プーチン大統領の冬支度

ロシアの仲間

増やせるか 減らすのか
仲間は 金持ち 貧乏  どちらの国

イスラエル・ガザ戦争が始まり 
プーチン大統領 大喜びか
ウクライナ侵攻のネット上の情報 情報量が日に日に減少

 


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第三次世界大戦  プーチン大統領の「夢」  戦争終結の道  ウクライナ分断  孤立するロシア  プーチンの新冷戦  どこへ行くプーチン大統領 ・・・   ウクライナ侵攻 丸二年  
  
 

 

●メディアが騒ぎ立てる「中国が165年ぶりにウラジオストク奪還」の現実度 10/1
モスクワを訪問した習近平氏の「本当の目的」
今年5月、中国の税関当局が突然「6月からロシアのウラジオストク港を越境のための通過港として使用可能にする」と発表したことで、世界のメディアは敏感に反応、「中国が165年ぶりに同港奪還か」とセンセーショナルに書き立てた。
もちろんロシアのプーチン大統領がこんな見出しを目にすれば面白くないだろうが、恐らく機嫌を損なうような話題を、側近がプーチン氏に耳打ちすることはないだろう。
中国内陸部の東北三省地域(旧満州)の経済発展のため、海の玄関口として一番近い同港を、自国港のように自由に使えるという取り決めだ。同港はロシア東部、極東地域の日本海に面した貿易港で、同国海軍太平洋艦隊が司令部を置く一大軍港でもある。
東北三省地域での商工業・交通の中心都市、牡丹江(ボタンコウ)は中国の対ロ貿易の窓口で、ウラジオストクは南東約240kmの距離にある。だが越境の際は煩雑な通関手続きが必須で、「手間・ヒマ・コスト」がかかるため、活発に使用されてきたとは言い難い。
これを改善するため、今年3月中国の習近平国家主席が直接モスクワに乗り込みプーチン氏に直談判。プーチン氏も快諾し、中国と同港との間を通過する物流に限って、通関手続きをほぼ撤廃。中国は自国の港並みに自由に使えるようになった。
だが実際は、孤立無援の“盟友”の足元を見つつ、「欧米との関係悪化は避けたいので目立った軍事支援はできないが、可能な限り助ける」と、習氏は自分に有利なディールをプーチン氏に持ちかけ、会談は長時間に及んだものと見られる。
もちろんウクライナ戦争関連が中心で、中国による武器・弾薬支援をプーチン氏が迫ったことは想像に難くはない。
一方、同港の自由使用についても話し合われたようで、「当初難色を示していたプーチン氏も、中国の離反だけは避けたいと、同港の自由使用権を渋々認めたのでは」との見方が有力だ。
習氏は訪ロ直前の3月初め、中国の国会に当たる全人代(全国人民代表大会)で3期目となる国家主席の続投を果たし、初の外遊先にモスクワを選んでプーチン氏を大いに喜ばせるという演出までした。
対照的にプーチン氏はウクライナ侵略戦争が想定外の長期戦・消耗戦に突入、国内経済も疲弊し始めるなど冴えない。両者が交渉に臨めば、どちらが有利かは自明の理だろう。
ウラジオストク港の自由使用権は事実上の「軍港化」
今回の取引では「2030年までの経済協力に関する共同声明」がまとめられ、鉄道・道路・河川・海運など物流インフラでの一層の連携が話し合われ、ウラジオストク港の自由使用権はその目玉的存在でもある。
だが「裏には軍事的な秘密協定も結んだのでは」との指摘もある。「中国海軍による同港の事実上の“軍港化”」だ。
「急膨張する中国海軍は南シナ海、東シナ海、西太平洋と活動範囲を拡大。対米軍事戦略を考えれば今後は日本海、さらには北極海へと艦艇が遊弋(ゆうよく/軍艦が動き回ること)の度を強めるのは確実だ。だが、そうなると適当な場所に補給・休養・修理が可能な港湾がどうしても必要になる。しかもできるだけインフラが整った大規模な軍港、つまりウラジオストクが理想的と言える」(事情通)
近い将来、中国海軍が日本海で活動を活発化させたくても、同国はこの海域に面しておらず自国の港湾などはない。ちょっとした補給・休養なら友好国のロシアや北朝鮮の港を借りることも可能だろうが、常時寄港できる保証はない。
となれば艦艇は定期的に対馬海峡を通過し母国の軍港まで回航しなければならないが、片道だけでも優に1500kmを超え効率が悪い。また、日本海に中国海軍が事実上の軍港を擁したとなれば、対抗する日米韓に対する軍事戦略上の強力な牽制ともなる。
実は「今回の共同声明の文言がカギとなる」との見方もあるようだ。
「『鉄道・道路・河川・海運など物流インフラでの一層の連携』との内容だが、これはそのまま軍事の兵站、『ロジスティクス』と読み替えることができる。
ウラジオストク港を中国海軍の軍港として使用することはもちろん、同港〜牡丹江の鉄道や道路による軍需物資、さらには有事の際の武器・兵員輸送も比較的自由にできる、という内容が盛り込まれているかもしれない。実際、旧共産圏が結んだ『善隣友好協力条約』などには軍事的内容の“密約”が付される場合がほとんどで、額面どおりに見る国際通などいない」(別の事情通)
中国お得意の“サラミ戦術”で失地回復をもくろむ
今回両者の交渉が「中国海軍の同港常時使用」にまで本当に話が及んだかは不明だが、それでも世界のマスコミが騒ぐように、中国側にとって今回の共同声明が、「苦節165年の奪還」の第一歩と位置付けている可能性が高い、との深読みにはそれなりの根拠がある。
以前、当サイトにも寄稿したが、欧米列強が植民地拡大で競っていた19世紀半ば頃、中国(当時の清朝)はアヘン戦争でイギリスに敗北。「眠れる獅子(=清朝)は恐るるに足らず」とロシアも侵略に着手。軍事的恫喝を繰り返しながら1858年に無理矢理「アイグン条約」を結び、ウラジオストク周辺の広大な清朝の領土を奪った「黒歴史」がある。もちろん中国にとっては屈辱的な過去だろう。
そこで皮肉にも、同様にロシアがウクライナに侵略しつつも苦戦している現状を中国はチャンスと捉え、まずはウラジオストクを徐々に取り戻そうと考えても不思議ではない。
「まずは当たり障りのない商業的な『非関税利用』あたりを皮切りに、港湾の拡大・整備やこれに必要な資金投融資、一部港湾区画の長期租借、租借地の治外法権化や軍隊の駐留など徐々にレベルを上げ、気がついた時には事実上の中国領というシナリオだ。
南沙諸島や尖閣諸島などでも現在進行形で、時間をかけて既成事実を徐々に積み上げる“サラミ戦術”(サラミをナイフで薄く切って行くように気がついた時にはなくなっている)はいわば中国のお家芸だ」(前出の事情通)
現に「サラミ戦術」はすでに始まっている模様で、今年2月中国の公式地図を発行する自然資源省は、地図上の「ウラジオストク」の表記をこれまでロシア語だけから、新たにかつて中国領だった時の「海参崴(ハイシェンウェイ):海辺の小さな村」という名前の併記を義務づけた。
ウラジオストク自体がそもそも「東を支配せよ」を意味し、中国にすれば心情を逆なでする“悪名”で、1日でも早い改名を願っているはず。このタイミングでの「海参崴」併記義務づけは、ウクライナ戦争を抱えるプーチン政権が反対しにくい、と中国側が読んだのは当然だろう。
「港湾整備による経済発展」という甘い言葉に誘われて莫大な借金を背負わされ、返済できなければ港湾を約1世紀にわたって租借するという、中国の「債務の罠」は国際的にも問題だ。実際スリランカのハンバントタ港がこの罠に陥り、同港の99年間の運営権を中国に譲渡。パキスタンのカラチ港も同様の弊害に悩む。
それ以前に、「そもそも蜜月状態の中ロの間柄なのに、何で今さらウラジオストク港に対する中国への優遇措置をロシアは今まで認めなかったのか」という素朴な疑問も残る。
だが前述した歴史的背景があるため、「一度同港に対する優遇措置を中国側に認めると、これを突破口として失地回復の動きを加速させる恐れがある、というロシア側の猜疑心が根底に渦巻いていることは確かだろう。
同時に急膨張する中国海軍に、自分の“内海”のような日本海に荒らされたくない、というライバル心も見え隠れする。
その先に視野に置く「北極海航路」の位置づけとは?
今回のウラジオストク港の“確保”と関連するかのように、中国海軍の日本海におけるプレゼンスを印象付けるような動きが連続しているのも事実だ。
まず今年7月下旬に中ロ両海軍は日本海を舞台に合同演習「北方連合2023」を実施、中国側4隻、ロシア側5隻の計9隻が参加した。
次に一度ウラジオストクに寄港したこの艦隊は、引き続き「合同パトロール」と称する演習を展開。「アジア太平地域と平和と安定を維持するのが目的」との名目で、太平洋に出てそのまま北上。アメリカ・アラスカ沖のベーリング海峡で対潜訓練などを行った。
中ロ艦隊が約10隻という大所帯をともなってアラスカ沖で演習を行うのは過去に例がなく、アメリカに対する強力な示威行為だと日米の軍事関係者は注視しているという。
その後も中ロ艦隊の合同パトロールは続き、太平洋を南下した後、今年8月半ばに沖縄本島と宮古島の間に到達。そのまま東シナ海に入るなど、日米を挑発するかのような動きを見せている。こうした動きに、「中国側の狙いは北極海進出の布石と見るべき」との指摘も出ている。
近年温暖化の影響で北極海の氷が解け、年間を通じて艦船が航行可能な、いわゆる『北極海航路』と、同海域での資源開発の利権を巡り、同海の沿岸国のさや当てが激しくなっている。
そして北極海航路を「海の一帯一路の“北回り版”」と位置づけ、その権益を一定程度確保しようというのか、沿岸国でもない中国もこのさや当てに参加。2015年に艦艇5隻からなる艦隊を初めてベーリング海峡に差し向けて軍事プレゼンスをアピールするなど精力を注ぐ。
そして中国の北極海航路戦略にとっても、ウラジオストクは海軍の中継地として極めて重要というわけである。ただしこうした動きにロシア側も警戒しているはずで、実際中国側の「サラミ戦術」がうまく行くかどうかは分からない。
だが、ロシアが仕掛けたウクライナ侵略戦争で苦戦した結果、皮肉にも1世紀以上前に中国からかすめ取ったウラジオストクを、事実上中国に奪還されたとしたら、まさに「歴史の皮肉」と言うべきだろう。
●復興期待先行のウクライナ国債、財政安定も停戦はいまだ見通せない危うさ 10/1
・戦争の長期化が避けられそうにないウクライナだが、開戦当初の予想に反し財政は安定感を増している。
・インフレの抑制に成功し、支援金で外貨準備も潤沢だ。一部の国債の価格は6月以降に5割ほど上昇した。
・だが2024年、仮に大統領選挙が実施され国内の団結にヒビが入るような事態になれば、戦況も財政への信任も大きく揺らぎかねない。
3カ月前に反転攻勢を開始したウクライナ軍はこのところ、クリミア半島の奪還に向けて攻勢を強めている。クリミア半島は2014年にロシアに併合され、ゼレンスキー大統領が「必ず奪還する」と強調している地域だ。
ゼレンスキー氏は「クリミア半島を含むロシア軍に奪われた全領土の奪還」を停戦の条件に掲げているが、反転攻勢全般の戦況はかんばしくない。戦争の長期化は避けられない情勢となっている。
長引く戦況を耐え抜くためには健全な経済が必須だ。しかし、連日のようにロシアからの攻撃にさらされるウクライナ経済は深刻なダメージを被っているのは言うまでもない。
2022年の実質国内総生産(GDP)は前年比29%減の1兆8000億フリブナ(約7兆円)となった。2022年の消費者物価指数(CPI)も急上昇した(前年比26.6%増)。
継戦能力の維持のためには安定した財政運営も不可欠だが、急増する戦費を歳入が賄えなくなったウクライナ政府は国立銀行(中央銀行)による国債引き受けに踏み切らざるを得なくなった。今年度のウクライナの財政赤字は侵攻前に比べ約9倍に膨らむ見込みで、西側諸国からの支援金に依存する状態が続いている。
市場関係者は開戦当初「ウクライナ財政が破綻するのは時間の問題だ」と危惧していた。だが予想に反し、ウクライナ財政はこのところ安定感を増しているようだ。
2023年8月のCPIは8.6%と1ケタになるなどインフレ抑制に成功したことが大きかった。日本をはじめ先進国ですら高いインフレ率に苦しんでいるのに、領土が戦場となっている国が物価を制御できているのはたいしたものだ。
支援金のおかげでウクライナの8月末の外貨準備高が404億ドルと過去最高となっていることも好材料となっている。
債権市場からの資金調達を活発化
ウクライナは昨年末から今年初頭にかけてロシアに電力インフラの約半分を破壊されるなどの深刻な被害を受けた。そうしたなか、政府が銀行部門への電力供給を優先するなど金融面のインフラ維持に努めたことも功を奏した。
これらのおかげで国際機関や投資家からの信認を得ることに成功したウクライナ政府は、債券市場からの資金調達を活発化させている。金利15〜20%近い各種の国債を発行しているのだが、一部の国債の価格は国際市場で今年6月以降、5割近くも上昇している。
過去最大の財政赤字を抱えるウクライナに対して、国際通貨基金(IMF)が3月末、4年間で総額156億ドルの金融支援プログラムを承認したことも追い風となった。だが、足元ではウクライナ経済に対する今後の期待が「買い」材料となっている。
ウクライナ政府は8月1日「来年の成長率は約5%に達する」との見通しも明らかにした。主な要因は「復興向けの投資」だ。
ゼレンスキー氏は国連総会などに合わせて訪米した際、ウクライナ復興のための投資について米実業家らと協議したことを明らかにした。ゼレンスキー氏によれば、資産運用大手ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)などがウクライナの復興に向け、大規模投資を行う用意があると表明したという。
ウクライナ政府は復興資金の規模を明らかにしていないが、世界銀行は「4000億ドルを大きく超える」と推計している。
大統領選挙の実施を求める西側諸国の声
復興資金の獲得でも「獅子奮迅」の活躍ぶりを見せているゼレンスキー氏だが、ここに来て頭が痛い問題が浮上している。
9月24日付の米ワシントンポストは「西側諸国は『来年3月に予定されている大統領選挙を実施すべき』との圧力を高めている」と報じた。
ロシアの侵攻以降、ウクライナでは戒厳令が敷かれ選挙が実施されなくなっている。だが、今年初めに大震災に襲われた後に大統領選挙を行ったトルコの事例を挙げて「ウクライナも『自由で公正な』選挙を行うべきだ」との声がにわかに高まっている。米国に代わってウクライナ支援の主役になりつつある欧州の人権重視の姿勢が影響している可能性がある。
これに対し、ウクライナの政治リーダーたちは戦時に選挙を行うことには消極的だ。
「選挙を強行すれば政治的分裂が生じ、国家の団結を台無しにしてしまう」との意見が大勢を占める。それでも、支援を受けている西側の意向を無視するわけにはいかないだろう。
筆者は「停戦のめどが立っていないのに、復興支援が先行して大きな話題になっているこのはおかしいのではないか」との思いを禁じ得ないでいる。「西側諸国から絶大な信頼を集めるゼレンスキー氏を中心にウクライナは一致団結している」という印象は西側諸国に広く共有されている。だが、そうしたイメージは、「戦争中に民間の長期資金を呼び込むことは至難の業だ」という不都合な真実を覆い隠すという危うい構図を生み出しかねない。
「選挙を実施すれば国内での高い支持率を維持するゼレンスキー氏の再選が有力だ」とされている。それでも、仮に大統領選挙が実施され、その結果がゼレンスキー氏にとって逆風となるものになったら、復興頼みのウクライナ国債への期待も萎んでしてしまうのではないだろうか。
思い起こせば、1998年のロシアの財政危機が災いしてロシア国債への投資を行っていた大手ヘッジファンドLTCMが破綻し、米国の金融市場は大きく動揺した。ウクライナ発でLTCMの「二の舞い」が起きないことを祈るばかりだ。 
●プーチン大統領、ウクライナでの戦争はロシアの主権を守る行動だ 10/1
ロシアのプーチン大統領は9月30日、大統領府のウェブサイトに掲載されたビデオ演説で、同国はウクライナで戦争をすることで自国の「主権」と「精神的価値」を守っているとの見解を示した。
演説はプーチン大統領がウクライナの4州を一方的に併合する文書に署名して1年が経過したのにあわせて公表された。
プーチン大統領は2022年2月に開始したウクライナ侵攻について、「われわれはロシアそのものを防衛している。母国のため、われわれの主権のため、精神的価値と統一のため、勝利のために共に戦っている」と説明。併合した地域を再生・発展させるための「大規模なプログラム」を実施する必要があるとも述べ、目標達成を誓った。
ウクライナが米国や他の同盟国からの多額の武器支援を受け4カ月にわたり反転攻勢を実施し、東部と南部でロシア軍の進行を阻んでいるにもかかわらず、プーチン大統領は今回の演説を通じ、領土に関して強固に主張することを目指した。
ロシア政府は1年前、ウクライナのザポリージャとドネツク、ルハンシク、ヘルソンの4州を併合するため、見せかけの「住民投票」を実施した。この投票は国連やウクライナの同盟国から非難を浴び、国際的にも認められていない。
ロシア安全保障会議の副議長を務めるメドベージェフ前大統領はテレグラムへの投稿で、戦争はウクライナ政府の「完全な破壊」と「ロシア固有の領土の解放」が実現するまで続くと発言。ロシアには「新しい地域が増える」ことになるとも述べた。
●ロシア空軍、戦争長期化で「機能不全」?既に約90機も喪失か 英国防省分析 10/1
イギリス国防省は2023年9月28日(木)、ウクライナ紛争の状況に関する分析を更新。ロシア空軍がウクライナ侵攻を開始した2022年2月以降、戦闘で約90機の固定翼機を喪失したとの分析を明らかにしました。
同国防省は、ロシア空軍が一部のタイプの戦闘機を平時より集中的に飛行させていると指摘。全ての航空機には、飛行時間で定められた寿命がありますが、ロシアは空軍の見込みよりも早く、機体の残存寿命を食いつぶしている可能性が高いとしています。
また、需要の増加や制裁によるスペアパーツ不足により、航空機のメンテナンスに支障をきたしているといいます。
同国防省によると、ロシア空軍は、占領下に置いたウクライナ上空への出撃回数を急増させる能力は依然として維持しているそう。ただ、戦争がロシアの当初計画より長引いているため、長期的にロシア空軍が戦術航空戦力を維持できなくなる可能性が高まったと分析しています。
●スロバキア、ロシア寄り中道左派が第1党に ウクライナ支援に反対 10/1
スロバキアで9月30日、議会選挙が行われ、ロシア寄りでウクライナへの軍事支援停止を訴えたフィツォ元首相率いる中道左派「スメル(道標)」が第1党となる見通しとなった。政権を作るには連立相手が必要となる。
開票率98%の段階でスメルの得票率は23.37%、リベラル派の「プログレッシブ・スロバキア(PS)」は16.86%。
「声(Hlas)」が15.03%で3位となっている。同党はスメル出身のピーター・ペレグリーニ氏が党首を務めており、政権樹立の鍵を握る可能性がある。
●スロバキア 隣国ウクライナへ軍事支援停止訴える野党が第1党へ 10/1
ウクライナの隣国スロバキアの議会選挙で、ウクライナへの軍事支援の停止などを訴えた野党が第1党となるのが確実となりました。今後、連立政権を発足させ、支援を停止するかなどが焦点となります。
ヨーロッパ中部のスロバキアでは先月30日、議会選挙が行われました。
統計局によりますと、開票率99.56%の時点で、ウクライナへの軍事支援の停止を訴え、ロシアへの制裁に反対するフィツォ元首相率いる左派の野党「方向・社会民主主義」が得票率23%余りで1位となっています。
スロバキアのこれまでの政権は、NATO=北大西洋条約機構の加盟国としては初めて戦闘機をウクライナに送るなど軍事支援を進め、ロシアへの制裁についてもEU=ヨーロッパ連合と足並みをそろえてきました。
フィツォ氏率いる党は、ロシアへの制裁は物価の高騰を引き起こし国民を苦しめるだけだなどとロシア寄りの主張を訴え、軍事侵攻の影響に不満を募らせる層などを中心に支持を広げたとみられます。ただフィツォ氏率いる党は単独で過半数を確保できておらず、今後、連立政権の発足に向け、交渉を行う見通しです。
その行方はウクライナを支援するEUの結束にも影響を与えかねず、フィツォ氏が政権を握った場合、ウクライナへの軍事支援を停止するかなどが焦点となります。
専門家 “ロシア寄りの主張は選挙に勝つため”と分析
スロバキアのシンクタンク、ブラチスラバ政策研究所のバシェチカ所長は、これまで3度首相を務めたフィツォ氏について、もともとロシア寄りの政治家ではないとした上で、「フィツォ氏は国民のかなりの数がロシア寄りだと知っていて、ロシアのプロパガンダだけでなく、反欧米的な考え方をまねている」と指摘し、選挙に勝つための戦略として意図的にロシア寄りの主張を繰り返していると分析しています。
そしてフィツォ氏が政権を握った場合、「選挙期間中ほどではないが、反ウクライナ的言動を続け、早期の和平交渉も求め、ロシア側の主張を繰り返すかもしれない」と指摘しました。
一方で停止を訴えるウクライナへの軍事支援については、第3国経由で弾薬を送るなどEUやNATOとの決定的な対立を避ける対応を取る可能性があるとの見方を示しました。

 

●ウクライナのロシア支配地域、地方選で編入支持=プーチン大統領 10/2
ロシアのプーチン大統領は30日、最近行われた地方選挙でロシアへの編入を望むウクライナのロシア支配地域住民の意向が反映されたとし、昨年の住民投票結果を再確認するものだとの認識を示した。
ウクライナ4州の併合宣言から1年となる節目に公開されたビデオ演説で、併合を支持する当局者らが9月上旬の地方選挙で勝利したことでロシアに加わるという選択が改めて鮮明になったと指摘。
「1年前の歴史的な住民投票と同様に、人々は再びロシアと共にあることを表明・確認した」と述べた。
昨年2月に開始したウクライナ侵攻について、「全面的な内戦」と「異なる考えを持つ人々に対するテロ」を引き起こしたウクライナの民族主義的指導者から人々を救う作戦との立場を繰り返した。
ロシアは昨年9月にウクライナ東部ドネツク州とルガンスク州、南部へルソン州とザポロジエ州の一部地域で住民投票を実施。圧倒的多数が賛成したとしてロシアへの併合を宣言した。
●プーチン氏、習氏との会談に期待 建国74年に合わせ祝電 10/2
ロシア大統領府は1日、プーチン大統領が中国の建国74年に合わせて習近平国家主席に祝電を送ったと発表した。中国での巨大経済圏構想「一帯一路」の国際会議に合わせた首脳会談を念頭に「近く行う交渉が、全ての分野におけるロ中の建設的関係の強化と、ユーラシア地域や世界の安定に貢献すると確信している」と期待を示した。
また中国が習氏の指導下で「国際舞台で地位を強化し、地域と世界の重要な問題の解決に積極的に関与している」と称賛。ロ中は包括的パートナーシップと戦略的関係に基づき「全ての分野で効果的に協力し、国際問題でも連携している」と指摘した。
●ウクライナ戦争に終止符か?ロシア外相発言から見えた「停戦のヒント」 10/2
欧米諸国からの強力な支援を受け反転攻勢を続けるウクライナと、攻撃の手を緩めることのないロシア。先日開かれた国連安保理の会合でも両国は非難の応酬を繰り広げましたが、戦争はこのまま泥沼化の一途を辿るしかないのでしょうか。
ウクライナ戦争停戦のラストチャンスか。露外相の意外な国連での発言
2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻直後、この戦いは数日のうちにロシアの圧勝で終わり、ロシアの条件下での停戦合意ができるという見込みが強く存在しました。
しかし、実際には今日に至るまで、およそ580日強にわたって両国間での戦闘は続き、ロシアによる一方的な支配地域を巡る攻防は一進一退の状況で、ロシア・ウクライナの当事者たちも、ウクライナの背後にいる欧米諸国とその仲間たちも、この戦争の長期化を見込んだ対応を取り始めています。
欧米諸国とその仲間たちから膨大な支援を受け、ロシアに対する反転攻勢を強め、【2014年の国境線まで領土を回復する】ことを目標に掲げているウクライナのゼレンスキー大統領は、支援を受け、その支援がウクライナの生死を左右する命綱であるがゆえに、ロシアに対して振り上げ、国際社会を味方につけるために掲げた拳を下げるチャンスを逸しています。
NATO加盟を希望し、今夏開催されたNATO首脳会談でNATO加盟に向けた動きが始まるものとの期待は、NATO諸国の首脳たちが抱く「ロシアとの直接的な戦争に巻き込まれたくはない」という堅い意志に阻まれ、しばらくは加盟申請に関する議論さえ始められない始末です。
NATOからは「戦闘中の国家の加盟申請を受けることはできないため、状況が落ち着くまでは議論は開始しない」という回答が寄せられましたが、それは実質的にウクライナ政府にロシアとの停戦協議を持つことを要求すると理解され、ゼレンスキー大統領が掲げる「全土奪還」という究極目標の達成に向けた動きとは相反する内容となるため、ウクライナは大きなジレンマに陥っていると思われます。
「現時点ではロシアと停戦協議のテーブルに就くことは不可能」という立場を表明し、欧米諸国とその仲間たちから供与された最新鋭の兵器(例:英国からのストームシャドーミサイル)を投入して、ロシア軍に占領されているウクライナ国内の都市にあるロシア軍施設や、ロシア国内の空軍基地などへの攻撃を激化させる行動に打って出ています。
その狙いは「できるだけ早期に、ウクライナにとってできるだけ有利な条件で停戦に持ち込むための政治的な土台を確保する」ことと考えられます。
士気を保つためと、欧米諸国とその仲間たちからの継続的な支援の確保のために、表立っては非常に高い軍事的な目標を掲げざるを得ない状況になっているものの、実際にはかなり状況は苦しく、欧米諸国とその仲間たちからの支援の途絶は、ウクライナの存続の可否(生死)を決定づけることに繋がるため、ロシアに対する反転攻勢は継続しつつも、現時点では「完全なるvictoryの追求」や「2014年、または1991年時点の国境ラインまでの回復」といった長期的な目標の追求よりも、「まずは一旦、停戦する環境を整えること」に政策的・戦略的な優先順位が移っているように見えます。
その背後には、来秋に大統領選挙と議会選挙を控えるバイデン政権とアメリカ連邦議会からの圧力が存在し、「現実的な対応を早急に望む」という、先週のワシントンDC訪問時にバイデン大統領や議会関係者からゼレンスキー大統領に伝えられた意向とも重なるものと考えられます。
ウクライナの「クリミア半島奪還」はあり得るか
では「ウクライナにとって有利な政治的な環境」とはどのような状況を指すのでしょうか?
多数の関係者から寄せられる分析を見てみると、それは「クリミア半島の奪還に向けた環境づくり」という答えにたどり着きますが、そのために「ウクライナ南部地域(ロシア本土からクリミアを繋ぐ回廊)の寸断を行い、クリミア半島のロシア軍と親ロシア派勢力への補給路を断つことが出来るか否か」が大きなカギになります。
英国の情報機関の分析では、ここ2週間から3週間の間に、ウクライナ軍がウクライナ南部の回廊を遮断することが出来るか否かにすべてがかかっているとのことです。
もしウクライナ軍による反転攻勢作戦を通じて、ロシアにとっての回廊を寸断し、クリミア半島をロシア本土と切り離すことが出来れば、近未来的にクリミア半島をロシアから奪還する土台が整うということにあります。
そうなれば予想外に早期の停戦を実現する可能性が高まりますが、その際に必ずと言っていいですが、ウクライナサイドがロシアに突き付ける“停戦のための条件”は【クリミア半島のウクライナへの返還とロシア軍の完全撤退】という内容になるはずです。
ロシアが“その”時点でウクライナ側の要求を検討するかどうかは、ちょっと次元の違うお話になりますが、その素地、つまりそのような要求をロシアに突き付ける条件がそろった時点で、ウクライナとしては欧米諸国とその仲間たちに対して【継続支援こそが、ロシアの野望を打ち負かす最低かつ必要条件である】という要求ができる最低条件となります。
仮に今後の反転攻勢がうまく行き、クリミア半島の帰属・返還を議題に挙げ、ロシアを停戦協議のテーブルに引きずり出すことが出来たとして、“クリミア半島の奪還”の実現可能性はどれほど考えられるでしょうか?
長期的なタイムスパンで見た場合、もしかしたら可能性は出てくるかもしれませんが、欧米諸国とその仲間たちが望む“今年中の解決・停戦協議の開始”という短期的なタイムスパンで見た場合、実現可能性、つまりロシアサイドがこれを話し合うことに合意する可能性は極めて低いと考えます。
その理由はプーチン大統領の政治的な理由にあります。
プーチン大統領への非難が強まっていた2014年に、電光石火の作戦でクリミア半島を奪い、ロシアによる実効支配を実現したことは、自身の支持率の急回復と政権基盤の盤石化に繋がった貴重なレガシー、そして権力の象徴として捉えられているため、これを失うことは、ほぼ疑いなくプーチン大統領の政治的神通力の著しい低下を意味することになりますので、来年3月に大統領選挙を控えるプーチン大統領がクリミアを手放すことに合意することは、まず考えられません。
クリミアに関わる要求がウクライナから寄せられた場合、起きうるシナリオはロシアによる戦闘レベルアップであり、クリミア死守のためには戦闘・戦争のエスカレーションも辞さないという姿勢から、ロシア軍による大規模同時攻撃がウクライナに対して行われることにつながると思われます。
核兵器の使用をプーチン大統領は思いとどまる傾向にありますが、ロシア政府内で勢力を拡大し、発言力を増す強硬派に押されて、これまでの【使用を厭わない】という威嚇から、【使用に向けた最終段階への移行】という極限の緊張状態に向かうかもしれません。
独立宣言下で合意したウクライナ領土を露が認める可能性も
ただよりあり得るのは、ウクライナ南部とクリミア半島周辺にウクライナを引き付けておき、キーウをはじめとするウクライナ中部とポーランドなどの中東欧諸国との国境線に近い都市に対する一斉ミサイル攻撃の連日の実施で、圧倒的な実力差をウクライナに思い知らせ、ウクライナ政府が欧米諸国とその仲間たちの協力を受けて実施する【ウクライナは徐々に前進している】という情報戦略による効果も一気に叩き潰すという作戦に出るのではないかと考えます。
その表れに、先週、国連総会および特別安全保障理事会会合にロシア代表として参加したラブロフ外相は「交渉による解決は今のところは考えられず、ウクライナが戦争で雌雄を決するというのであれば、ロシアは受けて立つ。戦場でぜひ解決しよう」と発言し、ロシアはこの戦いにおいて一歩も退かず、目的を完遂するという決意を表明しています。
これだけ見ると、もう平和的な解決の糸口など存在せず、ロシアもウクライナもとことんまで戦い、著しく消耗し、何らかの形でこの戦争に決着がついた際には、どちらも復興不可能なレベルまで破壊されているのではないかという状況を想像させられますが、本当にもう立つ瀬はないのでしょうか?
希望的観測を含め、私はまだ停戦を実現する可能性を諦めていません。
それは私が調停グループにいて、停戦協議が本格化した際、何らかの役割を担うかもしれないからということからではなく、先週、UNの場で「戦争継続やむなし」と受け取れる発言をしたラブロフ外相の“別の発言”の中に【ロシア側からの停戦の呼びかけと条件】を見た気がしたからです。
2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻して以降、プーチン大統領はもちろん、他のロシア政府幹部が口にする正当化の理由の中で【NATOが東進を続け、ロシアの隣に位置するウクライナをNATOに加盟させるという事態は絶対に許容できない】という内容を何度も繰り返しています。
その背後には常にプーチン大統領が抱くNATOと欧米への根強い不信感があります。プーチン大統領の過去の発言によると、ロシアが旧ソ連の地位と遺産を相続し、ワルシャワ条約機構を解体させることに合意した際、欧米諸国との間で「統一ドイツよりも東にNATOを拡大しない」という約束が結ばれたそうですが、その約束はその後反故にされ、NATOは限りなく東方展開し、ロシアが裏庭と位置付けてきたバルト三国を飲み込んだことで、ロシアは大きな安全保障上の脅威を抱くことになったため、これ以上の東方拡大、特にウクライナに食指を伸ばすことは、ロシアへの宣戦布告に等しいという主張を固めたようです。
ラブロフ外相の発言の中で「1991年にウクライナが旧ソ連邦を離脱する際に合意し、採択された独立宣言に基づいて、ウクライナの主権を承認した。その際、独立宣言(ウクライナ国家主権宣言)の中には、ウクライナは今後、非同盟の国であり、いかなる軍事同盟にも参加しないということが明言されている」ことが強調され、ラブロフ外相は「(プーチン大統領も同じ意見だが)そのような条件が遵守されるという条件下のみ、ロシアはウクライナの領土の保全を支持する」と述べています。
この部分を見ると「ウクライナがNATOへの加盟を、当初の合意の通りに断念し、非同盟・中立の国としてのステータスを貫くのであれば、1991年の独立宣言下で合意したウクライナ領土を、ロシアが認める“可能性がある”」ように解釈できるように感じます。
もしこの解釈が適切だとした場合、ゼレンスキー大統領が停戦、究極的に戦争終結のためにNATO加盟を断念するという条件を呑みさえすれば、停戦の可能性がでてくると考えられますが、実際にはそれほど簡単ではないでしょう。
クリミア問題は棚上げか。考えうる停戦実現のシナリオ
まず【ゼレンスキー大統領とウクライナ政府は、ロシアが再度侵攻してこないという保証を得ることができ、それを信用できるかどうか】という大きな疑問です。
プーチン大統領があからさまにしてきた旧ソ連邦各国のロシアへの再統合という夢と、“ウクライナとベラルーシ、ロシアは不可分の存在”という基本姿勢は、プーチン大統領が存命で権力の座にいる間は不変か、強まる一方であるため、いずれはウクライナへの軍事・非軍事的攻撃を強めるだろうと予想できます。
ゆえに、ゼレンスキー大統領とウクライナ政府としては、身の補償のために、NATOという後ろ盾または“保険”を確保したいと考えるのではないかと予想します。
次に仮にゼレンスキー大統領とウクライナ政府がNATO加盟を諦めることに同意し、公言しても、先ほどのラブロフ外相の発言内容に照らし合わせると、根本的なところでロシアとウクライナ双方が折り合うことが出来ない要素が解決されないことになります。
それはクリミア半島の帰属問題です。
1991年当時の合意内容に基づくならば、ソ連崩壊後は、“クリミア半島はウクライナの領土”とされたため、ウクライナに返還されることとなりますが、2014年にロシアがクリミア半島に侵攻し、一方的に併合したことは、プーチン大統領の政治的なレガシーに位置付けられているため、クリミアを放棄することは考えづらいと考えられるため、一筋縄ではいかないと思われます。
クリミア半島も回復することが至上命題と宣言したゼレンスキー大統領とウクライナ政府に対し、クリミア半島の併合はロシア系住民の権利と安全を保障するための必要な措置であり、住民の大多数をロシア系住民が占めることに鑑みて、クリミアはロシアの一部であることが明白と言いたいプーチン大統領とロシア政府の主張とこだわりは、決して相容れられないものであることは明白です。
しかし、停戦協議を再開し、かつ停戦を実現する可能性が残っているとすれば、「ロシアが一方的に併合した東南部4州―ドネツク、ヘルソン、ルハンスク、ザポリージャの“返還”」がロシア側からのカードとして示され、それをウクライナ側が当面の勝利として受け入れ、一旦、停戦をするというシナリオが成り立つ場合が考えられます。
この場合、クリミアの帰属は未解決案件として残し、2国間での合意に向けたプロセスを国際的に立ち上げ“直し”、調停プロセスに乗せて議論・協議を行うことするという条件に合意したうえで、ウクライナは東南部4州の奪還を“勝利”としてアピールし、ロシアは“NATOの東進・東方拡大を阻止したこと”を国内向けの“勝利”としてアピールするという繕いはできるのではないかと考えられます。
「絶対に停戦協議を行える・話し合いを持つ条件が揃っておらず、とことん戦うしかない」と言われているロシア・ウクライナ戦争ですが、久々に、かなり憶測と希望的観測に基づいた内容であることは否めないものの、無益でかつ多大な犠牲を生み、世界全体に悪影響を与え続けるこの戦争に、一旦、停戦・休憩の機会を与え、沸騰した双方とその後ろ盾の国々の頭を冷やす時間を獲得できるwindowが生まれてきたような気がします。
さほど長くはない「window」が開いている時間
しかし、このwindowが少しだけ開いているのは、さほど長い時間ではないとも感じます。
今年11月には、ウクライナの最大の支援国アメリカが、大統領選まで1年を迎え、国内政治戦が本格化する時期に入ります。それまでに何らかの成果を得てアピールしたいバイデン大統領と民主党と、ウクライナへの支援の行き過ぎと継続に黄信号を灯らせることで、国内回帰を促すことで支持獲得を狙う共和党の政治戦がヒートアップするにつれ、ウクライナが忘れ去られ、明らかに対ロの立場が悪化するタイミングが訪れることが予想されるため、それまでに何らかのプロセスが始動している必要があります。
先述した英国情報機関の分析内容が示す通り、私はこれから2週間から3週間がヤマではないかと見ています。
●バイデン氏、ウクライナ支援継続を約束 支援予算除外「つなぎ予算」成立受け 10/2
アメリカのジョー・バイデン大統領は1日、アメリカはロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援を継続すると約束した。前日には、米連邦政府の閉鎖を回避する「つなぎ予算案」が成立期限前に土壇場で可決・成立したが、ウクライナへの追加援助はこれに盛り込まれなかった。
野党・共和党の強硬派は、ウクライナへの軍事支援追加に反発している。強硬派の多くは、ウクライナでの戦争に対するバイデン大統領の姿勢に公然と反対している。
しかし、バイデン氏は、ウクライナはアメリカの支援を「あてにできる」と述べた。つなぎ予算成立を受けてホワイトハウスで会見する中で、ウクライナ支援を継続すると強調した。
「どのような状況だろうと、ウクライナへのアメリカの支援が中断されることを、我々は容認できない」と、大統領は述べた。
バイデン氏は軍事支援の回復について、「確実に提供すると(ウクライナには)安心してもらえる」と述べた。さらに、「アメリカの同盟諸国とアメリカ国民とウクライナ国民には、アメリカは必ず皆さんを支援すると、あてにしてもらいたい。アメリカは皆さんを見捨てて立ち去ったりしない」と強調した。
9月30日夜に成立したつなぎ予算には、ホワイトハウスの最優先事項であるウクライナ政府への60億ドル(約9000億円)相当の軍事援助は含まれていない。
数万人の連邦職員は10月1日午前0時1分(アメリカ東部標準時夏時間、日本時間10月1日午後1時1分)から無給の一時帰休となり、様々な政府サービスが停止される可能性があった。
共和党内の少数の強硬右派議員は、頑なに歳出削減を要求し、議会での交渉を妨げた。大多数の議員は連邦政府の閉鎖回避を優先させたため、共和党強硬派が強く反対していたウクライナへの追加援助は、今回のつなぎ予算案に盛り込まれなかった。
ロシアが昨年2月にウクライナへの全面侵攻を開始して以降、アメリカはすでにウクライナに対して約460億ドル(約6兆8900億円)の軍事援助を行っている。
バイデン氏はさらに、240億ドル(約3兆6000億円)の追加予算を要請している。
今年に入ってからは、米軍の主力戦車「M1エイブラムス」をウクライナに供与したほか、長距離射程の地対地ミサイル「ATACMS(陸軍戦術ミサイル・システム)」をウクライナに供与する方針だと報じられている。ウクライナ軍は同国南部で、ロシア軍に対する反転攻勢をじわじわと続けている。
共和党強硬派が反発
9月30日夜に成立した、10月1日から45日間の予算執行を可能にする「つなぎ予算」では、当面の軍事資金提供の継続は見送られた。
与野党の上院幹部は共同声明で、今後数週間で「米政府による」ウクライナ支援の「継続を確保する」意向を示した。
しかし、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が追加支援を求めてワシントンを訪れてからわずか9日後に、ウクライナ支援を盛り込まないつなぎ予算が成立した。このことは、下院の共和党強硬派がここ数カ月で、戦争に反対する姿勢を強めていることを映し出している。
下院では共和党が僅差で、上院では民主党が1議席差で過半数を占めており、あらゆる財政措置の実施にも両党の賛成が必要となる。
マット・ゲイツ下院議員(共和党、フロリダ州)は9月30日に記者団に対し、「議会ですでに承認された資金の額は、必要以上の額と多すぎる額の間くらいだ」と述べた。
マージョリー・テイラー・グリーン下院議員(共和党、ジョージア州)は、ウクライナ政府への提供が決まっている額はすでに大きすぎると批判し、「ウクライナは51番目の州ではない」と述べた。
こうした共和党強硬派のアプローチは、民主党議員から猛反発を招いた。
マーク・ワーナー上院議員(民主党)は、「このタイミングでウクライナから手を引くなど、信じられない」とした。
こうした騒動とは裏腹に、ウクライナ政府関係者は、45日間の期限のつなぎ予算は自国にとっての外交的「チャンス」と位置づけようとしている。この間にウクライナは、さらに長期的な支援を確保しようという姿勢で、その外交努力に「45日」という締め切りが一方的に押し付けられたようなことだと、ウクライナ政府筋は話している。
ウクライナ外務省は、「アメリカからの援助の流れに変化は起きない」としており、30億ドル相当の人道的・軍事的支援は今でも届く予定だという。ただ、「現在進行中の事業」に影響が出るかもしれないことは認めている。
ウクライナの国会議員オレクシイ・ゴンチャレンコ氏は、アメリカからの資金援助停止はウクライナ政府にとって懸念材料だと認めた。
「米議会での採決は気がかりだ。アメリカは必要な限りウクライナと共にあると言っていたのに、その場しのぎの取り決めからウクライナ支援が除外された。これはウクライナだけでなく、ヨーロッパにとっても警戒すべき兆候だ」と、ゴンチャレンコ議員はBBCに語った。
「ウクライナ疲れ」
この政治的混乱は、西側諸国が抱える「ウクライナ疲れ」の症状の1つだ。米共和党内でウクライナ支援への懐疑的な見方が強まっていることや、スロヴァキアで最近実施された選挙でロシア政府寄りのポピュリスト政党が勝利したことは、ウクライナと欧州連合(EU)にとって懸念材料といえる。
キーウでBBCのインタビューに応じた、EUのジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表は、ウクライナへの資金援助に関する米議会の今回の決定を「心配している」という。
「私には今後どうなるかはわからない」としつつ、「ひとつはっきりしていることがある。我々ヨーロッパ人にとって、ロシアのウクライナに対する戦争は、存亡に関わる脅威なので、我々はそれにしかるべく対応しなくてはならない」とボレル氏は述べた。
ゼレンスキー氏は毎晩定例の演説で、誰かがウクライナの戦いを止めさせるなど、あり得ないことだと述べた。
「我々のたくましさ、我々の忍耐、しぶとさ、不屈の精神を、誰かが『停止』させるなど、あってはならないし、そんなことはできない。日常的にも緊急的にも。我々のたくましさにも忍耐にも、どれにも『消費期限』や『使用期限』などない。我々が抵抗を止める、戦いの期限などない。唯一の期限は、我々の勝利だ。そして、勝利を引き寄せる連日の戦いの中、我々はこう言う。『必要なだけ、戦い続ける』と」 「(2022年)2月24日の最初の数分間にもそうしていたし、この585日間ずっとそうしてきた。これからもそうする」と、ゼレンスキー氏は強調した。
●米つなぎ予算「サプライズ突破」、ウクライナ支援除外…反転攻勢の影響懸念 10/2
10月からの2024会計年度予算を巡り、米議会は予算措置期限だった9月30日の急転直下の与野党合意により政府機関の一時閉鎖を回避した。民主、共和両党の妥結によってウクライナ支援予算が除外され、ロシアに対する反転攻勢への影響が懸念される。
事態が急展開したのは、期限直前の30日午後だった。共和党のケビン・マッカーシー下院議長は、前日に否決されたつなぎ予算案から大幅な歳出削減や国境警備強化など共和党独自の主張を削除し、政権が求めていた災害対策費を加えて採決にかけた。極端な主張でマッカーシー氏を揺さぶっていた党内の保守強硬派との協調をあきらめ、民主党と歩調を合わせる路線にかじを切った。
下院の採決では、多数派の共和党から90人もの造反を出したが、民主党はほぼ全員が賛成に回った。民主系が過半数を占める上院でも、反対は共和党のみだった。米メディアは「サプライズ突破」などと相次いで速報した。
保守強硬派は、超党派で合意すれば議長解任の動議を出すと警告していた。マッカーシー氏は「大人の対応をしたい。職を危険にさらす必要があるのなら、私はそうする」と述べ、混乱回避に向けた苦渋の決断だったことを強調した。今後、動議が出る可能性がある。
民主党下院トップのハキーム・ジェフリーズ院内総務は記者団に「米国民の勝利であり、議会を乗っ取ろうとした過激派の全面敗北だ」と歓迎した。
ただ、今回の決着は政権側の完全勝利とは言いがたい。侵略開始以降、バイデン政権はウクライナを全面支援する姿勢を示してきたが、国民生活の混乱回避と引き換えに支援予算を犠牲にする形になったためだ。
政権はこれまで、10月からの3か月のウクライナ支援で240億ドル(約3・6兆円)の予算を米議会に求めてきた。11月17日までのつなぎ予算から支援関連が除外されたことで、必要な予算を確保できなくなる恐れがある。
バイデン大統領は30日の声明で「いかなる状況でも米国のウクライナ支援を中断させるわけにはいかない。重要な時期であり、必要な支援の可決を期待する」と述べ、つなぎ予算とは別の予算措置を求めた。
しかし、2024年の大統領選に向けては、共和党候補者指名争いをリードするトランプ前大統領が、バイデン氏の長男の疑惑が解明されるまで「追加の武器供与をすべきでない」と訴えている。主要候補の間でも「白紙小切手は渡さない」(フロリダ州知事のロン・デサンティス氏)などと支援抑制論が幅を利かせる。
ウクライナへの「支援疲れ」が国民世論に広がる中、バイデン氏が呼びかけた予算措置に共和党が歩み寄る見通しは立っていない。
●スロヴァキア総選挙、ウクライナ支援に反対の政党が勝利 連立交渉へ 10/2
中欧スロヴァキアで1日、総選挙の投開票があり、ロベルト・フィツォ元首相率いる親ロ派の左派ポピュリスト政党「道標・社会民主主義」(SMER-SSD)が第1党となった。
出口調査では中道リベラル派の優勢が伝えられていたものの、最終的にはSMERが24%の票を獲得した。
SMERは、選挙で勝利すれば直ちにウクライナへの軍事支援を中止すると公約していた。
フィツォ党首は2006〜2010年と、2012〜2018年に2度、首相を経験している。2018年には、政権幹部の汚職を調査報道していたジャーナリスト、ヤン・クツィアク氏の殺害事件を受けて辞任した。
今回の勝利を受け、フィツォ氏は新政権樹立に向けた連立交渉を開始する。
第2党は出口調査で優勢だった「プログレッシヴ・スロヴァキア」(PS、17%)、第3党は親欧派の「声・社会民主主義」(Hlas、15%)だった。
Hlasは、2020年にSMERから分離した左翼政党。同党のペテル・ペレグリーニ党首は連立の可能性を示唆しており、「議席の分布から、Hlasがいなければ、正常に機能する連立政権が成立しないことがわかる」と語った。
フィツォ氏はHlasのほか、ナショナリズム政党の「スロヴァキア国民党」(5%)と連立するとみられている。
一方、新たに選出された議会には、自由意志主義から極右まで7党が議席を獲得しており、連立交渉が長期化・複雑化する可能性がある。
ウクライナに「銃弾1発送らない」
フィツォ氏は「親ロ派政治家」と呼ばれることを好まないが、ロシア政府は今回の選挙結果を歓迎するものとみられる。
フィツォ氏は先に支持者らに対し、「SMERが政権入りすれば、銃弾1発といえどもウクライナには送らない」と話していた。
こうした脅しは、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)加盟国に懸念を抱かせる一方で、ソーシャルメディア上では、伝統的にロシアに親近感を抱くスロヴァキア人の支持を得ていた。
スロヴァキアはこれまで、ウクライナ政府を安定的に支援し、地対空ミサイルやヘリコプターを供与してきた。さらに、退役した戦闘機「MIG-29」戦闘機を部隊ごと寄付している。
隣国ハンガリーの右翼政権を率いるオルバン・ヴィクトル首相は、フィツォ氏の勝利をたたえた。
オルバン氏はソーシャルメディアに「Guess who's back!」(誰が戻ってきたと思う!)と英語で投稿し、「いつでも愛国者と仕事をするのは良いことだ」と付け加えた。
オルバン氏と同様、フィツォ氏はウクライナでの戦争について「ウクライナのナチスとファシストが始めた」と主張してきた。その上で、唯一の停戦方法は和平交渉だとしている。
フィツォ氏の勝利は、ウクライナをめぐるNATOとEUの結束に、ドナウ川沿いで非常に明白な亀裂が入ったという印象を与える。
第2党となったPSは選挙期間中、「オープンで、寛容で、コスモポリタンな社会」という構想を提示し、グリーン政策や性的少数者(LGBTQ)の権利といった問題に関して、EU内のリベラル路線を踏襲することを提唱していた。
SMERは、この構想を「リベラル・ファシズム」として否定。選挙活動では代わりに安定、秩序、社会保障などを掲げた。フィツォ氏はまた、スロヴァキア経由で西欧に向かう移民の増加を懸念している。
リベラル派のズザナ・チャプトヴァ大統領は、フィツォ氏の勝利に控えめな反応を示した。
チャプトヴァ大統領は、フィツォ氏の勝利を祝福せず、カメラの前にも姿を現さず、報道官を通じて声明を発表。「選挙の勝者は、国民の期待を最も高めているだけに、今後の展開に最大の責任を負うことになる。スロヴァキアのために、私たち全員のために、その責任を果たすことが重要だ」と述べた。
スロヴァキア初の女性大統領、チャプトヴァ氏の任期は来年までだが、ここ数カ月、自分や家族に対する敵対攻撃を受けているため、再選を目指さないとしている。また、フィツォ氏の支持者から殺害の脅迫を受けたとして、フィツォ氏を提訴している。
●プーチン、ワグネル後継者と面談…「傭兵、ウクライナ戦場に投じなければ」 10/2
ロシアのプーチン大統領が傭兵組織ワグネル・グループの高官要人に会ってワグネルの傭兵をウクライナ戦争に投じる方案などについて議論したとニューヨーク・タイムズ(NYT)が先月29日(現地時間)、報じた。
この日、クレムリン宮(ロシア大統領府)はプーチン大統領がユヌスベク・エフクロフ国防次官を同席させる中でワグネル・グループ創立メンバーでもあるアンドレイ・トロシェフ氏と会った映像を公開した。
プーチン大統領はトロシェフ氏に「あなた方は1年以上戦闘に参加してきた。その戦いがどんなものであるか、どのようにすればよいかを知っている」とし「戦いを再びうまく行うために先決しなければならないことが何かを知っている」と話した。
これに先立ち、プーチン大統領は6月29日、エフゲニー・プリゴジン氏をはじめとするワグネル・グループ指揮官30人余りを呼び集めた席で「セドイ(灰色の髪の毛を意味する単語)」の下で戦闘を持続するよう指示した。セドイとは、ワグネル・グループ支持者で構成されたテレグラムチャネルでトロシェフ氏を示すコードネームとして認識されているという。フランス財務省もまた、セドイがトロシェフ氏を意味する別称であることを確認しているという。
トロシェフ氏はワグネルの高位指揮官であり元ロシア軍大佐で、チェチェンやシリアなどの地で活動した履歴がある人物だ。
特にシリアではバッシャール・アサド政権を助けて反乱軍を相手に戦った。このためトロシェフ氏は2021年12月欧州連合(EU)の制裁名簿に入った。
トロシェフ氏はワグネル・グループの共同設立者であるロシア特殊部隊指揮官出身のドミトリー・ウトキン氏と密接な関係であることが分かった。
●汚職対策で行き詰まるゼレンスキー政権 戦況にも影響か 10/2
ウクライナ軍内で相次ぎ発覚している汚職問題が、ロシアに対する反転攻勢作戦の先行きに影を落としている。徴兵を見逃す見返りとして、当局幹部が巨額の賄賂を得ていた事実が明るみに出ているためだ。
戦争が激化、長期化し、徴兵作業は厳しさを増すなか、一連の事態は国民の士気を下げるのは確実。ゼレンスキー政権は、違法行為の徹底的な摘発や、人事の入れ替えを進めているが、一連の問題は国内の厭戦気分を高めるだけでなく、国際社会によるウクライナへの支援の継続にも支障を及ぼしかねない。
徴兵逃れるためにウソの証明書発行
「俺は何も知らない。俺は何も買っていない。もう、十分説明しただろう。俺は関係ない。俺の親類がスペインで土地を買ったかどうかなど、聞いていない」
ウクライナ南部オデッサ州で、「徴兵事務所」のトップを務めるイェベン・ボリソフ軍事委員は現地メディアの取材に、そう語るのが精いっぱいだった。委員は、男性が徴兵を逃れるために「重い病気に罹患している」などとウソ≠フ証明を行う「兵役免除証明書」を発行する斡旋ビジネスで、巨額の利益を得ていた。さらにその利益で、親族らがスペインで400万ドル相当の別荘や高級自動車を購入していた事実も発覚した。
黒海沿岸にあるオデッサ州は、ロシア軍が占領するクリミア半島に隣接するウクライナの重要拠点で、ロシア軍によるミサイル攻撃に繰り返し苦しめられている地域だ。そのような州で、このような不正が堂々と行われていた事実は、国民に強い衝撃を与えた。
同委員はその後逮捕され、解任されたが、類似の事件の発覚は、ウクライナ国内で後を絶たない。業を煮やしたゼレンスキー大統領は8月、徴兵の責任を担う国内のすべての州の軍事委員の解任を発表。さらに、徴兵をめぐる不正について、112件もの刑事手続きが行われていると表明した。
「徴兵の業務については、前線で戦い、健康と、(地雷などで)足を失いながらも、ウクライナの尊厳を守った人々が付くことこそが望ましい」とも主張し、負傷兵らに寄り沿う姿勢も強調した。
ゼレンスキー氏は同月末にも、演説中に「兵役免除証明書の提出が、昨年2月の開戦時と比べて、十倍以上に膨らんだ州がある」と指摘し、それらのケースを調査していると表明した。違法な証明書の取得には「3000〜1万5000ドルが支払われている」と具体的な金額まで明かし、政府として問題を看過しない姿勢を強調した。
正論である一方、そこまで言い切らねばならないのは、このような不正が戦況とウクライナの国内状況に取り返しのつかないダメージを与えかねないことを、大統領自身が熟知しているからにほかならない。ウクライナの社会調査では現在でも「ロシアに徹底抗戦する」との意見が圧倒的多数を占めている。しかし、自国軍内での不正の蔓延は、そのような国民の士気に甚大な影響を及ぼすのは必至だからだ。
繰り返される汚職スキャンダル
ウクライナ軍や政府をめぐる汚職事件は後を絶たない。1月にはウクライナ国防省による軍用食料の調達をめぐり、特定企業から不当に高い価格で食料を調達する手法で、300万ドル以上が着服されていたと報じられた。
同月には、インフラ発展省の次官が、発電機を含む支援物資の購入に充てられる資金を横領した事件も発覚した。同次官もまた、企業と共謀して物資の購入金額を不当に吊り上げ、40万ドルあまりを着服していたという。次官のオフィスでは、大量のドルやウクライナの通貨であるフリブナの紙幣が発見されたという。
ゼレンスキー大統領は「(政府関係者から汚職で巨額の利益を得ていた)過去にはもう戻らない」と強調したが、厳冬期にロシア軍の攻撃で電力を奪われる国民を守るための発電機の購入費用が汚職で消えていたという事実は、ウクライナの汚職の深刻さを物語ってあまりあった。
汚職問題に関して、従来はウクライナのメディアが精力的に実態を報じていたが、戦争が始まってからは、それらの報道は鳴りを潜めていた。しかし、戦争が長期化するなか、メディアは再び汚職問題をめぐる報道に注力しはじめており、そのような状況も、より多くの汚職問題が公になる背景にあるとみられている。
国民の不満が高まるなか、ゼレンスキー大統領は9月上旬には、オレクシー・レズニコフ国防相の解任に踏み切った。レズニコフ氏をめぐっては、1月に軍の食料調達を巡る汚職が発覚した際も解任が取りざたされたが、ゼレンスキー氏が留任を求めたとされる人物だった。
レズニコフ氏は2022年2月のロシアによる侵攻開始当初からゼレンスキー政権を支え、海外からの軍事支援の確保などでも優れた手腕を振るったとされており、ゼレンスキー氏は解任は避けたい意向だったとみられる。ただ、相次ぐ不正に対する国民の目の厳しさが増すなか、解任に踏み切らざるを得なかったもようだ。ゼレンスキー氏は9月18日にはさらに、国防省の次官6人全員を解任している。
先が見えない戦争
このような状況は、今後の戦況に甚大な影響を及ぼしかねない。
22年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、すでに1年半が経過したものの、戦争の終結は依然見通せない状況が続いている。開戦当初は、ウクライナ軍への入隊希望者が相次ぎ、軍は兵力の確保にそこまで苦心することはなかった。
しかし、戦争が長期化するなか、開戦当初と同様に国民の戦意を維持することは困難で、徴兵が思うように進まない実態が浮かび上がっている。
ウクライナ政府は8月から、徴兵を推進するための新たなキャンペーンを開始。徴兵適齢期の男性らに、徴兵事務所に足を運んでもらうことを促進するためのものだが、キャンペーンが掲げたスローガンは「勇気は、恐怖を乗り越える」だった。
マリャル国防次官(後に解任)は「徴兵事務所を訪れた人のすべてが徴兵されるわけではない。徴兵されたとしても、誰もが前線に行くわけではない」と強調したが、そのような説明をせざるを得ない事実に、ウクライナ軍が徴兵でいかに苦戦しているかが分かる。
マリャル氏はまた、「徴兵をめぐる汚職を排除する」と約束した。ロシア軍との終わりの見えない戦争に巻き込まれるなか、賄賂を支払える財力のある家庭の子弟が徴兵を逃れ、その金で徴兵事務所の要人らが私腹を肥やしていた。そのような事実は、軍に加入する人々の戦意に深刻な影響を与えている。
ウクライナ軍は6月上旬から反転攻勢を開始し、南部を中心にロシアによる占領地の奪還作戦を進めている。ドイツ製のレオパルト2戦車や米国製のブラッドレー歩兵戦闘車などを投入し、さらに米英から供与されたクラスター弾や劣化ウラン弾までを使用することで、一部では、ロシア軍の強固な防衛線を突破したと伝えられるなど、少しずつ戦果を出しつつある。
しかし、そのスピードは決して速いとはいえず、ロシア軍の激しい抵抗を受けるなか、犠牲者が増大している。開戦から1年半を経るなか、米メディアは8月下旬、ウクライナ軍の死傷者数が約20万人、ロシア軍は約30万人に達したとの米軍関係者の証言を報じている。
ウクライナ軍は戦況の膠着を受け、米軍の助言を受けて反転攻勢戦略を見直し、南部メリトポリ方面に戦力を集中する作戦を取り始めたとの報道もある。ただ、ウクライナ軍が戦力を集中させれば、ロシア軍にとっても標的を絞りやすくなるため、ウクライナ軍の損失をさらに増大させかねない危険性も指摘される。
米国は汚職調査
ウクライナで再び明るみに出始めている汚職問題は、同国の最大の支援国である米国の動きも躊躇させている。米政府はすでに、ウクライナの汚職問題を監視するチームを派遣したと報じられているが、国内で共和党、また国民の間でも強まるウクライナ支援拒否の動きを抑え込む狙いがあるとみられる。ただ、ウクライナ国内で同様の事態が続けば、米国内の世論を支援支持に向けるのは一層厳しさを増すのは確実だ。
ゼレンスキー大統領は9月21日に米ワシントンでバイデン大統領と会談し、ウクライナに対する支援継続を訴えた。バイデン氏は「パートナーや同盟国と共に、米国民は世界があなた方と共に立つよう、できることを全てやる決意だ」と応じたという。
汚職問題を契機に欧米の支援が滞れば、ウクライナ軍はロシアとの戦いでさらに厳しい状況に追い込まれるのは必至だ。ゼレンスキー氏はロシア、そして国内では汚職の撲滅という、二つの戦いに同時に勝利する必要がある。
●ウクライナ、防衛産業フォーラム開催 欧米企業誘致し集積地目指す 10/2
ウクライナのゼレンスキー大統領は30日、首都キーウ(キエフ)で開いた海外の防衛企業とのフォーラムで、ロシア軍への反転攻勢のための武器供給を増やすために欧米の装備品メーカーと提携することでウクライナの防衛産業を「一大集積地」にしたいと述べた。
フォーラムには約30カ国から250社強が参加。ロシア軍による攻撃が続くウクライナ国内で、海外企業と協力して武器の製造や修理の能力をどのように構築するかが議題となった。
ゼレンスキー氏は戦況について「後退することなく前進することが非常に重要な局面で、前線での成果が日々求められている」と説明。
「ウクライナの防衛に必要な装備品や、ウクライナの兵士が使用する先進的な防衛システムの生産を現地化し、前線で最高の結果を出すことにわれわれは関心がある」と語った。
同氏によると、防空と地雷除去が当面の優先課題で、ミサイル、無人機、砲弾の国内生産を強化することも目指している。
独ラインメタルや英BAEシステムズなど欧米の防衛大手数社が既にウクライナの防衛企業との提携を発表している。
ウクライナ外務省によると、国内防衛企業は無人機、装甲車、弾薬の共同生産、技術交換、部品供給について、海外企業と約20の契約を結んだ。
●ウクライナの勇気は誰も「閉鎖」できず、ゼレンスキー氏が演説 10/2
ウクライナのゼレンスキー大統領は「防衛者の日」に当たる1日に公表した事前録音の演説で、ロシアに対する自国の戦いを弱めるものは何もないと述べた。前日に米議会がウクライナ支援を含んでいないつなぎ予算を可決し、ひとまず政府機関閉鎖を回避したが、これには直接触れずに勝利へ向け戦う決意を繰り返した。
ウクライナの安定、忍耐、強さ、勇気を「シャットダウン(閉鎖)」することは誰にもできないと述べた。同国ではこのシャットダウンという動詞はロシアの攻撃に伴う停電を指す際にしばしば用いられる。
その上で、ウクライナは勝利の日になって初めて抵抗と戦いをやめるだろうと語った。
一方、ウクライナのウメロフ国防相は、オースティン米国防長官と電話会談したことを短文投稿サイトのX(旧ツイッター)で明らかにし、米国の支援が継続されるとの確約を得たとつづった。
バイデン米大統領は1日、議会共和党に対し、ウクライナへの追加支援を提供する法案を支持するよう求め、政府機関を閉鎖の危機にさらした瀬戸際政策にうんざりしていると述べた。
●EU、ウクライナへの軍事支援拡大へ=ボレル上級代表 10/2
欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は1日、ウクライナへの軍事支援を拡大する方針を表明した。
ウクライナを訪問しているボレル氏は、先月就任したウメロフ国防相と対面で初の会談を行った。
会談後の記者会見で、米議会の採決に関する質問に「米国で何が起こるかは様子を見ることになろうが、欧州は支援を続け拡大していく」と述べた。
米議会は30日夜、つなぎ予算を可決したが、ウクライナ支援は盛り込まれていない。
ボレル氏はX(旧ツイッター)への投稿で、EUが「ウクライナ向け安全保障への長期的な関与」を準備していると述べた。また記者会見で、加盟国が年末までに援助拡大について決定することを望むと語った。
ウメロフ氏はXで、EUの「継続的な支援」に謝意を表明。軍事援助に関する協議は「大砲・弾薬、防空、EW(電子戦)、長期支援プログラム、訓練、防衛産業の現地化」に及んだと述べた。
●ウクライナのロシア支配地域、地方選で編入支持=プーチン大統領 10/2
ロシアのプーチン大統領は30日、最近行われた地方選挙でロシアへの編入を望むウクライナのロシア支配地域住民の意向が反映されたとし、昨年の住民投票結果を再確認するものだとの認識を示した。
ウクライナ4州の併合宣言から1年となる節目に公開されたビデオ演説で、併合を支持する当局者らが9月上旬の地方選挙で勝利したことでロシアに加わるという選択が改めて鮮明になったと指摘。
「1年前の歴史的な住民投票と同様に、人々は再びロシアと共にあることを表明・確認した」と述べた。
昨年2月に開始したウクライナ侵攻について、「全面的な内戦」と「異なる考えを持つ人々に対するテロ」を引き起こしたウクライナの民族主義的指導者から人々を救う作戦との立場を繰り返した。
ロシアは昨年9月にウクライナ東部ドネツク州とルガンスク州、南部へルソン州とザポロジエ州の一部地域で住民投票を実施。圧倒的多数が賛成したとしてロシアへの併合を宣言した。
●英国防相、ウクライナで軍事訓練の可能性示唆 首相は否定 10/2
スナク英首相は1日、ウクライナに軍事教官を派遣する計画は当面ないと述べ、同国での軍事訓練の可能性を示唆した国防相発言を否定した。
英と同盟国はこれまでのところ、ロシアと直接衝突するリスクを減らすため、ウクライナに軍を正式に駐留させることは控えている。
就任して間もないシャップス国防相はサンデー・テレグラフ紙のインタビューで、英国や他の西側諸国でウクライナ軍を訓練するだけでなく、軍事教官をウクライナに派遣したいとの意向を示した。
ところが、このインタビューが掲載された数時間後、スナク首相はウクライナに英兵を派遣する計画は当面ないとのコメントを発表した。
与党保守党の年次総会の冒頭に「国防相が言っていたのは、将来的にはウクライナで訓練を行うこともあり得るということだ。しかし、それは長期的な話であって、今すぐにということではない。現在の紛争に英兵を派遣することはない」と記者団に明言した。
●ロシア 来年の国防費1.7倍に ウクライナ侵攻継続に向けてか 10/2
ロシア政府は来年の国防費を今年の1.7倍に増額させる予算案を提出しました。ウクライナ侵攻の継続に向けたものとみられます。
ロシアメディアによりますと、29日に提出された予算案では、来年の国防費は歳出全体の3割にあたるおよそ10兆7000億ルーブル、日本円で16兆円余りに増額となりました。
今年の国防費の1.7倍で、GDP=国内総生産の6%に相当します。
長期化する侵攻のさらなる継続に向けて、武器や弾薬の増産や志願兵などの人件費がかさむことを見込んだものとみられ、ペスコフ大統領報道官は「われわれは特別軍事作戦を続けている。増額は不可欠だ」と述べています。
一方、プーチン大統領は29日、新たに13万人の徴兵を行う法令に署名しました。
毎年春と秋に実施しているもので、ロシア軍参謀本部はウクライナ侵攻に派遣されることはないとしています。
今回の徴兵について、タス通信はロシアが一方的に併合したウクライナの4つの州の住民が初めて徴兵の対象になると報じています。  
●米「ウクライナ支援予算」ゼロの衝撃…支援疲れ蔓延で遠のく停戦、10/2
もはや、ウクライナの敗北は決定的なのか──。
9月30日、アメリカの「つなぎ予算」がようやく成立した。しかし、共和党の反対によって「ウクライナ支援予算」は盛り込まれなかった。今回成立したのは、あくまで11月半ばまでの「つなぎ予算」だが、2024会計年度の本予算でもウクライナへの支援予算は、大幅に縮小される可能性が高い。
「さすがに本予算からウクライナ支援が消えることはないでしょうが、これまでのような大盤振る舞いは難しいと思う。アメリカでは『ウクライナより、国内だ』という世論が強まっているからです。インフレによって生活が苦しくなっているのが大きな理由です。7月のCNNの調査でも、ウクライナ支援の追加予算を『承認すべきでない』が55%と過半数に達しています。1年後に大統領選が控えているバイデン大統領も、世論に抗してまでウクライナ支援に巨費を投じるのは困難でしょう」(元外務省国際情報局長・孫崎享氏)
ロシアのウクライナ侵攻から、すでに1年8カ月。「支援疲れ」は国際社会に広がっている。
30日に行われたウクライナの隣国スロバキアの議会選挙では、ウクライナへの軍事支援の停止を訴えた野党が第1党になった。
これまでスロバキア政府は、戦闘機を送るなど軍事支援を進めてきたが、ストップする可能性がある。勝利した野党党首は「ロシアへの制裁は物価の高騰を招き国民を苦しめるだけだ」とも主張している。
さらに、ウクライナ政府の強固な支持国だったポーランド政府も、ここにきて「ウクライナは溺れゆく人のように何にでもしがみつく」「ウクライナに武器提供はしない」と明言している。
停戦も遠のいた
最大の支援国アメリカが、ウクライナ支援に二の足を踏みはじめたら、戦局が大きく変わるのは間違いない。
「支援疲れしている国は、『早く停戦して欲しい』というのがホンネでしょう。停戦に動く国があるかも知れない。でも、逆に停戦は遠のいたと思う。日本の報道からは分からないかも知れませんが、ウクライナの反攻はうまくいっていません。勝利のシナリオが見えない。西側からの支援が縮小するとなれば、なおさら戦況は不利になる。となると、ロシアのプーチン大統領は簡単には停戦に応じないでしょう。勝てると確信を持ったら、徹底的に行くはずです」(孫崎享氏)
いま頃、プーチン大統領は高笑いしているのではないか。
●トルコ新国会開幕 スウェーデンNATO加盟が焦点 ロシアに強気も 10/2
トルコ国会の新会期が1日、開幕した。エルドアン大統領は5月の大統領選と国会選で勝利し、政策の自由度を高めた。これまで欧米とロシアの間で独自外交を展開してきたエルドアン氏はどう動くのか。対欧米で焦点となるのは、スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟への対応。対露政策で変化が生じるとの見方も出ている。
エルドアン政権は、ロシアのウクライナ侵攻後にNATO加盟を申請したスウェーデンに対し、承認を保留してきた。新規加盟には全加盟国の承認が必要だが、トルコ側は同国などの少数民族クルド人の武装組織の「テロ対策」に、スウェーデンが非協力的であることを理由にしてきた。
エルドアン氏は今年7月のNATO首脳会議後、10月からの国会でスウェーデン加盟を批准する意向を示した。ただ、ロイター通信によると同氏は9月下旬、引き換えにバイデン米政権が米戦闘機F16をトルコに提供すると約束したとし、「彼らが約束を守ればトルコの国会も約束を果たす」と述べた。批准とF16提供を絡めたのは米側だとし、米国に履行を迫っている。
エルドアン政権はロシアから防空システムS400を購入して米政府の怒りを買い、最新鋭ステルス戦闘機F35の国際共同開発から排除されたため、F16の提供を求めていた。米国では人権侵害などを理由に提供に難色を示す向きもある。
エルドアン氏が再選を機に、プーチン露大統領に対して強気の姿勢に転じたという見方も少なくない。
エルドアン氏は7月、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、同国の将来のNATO加盟を支持すると表明した。トルコは同国内での滞在を条件にロシアが解放したとされるウクライナ部隊「アゾフ連隊」の指揮官ら5人のウクライナ帰国も認め、ロシアは「合意違反だ」と批判した。
こうした流れを受け、米CNN(電子版)は9月上旬、ロシアの国力低下を見て取ったエルドアン氏が、プーチン氏との衝突を避けつつ影響力を強めようとしているという米評論家の見方を紹介した。
トルコは9月、旧ソ連圏への影響力浸透に向けた新たな足場も得た。支援してきたアゼルバイジャンが軍事作戦を通じ、アルメニアとの「ナゴルノカラバフ紛争」で最終的に勝利を収める形になったからだ。
エルドアン、プーチン両氏は利害対立を抱えつつも親密な関係を基に共存してきた。その関係に変化が起きればウクライナ情勢など多方面に影響しそうだ。
●ウクライナ 領土奪還へ反転攻勢続く EUはキーウで外相会議へ 10/2
ウクライナでは領土奪還を目指して反転攻勢が続くなか、EU=ヨーロッパ連合は2日、外相会議をウクライナの首都キーウで開催します。ウクライナヘの「支援疲れ」も指摘されるなかでEUとして結束して支援を継続する姿勢を示すねらいもあるとみられます。
ウクライナ軍は2日、南部ザポリージャ州の主要都市メリトポリや東部ドネツク州の激戦地バフムトに向けて反転攻勢を続けていると発表し、占領された地域を少しずつ解放しロシア側は人員や装備を失っていると強調しています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は1日の分析で、ウクライナ軍がことし8月に奪還を発表したザポリージャ州西部のロボティネ付近で、一進一退の戦闘が続き「流動的になっている」との見方を示しました。
こうした中、EU=ヨーロッパ連合は2日、外相会議をウクライナの首都キーウで開催するため、加盟国の外相がキーウに集まっていると明らかにしました。
会議に先立ちEUの外相にあたるボレル上級代表は、今後の支援について意見を交わすことが目的で、ウクライナへの関与がゆるぎないことを示すための開催だと説明しました。
ロシアによるウクライナ侵攻の長期化でウクライナヘの「支援疲れ」も指摘される中で、EUとして結束して支援を継続する姿勢を示すねらいもあるとみられます。
●メドベージェフが発した核より現実的で恐しい戦線拡大の脅し 10/2
ドミトリー・メドベージェフ前ロシア大統領が、イギリスとドイツの今後の軍事支援を強く牽制した。もしイギリス軍がウクライナ兵の訓練をウクライナ国内で行うという計画を実行に移したら、そのイギリス人は攻撃対象になる。またもしドイツがウクライナに長距離巡航ミサイル「タウルス」を提供するようなことがあれば、ドイツ国内のタウルス製造工場もロシア軍の正当な攻撃目標になる、というのだ。
イギリスに対する脅しの発端となったのは、軍事用ハードウェアの「訓練と生産」をウクライナ領内に移す方向で協議している、というイギリスのグラント・シャップス国防相の発言だった。
英紙サンデー・テレグラフによれば、シャップスは「私は今日、訓練をもっとウクライナに近いところ、いずれはウクライナ領内で実施することについて話し合っていた」と語った。
だがリシ・スナク英首相は「ゆくゆくはそういうこともある、という話であって、今すぐに実施するわけではない」と、国防相の発言を一部、訂正した。
「国防相が言ったのは、ウクライナ国内で訓練を行うことは将来的には可能かもしれないということだ」とスナクは10月1日、保守党会合の前に語った。「イギリス軍の兵士が今、戦地に派遣されることはない」
「われわれは、ウクライナ人の訓練をイギリス国内で行っている」と、スナクは説明した。
メドベージェフは1日、テレグラムに投稿し、イギリス軍兵士がこのような任務に就いた場合、ロシア軍の「合法的な標的」になると述べた。
兵員は「容赦なく破壊されるだろう」と、現在ロシアの安全保障理事会の副議長を務めるメドベージェフは書いている。
NATO全体に拡大も
米シンクタンクのランド研究所は9月末に発表した報告書で、ロシアのウクライナへの攻撃によってウクライナ国内にいるNATO関係者が何かで死亡するなどの事件が起きれば、ウクライナでの戦争がエスカレートする可能性があることを示唆した。
メドベージェフは、ドイツがウクライナへのタウルス・ミサイル供与を決めた場合、ロシアは「これらのミサイルが製造されているドイツの工場を、国際法を完全に順守しながら」攻撃することになる、とも警告している。
NATOはこれまで、ロシアの侵攻に対抗してウクライナを支援しているだけであって、NATOとロシアは戦争状態にはないと主張してきた。だがロシアの意図的な攻撃によって戦争がNATO加盟国に波及すれば、加盟国に対する攻撃はNATO全体の攻撃とする北太平洋条約第5条が発動されて戦争がさらに拡大する恐れがある。
●ワルシャワで数十万人が現政権に抗議 トゥスク氏「分断終わらせる」 10/2
15日に総選挙を控えるポーランドの首都ワルシャワで1日、右派政権に抗議する大規模な集会が開かれた。欧州連合(EU)首脳会議の前常任議長で野党党首のトゥスク元首相が呼びかけた。AFP通信などによると、国内各地から集まった参加者が、ポーランド国旗やEUの旗を掲げてデモ行進した。
地元メディアによると、「100万人の心の行進」と名づけられたデモ行進には60万〜80万人が参加したという。この集会は、愛国主義を掲げ、反EU路線をとる保守与党「法と正義(PiS)」の政策に抗議したものだ。
英紙ガーディアンによると、トゥスク氏は「国民を分断させる強権政治を終わらせなければならない。より良い方向への変化は不可避だ」と政権交代を訴えた。
2015年から政権をとるPiSは、メディア規制や人工妊娠中絶の禁止、反移民、さらにはLGBTQなど性的少数者に対する差別的な政策など、EUの理念と相いれない政策を進めてきた。
そんな中、総選挙では隣国ウクライナへの支援が争点の一つとなり、ウクライナへの積極的な軍事支援をしてきたポーランドとウクライナの関係に亀裂が入りかねない事態になっている。
ウクライナへの侵攻を続けるロシアが7月に、黒海を通じてウクライナ産穀物を輸出する枠組みから離脱。その影響で事実上黒海が封鎖され、陸路で安価なウクライナ産穀物がポーランドに流入した。この動きに不満の声を上げる農家を支持基盤とする与党のモラビエツキ首相は9月、総選挙を見据え自国の農業を守るため、EUによる規制撤廃後も独自の輸入規制継続を決定したほか、武器供与の停止にまで言及。ウクライナやEUに強く反発する態度に出ていた。

 

●秋の徴兵で13万人を動員するロシア、慢性化する人手不足で加速するモノ不足 10/3
・秋の徴兵で13万人を動員するなど、ロシアは軍事部門に割り当てるヒト・モノ・カネの量を一段と増やしている。
・平時の経済活動に必要な民生品の生産減は中国からの貿易で補っているが、軍事費が膨張する中でどこまで持続可能だろうか。
・生品の生産に必要な生産要素を軍需品の生産に充てざるを得ないロシアは統制経済への道を歩んでいる。
ウクライナとの戦争の膠着を受けて、ロシアは軍事部門に割り当てるヒト・モノ・カネの量を一段と増やしている。
まずヒトに関しては、今年の秋の徴兵で前年比1万人増となる13万人を動員することになった。ロシア政府は2026年までに、軍の兵力を現在から3割増となる150万人まで引き上げることを計画している。来年からは、徴兵の対象年齢の上限が現行の27歳から30歳へと3歳引き上げられる。
こうした徴兵強化の結果、ロシアでは人手不足が深刻化すると予想される。ロシアの失業率(図表1)はすでに歴史的な低水準だが、これは景気の堅調を反映した現象ではなく、若者の徴兵や国外逃亡に伴い人手不足が慢性化したことを反映したものだ。
   【図表1 ロシアの失業率】
ロシア政府による徴兵の強化は人手不足に拍車をかける。労働供給がさらに減少すれば、労働需要が減退しない限り、需給は引き締まって完全雇用の状態になる。ただ、それで実現した完全雇用は民需がけん引する健全な経済成長の成果ではなく、慢性的な人手不足は供給(生産)の制約につながる。
もちろん、政府が軍事活動を優先する以上、企業は軍需品の生産を優先せざるを得ない。つまりモノ(完成品)の生産に必要なヒトやモノ(原材料や半製品)、そしてカネの投入が軍事活動に必要なモノ(軍需品)の生産に傾斜することになる。
そうなると、平時の活動に必要なモノ(民生品)の生産が圧迫され、モノ不足が進むことになる。
モノ不足の現状は、中国とロシアの二国間貿易収支からも透けて見える。
中国とロシアの二国間貿易収支は、一貫して中国の貿易赤字(ロシアの貿易黒字)だが、その規模は着実に縮小している。
ロシアが中国からの輸入を急増させているためだが、この動きは、ロシアが不足する民生品を中国から調達していることをうかがわせる。ロシアは資源を中国に売って得た外貨で、中国からモノを買っているのである。
   【図表2 中国の対ロ貿易収支】
来年の軍事費は今年から1.7倍増
ロシア政府は9月29日、2024年の軍事費を今年の1.7倍増の10兆7754億ルーブル(約16兆円)とする予算案を議会に提出した。ウクライナとの戦争が始まる前、ロシアの軍事費は名目GDP(国内総生産)の3%程度だった。しかし2024年は、その割合が6%程度にまで膨らみ、冷戦期並みの水準となる見通しである(図表3)。
   【図表3 ロシアの軍事費】
そもそも、来年の予算総額は約36.6兆ルーブル(約55兆円)と、前年比2割以上の増加の大型予算である。来年3月に大統領選を控えたウラジーミル・プーチン大統領の意向を汲み、全般的にバラマキを重視した内容となっているが、それでも軍事費の急増は顕著であり、予算全体を大きく拡張させるドライバーとなっている。
問題は、財政拡張の手立てをどうするかということだ。
膨張する軍事費はどこでカバーするのか?
このところロシアは、歳入の4割弱を占める石油・ガス収入の増収を図る観点から、サウジアラビアなどOPEC(石油輸出国機構)の国々との協調減産に尽力し、原油価格の押し上げに努めている。その結果、7月以降、原油価格は上昇が顕著だが、それでロシアの歳入が増えるか定かではない。
ロシア財務省によると、今年1-8月期の石油・ガス収入は前年から38.2%減少したようだ。その主因は、ヨーロッパ向けの天然ガスの輸出が不振を極めていることにあると考えられる。
実際に、ロシア最大のガス会社である国営ガスプロムの今年第2四半期の純損益は、前年同期から1兆ルーブル以上も減少し、186億ルーブルの赤字に転落した。
ヨーロッパに代わる需要家を開拓できない限り、石油・ガス価格が上昇しても歳入は十分に増えない。そのためロシアは新興国、特に中国に秋波を送る。10月の訪中時、プーチン大統領はガスプロムのアレクセイ・ミラー最高経営責任者(CEO)と国営石油会社ロスネフチのイーゴリ・セチンCEOを同行させる予定だ。
また、ロシア政府はエネルギー企業に対する課税の強化に乗り出すようだ。政府は外生的なショックでたまたま高収益を上げた企業に対して課す「棚ぼた税」(wind fall tax)であり、苦しむ家計や企業のための再配分の原資として位置付けているが、取りやすいところから税金を取るというスタンスでしかない。
そうした取り組みをしたところで、膨張が予想される軍事費のどの程度までをカバーできるのかは定かではない。予備費である国民福祉基金を取り崩すとしても限界があるため、起債による市場での資金調達も増えていくはずだ。民間投資家が消化できない部分を中銀が買い支えるなら、貨幣面からインフレ圧力が高まる。
甘いロシアのインフレ認識
そもそもロシアでは、消費者物価が今年4月の前年比2.3%上昇をボトムに伸びを再加速させており、直近8月には同5.2%上昇と中銀の目標水準(4%)を上回るに至った。
家計と企業の強いインフレ期待や政府による最低賃金や年金支給額の引き上げ、ルーブル安に伴う輸入物価の上昇などがインフレ再加速の主因と考えられている。特にルーブル相場の下落は深刻である(図表4)。
   【図表4 ルーブル相場】
米ドルに対する今年9月末までのルーブルの年初来騰落率は終値ベースで38.6%に達し、8月には一時1米ドル=100ルーブルの節目を割り込んだ。政府は中銀に対して通貨防衛のための利上げを要請しているが、政府が財政を拡張する以上、その効果は限定的となる。
ところが、ロシア中銀は9月28日に発表した2024年から2026年までを対象とする『金融政策ガイドライン』で、2024年の消費者物価上昇率がベースシナリオでも4.0%と、物価目標(4.0%)にとどまるという見方を示している。政府も2024年度の予算案で、同年の消費者物価上昇率が4.5%になるとの楽観的な見通しを示す。
戦争の継続にヒトモノカネという限りある生産要素をさらに投入するなら、民生品の生産は圧迫され、インフレはますます強まりそうなものだ。インフレがそれほど高まらないという政府と中銀の見方は、それだけ想定が甘いか、戦争を優先する結果、民間部門の経済活動が停滞すると見越してのことかもしれない。
着実に進む統制経済への道
ロシアとウクライナの戦争は、開戦からすでに1年半以上が経過している。ロシアにとって予想外とも言える展開の中、ロシア政府はヒト・モノ・カネという民生品の生産に必要な生産要素を軍需品の生産に充てざるを得なくなった。その結果、ロシアの経済は着実に軍事経済化している。戦争が長期化する限り、この傾向は強まる一方だ。
戦争の継続を優先するためには、戦争のために生じる様々な不均衡を抑え込む必要がある。例えば、戦争の継続に伴い加速するインフレに対しては、価格統制(公定価格制)や数量統制(配給制)を敷き、インフレを抑え込む必要がある。このことはつまり、戦争の継続を前提に、政府が経済の運営を統制するということである。
緩やかだが着実に、ロシアはそうした統制経済への道を歩んでいる。不均衡の解決を先送りしているに過ぎない統制経済は、今すぐとはいえないが、いつの日か爆発する蓋然性を有している。
●ロシア、契約兵の募集強化 次期大統領選控え動員回避 10/3
ウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン政権が契約兵の募集を強化している。来年3月に大統領選を控える政権は、予備役30万人を招集した昨年9月の「部分的動員」で社会に混乱と反発を招いた経緯を踏まえ、自発的な参加を促し戦力増強を図る構えとみられる。ただ、国内には動員再開への懸念は根強い。
報道によると、ロシアの実効支配下にあるウクライナ南部クリミア半島の露軍当局は今年9月、契約兵を募集する新たな動画広告を公開した。
広告では、塹壕(ざんごう)で戦闘中の兵士が仲間に「ペチェルシキ・パゴルブイ地区とは(ウクライナの首都)キーウのどこだ?」と質問。仲間は「中心部だ。叔母が住んでいる」と答えた。兵士が「そこに家を買うのが夢だ。キーウを取って戦争が終われば家族を連れていく」と言うと、仲間も「俺は(南部)オデッサ。海が好きだから」と応じた。
広告はウクライナ各地の都市名とともに「自分の夢の都市を選ぼう」と訴えた上で、軍事務所の連絡先を示して終わる。ロシアがキーウやオデッサの制圧を断念していないことを示すとともに、契約兵になれば裕福になれると強調する内容だ。
政権は今年春には、国民の平均月収の数倍に当たる20万ルーブル(約30万円)以上の報酬を提示して契約兵の募集を強化。プーチン大統領は9月15日、今年だけで「30万人が軍と契約した」と募集の順調さを強調した。
露政権が契約兵の募集を進める背景には、約1年前に発動した部分的動員の苦い記憶がある。動員に対する抗議デモが起き、多数の国民がロシアを出国した。
ただ、動員兵や契約兵が戦況に与えた明確な影響は不明で、露軍の戦力は補充後も低下しているとの見方が強い。
今年8月の米報道によると、米当局者は「露軍の死傷者が最大約30万人に達している」と推定。英BBC放送と露独立系メディアも9月末、共同調査の結果、露軍側に少なくとも約3万3000人の戦死者が確認され、6月のウクライナ軍の反攻開始後の露軍側戦死者も約2500人に上ると報じた。調査結果は公開情報のみに基づく最小値で、実際にはさらに多いのは確実だとしている。
露国内では戦力低下を受け、動員が再開されるのではないかとの危惧も強まっている。
インターネット上では9月10日に行われた統一地方選での政権側の圧勝を機に「動員が再開される」との噂が拡散。政権は「ウクライナによる情報工作」と否定したが、国民の懸念の深さが示された形だ。
部分的動員を定めた露大統領令に「最大100万人を動員できる」との非公開の条項があるとする露国内報道の存在も、国民の不信感に拍車をかけている。
●南部激戦地でもう一息のウクライナ軍、突破できればロシア軍瓦解へ 10/3
1.突破拡大するウクライナ地上軍
ウクライナ軍とロシア軍は、ザポリージャ州西部に主要戦力を集中させて戦っている。この地での勝敗により、戦争の勝敗が見えてきそうな天王山の戦いだ。
ウクライナ南部ザポリージャ州の西部で、ウクライナ地上軍(陸軍に海軍歩兵が加わっているので地上軍の名称を使用)は、ロボティネからトクマクまでの目標線(オリヒウ攻撃軸)に向けて突破口を形成し、それを拡大して、南下しつつある。
一方、ロシア地上軍は南下するウクライナ軍の南下を止めようと必死で、両軍は死闘を繰り広げている。
この地の戦いでは、ウクライナ軍の後方連絡線は後方にあるが、ロシア軍のそれは南にアゾフ海があるために主に東にある。
そのため、ザポリージャ州防御のロシア軍は、この地で敗北すれば、東からの後方連絡線を遮断されるという脅威を受けている。
ザポリージャ州西部のオリヒウ攻撃軸では、両軍の戦闘力の先端がぶつかり合っているのだ。
ロシア軍が占拠する地域は、南北に幅約110キロあるが、防御陣地はその北部の約30キロに集中している。
その約30キロの間に、ロシア軍は前進陣地、第1・第2・第3の防御陣地を、地域によっては第2と第3の間にも陣地線を構築した。
さらに、市街地を利用した防御も実施している。
   図1:オリヒウ攻撃軸のウクライナ軍の進出範囲とロシア軍防御線とそれまでの距離
ウクライナ軍はこれまで、前進陣地や第1防御線を破壊してきた。ベルボベ正面では第2防御線を突破して進んでいる。
ロシア軍はこれらの防御線の戦闘に最も力を入れてきた。ウクライナ軍も苦戦を強いられてきたが、10〜12キロほど深く進軍できている。
ベルボベ正面は、応急陣地の2.5防御線と第3防御線がある。あと、十数キロの戦だ。ロシア軍の戦力は減少しているし、もともと配備されている部隊は2個旅団だけだ。
ロボティネ正面は、まだ第2防御線と第3防御線が残っている。したがって、まだまだ厳しい戦いが続く。
これらの防御線を打ち破れば、その南にはトクマクなどの都市を守るように陣地が構築されているが、主要な都市以外はウクライナ軍を阻止できるような陣地は作られていない。
このため、第3防御線を突破されたときのロシア軍は、ウクライナ軍の前進を止めるためには応急陣地を構築するか、機動打撃により攻撃するほかはない。
南部戦線における地上戦を、第3防御線までの戦いとこれ以降のヤゾフ海までの戦いに区分して、今後の戦闘予想について考察する。
2.オリヒウ攻撃軸、防御3線突破要領
オリヒウ攻撃軸のこれまでの攻撃には、十数キロの前進のために4か月を費やした。
これは、ロシア軍が戦力と防御準備の点で最も強い抵抗をしてきたためだ。地雷などの障害処理にも時間がかかった。
ロシア軍は死力を尽くして戦ったが、戦力を消耗し、ウクライナ軍の前進の速度を遅らせられても、止められてはいない。
火砲の損害も著しく多く、砲撃も大きく減少してきた。
一方、ウクライナ軍は、クラスター弾をロシア軍の防御陣地に使い、効果も出ている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と米国のジョー・バイデン大統領の会談では、射程距離の長い地対地ミサイルATACMS(Army Tactical Missile System、エイタクムス)供与の発表もあった。
この兵器の供与により、攻撃進展速度はさらに速くなるであろう。
これから、ウクライナ軍はどの方向から攻撃するのか予想する。
どの攻撃方向を選択するかで、攻撃目標、攻撃進展速度、ロシア軍の機動打撃対処方法も変わる。
今後の攻撃方向は概ね3つに集約される。
オリヒウ攻撃軸の東側のベルボベから南への攻撃方向(A-1)、ロボティネからトクマクの東を通過する攻撃方向(A-2)、ロボティネからトクマクへ進む攻撃方向(A-3)がある。
   図2:オリヒウ攻撃軸、予想されるウクライナ軍の攻撃方向とロシア軍の防御線
3つの攻撃方向の特色について述べる。
A-1の場合は、現在、第2防御線を突破し戦闘中であるベルボベを経由して南下する攻撃軸である。
この経路では、第3防御線のみ1本だけが立ち塞がってくる。道路状況によっては、応急陣地のような第2.5防御線を突破する必要がある。
また、現在の接触線から第3防御線までは十数キロ、現在攻撃しているベルボベを占拠すれば、残り7〜8キロであり、第3防御線を突破するまでに、最短の攻撃軸である。
この攻撃軸が、現在では最も進展していることから、ウクライナ軍は、この方向を重視して攻撃を進める可能性が高い。
A-2の場合は、ロボティネから南下して、トクマクの東側を通過して南下する攻撃である。
また、この方向はトクマクへの直接攻撃を避けるものである。この方向は、まだ第2と第3の防御線が無傷のまま残っている。
ここを突破するには、ロシア軍の火砲数が著しく減少している現状でも、現在の予備部隊を投入しクラスター弾やATACMSを使ったとしても、10月末まで突破することが難しくなっている。
ただ、突破してしまえば、これらの南には周到な防御陣地が構成されていないので、217高地まで到達するのは早くなる。
A-3の場合は、ロボティネからトクマクの市街地を直接攻撃するものである。
トクマクまでには、A-2と同様に第2と第3防御線がまだ無傷のまま残っている。さらに、トクマクの周囲にも陣地線が構築されている。
著名な都市を攻撃して成功すれば攻撃成功の宣伝はできるが、トクマクを占拠するまでに多くの時間を要してしまう。
トクマクだけで数か月間かかる可能性がある。
そうなればロシア軍が新たな防御線を構築して、ヤゾフ海まで南下するのに時間がかかってしまい、ウクライナ軍の戦争構想が失敗する恐れが出てしまう。
できれば、市街地の戦闘を避けて、南下作戦を実施したいと考えるだろう。
もしも、トクマクがロシア軍に占拠され続ければ、ウクライナ軍の南下作戦の側背に脅威が残ると思われるが、ここは一部の部隊で拘束すればよい。
また、火砲を使って、トクマクに占拠する司令部や兵站施設を火砲で攻撃していけば、つまり兵糧攻めをしていれば、この寒い冬の期間に、ロシア軍の降伏を促すだろう。
この3つの攻撃方向を比較すれば、A-1が攻撃進展が進んでいること、ロシア軍の防御線が少なく短いこと、その後の攻撃進展が速いことが予想されることから、この方向を主攻撃として攻撃を続行する可能性が高い。
とはいえ、ウクライナ軍は第3防御線の突破口を形成したとしても、突破口の拡大を行う必要性があることから、ロボティネからトクマク方向への攻撃も継続して実施するだろう。
3.ヤゾフ海に面する都市までの攻撃方向
ウクライナ軍は、第2と第3防御線を突破した後は、南下してヤゾフ海に面する都市、メリトポリやベルジャンスクまでを奪還して、南部2州およびクリミア半島とロシア占拠地との間を分断する作戦だ。
これらはどうのようになるのだろうか。
具体的には、どの地域を目標として、どの方向から攻撃するのか。
攻撃方向については、3方向(A-1ab、A-2、A-3)が考えられる。
   図3:南部戦線ザポリージャ州オリヒウ攻撃軸作戦予想
A-1は、A-1aとA-1bに分けられる。
A-1aは、ウクライナ軍が現在、ロシア軍の第2線陣地のベルボベを打ち破って進む延長線上の方向だ。
これは、295高地からベルジャンスクに至る経路だ。この経路には主要な道路はないが、ロシア軍の防御陣地がなく、抵抗が少ない。
295高地を占拠していれば、ロシア軍の機動打撃がある場合でも、対処が有利に進められる。
A-1bは、第3防御ラインを打破した後に217高地を経由して、その後、道路P37号線沿いに南下しベルジャンスクに至るものだ。
途中から主要な道路を使用できることで、比較的機動が容易である。
また、この道路を獲得することで、トクマクへの補給を制約することができる。217高地を占拠していれば、ロシア軍の機動打撃がある場合でも、対処が有利に進められる。
A-2は、ロボティネから第2と第3の防御線を突き抜け、その後、方向を南東に向けて進み、150高地、そしてベルジャンスクに至る経路である。
これは、都市トクマクを攻撃せずに、トクマクの東をすり抜けて進むものであり、攻略に時間がかかるトクマクの市街戦を避け、ベルジャンスクに至ることができるので、早期にアゾフ海に到達することができる。
前述したが、トクマクを奪回しないことは、ウクライナ軍の攻撃前進に側背に脅威が残るが、これについては一部の部隊でロシア軍を拘束すれば済むことである。
ウクライナ軍がベルジャンスクに到達すれば、トクマクやメリトポリを守る部隊への補給を遮断することができるので、兵糧攻めで陥落させることができる。
A-3は、第2防御線を通過してトクマクの防御線を突破し、トクマクに入り市街戦を実施しなければならない。
トクマク奪回に多くの時間がかかる。その次に、メリトポリに入り市街地戦闘を実施することになる。
トクマクおよびメリトポリでの市街地戦闘は、陥落させるために時間がかかるし、ウクライナ軍としても大きな被害を受けることになる。
また、ロシア軍の兵站連絡線を止めることができないので、ロシア軍も長期間戦うことができる。
4.ヤゾフ海に面する都市までの攻撃目標
ウクライナ軍は、現在の接触線からヤゾフ海に到達するまでに、目的・距離別に概ね、
1ロシア軍防御線を突破する目標線(トクマク目標線)
2ロシア軍兵站線の妨害を可能とする目標線(ロシア軍兵站妨害目標線)
3ロシア軍を東西に分断する目標線(ロシア軍東西分断目標線)を設定すると考えられる。
図3ウクライナ軍の南部戦線ザポリージャ州オリヒウ攻撃軸作戦予想を参照。
   1トクマク目標線
ウクライナ軍が、ロシア軍の3線の防御線の3線目に突破口を形成し、さらに突破口を拡大することができれば、ロシア軍のザポリージャ州における防御は瓦解する。
そして、これよりも南には防御線がないために、ロシア軍はウクライナ軍の南下を阻止することは極めて難しくなる。
ただ、この目標線を獲得しただけでは、ロシア軍を東西に分断することはできない。また、兵站活動を妨害することも難しい。
このため、ウクライナ軍は、この目標線獲得後は、速やかに南下するだろう。
   2ロシア軍兵站妨害目標線
トクマク目標線を獲得しただけでは、ロシア領域からメリトポリへの後方連絡線(E58道路)を遮断することはできない。
ウクライナ軍は、少なくとも217高地や295高地の南までを獲得しなければならない。
ただし、トクマク目標線を獲得すれば、それよりも周到に準備した防御陣地がないので、ここを通過できればロシア軍兵站妨害目標線まで到達する時間は少なくて済む。
この目標線に到達する前後には、ロシア軍は北部・東部の戦力を抽出してザポリージャ州に移動し、この地まで進出したウクライナ軍を機動打撃するだろう。
ロシア軍がこの地を奪回されれば、南部2州のロシア軍は孤立する可能性が高まる。
   3と4ロシア軍東西分断目標線
ウクライナ軍がメリトポリおよびベルジャンスクに到達すれば、東西の後方連絡線を完全に遮断できる。
ロシア軍は、この地を奪回されれば南部2州のロシア軍は完全に孤立するし、クリミア半島の部隊までもが孤立する。
孤立すれば、時間の経過とともに兵糧攻めにより、投降する部隊が増加する。
このような事態を防ぐために、ロシア軍は前述同様に各地から戦力を抽出して、最大規模の機動打撃を実施するだろう。
5.トクマク目標線進出で南下阻止不可能に
オリヒウ攻撃軸でウクライナ軍の攻撃が進展すれば、ロシア軍の防御は瓦解し、主力はベルジャンスク経由でロシア領内に後退し、一部はトクマク、メリトポリの市街地に集結し、長期間の防御を行うだろう。
しかし、補給が続かず、自滅することになる。
   図4:ロシア軍の防勢作戦イメージ
自滅を防ぐために、ロシア軍はまずザポリージャ州東部やヘルソン州に配備している部隊から兵力を抽出して、機動打撃-1を行うだろう。
この場合、ザポリージャ州西部やヘルソン州の部隊が少なくなる。
この動きをウクライナ軍が察知すれば、これらの2つの地域から反撃を開始することになるであろう。
   図5:各段階におけるロシア軍の機動打撃要領
ロシア軍はこれまで何度も攻勢に失敗したこと、ロシア軍に大きな損失が出ていることから、トクマク目標線でウクライナ軍の攻撃を撃退することは不可能であろう。
ロシア軍が次に反撃を行うのは、295高地および217高地だ。
この場合、ロシア軍は北部戦線や東部戦線から戦力を集中して機動打撃-2を実施する可能性がある。
障害物を利用した陣地線での防御ではなく、防御の利がない機動打撃では、ロシア軍の成功はない。
ウクライナ軍にベルジャンスクが奪回されれば、ロシア軍は東西に分断されてしまい、ザポリージャ州およびヘルソン州の2州に配備されたロシア軍は孤立し、弾薬等の補給が得られなくなる。
さらに、クリミア橋がATACMSで破壊されれば、補給が完全に途絶してしまう。
孤立を防ぐために、ロシア軍は、この正面に対して北部と東部の戦線から抽出した多くの部隊を使って、機動打撃-3・4を実施するだろう。
ロシア軍のこれまでの戦いであれば、ウクライナ軍を撃退することは困難である。
また、この時点になると、ロシア軍内に混乱が起きている可能性が高く、機動打撃は失敗するだろう。
ウクライナ軍にメリトポリが奪回されれば、ロシア軍は東西に分断され、2州に配備されたロシア軍は抵抗できずに早期に降伏することになる。
●バイデン米大統領、ウクライナ支援継続確約で同盟国と電話会談へ 10/3
バイデン米大統領は米国の対ウクライナ支援継続をあらためて確約するため、同盟国との電話会談を計画している。事情に詳しい関係者が明らかにした。
非公表の情報だとして匿名を条件に語った関係者によると、この電話会談は早ければ3日にも実現する可能性がある。
ホワイトハウスのジャンピエール報道官は2日の記者会見で、同盟国と電話会議を行う予定は「現時点で」ないと発言。米国はウクライナでの戦争が始まって以来、パートナー国と連絡を取り続けており、「それは今後も継続する」と同報道官は述べた。
米国は「支援継続を示す」ため、既に承認されている部分からウクライナ向けの別の支援パッケージを「近く」発表するとも語った。
9月30日に米議会が政府機関閉鎖を回避するため超党派で可決したつなぎ予算案では、60億ドル(約9000億円)のウクライナ支援は除外され、一部の同盟国の間で米国の支援が細る恐れが懸念されている。
国防総省は「ウクライナ向けの安全保障支援で利用可能な資金をほぼ全て使い果たしており」、資金不足が生じれば防空や弾薬などを含め緊急に必要とされる支援に遅れや削減が生じることになると、マッコード会計監査官が9月29日遅くの下院民主党議員に宛てた書簡で説明していた。
現水準の資金でウクライナ向けの支援がどれだけ継続できるのか問われたジャンピエール報道官は、「ウクライナが戦場で緊急に必要とする支援にもう少し長く応じるには十分」な水準だと述べた。
バイデン大統領はこれより先、マッカーシー下院議長に対し、約束を守ってウクライナ支援の道筋を確保するよう呼び掛けていた。
●米のウクライナ支援、軍事企業からの調達一時凍結…つなぎ予算除外の影響 10/3
ロシアの侵略を受けるウクライナへの軍事支援で、米政府は2日、民間軍事企業から兵器を調達する制度を一時凍結したと発表した。9月末に成立した政府の暫定予算(つなぎ予算)にウクライナ支援が含まれなかったためで、与野党対立の影響が米国のウクライナ支援に広がりつつある。
一時凍結されたのは「ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)」という制度で、供与する兵器や装備を米軍の在庫からではなく、軍事産業から調達する。2022〜23会計年度で180億ドル(約2兆7000億円)の予算が計上され、弾薬などの供与に充てられた。
米政府は追加の予算を議会に求めたが、政府閉鎖を回避するために超党派で可決、成立したつなぎ予算から除外された。国務省のマシュー・ミラー報道官は2日の記者会見で「いかなる状況下でも米国のウクライナ支援が中断されることは許されない」と語り、予算確保を急ぐ考えを示した。
米軍の在庫による追加の兵器供与などは可能で、米政府が近く追加支援を発表する方針。米国防総省によると、米軍在庫から供与するための関連予算は16億ドル残っており、大統領権限で決めることができる。
先進7か国(G7)首脳は3日にオンライン形式での会合を開き、米国の状況を踏まえたウクライナ支援での結束を再確認する。バイデン米大統領と岸田首相らが出席する予定だ。
●米下院議長の解任動議 同じ共和党議員が提出 党内対立が先鋭化 10/3
アメリカで政府の新年度予算案がまとまらない状態が続く中、野党・共和党の保守強硬派の下院議員が同じ共和党のマッカーシー下院議長の解任動議を提出し、党内の対立が先鋭化しています。
アメリカでは議会下院で多数派を占める野党・共和党内の対立などから新年度の予算案がまとまらない状態が続いていて、共和党のマッカーシー下院議長は先月30日、当面の予算執行を続けるための「つなぎ予算」の案をまとめ、与党・民主党と協力して議会で超党派での可決につなげ、政府機関の閉鎖がぎりぎりで回避されました。
こうした中、共和党で保守強硬派のゲーツ下院議員は2日、マッカーシー議長の解任動議を提出しました。
ゲーツ議員は、「つなぎ予算」に保守強硬派が要求する歳出の大幅な削減が盛り込まれなかったことに加え、マッカーシー議長が民主党と協力したことを強く批判していました。
動議の提出を受けてマッカーシー議長はSNSに「受けて立つ」と投稿しました。
共和党の議員の多くはマッカーシー議長を支持していますが、与野党の議席数がきっ抗する中、民主党の対応によって結果が左右される可能性もあり、マッカーシー議長が解任を免れるかは不透明な情勢です。
バイデン政権はウクライナ支援を含む予算案の承認を急ぐよう議会に求めていますが、共和党の内部対立の先鋭化は、今後の審議の行方にも影響を与えるものとみられます。
●ロシア軍は戦々恐々…米国がウクライナに供与を決めた長距離ミサイルの実力 10/3
ブルームバーグ(日本語版)は9月23日、「バイデン政権、ウクライナにATACMSを少数提供へ-関係者」との記事を配信し、YAHOO! ニュースのトピックスに転載された。ATACMSは「エイタクムス」と発音され、日本語に訳すと「陸軍戦術ミサイル・システム」となる。
ATACMSの性能は極めて高く、いわゆるゲームチェンジャー、戦況を一変させる兵器だと指摘されてきた。今回、初めて供与されるわけだが、ウクライナの念願がようやく叶った形だ。
2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻すると、早くも6月の時点でATACMSを供与すべきか議論になった。
ゼレンスキー大統領は供与を切望していた。しかし、バイデン大統領は22年6月21日の会見で「第三次世界大戦は望まない」と強く否定。さらに今年1月にもアメリカ国防省の高官が「性能が過剰だ」と説明したことを読売新聞が報じた。
ATACMSを供与するとロシアを過度に刺激しかねない──これがアメリカの本音だった。軍事ジャーナリストが言う。
「ATACMSの射程距離は300キロメートルと長く、命中精度も高いことで知られています。東京都庁から300キロ圏内といえば、静岡県、愛知県、富山県、長野県などです。これらの地域なら、どこでもピンポイントで攻撃できるわけです。ロシアにとって脅威であることは言うまでもなく、対抗措置として戦術核の使用をほのめかしても不思議ではありません。バイデン大統領の『第三次世界大戦は望まない』という発言は、ATACMSの高性能を考えれば当然でした」
やはり怖いロシア
だが、遂にアメリカは供与へと踏み切った。ロシアの恫喝に屈せず、ウクライナに対する強い支援を実現したということなのだろうか。
「ブルームバーグを筆頭に欧米のメディアは、全て『少数』の供与と報じています。これは異常事態と評しても大げさではありません。ホワイトハウス側が『少量』を強調しているわけですが、本来ならあり得ないことです。情報戦でロシアにプレッシャーを与えるためにも、供与数を公表しないのが普通でしょう。バイデン政権が供与を明らかにしながら同時に火消しにも躍起なのは、依然としてロシアの反応が怖いからです」(同・軍事ジャーナリスト)
ならば「ATACMSはロシアの逆上が心配されるほど高性能な兵器」という言い方も可能だろう。一体、ATACMSの何が凄いのか。
「クリミア半島の港湾都市セバストポリに、ロシア黒海艦隊の司令部があります。ウクライナ軍は9月22日、司令部の攻撃に成功したと発表。34人の将校が死亡し、その中に艦隊司令官のビクトル・ソコロフ大将も含まれているとの情報も飛び交いました。さらにBBCは、攻撃にはイギリスとフランスが共同開発した空中発射巡航ミサイル『ストームシャドウ』が使われたと報じました」(同・軍事ジャーナリスト)
ロシア空軍の基地も攻撃可能
ストームシャドウも輸出版は射程距離が280キロある。ATACMSの300キロとほぼ互角と言えるが、性能の差は大きいという。
「ストームシャドウは航空機から発射する必要があり、ウクライナ空軍は数機しか持っていないSU-24戦闘爆撃機を使用しています。機数が足りないのは明白で、いつでも爆撃機を飛ばせるわけではありません。ところが、ATACMSは高機動ロケット砲システム『HIMARS』からの発射が可能です。おまけに、ストームシャドウの最高速度は音速(マッハ1)未満の亜音速ですが、ATACMSはマッハ3で飛びます」(同・軍事ジャーナリスト)
ウクライナ南部の都市ヘルソンは、反攻作戦における重要拠点の一つ。このヘルソンからセバストポリの距離は約250キロだ。
「ATACMSを使えば、ウクライナ軍はクリミア半島に駐留するロシア軍を広範囲に攻撃できます。例えば、アゾフ海沿岸の都市ベルジャンシクにはロシア空軍の基地があり、戦闘機や軍用ヘリである程度の航空優勢を確保しているとされています。しかし、ウクライナ領内からATACMSを発射すれば、基地を攻撃できます。甚大な被害が出るのは確実で、一定期間、離着陸を不可能にすることが可能です」(同・軍事ジャーナリスト)
封じ込められるロシア軍
アメリカは以前からHIMARSの供与は行っており、ウクライナ軍はフル活用している。そして重要なことだが、HIMARSがロシア軍の攻撃を受けて破壊されたという報道は今まで一つもない。
「HIMARSが発射するロケット弾の射程距離は約80キロです。ロシア軍は着弾地点から発射地点を算出するレーダーシステムを稼働させており、その範囲は30キロから40キロと推定されています。榴弾砲なら撃たれても発射地点を割り出せますが、HIMARSだとお手上げです。情報の精度が高いことで知られているオランダの戦争研究サイト『ORYX』でも、HIMARSの損害は確認されていません。そしてATACMSに至っては射程距離300キロですから、“絶対的な安全地帯”からロシア軍の重要拠点を攻撃することができます」(同・軍事ジャーナリスト)
ロシア軍がクリミア半島に拠点を置く司令部、兵站、軍港、空軍基地は、大半が射程圏内となる。ロシア国内とクリミア半島を結ぶクリミア大橋を標的とする可能性も高い。
「ロシア軍は今、ウクライナ領内に攻め込む考えはありません。ATACMSが実戦配備されれば、さらに自陣内に引きこもるでしょう。ロシア軍を封じ込めることができるわけですから、ウクライナ軍にとってはまさに戦術核を手にいれたほどの価値があります。ATACMSでクリミア半島のロシア軍を集中攻撃すれば、反転攻勢に強い追い風が吹くのは間違いありません」(同・軍事ジャーナリスト)
ATACMSと冬
アメリカが「少量」を強調しているのは前に見た通りだ。これには「在庫」の問題も大きいという。
「ATACMSは1991年の湾岸戦争で初めて実践で使用されました。ところが、中距離核戦力全廃条約(INF)が2019年に失効したことから、アメリカ軍は射程500キロ超のミサイル開発にシフトしており、ATACMSの製造は終了しました。在庫は約4000発と見られているのですが、ウクライナの他にも台湾など供与を求めている国はたくさんあります。そのためアメリカ軍は、ウクライナにATACMSを無制限で供与することは反対していたのです」(同・軍事ジャーナリスト)
こうした状況から考えると、アメリカはATACMSを「ウクライナが冬を乗り切るための兵器」と位置づけている可能性が高いという。
「秋の終わりに差しかかかると、ウクライナの大地は泥濘と化し、戦車の移動が難しくなります。そして長い冬が到来し、大地は凍って軍事車両の通行は可能になりますが、今度は兵士が寒さで動けなくなります。ただでさえ戦線は膠着するわけですが、ATACMSの射程距離に入っているロシア軍は新しい陣地や兵站の構築さえ難しくなります。衛星で監視され、そこを狙われたらひとたまりもありません。ウクライナ軍はロシア軍を身動きできない状況にさせ、戦況を見ながら重要な軍事施設を破壊し、戦果を宣伝しながら春を迎えようとしているのではないでしょうか」(同・軍事ジャーナリスト)
ロシア軍の悪夢
春になるとNATO(北大西洋条約機構)加盟国から供与される航空戦力が揃うと言われている。これでウクライナ軍は、戦車を孤立させず、空の支援を得ながら反攻作戦を行うことが可能になる。
「ただでさえロシア軍はATACMSで身動きが取れなくなるわけですが、春になって航空戦力が整うと、かなりの脅威を感じると思います。もしロシアのプーチン大統領にまともな判断能力があれば、停戦交渉に応じても不思議ではない状況です。アメリカの狙いも、おそらくはそこにあるのではないでしょうか」(同・軍事ジャーナリスト)
停戦交渉が現実のものとなるためにも、ATACMSの大活躍が期待される。もちろん実力は充分だと専門家の誰もが太鼓判を押す。
「ATACMSを搭載しているコンテナは、HIMARSのロケット弾のコンテナと全く同じ形です。操作するアメリカ軍の兵士も『100メートル離れると、どちらか分からない』と口を揃えます。これは敵軍に監視された場合を想定しているからです。戦場に潜むHIMARSを発見し、軍事衛星やドローンで必死にコンテナを判別しようとしても、射程距離が80キロのロケット弾なのか、300キロのATACMSなのか分かりません。HIMARSは『高機動ロケット砲システム』と訳されるように、発射した後は高速で離脱することが可能です。そしてATACMSなら、マッハ3で標的まで飛んでいきます。こうなると、もう誰にも止められません。今冬、ロシア軍にとっては悪夢のような被害が出ると思われます」(同・軍事ジャーナリスト)
●米、ウクライナに追加軍事支援へ つなぎ予算除外も継続強調 10/3
ジャンピエール米大統領報道官は2日の記者会見で、ウクライナへの追加軍事支援を近く発表するとの見通しを示した。9月30日に成立した「つなぎ予算」には野党共和党の一部の反対でウクライナ支援の予算が盛り込まれなかった。ジャンピエール氏は、支援継続の姿勢を強調した。
ジャンピエール氏は、ウクライナには国際社会の強力な後押しがあると指摘。ロシアのプーチン大統領に対し「粘り勝ちできると考えているのなら、それは間違いだ」と述べた。バイデン政権はウクライナ侵攻を巡り、10月3日に日本や欧州の有志国首脳とのオンライン会合を計画している。 
●ロシア民間軍事会社ワグネル、創設者の息子が「相続」か 10/3
ロシアのSNS「テレグラム」の非公式のアカウントによれば、ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者として知られるエフゲニー・プリゴジン氏の遺産や事業は、プリゴジン氏の遺志により、息子のパベル氏(25)に贈られた。
こうしたアカウントの一つである「Port」は、プリゴジン氏の遺言書のコピーを入手し、公開したと主張している。
プリゴジン氏は8月、搭乗していた民間機が墜落して死亡した。3月2日に公証人が署名したとされる遺書によれば、「ワグネル・グループ」を含むプリゴジン氏の多方面にわたる遺産の唯一の相続人として、パベル氏が指定されている。
非公式の発表は、パベル氏が9月8日に遺産相続を申請したことを示唆している。
Portによれば、ロシア国防省はプリゴジン氏の事業に関連して推計で最大8億ドル(約1200億円)の債務を抱えており、パベル氏はこれを全て回収する意向だという。この数字を確認することはできない。
6月にプリゴジン氏が短期間の武装蜂起を起こした際、ロシアのプーチン大統領は、プリゴジン氏が2022年5月から23年5月の間に、国防省から860億ルーブル(約1300億円)を受け取っていたと述べていた。さらに、プリゴジン氏が率いるケータリング会社「コンコルド」はロシア軍に対する食料の供給で、800億ルーブルの契約を国と結んでいたという。
ワグネル関連のテレグラムのアカウントによれば、パベル氏はワグネルの要員をウクライナの戦闘地域に戻すよう積極的に交渉しているという。こうした主張を検証することは不可能で、ワグネルの戦闘員が別の軍事組織に吸収されるかどうかは不明。
CNNはこうした発表や遺書の信ぴょう性について独自の確認ができていない。
●EU外相会議をキーウで開催 EUに支援疲れはないとロシアへメッセージ 10/3
欧州連合(EU)外相会議が2日、ウクライナの首都キーウで開催された。外相らはロシアに対し、ウクライナをめぐる欧州の「支援疲れ」を当てにしないよう警告した。
外相会議がEU域外で行われるのは今回が初めて。ウクライナは加盟国ではないが、かねて加盟を打診している。
一方この前日にはアメリカで、連邦政府の閉鎖を回避する「つなぎ予算案」が可決・成立したが、ウクライナへの追加援助は盛り込まれなかった。
欧州委員会のジョセップ・ボレル副委員長は、ウクライナで進行中の戦争を「存亡に関わる危機」と呼んだ。
「もしかしたら世界中の全員がこう認識しているわけではないかもしれないが、我々ヨーロッパ人にとっては、繰り返し言わせてもらうが、これは存亡に関わる危機だ」
「だからこそ、我々はあなたたちを支援し続けなくてはならない」と、ボレル氏はウクライナ国民に向けて述べた。「そして我々は、同盟相手のアメリカや友人たちに、あなたたちへの支援を続けるよう、協議しなくてはならない」
EUはすでにウクライナに対し、700億ユーロ(約11兆円)相当の軍事・民間支援を決定しており、向こう数年にわたって提供される。
ボレル副委員長はまた、EUが軍事支援で目指すのは「持続可能性と予測可能性」だと説明。加盟国が引き続き、ウクライナ支援とロシア制裁を採択し続けている事実を強調した。
フランスのカトリーヌ・コロナ外相は今回の会談について、「ウクライナが勝つまで、私たちは断固たる支援を続ける。(会談は)そのことを示す場だ」と述べた。
「加えて、私たちが支援に疲れてしまうなど、ロシアはそんなことを当てにしない方がよいと、そういうメッセージでもある。私たちは今後、長いこと、ここにとどまる」
ドイツのアナレナ・ベアボック外相は記者団に対し、送電網への攻撃からウクライナを守る戦略が必要だと訴えた。昨年の冬はこうした攻撃により、数百万人が暖房のない生活を強いられた。
「ウクライナには、防空システム、発電機、エネルギー供給の強化といった防寒計画が必要だ」とベアボック氏は述べた。
ウクライナのロシアの侵攻に対する反転攻勢では、いくつかの進展があった。南部ザポリッジャ州では、ロシアの防衛線を大きく破っている。
また、ロシアがウクライナ南部の防衛強化のために精鋭部隊の一部を東部バフムート周辺から移動させたことで、バフムート周辺でもウクライナが進軍している。
しかし、地上での進展は全体的に予想よりも遅れている。ウクライナはこれまで軍事的進展を政治的通貨として利用できたが、現在はこれまで以上に外交を活用しなければならない状態にある。
バイデン米大統領は支援を約束、EU内の亀裂も
アメリカ連邦議会が9月30日に可決したつなぎ予算には、60億ドル相当のウクライナ向け軍事支援が盛り込まれなかった。
バイデン政権はロシアの全面侵攻開始以来、460億ドル相当の軍事支援をウクライナに行っている。バイデン大統領はつなぎ予算の可決を受け、ウクライナはアメリカの支援を「あてにできる」と述べた。
ロシア政府は、欧州とアメリカの双方で戦争疲れが高まると考えている。ただし、この戦争へのアメリカの直接関与は続くともみている。
ウクライナのドミトロ・クレバ外相は1日の会議で、アメリカのつなぎ予算について、ウクライナ支持の減退を示すものではなく、単発的な「できごと」だと受け止めていると述べた。
アメリカでは野党・共和党の強硬派議員が、ウクライナへの軍事支援追加に反対し、ウクライナでの戦争に対するバイデン大統領の姿勢にも公然と反対している。
クレバ外相は、「我々は今、米連邦議会の両陣営と協力し、どのような状況でも二度と同じことが繰り返されないように努めている」と述べた。
「なので、アメリカの支援が打ち砕かれたとは感じていない」
一方で、EU内にも亀裂がみられる。特に、ウクライナと最も多くの問題を抱えているポーランドとハンガリーは今回、キーウに外相を送らず、代わりに州レベルの高官が出席した。
先週末には、EU加盟国の中欧スロヴァキアで、親ロ派政党が総選挙に勝利した。
道標・社会民主主義(SMER-SSD)を率いるロベルト・フィツォ元首相率いるフィツォ氏は今後、連立交渉に入る見込み。同氏は、ウクライナへの軍事支援を直ちに停止しすると公約していた。
クレバ氏はスロヴァキア総選挙について、その結果がウクライナに与える影響を判断するのは「時期尚早」だと述べた。
こうしたEU内の政治的な動きは、加盟国内で完全な統一を図ることは容易でないことを意味している。
●人口密集地に砲撃、2人死亡 ロシア防衛線で攻防 ウクライナ南部 10/3
ウクライナ当局は3日、前日に南部ヘルソン方面の人口密集地で、ロシア軍による砲撃があり、2人が死亡、少なくとも7人が負傷したと明らかにした。
ウクライナ国営通信が伝えた。2日夜から3日未明にかけて、東部ドニエプロペトロフスク州などにドローン31機とミサイル1発が飛来。大半を撃墜したものの、工場や民家に被害が出たという。
ヘルソン方面のウクライナ軍幹部は、2日の攻撃について、「迫撃砲や戦車、攻撃機などから、502発の砲撃があった」と説明した。教育施設やショッピングセンターも標的になったと訴えた。
ウクライナ軍は8月下旬に奪還した南部ザポロジエ州ロボティネから南下作戦を進めているが、ロシア軍の激しい抵抗を受けている。ウクライナ軍参謀本部は3日、同軍がロシア軍の防衛線の一部を突破したと伝えられる同州ベルボベ西方で「敵が失地回復を図ったが失敗した」と主張した。
一方、ロシアのショイグ国防相は3日、ロシア軍指導部との会議で「ベルボベやロボティネ付近のロシアの守備の突破を図る敵の試みはうまくいかなかった」と語った。米シンクタンク戦争研究所は1日付の報告で、ロシア軍が防御戦術を継続しており、「一帯は複雑で活発な動きがあるようだ」と指摘した。 
●ウクライナとロシア 双方の無人機による攻防が激化 10/3
ウクライナでは連日、ロシア軍による無人機の攻撃が相次ぐ一方、ウクライナ側もロシア西部のミサイル工場に対して、無人機による攻撃を行ったと発表し、双方の無人機による攻防が激しくなっています。
ウクライナ軍の参謀本部は3日、東部ドネツク州の激戦地バフムトや、南部ザポリージャ州の主要都市メリトポリに向けて反転攻勢を続けていると発表し、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、前線でウクライナ側にやや前進の動きがみられるという見方を示しています。
一方、南部ヘルソン州では2日、ロシア軍による砲撃で教育施設や教会などが攻撃され、地元の知事によると、少なくとも2人が死亡、7人がけがをしたということです。また、ウクライナ空軍は3日、ロシア軍が無人機31機と巡航ミサイル1発の攻撃をしかけてきたと発表しました。
そのほとんどを撃退し、死傷者はいないということですが、東部ドニプロペトロウシク州では、民間企業で火災が発生したということです。
ウクライナ空軍のイグナト報道官は、地元メディアに対して、無人機の攻撃が相次いでいるとして、「空と領土をさらに強力に守るための手段が欠けている」と述べ、防空システムのさらなる強化が必要だと訴えました。
一方、ウクライナ国防省の情報総局は2日、ロシア西部スモレンスク州の軍事企業の施設に対して、無人機4機による攻撃を行い、そのうち3機が命中したとSNSで発表しました。
この工場では、ロシア軍がウクライナへの攻撃で使用するミサイルが生産されているとして「生産能力に深刻な損害を与えた」と主張しています。
ロシア側は、無人機攻撃があったが防空システムによって撃墜し、けが人や被害はないとしています。
ロシアとウクライナ双方で、前線だけでなく無人機による攻防も激しくなっています。

 

●旧ソビエトのアルメニア プーチン氏に逮捕状出したICCに加盟へ 10/4
旧ソビエトのアルメニアの議会は3日、ICC=国際刑事裁判所の加盟に必要なローマ規程を批准しました。ICCはウクライナへの軍事侵攻をめぐりプーチン大統領に対して逮捕状を出していることからアルメニア側の決定をロシアは批判していて、両国の亀裂が深まっています。
アルメニアのメディアによりますと、アルメニア議会は3日、ICC=国際刑事裁判所の加盟に必要なローマ規程の批准について、賛成多数で可決しました。
ICCはことし3月、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領に対して逮捕状を出していて、アルメニアが今後、ICCに加盟すれば、プーチン大統領が入国した際に、逮捕や引き渡しの請求に応じる義務を負うことになります。
ロシアとアルメニアは同盟関係にあります。ただ、アゼルバイジャンとアルメニアの係争地のナゴルノカラバフをめぐって先月、アルメニア側が敗北し、アルメニア政府は、ロシアが役割を果たさなかったとして不満を強めています。
ICCをめぐるアルメニア側の動きに対して、ロシア大統領府のペスコフ報道官は3日に「不適切な決定だ」と批判し、アルメニア政府に説明を求めていくと強調しました。
ロシアは、アルメニアが欧米に接近しているなどと批判も繰り返し、両国の亀裂が深まっていて、旧ソビエトを勢力圏とみなすロシアの影響力の低下が鮮明となっています。
●旧ソ連のアルメニア、ICC加盟決定…プーチン大統領入国で“逮捕義務” 10/4
旧ソ連のアルメニアは、ロシアのプーチン大統領に逮捕状を出しているICC=国際刑事裁判所に加盟することを決めました。
アルメニア議会は3日、ICCの加盟に必要な国際条約「ローマ規程」を批准しました。124か国目の加盟国となり、ロシアのウクライナ侵攻を受け、ICCが戦争犯罪の疑いで逮捕状を出しているプーチン大統領がアルメニアに入国した際には、逮捕義務が生じます。
アルメニアは、隣国アゼルバイジャンとの係争地ナゴルノカラバフをめぐり、ロシアが支援しなかったとして不満を強めるなど“ロシア離れ”を加速させています。一方、ロシア側はアルメニアが欧米に接近しているなどと批判を繰り返していて、ICC加盟で両国の関係がいっそう悪化する可能性が出ています。
●「プーチン大統領、11月にロシア大統領選出馬を宣言する可能性も」 10/4
ロシアのプーチン大統領が来年の大統領選出馬を発表する可能性があるというロシアメディアの報道が出た。
3日(現地時間)、ロイター通信によると、ロシア日刊紙「コメルサント」は消息筋の話として、プーチン大統領が来月開かれる政府会議で大統領選出馬を発表するものと予想されると伝えた。
プーチン大統領が再選に成功する場合、2030年までにさらに6年間大統領職を維持することになる。ロシア大統領の任期は、2008年のメドベージェフ政権時代の4年から6年に変更された。
コメルサントは消息筋の話として、プーチン大統領が11月にロシア・モスクワで開かれる国家経済業績展示行事「ロシア」の開幕に合わせて来年3月17日に施行されるロシア大統領選挙に出馬すると宣言する可能性があると伝えた。
11月4日から来年4月12日まで開かれる展示会は、ロシア連邦の経済分野で最も重要な業績を展示する行事で、「ここで展示される業績はプーチン氏の業績だ」と消息筋は説明した。
ロシアの重要な経済成果を誇りながら非公式で選挙運動に突入するというシナリオだが、同消息筋は「最終決定はプーチン大統領次第だ」と付け加えた。
公式的にロシアの大統領選挙運動は、連邦議会(上院)が選挙を発表した瞬間に始められる。上院の選挙発表は投票日の100〜90日前に行われなければならないが、投票日が3月17日に予定されているため、12月8〜18日に発表される見通しだ。
このような報道に対してクレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官は「いかなる情報もない」として確認しなかった。
プーチン大統領は1999年12月31日に突然辞任したエリツィン元大統領から大統領職を譲り受けた後、2000年、2004年に再選に成功した。
2008年から4年間は側近のメドベージェフ元大統領に権力の座を譲り、首相に退いた。
しかしメドベージェフ元大統領が大統領任期を4年再任から6年重任に改憲した後の2012年プーチン氏は大統領に復帰し、2018年再選され第4期執権を続けている。
プーチン大統領は2021年4月、再び改正された選挙・国民投票関連法律改正案に署名することで、2036年までにさらに2度の大統領職を遂行できる道を開いた。今月7日に71歳の誕生日を迎える彼が84歳まで政権を握ることができるようになったわけだ。
プーチン氏は旧ソ連を最も長く統治した指導者ジョセフ・スターリン(1922〜1952年、30年執権)以来18年間在任したレオニード・ブレジネフ共産党書記長の任期を抜いて独裁体制を維持している。
先月、ペスコフ報道官は「プーチン大統領がまだ2024年の大統領選出馬を発表していないが、出馬することになれば彼と競争できる人は誰もいないだろう」と述べた。
●鈴木宗男参議院議員がロシア上院副議長と会談 10/4
ロシアを訪問中の鈴木宗男参議院議員は、ロシア上院のコサチョフ副議長と会談し、日ロ関係を向上させたいなどと述べました。
鈴木氏は3日、ロシア上院でコサチョフ副議長と会談しました。会談の冒頭でコサチョフ氏は日本が対ロシア制裁に参加した結果、日ロ関係が第二次世界大戦以降、最悪の状況になったと日本側の対応を批判しました。これに対して鈴木氏は、次のように応じました。
鈴木宗男参議院議員「安倍総理がプーチン大統領と極めて良好な関係を築いたのを、わずか1年で岸田総理はマイナスの方になってしまいました。私もコサチョフ氏と同じ考えで、日ロ関係をかつての安倍・プーチン関係にもっていきたい」
鈴木氏は所属する日本維新の会に事前に届け出ず、また、会談相手や内容などについても政府や党と一切調整せず、ロシアを訪れたと明らかにしたうえで、政治家個人としての行動であり、問題はないと主張しています。
●危険警報出ているのに…政府に届けずロシアに行った日本の議員 10/4
日本の国会議員がウクライナ戦争勃発後初めてロシアを訪問したと共同通信が3日にロシア外務省の話として報道した。
これによると、ロシア外務省は前日、日本維新の会所属の鈴木宗男参議院議員がルデンコ外務次官と面談したと明らかにした。元外務次官の鈴木氏は代表的な親ロシア派に分類される。
ロシア外務省はこの席で、鈴木議員が両国関係発展に重要な貢献をしたと評価したが、現在日本政府が対ロシア制裁に参加し数十年間にわたり積み上げてきた両国の協力関係を損傷させていると批判したという。
また、ロシア側が鈴木議員に対し、こうした日本の態度は日本の国益と国民の意思にも反するものと話したという。
これに対し松野博一官房長官はこの日午前の会見で「ロシア全土に渡航中止勧告以上の危険情報を出しており、どのような目的であれロシアへの渡航はやめてもらうよう国民に求めている」と話し、政府として鈴木氏から事前、事後に連絡は受けていないと話した。
続けて「ロシアのウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であり、日本は国際社会と協力してロシアに対する厳格な制裁を継続するだろう」と付け加えた。
鈴木議員は今年春にもロシア訪問を検討したが、維新の会執行部の要請を受け入れ取りやめている。鈴木氏は昨年10月に東京で開かれた駐日ロシア大使の講演会で西側諸国に向けウクライナへの武器支援を中断するよう訴えていた。
鈴木氏は1日に国会に海外出張届けを提出し、5日に帰国するという。維新の会は鈴木氏が党に必要な届けをしていなかったと判断して鈴木氏の帰国後に調査を経て処分を検討する方針だ。
●戦争中のウクライナに「大統領選挙実施」の圧力…黒幕はロシアか 10/4
民主主義国家なら戦争中でも「選挙」を行わなければならないのか。
西側の全面的な支援の下、ロシアの侵攻に対抗する戦争を1年7カ月間続けているウクライナの悩みが深まっている。一部の西側政治家が、戦争にもかかわらずウクライナが総選挙と大統領選挙を行うべきだと主張しているからだ。昨年2月末のロシアの全面侵攻後、ウクライナ全域には戒厳令が敷かれた。ウクライナ憲法は戒厳令のもとではすべての選挙を禁止している。本来ならウクライナは来月29日に総選挙を、来年3月に大統領選挙を実施しなければならない。
ウクライナが戦乱の中でも選挙を強行すべきだと主張した人々の中には、オランダの政治家、ティニー・コックス元欧州評議会議長もいる。コックス氏は5月、ウクライナのメディア「ユーロピアンプラウダ」とのインタビューで「ウクライナは自由で公正な選挙を行わなければならない」と主張した。さらに「戒厳令が維持される限り、憲法によって選挙ができないため、問題がある」とし、「どうしたら選挙が可能になるのかは、我々(西側)ではなく、ウクライナが解決策を見つけなければならない」と語った。コックス氏はトルコが2月に大地震に見舞われたたにもかかわらず、5月に大統領選挙を行ったことを例に挙げた。
それだけではない。リンゼイ・グラハム米上院議員も先月キーウを訪問し、「民主主義の発展」のため、ウクライナが来年選挙を実施すべきだとし、「国が攻撃を受けている状況でも自由で公正な選挙をすることを望んでいる」と述べた。
ウクライナはこのような主張に難色を示している。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「つけにしたり、武器を売ったりしてまでお金を工面し選挙を行うつもりはない」とし、「しかし、あなたたち(西側)が財政支援をし、国会議員が同意するならば、早く法案を変え一緒にリスクを受け入れよう」とウクライナメディアとのインタビューで語った。海外に避難したウクライナ市民700万人余りが権利を行使できる投票所を欧州連合全体に設置すべきだと強調し、「私たちはそのような基盤施設を備える力を持っていない」と付け加えた。
ゼレンスキー大統領は公正な選挙のために「立会人を最前線に送らなければならない」とも述べた。すべての有権者の権利が保障されるならば選挙を行うという立場を示し、事実上不可能だという点を遠まわしに表現したのだ。現在、ウクライナ領土の約5分の1がロシア軍占領下にあるだけでなく、市民数百万人が故郷を離れ、他国や都市に避難している状態だ。最前線に配置されている軍人数万人の場合、投票が容易ではない。
ワシントン・ポスト紙はウクライナのユーリヤ・ティモシェンコ元首相が「戦争中に選挙を行う代償は敗北として返ってくるだろう」と語ったと報じた。選挙によって自然に発生する政治的対立が、ロシアを撃退するために必要な全国家的団結を乱すという点を強調したのだ。ティモシェンコ元首相は、自分の政党は多くの議題でゼレンスキー大統領と異なる意見を持っているが、戦争中に選挙を強行することについては反対する考えを表明した。
ウクライナ内部では、このような主張が出てくる背景にロシアの介入があるという疑念の声が上がっている。あるウクライナの情報機関関係者は匿名でワシントン・ポスト紙に、「ロシアが秘密チャンネルを通じてこれを進めている」とし、選挙を実施すれば、ロシアがウクライナ社会内部に分裂を操作したり助長するチャンスを与えることになりかねないと指摘した。
ウクライナでジャーナリストとして活動しているリー・リニー氏とジョエル・バーサーマン氏は、米外交雑誌「フォーリン・ポリシー」への寄稿で、「全国的な空襲警報は(ウクライナ全域で)非常に多く発生し、20分から数時間まで続くこともある。これによる混乱のため、信頼できる投票、開票、集計は不可能であろう」と指摘した。さらに「ロシアはアフガニスタン選挙でタリバンが試みたように、ウクライナの政治的混乱を最大限に高めるため、全国投票所を爆撃対象にするのが有利だと判断するだろう」と懸念を示した。
8月、ウクライナ国会は戒厳令を11月までさらに90日延長した。総選挙が開かれるためには憲法を改正するか、戒厳令が撤回されなければならない。ジョー・バイデン政権は、選挙実施の可否はウクライナが決める問題という立場を示している。トニー・ブリンケン米国務長官は最近、キーウ訪問の際、ゼレンスキー大統領に市民社会や野党と選挙日程について協議するよう求めた。
●ウクライナへ提供する弾薬「枯渇寸前」 NATO当局者らが警告 10/4
北大西洋条約機構(NATO)と英国の当局者は3日、西側諸国がウクライナに提供する弾薬が枯渇しつつあり、増産する必要があると警告した。
NATOのロブ・バウアー軍事委員長は同日、ワルシャワ安全保障フォーラムでの討議の中で「弾薬の在庫が底を尽きつつある」と発言。「防衛産業界が生産を大幅に増強する必要がある」と指摘した。
バウアー氏によると、ウクライナを支援する国々はロシアがウクライナに侵攻する前に予算を増額したが、生産能力は増強していない。それにより、弾薬の価格は侵攻前に上昇していたという。
バウアー氏は「兵器や弾薬をウクライナに送ることはいいことだが、在庫が十分にある倉庫から提供しているわけではないという事実により、弾薬を取り巻く状況は悪化した。欧州の兵器や弾薬の倉庫が半分かそれ以下の状態からウクライナに提供を始めたため、在庫が底を尽きつつある」と説明した。
バウアー氏とともに登壇した、英国のジェームズ・ヒーピー国防担当閣外相は「ぎりぎり」の生産モデルは「明日の戦闘に備える必要があるときに間違いなく機能しない」と警告。また、ウクライナへの支援は継続すべきとの考えを示した。
ヒーピー氏は「在庫が少なくなっているからといって支援をやめることはできない」「ウクライナが今夜、そして明日以降も戦えるようにしなければならない。我々が供給をやめれば、ロシアのプーチン大統領が自動的に戦争をやめるわけではない」と指摘。「それはウクライナに日々供給し、我々の在庫も再構築することを意味する」と増産の必要性を訴えた。
●ウクライナ支援継続、日米欧が首脳電話会議で確認… 10/4
米国のバイデン大統領や岸田首相ら日米欧の首脳は3日、電話会議を開き、ロシアの侵略を受けるウクライナ情勢について協議した。米国で9月末に成立した政府の暫定予算(つなぎ予算)でウクライナ支援予算が除外されたことなどを踏まえ、ウクライナ支援での結束を改めて確認した。
米政府によると、日米英独など先進7か国(G7)やポーランド、ルーマニアの首脳、北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長らが出席した。
会議はバイデン氏の呼びかけで開かれた。バイデン氏は支援継続を表明した模様だ。同盟国の間では米国内の支援削減の動きに不安が広がっており、懸念を 払拭ふっしょく する必要があると判断したとみられる。
米国のカリーヌ・ジャンピエール大統領報道官は2日の記者会見で、追加の軍事支援を近く発表すると明らかにした。「勇敢なウクライナの人々を引き続き支援することを示すためだ」と語り、追加予算がなくても、当面は米軍の在庫から支援を続ける姿勢を強調した。
米国務省は2日、ウクライナに供与する武器を民間軍事企業から調達する制度を一時凍結したと発表した。追加の支援予算を確保できなかったことで、財源が底をついた。米国の予算措置が滞れば、他の支援にも影響が及ぶ可能性がある。
●日米欧首脳、ウクライナ巡り電話協議 支援へ結束確認 10/4
日本と米国、欧州の同志国首脳は3日、ロシアによる侵攻が続くウクライナ情勢を巡り電話協議した。バイデン米大統領が主催し、岸田文雄首相やドイツのショルツ首相らが参加した。各国が結束してウクライナへの支援を続ける方針を確かめた。
米ホワイトハウスは協議後の声明で「バイデン氏はウクライナが主権と領土の完全性を守るために必要な限り、米国がウクライナを支援する責務を再確認した」と記した。ウクライナがロシアの侵略から領土や重要インフラを守るために必要な武器供与や防空体制の強化などについて意見を交わした。
9月30日に成立した米政府閉鎖を回避する「つなぎ予算」にウクライナへの追加支援が盛り込まれなった。野党・共和党が反対したためで、米政府が確保したウクライナ支援の予算が底をつく事態が現実味を増す。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は3日の記者会見で、各国首脳との電話協議で「米国の支援継続に懸念を表明した外国首脳はいなかった」と説明した。バイデン氏が「いかなる状況にあっても米国のウクライナ支援を中断させるわけにはいかないと明言した」と明らかにした。
日本外務省によると、各国首脳は「同志国が団結してウクライナに寄り添い、結束して支援を続ける」との方針で一致した。
岸田首相は会議で、24年初めに日本でウクライナ経済復興推進会議を開く方針を説明した。「日本としてウクライナ支援を力強く実施する」と伝えた。
電話協議には主要7カ国(G7)首脳らのほか、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長やポーランドのドゥダ大統領、ルーマニアのヨハニス大統領らも出席した。
●G7首脳らウクライナ支援で結束 電話会談に岸田首相出席 10/4
岸田首相は3日、ロシアのウクライナ侵攻をめぐるG7(主要7カ国)の首脳らとの電話会議に出席し、結束してウクライナ支援を続けることを確認した。
電話会議には、アメリカのバイデン大統領などG7の首脳や、ポーランド、ルーマニアの首脳らが参加した。
首脳らは、「ウクライナの平和を一日も早く実現すべく、今こそ結束して支援を続ける必要がある」との認識で一致した。
また、岸田首相は、2024年初めにウクライナ復興に関する会議を日本で開催するなど、日本の支援の取り組みを強調した。 
●「HIV感染」がロシアとベラルーシで急拡大 その理由は? 10/4
ウクライナ侵攻を続けるロシアと隣国ベラルーシで、エイズの感染拡大が続いている。国連は、ロシアでの新たなエイズウイルス(HIV)感染者数が世界でワースト5に入ると警告、感染者は人口の1%に達する勢いだ。深刻化している欧米との対立が、感染予防に関する知識の普及を妨げており、事態の悪化に歯止めがかからない。
ロシアとベラルーシ / ともに旧ソ連構成国で、キリスト教東方正教を信仰する東スラブ系住民が多数を占める。1999年に両国は連合国家創設条約を締結。ウクライナ侵攻でもベラルーシはロシア軍の出撃拠点を提供し、ロシアと同じく欧米から制裁を受けている。ロシアの人口は約1億4000万人。ベラルーシは約950万人。
「私の周囲では誰も感染するとは思っていない」
ロシアでは2021年、新たに5万9000人がHIVに感染。国連は昨年末に南アフリカ、モザンビーク、ナイジェリア、インドに次ぐ深刻な状況だと指摘した。米フォーブス誌(ロシア語版)などが、公式統計を基に試算した感染者は150万人にのぼる。シベリアやウラル地方では、妊婦の2%以上がHIVに感染している都市もある。
しかし市民の危機感はいまひとつだ。ロシアやベラルーシでは「エイズは同性愛者の病気」という偏見が根強く、性病への警戒も薄い。モスクワのIT企業で働く20代男性は「私の周囲では誰も感染するとは思っていない」と話す。同市の20代の男性銀行員は「学校や大学ではエイズについて学ばなかったし、話題になりにくい」と打ち明けた。
「欧米敵視」が議論や知識の普及を阻んだ
ロシアでは1991年のソ連崩壊後、社会が混乱に陥り、売春や薬物乱用の際の注射針で感染者が急増。ロシア政府はエネルギー輸出で財政が安定した2000年以降、国際社会と連携して「ストップHIV」キャンペーンを実施し、メドベージェフ元大統領の妻が推進団体のトップを務めた。
だが、ロシアのエイズ啓発や患者支援に携わる団体の多くは、欧米の基金や国際機関から支援を受けており、ウクライナを巡って欧米との対立が激化すると、政府系団体以外は弾圧を受けるようになった。16年以降、複数のエイズ患者支援団体が、当局によって「外国の代理人」と認定された。「欧米のスパイ」とほぼ同義語であり、活動を封じられた。プーチン政権の欧米敵視の姿勢がエイズに関する社会の議論や知識の普及を阻んでいる。
社会学者のグトコフ氏は「プーチン政権は欧米敵視の思考を国民に植え付けており、この呪縛が解かれるには少なくとも15年はかかるだろう」と悲観する。
ベラルーシでは独自の理論まで
ベラルーシもエイズ禍が続いている。当局の発表によると、人口約200万人の首都ミンスクでの感染者数は9月1日時点で5501人。しかし「欧州最後の独裁国家」と呼ばれるベラルーシでは、政府にとって都合の悪い現実は公式統計に反映されないため、実際の感染者数はさらに多いとみられる。
外交筋によると、ベラルーシ南東部の工業都市スベトロゴルスク市は、1990年代後半、薬物中毒者らの注射針の回し打ちなどで感染者が爆発的に増え、「エイズの都」と呼ばれた。市保健当局は2000年代に「封じ込めに成功」と宣言したが、市民団体によると現在もスベトロゴルスクを含むゴメリ州での感染数はベラルーシ全体の半数近くを占める。
ロシアとベラルーシでは、感染症に対する国際社会の警戒を「欧米による陰謀論」と見なす風潮があり、ロシア正教会で「長司祭」と呼ばれる高位聖職者ドミトリー・スミルノフ氏は生前、「エイズはストレスやうつ病、予防接種が原因で生まれる」と主張。ベラルーシのルカシェンコ大統領も新型コロナウイルスについて「心の病なので、ウオッカやサウナが効く」と持論を展開してきた。
●ロシア ニュース番組中に反戦訴えた元職員に判決 禁錮8年6か月 10/4
ロシア国営テレビのニュース番組の放送中にスタジオに入ってウクライナ侵攻への反対を訴え注目された国営テレビの元職員に対し、モスクワの裁判所は、軍の活動についてうその情報を拡散したとする罪で禁錮8年6か月の判決を言い渡しました。
ロシア国営の「第1チャンネル」に勤務していたマリーナ・オフシャンニコワ氏は、ウクライナへの軍事侵攻が始まった直後の去年3月、ニュース番組の放送中にスタジオに入り、「戦争反対」と書いた紙を掲げて軍事侵攻を批判し注目されました。
その後も反戦を訴える活動を続けたオフシャンニコワ氏は、軍の活動について、うその情報を拡散したとして起訴され、自宅軟禁となっていましたが、去年10月、家族とともにロシアを離れたことが明らかにされました。
オフシャンニコワ氏は、SNSを通じて無罪を主張する声明を出していましたが、モスクワの裁判所は4日、禁錮8年6か月の判決を言い渡しました。
オフシャンニコワ氏はことし2月、滞在先のパリで会見し、「終わりが見えない戦闘が続き、ロシアの犯罪行為はどんどん残忍で攻撃的になっている。この戦争がウクライナの完全なる勝利で終わらないと、ロシアの未来もない」と述べるなど、国際社会が結束してウクライナを支援するよう呼びかけています。
フランス外務省「判決を強く非難する」
オフシャンニコワ氏が現在、滞在しているフランスの外務省は4日、声明を出しました。
声明では「判決を強く非難する」とした上で「オフシャンニコワ氏は、ロシアで放送されたニュースの中で、ウクライナに対する侵略戦争を勇気を持って非難した」としています。
そして「ロシア当局が、侵略戦争に批判的な声に対して行っている弾圧キャンペーンの激化を非常に懸念している。ロシアのプロパガンダは、ウクライナへの侵略戦争における武器そのものだ。国際人権法と報道の自由を尊重すべきだ」などとしています。
オフシャンニコワ氏は、先月29日ロシア国内の反戦活動を支援するためパリで開かれたフォーラムに参加するなどいまも活動を続けています。

