ウクライナ 分断

終戦 プーチンの妥協

ウクライナの分断


 


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第三次世界大戦  プーチン大統領の「夢」  戦争終結の道 ・・・   孤立するロシア  プーチンの新冷戦  どこへ行くプーチン大統領  プーチン大統領の冬支度
 
 

 

●ウクライナ侵攻で数々の「新語」が誕生…戦争が「Z」の意味まで変えた 9/1
ロシアのプーチン大統領が起こした戦争により、数々の「新語」が誕生した。それだけ、世界に激動のニュースがあふれ、ウクライナでは国の命運や人の生死が日々語られたということだろう。後に歴史家だけでなく、辞書編集者も悩ませることになるかもしれない。
記者が分からなかった「ラシスト」
2月下旬の侵攻開始直後、過去に世話になった首都キーウの知人にオンラインで取材していて、分からない言葉が出てきた。空襲警報や爆発音が聞こえるという中、彼女は「ラシスト」と繰り返してロシア軍を非難した。
プーチンは「同一民族の兄弟国」と口にしながら、明らかに差別感情を持ってウクライナ人の頭の上に爆弾を落としている。筆者はレイシスト(人種差別主義者)のスラブなまりだと思って勝手に納得していた。が、後で違うことを知った。言葉に神経を使う職業人として失格だ。
実はロシア(侮蔑的に英語発音でラシャと呼ぶ)とファシストの造語だった。独裁者を重ね合わせた「プトラー」などは、クリミア半島併合時からあったものの、あくまでスラング。対照的に「ラシスト」は現地の主要メディアでも多用されていたから、新語と判別できなかった。もはや辞書に載るレベルだろう。
こんな具合で、戦争取材やウクライナ各紙で謎の単語が頻出するものだから、骨が折れたし、やや不謹慎ながら興味深くもあった。時代や社会の反映なのだ。
なお「ラシャ」の最高指導者は、アルファベット26文字の一つにすぎない「Z」にかぎ十字のような意味を付与しただけでも、歴史に名を残した。
死語は自国民に響くか
新語というより、真実を覆い隠す珍語の「特別軍事作戦」。100日目の6月3日、侵略を受ける側のゼレンスキー大統領が動画で国民向けに演説した。
内容はいつもの戦況報告と異なる。コメディー俳優らしく、ぬくもりのある言葉で傷ついた人々を癒やし、勇気づけるもの。「百日百語」と題し、戦争で生まれた言葉、悲しみの言葉、希望の言葉を一つ一つ紹介した。
そして普遍的な言葉として「平和」「勝利」「ウクライナ」を列挙。「(2014年の軍事介入から)8年後の100日間、われわれはこの3語のために戦っている」とも強調していた。
翻って、プーチンは? そもそも第2次大戦直後の用語である「非ナチ化」など、時代遅れの「死語」が多い。自国民にさえ響くかどうか……。生きた言葉の力では、かつて小ロシアと呼ばれたウクライナに負けている。・・・ 
●ロシア 極東 北方領土 日本海などできょうから大規模軍事演習  9/1
ロシアは、ウクライナへの軍事侵攻を始めてから初めてとなる大規模な軍事演習を、1日からロシア極東や北方領土、日本海などで行います。侵攻の影響で規模の縮小を余儀なくされたとも指摘される中、ロシアとしては、参加する中国をはじめ各国との連携をアピールするものとみられます。
ロシア国防省は、極東地域などで4年に一度行っている大規模な軍事演習「ボストーク」を1日から7日までの日程で行います。
ことしは、7か所の演習場で予定されていますが、北方領土の択捉島と国後島も含んでいるほか、日本海やオホーツク海の海上や沿岸でも行われるとしています。
ロシアは毎年、大規模な軍事演習を行っていますが、ウクライナへの侵攻を始めてからは初めてです。
31日は、沿海地方の演習場で開会式が行われ、ロシアに加えて、演習に参加する13か国のうち、中国やインドなどの部隊が行進しました。
今回の演習には、兵士5万人以上のほか航空機140機や艦船60隻が参加するということですが、専門家などからはロシア軍は極東からもウクライナに部隊を派遣していて演習の規模の縮小を余儀なくされたとも指摘されています。
こうした中で、ロシアとしては、今回の演習を通じて、各国との軍事的な連携を強調し、対立するアメリカや日本などをけん制するとともに、国際的に孤立していないとアピールするねらいもあるとみられます。
●ゴルバチョフ氏とプーチン氏の「冷たい関係」 互いに批判繰り返し 9/1
8月30日に亡くなったゴルバチョフ元ソ連大統領は、後継国となったロシアのプーチン大統領との間で、お互いを批判するような発言を繰り返し、冷たい関係があらわになってきた。ゴルバチョフ氏がプーチン政権下で民主化が後退したことを取り上げる一方で、プーチン氏はゴルバチョフ大統領時代に起きたソ連崩壊を否定的に語ってきた。
共産党が一党独裁を続けたソ連の最高指導者を務めた過去を持ちながら、ゴルバチョフ氏はしばしば民主主義の価値を説いてきた。2000年に大統領に就任したプーチン氏と初めて会談した同年8月には「ロシアに秩序と責任感が必要とするプーチン大統領の路線を支持する」と明言した。
ところがプーチン氏が当時の最大の任期である2期8年を全うした後に首相に横滑りしたことから、批判的な発言を漏らすようになった。11年8月に毎日新聞と会見した際、ロシアは「(長期独裁国が多い)アフリカのような状況といえる」と批判。プーチン氏についても「今なら多くの業績を残した人物として(政界から)退くことができる」とも語った。15年12月に再度、毎日新聞とのインタビューに応じたときも、3期目の大統領に返り咲いたプーチン氏による統治を「個人による権威主義的な統治と反民主的傾向が続いている」と評した。
一方で、プーチン氏によるゴルバチョフ氏の評価も手厳しい。15年7月に米国の映画監督オリバー・ストーン氏とのインタビューに答え、ゴルバチョフ氏がソ連の最高指導者に就いた当時は「国に変革が必要であることは、ゴルバチョフにもその側近にも明らかだった」と指摘。しかしゴルバチョフ氏や周辺が「どのような方法で実現すべきかはまるでわかっていなかった」「だからこそ国に甚大なダメージを与えるようなことをいろいろとやった」と酷評した。
プーチン氏によるゴルバチョフ批判は、現在のロシアのウクライナ侵攻の遠因の一つとも言える北大西洋条約機構(NATO)に関する問題にも及ぶ。米国は1990年のドイツ再統一を前にして、ゴルバチョフ氏の同意を取り付けようとして、当時の共産圏にNATO加盟国を拡大しないと約束したとされる。しかし90年代後半以降、この「約束」はほごにされて、東欧諸国やソ連に組み込まれていたバルト3国などが次々とNATOに加盟したことから、ロシアが対米不信を募らせる一因となった。
米国の「約束」について、プーチン氏はストーン氏とのインタビューで次のように触れている。「約束は書面にされてはいなかった。その誤りを犯したのはゴルバチョフ氏だ」「政治の世界では何事も書面に残さなければならない。だがゴルバチョフ氏はペラペラしゃべっただけで十分だと判断した」。こう語り、米国の口約束を安易に信じた結果、NATOの東方拡大を許してしまったとの見解を示した。
90年にノーベル平和賞を受賞したゴルバチョフ氏は、欧米諸国で高く評価されたが、ソ連崩壊を防げなかったこともあり、ロシア国内の評価は高くなかった。一方で、ロシア国内ではプーチン氏がソ連崩壊後の混乱を収めたことなどを評価されてきたが、欧米諸国からは強権的な統治方法や隣国ウクライナへの軍事侵攻などを批判されている。両氏のコントラストは鮮明だ。
ただしゴルバチョフ氏は欧米寄り一辺倒の政治家だったわけでもない。プーチン政権が14年にウクライナ南部クリミアを強制編入すると、これに支持を表明した。またソ連末期のリトアニアで独立運動が激しくなると、武力鎮圧を試みた結果、死者を出したことにも批判が残されている。
●ゴルバチョフ氏の国葬、ロシア報道官「まだ決まっていない」… 9/1
30日に91歳で死去したミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領は、帝政ロシア、ソ連の最高指導者につきまとう冷酷なイメージを覆す笑顔と柔軟性を武器に、硬直化したソ連の内外政策を転換した。第2次大戦後、半世紀近くに及んだ東西冷戦を終結に導いた。ゴルバチョフ氏は国際的に称賛を浴びる一方、1991年に超大国だったソ連を崩壊させた張本人として、後継国家ロシアでの評価は低い。
90年ノーベル平和賞
ゴルバチョフ氏は85年3月、54歳でソ連の最高指導者ポストだった共産党書記長に就任した。ソ連は当時、アフガニスタンへ侵攻中で、ソ連を「悪の帝国」と非難した米国と軍拡競争を繰り広げていた。ゴルバチョフ氏の書記長就任時、国家予算の約40%を軍事費に充てていたとの指摘もある。内外政策の転換に踏み切った背景には、ソ連の経済と社会の疲弊が深刻で改革が急務だったことがある。
米欧との和解にかじを切った「新思考外交」では、85年にレーガン米大統領(当時)とスイス・ジュネーブで初会談に臨み、核軍縮に道筋をつけた。89年11月に「ベルリンの壁」が崩壊し、翌12月には米ソ首脳による冷戦の終結宣言、90年の東西ドイツ統一の実現にも貢献した。この年、ノーベル平和賞を受賞した。
国外では「ゴルビー」との愛称が定着し、政界引退後の2000年代にはフランスの高級ブランドの広告に登場したこともある。
ゴルバチョフ氏が共産党の再建を目指し、86年に掲げた「ペレストロイカ(立て直し)」は日本でも流行語になった。共産党の一党独裁を放棄し、90年に大統領制も導入した。
ソ連構成国だったウクライナで86年に発生したチョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所の爆発事故では、事故を隠して被害が拡大したことを批判され、「グラスノスチ(情報公開)」を加速させた。言論の自由拡大や民主化の推進は、ソ連崩壊後のロシアで民主化や人権運動の機運が醸成される種をまいた。
ゴルバチョフ氏自身は91年12月のソ連崩壊と同時に失脚し、政治的影響力が回復することはなかった。露国営テレビは8月31日、経済学者の見方として、「(ゴルバチョフ氏が)何もしなくてもソ連は10〜15年は存続できた」と報じた。プーチン大統領もソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的悲劇」と評している。
ゴルバチョフ氏の政敵で新生ロシアのエリツィン初代大統領が2007年に死去した際には国葬が営まれた。タス通信によると、ロシアの大統領報道官は8月31日、ゴルバチョフ氏の国葬を執り行うかどうかについては「まだ決まっていない」と述べた。国葬が行われた場合のプーチン大統領の参列についても未定という。 
●ロシア プーチン大統領 ゴルバチョフ氏の葬儀に参列せず  9/1
ロシア大統領府は、9月3日に営まれる予定のゴルバチョフ氏の葬儀に、プーチン大統領が参列しないと明らかにしました。
旧ソビエトの最後の指導者で東西冷戦を終結に導いたミハイル・ゴルバチョフ氏は8月30日、91歳で亡くなりました。
ゴルバチョフ氏が代表を務めた財団によりますと、葬儀は今月3日、モスクワ市内の施設で営まれる予定です。
これについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は、1日「残念ながらプーチン大統領は公務の都合で葬儀に参列できない」と述べ、プーチン大統領がゴルバチョフ氏の葬儀に参列しないことを明らかにしました。
また、報道陣から、葬儀は国葬という扱いになるかどうか質問されたのに対しては「その要素はあるだろう。政府は、葬儀の手配を支援する」と述べるにとどめました。
葬儀を前に、1日、プーチン大統領は、ゴルバチョフ氏が安置されている病院を訪れて遺体と対面し、国営テレビは、プーチン大統領が花を供え、無言で遺体や遺影を見つめたあと胸の前で十字を切り、ゴルバチョフ氏に別れを告げる様子を公開しました。
ゴルバチョフ氏は近年、プーチン政権の統治手法が強権的だと懸念を示し、ウクライナへの軍事侵攻に対しても憂慮していたと伝えられています。
●ウクライナへ軍事支援続く、スペインは初の対空兵器 英はドローン 9/1
スペイン国防省は9月1日までに、ウクライナへ対空砲や対空ミサイルを供与すると発表した。スペインがこの種の兵器の引き渡しに応じるのはロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、初めて。
声明で、野砲用の弾薬1000発、1000トン規模のディーゼル油、様々な装甲車両や冬季用の軍服3万着も送ると表明。侵攻から半年を経過したことなどを踏まえ、ロシアの侵略に抵抗し平和と自由を守る戦いに挑むウクライナを支え続けるとの決意も示した。
スペインは対空砲の操作に必要なウクライナ軍の訓練を同盟国内で実施する方針も明かした。ウクライナ空軍兵士の訓練も行うとした。
スペインは今年4月、弾薬類約200トンと他の装備品のウクライナへの譲渡を発表してもいた。
北欧スウェーデンのアンデション首相も9月1日までに、ウクライナに10億スウェーデン・クローナ(約130億円)相当の軍事、民生両面での追加援助を実施する方針を示した。半分は軍事支援に充てるとした。
首都ストックホルムにウクライナのクレバ外相を迎えた後の記者会見で表明した。「国境は力の行使あるいは戦争で決して変えてはいけない。ウクライナ支援は我々の責務であり名誉の行動である」と説いた。
クレバ外相は、スウェーデンに対し榴弾(りゅうだん)砲、防空兵器やより多くの砲弾の供与を求めた。理由は明確とし、ウクライナ自衛だけでなく欧州全体を守るためだと強調した。
一方、ウクライナを最近、電撃訪問したジョンソン英首相は、6600万米ドル相当の軍事援助の実施を発表した。英首相官邸の報道発表文によると、ウクライナ軍による長距離の監視能力や敵兵力の動向を把握し攻撃に転じる防御能力の向上につながり得る援助と説明した。
今回発表の援助には、最新型のドローン(無人機)など2000機が含まれた。敵の兵力の位置を知った後、攻撃に転じるドローンなども入っている。
敵兵力の前進を監視などする小型ドローンの「ブラック・ホーネット」850機も提供される見通し。このドローンは特に町村部での投入に効果的とも評した。ノルウェー国防省によると、ブラック・ホーネットは同国企業が開発したものでウクライナへの供与は英国と共同で実施する。
ジョンソン英首相の先月24日のウクライナ訪問はウクライナ侵攻が今年2月下旬に始まって以降、3度目だった。英国の政変で同首相は近く退任の予定だが、ウクライナのゼレンスキー大統領はジョンソン氏の支援を高く評価し、「自由勲章」の授与を発表した。
●ロシア ウクライナに軍事侵攻 9/1
IAEA調査チーム ザポリージャ原発へ到着 砲撃の情報も
ウクライナ南東部にあるザポリージャ原子力発電所に向かっていたIAEA=国際原子力機関の専門家チームが1日、日本時間の午後8時過ぎに到着しました。原発の周辺の地域では朝から砲撃の情報が相次ぎ、稼働中の原子炉の1つが安全装置が作動して停止するなど、緊迫した状況が続いています。
ウクライナの原子力発電公社「安全装置作動で5号機停止」
ウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所をめぐり、ウクライナの原子力発電公社「エネルゴアトム」は9月1日、「きょう再びロシア軍による砲撃があり、安全装置が作動して5号機が停止した」と発表し、稼働中の2基の原子炉のうち、1基が停止したとホームページで明らかにしました。これに対しロシア国防省は9月1日、「ウクライナ軍が挑発行為を行い、原発の1号機から400メートルの距離で4発の砲弾が爆発した。けさは、ウクライナ軍の工作部隊が7隻のボートに乗って、原発を奪還しようとしたが撃退した」などと主張し、原発の周辺の地域では戦闘が続いている模様です。
ロシア外相 「IAEAに期待するのは客観的な調査」
ロシアのラブロフ外相は9月1日、首都モスクワで講演し、IAEA=国際原子力機関によるザポリージャ原子力発電所の調査について、「われわれがIAEAに期待するのは客観的な調査だ」とけん制しました。また「ウクライナ軍は原発で挑発行為を続けるが、大事故につながらないことを願う。ロシアはIAEAが安全に任務を達成できるようあらゆる措置をとっている」と述べ、ロシア側はIAEAの任務を妨害しないと主張しました。
IAEA調査チーム ザポリージャ原発へ出発
8月31日、ウクライナ南東部のザポリージャ市に到着したIAEA=国際原子力機関の調査チームは9月1日、ザポリージャ原子力発電所に向けて出発しました。出発を前に現地時間の午前8時すぎ、グロッシ事務局長は「大きなリスクがあることは把握している。われわれには達成するべき非常に重要な任務がある」と記者団に述べました。一方、ザポリージャ州の知事は1日、「IAEAの調査が行えるよう、事前に合意していた原発までのルートをロシア側が砲撃している。われわれはロシアに対し、挑発をやめ、IAEAによる原発の施設への立ち入りを認めるよう求める」とSNSに投稿しました。IAEAが、原発の安全確保に向けた調査を始めようとしているにも関わらず、周辺では砲撃が続いているとみられ、調査が順調に行われるかどうかが焦点となっています。
米国防総省 IAEAの専門家チームの調査開始を歓迎
アメリカ国防総省のライダー報道官は31日、ウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所でIAEA=国際原子力機関の専門家チームが調査を始めることを歓迎するとしたうえで、「現地では散発的な砲撃が続いており、われわれはすべての当事者に原発の安全を確保するよう要請するとともに、IAEAのチームが作業を行えるようロシアに求める」と述べました。またウクライナ南部の戦況について、「ウクライナ軍がヘルソン州で若干前進し、一部ではロシア軍が後方へ退いたことを把握している」と指摘しました。さらに来週、ドイツ西部にあるアメリカ軍の基地で、オースティン国防長官らが主催してウクライナへの軍事支援について各国が協議する会合を開くと明らかにし、「世界50か国以上の国防相らと話し合い、ウクライナ側にロシアの侵略から自国を守るために必要な手段を提供するため、引き続き緊密に連携していく」と述べました。また、ホワイトハウスの高官は31日、記者団に対し、今後数日中にアメリカとして、ウクライナへの新たな軍事支援を発表すると明らかにしました。
EU ロシア人へのビザ発給手続き簡素化停止で合意
EU=ヨーロッパ連合は外相会議を開き、ウクライナへの侵攻を続けるロシアへの圧力を強めるため、ロシア人へのビザの発給手続きを簡素化するための協定の履行を停止することで合意しました。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて、EUはすでにロシア政府の高官や経済界の有力者などがEUに渡航することを禁止しています。EUは8月31日、チェコで外相会議を開き、ロシアへの圧力をさらに強めるためとして、一般市民を含めたロシア人へのビザの取り扱いについて協議しました。その結果、ビザの発給手続きを簡素化するためにロシアと結んだ協定の履行を停止することで合意しました。EUの外相にあたるボレル上級代表は記者会見で、「今後、発給手続きはより厳しく、より時間がかかるようになり、新たに発給されるビザは大幅に減るだろう」と述べました。軍事侵攻を受けて、EUがロシアの航空会社の乗り入れを禁止したことなどから陸路でEU域内に入るロシア人が増えていて、EUによりますと、2月24日から8月22日までの半年間で100万人近くに上るということです。ロシアと国境を接するエストニアやフィンランドは、すでに個別に観光目的などのロシア人に対するビザの発給を大幅に制限する措置の導入を決めていますが、EU全域でこうした措置をとることには慎重な立場の国もあり、合意には至りませんでした。
ロシア 北方領土や日本海などで大規模な軍事演習
ロシア国防省は、極東地域などで4年に1度行っている大規模な軍事演習「ボストーク」を9月1日から7日までの日程で行います。ことしは、7か所の演習場で予定されていますが、北方領土の択捉島と国後島も含んでいるほか、日本海やオホーツク海の海上や沿岸でも行われるとしています。ロシアは毎年、大規模な軍事演習を行っていますが、ウクライナへの侵攻を始めてからは初めてです。31日は、沿海地方の演習場で開会式が行われ、ロシアに加えて、演習に参加する13か国のうち、中国やインドなどの部隊が行進しました。今回の演習には兵士5万人以上のほか、航空機140機や艦船60隻が参加するということですが、専門家などからはロシア軍は極東からもウクライナに部隊を派遣していて、演習の規模の縮小を余儀なくされたとも指摘されています。こうした中で、ロシアとしては、今回の演習を通じて、各国との軍事的な連携を強調し、対立するアメリカや日本などをけん制するとともに、国際的に孤立していないとアピールするねらいもあるとみられます。
ロシア・イラン外相会談 欧米の制裁に対抗する姿勢鮮明に
イランのアブドラヒアン外相は8月31日、ロシアの首都モスクワを訪問し、ラブロフ外相と会談しました。会談後の共同会見でラブロフ外相はイラン核合意を巡る交渉について「イランを完全に支持する。合意文書の最終案にわれわれは満足している」と述べ、交渉が大詰めを迎えているという認識を示しました。これに対し、アブドラヒアン外相はイランとロシアを結ぶ鉄道を整備する計画のほか、金融や貿易などの分野での協力を議論したとしたうえで「近い将来、長期的で包括的な協定を結ぶだろう」と述べ、アメリカなどが両国に制裁を科すなか、結束して対抗する姿勢を鮮明にしました。一方、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアは無人機が不足しているとみられていて、アメリカ政府は、イランがロシアに対し、数百機の無人機の供与を進めていると指摘しています。両国はこれを否定していますが、欧米側はイランとロシアが経済だけでなく、軍事面での協力関係も深めようとしているとして、警戒を強めています。
IAEA 9月1日からザポリージャ原発の調査開始へ
ウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所では、安全性の確保に向けてIAEA=国際原子力機関の専門家チームが、9月1日から原発の調査を始める見通しです。ただ、原発や周辺では砲撃が続いているとみられ、IAEAの調査が順調に進められるかが焦点となっています。ウクライナ南東部にありロシア軍が掌握するザポリージャ原子力発電所では、相次ぐ砲撃によって一部の施設に被害が出ていて、重大な事故につながりかねないという懸念が高まっています。この調査を行うため、ウクライナに入っているIAEAの専門家チームが8月31日、原発から60キロほど離れたザポリージャ市に到着しました。ザポリージャ市で、記者団の取材に応じたIAEAのグロッシ事務局長は、原発の調査を9月1日から開始して数日間行うことを明らかにし、「現地の状況を評価するため技術的な作業を行う予定で、従業員と話す必要もある」と述べました。そのうえで、「IAEAの常駐化を目指す」として現地の状況を常に把握できる仕組み作りに向けて調整を進める考えを示しました。これについて、ウィーンに駐在するロシアのウリヤノフIAEA大使は「ロシアは歓迎する」として、認める可能性を示しました。一方、原発や周辺での砲撃について、ロシア国防省は31日、「ウクライナ軍がIAEAの任務を妨害する目的で30日も挑発行為を続け、原発の敷地内に砲撃があった」と主張するなど戦闘が続いているとみられます。またロシア軍が、原発の従業員らに対し、敷地内に駐留する部隊について口外しないよう圧力をかけているとも指摘されていて、IAEAの調査が順調に進められるかが焦点です。
ウクライナ南部へルソン州でウクライナ軍の攻勢続く
戦闘が続くウクライナでは、南部ヘルソン州のロシア軍が占領する地域でウクライナ軍が新たな攻勢に乗り出しています。ロシア国防省は31日、「ウクライナの攻勢は失敗した。ウクライナ兵は1700人以上が殺害された」と主張しましたが、イギリス国防省は、「ウクライナ軍は、ロシア側の防御が薄い地点で部隊を後退させている」と分析しています。ウクライナ軍の攻勢に対し、ロシア軍は部隊の再編や統合を進め、南部の防衛強化に取り組んでいると指摘されていて、南部での攻防が一段と激しくなるとみられています。
ウクライナ オデーサ「歴史地区」世界遺産登録申請へ
ユネスコ=国連教育科学文化機関は、ウクライナ南部の港湾都市オデーサの「歴史地区」について、ウクライナ政府から、世界遺産への登録を申請する方針を伝えられたと発表し、ユネスコとしてもウクライナ国内の文化財の保護に力を入れるとしています。ユネスコによりますと、この方針は、フランスのパリにあるユネスコ本部で、アズレ事務局長に対し、ウクライナのトカチェンコ文化情報相から8月30日、伝えられたということです。オデーサの「歴史地区」は、侵攻したロシア軍との戦闘が行われている前線から数十キロしか離れていないということで、ことし7月には、この地区にある19世紀に建てられた美術館の屋根の一部などが破壊されたということです。ユネスコは、ウクライナ政府の方針を受けて、登録の申請を緊急的に進められるよう、技術的な支援を行う専門家をウクライナに派遣したということで、ロシアの軍事侵攻で危機的な状況にさらされているウクライナ国内の文化財の保護に力を入れるとしています。
●日本は非友好国...ロシア北方領土演習に中国参加?高まる地政学的リスク  9/1
ロシア軍が占領しているザポリージャ原発をめぐってロシアとウクライナのつばぜり合いが続いています。一方、大和大学の佐々木正明教授によると「ウクライナ軍が原発を急襲し、制圧した」との情報があるということで確認が待たれます。またロシアが9月1日から始める『ボストーク2022(極東軍事演習)』が北方領土でも展開されることについて、佐々木教授は「日本は非友好国となり、プーチン大統領と安倍元総理の関係性がなくなった今、ロシアはより強硬に、より攻撃的になるのでは」と警戒しています。加えて北海道の目と鼻の先の択捉島、国後島の軍事演習に中国軍が参加する可能性もあり、北方領土でにわかに「中露との不測の事態」という、軍事的リスクが高まりをみせています。
―――緊張が続くザポリージャ原発にIAEA(国際原子力機関)が調査に入ります。ウクライナ南部の町で、欧州最大級の大きな原発があります。
(佐々木正明教授)ウクライナは原発大国です。チョルノービリ原発事故があった後も、エネルギーミックスの中のパーセンテージが増え、最も大きな原発がこのザポリージャです。
―――IAEA調査の受け入れをロシアも認めているということですよね?
はい。ロシアにとっても重要な基幹施設です。なぜかというと占領地が南部2州増え、クリミア半島には大事な軍港があります。ここのエネルギー源として最も大事な場所で、ロシア軍もここは失いたくない。そしてもし原発事故があれば被害や放射能漏れが、ロシア側にもやってきますので、ここは絶対ロシア軍が失いたくない、大惨事を起こしたくない意図があるんだと思います。
―――現在はロシア軍が占領。いっぽうウクライナは軍の管理下に完全に戻したい。双方が、攻撃は相手側によるものと主張しています。佐々木教授によりますと、「この原発は国内の半分に当たる電力を生む大事なエネルギー源だということと、これを盾にして攻撃ができるんじゃないか」と?
なぜザポリージャ原発の砲撃が相次いだかと言いますと、背景に、南部のウクライナ軍の反転攻勢があるんです。6〜7月になってから強まりました。新しいロシアの報道を見たんですけども、ロシアの国防省が発表したんですが、ザポリージャ原発にウクライナ軍が急襲して制圧作戦を始めたという報道があります。ロシア国防省が発表していますので確認はもちろん取れないですけども、少しきな臭い情報もあります。
―――IAEAの査察はいつくらい?
原発の対岸にザポリージャ市がありまして、そこを出発したという報道もあり、早ければ現地時間の午前中には入っている可能性もありますが、「ウクライナ軍の急襲」という情報もありますので、実際は私もわからないです。
「中露との不測の事態」軍事的リスク
―――続いては、ロシア軍の大規模軍事演習「ボストーク2022」の話です。参加した兵士、4年前は30万人だったんですけども、今年は5万人という規模です。
5万人という数字も実は大きいんです。30万人は、少し多すぎる数字で、実際は10万人ぐらいだったのではないか。5万人に減った理由は、やはり西部でウクライナ軍と戦っていますので、それほど兵士のゆとりはない。
―――演習場所には、北方領土の択捉島と国後島も含まれているということです。非友好国となった日本に対し、北方領土の演習が攻撃的なものになるのではないかというのが先生の懸念ですね。
今年、中国軍の海軍が参加しているんですが、もしかしたら北方領土付近で中国軍が参加して、中露の軍事演習をやるかも知れない。そうなりますと日中国交正常化、今年50年になりますので、中国に対しても少し軋轢が生まれる。そこで中国軍がどうなるかっていうのも一つの注目です。
―――9月3日、ロシアでは対日戦勝記念日です。これまでは9月3日に大規模な軍事演習はしてこなかったんだそうです。なぜか、安倍元総理とプーチン大統領の関係性があったから。
「晋三」「ウラジーミル」という関係を作り上げて、ちょうど9月3日付近にですね、ウラジオストクで東方経済フォーラムが開かれて、安倍さんは4年連続で行ってプーチン大統領と経済的結びつきを強めようとしていた。そこで配慮というか毒消しがされて、9月3日をあまり、ロシア国内でもプロパガンダとして日本の軍国主義をアピールすることはなかったけれど、安倍さんが亡き今、さらに非友好国ということですので、おそらく挑発的な発言、軍事演習を3日にぶつける可能性があります。
―――三澤解説委員によりますと、日本はロシアの「足の長いミサイル」にどう対応するか?
(三澤肇解説委員)軍事演習の内容にもよると思うんですが、実際に択捉島なんかに、ミサイルを配置していますので、実際にそういったものを打ったときにどうなるのか、中国が台湾周辺で軍事演習したときに日本のEEZ内にミサイルが着水しました。北海道にはとても近く、不測の事態が起こらないのか、非常に心配です。今後、過熱すると日本もミサイルを北海道などに置いた場合、また軋轢が深まる可能性があります。
(佐々木正明教授)今年はまず、ウクライナへの日本側の支援度によって、おそらく今回の9月3日の演習をやると思いますが、来年以降は、おそらく5月9日の対独戦勝記念日のような、日本への政治的アピールをやるような日になるかもしれません。
●EU加盟国のハンガリー、ロシア産天然ガス輸入増で合意… 9/1
東欧ハンガリーのペーテル・シーヤールトー外務貿易相は8月31日、ロシア産天然ガスの輸入量を増やすことでロシア側と合意したと発表した。ハンガリーは欧州連合(EU)加盟国だが、ビクトル・オルバン首相はロシアのプーチン大統領と親密な関係にある。EUが結束してエネルギーの脱ロシア依存を進める難しさが露呈している。
シーヤールトー氏がSNSに投稿したビデオ声明などによると、ハンガリーは露国営ガス会社ガスプロムから、9〜10月に日量最大580万立方メートルの追加供給を受ける。
ハンガリーは天然ガスの大半をロシアに依存している。昨年にはウクライナを迂回(うかい)するパイプラインを通じて、年間計45億立方メートルを輸入する長期契約を結んだ。ガスプロムは8月にも、トルコを通るパイプライン「トルコストリーム」経由で日量260万立方メートルを追加供給していたという。
EUは対露経済制裁として年内をメドにロシアからの石油輸入を禁じる方針だが、天然ガスではまとまっていない。オルバン氏は「苦しむのは欧州の方だ」とEUの制裁方針に公然と異議を唱えている。
●「孤立していないアピール」軍事演習大幅縮小もプーチン氏の狙いは? 9/1
IAEA=国際原子力機関の調査団が、ウクライナ南部のザポリージャ原発に到着しました。
防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。
(Q.ザポリージャ原発の周囲では砲撃が続いていますが、国際機関の視察が入ることで、原発の安全性は確保できるのでしょうか)
原子炉1基が緊急停止するなど、危険な状態が続いています。ウクライナ軍は、アメリカなどから提供された兵器などで、ロシア側の軍事拠点を効果的に攻撃しています。ロシアは、原発を砦にした形にしていて、ウクライナ側が攻撃しにくいだろうと。ここから軍事的な動きを強めていくと思います。だから、IAEAの調査団が一次的に立ち入ったとしても、ロシア側が原発を明け渡すということには残念ながらならないと思います。
一方、ロシア本国では、本格侵攻後初となる大規模軍事演習が始まりました。今回の軍事演習は『ボストーク』と呼ばれ、ロシア語で『東方』という意味です。4年に1度行われていますが、これまでよりも大幅に規模を縮小しています。兵士の数は5万人以上で、前回の約30万人から6分の1に縮小。また、訓練場所も当初の13カ所から7カ所にほぼ半減しています。一方、参加国はロシアをはじめ、中国、インド、ベラルーシなど14カ国で、前回よりも増えています。
(Q.規模を縮小した軍事演習をどうみたらいいでしょうか)
いま、ロシア軍はウクライナに6〜7割の兵力を投入しているとみられています。4年に一度、行われる極東地域の大規模軍事演習ですが、今回、兵士を少なくし、訓練場所も半減させる形となっていますので、ロシア側は無理してやっていると思います。つまり、それくらいウクライナ戦争に兵力・兵器を取られてしまっている状況があると思います。
(Q.無理してでも軍事演習を行うプーチン大統領の思惑はどこにあるのでしょうか)
2つあると思います。1つ目は、ウクライナ戦争を行っていても、国際社会から孤立していないということをアピールすることです。前回は、ロシアを含めて3カ国の参加だったのが、今回は14カ国に増えました。友好国の中国、インドのみならず、ニカラグアなど地理的に離れた国もかき集めた。決して、国際社会から孤立していないというアピールする狙いがあると思います。2つ目は、今回、中国の海軍が初めて参加しています。日本海で演習が行われるとみられています。国後、択捉島でロシア軍が軍事演習をやる構えを崩していませんので、日米をけん制する狙いもありそうです。
今回、大幅に規模を縮小しているというものの、5万人規模で、13カ国を招く形で、これだけの軍事演習をできるということをアピールしながら、今すぐ兵器・兵力不足でウクライナ戦争ができない状況ではないということを国際社会にアピールするという意図もあると思います。プーチン大統領は長期化の考えは崩していないところがありますので、引き続き、ウクライナでの犠牲者の拡大が懸念されます。

 

●プーチンの大誤算…実は「ウクライナの動き」を根本から見誤っていた! 9/2
ウクライナ出身、核問題の専門家
ハーバード大学識者インタビューの3回目は、核問題の専門家、マリアナ・ブジェリン(Mariana Budjeryn)博士の話を紹介する。彼女は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の思惑や、ウクライナの安全保障が裏切られたブダペスト覚書などについて語った。
ウクライナ出身のブジェリン氏はキーウの大学を卒業後、ブダペストにある中央ヨーロッパ大学で博士号を取得、米タフツ大学で訪問教授を務めた後、ハーバード大学ケネディスクールのベルファーセンター上席研究員に就任した。
ウクライナの侵略戦争をめぐっては、6月24日公開コラムで紹介したように、「西側で肘掛け椅子に座っている訳知り顔の評論家が、ウクライナ人に対して『ああすべきだ、こうすべきではない』などと指図すべきではない」と手厳しく批判している。
――ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が核兵器を使う可能性はある、と思うか。
〈私の見立てでは、可能性はあるが、そんなに高くはない。とはいえ、心配なのは、核の抑止力が彼の決定を妨げることはできない、という点だ。ウクライナは1994年に核を放棄した。(NATO=北大西洋条約機構の)拡大抑止にもカバーされていない。安全保障の真空地帯なのだ〉
〈(核の抑止力で)プーチン氏の決定を妨げられないとすれば、また、彼が合理的でないなら、核を使うかもしれない。たとえば、黒海で核を爆発させる「デモンストレーション・ショット」の議論がある。ただ、それで、ウクライナの人々の戦う意思を変えられるかと言えば、私は変えられない、と思う。とりわけ、ブチャの惨劇以降は〉
――ウクライナの人々は、戦うことをすでに決意している。
〈そう、決意している。橋は焼かれ、道路が破壊された以上、戦いはしばらく続く〉
「個人的な試み」で始まった戦争
――プーチン氏をどう評価しているか。
〈ロシアには戦争をどう進めるか、はっきりしたビジョンがあった。だが、いまや計画通りに進んでいないのは、あきらかだ。彼らは戦略を変え、ウクライナで達成しようとした政治目標さえ変えている。それは、オリジナルの計画ではない〉
〈私には、この戦争がプーチン氏の個人的な試みであるように思える。プーチン氏は非常に小さなグループで開戦を決定した。私はロシアの同僚と交流しているが、彼らは非常に驚いていた。彼らは、本格的な侵略が起きると予想していなかった。単なる演習か、限定的な作戦があるかどうか、と思っていたのだ。彼らの驚きが、非常に小さなサークルで決定されたことを物語っている〉
〈自分の個人的な評判を賭けた人物が戦争を始めたとき、歴史は「指導者としてのオーラや名声、信頼度のために、すべてを賭ける可能性が高い」ことを示している。だから、敵対する2国が意見を異にして始めた戦争よりも、今回はリスクが高い。彼が核を使う可能性はある〉
――プーチン氏は合理的だろうか。
〈それを判断するのは、非常に難しい。彼には特定の目的があり、目的を追求する手段を動員している、という点では合理的だ。とんでもない計算違いやウクライナ人に対する誤解があるが、私には「ウクライナという国をなくそうとする一貫した努力」であるように見える〉
〈彼は脅威を感じていた。だが、ウクライナ軍を見れば、まったく脅威ではなかった。ウクライナは核保有国ではなく、軍事国家でもない。彼にとっては、ウクライナの体制や統治型が脅威だったのだろう。私たちは法の統治を求めた。私たちが望んだ自由は、プーチンが自分の国で作ろうとしていたものと、非常に違っていたのだ〉
〈プーチン氏はウクライナとロシアは一体であり「ウクライナ人が自分の国家と統治権を持つべきではない。機能不全に陥っている」と考えている。彼は、自分が信じているものをデッチあげたか、宣伝に使おうと思ったか、のどちらかだ。「ウクライナ全体がナチに支配されている」などとは言えない。私は「狂っている」と思うが、それが事実なのだ〉
――プーチン氏はウクライナ人を誤解していた。
〈彼は、ウクライナの人々と国がどう動くか、まったく誤解していた、と思う。彼は街をロシア軍が行進していけば、人々が歓迎してくれる、と思っていた。それが、大規模な侵攻をするのに十分な軍隊を動員しなかった理由だ〉
〈軍隊の経験則は、攻撃と防御が3対1だ。彼は15万人を動員したが、ウクライナは10万人いた。彼は、最後の抵抗を予想していなかったのだ。それで、いま戦略を変えて、再調整している。彼は合理的に対応している〉
核戦争は起こりうるのか?
――核兵器を使うハードルは下がった、と思うか。
〈彼は繰り返し、核を使うと脅している。核を安売りして、ルーズトーク(散漫な話)にしてしまった。ロシアとNATOの核抑止の関係は何十年も存在していたのに、今回の戦争では起きていない。彼は「我々は偉大で強力な核保有国」とか「誰も歴史で見たことがないような結果を招く」などと言ったが、そんなことを言う必要はまったくなかった。NATOは、彼が核をちらつかさなくても、同じ対応をしただろう〉
〈冷戦を通じて、2つの敵対国が核のエスカレーションを恐れて、直接対決を恐れきた歴史がある。1956年のハンガリーやベルリン危機でもそうだった。多くの代理戦争があったが、軍隊は直接対峙しなかった。YouTubeをシャットダウンしたり、パイロットを殺害したが、そこまでだ。配慮があったのだ〉
〈それは、いまも適用されている。誰も核戦争を望んでいないからだ。だが、通常戦争も核戦争になる可能性はある。ロシアがそんな軍事力を保有しているのは、非常に不安だ。彼らは通常戦力を埋め合わせるために、核カードを使ってきた〉
〈冷戦の終了後、戦術目的の戦域核を使うしきい値は低くなったが、米国は韓国やその他の地域から、それらを撤去した。だが、ロシアはまだ2000個もの戦術核を保有している。それらは未配備で、たぶん5つの貯蔵庫にあるが、再配備するのに大した手間はかからない〉
〈冷戦後、米国とロシアは核兵器の役割を最小限に抑えようとした。それでも、ロシアは警戒態勢を解除しなかった。60年代から80年代まで、NATOとソ連には戦場での核使用計画があった。幸い、何も起きなかったが、計画はあった。冷戦後、戦場での使用は無意味になったように見えた〉
〈だが、いまや核問題が再び、テーブルに戻ってきた。だから、私は核を使うハードルが低くなったとは思わない。とはいえ、いくらか良き時代の遺産もある。戦場で戦術核を使えば、NATOもロシアも関係なく、エスカレートするということだ〉
ブダペスト合意の「真相」
――米国と英国、ロシアは1994年にブダペスト覚書に調印した。核放棄と引き換えに、ウクライナとベラルーシ、カザフスタン3カ国は国の安全が約束されたはずだった。ところが、結局、裏切られた。何があったのか。
〈ウクライナが受け継いだ遺産は、すぐ核抑止に使えるものではなかった。それはNATOと米国を抑止するための、別の国の核戦略の一部であり、ウクライナは完全な作戦統帥権を持っていなかった。完全な核燃料サイクルもなかった〉
〈ウクライナには、十分な科学者や産業能力があったが、2つの障害があった。1つはお金だ。ソ連が崩壊したとき、私はキーウの学生だったが、インフレ率は10000%に達していた。1度に5ドル以上は交換できなかった。カネがなく、新たに投資できなかった〉
〈もう1つは、国際的な反応だ。NPT(核不拡散条約)に加えて、米国は韓国や西ドイツの核保有を阻止しようとした。イランやイラク、北朝鮮についてもそうだ。ウクライナが核を保有すれば、米国や国際社会から好意的に思われない、と十分に予想できた〉
〈私たちは独立したばかりの新しい国で、民主国家を望んでいた。国際社会の好意を得て、良き国際市民でありたかった。北朝鮮や東欧のように、孤立したくなかった。私たちは、明確な言葉で言われた。「ウクライナでありたいなら、核放棄計画に参加すべきだ」と。それで、私たちは「分かりました、放棄する」と言った。もちろん、チェルノブイリ原発事故の影響もあった〉
〈一方、私たちには取引する権利もあった。1つは弾頭内の核分裂性物質を放棄する代償だ。3000個の戦術核弾頭と2000個のICBM(大陸間弾道ミサイル)と巡航ミサイルに含まれる高濃縮ウランとプルトニウムを手放す代わりに、ロシアは低濃縮ウランにダウンブレンドして、原発の燃料集合体としてウクライナに提供した〉
〈もう1つは、安全保障だ。ウクライナはブダペスト覚書で国の安全保障を求めたが、それは上手くいかなかった。ロシアは協力的でなかったし、米国にとって、安全保障とは北大西洋条約の第5条(集団防衛の規定)のようなものだ。日本や韓国、NATO同盟国に対する誓約だ〉
〈ポーランド、ハンガリー、チェコのNATO加盟でさえ、物議を醸した。米国が提供する安全保障に法的拘束力があれば、米国議会が承認する必要もある。政治的な戦いになる。米国はウクライナに圧力をかけた。結局、私たちにできた最善の選択は、文書に署名することだった。それは政治的保障にすぎず、国連の文書からコピペしただけのものだった〉
〈ただ、ブダペスト覚書はウクライナのNPT加盟とともに、核不拡散体制の一部になった。私は「覚書に対する違反は、NPT体制に打撃を与える」と批判している。完全な抑止ではないが、ウクライナが核を放棄する条件として、非核保有国と国際的核秩序の間で合意された取引の一部だったのだ〉
●ロシア石油大手の会長が「病院の窓から転落死」 企業重役の不審死相次ぐ 9/2
ロシアの石油大手ルクオイルのラヴィル・マガノフ会長(67)が1日、死亡した。モスクワ市内の病院の窓から転落したと報じられている。
ルクオイルはマガノフ会長の死を認めたものの、「重病の末」と説明している。ロシアのメディアは、マガノフ氏はモスクワの中央病院でけがの手当てを受けたが、同病院で亡くなったと報じた。ロシアではこのところ、大手企業の経営者などが相次いで謎の死を遂げている。
捜査当局は、現場で死因を調べていると説明。国営タス通信が取材した関係者によると、マガノフ氏は1日午前に6階の窓から転落したという。タス通信はその後、同氏が自殺したと報じた。
今年2月にロシアがウクライナ侵攻を開始した際、ルクオイルの役員会は紛争の早期終結を求めると表明。「この悲劇」の犠牲者に同情すると述べた。
4月にはワギト・アレクペロフ社長(当時)が、侵攻への対応を理由にイギリスから制裁を科されたことを受け、辞任している。
ロシアではここ数カ月で、エネルギー企業の重役やオリガルヒ(富豪)が不審死している。
・4月には、天然ガス大手ノヴァテクの前社長セルゲイ・プロトセーニャ氏と妻子の遺体が、スペインの別荘で発見された
・同月、石油大手ガスプロム傘下の金融機関ガスプロムバンクのウラジスラフ・アヴァエフ前副社長と妻子の遺体が、モスクワのマンションで発見された
・5月には、ルクオイルの大物役員アレクサンデル・スボティン氏が心不全で亡くなった。報道では、シャーマン(宗教的職能者)による代替医療を探していたという
ルクオイルは、ロシア最大の民間企業。 世界最大級のエネルギー企業に成長したのはマガノフ氏の経営手腕によるものだと、同社は声明で述べている。
マガノフ氏は1993年に入社し、2年前に会長となった。3年前にはウラジーミル・プーチン大統領から生涯の功労をたたえる勲章を授与されている。
●「旧来型の戦闘」で冷笑されるロシア軍の瀬戸際 9/2
ロシアがウクライナへ侵攻を開始してから半年が経過した。ここに来て、ウクライナ戦争の戦局が大きく動き出した。
兵力・装備の不足などで継戦能力の減退が目立ってきたロシア軍に対し、主導権を握ったウクライナ軍は2022年8月29日、ついに地上部隊による本格的な反攻作戦に乗り出した。ロシアに3月から制圧されている南部ヘルソン州などの奪還を目指したものだ。
ウクライナのゼレンスキー政権がこの時期に反攻作戦に踏み切った背景には、今年冬までに大きな勝利を実現したうえで、優位な立場でロシアとの停戦交渉を模索するという短期決戦の戦略がある。
アメリカのバイデン政権もウクライナを強力に支えるため、2022年10月にも大規模な軍事援助体制を発足させる構えだ。これは、アメリカがウクライナと事実上の「連合国」体制を構築することを意味する。
一方、プーチン政権は2022年7月以降の苦戦を受け、戦争を2023年以降へと長期化させ、粘り勝ちを狙う戦略に転換した。しかし反攻作戦の開始を受け、一層受け身に立たされる形となった。
反攻作戦を始めたウクライナ軍
2022年8月末現在、ウクライナ軍は反攻作戦の内容について厳しい箝口令を敷いており、詳細は不明だ。それだけ重大な決意で臨んでいる作戦であることを物語る。ヘルソン州に加え、ザポロリージャ(ザポロジェ)州でも始まったとみられるが、反攻作戦がどこまでの領土奪還を狙ったものかは現時点でははっきりしない。
反攻作戦の時期をめぐっては、これまで2022年6月末説など、さまざまな臆測が流れていた。最近では「本格的な反攻を延期する」との情報が欧米メディアで流れ、延期説が広がっていた。このため、今回の反攻は一種のサプライズとなった。ウクライナ側の陽動作戦だったとみられる。
この間、ウクライナ軍は周到に反攻への準備を進めてきた。まず、ヘルソン州のドニエプル川西岸に配置されているロシア部隊を弱体化させるため、司令部、弾薬庫を集中的に砲撃した。
さらに、ヘルソンへの主要な物資供給の出発点である南方のクリミア半島からの補給路にも執拗に砲撃を加えた。中でも補給路の要所である、ドニエプル川に架かる4つの橋をアメリカが供与した高性能兵器である高機動ロケット砲ハイマースで叩いている。その後もロシア軍が橋を修理したり、浮き橋を作るたびに攻撃している。この結果、この補給路はほぼ断絶状態だ。
軍事筋によると、反攻作戦を前にウクライナ軍は巧妙な砲撃でヘルソンのロシア軍自体も追い込んでいた。
当初、1万2000人のロシア軍部隊がいたが、ウクライナ軍はヘルソンにある司令部と通信施設をハイマースで激しく砲撃した。このため司令部は部隊を残したまま、約200キロメートルも離れた東岸のメリトポリまであっさりと後退した。
ウクライナ軍はその後、メリトポリの司令部にも再三砲撃を加えている。このため司令部と部隊が通信上も完全に切り離された状態になった。部隊には応援に来た3000人規模の部隊も合流したが、司令部と切り離されたことで士気喪失状態という。
補給が苦しくなったにもかかわらずロシア軍がヘルソンへ部隊を増強したことについて、ロシアの有力な軍事評論家であるユーリー・フョードロフ氏は2022年8月半ばに、ウクライナの「戦略的罠」にはまり降伏するか敗走するしか道がなくなる可能性を指摘していたが、文字通り、そうなってしまったようだ。ハイマースは、約70キロメートルの射程と精度の高さ、使い勝手のよさで優れており、ウクライナ軍にとって「ゲーム・チェンジャー」となっている。
旧来型の戦闘に終始するロシア軍
さらにウクライナ軍は2022年8月初旬から、クリミア半島の軍事施設や交通要衝を標的に地元のウクライナ人住民と協力して、パルチザン攻撃も継続している。この結果、クリミアから鉄道で軍事物資を送り出すことが一層難しくなった。同時にヘルソンなどでは住民の事前避難も進めていた。ウクライナ人住民に多数の死者を出した東南部マリウポリへのロシア軍の凄惨な攻撃を念頭に、反攻作戦での民間人の死者をなるべく少なくする配慮なのだろう。
ロシア軍は多数の将兵、民間人の死者を顧みずに砲撃戦を繰り返す、旧ソ連軍型戦争を採用している。軍事筋は、ウクライナ軍がこれとは一線を画した「頭を使った21世紀型の新たな戦争」をしようとしていると指摘する。ウクライナ軍は、兵力消耗型のロシア軍の将兵について「大砲の餌」と憐れんでいる。
反攻開始に当たって2022年8月30日にテレビ演説したゼレンスキー大統領も、ロシア軍兵士に対し「生きたければ自宅に戻るか、捕虜になるしかない」と部隊離脱を呼び掛けた。これはただでさえ士気低下が著しいと言われるロシア将兵の動揺を誘う心理戦とみられる。
反攻作戦開始を受け、戦況の行方とともに焦点になるのは、プーチン政権が2022年9月11日の実施に向け最終的準備をしている占領地での住民投票だ。東部ドンバス地方のルガンスク、ドネツクの両「人民共和国」に、南部ヘルソン州とザポリージャ州を加えた4地域で行うべく準備が進んでいる。プーチン政権としては、形だけの「住民投票」を経て違法にクリミア併合を宣言した2014年の「クリミア・シナリオ」を再現する狙いとみられる。
しかし、ウクライナ軍がヘルソンなどで奪還地域を広げてくれば、住民投票は事実上延期、ないし中止される可能性が高い。そうなればロシアへの「編入宣言」どころではなくなるだろう。
ゼレンスキー政権はなぜ短期決戦の戦略を選んだのか。その大きな要因としては、戦争が長期化すればするほど、ロシアに有利に働くとの判断がある。泥沼化すれば、ロシア産天然ガスの供給削減でエネルギー危機に見舞われているドイツを含め、欧州からウクライナに対し、不利な条件での停戦を求める圧力が出かねないとの危機感があるからだ。
さらに、人口1億4000万人のロシアと4500万人のウクライナの国力の差もある。現時点で軍事力が「ようやく肩を並べた」と主張するウクライナ軍だが、やはり国力の差を意識しているだろう。
では、反攻作戦が目指す領土奪還のゴールはどこなのか。現時点でゼレンスキー政権は発表していない。これもロシア軍の動揺を引き出す心理戦の一環だろう。常識的には、ヘルソン州や、一部が制圧されているザポリージャ州の奪還がゴールと考えるのが妥当だ。
これを実現して、侵攻開始時の地点までロシア軍を押し返すことで、とりあえず「戦勝」と宣言する構えとみられる。それだけでも、プーチン氏にとっては政権発足以来、最大の政治的敗北となる。その勝利をバックにプーチン政権に対し、力の立場で停戦交渉を呼び掛ける計画だろう。東部2州とクリミアの奪還はより長期的スパンで実現する2段階戦略とみられる。
クリミア奪還をも宣言したウクライナ
しかし、ゼレンスキー大統領は2022年8月24日、南部のみならず、大半を実効支配されている東部ドンバス地域とともにクリミアも奪還する宣言を出したばかりだ。多くの国民もこれを支持している。
今後の戦況次第だろうが、クリミアにも大掛かりな攻撃を仕掛ける可能性はあると思う。ゼレンスキー氏は2022年8月16日のテレビ演説で「クリミアなど占領された地域のすべての人々はロシア軍の施設に近づかないでほしい」と呼びかけた。
当面の焦点は、ロシア本土南部とクリミアを繋ぐ唯一の陸路、クリミア大橋だ。現時点で、パルチザン攻撃でパニックとなり、クリミアから逃れようとするロシア軍脱走兵を一人でも多く、橋を渡ってロシア側に逃がすほうが得策とウクライナ側は判断しているようだが、橋の破壊を狙った突然の攻撃も否定できない。
ここまでゼレンスキー政権が強気になった背景には、ウクライナに対し、アメリカが、先述した事実上の「連合国」体制構築に踏み出したからだ。この体制の骨格になるのが2022年5月にアメリカ議会が成立させた「武器貸与法」だ。「レンドリース法」とも呼ばれる武器貸与法は、2023年9月末までの間、手続きを簡略化し、迅速にウクライナに大量の軍事物資を貸与することを可能にする法律だ。
「武器貸与法」は第2次世界大戦中にも制定された。アメリカはナチス・ドイツと戦うイギリスなどに対して武器や装備を提供し、これが連合国勝利の要因の1つになった。同法成立以来、ウクライナ側は早期の実行をアメリカに求めていたが、ようやく2022年10月にも正式に動き出す見通しだ。これにより、アメリカとウクライナが事実上の「連合国」的関係になる。同法は大戦中、ドイツと戦った旧ソ連にも適用された。それが今回はロシアとの戦争で適用されることなる。歴史の皮肉だ。
ウクライナ側によると、2022年10月にはアメリカ国防総省内に武器供与と輸送に関する本部が設置される予定という。これまでは航空機で武器を運んでいたが、大幅に輸送量が増えるため、船舶輸送が主力になるという。
これに伴ってアメリカ製の高性能兵器の供与が大幅に増える見通しだ。F16 などアメリカ製戦闘機の供与が初めて始まる可能性もあるという。すでにアメリカではウクライナ兵士約1万人がアメリカ製兵器の操作の訓練を受けており、ウクライナ軍の装備面でのNATO(北大西洋条約機構)化が事実上進むことになる。
こうしたアメリカのウクライナ防衛への本格的関与の姿勢は、ウクライナが一定の戦勝を果たすことで、プーチン政権に継戦を断念させるとの米欧の戦略に基づくものだ。同軍事筋によると、仮にロシアとの間で何らかの停戦協定が実現した後、ロシアが協定を破り攻撃してきても守る態勢構築を意図しているという。
援助疲れを感じないアメリカの支援
ウクライナ独立記念日の2022年8月24日、アメリカ政府は30億ドル(約4100億円)規模の追加軍事支援を発表した。侵攻後、アメリカが1回の発表で明らかにした軍事支援としては最大規模だ。この中にはウクライナが強く望んでいた防空システムが初めて盛り込まれた。
この援助発表の際、アメリカ国防総省のカール国防次官(政策担当)は「プーチンの戦略は、ウクライナ国民やウクライナの同盟国が諦めるのを粘り強く待つことだ。今回の援助はこのプーチンの理論に直接挑むものだ」と強調した。当面アメリカ政府に「支援疲れ」がありそうもないことを示す発言だ。
同じことが、実は軍事支援に消極的と言われてきたドイツにも当てはまる。支援計画を発表しながら、なかなか実行しないショルツ首相に対してウクライナに同情的な国民ばかりか、連立政権内からも批判が出ていた。しかし2022年7月頃から本格的支援が動き出した。ドイツを当初批判していたウクライナ政府関係者からも批判が出なくなった。
フランスは相変わらず消極的だが、英国は軍事支援については米欧全体をリードするほどの積極姿勢だ。チェコなどの東欧諸国も支援に積極的だ。
これに対し、ロシア軍は反攻作戦を軍事的に撃退するとの強気の姿勢だ。しかし、苦しい実情を端的に示す事態が2022年8月24日に起きた。この日は侵攻開始からちょうど半年で、同時にウクライナの旧ソ連からの独立記念日という二重の意味で節目となった。
ゼレンスキー政権は政治的打撃を狙ってロシア軍が首都キーウの政府庁舎などに大規模なミサイル攻撃を行うのでは、と厳戒態勢を敷いた。
しかしこの日、ロシア軍が弾道ミサイル「イスカンデル」で攻撃したのは東部ドニエプロペトロフスク州の駅だった。25人もの死者が出たが、拍子抜けの印象は否めなかった。現地の事情に詳しい軍事筋は筆者に対し「精密誘導ミサイルの不足が理由だろう。東部への攻撃に回すためキーウにミサイルを撃たなかった」と指摘した。
ウクライナ軍情報部の発表によると、ロシア軍の主力ミサイルであるカリブル型巡航ミサイルの現在の保有数は「非常に少なく」、短距離巡航ミサイル「イスカンデルM」の場合、残っているのは保有数の当初の20%しかないという。しかも西側制裁のため、ロシアでのミサイル生産能力は大幅に減っている。西側からの輸入精密部品が多く使われているからだ。
火砲の弾薬についても、専門家からはすでに2022年内には極めて不足すると指摘されている。同軍事筋は「新たな兵員集めもうまくいっていない。ロシアの戦力を分析すると、年内で継戦能力が失われるだろう」と指摘する。
しかしプーチン政権としては、ウクライナに主導権を奪われたまま、侵攻が失敗する事態を受け入れるわけにはいかない。強気なプーチン氏は、受け身になりながらも何とか粘って情勢逆転のチャンスを狙うはずだ。欧州へのガス供給を絞って、米欧間の離反も狙うとみられる。
長期戦への世論形成を急ぐロシア
そのためには国民に長期戦が必要な理由を説明し、高い戦争支持を引き続き保つ必要がある。これを目的にクレムリンが最近、世論形成のために行っているのが、戦争の相手はウクライナだけではなく、NATO全体だとのプロパガンダだ。一日中、国営テレビで放送されるトークショーでこれを宣伝している。NATO相手の戦争だから長引くのは仕方ないという理屈だ。国民に覚悟を求める狙いだ。
だが、ショイグ国防相は2022年8月24日、ロシアの進軍が遅れているのは民間人の犠牲を避けるための意図的な選択だと説明した。この苦しい弁解は、西側諸国ばかりか国内でも失笑を買った。プーチン政権を支えてきた保守民族派からもクレムリン批判の声が出始めた。
このためショイグ発言の翌日、プーチン氏はあわてて保守派向けにダメージ・コントロールの手を打った。ロシア軍の総定員を2023年1月から約14万人増やして、約203万9700人とする大統領令に署名したのだ。クレムリンが具体的な増強策を打っていることを示す狙いだ。
しかし、この定員増が実際に兵力強化につながるとの見方は少数派だ。ロシアの軍事専門家であるルスラン・レビエフ氏は「徴兵逃れや脱走で、今ロシア軍は前例のない規模の定員割れが起きている。大統領の増員令が状況を変えるとは思えない」と冷ややかにみている。
どこを見ても打開の糸口が見当たらないプーチン政権。その中で起きた南部ザポリージャ原子力発電所での砲撃事件は、クレムリンにとって米欧から何らかの譲歩を引き出すための「瀬戸際作戦」とみられる。
しかし、原発事故という恐怖をちらつかせるロシアに対し、米欧は冷ややかだ。放射線が仮にポーランド領内で感知されればNATOへの攻撃とみなすとの強硬姿勢で対応している。侵攻作戦のみならず、原発危機を演出した脅迫戦術でもロシアは行き詰まっている。 
●ウクライナ戦争批判のロシア石油企業幹部 病院の窓から転落死、他殺疑う 9/1
ロシアの石油第2位「ルクオイル」は1日の声明で、会長のラビル・マガノフ氏(67)が死亡したことを明らかにした。
ロシアのインタファクス通信が、情報筋の話として伝えたところでは、マガノフ氏は1日朝、中央臨床病院の窓から転落し、それによる怪我で死亡したという。
同社によると、ルクオイル社は、会長不在となった場合、取締役会の副会長が会長の役割を果たすとされている。今年の取締役の構成は発表されていないものの、モスクワ州立法科大学の学長が副会長に再指名を受けているという。
ルクオイルはプーチン大統領のウクライナ侵攻の決定に反発を示した企業で、侵攻開始直後、紛争は「外交的手段による、交渉を通じて」解決するべきとの声明を発表していた。
中央臨床病院は、政財界のエリートが利用することで知られ、マガノフ氏が死亡した日、プーチン大統領は同病院で、ソ連最後の指導者で30日に死亡したゴルバチョフ元大統領の弔問に訪れたという。
ロイター通信によると、ロシアのタス通信は捜査当局者の情報をもとに、自殺と伝えている。マガノフ氏は心臓発作を患い、抗うつ剤を服用していたという。
一方、ウクライナ侵攻をめぐってクレムリンに反発していた会長の死に、ネットでは、自殺を疑う声が投稿されている。
ノース・ウェスト・イングランドの首席検察官、ナジル・アフザル氏はツイッターに「プーチンの批判的な人々の周りでは、欠陥の窓がよく見られる」と暗殺の可能性を指摘した。
4月、ロシアの天然ガス企業ノバテクの元幹部のセルゲイ・プロトセーニャ氏とその家族がスペインで死亡しているのが発見された。当時、現地の捜査当局は家族を殺害して、自殺をはかったとみて捜査を進めていると伝えられたが、ノバテク社はこれを疑う姿勢を示していた。同月、ロシア三大銀行のガスプロムバンクの元幹部、ウラジスラフ・アバエフ氏(51)も、妻と13歳の娘とともにモスクワのアパートで死亡しているのが見つかった。現地メディアは、アバエフ氏が二人を殺害した後、自殺した可能性があると伝えていた。
先月14日、プーチン氏に批判的で知られたラトビア系米国人の実業家、ダン・ラパポート氏(52)が、ワシントンD.Cの高級アパートから落下して死亡した。警察は他殺の可能性を否定しているものの、「プーチン最大の敵」ことビル・ブラウワー氏は、ポリティコの取材に「死の状況は、極めて疑わしい」と主張している。
●ロシア軍がミサイル発射「大失敗」、ロシア国内の住宅地に着弾 9/2
ロシア軍によるミサイル発射が「大失敗」した瞬間を捉えたとみられる動画が、インターネット上に出回っている。
ウクライナ軍の当局者によれば、8月31日の夜、ロシア軍は北東部のハルキウ(ハリコフ)で地対空ミサイル「S300」6発を発射したものの、このうち1発が軌道を外れ、国境に近いロシア・ベルゴロドの住宅街に着弾した。ベルゴロドの住民数人が、その瞬間をカメラで撮影していたという。
オープンソース・インテリジェンスのアカウントOSINTtechnicalが、失敗したミサイル発射を捉えたとされる動画の一部を共有。「誘導システムに何か深刻なトラブルが生じたようだ」と示唆した。
19秒間のある動画は、問題のミサイルが打ち上げられた後に進行方向を変えて軌道を逸れ、最終的には地上に落下して爆発を起こす様子を捉えている。
ロケットが着弾した正確な場所はまだ分かっていないが、メッセージアプリ「テレグラム」の複数のチャンネルによれば、ベルゴロド南西部のコムソモルスキー村とみられる。
ベルゴロド州のビャチェスラフ・グラトゴフ知事は自らのテレグラムのチャンネルで、市内で複数の爆発が報告されており、同州の防空システムが作動したと説明。投稿時点までに入った情報によれば、被害や犠牲者は出ていないと述べた。
ロシア軍の設備が誤作動したとみられるのは、今回が初めてではない。6月には、ロシアの防空システムが誤作動した瞬間を撮影した動画が、ソーシャルメディア上に出回った。
ミサイルが発射地点に引き返してくるように見える瞬間を捉えた動画もあった。ウクライナ東部のルハンスク(ルガンスク)州アルチェフスクから発射された地対空ミサイルが、発射後に軌道を変えて引き返し、発射地点の近くに着弾したのだ。
テレグラムのチャンネル「Kyiv Operative」が最初に投稿したこの動画には、ミサイルが発射された直後に向きを変えて逆戻りし、着弾して大規模な爆発が起きる様子が映っている。爆発後には、サイレンやアラームの音が鳴り始めている。
この爆発で破壊された、あるいは損傷した設備があるのかどうかは不明だ。被害者の中に、ロシアが支援する分離独立主義者が含まれていたかどうかも分かっておらず、この奇妙な誤作動の原因も分からなかった。
また6月には、ロシア軍が同市でミサイル発射を試みたものの、ウクライナの報道機関24TVの当時の報道によれば、1発目が発射後すぐに空中で爆発してばらばらになり、住宅街からさほど離れていないところで火災を引き起こしたということだ。
●“侵攻継続と和平交渉で意見が二分” ロシア 世論調査  9/2
ウクライナ侵攻をめぐってロシアの独立系の世論調査機関は、ロシア国内では侵攻の継続と和平交渉への移行で意見が二分しているとする調査結果を発表しました。
ロシア軍によるウクライナ侵攻後、ロシアの世論調査機関「レバダセンター」は毎月下旬に全国の1600人余りを対象に対面形式で調査を行っています。
1日、8月の調査結果を発表し、この中で「軍事行動を続けるべきか和平交渉を開始すべきか」という質問に対して、
「軍事行動の継続」と答えたのが48%、
「和平交渉の開始」が44%で、意見がほぼ二分しました。
このうち40歳未満では過半数が「和平交渉」を選んでいて、若い世代ほど和平交渉への移行を望んでいることがうかがえます。特に18歳から24歳までの若者の30%は「ロシア軍の行動を支持しない」と答え、情報統制が強まる中でも、およそ3人に1人が侵攻への反対姿勢を示した形です。
「レバダセンター」はいわゆる「外国のスパイ」を意味する「外国の代理人」に指定され、政権の圧力を受けながらも、独自の世論調査活動や分析を続けています。
●ウクライナ 輸出再開後 穀物など100万トン超も今後収穫厳しく  9/2
ウクライナ南部の港から8月に農産物の輸出が再開して以降、これまでに輸出された穀物などが100万トンを超えたと、国連が発表しました。ただ、ウクライナの農業生産者の中からは、軍事侵攻の影響で種や肥料が買えず、来年の収穫の減少は避けられないという厳しい見方が出ています。
黒海に面するウクライナ南部の港では、ロシア軍による封鎖で、農産物の輸出が滞っていましたが、8月、ウクライナとロシアとの合意に基づいて輸出が再開し、国連は、これまでに輸出された穀物などが100万トンを超えたと8月27日に発表しました。
輸出の再開が進む一方、ウクライナでは、今後の収穫や作付けに厳しい見通しを示す生産者もいます。
スコルニヤコウ氏が経営する大手穀物会社は、ウクライナ東部に12万7000ヘクタールの農地を所有していましたが、そのうち、およそ7割は軍事侵攻後にロシア側に掌握されたり、畑に地雷を埋められたりして、小麦などの収穫ができずにいるということです。
さらに、多くの農地で「穀物と農業用機械のすべてを奪われた」と述べ、失った穀物や農業用機械などの被害総額は、およそ1億ドル、日本円にして、およそ140億円に上ると訴えました。
軍事侵攻の影響で資金繰りが厳しくなる中、スコルニヤコウ氏は「来年の作物の種をまく資金がない。肥料も買えない。来年の収穫量は劇的に減少するだろう」と述べ、今後の作付けへの影響は避けられないという厳しい見方を示しました。
●「軍の大半はプーチンを嫌っている」パスポートをトイレに流し…ロシア兵暴露 9/2
ウクライナ侵攻に加わり、その後、フランスに逃れたロシア兵がJNNの単独インタビューに応じました。政府の言っていたことは「完全なウソだ」。決意の告発です。
侵攻開始から半年が過ぎたウクライナ。
ロシア軍による占領が続く南部ザポリージャ原発にはIAEA=国際原子力機関のチームが1日、ようやく調査に入りましたが、同じ日に再び周辺で砲撃が伝えられています。
一方、終わらない侵攻に加わっていた男性は今、別の場所にいました。
ロシア軍兵士 フィラティエフさん「目にしたのは、街が破壊され、平和な生活が壊されている様子です」
JNNの単独インタビューに応じたパベル・フィラティエフさん(34)。ロシアの親衛空挺連隊の隊員でしたが、砲弾で目を負傷後、今はフランス・パリにいます。
空港に到着した際には、自国のパスポートを破り捨て、ロシアへの強い不満を示すフィラティエフさん。
2月のウクライナ侵攻の際は南部ヘルソンに派遣されましたが、ほぼ命令は受けていなかったと証言しました。
ロシア軍兵士 フィラティエフさん「我々は誰からもどこを攻撃する、目的は何か、命令を受けていませんでした」
また、過酷な戦地の状況と兵士たちの行動については…。
ロシア軍兵士 フィラティエフさん「人がいない店があり、すべての軍人が店を通りがかる時にたばこ、水、食料を盗んでいきました。生死にかかわる問題だったのです」
そして、時間の経過とともに兵力は不足し軍の士気も低下。多くの兵士が次の戦地に行くことを拒否していたといいます。
ロシア軍兵士 フィラティエフさん「軍の大半はプーチンを嫌っているし、9割は軍に勤めたこともない国防相を笑っています」
ロシアで軍への批判は「偽情報」の流布として犯罪扱いとされますが、戦地を逃れたフィラティエフさんはSNS上に141ページに及ぶ手記を公表し、ロシア軍の内情を暴露。
今はフランスに政治亡命を求めています。彼が思うことは…。
ロシア軍兵士 フィラティエフさん「この戦争は誰にも必要ではないし、単に民間人が死んでいるだけだということを皆わかっています。(ロシア政府の言うことは)完全なウソであることは明らかです」
軍の実態を明らかにして「戦争を一刻も早く終わらせたい」。フィラティエフさんはそう訴えています。
●ロシアや占領地域の学校、政府承認の歴史教育が重要=プーチン氏 9/2
ロシアの学校で新学期が始まった1日、プーチン大統領は西部カリーニングラード州の学校の教室で全土から選抜され集まった子どもたちと面会し、政府が認めた歴史を教えることの重要性について語った。
プーチン氏は1時間の質疑応答の中で、ウクライナ東部の子どもたちがウクライナはかつてロシアとともにソ連という同じ国の一部だったことを理解していないことを知り、自分はショックだったと述べた。これを正すことが極めて重要な作業になるとし、ロシアや、ウクライナのロシア占領地域で学校がロシア政府の承認した教科を教えることが重要だと強調した。
ウクライナ侵攻後に愛国教育化を大きく推進しているロシア政府は、この新学期からすべての小学校で週初には授業の前に国旗などを掲揚するセレモニーを行い、国歌を演奏することを義務化。プーチン氏はソ連時代の共産党青年団「コムソモール」や少年団「ピオネール」にならった政府主宰の新たな青少年組織の理事会トップにも就任した。
●ロシア大統領、西部の飛び地を訪問 EUとの緊張高まる中 9/2
ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は1日、バルト海(Baltic Sea)沿岸にある飛び地カリーニングラード(Kaliningrad)を訪問した。新学期を迎えた生徒と面会し、ロシアによるウクライナ侵攻や経済、宇宙探査などの質問に応じた。
欧州連合(EU)に加盟するポーランド、リトアニア両国に挟まれたカリーニングラードは、軍事拠点化されている。ウクライナ侵攻開始後、ロシアとEUの間で緊張が高まり、同地には8月に極超音速弾道ミサイル「キンジャル(Kinzhal)」を搭載した戦闘機3機が配備された。
プーチン大統領はテレビ放送された映像の中で「わが国の兵士の任務は、この戦争を止め、国民を守り、当然ながらロシアを守ることだ」と語った。さらに「ウクライナはわが国を脅かす反ロシアの飛び地を構築し始めた」とも述べた。
リトアニアは6月、EUの制裁対象となっている物品を積みカリーニングラードへ向かうロシアの列車の国内通過を禁止し、ロシアはこれに反発。EUは7月、武器を除けば、制裁対象であってもロシアの貨物を通過させる義務がリトアニアにはあるとの指針を発表した。
●対ロシア制裁に加わらない「非欧米世界」の存在感…進む世界の分断 9/2
ロシアがウクライナ侵攻してから半年が過ぎた。プーチン大統領はウクライナでロシア系住民が迫害されていることを侵攻の正統性として強調しているが、これを機にロシアへの圧力は一斉に強化された。米国を中心とする欧米諸国はロシアへの経済制裁(原油や天然ガスなどの輸入停止、ロシア高官の入国禁止など)を強化し、マクドナルドやスターバックスなど世界的企業はロシアから完全撤退した。政府による制裁より、企業の完全撤退や事業縮小という自主制裁の方が効果的との意見も多いが、これらによってロシア経済は大きな損失を被ることになった。
また、欧米諸国は軍事面でもウクライナへの支援を強化し、今日までロシア軍の攻勢を食い止めることに成功している。侵攻当初、プーチン大統領は数日程度で首都キーウを掌握できると計算していたが、プーチン大統領が描く侵攻計画は既にフィクションと化し、ロシア軍は一進一退の攻防を余儀なくされている。
戦況が長期化することでロシア兵の疲労や不満も強まり、攻撃も無計画、無差別的なものになり、軍事戦略に基づく攻撃から逸脱したテロの様相も呈している。また、ロシアが使用する高性能武器も一部の材料で調達先が欧米諸国となっており、経済制裁に直面することで軍事開発面でも大きな制限が出ているという。欧米とロシアという構図のみでみれば、ロシアは経済的にも軍事的にも大きなダメージを受ける形になったことは間違いない。
しかし、それを支える空間が拡大している。実は、ウクライナに侵攻したロシアに対して経済制裁を実施しているのは欧米や日本など40か国あまりに留まり、中国やインド、ASEANや中東、アフリカの殆どの国は独自のスタンスを維持している。
ロシアへの経済制裁によってロシア産エネルギーが値下がりすることで、中国はロシアとのエネルギー貿易を強化する傾向にある。また、ASEANや中東、アフリカには一帯一路によって中国から多額の経済支援を受ける国も多く、道義的には欧米に追随したくても、そうすれば経済支援を停止、減額されることを警戒している国も少なくない。今年秋にG20を開催するインドネシアは、同会議にプーチンを招待することを発表し、インドは安価なロシア産エネルギーの輸入は避けられないとし、ロシアと距離を置くよう求める欧米の要請を一蹴した。
こういった「非欧米世界」の拡大、自国の国益を第一に、国益が合致すればロシアとも実利的接近を試みる各国の姿はプーチンを強く後押ししている。これがこの半年でプーチンが発見した最大の収穫と言っていいだろう。
米韓による軍事演習が8月22日から始まったなか、韓国軍は23日、ロシアの軍用機2機が韓国の防空識別圏に進入したと明らかにした。ロシア側の意図は明らかになっていないが、米韓による軍事演習を威嚇する狙いがあった可能性が高い。ロシアによるウクライナ侵攻から半年が経過するなか、日米などの間ではロシアが極東地域で軍事的活動を活発化させる懸念を強めているが、韓国で親米的な政権が誕生したこともあり、今後はロシアと韓国との間でも安全保障上の緊張が高まる可能性がある。
ロシアによるウクライナ侵攻から半年経って明らかになったことは、世界の分断が一層進み、しかもそれが長期化する様相を呈していることだ。プーチン大統領は強硬な態度を崩しておらず、「非欧米世界」陣営は先鋭化することで、今後一層欧米に対して強気の態度で対抗してくることだろう。グローバル化したサプライチェーン網のなか、経済のデカップリング(切り離し)は非現実的だ。しかし、日本としてはウクライナ侵攻で一層進んだ分断社会のなかでどう経済を支えていくかを考えていく必要がある。
●G7財務相、ロシア産石油価格の上限設定で合意 9/2
主要7カ国(G7)の財務相は2日開催したオンライン会合で、ロシア産石油および石油製品の価格に上限を設定する措置を導入する方針で合意した。原油価格の高騰を回避しつつ、ウクライナ侵攻を続けるロシアの戦費調達を阻む。
しかし、バレル当たりの価格上限については「技術的インプットの範囲に基づき」今後詰めるとし、重要な詳細は盛り込まれていない。
G7財務相は声明で「ロシア産原油および石油製品の海上輸送を可能にするサービスの包括的な禁止を決定し、実施するという共同の政治的意図を確認する」と表明した。
価格上限を超えるロシア産石油や石油製品の海上輸送への保険・金融サービスなどの提供は禁止される。
声明はまた、「欧州連合(EU)の第6次対ロシア制裁に含まれる関連措置のスケジュールに合わせて実施することを目指す」としている。EUは12月からロシア産石油の禁輸を施行する。
米国財務省の高官によると、ロシア産原油については特定のドルの価格上限を設け、石油製品については別の2種類の上限を設ける見通し。価格は必要に応じて見直すという。
議長国ドイツのリントナー財務相は会見で、ロシアの石油価格に上限を設けることで、ロシアの歳入が減少するとともに、インフレが抑制されるとし、「われわれはロシアの収入を制限したい。それと同時にわれわれの経済への打撃を軽減したい」と語った。
さらに、G7は上限設定でコンセンサス形成を目指しており、EUの全加盟国が参加することを望んでいるとした。
イエレン米財務長官も声明で「世界のエネルギー価格に下押し圧力をかける、ウクライナでの残忍な戦争の財源となるプーチン大統領の収入を断つという2つの目標」達成に役立つという認識を示した。
ロシア大統領府のペスコフ報道官はG7の声明を受け、世界の石油市場を不安定化させる措置という見方を示し、上限価格を設定する国国への石油販売を停止すると述べた。
G7の高官は、ロシア産石油価格の上限設定を巡り、他国からも参加に向け「前向きなシグナルを受け取っているが、確固としたコミットメントには至っていない」と述べた。同時に「われわれはロシアや中国などに対する結束のシグナルを送りたかった」と述べた。
ウクライナのゼレンスキー大統領のウステンコ上級経済顧問は、ロシアの収入を減らすためにまさに必要な措置」とし、G7財務相会合での決定を歓迎。価格上限が40━60ドルのレンジになるという見通しを示した。
ゼレンスキー大統領はビデオ演説で、ロシアの天然ガス輸出にも上限を設けるべきと訴えた。

 

●長期化するウクライナ侵攻がもたらしたロシア経済の本当の姿〜 9/3
ウクライナ侵攻の長期化は、西側諸国経済を中心に低成長とインフレ率の上昇という暗い見通しにつながっている。しかし、ロシアは原油や非エネルギー製品の輸出が健闘したうえ、中銀の機敏な危機対策もあり、経済は予想以上に持ちこたえている。公開統計情報が取捨選択されているとの指摘もあるが、少なくとも自動車生産については大幅減産を示す連邦統計局の発表が出ている。ロシアが制圧した東南部では、秋口にロシア編入を巡る住民投票実施に向け準備が進められている。しかし、ウクライナの反発は必至であり、停戦交渉の道筋は見えない。今後も、ウクライナ発の世界的な食糧危機の懸念が続くのか注目されている。
ロシア経済は想定以上に持ちこたえている?
ウクライナ侵攻長期化の懸念が現実のものとなり、世界経済に暗い影を落としている。ウクライナ侵攻のショックは、ロシアからのエネルギー輸入に大きく依存するEUに直接・間接的な大打撃を与え、経済の低成長とインフレ率の上昇という軌道を強いている。エネルギーおよび食糧価格の急騰は世界的なインフレ圧力を強め、家計の購買力を圧迫し、これまで想定されていたよりも速いペースでの金融政策引き締めに繋がっている。
IMFの2022年7月の見通しでは、西側主要国のほぼすべてが下方修正されたものの、ロシア経済は原油や非エネルギー製品の輸出が予想以上に持ちこたえ、2022年は6.0%縮小と上方修正された(前回4月見通しでは8.5%縮小)。金融セクターへの制裁の影響を緩和する措置を導入し、労働市場の弱体化も懸念されたほどではなく、国内需要は幾ばくかの強靭性を見せている。
さらにロシア中銀も、景気低迷は長期化するものの、これまでの予想ほど深刻にならないとして7月に景気見通しを上方修正している。企業活動も、6月予想時ほど停滞しておらず、ロシア企業が新たなサプライヤーや市場を開拓し、景況感も徐々に回復している。GDPの縮小幅が小さくなると予想されたのは、主に輸出の減少が想定よりも小幅だったためである。その結果、ロシア中銀は供給サイドの要因によってGDPは2022年に4〜6%縮小(4月時には8〜10%縮小を予想)するものの、2024年には拡大に転じると予想している。
一方、IMFは、景気後退の規模は相当なものであり、ロシアの経済成長率は2023年に前年比マイナス3.5%とリバウンドも期待はできないとみている。さらに米国イエール大学の調査では、ロシアは想定以上に制裁の影響を被っていることが判明したと指摘している。2月24日の侵攻以降、ロシアはエネルギー価格の高騰により、エネルギー輸出で数十億ドルの利益を得てきたが、他のセクターに関する指標からは、多くの国内経済活動が停止していることが示唆されているという。
同調査ではロシア国内の生産は完全に停止しており、失われたビジネス、製品、人材を他で代用する能力がロシアにはないことも指摘されている。また、ロシアでは、輸入はほぼ消滅し、人材や部品、技術が極めて不足しており、プーチン大統領を政治的に支援している中国からの重要な輸入でさえ、半分以下に減少しているという結果が示されている。ロシア国内の技術革新と生産基盤の空洞化は、価格の高騰と消費者の不安につながっていると同調査は結論付けている。
海外企業の撤退が続き、輸出が不振になったという調査結果は、ロシア経済が依然として堅調であり、「経済的消耗戦」に勝利しているというロシア政府の主張に真っ向から対立するものである。ただし、海外企業の撤退といっても、英米とそれ以外とでは大きな乖離がある。イエール大学はロシアからの企業の撤退状況についても侵攻開始から継続して調査を行っており、それによれば「通常通り」の業務を続けている英国企業は1社のみだが、EU企業は100社超と対照的である。フランスのラコステ、イタリアのアルマーニやベネトン、オランダのフィリップスなど、国を代表するような企業は、ロシア市場からの撤退や業務削減を求める声にもかかわらず、これまで通りの業務を続けている。
自動車販売不振はロシア当局も認めざるを得ない?
ロシアは、貿易統計を含む公式な経済統計の発表を停止または検閲し、ロシアにとって都合の良い統計のみを公表しているとイエール大の調査では指摘している。ただロシア側の統計でも特に自動車に関する指標は大きく悪化していることが読みとれ、同調査の指摘が全て正しいとも言い切れない。
ロシア連邦国家統計局によると、2022年5月にロシアでの乗用車生産はほぼ停止し、前年比96.7%減、ロシア国内で生産された乗用車はわずか3,700台に留まっている。また、トラックの生産も減少しており、重量トラックの生産は5月に前年比39.3%減となった。ウクライナ侵攻当初の3月初めに、主要海外自動車メーカーの多くが、ロシア国内での活動の一時中止を発表した。このため、工場での自動車生産は休止し、国内ディーラーへの新車供給も止まった。
それに伴いロシアの乗用車販売市場も同様に厳しい数字を示している。2022年7月の新車販売は前年比74.9%減(32,412台)、1〜7月でも同60.5%減(368,850台)となり、人気24ブランドを含むほぼ全てのメーカーの新車販売数は急落を示している。その主因はディーラーのもとに新車が供給されていないことである。
プーチン大統領は6月末にサンクトペテルブルクで開催された自動車業界発展に向けた会合で、自動車価格の上昇に関連し、市場に十分な数の自動車を供給することが必要と述べた。また、自動車業界が現在直面する主要なタスクとして、1工場操業を継続し、必要とされる部品を供給し、専門人材の雇用を確保すること、2価格が急騰している自動車の供給を大幅に増やすことを挙げた。さらに問題は乗用車に限らず、商用車でも確認されていると指摘している。商用車は買い手である企業や輸送業界が、不安定な状況下での投資を控えているためであり、特に、4月半ばから欧州へのロシアの輸送トラックの入国・滞在が禁止されていることが大きいという。プーチン大統領は、商用車市場の現状について、需要が不足している可能性があると認め、需要を支えるべく様々な支援プログラムを検討することを提案した。
住民投票でウクライナ紛争に決着はつくのか?
今後のロシア経済を予測する上でも欠かせないのが、ウクライナ侵攻がどのような形で、いつ終了するかの見通しであろう。2月15日、ロシア下院がドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国を国家承認したことは、両共和国のロシア系住民保護の口実をロシアに与えた。それを理由に始まったウクライナにおけるロシアの軍事活動は、キーウ攻略の失敗後に東部制圧へと焦点を移した。激戦が繰り広げられ、ロシア軍の制圧下にある地域が徐々に拡大している。両共和国では、ロシアへの編入是非を問う住民投票の準備が進められている。既に投票の枠組みは整っており、選挙人名簿も作成され、選挙委員の任命も済んでいるという。
また、投票日を1日ではなく、2日間にするとの案も検討されている。7月に隣接するロシアのロストフ州の選挙委員がその準備のためにドンバス地方に派遣された。7月時点で同地方には77カ所の投票所が設置されているという。8月前の投票実施も示唆されていたが、ロシア軍が両共和国とウクライナ側との行政国境にまで撤退し、(ウクライナ軍が侵攻できない)安全保障ゾーンが作られてから実施される予定のため、軍部からの合図待ちの状態にある。両共和国はロシアでは一つの地域として認識されており、ロシア政府が独立を同日に承認したことから、住民投票も(両共和国が)同日に実施というのが基本的な考えである。なお、両共和国の世論においてはロシア支持が明確だが、ドンバス地方でもウクライナ侵攻開始後にロシア支配下となった地域では、併合を巡る世論は一定ではないという。正確な日付は設定されていないが、東部地域の制圧が進めば住民投票は9月15日までに実施されるとの報道もある。
またロシア軍はウクライナ南部でも同様に激戦を続けながら、制圧地域を拡大しており、7月末の時点でウクライナ領土の約20%がロシアの支配下にあると報じられている。これまでロシアは南部よりも東部制圧を重視する姿勢をみせてきたが、7月20日にラブロフ外相は南部を長期的に支配する方針を明確に示している。一部報道によれば、南部の主要都市、ヘルソンやザポリージャ、北東部のハルキウなどロシア制圧地域では、約半数が編入支持だが、その大半は消極的な支持という。つまり積極的な支持はその10〜15%にすぎず、2割が反対に回る可能性があり、残り3割はウクライナ残留時よりも暮らし向きが楽になるのであればという条件での支持だという。これは公式な世論調査ではなく、住民投票の準備に携わっている関係者の見方にすぎない。7月23日にロシアが任命したザポリージャの暫定トップは、ロシア編入を巡る住民投票の第一歩となる選挙委員会を設立するための政令に署名している。ロシアは当初、制圧地域の編入ではなくウクライナからの分離を目指していたが、これら地域における親ロシア派への信頼感が薄れたこともあり直接的な支配へと戦略変更に出たと考えられている。
イスタンブール協定は、世界的な食糧危機を回避できるか?
さらに侵攻の長期化で最も懸念されているのが、食糧問題であろう。ウクライナは「欧州のパンかご」と称されるように、穀物やひまわり油の主要生産・輸出国である。農業はウクライナの全輸出額の4割以上を占め、侵攻前には雇用の15%を担っていた。アフリカや中東の発展途上国が主要輸出先であり、黒海からボスポラス海峡を経由してサハラ以南へと向かうルートが一般的であった。例えばレバノンでは小麦輸入に占めるウクライナ産小麦の割合は8割にも及んでいた。しかし、ロシアのウクライナ侵攻により、トルコやレバノン、シリアやソマリアといった国をはじめ世界的に食糧価格が高騰したうえ、ロシアが黒海を海上封鎖したため、穀物を積んだ輸出船が出港できず、ウクライナに滞留している穀物は2,000〜2,600万トンとみられている。ウクライナ最大の港湾都市であり、穀物輸出のターミナルであるオデーサではこれまで主要な戦闘は回避されていたが、港を守るためにウクライナは機雷を敷設し、ロシアが海上封鎖に踏み切っていた。
世界的に数百万人が飢饉の恐れに直面するなか、ロシア政府はその責任をウクライナや西側諸国に負わせようとした。アフリカ諸国の首脳に対し、これら諸国での食糧難はロシアの農作物輸出に対し西側諸国の制裁が発動されたためだと、虚偽の主張を展開していたため、ロシアのその後の動きが注目されていた。しかし7月に国連とトルコが仲介し、ロシアとウクライナが侵攻開始後初めて合意した協定により、8月1日に5カ月にわたるロシアの黒海封鎖が解かれ、オデーサからウクライナの穀物輸出船が出港することができた。このいわゆるイスタンブール協定では、機雷が敷設された港湾付近の海域では、ウクライナの船が穀物輸送船を誘導し、その間ロシアは輸送船を攻撃しないこと、またウクライナに向かう輸送船が武器を密輸するのではないかというロシアの懸念から、輸送船を検査することが合意された。今後も順調に穀物輸出船がウクライナを出港し、迫りくる世界的な食糧危機の緩和につながるか、協定の効果が注目されている。
滞留していた穀物船の無事な航行が続けば、協定に対する信頼性が高まり、また海外から貨物船が入港するスペースも確保され、定期的な船舶の往来が再開されることが期待されている。サハラ以南の港湾は浅瀬が多く、小型船が多用されるため、ウクライナ入港時の検査には長蛇の列ができるとみられているほか、状況が急変する可能性がある以上、ウクライナ入港に抵抗を覚える船主も少なくない。このため、ウクライナからの穀物輸出が侵攻前の水準に戻り、食糧危機が緩和されるには数カ月かかると、ウクライナのクブラコウ・インフラ相は慎重な見方を示している。なお、協定合意前にはこの黒海からのルートによる輸出再開の見通しや、世界的な景気後退への懸念、ロシアでの過去最高となる作物の収穫などにより、農作物商品の価格は下がってきていた。ただしウクライナのゼレンスキー大統領がロシアとの徹底抗戦の姿勢を見せているため、年内に停戦交渉が開始される可能性も低い。今後も、ウクライナ発の世界的な食糧危機の懸念が続くのか注目されている。
●ロシア、西側のハイテク製品への制裁回避に失敗=米政府高官 9/3
米国務省のオブライエン制裁調整官は2日、ロシアが西側諸国による軍事目的などに使用されるハイテク製品への制裁をかいくぐろうとしているものの失敗し、海外からの資金調達に苦しんでいるという認識を示した。
オブライエン氏は、欧州連合(EU)当局者との会合のために訪れているブリュッセルで記者団に対し、対ロシア制裁が「機能している」とし、「ロシアが機器や資金を入手しようとしていることは把握しているが、うまくいっているとは考えていない」と語った。
ロシアのプーチン大統領はこれまでに、制裁によるロシア経済への影響を認めつつも、西側の「経済電撃戦」は失敗したと発言している。
一部のEU当局者は、中国やインドが軍事目的に使用できる機器をロシアに販売し、制裁回避を手助けする可能性を懸念している。しかしオブライエン氏は、そうしたロシアの試みは失敗しているとし、「ロシアは見知らぬ業者から不確かな価格で品質の不明な機器の入手を強いられている。このような方策では近代経済は成り立たない」と述べた。
また、西側諸国は今後数カ月でロシア政府への圧力を強め、制裁の抜け穴をふさぐと同時にロシア経済の「要衝」に焦点を当てるという認識を示した。 
●ロシア ウクライナに軍事侵攻 9/3
ロシアは愛国教育強化 学校で国旗掲揚と国歌斉唱義務づけ
ロシアのプーチン政権は愛国教育を強化しています。
ロシア政府は、新しい学年が始まった今月から愛国心を育むためだとして、毎週月曜日に、学校での国旗の掲揚と国歌の斉唱を一斉に義務づけたほか「大切なことを話そう」という名の授業を新たに設け、ロシア独自の歴史観などを教えていくとしています。
今月1日、首都モスクワ市内の学校で行われた始業式では、国歌とともに国旗掲揚が行われ、新入生たちが真剣な表情で見つめていました。
生徒の1人は「今の時代に愛国心を育むことは、とても重要です。現状についてはさまざまな意見がありますが、祖国への忠誠心を持ち続けることが必要だ」と話していました。
プーチン大統領自身も1日、各地から集められた子どもたちを前に特別授業を開き、ウクライナ侵攻を重ねて正当化したあと、出席した子どもたちとともに、その場で国歌を斉唱しました。
プーチン政権としては、若者の間で軍事侵攻に否定的な意見が比較的多く聞かれる中、「愛国心を育む」という名目のもと、子どものころから政権側の主張を教え込むねらいがあるとみられます。
ザポリージャ原発 “ロシア側の妨害でIAEAは公平な評価難しい”
IAEAの専門家チームは、ロシア軍の部隊が展開するウクライナ南東部のザポリージャ原発に今月1日から入って調査を進めています。
チームを率いたグロッシ事務局長は2日、IAEAの本部があるオーストリアのウィーンに戻って記者会見し「IAEAが現場で何が起きているかを確認することは、事態の安定化に向けて重要な効果がある」と述べ、6人の専門家が現地にとどまり、2人が来週以降も常駐する方針を示しました。
一方、原発を運営するウクライナの原子力発電公社エネルゴアトムは2日「ロシア側は兵士のいる危機管理の施設に専門家が立ち入ることを認めなかった」として、IAEAは公平に評価するのが難しい状況に置かれているという見方を示しました。
これに対してグロッシ事務局長は「見せてほしいと頼んだ場所を見ることができた」と述べ、独立した調査ができているという認識を示し、来週前半に報告書をまとめるとしています。
運転停止のザポリージャ原発5号機 運転を再開
ウクライナの原子力発電公社「エネルゴアトム」は2日、前日の砲撃により運転を停止していたザポリージャ原子力発電所5号機について「送電網に接続し、出力を上げている」とSNSに投稿し、運転を再開したことを明らかにしました。
これで、稼働中の原子炉は合わせて2基になったということです。
●侵攻反対派の石油王が ロシア国内でまた不審死? 強硬派暴走か 8/3
非情なウクライナ侵攻を続けるロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、国内ではより過激な「強硬派」に脅かされている。新興財閥オリガルヒ関係者の不審死が相次ぎ、「プーチンの頭脳」と呼ばれる思想家の娘も殺害された。「プーチン氏が最も恐れる存在」の影がちらついている。
会長が転落死
ロシアの石油大手ルクオイルは、ラビリ・マガノフ会長(67)が「重病で死去した」と発表した。ロイター通信は、1日に病院の窓から転落したと伝えた。
ウクライナ侵攻前後から、オリガルヒ関係者の不審死や自殺未遂が立て続けに起きている。
ルクオイルは3月、ウクライナ侵攻を「悲劇的出来事」とし、早期停戦や交渉による問題解決を呼びかけていた。強硬派の不興を買っていたことは確実だ。
8月19日にロシアの思想家、アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘、ダリア・ドゥーギナ氏が爆殺された事件では、ウクライナ国家安全保障会議のオレクシー・ダニーロフ書記がロシアの諜報機関、連邦保安庁(FSB)の関与を示唆した。「ロシアでは戦争への支持が低下しており、クレムリン(大統領府)は国民の動員を必要としている。FSBはロシアの都市でテロ攻撃を組織し、大量の民間人の死傷者を出すとみられ、ドゥーギナ氏はその列の最初だ」と指摘した。
原発攻撃も
筑波大名誉教授の中村逸郎氏は「FSB内には反戦派と強硬派双方があるが、強硬派の犯行だった場合、反戦感情を防ぐ狙いや、主戦論を勢いづけるメッセージになる」と指摘する。
プーチン氏が掲げた「特別軍事作戦」が泥沼化するなか、全面的な「戦争」に踏み切るべきだと圧力をかけるのが強硬派のスタンスだ。
ウクライナ南部ザポロジエ原発への攻撃についても、「核攻撃を主張する強硬派の圧力を反映している可能性がある。より過激な強硬派の存在は、プーチン氏の悩みの種になっている」と中村氏は分析する。
プーチン氏の側近にはウラジーミル・メジンスキー大統領補佐官やニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記ら強硬派とみられる人物は多い。
前出の中村氏は「パトルシェフ氏の息子、ドミトリー氏が後継候補に噂されたこともある。強硬派の思い通りにならない場合、プーチン氏の退場に動く可能性は十分にある」と語った。
●IAEA ザポリージャ原発に専門家常駐の方針も南部で激しい戦闘 9/3
ロシア軍が掌握するウクライナのザポリージャ原子力発電所について、IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は2日、原発の安全を確保するため、現地で調査を行ったうえで専門家を常駐させる方針を示しました。一方、原発に近いウクライナ南部では今も激しい戦闘が続いているとみられ、順調に調査が続けられるかは予断を許さない情勢です。
IAEAの専門家チームは、ロシア軍の部隊が展開するウクライナ南東部のザポリージャ原発に今月1日から入って調査を進めています。
チームを率いたグロッシ事務局長は2日、IAEAの本部があるオーストリアのウィーンに戻って記者会見し「見せてほしいと頼んだ場所を見ることができた」と述べ、独立した調査ができているという認識を示し、来週前半にも報告書をまとめることを明らかにしました。
そのうえで「IAEAが現場で何が起きているかを確認することは、事態の安定化に向けて重要な効果がある」と述べ、専門家2人を来週以降も常駐させる方針を示しました。
ただ、イギリス国防省は2日に発表した分析で「ロシア軍が掌握するザポリージャ原発に近いウクライナ南部で激しい戦闘が続いている」と指摘していて、順調に調査が続けられるかは予断を許さない情勢です。
●逆襲され巨額損失、「万策尽きた」プーチン大統領 9/3
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、これまでにウクライナでの戦争で被った最も大きな5つの損失が、合わせて10億ドル以上にのぼることが分かった。
米フォーブス誌の計算によれば、ロシア軍にとって最大の痛手となったのは、ロシア黒海艦隊の旗艦であるミサイル巡洋艦「モスクワ」の沈没だ。4月に沈没した「モスクワ」の価値は、7億5000万ドル相当とされている。ウクライナ側は自分たちが対艦ミサイルを命中させて沈没させたと主張したが、ロシア側は艦上での火災が原因だったと主張している。
残る4つの重大損失は、8600万ドル相当のイリューシンIL76輸送機、7500万ドル相当の大型揚陸艦「サラトフ」、5000万ドル相当のスホーイSu30SM戦闘機、4000万ドル相当のスホーイSu34戦闘機で、これらを合計すると10億ドルを上回る計算になる。
フォーブスの計算によれば、軍事侵攻を開始した2月24日から8月24日までの6カ月間で、ロシア軍は1万2142点の軍事装備品を失い、その価値は合計で165億6000万ドル相当にのぼる。ミサイルは、この合計額には含まれていないという。
「迅速な勝利」の目論見が崩れた
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、ウクライナの独立記念日でもあった8月24日に、開始から半年の節目を迎えた。ロシアが迅速に勝利を収めるだろうという一部の予想は、西側諸国の支援を受けたウクライナ側の粘り強い抵抗によって打ち砕かれた。この数週間は、ウクライナがアメリカの高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)など、西側諸国から供与された兵器を駆使して、ロシア側の標的への攻撃を成功させている。
ウクライナ側が次々と攻撃を成功させるなか、ロシア政府は兵員を補充するために強制徴用を行い、今いる兵士にも、士気を上げるために現金支給のインセンティブを与えているとみられる。
元米陸軍大将のバリー・マッカフリーは8月22日、ツイッターへの投稿で、プーチンは「万策尽きて」おり、彼にとっての状況は今後、急速に悪化していくだろうと述べた。マッカフリーはまた、ロシア軍は「作戦面で困難な状況にあり」、ロシア全体に「軍事的な損失と経済的な孤立の深刻なひずみが生じ始めている」とも指摘した。
ロシアは「目標達成」の強気姿勢を崩さず
だがマッカフリーの評価とは対照的に、ロシアはこの「特別軍事作戦」を成功させる自信があると主張し続けている。ロシア外務省情報出版局のイワン・ネチャーエフ副長は、18日の記者会見の中で、ウクライナにおけるロシアの目標は達成されるだろうと語った。
「ロシアの目標が達成されて初めて、地域の平和、安定と安全を保障することが可能になる」とネチャーエフは述べた。
ロシア軍と比較して、ウクライナ軍が今回の戦闘でどれだけの損失を被ったのかは、はっきり分かっていない。米議会調査局は6月後半に発表した報告書の中で、ウクライナ軍が装備の半分を失ったという、地上部隊後方支援司令官ウォロディミル・カルペンコ准将の推定を紹介した例があるぐらいだ。
●ロシアの特殊軍事作戦「継続」48%・「和平協議へ」44%…世論二分 9/3
ロシアでプーチン政権と一線を画す独立系世論調査機関レバダ・センターは1日、8月下旬に実施したロシアのウクライナでの「特殊軍事作戦」に関する世論調査で、作戦継続か和平協議に移行すべきかどうかを巡る意見が二分したとの結果を発表した。
ロシアのウクライナ侵略開始から半年が経過し、厭戦(えんせん)ムードがじわじわと広がり始めている可能性がある。
作戦を継続すべきだとの回答は48%だったのに対し、44%が和平協議の開始を支持した。40歳未満では、和平協議への支持が作戦継続を上回った。
作戦への支持自体は76%と高止まりした。ウクライナ南部ヘルソン、ザポリージャ両州の露軍占領地域の将来についての調査では、45%がロシアへの併合を支持した。プーチン政権によるプロパガンダの浸透をうかがわせる。
●プーチン氏命令の軍増強の達成は「無理」、米国防総省高官 9/3
米国防総省高官は3日までに、ロシアのプーチン大統領が最近命令した同国軍の規模拡大に触れ、実現する可能性は少ないとの見方を示した。
ロシア軍の過去に言及しながら、規模拡大の目標値を達成した事例はないと強調した。プーチン氏は先に、ロシア軍の規模を現行の約190万人から204万人に拡大する大統領令に署名した。この大統領令は来年1月1日に発効する。
米国防総省高官は、新兵を集めるために年齢制限の撤廃や刑務所の受刑者の取り込みなどの措置を講じても、ロシア軍の戦闘能力の向上にはつながらない可能性に言及。これらの新たな新兵募集を打ち出したものの、より高齢で軍務に不適格な人物の採用、不十分な訓練につながった事態に直面したことも考えられると指摘した。
ウクライナへの軍事侵攻の前、ロシア軍は目標としていた人員規模に既に15万人足りない水準にあった可能性もあるとした。
●トルコのエルドアン大統領が再び「仲介役」を申し出 9/3
緊迫した状況が続くウクライナのザポリージャ原発を巡り、トルコのエルドアン大統領がロシアのプーチン大統領に再び仲介役を申し出ました。
トルコのエルドアン大統領は3日、ロシアのプーチン大統領と電話で会談しました。
トルコ大統領府によりますと、エルドアン大統領はロシア軍が占拠を続けるウクライナ南部のザポリージャ原発を巡り、事態の打開を目指して仲介役を果たす意向を伝えたということです。
先月30日に亡くなったゴルバチョフ元大統領の葬儀が行われた日でもあり、エルドアン大統領は哀悼の意を示したということです。
両首脳は今月15日からウズベキスタンで行われる上海協力機構の会議で会う予定です。
トルコはこれまでロシアとウクライナの停戦協議のほか、ウクライナの黒海からの穀物輸送を巡っても仲介役を果たしてきました。
●“クリミア奪還”はどこまで本気? ロシアの侵攻から半年 膠着続く… 9/3
ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始してから、8月24日で半年が経過した。長引く戦闘は今、新たな局面を迎えている。
侵攻開始から半年 現在の戦況
2月24日、プーチン大統領が「特別軍事作戦を決定した」と宣言した直後、ロシア軍がウクライナ国内に侵攻した。プーチン大統領は当初から“核の使用”をちらつかせていて、かつてない事態に世界が衝撃を受けた。
現在の戦況や今後の見通しについて、ロシア政治に詳しい慶應義塾大学の廣瀬陽子教授に話を聞く。
Q. 侵攻開始から3カ月の5月と8月現在では、ロシア軍の制圧地域がほとんど変わっていないように見えます。なぜでしょうか。
廣瀬陽子教授: ウクライナ側が非常に善戦しているということは挙げられます。欧米の支援や兵器が功を奏していて、ロシアは想定外だった抵抗にあっています。また、ロシアの兵力も足りていません。お金で兵士を集めてはいますが、訓練を十分にしないまま前線に送り込んでいますし、士気も低い。補給もうまくいっておらず、命令系統もうまく機能していません。このために戦況が膠着(こうちゃく)していると考えられます。
クリミアでの攻防活発化 ウクライナの考えは
一方、8月に入って攻防が激化しているのが、2014年からロシアによる実効支配が続くクリミア半島だ。
9日にはロシア軍用飛行場で大規模爆発、16日に弾薬保管場、18日には半島東部で2カ所の爆発が起き、さらに20日にはロシア黒海艦隊司令部にドローンが飛来して屋根の上に落下し炎上した。これらの攻撃は、正式な表明はないがウクライナ側によるものとみられている。
Q. 廣瀬教授はウクライナ側の狙いを「クリミア半島ではなく、今回侵攻された南部の奪還」と考えられていますが、どういうことでしょうか。
廣瀬陽子教授: ロシアは9月上旬に南部と東部を合わせて住民投票をしようとしていました。今の状況では無理という話も出ていますが、いずれにせよウクライナが南部を取り返せば、ロシアによる住民投票の実施は難しくなります。だから、ウクライナは南部を取り返そうと必死なんです。南部の戦線については、ロシアはクリミアを拠点にしているので、その拠点を攻撃すれば南部へのロシアの攻撃が難しくなるということがあります。住民投票が行われれば、クリミア併合時のようにロシアがそのまま自国化してしまう可能性が高いので、ウクライナからロシアへの「南部をクリミアのようには取らせないよ」というようなメッセージもあると思います。
Q. 8月23日の会議で、ゼレンスキー大統領は「全てはクリミアから始まりクリミアで終わる」といった発言をしたようです。文字通り読めば「クリミアを奪還するまでこの戦争は終わらない」と取れますが、これは本音ではないということですか。
廣瀬陽子教授: ここに来て、クリミア奪還までを視野に入れた動きも出てきているように思います。戦線が難しい状況になり、ロシア軍が残虐な行為をたくさん行っていますので、このままみすみす引くということもできない。そもそも問題の発端はクリミアから始まっているというのもあります。ウクライナの方向性の転換というのが最近色濃く見えてきていて、欧米が呼応している動きもあります。
廣瀬陽子教授: 欧米は今回の侵攻が始まった時、「クリミアは諦めて東部2州で決着を」といった雰囲気でしたが、最近はクリミア奪還に向けても協力的な姿勢が見えてきています。ただ、クリミアが戦場になると、ロシアも相当な規模で戦闘を展開します。ロシアが“戦争宣言”をして国一体となって戦ってくる可能性が高い。そうなると第三次世界大戦、核使用の恐れもありますので、欧米も「クリミア奪還まで支援してあげたい」という思いがありつつ、まだそこまで決意できないというところだと思います。
ポイントは“この冬” 欧米の支援続くか
Q. 戦闘が長引けば、どちらが優位になりますか。
廣瀬陽子教授: ロシアです。現在、ロシアはエネルギーの輸出を欧米に対して止めています。今ですらエネルギー価格は相当高くなっていますが、冬になると暖房でエネルギーの需要が増すので、ヨーロッパが受ける負担はより高くなります。そうなると、ウクライナ支援に音を上げる国が増える可能性が高い。ロシアは“ウクライナ支援疲れ”を狙っています。
●プーチン氏、6日に軍事演習視察 ロシア極東ウラジオストクで 9/3
ロシアのペスコフ大統領報道官は2日、プーチン大統領が大規模軍事演習「ボストーク(東方)2022」を6日に極東ウラジオストクで視察すると明らかにした。
タス通信が伝えた。ウラジオストクで開幕する東方経済フォーラム(5〜8日)の7日の全体会合で演説する前に立ち寄ることになるという。
プーチン氏のボストーク視察は2回連続。前回4年前は兵員約30万人が参加したが、今回はウクライナ侵攻の影響とみられる規模縮小で約5万人にとどまる。
それでも大統領自ら視察することで、軍を鼓舞するとともに、ウクライナや後ろ盾の西側諸国への強硬姿勢をアピールする狙いがあるもようだ。また、対米で共闘する中国のほか、ロシアの伝統的友好国インドも参加しており、日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」にくさびを打ち込みたい考えとみられる。 
●ゴルバチョフ氏葬儀・告別式、「国葬」ではなく静かな別れ… 9/3
8月30日に91歳で亡くなったミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領の葬儀・告別式が3日、モスクワ中心部で営まれた。ソ連最後の最高指導者として東西冷戦を終結に導いた偉業にもかかわらず「国葬」ではなく、プーチン露大統領も公務を理由に欠席した。
タス通信によると、ハンガリーのビクトル・オルバン首相が参列したが、米英やドイツは駐露大使にとどまった。ロシアによるウクライナ侵略も影を落とす静かな別れとなった。
露大統領府に近い労働組合会館「円柱の間」での告別式は大統領府儀典局が支援し、国葬に準じる形で行われた。露国内ではゴルバチョフ氏が1991年のソ連崩壊をもたらした張本人との批判が根強いことを反映したとみられる。露国営テレビもほぼ通常どおりの放送だった。
ゴルバチョフ氏はモスクワ市内のノボデビチ墓地で、99年に死去したライサ夫人の隣に埋葬された。墓地にはソ連の後継国家ロシアのエリツィン初代大統領ら著名人も埋葬されている。2007年に死去したエリツィン氏は、国葬だった。
●ゴルバチョフ氏に最後の別れ 大統領不在、モスクワで葬儀 9/3
8月30日に91歳で亡くなったゴルバチョフ元ソ連大統領の葬儀が3日、ロシアの首都モスクワで営まれた。市中心部の歴史的なホールで告別式が行われた後、政治家や著名人が多く眠るノボデビッチ墓地で、ライサ夫人(1999年死去)の隣に埋葬。ソ連崩壊による自由を懐かしむ市民らが列をつくり、最後の別れを告げた。
葬儀は連邦警護局(FSO)などが支援し「国葬的な要素もある」(ペスコフ大統領報道官)と説明されたが、プーチン大統領は他の国内日程を優先させるという理由で参列しなかった。タス通信によると、日本の上月豊久駐ロシア大使のほか、米英独仏とスペインの各大使、ハンガリーのオルバン首相が姿を見せた。
●モスクワでゴルバチョフ氏葬儀 欧米首脳の参列少なく 9/3
モスクワで3日、8月30日に死去した故ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領の葬儀が営まれた。市内の催事場で告別式が行われた後、ひつぎは墓地に運ばれ、1999年に先立ったライサ夫人の隣に埋葬された。「国葬」ではなく、プーチン大統領も職務を理由に参列しなかった。
ゴルバチョフ氏は89年の冷戦終結や90年の東西ドイツの統一を導き、同年にはノーベル平和賞を受賞した。8月30日、療養していたモスクワの中央クリニック病院で「重く長期の病気」(同病院)で死去した。91歳だった。
モスクワ中心部の労働組合会館で営まれた告別式には、花束を手にした市民らが相次ぎ訪れた。告別式の後、エリツィン初代ロシア大統領や作家のニコライ・ゴーゴリら多数の著名人が眠るモスクワ市内のノボデビチ墓地に埋葬された。
ロシアのウクライナ軍事侵攻が続くなか、欧米首脳の参列者はロシアと友好関係を保つハンガリーのオルバン首相だけだったようだ。タス通信によると、日米英独の駐ロシア大使が参列した。
2007年4月に死去したエリツィン氏は国葬で、政府は葬儀の日を「国民服喪の日」と宣言した。ゴルバチョフ氏の葬儀は「国葬の要素がある」(大統領府)とされ、政府は儀仗(ぎじょう)兵らを参加させるなど葬儀を支援した。
プーチン氏は3日の葬儀には参列しなかった。外国要人との電話協議や5〜8日にロシア極東で開く東方経済フォーラム出席のための準備など職務があるとしている。代わりに、ゴルバチョフ氏の遺体が安置されている病院を1日に訪れ、ひつぎに花をささげた。
欧米では「ゴルビー」の愛称で親しまれたゴルバチョフ氏だったが、ロシア国民の間では1991年のソ連崩壊をもたらしたとして批判的な見方が多い。ソ連崩壊について「20世紀最大の地政学的悲劇」と発言したことがあるプーチン氏とも疎遠だったとみられている。

 

●民間犠牲者、2万2000人超=復興コスト105兆円―冬にかけ被害拡大 9/4
ロシアのウクライナへの軍事侵攻は、第二次世界大戦以来、欧州で最大の陸上戦を引き起こした。軍事侵攻が始まって8月24日で6カ月が経過。国連の発表によると、侵略されたウクライナでは5000人超の民間人と9000人超の将兵が犠牲となった。一方、ロシア軍の死傷者数に関しては諸説あるが、米国防総省は7万〜8万人と推定。ウクライナにおける物的損害も大きく、復興費用には7500億ドル(約105兆円)かかると試算されている。
ウクライナ経済の復興コスト、7500億ドル超に
国連はウクライナ戦争で少なくとも5614人の民間人がウクライナで殺害されたと発表したが、同時に国連関係者は実数はこれを大幅に上回ると言う。アゾフスターリ製鉄所をめぐって激しい攻防が続いた南部の都市マリウポリでは、目撃者の証言や衛星画像などから民間人の死者は2万2000人に上るとウクライナ政府関係者はみている。
難民や国内避難民となることを余儀なくされたウクライナ人も多い。国連によると、外国に逃げて難民となった市民は670万人、国内避難民は660万人に上る。さらに、戦闘地域で道路や橋が破壊されたり、手元が不如意で逃げられず、戦闘地域に留まっている市民が1300万人に上ると試算されている。米紙ニューヨーク・タイムズが伝えた。
一方、ウクライナでは2月24日に侵略が始まって以来、ロシア軍による砲撃やミサイル攻撃で、18万戸の建物が破壊された。その中には11万5000戸の個人住宅、2290の教育施設、934の医療施設、1991の商店、27のショッピングセンター、715の文化施設、511の行政施設、28の石油貯蔵所、18の民間空港が含まれる。さらに、311の橋が破損、18万8000台の自家用車が破損するかもしくは押収され、2万4800キロに及ぶ道路が破損した。ウクライナにおける建物やインフラの被害総額は1136億ドルに上ると推定されている。
ウクライナ政府は、住民への基本サービスを維持し、経済を回していくためには毎月50億ドル必要だとしており、この数字は秋から冬にかけて増加し、いずれウクライナ経済の復興コストは7500億ドルに膨れ上がるとみている。
軍事支援は米英が突出
こうした中で西側諸国はウクライナへの軍事支援を継続しており、金額では米英が突出している。米国は最近、29億8000万ドルと過去最高となる新規援助を発表し、累計額は日本円換算で1兆円を超える。英国が続き40億ドル、3番目が欧州連合(EU)諸機関で25億ドル、4番目がポーランドで18億ドル、5番目がドイツで12億ドルとなっている。ただ、西側はプーチン政権を過度に追い詰めないために、ロケット砲などの射程をロシア領に届かない距離に制限したり、戦車や戦闘機などの供与は控えている。
ところで、戦争はウクライナの農民やアグリビジネスに230億ドル分の利益機会の逸失や、農業機械の破壊、余分の輸送コスト負担に直面させている。ロシア軍による黒海封鎖で、ウクライナでは約2000万トン分の穀物が輸出できずに港湾施設などで滞留している。国連とトルコの仲介により、8月初めから穀物輸送船の黒海の港からの航行が再開され、8月中に100万トン超の穀物が運び出されたが、今後も輸送が順調に進むのかどうか予断を許さない。
ウクライナ戦争が始まって半年、欧州で第二次世界大戦後、最大規模の戦争となったが、戦況は膠着状態が続き、終わりは見えず、長期化が懸念される。 
●ウクライナ軍 南部で攻勢強める ロシア軍の補給路断つねらい  9/4
ロシアの軍事侵攻をめぐり、ウクライナ軍はヘルソン州など南部を中心に攻勢を強めています。ウクライナ大統領府の顧問は当面はロシア軍の補給路を断ち戦闘能力を低下させることに重点を置いているとねらいを明らかにしました。
ロシアはウクライナ東部や南部で攻撃を続けています。
東部ドネツク州の知事はSNSで3日に市民4人が死亡したと伝えたほか、南部ミコライウ州の知事は4日、深夜に大規模なミサイル攻撃があり、医療機関や教育施設などに被害が出たとしています。
これに対してウクライナ軍は、ロシア軍が掌握したとするヘルソン州など南部を中心に攻勢を強めています。
これについてウクライナ大統領府の顧問、アレストビッチ氏はメディアへのインタビューで「砲撃によりロシア軍の作戦上の物流を体系的に破壊している」と述べ、ウクライナ軍が支配地域の奪還に向け、当面はロシア軍の補給路を断ち戦闘能力を低下させることに重点を置いていると明らかにしました。
一方、ロシアのプーチン大統領はウラジオストクで開かれる「東方経済フォーラム」などに参加するため、4日から極東を訪問します。
そして6日にはロシア軍の大規模軍事演習「ボストーク」を視察する予定で、軍事力に余力があることを内外に示すねらいもあるものとみられます。
●「ウクライナより国民」 首都でデモ チェコ 9/4
チェコの首都プラハで3日、約7万人が参加して、国民よりもウクライナにばかり関心を払っていると政府を批判するデモが行われた。
デモ隊は物価高に加え、新型コロナウイルスのワクチン接種、移民問題で不満を訴え「チェコ国民ファースト」と連呼した。冬の暖房費高騰が予想され「セーターを2枚くれ」と要求するプラカードもあった。
●「ウクライナ軍のロケット弾が奇跡的に180度回転」…露側がIAEA調査団に釈明  9/4
ロシア軍が占拠するザポリージャ原発での国際原子力機関(IAEA)の調査では、露軍占領地域から発射されたとみられるロケット弾の残骸に関し、露側専門家が「ウクライナ軍のロケット弾が奇跡的に180度回転した」と調査団に強弁する動画が拡散している。ロシアはウクライナ軍が原発を攻撃しているとの主張を浸透させようと躍起になっている。
動画では、メディアを引き連れて調査団を案内した露国営原子力企業ロスアトム幹部が1日、ロケット弾の着弾角度に疑問を持ったIAEAの調査団に釈明している。ロシア通信も画像を配信し、ウクライナのロケット弾だと強調した。
ウクライナの内務相顧問は2日、自身のSNSに動画を投稿し「これがロシアのやり方だ」と皮肉った。米政策研究機関「戦争研究所」は、ロシアが調査団の訪問に合わせ、原発に脅威を与えているのはウクライナ軍だと印象づける取り組みを加速させるだろうと指摘している。
●ミャンマー国軍総司令官、3度目のロシア訪問へ出発 プーチンと初対面か?  9/4
現地からの情報によると、ミャンマー国軍トップのミンアウンフライン総司令官は4日、ロシア極東ウラジオストクで5〜8日に開かれる「東方経済フォーラム」へ出席するため首都ネピドーを出発した。11日に帰国する。
3日付のミャンマー国営紙によると、ロシア側からフォーラムの招待を受けた。総司令官は経済分野などの協力関係をさらに強化するため、政府関係者と会談する予定。
昨年2月のクーデター以降、国軍はロシアへの傾斜を強めており、総司令官の訪ロは3回目。今年7月にもロシアを私的に訪問し、政府高官や国営原子力企業の幹部らと面会したが、プーチン大統領との会談は実現していない。
●右からも圧力…侵攻長期化でプーチン氏にかかる重圧 9/4
“プーチンの戦争”がプーチンを追い詰め始めている。半年が過ぎまだまだ終わりが見えないウクライナ侵攻。長期化するにつれウクライナの前線でも、ロシア国内でも、プーチン大統領への不満が見えてきた。プーチンが立たされた“苦境”、様々な面からその現実を見た。
「軍をやめたい人を支援する施設がありますが、実は逃げようとした軍人の監獄」
フランスに亡命を希望するロシア軍人が、フランス、シャルル・ドゴール空港で自らを撮影した映像がSNSにアップされた。
ロシア・第56親衛空挺襲撃隊 パベル・フィラティエフさん「若者が国のためだと信じていたことが、実際には我々を利用して操っている政権のためだった。」
と言って、彼は空港のトイレでロシアが発行した自分のパスポートを細切れに破り、便器に捨てた。そして言う・・・。
「ロシアが好きで、ロシア人すべてが好きです。しかしプーチンや今の政権はロシアではありません。プーチン、くそくらえだ。」
除隊を希望するロシア兵は後を絶たない。それに対しロシアはある団体を設立して精神的にも支援する態勢を整えたという。しかしそこの実態は全く別のものだった。
ロシア兵人権保護NGO タバロフ代表「1か月の戦場での軍務が終わりローテーションで交代要員、休暇要員になると多くの軍人が配置を離れ、契約を破棄して軍を辞めています。こうした流れが既に大規模になり国防省は神経を尖らせています。(中略)ルハンシク人民共和国のブリャンカには軍をやめたい人を支援する『軍人心理支援センター』がありますが、実はロシアに逃げようとした軍人の監獄でした。そこで兵士たちは心を入れ替えて前線に戻るよう肉体的にも精神的にも圧力を加えられました。ロシアに戻れた人もいますが、戻れなかったり行方が分からなくなったりする人もいます。」
総動員ができない現状、ロシア兵は絶対数が足りないといわれる。軍としては一人も逃がしたくない。だが、はじめから士気が高くない兵士たちは、すでに限界に達していた。前出の亡命希望のフィラティエフさんは手記に記している。“勇気を振り絞って戦闘態勢に入れという司令官の目も怖気づいていた。軍隊の大多数はそこで起きていることに不満を持ち、政府の指揮に不満を持ち、プーチンの政策に不満を持ち、軍隊にも入っていなかった国防大臣に不満を持っている”と。 
「プーチンの本音はリベラルな西洋主義者ですが、もし彼が自分の望むことを実現し始めたら、クレムリンから追い出されるでしょう」
侵攻長期化は戦場だけでなくロシア国内でも様々な影響をもたらしている。そこにどう関係しているのかは不明だが、先月20日、ロシアの極右思想家の娘が乗った車が爆破された。犯人はわかっていないが、いくつか想定されている犯人像がある。
(1)ウクライナ犯行説。すでにFSBがウクライナ側の容疑者を特定したとされるが、これはウクライナのメリットが考えられない
(2)反プーチン勢力犯行説。国民共和国軍が犯行声明を出したとされるが、国民共和国軍なる組織の存在すらはっきりしていない。
(3)ロシアによる自作自演説。目的は何なのか。
現在(3)である可能性が高いという専門家は少なくない。そしてその理由は、極右勢力が“特別軍事作戦”など生ぬるい対応でなく、戦争を宣言して総動員して戦争をしろと主張していることがプーチン氏にとって都合の良くないものだとみられるからだという。番組では、これまであまり知られていない極右思想家ドゥーギン氏に注目した。
スタジオゲストの朝日新聞、駒木明義氏は、2018年、この人物にインタビューしている。そこでプーチン氏に対し意外な見方を彼がしていることが分かった。
ロシア極右思想家 アレクサンドル・ドゥーギン氏「スターリンと大違いでプーチンは非常に実利的な政治家です。スターリンはまさに本物の大きくて強い独裁者でしたが、プーチンがどちらかというとプラグマティスト(実用主義者)です。リベラルの準備ができていない国ではリベラリズムはあり得ないということを理解しているので見せかけの保守主義を実行しているのです。プーチンの本音はリベラルな西洋主義者ですが、もし彼が自分の望むことを実現し始めたら、プーチンはクレムリンから追い出されるでしょう。」
クリミアを併合し、欧米と対抗し、ウクライナに侵攻したプーチン氏が、本来は西洋主義のリベラルな人物だという。駒木氏の解釈によれば、それが本心かは不明だが、ドゥーギン氏はそう見ていると。
朝日新聞社 駒木義明 論説委員「エリツィンの後継者として出てきた時は確かにリベラルなことを言っていた。しかし、ロシアの国民が“強いロシア”を望んでいるのでプーチンはそれを与えている。プーチンは優秀な広告マンであり、社会が望むものを与えるんだと、本質とは違うことをやっているんだと、ドゥーギンは言っている。」
真のリベラル派からは独裁者と非難されるプーチン氏。右派からは西洋主義、広告マンと揶揄されるプーチン氏。意外にも板挟みの実態が見えてきた。
防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長「私は軍の中にも右派的な思想の人はいると思う。プーチンは生ぬるいと。このまま長期化してはロシア兵の犠牲がどんどん拡大する。プーチンはもっと強硬に総動員かけてすべきだっていう人は、中枢に近い人にもいるんじゃないかと…」
この強硬派の声は、実は反対派の声よりも厄介だというのは服部倫卓氏だ。
ロシアNIS経済研究所 服部倫卓 所長「戦争反対の声はプーチンとしては弾圧すればいいんですが、強硬派の“もっと徹底的にやれ”っていうのを弾圧するのは矛盾しているわけです。」
悩ましいプーチン氏は、果たしてどこへ向かうのだろうか?そのロシアで今、軍事侵攻の報道が減少しているという。どういうことなのか?
「ロシア経済は、地獄の1丁目に差し掛かってる。」
『イズベスチヤ』という新聞がある。ソ連時代の政府機関紙で、今も政権寄りの姿勢を続けている。その新聞で軍事侵攻に関する記事が減ってきている。1面トップでウクライナ情勢を伝えた回数を数えた。すると、今年3月4月は90%がウクライナ関連だったのに対し、6月は50%。7月には30%を切った。ここに見える政権側の思惑とは?
防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長「国民が戦況に関心を向ければ、リベラル、右派両方からいずれ批判される。いつまで軍事作戦をやるのか。犠牲の実態は伝えなくても徐々に国民の知るところとなる。世論を喚起しないために報道を減らしているんじゃないか…」
戦争に目が向けばどっちに転んでもプラスにはならない。関心を持たせないに越したことはないのだ。一方で増えている報道もある。
朝日新聞社 駒木義明 論説委員「私自身もロシアのテレビを見ているんですが、戦争そのものをニュースで扱わなくなっている印象を持っています。戦争を扱うんじゃなく、ザポリージャ原発をウクライナ軍が攻撃したとか、ロシアへの経済制裁で欧米が物価高で困っているとか…。ロシア経済も多少行き詰まっているが、敵はもっと苦労しているとか。」
プーチン氏としてはロシア国内の不安を払拭し、反戦ムードを抑えることが最大の課題だ。来年には事実上大統領選がスタートする。戦争の行方とともに、今後、ロシア国内の経済の行方が左右することになる。
ロシアNIS経済研究所 服部倫卓 所長「私は間違いなくロシア経済はこれからどんどん悪くなると思う。地獄の1丁目に差し掛かってる。プーチンとしては選挙までだましだましやっていくんでしょうけど、どこかの時点でボロが出始める。そのボロが出るタイミングと選挙のタイミングに個人的には注目しています」
●ザポロジエ原発巡り仲介役、トルコ大統領がプーチン氏に意欲伝達 9/4
トルコのエルドアン大統領はロシアのプーチン大統領との電話会談で、ウクライナのザポロジエ原子力発電所を巡り、自国が仲介役を果たすことができると伝えた。トルコ大統領府が3日、発表した。
大統領府によると、両首脳はウクライナの穀物輸出問題を話し合ったほか、トルコのアックユ原発建設を計画通り継続する決意を表明。15─16日にウズベキスタンで行われる首脳会議の際にこれらの問題を詳細に協議することで合意した。
●堅調そうなロシア経済、疑わしい公式データ  9/4
ロシアがウクライナに侵攻するとまもなく、米国や欧州各国は矢継ぎ早にロシアに経済制裁を科した。
これを受け、ロシア国家統計局をはじめとする政府機関は、さまざまな経済統計の公表を停止した。輸出入、債務、原油生産量、銀行、航空会社や空港の利用者数など、それまで定期的に報告されていたデータが次々に姿を消した。
だが戦争が長引くにつれ、不可解なことが起きた。ロシア経済は予想以上に堅調だとメディアが報じ始めたのだ。4-6月期の国内総生産(GDP)が前年同期比4%減にとどまったことや、失業率が3.9%と過去最低を更新したことなどがそれを裏付けているという。
このデータの出どころは、米政府や欧州連合(EU)が制裁の効果を測れないよう、わずか6カ月前に経済データの公表をやめたロシア国家統計局だ。
ワシントンの国際金融協会(IIF)で首席エコノミストを務めるロビン・ブルックス氏は「データの質は急降下している」と話す。
戦争が始まるまでに、総じて西側諸国は「もはや手遅れなほど(ロシア大統領ウラジーミル・)プーチンにだまされていた」。イエール大学経営大学院チーフ・エグゼクティブ・リーダーシップ・インスティテュート(CELI)のリサーチディレクター、スティーブン・ティアン氏はこう指摘する。「今やエコノミストやメディアまでがロシア国家統計局のデータを信用し、だまされている。信用するのはまずそうだという、あらゆる警告サインが出ているにもかかわらずだ」
ティアン氏によると、彼らは経済データを額面通りに受け取っている。それがそこにあるから、というのが理由の一つだという。「定量モデルにとって必要なのは、モデルに入れられる時系列データだけだ」
ロシア国家統計局は内訳データの多くを公表していないにもかかわらず、GDPと失業率を算出している。その数字をエクセルに打ち込んでチャートを作成すると、足元の経済収縮は2008年の世界金融危機時ほどひどくはないように見える。
IIF副主席エコノミストでロシア経済専門家のエリナ・リバコワ氏によると、これは偶然ではない。プーチン氏は以前から、国際制裁に耐えうる経済を意味する「要塞(ようさい)ロシア」をスローガンに掲げてきた。「ロシア経済が2008年以上に落ち込んでいるところを見せれば、敗北を認めたことになる」と同氏は話す。
ソ連時代の経済データは信ぴょう性が極めて低かった。今週死去したソ連最後の最高指導者ミハイル・ゴルバチョフ氏は1989年、同国が軍事費の規模を過小報告していたことを暴露。実際は公表値の4倍だったが、ソ連の指導者の多くは実態を知らなかった。同氏の側近は当時、記者団に「自分たちの支出について初めて知った」と語っていた。
ロシアが市場経済に移行し、西側諸国との関係が深化するにつれ、経済データの質は改善した。ロシア中央銀行など一部の経済機関は、プーチン氏が国内で統制を強める中でも、その専門性と独立性が高く評価されていた。
一方でロシア国家統計局は、戦争が始まる前から、独立性とインテグリティー(誠実性)を疑問視されていた。プーチン氏が2017年、同局を経済省の管轄下に置いて以降、公表するデータの質が疑問視されることが増えていった。今も公表されている数少ない統計について、データが中断されていたこと以外にも、信ぴょう性を疑うべき理由がある。
ロシアには制度上の「隠れ失業者」がいることが知られている。従業員の解雇は法的に難しいが、企業は景気悪化時に従業員に無給「休暇」の取得を強制できる。この場合、その従業員は仕事も収入もないにもかかわらず、就業者としてカウントされる。その数は少なくない。2015年の失業率は、隠れ失業者を含めると約2.5ポイント高くなるとの推計がある。
前出のティアン氏や、CELI創設者のジェフリー・ソネンフェルド氏らは7月の論文で、欧米企業の撤退や制裁はロシア経済に壊滅的な打撃を与えているとして、ロシア政府のデータとは相反する見方を示した。ロシアから撤退した企業は1000社以上に上り、売上高合計はロシアのGDPの40%を上回るという。
撤退した事業の一部はロシア人が経営を引き継いでいるため、GDPへの打撃は40%には届かないだろうが、間違いなく4%以上だろう。
CELIの推計では、撤退した企業のうち約500社が完全に事業をやめ、ロシアの労働力人口の最大12%が失業した。一部はおそらく再就職したとみられる。ティアン氏は「失業率は12%とは言わないが、4%よりははるかに高い」と述べた。

 

