岸田首相の再出発

岸田首相

所信表明 
言葉の並べ替え 追加 削除
耳触りの良いお題目 中身なし
お手本はアベノマジック

争いごとのない日本 平和ボケ
毎日お昼寝 不勉強 静かな忖度メディア
言葉尻遊び 野党 喚くだけ

あいかわらず 借金膨らます
めざせ 借金大国ですか
後は野となれ山となれ 「財政健全化」放置 先送り 忘却 死語に

少子高齢化 
労働人口減少で 
GDP低下 当たり前
経済規模の縮小 当たり前

昔の日本 好景気
それなりの労働人口
世界トップレベル 物づくり技術を磨いていました
もう 昔話 思い出です

新しい経済構造の構築 求められています
今の 物づくり技術 普通 中 並 特徴なし
人材劣化 背景のひとつ ゆとり教育
現在の政治劣化 下地作り安倍政権 野党は死滅
これからも 無策なら 日本沈没

国の行先  ・・・ 不明 ・・・
 


岸田首相 所信表明演説はじめに経済社会外交安全保障・結び・・・
10/2310/2410/2510/2610/2710/2810/2910/3010/31・・・
11/111/211/311/4・・・
 
 
 
  
 

 

 
 
 
 

 

 
 
 
 
 

 

●岸田首相 所信表明演説 10/23
 
 
 
 

 

はじめに 〜変化の流れをつかみ取る〜
第二百十二回臨時国会の開会にあたり所信の一端を申し述べます。
日本国内閣総理大臣として、私の頭に今あるもの、それは、「変化の流れを絶対に逃さない、つかみ取る」の一点です。
岸田内閣は、防衛力の抜本的強化、エネルギー政策の転換、次元の異なるこども・子育て政策をはじめ、時代の変化に応じた先送りできない課題に一つ一つ挑戦し、結果をお示ししてきました。
今後も、物価高をはじめ国民が直面する課題に、「先送りせず、必ず答えを出す」との不撓不屈の覚悟をもって取り組んでいきます。
最初につかまなければならない変化の流れは、「経済」です。
三十年来続いてきたコストカット経済からの変化が起こりつつあります。
この変化の流れをつかみ取るために、持続的で構造的な賃上げを実現するとともに、官民連携による投資を積極化させていく。
「経済、経済、経済」、私は、何よりも経済に重点を置いていきます。
変化の流れは、社会にも起きています。
人口減少、とりわけ生産年齢人口の減少が進む一方で、デジタル化等によってそれを補って余りある生産性の向上を図る余地が増えています。
この変化をチャンスに変えていくためにも、少子化対策とあわせてデジタル化を徹底的に進めます。
そして、変化の流れは、外交・安全保障にも起きています。
ベルリンの壁崩壊以降進んだグローバル化は平和と繁栄の基盤となりました。
しかし、世界は分断と協調が複雑に絡み合う新たな時代に入っており、国際社会においてこれまで以上に結束が求められています。
日本は、国際情勢を踏まえ、柔軟に対応しつつ、自らの防衛力を強化し、米国やその他同志国、そして、グローバルサウスの国々との連携を密にしていきます。
明治維新、戦後復興、高度成長。
日本は、国の内外で起こった大きな時代の変化の流れをつかみ取り、個々の国民の「力」に変え、歴史に残る大きな社会変革を実現してきました。
そして、今、我々は再び歴史的な転換点に立っています。
本会議場に集う、国会議員の皆さん、百年後に振り返って、この国会が変革への大きなうねりを生み出した、そのように後世から評価されるよう、共に挑戦しようではありませんか。
 
 
 
 

 