 

●ロシアを支持する南アフリカ、忠誠心の根っこに見当外れの郷愁 10/5
時折、道徳的な悟りは稲妻のように訪れる。今年8月、南アフリカでそのような落雷があった。ナイジェリアの偉大な文人でノーベル文学賞受賞者のウォーレ・ショインカ氏(89)がステレンボッシュ大学の学生たちからウクライナ戦争についての見解を問われた時のことだ。
中立の立場は建前だけ
公式見解としては、南アフリカはこの戦争について中立の立場を保とうとしてきた。
だが、多くの若手を含む与党・アフリカ民族会議(ANC)の一部メンバーは公然とロシアの味方をした。
昨年、ANC青年同盟が送り込んだ使節団は、ウクライナ東部、南部4州でのインチキ住民投票は「美しく素晴らしいプロセス」だったと宣言した。
これは党内の年配政治家がわざわざ正す必要もないと判断したナンセンスだった。
1990年から南アフリカ労働組合会議(COSATU)とともにANCと3者同盟を組んでいる南アフリカ共産党は決まって、ロシアによるウクライナ侵攻を「NATO(北大西洋条約機構)が誘発した戦争」と呼ぶ。
今年2月にはロシアの侵略行為を記念するかのごとく、南アは自国沖合でロシア、中国両国との海軍合同演習を実施した。
また、急進左派の「経済的解放の闘士(EFF)」の党首で、ANCに連立パートナーが必要になった場合には未来の南ア副大統領になる可能性があるジュリアス・マレマ氏は、アンチ西側の姿勢をロシアへの忠誠と同一視している。
同氏は今年、ある集会で「我々はプーチンであり、プーチンは我々だ」と語った。
不正義と戦ってきた文人の道徳心
ショインカ氏はそうした浅はかな考え方を痛烈に批判した。
「今日のロシアはアフリカの解放の味方についたロシアではない」と同氏は言った。
「ウクライナは人間が暮らしている主権国家だ。ロシアは侵略者だ。なぜ我々はそうじゃないふりをしているのか。この義務感は一体何なのか」
ショインカ氏はその道徳心を証明してきた。
1960年代終盤には、ビアフラ戦争(ナイジェリア内戦)で仲裁を模索した後、投獄されて2年間独房で過ごした。
刑務所でトイレットペーパーに文章を書き、後に『The Man Died』として出版される獄中記を綴った。
だが、ショインカ氏は死ななかった。生涯にわたり、どこで見つけようとも見つけるや否や、不正義を不正義として糾弾した。
確かに、侵攻直後のパニックに駆られた日々にウクライナから避難した一部のアフリカ人学生は同国で人種差別に遭った。
(アフリカの黒人に対する人種差別はロシアでも決して未知の現象ではない)
また確かに、イラクとリビアに対する悲惨な侵攻をめぐって西側の偽善を批判することができる。
だが、ほかの誰かの愚行に基づいてロシアの侵略を応援することは、道徳の破綻というものだ。
ソ連に郷愁を抱く歴史
南アにおけるソビエト連邦に対する郷愁は本物だ。
世界の大部分が喜んで白人至上主義者とビジネスをしていた時、ロシアは国外に亡命したANCに資金を提供し、訓練に協力した。
ウォルター・シスル氏やクリス・ハニ氏など、ANCの指導部数人は南ア共産党のメンバーだった。
危険を顧みずにアパルトヘイト(人種隔離政策)に反対した白人の多くも共産党員だった。
伝記作家のジョニー・スタインバーグ氏はマンデラ一族に関する新著で、ズールー語を話す清掃員が1961年に、当時逃亡中だった故ネルソン・マンデラ氏がユダヤ系白人男性のウォルフィー・コデシュ氏の部屋に一緒にいるところを見かけたシーンを回想している。
これはスタインバーグ氏があの時代の「最も奇妙なシーン」と呼ぶものだ。
「黒人と白人の男性が2人だけで部屋にいて、2人の関係は明らかに対等だった」。ほとんど必然か、コデシュ氏は共産主義者だった。
もちろん、ソビエト連邦に対する忠誠心には二重思考の離れ業が必要だった。
スターリンのグラーグ(強制収容所)では何百万人もの人が殺され、ソ連はハンガリーの街頭に戦車を送り込んだ。
共産主義の理念がどういうわけか自由と平等を表していたとすれば、それは間違いなくソ連では実践されていなかった。
ソ連に郷愁を抱く歴史
南アにおけるソビエト連邦に対する郷愁は本物だ。
世界の大部分が喜んで白人至上主義者とビジネスをしていた時、ロシアは国外に亡命したANCに資金を提供し、訓練に協力した。
ウォルター・シスル氏やクリス・ハニ氏など、ANCの指導部数人は南ア共産党のメンバーだった。
危険を顧みずにアパルトヘイト(人種隔離政策)に反対した白人の多くも共産党員だった。
伝記作家のジョニー・スタインバーグ氏はマンデラ一族に関する新著で、ズールー語を話す清掃員が1961年に、当時逃亡中だった故ネルソン・マンデラ氏がユダヤ系白人男性のウォルフィー・コデシュ氏の部屋に一緒にいるところを見かけたシーンを回想している。
これはスタインバーグ氏があの時代の「最も奇妙なシーン」と呼ぶものだ。
「黒人と白人の男性が2人だけで部屋にいて、2人の関係は明らかに対等だった」。ほとんど必然か、コデシュ氏は共産主義者だった。
もちろん、ソビエト連邦に対する忠誠心には二重思考の離れ業が必要だった。
スターリンのグラーグ(強制収容所)では何百万人もの人が殺され、ソ連はハンガリーの街頭に戦車を送り込んだ。
共産主義の理念がどういうわけか自由と平等を表していたとすれば、それは間違いなくソ連では実践されていなかった。
●ワグネルの精鋭部隊はプリゴジンの息子(25)の指揮下でウクライナに戻る 10/5
民間軍事会社ワグネル・グループの創設者である故エフゲニー・プリゴジンの息子パベルが、本格的にウクライナ侵攻に参加するワグネルの精鋭部隊を引き継いだという情報が、ロシアのSNSテレグラムで伝えられている。
8月23日にエフゲニー・プリゴジンが原因不明のプライベート・ジェット機墜落事故で死亡して以来、ワグネルが今後、ウクライナ戦争とどう関わるかは明らかになっていない。
プーチンがワグネル司令官を登用
ワグネルはプリゴジンの指揮下で、ウクライナ東部バフムトで数カ月に及ぶ戦いの先頭に立ってきたが、6月24日にロシア軍幹部に対して反乱を起こした後、ロシア政府によってウクライナから撤退させられている。
プリゴジンとワグネルによるモスクワへの「正義の行進」が未遂に終わった後、一部の戦闘員は隣国ベラルーシに追放され、一部はロシア国防省との契約を提示された。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は今年7月、ワグネルは「存在しない」し、ロシアには民間軍事会社に関する法律も存在しないとみずから語った、とロシア紙コメルサントが報じている。
だがその点については疑問の声があがっている。ロシア政府は9月28日に、プーチンがワグネルの司令官だったアンドレイ・トロシェフと会談し、ウクライナで「さまざまな戦闘任務」を遂行できる「志願兵部隊」の創設について協議したと発表したからだ。
犯罪に走る元戦闘員
ロシアのニュースメディアMK.ruは10月2日、傭兵グループとつながりのあるテレグラム・チャンネルの投稿を引用し、ロシア国防省と契約を結んでいない3個のワグネル突撃部隊が、ウクライナの戦闘に参加するため、すでにアフリカを出発したと報じた。
あるテレグラム・チャンネルによると、ワグネルの戦闘員たちは、ワグネル内部の指揮系統を維持し、パベル・プリゴジンがウクライナでその指揮を執る協定に調印する可能性があるという。
MK.ruは軍事専門家の話として、アフリカから帰ってくるワグネルの部隊の最初の任務は、ウクライナ領ドンバス地方東部の都市アヴディーイウカの占領になるだろうと伝えている。この都市はバフムトの南約90キロ、ロシア占領下のドネツク州のすぐ北に位置している。
ワシントンのシンクタンク戦争研究所(ISW)は10月1日、ワグネルとロシア政府が今後の協力について交渉していると報道されてはいるが、ワグネルの立場は依然として不透明だと指摘した。
「ワグネルの主要な戦闘部隊は、ベラルーシ、中央アフリカ共和国、リビア、マリなど複数の国にまたがっており、ワグネル・グループ全体を統一するリーダーは存在しない」
一方、ロシア各地の新聞報道などによると、ワグネルをやめてロシアに戻った元戦闘員は国中で問題を起こし、殺人、誘拐、放火、レイブなどありとあらゆる重犯罪を犯している。
●「シベリアで核実験を」 ロシア編集長、発言が炎上 10/5
ロシア国営テレビRTのシモニャン編集長が2日の番組中、ウクライナ侵攻で対立する西側諸国を威嚇するため「シベリアのどこかで熱核爆発(核実験)を起こせばいい」と発言し、国内のSNS上で炎上している。シベリアの中心都市ノボシビルスクの市長らから批判が噴出した。
シモニャン氏は、核実験が戦争で優位に立つための「最後通告」になると述べていた。
プーチン政権は対外的に核兵器による威嚇を続ける一方、爆発を伴う核実験のモラトリアム(一時停止)を順守するのが建前。ペスコフ大統領報道官は3日、「彼女は政府機関で働いておらず、発言が公式見解を反映しているわけではない」とコメントした。
●北朝鮮が衛星再打ち上げ予告した10月…ロシアが「ワンポイントレッスン」か 10/5
北朝鮮が予告した軍事偵察衛星の再打ち上げを控え「助力者」としてのロシアの役割に関心が向かう。プーチン露大統領が自ら示唆した「衛星技術支援」をいつ、どんな形で適用するかという点だ。
北朝鮮は8月24日の2回目の打ち上げに失敗した直後、「10月に3回目の発射を断行する」と明らかにした。発射時点は10日の労働党創建日の前後が有力という見方が出ている。北朝鮮の立場では政治記念日を迎えて金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の功績を浮き彫りにしながら内部結束を図る必要性がある。
失敗すれば政治的負担が大きい中、ロシアの助力レベルが変数になると予想される。プーチン大統領は先月13日、金正恩国務委員長との露朝首脳会談に先立ち、北朝鮮の衛星開発を支援する意向を表した。
しかし今回の打ち上げではロシアの影響力は少ないという見方が多い。2回目の打ち上げで発射体「千里馬1型」の1段目と2段目は正常に飛行したが、3段目の非常爆発体系に問題が生じて失敗したというのが北朝鮮の評価だった。北朝鮮が言及した非常爆発体系は「飛行終了システム(FTS=Flight Termination)」とも呼ばれるが、各段の飛行中に問題が発生すれば意図的に爆破させることができる装置だ。
北朝鮮は「事故の原因は段階別発動機(エンジン)の信頼性と体系上大きな問題でない」と説明した。失敗は1・2・3段目ロケットの作動および段分離などの決定的な要素でなく、FTSの誤作動のような小さな問題にすぎないため10月中の再打ち上げを公言するのが可能だったということだ。北朝鮮の主張が事実なら、衛星を宇宙空間に打ち上げるうえでロシアの決定的な支援が必要な状況でない可能性もある。
また、先月の露朝首脳会談で技術移転に合意したとしても、北朝鮮がロシアの技術力をすぐに適用するには時間があまりにも短いという指摘もある。韓国国防安保フォーラムのシン・ジョンウ事務局長は「発射体を置いて実務陣の間で諮問する程度しかできないだろう」と話した。北朝鮮がロシアの技術を基盤にした液体燃料エンジンで衛星に搭載される白頭山(ペクドゥサン)エンジンを作ったという点で、ロシア技術陣のコンサルティング程度は可能ということだ。シン氏は「北が首脳会談後に設計図や発射データをロシアに提供したかも確実でない」とし「諮問したとしてもどれほど実効性のある助言を得られたかも疑問」と話した。
ただ、ロシアが衛星打ち上げ成功の経験から築いたノウハウを「ワンポイントレッスン」方式で伝える場合、予想以上の効果につながるという見方もある。政府筋は「わが国も衛星打ち上げ失敗を繰り返した当時、先進国の技術陣の助言が役に立った」と伝えた。
また光学装備のアップグレードなどは短期間で移転可能な技術であり、今回の打ち上げに活用される可能性もある。クォン・ヨンス元国防大教授は「ロシアとの協力で粗悪という評価を受けた衛星体の光学監視能力を補完できる技術や装備を確保する可能性も排除できない」と話した。
軍当局は北朝鮮偵察衛星の衛星体「万里鏡1号」について「偵察衛星としての軍事的効用性が全くないと評価する」という立場だ。ここに搭載されたカメラの解像度が横・縦1メートル以下の「サブメートル」級に至らず、軍事偵察衛星としての役割をするのは難しいという意味と解釈される。
結果的に北朝鮮はロシアの技術支援を中長期な課題として接近する可能性が高い。21世紀軍事研究所のリュ・ソンヨプ専門研究委員は「千里馬1型の10月の再打ち上げが失敗する場合、ロシアの技術は『プランB』になる可能性がある」と分析した。そのためには少なくとも1年以上の期間を置いて発射体と衛星体を新たにやり直す作業が必要というのが専門家らの評価だ。
一部ではロシアが試験設備の提供など間接支援に注力するという声も出ている。北朝鮮が確保していないと推定される真空チャンバーが代表的な例だ。エンジンの安定した試験基盤を備えるだけでも北朝鮮の衛星開発に大きく寄与すると予想される。
●ウクライナ支援に暗雲 米議会混乱で途絶懸念 10/5
マッカーシー米下院議長が解任されたことで、米議会で審議中のウクライナ支援予算案の行方に不透明感が強まった。
バイデン大統領は3日、日本や英国、欧州連合(EU)などの首脳と電話会議を開き、支援継続に取り組む姿勢を強調。だが、最大の後ろ盾だった米国の政治混乱は、ロシアの侵攻が続くウクライナの反転攻勢にも影を落としかねない。
「短期間でも支援が途切れれば、戦況は一変する。プーチン(ロシア大統領)は、われわれが折れるまで戦争を続けようと考えるだろう」。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は3日の記者会見でこう警告し、切れ目ない支援の必要性を訴えた。
米政府機関の一部閉鎖を回避するため9月末に成立したつなぎ予算からは、下院多数派を握る共和党の賛成を取り付けるため、ウクライナ支援分が除外された。日米欧首脳の電話会議は、バイデン氏が同盟国に事情を説明するのが狙いだったとみられる。ホワイトハウスによると、参加した他の首脳は米議会の状況に理解を示した。
米国で予算編成権を握るのは、政府ではなく議会。バイデン氏はウクライナ支援予算案の迅速な可決を議会に呼び掛けていたが、その直後の下院議長解任で、早期可決の希望はあっけなくついえた。
カービー氏は議会が追加資金を承認しなければ、米国の支援は「あと2カ月程度で底を突く」と指摘。国防総省によると、米軍が保有する武器を大統領の権限でウクライナに供与できる支援枠が約54億ドル(約8100億円)分残っているだけだ。
議会内でも混乱長期化への懸念が募っている。ダックワース上院議員(民主)は「上下両院の超党派の多数派が賛成している。(ウクライナ)支援継続を政治問題にしてはならない」と強調したが、マッカーシー氏を解任に追い込んだ共和党の強硬右派は支援に強く反対。予算案審議の先行きは見えない。 
●上がらぬゼレンスキーの戦果。限界に達した欧米の「ウクライナ支援疲れ」 10/5
開戦から1年7ヶ月を超えるも、先の見えない状況が続くウクライナ戦争。欧米のウクライナ支援疲れも頂点に達した今、新たな難題がNATOに降りかかりつつあるようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、最新の戦況を詳しく解説するとともに、アメリカの「ウクライナ支援拒否」の動きに対するゼレンスキー大統領の反応を紹介。さらにNATO加盟国コソボと国境を接するセルビアの不穏な動きを注視しています。
前進止まったウクライナ軍。欧米のウクライナ支援も限界か
ロ軍最強の第76空挺師団は、南部コパニの東側面を防衛している。師団全体で、そこにしか投入されていない。相当損耗しているようである。師団規模は1万人であるが、相当に少ないようである。
オリヒウ軸にウ軍は集中して攻撃している。その他では、バフムトの南を攻撃している。それ以外では、ウ軍は攻撃をしていない。
ロ軍も全体的に攻撃をしなくなった。ロ軍は代わりに各地で空爆を行っている。
このため、あまり状況の変化がない状態である。
   クピャンスク・スバトバ・リシチャンスク方面
ロ軍は、防衛のみで攻撃できない状態になっている。このため、ロ軍は航空優勢であることで、空爆を各地で行っている。ウ軍も、攻撃を行っていない。
ロ軍はクピャンスク南部のオスキル川にかかる4つ以上の橋を空爆して破壊したが、ウ軍は損傷した橋の近くに舟橋を設置したようだ。
   バフムト方面
北西では、ロ軍はオリホボバシリフカに地上攻撃したが、ウ軍と戦闘中である。
南側では、ウ軍はクリシチーウカ、アンドリーイウカを完全奪還した。ウ軍は追撃して「T0513」道路に向かって線路を超えて攻撃している。この道路は、バフムトへの補給路になっている。この補給路を火器管制下に置いたことで、ロ軍の補給が困難になっている。
その他で、ウ軍はクルディミウカとイワニフスクにも攻撃している。
というように、ロ軍は、この地域で押されている。このため、ワグナーの戦闘員を再配置されるようだと英国防省は言う。規模は数百人程度で、バフムトの地形を知る熟練兵をバフムート周辺に集中配備したようだと。
   ザポリージャ州方面
1.ベルカノボシルカ軸
東では、ノボドネツク、ノボマヨルシケ、シェフチェンコに攻撃をしているが、前進できずにいる。ここには大きな兵力を入れないので、攻撃も限定的になっている。中央では、ウ軍は、ザビトネ・バジャンニャを攻撃しているが、前進できないでいる。
2.オリヒウ軸
ウ軍は、ロボティネの南ノボプロコピウカを攻撃しているが、このノボプロコピウカ方向で少しづつ前進している。ロ軍も徐々に退却している。
コパニ方向へウ軍は向かっているが、ロ軍最強の第76空挺師団が立ちはだかっている。
ベルボベ方向では、第2防衛線を越えてウ軍は、市内の西側に前進しているが、ロ軍陣地も強化されていて、クラスター弾をはねのける構造になってきたことで、前進できなくなってきた。ここに、第7強襲師団が逆襲に出て、一部ウ軍を押し戻している。
もう1つが、ベルボベの南東にロ軍第1防衛線沿いにウ軍は前進して、166高地方向に塹壕を横から攻めている。
防空システムやレーダーも破壊され打つ手なしのロシア軍
   クリミア方面
ケルチ橋周辺にウ軍はドローンとミサイル攻撃をしている。クリミア西部の防空システムを破壊しているので、ケルチ橋付近のロ軍の防空システムを攻撃し始めている。
クリミアの全域に空襲警報が出ているが、ドローンを飛ばして、防空部隊の位置を探っている可能性もある。爆発炎上は、ケルチ地域に限られている。
米国からクラスター弾のATACMSミサイルが供与されるので、その前に防空システムを破壊する必要がある。
低い位置を飛ぶストームシャドーのような巡航ミサイルをロ軍防空システムは迎撃できないでいる。低い位置の探索する早期警戒機をロ軍は持っていないか、能力を発揮できないかである。早期警戒機がクリミア地域でもモスクワでも飛行していない。
ウクライナのヴェレシチューク副首相は28日、被占領下クリミアに滞在するロシア国民に対して、同地を退去するよう呼びかけた。「今後、クリミアへの攻撃が増加して、クリミア大橋が落ちた時、陸上回廊が切断された時、地上戦がクリミア半島で始まった時、彼らはどうするのかだ?」と発言した。
   その他方面
ロシア自由軍団は、ベルゴルドの国境付近のスタロセル村とテレブレノ村に夜間に入り、国境警備隊、警察、FSBと銃撃戦を行った。
また、ロシアのブリャンスク地方のルゴヴォイ集落に入り、ロ軍と衝突している。恐らく、ロシア自由軍団の偵察部隊があろう。
ロシア領内クルスク州、ブリャンスク州、ベルゴルド州では、連日ドローン攻撃があったが、侵攻作戦のための偵察活動も兼ねているようである。
クルスク州のカスタ2Eレーダー基地をドローン攻撃で破壊した。この2Eレーダーは極低高度の目標を察知する能力があるが、このレーダーをドローンで破壊ということは、近くに防空システムがないことを意味しているようだ。
クルスク州のスタロボイト知事は29日、州内の5ヶ所の集落や1ヶ所の病院が同日、ウ軍のドローン攻撃にさらされ、停電被害などを受けたとした。ウクライナのインフラ施設へのロ軍の攻撃が続くのなら、ウ軍も同様に対応するとした。
ブリャンスク州のウクライナ国境から21kmのポガール村では、ドローン攻撃でガス供給施設が破壊されて供給停止になっている。
モスクワ近郊のテカロフスキー航空基地で爆発炎上が起きたが、1回目はパルチザンによる航空機2機とヘリ1機を破壊したが、2回目は、空港の2階建てのビルを直撃した。このため、ビルが炎上している。搭乗員の殺傷を狙った可能性が高い。
この基地は、核戦争時空中指揮をする特殊な航空機を運用する部隊の基地である。
ルハンスク州のクラスノドンで、ロ軍弾薬庫の一帯が激しく炎上している。弾薬庫で誘爆が起きている。
ロ軍占領のルクスク、ドネツク、ヘルソンでもドローン、ミサイル、砲撃を受けて大きな被害を受けているが、ロ軍に打つ手がないようである。すでに、電子戦部隊を破壊され、防空システムやレーダーも破壊されていることによる。
ベルジャンスクでも爆発が起き、一帯が停電している。
それと、ウ軍は、ロシア占領地で負傷し、ウ軍前線の後ろに取り残されていた空挺部隊の軍人2人を救出した。
アメリカ人記者の質問に激怒したゼレンスキーの心中
ゼレンスキー大統領は、新たな攻勢作戦について米英の了解を得たという。とうとう、ドニプロ川左岸に、大規模な渡河作戦を実行するため海兵隊と特殊部隊が集結しているという。オリヒウ軸での攻撃速度が上がらず、このままでは、突破ができないことで、新たな攻撃軸を必要としているようだ。
オリヒウ軸の進捗が進まないことで、欧米でのウクライナ支援疲れを払拭できないでいる。このため、払拭するために、違う何かの戦果を出し続ける必要があり、その一環として、クリミア黒海艦隊司令部の攻撃やベルゴルドへのロシア自由軍団の攻撃などを行う必要があるようだ。
ゼレンスキー大統領も、米国でのウクライナ支援拒否の共和党の動きを非常に心配している。米国の記者が、ウクライナへの支援金が軍幹部の汚職で、消えているのではないかと聞いたときに、猛然と怒っている。
このようなウクライナ支援疲れで、徐々にウクライナ国産の兵器に置き換える必要を感じているようである。このため、費用が掛からない各種ドローンを作り始めている。
1機1,300万円の「バックファイヤー」ドローンは、事前に設定したルートを飛び、設定した場所を爆撃することができる。電波を出さないので、発見されない利点がある。高度300mを時速85kmで飛ぶ。
1輌350万円の地上ドローン「ラーテル」は、35kgの爆弾を積んで1.5km先の目標物を破壊できる。時速24kmで走行する。
しかし、中国はドローン部品の輸出制限したためウクライナは困難に直面している。ウのドローン製造者も「中国製部品の代わりを作るのは不能に近い」と述べている。中国部品の代わりをできるのは、日本しかないような気がする。日本から輸出したらどうだ。
その他、BAEシステムズは、105mm榴弾砲の砲弾の製造をウクライナ国内で行うことや、ラインメタル社とは、戦車の修理工場を国内に作る。
トルコのバイカル社とは、ドローンの製造工場を作ることで合意した。米国の防衛産業とウ国内で生産する方向で協議を行うことになったし、フランスも防衛企業がキーウを訪問して、現地生産企業への技術提供などの契約を締結したようである。
長期戦に備える方向で、ウクライナは国産兵器を拡充するようである。軍事大国化に向けてウクライナは動き出すことになる。
英国のグラント・シャップス国防長官は、英国兵をウクライナに派遣し、英国内だけでなく、現地でウクライナ兵の訓練を開始する予定だと述べた。そして、英海軍も黒海に展開するという。英国が米国の代わりに世界秩序維持の前面に立ち始めている。
反対に、ハンガリーのオルバン首相は、ウクライナのEU加盟を阻止すると述べているし、スロバキアでも反ウ政党が選挙に勝つ可能性があるが、スロバキア選挙出口調査だと、対ウ支援止めるとしたスメル(Smer)より、親ウなプログレッシブ(PS)の方が勝っている。これは予想外の展開だ。
正気を疑うロシア安全保障会議副議長の発言
28日に、プーチンは、ワグナー参謀長のトロシェフ氏にワグナー部隊の組織再構築を指示したように、プーチンはロ軍将軍たちの意見を聞かず、自ら戦争の指揮を執っているようである。そして、ワグナー軍をバフムトに投入する。
南部オリヒウ軸がロ軍とウ軍の決戦場所であるはずが、プーチンは東部バフムトをまだ重要視しているようである。
ロ軍は砲身が大量生産できず、戦場に新しい砲身が届くことはない。ロシアの貯蔵基地にある50%の耐用年数を持つ兵器から砲身を取っているが、それでも足りない。砲が1日に30〜40門、砲撃戦で失われている。このため火力支援がないことで、ロ軍兵士たちは大きな犠牲を出していて、ロ軍部隊は攻勢から守勢に転じている。
現状の状況から、ゲラシモフ参謀総長はトクマク防衛を犠牲にしても、メリトポリとベルジャンスク防衛を優先するという。このため、トクマクを取られることを前提に、南部地域全体の兵站が機能しなくなる恐れがあるので、トクマク経由ではない新しい鉄道の建設をしている。
それにかかわらず、「特別軍事作戦はキエフのナチ政権を完全に破壊するまで続く。勝利は我々のもの。ロシア国内に新たな地域がうまれるだろう」と、メドベージェフは発言した。正気か?
このような状況で、ロ軍は、10月1日より秋季の徴兵召集を開始する。召集は10月1日から10月31日まで手続きが行われる。13万人程度の徴兵であるが、今回はロ軍の人員不足があり、訓練後一度除隊するが、今回からは、そのまま派兵できるようにしたので、そのままウクライナ前線送りであろう。
これにより、前線の人員不足は解消される可能性が高い。
練度が低い兵で防衛するので、陣地の構造はそう簡単には潰せないように強固に作り、弱兵でもウ軍を押しのけるようにするようだ。
ロシア国民生活では、野菜、果物の値段は30%〜50%上昇し、ガソリンや軽油も歴史的高値であるが、シルアーノフ財務相は「インフレ?お客さんが買わなければいい!」とモスクワ経済フォーラムで発言した。この発言にロシア国民は怒っているようだ。
NATOに新たに降り掛かかりつつある難題
カラバフのアルツァフ共和国のシャフラマニャン大統領は28日「2024年1月1日までにアルツァフ共和国を解散する法令に署名した」とした。アルメニアに逃れたカラバフのアルメニア系住民の数も7万人を突破し、ナゴルノ・カラバフ地域に住んでいた住民のほぼ半数が故郷を離れたことになる。この地域はアゼルバイジャンの直轄領になる。
このアゼルの武力による現状変更の成功は、世界に影響して、米NSCのカービー報道官は、セルビアがコソボとの国境付近に大規模な軍部隊を展開しているとした。次はセルビアが武力による現状変更を行う可能性が出ている。
欧州はウクライナ戦争だけではなく、コソボ戦争も支援する必要になる。アルバニア系住民92%とセルビア系住民5%のコソボは、紛争が起きやすい。アルバニアはNATOに加盟している。このため、NATOもコソボの住民保護に動くことになる。
●ウクライナ国防省「クリミアで上陸作戦 ロシア側に打撃」 10/5
ウクライナ国防省はロシアが一方的に併合した南部クリミアで上陸作戦を行い、ロシア側に打撃を与えたと発表しました。一方、ロシア国防省はウクライナ軍の上陸作戦を阻止したとしていて、攻防が激しくなっているとみられます。
ウクライナ国防省の情報総局は4日、ロシアが一方的に併合した南部クリミアに対して、特殊部隊が行った上陸作戦だとする映像をSNSに公開し「クリミアはウクライナとなる」と投稿しました。
情報総局の幹部は地元メディアに対して、この作戦でロシア軍の空てい部隊に打撃を与えたと強調しています。
一方、これに先立ちロシア国防省は4日、黒海の海域でクリミア半島の西側の岬に向かうウクライナ軍の部隊を発見し、空軍が上陸を阻止したと主張しました。
ロシア国防省は3日には、クリミア沖の黒海上空でウクライナの対艦ミサイル「ネプチューン」を迎撃したとも発表していて、双方の攻防が激しくなっているとみられます。
また、ウクライナ軍は南部ザポリージャ州で反転攻勢を強めていてロシアが占拠する交通の要衝トクマクの奪還を目指しています。
このトクマクについて州内の主要都市メリトポリの市長は4日、SNSでロシア軍が将校の家族を避難させたり、占拠する行政機関を閉鎖するなど「混乱が起きている」と指摘しました。
イギリス国防省は4日、ロシア軍はトクマクを死守しようと要塞化を進める一方、先月(9月)28日、自国の最新鋭戦闘機「スホイ35」を防空システムによって撃墜してしまった可能性が高いとする分析を発表し、ウクライナの反転攻勢に対し、ロシア側が警戒を強めていることがうかがえます。
●ウクライナ特殊部隊がクリミア半島に上陸、任務完了後に撤退… 10/5
複数のウクライナメディアは4日、ロシアが一方的に併合したクリミア半島に特殊部隊が上陸し、露軍に大きな損害を与えたと報じた。ウクライナ国防省情報総局が明らかにしたというが、作戦の詳細な場所や日時は伝えていない。
ウクライナ当局が公開した動画には、特殊部隊を乗せたとみられる複数のボートが浜辺に接近する様子が映っている。任務完了後に部隊は撤退したが、損害も出たという。
タス通信によると、露国防省は4日、クリミア西部に到達しようとしたウクライナ軍の上陸を阻止したと明らかにした。
ウクライナ軍は最近、2014年にロシアに一方的に併合されたクリミアへの攻撃を続けている。9月13日に南西部セバストポリの造船所へのミサイル攻撃で露軍の大型揚陸艦などを損傷させたほか、22日にもミサイルで露軍黒海艦隊司令部を攻撃した。
クリミアは南部戦線への露軍の物資補給地となっているほか、ウクライナ各地に向けた長距離ミサイルの発射拠点でもある。一連の攻撃は、露軍の戦闘能力の弱体化を狙ったものとみられる。
●米中央軍、イランから押収した弾薬110万発をウクライナ軍に供与 10/5
米中央軍は4日、イランから昨年12月に押収した約110万発の7・62ミリ弾薬をウクライナ軍に供与したと発表した。米暫定予算からウクライナ支援が除外されたことを受け、米政府として様々な手法で支援を続ける意志を示す狙いがあるとみられる。
声明によると、弾薬はイランの革命防衛隊がイエメンの反政府武装勢力フーシを支援するため、国連安全保障理事会決議に違反して輸送していた際に押収された。
米政府は、イランから押収した弾薬をウクライナ支援に使う法的枠組みを検討した。民事上の没収手続きに沿って米政府に所有権を移転し、今月2日にウクライナ軍に引き渡した。
中央軍は声明で「米国は同盟国などと協力し、あらゆる合法的手段でイランによる殺傷兵器の援助に対抗する」と強調した。
●アルメニア フランス外相が軍事支援を表明 欧米側に接近へ 10/5
フランスのコロナ外相は3日、係争地をめぐって軍事行動を起こしたアゼルバイジャンに敗北したアルメニアを訪れ、軍事支援を行うことを表明しました。アルメニアもロシアとは離れて欧米側に接近する動きを強めています。
フランスのコロナ外相は3日、係争地をめぐって軍事行動を起こしたアゼルバイジャンに敗北したアルメニアを訪れ、パシニャン首相などと会談しました。
現地で記者会見を行ったコロナ外相は「アルメニアの主権と領土の保全に脅威を与えるいかなる試みに対してもフランスは注意を払っている」と述べた上でアゼルバイジャンによる脅威を受けているとして軍事装備品の供与など支援を行うことを表明しました。
アルメニアは、アゼルバイジャンが軍事行動を起こした際もロシアが役割を果たさなかったとして不満を強めていて、プーチン大統領に対して逮捕状を出しているICC=国際刑事裁判所への加盟に向けた動きまで進めるなどロシアとの亀裂が深まっています。
一方、アルメニアは、アメリカと合同軍事演習を行ったほか、パシニャン首相は5日から「ヨーロッパ政治共同体」の首脳会議が開かれるスペインを訪れると明らかにするなど、同盟関係にあるロシアとは離れて欧米側に接近する動きを強めています。
ウクライナ侵攻を受けてロシアと対立する欧米側もアルメニアとの関係を強化したいねらいとみられます。
アゼルバイジャン大統領 アルメニア首相との会談取りやめ
アゼルバイジャンの国営通信社は4日、アリエフ大統領がアルメニアのパシニャン首相との会談への出席を取りやめると報じました。
会談は、アルメニアとの係争地ナゴルノカラバフをめぐる軍事行動で先月アリエフ大統領が勝利宣言したあと、情勢の安定化に向けてEU=ヨーロッパ連合やフランス、ドイツなどが調整していました。
会談は、5日からスペインで開かれる「ヨーロッパ政治共同体」の首脳会議にあわせて行われるとみられていました。
アゼルバイジャンの国営通信社は、アリエフ大統領が出席を取りやめる理由について、EUなどヨーロッパ側がアゼルバイジャンに対して批判的な対応をとっているとしたほか、同盟関係にあるトルコ側の代表が会談への同席を認められなかったことを挙げています。
これに対し、現地のメディアによりますと、アルメニアのパシニャン首相は4日、「会談が行われないことは残念だ」と述べたうえで、自身はスペインに向かい、関係国と会談する考えを示したということです。
●ロシアが2024年3月からVPNサービスをブロックする予定だと報じられる 10/5
2022年2月にウクライナへの侵攻を開始したロシアでは、X(旧Twitter)やFacebookなどのSNSやさまざまな外国のウェブサイトへのアクセスを遮断していますが、一部の国民はVirtual Private Network(VPN)を使用してアクセスし続けています。ところが、ロシアの政権与党である統一ロシアの上院議員が、ロシア当局が2024年3月1日からVPNをブロックする計画だと発言しました。
ロシア当局はウクライナ侵攻を開始した直後からSNS各社へのアクセスを制限しましたが、外国産のSNSやウェブサイトを使いたいロシア国民はVPNを利用してアクセスし続けており、ウクライナ侵攻直後のVPNの平均需要は進行前と比較して2692%も増加したことが報じられました。
2023年3月には政府系機関が外国産のメッセージングアプリを利用することを禁止する法案が施行されたほか、2023年8月には「Gmailなどの外国産電子メールシステムを利用してロシアのプラットフォームに登録することを禁止する」「VPNなど規制を回避する方法について助言することを禁止する」といった内容の法令にウラジーミル・プーチン大統領が署名しました。
そんな中、統一ロシアのアルテム・シェイキン上院議員は2023年10月3日に、「2024年3月1日から、ロシアで禁止されているサイトへのアクセスを提供するVPNサービスをブロックする命令が施行されます」と発言しました。この命令はロシアでインターネットの監視を担っている連邦通信・情報技術・マスコミ分野監督庁(Roskomnadzor)によって下されたものです。
シェイキン氏によると、この計画において特に重視されているのは、Facebook・Instagram・WhatsAppを所有するMetaのプラットフォームへのアクセスをブロックすることだそうです。シェイキン氏は、「過激派組織として識別されているMeta製品への市民のアクセスを制限することが、特に重要である点を強調したいと思います」とコメントしました。
ロシア当局はMetaを危険視する理由について、「ロシア人に対する暴力行為を奨励・誘発する投稿が流布されているため」と主張しています。実際にMetaはウクライナ侵攻の直後に、一時的ですがウクライナやポーランドなど12カ国で暴力的な言論を一時的に許可していたとのこと。Metaの広報担当者は、暴力的な言論の許可はロシアの軍事侵攻に関するものに限定され、ロシアの民間人に対する暴力を呼びかけるような投稿は削除したと説明しています。
Metaの対応を受けて、2022年3月にはロシアの地方裁判所がFacebookやInstagramを運営するMetaを「過激派」と認定しました。また、2022年10月にはロシアの金融監視当局であるロシア連邦金融監視サービスが、Metaを「テロリストおよび過激派」のリストに追加しました。 
●支援弱体化へ世論工作を強化か ロシア、AIで各国に揺さぶり 10/5
米紙ニューヨーク・タイムズは5日までに、ロシアのプーチン政権が米欧によるウクライナへの軍事・経済支援を弱体化させようと、今後数カ月の間に人工知能(AI)などを使った世論工作を強化する可能性が高いと報じた。米政府関係者の話としている。
9月末に米議会で成立したつなぎ予算はウクライナ支援予算を除外。スロバキア国民議会選では軍事支援停止や対ロ制裁見直しを主張する左派政党が1党となった。支援を巡る対立が表面化する中、ロシア側は世論に揺さぶりをかける好機とみているようだ。
同紙によると、プーチン大統領は米政界へ影響力を及ぼし、ウクライナ支援への支持を縮小させて戦況をロシア有利に転換させることが可能だと考えているという。来年の大統領選に向けた共和党の候補指名争いで、国内経済優先を訴えるトランプ前大統領がリードする状況も影響している。
来年の欧州連合(EU)欧州議会選でより多くの親ロシア派候補を擁立することも画策しているという。
●ウクライナ、クリミア上陸作戦か ロシア艦隊は一部退避 10/5
ウクライナ国防省当局者は、ロシアが併合した南部クリミア半島への上陸作戦を特殊部隊が行い、ロシア軍に「大きな損害」を与えたと主張した。ウクライナ国営通信が4日伝えた。米シンクタンク戦争研究所は同日付の戦況報告で、ロシア海軍が黒海艦隊の数隻をクリミアの軍港セバストポリから、ロシア南部のノボロシスクに退避させたと分析した。
報道によると、特殊部隊は複数の班で構成され、黒海に面したクリミア半島西岸にここ数日の間に上陸。戦闘の末、ロシア空挺(くうてい)部隊に打撃を加えた。ウクライナ側にも被害が出た。特殊部隊は既に任務を完了し、クリミアから撤退したという。

 

●条件付き日ロ対話の用意 制裁解除前提か―プーチン氏 10/6
ロシアのプーチン大統領は5日、ウクライナ侵攻下の日ロ関係について、日本の働き掛けがあれば「われわれは(対話に応じる)用意がある」と述べた。プーチン氏は、関係正常化に向けて、日本が対ロ制裁をやめるなどの具体的行動を取ることが必要だという認識を示唆した。
内外のロシア専門家を集めて南部の黒海沿岸の保養地ソチで開かれた「バルダイ会議」で語った。参加した笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員の質問に答えた。
プーチン氏はこれまでも日米欧の制裁を批判している。昨年2月の侵攻開始以降、プーチン氏が日本側の質問を受ける形で、公の場で2国間関係に直接言及したのは初めてとみられる。
畔蒜氏とのやりとりで、プーチン氏は「われわれは日本に制裁を科していないし、窓を閉めたわけでもない。やったのは日本だ」と強調。一方で「(日本側が)『対話に意味がある時が訪れた。イニシアチブを取ることが可能だ』と考えるのならば、対話は常に良いことだ」と主張した。
●プーチン大統領が主張 関係正常化について「日本と対話する用意ある」 10/6
ロシアのプーチン大統領は南部ソチで開かれた国際会議で、日本との関係正常化について「対話する用意はあるが、日本側がイニシアチブを取る必要がある」などと主張しました。
ロシア プーチン大統領「ウクライナでの“戦争”を始めたのは我々ではない。逆に我々は(戦争を)終わらせようとしている」
プーチン大統領は5日、国内外のロシア専門家を集めて毎年開かれるバルダイ会議で演説し、ウクライナ侵攻を巡り「ロシアは2014年からウクライナ東部のドンバスで続く紛争を終わらせるために特別軍事作戦を開始した」と改めて持論を展開しました。
「さらなる領土に興味はない」とも述べ、領土拡大のための戦争ではないと主張しました。
プーチン氏は、「射程が数千キロに及ぶ原子力推進式巡航ミサイル『ブレベスニク』の発射実験に初めて成功した」と述べ、「ロシアがもし核攻撃を受ければ敵に生き残る可能性はない」と威嚇しました。
さらに、「だれもロシアの言うことに耳を貸そうとせず、西側諸国の傲慢(ごうまん)さは完全に常軌を逸していた」などと冷戦終結以降の西側諸国のロシアへの対応を批判しました。
ウクライナへの侵攻が長期化するなか、プーチン政権は、戦争が西側に起因するものだとするイメージを国民にアピールしています。
また、日本との関係を巡ってプーチン氏は、「我々が日本に制裁を科したわけではなく、窓を閉ざしたのは日本だ」と主張しました。
そのうえで、「制裁解除についてロシアは日本と対話する用意があるが、そのためには日本側がイニシアチブを取る必要がある」などと述べました。
●プーチン氏、CTBT批准撤回を示唆 有識者会合で 10/6
ロシアのプーチン大統領は5日、南部ソチで開催した有識者会合で、ロシアが批准している包括的核実験禁止条約(CTBT)を撤回する可能性を示唆した。ウクライナ侵攻で対立する米国が同条約を批准していないと批判した。核による威嚇を強め、米国をけん制する狙いとみられる。
内外有識者が参加する国際会合「ワルダイ会議」で発言した。プーチン氏はCTBTについてロシア、米国ともに署名したが、批准したのはロシアだけだと指摘。そのうえで「理論的には(ロシアの)批准を撤回することは可能だ」と表明した。
CTBTは核爆発を伴う全ての核実験を禁じた国際条約で、1996年に国連で採択された。米国や中国が批准せず発効はしていないが、核保有国はCTBTを尊重して核実験を停止してきた。
プーチン氏はまた、超長射程の原子力推進式巡航ミサイル「ブレベスニク」の発射実験に成功したと述べた。具体的な実施時期などについては触れなかった。
ロシア通信によると、ブレベスニクはプーチン氏が2018年3月の議会演説で開発を表明した。核弾頭を搭載可能で、仮想敵国のミサイル防衛網を突破する目的で開発を進めていた。
ウクライナ侵攻を非難し、対ロ制裁を科している日本との関係については「窓を閉ざしたのは我々ではない」と述べ、日本から申し出があれば対話に応じる考えを示した。
プーチン氏は8月にロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏らが搭乗した小型ジェット機が墜落し乗客全員が死亡したことについて、調査委員会からの報告として「死亡した人々の遺体から手榴弾(しゅりゅうだん)の破片が発見された」と述べた。機体への外部からの衝撃はなかったという。
プーチン氏は演説で西側諸国がウクライナ政権を支援したために同国東部地域での紛争が起きたと主張。「特別軍事作戦はそれを阻止することを目的としている」などと改めて自らの見解を説明した。
●ロシアの原子力巡航ミサイル「プレベストニク」、試験成功と発表 プーチン氏 10/6
ロシアのプーチン大統領は5日、新世代の原子力推進式巡航ミサイル「ブレベストニク」の試験に成功したと発表した。
ロシア国営RIAノーボスチがプーチン氏の話として伝えたところによれば、世界全体を射程に収める原子力推進式巡航ミサイル「ブレベストニク」の最新の試験に成功したという。
プーチン氏の発言は南部ソチで開催された「バルダイ・フォーラム」で出たもの。
ブレベストニクの開発計画は2018年、新世代の大陸間極超音速ミサイルを開発する幅広い取り組みの一環でプーチン氏が発表した。名前が出た兵器の中には弾道ミサイル「キンジャル」や極超音速滑空体「アバンガルド」も含まれる。
プーチン氏は18年3月の連邦議会演説で、開発の目的は今後数十年にわたって世界の戦略的均衡を確保することにあるとの認識を示した。
プーチン氏はこの時、プレベストニクについて「核弾頭を搭載する低空飛行ステルスミサイルであり、ほぼ無制限の射程と予測不能な軌道、迎撃を迂回(うかい)する能力を有する」と説明していた。
ただ欧米の専門家によると、このプログラムは問題に見舞われ、試験失敗が相次いでいる。オープンソースの分析グループ、核脅威イニシアチブは19年、「メディアはブレベストニクの試験が13回実施され、2回の部分的な成功を収めたという認識で一致している。米情報機関も同様の見解とされる」と明らかにした。
●ロシア、ウクライナのEU加盟に反対せず=プーチン氏 10/6
ロシアのプーチン大統領は5日、ウクライナによる北大西洋条約機構(NATO)加盟はロシアの安全保障を脅かすため常に反対してきたが、ウクライナの欧州連合(EU)加盟には反対しないと述べた。
●ロシア経済、国防費増大に「耐え得る」=プーチン大統領 10/6
ロシアのプーチン大統領は5日、同国経済が数年にわたりウクライナでの戦争に伴う国防費増大に耐え得ると指摘し、西側諸国による制裁の影響は大きくないとの見方を示した。
政府が先月示した予算案によると、ウクライナへの「特別軍事作戦」に一段の資金を振り向ける中、2024年国防費は歳出全体の約3分の1を占める見通し。
プーチン氏は南部ソチで開いた内外有識者の会合「ワルダイ会議」で、ロシア経済は昨年2.1%のマイナス成長になったが今年は回復する見込みで、制裁がもたらした課題を克服したと語った。
その上で、財政収支は第3・四半期に6600億ルーブル(66億9000万ドル)を超える黒字を記録したと明かした。
「全体として、われわれは安定的で持続可能な状況にある。制裁を受けてから浮上した全ての問題を克服し、次の発展段階に入った」と強調した。
プーチンは、ロシアが深刻な労働力不足に直面していると認めたが、中央銀行と政府はいかなる困難にも対処できる手段を持っていると述べた。
●ロシア国防費が歳出の約3割に プーチン氏発言、侵攻前から倍増 10/6
ロシアのプーチン大統領は5日、ウクライナ侵攻で増加するロシアの国防費について、「国防と安全保障の支出が伸び、(国内総生産〈GDP〉の)約3%だったのが、いまは約6%になった」と述べ、侵攻前から倍増したことを明らかにした。侵攻の長期化で弾薬などの生産を増やしており、歳出の約3割を占めることになる。
プーチン氏肝いりの国際有識者会議「バルダイクラブ討論会」で発言した。
ロシア政府が先月発表した2024年の予算案では、歳出は約36兆6千億ルーブルと歳入の35兆ルーブルを上回った。ただ、プーチン氏は「大砲に多額の出費をし、バター(国民生活)を忘れているわけではない。すべての発展計画が遂行されている」と強調した。
●ウクライナ東部でロシア軍による攻撃 住民少なくとも50人死亡 10/6
ウクライナ東部ハルキウ州でロシア軍による攻撃があり、子どもを含む住民少なくとも50人が死亡し、ウクライナ側はロシアへの非難を強めています。
ウクライナ内務省は、東部ハルキウ州のクピヤンシク近郊の集落で5日午後、ロシア軍の攻撃があり、子どもを含む住民少なくとも50人が死亡したとSNSで明らかにしました。
クリメンコ内相は地元メディアに対して、商店やカフェが被害を受け、現場では当時、追悼式で多くの人々が集まっていたとしています。
ウクライナのゼレンスキー大統領はSNSで、「残忍な犯罪だ。ロシアのテロを阻止しなければならない」と強く非難しました。
また、イエルマク大統領府長官も「ロシアは意図的に住民を殺害したテロリストだ」とSNSに投稿し、非難を強めています。
一方、ウクライナ国防省の情報総局は4日、ロシアが一方的に併合した南部クリミアで特殊部隊が上陸作戦を行い、ロシア軍の空てい部隊に打撃を与えたと発表しました。
クリミアでウクライナ軍がロシアの軍事施設などへの攻撃を強める中、アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルは4日、ロシア海軍の黒海艦隊が、潜水艦やフリゲート艦など複数の艦船をクリミアのセバストポリからロシア南部のノボロシースクに移したと伝えました。
ウクライナによる一連の攻撃を受けた動きだという見方を示した上で、「2014年にクリミアを占領したプーチン大統領にとって驚くべき後退だ」と伝えています。
●「生活のため」ウクライナ戦争を選ぶキューバの男たち、手付金30万円 10/6
キューバの首都ハバナ郊外にある小さな町ラ・フェデラルでは、男たちが次々とロシアに渡っているという。彼らはメッセージングアプリなどを介して、ウクライナ侵攻を進めるロシア軍のために傭兵になるよう勧誘を受けたのだ。ロイターは今回、キューバに残された家族らへの取材などを通して、キューバ人たちがどのように集められているのか、その実態に迫った。
「ここに着いて、この契約が本物だとわかった。ロシア連邦が私をここに連れてきた。ここにいる誰もが、自分たちが何をしに来たのかわかっていた。それは確かだ」
元レンガ職人のエンリケ・ゴンザレスさんは、ウクライナ戦争で戦うためにロシアに雇われたと話す数多くのキューバ人のひとりだ。妻のヤミデリー・セルバンテスさんとのビデオ通話でゴンザレスさんは、現在働いているという、モスクワから南へ数時間のトゥーラ近郊にある訓練キャンプを撮影して見せた。
ロイターは、キューバの小さな町ラ・フェデラルにある自宅でセルバンテスさんから話を聞いた。彼女によれば、ゴンザレスさんがロシアのために戦うことを決めた理由は、金銭的なものだったという。出発の数日後、セルバンテスさんは契約の手付金として約30万円を受け取った。以来、彼女は生活必需品を買えるようになったという。
妻のヤミデリー・セルバンテスさん「この状況を動かしているのは、必要性からだと私は言いたい。もし生活に困っていなかったら、男性たちは(ロシアに)行っていなかっただろう。働いて、働いて、働いて、夫は誰の助けも受けずに1人で働いた。他の誰かを雇って、あれこれ指示するくらいなら稼いだお金をあなたに渡す方がいいと言っていた。夫はとても一生懸命働いていた。だがある日彼は言った、これ以上我慢できないと。私はどうしたのか尋ねた。でも彼は『心配するな、何をするのかわかっている。ただこれ以上、この生活には耐えられないんだ』と言っていた」
キューバ人傭兵についてロシア当局に問い合わせたが、直ちに回答はなかった。本記事作成にあたりキューバ政府にも問い合わせたが、返答はなかった。
カリブ海に浮かぶキューバは、共産党による支配が今も続き、経済は疲弊している。同国のデータによると、ゴンザレスさんが受け取った手付金はキューバ人の平均月収わずか17ドルの、100倍以上だ。首都ハバナ郊外のラ・フェデラルほど困窮している町はない。2022年のデータによれば、住民800人の4人に1人が失業中だ。セルバンテスさんの近所では、傭兵の採用話が広まった6月以来、少なくとも3人の男性がロシアに向かった。
「数人が採用された。残った男性は、片手で数えられるほどだ」(セルバンテスさん)
ロイターは、ハバナ近郊の地区から採用された十数人の男性たちについて詳しく取材した。男性たちの職業は様々だ。ある者は商店主、またある者は製油所の労働者だ。
これらの男性たちやその家族への取材、そしてメッセージングアプリのやり取りや、渡航書類、写真や電話番号から得られた情報から、ロシアのウクライナ侵攻を支援するため、キューバ人たちがどのように集められているのか、その実態が浮き彫りとなった。
23歳のヨアン・ヴィオンディさんは、ラ・フェデラルのあるヴィラ・マリア地区で、6月以降ロシアに雇われた数十人の男たちを知っていると語った。ヴィオンディさんは、ロシアの採用担当者だという「ダヤナ」と名乗る人物とのアプリのメッセージを記者に見せてくれた。
ヴィオンディさんは、ロシア軍と契約した複数の友人と連絡を取り合っていた。彼が知る限り、友人らは「元気」だった。大半はウクライナにいるという。
一度はロシア渡航を検討したヨアン・ヴィオンディさん「この国では一生懸命働かないと生活していけないし、それでも生活は厳しい。だから、キューバで飢え死にしたくないから、これ(傭兵)を選んだとみんなが言っている。私も、彼らも、自分がどこへ行くのか完璧にわかっていた」
当初ロシア行きを望んでいたものの、後に不安を覚えたヴィオンディさんは「ダヤナ」との連絡を絶った。
ロイター記者が話を聞いたほとんどの人は、連絡先として「ダヤナ」の名前を挙げた。ロイターが確認した9人は全員、戦争に参加する契約を結んでいた。ロイターは「ダヤナ」からコメントを得ることができなかった。またこの人物のフルネームも確認できなかった。
キューバ政府は今年9月、ロシアのために戦うキューバ人を集める人身売買組織に関与したとして17人を逮捕したと発表。キューバ人がロシアの傭兵として渡航している実態が浮かび上がった。ロイターは、人身売買組織に関与したとされる人物の身元や、これらの人物が逮捕されたのか、確認することはできなかった。
長年の同盟国であるロシアのために自国民が戦闘に加わることについて、キューバ当局の説明は二転三転している。9月中旬、キューバ国民が外国軍のために戦うことは違法だと警告。ところがその数日後、在モスクワのキューバ大使は、「契約に署名し、合法的にロシア軍と共にこの作戦に参加することを望む」キューバ国民に、政府は反対しないと述べた。しかしそれ以降は再び、傭兵は禁止との従来の説明を繰り返している。
●戦争の裏でエスカレートするEUの「難民問題」…ドイツ都市部はカオス状態に 10/6
ランペドゥーサ島を目指す難民たち
地中海の島、イタリアのランペドゥーサ島が大混乱に陥っている。この島は、シチリア島からは230kmで、チュニジアからは113km。つまり、どうにか辿り着けそうなEUの領土として、アフリカ難民の格好の目的地だ。そのため前々から、チュニジアがアフリカ難民の積み出し港のようになっている。
ただ、地中海はれっきとした外海なので、小さなボートでの出帆など危険すぎてあり得ない。実際に、独Statista(世界最大の統計データプラットフォーム)が把握しているだけでも、今年の初めから9月17日までに海の藻屑となった命が2340人。本当はもっと多いだろう。
難民は、自力でボートや小船を工面して海に漕ぎ出しているわけではなく、その裏には密航を斡旋している国際的犯罪組織が存在する。この“難民ビジネス”は、大した元手も要らず、麻薬の密輸などよりリスクも少なく、失敗しても返金義務もないということで、今や彼らの巨大な資金源だ。
いずれにせよ、難民のせいで過去に何度もニュースを賑わしてきたランペドゥーサ島だが、現在の混乱はおそらく最大級。人口5500人のこの島に、今年すでに13万人が来ており、9月の18日から20日までの3日間には、なんと8500人が199艘の粗末なボートで漂着した。EUでは現在、難民受け入れ条件の厳格化が検討されているため、駆け込み現象が起こっているとみられる。
しかも、今回はいささか様子が違う。これまで地中海では、難民救助に特化したNGOが大型船を駆使してはアフリカ沿岸で“遭難”している難民を救助し、何百人もまとめてイタリアやマルタに運んできていた。
この活動は、一方からは人命救助の尊い行動と称賛され、他方からは、犯罪組織と協働しているとか、難民が増える原因を作っているなどと非難されたが、いずれにせよ、イタリアやマルタにしてみれば迷惑な話だ。そこでここ数年は、NGO船は入港を拒まれ、難民を積んだまま行き場を無くすなどという事態が繰り返されていた。
ところが今回は、難民は粗末なボートでランペドゥーサ島まで続々と到達していた。いくら海が穏やかであったにしても、199艘のボートが100km以上を無事に航行し、3日の間に数珠繋ぎに到着するのは、やはり少々奇異だった。そのため、難民を運んできたNGO船が、ランペドゥーサ島の近くで彼らをボートに乗せて放しているのではないかという憶測まで流れた。
イタリアは以前より、これらNGOの活動に業を煮やしていたが、実はドイツ政府は、このNGOに、長年のあいだ補助金を出している。そこで、強く反発したイタリアのメローニ首相が、「資金援助をやめてくれ」とドイツ政府に書簡で要請したのが9月末。それに対し、ドイツのベアボック外相(緑の党)が、「人命救助に対する支援はやめない」と応酬。女二人の対立はエスカレートした。
その結果、28日、国境防衛強化についての採決が予定されていたEUの内相会議は拗れ、イタリア内相が突然ローマに帰ってしまった。かくしてEUの難民政策の刷新は進まず、今年は例年よりも気温が高いこともあって、難民は今もランペドゥーサ島を目指している。
大量の難民の庇護でドイツもパンク寸前
実は、難民ではち切れそうになっているのはドイツ国内も同じで、こちらは主にアフガニスタン、シリア、イラクなどの中東難民だ。今年の8月だけで1.5万人が、オーストリアやチェコの国境から陸路で違法に侵入した。
現ドイツの社民党政権内で強い力を持っているのは緑の党だが、彼らは今も、難民は全て受け入れるという党の基本方針に拘っているため、ドイツの国境ははっきり言って隙間だらけだ。
ドイツで23年1月から8月までに提出された難民申請の数は22万116件で、前年比66%増。難民として認められる確率は今のところほぼ半々だそうだ。それでも皆がドイツで難民申請したがる理由は、申請中でも潤沢なお金が支給されるからだと言われる。
しかもドイツの場合、難民として認められなかった人たちも、そのまま滞在し続ける。地中海の難民をなるべく減らそうとする計画にあまり乗り気でないドイツ政府は、国内の不合格難民の母国送還にも消極的なのだ。その結果、退去しなければならないのに留まっている人の数が、今や累計で330万人に迫る。極度の人手不足の折り、これが労働力に回ればいいが、なかなかそうはいかない。
それに加えて、難民としてカウントされていないウクライナ避難民が、すでに100万人を超えた。最初は1年の期限付きの庇護のはずが、戦争は終わらないし、多くがいずれ長期、あるいは無期限ビザに切り替わっていくだろう。普通なら、ドイツの無期限ビザなどそう簡単に取れないから、移住したいウクライナ人にとっては無二のチャンスだ。
一方、ドイツの市町村は、強制的に割り当てられる大量の難民の庇護で大変なことになっている。受け入れは拒否できず、住居が足りない、職員が足りない、託児所が足りない、教師が足りない、もちろん、お金も足りないと、今や、ありとあらゆるところが破綻しつつある。
特に住居は不足しており、使っていない工場や倉庫を改造したり、郊外の空き地に急拵えのプレハブを建てたりしてもまだ足りず、役場や、学校の体育館や、とにかく並べられるところには隈なくベッドを並べているが、追いつかない自治体も多い。
そうでなくてもドイツは恒久的な住宅不足で、手頃な値段の住処を見つけることが難しかったというのに、今や自治体は大量の難民の住居の確保に必死で、住民はほったらかし。ベルリンでは7月、128戸の集合住宅の棟上げ式が行われたが、これが全戸、難民用になるとわかり、市民は怒った。ベルリンは、ドイツの中でも特に住宅難が深刻な都市だ。
難民や移民による犯罪も急増中
また、最近では、ベルリンやバーデン=ヴュルテンベルク州では、老人ホームの老人が追い出されて難民施設になったとか、ノルトライン=ヴェストファレン州の4つ星ホテルが、アフガニスタンとシリア人の難民収容施設になったとか、信じられないような話まで伝わってくる。
実際問題として、不動産の持ち主は、物件を老人ホームの事業者に貸すよりも、今や自治体に貸す方が儲かる。また、ホテル経営者も同様で、自治体に丸ごと貸し出せば確実に賃料が入る上、難民一人当たり一定の金額が支給される。
たとえば前述の四つ星ホテルでも、難民の世話は自治体の職員が全て仕切ってくれるので、もはや経営努力も要らない。厨房や清掃の従業員はそのまま残って、難民のために働いているそうだ。ただ、ホテルの入り口にあった女性の裸体の彫像だけは、難民を刺激しないように取り外されたとか。
もっとも、難民が皆、四つ星ホテルや新築の難民住宅に住んでいるわけではなく、粗悪な住居しか提供できない自治体では、若い男性の難民が、仕切りを作った体育館や、昔の兵舎などにぎゅーぎゅー詰めにされていたりもする。こんなはずではなかったと、極度の欲求不満に陥っているケースも多いらしい。難民申請中は働くことはできないが、自由には出歩けので、あちこちに出没し、それが近隣の住人とのトラブルも引き起こしている。
最近、問題になっているのは、難民や移民による犯罪で、政府はそれらをずっと隠そうとしてきたが、すでに隠せないレベルに達している。特に急増しているのがナイフによる傷害事件だが、殺人や婦女暴行といった凶悪犯罪も増えている。去年は、通学途上の小学生の女の子が、精神に異常をきたしていたらしい難民に刺し殺されるという凄惨な事件も起こり、ドイツの親たちを不安に陥れた。
ちなみに、長らく移民・難民の模範国であったスウェーデンでは、移民が形成した犯罪組織同士の争いがエスカレートし、殺人が増え、収拾がつかなくなっている。政府は9月末、これら犯罪組織の撲滅のため、国内での軍隊動員の計画まで発表した。ドイツはこういう事例を参考にすべきだが、残念ながら、緑の党は聞く耳を持たない。
ただ、この頃は、小さな市町村に難民の収容所設置が計画されると、住民が大々的に反対運動をするようになってきた。反人道と言われようが、人種差別と言われようが、自分の妻や娘を守ることの方が重要だという合意が形成されつつあるのだろう。ただ、現実として、これらの運動が必ずしも実を結ぶとは限らない。難民は、どこかに住まなければならないからだ。
左派の政治家たちは何を思うのか
ドイツ社会では、70年代にやってきたトルコ(クルド)、イタリア、レバノン系などの移民がすでに定着しているが、特定の都会では、長年のあいだに彼らの一部が形成したマフィアのような血縁犯罪組織もすっかり定着してしまった。
そこに、2015年以来、メルケル首相が呼び込んだ中東とアフリカからの難民が加わり、現在、縄張り争いが加熱している。今、ドイツの都会で街を歩いていると、いったいここはどこの国かと思うほど中東や北アフリカ系の外国人が増えており、以前のように安全とは言い切れない状況になっている。
しかし、左派の政治家はいまだに、多文化共生とか多様性とか、とにかく民族の坩堝状態が理想の社会であるように言っており、国民が、高い家賃と住宅難に苦しみ、夜になると娘の帰宅を気にかけていることなど、わかっていない。
また、地域によっては学校が崩壊し、ドイツ人が去っていくという現象も起こっているが、高級住宅地に住み、子供たちを私立の学校に通わせている政治家には、それも見えない。多様性を説く彼らが思い描いているのは、スイスの高級寄宿学校の、優雅な民族の坩堝かもしれない。
●ロシアによるウクライナ戦争、領土ではなく信条巡る対立 プーチン氏主張 10/6
ロシアのプーチン大統領が、ウクライナでの戦争は領土を巡る対立ではないと主張した。
5日、ロシア南部ソチで開かれたバルダイ・クラブ討論会に出席したプーチン氏は、「ウクライナ危機は領土対立ではない。それをはっきりさせておきたい。ロシアは領土面積で世界最大の国であり、我々は新たな領土の征服には関心がない」と発言した。
同氏によれば、ロシアは依然シベリアや極東などの開発に関連してなすべきことが非常に多いという。
また同国は地域の地政学的均衡の構築を試みているわけではないと重ねて強調。むしろ「新たな国際秩序の基礎となる信条」こそが問題になっていると指摘した。
その信条の一つは「世界の均衡の中で、誰であれ一方的に力で他者をねじ伏せることはできないということだ」と、プーチン氏は説明。「ある覇権国が他国に対し、その国のあり方や行動を意のままに従わせることがあってはならない」と続け、この信条の否定こそが対立を引き起こすとの見解を示した。ここでは西側諸国に言及していたとみられる。
その上で、西側のエリートは「敵を求めている。軍事行動とその拡大の必要性を正当化するためだ」と述べ、実際にロシア政府をその一つにしたと付け加えた。
●「ウクライナ戦争の終結議論…イスタンブールで第3回平和会議開催」 10/6
ロシア・ウクライナ戦争終結に向けた第3回「ウクライナ平和会議」が今月末、トルコ・イスタンブールで開催される。トルコは黒海の穀物協定をなどロシアとウクライナの間で仲裁の役割を遂行したことがある。
4日(現地時間)、ブルームバーグ通信は、消息筋によるとトルコが各国の安保顧問が参加する救済会議の開催を準備しており、日時と場所は暫定的に今月末、イスタンブールで予定されていると伝えた。
この会議では、ウクライナが今年年末に開催されることを希望する平和首脳会議を支持する案が協議される見通しだ。
先立って、ウクライナ平和会議の第1回会議は6月にデンマークのコペンハーゲン、第2回会議は今月5〜6日、サウジアラビアのジッダで開かれた。国家安保補佐官級会議で、いずれも非公開で行われた。
この会議は当初、ウクライナのゼレンスキー大統領が提案した10項目からなる平和の公式(peace formula)に対する支持を集めるために行われた。
しかし、第2回会議も具体的な成果なく終わり、共同声明も出されなかった。ただし、出席者は第2回会議は第1回会議の時より意見の相違が大幅に縮まったと伝えた。サウジアラビアは声明で「平和のための道を築く共同基盤を構築するため、国際的な協議を続け、意見を交換することの重要性に同意した」と述べた。
今回の会議には、米国官僚を含め、制限された人数が参加することが分かった。しかし、米国から誰がこの会議に参加するかは決まっていない。
ウクライナと同盟国はこの会議を通じてブラジル、インドなど中立の立場の諸国がロシアではなくウクライナに味方するように説得する案を模索している。ウクライナはこれらの国々に自国の事情を詳しく説明する機会が得られるものと見られる。
ゼレンスキー大統領は今年末に和平案を議論する首脳会議を開催することを希望している。
ロシアと緊密な関係を維持している中国は8月、サウジアラビア会議に出席して注目された。ブルームバーグは、ウクライナと同盟国は中国が次の会議にも出席することを望んでいるが、中国がイスタンブール会議に代表を派遣するかは不明だとした。
ロシアは会議に招待されなかった。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はゼレンスキー大統領の平和計画について「絶対的に実現不可能」と一蹴した。
ロシア官営のノーボスチ通信は、アンカラの外交消息筋によるとトルコがロシアの会議出席を支持していると報じた。
この消息筋はトルコがリードした会議で「平和交渉が進展するには、ロシアが出席しなければならない」という立場を表明したが、参加国全体の支持を受けることができなかったと伝えた。
モスクワの消息筋は、この会議に参加する国家が「圧力」、「脅迫」、「詐欺」によりゼレンスキー大統領の計画の議論に引きずられていると批判した。
●底抜け樽に「弾薬」注ぐ…3億発受けたウクライナ「ロシアに劣勢」 10/6
米国が押収したイランの弾薬までもウクライナに送るほど弾薬の枯渇が深刻な状態だ。ロシアとウクライナの戦争が1年7カ月続き、ウクライナに支援した数億発の弾薬は底抜けの瓶に水を注ぐように消耗されている。半面、ロシアは品質を低めて生産量を大きく増やしたうえ、北朝鮮からも弾薬を受け、ウクライナより優勢という評価が出ている。
4日(現地時間)のCNN・ロイター通信などによると、米国政府は海上で押収したイランの7.62ミリ弾薬110万発を2日、ウクライナ軍隊に譲渡した。この弾薬はウクライナなど東欧で広く使用されている突撃銃AK−47に使われる。中東地域の軍事作戦を担当する米軍中部司令部は昨年12月、米海軍兵力が無国籍船舶に積まれてイラン革命守備隊(TRGC)からイエメンのフーシ派反乱軍(シーア派武装組織)に輸送されていた物量を押収したと明らかにした。
英日刊ガーディアンは、最近西側陣営が深刻な弾薬不足状況に直面したと明らかにしたのに続き、米国が押収したイランの弾薬まで支援したという点に注目した。これに先立ち北大西洋条約機構(NATO)のロブ・バウアー軍事委員長はポーランドで開かれたワルシャワ安全保障フォーラムで「ウクライナに弾薬を提供しているが、もう底が見えている」と話した。
弾薬3億発支援も不足
米国務省が先月21日に発表した資料によると、米国は開戦以降、ウクライナに小型弾薬3億発と155ミリ砲弾200万発、105ミリ砲弾50万発など約3億510万発の弾薬を提供した。このほか欧州連合(EU)など同盟国が約35万発の弾薬を支援したと推定される。
ところがウクライナは昨年夏から東部の最大激戦地バフムトだけで数十万発の砲弾を使用するなど消耗戦を続け、年初から弾薬不足を訴えてきた。6月初めに南部電線で反攻を始め、砲弾、銃弾など多量の弾薬がさらに速いペースで消耗している。ニューヨークタイムズ(NYT)によると、ウクライナは反攻以降、防御ラインを突破するための接近戦をし、一日最大7000−8000発の弾薬を使用している。
米国企業研究所(AEI)の軍事専門家フレデリック・ケイガン氏はウォールストリートジャーナル(WSJ)に「ウクライナは南に進撃するため歩兵への依存度が高まり、イラン弾薬のような小銃弾薬も重要になった」と伝えた。
戦争が長期化して弾薬はさらに必要になったが、西側の生産能力は追いついていない。タイムズ紙によると、米国は1950年代の韓国戦争(朝鮮戦争)当時、戦時の需要を満たすために軍用弾薬工場86カ所を保有していたが、現在は5カ所にすぎない。欧州も1990年代の脱冷戦以降、軍需産業が縮小して弾薬生産量が減った。
米国は年初から弾薬生産量を倍以上に増やし、EUは6月、防衛産業業界へのEU基金支援を骨子とする「弾薬生産支援法」を推進するなど生産量を増やす努力をしている。しかしウクライナ軍の需要を満たすほどの成果は出せていないと、BBCは指摘した。また、最近は弾薬の価格が急騰し、より多くの費用をかかる状況であり、西側の支援余力に限界があるという見方も出ている。
ロシアの弾薬生産量は7倍多い
半面、ロシアは昨年半ばから一日に最大6万発の砲弾を使用するなど弾薬をかなり消耗しているが、依然としてウクライナより多くの弾薬を保有しているという。エストニアのクスティ・サム国防次官は「現在、ロシアの弾薬生産量は西側より7倍多いと推定される」と明らかにした。
ロシアは弾薬生産量を増やすため品質を犠牲にしながら価格を抑えた。NYTによると、西側の155ミリ砲弾製造コストは5000−6000ドル(675万−810万ウォン)だが、ロシアの152ミリ砲弾製造コストは600ドルにすぎない。また、アルメニア、トルコなど第3国を経由して軍需物資を調達し、北朝鮮から弾薬の供給を受けるなど西側の制裁を避けている。
大慶大学付設韓国軍事研究所のキム・ギウォン教授は「ウクライナは今後ロシアとの交渉で有利な条件を引き出すために弾薬を引き続き消耗しながら持ちこたえる必要があるため、西側の負担はさらに加重するしかない」とし「世界で最も大きな弾薬備蓄物量を保有する韓国に対する弾薬支援圧力がさらに強まる可能性がある」と話した。
●ウクライナ中銀が固定相場制を緩和、柔軟な管理相場制に移行 10/6
ウクライナ国立銀行(NBU、中央銀行)は10月2日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻以来継続していた対ドル固定相場制を緩和し、3日から柔軟な管理相場制に移行すると発表した。
移行の理由として、インフレ率の低下のほか、外貨準備高が十分に高い水準にあり、NBUが為替レートの安定性を維持できる能力が高まっていることや、通貨フリブニャ建ての金利商品の魅力が高まっていることを挙げた。
移行後も、NBUは外国為替市場の状況を監視し、為替介入を行うことで過度な相場変動を大幅に制限するとしている。また、為替レートの安定性を維持することで、インフレ率の減速を維持し、中期目標の5%の達成を目指すとのこと。
移行翌日の4日の公定為替レートは1ドル36.5901フリブニャ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとなり、前日と比べて0.0615のフリブニャ安にとどまった。
NBUのアンドリー・ピシュニー総裁は3日、自身のフェイスブックで「目標はレートの安定性を維持することだ。NBUがフリブニャを自由に変動させるつもりがないことを市場が理解すれば、(市場)介入は徐々に安定化すると確信している」と述べている。
NBUは2022年2月24日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、金融システムの信頼性と安定性を確保することを主な目的とし、公定為替レートを同日時点のレートで固定した。同年7月21日には、1ドルの固定レートを36.5686フリブニャに引き上げていた。
ウクライナでは2023年第2四半期(4〜6月)の実質GDP成長率が戦争勃発以来初のプラスを記録したほか、8月にはインフレ率が8.6%まで低下している。
●23年の世界貿易量、伸び予想を半分に下方修正=WTO 10/6
世界貿易機関(WTO)は5日、今年の世界の財貿易(モノの貿易)量について、前年比0.8%増にとどまるとの見通しを示した。4月時点の予想(1.7%増)から下方修正し、根強いインフレ、金利上昇、中国不動産市場の緊張、ウクライナ戦争が見通しに影を落としていると指摘した。
2024年には3.3%増に回復するとし、4月予想の3.2%増とほぼ同程度の伸びを見込んだ。
貿易の鈍化はより多くの国と品目に及んでいるとし、特に鉄鋼、事務・通信機器、繊維、衣料品が顕著だと指摘した。
自動車は例外で今年の販売台数は急増している。
WTOは、予測に対するリスクは均衡していると述べた。予想よりも大幅な中国の景気減速や、インフレ再燃、金利上昇の長期化といったリスクがマイナス要因になり得る一方、インフレが急速に鈍化すれば、予測の上方修正につながる可能性もあるとした。
また、世界的な緊張に関連した貿易分断化の兆候が見られるものの、24年の予測を脅かすような広範な脱グローバル化の兆候はないとした。
●露軍の砲撃が店舗直撃、6歳児含む51人の市民死亡…短距離弾道ミサイル 10/6
ウクライナメディアによると、東部ハルキウ州クピャンスクの村で5日、露軍による砲撃があり、6歳の子どもを含む少なくとも51人の市民が死亡した。ウクライナの民間施設への攻撃では、今年最多の死者数とみられる。
ウクライナ当局の発表によると、砲撃は午後1時過ぎ、村の喫茶店などの店舗を直撃した。喫茶店では当時、住民の追悼式が行われ、少なくとも60人が参加していたという。
クリメンコ内相は、今回の攻撃に短距離弾道ミサイル「イスカンデル」が使用されたとSNSで指摘した。スペイン訪問中のウォロディミル・ゼレンスキー大統領はSNSで「完全に意図的なテロ行為だ」とロシアを強く非難した。
一方、複数のウクライナメディアは4日、クリミア半島に特殊部隊が上陸し、露軍に大きな損害を与えたと報じた。ウクライナ国防省情報総局が明らかにしたというが、詳細な場所や日時は伝えていない。ウクライナ当局が公開した動画には、特殊部隊を乗せたとみられる複数のボートが浜辺に接近する様子が映っている。
●米中首脳会談、11月に米で調整 1年ぶり、台湾情勢など協議 10/6
米紙ワシントン・ポスト電子版は5日、米政府がバイデン大統領と中国の習近平国家主席の首脳会談を11月に西部サンフランシスコで実施する方向で本格調整を始めたと報じた。米中首脳の直接会談は昨年11月にインドネシア・バリ島で開いて以来となる。多くの分野で米中対立が先鋭化する中、関係安定化を目指す。
サンフランシスコで11月15〜17日に開かれるAPEC首脳会議に合わせた米中首脳会談を目指している。同紙は、実現する可能性は「相当高い」とする米政府関係者の発言を伝えた。
バイデン氏は習氏との会談で、台湾情勢など米中の利害が激しく対立する安全保障分野について協議。不測の事態を防止するため、軍同士を含めた意思疎通を維持することの重要性を訴える。ウクライナ侵攻を巡るロシアと北朝鮮の軍事協力の動きも議題とし、くぎを刺したい考えだ。
バイデン氏は香港民主化運動や少数民族ウイグル族抑圧など中国の人権状況への懸念を伝える方針。気候変動や食料安全保障など利害が重なる分野では連携を模索する。
●プーチン大統領「達成できると確信」軍事侵攻続ける考え強調 10/6
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナが行っている反転攻勢でウクライナ側は9万人以上の兵士を失うなど大きな打撃を受けていると主張し、軍事侵攻を続ける考えを強調しました。そのうえで、核弾頭を搭載できる最新の巡航ミサイルの開発実験に成功したと述べて核戦力を誇示し、欧米側をけん制しました。
ロシアのプーチン大統領は5日、ロシア南部ソチで開かれた国際情勢をテーマにした「バルダイ会議」に出席しました。
4時間近くにわたって行われた会議の中でプーチン大統領は、ウクライナがことし6月に開始した反転攻勢について、「ウクライナ軍は9万人以上の人や557両の戦車、1900台近くの装甲車を失った」と述べ、ウクライナ側が大きな打撃を受けていると強調しました。
そのうえで、「われわれは目標に向かって自信を持って進んでいる。必ず達成できると確信している」と述べ、軍事侵攻を続ける考えを強調しました。
また、プーチン大統領は、これまでにおよそ33万5000人が契約軍人としてロシア軍に参加したと述べました。
一方、プーチン大統領は「数年前に発表した最新の戦略兵器について作業がほぼ完了した」と述べ、原子力を動力源とし、核弾頭を搭載できる最新の巡航ミサイル「ブレベストニク」の最終実験に成功したとするなどロシアの核戦力を誇示し、対立する欧米側をけん制しました。
日本との対話「申し出があれば応じる用意」
また、日本から参加したロシアの外交・安全保障政策に詳しい笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員からの質問にプーチン大統領が応じました。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻後、悪化している日本との関係についてプーチン大統領は「われわれが日本に制裁を科したわけではなく、窓を閉ざしたわけではない。日本がやったのだ。対話が行われるのは良いことだ。閉ざした側から申し出があれば応じる用意がある」と主張しました。
松野官房長官「国益の観点から適切に対応」
松野官房長官は閣議の後の記者会見で、「ロシア側からは核をめぐるさまざまな発信がなされており、核兵器が使用される可能性を深刻に懸念している。核兵器による威嚇も使用もあってはならない。G7をはじめとする国際社会と連携し、厳しい制裁など外交的取り組みをしっかり進めていく」と述べました。
一方、プーチン大統領が日本側から申し出があれば対話に応じる用意があると主張したことについて、「日ロ両国が隣国として対処する必要がある事項については、何が国益に資するかという観点から適切に対応していく。北方領土問題については、問題を解決して平和条約を締結するとの方針を堅持する」と述べました。 
●プーチン大統領「新しい世界秩序」という表現でアメリカに対抗 10/6
ロシアのプーチン大統領は5日行った演説でウクライナへの軍事侵攻を正当化したうえで「新しい世界秩序」という表現でアメリカに対抗する姿勢を全面的に打ち出しました。
さらにCTBT=包括的核実験禁止条約の批准を撤回する可能性も示唆し、欧米側へのけん制を一段と強めています。
ロシアのプーチン大統領は5日、ロシア南部ソチで国際情勢をテーマに開かれた「バルダイ会議」に出席しました。
プーチン大統領は「ロシアの領土は世界最大で追加の領土を征服することに関心はない」などと述べ、ウクライナ侵攻は領土目的ではないと主張し、正当化しました。
そのうえで「われわれは新しい世界秩序の基礎となる原則について話している。西側諸国、特にアメリカは独断的にルールを決め、こうすべきだと教えてくる。植民地主義的な考えだ」と述べアメリカに対抗する姿勢を全面的に打ち出しました。
また、プーチン大統領は最新の巡航ミサイルなどロシアの核戦力を誇示したほか、ロシアが批准しているCTBT=包括的核実験禁止条約について「理論上、批准は取り消すことができる」と述べ、批准を撤回して新たな核実験に踏み切る可能性も示唆しました。
これを受けてプーチン大統領の側近として知られるボロジン下院議長は6日、SNSで「次の議会でCTBTの批准撤回について必ず議論する。CTBTを批准していないアメリカに対する鏡のような対応となるだろう」と投稿し、欧米側へのけん制を一段と強めています。
専門家「軍事侵攻を正当化しようとしている」
今回のバルダイ会議に日本から参加し、プーチン大統領に直接質問もした、ロシアの外交・安全保障政策に詳しい笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員が会議の後、NHKのインタビューに応じました。
畔蒜氏は、プーチン大統領の発言について「ウクライナでの戦争は、今後の世界秩序をめぐる戦いだと再定義することが一番のねらいだった。その世界秩序とは、彼が繰り返し言ってきた、アメリカ主導ではなくすべての国々が参加できる秩序であり、それに向けた象徴的な動きがBRICSだ」と述べ、アメリカと距離を置く国も多いBRICSやグローバル・サウスなどと、新たな秩序を作るための戦いだとして軍事侵攻を正当化しようとしていると指摘しました。
また、核戦力を誇示した一連のやりとりについて「ロシアにとって核の抑止力の信頼性が落ちているという危機感がある。西側が直接的に関与しないようけん制するのが一番の目的だと思う」と述べ、ウクライナ支援を続ける欧米側をけん制するねらいだと指摘しました。
プーチン大統領がCTBTの批准の撤回を示唆したことについては「今後の展開次第では、核実験の再開に向けた地ならしをする余地があるという発言をしたということだ」と述べ、けん制するねらいが込められているとしています。
畔蒜氏は、演説などを行うプーチン大統領の様子について「アメリカで国内政治が混乱し、ヨーロッパではスロバキアで親ロシア派の政権が誕生するなど、プーチン大統領にとってある種の追い風のようなものが吹いている。良くも悪くも自信を持って受け答えをしたという感じがある」と述べました。
一方、専門家などによる日ロの対話の可能性に関してプーチン大統領に質問したことについて「アメリカとロシアは核の問題があるので政府間の関係が悪化しても民間で対話を補うという伝統が根づいている。いま、日ロの政府間の関係は最低レベルだが、隣国であるロシアは核兵器を持っているし、最近は北朝鮮との関係も強化しようとしている。専門家レベルでも対話のチャンネルは持っておくべきだ」と述べました。
●なぜロシアは広大な国土があるのに他国を攻めるのか? 10/6
海外で、今や「ビジネスパーソンがいま最も学ぶべき学問の一つ」と言われている“地政学”。――地政学とは、「その国の元首になる“ロールプレイングゲーム”」。主体的に、自らがその国のリーダーであったら、とその国の置かれた状況に自らを置いて考えてみる訓練である――と『地政学が最強の教養である “圧倒的教養”が身につく、たった1つの学問』、田村耕太郎は話します。その地政学とは一体何なのか。
地政学とは「その国の元首になる“ロールプレイングゲーム”」
地政学とは「その国の元首になる“ロールプレイングゲーム”」である。そして、「その国のトップの考え」に影響を与える要素に「地理」とその他「6つの要素」がある(下図参照)。
つまり、「『地理』と『6つの要素』にその国の条件を入れ込むことで、『その国のトップの考え』が決まる思考の枠組み」が「地政学の思考法」だ。そうして、「自分がその国のトップだったら、どう考えるか」、思いをめぐらせる。
では、「その国の元首になる“ロールプレイングゲーム”」とは具体的にどんなことなのだろうか。今何かと地政学リスクについて話題を提供してくれているロシアを例に考えてみたい。
「なぜロシアは大きな国土があるのに、他国を攻めるのか?」という疑問を持つ人がいるかもしれないので、このテーマについて少し深掘りをしてみよう。あなたもプーチン氏になってみる。あなたが、クレムリンの執務室にどっかりと座っていたらどういう世界が見えるだろうか?
ロシアは世界一の国土の広さで、その面積は約1710万平方キロメートル、日本の約45倍である。東西に大きくまたがるため11ものタイムゾーンがあり、同じ国内でも時差は最大10時間にわたる。そんな広大な国土を治める立場にいるのだ。その広大な国土に190を超える少数民族を抱えているのだ。
あなたは大豪邸に住んでいる。その中には自分たちとは慣習や言葉も違う人たちが多く住んでいる。それよりある意味異質な人たちと、その広大な豪邸の敷地の境を接しながら窓やドアは増えているのだ。家が大きければ大きいほど、増えた窓やドアから強盗や泥棒に侵入される可能性は高くなる。プーチン氏は、陸続きの国境線が延びれば延びるほど侵入される恐怖は増すのだ。
地理が決まれば気候も決まる。ロシアの国土の約60%は永久凍土である。そしてその国土の80%は無人であるといわれる。国土が広く見えて、「なぜあんな広い国に住みながらまだ領土を拡大しようとするのか」と思う人もいるだろうが、80%が無人で住めない場所だとしたらどうだろう。
そして、地理が決まれば、必然的に「周辺国」が決まる。実は、ロシアは国境を隣接する国が14もある。ただでさえ、家が広くて侵入者に「恐怖」を感じているのに、侵入可能な窓やドアが増えたら、あなたならどう思うだろうか。「恐怖」はさらに強まり、もうこうなると、「攻められる前に、こちらから攻める」というマインドになりかねない。
ロシアという国は永久凍土など、居住や移動に適さない土地が多い。そのせいもあり、農業の生産性は低い。ロシアの耕地面積は1億2200万ヘクタールで、日本の28倍もあるが、穀物の単位面積あたり収穫高は1ヘクタールあたり2.4トンで日本の4割ほどしかない。そして、交易や海洋進出のために活用したい港湾の多くが、冬場に凍結してしまう。
こうして、「地理」が決まることで、間接的に「歴史」も決まる。「攻められる前に、こちらから攻める」というマインドと、生きていくために「不凍港」を求める動きが合わさる。あなたなら、どうするか。そう、だからこそ、ロシアは常に国外に進出を繰り返してきた。
もちろん、私はだからといってロシアの過去や現在の行動を正当化はしない。しかしながら、価値判断を除いてロールプレイング思考訓練だけやる。その上で自分ならどうするか? オプションを導き出すことがとても大事なのだ。
自らをクレムリンの執務室に置いて、価値判断はせずに、自分がプーチンならどうするかを考えてみることに意義はある。もちろん、違うオプションを導き出すことを試みるなど、相手の立場に立つことはとても重要である。この訓練はビジネスに役立つだけでなく、実際の和平交渉やその進展を読むことにおいても有意義だ。
地政学は「戦争」でなく「平和」のための学問
どうだろう。このように「要素」で考えていくと、例えば「ロシアがウクライナに侵攻した」というニュース一つをとってみても、その受け取り方が結構変わってくるのではなかろうか?
持続する現実的な平和を確立するためには地政学的理解が欠かせないのだ。世界はジャングルの掟が支配する。フランシス・フクヤマ氏が『歴史の終わり』で説いたような世界はやってこなかった。世界に自由民主主義が自然と広がり、国際機関や国際社会が国際法を使って平和を保障してくれるような世界はまだまだやってこないだろう。
現実的には平和とは力の均衡状態のことを言う。今回のウクライナ戦争は、プーチン氏がウクライナにおけるNATOとロシアの均衡状態が崩れたと判断して起こした。むき出しの力を使って状況を変えようとするリーダーの置かれた立場を理解して手を打たなければ、現実的で持続する平和はやってこない。
そのために地政学的理解、つまりロールプレイング的思考訓練が必要なのだ。善悪でリーダーを判断して勧善懲悪を期待してはいけない。NATO側にもアメリカにも、国益・名誉・恐怖から来る地政学的判断がある。そこも理解して我々日本人は世論やビジネスの構築を目指すべきだろう。
ウクライナ戦争に勝るとも劣らないような地政学的リスクが、我々が住む日本近辺にもないわけではないのである。
「地理」が「6つの要素」すべてを決める
我々は世界中ほぼどこにでも旅ができて、ほぼ世界中からスマホ一つで色々なものをオーダーできる時代に生きている。そのため、「もうテクノロジーは地理を乗り越えてしまった」と思いがちである。しかし、地理による運命を書き換える能力はまだまだ我々人類は手にしていないのだ。
スマホのおかげで世界中からオーダーできると思われている品々は、デジタル化できる商品を除いて、ほとんどが海を渡って我々のもとに届いている。デジタル情報の99%も海底ケーブルを通じて届いている。海を制するものが世界を制する時代は変わっていないのだ。
一方で個人で旅行はできるが、国として物理的に、欧州や北米に引っ越せるわけではない。後述するが私はシンガポール建国の父である故リークワンユーさんから三度も「今の地理的条件で日本が小さく、貧しく、老いていくのは相当まずいよ。日本は引っ越せないんだよ」と指摘された。地理的な運命を、今の人類が乗り越えることは難しいのだ。
ウクライナ戦争も台湾情勢も朝鮮半島情勢もすべてが地理的な運命から来ている部分が大きい。どんな国に周りを囲まれるのかは変えられない。
天候は地理に左右される。日本に台風が来るのも、台風発生地帯より南に位置するシンガポールで台風がないのも地理のせいだ。ロシアのほとんどが極寒の地にあり、アメリカが肥沃で温暖な土地を多く持つのも地理的条件のせいである。今後は期待したいが、気候を自在に変化させるようなテクノロジーをまだ人類は持っていない。
地理的な位置で国民性も影響を受ける。大陸的、島国根性、半島感情など色々言われるが、それらも一理ある。日々、目に入る光景や暮らしの風景や人の出入りは地理に左右される。
天候や国民性や周りの国々により、その国の統治体系も影響を受ける。地理的な位置で、獲れる食物も利用できる資源も左右される。そこから起こってくる産業も変わってくる。
地球上のどこにあるのか? 緯度はどのへんなのか? 島なのか? 半島なのか? 大陸の真ん中にあるのか? これによって、国の運命は大きく変わる。今まで述べた要素によって歴史が作られてくる。歴史はその地理的条件から始まっているのだ。
かつてパンゲアという一つの大陸だった我々が住む世界も6つの大陸と多くの島に分かれてしまった。その後、我々人類が誕生した。そしてどこに住むのかによって我々の運命は左右されるようになってしまったのだ。
「地理」が習近平氏の支配体制を決めている?
中国は、ロシアと同様、異様なほど広い国土を有している。その国土の多くの部分、特に内陸部は砂漠地帯などの乾燥地域が続く。内陸部の乾燥地帯は「ステップ気候」と呼ばれ、日本とは異なり大木が育つことはなく、背丈の低い草木が生える程度。草原気候とも言われる。
そこで安定的に食糧を生み出すには大河川から灌漑などの大規模な土木事業を行い水を確保するしかない。よって、大規模な土木工事をするために大量の動員が可能になるよう広い国土を中央集権的に治める制度が確立されてきた。欧州のように高い木々や山脈が大地をさえぎることがないので、複数の国に分かれることもなかった。
巨大な国を作り、それを中央集権で束ね、巨大なインフラを建設して生きていくために、道路や文字や暦や単位を統一し、巨大な領地を隅々まで管理するために官僚制度を作り出した。
また騎馬民族の存在も大きい。ステップ気候帯は定住には適さない環境のため、常に移動する生活スタイルが確立した集団が常に存在した。彼らは気候の変化によって南下し、機動力・狩猟能力に長けていたので、それを戦闘力に転換しやすく、常に定住する人々の脅威になった。
中国はその騎馬民族らから広い国境線を守るのに必死だったのだ。中国は万里の長城などの軍事インフラ構築や軍隊整備を行って、騎馬民族の来襲から自らを守るためにも、統一した文字や暦や単位や官僚制度を作り出した。
「中国はなぜ中央集権的なのか?」への答えが少し見えてきたのではないか。中国が中央集権的、強権的なのは、こういった中国の地理的な制約があるのだ。「地理」によって、「統治体系」が決まり、歴史が作られた。「地理」つまり「場所」というのは、国において、運命を決定づけてしまう重要な要素なのである。
●ロシアの軽油輸出禁止、大半を解除 10/6
ロシア政府は6日、先月21日に導入した軽油の輸出禁止措置の大半を解除したことを明らかにした。
パイプラインで海港に輸送される軽油の輸出を解禁する。各生産者が生産した軽油の少なくも半分を国内市場に供給することが条件。
ガソリンの輸出制限は継続する。
軽油は石油製品ではロシア最大の輸出品目。昨年の輸出は約3500万トンで、4分の3近くがパイプライン経由で輸送された。
昨年のガソリン輸出は480万トン。
ロシアの輸出禁止措置は国際価格の押し上げ要因となっており、一部のバイヤーがガソリンと軽油の代替調達先の確保を迫られている。
●ロシア、隣国ジョージアの分離派地域に海軍基地を建設へ=現地指導者 10/6
ロシアが、隣国ジョージアの独立分離派が実効支配している地域アブハジアに海軍基地を建設する予定だと、同地域のリーダーが5日付のロシア紙で語った。
アブハジアの大統領を自称しているアスラン・ブジャニヤ氏はロシアのタブロイド紙に対し、この地域が近々、黒海におけるロシアの「恒常的な展開拠点」になると述べた。
ロシア政府はこの件についてコメントを拒否している。
ジョージアの外務省は、「ジョージアの主権と領土保全に対する明白な侵害」だと述べている。
アブハジアはジョージア北西部に位置し、黒海に面している。ソ連崩壊後の1992〜1993年に自治権をめぐってジョージアと戦闘となり、1999年に独立を宣言したが、国際的には承認されていない。
だが、2008年にジョージアとロシアの間で紛争が起きると、ロシアはアブハジアの独立を承認した。ジョージアは、アブハジアがロシアに占領されているとしている。
ロシアはすでに、アブハジアに陸軍基地を置いている。
ブジャニヤ氏は、オチャムチレ地区に海軍基地が置かれることで、ロシアとアブハジアの防衛能力が高まり、両国の「基本的利益を守る」ことになると述べた。また、「安全保障が何よりも重要だ」と語った。
同氏は今週初めにロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談しており、ロシアのウクライナ侵攻を支持すると述べていた。
黒海ではこのところ、ウクライナがロシアの黒海艦隊への攻撃を強めている。2週間前には、クリミアにある艦隊司令部を攻撃した。
ロシアは2014年以降、クリミアを不当に併合している。
イギリス国防省は先に、クリミアでウクライナのさらなる攻撃に直面し、ロシアの黒海艦隊の活動は東に移動しているとの見方を示した。
高解像度の人工衛星写真によれば、少なくとも17隻のロシア戦艦がセヴァストポリからノヴォロシスクに移動している。
アブハジアに新たに予定されているという海軍基地の位置は、ノヴォロシスクからさらに500キロほど南東になる。
アブハジアに艦隊を置くことで、ロシアがジョージアの領土から攻撃を行う可能性も、ウクライナがジョージアの領土に攻撃する可能性も高くなる。
ロシアのドミトリ・ペスコフ大統領報道官は、艦隊の派遣についての質問に答えず、国防省にたずねるよう記者らに促した。
黒海艦隊は、ロシア海軍の主力部隊とみなされている。同艦隊はウクライナに向けてミサイルを発射し、壊滅的な被害をもたらしている。
そのため、ウクライナとっては重要な標的となっている。9月下旬にはウクライナがクリミアにある艦隊司令部を攻撃。4人のロシア人将校を殺害したとしている。
●世界でロシアにNO!を突き付けている国は意外に少ない? 各国の対応 10/6
実際、世界でどれだけの国がロシアにNO!を突き付けている?
いま知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。ロシアのウクライナ侵攻は世界中から非難されましたが、実際にロシアにNO!を突き付けている世界の国々はどれくらいあるのでしょうか?友好的な国、曖昧な態度の国など、国ごとの反応をまとめました。
ウクライナ侵攻でロシアを強く非難した日本
ロシアがウクライナへ侵攻したことで、日本はロシアを強く非難し、ロシアへの経済制裁を強化しました。今日では中古自動車や高級品などがロシアへ輸出することができませんし、一部のロシア高官の日本への入国も規制されています。日本はアメリカや西欧諸国と足並みを揃え、対露非難を強めていますが、それによって米露関係や日露関係は急激に悪化しました。今日でもその状況に全く変化はなく、日露関係は冷戦後最悪な状況が続いています。北海道知床半島からすぐ見える国後島が、これほど遠くに感じることはこれまでなかったでしょう。
実はロシアにNO!を突き付けている国は世界で少数派
日本のメディアで報道されている事実を中心にウクライナ戦争を眺めていると、日本や欧米の対露姿勢が基本で、他の国々もそのスタンスを取っているかのように映ります。しかし、実はロシアに対して明確にNOの姿勢を貫いている国々は世界で少数派なのです。
ウクライナ侵攻直後の2021年3月、国連総会ではウクライナ侵攻を非難する、ロシア非難決議が141カ国の賛成で採択されました。採択反対に回ったのはロシアの他にはベラルーシとエリトリア、北朝鮮とシリアの5カ国で、どれもロシアと良い関係を維持している国々です。一方、中国やインドなど35カ国が棄権し、国際社会の複雑さ、難しさを露呈する結果となりました。
ペナルティーを課していない国々もかなり多い
そして、さらに重要なのは、同決議で賛成に回ったものの、侵攻したロシアに対してペナルティーを課していない国々が極めて多いのです。侵攻から1年半が経過しますが、その後ロシアに対して経済制裁などを実施しているのは、アメリカや西欧諸国、日本や韓国、オーストラリアなど40カ国あまりに留まっているのです。
たとえば、親日的な国が多いASEANをみても一目瞭然です。ASEANといっても、インドネシアやマレーシア、シンガポールやタイ、ベトナムなど日本と良好な関係を維持する国もあれば、ラオスやミャンマー、カンボジアのように経済的に中国と深く結び付いている国もありますが、ロシアへ経済制裁を実施しているのはシンガポールのみなのです。
国家は自分の国の利益のために行動する
では、なぜ多くの国は戦争を仕掛けたロシアに対して明確にNOの姿勢を示さないのでしょうか。戦争を仕掛けたのだから、当然非難されるべきだと多くの人が思うことでしょう。しかし、国際社会の実状は極めて複雑で、国家は自身の国益のために行動しており、1つのチームなることは極めて難題です。
たとえばさっきのASEANのケースでも、ラオスやミャンマー、カンボジアといった国は中国からの経済支援なしには発展が望めないのが現実で、政治的に中国の異に反する外交はなかなか展開できません。中国はウクライナ侵攻に対して、それを非難することも支持することもなく沈黙を続けています。そのような状況で、ラオスなどが欧米と足並みを揃えるような姿勢に転じれば、それを良く思わない中国との間で亀裂が生じる恐れがあり、経済支援停止など圧力を掛けられる可能性があります。一種の脅しになりますが、道徳的に動けないという現実もあります。
ロシアが持つエネルギーも途上国に魅力
また、ロシアは世界有数のエネルギー大国であり、原油や天然ガスなどを多くの途上国に輸出しています。東南アジアや南アジア、中東やアフリカ、中南米にはこれから経済発展が期待される新興国が多くあります。そういった経済発展を遂げようとする国々としては、それに必要なエネルギーを提供してくれる国とは安定的、良好な関係を維持する必要があります。
今日、ウクライナ侵攻によってロシア産エネルギーの価格は安くなっており、今こそロシア産エネルギーを買おうと、多くの途上国はロシアとの経済関係を強化しています。これから日本を抜いて世界第三の経済大国になるインドも、ロシアとのエネルギーを軸とした経済関係を強化しています。
ロシアに明確にNOを突き付けているのは、世界で40カ国あまりしかありませんが、その大半は欧米諸国です。他の国々は人道的にそれが許されない問題と自覚しつつも、国家の国益を第一に実利的外交を展開しています。ここに国際社会の難しさがあります。ウクライナ侵攻は、我々に世界の難しさを改めて示しています。

 

●プーチン氏「ロシアは世界最大の領土」「さらに増やす野心はない」… 10/7
ロシアのプーチン大統領は5日に露南部ソチで開催された「バルダイ会議」で、ウクライナ侵略を改めて正当化し、強気な発言を繰り返した。ウクライナが頼りとする米欧に「支援疲れ」が見えていることが背景にあるとみられる。
プーチン氏は会議で、ウクライナとの戦闘に関し「反転攻勢が始まった6月4日以来、ウクライナ軍は9万人以上の人や、557両の戦車、1900台近くの装甲車を失った」と主張した。ウクライナは経済・軍事面で米欧の支援に依存していると指摘し「軍事支援が止まれば、1週間しかもたない」とも強調した。
会議に出席した笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員は「既に勝利を決めたかのような自信に満ちた受け答えが目立った。米連邦議会はウクライナ支援を巡って混乱し、スロバキアではウクライナ支援反対を訴える政党が勝利し自信を深めているのではないか」と指摘した。
プーチン氏は会議で「ロシアは世界最大の領土を持ち、さらに領土を増やすことに関心はない」とも語り、ウクライナ侵略を、西側諸国が覇権を握る現在の国際秩序を巡る戦いにすり替える持論を展開した。
米欧批判の一方で、プーチン氏は中国の 習近平シージンピン 国家主席やインドのナレンドラ・モディ首相ら新興5か国(BRICS)加盟国首脳を称賛した。ロシアは来年、議長国を務めるBRICSを軸に、西側諸国の覇権に挑戦するものとみられる。
●ウクライナ、子供500人超死亡 ロシア侵攻、東部州で多く 10/7
ウクライナ検察は6日、昨年2月に始まったロシアの侵攻によって6日までに子ども計505人が殺害され、1100人以上が負傷したと明らかにした。激戦が繰り広げられている東部のドネツク州やハリコフ州で死傷した子どもが多いとしている。
ウクライナメディアなどによると、6日朝に起きたハリコフ州の州都ハリコフにある住居用ビルに対するミサイル攻撃では、10歳の少年と祖母が亡くなった。11カ月の乳児も負傷した。
ゼレンスキー大統領が公開した動画によると、建物は大きく破損し、道路に破片が散乱。複数の車両が炎上した。
ハリコフ州クピャンスク近郊の村への5日のミサイル攻撃でも、子どもを含む50人以上が命を落とした。ウクライナ側は、いずれの攻撃も弾道ミサイル「イスカンデル」が使われたとみている。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報道官は6日、この村に調査団を派遣したと明らかにしている。ロシアのペスコフ大統領報道官は、ロシア軍が民間人を標的にすることはないと主張した。
●プーチン大統領と金正恩総書記が急接近の背景 「中国から支援」北朝鮮 10/7
プーチン大統領と金正恩総書記が会談した。両国接近の背景には中国からの支援引き出しという共通の思惑がある。
ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩総書記が9月、約4年半ぶりに会談し、軍事協力の可能性がとりざたされている。韓国政府当局者は会談について「中国を脅して支援を得るための、プーチンと金正恩による共同作品だ」と語る。打算だけで結びついた二人の関係だが、事態の展開によっては東アジアの安全保障に深刻な影を落とすことになるかもしれない。
ロシア(旧ソ連)は、金日成氏を首班に据えた北朝鮮を生み出した。朝鮮戦争では戦闘機や戦車を支援し、戦後は東欧諸国とともに荒廃した北朝鮮の国土を再建した。金日成氏が当時、「わが国はネジ一本までソ連製だ」と嘆いたほどだ。
北朝鮮の製鋼所や発電所などの重要インフラや兵器などは、現在に至るまでほぼ旧ソ連製で占められている。
ただ、第2次大戦直後、北朝鮮に進駐したソ連軍兵士は強盗や強姦なども働いた。当時を知る脱北者の一人は「朝鮮人はロシア人をロスケと呼び、憎んだ」と語る。1991年のソ連崩壊後は、支援も急減した。韓国の統計によれば、北朝鮮の対外貿易でロシアが占める割合は1%もない。
一方、ロシアも北朝鮮から裏切られ続けた。ソ連が有償援助をしても、北朝鮮はほとんど返済しなかった。金正日総書記時代の末期、対ロシア債務の9割を免除してもらったが、ロシアにとっての北朝鮮は魅力的な交易相手ではない。プーチン氏は2019年の前回首脳会談では、正恩氏が提案した北朝鮮産の水産物や鉱物の輸入に関心を示さなかった。
朝ロの共通の思惑
決定的だったのが1993年の北朝鮮による核不拡散条約(NPT)脱退宣言だった。ロシアは研究用小型原子炉を提供するなど、北朝鮮の原子力の平和利用を支援してきた。ロシア外務省関係者は当時、日本政府関係者に対して「我々はとんでもない国を作ってしまった」と語り、嘆いた。ロシアは近年、北朝鮮に軍事兵器の支援をしてこなかった。
「信頼も共通の価値観もない関係」(韓国の金塾・元国連大使)の両国が接近した背景には、「中国から更に支援を引き出したい」という共通の思惑がある。
ロシアはウクライナ侵攻が長期化し、深刻な弾薬・兵器不足に陥っている。北朝鮮から弾薬、イランからドローン(無人機)などをかき集めている。軍事関係筋は「アフリカなどの第三国からも、旧ソ連製兵器が間接的にロシアやウクライナに流れ込んでいる」と語る。
これに対し、中国は国連の対ロシア制裁決議に賛成しないものの、ロシアに対する公式の軍事支援には踏み切っていない。
北朝鮮も中国との関係に苦しんでいる。中国は昨年、7回目の核実験に踏み切ろうとした北朝鮮に圧力をかけたとされる。韓国政府元高官によれば、習近平国家主席が正恩氏に送った親書で「我々は様々な局面で朝鮮を支持してきた。だが、核実験をすれば、我々は朝鮮を保護する幕を下ろさざるを得なくなる」と警告したという。
北朝鮮の“二股外交”
その後、北朝鮮と中国との関係は微妙な状況が続いている。北朝鮮は今年、朝鮮戦争休戦70周年の7月27日と建国75周年の9月9日を記念した軍事パレードを行った。中国は党政治局常務委員ではない軽量級の代表団を送るにとどめた。
北朝鮮経済は新型コロナウイルス問題もあり、どん底の状態が続いている。韓国銀行によれば、北朝鮮の22年の経済成長率はマイナス0.2%。20年のマイナス4.5%、21年のマイナス0.1%に次いで3年連続のマイナス成長を記録した。北朝鮮の経済回復のためには、中国からの石油や肥料、建設資材などの輸入拡大、中国人観光客の訪朝などが欠かせない。
韓国政府当局者は「北朝鮮は誇り高いため、中国に素直に頭を下げたくない。中国が譲歩せざるをえない環境をつくるため、ロシアに接近したのだろう」と語る。北朝鮮は金日成氏の時代から、ロシア(旧ソ連)と中国の間を渡り歩く「ヤンタリ(二股)外交」を行ってきた。
今回、正恩氏はロシア訪問にあたり、陸海空軍の将校や軍需部門関係者を引き連れた。朝鮮中央通信は正恩氏がロシア製戦闘機や軍艦に試乗する写真を相次いで公開した。別の韓国政府当局者は「ロシアとの軍事協力を匂わせ、中国を慌てさせるのが目的だろう」と語る。
中国は北朝鮮の核開発を苦々しく思っている。東アジアで日本や韓国、台湾などに核開発の動きが広がる「核ドミノ現象」を警戒しているからだ。青年失業率の悪化や不動産事業の深刻な不況など、内政が混乱するなか、日米韓との対立をあおる動きも避けたい。
北朝鮮としては中国に「北朝鮮とロシアとの軍事協力が嫌なら、もっとカネを出せ」というメッセージを送ったつもりなのだろう。
●米研究グループ “北朝鮮がロシアに武器供与を始めたか” 10/7
アメリカの研究グループは、北朝鮮とロシアの国境沿いの衛星写真を分析した結果、これまでになく多い貨物車両を確認したと発表し、先月行われた両国の首脳会談を受けて、北朝鮮がロシアに対して武器の供与を始めたのではないかとする見方を示しました。
アメリカのシンクタンク、CSIS=戦略国際問題研究所は6日、北朝鮮とロシアの国境沿いを5日に撮影した衛星写真の分析結果を公表しました。
それによりますと、北朝鮮とロシアの国境沿いの北朝鮮側の鉄道施設で、これまでになく多い73両の貨物車両を確認したということです。
先月の北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記とロシアのプーチン大統領の首脳会談の5日後から、貨物車両が徐々に増えたということで、北朝鮮がロシアに対して武器の供与を始めたのではないかとする見方を示しました。
首脳会談でロシアは北朝鮮に対して砲弾などの供与を求めるという見方もありましたが、研究グループは、車両は覆われているため、特定するのは難しいとしています。
北朝鮮とロシアが軍事分野で協力を進めているとみるアメリカ政府は、武器の供与は国連安全保障理事会の複数の決議に違反するとして、新たな制裁も辞さない考えを示すなど警戒を強めています。
●プーチン氏、アルメニア首相と会談カラバフ情勢協議 10/7
アルメニア首相府は7日、パシニャン首相がロシアのプーチン大統領と電話会談したと発表した。9月にアゼルバイジャンの攻撃を受けたナゴルノカラバフのアルメニア系住民がアルメニアに避難している状況や、ロシアとの2国間の問題を議論したという。
パシニャン氏は7日に71歳の誕生日を迎えたプーチン氏に祝いの言葉も贈った。露大統領府はパシニャン氏を含む各国首脳から祝電を受けたと発表した。
ナゴルノカラバフを放棄した形のパシニャン氏は現地に平和維持部隊を派遣するロシアの支援が不十分だったと不満を表明してきた。プーチン氏はパシニャン氏が昨年来アゼルバイジャン領だと認めていたと反論している。
●アメリカを狙える…核弾頭搭載可能なICBM「サルマト」近く実戦配備へ ロシア 10/7
ロシア国防省は7日、アメリカまで届く核弾頭搭載可能な大陸間弾道ミサイル「サルマト」を近く実戦配備すると発表しました。
ロシア国防省は7日、ショイグ国防相が、シベリアにある軍需産業で、大陸間弾道ミサイル「サルマト」の製造工程を視察する映像を公開しました。近く実戦配備される予定だとしています。
「サルマト」は世界最長、1万8000キロの射程をもち、南極経由でもアメリカを狙えるミサイルで、プーチン大統領が5日、「開発を終了した」と述べていました。
ロシアの核兵器開発を巡っては、プーチン大統領が同じ5日、「CTBT=包括的核実験禁止条約」の批准撤回について言及し、核実験の再開を示唆しました。
ロシア下院議長も6日、「次の議会では必ず議論する」とSNSに投稿するなど、核を使って西側をけん制する動きを強めています。
●ロシアの「核使用」、追い込んでいるのは米国 ベラルーシ大統領 10/7
ベラルーシのルカシェンコ大統領は6日、ウクライナに武器を供与することで米国がロシアを核兵器の使用に踏み切る状況へと追い込んでいるとの認識を示した。
南西部ブレスト州にある軍の施設の視察中、ルカシェンコ氏は「あくまでも私見だが、米国人がロシア人を追い込んで、最も恐ろしい兵器を使わせようとしている印象を持っている。彼らはウォロディミル・オレクサンドロビチ・ゼレンスキーと彼の軍隊を武装し、長距離ミサイルを供与する。300キロ飛べるミサイルまで与えている」と語った。
その上で、もしそうしたミサイルがロシアの領土に撃ち込まれれば、ロシア政府は反撃せざるを得なくなると指摘。反撃は核兵器による極めて大規模なものになるとの見方を示唆した。
ルカシェンコ氏によれば、国同士の対立の激化はロシアに核の使用を促すが、米国人は自分たちの安全に不安を感じていないという。「なぜなら彼らは海の向こう側にいるからだ」
同氏の発言に先立ち、ロシアのプーチン大統領は5日、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を撤回する可能性を示唆。翌日にはウォロジン下院議長が、次の会合で批准撤回の問題について間違いなく話し合うと明言した。
ルカシェンコ氏はまた、米議会によるウクライナ支援の今後の不透明感にも触れ、現状をウクライナに向けた合図だと指摘。「もたもたせずに反転攻勢の範囲を拡大し、より多くの若者を投入しろ」というメッセージを送っているとの見方を示した。
ルカシェンコ氏によれば、米国がウクライナに反転攻勢のペースを上げるよう求めるのは、ウクライナの戦場での勝利を利用してバイデン大統領の支持率を引き上げる狙いがあるためだという。
「政治的な状況から、この戦争はバイデン氏や米政権の権威を高めていない。彼(バイデン氏)は既にあらゆる世論調査で敗北している。彼には何らかの勝利が必要だ。勝つためには何かを提示してみせる必要がある」(ルカシェンコ氏)
●ガザ地区からロケット攻撃 イスラエル報復 首相“戦争状態に” 10/7
中東のイスラエルで7日、パレスチナのガザ地区からロケット弾などによる大規模な攻撃があり、地元メディアはこれまでに少なくとも40人のイスラエル人が死亡し、500人以上がけがをしたと伝えています。
イスラエル側もガザ地区への報復作戦を開始していて、事態の激化が懸念されています。
イスラエルのメディアによりますとパレスチナ暫定自治区のガザ地区から7日、2000発以上のロケット弾が発射され、イスラエル南部などで被害が出ているほか、ガザ地区から侵入した武装勢力とイスラエルの治安部隊との銃撃戦も起きているということです。
一連の攻撃でこれまでに少なくとも40人のイスラエル人が死亡し、500人以上がけがをしたと伝えています。
今回の攻撃について、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは声明で、イスラエルへの攻撃を開始しその後、複数のイスラエル兵を捕虜にしたと主張しています。
イスラエルのネタニヤフ首相「戦争状態にある」
イスラエルではネタニヤフ首相が「われわれは戦争状態にある」とする声明を出したほか、イスラエル軍も報復作戦を開始しガザ地区にあるハマスの複数の拠点を空爆したとしています。
中東の衛星テレビ局アルジャジーラなどは、ガザ地区では7日、160人以上が死亡したと伝えています。
ガザ地区からのロケット弾による攻撃は、これまでもたびたび行われてきましたが、ガザ地区からイスラエル側に武装勢力が侵入して攻撃を行うのは極めて異例で、事態の激化が懸念されています。
ガザ地区とは
パレスチナは、1948年のイスラエル建国とその後の中東戦争、それに内部の対立を経て、ヨルダン川西岸地区とガザ地区に分断されています。
このうちガザ地区は、地中海に沿った、鹿児島県の種子島ほどの広さの土地に220万人以上が暮らしていて、イスラム組織「ハマス」が実効支配しています。
このハマスを敵視するイスラエルによる経済封鎖が続いているほか、軍事衝突で多くの民間人が犠牲となってきました。
また、ガザ地区の周囲には壁やフェンスが張り巡らされ、移動の自由も制限されていて、「天井のない監獄」とも呼ばれています。
イスラエルとパレスチナ 武力攻撃の応酬
中東のイスラエルとパレスチナの間では、武力攻撃の応酬が続いてきました。
2014年、イスラエル軍が地上部隊を投入してガザ地区に侵攻し、この軍事衝突ではガザ地区で2200人以上、イスラエル側でおよそ70人が死亡しました。
また、2021年5月の衝突でガザ地区では256人が死亡しています。
さらに、ことしに入ってから、双方による暴力の応酬が激化していて、7月にはヨルダン川西岸地区で、イスラエル軍が過去20年間で最大規模とされる軍事作戦を実施し、パレスチナ人13人が死亡したほか、イスラエル側も兵士1人が死亡しました。
国連の発表によりますと、ことしに入ってから、パレスチナ人は200人以上、イスラエル人はおよそ30人が死亡しているということです。
小林外務報道官「すべての当事者に最大限の自制を求める」
外務省の小林外務報道官は7日夜、談話を発表し「ハマスなどのパレスチナ武装勢力がガザ地区からイスラエルに向けて多数のロケット弾を発射するとともに、イスラエル領内に越境攻撃を行ったことを強く非難する。犠牲者の遺族に対し哀悼の意を表し、負傷者に心からお見舞い申し上げる。わが国は、これ以上の被害が生じないようすべての当事者に最大限の自制を求める」としています。
各国から厳しい非難や双方に自制を求める声
欧米や中東などの各国からは攻撃に対する厳しい非難や、双方に自制を求める声が出ています。
このうちアメリカ、ホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議の報道官は声明を出し「ハマスのテロリストたちによるイスラエル市民への攻撃を明確に非難する。いかなるテロも正当化できない」としてハマスを強く非難しました。
また、安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官がイスラエル側と電話で協議し、イスラエルと緊密に連絡をとっていくと伝えたとしています。
イギリスのスナク首相は「ハマスのテロリストによるイスラエル市民への攻撃に衝撃を受けている。イスラエルには自国を防衛する絶対的な権利がある」とSNSに投稿しました。
フランスのマクロン大統領は、SNSへの投稿で「イスラエルに対するテロ攻撃を強く非難する。犠牲者やその家族らに対し、全面的に連帯を表明する」としています。
ウクライナのゼレンスキー大統領はSNSへの投稿で「世界のどこであってもテロはあってはならない。それは1つの国に対してのみならず、人類や世界全体に対する犯罪だからだ。イスラエルの自衛の権利は疑いの余地はない」としてハマス側を強く非難しました。
また、ロシア外務省のザハロワ報道官はSNSへの投稿で「状況の急激な悪化に最も深刻な懸念を表明する」としたうえで、双方に対し、即時の戦闘停止や暴力の放棄など自制を求めました。そして「現在の状況の激化は、国連や安保理決議が慢性的に無視された結果だ」などとして中東和平に向けた調停の動きを欧米が拒否していると一方的に批判しました。
トルコのエルドアン大統領は、首都アンカラで開かれた政権与党の大会で「すべての当事者に自制を呼びかけている。緊張を高めてはいけない」と述べ、双方に対し一刻も早く戦闘をやめるよう求めました。
エジプト外務省は声明で緊張の激化による深刻な危機に警鐘を鳴らすとした上で、市民を危険にさらさないよう自制を求めています。
サウジアラビア外務省も声明で状況を注視しているとした上で、双方に対し暴力を止めるよう訴えています。
一方、イスラエルと敵対し、ハマスを軍事的に支援してきたイランでは最高指導者ハメネイ師の顧問が、首都テヘラン市内で演説し「国際機関が沈黙するかげでパレスチナの子どもや若者がイスラエルに殺されてきた。われわれはパレスチナとエルサレムが解放されるまで、パレスチナの戦士たちとともにある」と述べハマスによる攻撃への支持を表明しました。

 

●プーチン大統領 71歳の誕生日 “勢力圏”の国々と緊密関係演出 10/8
ロシアのプーチン大統領は71歳の誕生日を迎えた7日、中央アジアのカザフスタン経由でウズベキスタンにガスの供給を開始する記念式典に出席し、関係の強化を強調しました。ウクライナ侵攻を続け、みずからの勢力圏とみなす旧ソビエト諸国の間でもロシア離れの動きがみられる中、緊密な関係を演出した形です。
ロシアはカザフスタンを経由してウズベキスタンにパイプラインを通じて初めてロシア産の天然ガスを供給することになり、プーチン大統領は7日、首都モスクワ郊外で両国の大統領とともに記念式典に出席しました。
式典でプーチン大統領は「このプロジェクトは、地域全体の経済発展やエネルギー安全保障の点で非常に重要だ。両国との戦略的なパートナーシップは今後も継続し、発展すると確信する」と述べてさらなる関係の強化を強調しました。
7日、プーチン大統領は71歳の誕生日をむかえ、ロシア大統領府は同盟関係にあるベラルーシなど旧ソビエトの国々やキューバなど友好国の首脳から祝福が寄せられたと発表しました。
また、係争地をめぐって軍事行動を起こしたアゼルバイジャンと、敗北したアルメニアの両首脳ともそれぞれ電話会談し、意見を交わしたということです。
ウクライナへの軍事侵攻を続け、旧ソビエト諸国の間でもアルメニア政府がロシア離れの動きをみせるなど影響力の低下がみられる中、プーチン大統領としては勢力圏とみなす国々との緊密な関係を演出した形です。
プーチン大統領は今月中旬、中央アジアのキルギスで旧ソビエト諸国の首脳らと会議を行う予定で、結束を強調する思惑があるとみられます。
●プーチン氏、71歳に 近く5選出馬宣言か―ロシア 10/8
ロシアのプーチン大統領は7日、71歳の誕生日を迎えた。2020年の憲法改正で来年3月予定の大統領選に再出馬する道が開かれたが、そうでなければ4期目を終えて退任を迎える年齢。ウクライナ侵攻で「戦時体制」が続き、政権はさらに長期化する公算が大きい。
5選出馬については「あるかないか」ではなく「いつ宣言するか」が注目されている。時期は今年11月4日の祝日「民族統一の日」ごろが有力。ペスコフ大統領報道官は早くも8月に「プーチン氏の圧勝は明白だ」と述べた。「健康不安説」は過去の話となっており、今月5日に出席した国際会議では、演説や質疑応答で約3時間半も発言した。
戦時下で孤立を回避しようと、昨年10月7日は独立国家共同体(CIS)非公式首脳会議を開き、70歳の節目を旧ソ連圏の友人と祝った。今年は訪ロしたウズベキスタンのミルジヨエフ大統領らと6、7両日に同席。公務をこなしながらの誕生日となった。
本人は意気軒高だが、旧ソ連圏ではロシアの影響力にほころびが見えており、再結束が急務だ。タス通信によると、プーチン氏は12日にキルギスを訪れ、翌13日のCIS首脳会議に出席。その後、中国主導の経済圏構想「一帯一路」の国際協力サミットフォーラム出席のため訪中する見込みだ。両国ともプーチン氏に逮捕状を発付した国際刑事裁判所(ICC)の加盟国ではない。
●大統領選「中止」を提案 戦時理由にプーチン氏の続投訴え―チェチェン首長 10/8
ロシア南部チェチェン共和国の独裁者カディロフ首長は7日、ウクライナ侵攻が続いていることを理由に、来年3月に予定される大統領選を事実上「実施しない」ことを提案した。国営タス通信などが伝えた。現在4期目のプーチン大統領の続投を前提にした発言だ。
7日はプーチン氏の71歳の誕生日。チェチェンの中心都市グロズヌイでは、約2万5000人がこれを祝福する「官製集会」が開かれた。カディロフ氏は集会で「特別軍事作戦(侵攻)が続く中、大統領選に候補者としてプーチン氏1人だけが出馬するか、実施を一時キャンセルするかを提案したい」と表明。「今日、わが国を守れる人は(プーチン氏の)他にいない」と訴えた。
●ロシア「紛争は外交的解決を」 ウクライナ大統領はイスラエル支持 10/8
ロシア政府は7日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの大規模な軍事衝突について、「(長年にわたる紛争は)武力ではなく、外交手段でのみ解決できる」と指摘した上で、双方に即時停戦を求めた。
外務省のザハロワ情報局長が述べた。
ザハロワ氏は「パレスチナとイスラエル双方に暴力を放棄し、必要な自制心を示すよう求める」と強調。国際社会の助けを借り、双方が「長年待ち望まれた、包括的かつ持続的な平和の確立に向けた交渉プロセス」に取り組むよう促した。
一方、現在ロシアの侵攻を受けているウクライナのゼレンスキー大統領は、通信アプリ「テレグラム」で「イスラエルに自衛権があることは議論の余地がない」とイスラエル側の反撃を支持。「テロ行為が金輪際、人の命を奪わぬよう、世界は結束して立ち上がらなければならない」と訴えた。
●「南」からのぞいた世界 10/8
南アフリカのヨハネスブルクで8月、同国とブラジル、ロシア、インド、中国の新興5カ国(BRICS)首脳会議が開かれ、中東4カ国を含む6カ国の加盟が認められました。いずれもグローバルサウス(南の世界)の国々です。
中東4カ国とはイラン、エジプト、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)で、イランを除けば、米国とも親しい国です。
BRICSは中ロが中核で、欧米諸国と溝を深めています。米国が中東を一極支配していた時代には、米国の尾を踏むような加盟はとても考えられませんでした。そうした「絵踏み」が通じない時代に入ったということでしょう。
BRICS11カ国の総国内総生産(GDP)は先進国のG7総体を上回る世界全体の37%を占めます。なにより加盟国の総石油輸出量は同じく約4割に達しました。
この点は重要です。というのも国際基軸通貨としての米ドルの礎は原油取引の大半がドル建てであることに根差しています。
自国の国益を最優先に
BRICSはドルを介さず、互いの通貨などで決済する仕組みを整えようとしています。実現すれば、米国主導の経済制裁も従来のような威力を発揮できません。
だからといって、エジプトやサウジなどに反米の意思はありません。自国の国益を最優先にした関係を望んでいるにすぎません。
グローバルサウスの台頭はロシアのウクライナ侵攻後、顕著になりました。英「エコノミスト」誌によれば、親ロシアもしくは中立の国々で暮らす人びとは世界人口の3分の2に及びます。その多くが「南」の国々です。
民主主義不在の国が多く、権威主義の中ロに甘いという見方があります。ただ、彼らの視点を無視することもできないでしょう。
ロシアの軍事侵攻が国際法違反であることは明白ですが、「南」の国々は国際秩序の原則よりも現実の経験則を重視します。
原則が言葉にすぎないことが少なくないからです。例えば、米国はイラク戦争では国際法を無視する一方、イスラエルのパレスチナ自治区への空爆には制裁を科そうとしません。サウジも権威主義国ですが、友好関係を崩しません。
中東にはウクライナでの戦争と1980年代のアフガニスタン内戦を重ねる知識人が少なくありません。欧米はアフガンでイスラム武装勢力を支援し、旧ソ連に勝利しました。だが、地元の民衆は辛酸をなめ、欧米の支援はイスラム過激派の誕生を促しました。
「南」では欧米の植民地主義に対する憤りも共通項です。旧フランス植民地のアフリカ諸国では、この3年間で6カ国の親仏政権がクーデターで倒されました。
ロシアが扇動した一面があります。とはいえ、クーデターの背景には60年代の独立後も、旧宗主国に間接支配されてきた不満があります。どの国の通貨もフランス政府が操るCFAフランで通貨主権はなく、天然資源の取引もフランス企業が独占してきました。
この地域ではイスラム過激派が台頭しています。かつてはリビアのカダフィ独裁政権がその防波堤役でしたが、同政権は北大西洋条約機構(NATO)の軍事介入で倒されます。その副作用は治安の不安定化として残されました。
欧米や中ロにくみせず
「南」の国々はロシアの蛮行の非を認めつつ、欧米に対しても根深い不信感を抱いています。その結果、彼らの多くは欧米と中ロ双方にくみすることを避け、是々非々の関係を志向しています。
一見、50年代の非同盟主義を彷彿(ほうふつ)とさせますが、各国とも自国の利益優先で往時のような団結は見られません。その傾向は世界全体の多極化を促しています。
こうした世界の変動に日本は追いついているのか。世界が多極化するほど、国ごとの丁寧な外交が求められますが、そのための情報収集力や理解は十分でしょうか。
米国はいまも世界随一の大国ですが、国力の衰えは否めず、自国を優先する点では変わりません。ロシアとの衝突を恐れて、ウクライナが望む飛行禁止区域の設定を拒んでいることが一例です。
日本は長く米国頼みを金科玉条としていますが、そのリスクも検証してみるべきです。「南」の国々のしたたかな外交戦略には学ぶべき点もあるかもしれません。
「長いものに巻かれろ」という処世術があります。しかし、多極化とは長いものが消えていくことです。内向きさを克服し、荒波を直視する覚悟が欠かせません。 
●北朝鮮がロシアに武器供給か、国境に貨車集結 報告書 10/8
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)が6日公表した最新報告書によると、ロシアとの国境に近い北朝鮮・豆満江(Tumangang)駅に貨物車両が集結している。先月には金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長がロシアを訪問してウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領と会談しており、報告書は、軍備品の鉄道輸送を示している可能性が高いとしている。
報告書は高解像度の衛星画像を分析した結果、少なくとも70両の貨車を確認したと説明。新型コロナウイルスの流行前と比べても「前例のない」規模だとしている。過去5年間に同駅に20両を超える貨車が集まった事例はなかったという。
報告書は、こうした北朝鮮側の動きについて「武器・弾薬のロシアへの供給を示すものである公算が大きい」と結論付けている。ただし、貨車には覆いがかけられているため、貨物を「特定」するのは不可能としている。
米CBSニュースは前日、米当局者の話として、北朝鮮はロシアに対し、ウクライナ侵攻に使うための砲弾の輸送を始めたと報じていた。
ロシアは、先月の金氏との首脳会談では北朝鮮からの武器供与について合意はなかったとしているが、プーチン氏は軍事協力の「可能性」はあると述べていた。
●イスラエルとハマス衝突、ロシア双方に停戦要求…ウクライナ支援の関心低下 10/8
イスラム主義組織ハマスによるイスラエルへの攻撃に対し、ロシアが双方に停戦を求めた一方で、ウクライナはイスラエル支持を明確に打ち出し、対照的な反応を示した。ロシア側がウクライナ侵略への関心を低下させるため、情報戦に乗り出したとの見方もある。
ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は7日、事態の深刻化に懸念を示した上で「75年にわたる紛争は武力ではなく、政治・外交的な手段でのみ解決できる」とし、双方に即時停戦を求めた。
ロシアは中東情勢で中立的な立場を維持してきた。ハマスを支持するイランとは友好関係にあり、イスラエルとも関係を維持するためだ。イスラエル側も米欧主導の対露制裁やウクライナへの軍事支援からは距離を置く。
米政策研究機関「戦争研究所」は7日、ロシアは中東の軍事衝突を「西側諸国のウクライナへの支援や関心をそぐための情報戦に利用する」と分析した。実際、メドベージェフ前大統領はSNSに「(中東情勢こそ)米国やその同盟国が取り組むべきだ」と投稿した。
一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はSNSでハマスの攻撃を「テロ」とし、「イスラエルが自衛権があるのは議論の余地がない」と投稿した。米欧各国と同様、イスラエルを支持する姿勢を示している。

 

●プリゴジンだけではない、同様の運命をたどったプーチンの批判者たち 10/9
今年8月、ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループの創設者エブゲニー・プリゴジンを乗せた飛行機が墜落し、搭乗者全員が死亡した。この墜落は不慮の事故ではなく、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が自身の批判者を罰するために起こした事件だとの見方が強い。
同様の事件の多くはプーチン大統領に対する公然とした批判や非難の後で起きているが、同大統領が批判者たちの死の責任を取ったことはない。
野党の元党首でプーチン大統領を激しく批判していたアレクセイ・ナワリヌイは2020年、ロシア政府が開発した神経剤ノビチョクによる毒殺未遂に遭った。この事件について、当時のアンゲラ・メルケル独首相は、ナワリヌイを「黙らせる」ための攻撃だと非難した。
ロシアの二重スパイだったセルゲイ・スクリパリも2018年、ノビチョクで攻撃された4人のうちの1人となった。ロシア当局はこの事件の責任を取らなかったが、当時のテリーザ・メイ英首相は、この攻撃は「ロシア国家の上層部で」承認された可能性が高い暗殺未遂だったと指摘した。
ロシアの元スパイでプーチン批判者のアレクサンドル・リトビネンコは2006年、英ロンドンで放射性金属のポロニウムによって毒殺された。英国の公的な取り調べでは、プーチン大統領自身がリトビネンコの殺害を承認していた可能性が高いことが判明した。
ロシア軍に対する人権訴訟でチェチェン市民の代理人を務めていた人権派弁護士のスタニスラフ・マルケロフと、プーチン大統領に批判的な記事を書いていた記者のアナスタシア・バブロワは2009年、ロシア大統領府(クレムリン)近郊で射殺された。
プリゴジンが6月にワグネルの傭兵を率いてモスクワに進軍する短期間の武装反乱を起こしたことを受け、米国土安全保障諮問評議会(HSAC)のドミトリー・アルペロビッチは米CNNに対し「プーチンは何よりも忠誠心を重んじる」と語った。「プーチンの下では盗みを働くことも、殺人を犯すことも、犯罪者になることもできる。だが、不誠実であることだけは許されない」
ロシア当局によると、プリゴジンは8月23日にモスクワ北西トベリ州で墜落した小型ジェット機の搭乗名簿に載っていた。乗員3人を含む搭乗者10人全員が死亡したという。ロシア連邦航空輸送庁が国営RIAノーボスチ通信にプリゴジンの死亡を確認したにもかかわらず、プリゴジンがまだ生きているのではないかとみる向きもある。
いずれにせよ、プリゴジンの死は突然起きたことではない。プリゴジンはプーチン大統領とかつて親密な関係にあったが、最近の反乱で両者の間に緊張が生じていた。プリゴジンは6月、プーチン大統領に強力な挑戦を仕かけ、モスクワに到達しそうになったが、突然、進軍を中止することに同意した。
両者の関係は30年ほど前にさかのぼる。プリゴジンが営むケータリング事業がロシア政府との契約を獲得したことで、囚人からレストラン経営者に転身したプリゴジンが「プーチンの料理人」として知られるようになったのだ。
プリゴジンは2014年以降、約2万5000人の傭兵を擁するワグネルを率いることで、政府を支援してきた。ワグネルは、ウクライナ侵攻の最前線で最も激しい戦闘に参加したことで知られている。だが、プリゴジンはロシア政府がワグネルの傭兵への攻撃を命じたと主張し、反乱を引き起こした。その後、ワグネルをベラルーシに移転させる協定をプーチン大統領と結んだとして、反乱は終結した。ところが、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、プリゴジンは国内にいなかったと説明。反乱に終止符を打ったのがどのような取り決めであったにせよ、その正確な条件もわかっていない。
英当局が英BBCに語ったところによると、プリゴジンが死亡した墜落事故の背後には、ロシアの国内情報機関である連邦保安庁(FSB)が関与している可能性が高い。匿名でBBCの取材に応じた国防筋は、プリゴジンはプーチン大統領に対する不誠実な態度が原因で狙われたと述べた。
●「中東の火薬庫」のもう一つの戦争…安保・経済リスクの再点検を 10/9
「中東の火薬庫」ガザ地区のパレスチナ武装組織ハマスが一昨日イスラエルに数千発のロケット砲を打ち込み両側が戦争局面に突入した。昨日はレバノン内のイスラム武装勢力ヒズボラが迫撃砲でイスラエルを攻撃して戦争拡大の様相を呈している。ウクライナ戦争が長期化する中でもう一つの戦争の炎が中東に広がり国際政治・経済に同時に暗雲が立ち込めている局面だ。
今回の武力衝突はイスラエルの安息日に合わせてハマスが「アル・アクサ・ストーム(Al Aqsa Storm)作戦」を敢行してイスラエル側に数千発のロケット砲を発射したことで始まった。数百人のハマス武装兵力は陸・海・空の3面からイスラエル領域に進入して、軍人と民間人を人質に取った。イスラエルも特別非常事態を宣言して「鉄剣(Swords of Iron)作戦」で大々的な反撃に出て両側の死亡者がすでに900人を超えた。
イスラエルのネタニヤフ首相は昨日、「ハマスがいる悪の都市を廃虚にする」と宣言した。ハマスも人質に取ったイスラエル民間人などをガザ地区全域に分散させて背水の陣を敷いた。ロシアのウクライナ侵攻以降、権威主義陣営と米国中心の自由陣営が対立する状況なので仲裁も容易ではない。
今回の衝突が長期化するという展望も出ている。今回の衝突の原因の一つとして、キリスト教・ユダヤ教・イスラム教三宗教の聖地である東エルサレム聖殿山の中にあるアル・アクサ寺院を巡る葛藤が挙げられている。イスラエル警察は4月、アル=アクサー・モスクでラマダンの夕方の祈りを捧げていたパレスチナ住民に閃光弾を発射して追い出した。当時シーア派であるシリアのヒズボラがイスラエルに向かってロケットを発射したが、今回スンニ派であるハマスと手を組んだ形だ。
2020年、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が修交したことに続き、最近ではイスラエルがイスラム・スンニー派の宗主国であるサウジアラビアとの関係正常化交渉に速度を出してハマスなどが反発してきた。特にサウジアラビアとも関係がギクシャクしているイスラム・シーア派宗主国のイランがハマスとヒズボラをそそのかして中東の平和を揺さぶろうとしたのではないかという分析も出ている。
全世界が関わっている最近のウクライナ戦争はもちろん、中東の武力衝突は対岸の火事と見ることはできない。何よりも産油国が集中している中東の武力紛争は韓国経済にとって悪材料だ。韓国政府は海外同胞の安全を守り、戦況に注目しながら対応シナリオを先制的に用意しなければならない。敵性国家とテロ勢力に囲まれたイスラエルの境遇は我々の安保状況も振り返らせる。世界最高水準というイスラエル情報機関モサドでさえ今回の奇襲攻撃を予想することができず、ロケット防御システム「アイアンドーム」にも穴が空いた。何よりも韓国は、もう一つの戦争が米国など自由民主同盟の関心と対応能力を分散させる間、北朝鮮の挑発拡張にも万全の備えを整えておかなくてはならない。
●砲弾だけでなくロシアに足りない“砲身” “共食い”で凌ぐロシア戦車部隊 10/9
長引くウクライナ戦争の中でロシア軍の軍事物資が不足していることが度々報じられてきた。中でも今回は陸地戦の要、大砲、その“砲身”の話だ。
「ウクライナ軍はロシア軍の大砲を狙って攻撃」
ロシア軍兵器の残骸をとらえた写真がある。ウクライナの国防省が公表したものだ。そこに映し出された兵器は戦車に似ているが“自走砲”と呼ばれるものだ。興味深いのは砲弾を発射する大砲の筒の部分“砲身”が外部から破壊されたというよりも、内部から破裂したように見えることだ。
つまりウクライナ軍の攻撃で破壊されたのではなく、暴発もしくは消耗による破裂だろうと考えられる。大砲の砲身は一般に1日200発撃った場合、2週間程度で消耗するという。しかしロシア軍は古い砲身を使い続けているらしい。
ロシアの軍事情報に精通するウクライナのアナリストに聞いた。
政治軍事アナリスト オレキサンドル・コワレンコ氏「ロシア軍はソ連時代の古典的な戦闘方法を採用していて1日の砲撃数が非常に多いのだが、当初使用していた兵器は消耗してしまった。今すべての大砲の砲身が不足している。砲身は弾薬並みに不足している。(中略)ウクライナ軍はロシア軍の大砲を狙って攻撃し、砲身を修理できないほどの数破壊することによって戦地で砲身が足りなくなるようにしている。特定の戦地で砲身や弾薬が足りなくなればロシア軍の攻撃が減るからだ…」
大砲をピンポイントで狙う戦法は功を奏し、今年に入ってロシア軍の大砲は急激に消耗している。しかしロシアではりゅう弾砲などの大砲が大規模生産されていない。
「寿命の尽きた兵器から取り外したモノ」
コワレンコ氏「この1年半でロシア軍は多くの砲身を失ったため、倉庫内に眠っていたソ連時代の砲身を蔵出しして使わざるを得なくなった。倉庫にある兵器から砲身を取り外して、今使ってる車両にくっ付けるだけだ。倉庫に保管されていた砲身は新品ではなく多くが寿命の尽きた兵器から取り外した物だ。保管状態は良くなく、金属疲労もみられる。寿命の尽きた砲身は破裂する可能性もあるし、砲身の内部で砲弾が暴発する可能性もある。」
実際に衛星からでロシア内の基地を写した写真を分析すると戦前に152ミリ自走砲が298両あった駐機場に今年5月は155両に減っていて、そのうち砲身が残っている車両はわずか4両だけになっている。
RUSI日本特別代表 秋元千明氏「自動小銃でも撃ち続ければ熱を持つので銃を交換しないと危ない。運動エネルギーで発射する筒を持った兵器は定期的に交換しないと事故になる。ということで、どんどん撃つロシアは頻繁に砲身を交換したので消耗した。新しく作るのではなくすでにあるものを取り外して交換する“共食い”というやり方でやっている。もうひとつの理由は戦術によるもの。ウクライナが防衛線を突破するのにいちばん苦労したのは地雷で、これを撤去しないと進めない。機械で処理することもあるんですが手作業でやらなきゃならないことが多い。その時砲撃で邪魔してくるわけです。従ってウクライナとしては前進するために大砲を潰す必要があって、集中的にロシアの大砲陣地を一つ一つ叩いた。これが功を奏した…」
「一番増産が難しいのは・・・、非常に高度な冶金技術が必要な砲身」
ウクライナ軍は先月だけで、これまでで最多の900以上のロシア軍の砲身を破壊した。
コワレンコ氏「ロシア軍の攻撃の質はすでに下がっている。ウクライナ軍の平均射程30kmに対してロシア軍は射程15km。精度も違う。ウクライナ軍はロシア運より精度が高く、射程の長い兵器を使って対砲兵戦を始めている。」
兵器の消耗は止まらない。一方で増産はできるものとできないものがあるという。
東京大学先端科学研究センター 小泉悠専任講師「ロシアがこの1年半、“頑張るぞ”と言って増産できるものとできないものがある。増産し易いのは大砲の弾。ショイグ国防大臣が8倍って言ってるくらい比較的簡単であろうと…。ロシアの軍需産業は戦時動員のための準備が義務付けられているので普段使わない工作機械も資材もある程度持ってる。逆に一番増産が難しいのは西側の技術に頼るハイテク製品。それと、非常に高度な冶金技術が必要な砲身なんかなんです。(中略)ただあと1年くらいは予備を引っ張り出してくることでもつ。ロシアの在庫の力は侮れない。あと1年持たせれば、砲身の新しい生産ラインを作れるかもしれない。なのでロシア軍がもの凄く苦しいことは間違いないが、これで瓦解寸前とは思わない…」
ロシアにも2か所、砲身を作れる工場があるというが、冶金技術から見て質の高い砲身を作ることが可能かは甚だ疑問だと堤伸輔氏は言う。
国際情報誌『フォーサイト』元編集長 堤伸輔氏「砲身の寿命1500発から2500発というのは、(高度な冶金工学に基づく)精巧な金属で造られたモノであって、レベルの低い作り方では…。でっかい鉄工所があればいいってものじゃなく、小さい溶鉱炉でいいから精度の高い金属を作らなきゃいけない。つまり、精度の低い砲身では寿命はもっと短いかもしれない。それを使わなければならないロシア兵は相当恐怖心を持って撃ってるんだろうなぁと…」
●「一帯一路」に対抗する 米欧の陸海路建設構想 10/9
9月9日付のFT紙の解説記事‘US and EU back new India-Middle East transport corridor’が、主要20カ国・地域(G20)首脳会議の脇で米欧首脳が、インドから中東を経て欧州に至る海陸の交通路の建設を支援することに合意したと報じ、貧困諸国を債務の罠に陥れる不透明な中国の「一帯一路」より、遥かに評価が高いとしている。要旨は次の通り。
米国と欧州連合(EU)は、中東から地中海に至る地域における中国の経済的影響力に対抗するため、インド・中東・地中海を結ぶ新たな海陸交通回廊の開発を支援することに合意した。この計画は、9月9日にニューデリーで開催されたG20首脳会議の議場外で、バイデン、モディ、ムハンマド・ビン・サルマンを含む諸首脳が合意した覚書に基づき開始される。
提案されている回廊は、新しい海底ケーブルやエネルギー輸送のためのインフラも含むプロジェクトで、インドからアラビア海を経てアラブ首長国連邦(UAE)まで伸び、その後サウジ、ヨルダン、イスラエルを横断してヨーロッパに至るものである。 義務的な財政支出の約束は未だないが、参加諸国は今後60日間の間に「行動計画」を策定することに合意した。
欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、「プロジェクトはインド、アラビア湾、ヨーロッパを結ぶこれまでで最も直接的な連絡路となるだろう。これは複数の大陸と複数の文明世界を結ぶグリーンでデジタルな橋だ」と述べた。
米国にとって、このプロジェクトは、UAEやサウジアラビアを含むアラブ地域に存在する米国と伝統的に協力関係にある諸国が中国、インドその他のアジアの大国と関係を深めている中、この地域における中国の影響力扶植への対抗策となるであろう。
EU当局者らは、この協力は、特にロシアの対ウクライナ戦争に対抗すべく、EUが湾岸諸国との貿易投資関係を深めようとする取り組みの中核である、としている。
EUは、中国の一帯一路構想に対抗し、主要な貿易相手国における欧州の権益を守るために始めた「グローバル・ゲートウェイ・プロジェクト」を通じ、2021年から27年までの間に海外インフラへの投資のために最大3000億ユーロを準備している。
このプロジェクトは、貧しい国々を債務の罠に誘い込み不透明であると酷評されている中国版の「一帯一路」構想が資金供与するインフラプロジェクトとは対照的だ。ファイナー米国家安全保障副補佐官は、「このプロジェクトは、水準が高く、強圧的でなく、何処かの国に何かを強いるものではないため、関係国からだけでなく世界中から高い評価を得ている」と語った。