●ロシアで国際経済会議 中国などと連携強調 欧米対抗のねらいか  9/5
ウクライナへの軍事侵攻をめぐり欧米がロシアに厳しい制裁を科すなか、ロシア極東のウラジオストクでは5日、プーチン大統領も出席する国際経済会議が開幕します。プーチン政権としては、中国などとの連携を強調することで国際的に孤立していないと内外に示し、欧米に対抗するねらいがあるとみられます。
ロシア極東のウラジオストクでは、5日から4日間の日程でロシア政府主催の「東方経済フォーラム」が開催され、60以上の国と地域から企業の代表や政府関係者の参加が見込まれているということです。
ことしのテーマは「多極化する世界への道」で、フォーラムの期間中、ロシアは▽中国とロシアが主導する枠組みの上海協力機構や、▽ASEAN=東南アジア諸国連合に加盟する各国との経済連携の強化などに向け意見を交わす予定です。
ロシアのプーチン大統領は開幕に先立ちメッセージを公開し「時代遅れの一極集中モデルは、新しい世界秩序に取って代わられようとしている」として、アジア太平洋地域、とりわけ中国を重視する姿勢を鮮明にしています。
ウクライナへの軍事侵攻をめぐり欧米がロシアに厳しい制裁を科すなか、プーチン政権としては、会議を通じて中国などとの連携を強調することで、国際的に孤立していないと内外に示し、欧米に対抗するねらいがあるとみられます。
中国 共産党の序列3位 栗戦書委員長が出席へ
中国国営の新華社通信によりますと、ウラジオストクで開催される「東方経済フォーラム」には、中国から共産党の序列3位で全人代=全国人民代表大会の栗戦書委員長が出席するということです。
栗委員長は7日に開かれる「東方経済フォーラム」の全体会合に出席し、その後、今月17日にかけてモンゴル、ネパール、韓国も訪れるということです。
中国では習近平国家主席をはじめ、共産党の最高指導部のメンバーは、おととし、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大して以降、海外への訪問を控えてきました。
中国としては、新型コロナの感染拡大以降、もっとも高い序列の人物をロシアに訪問させることで、台湾情勢などを巡ってアメリカとの緊張が高まる中、ともにアメリカと対立するロシアとの関係を重視する姿勢を示すねらいがあるとみられます。
●プーチンの“怒りの炎”に油を注ぐ「クリミア攻撃」ゼレンスキーが犯した大失策 9/5
世界中の戦闘終結の願いも虚しく、開戦から7カ月目に突入したウクライナ戦争。現在膠着状態が続くこの戦争はまた、地球上の至る所に「綻び」を表出させているようです。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、それら綻びの数々を列挙し各々について詳しく解説。さらに日本が置かれている厳しい安全保障環境を紹介するとともに、それが決してウクライナ戦争と無関係ではないことを強調しています。
混乱を極める世界で何が起きているか?
先週末より、これまであまり報じられなかったが、実はずっとくすぶり続けていた懸念事項が一気に爆発し、表出してきた気がいたします。
報道はそれでもロシアによるウクライナ侵攻をめぐる情報ばかりですが、その裏では、先週、触れたコソボ問題をはじめ、イラク・イラン、アフガニスタンの混乱と悲劇から、中台間の緊張の高まり、軍事演習を通じた中ロ印の間での綱引き、タイのプラユット政権の揺らぎやロヒンギャ問題をはじめとするミャンマー情勢の混乱など、今後、国際情勢を一気に極限の混乱に陥れ、まさにカオスを引き起こしかねない題材が勢ぞろいです。
それらすべてをカバーすることは不可能ですが、今週号ではすでに情報が得られたものをピックアップしてお伝えします。
最初は「ウクライナ情勢」についてです。
このところ欧米から供与された武器が功を奏し、ウクライナ軍がロシア軍に対して反攻を加え、南部へルソン州やクリミア半島で勢力を挽回しているというニュースが伝えられています。
「ロシアの弾薬がもう底をつき始めている」
「欧米諸国と友人たちによる制裁が効き始めている」
「アメリカから供与されるハイマースなどの武器が、ウクライナ軍に力を与え、今ではロシアを押し返している」
いろいろとウクライナの善戦を伝える内容がもたらされ、その勢いに乗るかのように、ゼレンスキー大統領は「ウクライナに属するすべての領土・権益を取り戻すまで戦う」と再度、勇ましいコメントを配信しています。
ロシアによるウクライナ侵攻から半年が過ぎて、ウクライナ疲れが目立ちだした中、再度、国際社会の関心をウクライナに向けさせ、支援レベルを復活させようという狙いが見えますが、私たちは少し落ち着いて状況を見極める必要があるかもしれません。
その一例が「ロシアの弾薬は底をつき始めている」という情報ですが、これに対してはNATOの一角を担い、対ロシア強硬姿勢を取るドイツの連邦軍幹部が「ウクライナ軍はNATOの支援を受けてロシア軍を押し返しているが、ロシア側の弾薬が切れ、かつ戦意を喪失しているというのは恐らく正しくはない。ロシアは一日数万発の弾薬をウクライナに対して用い、そのなかには旧式でありつつも威力がかなり大きいものがあり、無差別攻撃に投入するだけの余力は持っているようだ」との見解を示しているのは、一考の価値があるのではないかと思います。
ハイマースなどの射程が長く、誘導機能も優れている武器を、トルコから供与されているドローンによる位置把握と合わせることで、確かにロシアの弾薬庫を破壊したり、補給路を断ったりする戦果は挙げていますが、まだまだロシアは量でウクライナに勝っており、一気にウクライナ軍が失地を挽回できるほど事態は甘くないということを物語っているのだと考えます。
そして今回、ロシア側の闘争心に再度点火する可能性がある事態が、クリミア半島への攻撃です。
プーチン氏の怒りの火に油を注ぐクリミア半島への攻撃
2014年に「ロシア人同胞の権利を守る」という旗印の下、緑の戦車部隊と情報戦でロシアが一気にクリミア半島を併合してしまいました。その後、「クリミア半島を取り戻せ」がNATOやその仲間たちの合言葉になり、反プーチン大統領勢力の旗印になっていますが、普段からよく意見交換をしているストラテジストたち曰く、「ウクライナがこの時点でクリミアに触ってしまったのは、戦略上、賢明とは思えない」とのことで、「これを機に、まとまりを欠いてきていたロシア軍の眠りを覚まし、ウクライナに対して決定的な攻勢に出させる機運を高めることにつながるのではないか」と考えているようです。
2014年のクリミア半島の併合は、プーチン大統領にとってはサクセスストーリーとして扱われており、また同時に、旧ソ連解体後一度は近づこうとした欧米諸国との決別を意味する大事な契機と言え、今でも続く高い支持率の基盤となっている事項だと考えられています。ロシア海軍の港での相次ぐ爆破事件は、実行犯は公にはなっていませんが、恐らくウクライナ軍の特殊部隊(注:英国に訓練されているグループ)による仕業と言われており、ウクライナ側もそれを否定していないことから、プーチン大統領とその周辺、そしてロシア軍内での怒りの火に油を注ぐことになったという見解です。
個人的にはクリミア半島をロシアが一方的に併合したことは受け入れられないことですが、戦略的には、「今回のロシアによるウクライナ侵攻の失敗を印象付けるための最後のトドメ」として残しておいてもよかったのではないかと考えます。
ちなみに、一説によると8月30日に亡くなったゴルバチョフ大統領も、それまではプーチン大統領の方針を非難していたにもかかわらず、2014年のクリミア半島併合については支持していたほどで、今回のウクライナ侵攻への非難とは、あえて分けていたとのことですから、「ロシア国内でも反プーチン大統領の勢力が増えてきている」と嬉々として伝える報道内容がどこまで信頼に値するかは疑問ではないでしょうか。
ペスコフ大統領府報道官のようにプーチン大統領のスポークスマンとして表立って発言する人は別としても、クリミア半島へのロシア人の思い入れは侮れませんし、特に自らのサクセスストーリーに泥を塗ったウクライナにどのような一撃をプーチン大統領が加えようとするのか、とても気になります。
次に非常に気になるのがウクライナ南部にあり、欧州最大の原発であるザポリージャ原発を巡る攻防の行方です。
ロシア軍が原発内に駐留し、発電所と関連施設を手中に収めている中、ザポリージャ原発内の施設への攻撃が増加しています。原子炉から100メートルの位置に砲撃が…という背筋が凍りそうな情報も多数ありますが、それが誰の仕業か、こちらもまた真相はわかりません。
一説には「ロシア軍はかなり追い詰められており、やむを得ず原発を盾にウクライナからの攻勢を弱めようとしている」といった内容や、「ウクライナのみならず、ウクライナを支援する周辺国、欧州各国も、場合によっては巻き添えを食らうという状況を作り出しているのだ」という情報もありますが、強ち(あながち)偽りとは言えないでしょうが、これもまた事実とも異なるような気がしています。
ただ原発への偶発的な攻撃が生みかねない影響は、福島第一原発事故の記憶およびチェルノービレ(チェルノブイリ)原発事故の記憶が鮮明に残っている私たちにとっては恐怖以外の何でもなく、原発を戦闘に巻き込もうとしていることは行き過ぎだと思われます。
国際社会の懸念の高まりを受け、原子力の平和利用の確保を司るIAEAの調査団(グロッシー事務局長を含む)がザポリージャ原発の状況を調査すべくウクライナ入りしていますが、その効果は未知数です。
ロシアがザポリージャ原発に駐留し続けている理由
一応、ロシア政府は協力の姿勢を示していますが、原発からのロシア軍の撤退は「今回の受け入れの議題にはない」と受け入れない姿勢で、現在、原発をコントロールしているロシア軍がどれほど協力的かはわかりませんし、恐らくさほど期待はできないでしょう。
そうすると、IAEAの調査団による調査の有効性に疑問が呈されることになります。
今回の調査は本格的になるのか?それともただの見せかけなのか?
それはこれから見えてくると思いますが、各国の原子力の専門家は「本気なら、長期にわたって調査団はザポリージャ原発に残り、事態を見極めないといけない」と発言し、IAEAが計画している数日間の“調査”の有効性に疑問を呈しています。
とはいえ、長期に原発内に留まるのは、言い換えると国際的な専門家たちを今回の紛争における“人間の盾”化してしまうことも意味しますので、今回の調査団を“いかに有効的に使うか”を戦略的に考える必要があります。
ロシアが原発に駐留しているのは、切羽詰まっているからというよりは、戦闘とは別にウクライナ経済の生活インフラを締め上げるという別の作戦であると思われます。
それは、ちょっと強引かもしれませんが、ロシアに重度の制裁を課す欧州各国への“復讐”としてパイプラインのバルブを閉め、欧州各国(ドイツ、フィンランドなど)を締め上げている戦略に似ている気がします。
そしてロシアが切羽詰まっているか否かについては、4年ぶりに開催される大規模な軍事演習(東方戦線対応)の様子を見ればわかってくるかと思います。
そこに中国のみならず、中国を警戒し、ロシアとの適切な距離を保ちたいインドも参加し、他にスタン系の国々を含め、計12か国の軍が参加するのを、私たちはどう評価すべきでしょうか?
ロシアにはまだ余力があるのか?ロシアの関心は、中国と共に、東にも向けられているのか?ロシアとしては制裁を嘲笑うかのように、自らの支持者の存在を示したいのか?
これらの問いへの答えは、しばらくすると見えてくると思います。
さて、ここでウクライナ情勢から離れますが、ウクライナを舞台に鮮明化した綻びは至る所で表出してきています。
その一例が、イラクで爆発した大規模な武力対立です。
先の総選挙で多くの支持をえたサドル派(シーア派)は経済的に困窮する民からの支持を得ており、現政権がアメリカ撤退後のイラクの状況を改善できていないことに反発して、派の長であるサドル師(自らは議員ではない)が現政権の無能さに抗議するために政治からの引退を表明し、それに呼応した支持者たちが大規模デモを起こし、それが今週、武力による対立に発展したというシナリオです。
サドル師の“引退”宣言は実際にはサドル派を支持する民衆を動員するための作戦だと思われますが、結果として、ただでさえ政治基盤が脆弱な現政権の無力さがクローズアップされ、元々問題視されていた民族間・宗派間のいざこざに再点火して、今や、全土的な対立に発展しています。
まさしく内戦状態です。
その異常さは、首都バクダッドで政府機関が集まり、かつ外国の公館が集まるGreen Zone(イメージでは、東京の永田町・霞が関!?)まで紛争の火の粉は及んでおり、政府機能がマヒしていることを国内外に示す羽目になっています。
異常な状態を受け、イランは国境を閉じ、イラクへの直行便も止めるという措置を取っていますし、各国も大使館員を国外に避難させる措置を取ったようです。
ちなみに、サドル師はシーア派ですので、イランの暗躍が疑われそうですが、サドル派はイランとも対立関係にあるとされ、イラン政府も公式にも非公式にも関与を否定し、火の粉が飛んでこないように気を付けているようです。
一度は勢力を失ったとされるイスラム国が復活か
これが何を生むかと言えば、残念ながら一度は勢力を失ったとされるISの復活の兆しで、それはイラクの国としてのintegrityを失わせ、周辺国に対して再度、恐怖を投射することに繋がっています。
そしてそれは、滅茶苦茶にするだけして立ち去ったアメリカ政府とアメリカ軍への非難にもつながっているのですが、その影響については、またの機会に。
アメリカが立ち去り、ISが台頭し始めたと言えば、アフガニスタンを襲っている悲劇から目をそらすわけにはいきません。
8月30日で米軍の最後の飛行機がカブール国際空港を飛び立ってからちょうど1年が経ちますが、支配を取り戻したタリバン勢力は、国際的に正当な政府として承認されていないばかりか、日々、ISなどからのテロ攻撃に遭い、アフガニスタンに安定をもたらすことができていません。
アフガニスタンも例外なく、コロナのパンデミックの影響を受け、そこに大地震などの災害にも見舞われたことで、国民生活は破綻し、栄養失調の子供の割合が異常なレベルに達しているようですが、タリバン勢力に対する政府承認がまだほとんど存在しない中、国連も緊急安保理会議を開催したものの、懸念が表明されるだけで具体的な策が講じられないという悪循環に苦しめられています。
タリバンと言えば、女性の権利をはく奪しているという点がよく非難対象でクローズアップされますが、それ以外にもまったく国を動かすにあたってのキャパシティーが足りていない点を無視することはできません。
結果的にISによるテロを生み、それを抑えるために、一度は縁を切ったはずのアルカイダとの接触が噂されるなど、状況は悪化の一途を辿っています。
「イラクの状況や、アフガニスタンの状況のひどさについては分かったけど、それがウクライナとどう関係があるのか?」という質問があるかもしれませんが、これらのケースでも、ウクライナでの戦争で生じた国際社会の分断が影響しています。
イラクやアフガニスタンのケースに対しては、ウクライナ前は、主導権争いは存在しても、欧米諸国も、日本も、ロシアも中国も、そして周辺国も、経済的な権益の拡大という狙いの下に支援が行われてきました。それらの支援は国連を通じたものが多く、必ずしも効率的に支援が行われたとは言えませんが、まだ“協調介入”という特徴は残っていました。
ウクライナでの戦争がはじまり、世界が三極化する中、イラクやアフガニスタン、ミャンマーなどでの混乱や悲劇に対する非難や懸念の表明は行われるものの、支援とは程遠く、あくまでも“自らのサイド(極)に引き付けるため”という政治目的を持った接触に過ぎず、腰の据わった寄り添う形の支援は行われていません(ちなみに、ミャンマーのケースは別として、この寄り添い型の支援が上手なのが実は日本で、支援は継続されています)。
「とても気にはなるし、懸念を持っているけれど、今は具体的な策は講じられない」
ウクライナでの戦争をめぐる“陣地争い”の下、イラクもアフガニスタンも、じつは国際協調や支援が行き届かない悲劇の象徴になってしまっています。
これにはいろいろな方からご批判や非難があるかもしれませんが、もし私の思い過ごしや誤解であれば、指摘してくださいね。
しかし、私の知る限りでは、イラクやアフガニスタンの惨状については、皆、話すたびにため息をつき、懸念を述べるのですが、手は差し伸べられていないのが現状でしょう(そして、先週号で触れた第3極の国々にとっても、イラクやアフガニスタンは対象外のようです)。
振り上げた拳を下げるタイミングを逸している中台
イラクやアフガニスタンから国際的な関心や具体的な策を奪っているのが、中台間で目立ってきた緊張の高まりです。
ペロシ議長の訪台に始まり、私の記憶が正しければ、8月末までに4回、アメリカの連邦議会議員団が台湾を訪れ、アメリカの台湾支持を明確に打ち出しています。
これはペロシ議長の訪台後の「台湾は、アメリカにとって本当に支援する相手かどうかを見極めに行ったが、まさに中国に面しつつ、民主主義を堅持する友人であることが明らかになった」という発言を受けての大きな波ですが、10月16日に5年に一度の共産党大会を控え、自らの3期目の承認を控える習近平国家主席とその指導部にとっては、看過できない状況を作り出しています。
実弾を用いた大規模かつ本格的な軍事演習の実施や、経済的な制裁措置などを用いて台湾への圧力をかける北京政府ですが、アメリカの後ろ盾を得たと信じている蔡英文総統も負けじと最前線に赴き、中国への徹底抗戦を宣言して、もう双方、振り上げた拳を下げるタイミングを逸している状況になっています。
どこまでバイデン政権の対中・対台湾政策と合致しているかは精査が必要ですが、確実に11月以降の火種が生まれていることは確実でしょう。
ここでカギとなるのが、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて欧米諸国がロシアに課した経済制裁が“本当に”どれほど効いているのかという内容についての精査結果です。
全く効果がないとは言えませんが、かといって当初、予定していたほどの効果は出ておらず、天然ガスというエネルギー資源、金属や木材の資源、穀物…様々な“もの”を武器に、対ロ制裁の包囲網が崩されているのは事実です。
欧州各国については、エネルギーというインフラを握られ、ノルドストリームI経由のガス供給をテコに、プーチン大統領との我慢比べを強いられています。結果として、口先では厳しい口調でも、実際の制裁措置については及び腰になっているNATOの国もあります。
そこに第3極のインドがロシア産の石油と天然ガスを引き受けて、精製の上、国際マーケットに流すという“穴”が生じていますし、エネルギー需要が増え続ける中国も安価にロシアから供給を受けることで恩恵を被っています。そしてトルコについては、ウクライナにドローン兵器を売りつけながら、ロシアともしっかりと交易を続けていますし、UAEもサウジアラビア王国もロシアと非常に密接な関係を保つことで、経済的な恩恵を受けています(UAEについては、ドバイ─モスクワ間でエミレーツ航空が毎日7便直行便を運航しており、ほぼ満席だとか)。
このような距離感は、中国との距離感や台湾との距離感にも直接的に反映されています。
以前にもお話ししましたが、サウジアラビア王国もUAEも、多くのアフリカ諸国も、中国との関係を重視して、台湾関連の国際案件にはことごとく反対票を投じますし、中国が主張する“台湾観”に対して賛同し、欧米諸国を中心に、台湾海峡の問題を国際案件にすることに強く反対するという勢力となっています。
この勢力、ロシアによるウクライナ侵攻に対する各国の反応をベースに見えてきた第三極の国々と見事に一致します。
そうしてみた時、ちょっと注意深くシナリオを練ってみてくださいね。
仮に中台間で武力衝突が起きた際、どのような状況が見られるでしょうか?
中国への対峙の最前線を台湾と日本に押し付ける米国
一つ目は国際的な対中制裁の発動にどれほどの国々が賛同するかですが、これはほぼ、今回のロシアに対する制裁への賛同国・反対国・棄権国のリストと一致してくるものと思われます。
おまけにロシア経済の規模(世界第10位か11位)に比べると、中国の経済規模はかなり大きく、どこまで世界1位か2位と言われる中国経済に“楯突くことができるか”を考えた際、ロシアに対するケースよりも、経済制裁の効果は薄れるでしょう。
そして、インドは知りませんが、中東諸国は、中国と25年間にわたる戦略的パートナーシップ協定を結ぶイランも含め、中国をバックアップすることになると予想されます。ゆえに、対中経済制裁は、さほど影響を持たないと思われます。
二つ目は、軍事的な視点です。これは今回のロシアによるウクライナ侵攻の状況を見れば分かります。ロシアの侵攻に対しては各国から非難が寄せられ、欧米諸国については、NATOの枠組みを通じた武器弾薬の支援が行われていますが、ロシアと直接的に軍事的な対峙は行っていません。
この状況に鑑みると、仮に中国が台湾に対して軍事侵攻を行った場合、各国からの非難は寄せられるでしょうが、軍事面では直接的に対中戦に参加せず、あくまでも台湾支援に限られるように思われます。
言い換えると、アメリカは台湾を全面的に支援するというものの、台湾有事の際に軍事介入はしてくれないと思われます。
勝手な妄想かもしれませんが、菅政権時代にバイデン大統領との間で「日本の防衛力強化」と「アジア太平洋地域における役割の増大」について合意されていますが、少し穿った考え方をしますと、台湾有事が勃発した際、極論を言えば、米軍は直接的には動かず、台湾と日本に軍事的な支援を行って、中国への対峙の最前線を台湾と日本に“押し付ける”ような気がしてなりません。
以前、中国の軍関係者やストラテジストと話した際には「日本と戦うなんて大それたことは考えていない。中国は中越戦争以降、実戦を経験していないし、ましてや世界を相手に戦ったことは近代においてはない。負けてもアメリカや世界と戦った日本の恐ろしさはよく知っている」とのことでしたが、有事の際、もし日本が意図せず、アメリカに支えられる形式で前線にいて、中国と対峙していたとしたらどうでしょうか。
そしてそこに北朝鮮がちょっかいを出して来たら?そして、その時、韓国はどちら側についているのか?そして、今回の4年ぶりの大規模軍事演習が“東”を対象にしているロシアはその時、どのように動くか?
このように考えたら、大げさかもしれませんが、我が国日本を取り巻く安全保障環境はとてつもなく厳しいものであることは想像できるかと思います。
そして、それは、決して現在進行形のウクライナでの戦争とは無関係ではないこともお分かりになるかと思います。
まとまりのない内容になったかもしれませんし、突拍子もないようなお話だとお感じになるかもしれません。
しかし、国際情勢を俯瞰的に眺めてみた際、このような分析もあるのだとお考えいただき、皆さんのお考えの一助にして頂ければ幸いです。以上、国際情勢の裏側でした。
●軍事作戦「継続」48%、「和平協議」44%で世論二分 ロシア世論調査 9/5
ロシアの独立系世論調査機関「レバダセンター」は1日、ウクライナ侵攻について最新の世論調査結果を発表した。プーチン政権が「特別軍事作戦」と呼ぶ侵攻について、「継続」と「和平交渉」で意見が二分している状況が明らかになった。2月の侵攻開始から半年以上が経過し、えん戦ムードが拡大している可能性もある。
今回の調査は8月下旬に実施され、約1600人を対象とした。調査結果によると、「作戦を継続すべきだ」との回答は48%だったのに対し、44%は「和平協議を開始すべきだ」と答え、「ほぼ二分した」(同センター)形となった。このうち40歳以上は作戦継続支持が多かったが、18〜39歳では過半数が和平交渉を望んでおり、若い世代ほど戦闘終結を願っている傾向が浮き彫りとなった。
一方、「特別軍事作戦」自体への評価は「支持」が46%、「どちらかといえば支持」が30%で、7割以上が軍事行動を支持していた。
●オリガルヒ不審死¢ア出のウラ側 「プーチンの指示とみて間違いない」 9/5
ロシアの新興財閥幹部=オリガルヒの死亡報道が止まらない。ロシアの国営タス通信は1日、ロシアの石油大手ルクオイルのラビル・マガノフ会長(67)が入院先の病院の窓から転落して死亡したと報じた。ロシア当局は自殺としているが、今年に入ってオリガルヒ幹部は少なくとも8人が不審死を遂げており、世界中で反プーチン派を狙った暗殺を疑う声が上がっている。
自殺、一家心中、原因不明…。今年に入ってロシアではさまざまな形でオリガルヒ幹部の死亡が相次いでいる。旧ソ連崩壊後、現在のプーチン大統領ら政府が支援する形で急成長したオリガルヒだけにプーチン氏とは蜜月関係だったが、今年2月のウクライナ戦争勃発以降、急速に関係が悪化していった。
元警視庁刑事で日本安全保障危機管理学会インテリジェンス部会長の北芝健氏はこう話す。
「プーチンがオリガルヒの急成長を支援する見返りに資金面で援助を受けていたのは有名な話。しかし、プーチンの独断で始まったウクライナ戦争で、西側諸国の制裁を受ける立場になったオリガルヒは、ウクライナ戦争反対を表明するようになった。これがプーチンに裏切りと映り、次々に不審死を招く結果になっていると欧米の情報機関は見ている」
1日に自殺したとされるマガノフ氏は表だってウクライナ戦争を批判していたオリガルヒの一人だった。
4月にはロシア大手銀行ガスプロムバンクの元副社長が、拳銃で無理心中をはかり死亡したと当局が発表したが、使われた拳銃はロシア特殊部隊のものだったことが明らかに…。さらにこの翌日にはエネルギー大手ノバテク社の元副会長も無理心中で死亡したとされ、にわかに信じがたい事件が連続している。
「プーチン政権下では銃や毒物のほか、放射性物質まで使用した不審死事件が数多く起こっており、一連のオリガルヒの不審死はプーチンの指示とみて間違いない。過去にプーチンは人を殺したことがあるか聞かれ、『それは、自分の手を汚したことがあるか、ということか?』と答えたが、反逆者を抹消するためなら何でもアリな人間だ」(北芝氏)
一方で反プーチン派も「目には目を」の強硬策に出始めている。先月20日、プーチン氏を支えると言われる極右思想家が乗る予定だった車が爆発炎上。乗っていた同思想家の娘が爆死した。
かなり近いとされる人物を狙った暗殺未遂だけに、プーチン氏にも暗殺の手が近づいているのかと思いきや、北芝氏は「超厳戒態勢を敷くプーチンを狙撃で暗殺することは不可能。また毒見役が存在するため毒殺もできない」とプーチン暗殺の可能性を否定した。
一方で「今後もウクライナ戦争に反対するオリガルヒ幹部の暗殺は続くでしょう。ガスプロムバンクの副社長の死亡現場にロシア特殊部隊の拳銃が残されていたのは、『私に反逆したらこうなるぞ!』という暗示だ」と示唆。まだまだおそロシア≠ネ状況は続きそうだ。
●ロシア産ガス、上限価格設定必要=フォンデアライエン欧州委員長 9/5
欧州連合(EU)欧州委員会のフォンデアライエン委員長は2日、ロシアのプーチン大統領にEU域内のエネルギー市場を操作するもくろみがあり、これを頓挫させるにはロシアからパイプラインで供給される天然ガスに上限価格を設けるべきだとの考えを表明した。
また、ガス供給危機によって電力会社が棚ぼた式に得た利益の一部を徴収し、苦境にある市民や企業の支援策に活用する政策を策定するよう促した。
フォンデアライエン氏は、記者団に対して「パイプラインで欧州に供給されるロシア産ガスについて、価格に上限を設ける時期が来たと固く信じている」と語った。
その上で「価格上限は欧州レベルでの提案が可能であり、危機的な時代に緊急対策として一時的利益を徴収する法的根拠も欧州レベルで存在する」と付け加えた。
ロシアのメドベージェフ前大統領はフォンデアライエン氏の発言を受けて、EUがロシア産ガスの上限価格設定を進めた場合には供給を停止する可能性を警告した。 
●ウクライナ・ヘルソン州の住民投票、治安理由に中断=タス通信 9/5
ウクライナのヘルソン州で実施予定のロシア編入の是非を問う住民投票について、ロシアが設置した行政当局者は5日、治安情勢を理由に「一時停止」されたと述べた。ロシア国営通信タスが報じた。
報道によると、ヘルソン市近郊のドニプロ川に架かる重要なアントニフスキー橋は、数週間に及ぶウクライナの砲撃で車両の通行ができない状態という。
ヘルソン州は、ロシアの侵攻開始後まもなくロシア側に制圧されたが、ウクライナは先週、奪還を目指し本格的な反攻を開始したと発表した。
●ウクライナ軍、南部と東部で3集落を奪還… 9/5
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は4日のビデオ演説で、ウクライナ軍が南部と東部ドネツク州で露軍から計3か所の集落を奪還したと宣言した。ウクライナ軍は8月29日にヘルソン州など南部の領土奪還に向け反転攻勢に乗り出しており、戦果を強調することで士気を鼓舞する狙いがあるとみられる。
ゼレンスキー氏は南部で2か所、ドネツク州では1か所の集落を「解放した」と述べ、ウクライナ軍の奮闘を称賛した。南部の集落はヘルソン州内とみられる。ドネツク州は露軍が全域制圧を目指しているものの、攻略に手を焼いている。
大統領府長官や副長官は4日、それぞれのSNSに、自国兵士が建物の屋上でウクライナ国旗を掲げる写真を投稿した。大統領府長官は「一歩一歩」とのメッセージを付けた。写真は、東部ドニプロペトロウシク州と隣接するヘルソン州北部の集落で撮影されたとみられている。
ウクライナ軍は、露軍が3月に全域制圧を宣言したヘルソン州を中心に多方面で反撃を強化しているが、領土奪還作戦の進展状況については情報統制を敷いている。ゼレンスキー氏もビデオ演説で奪還した集落の詳細には触れなかった。
露国防省は4日の戦況に関する発表で、ウクライナ軍の反撃を「成功しない試み」と表現し、領土を奪還されたことを認めていない。露軍はミサイル攻撃や砲撃で対抗している。
ウクライナ国営通信によると、ヘルソン州に隣接する南部ミコライウ州の穀物貯蔵施設が4日、砲撃を受け、穀物数千トンの被害が出た。ウクライナ軍参謀本部は4日、露軍がミサイル14発を発射し、15回以上の空爆を行ったと説明した。
●プーチン大統領、「志願兵」集めで大企業にノルマ… 9/5
ロシアで徴兵問題を専門に扱う人権団体の幹部は3日、自身のSNSで、プーチン露大統領がウクライナ侵略作戦に派遣する兵員を確保するため、国内の大企業などを対象に契約軍人として志願させる従業員数のノルマを割り当て始めたと暴露した。国営のロシア鉄道は1万人を集めるよう指示されたとしている。
ロシア鉄道の内部情報として、待遇などの詳細が書かれた文書も公表。契約軍人となれば、会社側と露国防省が計40万ルーブル(約92万円)の一時金を支払い、従軍中は月給30万ルーブルやボーナスの支給などを約束しているという。プーチン政権は、強制動員による国民の反発を警戒し、様々な手法で「志願兵」を集めているが、難航が伝えられている。
●ロシア極東で経済フォーラム開幕 中印接近、7日にプーチン氏演説 9/5
ロシア極東ウラジオストクで5日、第7回東方経済フォーラムが開幕した。ウクライナ侵攻で欧米の対ロシア制裁が強化される中、経済活動の維持や非欧米諸国との協力について話し合う。プーチン大統領は7日の全体会合で演説し、制裁に屈しない姿勢を改めて強調する見通しだ。
7日の全体会合には親ロシア的なアルメニアのパシニャン首相、モンゴルのオユーンエルデネ首相、中国の栗戦書・全国人民代表大会常務委員長(国会議長に相当)、ミャンマー国軍のミンアウンフライン総司令官らが参加する。2国間会談も予定されている。
さらに、インドのモディ首相、マレーシアのイスマイルサブリ首相がビデオメッセージを寄せるという。ウクライナ侵攻で孤立するロシアは、中国に続いてインドにも接近しており、インド太平洋地域を重視する米国が懸念している。
今回のフォーラムは「多極化する世界へ」をテーマに据え、米国の一極支配に強く異を唱えている。開幕に先立ち、ペスコフ大統領報道官はタス通信に「欧米の非論理的でばかげた行動が世界的な嵐を引き起こしたが、ロシアはマクロ経済の安定を維持している」と主張。物価上昇や食料危機は、制裁に起因するとの認識を示した。
プーチン氏は6日にウラジオストクで、中印も参加する大規模軍事演習「ボストーク(東方)2022」を視察する。1日の最西端の飛び地カリーニングラード訪問に続き、5日は極東カムチャツカ半島に滞在。11日の統一地方選を前に地方重視の立場をアピールし、政権与党「統一ロシア」を支援する狙いとみられる。
●プーチン政権、反ロ路線に警戒 英保守党首選 9/5
ロシアに強硬姿勢で臨むトラス英首相の誕生をプーチン政権は警戒している。タス通信によると、スルツキー下院外交委員長は5日、「トラス氏の立場に幻想を抱くことはあり得ない」と述べ、現実的に対応する考えを表明。「ロシア嫌いでエネルギー・食料価格上昇を解決できるとも思えない」と皮肉った。
下院外交委所属のベリク議員も、ジョンソン政権で生まれた反ロシア路線がトラス氏によって「継続・強化される」と厳しい見通しを示した。
●習近平氏が2020年1月以来の国外、カザフ訪問へ… 9/5
インターファクス通信によると、中央アジア・カザフスタン外務省報道官は5日、中国の習近平(シージンピン)国家主席が14日、カザフスタンを訪問することを明らかにした。新型コロナウイルスへの感染を強く警戒しているとみられる習氏が国外に出るのは、新型コロナ感染拡大前の2020年1月にミャンマーを訪問して以来となる。
習氏は、翌15日にウズベキスタンのサマルカンドで開幕する上海協力機構(SCO)の首脳会議に出席するものとみられる。SCO首脳会議には、ロシアのプーチン大統領が出席する見通しとなっている。習氏とプーチン氏は、ロシアがウクライナに侵略する前の今年2月初旬に北京で対面会談している。それ以来、初めてとなる対面での中露首脳会談が開催される可能性がある。
中国は対露制裁を行う米欧を非難している。台湾問題を巡っても米国との対立が深まる中、習氏は外遊を通じてロシアとの連携を強化する考えとみられる。中露が主導するSCOにはインドやパキスタン、中央アジア各国が参加する。欧米とは一線を画す立場の国々との協力も確認する見通しだ。
中国は10月に、5年に1度の共産党大会を控えている。習氏がこのタイミングで外遊に踏み切るのは、異例の3期目入りに向けた党内の調整などが順調に進んでいることの表れとも言えそうだ。
カザフ外務省報道官は、習氏がカシムジョマルト・トカエフ大統領の招請に応じたと説明した。中国は、エネルギー資源が豊かなカザフとの関係を強めてきた。巨大経済圏構想「一帯一路」の要衝とも位置づけ、重要視している。
●ロシア国民が持つロシアン・イデオロギーの正体 9/5
ウクライナ侵攻による経済制裁後もロシアでのプーチン大統領の支持は、堅持されている。数年ごとに軍事行動を起こす指導者をなぜロシア国民は支持し続けるのか。
本稿では元ロシア外交官である亀山陽司氏著『地政学と歴史で読み解くロシアの行動原理』より、ロシア正教とロシアン・イデオロギーについて説明する。
イワン・イリイン(1883-1954年)は、ソビエト政権に否定的であったため、祖国を追放された思想家である。彼は在外白系ロシア人の組織である「ロシア全軍連合(ROVS)」のイデオローグとしても知られる。スイスで死んだが、ソ連崩壊後、その遺骨はモスクワに埋葬された。
現在、ロシアでその著作が次々に発刊されている。プーチン大統領もその演説の中でしばしばイリインに言及しており、プーチン大統領の政治思想に大きな影響を与えている人物であると考えられる。
正教会の信仰は“ロシア”そのものへの信仰
イリインは熱心な正教会の信徒であり、正教信仰をロシア国家にとって最も重要な思想だと考えていた。イリインが「ロシアのナショナリズムについて」という書の中で「我々はなぜロシアを信じるのか」と問うている。イリインはソ連を否定していたが、祖国に対する愛は強く抱いていた。
「我々ロシア人は、どこに住み、どんな状態にあったとしても、祖国ロシアに対する悲しみを逃れることはできない。これは自然で避けがたいことだ。この悲しみは我々を見捨てることはできないし、そうするべきではない。それは祖国に対する我々の生き生きとした愛情と信仰の現れなのだ」と書いている。
イリインによれば、ロシア人であるということは、ロシア語を話すことだけを意味するのではない。「ロシアを心から受け入れ、愛をもってロシアの価値ある独自性を見て、その独自性がロシア人に与えられた神の賜物であることを理解する」ことである。
イリインは、チュッチェフの「ロシアをただ信じるのみ」というフレーズを挙げ、ロシアへの信仰は不可欠であり、ロシアへの信仰なくしては生きることもロシアを復興させることもできないという。そして、ロシアを信仰するとは神においてロシアを見ることだとする。
イリインは反共主義者として、ロシア帝国の再興を望んでいたわけだが、その思想にはロシアン・イデオロギーの核心が表現されていると思われる。ここでいうロシアン・イデオロギーとは、ロシアの歴史を通じてロシアの権力および国民の中で自然に形成されてきたロシア固有のナショナルな価値観のことである。
ロシアの政治的イデオロギーや文化的イデオロギー、そして宗教的イデオロギーは、このロシアの基盤的イデオロギーに結びついていると考えられる。ロシアン・イデオロギーをあえて定義するとすれば、以下のようなものとなるだろう。
“ロシア”とは偉大な祖国であり、この祖国“ロシア”への愛と信仰によって、ロシアの偉大さを擁護し、発展させようとする愛国主義的価値観である。この“ロシア”とは、国土、歴史、文化、そしてロシア正教によって形成された1つの文明圏であり、大国である。大国であるとは、ロシアの偉大さの政治的表現であり、世界の命運の鍵を握っていることである。
少し大げさなようだが、ロシア人の価値観というものは、まさに祖国に対するパトリオティズムである。2008年のジョージア(グルジア)紛争も、2014年のクリミア「併合」も、2022年のウクライナ侵攻も、日本を含め欧米の自由民主主義の価値観から見ればまったく理解できない行動である。それにもかかわらず、ロシア国民はプーチン大統領を支持し、祖国ロシアの行動を肯定している。
これは、プーチン個人への信頼というわけではないだろう。そうではなく、ロシアという祖国に対する信頼であると考えざるを得ないのである。
2020年憲法改正で注目すべき側面
2020年の憲法改正については、プーチン大統領の5期および6期を可能にする修正ばかりがクローズアップされたが、むしろ、ロシアン・イデオロギーの定式化という側面こそが重要だったのではないだろうか。
このロシアン・イデオロギーは、祖国愛、パトリオティズムに立脚するものであり、ナショナルな価値観である。ソ連社会において支配的であったような政治的な国家イデオロギーではないことに注意が必要である。これについては、大統領就任直前にプーチン大統領が発表した論文「千年紀の境にあるロシア」(1999年12月30日)で明記されている。
プーチンは、「ロシア的理念」と題された章で、ロシアは内的分裂状態にあるが、こうした内的分裂状態は1917年のロシア革命の時代、1990年代のソ連崩壊後の時代に見られるものだとし、ロシアの現状をロシア革命の時代になぞらえる。
そして、ある種の政治家や学者が呼びかけている「国家イデオロギー」の創設について、こうした用語は知的、精神的、政治的自由がなかったソ連時代を連想させるため適切ではないとし、国家の公式イデオロギーの復活に反対するのである。そして、いかなる社会的合意も自発的なものでしかありえないとする。
プーチンにとっては、分裂したロシア社会の統合に必要なものは政治的な公式(官製)国家イデオロギーではなく、根源的で伝統的な価値観なのである。そして、そのような価値観として、パトリオティズム、大国性、国家主義、社会的連帯を挙げる。
根源的で伝統的な価値観4つの意味
パトリオティズムは、大部分のロシア人にとって肯定的な意味を有しており、祖国、歴史、そして偉業に対する誇りである。パトリオティズムを失えば、ロシア人は偉業を達成することができる民族としての自己を喪失するだろうというのである。
大国性については、ロシアは偉大な国家であったしそうあり続けるという。大国性は、ロシアの地政学的、経済的、文化的存在と分かちがたい性質である。大国としての能力とは、軍事力である以上に、自らの安全を確保し、国際社会における国益を擁護する能力であるという。
国家主義については、ロシアはアメリカやイギリスのようにリベラルな価値観が歴史的伝統となっている国の焼き直しにはならないという。ロシアにおいて、国家(権力)とは、国や国民の生活において極めて重要な役割をはたしてきた。強力な国家権力はロシア人にとって異常なことではなく、秩序の保証であり、改革の主唱者であり主要な原動力なのだ。
最後に社会的連帯だが、ロシアにおいては個人主義よりも集団的形態が優先していたとされ、ロシア社会では家父長的な傾向が根付いていたという。生活の改善というものを自己の努力よりも国家と社会の支援に結びつけて考えたのである。こうした傾向は現在も支配的であり、これを考慮して社会政策を考えなければならないとする。
その上で、ロシアには強力な国家権力が必要であると結論付けるのである。
こうしたプーチン統治の初期のプログラムを改めて振り返ると、そこに通底する思想が見えてくるのである。パトリオティズム、大国性、国家主義、集団性といった要素は、スラヴ主義者の主張に通じるものである。先に定式化した基盤的イデオロギーとしてのロシアン・イデオロギーにも妥当するものである。民主主義と資本主義といった西側の(普遍的な)価値観を受け入れはするが、それはあくまでもロシアの伝統に則った形でなければならないのである。
●ユーラシアも支配する…「プーチンの教祖」が解説する大統領の野望 9/5
ロシアの著名思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘ダリヤ・ドゥーギナ氏が、8月20日、モスクワ郊外で自動車ごと爆殺された。この車をドゥーギン氏が利用する予定だったことから、犯行はドゥーギン氏を狙ったものとみられている。ドゥーギン氏とは一体どんな人物なのか。ロシア思想を専門とするフランス人哲学者、ミシェル・エルチャニノフの著書『ウラジーミル・プーチンの頭のなか』(すばる舎)より紹介する――。
プーチンを知る上で重要な「ユーラシア主義」という野望
ウラジーミル・プーチンがまだロシアの大統領代行だった2000年、「ロシア 東側諸国の新しい展望」と題された記事で、このように言っている。
「ロシアは自らをユーラシアの国であると認識してきた。私たちはロシアの大部分がアジアの中に位置しているという事実を忘れたことはない。しかし、私たちがこれまでその事実を有効に活用してこなかったことも確かである」
つまり、これからのロシアはヨーロッパではなく、アジアの方を向いた政策に切り替えていく、という姿勢がここで示されたのだ。アジアへの歩み寄りはある計画の始まりを意味する。
ヨーロッパに対抗するような新たな勢力をアジアと協力して作り上げる、という計画だ。ヨーロッパともアジアとも異なる新たな枠組み、ロシアを中心としてヨーロッパとアジアにまたがる地域、つまりユーラシア地域をロシアが支配するという、「ユーラシア主義」のことである。
なぜシベリアやロシア極東地域の発展を最優先したのか
13年後、大統領としての第3期目が開始した日、プーチンはその新たな一歩を踏み出す態度を表明している。
「私たちは長く困難な道を共に歩もうとしています。私たちは自分自身や自分たちの力に自信を持ち始めました。これまで私たちは国を強く育て上げ、大国としての誇りを取り戻したのです。全世界がロシアの復活を目の当たりにしているのです。(……)私たちはあらゆる手を尽くしてさらに前進してまいります」
いったい彼は何を目標として前進していくというのか。それは、「リーダーとしてユーラシアを束ねていく」ということだ。しかし、この後プーチンが具体的にどのような計画を打ち出すことになるかなど、誰にも予測できてはいなかった。
一人プーチンのみがそれをほのめかしていたのである。
「これから数年間のうちに起こることは、さらにその先、数十年のロシアの行く先を決定する重要なものごとです」。
プーチンの壮大な計画が示されることとなるのは、その年の終わりのことである。プーチンはこの時、シベリアやロシア極東地域の発展こそが、「21世紀ロシアにとっての最優先事項」であると語った。
こうして、東欧、アジア、極東・シベリアというユーラシア地域をまとめるリーダーとなる野望が示されたのだ。
「ロシアこそがユーラシアを一つにまとめている」
ユーラシア主義の誕生は1920年代である。
ロシア革命の後、プラハやウィーン、ブルガリアのソフィア、ベルリン、パリといった都市へと移住していった思想家たちによって構想されたのだ。その代表者の一人が、地理学者で経済学者のピョートル・サヴィツキーである。
彼によれば、ウラル山脈によってヨーロッパとアジアとを分割するのは誤りであり、両者を合わせたユーラシアをアメリカ、アフリカに次ぐ“第三の大陸”と考える必要がある。その地域は一つのまとまりとして、「地理的に見た場合の独自の世界」を形成している。
そのまとまりが「ユーラシア」であり、ロシアこそがその中心となる。
サヴィツキーはその根拠として、植物相が共通していることを挙げる。ユーラシア地域は東から西にかけて、ツンドラ、タイガ、ステップ、砂漠といった地帯が絡み合い、三つの平原がそれらのユーラシア一帯を北から南までつないでいる。
このような条件下で、ユーラシアは植物相の観点からも一つの地域として見ることができるというのだ。地理的な起伏から言っても(ウラル山脈が便宜的にヨーロッパとアジアを分かつ「偽りの境界線」となっているのを除いて、この地域には大きな起伏は存在しない)、気候から言っても、この一帯には共通性が認められる。
ユーラシア大陸内では多様な要素が共存するだけではない。だからこそ、世界の中でユーラシアを地理的な一つの大きなまとまりとすることができるというわけだ。サヴィツキーはまた、ロシアこそがユーラシアを一つにまとめているとも言う。
「ロシア=ユーラシアは、旧世界(アメリカ大陸発見前の世界、ヨーロッパ・アジア・アフリカ)の中心である。この中心を取り払ってしまえば、ユーラシア大陸の辺境地域(ヨーロッパ、近東、イラン、インド、インドネシア、中国、日本)は『雑多な組み合わせ』に過ぎなくなる」
「ロシアは、ヨーロッパの国々の東と、『古い定義における』アジアの北に広がる広大な国で、ヨーロッパとアジアとをつなぐ重要な位置にある。ロシアこそがユーラシアを一つにまとめているという事実はこれまでも明らかであったが、将来、より重要な事実として認識されることになるだろう」
プーチンの教祖・ドゥーギン
ユーラシア主義はソビエト時代には注目を集めることはなかったが、冷戦終結後、1990年代になって、再評価されることとなる。
そんな新たなユーラシア主義(ネオ・ユーラシア主義)の思想家の中で、最も有名な人物はアレクサンドル・ドゥーギンだ。
彼はまた、さまざまな誤解にさらされている人物でもある。預言者のような髭を生やし、真っ青な瞳を持つ風貌からくる印象も相まって、プーチンの「教祖」とも呼ばれることもある。2人の個人的交流はそれほど深くないようだが、プーチンがネオ・ユーラシア主義を熱狂的に持ち上げるメディアの影響をいやが応にも受けていることは確かである。
ネオ・ユーラシア主義の中身
それでは、ネオ・ユーラシア主義の代表者であるドゥーギンの思想を見てみよう。
ドゥーギンの思想は、ユーラシア主義と極右的な思想とを混ぜ合わせたものだ。
2009年に書かれた『第四の政治理論の構築』と題された本の中で、ドゥーギンはユーラシア帝国の理想を掲げ、西側諸国の自由主義や民主主義と争う姿勢を表明している。内容を紹介しよう。
この本の中で彼は、「グローバル化した自由主義」が価値観の多様化をもたらし、「ポストモダン的な分裂を引き起こし、世界を破滅へと導く」と主張する。
「世界の若者たちは既に、破滅の一歩手前まで来ている。自由主義によるグローバル化が、人々の無意識に働きかけ、習慣を支配し、広告、娯楽、テクノロジー、ネットワークといったさまざまな分野に深く浸透している。その結果、世界の人々は自分の国や文化に対する愛着や、男女の違いを喪失し、人間としてのアイデンティティまでをも手放してしまっているのだ」
ドゥーギンの立場は、ユーラシア主義と極右勢力の掲げる「新しい社会秩序」の理論とを掛け合わせたものだ。それだけではない、神秘主義とメシア信仰の混在した思想も彼の特徴である。例えば、彼の著作のある章にはこんな題が付けられている――「反キリストの王国としてのグローバルな民主主義」。
彼によると、ロシアの進む道は二つに一つだ。悪しきグローバル化の波に飲み込まれるか、グローバル化への抵抗運動を主導していくか、である。
「ウクライナをめぐり西側との争いは避けられない」
2012年以前のプーチンはまだどちらも選択してはいなかった、と彼は言う。
「ロシアの権力者(プーチン)は露骨な西欧主義を取ることはなかったが、かといって別の立場(スラブ主義、ユーラシア主義)を選択することもなかった。態度を決めかねていたのだ」
しかし、「いつまでも問題を先延ばしにしているわけにはいかない。今後の西側諸国との関係を決定づけるような決断を迫られる日がやってくるだろう」。
現在、かつてソビエト連邦の一員だった国々がロシアを離れてヨーロッパやアメリカの方へ歩み寄ろうとしている。そして、それらの国々をめぐって、ロシアは西側諸国と対立している。ドゥーギンはこのような事態を早くから予見していたのである。彼は言う。
「もしもウクライナとジョージアがアメリカ帝国の一員となったならば(……)ロシアの進める領土拡大の計画にとって大きな障害となるだろう」
「ロシアによるウクライナ併合を阻止するという、アメリカ陣営の目論見が既に始まっているのである」
一方、ロシアも2008年にジョージアへ侵攻したのを皮切りに、次なる一歩に向けて準備を固めた。「クリミア半島とウクライナ東部をめぐっての西側諸国との争いは避けることができない」、こう彼は結論づけている。
ドゥーギンが見た大統領の頭の中
以上、簡単にドゥーギンの思想を紹介したが、私は彼に直接取材を行っている。
プーチンに影響を与えた哲学者について、彼に話を聞いたのだ。彼によれば、プーチンの中には、いくつかのイデオロギーのモデルが何層にも重なって存在している。
「まず、プーチンはソビエト時代に教育を受け、KGBで経験を積んだ、典型的な『ソビエト人』です。ソビエト人としての心性がプーチンの哲学思想の第1の層です。
ソビエト人としての彼は、資本主義世界が敵であるという世界観を持っています。この土台に重なる層として、ロシア革命後の移民たちによって展開された白軍運動、つまり帝政ロシアへの回帰を目指すナショナリズム・保守主義思想があります。
この思想の代表者としては、イワン・イリインが挙げられます。イリインはユーラシア主義と対立する思想家です。しかし、彼は独創的な思想家であるとは言えません。新しい考えを何も提示してはいないのです。哲学者としての彼は無能な人物です。イリインがプーチンへ与えた影響も限定的です。イリインは反共産主義者でしたが、プーチンはそうではありません。イリインはプーチンに思想的な影響を与えたというよりも、国内をまとめる技術を提供したに過ぎません。彼の思想は教養のない人々に向けた、教養のない人間によって生み出された思想なのです」
つまり、イリインの思想は権力に素直に従う人々を生み出すための道具というわけだ。ドゥーギンによればこれがプーチンの哲学思想の第2の層である。
第3の層として、ドゥーギンはジャン・パルビュレスコの著作や、ジャン・ティリアートの革命的ナショナリズム運動との交流から導き出した考えを披露している。キリスト教を土台とした保守主義連合への野望だ。
「プーチンはヨーロッパのキリスト教国同士の連合を実現させたいと願っています」
この野望の元となったのは、ロシアの哲学者ウラジーミル・ソロヴィヨフが提唱したとされる「保守主義的ユートピア」という概念である。
その理想は、キリスト教の価値を再認識したヨーロッパの伝統的な国々が集まり、「反キリストに戦いを挑む」ことである。それだけではなく、「ロシアがそれらの国々を主導して戦いを展開していく」必要があるというものだ。
最も重要な「第4の層」
ドゥーギンによれば、次の第4の層こそが最も重要なものである。
それこそがユーラシア主義なのである。
ユーラシア主義は、「他のイデオロギーとは全く別のものです。この理想はスラブ主義、特に第2世代スラブ主義と呼ばれる、コンスタンチン・レオンチェフやニコライ・ダニレフスキー、そして作家のドストエフスキーの思想が元になっています。
しかし、ユーラシア主義はスラブ主義よりも完成されたものです。ユーラシア主義の思想家たちはロシアの文化をより理論的に、より知性的に研究しています。ユーラシア主義はロシアの歴史の最も奥深いところにまで響く思想です。それは白軍や赤軍、帝政支持や社会主義、どんな立場にも当てはまる要素を持っています」
彼によると、ユーラシア主義は、歴史上のどのような時代にも有効な思想である。
「アメリカを中心とした西側諸国とユーラシアとの対立が激しさを増している中で、ユーラシア主義の思想は最も現代性のあるものなのです」
ドゥーギンによれば、プーチンは、ソビエト人としての心性、イリインの反共産主義・帝政支持、キリスト教に基づいた保守主義、そしてユーラシア主義、これらの要素を併せ持っている。
ウクライナ侵攻の理由
また、忘れてはならないことがある。
これらの思想を持ちながらも、「国際舞台において、プーチンは現実を見据えた行動を取っている、ということです。だからこそ、ロシアという国が世界に対して強い影響力を行使することができているし、タイミング良くクリミア半島を併合することができたのです」
ユーラシア主義はプーチンの理想を体現するだけではなく、現実を見据えた戦略なのだ。アメリカの勢力に対抗する政治的な戦略として「プーチンはユーラシア帝国の建設を宣言したのです」
さらに、ドゥーギンはユーラシア主義をめぐって、ロシアとウクライナの複雑な関係を指摘している。「3年以内にプーチンは、ウクライナの一部、ドニエプル川右岸の地域をロシアに統合するでしょう」(インタビューはウクライナ侵攻以前に行われたため、ドゥーギンの予想は現実となった)
プーチンはウクライナを一つの国家として認めていない。プーチンにとって、キーウを中心としたウクライナの親ヨーロッパ地域は、「もはやウクライナという国を象徴する地域ではありません」
「これらの地域は民俗学的な意味においてはウクライナとしてのアイデンティティを残してはいるでしょうが」、もはや政治的な独立を手放してしまった、とドゥーギンは言う。
つまりユーラシア連合の実現にとって、ウクライナの親ヨーロッパ地域こそが、大きな障害になっている、ということである。

 

●強気のプーチン戦略、欧州に巨額エネ危機コスト強いる 9/6
ロシアのプーチン大統領がほんの少し動いただけで、欧州はエネルギー安全保障の面で後戻りができない地点に達した。
プーチン氏は、西側が経済制裁を解除しない限り、ロシアからドイツに天然ガスを送る海底パイプライン「ノルドストリーム1」を止め続ける構えを見せた。
その結果、ロシアはもはや信頼できるガス供給者ではないのではないかという欧州側の「疑念」を「確信」に変えてしまったのだ。これで欧州各国は、エネルギー危機対策をぐずぐずと先送りできない立場に追い込まれたのは間違いない。
ノルドストリーム1の稼働率は最近数カ月、500億立方メートル超という年間輸送能力のおよそ20%で推移している。それでも欧州の指導者は、ロシアが技術上の障害と説明していた問題が解決されれば、通常の供給規模に戻るだろうと、わずかな望みをつないでいた。
ところが、実際にはノルドストリーム1は無期限で停止され、欧州は今年必要とするガス需要5700億立方メートルの約2割が不足する事態になった。
同時に、ロシアから別ルートで送られてくる年間500億立方メートル分も、供給がにわかに不安視されている。これらの不足分は、欧州がこれまで何とかひねり出した対策で節約できた需要と比べると、はるかに大きい。
そして、北半球のこの冬が平年以上の寒さになれば、欧州は新たに130億立方メートルが不可欠になるかもしれず、1400億立方メートルの液化天然ガス(LNG)を求めてアジアの買い手との競争を強いられることになる。
つまり昨年3月の水準と比べて既にそれぞれ14倍と10倍に達している欧州のガスと電力の価格は、来年とそれ以降も高止まりする。
バーンスタインのアナリストチームが懸念するのは、ドイツの各家庭の燃料費が年間で1万ユーロ超と昨年の4倍になり、英国でもエネルギー支出が3倍余り膨らんで6000ポンド強に跳ね上がる事態だ。
フランス、ドイツ、英国の3カ国だけで世帯数は1億を上回り、彼らが向こう2年間でそれぞれ年間2000ユーロ余計に支払うとすれば、負担額は4000億ユーロにもなる。
これほどの負担を国民にそのまま背負わせるというのは、現実味を欠く。そこで1つの選択肢として浮上するのは、エネルギー企業への資金融資で当面の価格を抑え、将来の価格引き上げを通じて国民に返済してもらう方法で、英国で提案されている。
さらに、電気料金に上限を設け、利用者から賦課金を徴収するというスペインで既に実施されている手法もある。
ドイツが渋々受け入れたような、石油・ガス生産者と再生可能エネルギーの発電事業者が得た思いがけない利益に課税するというのも効果があるかもしれない。あるいは政府が借金を増やして国民の負担の一部を吸収するのも対策になるだろう。
とはいえ、各国が消費者を市場の力から守るとしても、エネルギー需要自体を減らす手も打たなければならない。それには例えば、強制的な電力の割り当ても必要になるのではないか。
いずれにせよ欧州各国は、エネルギー危機で生じる金銭面と社会的なコストを釣り合わせるためのさまざまなやり方を見つけ出すことだろう。
少なくともプーチン氏が、そうすべきだとの考えに対する一切の疑心暗鬼を解消してくれたのだから。
●ウクライナ侵攻のロシア、戦略的目標を「何も達成していない」 英国防相 9/6
ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから半年以上が経過するなか、英国のウォレス国防相は5日、英下院で、ロシアが戦略的目標を何一つ達成していないと述べた。
ウォレス氏は、ロシアがウクライナ侵攻で装備と人員を大量に失い続けていると指摘。こうした損失が、ロシアの将来的な軍事上の有効性に長期的な影響を及ぼすとの見方を示した。
ウォレス氏は「現在までに2万5000人を超えるロシア兵が命を落としたと推定される」と指摘。そのほか、負傷者や捕虜となったもの、数万人と報じられている逃亡兵などを加えれば死傷者などは8万人を超えると述べた。
ウォレス氏はロシアのプーチン大統領について、エネルギーを「兵器化」しているとして非難し、議員に対しては有権者に状況を説明するよう促した。
ウォレス氏は、皆が直面している非常に不愉快な状況は、ロシアの全体主義的な政権が意図的に危害を加えようとし、エネルギー費用のために我々の価値を犠牲にするかどうか試そうとしていることが原因だと有権者に伝えることが重要だとの見方を示した。
●全村民360人が「人間の盾」、地下室に監禁1か月…  9/6
ロシアの侵略が続くウクライナに、約360人の住民ほぼ全員が地下室に閉じ込められ、「人間の盾」となった村がある。監禁は1か月近くに及び、10人が暗闇の中で命を落とした。村人が負った傷は深く、侵略が始まって半年となる今も癒えていない。(ウクライナ北部ヤヒドネ 伊藤崇)
湿った空気、暗闇
「空気がひどく湿り、普通に息ができる状態ではなかった。ここで、たくさんの人が死んでしまった」。8月中旬、チェルニヒウ州の村・ヤヒドネに一つしかない学校の地下室で、雑貨店経営スビトラーナ・ミネンコさん(51)が重い口を開いた。
ロシア軍は2月24日、ウクライナへの侵略を始めた。ヤヒドネに攻め入ったのは、3月3日。スビトラーナさんは村に迫る砲撃の音を聞き、家族ら7人で自宅の地下室へ逃げ込んだが、2日後、機関銃を持ったロシア兵に見つかった。スマートフォンを踏みつけて壊すよう命じられ、部隊が拠点とした学校の地下室に行くよう指示された。
そこは普段、倉庫として使われ、水道も電気もガスも通っていなかった。大小七つの部屋に分けられた計200平方メートルの空間に集められたのは、生後半年から93歳までの347人。スビトラーナさんの部屋には、車のバッテリーにつないだLEDがともっていたが、ほかの部屋はろうそくだけだった。真っ暗な廊下にまで人があふれ、大人は椅子や床に座ったまま寝た。
外は凍えるような寒さだったが、地下室は場所により蒸し風呂のように暑く、服を脱ぐ人もいた。1日にわずかな時間しか外に出られず、住民たちは部屋の片隅に置いたバケツで用を足した。
食べ物は、ロシア兵が持ってくる冷凍のパンや2人でコップ1杯のスープが頼りだった。全く配られない日もあり、「おなかをすかせた子どもたちを見るのが一番つらかった」とスビトラーナさんは話す。
「ロシア兵憎い」
監禁が長期化するにつれ、住民は次々に体調を崩した。意味不明なことを叫び始めると、その人はまもなく死んだ。
住民たちは、監禁が始まってからの日付を書き込んだ扉の横の壁に、亡くなった人の名前を記録した。ムジカ、ルダニ、ボイコ……。刻まれたのは10人に上った。
そんな日々が終わったのは、3月30日朝のこと。砲撃の音と揺れが突然やみ、辺りが静かになった。外に出てみると、ロシア兵の姿はなかった。その日は地下室にとどまり、翌31日、住民はウクライナ軍によって解放された。
ェ店員リュボフ・イワシェンコさん(50)は監禁中に、69歳の母ナディヤ・ブドチェンコさんを失った。体のどこにも不調はなかったが、地下室での生活が1週間ほどになると歩けなくなった。独り言を繰り返すようになり、解放の2日前に亡くなった。「とても愛していたのに……」と涙ぐむ。
リュボフさん自身も腎臓が悪くなり、週に3回、病院で透析を受けるようになった。「解放されなければ私も死んでいただろう。手にかけるのでもなく、自由を奪うことでこれ以上ないほどの恐怖をもたらした、ロシア兵が憎い」と語る。
主婦オルガ・マトビエンコさん(68)が夫と2人で暮らした学校そばの家は、戻ると焼け落ちていた。「全てが破壊されてしまった」と途方に暮れる。半年前まで、子どもたちのにぎやかな声が飛び交っていた学校を目にしても、「拷問部屋にしか見えない」という。
学校は侵略から半年がたっても、再開していない。地下室の壁には、監禁中に子どもたちが描いた太陽や花などの絵と共に、メッセージが残っている。
「戦争はいらない」
「人間の盾」条約違反
ヤヒドネの住民監禁について、全欧安保協力機構(OSCE)は7月にまとめた報告書で「非戦闘員を『人間の盾』に利用しており、ジュネーブ条約に反する」と指摘している。同条約は、戦闘の当事者が攻撃を阻止するために民間人を利用することを禁じており、ロシアも批准国だ。
捜査にあたるチェルニヒウ地検によると、監禁は3月3日〜30日の28日間に及んだ。地検は村人ら約300人から聴取し、現場からロシア兵の名前や階級などが記録された日記や写真などを収集。少なくとも9人のロシア兵が監禁に関与したと特定したが、いずれもロシアに戻っているという。セルヒー・クルプコ検事(33)は「国際法に基づいて起訴し、法廷で有罪判決が出れば、9人は国際指名手配される。何としても逮捕し、責任を追及したい」と話している。
●ロシア政府 “ビザなし交流などの協定を破棄” 一方的に発表  9/6
ロシア政府は、北方領土の元島民らによる、いわゆる「ビザなし交流」などの日本との合意を破棄したと、一方的に発表しました。ウクライナへの軍事侵攻を受けて、日本政府が制裁を科してきたことに反発した形です。
ロシア政府は5日、北方領土の元島民らによる「ビザなし交流」や、元島民が故郷の集落などを訪問する「自由訪問」など、これまでに日本との間で結ばれた合意を破棄したと、一方的に発表しました。
そのうえで、ロシア外務省に対して、この決定を日本政府に通知するよう指示したとしています。
「ビザなし交流」などの交流事業をめぐっては、ことし3月、ロシア外務省がウクライナへの軍事侵攻を受けて、日本政府が制裁を科したことに反発して、停止する意向を明らかにしていました。
その際に、北方領土問題を含む平和条約交渉を中断する意向を表明していて、「すべての責任は、反ロシア的な行動をとる日本側にある」と一方的に非難していました。
「ビザなし交流」は、日本人と北方領土に住むロシア人がビザの発給を受けずに、相互に訪問する枠組みで、1991年に合意され、1999年からは「自由訪問」の枠組みも作られ、「ビザなし交流」と合わせて、これまでに双方およそ3万人が参加しています。
根室 石垣市長「容認できるものではない」
ロシア政府が、北方領土の元島民らによるいわゆる「ビザなし交流」などの日本との合意を破棄したと発表したことについて、北海道根室市の石垣雅敏市長は6日午前、職員に向けて行った訓示の中で「この協定は当時のゴルバチョフ大統領からの提案であり、30年以上、時計の針を戻す行為は容認できるものではない」と非難しました。そのうえで「一度開いた扉は閉じ切ることはできないとも考えている。北方領土の隣接地域として一喜一憂することなく、返還運動原点の地の役割をしっかりと果たしていきたい」と述べました。
松野官房長官「極めて不当 ロシア側に改めて強く抗議」
松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「極めて不当なもので断じて受け入れられない。現在までのところロシア側からの通知はないが、きょう、ロシア側に対し、改めて強く抗議した」と述べました。そのうえで「日ロ関係の現状は、すべてロシア側に責任があるが、北方四島の交流事業などを行う状況にはない。もちろん、高齢になった元島民の方々の思いに何とか応えたいという考えに変わりないが、このような対応を取らざるをえないことについて、ご理解を賜りたい」と述べました。
林外相「極めて不当 改めて強く抗議」
林外務大臣は閣議のあとの記者会見で「極めて不当であり、断じて受け入れられない。現在までのところロシア側からの通知はないが、きょう外務省の欧州局参事官から、在京ロシア大使館の次席に対してこうした考えを伝え、改めて強く抗議した」と述べました。
●プーチン大統領、新たな外交方針承認 海外の「同胞」支援を重視 9/6
ロシアのプーチン大統領は5日、「ロシア世界」という概念に基づく新たな外交方針を承認した。外国に介入してロシア系住民を支援する行為を正当化するために保守派が唱えてきた概念で、公式に明文化した。
「人道方針」として31ページに及ぶ文書にまとめられた。ロシアは「ロシア世界の伝統と理想を守り、保護し、前進させる」べきと記された。
ロシアはウクライナ侵攻で一部地域を制圧したほか、東部を部分的に実効支配する親ロシア派を支援している。これらの行為を正当化するために強硬派の一部が唱えてきたロシアの政治や宗教に関する考え方が盛り込まれた。
「海外に住む同胞の権利行使、利益保護、文化的アイデンティティーの維持のためにロシア連邦は支援を提供する」とし、海外の同胞とのつながりが「多極化世界の実現に努力する民主主義国家としてのロシアのイメージを国際舞台で強化」することを可能にしていると主張した。
また、ロシアはスラブ系国家や中国、インドとの協力を拡大し、中東、中南米、アフリカとの関係を一段と強化すべきだとした。
2008年に起きたロシアとジョージアの軍事衝突後、ロシアが独立を認めたアブハジアと南オセチア、並びにウクライナ東部の一部を実効支配する親ロシア派「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」との関係を一段と深化する必要があるとも記された。
●プーチン氏「日出づる国は日本ではなくロシア」、中国ネット「その通り」  9/6
ロシアのプーチン大統領が「日出づる国はロシアだ」と発言したことが、中国のSNS上で反響を呼んでいる。
タス通信など複数のロシアメディアによると、プーチン氏は5日にカムチャツカで開かれた環境フォーラムで、廃棄物のリサイクルや処理の問題に言及した際、「地理的なことを言えば、やはりカムチャツカについて話すべきだ。一般的に、私たちの隣国である日本は『日出づる国』と呼ばれているが、私の考えでは、カムチャツカあるいはサハリンは日本よりも東にある。さらに東にはニュージーランドがあり、ニュージーランドのさらに東にはチュコトカがある」とし、「その意味で本当の『日出づる国』はロシアだ」と述べた。
中国メディアの環球網がこれを伝えると、中国のネットユーザーからは「その通りだ」「日本は『日出づる国』との呼称を控えるべき」「はははは。根本から日本をぶった切る気だな」「あの弾丸のような形をした日本が『日出づる国』とは(笑)」「そんなに緯度が高ければ確かに早く日が昇るだろうけどね(笑)」「5000年の文明を持つ華夏(中国)こそが真の『日出づる国』」「『日出づる国』って、そもそも中国の地理的位置を基準にした呼び方でしょ」といったコメントが書き込まれた。
●ロシア独立系紙「ノーバヤ・ガゼータ」の発行認可取り消し モスクワの裁判所 9/6
編集長がノーベル平和賞を受賞したロシアの独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」について、モスクワの裁判所は新聞発行の認可を取り消す判断を示しました。
独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」をめぐっては、ロシアの通信監督当局が7月に、報道機関としての認可を取り消すよう求める訴えを起こしていました。
インタファクス通信によりますと、モスクワの裁判所は5日、「ノーバヤ・ガゼータ」に対し、新聞を発行する認可を取り消す判断を示しました。
「ノーバヤ・ガゼータ」は声明を出し、「新聞はきょう殺された。読者は知る権利を奪われた」と批判。
ノーベル平和賞を受賞した編集長のムラトフ氏は、「この決定には法的根拠がない」と述べ、上訴する考えを示しています。
「ノーバヤ・ガゼータ」はプーチン政権に批判的な報道で知られ、ウクライナ侵攻後の3月から新聞の発行と電子版の配信の停止に事実上、追い込まれています。
一方、機密情報を漏らしたとして国家反逆罪に問われていた有力紙コメルサントの元記者イワン・サフロノフ氏に対し、モスクワの裁判所は5日、懲役22年の判決を言い渡しました。
サフロノフ氏は軍事機密をNATO=北大西洋条約機構側に漏らしたとして、おととし7月に拘束されましたが、事件をめぐっては独立系メディアや海外から「根拠がない」と批判する声が出ています。サフロノフ氏側は上訴する方針だということです。 
●ザポリージャ原発 砲撃による火災で外部電源失う 冷却機能維持  9/6
ロシア軍が掌握するウクライナのザポリージャ原子力発電所では5日、砲撃による火災の影響で外部電源が失われました。原子炉などを冷却する機能は維持されていますが、IAEA=国際原子力機関が現地入りしたあとも安全性が懸念される状況が続いています。
ザポリージャ原発を運営するウクライナの原子力発電公社エネルゴアトムは、5日、砲撃による火災の影響で、稼働している6号機が、外部の電力網から切り離され、電力供給を受けられなくなったと発表しました。
6号機は出力を下げたうえで運転を続け、原発施設内で必要な電力を供給しており、原子炉などを冷却する機能は維持されているということです。
IAEAによりますと、原発と外部電源を結ぶ送電線自体に損傷はなく、エネルゴアトムは、消火のため、意図的に外部の電力網から切り離したものの、火災が消し止められしだい、再び接続する見通しだということです。
エネルゴアトムは、外部電源が失われるのは先月25日以来だとしています。
これについて、ウクライナのゼレンスキー大統領は5日、動画を公開し「ザポリージャ原発は、ロシアの挑発によって放射線災害の一歩手前まできている」と危機感を示しました。
そして「原発への砲撃は、ロシアがIAEAや国際社会を軽視していることを意味する」と述べ、各国に対してロシアへの制裁を強化するよう求めました。
原発立地市の市長 ロシア軍の撤退が必要と訴える
砲撃が相次ぎ安全性への懸念が高まっているウクライナのザポリージャ原子力発電所が立地するエネルホダル市の市長が、NHKのオンラインインタビューに応じ「占領者の部隊がとどまるかぎり危険なままだ」と述べて、原発や市民の安全のためにはロシア軍の撤退が必要だと重ねて訴えました。
ロシア軍が占拠するザポリージャ原発周辺では、先月以降、砲撃が相次いでいて、今月1日には、IAEA=国際原子力機関の専門家チームが現地に入り調査を行いました。
しかし、5日には、砲撃の影響で、稼働していた6号機の外部電源が失われる事態となっています。
避難先のザポリージャ市で対応にあたっているエネルホダル市のドミトロ・オルロフ市長はNHKのインタビューに対し「IAEAの調査が行われたことは一歩前に進んだと言える」と一定の評価を示しながらも「残念ながら砲撃は続いていて、状況は変わっていない」と述べ依然として、原発や市民の安全が脅かされていると訴えました。
原発周辺への砲撃については「発射音が聞こえた直後に、爆発音が聞こえる。砲撃がロシア軍の占領地域内からなのは明らかだ」と述べ、ウクライナ軍の信用失墜などを狙ったロシア側による挑発行為だと非難しました。
またオルロフ市長は、市内には今も、およそ2万5000人の市民が残っているとしたうえで「市民が誘拐されるケースが増えている。携帯電話などを奪われ拷問された人もいる」と指摘したほか、食料や医薬品などの支援物資を送ろうとしてもロシア側が認めなかったと明かしました。
そのうえで「占領者の部隊がとどまるかぎり危険なままだ」と述べて、原発や市民の安全のためにはロシア軍の撤退が必要だと重ねて訴えました。
●プーチン氏、極東で軍事演習視察 中露の結束誇示 9/6
ロシアのプーチン大統領は6日、露極東沿海地方のセルゲエフスキー演習場を訪れ、露国防省が実施している大規模軍事演習「ボストーク2022」を視察した。タス通信は、演習場に到着したプーチン氏がショイグ国防相、ゲラシモフ参謀総長と非公開の会談を行い、その後、核搭載可能な弾道ミサイル「イスカンデルM」の発射演習などを監督したと伝えた。
露国防省によると、1日から7日までの演習には、中国やベラルーシ、インドなど13の外国が軍部隊やオブザーバーを派遣。ロシアは演習を通じ、ウクライナ侵攻で国際的に孤立したとの印象を払拭する狙いがあるとみられている。中国との結束を誇示し、ウクライナや台湾を支援する日米両国を威圧する狙いもあるもようだ。
演習では、サハリン(樺太)に上陸した仮想敵の部隊を多連装ロケットシステムで撃破する訓練や、戦闘機「ミグ31」による迎撃訓練などが行われた。ロシアが不法占拠する北方領土の国後(くなしり)島と択捉(えとろふ)島でも上陸阻止訓練が実施された。演習の一環として、日本海海域で露海軍と中国海軍による合同対潜訓練や、仮想敵の艦艇に対する合同射撃訓練なども実施された。
ただ、今回の演習に参加したのは計約5万人で、30万人超が参加したとされる2018年の前回演習からは大きく規模が縮小。ウクライナ侵攻には極東を管轄する東部軍管区からも兵員や装備が派遣されていることが要因だとみられている。
プーチン氏は7日、極東ウラジオストクで開催中の露主催の国際会議「東方経済フォーラム」の全体会合に出席する。ペスコフ露大統領報道官によると、プーチン氏はウクライナ情勢や極東の発展について演説する予定だという。
●ロシア大統領、核搭載可能ミサイル視察 極東演習、ウクライナ侵攻の軍鼓舞 9/6
ロシアのプーチン大統領は6日、極東ウラジオストク近郊で、大規模軍事演習「ボストーク(東方)2022」を視察した。ボストーク視察は4年前の前回から2回連続。ウクライナ侵攻開始から半年が過ぎ、戦闘が長期化の様相を示す中、ロシア軍を鼓舞するとともに、欧米などとの対決姿勢をアピールする狙いがある。
タス通信などによると、プーチン氏はショイグ国防相、ロシア軍制服組トップのゲラシモフ参謀総長と非公開会合を開いた。演習場では、核弾頭搭載可能な弾道ミサイル「イスカンデルM」の発射を視察した。
演習には、対米で共闘する中国のほか、ロシアの伝統的友好国インドも上海協力機構(SCO)加盟国の立場で参加。プーチン政権としては、中ロの結束を誇示して日米同盟をけん制するとともに、日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」にくさびを打ち込む思惑もあるとみられる。
●「極めて不当」林外務大臣 ロシアの「ビザなし交流」“一方的破棄”受け抗議 9/6
北方領土の「ビザなし交流」を巡り、ロシア側が一方的な失効を発表したことについて林外務大臣は「極めて不当だ」と抗議しました。
林外務大臣:「極めて不当なものであり、断じて受け入れられないと考えております」
今のところロシア側から外交ルートでの通知はないものの、外務省は6日朝、事務方がロシア大使館のナンバー2に対して、電話で強く抗議したということです。
「ビザなし交流」は、ビザを持たずに日本人と北方領土に住むロシア人との相互訪問を可能としていますが、ロシア側はウクライナ情勢を巡る日本政府の制裁に反発し、3月に一時停止を発表していました。
外務省幹部は「今回も協定の破棄とは捉えていない」として、時機をみて再開に向けた交渉を行う方針を示しています。
●美化してはいけない、骨の髄まで「大国主義者」だったゴルバチョフの実像 9/6
旧ソ連の初代にして最後の大統領を務めたミハイル・ゴルバチョフが8月30日、モスクワの病院で死去した。テレビのワイドショーなどを見ていると、「こんな時期だからこそ、いてほしい政治家だった」とか、「平和と民主主義を追求した人だった」などの発言がコメンテーターからしばしば聞かれる。プーチンとは大違いというわけだ。強い違和感を持った。
ゴルバチョフは私がまだ日本共産党にいた1985年にソ連共産党書記長に就任し、民主主義の要素を取り入れるグラスノスチ(開放)政策、経済の効率化を図るペレストロイカ(再構築)政策に取り組んだ。だがこれらの政策は、アメリカとの軍拡競争や、一党独裁政治のもとでの経済的疲弊、政治的行きづまりから、やむを得ず行われたものだった。軍拡競争でも、経済発展でも、アメリカ・資本主義陣営に負けたというだけの話だ。
骨の髄まで染みついた大国主義
しかもスターリン以来の「大国主義」(軍事力や経済力などが強大な大国が、他国や他民族に対して自国の立場や主張を支配的、強権的に押し付けること)は、ゴルバチョフ時代もまったく変わらなかった。
スターリン時代のソ連の大国主義は世界にとって有害そのものだった。ヒトラー・ドイツがヨーロッパへの侵略戦争を開始しようとするその時に、スターリンはヒトラー・ドイツと不可侵条約を結んだ。この不可侵条約には、両国が東ヨーロッパとバルト3国を分け合う秘密協定まで結ばれていた。ソ連は戦後、ファシズムと戦った国とされ、プーチンもそれを自慢しているが、そのファシズムの跋扈(ばっこ)を許してきたのもソ連なのであった。
この問題では、ゴルバチョフもスターリンとなんら変わることはなかった。元共産党議長の不破哲三氏は著書『新装版スターリンと大国主義』(2007年5月初版、新日本出版社)で次のように指摘している。
〈ゴルバチョフ政権は、バルト3国で民族的規模での強大な運動が起こるまで、ヒトラーと結んだ東ヨーロッパ・バルト3国再分割の「秘密議定書」について、それが存在することさえ頑強に否定しました。その存在を認めざるをえなくなると、今度は、バルト3国のソ連への加盟は「秘密議定書」とは関係なく、合法的な手続きでおこなわれた正当なものだと言い張り続けました。他の分野でのスターリンの悪事は認めても、大国主義の誤りは認めないというのが、後継者たちの一貫した“信条”だったのです。〉
北方領土返還問題でも、ゴルバチョフは耳触りの良さそうなことは述べたが、一歩も前進はしなかった。スターリンによる千島列島や歯舞・色丹の略奪は、当時、国際的にも承認されていた「領土不拡大の原則」に反するものであった。だがゴルバチョフも返還など毛頭考えなかった。
スターリンからゴルバチョフ、そしてプーチンと、ロシアの大国主義は骨の髄まで染みついたものなのだ。
そして、これこそロシア革命の指導者レーニンが最も恐れたことだった。
ロシア革命の直後、ロシア共産党内で問題になったのが他民族の民族自決権を認めるかどうかであった。多くの指導的幹部は権力を握っていない民族には自決権を認めないという態度をとった。その時レーニンは、「ある種の共産主義者を一皮むけば、大ロシア人排外主義があらわれる」「この大ロシア人排外主義者は我々多くの者の心に潜んでおり、これに対して戦わなければならない」と強調した。だがスターリンによってこの主張は葬られてしまった。
ロシアには、歴史的に積み上げられてきた根深い大国主義が、現在も存在し続けているのだ。
ウクライナ侵略を支持していた
9月1日付朝日新聞に編集委員・副島英樹氏のゴルバチョフ評伝が掲載されている。この評伝では、ゴルバチョフが総裁を務めてきたゴルバチョフ財団がロシアのウクライナ侵略に対して、「世界には人の命より大切なものはない。相互の尊重と双方の利益の考慮に基づいた交渉と対話のみが、最も深刻な対立や問題を解決できる唯一の方法だ」と呼びかけたことが紹介され、「対立ではなく協調を模索し、人類共通の利益を優先する理念が、この声明に込められている気がした」と結ばれている。
本当にそうだろうか。2014年3月、プーチン政権がウクライナ南部のクリミア半島を一方的に併合した際、「私がプーチン大統領の立場だったら、まったく同じことをしただろう」と全面的に支持している。プーチンと同じ侵略者の立場に立っていたのがゴルバチョフなのである。
副島氏はゴルバチョフの思想の柱は、「相互の尊重」「対話と協調」「政治思想の非軍事化」と述べ、「今世紀も人類の指針になりうる」などと評論している。なぜここまでゴルバチョフを持ち上げるのか不思議でならない。ちなみにウィキペディアによると世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の資金援助によりゴルバチョフ財団(ゴルバチョフ友好平和財団)を設立したそうである。
そもそもゴルバチョフはソ連の崩壊を望んでいたわけではない。多少の民主化は図ったとしても、基本的にはソ連共産党による一党独裁政治をやめる気などなかった。しかし、東欧の社会主義国で民主化の動きが強まり、ブレジネフ時代のように社会主義圏全体のために一国の主権を制限できるという「ブレジネフ・ドクトリン」は放棄せざるを得なくなっていた。
プーチンはゴルバチョフを「どんな改革が必要で、どうなされるべきかを分かっていなかった」と批判しているが、この批判は的を射ているだろう。結果として冷戦体制が終結し、ソ連が崩壊してしまったというだけのことなのだ。
ソ連の維持を目指した共産党のエリート
1991年8月にソ連共産党の解体が決定的になった際、日本共産党常任幹部会は、9月1日付で「大国主義・覇権主義の歴史的巨悪の党の終焉を歓迎する──ソ連共産党の解体にさいして」と題する声明を発表した。ここには、次のような指摘がなされている。
〈ソ連共産党は、7月末に開かれた中央委員会総会で決定された新綱領草案にもしめされているように、科学的社会主義の世界観を放棄して社会民主党化の宣言をおこなうなど、科学的社会主義の党としての実体を自ら否定していた党であった。しかも、こうして「転向」を宣言したソ連共産党は、新綱領草案にのべられているように、ソ連だけではなく世界中でもはや階級闘争や革命は不要だと主張し、世界の党にたいしても変節を事実上おしつける態度をとった。世界に大国主義の巨悪をふりまいてきたこの党は、自らの存在をやめる最後まで、それにふさわしい否定的な役割をはたそうとしたのである。〉
あきれた話で、ソ連共産党は“自分たちは共産党をやめるし、革命やめる。だから世界の共産党も同じようにすべき”というのだ。
産経新聞(9月4日付)に前モスクワ支局長の遠藤良介氏による「民族自決の志 見えぬ2人」と題して、ゴルバチョフとプーチンの評論が掲載されている。
〈プーチンが批判するゴルバチョフもまた、目指したのはソ連の維持であり、ウクライナの独立は認めがたいと考えていた。このことを振り返るとき、今日に至るロシア大国主義の桎梏(しっこく)を思い知らされる。〉
〈ペレストロイカ(再建)によるソ連民主化、米ソ核軍縮、東西冷戦の終結―。ゴルバチョフが世界史に残した巨大な足跡は決して過小評価されるべきではない。ただ、もともと共産党のエリートだったゴルバチョフが念頭に置いていたのは社会主義の枠内での改革だった。事態が急展開し、意図しないソ連崩壊に帰結したのは歴史の皮肉である。〉
まったく同感である。

 

●ロシア 兵器の供給不足か “イランや北朝鮮から兵器を調達か”  9/7
ウクライナ軍は、ロシア側に支配されていた地域の奪還を目指し、南部を中心に反転攻勢を続けています。一方、ロシアはウクライナの戦闘で兵員や装備品の損失が深刻化しているとみられ、欧米と対立するイランや北朝鮮から兵器の調達を進めているとも指摘されています。
ウクライナを軍事侵攻するロシアの国防省は6日、巡航ミサイル「カリブル」で攻撃し、東部ドニプロペトロウシク州で燃料庫を破壊したと発表しました。
これに対し、ウクライナ軍は、南部ヘルソン州を中心に反転攻勢を続け、ロシアに支配されていた南部と東部の複数の集落を解放したと強調しています。
イギリス国防省は6日、ヘルソン州でロシア軍の無人機の出撃回数が先月と比べて、大きく減っていると指摘しました。
その要因として欧米の制裁によってロシアで無人機の部品が不足していることなどを挙げ「無人機の運用が限られ、ロシア軍の作戦に影響が出ている」と分析しています。
一方、アメリカ政府は、ロシアと友好関係にあるイランが、ロシアに対して数百機の無人機の供与を進めていると懸念を示しています。
また、アメリカ政府高官は6日、記者団に対し「ロシアは北朝鮮から数百万発のロケット弾や砲弾の購入を進め、ウクライナで使用しようとしている」と明らかにしました。
そのうえで、この高官は「ウクライナにいるロシア軍が兵器の供給不足に陥っていることを示すものだ。ロシアは北朝鮮からさらなる兵器の購入を進める可能性がある」として、注視する考えを示しました。
また、アメリカ国防総省のライダー報道官も6日、記者会見で、「われわれはロシアが砲弾を求めて北朝鮮に接触したという情報を持っている。これは物資の供給や維持の能力について、ロシアの置かれた状況を示すもので、北朝鮮に接触したという事実は何らかの課題を抱えていることの現れだ」と指摘しました。
こうした中、ロシア大統領府のペスコフ報道官は記者団に対し「ウクライナでの軍事作戦への参加を望む市民にこれまで通りの仕事が保証されるよう、大統領は政府に指示するだろう」と説明しました。
これについてアメリカのシンクタンク、「戦争研究所」はロシア軍は兵員不足が深刻化していて、志願兵の確保に向けてプーチン政権の中枢にあたる大統領府が直接、動き始めていると指摘しています。
●ウクライナ戦争長期化でメリットを享受するロシアとトルコの強かな戦略… 9/7
ロシアがウクライナへ軍事侵攻を開始してから半年が経過した。多数の兵員と兵器を投入した両国の間の戦いは膠着状態になりつつあり、長期化する懸念が強まっている。ウクライナのゼレンスキー大統領は8月下旬、「ロシアの侵略との戦いに勝利し、クリミアを占領から解放することが必要だ」と表明するなど徹底抗戦の姿勢を崩していない。
ロシアも長期戦を辞さない構えを見せている。当初、短期での決着を目指していたロシアだが、侵攻の長期化した今、2014年から紛争が続いた東部ドンバス地方と同様、戦闘を続けることでウクライナを曖昧な立場にとどめておくことができるというメリットを見いだしているとの指摘がある。
ロシアが長期戦に移行できた背景には、西側諸国が科した厳しい制裁にもかかわらず、ロシア経済のダメージが小幅だったことがある。ロシアの今年第2四半期のGDPは前年比4%減となり、5期ぶりのマイナス成長となったが、落ち込み幅は予想されたほど大きくなかった。ロシア経済省は「今年のGDPは4.2%減にとどまり、当初想定したほど落ち込まない」との見通しを示している。堅調な資源輸出がロシア経済への制裁の影響を和らげていることに加え、ロシアからの外国企業の撤退も下火となり、輸入されなくなった消費財などの国内代替が進んでいることが功を奏した形だ。楽観できる状況ではないものの、プーチン大統領は「ロシアは長期戦に耐えられる」との自信を深めていることだろう。
ロシアには長期戦を志向する別の理由があるのかもしれない。プーチン大統領は「米国主導の世界秩序は終わった」とかねてから主張してきたが、ウクライナでの紛争状態が長引けば長引くほど、米国一極集中時代の終焉の可能性が高まっているからだ。
ウクライナ危機はこれまで「自由や民主主義を守る戦い」と称されてきたが、紛争が長期化するにつれて、「国際秩序に変革が起きる」との認識が広まりつつある。米ニューヨーク・タイムズは8月下旬、「西側諸国の関心がウクライナに集中しているため、国連の人道支援機関は記録的な資金不足に直面している」と報じた。米国が主導する制裁のせいで深刻な打撃を受けている発展途上国の反発は高まるばかりだ。ウクライナ侵攻に中立を保つ国々の人口は世界の3分の2を占めるが、これらの国々の行動基準は民主主義の価値よりも自国にとって損か得かだ。
米誌ナショナル・インタレストのコラムニストも8月下旬、「ロシアとウクライナのどちらが勝ったとしても、戦略的敗北を喫するのは米国だ」との分析を示した。「ロシアは中国やインド、ペルシャ湾岸諸国とより緊密な関係を築き、西側諸国と永遠に関係を断つだろう」とした上で「米国は多極化が進む世界の現実に向き合わざるを得なくなるだろう」と悲観的な未来を予測している。
経済的な利益を拡大させるトルコ
米国の影響力低下を尻目に国際社会で存在感を高めているのは、黒海の対岸に位置するトルコだ。黒海を挟んで隣接するロシアとウクライナとの関係の深さを生かして、激しく対立する両国の間を取り持つ役割を演じている。3月に両国の外相会談を実現させたトルコは、8月の穀物輸出に関するロシアとウクライナ間の合意を国連とともに実現させている。これに自信をつけたからだろうか、トルコのエルドアン大統領は9月3日、ロシア軍が占拠を続けるウクライナ南東部ザポリージャ原子力発電所をめぐって核災害の懸念が高まるなか、調停役に名乗りを上げた。穀物輸出の際に培った経験が生かせるというのはその理由だ。
ウクライナ危機の深刻化を回避することに貢献しているトルコは、ロシアや欧州との関係を強化し、実利を得ている。トルコは欧米の制裁で割安となったロシア産原油の輸入を増加させている。今年第2四半期は前年同期に比べ3倍になった。7月の首脳会談ではエネルギー貿易の決済通貨にトルコリラを活用する案も議論されている。
西側諸国の制裁下にあるロシアの企業はトルコを拠点化する動きを強めている。トルコは西側諸国の制裁に参加していないことから、トルコを拠点に国際的な調達や販売を続けようとするロシア企業が増加している。トルコ商工会議所連合によれば、ロシア企業のトルコ国内の設立数は今年1〜7月に600社を超え、昨年通年の177社を大きく上回る。
トルコの製造業は欧州向け輸出も増加させている。世界的なサプライチェーン(供給網)混乱のせいで調達先の近場シフトが進み、これまでアジアから供給されていた衣料品や家具などを代替生産することで輸出額を71億ドル増加させたといわれている(9月4日付日本経済新聞)。厳しいインフレに悩まされるトルコだが、国際社会における存在感の高まりをテコに経済的な利益を拡大させるというしたたかさを発揮しているのだ。googletag.cmd.push(function() { googletag.display('div-gpt-ad-1635733543229-0'); });
現在ロシアが占拠しているウクライナ南東部は、もともとオスマン・トルコが約600年にわたり支配していた地域だ。西側諸国が主導する国連が機能不全となり、世界が再び群雄割拠の時代に逆戻りすることになりつつある状況下で、地の利をいかしてトルコのような地域大国が影響力を持つようになっている。
ウクライナ危機の長期化により、米国一極時代の終焉が現実味を帯びてきている。日本もこうした国際政治の現実を直視しなければならないのではないだろうか。
●米、ロシア「テロ支援国家」指定見送り 9/7
米国のジョー・バイデン(Joe Biden)政権は6日、ロシアを「テロ支援国家」に指定しない方針を明らかにした。ウクライナや米議員らが指定を求めていたが、カリーヌ・ジャンピエール(Karine Jean-Pierre)大統領報道官は、「ロシアに責任を負わせる」上で「最も効果的または強力な道筋ではない」との考えを示した。
ロシアのテロ支援国家指定をめぐり、政権幹部は数か月にわたって明確な回答を避けてきた。これについてバイデン大統領は5日、記者団の問いに「ノー」と答えていた。
報道官は、ロシアをテロ支援国家に指定すれば、ロシアの侵攻で荒廃したウクライナの一部地域への支援物資の供給が妨げられたり、国連(UN)とトルコが仲介したウクライナの港からの穀物輸出協定に支援団体や企業が参加できなくなったりする可能性があると指摘。「(ロシアのウラジーミル・)プーチン(Vladimir Putin、大統領)に責任を取らせる上で非常に効果的な前例のない多国間(連携)を弱め、われわれの(交渉を通じて)ウクライナを支援する能力も損ないかねない」とした。
ナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)下院議長ら超党派の議員グループは、経済制裁を科してきたロシアへの圧力をさらに強めるためとして、バイデン氏にテロ支援国家指定を求めてきた。
米国によるテロ支援国家指定はさまざまな影響を及ぼす。企業や銀行としては、世界一の経済大国である米当局による法的措置を警戒し、リスクを取れなくなる。
現在指定されているのはイラン、シリア、北朝鮮、キューバの4か国のみで、いずれも経済規模はロシアと比べてはるかに小さい。 
●プーチン大統領 対決姿勢 “欧米の制裁が世界経済を弱体化”  9/7
ロシアのプーチン大統領は、極東のウラジオストクで演説し、この中で欧米がロシアに科した制裁が「世界経済を弱体化させた」と主張し、対決姿勢を鮮明にしました。そのうえでエネルギーの輸出などを通じて、中国をはじめとする友好国との連携を強化する姿勢を示しました。
ロシアのプーチン大統領は7日、極東のウラジオストクで、国際経済会議「東方経済フォーラム」の全体会合に出席し、演説しました。
このなかで「欧米は、自分たちにとってのみ有益な世界秩序を維持しようとしているが、制裁が、世界経済を弱体化させた」と主張し、欧米がロシアに科した制裁を批判しました。
そして、ロシア軍の封鎖で滞っていたウクライナから農産物の輸出が再開されたことについては「そのほとんどが、貧しい途上国ではなく、ヨーロッパ諸国に運ばれている。これでは人道的な大惨事につながる。ヨーロッパへの穀物輸出を制限する必要がある」と主張し、ロシアと対立を深めるヨーロッパをけん制しました。
また、ロシア産のエネルギーについて「ヨーロッパは長年、ロシア産の天然ガスの恩恵を受けてきたが、その利点をもはや必要としないのならば、それでもかまわない。世界はロシアのエネルギー資源を必要としている。ロシアはどんな国とも協力していく」と述べました。
そして「ノルドストリームを利用して、ロシアが『エネルギーを武器化している』と批判するが、制裁によってみずからを追い込んでいる」と述べ、ロシアが、豊富な天然ガスを利用してヨーロッパに揺さぶりをかけているという批判に反論しました。
また「ウクライナへの特別軍事作戦を開始してから、ロシアは何も失っておらず、今後も失うことはないと信じている。ロシアにとっての利益という観点では、われわれは主権を強化することができた。確かに、世界でも国内でもある種の二極化が起きたが、それはわれわれに利益をもたらすだろう」と主張しました。
そのうえで「ロシアの目的は、東部ドンバス地域の住民を助けることだ。われわれは最後までこれをやり遂げる」と述べ、軍事侵攻を継続する考えを改めて強調しました。
また、砲撃が相次ぎ安全性への懸念が高まっているウクライナのザポリージャ原子力発電所について、ウクライナ軍が原発を攻撃していると主張したうえで「IAEA=国際原子力機関は、原発から軍の装備を撤去するよう指摘するが、そこにロシア軍の装備はない」と述べました。
会議の全体会合には、中国の共産党の序列3位で、全人代=全国人民代表大会の栗戦書委員長や、ミャンマーで実権を握る軍のトップ、ミン・アウン・フライン司令官らが出席し、プーチン大統領は友好国との連携を強化する姿勢を打ち出しながら、欧米との対決姿勢を鮮明にしました。
「ザポリージャ原発にロシア軍の装備はない」
プーチン大統領は7日、ウラジオストクで開かれている国際経済会議の全体会合に出席し、ウクライナのザポリージャ原子力発電所で調査を行った、IAEA=国際原子力機関に言及しました。
プーチン大統領は「IAEAの報告書は信頼しているが、IAEAの専門家は、アメリカやヨーロッパから圧力を受け、ウクライナが原発を攻撃しているとは言えないのだ。欧米製の兵器が使われ、原発の安全性に脅威をもたらしている」と述べました。
そのうえで「IAEAは、原発から軍の装備を撤去するよう指摘するが、そこにロシア軍の装備はない」と述べ、ザポリージャ原発の非武装化に否定的な姿勢を示しました。
ロシア 中国との連携 一層強調
ロシア政府が、ロシア極東で開催している国際経済会議では、ウクライナへの軍事侵攻をめぐり欧米などとの対立が深まる中、中国との連携が一層強調されています。
ことしのプログラムでは、ロシアと中国の間の貿易や、若者の交流、それに中国とロシアが主導する枠組み、上海協力機構の重要性など、両国の連携強化をテーマにしたセッションが目立ちます。
このうち、7日に行われた今後の中ロの経済協力に関するセッションでは、中国と国境を接する極東のアムール州の知事が「中国側と経済分野などで、すばらしい関係を築いている」と述べたうえで、ことし6月に、国境に新たに橋が開通したことや、州内の公立学校で、ことしから中国語の授業を始めたことなどを紹介し、あらゆる分野で関係が強化されていると強調しました。
また、オンラインで出席したロシアに駐在する中国大使は、ことし7月までの両国の貿易額は977億ドル、日本円でおよそ14兆円に拡大したことなどをあげて「私たちの関係は、これまでの歴史で最高の時期に突入した」と評価しました。
●「ロシアは何も失わず」 プーチン氏、ウクライナ侵攻正当化 9/7
ロシアのプーチン大統領は7日、極東ウラジオストクで開催中の第7回東方経済フォーラムの全体会合で演説した。司会者の質問に対し、プーチン氏はウクライナ侵攻開始から半年以上が過ぎた現状認識について「ロシアは何も失っていない。むしろ主権を強化した」と強調。欧米の対ロシア制裁に屈しない姿勢を改めて示した。
また、「われわれは軍事作戦を始めたのではなく、(2014年以来の危機を)終わらせようとしている」と主張。問題は親ロシア政権が倒れたウクライナ政変に端を発するとして、国際社会を揺るがす侵攻をあくまで正当化した。
演説では、欧米の制裁が「全世界に脅威をもたらしている」と発言。食料輸出国ロシアを標的とすることで「人道危機につながる」との持論を展開した。対ロ制裁に加わっていない中国やインドを含むアジア太平洋地域などとのつながりを念頭に「ロシアを孤立させることはできない」とも語った。
●プーチン大統領、ウクライナ戦争でロシアはさらに強くなると主張 9/7
ロシアのプーチン大統領は、同国がウクライナ侵攻を経て一段と強くなって台頭すると述べ、欧米諸国の「制裁フィーバー」を非難した。
プーチン大統領は7日、ウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムで、会議進行役からウクライナ侵攻に関する質問を受け、「ロシアは何も失っておらず、この先も何も失わないと確信する」と述べた。プーチン大統領は質問前の演説ではウクライナでの戦争に一切言及していなかった。「主に得られるものは、ロシアの主権強化だ」とも語った。
大統領はさらに、新型コロナウイルスがもたらす経済への影響について「新型コロナ禍は別の問題に取って代わられた。それは地球規模の問題であり、世界全体を脅かしている」と述べ、「それは西側諸国の制裁フィーバーだ。ある種の行動様式を他国に押しつけ、主権を奪い、意のままに従わせようとする攻撃的な試みだ」と主張した。
ロシアを孤立させることは「不可能」だと強調した上で、「われわれはリスクも理解しており、その注視を続ける必要がある」とも述べた。
●「エネルギーを武器に利用」との批判に反論 ロシア大統領 9/7
ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は7日、ウクライナ侵攻を理由とした制裁に対する報復としてロシアがエネルギーを「武器」に使っているとの批判に反論し、停止している天然ガスパイプラインについて、タービンがロシアに返還されれば直ちに稼働させると述べた。
プーチン氏は極東ウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムで、「彼ら(欧州)はロシアがエネルギーを武器として使っていると主張している。ばかげたことだ。われわれは要請に基づいて、必要なだけ供給している」と述べた。
ロシアの国営天然ガス大手ガスプロムは2日、ロシア産天然ガスをドイツへ供給するパイプライン「ノルドストリーム」について、修理のため稼働再開を延期すると発表した。
ロシア大統領府は、カナダで修理中だった独電機大手シーメンス製タービンが西側諸国の制裁で返還されないと主張。プーチン氏は「タービンを提供すれば、あすにもノルドストリームを稼働させる」と述べた。
一方、ロシアとウクライナ、国連(UN)、トルコの合意により再開されたウクライナからの穀物輸出に関して、「ウクライナから輸出された穀物の大半は、貧しい開発途上国ではなく欧州に送られた」との見解を示した。
さらに「欧州諸国はここ数十年、数百年と、植民地主義者として行動してきた」とし、「彼らは今も同じように行動し続けている」と批判。欧州諸国は途上国を欺いており、「こうした手法を取れば、世界の食糧問題はさらに深刻化する」と主張した。
●川を泳いで敗走か。ウクライナの反撃に重火器を破棄して退却するロシア軍 9/7
南部地域の領土を取り戻すべく、8月29日に反転攻勢に出たウクライナ軍。9月4日にはゼレンスキー大統領が東部と南部の3つの集落を奪還したと表明しましたが、この先紛争はどう展開していくのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、さまざまな情報を整理しつつ戦況を解説。さらにロシア・ウクライナ両国の思惑と、この戦争が鮮明化させたものについて考察しています。
ウクライナ軍がヘルソン市に迫る
ウクライナ戦争はウ軍がヘルソン市の奪還を目指し、29日より総反撃を開始した。今後を検討しよう。
ウクライナ独立記念日の8月24日後の29日から南部ヘルソン州のドニエプル川西岸地域の奪還に向け、ウ軍は総反撃を開始した。
この反撃とともに、引き続き、ウ軍はクリミア半島やヘルソン州、ザポリージャ州のロ軍の弾薬庫や兵站拠点、司令部、空軍基地などを撃破して、ロ軍の補給をなくす動きをしている。
ロ軍は、戦争資源が枯渇してきたので、ドンバス方面に優秀部隊を集めて、この地点での突破を志向しているようだ。このため、ロ軍はイジューム西のノバ・フサリフカから突然、ドネツ川の橋を破壊して、対岸まで撤退した。
イジューム周辺の優秀な正規兵をドネツク周辺に移動させるようである。この正規兵の代わりに募集兵を充当するので、防衛の難しい地点を放棄するようだ。その募集兵も少なく、この地域は手薄になっている。
そのため、ウ軍は徐々に前進している。偵察隊を出して、ロ軍の空白地帯を見つけて、そこに浸透する方法で前進しているようだ。
プーチン大統領はドネツク州の完全制圧の期限を8月31日から9月15日に延期して、ロ軍に絶対命令を出したという。このため、ドネツクへの兵員増強がロ軍も必要になり、イジューム周辺やハルキウ周辺、スラビアンスク東側から多くの経験豊富な正規兵を移動させて募集兵に置き換えているようだ。
この2週間を見ると、ロ軍が前進できたのは、ドネツク近郊のピスキーだけであり、一度は押し戻したウ軍は、耐えられなくなり完全撤退した。
しかし、ピスキーから先に攻撃できない程ロ軍も消耗したようである。この情報でプーチンが動いた可能性がある。ドネツクに兵員を集めろと。現地指揮官と直接連絡しているので、全体戦局を見ずに、一部地域の戦術レベルで動員の命令を出したようだ。
これに関連して、多大な犠牲を払って前進したので、ロ軍は休戦をウ軍に申し出たが、時間稼ぎのような気もする。ドネツクに部隊を集める方向でロシア軍は動いているので、危ないような気がする。
このような動きから見ると、ロ軍の戦略は、南部も捨て、イジューも捨て、ドネツク市周辺を確保ということになる。
一方、ウ軍は、ドニエプル川のヘルソン市とノバ・カホフカの中間地点のリボグのポンツン・フェリーを破壊した。アントノフスキー橋やその付近のフェリー、カホフカ橋や付近の船橋も攻撃して、ドニエプル川西岸への補給を止める攻撃を継続しているが、フェリーの破壊もできるようになったようである。
これは、射程70km、誤差1mの「ボルケーノ」GPS誘導弾がウ軍に供給されて、PzH2000の155mm榴弾砲から打てるようになったことで、この弾は最後の段階で熱追尾ができるので動く目標でも狙えるからである。これで、ロ軍の補給は完全に止まることになる。
クリミア半島に補給している兵器・弾薬は、ヘルソン州に送れずにザポリージャ州のトクマク付近に蓄積したが、ここもHIMARSで破壊されている。しかし、ロ軍はドニエプル川西岸への大量の補給・援軍を諦めて、ザポリジャー州で新たな攻撃をするのではないかと見られている。新しく編成されたロ軍の第3軍団もザポリージャ州に正規部隊を送り込んで、募集兵はハリキウ近郊やイジュームに送っている。
このことでは、ドイツ軍ツォルン総監が、ロシア陸軍には第二戦線を開く余地があるとし、西側諸国はロシアの軍事力を過小評価すべきでないと警鐘を鳴らしている。まだ、ロシア軍は豊富な兵器を持っているということだ。
ウ軍の主力部隊がいる南部ヘルソン州では、29日より総攻撃になり、3方向で反撃している。1つにはヘルソン市の北からロ軍に占領されたブラホダトネを奪還し、高速道路M14を一直線でキセリフカ、そしてヘリソン市郊外のチェルノバイフカまで攻撃が及んでいるようである。
この攻撃軸にウ軍はかなりの戦力を投入している。HIMARSも昼からチェルノバイフカへの攻撃に使用している。しかし、チェルノバイフカから先のヘルソン市方面は要塞地帯になり、ここからの攻撃は容易ではないし、配備のロ軍も多い。しかし、ウ軍の攻撃がすごいことにロ軍は、ビックリしたようである。
この攻撃と同期して、ヘルソン市内の特殊部隊も市内で銃撃戦を開始しているが、市内の銃撃戦は収まったようである。
ヘルソン州中北部のロゾベの橋頭保からロ軍を攻撃して、スクイー・スタボクを奪還し、コストロムカも奪還でT2207号線で両軍が激戦中である。ロ軍の戦車中心BTGが集中しているので、ここではウ軍の前進速度は遅いことになっているが着実に前進している。
ヘルソン州北東部では、アルハンヘルスク、オリヘネを奪還して、ビソコピリアで激戦になっている。しかし、ここのウ軍は攻撃し奪還した地点を再度、ロ軍に奪われるなど、苦戦もしているようだ。しかし、ロ軍がヘルソン州東中部のゾルイ・バクカに砲撃をしているということは、ウ軍が10kmも南下した可能性がある。
しかし、このヘルソン州全体でウ軍もロ軍も情報統制しているのでよくわからない。両軍の攻撃地点やSNSの情報等で推測するしかない。
そして、混戦模様でもある。広い範囲に1万8,000千のロ軍では、点しか守れていないので、ウ軍が進撃しても、ロ軍陣地を避ければ、前進できる可能性が高い。
どちらにしても、ドニエプル川西岸地域のロ軍30BTGの1万8,000名分の補給ができなくなっているが、それでも、ロ軍は、今までに貯め込んだ大砲や戦車、ヘリコプター、迫撃砲と弾薬を大量に持ち戦っている。ウ軍兵士は「奴らの装備は豊富だが兵士は少ない」という。
補給は、ウ軍戦闘機に見つからないように、クリミアから輸送ヘリ2機と護衛の攻撃ヘリ2機の4機編隊で細々としているようであるが、非常に少ない。補給線を維持できずに空からの補給になっている。それと、孤立したロ軍が多数存在しているようだ。
このため、長期の戦闘になると、ロ軍の大量投降になる可能性が出てきた。いつまで、ロ軍が持つかという問題になっている。
事実、ロシアの独立系メディアThe Insiderによるとロシアはすでに誘導ミサイルをほとんど保有せず、戦争がこのまま維持されれば、砲弾と装甲車両は2022年末までにほとんどが払底するという。
そして、戦車ですが、ロ軍の車両損失合計は5,415両だが、1,756両(31%)がロ軍放棄でウ軍が鹵獲したものだ。これを修理して戦線に送り出しているようだ。ロ軍戦車のメンテナンスがないことで故障率が高いことになっている。
最後に、敗走するロ軍は、フェリー乗り場に押し寄せることになるが、ドニエプル川西岸地域では3ケ所のフェリーや橋しかない。後は川を泳いで渡るしかない。重火器は放棄することになる。
それと、AGM-88対レーダーミサイルでロ軍の防空レーダーが破壊されて、ロ軍のS300は機能しなくなっている。このため、バイラクタルTB2が偵察活動や対砲兵戦で、ロ軍の火砲を攻撃できるようになってきた。TB2でT-72戦車を破壊する動画も出てきた。
特にドニエプル川左岸のヘルソン市などの西側の一帯では、ウ軍が制空権を確保した可能性があり、この地域でロ軍戦闘機の活動は、非常に少なくなってきた。
このため、ウ軍攻撃機もロ軍地上部隊を空爆できるので、ウ軍陸上部隊は、砲兵と空軍の支援を受けて、ロ軍を攻撃している。これで、ヘルソン市郊外までウ軍は到達した模様である。
それでも、ロ軍の待ち伏せ攻撃で、ウ軍戦車隊などが被害を受けているようであり、相当な犠牲を払って前進している。
しかし、全体的には、ロ軍が不利な戦いになり、戦意の低い部隊は、ウ軍の攻撃ですぐに逃亡している。前線にいたドネツク109連隊は、ウ軍が攻撃開始したら、即撤退した。しかし、これも待ち伏せ攻撃の誘導の可能性もあり、注意が必要である。
英国と米国のウ軍軍事顧問団も、ウ軍の総反撃の前進速度を早めると、損害が多くなり、継戦能力を低くすることに警戒している。数か月という侵攻速度にして、ロ軍の弾薬を枯渇させるべきであるという。それと、ポーランドの全戦車PT-91も、まだ届いていない状況であり、攻撃兵器も十分とは言えないことも考慮しているようだ。
現在、オランダから供与された兵員輸送装甲車YPR-765APCsが多く、T-72、T-64などの戦車の台数が少ないことがネックである。この戦車の多くをヘルソン市奪還作戦に投入しているが、それでも損害が多いと数が足りなくなる。
このため、ウクライナのアレストビッチ大統領顧問によると、政府は多くのウ軍兵士が命を落とすことを望んでいないとし、ウ軍がロ軍に対し素早く勝利することを期待しないで欲しいとした。
しかし、ウクライナのレズニコフ国防相は、冬まで戦争を続けると、援助疲れで、EUからの支援がなくなることを心配している。このバランスが必要になっているようだ。
これに対して、ドイツのショルツ首相は、冬の燃料について、確保できたと言っているが、多くの国では冬の燃料の不足が心配な状況である。
プーチン大統領は、欧州への天然ガス供給を止めて、欧州でのエネルギー不足から停戦をウクライナに要求するのを待つ方向である。このため、ノルドストリームを止めた。
しかし、南部ヘルソン州のウ軍総反撃の経過で自信を持ったゼレンスキー大統領は、ウクライナ東部の紛争解決のための交渉グループにおける同国の代表団を廃止し、戦争で決着させるという。
このため、ゼレンスキー大統領は、ドイツに対して、ウクライナから電気の供給を行うとして、欧州のエネルギー不足を緩和して、支援の継続を図りたいようである。
そして、このウ軍の総反撃で、占領地のロ連邦編入のための住民投票は、統一地方選と同日の9/11に実施するのは不可能で、次の候補は11/4の「国民団結の日」になるのではないかと言われている。
一方、ザポリージャ原発には、IAEAの査察団が到着した。これで、ロシアは自分が占拠する原発への攻撃を控えると、期待したい。
この矛盾した根拠が出てきた。IAEAが「なぜ原発に飛んできたミサイルはロシアが打ったような方向を向いているの?」と言う質問に対して、ロシア側の担当者は、「着弾する際にミサイルが180度方向転換するからだ」と真顔で答えたという。
このようなロ軍の行動監視に、IAEAのグロッシ事務局長は、ザポリージャ原発にスタッフ2人を常駐させると発表した。
そして、ロシア軍が占拠するザポリージャ原子力発電所の安全性に関する報告書を9月9日までに発表すると述べた。
ショイグ国防相は、ウクライナが「核テロ」を実行していると非難し、ロシアが同原発に重火器を配備したというウクライナと西側諸国の主張を否定し、国連安保理でも、ロシアは原発の安全をウ軍が阻害したと、議題提案があり、IAEAの報告書後、審議されることになる。ロシアの嘘が、国連安保理でも暴かれることになる。
ロシアは9月1日から大規模な軍事演習「ボストーク」を、ロシア極東や北方領土、日本海などで行い、兵士5万人以上のほか航空機140機や艦船60隻が参加する。中国、アルジェリア、インド、ラオス、モンゴル、ニカラグア、シリア、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタンが参加する。
この狙いは、ウクライナ戦争でも、ロシアは中国とともに。米欧や日本への対抗ができると見せつける狙いがあるとみられるが、反対に、中国は艦船の参加もさせて、台湾進攻時にロシアの支援を得る狙いがあるようだ。
ロシアは、極東ロ軍もウクライナに70%程度送っているので、参加人数は1万人レベルのようである。恒例の大演習を行うことで、ロ軍が余裕あることを示したようだ。
世界は、確実に東西の分離になってきている。先進国群と専制主義国+新興国+発展途上国群の2つに割れている。温暖化防止などの先進国の規制で、新興国の発展は阻害されている。
それを嫌がる新興国は、両方の中間に位置することになる。そのよい例がインドだ。インドは、「ボストーク」に参加することで、欧米に対する不満を表しているように感じる。
さあ、どうなりますか?
●ウクライナ軍、北東部バラクレヤで反攻 ロシアの作戦に打撃も 9/7
ウクライナ軍が北東部ハリコフ州の町バラクレヤで反攻の動きを見せている。
ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力「ドネツク人民共和国」幹部は7日、通信アプリ「テレグラム」で、「バラクレヤがウクライナ軍部隊の攻撃を受けている」と認めた。
バラクレヤはロシア部隊が補給拠点とする交通の要衝イジュームの北西に位置し、ロシア軍が3月から占拠していた。親ロ派幹部は、ウクライナ側が以前から砲撃の準備を進めていたと指摘。ウクライナが奪還すれば、ロシア軍がハリコフ州で作戦を展開する上で打撃となる。
ウクライナ当局は反攻について明言を避けているが、現地の記者もテレグラムなどにバラクレヤで交戦が起きていると相次いで投稿した。
ウクライナ大統領府のアレストビッチ顧問は7日、テレグラムへの投稿で「ハリコフ州で電光石火の変化が起き、ロシア軍は東方へ退いている」と主張。ウクライナ軍は南部ヘルソン州でも攻勢を強めているとされ、アレストビッチ氏は作戦を「同時並行で進めている」と強調した。
ウクライナのメディアによると、ハリコフ州の別の町クピャンスクの当局者は6日、ビデオメッセージで「ウクライナ部隊が近くクピャンスクを解放する」と訴えた。 
●ウクライナ軍、ハルキウ東方に進軍か 最近までロシア占領の町に兵士の姿 8/7
ウクライナ軍が同国第2の都市ハルキウの東に進軍していることが分かった。CNNが位置情報を確認したSNSの動画には、最近までロシア軍に占領されていた町にウクライナの兵士がいる様子が映っている。
もしウクライナ軍がこの町で地歩を固めることができれば、隣接するバラクレヤに駐留するロシア軍を包囲することが可能になる。
ウクライナ、ロシア双方の情報によると、バラクレヤでは自称「ルガンスク人民共和国」の民兵やロシア国家親衛隊の兵士が守備に就いており、こうした民兵や兵士の置かれた状況は危うくなっている可能性がある。
CNNはこうした情報を独自に検証できていない。この地域でのウクライナの攻勢に関しては、ロシア政府もウクライナ政府も言及していない。
米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は6日、ウクライナ軍がバラクレヤに迫り、ロシア軍をドネツ川などの左岸に追いやっている可能性が高いとの分析を示した。
●ウクライナ、東部ハルキウ州でも反攻…ロシア軍が南部へ戦力移動か  9/7
ロイター通信は7日、ロシア軍の占領地域奪還に向け、南部で反転攻勢に乗り出しているウクライナ軍が、東部ハルキウ州でも反撃を始めたと報じた。ウクライナ軍が8月29日に開始した反攻が広範囲に及んでいる可能性がある。ウクライナ軍は6日、南部ヘルソン、ザポリージャ両州でも露軍拠点への攻撃を強めており、戦闘の主導権がウクライナに移り始めているようだ。
ロイター通信によると、東部ドネツク州の親露派武装集団幹部は6日、SNSに、露軍が占拠するハルキウ州バラクレヤに対し、ウクライナ軍が激しい攻撃を始めたと投稿した。バラクレヤは、露軍がドネツク州攻略の拠点としているハルキウ州イジュームに近く、奪還されれば、イジュームを防衛することも難しくなるという。ウクライナ大統領府幹部も反攻を認めた。
米政策研究機関「戦争研究所」は6日、東部に配備されていた露軍の精鋭部隊が南部で初めて確認されたと指摘した。露軍が南部の防衛を強化するため戦力を移動したことが、東部でもウクライナ軍の反攻を可能にしたとの見方だ。
ウクライナ軍参謀本部は7日、空軍が地上部隊の攻撃支援のため、約40か所の露軍拠点などに被害を与えたと発表した。6日には、ザポリージャ州ベルジャンシクの親露派「司令官」が車ごと爆殺されたとの情報も流れた。

 

●ウクライナ軍、クリミアのロシア軍基地攻撃認める「ロシア軍機10機が行動不能」 9/8
ウクライナ軍のザルジニー総司令官は7日、ロシアが2014年に併合したクリミア半島のロシア軍基地に対する一連の爆発について、ウクライナによるミサイルもしくはロケットによる攻撃と認めた。国営通信社ウクルインフォルムへの寄稿から明らかになった。
クリミア半島西部のロシア軍の基地では8月9日、複数回の爆発があった。ウクライナは、これまで攻撃を公式には認めていなかった。
一方、ザルジニー氏は寄稿でウクライナ軍が攻撃したことを認め、攻撃によりロシア軍機10機が「行動不能」に陥ったと述べた。
さらに、特定の状況においてロシア軍が核兵器を使用するという脅威があると指摘。ウクライナ戦争が来年まで続く可能性が高いとの見方を示した。
●国連安保理 欧米各国“ロシアはウクライナ市民拘束 強制移送”  9/8
ウクライナ情勢をめぐる国連の安全保障理事会の会合が開かれ、欧米各国は、ロシアがウクライナ東部などで市民を拘束したりロシア国内に強制的に移送したりしていると非難し、ロシアに対して国連による調査を受け入れるよう迫りました。
ウクライナ情勢をめぐり、欧米各国や国際的なNGOは、ロシア軍が支配下に置いたウクライナ東部などに市民を尋問する施設を設け、その後拘束したりロシア国内に強制的に移送したりしていると指摘しています。
これについて国連安保理で7日、会合が開かれ、国連人権高等弁務官事務所の担当者が報告を行い、ロシア軍がウクライナ市民を尋問していることを確認したとしたうえで、「信頼できる情報によればその過程で多数の人権侵害があった」と述べました。
このあと、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は「こうした活動はロシアの支配に従わない個人を特定するのが目的で、ロシアへの併合に備えるものだ。見せかけの住民投票を行おうとしている」と述べ、ロシアが併合を目指す地域で住民投票を行い、都合のよい結果が出るよう準備しているという見方を示しました。
そのうえで、強制的な移送などは国際法上の戦争犯罪に当たるとしてロシアを厳しく非難し、国連による調査を受け入れるよう迫りました。
これに対し、ロシアのネベンジャ国連大使は、現地で行われているのは尋問ではなく登録の手続きだと反論し、欧米はロシアをおとしめるために新たな偽情報を広めていると主張しています。
●プーチン氏「損はない」「主権強化された」 ウラジオの国際会議で 9/8
国際経済会議に、プーチン大統領が登壇し、ウクライナ侵攻について「主権が強化された」と強調した。
東方経済フォーラムに登壇したプーチン大統領。
ウクライナへの軍事侵攻後に、ロシアから撤退した企業が多いことを司会者から指摘され、プーチン大統領は「われわれは何1つ損はしていない。これからも損はしない。われわれの主権が強化されたことが利益だ」と強調した。
また、穀物輸送の再開について、プーチン大統領は、「ウクライナを出た87隻のうち、発展途上国には2隻しか届いていない。発展途上国への裏切りだ」と欧米を批判した。
3年前のフォーラムには、安倍晋三元首相が参加するなど、日ロの経済関係を深める場となっていたが、今回は、日本は代表団を派遣しなかった。
●「ロシアは何も失っていない」プーチン氏、ウクライナ侵攻巡り強気姿勢崩さず 9/8
ロシアは、ウクライナでの紛争から得ていることこそあれ、失っているものはない――プーチン氏は7日、こう語った。ロシアは国際的な影響力回復に向け、新たな道を歩んでいるという。
ロシア プーチン大統領「私たちは何も失っていないし、これからも失うことはないと確信している。
もう一度言っておきたい――これはよく言われることだが、全く正しい。軍事行動という点では、我々が何か始めたわけではない。ただそれに終止符を打とうとしているだけだ。」
ロシア極東のウラジオストクで開催された、東方経済フォーラムでプーチン氏はこう述べた。その一方で、この紛争が世界とロシアの双方に「ある種の二極化」を引き起こしたとの認識を示した。
7日、砲撃を受けたウクライナ・ハリコフの住民にとっては、得るものなどなく失うばかりだ。この女性は、激しく損壊した職場を見せてくれた。あらゆるものが破壊されたと語った。
同国南部で続いている奪還作戦について、ウクライナ当局者の口は堅い。だがへルソンでは着実な成果が報告されている。
これは、5日SNSに投稿された動画。ウクライナ軍が奪還したとするヘルソン地方のビソコピリヤで、兵士がウクライナ国旗を掲げる様子を撮影したという。ロイターはいつ撮影されたものか確認できていない。
一方ロシア側は、ウクライナ側の反撃を撃退しており、ロシア軍が撤退した事実はないとしている。
だが親ロ派の自称「ドネツク人民共和国」の関係者はハリコフと、ロシア側が掌握するイジュムとの中間にある町、バラクリアで戦闘があったと明らかにした。この町が失われると、イジュムに駐留するロシア軍は脆弱になるという。
ロイターは戦況に関する情報の真偽を、独自に確認することはできなかった。
●ロシア孤立化は「不可能」 プーチン氏、ガスなど供給停止を警告 9/8
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は7日、同国を孤立させることは「不可能だ」とし、同国産石油とガスの輸入価格に上限を設ける国に対しては供給を停止すると警告した。
西側諸国による一連の制裁を受け、アジアや中東、アフリカとの関係強化を模索するプーチン氏は、極東ウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムで演説し、「ロシアをどれだけ孤立させたい人がいようと、それは不可能だ」と言明。新型コロナウイルスの世界的大流行に代わって、「西側諸国の制裁熱」などが世界全体を脅かしていると述べた。
また、ロシア産の石油やガスの輸入価格に上限を設定することは「全く愚かな決断だ」と断言し、同国の経済的利益に反する場合は「一切何も供給しない」と述べた。
2日には先進7か国(G7)が、ウクライナに侵攻するロシアの軍事費の資金源を断ち切るために、同国産石油の輸入価格への上限設定を早急に進める方針で合意。同国にエネルギー源を大きく依存している欧州連合(EU)でも7日、欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長が、ロシア産石油とガスの輸入価格に上限を設けるよう加盟国に提案した。
●ウクライナ戦争の情報戦で引っ搔き回されたプーチン 9/8
出口の見えないウライナ戦争――。プーチン露大統領の手痛い誤算の背景として、同国情報機関による終始楽観的な戦況見通しがあったことが、米ワシントン・ポスト紙特別チームによる調査報道でこのほど明らかにされた。侵攻の動きを事前察知し、世界に向けて警告していた米側インテリジェンスとの質的差も浮彫りにされた。
周到な情報準備も、報告は楽観的なものばかり
ワシントン・ポスト紙は先月、ウクライナ戦争がロシアによる軍事侵攻開始から6カ月の節目を迎えるのを機会に、ベテラン記者を総動員し、米欧、ウクライナなど各国政府、軍・情報関係者を中心に精力的なインタビュー、背景取材に着手、その分析結果を数回に分け大々的に報道した。
この中で特に注目されるのが、冷戦時代の国家保安委員会(KGB)に代わり、クレムリンの戦争立案・遂行に中心的役割を演じてきた「連邦保安庁(FSB)」の存在だ。
FSBは2019年まで、部内の「ウクライナ課」に30人程度のスタッフを擁してきたが、その後、思い切った改革に乗り出し、今年2月の侵攻直前には、160人に大幅増員された。ウクライナ各州に専従要員を送り込み、国じゅうにスパイネットワークを張り巡らした。
プーチン大統領がひとたび「ウクライナ侵攻」を決断すると、FSBは、ゼレンスキー政権や軍内部に潜伏させていたスパイ網を通じ、ロシア軍が展開すべき具体的侵攻作戦、予想されるウクライナ側の反応などについて、クレムリンに詳細にわたる報告を行ってきた。
その核心部分は「同国政権は(侵攻後)短時間のうちに崩壊する」というものだった。
ウクライナ側の執拗なレジスタンスの可能性については、ほとんど言及しなかった。
ゼレンスキー政権の「短期崩壊」を前提に、「傀儡政権」樹立準備も完了、それを支えるウクライナ側の中心人物たちまで根回ししていた。その中には、かつてウクライナ大統領を務め、政変で2014年にロシアに逃亡したビクトル・ヤヌコビッチ氏、ウクライナ野党党首でプーチン氏とも親交を深めてきた新興財閥のビクトル・メドベチュク氏らが含まれていた。一方、ウクライナ現政権の情報機関はすでに、彼らについては「FSB同調者」としてマークしていたという。
しかし、FSB本部は、こうしたウクライナ情報機関の警戒ぶりに気づいた様子はなく、ロシア軍侵攻開始「最終段階の数日間」には、首都キーウ周辺に潜伏する工作要員たちのために用意した「居住用アパート案内」や「傀儡政権」樹立後に続々とモスクワから潜入が予想される要員たちのための受け入れに関する細かな指示を現地に頻繫に送っていた。
ワシントン・ポスト紙が入手したウクライナ側の機密情報ファイルによると、FSBのウクライナにおける主たる任務は、「政権の内部崩壊」「ゼレンスキー大統領追放」「親露政権樹立」にあり、同政権内部に潜伏させる要員たちの活躍に期待を寄せていた。そのうちの何人かは指示に従い、ウクライナ国防省の作戦妨害に乗り出したが、中には、秘密工作資金を着服したり、侵攻開始直後に嫌気がして謀反を起こしたりした者もいた。
FSBの戦況見通しも全体として、楽観に満ちたものであり、ゼレンスキー大統領の強靭な反抗姿勢や、同大統領に対するウクライナ国民の我慢強い忠誠ぶりに関しては、ほとんど言及がなく、戦争が困難に直面し、長期化することについては、プーチン大統領にまともな報告を上げてこなかった。
なぜか伝えられなかった「実際の」情報
FSBが、なぜ見通しを誤ったかについては、いまだミステリーとなっている。
特に、侵攻決定に先立ち、FSBはひそかに、ウクライナ国民を対象に広範囲にわたる独自の世論調査を実施していた。
それによると、回答者の大多数が「ロシアに占領されたら徹底的に抵抗する」と答えており、ロシア軍を解放者≠ニして歓迎する空気は当初から存在しなかった。にもかかわらず、FSB展望は「侵攻部隊は市民から歓迎され、すみやかに親露体制が回復される」との楽観論に立っていた。
しかもFSBは、「首都キーウに向けた電撃作戦により、ゼレンスキー政権は数日間で転覆され、大統領は殺害、身柄拘束あるいは直前の国外逃亡により、政治空白が生じ、新体制樹立が可能となる」ことを前提とした戦争計画まで作成していた。
ところが、実際には、FSB要員たちがロシア軍部隊とともにキーウ近郊に迫った時点で、早くもウクライナ軍の反撃に直面、撤退を余儀なくされるに至った。
ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)もほぼ、FSBと同様の報告をクレムリンに挙げていたという。
このようにロシア側のウクライナ侵攻作戦に関するインテリジェンスがいかに間違いだらけだったかは、その後の戦況が如実に物語っている。
ロシア軍は首都キーウ制圧を断念後、当初の作戦を転換、ウクライナ南部および東部諸州攻撃に主力を注入してきた。そしていったんは、ドネツク、ヘルソン各州を占拠したとみられていた。
しかし、ウクライナ軍は「首都制圧」というロシア軍側の出鼻をくじいたばかりか、去る8月29日、南部などでも領土奪還目指し猛烈な反撃攻勢に転じ、特にヘルソン州周辺では、集結した数万人規模の露軍部隊相手に今なお五分五分の戦いを続けている。
ウクライナ軍は、東部ドネツク州のいくつかの集落についても、すでに奪回したと伝えられる。さらに、ゼレンスキー大統領は今月4日の演説で「われわれはすべての領土を解放する」とさえと述べ、ロシアが併合した南部クリミアの奪還にも乗り出す姿勢を明らかにした。
一方のウクライナ側の治安・保安体制も、当初は堅固とは程遠い状態であり、ロシア側のスパイ潜入摘発、かく乱工作回避にかなり手を焼いていた。しかし、米中央情報局(CIA)、英秘密情報部(MI6)などからの情報支援を得て、去る7月には、ゼレンスキー大統領陣頭指揮の下に、小学校時代からの友達だった身内のイワン・バカノフ同国情報局長を突如解任、他にも内通者の一掃など、非常措置がとられている。
いずれにしても、プーチン大統領は、FSBによる「早期傀儡政権樹立」という見通しを真に受けてきた結果、今や、まったく出口の見えない長期戦を強いられていることは間違いない。
「ロシア侵攻説」を伝えるも西側諸国は懐疑的態度
これと対照的な活躍を見せてきたのが、米英両国のインテリジェンスだった。
特に、CIAを中心とする米側各情報機関は、ロシアの侵攻開始に先立つ1年以上前から、クレムリン、軍部、情報機関内部にスパイを潜り込ませ、プーチン大統領が着々とウクライナ侵攻作戦の準備に乗り出し始めていることを察知していた。
そして、2021年10月には、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)、ウイリアム・バーンズCIA長官らが、バイデン大統領に対し、より具体的なロシア側の侵攻着手のための「ウォー・プラン」について極秘ブリーフィングを行った。
これを受けて、バイデン大統領は早速、数人からなるインテリジェンス・チームをモスクワに派遣、プーチン大統領に直接面談した上、「わが方は、すでにクレムリンが何をしようとしているか、すべて把握している。侵攻に踏み切った場合、(ロシア側に)深刻な結果を招くことを知るべきだ」と警告していた。
しかし、プーチン大統領は現実にはこれを無視して、侵攻計画を強行したことになる。
ワシントン・ポスト紙の調査報道によると、米側情報チームは、プーチン大統領のみならず、英仏独など西側同盟諸国首脳に対しても、同様の事前ブリーフィングを行い、それぞれの外交チャンネル通じ、クレムリンにウクライナ侵攻を思いとどまらせるよう働きかけを促していた。
このうち、英国政府はMI6を通じ、ロシアの侵攻計画について米側と同様の情報をある程度まで把握しており、米側インテリジェンスより確度の高い情報と突き合せた上で、他の同盟諸国に対しても、ロシア軍による早期ウクライナ侵攻について警戒を呼び掛けていた。
ところが、ドイツ、フランス両国首脳は、ロシアのウクライナ侵攻に直前まで懐疑的態度を示していた。
特に両国当局者は、説明に当たった米情報機関のトップであるアブリル・ヘインズ国家情報長官に対し、かつてジョージ・ブッシュ政権権時代に米側インテリジェンスによる「イラク核保有」説で振り回された苦い経験にも言及した上で、「今回の場合も、ロシアが実際に侵攻に敢えて踏み切るとは思えない」「わが方の情報機関もそうした動きを察知していない」などと否定的見解に終始していたという。
しかし、米政府当局者たちが、「ロシア軍侵攻切迫」を信じ込ませるのに最も手を焼いたのが、ゼレンスキー大統領以下、当事者であるウクライナ政府側だった。
特に昨年11月、ブリンケン国務長官がゼレンスキー大統領を英スコットランドのグラスゴーにひそかに呼び出し、ロシア軍侵攻開始が時間の問題となりつつあることについて、クレムリン内部の動き、ロシア軍の国境沿いの展開など詳細にわたる情報を示しながら、厳重な警戒を促したが、このときも、大統領は「過去に何度も、ロシアは似たようなフェイントをかけてきた」などと述べ、半信半疑だった。
その数週後、大統領は側近のドミトロ・クレバ外相、アンドリー・イェルマク首席補佐官をワシントンに派遣、そこでも米側からさらに克明なブリーフィングを受けさせたが、それでもウクライナ政府側は、去る2月24日の侵攻開始の直前まで信じていなかった。
米側情報当局者は侵攻後、最近になって、「ウクライナ側情報機関にはロシア側のモグラたち≠ェ入り込んで暗躍していることは見え見えなので、あれ以上の核心に触れる機密を事前提供することは避けた」「しかし、侵攻後は、わが方はより積極的にウクライナ側に情報提供するようになった」と語っている。
その後去る7月、ゼレンスキー大統領が同国情報機関のトップであるバカノフ情報局長の解任、局長以下の思い切った人事刷新に踏み切ることになったが、これは決して偶然のことではなく、米情報機関の後押しがあったことは間違いない。
し烈極める米露情報戦の中にあって、かつてKGBで活躍し、情報活動を最大の武器にしてロシア最高指導者にまで上り詰めたプーチン氏が、今回のウクライナ侵攻作戦では、結果的に米側のインテリジェンスに引っ掻き回され、思ってもいなかった苦戦を強いられていることは、まことに皮肉というほかない。 
●米国連大使、ウクライナ人強制連行は戦争犯罪と非難 ロシア反発 9/8
米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は7日、ロシアが自国にウクライナ人を強制連行しているとし、戦争犯罪に当たると非難した。
国連安全保障理事会で「これらの作戦はロシアが自国の支配に十分に従わない、あるいは適合しないと見なす人物を特定することが目的だ」と述べた。
モスクワを含むさまざまな情報源からの推定として、ロシア当局がウクライナ侵攻後に90万─160万人のウクライナ人を「尋問し、拘束し、(ロシアに)強制連行」していると指摘。7月だけで1800人以上の子どもがウクライナのロシア支配地域から連行されたという情報を持っていると述べた。
その上で「被保護者を占領地から占領者の領土へ強制連行することは戦争犯罪を構成する」とし、「では、なぜ彼らはこのようなことをするのか?それは併合に向けた準備のためだ」と述べた。
一方、ロシアのネベンジャ国連大使は、この安保理会合は時間の無駄で、「ウクライナとその西側支援国が繰り広げる偽情報キャンペーンの新たなマイルストーン(標石)だ」と反発した。
●ウクライナ軍が「奇襲」成功か 激戦続くハルキウ州 「領土を奪還」 9/8
米戦争研究所(ISW)は7日、激戦が続く北東部ハルキウ州でウクライナ軍がロシア軍に奇襲を行い、約400平方キロの領土を奪還したとの分析を発表した。ウクライナのゼレンスキー大統領も同日夜の演説で、「ハルキウ州からよいニュースが入ってきた」と述べた。
ISWによると、ウクライナ軍は6〜7日、交通の要衝イジュームの北西で「非常に効果的な反撃」を実施。同軍がロシアの支配地内に入り、少なくとも20キロ前進した模様だとしている。
ロイター通信によると、戦闘があったのは、イジューム北西に位置する町バラクリヤ周辺。ウクライナ大統領府のアレストビッチ顧問は「ロシアはバラクリヤが包囲されていると言っているが、(ウクライナ軍は)さらに先に行っている」と指摘。「クピャンスクへの道路を封鎖した」として、ロシア軍の補給路に対して打撃を与えたと強調した。
ゼレンスキー氏はビデオ演説でハルキウ州での勝利に言及しつつ、「今は(奪還した)集落の名前を挙げる時ではない」と具体的な地名は明らかにしていない。
●露軍飛行場の大規模爆発、ウクライナ軍の攻撃と総司令官が認める… 9/8
ウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官は7日、ロシアが2014年に併合した南部クリミアで8月に発生した露軍のサキ軍用飛行場での大規模爆発が、ウクライナ軍の攻撃によるものだったと国営通信への寄稿で認めた。ザルジニー氏は、露軍とのミサイル戦力の差が縮まらなければ「戦争は何年にも及ぶ」と述べ、戦闘が長期化するとの見通しも示した。
クリミアでは8月9日のサキ飛行場での爆発以降も、別な露軍飛行場などで爆発が相次いだが、ウクライナ軍は関与を公式に認めていなかった。ザルジニー氏は寄稿で「ミサイルで攻撃した」と説明した。
ザルジニー氏の寄稿は「2023年の軍事作戦の展望」と題した共同論文で、ロシアとの長期戦を念頭に、クリミアの奪還作戦にも意欲を示した。
ただ、射程2000キロ・メートルのミサイルでウクライナ領土のどこでも攻撃可能な露軍との「戦力の不均衡」が変わらない場合、ロシアが侵略を断念するとは考えにくいと強調した。ウクライナ軍が8月末に南部ヘルソン州などで着手した反転攻勢だけでは侵略終結には持ち込めないとの認識を示した発言だ。
一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は7日のビデオ演説で、東部ハルキウ州の複数集落を露軍から奪還したと宣言した。
タス通信によると、ロシアの政権与党幹部は7日、露軍占領地域のロシアへの併合に向けた住民投票について、ロシアの「民族統一の日」にあたる11月4日の実施を提案した。住民投票は当初は5月の実施が取りざたされていたが、再三、延期されている。
●ウクライナ軍 東部でもロシア軍を押し戻す 反撃の動き続く  9/8
ロシア軍に支配されている領土の奪還を目指し、ウクライナ軍が南部で反転攻勢を強める中、アメリカのシンクタンクはウクライナ軍が東部ハルキウ州でもロシア軍の部隊を押し戻す動きが出ていると分析していて、ウクライナ軍による反撃の動きが続いています。
ウクライナ軍は、南部ヘルソン州などで反転攻勢を強めていますが、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は6日、ウクライナ軍が東部ハルキウ州でも反撃し、ロシア軍の部隊を押し戻したと指摘しました。
そして「ロシア軍がハルキウ州など東部から南部へ部隊を展開させたことで、ウクライナ軍はハルキウ州で反撃の機会を得たとみられる」としていて、ロシア軍が南部での防衛に追われる中、ウクライナ軍が東部でも反撃に成功したと分析しています。
ウクライナのゼレンスキー大統領も7日に公開した動画で「今週、ハルキウからいいニュースがあった。いま、集落の名前は明らかにしないがウクライナ軍がいくつかの集落を奪還した」と述べていて、ウクライナ軍による反撃の動きが続いています。
また、ウクライナ軍のザルジニー総司令官は7日、地元の通信社への寄稿で、ロシアが一方的に併合したクリミアの軍の基地で先月9日に起きた爆発について、ウクライナ側による攻撃だと初めて公に認めました。
この攻撃で駐留するロシア軍の複数の航空機が破壊されましたが、ザルジニー総司令官はクリミアについて、ロシア軍の部隊の展開や補給、それにウクライナへの空爆の拠点になっているとしてクリミアを奪還する重要性を強調しました。
一方、ロシア軍が掌握するウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所と周辺では依然として砲撃が続いています。
IAEA=国際原子力機関は声明で、原発と近くの火力発電所を結ぶ予備の送電線が、6日砲撃によって損傷したと明らかにしました。
IAEAは、この送電線の損傷により直ちに原発の運転に影響は出ていないとしていますが「施設がさらされる重大な安全のリスクを浮き彫りにしている」として、原発への外部からの電力供給に影響を与える軍事行動をやめるよう求めています。
●ロシア軍の士気低下、改善せず 給与未払いも 英国防省 9/8
英国防省は8日までにウクライナ情勢に関しロシア軍は戦闘疲れによる士気の低下や指揮統制の乱れに依然悩み、給与支払いの問題も抱えているとの分析結果を示した。
同省はSNS上の声明で、ロシア軍はウクライナへ送り込んだ兵力に基本的な物資を継続的に補給出来ないでいると指摘。これら物資には制服、武器、食料などが含まれ、給与未払いもあるとした。この後方支援態勢の不備が兵力の大半を襲う貧弱な士気につながっているのはまず間違いないとも見立てた。
ロシアは自軍部隊に通常、「適度な水準」の基本給や複雑な仕組みがある様々なボーナス金や手当を支給していると指摘。
その上でウクライナでは相当な額とみられる「戦闘ボーナス」が供与されていない深刻な問題が生じている可能性があると言及。軍内のお役所仕事、ウクライナ侵攻を「特別軍事作戦」と称する異例の法的な位置づけや少なくとも司令官級での汚職体質が背景にあるだろうと分析した。
米欧当局者は先月下旬、ウクライナ軍はロシア軍の攻勢に対し互角の勝負を挑んでいるとみられるとの戦局判断も示していた。米欧が引き渡した先端兵器の威力、優勢な士気の維持、部隊の団結力、機敏な戦術採用や優れた臨機応変さなどをその要因とした。
米国防総省当局者は、ウクライナ侵攻でロシア軍が被った死傷者は7〜8万人と推定している。
この中でウクライナ軍情報総局当局者は8日までに、ロシア軍の新たな部隊の投入は11月下旬まで不可能の状態にあると述べた。訓練を受けた職業軍人や装備品の不足を根拠にした。
新たな部隊には旧ソ連時代の兵器をあてがわれているとし、多くの場合、実戦には不適格な種類ともした。同当局者はSNS上で、職業軍人の補充が問題となっており、この事態を乗り切るための訓練には3〜4カ月要するとも述べた。
さらにロシア軍は今年の2、3両月に被った大規模な兵力損失で先端的な装備のほぼ全てを失っている状況にあるともした。このため新たな編成部隊には旧ソ連時代の古びた兵器が与えられているとも主張した。軍装備の4割は戦場に投入出来る状態にはないとし、修理などが必要ともした。
●ウクライナに970億円の追加軍事支援、榴弾砲など 米 9/8
米政府は8日、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対し、榴弾(りゅうだん)砲など6億7500万ドル(約970億円)に上る追加軍事支援を実施すると発表した。
ロイド・オースティン米国防長官は、ドイツ南西部ラムシュタインにある米空軍基地で開かれたウクライナ防衛に関する関係国会合に出席。「われわれは戦場での共通の努力の成果を実証している」と述べ、ウクライナはロシア軍に抵抗しているのみならず、南部では反転攻勢に出ているとの見方を示した。
追加支援には、105ミリ榴弾砲や、標的を正確に攻撃できる誘導型多連装ロケット発射システムの砲弾などが含まれる。
米国が最近ウクライナに供与した兵器で大きな戦果を挙げているのは、高機動ロケット砲システム「ハイマース」で、GMLRSの砲弾は最大80キロ離れた標的を正確に攻撃できる。
ただ、ウクライナが供与するよう要求している射程300キロの地対地ミサイル「ATACMS(エータクムス)」については、ミサイルがロシア領内に着弾して戦線拡大の懸念があるとして、米政府は供与を拒んでいる。
ウクライナ政府は西側諸国に対し、より強力な兵器の供与を重ねて要請。ウクライナのデニス・シュミハリ首相は4日にドイツを訪問した際も、改めて武器の供与を求めていた。
●EU、ロシア産天然ガス価格に上限案…プーチンは発動なら供給完全停止示唆  9/8
欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は7日、EU域内に輸入されるロシア産天然ガスの価格に上限を設置する案を明らかにした。ガス価格の高騰に歯止めをかけるとともに、ロシアのエネルギー収入に打撃を与えるのが狙いの制裁の一環となる。
上限設置案は、9日に開かれるEU各国のエネルギー相会合で協議される。フォンデアライエン氏は記者団に「ウクライナでの非道な戦争の資金源であるロシアの収入を削り取らなければならない」と述べた。
AFP通信によると、ロシアのプーチン大統領は7日、EUの発表に先立って「(上限設置案は)極めて愚かな決断だ」と述べた。発動させた場合には、欧州へのガス供給を完全に停止する考えも示唆している。上限設置がガスの供給不足につながり、さらなる価格高騰を招く恐れがある。
欧州委は、再生可能エネルギーや原発などの発電関連事業者について、一定以上の利益に対して追加課税する案も明らかにした。ガス価格高騰が電気料金全般の値上げにつながり、業者が恩恵を受けているためだ。課税で得た収入は各国の企業や世帯に還元する。
●ロシア、モンゴル経由の中国へのガス供給を協議=プーチン大統領 9/8
ロシアのプーチン大統領は7日、モンゴルを経由して中国に天然ガスを供給するための新たな大規模インフラ計画について協議していると明らかにした。
プーチン氏は国営テレビで放映されたモンゴルのオヨーンエルデネ首相との会談で「モンゴル経由で中国にロシア産天然ガスガスを供給するための主要なインフラプロジェクトの可能性について協議している」と述べた。
プーチン氏はこのほか、ロシアの国営石油会社ロスネフチがモンゴル政府と石油製品の供給を巡る協力の拡大で合意したことも明らかにした。
両首脳はロシア極東ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムで会談。プーチン氏は同フォーラムで行った演説で、ロシア産ガスへの上限価格設定を呼びかけている欧州は「愚かだ」とし、ロシア産エネルギーに上限価格が設定されれば、ガス・石油供給を停止すると表明している。
2019年末に稼働開始したロシアと中国を結ぶガスパイプライン「シベリアの力」の年間輸送能力は610億立方メートル。ロシア国営ガスプロムは、モンゴルを経由してロシア産天然ガスを中国に輸送する新たなパイプライン「シベリアの力2」建設の可能性を何年も前から検討してきた。
ガスプロムによると、提案されている「シベリアの力2」の年間輸送能力は500億立方メートルと、ドイツ向けに供給する「ノルドストリーム1」を若干下回る。ただ、ロシアによるウクライナ侵攻を受け欧州諸国がロシア産エネルギーへの依存度を低下させる中、中国向けの新たなパイプラインはロシアの重要な収入源になるとみられている。

 

●米国務長官がウクライナ訪問、22億ドルの支援表明… 9/9
米国のブリンケン国務長官は8日、ウクライナの首都キーウを訪問し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談した。ウクライナや周辺の18か国に対し、22億ドル(約3100億円)の長期的な安全保障支援を行う方針を伝えた。
ウクライナへの軍事支援をめぐっては、ドイツ南西部のラムシュタイン米空軍基地で8日、米国のオースティン国防長官が主宰する国際会合が開かれた。オースティン氏は、22億ドルの支援とは別に、りゅう弾砲や装甲車など6億7500万ドル(約970億円)相当の追加軍事支援をウクライナに対して行うと表明した。
会合の開催は5回目で、北大西洋条約機構(NATO)加盟国など約50か国の閣僚らが参加した。
●プーチン露大統領に焦燥の兆し  9/9
ロシアの対ウクライナ戦争は、ウクライナ側にわずかに有利な展開になったようだ。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が新たな脅しをかけていることと、ロシアが従来は兵器を供与してきた国々からの兵器調達に奔走していることは、それを示す一つの兆候だ。
ロシアは2月の電撃作戦が早期の勝利で終わると予想していたが、紛争はこう着状態となり、ウクライナは現在、ロシアの兵たんを破壊し、領土を取り戻すために南部で反転攻勢に出ている。ロシアは軍需物資の備蓄を取り崩さざるを得なくなった。特にスマート兵器の補充に苦労しているのは、西側諸国による制裁で、最新兵器に使われるコンピューターチップなどの部品の対ロ輸出が禁止されているためだ。
こうして、世界最悪のならず者国家であるイランと北朝鮮を相手にした、ロシア政府の「物乞い作戦」が始まった。米情報当局者らは5日、「深刻な供給不足」を緩和するため北朝鮮がロシアを支援していると記者団に語った。これは、イランがロシア政府にドローン(無人機)を供給しているという先月の報道に続くものだ。大国の地位を主張する国は通常、必要とする国々に兵器を提供するが、その逆はない。
プーチン氏は7日、ロシアのエネルギー輸出をさらに減らす可能性を示唆したほか、黒海を通じたウクライナ産の穀物輸出を容認するという、自らが結んだ合意の破棄をも辞さない姿勢を示した。このことからも、プーチン氏の不安の度合いを測ることができる。ロシアは最近、パイプライン「ノルドストリーム1」を通じた欧州への天然ガス供給を停止した。プーチン氏は供給停止を延長して、その対象に石油と石油精製品を加えるとの脅しをかけた。同氏は寒い冬に向かう欧州の指導者にさらなる政治的圧力をかけたいと考えている。しかし、そのような供給停止はどんなものであれ、戦費となるロシア政府の収入にも打撃を与える。
穀物に関して言うと、プーチン氏は今夏、ロシアが世界の食料不足の責任を問われないようにするために、ウクライナからの輸出を容認する合意を締結した。同氏は7日、西側諸国が途上国への食料供給を口実に、さまざまな面で自分たちを利するために合意を利用しているのは「あからさまな詐欺」だと非難した。
しかし、プーチン氏は食料の市場がグローバルであることや、穀物輸出合意の目的の一つが、供給拡大を通じた食料価格の押し下げだったことを分かっている。価格が低下すれば、貧しい国々にも恩恵が及ぶ。プーチン氏はウクライナ産穀物の輸出を本当に停止させれば、それが引き起こす苦難について、責任を問われることになる。
プーチン氏がウクライナ産穀物の輸出を本当に阻止した場合には、米国はプーチン氏に対し、ウクライナ産穀物輸送船の艦船による護衛を、有志連合諸国が検討するだろうと警告することも可能だ。同様の計画は、1980年代にイランの脅威への対策としてペルシャ湾から石油を運び出すタンカーを護衛するという形で、実施されたことがある。ロシア軍が人員と物資の不足に苦しむ中、平和的な護衛任務を遂行している西側諸国の船舶への威嚇に、プーチン氏が乗り気になるとは考えられない。
ウクライナでの戦争の終結までの道のりは遠い。そしてプーチン氏は、残虐行為と脅しをエスカレートさせるかもしれない。しかしロシア政府のから騒ぎぶりは、ウクライナ側の抵抗とウクライナへの外国の支援の効果が表れていることを示している。プーチン氏が侵攻を継続するならば、ウクライナと最前線に位置する北大西洋条約機構(NATO)諸国に対するその策略を止めるためには、最新兵器の供給を続けることが極めて重要となる。ウクライナだけでなく、ロシアもまた苦しい状況にある。 
●ウクライナ軍 欧米の支援で東部でも反転攻勢 複数の集落を奪還  9/9
ウクライナ軍は南部に続き、東部のハルキウ州でもロシアが支配した複数の集落の奪還に成功したと発表していて、欧米の軍事支援を受けながら反転攻勢を強めています。
ウクライナ軍は、ヘルソン州など南部に続いて、東部ハルキウ州でも反撃に向けた軍事作戦を続けていて、軍の参謀本部は8日、ロシア側が占領した地域に最大で50キロ攻め入ったほか、20の集落を解放したと明らかにしました。
また、東部ドネツク州のクラマトルシク近郊などでも、ロシアが占領した地域に攻め入ったとしていて、欧米の軍事支援を受けながら、反転攻勢を強めています。
ゼレンスキー大統領も8日、「9月に入ってからこれまでに、合わせて1000平方キロメートル以上に及ぶ領土を解放した」と戦果を強調しました。
ロシア軍が、南部の防衛のため東部から部隊を展開させる中、ウクライナ軍の反撃につながったと指摘されていて、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は8日、「ウクライナ軍がハルキウ州の反撃に成功したことに対し、ロシア国防省は沈黙している」と分析しました。
ロシア国防省は8日、東部のドネツク州やハルキウ州、それに南東部ザポリージャ州などで、ウクライナ軍の兵器や弾薬庫を破壊したとしていますが、軍の作戦指揮について、ロシア側の一部の軍事評論家からも疑問視する声があがっています。
●ウクライナ軍 ハルキウで複数の集落奪還 さらなる奪還へ米支援  9/9
ウクライナ軍は、東部ハルキウ州でロシアが支配していた複数の集落の奪還に成功したと明らかにし、反転攻勢を続けています。こうした中、首都キーウを訪問したアメリカのブリンケン国務長官はウクライナなどに対し、日本円にして4000億円規模の軍事支援を表明するなど、さらなる領土奪還に向けて支援する姿勢を強調しました。
ウクライナ軍の参謀本部は8日、これまでに東部ハルキウ州などでロシア側が支配していた20の集落を解放し、700平方キロメートル以上の領土を奪還したと明らかにしました。
また、東部ドネツク州のクラマトルシク近郊などでも、ロシアが占領した地域に攻め入ったとしています。
ゼレンスキー大統領も8日、「9月に入ってから、これまでに合わせて1000平方キロメートル以上に及ぶ領土を解放した」と述べ、反転攻勢を強調しています。
こうした中、アメリカのブリンケン国務長官は8日、首都キーウを事前に発表することなく訪問し、ゼレンスキー大統領と会談しました。 ブリンケン長官は、ウクライナ軍が東部や南部で反転攻勢を強めていることを念頭に「今が重要な局面だ。ロシアの軍事侵攻は6か月以上続いているが、ウクライナ軍の反撃は今も続き、成果を上げている」と述べました。
そのうえで、砲撃に使うりゅう弾砲や、高機動ロケット砲システムのロケット弾など、合わせて6億7500万ドル、日本円にしておよそ970億円相当の新たな軍事支援を行うと伝え、さらなる領土奪還に向けて支援する姿勢を強調しました。
これに対し、ゼレンスキー大統領は「アメリカが、ウクライナとともにあるという非常に重要なシグナルだ。われわれにとっては、領土を取り戻せるという保証だ」と応じました。
また、ブリンケン長官は、この支援とは別に、ロシアの脅威にさらされているとして、ウクライナや隣国のモルドバなど19か国に対し、22億ドルの軍事支援を行うと発表し、今回表明した支援額の総額は日本円にして4000億円規模に上ります。
●プーチン氏、英女王の葬儀欠席へ 大統領府 9/9
ロシア大統領府は9日、前日に死去した英国のエリザベス女王の葬儀にウラジーミル・プーチン大統領が参列する予定はないと発表した。
ドミトリー・ペスコフ報道官は同日の定例記者会見で、「ロシア人は女王の英知を尊敬していた」としつつも、女王の葬儀へのプーチン氏の参列は「検討されていない」と述べた。
●エネ供給武器のプーチン戦略、「ロシアにも痛手」の試算 9/9
「西側へのエネルギー供給を場合によっては、完全に停止する」――。ウクライナ侵攻を巡って欧米との関係悪化が続くロシアのプーチン大統領によるこうした脅しは、ロシアにとってもろ刃の剣となる恐れがある。
欧州連合(EU)は7日、ロシア産ガスの価格に上限を設ける案を表明。その直前にプーチン氏は、そうした上限が導入されるならロシアは供給を止めるとほのめかし「われわれにできるのは、ロシアの有名な民話のように(氷に穴を開けて尻尾で魚を釣っている)オオカミに尻尾が凍ると警告することのみだ」と言い放った。
サウジアラビアに次ぐ世界第2位の産油国で、同時に世界最大の天然ガス輸出国であるロシアから欧州へのエネルギー供給が途絶えれば、世界中のエネルギー市場は一層混乱し、国際価格はさらに跳ね上がる公算が大きい。
ロシア国営ガス会社・ガスプロムのミレル最高経営責任者(CEO)は8月、欧州のガス価格は今後1000立方メートル当たり4000ドルまで高騰する可能性があると発言している。7日時点の価格は約2200ドルだった。
ただ、EUがエネルギー調達で脱ロシア化計画をこのまま推進していけば、ロシアも痛手を受けることになる。
8月30日にミシュスチン首相が主催した非公開会合に提出された、ロシアのエネルギー戦略をまとめた文書には、ウクライナの戦争に付随するエネルギーセクターの「制約やリスク」の概要が記されている。ロイターが全体の内容を確認して明らかになった。
「2030年までの新たな情勢下での事業活動の戦略的方向性について」と題された文書は、外国顧客への供給を減らすと低価格に設定した国内販売の損失を輸出収入で補うという従来の仕組みが崩れると指摘。その結果として、各地域でのガス開発に必要な資金が不足しそうだとの見方を示した。
同文書はEUが2027年までにロシア産ガス輸入をやめると、1)30年までに年間で4000億ルーブル(65億5000万ドル)の減収になりかねない、2)27年までにガス輸出が年間1000億立方メートル減ってもおかしくない――と分析。その上で、30年までのロシアのガスセクター向け投資は約410億ドル目減りするとみている。
エネルギーが切り札
ロシアにとって欧州への石油とガスの販売は、ずっと主な外貨調達源だった。そして、1999年末にボリス・エリツィン氏から大統領の座を引き継いだプーチン氏が目指してきたのは、自国のエネルギー資源を切り札として、旧ソ連崩壊後に弱まったロシアの力を取り戻すことだった。
今回のウクライナを巡る欧米との対立局面でも再びエネルギーを武器に外交を展開するプーチン氏は、この戦争でロシアは新たな道に踏み出しているので何も失っていないし、むしろ得をしていると強気の言葉を発している。
プーチン氏が繰り返しているのは、欧州がロシア産石油・ガスを買いたくないのなら、あるいは価格に上限を設定するのであれば、ロシアは中国やインドに主要顧客を切り替えるというメッセージだ。
だが、これを実行するためには、東方に向けたパイプラインの建設を加速させなければならない、と同文書は指摘する。
現在、ロシアから中国への主要ガスパイプラインは「パワー・オブ・シベリア1」のみ。今年全体で見込まれる輸送量は160億立方メートルと、通常時に毎年欧州に輸送する量の11%にとどまる。
ヤマル半島にあるボバネンコボ、ハラザベイ両ガス田から中国につながる「パワー・オブ・シベリア2」はまだ完成していない。
最悪シナリオ
欧州がロシアに代わるエネルギーの調達先を見つけられた場合、ロシアは相当大きな試練に直面する。
同文書が描く最悪シナリオに基づくと、27年までに欧州諸国はロシア産石油への依存を完全に断ち切ることが可能で、「ドルジバ」石油パイプラインとバルト海沿岸の港が深刻な打撃を受ける。
ドルジバは昨年3600万トンを運び、バルト海沿岸の港は2019─21年で年間6000万─8000万トンの原油を取り扱ってきた。
同文書によると、ロシアのエネルギー業界は採掘の難しさなどに伴う生産コスト増加という旧来の課題に、輸出先切り替えコストとタンカー需要の高まりという新たな逆風が加わるという。
また、特に液化天然ガス(LNG)と石油精製の分野では、西側の技術が利用できなくなることで、ロシアのエネルギー業界は厳しい選択を迫られるだろう。
同文書は、LNG生産プロジェクトから技術面のパートナーが撤退すると、新規施設を稼働させるタイミングが遅れると警告。石油製品輸出は昨年の約55%相当、8000万トン分が減少し、精製活動は25─30%低下して国内向けの十分なガソリン生産も確保できなくなり、燃料価格を押し上げると懸念している。
このところは事業が順調で、今年1─6月の利益が2兆5000億ルーブルの過去最高だったガスプロムも、長期的には暗雲が立ち込める。
アナリストによると、世界全体の埋蔵量の約15%、ロシア全体の68%を握る同社は、いずれガス田の操業を停止するか、未利用ガスの燃焼処分が必要になるかもしれないという。