二 経済・経済・経済
「変化の流れをつかみ取る」ための「一丁目一番地」は経済です。
日本経済は、三十年ぶりの変革を果たすまたとないチャンスを迎えています。
このチャンスをつかみ取るために、私は過去に例のないような大胆な取組に踏みこむ決意です。
この三十年間、日本経済はコストカット最優先の対応を続けてきました。
人への投資や賃金、さらには未来への設備投資・研究開発投資までもが、コストカットの対象とされ、この結果、消費と投資が停滞し、更なる悪循環を招く。
低物価・低賃金・低成長に象徴される「コストカット型経済」とも呼び得る状況でした。
しかしながら、三十年ぶりに新たな経済ステージに移行できる大きなチャンスが巡ってきました。
コロナ禍での苦しかった三年間を乗り越え、経済状況は改善しつつあります。
三十年ぶりの三・五八%の賃上げ、過去最大規模の名目百兆円の設備投資、三十年ぶりの株価水準、五十兆円ものGDPギャップの解消も進み、税収も増加しています。
その一方で、国民負担率は所得増により低下する見込みです。
この前向きな動きが続けば、新たな経済ステージへの移行が現実のものとなります。
物価上昇を乗り越える構造的な賃上げと脱炭素やデジタルなど攻めの投資の拡大によって消費と投資の力強い循環が本格的に回り始めます。
「低物価・低賃金・低成長のコストカット型経済」から「持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済」への変革です。
「コストカット型経済」からの完全脱却に向けて、思い切った「供給力の強化」を、三年程度の「変革期間」を視野に入れて、集中的に講じていきます。
新しい経済ステージに向けた確かな息吹が生まれてはいるものの、国民の消費や投資動向は力強さに欠ける状況にあります。
外生的な物価上昇が急激に生じたため、足下の賃上げが物価上昇に追い付いていません。
変革を加速する力強い後押しを早急に行わなければ日本経済は、三年程度の「変革期間」どころか、これまでの状況に後戻りしてしまうリスクを抱えています。
しかし、私は、断じて後戻りは許さない。
変革を力強く進める「供給力の強化」と不安定な足下を固め、物価高を乗り越える「国民への還元」。
この二つを「車の両輪」として総合経済対策を取りまとめ、実行してまいります。
   供給力の強化
今回の総合経済対策の第一のポイントは、「供給力の強化」です。
GDPギャップが解消に向かう中、「供給力の強化」のための対策に軸足を移します。
半導体や脱炭素のように安全保障に関係する大型投資をはじめ、特に二年から三年以内に供給力強化に資する施策に支援措置を集中させ、「変革期間」の呼び水とします。
さらに、賃上げ税制を強化するための減税措置や、戦略物資について初期投資だけでなく投資全体の予見可能性を向上させる過去に例のない投資減税、特許などの所得に関する新たな減税制度、人手不足に苦しむ中堅・中小企業の省力化投資に対する補助制度をはじめ、抜本的な供給力強化のための措置を講じていきます。
突発的なエネルギー価格の高騰に備え、省エネ・脱炭素投資の更なる拡大を図ります。
また、AI、自動運転、宇宙、中小企業の海外展開などの新しいフロンティアやイノベーションへの取組、スタートアップへの支援を強化します。
経済活動の基盤である金融資本市場の変革にも取り組みます。
資産運用業とアセットオーナーシップの改革を進めるとともに、金融リテラシーの向上等に向けて関連法案の今国会での成立を目指します。
あわせて、三位一体の労働市場改革、企業の新陳代謝促進、物流革新など、生産性を引き上げる構造的な改革を進めます。
成長と分配が持続的に回っていく、物価上昇を十分に超える持続的賃上げが行われる経済を目指していきます。
さらに、十月から先行して開始した「年収の壁・支援強化パッケージ」について、今後「百六万円の壁」に近づく可能性のある全ての方が壁を乗り越えられるようにするため、十分な予算上の対応を確保します。
   国民への還元
経済対策の二つ目のポイントは、「国民への還元」です。
急激な物価高に対して賃金上昇が十分に追いつかない現状を踏まえ、「デフレ完全脱却のための一時的緩和措置」として、まず、現世代の国民の努力によってもたらされた成長による税収の増収分の一部を公正かつ適正に「還元」し、物価高による国民の御負担を緩和いたします。
同時に、長年にわたって染みついていたデフレマインドからの転換を今こそ行動に移すよう関係者に強く呼びかけていきます。
なお、還元措置の具体化に向けて、近く政府与党政策懇談会を開催し、与党の税制調査会における早急な検討を、指示します。
その際、物価高に最も切実に苦しんでおられる低所得者の方々の不安に配慮し、寄り添った対応を図ることが極めて重要です。
多くの自治体でこの夏以降低所得者世帯に対して一世帯当たり三万円を目安に支援を開始してきました。
この物価高対策のための重点支援地方交付金の枠組みを追加的に拡大することとし、経済対策に盛り込みます。
エネルギー価格の上昇については、九月には、年内の緊急措置として、リッター百七十五円をガソリン価格の実質的な上限とするため補助を拡大しました。
この措置を電気・ガス料金の激変緩和措置とあわせて来年春まで継続します。
また、地方自治体が地域の実情に応じてきめ細かく生活者や事業者を支援できるよう、先ほど申し上げた枠組み以外の重点支援地方交付金も追加します。
コロナ禍で国民負担率は高止まりしましたが、成長の成果もあって低下する見込みです。
その低下を確かなものとし、岸田内閣として国民負担率をコロナ禍の水準に後戻りさせることなく、高齢化等による上昇に歯止めを掛けます。
そのためにも所得の増加を先行させ、税負担や社会保障負担を抑制することに重きを置いて経済財政運営を行います。
  
 
  
 

 