インフラ建設は、経済支援、武器供与などの「実弾」の供与を通じた外交の中でも経済的インパクトが大きく、かつてわが国は今より積極的にアジアをはじめ多くの途上諸国にそうした支援を提供し、受益国の経済成長を促し、それを重要な外交手段の一つとしてきた。
日本が支援し急速な経済成長を遂げた諸国の中に中国も含まれるが、10年前頃から中国は欧州との間を繋ぐインフラ供与の「一帯一路」構想をその対外政策の表看板に掲げ、そのルート上の諸国に対し、中国が資金を貸し与えるので、それを受領すれば中国と同様に経済成長を享受できる、と魅了してきた。
東南アジアでも、昆明からシンガポールに至る高速鉄道計画を示し、クアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道計画がマレーシアとシンガポール政府によって発表された折には、高速鉄道分野の草分けである日本の新幹線に対抗する勢いで、「一帯一路」構想を激しくぶつけてきた。
上記の記事も言うように、その構想は各国の政治指導者を「不透明な」政治判断に誘い込み(マレーシアのナジブ政権時代には賄賂が横行した)、その結果としてそれら諸国は経済合理性から外れた借金を負うことになった。「債務の罠」にはまった途上国に対し、中国は「借金の形」に「一帯一路」のルート上に港湾などの利用権の提供を求め、中国への外交的傾斜を誘導してきた。世界はこうした事態を安全保障の懸念と感じるまでになった。
なぜ、日本が参画しないのか
過去数年、中国はブラジル、ロシア、インド、南アフリカとの新興5カ国(BRICS)や上海協力機構などを通じ、中央アジア、中東、アフリカ、中南米への更なる影響力を急速に拡大しつつあるが、この動きに対し、米国や欧州諸国が具体的対策を講じるのはやや遅きに失した感がある。しかし、手遅れというわけではないのだろう。例えば最近、イタリアのメローニ首相が一帯一路からの脱退の意向を明らかにしたと報じられている。
米当局者によれば、G20の脇で合意された上記の構想は、中東諸国を鉄道で結び、港でインドと接続させることで輸送時間や燃料の使用量を削減し、湾岸諸国から欧州へのエネルギー・貿易の流れを後押しすることが狙いだという。
署名された覚書によれば、この構想はインドとアラビア湾を結ぶ東側回廊と、アラビア湾と欧州を結ぶ北側回廊の2回廊で構成される。鉄道ルートに沿って、参加国は電力・データ回線用のケーブルや、発電に使用する再生可能エネルギー由来の水素パイプラインを敷設する予定だという。
残念なのは日本が参加していないことである。中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗すべく、米欧諸国が協力して実施しようとする世界的なインフラ整備プロジェクトに対し、質の高いインフラ整備を訴える外交努力を続けてきたわが国は、この米欧主導のプロジェクトに参画すべきだったのではないだろうか。 
●習主席「中国とアメリカは平和共存すべき」米シューマー院内総務ら議員団 10/9
中国の習近平国家主席は9日、アメリカの民主党シューマー院内総務が率いる超党派の議員団と会談しました。この中で習氏は「中国とアメリカは平和的に共存すべき」と述べ、関係改善に意欲を見せました。
中国国営の中央テレビによりますと、習近平国家主席は9日午後、人民大会堂で王毅政治局員兼外相と共にアメリカ民主党のシューマー院内総務が率いる超党派議員団と会談しました。
会談で習主席は「中国とアメリカは互いに尊重し合い平和的に共存し、ウィンウィンを目指して協力すべきだ。それは、両大国が正しく付き合う道を見出すためだ」と述べ、両国関係の安定と関係改善に意欲を見せました。
そのうえで「競争や対立は時代の趨勢にそぐわず、両国の経済は深くつながっていて、互いの発展から恩恵を受けることができる」とした上で、気候変動問題や国際的な問題解決への協力を呼びかけました。
一方、シューマー氏は「アメリカは中国との対立を求めておらず、相互尊重の精神で対話と意思疎通を強化することを望んでいる」と関係改善への意欲を示したということです。
アメリカと中国は11月の国際会議に合わせて1年ぶりとなる米中首脳会談を実施することを模索していて、今回の議員団の訪中は、その地ならしとみられます。
中国の習近平国家主席と会談した超党派のアメリカの上院議員団は9日、北京で記者会見しました。
議員団を率いた民主党のシューマー院内総務は、習主席と「様々な問題について率直に議論した」として、中国国内でのアメリカ企業に対する公正な競争条件の確保や、アメリカで社会問題になっている合成麻薬「フェンタニル」の取り締まり強化を求めたことを明らかにしました。
また、中東情勢をめぐり、イスラム組織「ハマス」による攻撃を受けたイスラエルを支援するよう促したうえで、イスラエルと敵対するイランに対して中国が影響力を行使し、地域の緊張を抑えるよう伝えたとしています。
さらにウクライナ情勢では、「ロシアのような無法国家と組むことは中国の大義にそぐわない」として、ロシアと連携することのないようけん制したことも明らかにしました。

 

●熟練工は軍、高学歴事務職は国外へ 「作戦」長期化に悩むロシア企業 10/10
2022年に始まったウクライナへの「特別軍事作戦」の収束が見えない中、労働力の一部は国外に流出し、一部は軍に取られ、死傷者も出ている。これがロシアの企業の現場をいかに揺るがし、労働市場や人口構造にどんな影響を与えるのか、現地で取材した。
チーズ工場の熟練工ほぼ全員が従軍
招集令状は昨秋の朝、そのチーズ工場に突然送られてきた。対象となったのは農場でトラクターの運転や修理を担当する熟練工の9人。「(農場に関係する)熟練工のほぼ全員が従軍させられた。一時期は大変だったが、何とかやりくりしている」
ロシアの首都に隣接するモスクワ州の酪農場を兼ねるこの工場では約500人が働く。経営者のオレグ・シロータさん(35)は、チーズ棚の前で自社に降りかかってきた難事を思い返した。
ロシアがウクライナで続けている「特別軍事作戦」に関連して、国内各地の住民が軍に招集されている。特に兵力不足が顕著になった2022年9月には「部分的動員令」が発動されて、政府発表によれば30万人が入隊させられた。
その際、人員の招集義務を負わされた自治体が地元企業に一定数の従業員を派遣するように要求。軍では機械に強い人材が必要とされており、このチーズ工場の熟練工のような従業員が対象にされることが多かった。
別の製造業のロシア企業もメカニック部門の人材を提供するように強いられた。今、この社の電子版の社内報には、ウクライナの前線に送られた社員たちの最新情報が載せられている。記者(大前)が関係者に一部を見せてもらうと、少しぎこちない様子でヘルメットをかぶった軍服姿の男性たちの姿が映っていた。
このときの社員たちは戦闘員として招集されたわけではなく、最前線には送られなかった。そのため、この時点では「まだ死傷者は出ていない」ということだった。
一方、部分的動員令が発動された当時、この社の一部の事務職員は、熟練工たちとは対照的な動きを見せたという。軍に招集されることを恐れた一部の男性職員は、部分的動員令の発令から数日のうちに、ロシアの近隣諸国を中心とした外国へと出国を急いだ。中には国外で落ち着いた後、電子メールを通じて辞表を提出してきた職員もいた。
ロシアが特別軍事作戦を始めた後、100万人を超すロシア国民が国外に逃れたとの推計もある。特にIT関係などの職に就く人たちは本国を離れても仕事を続けられる利点を生かし、出国の波に乗った。
だが現場で働かざるを得ない熟練工たちに、そんな選択肢はなかった。また多くの熟練工たちが日本の小中高に相当する一貫校を出た後、専門学校を卒業し、職に就いている。同じ企業で働いていても、大卒は安全な国外に出て、「比較的に学歴の低い職員ばかりが前線に送られた」との声は、この製造企業でも聞こえてきた。
●「ロシア利する」と警鐘 イスラエル攻撃、イランを批判 ウクライナ大統領 10/10
ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、パレスチナのイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃について「ロシアは中東で戦争を引き起こすことに関心を持っている」と主張し、ウクライナ侵攻を続けるプーチン政権を利するものだとして警鐘を鳴らした。
動画メッセージで述べた。
ゼレンスキー氏は「新たな苦痛の種が世界の団結を弱め、欧州の自由を破壊することにつながる」と指摘。さらに「ロシアの友好国イランが、イスラエルの攻撃者(ハマス)に公然と協力している」と語った。イランは、ハマスによる攻撃の立案に関与したと伝えられている。ウクライナへの攻撃に使用される自爆ドローンも供給しており、ゼレンスキー政権はイランに不信感を抱いている。 
●ウクライナ軍の補給支える鉄道、ロシアの攻撃ものともせず走り続ける 10/10
軍用車両を積んだウクライナの列車に対するロシア軍の攻撃は、ロシアがウクライナで拡大した1年8カ月近くにおよぶ戦争を子細に観察している人々の間で、警鐘のように響くものだった。
というのも、ウクライナは部隊や装備の輸送を含めて、輸送を国営ウクライナ鉄道に全面的に頼っているからだ。鉄道への依存度はほとんどの国よりもかなり高いだろう。
ロシア軍がウクライナの列車を計画的に攻撃すれば、ウクライナの戦争努力をまひさせることはできるかもしれない。9月30日かそれ以前にウクライナ南部ザポリージャ市近郊で行われたこの攻撃は、ウクライナ軍の兵站を寸断しようとロシア軍が組織的な行動に乗り出したことを示すものだろうか。
そうではない。この攻撃が目を引いているのは、ロシア軍による新たな対鉄道作戦を意味するからではなく、単にロシア側のドローン(無人機)によって上空から鮮明に撮影されていたからにすぎない。
ロシア軍は実のところ、これまでもずっとウクライナの鉄道を攻撃目標にしてきた。2022年2月24日に戦争を拡大した直後の一時期は鉄道を無視していたが、それは単純に鉄道もすぐに押さえられると思い込んでいたからだ。
ロシア軍は爆弾やロケット弾、巡航ミサイル、ドローンといった手段で、ウクライナの数十両の列車や鉄道駅、車両基地、鉄道橋、交換駅などを攻撃してきた。フォーリン・ポリシー誌によると、ウクライナ鉄道の職員22万人のうち、およそ400人がロシアの攻撃で亡くなっている。
だが、ロシア軍はどんなに攻撃してもウクライナの鉄道網全体を破壊することはできない。なぜならウクライナの鉄道網は広大で耐久力があるからだ。鉄道路線の総延長はおよそ2万4000kmに及び、欧州の国では3番目に長い。そこを2000両の機関車が計9万両の客車や貨車を牽引して走り、1500の駅に乗り入れている。
ロシア側はウクライナに多くの攻撃目標があるが、重要な結節点、とりわけ動く結節点を狙うのに苦慮している。今回の攻撃では重量4トンの短距離弾道ミサイル「イスカンデル」が使われたとされ、列車の近くに着弾して機関車と、貨車に積まれていた軍用トラック12台の一部が損傷した可能性があるが、この列車が停車中だった点に留意すべきだ。
重要な鉄道施設は西側製防空システムでカバー済み
ロシア軍がウクライナ鉄道を攻撃目標にするようになったのは2022年春にさかのぼる。ウクライナ軍が首都キーウに迫るロシア軍の機甲部隊を撃退し、2週間でウクライナを「非武装化」するというロシア側の目標を踏みにじってみせた後のことだ。
ロシアと親ロシア派勢力は以後、ウクライナ鉄道を破壊するという決意を再三新たにしている。直近では3月、ザポリージャ州の親ロ派幹部ウラジーミル・ロゴフが「鉄道は(ウクライナの)体制の部隊移動能力にとってきわめて重要だ」とロシア国営メディアに語っている。
しかし、ロシアのスパイ衛星はウクライナ鉄道の何千、何万という数の列車の動きを確実に追跡することはできない。たとえ、ウクライナ軍の兵士らを大量に輸送するために列車が集結している場合であってもだ。英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のリポートによれば、ウクライナ鉄道の列車は2022年3月、ロシアの衛星に気づかれずに1日に3〜4個旅団を移動させていた。
仮にロシア側がウクライナの列車を確実に追跡し、優先的に攻撃できたとしても、ウクライナ空軍はすでに最も重要な鉄道結節点を西側製の新たな防空システムで守っている。
さらに言えば、ロシア側の攻撃がたまたま防空を抜けて着弾し、被害を受けたとしても、ウクライナ側は迅速に復旧させるだろう。キーウ電気車両修理工場は、損傷した線路や橋、機関車、車両を修理するため140%の能力で稼働しているとのことだ。工場責任者のオレフ・ホロバシュチェンコは8月に「昨年は過去最多の車両を修理した」とフォーリン・ポリシーに話している。
つまり、ウクライナの列車は非常に困難な攻撃目標なのだ。機関車1両とその貨物がロシア軍の攻撃に遭ったからといって、ウクライナの鉄道網全体がこれまで以上に大きな危険にさらされるようになったわけではない。
●中東での戦争扇動、ロシアを利することに=ウクライナ大統領 10/10
ウクライナのゼレンスキー大統領は9日夜のビデオ演説で、世界の結束を弱めるため中東で戦争をあおることはロシアの利益になると述べた。
ロシアのプロパガンダ担当者が事態を「ほくそ笑んで」おり、「ロシアの同盟国」イランがイスラエルを攻撃する勢力を公然と支援していると指摘した。
「この全ては現在、世界が認識しているよりもはるかに大きな脅威となっている」とした上で「われわれは、この脅威に対抗する方法を知っている。必要な対策を準備している。最も重要なのは、最大限の世界的団結の必要性を訴えていることだ」と述べた。
ゼレンスキー氏は8日にイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談し「イスラエルと連帯している」と伝えた。
一方、ウクライナ国防省の情報総局は、ロシアの対外情報機関が中東紛争を利用して、ウクライナに対して行動を起こそうとしていると表明。ロシア側がウクライナでの戦闘で獲得した武器をパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスに渡したとし、後にウクライナが西側の武器をテロリストに流していると非難することを目的としていると指摘した。証拠は示していない。
●ウクライナ戦争の裏で燻る「新たな世界の火薬庫」が、別の戦争の“火種” 10/10
世界の目がウクライナに向いている間隙を突き、アルメニアとの係争地ナゴルノカラバフを電撃的に奪取したアゼルバイジャン。かような紛争の火種は、他の地域でもくすぶっているようです。元国連紛争調停官の島田さんが、米中ロという大国の影響力低下により「新たな世界の火薬庫」となりうる地域を挙げ、その注視すべき動向を詳細に解説。最悪の場合、世界を巻き込む終わりの見えない戦争に突入する可能性もあるとの見方を示しています。
次なる戦火はどこで上がるのか?各地でくすぶる紛争の火種
【世界の火薬庫】と聞いて、どの国・どの地域を思い浮かべるでしょうか?
私は旧ユーゴスラビアを含むバルカン半島をすぐに思い浮かべます(実際には「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれることが多いですが)。
実際に紛争調停の初めてのケースはコソボでしたし、紛争調停の世界に入るきっかけになったのは、先の旧ユーゴスラビアの崩壊とボスニア・ヘルツェゴビナにおける紛争でした。
また過去には「オーストリア・ハンガリー帝国の皇帝がサラエボで暗殺され(サラエボ事件)、そこから第1次世界大戦が勃発することになった」という“史実”も存在します。
しかし、そのバルカン半島諸国も、火薬庫と揶揄されるほどの不安定な緊張関係は現時点では存在せず、先のユーゴスラビア崩壊の悲劇以降、コソボ紛争を除けば、大きな武力紛争に発展していません。
ただそのコソボでまたセルビアとの武力紛争の可能性が急浮上してきました。アルメニアがナゴルノカラバフ紛争における完全敗北を認めざるを得なかったのとほぼ時を同じくして、9月24日にコソボ北部バニスカにかかる橋をセルビア系の武装勢力が封鎖し、コソボの警官を射殺したことに端を発し、コソボ特殊部隊と武装勢力との間で激しい戦闘が行われました。
セルビア政府は国境線沿いに重火器を装備した部隊を展開したのに対し、NATOはKFOR(コソボ治安維持部隊)を4,500人増派して対応に当たっていますが、コソボでの紛争ぼっ発以来、最大級の軍事的な対峙となっています。
今後、コソボ問題が大きな戦争に再度発展するかどうかは、コソボの後ろ盾である欧米諸国(国家承認してコソボの独立を承認)がセルビアを制裁対象にし、軍事的な行動を慎むように圧力をかけるかどうかにかかっているかもしれません。
元調停担当者として、本件の解決(できれば予防)にすでにお声がかかっておりますが、しっかりと状況を見極めたいと思います。
コソボを除けば比較的安定してきているバルカン半島情勢に代わり、ユーラシアがかなりきな臭くなってきました。
この地域の危うい安定は、すでに1917年のロシア革命によってできたソビエト連邦の成立以降、何度も民族問題・独立問題によって脅かされ、1991年のソビエト連邦崩壊と共和国の独立の連発に繋がり、“帝国”は崩壊しています。
その中には今、ロシアによる侵攻を受けているウクライナ(2022年から)、チェチェン(2000年)、ジョージア(2008年当時はグルジア)などが含まれ、さらにはロシアと微妙な距離感を保つスタン系の国々(カザフスタン、キルギスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタンなど)や、ナゴルノカラバフ紛争の主役であるアゼルバイジャンとアルメニアも含まれます。
それらは各国が抱く飽くなき領土とコントロールへの欲望の表れであり、ユーラシア諸国を常に悩ませる民族問題でもあります。
ナゴルノカラバフ紛争やウクライナでの戦争は、地域内のみならず、中東欧諸国の内政問題をクローズアップし、世界を分断する要素になっています。
ロシア革命以前に遡るナゴルノカラバフ紛争の芽
まずナゴルノカラバフ紛争ですが、僅か4,400平方キロメートルほどの地域の領有権を巡って長く争われてきています。
その争いの芽はもうロシア革命以前に遡ることができるようですが、ロシア革命後、ソビエト連邦の中央集権国家システムの“おかげ”で、一応は平静を保っていたように思います。
ただ、この時期にアルメニア系の住民の移住が盛んになり、1988年にゴルバチョフ政権下でのペレストロイカで共和国の自治権を拡大する方針が執られたのを機に、アルメニア住民が数にものを言わせてナゴルノカラバフ共和国(アルツァフ共和国)を設立し、実効支配体制を敷きます。
しかし、ここで問題となるのは、国際法上、ナゴルノカラバフ地域はアゼルバイジャン領とされており、それは今も変わりませんが、ナゴルノカラバフ共和国の一方的な設立と自治権の確立を狙っていたアルメニアが戦闘を開始し、アゼルバイジャンと激しい戦闘を行ったのが、1988年から1994年まで続いた第1次ナゴルノカラバフ紛争です。
そこでは100万人超の難民が発生し、双方合わせて3万人を超す死者がでましたが、その際、一般市民の多くも犠牲になったと言われています。
1994年に実質ソビエト連邦の後継者を自任したロシアが仲介し、ビシュケク議定書という停戦合意が結ばれましたが、戦争はアルメニア側の勝利だったがゆえにナゴルノカラバフ共和国の存在は黙認される代わりに、領有権は変わらずアゼルバイジャンが持つという不可思議な内容となりました。
それゆえでしょうか。アゼルバイジャンとアルメニア間で平和条約は締結できず、次第にアゼルバイジャンとナゴルノカラバフ共和国との接触線(軍事境界線)が武装化され、第2次ナゴルノカラバフ紛争が2020年9月に勃発する頃には、世界でも三本の指に入る武装軍事境界線になっていました。
1994年のビシュケク議定書で屈辱的な扱いを受けたと感じているアゼルバイジャンは、バクーの油田の開発を通じて経済力を一気に高めたのと同時に、民族そして宗教的にも近い隣国トルコの支援を受け、軍事力も大幅にupした結果、第2次ナゴルノカラバフ紛争では圧勝し、面目躍如となったのは皆さんもご記憶に新しいかと思います。
私はこの際の停戦合意の作成に関わりましたが、ここでも残念ながら終戦を意味する平和条約は締結できず、その後も、トルコとロシアの平和維持部隊の駐留を受けても、アゼルバイジャンとアルメニア側(ナゴルノカラバフ共和国)の小競り合いは続いていました。残念ながら、2022年2月24日以降は、ロシアによるウクライナ侵攻を機に、欧米諸国の関心が失われることにつながり、効果的な抑止力は働かない事態に陥りました。
その結果、ウクライナ戦争に忙殺されているロシアも欧米諸国も手出しできないと判断したのか、アゼルバイジャン側が今年9月19日に一気にナゴルノカラバフ共和国を攻撃し、次の日にはアルメニア側の全面降伏と武装解除を受けて、一応武力衝突は終結し、9月28日には9月1日付でナゴルノカラバフ共和国の大統領になったサンベル・シャラフラマニャン氏が「2024年1月1日をもってすべての行政機関を解散する」と宣言したことで、アゼルバイジャン側の全面勝利に終わりました。
これで【ナゴルノカラバフ紛争はついに終結し、幕を閉じる】という見込みが示されました。
またも「傍観するだけ」のロシアを非難したアルメニア
9月30日までの3日間で全12万人のアルメニア系住民のうち、10万人以上が本国アルメニアに向けてナゴルノカラバフを脱出し、来年の元旦を待つことなく、事態が収束するとの期待が示されたのですが、10月1日にアゼルバイジャン側がハルトゥニャン前大統領を含む300人以上を国際手配し、犯罪者として訴追するという行動に出たことで、再度、アルメニアとの緊張が高まっています。
アルメニアのパシニャン首相は「これはアルメニア系勢力を根絶やしにするためのアゼルバイジャン側の企て、テロである」と非難すると同時に、軍事同盟国であるロシアが“今回も”アルメニアを助けてくれなかったことを非難する声明を出しました。
これは今回の完全敗北を受けて、再度パシニャン首相への非難が国内で高まってきていることに対する対応と割り引くことは可能ですが、9月11日にはすでに小規模ながらアメリカ軍との軍事演習を敢行し、加えて隣国イランに接近して、アゼルバイジャン側に圧力をかける動きに出ています。
ちなみにイランは、皆さんもご存じの通り、アゼルバイジャンとは非常に近く、イランのシーア派の起こりはアゼルバイジャンであることが分かっており、今でもイラン国民の25%ほどがアゼルバイジャン系であることから、アルメニアがイランと接近することは、アゼルバイジャンに対して大きな疑念と心理的プレッシャーをかけることに繋がります。
でもどうしてイランはアルメニアに接近したのでしょうか?それはアゼルバイジャン政府が、イランにとっては宿敵のイスラエルからの軍事支援を(トルコの仲介で)受けることになり、それがイラン政府に「イスラエルは隣国アゼルバイジャンを通じてイランを攻撃する気ではないか」とイランを激怒させたからであると分析できます。
ナゴルノカラバフ紛争はアゼルバイジャン側の勝利に終わりそうですが、今後、アゼルバイジャンを核にトルコ、イランなどの地域大国を巻き込んだ情勢の不安定化につながることが懸念されます。
ちなみにナゴルノカラバフは、先述の通り、4,400平方キロメートルと決して広くはないのですが、石油と天然ガスパイプラインの回廊に近く、またロシア・トルコ・イランという強国の間に位置するため、コーカサス・中央アジア・欧州にまたがる地政学リスク・利害関係は自ずと大きくなることがお分かりになるかと思います。
少しこじつけと言えるかもしれませんが、今後、バルカン半島に並ぶ世界・地域の火薬庫になりそうです。
緊張に油を注ぐような真似に出たカザフスタン
コーカサスを世界の火薬庫にかえてしまう一端を担いそうなのが、スタン系の雄であるカザフスタンです。
トカエフ大統領が国内でデモに攻撃された際、プーチン大統領はロシア軍を派遣してトカエフ大統領の窮地を救ったため、トカエフ大統領はプーチン大統領に借りがあるため、無条件でプーチン大統領支持かと思いきや、ウクライナ侵攻を巡っては決してそうとは言えず、欧米諸国とその仲間たちによる対ロ制裁には加わらないものの、ロシアによるウクライナ東南部4州の併合は承認せず、これまでにもプーチン大統領が招集する会議でもあからさまに拒絶するそぶりを見せて、ロシアとの緊張を高めているように見えます。
その緊張に油に火を注ぐような真似に出たのが、先週9月28日にベルリンを訪問した際、ショルツ独首相に対して「カザフスタンはロシアの制裁回避・迂回を支持しない。そしてカザフスタンは対ロ制裁の方針に沿った行動を取る」と述べ、「カザフスタンは制裁を遵守するために関係機関と連絡を取っていて、制裁回避を目的とした行動が起きる可能性について、ドイツが心配する必要はない」と言ってのけ、ロシア、そしてプーチン大統領への決別を演出してみました。
トカエフに対するプーチンの不思議な対応
しかし、トカエフ大統領、そしてカザフスタンの本心はどこにあるのでしょうか?
表面的には【経済発展と海外投資の獲得を目指した改革路線のアピール】ではないかと考えます。
ロシアとの近すぎるイメージを払しょくするともに、“ロシアはもう単独では、カザフスタンを含む中央アジア・コーカサスという旧ソ連圏の面倒を見ることが出来ない”という現実を受けてのカザフスタン生存のための策と考えます。
ちなみにコーカサスの地図を今一度見ていただければと思いますが、カザフスタンはヨーロッパとアジアの交差点に位置し、輸送と貿易の要衝地であり、中国と中央アジア諸国と欧州各国を結ぶ貨物の80%以上がカザフスタンを経由するという戦略的な位置づけにあります。それは例えるならば、ボスポラス海峡を擁するトルコに似た位置づけでしょうか。
そして今、計画中のインドから欧州への輸送ルート(南北アジア回廊)と、カスピ海を基点としたトルコ・ジョージア・アゼルバイジャンを経由する中国と欧州とを結びつけるカスピ海横断ルートの中心に位置するという【アジア・コーカサス・欧州の要衝】になり、地域におけるパワーハウスになろうという意図があります。
ロシアとは7,500キロメートルの国境線で接しており、軍事・経済両面で非常に密接なつながりを持つ“同盟国”であるため、このような態度はプーチン大統領を刺激し、「ウクライナの後はカザフスタンではないか」と予想する勢力もありますが、不思議とプーチン大統領はトカエフ大統領を虐めておらず、どちらかというとスタン系の国々を纏める立場を推奨しているようです。
スタン系の国々からすると、カザフスタンの経済的な興隆は自国への経済的な利益のspill over(おこぼれ)を期待できますし、ロシアにとってはスタン系の国々をまとめてくれることで、中央アジアの安定を今は保つことが出来るという利益を感じているようです。
中央アジアに進出してきていた中国が現在、経済的なスランプで停滞しており、アメリカもつながりは持つものの、ウクライナ問題と中国への対応、そして国内の政治情勢に忙殺されているため、中央アジアとコーカサスへの介入が低下していることを受け、今はカザフスタンに中央アジア・コーカサスの守りの固めを依頼しているようです。
とはいえ、プーチン大統領のことですから、裏切られたと感じ始めたら、トカエフ大統領の命運も分かりませんが。
対ロ包囲網とウクライナ支援から離脱するNATO加盟国
そしてその混乱は中東欧にも及んできているようです。
その典型例が9月30日に実施されたスロバキアの議会選挙において、対ウクライナ支援の停止とロシアとの関係の回復を旗印にするスメルが第一党となり、親EUでウクライナ支援を進めてきたプログレッシブ・スロバキア(PS)が第二党となったことで、NATO加盟国でありEUのメンバーでもあるスロバキアが、対ロ包囲網とウクライナ支援から離脱するのではないかとの懸念が広がっています。
このまま行けば、第1党となったスメルの党首で元首相のフィツォ氏に対し、大統領が組閣指令を与えることとなりますが、スメルも、第2党のPSもこの度の総選挙で過半数を取っていないため、必然的に今後、連立協議が行われることになります。
対ウクライナ支援疲れとロシア制裁による経済的なスランプと国民生活の困窮、そして資源国であるロシアとの関係修復という国民生活に密着した主張に、インフラによる生活苦に不満を持つ有権者の支持が集まったことになりますが、今後、成立する連立政権の性格によっては、EUとNATOにとって、対ロ政策とウクライナ支援の結束を一気に崩し乱す要素になるかもしれません。
連立協議は、フィツォ氏の主張と過去の犯罪歴の存在から混迷すると言われていますが、ウクライナの隣国の一つで内政上の混乱と反転が起き、ロシア・ウクライナ戦争の趨勢を決めかねない事態が起きていることは、まさにコーカサスから中央アジア、そして中東欧が新たな世界の火薬庫になりかねない危険を提示していることにつながるのではないかと思われます。
新旧の大国が国際情勢の緊迫化に対応できぬ危機的状況
欧米諸国は実質的にナゴルノカラバフで起きたことに関与せず、結果を黙認する態度に出たことで、アゼルバイジャンが一気にアルメニア人系勢力の追い出しに出ました。
もしコソボで高まる非常に危険な緊張と戦いに対して、欧州各国が無関心を貫くようなことがあれば、もしかしたらセルビアによるコソボへの攻撃を誘発し、再度、バルカン半島を欧州のみならず、世界の火薬庫に変える可能性が高まります。
その場合、中央アジア・コーカサスで高まる紛争に向けた緊張感と共鳴して、コーカサスとバルカン半島が火薬庫となり、再度、世界を巻き込む終わりの見えない紛争に突入することになるかもしれません。
期せずしてナゴルノカラバフとコソボ、そしてロシア・ウクライナの問題に関与することになっていますが、とても大変な状況になってきていることを実感しています。
アメリカの影響力が下がり、欧州は根本的に停滞に陥っていて他地域に構っていられない中、その好敵手となるはずの中国も国内経済のスランプゆえに積極的に他国の面倒を見ることが出来ず、ロシアはウクライナとの戦争に掛かり切りという状況下で、新旧の大国たちが国際情勢の緊迫化に有効に対応できない危機的な状況になっているように感じます。
今後、世界はどうなるのか?対応を見誤らないようにしないといけないと感じています。
●イスラエル「宣戦布告」で米国は難しい立場に、ウクライナとの同時支援 10/10
イスラム組織ハマスによる前例のない奇襲攻撃を受け、中東における米国の同盟国であるイスラエルは戦争状態を宣言した。米国はイスラエルとウクライナ両国を同時に支援するという難しい立場に立たされた。
「米国は今、非常に困難な状況にある非常に厳しい立場にいることは明らかだ」――そう語るのは米ニューヨーク大学グローバル・アフェアーズ・センターのキャロライン・キセイン副学部長だ。
米ニューヨーク大学 キセイン教授「バイデン政権は明確にイスラエル支持を表明している。バイデン氏はまた、軍事支援を行うとも言っている。その軍事支援がどのようなものかは、まだ決まっていない。米地上軍の派遣はないと想定するが、装備品に関しては、おそらく米国がイスラエルに提供している年間30億ドル(約4450億円)の支援を超える援助が行われるだろう」
米陸軍は9日、イスラエルとウクライナへの支援を同時に行うためには、米国防総省の軍需品の生産・調達計画への追加資金について、議会の承認が必要だと説明した。
キセイン教授「米国は選挙の年を迎える中、中東やウクライナの戦線を支援する必要に加えて、イランやロシアにも目を光らせなければならない。外交政策の専門家たちは非常に忙しくなるだろう」
米国の対イスラエル支援物資の第1弾は、数日中に到着する見通しだ。
●原油価格4%台の急騰…「中東戦争拡大すれば第3のインフレの波」 10/10
パレスチナ武装勢力ハマスによるイスラエル攻撃の余波で国際原油価格が4%ほど急騰した。戦争が長引いたり戦争が拡大する最悪のシナリオが原油価格急騰と株式市場の不安につながりかねないためだ。
ブルームバーグが9日に伝えたところによると、この日午前にニューヨーク商品取引所(NYMEX)で11月引き渡し分のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は前営業日より4%ほど上昇した1バレル=86ドルで取引された。北海産ブレント原油の場合、一時前営業日より5%以上値を上げた89ドルを記録したりもした。
専門家は戦争による原油価格上昇は一時的とみている。イスラエルとパレスチナとも原油生産地ではないため原油市場に直接的な影響を及ぼしはしないからだ。石油・ガス市場専門家のバンダナ・ハリ氏は「原油価格が条件反射的に上がることはあるが、事態がさらに拡大せず中東地域の石油・ガス供給に影響がない点が認識されれば価格は落ちつくだろう」と予想した。
問題は戦争が長期化したり他の中東地域へ戦争が拡大する時だ。イランがハマスの攻撃を支援したという報道が出てきてから衝突が拡大する可能性への懸念が大きくなった。サウジアラビアの減産の余波などで上昇したWTIとブレント原油価格は高金利の長期化で世界経済が鈍化しているという懸念から今月に入り10ドル以上下がった。米国との関係で雪解けに入ったイランが原油輸出を増やしたのも原油価格下落に一役買った。ところが米国がイランの原油輸出制裁を再び強化すれば国際原油価格は1バレル=100ドル以上に高騰する可能性があるとの見通しが出ている。
韓国の専門家が挙げる最悪のシナリオも中東諸国が戦争に巻き込まれ世界の石油供給に大きな支障が生じる状況だ。これはドル高・高金利状況に置かれた韓国経済には踏んだり蹴ったりの状況になりかねない。
原油を輸入して使わなければならない韓国の立場では原油輸入価格が上がり貿易赤字が悪化するほかない。貿易赤字により韓国からドルが抜け出る場合、ウォン安圧力がかかり韓国の物価がともに上がる悪循環が続く恐れがある。漢陽(ハニャン)大学経済学科のハ・ジュンギョン教授は「ここに高金利基調が長期化すれば昨年のロシアとウクライナの戦争の余波で経験したように原油高・ドル高・高金利の衝撃が再び発生する可能性がある」と予想した。
各国中央銀行は国際原油価格が急騰し新たなインフレ圧力として作用する可能性を注視している。世界的会計コンサルティング企業マザーズのチーフエコノミスト、ジョージ・ラガリアス氏は「世界経済の最も大きなリスクは『第3のインフレの波』が起きる可能性。中東情勢に緊張が高まればエネルギー価格が上昇し、インフレを統制しようとする中央銀行の努力を弱めることになる」と話した。特に物価上昇抑制とソフトランディングを同時に達成しようとする米連邦準備制度理事会(FRB)の計算が複雑になった。原油価格上昇により物価が上がれば基準金利を「さらに高く、さらに長く」維持する必要性が大きくなるが、同時に高金利で景気ハードランディングの懸念もともに大きくなった状況だからだ。
不安な中東情勢がすぐにアジアの証券市場に及ぼす影響は大きくなかった。「ハングルの日」の休日で韓国証券市場が休場したこの日、中国上海総合指数は前営業日比0.44%下落した3096.92で取引を終えた。これに対し香港ハンセン指数は0.18%上がった1万7517.4を記録した。台湾加権指数も0.41%と小幅に上昇した。日本の証券市場は「スポーツの日」で休場した。
●ウクライナ軍 南部の要衝奪還目指す ロシア軍 地雷敷設強化か 10/10
ウクライナ軍は南部ザポリージャ州でロシア軍が占拠する要衝の奪還を目指しています。これを防ごうとロシア軍は地雷の敷設作業を強化しているとの分析も出ていて、双方の攻防がさらに激しくなるとみられます。
ウクライナ国防省は8日、ウメロフ国防相が激戦となっている東部ドネツク州バフムト方面で軍の指揮所を訪問し、現地の指揮官から戦況の報告を受けるとともに兵士を激励したと発表しました。
また、ウクライナ軍は南部ザポリージャ州で反転攻勢を続けていて、国防省はロシア軍の拠点ベルボベの西側で部分的な成功を収めたとしています。
一方、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は8日、ウクライナ軍がすでに奪還したと発表したザポリージャ州ロボティネから、ベルボベにわたる前線で、ロシア軍が再び地雷の敷設作業を強化しているとする分析を発表しました。
新たな地雷の設置によってウクライナ軍の突破を阻止するねらいだと指摘していて、ウクライナ軍がさらに南方にある交通の要衝トクマクの奪還を目指す中、攻防がさらに激しくなるとみられます。
またウクライナ軍の参謀本部はロシア軍が8日、東部や南部など各地を砲撃したと発表し南部ヘルソン州の知事は9日、この砲撃で1人が死亡し、子ども2人を含む18人がけがをしたとSNSで発表するなど被害が相次いでいます。
●"ウクライナ疲れ?"懸念される支援の綻び 10/10
ロシアがウクライナに侵攻してから1年7か月あまり。ウクライナと隣国ポーランドが農産物の輸出入をめぐって対立するなど長期化に伴い支援疲れともいえる動きが各国で見られ始め、ウクライナ情勢への影響が懸念されます。
Q.ゼレンスキー大統領の行く手を阻んでいるのは投票箱のようですが?
はい。ポーランドは次の日曜日、15日に総選挙を控えていまして、これが政府の姿勢を強硬にさせています。これまでポーランドはウクライナを積極的に支援してきましたが、ロシアの侵攻でウクライナ産の穀物が黒海に代わり陸路東ヨーロッパ経由で輸出され、国内に安い穀物が流入したため与党の支持基盤である農家を守るためEUが輸入制限の期限とした先月半ば以降も独自に禁止措置を続けてきました。これをウクライナのゼレンスキー大統領が国連総会で批判したことにモラウィエツキ首相は激怒し、ウクライナへの新たな武器の供与を止めると表明、さらに大統領に対して「二度とポーランドを侮辱するな」と怒りをあらわにしました。
Q.選挙後は緊張が緩和されるのでしょうか?
選挙戦では与党の右派政党「法と正義」が、EUの大統領もつとめたトゥスク元首相率いる野党を一歩リードしていますが、その差はわずかです。単独での過半数は難しく反移民を掲げウクライナ支援にも批判的な右派政党との連立政権ができれば、ウクライナやEUとの溝が深まりかねません。さらにウクライナに厳しい姿勢を見せているのはポーランドだけではないのです。
Q.他にもあるのですか?
ハンガリーとスロバキアもウクライナ産穀物の輸入禁止措置を続け、ハンガリーのオルバン首相は先月、ウクライナ国内のハンガリー系住民の権利が守られていないとして権利が回復されるまで国際的な問題ではウクライナを支持しないと表明。スロバキアでは総選挙でウクライナへの軍事支援に反対する左派政党が第1党になりました。ヨーロッパ各国で支援疲れともいえる状況が見られ始め、アメリカではウクライナ支援の予算のめどが立たないなど、このままではプーチン大統領の思うツボです。各国の足並みが乱れれば今後のウクライナ情勢をも左右しかねません。 
●イスラエルとハマスの衝突の陰にプーチン大統領? 「世界中で戦争を煽る」 10/10
イスラム組織「ハマス」とイスラエルの大規模衝突によって、利益を得ていると指摘される国がある。ロシアだ。ウクライナメディアは、「世界が一時的にでもウクライナから目を背けることで、ロシアはイスラエルでの紛争激化から利益を得ている」と報道している。ロシアが中東の大規模衝突にどのようにかかわっているというのだろうか?
「ハマスの弾薬はウクライナから」? 偽情報も乱れ飛ぶ
10月7日、ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃が開始されてからおよそ3時間後、ロシアのメドベージェフ元大統領は、さっそくSNSに次のように投稿した。
「ヨム・キプール戦争(=第四次中東戦争)開戦50周年の節目にハマスとイスラエルの間で戦闘が勃発することは、予想できたことだ。
イスラエルとパレスチナの間の紛争は何十年も続いていて、アメリカはそこで重要な役割を果たしている。
しかしこの愚か者たちは、パレスチナとイスラエルの和解に積極的に取り組む代わりに、私たちに介入し、ネオナチを全力で助け、隣国を紛争に追い込んでいる」
今回の大規模衝突は、西側諸国がウクライナ情勢に加担しすぎ、中東をなおざりにしていたために引き起こされたというのが、プーチン政権が発信する筋書きのようだ。
またラブロフ外相は9日、ハマスが使用している兵器を念頭に「西側がウクライナに供給している武器が世界中に拡散している」と主張。プーチン政権が、今回の中東での危機を利用してあらゆる方面から西側によるウクライナへの支援を断ち切ろうとしているのがわかる。
一方で、ウクライナの国防省は「ロシアが戦闘中にウクライナから奪った西側の兵器をハマスに渡している」とロシアがウクライナの信用失墜を狙ったものだとして、激しい情報戦が繰り広げられている。
だが、ウクライナ侵攻でも弾薬不足が指摘されるロシアが、ハマスに武器を渡すなどということがあり得るのだろうか。
ハマスと協議を続けてきたロシア
ロシアは公式的な立場として、アメリカなどとは異なり、イスラエルに対してパレスチナに領土の一部を与えるよう要求していて、アラブ側の主張を支持している。実はハマスとのつながりも深い。
ロシアメディアによると、ハマスの指導者は2022年5月と9月にモスクワを訪れ、9月にはラブロフ外相と会談している。この日、ラブロフ外相とのほか、ハマス指導者は、中東担当のボグダノフ外務次官らとも広範囲な協議を行ったという。
「ロシアの関与」を断言する専門家も…
ただ、ハマスによる今回の攻撃をロシアが支援したという決定的な確証はない。
それでもドイツの東欧の専門家セルゲイ・スムレニー氏は、イスラエルの戦車を破壊するハマスの映像とともに「ロシアが関与しているのは明らかだ」とSNSに投稿している。
「ハマスの同盟国はロシアを除いて、現代の戦車に対して爆弾投下ドローンを使用した経験を持っていない。ハマスを訓練できるのはロシアだけだ」という。
また、イギリス軍のリチャード・ケンプ元指揮官もハマスの攻撃について次のような論考を発表し、背後にロシアがいる可能性について警告している。
「これをガザからのテロリスト集団による、単なるいわれのない残忍な攻撃であるとみなすべきではない。それ以上のものであり、これらの殺人者を前進させたのはモスクワの手によるものだ」
証拠が示されていないため、英独という西側からも情報戦が仕掛けられている点は考慮する必要があるが、近年ロシアは中東情勢に積極的に関与してきたこともあり、ロシアの独立系メディアでも、直接的・間接的なものをふくめて「ロシアの関与があるのか?」という観点の記事も少なくない。
また、表向きには否定されているが、今回のハマスの攻撃をイランが支援しているとされる。
ウォールストリートジャーナルは、今回の攻撃は、イラン諜報機関の支援を受けて数週間前に計画されていたと伝える。
イランの「イスラム革命防衛隊」の将校らは8月から、地上、空、海からの侵攻の選択肢を探してハマスと協力し、作戦の詳細はベイルートで複数回行われた会合で最終決定されたという。
イランはロシアへのドローンの提供など、プーチン政権と深いつながりがあることが知られている。
「ロシアは各地で戦争を煽っている」
先に引用したイギリス軍のケンプ指揮官は、プーチン大統領が、中東に留まらず世界中で不安定な状況を生み出しているとして、次のように指摘する。
「プーチン大統領はNATO(=北大西洋条約機構)に直接戦いを挑まず、代わりにアゼルバイジャンとアルメニア、セルビアとコソボ、西アフリカ、そして今はイスラエルで戦争をあおっている」
北朝鮮でも…プーチン氏の狙いはウクライナから注目をそらすこと
ユーラシア大陸の反対側、朝鮮半島でも重大な動きがあった。
欧米メディアなどによると、10月5日の衛星画像で、ロシア連邦との国境に位置する北朝鮮の豆満(トゥマン)江で、「前例のない数」である73両の貨物列車が確認されたという。
衛星画像から貨物の中身を割り出すことは難しいものの、ロシアへの武器弾薬の供給開始に関連しているとみられている。
あるクレムリンに近い関係者は、プーチン氏が金正恩総書記と会談した狙いをこう明かす。
「プーチン氏の狙いは、極東に“優秀なトラブルメーカー”を作り上げることだ。先月のロ朝首脳会談の目的は軍事だけではなかった。ロシアは、産業なども含めて北朝鮮を近代化させようとしている」
プーチン大統領は、来年3月の大統領選挙に向けて、どうにかしてウクライナでの戦況を少しでも好転させたいと考えている。
「優秀なトラブルメーカー」はもちろん、西側諸国に東アジア情勢に目を向けさせるためのものだ。
国際社会がウクライナに注力しないように仕向けること。
これが今のプーチン政権の外交方針の中心的な課題となっていることは間違いない。
プーチン大統領があらゆる力を駆使して、世界各地で紛争を煽っている可能性も排除せず、情勢を注視する必要がある。
●ゼレンスキー氏、ハマスとロシアは「同じ悪」…武器供給支援するイランも非難 10/10
ウクライナ国営通信などによると、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は9日、北大西洋条約機構(NATO)の関連会合にオンラインで参加し、イスラム主義組織ハマスのイスラエルへの攻撃を、ロシアのウクライナ侵略に重ねて非難した。武器供給などでハマスとロシアを支援するイランも非難した。
ゼレンスキー氏はハマスとロシアが「同じ悪」だと指摘し、ハマスの行為をキーウ近郊のブチャで起きた民間人殺害と重ねて批判した。イラン製無人機がロシアによるウクライナへの攻撃に使われている点も指摘した。
ゼレンスキー氏は会合でNATO加盟国の議員らに、支援継続を訴えた。一部加盟国からは、ウクライナへの支援継続に疑問の声も出ており、米欧の軍事支援の停滞が反転攻勢の遅れを招きかねないとの危機感があるとみられる。
ロシアは冬に向け、ウクライナのエネルギー施設への攻撃も強めている。プーチン露大統領は5日、露南部ソチで開かれた「バルダイ会議」で、「米欧の支援が止まれば、ウクライナは1週間しか持たない」との表現で、米欧の対応しだいで戦況がロシア有利に傾くとの見方を示していた。
●プーチン氏「米国が完全に失敗」 ガザ戦闘に初言及 10/10
ロシアのプーチン大統領は10日、モスクワでイラクのスダニ首相と会談し、イスラム原理主義組織ハマスとイスラエルの大規模戦闘が起きた中東情勢などを協議した。プーチン氏は今回の事態について「米国の中東政策の明白な失敗だ」と指摘。米国がイスラエル側に立ち、パレスチナ側の利益を考慮してこなかったことが問題の根本にあるとする認識を示した。
プーチン氏がハマスとイスラエルの戦闘に公の場で言及するのは初。プーチン氏は「米国は情勢の正常化を独占しようと試みたが、双方に受け入れ可能な妥協案に関心を持たなかった」と主張した。また、「民間人の被害を最小限、あるいはゼロに抑えるべきだということを紛争当事者双方に求める」とも述べた。
ハマスとイスラエルの戦闘でロシアは即時停戦を要求。ロシアはハマスを支持するイランと友好関係にあるが、イスラエルにも影響力を保持し、イスラエルが欧米側の対露制裁やウクライナ軍事支援から距離を置く要因となっている。
ロシアは米国と欧州連合(EU)、国連とともに、イスラエルとパレスチナの仲介を目指す枠組み「中東カルテット」の一角。ロシアは「2国家共存」の実現による問題解決が必要だとする立場を示してきた。
プーチン氏とスダニ氏は11日、エネルギーをテーマとした露主催の国際会議の全体会合に出席。プーチン氏は全体会合で予定される演説でも中東情勢に言及するとみられる。
●露、人権理復帰へ立候補 国連、10日投票 10/10
国連総会(加盟193カ国)は10日、スイス・ジュネーブの人権理事会で来年1月から3年間の任期を務める新理事国の選挙を行う。ウクライナでの民間人虐殺などを理由に昨年、人権理を追放されたロシアが立候補。米欧が強く反対する一方、南半球を中心とした新興・途上国グローバルサウス(GS)の一部が賛成に回る可能性があるとして、人権団体などがロシアの復帰を懸念している。
ロシアが当選を目指すのは年末に任期が切れるウクライナとチェコの枠。ほかにアルバニアとブルガリアが立候補している。投票は各国に対して行われ、当選には全加盟国の過半数97票を獲得したうえで、上位2カ国に入る必要がある。
国連外交筋によると、ロシアは「人権理が特定の国々の政治的な道具になるのを防ぐ」と記した書簡を送り、米欧から人権問題を批判される一部のGS諸国の支持獲得を目指す。GS諸国は全加盟国の約7割を占める。米国などがロシアを支持しないよう働きかけているという。
ロシアは2021年から理事国を務めていたが、昨年2月に全面侵攻したウクライナでの人権侵害が問題となり、国連総会は昨年4月の緊急特別会合で理事国資格の停止を決議し、任期途中での追放が決まった。
ロシアは追放後もウクライナの民間人や住居、ダムなどを攻撃。子供の連れ去りなどの重大な人権侵害が指摘されてきた。人権理の役割は、人権問題に関する国際世論の喚起や人権状況の改善など。米ジェイコブ・ブラウスタイン人権向上研究所は「ロシアが人権理にふさわしくないのは明白」として、各国に当選阻止を呼びかけている。
●プーチン氏死ぬまで大統領≠フ野望、71歳の誕生日 10/10
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は7日、71歳の誕生日を迎えた。ウクライナ侵略が長期化し、国力を大きく消耗させているプーチン氏だが、強気の発言を繰り返し、2024年3月の大統領選にも意欲満々とされる。11月にも出馬を示唆するとの見方もあり、当選すれば83歳となる36年まで続投可能だ。
プーチン氏はロシア南部ソチで開かれた国際会議で、ウクライナは6月の反攻開始以来、「9万人以上の兵力と557台の戦車、約1900台の軍用車両を失った」と述べ、自軍の優位を強調した。ウクライナとの戦争は「新しい世界秩序を確立する原理の問題だ」とし、欧米主導の世界秩序を終わらせるための戦いだと正当化している。
開発中の「ブレベスニク」射程は事実上、無制限
また、開発中の原子力推進式巡航ミサイル「ブレベスニク」について「最終的な試験に成功した。量産と実戦配備に移行する必要がある」と述べた。米ミサイル防衛(MD)網を突破できる新兵器の一つとして開発しているもので、原子力推進で射程は事実上、無制限だとしている。
ロシア紙コメルサントは、プーチン氏が11月にも出馬を示唆する可能性があると報じた。プーチン氏は2000年に大統領の座に就き、憲法改正で任期を延ばすなどして政権に君臨してきた。24年の大統領選で勝てばさらに2期12年務めることができる。
多くの外交官や情報機関関係者らは、プーチン氏が生涯権力を維持すると予想している。大統領経験者は生涯に刑事・行政上の責任を問われない免責特権を与える法律も作っており、制度上の備えも盤石だ。
ただ、プーチン氏をめぐっては、健康不安説が消えていない。また、ウクライナでの戦争犯罪で国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ており、外遊もままならない。経済力も低下し、中国頼みというのが現状だ。「死ぬまで大統領」の野望が実現するかどうかは不透明だ。
●不毛な議論で「犠牲」となったウクライナ支援 ほくそ笑む中露 10/10
出張のため米国を訪れている。米政府や議会の関係者らと意見交換するためだ。最初の訪問地のニューヨークでは記録的な大雨に見舞われ、地下鉄や道路は冠水し、ぎりぎりで首都ワシントンに移動できた。改めて米国のインフラの老朽化を肌で感じた。
ワシントンでの話題は、米政府機関の閉鎖問題で持ち切りだった。昨年11月に訪れたときには、ロシアによるウクライナ侵攻や対中政策についての議論があったが、明らかに内向きに変わっていた。
確かに、政府閉鎖になると、多くの政府サービスがストップし、数百万人の連邦職員が一時休暇や無給での勤務を強いられる恐れがある。そして何よりも、米国の国内総生産(GDP)の約4分の1を占める政府支出が止まると経済を直撃しかねない。
米議会予算局によると、2019年に1カ月余り続いた政府閉鎖では、約110億ドル(約1兆6000億円)の経済損失が生じたという。
筆者がワシントンで勤務していたときにも、政府閉鎖はあった。当時は、オバマ政権が導入を進めた医療保険改革法(オバマケア)や、トランプ政権が移民対策としてメキシコとの境界に建設した「国境の壁」など、議会を二分するような政策が争点だった。
ところが、今回は争点が明確ではない。民主、共和両党の議員の主張を見ても、閉鎖が「政争の具」になっているようにしかみえなかった。
結局、期限ギリギリの9月30日午後(日本時間10月1日午前)、上下両院は、2024会計年度が始まる10月1日から11月17日までの政府資金を確保する暫定予算(つなぎ予算)案を可決した。土壇場で閉鎖は回避された。
だが、この予算からウクライナへの追加支援を除外したのだ。野党・共和党の強硬派らが強く反対したためだ。国防総省が議会側に送った対ウクライナの追加予算を促す書簡によると、米軍の武器の在庫の中でウクライナ側に供与できる259億ドル(約3兆9000億円)の予算枠が、16億ドル(約2400億円)しか残っていないという。
追加資金がなければ補給が遅れるのは必至だ。にもかかわらず、「ウクライナに資金を回すぐらいなら国内の経済対策に使うべきだ」と主張する強硬派の声に押された。
ところが、これだけでは収まらなかった。このディールをまとめた共和党のケビン・マッカーシー下院議長は3日、共和党保守強硬派議員が下院に提出した解任動議が賛成多数で可決され、解任に追い込まれたのだ。下院議長の解任は史上初で、極めて異例の事態となっている。
今回のゴタゴタ劇にほくそ笑んでいるのはロシアのウラジーミル・プーチン大統領だろう。このまま戦争が長引けば、米国の「支援疲れ」に追い込むことができ、戦いを有利に進めることができる。
そして、中国の習近平国家主席も同じ思いで見ているだろう。台湾で「有事の際に米国を信用できない」という世論が拡大すれば、最重要目標に掲げる「祖国統一」に有利に働くからだ。
米国内の「コップの中の嵐」は、さざ波となって広がり、そして津波になって欧州や東アジアを襲うのではないか。そんな杞憂(きゆう)が現実のものになりつつあることを感じている。
●イスラエル“南部制圧” 双方の死者1600人以上に 10/10
イスラム組織ハマスへの報復作戦を進めるイスラエル軍は10日、ハマスが実効支配するガザ地区への空爆を続けるとともに、ハマスの戦闘員などが侵入した南部の地域を制圧したと発表しました。双方の死者はあわせて1600人以上にのぼっていて、ガザ地区では空爆によって避難を強いられる人が急増しています。
外務省 イスラエルの危険情報のレベル引き上げ
今回の事態を受けて、日本の外務省は10日、イスラエルの危険情報のレベルを引き上げました。ガザ地区とその境界周辺には、これまで4段階の上から2番目にあたるレベル3の「渡航中止勧告」が出されていましたが、最も高いレベル4の「退避勧告」に引き上げました。また、レバノンとの国境地帯はレベル3の「渡航中止勧告」、ヨルダン川西岸地区は不要不急の渡航中止を求めるレベル2を継続しています。一方、テルアビブやエルサレムなどこのほかの地域については、これまでレベル1でしたが、航空便の運航を含め、事態が流動的だとして、不要不急の渡航中止を求めるレベル2に引き上げました。
プーチン大統領「中東でのアメリカ政策の失敗例」
ロシアのプーチン大統領は10日、首都モスクワを訪問したイラクのスダニ首相との会談の冒頭、イスラエルとパレスチナ暫定自治区のガザ地区の情勢について言及し、「ウクライナ危機が続き、そして残念ながら中東情勢が急激に悪化している。中東におけるアメリカの政策の明らかな失敗例だ」と述べアメリカを批判しました。そのうえで「われわれの立場は、民間人への被害は最小限に抑えるべきというものだ」と述べ、双方に自制を促しました。
ハマス最高幹部”攻撃が続く限り、人質解放の交渉受け入れず”
ハマスがガザ地区に連れ去った100人を超える人質について、ハマスの最高幹部ハニーヤ氏は10日、声明を発表し「敵の捕虜について、接触をしてきたすべての当事者に対して、戦闘が終わるまでこの件について取り合わないと伝えた」として、イスラエル軍の攻撃が続いている限り、人質の解放をめぐる交渉は受け入れないと主張しました。イスラエルのネタニヤフ首相は9日、「市民の解放のためにあらゆる手段を講じる」と述べ、ガザ地区へのさらなる攻撃が懸念される一方で、トルコのエルドアン大統領は「捕虜交換をはじめとしたあらゆる仲介の準備がある」と述べて、仲介に意欲を示しています。
UNRWA “空爆で18の国連施設が被害”
パレスチナ難民を支援するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は10日、声明を発表し、イスラム組織ハマスによる奇襲攻撃が始まった10月7日以降、学校など少なくとも18の国連の施設でイスラエル軍による空爆の被害を受けたほか、2人の職員とUNRWAの学校に通う生徒5人が死亡したということです。また、ガザ地区にあるUNRWAの本部が入るビルも、近くで起きた空爆で大きな被害を受けたと明らかにしました。これによる死者やけが人はいないということです。国連の推計では、10日現在でガザ地区にある80以上のUNRWAの学校に13万7000人あまりが避難しているということで、さらなる被害が懸念されます。
イスラエル軍“南部の地域を制圧”と発表
イスラエル軍などによりますと、これまでにイスラエル側では少なくとも900人が死亡し、およそ2700人以上がけがをしたほか、100人以上がハマスの人質になっているということです。一方、パレスチナの保健当局によりますとガザ地区でこれまでに770人が死亡し、およそ4000人がけがをしたとしていて、双方の死者はあわせて1600人以上にのぼっています。イスラエル軍の報道官は10日、ガザ地区に空爆を続けているとしたうえでハマスの戦闘員などが侵入した南部の地域を制圧したと発表しました。そして「テロリストのインフラを完全に破壊した。何千もの標的を攻撃し、何百トンもの爆弾を投下してきた。最大限の被害を与え続けている」と述べ、空爆とともに海上からもガザを包囲し、報復作戦を続ける方針を示しました。また、イスラエルのカッツエネルギー相は10日、SNSに「ガザ地区への電力供給は終わる。燃料の備蓄がなければ数日以内に地区の電力はなくなり、井戸水も1週間以内にくみ上げられなくなるだろう」と投稿し、圧力を強めています。ガザ地区の状況についてOCHA=国連人道問題調整事務所は9日、家を破壊されたり、被害を受けたりして学校や親戚の家などに避難している人が18万7000人以上に上り、さらに増え続けるとみられ、食料などの支援が急務だと指摘しています。
ハマス報道官 ”さらなるサプライズ起こす”
イスラエルの隣国レバノンの首都ベイルートにあるイスラム組織ハマス事務所のアフマド・アブドルハディ報道官は9日、NHKの取材に応じました。この中で「イスラエルでパレスチナに敵対的な政権が誕生し、占領地でのユダヤ人入植地の数が増え続けているにもかかわらず、多くのアラブ諸国がイスラエルとの国交正常化を進め、パレスチナの権利をはく奪しようとしている」と述べ、今回の攻撃を正当化するとともにアラブ諸国にも責任の一端があると主張しました。イスラエル軍によるガザ地区への攻撃が激しさを増していることについては「私たちはイスラエルが空爆や地上戦を展開することは想定していて、それに対応する用意がある。私たちはさらなるサプライズを起こすだろう。私たちは奪われたすべての土地を取り返すまで抵抗を続ける」と述べ、イスラエルがガザ地区への攻撃を激化させれば激しい抵抗を受けることになるとけん制しました。
ハマスの攻撃計画イランの関与は否定
ハマスによる攻撃の計画に、同じくイスラエルと敵対するイランが関与していたとアメリカの有力紙が報じたことをめぐり、イランにあるハマス事務所のハレド・カドミ代表が9日、NHKのオンライン取材に応じ「この作戦ははじめから最後まで完全にパレスチナの抵抗勢力によって行われているものだ」と述べ、イランの関与を否定しました。また、イランの最高指導者ハメネイ師は10日、首都テヘランで行った演説で、ハマスによるイスラエルへの攻撃について「政権の中枢を容易に再建できないほど破壊した」と称賛しました。その上で「この動きの背後にイランがいるという話は間違っている」と述べ、今回の攻撃の計画にイランが関与していたとする指摘について改めて否定しました。
SNSなどで偽動画が拡散 現地の検証団体など注意呼びかけ
旧ツイッターの「X」では、ハマスによる大規模攻撃が起きた直後に「パレスチナの戦士がイスラエルのヘリコプターを撃墜した」などとする文章とともに、兵士が持ち運びができるミサイルでヘリコプターを撃ち落とす様子を撮影したとされる動画が拡散されました。しかし、この動画はゲームの映像で、偽動画だと指摘する投稿が相次いでいます。また、動画共有アプリ「TikTok」でも、今回の衝突のものだとする偽動画が広がっていて、このうち「パラシュートでイスラエルに降下するパレスチナの兵士たち」だとする動画は映像の中に映る建物がエジプト・カイロにある軍の教育施設で、今回の衝突とは無関係であることがわかります。さらに「イスラエルの子どもたちがハマスに誘拐され、おりに閉じ込められている」様子だとする動画は、数百万回閲覧されていますが、イスラエルの研究者らによる検証団体は、攻撃が起きる前に投稿された誤った動画で害を及ぼすものだとして拡散しないよう呼びかけています。
空爆続くパレスチナ ガザ地区
   がれきの山 増え続ける負傷者
イスラム組織ハマスによる大規模な攻撃への報復として、イスラエル軍による激しい空爆を受けたパレスチナのガザ地区の各地から被害の状況が伝えられています。このうち、北部にあるジャバリア難民キャンプでは、空爆を受けた建物が大きく壊れてがれきの山になっていて、消火活動にあたる人の姿も確認できます。また、ガザ地区にあるモスクも空爆を受け、9日、けがをした人たちが次々と病院に運び込まれていました。なかには毛布に包まれた小さな子どもの姿もあり、住民の女性は「彼らは私たちを殺し、私たちを破壊しました。ガザの人たちを助けてください」と話していました。
   病院では医療物資不足
イスラエル軍による大規模な空爆が続くパレスチナのガザ地区では地区の拠点となっている病院に連日、多くのけが人が運び込まれています。NHKが9日午後に撮影した映像では病院に次々と救急車が到着し、空爆で負傷した人たちが医療関係者によって運び込まれていました。なかには出血して自力で歩けなくなった幼い子どもたちもいて、ストレッチャーに乗せられたり大人に抱えられたりして運び込まれていました。また病院の外では死亡した家族と対面し、泣き崩れている人の姿や祈りをささげている人の姿もありました。NHKの取材に応じたガザ地区の保健当局の報道官は「受け入れ態勢を引き上げたが医療物資の不足に苦しんでいます。負傷者が著しく増えていて医療物資の支援が必要です」と訴えていました。
   NHKのガザ事務所スタッフ「安全な場所はない」
NHKのガザ事務所のスタッフ、ムハンマド・シェハダ氏は10日、オンラインでのインタビューで現地の様子を次のように伝えました。シェハダ氏はイスラエル軍による報復攻撃について「30分から45分おきに激しい空爆が行われていて、誰も寝ることができていない。3日間で10時間ほどしか眠れていない」としています。その上で、イスラエル軍から安全な場所に避難せよとの警告があることについて「シェルターに避難しろというメッセージを受け取っても、ガザ地区にシェルターはない。シェルターとされる学校も空爆を受けているからだ。ここに安全な場所はない。どこに行けばいいのか、どこに身を隠せばいいのかわからない。いつ頭の上に爆弾が落ちてくるかわからない状況では、いまいる場所が安全かどうかを判断することはできない。『安全』という感覚を私たちは失っている。人々がどのような気持ちでいるのか、ことばや映像で説明することはできない」と話しています。激しい空爆が続く中、シェハダ氏とカメラマンの2人のNHKスタッフも避難を余儀なくされています。9日午後、イスラエル軍がNHKの事務所がある地域に空爆を行うとして、直ちに避難するよう住民に警告したためです。シェハダ氏は避難したときの様子について、「亡くなった市民が次々と運ばれてくる病院を取材して事務所に戻ると、イスラエル軍が事務所のある地域は危険だと警告していることを知った。11階にある事務所から外を見ると、住民らが急いで避難していく様子が見えた。すぐに最低限の荷物をまとめて避難した」と話しています。さらに10日午前1時ごろ、避難先のホテルの近くでも空爆があり、現場近くまで取材に行ったジャーナリスト3人が亡くなったということです。避難先のホテルでは、現在は電気やインターネットを使うことができていますが、いつ使えなくなるかはわからず、今後どうなるのか見通せない状態だといいます。そして、「イスラエルはハマスの軍事施設だけを攻撃していると主張しているが、私たちが病院やその周辺で目にした攻撃されている場所は、すべて民間の建物であり、犠牲者も市民だった。多くの子ども、女性、お年寄りが殺されている」と話し、国際社会に対し「一刻も早く、ガザで起きている戦争を止めるための方策を見つけてほしい」と強く訴えていました。
ハマスとの戦闘続くイスラエルでは
   ガザ地区近くから避難の女性 “テロリストに多くの人殺された”
イスラエルの南部では、ガザ地区からイスラエル側に侵入してきたハマスの戦闘員とイスラエル軍の戦闘が続いています。こうしたなかエルサレム郊外のホテルには、イスラエル南部から逃れてきた人たちおよそ300人が身を寄せています。3人の子どもを連れて8日に避難してきたという42歳の女性は、「土曜日の朝にテロリストが集落に侵入して来て、私たちは避難部屋にずっと隠れていました。15年以上、ガザ地区の近くで暮らしていますがこんなことは初めてです。多くの人が殺され、行方不明になっている人もいます。再び戻れるのか想像もできません」と話していました。また、37歳の男性は、「テロリストが朝6時ごろに集落に来て、近所の家を襲い始め、それが午後5時半ごろまで続きました。住民が小型の銃やライフルで集落を守ろうとし、さらに犠牲者が増えました。私も小さなナイフを持っていて連れ去られそうになったら家族を守るために抵抗しようと思っていました」と話していました。エルサレムはガザ地区からおよそ70キロ離れていますが、NHKの取材班が避難してきた住民を取材している最中も、ガザ地区からロケット弾が飛んできたことを知らせる防空警報が鳴り響きました。ホテルの前の広場で遊んでいた子どもや親たちは、慌てて建物の中に入り、地下の部屋に集まっていました。その後、ホテルから数キロ離れた住宅をロケット弾が直撃し、1人がけがをしたことがわかりました。被害を受けた住宅では窓が割れ、壁の一部が崩れ落ちていて、警察や消防が駆けつけて騒然とした雰囲気に包まれていました。
   エルサレム 献血に1000人超の列
エルサレムではハマスによる大規模攻撃を受けて、スタジアムに設けられた臨時の献血会場に長蛇の列ができていました。イスラエルでは負傷者への輸血のために今月7日から献血の呼びかけが始まり、9日も午前9時に受付が始まると、1000人を超える人が集まり、中には献血をするまで4時間待ったという人もいました。献血に訪れたエルサレムに住む男性は「兵士たちは私たちのために戦っている。多くの人が自分たちの責任を果たそうとここにきている」と話していました。またエルサレムに住む女性は「南部で起きていることはひどいことだ。献血には2〜3時間かかると聞いたが、国のために貢献したいと思い、ここで待っている」と話していました。
   イスラエル中央銀行 為替市場へ初介入
イスラエル中央銀行は9日、通貨シェケルの大幅な値下がりを防ごうと、保有する外貨の一部を売却すると発表しました。イスラエル中央銀行の発表によりますと、売却する外貨の額は最大300億ドル、日本円でおよそ4兆4700億円だとしています。売却の目的については、「シェケル相場の大幅な価格変動を抑え、市場が適切に機能し続けるために必要な流動性を供給するため」と説明していて、市場ではシェケルを買い支える狙いがあると受け止められています。海外メディアによりますと、イスラエル中央銀行による為替市場への介入は、変動相場制に移行して以来初めてだということです。
各国の反応は
   米バイデン大統領ら5か国の首脳 “イスラエルの取り組み支援”
アメリカのバイデン大統領とイギリスのスナク首相、ドイツのショルツ首相、フランスのマクロン大統領、それにイタリアのメローニ首相は9日、電話で会談しました。会談後に発表された共同声明でバイデン大統領らは「イスラエルへの揺るぎない結束した支持とともに、ハマスの恐るべきテロ行為に対する明確な非難を表明する」としています。そして「われわれの国は残虐行為から自国と自国民を守るためのイスラエルの取り組みを支援する」と強調し、引き続き5か国で連携していくとしています。
   米国防総省高官“軍事支援急ぐ”
アメリカ国防総省の高官は9日、記者団に対しイスラエル側の要請を受けて防空関連の装備や弾薬などの軍事支援を急いでいると説明しました。さらに周辺地域の抑止力を高めるため、アメリカ海軍の最新鋭の空母、「ジェラルド・フォード」を中心とした空母打撃群が、イスラエルに近い東地中海にまもなく到着するということです。また、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は記者団に対し「イスラエルが戦闘で弾薬を消費し続けるため、追加の軍事支援の要請があることを想定しており、可能な限り迅速に要請にこたえる」と述べて、イスラエルを継続的に支援する考えを示しました。一方、カービー調整官は「イスラエルにアメリカ軍を派遣するつもりはない」と述べました。
   国連事務総長 ガザ地区の人道状況 極めて悲惨
国連のグテーレス事務総長は9日、ニューヨークの国連本部で会見し、ハマスによる攻撃を改めて非難したうえで、「パレスチナの人たちが抱えている正当な不満はわかっている。しかしテロ行為と市民の殺害や誘拐は正当化できない。ただちに攻撃を停止しすべての人質を解放するよう求める」と訴えました。一方、イスラエルの軍事作戦について「イスラエルの正当な安全保障上の懸念を認識している。一方で軍事作戦は国際人道法に沿って行われなければならない」と述べ、市民の生命や民間インフラは保護されなければならないと強調しました。さらにガザ地区の人道状況は極めて悲惨だとしたうえで、イスラエルがガザ地区を完全に包囲するとしていることに「深く心を痛めている」と述べ、緊急の人道支援を届けるため国際社会が取り組むよう呼びかけました。国連によりますとグテーレス事務総長はイスラエルのネタニヤフ首相やパレスチナ暫定自治政府のアッバス議長、それに、周辺国の首脳らと相次いで電話会談を行っていて、事態のさらなる悪化や地域の不安定化を防ぐために協力を求めています。
   トルコ エルドアン大統領「あらゆる仲介の準備がある」
トルコのエルドアン大統領は9日の首都アンカラで行われた閣議後の会見で、イスラエルのヘルツォグ大統領、それにパレスチナ暫定自治政府のアッバス議長、それぞれと電話で会談したと明らかにしました。その上で、「双方からの要請があれば、捕虜交換をはじめとしたあらゆる仲介の準備がある」と述べて、双方に自制を呼びかけるとともに仲介に意欲を示しました。ただ、イスラエル側は「今は交渉や仲裁の時ではなく、境界の安全確保に取り組んでいる」としているほか、ハマスの軍事部門も「空爆のさなかに人質をめぐる交渉はしない」と述べるなど、当事者間では停戦に向けた動きは見られません。こうした中、エルドアン大統領は9日、エジプトのシシ大統領やカタールのタミム首長ら関係各国とも相次いで電話会談を行っていて、事態打開の糸口を見いだせるか注目されます。
   イギリス イスラエルへの全面的支援 表明
イギリスの首都ロンドンでは9日、パレスチナ出身の人たちなどがイスラエル大使館前に集まり、イスラエルによる長年にわたる占領や入植が今回の事態を引き起こしたとしてガザ地区への攻撃をやめるよう訴えました。集まったのはイギリス在住のパレスチナ人や反戦団体のメンバーなど数百人で、パレスチナの旗を振ったり「パレスチナを解放しろ」などと声を上げたりして攻撃の停止を呼びかけました。一方、イギリス政府はイスラエルへの全面的な支援を表明し、ハマスを支持したり、ユダヤ人の安全を脅かしたりする行為は取り締まりの対象になると警告していて、現場では多くの警察官が警戒に当たっていました。デモを主催した1人、イシュマイル・パテルさんは「イスラエル側はガザ地区への電気や食料、水の供給を遮断すると発表したうえ、地上侵攻が始まれば数千人が犠牲になると懸念している。イギリス政府はかつて1917年のバルフォア宣言に署名し、イスラエルという国家の成立に歴史的な責任を持っている。侵略者の肩を持つのではなく公平な立場を保ち、両者の対話を促してほしい」と訴えていました。地元メディアによりますと、ハマスによる攻撃でイギリス人10人以上が死亡、または行方不明になっているということで、スナク首相はこの日、内閣の会議を緊急招集し「イスラエルは自国を守り、さらなる侵略を阻止する権利を持っている」と強調しました。
   世界各地で双方の支持者がデモや集会 根深い対立浮き彫りに
アメリカ・ニューヨーク、マンハッタン中心部のイスラエル総領事館の近くでは、9日、幅20メートルほどの道路を挟んで、北側にイスラエルの支持者100人あまり、南側にパレスチナの支持者300人あまりがそれぞれ集まりました。現場に多くの警察官が出て警戒にあたる中、双方ともバリケードの中から身を乗り出すようにして相手側を非難することばを叫び、周辺は一時騒然となりました。イスラエル側の参加者の女性は「イスラエルの人たちは非人道的に誘拐された。いったい誰がやったのか。裁かれなければならない」と話していました。パレスチナ側の参加者の女性は「パレスチナの人たちは長い間、抑圧の中で生きてきた。もう十分だ」と話していました。ヨーロッパ有数のユダヤ人コミュニティーがあるフランスでは、9日、パリ中心部におよそ2万人が集まり、「イスラエルに連帯を」などと書かれたプラカードを持って行進したほか、観光名所のエッフェル塔ではイスラエル国旗をあしらったライトアップがされました。
   EU パレスチナへの資金支払いを即時停止
パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃を受けてヨーロッパではパレスチナへの支援を見直したり、一時的に停止したりする動きが出ています。このうちEU=ヨーロッパ連合では、近隣国についての政策などを担当するバールヘイ委員が9日、ソーシャルメディアに「イスラエルとイスラエルの人々に対する暴力行為と残酷さは転換点となった。何事もこれまでどおりというわけにはいかない」と投稿しました。そのうえでパレスチナに対するあらゆる資金の支払いを即時停止するとしたほか、すべての開発援助プロジェクトを見直すとしています。
   ドイツやオーストリア パレスチナへの援助 見直す動き
ドイツ政府は、9日の定例の記者会見で、パレスチナにおける飲料水の確保や職業訓練などのために、ことしと来年拠出する予定の2億5000万ユーロ、日本円でおよそ400億円の資金について、見直しが必要か検討するため一時的に拠出を停止していると明らかにしました。さらにオーストリアの外相も9日、地元メディアに対して、ハマスによる今回の攻撃を強く非難した上で、パレスチナへの援助を一時的に停止すると明らかにしました。
   ロシアとアラブ連盟 イスラエルと欧米を批判
ロシアのラブロフ外相は9日、首都モスクワを訪問したアラブ連盟のアブルゲイト事務局長と会談しました。会談後の記者会見でアブルゲイト事務局長は「ガザでは、これまでも多くの人々が殺害され、流血の事態が起きてきた。イスラエルはこうした行為を繰り返してきた」と述べイスラエルを批判しました。そして「今回の協議で、最も重要なことは流血を止め、情勢の安定化を達成するということで一致した。そうでなければ状況は大きく悪化するおそれがある」と述べ即時停戦を訴えました。これに対しラブロフ外相も「欧米は即時停戦を求めながら、イスラエルが勝利しなければならずテロリストを破壊すべきだと言っている」と述べ、欧米の立場は矛盾していると主張し、批判しました。
   ウクライナ大統領 “ロシア 中東で戦争を引き起こすことに関心”
ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、動画を公開し、イスラエル・パレスチナ情勢について「これはウクライナだけでなく、ヨーロッパ全体にとって極めて重要だ。入手可能な情報によれば、ロシアは中東で戦争を引き起こすことに関心を抱いている。それにより新たな痛みや苦しみの源が世界の団結を損ねることになる。ロシアのプロパガンダの宣伝者はほくそ笑んでいる」と述べ、事態が悪化し国際社会の足並みが乱れれば、ウクライナへ軍事侵攻を続けるロシアにとって利益になると主張しました。そのうえで「世界中のあらゆる国は今、国際法をどう守るか選択しなくてはならない」と訴えました。
   ユニセフ ガザ地区の電力などの供給停止に懸念示す
イスラエル政府は9日、ハマスに対する圧力を強めるため「ガザ地区を完全に包囲する」としてガザ地区への電力や食料、水などの供給をすべて停止する考えを示しています。これについて、ユニセフ=国連児童基金のキャサリン・ラッセル事務局長は9日、声明を発表し「ガザ地区への電力の遮断や、食料、燃料、水の供給を止める措置は、子どもたちの命を危険にさらすことにつながりかねない」と懸念を示しました。その上で、「人道状況が急速に悪化する中、子どもたちやその家族がどこにいようと、人道支援に携わる人々が安全に、命を守るための活動や、物資を届けることをできるようにしなければならない」として封鎖が行われる中でも緊急な人道支援は行われるべきだと訴えました。
ハマス奇襲攻撃 何が起きたのか
   始まりはガザ地区からの大規模ロケット攻撃
今回のハマスによる奇襲攻撃は7日午前6時半ごろ、ガザ地区からの大規模なロケット攻撃で始まりました。発射されたロケット弾の数について、ガザ地区を実効支配するハマス側は5000発以上、イスラエル側は2200発以上だとしています。それと前後するように戦闘員がイスラエル側に侵入。ガザ地区はイスラエルが建設した壁やフェンスに囲まれて封鎖されていますが、イギリスの公共放送BBCは、検問所を含む7か所をハマスの戦闘員が突破したと分析しています。ハマスの軍事部門のカッサム旅団はSNSなどで戦闘員がイスラエル側に侵入した様子だとする映像を公開しています。このうち、空から侵入したとする動画では複数の戦闘員が、動力付きのパラグライダーを使ってイスラエルが建設したコンクリートの分離壁を越えていくような様子が映っています。また、イスラエルとガザ地区の間の人の行き来を管理するエレズ検問所で撮影されたとされる映像では、分離壁で大きな爆発が起きたあと戦闘員たちが走って行く様子や施設のなかで激しい銃撃戦が起きている様子が記録されています。そして、フェンスごと爆破してそこから武装した戦闘員を荷台に乗せた複数の車がイスラエル側に侵入しているような動画もあります。さらに8日に公開された映像では、複数の戦闘員が海とみられる場所でボートに乗って水面を進む様子がとらえられています。ハマスによる奇襲攻撃が行われた7日はユダヤ教徒にとって、重要な祭日の最中で、イスラエルにとっては不意を突かれた形です。さらに前日の6日は、ユダヤ教徒にとって最も重要なしょく罪の日「ヨム・キプール」にイスラエルが突如、攻撃を受けたことから始まった第4次中東戦争から50年の節目にあたっていました。ハマスは今回の奇襲攻撃の作戦名を「アルアクサの洪水」としていてエルサレム旧市街にあるイスラム教の聖地「ハラム・アッシャリフ」にある「アルアクサ・モスク」のことを指しているとみられます。この聖地をめぐっては、同じ場所にかつてユダヤ教の神殿があったとされることから、イスラム教徒とユダヤ教徒の間の火種になってきました。一方、イスラエルのネタニヤフ首相は「戦争状態にある」と述べ、イスラエル軍が「鉄の剣」と名付けた報復作戦でガザ地区のハマスの拠点などへの大規模な空爆を続けています。
   ハマス 音楽イベントを襲撃 100人以上を人質に
イスラエル側は侵入した戦闘員がおよそ1000人にのぼるとしていて、戦闘員はガザ地区との境界近くで開かれていた音楽イベントの会場を襲撃し、260人を殺害したほか、兵士や市民を人質にしてガザ地区に連れ去るなどしています。人質の数について、ハマスは声明で100人以上にのぼると主張しています。一部のハマスの戦闘員はその後もイスラエル領内に残っていてイスラエル軍は交戦状態が続いていることを明らかにしています。
   音楽イベント参加者“生き地獄のよう”
音楽イベントの参加者が、ロイター通信の取材に応じ、凄惨な現場の様子を証言しました。このうち、イスラエル人の男性は、「午前6時半ごろにロケット弾による攻撃が始まり、参加者は何が起きているか分からず、叫び声が聞こえた。その後、会場で自動小銃を持ったバイクの男2人が銃を乱射し始めた。私たちは頭を伏せながら車を運転して逃げた。それから建物に入って部屋に隠れたが、外では絶えず銃声や叫び声が聞こえ、人が殺されていった」と話していました。別の男性は、「本当に生き地獄のようだった。私は軍隊に入って2つの戦争を経験したが、これほどの事態は見たことがない。遺体がそこかしこにあり、テロリストは殺す相手が男か女かも気にしなかった。彼らが行ったことは決して許されない」と話していました。
   イスラエル軍 レバノンから侵入の戦闘員を殺害
イスラエル軍は9日、「レバノンからイスラエルに侵入した複数の戦闘員を殺害した」とSNSで明らかにしました。具体的な人数や所属などは明らかにしていません。イスラエル軍は隣国レバノンとの国境付近にも戦車や装甲車を展開していて、9日に撮影された映像では、国境付近の道路に検問所が設けられているほか、武装した兵士が警戒にあたる様子が確認できます。隣国レバノンをめぐっては、イスラエルと国境を接する南部を拠点にするイスラム教シーア派組織ヒズボラが8日、イスラエル北部にある軍事施設に対し砲撃を行ったと発表しています。ロイター通信は「ヒズボラの幹部は今回の戦闘員のイスラエルへの侵入を否定した」と伝えていますが、今後、ヒズボラが攻撃を本格化させれば、イスラエルはハマスと二正面作戦を余儀なくされることになり、緊張がさらに拡大する事態も懸念されます。
各国の犠牲者
各国の発表によりますと、イスラエルでのイスラム組織ハマスによる攻撃で外国人にも多くの犠牲者や行方不明者が出ていて、一部は人質になっているとみられています。このうち、アメリカのバイデン大統領は9日、少なくとも11人のアメリカ人の死亡が確認されたと明らかにしました。バイデン大統領は「ハマスに拘束されている人たちの中にアメリカ人が含まれている可能性が高い」としています。タイの外務省によりますと、これまでにタイ人2人の死亡が確認されたほか、現地の雇用主からは死亡したタイ人は18人にのぼるという情報も入っているということで確認を急いでいます。また、タイ人11人が人質になっているということです。フランス外務省も、これまでにフランス人4人の死亡が確認されたほか、13人の行方がわからなくなっているとしています。フィリピン外務省は自国民7人が行方不明になっていると発表したほか、ブラジル外務省はガザ地区との境界近くで開かれていた音楽イベントに参加した自国民3人の行方が分からなくなっているとしています。イギリスの地元メディアはハマスによる攻撃で、イギリス人10人以上が死亡、または行方不明になっていると伝えています。アルゼンチンの外務省によりますと、これまでにアルゼンチン国籍の7人が死亡し、15人の行方がわからなくなっているということです。またブラジル外務省によりますと、ガザ地区との境界近くで開かれていた音楽イベントに参加していたブラジル人1人の死亡が確認されたということです。ペルー外務省も1人が死亡したと発表しました。また、チリの外相はチリ人の女性1人が誘拐されたと明らかにしました。そのほか、各国政府によりますと、ペルー人3人、ブラジル人2人、コロンビア人2人、パラグアイ人2人の行方がわかっていないということです。
●ロシア ラブロフ外相 16日から訪中 王毅外相と会談へ  10/10
ロシア外務省は、ラブロフ外相が10月16日から18日の日程で中国の北京を訪問し、王毅外相と会談すると発表しました。プーチン大統領も10月、北京で習近平国家主席と会談する見通しです。
ロシア外務省のザハロワ報道官は10日、中国の北京で開かれる巨大経済圏構想「一帯一路」の国際フォーラムにあわせて、ラブロフ外相が10月16日から18日の日程で北京を訪問すると発表しました。
滞在中に中国の王毅外相と会談するとしています。
ロシアのプーチン大統領も同じく「一帯一路」のフォーラムにあわせて、ウクライナへの軍事侵攻以降、初めて北京を訪れて、習近平国家主席と会談する見通しで、欧米との対立が深まる中、中国との関係を一層強化するねらいがあるとみられています。
一方、ラブロフ外相は10月、北朝鮮も訪問する予定ですが、ザハロワ報道官は「日程は調整中だ」としています。

 

●ロシア脱出者も受難 プーチン政権、帰国促す口実に―イスラエル攻撃 10/11
パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃では、昨年2月のウクライナ侵攻開始後にロシアからイスラエルへ逃れた若者も巻き込まれた。タス通信は9日、ロシアに戻っても身に危険は及ばないとするペスコフ大統領報道官の発言を伝えた。今回の衝突を口実に帰国を促している。
イスラエルには、プーチン政権による昨年秋の動員令前から、徴兵や戦争協力を嫌うユダヤ系ロシア人が移住した。独立系メディアによると、その一人、アンドレイ・コズロフさん(27)は、襲撃された野外音楽祭で警備員として働き、行方不明になった。
在イスラエル・ロシア大使館は、自国民の安否確認に着手。だが、コズロフさんの親族は独立系メディアの取材に「今のロシアを信用しない。(戦争を起こしたという点で)ハマスと何も変わらない」と述べ、支援を求めない考えを示した。
プーチン政権を支持する保守系メディアはSNSで、ロシアからイスラエルに渡った著名人がハマスの攻撃で逃げ惑っているというプロパガンダを流している。
ソ連時代のヒット曲「百万本のバラ」で知られる歌手アーラ・プガチョワさん(74)の夫で、イスラエルに移住したコメディー俳優マクシム・ガルキンさん(47)は「(ユダヤ系であることを)誇りに思う」と声明を発表。夫妻が欧州に脱出したというのは「偽情報」だと注意を促した。
●一帯一路サミット 17、18日開催 中国政府 プーチン大統領も出席へ 10/11
中国政府は、来週17日と18日に、北京で一帯一路サミットを開くと発表しました。ロシアのプーチン大統領も参加するとみられ、どのような話し合いが行われるのか注目されます。
来週17日と18日に北京で開かれる一帯一路サミットには、130以上の国が参加する予定です。
テーマは「ハイクオリティな『一帯一路』を共同で建設し、手を携えて繁栄を実現しよう」で、開幕式では習近平国家主席が演説を行うということです。
巨大経済圏構想「一帯一路」は習近平国家主席が2013年に提唱したもので、今年で10年を迎えます。
きのう行われた会見で、中国政府は「中国ラオス鉄道」の建設などの例を挙げ、この10年間に150か国以上の国々と「一帯一路」に関する協力文書に署名し、直接投資額は2400億ドルを超えたと成果をアピール。「貧困の解消や雇用の拡大、人々の生活向上に貢献した」と強調しました。
一方で、「一帯一路」に関わるプロジェクトが対象国の財政的負担となり、「債務の罠」に陥るケースが批判されていることを意識してか、今回のサミットでは「質の高い共同建設について話し合う」と繰り返し強調。
中国の強引なプロジェクトの進め方への批判をかわそうとする狙いがあるものとみられます。
また、サミットにはロシアのプーチン大統領も出席する予定です。
ウクライナ侵攻後、プーチン大統領が北京を訪問するのは初めてで、習近平国家主席との緊密さをアピールするものとみられます。
●ロシア軍、東部で攻勢強める ウクライナ「激しい戦闘」 10/11
ウクライナ東部ドネツク州アブデーフカ市の当局者は10日、ロシア軍が同市への攻勢を強めており「激しい戦闘が起きている」と述べた。ウクライナのメディアが報じた。イエルマーク大統領府長官も「大規模な砲撃と空爆にさらされている」と通信アプリに投稿した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は10日、ルーマニアの首都ブカレストを訪れ、ヨハニス大統領と会談した。記者会見でウクライナの防空強化について「朗報があるだろう」と述べたが、詳細は明らかにしなかった。
英国防省は10日、ロシアのプーチン政権が来年3月の大統領選までに軍への追加の動員を行う可能性は「極めて低い」との分析を公表した。プーチン大統領は立候補するとみられており「不人気な政策は最小限に抑える」との見通しを示した。
●アルメニア首相、プーチン氏出席予定のCIS首脳会議欠席へ 10/11
中央アジアのキルギスは10日、首都ビシケクで開かれる独立国家共同体(CIS)首脳会議について、アルメニアのニコル・パシニャン首相が欠席の意向を伝えてきたことを明らかにした。会議にはロシアのウラジーミル・プーチン首相が出席の予定で、このところぎくしゃくしている両国の関係が一段と冷え込む可能性がある。
プーチン氏は12日にビシケク入りの予定。3月に国際刑事裁判所(ICC)からウクライナ占領地からの子ども連れ去りに関与したとして逮捕状を出されて以来、初めての国外訪問となる。
一方、パシニャン氏はキルギスのサディル・ジャパロフ大統領に電話で、「諸事情により残念ながら出席できない」と伝えてきたという。
パシニャン氏は、アゼルバイジャンが係争地ナゴルノカラバフで先月軍事作戦を行った際、ロシアは介入に乗り出さなかったと非難している。
先週にはアルメニア議会がICCへの加盟を承認。同じく先週、スペイン・グラナダで行われた欧州連合(EU)非公式首脳会議に参加したパシニャン氏は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と同地で会談した。こうした一連の動きにロシアは神経をとがらせている。
●「膠着状態」のウクライナ戦争の不都合な真実...西側の支援も限界か? 10/11
ウクライナの反転攻勢が開始されて3カ月以上。これから秋が深まり、戦場は泥濘と化して攻勢は一層困難となる。アメリカのマーク・ミリー統合参謀本部議長は、反転攻勢が可能な時期は10月中旬から下旬までだと述べ、攻勢ペースが遅いことを認めたが、「作戦はまだ終わっていない」とわずかな期待を表明した。
これは、ウクライナの事実上の武器庫であるアメリカが反転攻勢の失敗を認めたようにも聞こえる。同じく、ウクライナの武器庫であり、応援者でもあるイギリスのトニー・ラダキン国防参謀総長は、「ウクライナが勝ち、ロシアが負けつつある」と述べている。彼によれば「ロシアの目的は、ウクライナを征服し、ロシアの支配下に置くこと」だが、現時点で「そういうことは起きていないし、今後、決して起きない。だからウクライナが勝ちつつあると言える」そうだ。ロシアの目的がウクライナ征服にあるという断定の妥当性はさて置き、さすがに苦し紛れの強弁に聞こえる。
これまでウクライナにおける戦況を「ウクライナ側から」報じてきた米CNNでさえ、今後数カ月の展望として、「ロシア軍の規模はウクライナ軍をはるかにしのいでいる。戦争で孤立が深まっても、プーチンは戦争の長期化で友好国を失う心配をしなくていい状況にある。消耗戦にはウクライナよりロシアのほうがうまく対応できる可能性がある」との評価を下している。その上で、「ウクライナ政府は万が一和平交渉が行われる場合に備えて、あるいは現在享受している西側諸国の鉄壁の支援が崩れ始めた場合に備えて、可能な限り有利な切り札を手にしておきたいところだ」と述べている。
西側の支援はそろそろ限界
こうした西側の高官やメディアの動向を見るにつけ、反転攻勢が「成果を出せなかった」という評価は固まりつつある。同時に、停戦交渉、和平交渉への期待や予測が高まってきている。西側が投入してきた莫大なウクライナ支援はそろそろ限界に近づいているのかもしれない。
EU諸国も、ウクライナ支援には是々非々で臨んでいる。ポーランドは大量のウクライナ避難民を受け入れて支えてきたが、スロバキアやハンガリーと共に、戦争のため海上輸送できなくなったウクライナ産穀物が流入してくることを拒否している。ポーランド政府にとっては、国内の農家への配慮のほうがウクライナ支援より重いのが現実である。この問題をウクライナがWTO(世界貿易機関)に提訴したことから、ポーランドはウクライナとの距離を取り始めた。9月20日、ポーランドのマテウシュ・モラウィエツキ首相は、自国の軍備近代化を理由としてウクライナへの武器供与を停止したと発表した。ポーランドは、米英独に次いで4番目の規模の軍事支援をウクライナに与えてきた国である。アンジェイ・ドゥダ大統領は、国連総会が行われているニューヨークでの記者会見で、ウクライナを溺れる人に例え、「溺れる人は救助しようとする人をも深みに引き込む恐れがある」と発言している。
欧州諸国は侵攻当初、ロシアをウクライナで食い止めなければ自分たちが危ないとの危機意識から何を置いてもウクライナを全面的に支援してきた。だが、ここにきてロシアの「野望」が無限ではなかったことに気付き、物事のバランスを改めて考え始めたのだろう。
こうしたウクライナ支援の空気の落ち込みを受けてか、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、英誌エコノミストのインタビューにおいて、ウクライナ支援が減少すれば、ウクライナ避難民たちがどのような反応を示すか分からない、と述べたようだ。その真意は不明だが、大量のウクライナ難民を受け入れている欧州諸国にとっては、一種の脅迫にも聞こえたことだろう。
ブリンケン発言のニュアンス
9月にインドで行われたG20首脳会議にウクライナは招待されなかったが、アントニー・ブリンケン米国務長官と日本の林芳正外相(当時)がG20と並行してウクライナを訪問し、支援の姿勢を示したのは記憶に新しい。ブリンケンは新たに10億ドル規模の支援を約束したが、ウクライナ訪問後の9月10日の記者会見で、ゼレンスキーはロシアと交渉するだろうかとの質問を受け、「プーチンはウクライナを地図から消し去るという目的に失敗したことを忘れてはならない」と述べつつ、「交渉には相手が必要だ」と応じた。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「目的に失敗した」というところは、前述のラダキンと同じ認識を示しており、「既にロシアは敗北している」というのが、西側が協調してアピールしたいナラティブなのだろう。その裏には、ウクライナは既に「勝利」しており、交渉してもいいのではないか、との言外のニュアンスが感じられる。
というのも、ブリンケンはさらに、「プーチンが交渉に関心を示せば、ウクライナ側は率先して応じると思う」と述べているのだ。その後に続けて「戦争終結はウクライナの主権と領土一体性を反映した条件で」としているが、これは定型文であって、重点は前者の交渉に関するくだりにあるのは明らかだ。
では、ロシア側はこうした情勢をどのようにみているのだろうか。ブリンケンの会見の2日後のプーチンの発言を見てみたい。これは、ウラジオストクで行われた極東経済フォーラム全体会合でのものである。プーチンは、ウクライナに交渉の用意があるというなら、第1歩としてウクライナ政府が定めたプーチン政権との和平交渉を禁じる法令を撤回してはどうかと切り返している。実際、ゼレンスキーはプーチンとの交渉を拒否することを公にしている。
さらに、プーチンはウクライナとの交渉の可能性について、「ウクライナは、全ての資源(人的資源、兵器、弾薬等)が尽きてから停戦し、交渉を開始することで、交渉を続けている間に資源の回復を図るという戦術の可能性もある」との趣旨の発言をした。
また、その3日後の9月15日にロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が、ウクライナ情勢について演説し、現在「交渉」についていろいろ言われているものは西側の陰謀だと断じた。そして、ウクライナ侵攻から間もない2022年3月に行われた和平交渉で、ウクライナのNATO加盟とは別の形での安全保障について事実上合意に至ったが、西側勢力から署名しないよう圧力がかかり、失敗したと批判している。
「両雄」は並び立たない
過去の交渉の失敗の経緯から、プーチンもラブロフも、たとえ交渉してもそれは相手側の時間稼ぎにすぎないと考えている。残念ながら、ロシアは現在、前向きに交渉に応じることはないと言わざるを得ない。
ロシアは、最初の和平交渉が西側の圧力によって失敗した後、反転攻勢を受けて大きく前線を後退させたため、予備役の部分動員を行わざるを得なくなった経緯がある。さらに、長引く戦闘に対処するため、軍事部門に投資を行い、総動員体制に準ずる国内体制まで整備した。さらにイランや北朝鮮との軍事協力にも動いている。ロシアはもう覚悟を決めているのである。ウクライナの武器弾薬要求は、NATOの供給能力を上回っていると認めているNATOとは対照的だ。つまり、部分動員令を発した昨年秋の時点で、ロシアは大きな転換点を迎えていたのだ。果たしてその事実を西側諸国は認識できているのだろうか。
現在進行形のウクライナの反転攻勢の成否については、人によって評価が大きく異なっており、確かなことは不明だが、ウクライナ側が思ったような結果を出せていないことは確かである。また、「資源」の観点からもロシア側が優勢であることも、基本的な共通認識となっているだろう。もちろん、ウクライナに対して欧米が、人的資源を含め、これまで以上の大規模支援を投入できるというなら話は変わってくるが、来年の米大統領選次第では、支援は今後縮小局面に入る可能性もある。
では、ロシア側は今後停戦の機運が高まったときにどのような条件で何を目標として行動するだろうか。まず指摘すべきは、ゼレンスキーとプーチンは互いに並び立たないということ。ゼレンスキーはプーチンとの交渉自体を拒否しており、プーチンはゼレンスキーとの最初の和平交渉の失敗以来、交渉は時間稼ぎとして信を置いていない。つまり、プーチンがいなくなるか、ゼレンスキーがいなくなるかだ。
どちらの可能性がより高いかは、比較的容易に想像できる。ゼレンスキーの支持基盤はプーチンに比べればはるかに脆弱だ。ウクライナでは次の大統領選挙が来年の3月に予定されているが、予定どおりに実施されるかは不明だ。ゼレンスキーは選挙資金の不足を理由に実施の有無を明確にしていない。
もし、公正な選挙が行われれば、落選する可能性も十分あるだろう。ウクライナ国民がゼレンスキーを選んだのは、そもそも彼がロシアと交渉して、14年以来のドンバス紛争を和平に持ち込むことを公約に掲げていたからである。6月の世論調査ではウクライナ国民の大半は領土面での譲歩を支持していないようだが、だからと言ってロシアに勝利するまで戦争を継続するというゼレンスキーが再選されるとは限らない。国民は現実的な見方をしているものだ。
選挙の結果、ゼレンスキーが去るというシナリオがなくても、ロシア側がゼレンスキー政権と交渉を行う可能性は低いだろう。ゼレンスキーを追い落とすために、どこかのタイミングでウクライナへの攻撃を強化することもあり得る。ロシアは、ゼレンスキー政権が崩壊するか、合法的に交代するか、ウクライナに新たな政権が誕生するまで待つだろう。
ウクライナ支援継続は得策か
というのも、ロシア側の認識では、ゼレンスキーは米英の「傀儡」である。ラブロフは、米英を「人形遣い」と呼んでいる。すなわち、ロシア側の大きな戦略目標の1つは、ロシアの安全保障のためにウクライナから米英の影響力を排除することにある。このことは、ウクライナのNATO非加盟、中立化にとって必要不可欠な条件となっている。
仮に和平交渉が成功したとしても、英米がバックに付いたウクライナ政権が残る限り、NATO加盟や軍備増強などの動きが再開される可能性は残り、その場合には、ロシアは躊躇なく侵攻を繰り返すことだろう。
歴史を通じて、ウクライナはロシアと欧州の間の緩衝地帯であったが、今や、双方にとって危険な火薬庫と化した。それは、停戦しても変わることはない。なぜなら、アグレッシブなウクライナと、ウクライナのNATO接近を決して許さないロシアという構図に変わりがないからだ。
欧州にとってウクライナという火薬庫を維持してまで、ウクライナのNATO加盟が必要なのだろうか。親ロ的なウクライナの時代に、東欧諸国が今以上に大きな脅威にさらされていたという事実はない。むしろ、ウクライナがNATOに加盟したほうが、安全保障上の問題がはるかに大きくなることは、全てのNATO加盟国が理解しているはずだ。そもそも、NATOは安全保障組織であって、自由民主主義を拡散するための政治組織ではない。安全保障を脅かすような拡大は本末転倒である。すなわち、ウクライナのNATO非加盟という条件で交渉を行うこと自体は、不合理な判断ではないのだ。
では、何のために、昨年3月の和平交渉を打ち切って戦争を継続したのか。西側は、ゼレンスキーではなく、プーチンがその座を追われるシナリオを期待したのである。
しかし、プーチン政権が予想以上に強固な支持基盤を国内に築いていることが明らかとなり、ゼレンスキーがプーチンを追い落とすことができないことが判明した今、西側にとってアグレッシブなウクライナを維持することが、果たして得策なのかという疑問が改めて問われることになるだろう。
主なものとして、以下のような問題があると考えられる。
第1に、既に述べたように、アグレッシブなウクライナは欧州の火薬庫となり、欧州の安全保障にとって大きな問題となる。
第2に、長期にわたってウクライナ支援を続けなければならないとすれば、避難民の問題も含めて近隣諸国にとって大きな負担となる。
第3に、自由民主主義の旗印を掲げてウクライナ支援を行ってきたが、汚職がはびこるウクライナをEUの基準まで浄化するのは容易ではない。
第4に、ウクライナで混乱が拡大し、治安が悪化すれば、近隣諸国にもその影響が及ぶだろう。これは避難民の問題のみならず、ウクライナに供与された大量の武器弾薬の密輸・流出なども含まれる。
第5に、ロシアは自国の安全保障のために実力行使をためらわないことが明らかとなったため、ウクライナを西側で維持することはロシアとの緊張を高め続けることとなる。
これらの問題点を踏まえて言えることは、ウクライナがロシアを弱体化させ、プーチンを追い落とすことができないのであれば、安全保障の観点に限れば、欧州、特に近隣の東欧諸国にとって、ウクライナを支援するデメリットは非常に大きいということだ。つまり、ウクライナを西側陣営につなぎ留めることができなくても、欧州諸国の安全保障にとってはむしろ望ましいという判断がなされることも十分あり得る。
そして、ウクライナを西側に引き寄せようとすることは欧州とロシアの安全保障にとって危険であるというこの判断こそ、プーチンが欧州に示そうとしている「事実」なのである。ここには、自由主義とか民主主義とかいったレッテルに基づく政治的価値判断はない。あるのは安全保障上の戦略的判断だけである。おそらく、現在の欧州に最も必要なのも安全保障上の戦略的判断だろう。
アメリカの著名な政治学者であるエドワード・ルトワックは、他国の紛争に第三者が介入することの危険性を指摘している。無責任な第三者の介入は、当事者同士が紛争の決着をつけることを邪魔することで、かえって双方の戦意を温存し、戦争を永続化させることにつながるというのだ。この議論はウクライナ情勢にもよく当てはまる。遠方のアメリカはともかく、欧州は紛争の長期化、永続化によって、自らの安全保障環境を明らかに悪化させている。
ところで、日本の岸田文雄政権はウクライナ支援の姿勢を鮮明にしているが、何を望んでいるのだろうか。いかなる外交政策にも、明確な戦略目標があるはずだ。日本の戦略目標は、紛争当初の欧米のようにプーチンが失脚することなのか、あるいは欧州の安全保障環境を悪化させることで、ロシアと欧州を分断させることなのか。これはアメリカには喜ばれるだろうが、本当に日本の国益になるのだろうか。国家として自国の国益が何なのか、真剣に考える必要があるだろう。
●「米国は2つの戦場に対応できない」 中東に向かう目に笑うプーチン 10/11
イスラエル、ウクライナに武器支援せず
ただ、ロシアがイスラエルとの長い友好関係を断って中東事態に深く介入するのは難しいという分析もある。第2次世界大戦以降、イスラエルに移住したロシア系ユダヤ人が多く、現在もイスラエル内のロシア語駆使者は150万人にのぼる。ウクライナ戦争の直前にもプーチン露大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が何度か会うなど両国首脳間の関係も深い方だ。
実際、過去にロシアは親イスラエルの動きを見せてきた。イスラエルが2018年末、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが国境の地下を掘った浸透用トンネルを破壊する作戦を進めると、ロシアはこれを支持した。また両国は2019年3月、シリアからの外国軍撤収を議論する実務グループを構成して協力した。
イスラエルもウクライナ戦争の局面で西側国家と違い、事実上、中立的な立場を見せた。ウクライナがロシアのミサイル空襲を防ぐために「アイアンドーム(Iron Dome)」防御体系の支援を何度か要請したが、イスラエルはこれに応じなかった。
その一方でイスラエルはロシアとイランがドローンなど武器提供を口実に密着するのを警戒している。昨年10月、当時のイスラエルのラピド首相はウクライナのクレバ外相との電話会談で「ロシアがテロリスト国家のイランと近づくのは、ウクライナだけでなく世界を危険にする」と述べた。
会談をして関与幅を広げるプーチン
開戦4日目の10日までロシアは今回の事態に公式的な立場を明らかにしていないが、「静中の動」の動きを見せている。ロシア大統領府はこの日、プーチン大統領がモスクワを訪問したイラクのスダニ首相と会い、ガザ地区の紛争を含む国際情勢について議論すると明らかにした。
また、パレスチナ自治政府のアッバス議長が近くロシアを訪問し、仲裁を要請するだろうと発表した。モスクワに駐在するパレスチナのハピズ特使はロイター通信に「アッバス議長がモスクワを訪問することで合意した」とし「我々はいつ訪問が実現するかロシア大統領府の公式声明を待っている」と話した。
パレスチナ自治政府は国際社会でパレスチナを代表するが、ハマスとは過激な武装闘争など路線上の葛藤があり、政治的に敵対的な関係にある。現在、イスラエル西南側にあるガザ地区はハマスが統治し、パレスチナ自治政府は西岸地区を総括している状況だ。これに先立ちアッバス議長がイスラエルのガザ地区空襲を防ぐために国連の介入を訴えただけに、ロシア訪問計画もこれと関係があるという見方が出ている。
国家安保戦略研究院のチャン・セホ研究委員は「これまでロシアはイスラエルのパレスチナ攻撃に批判的な立場を見せてきたが、とはいえ露骨な言及や軍事的な関与はしてこなかった」とし「現在は状況に注目しながら『戦略的あいまい性』を維持する段階とみられる」と述べた。
●ナゴルノカラバフ紛争で旧ソ連諸国がロシア離れ 10/11
フィナンシャル・タイムズ紙のMax Seddonモスクワ支局長が9月21日付け同紙に、「ナゴルノカラバフのアルメニア兵力はロシア仲介の停戦で解散することに同意。降伏は領域に対するアルメニアの掌握への破滅的な打撃たりうる」との解説記事を書いている。その要旨、次の通り。
9月20日、ナゴルノカラバフのアルメニア兵力は、アゼルバイジャンによる24時間の攻撃(少なくとも32人が死亡、200人が負傷)の後、ロシアが仲介した停戦で解散することに同意した。
この降伏は、南コーカサス山脈の領土(アルツァフ共和国:国際的にはアゼルバイジャンの一部と認められているが、ソ連崩壊以来事実上アルメニアが掌握してきた)へのアルメニアの掌握に対する破滅的な打撃になるだろう。
トルコが支援するアゼルバイジャンはイスラム教徒が多数を占める専制国家であるが、2020年の戦争でアルメニアの飛び地の一部とその周辺領域を支配下に置いた。この戦争でロシアがキリスト教の同盟国の支援をしなかったことがこの地域でのモスクワの影響力の喪失の始まりになった。
昨年のウクライナ侵攻後、ロシアの平和維持軍はアゼルバイジャンがこの地域とアルメニアを結ぶ唯一の道路を封鎖し、食料不足,医療品不足、停電が発生したのに何もしなかった。 
モスクワによって作られた真空に踏み込もうとする最近の米欧の試みも打開をもたらさなかった。
アルメニアとロシアの関係は汚職摘発ジャーナリストであったパシニャンが18年の民主的革命で首相になった後、悪くなりはじめ、20年戦争でロシアがアルメニアを助けに来なかったことでさらに悪化した。
ロシアはパシニャンが共同演習のために米軍を招き、ウクライナに人道援助を送ったあと、アルメニアの大使を呼びだし注意した。
クレムリンはロシアの平和維持軍がナゴルノカラバフのアルメニア人を守り、飛び地への経路を開いておくとの義務を果たしていないとのアルメニアの主張に反論している。
ペスコフ報道官は9月20日、「このような非難は全く根拠がない」と述べ、今年初めにパシニャンがアルメニアは1991年ソ連が崩壊した時のアゼルバイジャン国境(ナゴルノカラバフを含む)を承認する用意があると述べたことに言及した。彼は「これはアルメニア側がカラバフをアゼルバイジャンの一部と認めたことを意味する。法的にはアゼルバイジャン共和国は自分の領土で行動している」と述べた。
ナゴルノカラバフをめぐりアルメニアとアゼルバイジャンは1991年のソ連崩壊後ずっと対立していたが、ロシアがウクライナ戦争もあってコーカサスでの影響力を低下させる中で、アゼルバイジャンがナゴルノカラバフを「対テロ作戦」と称して攻撃し、今回の事態が引き起こされた。
勝利したアゼルバイジャンはナゴルノカラバフの主権回復を宣言し、同地の「アルツァフ共和国」は、24年1月1日までに解体されることとなった。一応停戦がロシアの仲介で成立した状況であるが、今後の進展を注意深く見守る必要がある。
記事にもある通り、20年にアゼルバイジャンはナゴルノカラバフを巡りアルメニアと軍事衝突し、これに勝利した。その結果、「アルツァフ共和国」は領土の多くをアゼルバイジャンに返還することとなった。
さらに、22年にはアゼルバイジャンがアルメニアの国境地帯を攻撃し、アゼルバイジャンが戦略拠点を占領するなど、両国の軍事紛争においてアゼルバイジャンの優勢は更に強まっていた。
影でうごめくトルコ
アルメニアはロシアがソ連崩壊後北大西洋条約機構(NATO)に倣って成立させた集団安全保障条約機構(CSTO)に加盟している。しかし、アルメニアとアゼルバイジャンの紛争において、ロシアがその条約に従ってアルメニアを支援したことはない。
それに対する失望感は、アルメニアのロシア離れを引き起こした。アルメニアが米軍との共同軍事演習を行うなどは、かつては考えられないことであった。
これに対し、アゼルバイジャンの方はトルコの影響力が強くなり、両国は今や準軍事同盟関係にある。
ロシアのコーカサスでの影響力は今や地に落ちていると言ってよいように思われる。ロシアはグルジアとも、南オセチアなどのロシアの傀儡政権樹立を巡り関係は良くない。
コーカサス情勢と連動しているかどうかは議論の余地があるが、ウクライナ戦争のせいで中央アジア5カ国にもロシア離れが起こっている。カザフスタンはその北部に多くのロシア人居住者を抱えており、それがウクライナ東部のようにロシアの侵攻の理由にもなりかねないと強い懸念を有し、領土の一体性の尊重を強く主張している。
ウクライナ戦争後、ロシアは国際的影響力を失い、弱体化する可能性が高い。その理由の一つは旧ソ連諸国のロシア離れである。このアルメニア・アゼルバイジャン紛争はその一つの現れではないかと思われる。
●ウクライナ東部で総攻撃 包囲進むアウディイウカ―ロシア軍 10/11
ウクライナのメディアなどは10日、ロシア軍が東部ドネツク州アウディイウカに同日朝から総攻撃を行っていると伝えた。アウディイウカは、親ロシア派の拠点都市ドネツクから北に約15キロの最前線に位置。ロシア軍による包囲が進んでおり、州内の激戦地になぞらえて「第2のバフムト」と化する恐れがあると懸念されている。
●核実験禁じるCTBT ロシアで批准の撤回に向けた動き 10/11
ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアでは、CTBT=包括的核実験禁止条約について、批准の撤回に向けた動きが出ています。ロシアの外務次官は「批准に関する条文を取り消す法案を提出すべきだ」と述べ、アメリカへのけん制を強めています。
ロシアではプーチン大統領が今月5日にCTBTの批准を撤回して新たな核実験に踏み切る可能性を示唆したことを受けて、議会下院の議長が9日、批准を撤回するかどうか、下院の国際問題委員会で検討するよう指示したと発表しました。
これについて議会下院のスルツキー国際問題委員長は10日、記者団に「関連法案はすでによく練られており、期限の今月18日には法案を提出できるだろう」と述べました。
また、リャプコフ外務次官は10日、ロシアの通信社に対し、アメリカが条約を批准していないことに触れ「ロシアも批准に関する条文を取り消す法案を提出すべきだ」と述べ、アメリカと均衡を保つ必要があるという考えを強調し、けん制を強めています。
プーチン大統領は10日、首都モスクワを訪問したイラクのスダニ首相との会談で「ウクライナ危機が続き、中東情勢は急激に悪化している。中東におけるアメリカの政策の明らかな失敗例だ」と述べ、アメリカを批判しました。
●ロシア 国連人権理事会の理事国に立候補も落選 10/11
世界各国の人権問題への対応を協議する国連人権理事会の理事国を決める選挙がアメリカ・ニューヨークの国連本部で行われ、ウクライナへの軍事侵攻で資格を停止されたロシアが立候補しましたが、国連加盟国による投票の結果、落選しました。
スイスのジュネーブにある国連人権理事会は、世界各国で深刻な人権侵害が起きたときに対応を協議する機関で、47の理事国で構成されています。
ロシアはウクライナへの軍事侵攻後、2022年4月に国連総会で採択された決議で、人権理事会の理事国としての資格が停止されました。
その後、ロシアは2024年からの3年間の理事国を決める選挙に立候補していたことが、9月に明らかになりました。
ニューヨークの国連本部で10日、国連加盟国による投票が行われ、日本や中国、それにキューバなどが理事国に選ばれましたが、ロシアは落選しました。
投票に先立ち、国際的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻と、中国による新疆ウイグル自治区の人権状況をあげて、「ロシアと中国は理事国にふさわしくなく選出されるべきではない」と表明していました。 
●プーチン大統領 米を非難「民間人を巻き込むな」 ハマスとイスラエルの衝突 10/11
イスラム組織「ハマス」とイスラエルの衝突を巡り、ロシアのプーチン大統領は、アメリカが原因であり、戦闘を激化させていると批判を繰り返しています。
プーチン大統領「アメリカは過去数年間、(パレスチナ問題の)解決策を無視してすべてを独占した」
プーチン大統領は11日、モスクワで開かれた国際フォーラムの演説でこのように述べ、アメリカを批判しました。
プーチン氏はまた、女性や子どもなどの民間人を戦渦に巻き込むべきではないと主張しました。
プーチン大統領「男同士で争うと決めたら、子どもと女性には手を出すな。これは双方に当てはまる」
この発言に対してロシアの独立系メディアは、ロシアのウクライナ侵攻により、1年半で少なくとも545人の子どもを含む9444人の民間人が殺害されていることを指摘しています。
プーチン氏の演説会場の建物は、一般の車などが近付かないよう工事用の車両が周囲に配置され、厳重な警戒態勢が敷かれました。

 

●プーチン大統領 中央アジア訪問し旧ソビエト諸国の結束演出へ 10/12
ロシアのプーチン大統領は、12日から中央アジアのキルギスを訪問し、旧ソビエト諸国の首脳会議に出席します。ウクライナへの軍事侵攻以降、旧ソビエト諸国のロシア離れが指摘されていて、プーチン大統領としては結束を演出したい思惑です。
ロシア大統領府は11日、プーチン大統領が、12日から中央アジアのキルギスを訪問し、ジャパロフ大統領と会談を行うと発表しました。
また翌13日にはキルギスで開かれる旧ソビエト諸国でつくるCIS=独立国家共同体の首脳会議に出席する予定です。
プーチン大統領が外国を訪問して首脳と会談するのは、ことし初めてとなります。
今回の訪問に関連して、ロシア大統領府のウシャコフ補佐官は、プーチン大統領がアゼルバイジャンのアリエフ大統領とも12日に会談する予定だと明らかにしました。
アゼルバイジャンは先月、係争地ナゴルノカラバフを巡って起こした軍事行動で、アルメニアに勝利宣言し、この地域の統合を進めていてプーチン大統領としては両国の仲介役としての存在感を示したいねらいもあるとみられます。
一方、アルメニアのパシニャン首相はロシアへの不満を強めていて今回のCIS首脳会議にも欠席する意向を明らかにしました。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻以降、旧ソビエト諸国のロシア離れが指摘されていて、プーチン大統領としては今回の訪問を通じて勢力圏とみなしている旧ソビエト諸国の結束を演出したい思惑です。
●ロシア、イスラエル・ハマスとの対話維持…両にらみ戦略のプーチン大統領 10/12
ロシアのプーチン政権は、イスラム主義組織ハマスとイスラエルの軍事衝突に関し、直接的な評価に強く踏み込まず、慎重に言葉を選んでいる。双方の当事者に加え、ハマスの後ろ盾となっているイランの重要性が、ウクライナ侵略の長期化に伴って増していることが背景にあるようだ。プーチン政権には来年3月の大統領選を控え、世論の分断を避けたい思惑も透ける。
プーチン大統領は、モスクワで11日開かれたエネルギー関連の会合で、米国の中東政策批判を繰り返す一方、衝突の原因には直接触れず、「双方に大きな苦しみがあるのは理解するが、民間人や女性、子どもの犠牲を抑える努力が必要だ」と述べるにとどめた。
ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は11日、国営テレビの番組で、ハマスの軍事行動を「テロとしか言いようのない行為を非難せずにはいられないが、その前に何があったか、忘れてはならない」と述べた。「バランスの取れたアプローチが重要」とも語った。
イスラエルに一方的に肩入れする米国とは一線を画し、露政府が双方と対話を維持する考えを示した発言だ。
かねてイスラエルとパレスチナの「2国家共存」を支持してきたプーチン政権は、イスラエルや米国が「テロリスト」と断じるハマスとも良好な関係を維持している。米紙ワシントン・ポストによると、セルゲイ・ラブロフ外相は2020年以降、少なくとも5回、モスクワでハマス幹部らと会談した。政治部門トップのイスマイル・ハニヤ氏も含まれるという。
ハマスを支援しているイランとの関係について、9月にテヘランを訪れたセルゲイ・ショイグ国防相は「新たなレベルに到達しつつある」と明言した。ロシアによるウクライナの民間施設への攻撃ではイラン製自爆型無人機が主力になっている。
プーチン政権与党「統一ロシア」の議員はSNSに「イスラエルの同盟国は米国だが、イランやムスリム世界の同盟国は誰だ。我々だ」と投稿した。ロシアと対立する米国の支援を受けるイスラエルへの反感も根強い。
ただ、プーチン氏はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と頻繁に連絡を取り合う「盟友」と称される。ロシアのウクライナ侵略を巡って、イスラエルは対露制裁に参加していない。露国内には十数万〜数十万人規模とされるユダヤ系コミュニティーがあり、財界などで影響力を持っており無視できない存在になっている。
●正恩氏「ロシアの勝利願う」 プーチン氏と祝電交換 10/12
朝鮮中央通信によると、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は12日、ロシアとの国交樹立75年を記念してプーチン大統領と祝電を交換した。
正恩氏は「ロシア人民が、国の自主権と尊厳、安全と平和を守る闘いで栄光をとどろかすことを願う」と伝達。ウクライナに侵攻するロシアの勝利に期待を示した。
プーチン氏は、9月の正恩氏とのロ朝首脳会談に言及。この時の合意実現が「2国間協力の一層の拡大に寄与すると確信する」と強調した。
合意の具体的内容は明らかにされていないが、北朝鮮が首脳会談を受け、ロシアへの武器・弾薬供給に着手したとの見方が強まっている。
●ロシア軍、ウクライナ東部要衝に大規模攻勢 10/12
ロシア軍は、数カ月にわたって包囲しているウクライナ東部の要衝の町アウディーイウカに大規模な攻勢をかけている。ウクライナ軍当局者が明らかにした。
当局者によると、2022年2月の侵攻開始以来、最大の同町に対する攻撃で、ロシア軍は大量の兵力と装備を振り向けた。大規模な攻撃は10日から行われているという。
ロシア側の発表でも戦闘が激化していることを示唆しており、同国軍が「アウディーイウカ近郊の形勢を改善した」という。
ウクライナ軍参謀本部によると、町への敵の攻撃を10回撃退した。
●ロシア軍がウクライナの学校をミサイル攻撃、4人死亡=当局 10/12
ウクライナ当局は、ウクライナ中部ドニエプロペトロフスク州ニコポリにある学校が11日にロシア軍によるミサイル攻撃を受け、少なくとも4人が死亡したと発表した。
2人が負傷し、治療を受けているという。
●米共和党議員、イスラエル・ウクライナ支援一括案に反対表明 10/12
米野党共和党の一部議員は11日、バイデン大統領からイスラエルとウクライナへの軍事援助を組み合わせた資金要請があった場合、拒否すると表明した。
政府当局者によると、ホワイトハウスはウクライナへの軍事援助承認の可能性を高めるため、イスラエル向け資金をウクライナや台湾向けと一括して議会に要請するかどうかを検討している。
イスラム組織ハマスの攻撃を受けたイスラエルを巡ってはバイデン氏と与野党双方の議員が支援に向けあらゆる措置を取ると表明している。
一方、共和党の一部議員はウクライナの汚職対策が不十分だとして同国への支援を批判。追加支援に反対している。
ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は記者会見で、政権が議会に要請する追加資金の枠組みはまだ確定していないと述べた。
共和党のドン・ベーコン下院議員は、イスラエルとウクライナへの援助のどちらも支持するが、別々に検討すべきだと記者団に述べた。
●バイデン政権、ウクライナに追加軍事支援…「イスラエル支援と両立可能」 10/12
米政府は11日、ウクライナに対する弾薬や対無人機システムなど2億ドル(約300億円)の追加軍事支援を発表した。9月末に成立した米政府の暫定予算(つなぎ予算)からはウクライナ支援費用が除外されているが、継続支援の姿勢を示す狙いがある。
これに先立ち、オースティン米国防長官は11日、ベルギーのブリュッセルで主催した約50か国によるウクライナ支援の国際会合で支援内容を説明し、「米国民の幅広い支持がある」と訴えて各国に理解を求めた。16回目となる同会合には、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が初めて対面で出席した。
オースティン氏は会合後の記者会見で「イスラエルとウクライナの両方の支援を行うことが能力的に可能で、それを行うつもりだ」と述べ、両国への支援の両立を図る姿勢を強調した。
●ウクライナ大統領、冬の戦いに向け武器供給要請 NATO本部で 10/12
ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、同国に侵攻したロシアが発電所などのインフラに対して攻撃するのに備え、冬を乗り切るための武器や防空設備を供給するよう北大西洋条約機構(NATO)同盟国に要請した。
ゼレンスキー氏は、2022年のロシアによる侵攻後で初めてNATO本部を訪問。ロシアのプーチン大統領をパレスチナのイスラム組織ハマスになぞらえ、ロシアのウクライナ侵攻とハマスのイスラエル攻撃を同じ硬貨の表裏のようだと指摘し、西側の軍事支援が不可欠だと訴えた。
NATO加盟国と、非加盟国でウクライナを軍事支援する約20カ国の国防担当相が集まった会合で「この戦争がいつ終わるのか、ウクライナにとって正当に終わるのかという問いに対し、冬の防空戦が答えの重要な部分を握る」とし、「私たちはテロとの冬の戦いに勝たなければならないし、勝つことができる」と訴えた。
オースティン米国防長官は、必要なだけウクライナを支援するという西側諸国の誓約を改めて表明。防空弾薬や、ロシアのドローン(無人機)に対抗するための武器を含む2億ドル相当の軍事支援を発表した。
NATOのストルテンベルグ事務総長は、プーチン氏がウクライナのエネルギーインフラを攻撃して「冬を戦争の武器として再び利用する準備をしている」と批判した。  
●プーチン大統領がキルギス訪問、逮捕状後初外遊 親ロシア国 10/12
ロシアのプーチン大統領は12日、中央アジアの親ロ国家キルギスを訪問しジャパロフ大統領と会談した。ウクライナ侵攻を巡る戦争犯罪容疑で国際刑事裁判所(ICC)が逮捕状を出して以来初の外遊となった。
プーチン氏は2022年2月のウクライナ侵攻以来ほとんど海外に出ておらず、ICCが今年3月にウクライナからの子どもの連れ去りに関与したとして逮捕状を出して以降はロシアを離れたことはなかった。
訪問は2日間の予定で、13日には首都ビシケクで開催される独立国家共同体(CIS)首脳会議に出席する。
プーチン氏はジャパロフ大統領との会談で、キルギスにとって重要な貿易相手国であり、最大の投資国であるロシアの重要性を強調、両国の協力関係をさらに発展させると述べた。
ロシアとキルギスの貿易が2桁の伸びを示していることをプーチン大統領は挙げたが、西側諸国ではキルギスがロシア企業による制裁破りを助けているのではないかと疑う声もある。
●中東情勢で偽動画拡散「発信源はロシア」の疑惑も 10/12
イスラエルとパレスチナの衝突をめぐって、SNSなどでさまざまな偽動画が拡散されています。その発信源の一つとして、ロシアの存在が指摘されています。
BBCのロゴが入った動画 「偽動画」と警告
「欧米がウクライナに供与した武器がイスラム組織ハマスに流出していた」
国際的な調査報道グループの「ベリングキャット」が偽動画だと警告したこの動画。
イギリスの公共放送、BBCのロゴが入っていて、BBCが制作したように見えますが、偽動画だと注意を呼びかけています。
制作者は不明ですが、同じような主張はここ数日、ロシア政府の関係者から相次いでいます。
ロシア側の発言 偽動画とほぼ同じ主張を
ロシアのメドベージェフ前大統領は、SNSに「ウクライナのナチス政権に供与された武器は現在、イスラエルに対して使用されている。事態は悪化するばかりだ。ミサイルや戦車、そしてすぐに飛行機も闇市場で売られるだろう」と書き込みました。
さらに、ロシア外務省の報道官も10日の記者会見で。
ロシア外務省 ザハロワ報道官「アメリカやイギリスなどNATOがウクライナに供与した兵器は、現場の兵士に渡されなかった。闇市場で売られたので世界のどこにでも現れる」
ウクライナ政府は反論「ロシアがハマスに兵器供与のケースも」
これに対して、ウクライナ政府は反論しています。
ロシアがパレスチナ情勢を利用して大規模な偽情報の発信に乗り出したと批判し、「フェイクだ」とSNSなどで注意を呼びかけています。
ウクライナの国防省も声明を発表し、「ロシアの特別機関が中東でウクライナの信用を失墜させるキャンペーンを進めている」と警告しました。
ロシアがウクライナでの戦闘で奪った欧米の兵器を、ロシアがハマスに引き渡しているケースがあると主張しているのです。
さらにウクライナ軍は、現場の兵士のビデオメッセージも発信し、イスラエルを全面的に支持する姿勢をアピールしています。
ウクライナ軍兵士「イスラエルに対する今回の攻撃は文明世界に対する犯罪だ。人道に対する罪を止めるため、国際社会は結束すべきだ」
パレスチナ情勢がどのようにウクライナ情勢に影響を及ぼすのか、現時点では不透明ですが、情報・サイバー空間ではすでに戦いが激しくなっているようです。

 

●プーチン大統領 キルギス訪問 中央アジアでの存在感をアピール 10/13
ロシアのプーチン大統領は、中央アジアのキルギスを訪問し、現地に駐留するロシア軍が地域の安全保障に貢献してきたと強調し、ロシアが勢力圏とみなす中央アジアでの存在感をアピールしました。
ロシアのプーチン大統領は12日、中央アジアのキルギスを訪問し、ジャパロフ大統領と会談しました。
プーチン大統領が、外国を訪問して首脳と会談するのはことし初めてで、プーチン大統領は「キルギスにとってロシアは最大の投資国だ」と述べ、ロシアが果たす経済的な役割は大きいと強調しました。
また、プーチン大統領は、首都ビシケク郊外のカント空軍基地にロシア軍が駐留してことしで20年になるのにあわせて開かれた式典で演説しました。
このなかで「中央アジア全体にも安全と安定をもたらし、テロなどの脅威に大いに貢献してきた」と述べ、アフガニスタン情勢などでロシア軍が安全保障に貢献してきたと強調しました。
そのうえで今後も最新の兵器などを配備していくとしてロシアが勢力圏とみなす中央アジアでの存在感をアピールしました。
プーチン大統領は13日にはキルギスで開かれる、旧ソビエト諸国でつくるCIS=独立国家共同体の首脳会議に出席する予定です。
プーチン大統領は、今月6日も中央アジアのウズベキスタンの大統領をロシアに招待して関係強化を打ち出したばかりで、ウクライナ侵攻以降、旧ソビエト諸国のロシア離れが指摘される中、関係国の結束を演出したい思惑があるとみられます。
●東部拠点でウクライナ防戦…ドネツク州アウディーイウカ、ロシア大規模攻撃 10/13
ウクライナ東部ドネツク州のアウディーイウカに対し、ロシア軍が最近、大規模な攻撃を仕掛けている。アウディーイウカは東部戦線でのウクライナ軍の守備の重要拠点で、両軍の激しい戦闘が続いている。
ロイター通信などによると、露軍の攻勢は10日に始まり、数十台の戦車や装甲車を投入している。ウクライナ軍は11日、露軍の10回にわたる攻撃を退け、「戦線を維持している」とSNSで発表した。
一方、ロシアのタス通信によると露国防省は11日、アウディーイウカで「前進している」と発表した。
アウディーイウカは、ドネツク州の要衝バフムトの南方約50キロ・メートルにある。ウクライナ軍は工場を 要塞ようさい 化し、立てこもっているという。米政策研究機関「戦争研究所」は、現在の露軍の兵力でアウディーイウカを陥落させることは難しいと指摘する一方で、露軍の攻勢にはウクライナ軍をくぎ付けにする狙いがあると分析している。
●ロシア軍 東部ドネツク州で兵力増強 ウクライナ軍との攻防激化 10/13
ウクライナ軍が領土の奪還を目指して反転攻勢を続ける中、東部ドネツク州ではロシア軍が兵力を増強して攻撃を強め、双方の攻防が激しさを増しているとみられます。
ウクライナ軍は、南部ザポリージャ州や東部ドネツク州で反転攻勢を進め、徐々に領土を奪還していると発表していますが、ドネツク州の激戦地アウディーイウカ周辺では、ロシア軍が兵力を増強して攻撃を強めているもようです。
ウクライナ軍の報道官は12日、地元メディアに対し、ロシア軍が空爆などを繰り返しているとした上で「敵は何らかの勝利を得て流れを変える好機とみているようだ」と述べたほか、アウディーイウカの市長は「攻撃は3日間続いている」としていて、双方の攻防が激しさを増しているとみられます。
ウクライナのゼレンスキー大統領は12日「われわれは踏みとどまっている。この戦争の結末を決めるのはウクライナの勇気と結束だ」とSNSに投稿しました。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は11日、アウディーイウカの南西や北西の集落付近にロシア軍が部隊を進めたことが位置情報で確認できるとした上で、ウクライナ軍がほかの戦線に展開するのを阻止するねらいもあると分析しています。
一方、ウクライナ空軍は12日、ロシア軍がロシア西部の国境付近などから夜間に33機のイラン製無人機で攻撃を仕掛け、このうち28機を撃墜したと発表しました。
また、ウクライナのクリメンコ内相は、今月5日に東部ハルキウ州の集落でロシア軍のミサイル攻撃によって亡くなった人があわせて59人で、全員が地元住民だと確認されたと発表し、「決して許さない」とロシアを重ねて非難しました。
●G7財務相、ハマスによるイスラエル攻撃を非難 共同声明 10/13
主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁は12日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスによるイスラエルに対する攻撃を非難すると同時に、ロシアの侵攻を受けているウクライナへの「揺るぎない」支援を表明する共同声明を発表した。
G7はモロッコのマラケシュで開かれている国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会に合わせ財務相・中銀総裁会議を開催。会議後に発表した共同声明で「ハマスによるイスラエルに対するテロ攻撃を断固として非難し、イスラエル国民との連帯を表明する」とした。
また、ロシアに対し制裁やその他の経済措置を実施する決意を表明。「制裁措置を回避し、損なうようなあらゆる試みに対抗することにコミットする」としたほか、ロシアの原油と石油製品に対し設定されている上限価格が効果を発揮しているか注視するとし、履行確保に向け必要に応じて適切な措置を取るとした。
このほか、欧州諸国の働きかけに応じる形で、凍結されたロシア資産から得られる収入をウクライナ復興に振り向ける方法を検討すると表明した。
今回のG7財務相・中銀総裁会議は、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルの攻撃は始まってから初めての対面形式での会議。議長を務めた鈴木俊一財務相は会議後の記者会見で、中東での紛争激化に懸念と非難の声が上がったとし、議題に挙げられていなかったものの、多くの参加者が時間をかけて見解を表明したと述べた。
日銀の植田和男総裁は、紛争が直ちに世界経済の見通しに関する見解の変更につながるわけではないとしながらも、ウクライナ情勢で世界経済の先行き不透明感が高まり、金融政策の舵取りが難しくなる中、このところの中東情勢で不確実性が一段と高まったとの認識を示した。
共同声明には世界経済に対する今回の危機の潜在的な影響に関する言及はない。  

 

●プーチン氏は、イスラエル・ガザ戦争で得をするのか=BBCロシア編集長 10/14
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領について、まるでボンド映画の巨悪のようなイメージを、私たちはついつい抱きたくなる。山奥の秘密の隠れ家には巨大な指令パネルがあり、彼はその前に鎮座して、世界中に混乱を巻き起こすのだ――というような。
ボタンを一つ押せば、バルカン半島が不安定になる。別のボタンを押せば、中東が爆発する、などなど。
そう思いたいのはやまやまだが……おそらく、不正確だ。クレムリン(ロシア大統領府)を率いる彼の、世界的な影響力を過大評価している。
確かにロシアは、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスと結びつきがあるし、イランとは緊密な関係を築いている。アメリカによると、ロシアとイランの両政府は今では、全面的な軍事同盟国なのだという。
だからといって、ハマスによるイスラエル攻撃について、ロシア政府が直接関与していたことにはならない。事前に承知していたことにも、ならない。
「ロシアが何かしら関与していたとは、我々は思っていない」。イスラエルの駐モスクワ大使、アレクサデル・ベン・ズヴィ氏はこのほど、ロシア紙コメルサントに対してこう述べた。ハマスがイスラエルで繰り広げた残虐行為に、ロシアが何か関わっていたなどとほのめかすのは、「まったくナンセンスだ」とも話した。
米ジェームズ・マーティン不拡散研究センターでロシアと中東を専門とするハンナ・ノッテ博士(在ベルリン)は、「ロシアがハマスに直接、武器を提供したとか、ロシアがハマス工作員に軍事訓練を提供したとか、そういう証拠はまったく目にしていない」と話す。
「確かにロシアは、長年にわたりハマスとかかわってきた。ロシアは一度も、ハマスをテロ組織と呼んでいない。ハマスの代表は昨年と今年、モスクワを訪れている」
「しかしだからといって、ロシアが多岐にわたりハマスを軍事的に支援しているとは類推できない。ロシア製の兵器システムがガザ地区に入っていることは、確認されている。しかしそれはおそらく、(エジプトの)シナイ半島経由で、かつイランの援助があってのことだろう」
つまり、プーチン大統領が「中東戦争」とラベルの付いたボタンを押したわけではないということだ。
しかし、この戦争から利益を得るつもりでいるのではないか? 
もちろんだ。どうやるのか、説明しよう。
ウクライナから世間の注目が外れる
中東における暴力拡大で、各国の国際報道はそのニュース一色になった。イスラエル発の劇的な記事タイトルが、ロシアがウクライナで続ける戦争から世間の目をそらすだろうと、ロシア政府は期待している。
ここで大事なのはただ単に、ニュースの流れを変えることだけではない。ロシア政府は中東情勢の結果として、西側がウクライナに提供するはずだった軍事援助がイスラエルへ振り向けられることを期待している。
「この危機は、(ウクライナでの)特別軍事作戦の展開に直接影響すると思う」。ロシアの外交官、コンスタンティン・ガリロフ氏は政府系新聞イズヴェスチヤにこう話した。
「ウクライナを支援する各国は、イスラエルでの紛争に気が移ってしまうはずだ。西側がウクライナを見放すという意味ではない。しかし、ウクライナに行く軍事支援の量は減り(中略)もちろん軍事作戦は一気にロシアに有利になるかもしれない」
ロシアは、自分に都合よく解釈している?  そうかもしれない。
「ウクライナを支援すると同様に、我々はイスラエルを支えることができるし、実際にそうする」。アメリカのロイド・オースティン国防長官は13日、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の国防相会議でこう発言した。
けれども、中東での紛争が長引けば、2つの戦争で2つの同盟国を同時に支え続けることが果たしてできるのか、アメリカの能力が試されることになる。
仲介者ロシア? 
ロシアは、平和を仲介するいわゆる「ピース・メイカー」の役割を自ら担うことで、中東での存在感を拡大しようとしている。
かつてロシアは中東での紛争終結に向けた国際的取り組みに参加し、その役割を請け負っていた。
「ロシアは(この紛争で)役割を果たすことができるし、そうする」。ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官はこう述べた。「我々は紛争の双方と、連絡を取り続けている」とも話した。
イラクのハンマド・スダニ首相は10日、モスクワを訪れてプーチン氏と会談し、中東における「本格的な停戦のイニシアチブを発表」するよう求めた。
ロシアが平和の使者に?  それはなかなか難しそうだ。
そもそもロシアは、隣国に全面的な侵略戦争を仕掛けた国だ。開戦から間もなく1年8カ月となるこの戦争で、ロシアがウクライナにもたらした死と破壊の規模は、世界に衝撃を与え続けている。
しかも、平和の実現に自分たちが「役割を果たせるし、そうする」と宣言したところで、紛争の当事者たちがロシアを仲介者として受け入れる保証はない。
ロシアはかねて中東に関心を抱いてきた。イスラエルがアメリカと緊密な関係を築く一方で、ソヴィエト連邦はアラブ寄りの姿勢をとった。旧ソ連は長年にわたり、国を挙げて反ユダヤ主義を推進し、それがソ連での暮らしの一部だった。
ソヴィエト「帝国」の崩壊後、ロシアとイスラエルの関係は改善した。旧ソ連を構成した各地の共和国から、100万人以上のユダヤ系住民がイスラエルへ移住したことも、これに関係している。
最近ではプーチン氏率いるロシアは、イランをはじめ、イスラエルと敵対する諸国と接近した。これがロシアとイスラエルの関係悪化につながっている。
アメリカを非難
クレムリンはこの機に乗じて、ただでさえ普段からしきりにやっていることを、さらに大々的に展開できそうだと察している。つまり、アメリカを非難することだ。
ハマスのイスラエル攻撃以降、プーチン氏が繰り返す主な言い分は、「これはアメリカの中東政策が破綻しているという一例だ」というものだ。
ロシアは「アメリカの覇権主義」と呼ぶものを攻撃するのが常で、今回もこのパターンに当てはまる。
そして、「中東で一番の悪者はアメリカ」と主張し続けることで、ロシア政府はアメリカのイメージを損ないつつ、中東における自分たちの位置を向上させようとする。これがロシア流のやり方だ。
私はこれまで、今の中東情勢がロシアにとってどう有利に働くかを検討してきた。しかし、ロシアにとって危険もある。
「慎重に調整された不安定。これこそロシアにとってベストの状態」だと、前出のノッテ博士は言う。
「この危機でウクライナから世界の注目が離れるなら、アメリカの国内政治におけるイスラエルの重要性を思えばそのリスクは本物だが、そうなれば確かに、ロシアは短期的には現状から利益を得ることになる」
しかし、ハマスに武器と資金を提供するイランを含め、中東の広範囲が現在の戦争に巻き込まれるようなことになれば、それはロシアの利益につながらないとも、ノッテ博士は言う。
「ロシアは、イスラエルとイランの間の全面戦争を望んでいない。もし事態がその方向に進み、アメリカがイスラエルを徹底的に支援すると明らかになれば、ロシアは今以上にイラン寄りに進むしか選ぶ道はないと判断するだろう。しかし、それがロシアの本心なのかどうか、はっきりしない」
「プーチン氏は今なお、自分とイスラエルとのつながりを重視していると私は思う。味方する側を選ばなくてはならないような外交状況に移ることを、ロシアは望んでいないと思う。だが、この紛争が悪化すればするほど、ロシアに対する圧力は高まるかもしれない」
●ウクライナ東部で激しい戦闘続く ロシア軍は主導権を演出か 10/14
ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州のアウディーイウカへの攻撃を続けていて、地元当局はロシア軍が「街を包囲しようとしている」として、危機感を示しています。
ウクライナ軍は東部や南部で反転攻勢を進め徐々に領土を奪還し、陣地を固めていると発表していますが、ロシア軍はドネツク州のアウディーイウカで激しい攻撃を続けています。
ウクライナのメディアは14日、アウディーイウカの市長が「5日間、敵は市街地周辺への攻撃を続けている。街を包囲しようとしている。新しい部隊が次々に送り込まれている」と述べたと伝えていて、市内には電気や水道が止まったままいまもおよそ1600人がいるとして強い危機感を示しています。
ただ、ウクライナ軍の参謀本部は14日、この地域の戦況についてロシア軍はウクライナ側の防衛を突破しようとしているが「成功していない」としています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は13日、ロシア軍が情報統制を強め、アウディーイウカ周辺での作戦についてSNSなどでの情報発信を制限するよう指示していると指摘し「プーチン政権は、局地的な動きをとらえて『ウクライナでの主導権を握っている』と見せようとしている」という見方を示しています。
こうした中、ドネツク州のポクロウシクでも13日、ロシア側による砲撃があり、地元の検察は1人死亡し、24人けがをしたと発表するなど、ウクライナ側での被害が続いています。

 