 

●ロシア、年内に3000万トンの穀物輸出へ=プーチン大統領 9/10
ロシアのプーチン大統領は9日、ロシアが年内に3000万トンの穀物を輸出する見通しで、いずれは5000万トンに拡大する用意があると表明した。
プーチン氏は安全保障会議で行ったテレビ演説で、国連とトルコの仲介によって締結したウクライナからの穀物輸出再開に関する合意について、ロシアや世界の低所得国が不利益を被っているという考えを改めて示した。
7月に締結した合意は、ロシアやウクライナが延長で合意しなければ、11月に失効する。
プーチン大統領は7日、ウクライナとの穀物合意を修正し、穀物を輸入できる国を制限したいとの意向を示していた。
●プーチンが大失政、ロシアのエネルギー産業崩壊の危機 9/10
プロローグ/漂流するプーチン・ロシア号
ロシア(露)のV.プーチン大統領(69歳)を船長とする「プーチン・ロシア」号は、目的地不明の羅針盤のない航海に出た結果、ロシアの国家戦略とエネルギー政策が漂流しています。
旧ソ連邦復活を夢見て、羅針盤のない航海に出た「プーチン・ロシア」号がどこに到着・漂着するのか現状では不明です。
しかし、沈みゆく船から真っ先に鼠が逃げ出すがごとく、鼠は既に逃げ始めています。
漂流の途中で食料が尽きる可能性もあり、座礁するか、無人島に漂着するかもしれません。
戦艦バウンティ号のように、近い将来、船内反乱が起きることもあり得ましょう。
プーチン新ロシア大統領が2000年5月に誕生した時、彼のスローガンは強いロシアの実現と法の独裁でした。
ロシアの大統領は弱いB.エリツィン大統領から強いプーチン大統領に代り、ロシア国民はプーチン大統領誕生に期待を寄せていました。
当時サハリン(旧樺太)に駐在して、現場で「サハリン-1」プロジェクトに従事していた筆者も、新大統領登場によりロシアは変わるだろうと期待しておりました。
その22年後の2月24日、ロシア軍はウクライナに軍事侵攻開始。
結果として、弱いロシアの実現と大統領個人独裁の道を歩んでおり、プーチン大統領は自らロシアの国益を毀損することになりました。
これを歴史の皮肉と言わずして、何と言えましょうか。
ロシアの国益を毀損するプーチン大統領
本稿では、プーチン大統領がいかにロシアの国益を毀損しているのか、ロシアは今後どうなるのか、筆者の独断と偏見と想像を交えて予測してみたいと思います。
筆者は、プーチン大統領は3本のルビコン川を渡ったと考えます。
1本目のルビコン川はロシア・ウクライナ国境、2本目のルビコン川は天然ガスパイプライン(P/L)を政治の道具に使ったこと、3本目のルビコン川は大統領令によりロシア連邦法を破ったことです。
旧ソ連邦と新生ロシア連邦は欧州大手ガス需要家にとり信頼に足る天然ガス供給源として、過去50年以上の長きにわたり、天然ガスを安定供給してきました。
しかし、これは当然です。他に主要外貨獲得源がないゆえ、信頼に足る石油・ガス供給源としての地位確立は旧ソ連邦・新生ロシア連邦にとり国益そのものでした。
ところが、露プーチン大統領は旧ソ連邦・新生ロシア連邦が過去50年以上の長きにわたり営々と築いてきた信頼を一日にして喪失。
文字通り、「築城五十年、落城一日」となりました。
次に、プーチン・ロシア号の近未来を予測します。
プーチン大統領に対しもはや諫言する側近はおらず、治安情報関係の身内しか信用していないと言われています。
ゆえに、早晩内閣を改造して、実質戦時内閣を組閣するものと筆者は予測します。
ただし、羅針盤なき航海の到着地は未定・不明にて、今後も漂流を続けることになるでしょう。
3油種油価動静(2021年1月〜2022年8月)
最初に、2021年1月から22年8月までの3油種(北海ブレント・米WTI・露ウラル原油)の週間油価推移を概観します。
油価は2020年後半から2022年2月末まで上昇基調が続きました。
ロシアの代表的油種ウラル原油は、西シベリア産軽質・スウィート原油(硫黄分0.5%以下)とヴォルガ流域の重質・サワー原油(同1%以上)のブレント原油で、中質・サワー原油です。
ゆえに、ウラル原油は英語では「URALs」と複数形のsが付きます。
ちなみに、日本が輸入していたロシア産原油は3種類(S-1ソーコル原油/S-2サハリンブレンド/ESPO原油)のみで、すべて軽質・スウィート原油です。
しかし、日本は今年2022年6月以降、ロシア産原油の輸入を停止しました。
今年(2022)8月29日〜9月2日の平均油価は北海ブレント$95.31/bbl(スポット価格)、米WTI $90.79(同)、ウラル原油(黒海沿岸ノヴォロシースク港出荷FOB)$74.34となりました。
ブレントとウラル原油には大きな値差があります。
この超安値の露産原油を買い漁っているのが中国とインドで、ロシアは現在、アジア諸国に対し市場価格より3割安い油価でオファーしていると報じられています。
日系マスコミではよく、「ウクライナ開戦後、油価は上昇した。ロシアは油価上昇を享受しており、石油収入は増え、戦費の問題はない」という解説が掲載されたり話されたりしていますが、これは間違いです。
上記のグラフをご覧ください。黒色の縦実線はロシア軍がウクライナに全面侵攻した2月24日です。
この日を境として、北海ブレントや米WTIの油価はいったん上昇しましたが、8月末の時点では侵攻前の油価水準を割りました。
一方、露ウラル原油はウクライナ侵攻後に油価下落。
8月末現在では、侵攻前と比較してバレル約$20低い水準で推移しています。すなわち、露ウラル原油は侵攻後下落したのです。
プーチン大統領の思考回路
ソ連邦は今から100年前の12月に誕生しました。
1917年の「2月革命」(旧暦)で帝政ロシアが崩壊して、ケレンスキー内閣が樹立。その年の「十月革命」でケレンスキー内閣が倒れ、レーニンを首班とするソビエト政権が誕生しました。
その後ロシアは赤軍と白軍に分かれた内戦状態となり、ソビエト連邦が成立したのは1922年12月30日でした。
ですから、今年(2022)12月はソビエト誕生100周年記念の年になります。
ロシアのV.プーチン大統領が何を目指してウクライナに全面侵攻したのか様々な説が流れていますが、本人の頭の中にはソ連邦復活の夢(夢想)が蘇っていたことでしょう。
露プーチン大統領は2000年5月7日新大統領に就任、7月8日に第1回大統領年次教書を発表しました。
最初の大統領年次教書は「ロシアは分裂の危機に瀕している」と悲壮感にあふれる内容であり、「強いロシアの実現を目指す」と国民に訴えました。
その後、プーチン大統領は2005年4月25日の本人にとっては6回目の大統領年次教書の中で、「ソ連邦崩壊は20世紀最大の地政学的惨事である」と述べています。
この頃から、ソ連邦復活の思考回路にスイッチが入ったのかもしれません。
ロシア軍のウクライナ全面侵攻作戦は2022年2月24日に発動され、この記事公開日の9月10日で侵攻開始後199日目となりました。
既に7か月目に入り、戦争は長期戦・消耗戦の様相を呈しています。
侵攻開始2日後には首都キエフ(現キーウ)を制圧し、ロシア傀儡政権樹立構想でしたから、プーチン大統領にとり現在の戦争長期化・泥沼化は想定外の大誤算と言えましょう(後述)。
戦争泥沼化によりプーチン大統領は国内マスコミ統制強化と実質「戦時経済」への移行を余儀なくされ、露マスコミ報道は太平洋戦争中の日系マスコミ同様、「大本営発表」であふれることになりました。
S.ショイグ国防相は8月24日、「ロシア軍は民間人の犠牲を抑えるべく、進軍速度を落としている」と発言。
国防相が誰でもすぐ分かる嘘をつかざるを得ないところに、ロシア軍の苦戦・苦境が透けて見えてきます。
NATO(北大西洋条約機構)東進を阻止すべくウクライナ侵攻開始したのに、逆にフィンランドとスウェーデンのNATO加盟を誘発。
従来は対ノルウェー国境170キロがNATO対峙線でしたが、新たに1269キロのフィンランド国境がNATO対峙線となり、結果としてNATO東進を促進。
これはプーチン大統領の戦略的失敗と言えます。
ウクライナ軍によるクリミア半島攻撃が激化。従来、戦場ではなかった場所が戦場となり、クリミア半島に住むロシア人も戦争を意識せざるを得ない状況になりました。
ウクライナのゼレンスキー大統領はクリミア半島奪還を表明しましたので、ロシア軍によるウクライナ全面侵攻作戦は新局面に入りました。
これも、プーチン大統領にとり不都合な真実と言えましょう。
短期全面制圧を目指してウクライナ電撃侵攻作戦を開始したプーチン大統領にとり、ウクライナ全面侵攻後半年経っても何一つ目的を達成できないとは、誰が想像し得えたことでしょうか?
ロシア軍がウクライナに全面侵攻したとき、露プーチン大統領は「戦争」ではなく「軍事作戦」と称しました。
旧日本軍が中国に侵攻した時、日本軍は「戦争」ではなく「事変」と称しました。
とすれば、今回の侵攻は「ウクライナ事変」と呼ぶのが相応しく、プーチンにはウクライナ事変がよく似合うとなりましょうか。
日本が日中戦争の泥沼から抜け出せなくなったように、ロシアはウクライナ戦争から抜け出せなくなり、国家衰退の道を歩むことになるだろうと筆者は予測します。
世界の耳目を驚かすプーチン大統領
今年(2022)6月から8月にかけ、ロシアでは世界の耳目を驚かすビジネス関連事件が3件、唐突に続発しました。
   1ノルト・ストリーム1(以後、NS1)天然ガス輸送問題
   2「サハリン-2」問題(大統領令416号)
   3「サハリン-1」問題(大統領令520号)です。
本稿では、世界の耳目を驚かせた、ロシアによるこの3つの暴挙を概観することにより、問題の本質は何かを考察したいと思います。
ロシアからバルト海経由ドイツ向け天然ガス海底パイプライン(以後、P/L)輸送量が今年6月、突然削減されました。
理由は、「ノルト・ストリーム1用ガス・タービンを修理に出したが、戻ってこない」との露ガスプロム側説明でした。
この結果、2022年8月の段階ではNS1の年間輸送能力55bcmに対し2割の天然ガス輸送量になっていましたが、露ガスプロムはさらに、「8月31日から3日間、定期修理のためNS1を全面停止する」と発表。
3日間の定期修理後にはまた不具合が見つかったとして、2022年9月8日現在、NS1の操業は全面停止されています(bcm=10億立米)。
しかし、このガス・タービン問題により、天然ガスP/L輸送が不可能になったのではありません。それは、あくまでも口実にすぎません。
すべての石油(原油・石油製品)P/Lや天然ガスP/Lは毎年必ず、保守点検や定期修理のため一時稼働を停止します。
しかし、事前に供給者(輸出者)は需要家(輸入者)に連絡して、迂回路で供給したり、備蓄施設から融通したり、最悪需要家に供給量削減で納得してもらいます。
NS1の場合、ロシア側出荷基地には予備含め計8基のコンプレッサーステーションがあり、毎年順番に保守点検・定期修理を実施しています。
ですから過去10年以上の長きにわたり、何の問題もなくロシアからドイツに天然ガスが供給されてきました。
今回、ロシアは天然ガスP/Lを政治利用したのです。
付言すれば、このガス・タービンは英ロールスロイス製の「Trent60」というモデルです。
本来は航空機用ジェットエンジンですが、これを地上用に改造したのが独シーメンス社の「SGT65」モデルで、仏ドレッサー製コンプレッサーと組み合わせて使用しています。
ロシアの石油・ガス産業
欧米メジャーが抜ければ、気象条件の厳しい海洋鉱区における石油・天然ガス生産は持続困難です。
厳しい海洋気象条件下の原油・天然ガス鉱区の探鉱・開発・生産・輸送には、欧米メジャーとシュランベルジャーやハリバートン、独ジーメンスや英ロールスロイス、米ベーカーヒューズGE(ゼネラル・エレクトリック)など、欧米の最新技術とノウハウの総合力が必要になります。
サハリン-2プロジェクトの場合、英シェルが抜ければ、LNGの原料となる天然ガス生産自体が困難になります。
当面は一匹狼の技術者雇用により短期間凌げますが、持続的生産は不可能です。
「欧米による対露経済制裁は効果ない」と書いたり・話したりしている評論家もいますが、現実は正反対です。
対露経済制裁措置が強力に効いているがゆえに、プーチン大統領は外資に対して「ロシアから出ていけ」と言ったが(大統領令416号)、外資が出ていくと石油・ガス生産に支障がでることを理解すると、今度は「出ていくな」という矛盾した大統領令(大統領令520号)を乱発しているのです。
上記より、欧米メジャーが撤退すればロシアのLNG構想は全面崩壊の可能性大となり、ロシアの国益を標榜するプーチン大統領自身が、図らずもロシアの国益を毀損していることが判明します。
すなわち、ロシアの真の敵はプーチン大統領その人との結論に至ります。
露大統領令416号と政令1369号
ロシアの法体系の優先順位は1憲法 2連邦法 3大統領令 4政令にて、「平時」において大統領令により連邦法を修正することはできません(「戦時」は別)。
このことを報じている日系マスコミは存在しませんが、問題の本質は露大統領自身が露連邦法に違反する大統領令を発令したことです。
なぜなら、サハリン-1と2のPSA(生産物分与契約)は実質、ロシアの法律になっているからです。
大統領が自国の法律を破る国に新規投資する企業は皆無となりましょう。
露プーチン大統領のエネルギー政策が漂流しており、今年に入り6月30日付け大統領令416号と8月5日付け大統領令520号と、相反する趣旨の大統領令を乱発しています。
本稿ではまず、6月30日付け大統領令416号と8月2日付け露政令1369号を概観します。
プーチン大統領は2022年6月30日、大統領令416号に署名しました。 これは、サハリン島北東部沖合のオホーツク海にて原油・天然ガスを探鉱・開発・生産しているサハリン-2プロジェクトに対し、事業会社「サハリン・エナジー社」の権益を、今後新規に設立されるロシア法人「サハリンスカヤ・エネルギア」に無償譲渡させる内容です。
しかし上記の通り、この大統領令自体がロシア連邦法に違反しています。
大統領令416号を受け、露政府は新ロシア法人「サハリンスカヤ・エネルギア」設立に関する8月2日付け政令1369号を発布。
新ロシア法人有限責任会社「サハリンスカヤ・エネルギア」が8月5日、サハリン州の州都ユージノ・サハリンスク(旧豊原)に登記されました。
日本政府は三井物産と三菱商事に対しS-2権益維持を要請し、三井・三菱はS-2新会社「サハリンスカヤ・エネルギア」に権益参加継続を決定。権益維持すべく、新会社に申請して許可されました。
ここで重要なことは、商社の権益維持とS-2「サハリンスカヤ・エネルギア」による対日LNG供給は別次元の問題であり、直接の関係はありません。
LNG供給契約は日本の需要家とサハリンスカヤ・エネルギア間の契約になり、三井・三菱はLNG契約の当事者ではないのです。
三井・三菱が権益参加継続すれば対日LNG供給が継続されると考えているとしたら、それは大いなる幻想にすぎません。
三井・三菱はS-2事業会社への出資者であり、事業会社が利益を出せば権益に応じて利益配分を受け、事業会社が赤字になれば権益に応じて赤字負担します。
LNG工場自体は新ロシア法人「サハリンスカヤ・エネルギア」に移管されますが、英シェルは既にS-2プロジェクトからの撤退を表明しています。
英シェルが抜ければ工場の保守・点検を担当する技術者もいなくなり、定期修理に必要な資機材も入手不可能になり、早晩LNG生産は低下・停止するでしょう。
売上減少しても運転資金は必要ですから、事業会社は赤字となり、権益参加者は赤字負担を強いられることになります。
筆者は、1〜2年後にはこの様な事態が表面化するものと予測します。
もっと重要なことがあります。
サハリン-2プロジェクトでは、サハリン島北東部沖合のオホーツク海サハリン-2鉱区(ルニ鉱区とピルトン・アストフ鉱区)で石油・ガスを探鉱・開発・生産していますが、シェルが抜ければ石油・ガス生産は徐々に停滞・減少することでしょう。
換言すれば、たとえLNG工場が稼働していても、原料となる天然ガスが不足する事態が早晩出現することになるでしょう。筆者は1〜2年後にはそうなると予測しております。
仮に、「英シェルが抜けても、サハリン-2の石油・ガス生産やLNG生産は問題ありません」と言っている人がいたとしたら、それはこのプロジェクトの実態を知らないか、あるいは「不都合な真実」を隠しているかのどちらかになります。
日本政府は三井物産と三菱商事に対しS-2権益維持を要請し、三井・三菱はS-2新会社「サハリンスカヤ・エネルギア」に権益参加継続を決定。権益維持すべく、新会社に申請して許可されました。
ところがその後、事態は急展開。9月7日付けロイター電は以下のごとく報じました。
「「サハリン2」新会社出資に大規模LNG事業の経験要求=ロシア政府
ロシア政府は6日、極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」を担う会社への出資について、年間生産能力が400万トンを超える液化天然ガス(LNG)プラントの操業経験がある事業者に限るとする条件を法令で示した。」
しかし、筆者はこのロシア側新基準は当然だと思っております。
上述のとおり、気象条件の厳しい海洋鉱区においては、欧米メジャーや石油サービス会社の参画なしには探鉱・開発・生産・輸送などは不可能です。
シェルが抜ければ、鉱区現場での石油・天然ガス生産も、LNG工場稼働も徐々に困難になり、最終的には生産停止必至となりましょう。
ロシア側も、遅ればせながらやっとこの事情を理解したのだと思います。
これが、ロシア側が急遽、権益参加基準を変更したゆえんと筆者は考えます。
ロシア側ではもう一つ、面白い動きが出てきました。
サハリン-2から撤退を表明しているシェルに代り、北極圏グィダン半島で「Arctic LNG 2」プロジェクトを推進している露Novatek社がシェルの権益譲渡を引き受けたい旨を申し出たと報じられました。
しかし、露Novatek社自体はLNG操業経験もありません。LNG操業経験のあるのは、Novatek社に10%の資本参加している仏トタールです。
ですから、Novatek社のサハリン-2権益参加は、仏トタールにオペレーター(主操業者)としてサハリン-2の運営・操業を委託したいというのがロシア側意向である、と筆者は推測しております。
では、仏トタールがサハリン-2の運営を引き受けるかどうかということになりますが、これは現状不明です。
ウクライナ戦争の進展次第と思いますが、恐らくトタールは辞退するでしょう。
トタールがサハリン-2のオペレーターになれば、米国から経済制裁対象会社に指定されてしまいます。
かくして、サハリン-2プロジェクトも漂流開始することになるでしょう。
露大統領令520号
世界最大の石油会社、露ロスネフチのI.セーチン社長は欧米メジャー撤退の意味を理解しています。
ゆえに、彼がプーチン大統領に出させた大統領令こそ520号にほかならないと筆者は考えます。
プーチン大統領は8月5日、露大統領令520号に署名。これは、サハリン-1プロジェクトから外資撤退を禁じる内容です。米エクソンモービルが抜ければ、サハリン-1プロジェクトも困難な時代を迎えることになるでしょう。
この大統領令の有効期限は今年末までですが、何時でも・何回でも有効期限延長可能と大統領令の中に明記されています。
すなわち、外資を絶対にロシアから撤退させないとのロシア側の強い意思が感じられます。
ウクライナ戦況
今から102年前の2月24日、ドイツのA.ヒトラーはミュンヘンのビアホール「ホーフブロイハウス」にて、ナチス党の旗揚げ式を挙行。
その2月24日に、反ナチズムを標榜するプーチン大統領麾下のロシア軍がウクライナに全面侵攻開始したのです。
これを歴史の皮肉と言わずして、何と言えましょうか。
この記事の公開日9月10日はロシア軍が2月24日ウクライナに全面侵攻開始以来199日目となり、ウクライナ戦争は丸半年を超えました。
短期電撃作戦の筈が長期戦・消耗戦となり、一番困惑しているのはプーチン大統領その人と筆者は想像します。
短期全面制圧を目指してウクライナ電撃侵攻作戦を開始したプーチン大統領にとり、この戦争長期化・泥沼化は想定外の大誤算となりました。
ウクライナ全面侵攻後半年経っても、プーチン大統領は何一つ目的を達成できていないのです。
9月8日のウクライナ大本営発表によれば、ロシア軍がウクライナに全面侵攻した2月24日から9月8日朝までの187日間におけるロシア軍の累計損害は以下の通りです。
ウクライナ参謀本部発表:ロシア軍累計損害/2022年9月8日朝現在
・戦死者:約5万1250人(前日比+640人)
・戦車:2112輌(同+15)/装甲車:4557輌(同+37)/火砲:1226門(+32)/トラック:3344台(+24)
・多連装ロケット発射台:239基(+2)/対空火器管制システム159基(+3)/巡航ミサイル214発(−)
・軍用機:239機(+2)/ヘリ 210機(+2)/ドローン 884機(+4)/軍艦 15隻(−)
ウクライナ大本営発表によれば、7月27日にロシア軍戦死者は遂に4万人を、9月8日には5万人を超えました。
一方、8月22日のウクライナ大本営発表によれば、ウクライナ軍の戦死者は約9000人の由。ロシア軍の戦死者と比較してウクライナ軍の戦死者数は5分の1、とちょっと少なすぎる感じがします。
もちろん、ウクライナ大本営発表ですからこのまま上記の数字を信じることは危険ですが、話半分としてもロシア軍の戦死者は既に2万5000人以上に達しています。
逆に、ウクライナ軍の戦死者は2倍と仮定すると、1万8000人になります。この辺がより真実に近い数字ではないでしょうか。
戦場では、戦死者1に対し、戦傷者は3の割合で発生すると言われています。この場合、ロシア軍の戦死傷者数は約10万人となり、初期投入戦力の半数以上が戦死傷者になります。
戦闘部隊は3割の戦死傷者数で「戦闘不能」となり、5割を超えると「全滅」と見做されるそうです。
とすれば、ロシア軍の対ウクライナ初期投入戦力は「全滅」したことになります。
露ショイグ国防相は8月24日、「民間人の被害を抑えるため、ロシアの進撃は遅れている」と発言しました。
これは図らずも、ロシア軍の進撃が停滞・失速していることを自ら認めたことになります。
日系マスコミではよく「ロシア国民は戦争による耐乏生活に慣れている」と話している人がいますが、そのように主張している人は重要な事実を見逃しています。
それは、ナポレオン戦争もドイツのソ連侵攻もロシア側にとり祖国防衛戦争であった点です。ロシアの祖国防衛戦争で負けたのは侵略軍です。
しかし、今回の戦争はロシアの祖国防衛戦争ではなく、ロシアの他国侵略戦争です。
ロシア側にとり、ウクライナ侵攻は意味も意義も大義もない戦争です。
一方、ウクライナ側にとっては祖国防衛戦争になります。これが、両軍戦闘部隊の士気に影響を与えないはずはありません。
最前線は消耗戦となり、勝敗の行方は兵站補給いかんとなりました。
ゆえに欧米が対ウクライナ軍事支援を継続する限りウクライナ軍有利となり、欧州が天然ガス不足の今冬を乗り切れば、ロシアには長い・寒い・暗い冬が待っていることでしょう。
プーチン大統領は高い代償を払うことになると予測します。
ロシア軍とウクライナ軍の戦力比較
ご参考までに、ロシア軍とウクライナ軍の戦力比較は以下の通りです。
ウクライナ参謀本部はロシア軍の被害を毎日発表しており、筆者は毎日記録しています。
9月8日のウクライナ大本営発表によれば、ロシア軍がウクライナに全面侵攻した2月24日から9月8日朝までの197日間におけるロシア軍の戦死者は遂に5万1250人になりました。
旧ソ連邦時代のアフガン戦争は10年間(1979年12月侵攻〜1989年2月撤退完了)続きましたが、この時のソ連軍戦死者は約1.5万人と言われています。
アフガン戦争では10年間で戦死者1.5万人でしたが、ウクライナ戦争では半年で5万人を超えました。
一方、ロシア軍の自軍被害に関する大本営発表は3月25日に発表したロシア軍戦死者1351人が最初で最後です。
これはすなわち、ロシア軍戦死者があまりにも多すぎて、公式発表できないことを意味します。
もちろん、しょせん大本営発表ですからそのまま信じることはできませんが、話半分としてもロシア軍は大被害を受けていることが透けて見えてきます。
参考までに、ロシア軍の被害割合は以下の通りです。
ここで1点、ロシア軍の戦死者数に関し付記したいと思います。
ロシア軍の場合、ロシア正規軍の戦死者将兵の遺体が戻ってきた場合のみ、戦死者と認定され、年金支払い対象になります。
換言すれば、行方不明者やロシア民間軍事会社ワグネルの傭兵部隊(ワーグナー独立愚連隊)、ウクライナ東部2州の民兵組織、チェチェン私兵軍団の戦死者などはロシア軍の戦死者に入っていないことになります。
ウクライナ戦場に露軍兵隊が少なくなったので、プーチン大統領はロシア企業に赤紙召集令状を出した由です。
戦闘現場からロシア軍がいなくなると、プーチンは愈々戦術核を使用するか、あるいはザポリージャ原発に手を出すかもしれませんね。
エピローグ/「ロシアは何も失っていない」
露プーチン大統領は9月7日、露極東経済フォーラム(於ウラジオストク)にて「ロシアは何も失っていない。何も失わない」と演説しました。本当でしょうか?
上述のごとく、ウクライナ大本営発表によれば、ウクライナ戦争におけるロシア軍死者数は既に5万人を超えています。話半分としても、死者数は2万5000人を超えています。
米国防省筋の発表でも、8月の時点でロシア軍の戦死傷者数は7万〜8万人と報じられています。
ロシア黒海艦隊の軍艦は15隻沈没しています。その中には、黒海艦隊旗艦たるミサイル巡洋艦「モスクワ」号も含まれています。
それでも「ロシアは何も失っていない」と言えるのでしょうか?
K.マルクスは「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」の中で次のように述べています。
ヘーゲル曰く、「歴史は繰り返す」。しかし彼は、「1度目は悲劇として、2度目は茶番劇として」と付け加えることを忘れた。
今もしマルクスが生きていれば、彼はプーチン大統領をどのように表現するのでしょうか?
マルクスは恐らく、次のように記述するだろうと筆者は想像します。
プーチン曰く、「ロシアは何も失っていない。何も失わない」。しかし彼は、「自分の思考回路以外は」と付け加えることを忘れた。 
●ロシア ウクライナに軍事侵攻 9/10
イギリス国防省 “ウクライナ軍 最大で50キロ前進”
戦況を分析するイギリス国防省は10日に「ウクライナ軍は今月6日からハルキウ州南部で作戦を開始し、ロシアが占領していた地域に最大で50キロ前進した。ロシア軍は奇襲を受けた」と指摘しています。
さらにウクライナ軍が東部ドンバス地域の最前線で戦うロシア軍の補給路となっているハルキウ州のクピヤンシクに迫っていて、奪還に成功すればロシア軍に大きな打撃になると分析しています。
ウクライナ軍の攻勢受け ロシアの“併合向けた住民投票”延期か
ロシア軍が支配してきた東部や南部では、ロシアで11日に行われる統一地方選挙にあわせて、併合に向けた住民投票を実施する計画があったとみられています。しかし、今月になってプーチン政権の与党幹部が住民投票を11月に実施するよう提案していて、ウクライナ軍の反転攻勢を受け投票を延期せざるを得なくなったと受け止められています。
ゼレンスキー大統領 「ハルキウ州で30以上の集落奪還」
ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、新たに動画を公開し「ウクライナ軍が東部ハルキウ州で30以上の集落を奪還し、支配下に置いた」と明らかにしました。9日にハルキウ州にある奪還した集落の1つで撮影された映像では、住宅や教会などが砲撃によって大きく壊れていて、ウクライナ側の警察が住民への支援のほか、ロシア軍による戦争犯罪について捜査を始めたということです。ウクライナ軍は先月下旬からヘルソン州など南部で反転攻勢を開始し、今月8日には東部ドネツク州のクラマトルシク近郊などでもロシアが占領した地域に攻め入ったと発表していて、各地で軍事作戦を展開し、反撃に転じているとみられます。ゼレンスキー大統領は動画のなかで「少しずつ新たな集落を奪還し、ウクライナの国旗と安全をわれわれの国民に返還する」と述べ、攻勢を続ける姿勢を強調しています。
ロシア国防省「部隊をハルキウ州に再び展開」
ロシア国防省は9日、ハルキウ州をミサイルなどで攻撃し、ウクライナ軍の指揮所を破壊し、兵士を殺害したと発表しました。さらに「ロシア軍の部隊をハルキウ州に再び展開している」として、戦車や軍用車が移動する映像を公開しました。ウクライナ軍の反撃に対応する姿勢を強調したいねらいとみられ、ウクライナ南部だけでなく東部でも激しい攻防が続いています。
プーチン大統領 自国産農産物や肥料の輸出拡大指示
プーチン大統領は9日、クレムリンで開いた安全保障会議で、ロシア産の農産物と肥料の輸出を拡大するよう関係閣僚に指示し「制裁によって、アフリカやアジア、南米へのロシア産の肥料の輸出が妨げられている。これは差別だ」と批判しました。また、ウクライナからも農産物の輸出が再開されたものの多くがヨーロッパ向けで、貧しい国に届いていないと主張し、ウクライナやヨーロッパ諸国の対応を批判しました。プーチン大統領は来週、ウクライナからの農産物の輸出再開の仲介役をつとめたトルコのエルドアン大統領と会談し、ヨーロッパ向けの農産物の輸出を制限するよう提案する考えを示しています。プーチン大統領としては、食料危機に直面するアフリカなど途上国に寄り添う姿勢を強調するとともに、ヨーロッパに揺さぶりをかけるねらいとみられます。
●モスクワ区議「プーチン氏は辞任を」 故郷サンクトペテルブルクでも 9/10
ロシア・モスクワの区議グループは9日、ウクライナ侵攻の責任を問い、プーチン大統領の辞任を要求した。モスクワに125ある地区の一つのリベラル系区議らが要請書をまとめた。少数派だが、長期化する侵攻に不満がくすぶっていることを示していると言えそうだ。
要請書は「(プーチン氏の)言動がロシアを冷戦時代に引き戻し、世界を核兵器で脅すことにつながっている」と批判。経済成長は実現せず、有能な人材が海外へ流出していると指摘した。
米政府系放送局によると、プーチン氏の故郷サンクトペテルブルクでも7日、区議グループがロシア下院に対し、「国家反逆」を理由に大統領を弾劾するよう訴える要請書を公表。ウクライナ侵攻によって若い兵士を死なせ、北大西洋条約機構(NATO)拡大も招いたと非難した。区議グループは、警察への出頭を求められたという。
●いったい何が? ロシアの政府寄りTV司会者が、傷だらけで番組に出演の怪 9/10
ロシア政府が流す「プロパガンダ」の拡散役を担っていることで知られるテレビ司会者のウラジーミル・ソロビヨフが最近、傷だらけの顔でロシア国営テレビに出演した。見るからに「何か」あったのは明らかだが、ソロビヨフ自身がその原因について語るのを拒否していることもあって、注目は高まるばかりだ。
ウクライナのニュースサイト「ザ・ニュー・ボイス・オブ・ウクライナ」のニカ・メルコゼロバのツイートによれば、ソロビヨフは顔に傷を負った経緯について説明を拒んだという。ソロビヨフはロシア政府寄りのテレビ司会者で、その立場と影響力から「プーチンの声」とも呼ばれている。
メルコゼロバが投稿したスクリーンショットを見ると、ソロビヨフの額と鼻、両頬には、赤みを帯びた傷跡がみられる。「彼は悲しそうな様子で、どこで傷を負ったのか説明を拒んだ。仲間の扇動家たちに向かって、『お前らには関係ない!』と言った」とメルコゼロバは書いている。
これを受けてツイッターユーザーの間では、ソロビヨフが傷を負った経緯について、さまざまな仮説が飛び交っている。
あるユーザーは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「ソロビヨフは(プロパガンダ拡散について)努力が足りないと不満を持ったのだろう」のだと書き込んだ。また最近、ロシアで著名な企業経営者などの「謎の転落死」が相次いでいることを思い浮かべた人も多かったようだ。ある人物は「1階の窓から転落したに違いない」とコメントした。
扇動家に労働の安全衛生などない?
脚本家でジャーナリストのナターリア・アントーノワは、次のように投稿した。「素晴らしい推察をしている人が大勢いるから、私の退屈な仮説はさらっと書いておこう。コカイン密売人との価格交渉が激しい段階に突入したのでは?」
ジャーナリストのクイントン・ムティヤラは、「プーチンのプロパガンダを担う人々に、労働の安全衛生などというものはないのだろう。出勤の際には、文字どおりパンチをかわして来なければならないのだ」
ソロビヨフは最近のテレビ出演の中で、ソビエト時代の強制労働収容所がナチス・ドイツの強制収容所と比べて、いかに恵まれた環境だったのかについて長々と自説を披露していた。
メディアサイト「デイリー・ビースト」のコラムニスト、ジュリア・デービスの翻訳によれば、ソロビヨフは「ソビエトの強制労働収容所は、管理者たちが収容者の名前を知っていて、収容者たちはソビエトの法律の下に収容所に入れられていた」と説明。「収容者は個人として扱われていた。一方でドイツの強制収容所では、収容者に『個』などなかった」と述べた。
さらに彼は「ソビエトの収容所が目指したのは再教育だった」が、ドイツの強制収容所が「目指したのは人としての収容者を破壊し、ばらばらにすること」だったと主張した。
また8月下旬には、ロシアはNATO全体を相手に戦っているのだと述べ、ロシアは「ウクライナの領土の20%以上」と「ウクライナ市民およそ1000万人をナチス化したウクライナ体制から解放」したと主張した。
一方でソロビヨフは、ロシアの姿勢に混乱も表明している。「西側は急速に、ロシアとのあからさまな対決に向けて動きつつある」と彼は述べ、さらにこう続けた。「失礼のないように言っても、我々の行動は奇妙だと思う。NATOがいずれ我が国と直接的な軍事衝突に衝突するのではないか、という考えが少しでもあるのだろうか?」
●志願兵“ノルマ1万人”の衝撃 戦闘拒否の兵士多数か ロシア軍 9/10
ロシア極東地域で行われていた大規模軍事演習が7日、閉会式を迎えました。大規模、とは言うものの前回とは比べ物にならないほど縮小しています。今回、演習は北方領土でも実施されました。公開された映像では、およそ70年前に開発された軍用車両が確認できます。ウクライナ侵攻の影響でしょうか、物資も人も足りていない実情がうかがえます。
こうした中、兵士を確保するためプーチン大統領が、大企業に対し驚きの命令を出していたことが明らかになりました。
「『ロシア鉄道』には1万人を割り当てます」(内部文書から)
プーチン大統領が、志願兵を集めるよう大企業にノルマを課したというのです。この内部文書を暴露したロシアの人権団体の幹部は…。
ロシアの人権団体幹部 アレクセイ・タバロフ氏「書類のスタイルにしても専門用語にしても、この書類はフェイク(嘘)ではないと言えます。ロシアの大企業や国営企業では兵士募集が行われていることを何回か聞きました」
ロシア鉄道の従業員は72万人。そこから1万人の志願兵を派遣するのは簡単なことではありません。最前線の部隊で何が起こっているのでしょうか…。
ロシアの人権団体幹部 アレクセイ・タバロフ氏「戦闘継続を大勢の人が拒否しています。3カ月の短期契約をして従軍した人も1〜2カ月過ぎると逃亡しようとしています」
一方、モスクワ市内の地方議会では、公然と反プーチンを打ち出す動きも出てきました。
ロモノフスク区議会「モスクワ・ロモノフスク区の議員一同は、プーチン大統領の辞任を求めます」
その理由として経済的な問題をあげたうえで…。
ロモノフスク区議会「ロシアはまたしても怖がられ憎まれる存在になりました。我々は再び全世界を核兵器で脅しています」
●統一地方選、11日投開票 ウクライナ侵攻も延期せず―リベラル派「平和」訴え 9/10
ロシア全土で11日、統一地方選の投開票が行われる。ウクライナ侵攻中で延期論もあったが、プーチン大統領の決断で封印されたもようだ。ロシア軍に関する「偽情報」を広めた場合、最高15年の禁錮刑が科される法律があり、政権与党「統一ロシア」の中に侵攻を批判する声は皆無だ。少数派のリベラル勢力は「平和」を訴え、無風選挙の中でも「戦争」が見え隠れする。
首都モスクワでは区議選を実施。期日前投票は9日に始まったが、関心は低そうだ。
独立系メディアによると、今回の統一地方選に際して「シロビキ」と呼ばれる軍・治安機関出身者が延期を検討。しかし、ウクライナ問題を担当するキリエンコ大統領府第1副長官がプーチン氏を説得し、実施にこぎ着けたという。
有事とはいえ、国内で戦争ではなく「特別軍事作戦」という位置付け。ロシア軍に多大な損害が出ていると欧米が推計する中でも、政権は国民の反発を恐れて「総動員」を宣言していない。統一地方選の延期論を封じた背景には、制裁下でも「正常な国民生活」を演出し、プーチン氏の再出馬が見込まれる2024年の大統領選に向けて環境を整備する狙いもあるもようだ。
選挙監視団体「ゴロス」は8月の報告書で、統一地方選が「過去10年間で最も競争のない選挙の一つ」になると指摘した。それでも、リベラル政党「ヤブロコ」は「平和のために!」というスローガンを掲げ、反戦を訴えている。
収監中の反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の陣営は「過激派組織」に指定され、選挙に参加できないが、統一ロシア候補を落選させる戦術「賢い投票」をモスクワ区議選で呼び掛けた。ナワリヌイ氏は最近、収監先を頻繁に変えられ、弁護士との面会も制限されているもようで、統一地方選に絡んだ圧力の可能性がある。
●プーチン氏の「弾劾」呼び掛け、自治体当局者に罰金か ロシア 9/10
ロシア第2の都市サンクトペテルブルクの自治体の当局者がプーチン大統領の弾劾(だんがい)訴追を呼び掛け、警察に呼び出された。罰金が言い渡されるとみられている。
ロシアで反体制的な見解が示されるのは異例。サンクトペテルブルクにあるスモルニンスコエ地区の議員は連邦議会下院に対し、プーチン氏を反逆容疑で弾劾訴追するよう求めた。
要望書を執筆したドミトリー・パリュガ氏は、ツイッターにプーチン氏の容疑を列挙。軍隊よりも職場で活躍すべき健康なロシア人男性の大量殺りく、ロシアの景気低迷と頭脳流出、フィンランドとスウェーデンの加盟を含む北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大、「特別軍事作戦」が逆効果に終わったことを挙げている。
パリュガ氏ともう1人の議員はツイッターに、サンクトペテルブルク市警が出した召喚状を投稿。罪状は「支配層の信用をおとしめたこと」だった。
その後のパリュガ氏の報告によると、警察に呼び出された議員4人のうち2人は釈放された。全員に罰金が言い渡される見通しだという。
ロシア政府はウクライナ侵攻に対する批判を封じ込めようと躍起になっている。人権団体「OVDインフォ」によると、ロシアでは侵攻開始以来、1万6437人が反戦活動で逮捕または拘束された。

 

 

●ロシア軍 ウクライナ東部のイジュームから “事実上の撤退”  9/11
ロシア国防省はウクライナ東部の重要な拠点となっているイジューム周辺の部隊の再配置を決めたと発表し、事実上、イジュームからの撤退を表明したものとみられます。
ウクライナ軍がイジュームを奪還すれば、ロシア軍にとって大きな打撃となるとみられ、ウクライナ軍は領土奪還に向けた反撃を強めています。
ウクライナの治安機関は10日、東部ドンバス地域の最前線に展開するロシア軍部隊への補給路となっているハルキウ州クピヤンシクをウクライナの部隊が奪還したことを明らかにしました。
これに続いて、イエルマク大統領府長官は10日、さらに南へ60キロほど離れたイジューム郊外にいるウクライナ軍部隊の写真をSNSに投稿しました。
ハルキウ州にあるイジュームは、ロシア軍が東部ドンバス地域に部隊を展開するうえで補給などの重要な拠点になっています。
そのイジューム周辺に展開するロシア軍について、ロシア国防省は10日、「ドネツク方面への作戦強化のために部隊の再配置を決めた」と発表し、事実上、イジュームからの撤退を表明したものとみられます。
また、イジュームの親ロシア派の幹部も「ウクライナ軍による砲撃を受け非常に厳しい状況にある」としたうえで、動画を通じて、避難を名目に、地元の住民をロシア領へ移す考えを示しました。
ウクライナ軍がイジュームを奪還すれば、東部ドンバス地域の広い範囲に部隊を展開させるロシア軍にとって大きな打撃になるものとみられます。
ウクライナ軍は欧米諸国から供与された兵器などを使って、ロシア軍が支配する地域の奪還に向けて8月下旬からヘルソン州など南部で、9月に入ってからはハルキウ州など東部でも反転攻勢に乗り出していて、領土奪還に向けた反撃を強めています。
●ウクライナで荒稼ぎ ロシア特殊部隊員は急ごしらえでも「給与は平均の3-4倍」 9/11
ロシア連邦チェチェン共和国にある「ロシア特殊部隊大学」。現在ここで軍事訓練を受けているのは、ロシア各地から集まった“志願兵”たちだ。彼らは2週間の訓練を終えると、ウクライナの戦場へと送られるという。野蛮な侵攻作戦の開始から半年、見えてくるのはロシアの粘り強さだった――。
侵攻開始から半年、ロシア側にも数万の死傷者が出ているとされる。兵力不足もささやかれる中、苦肉の策だろうか、5月には志願兵の年齢制限が撤廃された。
「私が7月下旬にこの訓練施設を取材した際は、チェチェン人やカザフ人、アルメニア人の志願者がいました。ただ、やはり一番多いのはロシア人で、私が話した中で最年長の人は56歳でした」
そう話すのは、ロシア在住ジャーナリストの徳山あすか氏だ。彼らが志願する“動機”は何なのか? 
「取材に対しては“非ナチ化のため”と答える場合が多いですね。とはいえ、もちろん金銭面に引かれて応募する人もいると思います」
実際、志願兵に支払われる月給は平均的なロシア人の3〜4倍。そのおかげか、現在では応募しても訓練所への「入校待ち」になるケースもあるという。侵略直後は、ロシア兵がすぐに不足してしまう、といった楽観的な見方もあったのだが、そう簡単にはいかないようである。
“プーチンの頭脳”の娘が爆殺された事件
一方で、8月20日にはモスクワ郊外で異変が。“プーチンの頭脳”とも呼ばれる思想家ドゥーギン氏(60)の車に爆弾が仕掛けられ、娘、ダリア氏(29)が爆殺されたのだ。直後に反プーチンを掲げる組織が犯行声明を出したものの、ロシア政府は「ウクライナ人による犯行」と発表。欧米では「プーチンによるロシア側の自作自演説」も出るなど、真偽不明の情報が飛び交っている。徳山氏は、
「そもそも爆弾がドゥーギンを狙ったものだったのかもはっきりしません。ドゥーギンはロシア国内ではインテリ層以外にはほとんど知られておらず、仮に暗殺しても影響は限定的ではないでしょうか」
逆にダリア氏は政府寄りのジャーナリストとして知られていたという。
「私もドンバスでの現地取材で一緒になりましたが、アゾフ大隊の残虐性などウクライナ批判をよどみなく展開していました。標的は最初から娘だったという説さえあります」(同)
戦場ではロシア兵が砲弾に「ダリア」と書いて発射しているとも。犯人の意図は不明なままだが、少なくともロシア側はある種の戦意高揚に利用しているということだろうか。ここでもロシア側のしたたかさが見え隠れする。
世界の期待とは裏腹に、この戦争はまだまだ終わりが見えない。 
●ウクライナ、東部で反攻強める ロシア軍は「再編成のため」要衝から撤退 9/11
ウクライナで侵攻を続けるロシア軍は10日、ウクライナの急速な反攻を受けて東部の要衝から撤退した。
ウクライナ当局はこの日、ウクライナ部隊がロシア軍の重要な補給拠点となっている東部ハルキウ州クプヤンシクに入ったと明らかにした。
ロシア国防省はその後、自軍が「再編成」するためにクプヤンシク近郊のハルキウ州イジュームから撤退したと発表した。
また、ドネツク地方の前線での「取り組みを強化する」ために3番目に重要な町バラクリヤから部隊が撤退したことも認めた。
ウクライナ軍のこの前進が維持されれば、ロシア軍がキーウ周辺から撤退して以降の最も重要な動きと言える。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は10日、毎晩定例のビデオ演説で、ウクライナ軍が今月初めに新たな反撃を開始して以降、2000平方キロメートルもの領土をロシア軍から奪還したと述べた。
ゼレンスキー氏は8日夜のビデオ演説で、過去1週間で1000平方キロメートル以上の領土を奪還したと発表しており、それからたった48時間でさらに1000平方キロメートを取り返したことになる。
軍事拠点から撤退
ロシアはこれまで、イジュームを主要軍事拠点にしていた。そのため、ロシア部隊がこの町から撤退したとするロシア側の発表は重要な意味を持つ。
ロシアの声明によると、「イジューム=バラクリヤ部隊をドネツク人民共和国領へ撤退・組織的に移送させるための軍事作戦が3日間実施された」と説明。「ロシア部隊への被害を防ぐため、敵に強力な射撃による敗北を与えた」とした。
ロシア国営タス通信によると、それから間もなく、ロシアが任命したハルキウの行政当局トップが住民に、「命を守るために」ロシアへ避難するよう勧告した。
隣接するロシア西部ベルゴロド州の知事は、国境を越えようと列を作る人々に携帯電話や暖をとれるもの、医療支援を提供する予定だと述べた。
ウクライナ政府が西側諸国に軍事支援を求め続ける中、今回の前進は、ロシアの占領地域を奪還する能力がウクライナ軍にある証左だと評価される見通し。
ウクライナのドミトロ・クレバ外相は、最近の展開はウクライナ軍がロシア軍を倒すことができることを示しており、西側諸国の武器をさらに確保できればより早期に戦争を終わらせられると述べた。
ウクライナ当局はウクライナ軍がクプヤンシクの市庁舎前で国旗を掲げているとする写真をソーシャルメディアに投稿した。兵士の足元にはロシア国旗があるように見える。
ゼレンスキー大統領は9日、自軍が「新たな集落を徐々に支配している」、「ウクライナの国旗を返還し、すべての国民を保護する」と述べた。
また、国家警察が解放された集落に戻りつつあるとし、ロシアによる戦争犯罪の疑いについて報告するよう市民に呼びかけた。
この呼びかけは、ウクライナの国連人権監視団がロシア軍による「捕虜に対する様々な違反行為を記録した」とする報告書を発表したことを受けてのもの。
同報告書はまた、ウクライナ軍が「捕虜を拷問したり不当に扱った事例」もあると非難している。
●ロシア軍 東部重要拠点の撤退表明か ウクライナは反転攻勢強調  9/11
ロシア国防省はウクライナ東部の重要な拠点、イジューム周辺の部隊の再配置を決めたと発表し、事実上、イジュームからの撤退を表明したものとみられます。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は10日、イジュームについて言及しなかったものの「およそ2000平方キロメートルのわれわれの領土が解放された」と述べ、反転攻勢を続けることを強調しました。
ウクライナの治安機関は10日、東部ドンバス地域の最前線に展開するロシア軍部隊への補給路となっているハルキウ州クピヤンシクをウクライナの部隊が奪還したことを明らかにしました。
これに続いて、イエルマク大統領府長官は10日、さらに南へ60キロほど離れたイジューム郊外にいるウクライナ軍部隊の写真をSNSに投稿しました。
ハルキウ州にあるイジュームは、ロシア軍が東部ドンバス地域に部隊を展開するうえで補給などの重要な拠点になっています。
そのイジューム周辺に展開するロシア軍について、ロシア国防省は10日「ドネツク方面への作戦強化のために部隊の再配置を決めた」と発表し、事実上、イジュームからの撤退を表明したものとみられます。
ウクライナ軍がイジュームを奪還すれば、東部ドンバス地域の広い範囲に部隊を展開させるロシア軍にとって大きな打撃になるものとみられます。
ウクライナのゼレンスキー大統領は10日に公開した動画で、イジュームについて言及しなかったものの「9月はじめからのウクライナ軍の攻勢により、およそ2000平方キロメートルのわれわれの領土が解放された」としたうえで「東部ドネツク州はいずれ全域が解放される」と述べ、反転攻勢を続けることを強調しました。
●英、プーチン氏に反論 穀物、貧困国に輸出されず?  9/11
英国防省は11日、ウクライナの穀物はほとんど貧困国に輸出されていないと主張したロシアのプーチン大統領の発言について、事実ではないと反論した。
プーチン氏は7日、国連とトルコの仲介で実現しているウクライナ産穀物輸出に関し、これまで出港した87隻のうち2隻しか貧困国に向かっていないと非難していた。
11日のウクライナ戦況分析で英国防省は、国連の統計を根拠に、約3割はアフリカや中東、アジアの貧困国や中所得国に向かっていると指摘した。プーチン氏は数字の根拠を示していない。英国防省は、ロシアが食料危機や侵略の責任を逃れるため故意に誤情報を流していると批判した。 
●ザポリージャ原発が完全に停止 「より安全な状態にするため冷却」 9/11
ロシア軍の占領下にあるウクライナ中南部のザポリージャ原発について、ウクライナの原子力企業「エネルゴアトム」は11日、「完全に停止している」とSNSなどで発表した。六つある原子炉のうち唯一稼働していた6号機をより安全な状態にするため停止させ、冷却して安定させる作業を進めているという。
発表によると、同原発では原子炉と外部とをつなぐ送電網がロシア軍の砲撃で損傷を受け、6号機は原発内で必要な電力を供給するために発電していた。外部とつなぐ送電網は10日に復旧し、6号機の停止が可能になったという。
同原発をめぐっては、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長が9日、声明を発表。相次ぐ攻撃で復旧が困難になり、最悪の場合、現在稼働している唯一の原子炉の停止をウクライナ側が検討していると明らかにしていた。
●プーチン政権、支配地域の住民投票を無期限延期か ウクライナで苦戦 9/11
ウクライナの東部や南部の占領地域でロシアが計画しているロシアへの併合を問う住民投票について、プーチン政権が無期限の延期を決めたと、国外に拠点のあるロシア系の独立メディア「メドゥーザ」が11日、ロシア大統領府に近い筋の情報として伝えた。最近の東部ハルキウ州でのウクライナ軍の攻勢が決定的な理由になったとしている。
ロシアが住民投票を計画していたのは、親ロシア派が支配する東部のドネツク州、ルハンスク州のほか、ウクライナ侵攻後に占領した南部ヘルソン州、北東部ハルキウ州、中南部ザポリージャ州の占領地域だ。
これらの占領地域のロシア側幹部らは当初、5月にも住民投票を実施できると主張。だが、ウクライナ軍の予想外の抵抗に苦戦して具体的な日程を決められず、最近も9月11日のロシアの統一地方選に合わせて実施する考えを表明していたが、実現できなかった。
●ロシア統一地方選挙 ウクライナ侵攻後初めて 「最も競争のない選挙」 9/11
ロシアでは、ウクライナ侵攻後初めて民意を問うことになる統一地方選挙が行われています。
ロシア全土で実施されている統一地方選挙には、14の地域の知事選やモスクワ区議選などが含まれていて、2月のウクライナ侵攻開始後、初めての大型選挙となります。
モスクワでは8日、一部の区議のグループが侵攻をめぐり、「ロシアを冷戦時代に逆戻りさせた」としてプーチン大統領の辞任を求める要望書をまとめました。一方、侵攻に批判的な野党候補の立候補が当局側から認められないケースなども相次いでいて、独立系選挙監視団体は「過去10年で最も競争のない選挙だ」としています。
独立系選挙監視団体「ゴロス」アンドレイチュク共同代表「(数字上の競争率だけでなく)実際の選挙の内容自体が低調です。政権の反対勢力とみなされた候補者は事実上、選挙に参加していないのです」
選挙戦を通してウクライナ侵攻への反発が広がることを避けようとするプーチン政権側の狙いも伺えます。投票は11日夜まで行われ、即日開票されます。
●押し黙るロシア人 9/11
ウクライナ侵攻から半年になるのを前に、約10年ぶりにロシアに出張した。かつて勤務していたモスクワ支局で最後の仕事になったのが、プーチン氏が国のトップに復帰した2012年3月の大統領選だった。
直前の11年12月に行われた下院選では不正疑惑が噴き出し、首都モスクワで行われた反政権デモには10万人以上が参加した。政治と距離を置いてきた民衆に変化の兆しが表れたと思った。
しかし、今回訪れたロシアで見たのは、再び沈黙した市民の姿だった。久しぶりに夕食を共にした友人の男性は、2時間話しても侵攻に関してほとんど語らなかった。対面取材で侵攻を非難した女性は、「表立っては言えない。記事にするなら匿名で」と後から連絡してきた。
露独立系マーケティング会社「ロシアンフィールド」が7月下旬、約2万7千人を対象に侵攻に関する世論調査を電話で行ったところ、90%が回答を拒否した。同社は有名な世論調査機関ではないし、電話番号からは容易に身元が判明する。監視を恐れる市民が黙って受話器を置く姿が目に浮かぶようだ。
モスクワの市街は発展して様変わりし、レストランは笑顔で乾杯する人々でにぎわっていた。だが、みな自分の意見を言わず、見えない殻に閉じ籠もっているように感じた。
●大規模な経済制裁を受けた「ロシア経済」は、なぜいまも崩壊しないのか 9/11
ウクライナ侵攻後、ロシアは西側諸国から過去に例のないほど大規模な経済制裁を科された。当初は混乱したロシア経済だが、いまも崩壊していない。何がロシア経済を支えているのか──英誌「エコノミスト」が、ロシア経済が持ち堪えている理由を解説する。
経済制裁は効いているのか
ロシア経済の実態は見えにくい。平時でもその透明性はシベリアの吹雪レベルだ。ウクライナ侵攻以来、ロシア中央銀行やロシア連邦統計局は、あらゆるデータの公開を停止している。今も同国経済に関する数字は多少あるものの、その信頼性は低い。多国籍企業も同国からエコノミストを引き上げた。投資銀行はロシア企業に関する助言ができなくなったため、調査活動を縮小している。
実体がよくわからないなか、ロシア経済の状況について、いま激しい議論が巻き起こっている。
最近共同で論文を発表したイェール大学の5人の研究者は、欧米企業の撤退と制裁がロシア経済を「不自由」にしていると主張する。経済的な強さはすべて見かけ上のものに過ぎないとするこの論文は、広い層に注目された。
「プーチンが選んだ統計は、メディアを通じて軽率に広く伝えられている。また、それは良識はあるのに不注意な専門家に利用され、非現実的なほどクレムリンに有利な予測を算出させている」と彼らは述べる。
一方、それほど暗くない見方もある。コンサルティング会社マクロ・アドバイザリーの創業者で、ロシア通として知られるクリス・ウェイファーは「ロシアの経済は崩壊に向かっているわけではない」と、最近の論文で書いている。
一体何が真実なのだろうか?
確かに不調なロシア経済
ウクライナ侵攻後、ロシア経済は大きく混乱した。ルーブルの価値は対ドルで4分の1以上も下落。株式市場も暴落したため、規制当局は取引を停止させた。欧米企業は次々と撤退し、各国政府は制裁を強化した。
それから1ヵ月も経たないうちに、2.5%の成長とされていた2022年の同国のGDP予想をアナリストたちは10%近く下方修正した。さらに悲観的な予想もある。ホワイトハウスは、「ロシアのGDPは今年最大15%減少し、過去15年間の経済的利益を一掃すると、専門家は予測している」と発表している。
どの議論においても指摘されるのは、ロシアはまだ苦しんでいるということだ。ルーブル安定のために春に行われた大幅な金利引き上げと、外国企業の撤退によって、ロシアは不況に追いやられた。
公式発表によると第2四半期のGDPは前年同期比4%減となった。300ほどある単一産業都市の多くは制裁によって傷つき、本格的な不況に陥っている。また、高学歴の人々を中心に多くの市民は国を去り、資産を海外に移す者もいる。
2022年第1四半期には外国人が150億ドル相当の直接投資を引き揚げ、過去最悪となった。2022年5月のロシアからグルジアへの送金は、ドル換算で前年の10倍という驚異的な数字を記録した。
欧州よりも経済好調?
しかし、今回多様なデータを分析したところ、ロシア経済は、もっとも楽観的な予想よりも好調であることがわかった。石油や天然ガスなどの炭化水素資源の輸出によって経常黒字が大幅に増加しているためだ。
たとえば、リアルタイムの経済成長を示す、投資銀行のゴールドマン・サックスによる「経済活動指数」(図表1)が参考になる。ロシアの数値は2022年3〜4月には大きく低下したが、その後数ヵ月で回復した。この下降は、2007〜09年の世界金融危機時や2014年のクリミア併合後ほどのレベルではない。
他の指標も同様の状況を示す。ロシアの前年度比GDP変化率(図表2)を見ると、現在の景気は悪いものの、もともと不安定な同国経済からすると、それほどひどいわけではない。
JPモルガン・チェース銀行によると、2022年6月のロシアの工業生産は前年同月比で1.8%減少した。一方、企業アンケートを元にしたサービス業の成長指数は、以前の危機時ほど打撃を受けていない。当初減少した電力消費も再び増加しているようだ。モノの需要を示す鉄道の積荷数も持ち直している。
さらに、インフレは緩和されている。2022年初頭から5月末までの消費者物価の上昇率は約10%にもなった。ルーブルの下落で輸入品が割高になり、欧米企業の撤退で供給が減ったのだ。
しかし、ロシア連邦統計局によると、現在物価は下落している。コンサルタント会社のステート・ストリート・グローバル・マーケッツとデータ会社のプライススタッツがオンライン価格を元に算出したデータでも、同様の傾向が見られる。
ルーブル高によって輸入品のコストが下がり、今後のインフレ見通しも低下している。クリーブランド連邦準備銀行とコンサルティング会社のモーニング・コンサルト、ブランダイス大学のラファエル・ショーンレが算出した、今後1年間のロシアの期待インフレ率(図表3)は、2022年3月の17.6%から7月には11%に低下している。
ガスが豊富にあるロシアでは、エネルギー価格の上昇による高インフレが起こる可能性も低い。
家計の助けになっているのは、物価の下落だけではない。ロシア最大銀行のズベルバンクによると、実質賃金の中央値は春以降に急激に上昇している。多くの企業が従業員の一時解雇や無給労働を行ったため、現状を正確には示していないであろうが、2022年6月の失業率は3.9%と過去最低を記録した。
労働市場が持ちこたえているため、人々は支出を続けられる。スベルバンクのデータによると、2022年7月の実質的な個人消費は年初とほぼ同じだ。春に輸入が減ったのは、多くの欧米企業が供給を止めたせいでもある。しかし、この落ち込みは近年の不況に比べれば深刻ではなく、輸入額(図表4)は急速に回復している。

 

●ウクライナが北東部ハルキウの奇襲で大戦果、戦況の転換点となる可能性大 9/12
「この24時間、ウクライナ軍は北東部ハルキウ州で大きな戦果を上げ続けている。ロシア軍はこの地域から部隊を撤退させたようだが、戦略的に重要な都市であるクピャンスクとイジューム周辺では戦闘が継続している」
英国の国防情報参謀部は9月11日のツイートでウクライナ戦争の戦況をこう報告した。
ウクライナ軍の奇襲に逃走するロシア軍
英国防情報参謀部(10日時点)によると、ウクライナ軍は9月6日、ハルキウ州南部で作戦を開始した。狭い前線でロシア軍が占領していた地域に最大50キロメートル攻め入った。ロシア軍は奇襲を受け、それほど守りを固めていなかった町をウクライナ軍に奪還されたり、包囲されたりしている。
イジューム周辺のロシア軍はますます孤立していく可能性が高い。ウクライナ軍は東部ドンバスの前線への補給路に位置するクピャンスクの町を脅かしている。クピャンスクがウクライナ軍によって奪還されればロシア軍にとって大打撃となる。南部ヘルソン州でもウクライナ軍の作戦は続いており、ロシア軍の防衛線は北と南の両方で圧力にさらされている。
米シンクタンク、戦争研究所(ISW)は10日深夜(米東部標準時)の時点で「ハルキウ州におけるウクライナ軍の反攻はロシア軍を追い詰め、ロシア軍が占領する東部ドンバスの北軸を崩壊させつつある。ロシア軍は統制がとれないまま撤退しており、イジューム周辺で包囲されるのを避けるため急いで逃走している」と分析した。
「軍事的敗北も破産も突然やってくる」
ISWは「ウクライナ軍は最大70キロメートルもロシア軍の陣地に入り込み、6日から5日間で3000平方キロメートル以上の地域を奪還した。これはロシア軍が4月以降の戦闘で奪った地域よりも広い。ウクライナ軍は今後48時間以内にイジュームを奪還する可能性が高い。ウクライナ軍にとって3月キーウの戦いに勝利して以来、最も重要な戦果となる」という。
ウクライナ軍はハルキウ州北東部、イジュームの北郊外、リマンの南・南西郊外で露・ウクライナ国境から15〜25キロメートル以内の地点に到達し、クピャンスクの西半分を奪還した。電光石火のようなウクライナ軍の進撃で、ロシア軍の東部ルハンスク州北部での活動を支えてきた後方連絡線を切断し、ロシア軍と親露派分離主義武装勢力の活動を大きく阻むことになる。
英国の戦略研究の第一人者でイラク戦争の検証メンバーも務めた英キングス・カレッジ・ロンドンのローレンス・フリードマン名誉教授は最新の有料ブログで「徐々に、そして突然に」と題しウクライナ戦争の戦況についてこう解説している。
「破産と同じように軍事的敗北も突然やってくる。長く苦しい戦いに見えるものが、敗走に一転することがある」
「ここ数日、ハルキウでウクライナ軍の驚くべき攻勢を目の当たりにしている。壊された車列の残骸、放棄された車両、捨てられた陣地、散乱する装備、惨めな捕虜…潰走する軍隊の画像や映像がSNSにアップされている。数十平方キロメートルが数百、数千になり、解放された村や町はほんの一握りから数十になった。その進撃の速さには目を見張る」(フリードマン氏)
「すでに負けが決まっている戦争で誰が殉死者になるのか」
フリードマン氏はこう書いている。
「この数日間に起こったことは歴史的な重要性を持つ。前線が静止しているように見えても、その状態がいつまでも続くとは限らない。特に、自分たちが戦っている戦争の大義が不確かで、将校への信頼を失っている場合に顕著なことを思い起こさせる。すでに負けている戦争で誰が殉死者になりたいというのだろうか」
8月29日、ウクライナ軍は南部の要衝ヘルソンの「奪還作戦」を開始した。ロシア軍はウクライナの20%を占領しており、前線はハルキウからヘルソンまで2500キロメートルに伸びる。その1300キロメートルで戦闘が繰り広げられている。ロシア軍がかなりの兵力をヘルソン防衛のため移した隙を利用して、ウクライナ軍は突如、手薄になったハルキウに奇襲を掛けた。これが大成功した。
ハルキウ奇襲は日和見的な作戦だったのか、それともヘルソン奪還は計画された陽動作戦だったのか。「確かなのはハルキウでの反攻は決して衝動的なものではなかったということだ。その意図があからさまにならないように部隊と装備を所定の位置に配置するなど、ウクライナ軍は周到に準備していた」とフリードマン氏は分析する。
ハルキウ奇襲の目的は、まず道路と鉄道の要衝であるクピャンスクを手に入れること。もう一つはロシア軍が部隊の大部分と司令部を置くイジュームの奪還である。ロシア軍の現地司令部は奇襲の兆候に全く気付いていなかった。ウクライナ軍の進撃を防ぐロシア軍の航空戦力も無力だった。すでにハルキウのロシア軍兵力は空洞化していたことがうかがえる。
日露戦争の趨勢を決めた奉天会戦
2014年の東部ドンバス紛争で親露派分離主義武装勢力を指揮した悪名高きロシア民族主義者イゴール・ガーキン元ロシア軍司令官は自身のテレグラムチャンネル(約53万5000人が登録)に「現在の状況を日露戦争になぞらえて表現するならば『奉天会戦』という言葉しか思い浮かばない」と投稿している。
1905年、旧満州(中国東北地方)の奉天(現在の瀋陽)で、満州軍総司令官、大山巌に率いられた25万人がアレクセイ・クロパトキン大将率いるロシア軍35万人を包囲しようとした。ロシア軍26万人が撤退し、日本軍が勝利した。死傷者は日本軍7万人、ロシア軍は捕虜を含め9万人にのぼった。日本海海戦とともに日露戦争全体で日本軍勝利の決め手となった。
イジュームからのロシア軍撤退についてガーキン氏は「最後の逃げ道が遮断の脅威にさらされている状況で完全に包囲されるのは犯罪に近い冒険主義だ」と理解を示す。
「性急な撤退は必然的に装備や兵員が大きく損なわれる。ロシア軍は必要な物資が極度に不足し、直ちに戦闘することができなくなるが、包囲を避ける撤退は戦略的に正しい」
しかし「戦線の広い範囲で深刻な作戦上の危機が続いており、それはすでに大敗北に発展している。いま実際、私たちにできることは、いかにしてこれ以上、敗北が深まるのを食い止め、作戦上の敗北が戦略上の敗北に転化するのを防ぐかということだけだ。主導権争いではすでに敵が勝っている」とガーキン氏は戦略的敗北を避けるよう求めている。
「ロシアは負けつつあるが、まだ負けてはいない」
ウラジーミル・プーチン露大統領は冬を前に欧州への天然ガス供給をシャットアウトし、欧州のエネルギー危機をさらに悪化させる作戦をとる。一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ジョー・バイデン米大統領の浮沈を決める米中間選挙、米欧の結束が乱れる恐れがある冬を前にヘルソン奪還とハルキウ奇襲という大勝負に出た。
兵站基地のクリミア半島を分断するヘルソン奪還作戦でロシア軍を南部に釘付けにし、手薄になったハルキウを奇襲で取り戻す作戦は奏功した。
「ロシアは負けつつあるが、まだ負けてはいない。戦争はすぐには終わらないという慎重さが求められる一方で、私たちの想定をはるかに超えるスピードでロシア軍の敗北が進む可能性もある」(フリードマン氏)
ウクライナ軍事支援連絡グループには約50カ国が参加。ウクライナへの武器供与と訓練、北大西洋条約機構(NATO)欧州加盟国の国防力を強化する武器製造のサプライチェーンが効率的に稼働し始めた。ウクライナ軍がM142高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」(射程80キロメートル)で400以上の目標を攻撃したのはその好例だ。
陸戦に詳しい英シンクタンク「英国王立防衛安全保障研究所」(RUSI)のジャック・ワトリング上級研究員はハルキウ奇襲作戦が始まる前のコメントでこう指摘している。
「厳しい冬が予想される中、ロシア軍は濡れ鼠になり寒さと飢え、惨めな状況に耐えなければならなくなる。士気のさらなる低下を招きやすくなるだろう」
日露戦争、第一次世界大戦、冷戦に敗れ、体制が崩壊したロシア
ワトリング氏は、ウクライナは3つの相反する要求と戦っていると解説する。(1)冬を前に武器供与が戦いを有利にしていることを支援国に示す政治的要請、(2)ロシア軍が主導権を取り戻さないよう継続的に混乱させる必要性、(3)ロシア軍をウクライナ国内から追い出す究極の目的――があり、作戦も3段階に分けて考えるべきだと提言する。
2500キロメートルにも及ぶ前線の長さ、ウクライナの国土の20%というロシア軍が占領する面積の広さを考慮すると、「ウクライナ軍が十分な機動部隊を編成するにはまだ時間が必要だ。冬に予定される作戦休止期間と合わせると、ウクライナ軍の作戦は2023年まで実施される可能性が最も高い」とワトリング氏は分析する。
戦争はプーチン氏が思い描いていたようには進んでいない。しかしプーチン氏やその側近はウクライナ軍の進撃にロシア軍が撤退しているという現状認識を欠いている。
「キーウやズミイヌイ(蛇)島放棄の際もそうだったが、ロシア指導層はより大きな失敗が目前に迫っていると見れば、手を引く覚悟があることを示唆している」(ワトリング氏)。
ワトリング氏が指摘するように楽観は禁物だ。しかし私たちはこの冬、悲観的になりすぎる必要もない。旧ソ連時代を含めロシアは日露戦争、第一次世界大戦、冷戦に敗れた時、体制が崩壊した。ウクライナ戦争でプーチン氏が敗北を認めざるを得ない状況に追い込まれた時、ロシアにとってそれは何を意味するのだろうか。 
●ロシア大敗、反攻猛進撃のワケ ウクライナが東部要衝奪還 9/12
ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、同国軍が東部ハリコフ州の要衝イジュムを奪還したと宣言した。今月に入って猛烈な勢いで領土を奪還している同国にとって戦略上、大きな戦果となった。ロシア軍は統制が取れず敗走しているとみられる。侵攻から200日、プーチン大統領は厳しい状況に追い込まれた。
イジュムはロシア軍の補給路で、支配地域で「最重要」とされる。米シンクタンクの戦争研究所は10日、ロシア軍が統制の取れていない形で敗走していると分析。ウクライナ軍が南北から補給路を断った場合、周辺のロシア軍が崩壊する可能性があると指摘した。
ロシア国防省は10日、州内のイジュムとバラクレヤに展開していた軍部隊をドネツク州方面に再配置すると発表、事実上の撤退表明となった。
ウクライナ軍は先月下旬から南部で奪還作戦を展開していた。元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は「南部奪還作戦に焦ったロシア軍が、東部のエリート部隊を南部に転用し、イジュムなどに穴ができた」と分析する。
東部でも今月6日以降、最大で70キロ前進し、東京都の約1・4倍の広さに相当する約3000平方キロメートルを奪還したとみられる。「ロシア軍の弱点が生じた地域に戦車など機甲戦力を投入した。ロシア軍は主導性のない作戦や、規律の乱れ、士気の低下などで自ら危機を招いた」と渡部氏。
これまで米国が装甲兵員輸送車「M113」、ポーランドが旧ソ連製戦車「T―72」をウクライナ軍に供与。さらにオースティン米国防長官は今月8日、榴弾(りゅうだん)砲や弾薬、対戦車兵器など6億7500万ドル(約970億円)の追加軍事支援をすると発表した。
渡部氏は「ロシア軍は志願兵も召集できず、新たな攻勢に出られない状況だ。プーチン氏が始めた戦争は本人以外、意義を見いだせず、四面楚歌だ。今後は欧米がウクライナ側が求める戦車や戦闘機などを迅速に与える必要がある。今がチャンスだ」と強調した。
●ウクライナ軍 東部ハルキウ州ほぼ全域を奪還か ロシア軍守勢に  9/12
ウクライナ軍は、東部ハルキウ州で大規模な反転攻勢を続けていて、州内のほとんどの地域をすでに奪還したという分析も出ています。イギリス国防省は、ロシア軍が守勢に追い込まれていると指摘しています。
ウクライナ軍が、東部ハルキウ州で反転攻勢を続ける中、ロシア国防省は10日、州内の重要拠点イジューム周辺に展開する部隊について「再配置を決めた」と発表し、イジュームからの撤退を事実上、表明したと受け止められています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は11日「ウクライナ軍が急速な反転攻勢によって、ハルキウ州のほぼ全域を奪還し、ロシアの作戦に大きな敗北をもたらした。ウクライナの成功は、欧米から供与された兵器を最大限活用し、巧みな軍事作戦を実行したことにある」とする分析を公表しました。
そして「戦争研究所」は、ウクライナ軍がイジュームも奪還したと指摘したうえで「ロシアが、東部ドネツク州の全域を掌握するという目的を達成できる見通しがなくなった」としています。
また、イギリス国防省は12日、ロシア軍がハルキウ州だけでなく南部ヘルソン州でも、ウクライナ軍から物流拠点の橋の攻撃を受け補給面で苦戦していると指摘しました。
そのうえで「ロシア軍の大部分の部隊は、急きょ防衛を優先させることを余儀なくされている可能性が非常に高い。ロシア軍の上層部の指揮官に対する信頼は、さらに悪化するだろう」として、ロシア軍が守勢に追い込まれていると指摘しています。
●日本とサウジアラビア 原油市場の安定化など協力で一致  9/12
ウクライナ情勢などを背景に原油市場の不透明な状況が続く中、岸田総理大臣は、サウジアラビアのムハンマド皇太子と電話で会談し、市場の安定化などに向けた協力をいっそう進めていくことで一致しました。
電話会談は、12日午後6時前からおよそ20分間行われました。
この中で、岸田総理大臣は、ウクライナ情勢などを背景に原油市場の不透明な状況が続いていることを踏まえ、市場の安定化に向けてサウジアラビアが指導的な役割を果たすよう強く期待していることを、ムハンマド皇太子に伝えました。
そして、両氏は、原油市場の安定化に加え、グリーンエネルギーの活用促進などを通じたカーボンニュートラルの実現に向けた協力を、いっそう進めていくことで一致しました。
また、岸田総理大臣は、日本はサウジアラビアとの関係を極めて重視しているとして、経済や社会制度の改革を全面的に支援する考えを伝え、両国の戦略的パートナーシップをさらに強化するため、首脳級や閣僚級の往来などを通じて、引き続き、緊密に連携していくことを確認しました。
●ロ軍の戦略 カディロフ首長が「批判」 9/12
ロシア国防省が北東部ハルキウ州の部隊の再編成を発表して要衝から撤退したことに対し、プーチン大統領に忠誠を誓うチェチェン共和国のカディロフ首長がロシア軍の戦略を批判しました。
ロシア国防省は10日、ハルキウ州のバラクレヤとイジューム地域の部隊を再編すると発表しました。
この地域からの撤退を認めたものとみられます。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、イジュームを奪還したと明らかにしました。
また、ウクライナ軍は今月以降、約3000平方キロメートルの領土を奪還したと主張しています。
こうしたなか、ウクライナ侵攻に加わっているチェチェン共和国のカディロフ首長は11日、自身のSNSで「もしロシアが望んだとしたら、一歩も後ずさりしなかったはずだ。そのための訓練を受けている者がいなかったのだろう」と述べました。
また、「間違いがあった。彼らはいくつかの結論を出すだろう」と指摘し、ロシア側の軍事戦略に疑問を呈しました。
さらに、カディロフ首長は「特別軍事作戦の戦略に変更がなければ、私は国防省の指導部と国の指導部に出向いて状況を説明しなければならない」と述べ、戦況次第ではプーチン大統領に直談判すると訴えました。
●習主席 上海協力機構 首脳会議出席でプーチン大統領と会談へ  9/12
中国外務省は、習近平国家主席が今月15日と16日に中央アジアのウズベキスタンで開かれる上海協力機構の首脳会議に出席すると発表しました。習主席が外国を訪問するのは、おととし1月以来で、ウクライナに軍事侵攻したロシアのプーチン大統領との会談で、どのような姿勢を示すのか注目されます。
中国外務省は、習近平国家主席が14日から16日までの日程で、中央アジアのカザフスタンとウズベキスタンを公式訪問すると発表しました。
このうち、ウズベキスタンでは、中国とロシアが主導する枠組み、上海協力機構の首脳会議に出席するということです。
ロシアのプーチン大統領は、この首脳会議にあわせて習主席と対面で会談を行う見通しだと明らかにしています。
習主席が外国を訪問するのは、おととし1月のミャンマー以来で、新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、初めてとなります。
習主席とプーチン大統領は、ことし2月4日、北京オリンピックの開会式にあわせて対面で首脳会談を行い、その20日後の2月24日に、ロシアがウクライナに軍事侵攻したあとも2度、電話での会談を行っています。
今回の中ロ首脳会談では、習主席が来月、党のトップとして異例の3期目入りするかが焦点となる共産党大会を前に、プーチン大統領に対して、どのような姿勢を示すのか注目されます。
“共産党の序列3位 ロシア訪れプーチン大統領らと会談”
中国国営の新華社通信は、共産党の序列3位で全人代=全国人民代表大会の栗戦書委員長が、今月7日から10日までロシアを訪れ、極東のウラジオストクでプーチン大統領と会談したあと、モスクワで上下両院の議長やロシアの各政党の代表と会談したと伝えました。
栗委員長は、ウラジオストクで開かれた「東方経済フォーラム」にあわせて、プーチン大統領と会談し、このなかで「習近平国家主席とプーチン大統領の指導のもと、新時代の中ロ関係が新たな段階へと進み、それぞれの国家の発展と民族の復興という偉大な目標を実現すると確信している」と述べたということです。
そして、来月16日から開かれる共産党大会について説明したとしています。
続いて訪れたモスクワでは、ボロジン下院議長やマトビエンコ上院議長、それに主要な政党の代表とも会談し、台湾をめぐる中国の立場への支持に謝意を示したうえで、中ロの協力関係を全面的に発展させていくことを確認したとしています。
●「調停者」トルコに欧米困惑 対露輸出増でも批判避け 9/12
ロシアによるウクライナへの侵略を巡り、トルコのエルドアン政権の動きに欧米が頭を痛めている。トルコが、ロシアとウクライナの「調停者」を自任して対露制裁に加わらず、ロシアとの関係を強化して経済制裁の抜け穴になっているからだ。だが、トルコはウクライナ、ロシア双方と対話のパイプを持つ。眉をひそめる欧米もトルコを頼りにせざるを得ない事情がある。
英紙フィナンシャル・タイムズは8月中旬、トルコの5〜7月の対露輸出が前年同時期比で46%増の20億ドル(約2900億円)に達したと伝えた。欧米がロシアに制裁を科し、千社以上が市場から撤退したとされるが、外国企業の穴をトルコが埋めている形だ。
欧州連合(EU)欧州対外活動庁のスタノ報道官は、同紙に「欧州が対露関係を縮小しているときに関与を深めるのは適切とはいえない」と述べ、くぎを刺した。
バイデン米政権もトルコの対露輸出増加にいらだちつつ、調停への期待からトルコへの表立った批判は避けているものとみられる。
制裁を科していないトルコはロシアの富豪の資産逃避先となり、ロシアが制裁で輸入できない高性能の電子機器などを迂回(うかい)して入手する拠点にもなっている。トルコでは露通貨ルーブルの決済システム「ミール」のカードも使用可能だ。
漁夫の利を得るトルコを欧米が表立って批判できないのは、トルコのエルドアン大統領の「調停外交」が成果を挙げた実績があるからだ。エルドアン氏は8月にロシアのプーチン大統領と会談する一方、国産無人機を供与してウクライナとも関係を築き、同国のゼレンスキー大統領とも会談。8月初めには、戦闘で停滞したウクライナ産穀物の輸出再開にこぎ着けた。
エルドアン氏が調停に熱心なのは、来年6月のトルコ大統領選を見据えた動きだとの見方が根強い。同氏は立候補を表明したものの支持率は低迷している。大きな理由が経済不振だ。
景気浮揚を優先するエルドアン氏は、中央銀行総裁を相次いで解任して利上げを阻止。トルコの通貨リラが対ドルで急落し、8月のインフレ率が24年ぶりに前年同月比80%を超えた。急速な物価高で同氏への反感が強まっている。
こうした中で戦争が起き、エルドアン氏は「国際社会に不可欠な指導者像」を誇示して、支持回復を図る思惑とみられる。
侵攻に端を発するスウェーデンとフィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟問題でも、エルドアン政権は、スウェーデンとフィンランドが、トルコが重視するテロ対策に非協力的だと横やりを入れ、両国の加盟承認に難色を示した。
トルコも一員であるNATOは、全加盟国が批准しないと新規加入ができない。エルドアン氏は、6月下旬のNATO首脳会議で態度を一変させ、加盟を歓迎する姿勢を示したが、数日後には「合意事項が履行されなければ批准を見送る」と表明した。
NATOに加盟する30カ国の内、数カ国は批准手続きが完了していない。その一国であるトルコは、いわば加盟問題を「人質」に取っている形だ。エルドアン氏の支持率が思うように上がらない中、トルコが批准するまでに「まだドラマが起きる可能性がある」(米紙)との懸念がくすぶる。
トルコが批准せず、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟が遅れれば、欧米から非難を浴びることは必至。支持率改善に向けた「内政ありき」のエルドアン氏の外交は危うい段階に差しかかっている。

 

●ロシアがサハリン2で再び「脅し」の恐れ、日本企業のジレンマは深まる公算 9/13
日本企業で拡大する 政治と経済のジレンマゾーン
ウクライナ侵攻によって日露関係が悪化する中、ロシア極東の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」について、ロシア政府は8月31日、三井物産と三菱商事が新たに設立したロシア企業に出資することを承認した。
プーチン大統領は6月末、サハリン2について事業主体を新たにロシア政府が設立するロシア企業に変更し、その資産を新会社に無償で譲渡することを命じる大統領令に署名し、ロシア政府は8月5日に新会社を設立して事業を移管し、両社に対して新会社に同様の出資比率で参画するかどうかを9月4日までに通知するよう求めていた。その後、三菱商事と三井物産は8月末までに、新たな運営会社に参画する意向をロシア政府へ通知する意向を表明していた。
三井物産は12.5%、三菱商事は10%をそれぞれ出資していたが、両社とも慎重な検討を重ね、総合的な観点から判断したと発表している。だが、緊迫化するエネルギー事情、世界的な物価高、そして何より日本は輸入する液化天然ガス(LNG)の9%近くをサハリン2に依存しており、両社とも日本のエネルギー安全保障を考慮し、非常に難しい決断を下したといえる。
しかし、世界経済の中で戦う日本企業にとって、今回のような“政治と経済のジレンマゾーン”はいっそう拡大する恐れがある。
ロシアがサハリン2で さらなる「脅し」の可能性も
今回のケースでロシア政府は両社の参画を承認したわけだが、ロシア外交官の日本からの国外追放、日本外交官のロシアからの国外追放、ロシア向けぜいたく品禁輸、ビザなし交流の失効措置など、今日、日露間では制裁措置の応酬が展開されており、今後も日露関係の冷え込みの長期化は避けられない。
こうした中、ロシア側が日本を政治的に揺さぶるため、サハリン2において第2弾、第3弾の脅しを見せてきても不思議ではない。エネルギー事情などロシア側も日本の政治、経済、社会情勢を日常的に分析し、日本にとって痛い部分を突いてくる可能性がある。
政治と経済のジレンマゾーンの拡大は、今日の大国間競争によっていっそう拍車が掛かりそうだ。
ロシアによるウクライナ侵攻から半年が経過するが、欧米や日本などによる対露制裁の限界が色濃くなっている。実際、ロシアに制裁を強化したのは40カ国あまりしかなく、中国やインドを筆頭に、東南アジアや南アジア、中東やアフリカ、中南米カリブなどの国々はほとんど制裁に加わっていない。
ウクライナ侵攻で拍車が掛かった世界的な物価高もあり、アジアやアフリカなどの中小国の中には米中対立、米中露の大国間競争などに巻き込まれたくない、疲れたと思う国々も少なくなく、各国とも国益を最大限引き出すため独自のスタンスで行動している。
こういった国際政治の動向が、プーチン大統領の強気の姿勢を助長している。最近ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムでも、プーチン大統領は欧米陣営を強く非難し、中国やインド、ミャンマーなどとの結束を強く示した。中国にとっても対米という中ではロシアと共闘する大きなメリットがあり、9月に入っても両国軍が日本海やオホーツク海で合同軍事演習を実施するなど日本や米国を強くけん制したように、今後は政治・経済の両面で中国とロシアの結び付きが顕著にみられることだろう。
欧米陣営と非欧米陣営で 部分的な経済デカップリングも
そうなれば、米中経済の完全なデカップリング(切り離し)は非現実的だが、経済圏で米国主導の欧米陣営、中露主導の非欧米陣営という形である程度のブロック化が顕著になってくる可能性を、我々は考える必要がある。
今日の台湾情勢がさらに緊迫化すれば、安全保障的に対立軸にある日中の関係が冷え込む可能性が高く、中国で操業する日本企業の経済活動に制限が出てくる恐れが考えられよう。2010年9月の尖閣諸島における中国漁船衝突事件の際、中国側は報復措置としてレアアースの対日輸出を停止させたことがある。中国にとって尖閣諸島も台湾も絶対に譲ることのできない核心的利益であることから、日本としては台湾有事の際に中国からどういった対抗措置が取られるか、2010年9月の経験から戦略的に考える必要がある。
しかし、こういった政治リスクが現実的に考えられるものの、企業にとって撤退や規模縮小というのは決して簡単な経営判断ではない。また、今回のサハリン2のように日本のエネルギー安全保障、また経済安全保障に絡むような極めて公益性が高い問題となると、“リスクがあっても継続しなければならない”という場面がある。こういった日本企業を悩ます政治と経済のジレンマゾーンは、今後拡大する可能性が高い。
中国は依然として日本にとって最大の貿易相手国であり、日本企業の脱中国には限界がある。しかし、日中間で政治リスクが高まる恐れがあり、日本企業を悩ます政治と経済のジレンマゾーンが拡大する可能性を我々は認識する必要がある。
●ゼレンスキー大統領 “東部と南部で6000平方キロ以上を解放”  9/13
ウクライナ軍が東部で反転攻勢を続ける中、ゼレンスキー大統領は12日、「東部と南部で6000平方キロメートル以上を解放した」と述べたうえで、反撃をさらに進める考えを示しました。一方、ロシア側は軍事侵攻を継続する構えを改めて強調していて、今後のプーチン政権の出方が焦点になります。
ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナでは、東部でウクライナ軍の反転攻勢の動きが鮮明になっています。
ロシア国防省は東部での戦線の重要拠点となっているハルキウ州イジュームからの撤退を事実上、表明していて、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は11日、ウクライナ軍がイジュームを含むハルキウ州のほぼ全域を奪還し「ロシアの作戦に大きな敗北をもたらした」と指摘しています。
こうした中、ゼレンスキー大統領は12日に公開した新たな動画で「われわれの兵士たちはすでにウクライナの東部と南部で6000平方キロメートル以上を解放した。わが軍の移動は続いている」と述べ、反撃をさらに進める考えを示しました。
これに対し、ロシア大統領府のペスコフ報道官は12日「すべての目標が達成されるまで作戦は継続される」と述べ、軍事侵攻を継続する構えを改めて強調しました。
プーチン大統領は、今月15日から行われる上海協力機構の首脳会議に出席するため中央アジアのウズベキスタンを訪問する予定ですが、大統領府に近い情報筋によりますと、これを前に戦況などについて分析する安全保障会議が開かれる可能性があるということで、今後のプーチン政権の出方が焦点になります。
一方、ウクライナが奪還したとされるイジュームの状況について12日、地元の市議会議員がオンラインで会見を開き、戦闘に巻き込まれるなどして少なくともおよそ1000人の市民が死亡したと明らかにしました。
今後、ロシア側の占領や、戦闘などによる住民の被害の実態解明が急がれることになりそうです。
ゼレンスキー大統領 さらなる反転攻勢を強調
ウクライナのゼレンスキー大統領は12日に公開した動画で「9月初めから今日までにわれわれの兵士たちは、すでにウクライナの東部と南部で6000平方キロメートル以上を解放した。わが軍の移動は続いている」と述べ、さらなる反転攻勢を強調しました。
また、11日と12日の2日間にロシア軍が行ったエネルギー関連のインフラへの攻撃により、数十万人が停電の影響を受けたとしたうえで、ロシア軍が民間施設をミサイルで攻撃していると非難しました。
そして「これはこの戦争をたくらんだ者の絶望の表れであり、ハルキウ州での敗北への反応である。彼らは戦場でわれわれの英雄に何もできないので、民間のインフラに卑劣な攻撃をしている」と述べました。
米軍高官 “ロシア軍 ハルキウ市近郊から撤退”
アメリカ軍の高官は12日、記者団に対し、ウクライナ軍が反転攻勢を続けるウクライナ東部の戦況について、ロシア軍がハルキウ市近郊で掌握していた地域の大部分を明け渡し、撤退したという分析を明らかにしました。
撤退したロシア軍の部隊の多くは国境を越えてロシア領内に移動したとしています。
そのうえで、この高官はウクライナ軍がハルキウ州内の重要拠点のイジュームも奪還した可能性が高いという認識を示しました。
この高官は、アメリカなどが供与している兵器がウクライナ軍の反転攻勢に役立っていると指摘し、国際社会と連携しながらウクライナに対して必要な軍事支援を続けていく考えを強調しました。
松野官房長官「引き続き対ロ制裁とウクライナ支援を柱に」
松野官房長官は閣議のあとの記者会見で「戦況の見通しについて確定的な評価や予測を示すのは困難だが、国際社会が長きにわたる懸命な努力と多くの犠牲の上に築き上げてきた国際秩序の根幹がロシアのウクライナ侵略によって脅かされており、平和秩序を守り抜くため、G7=主要7か国をはじめとする国際社会が結束して、断固たる決意で対応していく必要がある」と述べました。
そのうえで「わが国は、主権と領土そして祖国と家族を守ろうと懸命に行動するウクライナの国民とともにある。引き続き、強力な対ロ制裁とウクライナ支援の2つの柱にしっかりと取り組んでいく」と述べました。
●ウクライナが奪還した東部イジューム、住民1000人以上死亡か…拷問情報も  9/13
ロイター通信などは12日、ウクライナ軍が奪還を宣言した東部ハルキウ州イジュームで、戦闘により住民1000人以上が死亡した可能性があると報じた。同州でロシア軍が占領していた地域では、拷問が行われていたとの情報もある。キーウ周辺ブチャで明らかになった多数の民間人殺害に続き、露軍兵士による新たな戦争犯罪行為が判明する可能性がある。
東部ドネツク州に近いイジュームは露軍が軍事拠点としていたが、ウクライナ軍の反攻で撤退を余儀なくされた。露軍にとっては4月のキーウ周辺からの撤退に次ぐ痛手となる。
イジュームの市議によると、現在の人口が1万人程度の市内ではインフラ(社会基盤)の8割以上が破壊され、少なくとも1000人の市民が犠牲になった。侵略当初の3月に露軍が市内の医療機関を全て破壊し、健康面で影響を受けた人も多いという。
また、ウクライナの検察当局によると、ハルキウ州の村の民家や工場の敷地内で、拷問を受けたような痕がある4人の遺体が見つかった。露軍撤退後、地元住民の通報で発覚したという。ウクライナ内務相顧問はSNSで、露軍が撤退した地域で殺人や拷問の情報が集まり始めていることを明らかにした。
一方、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12日夜のビデオ演説で、ウクライナ軍は「9月初めから、東部と南部でウクライナの領土6000平方キロ・メートル以上を解放した」と述べた。反攻を始めて以来、奪還した地域が急速に拡大していることを強調し、「我が軍の展開は続いている」と作戦継続を訴えた。ウクライナ軍参謀本部は12日、ウクライナ軍が前日に20を超える集落から露軍を撃退したと発表している。
露軍が占拠する南部ザポリージャ原子力発電所を巡っては、国際原子力機関(IAEA)が12日、近隣の火力発電所と結ぶ非常用の送電線3本のうち2本目が復旧したと発表した。安全確保のため運転を停止した6号機が冷温停止状態になったことも公表した。
ただ、外部電力網とつながる通常用の送電線全4本は停止したままだ。ラファエル・グロッシ事務局長は「紛争地域の真ん中に位置する原発の安全・保安状況は、依然として不安定だ」と強調した。
●アゼルバイジャン・アルメニア間で再び軍事衝突 戦闘拡大の恐れも 9/13
南カフカス地方の旧ソ連構成国、アルメニアとアゼルバイジャンは13日未明、両国の国境地帯で軍事衝突が起きたと発表した。両国は相手側による挑発が発端だと主張した。タス通信が伝えた。銃撃や砲撃の応酬で死傷者が出ているという。両国の仲介役を担ってきたロシアはウクライナ侵攻に追われており、戦闘は拡大する恐れがある。
タスによると、アルメニア政府は13日、パシニャン首相が軍事同盟を結ぶロシアのプーチン大統領と電話会談を行い、衝突の情報を共有したと発表した。
両国間では2020年秋、係争地ナゴルノカラバフ自治州を巡る大規模な紛争が発生。両国に影響力を持つロシアの仲介で停戦が成立したが、その後も双方が相手側の攻撃を報告するなど緊張が続いてきた。
アルメニアは今年3月下旬にも、アゼルバイジャン軍が同自治州のアルメニア側支配地域に侵入したと非難。この際もロシアの介入によって、本格的な戦闘の再開は回避された。
ただ、ロシアは同自治州に駐留させていた停戦監視部隊の一部をウクライナ戦線に送ったとされ、ロシアの停戦維持能力の低下を指摘する声も出ている。
●8月の企業物価指数 過去最高 前年同月比 上昇率は9.0%  9/13
企業の間で取り引きされるモノの価格を示す企業物価指数の先月の速報値は、前の年の同じ月と比べて9.0%上昇しました。2020年の平均を100とした水準で115.1と過去最高で、原材料価格の上昇を背景に幅広い品目で値上げが進んでいます。
日銀が発表した企業物価指数の先月の速報値は、2020年の平均を100とした水準で115.1と、5か月連続で過去最高となりました。
指数は前の年の同じ月を18か月連続で上回り、先月の上昇率は前の月に続いて9.0%と高い水準となっています。
これは、ロシアのウクライナ侵攻を受けた原材料価格の上昇を背景に、小麦粉などの「飲食料品」や電気料金、それに「鉄鋼」の価格が上昇したことなどが主な要因です。
対象となった515品目のうち、8割以上の431品目が値上がりし、企業の間で原材料費の上昇分を販売価格に転嫁する動きが広がっています。
また、前の年の同じ月と比べた輸入物価の上昇率は円換算で42.5%となり、急速に進む円安も指数を押し上げています。
日銀は「価格転嫁の動きが幅広く見られる。引き続き資源や穀物の市況のほか、原材料高の動きなどを注視したい」としています。
松野官房長官「追加策を速やかに実施 影響緩和図っていく」
松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「原材料価格が高い水準で推移し、事業用電力などの価格が上昇したことによるものだ。消費者物価についても、国民生活に欠かせない食料品とエネルギー価格を中心に物価が上昇している」と指摘しました。
そのうえで「物価高騰に対する追加策を速やかに実施し、食料品やエネルギーなどの価格高騰の抑制や特に影響が大きい低所得者への支援、地域の実情に応じたきめこまやかな支援などを進め影響緩和を図っていく。さらに、岸田総理大臣が総合経済対策を策定すると表明しており、10月中の取りまとめに向けて検討を進めていきたい」と述べました。
●西側諸国による「経済電撃戦」、ロシアには効果なし プーチン氏 9/13
ロシアのプーチン大統領は12日、西側諸国がロシアに行った「経済電撃戦」の戦術について失敗したとの見方を示した。
プーチン氏はテレビ中継された会合で、「ロシアは自信を持って外圧に対処している。実際、一部の国々から財政的、技術的な攻撃を受けているといえるかもしれない」と述べた。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて西側諸国がロシアに対して行った経済制裁に言及しているとみられる。
プーチン氏は「経済電撃戦の戦術は、彼らが頼りにしていた突然の攻撃は、うまくいかなかった。これはすでに誰の目にも明らかであり、彼らにも同様だ」と付け加えた。
プーチン氏は、ロシア政府が即座に実施した効果的な保護措置のおかげで、ロシア経済は急激なリセッション(景気後退)を回避できたと指摘した。
物価上昇についても早期に安定し、インフレ率は4月のピーク時の17.8%から、9月5日時点で14.1%にまで下落したという。
プーチン氏は、インフレ率が年末までに約12%になるとの見通しを示した。経済活動も成長を始め、企業も通常通りの営業に戻るとしている。 
●崖っぷちロシア、習氏に支援懇願≠ゥ 兵器や弾薬、兵士の不足 9/13
中国の習近平国家主席と、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は今週、中央アジアのウズベキスタンで会談する見通しだ。ロシアによるウクライナ侵攻に対し、欧米諸国はロシアへの経済制裁やウクライナへの兵器供与で対抗している。ウクライナによる反転攻勢でロシアは苦境に陥っており、中国に支援などを呼びかける狙いが浮かぶ。習政権はウクライナ情勢に慎重な姿勢を貫くが、ロシアの懇願≠ノ応えるのか。
中国外務省は12日、習氏が14〜16日、カザフスタンとウズベキスタンを訪問すると発表した。習氏の外国訪問は新型コロナウイルスの流行後初めて。習氏とプーチンの直接会談は、上海協力機構(SCO)首脳会議が行われるウズベキスタンのサマルカンドで実施されるようだ。
ウクライナ情勢では、ロシア軍の劣勢が伝えられている。
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、東部ハリコフ州の要衝イジュムをロシア軍から奪還したと宣言した。米シンクタンク「戦争研究所」も、ロシア軍に制圧された同州のほぼ全域を取り戻したと分析した。
ロシアは兵器や弾薬、兵士の不足に苦しんでおり、北朝鮮がロケット弾や砲弾計数百万発を提供する手続きを行っていると米国防総省が発表した。北朝鮮が10万人規模の志願兵をウクライナに派遣するとの情報もある。
ただ、ロシアが最も頼りにしたいのは、ロシアの極東地域で実施した大規模軍事演習「ボストーク2022」にも参加した軍事大国・中国だ。国防費を毎年上げ続け、世界屈指の陸軍力を誇っている。
中国共産党機関紙、人民日報(海外版)は12日付で、中国共産党序列3位で、習氏の最側近として知られる栗戦書・全人代常務委員長が7〜10日、ロシアを訪問してプーチン氏と会談したと伝えた。栗氏からウクライナに関する直接的な言及はなかったようで、習政権の慎重な姿勢は継続されているようだ。
習氏は、プーチン氏から支援要請があった場合、動くのか。
国際政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「欧米などの監視もあり、中国が直接の支援に動く可能性は低い。一方、中国やロシアと並び『新・悪の枢軸』という枠組みで語られるイランや北朝鮮は、戦闘用の無人機(ドローン)や弾薬の販売に積極的だ。中国がロシアに武器を供与するとすれば、イランや北朝鮮を経由することになるだろう。中国としては、ロシアから石油や天然ガスを安く購入できる利益もある。現在の両国関係は、中国が完全に優位なかたちに傾いている」と分析している。
●ロシア軍敗走で強まるプーチン批判 9/13
ウクライナ軍の反転攻勢でロシア軍の敗走が重なるなか、ロシアの当局者の間でウラジーミル・プーチン大統領の辞任を求める声が広がっている。政権が反体制派を厳しく取り締まるロシアでは異例の事態だ。
プーチンは2月24日、ウクライナに対する軍事侵攻を開始。圧倒的な兵力を誇ったロシア軍は数日で首都キーウを陥落させる勢いだったが、アメリカをはじめとする同盟諸国の支援を受けたウクライナの強力な抵抗に遭った。これにより、ロシア政府はウクライナ侵攻の当初の目標を達成することができずにいる。
ウクライナ軍は先週から、南部ヘルソンや東部ハルキウ(ハリコフ)でロシア軍部隊を奇襲し、1600平方キロ以上の領土を奪還した。とくにこの週末、ロシア軍はイジュームなどの主要都市から撤退を余儀なくされた。
この一連の敗北が「反プーチン」機運の広がりにつながっているようだ。サンクトペテルブルクのスモルニンスコエ地区の区議であるクセニア・トルストレムは、9月12日にツイッターに投稿を行い、ロシア地方議会の区議35人がプーチンの辞任を求める要請書に署名したと明かした。プーチンによるウクライナ侵攻が、ロシアに「害を及ぼしている」というのが理由だ。
プーチンは「ロシアに害を及ぼす」
モスクワなど複数の主要都市の区議グループも要請書に署名している。トルストレムはこの要請書について、誰の「名誉を傷つける」ものでもないとしている。
ロシア下院は3月、軍に関する「偽情報」の拡散を禁止する新法を可決。当局はこの法律を利用して、ウクライナへの「特別軍事作戦」を批判した者を取り締まり、軍事侵攻について異を唱えるのは危険な行為になった。
区議たちは今回、ウクライナでの軍事作戦に具体的に言及こそしていないものの、要請書共に添えた短いメッセージの中でプーチンの行動を非難した。
要請書は「我々ロシア地方議会の区議グループは、ウラジーミル・プーチン大統領の行動がロシアと市民の未来に害を及ぼすと確信している」と述べ、さらにこう続けている。「プーチンがロシア連邦の大統領の座を退くことを要求する!」
スモルニンスコエ地区では、これまでにも複数の議員がプーチンを批判する声明を出していたが、今回はロシア政府の「お膝元」であるモスクワを含むほかの複数の自治体の区議も要請書に署名した。ウクライナでの敗北が続くなか、ロシアの当局者たちの間で不満が高まっていることを示唆している。
スモルニンスコエ地区の議会は9月上旬にも、プーチンを反逆罪で弾劾することを提案していた。同議会のニキータ・ユレフェフ区議は、ウクライナに対する特別軍事作戦がロシア軍の兵士たちを死なせ、経済に打撃をもたらし、NATOの拡大を招いていると批判した。
ユレフェフによれば、その後同議会の複数の議員が、ロシア政府の「信用をおとしめた」として警察に呼び出された。9月にはロシア軍の兵士2人も同様の罪に問われている。
今回も政権側の圧力があって、それが勝つのか予断を許さない。
●プーチン大統領と正恩氏、イランを交え核で結託=I? 9/13
ウクライナ侵攻で消耗が激しいロシアに、北朝鮮がロケット弾や砲弾計数百万発を提供する手続きを行っていると米国防総省が発表した。北朝鮮が10万人規模の志願兵をウクライナに派遣するとの情報もある。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は親密で、核兵器で周辺国を威嚇する手法も共通している。核や武器供与について両国と関係の深いイランを交えた「悪の連携」が加速するのか。
「輸出規制や制裁の影響もあり、ロシアが深刻な供給不足に苦しんでいることを示している」
米国務省のパテル副報道官は、6日の記者会見でこう指摘し、ロシアが北朝鮮から調達を増やすとみられると述べた。
ウクライナ軍は欧米の軍事支援を受けて東部や南部で反撃を継続、ロシアの支配地域の奪還を進めている。
西側諸国から厳しい経済制裁を受けたロシアが頼るのは北朝鮮だ。米ウォールストリート・ジャーナルなどによると、北朝鮮の申紅哲(シン・ホンチョル)駐ロシア大使は8月、ロシア国営タス通信に「共通の脅威である米国に対抗するために北朝鮮とロシアの協力を深めていく」と語ったという。正恩氏は6月12日の「ロシアの日」に合わせ、プーチン大統領に「両国の戦略・戦術的協力がさらに緊密になると確信する」と祝電を送ったが、現在も良好な関係にあるようだ。
評論家でジャーナリストの潮匡人氏は「北朝鮮はかつてロシア側から支援を受け、互換性の高い武器を多く所持している。弾薬不足のロシアにとって一刻も早く取引したい相手だ」と指摘する。
ロシアが頼るもう一つの国がイランだ。すでにイラン製ドローン(無人航空機)がウクライナの前線に投入されている。米財務省はドローンの運搬や人員の手配を行ったイラン企業4社などを制裁対象とした。
軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「半導体不足などを背景にロシアの武器不足は深刻だ。関係の近い中国は国際的な影響力が強いため、現状は軍事支援に慎重だ。そこで、同じく国際的な制裁を受けるイランや北朝鮮が積極的な軍事支援に動いている」と解説する。
また、米紙ニューヨーク・ポストによると、ロシア国営放送のチャンネル・ワンで、ロシアの国防専門家が「10万人の北朝鮮の志願兵が紛争に参加する用意があるとの報告がある」と発言したという。ロシアのマツェゴラ駐北朝鮮大使は、ウクライナ東部ドンバス地域について、破壊された施設の復旧作業で北朝鮮の建設労働者が重要な役割を担えると述べた。
米大手シンクタンク「ヘリテージ財団」のクリングナー上級研究員は8月に公表した報告書で、「北朝鮮によるロシアへの軍事支援は、2006年に可決された国連安保理決議1718にも違反する」との見解を示した。決議では北朝鮮が戦車、大砲、ミサイルなどの重火器を輸出することを禁止し、国連加盟国にその移転防止を求めている。ロシアは安保理の常任理事国でありながら、みずから決議破りに出ていることになる。
前出の世良氏は「北朝鮮はロシアに人員を派遣することで外貨を稼ぎたい。労働力を皮切りに、武器の売買や事実上の傭兵としての志願兵の派遣も時間の問題だろう」との見方を示す。
ロシアはウクライナで核兵器の使用に踏み切るとの懸念がくすぶる。北朝鮮は核兵器の使用条件などを定めた法令を採択。正恩氏は「絶対に核を放棄できない」と述べた。イランの核開発には北朝鮮が技術供与しているとも指摘が根強い。
ロシアや北朝鮮と日本海を挟んで向き合う日本も人ごとではない。前出の潮氏は、「国連安保理の非常任理事国である日本は、制裁決議に違反する北朝鮮の武器の輸出について先陣を切って批判する立場にある。岸田文雄政権がどこまで具体的な動きに出るかわからないが、声を挙げれば米国や英国は賛同する見込みが高く、西側諸国で一致してロシアの武器補給に圧力をかける機運が高まるだろう」と指摘した。
●ウクライナ反転攻勢も ロシア軍事侵攻を継続する構え強調  9/13
ウクライナ軍が東部ハルキウ州で反転攻勢を続ける中、ロシア大統領府は12日「すべての目標が達成されるまで作戦は継続される」と軍事侵攻を継続する構えを改めて強調し、今後のプーチン政権の出方が焦点になります。
ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナでは、東部でウクライナ軍の反転攻勢の動きが鮮明になっていて、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は「ウクライナ軍がハルキウ州のほぼ全域を奪還した」と分析しています。
ハルキウ州にいる親ロシア派の幹部は12日、国営ロシアテレビで、現地でウクライナ軍の部隊の規模がロシア軍の8倍に上ったという見方を示すとともに、市民およそ5000人が国境を越えてロシア国内に避難したと明らかにしました。
ロシア国防省はウクライナ東部での戦線の重要拠点となっているハルキウ州イジュームからの撤退を事実上、表明していて、「戦争研究所」はウクライナ軍がイジュームも奪還したと指摘しています。
そのイジュームの状況について12日、オンラインの記者会見を開いた市議会議員は戦闘に巻き込まれるなどして少なくともおよそ1000人の市民が死亡したと明らかにしました。
こうした中、ロシア大統領府のペスコフ報道官は12日「すべての目標が達成されるまで作戦は継続される」と述べ、軍事侵攻を継続する構えを改めて強調しました。
プーチン大統領は、今月15日から行われる上海協力機構の首脳会議に出席するためウズベキスタンを訪問する予定ですが、大統領府に近い情報筋によりますと、これを前に戦況などについて分析する安全保障会議が開かれる可能性があるということで、今後のプーチン政権の出方が焦点になります。
●プーチン氏は変わるのか ウクライナでロシア支配地が減少 9/13
1週間のニュースを伝えるロシア国営テレビの看板番組は通常、政府の成果を強調する。だが、この前の日曜日(11日)の放送は、珍しく告白で始まった。「(ウクライナでの)特別作戦の前線では、これまでで最も厳しい1週間になった」。司会者のドミトリー・キセレフ氏が、沈痛な面持ちで述べた。
「特にハルキウの戦線では、数で勝る敵軍の猛攻を受け、(ロシア)部隊はそれまで解放していた町から撤退を余儀なくされた」
「解放」とは「制圧」のことだ。ロシアは数カ月前にそれらの地域を占拠したが、ウクライナ軍が電光石火の反攻を実施。ロシア軍は、ウクライナ北東部でかなりの支配地を失った。
しかし、ロシアの国営メディアは平静を装っている。ハルキウ州で起きたことを、公式には「撤退」と呼んでいない。
政府発行紙ロシースカヤ・ガゼータの最新号は、「ロシア部隊がバラクリヤ、クプヤンシク、イジュームから不名誉にも逃げたといううわさを、ロシア国防省は否定した」とし、こう報じた。「部隊は逃げていない。これは事前に計画された再編成だ」。
タブロイド紙モスコフスキー・コムソモーレツでは、軍事アナリストが別の見解を示した。「敵を過小評価していたことはすでに明らかだ。(ロシア軍は)対応に時間がかかりすぎ、崩壊した。(中略)その結果、私たちは敗北を喫し、部隊を撤退させ包囲されないようにして損失を最小限に抑えようとした」。
有力者からも警告
この「敗北」は、親ロシアのソーシャルメディアチャンネルや、「愛国的」なロシア人ブロガーの間で怒りを呼び起こした。自分たちの軍が過ちを犯した、という非難が噴出している。
ロシア・チェチェン共和国の有力指導者、ラムザン・カディロフ氏も同様だ。
「一両日中に戦略が変更されなければ、国防省や国の指導者に、現地の本当の状況を説明しなければならなくなるだろう。非常に興味深い状況であり、驚くべき事態だ」と、カディロフ氏は警告した。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナへの本格侵攻を命じてから、半年余りがたった。ロシアの政治家、コメンテーター、アナリストたちは当初、政府が「特別軍事作戦」と呼ぶものについて、数日以内に終わるとテレビで予想していた。ウクライナ国民はロシア軍を解放者として迎え、ウクライナの政府は簡単に崩壊するだろうと話していた。
だが、そうはならなかった。
それどころか、半年以上たった今、ロシア軍は支配地を失い続けている。
この状況で重要な問いとなっているのが、プーチン氏は政治的な影響を受けるのかということだ。
プーチン氏は20年以上にわたり、ロシアのエリートたちの間で評判を得てきた。勝者であり、いつも窮地からの脱出に成功しており、要するに無敵である、という評判だ。
私はプーチン氏のことを、有名な脱出奇術師ハリー・フーディーニ氏のロシア版ような存在だと考えることがよくある。どんな結び目や鎖でつながれても、プーチン氏はいつも逃げてきた。
だが2月24日を境に、それが変わった。
この半年間は、ウクライナを侵攻するというプーチン氏の決断が大きな誤算だったことを示している。ロシアは素早い勝利を果たせず、長く血なまぐさい攻撃に陥り、不名誉な敗北を繰り返している。
権威主義的な指導者から無敵のオーラが失せると、問題が生じる。プーチン氏は、ロシアの歴史を思い知ることになるだろう。戦争をして勝利できなかったロシアの過去の指導者は、良い結末を迎えていない。
ロシアが日本に敗れたことで、1905年に最初のロシア革命が起きた。第1次世界大戦での軍事的失敗が、1917年のロシア革命を招き、皇帝を退位させた。
ただ、プーチン氏は公に敗者となるつもりはない。
ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は12日、「(ロシアの)特別軍事作戦は続いており、当初設定したすべての任務が完了するまで継続される」と記者団に話した。
ここでもう1つの重要な問いが生じる。プーチン氏は次に何をするのかだ。
プーチン氏の考えと計画を知っている人を探すのは困難だ。彼が軍や情報機関のトップから得ている情報がどれだけ正確かが、それを大きく左右しているかもしれない。
だが、分かっていることが2つある。プーチン氏はめったに間違いを認めない。そしてめったにUターンしない。
国営メディアの報道からは、戦地での失敗を西側によるウクライナ支援のせいにする兆しが、すでに見えている。
「NATO(北大西洋条約機構)の支援を受けたキーウ(ウクライナ)が反攻を開始した」と、ロシア国営テレビは伝えた。
そして、落ち着かない気分にさせる問いがもう1つ、数カ月前から後景に漂っている。通常兵器で勝利できなければ、プーチン氏は核兵器を使うのか、というものだ。
ウクライナ軍のヴァレリー・ザルジヌイ総司令官はほんの数日前、「特定の状況でロシア軍が戦術核兵器を使うという直接的な脅威はある」と警告した。
今のところ、ロシア政府にパニックの明確な兆候はない。国営テレビは前向きな言葉を発信。ウクライナのエネルギーインフラに対するミサイル攻撃については、「特別作戦における転換点」と表現している。
ロシアが支配地を失っているとの報道がウクライナから届いていた10日、モスクワではリラックスした様子のプーチン氏が、ヨーロッパで最も高さのある新型観覧車のオープニング式典に参加していた。
プーチン氏はなおも、自らの「特別作戦」がモスクワの新たな大観覧車のように、自分に有利に動くと信じているようだ。
●ウクライナ軍が要衝イジューム“奪還” 露ではプーチン氏を“公然批判”…… 9/13
反転攻勢を強めたウクライナ軍が、ウクライナ北東部・ハルキウ州の要衝イジュームを奪還しました。半年ぶりに町が取り戻され、市民に喜びの声が広がりました。一方、ロシアではプーチン大統領を批判する声が上がりはじめる“異例の事態”になっています。
ウクライナ北東部・ハルキウ州。11日に公開された映像では、住民らがウクライナ国旗を広げながら、安堵(あんど)の声を上げました。
「(この日を)待ってた! ありがとう!」
市民らは半年ぶりに町が取り戻され、喜んでいました。
ウクライナ兵士「ここは以前も、未来もウクライナだ。ロシアの世界はもう来ない!」
さらに要衝のウクライナ・イジュームでは、「イジュームはウクライナの領土だ! バンザイ!」と、市庁舎の屋上で兵士らが国旗を掲げ、「ロシア側から街を取り返した」と宣言しました。
実は、イジュームの奪還は、ウクライナ側にとって大きな意味を持つといいます。その背景は、イジュームの地理的な位置関係にありました。
イジュームは、ウクライナ東部・ドネツク州の完全掌握を目指すロシア軍が、前線に物資を送る重要な補給拠点の一つでした。
9月に入り、ハルキウ州で反転攻勢を強めたウクライナ軍は、わずか1週間ほどで、イジュームを含む、ハルキウ州のほぼ全域を奪還。ロシア側は、前線への補給路を断たれ、作戦は“破綻した”と指摘されています。
しかし、地元市議によると、イジュームでは市民約1000人が犠牲になったということです。
さらに、奪還された村では、ロシア軍が仕掛けた地雷の撤去が続くといいます。
ウクライナの当局者「完全に(爆発物を)除去するには、1か月はかかると思う」
ウクライナは、南部での反撃に重きを置く構えをみせつつ、奇襲する形で北東部のハルキウを奪還しました。
ウクライナ ゼレンスキー大統領(12日公開のSNSより)「9月初めから今日までに、わが戦士たちはすでにウクライナ東部と南部で、6000平方キロメートル以上を解放した」
9月だけで、東京都の実に3倍近くの領土を、ロシア側から取り戻したと主張しました。
イギリス国防省は「ウクライナの成功は、ロシアの作戦に大きな影響を与える」と指摘しました。
こうした中、ロシア国内では、プーチン大統領を公然と批判する声も聞かれるようになりました。
「ウラジーミル・プーチンのロシア大統領辞任を要求する!」
プーチン氏に辞任を突きつけたのは、モスクワやサンクトペテルブルクなどの地方議員グループです。体制批判が取り締まり対象になりうるロシアで、こうした声が上がるのは異例のことです。
さらに、プーチン大統領に忠誠を誓うチェチェン共和国のカディロフ首長も、作戦に「間違いがあった」とロシア軍を批判しました。
劣勢ともいえる状況に、ロシアのペスコフ大統領報道官は、「すべての目標が達成されるまで、作戦は継続する」と強気の姿勢を崩していません。
イギリスの有力紙タイムズは、「手負いのプーチン大統領の方が危険だ」と指摘しています。
●ウクライナ快進撃“要衝の町”奪還 “プーチン氏辞任要求”に30議員署名 9/13
ウクライナの反転攻勢を受け、ロシアが大きく揺らいでいます。専門家はロシアの核兵器使用について、「今までの中で一番近づいている」としています。
半年にわたりロシア軍に制圧された街で、笑顔と共にウクライナの国旗が掲げられました。
デルガチ地区長「(彼女は)本日から通常の業務に戻ることになりました」
ウクライナ北東部で広がる歓喜の声。今、ハルキウ州でウクライナ軍の快進撃が続いています。
ゼレンスキー大統領「9月初めから今まで我々の兵士は、ウクライナ東部と南部で6000平方キロメートル以上を奪還しました。そして反攻作戦は続いています」
9月に入った時点では、ハルキウ州の多くが赤で示されたロシア軍に制圧された地域でした。
ターニングポイントは6日です。ウクライナ軍はそれからわずか5日ほどでロシア軍の補給路につながる要衝イジュームを奪還。ハルキウ州の大部分を取り戻したのです。その面積は東京都の2.7倍に及びます。
奪還した地域に残されていたのは、ロシア軍の戦車や兵器です。ロシア軍の一部の兵士は、軍服を脱ぎ捨てて私服姿になり、地元住民に紛れ込んで逃走しているといいます。
わずか5日の“奪還劇”はなぜ成功したのでしょうか。専門家は、ウクライナ軍の巧みな作戦があったと指摘します。
防衛研究所・高橋杉雄氏「ウクライナ側がロシア側をだました」「当然ロシアも人工衛星があるので、ハルキウ方面にウクライナ軍が集結していたのは分かっていた。分かっていたが本命はヘルソンだと頭が最初にできているから、判断するのは人間なので、人間がだまされてしまうと、衛星情報やサイバーの情報があろうと正確な判断はできない」「(Q.この展開は予想できた?)まったく予想はしていなかった」
世界を欺いたというウクライナの進撃を受けてロシア側は大きく揺らいでいます。
高橋杉雄氏「決定的な敗北を回避する目的での核使用。今までの戦争の展開の中で一番近づいている」
ウクライナ軍はわずか5日でハルキウ州の大部分を取り戻す快進撃をみせています。それを受けてロシア側は大きく揺らいでいます。
ロシア国防相はハルキウ州の部隊を再編成すると発表しました。この地域からの撤退を認めたものとみられます。
こうした動きにプーチン大統領の熱烈な支持者からも批判の声が。
チェチェン共和国、カディロフ首長「最新情報を得ているが、具体的な説明がない」
プーチン大統領に忠誠を誓うチェチェン共和国のカディロフ首長。自身が指揮する部隊をウクライナに派遣するなど、ロシア軍を支援していますが、今回の戦略には不満があり、状況次第では直談判すると訴えました。
カディロフ首長「私は国防省のように戦略を考える専門家ではないが、今回間違えてしまったことがあると思う。今後、戦略の見直しをしてくれることを期待する」
そしてロシア国内でもプーチン大統領に逆風が。地方議会で反プーチンの動きが広がっているのです。
12日、サンクトペテルブルクの地方議員がプーチン大統領に辞任を求める声明を発表しました。そのなかで、「プーチン大統領の行動がロシアと市民の未来に害を及ぼすと信じている」と指摘。この声明にはモスクワなど、およそ30の地区の議員が署名しています。
専門家は“核の緊張”が軍事侵攻開始以来、最も高まっていると警鐘を鳴らしています。
●モスクワなどの地区区議、プーチン大統領の辞任要求 9/13
ロシアの首都モスクワやサンクトペテルブルクなど18カ所の地区区議からプーチン大統領の辞任を求める声が上がっていることがわかった。要請書が12日、ツイッターに投稿された。
サンクトペテルブルクの区議が投稿した要請書には、「我々、ロシアの地区区議は、ウラジーミル・プーチン大統領の行動が、ロシアとロシア市民の将来にとって有害だと信じている。我々は、ウラジーミル・プーチンのロシア連邦大統領職からの辞任を要求する」とあった。
ロシアではこのほど、ウクライナ侵攻が始まってから初となる地方選が行われ、プーチン政権支持の候補者が大量に当選した。
投稿者は今回の要請書について簡潔で誰の信用も傷つけないとし、参加したい区議は歓迎すると述べた。
モスクワの区議も、プーチン氏の見解と政府のモデルは時代遅れであり、ロシアとロシア人の発展の可能性を妨げているとして辞任を求めている。

 