三 社会
   社会の変化
日本社会も、大きな変化を迎えています。
人口減少と、国民のニーズの多様化・複雑化に応える新たな地域の仕組みを作り上げていかなければなりません。
   デジタルと社会
デジタル技術は、社会課題を新たなアプローチで解決する「力」を持ちます。
新型コロナ対策の「デジタル敗戦」を二度と繰り返さない。
デジタル化への変化の流れを確実につかんでいかなければならない。
「誰一人取り残さない」デジタル化を実現する。
こうした思いで、「マイナンバーカードの早期普及」、「デジタル田園都市国家構想」を進めてきました。
この固い決意の下に、アナログを前提とした行財政の仕組みを全面的に改革する「デジタル行財政改革」を起動します。
人口減少の下でも、これまで以上に質の高い公共サービスを提供するために、子育て、教育、介護などの分野でのデジタル技術の活用を、利用者起点で進めます。
地域交通の担い手不足や、移動の足の不足といった、深刻な社会問題に対応しつつ、ライドシェアの課題に取り組んでまいります。
私自ら、現場で奮闘する各分野の方々の生の声を聞いて、制度設計にいかします。
規制・制度の徹底した改革、EBPMを活用した予算事業の見える化にも取り組み、社会変革の実現、それを支える令和版の新たな行財政の構築を目指します。
あわせて、マイナンバー制度に対する国民の信頼回復に向けて、原則として十一月末を目途に総点検を終えるよう、政府を挙げて対応しています。
   包摂的な社会づくり
障害のある方もない方も含めて、全ての方が生きがいを感じられ、多様性が尊重される、包摂的な社会づくりに取り組みます。
特に、「女性」、「若者」、「高齢者」の力を引き出していきます。
前例のない規模で政策強化を図った「こども未来戦略方針」のスピード感ある実行のため、当面の集中的な取組に必要な制度設計を速やかに具体化し、できるところから取組を実施してまいります。
前倒しによる各種施策の実施を検討し、我が国のこども一人当たりの支援規模をOECDトップの水準に引き上げていきます。
「こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ」に基づく取組を加速するとともに、不登校やいじめに対する対策を強化します。
また、教職員の処遇見直し等を通じた公教育の再生にも取り組みます。
認知症の方が尊厳、希望を持って暮らすことができる社会、身寄りのない方も含めて高齢者の方々がお一人でも安心して年を重ねることができる社会を創らなければなりません。
新たに、「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」を立ち上げ、「認知症基本法」の施行に向けた準備を行うとともに、レカネマブの薬事承認による新たな時代の到来を踏まえ、必要な早期発見、検査・医療サービス等が提供される体制整備や治療薬の更なる研究開発を進めます。
あわせて、住まいの確保や入院・入居時の身元保証など高齢者の生活上の課題に取り組みます。
また、現場で働く方々の給与に関わる公定価格の見直しを進め、高齢化等による事業者の収益の増加等が処遇改善に構造的につながる仕組みを構築します。
引き続き新型コロナへの対応に万全を期し、花粉症についても、発生源対策、飛散対策、発症・曝露対策を一体的に推進し、国民の皆様の負担軽減に向けた取組を進めます。
   地方創生
観光は地域振興のエンジンです。
コロナ禍を越え、多くの観光地で賑わいを取り戻しつつあります。
しかし、一部の地域や時間帯に観光客が集中することで生じる混雑、マナー違反、担い手不足等のオーバーツーリズムの問題も顕在化しています。
持続可能な観光業に向けた対策にも着手します。
また、地方創生と社会課題解決を両立させる、循環経済への取組も進めます。
持続的な食料の安定供給に向け、食料安全保障の強化、農業のスマート化・グリーン化の推進を図ります。
あわせて、ホタテの品目別輸出促進団体を早期に認定するなど、市場拡大に向けて、農林水産物・食品の輸出促進に強力に取り組みます。
農政の基本は現場にあります。
今後も各地域に寄り添い、現場の方々の想いを受け止めながら、農政を転換し、実践的な支援を行ってまいります。
地方創生を支える中核は地域の中小・小規模事業者です。
持続的な賃上げが可能となるよう、省人化投資やデジタル投資の支援、賃上げ費用の転嫁対策を強力に進めます。
あわせて、ゼロゼロ融資について、現場の状況をしっかり踏まえて、適切な対応を促します。
総理に就任してから二年間、私は全国津々浦々を訪ね、約六十回の車座対話を含め、国民の皆さんと直接、意見交換をしてきました。
人口減少や過疎化などに悩む中でも、多くの方が、それぞれの現場で明日に向かって懸命に努力されています。
皆さん、政治の役割とは、そういう現場の方々を全力で支えることにあるのではないでしょうか。
地方こそ日本の宝、底力です。
皆さん、今こそ、共に、地方創生に力強く取り組もうではありませんか。
   福島復興と国土強靭化
「東北の復興なくして、日本の再生なし」。
引き続き強い決意で被災地の復興に取り組み、帰還困難区域における避難指示解除や解除後の復興も着実に進めます。
今年は、線状降水帯等により、各地で被害が発生しました。
こうした教訓を踏まえ、線状降水帯の予測の高度化など、デジタルの力を国土強靭化に導入します。
リニア中央新幹線の整備に向けた環境を整え、災害時も途切れない広域交通ネットワークの構築を進めます。
また、沖縄の離島地域をはじめ、電力供給の強靭化に資する電線地中化を加速します。
   大阪・関西万博
ポストコロナの中で初めて開かれる2025年大阪・関西万博については、海外パビリオン建設の遅れなど進捗状況が厳しくなっていることに強い危機感を持って、オールジャパンで進めていきます。
 