●ロシア軍 東部の州で攻勢強める ウクライナ側 街包囲に危機感 10/15
領土奪還を目指すウクライナ軍は南部ザポリージャ州で反転攻勢を続けていますが、これに対し、ロシア軍は東部の州で攻勢を強めていてウクライナ側は「街を包囲しようとしている」と危機感を示しています。
ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は東部ドネツク州で拠点の1つ、アウディーイウカへの攻勢を強めていて、地元の市長は「敵は市街地周辺への攻撃を続けている。街を包囲しようとしている」と述べ、危機感を示しています。
また、市長はウクライナメディアに対してロシア軍がアウディーイウカを占拠して年末までにドネツク州全域の掌握をねらっているという見方を示しました。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は13日「ロシア軍が情報統制を強め、アウディーイウカ周辺での作戦についてSNSなどでの情報発信を制限するよう指示している」としてロシア軍に不利益な情報が流れないよう情報を制御しようとしていると指摘しました。
一方、ウクライナ陸軍のシルスキー司令官は「東部のハルキウ州クピヤンシクからドネツク州リマンにかけての戦線がここ数日で著しく悪化している。敵はクピヤンシクを包囲しようとしている」としてロシア軍が攻勢を強めていると明らかにしました。
ウクライナ軍は南部ザポリージャ州で反転攻勢を続け、ロシア側が占領する拠点のトクマクの奪還を目指していますが、これに対し、ロシア軍は東部への攻撃を強化しているとみられます。
●ロシアとウクライナは、違うのか? 同じなのか? 10/15
ロシアとウクライナは、同じ国の中の地方の違いのように思っていたが、1年半にわたる戦争は終わらない。この両国の複雑でわかりにくい関係を、ChatGPTに説明してもらった。
ロシア人というが、実はウクライナ人
ロシアとウクライナの戦争が1年半たっても終わらない。残酷に破壊されたウクライナ市街地の写真が、いつになっても、新聞の紙面から消えない。
これほどの戦いを続けるのは、普通は、よほど憎み合っている国の間のことだ。しかし、両国の間でそうしたことをうかがわせるようなことは、これまでなかった。2014年のロシアによるクリミア半島併合も、あまり大きな世界的ニュースにはならなかった。
実際、日本人には、ロシア人とウクライナ人の違いを区別できない人が多い。いや、日本人だけではない。アメリカ人でもそうだ。
アメリカの大学教授にはユダヤ人が多い。これらの人々は、第二次世界大戦時にヨーロッパから逃れてきた人(あるいは、その子)が多い。とりわけ、ソ連や東ヨーロッパから来た人が多い。私の恩師であるヤコブ・マルシャック教授もそうだった。
これらの人たちをアメリカでは「ラッシャン・ジュー」と呼んでいた。「ロシア生まれのユダヤ人」という意味だ。
しかし、マルシャック教授はキエフの生まれなので、ロシア人ではなく、ウクライナ人だ。それにもかかわらず、ラッシャン・ジューの範疇に入っていたのは、アメリカ人が、ロシア人とウクライナ人の区別をしていなかったことを示している。
ロシア人とウクライナ人の区別をしないのは、日本人やアメリカ人だけのことではない。当のウクライナ生まれの人々が、気にかけていないようなのだ。
例えば、ロシアで活躍しているバレリーナには、ウクライナ出身の人が多い。その1人であるボリショイバレエのプリマバレリーナ、スヴェトラーナ・ザハーロワは、20年位前のビデオ・インタビューの中で、「私たちロシア人のバレリーナは」と言っている。
「ロシア対ウクライナ」でなく「皇帝対民衆」
同じようなことは、いくらでもある。
ソ連時代の映画監督セルゲイ・エイゼンシュテインの代表作は、「戦艦ポチョムキン」だ。これはロシア革命前夜に、ロシア黒海艦隊の戦艦ポチョムキン号で起きた水兵の反乱を描いた映画だ。
クライマックスは、オデッサにある大きな石作りの階段で、ロシア皇帝の軍隊が民衆を虐殺する場面だ。民衆が階段の下まで逃れると、馬に乗ったコサック兵が現れて、無残に殺戮する。
コサック兵は、ロシア皇帝の親衛兵だが、ウクライナ出身だ。だから、この場面で彼らは同胞を殺していることになる。
ただ、この映画の中では、「ウクライナ出身のコサックがロシアの皇帝のためにウクライナの民衆を殺している」という側面は無視されており、「皇帝の軍隊が民衆を殺している」という側面が強調されている。
これはその当時の感覚で、ロシアとウクライナの違いよりも、皇帝と民衆の違いの方が強く意識されていたことの結果だと言えるだろう。
いまの時点でこの場面を見ると、なんとも奇妙な感覚にとらわれる。
クリミア半島は、ロシア? ウクライナ?
今回のウクライナ・ロシア戦争で、クリミア半島は重要な地域だ。ここには、ロシアの軍港セヴァストポリがある。したがって、黒海を制覇し続けるために、ロシア本土からセヴァストポリまでの陸路を確保するのは、ロシアにとって決定的に重要なことだ。それを阻止するため、いまの戦争では、しばしばウクライナからの攻撃が行われている。
ところで、クリミア半島は、2014年にそれまでのウクライナ領からロシア領になった。
クリミア半島は、地理的にウクライナの1部のように見えるから、歴史的にウクライナ共和国のものであり、それが2014年に無理矢理ロシア領に編入されたのだと、私は考えていた。
ところが、実はそうではなく、この半島は、もともとロシア共和国の1部だったのだ。それが、1954年にロシアからウクライナに行政的に移管された。この移管は、ソ連共産党第一書記ニキータ・フルシチョフによって行われ、ウクライナ共和国の300周年を記念するものとして実施された。これは、ウクライナとロシアの間の友好と協力を強化するための象徴的な行為として行われたとされる。
複雑なロシアとウクライナの関係
これまで、ロシアとウクライナの差が強く意識されることはなかった。
したがって、歴史の教科書でも、しばらく前のものだと、クリミア半島がロシアとウクライナのどちらに属していたのかなどということは、書いていない場合が多かった。
ロシアとウクライナが違う国であるということは、今回のロシア侵攻によって、初めて多くの人が意識したことではないだろうか。実際、日本でも、この1年位の間に、ロシアとウクライナの関係に関する解説記事が急に増えた。
ロシアとウクライナは、歴史的に、対立し憎しみ合ってきたわけではなく、かといって、本当に友好的な関係でもなかった。この関係は、外から見ると、極めてわかりにくい。
しかし、その関係を正確に理解しないと、現在の世界で起こっている重大な事件を理解できない。
ChatGPTで複雑な関係がよくわかった
私が強調したいのは、ChatGPTがこうした問題にわかりやすく答えてくれたことだ。ロシアとウクライナの関係は複雑で捉え難いところが多い。これまでは、それを調べるのが面倒で、よくわからないままに放置していた。しかも、歴史の教科書や書籍にもこの複雑な関係をよく解説したものはなかった。
ところがChatGPTがこれらの問題に明確に答えてくれたのである。
ただし、ChatGPTの出力は誤っていることがあるので、検索エンジンなどで確かめる必要がある。それなら最初から検索エンジンで調べればよいではないかという意見があるかもしれないが、そうではない。
仮に書籍や資料に書いてあっても、このような複雑な問題に対する答えは、すぐには出てこない。書籍や資料には、著者が説明してしたいと思っていることが書いてあるので、読者が知りたいことが書いてあるわけでは必ずしもないからだ。
ところが、ChatGPTの場合には、こちらの質問に対してピンポイントで答えが返ってくる。このため、1945年のウクライナへの移譲のことなどがわかった。
いまの複雑な世界情勢を理解するのに、ChatGPTは強力な武器になってくれる。 
●ウ東部戦況「著しく悪化」 10/15
ウクライナ軍のシルスキー陸軍司令官は14日、北東部ハリコフ州クピャンスクから東部ドネツク州リマンにかけての前線の情勢について、「ここ数日で著しく悪化している」と認めた。ロシア軍は「クピャンスク包囲」を狙っているとの見方も示した。冬の到来を前に、両軍の攻防が激しさを増している。
ロシアのプーチン大統領も国営テレビのインタビューで、ウクライナ軍の反転攻勢に強力な防戦で対応していると表明した。クピャンスクやドネツク州アウディイウカといった地名も挙げつつ、「わが軍は(前線)のほぼ全ての地域、かなり広い地域で持ち直している」と強調した。
クピャンスクはロシアとの国境に近く、鉄道網の中心として知られる。アウディイウカは、ロシア軍が今月に入り総攻撃を仕掛けている「激戦地」(ウクライナのゼレンスキー大統領)。ロイター通信は15日、ロシア軍の攻撃で市民2人が死亡したと伝えた。
●プーチン氏"一帯一路"を擁護 10/15
ロシアのプーチン大統領は、17日に北京で始まる中国の経済圏構想「一帯一路」に関する国際会議に合わせた訪中を前に、中国メディアのインタビューに応じた。一帯一路について「誰かに何かを強制することはなく、機会を提供するだけだ」と指摘。途上国への融資を通じ「債務のわな」を仕掛けていると批判される中国を擁護した。
タス通信が15日、インタビュー内容を伝えた。プーチン氏は一帯一路に関し、「植民地時代の重い遺産を持つ(西側)諸国が世界で取り組もうとしている多くの計画と違う」と述べた。ウクライナに侵攻し欧米と対立するプーチン政権は、「反植民地主義」を掲げて「グローバル・サウス」と呼ばれる新興・途上国の取り込みを図っている。
●ロシア軍、ウクライナ東部に集中攻撃 街包囲か 10/15
ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は、東部ドネツク州で攻勢を強めていて、ウクライナ側は、「敵は街を包囲しようとしている」と危機感を示しました。
ウクライナ当局は14日、ロシア軍が5日間にわたりウクライナ軍の防衛拠点の1つであるドネツク州アウディイフカに集中攻撃をしかけていると明らかにしたうえで、「敵は街を包囲しようとしている」と危機感を示しました。
ただ、14日にはアウディイフカ周辺で「8倍もの敵の攻撃を撃退した」として、ロシア軍の攻撃は成功していないと主張しています。
街には今も約1600人の民間人が残っていて、双方に多数の死者が出ているとみられます。また、地元の市長はウクライナメディアに対し、ロシア軍が年末までにドネツク州全域の占拠をねらっているとの見方を示しており、州都ドネツクから約20kmに位置するアウディイフカの攻防が焦点となっています。
●機能不全を露呈する国連 存在意義はいっそうなくなる? 10/15
世界で戦争が起これば、その先頭に立って解決を目指すのが国連安保理の最大の使命である。国連安保理の決定は全加盟国を拘束し、これまでも場合によって武力行使を容認する決定を行ってきた。その絶大な権力を持つ国連安保理ではあるが、ウクライナ戦争では全く何もできないでいる。
機能不全極まりない“安全保障理事会”
安保理には常任理事国5ヶ国と非常任理事国10ヶ国が参加するのだが、その5ヶ国とは米国、英国、フランス、そして中国とロシアなのだ。そして、拒否権といって、その5ヶ国のうち1ヶ国でも反対すればどんな決議も否決される仕組みになっており、国連安保理では中国やロシアを非難したり、制裁を課したりする決議は全て拒否権の行使(中国やロシアが行使する)によって廃案となるのだ。
国連は今後崩壊するのか
今後、米国と中国、ロシアとの大国間対立はいっそう激しくなっていく。これはすでに避けられない事実だ。そうなれば世界の平和と安全を担う安全保障理事会にはさらなる活躍が期待されるわけだが、安全保障理事会は争いの中心にある大国によって運営されているのだ。安全保障理事会には何も期待はできない。そうなれば、安全保障理事会に変わる組織を何とか作らなければならないが、その可能性はゼロに近い。よって、国連とは別に今後はNATOの役割がいっそう広がる可能性があるが、NATOが対象とする範囲は北大西洋であり、要は欧米外の問題に介入する組織ではない。このままの状態が続けば、国連の崩壊も徐々に現実問題となってくるだろう。
●ウクライナ支援揺るがず 「EU結束維持に貢献」 10/15
東欧ブルガリアのガブリエル副首相兼外相は、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの「支援疲れ」が物価高騰などを背景に欧米で懸念される中、ブルガリアは経済的問題との「ジレンマはない」と明言し、支援継続の姿勢は揺るがないと強調した。首都ソフィアで15日までに共同通信の単独インタビューに応じた。
欧州連合(EU)では9月にスロバキアの議会選でウクライナへの軍事支援停止を訴えた左派が勝利。ポーランドが安価なウクライナ産穀物の輸入規制を巡り、同国と一時激しく対立した。ガブリエル氏は「EUの結束維持に貢献することが重要だ」と語った。
ロシアが黒海経由のウクライナ産穀物輸出合意を7月に離脱したことで「食料価格のインフレに拍車をかけ食料安全保障の状況を悪化させた」と批判。ブルガリア政府がポーランドなどと異なり、穀物の輸入規制を9月に延長しなかったことに関し、困難な時に協力し合うのが「真の連帯だ」と語った。
ただ「農家が心配し抗議もあった」とも言及し、政府にとって「簡単な決断ではなかった」と振り返った。

 

●プーチン大統領「ウクライナの大攻勢は完全に失敗…ロシア、最前線で成果」 10/16
ロシアのプーチン大統領がウクライナの大反撃を「完全に失敗した」と評価し、ロシア軍が最前線で成果を出していると主張した。
プーチン大統領は15日、ロシア国営放送の記者がテレグラムで一部公開したテレビ番組のインタビューで「遅々として進まないとされた反撃は完全に失敗した」と話した。
ウクライナは6月にロシアに奪われた領土を奪還するとして大反撃に出たが、膨大な地雷畑と塹壕などで構成されたロシアの防衛網を突破するのに苦戦しているという。
プーチン大統領は激戦が続くウクライナ東部アウディーウカに対しては「相手は新たな積極的攻勢作戦を準備している。われわれはそれを見ていて知っている」として自信を示した。
彼は「接触線全体に沿って起きることを『積極的防衛』と呼ぶ。わが軍はほぼすべての地域で陣地を改善している。非常に広い地域」と評価した。
●ロシア軍 東部で攻勢強める ウクライナ側拠点包囲に危機感 10/16
ウクライナ侵攻を続けるロシア軍は東部で攻勢を強めていて、ウクライナ側は拠点が包囲されることへの危機感を示しています。一方、プーチン大統領は戦線でロシア軍が有利な状況になっていると強調しました。
ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州の拠点の1つアウディイウカへの攻勢を強めていて、地元市長はウクライナメディアに対し、「敵は街を包囲しようとしている」と危機感を示しました。市長はロシア軍が年末までにドネツク州全域の掌握を狙っているとの見方を示しています。
また、ウクライナ陸軍のシルスキー司令官はハルキウ州クピャンスクからドネツク州リマンにかけての戦線が「ここ数日で著しく悪化している」とし、ロシア軍がクピャンシク包囲を狙っていると指摘しました。
一方、プーチン大統領は15日に公開された国営テレビのインタビューで、ウクライナ軍の反転攻勢について「停滞しているとされていたが、完全に失敗した」と主張。そのうえで、アウディイウカやクピャンシクなどの地名を挙げて、「われわれの軍はほぼすべての地域で陣地を持ち直している」と述べ、ロシア軍が有利な状況になっていると強調しました。
●ロシアと武器前払い取引、中国とは新鴨緑江大橋連結…北朝鮮戦略 10/16
「対米長期戦」を予告した北朝鮮が中国・ロシアと密着しながら戦略的生存に動いている。ロシアに通常兵器を運送する状況が捕捉され、北朝鮮新義州(シンウィジュ)と中国遼寧省丹東をつなぐ新鴨緑江(アムノッカン)大橋の開通が迫っているという見方も出ている。
米ホワイトハウスは13日(現地時間)、北朝鮮がロシアと隣接した羅津(ナジン)港からロシアに軍事装備と弾薬を送った可能性があると明らかにした。米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官はこの日の記者会見で「北朝鮮が1000個以上のコンテナ分量の軍事装備と弾薬をロシアに供与した」とし、ロシアが羅津港の埠頭からコンテナを運送する場面が入った衛星写真を公開した。
写真には9月7、8日に羅津港埠頭にコンテナが積まれた場面と、同月12日にロシア国籍船「アンガラ号」がロシア太平洋艦隊の施設が並ぶドゥナイ港にコンテナを運んで停泊している場面がある。また10月1日にはコンテナを積んだ列車がロシア・チホレツクの弾薬庫に到着した場面などが衛星写真で捕捉された。
米国が公開した諜報が事実なら、北朝鮮は従来の対外交渉パターンとは異なる果敢な取引に入ったという意味と解釈できる。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は米国・韓国と交渉する場合は選択肢さえも先に公開するのを避ける姿を見せたが、ロシアとの取引ではプーチン大統領と首脳会談が行われる前から武器を送ったからだ。国際制裁で経済的な困難に直面する北朝鮮と、ウクライナ戦争で武器が不足するロシアの利害が一致したのだ。
新型コロナ拡大前まで中朝の最大貿易拠点だった新義州と丹東をつなぐ新鴨緑江大橋付近では最近、車両の移動量が増え、開通が迫っているという分析があった。新鴨緑江大橋は中国が22億元(約440億円)を投入して2014年に完工したが、北朝鮮が新義州方向につながる接続道路の建設を特別な説明もなく延期し、開通が遅れていた。
米国の北朝鮮分析サイト38ノースは衛星写真を分析し、先週、新鴨緑江大橋で車両の活動が増えたとし、近いうちに完全に開通するという見方を示した。新鴨緑江大橋一帯を12日に撮影した衛星写真には、中国税関区域でバスと推定される大型車両が接近する場面があり、北朝鮮地域でもクレーン・トラックなどの車両や建築資材と推定される物体が捕捉された。
こうした状況は中露朝の密着を誇示しようとする北朝鮮の内心が反映されているという分析がある。露朝が密着する中でも、中国は米国との関係改善などを考慮して中露朝軍事協力には一線を画するような態度を見せ、北朝鮮が各個撃破式の接近をしたというのが専門家らの説明だ。
原州漢拏大のチョン・デジン教授は「不必要に関与しないという中国側の雰囲気が感知された中、北が共通関心事の経済・貿易を中心に関係の回復に入る姿」とし「中国が最近、収監中の脱北者の送還に入ったため、これをモメンタムにして両国関係を深めようとするだろう」と話した。
●米議会のロ中同時戦争準備提言、プーチン氏は「ナンセンス」と一蹴 10/16
ロシアのプーチン大統領は、米議会の超党派委員会がロシアと中国に対する同時戦争に備えるべきだと提言したことについて「ナンセンスだ」と一蹴した。ただ米国がロシアと戦おうとすれば、ウクライナにおける戦争は「完全に異なるレベル」に移行するだろうと警告した。
米議会の戦略態勢委員会は12日、米国は核保有国のロシアと中国との同時戦争に備え、核戦力の現代化と通常戦力の増強を進めるべきだなどとした報告書を公表した。
これを巡りプーチン氏は「われわれは平和を欲している」と強調した上で「ロシア、中国と戦うなどはばかげており、真剣だとは考えられない。単に互いが威嚇し合っているということだと思う」と述べた。
プーチン氏は「核保有の超大国同士の戦争となれば、話は全く違ってくる。まともな思考の持ち主なら、そんなことを考えるとは思わない。だが本当にそうした考えが彼らに去来するなら、われわれに警戒心をもたらすだけだ」と説明。米国など西側がロシアに戦いを仕掛けるならば、ウクライナでの戦争はこれまでと様相が全く違ってくると付け加えた。
●アゼルバイジャン大統領 ナゴルノカラバフ訪問 国旗を掲揚 10/16
旧ソビエトのアゼルバイジャンのアリエフ大統領は、隣国アルメニアとの係争地、ナゴルノカラバフの中心都市を訪問して国旗を掲げ、先月起こした軍事行動で勝利宣言したことを受けて、この地域の統合を進める姿勢を強調するねらいとみられます。
アゼルバイジャンとアルメニアの係争地のナゴルノカラバフでは、アルメニア系の勢力が「共和国」として独立を宣言し支配してきましたが、アゼルバイジャンが先月起こした軍事行動でアルメニア側が敗北したことを受けて来年1月1日までにアルメニア側の行政組織を解体する手続きが行われています。
こうしたなか、アゼルバイジャン大統領府は15日、アリエフ大統領がナゴルノカラバフの中心都市ハンケンディを訪問して国旗を掲げ、「これは歴史的な出来事だ」などと演説したと発表しました。
ハンケンディは、アルメニア側が「ステパナケルト」と呼ぶ行政の中心都市でしたが、アリエフ大統領としては軍事行動で勝利したことを受け、この地域の統合を進める姿勢を強調するねらいとみられます。
一方、アゼルバイジャンとアルメニアの対立を巡っては、ロシアのプーチン大統領が、今月13日に行われた旧ソビエト諸国でつくるCIS=独立国家共同体の首脳会議の場などを通じて、両国の仲介役としてモスクワで協議を開く用意があるなどと呼びかけています。
ただ、これまでロシアを後ろ盾としてきたアルメニア政府は今回の敗北を受けてロシアへの不満を強め欧米側に接近する姿勢も見せていて、この地域ではロシアの影響力の低下も指摘されています。
●ロシア黒海艦隊、防御強化か ウクライナは東部「撃退」 10/16
英国防省は14日、ウクライナに侵攻するロシアの黒海艦隊が8、9月のウクライナの攻勢を受け、防御態勢を強化しているとみられるとの分析を発表した。ミサイル艦や潜水艦などの戦力を、司令部があるクリミア半島セバストポリからロシア南部ノボロシースクなど東に移動させているという。
ウクライナ軍参謀本部は15日、ロシア軍が東部ドネツク州のアブデーフカ付近での攻撃を継続しているが「撃退した」と主張した。米シンクタンク、戦争研究所は14日、米国とウクライナ当局者の話から、ウクライナ側がアブデーフカ周辺への攻撃を予期し、準備を進めていた可能性に言及した。
ウクライナは無人機(ドローン)やミサイルによる攻撃などで黒海の北西部では主導権を握ってきた。英国防省は、黒海艦隊が巡航ミサイルでウクライナを攻撃しており、今後も黒海の東部からミサイル攻撃を継続するとみられると指摘した。
一方、ロシアのプーチン大統領はウクライナ東部ハリコフ州クピャンスク、南部ザポロジエ、アブデーフカの各方面でロシア軍が「積極的防衛を行い、形勢を改善した」と主張した。国営テレビ記者が15日、通信アプリに発言動画を投稿した。
AP通信は15日、ロシア軍の攻撃により、過去24時間にドネツク州やハリコフ州、南部ヘルソン州で計6人が死亡したと報じた。
ロシア国防省は15日、ウクライナと国境を接する西部2州などに14日夜から15日未明にかけてウクライナの無人機27機による攻撃の試みがあり、防空システムで迎撃して阻止したと発表した。うち18機がクルスク州、2機がベルゴロド州、その他は不明。クルスク州のスタロボイト知事は、クルスク市内など各地に破片が落下したが負傷者はいないと主張した。
●プーチン大統領、習近平・国家主席は「信頼できるパートナー」 10/16
中国の「一帯一路」構想の国際会議が開かれるのを前に、ロシアのプーチン大統領は中国国営メディアのインタビューに応じ、「一帯一路」構想を称賛し、習近平国家主席を「信頼できるパートナー」と称えました。
中国国営の中央テレビは15日、プーチン大統領が中国の巨大経済圏構想「一帯一路」について、「実りある成果を上げてきた」と称賛するインタビューを放送しました。
インタビューでプーチン大統領は、「中国が他国を“支配しようとしている”と見る人がいるかもしれないが、それは違う」とした上で、「中国の協力の良いところは他者への押しつけや強制がないところだ」と中国を支持する考えを示しました。
また、プーチン大統領は習近平国家主席について、「冷静で、実務的な信頼できるパートナーだ」と称えました。
プーチン大統領は17日から開かれる「一帯一路」の国際会議にあわせて中国を訪問する予定で、習近平国家主席との緊密さをアピールするものとみられます。
● プーチン大統領 中国との連携強化に意欲示す 中国国営テレビ 10/16
ロシアのプーチン大統領は、17日から中国ではじまる「一帯一路」の国際フォーラムにあわせて北京を訪問するのを前に、中国の国営テレビのインタビューで、習近平国家主席との友好関係をアピールしながら、中国との連携の強化に意欲を示しました。
ロシアのプーチン大統領は、去年2月にウクライナへの軍事侵攻を開始して以降、初めて中国を訪問し、習主席が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」の国際フォーラムに出席するとともに、習主席との首脳会談に臨む予定です。
プーチン大統領は、中国訪問を前に国営の中国中央テレビのインタビューに応じ、15日、その内容が放送されました。
この中でプーチン大統領は習主席について「冷静で実務的な、信頼できるパートナーだ」とたたえ、個人的な友好関係をアピールしました。
そして「一帯一路」の構想について「協力の枠組みで自分の意思を他者に押しつけていない。植民地主義的な色彩を帯びた計画とは決定的に違う」と述べ欧米を念頭にした比較を持ち出しながら「一帯一路」を支持し、中国との連携の強化に意欲を示しました。
一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官はロシアの国営テレビに対して「ロシアも中国も国際情勢において重要な役割を果たしている」と述べ、習主席との首脳会談では国際情勢が議題の中心になるという見通しを示しました。
●米国・中央アジア初の首脳会談が見せた課題 10/16
国連総会の機会にバイデン米大統領は中央アジア5カ国との首脳会談(C5+1)を開催した。これについて、この地域を専門とする研究者のカムラン・ボハリが、9月15日付けウォールストリート・ジャーナル紙掲載の論説‘The U.S. Should Upgrade Its Central Asia Strategy’で、米国はこの際カザフスタンをはじめとするこの地域に対する戦略を更に強化すべきであると論じている。要旨は次の通り。
米国にとって初めての中央アジア5カ国(カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギス、トルクメニスタン)とのサミット(C5+1)は、長い間待たれていたものであり、この枢要な地域における重要な一歩となる可能性がある。
米国のこの地域への影響力は、歴史的にロシアや中国よりもはるかに劣っているが、ウクライナ戦争によるロシアの弱体化と中国の景気後退は、米国にとって中央アジアとの関係を緊密化し、これまで孤立していたこの地域を西側諸国に引き寄せ国際社会に招き入れる好機である。
この地域の各国は、国内的、政治的、経済的な変革期を迎えており、地域最大の経済大国であるカザフスタンは、切望されている改革に向けて先頭に立っている。さらに、カザフスタンは、核不拡散、テロ対策、紛争解決、国際協力など、さまざまな分野で国際的なプレーヤーとしての地位を確立しつつある。
トカエフ大統領は昨年秋、マルチベクトル外交ドクトリンを宣言した。つまり、ロシア、中国、米国、欧州連合(EU)など、世界のあらゆる主要国との緊密な関係を目指すということだ。
カザフスタンは、米国がウクライナでの和解を模索し、戦後の不透明な時代におけるロシアとの関係を管理するのを助けることができるし、同様に、中国との競争激化への対応も助けることができる。
カザフスタン政府がこのような役割を果たすためには、ロシアと中国からの圧力に耐えるための2つの面での米国の支援が必要である。第一に、米国はカザフスタンの政治改革を支援し、メディアの自由を強化すべきだ。カザフスタンの民主化は、他の中央アジア4カ国にとり、中国、ロシア、アフガンの影響から脱するためのモデルとなりうる。
第二に、カザフスタンはカスピ海横断国際輸送回廊(通称:中央回廊)を通じて、この地域と世界経済をつなぐ役割を担っている。この輸送大動脈は、パイプライン、鉄道、高速道路、光ファイバーケーブルなどのチャンネルを通じて東西を結ぶ。この回廊は中央アジアの経済発展を促進し、国際的なエネルギーやその他の貿易の流れに貢献するだろう。
米国は、投資、貿易、技術、グローバル・リーダーシップを通じて、回廊の成功を支援することができる。より広く言えば、米国は、中国やロシアを追い抜く戦略の追求により、中央アジアへの戦術的アプローチをアップグレードする必要がある。
米国と中央アジア5カ国による史上初の首脳会談(C5+1)は、9月19日に開催された。会談後バイデンは、主権、独立、領土保全に関する原則はこれまで以上に重要であるとし、この地域での今後の協力の方向性として(1)テロ対策の強化、(2)民間部門が開発に貢献できるための新たなビジネス・プラットフォームの設立とエネルギー安全保障とサプライチェーン強化のための重要鉱物資源に関する新たな対話の可能性、(3)障害者の権利に関する新たなイニシアティブの3点を成果として列挙する簡単な声明を発表した。
(1)のテロ対策については既にこれまで国境警備に関する支援を行ってきており、(2)の鉱物資源に関する対話は注目されるがこれからその可能性を議論するということに過ぎない。カザフスタンとの二国間の首脳会談であればもう少し踏み込んだ成果の発表もあり得たかもしれないが、歴史的な首脳会談の成果としてはいかにも地味に見える。
特に、本年5月に中国が西安で主催した中国・中央アジア・サミットにおいて、習近平が38億ドルの経済支援を行う旨発表し、共同宣言と成果リストを発表し、100を超える協議文書が署名されたこととは比較しようもない。また、習近平は、別途5人の大統領との個別会談も行った。
上記の論説は、地域のリーダー国であるカザフスタンの政治改革を支持すべしと論じているが、注意すべきは他の4カ国大統領はこれをモデルとは考えているわけではなく、むしろカザフスタンの民主化への動きによりその孤立を招きかねないことであろう。
また、論説は、カスピ海経由の大回廊の構築を米国が支持すべきだと言う。確かに、ウクライナ戦争の影響で、ロシア南部経由の輸送ルートやパイプラインが機能不全となり、カザフスタンの繁栄にとりカスピ海中央回廊の重要性は増している。しかし、これは中国にとってはまさに一帯一路の大動脈にあたる部分であるので、米国の関与は容易ではないだろう。
米国にとってより重要なのは、この地域の鉱物資源であり、またカザフスタン側は、同国経済に貢献する何らかの投資をしてもらいたいというところだろう。それがバイデンの記者発表にも反映された今後の方向性であろう。
中国・ロシアにいかに対抗するか
論説は、米露関係においてカザフスタンの何らかの役割が期待できると示唆しているが、プーチンとトカエフの関係は相当悪化しており、ウクライナでの停戦や戦後秩序に対する貢献も当面期待できるとは思えない。
中央アジア諸国は、欧米の投資は歓迎するであろうが、ロシアの拡張主義に対する警戒感と、過度の中国への依存も避けたいという構図の中で、そのバランスをとる限度で欧米との関係緊密化を求めているのである。米国としてはそのような機会を何とか最大限に生かして関係を強化していくことが重要である。
上記の論説はやや楽観的に過ぎ、そう簡単に成果は期待できないように思われる。いずれにしても、米国が中央アジア外交に積極的に向き合おうとしていることは、地政学的なバランスから言えば大変良いことであるのは間違いない。
●中東紛争拡大のリスク、米高官が警告 イランやヒズボラの介入警戒 10/16
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は15日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの衝突が拡大する可能性があるとして警戒感を示した。
米CBSに「紛争がエスカレートし、北部で2つ目の戦線が開かれ、イランが関与するリスクもある」と述べた。
オースティン米国防長官は14日、東地中海に空母打撃群を追加派遣すると発表。「イスラエルに対する敵対的な行為やこの戦争を拡大しようとする試みを抑止するため」と説明した。
イランのアブドラヒアン外相は15日、中東の衛星テレビ、アルジャジーラに対し「ガザ地区での残虐行為をやめなければ、イランは傍観者のままでいることはできない」というメッセージをイスラエルに伝えたと述べ、イランが介入する可能性を警告。また「戦争が拡大すれば米国にも大きな損害が及ぶだろう」とけん制した。
イスラエル北部の国境では既に暴力がエスカレートしている。イランと関係が近く、レバノン南部を拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘員は15日、イスラエル軍の駐屯地や国境の集落を攻撃し、イスラエル側も反撃した。
サリバン氏はイスラエルとウクライナへの新たな軍事支援の規模について、報じられている20億ドルよりも「かなり大きな」額になるとの見方を示し、バイデン大統領が今週、議会と集中的な協議を行う予定だと述べた。
当局者によると、米政府はガザの人道危機緩和にも動いている。サリバン氏はNBCに、米国が民間人のために地上攻撃を遅らせるようイスラエルに求めているか問われ、イスラエルの軍事計画に干渉していないと回答。ただ、いかなる行動も戦争法に従うべきであり、民間人が安全な場所に避難する機会を確保すべきだとイスラエルに伝えていると述べた。
また、ガザの住民が食料や水、安全な避難所を確保できるようにしたいと強調。CNNのインタビューで、イスラエル当局がガザ南部で水の供給を再開したと述べた。
●3つの戦争に直面する世界経済…スタグフレーション現実化か 10/16
戦争の恐怖がまたしても世界経済にとっての問題として頭をもたげている。昨年2月に始まったロシアとウクライナの戦争もまだ終わっていない中、イスラエルとハマスの武力紛争は、ただでさえ脆弱な世界経済に暗い影を落としている。
中東の地政学的リスクは常に世界経済にとって火薬庫だった。中東地域の紛争が原油価格不安を刺激してきたからだ。さらにサウジアラビアが主導するOPECプラスの減産政策により、原油価格が1バレル当たり90ドル水準で動いている時期に起きた今回のイスラエルとハマスの紛争は、原油価格の高騰によるインフレ圧力の懸念を増幅させる火薬庫となりうる。それが物価高騰と景気低迷が同時に起こるスタグフレーションを現実化させうるからだ。
しかし懸念とは異なり、グローバル株式市場は上昇ラリーを続けており、原油価格も下落するという、意外な現象が演出されている。短期的な状況だけで中東の事態を評価するのは早計だと思われるが、金融市場がかつてとは異なる反応を示している背景には注目する必要がある。
第1に、戦争拡大の可能性が低いこと。イスラエルが地上戦を準備するなど、戦争は長期化する兆しを示しているが、金融市場が懸念する主な原油生産国とイスラエルとの全面戦争のシナリオが現実化する可能性は低いように思える。これは、以前の中東戦争の例とは異なり、中東地域内の原油生産とホルムズ海峡を通じた原油輸送に対する大きな打撃は当面ないことを示唆する。今回の事態で主な産油国の集まりであるOPECプラスのさらなる減産がむしろ難しくなったことも、原油価格下落の要因だ。
第2に、安全資産選好と景気後退が懸念されることによる金利の下落だ。今年9月の米国の連邦公開市場委員会(FOMC)以降、米国債の金利を中心として主要国の国債金利が続騰していることで、金融市場は2013年の緊縮発作(テーパータントラム)と似たような梗塞現象に直面した。韓国も株価、債券価格、ウォンの価値が同時に下落するトリプル安現象に苦しめられた。このように、金利の続騰にお手上げ状態だったグローバル金融市場において、中東戦争リスクは国債金利上昇にブレーキをかける役割を果たした。グローバル資金の安全資産選好現象と景気後退に対する懸念の重なりによって国債金利が急落したことが、株式市場をはじめとするグローバル金融市場にとっては恵みの雨となった。
しかし、戦争リスクを過小評価してはならない。世界で事実上3つの戦争が展開されることになったからだ。ロシアとウクライナの戦争、イスラエルとハマスの戦争、そして技術覇権をめぐる米中覇権戦争によって、世界経済は物理的ショックと経済的ショックに同時にさらされている。2024年の大統領選挙を控えて増幅している米国内の政治的対立も、もう一つのリスク要因だ。
国際通貨基金(IMF)は来年の世界の成長率を2.9%と見通しを示した。米国を含めた主要7カ国(G7)の来年の国内総生産(GDP)成長見通しも、大半が0〜1%台だ。非常に異例の低成長見通しだ。中東リスクが早期に沈静化すれば幸いだが、既存の戦争(ロシアとウクライナ、米中技術覇権戦争)に加え、中東戦争まで長期化または拡大すれば、世界経済はゼロ成長にも直面しうる。世界経済が1980年代初めのようなスタグフレーションに陥る可能性もあることを警戒しなければならない。
● クリミア大橋の復旧工事が完了、4車線通行が再開… 10/16
ウクライナ南部ヘルソン州で14〜15日、ロシア軍の攻撃による住宅やインフラ(社会基盤)施設など民間施設の被害が相次いだ。AP通信によると、攻撃で2人が死亡し、3人が負傷した。一部地域で停電や断水が起きている。
ヘルソン州当局高官は15日、戦闘機による空爆を含むロシア軍の攻撃を繰り返し受け、インフラ施設に被害が出ているとSNSで明らかにした。AP通信によると、東部ハルキウ州でも14〜15日にロシア軍による攻撃があり、住宅が破壊されて2人が死亡した。
一方、露タス通信は14日、ウクライナ南部クリミア半島とロシア本土を結ぶ「クリミア大橋」の復旧工事が完了し、4車線での通行が再開されたと報じた。予定より18日早い復旧という。クリミア大橋は7月に攻撃を受け、一部車道区間が完全に破壊されるなどの被害が出た。ウクライナの情報機関は米メディアに対し、攻撃が海軍との合同作戦だったことを認めていた。
●ガザ地区人道危機深刻化 人道回廊など外交動きも 10/16
イスラエルによる大規模な地上侵攻への緊張が高まる中、国連によりますと、パレスチナのガザ地区では少なくとも100万人が自宅を追われるなど人道危機が深刻化しています。一方、アメリカの国務省は中東を訪問中のブリンケン国務長官が16日に再びイスラエルを訪れると明らかにし、人道回廊の設置などについて関係国の外交の動きが活発化しています。
バイデン大統領 ガザ地区占領は「大きな過ちだ」反対の姿勢
アメリカのバイデン大統領はCBSテレビのインタビューの中で、イスラエルがガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスに攻撃を続けていることに支持は表明しつつも、大規模な軍事作戦によってガザ地区を占領することについては「大きな過ちだ」と述べ、反対する姿勢を示しました。
これは、15日に放送されたCBSテレビのニュース番組「60ミニッツ」のインタビューでバイデン大統領が述べたものです。
この中で、バイデン大統領は、ガザ地区でのイスラエル軍とイスラム組織ハマスとの衝突で、多くのパレスチナ市民が巻き込まれる中「停戦すべき時か」と質問され「イスラエルは対応しなければならない。ハマスを攻撃しなければならない」と述べ空爆を続けるイスラエルを支持する姿勢を改めて示しました。
一方、バイデン大統領は、イスラエル軍が1967年の第3次中東戦争の時と同じように、ガザ地区を再び占領することについては「大きな過ちだ」と述べ、反対する姿勢を示しました。
また、バイデン大統領は、イスラエルと、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナの双方に同時に支援を続けることができるかどうかについては「アメリカは世界史上、最も強力な国家だ。双方に対応できる」と強調しました。
ガザ地区“1週間で少なくとも100万人が避難余儀なくされる”
イスラエル軍とハマスの衝突は15日も続き、ガザ地区の保健当局によりますとこれまでに2670人が死亡した一方、イスラエル側では少なくとも1400人が死亡し、双方の死者は4000人を超えています。
パレスチナ難民を支援するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は、15日、ガザ地区ではこの1週間で少なくとも100万人が自宅を追われて避難を余儀なくされたと発表しました。
少なくとも40万人はUNRWAの学校や建物に避難しているものの、避難場所としての設備が整っておらず衛生環境も悪いということです。
また、OCHA=国連人道問題調整事務所によりますとガザ地区南部の一部の地域でイスラエルからの水の供給が再開されたものの、海水から真水をつくるための施設は燃料不足で稼働できておらず、脱水症状などの懸念は続いているということです。
さらに、WHO=世界保健機関によりますと、15日、ガザ地区の北部にある4つの病院が、損傷したり標的にされたりして稼働できなくなっているなど、ガザ地区では人道状況の悪化が深刻化しています。
一方、アメリカの複数のメディアは政府関係者の話としてバイデン大統領が今週、イスラエルを訪問する可能性について両国の間で協議が行われていると伝えました。
これについてホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議の報道官は「大統領の訪問について発表できるものはない」とコメントしています。
このほか、アメリカの国務省は先週、イスラエルを訪問したブリンケン国務長官が16日、再びイスラエルを訪問すると発表しました。
ブリンケン長官は、今回の中東訪問でエジプトなどと協議し、ガザ地区とエジプトの境界にあるラファ検問所が支援物資を運び込むために開放される予定だと明らかにしています。
イスラエルへの再度の訪問では民間人の避難のための人道回廊の設置などについて改めて協議を行うとみられていて、大規模な地上侵攻が懸念される中、民間人への被害を最小限にするための関係国の外交の動きが活発化しています。
米メディア“米大統領のイスラエル訪問可能性を両国が協議”
アメリカの複数のメディアは15日、両国の間でバイデン大統領が今週、イスラエルを訪問する可能性について協議が行われていると伝えました。
このうちニュースサイト「アクシオス」は、両国の政府関係者の話としてバイデン大統領が14日にネタニヤフ首相と電話会談を行った際に招待を受けたとしています。
また、エジプトの当局者の話としてシシ大統領が今週後半にパレスチナ情勢について話し合う国際会議を主催し、この場にバイデン大統領を招待しているということです。
ホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議の報道官は「大統領の訪問について発表できるものはない」とコメントしています。
国連総長“人質解放と人道支援は交渉材料になってはならない”
国連のグテーレス事務総長は15日、声明を出し「中東情勢が奈落の底に突き落とされようとしているいま、私の義務は2つの強力な人道的アピールを行うことだ」とした上で、「ハマスに対しては無条件で人質を直ちに解放するよう求める。イスラエルに対しては、ガザの人たちのために、人道支援物資の迅速かつ無制限な搬入を認めるよう求める」と訴えました。
そして、人質の解放と人道支援について「これらの2つは交渉材料になってはならない。それぞれ正しいことであり、実施されなければならない」と強調しました。
WHO “ガザ地区北部の4病院 稼働できず”
WHO=世界保健機関は15日、ガザ地区の北部にある4つの病院が、損傷したり標的にされたりして稼働できなくなったと発表しました。
また、イスラエル軍からガザ地区内の21の病院に対して退避するよう通告があったということです。
WHOは「医療従事者や医療機関、患者を守るためあらゆる予防策を取らなければならない」と強調するとともに「病院からの退避を強制することは集中治療や救命手術が必要な人たちにとって死刑宣告となり、国際人道法に違反する可能性がある」と批判しています。
ガザ地区とエジプト境界の検問所 大勢の市民が集まる
パレスチナのガザ地区とエジプトの境界にあるラファ検問所には、ガザ地区から出ようとする大勢の市民が集まっています。
ラファ検問所は現在、原則、通行出来ない状況になっていて15日に撮影された現地からの映像では検問所が開くのを待つ大勢の人々が大きな旅行カバンなどの荷物のそばに座り込んでいます。
ドイツ国籍を持つという女性は「娘がドイツ外務省に連絡し、帰れるようにしたというので来てみたところ、すべて閉まっていた。助けてほしい。とにかくここを去りたい」と話していました。
また、アメリカ国籍を持つという女性は「家屋が破壊され人々ががれきの下で亡くなる状況を目の当たりにすると、ここまで来られたことで命をもうひとつもらった気がします。アメリカに戻りたい」と話していました。
一方、ラファ検問所に近いエジプト側の街では、ガザ地区への人道支援物資を積んだ大型トラックが列を作って待機しています。
米国務長官 “支援物資搬入のため検問所開放される予定”
中東を訪問中のアメリカのブリンケン国務長官はエジプトの首都カイロで15日、記者団に対し、アラブ各国の首脳らとの会談について「すべての国と考えを共有できた。各国は、衝突が拡大しないようにそれぞれの影響力を行使するということだった」と述べ、一連の会談の成果を強調しました。
またブリンケン長官は、ガザ地区とエジプトの境界にあるラファ検問所についてエジプトのシシ大統領と協議を行ったと明らかにしたうえで「国連やエジプト、イスラエルなどとともに支援を必要とする人々に届けられるための態勢を整えている」と述べ、ガザ地区に支援物資を運び込むため検問所が開放される予定だと明らかにしました。
また16日に再びイスラエルを訪問することについて「この数日間の訪問で聞いたことを共有し、今後の道筋について協議する機会としたい。困難な状況だが、この状況を乗り越えようという決意は皆同じだ」と述べました。
さらにブリンケン長官は「イスラエルにはハマスの攻撃から自国を守り、二度と同じことが起きないようにする権利、そして義務がある」と述べた一方で「イスラエルがこれをどのように行うかが重要だ。民間人を傷つけないようあらゆる予防策をとらなければならない」と強調しました。
イスラエル軍報道官 “人質155人にのぼる”
イスラエル軍の報道官は15日、これまでにガザ地区でハマスに捕らわれていることが確認できた人質は155人にのぼると発表しました。
また、イスラエル軍がガザ地区の北部の住民に対し南部に退避するよう通告していることについては「ハマスは民間人を人間の盾にしようと躍起になっているが、これまでに60万人以上の住民が南部に移動した」として、退避は進んでいると強調しました。
英首相とヨルダン国王 ガザ地区への人道支援について協議
イギリスの首相官邸はスナク首相が15日、イギリスを訪れたヨルダンのアブドラ国王と会談し、ガザ地区への人道支援などについて協議したと発表しました。
両首脳はイスラエル政府やパレスチナ暫定自治政府だけでなく、中東地域の指導者たちとも協力して事態がさらにエスカレートするのを防ぐための外交努力について話し合ったとしています。
またガザ地区の民間人を保護するための措置を講じるとともに支援が確実に届くようにすることの重要性について合意したとしています。
ネタニヤフ首相「怪物を根絶やしにする準備できている」
イスラエル軍とハマスの衝突は15日も続き、ガザの保健当局によりますと、これまでに2670人が死亡した一方、イスラエル側では少なくとも1400人が死亡し、双方の死者は4000人を超えています。
ネタニヤフ首相は15日、今回の事態を受けて野党とも連携して新たに樹立した緊急政府の初めての閣僚会議を開きました。この中でネタニヤフ首相は「兵士たちは、いつでも怪物を根絶やしにする準備ができている」と述べ、ガザ地区への大規模な地上侵攻を強く示唆しました。
イスラエル軍のハレビ参謀総長も兵士らを前に「ガザ地区に入り、ハマスのすべての指揮官や戦闘員を倒すことはわれわれの責任だ」と述べています。
さらにイスラエル軍は15日、ハマスの治安機関で南部を管轄する指揮官を殺害したと発表しました。
ガザ地区から10キロあまり離れたイスラエル南部のアシュケロン郊外では15日、100を超える戦車や軍用車両が集結し、兵士らが車両を整備したり、物資を運び込んだりしていました。イスラエルに対するハマスによるロケット弾攻撃も繰り返されていて、市内のホテルなどに避難する住民の姿も見られました。
ただ、避難先のホテルもロケット弾の被害を受けていて、ホテルの責任者の男性は「われわれはガザ地区からの攻撃を受けてきた、今回はそれが終わることを望みます」と話していました。
一方、ガザ地区の保健当局は、空爆によって病院が破壊されたり、医療従事者が死亡したりして、けが人の手当てができないケースが増えていると訴えています。
また、地元の救助団体は15日、イスラエル軍の空爆で倒壊した建物のがれきの下に閉じ込められるなどして1000人以上の行方がわからなくなっているとしています。
ガザ地区では飲み水や医薬品も著しく不足し、人道状況の悪化が深刻化していて、民間人の犠牲者が増え続ける中、地上侵攻が始まればさらなる被害の拡大が懸念されます。
仏外相 “国際人道法を順守 民間人保護が必要”
イスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相などと会談したフランスのコロナ外相は15日、現地で記者会見し「イスラエルにはハマスとその危険から自らを守る権利があるが、公正でなければならない。国際人道法を順守し、民間人を保護する必要がある」と述べ、空爆を続けるイスラエルに民間人への被害を最小限にとどめるよう求めました。
また、多くの住民が避難しているガザ地区の南部にも食料などが届けられるべきだとしています。
さらに、イスラム組織ハマスによる攻撃で死亡したフランス人の数が19人にのぼったと明らかにしたほか、人質となっているとみられるフランス人については「すべての人質を即時かつ無条件で解放するよう求める。フランスは誰も見捨てない」と述べ、引き続き解放に向けて尽力する姿勢を強調しました。
米大統領補佐官 “イスラエル側 ガザ地区南部への水供給 再開”
イスラエルによってガザ地区の電力や水、燃料の供給が止められ人道危機が深まる中、アメリカ・ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は15日、CNNテレビに出演し、イスラエル側がガザ地区南部への水の供給を再開したと伝えてきたことを明らかにしました。実際に水の供給が再開されたかは不明です。
またサリバン補佐官は「ハマスとは何の関係もない罪のないパレスチナの人々が、爆撃を受けず、食料や水、医薬品などを手に入れることができる安全な地域にたどりつけるようにしたい」と述べ、民間人の避難のための人道回廊の設置などについて国連や関係国などと引き続き協議していく考えを強調しました。
一方、アメリカ国務省は15日、バイデン大統領がガザ地区での緊急の人道支援をはじめとした中東の人道問題を担当する大統領特使を任命したと発表しました。
国連レバノン暫定軍 “暫定軍本部にロケット弾1発が着弾”
レバノン南部に駐留しイスラエルとの国境地帯を監視する国連レバノン暫定軍は、15日、暫定軍の本部にロケット弾1発が着弾したと発表しました。けが人は出ていないということで、どこから発射されたのかは確認中だとしています。
現場周辺ではハマスが今月7日に大規模な攻撃を開始して以降、イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの間で散発的に衝突が起きていて、死者も出ています。
国連レバノン暫定軍は、武力衝突の拡大が続いていると非難した上で「すべての当事者に対し、戦闘を停止するよう求める」と呼びかけています。
国連レバノン暫定軍は1978年、レバノン南部に侵攻したイスラエル軍の軍事作戦の停止と撤退を監視するため、国連の安全保障理事会が設立した平和維持部隊で、ことし8月時点で49か国からおよそ1万人が参加しているということです。
OIC 閣僚級の緊急会合開くと発表
ガザ地区の情勢などについて話し合うため、イスラム諸国でつくるOIC=イスラム協力機構は、本部のあるサウジアラビア西部のジッダで18日、閣僚級の緊急会合を開くと発表しました。ガザ地区で命を脅かされている市民の状況や、エスカレートする軍事的な状況などについて意見を交わすとしています。
ただ、OICに加盟するイスラム圏の各国の間では、イスラエルとハマスの双方に自制を求める国もあれば、イランのようにハマスを支持する国もあるなど、立場に違いがあり、一枚岩となって事態の打開に向けた対応をとるのは容易ではないことが予想されます。
米報道官 “ブリンケン国務長官 16日に再びイスラエル訪問”
アメリカ国務省のミラー報道官は中東を訪問中のブリンケン国務長官が16日に再びイスラエルを訪れると明らかにしました。国務省は当初、ブリンケン長官が12日にイスラエルを訪れたあと、15日にかけてサウジアラビアやエジプト、それにカタールなど中東の各国を訪問すると発表していました。
ブリンケン長官はアラブの各国の首脳らとの会談を踏まえて、民間人の避難のための人道回廊の設置などについて改めてイスラエル側と協議を行うとみられます。
イラン外相 “ガザ地区への攻撃 やめるよう求めた”
中東の衛星テレビ局、アルジャジーラは15日、イランのアブドラヒアン外相がガザ地区への攻撃をやめるようイスラエルに求めたと伝えました。
イランのアブドラヒアン外相は、アルジャジーラのインタビューの中で「われわれはイスラエルに対し、第三者を介してガザ地区での犯罪行為をやめなければ手遅れになると伝えた」と述べ、イスラエルに警告したことを明らかにしました。
また、イランが後ろ盾となりイスラエルと敵対してきたレバノンのイスラム教シーア派組織、ヒズボラの最高指導者のナスララ師から「すべての選択肢が用意されている」と聞かされたとして、イスラエルがガザ地区への地上侵攻に踏み切ればヒズボラによるイスラエル北部への攻撃が激しくなる可能性を示唆し、イスラエルとそれを支援するアメリカをけん制しました。
その上で「この状況ではイランは傍観者のままではいられない」と述べ、具体的な手段には言及を避けながらも、ガザ地区の情勢に関わっていく考えを示しました。
イスラム圏の国々 立場わかれる
ガザ地区情勢への対応をめぐってはイスラム圏の国々でも立場がわかれています。
多くの国はイスラエルとハマスの双方に自制を求めていて、このうちトルコはエルドアン大統領が仲介役を務める意欲も示していて「双方からの要請があれば、捕虜交換をはじめとしたあらゆる仲介の準備がある」と述べています。
また、アラブ諸国の中でも早くからイスラエルと国交があり、イスラエルとハマスの過去の大規模衝突でも仲介の実績があるエジプトは双方に自制を求めた上で人道状況の改善に向けて隣接するガザ地区の南部から支援物資を運び込めるよう準備を進めています。
一方、ハマスを支援してきたイランは、ハマスによる攻撃を支持してイスラエルのみを非難し、イスラエルが大規模な軍事作戦を前にガザ地区の住民に避難を呼びかけていることについても「強制移住」だとして受け入れられないという立場を示しています。
また、内戦を通してイランの支援を受けるなど、関係の深いシリアもイスラエルを非難する立場を鮮明にしています。 
●日本産水産物の輸入制限 ロシア検疫当局「中国の措置に参加する」 10/16
東京電力・福島第一原発の処理水の海洋放出をめぐり、ロシアの検疫当局は、日本産水産物の輸入を一時制限すると発表しました。すでに禁輸に踏み切った中国と足並みを揃えた形です。
ロシア検疫当局は16日、声明を発表し「予防措置として、日本産水産物の輸入を一時制限する中国の措置に参加する」と表明しました。水産物の安全性を確認するために必要な情報が提供され、専門家によって分析が行われるまで制限を続けるとしています。
福島第一原発の処理水放出をめぐっては、中国が日本の水産物の輸入を全面的に禁止していて、ロシアとしては友好国の中国と足並みを揃えた形です。
プーチン大統領が近く中国を訪問し、習近平国家主席と会談を行う見通しですが、このタイミングでの発表は中国に協力的な姿勢を示す狙いがあるとみられます。
●「第5次中東戦争」に拡大か イスラエル情勢…カギを握るのはイランの関与 10/16
パレスチナ・ガザ地区を実行支配するイスラム原理主義組織ハマスが10月7日、イスラエル領内に向けて数千発のロケット弾を打ち込んで以降、中東における軍事的緊張が高まっている。ハマスは人質130人以上を拉致して連行し、イスラエル軍がガザ地区への攻撃を強化していることから、一部の人質を殺害している。イスラエル側も徹底抗戦の構えで、ガザ地区への地上侵攻が秒読み段階に入っており、これまでの犠牲者数は双方で4000人を超えている。さらなる犠牲の拡大は避けられない状況だ。
イスラエル情勢はどうなっていくのだろうか。その上でカギを握るのがイランの対応だ。今後イランがどれほどこの軍事衝突に介入するかで、その後の状況は大きく変わってくる。10月7日のハマスによる奇襲攻撃について、これまでのところイランは具体的に関与していないと主張している。この点についてはイランが関与してない可能性が極めて高い。仮にこの攻撃でイランの支持などが明らかになれば、イスラエルとイランの軍事的緊張が高まることは避けられず、サウジアラビアとの国交正常化を成し遂げたイランにとっても得策ではない。
しかし、イスラエルがガザ地区に地上部隊を展開し、そこで罪のないパレスチナ市民がさらに犠牲になれば、長年ハマスを支援するイランとしても何もしないわけにはいかなくなる。ハマスの最高幹部イスマイル・ハニヤ氏と最近会談したイランのアブドラヒアン外相も、「イスラエルによる犯罪が続けばいかなることも起こりうる、イランは傍観者でいられなくなる」と警告している。
中東地域において、レバノン・シリア・イラク・バーレーン・イエメンではイランの支援を受けるシーア派武装勢力が活動しているが、今回の件で既に反イスラエル感情を強め、レバノン南部を拠点とする親イランの武装勢力ヒズボラはイスラエル北部に向けてミサイルを打ち込んでいる。イスラエル側も親イランの武装勢力への警戒を強め、ヒズボラに応戦したり、隣国シリアへも空爆を行っている。親イランの武装勢力は米国がイスラエルを支援すれば、米国権益も攻撃対象になると警告するなど、一貫して強硬姿勢を貫いており、地上侵攻となればイスラエルへの攻撃をエスカレートさせる恐れがある。
そういった中、イランが目に見える形で具体的な関与を示さないと、イランのメンツが潰れるだけでなく、中東各地に点在する親イランの武装勢力との間でも摩擦が生じる可能性がある。
今日のイスラエル情勢は、今後の中東情勢の行方を大きく左右しかねない岐路にある。イスラエルとハマスとの交戦が激化し、イランが自ら、また親イランの武装勢力を利用する形で各地にあるイスラエル権益への攻撃を強化すれば、それは第5次中東戦争に発展しかねない。
そして、そうなれば米国の関心は再び中東にも注がれることになり、ウクライナや台湾といった問題に割ける時間やマンパワーが減り、ロシアや中国に隙を与えることになる。今まさに世界は1つの大きな分かれ道に差し掛かっている。
●中ロ外相が会談、中東情勢やウクライナ巡り協議 10/16
ロシアのラブロフ外相は、中国の王毅外相と北京で会談し、悪化する中東情勢を巡って意見を交わした。ロシア外務省が16日明らかにした。
外務省によると「中東情勢を含む幅広い国際問題と地域問題について徹底的な意見交換が行われた」。ウクライナにおける軍事衝突と「政治・外交的方法」による解決への取り組みについても議論したという。
●ロシア外相が北朝鮮を公式訪問へ 北朝鮮での首脳会談の布石か 10/16
ロシアのラブロフ外相が、18日から19日の日程で北朝鮮を訪問する。
ロシア外務省は16日、ラブロフ外相が18日から19日にかけて、北朝鮮を公式訪問すると発表した。
ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は、9月にロシア極東で首脳会談しており、北朝鮮メディアによると、晩さん会後に金総書記が北朝鮮に招待し、プーチン大統領も快諾している。
ラブロフ外相の訪朝は、北朝鮮での首脳会談の布石とみられる。
●ハマスのイスラエル攻撃「10月7日」にロシアの影 10/16
ロシア政治に詳しい筑波大名誉教授の中村逸郎氏が10月16日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演し、辛坊と対談。パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが突如、イスラエルに大規模攻撃を行ったのが7日だったことについて、「ロシアのプーチン大統領の誕生日だった」とロシアの影を指摘した。
イスラエルがパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻に向けた動きを加速させる中、ロシアのプーチン大統領が13日、停戦を仲介する用意があると表明した。今回の発言の背景には一体どんな思惑が見え隠れするのか―。
中村)プーチン大統領の誕生日は10月7日で、今年71歳になりました。私、びっくりしました。今年10月7日は、ハマスがイスラエルに突如、攻撃を開始した日にあたります。
辛坊)プーチン大統領の誕生日と、ハマスの攻撃に関係性はないでしょう。
中村)いえ、関係あるんですよ。誕生日祝いです。プーチン大統領はウクライナと戦争していますが、なかなか思い通りにいっていません。その理由は、ウクライナが強いからだけではなく、背後にアメリカがいて武器支援をしているからです。プーチン大統領としては「アメリカが邪魔だ」と考えています。そこで、アメリカの戦力を削ぐために、第2の戦線を開きたかったわけです。
辛坊)確かに、アメリカは現実問題として中東情勢の緊迫により、東地中海への空母打撃軍の派遣を決めましたから、二正面作戦を強いられているのは間違いないです。これで朝鮮半島でも有事が起きたら、アメリカはてんてこ舞いです。

 

●プーチン大統領、中国を訪問 10/17
ロシアのプーチン大統領は17日、中国を訪問した。北京で巨大経済圏構想「一帯一路」の国際会議に出席し、中国の習近平国家主席と18日に首脳会談を開く。プーチン氏の訪中はウクライナ侵攻後初めてで、米欧と対立する中、中国と連携強化を図る。両首脳は緊迫するパレスチナ自治区ガザ情勢も議論し、イスラエルの同盟国である米国とは一線を画した対応を取りそうだ。
中国は東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を巡り、ロシアと足並みをそろえて日本に圧力を加える構え。ロシアは16日に日本産水産物の輸入を制限すると発表。中国は日本産水産物の輸入を全面的に停止している。
●プーチン大統領が北京に到着 あす(18日)習近平主席と会談へ 10/17
ロシアのプーチン大統領がさきほど中国・北京に到着しました。
プーチン大統領が北京を訪問するのはウクライナ侵攻後初めてで18日、習近平国家主席と会談します。
ロシアのプーチン大統領はさきほど北京の空港に到着しました。
17日から開かれる巨大経済圏構想「一帯一路」の国際会議に出席し、開幕式でスピーチを行うほか18日には習近平国家主席と会談します。
プーチン氏が北京を訪問するのはウクライナ侵攻後初めてです。
これに先立ちロシアのラブロフ外相は16日中国の王毅外相と会談、「首脳会談では二国間関係の発展について全面的に話し合う予定」だとしています。
習主席との会談ではウクライナ情勢や緊迫化するイスラエル・パレスチナ情勢についても意見交換が行われるとみられ、両国がどのようなメッセージを発信するか注目されます。
●プーチン大統領「市民の犠牲に反対」、イスラエル首相と電話会談… 10/17
ロシアのプーチン大統領は16日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム主義組織ハマスとイスラエルの衝突を受け、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と電話会談した。パレスチナ自治政府とエジプト、イラン、シリアの首脳とも電話会談した。
露大統領府の発表によると、プーチン氏はイスラエルの犠牲者に哀悼の意を伝え、「市民の犠牲を伴うあらゆる行動に対する完全な反対と非難」を強調した。ガザにおける暴力の拡大と人道危機を防ぐため、ロシアが協力する用意があるとも述べた。ネタニヤフ氏は「ハマスを排除するまではガザへの攻撃をやめない」と述べた。
プーチン氏はパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長、エジプトのアブドルファタハ・シシ大統領、イランのエブラヒム・ライシ大統領、シリアのバッシャール・アサド大統領とも電話で会談した。露大統領府によると、首脳らは人道危機が深刻化していることに懸念を示し、即時停戦の必要性で一致した。
プーチン氏は、独立したパレスチナ国家とイスラエルの平和的共存に向け、交渉の再開を支持する立場を表明したという。
●プーチン氏 ガザ危機で双方首脳らと相次ぎ電話会談 紛争拡大に懸念 10/17
ロシアのプーチン大統領は、イスラエル・パレスチナ情勢をめぐり双方の首脳らと相次いで電話会談を行い、紛争拡大への懸念を示しました。
ロシア大統領府によりますと、プーチン大統領は16日、パレスチナ自治政府のアッバス議長、イランのライシ大統領、シリアのアサド大統領、エジプトのシシ大統領と相次ぎ電話会談し、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突をめぐり、紛争拡大に伴う人道危機への懸念を示しました。
そのうえでプーチン氏は、問題解決のためにはパレスチナ国家を樹立しイスラエルと「共存」することが必要だとの考えを改めて示しました。
プーチン氏はその後、イスラエルのネタニヤフ首相とも電話会談し、亡くなったイスラエル人遺族らへの哀悼の意を示すとともに、民間人を犠牲にする軍事行動への非難を表明しました。
プーチン氏は17日から中国で開かれる国際会議に合わせて訪中し習近平国家主席と首脳会談を行う予定で、中東情勢についても協議を行うとみられ、一連の電話会談で情勢を把握する狙いがあるとみられます。
●訪中したプーチン氏「習氏は真の世界領袖…『臨時職』ではない」 10/17
ロシアのプーチン大統領が中国の習近平国家主席こそが真の「世界領袖」であり、「臨時職」ではないと言って称えた。
17日、北京で4年ぶりに開かれる第3回一帯一路(陸・海上新シルクロード)国際協力首脳フォーラムに出席するプーチン大統領は中国中央テレビとの事前インタビューに臨み、今まで習主席と40回余り会って多くの良い記憶があるとアピールした。
プーチン大統領は「習主席は世界が公認した指導者の一人」としながら「一時な状況を見て決める指導者ではなく、情勢を分析評価できて未来を見通す長期的な観点を持っている」と称賛した。
続いて習主席に対して「彼こそが真の世界領袖だ。我々が『臨時職人』と呼んでいる人とは区別される」とし「『臨時職人』は国際舞台で5分ショーをして消えれば痕跡も残っていない」と話した。選挙で選出されて一定の任期だけをこなす通常の民主主義国家の国家指導者とは違うという意味だ。今年国家主席3連任に成功した習主席の追加再任までロシアが支持するというメッセージであると解釈することもできる。
西側と該当国家が「負債の罠」としながら批判する中国の一帯一路に対する支持の意向も表明した。プーチン大統領は「一帯一路イニシアチブとロシアのユーラシア経済共同体構想は完全に一致する」とし「これを中国が他人を征服するための試みと感じる者もいるが、我々は事実を直視しており、そのようなことはない」と評価した。
これに先立ち、プーチン大統領は5年前の2018年上海協力機構(SCO)青島首脳会議出席を控えて臨んだ中央テレビとのインタビューで「習主席は私と誕生日を祝う唯一の国家指導者」とし、二人のブロマンスを誇示していた。
18日に開幕する第3回一帯一路首脳フォーラムで習主席とプーチン大統領の中露首脳会談は最大の観戦ポイントに挙げられている。香港鳳凰放送などによると、16日午前、ロシアのラブロフ外相はプーチン大統領より一日早く北京に到着して王毅外交部長兼政治局委員と会談し、経済・金融・エネルギー協力をはじめ、ウクライナ戦争と最近のイスラエル・パレスチナ戦争に対する首脳会談発表文を調整した。
●ロシア、日本産水産物を全面禁輸へ 中国に同調、プーチン氏訪中前に 10/17
ロシアで動物検疫などを担う監督当局は16日、「予防的措置として、日本からの水産物の輸入を一時的に禁止する中国の規制に同調する」と発表した。
中国は8月、東京電力福島第一原発の処理水の海への放出にともない、日本産の水産物輸入を全面的に停止しており、ロシアも全面禁輸にするとみられる。
ロシアのプーチン大統領は近く、中国を訪問して習近平(シーチンピン)国家主席と首脳会談するとみられ、それを前に中国と歩調を合わせた可能性がある。
発表によると、期間は「水産物の安全性を確認し、当局の専門家が分析できる詳細な情報が提供されるまで」としており、事実上、無期限となる。
ただ、インタファクス通信によると、ロシアの日本からの魚の輸入は2022年が190トン、今年も9月までに118トンと少ない。日本近くの海ではロシア漁船が操業しており、中国との連帯を示す象徴的な意味が強いとみられる。
●中国、「一帯一路」10年の成果誇示 習氏、プーチン氏と会談へ― 10/17
中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」国際協力サミットフォーラムが17日、北京で開幕する。習近平国家主席は2日間の会期中、ロシアのプーチン大統領をはじめとした構想参加国の首脳らと会談する見通し。2013年に習氏の肝煎りで始まった構想の10年間の成果を誇示し、関係国との連帯をアピールする。
サミットフォーラムは今回で3回目。中国メディアは140カ国以上の代表が参加すると報じているが、外務省は出席者の内訳を明らかにしていない。期間中、習氏が基調演説を行うほか、ハイレベル会議やテーマ別会議、企業家による会合、歓迎夕食会が予定されている。
15日以降、アフリカや南米から首脳らが続々と北京入り。ロイター通信によると、アフガニスタンからもイスラム主義組織タリバン暫定政権の代表が出席する。中国は暫定政権を正式に承認していないが、資源開発を念頭に関係を強めており、9月には新たな駐アフガン大使が着任した。
一方、日本や米国からの公式な高官派遣はないもようだ。過去2回のフォーラムに出席した構想参加国の韓国も、今回は政府代表団を派遣しないと報じられている。
19年の前回開催時は150カ国以上の代表が出席し、そのうち37カ国が首脳級だった。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは外交関係者の情報として、今回は習氏が「選び抜いた指導者のみを招待した」と伝えており、参加規模は前回から縮小する可能性もある。
一帯一路には、ウクライナ侵攻を続けるロシアの脅威に敏感な東欧諸国も多く参加している。ただ、会議でのプーチン氏との同席を嫌い、首脳や代表団の派遣を見送った国もあるとみられる。
●軍事侵攻600日 ゼレンスキー大統領 領土奪還目指す決意示す 10/17
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から600日となった16日、ゼレンスキー大統領は領土奪還を目指す決意を改めて示しました。これに対しプーチン大統領は国防や治安当局のトップと会議を行い侵攻を続ける姿勢を鮮明にしました。
ゼレンスキー大統領「諦めない」国民へのメッセージ投稿
ロシアによる軍事侵攻が始まってから600日となった16日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、SNSに国民へのメッセージを投稿しました。
この中でゼレンスキー大統領は「諦めないという意志が自由を勝ち取ることにつながる。大切なのは、時間を浪費しないこと。団結を失わないこと。意志をむしばむ疑念を持たないことだ」として、国民に結束を呼びかけました。
その上で、「ウクライナ人の未来が、ウクライナ人だけのものとなるよう、日々全力を尽くさなければならない。祖国を守るために命をささげたすべての人の記憶が永遠となり、祝福されますように。私たちは必ず勝利する」として、徹底抗戦を続けていく決意をあらためて示しました。
ロシア 軍事侵攻を続ける姿勢
一方、ロシア大統領府は16日、プーチン大統領が首都モスクワ郊外の公邸でショイグ国防相やFSB=連邦保安庁のボルトニコフ長官、対外情報庁のナルイシキン長官などと会議を行ったと発表しました。
この中でプーチン大統領に対しショイグ国防相が「ウクライナ軍は反転攻勢で深刻な損害を受けている」と報告し、軍事侵攻を続ける姿勢を鮮明にしました。
また、大統領府はプーチン大統領がロシアが占領したウクライナ東部ドネツク州のマリウポリで行われた橋の開通式にオンラインで参加した様子を公開し、支配地域の既成事実化を図るねらいとみられます。
こうした中イギリス国防省は16日、ロシアが民間軍事会社を利用して「志願兵」という名目で戦闘員を集めていると指摘しました。
国民が懸念するさらなる動員を避けながらロシア軍の兵力を増強するねらいだとしていてプーチン政権は長期戦に備える構えを示しています。
●EU、ガザ人道支援で物資空輸へ エジプトに複数便 10/17
欧州連合(EU)は16日、パレスチナ自治区ガザの人道支援団体に物資を届けるためエジプトに複数の航空機を派遣し、空輸を開始すると発表した。
声明で「最初の2便が今週、避難所用品、医薬品、衛生キットを含む国連児童基金(ユニセフ)の人道支援物資を運ぶ予定だ」とした。
フォンデアライエン欧州委員長はアルバニアの首都ティラナで開いた記者会見で「ガザのパレスチナ人は人道支援と援助を必要としている。彼らが(イスラム組織)ハマスの蛮行の代償を払うことはできない」と述べた。
欧州委員会は14日、ガザの住民に対する人道支援について、当初予定の3倍の7500万ユーロに増額すると発表した。
●ロシア軍、東部戦線突破に攻勢 戦闘激化=ウクライナ陸軍司令官 10/17
ウクライナのシルスキー陸軍司令官は16日、北東部ハリコフ州クピャンスクから東部ドネツク州リマンにかけての戦線で戦闘が激しさを増しているとし、ロシア軍はこの前線を突破しようとしていると述べた。
陸軍が公開したビデオによると、シルスキー司令官は兵士らに対し、クピャンスク─リマン戦線で戦闘が「著しくエスカレートしている」とし、ウクライナ軍の防衛線を突破するためにロシア軍は攻勢を準備していると述べた。
ウクライナ軍はこの日の戦況説明で、クピャンスク周辺のほか、ドネツク州アブデーフカとマカリフカ近辺の東部戦線で戦闘が激化していると報告した。アブデーフカは大規模なコークス工場がある戦略的に重要な町で、ロシア軍は先週、アブデーフカ周辺に攻勢をかけた。 
●ロシアの大軍から要衝アウディーイウカを防衛したウクライナ軍のドローン戦術 10/17
ウクライナ軍の反転攻勢が続くなか、ロシア軍はウクライナ東部の要衝アウディーイウカに大規模な攻撃を仕掛けている。だが一時の勢いは衰えつつあるようだと、新たな分析が示された。
米シンクタンク「戦争研究所」は最新の戦況分析の中で、ロシア軍が10月15日に「アウディーイウカの包囲」を狙った攻撃を仕掛けたと指摘。だが「この地域でのロシア軍の作戦展開の勢いが衰えているようで、その後さらなる進展はみられていない」とつけ加えた。
戦争研究所によれば、ロシア軍はアウディーイウカ周辺への進軍初期に「大規模な損失」を被り、また進軍ペースも思いどおりにいかなかった可能性が高い。(公開情報を利用して情報収集・分析を行う)オープンソース・インテリジェンスの複数のアカウントは、アウディーイウカへの攻撃でロシア軍の装備にかなりの損失が出たと示唆していた。
ロシア軍は10月10日にアウディーイウカ周辺への大規模攻撃を開始。少なくとも3つの大隊を投入したとみられている。ウクライナの大統領首席補佐官を務めるアンドリー・イェルマクも、アウディーイウカが「ロシア軍の迫撃砲や航空機による集中攻撃を受けている」と述べていた。
14日夜にはヴォロディミル・ゼレンスキー大統領も、アウディーイウカを激戦地の筆頭に挙げ、「拠点を守り、ロシア軍を撃退している全ての者に感謝する」と述べた。
ウクライナ守備の重要拠点
アウディーイウカはずっと以前から、ウクライナとロシアの紛争の影響を受けてきた。ビタリー・バラバシ町長は以前、今も町に残っている住民は1600人程度だろうと言う。戦争が始まる前には約3万人が住んでいた。
ウクライナ軍のビクトル・トレフボフ少佐は、ロシア軍と親ロシア派武装勢力は9年前から、アウディーイウカを支配下に入れようとしてきたと指摘する。「ロシア軍の攻撃は激しいが、いまだ成功には至っていない。その大きな理由は、ウクライナの戦闘用と偵察用ドローン(無人機)がかつてないほど効果的に運用されているからだ」と彼は16日に本誌に語った。
ウクライナのミハイロ・フェデロフ副首相は16日、ウクライナ軍のドローンは10月9日から16日までの1週間で、ロシア軍の装甲車88台、戦車75台、榴弾砲と大砲101門とロシアの防空システム2つを破壊したと明らかにし、無人テクノロジーが「アウディーイウカの防衛において優れた効果を発揮したことが証明された」とX(旧ツイッター)への投稿の中で述べた。
戦争研究所は11日の戦況分析の中で、アウディーイウカは「ウクライナ軍の守備の重要拠点で、要塞化されていることで有名」だと述べ、ロシア軍が制圧するのは難しいだろうと指摘していた。
それでもハーグ戦略研究センターの戦略アナリストであるフレデリック・マーテンスは、ロシア軍が自分たちの防衛ラインに割り込む「突出部」であるアウディーイウカ(マップ参照)を制圧しようとするのは、驚くにはあたらないと指摘。ロシアは今回の戦争で、以前にもこの地域を制圧しようと試みており、それは「軍事的に筋の通った」戦略だと本誌に述べた。
ロシア軍がアウディーイウカを制圧すれば、6月に反転攻勢を始めたウクライナ軍と激しい戦闘を続けているロシア側にとっての大きな戦果となる。
マーテンスは、「もしもウクライナがアウディーイウカを失えば、それはロシア側の防衛にとって重要な勝利になる」と説明。ロシアがアウディーイウカを支配下に入れれば、ウクライナ東部の要衝ドネツク州を今後、ウクライナ軍の攻勢からより強力に守ることができるようになるからだと述べた。
だがキングズ・カレッジ・ロンドン戦争研究学部の教授であるマイケル・クラークは先週、ロシアがアウディーイウカに照準を合わせたのには、ほかの前線からウクライナ軍の注意を逸らす狙いもあった可能性が高いと本誌に語る。ロシアは「流れが変わるまでの時間稼ぎをしながら、アウディーイウカの前線の至るところで攻撃を仕掛けている」ようだと指摘した。
マーテンスも、「ウクライナ軍の兵士たちを釘付けにするために攻勢を仕掛ける場所という意味では、理論的にアウディーイウカが最適だろう」と分析した。
秋と冬も反転攻勢は続く
ウクライナ軍は何カ月も前から、ウクライナ東部と南部でロシア軍に対する激しい抵抗を繰り広げており、幾らかの成果を上げているものの、反転攻勢の進展ペースは遅く、大きな代償も伴っている。秋と冬は雨や雪が多く前線が泥でぬかるむが、ウクライナ政府は条件が悪化しても、反転攻勢を続けると宣言している。
ロシア軍は15日の戦況報告の中でアウディーイウカについては言及しなかったが、ウクライナ軍参謀本部は16日、前日にアウディーイウカでロシア軍から15回を超える攻撃があったと述べた。
ウクライナ国防省情報総局の報道官は先週、アウディーイウカに対するロシア軍の攻撃は想定していたと述べていた。戦争研究所は先日の戦況分析の中で、地雷を敷設するなど、ウクライナ軍が攻撃に備えていた兆候がみられると指摘していた。
●プーチン大統領…“最重要パートナー” の中国を訪問 10/17
中国が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」に関する国際会議にあわせ、中国を訪れているロシアのプーチン大統領。今回の中国訪問には、両国の経済関係をさらに強化する狙いもあります。西側諸国との対立が深まるなか、ロシアにとってパートナーとしての中国の存在感は急速に高まっています。急速に中国との関係を深める、中国との国境の街を取材しました。
17日午前の北京市内、一般車両を全て排除した厳戒態勢の中を車列が進んでいきました。その数36台。ロシアのプーチン大統領が北京に到着したのです。
記者「襲撃などを防ぐ目的でしょうか、同型の車両が2台並んで走行していきます」
車列はそのまま、中国で最高クラスの賓客を迎える迎賓館へ入りました。
ウクライナ侵攻をめぐり国際刑事裁判所から逮捕状が出て以降、プーチン大統領が旧ソ連圏以外の国を訪問するのは初めてです。
主要な外交舞台復帰の第一弾として、中国を選んだプーチン大統領。ウクライナ侵攻により西側諸国と“断絶状態”にあるロシアにとって、今や中国は“最重要パートナー”なのです。訪中に先立って行われた中国メディアのインタビューでは、プーチン大統領が習主席を持ち上げる発言もありました。
ロシア プーチン大統領「彼は間違いなく、世界に認められたリーダーのひとりです」
18日の首脳会談でも、ロシアと中国の“関係強化”を確認するとみられます。
こうしたなか、急速に中国との関係を深める街がありました。ロシアの極東地域にある、中国との国境の町、ブラゴベシチェンスクです。
記者(ロシア・ブラゴベシチェンスク、12日)「このアムール川を挟んで500メートル向こう側は、中国・黒竜江省の黒河市です」
町には、至るところに中国人観光客の姿がありました。
――食べ物で楽しみなのは?
ロシアを訪れた中国人「ロシアのバーベキュー!」
この町では、中国とのビジネス拡大に向けた動きが進められています。
去年6月には、両国を結ぶ初の「道路橋」が開通しました。プーチン大統領、“肝いりの事業”で、中国との“物流の大動脈”として期待を寄せています。現在は“物資の運搬”のみですが、来年から“人の往来”も可能になります。
より中国が身近になるなか、「中国語を子どもに習わせたい」と考える親が増え、語学学校の生徒も増えているといいます。去年からは、市内すべての学校でも、行政のトップダウンで「中国語」を教えるようになりました。
孔子学院 クハレンコ所長「この地域は中国との協力が欠かせず、住民が中国語を話せることは非常に重要だと、行政のトップが言っています」
市内の卸売市場を訪れると、そこに続々と運び込まれていたのは中国産の品物です。
そのわけは、橋の開通を受けて今年5月に設置された、税関と物流を1つにした施設です。
記者「中国からのトラックがたくさんとまっています」
それまで、中国からこの地域への貨物の輸送は、1500キロ離れたウラジオストクを経由していましたが、新たな橋と施設によって、大幅に短縮されたのです。
今年の中露の貿易額は、前年に比べて約3割も増加し、着実に成果を出しています。
地元のビジネスマン「経済など様々な分野で両国が協力すれば、ロシアにとって利益になると思います」
川をはさんだ隣国・中国に熱い視線を向けるプーチン大統領。したたかに、苦境を乗り切ろうとしています。
●タイ、ロシア人観光客のビザ延長 首相、北京でプーチン氏と会談 10/17
タイのセター首相は17日、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の国際会議のため訪問した北京で、ロシアのプーチン大統領と会談した。ロシア人のビザ(査証)の滞在期間を30日間から90日間に延長することを決定したと伝えた。タイ政府が明らかにした。タイ経済の柱の観光業でロシア人を誘致する狙い。
ウクライナ侵攻を受けて欧州各国などがロシア人の入国を制限する一方、タイは受け入れを継続。南部のリゾート地、プーケットなどがロシア人に人気となっている。

 

●プーチン氏「ロシアは抑圧できず」、バイデン氏の発言に反論 10/18
ロシアのプーチン大統領は17日、北京でのインタビューで、ロシアの国益は抑圧できないとし、バイデン米大統領の発言を否定した。その上で米国の政治家は他国を尊敬することを学ぶべきと述べた。
バイデン米大統領はCBSニュースでのインタビューで「われわれがもし実際に欧州全土を団結させ、プーチン大統領を、問題を引き起こせない状態に最終的に追いやったとしたらどうなるのかを想像してほしい」と述べた。
この発言に対し、プーチン大統領は「これは私個人に関するものではなく、国益に関するものだ。そしてロシアの国益を抑圧することは不可能だ」と指摘。「これはバイデン大統領だけでなく、米政治家全体にも当てはまる。他国を尊重することを学ばなければならない。そうすれば誰も抑圧する必要はなくなる」と語った。
●中国の「一帯一路10年フォーラム」に140ヵ国参加、習主席とプーチン氏会談 10/18
中国の習近平国家主席が核心政策である巨大経済圏構想「一帯一路」を提唱してから10年を迎え、140ヵ国の代表が参加した「一帯一路」国際フォーラムが17日、北京で開催された。ウクライナでの戦争犯罪容疑で国際刑事裁判所(ICC)に逮捕状を出されているロシアのプーチン大統領も出席し、両国の協力を強調した。
習氏が2013年8月に提唱した一帯一路は、中国内陸から中央アジア・欧州を結ぶ「陸上シルクロード」と東南アジア・インド・アフリカ・欧州を結ぶ「海上シルクロード」の建設を中核とする中国主導の巨大経済圏構想。その一環として、低開発国が中国から資金の支援を受けて国内のインフラなどの建設に乗り出したが、莫大な「債務のわな」に陥ったという指摘も出ている。
18日まで2日間開かれる国際フォーラムには、ロシアをはじめ、アフガニスタンなど親中の国々の代表が多数参加した。中国外務省は140ヵ国、30の国際機関から約4千人が参加したと明らかにした。
習氏は18日、基調演説で、一帯一路10年の成果を評価し、今後の計画を発表する。さらにプーチン氏との首脳会談も予定されている。両首脳は3月のモスクワ会談から7ヵ月ぶりに会うことになり、イスラエルとハマスの武力衝突などの懸案に対する立場を明らかにするとみられる。
●ロシア、CTBTの批准撤回へ 下院議長「我が国の安全保障のため」 10/18
ロシア下院は17日、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を撤回する法案の審議を始めた。
プーチン大統領が今月、米国への対抗措置として撤回が可能との考えを示しており、成立は確実な情勢だ。ロシアがウクライナ侵攻をめぐって「核の恫喝(どうかつ)」をちらつかせる中、「核実験のない世界」を目指すためのCTBTの発効は、米国なども批准していないため、一段と厳しい状況となった。
CTBTは1996年に国連総会で採択された。ロシアは2000年に批准したが、核開発能力を持つ「発効要件国」44カ国のうち、米国や中国、インドなど8カ国が批准せず、いまだ発効していない。
ボロジン下院議長は審議前、「我々は米国の批准を23年間も待った。我が国の安全保障のために批准を撤回する」とSNSに投稿した。ロシアメディアによると、定数の95%となる430人以上の議員が法案の提出者になっているという。
17日は法案を審議する3段階の第1読会が開かれて可決した。19日に下院を通過し、上院の採決後、プーチン氏が署名して成立するとみられる。
●ロシアが平和の使者に?イスラエルとハマスの衝突めぐる中露の狙い 10/18
独メディアのドイチェ・ヴェレ(中国語版)は17日、「ロシアが平和の使者に?」と題し、イスラエルとハマスの衝突に関する中露の立場について報じた。
ロシア当局は16日、プーチン大統領がイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談し、「民間人が犠牲となるあらゆる行動を非難する」「ガザ地区での人道危機を防ぐため問題解決を支援する用意がある」と表明したことを発表。
外交的手段を通じて紛争を終結させ、和平合意を実現するのがロシアのスタンスだと強調した。
一方で、イスラエル側のプレスリリースによると、ネタニヤフ首相はプーチン氏に対し「ハマスが壊滅するまでガザ地区への攻撃をやめることはない」と伝えたという。
記事は、「中国やロシアが停戦の仲介役を買って出ている」と指摘。ロシアが国連安全保障理事会で「バランスのとれた非政治的な停戦」を求める決議案を提出したこと、ロシア当局が「パレスチナ、イラン、エジプト、シリアらと即時停戦と人道主義的な休戦、緊急支援を行うことで一致した」としていること、プーチン氏が「独立したパレスチナ国家をつくり、イスラエルと平和的かつ安全に共存するため、国際法に基づく政治プロセスを再開すべき」と述べたことを紹介した。
一方、ロシアのこうした動きについて、ロイターが「この危機はある意味で世界の目をロシア・ウクライナ戦争からそらさせ、ロシアに中東諸国と緊密な関係を作り、自らに平和、冷静というイメージを付ける機会を提供した」と指摘したことを伝えた。
また、「ロシアの主張は中国の立場とも類似している」とも言及し、中国当局が衝突収束の活路は独立したパレスチナ国家の樹立にあるとしていることや、停戦や人道危機の緩和など情勢のクールダウンを呼び掛けていることに言及。
これについて独紙ディ・ヴェルトが「中国が中東で仲介者を演じる“偽中立”の裏にある真の狙いは、自らの経済的利益を守ることだ」と論じたことを伝えた。
●ロシア軍 ウクライナ東部で「ことし最重要作戦」か 英国防省 10/18
ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は東部ドネツク州のアウディーイウカへの攻勢を強めていて、イギリス国防省は「ことし1月以降で最も重要な攻撃作戦になっているとみられる」と指摘し、ロシア軍が大規模な作戦に乗り出しているという見方を示しました。
ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州のアウディーイウカへの攻勢を強めていて、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は16日「ロシア軍は作戦を強化するため新たに旅団を派遣した可能性が高い」と指摘しました。
また、イギリス国防省も17日「アウディーイウカはロシア軍によるドネツク州の掌握を阻止するための主要な街となってきた。ロシア軍はここを包囲しようとし、ことし1月以降で最も重要な攻撃作戦になっているとみられる」と指摘し大規模な作戦に乗り出しているという見方を示しました。
一方、ウクライナ側は守りを固めロシア軍の侵攻を食い止めていてロシア側に大きな損失が出ているとも分析しています。
こうした中、ロシア国防省は17日、ショイグ国防相が弾薬などの製造の増強に向けた会議を開き「武器を補充することが特に重要だ」と強調したと発表しました。
また、ロシアのシルアノフ財務相は16日、議会で「現在、ほとんどの無人機は中国から来ているものだ」と明らかにしたうえでロシア国産の無人機の割合を2025年までに4割まで引き上げる考えを示しました。
ロシアはウクライナ侵攻でもイラン製の無人機を使って、インフラ施設などへの攻撃を繰り返していますがプーチン政権としては外国の輸入に依存せず無人機の国産化を進めていくねらいとみられます。
●ロシアの戦略爆撃機が日本海を飛行 10/18
ロシア国防省は17日、戦略爆撃機の「ツポレフ95」2機が日本海を飛行したと発表した。中立海域の上空を飛行したとしている。
ツポレフ95の飛行時間は約7時間で、戦闘機のスホイ35が護衛した。国防省によると、飛行は国際規則を厳守して実施されたという。
プーチン大統領は17〜18日の日程で訪中している。18日には北京で習近平(シー・ジンピン)国家主席との中ロ首脳会談に臨む予定だ。
●ウクライナ、米供与の長射程ミサイル「ATACMS」初使用 10/18
ウクライナのゼレンスキー大統領は17日、米国から供与された長射程の地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」をウクライナ軍が使用したと明らかにした。
ゼレンスキー氏はビデオ演説で「米国に感謝する。バイデン大統領との合意が履行されている。ATACMSは極めて正確だ」と述べた。
これに先立ち、米CNNは複数の匿名の米政府当局者の話として、米国がウクライナにATACMSを秘密裏に引き渡したと報道。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)はウクライナが17日にロシア軍に対し初めてATACMSを使用したと報じていた。
ウクライナ軍はこの日、ロシア軍が制圧しているウクライナ東部と南部の飛行場を攻撃し、ヘリコプターや防空ミサイル発射装置などを破壊したと発表。具体的には、ルガンスク市とベルジャンスク市の近郊にある飛行場に「正確に狙いを定めた」攻撃を行ったと明らかにした。ただ、ウクライナ軍がATACMSを使用したとの報道については言及していない。
ロシア国防省はこの攻撃についてコメントしていないが、ベルジャンスク市があるザポロジエ州の親ロ派当局者は、ATACMSミサイルによるクラスター弾が17日に現地で確認されたと述べた。
ロシアの軍事ブロガーも今回の攻撃に言及し、ATACMSによる攻撃でロシア軍が兵士と装備を失ったと伝えている。
ウクライナのポドリャク大統領府顧問は戦争の新たな章が始まったとし、「国際的に認められたウクライナ国境内でロシア軍にとって安全な場所はもはやない」とX(旧ツイッター)に投稿した。
ロシアのアントノフ駐米大使は、ウクライナにATACMSを供与する米国の決定は重大な過ちであり、深刻な結果をもたらすと警告した。
ロシアメディアによると、同大使は「意図的に市民から隠されていたこの措置の結果は最も深刻なものになるだろう」とし、「米国は北大西洋条約機構(NATO)とロシアの直接衝突を推し進め続けている」と述べた。 
●グーグルのロシア子会社が破産 戦争でコンテンツ削除応じず多額の罰金 10/18
モスクワの裁判所は18日、米IT大手グーグルのロシア子会社の破産手続き開始を決定した。ロシア通信が伝えた。昨年6月、当局による銀行口座凍結で事業継続が不可能になったとして破産を申請、同9月に受理されていた。
グーグルは傘下の動画投稿サイト、ユーチューブがウクライナでの軍事作戦に関する虚偽情報を含むコンテンツ削除に応じなかったとして、多額の罰金を科されていた。
ロシアでは現在もグーグルの無料のサービス利用やユーチューブ視聴は可能。
●バイデン大統領がイスラエル訪問を急いだ理由とは 人道問題 10/18
バイデン米大統領が危険を押してイスラエルを訪問したのは、ハマスが実効支配するガザへの侵攻へとはやるイスラエルに対し、国際社会が民間人の犠牲拡大への懸念を強めているためだ。バイデン氏は改めて同盟国イスラエルとの連帯を強調したものの、人道問題が後手に回れば米国にも批判の矛先が向くため、自制も求める狙いがある。
防衛側のウクライナとは逆、はやる軍事大国の手綱を締めに
バイデン氏が戦渦の国で支援を表明したのは、2月に電撃訪問したウクライナに続いて2カ国目。ただ、ロシアに対する自衛に追われるウクライナとは対照的に、イスラエルは最新鋭の軍事力を誇り、すでにガザへの空爆で国連関係者らも含め多くの民間人が死傷している。17日の病院爆発もイスラエルは関与を否定しているが、国際社会に波紋が広がった。今後、地上部隊の投入で犠牲が拡大すれば中東諸国を中心に世界的な反発が強まり、イランなど反イスラエル勢力が「参戦」する口実にもなる。
イランはすでにイスラエルのガザ攻撃を「戦争犯罪」として軍事介入の可能性をほのめかし、イランの影響下にあるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラはイスラエル北部に砲撃を加えている。
バイデン氏は10日の演説で「イスラエルには悪質な攻撃に対応する権利と責務がある」と一定の報復を容認したものの、13日には「人道危機への対処が私の優先事項だ」と軌道修正した。
側近たちの相次ぐ現地入りも時間稼ぎか
バイデン氏の訪問に先だち、16日までにブリンケン国務長官やオースティン国防長官ら米政府高官が相次いでイスラエルを訪問。米紙ニューヨーク・タイムズによると、バイデン氏の側近たちは、政府高官を派遣中は大規模な侵攻を遅らせ、民間人を避難させるための時間を稼ぐことができると考えているという。米国が16日に人道支援の計画策定に合意させたことも、侵攻開始を遅らせる狙いがあるとみられる。
バイデン氏は米国内のユダヤ人感情にも配慮してイスラエルへの支持を表明し続けているが、民間人を巻き込んだ過剰な反撃を抑えられるか、難しい局面に立たされている。
●習主席に立場鮮明化をお願い? プーチン大統領訪中3つの狙い 10/18
ロシアのプーチン大統領が10月17日、北京空港に降り立った。中国の習近平主席が進める巨大経済圏構想「一帯一路」国際会議に出席するためだが、プーチン大統領が旧ソ連の国境を越えて外国を訪問するのは、3月17日に国際刑事裁判所によって「ウクライナ人児童の連れ去り」の戦争犯罪容疑で逮捕状が出されて以来、初めてだ。中国は国際刑事裁判所ローマ規定の締約国ではないため、プーチン大統領が逮捕されることはない。
政財界トップを引きつれた訪問
今回の中国訪問で注目されるのは、プーチン大統領に随伴するメンバーだ。エネルギー担当副首相ノヴァク、テクノロジー担当チェルヌイシェンコ、財務大臣シルアノフ、中央銀行総裁ナイブリナをはじめ、ロシア最大の天然ガス会社「ガスプロム」のミレル社長、同じくロシア最大の石油会社「ロスネフチ」のセーチン社長など、ロシアの政財界のトップを引き連れた異例の訪問団となっている。
軍と軍産複合体のトップだけが同席した、北朝鮮の金正恩総書記との首脳会談とは桁違いの充実ぶりだ。
プーチン大統領の3つの狙い
プーチン大統領の狙いは1ガス・石油など天然資源の供給契約を結ぶこと。2先端テクノロジー面での協力を得ること、3中国政府から「特別軍事作戦」でのロシアへの強力な支持表明を得ること、の3つだ。
   1) ガス・石油の供給契約
現在、ロシアと中国の間には「ガスプロム」が運営する「シベリアの力」という
東シベリアからの天然ガスパイプラインが稼働している。ロシアはさらに中国西部へ年間500億立方メートルの天然ガスを供給するパイプライン「シベリアの力2」の締結を目指している。しかし、中国側は「新しいパイプラインは必要ない」、と契約には消極的な姿勢を示してきた。ロシアにしてみれば、これまでヨーロッパに供給していたが、ウクライナ戦争によって買い手の消えた1550億立方メートル分の天然ガス収入の代替にしたい考えで、エネルギー担当のノヴァク副首相は年内の契約締結を目指しているが、その行方は不透明だ。
   2) 最先端テクノロジーでの協力
ロシアと中国の貿易額は2023年度には2000億ドル(約30兆円)を超える勢いで、これは「特別軍事作戦」開始時から60%増大したことになる。いまや乗用車や衣料品などをはじめ、ロシアの消費市場は中国製品なしではなりたたなくなっているが、ロシアが喉から手が出るほど欲しい、軍事用に転用できる最先端技術については、中国は慎重な姿勢を見せている。今年4月には、中国政府は「紛争当事者の一方に武器を供与することはしない」と声明を出している。確かにロシアの通信監督庁である「ロスコムナドゾール」は中国の「ファーウェイ」を通じて半導体やVPN接続やYouTubeのブロックシステムを購入していると言われており、中央アジア諸国やトルコなど第三国を経由する貿易でも、中国は大きな役割を果たしていると見られている。しかしロシアとしては精密ミサイルやドローンに転用できるテクノロジーや部品の供給が、何よりも重要になっているのだ。
   3) ロシアへの協力や支持の表明
プーチン大統領は、訪中直前の国際会議で、米国の一極支配と欧米的価値観を他国に押し付ける欧米の文化的帝国主義を非難するとともに、軍事同盟によって世界を分断し、ロシアにウクライナ侵攻を余儀なくさせたのはNATOである、と強い口調で批判した。そしてハマスのイスラエルへの攻撃についても、「米国の中東政策の明白な失敗」の結果だと、激しく米国に対峙する姿勢を見せた。
習近平主席は、2月にウクライナ戦争の調停案を提示したが、明確なロシア支持を打ち出さず、自国の国益を重視しながら曖昧な立ち位置を取り続けている。プーチン大統領としては、イスラエル情勢をテコに、中国に立場の鮮明化を迫り、グローバルサウスや「一帯一路」に集まる各国を「反欧米」の立場で結束させることで世界の分断を加速させ、長期化する「特別軍事作戦」を決定的に有利に継続させていくことが目標となっている。
習主席はどう応える?
しかし、プーチン訪中のこの3つの狙いに対して、習近平主席はどこまで応えるのだろうか。中国としては、停滞気味だとはいえ、いまでも貿易総額の12%(2022年)を占める最大の貿易相手国であり、「競争相手」でもある米国をいたずらに刺激することは避けたいであろうし、すでに中国の圧倒的な経済力の支配下に取り込んだといえるロシアを「一帯一路」の他の参加国以上に優遇する必要もない。欧米の価値観とは一線を画するにしても、ウクライナ戦争でロシア支持を明確に表明する必要も認めてないだろう。
弱体化したロシアを通貨的にも経済的にも支配下に置いたまま、長引く戦争をこのままプーチン大統領に続けさせ、ロシア、ウクライナ双方のみならず、支援する欧米をも疲弊させていくことが、中国の狙いであろう。

 

●中ロ関係、世界の紛争受け「強化」 プーチン氏 10/19
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は18日、訪問先の中国で習近平国家主席と会談し、両国関係は世界の紛争を受けて「強化」されたとの認識を示した。一方習氏も、両氏の深い友情と、両国の「政治・経済関係の深化」をたたえた。
巨大経済圏構想「一帯一路」の国際協力サミットフォーラムに出席するため、ロシアの国際的孤立を招いたウクライナ侵攻開始以降では初めて主要国を訪問したプーチン氏は、首都北京の人民大会堂で「旧友」の習氏との会談に臨んだ。
会談後に記者会見したプーチン氏は、世界的な混乱を受けて中国とロシアの距離が縮んだとの見方を示し、「これらすべての外的要因は共通の脅威であり、ロシアと中国の協力を強化している」と述べた。
国営新華社通信によると、習氏も「両国の政治的信頼関係は継続的に深化している」と述べ、「緊密かつ有効な戦略的協調」を評価した。
また習氏は、フォーラムの主賓として招いたプーチン氏と過去10年で42回面会してきたことに触れ、「仕事の上での良好な関係と深い友情を築いてきた」と述べたとされる。
一方、ロシア大統領府は、プーチン氏が習氏を「親愛なる友人」と呼び、「現在の困難な状況」における「外交面での緊密な協調」の重要性を強調したとする公式声明を出した。
さらに両首脳は、パレスチナ自治区ガザ地区の病院で17日夜に爆発があり、多数が犠牲になった事態についても言及した。
「悲劇」であり、「恐ろしい出来事だ」と表現したプーチン氏は、「衝突をできるだけ早く終わらせる必要性を示す警鐘になることを心から願う」と述べ、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの衝突を終結させなければならないと訴えた。
新華社によると、習氏も、「国際社会としての公平性と正義」を守るため、両国の協力を促したとされる。
●習主席・プーチン大統領、中東情勢など議論… 共助を再確認 10/19
米国のバイデン大統領がイスラエルを電撃訪問した18日、中露首脳は北京で会ってイスラエル−ハマス戦争の対応を議論して共助を再確認した。ロシアのプーチン大統領はこの日、中国の習近平国家主席との会談後、記者と会って習主席と約3時間にわたって話をしたとし、「中東情勢に対して細部まで議論した」と明らかにした。
プーチン大統領はガザ地区病院爆発について「悲劇であり人道主義的災難」としながら「この紛争を最大限はやく終わらせるか、少なくとも両側が対話する信号になるよう願う」と話した。今回の戦争を含めた外部要因が中露関係に及ぼす影響についての質問には「このような外部要因はすべて共通の脅威であり、両国協力を強める」と答えた。中国外交部も首脳会談後「イスラエル−パレスチナ情勢などに関して突っ込んだ意見を交換した」としてプーチン大統領の発言を確認した。
プーチン大統領はまた、米国がウクライナに地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」を供与したことに関連して「ウクライナの苦痛を先延ばしするだけの米国のもう一つの失敗」と批判した。この武器が戦線状況を急変させることはできず「米国はこの紛争にますます巻き込まれている」という。
両国首脳は会談冒頭発言から格別の友情を誇示した。習主席は「尊敬するプーチン大統領、私の老朋友(古い友人)」と親密さを表した後、「両国の政治的相互信頼が絶えず深化し、戦略的協力は緊密で効果的」と評価した。特にプーチン大統領を見つめながら「2013年以降、10年間で42回会って良い業務関係と深い友情を築いた」として特別な「ブロマンス」をアピールした。
プーチン大統領は「尊敬する習近平主席、親愛する友よ」と呼びかけて習主席の言葉に応じた。プーチン大統領は「現在の厳しい環境では外交政策の緊密な共助が求められている。両国関係を含めてすべてのことを議論するだろう」と話した。米国から経済および技術制裁に苦しめられている中露両国の首脳が外交で共助を誇示した。
習主席はこの日、広域経済圏建設構想である一帯一路10周年を迎えて開かれた「第3回一帯一路国際協力サミットフォーラム」開幕式で中国主導の二者択一秩序を強調した。習主席は基調演説で「他人にバラを渡せばその手に香りが残り、他人の成就を助ければ自分も助けを受けるが、他人の発展を脅威と考えて経済的相互依存を危険と感じるなら、さらなる急成長は望めない」と述べた。米国の半導体制裁と欧州連合(EU)の中国製電気自動車(EV)ダンピング調査などを批判したものと分析される。また、西欧で広がっている中国経済危機論を狙ったように「世界がうまくいってこそ中国がうまくいき、中国がうまくいってこそ世界がより良くなる」と強調した。
今回のサミットフォーラムは第1・2回に比べて動力が弱まった。この日の開幕式には24カ国首脳と国連およびBRICS新開発銀行総裁が出席した。2017年第1回フォーラムには29カ国、2019年第2回には38カ国の首脳が参加したことと比べると減った。計152カ国が参加していた。米国と日本・北朝鮮の国旗は見えなかったが、太極旗は立てられていた。
ロシアのラブロフ外相はこの日サミットフォーラムおよび中露首脳会談に同席した後、北朝鮮に移動したとスプートニク通信などが報じた。19日まで北朝鮮に留まって崔善姫(チェ・ソンヒ)外相と会い、プーチン大統領の北朝鮮答礼訪問などについて議論するものとみられる。
●「親愛なる友よ」中国への依存強めるロシア…習近平政権、深入り避ける構え 10/19
北京で18日開かれたロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席との会談では、ウクライナ侵略を続けるプーチン政権が、エネルギー分野などで中国への依存を強めていることが浮き彫りになった。習政権は、米国主導の国際秩序に対抗するためロシアとの連携を利用しつつも、深入りを避けているとみられる。
「親愛なる友よ」
侵略開始以降、旧ソ連圏外で初の外遊に中国を選んだプーチン氏は、会談の冒頭、習氏にこう呼びかけた。「一帯一路」構想を「非常に発展している」と述べ、「あなたの指導の下、成功を収めている」と称賛の言葉を繰り返した。
会談の主眼は、経済とエネルギー分野の連携強化だ。中国当局によると、今年の中露の貿易総額は9月末時点で1700億ドル(約25兆円)を超えた。2024年までに2000億ドル(約30兆円)に上げる目標を掲げるなか、プーチン氏は「今年は間違いなく突破する」と強調した。必死のアピールは、米欧の経済制裁が続く中、ロシアにとって中国との結びつきが死活的であることを際立たせた。
露側の期待感は同席者にも表れた。エネルギー担当の副首相のほか、露国営の石油会社ロスネフチやガス企業ガスプロム、銀行や原子力関係の企業トップが会談に同席した。石油や天然ガスの中国への輸出拡大を見据えた動きとみられる。
習氏は、プーチン氏との会談が13年以降で42回に上り、「良好な関係と深い友情を築いてきた」と述べ、プーチン氏が欠かせないパートナーだと強調した。
米欧も中露接近を警戒する。AP通信によると、9日に習氏と会談した米上院民主党トップのチャック・シューマー院内総務はロシア支援の停止を求めた。
ただ、習政権もロシアへの過度な肩入れはしない構えだ。英メディアによると、習氏は3月のモスクワでの会談で、プーチン氏にウクライナで核兵器使用を控えるよう警告。それでもプーチン氏は6月、隣国ベラルーシへの戦術核配備の開始を宣言するなど威嚇を続けた。米ブルームバーグ通信によると、中国は6〜7月にロシアからの原油輸入を3割近く減らしたという。
中国にとって対露貿易総額(22年)は、対米国(約7600億ドル)と対欧州連合(EU)(約8500億ドル)の総額を合わせれば、約8分の1にすぎない。露専門家からは「中国がロシアだけを理由に西側を含む関係を悪化させることはない」との分析も出ている。
中露首脳会談発言要旨
   習近平国家主席
プーチン氏が3回続けて一帯一路フォーラムに出席したことはロシアの一帯一路への支持を示している。ロシアは一帯一路国際協力の重要なパートナーだ。
互恵協力、ウィンウィンの中露関係はその場しのぎではなく長久の策だ。来年は中露国交樹立から75年となる。中国はロシアとともに両国民の根本的利益を基礎とし、両国協力を絶えず充実させていきたい。
中国は、ロシアが国家主権、安全、発展の利益を守ることを支持する。中国は上海協力機構(SCO)や主要20か国・地域(G20)などの枠組みでロシアとの協力を強め、中露両国や発展途上国の共通する利益を守りたい。
   プーチン大統領
一帯一路フォーラムの成功を祝福する。習氏が10年前に提唱した一帯一路は大きな成功を収め、世界が認める重要な国際公共物となった。私は開幕式での習氏の基調演説を高く評価し、習氏の将来展望と見識を称賛する。
ロシアは新興5か国(BRICS)のような多国間の枠組みで中国と密接に協力し、国際法に基づく国際体制を守り、より公正で合理的なグローバル・ガバナンスの形成を推進していきたい。
台湾は、中国の不可分の領土の一部だ。ロシアは「一つの中国」原則や、中国の国家主権と領土保全を断固として支持する。来年の国交樹立75年を契機に、両国の協力関係をさらに発展させていきたい。
●ロシア外相が訪朝、ウクライナでの戦争支持に謝意表明 10/19
北朝鮮を訪問したロシアのラブロフ外相は、ウクライナでの「特別軍事作戦」に対する北朝鮮の支持に謝意を表明し、金正恩朝鮮労働党総書記への「完全な支持と連帯」を約束した。ロシア外務省が発表した。
ラブロフ氏は18日に平壌に到着。同日に開かれた歓迎会で同氏は、ウクライナでの戦争に対する北朝鮮の「信念に基づく揺るぎない支持」を「心から」評価すると述べた。
「同様に、北朝鮮が選んだ発展の道において、ロシアは北朝鮮の願望に完全な支持と連帯を示す」と強調。演説原稿がロシア外務省のウェブサイトで公開された。
北朝鮮の国営メディアは、ラブロフ氏の訪問は両国関係をさらに強固なものにする「重要な機会」になると伝えた。
ラブロフ氏は、今回の訪朝が9月のプーチン大統領と金総書記の会談での合意事項を確認し、具体的な履行の手順をまとめる「重要な機会」になるとの見方を示した。
ロシアのタス通信は先に、ラブロフ氏がプーチン大統領の訪中の結果について北朝鮮側に説明する可能性もあると伝えた。
●ロシア下院 CTBT批准撤回を可決 10/19
ロシア下院が、すべての空間で核実験を禁じるCTBT(包括的核実験禁止条約)の批准撤回を可決した。
ロシア下院は18日、CTBTの批准撤回を審議し、全会一致で可決した。
ボロジン議長は本会議場で、「われわれの決定は、世界の安全保障を維持する義務に対して奔放な態度をとるアメリカへの返答となるだろう」と述べた。
CTBTは宇宙空間、大気圏内、水中、地下といったあらゆる空間での核実験を禁止している。
批准撤回をめぐっては、プーチン大統領が10月5日、ロシア南部ソチで開かれた国際討論フォーラムで、「批准していないアメリカのようにロシアが動くことは可能だ」とアメリカは無責任だと批判したうえで、対抗措置をとることを示唆していた。
CTBTの批准の撤回は、25日に上院で審議され可決される見通しで、プーチン大統領の署名を持って成立する。
今後、ロシアが核実験を再開するおそれがある。
●ウクライナ「ATACMS」でロシア軍を攻撃か ロシアは欧米けん制 10/19
ウクライナ軍はアメリカから新たに供与された射程の長い地対地ミサイルATACMSを使用し、ロシアが占拠する飛行場などを攻撃したとみられています。これに対しロシア側はプーチン大統領が、ウクライナへの侵攻作戦には影響はないと主張するなどして、欧米側をけん制しています。
領土奪還を目指すウクライナはアメリカから射程の長い地対地ミサイルATACMSの供与を受け、ロシア軍が占領している南部ザポリージャ州のベルジャンシクと東部ルハンシク州のルハンシクの飛行場で攻撃を行い、ヘリコプターや弾薬庫などを破壊したとみられています。
アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは17日、欧米側の当局者の話としてアメリカが今回供与したATACMSは、およそ20発だったとしています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は「作戦上重要なロシアの飛行場を攻撃したことで、ロシア側は航空戦力を分散させ、一部は撤退させることになるだろう。後方地域にあるロシアの弾薬庫にも重大な脅威をもたらしている」と指摘し、今後のロシア軍の作戦に影響を及ぼす可能性があるという見方を示しています。
これに対し、中国を訪問していたロシアのプーチン大統領は「この攻撃を撃退できる。これによって戦況が劇的に変わることはまったくない」と述べ、ウクライナの戦況に影響はないと主張しました。
また、ロシアのショイグ国防相は17日、首都モスクワでベラルーシのフレニン国防相と会議を開き「両国の国境近くでNATO=北大西洋条約機構が敵対的な行動を行い情勢が悪化している」と主張し、同盟関係にあるベラルーシとの連携を強調し、欧米側をけん制しました。
●国連安保理で停戦決議案 米が拒否権行使し否決 10/19
アメリカのバイデン大統領は18日、イスラム組織ハマスとの戦闘が続くイスラエルで演説し、拘束されたすべての人質の解放に強い決意を示した。
こうした中、国連の安全保障理事会で、イスラエルとハマスに「停戦」を求める決議案がアメリカの拒否権行使で否決された。
安保理事会は18日、ガザ地区での人道支援のためにイスラエルとハマスに「停戦」を求めるブラジルの決議案を採決した。
その結果、日本やフランスを含む12の理事国が賛成したが、アメリカが拒否権を行使して否決された。
ロシアとイギリスは棄権している。
アメリカの国連大使は、「イスラエルの自衛権について言及されていない」と反対の理由を説明した。
また、「ハマスが自らガザの深刻な人道危機を招いた」とあらためて非難した。
●バイデン氏 全人質解放に強い決意 ガザなどに1億ドルの人道支援表明 10/19
アメリカのバイデン大統領は18日、イスラム組織ハマスとの戦闘が続くイスラエルで演説し、拘束されたすべての人質の解放に強い決意を示した。
アメリカ・バイデン大統領「米大統領として、人質全員の解放と安全な帰還、これ以上の優先順位はないと断言する」
バイデン氏は演説の中で、「いかなる勢力もイスラエルに新たな攻撃を加えてはならない」とあらためて警告した。
深刻化するガザ地区の人道危機に関しては、1億ドル、およそ150億円の人道支援を行うと表明したほか、現在は封鎖されているエジプト側の検問所についても支援物資の搬入ができるようイスラエルと合意した。
こうした中、現在、ガザ地区南部に避難している国境なき医師団の白根麻衣子さんがインタビューに応じ、「爆撃やミサイルは常に隣り合わせで逃げる場所がない」と語った。
国境なき医師団・白根麻衣子さん「移動しろと言われても、封鎖された空間で逃げる場所がない、人道危機的な状況。12日間見てきたものは非常に衝撃的な規模の暴力。今一番被害を受けているのは一般市民。子どもや女性」
白根さんは、「医療施設に対する攻撃をいち早くとめてほしい」と訴えた。
●米支援案、ウクライナ600億ドル・イスラエル100億ドル=関係筋 10/19
バイデン米政権はウクライナに対する600億ドルの追加支援とイスラエルへの100億ドルの支援を検討しており、20日にも米議会に追加予算の承認を要請する見通し。事情に詳しい関係筋が18日に明らかにした。
バイデン大統領はイスラエル、ウクライナ、台湾の防衛支援やメキシコとの国境管理強化のための支出を含む約1000億ドルの追加予算の承認を議会に要請する方向で検討していると、関係筋が17日明らかにしていた。
上院外交委員会の共和党トップ、ジム・リッシュ議員は、報道以外では1000億ドルという数字は承知していないが、政権がイスラエルに100億ドルの支援を検討していることは聞いていると記者会見で述べた。
複数の関係筋は、バイデン氏が最終的な数字をまだ決定しておらず、議会に追加予算の内訳は伝達されていないと述べた。
●イスラエル・ハマス紛争の波及リスク「非常に現実的」=国連特使 10/19
国連で中東和平を担当するウェネスランド特使は18日、安全保障理事会で、イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの紛争が拡大するリスクは「非常に現実的で、極めて危険」と警告した。
ドーハからのビデオ演説で「中東全体とまではいかなくても、イスラエルとパレスチナの紛争の軌道を変えかねない、深く危険な深淵の瀬戸際にいることを恐れている」と述べた。
●ウクライナ、ロシアの攻撃で民間人10人死亡 南部反攻で前進 10/19
ウクライナ当局によると、17日夜から18日にかけてロシア軍が南部ザポロジエ市の集合住宅などを攻撃し、少なくとも民間人10人が死亡した。ウクライナ軍幹部らはまた、南部の反転攻勢で一定の進展があったと明らかにした。
当局によると、ザポロジエ市の集合住宅が深刻な損傷を受けたほか、中部ドニエプロペトロフスク州の村落も攻撃を受けて31歳の女性が死亡、住宅約20戸が損傷した。南部ヘルソン州では夜間の攻撃で2人が死亡した。
南部ミコライウ市の近くにある食料品店にもロシア軍のミサイルが着弾し、内務省によると、がれきに埋もれていた2人が救出された。
ゼレンスキー大統領は通信アプリ「テレグラム」に「邪悪な国家がテロ行為を続け、市民に戦争を仕掛けている。ロシアのテロを打ち破らなければならない」と投稿した。
一方、南部で反攻作戦を指揮するタルナフスキー司令官は、アゾフ海に向けて計画通りに部隊が前進していると表明。戦略的に重要なザポロジエ州ロボティネの南で「部分的な成功を収めた」とテレグラムに投稿した。
●なぜアフリカの国々は「プーチン支持」なのか… 政権維持 10/19
アフリカの「巨大利権」はプーチンに引き継がれる
ロシアの傭兵集団「ワグネル」を率いたエフゲニー・プリゴジン氏の死後も、ワグネルとロシアがアフリカを牛耳る構図には大きな変化がないのかもしれない。
海外各紙は中央アフリカなどで傭兵ビジネスを展開し、金鉱など天然資源の利権を牛耳るワグネルの事業をプーチン大統領が整理・引き継ぎを図っていると報じている。
ワグネルはこれまで、アフリカ、特に中央アフリカ共和国(CAR)で政府を対象とした警護サービスや武器の提供ほか、独自ブランドのアルコール販売などを通じ、ロシアのイメージ向上策を展開してきた。
米公共放送のPBSはこうした警護サービスについて、「ワグネルの帝国は広大であり、特にアフリカではロシアの影響力を広め、不安定さを助長するために、およそ12カ国に約5000人を派遣した」とする専門家による分析を報じている。
その結果、アフリカ諸国には、ワグネルやロシアに恩義を感じている政府が少なくない。こうした政府は、ワグネルの戦闘員がアフリカ現地で繰り広げている略奪や人権侵害からは目を背け、国を守る英雄として扱っている。
アフリカの国々が「親ロシア」になった理由
ロシアがアフリカへの影響力を強めることで、国際政治のバランスにも影響を及ぼしかねない。国際協力機構(JICA)の坂根宏治・スーダン事務所長は、笹川平和財団が発信する国際情報ネットワーク分析IINAに寄稿し、ロシアによる国連への影響力増大に懸念を示している。
昨年3月3日に開かれた国連総会の緊急特別会合で、ロシアを非難し、軍の即時撤退などを求める決議が賛成多数(賛成141カ国)で採択された。アフリカ諸国は54カ国中、8カ国が欠席、17カ国が棄権し、1カ国が反対票を投じた。こうした動向に、坂根事務局長は「ロシアによるアフリカ諸国の軍事セクターへの関与とは無関係ではない」と指摘する。
アフリカではクーデターや軍部による騒乱が次々と発生している。2021年1月から2022年2月までに9件のクーデターなどが発生し、このうちマリ、チャド、ギニア、スーダン、ブルキナ・ファソの5件が「成功」している。2000年以降では最も高い発生件数に達しており、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、相次ぐ不測の事態が「クーデターの流行」にあたると述べ危機感を表明した。
ロシアの関与は、現地情勢を不安定化させているだけではない。国連に加盟するアフリカ54カ国は、全加盟国193カ国の3割近くを占める。文化的・軍事的影響を通じて親ロシア派の国家を増加させることで、国連決議にさえ影響与えかねない事態を招いている。
欧米と一線を画し、現地政府の支持を得てきた
なぜロシアは、アフリカと関係を築くことができたのか。欧米諸国による支援とは異なるアプローチが、大きな要因として挙げられている。
ヨーロッパのオンラインメディアであるユーロ・ニュースは、ワグネルがロシアの利益を助長するために活動しており、結果としてアフリカ全土でロシアの影響力が増していると指摘している。
欧米諸国であれば支援を提示する際、引き換えに、現地の人権問題の改善を要求するのが通例だ。一方でロシアは、見返りさえ確保されれば現地の政治事情には口出ししない。
フランスの独立系地政学シンクタンク「イースタン・サークルズ」は、ユーロ・ニュースに対し、「若者たちのダイナミズムを支持し、『あなたたちの行動を支持しますし、人権侵害があっても裁きません』と言っていることが(ロシアの)特色なのです」と語る。
ロシアは西側と異なるスタンスをとり、これによってワグネルが現地に巧妙に入り込んでいるのだという。武器供給のほか、政情不安が続く強権国家にとってワグネルは治安維持の頼れるパートナーになったからだ。
強権政府を守るために、人々の生活を破壊してきた
だが、ワグネルは治安維持の英雄などではない。現地男性がCBSニュースに語った証言は、ワグネルがアフリカの一市民の生活を破壊したケースを克明に物語る。
ウスマンという仮名で取材に応じた中央アフリカのこの男性は、かつて家族で金の取引業を営んでいた。「とても裕福でした」とウスマン氏は振り返る。「家族全員の教育費を賄い、いい暮らしをしました。何も不自由はありませんでした」
2021年、家族が住む町にワグネルが進出したことで、状況は一変した。ウスマン氏の弟は殺害され、姉たちは強姦(ごうかん)され、そして金取引のビジネスはロシア人によって奪われたという。ウスマン氏自身は、ワグネルの基地にある仮設の監獄に連行された。何日にもわたる間拷問を受けたあと、やっとのことで脱出したという。
繰り返された虐殺、処刑、レイプ…
肩を震わせ、泣き崩れながらウスマン氏は語る。「やつらが私の国にしたこと、私の両親の目の前でしたこと……男として役立たずだと感じました」「やつらは私たちの財産を盗み、家を焼き払ったのです」。一度、盗まれたバイクにまだウスマン氏の名前が書かれているままの状態で、ワグネルの兵士が乗り回しているのを見たこともあるという。
ウスマン氏は、ワグネルが治安維持に貢献しているとの見方に真っ向から反抗する。「ワグネルは国を守るためにここにいるのではありません」「誰が言ったか知らないが、そんなことは大嘘だ!」
CBSは「ワグネルはあらゆるところに目を光らせているのだ」と述べ、取材に応じたウスマン氏が完全に怯えきっていたと伝えている。ウスマン氏は「仮名を使い、身元を隠し、隣国カメルーンで会うという途方もないことを条件に」して、ようやく記者の前に姿を現したほどだったという。
ウスマン氏の事例は、中央アフリカで起きている悲惨な殺害・略奪のほんの一例だ。CBSは、ワグネルによる民間人の虐殺、処刑、レイプの事例を複数確認していると指摘する。
利権を脅かす存在を徹底的に排除する
事業の邪魔になる存在は、何であれ徹底的に叩き潰す。それがワグネルの手口だ。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、今年3月のある晩、中央アフリカで防犯カメラに捉えられたショッキングな一幕を報じている。
フランスの大手飲料会社・カステル社が現地で運営するビール醸造工場に夜間、ワグネルの集団が近づき、柵越しに火炎瓶を投げ込み火災を発生させた。商品のビールに引火し、出荷前の在庫の大部分が焼失した。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、この攻撃はロシアのワグネル・グループによるものであり、アフリカにおけるロシア対西側諸国の影響力争いが表面化した一例だと報じている。
ワグネルは1990年代から中央アフリカ共和国で製造されているカステル社のMOCAFビールに対抗する商品を製造するため、首都北部のバンギに新たなビール醸造所を設立した。新たなロシア製のビールブランド「アフリカ・ティ・ロール」として急速にシェアを拡大している。
軍事的支配だけでなく、このように商品や教育を通じたソフトパワーでも支配を強めているのが、ワグネルのアフリカ支配の実態だ。
ダミー会社で偽装…「ワグネル帝国」の全容解明は難しい
こうした事業のうち、ワグネルが関与を公にしているものはごく一部にすぎない。プリゴジン氏は多岐にわたる方法で、自身の行動やビジネスの実態を隠蔽(いんぺい)していた。偽装工作やペーパーカンパニーの導入、そして移動手段の隠蔽などを通じ活動を秘匿化していたと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。
商売の実態を掴まれにくくするため、手の込んだ手法を多用していた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「プリゴジンの取引の多くは、厳重に管理された多数のダミー会社によって覆い隠されていた」と指摘する。この措置はワグネルに有利に働くのみならず、ロシアが影響力を隠蔽する目的も兼ねていたようだ。
記事は、「ワグネル・グループがロシアの影響力を増大させ、アフリカで親欧米政権に対する抗議を扇動し、制裁の回避を助け、クレムリンが(アフリカへの直接的な介入を)否認できるようにするための曇りガラスのようなものだった」と論じる。
同紙によると、商売の実態を不明瞭にするためにプリゴジン氏は、「いくつかの巧妙な手段」を用いていた。まず、取引の多くは、厳重な管理を受けたペーパーカンパニーを経由して行われた。
見返りは現金払い、天然資源の利権で荒稼ぎ
また、協力者に対して常用された手段として、多くの労働者や傭兵から、料理人や学者に至るまで、報酬は好んで現金払いとした。政府から直接現金を受け取るため、自身のプライベートジェットで出向くことさえ厭(いと)わなかったという。
米超党派組織の外交問題評議会は、「ワグネルのサービスは、反政府勢力や政権を含むクライアントのニーズによって異なり、その資金源は直接支払いから資源の利権まで多岐にわたる」と指摘する。
たとえば2018年、中央アフリカのフォースタン=アルシャンジュ・トゥアデラ大統領政府を防衛するべく、ワグネルの兵士約1000人が中央アフリカ入りした。ワグネルの子会社は見返りとして、制限のない森林伐採権と、高い利益を出しているンダシマ金鉱の管理権を得た。また、2017年以降のスーダンでは、スーダン軍の訓練などの見返りとして、金の輸出を受けている。
こうして、送金記録による把握が難しい手段で見返りを受ける手法を常用していた。
無関係に見える金鉱も木材輸出も、すべてワグネルにつながっている
ダミー会社もプリゴジン氏お得意の手法だ。CBSニュースは、ワグネルとプリゴジン氏が暴力、偽情報、そして煙幕の役割を果たす「ペーパーカンパニーの銀河系」を駆使し、取引を隠蔽していたと報じている。
記事によれば、プリゴジン氏は中央アフリカの鉱物資源を支配し、それがワグネルの活動の財源になっていた。独立系情報会社のグレイ・ダイナミクスはCBSに対し、中央アフリカのンダシマ金鉱はワグネルの25年間の採掘権の下で運営されていると指摘する。だが、金鉱はプリゴジン氏が関与するペーパーカンパニーである、ミダス・リソースの名の下で運営されている。
さらに、採掘した金をロシア首都へと直接運び出す際にも隠蔽工作が施された。ワグネルは飛行機のトランスポンダーをオフにし、レーダー上での識別を困難にした。こうして税関の規制が緩いアラブ首長国連邦に降り立ち、貨物を積み替えていたという。
ダミー会社で西側諸国からの制裁を逃れる
さらにCBSの取材により、木材の輸出に関してもダミー会社が用いられていることが明らかになった。伐採権を持つワグネル企業のボイス・ルージュ社は、表向きには木材を中央アフリカ国外に輸出していない。CBSが追跡した木材は書面上、カメルーンからウッド・インターナショナル・グループと称する企業が輸出したことになっている。
だが、調査の結果、ボイス・ルージュ社とウッド・インターナショナル・グループの登記上の住所は同一であり、許認可番号も同一のものを使用していることが発覚した。「調査を逃れるため、フロント企業の名前を変える。これもまたプリゴジンの裏技だ」と記事は指摘する。
CBSニュースは、プリゴジン氏とワグネルが多数の架空企業に関与しており、これらはクレムリンの戦略の一部だと論じている。ワグネルはアフリカ大陸で同盟の輪を広げつつ、天然資源をほしいままにし、西側諸国の厳格な制裁から逃れる新しい方法を模索している――との指摘だ。
ウクライナ戦争の資金源になっているとの指摘も
ワグネルの活動はウクライナ戦争の資金源になっているおそれがある。米CBSニュースは、ロシアがウクライナへの本格的な侵攻を開始して以来、最も血なまぐさい戦闘の多くは東部バクムート周辺で起きていると指摘。こうした戦闘員の多くはロシア兵ではなく、ワグネルから報酬を得ている傭兵だと述べている。
ワグネルが大量の傭兵を雇うには、相応の資金が必要だ。CBSニュースは独自に追跡調査を行ったうえで、ワグネルが中央アフリカの政府に味方し、見返りとして現地の金鉱の利権や木材伐採の許可などを取り付けていると報道。また、ワグネルは戦闘員をアフリカに派遣し、現地政府に対する騒乱の抑制をビジネスとして請け負うことで、ウクライナ戦争での「活動資金の大部分を賄っている」と記事は分析している。
「アフリカの巨大利権」はプリゴジンからプーチンへ
プリゴジン氏の死後、ロシアの影響力はどう変化するだろうか。米CNNは「モスクワが放ちたいメッセージは、『平常通りである』ということのようだ」と指摘。アフリカにおけるワグネルの活動をロシアが引き継ぎ、中央集権化すべく整理が進められていると報じている。初期からの取引相手国のひとつ、中央アフリカでは、ロシア政府が戦闘員との契約を更新し、主要都市に集約することで運用コストを軽減するよう、再編活動を積極的に進めているという。
米ワシントン・ポスト紙も、中央アフリカ共和国の当局者による情報として、現地にいる1000人以上の傭兵をロシア政府が直接管理する体制に移行しつつあると報じている。
さらにプリゴジン氏の死後、ロシアのユヌス=ベク・エフクロフ国防次官と、軍参謀本部情報総局(GRU)で秘密作戦部門を統括するアンドレイ・アベリャノフ氏は、そろってアフリカ諸国を訪問している。ある西側政府当局者はワシントン・ポスト紙に対し、訪問の主な目的は、「プリゴジンの広大な帝国は、いまや政府の管理下にある」とのメッセージを発信することだろうとの観測を示した。
プリゴジンの代わりはいくらでもいる
米公共放送のPBSも、ロシアの支配力は残るとの見方を取り上げている。現在のワグネルはより小規模な組織に分割されるが、引き続きロシア政府の下に置かれるという。
同局の報道番組「PBSニュースアワー」に出演した外交・防衛特派員のニック・シフリン氏は、「プーチン大統領はワグネル帝国を解体し、明らかに首を切り落としたようだ」と最新の話題に触れている。
続けて、「プリゴジンは自らを、人気者であり、必要不可欠な存在だと考えていた。そして、ウクライナであろうとアフリカであろうと、彼は個性と残忍さによってワグネルの多様な活動をまとめあげてきた」と、存在感あるプリゴジン氏を振り返る。だがその上で、「プーチン率いるロシアでは、ボス(プーチン氏)以外、誰一人として不可欠な存在ではない」と指摘。プリゴジン氏の代わりはいくらでもいるとの見方を示した。
共演した米シンクタンクのブルッキングス研究所のヴァンダ・フェルバブ=ブラウン氏も、アフリカ各国の政府はロシア依存から脱却できないとの見解を示した。ワグネルの今後についてブラウン氏は、ロシアはアフリカにおけるワグネル帝国を解体した方が管理しやすくなると指摘した。
ブラウン氏によると、複数の会社や人物に置き換えられる可能性が高いという。実際、例えばシリアでは、ワグネル部隊がロシア軍に編入され、ワグネルの指揮官がロシア軍の指揮官と交代しているという。ワグネルには政府への警護サービスから誤情報の流布までを一括して行う「スーパーマーケット」としての利点があったが、プーチン氏としては二度とこのような帝国の存在を許したくないだろう、とブラウン氏は語る。
ワグネル依存を止められない中央アフリカ
中央アフリカでは、ワグネルとの関係は続きそうだ。現地ではワグネルへの依存が強く、にわかに関係から抜け出せない現状がある。中央アフリカ共和国のトゥアデラ大統領は、ロシアへの感謝を明確に表明している。ワシントン・ポスト紙は親ワグネル色が濃い理由として、内政不安の解消にロシアが貢献したことを挙げている。
トゥアデラ大統領は同紙のインタビューに応じ、2016年に大統領に就任した際、全土の90%が反乱軍に支配されていたと振り返る。政府は首都防衛のための兵器を必要としていたが、過去2013年に反乱軍が政府を転覆したことを受けて国連が禁輸措置を敷いており、入手が困難であったという。そこへ「親切にも援助を申し出た」のがロシアだ。
トゥアデラ大統領は「フランスやアメリカではなく、ロシアが『親切に』援助を申し出た」と強調する。2018年には、ロシアから指導者たちが兵器の使用方法を教育するために送り込まれ、のちにそれがワグネルであることが明らかになった。2020年に反乱軍が政府転覆をもくろんだ際は、さらに多くの兵員がワグネルから派遣された。こうした事情を経て、現在でも政府関係者たちは、ワグネルの戦闘員によって首都バンギが救われたと捉えているのだという。
大統領顧問のTシャツには「私はワグネルだ」の文字
中央アフリカとワグネルの蜜月は続く。中央アフリカのフィデル・ゴンジカ大統領上級顧問は、ワグネルとの今後の関係を訊ねるCNNのインタビューに、「私はワグネルだ」と書かれたTシャツを着て臨んだ。ワグネルがPR用に配布しているものだ。
プリゴジン氏の訃報を耳にしたゴンジカ氏は、「悲しみ、私たちは泣いた。中央アフリカのすべての人々が泣きました」という。紛争が絶えない同国において反乱軍から身を護ってくれたワグネルに、感謝が尽きないとゴンジカ氏は語る。
CNNの記者が「アメリカは中央アフリカ共和国に、どの国よりも多くの人道支援を行っていますよね」と水を向けると、ゴンジカ氏は「しかし、それはまた別のことです」と応じた。「彼ら(アメリカ)はわれわれに食料を与え、ロシアは平和を与える。われわれは食料よりも平和を愛しているのです」
ゴンジカ氏はまた、「よく聞いてください。貧乏人に選択肢はないのです」とも語る。
「フランスに助けてもらいたかった。アメリカに助けてもらいたかった。彼らに頼んだが、助けることに同意したのはロシアだった。だから結局のところ、こうしてロシアにすがっているのです」
トップのプリゴジン氏が死亡したあとも、ロシアに頼らざるを得ない実情は変わらないだろう、とゴンジカ氏は語った。
「ワグネル帝国」の解体を狙うプーチンの意図
政情不安が続くアフリカの強権国家の指導者は、人権問題への対応を先送りしてでも、自身の政府を守ろうとする意識が強く働く。こうした国々に、ワグネルは武器や防衛サービスの提供を通じて影響力を拡大してきた。ビールやウォッカなどの販売など民間ビジネスも提供し、文化面でも親ロシア派の市民を育みつつある。
このような活動はワグネルにとって資金源となっているだけなく、国連総会で54票を持つアフリカ諸国を票田と化す作用を生み、ロシアにとって有利に働いてきた。西欧諸国がロシアに制裁を強めるなかで、海外から支持を取り付ける抜け道として機能している。
プリゴジン氏の死後、ワグネルの存在を危険視するプーチン氏は、企業の部分的解体と影響力の抑制を図るだろう。それでもアフリカ諸国がロシア依存から脱却できない以上、ロシアの影響力は依然残るものとみられる。
米シンクタンクのカウンシル・オン・フォーリン・リレーションズは、ワグネルがアフリカに関与した結果、人権侵害が疑われ、当該地域の治安が悪化したケースが多数あると実例を挙げている。2019年のリビアではワグネルが民間人地域に地雷を仕掛けたとされたほか、最近リークされた情報によるとチャドではワグネルが反政府勢力に加勢し、暫定大統領の追放を試みているという。
傍若無人に振る舞うロシアとワグネル戦闘員
欧米の支援を受けるには人権問題への対応が必須となるが、ワグネルやロシアはその条件を設けていない。結果としてアフリカ諸国は容易に支援を求めることができるが、その結果待っているのは、傍若無人に振る舞うロシアとワグネル戦闘員による支配と、国内の人権問題のいっそうの深刻化だ。
プリゴジン氏の死を受け、プーチン氏は強大で複雑に入り組んだワグネル帝国を解体し、ロシア政府による直轄化に動くとみられる。アフリカの資源を牛耳るだけでなく、国連総会での票をロシアの意のままに操る動きでもあり、国際社会への挑戦とも言えよう。プリゴジン氏の死後も続くロシアの暴虐が懸念される。
●欧州委員長のイスラエル訪問が波紋 EUの足並みに乱れ 10/19
イスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスによる軍事衝突を受け、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長がEU内で調整せずイスラエルを訪問したことが「職権逸脱」(欧州メディア)と波紋を広げている。EUは17日、テレビ会議形式で臨時首脳会議を開催し、認識の擦り合わせを図った。
フォンデアライエン氏が急きょイスラエル入りしたのは13日。ネタニヤフ首相を前に「イスラエルには自衛権がある」と全面的な支持を表明した。EUは10日の緊急外相会議で、自衛権を容認しつつも「国際人道法の順守」を求めることで一致していた。
訪問を受け、ボレル外交安全保障上級代表(外相)は「EU外交は政府間(で決める)政策だ」と強調。フォンデアライエン氏のスタンドプレーに、珍しくくぎを刺した。
EUのミシェル大統領は、軍事衝突の影響で社会的対立が深まっていることから「EU首脳の強固な結束」が必要だとして、17日に臨時首脳会議を開催した。欧州メディアによれば、会議では一部首脳がイスラエル訪問を支持したが、大半の加盟国はフォンデアライエン氏の発言に関して事前調整がなかったことに不満を示したという。
また、ロシアのプーチン大統領と北京で会談したハンガリーのオルバン首相は臨時首脳会議を欠席。結束の難しさが露呈した形となった。
ロシアのウクライナ侵攻が長期化する中、EU内では東欧を中心に「支援疲れ」も目立つ。ウクライナ問題に加え、パレスチナ情勢にどう向き合うのかを巡り、EUの結束は正念場を迎えている。
●南部にロシア攻撃、5人死亡 住宅破壊、東部でも 10/19
ウクライナ南部ザポロジエ州の当局者は18日、未明にあったロシア軍による州都ザポロジエへの攻撃で5人が死亡したと発表した。集合住宅が破壊され、遺体が見つかった。クリメンコ内相によると、東部ドニエプロペトロフスク州の村にも攻撃があり、1人が死亡した。
ロシア国防省は18日、2014年に併合したウクライナ南部クリミア半島にウクライナ軍による2発のミサイル攻撃があり、迎撃したと発表した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は18日、フランスのマクロン大統領と電話会談した。フランス大統領府によると、マクロン氏は中東情勢が緊迫しても「ウクライナ支援は必要な限り続く」と述べた。
●プーチン大統領、病院爆発は「恐ろしい出来事」 中露首脳会談 10/19
中国の習近平国家主席と会談したロシアのプーチン大統領は、パレスチナ自治区ガザ地区での病院での爆発を「恐ろしい出来事」と述べるとともに、停戦仲介に前向きな姿勢をアピールしました。
中国メディアによりますと、会談で習主席は「ロシアとの友好は一時的なものではなく長期的なものだ」と述べ、長期化が予想されるアメリカとの対立を念頭に連携強化を呼びかけました。また、「ロシアの国家主権や安全、発展の利益を守ることを支持する」と述べ、ウクライナ侵攻で孤立が続くロシアに寄り添う姿勢を鮮明にしました。
一方、会談後に記者会見したプーチン大統領は、「中東情勢についても詳しく話し合った」と明らかにしました。
プーチン大統領「(ガザ地区の病院への爆発は)恐ろしい出来事だ。数百人が死亡し、数百人が負傷した。これは惨事だ。この被害が紛争を早く終わらせるきっかけとなることを願っている」
会見でプーチン大統領はこのように述べ、厳しく非難しました。ウクライナ侵攻をめぐり孤立を深めてきたプーチン大統領としては、仲介姿勢をアピールすることで国際社会への復帰を目指す狙いがあるとみられます。 
●20日にも検問所開通し物資搬入か ガザ地区人道状況悪化 10/19
人道状況が悪化しているパレスチナ自治区・ガザだが、早ければ20日にも現地に支援物資が届く可能性がある。
ガザ地区では、イスラエルからの水や食料などの供給が止められ、急速に人道状況が悪化している。
イスラエルは18日、エジプトとガザ地区の境にあるラファ検問所からの支援物資の搬入を認める方針を示した。
現在は空爆で損壊した道路の修復がまだ続いているとの報道もあるが、検問所は早ければ20日にも開かれ、支援物資の搬入が始まる可能性がある。
一方で、物資はトラック20台分に制限されているほか、イスラム組織ハマスに横取りされるおそれもあり、事態改善につながるかは不透明。
またエジプトとヨルダンは声明を出し、安全保障上の観点から、ガザ地区にいるパレスチナ人を自国の領土に受け入れないとの方針を示した。
こうした中、イギリスのスナク首相はイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相と会談を行い、ハマスを「市民を危険にさらすテロリストだ」と厳しく非難するとともに、人道危機に対応するために支援を行う考えを明らかにした。
また、テルアビブの空港では自衛隊機で退避するため、イスラエルに住む日本人とその家族60人余りと、韓国人およそ20人が搭乗の受付などを行っている。
退避する日本人「非常にありがたいと思います。国の強いメッセージだと思います」、「毎日のようにミサイルが飛んでくるので精神状態も限界がきた。複雑です。イスラエルがすごく恋しいし、主人をここに残していかなければいけないので、心が張り裂けそうな思いでいます」
自衛隊機は、このあと経由地を経て羽田空港に向かう。
●露大統領演説で伊大使離席 侵攻に抗議、一帯一路会議 10/19
中国北京市で18日に開かれた巨大経済圏構想「一帯一路」の国際会議でロシアのプーチン大統領が演説を始めた際、イタリアのアンブロセッティ駐中国大使がウクライナ侵攻への抗議の意思を示すため離席し、会場を後にしたとイタリアメディアが19日までに報じた。
外交筋によると、先進7カ国(G7)で唯一、一帯一路に参加するイタリアは中国政府から国際会議への招待を受けたが代表団の派遣を見送り、習近平国家主席らが演説する行事にだけ大使が出席した。プーチン氏は習氏に続いて演説した。
イタリアは代表団派遣を見送ったことで、一帯一路を離脱する意向を固めたとの見方が強まっている。
欧州では中国がウクライナに侵攻したプーチン氏を招いたことに反発が広がり、国際会議への招待を受けた国が相次いで代表団派遣を拒否した。ハンガリーとセルビアは首脳級が会議のため訪中した。
●タイ首相、中ロと積極連携 実利優先で多角化外交 10/19
タイのセター首相は19日、訪問先の中国・北京で習近平国家主席と会談した。タイ政府が明らかにした。17、18両日に開かれた中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の国際会議にも出席し、協力して発展を目指すと表明。ロシアのプーチン大統領とも会談し、ロシア人観光客の滞在期間延長を提案した。9月の就任後初の中ロとの会談で、実利優先の積極姿勢で接近した。
タクシン元首相派「タイ貢献党」のセター氏は実業家出身で、経済政策を重視。中国の建設会社や自動車メーカー幹部とも面会し、タイへの投資を促した。習氏との会談では電気自動車(EV)や半導体の分野での協力強化で一致。タイ公式訪問も呼びかけた。
プーチン氏との会談でもタイ訪問を招請。実現性は不明だが、タクシン氏と親交のあるプーチン氏はタイ語で「ありがとう」と返答したという。
ウクライナ侵攻を受けて欧州各国などがロシア人の入国を制限する中、セター氏はロシア人観光客のビザ(査証)なしでの滞在期間を30日から90日に延長するとも伝えた。セター氏は政権の正式発足直前にロシア人に人気の南部のリゾート地、プーケットを視察しており、タイ経済の柱の観光業活性化に注力する。
一方でタイは米国と同盟関係にある。就任直後にはニューヨークを訪れ、テスラやグーグルなどの企業幹部と相次いで面会。セター氏は米メディアに「ビジネスに関しては米中どちらにもオープンだ」と語った。国家の「最高経営責任者(CEO)」を自称してタイ経済を成長させたタクシン氏をほうふつとさせる経済重視路線で、タイの伝統的な多角的外交を継続する姿勢を鮮明にしている。
●ロシア、ガザに27トンの人道支援物資提供 非常事態省 10/19
ロシア非常事態省は19日、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)の民間人を支援するため、27トン分の人道支援物資を送ったと発表した。エジプト経由で輸送されるという。
同省によると、首都モスクワ近郊の空港から、特別機がエジプトのアリーシュ(El-Arish)に向けて飛び立った。
送られた物資は「小麦、砂糖、米、パスタ」などで、「エジプトの赤新月社(Red Crescent)に引き渡され、ガザ地区に送られる」予定だという。
前日18日には米国のジョー・バイデン(Joe Biden)大統領も、エジプトがガザ地区ラファ(Rafah)との境界にある検問所を開き、トラック20台分の人道支援物資を通過させることに合意したと明らかにしていた。
●海兵隊ドニエプル渡河か ロ軍無人機とミサイル攻撃 10/19
米シンクタンク、戦争研究所は18日、ウクライナの海兵隊が南部ヘルソン州でドニエプル川を渡河し、東岸に上陸した可能性があるとの見方を示した。ただ現時点で本格的な足場は築いていないと指摘、ロシアの軍事専門家はウクライナ側が今後、大規模な作戦を行う可能性を警告している。
ウクライナ軍は19日、ロシア軍が18日夜から19日未明にかけ、イラン製無人機と弾道ミサイル「イスカンデル」などによる攻撃を行ったと発表した。東部や南部のインフラや軍事、民間施設が目標で、ウクライナ側は一部を迎撃した。南部ミコライウ州の知事は村の飲食店が被害を受け、2人が死亡したと明らかにした。
●ドイツ極右に中国との「癒着」発覚...中国の「脅しと賄賂」に屈してしまう理由 10/19
ドイツで急伸する極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に醜聞だ。今月、独メディア「ティー・オンライン」はAfD所属の欧州議会議員マクシミリアン・クラーと中国当局との癒着を報じた。
EU懐疑主義、反移民を掲げる同党は来年の欧州議会選で親中派として知られるクラーを筆頭候補に据えている。報道によると、クラーに「非常に近しい人々」が、中国から資金提供を受けていた。
また彼の側近はドイツ国内の中国反体制派グループと中国当局の双方とつながりがあり、前者の動きを後者に注進している疑いがあるという。クラーはこの報道を「事実無根だ」と否定しており、この一件が彼の強固な支持基盤に影響を与えることはなさそうだ。
ただ中国とつながるAfDの指導層はクラーだけではない。過去1年の間に、同党の政治家が数人、当局の招待で中国を訪れたことが分かっている。同党は中国・新疆ウイグル自治区での国家主導の残虐行為や、ウクライナ戦争での中国のロシア支援を受けて中国と距離を取るドイツ政府の姿勢に反対の立場だ。
専制国家への接近は、AfDだけでなくドイツの極左運動にも共通して見られる。しかし同党の親中化はそれよりも、中欧・東欧の極右全体に見られる明確なパターンをなぞっている。
欧州での「ばらまき」をいとわない中国
このパターンは欧州の各勢力に「ばらまき」をいとわない中国の姿勢と、中国の事実上の同盟国であるロシアと極右勢力が概して友好的であることの両方の帰結だ。アメリカやEUが中国と対決姿勢を強めているため、欧州諸国の反米・反EUの右派が中国に傾いていることも背景にある。
例えばハンガリーのオルバン首相や、セルビアのブチッチ大統領は親中傾向を隠さない。チェコではゼマン大統領(当時)が2015年、中国の政商、葉簡明(イエ・チエンミン)を経済顧問に任命したほどだった。
対照的に、西ヨーロッパの極右政党は中国に対して複雑な態度を取っている。フランスでは国民連合のマリーヌ・ルペン党首がインド太平洋における対中戦略を訴える。イタリアではメローニ首相が中国の「一帯一路」構想から離脱する方針を決めた。極右化が進むイギリスの保守党にも強力な反中派閥がある。
中国側からすると、中欧・東欧の極右勢力との協力はイデオロギーの親和性ではなく、便宜上の理由に基づいている。味方になりそうな各国の周縁的な勢力を見つけてはせっせと資金を注ぐことを繰り返しているだけだ。
中国にとっては大きなチャンス
とはいえ、ブレア元英首相からシュレーダー元独首相に至るまで、主流派政治家に対してさえも中国が「求愛」するのは以前から見られる光景ではあった。
大筋では、中国は他の大国との間で影響力拡大のゲームを競っているにすぎない。脅しや賄賂が中国の常套手段であることは確かだが、その他の手管はアメリカなどと同じ──政治家の自尊心をくすぐり、外国との取引の機会や、時には資金を提供する──だ。その違いは手段ではなく、中国の人権侵害に対する批判を封じるという目標にこそある。
AfDの台頭は、ハンガリーやセルビアのような小国よりもドイツを重視する中国にとって、大きなチャンスではあるだろう。
ただ本当に危険なのは、欧州のこうした周縁的な親中勢力ではなく、中道政党が権力を得るためそうした勢力と手を結ぶ意欲を強めていることかもしれない。