●独ロ首脳が電話会談、ウクライナ戦争巡り協議 9/14
ドイツのショルツ首相は13日、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、ウクライナ戦争について、停戦とロシア軍の完全撤退に基づく外交的解決策を可能な限り早く模索するよう求めた。ドイツ政府のヘベストライト報道官が述べた。
90分間の電話会談で、ショルツ首相はウクライナのザポロジエ原子力発電所の安全性を確保する必要性を強調したほか、プーチン大統領に対し、国連が支援する穀物協定の完全履行を継続するよう要請。ヘベストライト報道官は「ショルツ首相は、ロシアがこれ以上併合を進めることは許されず、いかなる状況下でも認められないと強調した」とし、両首脳が今後も連絡を取り合うことで合意したと語った。
●ウクライナ戦争、転換点に達したか判断難しい=米大統領 9/14
バイデン米大統領は13日、ウクライナ戦争が転換点に達したかとの質問に対して「その判断は難しい」とした上で「ウクライナ国民が大きな進展を遂げたことは明らかだ」と指摘した。今後については「長い道のりになる」との見方を示した。
●原発を人質に世界を脅すロシア、ウクライナ大攻勢の先にある暗い命運 9/14
ロシアによる侵攻当初に制圧され、ロシア軍が拠点化してるウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所で事故、攻撃が絶えない。9月1日にはIAEAが調査団を派遣。冷却用の電源が不安視される状況が続いており、原子炉の稼働を全面的に停止している。ロシアは、核事故の可能性を見せつけるという、核兵器によらない、これまでに世界が経験したことのない手法の「核恫喝」を行っている。ロシアの目算は何なのか、そしてその効果はどこにどのように表れているのか、侵攻開始直後の3月6日に公開の「もはやプーチンには追い詰められた上での『核恫喝』しか手は残っていない」の筆者が、この前代未聞の行動とロシアの命運を解き明かしてみる。
最初から「核」を匂わせる
今回のウクライナ戦争では開始直後から、プーチンは核の特別警戒態勢についての発言を行っていた。また、戦争の最初のフェーズは、ロシアによる、キエフ、東部、南部の3正面での侵攻でキエフがメインのターゲットだったが、その侵攻の過程で1986年に事故を起こし、封じ込め状態にある旧チェルノブイリ原子力発電所を制圧するなど、核施設を戦争に巻き込むことを匂わせるような行動を取ってきた。
この戦争当初の核を巡るプーチンの狙いは、西側諸国に対する過度な介入への牽制ということで考えていい。
当初、アメリカ側は、不測の事態を回避するため、ロシア側に、ショイグ国防相、ゲラシモフ参謀総長らと、軍のトップ同士のコミュニケーションのラインは開きたいと、何度かコンタクトを試みたが、ロシア側は出てこなかった。
4月に入ってロシア軍は東部と南部に兵力を再配置すると、5月半ばにショイグとオースティン米国防長官、さらにゲラシモフとミリー米統合参謀本部議長の電話会談が相次いで行われた。
また、5月30日に、バイデン大統領は、長射程の多連装ロケット砲HIMARS供与の議論に対し、この装備から発射できるロケット弾の内、射程70キロの通常弾は供与するが、最大射程300キロのロケット弾ATACMSは供給しないということを言明した。
歯止めは確かにかかった
さらにその翌日の31日、バイデン大統領はニューヨークタイムズにオプエドを発表して、ウクライナがロシアの領土に対して攻撃するようなことをアメリカは促さないと表明した。
注目しなければならないのは、このオプエドには、ウクライナの「sovereignty(主権)」への言及はあったが、「territorial integrity (領土の一体性)」という言葉は入っていないことだ。
ここには、ウクライナとロシア双方に対するメッセージがある。最終的にどういう形でこの戦争を終わらせるかは、当事者同士の問題でアメリカはそれに関与しない。ウクライナには武器の支援をする。しかし、ウクライナが侵略された全ての領土を取り戻すまで支援するかというと、それをここで約束するわけではない、という意味であったと思う。
つまりアメリカには同時に達成しなければならない2つのタスクがある。1つは、ウクライナを負けさせてはいけないこと。これは絶対にやらなければならない。しかし、同時に、核戦争になるところまでこの問題をエスカレートさせないことだ。
そういう文脈の中で出されたのが、5月31日のニューヨークタイムズのオプエドだった。アメリカのウクライナへの軍事支援には、やはり一定のリミットがあるということだ。プーチンが積極的に海外へ出だすのは、このオプエドが公表されて以降だ。
米ロ間だけに成立する会話
ロシアはアメリカとは、核の戦略的安定性の問題で、ある種のコミュニケーションをとっているといえる。「我々は核をもっている」ということを示し続けることで、アメリカに「ウクライナに侵攻したからロシアをたたきのめせばいい」ということだけではない、別の考えを余儀なくさせている。カードとして「核」は確かに効いている。核を中心とした戦略的安定の問題はアメリカにとっても非常に重要であるということだ。
ニューヨークタイムズのオプエドから3日後の6月2日、バイデンは軍備管理協会(Arm Control Association)の設立50周年にメッセージを送って、その中で、ウクライナに対してはしっかり支援をしなければいけないが、この核の戦力的安定の問題に関してはアメリカはロシアと関与していく必要があるというフレーズの入ったメッセージを送っている。ロシア側も見ている。
これに呼応する形でプーチンは、6月末のサンクトペテルブルクでの経済フォーラムのメッセージで、戦略的安定性の問題について対話する用意があるという発言をしている。
この流れの延長で考えると、今回のザポリージャ原発を巡る様々な動きは、ウクライナでの現実の戦闘とそれを巡る駆け引きというものとは別に、むしろアメリカとの綱引きということで解釈することが出来る。つまり原子力発電所の核を使った脅しということになる。
ただし脅しのレベルにとどめている。原発施設の中に軍用車両を集め、ロシア側から撃ったとしか思えないような砲撃が起こり、原発の設備に被害が発生する。一方で、IAEAの要員を受け入れて、しかもウクライナの攻撃であるという宣伝をしつづけている。もし本当にロシアが一連の攻撃や破壊を行っているとすれば、西側に対するぎりぎりの脅しを行っていることになる。一つ間違えば原発事故に繋がるかも知れない非常に危ない行為である。
2026年が天然ガスの脅しのリミット
ロシアは今、原子力発電所だけではなく、エネルギーと食糧も人質にとって、西側諸国に対して揺さぶりをかけている。
今、情勢は有利になってはいるが、それでもウクライナ側がロシアに対して圧倒的な軍事的勝利をするというのは簡単には出来ないだろう。
もしかしたらヘルソンの都市部は獲れるかも知れないけど、ヘルソンの東側を流れるドニエプル川を越えて攻めこむことは簡単なことではない。また直近ではハリコフ東方での攻勢が大成功し、オスキル側以西の地域からロシア軍を駆逐したが、これからさらに失地を大きく回復できたとしても、ドネツク、ルハンシク全体を取り戻すにはまだほど遠いだろう。
一方、ロシア側からすれば、今のペースで戦闘を続けることができるのは、長くてもあと数ヵ月だろう。兵力や兵器の損耗が激しいので、どこかで立ち止まり停戦する必要がある。ただそれはロシア側の都合であって、停戦を求めても、そううまく運ぶ保証はない。いずれにしても、ロシア側はある種の長期戦を覚悟せざるを得ない。
ロシアの基本的な戦略は、エネルギー、食糧、原発を人質に取って脅しをかけながら、西側のウクライナへの支援を抑制し、長期戦に持ち込み、同時に、それによって西側諸国の「ウクライナ疲れ」を待つということであり、それくらいしかない。
特に、脱炭素の問題があることから石炭火力を放棄した西ヨーロッパ、特にドイツは、原発廃止も政策としているので、ロシアの天然ガスパイプラインを前提にしなければエネルギー政策が成り立たない状況であり続けた。それ故、エネルギーが有効な「脅し」の材料になっている。
世界全体で見ても、現状ではロシアのガス供給を考慮しないと、ガス需要全体に対し、供給の絶対量が足りない。だから、例えば、日本も対ロ制裁とは正反対の行為であり、確実に供給される保証もないのだが、だがサハリン2の権益を手放せないのである。ガスに関しては世界的に需給が逼迫しているあと数年は、ロシアはゲームのカードにし続けることが出来る。
ただこれにもタイムリミットがある。特に天然ガスに関しては2026年以降、ロシア以外の地域の新規のガス増産プロジェクトからの供給が始まる。
それまでの間に、欧米諸国がウクライナ疲れをする、アメリカではトランプが復活する、それによって西側のウクライナへの支援が積極的でなくなる、などの事態の好転があることを期待するしかないのだ。
そして、ドンバスやクリミアを粘って維持し、今回新たに侵攻した南部地域を確保して居座り続ける事を狙うしかない。侵攻開始当初のゼレンスキー政権を倒すという目標に比べると大きく後退しているが、事ここに至ると、それしかない。
プーチンは出来れば全面的な大動員はやりたくない。今のロシア国内において、なぜ、政府の特別軍事作戦が、まかりなりにも約70%の国民に支持されているのか、というと、少数民族や貧しい人々が戦地に行っているため、国民のほとんどが自分たちが戦争をやらなくてもよいという前提があるからだ。そのためこの長期の人質戦略を採り続けるしかないだろう。
西側との関係を壊してしまったことのツケ
我々世界は、今後大きく国力を弱めたロシアと向き合うことになる。ウクライナの戦争が、大きな進展なく膠着状態がつづく形で終わったとしてでもある。
ロシアは西側との経済関係を大きく壊してしまった。そして制裁も解除されないで続くことになる。
ロシアという国はこれまで西側の技術を取り入れる事で国の近代化を進めてきた。それが18世紀初頭からのピョートル1世の時代からの歴史的な流れであった。だが、その流れは止まる。
ただこれまでと唯一違うかもしれない要素がある。中国が台頭しているということである。プーチンの、ロシア側の、一つの頼みの綱は、中国を筆頭にした、いわゆるグローバルサウスといった国々が、必ずしもアメリカの制裁に加わっていないことだ。そこに一縷の希望をつなげている。
確かにこれを機に、西側が圧倒的に世界的な求心力を取り戻す、ということではないだろう。今後の世界を規定していくのは、やはり米中関係ということになる。
その米中関係の中で、多分ロシアはこのまま行くと、中国のジュニアパートナーになって行かざるを得ない。ロシアが本当にそれを望んでいるかどうかは別にして、それ以外に選択肢はないだろう。
国際戦略の足場を失っていく
仮に日本や西側とエネルギーで繋がり続けるとしても、ロシアの資源がどこまで安定的に供給されるのか確かな保証はない。
地政学的な問題だけではない。資源開発もまた西側の技術に頼って行われてきた。この先、この西側の技術が供与されない中で、供給の信頼性は大きく揺らぐことになる。中国が西側の代替を出来るかというと、彼らも西側の技術で資源開発を行っているということはかわりない。
石油の生産、精製、エネルギー効率を回収する技術、海底資源開発の技術、こういった技術は西側にしかない。天然ガス関連の技術も基本的に西側に頼ってきている。既存のものは当面動いていくだろうが、メンテナンスや修理などもストックがある内はいいが、それが途切れていったとき、どこまで生産を維持できるのか。
ロシアの軍事産業にしても、西側の半導体を含めた技術が入ってこない中で、維持できるのであろうか。ウクライナとの戦いをするくらいのストックはあるだろうが、それでは輸出産業として今後も維持できるのだろうか。
ロシアはこれまで武器輸出国として国際的に戦略的な関係を構築してきた。インド、中国、ベトナムへの関係がそうだ。東南アジア諸国もかなり購入している。そういう武器供給国としてのロシアの存在感は、薄れていくことになる。
今後、エネルギーの供給者としてのロシア、武器の供給者としてのロシア、両方ともロシアにとって重要な戦略的なアセットだが、西側との協力関係無しで、どこまで維持することが出来るか。このことがロシアの今後の世界での立ち位置を決めていくことになる。この件に関してはあまり楽観的ではない。
当面のウクライナ情勢を見ると、西側は楽観出来ない。2026年までの時間軸で見ても、ロシアは、資源、食糧、原発などをツールとして使っていくことが出来る。一方、西側は民主主義であるが故にふらつく可能性がある。しかし、長期的に見て、以上の点からロシアは確実に国力を落としていくことになる。
●プーチンが戦況悪化に激怒! 国内200万人の予備兵を投入できない事情 9/14
ロシアによるウクライナ侵攻開始から半年余り。9月に入ってウクライナが東部ハルキウ州で大攻勢をかけて奪還し、ロシア軍は「東部ドンバス地方の解放を達成するため、戦力をドンバスに再編成する」としてハルキウ州からの撤退を認めた。
ロシア本土からドンバス地方への兵たん補給路である要衝イジュームも奪還したことから、世界中のメディアがこの戦争のターニングポイントになる可能性を報じている。
今回の大規模作戦前、ウクライナはロシアによって制圧されていた南部ヘルソン州への攻勢を宣言。これを受けてハルキウ州に展開するロシアの主力部隊がヘルソンへ移動した隙をついて大攻勢をかけたため、一部ではロシア軍をあざ笑う陽動作戦が成功した結果と見られている。
軍事評論家の黒井文太郎氏は、メンツを重んじるプーチン大統領について「ブチギレてるでしょうね」と分析しつつ、ハルキウ州を奪還できた要因を「欧米から供与された戦車など装甲車の存在と、米英などによる情報戦での勝利が大きかった」と指摘。ロシア軍の今後については「補給路を断たれたロシア軍が短期的に巻き返すのは難しい。そもそも兵士の数が少なすぎる」と分析した。
実際、70万人のウクライナ軍に対してロシアは36万人と言われ、火力で勝るもののマンパワーが不足している。しかも、戦闘を放棄して逃走する兵士も少なくないとされるだけに深刻だ。一方でロシアには約200万人の予備役兵がいると言われるだけに、メンツをつぶされたプーチン氏が一気に予備役兵を投入してマンパワーで逆転してくる可能性はないのか?
「プーチンはそれがしたくてもできないんです。予備役兵を動員すれば、ロシア国内を戦時体制にしなければいけない。しかし、国内が侵略されてないのに戦時体制に移行したら国内の不満が高まることになるので、プーチンでも実行することができない」(黒井氏)
陽動作戦に引っかかり、一杯食わされたプーチン氏の次の一手はいかに――。
●ロシアとベラルーシ、英女王国葬から排除 政府筋 9/14
英ロンドンで19日に執り行われるエリザベス女王の国葬に、ロシアとベラルーシが招待されていないことが英政府筋の話で分かった。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が理由とされる。
国葬には各国の元首ら100人以上が参列する見通し。政府筋によると、2か国以外にも、旧英植民地だが軍政下にあるミャンマーと、長年にわたり国際的に孤立している北朝鮮も招かれていない。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は8日に女王が死去したのを受け、「英国民の愛と尊敬を集め、世界の舞台で権威を認められてきた」と弔意を表する一方、国葬には参列しないと明言していた。
プーチン氏とベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領はウクライナ侵攻を受けての制裁の一環として、英国への入国を禁止されている。
●ドゥーギンの娘爆殺、企業幹部不審死−ロシアはテロで革命前夜なのか 9/14
ロシアでは、テロ事件がよく起きる。
民族問題、宗教問題等々、タネはいつでもある。今回のウクライナ戦争の前も、ロシアでは小規模なテロ行為が相次いでいた。2017年には学校、駅等に爆破予告の電話が相次ぐ事件があったし(一部の電話はウクライナ発と報道されている)、2018年には右翼勢力がアルハンゲリスクのFSB(公安警察)支所を爆破している。
昨年8月にはモスクワ南部のヴォロネシで乗り合いタクシーが爆破され1名が死亡、9月にはペルミの大学で発砲事件があり6名が死亡している。そして秋には、刑務所での騒動が相次いでいる。
もともとロシアの政治は荒っぽい。2006年にはチェチェン問題等に関わっていた女性記者ポリトコフスカヤが、自宅アパートのエレベーターで射殺されているし、2015年にはリベラル系野党指導者のボリス・ネムツォフが路上で射殺されている。
ひさびさの爆殺事件
ウクライナ戦争が始まってからは、当初、全国の大都市で青年たちの反戦デモが行われた他、10ヵ所以上の兵士徴募センターに火炎瓶が投げ込まれる事件が発生した。しかし総動員令が発令されず、大々的な徴兵が行われていないことから、多くの市民にとって戦争は遠くのできごと。
だから3月以降のロシア社会は平静だったのだが、8月20日モスクワで、右翼民族主義のイデオローグ、アレクサンドル・ドゥーギンの車が爆破され、運転していた娘ダリヤが犠牲になった。これは郊外での右派の集会に父を連れて参加したダリヤが1人で帰宅しようとした――ドゥーギンはスポンサーの車に乗って別途帰宅――ところ、車につけられていた爆弾が爆発したものである。
ドゥーギンは1962年生まれ。父親は秘密警察KGBの幹部だが、ドゥーギン自身は反ソ連活動に転じ、有名大学を退校処分となった後は、掃除夫を務めつつ英語、フランス語を独習している。
ロシア民族至上主義を掲げ、ウクライナ人を敵視。プーチン大統領のイデオロギー指南と見なされているが、過激の度が過ぎ、プーチンと会ったというニュースを見たことはない。最近では、ウクライナでのロシア軍の劣勢を指摘。ロシアが崩壊する可能性にも言及しつつ、保守愛国主義に沿ったラジカルな変革を政府に呼びかけていた。
飛び交う犯人説
今回の殺害の犯人については、諸説がある。治安担当のFSBは事件の翌々日には「犯人はウクライナ諜報機関が放ったナタリヤ・ヴォーフクという工作員だ。彼女はドゥーギナを殺害したその足で、エストニアに出国した」と写真付きで発表したのだが、その手際の良さでかえって疑われる羽目となった。ヴォーフクをそれほどフォローしていたのなら、犯行を止めることができただろうにと思う。
だから、「この事件はFSBの自作自演だ。国内引き締めの口実にする魂胆だ」という説が出てくる。しかしFSBがしかけるなら、もっと大型のテロを仕組むだろう。
1999年9月、モスクワなどの都市で集団アパートが数件、夜中に爆破され、100名を超える死者が出た。FSBはこれを直ちにチェチェン独立運動によるテロと決めつけ、チェチェンの独立運動弾圧作戦開始を正当化するとともに、その作戦を新任のプーチン首相に指揮させることで彼の人気を押し上げ、同年末エリツィン大統領からの権力禅譲に結び付けたのである。
このアパート爆破については、FSBの自作自演といううわさが当時根強くあった。この件と比べると、ドゥーギン殺害は情勢の転換点となるほどの衝撃は生まなかったことだろう。
一方、ロシア人によるテロだという説もある。野党指導者の1人イリヤー・ポノマリョフは、「民族共和軍」なる組織が関与したものだと公言している。この「民族共和軍」という存在は、今回初めて表に出たもので、その実体については何も情報がない。
しかし、これがロシア人によるテロだとすると、19世紀以来のロシアの歴史が記憶に蘇ってくる。テロは革命の代名詞だったのである。
テロの伝統
ロシアでは、権力者を狙うテロが多かった。社会の矛盾・格差をテロでひっくり返そうと言うのである。
19世紀初めにはナポレオンとの戦いでパリにまで進軍した将校たちが、進んだ西欧文明に触れて一念発起、改革を志して「12月党事件」(1825年)を起こしたし、1849年には社会主義者ペトラシェフスキー一味が検挙されている。この時は、作家のドストエフスキーも巻き込まれて、死刑を執行される直前までいく。
19世紀後半は、独りよがりの暴力的知識分子「ナロードニキ」たちが、農奴解放を実現した皇帝アレクサンドル2世を暗殺(1881年)しているし、その後も「社会革命党」分子による内務大臣暗殺(1902年及び1904年)、様々の勢力が暴力的反政府運動を群発させて革命的状況をもたらした1905年の「ロシア第一次革命」、それを自営農創設など前向きの改革で収拾しようとしたストルイピン首相の暗殺(1911年)等、枚挙にいとまがない。
1901〜1911年、革命運動によって殺された者は1万5000人を越え、その中には知事、警察長官、将軍、警察官、工場所有者などが多数いる。
ロシアのテロは、体制のたがが緩む時代の変わり目に起きている。経済が弱いために、社会は荒れやすく、テロは体制のたがを一層ほどいていく。
20世紀の初めには、それが1917年のロシア革命の土壌となった。このテロの波は、皇帝ニコライ2世一家の虐殺(1918年)、それを命じたレーニンへの暗殺未遂(1918年)、彼を祭り上げて権力を簒奪したスターリンによる大粛清で一応の幕を閉じる。
体制のたがが緩む時には、外国の勢力がつけこむ。1905年の全国騒擾状態は、日本軍の明石元二郎大佐がストックホルムを拠点にロシア反政府運動を支援したのもその一因で、日露戦争の停戦につながった。だからこそ、プーチン政権は欧米の諜報機関が国内の反政府運動を煽ることを極度に警戒しているのである。
ロシアは再び革命前夜といえるのか?
逆説のように聞こえるかもしれないが、「平民」によるテロは19世紀民主主義の登場とともに起きるようになった。中世は、平民が国王を殺すことなど考えられなかった。平民にとって身近の権力は領主で、国王ははるか彼方の抽象的な存在だったのである。
ところが近代は、領主のような中間的存在がなくなって、国のトップと市民がいわば直結する。平民は自分の不満を国のトップに直接ぶつけるようになった。アメリカでは1865年にはリンカーン大統領が一俳優に暗殺され、1901年にはマッキンリー大統領が生活に不満を持つ移民の息子に暗殺されている。
日本でも政党政治の父とされる原敬首相が1921年、右翼の鉄道員に刺殺され、1930年には浜口雄幸首相が右翼活動家に銃撃されたのがもとで死去、1932年には元蔵相の井上準之助が生活に不満を持つ右翼活動家に銃撃されて死去している。
今のロシアで要人へのテロが明日起きるというわけではないが、一般市民と中央権力の間の関係はかなり不安定なものとなっている。
ロシア人男性の平均寿命は70歳未満だが、プーチン大統領は今年70歳になる。2024年の任期切れを契機に退場するかもしれない。退場すれば、有象無象入り乱れた権力闘争が野放しになって、流血と陰謀の絶えない内政状況を生むだろう。
また経済は、ウクライナ侵攻に対する西側の制裁で、質・量両面で下降に向かう境目にある。つまりロシアは「時代の境目」にあって、「社会のたがが緩み」やすい時代にある。
既述のように、4月以来、いくつかの兵士徴募センターに火炎瓶が投げつけられる事件が発生、5月1日にはペルミの火薬・兵器工場での爆発で2名が亡くなっている。モスクワでは、歴史教科書の出版社の倉庫が火災になっている。
これらは反戦リベラルの青年によるものとは限らない。ロシアの右翼の中には跳ね上がり、現在の政府の対ウクライナ政策を生ぬるいとする者たちもいるからだ。
また最近、ロシアのエネルギー関連企業幹部が時には家族ぐるみ死亡、あるいは「自殺」する例が相次いでいるが、これの背景が不明である。あるいは、彼らはウクライナ戦争に反対で、反政府勢力に資金を出していたのかもしれないが、何か薄気味悪く、時代が変わり目にあることを感じさせる。
ウクライナ戦争では、ロシア、ウクライナ両軍とも消耗の極み。銃後の体制がどれだけしっかりしているかが、今後の勝敗を決める。ウクライナでは、ゼレンスキー大統領が軍隊、公安警察等への抑えをいつまで維持できるかが勝負だし、ロシアの場合、テロがブラックスワンになり得る。 
●ウクライナ軍の進撃は「迅速で衝撃的」 米ホワイトハウス 9/14
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報担当調整官は13日、ウクライナ軍がロシア軍の実効支配地域で進撃を続けていることについて、「迅速で衝撃的」と語った。ホワイトハウスは慎重ながらも楽観的な見方を繰り返し示している。
カービー氏はテレビ番組に出演し、「彼らには確かに一定の勢いがある。特に北東部のドンバス地方で勢いがある。あなたもウクライナ軍の進撃がいかに迅速で衝撃的だったか報道で目撃したと思う」と述べた。
カービー氏はそれでも、さらに戦闘が続くとし、特に南部ではウクライナ軍がヘルソン市近郊への突破を図っていると指摘。ウクライナ軍は南へ向かう際にはロシア軍からのさらに厳しい抵抗に直面しているものの、北東部について前進しており、そこではウクライナ側に一定の勢いがあることは間違いないと述べた。
カービー氏によれば、何週間にもわたる計画が実行に移されたという。
カービー氏は、ロシア国内でのプーチン大統領に対する脅威について質問されると、米国は状況を注視していると述べた。
カービー氏は、プーチン氏に対して、反体制派からだけではなくロシア国内で選出された議員からも批判が出ているとして、成り行きを見守っていると語った。反対意見を述べた一部の議員に対して取り締まりが始まる兆候がすでにあるという。それでも、選挙で選ばれた地区議員でさえプーチン氏に対する批判の声を上げているのは注目に値すると述べた。
カービー氏は、米国が外交的解決の状況が整ったと考えているかと質問されると、分からないとし、ウクライナのゼレンスキー大統領の考えに従うと述べた。
●兵隊を置いて司令官クラスの士官たちが逃げてしまったロシア軍 9/14
慶應義塾大学総合政策学部准教授の鶴岡路人が9月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ゼレンスキー大統領が「東部と南部で6000平方キロメートル以上を解放した」と発表したウクライナ情勢について解説した。
ゼレンスキー大統領「東部と南部6000平方キロ以上を解放」と発表
ロシアによる侵略が続くウクライナでは、東部でウクライナ軍の反転攻勢の動きが鮮明になっている。ウクライナ軍が東部で交戦を続けるなか、ゼレンスキー大統領は9月12日に「東部と南部で6000平方キロメートル以上を解放した」と述べ、反撃をさらに進める考えを示した。
飯田)特に東部ではハルキウ州イジュームを解放したということが、昨日(13日)辺りのニュースでも出ていましたが、もはやそこを越えてルハンシク州に入っているという話もあります。
兵隊を置いて司令官クラスの士官たちが逃げてしまったロシア軍 〜兵隊は制服を脱いで一目散にいなくなってしまった
鶴岡)進軍スピードが速すぎます。おそらくウクライナにとっても、ここまで早く行けるとは思っていなかったでしょうし、驚きの状況だと思います。注目すべきなのは、ロシア軍と正面から戦って勝った結果、進んでいるのではないということです。
飯田)戦いに勝って進んだわけではない。
鶴岡)ロシア側は「再配置だ」と強がっていますが、そもそも部隊としての退却すらできていません。戦車を含めた車両もすべて置いて、一目散に個人が逃げています。しかもヨーロッパなどの報道によると、まずは司令官クラスの士官たちが逃げてしまったようです。
飯田)そうなのですね。
鶴岡)下士官である兵隊たちを置いて逃げてしまったので、兵隊はどうしたらいいかわからない状況なのです。そうなると、部隊として整然と退却するのは無理です。ですから報道にもあるように、地元の人たちの車や自転車を盗んで逃げているとのことです。自転車でどこまで逃げられるのかは疑問ですが、制服も脱いで普通の洋服を奪い、それを着て逃げている人たちもいたそうです。個人が一目散に逃げていなくなってしまったから、ウクライナ軍は進めたということです。
手薄な場所がわかった上で進軍させたウクライナ軍の頭脳と分析の勝利
飯田)ウクライナ軍としても、「抵抗がないぞ? 進めるぞ?」という状況のまま、ここまできているのですね。
鶴岡)これほどのロシア軍の崩れ方は、ウクライナの想定以上だったと思いますけれど、徹底的に計画していたのは確かです。南部ヘルソンがおとりだったとは思いませんが、二正面ということだったのでしょう。
飯田)ハルキウとヘルソン・ザポリージャの。
鶴岡)東部ハルキウと、南部ヘルソンやザポリージャの両方で反転攻勢する。ただ、「南部をやるぞ」と言い続けた結果、ロシア軍の主力部隊が東部から南部に移動し、東部が手薄になっていました。そこをウクライナは虎視眈々と狙っていたのです。ロシア軍がどこにいるのか、おそらくアメリカも含めて衛星情報で徹底的に確認し、ロシア軍が手薄なことをわかった上で進軍させた。ですから、頭脳と分析と計画の勝利だと思います。
飯田)単なる偶然ではなく、状況をつくってきていた。二正面で戦うと負担がかなり大きくなるので、一正面で突破するのが常道だと言われますが、ウクライナ軍は予備が分厚くあったということですか?
鶴岡)部隊を温存してつくり、しかも少しずつ分けていた。数万人単位で移動するとロシア側に伝わってしまいますから、数千人ずつぐらいに分かれて準備していたようです。
ロシア人に対する心理的インパクトが強かったクリミアへの攻撃 〜国内から見ていればいいというものではない
飯田)8月末に南部で攻勢を強めたぐらいから、ゼレンスキー大統領がしきりに「これから勝負をかけるため、あまり情報を表に出してくれるなよ」と訴えていました。ここが肝だったのですね。
鶴岡)私は完璧に騙されました。ただ、重要なのは、南部もウクライナにとっては死活的に重要だということです。8月に南部への攻勢を強めた結果、ロシアが一方的に行おうとしていた住民投票が、事実上の延期になりました。
飯田)そうですね。
鶴岡)そういう成果はあったのだと思います。クリミアへの攻撃も8月に相当やりましたが、あれもロシア人に対する心理的インパクト、つまり、いままで安全だと思っていたところが安全ではないと思わせる。今回の戦争は「異国の地で行われていて、ロシア国内には影響がない」というのがロシア人の印象でした。それに対して「違いますよ」と。クリミアでもどこで爆発が起こるかわからないし、クリミア以外のところでも国境を越えてウクライナが攻撃していると思われる事案がいくつかあります。そういうものを含めて、「外から見ていればいいわけではないですよ」という強いメッセージがあるのだと思います。
プーチン政権がどこまでロシア国民に動員をかける気があるか 〜直接的な影響の少ない大都市圏の国民
飯田)ロシア国内の動揺がどこまで広がっていくのか。いまのところ、ウクライナに入っているロシア軍の兵隊などを見ると、西の方の貧しい地域から動員してきた人が多い。まだモスクワやサンクトペテルブルク辺りの人への影響はないという指摘もありますが、それも変わってきますか?
鶴岡)プーチン政権がどこまで動員をかける気があるのかということです。いままでは戦争ですらないという立場ですよね。「特別軍事作戦だ」と。この意味は一般人……特に政権にとって重要な一般人は、モスクワやサンクトペテルブルクにいる大都市圏の人たちですが、彼らは直接影響を受けない。ものがなくなったり、スターバックスがなくなるというような影響はありますが、モスクワで「家族が今回の戦争で死にました」という人はまだ少ないです。そうすると「自分たちの戦争ではないのだ」という認識になる。
EUのロシア人に対するビザの制限への不満の矛先がプーチン政権に向かう可能性も
飯田)一方で、ロシアでは11日に統一地方選挙の投票があったということです。そこでプーチン政権に対して反旗を翻す人も出てきている。徐々に崩れてきているということでしょうか?
鶴岡)まだ先行きはわかりませんが、モスクワやサンクトペテルブルクの一定階層以上の人たち、特に富裕層がどういう形で動くのか、政権は気にしていると思います。
飯田)富裕層がどう動くか。
鶴岡)興味深いのは、先週、合意された欧州連合(EU)のロシア人に対するビザ発給の話です。いままで日本を含めた欧米は、「悪いのはプーチン大統領やロシア政府だ」という発想で制裁を行ってきました。一般市民を直接ターゲットにすることはなかったのですが、今回、EUが決定したビザ発給の制限は、まさに一般市民を対象にした初めての制裁です。
飯田)今回のビザの制限は。
鶴岡)いままでの「悪いのは政府であり、一般市民は悪くない」というロジックから少し外れます。その結果、一般市民も反西側で固まってしまうという懸念もありますが、いまこの状態でEUへ旅行に行く人は相当な富裕層です。本来はクレジットカードも使えないはずですから、海外の銀行口座に紐づいたクレジットカードを持っているような人たちしか、現実的には海外旅行ができないのです。
飯田)ロシア人は。
鶴岡)該当するのは、モスクワやサンクトペテルブルクなどの大都市の富裕層です。彼らにとって、ヨーロッパへ旅行や買い物に行くのは生活の一部なのです。彼らがヨーロッパに行きにくくなると、不満を抱えるはずです。不満がどこに向かうかはわかりませんが、もしかすると政府の方針へ矛先が向くのではないかという期待も、ヨーロッパ側にはあるということです。
アメリカはビザの制限に反対だった
飯田)心理的な効果も狙いつつ、一方で向こう側に追いやって固まってしまうという懸念もありますが、制限に反対するような意見も出ていたのですか?
鶴岡)アメリカはビザ制限に反対していました。「悪いのは政府であって一般市民ではない」というラインが崩れてしまうからです。EUでも意見が分かれていて、制限に積極的な人とそうでない人がいました。ただ、これだけロシアがウクライナのなかで破壊と殺戮を行っている状況で、「何事もなかったかのようにロシア人がEU諸国のビーチリゾートで寝転がっていていいのか?」と。それは道徳的な気持ちとしてよくわかります。
EUからのロシアへの直行便は経済制裁によってない 〜エストニアやフィンランドから飛行機に乗るため、ロシアからの入国者が多く、安全保障上のリスクになっていた
鶴岡)もう1つは、安全保障の問題でもあったのですね。
飯田)安全保障の。
鶴岡)現在は経済制裁によって、ロシアとEU諸国の直行の航空便がありません。そうするとロシア人は、地続きであるフィンランドやエストニアに陸路で入り、そこから飛行機に乗るのです。
飯田)なるほど。
鶴岡)イスタンブール経由などもありますが、より直接的にヨーロッパへ行くとなると、そういう方法になります。その影響でエストニアやフィンランドに対し、ロシアからの入国数が増えているのです。ロシアからの入国者が増えていることが、安全保障上のリスクではないかという側面の議論もあります。
●ウクライナ侵攻直後に和平合意、プーチン氏拒否で幻に=関係筋 9/14
ロシアのウクライナ侵攻が始まった時点で北大西洋条約機構(NATO)に加盟しないとの約束をウクライナから取り付けていたにもかかわらず、プーチン大統領が軍事侵攻を進めたことが政権中枢部に近い3人の関係筋の話で明らかになった。
関係筋によると、ロシア交渉団を率いたドミトリー・コザク氏は、ウクライナとのこの暫定合意により大規模なウクライナ領土の占領は不要になったとプーチン氏に報告した。
プーチン氏は当初コザク氏の交渉を当初は支持していたが、同氏から合意案を提示された際に譲歩が不十分と主張し、目標を変更してウクライナの領土の大部分を併合する意向を示した。その結果コザク氏がまとめた合意は採用されなかったという。
ロシア大統領府のぺスコフ報道官はロイターの報道について「事実と全く関係がない。そうしたことは起こらなかった。確実に間違った情報だ」と述べた。
ウクライナ大統領府のポドリャク顧問はロシアが侵略の準備のために交渉を煙幕として利用したと述べたが、交渉の内容に関する質問には答えず、暫定合意があったかどうかも確認しなかった。
関係筋2人は、2月24日のウクライナ侵攻開始の直後から合意を正式なものにする動きがあったと明かした。コザク氏はロシアが求めていな主要な条件をウクライナが受け入れたと考え、プーチン氏に署名するように勧めたという。
ある関係者によると、コザク氏は2月24日以降に白紙委任されたが、本国に持ち帰ったところ全て取り消された。「プーチン氏は計画を変更した」と語った。
3人目の関係者は、コザク氏がプーチン氏に暫定合意について提案し、プーチン氏が拒否したのはウクライナ侵攻前と述べた。
プーチン氏がコザク氏の助言を聞き入れていたとしてもウクライナ戦争が終結していたかは定かでない。ロイターはウクライナのゼレンスキー大統領や政府高官がこの合意に関わっていたかを独自に確認することはできなかった。
●ウクライナ ロシア軍撤退の地域 住民が拷問加えられていた疑い  9/14
ロシアが軍事侵攻を続けるウクライナでは、東部や南部でウクライナ軍が反転攻勢を続けています。こうした中、東部ハルキウ州の警察幹部は、ロシア軍が撤退した地域で、多くの住民が拘束され、拷問を加えられていた疑いが明らかになったとして、被害の実態解明を急いでいます。
ウクライナ軍は東部のハルキウ州で反転攻勢を続け、マリャル国防次官は13日、ロシア軍から奪還したハルキウ州のバラクリヤで記者会見し、州内およそ300の集落と15万人以上が解放されたと強調しました。
ウクライナ軍は南部でも反撃を続けていて、南東部ザポリージャ州の中心都市メリトポリのフェドロフ市長は13日、SNSで、ロシア軍の車列が市内から離れ、ロシアが一方的に併合したクリミア半島に向かったと主張しました。
こうした状況を受けて、ゼレンスキー大統領は13日に公開した動画で、これまでに4000平方キロメートル以上の地域で、領土の統治を回復したと明らかにするとともに、これとは別に解放したほぼ同じ面積の地域でも、治安の安定化を進めていると強調しました。
一方、ハルキウ州の警察本部の幹部で、捜査を指揮するボルビノフ氏は13日、SNSに、バラクリヤでロシア軍が住民を不当に拘束し、拷問を加えていた疑いがあるとする情報を投稿しました。
警察署の地下などに、ウクライナ軍に協力したとして常時少なくとも40人を拘束し、電気ショックなどの拷問を加えていたという目撃情報を得ているとしたうえで「世界にロシア軍の非道ぶりを伝えるため、われわれはバラクリヤでの悲劇を明らかにする」と強調しています。
同じハルキウ州では、12日にも、ウクライナの検察当局が、ロシア軍が撤退した地域で拷問の痕がある4人の遺体が発見されたと明らかにしていて、ウクライナ政府は被害の実態解明を急いでいます。
●ゼレンスキー大統領 “解放の地域で治安の安定化進める” 9/14
ロシアが軍事侵攻を続けるウクライナでは、東部でウクライナ軍が反転攻勢を強めていて、ゼレンスキー大統領は、ロシアの占領から解放した地域で治安の安定化などを進めていると強調しました。
また、アメリカのバイデン大統領は「ウクライナ側が大きな進展を見せたのは確かだが、まだ長い道のりが待っている」と述べ、慎重に見極める姿勢を示しました。
ウクライナ軍は、東部のハルキウ州で反転攻勢を強めていて、マリャル国防次官は13日、州全域の解放に向け意欲を示しました。
ウクライナ軍は南部でも反撃を続けていて、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、ウクライナ軍が「ヘルソン州で大きな戦果をあげていて、この地域のロシア軍の士気と戦闘能力を着実に低下させている」という見方を示しています。
こうした中、ゼレンスキー大統領は13日に公開した動画で、これまでに4000平方キロメートル以上の地域で、領土の統治を回復したと明らかにしました。
さらに、これとは別に、解放したほぼ同じ面積の地域でも、ロシア側の残存勢力を捜したり拘束したりするなどして、治安の安定化を進めていると強調しました。
一方、アメリカのバイデン大統領は13日、記者団にウクライナ軍が東部で反転攻勢を強めていることが転換点になるかどうか聞かれ「まだはっきりはわからない。ウクライナ側が大きな進展を見せたことは確かだが、まだ長い道のりが待っている」と述べ、慎重に見極める姿勢を示しました。
●ウクライナが「非軍事化」を拒否 安全保障基本計画公表、徹底抗戦を掲げる  9/14
ウクライナ大統領府は13日、ロシアの軍事侵攻を受けて策定した国家安全保障の基本計画を公表した。自衛のための軍事力を保有する必要性を明記し、ロシアが要求する「非軍事化」を拒否。欧米諸国に対しウクライナが侵略された際の軍事介入も求め、ロシアへの徹底抗戦を掲げた格好だ。
計画では国家安全保障の根本を「自衛のための軍事力」と明記。ウクライナ軍が北大西洋条約機構(NATO)などの軍事訓練に参加する必要性を説いた。米英独仏、トルコ、東欧諸国などにウクライナ軍支援の義務を負う同盟国になるよう求め、制裁でロシアに圧力をかける国々も募った。
ウクライナは首都キーウ陥落の恐れがあった3月、関係国の安全保障を条件にNATO加盟断念を含めた「中立化」を受け入れる方針を示し、ロシアとの停戦交渉に臨んでいた。一方、今回の安保計画では、東部と南部で領土奪還に成功していることを背景に、武力でロシア軍を排除する姿勢を強く打ち出した。
ロシア前大統領のメドベージェフ安全保障会議副議長はウクライナの安保計画について「第三次大戦の序曲だ」と警告した。
●ウクライナ北東部で退却、プーチン氏の次の一手は 9/14
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ北東部においてロシア軍が素早く部隊を退却させたことについて、まだ、公式にコメントしていない。ただ、国内のナショナリスト勢力からは、戦争の主導権を奪い返せと迫られている。
西側情報当局者の話や公開情報の分析結果が正しいとすれば、プーチン氏に事態を早急に収拾できる方法は乏しい。行使可能な手段のほとんどは、ロシア国内絡みや地政学的な側面でリスクを抱えている。
1999年に権力の座についたプーチン氏がこれまで相手にした中で最も手ごわかったのは、チェチェンや北コーカサス地方のイスラム勢力だったが、これらの軍事作戦では部隊増強という道を選んだ。
ウクライナの戦争で同氏が持つ主な選択肢は、以下の通り。
戦線の安定化と部隊再編後に反撃
ロシアと西側の軍事専門家の意見が一致しているのは、ロシア側の立場で見ると、ロシア軍は早急に戦線を安定させてウクライナの進撃を食い止め、部隊を再編し、可能ならば反撃作戦を展開する必要があるという点だ。
しかし、西側諸国の間では、ロシアがこれまでのウクライナ軍との戦闘で多くの兵力を失い、遺棄ないし破壊された装備も多数に上る以上、果たして新たに投入する十分な地上兵力や兵器があるのか疑問視されている。
ポーランドのロチャン・コンサルティングのコンラッド・ムジカ所長は、ロシア軍のウクライナ北東部からの後退を受け「兵力は枯渇している。志願兵部隊は戦力が低下し、募兵活動によっても想定された規模の人数を届けられていない。入隊希望者が少なくなっているので、状況は悪化する一方だと思う。もし、ロシアが兵力を増やしたいなら、総動員が不可欠だ」と話す。
国家総動員
ロシアは過去5年以内に軍務経験がある予備役兵約200万人を動員できるが、彼らを訓練して実戦配置するには時間がかかる。
大統領府は13日、「現時点で」国家総動員は議論されていないと明らかにした。
総動員はナショナリストの支持を得られるとしても、都市部で暮らす一般の成人男性には歓迎されないだろう。彼らは戦争参加に消極的と伝えられている。
政府としても総動員となればウクライナ問題に関する公式メッセージを修正し、目的を限定した「特別軍事作戦」ではなく、全面戦争と呼ぶしかなくなる。そうなると大半のロシア国民のウクライナ侵攻前の日常生活を確保するという政府の方針も、撤回しなければならない。
全面戦争に移行した場合、徴兵に対する世論の反発という国内政治の上でのリスクも生じる。また、同じスラブ民族に全面戦争を仕掛けるというのも、プーチン政権の印象を悪くすることになる。
ロシア外務省に近いシンクタンク、RIACを率いるアンドレイ・クルチュノフ氏は以前から、ロシア政府は総動員には消極的だとの考えを披露してきた。
同氏は「大都市では多くの国民が戦争に行きたがっておらず、総動員が人気を博する公算は乏しい。しかも、今回の全事態を限定的な軍事作戦と説明することこそが、プーチン氏の利益になるのは明らかだと思う」と説明する。
英国の元駐ロシア大使、トニー・ブレントン氏は、総動員がロシア軍の戦力強化をもたらすには何カ月も必要になると発言している。
ロシアのエネルギー戦略で欧州が動揺することに期待
ロシア大統領府の考えに詳しい2人のロシア人関係者は先月ロイターに、プーチン氏の期待する展開を明かした。それによると同氏は、この冬のエネルギー価格高騰と供給不足によって欧州諸国がウクライナに対してロシアに都合の良い条件での休戦を強く働きかけてくれるのを待ち望んでいる。
もっとも欧州の何人かの外交官は、ウクライナが最近何度か軍事的な成功を収めたことで、一部の欧州諸国がウクライナに譲歩を促す取り組みは意味が薄れたとみている。
また、ドイツなどはここ数週間でロシアに対する姿勢が一段と強硬になり、冬のエネルギー危機を乗り切る決意をより固めているようだ。
ミサイルの標的拡大
ウクライナ北東部で退却したロシア軍は、ウクライナの電力施設へのミサイル攻撃に移行している。これにより主要都市・ハルキウや、その周辺のポルタバ、スミなどで一時的な停電が発生。水道やモバイル通信ネットワークにも被害が出ている。
こうした作戦をロシアのナショナリスト勢力の一部は称賛し、彼らはロシア軍が巡航ミサイルでウクライナの各インフラをより恒久的に破壊するのを望むだろう。ただ、それは国際的な非難を浴びかねない。
ロシアのナショナリスト勢力は、ウクライナの首都キーウ(キエフ)や各地の「意思決定」の中枢に攻撃をかけろとも長らく主張してきた。実行されれば、重大な副次的被害を招くのは避けられない。
穀物輸出再開合意の破棄ないし縮小
プーチン氏は、国連とトルコの仲介で合意したウクライナの穀物輸出再開を巡り、ロシアと貧困国にとって公平さに欠ける内容だと不満を表明し続けている。
今週にはプーチン氏がこの合意の修正を議論するため、トルコのエルドアン大統領と会談する予定。プーチン氏が直ちにウクライナに打撃を与えたいと考えるなら、合意を停止もしくは破棄するか、11月の期限到来時に更新しないという選択肢がある。
西側諸国や中東・アフリカの貧困国はプーチン氏が世界的な食料不足を深刻化させたと非難するだろうが、プーチン氏はウクライナに責任を押しつけるとみられる。
和平協定
ロシア大統領府は、適切な時期がくれば何らかの和平協定締結に向けた条件をウクライナに通知する意向だ。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、軍事力を駆使してロシアの制圧地を解放すると明言した。
ゼレンスキー氏が挙げる解放対象には、ロシアが2014年に強制編入したクリミア半島が含まれる。ロシア側は、クリミア問題は永久に解決済みと繰り返している。
ロシアは、ウクライナ東部の親ロシア勢力の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を国家として正式に承認しており、これらの地域をウクライナに譲り渡すことも政治的には不可能に見受けられる。
ロシアがウクライナ侵攻で最初に「大義名分」に掲げたのが、この2つの地域で迫害されている親ロシア住民を全面的に「解放する」ことだったからだ。
もちろんロシアは、部分的に制圧しているウクライナ南部の返還も国内世論に受け入れさせるのは難しい。南部ヘルソン州はクリミア北部と直接つながっている上に、クリミア半島に必要な水のほとんどを供給する要地。
また、ヘルソン州は、隣接するザポロジエ州とともにロシアがクリミア半島に物資を供給できる陸上回廊の役割も果たしている。
核兵器使用
複数のロシア政府高官は、ロシアがウクライナで戦術核を使うのではないかという西側の見方を否定した。それでも西側には不安が残っている。
戦術核が投入された場合、大規模な被害が生じるだけでなく、事態がエスカレートして西側とロシアの直接戦争に発展しかねない。
ロシアの核ドクトリンは、ロシアが核兵器ないし他の種類の大量破壊兵器の先制攻撃を受けた場合、あるいは通常兵器によって国家の存亡につながる脅威がもたらされた場合、核兵器使用を認めている。
元駐ロシア英大使のブレントン氏は、プーチン氏が追い詰められ、面目を保てないほどの屈辱的敗北に直面したなら、核兵器を使う恐れがあると警告した。
ブレントン氏によると、ロシアが敗北、しかもひどい負け方をしてプーチン氏が失脚するか、それとも核兵器の威力を誇示してこうした事態を回避するかの選択を迫られるとすれば、プーチン政権が核兵器使用に踏み切らないと断言できないという。
米国の駐欧州陸軍司令官を務めたベン・ホッジス氏も、そのリスクはあると認めつつ、実際に核兵器が使われる確率は乏しいとの見方も示した。「使っても実際に戦場で優位に立てるわけではなく、米国が座視して何の対応もしないのは不可能なので、プーチン氏ないし彼の側近が自滅的行動に走るとは思わない」という。
●全人代常務委員長、ロシアを訪問しプーチン大統領と会談 9/14
新華社の報道によると、中国の栗戦書・全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員長(中国共産党中央政治局常務委員で党内序列第3位)は9月7日から10日にかけてロシア極東のウラジオストクを訪問した。期間中、栗委員長はロシアのウラジーミル・プーチン大統領やビャチェスラフ・ボロジン下院議長などと会談したほか、7日に行われた第7回東方経済フォーラム(2022年9月12日記事参照)全体会合に出席してあいさつした。
栗委員長はその中で、今回の東方経済フォーラムのテーマである「多極化世界への道」はまさにタイムリーなものと評価した上で、世界の多極化は歴史の発展の大きな流れであること、中国でも習近平国家主席が2021年以降、世界発展イニシアチブや世界安全保障イニシアチブを提唱していると紹介し、国際社会とともに、同イニシアチブが定着して成功するよう推進していくとした。その上で、中国は世界の多極化の確固たる支持者であるとともに積極的な推進者であり、ロシアを含む域内各国とともに「一帯一路」構想の共同建設を深化させていくとした。
また、栗委員長は、今後ロシアと貿易やエネルギー、農業、インフラ建設、科学技術、教育、医療、文化などの分野で全方位の協力を強化するとともに、極東での中ロ協力の成果を得るため、中国東北地域の全面的振興とロシアの極東開発国家戦略との連携を進めていくとした。
東方経済フォーラムの開催期間中には、中ロの資源取引でも動きがみられた。中国石油天然気集団(CNPC)は、同集団の戴厚良董事長がロシア・ガスプロムのアレクセイ・ミレル会長と9月6日にオンラインで会談し、天然ガス分野の協力について協議したほか、「中ロ東線天然ガス売買契約書」(注)の付属協定に署名したと発表した。中国メディアでは、ガスプロムは中国向けの天然ガス輸出の決済通貨を今後ドルとユーロから人民元とルーブルに変更すると発表したと報じられている。
(注)中国・ロシア間を結ぶ天然ガスパイプラインはロシア・サハ共和国(ヤクーチヤ)南部のチャヤンダ鉱区(埋蔵量1兆2,000億立方メートル)から中国東北部にガスを輸送するもの。2014年5月にガスプロムとCNPCが年間380億立方メートルの天然ガスを30年間供給する売買契約を締結し、2014年9月1日から建設が開始された。ロシア国内の「シベリアの力」から中国国内に連結する「中ロ東線」は、2019年12月に北区間(黒竜江省黒河市から吉林省松原市長嶺県)が稼働し、2020年12月に中央区間(吉林省松原市長嶺県から河北省廊坊市永清県)が稼働、南区間(河北省廊坊市永清県から上海市)は2021年1月に全面的に建設が開始された。稼働は2025年予定とされている。
●プーチン大統領の解任要望書を公表…ロシア主要都市でも政権批判強まる 9/14
ウクライナ軍がロシアに占領された地域を次々と奪還する中、特別軍事作戦と称して侵攻を続けるプーチン大統領に主要都市からも批判が出ています。
プーチン大統領のお膝元であるサンクトペテルブルクの地方議員の一部は、先週ウクライナ侵攻でのロシア軍の損失やNATOの拡大などを理由に、プーチン大統領が国家反逆罪にあたるとし解任を求める要望書を公表。ロシアの裁判所は13日、議会解散につながるとの見方を示しました。
政権批判は取り締まりの対象になるため、こうした動きは異例とも言えますが、8日にはモスクワでも一部の区議のグループが大統領の辞任を求める要望書をまとめていました。
現在、ウクライナ軍は急速に領土の奪還を進め、北東部ハルキウ州においてはロシアが事実上の撤退を表明。こうした中、プーチン大統領に忠誠を誓っているとされ自身の部隊も侵攻に参加しているチェチェンのカディロフ首長は、作戦について「間違いがあった」と批判。プーチン大統領を支える勢力がこれまでと違う流れを可視化しています。
●プーチン弾劾♀機 「国民の反戦機運加速…終了宣言考える可能性」 9/14
ロシア軍が危機的状況だ。ウクライナ東部ハリコフ州の支配地の大部分を奪還され、未確認ながら軍トップレベルの将官とされる人物が捕虜になったとも報じられた。敗色濃厚のなか、ロシア国内ではプーチン大統領の辞任や弾劾を求める声が出始めた。一方、強硬派は総動員令を出して本格的な戦争に突入するよう要求するなど、左右からの圧力が強まっている。
ウクライナ現地メディア「リヴィウ・ジャーナル」はツイッターで、丸刈りで迷彩服姿の軍人が、額から眉間にかけて出血した状態でひざまずき、後ろ手に拘束された様子の映像を投稿した。この人物がロシア軍のアンドレイ・シチェボイ陸軍中将(53)とみられると推測している。
現地英字紙の「キーウ・ポスト」も「ウクライナに配備された部隊の半分を担当するロシアのトップ将軍を捕らえた可能性が高い」「第二次世界大戦以降、捕虜となった最高位のロシア将校となるだろう」と報じた。
シチェボイ氏は侵攻開始直後の2月28日、第8親衛諸兵科連合軍の中将兼司令官として欧州連合(EU)の制裁リストに掲載された。シリアの軍事作戦にも関与した経験があるという。
捕虜とされる映像の人物が本当にシチェボイ氏なのかは不明だが、これに先立つ8月26日、ウクライナ国防省情報総局がシチェボイ氏から別の人物に司令官が交代したと伝えており、関連も注視される。
筑波大名誉教授の中村逸郎氏は「司令官レベルで通常、捕虜になることは考えにくく、事実ならばロシア軍の崩壊を意味するに等しい。士気の低下や戦意喪失も加速するだろう。ロシア軍の敗北が近づいている」とみる。
国内でもプーチン政権への反発が強まる。首都モスクワ南西部の区議らが「国を事実上、冷戦時代の状況に陥れた」としてプーチン氏の辞任を求めた。サンクトペテルブルク中心部の区議も、プーチン氏を弾劾するよう下院に求めるアピールを公表したという。
プーチン氏は侵攻を「特別軍事作戦」と呼び、「戦争」ではないと位置付け、職業軍人のみを前線に投入していると説明してきた。
しかし、政権与党「統一ロシア」に所属するクリミア選出のシェレメト下院議員は12日、「総動員令を出して全ての力を結集しなければ作戦の目的は達成できない」と述べた。
中村氏は「国民の反戦機運も加速するだろう。11月のG20(20カ国・地域)首脳会議への参加を見据えてプーチン氏は軍事作戦の終了宣言を考える可能性もある。これに対し、強硬派はウクライナの原発を人質≠ノとる戦略に出るとの見方もあり、妥協案をめぐってプーチン政権との確執が生じるかもしれない」と強調した。
●「非欧米」諸国が首脳会合へ 習近平主席、プーチン大統領ら一堂に 9/14
中ロが主導する上海協力機構(SCO)の首脳会議が15、16両日、中央アジア・ウズベキスタンのサマルカンドで開かれる。新型コロナウイルスの流行以降、初の外遊となる中国の習近平しゅうきんぺい国家主席や、ロシアのプーチン大統領、インドのモディ首相ら「非欧米」の首脳が一堂に会する。中ロ両首脳は欧米に対抗し、エネルギーや食料の価格高騰問題で国際的議論をリードする狙いとみられる。
習氏は14日にカザフスタンを訪問。トカエフ大統領と会談する。15日にはプーチン氏とも会談し、ウクライナ情勢や対米関係を協議する見通しだ。カザフは習氏が2013年、初めて中国の巨大経済圏構想「一帯一路」を提唱した場所。コロナ禍の影響や中国が多額の借金を負わせて影響力を強める「債務のわな」への反発から、一帯一路の開発路線は停滞気味と伝えられるなか、習氏の訪問でてこ入れを図る。
外務省の毛寧副報道局長は、5年に1度開かれる共産党大会を約1カ月後に控えたタイミングでの習氏外遊について「中国がSCOや中央アジア諸国との関係を重視していることを十分体現している」と説明。SCOとの関係強化を通じ、台湾や人権問題で圧力を強める米国をけん制する狙いとみられる。
毛氏はSCOでは「加盟国間の協力で新たな共通認識を得て次の段階に進めることに重点を置く」とも発言。加盟国拡大を呼びかけるとみられる。ロシア紙によるとエジプトやエネルギー産出国のカタール、サウジアラビアを提携国「対話パートナー」に迎える可能性が高い。イランの正式加盟も決まりそうだ。
日米豪印の協力枠組み(クアッド)の一角インドのモディ首相も会議に参加し、16日にプーチン氏と会談する予定だ。
兵器購入などでロシアと伝統的に関係が深いインドはウクライナ侵攻後もロシアを非難せず、全方位外交を継続。欧米や日本がロシア産の原油や液化天然ガス(LNG)の禁輸や段階的な輸入削減を決めたのに対し、インドは逆にロシアからのエネルギー関連物資の輸入を増やしている。
両首脳は貿易促進に加え、ロシア産肥料の購入や食料の相互供給について協議する。インドはロシアと3年間の肥料輸入契約の締結を模索。ロシアはクアッドの枠組みにくさびを打つ思惑も透ける。
モディ氏と習氏が会談する可能性もある。両国は20年、国境未画定のカシミール地方で衝突して以降に関係が冷え込み、首脳会談は実現していない。
●独首相、プーチンと1時間半もの電話会談…停戦と露軍撤退要求も平行線か  9/14
ロシアのプーチン大統領とドイツのショルツ首相は13日、電話会談し、ロシアのウクライナ侵略を巡って協議した。ショルツ氏は会談で、戦闘の停止と露軍の完全撤退を改めて求めたが、プーチン氏は侵略を正当化し、協議は平行線に終わったとみられる。
独政府の発表によると、会談は約1時間半に及んだ。ウクライナの南部と東部で、露軍の占領地域をロシアに併合するための住民投票が画策されていることなどについて、ショルツ氏は「認められない」と非難した。露軍の占拠が続く南部ザポリージャ原子力発電所を巡っては、国際原子力機関(IAEA)が求めた安全確保措置を取るよう要求した。
露大統領府の発表によると、プーチン氏は東部ドンバス地方(ドネツク、ルハンスク両州)やザポリージャ原発を攻撃しているのはウクライナ軍だと主張し、戦闘継続の責任をウクライナ側に転嫁する立場を崩さなかった。
一方、ザポリージャ原発に関して、IAEAは13日、近くの火力発電所と原発を結ぶ非常用の送電線3本のうち3本目も復旧したと発表した。ラファエル・グロッシ事務局長は、原発周辺で最近数日は砲撃がないと指摘した上で、「原発の現状は依然として不安定だ」と懸念を示した。
ウクライナ軍は東部と南部で反攻を続けている。露軍が7月上旬に制圧を宣言した東部ルハンスク州でも、同州の知事が13日、ドネツク州との州境に近いクレミンナを露軍が放棄したとの認識を示した。
ウクライナ軍が反転攻勢を強めたハルキウ州では今月、露軍が火力発電所などを攻撃し、大規模停電が発生していたが、ウクライナ大統領府の高官は13日、SNSで「電力供給は100%回復した」と説明した。
●「NATO加盟しない」 侵攻時点で和平合意案、プーチン氏が却下か 9/14
ロイター通信は14日、ロシアがウクライナへの全面侵攻を始めた時点で、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟しないという暫定合意案を取り付けていたにもかかわらず、ロシアのプーチン大統領が侵攻を進めた、と報じた。プーチン政権指導層に近い3人の話として伝えた。ペスコフ大統領報道官は「事実無根」と否定したという。
報道によると、ウクライナ生まれのコザク大統領府副長官が特使として和平交渉にあたり、ウクライナがNATOに加盟しないことで暫定的に合意。コザク氏は、ロシアによる大規模なウクライナ占領は不要になる、とプーチン氏に伝えたという。
プーチン氏は当初この案を支持したが、内容が十分ではないとして、ウクライナの領土の一部併合が侵攻の目的に加わったという。プーチン氏が和平案を却下した時期について、情報源の3人のうち2人は侵攻が始まった2月24日の後で、もう1人は直前だと話したという。
●中国・習主席、コロナ後初外遊 党大会前に対外成果誇示 9/14
中国の習近平国家主席は14日、中央アジアのカザフスタンを訪れた。習氏が外国を訪問するのは2020年の新型コロナウイルス流行後で初めてで、15日にはウズベキスタンでロシアのプーチン大統領と会談する。第20回中国共産党大会の開幕を10月16日に控える中での外遊には、外交成果を誇示し、最高指導者として異例の3期目続投につなげる狙いがあるとみられる。
中国外務省の毛寧(もう・ねい)報道官は13日の記者会見で「党大会開催前の最も重要な外交活動だ」と強調した。
中国の指導者を巡っては、外遊中の国内の動きが失脚につながった故趙紫陽・元共産党総書記らの例がある。中国メディア関係者は、習氏が外遊に出たのは「党大会での3期目に向けた権力掌握を確実にしたという感触を得たからではないか」とみる。
コロナ後初の訪問先にカザフを選んだのは、最高指導者就任から10年間の対外成果を示す狙いからだ。習氏は13年のカザフ訪問時、巨大経済圏構想「一帯一路」につながる「シルクロード経済ベルト」を提唱した。習氏は今回の訪問前にカザフメディアに送った文章で、一帯一路を「国際社会に歓迎されているグローバルな公共財だ」と自賛した。
習氏は、ウズベクで15、16の両日開催される上海協力機構(SCO)首脳会議に出席する。中露主導のSCOやプーチン氏との個別会談で結束を確認し、「対中包囲網」の構築を進める米国を牽制(けんせい)する思惑だ。
中国としては、インドネシア・バリ島で11月に開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に向け、関係が比較的良好な国々との連携を確認する機会ともなる。
一方、香港メディア「香港01」は14日、ウクライナ問題を巡りロシアとカザフスタンの間に隙間風が吹いていると指摘。習氏には、プーチン氏との会談前にカザフでトカエフ大統領と会うことで「中国の地域内での影響力」を示す狙いがあると分析した。中露は対米では一致しているものの、両国の力関係を巡る水面下の駆け引きがうかがわれる。

 

●国連事務総長 “冷戦期以降で最大の分断 対話を通じ打開を”  9/15
国連のグテーレス事務総長は来週から始まる国連総会の首脳演説について「希望を与え、分断を克服するものでなければならない」と述べ、ウクライナ情勢をめぐって国際社会の対立と分断が深まる中、対話を通じて事態の打開に向けて協力するよう加盟国に呼びかけました。
第77期の国連総会は13日に開幕し、来週20日からは各国の首脳や外相らによる演説が行われる予定です。
これを前に国連のグテーレス事務総長が14日、ニューヨークの国連本部で記者会見し「今回の国連総会は大きな危機の時期に開催されている。地政学的な分断は冷戦期以降、最も大きくなっている」と述べウクライナ情勢をめぐって国際社会の対立と分断が深まっている現状に強い危機感を示しました。
さらに、グテーレス事務総長はウクライナ情勢を背景に世界的に食料価格が高騰して貧困層が影響を受けるなど、国際社会は多くの課題に十分対応できていないと指摘しました。
そのうえで来週から始まる首脳演説について「希望を与え、分断を克服するものでなければならない。その希望は対話と議論を通じてのみもたらされる」と強調し、事態の打開に向けて協力するよう加盟国に呼びかけました。
●ウクライナ軍、ヘルソン州「要衝を奪還」 南部でも反撃進む 9/15
ロシアによるウクライナ侵略で、南部ヘルソン州当局者は14日、ウクライナ軍が州都ヘルソン市から北西約15キロに位置する要衝キセリョフカを露軍から奪還したと発表した。ウクライナメディアが伝えた。東部ハリコフ州で反攻を成功させたウクライナ軍は、南部でも奪還作戦を進めているもようだ。
キセリョフカに関し、米シンクタンク「戦争研究所」は12日、衛星写真データに基づき露軍部隊の大半が撤退したと指摘。キセリョフカを喪失した場合、露軍はヘルソン市の防衛が困難になると分析していた。
ウクライナ国防省情報総局は14日、露軍はヘルソン市周辺に増援部隊を派遣しようとしているものの、士気の低下や人員不足により成功していないとする諜報結果を明らかにした。
ウクライナは南部での反攻を機密とし、進展の詳細は即座に公表しない方針。ただ、同国軍高官は12日、領土500平方キロメートルを奪還したと明らかにしている。
同国のゼレンスキー大統領は14日、奪還に成功したハリコフ州の要衝イジュムを訪問。「侵略者は領土を一時的に占領できても、国民を征服することはできない」と演説し、前線の兵士らに感謝を表明した。
●ローマ教皇、ウクライナ情勢巡る「仲介」不発…露正教会と会談できず  9/15
ローマ教皇フランシスコ(85)は13日、世界の宗教指導者が集まる会議に参加するためカザフスタンを訪問した。ロシアとウクライナの仲介役を果たそうと、外遊中に露正教会トップのキリル総主教との会談やウクライナ訪問が取り沙汰されたが、空振りの旅路となりそうだ。
教皇は、ロシアのウクライナ侵略を深く憂慮し、信徒に向けた祈りなどでも度々戦禍を憂えてきた。
外交面でも教皇は積極的に動き、ロシア国内で大きな影響力を持つキリル総主教との会談を働きかけてきた。総主教はプーチン大統領と親しく、侵略に同調する発言をしている。今回の会議には約50か国から宗教代表者が集まり、総主教の出席が見込まれていたため、教皇は会談で直接憂慮の念を伝えようとしたとみられる。だが、総主教は8月下旬に欠席を表明し、会談は実現しなかった。
今回の外遊に合わせ、教皇はウクライナ訪問も希望していたとされる。だが、8月下旬、プーチン氏に影響を与えたとされる思想家の娘が爆死した事件を巡り、教皇が「無実の女性が亡くなった」と発言すると、ウクライナが反発した。このため、訪問は当面見送られることになった模様だ。
一方、中国の 習近平シージンピン 国家主席は14日、教皇が訪問中のカザフスタンを訪れた。教皇は習氏との会談の可能性について13日、ローマからの機上で記者団に対し、「予定はわからないが、中国に行く用意は常にある」と述べた。
●ロシア排除・中立化拒否、ウクライナが「安全の保証」で新提案  9/15
ウクライナ大統領府は13日、ロシアに再侵略を許さないことを目的にした自国の「安全の保証」に関する作業部会の提案を公表した。安全の保証を確約する国際条約からロシアを排除し、自国の中立化も拒否しているのが特徴で、3月末の提案から様変わりした。タス通信によると、露大統領報道官は14日、提案が「ロシアにとって主要な脅威になる」と反発した。
作業部会は、ウクライナの大統領府長官と北大西洋条約機構(NATO)のアナス・フォー・ラスムセン前事務総長が共同議長を務めており、13日にウォロディミル・ゼレンスキー大統領に提案内容を勧告した。ゼレンスキー氏は13日のビデオ演説で、「ロシアがウクライナに戦争を仕掛ける幻想を持たせないようにする」ことの重要性を強調し、国際条約の準備を進める意向を表明した。
提案ではウクライナが侵略されないようにするため、米英仏独やカナダ、トルコ、豪州などと「キーウ安全保障盟約」と名付けた法的拘束力のある国際条約の締結を提唱した。ロシアの参加には言及していない。
安全の保証は、ウクライナのNATO加盟が実現するまで「暫定的に」必要だと強調し、ウクライナは「中立化」などの義務を負わないとも明記した。
ウクライナが3月29日のロシアとの停戦協議で提示した安全の保証に関する国際条約案では、ウクライナのNATO加盟を嫌うロシアに配慮し、ウクライナが「中立化」を確約する見返りに、自国の安全を保証してもらう内容だった。
新たな提案では、条約の適用範囲についても、「国際的に承認された領土」と位置付け、ロシアが2014年に併合した南部クリミアや、東部の親露派武装集団が実効支配する地域にも対象を拡大した。日本にも対露制裁など非軍事での貢献に期待感を示した。
ウクライナの副首相は13日、フランスのテレビ局とのインタビューで、ロシア側から、改めて停戦協議の打診があったことを明らかにし、ウクライナは拒否したと説明した。双方の停戦協議は5月中旬以降、中断している。
●ロシア軍 「拷問部屋」で40日間拘束され電気ショックなどの拷問… 9/15
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は14日、ウクライナ軍が反転攻勢で解放した東部ハルキウ州の要衝イジュームを訪問した。ハルキウ州では、露軍の支配が約半年間に及んだ地域もあり、戦争犯罪とみられる行為が次々と指摘されている。
ゼレンスキー氏は現地で兵士を激励している写真をSNSで公開した。地元メディアによると、ゼレンスキー氏は、露軍の撤退後に多数の民間人の殺害が発覚したキーウ近郊ブチャに触れながら「何の驚きもない。同じことが起きていた」と述べ、ロシアを非難した。
一方、ハルキウ州の警察幹部は13日、SNSを通じ、イジューム北方のバラクレヤで露軍が地元住民を拘束し、拷問したとみられる施設の存在を確認したと明らかにした。
露軍はバラクレヤで、建物の地下にウクライナ軍に協力したなどの疑いで地元住民を常時約40人拘束し、拷問を加えていたという。英BBCは、スマートフォンに軍服姿の兄弟の写真を保存していたため、約40日間拘束され、電気ショックなどの拷問を受けた男性の証言を伝えた。
●プーチンにどう接する? コロナ後初外遊で習近平が臨む「厄介な会談」 9/15
2020年1月暮れに新型コロナ肺炎がアウトブレイク(感染拡大)して以来、香港を除いてかたくなに海外に出て行かず、引きこもり生活を続けてきた中国の習近平国家主席が、およそ2年8カ月ぶりについに外遊に出た。
行先は中央アジア、カザフスタンとウズベキスタン。9月14日、まずカザフスタンを訪問し、トカエフ大統領と会談を行い、続いてウズベキスタンのサマルカンドで開かれる上海協力機構(SCO)サミットに15、16日に出席する。このサミットはロシアのプーチン大統領も出席する予定で、おそらくロシアによるウクライナ侵略戦争後、初めての中ロ首脳対面会談が開かれる見通しだ。
国内外のチャイナウォッチャーたちが注目するのは、習近平が第20回党大会直前に外遊することの意味だ。
習近平は8月の北戴河会議が終わったのちにサウジアラビアを訪問する予定が一部で報じられ、サウジアラビア側は「2017年5月のトランプ米大統領訪問以来、最も盛大な歓迎行事」を準備していたにもかかわらず、結局実現しなかった。これは党大会前に習近平が中国を離れるのが困難なほど、党内権力闘争が激しいからだろうとみられていた。
ならば、今回、習近平が外遊に踏み切ったということは、権力闘争が一段落つき、習近平が総書記の3期目連任が固まり、目下の政治情勢に自信を持っているということの裏付けなのだろうか。それとも党内の権力闘争よりも、中国共産党として習近平がわざわざ自分で行かねばならない重要な問題が、国外にあるということなのか。その辺について、考えてみたい。
ボロボロの「一帯一路」に党内でも批判の声
今回の外遊の見どころは2つある。1つは「一帯一路」だ。
外交部の毛寧報道官は9月13日の定例記者会見で次のように説明した。
「今回の歴訪は中国にとって、中国共産党の第20回党大会を前に行う重要な元首外交活動である」「SCOサミットで、習主席は各国首脳と共に、SCOの枠組みでの包括的協力や重大な国際・地域問題について踏み込んで意見交換し、協力の新たな共通認識を形成し、協力の新たな章を記す」「カザフスタンとウズベキスタンは中国にとって友好的な隣国、包括的な戦略的パートナーであり、『一帯一路』の重要な沿線国でもある。中国と両国は国交樹立後の30年間、常に、相互尊重、善隣友好、同舟相救う、互恵・ウィンウィンの原則に従い、相互関係が新たな成果を挙げ新たな段階へ上るよう、絶えず後押しをしてきた。習主席による両国への国賓としての訪問は、中国・カザフスタン関係、中国・ウズベキスタン関係が新たな発展段階に入ることを意味する」
この外交部の解説から想像するに、習近平は国家戦略として党規約にまで書き込み推進してきた「一帯一路」の立て直しを1つの目標としている。
実は「一帯一路」は、経済構想的にも政治戦略的にもボロボロで、党内でも批判的な声が上がっている。中国経済の減速、世界経済の減速による資金不足に加え、新型コロナや地域の政変、紛争などによって、プロジェクトそのものが「爛尾楼」(未完成で野ざらしにされた建築物の意味)化しているだけでなく、一帯一路が沿線国を債務の罠に落とし入れてきたやり方や、華僑マフィアによる人身売買や詐欺、マネーロンダリングの温床となっていたことなどが暴露され、そのイメージは地に落ちてしまった。習近平としては、このまま「一帯一路失敗」の印象を放置しておくわけにはいかないので、中央アジアで改めてテコ入れする必要がある、というわけだ。
一帯一路と「グローバル発展イニシアチブ」
では習近平はどのように一帯一路の印象悪化を食い止め、テコ入れを図るのか。
9月12日に米国のシンクタンク「CSIS」(戦略国際問題研究所)が主催したシンポジウムで話題になったのが、昨年(2021年)の国連総会一般弁論で習近平が打ち出した「グローバル発展イニシアチブ」だ。シンポジウムでは、習近平はこのグローバル発展イニシアチブを使って一帯一路の失敗印象を薄めようとするのではないか、という見方が出ていた。
アジア基金会国際発展協力高級主任のアンテア・ムラカラ氏が、グローバル発展イニシアチブと一帯一路は目的がよく似通っており、同じ名目で、中国が世界各地の発展計画に参与し連携させることができる、と指摘。ただ、一帯一路は経済成長とインフラ建設に重点を置いているのに対し、グローバル発展イニシアチブは発展とソフトパワーに重点を置いている。また、一帯一路は中国政府が全権を掌握しているが、グローバル発展イニシアチブは民間機関も参与する余地があるのが違いだという。
シンポジウムでは、この一帯一路、グローバル発展イニシアチブを議題に取り上げ、グローバル発展イニシアチブの国連ブランドを使って、評判が地に落ちた一帯一路の代わりに、海外に安定したプロジェクト建設環境を整備し、中国が新たに地政学的な影響力を持てるように仕切り直すつもりではないか、などといった見方も出ていた。
グローバル発展イニシアチブでは一帯一路の失敗の教訓を汲み、小さく精緻なプロジェクトを推進していくだろう。その成功によって「中国が一帯一路沿線国を債務の罠にはめた」という批判をうまくかわすことができれば、一帯一路の失敗という印象は緩和できるかもしれない。
だが一帯一路もグローバル発展イニシアチブも、狙いが習近平の「中華民族の偉大なる復興」のための地政学的影響力拡大の野望であることには変わりない。だから、一帯一路仕切り直しは、中央アジアおよびロシアというエネルギー国から始めたい、ということになる。
「プーチンを切る」という選択肢
外遊のもう1つの見どころは、習近平とプーチンの会談の行方だ。
この数日、ウクライナ軍が6000平方キロに及ぶ領土奪還とロシア軍撤退のニュースが大きく報じられた。ウクライナのゼレンスキー大統領はクリミア半島の奪還まで言い出している。これが成功するしないにかかわらず、プーチンの敗北は決定的に見える。そのようなプーチンと習近平が対面して何を話すのか。
2人は今年2月4日の北京五輪開幕日に会談して以来、初めて直接対面する。この2月の首脳会談の時に出した共同声明では、中ロ協力について「上限もタブーもない」と言い、一部でこれは準同盟関係宣言ではないか、という見方も出た。だが、後から聞いた周辺情報を総合すると、プーチンにあまりに肩入れした習近平の対ロ外交姿勢について党内では強い反発があり、それがロシアのウクライナ侵攻後、さらに強くなり、結局、習近平の対ロ外交は失敗と言われ、その責任を取る形で習近平お気に入りのロシア通外交官で将来の外交部長(外相)と目されていた外務次官の楽玉成が更迭されることになった。
今、プーチンの敗北が誰の目にもはっきりしてきた段階で、習近平としてはロシアとの関係を改めて自らの責任で仕切り直さなければならない。
おそらく習近平としてはプーチンを見捨てたくない。もしプーチン政権が倒れれば、親欧米政権が代わりにできて、ロシアが西側陣営とともに中国包囲網に加わることになりかねない。それは中国としても避けたいだろう。
だが、すでに改革開放路線維持を掲げる李克強ら共産党の反習近平勢力は、米国との関係改善を望んでいるだろうし、少なくとも米国の対ロ制裁に中国が巻き込まれることは絶対に避けたいはずだ。ならば、かつて中国の著名国際学者、胡偉が主張したように「プーチンを切る」必要が出てくる。
この難しい判断を、結局、習近平が責任をもってやらざるを得なくなったのが、おそらくは今回の外遊の最大の見どころだろう。
事前にプーチンと会談した習近平の腹心
習近平外遊直前の9月7〜9日には、習近平の腹心の栗戦書(全人代常務委員長、序列3位)がロシア極東のウラジオストックで開催された東方経済フォーラムに出席し、プーチンと会談している。
栗戦書は2020年の新型コロナアウトブレイク以降、最初に外遊した政治局常務委員となった。なぜ李克強でもなく、汪洋でもなく、韓正でもなく栗戦書かというと、プーチン対応は習近平の事案であり、他に誰も肩代わりできない、ということなのだ。栗戦書は腹心として、習近平の本音をプーチンに事前に伝える役目であろう。
ロシアメディアによると栗戦書はプーチンに対し、「ロシアのウクライナ進撃を支持し、必要な支援を提供したい」と語ったとか。ほぼ同じタイミングで9月12日、外交担当政治局員の楊潔篪が北京でデニソフ・ロシア大使と会見している。
その上で習近平がサマルカンドでプーチンと会う。
おそらくはプーチンは、追い詰められ屈辱で意気消沈しているか、あるいは怒り心頭かのどちらかだろう。ひょっとすると、敗北の原因を中国のロシアに対する軍事、経済支援が足りなかったからだと思って、その怒りを習近平にぶつけてくるかもしれない。
習近平としては、それをなだめつつ、今後、中国としてロシアをどのように支援していくかについて言質を取られることになろう。
栗戦書が実際にロシアメディアの報じるように発言したのなら、習近平はプーチンと本当に一連托生すると腹を括ったのかもしれない。とすると、習近平の今回の外遊は、その中身によっては、国内で展開される権力闘争以上に習近平の権力基盤に大きな影響があろう。
つまり、党内にすでに存在する“2つの司令部”、習近平派(劣化版毛沢東)vs.李克強派(劣化版ケ小平)の対立に、それぞれロシアと米国という外交要因がリンクし、一見、習近平連任で決着がついて迎えると見られる党大会の大きな変数になるかもしれない。
外遊に出る習近平の心境は?
多くのチャイナウォッチャーは、習近平が権力闘争で優勢に立ち、連任が決まり、その状況に自信をもっているからこそ、ようやく外遊に出られたのだ、と考えている。だが、ニューヨーク在住の華人評論家、陳破空は「習近平はむしろ絶望的な気分で外遊に出ざるを得ない状況だったのではないか」と言う。
つまり、2月以降の親ロ外交の責任を負う形でプーチンと対面し、プーチンの負け戦に最後まで支持を表明し、一連托生となるしか習近平には選択肢がなく、それはプーチンが失脚したときに習近平も失脚する可能性をはらんでいるという意味で。
もちろん、習近平が外交の天才であれば、ウクライナとロシアの間に立って和平交渉を主導するなどウルトラCの解決法でプーチンの面子を守りつつ中国の利益も守るという方法も考えられるのだが、習近平にそこまでの手腕があるならば、これほどの外交失策を積み重ねてはいまい。党大会まで50日あまり。まだ見通しは霧に包まれている。
●9人目の不審死…ロシア実業家 遺体発見「粛清か」 9/15
死亡したのは、ロシア極東・北極圏地域の開発を担当する、イバン・ペチョーリン氏(39)です。ウラジオストクの近海で、高速のボートから転落し、その後、遺体で発見されたということです。
ロシアでは、今年に入り、実業家などの要人が、自殺や原因不明の事故で次々と命を落としています。CNNによりますと、ペチョーリン氏で9人目だといいます。
ロシアに詳しい専門家は、不審死した人の多くが、国家プロジェクトに参加している人たちだと説明しています。
ロシア政治学者・中村逸郎氏「欧米から厳しい経済制裁を受けている。非常に窮地に追いやられてしまっている状況。そうした人たちが、プーチン大統領に批判とか不平を抱く。そして、そういう言動を見せるだけで、実は(プーチン政権から)粛清されてきている、その可能性が高い」 
●強力な反攻作戦で追い詰められるプーチン大統領 9/15
2022年8月29日に始まったウクライナ軍の反攻作戦は、開始からわずか2週間で西側専門家も驚くスピードで領土奪還を進めている。ロシア軍を翻弄するウクライナ軍の巧妙な戦略の前に完全に、戦局の主導権を奪われたプーチン政権はいよいよ追い込まれている。
この背後には、ウクライナと米欧が「連合国体制」をがっちり組んだ強力な軍事支援がある。ゼレンスキー政権は米英との間で戦争終結に向けた大戦略でも一致し、今後の攻勢に自信を深めている。さらに米欧は反攻作戦開始前から、ロシア敗北を前提に「戦後処理」の検討も密かに始めている。
ウクライナ軍の陽動作戦
このスピード進撃を象徴するのが、ハリコフ州の交通要衝イジュムの奪還だ。イジュムはロシアの軍事集積地のベルゴロドから南下してウクライナに入り、東部ドンバス地方に至る補給路の要所。ロシア軍が2022年3月に制圧して以来、ドンバスへの攻撃の拠点になっていた。
2022年9月10日にウクライナ部隊のイジュム到達が明らかになったが、翌11日にはゼレンスキー大統領が奪取を宣言した。ロシア軍は陥落直前に、武器などを置いたまま慌てて逃げており、2022年2月末の侵攻開始以来、最も屈辱的な敗走となった。
この奪還劇の裏には、今回ウクライナ軍による巧みな陽動作戦があった。反攻作戦で当初、焦点になったのは南部ヘルソンだった。ロシア軍はドニエプル川西岸でウクライナ軍により半ば包囲された状態で、いつ掃討作戦が始まるのかが注目されていた。
そのような中、2022年8月14日にウクライナ政府がヘルソンの住民に対し避難を要請した。これを知ったロシア軍は「ヘルソンでの掃討作戦が近い」と焦り、本来ドンバス地方攻略へ投入する予定だったイジュムの部隊をヘルソンに移動させた。この結果、イジュムには小規模の非正規部隊が残るのみとなった。これを見計らってウクライナ軍は奇襲の形でイジュムを制圧した。「住民避難要請」はロシア軍を誘い出す、完全な罠であった。
ウクライナの軍事専門家は、このロシア軍の狼狽ぶりについて、2022年8月初めにクリミア半島のロシア軍基地に行ったウクライナによるパルチザン攻撃が影響したと指摘する。不意を突かれたことで、ロシア軍はその後、冷静な判断力を失ったという。
イジュム陥落により、ドンバス地域を完全制圧するというプーチン政権の軍事目標の実現は完全に遠のいた。2022年2月末に侵攻を開始したプーチン政権は、当初狙った首都キーウの制圧に失敗。その後目標をルハンスク州とドネツク州を合わせたドンバス地方の完全制圧に目標を切り替えていた。それだけに今回のイジュム陥落は大きな権威失墜の事態だ。
ロシア国防省は2022年9月10日、イジュムとバラクレヤに展開していたロシア軍部隊を東部ドネツク州方面に「再配置する」と発表した。敗走を認めたくないクレムリンの苦しい言い訳と言える。
このウクライナ軍の巧妙な戦略を支えているのは総力戦体制だ。正規軍、軍情報機関、そしてパルチザン的な協力を行う住民が連携している。住民はロシア軍の移動をスマホで映像に撮って軍に伝えている。今回のイジュムから南部への増援派遣も、住民からの通報でウクライナ軍に筒抜けになっていた。
軍服脱いで脱走図るロシア兵
これとは対照的なのが、ロシア軍の明らかな士気低下だ。イジュムへのウクライナ軍の接近に気づかなかったことからして、「偵察がずさんだった」とロシアのメディアも指摘するほどだ。最前線から逃亡しようとする兵士が、これを止めようとする上官を射殺するケースも報道されている。
ヘルソンでは包囲から密かに抜け出そうとする兵士らが軍服から私服に着替えて、ドニエプル川西岸から東岸に逃げようとしているという。西岸には最近、ロシア・チェチェン共和国から部隊が投入されたが、任務は戦闘というよりロシア兵の脱走阻止と言われている。
ロシア軍の指揮統制の混乱は、ウクライナ側も指摘している。2022年6月に侵攻作戦を指揮していたドボルニコフ司令官が解任されて以降、誰が後任なのか明らかになっていない。ウクライナは大規模な地上戦一本やりという、ソ連時代以来の戦略を引きずるロシア軍最高幹部の作戦立案能力の欠如を指摘している。ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領顧問は、セルゲイ・ショイグ国防相はじめロシア軍最高幹部の「知的レベルが低いのはわが国にはよいこと」と皮肉っているほどだ。
さらに今回のイジュム陥落で露呈したのは、ロシア軍部隊の兵力不足だ。ウクライナ軍の反攻は、1ハリコフなど北東部、2東部ドンバス地方、3ヘルソン、ザポリージャの南部という3方面に展開している。先述したイジュムからヘルソンへの部隊急派が示しているのは、反攻をこの3方面でそれぞれ食い止めるだけの十分な兵力がロシア軍にないことを露呈した。
キーウの軍事筋は、正規軍や領土防衛隊などを含めた全兵力数の面で「ウクライナ軍はもはやロシア軍に勝っており、火力でもロシア軍との差を縮めている」と指摘する。
プーチン政権にとって芳しくない情報はまだある。ロシア軍が主導権を取り戻す切り札として編成し、投入したはずの「第3軍団」の動向が不明だからだ。同軍団は2万人規模で志願兵から成り、最新兵器も装備しており、南部に派遣されると言われていた。しかし現状ではどの戦線に配備されたのかは報道されておらず、今後どこに投入されたとしても同軍団に戦局を変える力はないとウクライナ側はみている。
一方、主導権を握ったウクライナ軍は、反攻作戦の今後の戦略の全容を明らかにしていない。今後もロシア軍の意表を突くような陽動作戦を展開する可能性がある。しかし、イジュム奪還を踏まえると、方面ごとに異なる戦略で奪還作戦を進めると筆者はみる。北東のハリコフ州全域を奪還したことで、当面は東部のドンバス地方(ルガンスク、ドネツク両州)で奪還作戦を急ぐとみられる。
2014年のクリミア併合時に、親ロ派分離地域としてロシアがドンバス地方に設置した「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」は、ウクライナからすれば8年間に及ぶ屈辱のシンボルだ。それだけにポドリャク顧問はドンバス奪還が「今や中心的課題であり、奪還できればロシア軍は戦意を喪失する」と述べた。
南部ヘルソンでは、すでにロシア軍部隊をほぼ包囲しており、制圧作戦をすぐに開始することはないとみられる。ロシア軍が弾薬・食料が尽きて、降伏あるいは逃亡するのを待つ作戦だろう。事実、ヘルソンの一部ロシア部隊から、戦争捕虜の人道的扱いを決めたジュネーブ条約を守る条件で、投降の用意があるとウクライナ軍に伝えてきたとの情報もあるとロシアの軍事専門家が指摘する。
米欧との連携深めるウクライナ
勢いに乗り始めたウクライナには、さらに強い追い風が吹いている。米英をはじめとするウクライナ支援の枠組みである連合国側との連携緊密化だ。公表されていないが、反攻作戦開始直前、アメリカとの間でウクライナは高官協議を開催、作戦の概要について調整を行った。
アメリカ側からはジェイコブ・サリバン大統領補佐官(安全保障問題担当)、アメリカ軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長が、ウクライナ側からはアンドリー・イェルマーク大統領府長官とヴァレリー・ザルジニー総司令官が参加した。ここで戦争の進め方について合意できた。今後も両国は、ロイド・オースティン国防長官とオレクシー・レズニコフ国防相の間でも、今後適宜、意見や情報を交換するという。
さらに2022年9月8日には、アメリカのブリンケン国務長官が事前の予告なしにキーウ入りして、ゼレンスキー大統領と会談した。ここで、両国は戦争をめぐる大戦略ですり合わせができたといわれる。合意内容は公表されていないが、同じ時期にキーウで開催されたウクライナ情勢に関する国際会議での議論が合意内容を反映したものになっている。
最も注目されるのは会議にオンライン参加したサリバン大統領補佐官の発言だ。「ウクライナはこれ以上戦争を続けないで、占領された領土をめぐってはロシアと交渉すべきだ」とのアメリカのキッシンジャー元国務長官の提案についてどう思うかとの質問に対し、サリバン氏はこの提案を明確に否定した。
「民主的に選ばれたウクライナの大統領が戦争の処理について決めなくてはならない。アメリカは、ウクライナが交渉であれ戦場であれ、領土の一体性を回復することを支持している。これがアメリカの主要な関心事だ」と述べた。さらに「アメリカの仕事はウクライナの戦場での力を強化することであり、戦闘において支援することだ」と強調した。
つまり、ブリンケン氏がゼレンスキー大統領との会談で合意したのは、侵攻されたウクライナの今後の選択をアメリカ政府が全面的に尊重するということである。全領土回復のため戦争でロシア軍を敗退に追い込むというのであればその選択を支持するし、戦争の途中で交渉を開始するならば、それも支持するということだ。いずれにしても停戦交渉に入るならば、ウクライナが出す条件通りにすべきとの立場だ。
戦後処理を水面下で検討開始
このバイデン政権との合意をゼレンスキー大統領は非常に喜んだという。これに気をよくした大統領はさっそくCNNテレビのインタビューで、ロシアに対し「ロシアがウクライナから完全に出ていくまでは何も話すことはない」と非常に強硬な立場を表明した。つまり、今回の侵攻が始まった2022年2月24日以前の状態ではなく、クリミアを併合した2014年年以前の国境までロシアが完全に撤退することが話し合いの条件だということだ。
つまりゼレンスキー政権が設定した和平交渉開始のマジックナンバーは「1991」だ。つまり旧ソ連から独立した1991年にさかのぼってウクライナ領土を原状回復することをロシアに要求したことを意味する。ゼレンスキー大統領は先述した国際会議で、2023年春までの反攻作戦が非常に重要だと述べ、短期決戦の構えでロシアを軍事的に追い詰めるとの意志を明確にした。
プーチン政権に対する米欧の厳しく非妥協的な姿勢を象徴するのがNATO(北大西洋条約機構)のストルテンベルグ事務総長の、2022年9月9日の発言だ。ウクライナへの連合国による武器支援問題を協議するため、ドイツのラムシュタイン空軍基地で行われた会議で「もしロシアが戦闘をやめたら平和が来るだろう。もしウクライナが戦闘をやめたら、ウクライナは独立国としての存在をやめるだろう。われわれは、ウクライナと自分たちのために今の路線を継続する必要がある」。
この継戦戦略の一方で、米欧が水面下で検討を始めているのが「戦後処理」問題だ。近い将来、具体的な検討課題として浮上してくるのが、ウクライナへのロシアの賠償問題やプーチン大統領の戦争犯罪を問う国際法廷の設置問題だ。ロシアが国連安保理常任理事国である以上、これらの問題が国連で正式に協議されるかは予断を許さないが、議論自体は水面下で関係国間で始まっている。
「戦後処理」問題で一番の焦点は、プーチン氏の扱いだ。ゼレンスキー大統領はこの問題でプーチン氏の排除を求める立場を明確にしており、米欧も「ポスト・プーチン」のロシアをめぐり検討している。戦後処理と言えば、アメリカが1941年の太平洋戦争の開戦から2年後には対日戦後処理問題の検討を始めていたことが有名だ。今回の米欧によるロシアに対する検討開始もそれとよく似た展開だ。
この戦後処理問題の結論が出るのはまだ先の話だろうが、今後のプーチン政権との関係を考える時、日本も考慮に入れるべき要素だろう。
●ウクライナ軍、南部の州都ヘルソン近くの集落奪還…南部でも反転攻勢進展  9/15
ウクライナ南部ヘルソン州議会の議長は14日、ウクライナ軍が州都ヘルソンから約20キロ・メートル北西の集落を露軍から奪還したと明らかにした。ウクライナ軍の南部での反転攻勢が進展している可能性がある。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は15日未明のビデオ演説で、東部ハルキウ州で約400の集落を奪還し、約15万人を解放したと宣言した。
ウクライナ軍がヘルソン州で奪還した集落は、交通の拠点だ。露軍との激しい戦闘が15日も続いているとの情報もある。ウクライナ軍はヘルソン州の奪還に向け、ヘルソンがあるドニプロ川西岸を遮断するため、露軍の補給路や弾薬庫を集中的に攻撃してきた。
ウクライナの国防次官は14日、ハルキウ州で6日以降に約8500平方キロ・メートルを露軍から奪還したと説明した。広島県の広さに相当する。ハルキウ州知事によると、露軍占領地域は州全体の約6%に減少した。ウクライナ軍は、南部の反攻を本格化させるタイミングととらえている模様だ。
ウクライナ大統領府副長官によると露軍は14日、ヘルソン州に近い南部クリビー・リフに巡航ミサイル8発を撃ち込み、ダムを破壊した。インフレツ川の水位が急上昇しており、住宅の浸水被害が伝えられている。
露軍は、発電所など市民生活に直結する重要施設への攻撃を強化しているが、米政策研究機関「戦争研究所」は、露軍が、インフレツ川の下流にあるウクライナ軍の浮橋を使用不能にして反攻を妨害しようとした可能性を指摘した。
●親ロ派ウクライナ人が国境越え ロシア軍撤退で  9/15
ロシア軍が2月下旬にウクライナ北東部のハリコフ州に侵攻した際、町を占領したロシア兵たちは地元住民に対し永続的な駐留を約束していた。
ところが、ウクライナ軍は今月、ロシア軍をこの地域の大半から撃退し、ほんの数日で約9000平方キロメートルの領土を奪還した。電光石火の進軍を受けて、ロシア軍は撤退を急ぎ、親ロシア派のウクライナ人たちは国境を越えてロシアに逃れ、ロシア市民はウクライナが国境沿いの領土を奪還したことに困惑している。
この撤退は、ロシア軍が開戦後間もなくウクライナの首都キーウの攻略に失敗して以来、最大の敗北の一つだ。戦争が7カ月目に入る中、ロシア政府は政治的・軍事的に厳しい課題に直面している。ロシアは数週間にわたる動きの鈍い攻勢で、人命と物資を費やして領土を占領してきたが、ウクライナ侵攻以降に奪った領土の10%以上を数日のうちに失った。
ウクライナ国境から約40キロ北に位置するロシアの都市ベルゴロドで行われたインタビューで、6人のウクライナ人と彼らに人道支援を行っている地元住民たちは、ロシアに流れ込んだ人の多くはロシアによる占領を最初は歓迎していたと語った。
ロシア発行のパスポートを受け取った人もいれば、定期的な収入を求めて州立病院や学校に就職した人もいたという。
ロシアの撤退に驚いた人もいる。ボランティアが運営する衣類バンクで話を聞いたウクライナ人女性は、ウクライナのクピャンスクにロシアが設立した行政機関の経理部に就職していたと話した。戦闘が同市に拡大したのを受けて、先週10日にすべてを置き去りにして逃げた。ロシア人に協力したことで訴追されることを恐れたという。
ウクライナの法律では、ロシア人に協力した罪で有罪となれば、10年から15年の禁錮刑に処せられる。
この女性は「人々は私たちに『特別作戦』についてどう感じているかを尋ねてくる」と話した。特別作戦とは、ロシア政府がウクライナでの戦争に言及する際の婉曲表現だ。「私たちは不確実性を感じており、今では一体なぜこのようなことが起きているのか理解できない」。国境から約100キロのクピャンスクに残る親族の安否が心配だという。
地元当局者によると、ロシア占領地にいた何百人もの住民がベルゴロド州に逃げ込んだ。地元メディアが先週末に公開した動画では、国境付近に車が列を成していた。バチェスラフ・グラドコフ州知事によると、同州は避難してきた1300人近くのウクライナ人を受け入れている。
ウクライナ軍が押し寄せる中、先週バラクレヤから逃れたという男性は、「ロシア軍が『あなたたちを置き去りにしない』と言ったとき、人々はそれを信じていた」と話した。「われわれ自身も、何が起こったのか理解できない」。男性の両親はバラクレヤに残っている。
ロシア政府は軍の後退に関して沈黙を続けている。国防省は、ウクライナ東部ドネツク州に向けて軍を後退させたとだけ述べている。2014年のクリミア半島併合を機に紛争が始まって以降、ロシアはドネツク州の一部を支配している。
ロシア政府と米ワシントンにあるロシア大使館にコメントを要請したが、回答は得られていない。
ロシア国営メディアは後退に関する報道を最小限に控えているが、一部の専門家はテレビでロシアの軍事戦略の再考を求めている。
インタビューに応じたベルゴロドの住民の大半は、ロシア政府の計画を信頼し、政府を支持していると答えた。しかし、一部の住民は軍事作戦が効果的に実施されているのか疑問視している。
地元の破産専門弁護士アンドレイ・ボルジク氏は「妨害行為や怠慢、能力不足がないかを判断するための調査が必要だ」と話した。「いくつかの明確な誤算があった。それは戦術的なものかもしれないし、戦略的なものかもしれない」。同氏は前線にいるロシア兵のためにドローンや暗視ゴーグル、新しい靴下などの装備をクラウドソーシングする手伝いをしている。
ベルゴロドのある住民は装甲仕様のバンを購入し、ここ数カ月間、ロシアの国境警備員がいることを意識しながら、ウクライナのクピャンスクやボルチャンスクに医薬品を運んでいる。この男性によると、両都市の住民には何カ月も水や電気が供給されていない。住民は当初、ロシアによる占領を歓迎していたが、その支配に幻滅し始めているという。
「人々は恐怖の中で暮らしている」と男性は話した。「第一に、外部とのつながりがない。人々はコミュニケーションを取れず、親族とも話せない。第二に、絶望と貧困がある」
「こうしたことがロシア軍の失敗の一つだと思う。彼らは物事を通常の状態に戻さなかった。だからウクライナ軍が戻ってくると、住民はすぐに受け入れた」
ベルゴロドの中心街のある市場では、ハリコフから撤退してきたばかりだというロシア軍の兵士らが、軍事用品を売る露店の間を歩き回っていた。革製の軍用ブーツや防寒帽子を試着し、凍った地面に座る際に使うクッションを選び、フライパンなどの基本的なキッチン用品を購入していた。
3人の兵士によれば、ぎりぎりの段階で自陣から撤退する命令を受けた後、近いうちに国境地帯に再配置されることを伝えられたという。
兵士の1人は「あのタイミングで撤退していなければ、われわれは包囲されていただろう」と語った。「ウクライナ側の装備は大幅に強化されている」
ある兵士は、今回の撤退によって、2月下旬にウクライナに侵攻して以来始めての休みが取れたと語った。最近ベルゴルドの中心街をぶらついていた兵士の一部は、明らかに酔っ払っていた。
別の兵士は、侵攻が計画通りの結末を迎えることに自信を示した。
「米国との戦いになっていなければ、われわれはずっと以前に勝利を収めていたはずだ」と語った。「それでもわれわれは勝つ」
多くのベルゴルド住民は今回の撤退を受けて、この戦争で次に何が起きるのかと神経をピリピリさせている。40万人近い人口を抱える同市では、頻繁に防空システムが作動している。
弁護士のボルジク氏は、自家用車の中に防弾チョッキとヘルメットを準備している。ビジネスマンのデニス・カティン氏は、ウクライナ侵攻開始後、自宅の裏庭に爆撃に備えたシェルターを作った。彼のビジネスパートナーは、中心街で共同経営するレストランの窓が吹き飛ばされることを想定して、ベニヤ板を購入したという。
ベルゴロド州のグラドコフ知事は今週、国境付近のいくつかの村が砲撃を受けたとして、住民に避難を呼び掛けた。
今週のある日の午後、ベルゴロド中心街の市場では遠方の爆発音が2回立て続けに聞こえた。買い物客らによれば、市の防空ミサイルシステムが作動した音だという。
ロシア軍支持を表す「Z」や「V」の文字をあしらった記章や、迷彩服を3月から販売している店の店主は、今回の撤退を招いた責任はロシア政府上層部にあると話した。
それでも彼女はプーチン氏の侵攻の決断を支持しているという。
「これほど多くの同胞が死んだのが無駄だったなどということはあり得ない」と語った。「このすべてが無駄だったということがあるはずがない」
●ウクライナでの後退、ロシア国内でも議論に 批判の矛先は国防省 9/15
ロシア軍がウクライナ・ハルキウ州で後退したことを受けて、ロシア国内では珍しく、コメンテーターや政治家が議論し、公の場で批判の声が上がっている。ただ、批判の矛先は主に国防省だ。
ロシアがウクライナで行っている「特別軍事作戦」に関する公の場での批判は、これまで起きたロシア軍の撤退とは対照的だ。例えば、ロシア軍の黒海のスネーク島からの撤退は善意の印とされていた。
コメンテーターは、国防省が週末に発表した軍のハルキウ州からドンバス地方への軍の「再移動」という説明を受け入れていない。
ロシア政府の民族融和に関する評議会のメンバーの1人は、ウクライナ軍の攻撃が差し迫っているとの情報を無視した軍当局者に責任を取らせるべきだと指摘した。
同メンバーは国営メディアで「2カ月前からウクライナ軍と軍事物資が当該の地域に集まっていた。全てテレグラムに書かれていた」と指摘した。
同メンバーは「限定的な動員」を呼びかけたほか、ウクライナでの後退について「戦術的な敗北」と述べた。
国民の動員に関する議論と、特別軍事作戦を「戦争」と呼ぶことの議論も議会で始まりつつある。
共産党のジュガーノフ委員長は「特別軍事作戦と戦争と何が違うのか。軍事作戦はいつでも止められる。戦争は止められない。勝利か敗北かで終結する」と述べ、戦争が起こっているとの見方を示した。
ペスコフ大統領報道官は先に、政府は国民の総動員について検討していないと述べていた。
●チェチェン・カディロフ首長 ロシアの各首長に自己動員」呼びかけ 9/15
ウクライナ侵攻でロシア側を支持するチェチェン共和国のカディロフ首長が、ロシア国内の各首長に戦闘への「自己動員」を呼び掛けました。
ウクライナ軍が反転攻勢を強めるなか、カディロフ首長は15日、自身のSNSで「クレムリン(=ロシア政府)の戒厳令を待つ必要はない」として、各地域の首長が自主的にウクライナの戦場に向け、動員を行うよう呼び掛けました。
カディロフ氏は、各地域にはそれぞれ少なくとも1000人の志願兵を準備し、訓練、配置する能力があるなどと主張しています。
一方、ロシア国内では軍の兵力不足は深刻化しているとみられています。
ウクライナ北東部・ハルキウでのロシア軍の撤退を機に、与党「統一ロシア」から本格的な動員を求める声が上がっています。
ただ、世論の反発は必至でプーチン政権は動員を実行できないままでいます。
兵士の動員を巡っては、プーチン氏に近い民間軍事会社「ワグネル」の経営に関わっているとされるオリガルヒのエブゲーニー・プリゴジン氏がロシアの刑務所で受刑者に志願を促す動画がSNS上で拡散しています。
調査報道サイト「インサイダー」はその後、この刑務所からおよそ150人の受刑者がウクライナの戦場に派遣されたと報じています。
プリゴジン氏が経営するケータリング会社は映像について、「本人に非常に似ている」とコメントしています。
●ロシア敗北 プーチン大統領10月に終戦宣言≠ゥ 9/15
ウクライナ東部ハリコフ州のロシア側支配地域をほぼ取り戻したウクライナ軍は、南部でも奪還作戦を展開している。ロシア国内でも「敗北」を認める声が強まっている。国際社会でも孤立を深めるプーチン大統領が「作戦終了を宣言する場合、10月末が期限だ」と専門家は指摘する。
ゼレンスキー大統領は14日、ハリコフ州の要衝イジュムを訪問。「侵略者は領土を一時的に占領できても、国民を征服することはできない」と演説し、前線の兵士らに感謝を表明した。
ウクライナ軍は南部ザポロジエ州でも前線に大部隊を集結させているとみられる。
ロシア国内では「敗退」との受け止め方が広がり、国営テレビの番組などで激論も交わされている。米シンクタンクの戦争研究所は13日、プーチン政権が世論の批判の矛先を軍に向けようとしており、敗退を軍の動員強化に利用するもようだと分析した。ただ、国内外で窮地に追い込まれており、特別軍事作戦を継続できるのか、不透明さが増してきた。
ロシア政治に詳しい筑波大学名誉教授の中村逸郎氏は「ロシア軍にとって侵攻開始後、最大の痛手となっている。G20(20カ国・地域)の枠組みを重視するプーチン氏は11月の首脳会合への出席に意欲をみせているが、侵攻継続の状態なら他国がボイコットし、国際的孤立を深める可能性もある。終了宣言を考える場合、10月末ごろまでがタイムリミットになりそうだ」と分析した。
●習氏とプーチン氏、侵略後初の直接会談…米国へのけん制と連携誇示  9/15
中国の 習近平シージンピン 国家主席とロシアのプーチン大統領は15日、中央アジア・ウズベキスタンのサマルカンドで会談した。ロシアが2月24日にウクライナ侵略を開始してから初めての直接会談となった。両首脳は中露の覇権主義的行動への非難を強める米国へのけん制として、会談を通じて連携を誇示した。
会談はサマルカンドで15日に開幕する上海協力機構(SCO)の首脳会議に合わせて開催された。習氏の外遊は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まって以来初めてで2年8か月ぶりだ。
露大統領府の発表によると、プーチン氏は会談の冒頭で、ウクライナ情勢に対する「中国のバランスの取れた立場を高く評価している」と述べた。台湾情勢を巡っては「『一つの中国』原則を強く支持し、台湾海峡での米国などによる挑発を非難する」と強調し、習政権の立場を擁護した。
中国外務省によると、習氏は会談で「双方の核心的利益に関わる問題で互いに力強く支持したい」と述べた。中国が絶対に譲ることのできない核心的利益と位置づける台湾問題を提起するとともに、ウクライナ侵略を巡るロシアの立場への理解を示唆した可能性がある。一方で、習氏のウクライナ問題についての発言は伝えられていない。
プーチン氏はウクライナの反転攻勢で戦況が悪化する中、中国のさらなる支持を取り付けたい思惑がある。一方、中国としてはロシアとともに国際社会からの孤立がさらに進む事態は避けたい考えで、習氏は直接的な軍事面の支援などには踏み込まなかった模様だ。
プーチン氏は会談で「昨年の中露の貿易総額が35%増の1400億ドル(約20兆円)超となった」とし、対露制裁が続く中、「今年、我々は記録を更新するだろう」と述べて貿易の拡大に期待を示した。
SCOには日米と連携するインドも加盟し、イランの正式加盟に関する手続きも進められている。習氏は1か月後の共産党大会で異例の3期目政権発足をにらむ。その直前の外遊に拡大が進むSCOの会議を選んだのは、米国との対立長期化を見据え、ロシアなどと対抗軸構築を改めて打ち出す狙いがあるとみられる。

 

●米、ロシアを支持しないよう中国に要請 ウクライナ戦争巡り 9/16
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は15日、中国に対し、ロシアによるウクライナでの戦争を支持しないよう求めた。また、ロシアのウクライナ侵攻に対して全世界が一丸となるべきで、傍観者であってはならないと述べた。
CNNのインタビューで「誰も傍観者であってはならない。全世界が一列に並び、ロシアのプーチン大統領の行いに対抗すべきだ」と指摘。「プーチン氏と通常通りのやり取りをしている場合ではない」と語った。
上海協力機構の会議に出席するためサマルカンドを訪れているプーチン大統領と中国の習近平国家主席はこの日、ロシアのウクライナ侵攻後初の直接会談を実施した。
カービー氏は、中国がロシアによるウクライナでの戦争をどの程度支援するかはまだ分からないとし、中国政府はプーチン大統領を実質的に支援する動きも、ロシアに対する制裁措置に違反することもなかったと指摘した。
これとは別に、カービー氏はMSNBCで、米国はウクライナに対し、新たな安全保障支援策を実施する準備を進めていると言及。時期などの詳細については明言を避けていたが、CNNでは「非常に近いうちに」発表される見込みとした。
●ロシアの財政黒字が急減、原油安とウクライナでの戦争で打撃 9/16
エネルギー価格が下落し、7カ月近くに及ぶウクライナでの戦争の費用が増すにつれ、ロシア経済に新たな緊張の兆しが見えてきた。
ロシア財務省が今週発表したデータによると、ロシアの財政黒字は夏の間にほぼ消えた。6月末の黒字は1兆3700億ルーブル(約3兆3000億円)だったが、先月末にはわずか1370億ルーブルにまで落ち込んだ。
歳入が圧迫されている。従来、ロシアの予算では天然ガスよりも石油の方が大きな割合を占めているが、指標となるブレント原油価格は6月上旬のピーク時から約25%下落した。
これが大きな打撃となっている。欧州連合(EU)によるロシアからの海上石油輸入の禁止や主要7カ国(G7)のロシア産石油の価格上限規制が12月に実施される前にもかかわらずだ。また、欧州の天然ガス価格は異常に高いままだが、EUおよび英国へのガス供給は年初から49%減少したとロシアの天然ガス会社ガスプロムは先週発表した。
ドイツ国際安全保障研究所の上級研究員、ジャニス・クルゲ氏によると、軍事費と、西側諸国の厳しい制裁の影響から経済を守るための対策費が大幅に増えているという。
ロシア政府のリアルタイムのデータは予算が現在赤字であることを示しているとクルゲ氏は指摘し、軍事費の上昇に伴いロシアの赤字はさらに膨らむ可能性があると付け加えた。
「軍事費はもともと今年3兆5000億ルーブルを予定していたが、今月すでに超えた可能性が高い」とCNNにコメントした。
ロシアの経済紙「ベドモスチ」は15日、政府に近い情報筋の話として、財務省が政府機関に対し来年10%の支出削減が必要だと伝えたと報じた。しかし国防費は増加する見込みという。
●大誤算…頼みの中国・習近平も冷ややかで、「四面楚歌」に追い込まれた! 9/16
ロシアが核を使う可能性
ウクライナが8月下旬から始めた反転攻勢で、ロシア軍を圧倒し、9月11日までに東部のハリコフ州のほぼ全域を奪還した。戦況はウクライナ優勢で動いていくのか。それとも、ロシアが形勢逆転を狙って、核や化学兵器に手を伸ばす可能性はないのだろうか。
まず、8月下旬からの展開を振り返ろう。
米国のジョー・バイデン政権は8月24日、29億8000万ドル(約4200億円)に上るウクライナへの追加軍事支援を決めた。これは1回の支援額として過去最大だっただけでなく、防空システムや長距離砲、弾薬など、中身も数年がかりの大規模な支援だった。
バイデン大統領は、支援を発表した声明で「米国はウクライナの人々が主権を守るために戦い続ける限り、彼らを支援することを約束する」と述べた。この言い方は、ほとんど「同盟国扱い」したも同然である。
それまでの支援は、言ってみれば「負けないように、しかし勝ちすぎないように」というような、中途半端なものだった。たとえば、5月30日に表明した支援では「ハイマース」と呼ばれる高機動ロケット砲システムも、わざわざロシアまで届かないように射程を短くしていた。
それに比べれば、8月の支援は、かなり本腰を入れてきた印象がある。なぜ、そうなったかと言えば、1つには、米国内でバイデン政権の姿勢に対して「いかにも中途半端」という批判が高まっていたからだ。
たとえば、ウォール・ストリート・ジャーナルは「ウクライナ支援で曖昧なバイデン氏」と題した5月31日付の社説で「これでは戦争に勝つことも、ウクライナに有利な形で膠着(こうちゃく)状態を強いることもできない」と批判した。
それだけではない。
私は、米国がロシアのウラジーミル・プーチン大統領は結局「核を使わないし、使えない」という判断に傾いてきたから、とみている。もしも、プーチン氏が本気で核のボタンに手を伸ばす可能性を本気で心配していたら、大胆な軍事支援を躊躇したはずだ。
米国は軍事衛星による偵察や通信傍受、あるいはロシア内部からの情報で、かなりの程度、ロシア軍の動向を把握している。たとえば、5月4日付のニューヨーク・タイムズは「米国の機密情報が、ロシアの将軍たちの殺害に役立っている」と報じた。
そうした実績もあって、米国は「ロシアが核兵器を使おうとすれば、事前に把握できる」という自信を深めているのではないか。
ウクライナ軍が優勢だが…
ウクライナ軍が本格的な反転攻勢に踏み切ったのは、まさに米国が積極的な支援姿勢に転換した直後だった。CNNが特ダネとして、反転攻勢の第1報を報じたのは、バイデン政権の発表5日後の8月29日だ。
9月13日付のニューヨーク・タイムズによれば、ジェイク・サリバン米大統領補佐官やマーク・ミリー米統合参謀本部議長が、数カ月前からウクライナ側のカウンターパートと協議し、作戦を練り上げていた。米国の支援はその一環だ。つまり、今回の作戦は事実上、米国と英国、ウクライナの3カ国による共同作戦だったのだ。
ウクライナは、このまま優勢を維持できるのだろうか。楽観できない。
元米国防長官のレオン・パネッタ氏は9月12日、ブルームバーグ・テレビのインタビューに答えて「(今回の攻勢は)重要な岐路(pivotal)であると同時に、危険でもある」と、次のように語っている。
〈我々は、重要な岐路にさしかかっている。プーチン氏を追い詰めれば、彼は反撃に転じるだろう。モスクワには、今回の攻勢で撤退を余儀なくされたことで、彼を批判する人々もいる。プーチン氏は実際、インフラを攻撃した。彼は戦域核に手を出すかもしれない〉
攻勢直前のタイミングで、核戦争に発展する可能性を警告する専門家もいた。攻撃的現実主義の大御所、シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授だ。
教授は8月17日、外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」に「ウクライナにおける火遊び」と題した論文を寄稿し、楽観的な見方を厳しく戒めた。次のようだ。
〈西側の政策担当者は、次のような見解で一致しているように見える。すなわち「対立は膠着状態に陥る」「弱体化したロシアは結局、米国とNATO(北大西洋条約機構)、ウクライナに有利な平和協定を受け入れる」「米国もロシアも戦争をエスカレートさせて得られる利点を承知しているが、破局は避けられる」というのだ。米国が直接、戦闘に介入したり、ロシアが核を使うなどとは、ほとんど誰も思っていない〉
だが、それは「あまりに軽率」と批判する。
〈破局的なエスカレーションを避けられたとしても、戦闘集団がそんな危険を管理する能力があるかどうか、まったく不確実だ。常識で考えるよりも、はるかに危険は大きい。欧州が核戦争で全滅する可能性を考えれば、特に注意しなければならない〉
戦略を大転換した米国
教授はロイド・オースチン米国防長官が「我々はロシアを弱体化させたい」と語った発言に注目した。私は4月29日公開コラムで、この発言を引用して「米国が戦略を大転換した」と書いたが、教授はこう指摘している。
〈米国はロシアを大国の座から引きずり下ろして、ノックアウトする意図を表明したのだ。国防長官は7月「支援は効果を上げている。ロシアは我々を潰せる、と思っているが、彼らの計算違いだ」と語っている。もはや、妥協の余地はない〉
教授は具体例を挙げて、米国の方針転換を指摘した。ハイマースと呼ばれる多連装ロケットシステムの提供、スロバキアを通じたミグ29戦闘機の提供、さらに、ニューヨーク・タイムズが報じた「米国の隠れ戦闘員、スパイ網の構築」などだ。
このニューヨーク・タイムズの記事(6月25日付)は、興味深い。米国や西側同盟国はドイツやフランス、英国に設けた基地で、ウクライナの特殊部隊を訓練している。米中央情報局(CIA)の担当者はキーウで、ウクライナ軍に極秘情報を提供している、という。
そのうえで、教授はこう指摘した。
〈プーチン氏が核を使うシナリオは3つある。1つは、米国やNATOが戦闘に加わるケースだ。そうなったら、脅しで核を爆発させるかもしれない。2つ目は戦場で形勢を逆転するために使う場合だ。ウクライナがロシア軍を打ち負かし、領土を奪還しそうになったら、モスクワは脅威が迫ったとみるだろう。3つ目は外交的解決が見込めず、戦争がロシアに非常に過酷な膠着状態に陥った場合だ〉
〈多くの人々が、戦争がエスカレートする危険性を、あまりに過小評価している。戦争はそれ自体のロジックを持っており、行方を予測するのは難しい。我々にできるのは、指導者が破局的エスカレーションを避けるために、戦争を管理するよう願うことだけだ〉
世界中が注目する中ロ首脳会談
戦争の行方を占ううえで、大きな鍵を握っているのは、中国である。
プーチン氏と中国の習近平総書記(国家主席)は9月15日に上海協力機構の首脳会議が開かれるウズベキスタンで会談した。プーチン氏は戦況の悪化を受けて、軍事支援にとどまらず、可能ならば「核の使用」についても、習氏から事前に「暗黙の了解」を取り付けたかったはずだ。
本稿執筆時点(15日午後9時)で、会談の詳細は明らかになっていないが、軍事支援も核の使用容認も、習氏は要請に応じないだろう。中国がロシア支持に大きく舵を切った後で、ロシアが大敗北を喫したら、習近平体制の基盤が揺らいでしまう。10月の共産党大会で総書記3選を至上命題にしている習氏に、そんなリスクを犯せるわけがない。
中国が了解を与えた後で、ロシアが本当に核を使ってしまったら、中国も世界から非難を浴びるのは避けられない。そうなったら、中国の「台湾奪取」という大目標にも、悪影響を及ぼすのは必至だ。
中国は核の「先制不使用」を宣言している。それがタテマエにすぎなくても、西側の中国批判に格好の武器を与えてしまう形になる。米国との対決で「ロシアと中国のどちらが主導権を握るのか」という問題もある。それは、戦後の世界秩序作りに直結する。
頼みの中国からもつれなくされ、プーチン氏はいよいよ「四面楚歌」状態に追い込まれてきた。
●ウクライナのNATO加盟問題は侵略の名目か…プーチン氏「断念合意」拒否  9/16
ロイター通信は14日、ロシアが2月24日にウクライナ侵略を始めた時点で、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念する暫定合意が両国間でまとまっていたにもかかわらず、プーチン露大統領が合意を拒否し、侵略を続行したと報じた。プーチン氏にとって、ウクライナのNATO加盟問題は、侵略の名目にすぎなかったとの見方が強まっている。
ロイター報道は、露政権指導部に近い3人の証言に基づいたもの。侵略を開始した直後か直前に、ウクライナとの協議を担当していたドミトリー・コザク大統領府副長官が、ロシアによるウクライナの大規模な占領を回避するため、ウクライナとの暫定合意をプーチン氏に打診したと指摘した。
プーチン氏は「不十分だ」と指摘して当初の合意支持を撤回し、侵略目的にウクライナ領土の併合を追加したという。露大統領報道官は「事実と全く異なる」と述べた。
●中ロ首脳が関係強化を確認 ウクライナ情勢めぐり中国は慎重姿勢も 9/16
ウクライナ侵攻後初めてロシアと中国の首脳が対面で会談しました。関係強化を確認する一方、ウクライナ情勢をめぐっては中国の慎重な姿勢が目立つ形となりました。
ロシア プーチン大統領「ウクライナ危機における中国のバランスが取れた姿勢を高く評価する。この問題に関する疑問や懸念があることを理解している」
プーチン大統領は15日、習近平国家主席と会談し、ウクライナ情勢をめぐる中国の姿勢を評価しました。そのうえで、台湾情勢について「『一つの中国』の原則を支持し、アメリカとその陣営による挑発を非難する」と述べ、中国を支持する姿勢を強調しました。
これに対し、習主席は「互いの核心的利益に関わる問題で強力な相互支援を行い、協力を深化させる」と応じ、「我々はロシアとともに、変動する世界を発展へと導く主導的な役割を果たす用意がある」と述べました。
一方でウクライナ情勢に関しては明言せず、態度を明確にしないなど、中国の慎重な姿勢が目立つ形となっています。この会談について、アメリカ政府は…
アメリカホワイトハウス ジャンピエール報道官「これまでも中国のロシアとの連携、関係の深さへの懸念を示してきました。ロシアがウクライナで侵略戦争、残忍な戦争を行っているにもかかわらず今回の会談はその連携を示す一例です」
●プーチン氏、ウクライナ巡る中国の懸念に理解表明 習氏の姿勢評価 9/16
ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席が15日、訪問中のウズベキスタン・サマルカンドで会談した。プーチン大統領はウクライナ情勢を巡る中国側の疑問や懸念を理解しているとした上で、習氏の「バランスの取れた姿勢を高く評価している」と述べた。
首脳会談は上海協力機構(SCO)首脳会議に合わせ行われ、ロシアのウクライナ侵攻開始後としては初の対面会談となる。
習氏は「旧友」と再会できたことをうれしく思っていると述べた上で、「世界や時代、歴史が変化に直面する中、中国はロシアと協力し、大国の責任を示す上で主導的な役割を果たすと同時に、混乱する世界に安定と前向きなエネルギーをもたらす考えだ」と語った。
国営の中国中央テレビ(CCTV)によると、中国政府は会談に関する声明でウクライナには言及せず、中国はロシアの中核利益に絡み、ロシアを支援する用意があると表明した。また習氏によるウクライナに関する公の発言もなかった。
プーチン大統領は、一極集中化の世界を目指す米国の試みは失敗に終わるという見方を示した上で、「ウクライナ危機に関して、中国の友人たちのバランスの取れた姿勢を高く評価している」とし、「親愛なる同志の習近平氏、親愛なる友人」と呼びかけた。
その上で「この件に関する中国側の疑問や懸念を理解している。今日の会談では、もちろんわれわれの立場を説明する。この問題について以前にも話したことがあるが、われわれの立場を詳しく説明する」と述べた。
プーチン氏がウクライナ戦争に対する中国の懸念について言及したのは初めて。
こうしたプーチン大統領の発言は、ウクライナ侵攻を巡り慎重姿勢を維持してきた中国が批判的な見解にシフトしている可能性を示唆しているという。
米コロンビア大学のイアン・ブレマー政治学教授はプーチン大統領の発言について、「引き下がることを余儀なくされる圧力をプーチン氏が認識したことを示す初の公的なサイン」と指摘。「ロシアはウクライナ侵攻によって主要7カ国(G7)ののけ者となった。中国はそれに関わることは望んでいない」と述べた。
中国はロシアのウクライナ侵攻開始後、西側諸国による対ロ制裁を批判する一方、ロシアへの非難を控えると同時に、ロシアの軍事作戦に支持は表明せず、支援も供給していない。
一方、ロシアのラブロフ外相は記者団に対し、非公開の中ロ首脳会談は素晴らしい内容だったと言及。「国際情勢に関するわれわれの評価は完全に一致しており、食い違いは全くない」とし、「近く開催される国連総会を含め、われわれの行動を引き続き調整していく」と述べた。
プーチン大統領はまた、台湾を巡り中国への支持を明示。「われわれは『一つの中国』政策の原則を堅持する」とし、「米国とその衛星国による台湾海峡での挑発を非難する」と表明した。
習氏は2013年の国家主席就任以降、プーチン大統領と行った対面会談は39回。一方、21年に就任したバイデン米大統領とはまだ対面会談を行っていない。
また、モンゴルのオヨーンエルデネ首相はプーチン、習両首脳との会談で、モンゴルを経由しロシアから中国に石油・ガスを供給するパイプラインを建設する構想に支持を表明した。
●ウクライナ軍 ハルキウ州で攻勢も ルハンシクなどで警戒強める  6/16
ロシアが軍事侵攻を続けるウクライナでゼレンスキー大統領は、東部ハルキウ州の大部分を奪還したとして「大きな勝利だ」と強調しました。一方で、隣接する東部のルハンシク州やドネツク州ではロシア軍が激しい攻撃を続けていて、地元当局は警戒を強めています。
ウクライナでは東部や南部でウクライナ軍が反転攻勢を続けていて、ゼレンスキー大統領は、東部ハルキウ州では、ほぼ全域を解放したと強調しました。
15日には首都キーウを訪れたEU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長と会談し、ウクライナ大統領府によりますと、この中でゼレンスキー大統領は「われわれは町や村をロシア軍の支配から日々解放し、士気を高めている。大きな勝利だ」と述べて自信を示しました。
一方、ハルキウ州に隣接するルハンシク州のハイダイ知事は15日、地元メディアのインタビューで「ルハンシク州を含む多くの地域では今も激しい戦闘が続いている。ハルキウ州のような速攻のシナリオが繰り返されることはない」と述べ、警戒を強めています。
また、ドネツク州のキリレンコ知事は15日、ウクライナ側の拠点の1つバフムトで5階建てのアパートがミサイル攻撃によって破壊されたほか、別の町では病院が攻撃を受けてけが人が出ているとSNSに投稿し、住民に避難を呼びかけています。
ロシア外務省のザハロワ報道官は15日の記者会見で、ウクライナに兵器を供与する欧米に敵意を示しながら「軍事作戦の目的を達成するという緊急性は日増しに強まっている」と主張し、今後、ロシアが攻撃を激化させる可能性もあるとみられます。 
●旧ソ連諸国で情勢不安定化 ロシア、軍をウクライナ動員で 9/16
米シンクタンク、戦争研究所は15日の戦況分析で、ロシアがウクライナ侵攻に伴い旧ソ連諸国の基地に駐留する部隊を動員したことで、同諸国でロシアの影響力が弱まり、地域情勢が不安定化している可能性を指摘した。
ウクライナ侵攻後に中央アジアのタジキスタンとキルギスの国境での軍事衝突や、アルメニアとアゼルバイジャンとの間で係争地ナゴルノカラバフを巡る争いが再燃している。
戦争研究所は欧米メディアを引用し、タジキスタンのロシア軍基地からは約1500人がウクライナに派遣され、さらに600人が動員される予定とした。
●ウクライナ侵攻で存在感増す「上海協力機構」 さらなる拡大目指すプーチン氏 9/16
中国とロシアが主導する枠組み「上海協力機構」の全体会合が開かれています。ウクライナ侵攻をめぐり欧米が制裁で足並みを揃える中、プーチン大統領にとって国際協調をアピールする舞台ですが、微妙な温度差もうかがえます。
中央アジア、ウズベキスタンで開かれた上海協力機構の首脳らによる全体会合。ロシアや中国、インドなどの加盟国のほか、オブザーバーなど含め過去最多の15か国が参加しました。
上海協力機構は加盟国だけでも世界の人口の半分近くを占める巨大な枠組み。今回、イランが正式加盟に関する文書への調印を行うなど拡大を続けています。
ウクライナ侵攻をめぐり対ロ制裁を科す欧米とは一線を画し、「多極的な世界」を掲げるプーチン大統領にとっては「孤立していない」とアピールする恰好の場といえます。
ロシアは中国やインドへ、エネルギーの輸出を拡大。制裁下で経済的な結びつきも強めています。
またプーチン氏は、きのう行われた中国との首脳会談で、枠組みのさらなる拡大に意欲を示しました。
ロシア プーチン大統領「建設的で生産的な枠組みとして、さらに強化していく必要がある」
ただ、ウクライナ情勢に関する微妙な“温度差”も浮かび上がっています。中国の習近平国家主席はウクライナについては明言せず、態度を明確にしませんでした。
ウクライナ側による領土奪還の動きが広がる中、一連の首脳会議ではウクライナ情勢に深入りしないという各国の姿勢が目立つ形となっています。
●中露、ウクライナで温度差 プーチン氏「懸念を理解」 9/16
ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席は、15日にウズベキスタンで行われた首脳会談で中露の良好な関係を高く評価した。ただ、ロシアが侵攻したウクライナの情勢に関しては、習氏が公の場での言及を避けた。プーチン氏も「中国側の疑問と懸念は理解している」と述べるなど、ウクライナを巡る両国の温度差が透けてみえた。
会談冒頭でプーチン氏は「この半年間で世界は劇的に変化しているが、変わらないものが一つある。それは中露の友情だ」と発言。台湾情勢に関しても「ロシアは米国や従属国による挑発を非難する」と述べ、中国への支持を鮮明にした。習氏も「激変する世界で、中国はロシアとともに大国の模範を示し、主導的役割を果たす」と応じるなど、蜜月ぶりをアピールした。
しかし、ウクライナ情勢に話が及ぶと、プーチン氏は「中国の中立的立場を高く評価する」と述べ、中国がロシアを完全には支持していないことを暗に認めた。習氏はウクライナに言及せず、ウクライナ情勢を念頭に置いたとみられる発言すらしなかった。
ウクライナ侵攻で中国は、対露制裁を発動した米欧などを非難する一方、ロシアへの支持も表明していない。ロシアに巻き込まれる形で国際社会で孤立したり、米欧の制裁対象とされたりすることを避けたいのが本音だ。タス通信によると、米国務省のプライス報道官は15日の記者会見で「現時点で中国がロシアに軍事支援や制裁回避手段を組織的に提供している兆候は見られない」と述べた。
他方で習氏には、米国への対抗軸を形成する上でロシアとの連携を必要としている事情がある。
ウズベクで16日に行われた上海協力機構(SCO)首脳会議で、習氏は米国による対中包囲網の形成を念頭に「陣営対立を作り出すことや、地域の安定を破壊する企てを食い止めるべきだ」と発言した。SCOの参加国拡大にも意欲を見せている。
習氏は同日、ウズベクでイランのライシ大統領とも個別に会談し、「内政不干渉の原則を守り、途上国の共通の利益を擁護したい」と強調した。
「地域の安全や広範な途上国、新興国の共通利益を守る必要がある」。プーチン氏との会談でこう訴えた習氏は、ロシアと連携し、米国と異なる価値観を持つ発展途上国をまとめ上げていく考えとみられる。
●ロシア、途上国に無償で肥料提供の用意=プーチン氏 9/16
ロシアのプーチン大統領は、ウズベキスタンで開催された上海協力機構(SCO)首脳会議で演説し、欧州が対ロシア制裁の一段の緩和に合意すれば、欧州の港に滞留しているロシア産肥料30万トン以上を途上国に無償で提供する用意があると述べた。
プーチン氏は欧州がロシアの肥料輸出を妨げている制裁を「部分的に」しか解除していないと指摘。欧州連合(EU)がロシアの輸出品の輸送に対する一部の制裁を緩和したことは歓迎するが、EUは加盟国のためだけに「身勝手に」制裁を解除していると非難した。
同氏は「ロシア産肥料を購入できるのは彼らのみだ。途上国や世界の最貧国はどうなるのか」と述べた。
●IAEA評議会がロシアに占領の中止求める決議 9/16
国際原子力機関(IAEA)理事会は15日、ロシアに対してウクライナ南部ザポロジエ原発の占拠を中止するよう求める決議を採択した。欧州連合(EU)や日米韓など42カ国は8月、ロシア軍が原発から即時撤退するよう共同声明を出していたが、国際機関も続いた形だ。
欧米メディアによると、35カ国で構成する理事会のうち、決議案には26カ国が賛成、ロシアと中国の2カ国が反対し、インド、パキスタン、エジプト、ベトナムなど7カ国は棄権した。
決議では、ザポロジエ原発と他の核施設に対するあらゆる行動を即時に停止するようロシアに要請。併せて「ウクライナの核施設に対するロシアの執拗な暴力を非難する」とし「原発の占領が事故のリスクを高めている」と指摘した。
一方、ロシアのプーチン大統領は「ウクライナが核武装をもくろんでいる」と主張。ザポロジエ原発周辺で起きる砲撃や火災は「ウクライナの仕業であることは明白」と述べている。
●ロシア天然ガスを中国へ パイプライン建設で合意 9/16
中国、ロシア、モンゴルはロシアの天然ガスを中国に運ぶパイプラインの建設を進めることで合意しました。
中国外務省によりますと、中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領、モンゴルのフレルスフ大統領が15日会談し、ロシアの天然ガスをモンゴル経由で中国に運ぶパイプラインの建設を進めることで合意しました。
ウクライナ侵攻後、ヨーロッパ諸国に代わり中国がロシアの天然ガスを購入するなど経済的に中国がロシアを支える構図となっていますが、今回の新パイプライン建設により、その関係性がより一層深まることが予想されます。
このほか、3か国は経済や金融などの分野での協力を深めることでも一致しています。

 

●なぜプーチンは8割の国民に支持されるのか…「愛国心」が生み出される背景 9/17
なぜロシア国民はプーチン大統領を支持しているのか。元外交官の亀山陽司さんは「ロシア国民は、ロシア正教会の神に守られた『ロシア』という国家を信仰している。プーチンを支持する理由は宗教事情と密接に関係している」という――。
なぜロシア人はプーチンを支持し続けるのか
ロシア軍によるウクライナ侵攻は長期化の様相を見せ、ウクライナは粘り強い抵抗を続けている。その影響で石油や天然ガス、食品の価格が高騰。世界経済は深刻な物価高に直面することになった。
米国もNATOも長期戦を覚悟し、8月末にはプーチン大統領が軍の拡充のための大統領令を発出した。ウクライナは東部や南部をロシア軍に占拠され、女性や子供たちは国内外に避難している。ロシアも軍事面で多大なコストと人命の損害を出している。
このような悲惨な実情を前にしても、渦中のロシア国民はこの戦争や、プーチン大統領に対する支持をし続けている。
ロシアの世論調査機関「世論基金」によれば、プーチン大統領の支持率は、ウクライナ侵攻前には60%前後だったが、侵攻後は80%前後で推移している。同じく世論調査機関であるレヴァダセンターによれば、ウクライナにおける「特別軍事作戦」について、今なお約80%の人が支持している。
また、ロシア国民の約60%は、ウクライナの惨状に個人的には道義的責任を感じていないとの調査結果が出ている。つまり、ロシア国民の多くは、ロシアのウクライナ侵攻を自分たちの責任と感じることなく、軍事行動自体を支持しているというわけだ。
政府の立場を人々が共有する土壌
これは、ロシア国民の大半が、ロシアのウクライナにおける軍事行動は「正当なもの」であると感じていることを意味する。
実際、4月末のレヴァダセンターの世論調査によれば、ウクライナの惨状の責任は米国とNATOにあると答えた人が実に57%、ウクライナ自身にあると答えた人が17%、ロシアにあると答えた人は7%であった。
要するに、ロシアは米国やNATOによる脅威に対抗するためにウクライナに侵攻するほかなかったというロシア政府の立場を共有しているということである。
これが、ロシア国民が隣国への侵攻というロシア政府の暴挙を支持する一つの答えなのであるが、問題は、なぜロシア国民は政府の立場を共有するのか、という点にある。それがわからない限り、この紛争を理解することはできないだろう。
ロシア人の戦争観
拙著『地政学と歴史で読み解くロシアの行動原理』(PHP新書)でも詳しく解説したが、ロシア国民の立場を理解するためには、ロシアにおいて支配的な考え方、ロシアン・イデオロギーと呼ぶべきものについて考察することが必要である。
まずロシア人にとっての戦争とはどのようなものなのかを考えてみたい。
我々日本人は第2次世界大戦、連合国による占領を経験して、平和を掲げる国家として再生した。従って、戦争は国際紛争を解決する手段としては放棄するとの立場をとっている。また、国連も平和と安全を守るという目的を持ち、武力行使を原則的には禁じている。日本では戦争は決して起こしてはならないものだという認識が一般的となっている。
しかし、ロシアでは若干事情が異なる。
もちろん、ロシアでも戦争は望ましいものではなく、できることならば避けたいと考えていることに変わりはない。第2次世界大戦でソ連が被った人的損害は2000万人以上といわれ、文字通り桁違いの犠牲者を出しているのである。
それでもロシア人は、日本人のように戦争をタブー視していない。それを示す好例が、法律によって定められた19に上る「軍事的栄光の日」だろう。
法的に刻まれ、受け継がれてきた
それは、13世紀のドイツ騎士団との戦いから始まり、14世紀のモンゴル・タタールとの戦い、18世紀のスウェーデンとの大北方戦争、二度にわたるロシア・トルコ戦争、19世紀のナポレオンとの戦い、クリミア戦争、そして第2次世界大戦の主要な戦闘まで続く長いリストだ。中には、対日戦争勝利に関する「第2次世界大戦終了の日」もある。
このようにロシア史における数々の戦争は法的にも記憶されているのである。
戦争は多大な犠牲を伴うが、それは祖国の防衛という輝かしい行為でもある。従ってそれは記憶され、語り継がれ、追体験されなければならない。そうすることによって、ロシアという国の偉大さと誇りを受け継いでいかなければならない、ということだ。
こうした戦争観は、ロシアの国家観と密接に結びついている。
専制、ロシア正教会、国民性の3本柱
近代的なロシアの国家観は19世紀の前半期に、特にニコライ1世(在位:1825〜55)の治世に形成されていった。それは、ロシア・ナショナリズムと皇帝専制主義との結合を特徴とするイデオロギーである。
ヨーロッパではフランス革命に端を発するリベラリズムの思潮が勢いを見せている中、ロシアはそうした動きを武力介入も辞さない構えで牽制したため、ニコライ1世は「ヨーロッパの憲兵」と恐れられた。
ニコライ1世はヨーロッパ的な価値よりもロシア的な固有の価値を重視した。そのイデオロギーは、専制、ロシア正教会、国民性(ナロードノスチ)の3本柱である。
専制というのは、皇帝権力の絶対性を擁護し、皇帝権力はなにものにも制約されないということである。また、ロシア正教会は、東ローマ帝国(ビザンツ帝国)からロシアが受容したキリスト教であり、西ローマ帝国からヨーロッパが継承したカトリック、そしてそこから派生したプロテスタントとは異なる流れである。国民性というのは、専制と正教会への全面的献身こそがロシア国民の国民性であるという考え方である。
こうしたニコライ1世の時代の国家的なイデオロギーは、実は現代のロシアにもある程度通じるものがある。
ロシア革命によって皇帝はいなくなったが、専制的な強権政治はソ連時代も現代ロシアでも同じだ。そして、先の世論調査に見たように、ロシア政府の立場を支持しているロシアの国民性にも共通点があることがわかるだろう。
愛国心が無尽蔵に生み出されるカラクリ
また、正教信仰もソ連崩壊とともに輝かしい復活を遂げ、今や正教会はプーチン政権と一体となっている。
正教会は同じキリスト教でもカトリックやプロテスタントとは色合いが違う。カトリックにおけるローマ教皇のような普遍的な権威はなく、あくまでもロシア正教会のトップである「モスクワおよび全ルーシの総主教」がトップである。
カトリックの普遍主義とは異なり、土着主義であり、民族教会を基本としている。民族教会の自治独立権が尊重され、民族語での礼拝が認められていた。ロシアの正教徒は他の総主教ではなく、あくまでもロシアの総主教に従うのである。このように正教会はそもそもナショナリズムと結びつきやすい土台を持っていると言える。
政権支持の背景にある「ロシアに対する信仰」
実はロシア国民が信じているのは、プーチンという個人でもなければ、なおさら政府でもない。また、一般的で普遍的なキリスト教の神というのでもない。それは、ロシア正教会の神によって守られた「ロシア」という国家なのである。
ロシアに対する信仰、これがロシアの国民性の根幹にある。ナショナリズムに裏打ちされたパトリオティズム(愛国主義)と言ってもいい。このロシアへの信仰の中身は、次のようなものだ。
「ロシアは偉大な祖国である。ロシアは、国土、歴史、文化、そしてロシア正教によって形成された一つの文明圏であり、世界の命運の鍵を握る大国である」
このロシアという偉大な祖国を擁護し、発展させること。これがロシア国民の使命というわけだ。こうした国民性は、政権が変わったらなくなるというものではない。従って、プーチン大統領を引きずりおろせばロシアが変わるとは言えない。
プーチン大統領が支持されるのは、ロシアの偉大さを擁護するその姿勢が共感されるからなのである。
プーチンの圧政より、西側への敗北を恐れる
プーチン大統領はそのことをよく理解している。
プーチン大統領が2000年に大統領に就任する直前に発表した「千年紀の境にあるロシア」という論文には「ロシア的理念」という章がある。ここで、根源的で伝統的な価値観として、パトリオティズム、大国性、国家主義、そして社会的連帯を掲げている。
国家主義とは、強力な国家権力がロシアにとって必要だということであり、社会的連帯とは、個人主義よりも集団的形態が優先されており、個人の努力よりも国家による支援が求められているということである。ここからロシアには強力な国家権力が必要だと結論付けている。
確かに、ロシア政府は言論の自由に制限を加えている。政府はウクライナでの戦争を「特別軍事作戦」と呼ぶことをメディアに強制しており、例えば昨年のノーベル平和賞を受賞したメディア「ノーバヤ・ガゼータ」紙は「作戦」に批判的であるとして活動停止に追い込んだ。
しかし、現時点でロシア国民が恐れているのは、プーチン政権による「圧政」ではなく、米国やNATOといった西側勢力に再び「敗北」することである。
ロシア人が重視する「誇り」と「偉大さ」
米政府は、プーチン政権はロシア国民の敵であると主張することで、ロシア国民の政府からの離反を期待しているが、世論調査の結果が示すとおり、ロシア国民にとっては、敵でありウクライナの惨状の責任者であるのは、米国でありNATOなのだ。
ロシア軍はウクライナ軍と戦闘はしているが、戦っている相手はウクライナというより、背後にいる米国とNATOということになる。
親露派であるドンバス地域やヘルソン州、ザポロージエ州を制圧することで、ロシアが取り戻しているのは歴史的な領土(18世紀のエカテリーナ2世の時代にオスマン帝国との戦争でロシア帝国が獲得した領土)なのではなく、冷戦での「敗北」で失った「誇り」、そしてロシアの「偉大さ」に他ならない。
米国とNATOがウクライナを明確にバックアップし続ける限り、こうしたロシア国民の認識を変えることは難しい。
●ゼレンスキー氏、戦争犯罪を非難 東部集団墓地で遺体450人確認 9/17
ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、ロシア軍から奪還した北東部で民間人ら多数の遺体が発見されたことを受け、ウクライナ市民への拷問や戦争犯罪を非難した。
ゼレンスキー大統領はロイターとのインタビューで「現時点で450人の遺体が埋葬されていることが確認されたが、他の場所にも多くの人が埋葬されている。拷問を受けた人々や、家族全員のケースもある」と語った。
戦争犯罪の証拠はあるかという質問に対しては「一定の証拠があり、ウクライナや国際チームによる調査が行われている。世界がこの状況を認識することがわれわれにとり非常に重要だ」と応じた。
東部ハリコフ州知事は16日、同州イジュムで見つかった集団墓地の一つから、手を後ろに縛られた遺体が発見されたと明らかにした。
ゼレンスキー大統領はまた、戦争の終結は迅速な武器供給にかかっているとし、主要各国にウクライナへの武器供与を拡充するよう改めて要請した。
ウクライナ軍が攻勢を増し、ロシア軍が掌握した地域を奪還していることを称賛しつつも、約7カ月となる戦争の流れが変わったと断言するのは性急とし、「戦争の終結に関し話すことは時期尚早だ」と慎重な見方を示した。
●印首相、ウクライナ侵攻を公に批判 「今は戦争の時でない」 9/17
インドのモディ首相は16日、ロシアのプーチン大統領と訪問先のウズベキスタン・サマルカンドで会談し、「今は戦争の時ではない」と述べ、約7カ月に及ぶウクライナ侵攻について公に批判した。
プーチン大統領はモディ首相の発言に対し、口をすぼめ、モディ氏に視線を向けた後下を向いた。そして「ウクライナ紛争に関するインドの立場や懸念は理解している」とした上で、「われわれは可能な限り早期の停戦に向け全力を尽くしている」と言明した。ウクライナが交渉を拒否したとも述べた。
プーチン大統領はこれまで、西側諸国と対立しているものの、中国やインドなどアジアの大国に目を向けることができるため、ロシアは孤立していないと繰り返し述べていた。
15日に行われた中国の習近平国家主席との会談では、プーチン大統領はウクライナ情勢を巡る中国側の疑問や懸念を理解しているとし、ウクライナ戦争に対する中国の懸念に初めて言及した。さらに、習氏の「バランスの取れた姿勢を高く評価している」と述べた。ウクライナ戦争に対する中国の懸念に言及するのは初めて。
また、習氏は16日、当地で開かれている上海協力機構(SCO)の首脳会議で演説し、旧共産圏で発生した民主化運動「カラー革命」が外国勢力の扇動によって引き起こされることがないよう、加盟国は協力する必要があると訴えた。
●プーチン大統領 インド首相と会談 “一刻も早く終結へ尽力”  9/17
ロシアのプーチン大統領とインドのモディ首相が会談し、モディ首相はウクライナ情勢をめぐり「今は戦争の時代ではないと思う」と、率直に懸念を伝えました。
これに対してプーチン大統領は、「一刻も早く終結させるため全力を尽くす」と述べたものの、停戦交渉を拒否しているのはウクライナ側だと主張し、侵攻を継続する構えを崩していません。
プーチン大統領とモディ首相は、中央アジアのウズベキスタンで16日、首脳会談を行いました。
対面での会談は、ロシアがウクライナに軍事侵攻して以降、これが初めてです。
会談の冒頭、モディ首相は「今は戦争の時代ではないと思う。民主主義、外交、対話こそ、われわれが平和の道をどのように進むのかを世界に示す手段だ」と、率直に懸念を伝えました。
インドはロシアの伝統的な友好国で、これまでウクライナへの軍事侵攻を直接的には非難してこなかったことから、今回、モディ首相がプーチン大統領に直接、懸念を伝えたことは異例と受け止められています。
これに対してプーチン大統領は、「あなたの懸念は承知しており、一刻も早く終結させるため全力を尽くす」と述べました。
その一方で、「ウクライナの指導者が交渉を拒否し、軍事的な手段で目的を達成したいと表明している」と主張し、侵攻を継続する構えは崩しませんでした。
●米、中ロの「足並み」けん制 サハリン2に否定的―ドンフリード国務次官補 9/17
ドンフリード米国務次官補(欧州・ユーラシア担当)は15日、時事通信の単独インタビューに応じ、ロシアのプーチン大統領と会談した中国の習近平国家主席に対し「ウクライナに全面侵攻したロシアと足並みをそろえないことが重要だ」とけん制した。また、制裁に苦しむロシアに中国が軍事支援を提供しないよう注視していくと述べた。
ドンフリード氏は、ウクライナ情勢をめぐり「中国側とさまざまなレベルで対話を継続し、ロシアの行動が根本的に間違っていると明確にしてきた」と説明。「これはウクライナの存立、世界の安定と主権、領土保全の原則に関わる問題だ」とも強調した。
ウクライナ軍が今月に入って北東部ハリコフ州などで攻勢に転じたことについては、「この目覚ましい成功は、ウクライナ人が数カ月の間に示してきた勇気と立ち直る力のたまものだ」と称賛した。
一方、戦争終結への出口戦略に関しては「(ウクライナの)ゼレンスキー大統領とバイデン大統領は、ウクライナがロシアとの交渉のテーブルに着いたとき、できるだけ強い立場にいることがその方法だと明言している」と指摘。ただ「現時点でロシアは誠実な交渉に関心を示していない」と述べた。
日米欧の先進7カ国(G7)は、ロシア産石油の取引価格に上限を設ける追加制裁を導入する方針で合意している。ドンフリード氏は「対ロシアでの日本の協力に多大な感謝を表する」としつつも、日本企業が参画するロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」について「ロシアの行動は、エネルギーに関し信頼できるパートナーでも供給者でもないことを示し続けている」と否定的に言及した。
さらに「プーチン氏がエネルギーの供給で戦争資金を調達するのを阻止し、エネルギー価格の高騰も抑えなければならない」として、ロシアを一層の孤立に追い込むことが非常に重要だと念を押した。
●習近平はどうして「死に体」プーチンとの連携を強化するのか 9/17
ウラジーミル・プーチン露大統領と中国の習近平国家主席は15日、ウズベキスタンで開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議に合わせて会談し、「中露の友情」と包括的・戦略的協力パートナーシップを改めて強調した。中露首脳が対面方式で会談するのは北京冬季五輪に合わせた2月以来で、ロシアによるウクライナ侵攻後は初めて。
ロシア軍がウクライナの占領地域から潰走、その跡から440遺体を超える集団墓地が見つかるなど残虐行為がさらに浮き彫りになる中、習氏が敢えてプーチン氏と会談した理由は何なのか。ロシア大統領府の発表によると、プーチン氏は会談冒頭、「ウクライナ危機に関する中国の友人のバランスの取れた立場を高く評価している」と習氏に感謝の意を伝えた。
しかし戦局の混迷に「中国の疑問や不安は理解できる。この問題に関するロシアの立場を詳しく説明する」と取り繕った。ナンシー・ペロシ米下院議長の訪台をきっかけに緊迫する台湾情勢について「ロシアは『一つの中国』の原則を堅持している。台湾海峡における米国とその衛星国の挑発を非難する」と中国の立場を支持した。
プーチン氏は「一極集中の世界を作ろうとする試みは醜く、圧倒的多数の国家にとって容認できないものだ」とする一方で、「昨年、中露の貿易額は35%増加し、1400億ドルを突破した。今年に入ってからの7カ月間で2国間貿易はさらに25%増加した。近い将来、貿易額を2000億ドル以上に増やせると確信している」と経済関係の強化に胸を張ってみせた。
習氏「相互の核心的利益に関わる問題で相互支援を拡大する」
中央アジアに一帯一路の一部である「シルクロード経済ベルト」を構築したい習氏は「歴史上前例のない地球規模の急激な変化に直面し、中国はロシアの仲間とともに責任あるグローバルパワーとしての範を示し、世界を持続可能な発展の軌道に乗せるために指導的役割を果たす」「相互の核心的利益に関わる問題で相互支援を拡大していく」と応じた。
中国共産党系機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」は「中露関係は歴史上最高の状態にある。首脳会談は2国間関係の着実な発展のための保証であり、中露関係が外部の雑音に影響されないことを示すものだ。中露を政治的・軍事的に結びつけて他の世界との間に楔を打ち込もうとする米欧の試みに対しても中国は警戒を強めている」という専門家の見方を伝えた。
「ロシアのウクライナ侵攻前、米欧は中露の接近を恐れて、その間に楔を打ち込もうとした。侵攻後は中露を一つの陣営とみなして国際社会と対立させようとしている。中国は自主外交を堅持し、ブロック対立やいわゆる同盟に反対している。中露関係はウクライナ紛争や(冷戦マインドの)米国の封じ込めに対応したものではない」との分析も紹介している。
環球時報は論説で「中露の包括的・戦略的協力パートナーシップは『非同盟、非対立、いかなる第三者も標的にしない』という原則に基づいている。中露はいわゆる反米同盟を形成したわけではない。米国はインド太平洋版NATO(北大西洋条約機構)を作ろうとしている。覇権主義に反対しながら、米欧の政治的なウイルスに抵抗するために団結した」と非難した。
プーチン亡き後のロシア
ウクライナ戦争は、わずか2〜3日のうちにキーウを陥落して親露派政権を樹立するというプーチン氏の所期計画が破綻、士気が低いロシア軍は北東部ハルキウや南部ヘルソンでウクライナ軍に戦術的な敗北を喫している。プーチン氏はまさに「死に体」である。
米コンサルティング会社ウィキストラットは8月、プーチン氏が死亡した場合、ロシアがどうなるかというシミュレーションを実施している。
ロシアが西側に回帰するという劇的な戦略転換がない限り、ロシアの中国依存度は時間とともに高まるという点で参加した23カ国の専門家56人の見方は一致した。ウクライナ戦争がいくら長引いても中国は漁夫の利を得る。制裁が西側へのロシア産原油・天然ガス輸出に重大な影響を与えるため、ロシアは貿易面で中国に頼らざるを得なくなるからだ。
ウィキストラット社の報告書は「プーチン氏が死んでもロシアの戦争継続の決断に影響を与えるとは考えられない。プーチン氏の後継者が2014年にウクライナから奪取した領土について妥協することもないだろう。短期的には政権の安定が唯一の目標になる。ロシアの外交政策は他の利益や目標より体制の安定確保を優先させるだろう」と予測している。
報告書は「中国はプーチン氏の死を南シナ海でより積極的な政策を追求する好機とみるかもしれない。習氏は権力掌握と政治的抑圧をさらに強める可能性がある」「プーチン氏の後継者は北コーカサス、ヴォルガ地方や近隣諸国の緊張に対処しなければならない。新政権はモスクワとの関係を再定義しようとする国々にタカ派的な戦略を取る可能性が高い」という。
北朝鮮化するロシア
中国については「ウクライナ戦争が継続すれば、プーチン氏の後継者は中国からエネルギー価格の引き下げを迫られる可能性が高い。中国はプーチン氏の死とそれに伴う不安定な状況を自国の経済的立場を強化する好機ととらえるだろう」と分析する。ロシアは、中国に従属する北朝鮮の状況にますます似てきていると指摘する専門家さえいた。
『モスクワ・ルール ロシアを西側と対立させる原動力』の著書があるロシア研究の第一人者で、英シンクタンク、王立国際問題研究所(チャタムハウス)上級コンサルティング研究員のキーア・ジャイルズ氏はシミュレーションの中で「ウクライナ戦争の行方がどう転んでも中国の利益になる」と話している。
ウクライナで早期和平が実現した場合、世界は安定と予測可能性を取り戻し、ロシアとの包括的・戦略的協力パートナーシップが軌道に乗り、中国に経済的利益をもたらす。戦争が継続すれば、ロシアの経済力・軍事力が弱体化し、ロシアがウクライナに侵攻したように、中国がロシアとの現・国境線の「歴史の過ち」を正す日が近づいてくることになる。
米欧との対立が深まる習氏にとって太鼓持ち役を担ってくれるプーチン氏ほどありがたい存在はいない。体制を維持する上でもプーチン氏は強力な盾になってくれている。
しかし「ロシアの国際秩序に対する破壊的な影響力が中国自身の政治的、経済的利益を侵害し始めたと認識すれば、中国は現在の立ち位置から一歩前進せざるを得なくなるかもしれない」とジャイルズ氏は指摘する。
●ウクライナの反撃、ロシアの計画を変えはしない=プーチン氏 9/17
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は16日、ウクライナの最近の反転攻勢について、ロシアの計画を変更するものではないと述べた。この件で公式にコメントしたのは初めて。
ウクライナ軍は、北東部ハルキウ州で6日間のうちに、領土8000平方キロメートル以上をロシアから奪還するという、驚異的な結果を出したとしている。
プーチン氏はこの日、ウズベキスタンで上海協力機構(SCO)首脳会議に臨んだ後に会見。ウクライナの反攻に慌ててはいないとし、東部ドンバス地方でのロシアの攻勢は順調なままだと述べた。
また、「ロシア軍は全軍が戦っているわけではないことを指摘しておく。(中略)職業軍人しか戦っていない」と説明。
「ドンバスでの私たちの攻勢は止まっていない。あまり速いペースではないが前進している。徐々に獲得領土を広げている」とした。
そして、ウクライナが攻撃を続ければ、「より深刻な」対応を取ると威嚇した。
工業地帯のドンバス地方は、ロシアによる侵攻の焦点となっている。プーチン氏は、ロシア語を話す住民を集団虐殺から救うために攻め込む必要があると、誤った主張をしている。
ドンバス地方の一部は2014年以降、ロシアの支援を受ける分離派が支配している。ウクライナが最近反撃を見せているハルキウ州は、ドンバス地方には含まれない。
兵士募集に苦労か
ロシアが支配地を失っていることを受け、ロシアの政府寄りの論者たちからは、より多くの兵士を動員すべきだとの声が出ている。
最近流出した動画には、ロシアの民間軍事会社が囚人を採用しようとしているとみられる様子が映っている。これは、ロシアが兵士の募集に苦労していることを示唆している。
プーチン氏は2月に侵攻を開始してから、ほとんどロシアを離れていない。今週、SCO首脳会議に出席し、中国の習近平国家主席と会談したことは、西側諸国から見放されたプーチン氏が、アジア諸国との関係強化を必要としていることを浮き彫りにした。
ただ、SCOに集った指導者らも、ロシアの侵攻への懸念を表明した。
インドのナレンドラ・モディ首相は、「今は戦争の時ではない」とプーチン氏に伝えた。
前日には、プーチン氏が中国の習氏に対し、「あなた方の疑問や懸念は理解している」と発言。習氏がロシアの侵攻を支持していないことをほのめかした。
●プーチン大統領 ウクライナ軍反転攻勢でも東部侵攻継続の考え  9/17
ロシアのプーチン大統領は記者会見で、ウクライナ軍の反転攻勢について「どのような終わりを迎えるか見てみよう。われわれの作戦の主要な目標は、東部ドンバス地域の解放だ」と述べ、侵攻を継続する考えを改めて示しました。
中央アジア・ウズベキスタンのサマルカンドでは、中国とロシアが主導する枠組み、上海協力機構の首脳会議が16日まで行われ、中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領、それにインドのモディ首相などが参加しました。
このうちプーチン大統領は、首脳会議の全体会合で「上海協力機構は世界最大の地域の枠組みであり、国際的な問題解決への役割が大きくなっている」と述べ、欧米への対抗軸として上海協力機構の勢力拡大を図りたい意向を強調しました。
プーチン大統領は全体会合のあと、一部のメディアを集めて会見し、「欧米側は何十年にもわたって、ロシアを崩壊させるという考えを培ってきた。そのために欧米側はウクライナを利用し、これを防ぐために特別軍事作戦が始まった」と主張し、軍事侵攻を重ねて正当化しました。
そのうえで、「ウクライナは活発な反撃作戦を開始すると発表したが、どのような終わりを迎えるか見てみよう。特別軍事作戦の主要な目標は、東部ドンバス地域の解放だ。われわれは急いでおらず、本質的に変わることはない」と述べ、侵攻を継続する考えを改めて示しました。
またウクライナ側との停戦交渉が暗礁に乗り上げていることについては、「ウクライナが何をしようとしているのか、わからない。彼らがほぼ毎日、立場を変えるからだ」と主張しました。
そのうえで、ウクライナのゼレンスキー大統領との会談の可能性について「彼らが拒否している。第1の条件は彼らが同意することだが彼らは望んでいない」と述べ、交渉はウクライナ次第だとする主張を展開しました。
このほかプーチン大統領は、ロシア軍が掌握したウクライナのザポリージャ原子力発電所だけでなく、ロシア領内の原子力施設やその周辺に対しても、ウクライナ側がテロ行為を試みたと一方的に非難しました。
●「こわもて」プーチン氏、旧ソ連構成国に低姿勢外交…笑顔で出迎え  9/17
ロシアのプーチン大統領が16日閉幕の上海協力機構(SCO)首脳会議に合わせ、ロシアが「勢力圏」と位置付ける旧ソ連構成国への影響力確保に腐心している。ロシアのウクライナ侵略以降、カザフスタンなどがロシアと距離を置く姿勢を見せているためだ。ここに来て、旧ソ連構成国同士の武力衝突も相次いで勃発し露軍主導の安全保障も揺らいでいる。
ロシア通信は、プーチン氏が15日、個別会談のため、キルギスのサディル・ジャパロフ大統領の到着を会場で待つ様子を収めた動画を配信した。プーチン氏は、遅れて到着したジャパロフ氏を満面の笑みで出迎えた。
今月8日に死去したエリザベス英女王を含め、世界各国の要人との会談に遅刻することで知られるプーチン氏だが、首脳会議が開かれたウズベキスタンの古都サマルカンドでは、旧ソ連構成国の首脳に対しても「平身低頭」の姿勢が目立つ。
15日に会談したウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領には、ロシアとの友好関係強化への功績をたたえ、勲章も授与した。
こわもてイメージの強いプーチン氏の腰が低いのは、ウクライナ侵略に伴いロシアから一定の距離を保とうとする「遠心力」が強まっていることが影響している。
代表格がカザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領だ。6月に露サンクトペテルブルクで開かれた国際経済会議の全体会合にプーチン氏とともに出席したトカエフ氏は、ウクライナ東部の親露派武装集団が実効支配する地域を「正式な国家とはみなさない」と断言し、ロシアによる一方的な国家承認を批判した。トカエフ氏は中国や欧州との関係強化を模索する動きを活発化させている。
旧ソ連構成国の情勢も不安定化している。タス通信などによると14日以降、タジキスタンとキルギスの国境地帯では両国の国境警備隊員らによる衝突が続いている。米政策研究機関「戦争研究所」は15日、情勢不安定化の要因に関し、ロシアが両国の露軍基地に配置していた兵士をウクライナ戦線に投入したことが影響しているとの見方を示した。
ロシアの同盟国アルメニアと、アゼルバイジャンの国境地帯でも最近、大規模な軍事衝突が発生した。ロシアがウクライナ侵略に集中している隙をついて、トルコを後ろ盾にするアゼルバイジャンが仕掛けたとの見方が根強い。米国のナンシー・ペロシ下院議長が近くアルメニアを訪問すると取りざたされており、旧ソ連構成国を巡る影響力争いが激しくなっている。
●プーチン、東部制圧の目標「修正はない」…「戦果は急がない」と長期戦決意 9/17
ロシアのプーチン大統領は16日、訪問先のウズベキスタン・サマルカンドで記者会見し、ウクライナの侵略作戦に関し、ウクライナ軍の反転攻勢を受けても、東部ドンバス地方(ドネツク、ルハンスク両州)の全域制圧を目指す目標の「修正はない」と表明した。
上海協力機構(SCO)の首脳会議閉幕後、記者会見に臨んだプーチン氏は、ドンバス地方の制圧に向けた「露軍の攻勢は続いている」とも語った。「ペースは遅いが占領地域は拡大している」と主張した。
露軍はウクライナ軍の反攻で、ドネツク州に隣接するハルキウ州の占領地域の大部分を失った。プーチン氏の一連の発言は長期戦を前提に侵略を続ける決意を表明したものだ。
プーチン氏はウクライナでの戦闘に参加しているのは「露軍の一部にすぎない」と指摘し、戦果も「急がない」と述べた。「反攻が最終的にどうなるのか見てみよう」とも繰り返した。反攻への露軍の対応は「非常に抑制的だ」と説明し、「深刻な対応」に変わる可能性を警告した。発電所など生活に直結する重要施設への攻撃を強化する予告との見方が出ている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との直接会談については「ウクライナが拒否している」として否定した。
プーチン氏は記者会見に先立ち、トルコのタイップ・エルドアン大統領と会談した。会談では、ウクライナ産穀物の海上輸出に関する合意の見直しが議題になったとみられるが、プーチン氏は記者会見で、具体的な方向性に踏み込まなかった。国連がロシア産の肥料原料の輸出促進を後押しする姿勢を見せたことが関係している可能性がある。
●ウクライナ 奪還した街の集団埋葬地を捜査 拷問の証拠も 9/17
ロシア軍が撤退したウクライナ北東部ハルキウ州の重要拠点イジューム。そこで見つかった集団埋葬地の多数の遺体について捜査が行われました。
ウクライナ当局は16日、イジュームで見つかった集団埋葬地の捜査を始めました。
これまでにおよそ400の遺体が埋められているとしていますが、現場に同行したハルキウ州知事は、「子供の遺体も多い。後ろ手に縛られていた死体もあった」としています。
これについてゼレンスキー大統領は、以前400人以上が殺害されたとみられる首都キーウ近郊のブチャを引き合いに、「拷問の証拠がある。ロシアはブチャで行ったことをイジュームで繰り返した」としてロシアを厳しく非難。また国連が現地へ調査団を派遣する準備していると明かしました。
●ロシア軍、将兵不足埋めるため士官学校の卒業前倒し 9/17
ウクライナ軍参謀本部は17日までに、ロシア軍は下級将校の不足を埋めるため一部の士官学校の卒業時期の前倒しを実施していると主張した。
これら士官学校には黒海高等海軍学校などが含まれるとした。欧米の軍事専門家らはこれまで、ウクライナに侵攻したロシア軍は司令官級あるいは兵士の補充に苦労し、様々な対応策をこらしていると指摘してきた。
ウクライナ軍参謀本部によると、ロシア軍内の戦術レベルでの司令官の不足は最近のウクライナ戦況などを受け予備役士官が軍務契約への署名を拒んでいるのも原因となっている。
ロシア軍兵士の士気や精神状態も低下し続けていると主張。休暇を終えた兵士が所属部隊に復帰しない事例も相当な数に達していると述べた。
●ハルキウ州から撤収急いだロシア軍、大量の装備品失う 9/17
ウクライナ軍参謀本部などは17日までに、同国北東部ハルキウ州からロシア軍が大規模な撤収を急いだ際、失ったり、放棄したりした軍装備品は数百規模に達すると報告した。
その量の特定は難しいとしたが、置き去りなどされたのは戦車や装甲車両も含む。専門家は、保有していた戦車の半数を失ったかもしれない戦車師団の存在も指摘。慌ただしく撤退したロシア軍が放置した戦車などを映した画像や動画も最近、多数出回っていた。
ウクライナ軍参謀本部は、今月6日からの1週間で破壊したロシア軍の装備は590と主張。戦車86両、装甲戦闘車両158両、砲門が106丁や車両159台などとした。
CNNはこれら数字を独自に確認出来ていないが、独立系のメディア「オリックス」は今年8月に比べ、ロシア軍の損害が大きく増加したことは立証出来ると説明。これら打撃の大半はハルキウ州で受け、南部ヘルソン州や東部ドネツク州でも生じたとした。同メディアはウクライナ侵攻が始まって以降、ロシア軍の損害などを照合する作業を続けている。
オリックスによると、今月11日の1日で破壊や損壊を受けたほか、捕獲もされていたロシア軍の装備は計102。戦車23両、装甲兵員輸送車13両に歩兵戦闘車両25両などだった。ロシア軍は翌日、さらに99を失ったともした。
これらは確認などが可能な損害のデータ分のみとなっており、実際の数字ははるかに多いともみている。
9月の第2週を対象にしてまとめた移動平均値によると、ロシア軍が1日あたり失った装備は平均で60以上。8月の最終週では約15だった。60以上との数字は、今年5月にウクライナ・ドネツ川の渡河を複数回図り無残な結果に終わった作戦以降では最も高い喪失率となった。
半面、ウクライナ軍が9月第2週で被った装備の損失は約10で推移していた。
ロシア軍がなくした装備の一部は、同国の正規軍ではなく、ウクライナ東部ルハンスク州で親ロシア勢力が名乗る「人民共和国」の民兵組織のものともみられる。これらの装備は旧式の可能性があるが、相当な数の最新型の兵器もあったという。
位置情報が確認された画像は、多数の改良型のT80型戦車が破壊などされた姿も示していた。地雷除去用の車両や装甲兵員輸送車の残骸も収められていた。
英ロンドン大学キングズカレッジで戦争研究に当たる軍事アナリストはSNS上で、2連隊を指揮下に置くロシア軍第4戦車師団がハルキウ州の要衝イジュームでの直近の敗北に伴う損害に言及。1連隊が持つ改良型のT80U型戦車のほぼ全部、あるいは同師団に属する予備の分も含めない全戦車の半分を奪われたとも分析した。
ロシア軍はこのほか、敵の火砲の位置を追跡する対砲兵レーダーも失った。ウクライナ軍兵士がハルキウ州で捕獲した短距離用地対空ミサイルを示す動画も流れた。また、性能に問題がないとみられるロシアのドローン(無人機)も回収していた。
ロシア軍がこれら装備を捨て去った理由について一部の専門家は燃料不足との見方を示した。
米シンクタンク「戦争研究所」は、非常に慌ただしく実行されたロシア軍の撤収は組織的な手法を講じられなかったことを意味すると指摘。今回の撤収に伴いロシア軍がこれほど多くの兵器や装備を失ったことは、ルハンスク州での同軍の戦力編成や新たな防衛ラインの構築を困難にする可能性もあるとした。
●プーチン大統領 反撃認めるも“新たな領土を獲得していく”  9/17
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ軍による反撃を受けていることを認めつつも「ゆっくりと、しかし一貫して、ロシア軍は新たな領土を獲得していく」と述べ、あくまで侵攻を継続する考えを強調しました。
ウクライナ東部でウクライナ軍が反転攻勢を続ける中、イギリス国防省は17日の分析で「ロシアはドンバスの支配地域を失わないために頑強な防衛を試みるだろうが、前線部隊に余力や士気があるかは不明だ」という見方を示しました。
こうした中、ロシアのプーチン大統領は16日、上海協力機構の首脳会議で訪れていたウズベキスタンで、一部のメディアを集めて会見し「ウクライナ軍は反撃を試みているが、われわれはドンバス地域での攻撃作戦をやめているわけではない。ゆっくりと、しかし一貫して、ロシア軍は新たな領土を獲得していく」と述べ、反撃を受けていることを認めつつ、あくまで侵攻を継続する考えを強調しました。
さらにプーチン大統領は、ウクライナ側がロシア領内でテロ行為を試みたとする主張を一方的に展開しながら「同じような事態が繰り返されれば、その答えはより深刻になる」と警告しました。
プーチン大統領としては、強気の姿勢を示すことで、ウクライナ側の反転攻勢に対して、ロシア国内で動揺が広がるのを抑えたいねらいがあるものとみられます。
●プーチン、「報復」砲撃を示唆 ウクライナがロ民間施設攻撃と 9/17
ロシアのプーチン大統領は16日、ウクライナ軍がロシア国内の民間インフラを攻撃していると主張し、「つい最近、ロシア軍はいくつかの攻撃を行った。これは警告と言える」と述べた。ウクライナ南部のダムや変電所への砲撃を指すとみられる。ウクライナの「テロ行為」が続けば「対応はより深刻になる」とも警告した。
ウクライナ軍は南部や東部のロシア制圧地域への反撃を強めており、インフラ施設を狙ったロシア側の「報復」が増加する可能性がある。
南部ヘルソン州の州都ヘルソンでは16日、ロシアが一方的に設置した「軍民行政府」が利用する建物で爆発があった。
●バイデン氏、プーチン氏の化学・核兵器使用をけん制 9/17
バイデン米大統領は16日、ロシアのプーチン大統領に対しウクライナでの戦闘の激化をあおる行動をけん制し、化学兵器あるいは核兵器の使用に踏み切った場合、相応の結果を招くだろうと警告した。
米CBSテレビとの会見で述べ、その内容の一部が16日に放映された。
バイデン氏はこの中で、化学兵器や核兵器の投入について「するな」の言葉を3回繰り返し、「第2次世界大戦以降、なかったような形で戦争の顔を変えるだろう」と主張した。
ロシアがこれら兵器を用いた際の米国の対応を問われ、当然の結果があるだろうとも指摘。「ロシアは今まで以上に世界でのけ者になるだろう。彼らがするであろう事柄の程度で対応の内容も決まる」と強調した。