 
 
 

 

四 外交・安全保障
   国際環境の変化と岸田外交
外交・安全保障も、大きな変化を迎えています。
「ポスト冷戦時代」は終わり、新たな時代へと大きな変化の流れが起きています。
ロシアのウクライナ侵略、イスラエル・パレスチナ情勢をはじめ、世界各地で深刻な事態が多発し、日本周辺においても、一方的な現状変更の試みや、北朝鮮の核・ミサイル開発は続けられ、安全保障環境は戦後最も厳しいものになっています。
こうした時代、変化の流れをつかみ取るため、岸田外交では法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序をさらにもう一歩進めます。
「人間の尊厳」という最も根源的な価値を中心に据え、世界を分断・対立ではなく協調に導くとの日本の立場を強く打ち出していきます。
   岸田外交の積極的展開
政権発足から二年間、唯一の同盟国たる米国との関係深化、日韓関係の改善、強力なウクライナ支援、対ロシア外交の大転換を進め、そしてG7広島サミットでは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守っていくというメッセージを、G7の枠を超えて、世界に向けて力強く発信しました。
食料危機、気候変動や感染症などのグローバルな危機により、最も甚大な影響を受けるのは、脆弱な立場に置かれた国や人々です。
我が国は、国際社会で影響力を増しているグローバルサウスの声に耳を傾け、絆を基盤として、経済活動の深化とともに、日本らしいきめ細かい協力を行っていきます。
本年は、日・ASEAN関係五十周年の節目です。
年末の日・ASEAN特別首脳会議では、次の五十年を描く新たな協力ビジョンを打ち出し、成長センターであるインド太平洋をけん引していきます。
また、核軍縮をめぐる状況が一層厳しいものになっている今だからこそ、唯一の戦争被爆国として、「核兵器のない世界」を目指す歩みを主導しなければなりません。
「ヒロシマ・アクション・プラン」に沿って現実的で着実な努力を積み重ねます。
中国との関係について私は、「建設的かつ安定的な関係」という考えを打ち出し、首脳レベルでも対話を進めてきています。
これからも、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含めて対話を行って、共通の課題については協力するという姿勢を貫いていきます。
ALPS処理水に関しては、引き続き科学的根拠に基づき、透明性の高い情報発信を行っていきます。
中国政府による日本産水産物の輸入停止に対しては、即時撤廃を求めるとともに、中国市場に依存しないよう販路拡大を図り、我が国の水産関係事業者を守るため、万全の対応を取ります。
韓国との間では、尹大統領との個人的信頼関係を梃子に、幅広い連携を深めています。
八月には、キャンプデービッドで日米韓三か国のパートナーシップの新時代を拓いていくという決意を内外に示すことができました。
経済安全保障を含め、三か国での戦略的連携を進めます。
また、日中韓の枠組みについても前進させます。
日ロ関係は、厳しい状況にありますが、領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持します。
   拉致問題
拉致被害者御家族が高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題は、ひとときもゆるがせにできない人道問題であり、政権の最重要課題です。
全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現し、日朝関係を新たなステージに引き上げるため、また、日朝平壌宣言に基づき、北朝鮮との諸問題を解決するためにも、金正恩委員長との首脳会談を実現すべく、私直轄のハイレベルでの協議を進めてまいります。
日朝双方の利益に合致し、地域の平和と安定にも大きく寄与する、日朝間の実りある関係を築いていくために、私は大局観に基づく判断をしてまいります。
   防衛力の抜本的強化
こうした外交の地歩を固めるためにも、日本自身の防衛力強化が重要です。
国民の命と我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くため、五年間で四十三兆円の防衛力整備の水準を確保し、防衛力の抜本的強化を速やかに実現します。
防衛力の抜本的強化のための税制措置の実施時期については、昨年末に閣議決定した枠組みの下、行財政改革を含めた財源調達の見通し、景気や賃上げの動向及びこれらに対する政府の対応、を踏まえて判断していきます。
自衛隊の統合運用の実効性を更に高め、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化します。
同時に、基地負担軽減に引き続き取り組み、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現するため、辺野古への移設工事を進めます。
また、強い沖縄経済を作ります。
 
 
 
 

 