 

●ロシア、北極海航路で対中LNG販売の拡大狙う=ノバク副首相 10/20
ロシアのノバク副首相は19日、北極海航路(NSR)を経由した中国との貿易を拡大し、液化天然ガス(LNG)の最大供給国になることを望んでいると述べた。
NSRは、ノルウェーとの国境に近いムルマンスクから東方に伸び、アラスカに近いベーリング海峡まで続いている。
ロシア政府によると、プーチン大統領は今週、中国を訪問。ノバク氏は訪中団の一員で、現地で丁薛祥・筆頭副首相と会談した。中ロビジネスフォーラムでは演説を行った。
ノバク氏によると、ロシアは中国向けLNG供給で第4位。ノバク氏は、世界LNG市場で、カタール、米国、オーストラリアと競合しており、「進行中の複数のプロジェクトを踏まえると、ロシアは対中LNG供給において、主要かつ信頼できる供給国になる可能性がある」と演説した。
ノバク氏と丁薛祥氏は、NSR経由の両国間の貿易貨物量を、少なくとも約5000万トンに拡大する方法について協議した。
ロシアは昨年、NSRの拡張計画を承認。貨物取扱量は24年に8000万トン、30年に1億5000万トンに拡大する見通し。
●プーチン大統領「ロシア五輪出場禁止は民族差別」 IOC批判 10/20
ロシア選手がオリンピック(五輪)に出場できなくした国際オリンピック委員会(IOC)の決定を巡りプーチン大統領が「民族差別」と猛非難した。
プーチン大統領は19日(現地時間)、ロシア・ペルムで開かれたロシア−スポーツ強国体育フォーラムの演説でIOCに対して「民族差別の中断」を促した。
プーチン大統領は「ロシアは五輪参加が選手たちの無条件の権利ではなく一種の特権であることを知ることになった」とし「この特権はスポーツの結果ではなくスポーツと関連のない政治的行動から得ることができるということを学んだ」とした。続いて「政治と何の関連もない選手にとって五輪が政治的圧迫の手段になる場合がある」と皮肉った。
ロシア選手は昨年2月ロシアのウクライナ侵攻余波で1年以上にわたり国際大会に参加することができずにいる。一部の選手は他国の国家代表に合流して五輪出場を準備中だ。
IOCは今年3月ロシアとベラルーシの選手が個人資格として中立団体に編成されて来年のパリ夏季五輪に出場できるように道を開けた。しかし「ロシアとベラルーシの選手は個人資格でも五輪出場を禁じるべきではないか」という声が出てIOCは最終決定を先送りしている。
プーチン大統領は「取り消すことができない価値の一つがスポーツの持つ統合の力だ。しかしスポーツの真の原則である結束力と忠誠心が試されている」とし「選手は五輪出場剥奪で厳しい時期を送っている」と述べた。
13日、IOCはロシアオリンピック委員会(ROC)の国家オリンピック委員会(NOC)の資格を停止した。ROCがドネツィク・ルハンシク・ヘルソン・ザポロジエなどロシアがウクライナから強制併合した4カ所のオリンピック委員会を自国組織に統合したことに対応する措置だ。
●「これ以上ない皮肉」 プーチン氏の民間人犠牲発言に―独首相 10/20
ドイツのショルツ首相は19日、ロシアのプーチン大統領がパレスチナのイスラム組織ハマスとイスラエルの衝突で、民間人の犠牲が出ることを容認しないと述べたことについて、「これ以上の皮肉はない」と指摘した。連邦議会の演説で語った。
ショルツ氏は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で市民に大量の犠牲者を出し続けていることを棚に上げたプーチン氏の言動に怒りをあらわにした。プーチン氏は13日、パレスチナ情勢に関して「民間人の死傷は絶対に受け入れられない」と語った。ロシアは、イスラエルとハマスの即時停戦を求めている。
●ロシア、女性編集者を拘束 米ロ二重国籍 10/20
米国とロシアの二重国籍を持つ米政府系報道機関「ラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティー(RFE/RL)」の女性編集者アルス・クルマシェワ氏がロシア当局に拘束された。RFE/RLが発表した。
プーチン政権はウクライナ侵攻以降、報道機関への統制を強め、多くの独立メディアやジャーナリストを「外国の代理人」に指定している。RFE/RLによると、ロシア当局は18日、クルマシェワ氏がこの「外国の代理人」登録を怠っていたとして起訴したと発表した。最長5年の禁固刑に処される可能性があるという。
クルマシェワ氏はプラハを拠点とし、今年5月に家族の緊急事態のためにロシアに入国。その後ロシア出国時に拘束され、パスポートを没収された。米国のパスポートをロシア当局に登録しなかったとして罰金も科されたという。
米国籍のジャーナリストとしては、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のエバン・ゲルシコビッチ記者も今年3月にロシア当局に拘束された。
●イスラエルとウクライナ支援、バイデン氏「不可欠」 緊急予算を要請 10/20
バイデン米大統領は19日夜、ホワイトハウスの大統領執務室から米国民向けに演説した。イスラム組織ハマスとの戦闘が続くイスラエルやロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援継続が「米国の安全保障にとって不可欠だ」と訴えた。また、両国への追加軍事支援を柱とした緊急予算を20日に連邦議会に要請すると明らかにした。
バイデン氏は演説で「我々は歴史の転換点に直面している」と述べた。ハマスとロシアのプーチン大統領に共通点があるとし、「双方とも近隣の民主主義国家を完全に滅ぼそうとしている」と指摘した。
その上で、ハマスの「テロ行為」に代償を負わせなければ「米国や世界へのテロの脅威は増大する」と主張。ロシアのウクライナ侵攻を許せば「世界中の侵略者たちをつけあがらせる。紛争や混乱のリスクがインド太平洋や中東に拡大する恐れがある」と訴えた。
米メディアによると、バイデン氏が要請する緊急予算は1000億ドル(約15兆円)規模。台湾への軍事支援や移民対策のための国境警備強化の費用も含まれるとみられている。バイデン氏は演説で「米国のリーダーシップが世界を支えている」と強調。国民に巨額の支出への理解を求め、議会側に党派対立を超えて停滞している予算審議を進めるよう訴えた。
バイデン氏は18日にイスラエルを訪問し、イスラエルへの連帯を内外にアピールしていた。米大統領は、戦争や自然災害などの重大事案で国民の結束を呼びかけたり理解を求めたりする際に執務室から演説する。バイデン氏が執務室から演説するのは2回目となる。
●バイデン氏、イスラエル・ウクライナ支援訴え 米指導力の重要性強調 10/20
バイデン米大統領は19日、ホワイトハウスで国民に向けて演説し、イスラエルとウクライナに対する多額の追加支援の重要性を訴えた。
「世界をまとめるのは米国のリーダーシップだ。米国の安全を守るのは米国の同盟関係だ」と強調した。
「(イスラム組織)ハマスと(ロシア大統領の)プーチンは異なる脅威だが、共通しているのは両者が隣国の民主主義を滅ぼしたい点だ」とも述べた。
ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザの病院で起きた爆発について、イスラエルの責任ではないとしつつ、「平和に暮らし、機会を得たいと願うだけの罪のないパレスチナ人の人間性を無視できない」と語った。
また、戦争を支援することが米国にとってなぜ重要なのか疑問視する声が国民の間で出ていることに懸念を示した。
「これらの紛争が遠くのことのように見えるのは分かる」と述べる一方で、米国の敵対勢力は両紛争がどのように展開するか注視しており、結果次第で世界の他の場所で問題を引き起こす恐れがあると警鐘を鳴らした。
共和党が多数派を握る下院で議長不在が続いている状況を念頭に「取るに足らない党派的で怒りに満ちた政治が偉大な国家としての責任を妨げてはならない」とも述べた。
また、議会に対し20日に緊急予算を要請する方針を明らかにした。
●イスラエル電撃訪問は「危険な誤算」?! 10/20  
それでも英BBCが「バイデン大統領しかいない」と評価する理由とは
イスラム組織ハマスがイスラエルに大規模な攻撃を仕掛け、両者の軍事衝突に発展するなか、米国のバイデン大統領がイスラエルを電撃訪問して、世界をあっと驚かせました。
もともと米国は親イスラエルの立場で知られていますが、現職の米国大統領が、砲弾が飛び交い、多くの死者が出ている「wartime」(戦渦)に訪問するのは極めて異例。各国メディアも「gamble」(危険な賭け)と称していますが、果たして、バイデン大統領が「政治生命をかけた」賭けの行方はどうなるのでしょうか?
早くも「誤算」と報じるメディアがある一方で、中東情勢を知りつくした英BBCは「世界中を見渡しても、バイデン大統領しかいない」と、手腕に期待を寄せていました。その理由は...。
英BBC「80歳のバイデン大統領、世界を見渡しても彼しかいない」
イスラム組織ハマスによる突然の大規模攻撃で、混乱に陥っている中東情勢。わずか10日間ほどで死者が数千人に及ぶなど、過去に類を見ない甚大な被害が広がっています。
この先、圧倒的な軍事力を誇るイスラエルの大規模報復が始まったら、一体どうなるのか...。世界中を巻き込んだ紛争への発展が懸念されるなか、各国首脳は「最悪の事態」を避けようと外交手段の限りを尽くしています。
そんななか、米国のバイデン大統領がイスラエルを電撃訪問。外国首脳のイスラエル入りはドイツ首相に続く2人目でしたが、直前にガザ地区の病院が爆破されて数百人が無くなるなど、戦況が悪化するなかでの「異例の訪問」に、地元米メディアも「危険な橋を渡った」と伝えています。
   President Biden walks a tightrope on Israel-Gaza
(バイデン大統領は、イスラエル・ガザ問題で危険な橋を渡っている:NYタイムズ紙) walk a tightrope on:危ない橋を渡る、綱渡りをする
残念ながら、多数の民間人死者を出したガザ地区病院爆発の影響で、予定されていた会合が次々とキャンセルになったバイデン大統領。緊張緩和の仲介役としては、期待されていたほどの役割を果たせなかったようです。
日本でも、「イスラエル訪問は誤算だった」「次期大統領選に向けた地盤固めは失敗に終わった」と伝える報道が目につきます。ところで疑問に残るのは、なぜ、これほどまでのリスクを冒して、バイデン大統領がイスラエル訪問を決行したのかということです。
複雑を極める中東情勢が、そんなに簡単に解決できるとは当の大統領自身も期待していなかったでしょうし、直前の病院爆発で「最悪のタイミング」となったことはわかっていたはずです。
そう不思議に思って海外ニュースを追いかけていたら、「今こそ、バイデン大統領の出番だ」という英BBCの記事を見つけました。
英BBCによると、今年80歳になるバイデン大統領は、議員になった50年前からずっとイスラエル問題に取り組んでいたそうです。さらに、イスラエルのネタニヤフ首相のことも40年近く知っているなど、バイデン大統領に匹敵する「人脈」や「経験」を持つ首脳は、世界中にいないとのこと。
最近は、演説中に足を踏み外したり、不可解な発言をしたりといったアクシデントが続いて「おじいちゃん大統領」のイメージが強かったバイデン大統領ですが、英BBCは「ようやく、バイデン大統領の『高齢』がマイナスではなく、プラスに働く時がきた」と、中東情勢に関わるキャリアを評価していました。
「やっと、高齢がプラスになる」というのは、英国らしい皮肉交じりではありますが、確かに、イギリスのスナク首相(43)や、フランスのマクロン大統領(45)が生まれる前からイスラエル問題に取り組んでいるという事実は説得力がありますし、バイデン氏の半世紀にわたるキャリアの右に出るものがいない、という評価には納得です。
また、政治家として大事な選挙を控えているとしても、戦況が悪化して自身が暗殺される危険性もある遠い外国の地に、「打算」だけで老体にムチを打って出かけるでしょうか?
もちろん、複雑な国際情勢ですから、バイデン大統領の「人脈」や「長年のキャリア」で状況が一変することはありません。それでも、状況を知り尽くし、特派員を現地に派遣して危険を冒しても現地から報道を続ける英BBCが、バイデン大統領に「淡い期待」を寄せる背景が理解できる気がします。
バイデン大統領でも状況を変えるのは難しい、それでも、バイデン大統領しかいない...。そんな厳しい現実を知ると、軽々に「今回の訪問は誤算だ」と否定する気にはなれません。日本のメディアだけでは見えてこない、世界の現実がそこにあるようです。
トラック運転手たちも安堵! やっと、エジプト側から支援物資を届けられる!
「危険な賭け」に出たバイデン大統領ですが、支援物資の搬入に関しては成果があった様子。パレスチナ自治区ガザへの人道支援について、エジプトとの境界の検問所からトラック20台分の支援物資を運び入れることで、エジプトのシシ大統領と合意したことが明らかになりました。
   Egypt and US agree to allow aid into Gaza
(エジプトと米国は、ガザ地区に支援物資を認めることに合意した:英BBC)
これまでガザ地区とエジプトの境界にあるラファ検問所は封鎖されていて、エジプト側には、各国からの支援物資を積んだ大型トラックが大量に「足止め」されていました。
物資不足が危機的な状況にあるガザ地区。水や食料、医療品などの必需品が足りずに人々の生活が切迫している目の前で、大量の物資が「足止め」されているとは信じがたいことです。未だ「150台以上のトラックがエジプト側で待機している(英BBC)」という報道に驚くばかりです。
今回、バイデン大統領とエジプトのシシ大統領が合意したのは、「最大20台のトラック通過」ですから、まだまだ氷山の一角にすぎません。それでも、「トラック20台」の小さな穴が大きく広がって、事態を動かす大きな一歩になることを願うのみです。
ウクライナの戦争もそうですが、政治の力が間違った方向に動く恐ろしさを目の当たりにする時代になりました。こんな時こそ、海外メディアにも目を向けて、複眼的な視点で世の中を眺めることが必要でしょう。これからも、多様な視点を伝えていきたいと意を強くしました。
それでは、「今週のニュースな英語」は、NYタイムズ紙の見出しから、「walk a tightrope 」(危ない橋を渡る、綱渡りをする)を使った表現を紹介します。ちなみに、「タイトロープ」は「綱渡り」に使う綱のことだそうですから、文字通り「綱渡り」なのですね。
   Ukraine must walk a tightrope between the U.S. and Europe
(ウクライナは米国とヨーロッパの間で危ない橋を渡らないといけない)
   Fed will walk a tightrope between inflation and recession
(Fedはインフレと景気後退の間で、綱渡りをしている)
   We have to walk a tightrope on pricing
(商品の値段決めでは、危ない橋を渡ることになる)
バイデン大統領に続いて、英国のスナク首相のイスラエル訪問も報じられました。各国首脳が一堂に会さずに五月雨式に訪問しているのは、イスラエルの大規模報復を遅らせる作戦だ、との説もあります。
さすがに他国の首脳を迎えている間は進行を開始しないだろう、という見立てですが、これといった打開策がない証左に映ります。事態の深刻さに圧倒されつつも、各国ニュースから目が離せない日々が続きそうです。
●ウクライナで約3万人の民間人・軍人が行方不明 10/20
ロシアによる侵攻が続くウクライナで、約3万人の民間人や軍人が行方不明になっていることが分かりました。
戦争や災害による行方不明者を調査するICMP(国際行方不明者機関)は18日、ウクライナでの行方不明者の捜索や遺体の身元確認についてウクライナ政府とさらに協力して進めることに合意しました。
このなかでウクライナ保健省は現在、約3万人の民間人や軍人の行方が分からなくなっていると明らかにしました。
ICMPは「これほど膨大な行方不明者を発見し、残虐行為の証拠を集めることは、単独の国では不可能」としています。
ICMPは去年11月、ウクライナでの行方不明者を1万5000人以上と推計していて、侵攻が長期化するなか、行方不明者の増加が伺えます。
●欧・米、貿易摩擦解消へ互恵的措置必要=EU大統領 10/20
欧州連合(EU)のミシェル大統領は19日、EUと米国は貿易摩擦解消に向けた互恵的な対策を見つける必要があると述べた。
ウクライナを巡る欧米の結束を示すため、20日に米ホワイトハウスで米・EU首脳会議が行われるが、貿易問題が双方の関係に影を落としている。
ミシェル氏とフォンデアライエン欧州委員長はトランプ前米政権時代に導入された関税の撤廃や米国のグリーン産業向け補助金の影響緩和で合意したい意向だが、交渉担当者は19日午後の時点で突破口を開くに至っていない。
ミシェル氏は記者団に対し、特に中東情勢の緊迫化を踏まえると米国とEUが共通の価値観や民主主義へのコミットメントで結束する重要な時期だと指摘。
一方、貿易面での解決策は互恵的でなければならないとも述べた。この問題が20日のホワイトハウスでの会談までに解決するかどうかについては予測を避け、交渉が継続していると述べるにとどめた。
米国はトランプ前政権が課したEUからの鉄鋼・アルミニウム輸入に対する関税を一時停止したが、中国など非市場経済の過剰生産能力への対応策などで今月末までに双方が合意することが前提となっている。
●鉄道輸送で「ヨーロッパ一帯一路」実現へ!? 安全保障は物流から! 10/20
ヨーロッパでは世界の不安定な情勢を受け、鉄道による輸送網の確立に向けた動きがあります。この「鉄道回廊」計画ですが、一枚岩ではなくさまざまな「関係性」も見え隠れします。
「脱ロシア・脱中国」のために「まず団結すべきなのは輸送」
ロシアのウクライナ侵攻で、ガス供給源と輸送ルートに苦悩した欧州。さらに、世界各地に食指を伸ばす中国の巨大経済圏構想「一帯一路政策」に対する警戒感も高まっています。それらの教訓から欧州では、「脱ロシア・脱中国」をすすめ「信用し合えるパートナー」だけで輸送網を確立することが重要課題となりました。
そのなかでも鉄道が安全保障上、非常に大切な戦略インフラであることが改めて意識されており、欧州版一帯一路ともいえる「鉄道回廊」の整備を進める計画があります。
その計画の中枢にあるのは、ドイツ。自らが鉄道網の「ハブ」となってEUを取りまとめ、鉄道強国への道を突き進もうとしています。鉄道や海路でインドまで結ぼうという構想もあり、世界の鉄道輸送網が大きく変わるかもしれません。
ドイツは来年度から2027年度までに400億ユーロ(約6兆円)という巨費を鉄道予算に割り当てる予定で、鉄道の近代化を急速に進めています。特に、信号システムをはじめ、国別で異なる運行方式を一元化し「シームレスな一つの鉄道網」を目指しています。すなわち鉄道の欧州統合です。
そのベースとなるのが、鉄道や海路を組み合わせた「欧州横断輸送ネットワーク (TEN-T)」という構想で、もともと冷戦が終わった1990年代に浮かんだ計画でした。それが昨今の緊迫した政治情勢を受け、具体化が急速に進んでいるのです。主要部は原則として「2030年完成」を視野に入れています。
ヨーロッパの安全保障「鉄道回廊」とは
TEN-Tは9つのルート(回廊)があります。フランス、イタリア、オーストリア、ハンガリー国内には4ルートが通り、デンマークなど12か国は1つしか通っていません。そのなかでドイツは突出していて、6つの回廊が通っています。しかも最新の発表資料によると、7つ目のルートもドイツにつながる可能性があります。
その7つ目のルート「北海―地中海回廊」は、アイルランドから海路でオランダのアムステルダムやフランスのル・アーヴルに上陸し、そこから地中海へと抜けるものです。欧州委員会は2022年11月、68ページの計画書を発表し、同回廊について「ドイツに繋ぐことを検討する」と、ひっそり書き加えたのです。
東欧と西欧、北欧と南欧の間、すなわち「中欧(セントラル・ヨーロッパ)」に位置するうえ、9つの国と接し、経済的にも政治的にも欧州の中心のドイツ。欧州最大の経済大国で自動車や工作機械などのモノ作りも集積しています。ほかの欧州諸国との貨物のやり取りが多いのも当然です。ドイツが欧州の鉄道輸送の「ハブ」になることは必然とも言えます。
しかも2021年末に発足したショルツ政権では、環境政党の「緑の党」が連立与党に入り、自動車や航空より環境に優しい鉄道への期待が高まっています。

一方、欧州の「鉄道回廊」の整備から外れつつあるのは英国です。
前述のTEN-Tの「北海―地中海回廊」は、もともとアイルランドだけでなく「英国の北部スコットランドからロンドンを経由してドーヴァー海峡を渡り、地中海に向かう」というルートでしたが、2022年1月のブレグジット(英国のEU離脱)で大きく計画が変わりました。
英国が「信用し合えるパートナー」から外れ、ハブと接続するどころか「ハブられる」選択をしたことにより、英国を通る必要がなくなり、代わりにドイツを経由する7つ目の回廊にする方向に切り替わったようです。
「ハブられ」イギリスの悲哀は「新幹線計画」にも…
英国の鉄道整備には、ほかにも甚大な影響が出ています。例えば英国は、ロンドンとイングランド北部を結ぶ高速鉄道「HS2(ハイスピード2)」を建設する予定でしたが、計画縮小を余儀なくされました。中部バーミンガムからさらに北のマンチェスターの間の着工を断念し、当初よりも路線を大幅に短縮したのです。
表向きの縮小理由は「インフレによる費用高騰」とされていますが、建設費用にあてこんでいたEUの資金支援が見込めなくなった影響もあるようです。
その動かぬ証拠が、英国運輸省の資料に書かれた当時の「HS2用に助成金を得られる可能性が最も高いのは、EUのTEN-Tから」という一文です。
EUとの“喧嘩別れ”から4年弱、もらえなかった資金の穴は大きかったのかも知れません。「ハブ」になる国のドイツと「ハブ」られた国の英国の明暗が分かれています。
ちなみに、欧州〜中東〜インドの回廊に含まれず「ハブ」られたのはトルコも同じで、「トルコ抜きの経済回廊はありえない」と怒りをにじませるという政治ドラマもありました。

ウクライナ情勢をかんがみて、EU内の輸送網だけを拡充しても近隣の「信用し合えるパートナー」との輸送網を築いておかなければ意味がないという考えになったEU。2022年7月に作成された欧州委員会の資料は「ロシアやベラルーシを信用したことへの反省」などがつづられ、欧州内で新設予定の輸送網から両国を排除することや、代わりにTEN-Tの4つの回廊をウクライナやモルドバまで伸ばす案が明示されています。
今後は、ロシア、中国、北朝鮮などの鉄道建設の計画がどう変更してくるのかも気になるところ。足元でイスラエルと、イスラム武装組織ハマスによる武力衝突もあり、激変した中東情勢も世界の物流に影響してきます。国際秩序が大きく揺れ動くなか、世界の鉄道輸送が変化していくのは間違いありません。「ハブ」になる国と、その一方で「ハブ」られる国々の行く末を注視したいところです。
●世界経済とG20 広がる不安への処方箋を 10/20
世界経済の先行きにさらなる不安が広がりかねない情勢だ。国際社会の対応が問われている。
日米中など主要20カ国・地域(G20)は財務相らによる会議を開き、世界経済は下振れリスクを抱えているとの認識で一致した。
国際通貨基金(IMF)は来年の成長率見通しを2%台に下方修正した。2000年以降、好不況の境目とされる3%を割ったのは、リーマン・ショックや新型コロナウイルス禍などによる5回だけだ。
ウクライナ危機に伴う物価高が重荷となっている。成長をけん引してきた中国は深刻な不動産不況に陥っている。米国は予算を巡る与野党の対立で政府機関の閉鎖と国債格下げの懸念がくすぶる。
追い打ちを掛けているのが中東情勢の緊迫化だ。イスラム組織ハマスとイスラエルの衝突がエスカレートし、産油国に混乱が広がれば、原油価格が高騰しかねない。
米欧の利上げが長引き、景気をさらに冷え込ませる恐れがある。米国の高金利は多額のドル建て債務を抱える途上国の負担を重くする。スリランカのような財政破綻が続くと金融市場を動揺させる。
さらに気がかりなのは、国際社会の対立が一段と深まることだ。
G20はウクライナ危機で日米欧と中露の亀裂が拡大し、共同声明を採択できない状態が続いた。ハマスの攻撃に対しても、イスラエル寄りの米欧と、中露やサウジアラビアとでは姿勢が異なる。
今回は声明を採択したが、ロシアのウクライナ侵攻を直接非難せず、中東情勢には全く触れなかった。初日に採択したのも、議論に深入りすることを避けたためだろう。インフレや食料危機にも処方箋を示したとは言いがたい。
第4次中東戦争を発端とした石油危機から今月で50年を迎えた。当時、日米欧は主要7カ国首脳会議(G7サミット)を創設し、連携して世界不況を克服した。協調の重要性は今も変わらない。
政治体制の違う国が集まるG20は意見集約が難しい。だが分断が深刻化すれば、しわ寄せは途上国など弱い立場の人たちに及ぶ。
意見の相違があっても、グローバルな課題では主要国は連携する必要がある。各国は責務を自覚し解決に努めなければならない。
●ブラジルは戻ってきた――返り咲いたルーラ大統領の外交 10/20
国際社会に「ブラジルは戻ってきた」
ブラジルを含む「グローバルサウス」と称される国々は、近年、再編が進む国際秩序における第三勢力として注目を集めている。とくに、2022年のロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、拡大路線を強める中国との関係も含め、世界各国の外交姿勢が以前より問われるようになった。2023年5月に日本で開催された主要7カ国(G7)サミットには、ブラジルやインドなどのグローバルサウス諸国が招待され、ウクライナのゼレンスキー大統領が電撃的に来日して出席したこともあり、外交舞台での各国の対応や立ち位置への関心が高まった。
ブラジルでは2022年10月に大統領選挙が行われ、史上最僅差ながら左派の労働者党のルーラ元大統領が現職大統領のボルソナロに勝利した。当選したルーラは、大統領就任前の2022年11月、エジプトで開催されたCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)に参加し、環境問題に取り組む国際社会に「ブラジルは戻ってきた」(O Brasil voltou)とアピールした。“南米のトランプ”とも称されたボルソナロ大統領が任期中、外交や環境問題に消極的だったため、ルーラ新大統領の発言はボルソナロ政権への暗示的な批判であるとともに、新政権の外交姿勢を表明するものとして注目された。
2023年1月に3度目となる大統領に就任したルーラは、政権発足100日を記念するイベントも「ブラジルは戻ってきた」というタイトルを付して開催した。このイベントでルーラ大統領は、キーワードの「ブラジルは戻ってきた」を外交以外のさまざまな分野でも使い、20回以上も繰り返しながら演説した。外交に関しては、「世界のすべての国との良好な関係を再開しながら、積極的で誇り高い外交政策を有するよう、ブラジルは戻ってきた」と主張した。また、グローバルな課題である環境問題に関しては、「持続可能性と気候変動への取り組みにおいて、ブラジルは世界の基準に戻るだろう」と述べた。
2010年の退任から13年ぶりに大統領へ返り咲いたルーラのもと、ブラジルはグローバルサウスの一角に挙げられ、国際社会でのプレゼンスを再び高めている。本稿では、G7やBRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)首脳会議などの重要な外交舞台において、ルーラ大統領が行ってきた主な言動を概観する。それらをもとに、変化する世界の勢力図におけるルーラ外交について考察し、ブラジルの課題について本稿が注目する点を指摘する。
13年ぶりに戻ってきたルーラ大統領の外交
ルーラは政権を発足させた2023年初めから活発に外交を行っている。年初からの主要な外交舞台における言動からは、ルーラ大統領が国際舞台に“ブラジルを戻した”ことが見てとれる。
大統領就任後に初訪問した米国での発言(2月10日)
バイデン大統領との首脳会談において、ロシアのウクライナ侵攻は「はなはだしい国際法違反」との文言を載せた共同声明を発表した。しかし、ウクライナ支援に関しては米国と歩調を合わせず、CNNのインタビューに「戦争に加わりたくない」と語り武器供与を拒否した。
大統領就任後の中国初訪問(4月13〜15日)
米国とEUはウクライナでの戦争を煽るのは止めるべきであり、和平の道を模索する国々でグループを結成すべきだと主張した。上海にある新開発銀行(NDB、いわゆるBRICS銀行)を訪問し、「IMFが発展途上国を窒息させ続けることはできない」「世界の国々がドルで貿易を行う必要があるのか疑問だ」と述べ、現行の国際金融システムを批判した。また、「我々ブラジルは、中国との戦略的パートナーシップのレベルを引き上げ、貿易の流れを拡大し、中国とともに世界の地政学のバランスを取りたい」と述べ、中国との関係強化により、再編が進む国際秩序での影響力を拡大させたい意向を示した。帰路に訪問したアラブ首長国連邦では、「戦争をやめることよりも始めることの方が簡単だ。なぜなら、今回の戦争はウクライナとロシアの両国が始めたものなのだから」と発言した。戦争勃発時に表明した「両国が始めた」との見解を繰り返すなど、ロシア寄りとも思われる言動を行った。
日本・広島でのG7サミット(5月21日)
ウクライナのゼレンスキー大統領と共同セッションで一度だけ同席し、両大統領はほぼ向かい合わせの正面に座った(写真1)。ただし、ゼレンスキー大統領が登場した際に各国代表が次々と挨拶したのに対し、ルーラ大統領は席を立たずに書類に目を通していた。ルーラ大統領はウクライナの領土一体性の侵害に言及し、紛争解決の手段としての武力行使を断固として拒否するとしてロシアを非難した。しかし同時に、中ロへの敵対ブロックの形成をけん制するとともに、多極的な世界秩序への移行には国際協力が必要だと強調し、自身のこれまでのポジションを堅持した。G7サミット最終日の記者会見では、ブラジルをはじめ中国やインドなどのグローバルサウスは和平を議題にしたいが、G7諸国が戦争を望んでいると強く批判した。
ロシアのプーチン大統領との電話会談(5月26日)
ブラジルはウクライナ戦争を解決すべく、中国、インド、インドネシアなどと共に和平交渉に関与する意思があると改めて表明した。ただし、招請されたロシア来訪については、謝意を表しつつ「今はロシアを訪問できない」と辞退した。
南アフリカで開催されたBRICS首脳会議(8月22〜24日)
中国主導で欧米諸国に対抗するようBRICS加盟国の拡大が協議されたことに対し、「我々はG7、G20、米国の対抗勢力になることを望んでいるわけではない。我々自身を組織化し、これまで存在しなかったものを作りたい」との立場を表明した(写真2)。ただし、BRICS首脳会議の最終日、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦という、中国とより親密な6カ国の新たな加盟が発表された。
インドで開催された20カ国・地域(G20)サミット(9月11日)
国際刑事裁判所(ICC)による逮捕状の問題からG20サミットを欠席したプーチン大統領に関して、2024年にG20議長国となるブラジルとして、「プーチン大統領は我が国を問題なく訪問できる。私が大統領在任中にブラジルに来るのであれば、プーチン大統領が逮捕される理由はない」と発言した。しかし、この発言に批判が集まったこともあり後日、「逮捕するかしないかを決めるのは司法であり、政府でも議会でもない。ただ私としては、米国やロシアが加盟していない国際刑事裁判所になぜブラジルが加盟しているのか調べたいと思う」と述べ、トーンをやや後退させた。
国連総会での演説(9月19〜20日)
演説の冒頭で取り上げたのは気候変動、世界における貧困や格差などブラジルが影響力を持ちうるテーマであり、「ブラジルは戻ってきた」とのフレーズを使いながら、多国間主義の外交姿勢を強調した。しかし、戦争や平和に関する内容を取り上げたのは演説の終盤であり、パレスチナ問題、ハイチ危機、イエメン紛争、グアテマラの政治不安など11カ国の名前を先に挙げた。「ウクライナ戦争は、国連憲章の目的と原則を普及できていない私たちの集団として無能さを露呈した」と最後の事例として取り上げ、国連の問題と関連させるかたちで言及した。またルーラ大統領は、国連総会の翌日にゼレンスキー大統領と初めて会談を行い、和平を提案できる国々でグループを形成する必要性という今までの持論とともに、「ロシアが行ったような領土占領が二度と起きぬよう」と述べ、ウクライナへの配慮を示した。
大統領就任以降の外交をめぐる言動には、世界の勢力図が変化するなかでグローバルサウスの一角として、国際社会に“戻ってきたブラジル”の影響力を強めようとするルーラ大統領の姿勢が表れていよう。このようなルーラ大統領の外交は、政権一期目と二期目と同様、ブラジル外交の伝統である多方位的な多国間交渉をベースにしながらも、大統領主導による独自外交を再び試みているものだといえる。
ただし、13年ぶりに大統領の座に戻ってきた現在の国際社会の情勢は、とくにロシアのウクライナ侵攻により、ルーラが2003年から8年間政権を担った頃とはかなり異なっている。大統領に返り咲いたルーラの外交は、国連総会の演説でみられたように、多国間主義にもとづいて和平への賛同を取りつけることが難しいこともあり、ブラジルが「南」の利益を代表しながら国際社会での影響力を高められるような環境や貧困・格差などの問題を優先しているといえよう。
グローバルサウスと従属論
「グローバルサウス」(川村 2023)の観点からブラジルを「世界」の中で捉えるときに想起されるのが、主にラテンアメリカ地域から発せられた開発理論である「従属論」(カルドーゾ&ファレット 2012)である。従属論では、世界資本主義経済システムの中枢である「北」に対して、周辺の「南」は構造的に低開発の状態にとどめ置かれる。従属論のなかにもさまざまな見解があるが、主唱者のひとりである社会学者のカルドーゾは、「北」との構造的な従属関係を変化させることで「南」も周辺から中枢へ移行していくことが可能だと唱えた。そのカルドーゾは、ブラジルの大統領を1995年から8年間務め、自らの理論の実践を試み、経済の安定の実現や21世紀初頭の発展の礎を築いた。
「南」の低開発や貧困問題への関心が強いルーラ大統領は、8月のBRICS首脳会議で次のように述べている。「我々は常に、あたかも地球の貧しい地域であり、まるで存在していないかのように扱われてきた。我々は常に二流であるかのように扱われた。しかし今、我々は重要な国になれることに気づき始めた」「気候問題について話すとすれば、今日交渉できる力があるのは誰か? それはグローバルサウスである。発展の可能性、成長の可能性について話したいなら、それはグローバルサウスである。我々は存在し、自らを組織していて、欧州連合、米国、すべての国と対等な条件で交渉のテーブルに座りたい、と言っているだけである。我々が望んでいるのは、政治的決定の観点から世界をより平等にする新しいメカニズムを作り出すことなのだ」。これらの発言は、低開発を強いられたグローバルサウスの一員であり、中枢への接近が可能とする従属論者を輩出したブラジルの、現大統領としての意志を込めたものだといえよう。
「戻ってきた」ブラジルの課題
周辺の「南」は、資本主義経済のなかで、中枢である「北」への従属的な構造から長きにわたり低開発の状態に置かれてきた。ルーラ大統領は自身が貧困層出身なこともあり、グローバルサウス諸国の結束や組織化により、「世界をより平等にする新たなメカニズム」の構築を試みていると考えられる。ただし、ブラジルの現状に関する課題として、経済における過度な「一次産品への依存」という、従属論で脱却が目指された状況が再び顕在化している点が挙げられる。
一次産品である「農牧業と鉱業」の合算が国内総生産(GDP)に占める割合、および、「鉱業以外の第二次産業」、とくに生産性の高い「製造業」が占める割合の推移を、20世紀半ばからまとめたのが図1である。ブラジルをはじめとするラテンアメリカ諸国は伝統的に「一次産品への依存」が高く、その脱却を目指して1960〜80年代に輸入代替工業化を推進した。その結果、GDPに占める「農牧業と鉱業」の割合は低下して「鉱業以外の第二次産業」の割合が増加し、1970年前後には「ブラジルの奇跡」と呼ばれる高度経済成長を達成した。その後、1980年代の「失われた10年」といわれる経済危機の後、1990年代に経済が自由化されると「鉱業以外の第二次産業」の割合は急激に低下した。21世紀初頭になると、「新しいブラジル」といわれる発展期を迎えたが、その背景には高度経済成長を遂げる中国への鉄鉱石や大豆などの一次産品輸出の増加があった。そのため、「新しいブラジル」においてGDPに占める「鉱業以外の第二次産業」の割合に大きな変化はなく、それどころか2021年になると、より生産性の高い「製造業」の割合を一次産品の「農牧業と鉱業」が上回る状況となった。
従属論の観点からは、「中枢」への一次産品輸出の増加が「周辺」の低開発を助長させることが懸念される。ブラジルは、中国と貿易や投資などの関係を深めるほど、自国経済における一次産品の比重が高まり、低開発の状態にとどめ置かれる可能性が高くなるのである。周辺から中枢へ移行した中国との関係をどう構築するかという点は、ルーラ外交が直面する重要な課題のひとつである。今回のBRICS首脳会議において、中国が欧米に対抗するかたちで加盟国拡大を主導したのに対し、必ずしも賛成ではないブラジルは、拡大を認める代わりに、ブラジルの国連常任理事国入りを中国が支持するよう持ちかけた。中国が実際にそれを支持するか否かは、両国の関係性をはじめ、今後の国連改革や拡大BRICSの影響力を左右するかもしれず、ブラジルの今後を占う試金石のひとつとなるだろう。また、ブラジルだけでなく南米地域全体においても、中国の経済的な影響力が増大しており、地域大国のブラジルにとって中国との関係は期待と懸念が混在する課題である。
ウクライナ戦争で問われるブラジルの安全保障観
最後に、ウクライナ戦争の和平交渉におけるブラジルの役割について指摘しておく。ブラジルは軍事的脅威にさらされていない南米のグローバルサウスである。この点はとくにウクライナ問題をめぐるルーラ大統領の外交姿勢に表れている。和平の仲介役に名乗り出る一方、ウクライナにクリミア半島の断念をも提案したルーラ大統領に対し、「世界をもっと広く理解すべきである」「ブラジルは誰とも戦争しているわけではない」と、ゼレンスキー大統領は批判的な発言をした。「誰かがアマゾンを侵略したら黙認するか」という、ウクライナのラテンアメリカ担当大使が示したような視点が、軍事的脅威にさらされていないブラジルには欠けているように見受けられる。
ブラジルが「戻ってきた」現在の世界には、戦争中でなくとも軍事や紛争の危険を抱えている国や地域が少なくない。国家安全保障に関わる問題にどこまでコミットし貢献できるか、グローバルサウスの大国としてルーラ大統領に問われる外交力のひとつだといえる。 
●バイデン大統領 イスラエル・ウクライナ支援の緊急予算要請を表明 10/20
アメリカのバイデン大統領は19日、ホワイトハウスの執務室から国民向けの演説を行い、イスラエルとウクライナへの支援に向けた緊急の予算を議会に要請すると表明しました。
バイデン大統領はロシアのプーチン大統領とイスラム組織「ハマス」を重ね合わせ、イスラエルとウクライナへの支援はアメリカの安全保障に不可欠だとして国民に理解を求めました。
バイデン大統領「ハマスとプーチン(大統領)は異なる脅威を代表しているが、共通点がある。両者は近隣の民主主義を完全に消滅しようとしている。イスラエルとウクライナ支援の成功が、アメリカの国家安全保障に不可欠だ」
バイデン大統領は「アメリカのリーダーシップが世界をまとめている」と強調し、「前例のない」緊急予算を議会に要請することに理解を求めました。
ガザ地区への攻撃で国際社会のイスラエルへの批判が高まっていることを念頭に、大統領はまた、「イスラエル政府が怒りに目を奪われないように警告する」と述べ、パレスチナ側に寄り添う姿勢も強調しました。
バイデン大統領は中東外交、そしてウクライナなど複数の事態対応を迫られる、まさに正念場を迎えています。
●「ハマスと同じ」発言容認せず=米大統領に反発―プーチン氏報道官 10/20
ロシアのペスコフ大統領報道官は20日、バイデン米大統領がイスラエルを攻撃したパレスチナのイスラム組織ハマスと、ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領を同列に扱ったことについて「受け入れられない」と強く反発した。タス通信が伝えた。
バイデン氏は19日の演説で「(ハマスもプーチン氏も)近隣の民主主義国家を完全に消滅させようとしている共通点がある」などと指摘。イスラエルとウクライナを支援する必要性を米国民に訴えていた。 
●プーチン氏の主張に反論 IOC 10/20
ロシアのプーチン大統領が来年のパリ五輪への同国選手の参加可否を決めていない国際オリンピック委員会(IOC)を批判したことについて、IOCは20日、「民族差別という非難を強く拒絶する」と反論した。AFP通信が報じた。
IOCは、ウクライナに侵攻を続けるロシアと同盟国ベラルーシの選手は個人資格で国を代表しない中立の立場で国際大会に出場できるよう、各競技団体に勧告している。プーチン氏の発言を受けIOCは「国際大会参加について定めた厳格な条件は、五輪憲章に基づいたものだ」と主張した。
●ウクライナ軍、ドニプロ川東岸へ渡河作戦…ロシア軍と激しい戦闘 10/20
ウクライナ軍は、ロシア軍が占領するウクライナ南部ヘルソン州のドニプロ川東岸への渡河作戦を実施した。露国防省は18日、ドニプロ川東岸の集落で、ウクライナ軍の活動を阻止したと明らかにし、ウクライナ軍に渡河を許したことを認めた。今回の渡河作戦はこれまでよりも規模が大きく、本格的な上陸作戦も視野に入れた拠点確保が狙いとの見方が出ている。
プーチン露大統領は18日、「(ウクライナ側は)ヘルソン方面で反攻作戦を始めたが結果は出ていない」と主張した。米政策研究機関「戦争研究所」は露軍事ブロガーらのSNSへの投稿を根拠に「ウクライナ軍が17〜18日にドニプロ川東岸に攻撃を仕掛けた」と指摘した。公開された位置情報を基に、ウクライナ軍がドニプロ川から東へ4キロ進軍したとの分析も明らかにした。露軍が反撃し、激しい戦闘になっている模様だ。
一方、露大統領府は20日、プーチン氏が露南部ロストフ・ナ・ドヌーの露軍司令部を訪れ、ウクライナ侵略作戦総司令官のワレリー・ゲラシモフ参謀総長から戦況報告を受けたと発表した。タス通信によるとプーチン氏の訪問は昨年2月の侵略開始以降、4回目だ。
● ロシア・ウクライナ首脳 中東情勢注視し作戦進めるか 10/20
ロシアのプーチン大統領は、南部の軍司令部を訪問し、参謀総長から最新の戦況について報告を受けた一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、軍事支援をめぐってアメリカのバイデン大統領と電話会談を行いました。双方は、緊迫する中東情勢が戦況にどう影響を与えるかについても注視しながら作戦を進めるとみられます。
ロシア大統領府は、プーチン大統領がウクライナと国境を接するロシア南部ロストフ州のロストフ・ナ・ドヌーにある軍司令部を訪問したと20日、発表しました。
プーチン大統領は、ゲラシモフ参謀総長から「作戦計画に従い任務を実施している」などと報告を受け、ロシア軍が今月に入りウクライナ東部での作戦を強化したとされる中、大統領みずから指示したとみられます。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は19日、アメリカのバイデン大統領と電話会談を行い、「勝利に必要なだけ支援するという強いシグナルをもらった」と述べました。
会談では、アメリカから供与された射程の長い地対地ミサイルATACMSが領土奪還に向けた追い風になると伝え、さらなる軍事支援ついても協議したとしています。
イスラエルとパレスチナの情勢が緊迫することで、ウクライナ侵攻に対する欧米側の関心が低下するとして、ウクライナは警戒しているとみられます。
双方は、中東情勢が戦況に影響を与えるかについても注視しながら作戦を進めるとみられます。
英国防省「米供与のミサイル攻撃 ロシア軍の作戦に影響も」
戦況を分析するイギリス国防省は20日、ウクライナ軍は、アメリカから供与された射程の長い地対地ミサイルATACMSを軍事作戦に使用して今月17日、ロシアが占拠する飛行場を攻撃し、南部ザポリージャ州のベルジャンシクで9機、東部ルハンシク州のルハンシクで5機のヘリコプターをそれぞれ破壊した可能性が高いと指摘しました。
このうちベルジャンシクの飛行場は、ロシア軍にとって南部戦線での後方の補給や攻撃、防衛の拠点として使用されていて、ロシア軍の作戦に影響を与える可能性があると分析しています。
また、現在のロシア側の軍需産業の製造能力を考えると、この損失について短期から中期的に代替することは難しいと指摘しています。
さらに、ロシア側は、今回の攻撃を受けて今後、最前線から司令部機能などを移転せざるを得なくなり、補給活動などにとっても負担が増大する可能性があると分析しています。
●プーチン氏、ロ南部司令部訪問 侵攻1年8カ月で軍引き締め 10/20
ロシア大統領府は20日、プーチン大統領が南部ロストフナドヌーの特別軍事作戦司令部を訪れ、ウクライナ侵攻を統括する総司令官兼務のゲラシモフ軍参謀総長らから戦況報告を受けたと発表した。タス通信によると、プーチン氏のロストフナドヌー訪問は、侵攻開始後で4回目。
プーチン氏は17、18両日に中国・北京を訪問。続いて立ち寄ったロシア中部ペルミからロストフナドヌーに入った。24日で侵攻から1年8カ月を迎えるのを前に、軍の引き締めを図った形だ。
●ロシアとハマスを同列に「近隣の民主主義国家を完全に破壊しようとしている」 10/20
米国のバイデン大統領は19日夜、ホワイトハウスの執務室から米国民向けのテレビ演説を行った。ロシアの侵略を受けるウクライナ、イスラム主義組織ハマスの攻撃を受けるイスラエル両国への軍事支援を巡り、20日に米議会に対して追加支援予算を一括要求すると表明した。ロシアとハマスを同列の脅威と位置づけ、「両者とも近隣の民主主義国家を完全に破壊しようとしている」と非難した。
バイデン氏は「イスラエルとウクライナでの成功は米国の安全保障にとって不可欠だ」とし、「ウクライナから立ち去り、イスラエルに背を向ければ、米国の指導力など全てを危険にさらす」と訴えた。追加予算は「賢明な投資だ」と説明し、国民、予算編成権を握る議会に理解を求めた。
バイデン氏は予算規模に触れなかったが、米メディアは今後1年で1000億ドル(約15兆円)規模と報じている。米国が「唯一の競争相手」と位置づける中国を念頭に、台湾への軍事支援も含まれる可能性がある。米政府が複数の国家脅威に関する支援予算を一括で議会に求めるのは異例だ。
9月末に成立した政府の暫定予算(つなぎ予算)では野党・共和党の反対でウクライナ支援予算が削除され、支援継続が危ぶまれている。政権は共和党が主張するイスラエル支援と同様の必要性を訴えることで、支援両立の実現を目指す。
バイデン氏は演説で、18日のイスラエル訪問時に、パレスチナ自治区ガザへの攻撃を重ねるベンヤミン・ネタニヤフ首相に、国際法に沿った行動を取り、民間人を可能な限り保護するよう求めたと語った。中東の安定に向け、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」を「あきらめない」とも述べた。17日にガザで発生した病院爆発については、イスラエルの攻撃が原因ではないと改めて指摘した。
ウクライナ情勢に関しては、ロシアの侵略を許せば「世界中の未来の侵略者たちが同じことを試みるだろう」と強調。「紛争と 混沌 のリスクはインド太平洋や中東など世界各地に広がる」と懸念を示した。
米大統領は、重要局面でオーバルオフィスと呼ばれる執務室から演説を行うことが慣例となっている。

 

●露、反戦派の元外務次官を「スパイ」指定 産経取材にも侵略批判 10/21
ロシア司法省は20日、ウクライナ侵略を批判してきた元露外務次官、ゲオルギー・クナーゼ氏(74)をスパイと同義の「外国の代理人」に指定したと発表した。クナーゼ氏は侵略開始直後の昨年3月、産経新聞の電話インタビューに応じ、プーチン露大統領を批判。また、侵略への加担を避けるためとして、良心に基づき露外務省を退職するよう現役外交官らに呼び掛けていた。
クナーゼ氏の「外国の代理人」指定は、ウクライナ侵略後、政権批判が事実上禁じられたロシアの言論環境の悪化を改めて浮き彫りにした。
露司法省はクナーゼ氏の「外国の代理人」指定の理由について「反露感情を形成する目的で、露公権力の決定や政策、露軍の活動に関する虚偽の情報を流布した。定期的に外国メディアにコメンテーターとして登場していた」などとした。クナーゼ氏は最近もウクライナメディアの取材に応じるなどしていた。
「外国の代理人」に指定された個人や団体は財政状況や活動内容が当局の厳しい監視下に置かれ、違反した場合は刑事罰などの対象となる。
露政権側は近年、自身に不都合な情報を発信する独立系メディアや人権団体などを続々と「外国の代理人」に指定。指定により活動停止に追い込まれる団体も出ており、欧米側からは言論弾圧だとする批判が出ている。
●バイデン大統領「ロシアが北朝鮮武器でウクライナ攻撃」 10/21
ロシアがウクライナ攻撃の武器確保のために北朝鮮に頼っていると、バイデン米大統領が19日(現地時間)、強調した。ロシアが北朝鮮の武器をウクライナ攻撃に使用しているか、使用しようとしていることをバイデン氏が直接明らかにしたのだ。
バイデン氏は、ホワイトハウスで行った国民向け演説で、「ウクライナは、米国が主導する世界50ヵ国の支援を受け、ロシア軍が占領した領土の半分以上を奪還した」とし、「一方、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナの都市と市民を脅かすための攻撃ドローンと弾薬を購入するためにイランと北朝鮮に頼っている」と述べた。
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は19日、訪朝したロシアのラブロフ外相と会談し、「安定的で未来志向的な新時代の朝ロ関係の百年の大計を構築しよう」と述べたと、北朝鮮の朝鮮中央通信が20日、伝えた。北朝鮮は、正恩氏とラブロフ氏が「地域および国際情勢に主導的に対処し、共同の努力で全ての方面において双務的連携を計画的に拡大していくことを議論した」とし、「見解の一致を見た」とも伝えた。
これにより、プーチン氏の訪朝が近いうちに実現するものと予想される。正恩氏とプーチン氏は、北朝鮮のウクライナ攻撃用武器供与やロシアの偵察衛星技術の提供など、武器と軍事技術の取引を超え、米国に対抗する長期的な共同戦線を構築するものとみられる。
これに先立ち、北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外相とラブロフ氏の会談では、経済、文化だけでなく、先進科学技術分野での協力事業についても話し合われたと、同通信は伝えた。ロシアが軍事偵察衛星、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、原子力潜水艦技術など、北朝鮮に先端軍事技術を移転することを議論した可能性を示唆したのだ。また、2024〜25年の交流計画書も締結したと同通信は報じた。専門家らは、「北朝鮮とロシアがこの期間、経済、エネルギー、技術協力で目に見える成果を出すという考えを示した」と見ている。
訪韓中のデニス・フランシス国連総会議長は20日、最近の北朝鮮とロシアの接近について、「休戦協定を違反したり、韓半島の安定・安全を損なうような措置や政策につながらないことを願う」と警告した。
朝鮮中央通信は20日、論評で、米軍の戦略爆撃機B−52H「ストラトフォートレス」の韓国初上陸について、「最初の消滅対象」と警告した。核武装が可能な米軍の代表的な戦略爆撃機であるB−52Hは前日、忠清北道清州(チュンチョンプクト・チョンジュ)の空軍基地に着陸した。
●民主主義国家の結束確認=米EU首脳、相次ぐ紛争で 10/21
バイデン米大統領は20日、訪米した欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長、ミシェル大統領とホワイトハウスで会談した。ロシアのウクライナ侵攻、パレスチナのイスラム組織ハマスのイスラエル攻撃と紛争が相次ぐ中、民主主義国家の結束を確認した。
会談の冒頭、バイデン氏は「われわれはウクライナ支援で共に立ち上がり、今はイスラエル支援で手を取り合っている」と表明。フォンデアライエン氏は「これらの紛争が示しているのは、民主主義国家は団結しなければならないということだ」と応じた。
会談後に発表した共同声明は、ハマスの攻撃を「残忍なテロ」と非難し、「国際人道法を含む国際法に従い、凶悪な攻撃に対するイスラエルの自衛権を確認する」と強調した。同時に、パレスチナ自治区ガザでの人道危機に懸念を示し、民間人保護の必要性を訴えた。ウクライナ支援の継続も改めて確認した。
バイデン氏は19日のテレビ演説で、ハマスとロシアのプーチン大統領を「近隣の民主主義国家を完全に消滅させようとしている共通点がある」と指摘。フォンデアライエン氏も19日の講演で「ハマスとロシアは似ている」と断じていた。
●中露首脳会談 世界の安定に寄与しない 10/21
「蜜月関係」をアピールすればするほど、そう演出せざるを得ない国情が浮かび上がる。中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が北京で首脳会談を行い、両国の結束を誇示した。
プーチン氏は中国の巨大経済圏構想「一帯一路」をテーマとした国際会合に招待され、演説を行った。ウクライナ侵略で国際刑事裁判所(ICC)から3月に逮捕状を出されて以降、旧ソ連圏以外では初の外国訪問となった。
ロシア同様、ICCに加盟していない中国だが、国際社会から強く非難されているプーチン氏を厚遇する姿勢には呆(あき)れかえるばかりである。
会談で習氏は「国際的な公平・正義を守り、世界の共同発展に貢献する力を促進したい」とプーチン氏に語りかけた。公平や正義を守るというのであれば、明確な国際法違反であるウクライナ侵略を非難し露軍の即時撤退を要求すべきだった。
中露両国は結託して、米国や国際秩序に対抗するつもりかもしれないが、国際法や人権を軽視し、力による現状変更を辞さない国家が国際社会から信頼を得られるはずはない。信頼されない国家が世界の安定に寄与することもあり得ない。
中国との対等な関係を強調するロシアだが、実情は異なる。米研究機関などによると、ロシアは2017年時点で1250億ドルの対中債務を抱えている。中国はロシアに「一帯一路」向け資金の3分の1を融資してきたが、米欧の対露制裁でほぼ全額が不良債権化しており、中国に頭が上がらない属国化≠指摘する声も出ている。
中国にも誤算が生じている。インフラ建設支援などで新興・途上国と連携する枠組み「一帯一路」は、中国の過剰な融資によって途上国が苦しむ「債務の罠(わな)」が取り沙汰され、当初の期待は警戒へ変わった。
中国は今回の会合に140カ国以上の代表が参加したと喧伝(けんでん)したが、首脳の出席は東南アジアやアフリカなど一部の国に限られた。ここへきて中国経済の成長鈍化がはっきりしてきた。これが中国共産党政権の土台を揺るがす可能性もある。
日本は米欧諸国と協力し、実のある支援で新興・途上国を引き込む動きを強めたい。それが中露の専制指導者の国際秩序攪乱(かくらん)を抑えることにつながる。
●米財政赤字254兆円、3年ぶり拡大…ウクライナ・イスラエル支援 10/21
米財務省は20日、2023会計年度(22年10月〜23年9月)の財政赤字が前年度比23%増の1兆6950億ドル(約254兆円)になったと発表した。赤字の拡大は3年ぶりだ。ウクライナやガザ情勢を踏まえて追加予算を議会に要請しているバイデン政権と、大幅な歳出削減を求める野党・共和党との対立がさらに激しくなる可能性がある。
赤字額は2000年以降では3番目の大きさだった。法人所得税や個人所得税などの徴収額が想定を下回り、歳入は約9%減の4兆4393億ドルだった。歳出は約2%減の6兆1344億ドルだったが、利払い費が拡大した。国内総生産(GDP)と比べた財政赤字の割合は6・3%となり、前年度から0・9ポイント拡大した。
バイデン政権はロシアの侵略を受けるウクライナや、イスラム主義組織ハマスに攻撃されているイスラエルへの軍事支援に向け、米議会に総額1000億ドルの緊急予算の承認を求めている。戦況次第では、支援額はさらに膨らむ可能性がある。
米議会は9月、24会計年度予算を巡り、11月17日までの暫定予算(つなぎ予算)を可決したが、本予算の成立に向けた協議はその後も難航している。
●米EU首脳「ウクライナ支援継続」 中東と同時対処 10/21
バイデン米大統領は20日、ホワイトハウスで欧州連合(EU)のミシェル大統領やフォンデアライエン欧州委員長と会談した。イスラエルの自衛権を支持し、不安定な中東情勢下でもウクライナ支援を続けると確認した。
バイデン氏は会談冒頭でイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲攻撃に触れ「我々はイスラエル支持で結束する」と強調した。ミシェル氏はバイデン氏のイスラエル訪問に関し「個人的関与に感謝する」と語り、同国をめぐる協力を申し合わせた。
会談後の共同声明に「国際人道法を含む国際法に整合的な形で凶悪な攻撃に対するイスラエルの自衛権を支持する」と明記した。地上侵攻を計画するイスラエル軍に民間人の被害を最小限にとどめるよう促した。
「地域の緊張拡大阻止が重要だ」とも言及し、イスラエルやパレスチナ自治区ガザの戦闘が周辺に波及しないよう取り組むとした。周辺国の武装勢力を支援してイスラエルと敵対するイランに関し、EUはパイプを持っており直接外交の余地がある。
フォンデアライエン氏は会談でロシアによるウクライナ侵攻と合わせ「これらの紛争は民主主義国が団結しなければならないことを示す」と語った。「中東での出来事は我々の強固なウクライナ支援を妨げない」と断言した。
共同声明に「ウクライナが主権や領土の一体性を守るために必要なだけ支援する」と盛り込み、支援を緩めない方針をアピールした。
バイデン政権はイスラエルとウクライナ支援を両立させる方針だが、野党・共和党の協力が必須条件となっており、実行が見通しにくい面がある。
● イスラエル支援で割れるアメリカの世論、武器支援に半数が反対… 10/21
バイデン米大統領は19日のテレビ演説で、世界での米国の役割を重ねて強調し、ウクライナとイスラエルに対する支援について議会や国民に理解を求めた。イスラエルへの軍事支援を巡る米国内の世論は大きく割れ、予算を審議する下院は議長不在の機能不全が続く。バイデン氏が訴える国内の団結にはほど遠いのが実態だ。
「米国のリーダーシップは世界をまとめ上げるものだ」「米国は世界を照らす灯台だ」――。
バイデン氏は約15分間の演説で、米国が世界秩序を守る超大国だと重ねて強調し、ロシアの侵略を受けるウクライナとイスラム主義組織ハマスの攻撃を受けたイスラエルの両方を支える必要性を訴えた。
演説場所は歴代大統領が重要局面で使ってきた「オーバルオフィス」と呼ばれるホワイトハウスの執務室が選ばれた。バイデン氏の執務室からの演説は今年6月以来、2度目だった。前回は米史上初の債務不履行(デフォルト)の危機に直面した時だった。
バイデン氏は、18日に自らイスラエルを訪問し、軍事支援の強化を約束しており、米国の世界での役割を改めて説明することで国民の理解を得ようとしたとみられる。
ただ、イスラエル支援を巡る世論は割れている。米CBSニュースの世論調査によると、イスラエルに対する武器支援に約半数が反対した。ハマスが実効支配するガザへの空爆で、多くの民間人が犠牲になっていることが影響しているとみられる。
ワシントンでは、ホワイトハウスや議会の周辺で停戦を求めるデモが相次いでいる。
国務省で同盟国などへの武器売却を担当する政治軍事局に11年間、所属していた男性が最近、イスラエルへの軍事支援に反発して辞職した。
一方、バイデン氏は議会に要求すると表明した緊急予算に、イスラエル向けの支援だけでなく、ウクライナ支援を組み合わせるしたたかさも見せた。野党・共和党にはウクライナ支援への消極姿勢が広がっている。
下院で多数派の共和党は前議長の解任から2週間が経過しても新議長を選出できずにいる。バイデン氏は演説で「米国内に分裂があるのは知っている。それを乗り越えなければならない」と述べたが、緊急予算は審議の開始時期すら見通せない状況だ。
●実は、世界の国の半数近くがウクライナではなくロシアを支持していた 10/21
ウクライナへ軍事侵攻したことで22年4月に国連人権理事会の理事国資格停止処分を受けていたロシア。だが、返り咲きを目指し、理事国を入れ替える選挙に立候補したものの、10日に行われた投票であえなく落選。この結果自体は順当とも思えるが、それでも予想以上に賛成票が集まったことに世界中で驚きの声が上がっている。
当選には国連に加盟する193カ国中、過半数の97カ国以上の支持が必要で、ロシアの理事国入りを支持したのは全体の43%にあたる83カ国。秘密投票のため、どの国がロシアを支持したのかは不明だが、欧米圏以外の地域から多数の賛成票が投じられたようだ。
「ウクライナは被害者、ロシアとプーチン大統領は悪という図式で日本のメディアは報じていますが、西側以外の国の捉え方はそれとは異なっています」(国際ジャーナリスト)
実際、中国やイラン、北朝鮮にアフガニスタンといった反米国家は、早い段階からロシア支持、あるいはロシア寄りの姿勢を打ち出している。また、プーチン大統領は国際刑事裁判所から逮捕状が出ており、国外で身柄を拘束される可能性があるが、「彼が入国しても逮捕されない」と発言したのはブラジルのルラ大統領。ロシアやプーチン大統領を擁護する発言を繰り返している。ブラジル以外でも、アルゼンチン、ベネズエラ、キューバなど、中南米の多くの国がロシア寄りだ。
「アフリカ諸国も大半が親ロシア。プーチン大統領は今年7月、アフリカの『40カ国以上と軍事協定』を結んだと述べており、これらの国が賛成に回った可能性が高い。他にも中東は親米のイスラエルやサウジアラビアをはじめ、大半の国が中立。シンガポール以外のASEAN諸国、インドなども同様の立場です。ただし、中立を謳いながらもロシア寄りの国も多く、一部の国が賛成票を投じたのだと思われます」(同)
孤立どころか国連加盟国の4割以上の国が支持。それを考えれば、西側に屈することなくロシアとプーチン大統領が強気な姿勢を貫くのは当然のことなのかもしれない。  
●自由と秩序乱す中ロ連携は看過できない 10/21
中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が今年2度目となる首脳会談を北京で開き、米国に対抗する陣営として結束と蜜月ぶりをアピールした。
ウクライナに加え、中東情勢も緊迫の度合いを増しているさなかだ。中ロの連携強化が世界の分断をあおり、自由と「法の支配」という国際秩序をこれ以上揺るがすとすれば看過できない。
首脳会談は今年3月に習氏がモスクワを訪問して以来。同氏が広域経済圏構想「一帯一路」を提唱して10周年を記念する会議に合わせてプーチン氏を招いた。
プーチン氏は会談後に2国間関係のほか、ウクライナ情勢やパレスチナとイスラエルの軍事衝突で緊張する中東情勢などで意見交換したことを明らかにした。
中東情勢について中ロはイスラム組織ハマスとイスラエル双方に停戦を呼びかける一方で、緊迫化のきっかけとなったハマスの大規模攻撃についてはテロと位置づけず、イスラエルとその後ろ盾である米国批判を強めている。
米国をけん制するためにテロを認めず擁護しているのであれば、筋違いだ。国連安全保障理事会の常任理事国としての責務を果たすことを中ロには求める。
ウクライナ情勢でも中国の責任は大きい。2022年2月、北京五輪の開会式の際に中ロ首脳会談を開き、安全保障を含む両国の連携を確認した。ロシアが侵攻に踏み切ったのはその直後だ。
今回も習氏は国際刑事裁判所(ICC)がプーチン氏に逮捕状を出すなか同氏を主賓級でもてなした。「一帯一路」の成功を宣伝するために利用したのだろうが、結果的に侵攻を後押ししている。このような振る舞いは国際社会の信頼を失うだけでなく、中ロと米国を中心とする西側陣営との溝を深めるだけだ。
気になるのは北朝鮮だ。今年9月に金正恩(キム・ジョンウン)総書記がロシア極東を訪問したのに続き、プーチン氏の訪朝が取り沙汰されている。中ロ首脳会談でも北朝鮮について意見交換した可能性がある。3カ国の連携の行方を注視する必要がある。
一方で分断を防ぐ試みは不可欠だ。米中は今年11月の首脳会談の実現に向け調整に入った。反目したままでは偶発的な事件が衝突に発展しかねない。制御できるうちに対話を再開し、安定と発展に貢献するのが大国の役目だ。
●全領土奪還まで交渉応じず ロシアは「中国の手下」 10/21
ウクライナ政府で安全保障政策の中枢を担うオレクシー・ダニロフ国家安全保障・国防会議書記は21日までに、ロシア占領下の自国領土を全て奪還する見通しがない限り、停戦交渉には応じないと明言した。首都キーウ(キエフ)で共同通信と単独会見した。ロシア本土の軍事施設への攻撃を継続すると表明。中国に接近するロシアは「中国の手下になった」と指摘した。
ロシアは併合したクリミア半島と東部・南部の4州支配の維持を図り、激しい攻撃を続けている。ウクライナの国家安保・国防会議は軍司令官や国防相、外相らで構成されるゼレンスキー大統領直属の最重要機関。同会議を取り仕切るダニロフ氏が全領土奪還の決意を表明したことで、戦争の長期化は避けられない状況がより明確になった。
ダニロフ氏は「クリミアを含む国土からロシアが去ることなく、何を話せるというのか」と訴えた。プーチン大統領を「テロリストだ」と非難し「プーチンという名前のヒトラーがわれわれの子どもたち500人を殺害した」と断じた。
● ウクライナ “東部でロシアが新たな攻撃か”激しい攻防続く 10/21
ロシア軍が侵攻を続けるウクライナでは、東部でロシア側が大きな損失を出しながらも新たな攻撃を仕掛けていると指摘されるなど、領土奪還を目指すウクライナ側との間で激しい攻防が続いているものとみられます。
ウクライナ軍はロシア側による激しい攻撃が続き、東部ドネツク州ではロシア側によるミサイル攻撃で教育施設が破壊されたほか、各地で一般の住宅などもミサイルや砲撃などによる攻撃を受け、市民に死傷者が出たと21日、発表しました。
また、ロシア軍が攻撃を強めているウクライナ側の拠点、東部ドネツク州のアウディーイウカでは、ロシア側が周辺を取り囲もうとしているもののウクライナ軍が持ちこたえ、ロシア側に大きな損失を与えているとしています。
アウディーイウカ周辺での攻防をめぐって、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は20日の分析で、ロシア軍が新たな攻撃を仕掛けてわずかに前進したとの見方を示すとともに、ロシア側が大きな損失にもかかわらず、この地域での攻撃に傾倒しているとみられると指摘していて、周辺では激しい戦闘が続いているものとみられます。
一方、ウクライナのシュミハリ首相は20日、SNSでロシア側が大規模攻撃のためにミサイルをため込んでいる可能性があるとの認識を示しました。
これは、去年の冬、ロシア軍によるインフラ施設への攻撃によって深刻な電力不足に陥ったことを念頭にしたもので、本格的な冬の訪れを前に備えを続ける必要性を強調しました。
●ウクライナ、東部アブデーフカでロシアの猛攻撃退=ゼレンスキー氏 10/21
ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、同国軍が東部ドネツク州の町アブデーフカでロシア軍の新たな猛攻を退け、激しい戦闘の中で地歩を固めていると述べた。
ゼレンスキー氏と軍幹部らは南部ヘルソン州を訪れ、同州やアブデーフカ周辺、その北部にありロシア軍が攻撃を強化しているクピャンスクについて協議した。
同氏はメッセージアプリ「テレグラム」に投稿した動画で「ここ数日、ロシア側の損害は実に甚大だ」とした上で、「強力な国防を維持し、占領者を連日撃破している全ての兵士に感謝する」と述べた。
大統領府は、ロシア軍のアブデーフカ攻撃により人員と装備の「記録的な損害」を被ったと述べたが、その程度についての詳細は明らかにしなかった。
ロイターは戦況を確認できなかった。
ロシア政府はアブデーフカ周辺の戦況は自軍の方が有利だと主張している。一方ウクライナ軍によると、戦闘は前線に沿って激化しており、この24時間で約90件の衝突があったという。これは、1週間前の平均である約60件を上回っている。

 

●カイロ平和サミット 上川外相も出席 イスラエルは不参加 10/22
上川外相はエジプトを訪問し、ガザ地区の緊張緩和などについて話しあう「カイロ平和サミット」に参加した。
この会議は、エジプト政府が呼びかけて、パレスチナのアッバス議長や国連のグテーレス事務総長が参加している。
21日は、人道危機が深刻化するガザ地区への支援などについて協議が行われた。
上川外相はカイロで会見し、「ハマスによるテロ攻撃を断固非難する」考えを示した。
さらに、ガザ地区の外国人退避の実現が優先課題だとしたうえで、現地の必要に沿った早急な支援を検討すると述べた。
一方で、地元メディアなどによると、平和サミットはアラブ諸国の主導で行われたため、イスラエルは出席しておらず、アメリカも閣僚の派遣を見送っている。
会議でも、アラブ諸国はイスラエル軍によるガザ地区への空爆停止を求める一方、欧米は人道支援の必要性を訴えるなどして温度差があり、停戦への糸口は見つけることができず閉幕した。
●ロシア、ウクライナの郵便施設をミサイル攻撃 6人死亡 10/22
ウクライナ東部ハルキウ(Kharkiv)州で21日、郵便施設がロシアのミサイル攻撃を受け、少なくとも職員6人が死亡、16人が負傷した。当局が明らかにした。
ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領はソーシャルメディアで、郵便企業ノバ・ポシュタ(Nova Poshta)のロゴの入ったコンテナとがれきに囲まれた、大きく損傷した倉庫とみられる動画を公開した。
ハルキウ州のオレグ・シネグボウ(Oleg Sinegubov)知事は「占領者の攻撃で6人が死亡、14人が負傷した。全員がノバ・ポシュタの職員で、施設内にいた」「死傷者の年齢は19〜42歳で、爆風や飛んできた破片で負傷した」と述べた。
シネグボウ氏によると、負傷者は病院で手当を受けているが、うち7人が重体だという。
その後の内務省の発表で、負傷者は16人に増えた。
●「米ロの拒否権」 ガザ地区における人道危機に、国際社会は何ができるのか 10/22
パレスチナ自治区ガザでの人道危機は日増しに深刻さを増していますが、停戦の兆しは見えていません。背景には大国アメリカの存在がありました。
人道危機が広がるガザでは…
中東、パレスチナ自治区ガザ。イスラエルによる激しい空爆が続いています。
ガザ地区の少年「家も全部壊され、家族もみんな死んじゃった…」
攻撃に巻き込まれる民間人は日に日に増え、子どもたちの犠牲者もすでに数百人に達するなど“人道的危機”は深刻さを増しています。
ガザ地区の少女「助けてくれる人も、後を追いかけてくれる人もいない。私たちはどうやって生きていけばいいの?教えて…」
国連安保理で何が?
こうした状況を受けて10月18日、国連安保理では人道支援のための、戦闘の一時停止を求める決議案が採決にかけられます。ところが…
安保理議長「決議案は否決されました」
日本など12か国が賛成したにもかかわらず、アメリカのみが反対、「拒否権」を行使し、決議案は葬られます。アメリカはその理由を…
米・トーマスグリーンフィールド国連大使「アメリカはイスラエルの自衛権に言及していないことに失望している」
パレスチナの国連大使からは怒りの声が…
パレスチナ・マンスール国連大使「(アメリカは)信用や権威を失い、ガザでの惨事に責任を負うことになる」
アメリカの「拒否権」行使は偽善?
さらに、アメリカを強く非難したのがロシアでした。
ロシア・ネベンジャ国連大使「アメリカの偽善とダブルスタンダードを目の当たりにした」
ロシアが指摘したアメリカの偽善。
それはウクライナ侵攻を巡り、撤退を求める決議案に、ロシアが拒否権を行使した際…
米・トーマスグリーンフィールド国連大使「思慮に欠けた無責任な常任理事国(ロシア)が『拒否権』を乱用し隣国を攻撃して、国連と国際社会のシステムを破壊している」
アメリカが、ロシアを厳しく批判していたからです。
そもそも「拒否権」とは国連の常任理事国5か国に与えられた特権で、一か国でも行使すれば、安保理決議は否決されてしまいます。
一方、ヨルダン川西岸地区では…
10月18日、ガザから約70キロ離れたヨルダン川西岸地区では…
イスラエルへの抗議行動をしていた、子どもを含むパレスチナ人数百人に向け、イスラエル兵が発砲したのです。
イスラエルの「入植活動」とは?
そのヨルダン川西岸地区は、以前からイスラエルが、国際法に違反するとされる「入植活動」(占領地への居住)を続けており、そこに住むユダヤ人はすでに70万人以上ともいわれます。
こうした違法な入植や、パレスチナ人に対する人権侵害などで安保理に出された非難決議に、アメリカは繰り返し拒否権を行使。
2000年以降でアメリカが拒否権を行使したのは15回。うち13回がパレスチナ関連で、アメリカはイスラエル擁護の姿勢を変えません。
10月20日、バイデン大統領が行った国民向け演説でも、ハマスと、プーチン大統領を並べて非難し、イスラエル支持を正当化。
米・バイデン大統領「テロリスト(ハマス)と独裁者(プーチン大統領)が報いを受けなければ、さらなる混乱と死、そして破壊を引き起こす」
なぜアメリカは、イスラエルを擁護するのか?
渡辺靖 教授(慶應義塾大学・現代アメリカ政治)「ユダヤ・ロビーというのは全米で最大規模の強さを持っている。アメリカの政治家にとっては、大統領選挙戦においても、非常に大きな影響力を持っている。そういう意味ではイスラエル支持というのは政治的に譲れない一線」
しかし、ガザの惨状を受け、アメリカ国内からも停戦を望む声が高まります。
デモ参加者「これ以上の虐殺を許してはならない。私たちの声を聞いて欲しい!」
10月18日、連邦議会前では、ユダヤ系市民にまでその声が広がり…
ユダヤ系の参加者「ユダヤを口実にするな!」「今すぐ停戦を!」
一部が議会の中に座り込む、異例の事態に発展したのです。
にもかかわらず、解決策を話しあうべき国連は、現在、アメリカの拒否権行使によって機能不全に陥ったまま。
渡辺靖 教授(慶應大学・現代アメリカ政治)「アメリカの力が失われつつあることもありますが、アメリカが自由を掲げる、民主主義を掲げると言っても、それはすべてダブルスタンダードで、偽善で、そういう不信感が中国からロシア、そして中東にまで横に繋がってきている」
大国の拒否権によって、何も手が打てない国連の現状。私たちはそれをどう受け止めたらいいのでしょうか―。
●プーチン大統領、「一帯一路」国際協力サミットフォーラムの成果に期待 10/22
ロシアのプーチン大統領がこのほど、クレムリン宮殿で中央広播電視総台(チャイナ・メディア・グループ/CMG)記者の独占インタビューを受けました。
今年3月に発表された中ロ共同声明によると、中ロ関係はすでに過去最高レベルに達しています。このほど行われたバルダイ会議でプーチン大統領は「ロシアと中国の協力は世界の安定にとって極めて重要だ」と発言していました。
中ロ関係の位置づけとその将来の発展について、プーチン大統領はインタビューの中で「両国関係は現在の国際情勢の下で形成されたものではなく、現在の世界政治情勢における『その場しのぎの方策』でもない。両国関係は20年間にわたって心血を注いで築き上げられ、安定的に発展してきた成果であり、一歩一歩が両国自身の利益に基づくものである。これは双方の共通認識だ。両国関係を引き続き推進していく中で、ロ中双方が常に互いの意見に耳を傾け、互いの利益に配慮する。われわれは歴史的に残された複雑な問題を含め、すべての問題で折衷案を見出すよう努力してきた。両国関係は常に善意に基づいており、国境画定問題の解決においても同様だ」と述べました。プーチン大統領によりますと、ロシアは中国にとって最大のエネルギー供給国で、供給額は1位となっています。また、中国はロシアにとって最大の貿易相手国で、ロシアの貿易額は中国にとって第6位になっています。これについてプーチン大統領は「ロシアと中国の双方は手を携えて正しい方向に向かって進んでいる。これは両国人民の利益に合致すると信じている」と述べました。
北京で開催された「一帯一路」国際協力サミットフォーラムについては「互恵協力プロジェクトの数は増え続けている。これらのプロジェクトは、『一帯一路』共同建設構想に参加し、融資を受けた国々に利益をもたらすだけでなく、中国にもプラスになる。中国もこれらのプロジェクトの実施から成果を得て、より良く、より多くの発展条件を獲得しているからだ。すべては互恵協力の基礎の上で進められている。ロシア政府が提出した各分野での『一帯一路』共同建設に関する協力提案は多数ページに及び、非常に細かくはっきりと書かれている。各プロジェクトは今後数十年の仕事となるため、非常に期待している」と語りました。
●ロシア、24時間で戦車55両・兵士1380人損失か アウジーイウカ攻勢継続 10/22
ウクライナ侵攻を続けるロシア軍はつい最近、4日間で戦車8両を含め、少なくとも68両の装甲車を失った。1年8カ月に及ぶウクライナ侵攻でロシア軍は苦戦しているが、そうした中でも今回の損失は特に大きい。同期間にウクライナ軍が被った損失は、ロシア軍の10分の1とみられている。
68両という損失車両の数は、オープンソースの情報を分析しているアンドルー・パーペチュアがソーシャルメディアに投稿された写真や動画で確認したもののみが含まれている。ロシア軍の実際の損失は、これよりもかなり大きいことはほぼ間違いないだろう。
この戦闘についてウクライナ軍参謀本部は、19日から20日にかけた24時間で戦車55両を含む175両もの装甲車を破壊したと発表した。昨年2月以来、ロシア軍が1日に失う戦車は平均してわずか3両だった。同軍はまた、アウジーイウカ上空で少なくとも戦闘機5機を失ったと報じられている。
兵士の死傷者数は車両の損失に比例している。ウクライナ軍参謀本部は、20日までの24時間でロシア兵1380人が死亡したと発表。ロシアの侵攻以来、双方における1日の犠牲者数としては最多規模だ。
ロシア側の犠牲者増加の要因は明らかだ。ここ数週間、各兵力最大2000人の7、8個の連隊と旅団が、ウクライナで最も防御が固められている都市のひとつであるアウジーイウカを包囲し、防御を切り崩そうと試み続けるも、失敗している。ウクライナ東部ドンバス地方にあるアウジーイウカは、ロシアの占領下にあるドネツクの北西に位置している。
ロシア軍は連日、戦車や戦闘車両の長い隊列を組んで挑んでいる。来る日も来る日も地雷原を突っ切り、ミサイルで狙われるキルゾーンに入り込み、大砲の砲撃を受け、そして爆発物を積んだドローンの餌食になっている。
それでもなお、ロシア軍は部隊を送り続けている。
これは、ウクライナ側のアウジーイウカ守備隊を側面から攻撃して切り崩し、最終的には撃破することを目指したものだが、失敗続きのこの作戦にロシア軍がなぜこれほどの兵力と車両を投入するのかは、はっきりしない。ウクライナ軍はアウジーイウカに少なくとも2個の旅団と連隊、付属の大隊を展開している。
ロシア軍の指揮官らは、ウクライナ軍が6月に始めた南部での反転攻勢の強化を阻止するために、ウクライナ軍の旅団を多大な犠牲を伴う戦いに引き込もうとしている可能性がある。ウクライナ軍はこの反攻作戦で、ロシアが占領しているメリトポリの北側に伸びる軸と、さらに東側のモクリヤリ川沿いに伸びる軸で、少なくとも約16km前進した。
ウクライナ軍はまた、ドニプロ川の左岸や東部バフムートの南でも前進している。
アウジーイウカの攻撃が本当にウクライナ軍の戦力を引き付けることを意図したものだとすれば、それはおそらく失敗している。「ウクライナ当局はすでに、アウジーイウカへの攻撃は戦力を引くための作戦だと認識しており、この軸にウクライナ軍が兵士を過度に投入することはないだろう」と米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は指摘した。
もしかするとこの攻撃は、引き付けの作戦ではないかもしれない。ロシアは単に、冬の到来を前にして、大規模な攻撃の機会が減少する中で勝利を収めようと必死になっているだけなのかもしれない。アウジーイウカの戦いで重要なのは、アウジーイウカ自体ではない可能性がある。
それはある意味、筋が通っているものの、実際には無意味な行為だ。ISWは「仮にアウジーイウカを掌握したとしても、ドネツク州の他の地域へ進軍する新たなルートが開かれることはない」と説明している。
だが、ロシアがアウジーイウカを象徴的な価値のために狙ったのだとすれば、それはひどい誤算だった。多くの血が流れた作戦が始まって2週間が経過した今、アウジーイウカが象徴しているのは、ロシア兵の死と大破した戦車だけだ。
攻勢の初日にロシア軍は撤退することもできただろう。ISWの推定では、ロシア軍は少なくとも45両の戦車や装甲車両を失った。だが、ロシア軍は攻勢を続けた。中隊や大隊が全滅しても、指揮官たちは気にしなかったようだ。
その意味で、ロシア軍のアウジーイウカでの作戦は、今年初めの東部ドネツク州ブフレダールでの作戦と不気味なほど類似している。ドネツクの南西約40kmに位置するブフレダールでは、ロシア軍の海兵隊が数週間、ひっきりなしにウクライナ軍の守備隊に猛攻撃をかけた。
ウクライナ側は、突撃隊を砲撃。ある交差点には、ロシア軍がウクライナ軍の攻撃に対応できなかった痕跡が残されていた。ウクライナ軍が数週間にわたってロシア軍に対する待ち伏せ攻撃を繰り返したこの交差点には、破壊された十数両の戦車や戦闘車両の残骸が散らばっていた。
激戦を経たブフレダールはいま、ウクライナ側にある。ロシア軍が制圧しようとできる限りの攻勢をかけているにもかかわらず、アウジーイウカも同様だ。
この戦いがどうなるかは分からない。ロシア軍は昨冬、ブフレダールの占領に失敗し、2つの海兵隊旅団の大部分を無駄に失った。だが春には、ドネツクの北約48kmに位置するバフムート周辺での戦いで、それより多くの犠牲を払いつつも、勝利を収めた。ウクライナ軍の旅団は時間を稼ぎ、ロシア軍に死傷者を出しながらバフムートから撤退したため、ロシア側にとってこの勝利は割に合わないものとなった。
キルゾーンが待ち受けるアウジーイウカに連隊を投入し続ければ、ロシア軍は最終的には同市を制圧できるかもしれない。だが、大きな損失を被った状態では、約970kmに及ぶ前線での作戦に支障をきたしかねない。
「この速い死傷ペースが続く限り、ロシア軍は効果的な攻勢をかけるのに必要とされる水準を満たせるよう、新兵を十分に訓練することができなくなる」と英王立防衛安全保障研究所は指摘している。
●ウクライナ軍 南部ドニプロ川東岸地域で大規模な作戦を展開か 10/22
ウクライナ軍はロシア側が占領を続ける南部のドニプロ川の東岸地域で大規模な作戦を展開しているとみられ、集落に部隊を前進させたという分析も出ていて、今後の反転攻勢の足がかりに出来るかが焦点となります。
ウクライナ軍はこのところ、南部ヘルソン州を流れるドニプロ川で作戦を展開し、川を渡ってロシア側が占領を続ける東岸地域で反転攻勢を続けているとみられています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は20日、ウクライナ軍が東岸で大規模な作戦を続け、集落に部隊を前進させたという分析を示しました。
また、イギリスの公共放送BBCは21日、ドニプロ川の東岸で戦うウクライナ軍の兵士の話として、「集落を確保できれば、そこを拠点にロシア軍の部隊や補給路を分断するためのさらなる大規模な作戦を展開できるようになる」とする見方を伝えていて、今後の反転攻勢の足がかりに出来るかが焦点となります。
一方、ウクライナ各地では21日にかけて、ロシア軍のミサイルなどによる攻撃があり、住宅や教育施設などに被害が相次ぎました。
今回の攻撃についてウクライナ軍の報道官は21日、地元メディアに対し、ミサイルと航空機から投下する誘導式の爆弾、そして無人機を同時に使う新たな戦術が用いられたと指摘しました。
その上で、「ウクライナの防空システムに対応させず、攻撃の成果を最大化することが目的だった」として警戒感を示しています。
●イスラエル・パレスチナ 米世論、軍事行動への賛意まだら 10/22
バイデン米大統領が19日、国民に向けて演説した。「オーバルオフィス」と呼ばれる大統領執務室からの演説は、戦争や重大な事件、主要政策の説明など限られた機会に行われ、重要な意味を持つ。今回の演説の背景にも、イスラエルへの支援や、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援継続を巡って国内世論が割れているという現状がある。
米国では、イスラム組織ハマスによる攻撃を受けたイスラエルへの同情や支持は強い。CNNテレビが12、13両日に実施した世論調査によると、ハマスによる7日の攻撃について、71%がイスラエル国民に「深く同情する」と答えた。一方、パレスチナの人々については「深く同情」との回答は41%にとどまった。 ・・・
●極右首相に安心感 メローニ氏就任1年 イタリア 10/22
イタリアのメローニ首相(46)が就任して22日で1年。
ファシスト党の流れをくむ極右「イタリアの同胞」の党首だけに、当初は「欧州で最も危険な女性」(ドイツ誌)と警戒された。しかし、ロシアの侵攻に直面したウクライナへの支援で米国や他の欧州諸国と足並みをそろえる手堅い外交を展開。西側諸国に安心感を与えたほか、国内世論の支持も厚く、安定した政権運営を続けている。
「われわれは火星人ではない。生身の人間だ」。イタリアで最初の女性首相となったメローニ氏は昨年11月、初外遊で訪れたベルギー・ブリュッセルの欧州連合(EU)本部で記者団にこう語った。政治信条が異なっても、会って話せば分かり合えるという趣旨だ。
かつて「反ユーロ」などの極端な主張を唱えた欧州の極右政党の多くは穏健化し、一部が政権参画するまでになった。メローニ氏も暴力・専制のファシズムに「郷愁はない」と強調しつつ、野党時代のEU批判を控えて各国との協調をアピールする。
ウクライナ支援では、イタリアがフランスと共同開発した防空システムを供与。侵攻開始1年の今年2月、メローニ氏はウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問し、ゼレンスキー大統領に「全面支援」を約束した。イタリアは対ロシア制裁を巡るEUの結束に水を差すと危ぶまれたこともあったが、杞憂(きゆう)に終わっている。
一方、公約に掲げた不法移民の阻止は実現に程遠い。中東や北アフリカから密航船でイタリアに到着する入国者は今年に入って急増。見かねたEUが海上監視の強化に乗り出す事態となった。
「もうけ過ぎ」とされる銀行を対象とした「超過利潤税」では失態を演じた。政権による8月の導入発表後、イタリア主要行の株価は一時10%近く急落。これを受けて課税規模をトーンダウンするなど、懸念の払拭に追われた。巨額の公的債務を抱えながら中・低所得層向けに減税を実施し、財政赤字の増大を容認しようとする姿勢も金融市場で不安視されている。
先進7カ国(G7)でイタリアが唯一参加した中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に関しては離脱を検討中。来年はG7議長国として存在感を発揮できるか、メローニ氏の手腕が問われそうだ。  
●櫻井よしこ氏が指摘「一帯一路は基本的に失敗」参加国は“債務の罠”に 10/22
10月18日から北京で2日間にわたって開かれた、中国主導の経済圏構想「一帯一路」の国際フォーラムで、習近平国家主席は「より多くの成果を得た」と強調し、実績をアピールした。
22日のフジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』では、今回の国際フォーラムをテーマに議論。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は「一帯一路計画は基本的に失敗したというふうに見ていい」と断言した。
理由について、櫻井氏は、米国のエイドデータ研究所の調査を引用し、一帯一路の参加国のうち42カ国がGDPの10%以上の債務を抱えていわゆる「債務の罠」に陥っていることに言及。それらの国は債務を返せないため、それが中国に跳ね返ってくる、と指摘した。
習氏はフォーラムで「質の高い一帯一路を目指す」と強調し、そのために「8項目の行動」を明らかにした。番組では、この8項目に含まれた「カスピ海を横断する国際輸送路のインフラ建設への投資」に注目。この国際輸送路は、ロシアを通過しないことなどから欧州諸国からも注目されているという。ただ、元外交官で内閣官房参与の宮家邦彦氏は「これも量を増やしてるだけだ」との認識を示し、「こんな人のいないところにこれだけの投資をして果たしてペイするのか。実現可能性は高いとは思わない」と切り捨てた。
以下、番組での主なやりとり。
松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員)「米国のヒラリー・クリントン元国務長官は(番組単独インタビューの中で)「中国がロシアを従属国にしようとしている」と述べた。今回、習近平国家主席が提唱した「一帯一路」の国際フォーラムにロシアのプーチン大統領が参加した。プーチン氏がウクライナ侵攻後に国外に出るのは、旧ソ連構成国を除いては初めてということで注目された。実際は、一帯一路国際フォーラムに参加した各国首脳の人数は前回の37カ国から22カ国へと減少している。特にヨーロッパはハンガリーだけで、G7(主要7カ国)で唯一参加していたイタリアはすでに(構想からの)離脱を中国側に伝えたという報道がある。一帯一路はすでに行き詰まっているのか。どう見るべきか。」
櫻井よしこ氏(ジャーナリスト・国家基本問題研究所理事長)「かなり行き詰まっていると思う。習近平氏が総書記になったのが2012年、翌年13年にこの一帯一路を提唱してちょうど10年になる。この10年間で彼らは(日本円で)だいたい36兆円分の投資をしていると聞いている。アジアインフラ投資銀行(AIID)などを通して6兆円とか、その他かなりの金を投資して中国のためのこの経済活動を世界中に広げようとしたわけだが、中国のための経済活動で、援助を受ける国のことは考えていない。そのため債務の罠のようなことが起きる。米国のエイドデータ研究所によると、中国の一帯一路に参加した国々の中のだいたい42カ国が国民総生産(GDP)の10%以上の債務を抱えて、いわゆる「債務の罠」に陥っているという見通しというか、推測がある。債務の罠に陥った国は債務を返せないから、中国に跳ね返ってくる。この一帯一路計画は基本的に失敗したと見ていいと思う。」
梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー)「習主席は一帯一路フォーラムで新たなルート、すなわちカスピ海を横断するルートに積極投資を行うと発表した。カザフスタンとアゼルバイジャンなどが欧州への輸出を念頭に開発を進めてきたルートだという。カザフスタンはユーラシア大陸でロシアに次ぐ天然ガスと石油の宝庫、アゼルバイジャンは輸出の9割を天然ガスと石油が占める資源大国だ。ロシアによるウクライナ侵攻後、こうしたロシアを回避する物流ルートに世界が注目をしているという。物流ルートには当然モノが集まり、人が集まり、金が集まってくる。ロシアを回避する形となるこのルートについて習氏は、プーチン氏がいる前で、一帯一路の今後の取り組みの第一項目にあげた。」
松山キャスター「習氏は一帯一路計画についてはこれから「量から質」に転換していくのだと、もっと質のいい投資を行っていくのだという考えも示した。今回新たなルートを発表した思惑について。」
宮家邦彦氏(元外交官・内閣官房参与)「これも量を増やしてるだけだ。質が本当にいいのだったら、もうとっくに投資が行われ、動いているはず。こんな人のいないところにこれだけの投資をして果たしてペイするのか。何か一つ新しいものを打ち上げたいという気持ちはわかるが、実現可能性は高いとは思わない。」
松山キャスター「日本政府も中央アジア地域には非常に強い関心を持っている。中国による中央アジア地域への投資拡大は、日本にはどのような影響があるか。」
櫻井氏「日本政府は中央アジアをものすごく大事なところだと見ている。中央アジアは、ロシアからも中国からも取り合いの対象になっていて、どっちが影響力を強めるかということ。今回の中東情勢とイランのことにも結びついていく。ロシアと中国の間にあって、人口がかなりあって、資源がものすごくあって、地政学的にも大事なところということで、このユーラシア大陸を中国が自分のものとして支配することがないようにするためにも日本は中央アジアとの関係を積極的に作っていかなければいけない。日本政府はそのことをいいと思っていると思う。ただ、あまり進んでいないという印象はあるけれど。」
●郵便施設にミサイル、6人死亡 ドニエプル川東岸に陣地 ウクライナ 10/22
ウクライナ北東部ハリコフ市近郊で21日夜、郵便会社の配送施設がロシア軍のミサイル攻撃を受け、6人が死亡、16人が負傷した。
ウクライナ軍参謀本部が発表した。
地元メディアによると、軍当局はロシア西部ベルゴロドから発射された地対空ミサイル「S300」が着弾したとの見方を示している。ハリコフ州のシネグボフ知事は、SNSで「ただの民間施設だ。ロシアがまた市民へのテロに及んだ」と非難した。
ウクライナ南部ヘルソン州では、ロシアが占領するドニエプル川東岸に対し、ウクライナ軍が上陸作戦を進めている。米シンクタンク戦争研究所によると、同軍は17〜18日にかけ、これまでより大規模な作戦を展開。ヘルソン市の東方数十キロ一帯で、東岸の一部に陣地を確保し、ロシア軍と交戦しているもようだ。 

 

●中ロ、ガザ危機で「パレスチナ支援」の共通大義 10/23
イスラエルのパレスチナ自治区ガザ攻撃に中東全域で怒りが高まる中、中国とロシアはパレスチナ人支援という共通の大義名分を見いだしている。
ロシアと中国にとって、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの奇襲攻撃を受けてイスラエルがガザを砲撃したことは、同盟国イスラエルの後ろ盾に徹する米国とは対照的に、開発途上国の擁護者としての信任を高める好機だ。
中国は一貫して自制と停戦を求めてきたが、イスラエル批判も強めている。
中国国営メディアによると、王毅外相は「イスラエルの行動は自衛の範囲を超えている」と述べ、ガザ住民に対する「集団的懲罰」をやめるよう求めた。
また、ロシアのプーチン大統領は先に、ガザ危機は「米国の中東政策の失敗の実例であることに多くの人が同意すると思う」と述べた。 もっと見る
プーチン氏と中国の習近平国家主席はともに、経済的機会のほか、おそらく米国とその同盟国の外交的影響力に対抗する方法として、グローバルサウスとの関係を深めようとしている。
中国で今月開催された習氏肝いりの「一帯一路」構想のサミットにプーチン氏は出席。習氏と「パレスチナ・イスラエル情勢に関する詳細な意見交換」を含む3時間の会談を行った。
ワシントンの戦略国際問題研究所の中東プログラムディレクター、ジョン・アルターマン氏は「中国とロシアはいまだに、パレスチナやイスラエルというよりも、米国という観点から(危機を)見ている」と指摘。中国とロシアにとって、米国が世界をまとめるこよは都合が悪く、米国とその同盟国が孤立を深めれば好都合なのだと語った。
パレスチナ支援
中東におけるロシアと中国の戦略は完全に一致しているわけではないが、共通点は多い。
ロシアは米国を痛烈に批判しているが、中国は米国を批判することをほとんど避けている。ウクライナ戦争の初期に中国がロシアを支持したことで外交的立場が悪化したのと対照的だ。
中国は今年、サウジアラビアとイランの国交回復を仲介し、中東における影響力の高まりを示した。
ロシアも、イラン製無人機(ドローン)の供給やシリアのアサド大統領支援で利害が一致するイランとの関係を改善しつつある。
中国とロシアはともに以前からパレスチナ人を支援しており、米国によるパレスチナ人の疎外に批判的だ。
シンガポール国立大学中東研究所のシニア研究フェロー、ジャン・ルー・サマーン氏は「中国とロシアはガザ危機における米国の負の役割を強調することで明らかに利害が一致し、それは米国に代わる世界秩序の構築が必要という両国の主張にも合っている」と指摘する。
中国メディアは10月7日にハマスの奇襲攻撃を取り上げたが、その後の報道ではパレスチナ人犠牲者の映像を流し、イスラエルに責任があるとするパレスチナ側の主張の引用が目立った。
中国・イスラエル関係のシンクタンク、シグナルグループのディレクター、カリス・ウィッテ氏は「10月7日に世界中の人々に衝撃を与えた現実は、中国のニュースには全く出てこない。その代わりに、イスラエルによるガザ空爆が取り上げられ、その標的がハマスのインフラのみであることは説明されていない」と語った。
同盟国を求めて
ウクライナにおけるロシアの戦争は、パレスチナの大義に賛同する動機をロシアに与えている。
米国はグローバルサウス諸国をウクライナ支持に引き込もうとしているが、米国が紛争を引き起こしているように見せかけることは、その取り組みを鈍らせることにつながる。
先のアルターマン氏は、米国を地政学上の最大のライバルと見なす中国にも同様の動機があると見る。イスラエルへの国際的支持を築こうとする米国に対抗するグローバルサウス勢力の形成を静かに支援していると指摘した。
中東専門家で浙江外国語学院のMa Xiaolin教授は、中国はパレスチナとイスラエルの間で公平な立場を取っているが、イスラエルが米国の支持を得て戦争の規模と範囲を拡大し、より多くの犠牲者を出せば、中国はパレスチナ側につくだろうと述べた。
●「中国、独裁で不安定化」 腐敗続く軍、疑念強める習氏 10/23
中国の習近平国家主席が共産党総書記として異例の3期目入りを果たして、23日で1年。
習氏の権力基盤が確立した一方、外相が突然解任され、核ミサイルを扱うロケット軍のトップが変則的に交代。近く国防相も更迭されるとの見方が強い。この動きをどう見るべきか。防衛研究所の山口信治・中国研究室主任研究官に聞いた。
――今夏、ロケット軍の司令官、政治工作を担当する政治委員にそれぞれ海軍、空軍の出身者が起用されるなど、中国軍に異変が見られた。
習氏の一強体制が固まり、人事は習氏の一存で決まり、習氏の信任を失うと簡単に失脚する状況だ。毛沢東時代と似ているところがあり、習氏の信任を巡る争いが体制内で激しくなっている。
習氏は就任以来、軍に対する統制を強めてきた。習氏が軍を掌握できていないというより、軍を信頼できていないのだろう。トップリーダーは長く在任すると疑念が強くなる。習氏もそうなっているのかもしれない。
――習氏は何を目指しているのか。
全ての最終判断を習氏が下し、典型的な「独裁者の政治」になりつつある。習氏が年を取れば取るほど、中国はさらに不安定になるのではないか。プーチン・ロシア大統領がウクライナ侵攻を強行したように、不合理な決断を下すかもしれない。
――7月に軍に対する党の優位を確認する会議が開かれ、軍機関紙・解放軍報で何度も反腐敗を訴えているが、習氏は軍に不満があるのか。
何らかの理由で軍に対する習氏の不信感が高まっているのかもしれない。最近の人事は反腐敗が関係している。今でも中国軍に腐敗している部分があるのは間違いない。
――解放軍報に指揮官の能力不足を率直に認める表現がしばしば出る。
指揮官の能力不足はずっと言われてきた。習氏に忠誠を誓い、十分な能力を備えた将官が少ないのだろう。
――中国軍の全体的な能力をどう評価するか。
ミサイルの性能が高く、戦闘機や艦艇も新しくて強力だ。周辺国にとって脅威だ。通常戦力の打撃力は非常に高い。中国と戦争になれば、日米は深刻な打撃を受ける。ただ、中国軍は本格的な戦争を長く経験しておらず、台湾を巡り全面的な戦争になった場合、本当に米軍と戦える能力があるのか疑わしい。
――昨年8月に台湾周辺で行った大規模演習などを見ると、海上封鎖で台湾を追い詰めて屈服させようとする意図が感じられる。
中国は「戦わずして勝つ」を目指しているのだろうが、容易ではない。台湾社会で中国による影響力工作が問題と見なされていて、すでに手の内がばれている。海上封鎖はあり得る作戦だが、米国が台湾に物資を運ぼうとするのを実力で妨げるのは、中国にとって非常に難しい決断になる。短期の戦闘終結も難しい。
――合理的に考えるなら、台湾侵攻の可能性は低いという見方が一般的だ。
軍事的な合理性から見れば「勝てない」。しかし、習氏は「勝てる」と考えるかもしれない。側近が習氏の意を酌んで「勝てます」と応じることが懸念される。
●習近平・プーチン「にんまり」か? 「一帯一路」フォーラム 10/23
10月18日、北京で第3回「一帯一路」国際協力サミット・フォーラム開幕式が開催された。習近平国家主席の基調講演の次に、プーチン大統領が壇上に立ってスピーチをしたのは、習近平がいかにプーチンに重きを置いているかを国際社会に明らかにするのに十分な効果を上げたにちがいない。
その後、習近平とプーチンは単独会談も含めて3時間ほど話し合っているが、何しろこの日はバイデン大統領が今から戦争を始めようとしているイスラエルを訪問しただけでなく、本来開催することになっていた中東諸国との会談を中東側に断られている。17日にガザ地区の病院が爆破されたことが原因だ。ガザ地区のあまりの惨状がウクライナ戦争の存在を霞めさせ、プーチンに「漁夫の利」をもたらしているように見える。
フォーラムに参加したのは151ヵ国と41の国際組織の代表で、1万人を超える人々が登録したが、日本のメディアは西側先進諸国の出席が少なかったと嘲笑うがごとく報道している。
しかし習近平からしてみれば、これはすなわちグローバルサウスを中心とした発展途上国が、アメリカから制裁を受けて抗議を共有している中露両国を支持しているということになる。拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で書いた、グローバルサウスを中心として習近平が築こうとしている世界新秩序が、フォーラム会場で実現しているかのようだ。
アメリカ国内における大統領選のためにイスラエルを支持したために中東紛争を招き、バイデンが自ら中東で失点を招いているのだから、米中覇権競争という意味では、習近平としても「悪くない」ことになるのかもしれない。
開幕式でスピーチした国から見える現実とグテーレス国連事務総長の怒り
開幕式の司会を務めたのは、拙著『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』で注目した新チャイナ・セブンの一人である丁薛祥(てい・せつしょう)だ。彼は2015年に発表された「中国製造2025」の提案者の一人で、GDPの「量から質への転換」という新常態(ニューノーマル)提唱者の一人でもあった。
どうりで、今般の習近平の基調演説のテーマも、「一帯一路」活動方向性の「量から質への転換」で、これまでのような巨額のインフラ投資からAIをはじめデジタル経済への投資と共同繫栄を目指していくとのこと。
開幕式で挨拶をした国と人物の布陣を見ると、「一帯一路」フォーラムが目指している姿が見えてくる。
中国の中央テレビ局CCTVには数えきれないほどの報道があるが、いずれも中国が言いたいところだけを切り取っており、またアクセス数が多いためか映像が途切れ途切れになるので、開幕式を最初から最後までフルコースで紹介しているユーチューブがあるのでそれをご紹介したい。
欧華傳媒による現場中継<第三回“一帯一路”国際協力サミット・フォーラム開幕式>だ。こんな凄いことをしてくれた欧華傳媒のスタッフの方々には心からの敬意を表したい。このユーチューブで、全てがわかるからだ。
最初の習近平の基調講演は約30分間で、次のプーチンのスピーチは約12分間だった。習近平が壇上に上がると、それまで開幕を待っていたこともあるだろうし、また今回のフォーラムの主催者でもあるので、割れるような拍手で迎えられたことは言うまでもないだろう。
しかし、参加者の目つき、顔の持ち上げ方などから見ると、習近平の時より、むしろプーチンが話し始めた時の方が、緊張感というか興味というか、注目度が高かったように見える。
たとえ中東情勢でウクライナ問題が霞むという状況がなかったとしても、プーチンはお構いなしに堂々としていたかもしれないが、まあ、喋り方の勢いの良いこと。立て板に水と言わんばかりの早口で、ほとんど原稿にも目を落とさず、喋りまくった。参加者が前のめりになって真剣に聞いている様子が伝わってくる。
3番目に壇上に立ったのはカザフスタン(中央アジア)のトカエフ大統領だ。
なんと、中国語で話し始めた!
最初の一言だけかと思ったら、そうではない。なかなかに流ちょうな中国語だ。まだソ連時代だった1970年にモスクワ国際大学に入学して北京にあるソ連大使館で実習しただけでなく、1983年からは北京語言大学で中国語を学んでいる。まさに中国痛で、習近平とは仲良しだ。
4番目にはインドネシアのジョコ大統領が、5番目には南米アルゼンチンのフェルナンデス大統領が、6番目にはアフリカ大陸エチオピアのアヴィ首相がスピーチをした。
ロシア、中央アジアのほかに、まさにグローバルサウスを満遍なく取り込んでいる布陣が、この講演者からも窺(うかが)えるだろう。
そして最後に登場したのが国連のグテーレス事務総長である。グテーレスはポルトガル人で1999年には首相としてマカオの中国返還に携わっている。そのような関係から中国とは仲良く、潘基文(パンギムン)事務総長辞任に当たり、グテーレスを国連事務総長に強く推薦しバックアップしたのは中国だった。
当然、熱烈な親中派なので、習近平の「一帯一路」に関する功績を褒めちぎり、最後に国連事務総長としてひとこと言わせてほしいとした上で、ガザ地区での非人道的な惨状に関して憤りを露わにした。「即時停戦」を求めると同時に、「このフォーラムの精神が、平和を必要とする人々の助けとなりますように」という言葉で結んだ。すなわち、この「一帯一路」フォーラムに集まっている人たちは「即時停戦」を求める陣営であることを示唆している。
奇しくも翌日、国連でブラジルが提案した即時停戦案に対して、唯一アメリカだけが拒否権を使い「停戦を阻止した」のは、あまりに象徴的だと言わねばなるまい。
3時間にも及んだ習近平・プーチン会談
この会談に関しても数多くの報道があり、中にはアクセス状態が悪かったり、習近平の発言だけで終ったりしているものがあったりと、適切なのを見つけるのに手間取ったが、CCTVのこの番組は一応安定しているし、双方の言葉を聞き取ることもできるので、こちらをご紹介したいと思う。
習近平はプーチンに対して「老朋友(昔からの友人)」と呼びかけ、プーチンは習近平に対して「親愛なる友人」と応じている様子を確認することができる。
何を話したかはあまり重要ではなく、そのときの互いの表情や言葉のトーンで関係を知ることができる。どっちみち、公開できる場面だけしか報道しないので、会談の長さも「親密度」や「重視度」を推し量るパラメータの一つとなる。
その点から言うと、習近平は17日から19日にかけて数十ヵ国の代表と対談しているので、各国30分程度と限られているのだが、プーチンだけは通訳を交えるだけの「テタテ」と呼ばれる「秘密会談」も含めて「3時間」に及んだと、プーチンが釣魚台国賓館の庭における記者会見で自慢げにばらしている。
たとえば10月18日のフランスのメディアRFI中文は<プーチンは北京における記者会見で習近平との会談を紹介した>という見出しで報道しており、その3時間の中には、実は茶話会のような形での「テタテ」もあったとのことだ。その意味では、やはりプーチンだけは特別扱いだったのは確かだったにちがいない。
さて、茶話会でのお茶の味は「にんまり」としていたのだろうか?
少なくとも、西側先進諸国に対する優越感から抜け出せない日本人の多くには、この「にんまり」の味はわからないかもしれない。その驕り高ぶった視点が、国際社会を見る目を曇らせ、アメリカが導く次の戦争へと日本を誘っていくことを憂う。
●プーチン大統領大誤算<鴻Vア軍、最大19万人戦闘不能か 10/23
ウクライナを侵略するロシアのプーチン大統領の「大誤算」を示すデータだ。英国防省は22日、昨年2月のウクライナ侵攻開始以来、ロシア軍の15万〜19万人が死亡や重傷により戦闘不能になったとの分析を発表した。戦場に復帰可能な負傷者を含めると損害は24万〜29万人に上ると推定した。この数字には東部ドネツク州バフムトで戦った民間軍事会社ワグネルの戦闘員は含まれていないとしている。
侵攻開始から約1年8カ月が経過した、ロシア軍はウクライナ東部と南部の4州を一方的に併合したが、西側の支援を受けたウクライナの反撃を受けている。
英国防省は、ロシアが昨秋に約30万人といわれる予備役の部分動員に踏み切るなどして兵力を増やしていることが「犠牲を伴いながらも攻撃を実行し、占領地を防衛できる主な要因となっている」と指摘した。
ウクライナ軍は南部クリミア半島奪還を目指し、半島につながる南部ヘルソン州方面への攻勢を強めている。タス通信によると、現地のロシア軍部隊司令官は22日、ウクライナ軍がヘルソン州を流れるドニエプル川河口で南岸の先端に位置するキンブルン半島への砲撃を以前の数倍に強化していると指摘。クリミアに上陸し、ロシア側支配地域への進軍を狙っているとみられる。今後もロシア軍の損害が増えると、さらなる動員を迫られる可能性がある。
●東部アウディウカへ執拗な攻撃で大損害のロシア軍、南部戦線の瓦解早める 10/23
今後の戦況に重大な影響を及ぼす戦いが今、行われている。
この戦闘の焦点は、南部戦線ザポリージャ州西部でのウクライナ地上軍の攻撃と東部戦線ドネツク州アウディウカでのロシア地上軍の攻撃だ。
ウクライナ軍が大規模部隊(数個海兵旅団)規模以上の部隊を投入して、へルソンを流れるドニエプル川を渡河するかどうかも注目するところである。
ウクライナ軍のアウディウカ要塞に対するロシア軍の無謀な攻撃とその失敗は、南部戦線の作戦に重大な影響を及ぼすことになるだろう。
東部戦線アウディウカでの戦闘について考察する。
1.アウディウカ要塞の存在価値
ウクライナ軍のアウディウカ要塞は、ロシア軍が2022年2月24日に侵攻を開始してから一度も破られていない。
ロシア軍は、アウディウカとバフムトを拠点とする防御ラインを突き破って前進できない限り、ドネツク州の境界まで進出できない。
ウラジーミル・プーチン大統領は侵攻当日、「ドネツク共和国(ドネツク州)とルガンスク共和国(ルハンスク州)の要請に応えて、特別軍事作戦を実施する」と発表した。
しかし、ロシア軍は現在でもプーチン氏が目標と定めたドネツク州の境界まで(約60キロの距離)進出できていない。
   図1 両軍の占拠範囲とアウディウカの位置
2.ロシア軍大量投入と無謀な攻撃
ロシア軍のドネツク境界までの進出を止めているのが、ウクライナ軍のアウディウカ要塞である。
ロシア軍は、侵攻当初から戦略的に重要なアウディウカ要塞に対して何度も攻撃している。
今回は10月10日頃から、これまでと異なり比較的大兵力を投入して正面から攻撃して圧迫を加えつつ、南北から挟み込むように攻撃(図2参照)している。
   図2 アウディウカ要塞へのロシア軍攻撃構想(推測)
敵軍よりも数倍以上の戦力差がある場合に採用する戦法であり、ロシア軍の得意とする戦法、両翼包囲攻撃だ。
この攻撃で、ロシア軍は約2個旅団(約8000人)を投入し、攻撃当初から約1週間、積極的に攻撃を実行した。航空攻撃も行った。
そして、多くの損害を出し膠着状態になった。
攻撃衝力(攻撃を続行する能力)は、1週間が過ぎてから急速に低下してきている。
攻撃の成果は、北部で約1.5キロ前進できただけだ。
ロシア軍は、侵攻開始後、何十回と攻撃したのだが、この要塞を陥落することができず、あと8キロという距離を塞ぐことができないのである。
アウディウカは、図1にあるように戦略的には重要だが、接触線の全体から見れば小さな局面だ。
その戦いで、ロシア軍はたったの1週間で無謀と見えるほど激しく攻撃し、大きな損害を出した。
しかも、投入戦力に見合うような結果が得られなかったのである。
ロシア軍は侵攻当初、ウクライナ軍に比して圧倒的に優勢である戦力を保有していた。
絶対的に有利だと評価されていたロシア軍が、この狭い地域でさえも陥落させられないでいるのだ。
   図3 アウディウカでの両軍の占拠地域の変化
再び、10月20日頃から新たに2個旅団を投入して、無謀な攻撃を開始している。
3.ロシア軍、アウディウカ攻撃で致命的損失
米国戦争研究所(ISW)のリポートによれば、アウディウカの戦いだけでロシア軍の損失は、5日間で兵士4500人以上、戦車60両以上、装甲車100両以上という。
兵士の損失を見ると、約7000〜8000人を投入して約4500人の損失、55〜65%の損失となる。
たった5日間で、ほぼ壊滅状態になっている。攻撃を再開するためには、新たな部隊を投入しなければならない。
この1週間ほどの損失の数字がどのような意味を持つのか。
ウクライナ参謀部が日々発表しているロシア軍損失を侵攻開始からその月の1週間の平均を算出し、その数値をアウディウカの1週間の戦いでの損失数と比較して分析する。
まず、ロシア軍全体の戦車・歩兵戦闘車のアウディウカで行われた1週間の戦いでの損失は約150両である。
150両の損失というのは、ロシア軍が侵攻を開始したその月の週平均値約130両を超えている。
侵攻開始したばかりの1か月の損失は、ロシア軍がウクライナ軍に突っ込んで行ったために、最も多くの損失を出した時の数値だ。
今回の1週間の数値が、侵攻当初の数値を超えているのだ。
   図4 ロシア軍戦車等の1週間平均損失数(アウディウカ戦が茶色)
次に兵員損失だが、週平均数値で最も多かったのは、侵攻から11〜13か月の期間だ。1週間に約5500人だった。
これは、バフムトを攻撃していたプリゴジン氏が率いるワグネル部隊の損失が多かったためだ。
アウディウカ攻撃の1週間の損失は6400人であり、バフムトで囚人たちを先頭に立たせて無謀な攻撃を行った時を超えて最も多い。
   図5 ロシア軍の週間平均兵員損失数(茶色がアウディウカ戦)
この大きな損害が発生しているのは、ロシア軍が練度不十分な部隊を大量に投入し、無策・無謀な攻撃を行って、ウクライナ軍に撃破されてしまったためだ。
4.大統領選前に戦果を得たいプーチン
ロシアは今、どのような戦果を得たいのか。なぜアウディウカなのか。
ロシアは、当面の地域目標をどこに設定しているかというと、「UKRAINSKA PRAVDA」によれば、東部のドンバス地域、特にドネツク州の境界までを制圧しようとしている。
この背景により、ロシアはドネツク州の象徴的で軍事的に緊要な地のアウディウカを是が非でも奪取したい、大きな損失を出してでも目標を達成したいと考えていると見てよい。
10月に実施しているのは、「プーチンの誕生日が10月7日であったために、10月上旬、遅くとも10月末までに戦果を出すように、セルゲイ・ショイグ国防相に命令があった」からだろう。
2024年3月のロシア大統領選挙に向けて、侵攻目的としたドネツク州の境界まで占拠する戦果が必須なのである。
ISWのリポートによれば、プーチン氏は「象徴的な勝利」を目指している。そして、「ウクライナでの戦いにおいて、局地的な戦闘場面でも主導権を握っている」と見せようとしている。
5.ウクライナ敗北を広める情報戦を展開
プーチン氏は、10月5日にロシア南部のソチで開催された「バルダイ会議」で、ウクライナとの戦闘に関し、次のように述べた。
「ウクライナ軍の反転攻勢が始まった6月4日以来、ウクライナ軍は9万人以上の兵士や、557両の戦車、1900台近くの装甲車を失った」
そして、ウクライナ軍に大きな損害が出ており、反転攻勢は「失敗している」と主張している。
ウクライナ軍の損害についての発言が事実と異なっているのは明白であり、反転攻勢のスピードは速くはないが、一つひとつ着実に成果を挙げている。
ロシア軍は、ウクライナ軍の反転攻勢の重点であるザポリージャ州西部での攻撃を止められていない。
プーチン氏には正しい情報が伝えられていないという。その結果、誤った発言をしていると言われている。
しかし、プーチン氏は、ロシア軍がドネツク州でさえ占拠できていないこと、ザポリージャ州西部ではウクライナ軍の前進を止められていないこと、兵士が多数死傷したことにより次から次に兵員を招集しなければならなくなっていることを、当然知っているはずだ。
現実を概ね把握していると見た方がよいだろう。
プーチン氏は10月15日には、ロシア国営テレビのインタビューで、ロシア軍がアヴディウカ、クピャンスク、ザポリージャ方面で「積極的な作戦戦闘」を行っていると主張した。
これに対し、ISWは「積極的な作戦戦闘」ではなく「積極的な防衛」という表現を使っている。
「ロシアの大幅な攻撃進捗に対する期待を和らげようとする試みである」というのがISWの評価である。
プーチン氏のこの発言も現実を理解しているからこそであろう。
ロシアは、東部戦線の局地的な戦いにおいてもその目標を達成できていないどころか、侵攻開始直後よりも短期間に多くの損失を出している。
プーチン氏は、目標を達成することができない都合の悪いことを嘘の情報にすり替え、戦果を挙げたように見せかけている。
6.南部戦線防御に波及、瓦解へ
ロシア軍は大量の戦力を投入し、無策無謀な攻撃で戦力を失っている。
ロシアの国防大臣や軍参謀長はプーチン氏に、「10月までに、(現実には不可能な)成果を上げよ」とせかされ、戦術なき無謀な突撃を後ろから銃を突き付けて実行させている。
それでもこれまでは十分な戦力があったのだが、今回、その戦力は破壊され続けている。
ロシア軍は、局地的な地域での作戦、特にザポリージャ州西部での防御やアウディウカの攻撃で多くの損害を出し、ウクライナ軍の防御を撃破できないでいる。
これらの地域にロシア軍の予備兵力を逐次投入しても、その目標を達成できていない。
予備戦力は、南部戦線の第2・第3の防御線に投入する予定だったはずだが、無策で無謀な攻撃でその戦力を著しく減少させてしまった。
一方、南部戦線におけるウクライナ軍は、戦力の損害を極力抑えるために火砲でロシア軍陣地を破壊して、その成果を確認してから再び攻撃している。これを何度も繰り返している。
これは、米軍の地上作戦の基本的戦術である。したがって、攻撃速度が遅くなっているのは当然のことである。
ウクライナ軍は今後、南部戦線でロシア軍陣地を一つひとつ着実に奪回していくだろう。
ロシア軍は、その場面での必要な戦力、機動打撃戦力(反撃力)が少なくなっている。
つまり、ウクライナ軍の前進を止める戦力は減少し、防御の強靭性がなくなってきているのだ。
ロシア軍防御の瓦解はその速度を上げている。
●ロシア、ウクライナ東部アブデーフカや南部ヘルソン州で攻撃強化 10/23
ロシア軍は22日、東部ドネツク州の町アブデーフカと南部ヘルソン州への攻撃を強めた。
一方、ウクライナ軍参謀本部はアブデーフカ周辺で20近いロシア軍の攻撃を撃退したと発表した。
アブデーフカは、ロシアが支配するドネツク市とドンバス地方の一部地域の奪還に重要な場所と見なされている。
ウクライナ国防省情報局の報道官は、アブデーフカが重要な意味を持つのは事実だと国内テレビに指摘。「占領軍がドネツクとルガンスクの全土を占領すると宣言して緊張を高めたのは今回が初めてではない。彼らの計画は失敗している」と語った。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、アブデーフカと近郊の町マリンカの状況について「特に厳しい。ロシア軍による多数の攻撃を受けているが、われわれは拠点を維持している」と語った。
ロシア軍はアブデーフカについて言及しなかったが、5月に占領したドネツク州バフムトで東側のウクライナ軍陣地に対する作戦が成功したと発表した。
ヘルソン州のプロクディン知事は、州内の複数の村が砲撃を受け、ヘルソン市内の輸送や食料生産拠点も攻撃されたと述べた。
●東部アブデエフカで激戦 ロシア軍攻勢も損害多数か 10/23
ロシアの侵略を受けるウクライナの国防省情報総局高官のユソフ氏は、露軍が東部ドネツク州都ドネツク近郊の都市アブデエフカの制圧を狙って攻撃を激化させていると発表した。ウクライナメディアが22日伝えた。
露軍は今月、アブデエフカへの攻勢を強化。ただ、ウクライナ軍に阻まれ、多くの損失を出しながら限定的な成果しか得られていないとの観測が強い。
ドネツク州全域の制圧を狙う露軍は同州バフムト制圧後、同市周辺でウクライナ軍に足止めされていることから、別の進軍ルートとしてアブデエフカの突破を狙っているとみられる。
アブデエフカを巡る戦闘について、米シンクタンク「戦争研究所」は21日、露軍が同市北西の地域でわずかに前進したもようだと指摘。ただ、「ここ数日間、ウクライナ軍は露軍の攻勢を撃退し、人員と装備に相当規模の損害を与えた可能性が高い」と分析した。
英国防省も23日、アブデエフカを巡る戦闘で露軍の損害がそれまでより90%増加していると指摘。侵略開始後の露軍の戦死者と戦線に復帰できない負傷者は計15万〜19万人だとする推計も公表した。
一方、南部戦線に関し、英BBC放送は21日、ウクライナ軍の現場部隊の話として、露軍占領下にある南部ヘルソン州ドニエプル川東岸地域にウクライナ軍が上陸し、「初めて強固な足場を確保した」と伝えた。一部の露軍事ブロガーもウクライナ軍の同川東岸への上陸を報告した。双方によると、ウクライナ軍部隊は東岸地域の集落クルインキに接近している。
これについて、ウクライナ軍南部方面部隊のグメニュク報道官は22日、地元テレビで同国軍の同川東岸への上陸を暗に認める一方、成果に言及するのは「時期尚早だ」と述べた。
●ガザ南部に支援物資2回目搬入へ イスラエル北部の住民が避難開始 10/23
イスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区への空爆が続けられる中、大勢の市民が避難しているガザ南部に、2回目となる支援物資を搬入するため、トラックの一団が、エジプト側からラファ検問所に入った。
支援物資を積んだトラック一団が、日本時間の22日午後8時過ぎから、ガザ地区とエジプトとの境にあるラファ検問所に入り始めた。
ガザ地区に支援物資を届けられれば、21日に次いで2回目となる。
今回の支援物資には、電気不足に苦しむ病院のために燃料も含まれていると報じられている。
一方、イスラエル政府は22日、レバノンとの国境に近い北部地域の住民を避難させる方針を発表した。
ハマスと緊密な関係を持つレバノン南部ヒズボラが、連日ミサイルで攻撃しているためで、北部を訪れたイスラエルのネタニヤフ首相は「仮にヒズボラが参戦を決断すればそれは過ちだ。レバノンとヒズボラは壊滅的な状況になる」と警告した。
●首相から危機感が伝わってこない 10/23
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが、民主主義国家イスラエルに対して卑劣な大規模の奇襲攻撃を行った事件だ、と正確に理解する必要があると思う。
ハマスの背後にイランと中露
ハマスが事前にイランと協議し、承認を得て実行に移された、と一米紙が事件翌日に報道して世界を驚かせたが、その後サリバン米大統領補佐官は「広い意味でイランはこの攻撃の共犯者だと我々は最初から述べている」と語った。関係者にとっては当たり前の事実だというのだ。「イランはハマスの軍事部門に資金を提供し、訓練を施し、実力を付けさせた」と同補佐官は付け加えた。ただ、今回の事件にイランがどう関わったかは現時点で確たる事実が分からないから、分かり次第明らかにすると記者団に約束している。
その通りだろう。ロシアのウクライナ侵攻は事前に米国が情報をつかみ、ウクライナ側に伝えたが、ゼレンスキー大統領らウクライナ首脳が信用しなかったという。今回のハマスによる攻撃を米側が知らなかったことをサリバン発言は物語っている。世界に名高いイスラエルの情報機関モサドも役に立たなかった。西側情報機関全体の惨憺たる失敗と言っていい。
事件と呼吸を合わせたかのように、1カ月前の米誌フォーリン・アフェアーズ電子版が「イランの新しいパトロン」と題する論文を載せた。ホメイニ革命後のイランが国家目標として核保有を追求し、国際的孤立を招き、そこに中露両国が食い込んで事実上のパトロンになった経過が、2人の専門家によって詳述されている。ハマスやレバノンの武装勢力ヒズボラをイランが操り、その背後に中露両国がいる世界的な構図がはっきりしてこよう。
あり得る世界戦争への拡大
ガザの紛争が世界的規模の戦争に広がりかねない深刻な事態が進行しつつあるが、紛争の鎮静化、新たな危険の阻止に当たる国は西側の依然として中心的存在である米国だ。国防総省は既に空母1隻を近海に派遣し、さらにもう1隻の派遣を決めたが、ウクライナ戦争と同様に、地上戦闘部隊を介入させる気配はない。ウクライナ向け武器支援に対してすら批判の少なくない「内向き」の米世論から判断して、海と空からの抑止で精いっぱいだろう。
米国は人種、所得、政治など多くの分野で分断症状を呈している。わけても民主、共和両党の対立は先鋭化をたどっているうえ、共和党内にもごたごたが起こり、同党出身の下院議長が解任されたまま議長空席の状態が続いている。ウクライナ向け追加援助承認は宙に浮いたままだ。
事件発生以来、日本の立場はいまひとつはっきりしない。21日に都内で開かれた国際会議に寄せられた岸田文雄首相のビデオメッセージは「パワーバランスの変化と地政学的競争の激化の中で、様々な課題が山積し、複合的危機を生み出している」と述べているだけで、危機感はさっぱり伝わってこない。メッセージの結論は「日米で連携したリーダーシップを発揮しなければならない」だ。論評に値しない。
●バイデン氏はイスラエルを全面的に支持した後、自制を求める圧力に直面 10/23
ジョー・バイデン大統領は週末、群衆の民主党献金者に対し、数十年前にベンヤミン・ネタニヤフ首相と撮った写真について語った。そのプロフィール写真は、同氏のイスラエルに対する長年の支持と率直に話した実績を示すことを意図したものとみられる。イスラエルと一緒に。 保守的なイスラエルの指導者。
バイデン氏は、自身が若い上院議員でネタニヤフ首相が大使館補佐官だった頃、自分の写真に「ビビ、私はあなたを愛している。あなたの言うことには同意しない」と書いたと述べた。 募金活動の会場で、ネタニヤフ首相は今も机の上に、バイデン氏が先週テルアビブをめまぐるしく訪問した際に持ち出した写真を掲げている。
イスラエルがガザ地区を支配するハマス過激派の根絶を目的とした地上攻撃を間もなく開始するとの期待が高まる中、バイデンは中東における米国の最も緊密な同盟国への全面的な支持を示す一方で、イスラエルに圧力をかけようとするという難しいバランスに再び直面していることに気づく。戦争がより広範な大火災に拡大するのを防ぐために、十分な自制心を持って行動すること。
バイデン氏は10月7日のハマスによる攻撃以来、文字通りにも比喩的にもネタニヤフ首相を温かい抱擁で包み込んできた。 同氏は、ガザ地区を支配し、1,400人のイスラエル人を殺害し、200人以上のイスラエル人を拘束する残忍な攻撃を実行した過激派組織の排除を目指すイスラエルを支援すると繰り返し約束した。
しかし同時に、パレスチナ人の窮状やイスラエルの強硬な対応がもたらす潜在的な影響に対する国民の関心も高まっている。
ホワイトハウス当局者らによると、バイデン氏は先週のテルアビブ訪問中、ネタニヤフ首相に戦略や今後の進め方について「難しい」質問をしたという。 バイデン氏自身は、イスラエルからの帰国途中に記者団に対し、地上作戦の拡大の可能性の「代替案について」イスラエル当局者らと「長い会話」をしたと語った。 米国防当局者もこの問題についてイスラエルと協議している。
バイデン氏は木曜日のテレビ演説で、イスラエルとウクライナの戦争支援について「イスラエルがこれまで以上に強力であることを地域の他の敵対勢力に知らせ、この紛争の拡大を防ぐだろう」と述べた。 「同時に…ネタニヤフ首相と私は昨日、イスラエルが戦争法に従って行動する緊急の必要性について再度話し合った。これは戦闘中の民間人を可能な限り保護することを意味する。」
アントニー・ブリンケン国務長官と国連世界食糧計画のシンディ・マケイン事務局長は日曜日、現場の状況はより複雑になっていると厳しい警告を発した。
ブリンケン氏はNBCの番組「ミート・ザ・プレス」で、イランの代理人による地域駐留米軍に対する「エスカレーションの可能性」を警告した。 イランはハマス、レバノンのヒズボラ過激派、イラクのシーア派民兵組織に対する最大の資金援助者である。
マケイン氏はABCの番組「ディス・ウィーク」で、ガザ地区で自身の組織が直面している人道状況は「壊滅的」だと述べた。
バチカン報道局は短い声明で、バイデン氏とフランシスコ法王が日曜日に約20分間電話で会談し、世界的な紛争における「平和への道筋を定める」必要性について話し合ったと発表した。
バランスの取れたアプローチを取るようバイデン氏に圧力をかけているのは、ガザ危機に関して首都で大規模な抗議活動が勃発しているのを目の当たりにした、エジプト、イラク、ヨルダンおよび海外のアラブ指導者たちだ。 欧州当局者らもこの声明を出し、ここ数十年で最も残忍なイスラエル領土への攻撃に恐怖を表明する一方、イスラエル人は国際法と人道法を遵守しなければならないとも強調した。 バイデン氏はまた、民主党の中道派や年配の指導者よりもイスラエル・パレスチナ問題で意見が分かれている、民主党のより若いリベラル派の人々からの厳しい監視にも直面している。
戦争開始から1週間も経たないうちに、数十人の国会議員がバイデン氏とブリンケン氏に書簡を送り、イスラエルの軍事行動が国際人道法の規則に従うこと、人質の安全な帰還、外交政策を遵守することを求め、イスラエルとパレスチナの民間人の保護を確実にするよう要請した。尽力。 恒久的な平和を確保するために。 これに続き、十数人の議員がバイデン政権に対し、エスカレーションの即時停止と停戦を求める決議案を提出した。
民主党議員団の3人の議員、イリノイ州のデリア・ラミレス議員、ペンシルベニア州のサマー・リー議員、ミシガン州のラシダ・トレイブ議員は先週ブリンケンに対し、米国民間人、特にガザ地区やガザ地区の人々の状況について「有意義な情報が不足している」と書簡を送った。イスラエル。 西岸。 政権は、500人から600人のアメリカ国民がガザにいる可能性があると述べた。
ミネソタ州民主党のイルハン・オマル下院議員は、罪のないイスラエル人とガザ人の命の評価に関して政権が二重基準を示していると指摘した。 ハマスが運営する保健省によると、イスラエルの報復爆撃作戦により4,000人以上のパレスチナ人が死亡した。 犠牲者の多くは女性と子供です。
「一つの残虐行為を見て『これは間違っている』と言いながら、生者が平らにされる一方で死体が山積みになるのをどうやって見るのでしょうか?」 オマル氏は記者会見でこう尋ねた。 「イスラエルはこの10日間で、アフガニスタンに1年間で投下したのと同じ数の爆弾を投下した。あなたの人間性はどこにあるのか、怒りはどこにあるのか、国民に対する懸念はどこにあるのか?」
政権内では、バイデン氏がイスラエル政策に近すぎる政策を追求しているのではないかとの議論があった。
先週、少なくとも一人の同省当局者が辞任し、パレスチナ人を犠牲にしてイスラエルを有利にする「一方的」政策と称する政策をもはや支持できないと述べた。
ジョシュ氏は「紛争の一方側へのさらなる兵器の急送など、一連の重要な政策決定を支持するために働くことはできない。それは近視眼的で破壊的で不公平で、私たちが公に受け入れている価値観と矛盾していると考えている」とジョシュ氏は語った。 。 国務省政治軍事局に11年間勤務した退役軍人であるポール氏は、水曜日に自身のLinkedInアカウントに投稿された声明の中でこう述べた。
他の国務省当局者も同様の懸念を表明しており、プライベートな会話について匿名を条件に話を聞いた関係者らによると、その一部は金曜日に開催された一連の内部職員協議で発言したという。 これらの人々は、それらのコメントの多くは怒りや感情的なものだったと述べた。
ブリンケン氏は木曜日、全省共通のメモを送り、イスラエルとパレスチナ人の双方に対する平等な正義と平和という政権の広範な目標を忘れないようスタッフに促した。
一方、バイデン政権当局者らはイスラエル側とのやりとりの中で、明らかな衝撃と怒りを目の当たりにしてきた。
先週のバイデン氏のイスラエル訪問で発表された最も重要な発表は、食糧、水、医薬品、その他の必需品を積んだ限られた数のトラックがラファ国境検問所を通ってガザに入るのを許可することにエジプトとイスラエルを説得することであった。
人道危機の大きさを考えると、ガザへの一部援助を認める合意は簡単に見えるが、米当局者らは、これは月曜のブリンケン首相とネタニヤフ首相の会談、そして水曜ごろのバイデン氏のネタニヤフ首相との会談前にイスラエルがとった立場における大きな譲歩を意味すると述べた。
ブリンケン・ネタニヤフ首相会談中、この協議に詳しい米国当局者らは、水、電気、燃料、食料、医薬品がガザに到達するのを阻止するというイスラエル側の意図や水を阻止する義務についてのイスラエル側のコメントを受けて、ますます懸念を強めたと述べた。 、電気、食料、医薬品がガザに到達するのを妨げます。 民間人の死傷者の数。
私的な会話について匿名を条件に語った4人の米当局者によると、これらのコメントはガザ地区のパレスチナ人全員に対する激しい痛み、怒り、あからさまな敵意を反映しているという。
当局者らは、イスラエルの安全保障と政治体制のメンバーはガザ人へのいかなる援助にも完全に反対していると述べ、ハマスの排除には第二次世界大戦で枢軸国を倒すために使用された方法が必要だと主張した。
ある当局者は、同氏らはイスラエル側の関係者から「第二次世界大戦で多くの罪のないドイツ人が亡くなった」と聞き、米国による広島と長崎への核爆撃で日本の民間人が大量に死亡したことを思い出したと述べた。
同様に、この問題に詳しい米国当局者によると、バイデン氏と側近らは非公式会談に関与した一部のイスラエル高官らから深い苦痛の声を聞いたという。
テルアビブへの7時間半の訪問を終えたバイデン氏は、10月7日の攻撃を、約3,000人が死亡した米国への攻撃である2001年9月11日と比較し、米国人が感じた怒りと戦争を回想した。その怒りに…彼は彼らを殴りました。 正義を求める気持ちは米国の多くの人が共有しています。 同氏はまた、米軍が20年に及ぶアフガニスタン戦争の泥沼にはまった時代である9.11後のアメリカの過ちを思い出すようイスラエル国民に促した。
「これについて警告します。この怒りを感じている間は、それに巻き込まれないでください」と彼は言いました。 「9/11の後、私たちは米国で激怒しました。私たちは正義を求め、正義を勝ち得ましたが、間違いも犯しました。」 
●ロシア軍の戦死者1日の最悪を更新? 原因はアウディーイウカの戦略ミス 10/23
ウクライナでのロシア軍の兵員の損失はここへきて急増し、死傷者数は30万人に近づいている、とウクライナ側が発表した。
ウクライナ軍参謀本部が10月21日に出した最新情報によれば、2022年2月の戦争勃発以来、ロシア軍は約29万2850人の兵士を失ったという。そのうち790人は過去24時間以内に死亡した。
その前日の20日には、ロシア軍が1日で1380人の戦闘員を失ったと発表。ほぼ20カ月に及ぶこの戦争において、ロシア軍にとって最も人命の損失が大きい戦闘だったと述べた。
ロシアはウクライナ戦争における自軍の死傷者数を発表していない。ロシア国防省は20日、ウクライナ軍は過去1週間、クピアンスク周辺の前線で約995人、ドネツクのライマン周辺で940人の戦闘員を失ったと発表した。
ロシアによると、ウクライナ軍はドネツク周辺で2065人以上の兵士を失い、さらにロシアが併合した地域の南部で過去7日間に1010人の兵士が戦線離脱したという。ウクライナは同じ期間にザポリージャ南部とへルソン地方でさらに820人の兵士を失った、とロシア政府は発表した。
ロシア側が発表したこれらの数字を合計すると、10月14日〜20日の間にウクライナ南部と東部で失われたウクライナ軍兵士は3895人となる。ウクライナ軍参謀本部は、同時期にロシア軍は6140人を失ったと主張している。
自国の被害は認めない
本誌は、ロシアとウクライナが発表した数字を独自に確認することはできなかった。ロシアもウクライナも自国の被害については口を閉ざし、自国の死傷者数や破壊された軍備の量について、認めることはほとんどない。
「現在進行中の紛争で死傷者数を特定するのはきわめて難しい。双方がデータを秘密にし、敵の死傷者数を膨らませようとするからだ」と英ロンドン大学キングス・カレッジ戦争学部の特別研究マリーナ・ミロンは今年5月に本誌に語っている。
ロシアは10月から、ウクライナ軍が6月初めに夏の反攻を開始して以来初の大規模な攻撃を開始し、ウクライナ東部ドネツクの町アウディーイウカに焦点を当てた。このコークス生産の中心地は、9年前からウクライナとロシアおよび、親ロシア派武装勢力の間の戦闘の最前線になっている。ここで勝てばロシア政府にとって戦術的にも象徴的にも重要な勝利となっただろう。
だがロシアはアウディーイウカ周辺の領土をいくらか獲得したものの、西側のアナリストはすぐに、この攻撃で多くの兵士と軍備を失ったと評価した。
ロシア軍は軽歩兵を「確実な死」にさらしていると、アウディーイウカを担当するウクライナ軍タブリア部隊のオレクサンドル・シュトゥプン報道官は17日に本誌に語った。
ウクライナ政府高官や西側の専門家たちは最近、ロシアの攻撃は絶望的で、攻撃の回数は減少しているという見方を示していた。
だがロシア軍部隊は20日、「アウディーイウカ近郊で再び攻勢を開始」し、わずかな領土を確保したと、ワシントンのシンクタンク戦争研究所(ISW)は最新の分析で述べた。
ISWによれば、ロシア軍司令官たちは、物資や人員の莫大な損失にもかかわらず、この地域での攻撃作戦に全力を尽くしている。
ウクライナの参謀本部は21日、「わが軍の兵士は着実に防衛を維持し、敵に多くの損害を与えている」と述べた。
だがロシア軍の死傷者の急増は、アウディーイウカに対する戦略的に誤った攻勢に負うところが大きいと、英国防省は分析する。アウディーイウカに対する度重なるロシア軍の攻撃はこれまでのところすべてウクライナ軍に跳ね返されたと、同国防省は22日に指摘した。
●ロシア、最大19万人戦闘不能か 英国防省分析、動員で兵力増強 10/23
英国防省は22日、ウクライナ侵攻を続けるロシア軍の15万〜19万人が、昨年2月の侵攻開始以来、死亡や重傷により戦闘不能になったとの分析を発表した。戦場に復帰可能な負傷者を含めると損害は24万〜29万人に上ると推定した。この数字には東部ドネツク州バフムトで戦った民間軍事会社ワグネルの戦闘員は含まれていないとしている。
英国防省は、ロシアが昨秋に部分動員に踏み切るなどして兵力を増やしていることが「犠牲を伴いながらも攻撃を実行し、占領地を防衛できる主な要因となっている」と指摘した。
●ロシア軍の損失膨らむ=冬場控え東部で激戦―ウクライナ軍は渡河 10/23
ロシア軍がウクライナ東部ドネツク州で総攻撃を仕掛けている。戦場の冬季入りを目前に控え、ウクライナの攻勢をくじいておくのが狙いで、22日も同州アウディイウカなどで激戦が繰り広げられた。ウクライナ軍は徹底抗戦で踏みとどまっており、ロシアは兵力の損失が膨らんでいるもようだ。
「アウディイウカと(さらに南方の)マリンカ方面は特に(戦闘が)激しい。ロシアの攻撃はおびただしいが、われわれの陣地は守られている」。ウクライナのゼレンスキー大統領は22日、前線の兵士らを鼓舞した。
アウディイウカはウクライナにとって「抵抗の合言葉」(ロイター通信)となっている地区。ロシアの侵攻に対する反転攻勢で象徴的な意味を帯びており、防衛にも力が入る。
ウクライナ側の情報では、ロシアはアウディイウカ周辺で過去1週間に推計5000〜6000人の兵士が戦死した。米シンクタンク戦争研究所は22日、ロシアが前線に部隊の増派を続けていると指摘。ウクライナのポドリャク大統領府顧問は、ロシアには「自軍は人的損害を気にせずに戦える」と示す狙いがあると分析する。
一方、ウクライナ南部ヘルソン州では同国軍部隊がドニエプル川を渡り、ロシアに占拠された東岸に足場を設けたと伝えられる。南部クリミア半島とロシア本土を結ぶ「陸の回廊」の分断に向け、一歩前進した形だ。
ただ、タス通信によると、ロシア軍は22日の戦闘でウクライナ軍のボート部隊を撃退したと主張。川を舞台に攻防が展開されているもようで、ウクライナが占領地へ前進するための橋頭堡(きょうとうほ)を東岸に築けるかは予断を許さない。 
●南部のダム決壊、損失3兆円 ロシアの環境犯罪2500件 10/23
ウクライナの環境保護・天然資源省のエブゲニー・フェドレンコ次官は23日までに共同通信のインタビューに応じ、6月に起きた南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所の巨大ダム決壊による損失が総額240億ドル(約3兆6千億円)に上る可能性を指摘した。また、ロシアによる2500件の環境破壊を、戦争犯罪として検察当局が捜査していると明らかにした。
フェドレンコ氏は侵攻によって全土で生じた土壌や大気、水質汚染など環境被害による損失額は現時点で560億ユーロ(約8兆9千億円)と試算。生態系への影響も深刻で、黒海やアゾフ海のイルカ類千頭が死んだなどと説明した。
●ウクライナ検察当局 軍事侵攻から各地で子ども508人死亡と発表 10/23
ロシア軍は、東部ドネツク州でのウクライナ側の拠点アウディーイウカの戦闘について多くの人員の損失が出る中、新たな部隊を派遣するなど掌握をねらっているとみられます。こうした中、ウクライナの検察当局は軍事侵攻が始まってから各地でこれまでに508人の子どもが死亡したと発表しました。
ウクライナ空軍は23日、ロシア軍が夜間、無人機やミサイルを使って各地を攻撃したと発表し、南部オデーサ州の地元当局は無人機9機を撃墜したものの無人機の破片で港湾のインフラ施設が損傷したとしています。
また、ロシア軍は東部ドネツク州でのウクライナ側の拠点アウディーイウカの周辺で攻撃を強め、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は22日「ロシア軍は新たな攻撃を行い、失敗したにもかかわらずこの戦線に追加の兵力を投入している」と指摘しました。
イギリス国防省も22日「アウディーイウカでの戦闘でロシア軍の犠牲者は90%増加した」と指摘していて、ロシア軍は人員の犠牲もいとわず掌握をねらっているとみられます。
こうした中、ウクライナの検察当局は23日、軍事侵攻が始まってから各地で多くの子どもたちも戦闘に巻き込まれていて508人が死亡し、1138人以上が負傷したと発表しました。
負傷した子どもの数はドネツク州が492人、ハルキウ州が304人と東部の州が多くなっていて、22日もハルキウ州のクピヤンシクでロシア軍の砲撃によって15歳の少女と17歳の少年が負傷したとしています。
一方、ロシア側が占領を続ける地域での犠牲者の数は把握されていないことから、ウクライナ検察当局は実際に死傷した子どもはさらに多いとみています。

 