 

●プーチン「参謀本部が決めている」…ハルキウ州での大敗、自身の責任回避 9/18
ロシアのプーチン大統領が16日、ウズベキスタンで臨んだ記者会見でウクライナ東部ドンバス地方(ドネツク、ルハンスク両州)の制圧を目指す方針の堅持を表明したのは、戦況の悪化で動揺する国内の沈静化を図る狙いがあった。プーチン氏は、軍部批判を強める強硬派に突き上げを食う形ともなっている。
「作戦の進め方は、軍参謀本部が決めている」
プーチン氏は記者会見で、一時はロシアへの併合の準備まで進んでいた東部ハルキウ州で露軍が大敗した責任は、自身にはないとアピールする発言が目立った。
大敗を受け、強硬派の批判は国防省や軍参謀本部に向いている。11日には、ウクライナに部隊を派遣している南部チェチェン共和国のラムザン・カディロフ首長がSNSへの投稿で「戦い方をすぐに見直さなければ、失敗を犯した国防省や軍参謀本部の指導層と談判する」と激烈な批判を展開したことが注目を集めた。
カディロフ氏はその後、地域ごとに「志願兵」を集め、計約8万5000人を追加派兵すると提唱し、ひとまず矛を収めた。強い忠誠を誓うプーチン氏の立場に配慮した可能性がある。
だが、強硬論はそれにとどまらない。最大野党・共産党のゲンナジー・ジュガーノフ議長も13日、政権が「特殊軍事作戦」だと主張している侵略が「全面戦争に発展した。戦争は最後まで戦わねばならない」と総動員の必要性を示唆した。
●中ロ首脳会談でくっきり、習近平がプーチンに見せつけた圧倒的立場の差 9/18
「一帯一路は沿線の国の国民に福をもたらす平和の道」
今回の外遊を総括した中国共産党中央委員会機関紙『人民日報』(9月17日付)の記事のタイトルも、「ヌルスルタンからサマルカンドへ、総書記とともに見る『一帯一路』成功の実践」。長文の記事の書き出しは、こんな調子だった。
<2013年も金秋の9月だった。習近平主席は、カザフスタンのナザルバエフ大学で行った演説で、重要な発表をした。演説の中で、習近平主席は初めて、『シルクロード経済ベルト』をともに築こうと提唱したのだ。それから1カ月も経たずして、習近平主席はインドネシアで、『21世紀海上シルクロード』を共同で建設していこうと提唱した。一本の陸路と、一本の海路。世界の版図の上で、二本の道が中国を起点として、交通の大動脈として壮大に広がり、万里に延びて、千年の旧シルクロードが、再び世界の視野に現れたのだ。この9年来、理念は行動となり、壮大に描かれた『意図』は、精密な『工芸画』となった。『一帯一路』はまさに、沿線の国の国民に福をもたらす平和の道、繁栄の道、開放の道、緑色の道、創新の道、文明の道となったのだ>
続いて、9月14日から16日まで行われた習近平主席の外遊について、具体的に綴っている。習主席が、サマルカンドで開かれた第22回SCO(上海協力機構)メンバー国元首理事会(首脳会議)に出席したことや、カザフスタンとウズベキスタンを国賓として訪問したことなどだ。
習近平主席の功績を持ち上げる論調
そして結びは、以下の通りだ。
<現在まで、すでに140カ国余りの国が、『一帯一路』をともに建設しようという(中国の)提起に、加入しており、世界の3分の2の人口をカバーしている。『一帯一路』をともに建設することは、すでに沿線の各国の国民に福をもたらす大事業となっているのだ。中国が提唱した『一帯一路』は、スローガンや伝説ではない。成功した実践であり、精彩のある現実なのだ。歴史の指針であり、新たな方向を指し示すものなのだ。現在、世界は100年なかった大変局が加速して進んでいる。世界と時代と歴史の変化に直面して、『一帯一路』の重大な提唱をともに建設していくことは、まさに『時代の問い』に対する中国の答案なのだ>
以上である。言いたいことは、習近平主席が9年前にカザフスタンで提唱して始めた「一帯一路」は、中国と世界に平和と発展をもたらした正しい選択だった。そのような英明な指導者を、1カ月後の共産党大会で、3たび総書記に推戴しようではないかということだ。
首脳会談で見せたプーチンとの距離感
ちなみに、この長文の記事には、「普京」(プーチン)という2文字が入っていない。穿った見方をすれば、このロシア大統領の名前を入れると、「平和と発展の道」である「一帯一路」の名を汚すものとなってしまうと考えているかのようだ。
「中ロ、共同声明出さず 首脳会談、かりそめの結束」(『日経新聞』9月17日付1面トップの見出し)
まさにそのような感じの、9月15日午後の中ロ首脳会談だった。CCTV(中国中央電視台)は、41回目となる習近平・プーチン会談を映像入りで報じていた。だが、コロナ対策として十分なソーシャルディスタンスを取ったテーブルの配置が、かえって中ロの「距離感」を感じさせた。
向かって右手に座った習近平主席は、皇帝然として、笑顔の一つもなく、机上の紙に書かれたことを読み上げていた。対する左手に座ったプーチン大統領は、まるで追い詰められた狼のような苦悶の表情で、イラつきながら落ち着きなく聞いている。その両サイドに座った側近たちも、暗く俯いたままだ。
CCTVのアナウンサーは、両首脳は「核心的利益の相互支持を再確認した」と述べていた。これは、前回6月15日の両首脳のオンライン会談でも確認し合ったことだ。アナウンサーはその例として、「台湾は中国の不可分の領土」であることを挙げていたが、「ウクライナはロシアの不可分の領土」とは言わなかった。
プーチンへの冷淡な態度は「総書記3選」への仕掛け
今回の外遊は、習近平主席にとって、重ねて言うが、「来たる党大会に向けて、『一帯一路』という自らの外交実績を中国国内に見せつける旅」だった。これに対して、プーチン大統領にとっては、「ウクライナ戦争の苦境を中国に救ってもらいたい旅」だった。両者には、はじめから齟齬があったのである。
習近平主席にとっては、もう一つ、8月前半の「北戴河会議」(共産党の非公式重要会議)の影響もあったことだろう。前任の胡錦濤政権と、その前任の江沢民政権の時代の長老(引退幹部)たちは、明らかに習近平総書記の「3選」に反対している。
その表向きの理由は、国内の経済運営に失敗したことと、あまりに「プーチンべったり」の外交に傾斜したことだ。このままでは中国は「第二のロシア」と化し、世界から孤立して経済が失速すると懸念しているのだ。
そのため習近平主席としては、長老たちに向けて、「プーチンべったりではない」ことを示す必要があったというわけだ。こうした「長老対策」もまた、自らの「総書記3選」のためである。
今回の中ロ首脳会談は、9年半の習近平政権を経て、「中国>ロシア」というユーラシア大陸2大国の秩序が、今後定着していくことを予感させるものでもあった。プーチン大統領はつくづく、「愚かな戦争」を起こしてしまったものだ。
それでも、『日経新聞』が付けた名文句「かりそめの結束」のまま、今後も中ロ関係が展開していくかと言えば、私はそうも思わない。丸10年、習近平総書記の公の動向をウォッチしてきた私からすれば、今回の中ロ首脳会談には、「来月の党大会が終わるまで待っていてほしい」という習主席のプーチン大統領に対する「暗黙のメッセージ」が込められているように思えてならないからだ。
むしろ、かつてのヨシフ・スターリン書記長と毛沢東主席のような友好関係が、今後とも続いていくと思われる。当時の「ソ連>中国」という関係が、逆になってはいるが。 
●ウクライナ最大の攻勢、新長距離砲にロシア敗走  9/18
ウクライナがあらゆる場所で攻勢に出る
<南部と東部の同時反抗作戦により、ロシア軍は後手に回っている。ゼレンスキー大統領の顧問は「ロシア軍を崩壊させることができると思う」と言った>
ウクライナ軍は南部と東部の同時反攻作戦で約700平方キロ以上の領土を奪還した。ここ数カ月で最も重要な前進と言えるかもしれない。
東部ドンバス地方では数週間にわたり戦線が膠着していたが、ウクライナ軍は9月初めに国内第2の都市ハルキウ(ハリコフ)からロシア軍を押し戻し始め、重要な補給線の遮断にも成功しそうな勢いだ。
ウクライナは東のハルキウ方面と南のヘルソン方面の2正面で攻勢をかけ、ロシア軍は後手に回っている。
ウクライナのゼレンスキー大統領の顧問ティモフィー・ミロバノフは、「私の理解では、あらゆる場所で攻勢に出ている」と語る。
ここ数日のウクライナ軍の素早い前進は、ロシア軍を首都キーウ(キエフ)近郊から追い出して以来、おそらくこの戦争最大の攻勢だろう。そのスピードには一部のウクライナ政府高官も驚いている。
ウクライナ軍は9月8日、ハルキウ州の20以上の集落を奪還したと発表。攻勢が可能になったのは、一部にはアメリカの長距離砲のおかげだ。
「ロシア軍に打撃を与える新しい長距離砲に加え、お粗末なタイミングで兵力を再配置しようとしたロシア軍の薄い防衛線を突いた」と、スウェーデン国防大学のオスカー・ヨンソンは指摘する。
ウクライナ軍は今回の攻勢で、4月に奪われた要所イジュームの奪還と、補給拠点クプヤンシクの遮断も視野に入った。
ロシアのプーチン大統領は8月25日、1月以降の13万7000人の兵力増員を発表した。おそらくウクライナでの損耗を埋め合わせるためだ。
ウクライナ当局者は今回の攻勢で優位に立てている理由について、欧米から供与された多連装ロケットシステム(MLRS)の射程内にあるヘルソンにロシア軍がハルキウから増援部隊を送っている最中で、防御線が手薄になっていたためだろうとの見方を示した。
ロシアはハルキウ近郊の兵員に、普段は国内の治安を担当する「国家親衛隊」のような実戦経験の浅い部隊も補充していると、ウクライナ議会のオレクシー・ゴンチャレンコ議員は指摘する。
ロシアの兵員不足はもっと深刻だという見方もある。大統領顧問のミロバノフは、「ウクライナ東部には住民全員が補充兵にされた村もある。誰も残っていない」と語る。
今回の攻勢の背後には、奪われた土地の奪還を急ぎたいウクライナの事情もある。厳しい冬が来れば、大量の雪が降り、気温は氷点下になる。
1週間以内にヘルソン攻略を開始するだろう
冬が終わるまでヘルソン解放を待つつもりはないと、ウクライナ政府当局者はフォーリン・ポリシー誌に語った。1週間以内に攻略を開始するだろうとウクライナ議会のオレクサンドラ・ウスチノワ議員は予測する。「ロシア軍は文字どおり敗走しつつある」
9月8日には、アメリカが6億7500万ドル分の追加軍事支援を発表した。これには南部戦線で威力を発揮した高機動ロケット砲システム(HIMARS)が含まれる。
それでもウクライナ政府高官は、まだ武器が足りないと訴える。とくに深刻なのは旧ソ連時代の152ミリ砲の不足だという。そのため欧米はNATO標準の155ミリ砲の供与で穴を埋めようとしている。
「補給ラインを弱体化させ、ロシアの軍事作戦能力を低下させるというのが一貫した戦略だ」と、大統領顧問のミロバノフは言う。「それをやり続ければ、ロシア軍を崩壊させることができると思う」
●上海協力機構、参加国間で紛争 ウクライナ侵攻でロシア影響力低下 9/18
中ロが主導する上海協力機構(SCO)首脳会議は16日、ウズベキスタンの古都サマルカンドで2日間の日程を終えた。
イランの正式加盟も決まり、採択された首脳宣言は「SCO拡大は地域安定に寄与する」と結束を強調した。しかし、現実には開幕直前からアルメニアとアゼルバイジャン、キルギスとタジキスタンという参加国同士の国境紛争が起き、不安要素が残った。
「情勢悪化を非常に懸念している」。プーチン大統領は16日、サマルカンドで会談したアゼルバイジャンのアリエフ大統領に訴えた。SCO首脳会議を欠席したアルメニアのパシニャン首相とは事前に電話で協議しており、双方に自制を呼び掛けた形だ。13日に再燃した両国の係争地ナゴルノカラバフの紛争は沈静化に向かったが、戦死者はアルメニア側135人、アゼルバイジャン側80人の計215人に上った。
キルギスとタジクは14日から国境地帯で交戦。相手による攻撃で始まったと非難し合った。ロシア紙コメルサントによると、衝突は「過去12年間で150件以上」と珍しくないが、SCO首脳会議に合わせてキルギスのジャパロフ、タジクのラフモン両大統領が急きょ会談する事態に。18日までにキルギス側46人、タジク側38人の計84人が死亡した。
衝突したのはいずれも旧ソ連構成国。ロシア軍は、ウクライナ侵攻が長期化し、戦闘による死傷者が「7万〜8万人」(米国防総省)とも推計される。ロシアはナゴルノカラバフに派遣した平和維持部隊などからも兵士をかき集めていると言われ、それが地域の不安定化につながっているもようだ。
米シンクタンクの戦争研究所は15日、プーチン政権が2月に侵攻開始後、「旧ソ連圏に駐留するロシア軍部隊の大半が流出した」と指摘した。ロシアは今も勢力圏と見なすアルメニアやキルギス、タジクなどに在外基地を置くが、戦争研究所は引き揚げの動きが「旧ソ連圏でロシアの影響力を低下させるとみられる」と分析した。 
●ザポリッジャ原発が外部電源と再接続 9/18
国際原子力機関(IAEA)は17日、ウクライナ南東部のザポリッジャ原子力発電所が再び外部電源と接続したと発表した。一方、ロシア軍から解放された東部イジュームで集団埋葬地が見つかった件をめぐり、欧州連合(EU)では戦争犯罪を裁く国際法廷を開くべきだとの声が上がっている。
ロシアはウクライナ侵攻の初期に、欧州最大の原発、ザポリッジャ原発を占拠。同原発はその後、繰り返し攻撃にさらされており、送電線が破壊されていた。
ウクライナとロシアは互いに、相手が原発周辺で戦闘行為を続けていると非難している。
6基ある原子炉は全て停止されているが、原子炉を冷却し、メルトダウンを回避するため、電源が必要だった。
IAEAは今回、同原発の状況は改善しているものの、なお危険だとしている。
IAEAは9月初めに現地を視察した後、状況のモニタリングのために永続的に施設にとどまるとしていた。
視察団は16日、砲撃によって損傷を受けていた4本の主要送電線のうち1本が修復され、国内の電力網につながったと報告した。
集団埋葬地発見で「国際法廷を」=EU
東部イジュームで集団埋葬地が見つかったことをめぐっては、EU議長国から戦争犯罪の国際法廷を開くべきだとの声が上がった。
イジューム郊外の森で発見された集団埋葬地からは、数百人の遺体が発見された。多くは市民で、女性や子供も含まれているという。
ウクライナは、イジュームで戦争犯罪が行われたと主張している。
チェコのヤン・リパフスキー外相はツイッターで、「21世紀に市民に対するこのような攻撃が行われるのは想像もできず、いまわしいことだ」と述べた。
「これを見過ごしてはいけない。全ての戦争犯罪者への罰を支持する(中略)迅速に侵略犯罪を裁く特別国際法廷を要求する」
東部でウクライナの反撃続く
ロシア軍が占領を続ける東部ドネツク州では、16日も激しい戦闘が続いた。
ドネツク市の分離派の市長は、ウクライナ政府による爆撃で市民4人が死亡したと主張。一方のウクライナ側は、ロシア軍がミコライウの地熱発電所を砲撃し、この地域の飲料水供給が断たれたと訴えた。
イギリス国防省によると、ウクライナ軍はここ数日、北東部での反撃に成功しており、現在も反攻を続けている。また、ロシアはウクライナ国境近くの補給地ベルゴロドへつながる経路を守るため、防衛線を張っているという。
こうしたなか、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は16日、ウクライナの最近の反転攻勢について、ロシアの計画を変更するものではないと述べた。この件で公式にコメントしたのは初めて。
●東部で“拷問場所10か所以上発見” ゼレンスキー大統領が非難  9/18
ウクライナ軍は、ウクライナ東部に加え南部でも反転攻勢を強めています。一方、ゼレンスキー大統領は、ほぼ全域を解放した東部ハルキウ州で、拷問が行われたとみられる場所が10か所以上発見されたとして「ロシアに占領された地域で、広く拷問が行われていたことを示している」と述べ、ロシアを非難しました。
ウクライナ軍は、東部ハルキウ州のほぼ全域をロシア軍から解放し、南部でも反転攻勢を強めています。
これについてウクライナ軍は17日に「南部ヘルソン州では占領者たちは退去ルートを準備している」とSNSに投稿し、ロシア軍が撤退に向けた動きを見せているとしています。
一方、ロシア国防省は17日、東部ドネツク州や南部ヘルソン州など、各地で攻撃を行ったと発表し、ロシアのプーチン大統領は16日、「戦っているのは軍のすべてではなく、一部でしかない」と述べ、兵力には余裕があるとアピールしました。
こうした中、ゼレンスキー大統領は17日に公開した動画で、ハルキウ州で、拷問が行われたとみられる場所が鉄道の駅など10か所以上、発見されたことを明らかにし「拷問で使う電気器具も見つかった。ロシアに占領された地域で、広く拷問が行われていたことを示している」と述べ、ロシアを非難しました。
ハルキウ州ではこれまでに重要拠点イジュームで、多くの住民が殺害され、埋められたとみられる集団墓地が確認されていて、ウクライナ当局が捜査を進めています。
●旧ソ連圏の紛争地をペロシ米下院議長が訪問 プーチン氏の責任論も浮上  9/18
アルメニアなど旧ソ連圏で勃発した紛争の対応にロシアが苦慮している。ロシアにとっての「勢力圏」だが、ウクライナ侵攻の苦戦を背景に軍事力で仲介する余裕がないためだ。侵攻の長期化に対しても、国内でリベラル、保守派の双方からプーチン政権の責任を問う声が上がり始めている。
係争地ナゴルノカラバフを巡って対立するアルメニアとアゼルバイジャンの国境で12日から続く戦闘では、双方合わせて200人以上の死者が出た。ペロシ米下院議長は18日、訪問先のアルメニアで「アゼルバイジャンがアルメニアに死をもたらす攻撃をした」と非難した。パシニャン首相との協議も行う見通しで、アゼルバイジャンの反発は必至だ。アルメニアはロシアの軍事同盟国で、米政府系ラジオによると米下院議長の公式訪問は初めて。
アルメニアは、旧ソ連圏の軍事同盟「集団安全保障条約機構」にこれまで2度戦闘の介入を要請したものの、ロシアに断られたためペロシ氏受け入れに傾いたとみられる。米国にはアルメニア系移民が多く暮らす一方、アゼルバイジャンの石油・天然ガス権益との関わりも強く、ブリンケン国務長官もロシアに代わって停戦仲介を急いでいる。
一方、14日に始まった中央アジアのタジキスタン、キルギスの国境警備隊の銃撃戦は、16日には重火器による砲撃戦になり、停戦合意が破られている。米シンクタンク、戦争研究所(ISW)は、旧ソ連の紛争地にあるロシア軍基地の兵士がウクライナに派遣されており、ロシア軍の不在で停戦継続が困難になっているとの分析を公表した。
こうした状況を受け、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクでは、プーチン氏の侵攻は国に悪影響として区議が辞任を求めるネット署名活動を開始。欧米メディアによると、極東サハ共和国を含め全土で区議数十人が賛意を示した。
南部チェチェン共和国のカディロフ首長は、ウクライナ東部ハリコフ州で占領地が奪われたことを受け、11日に「ロシア軍の戦略に誤りがあった。私が国の指導部に出向いて状況を説明したい」と軍を批判。体制内野党の共産党からも「総動員で戦うべきだ」と突き上げられている。
●プーチン氏最側近が訪中 ウクライナ・台湾協議か 9/18
中国外務省は、ロシアのプーチン大統領の最側近、パトルシェフ安全保障会議書記の中国訪問を発表した。日程は18日からの2日間。ロイター通信が18日、伝えた。タス通信によると、外交担当トップの楊潔※(※竹カンムリに褫のツクリ)共産党政治局員と「戦略的安定対話」を行う。パトルシェフ氏の訪中は2019年12月以来で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まってから初めてとなる。
ロシアによるウクライナ侵攻や米中が対立する台湾情勢を話し合うとみられる。プーチン氏と中国の習近平国家主席は15日、対面で約7カ月ぶりとなる会談をウズベキスタンのサマルカンドで実施。中ロの結束を誇示し、米国などをけん制する立場で一致したばかりだ。

 

●米軍トップ、戦況劣勢受けたロシアの反応に備え警戒強化呼びかけ 9/19
米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は18日、ウクライナの戦力を支援するポーランドの軍事基地を訪問した。ロシアがウクライナでの戦況の劣勢を受けてどのように反応するかは依然として不明だと述べ、米軍に警戒強化を呼びかけた。
ミリー氏は基地訪問後、ワルシャワで「戦争は現在、ロシアにとってあまりうまくいっておらず、われわれは高度の準備態勢と警戒態勢を維持する必要がある」と語った。
基地ではロシアの攻撃に備えたパトリオットミサイルなどの防空システムを視察した。
また、安全なテレビ会議を通じた米国製兵器の遠隔保守支援など、同基地の駐留米軍がウクライナに提供している重要な支援について説明を受けた。
ミリー氏は欧州に駐留する米軍への脅威が高まっているというわけではないとした上で、準備は必要だと指摘。「戦争では次に何が起こるか分からないものだ」と述べた。
ミリー氏に同行した記者団は、基地の名称や場所を公表しないよう要請された。
ミリー氏はプーチン大統領の次の行動については言及しなかったが、戦争は新たな局面を迎えており、ウクライナ軍が戦略的な主導権を握っていると指摘。「そのため、ロシアの反応がどうなるかを注意深く見守る必要がある」と述べた。
●ウクライナ、東部で進軍 ロシア軍、増援足りず守備が脆弱 9/19
ウクライナ軍は18日、東部ハリコフ州で、同州を南北に流れるオスキル川の両岸の支配をロシア軍から取り戻したと発表し、川に架設した臨時の橋を戦車が渡る動画を公開した。米シンクタンクの戦争研究所は、ロシア軍が同州と東部ルガンスク州に大規模な増援部隊を送れず、ウクライナ軍の反攻に対して守備が脆弱だと分析した。
東部ドニエプロペトロフスク州のレズニチェンコ知事は、ニコポリで18日、ロシア軍の激しい砲撃により住民2人が死亡、3人が負傷したと発表した。ニコポリはロシア軍が占拠するザポロジエ原発からドニエプル川を挟んで対岸に位置する。
●ロシアが民間標的拡大 ウクライナ情勢で警告―英国防省 9/19
英国防省は18日付のウクライナ情勢をめぐる戦況報告で、ロシア軍が民間施設を標的にする事例が過去7日間で増加したという見方を示した。各地でウクライナ側の反攻が続く中、「ウクライナの人々や政府の士気をくじく」のが狙いだと分析し、警告を発した形だ。
報告は「ロシアは前線で失敗に直面する中、攻撃対象を広げたようだ」と指摘。ウクライナ南部のダムや送電設備が攻撃される一方、「直ちに軍事的影響が出ないような施設」も標的になっているという。
北東部ハリコフ州のシネグボフ知事は18日、州内の病院から患者を避難させようとしていた医療関係者4人がロシア軍の砲撃で死亡し、患者2人が負傷したと述べた。
ウクライナ軍は最近、ロシアが3月から占領していたハリコフ州の各地で進撃を強化。11日までに同州の要衝イジュムを奪還した。イジュムではその後、民間人ら400人以上が埋葬されたとみられる集団墓地が発見された。
ウクライナのゼレンスキー大統領は17日のビデオ演説で「ウクライナ軍が解放したハリコフ州の各地では10以上の拷問施設が見つかった。ナチスと同じ行為だ」と非難した。ロシア軍をめぐっては2月のウクライナ侵攻開始以降、占領地で住民殺害に関与した疑いが繰り返し指摘されている。
一方、国際原子力機関(IAEA)は17日、ロシア軍が占拠するウクライナ南東部のザポロジエ原発について、主要送電線の一部が2週間ぶりに復旧したと発表した。敷地内の6基の原子炉については、冷温停止状態が続いている。
●ロシア軍の失態、プーチン氏と世界にどう影響?  9/19
ロシアの極右政治家、ウラジーミル・ジリノフスキー氏は昨年12月、議会の閉会にあたり、演説である予測を唱えていた。同氏は政府が内々に考えていることを暴露することが多い人物だ。
ウクライナとの戦争が2月22日の夜明け前に始まる――。今年4月に新型コロナウイルス感染で死亡したジリノフスキー氏は、こう予想した上で、その結果として「ロシアは再び偉大な国になるだろう」と息巻いた。「誰もが口をつぐみ、われわれを尊敬せざるを得なくなる」
欧州に第2次世界大戦以降、最も破滅的な流血の惨事をもたらす引き金となったウクライナへの侵攻は、ジリノフスキー氏の予想から2日後に始まった。しかし、すでに7カ月目に突入したこの戦争は、強国ロシアの復活どころか、ロシアの弱点をまざまざと露呈させた。
ロシア軍はかつて本気で敵だとも考えてこなかったウクライナを相手に、足元で手痛い敗北を喫しており、ロシアという国自体と世界におけるその役割を巡って、根本的な疑問が生じている。
ウクライナでのロシア軍の苦戦を受けて、パートナーや同盟国、武器の輸出相手国はロシアとの関係を見直しており、表だって批判することは避けつつも、陰ではショックを隠しきれずにいる。外交関係者はこう指摘する。
「ロシアの評判は地に落ちた」。こう話すのはコンサルティング会社キッシンジャー・アソシエーツのマネジングディレクター、トーマス・グラム氏だ。ブッシュ(子)政権時代に国家安全保障会議(NSC)のロシア担当幹部だった同氏は「ウクライナでの戦闘泥沼化により、ロシア自身の能力、将来的な力強さ、そして国際舞台でどれほど重要な影響力を持つかについて疑問符がついた」と述べる。
ロシアは今月、ウクライナ軍の急襲を受けて東部ハリコフ州で惨敗を喫した。ロシアが自国のパスポートの配布を開始し、最近ではロシアの教育課程に準じた学校を開設していた地域だ。早急な撤退を迫られたロシア軍は、わずか数日でウクライナ占領地の約1割を失った。ロシア兵は数百の戦車や自走式榴弾砲、装甲車などを放置したまま背走し、多数の兵士が戦争捕虜として拘束された。
ロシア軍は4月にも、同じように首都キーウ(キエフ)や北東部の2地域から撤退を余儀なくされている。ドンバス地方ではそれ以降、制圧地を幾分広げたが、ここ数日に一部はウクライナに奪還された。
それでも、ロシアはウクライナ領土の約2割(2014年以降に支配下に置いた7%も含む)を占領しており、都市や発電所、橋などに長距離巡航ミサイルで攻撃を加え続けている。ウクライナは今月、南部ヘルソンでも反撃に出たが、ハリコフほどは成功しなかった。ロシアは国内で強制動員に踏み切れば、兵力を著しく増強できる。ただ、これは国民の反発を呼ぶ可能性があり、ロシア政府はこれまで検討していないと述べている。また究極の手段として戦術核兵器を有しているが、そこまでエスカレートさせれば、ロシアにも予期せぬ悪影響が及びかねない。表明している核のドクトリン(原則)にも矛盾する。
ロシア軍司令官の指揮がまずいことに加え、数十年ぶりに西側の最新兵器と対決することなったロシア製兵器が、期待されていたほどの効力を発揮できていないことも足かせとなっている。ウクライナは武器保有でロシアに圧倒的な差をつけられているが、西側の技術に支えられ、正確に標的をとらえる能力を磨いており、その差は縮まっている。ロシア空軍はウクライナが支配する領土の上空でほぼ全く展開できておらず、ロシアの防空システムはクリミア半島を含め、前線から遠く離れた重要拠点をウクライナの攻撃から守り切れていない。
米国製の高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」が毎日のように大手を振ってロシア軍の標的を破壊し、ロシアは戦場における弱点に対処するため、武装ドローン(小型無人機)の調達でイランに協力を求めた。ロシア製武器の買い手は確実にこれに気付いている。トルコはこのほど、ロシア製の最新鋭地対空ミサイルシステム「S400」について、追加購入を見送ることを決定。インドやフィリピンはロシアからの軍用ヘリを購入する大型契約を撤回した。ロシアは2017〜21年において世界第2位の武器輸出国であり、世界で市場シェア19%を握る。インド、中国、エジプトが買い手の上位3カ国だ。武器販売に関する研究機関シピリ(ストックホルム)が分析した。
駐欧州陸軍司令官を務めたベン・ホッジス氏は「ロシアの軍需産業はこのすべてについて代償を支払うことになるだろう」と述べる。米国が2度の湾岸戦争でロシア製の軍装備をいとも簡単に破壊すると、ロシア側はイラク軍の錬度と運用に問題があるためだと説明していたという。ホッジス氏は「ところが、ロシア軍のメンバーが運用しても、やはりロシア製の軍装備は破壊された」と話す。「買い手にとっては、真の実力が丸見えになった」
「意外にもロシアが弱い」との見方が浮上していることで、ロシアにとっては、味方についてくれるパートナーや同盟国がさらに少なくなりそうだ。しかも、西側の制裁措置による痛みがじわりと経済に広がり、先端技術が枯渇しつつあるタイミングにも重なる。
中国は西側がウクライナに最新鋭兵器を供与する中でも、ロシアへの支持を表明する以上に肩入れすることは慎重に避けている。華為技術(ファーウェイ)など中国企業は、米国の制裁に違反することを恐れ、実質的にロシアへの販売を停止。ロシアが重要テクノロジーを入手する道はさらに狭まった。中国ドローン大手DJIは中立性を理由に、それまでロシア、ウクライナ両軍が偵察目的で使っていた商用ドローンの供給を打ち切っている。
中国のシンクタンク、全球化智庫(CCG)の創設者、王輝燿氏は、中国にとって優先課題はロシアを助けることではなく、世界経済に悪影響をもたらしているウクライナ戦争を終結させることだと話す。
米国という共通の脅威があるため、中国は「ロシアと便宜上の関係」を維持しているだけで、ウクライナの国家主権と領土保全を支持するとの立場を中国は繰り返し表明していると同氏は指摘する。
また「ロシアで西側企業の撤退に伴う空白を埋めようとする中国企業は皆無で、むしろ多くの企業はロシアとの取引を避けている」という。
2月24日の侵攻以降、15日に初めて中国の習近平国家主席と顔を合わせたプーチン氏は、中ロの間に吹く隙間風を自ら認めたようだった。プーチン氏はテーブルの反対側に座る習氏に向かって、ウクライナの危機を巡り「あなたの疑問と最大の関心事をわれわれは理解している」と語りかけた。中国政府が会談後に公表した声明には、ウクライナ問題に関する言及はなく、両首脳は互いの「中核利益」を支えることで合意したと説明している。
ロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」の加盟国も、ロシアと距離を置きつつある。ウクライナ侵攻開始の足場を提供したベラルーシを除き、全ての国がロシアを非難する国連総会の決議案採決を棄権した。
1月にロシア軍の介入で反政府デモを鎮圧し、政権崩壊を逃れたカザフスタンは、ロシアで戦争支持のシンボルとなっている「Z」の文字を違法にするという踏み込んだ措置に出た。ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領も、8月24日のウクライナの独立記念日に祝賀メッセージを送付。「平和な空」を祈っていると述べ、ロシア政府のひんしゅくを買った。
もっとも、ロシアがかなり弱体化しても、世界各地でなお大きな影響力を持つことは確かだろう。自国軍が旧ソ連の武器に大きく頼るインドにとっては、ロシアから軍装備の部品や弾薬を今後も確保することは最重要課題だ。インドはウクライナ侵攻を巡り、表だってロシアを批判することを控えている。また、アジアの2大国としてインドと中国は互いにライバル視する傾向を強めており、ロシアが中国の側に完全につかないようにすることもインドの目標だ。
ブルッキングス研究所のインドプロジェクト責任者、タンビ・マダン氏は「ロシアと中国をできるだけ遠ざけ、少なくとも中ロ関係が深まらないようにすることが、かねてインドの戦略目標だった」と話す。「自国の都合で西側に接近するインドよりも、中国はロシアにより多くのものを提供できる」という。インドにとって、ロシアが衰弱しつつも、自国に友好的な姿勢を保つことの副次的な利点の1つは、ロシア産原油が大幅なディスカウント価格で購入できることだと同氏は述べる。
イタリアと同程度の国内総生産(GDP)であるロシアは、世界で人気を集めるようなポップカルチャーもなく、近年テクノロジーや科学の分野で大きな偉業を成し遂げてもいない。そのため、通常および核戦力の双方において、軍事力だけが長らく世界の超大国だと主張する根拠になってきた。
プーチン氏は折に触れ、ロシア製兵器の素晴らしさを誇示している。ロシアはその武器を活用して、2008年にジョージア(旧グルジア)、2014年にはウクライナのクリミア半島とドンバス地方、その翌年にはシリアで軍事的な成功を収めた。
米海軍分析センター(CNA)のロシア研究責任者、マイケル・コフマン氏は「ロシアは歴史的に経済の基盤が比較的弱く、大国として扱われるべき大きな理由の1つとして軍事力に頼ってきた」と話す。「だが、軍事力に関する印象は急激に変化し得る。ウクライナでのロシア軍のひどいありさまをみれば特にそうだ」
またロシアの巨大な軍事力は長年、プーチン政権の正統性を支える要素でもあった。プーチン氏の就任当初10年こそ繁栄したロシア経済だが、クリミア半島やドンバス地方への軍事介入以降は経済が低迷、縮小しており、軍事力に頼る傾向が一層強まっている。
ロシアでは日々、(ユダヤ人大統領が率いる)ウクライナ国家は現代のナチスであり、足元の「特別軍事作戦」は第2次世界大戦の再来だとのプロパガンダが大量に流されている。そのため全面的な勝利を収めなければ、ナチスドイツに勝利した1945年の歴史的偉業への裏切りとなり、まさにプーチン体制の根本を揺るがしかねない。
だからこそ、ロシア軍幹部やプーチン氏自身も「特別軍事作戦」は極めて順調に進んでいるとのセリフを繰り返しているのだ。ロシア国防省はハリコフでの敗退について、ドンバス地方の「解放」を容易にするための計画されていた部隊の再配置だと説明している。
プーチン氏は今月、ウラジオストクで開催された経済フォーラムで「われわれは何も失っておらず、これからも何も失わない」と言い放った。その上で、ドンバスでの任務を「最後まで」全うすると表明し、こう加えた。「これは最終的に、国内外においてわが国を一段と強くする」
ロシアの世論は総じて、プーチン氏の説明を受け入れている。カーネギー国際平和財団のシニアフェロー、アンドレ・コレスニコフ氏(在モスクワ)はこう述べる。「プーチンのプロパガンダは敗北を勝利として伝えることができている」と同氏。「世論はあまにも無関心で、単に適切な言葉を見つければ済む」
とはいえ、プロパガンダにも亀裂が生じつつある。国家主義的な評論家や軍事ブロガーらは、ロシアのハリコフでの敗北について、1942年に旧ソ連が当地で喫したような、目も当てられない大敗北だと断じている。
ラトビアのエドガルス・リンケービッチ外相はインタビューで「ロシアは計画では失敗したようだが、戦争はまだ終わっていない。プーチンも、軍幹部らも弱腰、または負けつつあるといった印象を与えることは許されない」と話す。
弱さを露呈すれば命取りになりかねない。リンケービッチ氏によると、旧ソ連の指導者、ニキータ・フルシチョフは、1962年のキューバ危機で米国側に譲歩しすぎたとの認識がエスタブリッシュメント(支配層)の間で広がったため、「宮廷クーデター」で追放されるに至った。「どの支配者も強い指導者だと考えられている限りは強い」と話すリンケービッチ氏。「弱いとの印象を与えれば、挑戦者が必ず現れる」 
●ウクライナ軍の反攻続く 東部ドンバスのロシア軍もろく 9/19
ロイター通信によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は、東部ドンバス地方のロシア軍を脅かす北東部ハリコフ州のオスキル川東岸に軍が前進したと表明した。
18日夜の演説で「一連の勝利の後、現状は小休止しているように見えるが、これはさらなる(勝利への)準備だ」と宣言した。
米シンクタンクの戦争研究所は17日、ロシアがハリコフ、ルガンスク両州に大規模な援軍を出せなかったとして「ウクライナ北東部の大部分で、ロシア軍はウクライナの反攻に対し非常に脆弱(ぜいじゃく)な状態になっている」と分析した。英国防省によると、ロシア軍は攻撃対象を民間施設などに拡大している。
●ゼレンスキー大統領 攻勢の構え ロシア軍 原発に向け攻撃か  9/19
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア軍に占領された地域のさらなる解放に向けて攻勢を強める構えです。一方、ロシア軍は南部ミコライウ州にある南ウクライナ原子力発電所に向けて攻撃を行った可能性があり、安全性への懸念が高まりそうです。
ウクライナ軍は東部ハルキウ州のほぼ全域をロシア軍から解放したと発表し、さらに東のドンバス地域に部隊を進めているものとみられます。
ゼレンスキー大統領は18日、これまでの戦果を強調したうえで、南部のヘルソンや東部のマリウポリなどロシア軍に占領された地域の解放に向けて、攻勢を強める構えを示しました。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は18日、「ロシア軍は、ハルキウ州でウクライナ軍の反撃を受け、人員と装備で大きな被害を受け複数の装甲車部隊が、事実上壊滅した可能性が高い」と指摘しています。
一方、ゼレンスキー大統領は19日、「ミコライウ州にある南ウクライナ原子力発電所からおよそ300メートルの場所にミサイルが落下し、短時間の停電が発生した」と明らかにしました。
ウクライナの原子力発電公社エネルゴアトムによりますと、施設内の建物の窓ガラスが割れましたが3基ある原子炉に損傷はなく、職員などにけがもないということです。
ゼレンスキー大統領は「ロシアは全世界を危険にさらしている。手遅れになる前に止めなければならない」と述べ、非難を強めています。
今月に入って、ウクライナでは発電所やダムなどインフラ施設への攻撃が相次ぎ、イギリス国防省はロシア軍がウクライナの士気をくじこうと、標的を拡大した可能性が高いと分析しています。
ウクライナでは南東部のザポリージャ原子力発電所で砲撃が相次いでいますが、南ウクライナ原発に向けてロシア軍が攻撃を行った可能性があり、安全性への懸念が高まりそうです。
●ロシア、別の原発も攻撃 原子炉に損傷なし―ウクライナ 9/19
ウクライナの国営原子力企業エネルゴアトムは19日、ロシア軍が南部ミコライウ州にある南ウクライナ原発を攻撃したと通信アプリ「テレグラム」で発表した。3基ある原子炉に損傷はなく、通常運転を続けているという。
エネルゴアトムによると、ロシア軍は「ミサイル攻撃」を実施。原子炉から約300メートル離れた場所で爆発が起き、周辺の建物の窓を吹き飛ばした。また、原発近くにある水力発電所と送電線が損傷したという。
ウクライナのゼレンスキー大統領はテレグラムへの投稿で、原発ではロシアの攻撃により短時間の停電が発生したと指摘。「ロシアは全世界を危険にさらしている。手遅れになる前に止めなければならない」と非難した。
●ロシアと中国は戦略的提携深化を、プーチン氏最側近が楊氏と会談 9/19
中国を訪問したロシアのニコライ・パトルシェフ連邦安全保障会議書記が19日、中国外交担当トップの楊潔チ共産党政治局員と会談し、戦略的提携を深化して防衛協力を拡大し、主要な地政学的問題で両国が連携を強化するよう要請した。
ロシアがウクライナ侵攻を開始する直前にプーチン大統領と習近平国家主席は「無制限」のパートナーシップを宣言。しかし先週のウズベキスタンでの会談では、プーチンが、ウクライナ情勢を巡る中国側の疑問や懸念を理解していると述べていた。
プーチン大統領の最側近の一人であるパトルシェフ氏と楊氏は、プーチン氏と習氏の合意内容の履行について討議した。
連邦安全保障会議は「中国との戦略的パートナーシップの構築は、ロシア外交政策の無条件の優先事項だ」と声明で述べた。
両氏は、朝鮮半島や台湾、ウクライナについても意見交換。「共同演習やパトロールを中心に、さらなる軍事協力と参謀本部間の連絡強化で合意した」という。
●“同床異夢”の中露首脳会談 表向きは対欧米での共闘 …「プーチンリスク」 9/19
ロシアがウクライナに侵攻してから半年が経ち、8月のペロシ訪台で中露と欧米との対立が深まる中、プーチン大統領と習国家主席が9月15日に中央アジアのウズベキスタンで会談した。ウクライナ侵攻や緊張が高まる台湾情勢などで協議し、両国の関係を深めていくことで一致した。両者が対面で会うのは、北京五輪開催直前にプーチン大統領が北京を訪問して以来となった。
昨今、中露の結束は2つの側面から顕著になっている。1つは軍事面で、この直前も9月1日から7日にかけ、ロシア軍と中国軍は日本海やオホーツク海など極東海域で大規模な軍事演習「ボストーク2022」を合同で実施し、プーチン大統領も6日に同軍事演習を視察した。北海道・神威岬の西およそ190キロの日本海ではロシア海軍のフリゲート艦3隻と中国海軍のミサイル駆逐艦など3隻が航行しているのが発見され、同6隻の艦隊は周辺海域で機関銃の射撃演習を行うなどした。
もう1つは経済面で、たとえば中国税関総署は6月、5月のロシアからの原油輸入量が前年同月比で55パーセント、天然ガスが54パーセントそれぞれ増加したと発表し、最近は8月の貿易統計で世界各国からの輸入の伸び率が前年同期比(去年8月)で0.3%に留まった一方、ロシアからの輸入が60%増加したと明らかにした。こういった中露の政治と経済の両面での接近は、欧米との対立が収まる気配が見えない中、今後さらに深まることが予想される。
しかし、中露両国にとって、対欧米で共闘という戦略が重要であることは間違いないが、両国が全く同じ立ち位置にあるわけではなく、相思相愛ではない。少なくとも、「中国にとってのロシア」と「ロシアにとっての中国」には違いがある。
まず、中国にとってのロシアだが、習近平指導部としては対欧米でロシアとの協力が重要と感じている一方、そうすることによって欧米だけでなく、ASEANやアフリカなど第3諸国からどう思われるかということを気にしている。中国が最も懸念しているのは米国の存在以上に、諸外国の中国からの離反であり、ウクライナ侵攻という国際法違反を犯したロシアを第3諸国がどう見ているかを注視している。習政権としては、“国際法違反を犯したロシアに隠れ蓑を与える中国”というイメージが先行することは避けたく、何が何でもロシアとの共闘というわけではない。
一方、ロシアにとっての中国だが、今日、習氏がプーチン大統領を必要としている以上に、プーチン大統領は習氏を必要としている。国際法違反を犯したロシアのイメージが悪化したことは間違いなく、欧米主導のロシア制裁、それに付随する欧米企業による撤退や規模縮小などの自主規制により、ロシア経済は一定のダメージを受けた。プーチン大統領としては経済大国中国との関係を強化することで、被った経済的ダメージを相殺したい狙いがある。また、一帯一路によって中国の世界的な影響力が高まる中、中国との結束を示せば、中国の影響力が強い国々(カンボジアやミャンマー、ラオスなど)との間でも政治的摩擦を少なくできるとプーチン大統領は考えているはずだ。
プーチン大統領は、北京オリンピックとパラリンピックの間に侵攻を決断した。習氏は北京五輪の偉大な成功を開催前に強調していた。こういった観点からは、中国はロシアに泥を塗られた形になったと言え、習氏の中にはプーチンリスクというものも存在するだろう。今後も表向きには中露共闘が進むのは間違いない。しかし、それは相思相愛ではなく、今後両国の間で亀裂や不和が拡がる可能性も十分にある。
●IMF――岐路に立つ国際社会の「最後の貸手」 9/19
新型コロナウイルス感染症と ロシア・ウクライナ戦争 で、世界経済の先行きにかつてない暗雲が漂っている。そのなかで、各国政府、中央銀行と共に岐路に立たされているのが国際機関である。本稿では国際機関のうち経済分野で最も影響力の大きいIMF(国際通貨基金)についてこれまでの歩みを振り返り、今後を展望する。
コロナと戦争はサプライチェーンを混乱させ、物価高などを通じて新興国・途上国を中心に流動性の危機をもたらした。政府債務がデフォルト(債務不履行)寸前だったパキスタン(パキスタンはこれに洪水も加わった)、経済悪化への抗議活動が激化するなか大統領が出国してしまったバングラディシュ、あるいはまさに戦争そのものによる打撃を受けているウクライナなど、今年に入ってからでもIMFの金融支援によって辛うじて破綻を逃れた国家が相次いでいる。
世界190カ国が加盟し、6200億ドル(約88兆円)の資金基盤を持つ「最後の貸手(レンダー・オブ・ラスト・リゾート)」は今、「ドルの基軸通貨」に代わる国際金融システムの大転換もその視界に収めながら未来への岐路に立っている。・・・

 

●ウクライナ戦争で起きたEU分断と力学変動 9/20
仏ル・モンド紙コラムニストのシルヴィ・カウフマンが、ロシアのウクライナ侵攻で、欧州連合(EU)内の力学が変化している旨を、2022年8月30日の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)で書いている。
ロシアのウクライナ侵攻の結果、EU内の力学は変わりつつある。ソ連の占領下にあった加盟国及びウクライナとロシアに地理的に近い加盟国の見解は、今日、従来以上に真剣に受け取られている。
この傾向はロシア人に対する入国ビザの禁止を巡る議論に明瞭である。ポーランド、フィンランド、チェコおよびバルト三国は、禁止を支持した。ドイツはこの禁止に反対した。リトアニアは、合意が得られなければ、地域的な合意を作ると脅かし、結局、独仏両国は妥協に向けて動くこととなった。ポーランドとバルト三国は今やフィンランドやスウェーデンのような北欧諸国を当てにすることが可能で、独仏両国は守勢に回っている。
今年になって、独仏首脳は共に厳しい批判に直面した。ドイツはウクライナへの武器送達を躊躇したこと、フランスはプーチンとの電話会談を続けることに固執したことである。両者とも、とりあえず、ウクライナを軍事的に支持するとのコミットメントを再確認する必要を感じた。
しかし、EUがウクライナを含む新たな加盟国を統合するという仕事に取り組んでいる折、ドイツのショルツ首相は、プラハで、EUの多数決への「漸進的な移行」を呼び掛けた。独仏両首脳は、これに反対するポーランドに抵抗する十分な力はあると思っている。
もう一つ潜在的な不確定要素がある。9月25日のイタリアの選挙で極右が勝てば、欧州の変動する力学は更なる変化を見ることとなろう。

8月31日にプラハで開催された非公式EU外相理事会は、ロシアとの間の2007年のビザ発給円滑化協定を停止することを決定した。ロシアのウクライナ侵攻以降、EUに流入したロシア人旅行者は100万人に達するが、大多数はフィンランド(33万3000人)、エストニア(23万4000人)、リトアニア(13万2000人)経由でEUに流入した。ロシアとの間の空路は閉ざされているとされているのも、その所以であろう。
ウクライナ国民が苦境にある中で、ロシア人観光客の流入が通常通りであるべきではないとして、ポーランド、フィンランド、チェコおよびバルト三国は、EUが全面的なビザ発給禁止に踏み切ることを要求し、プーチン政権とロシア市民一般は区別すべきことを主張して全面的な禁止に反対する加盟国と対立した。ビザ発給円滑化協定の停止は、妥協の産物である。
ただ、妥協ではあるが、これら諸国の勝利である。この結果、全面的な禁止ではないが、ロシア市民に対するビザ発給は困難を増し、時間を要し、発給件数は顕著に低下するとされている。EU加盟国が独自の制限措置を講ずる余地も排除されていない。
プーチンの揺さぶりにEUは耐えられるか
このような事態は、ロシアのウクライナ侵攻の結果生じたEU内の力学の変動の象徴的な事例である。この他にも、ハンガリーのオルバン首相がプーチン大統領と近い関係を頑強に維持していることが、ヴィシェグラード・グループ(ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロヴァキア)を麻痺させ、ポーランドを含むその他EU加盟国との分断を招いた状況もある。
このような力学の変動――それに加えて従来からの東西あるいは南北の潜在的な対立もある――が重要視されねばならないのは、ガス供給を絞り込んで揺さぶりをかけ、EUを分断と不決断の冬に追い込み、出来ればEUを破壊するのが、プーチンの戦略だと思われるからである。
エネルギー価格の急騰、インフレの昂進、迫る不況が喫緊の問題に浮上し、加盟国は国内問題に注意を削がれ、それぞれの事情を抱えてEUとしての結束した行動の困難性が増しているように思われる。その困難性は、去る7月、ガス需要が高まる冬を前に、EUがガス消費の15%削減に合意するに至る過程で既に顕在化したところである。
EUはロシアへの対抗とウクライナに対する支援、更にはプーチンの計略を挫くためのガスのロシア依存からの脱却について、その結束を引き続き試されることになろう。ウクライナ戦争は、EU内の力学を揺さぶり、仏独連携は挑戦を受けているようにこの論説は書いているが、EUを率いる力は依然としてドイツとフランスにあると言うべきであろう。
望むならば、イタリアがドラギの路線を踏襲することであるが、予想される右派連立政権の外交政策あるいは財政政策は攪乱要因となる恐れがあろう。
●戦争犯罪は「うそ」 イジューム集団埋葬地 ロシアが全面否定 9/20
ウクライナ北東部ハリコフ州イジュームで多数の民間人らの遺体が発見されたことを巡り、ロシアのペスコフ大統領報道官は19日、「(ウクライナ側の発表は)うそだ」と述べ、ロシア軍の責任を全面的に否定した。
ペスコフ氏は、露軍が多数の民間人を虐殺した疑いがある首都キーウ(キエフ)近郊のブチャの事例を挙げ、ウクライナ側の発表を「ブチャと同じシナリオであり、うそだ。我々は真実を守っていく」と述べ、露軍は戦争犯罪に関与していないと主張した。
ロシアは4月に発覚したブチャの「虐殺」について「暴力行為による地元住民の被害は一件もない」と否定。ブチャで撮影された動画や写真の遺体は露軍の撤退後に置かれたものだと示唆し、「映像はデマ」「演出された挑発行為」などと主張している。
一方、ウクライナ政府は民間人ら400人以上が埋葬されたイジュームの集団墓地で発掘調査を進めており、19日までに146遺体を確認した。ロイター通信によると、ハリコフ州のシネグボフ知事は19日、発掘された遺体に2人の子供が含まれていたほか、一部の遺体には両手を縛られて拷問を受けた痕跡があったことを明らかにした。
●プーチンの大誤算…蜜月の中国・習近平が突然冷ややかに… 「完全孤立」 9/20
「孤立」が浮き彫りに…
加盟国合計の人口が世界の半数近くを占める巨大地域協力組織「上海協力機構(SCO)」は9月15、16の両日、ウズベキスタンのサマルカンドで首脳会議を開いた。今回の首脳会議は、新型コロナウイルスの感染拡大後、初めての対面形式をとり、新たにイランを加えて10カ国体制にする成果を挙げた。
ところが、会議に集まった首脳たちが繰り広げた外交では、ロシアのプーチン大統領が孤立1歩手前の苦境に立たされていることが浮き彫りになるハプニングもあった。本来ならば、中国とSCOを主導してきた功績でロシアの影響力が拡充してもおかしくない状況なのに、ウクライナに軍事侵攻したことが災いし、プーチン大統領に苦言を呈したり、明確に距離を置いたりする首脳が現れたのである。
何と言っても冷ややかだったのは、中国の習近平・国家主席だ。事前には、両国の蜜月関係の演出に腐心するとの見方もあったが、15日に開かれた両首脳の会談で目立った同主席の発言は、具体的な項目を示さずに「中ロの核心的利益に関わる問題について、相互に力強く支援する」と述べたことぐらい。ウクライナ侵攻に対する直接的な言及を避けた。
また、インドのモディ首相は16日、プーチン大統領との会談で、面と向かって「いまは戦争の時代ではない」と苦言を呈した。そのうえで、民主主義や外交、対話の重要性を説き、返す刀で食料や燃料の確保といった問題に触れて「解決の方法を見つけなければならない」と早期停戦を迫る発言もした。
プーチンの思惑とは正反対に
このところ、ウクライナ軍の反攻により、ロシアはウクライナ東部の広い範囲で領土を奪還される憂き目もみている。それだけに、プーチン氏は今回のサマルカンド会議で、ロシアが国際的に孤立していないことを内外に示したかったはずだ。ところが、結果は、その思惑とは正反対に終わった格好である。
SCOの前身「上海ファイブ」は、1996年の設立だ。旧ソ連の崩壊後、中国と国境を接していたロシアと旧ソ連の3カ国が結集した。結成当初の主目的は、それぞれの国の間にできた新しい国境の管理だった。
その後、2001年にSCOに衣替え。本部は北京に置く。各国間の国境地域の安定、信頼の醸成、加盟国間の協力促進を目的とし、緩やかな協力を目指している。現在は、中ロ2カ国のほか、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンの中央アジア4カ国とインド、パキスタンの8カ国が正式に加盟している。加盟国のGDPは世界の約2割、人口は半数近くを占めている。
すでにベラルーシが加盟申請を終えているほか、今回、米欧との核合意を巡って孤立感を深めていたイランが加盟の覚書に調印した。これにより、インドで開催する来年の首脳会談から正式な加盟国として参加することになった。
SCOには、正式な加盟国のほかに、オブザーバー国(アフガニスタン、ベラルーシ、イラン、モンゴル)や対話パートナー国(アゼルバイジャン、アルメニア、カンボジア、ネパール、トルコ、スリランカ)もある。このうちトルコは正式加盟を希望しているという。
習近平の“プーチン冷遇“
一連の首脳会合に臨み、習主席は、事前に目されたほどプーチン氏との蜜月の演出をしようとしなかった。首脳会談の順をみても、開催国カザフスタンを最初にし、ウズベキスタン、キルギス、トルクメニスタン、タジキスタンの中央アジア4カ国と会談。次いで、モンゴルを挟み、ようやく6番目にプーチン氏と会談した。
冒頭で記したように、習主席はウクライナ問題に沈黙。これに対し、プーチン氏は「中国のバランスの取れた立場を高く評価している。我々は中国側の懸念を理解している」と慮るかのような発言をした。
そればかりか、プーチン氏はあえて台湾問題に言及。「我々は『ひとつの中国』の原則を堅持している。台湾海峡における米国とその衛星国の挑発を非難する」と習主席をバックアップした。これに対して、習主席は「評価する」と述べるにとどまったのだ。
習主席の“プーチン冷遇“ぶりは、中国共産党の機関紙「人民日報」の報道を見ても明らかだ。同紙は、習主席のウズベキスタン訪問やウズベキスタンのトップとの首脳会談などの様子をトップ記事や2番手で扱った。その一方で、プーチン氏との首脳会談の扱いは3番手に抑えた。しかも、ウズベキスタンのトップとは固く握手する写真を掲載したのに、プーチン氏との会談はそれぞれが正面を直視している写真を載せるにとどめたのである。
「いまは戦争の時代ではない」
こうした冷遇ぶりには、ロシア軍のウクライナ侵攻によって、日米欧豪韓などの西側が結束、中ロと対峙する冷戦の構図が固まってしまったことに対する中国の焦りや、軍事面での中ロ関係強化や軍事、武器支援を打ち出すことによって中国が西側の制裁対象になっては堪らないという、中国の思惑が反映されているとみられている。
また、インドのモディ首相が首脳会談で「いまは戦争の時代ではない」などと苦言を呈したことに対し、プーチン氏は「あなたの懸念は理解している」と応じた。停戦交渉を拒否したのは、ウクライナの方だと釈明しつつも、「すべてが一刻も早く終わるよう手を尽くしていく」と約さざるを得なかったという。
よく知られているように、インドは伝統的なロシアの友好国だ。ウクライナ問題を巡っては、これまで、その関係の維持を優先して直接的な批判を控えてきた。
例えば、国際原子力機関(IAEA)が15日に開いた理事会で、ロシアに対して、占拠中のウクライナ南部ザポロジエ原子力発電所からの退去を求める決議を35カ国中26カ国の賛成で採択した際も、インドはロシアに配慮して採決を棄権した。ところが、今回は豹変、これまでと違い、モディ首相が真正面から苦言を呈したのだ。それだけに、プーチン氏は決して心中穏やかではなかったと推察される。
当のプーチン大統領は16日のSCO首脳会議後の記者会見で、ウクライナ侵攻に言及した。ウクライナ軍が東部ハリコフ州の要衝を奪還するなど攻勢に転じているものの、「(東部ドネツク州とルガンスク州を指す)ドンバス全域の解放が最大の目的」であり、「計画を変更することはない。ドンバスでの攻撃活動は停止しておらず、ロシア軍は徐々に新しい領土を占領している」と強気を装ったのである。
しかし、直近は、ウクライナが奪還した東部ハリコフ州の複数の場所で民間人を含む約500人の遺体が確認され、ウクライナのゼレンスキー大統領は国際社会に向けて「ロシアはテロ国家だ」とSNS(交流サイト)での非難を強めている。
強気一辺倒だったプーチン・ロシアの姿勢が一朝一夕に変わるとは考えにくい。が、今回の習主席やモディ首相との首脳会談での発言がロシア軍のウクライナからの早期撤退に向けた序章になることを期待したい。
●末期的なロシア軍、追い込まれたプーチン大統領 9/20
現実を見ないプーチン大統領
2月24日にロシア軍はウクライナへ侵攻した。一時はウクライナ首都キーウに到達したがウクライナ軍に撃退される。ロシア軍はウクライナ北部・東部・南部を占領し勝利するかに見えた。だがウクライナ軍の逆襲で北部のロシア軍は敗走。開戦から3ヶ月で1万人を超える戦死者を出したと言われる。
ロシア軍は敗走した部隊を東部に集めて乾坤一擲の攻勢を開始。だがウクライナ軍の抵抗で一進一退の攻防が続いた。ところが、9月に入ると急変する。ウクライナ軍はハルキウ付近で突破作戦を行い、7日後にはハルキウ周辺を奪還していた。ロシア軍は武器を捨てて敗走しウクライナ軍に戦力を与えてしまう。
プーチン大統領はロシア軍の敗走の現実を受け入れていない。ウクライナにおける軍事作戦を続けると同時にロシア軍の攻勢を続けることを公言。実際にウクライナ東部ではロシア軍による無意味な攻撃が確認されている。だがロシア軍の攻撃は突破作戦ではなく、無駄な時間を消費する攻撃に終わっている。
無意味なロシア軍の攻撃
9月になるとウクライナ情勢が急激に動いた。ウクライナ軍はハルキウ周辺で突破作戦を実行し成功させた。基本的に中央突破は戦車の集中か、敵軍の3倍以上の戦力優越が必要になる。何故ウクライナ軍はハリコフで突破に成功したのか?
戦車の集中とロシア軍よりも局地的に3倍以上の戦力にしたからだ。
ウクライナ軍の戦力はロシア軍よりも少ない。それでも局地的に敵軍よりも多くすることは可能。実際に欧米の軍隊は、攻撃と防御の戦力配分を行っている。防御の場合は成功すれば攻撃側の半分の戦力で戦える。戦線が安定すると防御側は半分の戦力を攻撃部隊に配分できる。これで各地から予備兵力を集めて攻撃部隊に集中する。すると局地的には敵軍よりも多い戦力で突破作戦を行える。
では攻撃しているロシア軍は?
攻撃している間はウクライナ軍に拘束されている。しかも戦線を突破できないから燃料・弾薬を消費するだけ。ロシア軍は自らウクライナ軍に強力な打撃力を与えることをしていた。
このことはISWで確認されており、しかもハルキウ付近を失っても攻撃を続けていることが確認されている。本来なら戦車部隊を集め、敵軍よりも多い戦力で突破作戦を行うはず。だがロシア軍は部隊を並べただけの攻撃を続けている。しかもウクライナ軍の防御は成功しており、ウクライナ軍は次の突破作戦に備える準備と予備兵力を得たことを意味する。つまり、次の突破作戦は前回よりも大規模になることを示唆している。
   ジョミニの原則
   1:主力を戦場の決勝点か、または敵の後方連絡線に対して継続的に投入する。
   2:我軍の主力を敵の個別の戦力と交戦するように機動させる。
   3:戦場において我軍の主力を決勝点か敵の緊要箇所に対して打撃させる。
   4:主力は決勝点に投入されるだけではなく交戦のために準備する。
ジョミニの原則は欧米軍の士官に基礎的な思考の土台を提供している。ジョミニはナポレオン戦争の時代に当時のロシア帝国で採用された人物。さらにロシア帝国軍の近代化と教育に関わった人物。だから今のウクライナ軍とロシア軍の士官も採用している思考の土台。
双方に共通している原則を基準に使うと、ウクライナ軍はジョミニの原則に従っている。それに対してロシア軍は原則に反することが多い。ウクライナ軍の突破作戦はジョミニの原則に則しているが、ロシア軍は行き当たりばったりなのだ。実際にウクライナ東部における攻勢の最中に、南部が危険と判断し、ロシア軍の一部を南部に移動させている。これでロシア軍は戦力不足になり東部での攻撃力を失った。
ロシア軍の現実と未来
ウクライナ軍がハルキウ付近で突破作戦を行うとロシア軍は敗走した。作戦開始時はロシア軍が反撃すると思われたが、実際には反撃することなく敗走した。戦争史から得られた経験則として以下の2点が挙げられる。
   指揮官の判断で防御戦闘を中止する理由
   1:敵の包囲・突破などの「敵の機動攻撃」
   2:予備戦力が尽き果てて戦闘力が低下した
つまりロシア軍は、ウクライナ軍の突破作戦で予備戦力が尽き果てていた。ウクライナ軍に反撃したくても防御すらできないまで戦力が低下していたのだ。ロシア軍は逃げるしか選べないまで士気が低下していたのだ。これは末端の兵士だけではなく、現場指揮官まで士気が低下していたことになる。
第一次世界大戦の塹壕戦で凄惨な突撃が繰り返された。これで一度失敗した作戦線で再攻撃をしないことが基本となった。だが今のロシア軍は同じ作戦線で何度も同じ攻撃を繰り返している。これは将官・左官クラスが第一次世界大戦以前のレベルであることを示唆している。
こうなるとロシア軍は大軍であってもウクライナ軍に粉砕されるだけ。しかもロシア軍は敗走するたびにウクライナ軍に武器弾薬を提供している。これではウクライナ軍は戦うたびに戦力を強化していることになる。実際の損害は戦後にならないと判明しないが、ロシア軍は約2000両以上の戦車を失っている。一個戦車師団は約400両の戦車で運用されるから、ロシア軍は5個戦車師団を失ったことになる。これは打撃力を失ったことを意味しており、ロシア軍は大規模な攻勢と突破作戦を行えないことを意味している。
プーチン大統領が選ぶ道
ロシア軍はウクライナ軍に粉砕されて弱体化。本来ならウクライナ軍に対して大規模な反撃と突破作戦を行わなければならない。だがロシア軍は無意味な攻撃を散発的に行うだけ。南部への侵攻は戦線の拡大であり戦力の分散に至った。そのため、南部を撤退させ戦力の集中と反撃を行うことになる。
これができないならウクライナから撤退となる。だがプーチン大統領は今も攻勢を行うことを公言している。今のロシア軍でウクライナ軍を撃破することは難しい。そうなると、プーチン大統領は戦術核を使い逆転勝利を選ぶ可能性が高い。
核保有国が通常戦力で勝てないなら残されたのは戦術核だけ。敵国の都市を攻撃する戦略核では規模が大きすぎる。ならば戦術核で戦力不足を補うことになるだろう。それに戦術核を使わなければロシアの未来はない。何故なら、ロシア軍の脅威がなくなればロシアの地位は低下する。外交でも無視されるので恐怖がなくなることはロシアの未来を潰す。
これが判っているから、プーチン大統領は戦術核を使って世界に恐怖を撒き散らすだろう。これで戦後もロシアに対する恐怖が残る。恐怖が残ればウクライナとの戦争に負けても、戦後のロシアの地位は保てる。
それにロシア軍がウクライナで戦術核を使っても欧米の核保有国は核兵器で報復しない。何故なら自国を核攻撃されたら報復するが、ウクライナは外国だしNATO加盟国でもない。ウクライナは空白地帯だからロシアは戦術核を使える条件を持っている。だからプーチン大統領は戦術核を使うはずだ。これを止められるのはロシア内部でのクーデターだけだ。 
●ロシア劣勢、兵士集めに躍起 受刑者も投入、総動員には慎重 9/20
ウクライナ軍の反撃によって東部ハリコフ州から撤退を余儀なくされるなど劣勢に陥ったロシアが、兵士の確保に躍起となっている。国内では総動員令を求める声も出始めているが、プーチン政権は慎重な構え。世論への影響を見極めつつ、民間軍事会社を通じて受刑者を戦線に投入するなど補充を図っている。
ハリコフ州でのロシア軍の後退が明らかになった直後の13日、政権の「体制内野党」、共産党のジュガーノフ委員長は下院で「戦争が起きている。総動員が必要だ」と訴えた。党は発言を修正したが、ウクライナ侵攻を戦争でなく「特別軍事作戦」と位置付けるプーチン政権の一線を踏み越えた発言だった。
●戦争犯罪の申し立ては「うそ」、ウクライナを一蹴 ロシア 9/20
ロシアのペスコフ大統領報道官は19日、ウクライナのゼレンスキー大統領が同国北東部でロシア軍が戦争犯罪を行ったと主張していることについて、「うそだ」と一蹴した。ペスコフ氏は、ウクライナ首都キーウ近郊のブチャで行ったものと同様のシナリオを実行しているとして、ウクライナ政府を非難した。
ペスコフ氏は「これはブチャと同じシナリオだ。これはうそだ。我々はもちろん、この物語全体の真実を守る」と述べた。
ロシア軍がウクライナ・ハルキウ州から後退した後、解放されたイジュームで集団墓地が発見され、ウクライナ国防省は少なくとも440人分の無名の墓が見つかったと明らかにしていた。
ゼレンスキー氏は16日、遺体の一部には拷問の痕跡が見つかったとして、残虐行為とテロ行為でロシアを非難した。
2月24日にロシアがウクライナ侵攻を開始して以降、民間人に対する虐殺行為の疑惑が数多く浮上している。ブチャでは調査官や記者によって、ロシア軍によるものとみられる虐殺行為がロシア軍の撤退後に明らかになっている。
ロシア側は、ブチャで民間人を殺害したとの申し立てについて、仕組まれた挑発行為だと一蹴している。
●ウクライナ情勢に国連グテーレス事務総長「世界がとてつもない機能不全」 9/20
国連のグテーレス事務総長はニューヨークの国連本部で各国首脳らによる一般討論演説に先立って演説し、ウクライナ情勢を念頭に「国連の安全保障理事会の機能が弱体化している」と訴えました。
グテーレス事務総長はさらに、国家間の分断によって「世界がとてつもない機能不全に陥っている」と警告し、協力と対話が進むべき唯一の道だと強調しました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は21日にビデオで演説し、ロシアへの厳しい対応を各国に求める予定ですが、プーチン大統領は出席しない方針です。
●バイデン米政権、ロシアに追加制裁、輸出管理も強化 9/20
米国のバイデン政権は9月15日、ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、ロシアの主要な軍事組織やハイテク産業の企業など複数の事業体・個人を制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定した。また、ロシアとベラルーシに対する輸出管理も強化した。
今回の制裁は財務、国務、商務各省がそれぞれの権限の下で発動した。SDNに関しては、財務省が事業体2組織と個人22人を指定した。財務省が指定したSDNには、ウクライナでロシア軍とともに戦闘に参加した準軍事組織とその幹部や、ロシア中央銀行が所有するカード決済網運営事業者の幹部が含まれる。国務省指定のSDNには、宇宙やエレクトロニクス産業のロシア企業が入っている。
制裁対象には、在米資産の凍結や米国人との資金・物品・サービスの取引禁止などを科す。SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。各省のSDN指定の詳細については、財務省のウェブサイトと国務省のファクトシートを参照。
商務省も9月15日、ロシアとベラルーシ向けの輸出管理を強化する一連の措置を発表した。正式には翌16日付の官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公示したが、措置は15日に有効となっている。同省は今回、輸出管理規則(EAR)でEAR99に分類される品目のうち、化学・生物兵器の生産・開発に使用され得る品目や量子コンピュータに関連する機器などについて、ロシアまたはベラルーシに輸出・再輸出・国内移送する際の許可要件を新設した。これら品目群には、米国製のソフトウエア・技術を用いて米国外で生産された製品についても、事前の許可申請を求める、いわゆる外国直接製品(FDP)ルールも適用する。そのほか、軍事エンドユーザー規制の拡大などを行った。
一方、財務省は商務省による措置を補完するかたちで、米国からロシア国内の個人・事業体への量子コンピュータサービスの輸出、再輸出、販売、提供を禁止すると発表した。所在地を問わず、米国人による輸出なども同様に禁じる。これはジョー・バイデン大統領が4月に署名した大統領令に基づく措置で、10月15日に有効となる。
●南ウクライナ原発周辺でミサイル攻撃 安全性に懸念高まる  9/20
ウクライナでは南部の南ウクライナ原子力発電所の周辺でミサイル攻撃があったとして、砲撃が相次いだ南東部のザポリージャ原発に続き、原発の安全性に懸念が高まっています。
ウクライナのゼレンスキー大統領は19日、SNSにメッセージを投稿し「ミコライウ州にある南ウクライナ原発からおよそ300メートルの場所にミサイルが落下し、短時間の停電が発生した」と述べました。
そのうえで「ロシアは全世界を危険にさらしている。手遅れになる前に止めなければならない」と訴えて、ロシアを非難しました。
ウクライナの原子力発電公社エネルゴアトムによりますと、施設内の建物の窓ガラスが100枚以上割れましたが、3基ある原子炉に損傷はなく、職員などにけがもないということです。
IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は、19日、声明を発表し「ザポリージャ原発での事故を防ぐ活動に集中してきたが、ウクライナのほかの原発が直面する潜在的な危険を浮き彫りにした」と述べ、原発を危険にさらすいかなる軍事行動も許されないと訴えました。
今月に入って、ウクライナでは発電所やダムなどインフラ施設への攻撃が相次いでいます。
イギリス国防省は、ロシア軍がウクライナの士気をくじこうと標的を拡大した可能性が高いと分析していて、砲撃が相次いだ南東部のザポリージャ原発に続き、南ウクライナ原発の安全性にも懸念が高まっています。
南ウクライナ原発とは
南ウクライナ原子力発電所は、ウクライナ南部のミコライウ州に立地しています。
ロシア軍が掌握し砲撃が相次いだザポリージャ原発からは西におよそ250キロの距離にあります。
原子炉は3基あり、出力はいずれも100万キロワットで、合わせて300万キロワットはザポリージャ原発の6基600万キロワットに次ぐ国内2番目の規模の原発です。
ザポリージャ原発と同じウクライナの原子力発電公社、エネルゴアトム社が運営し、今月19日現在、3基すべてが運転中です。
また、エネルゴアトム社によりますと、南ウクライナ原発は、国内の総電力の10%以上をまかなっているということです。
一方、IAEA=国際原子力機関によりますと、今月19日に南ウクライナ原発から300メートルほど離れた場所で砲撃による爆発があり、施設の窓ガラスが割れるなどの被害がありましたが、原発の運転への影響はないということです。
松野官房長官「許されない暴挙 即座に停止を求める」
松野官房長官は、午後の記者会見で「原発の占拠を含めたロシアの一連の行為は決して許されない暴挙で、原発事故を経験したわが国として強く非難し、このような蛮行を即座に停止することを求める。ロシアによる侵略を一刻も早くやめさせるため、国連総会の機会を含め、引き続き、G7をはじめとする国際社会と適切に連携し、発信を行っていく」と述べました。
●ロシア支援なら対中投資冷え込むと習氏に警告していた−バイデン氏 9/20
バイデン米大統領は中国の習近平国家主席に対し、対ロシア制裁に違反する行動を取れば「大きな間違い」になると警告していたと明らかにした。ウクライナに軍事侵攻したロシアへの中国による武器供与の兆候は今のところないとしている。
バイデン氏は18日放送されたCBSの番組「60ミニッツ」とのインタビューで、北京冬季五輪が開幕した2月4日に北京で習氏がロシアのプーチン大統領と会談した直後に習主席に電話したと述べた。北京五輪閉幕後の同月24日、ロシアはウクライナ侵攻を開始した。バイデン氏の発言はインタビューの抜粋に基づいている。
バイデン氏は習氏との電話会談がいつ行われたかについては特定しなかったが、「ロシアに科された制裁に違反した中国に米国などの人々が投資を続けると思うなら、大きな間違いを犯している」と伝えたと話した。
バイデン氏はCBSに対し、これまでのところ中国によるロシアへの実質的な支援の兆候はないと説明したが、詳細には触れなかった。中国とロシアの関係が米国を「複雑さを増した新たな冷戦」に陥らせる可能性があるかと問われたバイデン氏は、「複雑さを増した新たな冷戦だとは思わない」と答えた。
中国外務省のウェブサイトによると、王毅外相はニューヨークでキッシンジャー元米国務長官と19日に会談し、台湾に関係する問題は適切に管理されなければならず、そうでなければ、中国と米国の関係に「破壊的な影響」が及ぶと述べた。抑制のない台湾独立派の力が増せば、平和的な中台統一の可能性が低下するとも警告したという。
一方、中国の税関当局が20日発表した統計によれば、ロシアのエネルギー商品に対し中国が8月に行った支出は前年同月比で68%増え、83億ドル(約1兆1900億円)と過去最高を更新。石炭が記録を塗り替えるなどした。ロシアがウクライナ侵攻を開始した後の6カ月間では前年同期比74%増の440億ドル近くに達した。
●プーチン派圧勝のウラで... ロシアの選挙で不正告発 9/20
ウクライナの反撃が伝えられる中でも、自信が揺らがないように見えるプーチン大統領。先週行われた統一地方選挙でも、プーチン派は圧勝した。しかし、その裏で、さまざまな不正が告発されていた。
投開票の前の日に投稿された動画。野党の候補が、投票所の副所長に詰め寄っている。
野党候補「投票用紙を隠し持ってるでしょ? 確認させて」
副所長「どうやって?」
野党候補「立つのよ」
かたくなに立ち上がることを拒む副所長。見かねた警察官が促すと...。
野党候補「股の間に紙がはさまっているわ」
尻の下にあったのは、プーチン大統領を支持する与党「統一ロシア」にチェックが入った投票用紙の束。投票所の副所長が、不正に投票しようとしていたとみられる。トラブルは、ほかにも...。ある投票所では、投票箱の板の隙間から、投票用紙の束を不正に入れられるようになっていた。
一方で、プーチン大統領を批判するメッセージが書かれた無効票も、各地で見られたという。選挙結果は、本当に国民の圧倒的支持を表しているのか。それとも...。
●プーチン氏、欧州との「エネ戦争」でも遠のく勝利  9/20
ロシア産天然ガスの供給を大きく絞ることで、欧州諸国にウクライナへの支持を断念させようとするウラジーミル・プーチン露大統領のもくろみが外れつつある。ガス価格がピークから下げているほか、ロシア政府の財政は着実に悪化。欧州諸国はガス価格高騰による家計や企業の痛みを和らげる対策をまとめている。
ロシアが果たして、長期的に欧州との経済戦争に勝利できるか。双方はこの問題が、ウクライナでの戦争がどんな結末を迎えるかを大きく左右する要因になると考えている。だが、ここにきてプーチン氏の経済的な戦略は行き詰まりの様相が色濃くなってきた。ウクライナ軍が一部で領土を奪還するなど反転攻勢を強めているばかりか、プーチン氏はウクライナ侵攻を巡り、中国、インド両首脳が懸念を抱いていると認めざるを得なかった。
プーチン氏は天然ガスの供給を削減することで、欧州の家計や企業に打撃を与え、対ロシア制裁やウクライナへの軍事・経済支援に対する反対機運が域内で高まるとの賭けに出た。欧州諸国の政府はこうプーチン氏の戦略を分析している。
ロシアはこの経済戦争に負けると決まったわけではない。とはいえ、当局者やエネ専門家、エコノミストの間ではプーチン氏の読み通りの展開とはなりそうにないとのコンセンサスが広がりつつある。つまり、ロシアの供給削減は各地で深刻な打撃をもたらすとみられるものの、欧州はガス枯渇の事態に陥ることなく冬場を乗り切れるとの見立てだ。冬を乗り切れば、欧州のエネ供給に対するプーチン氏の影響力は決定的に弱まるだろうという。
プーチン氏は8月下旬、ガスパイプライン「ノルドストリーム」経由の欧州向けガス供給の無期限停止に踏みきることで、最大の「切り札」を切った。S&Pグローバル副会長でエネルギー歴史学者のダニエル・ヤーギン氏は「これは彼(プーチン氏)の勝負どころだ。最強の交渉カードを切った瞬間であり、完全なる賭けに出た」と述べる。
ウクライナの反撃で戦況が改善していることも、欧州諸国にとっては軌道修正に動きにくい要因だとの指摘も出ている。キングス・カレッジ・ロンドンのローレンス・フリードマン名誉教授(戦争研究)は「終わりの見えない膠着(こうちゃく)状態が続くとの見方が広がれば、(ウクライナ支援からの)出口を探る動きが出るかもしれない」と話す。だが「当局者の間で(プーチン氏に)降伏することが唯一の方策だと示唆する声は皆無だ」という。
ウクライナ侵攻を受けた石油・天然ガスの価格高騰は、エネ輸出国のロシア財政を大きく潤した。だが、足元ではガス輸出の急減や石油価格の落ち込みによって、ロシアにとってはまたとない追い風が弱まりつつあるようだ。原油価格の国際指標となる北海ブレントは6月のバレル当たり120ドル余りから、最近では90ドル程度に下落。これに伴い、ロシア産石油の価格もバレル当たり約65ドルに値下がりしている計算だ。
ロシア政府が19日公表したデータによると、8月の財政収支は大幅な赤字に転落した。1-8月の財政黒字は1370億ルーブル(約3300億円)と、黒字幅は1-7月までの約4810億ルーブルから大幅に縮小した。
欧州諸国はロシア産ガスの代替調達先の確保にも成功している。さらに、価格高騰を背景とする工場閉鎖や家計の消費削減によって、ガス消費は減る可能性が大きいとみられている。エコノミストが「需要の崩壊」と呼ぶ現象だ。
欧州連合(EU)は先週、電力消費の強制カットも含め、消費者への圧力軽減に向けた提案を打ち出した(今後各国政府の承認が必要)。ただ、エネ専門家の間では、各国政府が補助金を提供することで光熱費の負担を減らそうとすれば、エネ需要を抑制する取り組みを損ないかねないとの懸念も出ている。
これからやって来る冬場は、欧州政府にとって最も危うい期間になりそうだ。気温が例年を下回れば、エネ消費が増え、楽観論が消えかねない。また欧州諸国が結束して冬場を乗り切るには、在庫に余裕のある国が他国に融通する必要が出てくるだろう。
ロシアにとって一つの代償は、ガスを決して政治的な兵器として使わないという、旧ソ連時代から積み上げてきた「信頼ある供給国」としての評価を失うことだ。前出のヤーギン氏は「今では政治的な武器としてのみならず、戦争の兵器としても使っている(中略)頼れる供給国という評価は完全に消滅した」と述べる。
すでにロシアの影響力が後退している兆候も出てきた。ガス・電力価格は、ノルドストリーム経由の供給停止の発表直後こそ反射的に跳ね上がったものの、その後は急速に押し戻されている。
16日時点のガス卸売価格はメガワット時185ユーロ程度と、1年前の約3倍、ロシアがノルドストリーム経由の供給を絞り始めた6月初旬からはおよそ2倍の水準だ。それでも8月26日につけた終値ベースの最高値からは45%余り下落しており、7月下旬の水準に戻っている。
電力価格はピークから約半値に落ち込んだ。オランダの電力販売会社DCエナジー・トレーディングの共同創業者、デービッド・デンホランダー氏は「状況は安定化しつつあるようだ」と述べる。欧州中央部のガス貯蔵庫がほぼ満タンに近いことに加え、鉄鋼や肥料などエネ大量消費型産業が工場閉鎖に動いているほか、オランダなど各地で液化天然ガス(LNG)輸入ターミナルの設置が進んでいるためだという。
ロシアが再びガス供給で揺さぶりをかけないよう、欧州諸国は調達先の分散を目指し、LNGターミナル施設の新設を急いでいる。
その結果、米国などからのLNG輸入によってロシア産ガス削減の影響は和らいでいる。地下のガス貯蔵量は目下、能力の85%に達しており、10月末までに80%を達成するというEUの目標をすでに超えている。
英投資ファンド、ジェムコープ・キャピタルの首席エコノミスト、サイモン・クイジャーノエバンス氏は、ロシアがガス供給を完全に停止したとしても(ロシアは今もウクライナや「トルコストリーム」パイプライン経由でEUに1日当たり8000万立方メートルのガス輸出を継続)、EUは冬場を乗り切るだけのガスを確保できると分析している。「厳しい状況であり、天候にも左右されるだろうが、絶対に可能だ」
同氏によると、10月から3月のEUの天然ガス消費量は2018〜21年の平均で2560億立方メートル。一方、供給はロシア以外からの調達や在庫の切り崩しで推定2420億立方メートルを確保できる見通しだ。残る不足分についても、暖房の温度を若干下げるといった省エネ努力で吸収できると同氏は分析している。
EU諸国や英国などの政府も、エネ高騰に対する支援策を実施することから、「各国政府がプーチンに白旗を上げざるを得ないような暴動が発生する事態は考えにくい」。こう述べるのは、イタリアの元外交官で、ジョルジオ・ナポリターノ元大統領の外交顧問を務めたステファノ・ステファニーニ氏だ。
イタリアでは9月25日に総選挙が予定されており、世論調査によると、ジョルジャ・メローニ氏が率いる中道右派政権が誕生することが有力視されている。だが、マッテオ・サルビーニ、シルビオ・ベルルスコーニ両氏といったプーチン氏に近い右派政党の党首が連立政権に加わったとしても、イタリアの政情が何らかの問題をもたらす可能性は低いとステファニーニ氏はみている。
また前出のフリードマン教授は、プーチン氏が欧州諸国に対して実行可能な譲歩策を提示していないことも、欧州諸国が引き下がらない要因の一つだと指摘する。プーチン氏はこれまで、制裁解除をガス供給再開の条件にすることを目指している。
しかしながら、ウクライナでロシア軍によるとみられる民間人への残虐行為の疑惑が深まっていることで、欧州諸国の態度をさらに硬化させている、と同氏は指摘する。こうした中、プーチン氏は欧州諸国が現実的に支持できる合意を示せていない。
フリードマン氏はその上で、欧州がロシアへの対応を変えなければ、「確実にロシアの立場が弱まることになるだろう」と述べる。

 

●国連事務総長「ウクライナ背景に国際社会が分断」 総会演説で  9/21
ニューヨークの国連本部で国連総会の一般討論演説が始まり、冒頭、グテーレス事務総長は、ウクライナ情勢を背景に国際社会の対立と分断が深まっている現状に強い危機感を示したうえで、食料危機など共通の課題に一致して取り組むよう加盟国に呼びかけました。
国連本部では20日午前、日本時間の20日夜から、各国の首脳らによる一般討論演説が始まり、冒頭、グテーレス事務総長が演説しました。
この中でグテーレス事務総長は「私たちの世界は危機にひんしていて、まひしている。地政学的な分断は国連の安全保障理事会の機能を弱らせ、国際法を弱体化させ、あらゆる国際協力を衰退させている」と述べ、ウクライナ情勢を背景に国際社会の対立と分断が深まっている現状に強い危機感を示しました。
また、ロシアによる軍事侵攻は大規模な破壊をもたらしたと指摘する一方、ウクライナ以外でも紛争や人道危機が広がりつつあるとして、アフガニスタンやミャンマー、それにシリアやエチオピアなどで多くの市民が苦しんでいると訴えました。
そのうえでグテーレス事務総長は「協力と対話がわれわれの進むべき唯一の道だ」と述べ、食料危機など共通の課題に一致して取り組むよう加盟国に呼びかけました。
一般討論演説は今月26日まで行われ、焦点であるウクライナ情勢をめぐり、各国がどのような立場を示すのか注目されます。
●ウクライナを甘く見たツケ。戦争長期化で影響力“凋落”のプーチン 9/21
東部ハルキウ州では露軍を大敗北に至らしめるなど、反転攻勢の勢いを維持するウクライナ。押されるばかりのロシアですが、国内でもさまざまな声が上がり始めたようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、ウクライナ紛争の最新の戦局とロシアの強硬派らの主張を紹介。さらにもはや隠すことができなくなった、国際社会における「ロシアの影響力凋落の証拠」を記しています。
ロシアの影響力がなくなる
ウクライナ戦争で、ロ軍がハルキウ州で総崩れの状態になり、アゼルバイジャンがアルメニア本国を攻撃、しかし、ロシアは集団安全保障締結国アルメニアの出動要請を拒否。今後を検討しよう。
ウ軍は、東部ハルキウ州のほぼ全体を奪還したが、クピャンスク市西側の奪還後、オスキル川を渡河して東側も奪還して、オスキル川東岸を攻撃しているようだ。
そのほか、ドボリジナでも渡河して、橋頭保を築き、東に向かって攻撃して、トロイツクに達したという。またオスキル市でも渡河して市内で戦闘中である。もう1つがボロバ付近でも渡河したようで、都合4ケ所で渡河に成功しているので、オスキル川を防衛線としたロ軍の防衛線を突破していることになる。
しかし、ロ軍も体制を立て直しつつある。逆に、ウ軍は広範な地域を短時間に奪還したことで、奪還地域でのロ軍の残党刈に多くの兵を投入中であり、攻撃に回せる部隊が少ない。
このハルキウ州の大反撃で鹵獲したロシア軍兵器は、以下の通り
歩兵戦闘車:79両 / 無人航空機:5機 / 戦車:45両 / トラック等:41両 / 装甲戦闘車両:15両 / 自走砲:11両 / 装甲兵員輸送車:8両 / 指揮所:6両 / MLRS:5両 / 対空ミサイルシステム:1両 / 多数の弾薬類
信憑性は不明ですが、事実だとしたらかなりの戦力増強になった。
そして、スラビアンスク東側の攻撃でウ軍の前進は緩やかである。リマンでの戦闘も数日も続き、ロ軍は援軍を送り守備力を上げている。また、クレミナでロ軍が退却したが、ウ軍が到着できずに、再度ロ軍が入ったようである。
ヤンピルでも数日前から戦闘が続き、イジュームから撤退したロ軍が投入されて、ウ軍は前進できなくなっている。
ルハンスク州防衛で、ロ軍が体制を立て直しつつあるようである。残念であるが、ウ軍は、ロ軍の防衛線構築を阻止することで戦果を拡大できると思ったが、それは実現できなかったようである。
しかし、このセベロドネツク方面への鉄道網は、クピャンスクから伸びているので、ここの補給はクピャンスクを失ったロ軍は補給路としては、ルハンスク市から山超えで車で運ぶことになる。
このため、補給路の道路を監視して、輸送のトラックをPzH2000自走榴弾砲とボルケーノ弾やバイラクタルTB2で狙うと、この地域への補給ができなくなる。
ということで、この地域の防衛は難しいようである。ウ軍もじっくり攻撃して、相手の消耗を待つようだ。
一方、ロ軍はウクライナへの新しい派兵は、当分停止するという。十分な訓練をしなかった兵が、先に逃亡して戦局を悪くしたことが認識されて、訓練を行う時間が必要だということである。
ロ軍もウ軍の実力を思い知らされて、慎重に戦争遂行を考え始めたようである。戦闘を広範囲に行うのではなく、兵力を集中して1ケ所で攻撃を行うようになってきた。その成果がバクムット方面のコデマを制圧したロ軍が攻撃を強化して複数方向に進撃している。
ロシア国内では、戦争宣言をして総動員を掛けろいう強硬派の声が大きくなってきた。もう1つが国防省の責任を追及する方向で、議会は動き、ショイグ国防相の下院議会への召喚を要求する声も出ている。ショイグ国防相の解任を議会は要求する可能性もある。
一方、ウ軍は南部ヘルソン州での攻撃では、3軸で行っている。1軸は、ヘルソン市の北キセリフカからでロ軍が撤退したので、ウ軍が奪還した。ウ軍は前進して、チョルノバイフカ付近、ヘルソン空港あたりまで来ているようであり、ヘルソン周辺の要塞群の先端辺りにいる。また、西端のオレクサンドリフカをウ軍は奪還した。徐々にヘルソン市に近づいている。そして、ヘルソン市庁舎への砲撃もウ軍は開始した。
ドニエプル川の橋やフェリーは相変わらず攻撃しているので、ポンツン・フェリーで細々と補給をしている状況ではある。このため、食料や飲料水が思うように確保できず、戦場を離脱する部隊もあるようだ。
2軸は、ヘルソン州中北部のロゾベの橋頭保からロ軍を攻撃する軸であり、ベジメンネを奪還後、T2207号線脇を南下しているが、ロ軍はクリヴィー・リフ貯水地の堤防を破壊して洪水をおこし、橋頭保の船橋を押し流そうとしたが、失敗している。
3軸は、ヘルソン州北東部では、ビソコピリア奪還し南下しているが状況が見えない。ノヴォヴォスクレセンスキ奪還もしている。
そして、ウ軍はサポリージャ攻撃で大軍を集結していると、ロ軍は見てメルトポリからクリミアに軍民政府やロ軍の一部も移動させている。
次の大攻勢は、ザポリージャ州とロ軍は見ているようだ。ここのパルチザン活動は盛んであり、多くのウ軍特殊部隊が潜入しているとロ軍はみているようだ。
しかし、ウクライナは米議会や米国防総省に長距離ミサイルシステムや戦車を要望しているが、米国はウ軍が要望する長射程のATACMSを供与する考えはないという。ロシアもATACMSの供与はレッドゾーンだと再三宣言している。ということで、当面は地道にザポリージャ州を奪還して、アゾフ海の海岸線をめざすしかない。
また、黒海艦隊の母港をクリミア半島のセヴァストポリからノボロシスクに変更した。ザポリージャ州を奪還されると、セヴァストポリへの砲撃も可能になり、艦隊の安全がキープできないからでしょうね。
他方、ロシアの集団安全保障条約(CSTO)加盟国アルメニアが、国境付近で、アゼルバイジャン軍に攻撃されて、停戦監視をしていたロ軍は撤退し、軍の派遣をロシアに要請したが、ロシアもカザフスタンも要請を拒否した。
しかも、上海協力機構で、アゼルバイジャンとアルメニアのトップともプーチンは首脳会談をしたが、有効な調停をしていない。アルメニアへの支援を行わないようである。しかし、トルコとロシアが協議して、停戦には持ち込んだようである。
もう1つ、中央アジアのタジキタンとキルギス間の国境紛争も起こり、キルギスの飛び地のバトケンでは、住民らが政府に武器を配るよう要求している。
キルギスはクルグズ人の国家であり、キルギス政府は、タジクとの停戦発効後も「激しい戦闘」が続いているという。キルギスは、バイラクタルTB2で、侵攻してきたタジク軍のT-72戦車を攻撃しているようだ。
しかし、ここでもロシアが調停に乗り出さない。ロシアの影響力は行使できない。このため、中央アジアでの紛争を止められるのは、中国しかいないことになる。
もう1つ、シリアに展開していたロ軍もすべて撤収したという。ロシアの海外での影響力はなくなっていく。
一方、ウクライナが勝ち始めたので、欧州に逃れた800万人中500万人のウクライナ難民がすでに帰国したようだ。ロ軍のミサイルが防空システムで打ち落ちされれば、ウクライナに戻る人は増えるでしょうね。さあ、どうなりますか?
●トルコ大統領「戦争に勝者はいない」仲介への意欲を示す  9/21
トルコのエルドアン大統領は国連総会で演説し、「戦争に勝者はいない」と述べ、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり事態の打開に向けた仲介への意欲を改めて示しました。
トルコのエルドアン大統領は20日、国連総会で演説し「戦争に勝者はいないし、公正な和平に敗者はいない。いま求められているのは、解決に向けた対話と外交だ」と訴えました。
そのうえで、トルコが関与して実現したロシアとウクライナの外相会談や、ウクライナからの船舶での農産物の輸出再開を引き合いに出し、事態の打開に向けた仲介への意欲を改めて示しました。
また、「ザポリージャ原子力発電所でも同じ働きができる」として、原発の安全確保でも仲介の準備があると述べました。
一方で、エルドアン大統領は「国連安全保障理事会のより民主的で透明性のある構造の確立は、全人類が平和を求める上で重要な転機になる。世界は5か国よりも大きいということをあらゆる場で強調する」とし、常任理事国の中国やロシアが拒否権を行使することで機能不全に陥っているとして、改革が必要だという認識を示しました。
●ウクライナの支配地域でロシア編入へ向け住民投票の実施発表  9/21
ロシア軍が侵攻を続けるウクライナで、親ロシア派の勢力は今月23日から27日にかけてロシアへの編入に向けた住民投票の実施を決めたと表明しました。ウクライナ軍の反転攻勢を受けてプーチン政権が急きょ、支配地域の一方的な併合に動き出したかたちですが、ウクライナ側は「偽りの住民投票だ」と強く反発しています。
ウクライナの親ロシア派勢力は20日、東部のドネツク州とルハンシク州、南部のヘルソン州それに南東部のザポリージャ州の支配地域で、それぞれ今月23日から27日にかけてロシアへの編入に向けた住民投票の実施を決めたと表明しました。
ロシアのプーチン政権が支配地域の一方的な併合に向けて動き出したかたちです。
8年前にはウクライナ南部クリミアでもロシア軍が派遣される中で親ロシア派が住民投票を実施し、その結果を根拠にプーチン大統領はクリミアを一方的にロシアに併合しています。
住民投票の動きについて、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は19日、「ウクライナ軍の反転攻勢が続く中、親ロシア派勢力やクレムリンの意思決定者の一部がパニックに陥っていることを示唆している」と分析していました。
ウクライナ軍の反転攻勢を受け、プーチン政権は、危機感を強めているものとみられ、ロシアの前の大統領で、安全保障会議のメドベージェフ副議長は20日、SNSで「ロシアの領土を侵すことは犯罪であり、ロシアは自衛のためにあらゆる力を行使できる」と主張しました。
また政権与党の幹部で、ロシア議会下院のボロジン議長は「住民がロシアの一部になりたいという意思表示をするなら、われわれは支持する」と述べました。
一方、ウクライナのゼレンスキー政権は強く反発していて、クレバ外相は声明を出し「偽りの住民投票では何も変わらない。ロシアは侵略者であり、ウクライナの土地を違法に占領している。ウクライナは国土を解放する権利があり、ロシアがなんと言おうとも解放を続けていく」としています。
アメリカ政府も、ロシアが住民投票に踏み切れば追加の制裁を行うと警告していて、国際社会からの批判がさらに強まるとみられます。
背景に「ロシア側の危機感」か
ウクライナ東部や南部のロシア軍が掌握する地域で親ロシア派がロシアへの編入に向けた一方的な住民投票の実施を急いだ背景には、ウクライナ軍の反転攻勢を受けたロシア側の危機感があるものとみられます。
東部ドネツク州の親ロシア派の指導者プシリン氏は8月、住民投票はロシア軍が州全域を掌握したあとに実施する意向を表明していたほか、南部ヘルソン州の幹部は9月5日、治安上の理由から実施を見送る考えを示していました。
しかしプシリン氏は20日、国営ロシアテレビで方針の変更を認めたうえで、親ロシア派の支配地域以外の住民も投票に参加させる考えを示唆しました。
一方、ロシアの前の大統領で、安全保障会議のメドベージェフ副議長は20日、SNSで「住民投票は歴史的な正当性を回復するためにも非常に重要だ。ロシアの領土を侵すことは犯罪であり、ロシアは自衛のためにあらゆる力を行使できる」と主張しました。
また、政権与党の幹部で、ロシア議会下院のボロジン議長は「住民がロシアの一部になりたいと意思表示をするなら、われわれは支持する」と述べ、支配地域の一方的な併合に向けて動きだした形です。
こうした動きについてロシアの独立系ネットメディア「メドゥーザ」は「クレムリンは直ちに併合することを決定した」としたうえで、実施を急いだ背景には、ウクライナ軍が反転攻勢を強める中で、プーチン政権が支配地域をロシア領とすることを急いだという見方を示しています。
アメリカ国務長官「偽りの住民投票だ」
アメリカのブリンケン国務長官は20日、イギリスのクレバリー外相との会談に先立ち、「偽りの住民投票だ」と非難するとともに「プーチン大統領がロシアの予備役をさらに動員しようとしているという報告もある」と述べました。
そのうえで「もし住民投票が進められ、ロシアがウクライナの領土の併合をもくろんでいるのなら、アメリカは決して認めることはない。国連憲章を支持する他の国々にとっても、それを明確にすることは非常に重要だ」と述べ、住民投票などが進められた場合、国連の加盟国に対し反対の立場を示すよう呼びかけました。
アメリカ大統領補佐官「領土併合を主張するために利用」
アメリカのサリバン大統領補佐官は20日、記者会見で「この住民投票は、国際社会の基礎である主権と領土の一体性をないがしろにするものである。投票が操作されることは分かっているし、ロシアはこの偽りの住民投票を領土の併合を主張するために利用するだろう」と述べ、ロシア側を非難しました。
そのうえで「仮に実施されても、アメリカは決してロシアがウクライナの一部を併合したとする主張を認めることはないだろう。そして、ウクライナの領土であること以外、認めることはないだろう。ロシアの行動を明確に拒否し、われわれは引き続き同盟国とパートナーとともにロシアに対価を支払わせ、ウクライナへの支援を行っていく」と述べました。
ウクライナ軍 ハルキウ州のほぼ全域を奪還と発表
ウクライナ軍は、東部ハルキウ州のほぼ全域をロシア軍から奪還したと発表したほか、南部ヘルソン州でも反転攻勢を続けています。
さらに、東部ルハンシク州のハイダイ知事は19日、ウクライナ軍が、リシチャンシク郊外の集落ビロホリウカを奪還したと明らかにしました。
ルハンシク州では、ことし7月、ウクライナ側にとって最後の拠点とされたリシチャンシクをロシア軍が掌握し、ロシア国防省は州全域を掌握したと宣言していて、今後、ウクライナ軍はリシチャンシクの奪還に向けて攻勢を強めていくとみられます。
●フランス マクロン大統領 軍事侵攻は「帝国主義への回帰だ」  9/21
フランスのマクロン大統領は国連総会で演説し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「帝国主義や植民地の時代への回帰だ」と述べ、厳しく非難しました。
フランスのマクロン大統領は20日、国連総会で演説し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「安全保障理事会の常任理事国であるにもかかわらず、国連憲章に故意に違反し、併合のための戦争へ道をひらいた」と指摘しました。
そのうえで「いまはヨーロッパだが、あすはアジアやアフリカだ。これは帝国主義や植民地の時代への回帰だ」と述べ、厳しく非難しました。
そして、軍事侵攻によるエネルギーや食料の危機で国際社会に分断が生じかねない状況だとして「いくつかの国は中立の立場を維持しているが、いま沈黙することは歴史的な責任を負うことになり、新たな帝国主義を利する」とし、国連憲章のもとですべての加盟国が結束するよう訴えました。
一方で「和平についてのフランスの立場は明確だ。ロシア側とも開戦前から数か月にわたって対話を続けてきた」と述べ、軍事侵攻を終結させるため今後も対話を続ける姿勢を強調しました。
●プーチン氏演説、急きょ延期 総動員の観測くすぶる―ロシア 9/21
ロシア紙RBK(電子版)は20日、複数の大統領府筋の話として、プーチン大統領がウクライナ南東部のロシア併合に向けた「住民投票」に関し、同日中に国民向けに演説する可能性があると伝えたが、延期されたもようだ。一部メディアは21日に放映されると報じている。
ショイグ国防相もこれに合わせて演説するといい、ウクライナ軍の反転攻勢でロシア軍が苦戦を強いられる中、国民の「総動員」が宣言されるのではないかという観測がくすぶっている。下院では20日、「戦時」の規定を盛り込んだ刑法改正案が通過したが、カルタポロフ下院国防委員長は現地メディアに対し、総動員を意味するものではないと火消しを図っている。  
●プーチン氏は戦争を終わらせる気がある=トルコ大統領 9/21
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、19日放送の米放送局のインタビューで、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナでの戦争の終結を望んでおり、「重要な前進」があるとの見方を示した。
エルドアン氏とプーチン氏は16日、上海協力機構(SCO)首脳会議があったウズベキスタンで会談した。エルドアン氏は米公共放送局PBSのインタビューで、「非常に多岐にわたった協議」をしたとし、その際に受けたプーチン氏の印象について語った。
エルドアン氏は、「彼はできるだけ早くこの戦争を終わらせる意思があることを、実際に私に示した」、「それが私の印象だ。現在の状況は(ロシアにとって)かなり問題があるからだ」と述べた。
ウクライナでは今月になって、同国がロシアから領土を次々と奪還している。
エルドアン氏はまた、ロシアとウクライナの間で「人質」200人が近く交換されるだろうと述べた。捕虜交換の対象などの詳細は明らかにしなかった。
エルドアン氏はインタビューで、ロシアが侵攻で獲得した領土を維持するのを認めるべきか、また和平協定にそれを含めるべきか問われると、「いや、間違いなくノーだ」と答えた。
同氏はさらに、「侵略された国土はウクライナに返還される」とも述べた。ロシアが支援するウクライナ分離派が2014年以降に支配している地域も含めた発言なのかは、明らかではない。
ロシアは2014年に併合したクリミアの保持を認められるべきかと質問されると、エルドアン氏は、「正当な所有者」への返還についてプーチン氏と話し合ってきたと説明。ただ、進展はなかったと述べた。
エルドアン氏は、ウクライナでの戦争が始まって以降、たびたび調停を試みてきた。先週には、ロシアとウクライナによる直接の停戦協議の実現を目指していると述べた。
トルコは北大西洋条約機構(NATO)加盟国だが、「バランスのとれた」立場を示そうとしており、西側諸国をロシアに対して「挑発」政策を取っていると非難。ロシアへの制裁にも反対してきた。
エルドアン氏は今月、戦争は「すぐにも」終わる可能性は低いと警告していた。
ウクライナ東部の情勢
ウクライナ東部ルハンスク州のセルヒイ・ハイダイ知事は、ロシア軍がビロホリウカ村から撤退し、他の場所で守りを固めようとしていると述べた。
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「占領者は明らかにパニックに陥っている」と話した。
ロシアのプーチン大統領は先週、ゼレンスキー氏との会談に前向きだが、同氏がそうではないと発言した。また、インドのナレンドラ・モディ首相には、「できるだけ早く」戦いを終わらせたいと語っていた。
しかしロシアは、ウクライナ領土からの完全撤退という、同国の要求を受け入れる姿勢は示していない。ウクライナは、ロシアが2014年に併合したクリミアからも撤退するよう求めている。
東部2州で住民投票の動き
ロシアのドミトリー・メドヴェージェフ前大統領は、同国の支援を受けているウクライナの分離派が、ルハンスク州とドネツク州のロシア併合について「住民投票」を実施すべきだと述べた。メドヴェージェフ氏は現在、ロシアの安全保障会議副議長を務めている。
ルハンスク州とドネツク州は、「ドンバス」と呼ばれる東部地方を構成している。プーチン氏は、ドンバス地方の「解放」がロシアの主要目標だと繰り返し表明している。
ルハンスク州とドネツク州の親ロシア派指導者も、緊急の住民投票を求めている。ウクライナ国防省顧問のオレクシー・コピツコ氏は、こうした動きについて、ロシア側の「ヒステリーのしるし」であり、プーチン氏に行動を起こさせる試みだと述べた。
ウクライナ軍は、北東部ハルキウ州の大部分を奪還したほか、南部ヘルソン州で反撃を開始。ロシアが据えた現地指導者らがロシア加盟に関して住民投票を開くのを遅らせている。
●プーチン大統領 “予備役”の部分的動員表明 ウクライナ侵攻で  9/21
ウクライナへ軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は国民向けのテレビ演説を行い、戦地に派遣する兵士について、職業軍人だけでなく、有事に招集される、いわゆる予備役を部分的に動員する大統領令に署名したことを明らかにしました。ウクライナ軍の反転攻勢を受け、プーチン政権は危機感を強めているものとみられます。
プーチン大統領は21日、日本時間の午後3時すぎから国民向けのテレビ演説を行い、「東部ドンバス地域を解放するという主な目的は今も変わっていない」と述べ、軍事侵攻を続ける考えを改めて強調しました。
そして「ロシア国防省などが提案した部分的な動員を支持する必要がある」と述べ、戦地に派遣する兵士について、職業軍人だけでなく、21日からは、有事に招集される、いわゆる予備役を部分的に動員する大統領令に署名したことを明らかにしました。
プーチン大統領は、招集するのは、軍務経験がある予備役に限定されるとしています。
また、ショイグ国防相は、部分的な動員の規模について、30万人としています。
ウクライナの東部や南部でウクライナ軍が反転攻勢を続ける中、プーチン政権は危機感を強め、厳しい戦局を打開するために部分的な動員に踏み切ったとみられます。
さらにプーチン大統領は「欧米側の反ロシア政策は、一線を越えた」と述べ、ウクライナ軍が、欧米側から軍事支援として供与された兵器を使って、一方的に併合したウクライナ南部のクリミアや、ウクライナとの国境地帯にあるロシアの領内を攻撃していると主張しました。
そのうえで「欧米側は、核兵器でわれわれを脅迫している。ロシアの領土保全に対する脅威が生じた場合、国家と国民を守るために、あらゆる手段を行使する。これはブラフではない。核兵器でわれわれを脅迫するものは、風向きが逆になる可能性があることを知るべきだ」と述べ、核戦力の使用も辞さない構えを示し、欧米側を威嚇しました。
プーチン大統領が署名した大統領令は
プーチン大統領が署名した大統領令は「ロシア国民の部分的な動員を宣言する」としたうえで、動員された国民はロシア軍との契約に基づき軍人の地位を得るとしています。
そして、年齢の制限や健康状態を理由に不適格とされた場合などを除き、動員期間が終了するまで軍隊との契約は継続するとしています。
今回の大統領令は21日から発効するとした一方、部分的な動員がいつまで継続するのか、具体的な期間は示されていません。
大統領令ではこのほか、ロシア政府に対して、部分的な動員のための資金を拠出することや、ロシア軍の要請に応じて必要な措置を講じるよう求めています。
部分的動員の対象者は
イギリスの有力なシンクタンク、IISS=国際戦略研究所の年次報告書「ミリタリー・バランス」は、ロシア軍の予備役の数を200万人としています。
一方、ロシアのショイグ国防相は21日、ロシアには2500万人という膨大な動員のリソースがあり、今回の30万人は1%余りにすぎないと述べました。
ロシア編入に向けた住民投票 支持の考え
ウクライナのロシア軍が支配する地域では、親ロシア派の勢力が、今月23日から27日にかけてロシアへの編入に向けた住民投票の実施を一方的に決めています。
プーチン大統領はテレビ演説で「ロシアは、投票の安全な状況を確保するためにあらゆることをする」と述べ、住民投票を支持する考えを示しました。
ウクライナ大統領府顧問「プーチン体制崩壊を加速させるだけ」
ロシアの部分的な動員について、ウクライナ大統領府の顧問、アレストビッチ氏は、戦局に大きな変化が起きることはないという考えを示したうえで「プーチン体制の崩壊を加速させるだけだ」と批判しています。
また、ウクライナのポドリャク大統領府顧問はSNSへの投稿で「ロシアが3日間で終わるとしていた戦争は、結局、動員にまで拡大した」としたうえで「それでも、まだすべてが計画どおりだというのか」などとしてロシア側の対応を痛烈に皮肉りました。
専門家「ある意味でプーチン大統領は追い詰められている」
プーチン大統領が、国民を部分的に動員すると発表したことについて、ロシアの安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の兵頭慎治 政策研究部長は「ある意味でプーチン大統領は追い詰められている。東部でウクライナ軍による奪還が始まる中、ロシア側も兵力不足が深刻で、このままでは戦況が悪化するという予想もある」と指摘しました。
そして「部分的な動員に踏み切り、戦況を有利な形で展開したい意図がある」と分析しました。
そのうえで「『特別軍事作戦』に対する疑問の声が、ロシア国内でもあちこちからあがっている状況で、何らかの対応を迫られたということだが、国内の世論の反応をかなり気にしていたのは間違いない。直前まで世論の動向を見極めながら、今回の決定に至ったのではないか」と指摘しました。
兵頭氏は「動員の対象となる30万人が十分なのか、兵士の練度がどの程度なのか、未知数なところが残っている。動員によってロシアが有利になるかは、今後の戦況を見極める必要がある」と述べています。
●ユーロ 一時約2円下落 ウクライナ情勢悪化の懸念受け  9/21
21日の東京外国為替市場は、ロシアのプーチン大統領が予備役など国民を部分的に動員する大統領令に署名したことを明らかにし、ウクライナ情勢の悪化が懸念されたことから、ユーロは、円に対して一時、およそ2円下落しました。
ロシアのプーチン大統領は21日、戦地に派遣する兵士について、職業軍人だけでなく、予備役など国民を部分的に動員する大統領令に署名したことを明らかにしました。
これを受けて、東京外国為替市場ではウクライナ情勢の悪化を懸念してユーロを売る動きが急速に強まり、ユーロは円に対して、一時、およそ2円値下がりしました。
午後5時時点の円相場は、ユーロに対しては、20日と比べて1円52銭、円高ユーロ安の1ユーロ=142円45銭から49銭でした。
ドルに対しては、20日と比べて28銭、円安ドル高の1ドル=143円74銭から76銭でした。
また、ユーロはドルに対して、1ユーロ=0.9910から11ドルでした。
市場関係者は「プーチン大統領の発言で円やドルなど多くの通貨に対してユーロを売る動きが出た。今後さらに地政学リスクが高まれば、ほかの主要通貨にも大きな影響が出る可能性がある」と話しています。
●プーチン氏、部分動員令に署名 30万人規模 9/21
ロシアのプーチン大統領は21日午前(日本時間同日午後)、国営テレビを通じて国民に演説し、ロシアによるウクライナ侵攻に関して、戦闘継続のために部分的な動員令に署名したと明らかにした。ウクライナの親ロシア派武装勢力幹部らがロシアへの編入の是非を問う住民投票実施を一方的に表明したことについて「決定を支持する」と述べ、事実上の併合に踏み切る考えを示した。
プーチン氏は演説で、欧米の目的は「わが国を弱体化し、分断し、最終的に絶滅させることだ」と主張した。米欧のウクライナ軍への軍事支援でロシア軍が後退していることに危機感を表した。
「すべての(東部)ドンバス地域の解放は特別軍事作戦の揺るぎない目的だ」と国民に呼びかけ「部分的な動員令に署名した」と語った。対象は有事の兵役義務がある国民すべてではなく、特別な軍事技術・経験などを持つ予備役になる見通しだ。ショイグ国防相によると約30万人を動員し、深刻な兵員不足を補う。部分動員令は、武器など軍需物資の生産拡大も定めている。
核兵器使用の可能性も示唆した。プーチン氏は「わが領土の一体性が脅威にさらされる場合」には「もちろん、われわれが保持するすべての手段を利用する」と述べた。「これははったりではない」とも付け加え、核の脅しを強めた。
ウクライナ東部と南部の占領地域の親ロ派幹部らは20日、23〜27日にロシアへの編入の是非を問う住民投票を実施すると発表した。プーチン氏は演説で「ドネツク州とルガンスク州、ザポロジエ州、ヘルソン州の住民の大部分が自らの将来について決定することを支持する」と強調した。
ロシアが親ロシア占領地域の住民投票に踏み切った背景には、ロシアの領土に組み込むことで、核兵器の利用を可能にする狙いがあった。14年に承認した軍事ドクトリンでは、核兵器の使用要件について「国家の存在が脅威にさらされた時」と明記し、大統領が決定すると定めている。
プーチン氏は2月のウクライナ東部への軍事侵攻など国家にとって重要な決定をする際に、国民向けに演説してきた。今回もウクライナ軍の反転攻勢で戦況が悪化するなか、予備役の部分動員と親ロシア派地域の事実上の併合に踏み切る意向を強調した。
●プーチン氏の軍動員令、戦争をエスカレート=NATO事務総長 9/21
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は21日、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻を巡り軍動員令に署名したことは戦争をエスカレートさせるという認識を示した。さらに、核兵器使用の脅しは「危険で無謀なレトリック」と批判した。
ロシアのプーチン大統領は21日、軍の部分動員令に署名したと明らかにした。動員令は第2次世界大戦以来で即日適用される。ショイグ国防相によると、30万人が召集される見通し。
ストルテンベルグ氏はロイター通信のアレッサンドラ・ガローニ編集長とのインタビューで、プーチン大統領の動員令署名に驚きはないとした上で、こうした行動は「戦争が自身の計画通りに進んでいない」状況を示しており、プーチン大統領にとっては「大きな誤算」であることは明白と述べた。
また「軍隊の増強は紛争をエスカレートさせ、苦しみを増やし、より多くの命が失われる。ウクライナ人の命だけでなく、ロシア人の命もだ」とした。
ロシアによる核兵器使用については「われわれがどのように反応するかについて、ロシア側に誤解がないことを確実にしたい」とした上で、「最も重要なことはそのような状況に至ることを防ぐことで、われわれはロシアとのコミュニケーションで、先例のない結果について明確にしてきている」と語った。
同時に「ロシアがウクライナを主権国家、そして独立国家として認めない限り、短期間で解決策を見いだすことは難しい」とし、「この戦争を終わらせる唯一の方法は、プーチン大統領が戦場では勝てないことを証明することだ。プーチン氏がそれを理解すれば、ウクライナと理にかなった協定の交渉を余儀なくされる」と述べた。
NATO加盟国はウクライナに対し前例のない支援を提供しているが、足元では加盟国が武器や弾薬の在庫を補充する必要があると言及。ロシアへの対応が「長期間」に及ぶことを覚悟しており、現在は防衛関連企業と緊密に連携し、軍備品の在庫を確保しているとした。
●“軍事侵攻で世界の食料供給悪化” 欧米がロシアを非難  9/21
アメリカやEU=ヨーロッパ連合などの首脳や閣僚らが参加して食料安全保障に関する国際会議がニューヨークで開かれ、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアが世界の食料供給を悪化させているとして、非難の声が相次ぎました。
この会議は、国連総会に合わせてニューヨークで20日開かれ、アメリカやEU=ヨーロッパ連合、それにセネガルなどの首脳や閣僚らが出席しました。
この中で、アメリカのブリンケン国務長官が演説し、ことし初めの時点で、1億9000万人以上が深刻な食料不足にあったと指摘したうえで「国連のWFP=世界食糧計画によると、ロシアのプーチン大統領の残忍なウクライナへの軍事侵攻によって、さらに7000万人が食料不足に陥るかもしれない」と述べ、世界の食料供給を悪化させているのは、ロシアだと非難しました。
また、スペインのサンチェス首相も「ロシアは、不法なウクライナ侵攻を終わらせなくてはならない。世界の重要な食料供給源を脅威にさらしている」と述べ、強く批判しました。
一方、EUのミシェル大統領は「飢餓は世界の多くの地域に差し迫っている。私たちは、いまこそ政治的な約束を具体的な行動に移すときだ」と述べ、各国に対し食料危機の解決に向けて行動を起こすよう呼びかけました。
●相次ぐ“ロシア批判”と“国連の危機感” ウクライナ侵攻後初の国連総会 9/21
国連総会の一般討論演説では、ウクライナ情勢を受け、ロシアへの批判が相次いでいます。現地から中継です。
ウクライナ侵攻後初めてとなる今回の一般討論演説では、フランスのマクロン大統領をはじめとしたヨーロッパ諸国からロシアへの批判が相次ぎました。ただ、国連加盟国の間ではロシア批判への温度差があるのも確かで、むしろ、食料危機やエネルギー危機への対応の重要性を強調する発言もみられます。
こうしたなか、このあと演説を行うアメリカのバイデン大統領は「国連憲章の精神が脅威にさらされている」と強調する見通しです。特に、世界の安全を守る責任を持つ安全保障理事会の常任理事国の一つであるロシアが、国連憲章の精神の根幹を揺るがす他国への侵攻を行ったことを強く非難し、国連や安保理の機能を強化する必要性を訴えるものとみられます。
ただ、アメリカは時に国連を軽視した過去もあり、改革の機運が盛り上がる可能性は高くはありません。
●岸田首相 “力による現状変更許されず” トルコ大統領に伝える  9/21
ニューヨークを訪れている岸田総理大臣は、ウクライナ情勢をめぐり、停戦に向けて仲介に当たってきたトルコのエルドアン大統領と会談し、力による一方的な現状変更の試みは、いかなる地域でも許されないとする日本の立場を重ねて伝えました。
会談は、日本時間の21日未明、およそ40分間行われました。
この中で、岸田総理大臣は、ロシアによるウクライナ侵攻について、主権と領土の一体性の尊重に反し国際秩序の根幹を揺るがす暴挙だと非難したうえで、力による一方的な現状変更の試みは、いかなる地域でも許されないとする日本の立場を重ねて伝えました。
また、岸田総理大臣は、ウクライナからの農産物の輸出が再開したことについて、国連とともにロシアとウクライナの仲介に当たったトルコの粘り強い外交努力で実現したものだと敬意を示しました。
このほか、両首脳は、両国のEPA=経済連携協定の早期妥結に向けて協議を加速させるとともに、エネルギーや宇宙などさまざまな分野で2国間関係を発展させていくことで一致しました。
●ドイツ首相 国連総会でロシアを「帝国主義」と厳しく非難  9/21
ドイツのショルツ首相は、国連総会で演説し、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのふるまいを「帝国主義」と厳しく非難するとともに、侵攻をやめさせるため国際社会がウクライナへの支援を続けることが重要だと訴えました。
去年12月に就任したドイツのショルツ首相は20日、国連総会で初めて演説し、ウクライナへの侵攻を続けるロシアのふるまいについて「帝国主義以外のことばは見つからない。帝国主義や植民地主義とは対局にある世界平和への災いだ」と厳しく非難しました。
そのうえで、ウクライナが自衛できるようにドイツは兵器の供与も含めてウクライナへの支援に力を入れていると強調しました。
そして、ショルツ首相は「プーチンは勝つことができないと認識するまで戦争と帝国主義的な野望を諦めることはない」と述べ、侵攻をやめさせるためには国際社会がロシアを非難するだけでなく、ウクライナへの支援を続けることが重要だと訴えました。
ヨーロッパ最大の経済大国ドイツは、ロシアに天然ガスなどのエネルギーを大きく依存してきましたが、侵攻後は依存からの脱却を進め、ウクライナへの軍事支援についても積極姿勢に転じていて、ショルツ首相は国連の場でロシアへの厳しい姿勢を改めてアピールした形です。
●ロシア大統領、ウクライナ戦争に勝てないと認識すべき=独首相 9/21
ドイツのショルツ首相は20日、ロシアのプーチン大統領がウクライナとロシアを破壊する恐れのある「帝国の野望」を捨てるのは戦争に勝てないと認識した場合のみだという見解を示した。
国連総会で初めて演説し、「だからこそ、われわれはロシア主導のいかなる平和も受け入れず、ウクライナはロシアの攻撃をかわす必要がある」と述べた。
プーチン氏のウクライナ戦争による帝国主義の復活は欧州だけでなく、ルールに基づいた世界の平和秩序にとって大きな災いとなると警告。「強者が弱者を支配する」世界を望む者に立ち向かうよう国連に呼びかけた。
「戦争が政治の一般的手段で、独立国はより強い隣国や植民地主義国の支配下に置かれなければならず、繁栄と人権は幸運な少数者の特権という世界に引き戻そうとする向きを、なすすべもなく傍観するのか。それとも、21世紀の多極化した世界が多国間世界であり続けるよう、共に対処していくのか」と問いかけ、「対処しなければならないというのがドイツ人、欧州人としての私の答えだ」と述べた。
また、10月25日にウクライナ復興に関する会議をドイツで開催すると発表。ウクライナ政府の国家再建に向けた「膨大な費用」を援助すると表明した。
●ウクライナ東・南部4州、ロシア編入問う「住民投票」を今週実施 ロシア発表 9/21
ロシア軍の支配下にあるウクライナの4つの地域が20日、ロシアへの編入の是非を問う緊急の「住民投票」を今月23日〜27日に実施すると発表した。
ウクライナで侵攻を続けるロシア軍の攻勢はこの数カ月停滞しており、ウクライナ軍は北東部で広大な領土を奪還している。
こうした中、ロシアの支援を受けるウクライナ東部と南部の4つの行政当局は、「住民投票」を実施する考えだと明らかにした。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は20日夕に国民向けの演説を行う予定だったが、ロシア政府に近い情報筋は後に、演説が延期されたことを示唆した。延期の理由は明かさなかった。
ロシアは2014年にウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合する前にも、同様の「住民投票」を実施。国際的な非難を浴びた。
国際社会はロシアのクリミア併合を認めていない。しかし、ロシアがほかの占領地域についても、同じ形で「編入」させるつもりでいることは、かねて明らかだった。
ウクライナ領土を多く併合すればするほど、ロシア政府はロシアそのものが北大西洋条約機構(NATO)の兵器に攻撃されているのだと主張しやすくなる。
「見せかけの投票」では何も変わらない
ウクライナのドミトロ・クレバ外相は20日、「見せかけの『住民投票』では何も変わらない」と述べた。
ウクライナ国防省顧問のオレクシー・コピツコ氏は、投票計画はロシア政府の「ヒステリーのしるし」だと示唆した。
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は19日夜、「占領者は明らかにパニックに陥っている」と語っていた。
ドイツのオラフ・ショルツ首相も、投票は「でっちあげ」だと指摘。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、この案は「シニカル」かつ「パロディ」だとし、国際社会から認められないのは明らかだと非難した。
NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、投票に正当性はなく、「プーチンの戦争をさらにエスカレートさせる」ものだと述べた。
大規模動員の可能性も
ロシアのコンサルティング会社R・ポリティク創設者でロシア人アナリストのタチアナ・スタノヴァヤ氏は、今回の動きはロシアからウクライナと西側諸国に対する「明確な最後通告」だと見ている。適切な反応がなければ、ロシアは戦争のために軍隊を総動員するだろうと、スタノヴァヤ氏は指摘した。
併合が実現すれば、ロシア政府がロシアの領土とみなす場所を保護するためにあらゆる武器を使用する権限をプーチン氏に与えることになる。
ウクライナでの軍事力を強化するため、ロシア軍が大規模な動員を発表するのではないかとの憶測が流れている。
ロシア議会は20日、動員や戦闘の最中に脱走したり、軍用資産にダメージを与えたり、指示に従わないなどといった犯罪行為に対する処罰を重くする法案を可決した。
ロシア安全保障会議のドミトリー・メドヴェージェフ副議長は先に、ウクライナ東部ドンバス地方のドネツクとルハンスクで投票を行うことは「歴史的正義」を正す、不可逆的なものだと述べた。
「我が国の憲法改正後、ロシアの将来の指導者も役人も、これらの決定を覆すことはできない」と、メドヴェージェフ氏は話した。
4地域が「住民投票」実施を表明
この発言から間もなく、ロシアが後押しするドネツクとルハンスクの行政当局は、9月23日〜27日に投票を行うと発表した。この2地域は侵攻開始3日前にプーチン氏から独立国家として承認された。
南部ヘルソンやザポリッジャのロシアに任命された行政当局も同様に、投票の実施を宣言した。ロシア国営メディアは、住民は直接または遠隔での投票が可能だと伝えた。
この数カ月間、ロシアに任命された行政当局は「住民投票」と称する投票を行おうとしてきたものの、自由かつ公正な投票が行われる見込みはない。また、戦争が続いていることから、完全にロシアの支配下には置かれていない地域を併合しようとすることさえ非現実的だといえる。ウクライナ軍の反転攻勢はそれをさらに困難なものにしている。
7月以降、ルハンスクの大部分はロシアの手中にあったが、ルハンスクのウクライナ側の指導者は19日、ウクライナ軍が同州ビロホリウカ村を奪還したと発表した。
ドネツクの大部分は今もウクライナ軍の支配下にある。一方のロシア軍は、アゾフ海沿いの海岸地帯を占領している。
開戦当初にロシア軍に占領されたヘルソンは、その後ウクライナ軍が奪い返した。ロシアに任命された行政当局は度重なる攻撃にさらされ、投票が複数回延期された。
ザポリッジャの大半は、同名の州都を含め依然としてウクライナの支配下にある。
ウクライナ軍はドネツク市からそれほど遠くない場所まで到達している。ロシアの支援を受ける市長は19日、市内で爆発が相次ぎ、少なくとも13人が死亡したと発表。ウクライナ軍の砲撃だと非難した。
●ロシア軍、ウクライナでの死者5937人 国防相 9/21
ロシアのセルゲイ・ショイグ(Sergei Shoigu)国防相は21日、同国が2月にウクライナに侵攻して以降、自国軍の死者は5937人に上ったと発表した。ロシア政府が軍の犠牲者数に言及するのはまれ。
ショイグ国防相はテレビ放映された会見で、「われわれのきょう時点の死者は5937人だ」と述べた。
国防相はまた、ウクライナ国内でロシアが戦っている相手は「ウクライナというよりも、むしろ西側」だと主張した。
ウクライナでの軍事作戦の激化を受け、国民の「部分的な」動員を可能とする大統領令に署名したロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領も同日、領土を防衛するために利用可能なすべての手段を用いると言明。西側諸国は「わが国を弱体化させ、分割して最終的に破壊」しようとしていると非難した。
プーチン大統領は、ロシア側の最大の目標が「(ウクライナ東部の)ドンバス(Donbas)地方全域の解放」であることに変わりはないと強調した。
●プーチン大統領、予備役の部分的動員表明 「あらゆる手段」でロシア防衛と 9/21
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は21日、ウクライナをめぐり国民向けのビデオ演説で「部分的な動員令」の発動を宣言した。国営タス通信が伝えた。プーチン氏はロシアの領土的一体性が脅かされれば、「あらゆる手段を使ってロシアと国民を守る。これは、はったりではない」と強調した。
プーチン大統領は国民向けのビデオ演説で、西側諸国はロシアとウクライナの和平など望んでいないとして、ウクライナ国民を犠牲にしてでもロシアを滅ぼすことが西側諸国の目的だと明らかになったと批判した。
その上で大統領は、ロシアの目的はドンバスの解放だとして、「解放された土地」の住民を守るため緊急の判断が必要だと説明。「だから私は国防省に、部分的動員に合意するよう要請した」と述べた。
またプーチン氏は、ロシアが制圧したウクライナ領の住民は「ネオ・ナチのくびきの下にいたいとは思っていない」と、侵攻開始前からの主張を繰り返した。
予備役の部分的動員令はすでに署名済みで、21日から実施されるという。招集される市民は全員、戦闘員としての資格を完全にもつことになるともプーチン氏は説明した。
プーチン氏はさらに、西側諸国はロシアを脅し、ゆすり続けているが、ロシアには対抗するための武器がたくさんあると指摘。「この国の領土的一体性が脅かされるなら、ロシアと国民を守るため、我々は持てるあらゆる手段を使う。これは、はったりではない」と強調した。
「わが祖国の領土的一体性、我々の独立と自由は、繰り返す、我々が持つあらゆる手段で確保する。我々を核兵器で脅し、ゆすろうとする者たちは、やがて自分たちに向かい風が吹き、劣勢になることもあると知るべきだ」ともプーチン氏は述べ、「みなさんの支持を信用している」と結んだ。
30万人を段階的に
国営テレビはこの後、事前録画されたセルゲイ・ショイグ国防相の説明を放送。軍務経験がある予備役約30万人を段階的に招集すると述べた。
BBCのサラ・レインズフォード東欧特派員によると、ロシアの予備役は2500万人に上る。
国防相はさらに、学生は招集しないと述べ、学生は「落ち着いて」「授業に出続けるように」と呼びかけた。徴集兵を前線に送り込むこともしないと述べた。ロシア政府は侵攻開始当初、同様の発言をしていたものの実際には多くの徴集兵を前線に配備していた。
ショイグ国防相はさらに、これまでウクライナでロシア兵5937人が戦闘中に死亡したと発言。この人数は西側情報機関の推計や公開情報をもとにした集計よりも、はるかに少ないが、ロシア政府が公式の戦死者数を発表するのは数カ月ぶり。
劣勢のしるしと西側反応
プーチン氏の演説を受けてイギリスのベン・ウォレス国防相は、ロシアのウクライナ侵攻が失敗しつつあるしるしだと反応した。
英国防省は、「国民の一部を動員しないという約束をプーチン大統領が自ら違え」たことで、「侵略が失敗しつつあると認めたことになる」というウォレス氏のコメントをツイート。その中で国防相は、「(プーチン氏)と国防相は何万人もの自国民を、満足な装備を与えず、粗末な指揮官のもと、死に追いやった。どれだけ脅してプロパガンダをまき散らしたところで、この戦争に勝ちつつあるのはウクライナで、国際社会は団結しており、ロシアが世界的なのけ者になりつつある事実は、隠しようがない」と述べた。
アメリカの駐ウクライナ大使、ブリジット・ブリンク氏もツイッターで、「偽の住民投票や予備役動員は、弱さのしるし、ロシアの失敗のしるしだ」と書き、「ロシアによるウクライナ領併合の主張を合衆国は決して承認しないし、我々はいつまでもウクライナを支え続ける」と書いた。
ドイツのロベルト・ハベック副首相は「ロシアがまたしても、まずい、間違った一歩を踏み出した」と批判。オランダのマルク・ルッテ首相は、予備役招集と住民投票強行はロシアが「パニックしているしるし」だと述べた。
ロシアと国境を接するラトヴィアのエドガルス・リンケヴィッチ外相は、ロシア政府による予備役招集から逃れようとするロシア人に「人道的なものを含め一切のビザを発行しない」と述べた。また、「ラトヴィアに対する軍事的脅威のレベルはまだ低い」との見方を示した。
同様にロシアの飛び地領カリーニングラードと国境を接するリトアニアのアルヴィダス・アヌシャウスカス国防相は、「ロシアの軍事的動員は我々の国境付近でも行われるため、リトアニアの即応部隊は、ロシアのあらゆる挑発を阻止するため、緊急警戒態勢をとる」とツイートした。
動員に上限は ロシア国内で懸念
BBCのレインズフォード東欧特派員によると、プーチン大統領とショイグ国防相の発表を受けて、ロシア国内ではすでに、予備役招集の規模に上限はあるのか、懸念の声が出ている。動員令の実際の文言はきわめてあいまいなため、本当に学生は招集されないのか、疑問視するコメンテーターもいるという。
モスクワで取材するBBCのウィル・ヴァーノン記者によると、予備役招集の報道を受け、ロシアの株価は軒並み急落。国外脱出のため飛行機チケットの購入が急増しているとの情報もあるという。
ロシアの野党指導者で、刑務所に入れられているアレクセイ・ナワリヌイ氏は、予備役招集の発表を受けて、刑務所内で撮影した動画を弁護士経由で発表。その中で、「これはとんでもない悲劇につながる。とんでもない人数が命を落とす(中略)自分の個人的権力を維持するため、プーチンは隣国に侵入し、そこの国民を殺し、そして今や莫大な人数のロシア市民をこの戦争に送り込もうとしている」と批判した。
プーチン政権を声高に批判し続けたナワリヌイ氏は現在、詐欺や法廷侮辱の罪などで11年半の禁錮刑に服しているが、いずれも政権批判をやめさせるために政府が捏造(ねつぞう)した罪状だと主張している。
いつロシアを出られるのか
BBCは、イギリス在住のロシア人男性エフゲニーさん(30)に話を聞いた。エフゲニーさんは、55歳になる自分の父親が動員されるのではないかと心配している。母親には、「あなたはちょうどいい時にロシアを出た、間に合ってよかった」と言われたという。
またロシアに残る友人たちと情報交換したところ、友人たちはいつロシアから出られるのか知るため、あらゆるニュースやソーシャルメディアを確認し続けているという。
「すごくショックだし、この動員がウクライナの人たちにとってどういう意味をもつのかも、想像しがたい。自分の国がとんでもなく恥ずかしい。こんな戦争はいやだ」と、エフゲニーさんは話した。
解説 / ウクライナの反攻成功にロシア警戒――フランク・ガードナーBBC安全保障担当編集委員
プーチン大統領の強気で好戦的な演説を待つまでもなく、ウクライナでの戦争はすでに危険な段階に差しかかっていた。
東部ハルキウ周辺で2600平方キロ分もの国土奪還にウクライナがいきなり成功したことで、ロシア政府は危機感を抱いた。そのため、ロシアが後押しする分離派が実効支配する東部ドンバス地方で、「ロシア編入」を決める住民投票の実施を、前倒しすることにしていた。
この住民投票は実施前からすでに、やらせだと非難されている。しかし、この投票をもってロシアはウクライナのドンバス全域と南部ザポリッジャ、ならびにヘルソンを、ロシアの一部だと宣言することになるだろう。
国際社会がその結果を承認しなくても、ロシア政府にとってそれはどうでもいいことだ。
ロシア政府にしてみれば、ウクライナはもはや自国領を守るために戦えなくなる。プーチン氏にとって、ウクライナ軍は北大西洋条約機構(NATO)に提供された武器を使ってロシアに侵攻する、侵略者になるというわけだ。
この展開が続けば、ウクライナとウクライナを支援する西側諸国という悪の徒党からロシアの国土を守るためには、極端な手段も辞さないのだという、プーチン流の理屈は、さらに勢いを増すかもしれない。
不見識なウクライナ侵攻が屈辱的な敗北で終わらないようにするための手段として、訓練不足の予備役30万人の招集だけで、プーチン氏が満足するとも思えない。
●プーチン大統領、軍動員令で30万人召集 西側の「核の脅し」批判 9/21
ロシアのプーチン大統領は21日、軍の部分動員令に署名したと明らかにした。動員令は第2次世界大戦以来で即日適用される。西側が「核の脅し」を続けるなら、ロシアは兵力の全てを用いて対応すると警告した。
国民に向けたテレビ演説で「わが国の領土保全が脅かされるなら、われわれの市民を守るためにあらゆる手段を用いる。これは脅しではない」と述べた。
複数の北大西洋条約機構(NATO)加盟国の高官がロシアに対し核兵器を使用する可能性を示したと主張、西側による「核の脅し」を批判した。
またロシアの占領下にあるザポリージャ原子力発電所に対するウクライナ軍の砲撃を許すことで、西側諸国は「核の破滅」の危険を冒していると非難した。
また、自身はロシアの領土を防衛していると発言。西側諸国はロシアの破滅を望んでいるとも述べた。
「西側の攻撃的な反ロシア政策は、あらゆる一線を超えている」とし「核兵器でわれわれを脅迫しようとしている人々は、風向きが変わり得ることを知るべきだ」と語った。
プーチン氏の演説はロシア軍がウクライナ北東部で決定的な敗北を喫した後に行われた。北大西洋条約機構(NATO)とロシアが直接軍事衝突するリスクを高めることで、欧米がウクライナへの支援から手を引くことを期待したものだ。
新ロシア派支配地域の併合
動員令は徴兵ではなく、軍務経験者全員が対象となる。ショイグ国防相は30万人が召集されるとの見通しを示した。学生は含まれず、ウクライナへ送られる前に訓練を受けると説明した。動員は前線の背後あるロシア支配下の領土を「強化」するのに貢献すると述べた。
ウクライナ東・南部の親ロシア派支配地域やロシア軍の占領地域は20日、ロシアへの編入の是非を問う住民投票を23─27日に実施すると表明した。
プーチン氏は「ドネツク、ルハンスク、ザポリージャ、ケルソンの住民の大多数による将来に関する決定を支持する」と明言した。
「(ロシアに)近い人々を処刑人に引き渡す道徳的な権利はわれわれにはない。自らの運命を決めたいという心からの願いに応えるしかない」と述べた。ウクライナの領土の約15%に相当する同地域の正式なロシア併合に道を開くことになる。
ウクライナ東部ドンバス地域の「解放」を目指しているとし、ロシアの支配下にある地域の大半の住民はウクライナによる支配を望んでいないと主張した。
ウクライナの領土を正式に併合することで、プーチン氏は核兵器を使用するための口実を得る可能性がある。
ロシアの核ドクトリンは、大量破壊兵器が使用された場合か、ロシアが通常兵器による存亡の危機に直面した場合に核兵器を使用することができるとしている。
プーチン氏は「世界の支配を目論む者たち、祖国を解体し奴隷にしようとする者たちを阻止することは、われわれの歴史的伝統であり民族の宿命だ」強調。「今それを行う」と述べて国民の支持を訴えた。
ロシア軍の死者
ショイグ氏はまた侵攻開始以来、ロシア軍の死者が5937人(訂正)になったと明らかにした。ロシア軍が戦闘で大きな損失を受けたとの見方を否定し、負傷兵の90%が前線に戻ったと述べた。
ロシアが公式に死者数を公表するのは3月25日以来。その時点では1351人としていた。
米国防総省は7月、ロシア軍の死者は約1万5000人に上るとの見方を示している。8月には7万─8万人の死傷者が出ているとの推計を示した。
●プーチン氏は「自暴自棄に」 欧州、部分動員令に厳しい反応 9/21
ロシアのプーチン大統領が21日表明した部分的動員令をめぐり、ウクライナを支援する欧州諸国からは、「自暴自棄の行動だ」(ドイツのショルツ首相)などと厳しい反応が相次いだ。
DPA通信によると、ショルツ氏は国連総会出席のため訪れているニューヨークで、プーチン氏が今回の決定により「ロシアのすべてを大幅に悪化させた」と断言した。
ウォレス英国防相は声明で、ロシアは「侵略失敗を認めた」と論評。「いくら脅しやプロパガンダを続けても、ウクライナが勝利しつつあることや、国際社会の団結、ロシアが世界ののけ者になっている事実は隠せない」と強調した。
また、ロイター通信によると、欧州連合(EU)欧州委員会の報道官は「プーチン氏が平和に関心がなく、侵略戦争をエスカレートさせることに関心があることを改めて示すものだ」と批判した。 
●予備役動員・住民投票支持 プーチン大統領テレビ演説 9/21
ウクライナ侵攻をめぐり、ロシアのプーチン大統領が、国民の部分的動員令を発表した。
プーチン大統領「国内で部分的動員を行う。国防省と軍の提案を支持する。ロシア国民と領土を守るため、持っているあらゆる手段を使う」
ロシアのプーチン大統領は、日本時間21日午後3時ごろ、テレビ演説し、有事の際に出兵する意思を示して登録している「予備役」を招集する、部分的動員令に署名したと明らかにした。
ショイグ国防相は、戦闘経験などのある30万人が対象となるとしている。学生は含まれていない。
プーチン大統領は、また、親ロシア派を通じて実効支配する、ウクライナ東部などの4つの州で近く行われる、ロシア編入の是非を問う住民投票の結果を「支持する」と述べた。
投票を根拠に、一方的な編入に向けた動きを強めるものとみられる。
さらに、プーチン大統領は、「ロシア国民と領土を守るため、持っているあらゆる手段を使う」と述べ、核兵器使用の可能性をちらつかせ、あらためて西側諸国をけん制した。
●プーチン大統領 部分的動員へ なぜ今?ねらいは?  9/21
ウクライナへ軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は国民向けのテレビ演説を行い、戦地に派遣する兵士について、職業軍人だけでなく、有事に招集される、いわゆる予備役を部分的に動員する大統領令に署名したことを明らかにしました。
ウクライナ軍の反転攻勢を受け、プーチン政権は危機感を強めているものとみられます。
なぜこのタイミングなのか。ねらいはどこにあるのか。モスクワ支局の権平恒志 支局長に聞きました。
このタイミングで部分的動員に踏み切ったねらいは?
国民世論の反発を避けながら、深刻な兵員不足を補うことにあると言えます。背景にあるのは、軍事侵攻の長期化、それにウクライナ軍の反転攻勢です。プーチン大統領の演説に合わせて、ショイグ国防相は、ロシア側の死者数について5937人と発表しました。
ことし3月に1351人と発表したあと、半年たってようやく新たな数字を出してきた形です。しかし、実際の死者数は、もっと多いという見方が大勢です。
今月、反転攻勢が伝えられると、プーチン大統領の側近の1人が、地方の知事たちに自主的に動員をかけるよう促したほか、受刑者が戦闘に勧誘されているという情報まで伝えられました。
ウクライナ侵攻はあくまで「軍事作戦」だと強弁するプーチン政権にとって、いわば「戦争状態」を意味する国民総動員をかけることは自己矛盾することになりかねません。
今回の部分的な動員は苦肉の策と言え、また、ウクライナ軍の反転攻勢を受けた焦りの裏返しとも言えます。
ロシア国内の受け止めは?
プーチン大統領の演説直後にモスクワ市内で話を聞いたところ、日本のメディアだという前提ではありますが、13人のうち11人がおおむね決定を支持するという反応でした。
それでも明確に反対するという若者や息子の動員を案じる母親の姿もありました。
ロシアでは最近、国民的な歌手が、ウクライナ侵攻を「幻想的な目標」と表現して「そんな目標のために子どもたちが殺されていくのをやめさせたい」などと批判し、高い関心を集めています。
一部の国民から動揺や反発が生じかねない動員にいよいよ踏み切ったプーチン大統領。あくまで侵攻を継続する構えですが、思惑どおりに進むのかは不透明です。