五 結び
   憲法改正・皇位継承
「あるべき国の形を示す」国家の基本法たる憲法の改正もまた、先送りのできない重要な課題です。
先の国会では、衆・参両院の憲法審査会において、活発な御議論をいただきました。
このような動きを歓迎します。
憲法改正は、最終的には、国民の皆様による御判断が必要です。
国会の発議に向けた手続を進めるためにも、条文案の具体化など、これまで以上に積極的な議論が行われることを心から期待します。
また、安定的な皇位継承を確保するための諸課題等、とりわけ、皇族数の減少への対応も、国の基本に関わる重要な課題です。
政府としても、このような認識の下、皇族数確保のための具体的方策等を取りまとめ、国会に御報告いたしました。
この重要な課題についても、「立法府の総意」が早期に取りまとめられるよう、国会における積極的な議論が行われることを期待します。
旧統一教会については、先日、宗教法人法に基づき、解散命令請求を行ったところです。
今後、裁判所の審理となりますが、政府として、万全の対応をしてまいります。
あわせて、二度とこのように深刻な被害が生じることがないよう、不当寄附勧誘防止法等の厳正な運用に努めるとともに、被害者に寄り添った相談対応など、被害者救済に適切に対応してまいります。
この夏、私は全国のいろいろな現場にお邪魔させていただきました。
そこで見たものは、変化の流れをつかむ、日本人の「力」でした。
全焼した沖縄・首里城の再建現場では、「見せる復興」で復興プロセス自体を観光の「力」にしていました。
「歳をとることは明日がある」、栃木県の農福連携の現場では、障害者の皆さんが働く喜びを実感され、世界で認められるワインを作り出す「力」があふれていました。
「できないことではなく、できることに注目する」群馬県の認知症ケアの現場では、認知症をポジティブにとらえ、齢を重ねる「力」にしていました。
福島県でロボット技術を学ぶ学生は、「将来は廃炉に携わる一人になりたい」と目を輝かせていました。
日本の技術力を引っ張る「力」が芽を出しています。
令和の時代においても「変化の流れをつかむ」日本人の「力」は、脈々と受け継がれています。
変化の足音を国民にしっかりとお伝えし、変化を挑戦の機会に変えるための仕組み作りをしていく。
挑戦の障害となる古くなった制度を取り払い、全ての人が輝ける日本らしい包摂的な社会を創っていきます。
持続的な賃上げに加えて、人々のやる気、希望、社会の豊かさといったいわゆる「ウェルビーイング」を拡げれば、この令和の時代において再び、日本国民が「明日は今日より良くなる」と信じることができるようになる。
日本国民が「明日は今日より良くなる」と信じられる時代を実現します。
岸田政権は、歴史的な転換点の中で、変化の流れをつかみ、変化を力にしてまいります。
私自身、その先頭に立って、職を賭して粉骨砕身取り組む覚悟です。
国民の皆さんの御理解と御協力をお願いいたします。
御清聴ありがとうございました。
 
 
  
 

 