●プーチン大統領の自信のワケは経済成長。若さの秘訣は「茶の湯」の意外 10/24
欧米諸国が望むような展開にならないウクライナ情勢。それどころかロシアのGDPの成長率は欧米をはるかに上回っているようです。そのためか、プーチン大統領は意気軒昂。バルダイ国際討論会で大演説をぶったようです。国際政治経済学者の浜田和幸さんが、71歳になっても元気一杯なプーチン大統領の自信の源泉として、有名な「柔道」のほかに日本ルーツの「茶の湯」があると解説。ウクライナ戦争の停戦の道筋を拓くことができるのは、今年100歳を迎えた裏千家の千玄室氏ではないかとしています。
プーチン大統領の若さの秘訣は柔道と茶の湯の心?
71歳の誕生日を迎えたばかりですが、ロシアのプーチン大統領は元気一杯のようです。今年で20回目となったソチで開催されたバルダイ国際討論会では大演説をぶちました。
曰く「ロシアが中心となり、新たな世界を建設する」。
その自信のほどに参加者も世界のメディアも圧倒されたものです。日本をはじめ、欧米諸国では「ウクライナ戦争に足を引っ張られ、プーチンは青息吐息だ。ロシアの終わりの始まりが見える」といった論調が主流となっていますが、ロシアの経済はIMFの分析でも「欧米をはるかに上回るGDPの成長を見せている」とのこと。
アメリカを中心とするNATO諸国は、何かとロシアを敵視し、ウクライナでの代理戦争を通じてロシアの力を削ぎたいと願っていることは間違いありません。そのため、どうしても希望的観測から「ロシア崩壊論」に引っ張られる傾向が顕著です。
しかし、原油や天然ガスなどエネルギー資源の豊富なロシアは中国やインドなどに大量の輸出を重ね、経済を順調に回しています。アフリカなどグローバル・サウス諸国にも穀物や肥料などを大々的に輸出しているのです。
プーチン大統領とすれば、ハマスがイスラエルに大規模なドローン攻撃を仕掛け、大勢の死傷者が発生していることも、「アメリカの中東政策の失敗だ。ウクライナへの支援も同じ結果になるだろう」と一刀両断。
実は、プーチン大統領の自信の源泉にあるのは「柔道で鍛えた肉体」と「茶の湯で体得した平静心」と思われます。柔道に関しては、自身が黒帯の有段者であり、山下泰裕選手との交流も有名です。しかし、茶道についての思いはほとんど知られていません。
意外に思われるでしょうが、プーチン大統領は中国、ロシア、モンゴルを結ぶ「お茶の道構想」を推進しています。2023年末までには「お茶を通じた平和と安寧の世界」を目指すという意気込みです。
そうした構想を吹き込んだのは、裏千家元家元の千玄室大宗匠に他なりません。千利休が唱えた「和敬清寂」は、戦いのさ中にあっても、一服の茶の湯の心を大切にすることで、平和への道が開かれるという発想です。大正12年生まれで、今年100歳を迎えた千玄室氏の存在と教えはプーチン大統領の心を捉えて離しません。
「老いてますます盛んなり」。プーチン大統領は医者である娘からは現代医学に基づくアドバイスを受けていますが、最もほれ込んでいるのは、柔道と茶の湯の心なのです。
国連親善大使でもある千玄室氏と茶の湯の心を分かち合えば、ウクライナ戦争にも停戦の道筋が生まれるかも知れません。
●習近平の「一帯一路」は本当に“破たん”したのか? イタリアの離脱 10/24
10月17日から2日間、中国の首都北京で第3回「一帯一路」国際協力サミットフォーラム(一帯一路フォーラム)が開催された。今回の一帯一路フォーラムは、2013年9月に中国の習近平国家主席が一帯一路構想(当時は「シルクロード経済ベルト」)を提案してから10年という節目を迎えて開催されたこともあって、国際的に高い注目を集めた。
一帯一路構想を巡っては、スリランカのハンバントタ港の事案が象徴するように、中国による投融資が新興国の過剰債務問題(債務の罠)につながるという批判が、欧米からなされていた。一方で中国に対しても、戦略的価値に乏しい資産を引き取らざるを得ないという意味で、同国自身が「不良債権の罠」に陥ることへの警鐘が鳴らされている。
もともとこの一帯一路構想に関しては、中国の習近平国家主席自身にも確たる戦略ビジョンがなかったように感じられる。そのため、この10年間、中国政府が主導する対外投融資は、必ずしも戦略的に実施されてこなかったというのが現状だろう。その意味で、欧米による一帯一路構想への懸念や批判は、いささか過剰反応だったといえなくもない。
そして不動産価格の下落が象徴するように、10年の間に中国経済そのものが変調し、かつてのような高成長も見込めなくなった。一帯一路フォーラムで習近平国家主席は、一帯一路構想に基づく投融資を量から質に転換すると表明したが、ある意味で中国はようやく、政府が主導する対外投融資を戦略的に実行していく意思を表明したことになる。
一帯一路構想の性質の変化は、今回の一帯一路フォーラムに出席した各国首脳らの数にも反映されているといえる。一帯一路フォーラムサミットに首脳を派遣した国の数は24カ国にとどまり、2019年に開催された前回の38カ国から大幅に減少した。量的な拡大が見込めなくなった一帯一路構想から、距離を置く国が増えてきたわけだ。
離れるイタリアと留まるハンガリー
一帯一路に関しては、この構想に賛同していた唯一のG7加盟国であるイタリアが離脱の意思を示したことが話題となった。
確たる経済的な果実、具体的には中国からの投資の流入や対中輸出の増加が実現しなかったためだが、一方で引き続き、中国による対外投融資に期待を寄せる国も少なからず存在する。ヨーロッパの小国ハンガリーはその典型だ。
今回の一帯一路フォーラムでは、出席する各国の指導者の数が大幅に減ったが、ハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相は北京を訪問し、習近平国家主席や李強首相と個別に会談した。欧州連合(EU)は中国に対する姿勢を硬化させているが、オルバーン首相は中国との経済関係を重視しており、今回の訪中を実現させた。
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実際に、ハンガリーと中国の経済関係は深まっている。ハンガリーの直接投資流入額(投資の最終的なリスクがどこに所在するかを示す最終リスクベース)の推移を確認すると、中国からの投資流入額は2014年から2021年の間に10億ユーロから34億ユーロまで拡大した(図表1)。それに香港を加えると、日本からの投資流入額を上回る。
   図表1 ハンガリーの直接投資受入額
EVを通して関係が深まる中国とハンガリー、その理由
他方で、ハンガリーの対中貿易収支を確認すると、ハンガリーから中国に対する輸出はそれほど増えていない。が、中国からハンガリーへの輸入は急増しており、ハンガリーの対中貿易赤字も急増している(図表2)。とはいえ、ハンガリーが中国から輸入しているモノは、いわゆる完成品ばかりではなく、部品や中間財といった仕掛品も多い。
ハンガリーでは今後、中国の電気自動車(EV)関連メーカーが生産工場を相次いで稼働させる。そうなればEV関連を中心に、部品や完成品を輸入する流れが強まる。一方、中国のEV関連メーカーの工場が稼働すれば雇用が生まれ、ハンガリー経済の成長を押し上げることになる。ハンガリーは中国による対外投融資の恩恵を着実に得ているわけだ。
   図表2 ハンガリーの対中貿易収支
中国にすり寄るロシア、一定の距離を置く中国
ハンガリーのオルバーン首相は、一帯一路フォーラムへの参加に伴う訪中で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談を設けた点でも注目を浴びた。ハンガリーが加盟する欧州連合(EU)は、ウクライナとの戦争を巡ってロシアと対立を深めている。にもかかわらずプーチン大統領と会談を設けるオルバーン首相の姿勢には、賛否の両論がある。
一方でロシアは、中国への経済面での依存度を急速に高めている。
一帯一路フォーラムで演説をしたプーチン大統領は、一帯一路構想の実績を高く評価すると同時に、自らが主導する「ユーラシア経済連合」(ロシアを含む旧ソ連5カ国による経済同盟)と一帯一路構想を照らし合わせるなど、対欧米を念頭に中ロ主導の国際秩序の形成に期待を寄せている。
ユーラシア経済連合には、旧ソ連から独立した諸国のうち、中央アジアからはカザフスタンとキルギスが参加している。両国は中国と国境を接しているとともに、鉱物資源が豊富な資源国でもある。そのため中国にとっても、両国との間で友好関係を維持し、経済的なつながりを深めることは国益に適うものであり、投融資の優先対象となる。
とはいえ中国としては、ロシアとの協力関係はあくまで是々非々での判断に基づくものであり、両国が一体となって欧米と全面的に対立する構図が出来上がることを望んでいるわけではない。
ロシアは中国に対して折に触れて強いラブコールを寄せているが、中国はあいまいな態度に終始することで、欧米とロシア、両方との関係の維持に努めている。
より戦略性を帯びてくる中国の対外投融資
そもそも明確な戦略ビジョンがあったかさえ疑わしい一帯一路構想が、当初のイメージ像から萎んでいくことは、ある意味で当然の帰結である。
とはいえこのことは、中国による対外投融資路線が完全に破たんしたこと意味するものではない。「量」から「質」への転換のとおり、中国による対外投融資は、今後より戦略性を高めることになるだろう。
一帯一路構想から距離を置く国は確かに増えているが、同時にこのことは、中国による対外投融資の方向性を見守ろうという国が増えているということでもある。言い換えれば、今後は「量」から「質」に転換することになる中国の対外投融資が、やはり経済的に魅力的なものだと判断する国が、増える可能性も十分あるということだ。
その意味では、一帯一路構想から離脱するイタリアが、将来的に再び中国の対外投融資構想にコミットする展開もあり得る。一帯一路構想にとどまり続けるハンガリーが、経済的な利を得続ける可能性もある。
中国による対外投融資路線は確かに岐路に立っているが、それが完全に破たんしたという見方は、やはり間違いといえよう。
●中国「一帯一路」フォーラムのスピーチに感じた習近平主席の「強運」… 10/24
「一帯一路」は大丈夫なのか
先週17日と18日、中国が「今年最大の外交イベント」と位置づけてきた、第3回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムが、北京で開催された。
「一帯一路」とは、2013年秋に習近平主席が提唱した、中国とヨーロッパを陸路(シルクロード経済ベルト)と海路(21世紀海上シルクロード)で結び、インフラ整備などをユーラシア大陸全体に広げていくという広域経済圏構想だ。いまは、アフリカや南米にまで広がったと、中国政府は吹聴している。
今回の2日間にわたったビッグイベントには、中国側の発表によれば、151ヵ国と41の国際機関の代表が参加。国家首脳23人を始めとする1万人以上が、972億ドルのビジネス契約と、458項目の合意成果を得て閉幕した。このイベントを主催した習近平主席は、2日間、まさに「ユーラシア大陸の皇帝様」のように振舞ったのだった。
しかしながら、このイベントを報じた日本の主要メディアの論調は、おおむね否定的で、以下にような見出しが躍った。
・“習近平氏の誤算?” 中国「一帯一路」10年 どうなった?(NHK)
・退潮隠せぬ一帯一路 プーチン氏と同席嫌う各国―円卓会議見送り・中国(時事通信)
・途上国を借金漬けにする「債務のわな」に懸念、中国「一帯一路」方針転換か…フォーラム参加国は過去最少(読売新聞)
・中国の外交力強めたが、審査甘く借金漬けも 「一帯一路」四つの疑問(朝日新聞)
・一帯一路、「量から質」転換は誤算の裏返し 中国も「債務のわなに」(毎日新聞)
・岐路に立つ「一帯一路」、10周年首脳会議リポート(日本経済新聞)
・一帯一路、共同声明なし 会合、前回より首脳参加減る(産経新聞)
・中国「一帯一路」提唱から10年…15兆円超が不良債権化との推計も(東京新聞)
このように日本では「一帯一路」フォーラムについて「マイナス報道一色」とも言える状況だったのである。こうした記事を読むと、「習近平の『一帯一路』は、もう終わりだ」「最近の中国は経済もダメだが、外交もダメになったものだ」――そんな印象を抱いてしまう。
だが私は、まったく別な視座から、「一帯一路」フォーラムを注視していた。それは、「習近平の『強運』がいまだ続いているか」という視点だ。
「習近平政治」を形成するもの
習近平が、実質上の中国トップである共産党総書記に上り詰めたのは、2012年11月15日の「1中全会」(中国共産党第18期中央委員会第1回全体会議)で、私はこの大会を、北京の人民大会堂2階の記者席から目撃した。以後、この11年近くというもの、習近平総書記の公の場での言動を、つぶさにフォローしてきた。
その結果、「習近平政治」というものの輪郭が、おぼろげながら分かってきた。それは大ざっぱなイメージで言うと、「内核」と「外膜」から成っている。
内核を形成するのは、「毛沢東的権力闘争史観」である。「革命を継続せよ」と唱え続けた毛沢東主席は、1976年に82歳で死去するまで、「中南海」(北京の最高幹部の職住地)で権力闘争を続けた。
習近平という指導者は、明らかにこうした「毛沢東的遺伝子」を受け継いでいる。そのため、常に「権力闘争史観」に立たないと、いまの中国政治は理解できない。
一方、外膜を形成すると私が思うのは、比類なき「強運」である。これももしかしたら、「生涯で一度もケガしたことがない」という伝説を持つ毛沢東主席とつながるのかもしれない。
とにかく、この11年弱というもの、習近平総書記がピンチに立たされると、常に「外部から何かが起きて救ってくれる」のである。それは内政、外交問わずだ。
いくつか実例を挙げよう。まず内政については、昨年10月の第20回中国共産党大会で、本来なら「2期10年」を務めあげた習近平総書記は、政界を引退しなければならなかった。実際、8月前半に河北省北戴河(ほくたいが)で一年に一度だけ顔を合わせる長老グループは、揃って「引退勧告」を突きつけた。
だが当人は、辞めたくない。「隣国の友人」ウラジーミル・プーチン大統領のように、半永久政権を築きたい。
そんな時に、「宿敵」アメリカから、ナンシー・ペロシ下院議長が台湾に降り立ったのだ。すると習近平総書記は、ことさら大仰に人民解放軍の台湾近海での大演習を企図。「いまは有事である」として、政権を替えるべきではないという理由をつけて、「抵抗勢力」を押し切ってしまった。
続くピンチは、昨年11月の「白紙運動」である。
3年に及んだゼロコロナ政策に業を煮やした若者たちが、北京や上海で立ち上がり、「習近平は下野せよ!」「共産党は下野せよ!」と声を挙げた。こんなことは、1989年の天安門事件以降、33年ぶりで、これが中国全土に広がれば、政権崩壊につながる。
そうかといって、天安門事件の時のように、若者に銃口を向けるわけにはいかない。習近平政権は一体どうやって収めるのかと注視していたら、何と国内で最大の「政敵」だった江沢民元総書記が、11月30日に96歳で死去したのである。
習政権は渡りに船とばかりに、「全国民が一週間、喪に服す」として、14億中国人が持つスマートフォンの画面を「白黒」にした。これで「白紙運動」は、たちまち萎んでしまったのである。
外交についても、一例を示そう。
2015年11月15日と16日、トルコのアンタルヤでG20(主要国・地域)サミットが開かれた。この時のG20の主要議題は、「中国叩き」だった。中国は南シナ海で人工島を7つも作り、国際社会は非難轟轟だった。また中国株の大暴落、人民元の突然の切り下げによる「人民元ショック」などで、中国経済に対する疑心暗鬼は、頂点に達していた。
習近平主席にとっては、大変頭の痛い外遊だったが、逃げるわけにもいかない。すると、G20開催の二日前に、パリで同時多発テロが起こったのである。死者130人、負傷者300人超という大惨事で、G20は一転して、テロへの非難や対策一色となった。中国叩きなど、どこかへ吹き飛んでしまったのだ。
いま3つ例を挙げたが、事程左様に、「困ると何かが起こって助けてくれる」のが、習近平政権の常なのだ。
習近平主席が行った「二つのスピーチ」
そこで、話を戻して今回の3回目の「一帯一路」フォーラムである。冒頭の日本メディアの見出しが示すように、確かに「ピンチの一帯一路」だった。
前回2019年4月の時は、38ヵ国の国家元首クラスの首脳が勢揃いしたのに、今回は23ヵ国。会期も前回は3日間だったのに、今回は2日に短縮。習近平主席がこだわった「円卓での会議」も実現せず、共同声明すら出せなかった。
しかし、である。私は習近平主席が行った「二つのスピーチ」を、CCTV(中国中央広播電視総台)のインターネット中継で見たが、心にズシリと響いたのだ。
一つ目は、10月17日晩に人民大会堂で行われた歓迎宴会での祝辞である。習主席は、次のように述べた。
「レディース・アンド・ジェントルメン・アンド・フレンズ! いまの世界は太平とは言えない。世界経済は下降圧力が増大し、全世界の発展は多くの挑戦に直面している。
しかしわれわれは、堅く信じていこうではないか。平和・発展・協力・共栄という歴史の潮流は、阻むことができないと。人々の麗しい日常生活は、阻むことはできないと。各国が共同で発展・繁栄していく願いを実現することは、阻むことはできないと。
それには、われわれは協力関係を堅く守るという初心に返り、発展していく使命を銘心しさえすればよいのだ。そうすれば、共に築くハイレベルの『一帯一路』に、時代の光彩を放つことができるのだ。われわれが共同で努力し、人類のさらに美しい未来を切り拓いていこうではないか!」
二つ目は、翌18日の午前11時過ぎ(日本時間)から、人民大会堂で行われた基調演説で、こちらは33分にわたって、落ち着いた口調で述べた。その要旨は、以下の通りだ。
「今年は私が『一帯一路』を提唱してから10周年だ。その心は、古代のシルクロードにちなんで、互いの連通を主線とし、各国と政策の疎通、設備の連通、貿易の流通、資金の融通、民心の互通を強化していくものだ。それによって、世界経済の成長に新たなエンジンを注入し、全世界の発展に新たな余地を切り拓き、国際経済の協力に新たなプラットフォームを作り上げていくのだ。
『一帯一路』の提携は、ユーラシア大陸からアフリカ、ラテンアメリカにまで伸びていき、150ヵ国以上の国と、30以上の国際機関が『一帯一路』を共に築き上げる協力文書に署名した。『一帯一路』の提携は『大きな構図意図』から、『筆入れ』の段階に入ったのだ。企画図は実際の景色へと転化したのだ。
開放的でグリーンで清廉な、ハイレベルで民生に持続可能な『一帯一路』を、共に商い、共に建て、共に享(う)けるというのが、重要な指導原則だ。
10年来、われわれは力を尽くして、鉄路・道路・空港・港湾・パイプライン網などを作り、陸・海・空・ネットの全世界の相互通信網をカバーしてきた。各国の商品・資金・技術・人員の大流通を有効に促進し、千年にわたって続いたシルクロードに、新時代の新たな活力を与えてきた。
中国は各国に向けて、100億枚以上のマスクと23億回分のワクチンを提供し、20ヵ国以上でワクチン生産の協力を行ってきた。われわれが深く知ったのは、人類は相互依存する運命共同体だということだ。世界がよくなってこそ、中国もよくなれる。中国がよくなれば、世界はもっとよくなれる(世界好,中国才会好;中国好,世界会更好)。
中国はすでに、140以上の国と地域にとって主要な貿易パートナーであり、ますます多くの国にとって投資を受ける主要国となっている。皆が互いに友でありパートナーとして、相互尊重・相互支持・相互成就となれば、バラを贈ればその手に香りが余るように、他者を成就させることも自己を助けることなのだ。
イデオロギーの対立を起こさず、地政学の無茶な衝突を起こさず、グループ政治による対抗を起こさず、単独制裁に反対し、経済的な威圧に反対し、デカップリングやサプライチェーンの断絶に反対していく。10年の歴史過程が証明しているのは、『一帯一路』を共に作ることは、歴史の正しい道のりの一つであり、時代が進歩していくロジックに合致しているということだ。この道を歩んでいくことは、人間の正道なのだ。
私は、8項目の行動を提唱したい。(中略)近未来の5年(2024年〜2028年)で、中国の貨物とサービス貿易の累計は、おそらく32兆ドルを超える。中国国家開発銀行と中国輸出入銀行はおのおの、3500億元の融資窓口を開設する。(中国人民銀行は)800億元のシルクロード資金を増設する。今回のサミットフォーラムの期間中、企業家大会で計972億ドルの項目の提携協定を達成した。
『一帯一路』建設は中国に始まり、その成果とチャンスは世界に属する。『一帯一路』のさらに高品質で、さらに高水準の新たな発展を迎えようではないか。開放包容・互連互通・共同発展の世界を作り、共同で人類運命共同体作りを推進していこうではないか!」
以上である。習近平主席はスピーチの他にも、26回もの首脳会談をこなした。
具体的には、17日がカザフスタン、エチオピア、チリ、ハンガリー、パプアニューギニア、インドネシア、セルビア、ウズベキスタン。18日がロシア(プーチン大統領と3時間)、ナイジェリア、アルゼンチン、国連(アントニオ・グテーレス事務総長)、ケニア。
19日がカンボジア、モンゴル、エジプト、トルクメニスタン、コンゴ、タイ、モザンビーク、パキスタン、新開発銀行(ディルマ・ルセフメット総裁)。20日がスリランカ、ベトナム、ラオス、ブラジルである。
またしても「神風」が吹いた
この二つの演説を聴いていて、私が心にズシリと来たというのは、他でもない。イスラエル・パレスチナ紛争が勃発したことと関係している。昨年2月に始まったロシア・ウクライナ戦争に続き、いまや人類は二つ目の大型戦争に入ろうとしている。
世界の「米中ロ3大国」のうち、アメリカはウクライナに武器と軍事情報を提供し、今回またイスラエルに同様のものを与えようとしている。ロシアはウクライナに侵攻した当事者であり、パレスチナのハマス側が軍事的に頼るのも、結局はロシアということになるのだろう。
そのようなアメリカとロシアに比して、中国だけは、この二つの悲しむべき戦争に、軍事的な関わりを持っていない。中国のロシアとの今年の貿易額(1月〜9月)は、前年比で29.5%も増えているが、殺傷能力のある武器は提供していない。
今回、プーチン大統領が北京へ来て、習近平主席と「42回目の首脳会談」に臨んだが、そこでもおそらく、殺傷能力のある武器を提供するとは約束していない。
本来なら、冒頭の日本メディアがこぞって指摘しているように、「一帯一路」は10年前に習近平政権が思い描いていた理想とは程遠いし、すでにヒビ割れてもいる。「カネの切れ目が縁の切れ目」とばかりに、中国から離れていった国もある。
特に、中国が「一帯一路の終着点」と位置づけるヨーロッパで国家元首級の首脳を派遣したのは、ハンガリーとセルビアくらいのものだった。G7(主要先進国)で唯一、「一帯一路」の協定に署名していたイタリアも、今回は参加を見送った。ジョルジャ・メローニ政権は、今年中に「一帯一路」から離脱するとも言われている。
だが、世界情勢は、対象国を個別に見る「絶対的分析」も必要だが、現実には広く俯瞰した「相対的分析」によって判断されるものだ。現在の「戦争まみれ」の世界の中で、改めて習近平主席の愚直なスピーチを聴くと、「この10年で『一帯一路』はインフラ整備を積み上げてきた」「共に手を携えて『人類運命共同体』を作ろうではないか」といったセリフが、妙に説得力を持ってくるのである。
確かに中国は、この10年というもの、戦争を起こしていない。人民解放軍がどこかの戦争に積極的に加担したということもない。習近平政権が行ってきたのは、「一帯一路」の名のもとに、発展途上国にカネを貸し、中国企業が進出してインフラ建設を進めたことだ。「壊す」のではなく、「建てる」側だったのである。
前述の「習近平の強運」という論点から見れば、本来なら今回の3回目の「一帯一路」フォーラムは、「ボロボロの大会」になるリスクを孕んでいた。何せ開幕の一週間前まで、日程さえ正式発表できなかったくらいだ。
それがやはり今回も、「習近平にとっての神風」が吹いたのだ。すなわち、10月7日に突如として起こったハマスによるイスラエル攻撃と、それに対するイスラエルのガザ地区への報復攻撃である。
つくづく「持ってる男」
この降って湧いたような中東危機に、「米中ロ3大国」の中で最も慌てたのは、アメリカである。アントニー・ブリンケン国務長官が急遽、11日〜16日に中東を訪問し、18日にはジョー・バイデン大統領が自ら、イスラエルを緊急訪問した。
だが、アメリカがイスラエルに加勢すればするほど、世界のアメリカを見る目は冷ややかになっていくようにも映る。イスラエルは、発生当初こそ「被害者」だったが、現在は「加害者」の側だからだ。
そのことを象徴したのが、18日に国連安全保障理事会で行われた、ブラジルが提出した即時停戦決議案に対する採決だった。何とアメリカが反対し、拒否権を行使して葬り去ったのだ。「イスラエルによる自衛権の行使を妨げる」というのが、その理由だった。
これに対して、国連パレスチナ常任オブザーバーのリヤド・マンスール氏は、怒りをぶちまけた。
「この理事会が2日前に停戦を呼びかけていれば、何百人もの命を救うことができただろう。とにかく、いますぐ流血の事態を止めてくれ!」
17日にガザ地区のアル・アハリ病院が砲撃を受け、500人近い無辜の人々が犠牲となったばかりだけに、マンスール氏の言葉には重みがあった。
ともあれ、繰り返しになるが、「米中ロ3大国」のうち、ロシアは現在、戦争中である。アメリカは、ウクライナに武器などを提供しているばかりか、中東で今後起こりうる戦争に、加担しようとしている。
そうなると相対的に、「一帯一路」や「人類運命共同体」の提唱者である中国の世界における存在感が、高まっていくのである。特に、グローバルサウスと呼ばれる発展途上国においては、そうである。いや、先進国においても「中国の方がマシではないか」と共感する人が出てくるだろう。
加えて、過去5年間、「中国封じ込め」を実行してきたアメリカも、微妙に態度を変えざるを得なくなる。ロシア・ウクライナ、イスラエル・パレスチナという「2つの戦争」に加担しながら、「中国封じ込め」も同時に行う「3正面作戦」は、いまのアメリカの国力では無理である。
そもそも中東問題を解決するには、中東の多くの国にとって最大の貿易相手国である中国を敵に回すわけにはいかない。2001年の「9・11事件」後のアメリカの二つの戦争――アフガニスタン戦争とイラク戦争も、「後背地」の中国を説き伏せたことで勝利に導けた。
というわけで、今回も習近平主席に「強運」がもたらされた。つくづく「持ってる男」だと思う。
●アウディーイウカ攻撃に失敗したロシア軍、兵力追加投入… 10/24
ロシアによるウクライナ侵略は24日で1年8か月を迎える。ロシア軍は東部ドネツク州アウディーイウカ周辺で多くの犠牲を出して攻勢を続けているが、ウクライナ軍が敷設した地雷などに阻まれ、苦戦を強いられているとみられる。
アウディーイウカの戦闘について、米政策研究機関「戦争研究所」は22日、露軍が19〜20日の攻撃に失敗したにもかかわらず、兵力を追加投入したと指摘。英国防省も22日、「露軍の犠牲者は90%増えた」と分析した。
プーチン大統領は15日にウクライナの反転攻勢について、「完全に失敗した」と決めつけた。アウディーイウカへの攻勢は、是が非でも成果を得たいという政治的動機に基づいているとの指摘もある。
同研究所は、ロシアの軍事ブロガーの話として、ウクライナ側はアウディーイウカ周辺に地雷を敷設し、「厳重に要塞(ようさい)化した」と指摘した。ウクライナが6月に反転攻勢を開始した直後、南部ザポリージャ州の要衝トクマクを目指す攻撃で露軍の地雷に足止めされた状況と似ているという。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は22日夜の演説で、アウディーイウカの現状に触れ、「多数のロシアの攻撃があるが、我々の陣地は維持されている」と語った。
ウクライナ軍は広範な領土奪還の足がかりとするため、南部ヘルソン州のドニプロ川で渡河作戦を続けている。
●スイスは「保守回帰」「ポピュリズム復活」 総選挙海外報道 10/24
他の欧州国家と同じように、スイスでも右翼ポピュリズムが広がっている――22日に実施されたスイス総選挙の結果について、複数の国外メディアがこう総括した。一方、国内メディアは環境政党が墓穴を掘った結果に過ぎないと分析する。
22日の総選挙では、右派の国民党(SVP/UDC)が得票率28.6%と2019年の前回選挙を3ポイント上回り、第1党としての地位を強固にした。最大の敗者は2つの環境政党で、合計11議席を失った。
「今回の選挙は、欧州全土の投票所でポピュリスト(大衆迎合主義者)が復活していることを裏付ける」。英紙フィナンシャル・タイムズはこう総括した。他の多くの報道機関と同じように、イタリアやオーストリア、ドイツ、フィンランドに続くスイスの右傾化を指摘した。
独紙フランクフルター・アルゲマイネは「コロナ禍や地政学的大変動の結果、国民の間で気候問題への意識は再び低下した。政治的にも経済的にも不安定な時代にあって、再び保守勢力にすがりたいと考えるスイス国民が増えた」と分析した。
ウクライナ戦争や緊迫化する中東情勢を受け、有権者は外部の脅威と認識されるものに対する防衛的な姿勢を強めた、と解説するメディアも複数あった。
物議を醸す選挙広告
仏紙ル・モンドは、国民党が選挙戦で「『大量移民』との闘いや人口1千万人予想という得意分野に重点を置いた」と指摘した。「血まみれのナイフやフードで顔を隠した犯罪者、拳、傷だらけの顔、怯える女性はニューノーマル(新常態)になるのか?外国人による犯罪に焦点を当てるため、こう問いかける広告がソーシャルメディアを駆け巡った」
独紙ツァイト紙は、選挙戦で「『外国人を攻撃』カードが切られた」とたとえた。
独紙スードドイチェ・ツァイトゥングは「スイスは孤立しつつある」と批判的に報じた。「ウクライナ戦争、中東戦争…多くの有権者は目をつぶって国民党に投票した。居心地の良い中立に身を包むために」
米CNBCは、スイスの有権者は他の欧州諸国と同様、相反する問題の間で板挟みになっていると解説した。
「スイス総選挙は、右翼ポピュリストを選ぶか、カネや資源を地球温暖化対策に投じるべきかの間で揺れる欧州有権者の実像を改めて浮き彫りにした。裕福なスイス有権者でさえ、例外ではなかった」
環境政党の敗因
スイス・ドイツ語圏の日刊紙NZZは「世界中に広がる巨大な影がスイスにも落ちた」と総括した。「世界は燃え、大きな不確実性がある。国民に何かを要求する政党は求められていない。たとえ嘘だとしても、安全を約束する者が勝利する」
「今回の選挙ではリベラリズムが台頭し、個人の責任はこれまでになく軽視された」
しかし、国内メディアの多くはより細かい変化にも着目し、今回の選挙で右派が地滑り的な勝利を収めたわけではないと総括した。左派・社会民主党(SP/PS)と中央党(Die Mitte/Le Centre)も議席を伸ばしたからだ。
メディアの批判の矛先は、終始劣勢だった緑の党(GPS/Les Verts)と自由緑の党(GPL/PVL)に向かった。環境政党は気候対策として国民に大きな負担を強いる一方で、有権者に受け入れられる具体的な計画を示すことができなかった。
スイス・ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガー他のサイトへは「危機が多発する今、緑の党の掲げる終末論は警鐘効果が薄れ、絶えず変化を求める同党の呼びかけは威嚇効果をもたらした」と読み解いた。
スイス・フランス語圏日刊紙トリビューン・ド・ジュネーブは「緑の党は、説教ばかりしているうちに道を見失ってしまった」と皮肉った。
●ウクライナのEUへ期待の声と山積する課題 10/24
欧州統合のプロセスにおいて「加盟国の拡大」は統合を進める推進力の一つであったが、少し前まで真剣に討議されなかった。しかし、ロシア・ウクライナ戦争で、ウクライナ加盟へ前向きな姿勢を取る必要が出てきており、解決すべき問題となっている。
Economist誌9月30日号は「ウクライナにおける戦争は欧州連合(EU)を拡大し改善すべき強い理由である」と題する社説を掲載している。概要は次の通り。
EUを27カ国から36カ国に拡大する(ウクライナ、西バルカン諸国、ジョージア、モルドヴァを含む9か国の新規加盟を受け入れ)のは、容易なことではない。最も新しい加盟国はクロアチアだが、その加盟は10年前のことであった。
EU拡大という考えは長らく休眠状態であったが、ようやく討議項目として復活してきた。拡大完了の目標年次は2030年とされており、これは楽観的であるものの目指す価値がある。
拡大は、EUの最も成功した政策である。ユーロの導入、単一市場の設立といったEUのプロジェクトが大きな意味を持ったのは、それに参加する国が広範だったからだ。ウクライナを支援するEUの取り組みは、戦地に接する4カ国(ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア)を加盟国として受け入れていなければ、はるかに弱々しいものとなっていたであろう。
EUには、これら9カ国の加盟申請を中途半端な状態に止めておく余裕はない。それは、プーチンに欧州を不安定化させる隙を与えることになる。
EU拡大の作業を進める上で三つ重要なことがある。第一は、加盟申請国に対して希望を持たせるメッセージを発することである。EU加盟国になるに足りる必要な改革を行った場合には、加盟を認めることをはっきりさせるべきだ。
第二点は、EUの内部改革(拒否権の見直しや共通農業政策の改革など)を理由に、準備ができている国の加盟を遅らせるべきではない。内部改革を進めていることは、加盟申請国に対してドアを閉じる理由にならない。
第三点は、過去の拡大から教訓を学ぶことである。多くの国の場合、EU加盟のための改革がその後も継続し、それらの国は、EU加盟後、より自由になり、更に繁栄した。しかし、EUに加盟した後、EUの規範に反する方向に進んでしまったハンガリーやポーランドのような事例もある。ガバナンスの面で好ましくない実績のある国については、よくない行いを罰する仕組みが必要である。
欧州が世界の中で一つの勢力として数えられるためには、行動できる力を示す必要がある。拡大が困難であるからといってそれを遅らせることは、欧州とEUを弱体化させることにしかならない。
まして、欧州は、ロシアの侵略と米国の孤立主義にさらされている時である。戦争は悲惨な状況を生み出しているが、EUがより大きく、よりよい存在になるための推進力をも生み出している。欧州はそれを実現する道を探さなければならない。

欧州統合のプロセスにおいて「加盟国の拡大」は、「権限の拡張」、「制度の深化」とともに統合を進める推進力の一つであったが、少し前まではこの問題がEU内において真剣に討議される状況ではなかった。
「EUは四つの危機に直面してきた」とよく言われた。2010年に本格化したユーロ危機、14年以降のロシアのクリミア半島及びウクライナ東部への侵攻、15年以降の移民・テロ危機、16年以降の英国のEU離脱問題の四つである。
その後、さらに、新型コロナ・ウイルス問題への対処、ハンガリーとポーランドの「法の支配」からの逸脱の問題の深刻化が加わり、新規加盟国の問題について取り組むような状況にはなかった。
しかし、ロシア・ウクライナ戦争がこれを大きく変えた。EU加盟国の多くが、ウクライナに対して連帯感を示すため、また、ロシアの脅威を受けての欧州のあるべき姿を考え、ウクライナのEU加盟申請について前向きな姿勢を取った。
しかし、EUへの新規加盟については既に列に並んでいる国がいる。それらの国々と並行してウクライナの加盟について検討を進めていこうとの力学が働いているのが今日の状況である。列に並んでいる国を宙ぶらりんな状況のままにしておくことは、好ましくない方向に向かわせかねないとの考慮も働いている。
新規加盟へ並ぶ国の特徴
EUへの新規加盟の列に並んでいる国は、いくつかのカテゴリーに分けられる。第一は、「加盟候補国」とされ、加盟交渉がすでに開始されている国である(アルバニア、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア)。第二は、加盟交渉開始にまでは至っていないものの「加盟候補国」と認定された国である(ウクライナ、モルドヴァ、ボスニア・ヘルツェゴビナ)。第三は、それよりも更に時間とプロセスを要する「潜在的な加盟候補国」である(ジョージアとコソボ)。第四は、かねてから「加盟候補国」とされながらも動きのないトルコであるが、ここでいう9カ国には含まれない。
上記の社説では、9カ国をまとめて取り扱っているが、実際には、物事が早く進む国とそうでない国に分かれていくだろう。EUへの新規加盟に際しては、1993年にとりまとめられた「コペンハーゲン基準」に沿って、EUとしての政治的基準、経済的基準、法的基準に合致しているかを各分野について精査するプロセスが進められるが、特に、「アキ・コミュノテール」と呼ばれるEUにおける法の総体系への整合性を確保するのは大作業である。
EU拡大は、中長期的な視点からウクライナの安全保障をどのように確保するかの問題ともリンクしている。ウクライナのNATO加盟は一つのオプションであるが、それが難しい際のセカンド・ベストとしてウクライナのEU加盟を同国の安全保障措置の一環として位置づけるとの考えがある。
しかし、EU加盟はNATO第5条のような集団防衛の仕組みを提供するものではない。EUが用意しているのは、加盟国の一つに攻撃が加えられた際には他の加盟国はできる限りの援助を行うとの努力義務に止まるものである。
●ロシア人の約半数が「収入不足」、基礎的支出満たせず 10/24
人材採用会社ヘッドハンターの調査で、賃金が基礎的支出を下回っていると回答したロシア人が過去2年で20%増加し、約半数に達したことが分かった。
ロシアはウクライナでの戦争に多額の支出を投じている。
調査は10月に約5000人を対象に実施。副業や投資による収入を除いて賃金が基礎支出をカバーできているかとの質問に「できている」と回答したのは20%と、ウクライナ侵攻前の2021年の36%から大幅に低下した。
また、「困難だができている」は同25%から36%に、賃金が不十分との回答は同39%から45%に上昇した。
この45%のうち、毎月少なくとも2万ルーブル(212ドル)以上不足しているとの回答は過半数を占めた。
ロシア連邦統計局(ロスタット)によると、7月のロシア人の名目月収は平均7万1419ルーブル(756ドル)だった。
●ウクライナ戦争で大儲けするゼレンスキー大統領とその取り巻き 10/24
長引くウクライナ戦争ですが、欧米や日本の報道では「ロシア=悪、ウクライナ=善」といった構図が一般的になっています。そのため、「日本もウクライナのためにできる限りの支援をするのが望ましい」との論調が大手を振っているようです。
しかし、どの戦争でも一方だけが善で、一方だけが悪ということはあり得ません。人類の歴史は戦争の歴史でもあり、そこではさまざまな利害が絡まっており、どちらかに絶対的な正義が宿っていることはあり得ない話です。
たとえば、ウクライナ戦争の場合でも、ロシア軍による侵攻が始まる直前の2022年2月14日、ゼレンスキー大統領が率いる政権政党「国民への奉仕」所属の国会議員37名が行方不明になりました。イタリアの新聞報道によれば、彼らはウクライナの富豪らとともに自家用ジェットでオーストリアに脱出したといいます。その直後、戦争が始まったわけです。
そしてウクライナの新聞が調べたところ、多くのウクライナの金持ち連中が家族をともないフランスのコート・ダジュールの保養地で過ごしていることが確認されています。大半のウクライナ国民が戦火の下で生きるか死ぬかの瀬戸際に追いやられているときに、勝手気ままに海外で暮らしているゼレンスキー大統領の取り巻きが数多く目撃されているのです。
今年7月20日に召集されたウクライナ議会には450人いる議員のうち、たった99人しか出席しませんでした。欠席した議員の多くはモルディブなどのリゾート地で悠々自適の生活をしているようです。そうした議員連中曰く「ウクライナの防衛は外国の義勇兵に任せている」。
しかも、アメリカのCBSがまとめたドキュメンタリーによれば、「欧米からの軍事品や医薬品など、支援物資の70%は必要な所に届いておらず、闇市場に流れている」とのこと。ゼレンスキー大統領夫妻の両親や親族は早い段階で外国に逃亡しています。世界を飛び回り、ウクライナへの支援を呼び掛けているゼレンスキー大統領ですが、エレナ夫人は同行したニューヨークやパリで大盤振る舞いの買い物三昧。
最近もカルティエで金やダイヤのブレスレットを始め34万ドルものショッピングに勤しんでいることが報道されたばかり。昨年のクリスマスはパリで過ごし、そこでも高級ブティックをはしごし、しこたまブランド商品を買い漁っていました。とても国民が生死の瀬戸際に追い込まれていることに寄り添うような姿勢は見られません。
また、ポロシェンコ前大統領に至っては、自分の子どもたちのみならず10もの現金をもってイギリスに逃れている模様です。最大の問題はウクライナの腐敗体質が悪化の一途をたどっていることです。以前からウクライナは世界でも指折りの「汚職大国」として知られていました。
最新の世界腐敗指数(CPI)でも、ウクライナはワーストランキングの上位を占めています。そのことを象徴的に示しているのが、去る9月に解任されたレズニコフ国防大臣の現金持ち逃げ事件でしょう。海外から提供されてきた経済支援や軍事物資の横流しで懐にしまい込んだ10億ドル(約1,500億円)をもって、国外に姿を消してしまいました。同時に7人の副大臣ら軍の幹部も解任されましたが、政府の上から下まで「ワイロ三昧」が当たり前になっているようです。
兵役を逃れるために軍の幹部にワイロを渡すのは日常茶飯事。追放されたレズニコフ国防大臣ですが、ウクライナの軍部の間では「あいつはアメリカの金を持ち去っただけで、ウクライナの金に手を出したわけではない」と、奇妙な論理で肩を持つ動きもあります。
実は、ゼレンスキー大統領も同じ穴の狢で、海外からの支援金で国内の公務員6万人の給与を全額賄っているうえに、家族名義でイギリスやフランス、最近はエジプトにも豪邸を購入したことが明らかに。
こうした腐敗体質や「ワイロ文化」を解消しない限り、ウクライナ戦争は終結しないのではないでしょうか。ウクライナの新聞によれば、ウクライナ人は1人頭8,000ドルから1万ドルの代金を払えば、徴兵対象であっても国外への脱出が可能になっているとのこと。最近は死亡診断書の偽造が急増しているとの報道もあります。こうした偽造文書で徴兵を免れているわけで、新たなビジネスとして急成長している模様です。
●パレスチナ情勢が国際エネルギー秩序にもたらす影響 10/24
パレスチナ・ガザ地区を実効支配するイスラム主義勢力ハマスがイスラエルへの大規模攻撃を2023年10月7日に実施したことを受け、イスラエルがガザ地区への報復攻撃を行うなど、パレスチナ情勢が緊迫化している。こうした中、パレスチナ情勢の悪化に連動し、世界有数の石油・ガス産出地域である湾岸地域が不安定化し、国際エネルギー秩序が混乱に陥る可能性があるのかが注視される。
イスラエルの天然ガス動向への影響
まず、パレスチナ情勢の悪化はイスラエルの天然ガス動向に影響を及ぼした。イスラエル・エネルギー省は23年10月9日、安全性の懸念を理由に南部沿岸のタマル・ガス田の生産停止を発表した。
翌10日には、米石油会社「シェブロン(Chevron)」は、イスラエル・エジプト間の東地中海ガスパイプライン(EMG)を通じたエジプト向け天然ガス輸出を停止し、ヨルダンを経由する代替パイプラインで供給することを発表した。EMGは、イスラエル南部の町アシュケロン(ガザ地区の北約10キロメートル)とエジプト・シナイ半島の町アリーシュを結ぶ海底パイプラインである。
エジプトは20年1月からイスラエルの沖にあるタマルおよびレバイアサン両ガス田で生産されたイスラエル産ガスを輸入している。地中海で唯一の液化天然ガス(LNG)施設を擁すエジプトは、22年6月にイスラエルおよび欧州連合(EU)と調印した覚書にもとづき、輸入したイスラエル産ガスをエジプトのLNG施設で液化した後、タンカーで欧州諸国に輸出する計画を進めてきた。
だが、今回のタマル・ガス田での生産中断とEMGの操業停止が長期化し、イスラエルからエジプトへの輸出量が大きく減少すると予想されることから、エジプトは国内供給を優先せざるを得ず、欧州向け輸出分を十分に確保できなくなる恐れがある。欧州が22年2月のロシアによるウクライナ侵攻を機に、エネルギー面でのロシア依存の脱却を試みる中、地中海を挟んで隣接するエジプトは代替調達先の1つとして期待されていた。
さらに、今般のガザ情勢に連動してイスラエルとレバノンのヒズボラ間の軍事衝突も起きたことで、イスラエルのガス田開発全体が悪影響を受けるだろう。イスラエルとレバノンの係争中の海域には、イスラエルが開発を進めるカリシュ・ガス田(ハイファ沖80キロメートル)がある。両者の対立激化がイスラエル権益への攻撃の活発化につながると予想されるため、同ガス田がヒズボラによる更なる海上攻撃を受け、開発事業が中断に追い込まれる可能性がある。
情勢悪化で原油価格は上昇
イスラエルの軍事行動を受け、イランの「代理勢力」であるシーア派民兵が中東各地で武装活動を活発化させている。代表的な組織はレバノンのヒズボラ、イラクの人民動員、イエメンのアンサール・アッラー(通称フーシー派)である。
10月19日、シリアやイラクに駐留する米軍を狙った無人機攻撃が相次いだ。シリアは南東部のタンフ基地や東部コノコ・ガス田の基地、イラクは北部エルビルにあるハリール基地やバグダード国際空港付近の基地などが攻撃を受けた。
さらに同日、イエメンからイスラエルに向けてミサイル4発と無人機12機ほどが発射され、米海軍の艦艇が全てを迎撃した。一連の攻撃は、イランの代理勢力によるものであるとされる。
パレスチナ情勢の緊迫化は国際原油価格の推移にも影響している。原油指標の1つ、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は、ハマスの奇襲前(10月6日)に1バレル当たり82ドルであったのが、攻撃後の9日には86ドルに上昇した。その後、一旦は下落したものの、油価は再び上昇し、19日には90ドルを上回った。
原油価格の変動はいくつかの要因から引き起こされる。米ミシガン大学経済学部のLutz Kilian教授は09年に油価変動を、(1)供給要因、(2)実体経済の総需要要因、(3)地政学リスクとしての原油市場特有の変動要因(将来の供給停止といった不確実性に起因する事前予防的な需要)に分類した時系列分析モデルを提示した。
また、日本銀行が16年に発行したワーキングペーパーでは、Kilianモデルを拡張させ、金融要因や将来の需要・供給に対する期待要因を考慮したモデルが提示された。
今回のイスラエル・ハマス間の攻防は、主要産油地ではない場所で展開しているため、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)といった湾岸諸国の原油輸出に直接影響を与えている訳ではない。しかし油価が上昇する背景には、地政学リスクの観点から事前予防的な需要が生じたことがあると考えられる。
特に米国が19日、戦略石油備蓄(SPR)の補充を打ち出した影響が大きい。バイデン政権は今年12月と来年1月に600万バレルの原油を購入し、SPRの積み増しを図る計画だ。先行き不透明な中東情勢への懸念から、早期に原油を確保しようとする動きが世界中に広がれば、油価上昇に拍車がかかるだろう。
懸念される湾岸情勢への飛び火
パレスチナ情勢での大きな懸念点が、イスラエルが地上軍事作戦の実施に踏み切った場合におけるイラン側の反応である。現在、イランの代理勢力がイスラエルや米国の出方を牽制するような形で武装活動を行っているものの、イラン自体は大きな軍事行動をとっていない。
しかし米ニュースサイト「アクシオス(Axios)」によると、10月13日、イランのアブドゥルラヒヤーン外相は国連の中東和平担当特別調整官との会談で、イスラエルによるガザ攻撃が続けば、介入せざるを得ないと警告し、イラン参戦の可能性を示唆した。このように、イランはイスラエルおよび米国との対決姿勢をより一層強めている。
また、イランはイスラエルを地域的孤立させるため、対イスラエル包囲網の形成にも努めている。10月18日にイスラム協力機構(OIC)加盟国に対し、イスラエルに対する石油禁輸を取るよう呼びかけた。また、イスラエルと外交関係を締結しているOIC加盟国には、イスラエルとの断交を求めた。
こうした状況下、米国はハマスをロシアのプーチン大統領と並ぶ、米国の民主主義にとっての深刻な脅威であると名指し、イスラエルを全面的に支援する構えだ。このため、パレスチナ情勢の展開次第で米国・イラン間の緊張も高まるだろう。その場合、湾岸諸国は米国・イランとの関係で板挟みの立場に追い込まれる可能性がある。
湾岸諸国は米国に安全保障面を依存する一方、最近はイランとの関係改善を進めてきた。特に、今年3月のサウジ・イラン関係正常化に係る合意は地域情勢の緊張緩和に貢献するものであった。このため、湾岸諸国としては、イスラエルの地上軍事作戦からのイランの介入、米・イランの対立激化といったシナリオを避けるため、イスラエルに自制を強く要請するしかない状況である。
仮に湾岸諸国が、イランが求めるイスラエルへの石油禁輸やイスラエルとの断交に応じず(アラブ首長国連邦(UAE)およびバーレーンの場合)、イランがそれに対し不信感を募らせれば、イランの代理勢力が湾岸諸国側を警告するような武装活動に着手する可能性も否定できない。過去には、イエメンのフーシー派の無人機が19年9月にサウジアラビア東部の石油施設を、22年1月にUAE首都アブダビの石油施設を攻撃した経緯がある。
世界の多くの国々がサウジアラビア・UAEから原油を輸入しており、特に日本は両国から原油調達率が全体の約8割に達する。このため、パレスチナから湾岸地域に戦火が移るとなれば、単に原油高の煽りを受けるだけでなく、日本の原油の安定確保が脅かされる事態となることは留意すべき点である。
●裏切り、分裂…「米国政治の混迷」は報道の斜め上! 10/24
アメリカ政府のウクライナ支援のための追加予算が連邦議会で宙に浮いている。バイデン政権は大統領在庫引き出し権限(PDA)を利用することで、当面はウクライナ支援を継続できるものの、連邦議会の正常化による予算措置は急務だ。それにもかかわらず、10月初頭からアメリカの連邦議会はさらなる混乱に陥っている。そしてそれは、ウクライナ情勢やイスラエルとパレスチナ自治区の軍事衝突にも大きな影響を及ぼしている。
アメリカ内政、前代未聞の事態に陥る
10月3日、アメリカ議会下院でケビン・マッカーシー議長に対して史上初めて解任動議が可決された。これは前代未聞の事態である。
この解任動議は、マッカーシー議長が政府閉鎖を回避するつなぎ予算(1カ月間の政府資金を確保する暫定予算)を下院の民主党と協力して通したことに対し、共和党の保守強硬派、フリーダム・コーカス(自由議連)のメンバーが下院議長解任動議を提出したため、とされている。
だが、この解任動議に関する出来事は日本で言われているほど単純ではない。マッカーシー議長の解任決議可決には、共和党の一部にすぎないフリーダム・コーカスの議員票だけでは不足していた。実は、マッカーシー議長は、つなぎ予算で協力したはずの下院民主党の裏切りにあって、民主党議員の賛同によって、その職を解任されてしまったのである。
下院民主党には共和党保守強硬派と同じく、ウクライナ支援に否定的な勢力が実は存在している。それは下院民主党の最大勢力である進歩派議員連盟(CPC)である。
進歩派議員連盟は当初からウクライナ支援に対して否定的であり、バイデン政権の外交姿勢について度々くぎを刺してきた。昨年10月同連盟議員はバイデン大統領にプーチンとの直接対話を求める書簡を発表し、民主党内の他議員から激しい反発を招いて同書簡を撤回した経緯がある。ウクライナ支援に対する懐疑的な見方は、共和党側だけでなく実は民主党側にも潜在的に渦巻いているのだ。
そのため、下院民主党としては、ウクライナ支援を求めるバイデン政権に配慮しつつ、CPCの意向を背景としてウクライナ支援をつなぎ予算から除き、さらにその責任を共和党保守強硬派に求める一手を打ったといえよう。
さらに協力したはずのマッカーシー議長を解任し、連邦議会を混乱させることで、来年の連邦議会議員選挙で共和党の責任を追及する政局的な意図も丸見えだ。
アメリカは内政の混乱が外交に波及するようになっており、共和党・民主党両党ともにウクライナ支援に対して一枚岩の姿勢が取れなくなっている。アメリカの対ウクライナ支援でのリーダーシップが落ちれば、国際状況は大きく変わっていくことになるだろう。
そんなアメリカの動きを、欧州諸国やグローバルサウスは冷静に見ている。日本も従来通りアメリカ頼りでは危うい状況だが、一体何が今世界で起きているのか、見ていこう。
ドイツとフランスの「保険」の掛け方
欧州諸国の姿勢が基本的にはウクライナ支援を基調としていることは間違いない。しかし、それはウクライナ情勢の変化にいつでも対応できるようにしていることが前提だ。つまり、国益を踏まえた二股外交を展開しているのだ。
たとえば、ドイツは急速に悪化する経済状況に対応するため、実質的にロシアに対して塩を送っている。今年6月まで、ロシアから欧州に石油を運ぶドルジバパイプライン経由でロシアのエネルギーを輸入していたし、6月以降も第三国のエネルギーをロシア経由で輸入している。また、ドイツはイランとの関係が良好であり、両者の原油取引の利益はイラン製自爆ドローンに使用されていて、そのままロシアに供与されている。ドイツはウクライナ支援と同時にロシアも含む反西側国家と関係をしっかりと保っているのだ。
また、フランスのマクロン大統領は今年4月ロシアの後ろ盾である中国の習近平国家主席と面会した。その際、「ロシアに理性を取り戻させ、みんなを交渉のテーブルに着かせるにはあなたが頼りだ」と習近平氏を持ち上げて見せた。EUのフォンデアライエン欧州委員長が中国に警戒感を崩していないのに対し、マクロン大統領は「私たちが一緒にやれることは幅広い。フランスと中国の友情万歳!」と自らのSNSに中国語で投稿すらしている。フランスは中国との関係を、てことして対ロシアの“保険”をかけている。
つまり、EUの中心である独仏は、アメリカが何らかの形でウクライナから手を引くことを想定し、目立たないところで、自らの生き残りと立場の強化を図っているのだ。
ハマスもアメリカの混乱をうかがった
グローバルサウスの動きはもっと露骨である。グローバルサウスの中心は中国、インド、ブラジル(およびロシア)だ。彼らは元々、西側諸国との価値観を共有していない(特にインドに対する西側諸国の誤解は著しい)。
だからこそ、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に対するグローバルサウスの支持は高まる一方だ。BRICSの一角である南アフリカで、8月に開催されたBRICS首脳会議では多くの国々の新規加入見通しが示された。約20カ国が公式に加盟申請し、さらに20カ国以上が参加に関心を示している。人口・経済力を持ちながら、グローバルサウス西側諸国の価値観を押し付けない枠組みへの求心力は高まり続けている。
また、9月にはロシアのウラジオストクで東方経済フォーラムが開催された。プーチン大統領が北朝鮮の金正恩と接触したことが日本でもニュースなって注目を集めたが、実は同フォーラムには他にもインド、ベトナム、カザフスタン、ラオス、ミャンマー、シンガポール、フィリピン、ベラルーシといった国々が参加していた。往年の勢いはないものの、この状況下でもまだ一定の国々との付き合いが維持されているのだ。
さらに、トルコを後ろ盾としたアゼルバイジャンとアルメニアのナゴルノ・カラバフ紛争が再燃し、アルメニアが事実上あっさり降伏することになった。この紛争はアメリカとアルメニアが軍事演習を行った直後に起きたものであり、まさにアメリカの影響力の失墜と弱腰な外交姿勢を露骨に見透かす事件であった。
直近のハマスによるイスラエルに対する奇襲は、サウジアラビアとイスラエルの接近を妨害するものとも推察されているが、ハマス側がバイデン政権の脆弱な足元を見て行動したことは明らかだ。アメリカの混乱はそのまま世界情勢の混乱に直結する。
岸田政権に求められる「日本の生き残り戦略」
岸田政権はバイデン政権のウクライナ支援に歩調を合わせてきたものの、急速に変化するアメリカ情勢およびグローバルサウスの動向を踏まえた外交を志向することが必要だ。バイデン政権の外交姿勢に過剰におもねるのではなく、自国独自の生き残りおよび影響力拡大に向けた取り組みが重要である。
岸田政権は「反撃能力」にも活用する予定の巡航ミサイル「トマホーク」を、1年前倒しして2025年度から取得することをアメリカ国防総省と決定した。台湾有事や北朝鮮問題を前提としても、2024年大統領選挙後の政治混乱の可能性に慌てて対応した、というのが実態だろう。
ただし、トマホークは国産スタンドミサイルの補完的役割でしかなく、国産ミサイルの前倒生産も努力すべきだ。それに伴う配備場所や弾薬庫整備加速も行うことが求められる。アメリカに頼りきりになるのではなく、自国の取り組みの充実が必要だ。
一方、自民党は今年9月「日・グローバルサウス連携本部」を新たに設置し、萩生田光一政調会長が本部長に就任することを決めた。同本部では対日投資やサプライチェーン構築に向けた戦略を議論するものとしている。この取り組みが世界全体を見据えた腰の据わった取り組みとなることに期待したい。果たして実態が伴う取り組みになるのか、今後の状況を見守りたいと思う。
アメリカ政治の混乱が世界に大きく波及しつつあり、日本政府は従来のアメリカ頼りの戦略の延長線ではなく、日本独自の戦略を持つことが急務といえるだろう。
●米EU首脳会談、ウクライナ支援などで一致 10/24
米国のジョー・バイデン大統領は10月20日、訪米中の欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長および欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長と、首都ワシントンで会談した。会談後に共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、国際的な諸課題への対応や米国EU間の経済協力の強化を掲げた。
共同声明では、イスラエルとパレスチナ自治区のガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの衝突を巡り、イスラエルが国際法に従ってハマスの攻撃から自国を守る権利を確認すると記した。また、武力衝突の地域的な拡大を防ぐことが重要との認識を示した。ロシアのウクライナ侵攻については、米国とEUによる「ウクライナとその国民に対する長期的な政治的、財政的、人道的、軍事的支援に揺るぎはない」と訴えた。対ロシア制裁を迂回する行為には、今後も制裁と輸出管理を厳格に実施すると主張した。
共同声明には、インド太平洋地域における連携も盛り込まれた。それぞれのインド太平洋戦略に沿って、インド太平洋における実務的な協力を強化する機会を探ると言及した。中国に関しては「率直に関わり、われわれの懸念を直接伝える重要性を認識し、中国と建設的かつ安定的な関係を構築する用意がある」と明記した。経済的なデカップリング(分断)は目指さないとしつつ、リスク軽減のために国家安全保障に関わる先端技術を保護する必要があると指摘した。また、経済的威圧や非市場的政策への対処も挙げた。
米国EU間の経済協力では、米国EU貿易技術評議会(TTC)における進展(2023年6月6日記事参照)を評価し、2023年内に開催予定の第5回閣僚会議に向けて共同作業を進めることを奨励した。TTCで策定した「信頼できる人工知能(AI)とリスク管理に関する共同ロードマップ」を通じて、AIのリスク管理と信頼性のあるAIに関わるツールや手法を開発するための継続的な取り組みを確認した。
今回の首脳会談では、米国とEUが2021年10月以降、交渉を続けてきた「鉄鋼・アルミニウム・グローバルアレンジメント」と、2023年3月に交渉入りを決めた重要鉱物協定がそれぞれ合意されるか注目されていたが、いずれも合意には至らなかった。鉄鋼・アルミ貿易に関する交渉は、世界の鉄鋼・アルミを巡る炭素排出と過剰生産問題への対処を取り決めるもので、2023年10月末が交渉期限となっていた(2021年11月2日記事参照)。共同声明では「この2年間で、われわれは非市場的な過剰生産能力の原因を特定するために大きな進展を遂げた」などと指摘しつつ、今後2カ月間、交渉を続けると表明するにとどまった。
一方、重要鉱物協定は、EUで採掘または加工された鉱物が米国のインフレ削減法(IRA)のクリーンビークル(注)税額控除のバッテリー調達価格要件を満たせるようにすることが目的だ。共同声明では「今後数週間、これらの交渉を引き続き進展させ、それぞれの利害関係者と協議する」と説明したが、具体的な交渉期限は明示されなかった。政治専門紙「ポリティコ」(10月20日)によると、米国とEUは協定の労働や環境に関する規定を巡って見解の相違を解消できていないもようだ。
(注)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の総称。
●ロシアのウクライナ侵攻20か月 東部・南部で激しい攻防続く 10/24
ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して24日で20か月となります。東部や南部で双方の激しい攻防は繰り返され、兵士の犠牲も増え続けています。
ロシア軍は東部ドネツク州のウクライナ側の拠点アウディーイウカの周辺で、追加の兵力を投入しながら攻撃を強め、掌握を狙っているとみられます。
イギリス国防省は、ロシアが去年2月24日にウクライナへの軍事侵攻を開始して以降、ロシア軍の死者と、戦闘に復帰できない負傷者をあわせた人数は15万人から19万人に上るという見方を示しました。
また、ロシアの政府高官は今月、戦闘で重傷を負った兵士の過半数が手足の切断を余儀なくされたと明らかにしました。
これについてイギリス国防省は23日「ロシア政府は増え続ける負傷兵の医療費や戦死者の遺族補償として、多くの支出を割り当てる必要が出てくる」と指摘し、ロシア政府がいずれ戦費の調達で難しい決断を迫られることになるという見方を示しました。
一方、反転攻勢を進めるウクライナ側でも兵士の犠牲は増え続けています。
アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは、ことし8月、複数のアメリカ当局者の話として軍事侵攻が始まって以降、ウクライナ側の死者はおよそ7万人に上ったという見方を伝えています。
西部の都市リビウでは23日、教会で3人の兵士の葬儀が合同で営まれていました。
市内の集団墓地には軍事侵攻以降、戦死した兵士を埋葬するための新たな区画が整備されましたが、ことし3月には300ほどだった墓が23日には536にまで増えたということです。
この日の葬儀に参列した女性は「高すぎる代償を払っていることも事実で、最終的には犠牲の大きさに耐えられなくなるかも知れない。それだけに、さらなる武器の供与や支援が必要だ」と訴えていました。 
●習氏、引き締めの手を緩めず 異例の長期政権、不透明感増す 10/24
中国の李尚福(り・しょうふく)国防相が24日解任されたことは、中国政治を巡る不透明感が強まっていることを鮮明にした。中国共産党の習近平総書記(国家主席)は異例の3期目体制に入って権限集中を進めているが、長期政権を維持するために政権内部でも引き締めの手を緩めないとの姿勢を鮮明にしている。
李氏の人事について、中国メディアの記者は「何が起きているか全く分からない」と指摘する。中国外務省報道官も「状況を把握していない」などと答えるにとどめてきた。
7月には秦剛外相(当時)が1カ月間動静不明となった後に外相職を解任されたが、いまだに理由については明らかにされていない。北京の外交筋は「外相や国防相が理由も明かされずに突然いなくなるような状況は、世界的に見ても正常なものではない」と指摘する。以前にも増して人事のブラックボックス化が強まっている。
2012年に発足した習指導部は「トラもハエもたたく」と宣言し、腐敗を理由に政敵を次々と失脚させて政権を脅かす動きを封じてきた。習氏に有力な対抗勢力は既に見られないが、問題があると判断すれば政権要職であっても躊躇なく交代させるという姿勢を明確にしている。
ただ、人事の異変による影響が一部で生じているという指摘もある。外交トップの王毅共産党政治局員兼外相は9月、出席が予想されていた米ニューヨークの国連総会には行かず、ロシアを訪問してプーチン大統領らと会談した。秦氏解任で外相兼務となった王氏の手が回らなくなっていると北京の外交筋は見ている。
一方で、李氏の交代を機に停滞していた米中の軍当局間の対話が本格的に再開するか注目される。李氏はロシアとの武器取引を巡り米国の制裁対象に指定されており、バイデン米政権は不測の軍事衝突回避のため米中国防相会談を求めてきたが中国側は拒否してきた経緯があるからだ。ただ、中国側は米国が台湾への武器売却を進めていることなどに反発しており、対話再開が進むかは不透明だ。
●中国、外相に続き国防相も解任 異常事態続く3期目の習体制 10/24
中国の李尚福国務委員兼国防相が2カ月近く、公の場から姿を消した末に解任された。
7月に解任された外相に続き、習近平国家主席の信頼を得て登用されたとされる主要閣僚の相次ぐ失脚劇は、3期目の習氏の指導体制にとってどんな意味をもつのか。
中国の国防相は軍の作戦・指揮の責任者ではなく、「軍事外交」の顔としての役割が大きい。李氏は3月に就任して以降、公表されたものだけで40カ国近くの防衛当局者と会談。四つの国際会議に出席し、各国軍関係者のほか、ロシアのプーチン大統領など首脳級との会見もこなした。
しかし、北京にアフリカの約50カ国から関係者を招いた会議で演説した8月29日を最後に、動静が途絶えた。
英紙フィナンシャル・タイムズは9月14日、米政府関係者の話として、米政府は李氏が中国当局の捜査を受けすでに職を解かれたと判断したと報道。ロイター通信は李氏の容疑について、装備品の調達にからむものだと伝えた。李氏は2017〜22年に軍の調達部門トップを務めている。
●EUはソ連の「パロディー」 ハンガリー首相 10/24
ハンガリーのオルバン・ビクトル首相は23日、旧ソ連軍の撤退を求めてハンガリー市民が蜂起した「ハンガリー動乱」の日に合わせて行った演説で、欧州連合(EU)を旧ソ連の「パロディー」だと批判した。
ハンガリーはEU加盟国だが、オルバン氏は昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始後も、ウラジーミル・プーチン大統領との関係を維持している。
西部べスプレーム(Veszprem)で演説したオルバン氏は「歴史は時に繰り返す。幸いなのは、1度目は悲劇だったものが、2度目はせいぜい茶番に終わることだ」と発言。
その上で、「モスクワ(ソ連)は悲劇だったが、ブリュッセル(EU)はまずい現代版パロディーだ。モスクワが口笛を吹けば、われわれは踊らないわけにいかなかった。ブリュッセルも口笛を吹くが、われわれは好きなように踊ればいいし、躍りたくなければ踊らなくても済む」と述べた。
ただしオルバン氏は、EUは「まだ絶望的ではない」と補足。「モスクワは修復不能だったが、ブリュッセルとEUは修復が可能だ。欧州にはまだ選挙がある」と述べ、来年6月に予定されている欧州議会選挙に言及した。
オルバン氏は司法や報道の独立性、移民問題、性的少数者(LGBTなど)の権利をはじめ、さまざまな課題をめぐってEUと頻繁に対立しており、以前から欧州議会でポピュリスト政党が躍進し、EUに方針転換を迫ることを望むと語っている。

 

●セター首相、北京でプーチン大統領と会談 10/25
タイのセター首相は17日、中国の北京でロシアのプーチン大統領と会談した。両首脳は、二国間の関係強化について確認した。
会談後、セター首相は口頭で、プーチン大統領にタイ訪問を打診。プーチン大統領は、「大変嬉しく思う」と応じたという。プラチャーチャート・トゥラキットが報じた。
セター首相は、10月16日の閣議決定で、ロシア人のビザの滞在期間を30日間から90日間に延長したと述べた。また、二国間の農産物の貿易について、ロシアが食肉市場の開放しタイの貿易拡大につながることを期待しているとした。
プーチン大統領は、タイとロシアの関係は古く、2022年には国交樹立125周年を迎え、両国は良好な関係にあると述べた。
一方、2022年の両国の貿易額は、世界経済の影響で減少したと指摘した。今年、タイへ旅行したロシア人は約100万人にのぼり、来年は両国の観光と文化交流の年になるとした。
●英紙「プーチン大統領、寝室で心停止状態で発見」、健康不安説浮上 10/25
健康不安がしばしばささやかれていたロシアのプーチン大統領が、心停止し、応急処置の末、意識を取り戻したという主張が提起された。ロシア大統領府は、心停止説が広まると、プーチン氏が会議をする写真を公開した。
英紙デイリー・ミラーなどは23日、テレグラムチャンネル「ジェネラルSVR」を引用し、前夜、プーチン氏が寝室の床に倒れてけいれんを起こしているのが発見され、医療陣による心肺蘇生で意識を取り戻したと報じた。ジェネラルSVRは、「主治医は、プーチン大統領が今秋を越えられないだろうと警告した。今回の件で、大統領府はひどく動揺している」と主張した。
大統領府はこれに対して反応を出さず、数時間後、プーチン氏がカバルダ・バルカル共和国のカズベク・ココフ首長と大統領室で会う写真をホームページに説明と共に掲載した。
すると、ジェネラルSVRは24日、ココフ氏と会ったのはプーチン氏ではなく代役だとし、「現在、集中治療室にいるプーチン氏の状態は安定しているが、見通しは楽観的でない」と指摘した。ただし、これに関する具体的な証拠は提示しなかった。これに先立ち、ジェネラルSVRは、今年3月にウクライナ占領地を訪問したのもプーチン氏ではなく、代役だったと主張した。
米国の経済専門ネットメディア「ビジネス・インサイダー」によると、2020年に登場した反プーチンのジェネラルSVRは、ロシア対外情報局(SVR)の前・現職の要員が運営していると主張した。これまで、プーチン氏の癌手術説、初期パーキンソン病診断説などを提起した。ビジネス・インサイダーは、「このチャンネルが出した興味深いニュースを大統領府が公開否定したこともあるほど、影響力のあるチャンネルだ」としながらも、「ただし、具体的な証拠を提示せず、ロシアのメディア専門家も信頼度を低く見ている」と指摘した。
●「プーチン大統領、心停止で心肺蘇生」の噂流出に…会議中の写真を公開 10/25
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(71)が寝室で心停止状態に陥り、心肺蘇生法を受けたという噂が流れた中、ロシア大統領宮(クレムリン)が健康な様子のプーチン大統領の写真を公開した。
英タブロイド紙「デイリー・ミラー」や「デイリー・エクスプレス」などは23日付で、プーチン大統領の健康異常説を提起してきたテレグラムのチャンネルを引用し、「プーチン大統領が22日夜、心停止を起こし、救急要員から緊急措置を受けた」という主張が出たと報じた。
22日午後9時5分頃、大統領の保安要員らが大統領の寝室で何かが落ちる音を聞いて駆けつけたところ、プーチン大統領がベッドの横に倒れているのを発見したと、これらのタブロイド紙は報道した。当時、プーチン大統領は床に倒れてけいれんを起こし、体を弓型に曲げて白目をむいており、急いで医療スタッフの蘇生術を受け安定を取り戻したと伝えた。
しかし、ロシア大統領宮は23日、プーチン大統領がいつも通りの姿で執務室で会議している写真を公開した。写真のプーチン大統領は、向かい側に座ったロシア南部のの代表カズベク・ココフ氏と書類を前にして話し合っている。プーチン大統領の健康異常説はしばしば登場するが、事実と確認されたことはない。
●「心停止説」プーチン大統領、健在ぶりを誇示…「多くの会議に出席する」 10/25
「心停止説」が流れたプーチン大統領が24日(現地時間)、これ見よがしに公開活動を続け、健在ぶりを誇示した。
この日、プーチン大統領はクレムリン宮(ロシア政府)の会議室でデニス・マントゥロフ産業商務相と会議し、産業・生産分野の報告を受けた。
スプートニクなどのロシア通信社は、プーチン大統領とマントゥロフ産業商務相の会議の様子を写真記事で報じた。
プーチン大統領はこの日、モスクワで開かれたロシア・モスクワ外科医学術会議の開幕式には直接出席しなかったが、挨拶の言葉を送った。
これに先立って「ゼネラルSVR」テレグラムチャンネルはプーチン大統領が22日夜、心停止を起こして医療スタッフの蘇生術を受けた後、官邸内の特別集中治療室で意識を取り戻したと主張した。
同チャンネルは過去にもがん手術説、初期パーキンソン病診断説、階段で倒れた後の便失禁説などプーチン大統領の健康に関する各種疑惑を提起している。
71歳のプーチン大統領がどのような病気を患っているのか確認された情報はない。
クレムリン宮のドミトリー・ペスコフ報道官は同日の定例記者会見でプーチン大統領の心停止説に関する質問を受け、「偽ニュースだ」と強く否定した。
さらにペスコフ報道官は、「プーチン大統領がマントゥロフ大臣と会談する予定であり、多くの非公開会議に出席する計画がある」と明らかにした。午後には電話で「国際的な対話」が行われる可能性もあると付け加えた。
プーチン大統領は25日にはエネルギー、建設、極東分野の閣僚とガスプロムのアレクセイ・ミレル最高責任者(CEO)などが参加するテレビ会議を開き、冬の準備に関して話し合う予定だとクレムリン宮は明らかにした。
●ドニプロ川めぐる攻防 戦況への影響は 10/25
ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍が東部で攻勢を強めているのに対して、ウクライナ軍は南部ヘルソン州を流れるドニプロ川を渡って大規模な作戦を展開しているとみられ、東部と南部で激しい攻防が続いています。
このドニプロ川をめぐる攻防、今後の戦況にどのような影響を与えるのでしょうか。
防衛省防衛研究所の兵頭慎治 研究幹事の解説です。
ボートに乗り込むウクライナ軍の兵士たち。川をボートで進んでいきます。
ウクライナ軍兵士「迷いなく敵と戦いに行く われわれの家族と国のためだ!」
反転攻勢を続けるウクライナ軍。
南部ヘルソン州を流れるドニプロ川を渡ってロシア側が占領を続ける東岸地域で大規模な作戦を展開し、一部の集落に部隊を前進させたという見方も出ています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は「ウクライナ側は奪還した陣地で補給や部隊の補強を図ろうとしているが、ロシアも必死に阻もうとしている」と分析しています。
ウクライナ軍 ドニプロ川での作戦 その意味合いは?
激しい攻防が続くドニプロ川。
その流域ではことし6月に水力発電所のダムが決壊。
下流では広い範囲が浸水し、ウクライナ軍の反転攻勢への影響が指摘されていました。
今回のウクライナ軍によるドニプロ川での作戦。
その意味合いを兵頭さんは、こう分析します。
防衛省防衛研究所 兵頭慎治 研究幹事「水没の影響が収まってきて、ウクライナ側も本格的な渡河作戦を再開する状況が整ってきた。ドニプロ川というのは、渡河が成功して突破できればウクライナ軍はクリミア半島に最も近い場所になる。ロシア軍の側も一定の兵力を別の前線から振り向けて、ここの守りを固めていかざるをえない可能性もある。」
冬が近づく中 焦点は?
そのロシア軍は、東部で攻勢を強めています。
21日の夜、ハルキウ州の郵便施設に対してミサイルで攻撃を行い、ウクライナ側は6人が死亡したと発表しました。
冬も近づく中、どのようなことが焦点となるのか、兵頭さんに聞きました。
兵頭慎治 研究幹事「ウクライナ軍の反転攻勢の本命は引き続き南部ザポリージャ州、トクマクに向けてロシア軍の防衛線を突破できるか。ロシア側の兵力の分散を図り、そしてこのザポリージャ州でのロシア軍の守りを弱めていきたい。ロシア軍の戦力を分散させるという観点からドニプロ川をめぐる両者の攻防戦、これは引き続き続いていく。」
●アメリカがウクライナを見捨てる日...米大統領選が戦争の結果に影響か? 10/25
米大統領選の勝敗が外国で起きている問題で決まるということはめったにない。だが2024年大統領選の序盤において、ウクライナは争点となっている。
ジョー・バイデン大統領は、ウクライナ支援を「必要な限り」続けると述べている。ドナルド・トランプ前大統領は、再選されたらできるだけ早く「1日で」戦争を終結させると主張している。2大政党の外交政策の違いがこれほど際立つのは、イラク戦争が大きな争点となり最終的にジョージ・W・ブッシュが勝利した04年の大統領選以来、20年ぶりのことだ。
こうした意見の対立は、イラクとアフガニスタンから米軍を撤退させた後の時代に、アメリカは世界という舞台でどんな役割を果たすべきかという、米国内の幅広い議論を反映している。
バイデンに言わせれば、21世紀における大国同士のしのぎ合いで民主国家が専制国家に勝るには、アメリカの断固たるリーダーシップが必要で、それを証明しているのがウクライナ情勢だ。一方、トランプやフロリダ州のロン・デサンティス知事(いずれも共和党の大統領候補指名レースの有力候補だ)は「アメリカ・ファースト」的な孤立主義のほうを好み、他国の紛争へのアメリカの介入に厳しい制限を加えるべきだと呼びかける。
共和党の候補者の中には、マイク・ペンス前副大統領のように外交に関しては伝統的な保守派らしい考え方を信奉し、「自由世界」のリーダーとしてアメリカが積極行動主義的な役割を果たすべきだと考える人々もいる。だが、ウクライナ支援に反感を抱く共和党の草の根の支持者たちとの溝は広がるばかりだ。
ウクライナ問題が24年米大統領選の行方を左右しそうなのと同様に、米大統領選はウクライナにとっても戦争の結果を左右する要因になるかもしれない。NATOの対ウクライナ支援の方向性を決めるのも、西側諸国からの軍事支援の規模に影響を与えるのも米大統領選の勝者だからだ。また米大統領選の結果は、ウクライナ問題以外のアメリカの外交政策の方向性にも大きな影響を与える。
バイデンにとっては、外交で成果を上げたといえるかどうかはウクライナ次第という面がある。「バイデンとしてはウクライナを負けさせるわけにはいかない」と、かつて米国家安全保障会議(NSC)ロシア担当上級部長を務めたトーマス・グレアムは本誌に語った。「これが民主主義と専制主義の戦いなら、専制主義者を勝たせるわけにはいかない」
この大統領選で特定の結果を願っているのは、バイデンやウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領だけではない。欧州の指導者たちも選挙戦を注視している。アメリカはバイデンの下で自分たちのパートナーであり続けるのか、それともトランプか似たような考え方の共和党候補の下で敵とも味方ともつかない国になるのか──。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が誰を応援しているかは言うまでもない。
バイデンの世界観は古い?
バイデンにとって、ウクライナ戦争は長引くという見通しは政治的に厄介な問題だ。彼が指揮しているのは西側とロシアの代理戦争だが、数多くの命と多額の戦費を費やしても、戦いに終わりは見えない。
米軍の派兵やロシア政府との対立激化の引き金を引くことなくウクライナの主権を守り、プーチンを地政学的に打倒するというのがウクライナ問題におけるバイデンの長期的戦略だ。しかし戦争の長期化により、再選しない限り実現は不可能だ。
アメリカ国民は基本的にはウクライナを支持している。だがアメリカがまたも外国の紛争に、間接的とはいえ長期間巻き込まれ、税金を使うことには懸念を持っている。バイデンにとっては、こうした外交政策が選挙戦で裏目に出る可能性もある。
「バイデンはこれまで一貫して国際主義者だった」と、ハーバード大学ケネディ行政大学院のトーマス・パターソン教授は言う。バイデンは「伝統的な同盟関係と、『自由世界』の盟主としての義務を果たすこと」の信奉者だという。「1950年代初頭なら(バイデンの世界観は)幅広い支持を集めただろう。今はそれがどれほどの意味を持つか疑問だ」
だが政権内外でバイデンを支える人々は、彼の皮算用をこう分析する。ウクライナに関わる出費はアメリカがアフガニスタン戦争に費やした2兆ドル超と比べればささやかな額であり、アメリカ国民の生命を危険にさらすことなくロシアを弱体化させ世界ののけ者にすることができるなら安い買い物だ──。
「専制主義と対峙する民主主義国家を支援する際のアメリカの利益について語るバイデンの言葉は、決して空虚な理想主義ではない。1945年からアメリカが掲げてきた抜け目ない戦略の一環だ」と、駐ポーランド米大使を務めたダニエル・フリードは言う。「ウクライナ支援のための出費は、非常にいい投資だ」
だが有権者の同意が得られるかどうかは分からないし、バイデンのアプローチが将来の米外交のモデルとなり得るのかどうかも不明だ。
「同盟相手のウクライナの人々は、イラクやアフガニスタン、シリアやリビアにはいなかったタイプだ」と、元駐ウクライナ米大使のジョン・ハーブストは言う。「(身の安全のため)避難しようとわれわれが提案したら、ゼレンスキーは『武器をくれ』と言った。だがタリバンによるカブール制圧が迫ったとき、(当時のアフガニスタンの)アシュラフ・ガニ大統領は逃げ出した」
自力で戦い続けるというウクライナの覚悟が、この戦争をブッシュ時代の中東における「永久戦争」と比較しにくくしていると、ハーブストらは指摘する。イラクとアフガニスタンではアメリカとそのパートナーが初期の戦闘のほとんどを行い、その後、現地の治安部隊に従来型の常備軍を持たない反乱勢力と戦う訓練を実施した。
一方、ウクライナの戦闘部隊は非常に士気が高く、開戦当初に大部分を占めていた旧ソ連時代の兵器に外国製の最先端兵器をうまく統合した。そうした要因が、ウクライナの場合は国際社会から多額の援助が寄せられたこともあって、ヨーロッパにおける第2次大戦以来最大の地上戦で核超大国の本格的侵攻から国を守ることを可能にしている。
ウクライナ戦争は「自力で戦う覚悟の国を支援すれば最後には勝てる」というメッセージだと、フリードは言う。最終的にウクライナが勝てばバイデンの戦略の正しさが証明されるだろう。戦争が終結したとき「ウクライナが自由で安全なら、ロシア帝国再興というプーチンの夢は破れるだろう。それはアメリカにとって大成功だ」と、フリードは言う。
だが、ウクライナの勝利は確実ではない。トランプと他の共和党予備選候補が何をもってウクライナの成功とするかも同じくらい不透明だ。
トランプやデサンティスの孤立主義的傾向は、共和党支持者に受けがいいようだ。国民はバイデン政権のウクライナ政策をおおむね支持しており、今年6月のギャラップの調査では62%が引き続き「ウクライナの領土奪回」を支持すると回答した。だが共和党支持者では、49%が「速やかな紛争終結」を望むと答えた。
この調査結果は、保守派陣営で外交政策をめぐる亀裂が拡大していることを浮き彫りにしている。ブッシュが始めた戦争を共和党員の大多数が支持していた頃には想像できなかった状況だ。「トランプは共和党を大きく変えている」と、パターソンは言う。
トランプは7月のFOXビジネスのインタビューでウクライナ問題について発言。「私ならゼレンスキーに『もう援助しない、取引しろ』と言い、プーチンには『取引しないとゼレンスキーに多くを与える』と言う。1日で取引成立だ」と明言した。
しかしトランプは具体的なことは語らず、デサンティスの考えはそれ以上に不明だ。今年3月、FOXニュースのタッカー・カールソンが共和党の大統領選の候補者らに送った質問状へのデサンティスの回答は、ウクライナ戦争に総じて無関心であることをうかがわせた。
カールソンは各候補の回答をツイッター(現X)に投稿。デサンティスはウクライナとロシアの領土争いへの関与を深めることはアメリカの大きな国益にはならないと回答していた(彼は10日後に発言を修正。「ロシアが侵攻したのは明白であり、誤りだ」とし、プーチンを「戦犯」と呼んだ)。
共和党は「トランプ一強」状態
共和党の極右議員も、アメリカがウクライナ問題に関与することをますます公然と軽視するようになっている。下院では7月、共和党議員89人がウクライナへの軍事支援を3億ドル削減する予算修正案に賛成票を投じた。それとは別に、今後ウクライナに対する全ての軍事援助を停止する案には共和党議員70人が賛成票を投じた(いずれも成立せず)。
多くの共和党支持者も、アメリカの対ウクライナ支援は過大だと考えている。ピュー・リサーチセンターの6月の調査では、「過大」と回答した人は共和党支持者と共和党寄りの無党派層では1年前の12%から44%に上昇。一方、民主党支持者と民主党寄りの層ではわずか14%だった。
共和党の孤立主義勢力がアメリカの対ウクライナ援助の削減、ひいては停止への意欲を募らせている状況は、共和党がロシアのウクライナ侵攻に対するバイデンの「弱腰」を非難してきたことと矛盾している。
昨年2月にロシアが侵攻を開始して以来、バイデン政権はウクライナ政府に430億ドルの軍事支援を実施、ウクライナはHIMARS(ハイマース)やパトリオットミサイルなど、より高性能な兵器システムを手にしてきた。ただし、それは何カ月も議論を重ねた末、時にはヨーロッパの同盟国から説得された末だった。
「アメリカは他のNATO加盟国と同じく、ウクライナの主権と領土保全の全面回復を目指しているとバイデン政権は主張する」と、トランプ前大統領の補佐官(国家安全保障担当)を務めたジョン・ボルトンは言う。「問題は、そのために何を提供するかだ」
今回の戦争へのバイデンの対応は支援継続に対する「議会超党派の支持を台無しにしている」と、共和党のマイケル・マコール下院外交委員長は言う。「極めて重要な兵器システムの提供の遅さは紛争を長引かせるばかりか、中国共産党のような敵に弱さを示してもいる」
共和党主流派の候補者であるペンス、ニッキ・ヘイリー元米国連大使、ティム・スコット上院議員、クリス・クリスティー前ニュージャージー州知事という穏健派4人も、欧米の強固なウクライナ支援の継続を求めてきた。だが支持率は全員1桁で低迷し、大半の調査で4人合わせて15%未満だった。対するトランプは、ほとんどの調査で支持率50%超とトップ。彼以外で常に10%を超えている候補はデサンティスだけだ。
問われる戦闘継続の条件
今のところ、来年の大統領選で政権交代が実現すれば、ホワイトハウスの次の主人はウクライナ問題に関してバイデンと異なった、そして米主流派とは懸け離れた意見の持ち主になる可能性が高い。
だがトランプの返り咲きは早期の戦争終結を意味するとは限らないと指摘するのは、トランプ前政権でNSCのウクライナ担当を務め、いわゆる「ウクライナ疑惑」をめぐってトランプの1度目の弾劾訴追につながる証言をしたアレクサンダー・ビンドマン元米陸軍中佐だ。
「ウクライナは、力が続く限り戦闘を続けるしかない」と、ビンドマンは本誌に語った。「アメリカが孤立主義に転換し、ウクライナにもう1ドルの支援も行わないとしても」その点は変わらないはずだという。
25年以降もウクライナが国を守る戦いを継続するには、これまでと同じレベルの支援を、別の形で獲得することが必要になるかもしれない。
専門家らが言うとおり、政権を率いるのがトランプなら、バイデンのように国際的なウクライナ支援体制をまとめ上げるとは思えない。だが米戦略国際問題研究所の客員研究員で、欧州政策に詳しいマチュー・ドゥロワンに言わせれば、「アメリカ・ファースト」によって欧米関係が冷え込んだ場合、ウクライナの近隣国が役割を拡大する可能性がある。
「アメリカが支援をやめたら、欧州各国に穴埋めができるかどうかはまだ分からない。しかし、少なくともそうしようとする動機はある」
ウクライナが戦闘で決定的勝利を挙げ、ロシアに有利な長期の消耗戦に引きずり込まれる事態を回避するには、追加の軍事支援に踏み出してくれる相手が必要だ──ウクライナ内務省顧問のアントン・ゲラシュチェンコは、そう本誌に語った。
「時間が私たちの敵になりつつある。ロシアの人口はウクライナの3.5倍だ。私たちには、いつまでも戦い続けるだけの人員がいない」
死傷率がより高くても、ロシアはウクライナに比べて容易に持ちこたえられるし、プーチンが出口を探している兆候はまだない。ロシア専門家で米海軍大学院助教のアレクサンダル・マトフスキは、個人的見解だと断った上でそう指摘する。「ロシアとロシア国民にどれほど打撃を与えようと、プーチンは物理的限界まで粘る道を選ぶかもしれない」
さらにロシアの兵力は比較的高齢で、多くの場合は経済・社会的に恵まれない層からの動員兵だと、ゲラシュチェンコは語る。一方、ウクライナでは文化的エリート層や高学歴の中間層の多くが志願兵になり、空洞化が進んでいる。これはウクライナにとって過酷なツケだという。
「私たちには、はるかに大規模な物量の武器が必要だ。それも、最も熟練した兵士の少なくとも一部がまだ戦場にいる間に。これから10年間、あるいはそれ以上にわたって援助を求め続けずに済むために、即時の支援増大を必要としている」
侵攻当初から、ウクライナの運命はウクライナが決めるべきだと、バイデン政権は主張してきた。こうした姿勢が大統領選で勝利をもたらすと、民主党関係者は確信している。彼らが指摘するように、現職大統領としての職務能力への支持率は低いものの、世論調査ではバイデンとトランプは互角。加えて、米国民の大半が、アメリカはウクライナへの支援を継続すべきだと(少なくとも今のところは)考えている。
高齢バイデンの意外な強み
有権者はウクライナ問題や外交政策を「人格検査」と位置付けるはずであり、トランプ相手の戦いならそれがバイデンに幸いするのではないか。そうみるのは、20年大統領選でバイデン陣営に参加した民主党の世論調査担当者セリンダ・レイクだ。
「安定したリーダーシップと、混乱したリーダーシップの違いがはっきり表れる」と、レイクは本誌に語った。「(ウクライナでの戦争は、80代に入ったバイデンが)力を示し、年齢を長所にする機会にもなっている。外交政策は、明らかに年齢が経験と同義の分野だから」
政策的観点から見れば、バイデンの戦略は既に効果を上げていると話すのは、カーネギー国際平和財団のロシア問題専門家で、元NSC顧問のアンドルー・ワイスだ。「何もかもが、プーチンが(侵攻当初に)ロシアにとって戦略的に重要と判断したものと正反対になりつつある」
「ロシアと隣り合うウクライナは今や重武装化され、欧米と緊密な関係にあり、軍事的・経済的支援を要求できるようになっている」
ロシアの将来的な侵略から身を守るため、ウクライナには具体的な安全保障、つまりNATOやEUへの加盟が不可欠だと、ゼレンスキーは主張している。それが実現するか、答えを出すのは時期尚早だ。
バイデンは7月のNATO首脳会議の後、戦争が続く間はウクライナのNATO加盟の可能性はないと発言した。ただし、バイデンはウクライナ政府をなだめるためか、ロシアが「永遠に戦争を維持する」ことは不可能だろうとの見方も示している。
バイデンが米大統領として和平プロセスを導くには、再選を決めるのが最も確実な道だ。既にウクライナに投じた資源の規模を考えれば、このまま進む以外に選択肢はほぼないと、元NSCロシア担当上級部長のグレアムは語る。今さらバイデンが後戻りすることはあり得ない、と。
●歩兵戦闘車を大量に失ったロシア、「コスパ悪い」BMD-3も戦線復帰 10/25
ロシアはウクライナの戦場に部隊を送るために、使えるものならどんな装甲車両でも確保しようと長期保管庫や車両駐車場、試験場を隅々まで探し続けている。
最近見つけ出したのは、軽量で空中投下ができるBMD-3歩兵戦闘車(IFV)だ。前モデルのBMD-2を踏襲した車体に、より重量のあるBMP-2の砲塔と30mm機関砲を組み合わせている。
乗員、歩兵合わせて7人乗り込める2両のBMD-3が、このほどネット上に出回ったウクライナ前線の写真に登場した。
1990年代に製造されたBMD-3は、BTR-50装甲兵員輸送車よりもずっと新しい。ロシアはウクライナとの1年8カ月に及ぶ戦争で被った5000両超の損失を補うために、退役して数十年経つBTR-50を復活させて戦線に投入した。
BMD-3は、ロシア軍が古いMT-LB装甲けん引車をベースにして作ったDIY戦闘車両よりも、防御力ではるかに優れている。
ウクライナでのBMD-3の登場で奇妙なのは、古すぎるとか、装備が貧弱だとかいうことではない。そうではなく、ロシアの空挺部隊が数年前に、BMD-3のコストが維持に見合わないと判断していたことだ。その判断は、ウクライナでの戦争で変わった。
BMDシリーズの開発は1960年代にさかのぼる。輸送機が1両か複数のBMDを運搬してパラシュートで投下させられるよう、まずは軽量であることを念頭に設計されている。
BMD-3の場合、重量は14トンだ。BMDは軽量化の代償として、MT-LBや米国のM113装甲兵員輸送車ほどではないにせよ、防御力が低下している。
ロシアが1980年代にBMD-3の開発を始めた際、ヘリで輸送できるほどの軽さはそのままに、防御力と火力を追加することを目標としていた。
だが、BMD-3は不運だった。ソ連が崩壊する直前の1990年に生産が始まり、その後の経済混乱で生産は短期間で打ち切られた。空挺部隊が入手したのはわずか137両で、数年間だけ使用した後に倉庫入りとなった。
改良を加えられた上でも、BMD-3は維持コストに見合う価値があるという判断にはならなかった。当時、空挺部隊はすでに数千両のBMD-2を運用・保有していた。
だがウクライナに侵攻してからの約2年間で、空挺連隊は250両以上のBMD-2を失った。総数の10%だ。137両あるBMD-3を全て再稼働させれば、BMD-2やBMD-1の損失を補うことができ、ロシアの防衛産業が車両を新規生産する時間を稼ぐことができる。
問題は、次に何が起きるかだ。現在の損失ペースが続けば、早ければ来年にもBMD-3は使い果たされる可能性がある。そうなった場合、ロシアは保管されている冷戦時代の旧式車両にさらに手を伸ばすのだろうか。例えば、1950年代の装輪式BTR-40偵察車両を復活させるのだろうか。
●SEECATにみるドローンの脅威と探知の未来 10/25
テロ対策特殊装備展(SEECAT)/危機管理産業展(RISCON)が10月11〜13日に、東京・有明の東京ビッグサイトで開催された。毎年の開催だが、SEECATは名称が示すとおり、テロに対応するための装備の展示会ということから、自衛隊、警察、自治体、重要インフラ事業者など入場者が限定されている。近年はこの展示会で対ドローン(空中無人機、UAV)が一つの分野として確立しているが、対ドローンの探知・識別・無力化のプロセスのなかで、特に探知について興味深い出展があった。
開催直前の10月7日から中東でハマスとイスラエルの戦闘が起きている。ハマスはロケット弾「カッサーム」を攻撃開始から20分間で5000発以上打ち込んだと主張している。これと同時にドローンがイスラエルの警備塔や検問所、通信塔に爆発物を投下する様子が捉えられており、ロケット弾攻撃は陽動作戦の可能性が高い。
ドローンにより警備センサーを破壊されたイスラエルは状況を十分把握できず、その間に数百人のハマス戦闘員が境界のフェンスや障壁を破壊するなどして侵入。150人以上が拉致され、2000人以上が殺害された。
日本でも弾道ミサイルや巡航ミサイル、極超音速ミサイルによる飽和攻撃の可能性はかねて指摘されているが、今回のハマスの攻撃からは、やはりドローンによる攻撃への対処により重きを置く必要があると考えられる。
ドローンは1機10万円台から調達できるため、大量に装備できる。そして、爆発物を搭載して投下させたり、自爆させたりする運用法がウクライナ戦争では本格化したことで、戦争・紛争においてドローンは欠かせないものとして確立した。まだ数百機のスウォーム(群れ)としての実戦投入例はないが、技術的には実用段階にある。近い将来の戦争・紛争ではスウォームで投入されるのは間違いない。
ただ、ドローンの泣きどころは行動距離(滞空時間)が短いこと。問題の克服には、北朝鮮の工作船のように偽装した漁船や商船を使う手がある。漁船や商船に多数のドローンを搭載、日本の沿海で発進させ飽和攻撃を行う。船舶にロケット弾を搭載する方法もあるが、ドローンに比べれば発射装置などが目立ちやすいので、ドローンを使う方が合理的だろう。
防御側としては船舶の監視、飛行するドローンの探知・識別・無力化が必要になる。このなかで探知について、従来のドローン探知はレーダーや赤外線カメラなどが主役だが、「ライダー」による探知の開発が進められている。ライダーはレーダーのように電波を使って探知するのではなくレーザーを使ったもので、低高度ではレーダーよりも有効である可能性が高い点が最大の強みではないか。
メトロウェザー社の小型ドップラーライダーWG−100は、もともと大気状態の観測が出発点という。赤外線レーザーを照射してそれが大気中のチリに反射して戻ってきたのを感知することで、風を観測する。その風の動きをソフトウエアで分析することでドローンを探知する仕組み。「大気中のチリは低空の方が多いため、原理的に高空よりも高度が低いところが得意」と担当者は説明する。
さらに「海上の方が得意。理由は水しぶきによる海塩エアロゾルがあるから」とも。海塩エアロゾルは海面から出た微小なしぶきが蒸発して残った塩の成分が大気中を漂う状態のこと。天候が荒れて波浪が強い時にできやすい。逆にレーダーは海面近くはシークラッターなど乱反射があるため不得意で、そのため荒天はさらに不利になる。
現在のところ同製品の探知距離は約15キロというが、これは照射出力を上げることで距離を延ばせる。現状はクラス1という目に入っても安全だとされる弱いレーザーを使っている。
探知対象の形状などを判別する分解能は1メートル以下という。これではドローンがあることはわかるが、どのようなものかの詳細を知るには不十分で、複数のライダー、レーダー、光学機器と組み合わせ、動きの特徴などを分析することで判別する。「1年後くらいには実用に耐えるものができる」ともくろむ。スウォームへの対応は「同時追尾は10以下ぐらい。より多くに対応するには複数のライダーを方向別に設置し対応していく」と説明している。
高さ106センチ、縦60センチ、横74センチ、重量180キロで、消費電力最大800Wという諸元からも設置の容易さを意識していることがわかる。
気象観測目的としては現在、NASAのプロジェクトに採用され、バージニア州のバージニア航空宇宙センター近くに2台設置して試験中。日本でも大阪・アジア太平洋トレードセンター屋上に設置されている。大阪・梅田地区にも設置予定だ。
ドローン探知用としても「2〜3年後の実用化目指す」という。分解能や同時追尾能力は今後向上していくとみられ、近い将来の有望株の一つだ。
また、韓国企業の対ドローンシステムも目を引いた。トリス・スクゥエア社は日本初進出で、韓国企業のこの分野での出展は過去に例がないとみられる。
同社の「Elijah」はAESAレーダを核にするシステム。Xバンドレーダー4基で全周、さらに上方に1基組み合わせるとドーム状にカバーできる。1・5メートル四方程度の大きさのドローンなら13キロの探知距離があり、他社製品よりも探知距離が長い点を強調。
同時に200機を追跡可能で、距離10キロ前後でAIが怪しいドローンなのか分類・識別してアラートを出せる。24時間365日の稼働が前提で、完全自動化による検知・監視が可能などとしていた。
特徴的なのは韓国で2年半前にリリースし、納入実績は陸軍2基、海軍1基、空軍1基だったのが、今年中に軍に50基を納入予定で、さらに増えていく見通しとしている点。また原発や高速道路といった重要インフラ企業向けにも商談が進んでいるという。同社製品に限らず対ドローンシステムは1基がカバーできる範囲が限られるので、多数の配置が急ピッチで進められていることを示している。
背景にあるのは北朝鮮の動き。2022年12月に、北朝鮮のドローン5機が南北境界線を越えて韓国領空に侵入する事件があった。うち1機はソウルの北端に飛来し、北に戻っている。韓国でのドローン対処への危機感は「相当強い」と同社関係者。韓国軍も今年9月に陸海空海兵隊の合同部隊「ドローン作戦司令部」を発足させている。
SEECAT/RISCONの展示からも、ドローンによる攻撃の危機は既に日本周辺に存在しており、対処法はすでにあることがわかる。ただ、ピンポイントでの警戒・監視になるので、いかに網を広げていくかが死活問題になるのは、ハマスによる攻撃が示した。
●ウクライナにはなぜ米国のクラスター弾が必要か 兵士が明かした現実 10/25
ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、米国は7月、クラスター弾をウクライナに供与すると発表した。一つの親爆弾が無数の小型爆弾をばらまく兵器は軍事的な効果が高い半面、無差別に民間人に被害を及ぼす危険があり、「悪魔の兵器」とも呼ばれる。ウクライナ軍はクラスター弾をどこで、どう使っているのか。前線の兵士が語った。
「1発で広大な範囲の敵を攻撃できる。弾薬が極度に足りない中でこれほど強みになる武器は他にない」
東部ドネツク州の激戦地バフムートでロシア軍と戦う部隊に所属するボロディミール・ラシュクさん(35)は8月12日、戦場からオンラインで応じた朝日新聞の取材にこう語った。
米国製のクラスター弾は供与の発表から数週間でラシュクさんたちの部隊に届いた。地形やロシア軍の部隊の種類に応じて、親爆弾が子爆弾を散乱させる高さの調整や子爆弾の種類の入れ替えが可能なため、戦場で大きな効果を発揮するという。ラシュクさんは「塹壕(ざんごう)に隠れている兵士にも有効だ」と話す。
しかし、米国によるウクライナへのクラスター弾の供与は国際社会に波紋を呼んだ。過去の戦争では、着弾と同時に爆発するはずの子爆弾の相当数が不発弾として残り、戦闘が終わった後に民間人が死傷する事例が相次いできたからだ。
その非人道性から、2008年には禁止条約が作られ、120カ国以上が参加している。米国は条約に加わっていないが危険性を認め、使用を控えてきた。クラスター弾の廃絶に取り組むNGOの連合体「クラスター兵器連合(CMC)」の報告書によると、世界では昨年1年間に1172人がクラスター弾で死傷し、10年の統計開始以来、最多を記録した。そのうち、916人がウクライナでの死傷者で、民間人の犠牲は9割を超えた。
●ロシア石油大手ルクオイル会長が急死、昨年は前会長が転落死 10/25
ロシア第2位の石油会社ルクオイル(LKOH.MM)は24日、ウラジーミル・ネクラソフ会長(66)が急性心不全のため急死したと発表した。
同社を巡っては、昨年9月に当時会長だったラビル・マガノフ氏も入院先の病院で窓から転落し死亡したとされている。
ネクラソフ氏は同社の石油・ガス部門に約50年間従事し、第一副社長や社長顧問も務めた。ルクオイルは同氏の死亡について、コメントを控えた。
ロシアでは昨年2月のウクライナ侵攻開始後、複数の実業家が急死しており、その大半がエネルギー産業の関係者だった。
ルクオイルの取締役会は昨年3月、ウクライナ情勢を巡り「悲劇的な出来事」と憂慮を表明し、交渉を通じて紛争を可能な限り早期終結させることを求めた。
●クリミア、射程圏「時間の問題」 ゼレンスキー氏が国際会議で演説 10/25
ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、ロシア占領下の南部クリミア半島と周辺海域について、全域がウクライナ軍の攻撃の射程圏に入るのは「時間の問題だ」と述べた。チェコの首都プラハで開催された国際会議でオンライン演説した。
ウクライナ軍はロシア黒海艦隊が拠点を置くクリミアへの攻撃を強めている。ゼレンスキー氏は「ロシアにとって安全な基地はもはや存在しない」と主張。ロシア軍が黒海西部で活動できなくなり、クリミアから東方に艦隊を移動させていると指摘した。
ウクライナ東部ハリコフ州では24日、ロシア軍の攻撃により民間人2人が死亡した。
●IEA、当面の戦略的石油備蓄は十分 備蓄増は不要=幹部 10/25
国際エネルギー機関(IEA)の貞森恵祐エネルギー市場・安全保障局長は24日にロイターのインタビューで、石油市場安定のために必要な場合でも加盟国の現在の戦略的石油備蓄量は十分な量があると見ており、さらに増やす必要はないとの見解を示した。
10月上旬にイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃後に原油価格は1バレル=95ドル超まで高騰し、2022年のロシアのウクライナ侵攻後の石油市場にとって最も重大の地政学的リスクの一つとなっている。
IEAの加盟31カ国は22年、ウクライナ侵攻による市場の混乱に対応するため、緊急備蓄から2回に分けて合計1億8270万バレルを放出した。
貞森氏はシンガポールでの業界イベントに合わせたインタビューで、戦略的石油備蓄量の拡大について「今のところ、そのようなことをする必要はないと思う」としつつ、「私たちは状況を注視していく」と語った。
IEAは加盟国に対し、石油純輸入量の少なくとも90日分に相当する石油を備蓄し、世界の石油市場に影響を及ぼす深刻な供給停止に協調して対応できるよう準備することを求めている。現在、加盟国の戦略備蓄は計約12億バレルとなっている。
貞森氏は、中東情勢による実際の供給への直接的な影響はこれまでのところないとのIEAの2週間前のコメントを繰り返した上で「しかし、今後の展開については警戒する必要がある」と述べた。
●北朝鮮から供与も ロシアが砲弾400万発保有、米戦争研究所 10/25
米シンクタンク、戦争研究所は、ウクライナに侵攻するロシアは約400万発の砲弾を保有しているとの分析を伝えた。北朝鮮による弾薬供与も始まったとみられ、今後1年間「限定的な規模」で戦闘を継続できる数という。一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシア占領下の南部クリミア半島と周辺海域について、全域がウクライナ軍の攻撃の射程圏に入るのは「時間の問題だ」と述べた。
ウクライナの軍事専門家によると、ロシア軍は現在、1日当たり1万〜1万5000発の砲弾を発射している。昨年夏には1日4万5000〜8万発を発射しており、大幅に減少している。
ただ、戦争研究所は23日、「ロシアの砲弾生産能力と北朝鮮の継続的な輸出を考慮すれば、ロシアは当面十分な火力を維持できる」と分析した。
こうしたなか、ゼレンスキー氏は24日、チェコの首都プラハで開催された国際会議でオンライン演説し、「ロシアにとって安全な基地はもはや存在しない」と主張した。
ウクライナ軍は現在、ロシア黒海艦隊が拠点を置くクリミアへの攻撃を強めている。ゼレンスキー氏は17日のビデオ声明で、米国から供与を受けた長射程の地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」をロシア軍に対して使用したと明らかにした。
ATACMSは射程約160〜300キロで、高機動ロケット砲システム「ハイマース」から発射して前線のはるか後方を攻撃できる。
ゼレンスキー氏は、ロシア軍が黒海西部で活動できなくなり、クリミアから東方に艦隊を移動させていると指摘した。
●ロシア軍、「1年強」継戦可能 砲弾400万発保有 10/25
ウクライナ侵攻を続けるロシア軍が、長期戦を見据え十分な弾薬確保に動いているとの見方が浮上している。
ロシアに隣接するエストニアの情報当局高官は、「ロシアには約400万発の砲弾が残されている」と指摘。現状でも1年以上戦闘を継続できるとの分析を明らかにした。
エストニア公共放送は20日、同国軍情報機関トップ、アンツ・キビゼルグ大佐の記者会見の内容を報道。キビゼルグ氏は、約400万発との推計を公表した上で、「1日1万発という比較的少ない現在の消費量なら、1年強は使用し続けることが可能だ」と述べた。
北朝鮮によるロシアへの軍事支援に関しては、ロシア軍の約1カ月分の消費量に相当する30万〜35万発の砲弾がロシアに渡ったと推測。ロシアが現時点で十分な砲弾を保有していることを踏まえると、北朝鮮の砲弾は長期戦に備えた備蓄に回ると予測した。
弾薬を巡っては、ウクライナへの供給源となっている西側諸国の間でも不足が取り沙汰されている。北大西洋条約機構(NATO)高官は今月に入り、各国の弾薬が減っていると指摘。ただ、ゼレンスキー大統領は23日、前線への弾薬供給について、自国産を含め「絶えず増加している」と主張した。
米シンクタンク戦争研究所は23日、西側諸国がロシア軍と比較してどれだけウクライナに弾薬を供与できるかが「2024年の両国の戦力を決定する重要な要因になるだろう」と分析した。
ロシアのウクライナ侵攻は、24日で1年8カ月を迎えた。英国防省の分析によると、侵攻後のロシア側の死傷者は15万〜19万人に上る。一方、ウクライナの検察当局は23日、侵攻によりこれまでに508人の子供が死亡したと発表した。 
●CTBT批准撤回法案、ロシア議会を通過 プーチン大統領に送付 10/25
ロシア議会は25日、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を撤回する法案を可決した。下院に続き、上院も全会一致で通過。署名のためプーチン大統領に送られる。
リャブコフ外務次官は、米国が「敵対的」政策をやめない限り、核問題協議を再開するつもりはないと述べた。
プーチン氏は今月、CTBTに署名したものの批准しなかった米国の立場にならうため、批准を撤回するよう議会に求めていた。
ロシアは核実験について、米国が再開しない限り再開することはないとしている。ただ、ウクライナや中東で戦争が勃発し、緊張が高まる中、ロシアか米国のどちらかが実験を行えば新たな軍拡競争、そして他国によるさらなる実験の引き金になりかねないと専門家は指摘する。
●ロ軍、空爆主体に転換 地上戦で死傷者多数か―ウクライナ東部 10/25
ウクライナに侵攻するロシア軍は25日も東部ドネツク州アウディイウカ近郊に集中攻撃を仕掛けているもようだ。ただ、ウクライナ軍によると、ロシア軍は地上戦で多数の死傷者を出したため、空爆を中心とする作戦に転換を強いられているという。
英スカイニューズによると、ウクライナ軍南方部隊報道官は「敵は過去2日間で40発の誘導爆弾を投下したが、地上攻撃の回数は前日と比べ半減した」と指摘した。ロシア軍はドネツク州で5日間に2400人の死傷者を出したとされ、報道官は「こうした(地上攻撃が減る)事態は驚きではない」と述べた。
● ロシア 冬の戦闘に向け準備を指示 インフラ施設を標的に攻撃か 10/25
ロシアのショイグ国防相は侵攻を続けるウクライナ東部の指揮所を訪問し、冬の戦闘に向けて部隊に準備を指示しました。ロシアは冬の間、インフラ施設に対して無人機による攻撃を強めていくとみられ、ウクライナ側は警戒を続けています。
ロシア国防省は、軍事侵攻を続けるウクライナ東部のドネツク州の南方方面で戦闘を行う指揮所にショイグ国防相が訪問したと25日、発表しました。
ショイグ国防相は戦況とともに、無人機を扱うロシア軍の部隊についても報告を受けたということです。
さらに、今後の冬の戦闘に向けて寒さ対策の軍需物資の支給など部隊に準備を指示したとしています。
また、ウクライナ空軍は25日、ロシア軍が夜間、11機のイラン製の無人機を使って各地で攻撃を行い、いずれも撃墜したと発表しました。
ただ、西部フメリニツキー州では破壊した無人機の破片が落下し、16人がけがをしたほか、ウクライナのエネルギー省は、攻撃によってフメリニツキー原子力発電所の敷地内にある管理棟が損傷し送電線が切断され、周辺地域で停電が起きたと発表しました。
ゼレンスキー大統領は25日、SNSで「エネルギーのインフラ施設に対するテロ攻撃にわれわれは備えている。ことしは自分たちを守るだけでなく、それに対応していく」と投稿し、冬の間のインフラへの攻撃に対し警戒を続けています。
一方、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は24日、ロシア軍が23日にキーウ州で攻撃した際、ロシア製の新たな長距離無人機「イタルマス」を初めて使用した可能性があると指摘しました。
ロシアは冬の時期に向けてインフラ施設を標的にした攻撃を強めていくとみられていて「戦争研究所」は「イラン製の無人機だけでなくより安く、軽量な国産の無人機で攻撃を補おうとしている」として攻撃の手法を多様化しようとしていると分析しています。
●教皇、戦争に苦しみ平和を望むすべての人々のために祈る 10/25
教皇フランシスコは、深刻化するイスラエルとパレスチナ間の情勢を思い、来る27日(金)を断食と祈りと悔い改めの日とするよう改めて招かれた。
教皇フランシスコは、10月25日(水)の一般謁見で、深刻化するイスラエルとパレスチナ間の状況に変わらぬ憂慮の念を示された。
パレスチナとイスラエルの厳しい情勢を常に思っていると述べた教皇は、人質の解放とガザへの人道支援物資搬入の進展を強く願われた。
教皇は、中東をはじめ、ウクライナ、そして戦争に傷つく他の地域において、苦しみ、平和プロセスに望みをかけるすべての人々のために祈り続けていると話された。
こうした中、教皇は、10月27日(金)を断食と祈りと悔い改めの日とするよう皆を招くと共に、同日18時、バチカンの聖ペトロ大聖堂で行われる世界平和のための祈りの集いへの参加を呼びかけられた。

 

● 志願兵38万人、来年も活用=消耗戦でウクライナ威圧― 10/26
ウクライナ侵攻を続けるロシアのメドベージェフ前大統領(安全保障会議副議長)は25日、今年1月以降、新たに志願兵ら約38万5000人が軍務に就いたと明らかにした。志願兵の活用を「最高司令官(プーチン大統領)が来年も続けるよう決めた」と説明。戦況が消耗戦の様相を呈する中、兵員についてロシアは無尽蔵に近いと主張し、ウクライナと支援する西側諸国を威圧する狙いとみられる。
ロシアは昨年秋、予備役30万人の部分動員令が徴兵忌避や反戦運動を生み、国内が混乱に陥った。志願兵の存在によって今年と来年、動員が回避できると示唆することで、プーチン政権には来年3月の大統領選への悪影響を最小化する思惑もあるもようだ。
●プーチン大統領、核攻撃に応じた大規模な核抑止の訓練を指揮 10/26
ロシアのプーチン大統領が大規模な核抑止の訓練を指揮し、大陸間弾道ミサイルや巡航ミサイルの発射が行われました。
ロシア大統領府は25日、プーチン大統領の指揮のもと陸海空の各部隊による核抑止力の訓練が実施されたと発表しました。敵の核攻撃に応じた大規模な核攻撃を想定したということです。
訓練では大陸間弾道ミサイル「ヤルス」のほか、戦略原子力潜水艦「トゥーラ」から弾道ミサイル「シネワ」が発射されました。また、長距離戦略爆撃機ツポレフ95MSから巡航ミサイルも発射されました。
プーチン氏はちょうど1年前の2022年10月26日にも同様の訓練を指揮しています。ウクライナ侵攻を続けるロシアは、核による威嚇を強めています。
●ロシア、核ミサイル演習を実施 ウクライナや欧米威圧 10/26
ウクライナ侵略を続けるロシアは25日、プーチン大統領の指揮の下、戦略核兵器を運用する露軍部隊によるミサイル発射演習を行った。ロシアは核戦力を誇示することで、ウクライナに抗戦を断念させたり、欧米諸国にウクライナ支援を躊躇(ちゅうちょ)させたりする思惑だとみられる。
露国防省の発表によると、北西部プレセツク宇宙基地から大陸間弾道ミサイル(ICBM)「ヤルス」を極東カムチャツカ半島の試験場に向けて発射。バレンツ海では原子力潜水艦「トゥーラ」が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「シネワ」を発射した。長距離戦略爆撃機「ツポレフ95MS」による巡航ミサイルの発射も行われた。
ショイグ国防相はプーチン氏への報告で「敵による核攻撃への報復」を想定した演習だと主張した。
ロシアはウクライナ侵略開始後、核兵器開発と運用態勢の強化を加速させてきた。ロシアは2月、米露間の新戦略兵器削減条約(新START)の義務履行を一時停止すると表明。プーチン氏は今月5日、新型ICBM「サルマト」や原子力推進式巡航ミサイル「ブレベスニク」の量産を近く開始する方針を示した。露上下両院も25日までに包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准をロシアが撤回すると定める法案を可決。法案はプーチン氏の署名を経て近く発効する見通しだ。
ロシアの動きに対し、ウクライナや日米欧などは「核による恫喝」だと批判している。
●「プーチンが寝室で心肺停止」衝撃情報の裏に「死のシナリオ」が! 10/26
〈10月22日夜、ロシアのプーチン大統領が寝室で心肺停止状態に陥った〉
そんな衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。イギリスのタブロイド紙(デイリー・ミラー、デイリー・エクスプレスなど)が、驚くべき「秘密」を報じたのだ。
同ニュースの引用元は、SVR(ロシア対外情報庁)の元上級幹部を名乗る人物が運営しているとされる、テレグラムチャンネル「ゼネラルSVR」だ。通称「SVR将軍」と呼ばれる同メディアなどの情報を総合すると、衝撃情報の内容は以下のようになる。
・22日午後21時5分頃、プーチン大統領の保安要員らは、大統領の寝室で何かが落ちるような音を耳にした
・保安要員らが寝室に駆けつけると、プーチン大統領は床に倒れて痙攣を起こし、体を弓なりに曲げて白目を剥いていた
・ほどなくしてプーチン大統領は心肺停止状態に陥り、急ぎ駆けつけた医療スタッフによって、心肺蘇生術が行われた
・その甲斐あってか、プーチン大統領は間もなく息を吹き返して、死の危機を脱した
その後、ロシアのペスコフ大統領報道官は一連の報道を「偽ニュースだ」と完全否定した上で、クレムリン(ロシア大統領府)内の執務室で、普段と変わらぬ様子で会議の指揮を執っているプーチン大統領の「写真」を公開した。デニス・マントゥロフ産業商務相と会議し、産業・生産分野の報告を受けたのだという。さらにモスクワで開かれたロシア・モスクワ外科医学術会議の開幕式に際し、挨拶の言葉を送ったとされる。
「心肺停止情報」を慌てて打ち消すかのような、これ見よがしの「健在アピール」だが、独裁者プーチンとその周辺で何が起きているのか。プーチン大統領とクレムリン内の動静に詳しい国際諜報アナリストが明かす。
「ゼネラルSVRは、プーチンの健康不安説を発信してきたことで有名なメディア。今回の心肺停止報道の真偽は不明ですが、クレムリン内でプーチンの『死のシナリオ』、すなわち独裁者が急死した後のシナリオが、秘かに検討されてきたことは紛れもない事実です。今回の一件は、そのことを裏づける証左かもしれません」
虐殺王もすでに71歳。ガンやパーキンソン病などの噂に限らず、何があってもおかしくはない年齢なのだ。
●ロシア「プーチン大統領の健康不安説は常に繰り返される…笑い呼ぶだけ」 10/26
ロシアのプーチン大統領が健康不安説を一蹴し積極的な公開活動に出た。
AP通信は24日、ロシア大統領府がプーチン大統領とマントゥロフ産業商務相が会議をしている写真を公開し、彼がだれよりも健康だとロシア大統領府のペスコフ報道官の話を引用して報道した。
ペスコフ報道官はこの日の記者会見で、「プーチン大統領の健康不安説は常に繰り返されてきたフェイクニュースだ。こうした話にならない主張は笑いを呼ぶだけだ。影武者説もまたとんでもない詐欺だ」と強調した。
これに先立ちテレグラムチャンネル「ゼネラルSVR」は23日、「プーチン大統領が気を失いけいれんを起こし倒れた。医療陣が心停止と判断し、救急室に移して彼を蘇生させた」と明らかにした。英国の複数のタブロイド紙がこのチャンネルを引用報道しプーチン大統領の健康不安説が急速に広がることになった。
ロシア大統領府はすぐにプーチン大統領がカバルダ・バルカル共和国のココフ首長と会う写真を公開して反論したが、ゼネラルSVRは「ココフ首長と会ったのはプーチンの影武者」と主張して対抗した。
このチャンネルはプーチン大統領のがん手術説、パーキンソン病診断説、階段で足を踏み外した後の便失禁説などを提起している。しかしいずれも明確な根拠は提示できていない。
●ロシア無人機攻撃、原発狙った可能性高い=ゼレンスキー氏 10/26
ウクライナのゼレンスキー大統領は25日、西部フメリニツキー州で同日未明にロシア軍が行ったドローン(無人機)攻撃は原子力発電所を狙った可能性が高いとの見方を示した。
この攻撃により原発敷地内の窓が衝撃で破損したほか、周辺住民20人が負傷した。
国際原子力機関(IAEA)によると、原発の運転や送電網への接続に影響は出ていない。
ゼレンスキー氏はロシアに対する制裁強化の必要性を改めて示すものだと述べた。
ウクライナ軍はロシアの無人機11機を全て破壊したとしており、内相によると、被害は爆風と破片の落下によって生じた。エネルギー省は原発の管理棟などの窓が破損したほか、送電線も損傷し、周辺地域で停電が発生したとしている。
●プーチン氏、イスラエル・ハマス衝突が中東域外に広がる可能性警告 10/26
ロシアのプーチン大統領は25日、イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの衝突が中東域外にも広がる可能性があると警告するとともに、ガザにいる罪のない女や子ども、老人が別の誰かが犯した罪のために痛めつけられるのは間違いだと述べた。
プーチン氏は国内のさまざまな宗教の指導者と大統領府で面会し、中東地域での流血を止めなければならないと強調。外国首脳と電話会談した際、戦闘を止めなければ戦火が大幅に拡大するリスクがあると伝えたと説明した。
中東危機のさらなる激化は「重大かつ極めて危険で破壊的な結果を招く」とし「中東の境界をはるかに越えて波及する可能性がある」と語った。大統領府が発言内容を公表した。
また、特定の勢力ができる限り多くの国や人を紛争に引き込もうとしていると述べ、名指しすることなく西側諸国を批判。「混乱と相互憎悪の本当の波」を中東だけでなく、域外に起こすことが目的だと主張した。
ロシア政府はパレスチナとイスラエルが共存する「2国家解決」を引き続き支持している、と語った。
●中国の影響力は減衰している―独メディア 10/26
2023年10月23日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、北京で先日開かれた「一帯一路」サミットフォーラムから中国の影響力低下がうかがえるとするドイツ主要紙の評論を紹介する記事を掲載した。
記事は、先週北京で行われた同フォーラムに出席した各国首脳の数が前回に比べて半分近く減少したと紹介。
この状況について独紙フランクフルター・アルゲマイネが「経済が低迷する中国は『慈善事業』を維持できなくなっており、習近平(シー・ジンピン)国家主席の外交戦略にも影響していることが十分に示された」と論じるとともに、中国はグローバルサウスに極力迎合しようとしているものの、関係国の全ての人物が中国に協力する政策を続ける意思を持っているわけではないと指摘したことを伝えた。
また、習主席は今後5年で「一帯一路」の枠組みにおいて1000億ユーロ(約16兆円)を提供することを約束したと紹介した上で「金額は以前より少ないものの、依然として大多数の新興国や途上国がフォーラムに代表団を派遣した」としつつ、その一部は中国への迎合が「致し方ない選択」であるとの認識を示し「アルゼンチンの大統領は、国際通貨基金(IMF)から圧力を受け続ける中で中国が救いの手を差し伸べてくれたとコメントしていたが、中国はアルゼンチンのリチウム資源が目当てなのだ」としている。
その上で「中国はこの10年、概念が曖昧で統一的な協調性に欠ける『一帯一路』というブランドの下、新興国や途上国のインフラ建設のために1兆ユーロ(約160兆円)近い資金を提供してきた。現地市場の開発と同時に国際的な影響力を拡大することが中国の狙いだった。そして、中国の経済成長が鈍化するにつれ『一帯一路』は高額な融資や巨大なプロジェクトに焦点を当てず、『グリーン』『デジタル化』といった分野へと転換した。しかし、西側主導の国際秩序に中国の烙印(らくいん)を押すという習主席の野望は何ら変化していない」と評した。
記事は、習主席の「一帯一路」構想にロシアのプーチン大統領が積極的に呼応するほか、ハンガリーが欧州連合(EU)加盟国として唯一同フォーラムに出席し、中ロ両国の首脳とそれぞれ会談する動きを見せたと指摘。南ドイツ新聞がハンガリーの思惑について「経済的な利益に加えて、西側が苦境に陥った時に東側に後ろ盾を求められるようにするという政治的な打算があるのは明らかだ」と分析したことを伝えた。
●北からロシアへの武器提供「複数回」確認 日米韓外相が非難声明 10/26
上川陽子外相と米国のブリンケン国務長官、韓国の朴振(パクチン)外相は26日、ウクライナ侵攻に使うための軍事装備品や弾薬が、北朝鮮からロシアに複数回提供されたことを確認したとして、「ロシアの侵略戦争による人的被害を著しく増大させることになる」と非難する声明を出した。
3氏はまた、ウクライナへの支援の継続を表明し、関連する国連安保理決議に違反する活動を直ちに停止するよう朝ロに求めた。
朝ロ間の武器移転をめぐっては、米政府が13日、北朝鮮がコンテナ1千個分以上の弾薬など軍需品をロシアに提供したとの見解を示している。日本政府は移転の有無について見解を示してこなかったが、外務省は「総合的評価として、信じるに足る情報が確認された」としている。
また、声明は「北朝鮮はロシ… ・・・
●ウクライナ、9月のGDP9.1%増=経済省 10/26
ウクライナ経済省は25日、9月の国内総生産(GDP)は前年同期比約9.1%増だったと発表した。
1─9月期のGDPはロシアによる侵攻が開始した2022年の同期比5.3%増だった。
同省は「比較となる統計の基準が低いことに加え、新たな課題に対する企業の高い適応能力、政府や国外のパートナーからの支援が背景にある」と指摘した。
ウクライナ経済は、ロシアの侵攻による経済的打撃から徐々に回復しつつある。しかし、戦争の長期化や物流の混乱、エネルギーシステムへの攻撃が今も経済成長の大きな障壁となっている。
●露軍の攻勢弱体化 損害拡大で再編成か 東部ドネツク州 10/26
ロシアによるウクライナ侵略で激戦が続く東部ドネツク州アブデエフカを巡る攻防に関し、ウクライナ軍のシュトゥプン報道官は25日までに露軍の攻勢が弱まっていると報告した。
シュトゥプン氏はその理由を、露軍が過去1週間に同州だけで約3000人の死傷者を出し、部隊の再編成に着手したためだと指摘した。ウクライナメディアが伝えた。
ドネツク州全域の制圧を狙う露軍は今月、同州の州都ドネツク近郊の都市アブデエフカへの攻勢を強化。露軍は同州バフムトの制圧後、周辺でウクライナ軍に足止めされていることから、別の進軍ルートとしてアブデエフカの突破を狙っているとみられる。ただ、米シンクタンク「戦争研究所」や英国防省によると、露軍はアブデエフカ周辺でもウクライナ軍の抗戦に遭い、大きな損害を出して目立った前進を達成できていない。
一方のウクライナ軍も、反攻の主軸とする南部ザポロジエ州方面で8月下旬に集落ロボティネを奪還したものの、露軍の防衛線に直面。当面の奪還目標とする小都市トクマク方面に前進できておらず、戦局は南部・東部とも膠着の度を増している。
●NATO事務総長「備蓄は尽きた」ウクライナ侵攻長期化で軍需品増産呼掛け 10/26
NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長はロシアによるウクライナ侵攻で「NATOの備蓄は尽きた」と述べ、加盟国に軍需品の生産量を増やすよう呼びかけました。
NATOのストルテンベルグ事務総長は24日、スウェーデンの首都ストックホルムで会見し、トルコのエルドアン大統領がスウェーデンのNATO加盟を認める法案に署名したことを歓迎しました。
また、スウェーデンのウクライナに対する軍事的支援に感謝を述べたうえで、「ロシアによる戦争でNATOの備蓄は尽きた」と話し、加盟国に武器や弾薬などの軍需品の生産量を増やすよう促しました。
さらに、今後のロシアの動きについて「再び冬を戦争の武器とすべく準備している」と分析したうえで、「ウクライナの需要を満たし、自らの防衛力を確保するために増産は不可欠だ。スピードと量が重要になる」と強調しています。
●スロバキア新首相にフィツォ氏 ウクライナへの軍事支援停止主張 10/26
スロバキアのチャプトバ大統領は25日、ウクライナへの軍事支援停止を訴えて9月の総選挙で第1党となった中道左派スメル(道標)を率いるフィツォ元首相を首相に任命した。フィツォ氏は対ロシア経済制裁にも反対しており、欧州諸国の結束が乱れる可能性もある。
新政権は、議会(1院制、150議席)で42議席を獲得したスメルと27議席の左派HLAS(声)、そして10議席の民族主義政党「スロバキア国民党」による3党連立となる。
英紙ガーディアンによると、フィツォ氏は25日、「我々は建設的な政府になる。スロバキアの主権ある外交政策が見られるだろう」と語った。
選挙戦ではウクライナ支援の是非が主な争点となった。ロシアによるウクライナ侵攻後、スロバキアは隣国ウクライナを積極的に支援してきた。しかしフィツォ氏は選挙戦で、「政権入りすれば、ウクライナには武器も弾薬も送らない」と訴えていた。またスロバキア国民党も軍事支援の停止を訴えていた。一方、HLASは外交政策の継続を訴えており、新政権の外交方針が注目される。 
●ロシア、北朝鮮と「あらゆる分野」で緊密な関係構築へ 10/26
ロシア大統領府のペスコフ報道官は26日、北朝鮮とあらゆる分野で緊密な関係を構築していくと表明した。
これに先立ち、日米韓の3カ国は北朝鮮によるロシアへの武器や軍事装備の提供を強く非難し、複数の武器取引を確認していると明らかにした。 もっと見る
ペスコフ報道官はこれについて「そうした報告はたくさんあるが、概して全て根拠なく、詳細が明らかにされていない。そのような報告はは昔からある。私たちがコメントする意味はない」と発言。
「北朝鮮は隣国であり、今後もあらゆる分野で緊密な関係を発展させていく」と述べた。
武器の供給があったのかとの質問には「これについては一切コメントしない」と答えた。
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記とロシアのプーチン大統領は9月にロシアで会談し、軍事問題やウクライナ戦争のほか、ロシアが北朝鮮の衛星開発を支援する可能性について協議した。
●ハマス幹部がモスクワ訪問 ロシア、人質解放など求める 10/26
ロシア外務省は26日、イスラエル軍と戦闘を続けるイスラム組織ハマスの幹部アブマルズーク氏が、ハマス代表団を率いてモスクワを訪問したと明らかにした。ロシアは、ハマスがパレスチナ自治区ガザで拘束する外国人の人質の即時解放や、ロシア人を含む外国人の安全な避難を保証するよう求めたとしている。タス通信が伝えた。
ロシア紙イズベスチヤは通信アプリで、ボグダノフ外務次官がアブマルズーク氏と会談したと写真付きで報じた。ハマスも26日、代表団がロシアを訪れ、ボグダノフ氏と会談したと発表。ハマス側はプーチン大統領の姿勢を称賛したという。ロシアはソ連時代からパレスチナと良好な関係にある。
●ロシア 大陸間弾道ミサイルなどを使った大規模な演習 映像を公開 10/26
ロシアは25日、「敵の核攻撃に報復するため」として、大陸間弾道ミサイルなどを使った大規模な演習を行ったとしてその映像を公開しました。
軍事演習は、プーチン大統領がオンラインで参加する中、ショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長の指揮で行われました。
演習のなかでは北西部の基地から大陸間弾道ミサイル「ヤルス」をカムチャツカ半島の訓練場に向けて発射しました。ヤルスはロシアが地上に配備する核兵器の主力とすることをめざしています。
また、バレンツ海では戦略原子力潜水艦が弾道ミサイルを発射しました。
さらに核兵器を搭載可能な戦略爆撃機ツポレフ95も演習に参加しています。
ロシアは25日、議会上院がCTBT=包括的核実験禁止条約の批准撤回を承認していて、西側諸国に対して核による威嚇を強める狙いがあるとみられます。
● ロシア 38万人余が兵役に “来年も契約軍人で兵員補充”決定 10/26
ロシアの安全保障会議のメドベージェフ副議長はことし1月以降、38万人余りが兵役に就いたとしたうえで、プーチン大統領が来年も契約軍人で兵員の補充を行うことを決定したと明らかにしました。兵力を増強し、ウクライナ侵攻を続ける構えを示したものとみられます。
ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア軍は東部ドネツク州などで、人員の犠牲もいとわず攻撃を繰り返しています。
ロシアの前の大統領で、安全保障会議のメドベージェフ副議長は25日、軍への追加人員に関する会議を開き、ことし1月以降、契約軍人を中心に38万5000人が兵役に就いたと明らかにしました。
また、毎日およそ1600人が軍と契約を結んでいると主張したうえで「プーチン大統領は来年も契約軍人で兵員の補充を行っていくことを決定した」と述べました。
ロシア軍をめぐっては、イギリス国防省が今月、死者と、戦闘に復帰できない負傷者を合わせると15万人から19万人に上るという見方を示すなど、兵員不足が深刻になっています。
プーチン政権は去年9月に30万人規模の予備役の動員に踏み切りましたが、国民の間で不安や反発が広がり、その後は高額の報酬などを示しながら、契約軍人などを確保しています。
プーチン政権としては、来年3月の大統領選挙を前に、国民の不満を回避しつつ、契約軍人によって兵員不足を補い、ウクライナ侵攻を続ける構えを示したものとみられます。
●ロシア人大隊、ウクライナ軍内に新設 自国での反体制活動に見切り 10/26
ウクライナの首都キーウ近郊の渓谷で、迷彩服を着た兵士の一行が戦闘の基礎を学んでいる。指導に用いられているのはロシア語だ。
ウクライナ軍内に新設されたこの「シベリア大隊」には、同胞と戦う覚悟でウクライナにやって来たロシア人約50人が所属している。
ソバを意味する「グレチハ」というコールサインで呼ばれる兵士は、「ロシアと戦うため、また(ウラジーミル・)プーチン政権、帝国主義と戦うために、一刻も早くウクライナに入ろうと決めた」と話した。
ロシアによる侵攻が始まると、ウクライナには諸外国から義勇兵が集まった。このうちの大半がウクライナ軍の外国人部隊に加わっており、シベリア大隊もその一部だ。
隊員には、民族的にはロシア人だが、長く反体制的な意見を持ってきたという兵士もいれば、シベリアの少数民族出身者もいる。
外国人部隊の報道官によると、ロシア出身兵に不法入国者はいない。「何もかも完全に合法だ。ウクライナに入れるよう、国内外の法律のさまざまな抜け穴を見つける必要がある」と明かした。戦争捕虜は一人もおらず、全員が契約兵だという。
ロシア国内での抗議デモは「無意味」
グレチハさんはウクライナのクリミア半島生まれだが、モスクワで暮らし、救急隊員として働いてきた。侵攻に抗議するデモに何度か参加したが、「無意味」だと悟ったという。
「現在ロシアは独裁政権で、もちろん極めて不満だ。今自分の身に具体的に影響があるわけではなく、私は刑務所に入っているわけでも、外国のスパイでもないが、国家が国民の自由を徐々に奪っているということは感じている」とグレチハさん。
昨年ロシアを出国してウクライナ入りしようとしたが、「当初は組織化されておらず、入国方法に関する情報もなかった」ため、ロシア人の入国時にビザ(査証)取得要件のない国々で、主にテントに寝泊まりして過ごした。
その後、シベリア大隊への入隊希望を受け付けている団体「シビック・カウンシル(Civic Council)」の存在を知った。フェイスブックの公式ページによると、拠点はポーランド・ワルシャワにあるという。
グレチハさんによると、同団体が自身と妻のウクライナ入国を手配してくれた。
また、スウェーデン人を意味する「シュウェブ」というコールサインで呼ばれる兵士は、「政治的迫害」が理由で10年以上前にロシアを離れ、2011年からスウェーデンで暮らしてきたと話した。「長年、反政府や反プーチンの活動に参加し、外国に移住せざるを得なくなった」
「この戦争では、人々の自由を守る側に立っているのはウクライナだ」とみているシュウェブさん。「今必要なのは、プーチンのロシアを打倒すること」であり、ひいてはロシアに加えベラルーシでも政変が起こることを願っている。
「そのためには、ウクライナの勝利が必要だ」とシュウェブさんは強調した。

 

●ハンガリー首相にEU内から批判、プーチン氏との会談巡り 10/27
欧州連合(EU)首脳会議のためにブリュッセルに到着したエストニアとルクセンブルクの首脳は26日、ハンガリーのオルバン首相が今月の訪中時にロシアのプーチン大統領と会談したことを批判した。
エストニアのカラス首相はオルバン氏にこの問題を提起すると述べ、ルクセンブルクのベッテル首相はプーチン氏との会談はロシアの侵攻を受けるウクライナ国民に「中指を立てる」ようなものだと非難した。
オルバン氏は自身の戦略を「誇りに思う」と表明。「われわれは平和のために何でもやるつもりだ。それ故、ロシアとの対話ラインを全て開いたままにしている。そうしなければ平和の機会が失われる」と釈明した。
オルバン政権は他のEU加盟国に比べてロシアと近い関係にあり、対ロシア制裁に繰り返し反対しているほか、EUのウクライナ追加支援阻止もほのめかしてきた。
●「なぜプーチンと握手を?」 EU・NATOの非難にハンガリー首相「誇らしい」 10/27
ロシアのプーチン大統領と握手をするなど会談したことに対して批判を受けていたハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相がロシアとの疎通を今後も続けるという意向を明らかにした。
26日(現地時間)、オルバーン首相はベルギー・ブリュッセルで開かれた欧州連合(EU)首脳会議開始前に記者団と会い、「我々はロシアとすべての疎通チャネルを今後も開放する。そうしなければ平和の機会がそもそもなくなってしまう」と主張した。
オルバーン首相はまた「これは(外交)戦略」としながら「したがって誇らしいと考える」と強調した。
オルバーン首相はこれに先立って17日、中国で開かれた一帯一路(中国−中央アジア−欧州を連結する陸上・海上シルクロード)サミットフォーラムを契機にプーチン大統領と会談した。
これによってEUと北大西洋条約機構(NATO)内部から批判を受けた。「昨年のウクライナ戦争勃発以降、西側がロシアと対立している状況で、EUやNATO加盟国の首脳として不適切」という批判だ。
当時外信も「EUの首脳がプーチン大統領と会合したのはウクライナ戦争勃発後で初めて」と指摘したことがある。
この日、オルバーン首相の発言は相次ぐ批判にも自国が追求してきた外交政策方向に問題がないと迂回反論したものと解釈される。
●「プーチン心停止で影武者代行」情報…訪中大失敗のストレス 10/27
ロシアのプーチン大統領(71)の深刻な健康不安説が世界を駆け巡っている。寝室で心停止状態になり、特別な集中治療室で意識を取り戻したものの、影武者が執務を代行しているというのだ。出口の見えないウクライナ侵攻から20カ月あまり。来年3月の大統領選を控え、いよいよ「プーチンのロシア」はジ・エンドなのか。
警護官は見た「ベッドの横でけいれん」
プーチン大統領の異常を発信したのは、テレグラムのチャンネル「SVR将軍」。SVR(ロシア対外情報局)の元メンバーを名乗る人物が運営していて、ウクライナ戦争以降、その情報力に注目が集まる。プーチン大統領については過去にがん手術説、初期パーキンソン病診断説、階段から踏み外して便失禁した説などを流していた。
SVR将軍によると、コトが起きたのは22日夜。〈午後9時5分ごろ、プーチンの警護官が寝室で物が落ちる音を聞いて駆けつけると、プーチンがベッドの横に倒れているのを発見〉し、〈プーチンがけいれんを起こしているのを見た〉という。ブラジルのルラ大統領との23日の電話会談は影武者が代行したとも主張しているが、信憑性はどうなのか。ペスコフ大統領報道官は「大統領は健康だ」と明言している。
プーチン大統領は絶望の淵に
筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)はこう言う。
「SVR将軍のこれまでの投稿は、プーチン氏の表舞台での動きと整合しているため、この件についても事実に近いとみています。実際、プーチン氏は先週の訪中が大失敗し、非常に大きなストレスを抱えている。習近平国家主席肝いりの一帯一路の関連フォーラムに出席し、首脳会談を実施しましたが、ロシアと中国を結ぶ天然ガスパイプライン『シベリアの力2』の建設にGOサインを得られなかった。ロシアの対中債務は1250億ドル(約18.7兆円)に達し、中国の対外融資の3分の1に及んでいるため、天然ガス輸出で返済する計画だったのがパー。米国との関係改善を模索する習近平氏から中ロ軍事同盟の締結も蹴っ飛ばされ、プーチン氏は絶望の淵に立たされています」
プーチン大統領はウクライナ情勢をめぐっても、ひどい思い違いをしていた。進軍したロシア軍を住民が歓喜で迎えると信じていたとされる。
「ウクライナにしろ、中国にしろ、プーチン氏に正確な情報が上がっていないということ。死に体のプーチン氏に大統領5選は無理だという空気が国内で広がっていますし、盟友のベラルーシのルカシェンコ大統領も距離を取り始めています」(中村逸郎氏)
残り任期は半年。四半世紀の独裁にようやく幕が下りそうだ。
●プーチン氏にウクライナとの停戦交渉訴え ロシア改革派野党元代表が会談 10/27
ロシアの改革派野党「ヤブロコ」は26日、創設者で元党代表のグリゴリー・ヤブリンスキー氏が同日、プーチン大統領と会談し、ウクライナ侵攻について協議したと明らかにした。ヤブリンスキー氏は早期の停戦交渉開始が必要だと訴えた。党広報部が通信アプリで公表した。
ほかにロシア経済の見通しも話し合った。来年3月に予定される次期大統領選は話題にならなかったとしている。ペスコフ大統領報道官はタス通信などに「コメントしない」と述べた。
ヤブロコは昨年2月に始まった侵攻に一貫して反対しているが、下院に議席がなく社会での影響力は限られている。
ヤブリンスキー氏は過去にも大統領選に立候補しており、仮に有権者1千万人の署名が集まれば次期大統領選に出馬すると表明している。
●米政府、ウクライナに弾薬供与 議会に追加予算念押し 10/27
米国防総省は26日、弾薬を柱とするウクライナ向けの武器支援を発表した。声明で米議会に「ウクライナ国民への責務を果たすよう求める」と強調し、将来の支援に必要な追加予算を可決するよう念押しした。
米国は1億5000万ドル(225億円)相当の武器を新たに供与する。地対空ミサイルシステムのNASAMSや高機動ロケット砲システムのハイマースに搭載する弾薬を送る。携帯型防空ミサイルのスティンガーも支援に盛った。
ブリンケン国務長官は声明で、ロシア軍がウクライナから撤退するまで「米国や50カ国以上の有志国はウクライナに寄り添い続ける」と言明した。
「我々はウクライナ国民が強靱(きょうじん)で繁栄する民主主義のもとで(国を)再建して安全に生活する将来を確保できるように米議会と連携する」と説明。議会に追加予算を早期に通すよう促した。
バイデン政権は20日、議会に要請した緊急予算にウクライナ支援として614億ドルを盛り込んだ。追加予算を確保できないと、ウクライナに送った分の武器を補充できなくなる恐れがある。
予算確保のカギは野党・共和党の賛同を得られるかどうかだ。共和党にはウクライナ支援よりメキシコとの国境管理などを重視すべきだとの意見がある。
25日に下院議長へ就任した共和党のマイク・ジョンソン氏は「プーチン(ロシア大統領)が成功しないようにしなければならないし、下院共和議員はその大義で一致している」と話した。ウクライナ支援の扱いを議論していく考えを示した。
バイデン政権はウクライナやイスラエル支援などをセットにした一括予算法案の策定を議会に働きかけてきた。与野党がほぼ一枚岩で支持するイスラエル向けと抱き合わせると、ウクライナ支援予算も通りやすくなると見込む。
●黒海穀物回廊は機能している=ウクライナ副首相 10/27
ウクライナのクブラコフ副首相は26日、黒海の新たな穀物輸出回廊は機能していると説明した。
キエフを拠点とするコンサルタント会社バルバ・インベストと英警備会社アムブレイはなどは、ロシアの戦闘機や機雷による脅威の可能性があるため、ウクライナが回廊の使用を停止したと報じていた。
クブラコフ氏はX(旧ツイッター)への投稿で、回廊の一時停止に関する情報は誤りで、ウクライナ海軍が設定した利用可能な航路は全て有効であり、民間船舶が利用していると説明した。
● 北朝鮮の弾薬、コンテナ1000個以上がロシアに到着か…英国防省 10/27
英国防省は26日、北朝鮮の弾薬がロシア西部に到着したのはほぼ確実だとする分析を発表した。ここ数週間でコンテナ1000個以上が運び込まれているとみられており、「規模とペースを維持すれば、北朝鮮はイランやベラルーシと並んで最も重要な武器供給国の一つになる」と指摘した。
プーチン露大統領(右)と握手する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(今年9月)=ロイター
分析では、これらの弾薬供与が露軍のウクライナ侵略を支えているとし、露高官の最近の訪朝における「主要議題の一つであった可能性が高い」とした。
ロイター通信によると、ドミトリー・ペスコフ露大統領報道官は26日、「北朝鮮は隣国で、あらゆる分野での緊密な関係を続けていく」と述べた。武器が実際に運搬されたかについてはコメントしなかった。
一方、ウクライナ政府は26日、東部ハルキウ州クピャンスクの10集落から子供275人の避難を計画していると発表した。ウクライナの英字ニュースサイト「キーウ・インディペンデント」によると、これらの集落は前線の西方10〜20キロ・メートルにある。露軍による攻撃が激化し、8月から子供の避難を始めていたという。
●スロバキアがウクライナへ武器供与停止 ロシア寄り政党が選挙で勝利 10/27
ウクライナの隣国・スロバキアの新しい首相が、ウクライナへの武器供与を停止すると表明した。
フィツォ首相「私は首相として、ウクライナへの軍事援助の停止を支持します」
現地メディアなどによれば、フィツォ首相は、ウクライナへ人道支援や財政的な援助は継続する方針を示す一方、ロシアに対する追加制裁には反対の姿勢を示している。
フィツォ氏が率いるロシア寄りの左派政党「スメル(道標)」は9月の総選挙で第1党となり、連立政権が25日に発足、フィツォ氏が4度目となる首相の座に就いた。
ウクライナ情勢をめぐっては、これまでハンガリーがロシアに融和的な姿勢を取っていて、スロバキアの新政権誕生で、ヨーロッパ内の結束が揺らぐ可能性もある。 
●ハマス代表団がモスクワ訪問、プーチン氏を称賛「イスラエルの犯罪の終焉」 10/27
タス通信などによると、イスラエル軍との戦闘を続けるイスラム主義組織ハマスの代表団が26日、モスクワを訪れ、ロシア政府で中東問題を担当するミハイル・ボグダノフ外務次官と会談した。露外務省によると、露側はパレスチナ自治区ガザで拘束中の外国人の人質の即時解放や、安全な避難を保証するよう求めた。
モスクワを訪問したのは、ハマス幹部のムーサ・アブ・マルズーク氏ら。ハマスは声明を出し、「西側諸国の支持を受けるイスラエルの犯罪を終わらせようとしている」として、プーチン大統領の姿勢を称賛した。
ロシアのプーチン大統領の写真を掲げる人たち(パレスチナ自治区ヘブロンで、ロイター)
プーチン政権は中東地域のパレスチナやハマス、イラン、イスラエルなどと一定の関係を維持している。今回の事態を「米国の中東政策の失敗の典型例だ」と訴え、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」による解決を探るべきだとして即時停戦を求めている。
これに対しイスラエル外務省は声明を出し、ロシア政府によるハマス幹部の招待は「テロ支援行為であり、ハマスの残虐行為を正当化するものだ」とロシアを非難。ハマス幹部らを直ちに追放するよう求めた。
●ロシア中銀、予想以上の大幅利上げ−インフレ抑制とルーブル安定重視 10/27
ロシア銀行(中央銀行)は27日、予想を大きく上回る利上げを実施した。資本規制再導入で通貨ルーブルへの圧力は沈静化したが、インフレリスクはなお強まっていると指摘した。
中銀は政策金利を15%と、これまでの13%から引き上げた。エコノミストは14%への利上げを予想していた。
今回の決定により2022年4月以来の高金利となり、ロシア経済にはリセッション(景気後退)に陥るリスクが生じる。それでもプーチン氏が大統領選挙に備え、対ウクライナ戦争が1年9カ月目に入った今、ルーブルを安定させてインフレを抑制することを優先させた。
中銀は声明で「インフレ率が目標から上方に乖離(かいり)していくことを抑え、2024年に4%に戻す」ためには、追加的な金融引き締めが必要だと説明した。
「現在のインフレ圧力は中銀の予想を上回るレベルまで大きく高まった」と続けた。次の政策行動の方向性に関する示唆はなかった。
決定発表後にルーブルは対ドルで上げを広げた。
中銀はまた、インフレ率予想を引き上げ、年末は7−7.5%のレンジになるとの見通しを示した。金利軌道の予測も上振れさせた。
●ECBの利上げ、インフレ抑制に効果=独連銀総裁 10/27
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのナーゲル独連銀総裁は27日、これまでの一連の利上げがインフレ抑制で効果を発揮しているとの認識を示した。
将来の政策行動について予断を持っていないとも述べた。
総裁は声明で「インフレは依然として目標の2%への到達には程遠いが、金融引き締め政策は効果を発揮している」とし「このため、理事会は方針を堅持しており、金利を据え置いた」と述べた。
●プーチン氏、リベラル派と会談 大統領選前に異例、臆測も―ロシア 10/27
ロシアのリベラル系野党「ヤブロコ」は26日、創設者グリゴリー・ヤブリンスキー氏(71)がプーチン大統領と会談したと明らかにした。強権体制を敷くプーチン氏がウクライナ侵攻下、与党や政権に従順な「体制内野党」以外の政治家と会うのは極めて異例だ。
タス通信によると、ペスコフ大統領報道官は会談に関し「何もコメントしない」と確認を避けた。ヤブロコは「(来年3月の)大統領選については議論していない」と主張したが、内容を巡り臆測を呼びそうだ。
ヤブリンスキー氏は2018年の大統領選で5位だった。来年の選挙での再挑戦について、ヤブロコ側は「1000万人分の推薦署名が集まれば立候補を検討すると、本人が繰り返し公言している」として、条件付きながら可能性を否定していない。前回選挙で立候補を認められなかった反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(47)は、禁錮19年の判決を受けて収監中。
次期大統領選は、現在4期目のプーチン氏が出馬し圧勝するのが既定路線だが、「無風選挙」になり投票率が低下すれば、有権者全体に占めるプーチン氏の「絶対得票率」が伸び悩むことになる。政権の正統性を誇示するためにも、投票率アップは至上命令。ヤブリンスキー氏が参加し投票率が押し上げられるシナリオも、政権は視野に入れているもようだ。
ヤブロコの発表によると、今回の会談は「特別軍事作戦(ウクライナ侵攻)での停戦合意の必要性」が議題。ヤブリンスキー氏は「できるだけ早く停戦交渉を始める必要があると考えており、自身も交渉に参加する用意がある」とプーチン氏に伝えたという。
ヤブロコは「反戦」を掲げていたが、発表文は戦争の現実を認めた上で「停戦」を訴えるという配慮を見せた。プーチン政権は目標達成まで侵攻を続ける構えで、戦闘長期化は停戦交渉に応じないウクライナや支援する米国のせいだと責任転嫁している。
●ウクライナ軍、10日以降で「ロシア軍の死傷者5千人」…装甲車400台破壊 10/27
ウクライナ国防省系メディアによると、ウクライナ軍報道官は26日、ウクライナ東部アウディーイウカとドネツク近郊で10月10日以後、「ロシア軍の死傷者が5000人に達する」と述べた。装甲車は約400台が破壊されたとしている。
報道官によると、露軍は攻撃ヘリ「Ka52」や戦闘機「Su(スホイ)25」などの航空戦力を投入し、アウディーイウカの包囲を試みている。
米政策研究機関「戦争研究所」も26日、衛星写真の分析などから、露軍が10月10〜20日に装甲車や戦車など少なくとも109台を破壊されたと発表した。露軍はアウディーイウカに追加の兵力を投入しているが、「装甲車など兵器の損耗を埋めるのに苦労する」と指摘した。長期的に、露軍の作戦能力の弱体化につながる可能性もあるとしている。
一方、英国防省は26日、北朝鮮の弾薬がロシア西部に到着したのはほぼ確実だとする分析を発表した。ここ数週間でコンテナ1000個以上が運び込まれており、規模と頻度が維持された場合、「北朝鮮はイランやベラルーシと並ぶ最も重要な武器供給国の一つになる」と指摘した。
インターファクス通信によるとドミトリー・ペスコフ露大統領報道官は26日、「北朝鮮は隣国で、あらゆる分野での緊密な関係を続けていく」と述べた。
●EU、ウクライナ支援で亀裂 ハンガリーとスロバキアが難色 10/27
欧州連合(EU)はウクライナに向こう4年間で500億ユーロ(530億ドル)を支援する案を大筋で支持したが、全会一致が必要となる12月の詳細合意を前にハンガリーとスロバキアが難色を示し、EU内に亀裂が生じていることが明らかになった。
EUはブリュッセルで開催された首脳会議2日目に「ウクライナとその国民に必要な限り、強力な財政・経済・人道・軍事・外交支援を提供し続ける」と明記する声明を採択した。EU欧州委員会は6月、2024─27年にウクライナに500億ユーロを支援することを提案している。
ドイツのショルツ首相は首脳会議後「ウクライナの財政安定のために必要なことが決定されると予想している」とし、「部分的に異なるアセスメントが決定に影響するとは考えていない」と述べた。
アイルランドのバラッカー首相は2日目の協議前「ウクライナに追加の資金が必要だという強い意見があり、その点はほぼ一致している」とした上で「ただ、資金をどこから捻出するかについては、効率性を除いてほとんど意見が一致していない。12月までに合意できると思う」と述べていた。
ハンガリーとスロバキアが難色
ハンガリーはこれまでもウクライナ支援に懐疑的な姿勢を表明。ロシアのプーチン大統領と会談したばかりのハンガリーのオルバン首相は、ウクライナに資金と軍事支援を提供するEUの戦略は失敗したとし、「ウクライナは戦場で勝てない」と述べた。
その上で、ウクライナに対する500億ユーロの新たな支援を含むEU予算の改定案を現在の形では支持しないと表明。ただ、交渉の余地はあるとの姿勢も示した。
スロバキアのフィツォ首相もオルバン氏に同調。ウクライナでは汚職が蔓延していると指摘し、EUの新たな支援に資金が不正利用されない保証を盛り込むよう求めたほか、ウクライナに対する軍事支援を停止すると表明した。
●EU首脳会議 ウクライナへの資金支援 2か国が支持しない姿勢 10/27
ロシアによるウクライナ侵攻が長引くなか、EU=ヨーロッパ連合の首脳会議でハンガリーなど2か国が、ウクライナへの今後の資金支援を支持しない姿勢を示し、ウクライナを支えるEUの結束を揺るがしかねない事態となっています。
EUは、27日までの2日間ベルギーで首脳会議を開き、ウクライナに対し、来年からの4年間で最大500億ユーロ、日本円で7兆9000億円規模の資金支援や、その裏付けとなるEUの予算について協議しました。
27日、記者団の取材に応じたエストニアのカラス首相は、首脳会議でハンガリーとスロバキアの2つの加盟国が、資金支援について支持しない姿勢を示したことを明らかにしました。
このうち、ロシア寄りの姿勢を示すハンガリーのオルバン首相は、27日朝、ラジオに出演し「ヨーロッパの戦略はウクライナが戦争に勝つというものだったが、そうはならない。ウクライナに資金を送る理由はない」と述べました。
また、ウクライナへの軍事支援の停止を訴えて、10月に新たに就任したスロバキアのフィツォ首相は、SNSにウクライナ国内の汚職を問題視し、資金が適切に使われる保証が必要だと投稿しました。
EUはことし年末までの合意を目指していますが、資金支援には、すべての加盟国の合意が必要で、2か国の姿勢はウクライナを支えるEUの結束を揺るがしかねない事態となっています。
●財政支援の継続確認=ウクライナ巡り―EU首脳会議閉幕 10/27
欧州連合(EU)は27日、ブリュッセルで首脳会議を開き、ロシアによる侵攻が続くウクライナへの支援を継続する方針を改めて確認した。移民問題や欧州経済についても協議し、2日間の日程を終えた。
会議で採択された文書は、ウクライナ支援について「EUは今後も強力な財政、経済、人道、軍事、外交支援を継続する」と明記。凍結したロシア資産について、ウクライナ復興などに活用するための具体案を示すよう欧州委員会に求めた。