 

●ロシア動員令に抗議、1300人拘束 「無意味な戦争」市民恐れ出国の動き 9/22
ロシアのプーチン大統領が21日、ウクライナでの軍事作戦で劣勢を挽回するため部分動員令を出したことをきっかけに、ウクライナ侵攻や動員令に抗議するデモがロシア各地に広がった。人権団体「OVDインフォ」によると同日1300人以上が当局に拘束された。市民は「無意味な戦争」(予備役の男性)に動員される恐怖を口にした。出国の航空券を買い求める動きが進んでいる。
プーチン氏は反戦機運の高まりを恐れて総動員は避け、予備役を対象とする部分動員を出した。政権は近年デモを徹底弾圧しており、全国規模のデモは侵攻開始から間もない3月以来とみられる。
独立系メディア「メドゥーザ」などによると、第2の都市サンクトペテルブルクや東シベリアのイルクーツクなど38都市で抗議があり、拘束者が出た。
予備役の無職男性アンドレイさん(31)は取材に「戦争そのものと同様、動員も無意味で有害だ」と批判した。メドゥーザによると予備役は令状を受け取ると軍の許可なく出国できなくなる見通し。
●プーチン氏は犯罪的な戦争に失敗、多くの命奪う=ナワリヌイ氏 9/22
服役中のロシア反政府活動家ナワリヌイ氏は21日、プーチン大統領がウクライナ侵攻を巡り軍動員令に署名したことを受け、プーチン氏は犯罪的な戦争に失敗しているにもかかわらず、さらに多くのロシア人を死に追いやろうとしていると述べた。
プーチン大統領は21日、軍の部分動員令に署名したと明らかにした。動員令は第2次世界大戦以来で即日適用される。ショイグ国防相によると、30万人が召集される見通し。
ナワリヌイ氏は自身の弁護士によって録画・公開された刑務所からのビデオメッセージで「犯罪的な戦争が悪化し、深化していることは明らかだ。プーチン氏はできるだけ多くの人々を巻き込もうとしている」と批判。ロシア人の血で数十万人のウクライナ人を傷つけることを望んでいるとした。
また、ロシアの反戦団体「ベスナ」も「われわれの父、兄弟、夫など数千人ものロシア人男性が戦争という肉挽き器に放り込まれることになる。戦争は今、全ての家庭、全ての家族に押し寄せている」とし、動員令に反対する街頭抗議を呼びかけた。
●黒海艦隊がクリミアからロシアに「退避」、ハイマースの餌食避ける 9/22
英国防省の報告によれば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、クリミア半島を拠点としてきた黒海艦隊をロシア南部に移動せざるをえなくなっている。
英国防省は、毎日更新しているウクライナ戦争の情勢分析で、ウクライナ軍がクリミア半島の奥深くまで攻撃してきたことを受け、ロシアの黒海艦隊司令部が「キロ型潜水艦」を母港のセバストポリから、ロシア南部のノボロシースクに移動させているのはほぼ確実だ、と述べている。
「ウクライナ軍の長距離攻撃能力が向上し、(黒海艦隊にとっての)安全保障上の脅威レベルが変化したためだと見られる」
黒海艦隊を脅かしたウクライナ軍のクリミア攻撃の具体例として、英国防省は、この2カ月間に起きた黒海艦隊本部および主要な海軍飛行場への攻撃に言及している。
侵攻前は黒海の支配者だった
プーチンが2014年にクリミア半島を併合した「動機」の一つは黒海艦隊にとって安全な拠点を確保することだったが、せっかく手に入れたその拠点は失われつつある可能性が高い、と英国防省は分析する。
英国防省によるこの評価は、元米欧州軍司令官のベン・ホッジスの発言を受けたものだ。ホッジスは9月19日に公開された動画で、ロシア軍はウクライナの陸海で苦戦しており、黒海艦隊は「全く役立たず」になっていると述べた。
プーチンのウクライナ侵攻以前には、黒海艦隊は「基本的に黒海全体を支配していた」と、ホッジスは言う。「だがこの半年間で、ロシア海軍もロシア陸軍と弱さでが変わらないという現実をわれわれは目の当たりにしてきた」
ホッジスは、7億5000万ドルの価値があると推定される黒海艦隊の旗艦「モスクワ」の沈没に加えて、黒海で撃沈した複数のロシア艦船に言及した。
黒海艦隊は「ウクライナの海岸に近づくことを恐れ」、クリミア半島の陰に身を隠している、とホッジスは述べている。
「黒海艦隊は、潜水艦を除けば、全く役に立っていないと思う。戦いに参加していない」とホッジスは続ける。「ウクライナ軍はクリミアに迫っており、セバストポリも間もなくハイマース(高軌道ロケット砲システム)など長距離砲の射程に入る。そうなれば、黒海艦隊は手も足も出ない」
ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は8月、ロシアに奪われた領土を奪還するための大規模な反撃の一環として、クリミア半島を取り戻すと宣言していた。
●ロシアの軍事侵攻に適切な処罰を、ゼレンスキー氏が国連で訴え 9/22
ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、国連総会でビデオ演説し、自国に軍事侵攻したロシアが「適切に処罰」されることを望むと訴えた。
大統領は事前収録した演説で、ウクライナ政府が策定した持続可能な和平に向けた5項目の計画に言及。一方で、中立的立場を取る考えはなく、ウクライナが提案した以外の和平案は受け入れないことを強調した。
5項目にはロシアの武力侵攻に対する処罰、ウクライナの安全保障の再確保、同国の領土の一体性と安全の保証が含まれた。
ゼレンスキー氏は和平案の最初の項目としてロシアによる武力侵攻や国境と領土の一体性への侵害行為に対する処罰を求めているとし、「国際的に認められた国境が回復するまで、罰を与えなければならない」と主張した。
一方で、「人道と平和が攻撃されている」ため中立的立場を取る考えはないと述べた。
●バイデン大統領 国連で演説“国連憲章に違反”とロシア非難  9/22
アメリカのバイデン大統領は国連総会で演説し、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアについて「国連安保理の常任理事国が、地図から主権国家を消そうとした」と改めて非難するとともに、プーチン大統領が核戦力の使用も辞さない構えを示したことについても「核不拡散体制の責任を無視した無謀な発言だ」と強く批判しました。
アメリカのバイデン大統領は21日、国連総会で演説し、ロシアについて「国連安全保障理事会の常任理事国が隣国に軍事侵攻し、地図から主権国家を消そうとした」と述べ、安保理の常任理事国であるロシアがみずから国連憲章に違反したと非難しました。
そして、ウクライナの親ロシア派の勢力が領土の一方的な併合に向けて「住民投票」だとする活動を計画していることについて「ロシア政府は、偽りの住民投票を組織し、ウクライナの領土を併合しようとしている。重大な国連憲章違反だ」と指摘しました。
さらに、プーチン大統領が核戦力の使用も辞さない構えを示したことについて「核不拡散体制の責任を無視した無謀な発言だ」と述べ、ロシアがNPT=核拡散防止条約の締約国でありながら、責任を放棄していると強く批判しました。
そのうえで「われわれは、同盟国や友好国と連携し、ロシアに代償を科す。残虐行為や戦争犯罪についてロシアの責任を追及する」と強調しました。
一方、バイデン大統領は、ロシアによる軍事侵攻で悪化した食料危機に対応するためだとして、29億ドル以上、日本円にしておよそ4180億円の支援を表明しました。
「常任理事国と非常任理事国 増やすこと支持」
バイデン大統領は安全保障理事会について「いまの世界の要求に対応するため、この機関がより包括的になるときが来たと信じている。アメリカは、常任理事国と非常任理事国の両方を増やすことを支持している」と述べ、安保理改革に前向きな姿勢を示しました。
また「安保理のメンバーは、国連憲章を守るとともに、安保理が信用され、効果的であるために、異常事態を除いて、拒否権の使用は控えるべきだ」と訴えました。
「台湾海峡 一方による現状変更には反対」
バイデン大統領は台湾海峡について「われわれは、台湾海峡の平和と安定の維持を目指す。どちらか一方による現状変更には反対し続ける」と述べました。
さらに「われわれには、『1つの中国』政策があり、それは、40年にわたって紛争を防ぐのに役立ってきた」と述べ、「台湾は中国の一部だ」という中国の立場を認識する、従来からのアメリカの政策に変更はないという考えを改めて示しました。
●トラス英首相「壊滅的失敗を正当化」 ロシアのプーチン大統領を批判 9/22
トラス英首相は21日、就任後初の国連総会での演説で、ロシアのプーチン大統領が自国防衛のために核兵器の使用も辞さないと示唆したことなどについて、ウクライナでの「壊滅的失敗を必死に正当化しようとしている」と批判した。 
●若者戦地へ…“逃避用”航空券高騰…“部分動員”ロシア国内からも反発 9/22
ウクライナ侵攻をめぐり、プーチン大統領が発表した“部分動員”。ロシアでは、反戦ムードが盛り上がる一方で、国外へと脱出する動きが加速しています。
航空券は軒並み売り切れ、値段も高騰しているそうです。アルメニアやセルビアの空港には、ロシアからの渡航者の姿があります。
ロシアからの渡航者「僕の妻はウクライナ人で、家族はキーウにもいる」
ロシアからの渡航者「何が起きたのか、なぜ起きたのか。まだ信じられません。こうしてメディアと話をするのも怖い。政府関係者や、警察が見ていて、祖国でトラブルになるかもしれない。でも言いたい。ウクライナに自由を。お願い、誰かプーチンを止めて」
今のロシアでプーチン批判は、逮捕に直結します。そんなリスクを負いながらでも、首都・モスクワなど、各地で戦争に反対するデモが行われました。
デモ参加者「我々は以前から恐れるべきだった。最悪の事態はすでに起きている」
デモ参加者「子どもの命は絶対、渡さない。(Q.デモ参加で変わると思うか)変わらないかもしれないが、私の立場を表明するのは市民の義務 」
しかし、この国では、平和を望む声を上げるのは犯罪です。この日の拘束されたのは、ロシア全土で1300人以上に上りました。独立系メディアによりますと、逮捕されて、そのまま徴兵された人もいるそうです。
国連の場では、批判が相次ぎました。
アメリカ・バイデン大統領「ロシアは、今、さらに兵士を戦地に送ろうと呼び掛けている。世界は非道な行為を直視すべき」
ウクライナ・ゼレンスキー大統領「国連加盟国の中で、私の演説を遮って、『戦争に満足だ、私の戦争だ』と言いたげな人物は1人だけ」
●焦るプーチン…怒り狂うプーチン… 9/22
ウクライナ軍の反転攻勢に焦るプーチン…「核ミサイルを撃つタイミングは今しかない」
   ウクライナ軍が仕掛けた罠
ウクライナ戦争が重大な転換点を迎えている。9月11日、ウクライナ軍は北東部のハルキウ州のほぼ全域を奪還した。取り戻した領土は4000〜6000平方キロメートルとされ、東京都の面積の1.8倍にあたる。ロシア軍は守勢に回り、部隊の再編制を余儀なくされた。被害も甚大で主力兵器である戦車『T-80』を100台以上破壊され、ロシア軍の重要な補給地点であったイジューム、クピャンスクも失った。'14年の東部ドンバス紛争で指揮を取った元ロシア軍司令官のイゴール・ガーキンは此度の敗走についてこう語っている。
「現在の状況を日露戦争になぞらえて表現するならば、奉天会戦という言葉しか思い浮かばない。ロシアは負けつつあるかもしれない」
奉天会戦は日露戦争において、圧倒的に兵力差があったロシア軍を日本軍が破り、後の勝利を決定的とした戦いだ。国内からそんな声が出るほど、ロシアは窮地に立たされているのだ。
ハルキウ州の奪還は用意周到に仕組まれた奇襲作戦だった。8月9日、ウクライナ軍はクリミア半島西部のサキ航空基地を砲撃し、20日には軍港都市セバストポリでロシア黒海艦隊司令部を爆撃した。
その際、黒海艦隊が所有する戦闘機の半数以上を破壊した。ロシア軍は南西部の要衝へルソンで反攻が始まると予測し、北部、東部に駐留していた兵力を南部に移送し、守備を固めた。
しかし、それが罠だった。ウクライナ軍は手薄になったハルキウ州を一気に攻め立てた。軍事評論家の高部正樹氏が語る。
   ウクライナが求めていた戦果
「NATO諸国にウクライナへの『支援疲れ』が漂うなか、戦地はほどなく冬を迎えようとしている。積雪や極寒で前線が膠着するし、天然ガス不足に悩むドイツなどヨーロッパ諸国からの支援が滞るかもしれない。ウクライナは、更なる支援を求めるにあたって、何としても戦果を上げたかったのでしょう」
奪還作戦において、成功のカギを担ったのが主に米国から供与された最新兵器である。まずは制空権を確保するために、攻守両面で重要な役割を果たすレーダーを破壊するミサイル『AGM-88 HARM』を導入した。
そして、それを正確に撃ち込むのに一役買ったのが高性能偵察ドローンの『スキャンイーグル』だ。昼夜問わず、24時間航行することが可能で、ロシア軍の砲撃の射程外から電子光学、赤外線を使ったセンサーで敵レーダーの位置を捉えていたのだ。
さらに、自爆特攻ドローン『スイッチブレード』『フェニックスゴースト』が装甲車両などを攻撃し、兵力を弱らせていった。
「特に戦果をあげたのは、高機動ロケット砲システム『HIMARS』です。静止したものを目標にすればGPS誘導でほぼ100%命中させることができます。1~2ヵ月前まで戦況は膠着状態で、ロシア軍がじりじりと前進していましたが、 HIMARSにより司令部、弾薬庫などが攻撃され、前線への補給が滞った。ロシア軍の圧力が弱くなったことで、ウクライナ軍が反撃するための時間・空間的余裕が生まれたのです」(防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄氏)
北東部を解放したウクライナ軍は、南部でも攻勢を強めていくだろう。ゼレンスキー大統領も独立記念日の前日にあたる8月23日、こう宣言している。
「クリミア半島はわれわれの領土であり、他国との協議なしにわれわれが正しいと決めた方法で取り戻す。奪還は、欧州における安全と正義の回復に向けた歴史的な反戦の一歩となる」
   領土を失うくらいなら
ロシア軍はクリミア半島を死守すると同時に、ウクライナ軍を押し戻すために北部の防衛ラインを急いで再構築しなければならない。10月下旬になれば、雪が降り始め前線は動けなくなるからだ。ロシア軍は主力部隊をへルソンに配置しているが、ドニプロ川周辺の橋を『HIMARS』により破壊されて輸送路が断たれている。
自軍が敗退するさまを眺めるプーチン大統領は冷酷な表情を崩さない。だが、その内面は怒りと屈辱、焦りで煮えたぎっているだろう。
プーチンにとって、この戦争の大義名分は「ウクライナに跋扈するネオナチを排除するための祖国防衛」だ。しかし、現状を見てみれば、実効支配していたウクライナ東部のドンバス地方、クリミア半島を失う恐れすらある。
そして、侵攻以前より領土を減らすことになれば、それはプーチンにとって明白な敗北であり、ロシア史上最大の恥となる。
19世紀にナポレオンがロシアに侵攻したとき、政治家たちは自らの指示でモスクワを燃やした。ナポレオンは『占領する意味がない』と撤退。プーチンはその逸話を『ロシアの勝利』とし、何度もプロパガンダとして利用してきた。プーチンは極端な愛国主義者だ。そして、奇しくも、その状況が現代に再現されている。
欧米の息がかかったウクライナ軍が、さらなる侵攻を企てようものなら、自国領土での損害や国際社会からの猛反発も厭わず、常軌を逸した反撃に出るだろう。そのために必要な兵器は、一つしかない。核兵器だ。
「まさに今が使用のタイミングではあります。プーチンが現在、動員している陸軍、空軍の兵力で巻き返すことができないと判断すれば、核兵器を使用する可能性は否定できません」(軍事ジャーナリストの菊池雅之氏)
「11月までに決着をつけろ!」…怒り狂うプーチンが「核ミサイルで狙う都市」
   側近はますます強硬に
国内で活発化し始めた反戦運動も核使用の現実味を高める一因となっている。ロシア軍が守勢に回っているという情報が徐々に伝わり、9月11日に行われた統一地方選では、公然と反戦の声を上げる野党政治家や有権者が目立った。
さらに「プーチンの頭脳」と呼ばれるロシアの極右思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘ダリア氏が暗殺された事件でも、反プーチンを掲げる『国民共和国軍』が犯行声明を発表した。
今、ロシア国内ではプーチン更迭を求める動きがかつてないほどに大きくなっているのだ。筑波大学名誉教授の中村逸郎氏が言う。
「プーチンは、11月にバリ島で開かれる予定のG20までに、なんとしても『特別軍事作戦』を終わらせたいという思惑が強い。今の状況のまま出席すると、当然、欠席する国は多くなり、国際社会での孤立が浮き彫りになってしまいます。そうなれば、厭戦気分が漂い始めた国内でも世論に押され、プーチン陣営の支持基盤も揺らいでくる。
一方で、ウクライナ侵攻を主導したロシア連邦安全保障会議書記のパトルシェフら側近はより強硬な手段を主張し始めています。核兵器を使い、強引にでも作戦を終わらせることもあり得なくはありません」
   プーチンが「狙う」場所
ウクライナ軍が米国から供与された最新兵器で攻勢を続けるなか、プーチンは一発の核ミサイルで戦況をひっくり返そうとしている。いったい、どこが狙われるのか。
「『威嚇』として人的被害が少なく、かつロシアの領土に放射能の影響が及びにくい地方の原野などに、広島原爆の3分の1程度の威力を持った核ミサイルを落とす可能性があります。首都・キーウとオデーサを結んだ直線から東に離れたウクライナ中央部が着弾地点になると思います」(軍事評論家の高部正樹氏)
人的被害を避けるという意味では海上で爆発させる可能性もある。その際、狙われるのはオデーサ沖合の黒海だ。海上ならば人的被害もなく、北風で放射能は南に流れていき、クリミア半島に放射能の影響が及ぶことはない。NATO諸国も報復はしてこないと踏んでいるのだ。
プーチンは原発を使った「核攻撃」を行う怖れもある。特殊部隊などの手で故意に事故を発生させ、放射能をバラまくのだ。標的になるのは南ウクライナ原発だろう。
現在ロシアが実効支配している地域にあるザポリージャ原発とちがって、ここならば、支配地域や周辺国の汚染は最小限となる。国際社会からの反発は必至だが、ロシアは「偶発的な事故」としてシラを切るだろう。いずれにしても、南部で攻勢を仕掛けようとしているウクライナ軍に対して強烈な牽制となる。
だが、さらにおぞましいシナリオもある。奪還された都市に駐留するウクライナ軍をターゲットに核ミサイルを撃ち込むことだ。先述したように、プーチンは戦争に負けるくらいなら、自国の領土を放射能で汚染させても勝利をもぎ取ろうとするかもしれない。
   「早すぎる撤退」の不気味
現在、ロシア側にとって、最も窮地に立たされている戦線は東部のドンバス地方だ。ウクライナ軍は徹甲部隊を投入し、米国から新たに供与された対地雷装甲車『マックスプロ』を駆使して一気に領土奪還を目論んでいる。
「このような状況での核兵器の使われ方はごく単純に言うと二つがあり得ます。一つは相手を引き下がらせるために『使うぞ! 』と脅して、相手が引き下がらなかった場合に使うパターン。もう一つは黙って奇襲的に使うパターンです。軍事的には黙って使うほうが効果は高い」(防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄氏)
その場合に狙われる地域として、候補に挙げられるのはハルキウ、イジュームなどウクライナ軍が今回の奇襲作戦で奪還した補給の重要拠点だ。ここを叩けば、ウクライナ軍の勢いは止まることになるだろう。
一つ気にかかるのが、これらの都市を奪還されたあとのロシア軍の動きである。異様に早いスピードで撤退したのだ。この急ぎ方は、核ミサイルを撃つための準備ではないかと指摘する専門家も少なくない。
「使用される核兵器は短距離弾道ミサイル『イスカンデル』と見て、間違いないでしょう。射程は500km程度で、東部の国境地帯に配備すれば、現在、戦闘が行われている地域のほとんどの主要都市が射程圏内に収まります」(前出・高部氏)
このミサイルの恐ろしいところは、複雑な軌道を描きながら超音速で巡航し、さらに本命の核弾頭を確実に着弾させるために囮の爆弾をバラまくことだ。敵の防空システムは攪乱され、迎撃が非常に難しい。また、機動性も高く、装甲車両に積み込んで敵の攻撃が届かない地域へ短時間で移動させることができる。
ウクライナ軍の奇襲作戦で敗走した3日後、ロシア大統領報道官のペスコフはこう強調した。
「特別軍事作戦は継続しており、当初の目標を達成するまで継続する」
これが本気の発言なら、目標達成のため使われる兵器はもはや一つしか残されていない。77年の歳月を経て、再び世界は核の炎による悲劇を目の当たりにするのか。
●編入領土攻撃なら「核使用」も 住民投票前にけん制―メドベージェフ氏 9/22
ロシアのメドベージェフ前大統領は22日、ウクライナ東部ドンバス地方などが住民投票を経てロシアに編入されると明言した上で「(編入された領土を防衛するため)戦略核を含むあらゆる兵器が使用され得る」と述べた。プーチン大統領の21日の国民向け演説などを踏まえ、通信アプリで警告した。
23日から親ロシア派がドンバス地方や南部ヘルソン、ザポロジエ両州で強行する住民投票を前に、占領地の奪還を目指すウクライナや、重火器を支援する米国などを強くけん制した形。極超音速兵器にも触れ、ロシアが編入したクリミア半島が攻撃されるよりも「はるかに速く」欧米に達すると記した。
●ロシアの動員令、「核のレトリック」批判 一段の制裁追求―G7外相 9/22
先進7カ国(G7)議長国のドイツは22日声明を発表し、G7外相が21日にニューヨークで行った会合で、ロシアによる部分的動員令や「無責任な核のレトリック」は遺憾であり、ロシアへの一段の制裁を追求するとの認識で一致したと明らかにした。
声明は、ウクライナ東部や南部の親ロシア派によるロシアへの編入に向けた住民投票について「偽の投票」と強く批判。編入はウクライナの主権と国連憲章への重大な違反で、各国に投票結果を認めないよう呼び掛けた。
●ウクライナとロシアが捕虜交換…計270人、侵略開始後で最大か  9/22
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は22日のビデオ演説で、ロシアと捕虜交換が成立し、ウクライナ内務省系の武装組織「アゾフ大隊」の司令官ら215人が解放されたことを明らかにした。米英など外国人10人も含まれているという。
ロシア側には、プーチン露大統領と親密とされる親露派政党の党首だったビクトル・メドベドチュク氏ら55人を引き渡した。交換の規模は2月の侵略開始後、最大とみられる。
プーチン政権は、ゼレンスキー政権を一方的にナチス・ドイツになぞらえ、南東部マリウポリが拠点のアゾフ大隊を象徴的な存在として敵視してきた。
ゼレンスキー氏が、捕虜交換を条件に、ロシア産アンモニアの輸出再開を支持する意向を表明したことが影響したようだ。アンモニアは肥料の原料になる。
●焦るロシア…ウクライナの土地を併合へ 「動員令」と「住民投票」 9/22
ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア。9月21日、プーチン大統領は「ロシア国内で部分的動員令を行うという国防省と軍の提案を支持する」と述べ、「予備役」を動員すると宣言しました。この発表を受けてロシアでは、抗議デモや国外脱出の動きが広がっています。
またロシアは、ウクライナ領土の一方的な編入への動きも強めています。ウクライナ東部と南部の4州の一部で、ロシアへの編入について問う住民投票を行うと親ロシア派組織などが発表。プーチン大統領はこれを支持し、「ロシアの国民と領土を守るため、持っているあらゆる手段を使う」と述べ、核兵器を使う可能性までちらつかせて西側諸国をけん制しています。
ウクライナは9月6日以降、欧米の支援などを受けてロシアに制圧されたいくつかの地域を奪還し、その範囲は拡大を続けています。ウクライナ問題に詳しい神戸学院大学の岡部芳彦教授は、「動員令」と「住民投票」から、ロシアの「焦り」と「狙い」が見えると話します。詳しい解説をお聞きします。
新実キャスター「岡部教授は『動員令』について、『欧米の武器支援などに対抗』するために必要だと判断されたわけですよね?」
岡部芳彦教授「そうですね、最近のロシア軍はウクライナ軍に押されて兵員不足です。刑務所の受刑者も動員していましたが、それでも足りないので、『動員令』で兵員を確保しようとしています」
新実キャスター「ロシアは『動員令』と同時に、多くの部分を制圧しているルハンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州について住民投票を行い、賛成多数であればロシアの領土にすると発表しました。『動員令』は国民の反発を買いますが、この『併合』で戦争の成果が上がっているということを国内にアピールする意図があるんですね?」
岡部芳彦教授「そうですね。本来であれば4州をすべて占領してから住民投票を行うのが目標だったんですけど、ルハンスクは99パーセント、ドネツクとザポリージャは66パーセント、ヘルソンは93パーセント程度しか占領していない中で、成果を見せるのをかなり急いでいるようにみえます」
新実キャスター「それが『焦り』ということなんですね。住民投票を行ったからといってロシアが簡単に4州を併合できるとは考えにくいんですが、『投票結果の改ざんも可能』なので、賛成多数という結果が発表されるんですね?」
岡部芳彦教授「そうですね、2014年にはクリミア併合がありました。ウクライナ東部の指導部には、ロシアを支持する人たちがいます。しかし、住民にはそうでない人も多い。多くの人たちはロシアの占領を嫌って避難していました。そんな中で行われた投票で、賛成が96パーセント以上というあり得ない数字が出た。今回も似たような流れなので、数字で本当かどうかが分かると思います」
新実キャスター「クリミア半島の賛成『96パーセント以上』という数字は嘘なんですか?」
岡部芳彦教授「常識的にはあり得ない数字なので。クリミアのときはまだ、国際選挙監視団を呼んで正当に見せようとする余裕がありましたが、今回はそんな余裕のない混乱の中で行われるので…投票自体が実施できればの話ですが」
新実キャスター「ロシアがウクライナに領土を奪還されるような状況になり始めた『焦り』から、住民投票・編入という方向に動いているんですが、そこには確固たる『狙い』もあります。岡部教授が見るロシアの狙いとして、『4州を併合すれば“ロシアの領土”になる。そこを攻撃されれば、核を使用できる』というロジックが成立するということですが」
岡部芳彦教授「そうですね。この戦争は“ドネツク人民共和国”と“ルハンスク人民共和国”という2つの偽物の国の独立を承認する、というところから始まりました。今はフェーズとともに理屈も変わって、自国の領土にしてしまうと。プーチン大統領は6月のサンクトペテルブルクの国際経済フォーラムで『国家の主権が脅かされるときは核攻撃もあり得る』と言っています。“国家の主権が脅かされる”とは“領土を侵略される”ということになりますので、4州を併合することで核兵器の使用につながるという理屈につなげようとしています。ウクライナからすると自国の領土の奪還なのですが」
新実キャスター「今後、ウクライナは領土奪還作戦を継続するとみられていますか?」
岡部芳彦教授「そうですね、状況を静観するというのはあると思いますが、領土奪還は継続すると思います。ウクライナもロシアも、われわれほど核兵器を怖いものだと考えていません。『戦術核』のようなものが使われる可能性があるというのは、彼らはいつも考えています」
新実キャスター「今のウクライナの優勢は欧米の武器支援があってのものだと思います。ウクライナが核攻撃をその程度に考えていたとしても、アメリカが、『核を本当に使うなら…』と支援をためらう可能性はありませんか?」
岡部芳彦教授「今まではロシアの核使用を恐れていましたので、そういった側面はあったのですが、逆に武器支援のフェーズも上がるかもしれません。これまでウクライナが求めていた最新兵器は提供されていませんでしたが、近い将来、アメリカが戦闘機の提供を行う可能性も出てきたと思います」
新実キャスター「戦況が大きく動くきっかけになるかもしれないということですね」
●プーチン大統領 “予備役”部分的動員発表 なぜ? 9/22
ウクライナへ軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は2022年9月21日、国民向けのテレビ演説を行いました。この中で、戦地に派遣する兵士について、職業軍人だけでなく、有事に招集される、いわゆる予備役を部分的に動員する大統領令に署名したことを明らかにしました。演説全文は以下のとおりです。
プーチン大統領演説 [全文]
皆さん、私の演説のテーマは、ドンバス地域の情勢と、2014年の軍事クーデターによりウクライナで政権を奪取したネオナチ政権からドンバス地域を解放するための特別軍事作戦の経過だ。
きょう私が話す相手は、わが国の全国民、さまざまな世代・年齢・民族の人々、われわれの偉大な祖国の国民、大いなる歴史的なロシアが結ぶ全ての人々、いま最前線で戦い、任務についている兵士・将校・義勇兵、われわれの兄弟姉妹であるドネツク人民共和国、ルハンシク人民共和国、ヘルソン州、ザポリージャ州のほかネオナチ政権から解放された各地域の住民だ。
話すのは、ロシアの主権と安全、領土保全のために不可欠で緊急の対応について、みずからの将来を決めたいという同胞の希望と意志への支援について、そして、あらゆる手段でみずからの支配を保とうと、主権を有し自立した発展の中心を封鎖・抑圧し、ほかの国や国民にみずからの意志を押しつけ続け、偽善を植え付けようとする一部西側エリートたちの侵略政策についてである。
西側の目標は、わが国を弱体化させ、分裂させ、最終的に滅ぼすことである。彼らは1991年、ソビエトを分裂させることができたので、今度はロシア自体が、互いに致命的に敵対するたくさんの地域と州に分裂する時が来たと明言している。
そして、西側は長いことそうした構想を練ってきた。彼らはカフカスの国際テロリスト集団を鼓舞し、わが国の国境近くにNATOの攻撃インフラを置いた。彼らは全体的なロシア嫌いを武器として、特にウクライナでは数十年にわたり意図的にロシアへの憎悪を醸成し、反ロシアの足掛かりとしての運命を背負わせ、ウクライナ国民自身を大砲の餌食にしてわが国との戦争に追い込んだ。
彼らはこの戦争を2014年に始め、民間人に武力を行使し、クーデターの結果ウクライナに生まれた政権の承認を拒む人々に対して、ジェノサイド、封鎖、テロを計画した。
そして、いまのキエフ(キーウ)政権が実際、ドンバスの問題の平和的な解決を公式に拒否し、さらに核兵器を要求したあと、すでに過去2度起こったとおり、ドンバスへのさらなる大規模攻撃が避けられないことはじつに明白となった。そうなれば、ロシアのクリミア、すなわちロシアに対する攻撃へと続くことも避けられなかっただろう。
これを踏まえれば、先制的な軍事作戦を行う決定は絶対に必要不可欠であり、唯一可能なものだった。ドンバス全域の解放という作戦の主要目標は、以前もいまも変わっていない。
ルハンシク人民共和国は、すでに全域でネオナチの掃討が済んでいる。ドネツク人民共和国での戦闘は続いている。この8年間で、キエフ(キーウ)の占領政権はこの場所に深く階層化された長期的な防衛施設を築き上げた。正面突破すれば多大な損失を出すことになることから、われわれの部隊とドンバスの共和国軍の部隊は、計画的かつ有能に行動し、装備を使用し、人員をむだにせずに、ドネツクの土地を一歩ずつ解放している。町や村からネオナチを追い出し、キエフ(キーウ)政権が人質や人間の盾にした人々を支援している。
ご承知のとおり、特別軍事作戦には、契約に基づいて任務に当たる職業軍人が参加している。彼らと肩を並べて戦っている義勇兵組織は、民族も職業も年齢も異なる人たち、真の愛国者だ。彼らは心の声に従ってロシアとドンバスを守るため立ち上がった。
この点に関して、私はすでに政府と国防省に対し、義勇兵とドネツク・ルハンシク人民共和国の部隊の戦闘員の法的な位置づけを、完全かつ可及的速やかに決定するよう指示した。この地位は、物資・医療面の支援や社会保障を含め、ロシア軍の正規軍人と同じでなければならない。ドンバスの義勇兵組織と民兵部隊に装備品を供給する態勢作りに特別な注意を払わなければならない。
ドンバス防衛の主要任務の決定に際し、わが軍は、国防省と参謀本部の戦略行動全般に関する計画と決定に基づいて、ヘルソン州とザポリージャ州の相当な領域と、その他いくつかの地域をネオナチから解放した。結果として、1000キロを超える長大な戦線が形成された。
きょう、初めて公言したいこととは何か。イスタンブールでの交渉を含め、特別軍事作戦の開始後すでに、キエフ(キーウ)の代表団はわれわれの提案に非常に前向きな反応を示した。これらの提案は何よりもロシアの安全、われわれの利益に関わるものだった。ところが明白に、平和的解決は西側諸国の思惑に沿わず、一定の妥協が成立したあと、実際キエフ(キーウ)には一切の合意を潰すよう直接の命令が下されたのだ。
ウクライナにはさらに多くの武器が投入されるようになった。キエフ(キーウ)政権は、外国人よう兵と民族主義者から成る新たな武装集団、NATOの教範で訓練され西側の顧問が事実上指揮する軍隊を配備した。
同時に最も過酷な形で強化されたのが、2014年の軍事クーデター直後に確立されたウクライナ全土の自国民に対する弾圧体制だ。脅迫・テロ・暴力による政治はますます大規模で、おぞましく、野蛮な形態となっている。
強調しておきたい。ネオナチから解放された領土は、歴史的に「ノヴォロシア」の土地だが、暮らす人の大多数が、ネオナチ政権のくびきに置かれることを望んでいないとわれわれは知っている。ザポリージャ州、ヘルソン州、ルハンシク、ドネツクで、ハルキウ州の占領地域でネオナチがはたらいたような残虐行為が見られたし、まだ見受けられる。バンデラ主義者やナチの懲罰隊員の子孫は、人を殺し、拷問し、投獄し、憂さ晴らしをし、民間人に制裁を加え、嘲笑している。
ドネツク人民共和国とルハンシク人民共和国、ザポリージャ州、ヘルソン州には、戦闘開始前は750万人以上が居住していた。その多くが避難民となり、故郷を去ることを余儀なくされた。そして、残った約500万人は、いま、ネオナチ戦闘員による絶え間ない砲撃やミサイル攻撃にさらされている。彼らは病院や学校を攻撃し、民間人に対するテロ行為を行っている。
われわれは、近しい人々を苦しめるため迫害者に引き渡す倫理上の権利を持たず、運命をみずから決定したいという彼らの切実な願いに応えないわけにはいかない。ドンバスの人民共和国の議会とヘルソン、ザポリージャ両州の「軍民行政府」は、その土地の将来についての住民投票の実施を決定し、われわれロシアにこうした措置を支持するよう要請してきた。
強調しておきたい。われわれは、人々がみずからの意思を表明できるよう、住民投票の実施に向けた安全な条件を整えるためあらゆることを行う。そして、ドネツク・ルハンシク人民共和国、ザポリージャ州、ヘルソン州の住民の大多数によってなされるみずからの将来についての決定を、われわれは支持する。
皆さん。
現在ロシア軍は、すでに話したとおり、1000キロを超える戦線で活動していて、ネオナチ組織だけでなく、事実上、西側が結集した全軍事機構と対抗している。
こうした状況においては、次のような決定を下す必要があると考える。それは、われわれが直面する脅威に十分対応できるものだ。すなわち、われわれの祖国と主権、領土の一体性を守り、わが国民と解放地域の人々の安全を確保するために、ロシア連邦で部分的な動員を行うという国防省と参謀本部の提案を支持することが必要だと考える。
繰り返しになるが、言っているのは部分的な動員のことで、つまり兵役への招集の対象となるのは、現在予備役になっている国民だけで、とりわけ(ロシア)軍で勤務したことがある者、一定程度の軍事の専門知識や関連する経験を有する人だけだ。
兵役に招集された者は、部隊への派遣に先立って必ず、特別軍事作戦の経験を考慮した追加の軍事訓練を受けることになる。
部分的な動員に関する大統領令には署名した。
法令に基づき、連邦議会の上下両院には、本日、正式に書面で通知される。
動員措置は本日9月21日から開始される。各地の首長に対し、徴兵委員会の業務に必要なあらゆる援助を行うよう指示する。
特に強調したいのは、動員により兵役に招集されたロシア国民は、契約に基づき兵役に就く軍人と同じ地位、給与、あらゆる社会保障を受けるということだ。
部分的動員に関する大統領令は、国家防衛の調達を履行するための追加的な措置も規定していることを付言する。軍産複合体の役員は、兵器や装備品の増産と、追加の生産設備の配備に直接の責任を負っている。また、防衛産業に対する物的、資源的、財政的保障をめぐる全ての問題は、政府によって遅滞なく解決されなければならない。
西側は、攻撃的反ロシア政策においてあらゆる線を越えた。われわれは常に、わが国とわが国民に向けた脅威を耳にしている。西側の無責任な政治家の一部は、ウクライナに対する長距離攻撃兵器、つまりクリミアやその他のロシアの地方への攻撃を可能とするシステムの供給計画について、ただ話をしているというだけではない。
こうしたテロ攻撃は、西側の兵器を利用したものも含め、すでにベルゴロド州とクルスク州の国境付近の集落に対して行われている。NATOは、最新のシステム、航空機、艦船、衛星、戦略無人機を利用して、リアルタイムでロシア南部全域を偵察している。
アメリカ、イギリス、NATOは、軍事行動をわが国の領土へ移すようウクライナに直接働きかけている。もはや公然と、ロシアは戦場であらゆる手段でもって粉砕され、政治・経済・文化、あらゆる主権を剥奪され、完全に略奪されなければならないと、語られている。
核による脅迫も行われている。西側が扇動するザポリージャ原発への砲撃によって、原子力の大災害が発生する危険があるというだけでなく、NATOを主導する国々の複数の高官から、ロシアに対して大量破壊兵器、核兵器を使用する可能性があり、それは許容可能という発言も出た。
ロシアに対してこうした発言をすることをよしとする人々に対し、わが国もまたさまざまな破壊手段を保有しており、一部はNATO加盟国よりも最先端のものだということを思い出させておきたい。わが国の領土の一体性が脅かされる場合には、ロシアとわが国民を守るため、われわれは、当然、保有するあらゆる手段を行使する。これは脅しではない。
ロシア国民は確信してよい。祖国の領土の一体性、われわれの独立と自由は確保され、改めて強調するが、それはわれわれが保有するあらゆる手段によって確保されるであろう。核兵器でわれわれを脅迫しようとする者は、風向きが逆になる可能性があることを知るべきだ。 世界の支配を目指し、わが祖国、わが母国を解体し隷属させると脅す者を阻止するのは、われわれの歴史的な伝統で、わが国民の宿命の一部となっている。われわれは今回もそれを成し遂げ、今後もそうし続ける。皆さんの支持を信じている。
●プーチン演説、合理的判断の欠如が露呈…現実から自分を分離、国民が離反 9/22
ロシアのプーチン大統領は9月21日、国民向けのテレビ演説を行い、ウクライナで戦闘を継続すべく部分的な動員令に署名したと明らかにした。これは、戦地に派遣するために、職業軍人だけでなく、有事に招集される、いわゆる予備役も部分的に動員する大統領令である。また、ウクライナ東部と南部の占領地域の親ロシア派武装勢力幹部らがロシアへの編入の是非を問う住民投票を実施すると発表したことについて「決定を支持する」と述べた。
驚くことに、この演説でプーチン氏は「欧米側は、核兵器でわれわれを脅迫している。ロシアの領土保全に対する脅威が生じた場合、国家と国民を守るために、あらゆる手段を行使する」と語り、核戦力の使用も辞さない構えを示した。おまけに、「これはブラフ(はったり)ではない」と付け加えた。
プーチン氏がこの演説を行った背景には、ウクライナ軍が反転攻勢を強めており、東部でかなり広範囲の領土を奪還したことがあると考えられる。当然、プーチン氏は危機感を強めているはずだが、そんなことはおくびにも出さず、「一歩も引かない」という強い意志を示した。まあ、これまでプーチン氏は自ら引いたことが一度もないのだから、こういう反応をすることは予想の範囲内だった。
しかも、「これはブラフ(はったり)ではない」と凄んだのは、欧米諸国も自身の演説に耳をそばだてることを想定したうえでのプーチン氏の脅迫にほかならない。一応スーツにネクタイ姿だったが、ヤクザ映画に出てくる○○組の組長がテーブルにドスを突き立てて脅しているような印象さえ受けた。
「こいつ堅気じゃないな」と思わせる迫力で、欧米の民主主義国には、これだけ凄んで見せられる首脳はいない。日本の首相では到底太刀打ちできないだろう。さすが元KGBで、幾多の修羅場をくぐり抜けてきた独裁者だけのことはあると妙に感心した。
脅迫によって欧米諸国の要心を目覚めさせることになっても、どうでもいい
脅迫について、ルネサンス期のイタリアの政治思想家、マキアヴェッリは次のように戒めている。
「ある人物が、賢明で思慮に富む人物であることを実証する材料の一つは、たとえ言葉だけであっても他者を脅迫したり侮辱したりしないことであると言ってよい。なぜならこの二つの行為とも、相手に害を与えるのに何の役にも立たないからである。脅迫は、相手の要心を目覚めさせるだけだし、侮辱はこれまで以上の敵意をかき立たせるだけである。その結果、相手はそれまでは考えもしなかった強い執念をもって、あなたを破滅させようと決意するにちがいない」
この戒めをプーチン氏が知っているかどうか、わからない。たとえ知っていたとしても、ウクライナさらには欧米諸国がこれまで以上に要心しようが、敵意を募らせようが、どうでもいいと思っているのではないか。プーチン氏は、とにかく自分が仕掛けた戦いに勝ち、強大なロシアを取り戻すことしか考えていないように見える。
こうした思考回路に陥るのは、この連載で以前指摘したようにプーチン氏がナルシシストだからである。ナルシシストが何よりも恐れるのは、自己愛が傷つくことだ。だから、せっかく占領したウクライナ東部の領土の広大な部分をウクライナ軍に奪還され、ロシア軍が東部での戦線の重要拠点からの撤退を余儀なくされたことは、プーチン氏にとって何よりも耐えがたかったはずだ。
この傷ついた自己愛を修復すべく、兵力不足を補うために、予備役まで動員する決断をしたと考えられる。しかし、プーチン氏の決断が合理的かどうか、はなはだ疑問である。プーチン氏が部分的な動員令に署名したとの発表を受け、ロシア発の航空便に予約が殺到し、週内の便はほぼ満席になっているという。
おそらくロシアから逃げ出したい人が多いのだろう。そういう願望を抱くのは、この動員令の対象者だけではないはずだ。これから統制や締めつけがさらに厳しくなり、物資不足も深刻になると思えば、逃げるが勝ちと考えるのは当然だ。
ナルシシストの独裁者にはとてもつきあっていられないというのが、逃げ出そうとするロシア人の本音ではないか。とくに「補正要素」が欠けた悪性のナルシシズムの持ち主は、「偉大さを維持するために、どんどん現実から自分を分離していく」(『悪について』)が、プーチン氏はその典型のように見える。
当然、これからも客観性と合理的判断が欠如した決断を繰り返し、さらなるロシア国民の離反を招く可能性が高い。もっとも、プーチン氏は国民と側近を恐怖で支配しているので、表立ってプーチン氏を批判する動きはそれほど盛り上がらず、嫌気がさしたロシア人が国外に脱出するだけかもしれない。
●ロシア軍の予備役部分動員、何を意味するのか? 9/22
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は21日、ウクライナをめぐり「部分的な動員令」の発動を宣言した。ウクライナを侵攻中のロシア軍は今月に入り、占領地を奪還されるなど大幅な後退を強いられている。国民向けのビデオ演説でプーチン氏は、ウクライナ政府を支援する西側諸国によって、ロシアの「領土的一体性」が直接脅かされていると述べた。また北大西洋条約機構(NATO)に対し、核保有国であるロシアはあらゆる兵器を使って、西側の「核の脅迫」に対応できると警告した。
この前日には、ウクライナ東部と南部の4州でロシアが任命した指導者らが、ロシアへの編入を問う「住民投票」と行うと発表している。ロシアは2014年にクリミア半島を併合した際も、同様の動きを見せていた。
部分動員、その実態は?
ロシアは、軍務経験のある予備役を30万人招集する計画。プーチン大統領は、招集されるのはウクライナでの紛争で必要となる特別技能を持つ人たちだと強調した。60歳以上の定年退職者も対象になる。ロシアには2500万人の予備役がいるため、理論上はこの人数を動員することが可能だが、その予定はまだないという。プーチン大統領とセルゲイ・ショイグ国防相は共に、徴集兵を前線に送り込むことはないと強調している。ショイグ国防相は一方で、1000キロにわたる前線を守るためには追加の部隊が必要だと述べた。部分動員は数カ月にわたって段階的に行われる予定。プーチン氏は先に、ロシアは長期戦に備えていると話していた。ロシアの国営通信は、ロシア政府が動員令を発するのは第2次世界大戦以来だと伝えているが、実際には1980年代にアフガニスタン紛争のために、その後も北コーカサスでのチェチェン紛争のために、それぞれ数千人を招集している。これらの紛争では十分な訓練を受けていない徴集兵らが多く殺された。そのためロシア政府は今回、反戦ムードの高まりを避けようと慎重になっているようだ。
ロシア軍はウクライナ軍より強いのか
ロシア軍は数の上ではウクライナ軍に勝っているが、ウクライナは戦場での戦術や西側の精密な武器などでその差を埋めている。
2月の侵攻開始時、ウクライナには19万人のロシア兵が投入されていた。これに、ウクライナ東部ドンバス地方の親ロシア派戦闘員が数千人いた。
ロシア政府はその後、金銭的な優遇と引き換えに大規模な兵の募集活動を行っている。そのため、シベリアやコーカサスといった貧しい地域から、チェチェン紛争を経験した戦闘員などが、追加の部隊員として投入されている。ロシアは平時、軍隊の規模の上限を軍人100万人余り、一般職員約90万人と定めている。しかしプーチン大統領は8月、13万7000人を追加雇用する大統領令に署名した。同国の徴兵制度では、18〜27歳の男性に対し通常1年間の兵役義務を課している。ただし、健康状態や学生であることなど、さまざまな理由で免除される。ロシア政府は当初、徴集兵をウクライナに送り込むことはないと述べていた。しかし実際には、徴集兵らに無理やりウクライナ行きの契約をさせていたことが明らかになり、当局者数人が懲戒処分を受けている。プーチン氏はその後、徴集兵は戦闘には投入されないと強調している。侵攻以前、ウクライナ軍の規模は現役の兵士が19万6600人と、非常に小さかった。しかしウクライナ政府は大規模な動員令を発令し、兵士の数を大幅に増やした。
なぜ今なのか
西側の軍事アナリストや政治家らは、東部ハルキウでのウクライナ軍の大規模な反撃によって、ロシア政府が守勢に転じたとみている。これが、プーチン氏の最近の決断を説明している。ショイグ国防相はさらに、これまでウクライナでロシア兵5937人が戦闘中に死亡したと発言した。しかし英国防省が7月に発表した分析では、ロシア側の死者は2万5000人と推測されており、これと比べてはるかに少ない。ウクライナは、敵側の犠牲者は5万人としている。最近では、兵力の大きな損失を補うため、国内の刑務所で雇い兵を募集していることも明らかになっている。1979〜1989年のアフガニスタン紛争では、旧ソ連軍は1万5000人の兵士を失っている。BBCロシア語の調査では、ロシアはウクライナでパイロットや情報専門家、特別部隊など1000人以上のエリート軍人を失っている。
プーチン氏は核戦争を警告しているのか
プーチン大統領は演説の中で、ウクライナ政府を支援する西側諸国が反ロシア的な「脅威」になっていると非難。ロシアの領土的一体性が脅かされた場合、必要であればあらゆる兵器を使用すると警告した。また、「わが国にもさまざまな大量破壊兵器があり、中にはNATO諸国が保有するものよりも近代的なものもある」、「これははったりではない」と付け加えた。ロシアの軍規では、国土が攻撃され脅かされた場合に戦術核の使用が認められている。ロシア軍はウクライナですでに、時速6000キロ超の長距離極超音速ミサイルを使っている。しかしアナリストらは、戦争の潮目を変えるには至っていないとみている。ロシアが占領地域での「住民投票」を実施し、ウクライナ領土の一部がロシアに編入されたと主張した後に、ロシアの領土がNATOの攻撃を受けていると主張する可能性がある。ウクライナ政府と西側の首脳は、この物議をかもしている「住民投票」について、ロシアによる占領の隠れみのだとみている。アメリカの駐ウクライナ大使、ブリジット・ブリンク氏もツイッターで、「偽の住民投票や予備役動員は、弱さのしるし、ロシアの失敗のしるしだ」と書いた。オランダのマルク・ルッテ首相も、予備役招集や住民投票の強行といったプーチン大統領の決定は「パニックの証し」だと述べた。その上で、「プーチン氏の核兵器にまつわるレトリックは、これまでにも聞いてきたもの」で、問題視していないと語った。その他の西側諸国の政治家も、核の脅威は高まっていないとしている。
●G7外相 ウクライナ支援で連携確認 林大臣、新たな対ロ制裁措置を発表 9/22
岸田総理とともにアメリカを訪問中の林外務大臣は、G7=主要7カ国の外務大臣らと会談し、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援でG7の連携を改めて確認しました。
林外務大臣:「強力な対ロ制裁、そしてウクライナ支援、これを継続していくためにもG7の結束をますますですね、維持することが、ますます重要である旨を述べました」
また、会談ではロシアの軍事侵攻への対応であらわとなった国連の機能強化策や東シナ海などで軍事活動を活発化させている中国について議論しました。
林大臣は記者団に対し、ロシアへの制裁として化学兵器に関連する物品のロシアへの輸出禁止やロシアの軍事関連団体を新たに輸出禁止の対象とすると明らかにしました。
また来年、広島で行われるG7サミットに先立ち、長野県で行う外務大臣会合は4月16日から3日間の日程だと発表しました。
●プーチン大統領への抗議デモ参加者に軍への召喚状を渡す ロシア報道 9/22
ロシアの独立系メディア「メドゥーザ」は22日、プーチン大統領が発表した「部分的な動員令」に反対し、警察署に拘束されたデモ参加者に軍への召喚状が手渡されたと報じた。
モスクワの複数の警察署では、召喚状が拘束者に直接手渡されたという。別の警察署では、近く召喚状が手渡されることになる、と拘束者に告げられているという。
メドゥーザによると、ある拘束者は、召喚状への署名を拒否すれば刑事事件で立件されることになる、と脅されたという。
プーチン氏は21日、「我が軍が対峙(たいじ)するのは事実上、西側集団の全戦争マシンだ」などと述べ、軍務経験がある予備役の市民を招集することを明らかにしていた。
●ロシア 予備役30万人動員へ 戦闘で効果発揮可能性低い指摘も  9/22
ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン政権は、30万人の予備役を動員し、戦局を打開したい思惑です。一方、イギリス国防省は今後、数か月の間、動員された部隊が戦闘で効果を発揮する可能性は低いと指摘しています。
ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナへの軍事侵攻を続ける考えを改めて示したうえで、戦地に派遣する兵士について、職業軍人だけでなく有事に招集される、いわゆる予備役を部分的に動員すると表明しました。
ロシア国防省は、招集するのは軍務経験などがある予備役に限定され、動員の規模は30万人だとしています。
これについてイギリス国防省は22日「ロシアは30万人を動員するための管理や補給面で苦労する可能性が高い。今後、数か月の間、動員された兵士による新たな部隊が戦闘で効果を発揮する可能性は低いだろう」と分析しました。
そして「今回の動きは、ウクライナで戦うロシアの志願兵がもういなくなったことを事実上、示すものだ」と辛辣に指摘しています。
さらに「この限られた動員でさえ、一部のロシア国民には強い不満の声が上がっている。プーチン大統領は、戦力を必要とするため、かなりの政治的なリスクを受け入れている」として、プーチン政権が戦局を挽回するため、大きな賭けに踏み切ったと指摘しました。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」も21日の分析で「ロシアの部分的な動員は、今後、数か月の間、戦いの方向性に実質的な影響を与えないだろう」と指摘しています。
こうした中、プーチン政権はウクライナの東部や南部で支配する地域の一方的な併合をねらい、親ロシア派勢力が、23日から27日にかけて「住民投票」だとする組織的な活動を始める予定です。
ロシアのラブロフ外相は、21日に掲載されたアメリカの有力メディア「ニューズウィーク」とのインタビューで、「住民は自分たちの運命を独自に決定する権利を持つ。ロシアと一緒にいたいという願望をわれわれは理解しており、住民の選択を尊重する」と述べ、「住民投票」だとする活動を名目に併合を推し進める考えを強調しました。
一方、ウクライナ政府や国際社会からは「偽りの住民投票」だとして非難の声が強まっています。
これについてアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、親ロシア派側は、支配地域で住民の監視を強め、ロシアを支持する住民だけを強制的に選別する作業を進めていると警告しています。
●ロシアの「脅迫」に対抗を 仏大統領、ウクライナ支援で団結訴え 9/22
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は22日に放映された仏BFMテレビのインタビューで、西側諸国は、ウクライナ侵攻で核兵器の使用を示唆したロシアのウラジーミル・プーチン大統領の「脅迫」に立ち向かう必要があると訴えた。
マクロン氏は国連総会からの帰途、「われわれの任務は後ろに引かないことだ。すなわち、ウクライナが自国領土を守り、ロシアを攻撃しないよう今まで通り支援することだ」と語った。
また、「ロシアは明らかに切羽詰まっている」としつつも、「事態をエスカレートさせることにはくみしない」との考えを示した。
プーチン氏が予備役の「部分的」動員を表明した際、「利用可能なすべての手段」を使うと警告したことを受けて、欧州では警戒感が高まっている。専門家は、ウクライナ軍による最近の反転攻勢に対してプーチン大統領が予測不能な行動に出る可能性があると指摘している。
●ロシア、投降や不服従を厳罰化 法案可決、戦況劣勢で引き締め 9/22
ロシア上院は21日、戦時や動員下における兵役忌避や投降、命令不服従に対する罰をより厳しくする刑法改正案を可決した。プーチン大統領が署名し発効する見通し。2月に始まったウクライナ侵攻は公式には「戦時」ではないが、規律の引き締めと、プーチン氏が21日に発表した30万人の予備役を対象とした部分動員で、劣勢の戦況打開を図るとみられる。予備役招集は既に始まったが、効果は未知数だ。
2月のウクライナ侵攻後、ロシア兵の士気の低さや投降、上官の命令に従わない事例が伝えられ、欧米の軍事専門家は、こうした現状がロシア軍苦戦の一因とみている。

 

●ウクライナ情勢 安全保障理事会で激しい論戦が繰り広げられる  9/23
ニューヨークの国連本部では国連総会と並行してウクライナ情勢をめぐる安全保障理事会の会合が開かれ、すべての理事国の首相や外相が出席しました。ロシア側が核による威嚇を行い予備役も動員して兵力を増強する構えを示したことについて、アメリカのブリンケン国務長官が厳しく非難したのに対し、ロシアのラブロフ外相は強く反発し、激しい論戦が繰り広げられました。
国連本部では22日、国連総会の首脳演説と並行して、ウクライナ情勢を協議する閣僚級の会合が開かれ、15の理事国と参加した関係国すべてから首相や外相が出席しました。
冒頭グテーレス事務総長は、ロシアのプーチン大統領が再び核戦力の使用も辞さない構えを示したことを念頭に、「かつては考えられなかった核戦争の可能性を示唆する人々がいるが、決して認めることはできない」と非難しました。
アメリカのブリンケン国務長官は、国連総会の首脳演説が行われているさなかに、プーチン大統領が予備役を部分的に動員し兵力を増強する構えを示したことについて、「国連総会や安保理をさげすむもので、プーチン大統領は戦争を終わらせるのではなく、拡大させることを選んだ」と厳しく非難しました。
また、ウクライナのクレバ外相は、東部イジュームで新たに集団墓地が見つかるなど、ロシア軍の残虐行為が次々に発覚しているとしたうえで、「正義なくして和平はありえない」と述べ、ロシアの責任が追及されなければ和平は実現しないと訴えました。
これに対しロシアのラブロフ外相は、改めて軍事侵攻を正当化したうえで、「ロシアの安全保障を脅かす反ロシア的な主張が数多く展開されたが、いずれも断じて受け入れられない」と強く反発し、発言が終わると直ちに退席し、欧米とロシアの対立が再び浮き彫りになりました。
イギリス外相 ロシアを強く非難
国連安全保障理事会の閣僚級会合で、イギリスのクレバリー外相はロシアがウクライナの民間人に対して残虐行為を行っていることは国連の報告書からも明らかだと強く批判しました。そのうえで「ウクライナのみならず、世界中に苦難と食糧難を広げ、世界で最も弱い立場にある何百万人もの人々を飢餓や飢きんに陥れている。ロシアがウクライナの農場やインフラを破壊したことが原因で、輸出を遅らせているのはロシアのせいだが、制裁を科したわれわれに責任を負わせようとしている」と述べ、ロシアは責任を転嫁していると強く非難しました。さらに発言を終えたロシアのラブロフ外相がすぐに退席したことについて、「国際社会の非難を聞きたくないからだ」と批判し、ロシアがウクライナで支配する地域の併合をねらって「住民投票」とする活動を計画していることについて、「安全保障理事会のメンバーはロシアによるウクライナ併合の試みを明確に拒否しなければならない」と述べ、ロシアの行動を受け入れないよう各国に呼びかけました。
フランス外相 「正義なくして平和はない」
国連安全保障理事会の閣僚級会合で、議長国を務めるフランスのカトリーヌ・コロナ外相は「フランスのメッセージは明確だ。正義を追求するのはわれわれの共通の責務であり、正義なくして平和はない」と述べ、ロシアによる戦争犯罪などの責任が追及されなければ安定した和平はありえないと主張しました。そのうえで「ICC=国際刑事裁判所による捜査によって国際法上の人道に対する罪が立件される可能性がある。責任者は特定され訴追され、被害者のために裁かれる。それがわれわれの責務だ」と述べ、国際刑事裁判所の捜査などに協力するよう各国に呼びかけました。
ドイツ外相 ロシアを強くけん制
国連安全保障理事会の閣僚級会合に出席したドイツのベアボック外相は、ロシアに対して、「この戦争は勝つことができない戦争だ。ただちに戦争を終わらせるべきだ。ウクライナを苦しめることや自国の市民を死に追いやることは、やめなければならない」と述べ、強くけん制しました。そのうえで、「ロシアによる戦争が始まって200日がたち、世界中の飢餓や貧困、危険を増大させた」として、軍事侵攻がウクライナだけでなく世界に混乱を広げている現状に、強い懸念を示しました。
中国外相 中立的な立場を強調
国連安全保障理事会の閣僚級会合で、中国の王毅外相はウクライナで行われている人道状況の調査について「有罪と決めつけるのではなく、事実に基づいた客観的で公正なものでなければならず、政治的な介入も許されない。国際社会は、国連の人道支援機関が中立と公平を守ることを支持すべきだ」と述べ、あくまでも中立的な立場を強調しました。また安全保障理事会の役割について「停戦と和平交渉という正しい方向を目指し、政治的解決に向け建設的で責任ある行動をとる必要がある」と述べ、無条件での対話による解決を後押しするべきだと訴えました。
インド外相 早期停戦の実現を求める
国連安全保障理事会の閣僚級会合で、インドのジャイシャンカル外相は「グローバル化した世界では、紛争の影響は遠く離れた地域にも及んでいる。われわれも食糧や穀物、肥料などの不足、価格の高騰を経験しており、状況を懸念している。特に、発展途上国はその痛みを痛切に感じており、苦境にある世界経済をさらに複雑化させるような施策を始めてはならない」と述べ、戦闘の長期化がとりわけ発展途上国に深刻な影響を及ぼしているとして、対話を通じた早期停戦の実現を求めました。
ベラルーシ外相 欧米各国の対応を改めて批判
国連安全保障理事会の閣僚級会合で、ロシアと同盟関係にあるベラルーシのウラジーミル・マケイ外相は「ウクライナでの出来事はある日突然起こったわけではない。西側諸国がこの地域の安全保障上のリスクを無視し、関係国の懸念を考慮に入れなかった結果だ」と述べ、欧米各国の対応を改めて批判しました。そのうえで「遅かれ早かれ、すべては交渉のテーブルで決着する。交渉に着くのは早ければ早いほどいい」と述べ、ウクライナとロシアの双方がすみやかに交渉のテーブルに着くべきだと主張しました。
●世界首脳、ロシアに責任追求 ウクライナ戦争巡り ロ側は擁護 9/23
世界各国首脳は22日、ロシアに対し、ウクライナにおける人権侵害の責任を取るよう求めた。一方で、ロシアのラブロフ外相はウクライナ戦争を擁護し、ウクライナの残虐行為を非難した。
ラブロフ外相は国連安全保障理事会の会合で、2月24日のロシアによる侵攻以来、ウクライナで行われている残虐行為について演説し、ウクライナがロシアに対する脅威を作り出し、ウクライナにいる親ロシア派などの権利を「大胆に踏みにじった」と非難。「われわれは決してこれを受け入れないと断言できる」とし、「今日私が話したことは全て、特別軍事作戦の実施決定が避けられないものであったことを裏付ける」と主張した。
また、ウクライナに兵器を供給し、兵士の訓練に携わっている国々は紛争の当事者であるとし、「西側諸国が意図的にこの紛争を煽ったことは依然として罰されていない」とした。
グテレス国連事務総長は、武力による威嚇などによる他国の領土併合は国連憲章および国際法に違反すると述べ、ロシアが実効支配するウクライナの4地域で実施されるロシア編入の是非を問う住民投票に懸念を表明。核兵器を利用した紛争について語ることも「全く受け入れられない」とした。
国際刑事裁判所(ICC)のカリム・カーン主任検察官は、ICCの管轄範囲内の犯罪がウクライナで行われたと信じる「合理的な根拠」があると述べた。ハーグに本拠を置くICCは、戦争犯罪、人道に対する罪、大量虐殺、侵略の罪などを扱っている。
米国は、ロシアを含むさまざまな情報源に基づき、ロシアによるウクライナ侵攻開始以降、当局が「尋問、拘束、強制送還」したウクライナ人は最大160万人に上ると推計。米国のブリンケン国務長官は米政府はウクライナによる自衛を引き続き支援すると表明。「国際秩序が目の前で蹂躙されているロシアのプーチン大統領をこのまま放っておくことはできない」と述べた。
クレバリー英外相は「われわれはプーチン大統領に対し、ウクライナ国民への攻撃を止めさせ、残虐行為を行う人々への免責はありえないことを明確にしなければならない」とし、世界各国はロシアによる「うその列挙」を否定する必要があるとした。
中国の王毅外相は、優先すべきは前提条件なしの対話を再開することであり、双方が自制し、緊張をエスカレートさせないことだと言及。「ウクライナに対する中国の立場は明確だ。全ての国の主権、領土保全は尊重されるべきであり、全ての国の合理的な安全保障上の懸念は真剣に考慮されるべきだ」と語った。
ウクライナのクレバ外相は22日の安保理でラブロフ外相と対話する可能性があるのかと問われ「安全な社会的距離を保つだろう」とした。
ウクライナの戦争犯罪主任検察官は先月ロイターに対し、ロシアの侵攻開始以来、約2万6000件の戦争犯罪の疑いを調査していると明らかにしている。ただロシアが米国、フランス、英国、中国とともに拒否権を持つ常任理事国になっているため、安保理はウクライナに対し有意な行動を起こすことができていない。
ウクライナ東部の親ロシア派勢力「ルガンスク人民共和国」と「ドネツク人民共和国」ほか、南部ヘルソン州にロシアが設置した行政機関、および南部ザポロジエ州のロシア軍占領地域が20日、ロシアへの編入の是非を問う住民投票を23─27日に実施すると表明。ロシアのプーチン大統領はこの翌日、軍の部分動員令に署名したと明らかにし、西側が「核の脅し」を続ければ兵力の全てを用いて対応すると警告した。
●「憲章違反」と住民投票非難 ウクライナ情勢で安保理閣僚会合―国連総長 9/23
国連安全保障理事会は22日午前(日本時間同日夜)、ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり閣僚級会合を開いた。冒頭で演説したグテレス事務総長は、ウクライナの親ロシア派がロシアへの編入に向けた「住民投票」を行うと発表したことに深い憂慮を表明。「武力による威嚇や行使で(領土を)併合することは国連憲章に反する」と非難した。
グテレス氏は、ロシアとウクライナの間で250人以上の捕虜交換が実施されたことを歓迎した一方、「ウクライナでのロシアの戦争は終わる兆しが見えない」と危機感を表明した。会合は、世界中から首脳らが集まる国連総会一般討論演説の期間に合わせ、議長国フランスが開催を要請し、ブリンケン米国務長官らが出席した。
●米「ロシアは逃れられず」 安保理、侵攻後初の閣僚会合 9/23
国連安全保障理事会は22日、ロシアのウクライナ侵攻後で初となる閣僚級会合を開き、ロシアのラブロフ外相が侵攻以来で初めて出席した。プーチン大統領が発令した部分動員令や親ロシア派がウクライナで計画するロシアへの編入の是非を問う住民投票をめぐり、米欧など各国から非難が集中した。
ブリンケン米国務長官は「プーチン氏は世界の大半が国連に集まる今週、自ら起こした火に油を注ぐために、国連憲章、国連総会と安保理を徹底的にないがしろにすることを選択した」と非難。「国際秩序そのものが目の前でずたずたに引き裂かれている。われわれはプーチン氏が(侵攻をめぐる責任追及を)逃れることを許さない」と強調した。
住民投票による事実上の併合が決まれば「プーチン氏はその土地を解放しようとするウクライナの努力を、いわゆる『ロシア領土』への攻撃だと主張することが予想される」との懸念も示した。
一方、会合に遅れて出席したロシアのラブロフ外相は演説で、ロシアへの非難は「西側諸国のプロパガンダだ」と主張。ウクライナへの武器供給や兵士の訓練などの支援をする国も紛争の当事国だと指摘した上で「西側諸国が紛争を故意にあおっていることは罰せられないままだ」と反論した。「特別軍事作戦の実施が不可避であったことを裏付けている」とも述べた。演説後には退席した。
プーチン氏は各国首脳が集まる国連総会の首脳級演説中の21日に国営テレビで国民向けに演説。戦闘継続のための部分動員を発表し、親ロシア派支配地域の事実上の併合に踏み切る考えを示した。「領土の一体性が脅威にさらされる場合」に「すべての手段を利用する。はったりではない」と述べ、核使用の脅しを強めた。
ノルウェーのストーレ首相は「ロシアに対する軍事的脅威は存在しない。ロシア軍が大規模な動員をする正当な理由は何もない」と強調した。「もしロシア国民が自由に意見を述べることができたら、彼らは戦争を選択しただろうか。そうは思わない」と述べた。
ウクライナのクレバ外相は「プーチン氏とその側近を裁判にかける唯一の方法は、ウクライナに対する侵略の罪を裁く特別法廷を設置することだ」と訴えた。会合前、ラブロフ氏と直接話す可能性を問われたクレバ氏は「安全な社会的距離を保つだろう」とも語った。
会合には戦争犯罪や人道に対する罪などを扱う国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)のカーン主任検察官も出席。ウクライナでICC管轄内の犯罪が行われたと信じる「合理的な根拠」があると明言した。意図的な民間人への攻撃や、子どもを含む住民のウクライナからの移送について優先的に調査を進めている。
カーン氏は「私がブチャに行った時に見た遺体は(ロシアが主張する)偽物ではなかった。建物や学校の破壊も現実だった」と語った。「いかなる紛争にも責任があることを示さなければならない」と訴えた。
グテレス国連事務総長は「加害者は公正で独立した司法手続きにおいて責任を負わなければならない」と語り、全ての当事者にICCの調査への全面協力を求めた。プーチン氏による核兵器使用の示唆に触れ「世界は核による大惨事を起こすわけにはいかない」とクギを刺した。
●ウクライナとの捕虜交換、ロシア国内で反発広がる  9/23
ロシアではウクライナとの間で行われた捕虜交換を巡り、国家主義者らから批判の声が上がっている。捕虜交換にはウクライナの司令官も含まれ、ウクライナ政府は「勝利」との認識を示す一方、ロシア国内には解放の決定を疑問視する声がある。
ウクライナ軍がロシア軍を劣勢に追い込み着々と反撃を進める中、トルコの仲介で捕虜交換が行われた。戦闘開始以降で外交的な進展がみられたのは久々となる。
ロシアが解放した215人の捕虜の中には、ウクライナの港湾都市マリウポリの防衛を指揮し、ロシアに対する抵抗の象徴となった司令官数人が含まれた。こうした司令官らが所属する「アゾフ連隊」をロシアはテロ集団とみなしており、隊員を裁判にかけると宣言していた。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は演説で「これは間違いなくわれわれの国家や社会全体にとっての勝利だ」と述べ、捕虜交換は長期間にわたり調整が進められていたことを明らかにした。
ウクライナは引き換えに55人のロシア人と、ウクライナの親ロ派政党の指導者、ビクトル・メドベチュク氏を解放。メドベチュク氏はロシアのウラジーミル・プーチン大統領と親しい関係にある。
ゼレンスキー氏によると、ロシアは当初、メドベチュク氏と引き換えにウクライナ人捕虜50人を解放することを提案していたが、最終的にロシアは200人以上の解放に応じた。
ロシアとウクライナがそれぞれ拘束している捕虜の総数は明らかではない。
ゼレンスキー氏によると、今回解放されたウクライナ人の中にはマリウポリ防衛に加わった戦闘員188人が含まれ、そのうち108名はアゾフ連隊の隊員だった。アゾフ連隊司令官の解放を巡る交渉は最も困難だったという。
ロシア政府関係者は捕虜交換について、おおむね沈黙している。ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は国営タス通信に対し、捕虜交換にメドベチュク氏やアゾフ連隊の隊員が含まれていたかについて「大統領府はコメントしない」と述べた。
ロシアではウクライナ侵攻の支持者らの間で、政府は戦場で失態を演じているとの声が強まっており、今回の捕虜交換も批判を招いた。
2014年にウクライナ東部の分離独立運動で親ロシア派勢力を率いた元諜報(ちょうほう)員、イゴール・ガーキン氏は、アゾフ連隊司令官の解放は裏切り行為だと主張。プーチン氏が21日に予備役の動員を命じたことに関連し、動員されるロシア人への侮辱になるとの見方も示した。同氏は、解放は「犯罪より悪い」とし、「信じられないほどの愚かさだ」と断じた。
戦争支持を表明するブロガーらも政府批判に加わっている。
ロシア政府支持者に引用されることが多いジャーナリストのアンドレイ・メドベージェフは「ロシアの英雄」が人もいない飛行場で国旗や花束での出迎えもなく帰還するといった対応を受けるのは「極めて奇妙なことだ」と記した。
ロシアの対話アプリ「テレグラム」の「WarGonzo」チャンネルで意見を発信する戦争支持派のブロガー、ドミトリー・セレズネフ氏は、捕虜交換の条件としてウクライナの司令官は戦争が終わるまでトルコにとどまることになっていることに言及。「アゾフ戦闘員の交換に個人的に反対しているわけではない。ただ、アゾフ司令官が特別軍事作戦の残りの期間はトルコで休暇を取らなければならないというのは、ちょっとばかげた話だ」。
●「部分的動員」という賭けに出たプーチンの苦渋  9/23
プーチン大統領が2022年9月21日、ついに「部分的動員」という大きな賭けに出た。兵力不足が露呈したロシア軍がウクライナ軍の巧妙な反攻作戦で崖っぷちに追い込まれた中、30万人規模の予備役投入で戦局の好転を図った苦肉の策だ。
しかし、予備役の戦線投入は早くて数カ月先とみられ、戦況をただちに有利に転換する可能性は低い。おまけにこれまで「戦争は支持するが、従軍はお断り」と考えてきたノンポリのロシア国民の間で、「プーチン離れ」が進む兆候もすでに出始めている。今回の決定がプーチン氏にとって逆噴射する可能性もある。
ためらいがちな「部分的動員」発令
今回のプーチン氏の決定は、「ためらい」の色が濃いものだった。当初前日の2022年9月20日夜に行われると言われていた国民向けの声明は延期され、モスクワ時間の同21日朝にテレビ放送された。もともと大統領は、政権内で「戦争党」とも呼ばれる強硬派や民族派が求めていた国民総動員には消極的だった。クレムリンが独自に秘密裡に行う世論調査で否定的な意見が強かったからだ。
しかし、東北部ハルキウ(ハリコフ)州の要衝イジュムがウクライナ軍の奇襲によってあっという間に陥落するなど日々悪化する戦局に対し、クレムリン内では何らかの手を打つべきとの圧力が高まった。一方で大統領の個人的友人でもある新興財閥の中では「平和党」と呼ばれるグループがいて、総動員に反対していた。
このままでは政権内に大きな亀裂が走ることを恐れたプーチン氏は結局、両派の主張の間をとった妥協策として今回の部分的動員になったとみられる。
「戦争党」には政権ナンバー2のパトルシェフ安全保障会議書記やメドベージェフ前大統領、ウォロジン下院議長など大物政治家が揃っている。平和党と比べ、政治的権力は圧倒的に強い。今回の決定でプーチン氏は政権内でのガス抜きを図ったと言えよう。
しかし、実際の戦局を好転させるだけの結果を出せるかとなると疑問が残る。30万人の予備役招集は発表当日から有効とされたが、いくら軍務経験者といってもこれから訓練をし、装備・軍服を配備し戦線に送れるようになるには今後数カ月かかるとの見方が一般的だ。現在ウクライナに派兵されているロシア軍は20万人以下とみられ、それから比べると30万人という規模はかなりのものだ。
一方でウクライナ軍は、2022年末から2023年初めにかけての冬季期間中でのロシア軍への決定的勝利を目指して反攻作戦を急いでおり、ロシア側の動員が間に合わない可能性もある。おまけにロシア軍の東部・南部での士気低下や指揮系統のマヒは隠しようもないほどだ。予備役が配備されても一度壊れた態勢が回復するとはとても思えない。
現在ウクライナ軍は現在ドネツク州陥落に力点を置いており、隣のルハンシク(ルガンスク)州にはもはや重点を置いていない。ロシア軍の士気があまりに低いからだ。ドネツク州でロシア軍部隊は要衝のバフムトへの攻撃を続けているが、ウクライナ側は「無駄な攻撃」と嘲笑している。軍事的に攻略が不可能なためだ。
しかしプーチン氏はドネツク州の早期の全面的制圧を軍に厳命しており、ロシア軍の現地司令官は「不可能であることをプーチン氏に報告できずに惰性で攻撃しているだけ」とウクライナ側はみている。さらに、ミサイルなどの主力兵器の不足も決定的だ。兵力だけ増やしても戦死者を増やすだけとの批判がウクライナ側からも出ている。
部分動員が国内政治にもたらすリスク
今回の部分動員の発表と合わせ、プーチン氏はロシアへの編入を問う「住民投票」がウクライナ東部や南部の計4州で2022年9月23日から27日までの日程で実施されることを初めて認めた。編入支持が「圧倒的多数」で承認されることは確実で、プーチン氏は新たな領土拡大という戦果を誇示する狙いだろう。
しかし、部分動員という折衷的措置であっても、より広い層の国民を戦場に駆り出すことになる今回の決定は、プーチン氏にとって国内政治的にも大きなリスクをもたらした。多くのロシア国民、とくにモスクワやサンクトペテルブルクといった大都市の住民の多くは、自分たちが戦場に送られない限りにおいて、侵攻を支持するという消極的支持派だからだ。
プーチン政権の内部事情に精通する元クレムリンのスピーチライターで政治評論家のアッバス・ガリャモフ氏は「プーチン氏が国民との社会契約を破った」と指摘する。つまり、社会契約とは「プーチン政権はこれまで志願兵の募集を地方中心で行って、都市部住民にはほとんど触らずに来た。彼らには快適な生活を保障する代わりに、戦争への支持を集めてきた」ことだと説明する。
戦争中も都市部の住民は旅行したり、通常とほぼ変わらぬ生活を謳歌している。この平和な生活が破られることで、今後国民の間で政権への抗議の機運が広がる可能性も出てきた。同時に既にモスクワなどでは招集される前に国外に脱出を図るパニック的動きが出ている。
一方でウクライナ側としては、ロシア軍の追加派兵によって早期勝利への青写真が狂うことを警戒している。今後米欧に追加の軍事支援を求めることになるだろう。
同時に、ウクライナは巧妙な戦略を別途に検討し始めている。それは、前線のロシア将兵に対し、投降と同時にウクライナへの亡命を呼び掛ける作戦だ。戦線ではすでに投降の動きが出始めている。これを受け、ロシア議会では投降を処罰する法が制定された。
このため、ウクライナ軍はロシア兵に対し、プーチン体制がなくなり、徴兵も投降への処罰もなくなるまでウクライナに留まることを許す方針だ。戦死や投獄よりマシと考えるロシア兵が出てくる可能性はある。
米欧はプーチン執務室への報復も示唆
今回、国際的に衝撃をもたらしたプーチン氏による核兵器使用の警告について、アメリカをはじめとする西側は警戒しつつも、ロシアに対し、水面下で強く警告している。軍事筋によると、2022年3月の段階で米欧は核をウクライナに使用した場合、ロシア軍核部隊のみならず、「使用を決定した場所」、つまりプーチン氏の執務場所も核で報復攻撃するという警告をバックチャンネルを通してしている。今回のプーチン発言後も同様の警告をしたとみられる。
それでもプーチン氏が核使用に踏み切る可能性があるのか否か。それは本人にしかわからない。しかし、通常戦で苦境にあるクレムリンが核の脅しで米欧やウクライナを威嚇し、自国に有利な形での交渉開始を迫る戦略の可能性が高いと筆者はみる。国際社会は冷静に行動すべきだ。
●プーチンが絶体絶命…中国・習近平からも見捨てられて「万事休す」へ 9/23
中国からの「ゼロ回答」
中国がロシアから距離を置き始めている。一方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は予備役の動員と核の使用も辞さない考えを表明した。ロシアが敗北すれば、台湾奪取を目論んでいる中国も戦略の見直しを迫られるのは、必至だ。中国は、どう動くのか。
私は先週のコラムで、9月15日に開かれた中ロ首脳会談について、結果が判明していなかった段階だったが、中国の習近平総書記(国家主席)はロシアが求める軍事支援や核使用容認の「要請に応じないだろう」と書いた。
結果は、その通りどころか、中国はもっと冷淡だった。プーチン氏を、ほとんど「見捨てた」と言ってもいいほどである。会談冒頭のやりとりが、実態を物語っている。
プーチン氏は、まず「ウクライナ危機に関して、中国のバランスのとれた立場を高く評価する」と述べた。問題はこの次だ。「我々は、中国が疑問や懸念を抱いていることを理解している。本日の会合で詳細に説明する」と語ったのだ。
これは、驚くべき発言である。プーチン氏が戦況の悪化を自ら認めたも同然だ。ようするに「我々は追い込まれた。だが、心配するな」と言ったのである。
習氏の返答は、そっけなかった。「世界が歴史と時代の挑戦を受けているなか、中国は主要国としての責任と主導的役割を果たすために、ロシアとともに仕事をする。そして、荒れ狂う世界に安定と積極的なエネルギーを注入する」と応じただけだ。
習氏は「ウクライナ」という言葉さえ口にしなかった。中国側は、後で「互いの核心的利益に関する問題について、双方が強力な支援を拡大する準備が整っている」という声明を出したが、これも、ただの一般論にとどまっている。
戦場で守勢に立たされたプーチン氏とすれば、喉から手が出るほど、中国からの軍事支援が欲しかったはずだ。それだけでなく、いざとなれば「核の使用」についても、可能ならば、事前に「暗黙の了解」を取り付けたかっただろう。
それは「米国の暴露」で明白である。9月5日付のニューヨーク・タイムズによれば、米諜報機関はロシアが北朝鮮に数百万発のロケット弾や砲弾を調達していた。イランからは、ドローンを購入していた。ロシアは武器弾薬を使い果たしつつある。
だが、願いは叶わなかった。
中国の「ゼロ回答」は、事前にロシアに伝わっていたに違いない。だからこそ、プーチン氏は冒頭から「あなたの疑問と懸念は理解している」と言わざるをえなかったのだ。とても、軍事支援や核使用の了解取り付けどころではなかった。
日本のメディアの大失態
私は、以上のような見立てを、9月16日発売の「夕刊フジ」のコラムに書いたが、こうした見方は、私だけではない。
9月15日付のニューヨーク・タイムズは「プーチンの戦争に対する中国の支持は、首脳会談の後、一段と揺らいでいる」と報じた。CNNも同じく「ロシアの後退は『新たな世界秩序』作りを目指す彼らの計画を台無しにしている」と報じている。
日本のメディアはどうかと言えば、まったくピンぼけだ。
たとえば、共同通信は15日に「中ロ首脳、協力深化表明 侵攻後初の首脳会談」という記事を配信した。NHKの報道も「中ロ首脳 軍事侵攻後 初の対面会談 対米姿勢で結束強化を強調」という具合である。
中ロに隙間風が吹くどころか、逆に「結束を固めた」とみていたのである。記者も担当デスクも「中ロの連携は盤石」と思い込んでいたのか、プーチン氏の冒頭発言の異様さに気づかないほど鈍感だったか、あるいは、その両方だったとしか思えない。
私は9月16日朝の「虎ノ門ニュース」で、ピンぼけぶりを指摘したが、こんな調子では、日本でマスコミ不信に拍車がかかっているのも無理はない。
プーチンを切り捨てる習近平
それはともかく、ロシアは首脳会談後の19日になって、ニコライ・パトルシェフ安全保障理事会書記が訪中し、中国共産党の楊潔篪政治局員と会談した。ロシア側の発表によれば、合同軍事演習の実施や軍事部門の協力強化、参謀本部の連絡強化で合意した、という。
プーチン大統領は21日、国民向けの演説で、部分的な予備役動員を表明した。セルゲイ・ショイグ国防相によれば「30万人を動員する」という。同時に、核の使用についても、大統領は「はったりではない」と述べ、あらためて、核を使う可能性を示唆した。矢継ぎ早の動きに、ロシアの焦りがにじみ出ている。
中国は、どうするのか。
私は「ウクライナ戦争の結末と、プーチン氏の運命を見極めるまでは動かない」とみる。その間は「台湾侵攻は当面、棚上げする」だろう。これまで国内の反対論を抑え込んで、プーチン氏に入れ込んできただけに、もしも、ロシアが敗北すれば、その衝撃波は習氏の政治基盤を根底から直撃するからだ。
戦争に敗れた後も、プーチン氏が権力を維持できるかどうかは分からない。最悪の場合、プーチン政権が倒れ、後継政権はウクライナに全面謝罪し、親米路線に大きく舵を切り替える可能性もある。そうしなければ、経済制裁を解除できず、国が立ち行かないからだ。そうなったら、習氏にとっては「悪夢のシナリオ」である。
歴史の前例もある。
米国のリチャード・ニクソン政権は1971年7月に突如、訪中を発表し、劇的な米中和解を成し遂げた(第1次ニクソン・ショック)。これによって、中国は激しく対立していた旧ソ連に対する「米中包囲網」を形成しただけでなく、米国の支援を得て、経済発展の足がかりを築くことができた。
もしも、敗北した後の新生ロシアが米国と手を組むようなことになれば、攻守所を変えて、今度は「米ロによる対中包囲網」が完成してしまうかもしれないのだ。
これは、けっして夢物語ではない。私が夏にインタビューしたハーバード大学のステファン・M・ウォルト教授は3月21日に米外交誌「フォーリン・ポリシー」に寄稿した論文で、次のように指摘している。
〈欧州の防衛能力は一夜にして、回復しない。長期的には、米国とNATO(北大西洋条約機構)、欧州連合は欧州の安定性を高め、ロシアを中国への依存から引き離すために、ロシアを除外しない形で、欧州安全保障秩序の構築に務めるべきだ。こうした展開は、モスクワに新しい指導者が誕生するのを待たねばならないが、長期的な目標であるべきだ〉
いま、ロシアの劣勢が深まるにつれて、そんな事態が現実になる可能性が出ている。先のCNN記事も、その可能性を指摘していた。もっとも真剣に考慮しているのは、習近平氏に違いない。一歩間違えれば、プーチン氏と共倒れになる可能性があるからだ。
もちろん、別の展開もありうるが、成り行きをしっかり見極めずに、台湾に突撃するほど、習氏が愚かとは思えない。古今東西、独裁者にとって最重要課題は、自分自身の生き残りと権力維持だ。台湾奪取のような夢の実現ではない。
はっきり言えば、習氏にとって「台湾奪取=中国の夢」は、単なる理想にすぎない。独裁者に、理想は2の次、3の次だ。肝心なのは、何はさておき、自分自身の権力維持である。権力を失ってしまったら、理想の実現もへったくれもないからだ。
ロシアが敗北すれば、プーチン氏と手を組んだのは、習氏の戦略的失敗になる。それは当然、国内で批判を招く。そのうえ、台湾奪取のようなリスクのある博打を打てるか。そうではなく、習氏はまず自分自身の足元を固め直すことを優先するだろう。
バイデン政権はどう動くか?
逆に言えば、米国にとって、習氏の台湾奪取計画を抑止する最良の手段は、ウクライナでプーチンを打ち負かし、できれば失脚させることだ。今回の中ロ首脳会談は、ウクライナ戦争だけでなく、台湾問題でも重大な岐路にさしかかった事実を示している。
米国の戦略目標が「ロシアの弱体化」であるのは、4月のロイド・オースチン国防長官発言で明らかになっていた。ウクライナの反転攻勢の成功で、米国は目標を達成できそうな見通しが出てきた。
米国のジョー・バイデン政権で、ウクライナ支援の指揮をとっているのは、ジェイク・サリバン大統領補佐官とマーク・ミリー統合参謀本部議長である。この2人は、反転攻勢の立案も担っていた。作戦成功に自信を深めているに違いない。
バイデン大統領は9月18日、米CBSのテレビ番組「60ミニッツ」で「米軍が台湾を防衛するかどうか」と問われ「もし実際に前例のない攻撃があれば、イエスだ」と述べた。大統領が同じ質問を受けたのは、これで4回目だ。
9月17日付のニューヨーク・タイムズによれば、大統領は「プーチン氏が核で反撃する事態を恐れて、ウクライナが求めている『ATACMS』と呼ばれる長距離射程ミサイルの提供を躊躇している」という。米議会では、そんなバイデン政権の弱腰姿勢に批判が強まっている。
バイデン氏は、どう対応するのか。大統領の決断は、プーチン氏だけでなく、台湾と習近平氏の運命も握っている。 
●ロシア「住民投票」活動始める ゼレンスキー大統領 強く反発  9/23
ロシアのプーチン政権は、23日から、ウクライナで支配する地域の一方的な併合をねらい、「住民投票」だとする活動を始めています。これに対して、ウクライナのゼレンスキー大統領は強く反発しています。
プーチン政権はウクライナで支配する地域の一方的な併合をねらい、親ロシア派勢力が、東部ドンバス地域のドネツク州とルハンシク州、それに南部ヘルソン州などで、23日から27日にかけて「住民投票」だとする組織的な活動を始める予定です。ロシアの国営通信は23日「投票が始まった」と伝えました。
ロシアの前の大統領で、安全保障会議のメドベージェフ副議長は21日、SNSに「住民投票が行われ、ドンバスなどの領土はロシアに受け入れられるだろう」と投稿し、ロシアがこの地域を併合する可能性を示唆しました。
一方、ロシアに大部分が占領されているウクライナ・ルハンシク州のハイダイ知事は22日、NHKの取材にオンラインで応じ、「ロシア軍は占領に反対するデモ隊に発砲したあと、大勢の人をバスで連れてきてロシア軍を歓迎する住民だと称したことがある」と述べ「住民投票」だとする活動もみせかけにすぎないとの見方を示しました。
また、ウクライナのゼレンスキー大統領は、22日に公開した動画で「占領地での偽の住民投票という茶番は、2014年にクリミアで起きたことと同じだ」と述べ、強く反発しています。
●ウクライナ4州で住民投票強行 東・南部、ロ編入賛成が多数確実 9/23
ウクライナ東部ドンバス地域(ルガンスク、ドネツク両州)や南部の一部を支配する親ロシア派は23日、ロシア編入を問う「住民投票」を4州で強行した。27日まで。編入賛成が多数を占めることは確実。国際社会が強く反発する中、プーチン政権は投票結果を足場に制圧地域の一方的な編入を急ぐ。
ロシアの侵攻から24日で7カ月。ウクライナ軍が東部ハリコフ州で劇的な戦果を上げ、南部でも反攻。守勢のロシアは予備役の部分動員に踏み切る一方、制圧地の支配固めや反攻抑止のための「核の脅し」も一段と強化するなど、ウクライナ情勢は新局面に入った。
●トヨタ、ロシアでの生産と販売から撤退 ウクライナ情勢で部品調達困難 9/23
トヨタ自動車はロシアでの自動車の生産と販売から撤退します。ウクライナ情勢により部品調達が困難となっていて、「半年が経過しても生産再開の可能性が見いだせず、このままではトヨタが目指す製品づくりができない」と判断しました。ロシアにあるトヨタの工場は今年3月から操業を停止していました。
●ウクライナめぐり“初”の閣僚級安保理会合 ラブロフ外相は席立ち別会合へ 9/23
国連安保理ではウクライナ情勢をめぐる初の閣僚級会合が開かれました。遅れて現れたロシアのラブロフ外相は軍事侵攻を改めて正当化、他国の演説を聞くことなく退席しています。
ロシアの軍事侵攻以降、何度も重ねられてきた安保理会合ですが、きょうは初めての閣僚級が出席します。
ウクライナ クレバ外相「きょう、我々がここで話し合うことはウクライナとロシアのことだけではない。直面している国際安全保障の危機はどんどん大きくなっている」
ロシア・ラブロフ外相は演説直前に会場入り―
ロシア ラブロフ外相「ウクライナが国際人権法の規範を踏みにじるナチスのような全体主義国家になったことは間違いない」
多くの外相が演説終了後も残るなか、ラブロフ氏は演説が終わるとすぐに会場を後にし、他国の声に耳を傾けることはありませんでした。
安保理ではこれまで30回にも及ぶ会合が開かれてきましたが、実効性のある対応をとることができず、非難の応酬が繰り広げられています。安保理では手詰まり感が強まり、事態打開の見通しは立っていません。
●自らの政権の足元に地雷を仕掛けたプーチン氏 9/30
テレビ放送された国民向けの演説で21日夜、ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵攻での「部分的動員」を発表した。これはプーチン氏が実質的に、ロシア人との暗黙の社会契約を破ったことを意味する。契約に基づきロシアの市民は、権力者らが利益をくすねたり争いを起こしたりするのを許す代わりに、自分たちの私生活には介入させない。
戦争が新たな段階に入りつつある中、追い詰められたプーチン氏は自分の背後にロシア人の相当な部分を引きずり込んでいる。同氏が事実上行ったのは国内に向けての宣戦布告であり、結果的に野党勢力や市民社会のみならず、ロシアの男性人口を敵に回したことになる。
なぜプーチン氏はそんな危険を冒すのか? それは本人自ら、世間の戦争に対する関心の欠如を数カ月にわたり促してきたからだ。国民の動員は深刻な不満を社会にもたらす。だからこそ総動員ではなく部分的動員を決断したわけだが、長い目で見れば自身の政権の足元に地雷を仕掛けたことに他ならない。短期的には、動員に対する妨害行為に直面するだろう。
もうずいぶんと長い間、プーチン氏は大衆の間で戦争を遠ざける姿勢を助長してきた。今やロシア人はそのつけを払い、兵士として使い捨てにされようとしている。
果たして21日の発表はどのような形でロシア人たちを安全地帯から連れ出し得るだろうか? 彼らはこれまで、現状の「特別軍事作戦」に対して関心がなかった。
少なくとも今に至るまで、この地で感じられる主要な感情(むしろその欠如というべきだが)は無関心に他ならなかった。それは様々な色合いを帯びて現れる。正真正銘の無関心もあれば、他人を模倣したものや自ら作り上げた無関心もある。
ロシア人のうち、「特別軍事作戦」を「どちらかと言えば」支持している30%(50%近くは「断固」支持、20%弱は不支持)は、自分の意見を持たない。もっぱらテレビやプーチン氏の言葉を借用し、悪いニュースや他の情報源を遮断する。それでも時には戦争自体を好ましく思わないこともあり、この30%に属する人はプーチン氏と同氏の構想に対する態度を変化させる可能性がある。
一般の人々の無関心は、プーチン氏を利する。そうした市民は政治家たちの問題に干渉しないし、彼らの構想を支持する。その代わり政治家に求めるのは、物事が正常な状態にあるとの印象を維持することだ。
プーチン氏はそれを実行している。戦争及び自分自身を支える部分的動員(それは侵攻開始後すぐに起きた)と動員解除とを巧みに組み合わせながら。娯楽番組は再びテレビで流れるようになり、年次のモスクワ市の祝日には花火が打ち上げられた(この日のジョークには、同市のソビャーニン市長がウクライナ軍の反攻開始を祝福したのだと皮肉るものもあった)。人々は普通の日常生活を送っており、ウクライナでの出来事に対する関心は今夏を通じて低いままだった。
しかしこうした無関心な人々でさえ、ウクライナの反撃は無視できなかった。ここでも真実を知ろうとしない態度は主流であり、もし当局者が退却ではなく軍の再編だと言えば、再編が真実となる。それでもクレムリン公認のトーク番組ですら、失敗を認める内容であふれる状況となった。
この状況が平和への願望を呼び起こすことはなかった。そうした願望は概ね作戦を支持する人々の気分の中にさえ表れていたが、ここで起きたのは攻撃性とヘイトスピーチの爆発だった。「なりふり構わず」、さっさとウクライナに思い知らせろという声が叫ばれた。プーチン氏はこれを受けて、発電所などインフラへのミサイル攻撃を行った。攻撃は報復心と怒りによるものだったが、後者から明らかになるのは弱さであって強さではない。
急進論者はプーチン氏に不満を抱き、戦争の徹底的な遂行と総動員とを求める。しかしクレムリンの独裁者には、迅速な勝利を可能にする資源、とりわけ人的資源が不足している(そうした理由から、現在は兵士の補充のため有罪判決を受けた受刑者まで採用している)。
ただプーチン氏にとって、中産階級の機嫌を損ねるのは得策ではない。彼らは自宅のソファからテレビで戦争を見られればいいのであって、自ら塹壕(ざんごう)に赴くつもりはない。それ以上に、総動員を掛ければ経済を回すのに必要な人的資本が戦争へと流れる。平たく言うと、働き手がろくにいない事態となってしまう。
急進派の側がプーチン氏に不満を募らせるのは今に始まった現象ではないものの、かつてそうした態度がここまではっきりと示されたことはなかった。ただ彼らがプーチン氏に太刀打ちできる可能性は皆無だ。超保守的な急進派も、親西側のリベラル派が受けるのと同様の圧力によって抑えつけられるだろう。件(くだん)の独裁者は戦争と帝国主義にかけて、いかなる敵の存在も受け入れない。
ロシア国内の世論は一向に盛り上がらず、何か並外れた事象がない限り本格的にムードに切り替わることはないだろう。同じ話は経済の問題にも当てはまる。今に至るまで、社会経済的な危機はそれほど見える形では表出していない。危機の本格的な始まりは先延ばしにされているが、一部のエコノミストが指摘するように、おそらく今年末から来年初めにかけて危機そのものが顕在化するだろう。
世論が惰性に流れる状態にある中、プーチン氏にとっては敗北を勝利だと言いくるめることが可能になる。損失を戦果と形容することで、同氏はすぐにも戦争を止められる。部分的にはそれを実行しており、ウクライナの4つの占領地域に関してはロシアへの編入を巡る住民投票を直ちに行うと発表。それによって、損失を固定化する判断を下した。
明らかにプーチン氏には自ら始めたことを止めるつもりがなく、ロシアが戦場で成功を収めるものと思い込んでいる。あるいは少なくとも、占領地域においてより強固な足掛かりを得られ、ロシア領だと宣言できると思っている。その場合、現地でのいかなる戦闘もロシアに対する攻撃とみなすようになる。そして「特別軍事作戦」を正式な戦争の状態へと移行させる機会を手にし、総動員の可能性に道が開ける。現時点でプーチン氏が発表しているのは、あくまでも制限付きの「部分的」動員だ。
だがこうしたことは全て裏目に出るかもしれない。すでに公式な場で主要な「友人」である中国の習近平(シーチンピン)国家主席やインドのモディ首相が懸念を表明している。そんな中、プーチン氏が戦争の終結を遅らせれば遅らせるほど、その分勝利と見なし得る形での後日の和平締結は難しくなるだろう。
なるほど、世論は内心長期戦を覚悟してはいるが、絶え間ない緊張がもたらす疲労感がいつ一線を越え、ムードを変えるかは誰にも分からない。そうした緊張状態は、入念に育んだ無関心によって和らげておく必要がある。プーチン氏によると自分には時間があり、ロシア軍は急いではいないという。
それでも時間が経つにつれ、敗北を勝利として示すのは一段と困難になるだろう。とりわけ例のためらいがちな層、「どちらかと言えば」同氏を支持する程度の30%に対しては。
●やはり「プーチンを裏切った」代償? 止まらないロシア富豪の「奇怪な死」 9/23
ソ連崩壊を決定付けた1991年のベロベーシ合意の立役者4人は、これで全員亡くなった──ゴルバチョフ元ソ連大統領が死去した2日後の9月1日、友人のロシア人ジャーナリストから、そんな冗談めかしたテキストメッセージを受け取った。
4人のうち、エリツィン元ロシア大統領以外の3人がロシアのウクライナ侵攻以降に死亡していると、彼は指摘した。友人は陰謀論嫌いで有名だ。だから、3人の死が何らかの意図に基づく可能性を問うことはせず、こう返信した。ウクライナでのロシアの残虐行為や失敗が明白になった時期に、3人が立て続けに亡くなったのは統計学的に不自然だ、と。
その日、ロシアのエネルギー業界の大物がさらにもう1人、謎の死を遂げていたことを、私はまだ知らなかった。
不審死した業界の重鎮はこれが6人目だ。今年4月には、天然ガス大手ノバテクのセルゲイ・プロトセーニャ元副会長がスペインの別荘で家族と共に遺体で見つかった。2月末には、原油・ガス事業で富を成したオリガルヒ(新興財閥)のミハイル・ワトフォードが、英南東部の自邸で首つり姿で発見。その3日前には、ガスプロム幹部がロシア国内で死亡している。
ロシアでの事件のうち、よく知られているのが、民間石油会社ルクオイルの役員アレクサンドル・スボティンとラビル・マガノフ会長の不審死だ。スボティンは5月、シャーマン(霊媒師)の儀式中に心不全で死亡したとされる。マガノフは9月1日、病院の窓から「飛び降り自殺」した。ルクオイルはウクライナ侵攻に対し、異例の反対を表明したロシア企業だ。
ウクライナ侵攻に抗議した人物の末路
ほかにも、エリツィン政権時代の民営化政策を率いたアナトリー・チュバイスがウクライナ侵攻に抗議して今年3月にロシア大統領特使を辞任して以来、トルコやイスラエルを転々とした末に、欧州で入院していることが先頃明らかになった。毒物を投与された可能性が指摘されている。
さらに9月12日には、ロシア極東・北極圏開発公社航空部門幹部のイワン・ペチョーリンがウラジオストク沖でボートから転落し、遺体で発見されたと発表された。
相次ぐ不審死は、エネルギー業界の人間が秘密作戦の金融面に関する情報をリークしている疑いがあるせいではないか、との見方が業界内では最も一般的だ。
一連の死は「標的殺害」なのか。あるロシア人評論家に意見を聞いたところ、ロシア政府とビジネス界トップの間の経緯を考えれば、単なる偶然ではないと誰もが思っていると、謎めいた答えが返ってきた。
エリツィンが96年大統領選で再選されたのは、オリガルヒの大規模介入のおかげだ。後継者のプーチン大統領は権力が肥大した彼らの懐柔に動き、2000年の大統領就任式の数カ月前に大物オリガルヒを招集。政府に忠実である限り、90年代の民営化で稼いだ利得に目をつぶると約束した。
ウクライナ侵攻の当日、プーチンはオリガルヒを再び招集し、今や政権への忠誠心の対価はさらに高くなっているとクギを刺した。異論は厳禁だとのシグナルだったことは明らかだ。つまり、一連の事件はオメルタ(沈黙の掟)に基づく裏切り行為への制裁だと、私たちは思っている──。
とはいえ業界内での「抗争」が原因である可能性も高いと、評論家は明言した。私は前出の友人にこの説を伝え、考えを聞いた。いつもなら自論にこだわる友人の答えは「分からない」。推測でいいから教えてくれとさらに頼むと、彼はこう返信した。「この国で起きていることはもう何も私には分からない。全然分からない」
●「戦場には行きたくない」ロシア国民大脱出=@9/23
ウクライナ侵攻をめぐり、ロシアのプーチン大統領が予備役など30万人規模の部分的動員令を出したことで、国外脱出の動きや大規模抗議デモが相次いでいる。クレムリン(大統領府)は流出阻止に苦慮するが、「前線に出れば榴弾(りゅうだん)砲の餌食」(軍事専門家)となるだけにパニックは収まらない。プーチン氏は深い墓穴を掘った。
部分的動員令を受けて、現地メディアは、アルメニアやトルコ、アゼルバイジャンのバクー、ウズベキスタンのタシケント行きの航空券が売り切れたと伝えた。ほとんどが往復ではなく片道とみられる。
露紙モスクワ・タイムズ(電子版)は、航空券が2倍から3倍以上に高騰、検索サイトのグーグルで「ロシアを脱出する方法」というタグの検索数が1日で2900%も増加したと報じた。
現地の航空券予約サイト「アビアセールス」の検索数も急増し、航空大手「アエロフロート」や「航空券」を意味するロシア語の検索ワードが一気にトレンド入りした。
露独立系メディア「メドゥーザ」のまとめでは、ロシアから渡航先に選べる国として、パスポートもビザもない場合はアルメニア、ベラルーシ、キルギス、カザフスタンの4カ国。パスポートはあるがビザがない場合(一部は電子ビザが必要)はトルコ、イスラエルやアラブ、東南アジア諸国など36カ国を挙げている。
ロシアからの大脱出について「『亡命』に近い動きだろう」とみるのは筑波大名誉教授の中村逸郎氏。「旧ソ連諸国はロシア語が通じ、知人や親戚がいる人も多いため選ばれやすい。ウクライナ侵攻に反対したカザフスタンに移動するとの声も聞かれる。富裕層はトルコやロンドン、ドバイなどへの出国も考えられる」という。
ロシアの政権中枢の混乱も伝わっている。モスクワ・タイムズによると、大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は22日、当局が国境閉鎖を計画しているか否かについて、「今すぐには回答できない」とした。元国防次官で、議会下院防衛委員会のアンドレイ・カルタポロフ委員長は、召集令状を受け取るまでは移動を制限することはないとしながらも、「どこにも出かけないように」と警告した。
ロイターによると、動員令では、戦車の操縦手や工兵、狙撃手など、過去に専門的な軍務に就いたことのある予備役を求めているというが、戦局は打開できるのか。
元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は「予備役を召集しても古い人材で、もはやロシア軍には訓練能力もなく、即効性は見込めない。現在、国境警備にあたっている要員を第一線に送り、予備役を穴埋めに配置することが考えられる」と解説する。
一方で、予備役が前線に送られる可能性もあると渡部氏はみる。「ロシアの攻撃はワンパターンなので、突撃する兵士が求められているようにみえる。前線に出れば、榴弾砲の餌食になるだけだとみる向きもある」
「総動員令」を避けて国内の反発を抑えるというプーチン氏の思惑は崩れた。中村氏は「今後はロシア難民が問題化するほか、西側への内部情報の流出も増えると想定される。(1989年の)ベルリンの壁崩壊当時を想起させる」と指摘した。

 

●ロシア動員令は「正規軍崩壊の証し」 ウクライナ、東部で要衝迫る 8/24
ウクライナのゼレンスキー大統領は22日夜(日本時間23日朝)のビデオ演説で、ロシアの部分動員令は「正規軍が耐えきれずに崩壊した」ことを認めたものだとして、攻勢の継続を明言した。
ウクライナ軍は東部でロシア軍の一部防衛線を突破し、要衝に迫っているもようだ。
ゼレンスキー氏は「ロシア指導部のいかなる決定も、ウクライナに何の変化ももたらさない」と強調した。米シンクタンクの戦争研究所は22日、ロシアは部分動員令で一部の予備役を招集するとの約束を破り、一般市民の強制的な動員にも動いていると指摘。戦力は大きく向上しない一方、国内で反発が強まっていると分析した。
戦争研究所はロシアからの情報に基づき、ウクライナ軍が東部ドネツク州リマンの北方約20キロや北西約22キロの地点でロシア軍の防衛線を突破したもようだと分析した。5月にロシア軍に制圧されたリマンは、6月に陥落した東部ルガンスク州の拠点都市セベロドネツクの西方に位置し、セベロドネツク奪還への重要な拠点となり得る。
また、英国防省によると、ウクライナ軍は北東部ハリコフ州では、撤退を続けるロシア軍が防衛線を敷こうと試みたオスキル川東岸で、複数の拠点を確保した。同省は「戦況は依然複雑だが、ウクライナ軍はロシア軍が重要と位置付ける領域に圧力をかけている」と説明した。 
●欧州はエネ高騰で戦時経済に 9/24
ロシアのウクライナ侵攻が誘発した、エネルギー価格の高騰とエネルギー供給不足への懸念が欧州経済を直撃している。欧州はグローバルな経済ショックの中心であえいでいる。こうした中で、欧州連合(EU)とEU加盟国政府は、一般家庭に助成金を支給するなど支援策を講じたり、巨額の偶発的利益を手にしたエネルギー企業から一定の利益を徴収するなど、事実上の”戦時経済体制”を取り始めている。
ガス価格は8倍に
欧州では化石燃料のうちロシアへの依存度がウクライナ戦争前に40%に達していた天然ガスの価格高騰が目立ち、同戦争が始まってから8倍となり、ロシアの国有独占国有ガス企業ガスプロムがバルト海経由でドイツに達する「ノルドストリーム1」パイプラインによるガス供給を9月初めに停止したことから今冬の暖房用需要期を控えて供給不安が強まっている。
エネルギー危機は欧州では産業競争力、市民の生活水準、社会的安定にとって数十年に一度の脅威となっている。こうした中で政策担当者らは今年の冬に深刻なエネルギー供給不足となれば工場閉鎖や計画停電,エネルギーの配給などを実施する計画を立てている。
エネルギー危機は既に欧州の経済成長の大幅減速につながっており、ドイツなど一部EU諸国では年末までにリセッション(景気後退)入りする懸念もささやかれている。
EU欧州委員会は平時にはエネルギー価格は市場原理に基づいて決められるべきとの立場を取っているが、ウクライナ戦争が続く現在のような戦時においては、一般消費者を保護するとともに、一部企業の巨額の偶発的利益の一部を吐き出させることによる「公平感」の醸成を目指すことによる事実上の戦時経済体制への移行が必要だと考えている。
欧州委はまた、ロシア産ガス価格の上限設定を検討したり、エネルギー使用量の削減を義務付けるなどエネルギー市場への介入も企てている。
1400億ユーロ徴収へ
ガス価格に連動して電気料金も急上昇。米紙ニューヨーク・タイムズによると、西欧諸国では最高値を更新し続けている。ドイツでは一日平均のメガワット時で600ユーロ、フランスでは700ユーロに達し、ピーク時では1500ユーロにまで跳ね上がった。
チェコの首都プラハでは9月に入り、高騰するエネルギー料金に抗議するデモに7万人が参加した。
こうした中で、英独仏とスウェーデンの政府は一般家庭と企業の負担を軽減するために数十億ドル規模の救済措置をそれぞれ発表した。ただ、これらの措置のコストは膨大で、国際通貨基金(IMF)はEUが財政支出/赤字の枠組みを見直すよう提案した。
欧州委のフォンデアライエン委員長は9月14日、仏東部ストラスブールの欧州議会で行った施政方針演説で、ロシアのウクライナ侵攻を背景とする電気料金の高騰で巨額の利益を得ているエネルギー関連企業から、総額1400億ユーロを徴収する方針を発表した。消費者への還元や企業支援に充当する。フォンデアライエン氏は発電コストが安い再生可能エネルギーなどの発電業者について「消費者の陰に隠れ、戦争で桁外れの利益を得ることは間違っている」と指摘、利益に一定の基準を設け、これを上回る分を徴収する考えを示した。石油やガスなど化石燃料を扱う企業にも利益の一部還元を求める。
エネルギーの”武器化
欧州各国は冬場のエネルギー不足に備えてガス備蓄の増強や代替エネルギー源の確保などに尽力しているが、ガスプロムによるノルドストリーム1パイプライン経由の天然ガス供給停止なロシアの締め付けは厳しい。
ニューヨーク・タイムズによれば、ロシアのプーチン大統領はガスの供給不足でウクライナへの欧州の支援は弱まるだろうとみている節があるという。
米国のブリンケン国務長官はロシアは欧州に対して「エネルギーを武器化」していると批判している。
ウクライナ戦争が長期化する中、欧州諸国がエネルギー危機を一致団結して乗り越えられるのかは戦争の帰趨にも影響を及ぼしそうだ。
●プーチンが“すべて暴露”した「地球環境問題」と「脱化石燃料」の真実 9/24
ロシアによるウクライナ侵攻で1989年来の束の間の平和が崩れて東西冷戦に逆戻りし、グローバル化のボーナスがことごとくオーナスに転じたばかりか、西欧消費国側が仕掛けた脱化石燃料のリープフロッグ謀略もパラドックスと化した感がある。
いまや温暖化など環境問題の解決に向けた脱化石ブームのウラで起きていた“不都合な真実”がすべてめくられた――。では、誰が何のために何をしていたのか。そんな世界中にはりめぐされた「複雑系の因果関係」をレポートするのが、流通ストラテジストの小島健輔氏だ。
インフレとカントリーリスクが世界を席巻
2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、1989年11月9日の東西ベルリンの壁崩壊に発する東西冷戦の終結という現代史における束の間の平和をいとも簡単に葬り去った。
プーチンが開いたパンドラの箱には、東西冷戦終結以来、溜まりに溜まった東西間・南北間・貧富間・先進消費国対後進資源国の格差と矛盾が詰め込まれていた。
33年間にわたって世界が享受して来たデフレと経済成長というグローバル化のボーナスが一瞬にして急激なインフレとカントリーリスクというオーナスに転じ、西欧消費国側が化石燃料供給国側(OPEC+ロシア)に対して仕掛けた脱化石燃料というリーフプロッグ謀略のプロパガンダも同時に崩れた。
ウクライナ戦争がロシアと西欧諸国(NATO)の代理戦争と化して総力消耗戦となり、化石燃料と火薬の大量消費で二酸化炭素が爆発的に発生している。
兵器とインフラの消耗で巨大な有効需要が生まれているのは、正しく戦争が即効的な有効需要政策であることを実証しており、西欧消費国側が仕掛けた化石燃料インフラの強制償却というリープフロッグ謀略の必要性にも疑問符が付いた。
西欧消費国側は償却するはずの化石燃料インフラに頼るか原発に頼るかの選択を迫られており(日本も同様)、脱化石燃料のリープフロッグ謀略はパラドックスと化した感がある。
   リープフロッグ(カエル跳び)現象
インフラ蓄積の薄い新興国は償却負担が軽く、技術革新による設備更新が加速度的に進むこと。固定電話網の普及以前に携帯電話が普及し、ATMの普及以前にスマホのネット決済が普及した中国の事例が引き合いに出されることが多い。
地球温暖化はリープフロッグのプロパガンダ…?
西欧消費国側が仕掛けた二酸化炭素を元凶とする地球温暖化説は、化石燃料文明の既存インフラを全面償却して、クリーンエネルギー文明を構築する巨額投資で停滞する西欧経済を活性化せんとする世紀のリープフロッグ大謀略だった。
産業革命以来のインフラ蓄積の厚い西欧消費国は途上国のようなリープフロッグ現象が期待できず、戦争に匹敵する大規模な既存インフラ償却という有効需要政策を必要としていた。
リーマンショックに対策して先進各国の中央銀行が大量供給した低金利資金も大半がBRICsに流れ、中国やインド、ブラジルやロシアの急激な経済成長をもたらして習近平やプーチンの権力獲得に貢献し、今や西側世界はその清算を強いられている。
「SDGs」の大合唱のウラで…
もとより地球温暖化説も二酸化炭素元凶説も科学的裏付けの怪しいプロパガンダであり、気候学者や地質学者など専門家の多くは疑念を呈している。
地球温暖化説は時間の物指し次第で逆(寒冷化)とも取れる未検証な説で、数十年というレンジでは温暖化に見えても数千年というレンジでは顕著に寒冷化しており、最終氷河期終了(1万1600年前)以来の最暖期だった8000年前に比べると平均気温は2度から3度、水面も4〜6メートル低下している。
二酸化炭素元凶説も産業革命以降の工業発展によるものではなく8000年前の焼畑農耕に発すると見る学者も多く、生態系が繁栄するにも一定レヴェルの二酸化炭素濃度は必要だ。
地球史を振り返れば現在の二酸化炭素濃度は低く、生態系を活性化させ自然の自浄力を高めるには現在より多少高い方が望ましいという見方もある。
科学的には怪しい二酸化炭素元凶地球温暖化説がSDGsの潮流に乗って西側世界の大合唱となっていったのは、行き詰まった西欧文明を既存インフラの強制償却によって再生せんとする政財界の利害が一致したからで、敢えて逆らうメリットは学者や化石燃料資本などに限られたからと思われる。
ICEV(内燃機関動力車)からEV(電気動力車)へ全面転換することが社会全体のエネルギー効率を高め環境を改善するか冷静に検証すれば極めて怪しいが、トヨタ自動車など現実を見た理性の声もポピュリズムの大合唱にかき消されつつあるのが現実だ。
欧米のポピュリズムがどれほどのものか、ディーゼル信仰から一転してのEV信仰は検証なきカルトと言っても良いだろう。
分断と対立には誰にもメリットが無い
現代史を振り返れば、第二次大戦の荒廃からの復興ボーナス(人口増とインフラ再建)が73年のオイルショックで終わって停滞期に入り、89年のベルリンの壁崩壊を契機とするグローバル化ボーナス(コストダウンと市場拡大)で新たな発展を享受したものの、08年のリーマンショックを契機に先進国経済が伸び悩む一方、BRICs諸国は爆発的に成長して力関係が激変した。
世界市場は拡大を継続したもののグローバル化はインフレ輸出というオーナスに転じ、コロナとウクライナ侵攻で分断と対立の東西冷戦に逆戻りし、劇的なインフレとカントリーリスクというオーナスが西欧諸国に繁栄の清算を強いている。
そんな中で化石燃料文明のインフラを強制償却してクリーンエネルギー文明を構築するというリープフロッグ大謀略は過ぎた重荷となり、専制国側に加えてOPECなど産油国側も対立関係に追いやるリスクとコストに耐えなくなった。
消耗する大国
ウクライナ侵攻のNATOによる代理戦争化、経済制裁と資源制裁の応酬でロシアもNATOも消耗しており、西欧側は化石燃料文明のインフラを強制償却する必要も余裕も失ったのではないか。
ロシアや中国など専制国VS.米国を軸とする西欧先進国という対立の構図はインフレとカントリーリスクが増大するだけで、化石燃料インフラを強制償却する余裕が無くなった以上はどちらにもメリットが無い。
一刻も早くウクライナに平和が戻って再び世界にデタントが訪れ、分断と対立の構図が解消されることを願うばかりだ。
●トヨタ ロシアの工場閉鎖へ 軍事侵攻長期化で生産継続困難 9/24
トヨタ自動車はロシアのサンクトペテルブルクでの生産活動を終了し、工場を閉鎖すると発表しました。ロシアのウクライナへの軍事侵攻が長期化し、現地での生産を続けることが難しくなったと判断したためで、日本の自動車メーカーがロシアの工場の閉鎖を決めるのは今回が初めてです。
トヨタ自動車はロシアのウクライナへの軍事侵攻の影響で部品が調達できなくなりことし3月からサンクトペテルブルクにある工場の稼働を停止していました。その後、生産の再開に向けて設備のメンテナンスを行い従業員への給料の支払いも続けてきましたが、事態が長期化し生産再開の可能性が見込めないとして現地での生産活動を終了し工場を閉鎖することを決めました。今後、ロシアでの新車の販売は行わないということですが、車の保有者へのアフターサービスは続けるとしています。トヨタは2007年にサンクトペテルブルクの工場で生産を始め、SUV=多目的スポーツ車など年間8万台あまりを生産していました。工場で働くおよそ2000人の従業員に対しては今後、最大限の支援を行うとしています。
日本の自動車メーカーではこのほか日産自動車やマツダ、それに三菱自動車工業がロシアでの生産を停止していますが、工場の閉鎖を決めたのはトヨタが初めてです。
●「戦争に行くか、投獄か」 ロシア、逮捕のデモ参加者に選択強要 9/24
ロシアの予備役動員令に抗議するデモに参加したミハイル・スエチンさん(29)は、拘束されることは予測していたが、まさか自分が反対している軍への入隊を命じられるとは思いもしなかった。
ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が21日、国民に向けたテレビ演説で、第2次世界大戦(World War II)以来となる動員令を発表すると、国内では抗議が巻き起こった。
首都モスクワでこれまでにも反政権デモに参加してきたスエチンさんはAFPの電話取材に、「いつものように逮捕され、警察に連行され、出廷させられることは覚悟していた。ところが、『お前はあす戦争に行く』と言われ驚いた」と語った。
独立系人権団体「OVDインフォ(OVD-Info)」によると、21日に国内各地で行われたデモでは、1300人以上が逮捕された。モスクワの少なくとも15か所の警察署では、拘束された男性が徴兵用紙を手渡されたという。
大統領府のドミトリー・ペスコフ(Dmitry Peskov)報道官は翌朝の記者会見で、こうした手続きは「法律違反ではない」と擁護した。
動員令発表の前日には、招集令状を拒否した人や脱走兵への処罰を強化する法案がロシア議会を通過。まだ新法として成立はしていないが、違反者に5〜15年の懲役刑を科す内容となっている。
「戦争に行くか、10年間投獄か」
警察署に連行されたスエチンさんは一人で部屋に連れて行かれ、翌日に徴兵事務所に出頭することを求める令状に署名するよう圧力をかけられた。警察官は、「これに署名してあす戦争に行くか、10年間投獄されるかのどちらかだ」と脅したという。
スエチンさんは弁護士の助言に従い、署名を拒否。翌朝5時ごろに釈放された。だが警察は、重大事件を担当するロシア連邦捜査委員会に対し本件を通知するとし、スエチンさんは「非常にまずい」状況に置かれると警告した。
だが、招集に応じた人の未来がこれよりも明るいわけではない。
先週18歳になったばかりの大学生アンドレイさんは、モスクワでのデモで拘束された後、軍に招集された。
アンドレイさんはAFPに対し、警察署では署名を拒否する人々が警官から「脅迫」を受けていたと証言。「自分が逃げられないのは明らかだった」ことから、徴兵事務所への出頭を誓約する文書に署名してしまったと語った。
両親には伝えず
ロシアのセルゲイ・ショイグ(Sergei Shoigu)国防相は21日、学生は動員しないと約束しており、大学に入学したばかりのアンドレイさんは招集されないはずだった。「ロシアは無限の可能性を秘めた国だとはよく言ったものだ」とアンドレイさんは皮肉った。
22日の徴兵事務所への出頭には応じないことにしたが、今は弁護士を探しているところで、今後どうするかは分からないという。
両親には、心配をかけたくないとの理由でまだ打ち明けていない。「自分がどうなるのかがより見えてきたら、言うと思う」 
●ウクライナへの侵攻7か月 ロシアの支配地域で予備役の動員か  9/24
ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始してから24日で7か月となりました。ロシアが支配する地域ではプーチン政権が一方的な併合をねらって、「住民投票」だとする組織的な活動が実施されているほか、ロシア国内で始まった予備役の部分的な動員まで行われているとされ、ウクライナのゼレンスキー大統領はいかなる手段を使ってでも動員から逃れるよう国民に呼びかけました。
ウクライナ軍が東部や南部で反転攻勢を続ける中、ドネツク州やルハンシク州、ザポリージャ州、それにヘルソン州などのロシアの支配地域では、プーチン政権の後ろ盾を得た親ロシア派の勢力による「住民投票」だとする組織的な活動が行われています。
ロシアによる一方的な併合をねらった動きとみられていて、G7=主要7か国の首脳は23日、「仮に併合と称することが起きたとしても決して認めない」とする声明を発表しました。
この動きと並行してロシアのプーチン大統領は21日、予備役を部分的に動員すると表明し、ロシアでは首都モスクワをはじめ、各地で市民が相次いで招集されています。
ロシア国防省は動員の規模を30万人だとしていますが、独立系のメディアは100万人の動員を可能とする条項が大統領令の中に非公開で含まれているとも伝えていて、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は23日、「年配者や学生、軍務経験のない市民など、戦闘経験を持つ男性を優先するという基準に満たない者まで動員している」と指摘しています。
ウクライナ軍は24日、「占領者はザポリージャ州やヘルソン州で、ロシアのパスポートを受け取った男性に動員の要請を始めた」とSNSに投稿し、ウクライナ国内にあるロシアの支配地域でも動員が行われていると指摘しました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は23日に公開したビデオ演説で、「いかなる手段を使ってでも招集令状を逃れ、ウクライナの解放地域に行ってほしい」と述べ、動員から逃れるよう国民に呼びかけました。
ウクライナへの軍事侵攻が始まって24日で7か月となりますが、プーチン政権は欧米側の非難をよそに、一層、強硬な手段に出ていて、戦闘のさらなる長期化は避けられない見通しです。
“少数民族の動員活発化”人権団体が懸念
ロシアのプーチン大統領が予備役を部分的に動員すると表明したあと、ロシア国内では少数民族が多く暮らす地方でも動員の動きが活発化しているとして人権団体が懸念を示しました。
ロシア極東のブリヤート共和国の人権団体の代表は、1日で4000人から5000人が動員されたとしたうえで、「ブリヤートではプーチン大統領が言う部分的な動員ではなく全面的な動員が行われている」と述べ、貧しい少数民族に負担がのしかかっていると指摘しました。
またブリヤート共和国の人たちの中には動員から逃れるために、ビザがいらない隣国のモンゴルに出国する動きが出ているとしています。
「部分的な動員」「住民投票の実施」ロシアのねらいは
軍事侵攻の開始から7か月がたつ中、ロシアのプーチン政権が予備役の部分的な動員を始めたことについて、ロシアの外交・安全保障政策に詳しい笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員は「ロシア国民はウクライナでの戦争の現実を感じざるを得なくなった」として、今後、ロシア国内の世論に変化が生じるか注視する必要があると指摘しました。
畔蒜主任研究員は「『ウクライナでの戦争の現実』と『モスクワで続く日常生活』というパラレルワールドを維持することが、これまでロシア国民が戦争を支持する前提条件になっていた」としたうえで、「部分的な動員が始まったことで、ロシアの国民が戦争の現実を身近なものに感じざるを得なくなった」と述べて、今後、ロシア国内でプーチン大統領や戦争に対する支持が低下していく可能性があると指摘しました。
また23日からロシア側が始めた「住民投票」だとする活動については、「もともとは支配領域を拡大したうえで『住民投票』を行うはずが、ハルキウでの敗北を受けて急きょ、実施することになった。このまま何の手も打たずに戦争を続けると、すでに確保している占領地域をも徐々に失っていくという危機感がロシア側には相当ある」と述べました。
そのうえで、「プーチン政権は『部分的な動員』を行い、『住民投票の実施』を指示し、かつ、『核の使用を示唆』する形でウクライナの前進を止めるねらいがある」と指摘し、ロシア側はこの3点を組み合わせることで戦況を好転させたい思惑があるという見方を示しました。
このうちプーチン大統領が21日の演説で『核戦力の使用』を辞さない構えを示したことについて畔蒜氏は、「5月にアメリカとロシアが軍レベルで対話をして以降、プーチン大統領は核使用を示唆してこなかったが、今回、改めてそれを示唆した。この局面で米ロが再びコミュニケーションをとるのかどうか注目される」と述べました。
今後の展開については、ロシアがヨーロッパへのエネルギー供給を制限する動きも見せる中、「これから冬を迎えるドイツやフランスなどヨーロッパの国々が、どこまで団結してウクライナへの支援を続けられるのかも大きな注目点だ」と指摘しました。
●ウクライナ「住民投票」、ロシア兵が戸別訪問で編入の賛否を「集計」 9/24
ロシア軍が制圧するウクライナ東部や南部でロシア当局が、ロシア編入の是非を問う「住民投票」を開始している。現地のウクライナ人によると、武装したロシア兵が住民を戸別訪問して、編入への賛否を直接確認して回っているという。
南部エネルホダルに住む女性はBBCに対して、「やってきた兵士に口頭で、(ロシア編入に賛成か反対か)答えなくてはならない。兵士はその答えを記入した用紙を持ち帰る」のだと話した。
南部へルソンでは、街の中心部に投票箱を持ったロシア兵が立ち、住民の投票を集めているという。
ロシアの国営タス通信は、戸別訪問での票の回収は「安全のため」だとしている。「直接投票は9月27日のみで、それ以外は地域ごとに、戸別に行われる」という。
南部メリトポリの女性はBBCに対して、地元の「協力者」2人がロシア兵2人と共に自分の両親のアパートを訪れ、投票用紙を渡したと話した。その目の前で「父親は(ロシア編入に)『反対』と書き込んだ」のだという。
女性によるとさらに、「母親がそのそばにいて、『反対』と書いたらどうなるのか尋ねると、『何も』という返事が返ってきた」という。
「これからロシアに迫害されるのではないかと、母は心配している」と女性は話した。
女性によると、用意される投票用紙は1人1枚ではなく、世帯ごとだという。
ロシア当局がウクライナ東部や南部で「住民投票」を戸別訪問で実施しているという情報は、こうした個々の住民の話がもとになっているものの、ロシア兵が同行しているという話から、住民投票は自由で公平なものだというロシア政府の主張に疑問が生じている。
各地で5日間にわたり実施されるこの「住民投票」の結果、ロシアはウクライナ東部や南部の一部地域を「ロシアの一部」だと主張するだろうというのが、大方の見方だ。事実上の「併合」にあたるこの結果を、ほとんどの諸外国は承認しないものとみられるが、ロシアは対象地域への攻撃を自国への攻撃だと主張する根拠にすると予想されている。
   「住民投票」の内容は
・国際的に未承認の自称「ルハンスク人民共和国」と同「ドネツク人民共和国」では、連邦の一部としてロシアに帰属することを支持するかどうか、住民に質問している
・ザポリッジャ州とヘルソン州では、「ウクライナからの分離、独立国の樹立、後に連邦の一部としてロシアに帰属することを支持する」かどうか、住民に質問している
・ルハンスクとドネツクでは投票用紙の言語はロシア語のみ
・ザポリッジャ州とヘルソン州ではウクライナ語とロシア語が併用されている。
アメリカのジョー・バイデン大統領は23日、ロシアによるこうした住民投票を「やらせ」だと非難。「合衆国はウクライナの領土をウクライナの一部として以外、決して承認しない。ロシアの住民投票はやらせだ。国連憲章を含む国際法に甚だしく違反し、ウクライナの一部を武力で併合するための、にせの建前だ」と批判した。
イギリスのジェイムズ・クレヴァリー外相は、ロシア当局がすでに「このやらせの住民投票について、投票率も賛成率もあらかじめ決めてある」ことを示す証拠を、イギリスは得ているのだと話している。外相によると、ロシアはルハンスク、ドネツク、ヘルソン、ザポリッジャの4州の併合を、月末までに正式に決定し手続きを終えるつもりだという。
南部ヘルソンの住民はBBCに対して、ロシアの通信社が投票所の位置を説明しているほかは、ことさらに投票を呼びかける動きはないと話した。投票所は10年も使われていない港湾地区の建物だという。
ヘルソンに住む別の女性は、投票所だと思われる建物の外に「武装勢力」がいたと話す。自分は、投票させられないよう、パスポートを忘れたふりをしたと話した。
この女性は、自分も友人も家族も、知り合いは誰もがこの住民投票に反対していると話す。
「この住民投票の後、自分たちの暮らしがどうなるのかわからない。(ロシアが)何をどうしたいのか、とてもわかりにくい」と女性は話した。
ウクライナ政府は、住民投票の結果がどうなっても情勢は何も変わらず、ウクライナ軍はロシアに制圧された全ての領土を解放するため攻勢を続けるとしている。
動員避けるためロシア人男性の出国続く
他方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ侵攻をめぐり、少なくとも予備役30万人の「部分的な動員令」を発動したことを受け、ロシアの国境沿いには招集を回避するために出国しようとする人たちの行列ができている。
サンクトペテルブルクを離れてカザフスタンに逃れた若いロシア人男性は、BBCラジオに対して、自分の友人もほとんどが移動中だと話した。
「今のところ、完全崩壊みたいな感じだ。亡命を考えていない人間など、知り合いでは1人か2人しかいない」と、この男性は話した。
自分のようにロシアから出国した知り合いもいれば、小さな村に身を隠した知り合いもいるという。
「自分たちは今しきりにウクライナでの戦争について考えている。でも2月にはそれほど、この戦争について考えなかった。それがロシアの大問題だ」
●集団埋葬地から447遺体 ウクライナ搬出完了 戦争犯罪捜査へ 9/24
ウクライナ軍がロシア軍から奪還したウクライナ東部ハリコフ州イジュム近郊で見つかった集団埋葬地を巡り、同国検察当局は23日、遺体の搬出作業を完了した。子供5人を含む民間人425人と軍人22人の計447人の遺体が搬出された。首にロープをまかれるなど複数の遺体に拷問を受けた痕跡があり、ウクライナは露軍の戦争犯罪があったとみて捜査を進める。ウクライナメディアが伝えた。
ロシアの首都モスクワでは23日、ウクライナ国内の露占領地域で同日始まったロシアへの編入の賛否を問う「住民投票」を支持する集会が開かれた。集会は政権側が主催し、国営テレビが中継。警察当局は約5万人が参加したと主張した。米欧諸国が一方的な「住民投票」を非難する中、露政権は国民の高い支持をアピールする狙いとみられる。
●米、ロシアに核兵器投入を警告 非公式接触で過去数カ月間 9/24
複数の米政府当局者は24日までに、米国が過去数カ月間、非公式の接触手段を通じウクライナに侵攻したロシアに対し核兵器を使った場合、相応の結果を招くと警告してきたことを明らかにした。
この接触手段の詳細や警告した時期などは即座にわかっていない。ただ、米政府当局者は米国務省が関与していることは認めた。
バイデン米政権は、ウクライナ侵攻に備えた兵力集積や侵攻開始の時期に情報機関を通じて機微に触れるメッセージを伝えてきてもいた。
ロシアのプーチン大統領は今月21日の演説で、ウクライナにおける戦況の劣勢が目立ち始めたことを受け、核兵器使用も威嚇していた。
米政府当局者によると、プーチン氏が核兵器攻撃に触れたのは今年2月のウクライナ侵攻の開始以降、初めてではない。ただ、一部専門家は21日の威嚇は過去の類似の言動と比べ、より具体的かつ可能性の拡大をにじませたものと受け止めている。
米中央情報局(CIA)の最高幹部らは公にはロシアが核兵器の使用を準備している兆候はないと説明している。しかし、一部の軍事アナリストらはウクライナでの形勢の不利を踏まえ戦場での威力にとどめる戦術核を投入する事態を危惧してきた。
米情報機関当局者たちは、プーチン氏はロシアあるいは自らの支配体制の存在が危険な局面に陥ったと判断した場合のみ、核の選択肢に頼る可能性があるとみてきた。ウクライナ戦争での敗北への直面がこれに該当するのかどうかは不明となっている。
●「核テロ」か「亡命」か 窮鼠のプーチン大統領が狂乱状態に 9/24
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は18日のビデオ声明で、奪還した東部ハリコフ州に続き、東部ドンバス地域やクリミア半島でも、ロシア軍への反攻を続ける意思を明確にした。一方、敗走が伝えられるロシア軍は最近、ダムや送電線といったウクライナの民間インフラへのミサイル攻撃を増やしている。中国の習近平国家主席からも距離を置かれ、追い込まれたウラジーミル・プーチン大統領が「核テロ」に踏み切る重大危機と、「亡命」検討情報。中国が岸田文雄政権に仕掛ける日米分断工作とは。ジャーナリストの加賀孝英氏が最新情報に迫った。
「プーチン大統領が、キレて危険だ。ウクライナでの無差別虐殺や、NATO(北大西洋条約機構)と全面戦争となる核攻撃で、暴走する危険がある。ジョー・バイデン米大統領とNATOは警告を発した。その裏側で、中露両国は『岸田政権潰しの対日攻撃』に出ている」
外事警察関係者は、こう語った。
ご承知の通り、ウクライナ情勢が激変している。ウクライナ軍は今月上旬、ハリコフ州で反攻を強め、東部の要衝イジュムを奪還した。ロシア軍は総崩れで逃走し、戦況は一気に「ロシア敗北」濃厚となった。
こうしたなか、中国とロシアが主導して中央アジア・ウズベキスタンで開かれていた上海協力機構(SOC)首脳会議が16日、閉幕した。
外務省関係者は「世界がSOC首脳会議を注視していた。プーチン氏は戦況を逆転すべく、必死で全加盟国に『ロシアへの全面支持と支援表明。ウクライナを支援する米国とNATOへの対決姿勢の表明』を工作していた。しかし、すべて失敗した。盟友のはずの習氏も拒否した。見捨てられた格好だ。プーチン氏の権威失墜を、全世界が目撃した」と語った。
一体、何があったのか。情報をまとめると、こうだ。
1.習氏は14日、ウズベキスタンのサマルカンド国際空港に到着した。同国のシャフカト・ミルジヨエフ大統領らが出迎えた。プーチン氏は翌15日に到着し、格下のアブドゥラ・アリポフ首相が出迎えた。中国とロシアを明らかに区別して、プーチン氏に屈辱を味わわせた。
2.中露首脳会談が15日に行われた。プーチン氏は終始、習氏を褒めたが、習氏は不機嫌だった。「内心激怒していた」とされる。ウクライナ侵攻の長期化で、日本と米国、オーストラリア、NATO諸国が「台湾防衛」で結束した。習氏が企てる「台湾統一(侵攻)」を難しくさせた。すべてプーチン氏の無能のせいだからだ。
3.プーチン氏は、トルコやインド、アゼルバイジャン、キルギスタンの首脳と個別会談した。ところが、予定時刻に各国首脳が現れない。「反プーチン」の意志表明だった。一人待たされるプーチン氏の姿に、記者団から嘲笑がもれた―。
驚愕(きょうがく)情報がある。以下、日米情報当局から入手した情報だ。
「プーチン氏は狂乱状態だ。ウクライナのザポリージャ原子力発電所の破壊(核テロ)や、戦術核攻撃を『セルゲイ・ショイグ国防相や、ワレリー・ゲラシモフ参謀総長らに何度か命令した』という情報がある。プーチン氏は『勝利のためには、核攻撃しかない』と妄信している。一方で、クーデターや暗殺におびえ、『極秘裏に、シリアなどへの亡命を検討し始めた』という情報まである」
米上院外交委員会は14日、台湾への軍事支援を大幅に強化する「台湾政策法案」を賛成多数で可決した。欧州議会は15日、中国の軍事的挑発行為を非難し、台湾と欧州連合(EU)の関係強化の提言を盛り込んだ「台湾海峡情勢決議文」を採択した。
弱腰の岸田政権を狙った「中露北」日本無力化工作
日米情報当局の情報は、こう続く。
「習氏は焦っている。『台湾政策法案』は事実上、台湾を独立国と認める画期的なものだ。法案は今後、上下両院本会議で可決、バイデン大統領の署名で成立する。習氏には時間がなくなった。『台湾侵攻Xデー』が早まりかねない。中国は一方で、台湾防衛の要である日米同盟の分断工作を画策している。ターゲットは弱腰・二股外交の岸田政権だ」
「親ロシア派ハッカー集団が今月上旬、『日本に宣戦布告』し、政府系や民間企業のサイトが攻撃された。西側情報機関は『プーチン氏がバックについたハッカー集団の1つ』と認識している。中国とロシアは『日本無力化工作』で連携している。中国サイバー部隊(攻撃部隊約3万人)が参戦する。サイバー戦争だ。日本の国家機能崩壊の危機だ。中国とロシア、北朝鮮の『岸田政権潰し』の世論工作部隊も動いている。日本の一部勢力も連携している可能性がある。日本の危機だ」
岸田首相に申し上げたい。
中国とロシアと北朝鮮は、岸田政権を完全にナメている。理不尽な攻撃から逃げてはダメだ。日本の主権と民主主義を守るために、裏切り者を排除して、断固戦うべきだ。そうしなければ、日本は本当に終わってしまう。
●プーチン氏はウクライナ侵攻「あおられた」 元伊首相が擁護発言 9/24
イタリアのシルビオ・ベルルスコーニ元首相(85)が22日、長年の盟友、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに侵攻したのは「取り巻きにあおられた」からだと発言した。国内で非難の声が上がり、23日に釈明に追われた。
ベルルスコーニ氏は22日、国営イタリア放送協会の番組で「プーチン氏は実に厄介でドラマチックな状況に追い込まれた」として、ウクライナ東部ドンバス地方の親ロシア派がモスクワを訪れ、ウクライナ軍から攻撃を受けたと主張して支援を求めたのだと話した。
「プーチン氏は、ロシア国民と自身の党(統一ロシア)、閣僚たちにあおられて特別軍事作戦を考え出した。(ウクライナの)キーウに入り、1週間以内に(ウォロディミル・)ゼレンスキー政権を適任者にすげ替え、次の1週間でロシアに戻るつもりだった」
この発言をめぐり、イタリア国内では抗議の声が上がり、中道左派「民主党」のエンリコ・レッタ書記長(党首)は「言語道断」だと非難した。
ベルルスコーニ氏は23日、誤解であり、他の人々が言っていたことを話しただけだと釈明。「ウクライナへの侵略は不当であり、容認できない」と述べ、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)への支持を表明した。
ベルルスコーニ氏が党首を務める中道右派政党「フォルツァ・イタリア」は、25日に実施される総選挙で、ジョルジャ・メローニ氏率いる極右政党「イタリアの同胞」主導の連立政権の一角として政権に復帰するとみられている。
ベルルスコーニ氏は主にオンラインで選挙運動を実施。家事労働の賃金を約束して中高年女性や主婦層の心をつかもうとしている。
また、短編動画投稿アプリ「ティックトック(TikTok)」で、みんなのガールフレンドは奪うつもりはないなどとジョークを飛ばして若者にもアピールしている。

 