●岸田首相、「変化の流れ」連呼 経済移行の大チャンス―所信表明演説 10/23
岸田文雄首相が23日に行った所信表明演説は「変化の流れを絶対に逃さない、つかみ取る」とのフレーズで始まる。「変化の流れ」の文言は経済情勢やデジタル化、外交・安全保障などさまざまな文脈で用いられ、登場回数は項目名を含め14回に上った。
首相は演説で「明治維新、戦後復興、高度成長。日本は大きな時代の変化の流れをつかみ取り、歴史に残る大きな社会変革を実現してきた」と振り返り、「再び歴史的な転換点に立っている。共に挑戦しよう」と議場に呼び掛けた。
首相が政策遂行の「一丁目一番地」に掲げるのが経済。演説でも「経済、経済、経済」と繰り返し、「供給力の強化」と「国民への還元」を「車の両輪」として総合経済対策を策定し実行すると表明した。
「30年」もキーワードだ。「30年来続いてきたコストカット経済からの変化が起こりつつある」「30年ぶりに新たな経済ステージに移行できる大きなチャンスが巡ってきた」として、日本経済が変革を果たす機会を逃してはいけないと唱えた。
政権発足以来売りにしてきた「聞く力」は今回も登場。今夏に沖縄、栃木、群馬、福島各県を訪問し、現場の声に耳を傾けたと紹介した。「そこで見たものは、変化の流れをつかむ、日本人の『力』だった」と語り掛けた。
結びで使った「明日は今日より良くなる」との言い回しは「首相のお気に入り」(周辺)。「歴史的な転換点の中で変化を力にする。職を賭して粉骨砕身取り組む覚悟だ」とまとめた。
演説は約8600字。岸田政権の所信表明演説としては2021年臨時国会の約8800字に次ぐ長さとなった。
●所得減税念頭に税収還元 供給力強化へ集中投資―持続的賃上げ実現 10/23
岸田文雄首相は23日午後の衆院本会議で、所信表明演説を行った。総合経済対策について、所得税減税を念頭に「税増収分の一部を還元し、国民負担を緩和する」と表明。今後3年程度を供給力強化への「変革期間」と位置付け、半導体や脱炭素といった大型投資への支援を集中すると訴えた。
経済対策は11月2日にも閣議決定する。首相は物価高を乗り越える「国民への還元」と変革を進める「供給力強化」が「車の両輪」と強調。「還元」に関し、急激な物価高に賃金上昇が十分追い付いていないとして「デフレ完全脱却のための一時的な緩和措置」と指摘した。具体化に向け政府与党政策懇談会で、与党の税制調査会に早急な検討を指示すると説明。具体的な税目には言及しなかった。
首相は「私の頭に今あるものは『変化の流れを絶対に逃さない』の一点だ」と切り出し、「最初につかまなければならない変化の流れは経済だ」と力説。低物価・低賃金の「コストカット型経済」から「成長型経済」に転換させるために「持続的な賃上げ」を実現し、投資を積極化させると語った。
年末に期限を迎えるガソリン代、電気・ガス料金の補助は来春まで継続する意向を示した。低所得者支援に関し、多くの自治体で1世帯当たり3万円の支援が始まっていることに触れ、その財源として地方自治体への「重点支援地方交付金」を追加する方針を示した。
急速な人口減少を受け「質の高い公共サービス提供」へデジタル行財政改革を推進。公共交通機関の運転手不足に対応するため「ライドシェアの課題に取り組む」と語った。マイナンバー制度の信頼回復に向け11月末をめどに総点検を終えるよう全力を尽くす考えを示した。
外交面ではロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ情勢に言及。中国の海洋進出も念頭に「安全保障環境は戦後最も厳しい」とし、「世界を分断・対立ではなく協調に導く」と説いた。日韓関係は、尹錫悦大統領との「個人的信頼関係」をてこに連携を深めると打ち出した。
北朝鮮の拉致問題を「政権の最重要課題」とし、金正恩朝鮮労働党総書記との首脳会談実現へ意欲を重ねて表明。「日朝の実りある関係を築くため大局観に基づく判断をする」との意向を示した。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題は、解散命令請求に関する裁判所での審理に「政府として万全の対応」を取ると主張。安定的な皇位継承と憲法改正に関し、国会での議論進展に期待を示した。「職を賭して粉骨砕身取り組む覚悟だ」と締めくくった。
●デフレ完全脱却へ税収増を還元、「一時的措置」−首相が所信演説 10/23
岸田文雄首相は23日の所信表明演説で、急激な物価高による国民の負担を軽減するため、総合経済対策の一環として税収増の国民への還元策を実施すると述べた。「デフレ完全脱却のための一時的緩和措置」としている。与党に検討を指示した所得減税などが念頭にある。
衆院本会議での演説で、岸田首相は今春闘の賃上げなどにより、「日本経済は、30年ぶりの変革を果たすまたとないチャンスを迎えている」と指摘。「このチャンスをつかみ取る」ために、「過去に例のない大胆な取り組みに踏み込む決意」を示した。
その上で、「国民への還元」として、「急激な物価高に対して賃金上昇が十分に追いつかない現状を踏まえ、国民の努力によってもたらされた成長による税収の増収分の一部を公正かつ適正に還元し、物価高による国民の負担を緩和する」と表明した。
新型コロナ禍を経て経済活動の正常化が進む中、消費者物価は1年半にわたり日本銀行の2%目標を上回る水準が続いている。今春闘では30年ぶり高水準の賃上げを達成したが、実質賃金は前年を下回ったまま。物価高への国民の強い不満が内閣支持率低迷の背景にある。減税など還元策の後押しで本格的なデフレ脱却につなげられるか、岸田首相の経済財政運営は正念場を迎えている。 
演説で岸田首相は、「何よりも経済に重点を置いていく」とも強調。年末までとしているガソリン補助金、電気、ガス料金の激変緩和措置を来年春まで継続する方針も明らかにした。地方自治体が低所得者向けに実施してきた1世帯あたり3万円を目安とした給付金の財源となる交付金の枠組みについても、「追加的に拡大する」と述べた。
現役世代に恩恵
岸田首相は20日、自民、公明両党に対し、税収増の還元策として所得税減税も検討するよう指示した。自民党の宮沢洋一税制調査会長は同日夜、所得減税のうち一定額を差し引く「定額」であれば納税者に均等に効果が及ぶと指摘。減税期間は、1年とするのが「常識的だ」との見解も示した。自民、公明両党は26日にも政策懇談会を開いた上で、減税に関しては与党の税制調査会を中心に具体策の議論を始める。