 

●ウクライナ鉄鋼業、ロシアの黒海攻撃や停電で生産停滞 10/28
ウクライナ南部の都市ザポロジエにある旧ソ連時代の製鉄所ザポリスタルは、人手不足や阻止されている海運での輸出、停電、ロシアのミサイル攻撃といったさまざまな脅威に耐え、これまでなんとか操業を続けてきた。
ただ、昨年は第二次世界大戦後初めて、一時的に操業を停止した。ロマン・ソロボディアニウク所長は同社の先行きと、かつては強大だったウクライナの鉄鋼産業全体の将来が危ぶまれていることを把握している。
黒海経由で鉄鋼を市場に供給できるようにならない限り、ウクライナ経済にとって農業に次いで重要な鉄鋼産業が回復する見込みはほとんどない。だが、黒海の海運はロシアによる脅威にさらされ続けている。
ウクライナ鉄鋼メーカーの労働組合のオレクサンドル・カレンコフ委員長は「海運が自由にできなければ、われわれの産業は存続できず、他の全ての産業もわれわれに続くだろう」とロイターの取材に答えた。
労組の統計によると、旧ソ連時代にウクライナは年間5000万トン以上の鉄鋼を生産していた。それが2021年には2100万―2200万トンに減少し、昨年のロシアの侵攻を受け、22年には630万トンに落ち込んだ。
これは、ロシアによる領土獲得で巨大製鉄所が制御できなくなったり、破壊されたりしたことが一因だ。特にマリウポリのアゾフスタリ製鉄所は最も激しい戦闘の舞台となった。
最新のデータによると、今年1―9月期の生産量は前年同期から17%減って390万トンだった。通年では小幅ながら増加する可能性がある。
もう一つの小さな光明は、国内需要の増加だ。ウクライナが武器製造を増やし、防空壕を建設するとともに、戦争で破壊された都市の復興も始まったことにより、1―9月の鉄鋼消費量は260万トンと、ほぼ倍増した。
しかし、生産量の5分の4を輸出していた鉄鋼産業を維持するには、これでも不十分だ。
ロシアによる本格的な侵攻以前、金属セクターは全体としてウクライナのGDPの10%、輸出の30%を占めていた。
列車と船舶
黒海経由の輸送が事実上不可能なため、鉄鋼メーカーは製品を可能な限り鉄道で欧州に輸送している。
ウクライナから欧州に毎日移動する貨物車1800両の約半分を鉄鋼業界が占める。鉄道輸出の限界は年間約300万トンだ。
今月初め、ザポリスタル製鉄所を訪れたロイターの記者にソロボディアニウク所長は「海上輸送と比較すると4倍のコストがかかる」と語った。今年は貨物鉄道の運賃が上がり、コストがさらに20―30%押し上げられるだろうという。
ウクライナのシンクタンク、GMKセンターのスタニスラフ・ジンチェンコ代表は、今年に入って南部オデッサ周辺の港を通過した鉄鋼は10万トンに満たず、必要量のごく一部に過ぎないと述べた。
ザポリスタル製鉄所は今年、鉄鉱石と圧延鋼材の生産量240万―250万トンの3分の2を輸出する見通しだ。侵攻前の生産量は年間420万トンだった。
ロシアが農産物を積んだ船舶を攻撃しないことを決めた協定から離脱したため、ウクライナは自国とルーマニア、ブルガリアの沿岸部を通り、トルコを経由する「人道回廊」と呼ぶルートで貨物を運び始めている。
鉄鋼関係者もこのルートの利用を望んでいるが、ウクライナ領内と黒海で戦争が激化しているのに加え、ロシアがここ数週間、オデッサ周辺の港湾インフラへの攻撃を強めていることを考えると、リスクが大きい。
停電、従業員の離職
製鉄所は稼働を減らしているにもかかわらず、十分な人員を確保するのにも苦労している。
ザポリスタルの従業員数百人は、戦争初期に街を離れた。ザポリスタルは前線からわずか50キロしか離れておらず、ロシアの支配下にある欧州最大の原子力発電所にも近いためだ。
ソロボディアニウク氏の話では、さらに1050人が軍隊に行き、そのうち40人が死亡した。製鉄所は全体として侵攻前の労働力、約1万人の20%を失っていて「人員数を考えれば、生産能力は限界に達している」という。
鉄鋼圧延工として働くマクシム・メドコフさんは、自分の部署では人手が足りないと語る。「病気になったり、家族に問題があったりすると、難しい状況になる」と説明した。
だが、ロイターが製鉄所で話を聞いたほとんどの労働者は、働き続ける決意を固めていると語った。
23歳のオレクサンドル・ヤスナスさんは、ここにとどまるつもりだ。「引っ越したいと思っていた人たちは皆、もう引っ越した」と語った。
一方、冬が近づき、送電網への圧力が最高潮に達すると、電力供給が一層不安定化して鉄鋼生産を圧迫する恐れがある。
昨冬、ロシアはウクライナの電力系統を数百発のミサイルや無人機で攻撃し、電力網の約40%に損害を与えた。一部はなお修理が必要だ。
シンクタンクのジンチェンコ氏は「昨冬の停電で、鉄鋼生産は2分の1から3分の1に減少したとみられる」と述べた。
●EU首脳、ロシア資産凍結による利益活用で合意 10/28
ブリュッセル-欧州理事会首脳会議によると、欧州連合の指導者らは、凍結されたロシア国家資産から得た利益をウクライナ再建に活用するという前例のない計画を支持し、この点に関する法的提案を提出するよう欧州委員会に求めた。 結論。
同氏はさらに、「適用される契約上の義務に沿って、凍結されたロシア資産から直接得られる民間団体が保有する特別な収入を、ウクライナの復旧と再建を支援するためにどのように振り向けるかについて、パートナーと連携して決定的な進展を図る必要がある」と付け加えた。 「国際法は欧州理事会、上級代表、欧州委員会に対し、提案提出に向けた作業を加速するよう求めている」と彼らは書いている。
ロシアの対ウクライナ戦争開始時に制裁参加国が凍結したロシアの外貨準備高約3000億ドルのうち、大部分(2000億ユーロ以上)は欧州連合内にある。 ロシアの証券は満期に達し、金融仲介業者によって再投資され、利益を生み出します。
欧州連合は、ウクライナのこれらの利益に税金を課すという考えを浮上させたが、欧州中央銀行と一部のEUは、 パリやベルリンなどの首都は疑問を表明した。 彼らは、この動きが金融市場を混乱させ、基軸通貨としてのユーロの地位を弱めることを懸念している。
金曜日にブリュッセルで開かれた首脳会議で、ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は指導者らに法的提案の提出義務を求め、支持があることを示唆した。 声明 首脳らの議論に詳しい関係者によると、G7財務相らは今月初めに声明を発表した。
欧州連合では、バルト三国、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ポーランドがこの考えに賛成の立場を表明した。 ベルギーのアレクサンダー・デ・クルー首相は、ルクセンブルクのザビエル・ベッテル首相と同様に、すべての法的、マクロ経済的、金銭的リスクを考慮するよう求めた。 注意注意。
ベルギー政府によると、ベルギーの清算機関ユーロクリアはロシアの国有資産1800億ユーロを保有しており、木曜日に発表された四半期決算では、今年最初の9カ月間に30億ユーロの利益を上げたと発表した。 ルクセンブルクには、現在凍結されたロシア証券を保管している別の清算機関であるクリアストリームの本拠地がある。
この決定は、ブリュッセルで開催されたEU首脳による欧州理事会サミットの最終日に下される。 しかし、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による全面侵攻後のウクライナ再建のためにロシアの資産を活用するという考えは、1年以上前にウクライナが西側の制裁下で凍結されて以来、広まっていた。
フォンデアライエン首相は6月、「夏休み前に」ロシアの国有資産の活用方法に関する提案を作成すると約束したが、欧州中央銀行や一部資本からの懸念により提案は出されなかった。
その後、欧州委員会は、EUが独自にこのような前例のない措置を講じることによる法的および財政的リスクを確実に負わないようにするため、ウクライナの利益のためにロシア資産を活用することに関するG7声明をまとめようとした。 欧州連合は最近のG7法務・財務相会合で解決の仲介を試みたが、それも実現しなかった。
欧州連合の指導者たちは、ロシアのウクライナ戦争に影を落とすイスラエルとハマスの戦争の脅威を考慮して、この進展を達成した。 委員会関係者は、提案は年内に提出される予定だと述べた。
●ウクライナ復興にロシアの資産から得た収益 EU、12月にも提案か 10/28
英紙フィナンシャル・タイムズは27日、欧州連合(EU)欧州委員会が、ウクライナ侵攻を受けて凍結されたロシア中央銀行の資産から得た収益をウクライナの戦争復興に充てる計画を検討していると報じた。12月にも提案する見通しだ。
今月26〜27日に開かれたEU首脳会議の合意文書は、制裁で凍結したロシア関連資産を活用する案について検討を進めるように求めた。凍結資産を没収、活用することには法的な問題点を指摘する声もあるため、欧州委は元本ではなく収益を活用する方針だ。
報道によると、ロ中銀の凍結資産は3千億ドル(約44兆9千億円)。1800億ユーロ(約28兆4千億円)はブリュッセルに本部がある決済機関が保管しており、これを再投資して得た収益をウクライナの支援に充てる計画だ。
同機関によると、金利の上昇も背景に、凍結されたロシアの資産から今年1〜9月だけで30億ユーロの収益が得られた。
●ロシアの新車輸入、ほぼ中国車に 今年9月末までに全体の97%に拡大 10/28
ロシアと中国の関係強化と西側の制裁継続によって、ロシアの新車輸入のほとんどが中国車になろうとしています。これまで日本車が持っていた市場が奪われつつあります。
記者「モスクワの中国車販売店に来ています。こちらはハイブリッドカーなのだそうですが、洗練されたデザインです」
ロシアメディアによりますと、ロシア税関当局がまとめた今年9月末までの新車輸入数は、およそ41万5000台で、このうち中国車が40万台と全体の97%にまで拡大しました。
つい最近まで、ロシアでの中国車の評判は、品質の面から高くありませんでした。しかし、プーチン大統領自らも認めるほど中国車の質は改善されています。
中国車販売店「ROLF」カンディノフ部長「中国車販売は増加傾向にあると見ている。これには2つの要因がある。まず、中国車自体の品質が非常に良くなった。2つ目は(西側企業)が市場から撤退したからだ」
客「内装がとてもキレイで、オプションが非常に興味深い。価格もヨーロッパ車と比較してかなり安い。だからとても気に入っている」
モスクワ市内を走る中国車の数は目に見えて増えていて、ロシア自動車ディーラー協会は「2年以内に中国が市場の90%を占める」と分析しています。
制裁によって、西側企業がロシア市場から撤退したことで、中国企業がまたとないビジネスチャンスを得るという皮肉な結果となりました。
●ウクライナ提唱の和平案 各国協議がマルタで開催へ 28日から 10/28
ウクライナが提唱する和平案について、各国の政府高官が話し合う協議が28日から地中海の島国マルタで始まります。
イスラエル・パレスチナ情勢を巡り、立場が異なる各国が、ウクライナ支援でどこまで一致した対応を打ち出せるかが焦点です。
この協議は、G7=主要7か国やグローバル・サウスと呼ばれる新興国などの安全保障担当の政府高官が参加して行われているもので、今回で3回目です。
外交筋によりますと、28日から2日間の日程で地中海の島国マルタで開催される協議には、これまででもっとも多い、およそ90の国や国際機関の関係者が対面やオンラインで参加する見通しで、ウクライナからはイエルマク大統領府長官が、日本からは秋葉国家安全保障局長が参加するということです。
協議では、ウクライナが提唱する和平案の10項目のうち原子力と放射線の安全や食料の安全保障など、各国が一致しやすい分野で連携強化を進めることを確認する見通しだということです。
ただ、一部の欧米メディアは「イスラエルによる地上侵攻を支持するアメリカなどの立場がロシアの戦争に反対する合意形成の努力を害している」として、イスラエル・パレスチナ情勢をめぐるアメリカなどの立場がロシアを非難するという新興国も含めた各国の結束に乱れを生じさせる可能性を指摘しています。
今回の協議では、中東情勢を巡って立場が異なる各国が、ウクライナ支援でどこまで一致した対応を打ち出せるかが焦点です。
●ロシア軍、東部の要衝アブデーフカで兵力損失=ゼレンスキー氏 10/28
ウクライナのゼレンスキー大統領は27日、東部での戦況について、ロシア軍はドネツク州の要衝アブデーフカを進攻しようとしたものの、少なくとも1旅団分の兵力を失ったと明らかにした。
ウクライナ大統領府によると、ゼレンスキー大統領は英国のスナク首相との電話会談で「ロシア軍はアブデーフカ包囲を何度も試みたが、ウクライナ軍が阻止し、ロシア軍は少なくとも1旅団を失った」と述べた。
ロイターは戦況を独自に確認できていない。ロシアからコメントは得られていない。
アブデーフカはロシアが制圧しているドネツク州の領域から約25キロの距離にあり、北、東、南側をロシア軍に包囲されている。米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は26日、ロシア軍はアブデーフカ近郊で大きな損害を受けたとし、長期的な攻撃能力が損なわれた可能性が高いとの見方を示した。
●米バイデン大統領 中国 王毅外相と面会 対話維持の必要性強調 10/28
アメリカのバイデン大統領は中国の王毅外相と面会し、両国が対話を維持することの必要性を強調しました。焦点となっていた米中首脳会談についてホワイトハウスの高官は「実現すると確信している」と述べ、期待感を示しました。
アメリカのブリンケン国務長官は27日、前日に引き続き、首都ワシントンで中国の王毅外相とおよそ2時間会談し、ウクライナや中東情勢などについて議論したほか、米中首脳会談の実現に向け、調整が進められたものとみられます。
また、ホワイトハウスは、バイデン大統領が王外相と面会したと発表しました。
この中で、バイデン大統領は、両国が責任を持って競争を管理することや対話を維持することの必要性を強調したということです。
面会後、ホワイトハウスの高官は記者団に対し面会は1時間にわたって行われたとした上で、「バイデン大統領は前向きな議論だったと受け止めている」と述べました。
その上で「会談が実現すると確信している」と述べ、時期については明言しなかったものの米中首脳会談の実現に期待感を示しました。
今回の一連の協議で、来月中旬にサンフランシスコで開かれるAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議に合わせてバイデン大統領と習近平国家主席の首脳会談が実現することにつながるのか注目されます。 
●ロシアの占領地を守るエリート「イルカ部隊」を増強...10/28
ロシアが、ウクライナの戦闘地域に近い海域に「軍用イルカ」を配備し、黒海でイルカ利用を拡大する動きを見せているという。欧州の海軍専門メディア「ネイバルニュース」の報道によると、クリミア半島西部のエフパトリアからほど近いノボオゼルノエにあるロシア海軍の基地に、イルカの囲いが出現したことが新たな画像で確認された。
イルカの軍事利用は、ウクライナ戦争以前から見られたものだ。ロシアがウクライナの特殊部隊を撃退するため、黒海の基地周辺で軍用動物を訓練・使用していることは以前から報じられてきた。今回の戦争が始まってからは、爆弾や機雷による火傷、またはソナーの影響で死亡したイルカたちの痛々しい写真も、現地では繰り返し撮影されてきた。
米海軍協会は、ロシアによるウクライナへの全面侵攻の開始直後に、セバストポリに駐留するロシア軍が港入り口に「イルカの囲い」を2つ設置したと明らかにしている。なお、米海軍も長年にわたってイルカを使用してきた。
今回の画像が確認されたノボオゼルノエはセバストポリの北方にあり、黒海におけるロシアの主要基地よりも、激しい戦闘が続くウクライナ本土南部に近い。また、ウクライナがここ数カ月で照準を合わせているエフパトリアのすぐ北に位置する。
ウクライナは、2014年にロシアが併合し、20カ月におよぶ全面戦争の足がかりにしているクリミア半島の奪還を宣言している。
イルカで敵のダイバーを撃退
ノボオゼルノエへの軍用イルカの配備は、「この地域で脅威となっているウクライナの特殊部隊に対する防衛」を目的としていると見られるとネイバルニュースは伝えている。また、クリミア半島西部にイルカの囲いが現れたのは今年8月頃だという。
ウクライナ軍は今夏、クリミアでの戦闘を強化し、エフパトリア近くに配備されているロシアの高度防空システムを攻撃した。同時に水陸両用攻撃を実施した後は、セバストポリを長距離ミサイルで攻撃し、ロシアの揚陸艦と潜水艦それぞれ1隻が被害を受けた。
英国防省は6月下旬、ロシアがセバストポリ基地に対して、「訓練された海洋哺乳類の増加」を含む「大規模な強化」を行っていると発表した。情勢報告によれば、同基地の画像には「浮かんでいる哺乳類用の囲いがほぼ倍増」している様子が捉えられ、そこにはバンドウイルカも含まれると見られていた。
英政府によれば、ロシアは様々な任務のために多くの動物を訓練しており、クリミア半島のイルカは敵のダイバーを撃退するためのものだ。また、ロシアの北極海域では、シロイルカやアザラシも利用されているという。
●プーチン大統領が非道戦術<~サイルでインフラ大規模攻撃の懸念… 10/28
ウクライナを侵略するロシアのプーチン大統領が非道な戦術に出ようとしている。ロシア空軍は巡航ミサイルによる攻撃を控えていることから、冬場に電力インフラを大規模攻撃する懸念がある。ロシア軍はウクライナ東部で10日間に軍用車両100台以上を失うなど甚大な被害を受けたが、命令に従わない兵士を処刑しているとの指摘もある。
英国防省は27日、ロシア空軍の長距離爆撃を担う部隊が、巡航ミサイル攻撃を1カ月以上、控えているとの分析を発表した。ミサイルを備蓄し、冬場に電力インフラを狙う準備をしているとの見方を示した。イラン製の無人機を併用し、インフラ攻撃を繰り返す恐れがあるとも警告した。
ロシア軍は南部ザポリージャ原発を占拠し、冷却水を供給するダムを破壊するなどの攻撃を繰り返している。
一方、米シンクタンク、戦争研究所は26日、東部ドネツク州アブデーフカの戦闘でロシア軍が10〜20日に軍用車両100台以上を失うなど、甚大な被害を受けたとの分析を公表した。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は、アブデーフカなどで攻勢をかけるロシア軍が「命令に従わない兵士を処刑しているとの情報がある」と述べた。カービー氏は、ロシア軍が十分に訓練せず、装備のない兵士を戦地に送り込む「人海戦術」を取っていると指摘。ロシア軍の指揮官が、ウクライナ軍の砲撃から逃れようと撤退を求めた部隊に所属する全員を処刑すると脅していた情報もあると明らかにした。
カービー氏によると、10月11日以降、アブデーフカ周辺でロシア兵数千人が死傷、うち一部はロシア軍に殺害されたという。
ウクライナのゼレンスキー大統領は27日、スナク英首相と電話会談し、アブデーフカの包囲を狙って攻撃を続けるロシア軍を押し戻したと説明し「敵は少なくとも一つの旅団を失った」と強調した。
●露空軍、ミサイル攻撃抑制 「冬にインフラ狙う準備」英分析 10/28
英国防省は27日、ロシア空軍で長距離爆撃を担う部隊がウクライナに対し、空から発射する巡航ミサイル攻撃を1カ月以上、控えているとの分析を発表した。ミサイルを備蓄し、冬場に電力インフラを狙う準備をしているとの見方を示した。イラン製の無人機を併用し、インフラ攻撃を繰り返す恐れがあると警告した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は27日、スナク英首相と電話会談した。東部ドネツク州アブデーフカの包囲を狙って攻撃を続けるロシア軍を押し戻したと説明し「敵は少なくとも一つの旅団を失った」と主張した。通信アプリへの別の投稿では「今週、ロシアの損失が大幅に増えた」と戦果を強調した。
米シンクタンク、戦争研究所は27日、ウクライナ軍が南部ヘルソン州のドニエプル川東岸でわずかに前進したとの分析を発表した。
●“核兵器のない世界目指す”日本提出の国連決議案30年連続採択 10/28
核兵器のない世界を目指して世界に取り組みを呼びかける国連決議案を日本政府が提出し、賛成多数で採択されました。核兵器廃絶を目指す日本の決議の採択は30年連続です。
日本は唯一の戦争被爆国として、核兵器廃絶に向けた決議案を毎年、国連に提出していて、ことしの決議案は27日、軍縮を扱う国連総会の第1委員会で採決が行われ、賛成多数で採択されました。
決議の採択は1994年から30年連続となります。
賛成したのは核保有国のアメリカやイギリスを含め145か国で、去年より6か国増えました。
一方、ロシアや中国、北朝鮮など7か国が反対しました。
決議ではウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアを念頭に、「核兵器をめぐる無責任な主張によって世界の安全保障環境が悪化している」と懸念を示し、ロシアがアメリカとの核軍縮条約「新START」の履行停止を表明したことに遺憾の意を表しています。
また、世界全体の核弾頭の数は減少傾向にあるものの、中国が核戦力を増強しているとみられることを念頭に、「いくつかの国の行動でリスクにさらされている」と指摘し、核保有国に対して核兵器のさらなる削減や透明性の確保などを求めています。
このほか、すべての国連加盟国に対し、指導者や若者が広島や長崎を訪問し、被爆者との交流を通じて被爆の実相に理解を深めるべきだと呼びかけています。

 

●“ワグネルの戦闘員 多くが別の部隊に” ロシア 国営通信 10/29
ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアが兵士の犠牲もいとわず攻撃を続ける中、ロシアの国営通信は、民間軍事会社ワグネルに所属した戦闘員の多くが別の部隊に加わっていると伝えました。プーチン政権が、かつて反旗を翻したワグネルを統制下に置きながら兵員不足を補っている実態がうかがえます。
ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州で、ウクライナ側の拠点アウディーイウカの掌握を狙ってウクライナ軍と激しい戦闘を続けています。
アウディーイウカをめぐってイギリス国防省は28日「ロシアは最大8つの旅団をこの地域に投入したとみられるが、ことしロシア側で最も高い死傷率を記録している可能性がある」と分析しました。
その上で「政治指導部は、より多くの領土を奪うことを要求しているが、軍は効果的な作戦を生み出すことができずにいる」という見方を示しました。
こうした中、国営のロシア通信は28日、民間軍事会社ワグネルに所属した戦闘員の多くが、プーチン大統領に強い忠誠心を示すチェチェンのカディロフ氏が率いる部隊に加わっていると伝えました。
プーチン大統領は先月末、ワグネルの元幹部と会談し、ウクライナ侵攻に参加する志願兵の部隊を組織するよう指示していて、ことし6月に武装反乱を起こしたワグネルを政権の統制下に置きながら兵員不足を補っている実態がうかがえます。
また、ロシア通信は27日「ウクライナ軍の元兵士で組織された志願兵の部隊が、ロシア軍部隊として前線に送られている」とも伝え、これについてアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は「捕虜に強要した可能性が高く、戦争捕虜の扱いを定めた条約に違反する」と指摘しています。
●プーチンも「被害」に…「藁人形に五寸釘」で呪殺する「丑の刻参り」 10/29
イスラエルとハマスによる空爆の応酬を世界中が注視する中、報道頻度が少なくなった感のある、ロシアとウクライナ戦争だが、最前線では現在もなお、熾烈な激戦が続いている。
ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻を始めたのは、昨年2月。以降、1年8カ月にわたり、血で血を洗う戦闘が繰り広げられている。
その最中、千葉県松戸市内の約10カ所の神社で、御神木にプーチンの顔写真を付けた藁人形が打ち付けられる事件が発生したのは、昨年5月だった。千葉県警は「丑の刻参り」事件として、捜査を開始。6月には同市在住の男が、建造物侵入と器物損壊の疑いで逮捕された。
取調べに対し、男は「ロシアによるウクライナ侵攻への抗議が動機だった」と供述。呪殺については科学的効果が実証できないため、現行法では不能犯と扱われる。そのため「丑の刻参り」は住居侵入罪と器物損壊罪として扱われるケースがほとんどだとされる。
とはいえ、令和の時代に「丑の刻参り」など時代錯誤と思えるのだが、実は近年でも、相変わらず藁人形に釘を打ち込んで相手を呪い殺す、といった行為が多発しているというから、驚くばかりだ。
「丑の刻参り」は、午前1時から午前3時頃を指す「丑の刻」に、神社の御神木に呪い殺したい相手に見立てた藁人形を置き、五寸釘で打ちつける日本古来の呪いの儀式だ。オカルト研究家によれば、
「白衣を着用し、灯したロウソクを突き立てた鉄輪を頭にかぶった姿で連夜、この詣でを繰り返す。すると7日目の満願の日に、呪った相手が死ぬというものです。ただ、途中で行為を誰かに見られると、その効力が失せると信じられています」
その現場を見られ、目撃者を脅したり襲い掛かかったりすれば、脅迫罪や傷害罪、あるいは殺人未遂の現行犯で逮捕されることもありうるわけだが、
「実際に『丑の刻参り』に関連して、脅迫罪が適用されたケースがあります。例えば1954年には、秋田市在住の女が交際中だった男性に対し『お前を丑の刻参りで呪い殺す』という旨の脅迫を行い、逮捕されました。また、2017年、東京都江戸川区に住む男が藁人形に『クソがきどもここからとびおりてみんな死ね』と書いて歩道橋に吊るしたことでも、脅迫罪で逮捕されている。逮捕に至らないまでも、いまだ『丑の刻参り』の報告は後を絶たないと言われますから、時代は変われども、いかに呪いが信じられているかを物語っています」(前出・オカルト研究家)
罪を憎んで人を憎まず。いくら呪いの儀式とはいえ、一歩間違えば犯罪になる「丑の刻参り」には、くれぐれも注意すべし。
●匿名SNS発の「プーチン死亡説」に世界の大衆メディアが飛びつく理由 10/29
「大統領は今晩バルダイの大統領邸で死亡した」
[ロンドン発]暗号化メッセージアプリ「テレグラム」の匿名チャンネル「対外情報局(SVR)将軍」は26日「注意! 今この瞬間、ロシアで“クーデター”が進行中だ。ウラジーミル・プーチン露大統領は今晩、ロシア北西部の保養地バルダイの大統領邸で死亡した。モスクワ時間午後8時42分、医師は蘇生を中止し、死亡を告げた」と速報した。
「SVR将軍」によると、医師団はプーチン大統領の遺体が横たわる部屋でロシア連邦警護庁のドミトリー・コチュネフ長官の個人的な命令で大統領警護官に拘束された。コチュネフはシロビキ(治安・国防関係の国家主義者)の実力者、ロシア連邦安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記と連絡を取り、指示を受けている。大統領府の警備は強化されている。
「積極的な交渉が行われている。プーチンの死後、ドッペルゲンガー(影武者)を大統領にすり替える試みはクーデターだ」(SVR将軍)。
翌27日には「昨日午後、プーチンの健康状態が急激に悪化し始めた。午後8時ごろ、当直医が医師団を追加招集し、到着15分後にプーチンの蘇生処置を開始したが、その時点で危篤状態に陥っていた」と詳報した。
午後8時42分、医師は蘇生を中止し、プーチンの死亡を告げた。その後、警護官に事態を報告した。コチュネフの個人的な命令で、プーチンが死亡した集中治療室に改造された一室は封鎖された。医師団はプーチンの遺体と一緒に閉じ込められたままだった。警護当局は医師団に落ち着いて静かに待つように命じた――「SVR将軍」はそう報告している。
「SVR将軍」とは
「コチュネフはパトルシェフの指示を実行している。コチュネフの指示により大統領の影武者の警備も強化された。現在、医師団の運命も含め、問題は解決されつつある。現体制を維持し、影武者を大統領としてプーチンにすり替えるため、パトルシェフの指導の下、プーチンの側近による集団指導体制を構築する交渉はほぼ終了した」(SVR将軍)
「プーチンが生きていた時は何の問題もなく影武者を使うことができ、極端な場合、本物を登場させることができた。しかしプーチンの死後、影武者を大統領として詐称しようとする試みは国家革命だ! プーチンの遺体は大統領邸の以前は冷凍食品が保管されていた冷凍庫に安置された。医師団はいくつかの部屋に分けられ、拘束され続けている」(同)
「SVR将軍」のテレグラム・チャンネルは2020年9月に開設され、登録読者は現在40万4677人に達している。チャンネル主宰者は海外で暮らすSVRの退役将官「ビクトール・ミハイロビッチ」とされ、信頼できる政府筋を情報源にしているという触れ込みだ。これまでにもプーチンの影武者説やプーチンの末期がん説をまことしやかに流し続けてきた。
今回の「プーチン死亡」情報もクレムリンの鉄のカーテンに覆われて裏の取りようがない。
数日前から「SVR将軍」は「プーチンの体調急変」を伝えてきた。23日には「昨日モスクワ時間午後9時5分ごろ、大統領邸の警護官がプーチンの寝室から物音と倒れる音を聞いた。警護官が寝室に入ると、プーチンは目を丸くして床の上で痙攣していた」と投稿している。
「プーチンの容体が悪化しているのは腫瘍やその他多くの病気が原因」
「SVR将軍」の23日の報告によると、倒れているプーチンの元に当直医がすぐに呼ばれた。プーチンは心停止状態と診断され、蘇生処置が行われた。救命措置は間に合い、心臓は動き出し、プーチンは意識を取り戻した。蘇生に必要な最先端の医療機器を備えた大統領邸内の集中治療室に移された。プーチンの容体は安定し、常に医師の監視下に置かれている――。
「プーチンの健康状態が悪化しているのは腫瘍やその他多くの病気が原因だ。主治医はプーチンの容体は非常に悪く、秋の終わりまで生きられそうにないと警告している。今回の心停止は大統領の側近たちを深く憂慮させた。最近、公式の会議や行事はすべて影武者が行っている。側近たちは大統領が数日中に死亡した場合に備えて協議することで合意した」(SVR将軍)
続けて24日には「パトルシェフが率いる権力ブロックの指導者グループは、円卓会議のようなものを組織し、すべての決定はコンセンサスによって行われると約束している。しかし権力体制のバランスを取る重心の役割を担ってきたのはプーチンであり、彼に代わる二重権力者は存在しない。プーチン抜きでは体制が崩壊するのは当然の帰結なのだ」と分析している。
25日には「昨日、初めて大統領の影武者がビデオリンクによる非公開の会議に招かれた。パトルシェフは影武者の存在を事実上、無視して会議を進行したが、会議の進行方法について異論は出なかった。プーチンはもはや国を運営することはできない。影武者がしばらくの間大統領を演じるが、一時的な解決策に過ぎないことは誰もが認識している」と解説した。
そして26日には、冒頭で紹介したように、ついに「プーチン死亡説」を唱えるに至った。
露大統領府報道官「影武者は笑い話」
ロシアの国営通信RIAノーボスチ(24日付)によると、ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は「プーチン大統領の健康問題についての話はデタラメだ。大統領は健康だ」と述べ、プーチンの影武者説についても「不合理で虚偽の主張だ。笑い話に過ぎない」と否定した。情報は世界中の大衆メディアに取り上げられ、瞬く間に拡散するからだ。実際、今回の「心停止」説も英国の大衆紙などがこぞって取り上げている。
しかし影武者説は大統領に就任した2000年当時から浮き沈みしている。民間軍事会社ワグネルグループの武装反乱が鎮まった直後の6月28日、プーチンは南部ダゲスタン共和国の都市デルベントをサプライズ訪問し、市民の握手や写真撮影に応じた。暗殺を警戒して信頼のおけるごく少数の側近としか会わないとされるだけに、影武者説は一段と強まった。
偽情報・検証・メディアのミスリードを担当する英BBC放送アシスタント・エディター、オルガ・ロビンソン氏は「プーチンの心停止に関する憶測はX(旧ツイッター)のあるアカウントで数百万ビューを獲得した。情報源の『SVR将軍』はロシアの政治やエリートに関する内部情報を持っていると主張する多くの匿名テレグラム・チャンネルの一つだ」という。
ロビンソン氏はXへの連続投稿で「クレムリンは秘密主義で有名なので、その空白を埋める刺激的なうわさを提供する情報源には長年事欠かない。『SVR将軍』は情報機関の現役メンバーや元メンバーによって運営されていると主張しているが、誰が運営しているのかは正確には分からない」と指摘する。
ロシア専門家「『SVR将軍』は真に受けるべきでない」
ロビンソン氏によると、根拠のない主張を売り込むことで知られるモスクワ国際関係大学元教授で評論家のヴァレリー・ソロヴェイ氏やウクライナの弁護士が「SVR将軍」の正体として取り沙汰されたが、弁護士と「SVR将軍」は否定している。ロシア当局から「好ましくない組織」に指定されている独立系メディアサイト「メドゥーザ」はソロヴェイ氏についてこう報じている。
「ソロヴェイ氏の『予測』の大部分は実現していないが、例外的な数回のヒットのおかげでTV・ラジオ局は出演を依頼し続けた。次第に彼の『予測』や『内部スクープ』は空想に近いものになっていった。プーチンの健康状態に気を取られるようになり長い間、パーキンソン病など何らかの恐ろしい病気で死の淵に立たされていると主張している」(メドゥーザ)
ロビンソン氏は「ここ数年『SVR将軍』はプーチンとその側近に関する突拍子もないうわさの発信源となってきた。プーチンが階段から落ちて、お漏らしをしたという類の話だ。その投稿はいつも具体的な証拠がないにもかかわらず、刺激的な詳細にあふれている。そのため世界中のメディアで何度も引用される」と注意を呼びかけている。
『プーチンの戦争:チェチェンからウクライナまで』の著者でシンクタンク、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマーク・ガレオッティ上級アソシエイト研究員は昨年5月、プーチンがガンの手術を受けている間、パトルシェフがロシアを代行統治するとのうわさについて「発信源のテレグラム・チャンネル『SVR将軍』は真に受けるべきでない」と否定した。
読者が潜在意識の中で憂さ晴らしニュースを切望している
ロシア憲法によれば、大統領が長期にわたって職務を遂行できない場合、首相が暫定的に職務にあたる。ガレオッティ氏は「パトルシェフは誠実な仲介者でもなければ、コンセンサス重視の議長でもない。彼はタカ派の中のタカ派であり、彼にこのような権力を与えることはたとえ短期間であっても、政治的に深刻で不安定な影響を与える」と分析していた。
まず安全保障や外交政策ではほとんど影響力がないとはいえ、自分のために国を運営するテクノクラートを恐怖に陥れ、怒らせる。経済政策においてプーチンはシロビキよりテクノクラートを支持している。「パトルシェフが事実上の後継者として昇格するのを見るのはシロビキでさえ心地よくないかもしれない。彼は周りにあまり好かれていない」という。
「匿名のソーシャルメディア・チャンネルは驚くべき特権的なアクセスを主張し、荒唐無稽で人目を引く話を発信するので注意せよということだ。たとえそれがページビュー稼ぎのニュース記事になったとしても」とガレオッティ氏は釘を刺す。しかしプーチンやクレムリンの思考法は西側にとってパラノイアそのものだ。
世界は今、インフレとエネルギー危機、食料不足にさいなまれている。匿名のソーシャルメディア・チャンネルも世界中の大衆メディアも、鉄のカーテンに囲まれてクレムリンの情報が枯渇する中、読者が潜在意識の中で切望する仮想現実を憂さ晴らしニュースとして流していると言えるのかもしれない。
●まともな装備与えられず危険な前線へ、ロシアの部隊「ストームZ」… 10/29
英BBCは26日、ウクライナ侵略を続けるロシアが兵力増強のため、受刑者の軍隊への勧誘に再び力を入れていると報じた。恩赦と引き換えに、戦闘に受刑者を参加させる民間軍事会社「ワグネル」の手法をロシア政府も踏襲しているとみられる。
英BBCや露メディアなどによると、部隊は非公式に「ストームZ」と呼ばれている。ロシアのウクライナ侵攻への支持を意味する「Z」をあらわすほか、ロシア語で受刑者を意味する「Zek」の頭文字でもある。この部隊は、まともな装備を与えられないまま危険な前線に送り込まれることが多い上、軍紀違反などに対する「懲罰」として兵士が配置されるという。
米紙ワシントン・ポストは26日、昨年2月のウクライナ侵攻開始時点で約42万人いた露国内の受刑者が、最近は約26万6000人と記録的な水準にまで低下したと報じた。ワグネルは約5万人の受刑者を戦闘員に起用したとされ、その他に、約10万人の受刑者が戦闘に参加した計算になる。
プーチン大統領は昨年11月、殺人などの重罪で服役した受刑者の招集を可能にする法律を成立させている。
一方、ロシア語の独立系メディア「メドゥーザ」は24日、戦闘からの帰還兵による犯罪について報じないよう露大統領府が政府系メディアなどに指示したと報じた。「ウクライナから戻った兵士が妻と母に花束を贈った」といった内容の記事が報じられているという。
●ロシアのクラスター弾が奪った日常 今も歩けず、苦悩する被害者 10/29
戦争が終わった後も民間人に無差別に被害を及ぼす危険から非人道性が批判されるクラスター弾。ロシアはウクライナに侵攻を開始した当初から各地の戦場で使ってきた。戦争が始まってから1年半が過ぎた今も、「悪魔の兵器」がウクライナの人たちの日常を奪っている。
ウクライナ北部チェルニヒウで暮らすナターリャ・アブデンコさん(33)は昨年3月17日に、家族で市中心部に飲料水を受け取りに出かけたときに、ロシア軍によるクラスター弾の攻撃があり、被害に遭った。夫も含めてその場にいた一家全員が負傷した。アブデンコさんは今もほとんど歩けない。現実を受け入れるしかないと分かっていても、いまだに受け入れられずにつらい日々を過ごす。
ウクライナではロシアが使用したクラスター弾による民間人の被害が相次ぐが、ロシアに対抗するためにクラスター弾の使用の正当性を強調する政府の立場を支持する声が根強い。東部クラマトルスクで昨年4月にクラスター弾による攻撃から生き残ったイナ・バラノフスカさん(25)は「人道に反する兵器であってもウクライナを勝利に近づけてくれると思う」と話す。
クラスター弾の廃絶に取り組むNGOの連合体「クラスター兵器連合(CMC)」によると、世界では昨年1年間に1172人がクラスター弾で死傷した。これは2010年の統計開始以来、最多記録だという。そのうち、916人がウクライナでの死傷者で、民間人の犠牲は9割を超えた。
●積み重なるロシア兵の屍、「孤塁」アウジーイウカを守る第110旅団の死闘 10/29
10月10日、ウクライナ東部ドネツク市のすぐ北西にあるウクライナ軍の要衝アウジーイウカ周辺に対して、ロシア軍の3個旅団が攻撃を仕かけた。
激しい砲撃に続いて行われたこの攻撃は、明らかに「固定(フィクシング)作戦」だった。ロシア軍はこの攻撃を通じて、ほかの前線で戦っているウクライナ軍の旅団を引き剥がし、こちらに張り付けることを目論んだのだ。
だが、これまでロシア側の狙いどおりにはなっていない。「ウクライナ当局は、アウジーイウカへの攻勢はロシア側による固定作戦だと認識しており、この軸に過剰な兵力を投入する公算は小さい」ワシントンD.C.にある戦争研究所(ISW)は早くも11日時点でそう分析している。
現に、ウクライナ軍によるアウジーイウカへの比較的大きな増援は、確認できるものでは第47独立機械化旅団の1個もしくは2個大隊だけだ。第47旅団は最近まで、南部ザポリージャ州のメリトポリに向かう軸の反転攻勢を主導していた部隊である。
つまり、アウジーイウカにいるウクライナ軍の数個旅団は現存の兵力で、より大きな兵力のロシア軍部隊による連続攻撃に持ちこたえねばならなかった。この町の北面に配置された第110独立機械化旅団は、そうした旅団の1つだった。
2000人規模の第110旅団はウクライナ軍で最も経験豊富な部隊というわけでもなければ、最も装備の充実した部隊でもない。だが、この旅団は現時点で、ウクライナの戦争努力において最も過酷で最も重要な仕事をしていると言っても過言ではない。1000km近くにおよぶウクライナの前線からほかの旅団を引き離させずにアウジーイウカを死守することで、ウクライナ軍が南部と東部で始めて5カ月近くたつ反転攻勢を停止せずに済むようにしているからだ。
「第110機械化旅団の英雄的な戦いぶりは言葉では言い表せない」ウクライナのジャーナリスト、ユーリー・ブトゥーソウはそう記している。
塹壕に配された第110旅団の兵士たちは、対戦車ミサイルや対空ミサイルを撃ち込んだり、24時間運用しているドローン(無人機)から爆弾を落としたり、あるいは近傍の第55独立砲兵旅団から支援射撃を受けたりしながら、ブトゥーソウによると13日間でロシア軍の装甲車両を200両以上破壊し、兵士800人以上を殺害した。
「途方もない数だ。何百もの死体が農地や野原に転がっている」とブトゥーソウは書いている。
1年半にわたり交代せず防御を続けている
しかも、第110旅団はそれほど新しい装備が配備されているわけでもない。この旅団が主に使っている車両は旧ソ連やチェコ、オランダ製のもので、むしろかなり老朽化している。具体的に言えば、オランダから供与された防護の薄いYPR-765装甲兵員輸送車、旧ソ連軍から引き継いだやはり軽装のBMP-1歩兵戦闘車、チェコから剰余分を譲渡されたダナ自走榴弾砲やRM-70自走多連装ロケット砲などだ。
こうした可もなく不可もなくといった程度の車両を、第110旅団は独創的に用いてきた。3月に撮影された動画には、泥だらけの場所を第110旅団のYPRが前進しては反転し、そしてまた前進するという一見奇妙な動きをしながら、近くのロシア軍陣地に向けて重機関砲で射撃している様子が映っていた。
YPRのダンスは、敵が照準を合わせるのを難しくし、装甲の薄いこの車両を守るのに役立ったかもしれない。
とはいえ、第110旅団が持ちこたえてきたことは装備や戦術だけでは説明できない。これほど激しい戦闘では、装備や戦術以上に士気が重要になる。
「この旅団は1年半にわたって、まったく交代せずにアウジーイウカを防御してきた」とブトゥーソウは驚嘆している。「かなりの数の部隊が、あらゆる種類の兵器による攻撃にさらされているアウジーイウカから一歩も出ないで、ずっとそれぞれの陣地で生活している」
「想像するのですら難しい」とブトゥーソウは続ける。「これらの鋼鉄の男たちは、世界のほかのどんな軍隊も耐えられないであろう状況で戦っている。ロシア軍ならあっさり逃げ出しているだろう」
壕に潜み、ロシア軍が最も好みそうな攻撃ラインで待ち構える第110旅団はおそらく、ここを放棄しない限り敗北することはないだろう。「わたしたちの兵士たちは長い戦闘で疲弊している」ともブトゥーソウは伝えている。「ロシア兵たちも、ウクライナ側が自分たちを殺すのに飽きてくれることを望んでいる」
●戦争防止機能としては限界となった国連の問題点 10/29
ロシアとウクライナ、イスラエル軍とイスラム組織ハマス。現在、世界では大きな衝突が起きているが、どちらも終結への糸口が見いだせていない。こういった国レベルでの争いの場合、解決に向けての場として国連安全保障理事会(以下、安保理)に期待したいところではあるが、残念ながら機能不全という声が多く聞こえる。世界をゆるがす非常事態に元陸将・小川清史氏が、国際連合の枠組みを検証する。
ウクライナの安全保障「ブタベスト覚書」について
ウクライナゼレンスキー大統領は先月、安保理に出席し、国連の枠組みを批判した。特にロシアを侵略者と名指し「侵略者の手にある拒否権こそが、国連を手詰まりへと追いやった」と述べ、安保理のあらゆる取組みや、イニシアチブを拒否する能力がロシアにあるため、ロシアのウクライナ侵攻を止めることが不可能になっていると論じた。
グテーレス国連事務総長も演説し「ロシアのウクライナ侵攻は、国連憲章と国際法に明らかに違反している」と述べ、ロシアの侵攻を批判した。さらに「ますます多極化する世界で深い亀裂を生んでいる」と、ウクライナに対する被害にとどまらず、世界を亀裂へと向かわせていると述べた。
ウクライナは、この戦いを自分たちの主権のためというだけでなく、民主主義そのもののための戦いであると主張し、国際社会の協力の必要性を訴えている。
国連に大いに期待を抱いている発言であり、日本国内でも「国連が本来の役目を果たしていない」といった発言が多々聴かれるところである。では、国連は戦争を止める機能や、新たな戦争発生を防止する機能を有するのか確認したい。
妥当な理解と判断をしないと、過剰な期待によって事態の悪化を招いてしまうこともあるので、正しい理解が必要である。
では、ロシア・ウクライナ戦争から再度確認したい。そもそもウクライナの安全保障の枠組みは、ソビエト連邦崩壊後の1994年の「ブダペスト覚書」に基づくものであった。
その署名国は、ウクライナ・ロシア・アメリカ・イギリスであり、その覚書によると「ウクライナは自国領内に残る核兵器を放棄する。それと引き換えにロシア・アメリカ・イギリスが、ウクライナの領土的一体性を尊重し、安全を保障する」との内容であった。
しかし、この枠組みはNATOのような条約に基づく共同防衛体制ではなく、署名国はウクライナに対して軍事的な協力をする義務のない覚書であった。中国やフランスも別々の書面でウクライナの安全を保障することにしたが、同じく義務の無い内容であった。
2014年のロシアによるドネツク共和国および、ルガンスク共和国への軍事侵攻が行われ、ミンスク議定書とミンスクUが調印されたものの、停戦を約束する議定書であり、新たな安全保障の枠組みではなかった。
ウクライナにとっては、ブダペスト覚書が機能しない以上、頼みとなる安全保障機構は国連だけになる。
国連の成立は第2次世界大戦の再燃を防止するため
しかし、そもそも国連はウクライナの安全を保障する機能を有していたのか。全111条からなる国連憲章は、安保理が平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持、または回復するために勧告をし、必要な措置をとることが記されている。
その措置は安保理の許可がなければ強制行動をとれない一方、敵国であった国に対しての強制行動は例外とされ、許可なく強制行動をとることができる。その敵国とは第2次世界戦争中に国連憲章のいずれかの署名国の敵国であった国のことである。
いずれかの署名国とは、1942年1月1日の連合国宣言に署名し批准した国(原加盟国)、または1945年6月26日にサンフランシスコで連合国会議に参加した国が該当する。当時は第2次世界戦争中であり、国連加盟国にとっての当時の敵国とは、日本とドイツである。
つまり、国連とは安保理が権限を有し、第2次世界戦争の再燃を防止するための枠組みである。基本的に過去に発生した第2次世界戦争の再燃防止、その役割のために創設されたものである。
その後、国連はさまざまな紛争などに対して対応してきたものの、その活躍はPKOに象徴されるように停戦後の紛争国相互の監視などであった。残念ながら現在起きている戦争や、将来起こる戦争を防止するものではないのである。
国連機構創設から80年近くが経過するが、国連憲章の趣旨によって創設された以上、その根本的役割はどうしても根強く残るのである。ゼレンスキー大統領としては、国連そのものに期待できない以上、個別に各国首脳などに対して協力要請を継続して、ロシア・ウクライナ戦争での領土奪還を目指すことが、最も確実かつ必要な行動である。
この世界には超国家政府がないために、国家が相互に紛争や国益の対立を解消する努力をしなければならない。そのためには相互理解がきわめて重要であるが、現在の安保理中心の国連で可能かと言われれば、困難であると評価せざるを得ない。 
なぜNATOの全会一致方式が有効なのか?
同じく国際機関である北大西洋条約機構(NATO)の意思決定は全会一致方式であり、全加盟国のコンセンサスを得ることが必要である。意思決定に至るまでに長期間を要する場合や、決定に至らない場合もあるものの、コンセンサスを得るために粘り強く徹底的な議論が行われるからこそ、各国の認識共有が図られる。
各加盟国の主権を尊重し、それぞれの立場に基づく主張を聞くことが国際機関としての役割とも言えよう。
一方、国連は拒否権を有する安保理常任理事国の全てが、意見の一致をみないと意思決定されないため、拒否権発動をもって議論は止まってしまうのである。常任理事国以外の加盟国は、多数決方式に参加する国家としての位置付けであり、多数決である以上、議論を尽くすよりも採決を優先しがちにならざるを得ない。
全会一致方式は、意思決定に時間がかかるものの、徹底的に議論するために、たとえ意見が一致しなくとも議論を通じて理解が進むのである。一方、多数決方式では、ある程度まで議論すれば採決によって意思決定がなされ、理解の進展には限界があろう。
安保理常任理事国から拒否権を剥奪するとの改革案では、現行の多数決方式を残したままで、意思決定は容易かつ早期にできるものの、議論は尽くされないまま国連による強制措置が行われる可能性が多くなろう。
また、常任理事国の数を増やすといった改革案が出されることもあるが、拒否権のある国と、ない国が存在する以上、現在と同じく意思決定できないという問題は残ることになろう。ちなみに、日本国内の政治的意思決定は多数決方式である。仮に全会一致方式を採用すると、周辺国との紛争対処や国内問題にタイムリーな対応ができなくなる。
地域ごとの安全保障の枠組みの必要性
結論としては、現在の国連憲章に基づく国連機構では、戦争防止機能としては限界があると言わざるを得ないだろう。安保理事会を完全に改革して、その構成国には地域ごとの代表を参加させ、国際的な問題に対しての強制措置には、全会一致方式による意思決定を行うことが望ましいだろう。
しかし、国連憲章変更のためには、まず憲章再審議の全体会議の開催を決定するため、総会構成国の3分の2の多数と安保理事会理事国の投票が必要となる。そのうえで、全体会議の3分の2の多数により勧告された憲章変更について、安保理全常任理事国を含む加盟国の3分の2が批准して効力を生ずる。はっきり言って、国連憲章は改正不可能な手続きが盛り込まれた憲章である。
結局は新たな条約に基づく、新たな国際機構を作り上げるしかないと思える。いや、それよりは国連憲章の認める地域的取り決めを発展させることが、妥当かつ近道ではないだろうか。
前述したNATOは、国連の目的および原則と一致しており、冷戦後加盟国が2倍に増加したものの、域内での紛争は発生していない。地域ごとに集団安全保障機構を作り、周辺にある脅威対象国の武力行使を抑制することができるように、全会一致方式で粘り強く機構を構築することが望ましい。 
●ロシア、ハマスと「連携」 米欧対抗でウクライナ侵攻正当化の狙いも 10/29
ロシアが、イスラム組織ハマスとイスラエルとの軍事衝突をめぐり、久々に存在感を示している。国連などでパレスチナ側を支援する姿勢を鮮明にし、イスラエル支持の米欧に対抗。背景には、国際社会から非難を浴びているウクライナ侵攻の正当化に利用する思惑も見える。
「ハマス代表団は、プーチン大統領の姿勢と、積極的なロシア外交の努力を高く評価した」
モスクワを訪問したハマス幹部のアブ・マルズーク氏らは26日、ロシア外務省のボグダノフ次官と会談後の声明でロシアの姿勢を称賛した。ロシア人ら外国人の人質解放についても協議し、ロシアとイスラエルの二重国籍を持つ8人の解放に努力する考えを伝えたという。
マルズーク氏は今年3月にも訪ロするなど、ハマスはロシアと友好関係にある。ウクライナ侵攻についても、「米国支配を終わらせ、世界を多極化する目的だ」と理解を示す 。
●ウクライナ原発近くで爆発、施設の多数の窓割れる IAEA 10/29
国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は29日までに、ウクライナ西部フメリニツキー州にある原子力発電所近くで起きた爆発の衝撃波で、同原発の施設の窓ガラスが多数割れる被害が出たと報告した。
また、現場から離れた場所に位置する放射線監視施設への送電が一時止まったとも述べた。
事務局長は声明で「多数の窓が割れたということは爆発が非常に近くで起きたことを意味する」とし、「次はそれほど幸運でないかもしれない」との危機感を表明。「原発への攻撃は何としても避けなければならない」と訴えた。
「今回の事態はウクライナでの原子力の安全管理態勢が、極度に不安定な状態に直面していることを再度示した」と強調。「この状態は悲劇的な戦争が続く限り変わらない」と続けた。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアがドローン(無人機)を使ってフメリニツキー原発を狙った可能性が高いと非難。原発から約5キロと約20キロそれぞれ離れた場所でドローン2機が撃墜されたとも報告した。
●ウクライナ提唱の和平案協議=東部アウディイウカで攻防続く 10/29
地中海の島国マルタで28日、ウクライナが提唱する和平案「平和の公式」について議論する各国政府高官による国際会議が開かれた。ウクライナのゼレンスキー大統領によれば、66カ国が参加した。ロシアのウクライナ侵攻が長期化する中、将来の和平協議に向けウクライナ側の主張への理解を広める狙いがある。
ゼレンスキー氏は28日の国民向けビデオ演説で、「昨年私が初めて平和の公式を紹介した時、世界はまだ(和平実現に向けて)さまざまなビジョンや異なるアプローチを議論していた」と述懐。「世界の多数が、共有された公正なビジョンを軸に徐々に団結しつつある」と会議の成果を強調した。日本からは秋葉剛男国家安全保障局長が出席した。
平和の公式は、ロシア軍の撤退や領土の回復など10項目で構成。会議では、このうち食料供給や核・原子力の安全の確保などを重点的に議論した。ロシアは平和の公式を「実現不可能だ」(ラブロフ外相)として拒否している。
一方、ウクライナ東部ドネツク州の激戦地アウディイウカ周辺では両軍の攻防が続いている。ウクライナ軍参謀本部は28日も「敵(ロシア軍)は突撃を試みたが、失敗した」と主張した。
英国防省は「ロシア軍は恐らく最大8個旅団をこの地域に投入している」と分析。しかし、死傷者が非常に多く、ロシア国内でも軍の戦術を批判する声が上がっていると指摘した。その上で、政治指導者の要求に軍が応えられていないとし、「ロシアの軍事的・政治的課題は戦争を通じて何も変わっていない」と述べた。
●G7も気を遣うグローバルサウスの新盟主インド、存在感高まるも「弱点」が 10/29
インドの首都ニューデリーで9月9、10日の両日開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は、モディ首相にとって、存在感を世界に示す格好の舞台となった。
「G20の議長国として、全世界が団結し、信頼の欠如を、信頼と信用に変えるように呼び掛ける。今こそ私たち全員が共に歩む時だ」
インドの“顔色”うかがうG7諸国
サミットの冒頭の演説で、モディ首相は力強く各国に結束を呼びかけると、午後には首脳宣言を採択したことを表明した。ロシアのウクライナ侵攻後、各国の対立や意見の相違が大きく、首脳宣言が出せない事態も予想されていた。ところがインドは議論も始まっていないような段階で各国に提案し、判断を迫る“奇策”で、初日採択という異例の展開を生んだ。
「インドがやろうとすることに、G7(主要7カ国)が相当譲歩し、顔色をうかがったというのは特筆すべきことだ。各国とも『インドを敵に回したくない』『手放したくない』と、やや遠回りで消極的な関与の仕方をした結果、採択された文書は重みに欠けるものになった」。国際情勢に詳しい東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授(国際政治経済学)が解説する。
グローバルサウス主導
ロシアのウクライナ侵攻以降、世界は対立・分断を深めている。そうした中、経済成長の潜在力が大きく、各分野ごとにパートナーを代える外交を展開するインドに秋波を送ってきたG7各国は、ウクライナに関する文言もなく、形式だけを整えたような内容の宣言に同意するしかなかった。
このG20会合では議長国インドが主導する形で、アフリカ連合(AU)が正式にメンバー入りすることも決まった。存在感を高める「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国をインドが主導して取り込んだことで、その代表という立ち位置を固めた形だ。
存在感を高めるインド。国連経済社会局の推計では、今年4月末までに人口が14億2577万人に達し、中国を追い越して人口世界一になったとみられる。若年人口が多く、成長の余地も大きい。
米巨大ITのトップを次々輩出
最近、インドの隆盛を感じさせる存在となっているのがグローバル企業のCEO(最高経営責任者)の地位に次々と就くインド出身者だ。マイクロソフト、IBM、スターバックスコーヒー、グーグルなどのトップがインド出身者となり、話題を呼んだ。
果たして、インドはこのまま大国、グローバルリーダーへの道を歩むのか。鈴木氏は「インドは社会資本やインフラに関しても未整備で、自国で全部まかなえるような国ではない。グローバルな大国としての条件に、まだ達していないだろう」と指摘する。
最大の問題点は製造業
その一番の問題点は、製造業の弱さだ。製造業振興策「メーク・イン・インディア」の旗印の下、補助金を活用した産業育成策を進めているが、主要な製品はなお輸入に頼っているのが実情だ。
背景には「人口ボーナス」を生かせていない社会構造がある。みずほリサーチ&テクノロジーズの対木さおり主席エコノミストは「人的資本の蓄積の遅れは深刻で、特に女性の労働参加率の低さが経済成長を妨げている」と語る。
飛びぬける女性の識字率の低さ
特に農村部では、家庭の労働力として扱われ、学校に通っていない少女も少なくない。女性の識字率は6割台(21年)にとどまり、アジア諸国でも飛び抜けて低い水準にある。対木氏は「政府も若年層向けの支援策などを実施しているが、教育の問題は補助金ですぐに解決できるような問題ではない。女性がオフィスで働くということ自体が根付いておらず、改善には時間がかかる」と指摘する。
優秀な人材は海外へ
一方で、IT分野など優秀な人材は活路を求め、海外に出ていく。世界的企業のCEO増加は、インド社会の問題点の裏返しでもある。このほかにも貧弱なインフラ、行政の汚職、連邦政府と州の複雑な関係など、インドの成長を阻む存在は次々に挙げられる。
拡大する存在感に見合うように、足場をどう固めるのか。インドが解決すべき課題は多い。

 

●プーチンは習近平を「世界のリーダー」と絶賛したが…中国にも見放される 10/30
格の違いが鮮明になった「一帯一路」フォーラム
10月17〜18日、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の国際協力フォーラムに出席したロシアのプーチン大統領は、習近平国家主席を「世界的指導者」と持ち上げ、「一帯一路構想はロシアの考えと合致し、大きな成果を収めた」と絶賛した。
ロシアの国営メディアは、プーチン大統領が今回の訪中で世界的な威信と尊敬を集めたと伝え、「西側に対する象徴的な勝利」と描いている。
写真=EPA/SERGEY GUNEEV/SPUTNIK/KREMLIN POOL/時事通信フォト
2023年10月18日、中国・北京の人民大会堂で、第3回「一帯一路」国際協力フォーラムの一環として行われた会談の前に握手するロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席。 - 写真=EPA/SERGEY GUNEEV/SPUTNIK/KREMLIN POOL/時事通信フォト
だが、「プーチンは手ぶらで帰った」(独立系紙モスクワ・タイムズ)とされるように、中国側はウクライナ侵攻で孤立するロシアへの深入りを避け、冷淡な対応がみられた。中露の格の違いも鮮明になり、ロシアの外交的後退を示した。
中国による「植民地貿易」を批判
9月の統一地方選で勝利したソビャーニン・モスクワ市長が9月28日、「モスクワ経済フォーラム」で行った中国批判演説が話題を呼んでいる。
大統領に近いソビャーニン市長はこの中で、「西側諸国の制裁により、東側に目を向けたロシア経済は新たな困難に直面した。東側は西側よりさらに厳しいことを認識しなければいけない」と述べ、中国の名指しは避けながら、中露経済協力の落とし穴に警告を発した。
市長は「東側は機械製造でも、航空機製造でも、エレクトロニクスの分野でも技術を提供しようとせず、優遇措置を自国企業に提供し、自国メーカーにダンピングを与えている」と述べ、「経済戦争という深刻な事態が起きている」と指摘した。
さらに、中国を念頭に、ロシアから資源のみを大幅な安値で購入し、完成品の購入を押し付けていると批判。ロシアへの技術移転や低利融資をほとんどしないと批判した。中露貿易の実態は、中国が資源を購入して製品を売る一種の「植民地貿易」であることを告発したものだ。
習主席を「世界のリーダー」と大絶賛
不均衡な中露経済関係への懸念や不満は、ロシアの経済官僚やビジネスマンの一部に出ているが、プーチン大統領は今回の訪中で、対中一辺倒路線を推進した。
訪問直前、中国中央テレビとのインタビューで、習主席を「間違いなく世界のリーダーだ。細部に気を配り、冷静で、ビジネスマインドがあり、信頼できるパートナーだ」とべた褒めだった。
中露経済協力については、両国貿易が今年、目標の2000億ドルを突破し、さらに拡大していくと予測。ソビャーニン市長の懸念についても、「製品貿易における不均衡について、中国の友人たちがわれわれの意向を無視することはなかった」と否定し、習主席のイニシアチブに今後も協力していくと誓った。
「一帯一路」は、中国の経済減速や途上国の「債務の罠」で難航しているが、大統領はフォーラムの演説で、「真に重要でグローバルな未来志向の構想だ」と絶賛。首脳会談では、「共通の外的な脅威が中露関係を強化させる」と述べ、対米連携を訴えた。
訪中前、ロシア政府は福島第1原発処理水の海洋放出を受け、日本産水産物の輸入制限を発表し、中国に同調していた。
一方、中国は冷淡な態度が目立つ
だが、歯の浮くような中国賛美にもかかわらず、訪中の成果はあまりなかった。
大統領には多数の経済閣僚や石油・ガス企業トップらが同行したが、中国側はロシアが強く求める2本目のガス・パイプライン建設構想に同意しなかった。ロシアは欧州向けのガス輸出が激減したため、北極圏のヤマル半島からモンゴル経由の第2のパイプライン建設を中国に持ちかけており、ロシアメディアは合意の可能性を報じたが、中国は応じなかった。
エネルギー調達先の多角化を進める中国は、中央アジアやアフリカからのガス輸入計画を進めており、ロシアへの過度の依存を避けたようだ。国際価格より大幅に安い石油・ガス輸出も維持される。
共同声明など首脳間の文書は今回、発表されなかった。ロシアメディアはパレスチナ情勢で共同文書が発表されると伝えていたが、誤報となった。
プーチンの期待とは裏腹に中国はしたたかだった
ウクライナ戦争で兵器不足に陥ったロシアは中国の武器援助を切望しているが、訪問団にショイグ国防相ら軍関係者は入っておらず、軍事問題は議題に上らなかったようだ。中国が最初から、軍事協力問題は討議しないと伝えていた可能性がある。
両国の発表をみる限り、習主席が反米連携に同調した形跡もない。
首脳会談は3時間に及んだが、会談内容は公表されず、共同記者会見もなかった。プーチン大統領は単独の会見で、会談内容に関する質問に対し、「完全な機密情報の性質を持つ話もした。生産的で有益だった」とかわした。
ウクライナ戦争のやりとりも不明だ。中国は今年2月、12項目の和平案を発表したが、ロシアは「核兵器の移転」や「核の恫喝」「穀物の安定輸出」などの項目に公然と違反しており、平行線だったとみられる。
モスクワ・タイムズ紙は、「ロシア代表団は、期待していた大型のエネルギーや農業の取引なしに帰国した」とし、具体的な成果に結びつかなかったとする代表団筋の発言を伝えた。中国側はしたたかで、ロシアの期待は空回りに終わったようだ。
クレムリン当局者は「テレビ局に指示している」
それでも、ロシアの国営メディアは、プーチン大統領が北京で大歓迎を受けたと大々的に報じ、「習主席はプーチン大統領を最初に歓迎宴に招待し、到着時にはレッドカーペットが敷かれ、一挙手一投足に注目が集まった」などと強調。ラブロフ外相は「会場でのプーチン大統領の演説は熱狂的に受け止められた」と記者団に語った。
クレムリン当局者は同紙に対し、「プーチン大統領が世界的リーダーであることを国民に想起させる観点で報道するよう、テレビ局に指示している」と検閲を明かした。
大統領が旧ソ連圏以外を外遊するのは、3月に国際刑事裁判所(ICC)から、ウクライナの子供連れ去りで逮捕状を請求されて以来初めて。久々の外遊でスポットライトを浴び、来年3月の大統領選を前に、外交活動に支障がないことを国民に示す狙いがある。
しかし、実際にはプーチン大統領の演説中、空席が目立った。前回のフォーラムでは、参加国代表が一堂に会する円卓会議が開かれたが、今回はプーチン大統領との同席を嫌がる国が多く、開催されなかったという。
中国は反米パートナーである同大統領を厚遇しながら、侵略戦争を進めるロシアと距離を置き、肩入れを避けようとしたようだ。
不平等貿易でも“兄貴分”に従うしかない
経済減速や失業問題など内憂が高まる習主席は11月中旬、サンフランシスコで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合に出席する見通しで、米中、日中首脳会談も予想される。年末には、中国・EU(欧州連合)首脳会議が開かれる予定だ。
米国から入国禁止措置を受けるプーチン大統領はAPECの欠席を早々と決めたが、習主席は今後、西側諸国との一定の関係改善を重視しそうだ。
一方、孤立するロシアには「向中一辺倒路線」以外に選択肢はない。中国から冷淡な対応を受けても、中国との全面協力を進めざるを得ない。経済分野は不平等かつ不利な「植民地貿易」であっても、兄貴分の中国に従わざるを得ないのだ。
中露関係は、「踏まれても 付いていきます 下駄の雪」の構図だろう。
●ロシアとウクライナ、戦争終結に向け交渉すべき=ベラルーシ大統領 10/30
ロシアと同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領は週末、ウクライナとロシアの戦争について、前線がこう着状態に陥っており、両国はいったん腰を据えて戦争終結に向けた交渉を行う必要があると述べた。 
国営ベルタ通信のウェブサイトに掲載された質疑応答形式の動画での発言。
ルカシェンコ氏は「両国がいずれも十分な問題を抱えており、全般的に状況はかなりこう着している」と指摘。「両陣営が真っ向から対立して死闘を繰り広げ、動きが止まっている。人々は死に続けている」と述べた。
ウクライナがロシアに自国領土から撤退を求めていることについて、「誰も死なないように」交渉の場で解決すべきだと主張。「以前言及したように、前提条件は必要ない。重要なのは『停止』の命令が下されることだ」と述べた。
●G7貿易相会合“不必要な制限撤廃を” 中国・ロシアの輸入制限 10/30
大阪市と堺市で行われていたG7(主要7カ国)貿易相会合は、中国とロシアが行っている日本産水産物の輸入制限の撤廃を求める共同声明を発表し、閉幕した。
西村経産相「(輸入規制は)科学的根拠に基づかない、全く受け入れない日本の考え方を明確に伝え、G7各国から幅広く支持を得た」
声明では、不当な貿易制限などで他国に圧力をかける経済的威圧の拡大への「憂慮」を示し、協力して対抗していく方針を示した。
そのうえで、「G7メンバーは、新たに導入された日本の食品への輸入規制を含め、不必要に貿易を制限するいかなる措置も直ちに撤廃されることを強く求める」と明記し、中国とロシアによる日本産水産物の輸入制限の撤廃を求めた。
●ロシア軍がウクライナのレオパルト2をさらに2両撃破か、1週間で計5両 10/30
ロシア軍がウクライナ軍のレオパルト2戦車をさらに2両撃破したようだ。そうだとすれば、ロシアがウクライナに仕かけた戦争の約965kmにおよぶ前線の1つの区域で、わずか1週間ほどでウクライナ軍は4両目と5両目のレオパルト2を失ったことになる。
最近のレオパルト2の損失は、すべてウクライナ南部ザポリージャ州で発生した。ウクライナ軍が南部で反攻を開始して4カ月が経つ。同州では疲弊した第47機械化旅団に代わって第33機械化旅団が最近、反攻を主導している。第33旅団は、欧州の同盟国から今春、第1弾として供与された40両のレオパルト2A4を唯一運用している。
「この方面での敵の損失は兵士85人、レオパルト2両を含む戦車3両、装甲戦闘車両4両、軍用車両2両にのぼる」とロシア政府は10月26日、国営タス通信に語った。
ロシア国防省はウクライナ側の損失についてよく嘘をつくため、疑ってかかる必要がある。だが、レオパルト2への最近の攻撃の少なくとも1つを撮影したとみられる映像があることにも注意したい。
レオパルト2の損失の急増は予想外ではない。第33旅団がザポリージャ州のベルボベからメリトポリにかけての攻勢軸でロシア軍の連隊と日々接近戦を展開するにつれ、同旅団のレオパルト2大隊(通常、少なくとも30両の戦車を運用する)は地雷や砲撃、そして最も致命的な爆発物を搭載したFPV(1人称視点)ドローンの攻撃をますます受けている。
最近発生した5両のレオパルト2A4の損失のほとんどは、ドローン攻撃によるものだったようだ。ロシア軍のドローン作戦の急増は、第33旅団の損失拡大のもう1つの大きな要因である可能性がある。ザポリージャ上空ではFPVドローンがますます増えている。
米シンクタンである戦略国際問題研究所の欧州・ロシア・ユーラシア部門で非常勤上級研究員を務めるサミュエル・ベンデットは、約450gの擲弾を搭載する重量900gのFPVドローンはそれほど強力な対戦車兵器ではないと説明する。
「すべてのFPVの命中が実際の損失につながるわけではなく、FPVが他の兵器より常に優れているとは限らない」とベンデットはいう。「戦車のように大きく、しっかりと装甲が施された標的を破壊するには、複数のFPVドローンによる攻撃が必要となることもある一方で、強力な対戦車ミサイルなら一発で仕留めることができる」
だが、FPVドローンは往々にして群れをなして攻撃する。最初の攻撃は戦車にダメージを与え、おそらく動けなくする。続く攻撃で、徐々に戦車を破壊していく。
保有するドローンが多ければ多いほど、車両1台に対してより多くのドローンを投入できることはいうまでもない。ロシアはこの1年、小型ドローンの国内生産を大幅に拡大し、同時に熟練したドローン操縦士の部隊を養成した。
モノと人材がそろえば、軍がFPVドローン部隊を拡大するのは簡単だ。「FPVは1機あたり約400〜500ドル(約6万〜7万5000円)と安価なためどこにでもあり、ウクライナ、ロシアともに月に何千機ものFPVを投入している」とベンデットはいう。「つまり、戦場がドローンで溢れている状態を我々は目の当たりにしている」
ザポリージャ上空で今起きていることは、ロシアがFPVドローンの配備に本腰を入れたため、避けられないことだった。逃れられないロシアのドローンの存在により、ウクライナ軍の戦車の乗員にとって特に昼間に身を隠さず野原や道路を移動するのは非常に危険な行為だ。それは、第33旅団の戦車の乗員がもちろん理解している残酷な現実だ。
はっきりさせておくと、ウクライナ軍は西側製の戦車を使い果たしつつあるわけではない。最近、戦車の損失が急増したが、ウクライナ軍は西側が供与した戦車の維持に全体的に成功している。これまでにウクライナはドイツ製のレオパルト2A4(40両)、レオパルト2A6(21両)、レオパルト1A5(20〜30両余り)、スウェーデン製のStrv 122(10両)、英国製のチャレンジャー2(14両)、米国製のM1A1エイブラムス(31両)を受け取った。追加のレオパルト1と2も届く予定だ。
反攻開始からの4カ月の激戦で、ウクライナ軍はレオパルト2A4を7両、2A6を3両、チャレンジャー2を1両失った。ウクライナの同盟国が供与した150両ほどの戦車のうちの11両だ。
一方で損傷した戦車はそのままになることはない。戦車コンサルタントのニコラス・ドラモンドは「失われた戦車もあるが、回復率はすばらしい。損傷した戦車を迅速に修理し、再び使用できるようにしている」と指摘している。
だがウクライナ側の損失率は間違いなく大幅に悪化している。今後ウクライナが優れた戦車を維持するためには、小型ドローンから戦車を守るための対策を講じる必要がある。
それには3つの手法が考えられる。1つはドイツ製の優れたゲパルト自走対空砲など、より機動性の高い対空砲を配備することだ。それから、ドローンの制御信号を妨害できるジャミング装置を増やすこと、そして敵のドローン部隊が脅威となる小型ドローンを飛ばす前にその部隊を標的にすることだ。
「双方ともFPVドローンの増大し続ける脅威にできるだけ早く適応しようとしている」とベンデットはいう。
だがドローン操縦士らも適応している。戦車を狙うFPVドローンの第一世代は、重量がわずか1kg前後で、その半分の重さのものを搭載できるというモデルが主流だった。
いまドローンは大型化し、最大約4.5kgを搭載するようになっている。4.5kgの爆薬は、1kgの爆薬よりはるかに大きなダメージを与えることができる。
●ウクライナ・反転攻勢とコサック自立の地 10/30
冬が近づく中、ウクライナ軍は南部ザポリージャ方面で反転攻勢を続けています。この地域はウクライナの自立の歴史と深く結びついています。石川専門解説委員に聞きます。
Q ザポリージャの重要性は?
A ウクライナ南部ドニプロ川流域から黒海に至る州でクリミア半島につながる要衝で、ウクライナ反転攻勢にとって最重要な目標です。ウクライナ側が徐々に前進しつつありますが、ロシアの防御も非常に頑強です。
Q そこがウクライナの歴史にとっての意味とは?
A ウクライナの形成に重要な役割を果たした自立武装農民集団コサックと深く結びついています。ザポリージャのドニプロ川の流域には、16世紀から18世紀にかけてザポリージャ・コサックといわれる一大拠点がおかれ、北西からのポーランド、東からのロシア帝国、南からのオスマントルコという列強がしのぎを削る中、コサックの自治と自由を守り、今のウクライナの源流の一つとなりました。ウクライナ国歌「ウクライナは死なず」の中にも、「われらが自由のために魂と身をささげ、われらがコサックの氏族であることを示そう」とうたわれています。
Q 自由ということが重要なのですか?
A その通りです。ウクライナにとって自由は特別な意味を持っています。自由が失われたという喪失の歴史でもあるからです。ザポリージャのコサックは、18世紀後半にかけて、ロシア帝国の拡大によって飲み込まれ、自治と自由を喪失しました。この喪失したコサックの自由を再び回復しようという思いが19世紀以降の独立を求めるウクライナの民族運動を支えてきました。その歴史が今の戦いとも重なっています。
去年2月プーチン大統領がウクライナへの軍事侵攻を始めてから、
ロシア軍と戦うウクライナ人の間に愛唱されている歌に愛国歌「草原の赤いカリーナ」があります。20世紀初頭に生まれ、失われたザポリージャ・コサックの自由を復活させウクライナの独立を希求する歌です。
ザポリージャでの反転攻勢は自由の回復という歴史における意味も持っているのです。
●東部でロシア軍機撃墜と表明 製油所もドローン攻撃 10/30
ロシアの侵攻を受けるウクライナの国境警備隊は29日、激戦が続く東部ドネツク州アブデーフカ周辺で、ロシア軍機を対空ミサイルで撃墜したと表明した。スホイ25攻撃機の可能性があるという。
ウクライナ保安局当局者は29日、地元メディアに、ロシア南部クラスノダール地方の製油所を2機のドローンで攻撃したと明らかにした。製油所では昨年700万トン以上の航空燃料が製造され、軍用機に使用されていたとしている。ロシア国防省は無人機を迎撃したと発表した。
またニューヨーク・タイムズは28日、ウクライナが米国と、現有のソ連製兵器と欧米供与兵器を組み合わせた防空システムの構築を進めていると報じた。 
●中ロ、関係強化をアピール−北京の軍事フォーラムで米国を強くけん制 10/30
中国とロシアは北京で30日開催された国際軍事フォーラムで両国間の強い結び付きをアピールし、米中首脳会談が11月に行われるとみられる中にあっても米国を強くけん制した。
中国共産党中央軍事委員会の張又俠副主席は安全保障フォーラム「香山論壇」で講演し、「特定の国々が世界中で問題を引き起こし続けている」と指摘。「意図的に混乱を生み出し、地域の問題と他国の内政に干渉し、カラー革命を扇動する」と述べ、米国を暗に批判した。
ファーラムに出席したロシアのショイグ国防相は、「覇権維持のため米国は絶えず動いているが、それは間もなく消え去る」と語った。ロシアは2022年2月に開始したウクライナ侵攻を巡り米国と欧州連合(EU)から制裁を受けている。
両者の発言は、ウクライナへの武力侵攻に踏み切ったロシアと中国の間に形成された緊密なパートナーシップをあらためて示している。
中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は侵攻開始の直前に「限界のない」友好関係を宣言。中国は以来、西側諸国の制裁に直面しているロシアを外交・経済的に支援。対ロシア輸出を増やす一方、ロシア産化石燃料の安定供給を確保した。
●ウクライナ紛争、西側がアジア太平洋に拡大模索=ロシア国防相 10/30
ロシアのショイグ国防相は中国・北京で開催中の安全保障会議「香山フォーラム」で、西側はウクライナ紛争をアジア太平洋地域に拡大しようとしていると述べた。ロシア国営メディアが30日に報じた。
タス通信によると、同氏は北大西洋条約機構(NATO)がアジア太平洋での軍備増強を「仰々しい対話願望」で覆い隠していると発言。NATO諸国が同地域で軍拡競争を進め、自らの軍事的プレゼンスや軍事演習の頻度と規模を拡大していると主張した。
また、米軍がロシアと中国を抑止するため、ミサイル発射に関する日韓との情報交換を利用するだろうと述べた。
一方、ロシアによる包括的核実験禁止条約(CTBT)批准撤回の動きは合意の終わりを意味するものではないとし、ロシアは核兵器使用のハードルを下げないと強調した。

 

●ロシア南部 イスラエルに抗議の群集 プーチン大統領は対応協議 10/31
ロシア南部のイスラム教徒が多数を占めるダゲスタン共和国で、イスラエルに抗議する群衆が空港に乱入する事態となったことについて、ロシアのプーチン大統領は「ウクライナの領土から欧米の情報機関が暴動を扇動した」などと一方的に主張しました。
プーチン大統領は政権幹部と対応を協議し、混乱が広がることへの警戒を強めているとみられます。
イスラエル軍がパレスチナのガザ地区で地上での軍事行動を拡大する中、29日夜、ロシア南部のイスラム教徒が多数を占めるダゲスタン共和国の中心都市マハチカラの空港では、イスラエルからの旅客機が到着するという話を聞きつけた数千人の群衆が、空港に殺到しました。
一部は滑走路にも乱入して到着した旅客機を取り囲み、空港は一時閉鎖される事態になり、地元当局によりますと、この騒動で警察官9人を含むあわせて20人がけがをしたということです。
また、空港に侵入するなどした83人が拘束されたほか、ロシアで重大事件を扱う連邦捜査委員会は30日、捜査を開始したと発表しました。
さらにプーチン大統領は30日夜、モスクワ郊外の公邸で政権幹部を集めた会合を開きました。
この中で、ダゲスタン共和国で起きた騒動について、プーチン大統領は「ロシアを不安定化させ、分裂させようとする試みがある。ウクライナの領土から欧米の情報機関が暴動を扇動した」と一方的に主張した上で、今後の対応を協議し、混乱が広がることへの警戒を強めているとみられます。
●空港での反ユダヤ主義の暴動、「外部の干渉」によるもの ロシア政府 10/31
ロシア南部ダゲスタン共和国の空港で起きた反ユダヤ主義の暴動をめぐり、ロシア大統領府のペスコフ報道官は30日、暴動が「外部の干渉」によるものと非難した。
ペスコフ氏は記者団に対し、マハチカラ空港周辺で起きた出来事が外部からの情報など外部からの干渉によるものであることは明らかだとの認識を示した。
ダゲスタン共和国はイスラム教徒が多数を占める。29日にはイスラエルからの航空便が到着した空港が集団に襲われ、当局は空港の閉鎖や航空便の行き先変更を余儀なくされていた。
地元保健省のSNSへの投稿によれば、今回の暴動によって、警官と民間人を合わせて少なくとも20人が負傷した。
SNSに掲載された複数の動画には、空港内や飛行場に侵入した群集が映っている。一部はパレスチナの旗を振ったり、国際ターミナルの扉を突破したりしていた。
ペスコフ氏によれば、ロシアのプーチン大統領はダゲスタン共和国の治安当局などから今回の事案に関する情報を幅広く受け取っており、暴動に対処するための会議を30日夜に予定しているという。
●ガザ危機、西側に責任 米は世界的混乱が必要=プーチン氏 10/31
ロシアのプーチン大統領は30日、安全保障会議当局者らとの会議で、中東危機の責任は西側にあり、米国は世界的な混乱を必要としていると主張した。
プーチン大統領とはテレビ放映された会議で「米国の支配的なエリート」とその「衛星国」がイスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザでの殺害や、ウクライナのほか、アフガニスタン、イラク、シリア情勢の背後にいるという認識を表明。「米国は中東の絶え間ない混乱を必要としているため、ガザ地区での即時停戦を主張し、危機の解決に真の貢献をしようとする国々の信用を失墜させることに全力を尽くしている」と述べた。
その上で、中東危機の原因になっている米国の影の勢力と、ロシアはウクライナの戦場で戦っているとし、「パレスチナはこの悲劇の背後にいる者と戦うことによってのみ救われる。ロシアは、われわれ自身のほか、真の自由を求める人々のために、『特別軍事作戦』を通して彼らと戦っている」と語った。
プーチン氏はこのほか、ロシア南部ダゲスタン共和国の首都マハチカラで29日、数百人の反イスラエルのデモ隊が空港の滑走路に侵入し、イスラエルから到着した飛行機を襲撃しようとした事件について、西側諸国の情報機関やウクライナが手助けしていると非難。マハチカラで起きたことは、西側情報機関のエージェントによって触発されたと述べた。ただ、証拠は示さなかった。
●中国、北朝鮮、イラン… ロシアの外交活発化 新興・途上国にも秋波 10/31
ロシアがウクライナで続ける「特別軍事作戦」の長期化を背景に、外交を活発化させている。中国など友好国との関係強化に加え「グローバルサウス」と総称される新興・途上国の取り込みを図るのが狙いだ。ただ、プーチン政権が影響圏とみなしてきた旧ソ連諸国の一部では「ロシア離れ」の動きも起きている。
「中露関係は模範的で、他の国にとっても魅力的だ。欧米側に引き入れられたくないと考える国々の輪が広がっている」。ショイグ露国防相は10月30日、北京での安全保障関連の国際会議に出席し、中露の結束を強調しつつ欧米をけん制した。プーチン大統領も同18日に北京での別の国際会議で中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」を絶賛し、習近平国家主席との首脳会談で結束を誇示した。
ウクライナ危機を巡って、中国は「(戦争の)原因は北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大にある」と明確にロシア寄りの立場を取り、貿易拡大でロシア経済を支える。そのため、ロシア側では以前は指摘された隣の大国・中国への警戒感は一掃されたかのようだ。むしろ、対中友好関係を強調することで、新興・途上国への影響力拡大につなげたいという思惑さえちらつかせている。
ソ連時代から関係が深い北朝鮮との再接近も急ピッチで進む。9月の首脳会談や10月の外相訪問などを通じ、武器供与での合意があったとの観測が浮上。米政府は、北朝鮮が9〜10月にロシアへコンテナ1000個超分の兵器や軍需品を供与したと指摘している。
反米で共闘するイランに対してもテコ入れが進む。ショイグ氏が9月にイランを訪問。リャプコフ外務次官は10月下旬、両国の軍事技術協力について「互恵的に発展させていく」と報道陣に強調した。
目指すは中露中心の「多極化」
こうした動きを見せるプーチン政権が目指すのは、欧米中心の国際秩序から、中露などが強い発言力を持つ「多極化」した世界への転換だ。アジア、アフリカ、中南米などの新興・途上国の多くは、自国の国益を最重視する観点からウクライナ問題で欧米とは歩調を合わせておらず、ロシアは関係強化が可能とみる。
プーチン政権が新興5カ国(BRICS)や上海協力機構(SCO)といった多国間枠組みを重視するのはそのためだ。7月にはロシア・アフリカ首脳会議を開くなど、幅広く外交攻勢をかけている。プーチン氏は北京での会議に際しても、タイやベトナムの首脳らと会談して秋波を送った。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、露連邦極東大のアルチョム・ルキン教授は「ロシアは依然として豊富な資源を持つ大国だ。グローバルサウスの国々はウクライナ問題よりも対露ビジネスに関心がある」と指摘している。
旧ソ連圏には引き締めやつなぎ留め
一方で、ロシアの影響力低下が指摘される旧ソ連圏では引き締めを図る。特に、カザフスタンなど中央アジア諸国については、欧米側の接近の動きにロシアは警戒を強めている。米国などには、これらの国々が対露経済制裁の「抜け穴」となるのを封じる狙いがあるとみられるためだ。
現状、旧ソ連9カ国で構成する独立国家共同体(CIS)の首脳会議が10月中旬にキルギスで開かれた機会に、プーチン氏は別途、中央アジア4カ国の首脳と会談して結束を確認した。
ただ、CIS加盟国の中でも、アルメニアは首脳会議を欠席するなどロシア離れを加速させている。9月にアゼルバイジャンが係争地ナゴルノカラバフで軍事行動を起こしてアルメニア系の地元勢力を敗退させた際、同盟関係にあるロシアが動かなかったためだ。プーチン氏は平和条約締結の支援を提案するなど、つなぎ留めを図ろうとしている。
●バフムトでロシア軍攻勢 ウクライナ「厳しい情勢」 10/31
ウクライナのシルスキー陸軍司令官は、東部ドネツク州バフムトでロシア軍が部隊を大幅に増強し、防衛から転じて攻勢を強めているとの見方を示した。「依然として厳しい情勢が続いている」と訴えた。インタファクス・ウクライナ通信が30日、インタビューを伝えた。
シルスキー氏は、ロシア軍が空挺部隊を投入し、失地を取り戻そうとしていると指摘した。目標に突っ込んで自爆する「カミカゼ・ドローン」の増加にも警戒感を示した。
ウクライナ南部ヘルソン州当局者は30日、州内を走るバスにロシア軍の砲撃があり、男女7人がけがをしたと明らかにした。
●原油先物、主要中銀会合控え上昇 中東情勢の緊迫続く 10/31
アジア時間序盤の原油先物は、主要中央銀行の金融政策決定を週内に控えて上昇した。中東情勢を巡る緊張も続いている。
0001GMT(日本時間午前9時01分)時点で北海ブレント先物は0.46ドル(0.53%)高の1バレル=87.91ドル、米WTI先物は0.33ドル(0.4%)高の83.64ドル。
イスラエル軍は30日、パレスチナ自治区ガザ北部のガザ市を2方向から攻撃した。
市場は日銀、米連邦準備理事会(FRB)、イングランド銀行(英中銀)が今週発表する政策決定会合の結果も注視している。
また、中国は購買担当者景気指数(PMI)、香港と台湾は第3・四半期域内総生産(GDP)を発表する。
●ドル円の変動率上昇には要警戒 3つの火種抱え 10/31
これまで150円ちょうどで上値を抑えられていたドル円は、10月26日にその壁を上抜けた。もともとその水準にさほど意味があったわけではない。既に昨年10月に151円95銭まで上昇したうえ、今年10月3日にも150円03銭の高値を付けている。
ただ、鈴木財務大臣や神田財務官による円安けん制発言が続くなかで、「150円ちょうどを明確に上抜けたら円買い介入が入るのではないか」といった介入警戒感が高まりやすかったこと、また、こうした大台にはオプションのストライクなども含めて様々な注文(オーダー)が集まりやすく、これらが壁を作っていた可能性が高い。
ドル円の変動率、今後上昇へ
しかし、壁を上抜けた割には、ドル円の上昇に過熱感はない。もし今後さらに上昇が続き、昨年高値の151円95銭をも上抜けた場合、冷静にテクニカルポイントだけ見てみると、1990年6月25日高値の155円87銭、同年4月17日の160円20銭といった水準まで、明確な抵抗線(レジスタンス)は見当たらない。
果たして来年にかけて、ドル円は昨年の高値を超えてこれらの水準を試すのか、あるいは下落に転じるのだろうか。結論から言えば、来年に入ると米国景気は利上げの累積効果から減速するとみており、ドル円は反落すると予想している。とはいえ、どのようなトレンド線を描くかまでは、正直なところ予測し難い。ドル円が上昇、下落、いずれの方向にも大きく変動し得る不確定要素があまりにも多いためだ。現段階で言えることは、ドル円相場のボラティリティー(変動率)は今後上昇していく公算が大きいということだ。
15%超え、過去10年で4回
まずはドル円の1カ月物ボラティリティーを見てみよう。過去10年で見ると、ドル円のボラティリティーが15%を超えて大きく上昇した局面は4回あった。
1回目は、2013年3月に就任した黒田東彦日銀総裁の下で行われた異次元緩和による円安局面だ。ドル円は年初の86円台から半年ほどで約20%上昇。ボラティリティーも年初の9%台から6月には17%付近まで上昇した。
2度目は2016年だが、同年は6月のBrexitショックと、夏場には米大統領選でトランプ候補の支持率がクリントン候補の支持率を上回るなど混戦の様相を呈したことから、ドル円が年初の120円台から6月には100円を割り込む展開となるなかで、ボラティリティーは15%台まで上昇した。
3度目はコロナショックの2020年3月だ。この時はドル円が1カ月間で111円台→101円台→111円台と激しく変動し、ボラティリティーも16%台まで上昇。
直近は、2022年10月の151円台後半を付けた局面で、ボラティリティーは同じく16%台まで上昇した。
しかし、今年は年初来でドル円が約18%も上昇したにもかかわらず、足元のボラティリティーは8%程度と、10%を割り込んでいる。もちろん、もう一段ボラティリティーが低下する可能性もないとは言えないが、いくつかの波乱要因を踏まえれば、今後は上昇する可能性のほうが高いように思われる。筆者が注目している主な火種は、以下の3点だ。
米長期金利、一段の上昇リスク
第1に、米長期金利の更なる上昇リスクが挙げられよう。
10月23日、米10年債利回りは5%台に乗せた。主な要因としては、米国経済の想定外の強さが続いていることが挙げられるが、9月以降は、期待政策金利は4.5%付近で変わらなかったにもかかわらず、米長期金利は上昇した。これは、タームプレミアムが上昇したことが背景にある。タームプレミアムとは、残存期間の長い債券に対して、価格変動や流動性リスクが高まる分、投資家が求める「上乗せ金利」のことである。
米10年債のタームプレミアムは9月27日、約2年半ぶりにプラスに転じた。折しも米下院で歳出法案がまとまらなかったタイミングで、いったんはつなぎ予算で凌いだものの、仮に政府のシャットダウンとなれば、米国債格下げのリスクも高まっていた。その後マッカーシー下院議長が解任され、米下院議長が3週間も不在という前代未聞の混乱を来したなかで、タームプレミアムはさらに上昇。10月25日にジョンソン氏が下院議長に選出されたが、トランプ前大統領に近い同議長がうまく下院を取りまとめられるかは未知数だ。
今後民主党と協議し、つなぎ予算が期限を迎える11月17日までに、政府の歳出法案が議会を通過するかが喫緊の課題となる。そもそも米財政は悪化が目立っており、今月20日の財務省の公表によれば、2023年度の財政収支は、1兆6950億ドルの赤字と、前年度比で23%悪化したという。こうした環境下でタームプレミアムは0.4%と高止まりしているが、今後仮に米国債の格下げリスクが高まるような場合には、米金利はさらに上昇するだろう。
日米金利差の観点からすればドル高だが、この場合、「悪い金利上昇」となり、必ずしもドル高にならない可能性もある。むしろ米国債やドルへの信認が損なわれれば、金利は上昇しても、為替の反応としてはドルが急落するリスクもはらむ。
米大統領選、トランプ氏返り咲きシナリオ
第2に、来年の米大統領選も波乱要因の1つと言えよう。調査会社ファイブサーティーエイトによる世論調査では、10月28日時点では共和党の候補者の中で、トランプ前大統領の支持率が56.9%と、2位のデサンティス候補の14.1%を大きく引き離している。仮に同氏の返り咲きが実現するようなら、ウクライナ情勢、中東情勢に対する米国の対応方針にも大きな変化が生じる可能性があるうえ、米中摩擦が再び激化するリスクもくすぶる。
米メディアの報道によれば先月15日にトランプ氏は、「米政策金利が高すぎる」と述べ、米連邦準備理事会(FRB)を批判したという。2019年に当時大統領だった同氏がパウエル議長に対し、「金利が高すぎる」と圧力をかけたのは記憶に新しい。そもそも同氏は起訴されており今後の裁判の行方次第ではあるものの、トランプ氏が来年共和党の代表選で勝利する展開となれば、ドル円のボラティリティーも高まる公算は大きい。
中東情勢、原油急騰による米経済への衝撃
第3に、10月以降急激に悪化した中東情勢だ。今後さらに深刻化した場合には原油価格の急騰を招く可能性がある。イランのアブドラヒアン外相は10月26日、「イスラエルとハマスの戦争がより広範な紛争に発展した場合、米国も影響は避けられない」と警告。今後、この衝突がさらに広がり、イランと米国の対立を深めた場合には、イランがこれまでも度々示唆してきた「ホルムズ海峡封鎖」に踏み切るリスクが懸念される。
原油高はコストプッシュインフレにつながり、FRBの利上げ観測から長期金利の上昇につながるとの見方もある一方で、供給制約による原油価格の急騰は米国経済にとってマイナスとなり、むしろ米長期金利の低下につながるかもしれない。
これも、ドル相場にとっては不確定要素となり、ドル円のボラティリティーを高める公算が大きい。なお、これまでボラティリティーが低く推移してきたことが、低リスクでドルと円の金利差を狙った取引を可能にしたため、いわゆる「円キャリー取引」の活発化につながったことを踏まえれば、ボラティリティーの急騰は円キャリ―取引の巻き戻しを促し、どちらかといえば円高圧力がかりやすくなる可能性がある点には警戒しておきたい。
嵐の前の静けさ
米国では10月の景況感も概ね良好な結果となるなど、足元の経済は堅調さを維持している。景気悪化が著しいユーロ圏や、依然として金融緩和を維持する日本と比べれば、相対的にドルが強いのも頷けるが、景気格差や金利差だけで動くわけではないのが為替相場だ。地政学リスクをはじめとする様々な環境変化を踏まえれば、足元のボラティリティーの低下は、嵐の前の静けさかもしれない。 
●ロシア大統領、外部干渉対策強化を協議 南部の空港乱入受け 10/31
ロシアのプーチン大統領は、南部ダゲスタン共和国で29日に発生した反イスラエルデモ隊の空港乱入を受け、30日に安全保障担当当局者と外部からの干渉対策強化を協議した。ペスコフ大統領報道官が31日、明らかにした。
30日の会議には、安全保障会議のメンバーや法執行機関のトップらが出席。プーチン氏は、西側とウクライナがロシア国内の不安をあおっていると非難した。中東危機の責任は西側諸国と米国の支配エリートにあるとし、この影の勢力とウクライナの戦場で戦っていると述べた。
ペスコフ報道官は、イスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突に乗じてロシア社会を不穏にしようとする情報操作など外部からの干渉への対策が会議で話し合われたと述べた。
●プーチン大統領「空港デモ、ウクライナ・西側が背後」主張…「責任転嫁」 10/31
ロシアのプーチン大統領がダゲスタン共和国の空港で発生した反ユダヤ暴力デモについて「ウクライナと西側が扇動した」と主張した。
30日(現地時間)のAP通信によると、プーチン大統領はこの日、ダゲスタン空港の暴力デモに関連した閣僚との会談で「昨夜マハチカラで発生した事件はウクライナだけでなく西側の特殊情報要員によりSNSで扇動されたものだ」と述べた。
これに先立ち前日、ロシア西南部のダゲスタン共和国の首都マハチカラの空港では150人以上のデモ隊が空港ターミナルの出入口を壊して滑走路まで乱入した。
デモ隊はイスラエル発の飛行機が到着すると乗客を包囲し、「イスラエル人を見つけ出す」として暴徒化した。アラビア語の祈祷文「アラフ・アクバル・(神は偉大だ)」を叫んだりパレスチナ国旗を振ったりした。
プーチン大統領は「誰が混乱を煽っていて、誰が利益を得ているかはすでに明らかになった」とし「米国の支配エリートと衛星国家が世界不安定の主な受恵者」と述べた。
ロシア大統領府のペスコフ報道官もこの日、空港デモに関連し「外部の干渉の結果ということはよく知られていて、明白だ」とし、悪意を持った人たちが人口の大多数がムスリムと知られるダゲスタン地域の人たちを刺激したと主張した。
これに対し米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は「ロシアはいつも問題が生じるたびに他の人に責任をなすりつけて外部の責任にする」とし「西側は今回の件といかなる関係もない」と反論した。
また「プーチン大統領は安保当局者らと会議をしたというが、ロシア政府は静かだ」とし、プーチン大統領がデモ隊を批判しない点を指摘した。
●ロシア南部でイスラエル批判の群衆が暴徒化… 10/31
イスラム教徒が多く住むロシア南部のダゲスタン共和国で、パレスチナ自治区ガザを攻撃するイスラエルを批判する群衆が暴徒化した原因を巡り、ロシアのプーチン大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が30日、非難合戦を展開した。
プーチン氏は閣僚らとの会議で、暴動について「SNSなどを通じて、ウクライナ領内からも含め、西側の情報機関に触発された」と具体的な根拠を示さず主張した。これに対し、ゼレンスキー氏は夜のビデオ演説で、露国内で反ユダヤの動きが表面化したことを「憎悪と堕落がはびこり、統制が取れない事態になっている」と非難した。
ダゲスタン共和国の空港では29日夜、イスラエルのテルアビブから到着した旅客機の乗客を標的に、反ユダヤを訴える住民らが滑走路などになだれ込んだ。治安部隊が出動し、20人以上が負傷した。
●ロシア侵攻を「猫のケンカ」扱い…『通販生活』が謝罪 10/31
10月30日、雑誌『通販生活』を発行するカタログハウスは、ロシアによるウクライナ侵攻を猫のケンカにたとえた2023年冬号の表紙について、表現が不適切だったとして在日ウクライナ大使館に謝罪したと発表した。同号の店頭販売は取りやめる予定という。
10日、『通販生活』のX(旧Twitter)公式アカウントで告知された2023年冬号の表紙には、銃を構える兵士を映したモニターを猫が眺める構図の写真を掲載。その下には以下の文言が並んでいた。
《プーチンの侵略に断じて屈しないウクライナの人びと。がんばれ、がんばれ、がんばれ。守れ、守れ、守れ。殺せ、殺せ、殺せ。殺されろ、殺されろ、殺されろ。人間のケンカは「守れ」が「殺し合い」になってしまうのか。ボクたちのケンカはせいぜい怪我くらいで停戦するけど。見習ってください。停戦してください》
この表紙画像は拡散され、SNSで違和感を訴える声が続出する事態に。在日ウクライナ大使館は、27日、Xの公式アカウントで、こう抗議していた。
《在日ウクライナ大使館はこのような呼びかけ及び例えを、日本国民及び日本政府の立場に矛盾するものとして強く非難します。ロシアは侵略国家であり、ウクライナから直ちに撤退すべきです。主権国家に対する侵略戦争はケンカではありません。侵略者を宥めることは終戦に導きません。》
30日夜、カタログハウスは同社のホームページで見解を公表。以下のように謝罪した。
《『殺せ』『殺されろ』の主語は決して『ウクライナの人びと』ではなく、戦争の本質を表現したつもりです。どちらの側に理があるにせよ、『殺せ』は『殺されろ』の同義語になってしまうから、勃発した戦争は一日も早く終結させなくてはいけない。そんな思いを託して、このように表現しました。つたない表現で誤解を招いてしまったことをお詫びします。》
SNSでは、カタログハウスの謝罪文にも批判的な声が多くあがっている。
《つたないとか誤解とか言い訳がましい》
《謝罪文とか言ってるようだが、単なる言い訳じゃん 「戦争」を“ケンカ”扱いする時点でお花畑過ぎるゎ》
《あの醜悪な表紙を「つたない表現」とはね。炎上したから、とりあえず謝ってます感がすごいわ》
カタログハウスは《ウクライナ、そしてパレスチナ・ガザ地区において一日も早い平和が訪れることを願い、これからも非戦の特集に取り組んでまいります》としている。
●JICA、ウクライナで業務再開 10/31
上川陽子外相は31日の記者会見で、ウクライナ情勢の悪化に伴い一時閉鎖していた国際協力機構(JICA)の現地事務所について、11月1日からの業務再開を発表した。「支援を迅速かつ着実に実現していくため、現地の拠点となる事務所の再開が不可欠だ」と説明。その上で「日本らしいきめの細かい支援を実施し、復旧・復興への歩みを力強く推進する」と強調した。
●ウクライナ、黒海沿岸へ穀物輸送急増 新たな輸出回廊が機能 10/31
ウクライナの鉄道当局者は30日、黒海の新たな穀物輸出回廊が機能しており、オデーサ(オデッサ)地方の港湾に穀物を輸送する貨物車が急増していると明らかにした。
フェイスブックの投稿によると、貨物車はここ1週間で50%増加し、2676両から4032両になった。
ロシアがウクライナ産穀物の海上輸送を巡る協定を停止し、黒海が事実上封鎖されたことを受け、ウクライナは8月にアフリカやアジア向け船舶のために「人道回廊」を開設。農業当局者によると、その後にウクライナ南西沿岸からルーマニア領海を経てトルコに至る黒海航路も使用されることになった。
8月以降、新航路を経由した穀物は70万トンを超えた。農業省高官は先週、新回廊による穀物輸出は10月に100万トンを突破する可能性があると述べた。
ただ30日に発表された統計では、10月の全穀物輸出は物流問題で約50%減少した。
●ウクライナ、ロシア軍機撃墜 東部アブデーフカ周辺 10/31
ウクライナ国境警備隊は29日、激戦が続く東部ドネツク州アブデーフカ周辺で、ロシア軍機を対空ミサイルで撃墜したと表明した。スホイ25攻撃機の可能性があるという。米シンクタンク、戦争研究所は同日、ロシア軍がアブデーフカ方面に4万人を配置し、増援部隊も送っていると分析した。
ウクライナ保安局(SBU)当局者は29日、地元メディアに、同日未明にロシア南部クラスノダール地方の製油所を2機の無人機(ドローン)で攻撃したと明らかにした。製油所では昨年700万トン以上の航空燃料が製造され、軍用機に使用されていたとしている。
 
 

 

●ロシアはウクライナで成功、米支援なければ=米国防長官 11/1
オースティン米国防長官は31日、米国のウクライナ支援がなければ「プーチン氏は成功を収めるだろう」と米上院での公聴会で述べた。
また「今、ウクライナへの支援を急にやめれば、プーチン氏は一段と強くなり、やりたいようにやって成功するだけだ」とした。
●「今すぐ停戦!今すぐ停戦!」米連邦議会で“反戦”訴える抗議が相次ぐ 11/1
アメリカ連邦議会で31日、ブリンケン国務長官などが出席してイスラエルなどへの軍事支援を議論する公聴会が開催されたが、反戦を訴える傍聴者の抗議が相次ぎ、審議が中断した。
議会で証言するブリンケン氏らの後ろで、赤色に塗られた手が挙がっている。反戦を訴える団体などが、バイデン政権がイスラエルを支援し、手を血で汚していると抗議して行ったものだ。
さらに、ブリンケン氏の発言を遮るように、傍聴席にいた女性から「ガザに対する残忍な大虐殺を止めてください。アメリカは虐殺を支援している」などと停戦を求める声が挙がった。
審議が一時中断し、警察が女性を部屋から退場させるが…。
女性: パレスチナ人は動物ではない。
委員長: 公聴会を再び中断します。傍聴者の皆さんは、会場にいる人々に敬意を払って…。
女性: 今すぐ停戦!今すぐ停戦!今すぐ停戦!今すぐ停戦!
抗議は収まることなく、6回にわたって公聴会が中断する異例の事態になった。
アメリカ国内では、ガザ地区での戦闘の拡大に伴い、イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦を求める抗議活動が強まっている。
●ロシア、自国から撤退する外国企業に規制「自由な出口ない」 11/1
ロシアが自国を離れる企業に対し厳格な規制を予告した。事実上昨年2月のウクライナ侵攻勃発後ロシアに制裁を加えている西側諸国とその企業を狙った措置という分析が出ている。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は先月31日の会見で「ロシアを離れる企業は厳格な規制を適用されることになるだろう」と明らかにした。
ペスコフ報道官はロシアから撤退する企業の条件に関する質疑に、「明らかに自由な出口はありえず、政府の特別委員会が厳格に規制するだろう」と答えた。
特に西側企業に対してはより厳格な規制があるだろうと示唆した。彼は「西側がロシアを相手に行う『準戦争』を考慮すると西側企業は特別体制を適用される」と言及した。
ウクライナ侵攻後ロシアに制裁を加えている西側諸国を「非友好国」に分類し、該当国の企業に不利益を与えるという説明だ。
ペスコフ報道官によると、プーチン大統領は先月30日にダゲスタン空港で起きた反ユダヤ主義的暴力デモ関連会議で外国の内政干渉に対する対応を強化する案を議論したりもした。
プーチン大統領はこの会議で「ウクライナと西側が今回のデモを助長しロシア社会に不安を起こした」と批判した。
西側企業に対する特別規制と関連し英フィナンシャル・タイムズは「西側企業がロシアから撤退する場合、事業売却代金をルーブルで受け取ることに同意しなくてはならず、ドルやユーロで受け取ることに固執するならば海外送金が遅れたり金額損失を甘受しなければならない」と報道した。
同紙は「最近のルーブル下落を防ごうとするロシアの資本統制措置」と分析した。
しかしペスコフ報道官は「ルーブル相場とは関係ない措置」と線を引いた。続けて「ロシアは依然として外国人投資家に開放的。一部企業は離れるが別の企業はより多くの関心を見せている」と主張した。
一方、ペスコフ報道官は2024年3月のロシア大統領選挙を控え、プーチン大統領がいつ出馬宣言をするかとの質問には「まだ選挙キャンペーンは公示されていない。多くの潜在的候補者が憲法が規定した大統領候補要件を満たしている」という話で答に代えた。
●ロシア軍 ウクライナ東部で攻勢強めるも 南部では守りを強化か 11/1
ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は東部の各戦線で部隊を増強するなど攻勢を強めています。一方、ウクライナ軍が反転攻勢を続ける南部では、ロシア側は精鋭とされる空てい部隊の司令官が指揮をとることになったとみられ、占領地域の守りを強化するねらいとみられます。
ウクライナ陸軍のシルスキー司令官は10月30日、SNSで「ロシア軍は、クピヤンシクで活発に活動し、バフムトでは防衛から積極的な攻勢へと移行した」と投稿し、東部のハルキウ州クピヤンシクやドネツク州バフムトでロシア軍が攻勢を強めていると指摘しました。
ロシア軍はドネツク州のウクライナ側の拠点、アウディーイウカでも部隊を増強して攻撃を続けています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は30日ロシア軍が受刑者などで構成された「ストームZ」と呼ばれる突撃部隊を激戦地に投入していると指摘していて、兵士の犠牲をいとわず攻勢を強めているとみられます。
一方、イギリス国防省は31日、ロシア軍が南部ヘルソン州で作戦指揮をとる司令官に、精鋭とされる空てい部隊の司令官で、参謀本部の評価が高い、テプリンスキー氏を新たに任命したとみられると指摘しました。
ウクライナ軍の部隊は、ヘルソン州を流れるドニプロ川でロシア側が占領する東岸に渡って反転攻勢を続けていて、イギリス国防省は「ロシアにとって、ヘルソン州の占領地域の維持が優先課題となっている」と分析しています。 
●ウクライナ製油所で火災、ロシアがインフラを攻撃 11/1
ウクライナ空軍は1日、ロシアが夜間に多数の無人機とミサイルを発射し、軍事施設と主要なインフラを攻撃したと発表した。地元当局によると製油所が被害を受けた。
空軍はイラン製無人機「シャヘド」20機のうち18機を破壊し、ミサイルも撃ち落としたとメッセージアプリ「テレグラム」に投稿した。
ウクライナ中部ポルタワ州のプロニン州軍行政府長官によると、同州のクレメンチュク製油所で火災が発生した。
「(火災は)鎮火し状況は管理下にある」とテレグラムで説明した。被害状況について情報を収集中で、これまでのところ死傷者の報告はないとした。
●ロシア軍が今年最大の砲撃、24時間で100集落以上 ウクライナ内相 11/1
ウクライナのイーホル・クリメンコ内相は1日、ロシア軍が過去24時間に100以上の集落に対し砲撃を行ったと発表した。24時間で行われた攻撃としては今年最大の規模だったとしている。
クリメンコ氏はソーシャルメディアに、「敵は過去24時間で、10州の118の集落を砲撃した。攻撃を受けた町村の数としては今年最多だ」と投稿した。
現地当局によると、東部ハルキウ州と南部ヘルソン州でそれぞれ1人が死亡した。
また、東部ドニプロペトロウシク州知事は州内の都市ニコポリでロシア軍による無人機攻撃があり、女性1人が死亡し、4人が負傷したと明らかにした。
●「1万3000両以上の車両を撃破」ロシア国防省が「侵攻以来の戦果」を発表 11/1
ロシア国防省は2023年10月29日、2022年2月のウクライナ侵攻(ロシア側は特別軍事作戦と呼称)からの戦果を発表し、侵攻開始以来、ロシア軍は1万3000両以上のウクライナ戦車やその他の装甲戦闘車両を破壊したと主張しました。
戦果の内訳はほかに、517機の航空機、253機のヘリコプター、6902基のりゅう弾砲および迫撃砲、1170基の多連装ロケット砲となっています。
この報告でロシア国防省は「特別軍事作戦開始以来、敵の車両は破壊され続けている」と述べています。
なお、ウクライナ側はほぼ毎日戦果報告を行っており、ウクライナ軍参謀本部の主張によると2023年10月31日の時点で撃破した兵器の数は、戦車5223両、装甲戦闘車両などを9834台、航空機321機、ヘリコプター324機といった数字になっています。
●国連機関“ウクライナ侵攻以降9900人以上の市民犠牲”明らかに 11/1
ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、9,900人以上の市民が犠牲になったとする最新のデータを国連機関が発表した。
10月31日、ウクライナ情勢をめぐる国連安全保障理事会の会合で、ロシアの侵攻開始以降、ウクライナ全土への攻撃で9,900人以上の市民が殺害されたとする最新の集計を発表し、「毎日16人の市民が犠牲になっている」と指摘された。
そして、実際の犠牲者は「もっと多いだろう」との見方も示した。
ウクライナでは現在、ロシア軍が東部に戦力を集中して攻勢をかけているが、ウクライナ軍の反撃を受け、一進一退の攻防が続いている。

 

●ウクライナ戦争の停止、露国民7割が支持 露世論調査 11/2
「仮にプーチン大統領がウクライナとの戦争停止を決めた場合、その決定を支持するか」とロシア国民に尋ねたところ、70%が「決定を支持する」と回答したことが、露独立系機関「レバダ・センター」の10月の世論調査で分かった。プーチン政権は従来、「国民の大多数がウクライナでの軍事作戦を支持している」と主張してきたが、今回の調査結果は露国民内での厭戦(えんせん)機運の高まりを示唆した。
レバダ・センターは10月19〜25日、18歳以上の露国民約1600人を対象に世論調査を実施。結果を31日に公表した。
それによると、冒頭の質問に対し、37%が「完全に支持する」と回答。「おおむね支持する」とした33%を合わせると計70%が戦争停止を支持した。一方、「あまり支持しない」は9%、「全く支持しない」は12%で、9%は「回答困難」とした。
レバダ・センターは同時に「仮にプーチン大統領がウクライナとの戦争停止と、併合したウクライナ領土の返還を決めた場合、その決定を支持するか」との質問でも世論調査を実施。この質問形式の場合、「完全に支持する」「おおむね支持する」とした回答者の割合は計34%まで低下した。反対に「あまり支持しない」「全く支持しない」との回答は計57%に上った。残りは「回答困難」だった。
半数超の露国民が領土の返還を条件とした戦争の停止は支持できないと考えていることが明らかになった形だ。
●ウクライナ戦争の犠牲者隠すロシア 11/2
ロシアのプーチン政権は、自ら仕掛け、1年半以上過ぎた対ウクライナ戦争での正確なロシア軍兵士の死傷者の実態を明らかにしていない。クレムリンが恐らく意図的に、ウクライナでの戦死者の人数を隠そうとしていることは、広く知られている。
ロシア政府の公式統計機関である「ロススタット」は、対ウクライナ戦争での戦死者数の発表を控えていながら、ある意味で、「プーチンの戦争」におけるロシア軍の戦死者の状況について、貴重な情報を与えてくれているという。その一つが、非ロシア系や貧困地域出身兵士の死傷者数が、ロシア人兵士よりも突出している指摘である。これは米国のロシア・ウクライナ問題の専門家ポール・ゴーブル氏(元ベーカー国務長官特別顧問)の調査で明らかにされた。
統計のサブ範疇を変更
プーチン大統領が昨年2月24日、ウクライナに対する本格的な侵攻を始めた後、「ロススタット」は特別なサブ範疇(はんちゅう)としての軍の死者数の発表を中止した。しかし、この政府統計機関は、政府が政策決定に比較的正確なデータを必要としているという理由により、全体の死者数と、他の範疇に属する死者数の発表は従来通りにした。ロススタットはそうすることで、自分たちとしては発表を阻止していると思っていた数字を意図せずに公表してしまった。ロススタットは既に、早過ぎる死について性別の記載を中止して、女性を男性の中に混じりこませ、原因不明の死の割合を減らそうとしている。ロススタットは今後、こうした形での死者数の発表を完全に止(や)めてしまう可能性もあるといわれる。
ロススタットは、戦争の前には死者について、病死者と、「外的要因」による死者という二つの範疇に分けていた。病死の範疇について変更はないが、「外的要因」による死者の範疇は変更された。この範疇はここ数十年間、「事故死、自殺」と、「軍での死者」が、別々のサブ範疇になっていた。2022年2月以降、「軍での死者」というサブ範疇がなくなった。しかし、「外的要因」による死者の全体の数から事故死および自殺による死者数を差し引くことで、「軍での死者数」を導き出すことができるのだ。
ロシアの独立系調査報道メディア「インポータント・ストーリーズ(IS)」は今年夏、この方法で22年のロシア軍の戦死者の総数を計算したと発表した。同メディアは数字を公表していないが、同じ時期の地域ごとのロシアの若者戦死者数の計算を、既に完了しているという。
このISの新たな報告で特に注目すべきは、22年にはロススタットの「外的要因」の範疇に入る死者のうちでは「軍における死者」が最大となった、と結論付けている点である。18歳から29歳のロシアの若者の間では、「外的要因」による死者の40%が戦死者だ。この年代の死者では、高齢者よりも健康状態の良好な者が多いために、「病死」の範疇に入る者は比較的少なく、従ってこの年齢層の死因では、戦死が異常に高い割合を占めていることになる。こうして、戦死を隠そうとする政府の努力は無駄になってしまった。
ISの報道内容の中で、特に大きな意味を持つのは、国内の非ロシア人共和国や貧困地域でのロシア人の戦死の割合に関するISの発見である。これらの地域から動員された動員兵の数は他の地域と比べ、不釣り合いに多い。ブリヤート、北オセチア、ダゲスタン、モルドビア、マリ・エルの五つの非ロシア人共和国と、ロストフおよびオレンブルグというロシアの貧しい地方の若者の死因の70%近くが、「外的要因」の範疇に入っている。
高まる反モスクワ感情
そしてその死因は、ウクライナでの戦闘によるものである可能性が高く、ここで示されている傾向は、多数の徴兵が行われている非ロシア人および貧しい地方のロシア人の若者たちがロシア政府によって「大砲の餌」用兵士として使われ、他の地域と比べ、自分たちが不釣り合いに幅広く苦しめられている、と考える地元の人々の議論に証拠を提供することになり、彼らの民族主義感情や反モスクワ感情を煽り立てるのは、ほぼ間違いない。
●イスラエル・ハマス戦争で見え隠れするウクライナ人の「複雑な本音」 11/2
10月9日、ウクライナのゼレンスキー大統領は「イスラエルを攻撃しているのはテロ組織で、ウクライナに攻撃を加えているのはテロ国家だが、本質は同じ」と話した。
イスラエルによるハマスへの攻撃が激化する一方、昨年から始まったウクライナとロシアの戦争もいまだ終わりがまったく見えていない。
そんな中で、「侵略から国を守る」側として国際社会から支援を受けるウクライナは、イスラエルによる侵攻をどう見ているのだろうか? 
イスラエルに対するふたつの評価軸
10月7日、パレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム武装組織「ハマス」は数千発のロケット弾でイスラエルを急襲。これに対しイスラエルは宣戦を布告した。
中東で新たに生じた大規模な戦闘「イスラエル・ハマス戦争」(以下、ガザ戦争)に世界の注目が集まる中、難しい立場に置かれている国がある。ロシア軍による侵攻と戦い続けているウクライナである。
ただでさえ、ロシア・ウクライナ戦争の長期化で、一部の西側諸国でも「支援疲れ」がささやかれるなど、国際社会における存在感がやや低下しているところだ。では、ウクライナの人々は中東の事態をどう見ているのだろうか?
ウクライナ政府は新たな戦争に対しどのようなスタンスを取ろうとしているのだろうか。ウクライナのグローバルメディア「ウクルインフォルム通信」の編集者で、現地の情報を発信し続けている日本人、平野高志氏に解説してもらった。
「今回ウクライナ政府はゼレンスキー大統領も外務省もイスラエルを支持するような発表をしていますが、それはまず何よりも『テロは根絶しなければならない』との立場からです。
ウクライナは、ロシアが民間人を狙って攻撃していることをテロと見なしています。ロシアのテロを非難する以上、ハマスのテロも非難しないわけにはいかない、という考えです。
とはいえ、ウクライナとイスラエルの関係は複雑です。特に2014年、ロシアがウクライナのクリミア半島を占領して以来、両国の見解はしばしばかみ合わないことがありました」
14年3月、ロシアはクリミア半島を占領し、次いで親露派による独立宣言が行なわれたウクライナ東部の2州を支援し続けてきた。
ウクライナ政府としては、親露派に独立宣言をさせて「併合」や武力介入を正当化する、というロシアの常套(じょうとう)手段はとうてい認められない。そこで国際法を盾にロシアを非難するわけだが、困ったことに国際社会の「無法者」はロシア以外にもいる。
そのひとつがほかでもない、イスラエルだ。同国は例えば第3次中東戦争(1967年)でシリアから奪ったゴラン高原を長期の占領の後に「併合」して今に至るが、日本も含め国際社会はいまだにそこをイスラエルの領土だとは認めていない。
そして、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸と東エルサレムにイスラエル国民の居住を進める「入植」も、国際法違反として非難を浴び続けている。
「ウクライナも、やはりイスラエルの入植は非難してきました。16年に国連安保理に入植非難決議が出された際にはウクライナも賛成を投じました。結果、棄権したアメリカ以外の14ヵ国が賛成で一致し、採択されたのです。
これにはイスラエル政府が激怒しまして、当時予定されていたウクライナの首相のイスラエル訪問を一方的に取り消してしまいました」
ちなみにこのときのアメリカの棄権≠ヘ、同国にしては珍しくイスラエルに厳しいほうの対応だったという。
「まとめると、ウクライナ政府はイスラエルに対し、ふたつの判断軸を持っているということです。テロと戦うことについては支持し、国際法を侵犯していることについては非難する。先日、政府関係者に話を聞きましたが、この立場は今回のハマスの襲撃以降も変わっていません」
一方、イスラエルはウクライナに対して、微妙に距離を置いている。
例えばハマスのテロが起きたとき、ウクライナのゼレンスキー大統領はいち早くイスラエルに弔意と連帯を表明するとともに、同国への訪問を希望したが、「今はその時ではない」と断られてしまった。平野氏はこう語る。
「話を聞いたときは、拒否するんだ!ってびっくりしましたよ(笑)。考えてみたら断る理由も想像できますが。
ゼレンスキー大統領がイスラエルを訪問したらおそらく、『ハマスとロシアは共にテロリスト集団である』といった発言をする。イスラエルのネタニヤフ政権としては、今の難しい状況の中でロシアを敵に回すのは避けたい。だから断ったのだと思います」
ウクライナ人のトラウマを呼び起こす
これまでウクライナは各国の支援を得てロシアの侵略と戦ってきた。ここで注目がイスラエルに移ると、支援が減ってしまう――そういった不安はあるのだろうか?
「支援をしている欧米の国々から『今後も支援は変わらない』と確証を得ているので、政府関係者レベルではそういった不安はないと思いますよ。ウクライナ国内の報道を見ていると、国民の関心事になっているとは思いますが。
でも、自国の心配をする以前に、ウクライナの人々もガザ戦争の報道にくぎづけになっている部分があると思います」
さて、ここでウクライナの現状について触れておきたい。首都キーウ在住の平野氏によれば、ロシア侵攻により電力などの生活インフラにまで被害を受けていた昨年と異なり、今は比較的、市民生活は安定しているそうだ。
ウクライナ国民はガザ戦争に対して、どんな見方をしているのだろうか。平野氏はこう話す。
「SNSを見る限り、10月7日の攻撃直後の反応は、イスラエルへの支持の声が目立ちました。ハマスのテロは、ロシアがウクライナの都市ブチャで行なった虐殺(昨年3月)とかぶって見えたからでしょう。
トラウマ的にショックを受けた人が本当にたくさんいたと思います。『ハマスはなんてひどいことをするんだ』と、まず感情的な反応が多かったようです」
ただ、これまでイスラエルは国際法に反してパレスチナの人々を迫害してきた歴史がある。ゼレンスキー政権も国際法違反を認めない姿勢は踏襲しているようだ。一般国民はどうか。
「ガザ地区に対するイスラエルの侵攻が始まると、パレスチナに対して共感を抱いていた人の声も少しずつ聞こえてきました。私の肌感覚ではイスラエルに対する支持の声が大きいような気がしますが、必ずしもパレスチナに対する共感がないかというとそうでもないです」
ガザ地区にいた同胞たち
イスラエルはおよそ2500年以上もの間、自国≠持てなかったユダヤ人が、1948年に国際世論の後押しを受けてパレスチナの地に建てた国である。それまでは世界各地にマイノリティとして暮らしていたわけで、その結果各地にコネクションを持っている。
中でもウクライナ、特に西部のガリツィア地方は、ユダヤ人が多く暮らしていた土地だ。ユダヤ−イスラエルとの結びつきは強く、それゆえのシンパシーもあるのだろうか。
「あると思います。こっちからイスラエルに移住した人でも、ウクライナとのコンタクトはもちろん残っていますし、その分イスラエルからの情報は入りやすくなっています。
そのほか、イスラエルで暮らしているウクライナ人も当然いますし、私の知り合いにもいます。その人たちはやはりイスラエル支持を表明していますね」(平野氏)
ただ、一筋縄ではいかない事情もある。
「実はガザ地区に約800人のウクライナ人が住んでいるそうなのです。ウクライナの大学に留学していたパレスチナ人と結婚して、一緒にガザに移住した人が多くいるらしい。
今、そのうちの300人以上がガザからの避難を希望してウクライナの外務省に訴えています。脱出できなくて困っていると報じられていますし、彼らの中には死者が出ています。政権も気をもんでいます。
その人たちの声が届くようになると、ウクライナ人のこの戦争の見方が大きく変わることもあるかもしれません」
●いたずら電話にだまされたイタリア首相「正直ウクライナ戦争に疲れた」 11/2
イタリアのメローニ首相がロシアのユーチューバーによるいたずら電話にだまされ、ウクライナ戦争に対する疲れを打ち明けたとCNNが1日に伝えた。
報道によると、「ボバン」と「レクサス」という芸名で活動するロシアのユーチューバー2人はこの日、メローニ首相との電話を録音した13分の音声ファイルを公開した。彼らは9月18日にアフリカの政治家のふりをしてメローニ首相に接近したという。
メローニ首相は彼らに「正直に言えば(ウクライナ戦争に対する)疲労度が非常に高いのが事実だ。出口を探すべき時がきた。問題は国際法に違反せず双方が受け入れられる出口を見つけること」と話した。
続けてメローニ首相はイタリアが今年12万人のアフリカ移民を受け入れたが残りの欧州連合(EU)諸国は気にもとめていないと不満を述べたりもした。「イタリアがあらゆる問題を解決すべきという非常に愚かな考えをしている」としながらだ。
イタリア首相室はこの日声明を通じ「通話が行われたのは事実であり、首相がだまされたことは遺憾」と明らかにした。
2人のユーチューバーはジョンソン前英首相、メルケル前ドイツ首相、トルコのエルドアン 大統領などにもいたずら電話を試みている。これに対し世界の指導者らと簡単に電話通話に成功した点から彼らがロシア安保機関の助けを受けたものと多くが疑っているとイタリアメディアのラ・レプブリカは伝えた。
●ウクライナ軍総司令官が危機感、戦局こう着でロシア軍再建の時間与える恐れ 11/2
クライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官は1日、英誌エコノミストへの寄稿記事で、ロシアとの戦争が一進一退の消耗戦に移行しつつあり、このままではロシア側に兵力再建の時間を与えてしまうと危機感を表明した。
ザルジニー氏は「ミサイルや砲弾といった基本的な武器は引き続き大事だ。しかしウクライナ軍はこの種の戦争で局面を打開するために鍵となる能力と技術を必要としており、最も重要なのは航空兵力だ」と説明した。
ウクライナ軍が反転攻勢を開始してほぼ5カ月が経過しているが、大量の地雷を敷設したロシアの防衛ラインをなお本格的に突破できず、冬の天候悪化とともに戦局がこう着する見通しも出てきた。
ロシア軍は現在、ウクライナ東部の幾つかの地点では逆に攻勢に出ており、ウクライナ側は空爆で送電網が破壊されて、真冬に数百万人が停電に見舞われかねないと懸念している。
こうした中でザルジニー氏は、消耗戦の危険性を強調。「これはロシアに利益をもたらし、兵力を再建して最終的にウクライナの軍と国家に脅威となるだろう」と訴えた。
同氏は、ロシアの航空優勢こそがウクライナ軍の前進を困難にしていると指摘し、ロシアの防空網を圧倒するためには大規模な無人機攻撃を遂行するべきだとの見方を示した。また西側から供給される武器では、ロシアの広大な地雷原に対応するには不十分なことが分かっているとも述べた。
さらに同氏は、ウクライナ軍が予備兵力の整備を最優先に掲げているものの、国内の訓練能力や招集対象者が限られる点などの問題については、解決に向けて鋭意努力していると明らかにした。
●ロシアやOPECが演出する原油高、ロシア財政に与える影響はどれほどか? 11/2
2023年4-6月期をボトムに反発している国際原油価格。主にロシアがOPEC諸国と協調した減産によるものだが、ロシア財政にポジティブな影響を与えている。
7-9月期の連邦歳入は前年比28.5%増だが、牽引したのは石油ガス収入ではなく、所得税などの一般税収。歳入に対する原油価格の上昇分はこれから訪れる。
もっとも、原油高はロシア財政にポジティブだが、軍事費という形で浪費されており、原油高でなければ戦争の継続も国内の経済対策も打つことができない。
2022年2月に生じたロシアのウクライナ侵攻に伴って急上昇した国際原油価格(ブレント原油価格)。同年4-6月期をピークに下落に転じ、安定したが、2023年4-6月期をボトムに反発し、7-9月期の平均水準はバレル当たり86.7米ドルと、4-6月期の78.1米ドルからおおよそ11%上昇している(図表1)。
   【図表1 ブレント原油価格】
この間の国際原油価格の上昇は、主にロシアがサウジアラビアなど他の産油国と協調して原油の減産に取り組んだことで実現した。いわゆるOPECプラスは、10月4日に開催した第50回共同閣僚監視委員会(JMMC)でも、6月4日の第35回閣僚級会合で合意した2024年末までの減産方針を維持することを再確認したところだ。
他方で、ロシア産原油の価格(ウラル原油価格)は、いわゆるG7とオーストラリアによる制裁を受けて国際原油価格を下回って推移している。ただ、ロシアによる追加の自主減産に加えて、原油市況そのものの上昇もあり、ロシア産原油価格も上昇。バレル当たり60米ドルという天井を突破している。
ロシアが原油高の演出に躍起になっている最大の理由は、歳入の確保に他ならない。
ロシアの連邦歳入のおおよそ3割が、資源企業に対する課税(石油ガス収入)であることは広く知られた事実だ。ウクライナとの戦争で膨張する軍事費と国内の経済対策費を賄うために、ロシアは原油高を演出して歳入を確保する必要があるのだ。
とりわけロシアは2024年3月に大統領選を控えている。これを見据え、9月に発表された2024年の予算案は歳出が2023年から26%増える計画となった。
大企業に対する増税もあり、石油ガス収入以外の収入が大幅に増えるため、財政赤字はわずかだと政府は説明する。そうはいっても、石油ガス収入が増えるに越したことはないだろう。
それでは、2023年7-9月期に進んだ原油高は、ロシアの歳入をどれだけ押し上げたのだろうか。ロシア財務省の統計より、その様子を概観してみたい。
原油高がロシアの歳入増につながるのはむしろこれから
ロシアの7-9月期の連邦歳入は前年比28.5%増の7兆3524億ルーブルに達した。その増加をけん引したのは、むしろ石油ガス収入以外の収入(つまり所得税など一般的な税収)だった(図表2)。
   【図表2 ロシアの連邦歳入】
ロシアの2022年の実質経済成長率は2.1%減だったが、これは欧米日からの経済制裁で圧迫された民需を、軍需を中心とする公需が下支えした結果でもある。
民需そのものが強く圧迫された結果、資源企業向けを除く課税収入が減少したことが、2022年4-6月期以降に石油ガス以外の収入が下押し寄与に転じた理由だ。
もっとも、2023年4-6月期に入ると、ロシアの実質経済成長率は前年比プラスに転じており、景気は曲がりなりにも回復軌道に乗っている。
同期以降、石油ガス以外の収入は前年比で急増しているが、これは前年の急減に伴うベース効果に加えて、大企業に対する課税の強化や、高インフレによる税収増(インフレ課税)を反映した現象だと考えられる。
このように、7-9月期の歳入の動きを確認する限りにおいては、この間に進んだ原油高は、ロシアの歳入を増やす方向にはそれほど働いていないと判断される。
ただ、これは当然のことだ。なぜならこれまでのトレンドに基づけば、国際原油価格の上昇でロシアの石油ガス収入が増えるとしても、概ね1四半期のラグがあるためだ(図表3)。
   【図表3 ロシアの石油ガス収入と国際原油価格の推移】
つまり、マクロ的に考えれば、7-9月期における原油価格の上昇は、翌10-12月期の石油ガス収入の増加につながると考えられる。
10月に入って、国際原油価格は頭が重い展開となっているが、一方でパレスチナ情勢が緊迫化しており、価格の一段の上昇も意識される。そうなれば、ロシアの歳入は年明け以降も増加基調で推移すると考えられる。
ロシア軍の攻勢を阻んだ財政面の制約
他方で、話を財政収支に転じると、2023年7-9月期の財政収支は、5四半期ぶりとなる歳入超過(6517億ルーブル)となった(図表4)。歳入が増えたことに加えて、歳出が実に17四半期ぶりに前年割れ(4.8%減)となったことも、財政収支の黒字転換につながっている。
    【図表4 ロシアの財政収支】
それではなぜ、ロシアは歳出の抑制に努めているのだろうか。
筆者は戦局分析に関しては全くの門外漢だが、今年の7-9月期、ロシアとウクライナの戦争は膠着が続いた印象がある。歳出の減少が物語るように、この間にロシアは軍事費の拡大を抑制しており、そのことが財政面からロシア軍の攻勢を阻んだのかもしれない。
いずれにせよ、ロシアは何らかの歳出のカットを迫られた。
つまるところ、ロシアはウクライナとの戦争の長期化に備えて、歳出面からも財政の再建に努めているのではないだろうか。確かに原油価格は反発しているが、結局のところは水物である。資源企業に対する法人税や採掘税も引き上げたが、石油ガス収入が不安定であることに変わりはない。そのため、財政再建には歳出の抑制が不可避となる。
財政再建がある程度まで進んだ段階で、ロシアはウクライナとの戦争で攻勢に出るのかもしれない。そうでなくても、ウクライナとの戦争が続く以上、ロシアの軍事費は膨張したままであり、財政を圧迫する。
結局、原油高を演出しても、それが軍事費というかたちで浪費されれば、ロシアの財政は回るかもしれないが、経済は確実に干上がる。
原油高でなければ成り立たないロシア財政
原油高は確かにロシアの財政にポジティブな影響を与える。だが、結局のところ、ロシアの財政は原油高だから盤石であるというよりも、原油高でないと今のロシアの財政は成り立たないという解釈の方が正しいといえよう。
原油高を維持しないと、ロシアはウクライナとの戦争も継続できず、国内の経済対策も打つことができない。
他方で、他の産油国とともに減産に努めたところで、ロシアがいつまで原油高を謳歌できるかは不透明だ。世界景気は停滞が続いており、原油の需要そのものも低迷している。
それに、米財務省が10月にロシア産原油の取引を行った事業者に対して金融制裁を科するなど、先進国側もロシア産原油の価格を引き下げるべく、対策を強化してきている。
ロシアとしては、今後に備えるために、今のうちに得られるだけの石油ガス収入をとにかく確保しておきたいというところではないだろうか。 
●プーチン大統領 CTBT=包括的核実験禁止条約の批准撤回の法案に署名 11/2
ロシアのプーチン大統領は2日、CTBT=包括的核実験禁止条約の批准を撤回する法案に署名しました。プーチン大統領の署名により法律は発効し、ロシアは事実上、CTBTを離脱することになります。
プーチン氏は先月、国内に核実験再開を求める声があるとし、アメリカがCTBTを批准していないことから「理論的には批准を撤回することは可能だ」と表明。その後、上下両院が法案を可決していました。
今後の核実験再開の可能性について、外務省高官は「アメリカが核実験を実施した場合に限られる」としていますが、ロシアとしては対立を深めるアメリカをけん制する狙いがあるとみられます。
ロシアのCTBT=包括的核実験禁止条約の批准撤回について、アメリカのブリンケン国務長官は、「誤った方向への一歩」で「深く懸念している」との声明を出しました。
ブリンケン長官は、ロシアの最近の核に関する発言を「無責任だ」と指摘し、「ウクライナに対する違法な戦争を続ける中で、核のリスクを高めようとしている」と批判しています。
●ロシア、包括的核実験禁止条約から事実上離脱−プーチン氏が批准撤回 11/2
ロシアのプーチン大統領は、同国の包括的核実験禁止条約(CTBT)批准を撤回した。プーチン氏は先月、米国がCTBTを批准していないことに不満を述べていた。
1996年に国連で採択されたCTBTはこれまでにロシアを含む178カ国が批准したが、条約発効の要件とされる、核兵器または原子炉を持つ特定の44カ国全ての批准が済んでいないため世界的には未発効のままだ。米国はCTBTを署名した187カ国のうちの一つだが、上院の否決により批准はされていない。
ただ、米国はCTBTに署名して以来、条約で禁止されている核実験を行っていない。プーチン氏は以前、米国が実験を再開しない限り、ロシアがすることはないと語っていた。
ロシア下院は先月、CTBTの批准を撤回する法案を全会一致で可決していた。
●プーチン氏周辺に異変 大企業の幹部また変死 11/2
ウクライナ軍が公開した映像。塹壕(ざんごう)のすぐ近くで、ロシア軍の砲弾が爆発し、がれきが降りかかる。
ウクライナ東部のバフムト。ロシア軍の砲弾が次々と爆発し、目の前で炎が上がる。輸送車が到着し、急いで乗り込むウクライナ兵。
現在、ロシア軍はバフムト周辺で兵力を大幅に増強。防衛から一転、攻勢を強めているという。
しかし国内に目を向けると、プーチン大統領の周辺に異変が。
まず、2024年3月の大統領選。ウクライナへの侵攻に反対する元下院議員が立候補を表明し、「プーチン氏は致命的なミスを犯した。このままでは、ロシアは中国の属国になる危険性がある」と主張している。
一方、謎めいた出来事も。
プーチン氏と握手を交わす大手石油会社「ルクオイル」の前の会長。2022年9月、病院の窓から転落し死亡した。さらに10月、あとを継いだ会長も死亡したことがわかったのだ。
ルクオイルは2022年3月、ウクライナ侵攻の停止を求める異例の声明を発表。その後、およそ1年半で3人の幹部が死亡したのだ。
ロシアの独立系メディアの調査によると、7割が停戦を支持。
国内では、一定の厭戦(えんせん)機運が出始めていることを示している。
●ウクライナ反攻「期待通り進まず」=成り済まし電話に伊首相 11/2
イタリアのメローニ首相が9月、アフリカ連合(AU)高官に成り済ました人物からのいたずら電話に引っ掛かり、ロシアの侵攻に対するウクライナの反転攻勢が「期待通りに進んでいない」と懸念を示していたことが分かった。ANSA通信が1日伝えた。
メローニ氏をだましたのは、著名人への偽電話で知られるロシアの2人組「ボバンとレクサス」。録音した会話がインターネットで公開され、イタリア首相府も認めた。2人はロシア当局とのつながりが指摘される。
報道によると、電話があったのは9月18日で、2人のうち1人がAU委員長をかたった。メローニ氏はウクライナ情勢を巡り、「皆、とても疲れている。出口が必要だと理解する時が近づいている」と述べ、「国際法を踏みにじらずに(ロシア、ウクライナ)双方が受け入れ可能な解決策が見つかるかが問題だ」と語った。
●プーチン氏死亡のデマはロシアが流布、ウクライナ情報機関 11/2
先月出回ったプーチン大統領死亡説について、ウクライナの国防省情報総局のアンドリー・ユソフ報道官は、デマはロシア政府が流布したとの考えを示した。
ウクラインスカヤ・プラウダによると、1日、ウクライナのラジオ番組のインタビューに応じたユソフ氏は、「ウクライナのリスナーにとっては甘い音楽に聞こえるが」としつつ、デマはロシア国内向けに画策されたものだと主張。目的は「社会がどのように反応するかを観察することだ。個人やエリート、メディアの反応を見るため」であり、「このようにして、諜報機関の活動の上に構築された帝国は、支配を継続する方法を学習している」と述べた。さらに「これでお終いではなく、特定の作戦であることは明らかだ」と加えた。
これとは別に、ウクライナ国家安全保障・国防会議のオレクシー・ダニロフ書記は、来年の大統領選の下準備との見方を示している。
ロシア大統領府は先月、ウクライナ情勢にかかわらず、次期大統領選と26年の議会選挙を予定通り実施すべきとの考えを明らかにしている。
先月26日、テレグラムのチャンネル「General SVR」は、プーチン大統領がモスクワ時間の午後8時42分、ヴァルダイにある大統領公邸で医師による蘇生の努力の甲斐なく他界したと投稿した。 同チャンネルは、プーチン氏の健康不安説や影武者説、プリゴジン氏生存説などセンセーショナルな内容をたびたび投稿することで知られる。クレムリン内部に詳しい人物が運営するとされるが、誤情報の専門家は信頼性に欠けるとしている。
それにも関わらず、死亡の噂はオーストラリア、イギリス、インドなど各国メディアによって報じられ、SNSで広く拡散された。AP通信によると、投稿は40万回視聴され、2.2万回シェアされたほか、5,000人の新規フォロワー獲得につながったという。
死亡へとつながる一連の投稿が始まったのは23日。チャンネル主は、プーチン氏の邸宅で大きな物音がしたため警備員が駆けつけると、目を白黒させて痙攣している大統領を発見したと説明。医師らは心停止と判断し、公邸内にある最新技術を備えた集中治療室で蘇生処置が施されたと投稿した。
翌日の投稿では、プーチン氏の容体は目を離せない状況にあるとしつつ、同日行われたブラジルのルーラ・ダシルバ大統領との電話会談やカバルダ・バルカル共和国の指導者との会談は、影武者がこなしたと主張した。
死亡デマの前日の25日には、過去24時間で容体が悪化し、医師らは懸命の努力を続けているものの、最悪を覚悟している旨のコメントを投稿していた。
ちなみにロシアのペスコフ大統領報道官は先週、二度にわたって噂を否定している。タス通信によると、同氏は噂を「でっち上げ」と一蹴。大統領は「問題ない」と語った。
●消耗戦は「ロシアに有利」 空軍、電子戦強化が鍵 11/2
ウクライナ軍のザルジニー総司令官は1日、英誌エコノミストに寄稿し、ロシアの侵攻が互いの陣地を奪い合う消耗戦に移行しており、軍事力を回復できるロシアにとって有利な状況が生まれるとの見方を示した。局面打開のためには、空軍や通信妨害などの電子戦の強化が鍵になると訴えた。
ザルジニー氏はミサイルや砲弾などの兵器増強も重要と指摘。ロシア側の兵器を破壊するための武器や、地雷除去技術も必要とした。さらに、ロシア軍の人的損失は甚大だが武器備蓄では今後も優位性を保つとして「ロシアを過小評価すべきでない」と強調した。
●「偽情報」問題、国連で議題に 11/2
偽情報の拡散とAI(人工知能)の悪用は世界の何十億という人々に危害を及ぼす −− 国連英国代表部のスポークスパーソンがニューヨークで訴えた。
10月中旬、ニューヨークの国連本部で開かれた国連総会第4委員会で「情報」が議題に取り上げられ、英国代表部スポークスパーソンのマンゴ・ウッディーフィールド氏が「デジタルプラットフォームが生む深刻な危機」と「偽情報・誤情報の拡散による脅威」を訴えた。
「偽情報や誤情報、意図的に情報を操作しようとする企ては、世界の何十億という人々に危害を及ぼす。我々の自由を脅かし、個人と社会を害し、危機の際には人々を誤った方向に導くことをこの数週間、我々は目撃してきた」
依然続くロシアのウクライナ侵攻、そしてイスラエルとイスラム組織ハマスとの軍事衝突の勃発。昨今、プロパガンダの応酬は世界でますます激化する。
「AIは偽情報・誤情報をいかにも真実であるかのようにでっち上げ、大規模に拡散する能力を持っている」
さらに同氏は、「ロシアは安全保障理事会を偽情報のプラットフォームとして利用し」ており、「ウクライナに関する虚偽情報を広めるため、何十人という偽の証人を国連の場に呼んだ。それらが明らかにでたらめであることは、国連の専門家によって何度も証明されている」と発言。
英政府高官は、「ロシアは自らが犯している恐ろしい罪を隠蔽するため、偽情報キャンペーンを展開し、安全保障理事会における議論を貶めている」と話す。
「英国は引き続き、偽情報を見つけ次第公開し、ロシアの説明責任を問いただしていく」
英国は国連グローバルコミュニケーション局が推し進める「デジタルプラットフォームにおける情報保全の行動規範(Code of Conduct for Information Integrity on Digital Platforms)」を支持する。「加盟国はプラットフォーム同様、急速なテクノロジーの進化に責任を持って対処する必要がある。最新のテクノロジーを理解し、適切に管理して、何十億という人々が安全に利用できる環境を構築しなければならない」とウッディーフィールド氏。
「偽情報や誤情報に対抗できる手段は、信頼できる情報へのアクセス。国連には、事実に基づいた正確かつ公正な報告書を作成するという極めて重要な役割がある。だがその役割を果たすことは、毎年困難になりつつある」
国連はコンゴ民主共和国や中央アフリカ、マリ、南スーダンといった国々で平和維持活動を展開する。だがその活動は、偽情報によって脅威に直面している。
「国連加盟国は、信頼できる情報源としての国連の完全性を守っていく責任がある」(ウッディーフィールド氏)
「残念ながらいくつかの加盟国は、国連の場で有害な偽情報を拡散したり、国連に関する偽情報を拡散したりしている。国連の平和維持活動に関する偽情報は、依然として大きな懸念事項だ。平和維持部隊は極めて困難な環境で、困難な任務を遂行する使命を課せられている。その任務に関する偽情報が拡散すれば、国連スタッフにとって脅威となり、任務遂行の妨げとなる」
国連グローバルコミュニケーション局は「国連の現場活動を支援し、偽情報をいち早く正す情報研究所の開設を進めている」。英国もこの計画を支援していくという。