●プーチン氏が命じた「動員」100万人規模か…対象外の大学生にも招集令状  9/25
ロシアのプーチン政権が、ウクライナ侵略の兵員を補充するため発令した部分的動員を巡り、強引な招集の実態が次々と明らかになっている。動員規模についても、セルゲイ・ショイグ国防相が21日に言及した30万人にとどまらず、100万人規模との報道が相次ぎ、国民の不満は高まるばかりだ。露独立系人権団体によると、モスクワなどで24日、再び抗議デモが行われ、少なくとも554人が治安当局に拘束された。
シベリアのメディアによると、ブリヤート共和国にある人口約5500人の村では、プーチン大統領が部分的動員を発令したテレビ演説から数時間後の21日夜、対象者宅の訪問を担当者が始め、翌日午前4時に集合するよう指示した。午前10時には男性約700人が、訓練施設に向け出発した。
極東沿海地方は約7700人の招集を24日までに終える予定だ。地方政府の迅速な対応が際立つが、粗さも目立つ。ブリヤートでは、動員対象外のはずの大学生にも招集令状が渡された。南部ボルゴグラード州では、63歳で糖尿病などの持病も抱える退役軍人が、身体検査を受けずに招集された。
動員規模の不透明感が社会の動揺に拍車をかけている面がある。露大統領府が21日に公表した部分的動員令では、規模を記載した第7項を「機密扱い」として開示していない。ショイグ氏が言及した30万人という数字も国営テレビでの発言だけだ。
動員が11月まで3段階に分けて実施されるとの情報もあり、ロシア語の独立系ニュースサイト「ノーバヤ・ガゼータ欧州」は22日、大統領府関係者の証言として、第7項は「最終的に100万人になった」と報じた。露大統領報道官は否定したが、独立系ニュースサイト「メドゥーザ」も23日、動員規模は「120万人」と報じた。
プーチン政権は、ウクライナ侵略を職業軍人や「志願兵」だけが派遣される「特殊軍事作戦」と称し、国民に関心を向けさせないよう腐心してきた。反戦運動も厳しい情報統制と弾圧で抑え込んでいた。
だが、身近な家族や同僚が強制的に戦場に送られることになれば、 厭戦えんせん ムードが高まり、高止まりしてきたプーチン氏や軍事作戦への支持率にも影響を与えるのは必至だ。プーチン氏は、国内の安定維持という難題も自ら抱え込んだ形だ。
●ウクライナ軍事侵攻中のロシア 予備役動員へ国内で抗議相次ぐ  9/25
ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン政権は予備役の動員に踏み切り、各地で連日、市民を招集していますが、これに抗議する動きが相次いでいます。プーチン政権は多くの参加者を拘束し力で押さえ込んでいますが、国民の間では不満が広がっているものとみられます。
ウクライナで今月に入ってウクライナ軍が東部や南部で反転攻勢を続ける中、ロシアのプーチン大統領は21日、予備役を部分的に動員すると表明し、各地で市民が軍に招集されています。
ロシアの独立系のメディアは、優先的な招集の対象ではない高齢者や学生も動員され、国防省が示した30万人という規模を大幅に上回る100万人が動員される可能性があると伝えています。
またシベリアのケメロボ州にある村では、住民の男性すべてが動員されたとも伝えています。
こうした中、24日、動員に抗議する活動が首都モスクワや第2の都市サンクトペテルブルク、それに極東シベリアの都市などロシア各地で行われました。
抗議活動の参加者は治安部隊によって次々と拘束され、ロシアの人権団体は、日本時間の25日午前3時すぎの時点で、少なくとも32の都市で740人余りが拘束されたとしています。
拘束された参加者に招集令状が渡されることもあると伝えられていて、その合法性について記者に問われたロシア大統領府のペスコフ報道官は「何の違法性もない」と行為を正当化しています。
プーチン政権は市民の抗議活動を力で押さえ込みながら、あくまでウクライナ侵攻を続ける構えですが、国民の間では不満が広がっているものとみられます。
一方、ウクライナではロシアの支配地域で親ロシア派の勢力が「住民投票」だとする組織的な活動を強行していて、プーチン政権による一方的な併合をねらった動きだとして、ウクライナや欧米各国が強く非難しています。
「住民投票」についてロシア国営のタス通信は24日、議会関係者の話として、今月27日の投票終了後、ロシアの議会での決議を経て、30日にも併合の手続きが行われる可能性があると伝えています。
●ロシア、世論引き締めに躍起 プーチン政権、反戦に「愛国」で対抗 9/25
ロシアのプーチン政権は、最大100万人規模とも言われる予備役の部分動員令で動揺が広がる中、世論の引き締めに必死だ。
24日も全土で抗議デモがあり、国民の間で厭戦(えんせん)ムードが高まれば、ウクライナ侵攻で戦況を好転させるどころか、逆に足をすくわれかねない。再燃した反戦デモには「愛国デモ」で対抗し、あくまで主戦論をあおっている。
「仲間を見捨てない」。プーチン大統領の政治運動体「全ロシア人民戦線」は23日、こう銘打った官製デモをモスクワ中心部で開催した。ウクライナ東・南部4州でロシア編入に向けた「住民投票」が始まったのに合わせ、国民の「支持」を演出。プーチン氏は姿を見せなかったが「5万人」(警察発表)を動員した。
国内では大統領令が出された21日から、地方を中心に早くも動員が活発化。対象の「経験豊富な予備役」(ショイグ国防相)の男性らが、集団でバスに乗り込む映像などがインターネットに投稿された。軍参謀本部は「初日だけで約1万人が自主的に招集に応じた」と発表し、徴兵忌避の声をかき消すのに躍起だ。
「動員計画を254%上回って達成している」。南部チェチェン共和国の独裁者カディロフ首長は22日、既にウクライナにチェチェン兵2万人を投入してきたと地元メディアで主張。ロシア軍の劣勢を覆すため、地方単位の「自主動員」が持論だったこともあり、プーチン氏への忠誠心を数字でアピールした。
だが、国民の間では一方的な負担の押し付けへの不満がくすぶっている。ペスコフ大統領報道官の息子ニコライ氏が21日、独立系放送局「ドシチ」の生放送で、おとり取材の電話で「翌朝10時に出頭するように」と通告された際、招集に応じない考えを明らかにすると、父子ともども厳しい批判を浴びた。
反発を恐れる政権与党「統一ロシア」幹部は23日、通信アプリに「所属する下院議員4人から、特別軍事作戦(侵攻)に派遣してほしいと申し出があった」と投稿した。もっとも、政治家を動員できるかどうかは「国防省が判断する」とも付け加えており、国民向けのポーズにとどまる可能性も排除できない。
●「住民投票」強行のウクライナ4州、ロシアが30日にも一部併合手続きへ… 9/25
タス通信は24日、ロシア議会の関係者の話として、ウクライナの東部と南部の親ロシア派勢力が一方的に「住民投票」を実施している4州の一部について、30日にもロシアへの併合手続きが行われる見通しだと伝えた。
ウクライナの東部ドネツク州とルハンスク州、南部のヘルソン州とザポリージャ州では23〜27日の日程で、露軍の支援を受ける親露派が支配地域のロシアへの併合を目指して「住民投票」を強行している。
ロシアのプーチン政権は「住民投票」の結果を支持するとの立場を表明しているが、ウクライナ政府などは「偽りの投票」と批判し、住民への圧力といった露側に都合のよい不正が行われると訴えている。
●プーチン大統領 兵役拒否・脱走者に厳罰を科す刑法改正案承認  9/25
ロシアのプーチン大統領は24日、動員や戒厳令の期間中、あるいは戦時中に、兵役を拒否したり脱走したりした者に厳罰を科すことを規定した、刑法などの改正案を承認しました。
兵役の拒否や脱走のほか命令に従わなかったり上官に抵抗したりした場合、最大で15年の禁錮刑を科すとしています。
今回の改正で法律に「戦時中」などに加えて「動員の期間中」という文言が新たに盛り込まれたほか、職業軍人だけでなく招集された予備役も重い刑事責任を負うとしています。
ウクライナでロシア軍は深刻な兵員不足に陥っているとされるほか、戦闘への参加を拒否した兵士が部隊を離れるなど士気の低下も伝えられ、プーチン政権としては、罰則を厳しくすることで軍の引き締めを図るとともに、今月21日に踏み切った予備役の動員を確実に進めるねらいもあるものとみられます。
●ロシア議会、29日に併合法案審議 プーチン氏が30日演説も 9/25
ロシアの通信各社は24日、ウクライナ東・南部の親ロシア派勢力が実効支配する4地域でロシアへの編入の賛否を問う住民投票が23日に始まったことを受け、ロシア議会下院が29日に当該地域の併合法案を審議する可能性があると報じた。プーチン大統領が30日に議会で演説する準備しているとの情報もある。
住民投票が実施されているのはウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州、南部のへルソン州とザポロジエ州の一部地域。投票は27日までの予定。
国営タス通信によると、併合法案を住民投票終了から2日後の29日にも討議する可能性があると下院関係者が述べた。
インタファクス通信は、関係筋情報として、上院が同日中に法案を審議する可能性があると伝えた。RIAノーボスチ通信によると、プーチン大統領が30日に両院臨時合同議会で正式な演説を行う準備をしている可能性があるという。
ルガンスク州の当局者によると、投票2日目終了時点で投票率は45.9%。ザポロジエ州は35.5%とロシアメディアが伝えた。 
●「ロシアを核攻撃するよう国際社会は宣言すべき」 ゼレンスキー“最側近” 9/25
“部分的”と前置きをしながらもついに動員に踏み切ったプーチン大統領。さらに核使用についても、あえて“脅しではない”と念を押した。新たな局面に突入したウクライナ戦争。ゼレンスキー大統領最側近に単独インタビュー、専門家とともにその影響と今後を読み解いた。
「今回の動員は・・・脅威にはならない」
プーチン氏が“部分的動員”の大統領令に署名した。これにより30万人の予備役が招集され、おそらくはウクライナでの軍事行動に参加することになる。人員不足が伝えられるウクライナ前線のロシア軍にとって、この動員はどれくらいの効果があるのか、番組ではウクライナ側に話を聞いた。ゼレンスキー大統領の最側近の一人、ポドリャク大統領顧問だ。
ポドリャク大統領顧問「始まった当初、ロシアは能力の高い部隊が多かったが、今はほとんど残っていない。今回動員されるホワイトカラーの人たちは十分な訓練を受ける時間もなければ適切な装備もないので脅威にはならない。(中略)それに国家に対する忠誠心が問題になる。彼らは30万人と決めているわけではなく、できるだけだけ動員したいので、50万人、100万人になる可能性もある。皮肉ですが、ロシアの唯一の才能は数で勝負することです」
確かに、頭数ではロシアにはまだまだ兵士になりうる人間はいる。だが、突然戦場に連れていかれ、忠誠心もなければ満足な装備もない。さらに大きな問題を小谷哲男教授は指摘する。
明海大学 小谷哲男教授「戦闘に入る前には十分な訓練が必要で、そのためのシステムが必要です。訓練にはそのための将校が必要です。彼らの下で招集された人は色々教えてもらう。でも、その将校が全然足りていない。(中略)頭数にはなるでしょうが、大した戦力にはならないかと・・・」
今回の動員は、戦場では大きく影響しないというが、戦場ではなくロシア国内で、大きく影響している。
「これは津波や地震のようなもの。ロシアの動員もまた自然災害なのです」
そもそも予備役とは、徴兵による兵役経験者の中で、自ら登録し定期的に軍事訓練を受けているものとされ、ロシア国内に約200万人いる。が、ショイグ国防相によれば、ロシアには軍務経験者、戦闘経験者、軍事専門性を持つ者が2500万人近くいて、部分的動員は“総動員”の1.1%に過ぎないとしている。動員数の小ささを強調することで国内の動揺を抑えようとした発言だ。
しかし、国内の動揺は動員発表直後から国民の行動に表れていた。ビザなしにロシア国外に飛べるトルコ行きなどの航空機はすでに満席。セルビアの空港でロシア人女性の話を聞いた。
ロシア人女性「私があなたと話している映像を政府や警察も見ることができるので、私自身の安全が脅かされるのではないかと怖いです。でも言いたいです。“ウクライナに自由を”と。そして“だれかプーチンを止めて”と」
航空便の他にも、陸路で国外に脱出できる道路は、モンゴルへの道もジョージアへの道も大渋滞だ。また、モスクワなど38都市で動員反対のデモが行われ、すでに1400人以上が拘束されている。さらに、拘束された若者には、徴兵事務所に出頭する旨を伝える軍の召集令状いわゆる“赤紙”が渡されるという。もちろん召集を拒めば罰則がある。
こういった事態に、戦場に我が子を送り出す母親の代表は何を思うのだろうか、話を聞いた。
ロシア兵士『母の会』メリニコワ会長「警察官が招集の年齢に当たる45歳までの男性を道端で呼び止め、令状を渡していました。(中略)母親たちは皆さん心配しています。動員がウクライナの戦闘行為のためであることは明らかです。自分の息子や近しい人を送り出したい人はいません。多くの方から電話で質問がありました。動員されないためにはどうすればいいのか・・・。(中略)ロシア兵士『母の会』が政治問題に対して回答することは危険です。私たちはいかなる政治的な色も出しません。大統領が動員令を決めたのです。どんな意見が有り得るでしょう。これは、台風や津波や地震のようなもの。ロシアの動員もまた自然災害なのです」
母の悲痛な叫びも、プーチン氏やロシア上層部には届かない。仮に届いたとして辞めるはずもない。それどころか、動員発令前日には、兵役に関する刑法の修正案が議会で可決している。
そこには「戦時・戒厳令・動員」の概念が新たに記され、徴兵忌避、軍事作戦への参加拒否などについて最長10年の刑罰など厳罰化が盛り込まれた。
「即時にロシア国内の核兵器施設を共同で核攻撃する」
動員令を発する際の演説で、プーチン氏はこうも語った。
「我が国の領土の一体性が脅かされた場合、ロシアとわが国民を保護するため我々は無条件に持っている手段のすべてを使用する。これは単なる脅しではない」
この発言から、ロシアの核使用のハードルが下がったと小谷教授は読む。
明海大学 小谷哲男教授「これまでも同じような発言はあったが、これまでは“ロシアの存続が脅かされた場合”と言っていたところを、今回は“領土の一体性が脅かされた場合”とハードルを下げていると読み解ける。そこはアメリカも注目している。(中略)ただ今のところ、核兵器を使う動きをアメリカは確認していない・・・」
核弾頭をミサイルの近くに配備するなどの動きは、アメリカは把握できるという。やはり今回も脅しなのか・・・。しかし、“領土”という言葉に懸念を抱くのは兵頭慎治氏だ。
防衛研究所 兵頭慎治政策研究部長「脅しだと思うが、かなりマックスな状態の脅しだと思う。それに領土と言っているが、住民投票を行う4州が併合された場合、ここもロシアが言うところの我が国の領土になってしまうのか、そうなると・・・」
そうなると、かなり問題は複雑化する。では、このプーチンの“核の脅威”をウクライナはどうとらえているのか、大統領側近は番組のインタビューに確固たる意見を訴えた。
ポドリャク大統領顧問「ロシアが核抑止ドクトリンに基づき、戦術的ないし戦略的な核使用を利用しようとした場合、即時にロシア国内の核兵器施設を共同で核攻撃するということを国際社会が明確に宣言するべきです。これはウクライナではなくグローバルな社会の判断です」
いまアメリカのバイデン大統領はロシアに対し核攻撃をした場合の懸念をあらゆるチャンネルを使って伝えているという。果たして国際社会、そしてプーチン大統領はポドリャク大統領顧問の発言にどう反応するのだろうか。
●プーチン氏、国防次官を解任 補給失敗が理由か 9/25
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は24日、ドミトリー・ブルガコフ国防次官(67)を解任した。国防省が発表した。ブルガコフ次官は、ウクライナ侵攻におけるロシア軍の物資補給を担当していた。補給の混乱がウクライナ南部などでのロシア軍の苦戦の原因とされているだけに、その責任を問われた可能性がある。
国防省は通信アプリ「テレグラム」で、ブルガコフ次官は新しい職務に就くことになったと説明。後任には、ウクライナ南東部マリウポリへの激しい攻勢を指揮したミハイル・ミジンツェフ上級大将が就くという。
ブルガコフ次官は2008年以来、ロシア軍の補給作戦を取りまとめてきた。ロシア軍が2015年にシリアに配備された際にも、その補給を取り仕切った。
しかし複数の消息筋は、ブルガコフ次官がここ数カ月、政府内部で隅に追いやられていたと指摘。ウクライナでのロシア軍の前進を妨げ、自軍が供給不足のまま放置されるという、補給作戦の混乱をめぐり、次官の責任を問いただす声が相次いでいたという。
ロシア政府はこのところ、数少ない同盟国の北朝鮮やイランに新たな大砲やドローンの供給を求めざるを得なくなっている。
新たに招集されたロシア人新兵がさびたアサルトライフルを装備している動画がソーシャルメディア上に出回る中、ブルガコフ次官の解任が発表された。
ロシアの戦争推進派はブルガコフ次官の解任を歓迎した。後任のミジンツェフ将軍は強硬派に受け入れられるものと予想される。ミジンツェフ氏はマリウポリでの包囲作戦を指揮したことを理由に、イギリスの制裁対象となっている。
多くのウクライナ人から「マリウポリの虐殺者」と呼ばれるミジンツェフ氏は、シリア内戦でもロシア軍を率いて、アレッポの街を壊滅させた残虐な爆撃作戦を指揮したとされる。
英外務省は3月にミジンツェフ将軍への制裁を発表した際、将軍がウクライナとシリアでの両方の紛争で「おぞましい戦術」用いて「残虐行為」を行ったと非難した。
プーチン氏はウクライナでの戦争で直接指揮を執り、ウクライナ国内にいる将官たちに自ら命令を下し始めたと報じられている。
米当局者は米CNNに対し、ロシア政府の「指揮系統の機能不全」が深刻化し、プーチン氏は戦争で従来より積極的な役割を負わざるを得なくなっていると語った。
イギリスの国防当局者は先月、プーチン氏がセルゲイ・ショイグ国防相を疎外していると示唆した。国防当局の高官がショイグ氏の「無能で現場知らずのリーダーシップ」を嘲笑し始めたためという。
こうした中、米紙ニューヨーク・タイムズは、ロシア側の現地指揮官による南部ヘルソンからの撤退要請を拒否したと報じた。ヘルソンではウクライナ軍が徐々に前進している。
同紙は米情報筋の話として、プーチン氏が撤退の検討を拒否したため、ヘルソンにいるロシア部隊の士気が低下したと伝えた。同部隊はロシアの補給線からほぼ切り離された状態にあり、頼みの綱として浮き橋の再設置を必要としている。
●マツダ ロシアの工場の生産終了する方向 現地企業と協議入る  9/25
自動車メーカーのマツダは、ロシアにある工場での生産を終了する方向で、合弁相手の現地企業と協議に入りました。ロシアのウクライナへの軍事侵攻の影響が長期化し、稼働を再開できる見通しが立たないためで、日本の自動車業界への影響が一段と広がりそうです。
マツダは、2012年にロシアの自動車メーカー「ソラーズ社」と極東のウラジオストクに合弁工場を設立して、日本から輸出した部品でSUV=多目的スポーツ車などを現地向けに組み立てていました。
去年はおよそ2万9000台を生産しましたが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響で、部品を調達できなくなり、ことし4月には工場の稼働を停止しています。
その後も軍事侵攻が長期化し、稼働を再開できる見通しが立たないことから、マツダは、この工場での生産を終了する方向でソラーズ社などと協議に入りました。
マツダは、「現状では生産は困難と考えており、中止する方向でソラーズ社、および関係各所と協議中です」とコメントしています。
ロシアで事業を展開してきた日本の自動車メーカーでは、トヨタ自動車がサンクトペテルブルクにある工場の閉鎖を発表していて、影響が一段と広がりそうです。
●プーチンの動員令は「ロシア崩壊の序章」 ウクライナ侵攻は「自殺行為」  9/25
ロシアの著名な反政権派記者で、元下院議員のイーゴリ・ヤコベンコさん(71)が23日、本紙のオンライン取材に、プーチン大統領が命じた予備役の動員令について「ロシア連邦崩壊の序章になる」と答えた。ロシア国民は「自らが肉弾として消費されると自覚した」と語るなど痛烈な現状分析を紹介する。ヤコベンコさんは現在、国外に滞在している。
警察もFSBも動員 死にたくないから政権支持せず
今回の動員令は、ロシアが戦争状態になったことを意味する。プーチンはウクライナ侵攻で宣戦布告をせず、ロシア国民はこれまで侵攻をテレビのサッカー観戦のような気分で見ていた。動員令は、戦時体制への移行を告げたことになる。
ロシア人は動員を嫌って逃げ回っている。軍事専門家によると、ウクライナ軍の反転攻勢を防ぐか遅らせるには「肉弾」となる兵士ら70万〜100万人の動員が必要とされる。こんなに兵士が集まるとは思えない。
動員によって現体制の継続は難しくなる。プーチンの権力の源泉である警察官や情報機関の連邦保安局(FSB)職員も動員命令を受けている。彼らも死にたくはないので、政権を支持しなくなる。ロシアは帝政期、ソ連期を含めて皇帝や最高指導者が突然、権力を失って劇的な体制転換が起きることが多々あった。
核使用発言は「こけおどし」
ウクライナ軍は9月に入り、東部ハリコフの奪還作戦で大成功を収めた。プーチンは上海協力機構(SCO)首脳会議で、他国の首脳に待たされるという屈辱も味わった。敗北に伴う権威の低下は明らかだ。一部のロシア退役軍人らが声明を出したように、全世界と戦争をするのは不可能だ。
ウクライナ侵攻はロシアにとって自殺行為であり、連邦政府を弱体化させる。ロシア革命、ソ連崩壊に次ぐ第三の「帝国崩壊」を引き起こす可能性がある。(多民族・多宗教の)ロシアでは体制の遠心力が強く作用し、ソ連崩壊時にチェチェンやタタールなどの民族自治共和国がロシアからの分離独立を望んだのは周知の事実だ。いまのロシアの統一は軍事力によって保たれているに過ぎない。
動員令が出るまで反戦デモが沈静化していたのは、家族や友人に死の危険が迫るまで、ウクライナ人の死は「他人ごと」だったからだ。プーチンは「核の威嚇」を繰り返すが、実際に核兵器を使えば、自分が真っ先に欧米からの反撃で殺されると分かっている。核使用に関わる彼の発言は「こけおどし」といえる。
●米、インドにロシア離れを説得 兵器とエネルギー調達で 9/25
米国務省高官は25日までに、インド政府に対し兵器やエネルギー源の輸入でロシア離れを説得していることを明らかにした。
これまでの接触をへてインド政府当局者はロシア頼みからの離反が国益に実際寄与すると理解し始めているとの感触を得ているとした。
同高官は、インドは最初に兵器、その後はエネルギー源の確保について40年余にわたってロシアに傾斜してきたと指摘。その依存度は極めて非常に大きかったともした。
その上で「米国は兵器獲得などの多様化について手助け出来る選択肢でインド側と掘り下げた意見交換をしてきた」と説明。兵器供給面ではロシアは信頼し得る相手ではないとも述べた。
エネルギー問題については、米国はロシア産石油の市場での流通は望むものの、ウクライナ侵攻を支える資金源を封じるため市場価格での上限設定に同調するよう各国に求めてきたと主張した。
米国務省高官の今回の発言は、インドのモディ首相が今月16日、ロシアのプーチン大統領と対面会談し、「今は戦争の時代ではない」との苦言を直接伝えたともされる展開を受けたものともなっている。
インド、ロシア両首脳の会談は、ウズベキスタン・サマルカンドで開かれた上海協力機構(SCO)の首脳会議に合わせて実施された。モディ、プーチン両氏の首脳会談は今年になって初めてだった。
国務省高官はインド側の対応の変化などに触れ、ウクライナ北東部イジュームで発覚した虐殺疑惑はロシアの行動をこれまで黙認してきた諸国に再考を促したことを示唆。集団墓地で頭部を撃ち抜かれた女性や子どもら約500人の遺体が見つかる世界が震撼(しんかん)した惨事を受け、ロシアと密接な関係は持ちたくないと思うだろうとした。
●「プーチン氏の発表をよく読むことだ」ロシア外相、国連会見で正当化 9/25
ロシアのラブロフ外相は24日、米ニューヨークの国連本部で記者会見し、プーチン政権が「特別軍事作戦」と呼ぶウクライナ侵攻について、約100人の報道陣を前に1時間、正当化を続けた。
ラブロフ氏は会見で、ロシア語だけでなく時々英語での回答を交えて応答。侵攻について「あなた方は侵略や併合と呼ぶけれど、私の答えはシンプルだ。現地の人に話を聞きなさい。ニューヨークやオフィスで判断せず、クリミア(半島)などに行きなさい」などと主張した。
侵攻が終わる方法について問われると、「プーチン大統領が2月24日に発表したことをもっと頻繁に、気をつけながら読むといい。そこに全部書いてある。読めばわかる」などと諭そうとした。

 

●「プーチン氏の恫喝に耳貸すな」 英首相が西側結束訴え 9/26
トラス英首相は25日放送されたCNNテレビのインタビューで「われわれはロシアのプーチン大統領による恫喝に耳を貸す必要などなく、対ロシア制裁とウクライナへの支援を続けていかなければならない」と語り、西側諸国の結束を改めて呼びかけた。
プーチン氏は先週、予備役の部分動員を可能にする命令を出すとともに、ことさらに核戦争の脅威をあおる姿勢を打ち出した。これについてトラス氏は、プーチン氏は戦争で勝利できず、戦略的な失敗をしたからこそウクライナ侵攻をエスカレートさせていると指摘。「プーチン氏は自由世界の反撃力の強さを想定していなかったのだと思う」と述べた。
またトラス氏は米英両国に関して「特別な関係」は引き続き存在すると信じていると強調した上で「ロシアからの脅威や中国の威圧的な態度の高まりに直面している今、その重要性は増すばかりになっている。われわれがこの特別な関係をこれからもっと特別にしていけるようにする決意だ」と付け加えた。
英国は中国が台湾に軍事侵攻した場合に台湾を守るのか聞かれると「われわれは同盟諸国と協力し、台湾が自らを守れるよう万全を期すつもりだ」と答えた。
●プーチンの部分動員令が国内のパニックを引き起こしただけで「効果なし」 9/26
ウクライナへの侵攻を開始してから約7カ月。ロシアのプーチン大統領は9月21日(現地時間)、軍の部分動員令に署名したと明らかにした。
ただ、この動きがロシア軍の増強にはつながらないだろうと専門家は話している。
動員には時間がかかるし、訓練やインフラも足りない。
ロシアのプーチン大統領は9月21日、軍の部分動員令に署名したと明らかにした。ウクライナ侵攻で、明らかに不足しているマンパワーを増強するためだ。ただ、専門家によると、プーチン大統領の"決断"がすぐに戦局を変えることはないという。
2月にウクライナ侵攻を開始したものの、すでに7カ月かかっていること、最近ではウクライナ側の勝利が続いていることから、プーチン大統領は戦争をエスカレートさせた。
ロシアの専門家や西側諸国は、プーチン大統領の21日の演説 ── 核の脅しを含む ── はロシアのウクライナ侵攻がうまくいっておらず、プーチン大統領もそれを分かっていることの表れとの見解で一致している。
約30万人の予備役が招集される見込みだが、専門家によると、これだけの規模を動員するには数カ月かかるという。なお、ウクライナ側はロシアによる侵攻が始まった直後に総動員令を発令している。
「これが実際の戦場に大きなインパクトを与えることは非常に想像しがたい」とデューク大学サンフォード公共政策大学院の助教で、旧ソ連と米ソ関係に詳しい歴史学者のサイモン・マイルズ氏はInsiderに語った。
ロシアの部分動員にとって大きなハードルの1つは、軍事インフラの枯渇だ。
「予備役を召集するのも1つの方法だ。ただ、その戦闘力を高めるには少なくとも数週間はかかる、何らかの訓練過程を経なければならない」とマイルズ氏は話している。
●ウクライナ軍に撃墜され炎に包まれたロシア軍戦闘機…パイロットの運命や 9/26
ロシア軍のSU30戦闘機がウクライナのハルキウで携帯用対空ミサイルとみられるミサイルに撃墜され、その様子を撮影した動画がウクライナ軍のSNS(交流サイト)で公開された。ウクライナ戦争でロシア軍戦闘機やヘリコプターが撃墜される映像や写真はこれまで何度か公開されてきたが、今回は戦闘機が撃墜され、直後にパイロットが脱出する様子も比較的鮮明に映っていることから注目を集めている。
ウクライナ軍のSNS動画を見ると、ハルキウで低空飛行をしていたロシア軍のSU30戦闘機が米国製のスティンガーミサイルとみられる携帯用対空ミサイルで撃墜され、炎に包まれた状態で墜落した。映像には戦闘機が撃墜された直後に二つのパラシュート(映像の中の赤い円)が開く様子も撮影されている。二人のパイロットが射出座席によって脱出に成功したとみられる。
この映像を見ると、戦闘機は低空飛行中に撃墜されたにもかかわらず、射出座席とパラシュートが正常に作動したことが分かる。これについてネットでは「性能の高さに驚いた」などのコメントが相次いでいる。国際航空ショーなどで墜落事故が発生した際、ロシア軍戦闘機の射出座席は超低空からでも正常に作動するため国際的に高く評価されてきた。
SU30は地上攻撃能力を持つロシア軍の代表的な戦闘機で、ロシア版「ストライク・イーグル(F15戦闘爆撃機)」とも呼ばれている。全長21.9メートル、全幅14.7メートルで最高速度はマッハ2(音速の2倍)だ。航続距離は3000キロで最大8トンのさまざまな爆弾やミサイルを搭載できる。シリア内戦など実戦でも数多く使用されている。
ウクライナ戦争でスティンガーなど携帯用対空ミサイルが活躍していることについて韓国の専門家は「韓国にとっても対岸の火事ではない」と指摘する。ウクライナ戦争が始まった直後はウクライナ軍がスティンガーとみられる対空ミサイルを使い、「サタンの馬車」として知られる攻撃ヘリMi24「ハインド」を一発で撃墜する映像が話題になった。
北朝鮮も、圧倒的に優勢な韓国軍と米軍の空軍力はもちろんAH64「アパッチ」など韓米軍の攻撃ヘリに対抗するために、SA16などさまざまな携帯用対空ミサイルを保有している。北朝鮮軍は戦車や装甲車など機甲部隊の車両上部にも携帯用対空ミサイルを装着している。
携帯用対空ミサイルについては「フレア」と呼ばれる一種の閃光(せんこう)弾が対抗手段として数多く使用されているが、ミサイルの進化により限界も指摘されている。携帯用対空ミサイルをレーザー光線で無力化する「指向性赤外線対抗装置(DIRCM)」も新たな対策として注目されているが、1台当たり数十億ウォン(数億円)と非常に高価なことが課題だ。
韓国メーカーもDIRCM開発に成功したが、現状では巨大なサイズと性能上の限界など克服すべき課題も残っている。そのため大統領専用機や特殊作戦機など特別に必要なときはDIRCMを使用し、ヘリや戦闘機、輸送機などに本格的に搭載する際には改良された国産品を搭載するツートラック方式も代案として検討されている。
●予備役男性、出国禁止へ ウクライナ侵攻で退避相次ぐ ロシア 9/26
ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン政権が、予備役の男性を28日にも出国禁止にする方針であることが分かった。
独立系メディア「メドゥーザ」が25日、大統領府関係者2人の話として伝えた。ロシア軍の人的損害を補おうと、予備役を招集する部分動員令が21日に出て以降、空路・陸路での国外退避が相次いでいた。
政権は予備役の出国禁止をルール化することで、混乱の収拾を図り、安定的に招集を進めたい考え。しかし、動員に抗議する大規模デモが起きるなど社会不安が広がっており、抑圧的な措置で国民は不満を募らせることになりそうだ。 
●インドと中国、国連演説でウクライナ侵攻に懸念表明 ロシアは両国に秋波 9/26
ロシア、中国、インドの外相が24日、ニューヨークの国連総会で演説した。ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、インドは途上国を牽引(けんいん)する立場から食料危機やインフレなどの影響に懸念を示し、ロシアへの不快感を表明。中国も戦闘長期化に懸念をにじませた。一方、露外相は、台湾情勢で中国、国連安全保障理事会の改革でインドを支持する立場を強調し、秋波を送った。国連外交筋は「中印のロシア離れを防ぐ狙いがあるのだろう」と話している。
インド「戦争と紛争の時代ではない」
インドのジャイシャンカル外相は演説で「生活費の上昇や、燃料や食料、肥料の不足は、ウクライナ紛争の結果だ」と指摘し、「南の途上国が最も打撃を受ける」と危惧を示した。ロシアの侵攻をめぐるインドの立場について従来どおり直接の対露批判を控える一方、「今は戦争と紛争の時代ではない。開発と協力の時代だ」と強く訴えた。
ジャイシャンカル氏はまた、「インドは25年以内に先進国になる」との目標を語り、日本やドイツ、ブラジルとともに常任理事国入りに名乗りを上げる安保理改革でも本格的な交渉を始めるべきだと訴えた。
中国「危機解決の努力支持」
中国の王毅外相兼国務委員も、貧困の撲滅と開発を「国際的課題の中心に据えるべきだ」と述べ、途上国への中国の支援実績をアピール。食料やエネルギー価格の高騰など地球規模で余波が広がる「ウクライナ危機の解決に向けた建設的な努力を支持する」と訴えた。
王氏は、台湾情勢について「中国が完全に統一されて初めて、台湾海峡に真の平和が訪れる。外部の干渉に対抗するために、最も強力な措置を取る」と述べた。中国が侵攻すれば台湾を防衛するとしたバイデン米大統領の発言などを念頭に米国を牽制(けんせい)した。
露はインドとブラジルの常任理事国入り支持
王氏の後に登壇したラブロフ露外相はウクライナを支援する米国を非難する中で「米国は台湾で火遊びをしている。何よりも軍事支援を約束している」と中国に加勢した。
ラブロフ氏は、インドが唱える安保理改革についても、「インドとブラジルは特に常任理事国にふさわしい」と語った。
ラブロフ氏は演説後の会見で「日本とドイツは西側諸国で、(途上国などからの代表を増やす)ロシアの改革意図にはそぐわない」と述べた。発言には日独とインド、ブラジルを分断する狙いもありそうだ。
●冬の世界エネルギー危機は決定的――劣勢ロシア瀬戸際のシナリオ 9/26
ハリコフ東方での「歴史的敗走」がもたらしたもの
9月の前半に、ハリコフ東方でウクライナ軍が攻勢に出て、短期間に失地を回復、ロシア軍は大きく後退した。ロシア側はこれを「後退」と表現しているが、プーチン政権に大きな衝撃を与えたのは間違いない。
そのことを表しているのが9月21日にプーチン大統領が行ったテレビ演説である。そこでは3つのことが打ち出された。部分的動員。占領地域の住民投票への支持の表明、すなわちこの地域のロシアへの編入。そして、核の使用を改めて示唆。住民投票への支持と核の使用の示唆は表裏一体の関係にある。住民投票を経てロシアに編入されるとなると、あの地域は「ロシア領」になる。ロシア領への攻撃は核の使用の対象になり得るということだ。
これはかなり強気の措置、発言のように見える。だが、実を言うと特に動員は部分的であれ手を付けたくない措置であり、追い込まれた結果、リスクを取らざる得なくなったというのが現実である。プーチン政権にとっては、これは戦争のシナリオを再び大きく修正せざるをえなかった結果なのである。今後の戦略の最も重要な部分は、実は、この演説で打ち出された3つの要素以外のところにあるといってよい。
強気の措置を打ち出したからといって、ロシアにとって状況が好転するわけではないだろう。30万人とも言われる動員を行ったとしても、前線に投入されるまでの訓練期間は僅か2週間と言われており、それでは即戦力としては期待出来ない。核の脅しも、これがウクライナの軍事攻勢と西側援助の牽制を狙ったものだが、核が現実に使用される可能性があるのか不透明である。
ロシアに出来ることは、これ以上の戦況の悪化を避けつつ膠着に持ち込み、何とか冬の到来を待ち、天然ガスを中心とした西側へのエネルギーの供給を絞り、危機的な状況を作り出し、西側諸国がウクライナ支援「疲れ」を起こすのを待つことしかないだろう。
つまりエネルギー危機による脅しで、軍事的敗北を回避する戦略しか選択できないところにまで追い込まれたのである。このことは、世界にとって深刻な事態を引き起こす。かつて、ナポレオン、ヒトラーを退けたロシアの「冬将軍」は、今度は特に西欧諸国を襲おうとしているのである。
プーチンへの本当の圧力
今回のロシア軍がハリコフ東方で喫した歴史的な敗北を受けて、ロシア国内でも、モスクワやサンクトペテルブルグの議会などで、プーチンが始めた戦争に反対する声が上がった。しかし、一方で、それ以上に、プーチンの戦争を賛成している人たちの間から、現在の戦争のやり方に対する批判の声が大きくなっていた。
プーチンは、今回の「特別軍事行動」を本格的な動員を行うことなしにやろうとした。当初は電撃戦でキエフを占領しゼレンスキー政権を倒すことを企図し、それに失敗した後は、東部と南部を占領し、エネルギーなどの西側への供給、つまり世界経済を人質にとり、欧米諸国のウクライナに対する支持を分断するという、ある種、時間を味方に付けて欧米がウクライナの支援疲れをするのを待つということを基本的な戦略とした。
ところがハリコフでの敗北をうけて、ロシア国内でそのような戦争のやり方に対する批判の声が上がったことで、当初考えていた戦争のやり方を大きく修正せざるを得なくなった。これが今回の演説の一番のポイントである。
ロシア国内の戦争に対する世論は、1.積極的支持、2.基本的に自分の生活とは直接関係ないという前提で消極的に支持、3.積極的反対、の3つの層がある。このうち1と2をとりまとめて、プーチン政権へのウクライナ戦争についての支持ということで、戦争推進の国内的な大義名分を得ている。1と2の支持を維持することがプーチン政権には最重要で、そちらの方に対して反応せざるを得なかった。
特に1の中の強硬派からは、「今回の戦争のやり方をもっと変えるべきだ。このままでは負けてしまう」という声が、共産党のジュガーノフ党首や、チェチェン共和国のカディロフ首長といった人たちから上がるようになっている。
しかも実際負けている。強硬派からしてみたら、今回打ち出したのは全面的な動員ではないので、これでも不満ではあるが、この部分的動員でどこまで状況が改善するのか、様子見という状態だ。
もちろん、動員に反対する声、そして徴兵忌避の混乱は一気に広がっているが、まだこれでも、反プーチン政権の勢力となるようなレベルではなく、強権的に抑え込んでいくであろう。
動員を避けたかった理由
以前から総動員の可能性が指摘されていたが、今回、部分的動員に止まった。プーチンの基本的なシナリオは国内的なハレーションを最小限に抑えつつ、この戦争に勝利するというものだ。その点からすると、本来、部分的であっても動員をやりたくなかった。
一方、戦場においてはロシア側がかなり追い詰められている。これを反転させなければならないという問題と、国内的なハレーションをなるべく回避するという問題のバランスをとった結果がこの部分動員という形だ。
プーチンからすると軍事的な要因だけでこの戦争は継続できないのである。この戦争を継続し勝利しなければならないが、継続のためにいろいろやった結果、プーチン政権の基盤が崩れてしまい、体制が維持できなくなったら、戦争は勝利とはいえない。これがプーチンが直面しているジレンマである。
部分動員をかければ、対象となる人からすると、当然、徴兵を嫌い出国したり戦争に反対するといった動きは出てくる。ただそれがどこまで体制の揺らぎに繋がるかは、これからの問題で、今、何か大きな反対勢力の形成に向かっている、と言うことではない。今、国内で起きている動きが、すぐプーチン政権の崩壊に繋がるような状況になるとは想定できない。逆いうと、そうしないレベルで今回の決定がなされた。
ただこれまではウクライナの戦争とロシア国内を分離して、パラレルワールドとして遂行するのが、プーチンの基本戦略だったが、このパラレルワールドが繋がってしまった。このことの中長期的な意味は小さくない。
だからすぐ挽回、というわけにはいかない
核の恫喝の効果についてはやってみないとわからない。だから、当面は今回の部分的動員によってどこまで劣勢を回復できるのかがポイントになってくる。
しかし、30万人の予備役というのは、名目上、特殊な軍事技術を持っている人、実戦経験がある人、ということになっているが、ほとんど訓練されていない人員と思われる。わずか2週間の訓練で実戦に投入されると言われており、どこまでの軍事的な効果を上げるのか、まだ予想がつかない。
問題は、その結果、もし後退を余儀なくされるという状況になった場合に、ロシアはどういう対応をするのか。ロシアはすでに行っている民間インフラへの攻撃を拡大するなど、戦争のやり方の強度を上げていくことは間違いない。その延長線上で核の使用があり得るのか否か。
核の脅しについては、西側はもちろん批判的である。ただアメリカは核の使用についてはプーチンがどこまで本気なのか注意深く見ている。実際の対応はそれを見極めてからである。
実際のところ、プーチンが期待しているのはアメリカを含めた西側に対する影響である。今回の措置の直接的な意図は、西側のウクライナへの支援のレベルを下げる、もしくはこれ以上向上させないということにつきる。
落としどころはまだわからない
一方、バイデン政権は、基本的にはどこかで和平の方に持って行きたいとは思っているはずである。しかし、その際の線引きをどうするのか。戦線がどこかで膠着状態になったところでその線での停戦なのか、2月24日の侵攻開始以降の占領地からのロシア軍の撤退なのか、2014年のクリミアとドンバス侵攻以前の状態に戻すのか、その答えをアメリカはまだもっていないと思う。
5月にバイデン大統領がニューヨーク・タイムズに寄稿したオプエドにあるように、アメリカは「ウクライナの領土の一体性」には言及していない。つまり、ウクライナの国土回復については何のコミットもしていないのである。もちろんアメリカが決めるべき性質のことではない。
自分がグリップしている武器の供与のレベルや量のコントロールを通じて、落とし所を探るということが、アメリカが出来る唯一の方法だと思う。
アメリカにしてみると、ウクライナを説得することが停戦、和平に向けて一番難しい点となるだろう。ウクライナにはウクライナの事情がある。ゼレンスキーにしても全権を持っているわけではない。まして、これだけ勝利してしまったので、ウクライナ側の期待値も相当高まっているでしょうし。
この冬にかけての、動員を受けての次の戦いがどういう結果を生むのかが今後を占う上での一つの焦点になる。
必ずやってくる「冬将軍」
今回、部分的な動員をかけたその先に、プーチンが描く出口シナリオが、あるとすれば、それはやはりナポレオン、ヒトラーを苦しめた冬将軍を、今度はヨーロッパにむけて襲わせることだ。つまり、天然ガスの供給を意図的に止め、冬の需要期にエネルギー危機を引き起こすことだ。ロシア側がこれを仕掛けるのは間違いない。
その結果、特にヨーロッパ側でウクライナ支援疲れが起きることを期待しているのだと思う。ヨーロッパがこの冬を超えて、エネルギー危機をどこまで耐え忍ぶことが出来るかが、実は最大の焦点であることは、開戦当初から変わってはいない。むしろ、その深刻度は増している。
2026年までは構造的に世界は天然ガス不足なのである。脱炭素の浸透で、開発が行われず新規の産出がないのである。その上で今回の事態。どこかでエネルギー危機により西側諸国がウクライナに停戦を働きかけるという可能性は、ゼロではない。こればかりは何が起こるかわからない。ウクライナは西側の支援がなければ戦争できない。少なくともプーチンはそこにかけている。
しかし、西側がエネルギー危機で音を上げるまで、一定の水準で戦況を持ちこたえなければ話にならない。そして今のままではそれ自体が危うい。それ故、動員に踏み切らざるを得なかった。もしこれでも持ちこたえられなかったら、総動員、核使用といったエスカレーションがあるのかも知れない。
プーチンとすれば、国内を不安定化させる可能性のある動員という政策に踏み切りながら、行ってみれば自らの政治的資源を食い潰しながら、悪化する戦況を支え、ヨーロッパへの冬将軍という神風が吹くことを待つしか手がないのである。
そのくらい9月のハリコフの敗退の衝撃は大きかったといえる。
●米政府高官 ウクライナ情勢めぐりロシアの核兵器使用をけん制  9/26
ウクライナ情勢をめぐり、ロシアのプーチン大統領が核戦力の使用も辞さない構えを示していることについて、アメリカ政府高官は、欧米の動きの抑止にはつながらず、核兵器を使用すれば「ロシアは破滅的な結果を招くことになる」と述べて強くけん制しました。
バイデン政権で安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は25日に放送されたアメリカ、ABCテレビの番組で、ロシアのプーチン大統領がウクライナへの軍事支援を行う欧米側を批判し、核戦力の使用も辞さない構えを示していることについて、「われわれの行動を抑止することにはならない」と強調しました。
そして「ロシアで非常に高い地位にある人間と直接、かつ非公式に連絡をとり、核兵器をウクライナで使えばロシアは破滅的な結果を招くことになると伝えた。アメリカは、同盟国や友好国とともに断固とした対応をとる」と述べて、強くけん制しました。
一方で司会者から「ロシアと直接、戦火を交えるのか」と問われると、サリバン氏は直接の言及を避け「われわれはあらゆる不測の事態に備えている」と述べるにとどめました。
また、予備役の動員に踏み切ったプーチン政権に対し、ロシア国内で抗議活動が相次いでいることについてサリバン氏は「プーチンの行いに対する強い不満の表れだ」と述べるとともに「予備役の動員や支配地域でのいかさまの住民投票は、力と自信のなさの表れだ。ロシアとプーチンがもがき苦しんでいる兆候がある」と指摘しました。
●マツダもトヨタに追随、ロシア事業から撤退へ 9/26
ロシアがウクライナに軍事侵攻してから7か月。ロシア国内では国民の部分動員令に反対するデモも激しくなるなど混乱が続く。こうした中、ロシア事業から撤退する日本の自動車大手が相次いでいるという。
先週末、トヨタ自動車がロシア事業からの撤退を決めたほか、マツダも現地生産から撤退する方針を固めたと、9月25日付けの日経朝刊やきょうの読売などが報じている。それによると、ロシアのウクライナ侵攻でサプライチェーン(調達網)の混乱が長期化し、金融制裁も事業継続を難しくしていることが背景とみられる。トヨタはすでに販売した車の保守サービスを除き、生産・販売事業をやめると発表。マツダもロシアでの生産終了で提携する現地企業と協議に入ったなどと取り上げている。
マツダは、2012年からロシア東部のウラジオストクで、ロシアの自動車大手「ソラーズ」との合弁工場を稼働させて、スポーツ用多目的車(SUV)『CX-5』などを現地向けに生産していたが、ロシアのウクライナ侵攻に伴い、操業を中止。再開の見通しが立たないため、関係機関と撤退に向けた実務的な協議を進めているという。読売によると「この工場は、日露両国の経済協力の目玉事業の一つで、撤退には慎重論もあった。ロシアへの非難が高まる中、企業イメージへの影響などを考慮したとみられる」とも伝えている。
トヨタやマツダ以外にも日本車メーカーでは、日産自動車がサンクトペテルブルクの完成車工場の稼働停止を12月末まで延長することを決めているほか、三菱自動車もカルーガ州に欧州ステランティスとの合弁工場で現地生産を行っていたが、目下稼働を休止中。トヨタ、マツダ同様にロシア事業からの撤退を視野に入れての判断が迫られている。
●ロシア抗議デモ 2000人以上拘束か 国外“脱出”で空港に長蛇の列も 9/26
ロシアのプーチン大統領が発表した動員令に対する抗議デモが、ロシア各地で続いている。モスクワ郊外の空港は、招集を逃れたい市民であふれかえっている。
動員令に反対する抗議デモは、24日もロシアの各地で行われた。治安当局は、これまでにデモに参加した市民2,000人以上を拘束したとみられている。
事態を沈静化するため、プーチン大統領は24日、学生への招集を延期する大統領令に署名したが、モスクワ郊外の空港では前と変わらず、国外に脱出しようとする人たちで長蛇の列ができている。
一方、ロシアの中西部の街では、家族が別れを惜しむ中、招集に応じ、戦線に向かう人たちがバスに乗り込んでいた。 
●ロシアの予備役動員 抗議活動相次ぐ “効果大きくない”見方も  9/26
ウクライナに侵攻するロシアのプーチン政権は予備役の動員に踏み切りましたが、ロシア国内では抗議活動が相次ぎ、国民の不満が広がっています。一方、イギリス国防省は動員された兵士がロシア軍基地に到着し始めたとしていますが、経験や訓練が不足し、動員がもたらす効果は大きくないという見方が出ています。
ロシアのプーチン大統領が今月21日、予備役から部分的に動員すると表明して以降、ロシア各地では連日、抗議活動が続いています。
ロシアの人権団体は、21日から25日までの間に少なくとも2300人以上が政権側に拘束されたとしています。また、イルクーツク州の州知事は26日、州内のウスチ・イリムスクにある徴兵事務所で若い男が発砲し、事務所の責任者が重体になっていると明らかにしました。
独立系のネットメディア「メドゥーザ」は、動員が始まって以降、25日までにロシア国内の少なくとも10か所の徴兵事務所で放火事件が相次いでいると伝え、国民の不満が広がっています。
一方、イギリス国防省は26日、動員によって招集されたロシア軍の兵士の第1陣が軍の基地に到着し始めたとしています。ただ、こうした兵士は何年も軍事経験がなく訓練も不足していて、最低限の準備だけで前線に派遣されるとみられることから、戦地で犠牲になる可能性が高いと分析しています。
また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は25日、今回の動員に関する分析を発表し、「動員に対するロシア国内の抗議は、プーチン大統領のたび重なる失敗を反映しているものだ。プーチン大統領は、この侵略を戦争ではなく『特別軍事作戦』と言い続け、動員されることを国民に覚悟させるような条件を整えてこなかった」としています。
そして、ロシア軍にとって動員がもたらす効果は少なくともことしは大きくなく、来年も劇的な変化はもたらさない可能性があると指摘したうえで、「プーチン大統領は、大規模な戦争を遂行する能力の限界に直面する可能性が高い」と分析しています。
大統領府報道官の息子“招集拒否したかのような動画”で物議
今回の動員に関連して、ロシア大統領府のペスコフ報道官の息子が、ロシア軍からの動員の招集を拒否したように受け止められる動画が公開され、物議を醸しています。
公開したのはロシアの反体制派のグループで、動画はペスコフ報道官の息子、ニコライ・ペスコフ氏に対し、予備役を招集する担当者を装い偽の電話をかけた際のやり取りだとしています。
この中では偽の担当者が「あなたに招集状が送られた。徴兵事務所に来るようにという紙を受け取ったはずだ」と伝えたのに対し、ニコライ氏が「もちろん、あすは行かない。私がペスコフであることを知っているなら、それがいかに間違っているか、理解する必要がある。この問題は別のレベルで解決する」などと答えるやり取りが伝えられています。
動画は今月21日に公開されたあと、340万回以上、再生され関心を集めていることがうかがえます。
これについて、ペスコフ報道官は動画の音声が息子の声だと認めたうえで「このグループは、すべての会話のやり取りを公開していない。私は息子のことを信じている」と反論しています。
ロシア⇒トルコ便は軒並み売り切れ
今月21日以降、ロシアからトルコへ向かう便は軒並み売り切れていてプーチン大統領が予備役の部分的な動員を発表したことが影響したのではないかとみられています。
トルコ航空の予約サイトでは、日本時間の26日午後5時の時点で、1日5便あるモスクワ発イスタンブール行きの直行便のチケットが、来月5日の分まですべて売り切れていました。
6日は、エコノミークラスの片道の航空券が日本円で19万5000円余りとなっています。
同じ日に運航し、飛行時間がモスクワ便の3倍以上ある羽田とイスタンブールを結ぶ便と比べても4万円近く高く、価格が高騰しているようすがうかがえます。
また、トルコ南部のリゾート地のアンタルヤにはトルコ航空だけでモスクワからの直行便が1日14便運航していますが、こちらも来月2日まで満席となっています。
トルコは欧米各国がロシアからの航空便の受け入れを停止する中、往来が続く国の一つで、ロシア人は短期滞在の際にビザは必要ありません。
ロシア隣国のフィンランドにもロシアから多くの人が
このうちロシア第2の都市サンクトペテルブルクから車でおよそ3時間のところにあるフィンランド東部の町ヴァーリマーの検問所では入国しようという人たちを乗せた乗用車やバスが数百メートルの列を作っていました。
若い男性の姿も多く、ロイター通信の取材に応じた26歳のロシア人男性は「プーチン大統領の発表の直後に荷物をまとめて出国することを決めた。EU加盟国などへの短期訪問ビザを持っているので、フィンランド経由でトルコに飛行機で向かう便を予約した」と話していました。
ロイター通信によりますと、この週末にフィンランドに陸路で入国したロシア人は1万7000人近くに上り、前の週末に比べておよそ80%増えました。
こうした状況について、フィンランド政府は「フィンランドの国際的な立場に深刻な悪影響を及ぼしている」として、ロシア人の観光目的などの入国を近く、大幅に制限する方針です。
●プーチン動員令、国内パニックだけじゃない深刻な影響 9/26
2月24日のウクライナ侵攻から約7カ月がたった9月21日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、戦闘継続のために予備役の部分的動員令に署名したことを発表した。
3日でケリがつくはずだった戦争が長引き、最近は一部地域でロシア勢の後退が伝えられるなかでのことだ。
プーチンは、かねてから総動員を求めてきた国防部門の圧力と、そんなことをすれば政情不安に陥るリスクの間で身動きが取れなくなっている。
欧米諸国の政府高官らは、ロシアがこれ以上この戦争に人員を投入しようとすれば、国内で激しい反発が生じるはずだと予想していた。
実際、30万規模とされる部分的動員令が発表されて以来、首都モスクワやサンクトペテルブルクを中心にロシア各地で大規模な抗議デモが起きている。
これまでウクライナに送り込まれた兵士たちは、貧困家庭や地方の出身者が多かった。ロシアには徴兵制があるが、裕福な家庭の子弟は免除されていることが多い。
従って動員対象を軍務経験者に限定すれば、都会のエリート家庭の子弟を動員せずに済み、大きな批判は避けられると、当局は踏んだらしい。
だが、部分的動員令が発表されるや否や、外国行きの飛行機の片道航空券が飛ぶように売れ、隣接するフィンランドやジョージア(グルジア)、モンゴルなどを陸路で目指す車が国境に列を成した。招集該当年齢の男性は出国を禁止されるのではという不安が、パニックに拍車を掛けた。
ロシアはウクライナ侵攻当初、こうした動員はないと明言していた。
それを覆す決定なだけに、プーチンが今後、この戦争は「ウクライナ東部のドンバス地方に限定された特別軍事作戦だ」と言い続けるのは難しくなりそうだ。
部分的動員令を発表した国民向け演説で、プーチンはもう1つの発表をした。
ロシアが実効支配するウクライナ東部のドネツクとルハンスク(ルガンスク)、そして南部のヘルソンとザポリッジャ(ザポリージャ)の4地域で予定されている、ロシアへの編入を問う住民投票の実施を支持すると語ったのだ。
ロシアは2014年に侵攻したクリミア半島でも同じような住民投票を強行して「住民の民主的な選択を尊重する」という体裁をつくって強引にロシアに併合した。
核使用の脅しを正当化
危険なのは、今回もこうして一応の既成事実をつくってしまえば、ウクライナがこれらの地域からロシア勢を追放する攻撃を仕掛けてきたとき、プーチンは「ロシアの領土が直接攻撃を受けた」と主張して、戦争をエスカレートさせやすくなることだ。
「プーチンとしては核の使用を正当化する口実になる」と、カーネギー国際平和財団のアレクサンデル・バウノフ上級研究員は、20日にツイッターで懸念を示した。
実際、プーチンは演説で、ロシアの「領土的一体性」が脅かされれば核を使用する可能性があるとし、「これは虚勢ではない」と明言した。
欧米とウクライナの指導者らは、すぐにこの声明を厳しく非難するとともに、はったりにすぎないと切り捨てた。
イエンス・ストルテンベルグNATO事務総長は、「これは危険で無謀な核のレトリックだ。(プーチンが)これまで何度もやってきたことで、目新しいものではない」「今のところ(ロシアの)核の状況に変化は見られない。われわれは極めて注意深く監視・警戒態勢を維持していく」と語った。
4地域で行われる住民投票についても、非難が相次いだ。「投票をしても何も変わらない。ロシアは躍起になっているだけだ」と、ウクライナのドミトロ・クレバ外相はニューヨークで記者団に語った。
ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)も20日、「見せかけの住民投票」だと非難し、「自信のある国ならこんなことはしない。こんなのは強さを示す行為ではない」と断言した。
新たに動員されることになった兵士たちがいつウクライナに投入されるのか、そして、果たして彼らがどのくらい使い物になるのかはかなり不透明だ。
ロシア軍の予備役は200万人以上いるが、日常的に訓練を受けている者はほとんどいないとされる。
ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、徴兵制度で集められた新兵が戦場に送られることはないと述べたが、少なくとも過去には、若い徴集兵がウクライナに放り込まれていたことが分かっている。
「戦闘能力は非常に低い」
専門家によると、新兵を訓練するには数カ月かかるが、軍務経験者ならば訓練期間を短縮できる。
「(予備役は)志願兵と同じように、1〜2カ月ほどの訓練でウクライナに送り込まれるだろう」と、戦争研究所(ワシントン)のメーソン・クラーク上級研究員は語る。
「とはいえ、ロシアが現在のような窮地に陥ったのはそのせいだ。(予備役の)戦闘能力も非常に低いだろう」
21日のテレビ演説でプーチンは、招集した予備役には戦地に派遣する前に各自の経験に応じて「追加的な訓練」を行うと述べた。
しかし30万人の兵士を訓練し、武器を与え、配備するのは、既に窮地に陥っている軍隊に兵站(へいたん)上の重い負担を与えることになると、専門家は言う。
ウクライナでの作戦に投じる兵力を30万人増やすには、既に現地で戦っている兵士の軍務契約を延長し、帰還させずに引き続き戦わせる手もある。
だが士気の面からそれは難しいと専門家は言う。戦地にいる期間が長引けば、戦意喪失は避けられないからだ。
「問題はロシア軍の指揮がまずい上、兵士がまともな訓練を受けていないことだ。基本的な訓練すら不十分で、長く軍隊にいた兵士の能力も低い」と在欧米陸軍の元トップ、マーク・ハートリングはプーチンの発表後にツイートした。
「戦況が悪化した前線に士気が低い新兵を無理やり送り込めば、もっと悲惨な状況になるのは目に見えている」
もっとも、予備役はウクライナには派遣されず、ウクライナに向かう正規軍の兵士の穴埋めに使われる可能性もあると、ロシア軍の動向に詳しい欧州の高官はみる。
予備役動員が「ウクライナの戦況に与える影響は不透明だが、戦争が計画どおりに進んでいないとプーチンが認めていることを示すサインとしては、これまでで最も明白な動きだ」と、その高官は言う。
プーチンは国連総会出席のため各国首脳がニューヨークを訪れている最中に動員令を発表した。折しもウクライナ戦争と世界の食料・エネルギー市場に与えたその深刻な影響が話し合われようとしているときに、である。
軍事侵攻のせいで西側に排除されたプーチンは国連総会には欠席したが、前の週にウズベキスタンで行われた上海協力機構の首脳会議には乗り込んだ。そして、そこで予想外の冷たい仕打ちに遭った。
中国の習近平(シー・チンピン)国家主席には距離を置かれ、インドのナレンドラ・モディ首相には公共の場で批判された。プーチンは西側の制裁から経済を守るためアジア向けのエネルギー輸出を拡大しようとしているが、肝心の中国とインドに冷や水を浴びせられた格好だ。
プーチンのテレビ演説の前日、ロシア下院は兵士の脱走や徴兵忌避などに対する処罰を厳格化する法案を採択した。罰則が適用される状況も戦闘中に加え、動員令の発令時や戒厳令下にまで拡大された。
ウクライナで展開しているのは戦争や侵攻ではなく、「特別軍事作戦」だとロシア当局は言い張ってきたが、これにも新法は適用される。
新法では脱走すれば最高15年、敵国に投降すれば最高5年の禁錮刑が科される。軍需品の生産で政府の要請を断れば、企業経営者も4〜8年の服役を覚悟しなければならない。
志願兵まで戦闘を拒否
ロシア当局は見せかけの「住民投票」でウクライナ東部や南部を併合し、「国土防衛」を口実に侵攻をエスカレートさせる意向をちらつかせている。
ロシア政府内のタカ派はさらに強気で、外国の侵攻には核兵器の使用も含めあらゆる軍事オプションで対抗する構えだ。
「ロシアの領土への侵入は犯罪であり、自衛のためにはどんな手段を用いてもいい」と、ロシアのドミトリー・メドベージェフ前大統領は20日にメッセージアプリのテレグラムに投稿した。
西側当局者によれば、ロシアは侵攻初期に精鋭部隊が壊滅的な損失を受けた上、その後も増え続ける死傷者の補充に追われ、ウクライナに十分な兵員を送り込むことがますます困難になっている。
「ロシア政府は兵員不足を補おうと新兵募集に躍起になっている。ロシア軍の戦績は惨憺たるもので、ハルキウ(ハリコフ)の(ウクライナに奪還されたという)報を受けて、ロシアの多くの志願兵が戦闘を拒否するありさまだ」と、米国防総省の高官は19日に記者会見で語った。
米国防総省筋によれば、民間軍事会社のワーグナー・グループがタジク人やベラルーシ人、アルメニア人の雇い兵を募集し、ロシアの刑務所でも受刑者約1500人に戦闘参加を呼び掛けたという。だが若い未経験の兵士が多数死んでいると知り、多くの服役者が拒否しているもようだ。
一方、ウクライナ当局はロシアが住民投票実施を宣言したことを利用して、西側からさらなる武器援助を取り付けようとしている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の顧問を務めるミハイロ・ポドリャクは、前線から約300キロ離れたロシアの軍事施設などを攻撃できる陸軍戦術ミサイルシステムや最新鋭の戦車の供与、ロシアの特定の産業にさらなる制裁を科すことをアメリカに求めた。
プーチンを追い詰める包囲網は一層狭まりそうだ。
●ゼレンスキー大統領、ロシア兵に投降呼びかけ 「文明的に」扱うと 9/26
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は24日、ウクライナに降伏したロシア兵を「文明的な方法で」扱うと述べた。またロシア人に対し、前線に送り込まれた場合には逃亡や投降するよう呼びかけた。
ロシアではウラジーミル・プーチン大統領が21日、予備役の「部分的動員」を発表。24日には、脱走兵や命令に背いた兵士への罰を倍加する法律に署名した。
同国では現在、各地で部分動員に対する抗議活動が起きている。ロシアの人権状況を監視する独立系団体「OVD-Info」によると、治安当局に拘束された人は、先週前半には1000人以上、24日だけで700人以上に上った。ロシアでは、認可されていない集会は法律で禁じられている。
ゼレンスキー氏はこの日のビデオ演説で、自らの第一言語であるロシア語でロシア人に対し、戦争終了後に戦争犯罪人として裁かれるリスクを取るより、ウクライナ側に降伏するべきだと呼びかけた。
また、ウクライナはロシアの脱走兵などを国際協定にのっとって扱うとしたほか、ロシアに戻った際の処遇を恐れる場合には送還しないと述べた。
「我々の兵器による爆撃で死ぬより、投降してウクライナの捕虜になる方が良い」と、ゼレンスキー氏は強調した。
プーチン大統領が署名した新法では、脱走、戦闘拒否、命令違反、降伏などを行ったロシア兵に10年の禁錮刑を科すとしている。
ロシア軍はウクライナ東部や南部でウクライナの反攻を受け、退却を余儀なくされている。プーチン氏の一連の動きは、戦争の主導権を握り直すためのものだとみられている。
部分動員の発令を受け、国境には動員を免れようとするロシア人がつめかけている。
エストニアとラトヴィア、リトアニアは、動員令から逃れようとする人に自動的に亡命を認める予定はないとして、大半のロシア人の入国を許していない。
バルティック・ニュース・サービスによると、エストニアのラウリ・ラーネメツ内相は、ウクライナ侵攻は「ロシア人の集団責任」だとして、ロシア人の入国禁止がロシア国内での「不満をかきたて」ることを願っていると述べたという。
●戦争長期化で歪み続けるロシア経済 もはや修復不能 9/26
ロシアによるウクライナ侵攻から半年以上が経過し、ロシア経済も変化が見られ始めている。実質賃金が4月から前年比マイナスを継続。これに伴い、小売売上高も減少を続ける。経済の屋台骨とも言えるエネルギー資源の生産量にも西側諸国の制裁の影響が出始め、財政収支もマイナスとなりつつある。
ただ、ロシア国内では「制裁慣れ」ともとれる動きがあり、財政もしばらく持ちこたえられそうだ。ロシアの国力衰退によって戦況が大きく変わるとまでは言えない状況だ。引き続きロシア経済の実態を注視しながら、プーチン政権の動きを見定める必要がありそうだ。
ジワリと影響が出ている西側諸国の制裁
ウクライナ侵攻後、西側諸国が相次いでロシア産エネルギー資源の輸入削減や禁輸を打ち出したことで、市場では徐々にロシア産化石燃料を忌避する動きが強まり、その結果、ロシアのエネルギー資源の生産量は減少に向かっている。
西側諸国がいち早く足並みをそろえて禁輸措置を決定したのは石炭だ。この制裁により、ロシアの石炭生産量は、2022年7月に前年比5.1%減となり、1〜7月で見ると0.9%減少している。
原油生産量に関しては、5月に前年比2.4%減少。7月は同2.8%増となったが、これは中国やインドが輸入量を増やしたためとみられる。しかし、中国やインドにとってこうした取引量の拡大は、米国をはじめとした諸外国からの目線もあり、継続的になされるものではないとの見方が一般的だ。
また、現在ロシア産石油(原油および石油製品)の最大の輸入地域である欧州連合(EU)は6月、ロシア産石油輸入の約90%を年末までに停止することで合意している。この禁輸措置により、ロシアは原油生産の縮小を余儀なくされる見通しだ。
天然ガス生産量は、7月に前年比22%減少し、1〜7月でも同7.3%減となっている。これは主に、ロシア側が、外国で修理中のタービンが、西側の制裁によってロシアに戻されないこと等を理由に、最大の輸出先である欧州向けのパイプライン送ガス量を大幅に削減していることによるものだ。しかし、同時にEUも、ロシア産天然ガスへの依存からの脱却の動きを急速に強めていることに注意が必要だ。
EUは3月に、ロシアからの天然ガス輸入量を年内に3分の2削減し、2027年までに完全に輸入を停止するという目標を掲げ、省エネやエネルギー供給源の多様化に急ピッチで取り組んでいる。天然ガスの輸送は、石油のように簡単ではないため、対露制裁に同調しない中国やインドへ輸出先を転換しようにも難しい。ロシアの天然ガス生産は、原油生産以上に、輸出市場の制約による影響を強く受ける可能性がある。
筆者が試算したロシアの国内総生産(GDP)における非友好国(対露制裁に参加している国)向け石油輸出が占める割合は6%、天然ガスは1%で、計7%にのぼる。EU等によるロシア産エネルギー資源への依存からの脱却によって、この7%の大半が消失することになる。その一部は、対露制裁に同調しない中国やインドへの輸出先転換によって補われることになるが、その場合でもディスカウント(買い叩き)に遭うことは避けられない。
財政は持ちこたえるも
ロシアの国家財政は、今のところ持ちこたえている。歳入面では、石油ガス価格の高騰により「石油ガス収入」が安定的に推移していること、歳出面では、いわゆる戦費と目される「国防・安全保障・総務支出」がそれほど急拡大していないことが財政の安定に寄与している。
7月には、約1兆ルーブルと本年に入り単月では最大の財政赤字となったが、1〜7月期で見ると、4820億ルーブル(21年GDP比で0.4%に相当)の財政黒字だ。少なくとも、22年については財政が赤字になるとしても小幅赤字で、大きく崩れる可能性は低い。
また、たとえ財政赤字になったとしても、これまでの財政黒字を積み立てた国民福祉基金の残高が22年6月末時点で10.8兆ルーブル(うち流動資産部分は7.4兆ルーブル)あり、これを取り崩すことで、国債を発行せずとも財政赤字を補填することが十分可能な状態だ。
しかし、2〜3年後もロシアの国家財政が盤石かと問われると、必ずしもそうとは言えない。前述の通り、西側諸国がロシア産エネルギー資源の輸入削減を進めていることから、ロシアの石油・ガスの生産・輸出量は減少に向かうと見込まれるが、これは石油ガス収入の減少要因となる。こうした中で、今後、戦費が拡大されたり、国民の不満を緩和するために大規模な財政支出が行われたりすると、財政赤字は急拡大し、その分、国民福祉基金が底をつく時期も早まることになる。
我慢強い国民性と「制裁慣れ」
ロシア国内の小売売上高については、ウクライナ侵攻の翌々月の4月から減少が鮮明となった。4月には、前年比9.8%減少、5月は同10.1%減となり、直近の7月まで前年比約1割減の推移を続けている。
小売売上高の減少の主因となっているのは、実質賃金の減少だ。3月にルーブルが対米ドルで前月から25%下落し、インフレ率が2月の9.2%から16.7%へ急上昇したことにより、実質賃金は4月に前年比7.2%減、5月も同6.1%減と前年割れを続けている。
小売売上高、実質賃金とも前年割れを続けているものの、6月頃から、わずかながら持ち直しの動きがみられることにも注意が必要だ。こうした持ち直しの背景には、ロシアの企業や国民が、制裁を課された状態に適応してきているということがある。
その端的な例がウクライナ侵攻により撤退した米国のハンバーガーチェーン大手のマクドナルドやコーヒーチェーンのスターバックスの後継店の開店だ。ともに、ロゴや商品、サービスが酷似したものを提供している。
このほか、制裁により半導体をはじめとする高度技術品の輸入が規制されるなかで、そうした部品なしで製品を製造・販売する動きも広がっている。自動車のエアバッグやABS(アンチロック・ブレーキシステム)の製造が困難になるなかで、これらの装置を装備していない自動車を製造し、新車として販売する形だ。
世界的な信頼を失ったロシア経済の行方は
ウクライナ戦争下でのロシア経済は、歪を明らかにしつつも、しばらくは大きく悪化することなく継続しそうだ。
しかしながら、質の下がった商品が流通し、明るい将来展望を描くことができないような社会・経済状況が続く限り、若年層を中心に優秀な人材の国外流出は避けられない。こうした人材流出は、ロシア経済の今後の成長可能性を、中長期的に大きく制約する要因になるだろう。
また、たとえ戦争が終わり、西側諸国による制裁が緩和されることになっても、エネルギー資源の安定的な供給者としてのロシアに対する信頼はすでに失墜している。多くの国が、ロシアへのエネルギー依存を極力減らそうとする方向性は変わらないだろう。ロシア経済の基幹産業である石油・ガス部門の成長はもはや見込めない。
ロシアは戦争の勝ち負けにかかわらず、経済的な下り坂を進むことになりそうだ。
●OECD、世界経済はウクライナ情勢で動揺−追加利上げ見込む 9/26
経済協力開発機構(OECD)は26日、ウクライナでの戦争で世界が動揺しているとし、ほぼ全ての20カ国・地域(G20)について来年の経済成長率見通しを引き下げ、追加利上げがあるとの見方を示した。
OECDの最新経済見通しによると、世界経済は来年、2.2%成長にとどまる。G20の国内総生産(GDP)で成長見通しがやや上方修正されたのはインドネシアだけで、大半に関して引き下げた。インフレ予想はG20の多くの国で引き上げられた。
OECDは中間経済見通しで、「世界経済は打撃を受けている」とし、「世界、特に欧州はウクライナでの戦争のコストが負担だ。多くの国が厳しい冬に直面している」と指摘した。
OECDの見通しは、ロシアがウクライナで始めた戦争とその後のエネルギー不足で生じた二重の衝撃を裏付けている。エネルギー価格の高騰は生活費を巡る幅広い危機を招いた。
「多くの国でインフレが広範囲に及んでいる」とするOECDは、「インフレ期待を落ち着かせ、インフレ圧力の永続的低下を確実にするため、大半の主要国で追加利上げが必要だ」と主張。欧州一の経済大国ドイツは来年、マイナス0.7%成長になるとOECDは見込んでいる。
OECDによると、「実質所得の減少とエネルギー市場の混乱による足かせを考慮すると、ユーロ圏全体」とドイツ、イタリア、英国で短期的にGDPが減少する。
特にガスなどの燃料不足がさらに深刻化すると、来年の欧州成長率がさらに1.25ポイント下がり、インフレ率が1.5ポイント余り上昇する可能性がある。「多くの国が23年に年間ベースでリセッション(景気後退)」となり、欧州の成長は「24年も弱まるだろう」と予想した。
●ウクライナで相次ぐ農地火災「ロシア軍は狙って攻撃している」…農業者悲嘆 9/26
ロシアの侵略下で相次ぐウクライナの農地火災は、収穫前の穀物だけでなく、営農に欠かせない農機具などにも被害を広げる。「このまま戦争が続き、何もかもなくなったら、どうすればいいのか……」。農業者は悲嘆している。
「何年もかけて作りあげてきたものが全て壊されてしまった」。東部ドネツク州バフムト郊外で、小麦や大麦、ヒマワリなどを作るセルヒー・グリゴリエフさん(53)は9月中旬、読売新聞の取材に語った。
5月から続いた農地への砲撃で小麦畑が炎上し、約700ヘクタールが灰となった。砲撃は倉庫などの建物にも及び、耕運機やトラクターも壊された。セルヒーさんは「ロシア軍は、農地を狙って攻撃している」と憤る。
農地火災は、ウクライナ南部でも相次ぐ。ザポリージャ州バシリウカのパブロ・セルヒエンコさん(24)の畑では、小麦や大麦などを植え付けた約200ヘクタールが焼けた。ロシア軍は農地から3〜5キロの距離まで近付き、パブロさんは「種まきや草刈りをしている時に砲撃されたこともあった」と語る。パブロさんの損失は約2億フリブニャ(約7億6000万円)にも上りそうだという。
戦時下で燃料や肥料などの価格が高騰していることも、営農に追い打ちをかける。ウクライナは小麦を中心に世界有数の食糧供給国だが、農業者を取り巻く環境は厳しさを増す。
パブロさんは「21世紀になっても発展や繁栄を追い求めるのでなく、破壊を選ぶとは恐ろしい。いつこの戦争は終わりを迎えられるのか……」とうなだれる。
南部ヘルソン州の警察当局によると、ロシア軍による農地への砲撃は断続的に続き、消火活動には危険が伴う。このため人員を大量に動員して火を消すことは難しく、ロシア軍の占領地では消火活動自体が許可されないケースもあるという。
警察当局は「ロシアは意図的に作物を破壊し続けている」として、戦争犯罪に関する国内法に基づき、捜査を進めている。
●ロシア軍、占領下のウクライナ人にも招集令状…国際条約に違反 9/26
ウクライナ軍参謀本部は26日、ロシア軍が占領している東部ルハンスク州の一部で、18歳以上のウクライナ人男性に露軍への参加を求める招集令状の配布を始めたと表明した。ロシアが占領地域の一方的な併合を前提に、露国内で着手している部分的動員を強化しているものとみられる。占領地での住民の徴兵は国際条約に違反しており、露軍の強引な兵員補充が目立っている。
ウクライナ軍参謀本部によると、南部ヘルソン、ザポリージャ両州の露軍占領地域でも、ロシア旅券を持つ住民が動員対象になっているという。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は25日のビデオ演説で、ロシアが2014年に併合した南部クリミアで、先住民族クリミア・タタール人が主要な動員対象になっているとして、「新たなジェノサイド(集団殺害)政策だ」と非難した。
クリミア・タタール人はプーチン政権の弾圧に苦しんできた。地元人権団体は、約5000枚とされるクリミアでの招集令状の約9割がクリミア・タタール人に渡されたと主張している。
露国内では動員を巡る混乱が続いている。ロシア語の独立系ニュースサイト「メドゥーザ」は25日、動員対象になる男性の出国が28日にも禁止されると報じた。既に約26万人が出国したとも伝えられる。東シベリア・イルクーツク州知事などによると、州内の徴兵事務所で26日、男が発砲し、所長が重体になった。男は親友が招集され、動揺していたという。
一方、タス通信などは26日、ロシアが東部ドンバス地方(ルハンスク、ドネツク両州)と南部2州の支配地域を併合するために23〜27日の日程で行っている「住民投票」について、全4州で投票率が50%を突破し、投票が「成立した」と報じた。プーチン大統領が30日にも露議会で演説し、併合を宣言する可能性が強まった。
●「プーチンはかなり苦しんでいる」ホワイトハウス高官がロシアの窮状を指摘 9/26
プーチンはウクライナ侵攻でかなり苦しんでいる――予備役の部分的な動員などを発表したを発表したロシアのプーチン大統領について、アメリカのホワイトハウス高官が指摘した。
プーチン大統領は9月21日、半年以上続くウクライナ侵攻のために約30万人の予備役を動員するとテレビ演説で発表した。
さらにロシア当局は23日、制圧したウクライナ東部や南部地域のロシア編入を問うための住民投票を開始した。
ホワイトハウスのジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官は25日、こういった動きについて「間違いなくロシアの強さや自信の表れではありません。むしろ全く反対で、ロシアそしてプーチンがかなり苦しんでいることの兆候です」とABCの番組で述べた。
核の脅威は本気か、ハッタリか
プーチン大統領は21日の演説で、核兵器の使用も辞さないという考えも示している。
サリバン氏はこの問題について「アメリカが核兵器使用にどう反応するかを、ロシアは十分に理解している」とNBCの番組で述べ、使用すれば「破滅的な結果が待ち受けている」とロシアに警告したことを明らかにした。
サリバン氏によると、プーチン大統領がウクライナ侵攻に関連して核の脅威を持ち出すのは今回が初めてではなく、ホワイトハウスは深刻に受け止めている。
一方、ティム・ケイン連邦上院議員は24日に出演したMSNBCの番組で「プーチン大統領は追い込まれており危険だ」と述べながらも、核兵器の使用はロシアにも放射性降下物の危険をもたらすことから「脅しに過ぎない」という考えを示した。
「核兵器はどこで使用しようが…国際社会からの激しく非難という大打撃を招きますが、それだけではなくロシアに放射能降下物の危険性をもたらします。ですから私は、大いなるハッタリだと思います」
●民間軍事会社「ワグネル」、プーチン氏と親しい実業家が創設認める 9/26
ロシアの実業家でウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領と親しいエフゲニー・プリゴジン氏(61)は26日、民間軍事会社「ワグネル」を創設したのは自分だと公表するとともに、同社が中南米やアフリカに傭兵(ようへい)を派遣してきたと認めた。
プリゴジン氏はワグネルが出した声明の中で、2014年にウクライナ・ドンバス地方に戦闘員を派遣するために同社を創設し、後に「大隊戦術軍(BTG)ワグネル」の名称になったと説明した。
大統領府とケータリング契約を結んでいることから「プーチンのシェフ」とも呼ばれるプリゴジン氏は、これまでワグネルとの関与を否定していた。
同氏はワグネルの傭兵について「シリアやアラブ諸国の人々、貧窮したアフリカや中南米の人々を守った英雄たちが、祖国を支える柱となっている」と記した。
ワグネルは長年、ロシア政府の外国での目的を果たすために活動していると疑われてきたが、大統領府はいかなる関係もないと否定している。
●サウジ皇太子、捕虜交換で価値高める ロシアにパイプ 9/26
サウジアラビアはロシアとウクライナの捕虜交換で仲介役を果たしたことで、ロシアの孤立を図る西側諸国に対してロシアと実力者ムハンマド皇太子とのパイプは「有益だ」とのメッセージを送ることに成功、外交的な勝利を収めた。
また今回の動きは、2018年に起きたサウジ人著名ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の殺害に関与したとの疑惑で傷ついた皇太子の国際的なイメージの回復にも、意図的かどうかはともかく、役立ちそうだとアナリストは見ている。
ロシアは21日、ムハンマド皇太子の仲介により、捕虜の外国人10人を解放した。うち5人が英国人、2人が米国人。皇太子が慎重に育んだプーチン大統領との結びつきよって解放が実現したもようだ。
時を同じくしてトルコの仲介による捕虜交換で、ウクライナ側兵士215人と親ロシア政党の指導者など55人が解放された。
米ライス大学ベーカー研究所のクリスチャン・ウルリクセン氏(政治学)は、仲介者の選択にあたりサウジとロシアのパイプが重要な要素になったようだと指摘。「ムハンマド皇太子は今回の仲介を承認し、結果を出すことにより、衝動的で破壊的な人物だという評判を覆し、この地域の有力政治家の役割を担う能力があると示すことができる」と述べた。
皇太子は当初、大胆な改革者と見られていたが、カショギ氏殺害事件でそうしたイメージは大きく損なわれた。
皇太子はカショギ氏殺害を命じていないとしつつ、自分の監督下で起きたとして責任を認めている。
人道的理由を強調
サウジのファイサル外相はBBCとのインタビューで、捕虜解放に同国が関与した動機は人道的なものだったと説明。皇太子の名誉回復のためだったとの見方については、「ひねくれている」と否定した。
ファイサル氏によると、皇太子は捕虜解放のため4月からプーチン氏と連絡を取り合っていた。当時のジョンソン英首相がサウジを訪問したのを受け、英国人5人が捕虜となっている問題を「理解」したという。
ファイサル氏はフォックス・ニュースのインタビューで「皇太子は、これは人道的行為として価値があるとプーチン氏を説得することに成功し、今回の結果を得ることができた」と振り返った。
解放された外国人には、クロアチア人、モロッコ人、スウェーデン人も含まれており、サウジ機でサウジの首都リヤドに移動した。当局者によると、米国人2人は数日以内にサウジを離れる予定。
ウクライナ戦争が世界のエネルギー市場を揺るがす中、世界最大の石油輸出国であるサウジは米国とロシアの両方にとって重要性が高まっている。
世界中の指導者が石油の増産を求めて次々とサウジを訪れているが、サウジはロシアを孤立させる取り組みに加わる姿勢を見せていない。サウジは、石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟国で構成するOPECプラスなどを通じて、プーチン氏との協力関係を強めている。
ロシアとの「有益な」関係
バイデン米大統領は7月のサウジ訪問で同国から原油の即時増産、プーチン氏への強硬姿勢といった課題で言質を取り付けることができず、米国とサウジの緊張関係が浮き彫りになった。
親政府派のコメンテーター、アリ・シハビ氏によると、サウジが捕虜解放を仲介したのは初めてだ。「西側諸国に対して、ロシアとのパイプも有益な目的になり得るとのメッセージを発したのだろう」と分析。「両者との関係を維持する国が必要だ」と強調した。
西側外交筋によると、捕虜交換計画は何カ月も前から進んでいたが、中東湾岸諸国のほとんどの外交筋がそれを知ったのは最終段階に入ってからだった。
ワシントンのアラブ湾岸諸国研究所のクリスティン・ディワン上級研究員は、外交的な仲介役という戦略をサウジが採るのは異例で、普通はカタールなどこの地域の小国が使う手法だと指摘。「錬金術のようなものだ。皇太子は批判を浴びている対ロシア関係を金に変えてみせた」と述べた。
●ロシア軍、動員で一層の人的損害も 「最低限」の準備で前線へ 9/26
英国防省は26日のウクライナ戦況分析で、ロシアによる予備役の部分動員令に関し「招集を受けた初期部隊が軍基地に到着を始めた」との見方を明らかにした。
また、経験や戦う意欲に乏しい兵士を前線に送り込むことで、今後一層の人的損害を受けることになると予測した。
英国防省は「西側諸国と異なり、ロシア軍は兵士たちに指定された作戦部隊内での低水準の基本訓練しか施さず、予備役の多くは何年も軍事的な経験を積んでいない」と指摘。さらに「教官不足や性急な動員状況から見て、多くは最低限の準備をしたのみで前線に駆り出される」とし、「ロシアは高い(人的な)損耗率に苦しむだろう」と警告した。

 

●習近平の「3選」確定後、中国がロシア・ウクライナ戦争の「仲裁」に動く可能性 9/27
プーチン大統領の「暴走」
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の「暴走」が止まらない。先週、二つの「暴挙」に出た。
第一は、9月21日午後3時(モスクワ時間)、国民向けテレビ演説を行い、予備役の国民を軍務に就かせる「部分的動員令」を発表したことだ。第二次世界大戦でアドルフ・ヒトラー総統率いるナチスドイツと死闘を演じた際に、ヨシフ・スターリン書記長が発令して以来、実に81年ぶりの措置である。
これによって、2月24日にロシアがウクライナへの侵攻を開始して以降、新たなステージに入ったことになる。ロシア国防省は、動員される予備役の数を30万人としているが、実は100万人だという報道もある。また、2500万人を動員する法律的解釈ができるという報道もある。実際、「自分は予備役でないのに『召集令状』が届いた」という青年の映像が流された。
第二は、ロシアが占領したウクライナの4つの地域での「住民投票」の開始である。これは9月23日から、東部ドンバス地域のドネツク州とルハンシク州、南東部のザポリージャ州、南部のヘルソン州で行われ、27日に終了するという。この手続きを経て、30日にプーチン大統領が編集手続きを行うと、ロシアのタス通信が伝えている。2014年3月にウクライナのクリミア半島を併合した時と、同様のパターンだ。
ロシアが上記4州の「併合」を完成した場合、最も懸念されるのは、引き続き起こりうるウクライナ側の反撃を、ロシアが核兵器を使用して喰いとめようとすることだ。ロシアとしては、ウクライナからの反撃は、「自国領土への攻撃」とみなすので、何が起きてもおかしくない。
国連総会のためニューヨークを訪問中のロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は24日、現地で記者会見を開いた。そこでも焦点は核兵器の使用で、ロシアの記者が質問すると、ラブロフ外相は言葉を慎重に選びながら、こう答えた。
「わが国には核兵器の安全保障に関して、基本的な原則がある。私は別にあえて、悲観的な予測をしようとは思わないが、その基本的原則は、ロシアのあらゆる地域に適用されるものだ」
このように、核兵器の使用を否定しなかった。当然ながら、こうした回答はプーチン大統領と擦り合わせて、「核の脅し」として行っているものと見られる。
こうしたロシアの「暴走」に対して、直接的な当事者であるウクライナは、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領率いる軍の善戦が伝えられてはいる。だが短期間に、この4州すべてを奪還することは不可能だ。引き続き、アメリカやNATO(北大西洋条約機構)からの強力な武器や情報の支援を必要とする。
プーチンの首に鈴をつけるのは誰か
アメリカは、25日にジェイク・サリバン大統領安保担当補佐官が、ABCテレビのインタビューに答えた。
「現在、ロシアの高位の人物と、直接かつ非公式に連絡を取り続けている。そのルートで、ロシアが今後万一、ウクライナで核兵器を使用すれば、壊滅的な結果を招くことになるだろうと伝えている。またその場合、アメリカは同盟国・友好国とともに、断固とした対応を取る」
威勢はいいが、これまでのジョー・バイデン政権の行動から考えると、いささか腰が引けているようにも思える。そもそも、アメリカが率いるNATO軍が拱手傍観すると判断したからこそ、プーチン大統領はウクライナ侵攻を決断したわけで、実際にNATO軍は直接の不関与を貫いている。
ヨーロッパは、さらに腰が引けている。凄まじいインフレが続く中、厭戦ムードが漂っているからだ。加えて、極寒の冬が近づくにつれ、エネルギーを依存してきたロシアへの非難が弱まる可能性がある。
アンゲラ・メルケル首相の時代に「EUの盟主」を自任していたドイツは、オラフ・ショルツ首相が現在、中東を歴訪中だ。何とか自力でエネルギーを調達し、少しでもロシア依存を減らそうということだが、「ようやく1日分調達」などと、ドイツで皮肉たっぷりに報じられている。
「EU分裂の震源地」となりそうなのが、イタリアだ。25日に行われた総選挙で、右派連合が過半数を獲得。「イタリアの同胞」のジョルジャ・メローニ党首(45歳)が、26日に「これで国民の信任を得た。今日はゴールではなくスタートだ」と勝利宣言を行った。第二次世界大戦時の独裁者ベニート・ムッソリーニ首相を敬愛すると言われる彼女が、イタリア初の女性首相に就くのは確実の情勢だ。
まさに「EU創設の崇高な理念」とは真逆の考えを持ったリーダーが、EU第3の経済国に誕生するのだ。メローニ政権誕生を、クレムリン宮殿の主は、ほくそ笑んでいることだろう。
というわけで、この広い世界に、プーチン大統領の首に鈴をつけられる人物は、たった一人しかいないという結論になる。
それは、中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席だ。両首脳は、今月15日に、ウズベキスタンのサマルカンドで、SCO(上海協力機構)首脳会議に合わせて、41回目となる首脳会談を開いたばかりである。
この時の中ロ首脳会談では、プーチン大統領の「低姿勢」と、習近平主席の「冷淡な態度」が話題を呼んだ。四面楚歌のロシアは中国にすがろうとしているが、中国は必ずしもロシアと「一心同体」を貫こうとはしていないという解釈だ。
では、中国は今後、事態の打開へ向けて重い腰を上げるのか? もし動くとしたら、どのような立場を取るのか? 
中国の動きを読み解くキーワード
結論を先に言えば、私は、10月16日から1週間ほどかけて行われる第20回中国共産党大会で、習近平総書記が「3選」を果たし、国内で権力基盤を盤石なものにしたら、中国が仲裁に乗り出す可能性はあると見ている。
その際の中国の立場は、その時点の情勢にもよるだろうが、ややロシア寄りに傾きながらも、「両者痛み分け」となる仲裁案を提案するのではないか。
実際、中国はそのための準備とも思える行動を、着々と進めている。
9月19日、中国福建省で、中国外交トップの楊潔篪(よう・けつち)氏が、プーチン大統領の最側近とされるニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記と、丸一日協議を行った。協議の具体的内容は不明だが、新華社通信が伝えた全文を訳す。
〈 9月19日、中国共産党中央委員会政治局委員、中央外事工作委員会弁公室主任の楊潔篪は福建省で、ロシア連邦安全会議秘書のパトルシェフと、中ロ第17回戦略安全交渉を共催した。双方が一致して同意したのは、継続してこの戦略安全交渉の重要なプラットフォームをうまく活用していくことだ。
中ロの国家元首がSCOサマルカンド首脳会議での首脳会談で得た共通認識を実現させるのだ。相互信頼を増進し、中ロがそれぞれの国情に合った発展の道を歩むことを支持し、共同で全世界の戦略的安定を維持、保護し、両国の全面的戦略的パートナーシップ関係の内容を不断に強固にし、充実させていく。
楊潔篪が示したのは、昨今、習近平主席とプーチン大統領の戦略的リードのもとで、中ロ関係は終始、発展の勢いを保持しているということだ。両国は、それぞれの核心的利益と重大な懸念問題に関して、終始、相互支持を固めている。各分野での協力と内容は不断に豊富なものとなっている。
国連を核心とした国際システムと国際法を基礎とした国際秩序を、共同で死守していく。国際的な公平と正義を維持、保護し、相互尊重・平和共処・協力共勝の新型の大国関係の規範としていく。
楊潔篪が指摘したのは、中国はロシアとともに、両国の国家元首の共通認識を実現させていくということだ。政治の相互信頼と戦略提携を引き続き深化させ、両国の国家元首が確定した方向に沿って、双方の関係が闊歩前進していくようにする。そして中ロ各自の発展振興が、外部環境にさらなる安全安定をもたらし、両国の共同利益を維持、保護し、世界の安全安定にさらなる貢献をしていくようにする。
パトルシェフは示した。ロシア側は、中国と緊密な戦略的意思疎通を保持し、各分野での実務的協力を深化させ、国際組織の中でさらに一歩、協調と協力関係を強化させていく用意がある。
双方は他にも、全世界の戦略的安定の維持と保護、アジア太平洋地域の情勢、アフガニスタン、ウクライナなどの問題についても、深く意見を交わした 〉
この記事の中で、キーワードと思われるのは、「核心的利益の相互支持」と、「実務的協力の深化」である。
まず「核心的利益の相互支持」だが、この言葉は、2月4日の習近平主席とプーチン大統領の北京会談でも、6月15日のオンライン会談でも、中国側が強調していた。
中国にとって最大の核心的利益は台湾問題で、ロシアにとってはウクライナ問題だ。そのため基本的に、中国はロシアのウクライナ侵攻について、非難したり制裁を与えたりすることはしない。
では、中ロは何をするのかと言えば、「実務的協力の深化」だ。これは記事のニュアンスから判断して、ロシアが望んでいる中国からロシアへの武器供与は意味せず、経済関係の強化を示すものだろう。
中国海関(税関)総署の発表によれば、今年1月〜8月の中ロ貿易は1172億ドルに上り、前年同期比31.4%増だ。特にロシアから中国へは729億ドルで、前年同期比50.7%と急増しているのだ。
これは主に、原油・天然ガス・石炭・電力といったエネルギー関連である。一説によると、中国が安く買い叩いているとも言われる。
また5月に張漢琿(ちょう・かんぐん)駐ロ中国大使が、「昨年の中ロ貿易の17.9%が人民元決済だった」と述べているので、中国としては人民元経済圏を広げるというメリットもある。こうしたことをまとめて、「実務的協力の深化」と呼んでいるのだろう。
王毅外交部長が語った「中国の立場」
中国外交ナンバー2で、習近平主席の「忠実な口」と言われる王毅(おう・き)国務委員兼外交部長(外相)も、先週は国連総会が開かれているニューヨークで、活発な外交を展開した。
そのハイライトとも言えたのが、アメリカ東部時間の9月24日に国連総会で行ったスピーチだった。タイトルは、「平和と発展に尽力し、団結と進歩を担当する」。
私はインターネットの中継で、22分のスピーチを聴いたが、自身が絶対忠誠を誓う「習近平主席」の名前を7回も連呼した。
王毅外交部長は、連日の分刻みの各国との外相会談などで、さすがにお疲れの様子で、時折、声もかすれがちだった。それでも、習近平主席の「忠実な口」として、中国の立場を次のように述べた。
〈 どうやって時代の要求に対応し、歴史の潮流を把握し、共同で人類運命共同体を構築していくか。中国の主張は堅固にして明確だ。
第一に、平和が必要であり、戦乱にしてはならない。平和は一切の美しい未来の前提であり、各国の共同の安全の基礎である。
第二に、発展が必要であり、貧困を生み出してはならない。発展は各種の難題を打ち破り、人々の幸福を実現するカギである。
第三に、開放が必要であり、国を閉ざしてはならない。保護主義を取ることは自縛行為であり、サプライチェーンを切ってデカップリングすることは、必ず他者に損害を与えて自分も被害に遭う。
第四に、協力が必要であり、対抗してはならない。尽きることのない世界的なチャレンジに直面して、最強のパワーは心を合わせて協力することであり、最も有効な方法は同じ舟に乗って助け合うことであり、最も光明な前景は協力共勝だ。
第五に、団結が必要であり、分裂してはならない。平和・発展・公平・正義・民主・自由は全人類の共同の価値感であり、制度の違いは分裂を造成する理由にはならない。さらに民主と人権を政治化・道具化・武器化させてはならない。
第六に、公平が必要であり、覇権を目指してはならない。大小の国家が相互に尊重し、一律平等が国連憲章の主要な原則だ。
昨今の各種の安全へのチャレンジに直面して、習近平主席は全世界の安全を提唱した。国際社会に、共同で総合的で持続可能な安全観の堅持を呼びかけた。
各国の主権尊重、領土保全を堅持し、国連憲章の趣旨原則の順守を堅持し、各国の合理的な安全への懸念の重視を堅持し、対話を通じた協商と平和的な争議の解決を堅持し、伝統的及び非伝統的な安全のコントロールの維持、保護を堅持することを呼びかけた。
そうして人類の平和に中国の知恵で貢献、補填していく。国際的な安全のチャレンジに対して、中国の方案を提供して応対していく 〉
以上である。22分間のスピーチの中に、「ウクライナ」「ロシア」といった単語は出て来なかった。もっと俯瞰的に、中国がいかに世界の平和と発展に貢献しているかを自負した内容だった。
中国が仲介に乗り出す準備
これは一見すると、「中国は今後とも、ウクライナ戦争に直接的に関わったり、仲裁したりする意思がない」とも解釈できる。もっと穿った見方をすれば、「中国は同じ強権国家の大国でも、野蛮極まりないロシアとは違うのだ」とアピールしたかったのではとも考えられる。
だが私は、中国は来月の第20回中国共産党大会の後、積極的に仲介に乗り出す準備をしている可能性があると見ている。その証拠に、今回、王毅国務委員兼外相は、ニューヨークを舞台に、尋常でない数の会談・会議などをこなした。
中国外交部が公にしているだけでも、9月20日が8件、21日も8件、22日が11件、23日が5件、国連総会のスピーチを行った24日は9件、翌25日は7件。合計すると6日間で48件! 「世界一働くスーパー外相」と言われるゆえんだ。
特に、ウクライナ戦争に関係する重要人物――ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相、ウクライナのドミトロ・クレバ外相、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官、NATOのイェンス・ストラテンベルグ事務局長、国連のアントニオ・グテーレス事務局長らと、漏れなく会談している。
注目のクレバ外相との会談では、新華社通信によれば、王毅国務委員兼外相は、次のように発言した。
「習近平主席は、こう指摘している。各国の主権と領土の保全は、すべて尊重されるべきだ。また国連憲章の趣旨と原則は、順守されるべきだ。各方の合理的な安全への懸念は、重視されるべきだ。危機の平和的解決に至る一切の努力は、支持されるべきだ。
この『4つの当然』は、中国のウクライナ問題に対する最も権威づけた陳述であり、中国がこの問題を処理することを見守る根本的な尊重、順守すべき点である。
責任ある大国であり、国連安保理の常任理事国として、中国は一貫して交渉に尽力してきた。拱手傍観せず、火に油を注ぐこともなく、ましてや漁夫の利を得ようともしていない。われわれは終始、平和の立場に立っており、引き続き建設的役割を発揮していく。
ウクライナ政府と国民が、ウクライナ在住の中国人、とりわけ留学生の避難に助力と関与をしてくれたことに感謝し、両国国民の間の友好的な感情を顕彰したい。
今年は中国とウクライナの国交30周年だ。中国はこれを機に、両国関係をさらに発展させ、伝統的友誼を発揚させ、より一層両国の国民に恩恵を与えるよう企画する用意がある」
これに対して、クレバ外相はこう答えた。
「ウクライナは、中国の国際的地位と重要な影響力を重視している。中国がいまの危機を緩和するのに重要な役割を果たすことを期待している。
ウクライナは国益にマッチした対話交渉を行う用意がある。ウクライナは一貫して、一つの中国政策(中国と台湾は一つという政策)を支持し、中国の主権と領土保全の維持、保護を支持している。中国と各分野での交流と協力を強化することを期待している」
思えば、ウクライナにとって、昨年の最大の貿易相手国は中国だった。ウクライナとしても、「一つの中国」という「踏み絵」をきちんと踏みつつ、中国に仲介を期待しているのである。
中国が仲介に乗り出すとしたら、その「腹案」は何だろう? ドンバス地方の2州はロシアに渡して、他の2州からはロシアが撤退するということだろうか。
ともあれ、10月下旬に第20回中国共産党大会が終わると、11月15日、16日に、インドネシアのバリ島で、G20(主要国・地域)首脳会議が開かれる。この場には、プーチン大統領、バイデン大統領、習近平主席らが一堂に会する。ここが大きな大きな外交の場になりそうだ。
●「原発が炎に包まれている」IAEA事務局長 各国に協力呼びかけ  9/27
IAEA=国際原子力機関の年次総会が、オーストリアで始まりました。グロッシ事務局長は、安全性への懸念が広がるウクライナのザポリージャ原子力発電所を巡り「原発が炎に包まれている」と強い危機感を示し、重大な事故を防ぐために、原発周辺を安全な区域に設定できるよう、各国に協力を呼びかけました。
IAEAの年次総会は、本部があるオーストリアのウィーンで26日から始まり、冒頭、グロッシ事務局長が演説を行いました。
このなかでグロッシ事務局長は、相次ぐ砲撃により一時的に外部電源を失うなど、安全性への懸念が広がっているウクライナ南東部のザポリージャ原発について「ヨーロッパ最大規模の原発が炎に包まれている。信じがたいことだが、現実だ。この現実を前に、われわれは行動しなければならない」と述べ、強い危機感を示しました。
そのうえで、重大な事故を防ぐために原発周辺を安全な区域に設定する、みずからの提案に関連して、ウクライナとロシア双方との協議をさらに進めるため、両国を訪れる用意があると強調し、各国に理解と協力を呼びかけました。
IAEAの年次総会では、26日に日本やウクライナ、そして、ロシアなど各国の代表による演説が続いていて、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻や原発の安全確保を巡って、どのような姿勢が示されるかが焦点となっています。
総会では各国が非難もロシアは「攻撃はウクライナ側」
総会では日本をはじめ各国の代表が演説を行い、ザポリージャ原子力発電所を占拠するロシアへの非難が相次ぎました。
このうち、アメリカのグランホルムエネルギー長官は「ロシアによる原子力施設の占拠は、原子力の平和利用に対するロシアの姿勢に疑念を抱かせる」と非難し、ロシアに対して部隊を撤退するよう要求しました。
また、日本の高市科学技術担当大臣もビデオ演説で「ウクライナの原子力施設やその付近でのロシアの軍事行為は決して許されるものではない。最も強いことばで非難する」と述べるなど、各国の代表からロシアへの非難が相次ぎました。
これに対して、ロシアの代表は「ウクライナ側が原発を攻撃している」と述べ原発には部隊を配置していないとも主張しました。
●プーチン氏、いかなる敗北も「認めず」 フィンランド大統領 9/27
フィンランドのニーニスト大統領は27日までに、ロシアによるウクライナ侵攻が危険な状況を迎えていると警告した。ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵攻に高い信頼性を与えていたものの、自分に不利な状況になってきているとの見方を示した。
ニーニスト氏はCNNの取材に対し、プーチン氏がウクライナ侵攻に全てをつぎ込んでいると語った。
ニーニスト氏はプーチン氏について、「戦士」だと形容。そのため、プーチン氏がいかなる種類の敗北についても受け入れるのを目撃することは非常に困難であり、そのことが状況を危機的なものにしていることは間違いないと指摘した。
フィンランドの国境警備当局によれば、24日に陸路でフィンランドに入国したロシア人の数は8500人を超えた。
国境警備当局の幹部は25日、SNSへの投稿で、24日には8572人のロシア人が陸路でフィンランドに入国したと明らかにした。1週間前の土曜日に入国したロシア人の数は5286人だったという。24日の入国数は前週比で62%増えた計算になる。
プーチン氏が失速したウクライナ侵攻を立て直すため「部分的動員」を宣言したことで一般のロシア人もウクライナ侵攻に関与する可能性が高くなり、フィンランドに入国するロシア人の数が増加している。 
●ウクライナで戦死のロシア兵、「全ての罪を洗い流される」 キリル総主教 9/27
ロシア正教会トップのキリル総主教が、ウクライナとの戦争で死亡したロシア兵は全ての罪を清められると発言した。
キリル氏は25日の礼拝で、ウクライナ戦争で多数の死者が出ている現状に言及。「兄弟殺しの戦争で殺し合う兄弟が1人でも少なくなるよう、教会はこの戦いが可能な限り早く終わることを祈っている」と述べた。
一方で、ある人が職務を果たす義務感に突き動かされているのであれば、その人は天命に従い義務を全うすると述べ、「もし義務の遂行中に命を落とした場合、間違いなく犠牲に等しい行為になる。他人のために我が身を犠牲にしているのだ。こうした犠牲により全ての罪が洗い流されるものと確信している」と説いた。
キリル氏の発言に先立ち、ロシアのプーチン大統領は30万人以上の徴兵を目的とした国民の「部分的動員」を発表し、ウクライナ侵攻をエスカレートさせていた。
●ウクライナでの戦争で世界経済は2023年も減速、OECDが見通し 9/27
ロシアとウクライナの戦争および、いまだ続く新型コロナウイルス感染症流行の影響により、世界の経済成長は予想以上に減速し、インフレが加速している。
この傾向は来年も続くだろうという悲観的見通しを経済協力開発機構(OECD)は月曜日、発表した。
パリに本部を置くOECDの予測では、今年の世界経済の成長率は3%にとどまり、2023年には世界全体の生産活動に2.8兆ドル相当の減少が見込まれることから、来年はさらに減速してわずか2.2%となる見通しである。
ロシアは世界有数のエネルギーおよび肥料の輸出国であり、ロシア・ウクライナ両国とも主要な穀物の輸出国で、世界中で飢餓の危険にさらされている数百万人の人々に食物を供給していた。
このため、ウクライナでの戦争により、世界的に食糧とエネルギー価格が高騰している。
また、中国では新型コロナウイルス感染症対策のロックダウンの影響で、経済の大部分が休止状態となった。
「戦争、エネルギーと食糧費の高騰、中国のゼロコロナ政策などが相俟って、成長は低調となるでしょう。
インフレは加速するとともに長引くと考えられます」とOECDのマティアス・コーマン事務総長はパリで報道陣に語った。
インフレとエネルギー供給の危機を考慮して、OECDは今年のアメリカの成長率を約1.5%まで引き下げ、さらに来年の成長率をわずか0.5%とした。
冬の間に一部の国ではさらに経済が落ち込むことを見込んで、OECDはユーロ圏19カ国の今年の成長率を1.25%、来年の成長率を0.3%と予測した。
OECDは住宅の暖房や発電、工場の稼働に必要な天然ガスの供給量をロシアが減らしたことで、ヨーロッパでエネルギー不足が生じるという見通しに言及している。
また、不足が現実になれば、世界的に燃料価格が上昇し、企業は活動を制限せざるを得なくなり、ヨーロッパの多くの国で来年は景気後退が起こるとしている。
中国の今年の成長率は3.2%に下落する見込みで、パンデミックが始まった2020年を除けば、これは1970年代以降でもっとも低い数字である。
OECDの予測では、中国の来年の成長率はやや上昇して4.7%である。
各国の中央銀行が利下げを続行し、世界経済が減速することで、G20諸国では、来年にはインフレ率は低下すると予想される。
消費者物価指数はG20諸国では今年の8.2%増から2023年には6.6%増に緩和される見通しだが、それでも各中銀が目標とする2%を上回る。
「経済を取り巻くこれらの困難な状況は、大胆かつ適切に策定され、十分に調整された政策を必要とするでしょう」とコーマン事務総長は指摘した。
OECDは物価上昇や中銀による利上げ、代替エネルギー源模索の結果として起きる気候変動対策から影響をもっとも大きく被る人々への短期的支援とともに、食糧供給を強化するための国際協調を呼びかけている。
●米、ウクライナに660億円の追加支援…「露軍による残虐行為の調査支援」 9/27
米政府は26日、ロシアが侵略を続けるウクライナの治安当局の能力向上のため、4億5750万ドル(約660億円)の追加支援を行うと発表した。昨年12月以降、治安当局への支援は総額6億4500万ドルとなった。
支援は、ウクライナの警察や国境警備隊など法執行機関の活動に使われる。ブリンケン米国務長官は26日の声明で、「露軍による残虐行為の調査などを行うウクライナへの支援につながる」と述べた。
●ロシア国内反発 なぜプーチン大統領は 部分的動員を決断したのか 9/27
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から7か月。ウクライナ軍が反転攻勢を強める一方で、プーチン大統領は予備役を対象とした部分的な動員令に署名しました。これにロシア各地では抗議 デモが起きています。
9月22日放送のBS日テレ「深層NEWS」では、笹川平和財団上席研究員 小原凡司さん、筑波大学教授 東野篤子さんをゲストに、当初慎重と見られていた予備役の動員をプーチン大統領はなぜ決断したのか、軍事侵攻の今後にどういった影響を与えるのかを議論しました。
右松健太キャスター「ロシア国内では部分的な動員令に対し、抗議デモ が起きています。軍事侵攻開始以降、国内世論を抑え込んできたプーチン政権ですが、対する市民の受け止めをどうみていますか?」
小原凡司氏「これまで(ロシア市民)は、自国の安全には関係ない、他国の自分たちから遠いところで行われていて、しかも勝っていると信じて、あるいは信じさせられていたわけです」「そうすると、市民というのは無関心を装えるわけですが、それが実は負け始めてるんじゃないか、そして動員というところまで来れば、今度は自分たちに直接関わってくるということが急に起きたわけですから、その衝撃と反発は大きいのだと思います」
右松キャスター「反発の大きな要因は予備役の部分的動員が示された点ですが、同時にロシアの劣勢が市民にも示された形になったのでしょうか?」
東野篤子さん(筑波大学教授)「そうですね、ここまでやらなければいけない以上、何かが起きているというふうに感じとったロシア市民は少なくないと思います」「軍事侵攻の初めから一定程度、戦争に反対する市民もいましたが、開始後、ものすごく弾圧を受け、反戦の意思を示したくても隠していた人が多いですが、それでも今回、デモが起きたということは、やはり非常に強い意志を持った反戦活動が展開されていると見た方がいいと思います」
右松キャスター「プーチン大統領の演説のポイントをこちらにまとめました」「全体を通じてプーチン大統領が、軍事侵攻始まって7か 月が経つのを前に、このような中身の演説を行ったことをどう見ていますか?」
小原氏「ロシアは2000年に発表した軍事ドクトリンで既に『エスカレーション抑止』という考え方を示しています。通常兵力でNATO(北大西洋条約機構)に 対して圧倒的劣勢に立っているロシアは、NATOを抑止するためには通常兵力では駄目だと。だから核を使ってより大きく段階を上げるんだ、というのをロシアが示すことによってNATOに手を出させないという考え方です」「これを改めてウクライナで、もう一度示さなければいけないほど、ロシアは今劣勢に立たされている可能性が高いと思います」「しかも、『エスカレーション抑止』の考え方は自国の安全が脅かされれば、相手は核を使用しなくても自分は核を使うということなのですが、それもこの2番目の『ロシアへの編入』ということにも掛かってくると思います」「ここで住民投票を行って、いくら国際社会が反対しようがロシアはロシアで勝手に編入したと言いますから、今度は『自国領に対する攻撃だ』ということになり、『核兵器を使用するぞ』ということが現実味を帯びるということになる」「ですから、そのような脅迫の中身に現実味を帯びさせるためにもこの住民投票を行うということです」「ただ『自国領に対する攻撃』ということになると、これは「戦争」ということになるので、今までのように「特別軍事作戦」と言えなくなるという、これも諸刃の剣だと思います」
東野氏「そもそもの大きな動きとして、このような演説をこのタイミングで行ったということは、やはり9月7日以降の東部に対するウクライナ軍のその反転攻勢が、2週間に及んで続いているということ。やはりこれは相当の危機感を持ったんだろうと思います」「戦況で押し込まれて いるからこういった措置を次々に出さざるを得なくなってきていると思います」
郡司恭子アナウンサー「部分的な動員令について、プーチン大統領の演説の内容がこちらです」「軍隊経験のある予備役が対象で、約30万人が招集されるとみられています。また、ロシアが動員令を出すのは第二次世界大戦以来だということです」「動員令を出したタイミングをどう見ていますか?」
小原氏「ロシア軍が劣勢に立たされている。このままだと軍事的にも今まで押さえている地域を奪還されかねない。東部2州を失ってしまえばプーチン大統領は負けを認めざるを得なくなります。負けは認めない。そのためにはさらに動員し、兵力を増強して、今までロシアが抑えたところは取らせないということにするのだと思います」
右松キャスター「予備役の動員は第二次世界大戦以来だと。ウクライナ軍事侵攻が始まって約7か月 間の情勢においての演説をどのように位置付けますか?」
東野氏「このヒントは、プーチン大統領の演説の前半部分にあったんだろうと思います」「長々と、『これはウクライナとロシアの戦いではなくて、ウクライナを完全にアメリカやヨーロッパが操っている』と。『ウクライナが和平に動こうとすることがなかったわけではないけれども、それは西側諸国が邪魔して和平させなかった』と。(この内容は)嘘八百なんですけどそういうこと言っています」「結論として、これは『ロシア対ウクライナ』の戦いではなく、ウクライナのバックにはNATOがいるのだから、段階を上げなければならない、という区切りとしてNATOに対してロシアがよりよく対処するためのものだとロジックを切り替えたんだと思います」
右松キャスター「これまでは『ロシア対ウクライナ』という構図だったものが、ロシア側は、『ロシア対NATO』あるいは『ロシア対アメリカ』という位置づけに変えていきたい?」
東野氏「元々そのようには言っていました。ただ、あくまでもこれは『特別軍事作戦』で小規模の限定的なものとしてできるはずだったのに、NATOや米欧諸国の役割が自分たちの思っていた以上に深刻だということです」「なので、今までも言ってはいましたがその要素や、その割合が上がってきたというように、徐々にロジックを変えてきてると思います」
右松キャスター「ロシア軍の総兵力は職業軍人、契約軍人、徴兵者あわせて90万人とされています。正規軍の投入を避けて、予備役の動員を判断した軍の考えは?」
小原氏「この正規軍にどのぐらい動かせる余裕があるのかというのは、わからないというのが正直なところです」「これだけ広い領土ですからそれぞれの地域に展開している部隊はそれぞれ任務を負っているので、そこから離せない部隊もあると思います」「また今回、ウクライナに投入した部隊の多くはロシア東部から持ってきているということを考えると、西部の部隊を使いたくないのではないかという心理もうかがえます」
右松キャスター「正規軍の精鋭部隊はまだ触りたくないと」
小原氏「正規軍を投入したくないという理由は、『これは戦争ではない』という主張していることにも関わっているかもしれませんし、その他にも軍内部との関係もあるかもしれません。そこのところは明確ではありません」
右松キャスター「予備役の30万人はどのような基準で選ばれると見ていますか?」
東野氏「ここが明らかではないので、この自分も当てはまるんじゃないかと今、多くの人に疑心暗鬼になっていると思います」「『私は従軍経験がないです』と言える人は、もしかしたら関係ないと思っているかもしれないですが、この従軍経験が実は非常に柔らかく解釈される可能性がある。例えば、少しでも訓練を受けたことがある人であれば従軍経験があるとみなされる。ロシアの国内でも情報が入り乱れていて非常に混乱しているわけです」「だからこそ、自分も関係あるかもしれないと思う人でお金のある人は国外に逃亡するなど、選ばれ方がまだわからないことがさらなるパニックを引き起こしてると思います」
右松キャスター「今月に入って、ウクライナ軍はハルキウ州の一部を電撃的に奪還するなど反転攻勢を強めています。ウクライナの東部・南部も今後ウクライナ軍ペースで進むと見ていますか?」
東野氏「東部と南部は分けるべきだと思います」「今のロシア軍の動きは、アメリカやイギリスなどの衛星情報からも見て取れますが、どうやらそこまでロシア側は反転攻勢の準備ができていないようだと。東部に関してはどんどん押し込んでいるけれども、南部ヘルソンに関してはやはりまだ激戦地だということです。一部ではウクライナ軍の劣勢も伝えられている。南部に関してはやはり進度は非常に遅いですし、これから苦戦する可能性もあると思います」
右松キャスター「激戦地に今回の予備役を投入するのか否か。どのように見ていますか?」
小原氏「通常であれば、予備役を最前線に送るってことはあまり考えられないですよね。よほど追い込まれている状況でない限りそういうことはしない。普通は後方の補強基地の警備などの任務に当たらせて、そこに付いていった熟練兵を前に出すというのが普通の考え方だと思います」「ただ、ロシアの場合はどこまで追い込まれているかによって、こういう人たちを最前線に送り込む可能性はあると思います」「元々、ウクライナに侵攻した時、新しい兵が多かったと聞いていますから、ロシアはそういう部隊の使い方をするんだということです。例えば消耗戦の時に『消耗していい人たち』を先に出して消耗させるといったこともやるのかもしれません」
飯塚恵子 読売新聞編集委員「玉石混交かもしれませんが兵力増強ですよね。これによって長期化は避けられず、停戦する気がないということがはっきりしたと思います」「なぜ予備役の部分的動員をと考えると、単に反転攻勢のためというだけではなく、おそらく、プーチン氏の周辺に強硬派の人たちがいるんだと思います」「この人たちが『なんでこんなに負けているんだ』とプーチン氏を突き上げている動きもあるのではないか。今まではプーチン氏も動員は慎重だったわけですが、もう少し強硬に出ざるを得ない背景に、後ろから押している人がいるのではと。国内の権力闘争や圧力も感じます」
●プーチンからの最後通牒か。ロシア軍が謎の撤退を決定した本当の意味 9/27
ついに開戦から8カ月目に突入してしまったウクライナ紛争。領土回復に向けたウクライナ軍の猛烈な反転攻勢の前に撤退を余儀なくされたと伝えられるロシアですが、この動きについては「深読み」が必要なようです。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、露軍の撤退と占領地域での住民投票実施が何を意味するかを考察。さらにプーチン大統領に核兵器を使用させないためNATOサイドが徹底すべきことを提示しています。
鮮明になった世界の分断‐再び協調の時代はくるのか?
「ロシアのウクライナ侵攻を非難しているのは、世界人口のわずか36%」
Economist Intelligence Unit (EIU)が発表した結果は、世界の分断を表現していました。
ここで36%の非難を“わずか”とするのか“36%も”と見るのかは、私たちがどの視点に立って分析するのかによりますが、日々、ロシアによる蛮行のイメージが強調される情報に晒されている私たちにとっては、意図的か否かは別として、確実に「たった36%しかロシアによる侵攻を非難しないのか」とショックに感じるかもしれません。
自分たちが正しいと信じていることは、世界の過半数の支持も得られていないのかと。
以前、このコーナーでも描いた世界は、すでに3極化していると申し上げましたが、今回触れた「ロシアによるウクライナ侵攻を非難する36%」は主に欧米諸国と仲間たちです。
第2極はロシアに同調するグループで、EIUによると世界人口の32%に当たります。主にロシア、中国、イラン、北朝鮮、そしてスタン系の国々といったところでしょうか。
そして中立もしくはケースバイケースで支持するサイドを選ぶ第3極は、世界人口の32%にあたるという分析でした。トルコ、インド、中東アラブ諸国、ブラジル、南アフリカなどがこの極に含まれるとされます。
実際には、侵攻を非難する人口割合はもっと高いと思われますが、対ロ制裁を課している国々の割合を人口割合で見れば、今回、最初に挙げた36%になるのだと思われます。
EIUは「分断は予想以上に進んでいる。どうしてこうなったのだろうか?」と問いかけています。
「どうしてこうなったのか?」については分析をしておく必要があると思いますが、今回の数値をもとに結論を急ぐのは拙速な気がするだけでなく、若干の情報操作のにおいがしてなりません。
そして「では、分断の時代に何をすべきなのか?」についても議論されなくてはならないでしょう。
多くの報道で「ウクライナ側の反転攻勢がこのところうまく行っていて、それに焦りを覚えたロシアサイドが停戦協議の準備があると伝えてきた」という情報が伝えられ、「ウクライナ側は拒否した」とありますが、実際のところはどうでしょうか?
いろいろと入ってきている情報を見たうえで判断すると、嘘ではないにせよ、伝える側の意図を感じる内容であると考えます。
まず、ウクライナ側が拒絶したという点については、ここ10日間ほどの反転攻勢とロシアに侵略された東部・南部の集落の奪還が進む状況下では、ウクライナサイドは勢いに乗っていますので、現時点でロシアと公式な話し合いのテーブルにつくための心理的なベースが存在しません。
ゼレンスキー大統領が鼓舞するように「ロシアに奪われたすべての領土を取り戻すまで戦いを止めない」わけですから、ある例外的な状況を除けば、ウクライナ側に利はありません。
ではその“例外的な状況”とはどのような状況でしょうか。
それはウクライナ側が交渉ポジションとして当初から掲げる「ロシア側がクリミア半島を含め、ドンバス地方もウクライナ側に返還する」という状況ですが、これをロシア側が提案することはまずありえません。
特にクリミア半島については、プーチン大統領とその側近たちが権力の座についている限りはありません。
以前にも触れたとおり、2014年のクリミア半島併合(一方的な)は、一応「虐げられているロシア人の同胞を救う」という大義名分が立てられ、情報操作を含むありとあらゆる手を駆使し、ついには迅速に住民投票まで行って一方的にロシアに編入したという経緯があり、これは今でもロシア国民にとっては、ロシア人とロシアを守るためにプーチン大統領が発揮したリーダーシップの典型例だと信じられており、プーチン大統領の支持基盤となっています。ゆえに、クリミア半島の返還は、ロシアの中では選択肢にも入っていません。
今回、真偽は分かりませんが、仮にロシアが協議を持ち掛けたとしても、クリミア半島はもちろん、ドンバス地方も含め、ウクライナへの返還が選択肢として挙げられていないようです。
その代わりに、これも真偽が明らかではないですが、協議の内容としてテーブルに乗せられたのは、あくまでも「現状を維持した形での停戦と状況の固定化」であり、撤退・退却・返還という内容は含まれていないと思われます。
考えうるトーン的には「現状を受け入れ、かつドンバス地方で住民投票を行った結果、仮にロシアへの編入が選択された場合、ウクライナ側はそれを尊重して受け入れることを条件として停戦協議に合意する」といった感じであったようです。
ちなみにロシアサイドには、今のウクライナ“での”戦争を止めるつもりはなく、あくまでもやりきるというのが路線のようで、その証拠に、今回の戦争を“終焉させる”ために予備役を30万人単位で招集し、戦線に投入するという発表に至っているようです。
予備役の部分招集に踏み切った際には「ああ、ロシアもついに一線を越えたな。かなり困っているに違いない」と感じたのですが、各国メディアにインタビューされていた市民の声の大多数は「政府がそれを必要と考えているのであれば、仕方がないだろう」というトーンだったことには驚きましたが、同時に腑に落ちた部分もありました。
先週号でも触れたのですが、現時点まで、侵略(注:特別軍事作戦の開始)から7か月が経とうとしている今でも、多くのロシア国民にとっては、これは自らが危機にさらされるロシア人の生存のための戦いではなく、あくまでも国・政府が必要性に駆られて“よその国”で実行している戦争に“すぎない”という認識に、まだ留まっていることが理解出来た気がします。
ではいかにして“その認識”を変えるか?
その答えは、実は“プーチン大統領”絡みではありません。プーチン大統領の体制が継続するか否かに関わらず、この戦争がロシア国外で行われている限りは、大多数のロシア国民にとっては、これは“政府がどこかよその国で行っている戦争であり、私たちに直接的な害はない”という認識が変わるきっかけにはなりません。
認識を変えるには、これは起こりうる結果が恐ろしいのですが、この戦いがロシア国民にとっての“生存のための戦争”にならなくてはなりません。
言い換えれば、現在行われているウクライナによる反転攻勢が、“ロシア”の領土や人々に被害を与えるものに変わった瞬間から、認識の大きな転換が行われます。
それがウクライナ軍によって行われる反転攻勢中に発射された偶発的なミサイルのロシア領内への着弾なのか、考えづらいシナリオですがNATOによるロシア攻撃なのかは分かりませんが、【ロシアへの攻撃】は大きな認識の転換をもたらし、場合によってはロシアによる総攻撃を招くこともありえます。
ところで“ロシア領内”といった場合、現在、行われている内容を見てみたら、ちょっと背筋が寒くならないでしょうか?
ロシア政府は、2014年にクリミア半島併合を一方的に併合しましたが、その際、住民投票を強行して正当化しました。今、ウクライナ軍による反転攻勢でドンバス地方の集落の奪還が報じられていますが、ここで住民投票が行われ(ロシア側による工作によって)、ロシアへの編入が“住民の意志”として示された場合、現在、ウクライナ軍による反転攻勢は、“ロシア領”への攻撃というこじつけが可能になり、おまけにNATOとくにアメリカによって提供されているハイマースなどの武器による攻撃だと認識されたら、究極的にはプーチン大統領、ショイグ国防相、そして統合参謀本部議長が持つ“核使用の権限”に国民的なサポートが示される可能性が現実化してくるかもしれません。
住民投票を急ぐ動きがルガンスク州、ドネツク州のドンバス地方に加え、ザポロジエ州、そしてヘルソン州でも進んでいることは、同様の懸念と思惑を感じさせます。
今回の「ウクライナ軍による反転攻勢」が進む直前に、シベリア(東宝経済フォーラム時)でプーチン大統領、ショイグ国防相、そして統合参謀本部議長が会合を開いており、その後、ロシア軍が謎の撤退を行い、表向きは“再配備”と主張していますが、その“決定”がもつ本当の意味を考えたことはあるでしょうか?
この戦いを別次元に持って行き、一気に決着をつけるための前置きでしょうか?それとも、ロシアの弱体化を決定づける出来事として捉えられるべきでしょうか?または、ウクライナと、その背後にいる米国などへの“旧ソ連に手を出すな”という最後通牒的な意味合いを持つのでしょうか?
いろいろなことが考えられますが、そもそもどうしてこのタイミングで一見軍事的に“不利”にも思えるような大規模な撤退に踏み切ったのか?
そして、それに合わせて、ザポリージャ原発のみならず、南部の原発にミサイル攻撃を行うのは、どのような意図が込められているのか。
それもウクライナと欧米諸国への威嚇と最後通牒なのでしょうか?
もし威嚇ならどのような内容でしょうか?それは戦略核兵器の使用を暗示しているのでしょうか。またはエネルギーインフラの支配を通じて、ウクライナ経済と欧州経済を締め上げるという脅しなのか。
その真の意図はまた後日、明かされるとして、私自身も含め、再三語られる【ロシアによる核兵器の使用】はどれほど“現実的”なのでしょうか?
ロシア政府内はもちろん、欧米諸国の政府・軍関係者などと意見交換をしてみると、【ロシア政府が世界に示す核兵器使用の脅威は深刻に捉えられないといけないと考えますが、パニックに陥る必要はない】と言えます。
その理由として、実際にワシントンDCでも懸念されだした【プーチン大統領などを追い詰めすぎると核兵器使用に踏み切るのではないか】という内容は、NATOが直接的に対ロ戦争に参戦し、かつロシア本土に攻撃を加えるという一線を越える行動に発展しない限り、起こりづらいシナリオだと考えるからです。
ただウクライナ軍による反転攻勢にドンバス地方などのロシア系住民への蛮行が含まれることが明らかになった場合、ロシア軍による軍事行動のレベルを上げるべきだとのpublic pressureが高まり、それが核使用をプーチン大統領に求めるという図式につながる可能性は否定できません。
ロシアおよびプーチン大統領に核を使わせないようにするためには、NATOサイドは「ロシアに攻めこむ意図はない」ことを明確にクレムリン(プーチン大統領)とNATO加盟各国の国民に伝える必要があります。
現時点では、アメリカが供与するハイマースなどの高度な武器を使用する条件として「ロシア領内に越境する使用は許さない」という内容が加えられていますが、それをウクライナに守らせることと、NATOはロシアを攻撃する意図はないことを示すことを徹底することが大事です。
欧州各国は、可能性は低いとしつつも、常にプーチン大統領による核兵器使用を危惧し、かつそれによって欧州にもたらされる放射能被害への恐れが常に頭にあるようです。ただその危険性を低減させるカギを、自らの側も握っているということを国民に伝えておくことで、ウクライナでの戦争が長引いたとしても、それが自国に被害が広がってくることを食い止めるために支援の継続が必要であることを伝えることもできるようになります。
現時点では、私見ではありますが、その対クレムリンと対自国民のコミュニケーションは決してうまく行っているとは言えないと考えます。また、今でも「この戦争は政府がよそで行っている戦争」という意識から“自分事”化できていないロシア国民にメッセージを届け、コミュニケーションを図ることもできていません。
欧米諸国とその仲間たちは、非常に厳しい経済制裁をロシアに課すことで、ロシア国民にもメッセージが伝わると考えたようですが、実際には「どうせ非ロシア人にはロシアの考え方は分からない。欧米諸国はただ私たちをいじめたいだけなのだ」と考える習性があるとされるロシアの国民性ですから、意図していることは伝わってはいないと思われます。
今週はNYで国連の年次総会が開催されており、各国首脳が集って様々なアジェンダについて意見を交換していますが、ロシアに対する批判だけに終始せず、自らがどのような意図を持ち、行動するのかという方向性も明らかにし、国際社会に対して明確なメッセージを出す必要があります。
G20プロセスや国連プロセスにおけるロシアはずしや批判は、恐らくそのような重要なコミュニケーションを直接ロシアと持つための機会を逸していると感じます。
ロシア、そしてプーチン大統領が行った一方的なウクライナへの軍事侵攻は決して看過できるものではないのですが、ロシアの蛮行・愚行を止めるためには、やはり話し合いのテーブルに、equal standingで座り、意見をぶつけ合う必要があると考えます。
現時点では、欧米諸国とその仲間たちはウクライナに対する軍事支援をチャンネルとしてロシアと対立していますが、協議や和平に向けた話し合いの重要性を口にしているにもかかわらず、その機会を自ら拒否しているように見えます。
意見が平行線をたどって、合意の糸口が見えなかったとしても、「一応、ロシアの考えは聞いた。こちらの考えも面と向かって伝える」という姿勢を打ち出すことが非常に重要だと考えます。
しかしできないのだとしたら…一体、皆、どのような意図を隠し持っているのか、とても勘繰ってみたくなります。
国連の役割自身は、今回の紛争解決にはさほど期待できないと思いますが(そして個人的には悲しんでいますが)、話し合いの場を提供すること、そして振り上げてしまった拳を下すためのきっかけを作ることはまだまだできるでしょうし、それは国連に向いている方策だと考えます。
それが国連にできるのであれば、今年の総会は思いのほか、“いい仕事”をすることができるかもしれません。
もう後戻りできないとさえ感じる世界の分断を、国連総会に皆が集うこの機会に、再度、協調の機運を高める機会に変えることが出来るか。
個人的にはまだ期待を寄せたいと思います。以上、国際情勢の裏側でした。
●国外へ脱出の動きやまず “盟友”のゲキにプーチン氏は 9/27
あたりが暗い中、現れた車。中から出てきた男は、何かを手に取って建物に近づいた。
そして、あたりに真っ赤な光が。男が投げたのは火炎瓶。その後、何度も建物に投げ入れた。場所は、ロシア南部の部分的動員令で招集された人たちが集められる事務所。こうした施設への放火は、動員令の発令から5日間で17件にのぼっている。
一方、別の施設では、招集された男性を涙ながらに見送る家族たち。中には招集直前に結婚した男女もいるが、表情は暗いまま。
現地の報道では、ロシア政府は予備役対象の男性を28日にも出国禁止にする方針。
そんな中、撮影された衛星写真。道路にずらりと延びているのは車の行列。場所はジョージアとの国境付近。ロシアから脱出しようとしている人たちであふれかえり、出国まで48時間待ちの事態になっている。
そうしたタイミングで、プーチン大統領のもとを、盟友のベラルーシのルカシェンコ大統領が訪問した。今のプーチン氏にとって、国際社会での数少ない味方だが、会談ではこんな言葉を...。ベラルーシ ルカシェンコ大統領「ロシアには2500万人の予備役がいる。3万人だろうが5万人だろうが、逃げるなら逃げてしまえ」この言葉に、プーチン大統領は、黙ってうなずくだけだった。
●「必要あれば核兵器を使う権利ある」ロシアのメドベージェフ前大統領 9/27
ロシアのメドベージェフ前大統領は27日、「ロシアは、必要があれば核兵器を使う権利がある。これは決して脅しではない」とSNSに投稿した。ロイター通信などが報じた。
メドベージェフ氏は、国の存続が脅かされれば「ロシアが核兵器を使うことは大統領が最近、明らかにした通りだ」と言及。また、ロシアがウクライナを核攻撃したとしても、「北大西洋条約機構(NATO)はこの紛争に直接介入してこないだろう。NATOにとっては誰にも用のない死に行くウクライナより、自分たちの安全の方がずっと重要なのだから」と記した。
ロシアのプーチン大統領は21日の国民向けのビデオ演説で、ロシアが「(欧米から)核の脅威にさらされている」として、核兵器の使用も辞さない考えを改めて示していた。一方、米国のサリバン大統領補佐官が25日、ロシアが核兵器の使用に踏み切った場合、「ロシアにとって破滅的な結果になる」と警告した。

 