第一生命経済研究所の星野卓也・経済調査部主任エコノミストは、政府はこれまで実施してきた低所得者向け給付の対象者には高齢の年金受給者も多く、「現役世代に政策の恩恵が届いていなかった」と指摘。所得減税を組み合わせることで幅広い層に届く新たな負担軽減の形を模索しているのだろうと語った。「定額減税」が導入された場合、3年程度の時限措置であれば、財政への影響は1−2兆円程度に収まるとの見方を示した。
岸田政権はこれまで、「物価高から国民を守る」との方針を掲げ、ガソリン価格抑制に毎月3000億円余を投入してきたほか、低所得世帯に対し、1世帯当たり3万円を給付する支援措置(2023年度)を地方自治体を通じて実施した。
人気取りのバラマキ
好調な企業収益などを背景に、2022年度の税収は過去最高の71.1兆円に上る。法人税や所得税が上向いたほか、物価高の影響で消費税収も伸びた。消費税は1989年の導入以来最も多く、所得税収を上回る規模となっている。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは5日付けのリポートで、国の予算で歳出額は歳入額を大幅に上回っており、税収の上振れは財政赤字を穴埋めし、新規国債発行を減らすことに使うのが筋だと指摘。減税の検討については「国民の人気取りのバラマキ的な政策が強まっていると言えるのではないか」と述べた。
政府は過去の経済対策でも、 所得減税を行っている。1990年代には橋本龍太郎内閣で「定額減税」を行ったが、2008年の世界金融危機以降の対策では、対象者に直接支援が届く「給付金」が主流となっている。
木内氏は20日のリポートでは、減税による経済効果について、仮に5兆円分の所得減税を恒久措置として実施するのであれば、実質国内総生産(GDP)を1年間で0.25%押し上げると試算。時限措置の場合は効果は0.12%程度になるとして、「財政環境を一段と悪化させる一方、経済効果は限定的」だと指摘した。
●所得減税念頭に税収還元 供給力強化へ集中投資―持続的賃上げ実現 10/23
岸田文雄首相は23日午後の衆院本会議で、所信表明演説を行った。総合経済対策について、所得税減税を念頭に「税増収分の一部を還元し、国民負担を緩和する」と表明。今後3年程度を供給力強化への「変革期間」と位置付け、半導体や脱炭素といった大型投資への支援を集中すると訴えた。
経済対策は11月2日にも閣議決定する。首相は物価高を乗り越える「国民への還元」と変革を進める「供給力強化」が「車の両輪」と強調。「還元」に関し、急激な物価高に賃金上昇が十分追い付いていないとして「デフレ完全脱却のための一時的な緩和措置」と指摘した。具体化に向け政府与党政策懇談会で、与党の税制調査会に早急な検討を指示すると説明。具体的な税目には言及しなかった。
首相は「私の頭に今あるものは『変化の流れを絶対に逃さない』の一点だ」と切り出し、「最初につかまなければならない変化の流れは経済だ」と力説。低物価・低賃金の「コストカット型経済」から「成長型経済」に転換させるために「持続的な賃上げ」を実現し、投資を積極化させると語った。
年末に期限を迎えるガソリン代、電気・ガス料金の補助は来春まで継続する意向を示した。低所得者支援に関し、多くの自治体で1世帯当たり3万円の支援が始まっていることに触れ、その財源として地方自治体への「重点支援地方交付金」を追加する方針を示した。
急速な人口減少を受け「質の高い公共サービス提供」へデジタル行財政改革を推進。公共交通機関の運転手不足に対応するため「ライドシェアの課題に取り組む」と語った。マイナンバー制度の信頼回復に向け11月末をめどに総点検を終えるよう全力を尽くす考えを示した。
外交面ではロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ情勢に言及。中国の海洋進出も念頭に「安全保障環境は戦後最も厳しい」とし、「世界を分断・対立ではなく協調に導く」と説いた。日韓関係は、尹錫悦大統領との「個人的信頼関係」をてこに連携を深めると打ち出した。
北朝鮮の拉致問題を「政権の最重要課題」とし、金正恩朝鮮労働党総書記との首脳会談実現へ意欲を重ねて表明。「日朝の実りある関係を築くため大局観に基づく判断をする」との意向を示した。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題は、解散命令請求に関する裁判所での審理に「政府として万全の対応」を取ると主張。安定的な皇位継承と憲法改正に関し、国会での議論進展に期待を示した。「職を賭して粉骨砕身取り組む覚悟だ」と締めくくった。
●岸田首相、所信表明演説で「国民に還元」という言葉…「所得税減税」実現? 10/23
岸田首相は、衆議院、参議院の本会議で所信表明演説を行い、物価高に対応する、経済対策を打ち出しました。首相の所信表明演説には、「国民に還元」という言葉がありました。具体的には「所得税の減税」が検討されるということですが、実現するのでしょうか?
これまで首相自らが打ち出した政策は、実現したケースが多いと思いますが、今回は、すんなりいくか、見通しは立っていません。というのも、野党だけでなく、与党内からも反対論が多いからです。
ある自民党幹部は「財政状況を考えれば減税などできない」と話しています。さらに今回の特徴は、岸田首相に近い議員までもが否定的な点です。
ある首相側近議員は「どういう理屈で説明するか不安だ」と話すなど、ネガティブな姿勢を示しています。
――なぜ首相に近い人まで反対してるんでしょうか?
取材をしていますと「政策として筋が悪い」と話す議員が多いです。「筋が悪い」という理由は何か。大きく2つあります。
1つ目は「政策の整合性」という点です。ある首相側近は「防衛増税と言ってる中で、減税というのは説明がつかない」と指摘しています。
2つ目は「政策の効果」です。減税は「即効性がない」と言われます。実際に減税が実感できる時期について、ある財務省幹部は「早くても来年の半ば」と話しています。であるならば、より早く効果が出る「現金などの給付措置」の方が「効果的」という主張です。
――この「減税」の打ち出しは、岸田首相が「衆議院の解散」をねらっているという見方もありますが、実際はどうなんでしょうか?
そうなんです。ある側近議員は「所得減税を言い出したのは、解散を意識している」とハッキリ言っていました。
岸田首相周辺も「解散についてはドラスティックな事を考えている」と話すなど、「年内解散」の可能性も完全に排除されていません。
一方で、22日に行われた衆参の補欠選挙は1勝1敗でした。
政権への評価の低さがあらわになった形で、「解散どころではない」との声も多くあります。
所得税減税という政策の実現と、解散戦略をどう両立させるのか。岸田首相にとっては厳しい局面が続きそうです。 
 