 

●米国、ロシアの核実験禁止条約批准撤回に「深く憂慮…無責任」 11/3
米国政府はロシアが包括的核実験禁止条約(CTBT)批准撤回案を通過させたことについて「深く憂慮する」と述べた。
トニー・ブリンケン長官は2日(現地時間)、声明を出して「不幸にもこれは我々をCTBTの発効側ではなく誤った方向に導く重大な歩みを意味する」と述べた。
ロシアのプーチン大統領は同日、CTBT撤回法案に署名した。先月5日、バルダイ・クラブ討論会での演説で「原則的には米国が条約に署名はしたが批准していないことと同様に行動することが可能」としてCTBT批准撤回の可能性に言及してから約4週間後に、実際に批准撤回を断行した。
CTBTは1996年9月の国連総会で採択されたが、核兵器を保有中または保有可能な44カ国中8カ国(米国、中国、エジプト、イスラエル、イラン、インド、北朝鮮、パキスタン)が批准していないため未だ発表されていない。ロシアと米国は1996年にCTBT条約にともに署名したが、ロシアと違って米国は批准手続きを終えておらず署名のみで批准は行っていない。
これに対し、ロシアは米国と「均衡」を合わせて批准を撤回することにしたもので、批准を撤回しても核兵器実験を行う意図はないと主張した。
ブリンケン長官は「ロシアの措置は国際軍備統制体制に対する信頼を後退させる役割しかしない」と指摘し、「我々は核兵器爆発実験とCTBTに関するロシアの最近の発言の無責任さを引き続き強調する」と説明した。
また、「ロシア当局者は批准撤回の動きが核実験再開を意味するものではないとしており、ロシアがこの言葉を守ることを促す」とし「米国はCTBT発表のために専念している」と述べた。
●岸田首相、ロシアのCTBT批准撤回に署名で「極めて遺憾」 11/3
岸田文雄首相は3日、ロシアのプーチン大統領が核実験全面禁止条約(CTBT)の批准を撤回する法律に署名し、発効させたことについて「国際社会がCTBTの発効促進・普遍化に向けて長年積み重ねてきた努力に逆行するものであり、極めて遺憾だ」と自身のX(ツイッター)に投稿した。
首相は核軍縮に向けた現実的な手法として、核爆発を伴う全ての核実験を禁じるCTBTの早期発効を重視している。首相は投稿で「現実的かつ実践的な取り組みを通じて、『核兵器のない世界』の実現に向けて引き続き全力を尽くす」と強調した。
●プーチン大統領も嘲弄した「欧州トコジラミ」…「ロシア制裁?虫が流入されない」 11/3
ロシアのプーチン大統領が西側の経済制裁に対して懸念しないという立場を示し、トコジラミ(南京虫)の出没問題をあざ笑ったと2日(現地時間)、米政治専門メディアポリティコが報じた。
この日、ポリティコはロシア国営タス通信を引用して「プーチン大統領は欧州連合(EU)の12回目の経済制裁について滑稽だ」とし「欧州のトコジラミ問題に言及した」と伝えた。
前日、プーチン大統領は「ゴミは少ないほど良い。欧州の大都市からロシアにトコジラミが入ってくる可能性はなくなった」と話したという。リトアニアが12回目の対露制裁にボタンや釘、針なども含めようとしたことに対する反応だ。
最近、フランスでは汽車や映画館など、さまざまなところでトコジラミが目撃されて市民の混乱を招いている。先月7日にはフランス全域の学校17校で空き巣が発見され、このうち7校が休校になった。
英国でも、トコジラミと推定される茶色の虫が乗客のズボンを這う動画がソーシャルメディア(SNS)を通じて広がり波紋を呼んだ。ロンドンのサディク・カーン市長は現地メディアとのインタビューで「ウィーン大学での出没は本当に懸念すべきこと」とし「パリのようなことを体験しないように当局が措置を取っている」と話した。
専門家は、新型コロナ以降、再び活発になった観光など国家間の往来が頻繁になりトコジラミが出没していると判断している。
ただ、ポリティコはプーチン大統領の発言に対して「経済制裁を全く懸念しないというプーチン大統領の発言は事実ではないだろう」とし「EUの新しい制裁はほとんどの品目を指定する可能性がある」と指摘した。
●プーチン大統領の策謀か 中東にワグネルが「参戦」へ ハマス協力 11/3
イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘が激化するなど混迷する中東に、ロシアのプーチン政権が手を伸ばすのか。ハマスに協力しているレバノンの民兵組織ヒズボラに、ロシアの民間軍事会社ワグネルが防空システムの供与を検討していると米メディアが報じた。ワグネルをめぐっては、8月に創設者のプリゴジン氏が飛行機事故で死去した後、ロシア軍が統制を強めているとされる。
米紙ウォールストリート・ジャーナル電子版は2日、ワグネルがヒズボラに対し、防空システムの供与を検討していると報じた。米政府はワグネルの動向に警戒を強めているという。
米政府当局者は同紙に、ワグネルが既に防空システムを供与したとの確認はできていないとした上で、注目していると述べた。
ワグネルは民間軍事会社としてアフリカや中東に部隊を派遣しており、内戦が続くシリアではアサド政権と協力関係を築いてきた。アサド政権を支援するイランの影響下にあるヒズボラも、シリアに多数の戦闘員を送り込み、アサド政権が内戦で優位を確立することを支えてきた。
ハマスに対して空爆や地上作戦を進めているイスラエルにとって、ヒズボラとの「二正面作戦」は避けたいところだ。ワグネルがヒズボラの軍事的な支援を行うことは痛手となる。
ワグネル創設者のプリゴジン氏は、6月に反乱を起こし、8月に飛行機事故で急死した。その後は一部がロシア軍に組み込まれるなど再編が進み、プーチン政権の影響力が強まっているとの見方がある。
プーチン大統領は10月30日、イスラエルの後ろ盾である米国が自国の覇権維持のために世界の不安定化を望み「停戦を求める国々をおとしめている」と非難した。ハマスに共感を示しつつ、ウクライナでの軍事作戦は「全世界とパレスチナの人々の運命を決める戦い」だと一方的に主張し、侵略を正当化しようとしている。
●ロシア軍 消耗戦準備か“受刑者などの部隊 突撃させる可能性” 11/3
ロシア軍は、掌握をねらうウクライナ東部の激戦地で、多くの兵士の犠牲を出しながらも再び激しい消耗戦を仕掛ける準備をしているとの見方が出ていて、抗戦するウクライナ側は警戒を強めています。
ロシア軍は、ウクライナ東部ドネツク州のウクライナ側の拠点アウディーイウカの掌握をねらって、多くの兵士の犠牲を出しながら攻撃を続けています。
アウディーイウカの戦況について、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は1日の分析で「ロシア軍は歩兵を中心とした、消耗の激しい地上攻撃を再び仕掛ける準備をしているとみられる」とした上で、受刑者などで構成された部隊を突撃させる可能性があるとの見方を示しました。
前線のウクライナ軍の報道官も2日、地元メディアに対して、ロシア軍がアウディーイウカ周辺で新たな攻撃に向けて部隊の増強など準備をしているとする見方を示し警戒を強めています。
一方、ロシア国防省は2日、ロシアが占拠を続けるウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所の近くで、ウクライナ側の無人機9機を撃墜したと発表しました。
またロシア外務省はザハロワ報道官のコメントを発表し、2機が近くの宿泊施設を直撃したと主張した上で「IAEA=国際原子力機関の専門家が交代する時期であり、無責任な挑発行為だ」とウクライナ側を一方的に非難するなど、揺さぶりを続けています。
●世界の耳目が中東に集中する隙に…ロシア、ウクライナ10州の118都市を爆撃 11/3
ロシアが1日(現地時間)、ウクライナの10州におびただしい量の爆弾を落とし、今年に入って最大規模の空爆を行った。イスラエルとハマスの戦争でウクライナ戦争に対する国際社会の関心が薄れている隙を狙い、全面的な圧迫に乗り出したものとみられる。
ウクライナのイゴール・クリメンコ内務相は同日、ソーシャルメディアへの投稿で「24時間にわたり敵軍が10州の118の都市と村を爆撃した」とし、「これは今年に入って一日でなされた攻撃としては最大規模」だと明らかにした。AFP通信などが報じた。ウクライナには24州と3つの特別行政区域があるが、このうち40%程度が攻撃を受けたわけだ。ロシア軍の攻撃は東部と南部戦線に集中しているが、比較的攻撃が少なかった中部地域の産業施設も空爆の被害を受けた。
ウクライナ空軍は、ロシア軍がドローンとミサイルを動員して中部ポルタバ州を攻撃したとし、この地域を狙ったドローン20機のうち18機とミサイル1発を撃墜したと発表した。ユーリ・イナート空軍報道官は「ポルタバ州に(一日の間に)数回にわたる空爆があった」と説明した。
同日の攻撃で、ポルタバ州クレメンチュクにある精油施設で火事が発生し、数時間にわたる鎮火作業の末に火が消し止められたと、地元の軍政庁関係者が明らかにした。ウクライナのエネルギー省は、ポルタバ州の3つの村の電気が途絶え、基盤施設も損壊したと発表した。近隣のクロピヴニツキー地域にもドローンの破片などが落ち、鉄道用電力が途絶えた。
ロシア軍は南部のヘルソン州とニコポリ州も爆撃した。ウクライナ南部司令部のナタリア・コメニウク報道官は、昨年夏、ヘルソン州を横切るドニプロ川の東側に押されたロシア軍が、20発の空中投下爆弾で川の西側地域を攻撃したと伝えた。この川を挟んでザポリージャ原発に面しているニコポリ州ニコポリ市の住居地域も攻撃を受け、59歳の女性1人が死亡し、4人が負傷した。
最大の激戦地である東部ドネツク州では、中部の都市アウディイウカをめぐり激しい攻防が繰り広げられた。同市の軍政責任者のビタリー・バラバシ氏は「昨日だけで40回に及ぶ大規模砲撃が発生し、都市がほぼ消えるほど破壊された」とし、ロシア軍が再び集中攻撃に乗り出す準備をしていると警告した。ロシア軍は先月10日から同都市を包囲し、20日以上集中攻撃を行っている。
ウクライナの軍事アナリスト、オレクサンドル・コバレンコ氏は、「現在、ロシア軍約4万人がこの都市周辺に結集している」と伝えた。さらに「ロシア軍はこの都市の占領作戦で相当な被害を受けたが、依然として占領を試みている」とし、「これは戦術的目標というより政治的目標になった」と指摘した。
ウクライナのワレリー・ザルジニー総司令官は、冬季に入り戦争が「陣地戦」中心の新しい局面に入ったと述べた。ザルジニー総司令官は英誌「エコノミスト」に寄稿した文で、戦争局面が「素早く動く機動戦から陣地を取って消耗的な戦闘を繰り広げる段階に変わっている」とし、「このような状況は、ロシアに軍事力を再構築する機会を提供し、ロシア軍に有利に働くだろう」と指摘した。さらに「このような状況を突破するためには、ミサイルや砲弾などの基本的な兵器が必要だ」と述べ、西側に改めて兵器供与を求めた。
一方、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は同日、北大西洋条約機構(NATO)の軍事支援にもかかわらずウクライナが戦争で敗北していると主張した。さらに、ロシア軍がザポリージャ州、ヘルソン州、ドネツク州で攻勢を強化し、ウクライナ軍が大きな損失を被って「兵士の士気も低下した」と語った。
●ウクライナ最高指導者「ロシアとの戦争は行き詰まり」 11/3
ウクライナの最高司令官は、数ヶ月にわたる激しい戦闘にもかかわらず戦線はほとんど変化しておらず、ウクライナ軍はロシアとの「行き詰まり」に陥っており、差し迫った大きな進展はないことを認めた。 これは、行き詰まった軍の反撃に対するウクライナ高官によるこれまでで最も率直な評価である。
ヴァレリー・ザロズニー司令官はエコノミスト紙に「第一次世界大戦と同じように、我々は行き詰まる技術レベルに達している」と語った。 インタビュー 水曜日に発行されました。 「おそらく、うまく深く浸透することはないだろう。」
ザロズヌイ将軍は、ウクライナ軍上級司令官が戦闘が膠着状態に達したと発言したのは初めてだが、膠着状態を打破するには制空権を獲得し砲撃の効果を高めるための技術進歩が必要かもしれないと付け加えた。 同氏は、ロシア軍も前進できないと付け加えた。
同将軍は、双方の最新技術と精密兵器により、無人機の使用拡大や無人機妨害能力など、部隊が敵陣に侵入することを阻止していると述べた。 同氏は膠着状態を打破する方法として電子戦の進歩を求めた。
「私たちは新しいテクノロジーに組み込まれた力を活用する必要があります」と彼は言いました。
同将軍はまた、突破口を阻止し戦争を長引かせるために自国の軍隊を犠牲にするロシアの姿勢を過小評価しているとも述べた。 「それは私のせいだった」と彼は言った。 ロシアは少なくとも15万人の死者を出した。 他の国であれば、これほどの損失があれば戦争は止まっただろう。 ロシアにおける人的被害に関する彼の説明は、独自に検証することができなかった。
同氏のコメントは、侵攻してくるロシア軍との20か月にわたる戦いの中で、ウクライナにとって特に困難な時期に発せられた。 西側諸国がウクライナに供給した兵器はロシアの防衛を突破することができず、状況を変えることができる兵器は少数しか残されていなかった。 一部の下院共和党議員が追加支援を拒否している米国も含め、西側同盟諸国のウクライナ支援継続の意欲は低下している。
ウクライナ当局者らはまた、イスラエルとハマスの戦争が西側諸国の注意をウクライナからそらし、ロシアとの戦いに使用できる武器供給を枯渇させることを懸念している。
ウクライナは一連の反撃で、最初の侵攻で占領した領土のほぼ半分からロシア軍を追い出すことに成功したが、多くの軍事アナリストが驚いたことに、同将軍は「現段階の戦争は徐々に本格化しつつある」と述べた。ポジションフォーム。」 双方がお互いを釘付けにすることができる場所。 彼はAで評価した 9ページの記事 この記事はインタビューとともに掲載され、「出口」を見つける必要性を指摘した。
クレムリン報道官のドミトリー・S氏は次のように語った。 ペスコフ氏は木曜日、戦争は「膠着状態ではない」とし、ロシア軍は戦場で前進を続けるだろうと述べた。
ザロズヌイ将軍のコメントは、戦場での迅速な成功に対する連合国の期待を和らげようとするウクライナ当局者らの広範な努力の中で発せられ、同時にウクライナが戦場で優位に立つことができるよう軍事支援を維持するよう求めた。 火曜日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、外の世界は「成功に慣れている」と述べ、ウクライナ軍の成果が「当然のことと思われている」と不満を述べた。
国防治安局長官ローマン・コステンコ大佐は、将軍の記事には具体的にそうは書かれていなかったが、戦争が「その場での」戦闘になったという評価は、ウクライナの反撃が目標を達成することなく終了したことを認めたことを示していると述べた。目標。 ウクライナ最高議会情報委員会
これは、キエフ政府の立場として表明されたものではなく、しばらくの間、軍事アナリストの結論であった。 コステンコ氏は、ウクライナは南部で引き続き攻勢を続けているが、前進はゆっくりであると述べた。 同氏は、この記事は「勝利は明日には訪れないということを社会に知らしめた」と述べた。
コステンコ氏は、この記事は武器調達を担当する国防省に対し、戦車や大砲を含む重火器の調達に焦点を当てることは、新技術や精密兵器の探索よりも重要ではないことを指摘すべきだと述べた。 同氏は、ウクライナ軍はすでに大砲よりも無人機でロシアの大砲や装甲車両を多く破壊していると述べた。
ザロズヌイ将軍はインタビューと記事の中で、この対立は主に戦場での技術的平等の結果であり、双方とも最新のセンサーを使って軍隊や装備を探知し、先進兵器を使ってそれらを破壊したと指摘した。
同氏は、数週間にわたって繰り返しロシアの攻撃にさらされてきたウクライナ東部の都市アヴディウカの前線を訪れ、戦闘の新たな状況を理解したと述べた。 大砲と無人機を使用することで、各陣営は敵と目標の前進部隊を消耗させ、抑制することができます。
「単純な真実は、私たちは敵の行動をすべて見ており、敵も私たちの行動をすべて見ているということです」と彼は書いた。
ザロズヌイ将軍は、西側諸国が提供した兵器の有効性は、ロシアの通信妨害システムに対して脆弱なGPS航法技術を使用したため低下したと述べた。
電子戦 ロシアの能力がウクライナの能力を上回っているため、これは戦争の大部分の背後に隠れた手である。 ロシア軍は携帯電話の信号を探知し、GPSや無線周波数を妨害することができます。 ウクライナには独自の電子戦システムがあるが、兵士らはこの分野ではロシアが一貫して優位に立っていると不満を漏らすことが多い。
これは、無線が時々役に立たない環境で戦おうとするウクライナ軍の編隊がますます孤立することを意味する。
ロシアによる難読化に直面して、有効な通信設備がなければ歩兵、戦車、砲兵による支援間の調整が極めて困難であるため、ウクライナ軍は多くの場合、大規模に集結して攻撃することができない。
ロシア軍部隊もウクライナ軍の妨害により同様の問題に直面しているが、ウクライナの能力が限られているため、ロシア軍部隊がどの程度広範囲に規律を持って対応しているかは不明である。
5か月前に始まり、ウクライナ軍が南部のロシア軍を分断できるとの期待を抱いて始まった南部でのキエフの反撃は、ほぼ停止したようだ。 ウクライナ軍はロシアの防御陣地の巨大な層を突破することができなかった。
戦略国際​​問題研究センターはAに数えられます。 最終分析 8月下旬まで、ウクライナ軍は1日あたり約90メートルの速度で南下していた。
フランス戦略研究財団のティボー・フィーユ副所長は「これは戦術的な妨害だ」と述べ、ロシア軍とウクライナ軍が互いの空軍・地上軍の能力を打ち消し合っていると指摘した。 「前線には十分な時間があった。」
ザロズヌイ将軍のコメントに応えてペスコフ氏は、キエフがウクライナの勝利が見えなくなったと悟るのが早ければ早いほど、「新たな地平が早く開くだろう」と述べた。
彼が何を指しているのかは明らかではなかった。 クレムリンは長年、ウクライナがロシアへの領土割譲に同意すれば和平が実現する可能性を示唆しているが、双方が交渉による解決について話し合う意向を示す兆候はない。
ザロズヌイ将軍はまさにこの懸念を表明した。彼の軍隊が第一次世界大戦と同様の血なまぐさい塹壕戦に巻き込まれるのではないか、この戦争は何年も続く可能性があり、その兵力の多さによりロシアが有利になる可能性がある。
同氏は記事の中で、「ウクライナ軍はこの種の戦争から脱却するための基本的な軍事能力と技術を必要としている」と述べた。 これには、ロシアの防空システムを突破するためのドローンやより高度な砲兵兵器の大量使用や、ロシアが独自のドローンを飛行させるのを阻止するための妨害装置が含まれる。
ウクライナは長年西側に対し、来年中に実戦投入される予定のF-16戦闘機の取得を強く求めてきた。 しかし、ザロズヌイ将軍は、ロシアが防空能力を向上させているため、これらの兵器は戦争のこの新たな段階では以前よりも役に立たなくなるだろうと示唆しているようだ。
●ウクライナ軍「膠着状態にある」、航空優勢の確保強調…露軍は攻勢 11/3
ウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官は1日、英誌エコノミストへの寄稿で、ロシア軍との現在の戦況は「膠着(こうちゃく)状態にある」と認め、一進一退の消耗戦に移行しているとの認識を示した。最も必要なのは航空優勢の確保だと強調した。
ザルジニー氏は、現状打破へ、ロシアが敷設した地雷の突破や、電子戦能力の強化などが必要と指摘した。戦争の長期化は「あらゆる手段で軍事力を再編成・増強しようとするロシアに有益だ」とし、ウクライナに脅威になると強調した。
31日、ウクライナ東部ドネツク州で、爆撃後に燃え上がるタンク車=ロイター
露軍は犠牲をいとわず東部ドネツク州アウディーイウカへの攻勢を続ける構えだ。米政策研究機関「戦争研究所」は1日、露軍が歩兵主導の地上攻撃を再び仕掛ける準備をしていると指摘した。受刑者らを中心とする部隊が正面から突撃する可能性があるという。
露軍はウクライナ全域への攻勢も強めている。ウクライナのイゴール・クリメンコ内相は1日、SNSで、露軍がこの24時間で「10地域の118集落を攻撃した」とし、今年に入り最大規模だと指摘した。中部ポルタワ州クレメンチュクでは攻撃を受けた製油所が炎上し、送電線も被害を受け、停電が発生した。
また、ウクライナ軍によると、ロシアの侵略開始以来、地雷や爆発物で民間人260人以上が死亡した。農作業中に被害に遭うケースも多く、事故の4分の1は農地で発生したという。
●「東部でロ軍に多大損害」 ゼレンスキー大統領 11/3
ウクライナのゼレンスキー大統領は2日、ロシア軍が攻勢を仕掛けている東部ドネツク州でロシア側に多大な損害を与えたと明らかにし、南部戦線では攻撃を続けていると主張した。オランダのオロングレン国防相と首都キーウ(キエフ)で会談し、各国が重要兵器の供与を決断する後押しをしたとして、謝意を示した。大統領府などが発表した。
英国防省は2日、ウクライナ軍の攻撃でロシアが先週、長距離地対空ミサイルの発射装置を少なくとも4基失った恐れがあるとの分析を発表。損失により、ロシア側の防空が弱まる可能性があるとの考えを示した。クリミア半島でも地対空ミサイル関連設備が損傷したと指摘。 
●年金基金に攻撃、7人死亡 11/3
ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ南部ヘルソン州出身のバシューク・ロシア上院議員は3日、ロシア側の実効支配下にある同州中部の集落チャプリンカにウクライナ軍のミサイル攻撃があり7人が死亡、9人が負傷したと明らかにした。タス通信が報じた。標的になったのは年金基金などが入居する建物という。
バシューク氏は通信アプリの投稿で、軍事活動とは関係のない建物が狙われたと指摘。「ウクライナ軍が民間インフラを攻撃するのは初めてではない」と非難した。
ヘルソン州ロシア側行政府のサリド知事は、米国製ミサイル6発がチャプリンカに撃ち込まれ、防空システムで破壊されなかった2発が命中したと説明した。
●ウクライナ向け西側供与の兵器の一部、タリバンの手に=ロ大統領 11/3
ロシアのプーチン大統領は3日、西側諸国がウクライナに供与した兵器の一部が違法な武器市場を通じて中東に流れ、イスラム主義組織タリバンに売られていると主張した。
プーチン氏は「ウクライナから中東に兵器が流れていると言われている。もちろんそうだ、売られているのだから」とし、「タリバンに売られ、そこからどこへでも流れる」と発言した。
2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以来、西側の大国はロシア軍を打ち負かすためウクライナに数百億ドルもの武器を供与してきた。
キール世界経済研究所によると、米国はじめ西側の8つの援助大国はウクライナに少なくとも総額840億ユーロ(900億ドル)の軍事支援を約束した。
ウクライナは供与された武器を厳重に管理しているとするものの、西側の安全保障当局者の一部は懸念を示しており、米国はウクライナに対して汚職問題により広く取り組むよう求めた。
22年6月、国際刑事警察機構(インターポール)のユルゲン・ストック事務総長は、ウクライナに供与される兵器の一部が犯罪組織の手に渡る恐れがあると警告していた。
「国際組織犯罪に対抗するグローバル・イニシアティブ」が今年3月にまとめたウクライナでの戦闘と違法な武器取引に関する報告書は「現在、ウクライナ紛争地域からの武器の大量の流出はない」とした上で、現在の戦闘が終結した際にはウクライナの戦場が秩序のない新たな武器庫となる可能性があることを前例が示しているとも言及した。
●ロシア軍の防衛線・人海戦術に苦戦、拠点都市の奪還進まず… 11/3
ウクライナ軍がロシアに占領された南・東部の領土奪還を目指す大規模な反転攻勢の着手から4日で5か月となる。ウクライナ軍は主戦場と位置付ける南部ザポリージャ州一帯の戦線で、露軍の防衛線と人海戦術に手を焼き、戦況は膠着(こうちゃく)状態に陥っている。東部では露軍が犠牲をいとわぬ攻勢に転じ、反攻の障害になっている。
ウクライナ軍は2日、ザポリージャ州の補給拠点都市メリトポリ方面で「敵の人員と装備に損害を与えた」と発表し戦果を強調した。
ただ、ウクライナ軍の足踏みは長期化している。ウクライナ軍がメリトポリ奪還を目指す戦線の起点オリヒウから約15キロ・メートル南方のロボティネに到達したのは8月だ。それ以降、ほとんど前進できていない。ロボティネから目的地のメリトポリまで約75キロ・メートルある。
ウクライナ軍の反攻は、ロシアが一方的に併合した南部クリミアと露本土の間にある拠点都市を奪還し、クリミアを孤立させる狙いだったが、年内の実現は不可能な情勢だ。露軍がウクライナ領の約17%を占領している状況は5か月前からほぼ変化がない。
ウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官は、英誌エコノミストとの最近のインタビューで、戦況が「膠着状態にある」と述べた。総司令官が率直に苦境を認めたのは、米欧から迅速に高性能兵器の支援を受けなければ戦局を打開できないとの危機感があるためとみられる。
ウクライナ軍は10月中旬以降、南部ヘルソン州ドニプロ川東岸の露軍占領地域への渡河作戦を実施して、拠点を維持しているとみられるが露軍は抵抗している。
対する露軍は10月10日頃から東部ドネツク州アウディーイウカで攻勢に出ている。ウクライナ軍は一帯での露軍側の死傷者が5000人を超えたと主張する。露軍の損失は記録的な水準に拡大しているとされるが、露軍は部隊の追加投入を続けている。露軍がプーチン大統領の出馬が有力視される来年3月予定の大統領選に向け「戦果」を得ようとしているとの見方が根強い。
英国防省は、露軍による巡航ミサイルを使った攻撃が減少している点に注目し、ウクライナのエネルギー施設を攻撃するため温存している可能性があるとの見方を示している。
●北極圏LNG開発、外国企業の参加継続困難か ロシア主導、日本も権益 11/3
ロシア紙コメルサント電子版は3日、日本が権益の一部を持つ北極圏の液化天然ガス(LNG)開発事業「アークティックLNG2」がウクライナ侵攻を理由にした米政府の対ロ追加制裁に含まれたことで、出資する外国企業は銀行を通じた支払いができなくなり、事業への参加継続が困難になるとの見方を報じた。
同紙は、対ロ制裁を科しロシア政府から「非友好国」に指定されているフランスと日本の企業についてはプーチン政権が権益の売却などを認めない可能性が高く、撤退も容易ではないとの専門家の意見を伝えている。
タス通信によると、アーク2を主導するロシア天然ガス大手ノバテクのミヘルソン社長は3日、訪問先のウズベキスタンで、事業が縮小すればLNGの国際価格は上昇するだろうと指摘した。

 

●「世界一の富豪」がウクライナを救った…プーチン得意の「情報工作」が頓挫 11/4
なぜロシアは「ハイブリッド戦」を展開しなかったのか
もしロシアが軍事行動に出る場合、戦車などによる軍事行動とともに、サイバー攻撃も駆使する「ハイブリッド戦」を展開すると言われてきました。
ところが今回の戦況の推移を見ると、ロシア軍のサイバー攻撃が有効だったとは、必ずしも言えない状態が続きました。
たとえば2014年にロシアがクリミア半島に電撃的に侵攻して占領した際には、ウクライナ政府のコンピューター網にサイバー攻撃が仕掛けられ、政府の機能がマヒしてしまったケースがありました。
そこで今回も同じような攻撃が仕掛けられるのではないかと危惧されていたのですが、それほどの被害が出ないで済んでいます。2014年以降、アメリカがサイバー攻撃を防ぐ技術や装備をウクライナに提供していたからです。
つまり、ロシアのサイバー攻撃は、アメリカが供与した技術や装備によって防がれたというわけです。実際、どの程度の攻撃が行われたのか。
アメリカがウクライナに提供したもの
たとえばマイクロソフトは2022年4月27日に、ロシアが行ったサイバー攻撃に関するレポートを出しています。
そのレポートによれば、ロシアは実際の侵攻前から、積極的にウクライナのインフラに対するサイバー攻撃を加えていました。わかっているだけで実に237回の攻撃を行い、そのうち約40件はウクライナの数百のシステムファイルを破壊・抹消したと報告されています。
さらにロシアは原発などの発電所、空港などにサイバー攻撃を加え、その直後にミサイルなどの実際の攻撃を加えていたこともわかっています。おそらくこれは、サイバー攻撃だけではインフラ機能を破壊しきれなかったので、実際の火力による攻撃、つまり物理的な破壊に切り替えたのでしょう。
2014年とは違い、ウクライナがロシアのサイバー攻撃を防御できたのは、アメリカが提供した「相応の備え」があったからこそです。
アメリカは、2021年の10月から11月にかけて、陸軍のサイバー部隊やアメリカ政府が業務委託した民間企業の社員をウクライナに派遣し、ウクライナ政府のコンピューターシステム自体にコンピューターウイルスが忍び込んでいないかチェックしました。
その結果、鉄道システムに「ワイパー」と呼ばれるウイルスが潜んでいるのを発見、駆除しています。「ワイパー」は、普段はじっと潜んでいるだけですが、外部から指示を受けると突然作動し、システムを破壊するウイルスです。ロシアがウクライナに侵攻した際、大勢のウクライナ国民が鉄道で避難しました。
もしワイパーの存在に事前に気づかなければ、鉄道網は大混乱に陥っていたことでしょう。
最も役に立った機器
今回、ロシアのウクライナ侵攻で、ウクライナにとって極めて役立ったのは、アメリカのスペースXの最高経営責任者のイーロン・マスク氏が提供した「スターリンク」でしょう。
「スターリンク」は、2000基を超える小型の通信衛星を低い軌道に乗せて地球を周回させています。この衛星を使うと、ウクライナのどこにいても通信が途切れることはありません。
ロシア軍がウクライナに侵攻し、携帯電話の中継基地などを破壊したため、通信が難しくなりました。そこでウクライナの副首相がツイッター上でマスク氏に助けを求めると、いち早く通信が可能になるようにスターリンクの機器5000基以上が寄付されたというのです。
これにより、ウクライナ軍はどこにいても連絡が取れ、戦闘に大きく貢献しました。実際の戦闘と同じくらい重要なのが情報です。侵攻開始当初から、ロシアは「ゼレンスキーは首都を捨てて逃げだした。国民を見捨てた」という偽情報をSNSやメディアによって拡散してきました。
こうしたロシアの情報工作、世論や決定権者に対する影響力工作はソ連時代からの「得意技」で、KGB仕込みの工作戦術を、インターネットと組み合わせることで磨き上げてきました。
ウクライナ戦争においても当然、ロシア側の言い分を客観情報のように装って流したり、ウクライナの言い分を否定するフェイク画像をネット上で拡散したりするなどの情報戦を展開しています。
もしスターリンクがなければ…
ロシアの情報戦は、ウクライナの人々だけではなく、NATO諸国の国民はもちろん、日本や、いわゆる西側諸国全体をターゲットとしているのです。もしスターリンクがなく、ウクライナ発の情報が国民に届かなければ、ウクライナ国民は戦意を喪失していたか、ゼレンスキーを敵視するようになっていたかもしれません。あるいは周辺国も、ウクライナへの支援を打ち切っていた可能性があります。
しかしゼレンスキーは、「私は首都にいる」と他の閣僚と一緒にスマートフォンを使って「生中継」し、ウクライナ国民だけではなく、ウクライナを支援する各国の人々を安心させました。
ロシアの偽情報を自らの情報によって打ち消すという、ウクライナ戦争の情報戦を象徴するような場面でした。ゼレンスキー大統領による日々の発表が、途絶えることなく国民に、あるいは全世界に届いたのは、スターリンクの働きがあったからなのです。
さらに2022年3月にゼレンスキーが降伏を呼び掛ける偽の動画が、ロシアのSNSで拡散されるという出来事もありました。実際にゼレンスキーが喋っているかのような、一見しただけでは見分けのつかない動画です。こうした動画や画像は「ディープフェイク」と呼ばれ、新たな戦争の武器になるだろうとかねて指摘されてきました。
新しい戦争の形
「ゼレンスキー降伏勧告動画」は、誰が作ったのか明らかになっていませんが、当然ながらロシアの関与が疑われています。これまでにも、オバマ大統領やトランプ大統領が実際には言ってもいないセリフを話しているかのような偽動画が作成されてきましたが、まさにこのゼレンスキー動画は、ディープフェイクが「実戦投入」された事例となりました。
ただ、これもゼレンスキー自身が「偽物だ」と発信したことで事なきを得ました。もしこうした発信がなければ、戦況が大きく変わっていた可能性さえあります。
さらには、ウクライナの人々が地下壕(ごう)や地下鉄に避難を余儀なくされている実態、自分の部屋から爆音が聞こえる動画などを、自分のスマートフォンから発信したことも、国際世論に対する強いアピールになりました。
戦時の情報戦は、インターネットやスマートフォンによって、個人個人が発信者となり、さらには工作のターゲットにもなるということを、このウクライナ戦争はまざまざと見せつけたのです。
マイクロソフトが発表した「教訓」
マイクロソフトは2022年6月、「ウクライナの防衛 サイバー戦争の初期の教訓」というレポートを発表しています。ここでは「各国は最新テクノロジを駆使して戦争を行い、戦争そのものがテクノロジの革新を加速する」としたうえで、ロシア対ウクライナのサイバー空間の戦いから得られた結論を示しています。
レポートでは4つのポイントを取り上げています。
第1に、先にも述べた「ワイパー」攻撃のような、事前に仕込まれた脅威を見つけることの重要性。
第2に、肉眼で見えないサイバー上の脅威に対する防御を、AIなどを駆使して迅速に行うことの必要性。
第3に、ウクライナ以外の同盟国の政府を標的としたサイバー上の攻撃やスパイ活動に対する警戒。
そして第4に、サイバーを介したネットワーク、システムの破壊などの攻撃や情報窃取だけでなく、情報戦・影響力工作に留意することを挙げています。
国境もなく、目に見えない状態で日常的に行われているサイバー空間でのつばぜり合い。実際の戦地からは遠く離れている日本も、サイバー戦争については全く他人事ではありません。
ロシアが「ワクチン脅威論」を流布したワケ
特に4つ目の影響力工作には注目する必要があります。
マイクロソフトの分析によれば、開戦後にロシアは自国を有利にするためのプロパガンダ情報を拡散し、その拡散度合いは開戦前と比べてウクライナで216%、アメリカで82%拡大した、と報告しています。
しかも直接戦争にかかわる話題だけではなく、ロシアが「ワクチン脅威論」を流布し、他国の国民に自国政府に対する不信感を植え付けようとしていたことも指摘されています。目に見えないサイバー空間で、実際に戦争を行っているわけではない国に対しても、日常的に攻撃が行われている実態——。
ハイブリッド戦の時代は、軍事手段と非軍事手段の区別だけでなく、戦時と有事、さらには戦争当事国とそうでない国の境目をなくすものであり、攻撃対象も、かつてのスパイが工作対象とした政府や軍の要人、メディア関係者などに限らず、「一般市民」までも巻き込むものであることに留意しなければならない時代なのです。
ロシアのスパイが行っていたこと
一方で、ウクライナ国内ではロシアのスパイの摘発に追われました。2022年7月には検事総長とウクライナの「保安局」の長官が解任されています。両氏が管轄する機関で60人以上がロシアに協力した疑いが出たため、その責任を取らされたのです。
解任された2人はいずれもゼレンスキー大統領の側近でした。ウクライナ政府にとっては大きな痛手でした。ゼレンスキー大統領は、国民向けのビデオ演説で、「国家反逆」などの疑いで、650件を超える捜査が進められていると説明しています。
保安局とはウクライナの情報機関。ソ連時代にはKGBでした。一方、ロシアの情報機関のFSBも、もともとはソ連のKGBです。いわば仲間同士でした。
ウクライナが独立を果たした後も、ロシアのスパイだった局員が多数保安局の中に潜伏していたということなのです。熾烈(しれつ)なスパイ合戦の一端が見えました。
当初アメリカは、自らが掴んだロシアの軍事情報について、ウクライナに速報することをためらっていました。情報を加工しないでウクライナ側に伝えると、ウクライナ政府内に潜んでいるロシアのスパイが内容をロシアに伝えることで、ロシア内のアメリカの情報源が暴露されてしまうことを恐れたからです。
ウクライナ国内でロシアのスパイ網が摘発されたことで、アメリカはロシアの軍事情報を速報するようになりました。ロシアによるウクライナ侵攻でも、このようにスパイ活動が展開されていました。
スパイ活動は、時として大きく報道されることがありますが、普段は目にすることがないものです。でも、スパイ活動によって世界史が大きく書き替えられたこともあるのです。
●ワグネル反乱「詳報し過ぎ」 タス通信の社長更迭―ロシア紙 11/4
ロシア紙モスクワ・タイムズ(電子版)は3日、国営タス通信の前社長が7月に退任した内幕について、民間軍事会社ワグネルによる6月の武装反乱を「詳しく報じ過ぎた」ことが原因の更迭だったと伝えた。タスは反乱の「状況証拠」として、ワグネルが南部ロストフナドヌーを占拠する写真をいち早く配信していた。
更迭されたのは、タスを11年間率いたミハイロフ前社長。モスクワ・タイムズによると、政府関係者は「重要業務が報道ではなく、プーチン政権にとって正しい見方の周知であることをタスは忘れていた」と警告した。
●米ウクライナ支援、一部財源が枯渇 「今後は小出しに」 11/4
米政府は3日、ロシアの侵略が続くウクライナへの4億2500万ドル(約633億円)の追加軍事支援を発表した。この結果、議会が承認済みの資金枠「ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)」が枯渇し、今後は大統領の権限で米軍在庫から供与できる枠組みから小出しに支援を続けるとしている。
ウクライナとイスラエル支援を一括した緊急予算案の行方も不透明感が漂い、「戦闘が続く限り支え続ける」としてきた米国のウクライナ支援に財源上の制約が急浮上してきた。
今回の内訳はロシアの無人機攻撃に対処する防空システム3億ドルをUSAIから拠出。高機動ロケット砲システム「ハイマース」の弾薬などの補充に1億2500万ドル分を「緊急時大統領在庫引き出し権(PDA)」から拠出する。
ジャンピエール大統領報道官は3日、USAIは今回の支援で使い果たすと指摘。ウクライナが戦場で必要とする武器はPDAから供与を続けるとしつつ「米国の支援能力を可能な限り引き延ばすため、より小さなパッケージで供与を始める」と述べた。ロイター通信によると、PDAは残り約50億ドル分ある。
支援の財源をめぐっては政府が10月下旬、ウクライナ支援に614億ドル、イスラム原理主義組織ハマスとの戦闘が続くイスラエル支援に143億ドル、インド太平洋向け支援20億ドルなどで構成する1060億ドルの緊急予算案を議会に要請。
しかし、下院は共和党のジョンソン新議長の主導でイスラエルに絞った予算案を賛成多数で可決。親イスラエルで一致するが、ウクライナ支援に否定的な党内の空気を反映した形だ。
民主党が多数派の上院は下院の案に反対の意向。バイデン大統領も仮に両院で可決しても拒否権を行使する方針を示す。だが、開始から約5カ月を経過したウクライナ軍の反攻作戦が難航する中、ジャンピエール氏は「米国がウクライナと共にあり続けることを世界とプーチン大統領に示す必要がある」と議会に緊急予算案の早期可決を訴えた。
●「対立から協調」の岸田外交への不安 11/4
第212回臨時国会の開会に当たり、去る10月23日、岸田文雄首相が所信表明演説を行った。首相官邸発表の演説全文は、小見出し込みで8868文字、盛りだくさんの内容だが、大事な二つの言葉が含まれていなかった。
今回の所信表明演説では、「経済、経済、経済」が注目を集めたが、その陰に隠れて「新しい資本主義」が一度も出てこなかったことは注目されていない。「新しい資本主義」は岸田内閣の看板だったはずである。
好意的にみれば、これは言葉の置き換えかもしれない。「低物価・低賃金・低成長のコストカット型経済」から「持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済」への変革、そして「供給力の強化」と「国民への還元」を「車の両輪」として総合経済対策を取りまとめ、実行する決意は「新しい資本主義」の中身と言えなくもない。
党の政策変える合図か
しかし「経済、経済、経済」が、1997年5月、18年ぶりの政権交代を実現した「ニュー・レイバー」の旗手、ブレア英首相が所信表明演説で「教育、教育、教育」と連呼した故事に倣ったものだとすると、そこに別の意図を見いださざるを得ない。すなわち、ブレア首相は、サッチャリズム政策から「第三の道」への路線変更、つまり価値観の転換を含む政策変更を示すために「教育、教育、教育」と連呼したのであった。
そうだとすると、岸田首相の「経済」の連呼は、安倍晋三首相以来の、経済以外の価値観をも重視してきた自民党の政策を変えるシグナルだったことにならないか。2013年以来の日本は、経済において世界をリードする国ではなかったが、安倍首相が自由と民主、法の支配の価値観共有を基礎とする「自由で開かれたインド太平洋(FOIP=Free and Open Indo-Pacific)」の実現を世界に呼び掛け、日米豪印のQUAD首脳会議を定例化させ、アメリカをはじめとする先進7カ国(G7)がFOIPを共有するように働き掛けた。岸田首相が主催した今年5月のG7広島サミットで、首脳コミュニケに「自由で開かれたインド太平洋の重要性を改めて表明する」と明示できたのは、その成果だった。
あれから5カ月、岸田首相の所信表明演説に「自由で開かれたインド太平洋」は一度も出てこなかった。その代わりに、今回、首相は自ら「岸田外交」という語を用いた。安倍首相は、史上最長の首相在任期間において、施政方針および所信表明で「安倍外交」という語は一度も用いなかった。安倍首相はその代わりに「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を語り、「自由で開かれたインド太平洋」の実現を求めた。では、「岸田外交」の中身は何か。
岸田首相は「世界を分断・対立ではなく協調に導く」のが日本の立場だと述べた。では岸田首相に問う、世界を分断・対立させているのは誰か。
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナから危害を加えられずして一方的に武力攻撃を命じ、ウクライナの無辜(むこ)の市民を殺傷して飽くことがない。習近平国家主席指導下の中国は、東シナ海・南シナ海で自国の領土、領海を一方的に拡張しようとし、一秒も支配したことがない台湾を中国の領土に組み込もうとあらゆる圧力をかけ、武力行使を辞さないと公言している。金正恩総書記の北朝鮮は、世界を敵に回しつつ核武装を進め、ミサイル発射に余念がない。
岸田首相は、これらの国々、そしてその指導者を、どのようにして宗旨変えさせて、世界を協調に導くのだろうか。
自由と民主諦める恐れ
世界の分断・対立を厭(いと)わない相手の意図が変わらないのに、分断・対立を回避して協調する方法は一つしかない。こちらが主張を取り下げて相手に合わせ、相手の要求を呑(の)むことである。自由と民主、法の支配を諦めることである。
ところで、岸田首相は「経済、経済、経済」と連呼した。そうだとすると日本経済の目標達成のために、経済以外に問題があっても、アステラス製薬の幹部社員に続いて、日本のビジネスマンが「スパイ容疑」で続々と逮捕されても、中国との対立より協調を重視して経済関係促進に動かないだろうか。ロシアの天然資源のために、アメリカをはじめとする同志国と異なる対露経済外交を展開しないか。
「自由で開かれたインド太平洋」を掲げない「岸田外交」で、日本はどういう世界を創ろうとしているのか、不安を禁じ得ない。
●「価値観、文化守る戦い」 露大統領、侵攻を正当化 11/4
ロシアのプーチン大統領は3日、ウクライナで続けている軍事作戦により「われわれは自らの道徳的価値観や歴史、文化を守っている」と述べ、国の独立を懸けた歴史的な戦いと位置付けて侵攻を正当化した。4日の祝日「国民統一の日」を前に、モスクワで開かれた国の諮問機関「社会評議会」メンバーとの会合で語った。
プーチン氏は、2014年にウクライナの親ロ派政権が暴徒化した野党側デモで倒されなければ、ロシアによるクリミア半島併合も「なかっただろう」と指摘。その後に起きたウクライナ東部のロシア系住民とウクライナ政府軍の交戦を念頭に、昨年2月の侵攻開始以前にロシアは「攻撃されていた」と主張した。
ウクライナでの汚職は「事実上制度化されている」と述べ、欧米が供与した兵器が中東やアフガニスタンに横流しされていると語った。
●プーチン大統領 ウクライナ占領地域の既成事実化急ぐ考え示す 11/4
ウクライナ軍が反転攻勢を開始して5か月となるものの、こう着した状況が続く中、ロシアのプーチン大統領は、占領地域の既成事実化を急ぐ考えを示しました。
ロシア軍は、ウクライナ東部ドネツク州の拠点アウディーイウカの掌握をねらって、兵士の犠牲もいとわず攻撃を繰り返す一方、ウクライナ軍は南部のザポリージャ州などで反転攻勢を続けています。
イギリス国防省は3日、アウディーイウカ周辺ではロシア軍の攻撃がウクライナ側の強固な防衛に阻まれている一方で、南部では逆にウクライナ軍の部隊が、ロシア側が周到に準備した防御陣地でとどまっていると指摘しました。
その背景として、双方とも防空能力を維持していることや、1200キロに及ぶ戦線を維持するために大半の兵力が必要となり、突破口を開く部隊の編成に苦労していることを挙げています。
ウクライナがことし6月に反転攻勢を開始して5か月となるものの、こう着した状況が続く中、ロシアのプーチン大統領は3日、首都モスクワで政府の諮問機関との会合を開きました。
この中でプーチン大統領は、去年9月に一方的に併合を宣言したドネツク州やザポリージャ州などウクライナ東部と南部の4つの州について、「住民がロシア領になった恩恵をできるだけ早く実感できるようにすべきだ」と述べ、占領地域の既成事実化を急ぐ考えを示しました。
また、9年前にウクライナ南部クリミアを一方的に併合したことにも触れ、「ウクライナときょうだいのような関係ができていれば、クリミアに関連するような行動など誰も思い浮かばなかっただろう」と主張しました。
●ロシア軍 大統領選も念頭にウクライナ東部へ大規模攻撃準備か 11/4
ロシア軍はウクライナ東部の拠点アウディーイウカでさらなる大規模攻撃の準備を進めているとみられています。来年3月に行われる予定のロシアの大統領選挙も念頭に攻勢を強めているという見方も出ています。
ロシア軍は東部ドネツク州のウクライナ側の拠点、アウディーイウカで攻撃を続けていて、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は3日「ロシア軍は第3弾となる大規模攻撃の準備を進めている」と指摘しました。
アウディーイウカを攻撃する思惑についてロシアの安全保障や核戦略に詳しく、現在はヨーロッパを拠点に活動するユーリー・フョードロフ氏はNHKのインタビューに対し、「政治的なものが主体だろう。プーチン大統領が掲げたドネツク州全域の占領という戦略目標の実現のために有利な条件を作ろうとするものだ」と指摘しました。
そして「プーチン大統領にとって勝利が必要となっている。勝利がないままに大統領選挙のキャンペーンを開始するのは都合がよくないということだ」と述べ、来年3月に行われる予定のロシアの大統領選挙も念頭にロシア軍が攻勢を強めているという見方を示しました。
ただ、フョードロフ氏は「軍事的にはアウディーイウカを占領してもロシア軍が先に進むにははるかに多くの兵力が必要となる。この街で終わりとなるだろう」としています。
また、ロシア軍は3日も大規模な無人機攻撃を行い、各地で被害が相次いでいます。
ゼレンスキー大統領はSNSで「冬が近づくにつれ、ロシアのテロリストはさらに被害を与えようとしている。われわれは敵に対応する」と投稿しロシア軍のインフラ施設などに対する攻撃に対抗していく考えを示しました。
●“ゼレンスキー大統領 欧米に裏切られたと感じている” 米雑誌 11/4
ウクライナのゼレンスキー大統領は、アメリカの雑誌「タイム」に対して「最も恐ろしいことは戦争に対する慣れだ」と述べ、大統領側近の1人は、欧米側から必要な軍事支援を受けられていないとして大統領は裏切られたと感じていると明らかにしました。
アメリカの雑誌「タイム」が10月30日付けで報じたところによりますと、ゼレンスキー大統領はことし9月、アメリカを訪問したあとに応じた取材の中で「最も恐ろしいことは戦争に対する慣れだ。戦争疲れの波が押し寄せアメリカやヨーロッパでも見られる」と述べたということです。
また、大統領の側近の1人は「タイム」に対して「欧米側は戦争に勝つ手段を与えずただ生き延びるだけの手段しか提供していない」と述べゼレンスキー大統領は欧米側に裏切られたと感じていると明らかにしました。
また、別の側近は、これまで作戦会議で雑談をしたり冗談を言ったりしていたゼレンスキー大統領について「今では最新の情報を聞いて指示を出し、そして会議の部屋を出るだけだ」と述べました。
一方、戦況が芳しくない中であってもウクライナが最終的に勝利するという大統領の抱く信念が、周囲を心配させるほどにかたくなになっていて、そのことが新たな戦略などを打ち出そうとするチームの努力を損ねているとしています。
また、記事では、ゼレンスキー大統領の訪米を前に、ホワイトハウスがウクライナが行うべき汚職対策のリストを作成するなど国防省での疑惑も伝えられた汚職の問題を解決するようアメリカ側からの圧力が強まっているとしています。
ウクライナの政権内では「仕事への監視が強まり、官僚主義がまひし、士気が下がっている」という声も出ているということです。
この記事の内容についてウクライナのポドリャク大統領府顧問は、31日地元メディアに対して「独自の視点を持つジャーナリストの主観的な見方だ」としたうえで「われわれのパートナーを裏切り者だとは考えていない」と述べ、否定しました。
●ゼレンスキー氏、「疲れ切り西側に失望」 会見の米誌報道 11/4
米週刊誌「タイム」は4日までに、ウクライナのゼレンスキー大統領と会見し、同大統領は支援国のウクライナに対する信頼をつなぎとめる絶え間ない努力を注いでいるため、疲れ切っているなどと報じた。
ゼレンスキー氏は「誰も私のようには我々の勝利を信じていない。誰もがだ」とし、「支援国にその信念をしみこませるためには私の全てのエネルギーが必要だ」と明かした。
同誌は「大統領は疲れている。時には短気になる。支援国の援助がしぼむことを心配している」とも伝えた。ウクライナでの戦闘への「疲労感は波のように寄せている。米国や欧州でこれを見ることができる」と指摘したという。
ゼレンスキー大統領は勝利にこだわっており、休戦や交渉は支持しないとも述べたとした。
イスラム組織「ハマス」とイスラエル軍との交戦に関連し、「当然、ウクライナの問題への関心は中東での事態のため薄れている」とも認めた。
タイム誌はゼレンスキー大統領の側近の話として、「大統領は西側の支援国に裏切られたとも感じている」とも伝えた。支援国は戦争の勝利に必要な手段を与えず、ただ事態を切り抜けるための手段を提供しているとの思いを抱いているとした。
長射程の米戦術ミサイル「エイタクムス」の供与決定に時間がかかり、ウクライナ側が切望していたF16型戦闘機の到着が早くても来春になるなど速度感に欠ける支援のあり方は、ロシアを利するだけとの不満につながっている。
●ロシア軍、欧州最大規模「コークス工場」の掌握狙いか… 11/4
ロイター通信によると、ロシア軍が攻勢を強めるウクライナ東部ドネツク州のアウディーイウカの当局者は3日放送の国営テレビで、露軍の次の目標は中心部に隣接する巨大なコークス工場の掌握だと明かした。露軍の音声通信の傍受で判明したという。露軍は、アウディーイウカ中心部を包囲する狙いとみられる。
欧州最大規模とされるコークス工場は、ウクライナ軍が 要塞 化しているとみられる。露軍が工場を制圧すれば、中心部への補給路を断つことにつながる。当局者は「地面が乾き、前進が可能になれば、いつでも攻撃は始まる」と語り、露軍の大規模攻撃が近く始まる可能性を示唆した。米政策研究機関「戦争研究所」も3日、露軍がアウディーイウカの北側で進軍したのを確認した。
一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が3日にSNSに投稿した画像から、地雷原を除去するなどの役割を担う戦闘車両「M1150 ABV」が確認された。米海兵隊や米陸軍が使用しており、ウクライナ側に供与されたものとみられる。 
●欧米、ウクライナに停戦促す動き 米NBC報道 11/4
ロシアによるウクライナ侵略で、米NBCニュースは4日、複数の米当局者らの話として、ウクライナを支援する欧米諸国がウクライナ側と停戦について「ひそかに」協議を始めたと伝えた。ウクライナ軍の反攻が進まず戦局が膠着(こうちゃく)していることや、ウクライナ軍の疲弊、イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスとの交戦などを背景に、欧米側のウクライナ支援の余力が低下していることが背景だとしている。
NBCによると、停戦に関する欧米とウクライナの協議は、50カ国以上が参加した10月のウクライナ支援国の会合の中で行われた。ウクライナがロシアに一定の譲歩をする見返りに、北大西洋条約機構(NATO)がウクライナの安全を保証し、ロシアの再侵略を防ぐ案が浮上しているという。
ウクライナのゼレンスキー大統領は従来、停戦はロシアによる占領地支配の既成事実化と将来的な再侵略を招くとしてプーチン露政権との交渉を否定。ただ、ウクライナも欧米側の意向を無視できない見通しで、今後、停戦に向けた動きが表面化する可能性もある。
●和平交渉の可能性模索 欧米、ウクライナと協議 報道 11/4
米NBCニュース(電子版)は3日、欧米諸国がウクライナに対し、ロシアとの和平交渉の可能性に関する協議を持ち掛けたと報じた。
戦況がこう着状態に陥り、ウクライナ軍の兵士不足が懸念されていることに加え、イスラエルとイスラム組織ハマスによる軍事衝突を背景に、欧米の支援余力が低下しているため。複数の関係者の話として伝えた。
NBCによると、50カ国以上が参加した10月のウクライナ支援国の会合で協議された。年末から来年初めまでの和平交渉開始を視野に、ウクライナが何を譲歩するのかなどを幅広く話し合った。北大西洋条約機構(NATO)がウクライナの安全を保障し、ロシアによる再侵攻を抑止する案も出ているという。 
●辞任した露タス通信CEOは「大統領府が解任」…ワグネル報道巡り 11/4
ロシアの独立系英字紙「モスクワ・タイムズ」は3日、7月に辞任した国営タス通信のセルゲイ・ミハイロフ最高経営責任者(CEO)について、民間軍事会社「ワグネル」の反乱に関する同通信の報道に不満を持った大統領府に解任されたと伝えた。
6月に起きたワグネルの反乱で、タス通信はワグネル部隊が露南部のロストフ・ナ・ドヌーに入り、市街地などを占拠したことをいち早く写真で報じた。メディアを統括する政府高官が激怒したという。7月5日、ミハイロフ氏は自らの意思で辞任すると発表された。
露政府関係者は「タス通信はあまりに詳細で迅速だった。彼らの仕事は報道ではなく、クレムリンのため正しい物語を作ること」と語ったという。ミハイロフ氏は勲章を受けるなど、プーチン大統領に近いとされていた。
●ウクライナ「脇に追いやられている」 ガザ情勢注目で懸念 ゼレンスキー氏 11/4
ウクライナのゼレンスキー大統領は4日、首都キーウ(キエフ)で記者会見し、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が国際社会の耳目を集める中、「ウクライナは脇に追いやられている」と述べ、対ウクライナ支援低下の可能性に懸念を示した。
ウクライナでの戦争が注目されないようにすることが「ロシアの狙いの一つだ」とも述べ、「この困難を乗り越える」と強調した。
ゼレンスキー氏はこの日、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長と会談し、ウクライナのEU加盟などを協議した。
会見に同席したフォンデアライエン氏はウクライナの加盟を巡り、司法制度などの国内改革を「素晴らしい前進だ」と評価。改革が完了した場合、加盟交渉入りという「野心的な目標を達成できると確信している」と指摘した。 
●クリミアの造船所攻撃 ウクライナ軍 11/4
ウクライナ軍は4日、ロシアが併合した南部クリミア半島のザリフ造船所を攻撃したと表明した。ロシアが創設した「クリミア共和国」のアクショーノフ首長は、ロシア軍がミサイルを迎撃し、破片が造船所の周辺に落ちたと述べた。
ウクライナはクリミアのロシア軍施設への攻撃を続けている。ザリフ造船所は半島東部に位置し、ロシア軍の艦船を建造していた。
英国防省は4日の戦況分析で、ロシア軍が東部ドネツク州アブデーフカで過去3週間に軍用車両約200台を失った可能性が高いと指摘した。歩兵による無謀な作戦に変更し、人的損失が拡大しているもようだ。

 

●欧米当局 ウクライナに停戦交渉の可能性 協議持ちかけか 11/5
ロシアがウクライナへの侵攻を続ける中、アメリカのメディアは欧米の当局者がウクライナに対し、ロシアとの停戦交渉の可能性について協議を持ちかけていたと伝えました。一方、ロシアは東部で攻勢を強め、軍事侵攻を続ける姿勢を強調しています。
アメリカのNBCテレビは4日、アメリカ政府高官などの話として、先月行われたウクライナ支援の会合の場で欧米の当局者がウクライナ政府に対し、ロシアとの停戦交渉の可能性について内々に協議を持ちかけていたと伝えました。
この中では、停戦の合意のためにウクライナ側が何を放棄する必要があるのかなどの概要についても、話があったとしています。
そして、戦況がこう着する中、ウクライナへの軍事支援が継続できるかという懸念が広がっているうえ、イスラエル・パレスチナ情勢によってウクライナ侵攻へのアメリカ国民の関心が大きく低下する中で、この協議が行われたと報じています。
これについてウクライナのゼレンスキー大統領は4日、記者会見で「報道を不快に思う。ロシアと話し合うようにと圧力をかける欧米側の指導者はいない」として、交渉を行う考えはないと強調しました。
一方、ロシア軍は軍事侵攻を続けていてイギリス国防省は4日、「ロシア指導部はわずかな領土獲得のために甚大な人的損失も受け入れる姿勢を示している」としてロシア軍は犠牲をいとわず、東部ドネツク州の拠点アウディーイウカの掌握をねらっていると指摘しています。
また、ロシアのプーチン大統領は4日、ロシアの祝日「民族統一の日」にあわせて首都モスクワで開かれた式典で献花し、その後、集まったボランティアの人たちに対し、「命を危険にさらす人への精神的な支援は重要だ」と述べウクライナの戦闘に参加する兵士をたたえ、侵攻を続ける姿勢を強調しました。
●ウクライナ大統領、和平交渉の可能性巡る欧米からの圧力説を否定 11/5
ウクライナのゼレンスキー大統領は、米国と欧州の当局者がロシアとの和平交渉の可能性について圧力をかけ始めたとする米NBCの報道内容を否定した。
ゼレンスキー大統領は欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長との記者会見で、「誰が何のためにこれを報じたのか分からない」と発言。ウクライナが数カ月にわたり反転攻勢を展開している同国東部と南東部の戦況について「膠着(こうちゃく)状態ではない」と付け加えた。
ウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官は先に、1年9カ月目に入ったロシアとの戦争が第一次世界大戦に似た消耗戦の新段階に入ったと指摘していた。
●欧米諸国がウクライナ側とロシアの和平交渉の可能性密かに協議開始 11/5
ウクライナを支援する欧米諸国が、ウクライナ側とロシアとの和平交渉の可能性について密かに協議を開始したと、アメリカメディアが報じました。
これは、アメリカ当局者の話として、NBCテレビが伝えたもので、先月、ウクライナへの軍事支援に関する国際会議などで話し合われたということです。
これについて、ウクライナのゼレンスキー大統領は4日、キーウを訪れているEU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長との共同会見で、「今、我々がロシアと交渉の座に着き、何かを明け渡すことはあり得ない」として応じない姿勢を示しました。
EUは今月8日にウクライナなどの加盟問題について報告書を公表する予定で、フォンデアライエン委員長は加盟に向けてウクライナは「大幅に前進した」と話しました。
●「プーチン大統領は1人だけ」ロシア大統領報道官“影武者”説を否定 11/5
ロシアのペスコフ大統領報道官は「プーチン大統領は1人だけだ」と述べ、“影武者”説を否定しました。
ロシアの祝日「民族統一の日」にあたる4日、プーチン大統領は「赤の広場」にある記念碑に献花しました。
ロシア正教会トップのキリル総主教ら各宗教関係者や愛国的な団体に所属する若者たちを前に、プーチン氏は特別軍事作戦と称するウクライナ侵攻に参加する兵士らへの精神的な支援が「非常に重要だ」と強調。侵攻継続に向けて国民の団結を訴えました。
「民族統一の日」に合わせて、首都モスクワでは、ロシアの各地域の伝統や産業などを紹介する大規模な展示会「ロシア」が始まりました。去年、一方的に併合したウクライナの4つの州もロシアの地域として紹介されています。
この展示会はプーチン政権下でのロシアの発展をアピールするもので、来年3月の大統領選の後まで続けられる予定だとしていて、事実上の選挙キャンペーンの一環とみられます。
一方、展示会の中で行われたイベントでペスコフ大統領報道官は「メディアやSNSでプーチン大統領の“影武者”が3人なのか4人なのかと憶測が飛び交っているが、プーチン大統領は1人だけだ」と述べ、“影武者”説を否定しました。
プーチン氏をめぐっては、これまでにW影武者W説のほか、健康不安説なども取り沙汰されています。
●プーチン氏の選挙キャンペーンか ロシアで大規模イベント開催 11/5
ロシアでは「民族統一の日」を迎え、大規模なイベントがはじまりました。プーチン大統領の選挙キャンペーンの一環と見られます。
モスクワでは4日、「民族統一の日」にあわせロシアの各地方の伝統工芸や最新技術などを紹介する大規模な展示会「ロシア」がはじまりました。
独立系メディアによりますと、この展示会はプーチン大統領就任以降の約20年間でロシアが、どれだけ発展したかをアピールしているということです。大統領選が終わる4月まで続く予定でプーチン氏の大統領選挙キャンペーンの一貫とみられています。
2022年、ロシアが一方的に併合したウクライナ4州もロシアの一部として紹介されています。
●なぜ失敗国家は「不屈のウクライナ」に豹変できたのか 11/5
ロシアがウクライナに侵攻してから、2回目の冬が近づいている。膠着気味とはいえ、ウクライナは頑強な抵抗を続けている。正直、今回の戦争がこんな形で2年目の半ばを過ぎるとは思いもしなかった。
2022年2月24日にロシア軍が国境を越えた時点で、私は短期間でウクライナはロシアに組み敷かれると予想した。不明を恥じるしかないが、当時、専門家の大半も同じような見通しを持っていたはずだ。ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領がリーダーシップを発揮して反転攻勢に出るなどと言えば、夢想家として笑い物になったことだろう。
払拭しきれなかった「失敗国家」のイメージ
当時、私は日本経済新聞社で編集委員として働いていた。開戦直後のタイミングでニュースキャスターも兼務することになった。日々のメディアチェックに加え、番組のゲストなど専門家と接する機会も多く、戦況自体はかなり詳細に把握していた。
だが、いくら情報を追いかけても、霧が晴れない気分は続いた。根っこにあったのは、長年抱いてきた「失敗国家ウクライナ」のイメージと、大国ロシアを退ける「不屈のウクライナ」の間の大きすぎるギャップだった。とても同じ国とは思えないほど、ウクライナは戦争を挟んで豹変した。なぜそんなことができたのか。
開戦前の私のウクライナ像は、日本人としては平均的なものだったと思う。
1972年生まれの私がウクライナを最初に意識したのは1986年のチェルノブイリ原発事故だった。その後、冷戦終結・ソ連崩壊の過程で「世界第3の核保有国」の処遇が焦点になったこともあり、ウクライナはぼんやりと「核」と重なるイメージの国だった。
近現代史の視点からは、ロシアとドイツという二つの大国に苛まれた受難の国と捉えていた。歴史家ティモシー・スナイダーが『ブラッドランド』(ちくま学芸文庫)で示したように、ウクライナ、ポーランド、ベラルーシの地は夥しい血を吸ってきた。
21世紀以降の印象は「失敗国家」そのものだった。2004年のオレンジ革命、2014年のマイダン革命と改革の兆しが見えても、根深い汚職でまともに機能する政府を持てない国。民主化の波を警戒するロシアの影響下からいつまでも抜け出せない国。そんなイメージだ。天然ガス供給網の要であり、黒海へアクセスする世界有数の穀倉地帯という強みですら、ウラジーミル・プーチン氏の野望を引き寄せる地政学的な呪縛のように映っていた。
言葉を選ばずに言えば、私はウクライナを「呪われた地」と考えていた。まるで他人事のように。
開戦してもキーウにとどまった友人
2022年2月、その遠く離れた失敗国家の命運が、いきなり身近で、切迫したものに変わった。一人の友人が戦禍に巻き込まれる可能性が高まったからだ。
ロシアの侵攻が迫っていた2月上旬、嫌な予感がして、フリージャーナリストの古川英治氏にダイレクトメッセージを送った。
「まさか、キーウにいたりしないよね?」
私の問いかけに、すぐに「ビンゴ」と返信があった。 
「おいおい。記者根性はいいけど、さすがに逃げなさいよ。少なくとも西部に!」
「ジャーナリストじゃない、当事者だよ、おれ。妻が動かないって言うから」
天を仰いだ。古川氏は2009年にウクライナ人女性と結婚している。義母と義妹の家族も一緒で、キーウに留まる意志は固いという。
話題のノンフィクション『ウクライナ・ダイアリー 不屈の民の記録』(KADOKAWA)の著者である古川氏は、日本経済新聞の元同僚だ。古川氏は2021年、私は2023年6月に日経を退社している。2016年に私が欧州・中東・アフリカ地域の報道のまとめ役としてロンドンに赴任した時期、古川氏はモスクワ支局長を務めていた。日常的な業務連絡のついでに、1〜2時間話し込むことも度々だった。
トランプ政権や英国の欧州連合離脱がもたらすカオス、シリア内戦とプーチン政権の闇、領土問題に固執する安倍政権の融和的な対露外交の危うさなど、国際情勢をめぐる話題には事欠かなかった。海外の政府関係者や学識者に幅広いネットワークを持つ古川氏との対話は、メディアや本に頼りがちな私にとって、新鮮な刺激になった。ロンドン出張の折には、いつも我が家に立ち寄ってもらった。日本食材店「アタリヤ」の新鮮な刺身を皿いっぱいに盛り、モスクワではなかなか味わえない手巻き寿司を振る舞った。人懐こい古川氏は、すぐに私の家族の間でも人気者になった。
新聞記者として、あるいは一人の人間として、私は人並み以上に世界で続く戦禍に関心を持ち、胸を痛めてきたつもりだった。だが、友人が巻き込まれてみて、これまでの自分はあくまで傍観者にすぎなかったと痛感した。
開戦直後は首都キーウへのロシアの進軍ペースが気になり、夜中に何度も起きてニュースをチェックした。ミサイル攻撃に日本人ジャーナリストが巻き込まれたとニュースで聞いた時には胃が痛くなった。
やがてウクライナは反撃に転じ、古川氏は「当事者」からジャーナリストに戻り、ウクライナ中を飛び回って取材を再開した。時折、連絡をとり、戦地の惨状や現地の人々の暮らしぶりを聞いた。
だが、私の中でくすぶる「なぜウクライナは豹変できたのか」というビッグクエスチョンを突っ込んで話し合うことはなかった。古川氏が2022年秋に一時帰国した際にはロンドン時代のように自宅に招いて手巻き寿司パーティーを開いた。その時も「なぜ」には話が及ばなかった。
その時点では「これからどうなる」と戦争の行方に我々の関心が集中していたからだろう。『ウクライナ・ダイアリー』を読むと、この時点では古川氏の中にもまだ答えははっきりと形作られていなかったのではないかと思う。
書いて伝えなければならない「不屈の民」の姿
「原稿、読んでみて」
開戦から約1年経った2023年2月初め。古川氏から『ウクライナ・ダイアリー』の草稿が送られてきた。そこには私の「なぜ」という問いへの答えが、不屈の民の姿があった。
ロシアの理不尽な蛮行に対する怒り。
自律的に動くコサックの伝統。
自由と民主主義への渇望。
国土・郷土への愛着。
勇気とユーモア。
ウクライナの民とは、こんな人々だったのか。小泉悠氏の『ウクライナ戦争』(ちくま新書)など「鳥の目」で今回の戦争を捉えた好著と「虫の目」で人々を描く『ウクライナ・ダイアリー』が補い合って、パズルが一気に埋まるように疑問が氷解する思いだった。
「俺は彼らに借りがあるんだよ。何が起きたか、なんとかして伝えないと」
初稿を読んだ私に、古川氏がこんな言葉を漏らした。「彼ら」は取材したウクライナの人々を指す。
私はこの言葉を意外な思いで聞いた。5つ年上の古川氏のことを誰かに伝える時、私は「突撃取材小僧です」と説明することがある。このニックネームには「取材となればどこまでも突っ込んでいくけれど、それで満足してなかなか原稿を書かない」という含意もある。ロンドン時代は「上司」として原稿を書かせるのに苦労したものだ。
そんな男が、書かなければ、伝えなければ、と切迫感を抱いている。
だから私はあえて大幅な加筆を提案した。古川氏の個人的な想いや家族のエピソードを、もっと読みたい、特にソ連時代からウクライナの現代史を生きてきた「ママ」こと義母の物語をもっと知りたかった。
ジャーナリスティックな記述だけでも一級のドキュメンタリーにはなる。そこに古川氏自身と家族の数奇な巡り合わせが加われば、強い訴求力をもった素晴らしい読み物が生まれる。そんな予感がした。
私の無責任な期待は『ウクライナ・ダイアリー』という稀有な一冊として結実した。
「早くキーウに帰りたい」
今年も昨年と同様、一時帰国した古川氏を自宅に招いた。日経新聞の現役記者をまじえ、ご所望の手巻き寿司を囲んだ3時間ほどの間、本の話も、ウクライナの話題も、ほとんど出なかった。何を話したかほとんど忘れてしまったが、ずっと笑いっぱなしの一夜だった。
覚えているのは「早くキーウに帰りたい」という古川氏の言葉だ。安全で快適な日本より、ウクライナの方が居心地が良いという。何より、今回の戦争を機に「ネーション」として目覚めたウクライナの姿を現場で取材したいのだろう。
もうすぐウクライナは戦時下の2度目の冬を迎える。ロシアによるインフラ攻撃で電力不足が続く中、氷点下まで冷え込む日々が待っている。『ウクライナ・ダイアリー』を数回読み返した今、彼の地の厳しい冬の景色の中には、一人の友人だけでなく、その家族と友人たち、戦地で理不尽な侵略に抗う人々の姿が浮かぶ。 
いつかウクライナを訪れて、不屈の民と彼らが守りぬいた大地をこの目で確かめたい。
●EU委員長、ウクライナの加盟を目指した改革を評価 11/5
EU(=欧州連合)のフォンデアライエン委員長は、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、ウクライナのEU加盟を目指した改革について、「ロシアとの戦争中でも進んでいる」と評価しました。
「(改革が)実現すれば、ウクライナは野心的目標であるEU加盟への次の段階に進めると確信しています」(フォンデアライエン委員長)
「ウクライナは組織変革を止めません。改革は続きます。新たな法律を制定し、反汚職システムを有効に機能させます」(ゼレンスキー大統領)
EUはウクライナなどの加盟についての報告書を8日に公表する予定です。それに先立ち4日、キーウを訪問したフォンデアライエン委員長は、ウクライナの改革について多くの目標を達成していることを評価し、「加盟に向けて目覚ましい前進をしている」と述べました。
ウクライナは2022年2月に、ロシアによる侵攻が始まった直後、EUへの加盟を申請し、6月には異例のスピードで加盟候補国に正式に認定されていました。汚職が問題になっていたウクライナですが、EU加盟には基準を満たす必要があり、改革を進めていました。12月のEU首脳会議でもウクライナの加盟が議論される予定です。
●ウクライナ政権と軍に不協和音 11/5
ロシアの侵攻を受けるウクライナの政権と軍の間で、対外発信や幹部人事に関して不協和音が生じている。十分な意思疎通を欠いていることがうかがわれ、失態が続けば政権の求心力低下につながる恐れもある。ゼレンスキー大統領は神経をとがらせているとみられる。
ウクライナ軍のザルジニー総司令官は英誌エコノミストへの1日の寄稿で「戦争は新たな段階に入りつつある。第1次世界大戦のような、変化の少ない消耗戦だ」と述べ、ロシアに有利な状況が生まれていると指摘した。
この発言について、大統領府高官はウクライナメディアに「私が軍にいたら、前線で起きていることや今後の選択肢について報道機関に話したりしない」とけん制。軍最高司令官を兼ねるゼレンスキー氏も4日の記者会見で「膠着状態ではない」と述べ、ザルジニー氏の戦況分析を否定する形となった。
ゼレンスキー氏が3日発表した特殊作戦軍の司令官人事では、交代となった前司令官が「理由が分からない。報道で(交代を)知った」と暴露した。
●ゼレンスキー氏、ガザでの戦争でウクライナへの注目薄れたと認める 11/5
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は4日、イスラエル・ガザ戦争によって世界の注目がウクライナでの戦争から離れていると認めた。キーウを訪れた欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長との共同記者会見で、発言した。
ゼレンスキー氏は記者会見で、「中東での戦争のため、注目が(ウクライナから)外れているのは明らかだ」と述べた。そして、世界がウクライナでの戦争に注目しなくなることは、ロシアの「目標の一つ」だと指摘した。
ウクライナ軍がロシア軍に対して6月から続けている南部での反転攻勢は、今のところ目立った成果につながっていない。
このためウクライナを支援する西側諸国の間では、戦争疲れの懸念が高まっている。一部の西側政府では、ウクライナに高性能の兵器や資金を提供し続けることへの抵抗感が募っているとも言われる。
「手詰まりではない」=ゼレンスキー氏
ゼレンスキー大統領は記者会見で、ロシアとの戦争が膠着状態に達したという見方を否定した。ロシアは世界の注目が「弱まる」ことを期待しているが、「すべては今も我々の力の及ぶところにある」と強調した。
2022年2月にウクライナ全面侵攻を開始したロシアとの戦争について、ウクライナ軍のヴァレリー・ザルジニー総司令官は11月1日付の英誌エコノミストに対して、ウクライナとロシアの両軍が前線で行き詰っており、「手詰まり」の状態に達したと発言。「おそらく深く美しい前線突破はないだろう」とも、司令官は述べていた。
ザルジニー総司令官は、ロシアとの戦争が今ではお互いの位置を維持するための静的な段階に移行しつつあり、これによってロシアは「軍事力再建の猶予を得る」ことになるとも述べていた。
これについて質問されたゼレンスキー大統領は、「誰もがくたびれているし、いろいろな意見がある」と答え、さらに「しかし、手詰まり状態ではない」と言明した。
ロシアが「制空権を握っている」とゼレンスキー氏は認め、状況を変えるにはウクライナはアメリカ製のF16戦闘機や最先端の防空システムを喫緊に必要としていると強調した。
さらに、昨年にもウクライナでの戦争について「手詰まり」「膠着」といった話がしきりに飛び交ったものの、ウクライナ軍が北東部ハルキウ州や南部ヘルソン州で大きな戦果を挙げたのはその後のことだったと、ゼレンスキー氏は指摘した。
ロシアと停戦交渉に臨むよう圧力が高まっているとの報道についても、ゼレンスキー氏は否定した。
「欧州連合にもアメリカにも、どのパートナー諸国にも、ロシアと交渉し、何かをロシアに与えるよう、いま我々に圧力をかけている人は誰もいない。そんなことにはならない」
「全目標の実現が必要」=ロシア政府
これに先立ちロシア政府は2日の時点で、戦場が「手詰まり」状態にあるというザルジニー総司令官の評価に反論していた。
クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官は、「当初定められたすべての(戦争)目標は実現されなくてはならない」として、「キエフ(キーウのロシア語読み)の政権が戦場で勝てるなど、そのような可能性に言及することさえ、ばかげている」とも述べた。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はこれまでに、ウクライナの反転攻勢は失敗したと繰り返している。ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は今週、北大西洋条約機構(NATO)同盟諸国から新しい兵器を受け取っているにもかかわらず、ウクライナは戦争に負けつつあると発言している。
前線の状況は
ウクライナのルステム・ウメロフ国防相は4日、南部ザポリッジャ州で3日に第128機械化旅団「ザカルパッティア」の兵士が複数、死亡したと認め、この「悲劇」について全面的な調査を行うと述べた。
ウクライナ軍によると、ロシアのミサイル攻撃で犠牲が出たという。
ウクライナ・メディアやロシア軍事ブロガーによると、前線に近い村で行われていた勲章授与式でウクライナ兵20人以上が死亡したという。
これとは別にウクライナ軍は4日、クリミアの造船所攻撃に成功し、「開運・港湾インフラ」を破壊したと発表した。クリミア半島は2014年にロシアが併合している。
これについてロシア国営メディアはロシア国防省の発表として、クリミア東部ケルチの造船所にウクライナが撃ち込んだミサイル15発のうち13発を迎撃したものの、ロシア艦1隻が被害を受けたと伝えた。
で、ロシアが「東部ドンバス地域の町アウディイウカを襲撃する中で、おそらく装甲車約200台を失った」と指摘した。
「2023年10月初めから、この町の周辺でロシア兵数千人が死傷している可能性が高い」ともしている。
「ロシア軍指導部は引き続き、微小な領土制圧と引き換えに大量の人員を失ってもかまわないという姿勢を示し続けている」と、英国防省は述べている。
ロシア軍はこのところウクライナ東部と北東部で進軍しようとしているものの、ウクライナ軍はすべて押し戻しているという。
ロシアとウクライナ双方の言い分は、第三者による客観的な検証を受けていない。
●ウクライナへの国際的関心低下か ゼレンスキー大統領が認める 11/5
ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は4日、パレスチナ自治区ガザ情勢を受け、ウクライナへの国際的な関心が低下しているのは「事実だ」と認め「ロシアの狙いの一つだ」と述べた。首都キーウ(キエフ)を訪問した欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長との共同記者会見で述べた。
ウクライナでは、関心低下に伴って欧米の支援が先細りになるのではないかとの懸念が出ている。ゼレンスキー氏は、ガザ情勢に関心が向くことを「理解できる」とした上で「われわれはウクライナにほとんど注意が払われなかった非常に困難な時期を経験し、乗り越えた。今回の難問を克服できると確信している」と強調した。
●ウクライナと支援国が不信感を持つ事態だけは避けたい 11/5
「自由民主主義の勝利」が謳われた冷戦終焉時に、アメリカの権威は絶大になった。自由主義陣営の盟主としての地位とともに、軍事力・経済力において、他の追随を許さない実力を持っていると思われた。インターネットによる産業構造の変革においても主導的な役割を果たし、蓄積された財政赤字も1990年代に改善し、21世紀初頭においてアメリカは絶頂期にあったと言える。
隔世の感がある。
2001年からの「グローバルな対テロ戦争」は、アメリカ軍を迷走させ、経済に足かせを作り、社会構造に苦悩に満ちた分断を生んだ。
屈辱のカブール完全撤退を2021年8月に完遂させた後、22年2月にロシアがウクライナに全面侵攻を開始した。アフガニスタン共和国政府のガニ大統領がいち早く首都を脱出したことを聞いて、バイデン大統領は激怒したと言われる。それに対して、ウクライナのゼレンスキー大統領は、迫りくるロシアの首都攻撃に屈せず、徹底抗戦を誓った。バイデン大統領は、ウクライナへの全面支援を表明した。同盟諸国もそれに続いた。
それから一年半以上がたった。今年の夏のウクライナ軍の反転攻勢は、来年秋の米国大統領選挙をにらんで、ぎりぎりのタイミングで開始されたものであった。苦戦や予測されたが、それ以上引き延ばすこともできなかった。
二カ月ほど前、進軍の速度が遅いという声もある中、私は、事情を考えれば、ウクライナ軍は善戦していると言えるのではないか、と書いた。
ただ、その後、ウクライナ軍の進軍はむしろ一層停滞した。できれば、せめて冬になる前に要衝地のトクマクまで到達したかったが、それはほぼ不可能な情勢だろう。すでに秋の泥濘期に入っている。
『TIME』誌に、勝利だけを目指して突き進むゼレンスキー大統領に対して、政権内で不安と不満が生まれていることを伝える記事が掲載され、大きな波紋を呼んでいる。
特によくないのが、ゼレンスキー大統領が「西側に失望した」と語ったと報じられていることである。
あわせて『Economist』誌にザルジニー・ウクライナ軍総司令官のインタビュー記事も公刊された。ザルジニー総司令官は、戦局が膠着常態に入ったことを認め、それは自身の責任でもあると考えている、と語った。カリスマ司令官の実直な言葉であるだけに、重たく響く。
折しも中東情勢が混迷を極め始めた。アメリカを始めとするウクライナ支援国の関心が大きくウクライナからそがれている。これはアメリカの議会でウクライナ支援懐疑派が発言力を高める効果をもたらし、さらには軍事的・財政的資源が先細りしていく可能性が出てきたことを意味するだけではない。米国の大統領選挙でバイデン大統領が再選される見込みが目立って減少し、トランプ氏のようなウクライナ支援懐疑派が勝利する可能性が高まったことまでも意味している。
アメリカは中東情勢への対応で四苦八苦している。私に言わせれば、ミスをした。イスラエルに対する眼差しが一層厳しい欧州諸国の指導者たちも、ゼレンスキー大統領も、ミスをした。
21世紀になって米欧の威信が大きく低下し、しかも成果が出ないまま、軍事的・財政的に疲弊の度を強めていく傾向が顕著だった。アメリカとその同盟諸国は、ウクライナでその流れを堰き止めたいという期待をしていた。残念ながら、現状では、大きな流れに真っ向から抗して押し戻すのは、難しい、と言わざるを得ない。
冷静になる必要がある。
私は開戦時から、「軍事専門家はウクライナの敗北は不可避だと言い、歴史家はロシアの敗北は不可避だと言っているが、双方が正しいように見える」、と言ってきた。
少しニュアンスを変えると、これは、「ウクライナは負けないが、ロシアも負けない」、と言うのと、同じである。
ロシアがウクライナを完全制圧するのは難しい。だが同時に、ウクライナがロシアを完全に駆逐することも難しい。
仮にウクライナが奪われた領地の全てを取り戻しても、なお広大な国境線にそってロシアの再侵略を防がなければならないことは、取り戻せなかったときの場合と、同じである。
国際社会の大多数はロシアの侵略を認めている。戦局の行方等の事情だけで、その事実が変わるわけではない。だが戦争の結果は、国際世論の結果で決まるわけではない。
巷ではウクライナが望めばいつでも簡単に停戦がなされて戦争が終わるかのように語る者もいるが、状況の過度の単純化は禁物である。戦争を続けるのは難しく、戦争を終わらせるのもやはり難しい。
また、せっかくウクライナとの固い団結を示して平時ではありえない努力をした支援国が、結局はウクライナからの恨みの対象になるような事態は、何としても避けなければならない。
勝利か敗北か、完全奪還か降伏停戦か、といった二者択一は、最初から存在していない。状況は常に厳しく、複雑だ。だが、全面侵攻から二回目の冬を迎えるにあたり、厳しさと複雑さは、さらにいっそう高まっている。 
●ロシアがリビアで基地創設の動き、米政府「非常に真剣に」脅威を認識 11/5
ロシアがリビア東部で軍事的プレゼンスを拡大する動きを見せている。海軍基地の創設につながる可能性があり、そうなればロシアは欧州の南に強力な足場を築くことになる。
ロシアのプーチン大統領とリビアの軍事組織「リビア国民軍(LNA)」のハフタル司令官は、9月下旬にモスクワで会談した後、防衛協定の締結に取り組んでいると、この件について説明を受けた複数の関係者が明らかにした。扱いに注意を要する問題だとして、関係者らは匿名で話した。
リビアでロシアの活動が活発になることは、米欧に新たな課題を突きつける。ウクライナ侵攻を巡るロシア政府との対立は解決の糸口が見えず、イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦争が中東で拡大した場合にロシアが何らかの形で関与する可能性が警戒されている。ロシアは隣国シリアにおいて、10年にわたる内戦を通じて積極的に活動してきた。
元米リビア特使のジョナサン・ワイナー氏は、米政府がこの脅威を「非常に真剣に」受け止めていると話した。「ロシアに地中海の足場を築かせないことは、重要な戦略的目標だった。ロシアがそこに港を築けば、欧州連合(EU)全域を偵察する能力を得る」と述べた。
●ロシア正教会トップを捜査 ウクライナ保安当局 11/5
ウクライナ保安局(SBU)は4日、ロシアによる侵攻を正当化し助長したとして、ロシア正教会の最高位キリル総主教に関する捜査に着手したと表明した。キリル総主教はプーチン大統領に近く、侵攻支持の立場を表明している。
キリル総主教はロシアにいるため、身柄拘束は事実上不可能。
SBUはキリル総主教が、ロシアの軍事・政治の最高指導部に非常に近い存在だと指摘。プロパガンダのためにロシア正教会やウクライナ正教会の組織を利用し、信者に対しウクライナと戦うために団結するよう呼びかけたとしている。
●ウクライナ政権と軍に不協和音 大統領、求心力低下を警戒 11/5
ロシアの侵攻を受けるウクライナの政権と軍の間で、対外発信や幹部人事に関して不協和音が生じている。十分な意思疎通を欠いていることがうかがわれ、失態が続けば政権の求心力低下につながる恐れもある。ゼレンスキー大統領は神経をとがらせているとみられる。
ウクライナ軍のザルジニー総司令官は英誌エコノミストへの1日の寄稿で「戦争は新たな段階に入りつつある。第1次世界大戦のような、変化の少ない消耗戦だ」と述べ、ロシアに有利な状況が生まれていると指摘した。
この発言について、大統領府高官はウクライナメディアに「私が軍にいたら、前線で起きていることや今後の選択肢について報道機関に話したりしない」とけん制。軍最高司令官を兼ねるゼレンスキー氏も4日の記者会見で「膠着状態ではない」と述べ、ザルジニー氏の戦況分析を否定する形となった。
ゼレンスキー氏が3日発表した特殊作戦軍の司令官人事では、交代となった前司令官が「理由が分からない。報道で(交代を)知った」と暴露した。
●欧米当局者、ウクライナに停戦交渉の可能性について協議もちかけ 11/5
ロシアによるウクライナ侵攻が長期化し、さらに、中東情勢の緊迫化で関心も低下する中、アメリカのNBCは4日、アメリカ政府高官らの話として、欧米の当局者がウクライナに対し、ロシアとの停戦交渉の可能性について協議をもちかけていたと報じました。NBCによりますと、この中には停戦のために、ウクライナが何を諦めなければいけないか、大まかな概要が含まれていたとしています。
協議の一部は、先月開かれたウクライナ支援のための会合で行われたということです。
ロイター通信によりますと、この報道に対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は4日、今はロシアと停戦について交渉するときではないという姿勢を改めて示しました。
また、「EUやアメリカの首脳らの誰からも、停戦交渉に応じるよう圧力はかけられていない」としています。
●ゼレンスキー氏、停滞する戦況に「膠着ではない」と強調…「支援疲れ」警戒 11/5
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は4日、ロシア軍との戦況が膠着(こうちゃく)しているとしたウクライナ軍総司令官の分析を「今の状況は膠着ではない」と否定した。米欧各国の「支援疲れ」を招くことを警戒している模様だ。
ウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官は1日、英誌エコノミストへの寄稿で、消耗戦に移行しているとの認識を示していた。一方、英BBCなどによると、ゼレンスキー氏はキーウで開いた記者会見で「様々な意見があるが、これは膠着ではない」と強調した。また、中東情勢の緊迫に伴うウクライナへの関心低下について認め、「それがロシアの狙いの一つだ」と述べて支援の継続を求めた。
戦況を巡っては、米NBCニュースが4日、米政府高官らの情報として、米欧の当局者が10月、ロシアとの停戦の可能性についてウクライナと協議を始めたと報じた。ゼレンスキー氏は記者会見で、この報道にも言及して「ロシアと協議するよう圧力をかける欧米やパートナーの指導者は一人もいない」と否定した。
NBCは、協議の背景には、戦況の停滞や米欧が支援を継続できるかという疑問があると伝えている。バイデン米大統領は、兵士の大量動員が可能なロシアに対し、ウクライナ軍がいずれ兵力不足に陥る可能性を危惧しているという。
一方、ウクライナ空軍は4日、クリミア半島のケルチの造船所へのミサイル攻撃に成功したと発表した。高精度巡航ミサイル「カリブル」を搭載できる最新鋭艦が停泊していたという。ロシアのインターファクス通信によると、露国防省は、ウクライナ軍が4日にケルチに巡航ミサイル15発を発射し、1発が艦船1隻に損傷を与えたと発表した。艦名は明らかにしていない。
ニュースサイト「ウクライナ・プラウダ」によると、露軍は4日、短距離弾道ミサイル「イスカンデル」などで東部ドニプロペトロウシク州や中部ポルタワ州などを攻撃した。

 

●ゼレンスキー大統領「トランプ、ウクライナに来てみてほしい」 11/6
ウクライナのゼレンスキー大統領が20カ月間続くロシアとの戦争に対して「膠着状態に陥ったとは考えていない」として米国や友邦の支援を求めた。戦争を24時間内に終わらせることができると主張したトランプ前米国大統領には「ウクライナに来て見るよう招待する」と言って反論した。
ゼレンスキー大統領は5日(現地時間)、米国NBC放送とのインタビューに出演して「相手は我々を窮地に追い込んだと考えているようだが、そのようなことは起きていない」と話した。ゼレンスキー大統領のこの言葉はウクライナの勝利の可能性に疑問を呈して戦争が膠着状態に陥っていると話した米国軍関係者や同盟国の一部の主張を一蹴する発言だ。実際、最近数週間にわたり、両国の戦争は東部ドンバス地域で押して押し戻される戦闘を繰り返している。
ゼレンスキー大統領は「我々はさらに早く進軍してロシアを不意打ちできるようなさまざまな作戦を立てている」と話した。ただし、防空作戦のためにはドローンが必要だと訴えた。また「我々が防空システムを生産する間だけでも、全世界、米国、欧州、アジアはドローンを借してほしい」とし「特に冬は非常に厳しい時期」と求めた。
あわせてトランプ氏に対して「24時間内に戦争を終わらせることができると言ったことは歓迎する」としつつも実現の可能性に関しては距離を置いた。これに先立ち、トランプ氏は来年大統領選挙で再選すればウクライナ戦争を24時間内に終わらせることができると主張した。
ゼレンスキー大統領は「ウクライナに実際に来てみてこそ知ることができることがある」とし「バイデン大統領は来たことがあるのでトランプ氏も招待する」と話した。続いて「もしここに来ればなぜトランプ氏が戦争を終わらせることができないのか説明できるが、24分あれば充分だろう」と付け加えた。
この日のインタビューでゼレンスキー大統領はプーチン大統領を「滅びるテロリスト」と呼び、ロシアはもちろん北朝鮮やイランがイスラエルと戦争を行うパレスチナ武装勢力ハマスの背後にいると主張した。ロシアとの平和交渉問題に関しては「テロリストとはどんな対話もしたくない」と答えた。
最近、米国メディアは米国と欧州連合(EU)当局者がウクライナ政府にロシアとの戦争を終わらせる平和交渉のためにあきらめなければならない可能性のある懸案に言及し始めたと報じた。ゼレンスキー大統領は「米国は私がテロリストと対話する準備はできていないことを知っている」とし「我々はテロリストを信じることはできない」と否定した。
●ゼレンスキー氏がトランプ氏招待の意向「侵攻処理できぬと説明する」 11/6
ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は、2024年の米大統領選で返り咲きを目指すトランプ前大統領に対し、ウクライナを訪問するよう呼びかけた。5日に放送された米NBCニュースのインタビューで語った。
ゼレンスキー氏は、トランプ氏が「私が大統領なら24時間以内に侵攻を終わらせる」と主張していることに言及。「トランプ氏を(ウクライナに)招待する」と訪問を呼びかけたうえで「ここに来ることができるなら、彼にはこの戦争を処理できない、平和をもたらすことはできないということを24分以内で説明する」と話した。
トランプ氏は米国のウクライナ支援に疑問を呈し、欧州が資金を援助すべきだと主張して米共和党の保守強硬派らに影響を与えている。ゼレンスキー氏は「もしロシアが私たちを皆殺しにしたら、彼らは北大西洋条約機構(NATO)諸国を攻撃し、あなたたちは自分の息子や娘たちを(戦場に)送ることになる」と話し、米国に対して支援継続の必要性を訴えた。トランプ氏が再選された場合、ウクライナの「後ろ盾」となるかどうかについては「分からない」としている。
●米国にウクライナ支援強化を要請、ゼレンスキー大統領 11/6
ウクライナのゼレンスキー大統領は5日放送の米NBCテレビ報道番組「ミート・ザ・プレス」のインタビューに答え、ロシア軍と戦うウクライナ軍支援のため米国に資金供給の拡大を要請した。
インタビュー草稿によると、米国が支援を強化しない場合、最終的に米兵が欧州でロシアとのさらに大きな衝突に巻き込まれかねないと同大統領は発言。その上で「ロシアはわれわれ全員を殺せば、次に北大西洋条約機構(NATO)諸国を攻撃し、あなた方は自分の息子や娘を戦いへと送ることになるだろう」と語った。
米下院は先週、多数派を共和党が占める中、イスラエル支援に143億ドルを拠出する予算案を可決したが、ウクライナ支援の増額案は一切盛り込まれなかった。
来年の米大統領選で共和党候補として有力なトランプ前大統領はこれまでウクライナ支援を厳しく批判しており、本選挙で再選を果たせば24時間以内に戦争を終結できると表明してきた。
これに対しゼレンスキー大統領はインタビューの中で、トランプ氏に自身の目で武力衝突の規模を理解できるようウクライナに招待した。仮にトランプ氏が訪問した場合「私がこの戦争を完遂できないことを説明するのに必要な時間は24分だ。彼はプーチンのせいで平和をもたらすことができない」と話した。
●ガザの状況への怒り当然、ロシア国民は冷静に対応を=プーチン氏 11/6
ロシアのプーチン大統領は3日、パレスチナ自治区ガザの「血まみれになった子供」の映像を見て怒りがわくのは当然とした上で、国民は冷静さを保つ必要があると呼びかけた。
イスラム教徒が多数を占めるロシア南部ダゲスタン共和国の首都マハチカラで10月に起きた反イスラエル暴動について発言した。
ガザで苦しみ血まみれになっている子どもたちを見れば、怒りをぶつけたくなるのは当然だと述べた上で「しかしわれわれは冷静に対応し、悪の根源がどこにあるのかを理解すべきだ」と訴えた。
イスラエルのガザ空爆に抗議する群衆が10月29日、マハチカラの空港に押し寄せ、テルアビブから到着したユダヤ人の乗客を襲撃しようとして大混乱になった。 もっと見る
80人以上が逮捕され、プーチン氏は治安責任者との緊急会議を招集して再発防止策を協議した。
●ゼレンスキー大統領、停戦交渉の可能性を否定 「世界の疲弊は理解」 11/6
ウクライナのゼレンスキー大統領は5日に放送された米NBCのインタビューで、ロシア側と停戦交渉するつもりがないと強調した。「彼ら(ロシア軍)は我々の領土から出ていかなければならない。その後で初めて、世界は外交のスイッチを入れられる」と述べた。
イスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突が始まったこともあり、ロシアによるウクライナ侵攻への国際社会の関心は薄れつつある。NBCは4日、米政府高官らの話として「欧米の当局者がウクライナ政府と和平交渉の可能性について議論を始めた」と報じた。
だが、ゼレンスキー氏はインタビューで「米国は、私がテロリスト(ロシア側)と話す用意がないことを知っている。彼らの言葉は無に等しいからだ」と述べ、現時点ではロシア側と停戦交渉に臨む考えがないと改めて説明した。一方で、「世界の多くの人が疲弊している。当たり前のことだ。理解できる。なぜなら、長い戦争だからだ」とも指摘した。 ・・・
●南部インフラにミサイル攻撃 - ロシア軍、2週間で死亡900人 11/6
ウクライナ軍は5日、ロシア軍が南部オデッサ州のインフラ施設をミサイル攻撃し、建物が損壊したと明らかにした。職員3人が負傷し、周囲の家屋に被害が出た。ウクライナメディアが報じた。一方、米シンクタンク、戦争研究所は4日、ロシア独立系メディアなどのデータを基に過去2週間で900人超のロシア兵が戦死したと発表した。
ウクライナメディアは5日、ロシア軍が過去24時間で、50発以上の爆弾を使って南部ヘルソン州を9回空爆したと報じた。教育機関が被害を受けた。
英国防省は5日、冬を迎えると、ウクライナに展開するロシア兵士の士気が下がるとの分析を発表した。
●「西側、ウクライナと平和交渉議論」…ゼレンスキー「そのようなことはない」 11/6
米国と欧州の当局者が、ロシアとの平和交渉の可能性に対しウクライナと対話を始めたという外信報道が出た。
米NBCニュースは4日、複数の米政府当局者の話として、「この対話には交渉妥結のためにウクライナがあきらめるべき事案に対する広範囲な枠組みが含まれた」と伝えた。
これまでロシアとの平和交渉の可否は当事国であるウクライナだけ決定可能というのが西側の公式な立場だった。しかし報道の通りならばウクライナの一部譲歩を甘受してでも戦争を早く終わらせなければならないという側に西側の気流が変わったことになる。イスラエルとハマスの戦争勃発により「2つの戦争」を支援する西側の疲労感が大きくなったためという分析だ。
ウクライナは6月から領土修復を目標に大反撃に出たが、現在まで具体的な成果を出せずにいる。これと関連しウクライナ軍のザルジニー総司令官は最近エコノミストとのインタビューで「今回の戦争が第1次世界大戦方式の塹壕戦に流れる危険がある。ロシアがこうした膠着状態を戦力再整備の機会に活用できる」と警告した。
だが米国家安全保障会議(NSC)のワトソン報道官は報道に対し「現時点で(平和)交渉と関連してウクライナと進められているどんな対話も知らない」と即時否認した。
英BBCなどによると、ウクライナのゼレンスキー大統領も「時間が過ぎ人々は疲弊しているがこれは膠着状態ではない。われわれのパートナーのうちだれもロシアと向かい合い何かを与えるよう圧力をかけていない」と明らかにした。
●防空システム供与加速訴え 11/6
ウクライナのゼレンスキー大統領は5日、米NBCテレビとのインタビューで、制空権を握るロシアに対抗するため、各国に防空システムの供与を加速するよう訴えた。防空システムを米国と共同生産する案を検討しているとも説明した。攻撃用無人機の供与も求めた。
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ情勢に国際的な関心が集まる中、ゼレンスキー氏は防空態勢強化やF16戦闘機の投入で制空権の確保を急ぎ、停滞する反転攻勢で勢いを取り戻したい考えだ。 
●プーチン時代の「成果」アピール 博覧会で選挙運動開始 ロシア 11/6
ロシアの首都モスクワで、2000年から通算4期にわたるプーチン大統領の治世の「成果」をアピールする博覧会が始まった。
来年3月に予定される大統領選に関し、プーチン氏は態度こそ表明していないが、5選出馬が確実視される。博覧会を通じ「選挙運動」が事実上スタートしたと受け止められている。
行事は「国際博覧会・フォーラム『ロシア』」。ソ連時代に「国民経済の達成」を示す国威発揚の場として建設された常設博覧会場「VDNKh」を舞台に、来年4月まで開催される。
独立系メディアによると、博覧会には51億ルーブル(約82億円)が投じられた。会場には「成果」として、14年に一方的に「併合」したウクライナ南部クリミア半島や、昨年2月からの侵攻で占領を進めたウクライナ東・南部4州に関する展示もある。
4日の開幕に合わせてプーチン氏が立候補の意思を発表するのではないかという観測も流れたが、本人は会場に姿を見せなかった。それでも期間中に「大統領は何度も訪れる」(ペスコフ大統領報道官)とされ、この博覧会か12月に催される別の投資フォーラムが出馬表明の場となりそうだ。ロイター通信は6日、プーチン氏が出馬する意向だと伝えた。
4日は祝日「民族統一の日」。17世紀に人々が団結してポーランド軍からモスクワを解放したことを記念する日で、多民族国家ロシアで重視されている。しかし、現実には国民統合どころか、南部ダゲスタン共和国マハチカラで10月下旬、「反ユダヤ」を叫ぶイスラム系住民が暴徒化したばかりで、プーチン政権は民族問題に神経をとがらせている。
プーチン氏は4日、例年通り、祝日ゆかりの中世の英雄、商人ミーニンとポジャルスキー公の銅像に献花。国防省の青少年団メンバーと交流した。最近は大統領選を控え、子供たちとの「自撮り」に応じるなど、親しみやすさを印象付けることに余念がない。
●プーチン大統領、来年3月のロシア大統領選“出馬を決めた”…ロイター通信 11/6
ロイター通信は6日、ロシアのプーチン大統領が、来年3月の大統領選に出馬することを決めたと報じました。
ロイター通信は、複数の情報筋の話として「プーチン大統領は、3月の大統領選挙に出馬することを決めた」と報じました。
この報道に対し、大統領府のぺスコフ報道官は6日、「プーチン大統領はまだ、その旨の発言をしていない」とコメントし、否定しませんでした。
出馬についてプーチン大統領自身は先月、「3年後までの連邦予算についてミシュスチン首相と協議している」と述べていて、ぺスコフ報道官も先月、「ライバルはいない」と話していました。
プーチン大統領が次回選挙で当選すれば、通算5期目となります。
ロシア大統領選挙は、来年3月17日に行われる予定です。
●ロシア軍、東・南部で前線突破に「失敗」 ウクライナ軍 11/6
ウクライナ軍は6日、ロシア軍が先週ウクライナ東部および南部で前線突破を試みたものの、「失敗に終わった」と発表した。
ウクライナ側の発表によると、過去1週間で400件の「武力衝突」が発生。ロシア軍は数か月にわたって包囲・掌握を試みているウクライナ東部ドネツク州の工業都市アウディーウカへの攻撃を続けている。
ウクライナ軍のアンドリー・コワリョウ報道官は6日の国営テレビのインタビューで「敵は複数の方面に同時攻撃を行っている」と述べた。
ウクライナ側も、同州バフムート南方で独自の攻撃作戦を実施しているという。
また同報道官によると、ロシア軍はウクライナが今年に入り支配権を回復した南部ザポリージャ州ロボティネ付近でも陣地回復を試みたが、成功していないという。
一方、ロシア国防省は前日5日、ロボティネ付近でウクライナの攻撃を撃退したと発表した。
AFPは、どちらの主張についても真偽を確認できていない。
両国政府は、紛争はこう着状態には陥っていないと主張しているが、前線の位置はこの1年間ほとんど動いていない。
●ウクライナ、戦時下の選挙に賛否 難題が山積、実現困難か 11/6
ウクライナで、ロシアとの戦争中でも選挙で民意を問う是非についての議論が続いている。平時であれば大統領選が来年3月に予定されていたが、国内法は戒厳令下の選挙を禁じると規定。ウクライナを支援する欧米には選挙を促す意見があり、ゼレンスキー大統領は法改正の可能性に言及した。ただ難題は山積し、実現は困難との見方が大勢だ。
8月にウクライナを訪れた米国のグラム上院議員(共和党)は「ウクライナが攻撃にさらされていても、自由で公正な選挙を行うことを望む」と述べ、政権の正統性を保つには選挙が必要だと主張した。欧州評議会の幹部も5月、選挙の確実な実施を呼びかけていた。
●欧米への対抗強めるロシア ガザ情勢引き合いにウクライナ侵攻正当化 11/6
ロシアのプーチン政権は、ウクライナでの「特別軍事作戦」が長期化する中、中東情勢を巡ってもイスラエル支持の欧米への対抗姿勢を強めている。パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘について、ロシアはパレスチナ寄りの立場を鮮明にし、露軍のウクライナでの戦闘を「欧米支配に対する共闘」と位置づけて非欧米諸国にアピールしている。
「欧米が中東に望んでいるのは絶え間ない混沌(こんとん)だ」。プーチン露大統領は10月30日、政権内の会合でガザ情勢悪化の責任は欧米にあると指弾し、ガザ地区での民間人の犠牲を「決して正当化できない」と非難した。欧米が武器や資金を送って憎悪をあおっていると訴え、「ロシアが特別軍事作戦で戦っているのも、まさにこういう者たちだ」と主張した。
ロシアはソ連時代から兵器供与などを通じてアラブ諸国との距離を縮め、ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスとの関係も深い。また、イスラエルと敵対してハマスを支援するイランとは反米路線で一致し、軍事協力を強化している。
一方で、ソ連崩壊前後に大勢のユダヤ系住民がイスラエルへ移住した経緯もあり、ロシアは同国とも友好関係を築いてきた。ロシアにとって、イスラエルは親米国家ながら対露経済制裁に参加せず、ウクライナへの軍事支援を控えるという貴重な存在だ。プーチン政権には関係の決定的な悪化を避けたい思惑もにじむ。
10月下旬に露外務次官がハマス幹部とモスクワで会談した際、イスラエル外務省の抗議を受けた。これに対し、ザハロワ露外務省情報局長は、ロシアとイスラエルには「強固な2国間関係がある」と述べ、「ロシアはパレスチナ紛争で公平な調停者としての立場を維持している」と強調した。
ただ、ロシア国内ではイスラム教徒が多い地域などで、反イスラエルの世論が高まっている。同29日には、南部ダゲスタン共和国の空港でイスラエルからの到着便を狙った暴動が発生。プーチン氏は、欧米の諜報(ちょうほう)機関がネット交流サービス(SNS)を通じて扇動したと主張して矛先をそらした。だが、かじ取り次第では一部地域の不安定化の可能性があり、危うさも抱えている。

 

●プーチン氏、9日にカザフ訪問 トカエフ大統領と会談へ 11/7
ロシアのプーチン大統領は9日にカザフスタンを訪問する予定だと、カザフスタンの大統領府が6日に明らかにした。
声明によると、プーチン大統領とトカエフ大統領はカザフの首都アスタナで会談し、二国間の問題を協議する。また、コスタナイ市で開かれる両国間のビジネス会合にともにビデオ参加するという。
オランダのハーグに本部がある国際刑事裁判所(ICC)は今年3月、ウクライナの子どもの不法な送還と同国領土からロシアへの不法移送の疑いでプーチン大統領の逮捕状を発行。加盟する123カ国に、プーチン氏が訪れた場合、拘束して裁判のためハーグに移送することを求めている。
逮捕状の発行以後、プーチン氏は中国とキルギスのみを訪問しており、カザフは3カ国目。いずれもICCに加盟していない。
●ウクライナ大統領、戦時中の選挙実施求める声は「無責任」 11/7
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアの侵攻が続く中で選挙を実施すべきかどうか議論が高まっていることについて、戦時中に選挙を行うという考えは無責任だと一蹴した。
2022年2月にロシアが侵攻を開始した際にウクライナでは戒厳令が発令され、選挙は実施できない。
ゼレンスキー氏は「現在は戦時中で、多くの課題がある中、選挙関連の話題を軽薄に出すのはまったく無責任だと誰もが理解している」と強調。防衛に集中する必要性を訴えた。
平時であれば、今年10月に議会選、24年3月に大統領選が行われるはずだった。
米共和党のリンゼー・グラム上院議員など米欧の当局者の一部は、戦争中であっても自由で公正な投票を実施できることを示すため、ウクライナ政府に選挙を実施するよう求めてきた。
●スロバキア首相、民間企業のウクライナ武器輸出は反対せず 11/7
スロバキアのフィツォ新首相は6日、ロシアの侵攻を受ける隣国ウクライナへの軍事支援の停止について「企業が武器を製造し、海外で販売したい場合には反対しない」と述べ、民間軍需企業の輸出は認める意向を示した。首都ブラチスラバで記者団に語ったと、米ブルームバーグ通信などが報じた。
フィツォ氏は9月の総選挙で「(与党になれば)ウクライナには武器も弾薬も送らない」と公約していた。フィツォ氏は、この公約はスロバキア軍の備蓄から供与される武器のみが対象になると説明したという。
北大西洋条約機構(NATO)加盟国のスロバキアには、砲弾や戦車のメーカーがある。ブルームバーグによると、スロバキアは年間約18万発の砲弾を生産し、ウクライナへの重要な弾薬供給国となってきた。
● “ロシア軍兵士も劣悪な環境に置かれている” 英国防省分析 11/7
ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は、冬が迫る中、無人機などによる攻撃を続け、各地で被害が出ています。一方、イギリス国防省はロシア軍の兵士も劣悪な環境に置かれていて軍の課題となっていると分析しています。
ロシア軍は、ウクライナ各地で無人機やミサイルによる攻撃を続けていて南部オデーサ州の当局者は6日、ロシア軍の夜間の攻撃で8人がけがをしたと発表しました。
さらに世界遺産に登録されているオデーサ中心部の「歴史地区」では住宅や美術館が被害を受けたとしています。
ゼレンスキー大統領は5日に公開されたアメリカNBCテレビのインタビューで、「冬は非常に困難な時期だ」と述べ、防空システムや無人機などのさらなる軍事支援を欧米各国に求めました。
一方、イギリス国防省は5日、侵攻するロシア軍の状況について「前線で何週間にもわたり、頭からつま先までぬれていた」とか「泥の中で食事をとっていた」などとする証言を紹介し、兵士が劣悪な環境に置かれていると指摘しました。
補給支援の不安定性などが背景にあるとしていて、ロシア軍の大きな課題となっていると分析しています。
こうしたなか、ロシアが一方的な併合を宣言したウクライナ南部ザポリージャ州のロシア側の幹部は6日、国営メディアなどに対し、ロシア南部ロストフ州からザポリージャ州を経由し、南部クリミアまでつながる鉄道の建設工事が始まったと明らかにしました。
ウクライナ東部ドネツク州でもすでに鉄道建設が始まり、物資輸送などに使われる見通しだとしていて、ロシアとしては部隊の補給支援を強化するとともに支配の既成事実化を進めるねらいとみられます。 
●CFE条約の破棄完了 ロシア外務省 11/7
ロシア外務省は7日、欧州通常戦力(CFE)条約の破棄手続きが完了したと発表した。
ウクライナ侵攻を巡って対立する北大西洋条約機構(NATO)への対抗措置。今年5月、プーチン大統領が破棄する法案を提出し、上下両院で可決・承認されていた。
●ゼレンスキー氏、トランプ氏をウクライナに招待 「和平もたらすのは不可能」 11/7
ウクライナのゼレンスキー大統領がこのほど、米国のトランプ前大統領を自国に招待した。トランプ氏は来年の米大統領選で自身が勝利すれば、ロシアによるウクライナとの戦争を24時間以内に終わらせることができると主張していた。
ゼレンスキー氏は5日放送の米NBCとのインタビューで、トランプ氏の主張を疑問視。同氏をウクライナへ招待し、ロシアの侵攻の規模を本人に直接確かめてもらう考えを示唆した。
その上で、トランプ氏がウクライナを訪問した場合、24分あれば同氏にこの戦争を処理するのは不可能であることを説明できると発言。トランプ氏が和平をもたらせない原因はロシアのプーチン大統領にあるとも指摘した。
ゼレンスキー氏はこの他、今年初めにウクライナを訪問したバイデン米大統領を称賛。実際に現地へ来て初めて理解できる事柄もあるとし、「だからトランプ大統領を招待する」と続けた。
トランプ氏は今年5月、CNNの取材に答え、ロシアが全面侵攻を開始した時点で自身が大統領だったなら、戦争は起きていなかっただろうと発言。自分が大統領に再選されれば、プーチン氏やゼレンスキー氏との会談を通じ、1日で紛争を解決できると語っていた。
ウクライナ軍トップのザルジニー総司令官は先週、英誌「エコノミスト」への長めの寄稿文で国内の戦況が膠着(こうちゃく)状態にあると説明。「第1次世界大戦がそうだったように、技術的な進歩の影響で我々は手詰まり状態に陥っている」と述べていた。
NBCからザルジニー氏の見立てを受け入れるかと問われたゼレンスキー氏は、困難な戦況を認めつつも、戦争が「膠着状態」に達しているとは思わないと回答。主導権はウクライナ側が握っていると主張し、黒海やクリミア半島での自軍の戦果に言及した。
またウクライナによるロシアとの戦闘は、米国の国家安全保障にも関連すると強調した。米国からの支援が縮小すれば、ロシアとの軍事衝突は欧州地域で一段と広範囲に拡大し、最終的に米軍兵士がこれに巻き込まれる可能性もあると述べた。
さらにロシアと和平協議を行う考えについてはこれを否定。「テロリストと話をする用意はない。彼らの言葉には何の意味もないからだ」と一蹴した。
●ロシア軍、南オセチアでジョージア市民射殺 11/7
ジョージア政府は6日、北部の親ロシア派支配地域、南オセチア近郊で、民間人1人がロシア軍に殺害されたと明らかにした。
南オセチアをめぐっては、2008年にロシアとジョージアが軍事衝突し、独立を宣言。ロシアは独立を承認し、実効支配している。
ジョージアの保安当局によると、民間人が殺害されたのはゴリ市。また別の民間人1人が「違法に拘束された」という。
08年の紛争以降、派遣されている欧州連合(EU)の監視団も、南オセチアの行政境界線で発生した事案でジョージア市民1人が死亡したと確認した。
地元住民が独立系テレビ局ピルベリTVに語ったところによると、殺害されたのは58歳の男性で、地元住民数人と教会に礼拝に訪れた際にロシア兵に撃たれた。ロシアは今年に入り、この教会へのジョージア人の立ち入りを禁止していた。
ジョージアのサロメ・ズラビシビリ大統領は、「ロシアの占領軍がジョージア市民を射殺したことに怒りを隠せない」とし、「ロシアの行動を明確に非難するよう」国際社会に求めた。
●ロシア 本土からクリミアまでつなぐ新たな鉄道の建設工事に着手 11/7
ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミアをめぐり、ウクライナの占領地域を通ってロシア本土とクリミアをつなぐ新たな鉄道の建設工事が始まったと報じられました。
国営ロシア通信によりますと、鉄道はロシア南部ロストフナドヌーからクリミアをつなぐルートで、一方的にロシアが併合したウクライナ東部・ドネツク州のマリウポリや南部ザポリージャ州を通ります。
ザポリージャ州のロシア側トップは新たな鉄道は軍への補給などに活用されるとしていて、ロシアにとってウクライナの攻撃が続くクリミアへの補給路の確保が課題となっているとみられます。
こうしたなか、プーチン大統領が来年3月の大統領選に出馬する意向を固めたと、6日にロイター通信が報じました。
複数の関係者の話として、顧問らがすでに選挙運動の準備に入ったと伝えていますが、報道についてペスコフ大統領報道官は6日、「プーチン大統領は何も表明していない」としています。
一方、ウクライナのEU=ヨーロッパ連合への加盟をめぐり、ロイター通信はEU関係者の話として、加盟に関する交渉が「来年にも始まる見通しだ」と伝えています。
●ロシア、インフラ破壊の準備か ウクライナ情報総局 11/7
ウクライナ国防省情報総局は7日、ロシア軍が南部ヘルソン州の支配地域で、ガス施設や変電所など重要インフラに爆弾を仕掛けている兆候があると表明した。撤退を強いられた際に破壊する準備をしている可能性がある。ロシア軍は5〜6日に南部をミサイルや無人機で集中攻撃した。
クリメンコ内相は、ヘルソン州には5日に87回の空爆があり、一度の攻撃としては侵攻開始以降で最大規模だったと指摘。米シンクタンク、戦争研究所は6日、ロシアがミサイル生産を加速し備蓄が増えたとの見方を示した。
一方、ロシア国防省は7日、同日午前にウクライナの無人機による攻撃の試みがあり、迎撃したと発表した。
●ウクライナの世界遺産「オデーサ歴史地区」をロシア軍が攻撃 11/7
ウクライナ侵略を続けるロシア軍は5日、ウクライナ南部オデーサを無人機などで攻撃し、少なくとも8人が負傷した。世界遺産に登録された「オデーサ歴史地区」が攻撃され、120年以上の歴史がある美術館が被害を受けた。ロイター通信などが報じた。
美術館近くの道路は深くえぐれており、美術館の窓やドアなどが壊れた。国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)は爆撃を非難し、文化遺産の保護を求めた。「歴史地区」では今年7月にも露軍の攻撃があり、大聖堂に被害があった。
一方、RBCウクライナ通信は6日、ウクライナの国防関係者らの話として、ロシアが気温が氷点下となる冬を待ち、エネルギー施設などに大規模な攻撃を仕掛けるとの見方を伝えた。電力消費のピークにあわせた巡航ミサイルによる攻撃で、大規模な被害を引き起こす狙いがあるという。

 

●多極的世界秩序構築が難局、各地の紛争で=カザフ大統領 11/8
カザフスタンのトカエフ大統領は8日付のロシア紙イズベスチヤのインタビューで、世界各地で紛争が発生する中、「多極的世界秩序」の基盤づくりが極めて難しくなっているとの見方を示した。
一方で、世界の緊張が今後は収まり、改革後の国連を中心とする国際協力に取って代わられると予想した。
インタビューは、ロシアのプーチン大統領による今週のカザフ訪問を前に行われた。トカエフ氏は「地球上の全く離れた地域での紛争、制裁をめぐる対立、貿易戦争などを背景に楽観的になるのは難しい」と語った。
カザフスタンはソ連崩壊後も、ロシアと近い関係を保ってきた。ロシアのウクライナ侵攻に関してはバランスの取れた立場を維持しており、約1年前のロシアによるウクライナ東・南部4州の一方的な併合を認めていない。
一方、プーチン氏はカザフスタン紙のインタビューに応じ、8カ国で構成される上海協力機構(SCO)における両国の取り組みを称賛。旧ソ連諸国がつくる独立国家共同体(CIS)などの組織も高く評価した。
●ロシアのCFE条約脱退非難 NATO、条約履行停止 11/8
北大西洋条約機構(NATO)は7日、旧ソ連諸国などで構成したワルシャワ条約機構加盟国との間で欧州に配備できる通常兵器の上限を定めた欧州通常戦力(CFE)条約をロシアが脱退したことを非難する声明を出した。条約の履行を停止するとした。
NATOは声明で「ロシアはルールに基づく国際秩序を損ない続けている」と強調。条約について「ロシアが順守しない状況では持続不可能だ」と指摘した。
ロシア外務省は7日、CFE条約からの脱退手続きが正式に完了したと発表した。
ロシアは今年5月、ウクライナ侵攻を受けたフィンランドとスウェーデンのNATO加盟の動きによりCFE条約が「最終的に過去の遺物となった」とし、NATO北欧拡大への対抗措置として同条約破棄を決定。上下両院を通過した条約破棄の法律にプーチン大統領が同29日に署名し、発効させていた。
●NATO、ロシアのCFE条約脱退を非難 運用停止へ 11/8
北大西洋条約機構(NATO)加盟国は7日、ロシアが東西対立の緩和を目的とした冷戦後の重要な軍縮条約となる欧州通常戦力(CFE)条約から正式に脱退したことを非難した上で、CFE条約の運用を停止すると発表した。 もっと見る
声明で「加盟国は、ロシアによるCFE条約からの脱退と、同条約の目的に反するウクライナへの侵略戦争を非難する」と指摘。ロシアは欧州および大西洋の安全保障を損なっているとし、「したがって加盟国は、国際法上の権利に従い、必要な限りCFE条約の運用を停止する。これは、NATO全加盟国が全面的に支持する決定だ」とした。
米国は12月7日からCFE条約の義務を停止すると表明。サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)はロシアのウクライナに対する戦争およびCFE条約からの脱退は、条約に関連する状況を「根本的に変化させ」、参加国の義務を一変させたとした。
ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官も、ロシアのCFE条約脱退を受け、米国が「脱退しないことをどう正当化できるか分からない」という認識を示した。
●欧米当局がウクライナにロシアとの停戦交渉を要請か 11/8
ウクライナとロシアの戦争が続くなか、米国メディアは4日に米政府高官の話として、先月開催されたウクライナ支援の国際会議で、欧米当局者たちがウクライナ政府に対し、ロシアとの停戦交渉の可能性について協議を持ちかけたと報じた。
危機感を強めるゼレンスキー大統領
それ以上に詳しい内容は分かっていないが、これが事実だとするとウクライナにとっては極めて痛い話となる。
ロシアとウクライナの混沌状態が続くなか、ゼレンスキー大統領は欧米諸国で“ウクライナ支援”疲れが広がり、中東問題で世界の関心がウクライナから薄まっていくことを懸念している。
ニコニコ笑うプーチン
しかし、これは欧米が自らの敗北をロシアに示したことと等しい。ウクライナ侵攻後、ウクライナ軍は欧米からの支援もあってロシア軍を追い込み、ロシアの劣勢が顕著だった。
しかし、最近は双方とも優勢劣勢と言える状況ではなく、ウクライナ軍の勢いに陰りも見えている。そのような中、ロシアがウクライナの一部領土を占領している状態で停戦交渉が実施されれば、それはロシアの占領を既成事実化し、再侵攻させる意欲を与えることになる。
欧米諸国はロシアの侵攻は許さないと当初から非難し、ロシアへ経済制裁を強化してきた。にもかかわらず、欧米がウクライナに停戦交渉しなさいと呼び掛けることは、ロシアに敗北を認めたようなものだ。
今ごろ、プーチンはニコニコ笑っているに違いない。仮に停戦となれば、プーチンはさらなる攻勢を強めることだろう。
●ウクライナへの関心低下懸念 中東情勢でゼレンスキー政権 11/8
イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が1カ月に及ぶ中、ロシアによる侵攻が続くウクライナのゼレンスキー大統領は懸念を強めている。
反転攻勢を進める上で頼みの綱となる「国際社会の関心」が薄れつつあると実感しているためだ。中東での戦争が、東欧で続くもう一つの戦争に影響を与えている。
「事態が急速に動き始めようとしている」。米誌タイム(電子版)によると、ハマスによるイスラエル攻撃から2日後の10月9日、ウクライナ高官の一人はゼレンスキー氏も参加した会議後にこう漏らした。
もっとも、それ以前から欧州の一部諸国では、ウクライナ支援に後ろ向きな主張が表面化していた。ゼレンスキー氏は9月の訪米時、昨年末と打って変わって冷淡な対応に直面。バイデン米大統領は軍事支援の継続を約束したが、最大の後ろ盾である米国にも「支援疲れ」が波及しつつある現実を突き付けられた。
追い打ちを掛けるように、中東情勢の急変で「欧米やメディアの関心が(ハマスが実効支配するパレスチナ自治区)ガザに移った」(タイム誌)。ゼレンスキー氏は「最も恐ろしいのは、世界の一部がウクライナ戦争に慣れてしまったことだ」と、強い危機感を抱いているという。
支援疲れと関心低下の結果、ウクライナに不利な形で西側諸国が停戦圧力を強める展開となれば、徹底抗戦を貫いた政権の求心力にも響きかねない。
バイデン氏は10月19日、「(ハマスもロシアも)近隣の民主主義国家を完全に消滅させようとしている共通点がある」と述べ、ウクライナ支援継続の必要性を訴えた。それでもウクライナの不安は拭えない。ゼレンスキー氏は今月4日の記者会見で、関心の低下こそ「ロシアの狙いの一つだ」と警鐘を鳴らした。
●クリミア攻撃でロシア新造艦損傷 英分析、戦線へ配備遅れる可能性 11/8
英国防省は7日、ウクライナ軍による南部クリミア半島のザリフ造船所に対する4日の攻撃で、新造のロシア艦船が損傷を受けたのは確実との見方を発表した。ロシアは造船インフラを前線から離れた場所に移転する必要に迫られ、新造艦の戦線への配備が遅れる可能性があると分析した。
英国防省によると、損傷したのはコルベット艦「アスコルド」で2021年に進水したが、まだロシア海軍に就役はしていなかった。
ロシアが併合を宣言したウクライナ東部ドネツク州のロシア側行政府トップ、プシーリン氏は7日、州都ドネツクの中心部などにウクライナ側が米国供与の高機動ロケット砲システム「ハイマース」から数発撃ち込み、市民6人が死亡、少なくとも11人が負傷したと明らかにした。タス通信などが伝えた。プシーリン氏によると、住居や医療施設などが狙われた。
ウクライナ当局は7日、ロシア兵の捕虜を収容する新たなキャンプを近く開設すると発表した。ロシア側の士気の低下や前線の状況によって、捕虜の数が増加しているためだと主張した。
●G7外相、ウクライナ情勢を議論 対ロシア制裁、支援継続確認へ 11/8
先進7カ国(G7)は8日午前、外相会合の2日目の討議を東京都内で実施した。ロシアの侵攻が続くウクライナ情勢を巡り議論し、対ロシア制裁やウクライナ支援を継続する方針を確認する見通し。中国の覇権主義的な動きを踏まえ、自由で開かれたインド太平洋の実現についても協議する。G7外相声明を発表する方向で調整している。
7日の会合ではイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が激化する中東情勢を中心に議論。議長の上川陽子外相は共同声明を通じ、事態沈静化に向けたG7の一致した立場を示す考えだ。ウクライナ情勢への対応についても結束を確認する。
● G7外相会合2日目 ウクライナや中国情勢を議論 共同声明発表へ 11/8
東京で開かれているG7=主要7か国の外相会合は、7日、イスラエル・パレスチナ情勢をめぐって討議を行い、上川外務大臣は、人道目的の一時的な戦闘休止の必要性などを訴えました。8日はウクライナや中国の情勢を議論し、共同声明を発表することにしています。
G7の外相は7日夜、東京・港区の飯倉公館で最初の会合となるワーキングディナーを行い、イスラエル・パレスチナ情勢をめぐって2時間あまり討議を行いました。
議長の上川外務大臣は人質の即時解放とガザ地区の深刻な状況の改善が最優先であり、人道目的での一時的な戦闘休止などを関係国に働きかけていく必要性を訴えました。
外務省関係者によりますと、各国は人道目的での戦闘休止が必要だという認識を共有していたということで、上川大臣は記者団に対し「声明では中東情勢に関する一致した立場を示せるようにしたい」と述べました。
2日目の8日は、ウクライナ情勢や中国を含むインド太平洋地域の情勢などが議題となります。
ウクライナのクレバ外相もオンラインで参加する方向で、厳しい対ロシア制裁と支援の継続をG7として改めて確認したい考えです。
また、覇権主義的な動きを強める中国をめぐっては、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持する重要性を共有する一方、対話の必要性も確認する見通しです。
一連の討議を終えたあと、上川大臣が議長として記者会見するとともに共同声明を発表することにしています。 

 

●プーチン氏、米欧接近の同盟国を訪問 一段の「ロシア離れ」防ぐ狙い 11/9
ロシアのプーチン大統領が9日、中央アジアのカザフスタンを訪問した。
経済面でも安全保障面でも、カザフスタンはロシアにとって最重要の同盟国だが、ウクライナ侵攻後はロシアから距離を取り、欧米に近づく動きも見せている。今回の訪問で両国の緊密な関係を国内外にアピールし、一層の「ロシア離れ」を防ぐ狙いがあるとみられる。
「ロシア語は我々の共通財産であり、競争力のある長所だが、重要なのは友好を強固にする大切な要因であることだ」
プーチン氏は、訪問前日となる8日公開のカザフスタンメディアのインタビューで、旧ソ連構成国だったカザフスタンとの強い絆を強調した。
●ロシア、トルコ、イラン首脳、中央アジア訪問 強まる外交攻勢 11/9
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は9日、カザフスタンを訪問した。一方、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン、イランのイブラヒム・ライシ両大統領は同日、ウズベキスタン入りした。中央アジアに対してはこのところ、外交攻勢が改めて強まっている。
ロシアは中央アジアが依然自国の影響下にあると考えているものの、ウクライナ侵攻以降、その影響力は陰りを見せており、旧ソ連構成国はパートナーシップの多様化を目指している。
それでも、カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ、プーチン両大統領は首都アスタナでの会談を前に、共に両国関係を称賛。プーチン氏は「われわれの戦略的パートナーシップは実に前向きだ」と述べ、トカエフ氏は「豊かな歴史と明るい未来のある同盟」とたたえた。
だがソ連崩壊から30年が経過し、ロシアがウクライナ侵攻で行き詰まりを見せる中、中央アジアに対しては他の大国も投資を進めている。
中国は巨大経済圏構想「一帯一路」で中央アジアの主要パートナーとなった。
プーチン氏訪問の1週間前には、フランスのエマニュエル・マクロン大統領もカザフスタンを訪問。また欧州連合(EU)や米国、イラン、トルコも、カザフとの関係強化に動いている。
一方、エルドアン、ライシ両大統領はウズベキスタンの首都タシケントで開催される経済協力機構(ECO)首脳会議に出席するため同国を訪問した。
会議にはこのほか、パキスタンのアンワールル・ハック・カーカル首相ら中央アジア諸国首脳の出席が予定されている。
ただしウズベキスタン政府によると、イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスの紛争は、今回の会議の議題には上がっていないという。
●プーチン氏、カザフ訪問 同盟関係の発展強調 11/9
ロシアのプーチン大統領は9日、中央アジアのカザフスタンを公式訪問し、トカエフ大統領と首都アスタナで会談した。プーチン氏は「両国間の戦略的パートナーシップと同盟関係が成功裏に発展している」と強調し、トカエフ氏も「訪問は政治的、歴史的に重要」と述べ、歓迎した。共同声明ではエネルギーや軍事など幅広い分野での協力強化が盛り込まれた。
ウクライナ侵攻により、ロシアの求心力は旧ソ連諸国でも低下。10月のキルギスでの独立国家共同体(CIS)首脳会議はアルメニアが欠席しロシア離れを印象付けた。プーチン氏は伝統的影響圏のつなぎ留めを図る。
●ウ大統領「年内に戦果示す」 11/9
ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、ロイター通信とのインタビューで、ロシア軍に対する反転攻勢について「年内に戦果を示したい」と語った。消耗戦で損失が増えており「(結果を出すのは)非常に重要だ」と強調した。
反転攻勢が遅れ、戦況がこう着状態に陥っているとの指摘に対しては「ゆっくりとではあるが南部で前進しており、東部でも同様だ」と反論。「容易ではないが、成功を確信している」と述べた。
ゼレンスキー氏は、欧米諸国の武器供与を改めて歓迎した。ただ、パレスチナ情勢の悪化でウクライナへの関心が低下し、支援が思うように進んでいないと懸念を示した。 

 

●プーチン氏、大統領選に向け恒例行事開催へ 「政権の安定」アピール 11/10
ロシアのプーチン大統領は年内に、恒例行事の「大記者会見」と国民との「直接対話」を合同で開催することになった。ペスコフ大統領報道官が9日、明らかにした。昨年はウクライナ侵攻が長期化した影響で見送られたが、プーチン氏は来年3月の大統領選で当選が確実視されており、「政権の安定」と「国民の強固な支持」を国内外にアピールする狙いとみられる。
ロシアの経済紙RBCは同日、情報筋の話として14日に計画されていると伝えた。昨年は開かれず、ウクライナ侵攻でロシア軍が苦戦し、国民に侵攻の成果や見通しを示せないためだとみられていた。
大記者会見は例年、国内外から1千人以上の記者が参加し、約4時間にわたり行われる。直接対話は、プーチン氏が国民から直接要望などを聞き、知事らに指示して指導力を誇示する生放送のテレビ番組だ。
来年3月には大統領選が控える。プーチン氏の再選は揺るがない情勢だが、侵攻が長期化する中、「圧倒的な支持」で再選する形をつくる必要がある。
恒例行事の復活により、プーチン氏が国民の声に耳を傾ける姿勢や、侵攻など国内外の課題に対応する能力を強調し、国民からの強い支持も示せると判断したとみられる。
●ウクライナで失った国際的権威の回復をガザで狙うプーチン大統領 11/10
イスラム主義勢力ハマスによるイスラエル攻撃から2023年11月7日で1カ月。パレスチナでの歴史的流血が続く中、プーチン氏が複雑で巧妙な外交を展開している。どんな外交なのか。狙いは何なのか。その成否の見通しも含めて考えてみた。
今回のプーチン外交の狙いは大きく分けて2つある。最大のものは、ウクライナ情勢から中東情勢へと、国際的関心をできるだけそらすことである。
ウクライナ侵攻を受けて米欧日に包囲網を築かれ、国連でも孤立感を味わっているロシア。プーチン氏としては、ワシントンや欧州各国の注意がパレスチナ情勢に注がれる結果、米欧のキーウへの武器支援が減り、対ロ制裁の緩和につながることを期待している。そうなれば、ゼレンスキー政権の立場を弱めることができる。
ガザにおける人道状況が悲惨であることは誰の目にも明白であるが、プーチン・ロシアは、ウクライナ紛争を巡る独自の思惑を懐に抱えて、国連などでガザでの停戦要求など声高に主張しているのだ。
米欧との「地政学的均衡」とは
もう1つの目的は、米欧との「地政学的均衡」の実現だ。今回の事態発生を奇貨として、プーチン氏は元々反米意識の強いアラブ世界においてロシアへの親近感を回復し、世界規模での孤立解消、あるいは米欧に対抗できる国家群の形成に向けた第一歩にすることを狙っている。これが「地政学的均衡」だ。
このため、プーチン氏は極めて手の込んだ外交を展開している。ハマスによる今回のイスラエル攻撃自体は「テロ」として批判する一方で、この攻撃を実行したのはハマスの一部に過ぎないとの立場だ。
そのうえで、攻撃直後にクレムリンにハマス代表団を迎えるなど、長年緊密な関係を維持してきたハマス寄りの立場を打ち出した。国内でイスラム過激派の動きに神経を尖らせているプーチン氏としては、反テロは基本政策だ。
このため、反テロの表看板を下ろさない一方で、その裏で実質的にはハマスとの関係維持を優先するという建前と本音の使い分けをしたのだ。ただその後、ハマスによるイスラエル市民への攻撃が続いていれば、この使い分け外交も苦しくなる可能性はあった。
ところがそこに追い風が吹いた。イスラエルの地上侵攻によってガザでの住民の犠牲が拡大し、米欧含め世界規模で、イスラエルとこれを支援するアメリカへの批判が一気に広がったのだ。パレスチナ紛争の歴史の中で、これだけ国際社会のイスラエルへの風当たりが厳しくなったのは初めてだ。
プーチン氏にとっては、願ってもない状況が生まれたのだ。一気に反米言辞のトーンを強めた。アメリカこそ、中東のみならず世界規模で紛争を起こし、利益を得ている元凶との論理を振りかざした。
元凶は「人形遣い」のアメリカ
これを象徴するのが2023年10月30日のクレムリンでの安全保障会議での演説だ。「中東だけでなく、他の地域紛争でも世界中で人々に憎悪のタネを撒き、衝突させている勢力がいる。それは地政学における操り人形遣いだ。世界の不安定化の受益者はアメリカとその衛星国だ」と決めつけた。
「操り人形遣い」と「衛星国」は、プーチン政権がウクライナ侵攻に絡み、アメリカとゼレンスキー政権を指す際に使う言葉だ。人形遣いのアメリカがウクライナ政府を思うままに操り、ロシアに敵対させているという、お得意の理屈だ。
つまり、今回のガザでの人道危機も、ロシアのウクライナ侵攻も根っこは同じで、引き起こしたのはアメリカの覇権主義的だ、という論理だ。いわば、国際法違反の暴挙であるウクライナ侵攻を、アメリカの覇権に挑む正当な行動だ、とする「違法行為のロンダリング」だと筆者は考える。
筆者はこのプーチン演説の映像を見たが、その表情に最近では見られなかった迫力を感じた。自分こそ、アメリカの一極支配体制に挑み、多極化を目指す、世界のリーダーだというのが、プーチン氏にとって最大の自負だ。表情にその高揚した気持ちが出たのだろう。
隣の主権国家への一方的侵攻によって、このプーチン氏の主張は国際社会に対する説得力を失っていたが、今回のパレスチナ情勢の出現で、再び「反米、多極化」を訴える舞台装置が整ったと、ほくそ笑んでいるに違いない。
ウクライナ侵攻でロシアを批判したのに、イスラエルのガザ侵攻を支持するアメリカは「ダブルスタンダードだ」との批判を切り札にして、米欧との「地政学的均衡」を狙うグローバル戦略なのだ。
その戦略の最大の標的はどこか。それはインド、ブラジル、南アフリカなどグローバルサウス(GS)と呼ばれる新興・途上国だ。GSには米欧が主導する国際秩序への反発やウクライナ侵攻を発端とする食料危機への危機感から、侵攻を巡り中立的立場を取る国も多い。
プーチン氏としては、GS諸国に対し、ダブルスタンダード論でアメリカへの反発をいっそう募って、その立ち位置を中立からさらに一歩ロシア側に引き寄せ、反アメリカ国