●プーチンの核威嚇にたじろぐバイデン政権、「軟弱」対応に米国内で批判 9/28
ロシアのプーチン大統領がウクライナでの戦闘で核兵器を使うかもしれないと示唆したことが、米国で激しい反発を呼んだ。だが米国のバイデン政権は、ロシアが小型戦術核を使用する可能性に対して、ただ「止めろ」という声を上げるだけで、実際にどのような報復や抑止の手段をとるかについては言及しないままである。
バイデン政権の具体策に触れない態度が、プーチン大統領の核の脅しの効果をさらに高めるのではないかという懸念も、米国では広がりつつある。
「はったりではない」と脅すプーチン大統領
プーチン大統領は9月21日のロシア国内での全国向け演説で、ウクライナでの戦闘への「部分的な動員令」を宣言するとともに、「ロシア領土の保全への脅威に対しては、あらゆる武器を使ってでも防衛する。これは、はったりではない」と語った。
この「あらゆる武器」は核兵器をも含むという示唆だとの受け止め方が一般的だった。米国でも「プーチン大統領の新たな核兵器行使の威嚇」として大きなニュースとなった。
とくにプーチン大統領はこの演説で、「北大西洋条約機構(NATO)の首脳たちはロシアに対して最悪の場合、核兵器を使用してもよいと考えているようだが」とも述べた。この発言が事実に立脚していないとしても、核兵器という言葉をはっきりと口にしたことは、演説の迫力を増す結果となった。その後に出てきた「あらゆる武器を使ってでも」という言葉に、当然、核兵器が含まれるのだという見方を強くしたわけである。
プーチン大統領はウクライナ侵攻開始直後の2月24日にも核兵器使用を示唆している。この際は、米側の介入を防ぐための威嚇と解釈されたが、それから7カ月近く経った今、ウクライナでの戦況がロシアに不利となった段階での核使用示唆は、より現実的な言明として受け止められた。つまりロシアは、ウクライナでの戦況を有利にして、ロシア領だと宣言した南部各州を確保するために、戦術核兵器の使用も辞さないと威迫している、というわけだ。
プーチン大統領は今回の言明で「はったり(英語では“bluff”)ではない」と強調した。“bluff”とは、実際にはその意図がなくても、危険な行動をとるぞと言って脅かすことを意味するが、今回は、ウクライナでの戦闘でロシア軍が守勢に立った状況などから戦術核兵器使用の可能性は前回よりずっと高いとみられる。
「軟弱すぎる」バイデン政権の対応
米国ではバイデン政権のジョン・カービー報道官が「プーチン大統領がウクライナで敗北しつつある際にこんな言辞を述べるのは危険な前例になる」と批判した。同報道官は「プーチン大統領の言明は無責任であり、誰も得をしない」とも述べ、ロシア側の戦略核兵器態勢に今のところ変化はないことも明らかにした。だが米国側がどう対応するかについては、具体的な言及はなにもなかった。
公の場でのバイデン大統領自身の対応は、プーチン大統領の核兵器使用の可能性に対して「止めろ、止めろ、止めろ。そんなことをすれば第2次世界大戦以来の戦争の様相を変えてしまう」と発言するだけだった。
米国ではバイデン政権のこうした反応について多方面からの批判が噴出した。
外交関係評議会の上級研究員で著名な戦略問題専門家のマックス・ブート氏は、9月21日付のワシントン・ポストに「プーチンにはったりをかけさせるな」という見出しの寄稿でバイデン政権の対応を軟弱すぎると批判した。
ブート氏は、「ロシアの核の脅しに米国が抑止効果を有する反応を示さなければ、プーチンはウクライナ国内で戦術核の行使をするかもしれないという、さらなる威嚇でウクライナ戦で優位に立つだろう」と述べた。その上で具体的な対応戦略として、「もしロシアが戦術核兵器を使用したら、米国は少なくともNATO諸国の軍隊を動員してウクライナ領内のロシア軍に通常兵器により総攻撃をかけることを宣言すべきだ」と提案した。「核には核」の対応でなくても抑止効果のある反撃宣言はできるという考え方である。
戦略問題の権威とされる評論家デービッド・イグネーシアス氏も、ワシントン・ポスト(9月23日付)への寄稿論文で、バイデン大統領が繰り返した「止めろ」という表現はプーチン大統領に対する警告でなくて、懇願だと厳しく批判した。相手に特定の行動をとらないよう頼むという態度は、プーチン大統領を増長させ、その種の脅しがさらに効果をあげるのだ、とも同論文は説いていた。そのうえでイグネーシアス氏は「1962年のキューバ・ミサイル危機で当時のケネディ大統領がソ連に対してとった強固な態度から、バイデン氏も学ぶべきだ」と訴えていた。
保守系の有名な政治評論家のペギー・ヌーナン氏はウォール・ストリート・ジャーナル(9月24日付)への寄稿論文で、「プーチンの脅しを軽視するのは間違いだ」と題して、やはりバイデン政権への批判を表明した。同論文は、プーチン大統領がウクライナ国内の戦闘での小型の戦術核兵器の使用を、米側の推測よりもっと現実的な手段として考えているとみて、バイデン政権がプーチン言明を「はったりとみるのは間違いだ」と警告していた。
米国内部でのこうした批判は、バイデン政権が「ロシアの戦術核兵器使用は米国とロシアとの戦略核兵器での対決へとエスカレートし得る」とみて慎重な姿勢をとっているのに対して、ロシア側は「地域限定の小型核兵器の使用は米国との全面衝突を意味しない」という認識を保っているというギャップに焦点を合わせた論調が多いようである。いずれにしてもウクライナでの核問題はなお重大な危険を秘めたままと言えよう。
●核恫喝も見透かされ、終わりが近づいたプーチンの政治生命 9/28
9月6日に開始されたウクライナ軍の反転攻勢により、ウクライナ軍は、5日間でハルキウ州のほぼすべてを奪還した。
ロシア軍は、戦車や装甲車、武器、弾薬を捨てて遁走した。
依然として部隊の連携に欠陥があり、大義のない戦いに無理やり駆り出された士気の低いロシア軍が、この戦局を逆転することは極めて困難であると筆者はみている。
さて、今回のウクライナの軍事的大勝利はウラジーミル・プーチン大統領を窮地に追い込んだ。
残虐行為で知られる「カディロフ部隊」をウクライナに派遣しているチェチェン共和国のカディロフ首長は9月11日、作戦に「間違いがあった」とロシア軍を批判した。
また、ロシア国内でもプーチン大統領を批判する声が上がり始めている。
モスクワの区議グループは9月9日、ウクライナ侵攻の責任を問いプーチン大統領の辞任を求める要望書を公表した。
サンクトペテルブルクでも議員グループが9月7日、「プーチン氏の行動は、ロシアの安全保障を脅かしている」として辞任を求める要望書を公表した。
また、9月16日に開催された印ロおよび中ロ首脳会議では、インドと中国がウクライナ戦争に関する懸念を表明した。
「非西側諸国間の結束」を目指しているプーチン氏にとって大きな打撃となった。
また、思いもよらぬロシア軍の敗北に狼狽したプーチン氏は、9月21日、30万とも言われる予備役の部分的動員令を発令した。
これに対して、抗議デモがロシア全土に広がった。
さらに、占領された領土の奪還を目指して攻勢を続けるウクライナ軍の機先を制するために、プーチン氏は、ウクライナ東・南部4州でロシアへの編入に向けた「住民投票」を従来予定の11月から前倒しで9月23日から実施した。
これに対して、G7首脳は、住民投票は、ウクライナが主権を有する領土の地位を変更するための偽りの口実を作るためのものであり、また、これらの行為は国連憲章および国際法に明確に違反し、国家間の法の支配に正面から反するものであると厳しく非難した。
このように、ロシアの国際社会からの孤立化がさらに進んだ。
ところで、内憂外患を抱え、正念場にあったプーチン氏は、大きなミスを犯したと筆者はみている。
それは、極東ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムでの演説(9月7日)である。
同演説で、プーチン氏は、「ロシアはウクライナでの特別軍事作戦で何も失っていない」と述べた。
ロシア軍の戦死者は、ロシア当局が戦死者数を発表していないので詳細は分からないが1万〜5万人と言われている。少なくても1万人のロシア国民が戦死しているのに「何も失っていない」とは、兵士の命を軽視しているとしか思えない。
この演説でプーチン氏が国民の信頼を失ったことは紛れもない。
ロシア国民がプーチン氏のために死にたくないと思うのは当然であり、今後、ロシア軍の士気は決して高揚することはないであろうと筆者はみている。
ところで、ロシアをあまり追い詰めると、核兵器を使用するのではないかという懸念が生じる。
筆者は米国をはじめとするNATO(北大西洋条約機構)30カ国の通常兵器と核兵器は、ロシアの核使用を思いとどまらせているとみている。その理由などは後述する。
以下、初めにウクライナ軍の反転攻勢成功の要因について述べ、次にプーチン大統領に対する国内の反発について述べ、次にロシアの国際社会からの孤立について述べ、最後に米・NATO加盟国が、ロシアの核使用を抑止している理由について述べる。
1.ウクライナ軍の反転攻勢成功の要因
ウクライナ軍は8月下旬、南部へルソンへの大規模反撃作戦があるように見せかけ、東部のロシア軍の南部への移動を誘い、手薄となった東部に奇襲をかけ、一気に東部を制圧した。
いわゆる陽動作戦の成功である。
ロシア軍が人員や物資を戦線に送る拠点として利用していた東部の交通の要衝イジュームの奪還は、今後の軍事作戦の成否に大きな影響を及ぼすだけでなく、プーチン政権にも大きな打撃となった。
ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の解放というロシアの特別軍事作戦の目的の達成の見込みが立たなくなったからである。
筆者は、今回のウクライナの反転攻勢は、プーチン氏のモスクワ不在の時を狙うなど用意周到に準備されていたとみている。
プーチン氏は、9月1日の最西端の飛び地カリーニングラード訪問に続き、5日は極東カムチャツカ半島に滞在し、6日にはウラジオストクで、中印も参加した大規模軍事演習「ボストーク(東方)2022」を視察した。
7日には極東のウラジオストクで、国際経済会議「東方経済フォーラム」の全体会合に出席・演説し、9月16日にはウズベキスタンのサマルカンドで印ロおよび中ロ首脳会議に参加した。
ウクライナ軍は9月6日に反転攻勢に出た。まさに絶妙なタイミングであり、プーチン氏は虚を突かれたのである。
次にウクライナ軍の反転攻勢を成功に導いた諜報機関による偽情報作戦について述べる。
偽情報(Disinformation)とは、意図的に作成・拡散された虚偽もしくは不正確な情報をいう。
偽情報作戦とは、敵を間違った方向に誘導するために意図的に偽情報を拡散させることをいう。
   偽情報作戦その1
「8月29日、ウクライナ南部軍司令部のナタリア・フメニウク報道官は、ロシア軍に対する反撃をヘルソン地域を含む同国南部で開始したと発表した。ブリーフィングで、最近のロシア南部の物流ルートへの攻撃により、『敵国は紛れもなく弱体化した』と指摘。ただ、新たな攻撃に関する詳細については言及を避けた」(出典:ロイター8月29日)
   偽情報作戦その2
「ウクライナはロシア軍が占領する南部の要衝ヘルソン市奪還に向け同市の周辺で反攻を開始、激しい戦闘を繰り広げている。ウクライナ大統領府が明らかにした。ウクライナ南部軍司令部によると、ウクライナ軍は前線の複数の地点で29日に反攻を開始、ヘルソン地域周辺のロシア軍拠点を砲撃した。ロシア国防相は声明で、ウクライナ軍の攻撃を認めた上で、作戦は『悲惨な失敗』に終わったとした」(出典Bloomberg News8月31日)
ロシア軍は、この(偽)情報に対処するため、東部戦線の兵力を南部に移動させ北東部の要衝ハルキウなどの防衛が手薄にならざるを得なかった。
また、ウクライナ軍のハルキウ付近の部隊が大規模な作戦を準備しているという情報がロシア側に漏れないように徹底的に情報統制した。
それとともに、地元民を装っているロシアのスパイに「ウクライナ軍は攻撃の準備ができていない」という偽情報をつかませてロシア側に伝えさせていたという。
こうして9月6日ウクライナ軍が不意急襲的に東部戦線に攻勢を開始すると、不意をつかれたロシア軍はほとんど抵抗しないまま逃走したのである。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は8日夜のビデオ演説で、この1週間で同国南部と東部の1000平方キロメートル以上の領土をロシア軍から奪還したと発表した。
2.プーチンに対する国内の反発
   (1)国家主義思想家の娘に対するテロ
ロシアのプーチン大統領の世界観に大きく影響したとされる国家主義思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘ダリヤ氏(29)は車で帰宅中、8月20日夜、モスクワ近郊で車が爆発したため死亡したという。
ドゥーギン親子は20日夜の会合から帰宅中だった。当初は同じ車に同乗する予定だったが、直前になってドゥーギン氏は娘と別の車に乗ることにしたと、ロシア・メディアが伝えている。
このため「プーチンの脳」とも呼ばれるドゥーギン氏を対象にした攻撃だった可能性が、指摘されている。
ウクライナ侵攻を支持するドゥーギン氏は2015年、ロシアによる2014年のクリミア併合に関与したとして、米国の制裁対象に加えられた。
ドゥーギン氏はかねてロシアは国際社会でもっと自己主張し積極的に活動すべきだと主張していた。
今回の犯人については、諸説ある。
ロシア連邦保安庁(FSB)は事件の翌々日には「犯人はウクライナ諜報機関が放ったナタリヤ・ヴォーフクという工作員だ。彼女はドゥーギン氏の娘ダリヤ氏を殺害したその足で、エストニアに出国した」と写真付きで発表した。
しかし、その手際の良さでかえって疑われる羽目となった。
また、「この事件はFSBの自作自演だ。国内引き締めの口実にする魂胆だ」という説もある。
一方、ロシア人によるテロだという説もある。野党指導者の一人、イリヤー・ポノマリョフ氏は、「民族共和軍」なる組織が関与したものだと公言している。
この「民族共和軍」という存在は、今回初めて表に出たもので、その実体については何も情報がない。
筆者の憶測であるが、大義なき侵略戦争に駆り立てるアレクサンドル・ドゥーギン氏に対するロシア人によるテロではないかとみている。
   (2)予備役の部分的動員に対する反発
プーチン大統領は9月21日、予備役を部分的に動員する大統領令に署名したとテレビ演説で発表した。
演説の中で「東部ドンバス地域を解放するという主な目的は今も変わっていない」と述べ、ウクライナ侵攻を続ける考えを改めて強調した。
プーチン大統領に続けて演説したショイグ国防相は、侵攻開始から死んだロシア兵の数を「5937人」と説明した。その上で「30万人の予備兵の招集を検討している」と述べた。
予備役の部分的動員に抗議するデモがロシア全土に広がった。
ロシアの人権団体は、9月22日、38都市で1400人を超える市民らが警察当局に拘束されたと発表した。
9月24日、32都市で計760人超が拘束された。デモ参加者は、「プーチンために死にたくない」「プーチンを戦場に送れ」などと叫んでいる。
ロシアによるウクライナ侵攻が発表された2月24日、国内外で「反戦デモ」が同時多発的に発生したが、プーチン政権は首都モスクワで機動隊を投入し、参加者を拘束するなど素早く弾圧した。
プーチン政権は、今回も動員への国民の反発は限定的とみて、デモを力で押さえ込み、予備役の部分動員を予定通り進めると見られる。
しかし、ロシアから出国する航空券が売り切れになったり、ロシア国境に出国待ちの長い車列ができたり、予備役招集から逃れようとロシア国民の国外脱出が加速している。
   (3)ウクライナとの捕虜交換に対するロシア国内の反発
ウクライナのゼレンスキ―大統領は9月21日、ウクライナとロシアの間で捕虜交換が行われ、外国人兵士10人を含む215人が解放されたと発表された。
ロシア側は55人の兵士が解放された。
ロシアが解放した215人の捕虜の中には、ウクライナの港湾都市マリウポリの防衛を指揮し、ロシアに対する抵抗の象徴となった「アゾフ連隊」の司令官数人が含まれていた。
一方、ウクライナは、215人と引き換えに、55人のロシア軍兵士とウクライナの親ロ派政党の指導者、ビクトル・メドベチュク氏を解放した。
メドベチュク氏はロシアのプーチン大統領と親しい関係にあることが知られている。
2014年にウクライナ東部の分離独立運動で親ロシア派勢力を率いた元諜報員、イゴール・ガーキン氏は、アゾフ連隊司令官の解放は裏切り行為だと主張。
プーチン氏が9月21日に予備役の動員を命じたことに関連し、動員されるロシア人への侮辱になるとの見方も示した。
同氏は、解放は「犯罪より悪い」とし、「信じられないほどの愚かさだ」と断じた。
戦争支持を表明するブロガーらも政府批判に加わっている。
3.ロシアの国際社会からの孤立
   (1)ロシアの国連人権理事会の理事国としての資格を停止
国連本部で4月7日、第11回国連総会緊急特別会期(注1)が開催され、ウクライナの首都近郊のブチャなどで多くの市民の遺体が見つかったことを受けて、米国などが提出したロシアの国連人権理事会の理事国としての資格を停止するよう求める決議案の採決が行われた。
採決の結果、欧米や日本など合わせて93か国が賛成し、ロシアのほか中国や北朝鮮など24か国が反対、インドやブラジル、メキシコなど58か国が棄権し、棄権と無投票を除いた国の3分の2以上の賛成で、決議が採択された。
国連人権理事会の理事国の資格が停止されるのは、2011年に反政府勢力を武力で弾圧していたカダフィ政権下のリビアが停止されて以来、2例目である。
ジョー・バイデン米大統領は声明を発表し、採択を歓迎するとともにロシアの責任追及を続けていく考えを次のように強調した。
「プーチンの戦争がロシアを国際的なのけ者にしたことを改めて示す、国際社会による意味のある一歩だ」
「ロシアは国連人権理事会にいるべきではない。残虐行為の責任をロシアにとらせるために今後も各国とともに証拠を集めていく」
(注1)現在進行中のロシアのウクライナ侵攻を議題として、国際連合総会の第11回緊急特別会期(emergency special session:ESS)が、2022年2月28日から開催されている。第11回ESSのこれまでの決議案は、ES-11/1(ウクライナに対する侵略)、ES-11/2(ウクライナに対する侵略がもたらした人道的結果)および今回のES-11/3(人権理事会におけるロシア連邦の理事国資格停止)の3つである。
   (2)モディ首相および習主席のウクライナ戦争に対する懸念の表明
9月15〜16日にウズベキスタンのサマルカンドで行われた上海協力機構(SCO)の首脳会議に合わせて実施された印ロおよび中ロ首脳会議は、ロシアが国際社会からさらに孤立していることを如実に示した。
インドのモディ首相は冒頭、ウクライナ問題を念頭に「今は戦争の時代ではない」と述べ、外交的手段での解決を求めた。
プーチン氏は「ウクライナの紛争へのあなたの立場と懸念は承知している」とし、「早期に終えるよう全力を尽くす」と述べたが、「ウクライナ側が交渉を拒否している」と強調した。
中国の習近平国家主席は、「世界や時代、歴史が変化に直面する中、中国はロシアと協力し、大国の責任を示す上で主導的な役割を果たすと同時に、混乱する世界に安定と前向きなエネルギーをもたらす考えだ」と語った。
プーチン大統領は、一極集中化の世界を目指す米国の試みは失敗に終わるという見方を示した上で、「ウクライナ危機に関して、中国の友人たちのバランスの取れた姿勢を高く評価している」とし、その上で「この件に関する中国側の疑問や懸念を理解している」と述べた。
プーチン氏が、インドと中国のウクライナ戦争に対する懸念についていて言及したのは初めてである。
ウクライナ侵攻後、インド、中国をはじめとして非西側諸国との間で結束を高めようとしているプーチン氏に大きな打撃になったと筆者はみている。
また、筆者の憶測であるが、インド・中国の両首脳、特にモディ首相は、ロシアの核使用に対する懸念を述べたであろう。
   (3)ラブロフ露外相の安全保障理事会からの退席
9月22日、国連安全保障理事会閣僚級会合では、プーチン露政権が30万人規模の予備役を動員し、占領下のウクライナ4州で露編入を問う「住民投票」を行うと発表したことや、ロシアが核兵器の使用を示唆したことへの非難が続出した。
このような中、ロシアのラブロフ外相は自分の演説直前に会場入りし、「ウクライナのネオナチ政権はロシア人とロシア語を話す人々の権利を踏みにじっている。彼らを保護するための特別軍事作戦の実施は不可避だ」などと持論を展開し、演説が終わるとすぐに会場を後にした。
各国とは議論はしないというこのラブロフ氏の姿勢は、常任理事国としての責任を放棄し、国際の平和と安全に主要な責任を持つのが安全保障理事会の役割を冒涜するものである。
会場から退席するラブロフ氏の姿は、かつて国際連盟の議場から退場する松岡洋右日本代表の姿と重なる。筆者は、ロシアの国際的孤立が一層深まったという印象を持った。
   (4)ロシアの戦争犯罪に対する国際社会の非難
4月3日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)郊外ブチャで民間人とみられる多くの遺体が見つかったことに関し、欧州主要国はロシアを一斉に非難した。
民間人虐殺は「戦争犯罪」と断じ、捜査に協力する姿勢を示した。
7月15日、米国務省は、大量虐殺や残虐行為の防止に関する年次議会報告書を発表し、ウクライナに侵攻したロシア軍が戦争犯罪を行っていると非難した。
報告書は、ロシア軍が投降しようとしたウクライナ人の手を縛るなどして処刑・拷問し、市民を強制移住させたり、性的暴行を加えたりしているとの報告があると指摘した。
9月23日、ウクライナでの人権状況を調べていた国連人権理事会が設置した独立調査委員会は「ウクライナで戦争犯罪が行われた」と結論づける報告書を発表した。
市街地での無差別爆撃や処刑、拷問のほか、4歳の子供への性的暴行などを確認したという。
4.ロシアの核使用を抑止しているNATO
   (1)過去のプーチンの核兵器に関する発言
1 2018年のドキュメンタリーでプーチン大統領は、「ロシアを全滅させようとする者がいるなら、それに応じる法的な権利が我々にはある。確かにそれは、人類と世界にとって大惨事だ。しかし私はロシアの市民で、国家元首だ。ロシアのない世界など、なぜ必要なのか」と発言した。
2 2022年2月24日のウクライナ侵攻直前の19日には戦略核兵器を使った「戦略抑止力演習」に踏み切り、相対的に威力の小さい戦術核兵器まで動員しての大規模な演習を実施した。
3 2月24日、プーチン氏は、国営テレビを通じてロシア国民向けに「ウクライナ政府によって虐げられた人々を保護するため、『特別な軍事作戦』を実施することを決定した」と演説した。
同じ演説の中で「ロシアは、ソ連が崩壊したあとも最強の核保有国の一つだ。ロシアへの直接攻撃は、敗北と壊滅的な結果をもたらす」と述べ、核使用をちらつかせて米欧を強く牽制した。
4 2月27日、プーチン氏は、ショイグ国防相、ゲラシモフ軍参謀総長に対し「NATO側から攻撃的な発言が行われている」と述べ、核抑止力部隊に高い警戒態勢に移行するよう命じた。
5 9月21日、プーチン氏は、予備役の部分的動員を発表するテレビ演説で次のように語った。
「ロシアもまた様々な破壊手段を保有しており、一部はNATO加盟国よりも最先端のものだということを思い出させておきたい」
「わが国の領土の一体性が脅かされる場合には、ロシアとわが国民を守るため、われわれは当然、保有するあらゆる手段を行使する。これは脅しではない」
「ロシア国民は確信してよい。祖国の領土の一体性、われわれの独立と自由は確保され、改めて強調するが、それはわれわれが保有するあらゆる手段によって確保されるであろう」
「核兵器でわれわれを脅迫しようとする者は、風向きが逆になる可能性があることを知るべきだ」
   (2)米国高官のロシアの核兵器の使用に関する発言
1 2月28日、米国防総省高官は記者団に対し、ロシアのプーチン大統領による核部隊の戦闘警戒態勢命令を巡り、ロシア側の特筆すべき具体的な動きは確認できていないとした上で、米欧側の核抑止力に自信を示した。
2 9月18日、バイデン米大統領は、放映の米CBSテレビのインタビューで、ウクライナ侵攻で劣勢に立たされているロシアが化学兵器や戦術核兵器を使えば、米国も対応策を取り「重大な結果を招くことになる」と警告した。
「ロシアが何をするかによって対応策を決める」と述べ、具体策は明らかにしなかった。
バイデン氏はロシアのプーチン大統領が化学兵器や戦術核を使用すれば「第2次大戦後なかった状況へと戦争を変質させる」と指摘し「使ってはならない」と3回繰り返し、使用に踏み切れば、ロシアはさらに国際社会で孤立するとけん制した。
3 9月22日、米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は、9月21日のプーチン大統領の「我々の保有するあらゆる手段を行使する。これは脅しではない」とする演説について、米CNNテレビのインタビューで次のように語った。
「プーチン氏のあらゆる脅しを真剣に受け止めている」
「できる限り(ロシアを)監視している。米国の戦略的抑止態勢を変える必要があるような兆候は今のところ見られない」
4 9月22日、ベルギーのNATO本部に駐在する米国のスミスNATO大使は、9月21日のプーチン大統領のテレビ演説について、NATO本部でNHKの単独インタビューに応じ、次のように述べ、ロシアを牽制する姿勢を示した。
「現時点では、核戦力についての非常に危険で事態の悪化につながりかねない発言を耳にしているにすぎない。ロシアの状況を注視しているが、今のところ特段の変化は見られない」
「ロシアが核戦力の使用に踏み切った場合、われわれは準備ができている」
   (3)米国のロシアの核戦力の監視体制
全米科学者連盟の核情報プロジェクト責任者であるハンス・クリステンセン氏はニューズウィーク誌に対し、次のように語った。
「米情報当局はロシアの核兵器保管施設を監視しており、核弾頭がトラックやヘリコプターに積み込まれたり、核兵器を扱うための特殊訓練を受けた部隊の活動が活発化したりした場合に、それを検知することができる」
「これらの活動は、プーチンが短距離核戦力による攻撃の準備に着手したことを示すものとなる」
「一方で、地上型の移動式発射台、ミサイル潜水艦や巡航ミサイルの移動が通常よりも増えた場合には、長距離核戦力が使用される可能性があると予測できる」
「核兵器の指揮統制システムや通信全般における検知可能な活動が増えることからも、何かが起きていることがうかがえる」
「今年2月末には、核戦力を含む核抑止部隊を、任務遂行のための高度な警戒態勢に移行させると言った。だが当時はプーチンが核攻撃の準備を行っていることを示す動きはみられなかった」
「今回も米当局者たちが前回同様にロシアの動きを観察し、脅威がどれだけ差し迫ったものか否かを明らかにすると期待している」
「また米側も1000発近い核兵器を数分以内に発射できる態勢にあるため、プーチンが核攻撃を行っても、すぐに反撃できる」
   (4)筆者コメント
米国は、ロシアのウクライナ侵攻開始時から、ロシアの核戦力を完全に監視していることは間違いない。
そして、「ロシアに核戦力の使用の兆候がない」と公表し、米国の監視能力の高さを誇示し、ロシアを牽制している。
また、米軍は大統領からの命令があった場合、これに数分内に応じるため保有する弾道ミサイルの一部を高度な発射態勢の状態に置いていると筆者はみている。
常時監視と即応態勢の維持が米国のロシアに対する核抑止力の自信となっている。
さらに米国は、2月24日のロシアのウクライナ侵攻開始以降、長い時間をかけて、ロシアの核の恫喝への対抗策を検討してきたに違いない。
そして、ロシアが核兵器を使用すれば、米国をはじめNATO加盟国の30カ国は、ロシアとの武力による全面対決を辞さない、必要ならば核兵器を使用するとの覚悟を決めたのであろうと筆者はみている。
これはバイデン大統領の、米国も対応策を取り「重大な結果を招くことになる」という警告に現れている。
そして、米国は、その決意をウクライナ側に通知している。そのことは、プーチン氏の「核兵器でわれわれを脅迫しようとする者」という発言に現れている。
また、8月のウクライナ軍のクリミア半島への攻撃に対して、すなわちロシアのいうロシア領土への攻撃に対して断固とした対応策を取れなかったことで、プーチンの核使用の恫喝がブラフであることが露呈した。
これで米・NATOの通常戦力および核戦力にロシアは完全に核の使用を抑止されてしまったと筆者はみている。
ところで、筆者は核戦争の瀬戸際まで近づいたキューバ危機で、米国がいわゆる“核のチキンレース”で旧ソ連に勝利できたのは、米国ではスタッフが集団となって解決策を求めたからだという論考を読んだことがある。
独裁者が一人で核の使用を決定するプレッシャーは相当のものであろう。狂人でない限りそれは不可能である。
プーチンが狂人でないことを願っている。
おわりに
筆者は、拙稿「嘘だらけのプーチン歴史観、ロシアの対独戦勝は米国のおかげ」で、今回のウクライナ戦争でロシアを敗戦国の立場に追いやり、ロシアの常任理事国の地位を剥奪するとともに国連安保理改革につながることを願っていると述べた。
その考えは今も変わっていない。
現時点では、祖国防衛に燃え士気の高いウクライナ軍と大義がない戦いに無理やり駆り出された士気の低いロシア軍との勝敗はすでに明らかである。
しかし、プーチン氏は、予備役の動員を行い戦争のさらなる長期化も辞さない姿勢を見せている。以下、いくつかのシナリオを考えてみた。
現在、プーチン政権は窮地に陥っている。
プーチン氏が大義のない戦争を始めた。短期で終わると思っていた戦争が長期し、ウクライナ軍の予想外の頑強な抵抗を受け、何万人ものロシア兵が戦死した。
ロシア軍は深刻な兵員不足に陥り、兵員を補充するために予備役の動員令を発動した。これが国民の反発を呼び、反対するデモがロシア全土に広がった。
プーチン氏は、国内治安部隊を使って反対勢力を弾圧するが、事態はさらに悪化した。そして、国民の信頼と支持を失った。
一方、ウクライナ軍の攻勢の勢いはとどまらず、住民投票でロシアに併合した東部と南部の4州が奪還されそうになる。
そして、プーチン氏は、核使用の可否をめぐり側近と対立するようになり、ついに側近によるクーデターによりプーチンは失脚する――。
これは、筆者が理想とするシナリオである。
次に、停戦合意の可能性であるが、現在、戦いを有利に進めているゼレンスキー大統領は、クリミアの返還を要求するであろう。
プーチン氏がこの要求を呑むとは思えない。当分停戦合意の可能性はない。
次に、戦争の長期化である。
ウクライナの反転攻勢の直前には戦線は膠着状態にあり「消耗戦」の様相を呈してきたと言われていた。
戦局は一夜にして逆転するものである。ロシアが兵員を増強し、軍の体制と態勢を立て直し、また「消耗戦」の様相を呈するようになるかもしれない。
その時、プーチン氏は、天然ガスを「武器」に欧州の結束に揺さぶりをかけようとするであろう。
プーチンの揺さぶりに対して、米・NATO加盟国が結束し、ウクライナへの軍事支援を継続できるかが、ウクライナの軍事的勝利のカギとなる。
●ウクライナ4州の「住民投票」終了、露併合に暫定で「賛成約90%」… 9/28
ロシアのタス通信によると、ウクライナの親露派勢力は27日、東部・南部の計4州でロシアへの一方的な併合に向けて行ってきた「住民投票」が終了し、暫定結果として、4州とも「約90%が併合に賛成した」と発表した。ロシアや親露派が、併合の正当性を主張するため結果を操作しているとみられる。プーチン露大統領が30日にも露議会で演説し、併合を宣言する可能性が強まった。
親露派勢力は「住民投票」を東部のドネツク州、ルハンスク州と南部のザポリージャ州、ヘルソン州で23日から強行してきた。26日までは親露派関係者による戸別訪問で進めてきたが、最終日の27日は各所に設置された投票所で実施した。親露派は、同日午後4時(日本時間27日午後10時)に投票を終了したと発表した。
各州の親露派勢力は26日夜までに、「住民投票」の成立要件となる「投票率50%」を上回ったと主張している。
ウクライナ側は、「住民投票」を認めておらず、住民への圧力や不正が行われていると強く非難している。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は26日夜の国民向けビデオ演説で、東部ドンバス地方(ドネツク、ルハンスク両州)が「我々の第1の目標だ」と述べ、奪還する意思を改めて強調した。
●ウクライナが奪還した東部ハルキウ、ロシアが「報復」攻撃…インフラ施設 9/28
ロイター通信によると、ロシア軍は27日、ウクライナ軍に奪還された東部ハルキウ州を攻撃した。州都ハルキウの市長は同日、計4回の攻撃でインフラ施設が損傷し、市内の一部で停電が起きているとSNSで明らかにした。
ウクライナ当局は、ウクライナ軍の反転攻勢で支配地域からの撤退を余儀なくされた露軍による報復との見方を示している。地元メディアによると、南部オデーサ州でも同日、露軍によるミサイル攻撃があり、ウクライナ軍が2発を迎撃した。
ロシア通信は同日、親露派の話として、露軍が占領している東部ルハンスク州で、ロシアへの併合を問う「住民投票」が実施された23〜27日にウクライナの武装勢力から計17回の砲撃があり、民間人15人が犠牲となったと報じた。
●ノルドストリームガス漏れ、破壊工作か 欧州が原因究明急ぐ 9/28
ロシアから欧州に天然ガスを送る海底パイプライン「ノルドストリーム1」と「ノルドストリーム2」で発見されたガス漏れについて、ドイツ、デンマーク、スウェーデンは27日、破壊された可能性に言及した。ただ、不明な点が多く、欧州は原因究明を急いでいる。
ドイツのハーベック経済相は、ガス漏れはガス管を狙った攻撃によるもので自然現象や消耗が原因ではないことは確かだと述べた。
デンマークのフレデリクセン首相とスウェーデンのアンデション首相は意図的な行為によるもので、恐らく破壊工作との認識を示した。ポーランドのモラウィエツキ首相は、証拠を示さずに破壊工作と断言した。
ロシアはウクライナ侵攻を巡る西側諸国の制裁に反発し、ノルドストリーム経由のガス輸出を削減してきた。両パイプラインは現在稼働していないが、冬が到来する前にノルドストリーム1が欧州へのガス供給を再開するとの期待は失われるとみられる。
ロシアも破壊工作の可能性があるとの見方を表明し、ガス漏れで欧州のエネルギー安全保障が損なわれたと指摘した。
ウクライナ政府の高官は欧州の不安定化を狙ったロシアの攻撃と主張したが、根拠は示さなかった。
モラウィエツキ首相はポーランド・ノルウェー間の新たなパイプライン開通のイベントで「われわれにはこれが破壊工作であることは明確で、ウクライナ情勢緊迫化の次のステップに関係している」と語った。
アンデション首相はガス漏れに絡み2回の衝撃が観測されており、スウェーデンへの攻撃ではないが、NATO(北大西洋条約機構)やデンマーク、ドイツなどの近隣諸国と緊密に連絡を取り合っていると述べた。
デンマークとスウェーデンの地震学者らは、ガス漏れの現場近くで26日に2件の強い爆発音を観測したと発表。
デンマーク・グリーンランド地質調査所(GEUS)は地震とは異なる活動が検知され、爆発で通常記録される活動に類似していると分析した。
スウェーデンのウプサラ大学国立地震学センター(SNSN)は、2回目の大きな爆発が「100キログラム以上のダイナマイトに相当する」とし、爆発は海底下ではなく水中で起きたと説明した。
デンマーク軍によると、最も大きな漏えいがある場所では、直径1キロメートル以上の泡が海面が発生したという。
スウェーデン海事局(SMA)によると、ノルドストリーム 1の漏えいはスウェーデンの経済水域とデンマークの経済水域でそれぞれ1カ所見つかり、どちらもバルト海のデンマーク領ボーンホルム島の北東に位置する。船舶が現場に接近しないよう監視しているとした。
運営会社ノルドストリームは、パイプラインが「前例のない」損傷を受けたと発表した。
デンマーク・エネルギー庁のベッツァウ長官は、パイプラインの穴は非常に大きく、ノルドストリーム2からのガス漏れが止まるまでおそらく1週間かかると述べた。「海面にはメタンが充満しており、この海域では爆発の危険性が高まっている」と警告した。
●米印外相会談 対中国分野では協力も対ロシア制裁で違いか  9/28
アメリカとインドの外相が会談し中国への対抗を念頭に、安全保障や経済の分野で協力を深めていくことで一致しました。一方、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアへの制裁の一環として、アメリカなどが検討しているロシア産の石油への上限価格の設定をめぐっては、立場の違いが残ったものと見られます。
アメリカのブリンケン国務長官とインドのジャイシャンカル外相は27日、ワシントンで会談したあと、そろって記者会見しました。
この中で、ブリンケン長官は「自由で開かれた国際秩序を維持するため、両国関係は極めて重要だ」と述べ、ジャイシャンカル外相も「両国の協力はインド太平洋地域を越え、広がっている」と応じ、中国への対抗を念頭に、安全保障や経済の分野で協力を深めていくことで一致したことを明らかにしました。
一方、会談では、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアへの制裁の一環として、アメリカや日本などが検討しているロシア産の石油への上限価格の設定についても話し合われました。
これについてジャイシャンカル外相は「われわれの懸念は、エネルギー市場が緊張状態にあることで、緩和されるべきだ」と述べるにとどまりました。
ロシア産の石油への上限価格の設定をめぐっては専門家からは実効性の確保にはインドなどの主要な消費国の協力が不可欠だと指摘されていますが、アメリカと、ロシアの伝統的な友好国インドとの立場の違いが残ったものと見られます。
●プーチンがロシア軍人に直接指示の異常事態 9/28
ロシア・ウクライナ戦争を巡って、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(69)が「自滅」する可能性があると複数のメディアが伝えている。専門家が注目するのは、「BBC NEWS JAPAN」が9月25日に配信した「プーチン氏、国防次官を解任 補給失敗が理由か」という報道だ。
BBCの記事には重要なポイントが3つあるという。以下に引用させていただく。
【1】プーチン大統領は9月24日、ドミトリー・ブルガコフ国防次官(67)を解任した。次官は物資補給の担当。補給の混乱が苦戦の原因とされているため、責任を問われた可能性がある。
【2】プーチン大統領はウクライナ戦争で直接指揮を執り、ウクライナ国内にいる将官たちに自ら命令を下し始めたと報じられている。
【3】米当局者は米CNNに「ロシア政府における指揮系統の機能不全が深刻化している」と語った。
プーチン大統領は軍の人事権を濫用し、作戦にも口出しするようになったというわけだ。これはロシア軍に多大な悪影響を及ぼす可能性があると、ある軍事ジャーナリストは言う。
「古今東西の戦史を振り返ると、軍部の暴走で国家が破滅した例は枚挙に暇がありません。戦前の日本もそうでした。そのため現代の民主主義国家はで、選挙をベースに選ばれた大統領や首相などが軍の人事権などを持ち、暴走を抑止する統治システムを構築しています」
プーチン大統領の暴走
大統領や首相が安易に軍を使う懸念も根強い。そのため、参戦などに関しては、議会の同意を必要とする国も少なくない。軍隊に対して二重三重のチェック機能を用意しているわけだ。
ところがプーチン大統領の場合、【1】「補給の不手際」という理由から軍高官を解任した。なおかつ【2】大統領自ら作戦レベルの指示を行うようになった──と報道された。
この2点は、「軍の暴走を止める」どころか「むしろ大統領の暴走で、ロシアが破滅する」可能性を示唆しているという。
「戦術、作戦、兵站は、絶対にプロの軍人が担当すべき領域です。政治家が関与すると必ず悪影響を及ぼします。人事権を持つ最高責任者が現場に口出しすると、ろくなことにならないのは国家も企業も同じでしょう。プロスポーツが好きな人なら、オーナー、ゼネラルマネージャー(GM)、監督、選手の関係を思い出すかもしれません」(同・軍事ジャーナリスト)
オーナーはGMにチーム作りを一任する。GMは監督や選手を集めてチームを作る。そして、監督が選手に指示を行って試合に勝つ──これが基本と言っていいだろう。
「シン・ゴジラ」
「オーナーは強大な人事権を持っています。そんな“最高権力者”が試合で監督や選手に直接指示をしたとしたらどうなるでしょうか。現場が萎縮するのは間違いありません。選手や監督、GMは、チームを辞めるか、クビになるのを恐れてイエスマンに変貌します。そしてオーナーが喜ぶことしか報告しないようになります」(同・軍事ジャーナリスト)
その結果、オーナーには間違った情報ばかり届けられる。これでは正しい情勢判断は不可能だ。よってチームは敗北する。
この軍事ジャーナリストは、2016年に公開された映画「シン・ゴジラ」[庵野秀明総監督(62):東宝)が、この問題を解く鍵になるという。
「映画に登場した首相はゴジラの“駆除”は命じましたが、『ゴジラを多摩川で撃退せよ』などという命令はしませんでした。首相の仕事は、アメリカとの折衝や民間人の避難、そして作戦開始の決定です。作戦の立案、兵員や兵器の移動、戦闘準備、ゴジラの監視といった具体的な任務は、全て自衛隊に一任されていました」(同・軍事ジャーナリスト)
トルーマンの“英断”
実際の戦史も見てみよう。第二次世界大戦(1939〜1945)や朝鮮戦争(1950〜1953)で、アメリカの大統領と軍との関係はどうなっていたのだろうか。
「太平洋戦争終盤の1944年、アメリカの陸軍と海軍は『台湾と沖縄のどちらを先に攻略するか』という問題で議論を重ねました。そして、遅くとも10月には、台湾への上陸作戦は見送ることが決定したのです。こうした議論に、当時のフランクリン・ルーズベルト大統領(1882〜1945)が深く関与するようなことはありませんでした」(同・軍事ジャーナリスト)
朝鮮戦争の場合、大統領は重要な決断を下した。戦争末期、アメリカ軍を中心とする国連軍が優勢となっていた。そのため総司令官のダグラス・マッカーサー(1880〜1964)は、「戦争を継続したい」と具申した。
「しかし当時のハリー・トルーマン大統領(1884〜1972)は、中国やソ連との全面戦争を懸念しました。そこで彼は、マッカーサーを解任するという人事権を発動することで休戦を実現したのです。この歴史的事実から、『国の最高責任者にとって重要な任務の一つは、作戦の指導ではなく戦争の開始と終結を決定すること』だと分かります」(同・軍事ジャーナリスト)
準備不足のロシア軍
もし日本にロシアや中国が攻めてきても、首相と自衛隊の関係は同じはずだという。
「北海道や尖閣諸島に上陸したロシア軍や中国軍の撃退を首相は命じるでしょう。しかし、具体的に『北海道のここで戦え』とか、『この海域にイージス艦を派遣しろ』などと口を出すことはないはずです」(同・軍事ジャーナリスト)
一方のプーチン大統領は、こうした“セオリー”を完全に無視しているように見える。例えば時事通信は9月26日、「ロシア軍、動員で一層の人的損害も 『最低限』の準備で前線へ―ウクライナ」の記事を配信した。
この記事で軍事ジャーナリストが呆れ返ったのは、以下の箇所だ。
《英国防省は「西側諸国と異なり、ロシア軍は兵士たちに指定された作戦部隊内での低水準の基本訓練しか施さず、予備役の多くは何年も軍事的な経験を積んでいない」と指摘。さらに「教官不足や性急な動員状況から見て、多くは最低限の準備をしたのみで前線に駆り出される」とし、「ロシアは高い(人的な)損耗率に苦しむだろう」と警告した》
歴史の法則
「この報道が事実なら、事態はかなり深刻です。そもそも軍隊とは、ただ移動するだけでも訓練が必要です。加えて、ロシア軍の目標はウクライナ軍の撃退でしょう。それには砲兵と歩兵、戦車部隊との連携が不可欠であり、訓練の積み重ねが欠かせません。付け焼き刃の兵隊が前線に送られても、かえって部隊は混乱するだけです」(同・軍事ジャーナリスト)
そして重要なのは、こうした軍の実情をプーチン大統領に報告して諫言する高官は、誰もいないということだ。
「“シビリアン・コントロール”と言いますが、ロシアで本当に暴走しているのは軍部ではなく“シビリアン”であるはずのプーチン大統領です。戦史を紐解くと、最高責任者が口出しをして勝利した軍隊は皆無です。多くのメディアがロシア軍の“指揮系統の混乱”に注目するのは、歴史の法則を考えると、ロシア軍が敗北する可能性が高いからです」(同・軍事ジャーナリスト)
●ロシア国境付近は脱出する車で大渋滞…モンゴル、ジョージア、フィンランド 9/28
•ロシアのプーチン大統領は9月21日、ロシア軍の予備役を部分的に動員することを発表した。
•それ以来、多くのロシア人が国外脱出を試み、片道航空券の売り切れが続出している。
•最新の衛星画像によると、ジョージアやモンゴルとの国境に向かう道が、多くの車で渋滞している。
ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は2022年9月21日、テレビ演説で予備役の兵士を部分的に動員することを発表した。これは、ウクライナでの戦況悪化が背景にあると思われる。
この発表の直後から多くのロシア人が、わずか7カ月で何万人もの兵士が死傷している戦争への派兵を避けようと、できる限りの手段で国外に脱出し始めた。「ロシアから脱出する方法について」といったGoogle検索が急増し、片道航空券は売り切れ、ロシアの国境での渋滞を示すビデオが共有され始めた。
商業衛星画像会社のマクサー・テクノロジーズ(Maxar Technologies)は、最新の衛星画像を9月26日にInsiderに提供した。それには、ジョージアとモンゴルとの国境に向かう車の長い列が写っている。
下の画像は9月25日に撮影されたもので、ロシアとジョージアの国境近くの道路がトラックと車で渋滞している。
マクサーは、プーチン大統領が予備役の部分的動員を発表する前の8月15日と発表後の9月23日に、ロシアとモンゴルの国境にあるキャフタ検問所の衛星画像を撮影している。9月の画像では交通量が大幅に増加していることが分かる。
北西に隣接するフィンランドに逃れようとするロシア人もいる。
フィンランド国境警備隊のマッティ・ピトカニッティ(Matti Pitkäniitty)は、9月25日に8000人以上のロシア人が入国したと26日にツイートしている。これは動員発表前にあたる9月18日に報告された人数の2倍にのぼる。
ピトカニッティによると、フィンランドへの入国者の多くが他国へ向かう途中であり、25日のうちに5000人以上のロシア人がフィンランドから出国したという。
「フィンランドとロシアの陸上国境での通行量は、以前よりも多い状態が続いている。今後についていは不確実なことが多い。フィンランド国境警備隊は、さまざまな展開、それも困難な展開に備えている」とピトカニッティは付け加えた。
●目隠し、押さえつけも......ロシアが「領事」拘束ウラジオストクで“スパイ容疑” 9/28
ロシア極東のウラジオストクで、日本の領事がスパイ容疑で拘束され、動画が公開されました。領事は目隠しされ、頭を押さえつけられる扱いを受けたといいます。ロシアが「スパイ行為」との口実が作れるのは、ウラジオストクならではの背景があるとみられます。
ロシア経済を支えるウラジオストク
有働由美子キャスター「拘束されるのもそうですが、外交官が目隠しをされたり、頭を押さえつけられたり...。こんなことはあるのでしょうか」
小野高弘・日本テレビ解説委員「こんな仕打ちは聞いたことがありません。ただ、ロシアがスパイ行為だと口実を作れるのは、場所がウラジオストクだからということもあります」「ウラジオストクはモスクワから遠く離れていますが、プーチン大統領にとってロシアの経済全体を支える大事な場所です。中国などアジアの国々との貿易の窓口でもあります」「9月にはウラジオストクで、ロシアに投資を呼び込む国際会議が行われました。このイベントはプーチン大統領肝いりで、本人も出てきました。ロシアと交流しようとする国が多く集まっていました」「つまり、ウラジオストクではロシアの対外政策に関するいろいろな情報が飛び交っていて、入手できます。ウラジオストクにある日本の総領事館は、通常の行政手続きやパスポートの再発行なども行いますが、同時にさまざまな情報収集もやっているはずです」
廣瀬教授「ロシアは動画のねつ造も」
有働キャスター「ロシアはそこに目を付けた、と」
小野委員「そうです。日本側は、違法なことは何もしていないと主張していますが、ロシアからすれば、大事なウラジオストクで非友好国である日本が情報を集めるのはスパイ行為に当たると口実を作れます。そうやって日本を脅すわけです」
有働キャスター「動画を出してまで、そういうことをするものですか?」
小野委員「『そういうことをする』と、ロシア政治に詳しい慶応義塾大学の廣瀬陽子教授は言います。『証拠だと言って動画を出すのは、ロシアのいつものやり方。動画のねつ造すらやる』と指摘します」「また『ロシアが他国の外交官を追放するのも珍しい話ではなく、日本がロシアに制裁を続けていることへの意趣返しだ』とみています」
落合さん「狙いは外交的譲歩か」
落合陽一・筑波大学准教授「外交官に手を出すのはご法度ですが、外交的な譲歩を引き出そうとするメッセージを感じます。われわれは平和的に常に外交は考えますが、(ロシア側は)こういった脅しのようなことをしてきます」「日本とロシアの関係は非常に敵対的な状況になりつつありますが、日本が譲歩しないにしても、(ロシアとしては)対立を強めて警戒しておいた方が、外交上得なメッセージなのだろうなと思います」「『これ以上は内政に関わってくるなよ』という圧力だったり、日本側が外交的なメッセージを発することに躊躇することを狙っているのではないかと、素人ながら思います」
有働キャスター「これ(拘束による圧力)をやって日本が制裁を緩めるはずはありませんし、対立を強めるようなやり方は何にもならないと思います」 
●「日本の戦争犯罪に時効なし」 ロシア外相、歴史でけん制 9/28
タス通信によると、ロシアのラブロフ外相は28日、第2次大戦の歴史をめぐり「日本の軍国主義の犯罪は時効がないものであり、忘れてはならない」と表明した。
モスクワの外務省外交アカデミーで「軍国主義日本の犯罪」と題して開かれた国際会議にメッセージを寄せた。
ロシアによるウクライナ侵攻開始後、欧米と協調してロシア制裁を強化する日本に対し、歴史問題を持ち出してけん制したとみられる。ロシア軍の「戦争犯罪」の疑いが広く伝えられる中、ロシアの国内世論や学界の動揺を抑えようと、批判の矛先を日本に向けさせる狙いもありそうだ。
日ロ関係をめぐっては、ロシア側が26日、在ウラジオストク日本総領事館の領事を一時拘束し、48時間以内の国外退去を通告。日本側が強く抗議するなど、悪化の一途をたどっている。
ラブロフ氏は日本について「残念なことに、アジア太平洋地域の国々への侵略に対する反省の弁がない一方、全く根拠のないばかげたロシア非難が聞こえてくる」と指摘。「歴史に対するこうしたアプローチは、国連中心の世界秩序を損なうもので、受け入れられない」と主張した。
●ウクライナ大統領「茶番劇だ」親ロシア派の“住民投票”に反発  9/28
ロシアの国営メディアは、親ロシア派の勢力がロシアへの一方的な編入をねらってウクライナの東部や南部で行った「住民投票」だとする活動の「開票」の作業が終了し、いずれも編入に「賛成」する票が「反対」を大きく上回ったと伝えました。これに対し、ゼレンスキー大統領は「茶番劇だ」などとして、正当性がないと強く反発しました。
ロシアのプーチン政権を後ろ盾とする親ロシア派の勢力は、今月23日からウクライナの東部や南部の支配地域でロシアへの一方的な編入をねらった「住民投票」だとする活動を強行しました。
ロシアの国営メディアは27日、東部のドネツク州とルハンシク州、南東部ザポリージャ州、それに南部ヘルソン州のすべてで「開票」の作業が終了し、いずれもロシアへの編入に「賛成」する票の割合が80%から90%に上り、「反対」を大きく上回ったと伝えています。
それぞれの州の親ロシア派の勢力は今回の結果を受けて、プーチン政権に対して編入を要請するものとみられます。
ゼレンスキー大統領 国際社会に対応求める
ウクライナのゼレンスキー大統領は、27日に動画を公開し、親ロシア派が行った「住民投票」だとする活動について「占領された地域での茶番劇は、住民投票のまねごとですらない。どういう結果にしようとしていたのかは事前にわかっていた。情報機関が活動する必要もなく、この茶番劇の内容は事前にメディアに流れていた。ロシアは隠そうともしていない」と述べ、正当性がないと強調しました。
そのうえで、「唯一の合理的な対処はウクライナに対するさらなる支援だ。防衛、財政、そして制裁での支援を確認してくれたパートナーに感謝する」と述べました。
さらに、国連安全保障理事会の緊急会合で演説したことに触れ「世界を敵に回している人物を止めてほしいと呼びかけた。最後の破壊的なステップが踏み出されていない今なら止めることができる」と国際社会に対応を求めました。
国連安保理 「住民投票」活動めぐって緊急会合
一方、国連の安全保障理事会は27日、ウクライナの東部や南部のロシアの支配地域で行われた「住民投票」だとする活動をめぐって緊急会合を開きました。
冒頭、国連のディカルロ事務次長は「紛争のさなかにロシアの支配下にある地域で、ウクライナの法的な枠組みが及ばないところで実施されたもので、真に民意を表しているとは言い難い」と指摘したほか、欧米各国を中心にロシアを非難する意見が相次ぎました。
このうち、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は「人々に銃口を向け、投票を強要している」と述べ、ロシア軍の即時撤退を義務づける決議案を、近く安保理に提出する考えを表明しました。
●プーチン氏の動員令、ロシア経済に痛烈な打撃  9/28
ウラジーミル・プーチン露大統領が発した部分動員令や原油相場の急落、西側による一連の追加制裁を受けて、すでに低迷しているロシア経済にさらなる重圧がかかりそうだ。これまでウクライナ侵攻の戦費調達を支えてきた財政が崩壊しかねない状況に追い込まれている。
プーチン氏がウクライナ侵攻にさらなる資源をつぎ込むことを決めたことで、ロシア経済に暗雲が立ちこめてきた。動員令に伴い30万人以上を新たに投入すれば、徴集兵の軍装備や訓練、給料を手当てする必要が出てくるためだ。さらに民間企業にとっては、兵役または徴兵逃れの国外脱出によって人手が奪われ、新たな問題に直面することになる。
折しも、エネルギー価格高騰による収益押し上げ効果はピークを過ぎたもようだ。ロシアの財政収支は先月、エネルギー収入の落ち込みが響き、赤字に転落した。これには足元の原油急落や、ロシアが欧州への天然ガス供給をほぼ完全に遮断した影響はまだ反映されておらず、すでにそれ以前の段階で国家財政が手当てできていないことになる。
IEビジネス・スクール(マドリード)のマクシム・ミロノフ教授(金融)は「とりわけ不透明感が増すことで、動員令がロシア経済に新たな一撃となっている」と話す。「しかも、石油・ガス収入が枯渇に向かうタイミングで起きている」
戦争では往々にして、長期的に戦費を確保できる経済力を持った側が勝利することが多い。ウクライナ経済も壊滅的な打撃を受けているが、西側から巨額の資金援助を受けている。
西側の制裁措置はロシアの商業活動に大きな打撃を与えたものの、エネルギー価格の高騰が追い風となり、ロシア政府は経済を安定させることができた。侵攻直後こそ急落した通貨ルーブルも、その後は対ドルで急速に持ち直し、インフレも落ち着いた。ロシア政府や独立系のエコノミストは目下、ロシア経済が今年、これまで想定されていたほど深刻なリセッション(景気後退)には陥らないとみている。
ロシア経済の崩壊が迫っていることを示す兆候はないが、国内の経営者や投資家の間では、部分動員令を受けて動揺が広がっている。プーチン氏の発令がさらなる徴兵に扉を開いたとの指摘もある。ほぼ国内投資家のみに限られるロシアの株式市場は、動員令の発表を受けて急落した。
動員令の発令前に公表された政府データによると、8月の財政収支は大幅な赤字となった。その結果、今年1-8月の財政黒字は1370億ルーブル(約3400億円)と、1-7月の約4810億ルーブルから大幅に縮小した。
ロシア政府は赤字穴埋めのため、エネ業界への増税を含む複数の措置を導入。今月には、2月以来となる国債の発行に踏み切った。ただ、新発債はロシア国民が買い支える必要がある。侵攻前にロシア国債の約2割を保有していた外国人投資家は、投資が禁じられている。さらにロシアは外国の債券市場から締め出されたままだ。
ロシア経済が抱える問題は、自らの政策が招いた「自業自得」の側面もある。ウクライナ侵攻によるエネルギー価格の跳ね上がりは当初、ロシアに巨額の収入をもたらしていた。国際金融協会(IIF)では、1-7月のロシア連邦予算のうち、石油・ガス収入は約45%を占めていたと分析している。
ところが、エネルギー価格の高騰は世界経済の成長に急ブレーキをかけ、各地で石油需要の減退を招いた。原油の国際指標である北海ブレントは6月の高値から約3割下げ、バレル当たり85ドルを割り込んでいる。
ロシア産原油が約20ドルのディスカウントで取引されていることを踏まえると、ロシアはすでに財政収支を均衡させるのに必要な水準を下回る価格で原油を販売していることになる。S&Pグローバル・コモディティ・インサイツは2021年に、この水準をバレル当たり69ドルと推定していた。通貨高によって石油輸出で得られる代金がルーブル建てに換算すると目減りすることも、政府にとって悩ましい問題となっている。
アナリストや調査会社によると、ここ数週間には原油価格の下落に加え、ロシアの石油輸出も減少している。世界経済の減速のほか、12月に欧州連合(EU)が実施するロシア産燃料への制裁措置も重しとなっている可能性が高い。
OilXのシニアアナリスト、ニール・クロスビー氏は、9月のロシアの原油輸出は日量およそ450万バレルと、8月の同480万バレル余りから減ったとみている。西側の制裁発動で行き場を失ったロシア産原油を大量に買っていたトルコ、中国、インド3カ国への供給が落ち込んだためだという。
キャピタル・エコノミクスでは、ロシアの石油・ガス収入が2023年に今年の推定およそ3400億ドル(約49兆1300億円)から1700億ドルに半減すると試算している。落ち込みの規模は昨年のロシア国防予算の2倍以上に相当する額だ。
西側諸国はさらに制裁を強める構えで、主要7カ国(G7)はロシア産石油に価格上限を設定する方向で調整している。
ロシアが戦場で劣勢に立たされているように、徴兵に伴うコストと障害がロシア国民の信頼感を揺らしている。
「動員令はすべてのロシア家計に降り懸かるダモクレスの剣(迫り来る危機)だ」。こう指摘するのはドイツ国際安全保障研究所のロシア専門家、ヤニス・クルーゲ氏だ。「これで平均的なロシア消費者の間で楽観論が消えるだろう」
高まる不安から、国外脱出を図る兵役年齢のロシア人男性が国境へと殺到しており、ウクライナ侵攻以降、すでに相当な規模に達していた頭脳流出がさらに加速している。 前出のミロノフ氏は「人々は行けるところに逃げている」と話す。「彼らは高い技能を持ち、教育水準の高い労働者が中心だ。そのため今回の動員令は、来年のみならず、数十年にわたって経済に重大な影響をもたらすだろう」

 

●ロシアの弔鐘となる「ウクライナ戦争動員令」〜世界の枠組みまで変わる 9/29
9月21日、プーチン大統領は「部分的な」動員令を発布した。ウクライナ侵攻の失敗で戦線が伸び切り、とうとう兵士が足りなくなったのだ。「軍務・戦闘経験や特殊な軍事スキルを持つ予備役」が対象。学生や、1年間の兵役期間中の若い徴集兵は対象外。当面30万名ほどを目標に、数カ月かけて動員していく。
ウクライナ侵攻という錯誤を取り繕うためにじたばたし、結局傷口を広げて退陣に至る……この動員令は、プーチン政権の終末を告げるトランペットとなりかねない。
「戦争に駆り出されるのは真っ平ごめん」
これまでロシア国民は、ウクライナ戦争を対岸の火事のように見てきた。ウクライナで戦っているのは遠くの地方や少数民族居住地域を中心に駆り集められた職業兵だから、一般のロシア人には切実性がない。だから開戦後もプーチン支持率は80%前後を維持し、モスクワのバーは毎晩満員の盛況を続けたのだ。
国民は、「ウクライナでネオナチが騒いでロシアに盾突くから、職業兵を送って懲らしめているのだ」という当局の説明を良しとして、あとは考えないようにしていた。
今回の動員令はそれをひっくり返した。プーチンは、「部分的な動員」だと言ったが、社会はこれを「総動員令」だと受け取った。役人も、召集のノルマをこなすためには、「軍務・戦闘経験や特殊な軍事スキルを持つ予備役」などという、しかつめらしい条件を無視するだろう。
その結果、何が起きたか? 海外(と言ってもフィンランドやジョージアなど隣接・近接国が中心)へ脱出する男性で空港・国境は長蛇の列。徴兵センターで発砲したり、女性たちが取り締まりの警官隊を包囲して動けなくさせる事例が頻発している。
「うちの夫、息子は今、用務で国内出張中。どこにいるかわからないので、召集を伝えられない」ロシア人が急増するだろう。すると議会は召集に一定期間以上反応しない者には罰則を設ける。その結果、警察が住民のアパートを訪問して、騒動が起きる。スターリンの頃と違って、公安が市民のアパートにずかずか踏み込めるご時世ではない。この結果、海外に逃げるカネやコネ、そして査証を持たない普通の国民、偽学生証を購入するカネもない貧困層が、召集のしわ寄せを食らうことだろう。
怒りと不満が社会に満ちる。そうなると、徴募が集中する少数民族地域、地方を筆頭に、知事、市長たちは、当局に物申さざるを得なくなる。この機会に、中央からの交付金・助成金をさらにふんだくろうとする知事が必ず出る。中央は、ない袖は振れない、と言うだろう。すると知事たちは、今年の税収はもう中央に送金せず、地元で全部使うと言って、地元での人気を何とかつなぎとめようとする。
そんなことが起きるのか、と思うかもしれないが、これは1991年ソ連の崩壊間際の数カ月間、ソ連で起きていたことだ。当時、モスクワの中央政府は歳入を失って、役人の給料も払えなくなり、やめていく者が続出したのだ。
兵士を確保しても兵器がない
ウクライナ戦争はこれからどうなる? 召集された兵士がまとまって戦線に着くまでには、数カ月かかる。この間ロシア軍は、合計1000キロにも及ぶ前線(ショイグ国防相の発言)を守り切れるのか。
しかも、ロシアの兵器はずいぶん破壊されている。現役戦車は全国で3000両程度だったのを、今回の戦争で既に800両以上失っている。これまでの年間生産量は100両程度。残ったものも、エンジンが稼働1000時間ほどで更新が必要だが、エンジンの生産能力も限られている。ミサイルの生産能力はもともと限られていた上に、西側が先端半導体の輸出を禁じた後は、生産自体に問題が生じていることだろう。
だからロシアはナポレオン時代の「大砲を撃ちまくってから、歩兵がつっこむ」式の戦術しか取れないのだが、肝心の大砲とその砲弾の生産能力も限られている。統計はないのだが、1999年からのチェチェン戦争の場合(当時のプーチン首相が指揮した)、首都グローズヌイ等を砲弾で真っ平にしたあげく、砲弾の備蓄がなくなっている。現在ウクライナで毎日6万の砲弾を消費しているので、右チェチェン戦争の比ではない。
砲弾はそれでも、ロシア国内にまだ大量に備蓄されているだろうが、問題はこれを輸送する能力が限られているということだ。ロシア軍の輸送は鉄道に依存している。地図を見ると、ロシアとウクライナを結ぶ幹線鉄道は数が限られている。うちハリコフからロシアへ向かうものは、今回のウクライナ軍のハリコフ州奪還作戦で、ウクライナ側の手に落ちた。残るのは(地図を見る限り)あと3本。心細い。これを、ウクライナ軍の長距離砲(砲と言うが、実質的にはミサイルだ)で破壊されたらひとたまりもない。
ドネツ・ルハンスクとロシアを結ぶ鉄道を破壊されると、ウクライナ南部のヘルソンなどのロシア軍征圧地も防護できなくなるし、ウクライナには絶対奪還できないと思われていたクリミアが意外と脆弱な姿をあらわす。鉄道輸送(クリミアへは東部のケルチ海峡の鉄橋、北部のザポロージエ経由の鉄道がある)が駄目になると、クリミアへの補給は難しいからだ。
ロシア海軍の揚陸艦の多くは、戦争の初期の段階で、ウクライナのミサイルであえない最期を遂げている。クリミア西部のセヴァストーポリ軍港に、海上経由で物資を運び込むこともできないだろう。セヴァストーポリ軍港の安全ももう保証の限りでないからだ。ロシア黒海艦隊はサポートする施設のない黒海沿岸の港たちに分散駐留することを迫られるだろう。
これを防ぐために、ロシアは原爆を使う? しかし、どこに? うっかりすれば、自分の領土を原爆で攻撃することとなってしまう。それに原爆を使ったところで、1週間もすれば放射能は薄らいで、そこにウクライナ軍は突っ込んでくるだろう。ポーランドの西側兵器集積所を撃つ? そうなれば、核のやりとりのエスカレーションは免れない。
ニコライ1世の急死、その状況とその後
プーチンはドネツ・ルハンスクなどで今、住民投票を行っていて、その結果がどうであれ、住民が望んだとか言って、これらの地域をロシアに併合してしまうだろう。ウクライナ軍がここを攻めると、「ウクライナはロシア領を攻撃した。ついては……」ということで、反撃を強化する口実にしようというわけだ。
しかしこれは何か子供っぽいやり方だし、そもそも、もう時を失したのではないか? クリミアも、ロシアが「併合」したのだが、ウクライナ軍はものともせずに攻撃の構えを見せているし、これにロシアが「自衛だ」と言い立てて作戦を強化しようにも、前記のようにどうしようもない。
やはり、2月の電撃攻撃に失敗したことが致命的だったのだ。今や戦線は伸び切ってしまい、ロシア軍はこれに対処できない。
1853年からのクリミア戦争の場合、ロシアは今と同じく孤立していて、今と同じく後れた兵備で、それでも戦況は一進一退だったのが、途中の1855年2月、皇帝ニコライ1世が肺炎で死んでしまう。これは急死で、セヴァストーポリを包囲されて敗北を予期した皇帝が、寒中の屋外イベントにわざと薄着で出席して風邪をこじらせることで、実質的に自殺したのだ、といううわさが広まった。
後継のアレクサンドル2世は1861年に懸案の農奴解放を実現。国内の改革へ向けて大きな一歩を踏み出したのだが、1881年にはテロ組織「人民の意志」党の一員に爆殺されてしまう。その後継のアレクサンドル3世の時代は、保守と弾圧、そしてこれに対抗するテロの頻発で彩られる。
1902年及び1904年には警察の元締め、内務大臣が相次いで暗殺されているし、1905年には様々の勢力が暴力的反政府運動を群発させて革命的状況をもたらした。それを自営農創設など前向きの改革で収拾しようとしたストルイピン首相も、1911年暗殺されている。1901〜1911年、革命運動によって殺された者は1万5000人を越え 、その中には知事、警察長官、将軍、警察官、工場所有者などが多数いた。
プーチン後のロシアは独裁か混乱
今回、ニコライ1世の急死に似たことが起きて、不思議でない。毎年11月4日は「国民団結の日」。赤の広場ではイベントが行われ、プーチンも出てきて献花など行う。その時プーチンが寒天下(11月初旬のモスクワの気温は零度に近づく)、薄着で出てきたら、それはニコライ1世の前例を踏襲することになるかもしれない。
プーチンがいなくなると、その後は、公安当局が多分メドベージェフ元大統領あたりを大統領に担ぎ出して、ウクライナ戦争は凍結、国内締め付けを強化する。
西側の期待する「民主勢力」は小さく、薄く、分裂していて、指導者もいないから、政治的な力にならない。たとえ民主勢力が権力を一時的に握ったとしても、彼らに実際の行政・外交能力はない。自負心の強い者が多いから、ソ連崩壊直後の1990年代も互いに争いを始めて、結局保守派に権力を取り返されている。
メドベージェフはかつて、ITにも詳しいリベラルとして知られていたが、昨年1月首相の地位から突如引き降ろされて以降は、権力にしがみつくため、保守勢力に迎合する発言を繰り返している。昨年の夏、ウクライナ侵攻のお先棒をかつぐ論文を真っ先に発表したのも彼だ。
締め付けが強化されたとしても、ロシアは結局のところ、混乱の時代を迎えるだろう。
エリツィン大統領による大混乱の後を継いで2000年、大統領になったプーチンは20年にわたる安定期をもたらしたかに見えるが、それは2000年以降の世界原油価格の高騰に助けられてのことで、ロシア経済に実力はない。
プーチンは公安を使って国内締め付けを続けてきたが、彼がいなくなると、公安・警察機関の権威・力も弱まるだろう。ロシア人の権利意識は冷戦後ほぼ一貫して高くなってきているので、締め付けも容易ではない。
中央アジア諸国がロシアから離れていく
ロシアは、ソ連時代の計画経済体制から市場経済への移行をはかろうとして果たせず、今回西側との関係を決定的に悪くしたことで、今後の発展のための資金と技術をほぼ完全にふさがれることとなった。ユーラシアにおけるロシアの権威、地位は急速に低下し、9月中旬の上海協力機構首脳会議を境に、それは誰の目にも見えるものとなった。
中央アジア諸国は、米中ロの間をうまく泳いで、自分の利益を貫く技に益々磨きをかけている。
8月中旬、タジキスタンは米国、ウズベキスタン軍等とともに共同軍事演習を行ったが、これにロシア、中国は呼んでいない。またこの半年、カザフスタンのカザフ民族主義的傾向にロシア論壇が食って掛かることが増えていたが、9月中旬カザフスタンは、上海協力機構年次首脳会議の直前に習近平中国国家主席を招請。なんと、「主権と領土保全の尊重」で合意している。これでロシアは、うかうかとカザフスタンに手を出すことができなくなった。
さらに中央アジア諸国は7月21日の定例首脳会合で、善隣友好条約を結ぶ検討を始めた。中央アジア5カ国、あるいは最大のウズベキスタンとカザフスタンだけでもスクラムを組めば、ロシア、中国、米国などの大国に牛耳られるのを防げる。
以前なら、旧ソ連諸国間の紛争はロシアが火消し・調停することも多かったが、上海協力機構首脳会議の直前、9月12日にはアゼルバイジャンとアルメニアの間の戦闘が再燃して、200名近くが死んでいる。また9月14日には、タジキスタンとキルギスの間でも武力衝突が再燃している。
そして、これまではロシアと中国が牛耳って、反米に利用してきた上海協力機構は、勢力拡張のためにインド、パキスタン、イラン、トルコ(トルコはまだ正式加盟国ではないが、エルドアン大統領は今回首脳会議に賓客として参加して、発言までしている)などを引き込んだことで、特定の色を打ち出しにくくなった。今回の共同声明を見ると、反米の「ハ」の字もない。ウクライナ戦争への言及もなく、ひたすら経済関係の推進のことばかり述べている。
ロシアを捨て米国と修好に向かう中国
中国は以前ほどはロシアとの準同盟関係を必要としていない。それどころか、ウクライナ戦争で西側と不要に対立しているロシアは、中国にとってassetではなくお荷物になっているだろう。下手にロシアを助けると、西側に制裁を食らって経済をおかしくされてしまうからだ。
それに7月ナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問で、中国軍は1週間以上にわたって台湾を包囲する軍事演習を繰り広げたが、これにロシア軍は参加していない。ロシアに重要なウクライナ問題、中国に重要な台湾問題で、両国は具体的な関与を避けているのである。9月16日サマルカンドでの中ロ首脳会談の内容にも目ぼしいものはなく、事後の記者会見でプーチンは右会談についての記者の質問を早々に打ち切っている。
中国は、ロシアによるクリミア併合を認めていないから、今回ロシアがドネツ、ルハンスク等を「併合」しても認めまい。国連総会にロシアを非難する決議が出されれば、3月にそうしたのと同じく、これに反対することなく、棄権票を投じて逃げるだけだ。
9月21日ニューヨークでラヴロフ外相と会談した王毅・外交部長は、「ウクライナ問題は話し合いで解決してください」式の発言ですませている。調停に乗り出すくらいしてもよさそうなのに、逃げの一手なのだ。
中国の対西側諸国関係に構造的変化が起きようとしている。米中首脳会談が近く実現するかどうか、それが米中接近をもたらすかどうかはまだわからないが、日中は雪解けの方向にある。8月17日には秋葉国家安全保障局長が、中国側からの要請で訪中し、楊潔篪政治局員と7時間にもわたって会談したことがその兆候。おそらく、日中首脳会談の瀬踏みなのだろう。
10月の中国共産党党大会で、習近平念願の党主席3選が実現すれば、彼は成功の望みの小さい台湾侵攻は棚上げにして、米国・日本・NATOから強まる一方の圧力を和らげることに外交の主眼を置くだろう。
いろいろな意味で、今回のウクライナ戦争はプーチン・ロシアの弔鐘になるだけでなく、世界の枠組み変化の引き金を引いたのだ。
●米、対ロシア制裁ペース緩めず ウクライナ情勢巡り=高官 9/29
米国務省のオブライエン制裁調整官は28日、ウクライナ東・南部4州で実施されたロシア編入の是非を問う「住民投票」について、ロシアに対し迅速に経済的代償を科すため、米国は同盟国やパートナーと連携していると明らかにした。
オブライエン氏は米上院外交委員会での証言原稿で、バイデン政権が平均で6週間ごとに対ロシア制裁を発表しているペースは今後も続く見通しとし、「より多くの制裁パッケージがあり、われわれは制裁の強化に取り組んでいる」と語った。
さらに金融部門やとハイテク分野を中心に「全ての選択肢が検討されている」と述べた。
ロシアがウクライナ占拠地域に設置した当局は27日、ウクライナ東南部4州の親ロシア派支配地域で実施されているロシアへの編入を問う投票で、圧倒的多数が編入に賛成したとの集計結果を発表した。
●ロシア ドイツ結ぶパイプラインガス漏れ 破壊工作の見方強まる  9/29
ロシアとドイツを結ぶバルト海の天然ガスパイプラインで起きたガス漏れについて、ヨーロッパ側では、破壊工作が原因ではないかという見方が強まり、警戒感が広がっています。
バルト海の海底を経由してロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン、ノルドストリームについて、デンマーク軍は27日、3か所でガス漏れが確認されたと発表し、デンマークの外相は28日、「ガス漏れは爆発によるもので意図的な行為だ」と述べました。
また、EU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表も「意図的な行為」との見方を示し、ドイツのランブレヒト国防相も声明で「破壊工作の疑いがある」としてデンマーク側の調査に協力する姿勢を示すなど、破壊工作が原因ではないかという見方が強まっています。
さらに、ドイツの有力誌シュピーゲルは、アメリカのCIA=中央情報局がパイプラインが攻撃されるおそれがあるとドイツ政府に事前に警告していたと伝えているほか、ウクライナ情勢を巡りヨーロッパと対立するロシアが関与した可能性を指摘するメディアもあります。
これに対し、ロシア大統領府のペスコフ報道官は「非常にばかげている」と否定し、調査にはロシア側も参加する必要があるという考えを示しました。
ヨーロッパ側では、海底の重要インフラが損傷を受けた事態に警戒感が広がっています。
天然ガスパイプライン、「ノルドストリーム」でガス漏れが起きたことをめぐり、国連安全保障理事会の今月の議長国フランスは、ロシアの要請に基づいて対応を協議する緊急会合を今月30日に開催すると明らかにしました。
また、ロシアのポリャンスキー国連次席大使は自身のツイッターに「ノルドストリームに対する破壊工作について安保理の緊急会合を要請した」と投稿しました。
●モンゴル首相、プーチン大統領と会談、天然ガスパイプラインなど協議 9/29
第7回東方経済フォーラムに出席のためロシア・ウラジオストクを訪問したモンゴルのロブサンナムスライ・オヨーンエルデネ首相は9月7日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談した。
プーチン大統領は「ロシアとモンゴルはこれまでウランバートル鉄道(注1)、エルデネット鉱山などの大型プロジェクトを協力して成功裏に収めてきた。今後も大型プロジェクトの互恵的な協力に前向きだ」と表明した。大統領は具体例として、ロシアから中国向けに天然ガスを輸送するパイプラインの962キロをモンゴル経由で建設するプロジェクト(シベリアの力2:2020年1月6日記事参照、「モンゴル経済概況(2020年6月)」参照)を挙げ、「この案件は地域発展に重要な役割を果たすことが期待されている」と述べた。モンゴル政府発表によると、双方は同パイプラインの稼働について2029年を目指して積極的に推進することについて話し合った。
オヨーンエルデネ首相はロシアの資源大手ガスプロムのアレクセイ・ミレル会長とも会談し、天然ガスパイプライン建設について意見交換した。ガスプロムはモンゴルとロシアの合同作業部会がスケジュールどおりに進んでいることに関して、モンゴル政府の協力に謝意を示すとともに、「地域を横断して実施するこのプロジェクトが相互に利益をもたらすことを確信している」と述べた。オヨーンエルデネ首相は「天然ガスの世界的企業のガスプロムとプロジェクトを共同で実施できることは喜ばしい」と述べた。
電力分野でも、エグ川水力発電所建設の問題(注2)についてロシア側と交渉の結果、モンゴルが国連の専門家調査チームと共同で環境アセスメントを実施し、その結果を基に最終的に判断すると決定した。ロシア側はエグ川水力発電所と第3火力発電所(注3)拡張のための支援を表明した。
9月15日には、モンゴルのオフナー・フレルスフ大統領はウズベキスタンで行われた上海協力機構(SCO)加盟国拡大首脳会議に出席し、プーチン大統領、中国の習近平国家主席との3カ国首脳会談を行った。モンゴル外務省によると、会談ではモンゴル経由でロシアから中国への天然ガスパイプラインを建設するプロジェクトは3カ国協力で特に重要との認識でモンゴル・ロシア・中国が一致したという。
(注1)モンゴルの北のロシア国境から、南の中国国境までを結ぶ鉄道。モンゴルとロシアの合弁企業が経営している。
(注2)モンゴルからロシアに流入するセレンゲ川の上流にあるエグ川に水力発電所のダムを建設することについて、ロシア側がセレンゲ川の水量減少やバイカル湖の水位低下などの環境に与える影響を懸念していたことにより、エグ川水力発電所建設プロジェクトはロシア側の賛同が得られずに長年停滞していた。モンゴルでは、国内の電力供給不足と世界的な脱炭素の流れの中、石炭火力発電所以外の選択肢として、水力発電所を建設する必要性に迫られている。
(注3)第3火力発電所は社会主義時代にソ連の支援によってウランバートル市に建設された電熱併給型石炭火力発電所。民主化以降もロシアの支援で数度にわたって改修・拡張が行われている。
●「住民投票」4州トップ、ロシアへの併合正式申請…プーチン30日にも宣言へ  9/29
ロシアのタス通信などによると、ウクライナ東・南部計4州の親露派トップは28日、「住民投票」の結果、ロシアへの併合賛成が多数だったとしてプーチン露大統領に併合を公式に申請した。プーチン氏は30日にもロシアへの併合を宣言する。
ロシアのウクライナ領土の併合は2014年の南部クリミア以来。対象は東部ドンバス地方(ドネツク、ルハンスク両州)の親露派武装集団が実効支配する地域と、2月24日以降の侵略で占領した南部ヘルソン、ザポリージャ両州の一部だ。全土の約15%に当たる。
タス通信によると、プーチン氏が30日に演説して併合を宣言する方向で調整が進んでおり、露有力紙RBCによると30日夕に、モスクワの露大統領府周辺で祝賀行事も計画されている。10月4日に上院が関連法案を審議し、併合手続きを完了する日程が浮上している。
メドベージェフ前大統領は27日、併合を歓迎した上で、併合する地域が攻撃された場合の「核兵器使用の権利」に改めて言及し、ウクライナ軍を軍事支援する米欧をけん制した。
国連安全保障理事会は27日、「住民投票」を巡り緊急会合を開いた。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「偽りの投票だ」と批判し、プーチン氏との直接会談を「拒否する」と述べた。米国のブリンケン国務長官は27日の記者会見で「ウクライナには、不法に占拠された地域の奪還を含め、領土全体を自衛する権利がある」と述べ、4州奪還を支持する姿勢を鮮明にした。
●親ロシア派トップら編入要請へ 「住民投票」賛成多数受け 9/29
ウクライナ東部と南部4州のロシアへの編入の動きが加速している。
3つの州の親ロシア派などのトップが、編入を要請する書類を公表し、東部2州のトップは、プーチン大統領に会いにモスクワに向かった。
親ロシア派の発表では、4つの州で行われた住民投票の結果、3つの州で賛成票が90%を超えて、ロシアへの編入が圧倒的賛成多数になったという。
親ロシア派「ドネツク人民共和国」トップ「待ちに待った瞬間が訪れた。『ドンバスはロシアだ』と言えるようになった」
親ロシア派「ルガンスク人民共和国」トップ「『ルガンスク人民共和国』のロシア編入をプーチン大統領にご検討願う」
投票の結果を受け、3つの州の親ロシア派などのトップが、編入を要請する書類を公表し、東部2州のトップは、28日にそれぞれプーチン大統領に会いにモスクワに向かったという。
プーチン大統領は、30日にも編入を宣言する見通しで、ウクライナや欧米諸国は、一方的な併合は認められないと強く反発している。 
●ドネツクでウクライナ反攻が加速 動員令、ロシア国境で混乱 9/29
米シンクタンク、戦争研究所は28日、ウクライナ東部ドネツク州で同国軍が反攻を加速し、北部リマン周辺で領土の奪還を進めつつあると指摘した。隣接するルガンスク州の知事はリマンでの攻防がルガンスク州での反転攻勢の鍵を握ると指摘しており、大きな戦果につながる可能性がある。
ロシアが部分動員令を出して以降、国境に市民が殺到し混乱が続いている。戦争研究所は、何十万人ものロシア人が出国を試みている現状を食い止めるため、当局が国境地域への移動の制限に乗り出したと指摘。ロシアの独立系メディアは、市民の不満拡大を懸念する当局が国境を閉鎖できずにいるとした。
●「汚職大国」ウクライナに供与された支援金と武器、無駄遣いで「消失」の危険 9/29
イスラム主義組織タリバンが政権を掌握したアフガニスタンから米軍が撤退し、20年にわたる泥沼戦争にようやく終止符が打たれてから1年。アメリカはまたも、戦争中の国への軍事援助と経済援助に莫大な金額をつぎ込んでいる。今度の相手は、ロシアの侵攻と戦うウクライナだ。
ジョー・バイデン大統領の就任以来、アメリカはウクライナに136億ドルの安全保障援助を約束してきた。さらに米議会は5月に約400億ドルの追加支援法案を可決しており、今後も支援は拡大しそうだ。
アフガニスタンでの経験が手掛かりになるとすれば、これらの資金の多くが流用され、悪用され、あるいはどこかに消えてしまう可能性が高いと、専門家は指摘する。「アフガニスタンに莫大な資金を投じたときと同じことが起きている」と、米政府のアフガニスタン復興担当特別査察官事務所(SIGAR)のジョン・ソプコ特別監査官は語る。
アメリカのNGOである武器管理協会のガブリエラ・イベリズ・ローザヘルナンデス研究員も、ウクライナへの援助について特別査察官事務所が設置されれば、アメリカの資金がどこ(とりわけ安全保障の領域で)に行き着いたかを追跡する助けになるだろうと語る。
ただ、援助の規模が大きいことや、軽兵器は追跡が難しいことを考えると、実際の作業は厄介なものになるだろうとローザヘルナンデスは予想する。アフガニスタンでも、タリバンがアメリカの兵器を一部入手したし、イラクやシリアでは、現地のパートナーに提供するはずの武器が過激派組織「イスラム国」(IS)のようなテロ組織の手に渡ったことがあった。
2020年のSIGARの報告書によると、アメリカがアフガニスタン政府に供与した資金約630億ドルのうち、約190億ドルが無駄遣い、汚職、乱用に消えた(ちなみにアメリカがアフガニスタン戦争に費やした金額は計1340億ドルだ)。
ウクライナへの支援金が同じような運命をたどらないようにするためには、もっと監視が必要だと、ソプコら専門家は警告する。「これだけ莫大な資金が一つの国に急に投入されるときは、最初から監視の仕組みを構築しておく必要がある」とソプコは言う。「だが、それが今は見当たらない。通常の監督機関は忙しくて手が回らないのが現状だ」
懸念されるのは、支援金の行方だけではない。ロシアから占領地域を奪還するための戦いは市街地で展開されることもあり、アメリカ製の武器を手にしたウクライナ軍が、一般市民を巻き添えにする恐れがある。
武器が敵対国や組織に横流しされる危険
アメリカが供給した武器がウクライナ経由で、アメリカに敵対する国や組織に横流しされる危険もある。「中東のテロ組織が、ウクライナから流出したジャベリン(携帯型対戦車ミサイル)を手に入れれば、甚大なダメージになる」と、米戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・キャンシアン上級顧問は語る。
過去の失敗を繰り返さないためには、ホワイトハウスと議会の両方に、ウクライナ紛争の状況を正直に説明する超党派の手続きを設けるべきだと、専門家らは訴えている。
ウクライナに対する軍事援助や経済援助の透明性を高めるために、SIGARのウクライナ版を設置するべきだとソプコは主張する。SIGARは、アフガニスタン復興事業に使われるアメリカの資金の流れを監視する政府機関として08年に設立され、四半期ごとに米議会に報告書を提出している。こうした監視体制は、シリアなどの紛争でもモデルになるはずだとソプコは言う。
「戦争中に武器援助の流れを追跡するのは非常に難しい。小火器の場合はなおさらだ」と、ローザヘルナンデスは言う。「戦場では、軍需品の管理は貧弱になりがちだ。アメリカとウクライナ双方の政策立案者が、説明責任に重点を置く必要がある」
米議会では実際、対ウクライナ援助の流れをもっと厳しく監視するべきだという声が、民主・共和どちらの党の議員からも上がっている。ランド・ポール上院議員(共和党)は5月、上院が400億ドルのウクライナ追加支援法案を迅速に可決しようとしたとき、その手続きに反対して採決を遅らせた(ファスト・トラック手続きを利用するためには満場一致の賛成が必要になるためだ)。
チャック・グラスリー上院議員(共和党)も6月、援助の監視体制が脆弱だと声を上げた。保守派だけではない。上院軍事委員会のメンバーである民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員も、強力な監視の仕組みを確立するよう求めた。
1991年にソ連から独立したウクライナは、大掛かりな腐敗に長年苦しんできた。国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)の21年の汚職腐敗度指数(CPI)で、ウクライナはエスワティニ(旧スワジランド)と並び世界122位にランクされている。すぐ下にはガボンやメキシコ、ニジェール、パプアニューギニアといった国がランクされている。
ちなみにアフガニスタンは174位と、もっと下だ。イラクは157位、シリアは178位、アメリカは27位、ロシアは136位だ。ただし、「このランキングは、あくまで腐敗の認識を測定したものであって、実際の腐敗レベルとは違う」と、TIウクライナ支部のオレクサンドル・カリテンコ法務顧問は語る。
「このランキングは、あくまで腐敗の認識を測定したものであって、実際の腐敗レベルとは違う」と、TIウクライナ支部のオレクサンドル・カリテンコ法務顧問は語る。
カリテンコによるとウクライナの評価は、信頼に足る9つの国際機関が実施した調査結果に基づいており、前年よりも評価は下がったという。これはウクライナの「政府機関に腐敗を取り締まる常任の管理職が長年存在しなかったため、腐敗追放システムに対するプレッシャーが高まっている」からだ。
「腐敗取締特別検察庁(SAPO)の長官選びは1年以上かかった」とカリテンコは言う。「資産回収管理局(ARMA)のトップ選びも、前任者の更迭から2年近くたってようやく始まった」
問題はさらに2つある。司法改革に着手するための法的枠組みが採択されたのに、改革の実施が遅れていることと、いくつかの腐敗問題の徹底的な解決に寄与するはずの『反腐敗戦略』の議会での採択が遅れたことだ。
ロシアとの戦争も重荷だ。「戦争が続いているのに、腐敗撲滅に向けた改革を目覚ましく前進させることができると期待するのは非現実的だが」とカリテンコは言う。「今すぐにでも取り組まなければならない課題がある」
SAPOの長官は7月に任命されたばかりだし、ARMAと国家反汚職局(NABU)の責任者は選考中だ。トップの不在はウクライナにとって弱点だ。「各組織が独立性や、権限の基礎となる法的枠組みについて課題を抱えているならなおさらだ」とカリテンコは言う。
トップ人事の遅れは組織の効率性にも悪影響を与える。既に長官が任命されたSAPOでも「独立性を強化し、トップの権限を拡大し、不当な介入を受けるリスクを最小化しなければならない状況は残っている」。
航空防衛産業のコンサルティング会社スティーブン・マイヤーズ&アソシエイツの創業者で、米国務省の国際経済政策諮問委員会を務めた経験もあるスティーブン・マイヤーズも、ウクライナ支援の透明性の欠如を心配する1人だ。
「ウクライナには、支援の分配に関して説明責任を果たすための効果的な仕組みがない」とマイヤーズは本誌に語った。「懸念すべき状況なのは間違いない」
マイヤーズに言わせれば、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領率いる現政権も含む、ウクライナの過去20年間の歴代政権は腐敗の大きな問題を抱えてきた。賄賂などの違法なカネの流れが生まれがちなだけではない。「さらに深刻なのは支援を受けた軍備品や武器に関わる問題だ」と彼は言う。「戦地の指揮官が装備の一部をロシア人や中国人、イラン人といった買い手に横流しするのを防ぐ手だてがほぼない」
CSISのキャンシアンが心配するのは、腐敗の可能性や具体的な事例が、超党派で進められてきたウクライナ支援に悪影響を与えることだ。
「腐敗の実例が明らかになれば、超党派の合意に水を差すだろう」とキャンシアンは言う。「そんなことになれば深刻な影響が出る。ウクライナはアメリカとNATOからの長期にわたる高度な支援を必要としているのだから」
アフガニスタンとウクライナでは状況があまりにも違うとしながら、キャンシアンも特別査察官事務所の設置は支援の無駄遣いや不正使用の防止に役立つと考える。ただしアフガニスタンでは、SIGARの警告に耳を傾ける人はほとんどいなかったのも確かだ。
支援がなければ我々の政権は崩壊する
「アフガニスタンではどの司令官も腐敗の問題は遺憾だと言っていた」とキャンシアンは語る。「だが結局は、『支援を削減すればわれわれ(の政権)は崩壊する。支援は続けてもらわなければ困る』と言うばかりだった。ウクライナも同じような傾向にあるのかもしれない」
これまでのところ、高価なハイテク兵器の支援を求めるウクライナ政府の訴えは功を奏している。アメリカ政府は高機動ロケット砲システム(HIMARS)などの最先端の武器を供与してきた。
だが支援の増加に比例して、リスクも増えている。懸念される点は大きく分けて2つ。1つはアメリカから供与された武器がウクライナ軍ではなく、アメリカと敵対する第三者の手に渡る可能性だ。「武器に関するリスクとは、横流しの可能性だ」とキャンシアンは言う。「ジャベリンや対戦車兵器、スティンガーミサイルの一部が、ウクライナにいる誰かが第三者に横流ししたせいで、渡ってはならない勢力の手に渡ってしまうかもしれない」
第2のリスクは、アメリカが供与した兵器や武器によって民間人の犠牲が出てしまう可能性だ。侵攻開始以降、ロシアとウクライナは互いに相手の残虐行為を非難しているが、キャンシアンは「ロシア人に対してではなくウクライナ人、特にロシア語を話す人々に対して」アメリカの武器が使われるシナリオを懸念する。
ロシアが占領しているウクライナの東部や南部では、住民の多くをロシア語話者が占めている。そしてロシア政府の言う「戦争の大義」には、ウクライナ国内のロシア語話者の防衛も重点項目として掲げられている。
アメリカによる監視を強化すれば、供与された武器が必要な場所に届くのが遅れるというウクライナ側の理屈を、キャンシアンは一蹴する。「これらの(監視の)メカニズムには干渉が過ぎる印象があるかもしれないが、実際はアメリカが援助を行う際のスタンダードだ」
「アフガニスタンのときのように『この国は腐敗していて、金を出しても横取りされてしまうだけだ』という見方が出てきたら、ロシアと戦い続けるために必要な長期的な支援は消えうせるだろう」と彼は言う。
この問題について国務省の報道官は、バイデン政権はゼレンスキー政権と直接手を携え、あらゆる形の支援が必要なところに届くよう努めていると述べた。「アメリカは自国の防衛技術を守り、その横流しや違法な拡散を防ぐ責任を非常に重く受け止めている。支援に関する説明責任がしっかり果たされるよう、われわれはウクライナ政府への積極的な関与を続けている」。だがこうした言葉だけでは、さらなる透明性を伴う厳格な仕組みを求める人々を納得させることはできない。
SIGARのソプコも支援については、監視を含めて党派を超えた取り組みが大事だと考えている。「それこそが本当に必要だ」とソプコは言う。「そうでなければ、われわれは歴史のハムスターの回し車に乗って、同じ過ちを繰り返し続けることになる」
●インドの対ロ政策、距離置きつつエネルギー輸入は継続へ 9/29
インドはウクライナ戦争を巡りロシアへの対応が手ぬるいとの批判を抑えるため、ロシアから距離を置く姿勢を鮮明にしつつある。しかしロシアにウクライナ侵攻の責任を負わせるまでには踏み込んでおらず、ロシア産の安い石油や石炭を輸入する政策を変えることはないだろう。
インドはモディ首相が今月半ば、ロシアのウクライナ侵攻後初めてロシアのプーチン大統領と対面での会談を行った際、「今は戦争のときではない」と述べ、インドの立場を明確にした。
ジャイシャンカル外相も先週の国連安全保障理事会で、ウクライナ情勢を「非常に危惧」しており、核のリスクが高まっていることを「特に心配している」と述べた。
アナリストによると、わずかとはいえインドがロシアへの態度を変えた背景には、ウクライナ戦による経済的な負担の増大や、それがインドに与える影響を巡る懸念がある。
さらにインドは、ウクライナ戦争をきっかけにロシアが、インドと緊張関係にある中国に接近することを懸念していると、アナリストは指摘する。インドはロシアから距離を取ることは、ロシアに近過ぎるという欧米諸国からの批判をかわすのにも役立つと期待している。
インドの元駐ロシア大使で国家安全保障顧問会議の議長を務めるP.S.ラグハバン氏は、インドは常にウクライナでの敵対行為の終結を求めてきたが、今は公に、よりはっきりした立場を取っていると説明。「インドと中国は同じ行動をしているという言説に反論している」と述べた。
「われわれの立場は(中国とは)全く違う。やみくもにロシアを支持しているわけではない。ロシアとの間に一定の協力関係を築き、継続する必要はある。国防は最重要だが、石油も同じだ。肥料の輸入も増えている。要は、エネルギーが安く手に入るなら購入するということだ」
インドとロシアは数十年も前から密接な関係にある。インドの2018―21年の武器輸入総額124億ドルのうちロシアは55億1000万ドルを占めた。
ロシアはインドの石油輸入に占める比率が以前は小さかったが、ウクライナ戦争後に急激に高まり、今では第3位の供給国に躍り出た。ロシア産は価格が安く、インドの輸入は1年前と比べて10倍に急増。ロシア産石炭の輸入も前年比4倍に膨らんだ。
ラグハバン氏は、経済的にメリットがあるからロシアと取引しているが、だからといって「ロシアの成すこと全てに賛成しているわけではない」と強調した。
平和を支持
アナリストは、インドが対ロシア姿勢を鮮明にすることでロシアとの関係が壊れることはないと見ている。
シンクタンク、オブザーバー・リサーチ・ファウンデーションの研究者、ナンダン・ウニクリシュナン氏は「今の時点でインドはロシアと完全に決別するつもりはない」と分析。インドが兵器輸入の分散化と国産化の取り組みを進めていることに触れ、「ロシアと結ぶ橋がすぐに破壊されることはないが、橋の交通量は減るかもしれない」と述べた。
インドのジャイシャンカル外相とロシアのラブロフ外相との24日の会談後にロシアは、両外相が「相互の国益に関する問題全体にわたり二国間交流を強化する確固たる意図」を強調したと発表した。
ジャイシャンカル外相は23日の国連総会で「ウクライナ紛争が激化する中、われわれは誰の味方なのかと尋ねられることが少なくない。インドは平和の側に立ち、そこに確固として留まる」と述べたが、ロシアには直接言及しなかった。
アナリストによると、インドの最近の発信にロシアは否定的な反応を示しておらず、一方で米国からは歓迎されている。両国と戦略的な関係を持つインドにとって、外交的なバランスを取るのは必ずしも容易ではない。
アナリストによると、インドが懸念しているのは、戦争が進んでプーチン氏がさらに追い詰められた場合に、ロシアが中国に一層すり寄ることだ。
ロンドン大学東洋アフリカ研究学院の上級講師アビナッシュ・パリワル氏(国際関係学)は「中ロ関係は中国に有利な方向に傾いており、ヒマラヤ地域において(インドと中国の間で)深刻な紛争が勃発した場合、ロシアがインドの懸念に応えることはないだろう」と述べた。
●ロシア プーチン大統領 支持率8割切る 予備役動員への不安か  9/29
ロシアでプーチン大統領の支持率が、ウクライナへの軍事侵攻後、初めて8割を切ったと、独立系の世論調査機関が発表し、予備役の部分的な動員に対する国民の不安や不満の表れと受け止められています。
民間の世論調査機関「レバダセンター」が、9月22日から28日にかけて、ロシア国内の18歳以上の1600人余りを対象に対面で調査したところ「プーチン大統領の活動を支持する」と答えた人の割合は77%で、先月を6ポイント下回りました。
プーチン大統領の支持率はウクライナ侵攻後のことし3月、およそ4年ぶりに80%を超えましたが今回、侵攻後初めて8割を切りました。
また「国は正しい方向に進んでいる」と答えた人の割合は60%と、先月を7ポイント下回ったのに対し「間違った道に進んでいる」は27%と、軍事侵攻後、最も高くなりました。
調査はプーチン大統領が、9月21日に予備役の部分的な動員に踏み切った直後に行われ、レバダセンターのボルコフ所長はNHKの取材に「突然の動員発表による国民の不安や恐怖、不満の表れだ」と分析しています。
「レバダセンター」は政権から「外国のスパイ」を意味する「外国の代理人」に指定され、圧力を受けながらも独自の世論調査活動や分析を続けています。
●ウクライナ4州の親ロシア派支配地域、プーチンが「併合条約」あす調印 9/29
タス通信によると、ロシアの大統領報道官は29日、プーチン大統領が30日にモスクワの大統領府で、ウクライナ東・南部4州の親露派支配地域を一方的に併合する「条約」に調印すると明らかにした。プーチン氏は演説もする予定だ。
調印式は、モスクワ入りしている4州の親露派トップと、30日午後3時(日本時間30日午後9時)から上下両院の議員らを招いて行われる。23〜27日に実施された「住民投票」で併合支持が「多数を占めた」とする結果を踏まえたものだ。調印後、上下両院に条約の批准を求める見通しだ。
調印に先立ち、南部ヘルソン、ザポリージャ両州の親露派がウクライナから一方的に独立することも承認するとみられる。東部ルハンスク、ドネツク両州の親露派は既に独立を宣言し、プーチン氏が2月、承認していた。
30日には大統領府付近で祝賀集会も予定されており、特設ステージの設営が進んでいる。タス通信などによると、露上下両院は10月3、4両日に関連法案を審議する予定だ。米欧各国は「偽りの投票だ」などとして、併合を認めない立場だ。ロシアがウクライナ領土を併合するのは、2014年のクリミア以来となる。
一方、露独立系世論調査機関レバダ・センターは28日、プーチン大統領の支持率が77%となり、8月調査から6ポイント下がったと発表した。プーチン氏が21日に部分的動員を発令した影響とみられる。調査は22〜28日に行われた。プーチン氏の支持率が80%を割り込んだのは3月以降、初めてだ。不支持率も6ポイント増の21%となった。
ウクライナ東部ルハンスク州の知事は28日、SNSを通じ、動員で招集されたばかりのロシア兵が最前線へ投入されていると明らかにした。十分な訓練が行われていないことを示すもので、SNSでは訓練施設の劣悪な環境に関する投稿も相次いでいる。

 

●プーチン氏を止めれば最悪の結果は回避可能=ウクライナ大統領 9/30
ウクライナのゼレンスキー大統領は29日、ロシアはウクライナ戦争による最悪の結果を回避することが可能だが、そのためにはプーチン大統領を止めなければならないと述べた。
夕方の演説で、ロシア大統領府が計画しているウクライナ東南部4州の併合は予想された結果を生まないと指摘。それどころか、ロシア自身が2014年に併合されたクリミアで繰り広げられたような無法の「破滅的状況」と切り離せなくなるとした。
●ゼレンスキー氏「動員に抵抗を」、ロシア少数民族に呼びかけ 9/30
ウクライナのゼレンスキー大統領は29日、ロシア全土の少数民族に対して「恥じるべき戦争」で死ぬべきでないと述べ、ロシア政府による動員に抵抗するよう呼びかけた。
プーチン大統領による部分的動員令を受け、南部のコーカサスやシベリアなど少数民族が住む一部地域では、激しい抗議デモが起きている。部分動員では、こうした貧しい少数民族が徴兵対象になるケースが偏って多いとの指摘がある。
ゼレンスキー氏は「あなた方はウクライナで死ぬ必要はない。あなた方の息子はウクライナで死ぬ必要はない」と強調し、「誰も恥じるべき戦争に加わる義務はない」と述べた。
ロシアの調査機関iStoriesがまとめたデータによると、ウクライナ戦争の犠牲者の割合は、ロシア連邦を構成する共和国の1つでモンゴルと国境を接するブリヤート共和国と、主にイスラム教徒が住むカスピ海沿岸のダゲスタン共和国で最も多い。
ダゲスタンでは先週、徴兵反対の抗議デモで100人以上が拘束された。
●ロシア プーチン大統領 ウクライナの2州を「独立国家」署名  9/30
ロシアのプーチン大統領は29日、ウクライナの南東部ザポリージャ州と南部ヘルソン州について「独立国家」として一方的に承認する大統領令に署名しました。30日には東部の2つの州と合わせて4つの州を併合する文書に調印する構えで、ウクライナや国際社会の非難がさらに強まるとみられます。
プーチン大統領は29日、ウクライナの南東部ザポリージャ州と南部ヘルソン州についてそれぞれ「独立国家」として一方的に承認する大統領令に署名しました。
大統領令ではプーチン政権を後ろ盾とする親ロシア派の勢力が強行した「住民投票」だとする組織的な活動に触れ、「人々の民意を尊重する」と主張しています。
プーチン大統領はことし2月、ウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州も独立国家として一方的に承認する大統領令に署名しています。
ロシア大統領府は、プーチン大統領が首都モスクワのクレムリンで、30日の午後3時、日本時間の30日午後9時から式典を開くと発表していて、ウクライナの4つの州を併合する文書に調印し、演説で併合について表明するものとみられます。
8年前のウクライナ南部クリミアに続いて4つの州を一方的に併合する構えのプーチン政権に対してウクライナ政府が強く反発しているほか、アメリカやEU=ヨーロッパ連合は追加の経済制裁を科す方針を明らかにしていて、国際社会の非難がさらに強まるとみられます。
アメリカ バイデン大統領「決して認めない 完全なでっちあげ」
ウクライナの一部をロシアに併合しようとする動きについて、アメリカのバイデン大統領は29日「アメリカはウクライナの領土をロシアのものとする主張を決して認めない。『住民投票』と称するものは完全なでっちあげにすぎない」と述べ、非難しました。
そのうえで「プーチンの帝国主義的な野心にもとづいたウクライナへの侵攻は明確な国連憲章違反だ」と述べて批判しました。
●ロシア プーチン大統領「正当な理由なく動員の人は家に帰す」  9/30
ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領はみずから踏み切った予備役の部分的な動員について「誤りがあったとすれば正さなければならない」などと述べ、動員の過程で誤りがあったことを認めました。
反発や混乱が広がる中、世論に配慮する姿勢を示すことで社会の不安定化を避けたいものとみられます。
プーチン大統領は29日、首都モスクワで安全保障会議を開き、今月21日から全土で進めている予備役の部分的な動員について発言しました。
この中でプーチン大統領は持病がある人や招集の対象年齢を過ぎた人なども動員されているという情報があるとしたうえで「誤りがあったとすれば正さなければならず、正当な理由なく動員された人は家に帰さなければならない」と述べ、動員の過程で誤りがあったことを認めました。
そして「騒がず冷静に、しかし迅速かつ徹底して対処しなければならない」と強調しました。
動員をめぐってロシア国内では各地で抗議活動が起きたり招集を逃れようと市民が周辺各国へ押し寄せたりして反発や混乱が広がっていて、プーチン大統領としては世論に配慮する姿勢を示すことで社会の不安定化を避けたいものとみられます。
ロシア世論調査 動員は半数近くが「不安や恐怖」と回答
ロシアで進められている予備役の動員についてロシアの独立系の世論調査機関は、調査した人の半数近くが不安や恐怖を感じていると回答したと発表しました。
民間の世論調査機関「レバダセンター」は9月22日から28日にかけて、ロシア国内の18歳以上の1600人余りを対象に予備役の動員について対面で調査した結果を29日に発表しました。
この中で「動員についてどう感じるか」複数回答で聞いたところ、「不安や恐怖」が47%と最も多く、次いで「ショック」と「国への誇り」がそれぞれ23%、「怒りや憤り」が13%でした。
また、今後、総動員が発令されることを恐れているかという質問に対して「間違いなく恐れている」が36%、「どちらかというと恐れている」が30%で、動員の対象が国民全体に及ぶことを恐れているのは3分の2に上りました。
ことし2月のウクライナ侵攻直後に行われた調査で総動員の発令を恐れていると答えたのは合わせて28%にとどまっていて、今回、プーチン大統領が踏み切った動員によって国民の間で不安が広がっていることがうかがえます。
「レバダセンター」は政権から「外国のスパイ」を意味する「外国の代理人」に指定され、圧力を受けながらも独自の世論調査活動や分析を続けています。 
●ロシア、シリアで攻撃減少 死者最少、ウクライナ侵攻受け 9/30
在英のシリア人権監視団は30日、ロシアがアサド政権支持のためシリア国内で行っている攻撃件数が、ロシアによるウクライナ侵攻以降に減少したと明らかにした。監視団は「ウクライナでの戦争開始後、シリアでのロシアの役割が総じて減退した」と指摘している。
監視団によると、過去1年のシリアでのロシアの攻撃による犠牲者は241人で、うち28人が民間人。残りの大半は過激派組織「イスラム国」(IS)戦闘員だった。ロシアが2015年9月30日にシリアへ軍事介入してから丸7年が経過する中、1年間の死者数としては最少だった。
ロシアの軍事介入でアサド政権は劣勢を覆し、シリア内戦での圧倒的優位を固めた。過去7年間のロシアの空爆による死者は2万1000人超。民間人は8697人に達し、うち4分の1は子供という。
●民間車列に「ミサイル攻撃」 50人超死傷―ウクライナ南部 9/30
ウクライナ南部ザポロジエ州のスタルク知事は30日、ザポロジエ市郊外で民間の車列にロシア軍のミサイル攻撃があり、少なくとも市民23人が死亡、28人が負傷したと明らかにした。
スタルク氏は通信アプリ「テレグラム」で「人道支援目的の民間人の車列が攻撃された」と指摘。「犠牲になった人々は、ロシア軍が占領する地域に親族を迎えに行ったり、援助物資を届けたりするために車で列をつくっていた」と語った。
ウクライナのティモシェンコ大統領府副長官はテレグラムで、車列の場所に16発のミサイル攻撃があったと主張。現場映像を投稿し、軍事的目標はないとして「非道だ」と訴えた。
ロシアの独立系英字紙モスクワ・タイムズによると、ザポロジエ州の親ロシア派当局者は、ミサイル攻撃を「ウクライナのテロだ」と主張し、ロシアの関与を否定した。
このほか、南部ミコライウでもロシア軍のミサイルが9階建ての集合住宅を直撃。崩壊した建物の下敷きになるなどして複数の負傷者が出たという。
●ロシアの動員令、実は100万人?プーチン氏の大統領令に非公開の項目 9/30
敗北に次ぐ敗北――。ウクライナの一部戦線で追い詰められたロシアのプーチン大統領が9月21日、ついに動員令を発動した。
国民総動員ではない「部分的動員」だが、それで戦況を変えられるのか。「本気」を見せたプーチン氏に、ロシア人はどう応じるのか――。
ロシア軍は9月、ウクライナ北東部ハリキウ州の占領地を次々とウクライナ軍に奪還された。南部ヘルソン州でも部隊が補給路を攻撃され、数万の兵員が孤立の危機と戦っている。「動員令」発動の背景にはそうした苦戦がある。
プーチン氏はこれまで「(ロシアは)まだ本気を出していない」「まだ全ての力を出していない」などと発言してきただけに、動員令を出したことでようやく「本気」になった格好だ。
大本営発表ばかりだったロシアメディアも「本気モード」に切り替えた。敗北の本当の様子を伝え、国民に戦いを呼びかけ始めたのだ。
ロシア紙「コムソモーリスカヤ・プラウダ」(9月21日)は次のように報じた。
「動員令は状況が良くない時に発動される。(プーチン氏の)目標達成のためには、現有兵力が足りないことを認めざるをえない。戦いは(攻撃ではなく)『防衛』のフェーズに入った。前線で決定的に不足しているのは、歩兵の射撃手、操縦手、砲兵の照準手だ。複数の旅団(約4千人)で、歩兵が60人しかいなかった例がある。ある連隊では突撃兵が6人しかいなかった」
しかし、動員令はロシア国民にとっては「晴天のへきれき」だったようだ。若者らが全土で抗議活動をした。独立系ロシア語メディア「7×7」はYouTubeで彼らの声を紹介した。
「僕はプーチンのために死ぬつもりはない」(シベリアのノボシビルスク市で)
「ロシアの若者が戦場へ駆り出されるのが良いことですか?」(ロシア中南部のペルミ市で)
権力側は対抗し、「反動員」を訴えたモスクワの若者に赤紙(召集令状)を送付した。人権派弁護士チコフ氏はSNSのTelegramで「召集令状が初日から反戦運動を抑えこむ手段になった」と投稿した。
各地の若者らの抗議集会も当局が押さえこみ、初日だけで38都市で1400人が逮捕された。
ロシア人が受けたショックをロシア語メディア「ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」は次のように書いた
「テレビで見ていただけの戦争が『画面から自分の家庭に飛び込んでくる』と突然ロシア人は気づいた」
動員逃れのため海外へ逃げたロシア人は数万人にのぼった。中央アジア・カザフスタンへ車で逃げた43歳の男性は「プーチン支持が本物なら、みんな逃げないさ。(プーチンの)国民への愛情なんてテレビ番組の中だけの嘘っぱちだ」と話した。
ロシアのショイグ国防相は動員数を「30万人」と述べたが、多いのか少ないのか。ウクライナでの戦争に詳しい独立系民間調査組織CITは次のように評価する。
「ロシア陸軍の職業軍人の数は15万人から18万人の間。仮に30万人が陸軍に加わるとすると、規模は3倍になる。ロシア軍の前線防衛には十分で、(ロシアが大敗した)ハリキウ州の再現は防げるようになる。西側はウクライナへの軍事支援を拡大しなければならないだろう」
動員は30万人にとどまらない、との指摘もある。10項目ある大統領令のうち、動員数を規定した第7項が非公開にされたからだ。
ロシア語メディア「ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」はクレムリン(ロシア大統領府)筋の話として、第7項目に書かれた動員数は「100万人」だと伝えた。国防相の言う「30万人」を額面通り受け止めることはできない。
部分的動員でなく「全面動員」ではないか――。実際、そんな声がロシアの地方を中心に広がっている。
問題になっているのは「深夜のノック」だ。法律上、郵送での召集令状送付は認められず、自宅などで手渡ししなければならない。極東ブリヤートでは、深夜の自宅訪問がしばしば起きている。ドイツ国営メディアDW(9月23日)はブリヤートの人権活動家の言葉を伝えた。
「朝の3時、4時にまで訪問してくる。動員がいかに『全面的』か分かります。しかも、赤紙を渡しに来るのは、教師たちなのです」
教師が駆り出されているのは、召集令状を扱う徴兵事務所だけでは人手が足りないためだ。ブリヤート以外の地域でも、午後11時に女性教師が対象者宅を訪ね、その母親が抗議する様子がTelegramに投稿されている。
「前線に行くのは年寄りばかりじゃないか」。モスクワのチコフ弁護士は9月23日、SNSでこう皮肉った。召集令状が高齢者にも渡されているためだ。
「今日、軍務経験のない男性58歳(極東ヤクート)、元軍曹61歳(西部サマラ)、元中尉55歳(西部ボルゴグラード)、元大佐63歳(モスクワ)に召集令状が渡されたという。極東ウラン・ウデでは60代の年金生活者たちがバスで徴兵手続きに連行された」
9月22日、ロシア中部に住む20代の複数の女性看護師がTelegramで「軍務経験がないのに、召集令状が来た。応じないと裁判にかけると脅された」と訴えた。看護兵は前線で最も不足している兵種だ。そのため、「無差別的な徴兵」が行われている可能性がある。
仏教徒のブリヤート人など少数民族がすむ地域で優先的に動員が行われている可能性がある。ロイター通信(9月23日)は次のように伝えた。
「ブリヤートの人権活動家は『首都モスクワで抗議活動を広げないため、動員の比重は、少数民族の住む貧しい地方が高くなっている』と怒る。ウクライナで死んだ兵士の数を見ても地方偏重がある。ブリヤートがロシアで2番目に多い259人、南部のイスラム教地域ダゲスタンが最も多い277人。それに対しモスクワは10人だ」
そのダゲスタンの徴兵事務所前に9月22日、数十人の男性が抗議に詰めかけた。地元メディア「チェルノービク」がTelegramで次のように伝えた。
男たちが「(今の戦いは)政治家のためやっていることだ」「何のために戦うのか」との声をあげた。
徴兵事務所職員が「未来のための戦いだ」と答えると、「我々は『今』でさえよくない、未来って何のことだ」。
さらに別の男が「今、敵が迫っているのか」と聞くと、職員は「まだ、ない」と述べ、答えに窮した。
地方の知事たちは釈明に追われた。SNSなどで次のように述べた。
ダゲスタンの首長は「(動員令で)皆さんが不安や苦悩をいだいていることは分かっています。しかし、今は団結すべき時なのです」。
ブリヤートの首長は「病気の人など70人に誤って召集令状を渡した。善処します」(中高年についての言及はなかった)。
ウラジオストクが州都の沿海地方の知事は「動員で企業・農業・消防が働き手を失うことを私は理解している。私の部下の公務員も150人が徴兵事務所へ出頭した。兵士を送り出すのに豪華な花火はいらない。招集令状が来た家庭に喜びはないからだ」。
「豪華な花火」とは、この11日前、モスクワで、市創設記念日を祝う花火大会があったことを皮肉っている。
「動員逃れ」はロシアでは刑法違反だ。CITや人権派弁護士は、「今の状況では、警察官などが対象者を連行して動員の手続きをさせるケースも出てくるかもしれない」と指摘した。
そうした人権無視の動員などを監視する、兵士のための人権擁護団体がロシアに10ほどある。その一つ、「アゴラ」には動員令が出た日だけで6千件の相談があった。
ロシア軍内部の人権侵害の情報は少なくない。ウクライナに派兵された将兵の家族からの通報を、ロシア語メディア「メドゥーザ」(8月24日)が次のように伝えた。
「ロシアのある大きな地方で活動する兵士の母親委員会には、本格侵攻の2月以来、400件の訴えがあった。最も多いのは『ウクライナに行った息子や兄弟と連絡が取れなくなった』というものだ」
記事では兵士の家族の声を次のように紹介している。
兵士の母親「2月、息子から、小銃を渡されて今から戦場に送られる、と電話があった。それきり連絡がない」
別の兵士の母親「2月に息子から電話が来たきり連絡が途絶えた。戦友から息子は死んだ、部隊の40人中、生き残ったのは15人だ、と聞かされた」
将校の妻「夫ともう2人の将校が6月16日、(自称)ルガンスク人民共和国で軍の命令を遂行できないとして、除隊を申し出た。すると、手錠をはめられ、ロシアの私兵集団ワグネルに身柄を引き渡された」
メドゥーザによると、この団体が救えたのは何人かの将兵にすぎず、多くの兵士の運命は不明のままだ。
こうまでしてロシア人が戦う大義を、政権側はどう説明するのか。ロシアの著名な軍事ジャーナリストは部分的動員令についてコムソモーリスカヤ・プラウダ紙に対し、こう述べた。
「私は数カ月前、NATOの直接的関与の兆候を知り、この紛争は『実存』をかけたものだと分かった。ロシアが力をセーブしていては、西側諸国とは戦えないのだ」
プーチン大統領は「動員演説」でやはり「反西側」を強調した。ロシア・エリートの間では、「もはやウクライナとの戦争ではなく、西側との戦争だ」という論調が強まっている。ロシアが先に倒れるか、西側が先か、それがプーチン流の「実存」の意味だ。
ロシア兵の士気の低さは幾度も指摘されてきた。今回、反戦派の若者や、高齢者にまで「赤紙」を渡し、囚人さえ動員する動きがある。
プーチン氏の抽象的なアジテーションが彼らの戦意を高め、戦争がロシア優位に傾く可能性はあるのか。
民間調査組織CITは「動員兵を訓練する必要があるかもしれず、数カ月様子を見るべきだ」と指摘する。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は「今年は変化は起きない。来年も不透明だ」と述べ、こう警告する。
「ロシアが様々な地方で死に物狂いの動員をかけることは、社会的緊張を悪化させかねない。すでに地域による(戦争の犠牲の)不平等性が問題化しているからだ」
●プーチン氏、戦闘停止と交渉再開求める 9/30
ロシアのプーチン大統領は30日、ウクライナのゼレンスキー政権に対し、直ちに戦闘を停止し、交渉の席に着くよう求めた。
●「米は日独韓いまだ占領」 プーチン氏、原爆も言及 9/30
ロシアのプーチン大統領は30日の演説で「米国はいまだにドイツや日本、韓国を事実上占領している。指導者たちが監視されていることを全世界が知っている」と述べ、同盟関係が対等でないと批判した。
プーチン氏は、これらの国の指導者が米国に対し「奴隷のように沈黙し、不満もこぼさずに野蛮な行為を受け入れている」と指摘。そうした振る舞いは「恥ずべきだ」と断じた。
また「米国は2度にわたり核兵器を使った世界で唯一の国で、日本の広島や長崎を破壊した」とも述べ、核兵器使用の「先例」をつくったと批判した。
●「永遠に私たちと同じ国民になる」プーチン大統領 ウクライナ4州“併合宣言” 9/30
ロシアのプーチン大統領がクレムリンで演説し、ウクライナ4州の併合を一方的に宣言しました。
プーチン大統領「ロシア国民、ドネツク、ルガンスク、ザポリージャ、ヘルソンの皆様、議員、議長。投票が行われて、結果はご存じの通りです。ドネツク、ルガンスク、ザポリージャ、ヘルソンは自分たちではっきりと選択しました。数百万人の人民の意志です。ソ連はもうありません。でも戻る必要はありません。彼らは永遠に、私たちと同じ国民になります。キーウ政権に2014年から続く戦争行為をやめ、交渉につくよう言います。キーウは彼らの意志を尊重しなければいけない。それが平和につながる」
EU(ヨーロッパ連合)は即座に声明を出しました。
EU「ロシアはウクライナの独立・主権・領土保全を露骨に侵害しました。違法な併合を断固として拒否し非難します」
●プーチンのロシアと共に「敗れる」日本―残る希望は若者達? 9/30
結論から言えば、遅かれ早かれ、プーチン大統領は、ウクライナ侵攻で敗れることになる。あまりに多くのものを失い、ロシアも国家的な危機を迎えることになるだろう。そして、この戦争を契機に世界は大きく変化していく。その変化の動きに、日本がついていけるのか。この国における論議の貧困さを観ていると、日本自体もかなり危ういと言える。
既に「詰んでいる」プーチン
プーチン大統領は、既に「詰んでいる」ことを自覚するべきだ。部分動員で何十万人もの兵士を戦地に送ったとしても、ロシア軍の士気は極めて低い上、兵站、つまり兵器などの戦争に必要な物資の供給が不足している状況は変わらない。欧米等の経済制裁で、ロシア国内での生産力は落ちており、それは兵器工場も例外ではないからだ。一方で、ウクライナ軍は欧米諸国、特に米国から無尽蔵とも言える軍事支援を受けており、数で勝るロシア軍相手に善戦を続けている。プーチン大統領は核兵器の使用も示唆し、ウクライナや世界を脅そうとしているが、ロシア側が勝手に始めた侵略戦争で核兵器まで使えば、国際社会の反発はこれまでとは次元の違うものとなるだろう。ウクライナ侵攻で、どちらかと言えばロシア寄りの立場をとり、プーチン大統領が頼る中国も、ロシアが核兵器を使用すれば、かばうことは難しいだろうし、中国自体も難しい立場に置かれることになる。
例え、ロシア軍がさらなる攻勢をかけ、ウクライナでの戦闘を優勢なものにしたとしても、ロシアの抱える本質的な問題は変わらない。それは、ロシア経済が石油や天然ガス、石炭等の地下資源に依存したもので、かつ、それらの資源の最大の買い手がEU諸国であるということだ。ロシアの輸出相手国をみると、全体の約半分近い44.7%がEU諸国向けである(関連情報)。そのEU諸国に対し、愚かにもプーチン大統領はエネルギー危機を助長するような揺さぶりをかけている。それによってEU諸国は断固たる「エネルギーの脱ロシア化」を進めているのだ。
加速する欧州の脱ロシア
EUの立法・行政機関である欧州委員会は、ウクライナ侵攻を受け、今年5月に新たなエネルギー政策として、「リパワーEU」をまとめた。これは、
・再生可能エネルギーへの移行の加速
・エネルギー確保の多角化、天然ガスの脱ロシア依存
・省エネの推進
を柱とするもので、それ以前に温暖化対策として決定していた分も含め、2030年までに最大で3000億ユーロ(約40兆円)の投資を行うとしている。
とりわけ、再生可能エネルギーへの移行の加速では、「現在の2倍以上となる320ギガワット*以上の太陽光発電を2025年までに新設。2030年までに約600ギガワット分の新設を目指す」との目標を掲げている。これを可能とするため、住宅や商業施設等への太陽光発電パネルの設置を段階的に義務化するという。 さらに、再エネ由来の水素の生産を、2030年までに、現行目標の約2倍となる年間約1,000万トンに引き上げるとともに、同量をEU域外から輸入。さらに、2030年までに350億立法メートル分のバイオガスの生産を目指す。これらの対応策により、現在、年間で約1550億立法メートルのロシア産天然ガスへの依存から脱却するというのだ(関連情報)。確かに、現在のEUにおけるエネルギー危機は深刻であるが、中長期的には、脱炭素社会・経済を実現する動きを強力に推し進める要因となっているのだろう。
*1ギガワットは大型原発一基分の電力に相当。
ルサンチマンに溺れる日本の末路は?
正に生存をかけたEUの脱ロシア化への本気度に比べ、日本の動きは鈍い。ウクライナ危機は、石油や石炭、天然ガスといった化石燃料を国外に依存することの危うさを改めて突きつけ、実際に日本経済・社会も原油・ガス等の価格高騰の影響を受けている。だが、そうした事実を踏まえ、エネルギー安全保障を考えなおす建設的な論議よりも、EUの再生可能エネルギー推進や電気自動車の開発・普及へのルサンチマン(弱者が強者に対して抱く恨み・妬み・嫉み)に溺れた主張が蔓延しているのは残念なことだ。とりわけ、保守系の新聞、雑誌系、ネットメディアでの論議のレベルは低く、醜悪ですらある。つまり、「EUの脱炭素は失敗だった」的な主張だ。それでなくとも、この期に及んでなお、日本政府が原発や火力発電に依存し続けるエネルギー政策に固執する中で、それを助長するようなメディアでの論議は、世界的な脱炭素の潮流から、ますます日本を孤立させることとなり、それは日本経済や社会にとって、とてつもない損失をもたらす。
希望は若者達?
EUの苦しみを揶揄するだけで、その先駆的な取り組みから学ぶこともなく、現状維持を正当化しようとする日本の言説を見聞きすると、これだから日本は「失われた〇〇年」を更新し続け、衰退の一途をたどっているのだろうと暗澹たる気持ちになるのだが、希望もある。それは、若者達の行動だ。10代、20代の若者達が参加する「350NewENEration」は、現在、GENESIS松島計画見直しのため、パブリックコメントを送るキャンペーンを行っている。
この、GENESIS松島計画とは、電源開発株式会社(J-Power)が、長崎県西海市のある旧式の石炭火力発電所に、石炭をガス化する発電設備を付け加え「効率を改善」することで、今後も使い続けようとするものだ。だが、同計画で抑制されるCO2排出はわずかにすぎず、天然ガスによる火力発電と比較して2倍以上の排出係数となることには変わりはない。昨年の温暖化対策の国連会議COP26では、温暖化による破局的な影響を防ぐため、「主要経済国は2030年代に石炭火力発電所を全廃する」という国際合意が40カ国以上の賛成でまとまったが、GENESIS松島計画はこうした世界の脱炭素の流れに逆行する。そこで、350NewENErationは「石炭ゾンビ」というサイトを立ち上げ、上述のGENESIS松島計画見直しパブコメの募集や、識者メッセージの紹介、勉強会の開催を行っている。
これらの若い世代の意識や活動は、ルサンチマンに溺れる古臭いメディアでの論議とは対照的だ。ロシア軍によるウクライナ侵攻は、現地の人々にとっては勿論のこと、世界にとっても大変な悪影響を及ぼしているが、このピンチは独裁者の横暴を挫き、温暖化の破局的な影響を防ぐための社会・経済を変革するチャンスでもある。日本の大人達も、若者達の姿勢に学び、応援すべきなのだろう。
 
 

 

●「勝利はわれわれのものに」 プーチン氏、赤の広場で演説 10/1
7か月に及ぶ軍事侵攻をへてウクライナ4州の併合を宣言したロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は9月30日、首都モスクワ中心部の赤の広場(Red Square)で開かれた集会で、数千人の国民を前に演説し、「勝利はわれわれのものになる!」と宣言した。
プーチン氏はウクライナ4州の住民に対し「ロシアは私たちの兄弟姉妹に故郷の扉を開くだけでなく、心を開く。おかえり!」と語り掛けた。
●勝利を期し「万歳」三唱 祝賀集会でプーチン氏 10/1
ロシアのプーチン大統領は30日夜、ウクライナ東・南部4州併合を強行後、モスクワの「赤の広場」で祝賀コンサートとして開かれた「官製集会」に登壇した。動員された群衆に向かって「歴史的な日」「真実と正義の日」と自賛。現地で戦う兵士をたたえた上で、会場から届くように「ウラー(万歳)」と叫ぶよう提案し、3回唱和した。
スピーチでは「ロシアがウクライナをつくった」という歴史観を披露。ロシア帝国の後にソ連が成立し、崩壊したことで今のウクライナが生まれたという理屈だ。プーチン氏は、ソ連崩壊時に民意は問われなかったが「今になってロシアが選択の機会を提供した」「住民は歴史的な祖国であるロシアと一緒にいることを選択した」と述べた。国際社会から偽物と批判される「住民投票」の正当性を訴えた。
●プーチン氏「何百万人もの意思だ」…ウクライナ4州の一方的な「併合」宣言  10/1
ロシアのプーチン大統領は30日、モスクワの大統領府で、ウクライナ東・南部4州の親露派トップらを集めて演説し、4州の一方的な併合を宣言した。その後、トップらと4州を併合する「条約」に調印した。2月に始まったロシアのウクライナ侵略は、4州を自国領土として既成事実化を図るロシアに対し、ウクライナが領土奪還を加速させるという新たな段階に入った。
プーチン氏が併合を宣言したのは、親露派の支配地域がある東部ドネツク、ルハンスク両州と南部ヘルソン、ザポリージャ両州だ。4州には親露派やロシア軍が占領していない地域があるが、「条約」では4州全土を併合の対象としている。
プーチン氏は演説で、9月23〜27日に4州で強行した「住民投票」の結果を根拠に、4州からの併合要請が「何百万人もの人々の意思に基づくものだ」と述べ、一方的な併合を正当化した。4州については、「ノボロシア(新ロシア)」と表現し、歴史的なロシア領土だと主張した。
プーチン氏は今後、憲法裁判所に併合が合憲か否かの判断を仰いだ上で、議会に「条約」の批准を求める。上下両院は10月3〜4日に併合に必要な法案を審議する。
ロシアがウクライナ領土を一方的に併合するのは2014年3月の南部クリミア以来だ。ロシアが兵士動員を進め、4州の支配を固めれば、ウクライナが4州を攻撃した場合、「自国領土」への攻撃とみなし、「核による反撃」で抑止する恐れがある。米欧が反発をいっそう強めるのは必至の情勢だ。
●プーチン大統領 ウクライナ4州「併合条約」に署名  10/1
ロシアのプーチン大統領は、日本時間の9月30日の夜、モスクワのクレムリンで行われた式典で、ウクライナの東部や南部の4つの州について、ロシアが併合すると定めた「条約」だとする文書に署名しました。プーチン大統領が一方的な併合に踏み切ったことで、国際社会から一層非難が強まるのは確実です。ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は、日本時間の9月30日の夜9時すぎからモスクワのクレムリンで行われた式典で演説しました。この中でプーチン大統領は、▽ウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州、▽南東部ザポリージャ州、▽南部ヘルソン州の合わせて4つの州で強行された「住民投票」だとする活動について「住民は、自分たちの選択を行った。この地域に住む人々は永遠にロシア国民だ」などと述べ、ロシアがウクライナの4つの州を併合することを一方的に宣言しました。そして、演説のあと、4つの州にいる親ロシア派勢力の幹部とともに、ロシアが併合すると定めた「条約」だとする文書に署名しました。一方、プーチン大統領は演説の中で、併合の正当性を強調したうえで、「われわれはウクライナに即時停戦し、交渉のテーブルに戻ることを求める。われわれの準備はできている。しかし、4つの州の人々による選択について議論の余地はない。ウクライナは、この地域の住民の選択を尊重すべきで、これが唯一の平和への道となり得る」と述べ、ウクライナ政府に対して交渉に応じるよう迫りました。また、「われわれは、あらゆる力と手段を講じてロシアの領土を守る」とも述べ、核戦力を念頭にウクライナや欧米をけん制したものとみられます。アメリカやEU=ヨーロッパ連合は、追加の経済制裁を科す方針を明らかにしていますが、強硬な姿勢を崩さないプーチン大統領は、8年前、ウクライナ南部のクリミアを併合したのに続いて、再び力による一方的な現状変更に踏み切ったもので、国際社会からいっそう非難が強まるのは確実です。
岸田首相 ツイッターで強く非難
岸田総理大臣は、みずからのツイッターに「ロシアによるウクライナの一部地域の『編入』を強く非難します。これは、ウクライナの主権と領土一体性を侵害し、国際法違反であり、決して認められません。力による一方的な現状変更の試みは看過できず、ロシアが侵略を直ちに止めるよう改めて強く求めます」と、日本語と英語で投稿しました。
林外相「国際法に違反する行為 強く非難する」
ロシアのプーチン大統領の署名を受けて、林外務大臣は9月30日の夜談話を発表し、「ウクライナの主権と領土の一体性を侵害し、国際法に違反する行為であり、決して認められてはならず、強く非難する。武力によって領土を取得しようとする試みにほかならず、無効であり、国際社会における法の支配の原則に正面から反する」としています。その上で、「力による一方的な現状変更の試みを決して看過できず、引き続きロシアに対し、即時に侵略を停止し部隊をロシア国内に撤収するよう改めて強く求め、 G7=主要7か国をはじめとする国際社会と連携しながら強力な対ロ制裁とウクライナ支援の2つの柱にしっかり取り組んでいく」としています。
米大統領「この併合にはまったく正当性がない」
ロシアによる一方的な併合について、アメリカのバイデン大統領は30日、声明を発表し「ロシアは国際法に違反し、国連憲章を踏みにじった。この併合にはまったく正当性がない。アメリカは国際的に認められたウクライナの国境を常に尊重していく」と非難し、併合を認めない考えを示しました。そのうえで「ロシアを非難し、責任を取らせるよう国際社会を結集させていく。アメリカはウクライナが自衛のために必要なものを提供し続ける」として、今後も軍事支援を続けていくと強調しました。
英首相「さらなる制裁を科すことを含め行動する」
イギリスのトラス首相は30日、ロシアによる一方的な併合に関する声明を発表し「プーチン大統領は、ウクライナを併合するという脅迫で、国際法に再び違反している。われわれはさらなる制裁を科すことを含め、ちゅうちょせず行動する」と非難しました。イギリス外務省が発表した追加の制裁では、ロシアの産業にとって不可欠な数百の商品など、およそ700品目について輸出を禁止したほか、イギリスのITシステムの設計を含むコンサルティングや法律顧問などの分野で、ロシア向けのサービスを停止するとしています。そのうえで「侵攻が始まって以来、ロシアから17万人以上のIT専門家が国外に逃れていることから、これらの措置はロシアの能力をさらに減退させる」と、追加制裁の効果を強調しています。
仏大統領府「ともにロシアの侵略に立ち向かう」
フランス大統領府は30日、声明を発表し「ロシアによる非合法な併合を強く非難する。これは国際法とウクライナの主権に対する重大な侵害だ。フランスはウクライナが自国の領土全体で完全に主権を回復できるよう、ともにロシアの侵略に立ち向かう」としています。
EU「違法な併合 決して認めない」
EU=ヨーロッパ連合は9月30日、声明を発表し、ロシアによる一方的な併合を非難しました。声明では、「ルールに基づく国際秩序を損ない、独立や主権、領土の一体性といったウクライナの基本的な権利をはなはだしく侵害することで、ロシアは世界の安全を危険にさらしている。われわれはこの違法な併合を決して認めない。すべての国と国際機関にも受け入れないよう求める」としています。そして、「ウクライナには、国際的に承認された国境内で占領された地域を解放する権利がある」としたうえで、今後もロシアへの制裁を強化し、ウクライナへの経済的、軍事的な支援を続けていくと強調しました。
NATO事務総長「違法に土地を奪う行為だ」
NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は30日、ベルギーの本部で記者会見を開き、今回のロシアによる一方的な併合について「違法に土地を奪う行為だ。NATOの加盟国は今も、そしてこれからも、これらの地域をロシアの一部だとは認めない」と非難しました。そのうえで「ロシアが戦うことをやめれば平和が訪れるが、ウクライナが戦うことをやめれば独立した主権国家として存在できなくなってしまう。われわれはロシアの侵攻に対して、ウクライナが戦い続けるかぎり、支援していく決意だ」と強調しました。
イタリア 右派党首「新たな帝国主義的な価値観示すものだ」
イタリアで先月(9月)行われた議会選挙の結果、上下両院で第1党となった右派政党「イタリアの同胞」のメローニ党首は30日、ロシアによる一方的な併合に関するコメントを出しました。この中で、「暴力的な軍事占領下で実施された偽の国民投票を経て行われた併合は、法的にも政治的にも価値がない。ヨーロッパ大陸全体の安全保障を脅かす、新たな帝国主義的かつソビエト的価値観を、改めて示すものだ」として、ロシアのプーチン大統領を名指しで批判しました。メローニ党首は、10月中旬以降首相に就任する見通しで、ともに連立を組む複数の政党の党首がロシアに融和的なことなどから、ロシア寄りの政権になるのではないかと懸念されていました。
●ウクライナ戦争犯罪記録者に授与 「もう一つのノーベル賞」  10/1
「もう一つのノーベル賞」と呼ばれるスウェーデンの「ライト・ライブリフッド賞」の運営財団は9月30日までに、ウクライナの民主化に貢献し、ロシアによる侵攻の中で戦争犯罪を記録し続けるウクライナ人女性を今年の受賞者の1人に選んだと発表した。財団は「活動は戦争犯罪と人権侵害を記録する上での模範を示している」と強調した。
受賞したのはオレクサンドラ・マトイチュクさん(38)とマトイチュクさんらが率いる人権団体「市民自由センター」。
賞は1980年に創設され、人権擁護や環境保護などでの貢献を顕彰している。
●ウクライナがNATO加盟申請へ、ゼレンスキー氏表明… 10/1
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は30日、ロシアによる東・南部4州の一方的な併合宣言を受け、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を正式に申請する方針を表明した。ウクライナは、加盟を激しく嫌うロシアを刺激しないよう早期加盟を事実上断念していたが、方針転換を図ることになる。
ゼレンスキー氏は、30日に緊急開催した国家安全保障国防会議で方針を決めたと説明した。会議では、プーチン露大統領とは協議せず、ロシアからの領土奪還を継続する方針なども決めた。
●国連安保理 「住民投票」非難する決議案 ロシアの拒否権で否決  10/1
国連の安全保障理事会では、ウクライナの東部や南部で行われた「住民投票」だとされる活動を違法だと非難し、ロシアによる一方的な併合などの根拠にはできないとして、ロシア軍の即時撤退を求める決議案をアメリカなどが提出しましたが、ロシアが拒否権を行使して否決されました。
決議案は、アメリカとアルバニアがまとめたもので、ウクライナの東部や南部の4つの州で親ロシア派の勢力が行った「住民投票」だとする活動を違法行為だと非難したうえで、ロシアによる一方的な併合を含む領土の変更の根拠にすることはできないとしています。
また、各国に対してロシアによるウクライナ領のいかなる変更も認めないことを求め、ロシア軍に対してウクライナからの即時撤退を求めています。
採決は30日、日本時間の10月1日午前4時から開かれた緊急会合で行われ、理事国15か国のうち10か国が賛成しましたが、中国、インド、ブラジル、ガボンが棄権し、ロシアが拒否権を行使して、決議案は否決されました。
採決に先立ちアメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は、「ロシアは武力によって他の国の一部を併合しようとしており、国際社会は断じて認めない」と厳しく非難したのに対し、ロシアのネベンジャ国連大使は、「住民は投票を通じて自由な選択をした。後戻りはありえない」と強く反発しました。
アメリカはこのあと、同様の決議案をすべての国連加盟国が参加できる国連総会にも提出する方針ですが、国連の場でロシアの動きに歯止めをかけることは難しくなっているのが実情です。
●シカゴ小麦 反発=米生産見通し下げ、ウクライナ懸念で 10/1
反発。米農務省が米国産小麦の生産予想を大幅に引き下げたことや、ロシアによるウクライナの一部併合を受けた。
中心限月12月きりの清算値(終値に相当)は25.25セント高の921.50セント。一時7月11日以来の高値となる945.75セントまで上昇した。
週間ベースでは4.66%上昇と、9月9日以来の大幅な伸び率だった。
米農務省は今年の小麦生産高を16億5000万ブッシェルと従来予想から下方修正した。アナリストの平均予想は17億7800万ブッシェル。
ウクライナ情勢の緊迫化も支援材料だった。ロシアのプーチン大統領は30日、ウクライナ東部・南部4州の占領地での「住民投票」を受け、この地域の併合を宣言。西側諸国は住民投票は強制されたもので、住民の意思を代表していないと反発した。
●G7外相 ロシアによる併合「最も強いことばで非難」追加制裁へ  10/1
ロシアによる一方的な併合を受けて、G7=主要7か国の外相らは、日本時間の10月
1日に声明を発表し、「可能なかぎり最も強いことばで一致して非難する」として、ロシアに対し追加の制裁を科すことを表明しました。
声明では、「ロシアによるウクライナに対する侵略戦争とウクライナの主権と領土の一体性に対する継続的な侵害に対し、可能なかぎり最も強いことばで一致して非難する」としています。
そのうえで、「『併合』と称されるものも、銃を突きつける中で行われた偽りの『住民投票』も決して認めない。すべての国に対し、武力により領土を取得しようとする試みを明確に非難するよう求める」としています。
そして、「ロシアに政治的・経済的な支援を提供する個人や団体に対し、さらなる経済的コストを課す」として、ロシアに対し追加の制裁を科すことを表明しました。
さらに、ロシアに対し、直ちに軍事侵攻を止めてウクライナからすべての軍を撤退させるよう求めるとともに、ロシアが今回、一方的な併合に踏みきった4つの州と、8年前に一方的に併合した南部のクリミアについて、ウクライナの不可分の一部だと再確認したとしています。
●ウクライナ軍、東部リマンでロシア軍を包囲「進軍補給に使うルートを押さえた」 10/1
ウクライナのゼレンスキー大統領は30日、東部ドネツク州北部の要衝リマンに言及し、ウクライナ軍が東部で「重要な成果」を上げたと述べた。
ウクライナ国防省はこの日、ウクライナ軍がリマン北東10キロの地点にあるドロビシェベ村を制圧したと表明。リマンはウクライナ軍が今月に入り反転攻勢を加速させてから、両軍の新たな戦闘の中心地となっていた。
ゼレンスキー氏はビデオ演説で「東部で重要な成果があった。リマンで起きていることは周知の通りだ」とし、「こうした動きはウクライナにとって大きな意味を持つ」と述べた。ただ、詳細は明らかにしなかった。
これに先立ちウクライナ軍の報道官は公共放送で、リマンでロシア軍を包囲していると表明し、「敵の進軍、弾薬などの補給に使うルートは全て事実上(ウクライナ軍が)押さえている」と述べていた。
東部の親ロシア派組織「ドネツク人民共和国」を率いるデニス・プシリン氏は、リマンがウクライナ軍に半ば包囲されており、前線からの報告は「憂慮すべきもの」と発言。SNS(交流サイト)への投稿で、ロシアへの正式編入を前に「ウクライナ軍は、この歴史的な出来事を黒く塗り潰そうと全力で取り組んでいる」としていた。
●「住民投票」非難の決議案否決 10カ国賛成もロシア拒否権―国連安保理 10/1
国連安全保障理事会(15カ国)は9月30日、ウクライナ情勢をめぐる緊急会合を開き、ウクライナ東・南部4州で親ロシア派が強行した「住民投票」を非難する決議案を採決に付した。採択に必要な9カ国を上回る米英仏など10カ国が賛成したが、常任理事国のロシアが拒否権を行使し廃案となった。
中国、インド、ブラジル、ガボンの4カ国は「対話」を重視する姿勢を示し、棄権した。ロシアのウクライナ侵攻に絡み、安保理でロシアが拒否権を行使したのは、侵攻直後の2月、ウクライナからの軍即時撤退を要求する決議案の採決以来、2回目。
米国とアルバニアが作成した今回の決議案は、住民投票が「違法」であり「併合を含め(4州の)地位のいかなる変更の根拠となることもできない」と強調。4州のロシア編入は無効だとして、加盟国や国際機関に対して承認しないよう求めていた。
ロシアのプーチン大統領は会合に先立つ30日、親ロ派と「編入条約」に調印。各理事国からは「ウクライナの主権の深刻な侵害だ」(ガーナ)、「平和的解決をより困難にする」(アラブ首長国連邦)などと批判が相次いだ。
否決を受け、米国などは2〜4月に開いた国連総会の緊急特別会合を再招集し、改めて非難決議案の採択を目指す。総会決議は安保理決議と異なり法的拘束力を持たないが、全193加盟国で構成する総会の場でロシアの責任を追及し、孤立を際立たせたい考えだ。
●プーチン氏の動員令後、ロシア離れた国民は20万人以上 10/1
ロシアのプーチン大統領がウクライナでの兵員補充を狙う部分的な動員令を先月21日に発動した後、ジョージア、カザフスタンや欧州連合(EU)圏内へ出国したロシア人はこれまで20万人以上に達したことが10月1日までにわかった。
ロシアの隣接国を含む様々な国のデータ集計で判明した。先月29日時点での数字となっている。
カザフスタン内務省幹部によると、カザフスタンへ越境したロシア人は9月の第4週では約10万人を記録した。同国国営の通信社カズインフォルムが伝えた。
ジョージア内務省のデータによると、9月21〜26日の間に入国したロシア人は少なくとも5万3136人だった。
欧州国境沿岸警備機関(FRONTEX)のまとめでは、9月19〜25日の間にEU加盟国に渡航したロシア人は約6万6000人で、その前の週と比べ30%以上増えていた。
今回集計したデータには、モンゴルとアルメニアの分は含まれていない。この2国にも過去数日間、ロシア人の到着が確認されていた。
動員令の発動以降、ロシアでは国を離れた国民の人数に関する公式データは公には出ていない。
最大で30万人規模ともされる動員令はロシア国内での抗議活動の発生や国民の国外脱出にもつながっていた。英国防省は最近、動員令を回避するため他国へ渡ったロシア人はウクライナ軍事侵攻に駆り出された兵士の人数をおそらく上回るとの分析結果を示してもいた。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は、動員令の発表後に出国を選んだロシア人の人数は承知していないと指摘。ロシアのメディア「ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」は最近、大統領府筋の情報を引用し、ロシア連邦保安局(FSB)は計26万1000人と報告したと伝えた。
●「ロシアには永遠に戻りたくない」兵役逃れで隣国ジョージアにロシア人殺到… 10/1
ロシアでは予備役の部分的な動員が発表されたあと、国外へ脱出する人が急増しています。隣国・ジョージアには1日1万人ものロシア人が入国し、混乱も起きています。
兵役逃れ隣国に殺到「永遠に戻りたくない」
ロシアとジョージアの国境付近には兵役を逃れようと出国する男性や家族が殺到し、1日に1万人のロシア人がジョージアに入国しているといいます。
ロシアから入国した男性「若者がロシアを離れるのはプーチンのために戦争に参加したくないから」
中には徒歩や自転車で国境を超える人たちも。現地メディアによると、ロシア側で出国希望者に5万ルーブル(約12万円)で自転車を売っている事例もあるといいます。
こちらのロシア人夫婦は幼い子供2人を連れて避難してきたといいます。
ロシアから入国した男性「ロシアでは何もかも厳しくなるばかり。全く先が見えない」
この後、親戚が住んでいるアルメニアに行くとのことですが…
――将来ロシアに戻ろうと思いますか?
ロシアから入国した男性「戻らないと思う永遠に。もう戻りたくない」
一方的な併合 隣国ジョージアの市民の声は?
国山ハセンキャスター「国境取材を終え、現在は首都トビリシに戻った西村記者に聞きます。ジョージアの人々はプーチン大統領の演説をどのような思いで聞いたのでしょうか?」
西村匡史記者「ジョージアは14年前にロシアに軍事侵攻された国であるだけに、今回の「併合強行」について多くの国民が、自分の国の出来事のように怒りを感じていました。」
ジョージア市民「ジョージアとウクライナでやったように(プーチン大統領は)占領できると思っているが、それはとても古い考えだ」
ジョージア市民「ロシアの多くの人がこの戦争が正当だと思っていて領土を取り戻していると言っている」
西村匡史記者「ジョージアをめぐっては2008年にロシアが一方的に独立を承認し軍を駐留させているジョージア北部の南オセチアでロシアへの編入を目指す動きがあるなど、多くのジョージア国民にとってウクライナで起こっている出来事は他人事ではありません。」
私が先ほど市民から話を聞いた場所は1989年にソ連からの独立を目指すデモで殺害された市民を慰霊するモニュメントの前です。ここには現在のロシアのウクライナ侵攻で犠牲になったウクライナ軍の兵士とともに戦ったジョージア軍の兵士を慰霊する写真が置かれていました。今回の「併合強行」は南オセチアの問題などを抱えるジョージア人にとっても大きな衝撃をもって受け止められていました。
●焦りの「強制併合」プーチン蟻地獄=@「部分動員」「無策」で求心力低下 10/1
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は9月30日、モスクワのクレムリン(大統領府)で上下両院議員らを前に演説し、ウクライナの東・南部4州の併合を一方的に宣言した。軍事作戦が劣勢のなか、拙速な併合に走ったプーチン氏に焦りの色もうかがえる。ロシア国内に熱狂はなく、予備役の部分的動員への反発から求心力低下は隠せない。専門家は「プーチン氏は蟻地獄に陥っている」と指摘する。
「運命はロシアと共にある。住民は永遠にロシア人になる」と演説で語ったプーチン氏。4州の親露派代表と「併合条約」に調印し、ウクライナに直ちに戦闘を停止し、交渉の席に着くよう求めた。一方で、4州の併合は譲れないと強調し、全土奪還を目指すと表明しているウクライナとの対話による紛争解決は一層困難になった。
米国のジョー・バイデン大統領は、声明で「主権国家の領土を不正に併合しようとしている」と非難。米英両政府はロシア中央銀行のエリヴィラ・ナビウリナ総裁に対する資産凍結などの制裁措置を発表した。
自由主義陣営が認めるはずもない荒唐無稽な「併合」をなぜ急いだのか。筑波大名誉教授の中村逸郎氏はプーチン氏の演説からこう分析する。
「ロシアの伝統や文化を強調し、欧米への敵対姿勢を打ち出すことで国内の結束を図る狙いがあったのだろう。だが、軍事作戦は劣勢で、併合を『戦果』として強調できなかったことが最大の弱みだ。軍事作戦の終了にも踏み込めず、新しい政策もなかった。プーチン氏の無策は国民の不安に拍車をかけるだけになった」
4州では9月23〜27日にロシア編入を求める「住民投票」と称する活動を実施、親露派はいずれも87〜99%の高い率で支持されたと主張している。ただ、投票は公正に行われたものではなく、4州のうち、親露派支配地域はドネツク州が約60%、ザポロジエ州で約70%に留まっている。
元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は「編入地域を『ロシア本土』とすることで、国民を動員して第一線の兵士を確保したり、戦術核を使う口実にしたり、西側諸国の武器供与を渋らせる狙いがあるだろう」とみる。
だが、プーチン氏は、21日に30万人規模の予備役の部分的動員令を発した以降、国内で苦境に立たされている。
大規模な抗議活動のほか、関係施設で放火や、銃撃事件にまで発展した。動員を逃れるために旧ソ連諸国などへの脱出も加速しているが、現地の独立系メディアでは、市民の不満拡大を懸念する当局が国境を閉鎖できずにいると伝えるなど、収束に手を焼いているようだ。
クレムリンのサイトによると、プーチン氏は29日に開催された国家安全保障会議で動員の過程に言及し、「市民から多くの情報が寄せられる。すべての問題は修正され、将来、発生するのを防ぐ必要がある」と事実上誤りがあったことを認めた。
露独立系世論調査機関「レバダ・センター」が9月22〜28日に1631人を対象に実施した調査では、「プーチン氏の活動を支持する」と答えた人は77%。これでも高い数字ではあるが、侵攻開始以後3月から8月まで82〜83%だったのが、前月調査から6ポイントも減らしたのは注目に値する。
ロシア国民が暴徒化も
前出の中村氏は「ジョージア国境などで脱出できず、立ち往生している国民が暴徒化する可能性もある。地方では反戦の動きが強く、プーチン氏と政権内の強硬派との間でも意見の食い違いがある。これらの勢力が『反プーチン』を旗印に組み、クーデターが起こる可能性は常に残される」と語った。
戦況も厳しさを増している。ウクライナ軍の激しい反攻が続く東部ドネツク州では、同軍が北部リマン周辺で、複数の方向から領土の奪還を進めつつあると米シンクタンクの戦争研究所が分析した。リマンは5月に親露派が完全掌握した地域で、ロシア軍の重要な拠点だ。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は30日、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を正式に申請すると表明したが、戦況にどう影響するか。
前出の渡部氏は、ゼレンスキー氏の狙いについて「プーチン氏の国内向けな荒唐無稽な主張を実力で『有名無実化』する戦略だ。今後も反転攻勢の動きを加速させるだろう。プーチン氏は蟻地獄にますます落ち込んでいく」との見解を示した。
●死ぬために動員されるロシア新兵たち...「現場」は違法行為で無秩序状態に 10/1
ウラジーミル・プーチン露大統領は30日、モスクワのクレムリンで上下両院議員らを前に演説し、占領するウクライナの東部ドネツク、ルハンスク、南部ザポリージャ、ヘルソン計4州(ウクライナ国土の約15%)の併合を宣言した。最大100万人を徴兵できる予備役動員を正当化し、エネルギー危機を悪化させ、米欧とウクライナを分断させる持久戦に持ち込む狙いがある。
ロシア国営通信社タス通信によると、4州で9月23〜27日に行われたロシア編入を求める住民投票で「ドネツク人民共和国」は99.2%(投票率97.5%)、「ルハンスク人民共和国」は98.4%(同94.2%)、ザポリージャ州93.1%(同85.4%)、ヘルソン州87.1%(同78.9%)の支持を得た。投票結果を受け、各州の親露派はプーチン氏にロシアへの編入を要請した。
これに対し、ウクライナ側は「民意の捏造だ」と反発し、国連のアントニオ・グテーレス事務総長も「いわゆる『住民投票』は紛争中にウクライナの憲法や法律の枠組みの外で行われたもので、真の民意ではない。 武力の威嚇や行使により、他国の領土を併合することは国連憲章と国際法に違反する。危険なエスカレーションだ」と厳しく非難した。
プーチン氏はこの日の演説で「ドネツク、ルハンスク両人民共和国、ザポリージャ、ヘルソン両地域の数百万人の選択の背景には私たちに共通する運命と千年の歴史がある。人々は精神的な絆を子や孫に受け継いできた。彼らはロシアへの愛を貫き通した。この感覚は誰にも壊されない。ソ連最後の指導者はわが偉大な祖国を引き裂き、ソ連はなくなった」と語った。
「部分動員」発表から大量のロシア人が国外脱出
「過去は取り戻せない。文化、信仰、伝統、言語によって自分たちをロシアの一部と考え、何世紀にもわたって一つの国家で暮らしてきた祖先を持つ何百万人の決意ほど強いものはない。本当の歴史的な故郷に帰ろうという決意ほど強いものはない」。プーチン氏は4州を併合した後、キーウ政権にすべての敵対行為を停止し、交渉のテーブルに戻ることを求めた。
「特別軍事作戦に参加する兵士と将校、ドンバスとノヴォロシア(黒海北岸部)の兵士、部分動員令の後に愛国的義務を果たすため軍隊に参加し、心の叫びから自ら軍の登録と入隊のためやって来た人々に語りかけたい。彼らの両親や妻や子供たちに、誰が世界を戦争と危機に投げ込み、この悲劇から血まみれの利益を得ているのかと言いたい」(プーチン氏)
クリミア半島とロシア本土を結ぶ「陸の回廊」が完成すれば戦略的な意義は大きい。しかしヘルソンでウクライナ軍に押し込まれているプーチン氏は政治的にこの戦争に勝利する道しか残されていない。4州をいったんロシアに併合してしまえば、領土割譲禁止を明記したロシア憲法に基づき、不人気な部分動員に関して領土防衛のためという大義名分が成り立つ。
プーチン氏は9月21日、国民向けビデオ演説で核兵器による威嚇を改めて行うとともに、予備役30万人の動員を表明した。英国防情報部は29日「プーチン氏が『部分動員』を発表してから1週間で招集を逃れようとするロシア人の国外脱出がかなりあった。2月にロシア軍が展開した部隊全体(推定約13万人)の規模を上回る可能性が高い」とツイートした。
大混乱を極める動員現場
「国外脱出組には裕福な人や高学歴の人が多く含まれる。動員される予備役と合わせると労働力の減少や『頭脳流出』加速による国内経済への影響は一段と大きい」(英国防情報部)。活動停止に追い込まれた露独立系メディア「ノーバヤ・ガゼータ」のジャーナリストによる「ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」は部分動員で最大100万人の徴兵が可能だと伝える。
子供の多い父親や持病のある人、すでに招集年齢を過ぎている人が徴兵されたり、医師や他の高度な専門家がライフル部隊に入隊させられたり、動員現場は大混乱を極めている。プーチン氏自身、29日の安全保障会議で混乱を認めざるを得なかったほどだ。こうした「違法動員」は多くの地域で起こり、被害者家族の悲惨な体験は口コミで一気に拡散している。
米シンクタンク、戦争研究所(ISW)は「クレムリンはロシア国民を落ち着かせながら、戦い続けるために十分な人数を動員する困難な仕事に直面している」と指摘する。ウィリアム・バーンズ米CIA(中央情報局)長官は「目標の30万人が動員できても後方支援を確保できず、新しく動員された兵士に十分な訓練と装備を提供することもできない」と言う。
ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ紙によると、ロシアの最貧共和国の一つで、すでに300人近い戦死者を出したダゲスタンでは徴兵制廃止とウクライナに出兵している家族と連絡が取れるよう求める反戦集会が開かれた。抗議の意思表示として高速道路も封鎖された。部分動員とは言ってもダゲスタン共和国の小さな村にとっては「総動員」に等しい。
無益な攻勢のため死ぬ運命にある消耗品
英国の戦略研究の第一人者でイラク戦争の検証メンバーも務めた英キングス・カレッジ・ロンドンのローレンス・フリードマン名誉教授は最新の有料ブログで「『キャノン・フアダー(大砲の餌食)』は無益な攻勢や露出した陣地の防衛のために死ぬ運命にある消耗品としての新兵のことを言う」と書いている。
現在ではウクライナでの危険な戦いに駆り出される不幸なロシア兵を表現する言葉として使われる。プーチン氏が部分動員を発表するや否やツイッターに「#キャノン・フアダー」というハッシュタグが立った。動員の狙いは軍の慢性的な人手不足を解消することにある。しかしロシア軍は兵士を指導できる将校の大半を失ってしまったとフリードマン氏は指摘する。
「ナチスとの戦いでヨシフ・スターリンは『量は質をもたらす』と語った。しかし大砲を備えた防御陣地への量の攻撃は『大砲の餌』を作り出す。その一方で防御に使えばウクライナの反攻計画を複雑にし、ロシア軍がすでに十分に潜伏している地域の攻略を難しくする可能性がある。ロシア軍司令部はより多くの兵員を投入して時間を稼ごうとしているのだ」
バルト海を通ってロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1、2」でガス漏れの発生が相次いでいる。エネルギー価格の高騰でイタリア総選挙ではかつてプーチン氏を称賛した右派3党の連合が勝利し、発足したばかりのトラス英政権がダッチロール状態に陥った。戦争が長引けば長引くほど欧州では厭戦気分が強くなるのは避けられない。
「ボルシチに入れる肉にウジがわいた」
しかしプーチン氏最大の応援団であるロシア国営放送の女性記者は動員がいかに無秩序に行われているかを伝え、1905年に黒海艦隊の戦艦ポチョムキンで起きた反乱に言及した。日露戦争の余波で起きたこの反乱はセルゲイ・エイゼンシュテイン監督の映画『戦艦ポチョムキン』(1925年公開)で描かれ、日本でも有名だ。
「ボルシチに入れる肉にウジがわいたと乗組員が抗議すると医者は食べても全く問題ないと言い放った。乗組員がスープの不味さを訴えたところ、艦長に撃たれた。艦長は海に投げ込まれ、乗組員は艦を乗っ取る。『腐った肉はもうたくさんだ』という叫びから反乱は始まった。小さな不満が大きな怒りと絶望を呼び起こすことがある」(フリードマン氏)
戦艦ポチョムキン・モーメント(瞬間)が来るのが早いか、欧州の厭戦気分ががまんの限界を超えるのが早いのか。厳しい冬を前にしたこの数週間が文字通り、勝負の分かれ目になる。結果を急いで無理に攻めれば、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領もプーチン氏と同じ轍を踏む恐れがある。
●ロシアはソ連の再興目指していない プーチン氏 10/1
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は9月30日、大統領府で開かれたウクライナ4州を併合する式典で、ソビエト連邦の再興は目指していないと述べた。
プーチン氏はテレビ中継された同式典で「ソ連はもう存在しない。過去を取り戻すことはできない。ロシアはもはやソ連を必要としていない。われわれはソ連を目指していない」と述べる一方、ソ連末期の指導者らが「われわれの偉大な国を破壊した」と非難した。
プーチン氏はまた、西側諸国がロシアを「植民地」扱いしたがっていると主張。「欲に駆られて、自分たちの力を制約を受けずに維持しようとしている。それこそが、西側諸国がわが国に仕掛けているこのハイブリッド戦争の真の狙いだ」「西側諸国にとってロシアは不要な存在なのだ」と訴えた。
さらに「西側諸国は、他国に寄生する新植民地体制を維持するためなら何でもしようとしている。事実、世界中か