 
 
 

 

● 国会 きょうから各党の代表質問始まる 物価高の対応など議論 10/24
国会は24日から、岸田総理大臣の所信表明演説に対する各党の代表質問が始まります。物価高への対応をめぐり、自民党が減税を含めた国民への還元策について説明を求めるのに対し、立憲民主党は給付金の支給を柱とした党独自の対策を受け入れるよう迫ることにしています。
国会は23日に岸田総理大臣の所信表明演説が行われたことを受けて、24日から3日間、衆参両院で各党の代表質問が行われます。
初日は衆議院本会議で自民党の稲田幹事長代理や立憲民主党の泉代表らが質問に立ちます。
この中で稲田氏は物価高を受けた新たな経済対策について、岸田総理大臣が所得税の減税の検討を与党に指示したことを踏まえ、具体策の説明を求めることにしています。
また少子化対策の財源のあり方のほか、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエル・パレスチナ情勢を踏まえた外交戦略、さらに憲法改正に向けた見解などを問うことにしています。
一方、泉氏は物価高への対応をめぐり、減税よりも即効性があるとして中間層を含む6割の世帯に3万円の「インフレ手当」を支給することや、ガソリン価格を抑えるための「トリガー条項」の凍結解除など、党独自の対策を受け入れるよう迫ることにしています。
また旧統一教会の問題で、被害者救済にあてるため教団の財産を保全する法整備などについても政府の方針をただすことにしていて、与野党の論戦が始まります。
●立憲・泉代表“所得税減税ではなく、給付急ぐべき” 国会・代表質問 10/24
国会で、岸田首相の所信表明に対する各党の代表質問が始まりました。立憲民主党の泉代表は、経済対策を打ち出すのが遅いと批判した上で、所得税減税ではなく、給付を急ぐべきだと迫りました。
立憲民主党・泉代表「総理は『経済、経済、経済』と言いましたけれども、結局国民に何を届けるのか、いまだわかりません。(国民に届けるべきは)『給付、給付、給付』ではないですか」
岸田首相「物価高に最も切実に苦しんでおられるのは低所得者の方々であり、国民への還元について、その実施時期も含め、早急に具体化してまいります」
泉代表は、首相が所信表明演説で所得税減税にハッキリとは言及しなかったことを指摘し、「減税は行うのか、行わないのか」と、ただしました。
これに対して、岸田首相は「与党で正式な議論も開始されていない段階で政府の考えを述べることは控えなければならない」と釈明した上で、「所得税減税を含め、早急に検討を進めていく」と明言しました。
一方、立憲民主党の吉田議員は旧ジャニーズ事務所の元社長による性加害問題を取り上げ、岸田首相に「一般論の従来のコメントでなく、コメントすべきではないか」と訴えました。
これに対して、岸田首相は「長期間、広範に繰り返されたとされる事案で決してあってはならない」と述べました。
●吉田はるみ議員「国民一人ひとりが大切にされる日本を、未来につなぐ」 10/24
衆院本会議で10月24日、岸田総理の所信表明演説に対する代表質問が行われ、泉健太代表に続き、吉田はるみ議員が登壇しました。
冒頭、吉田議員は、岸田総理が都内のスーパーを視察した際に「野菜や肉、確かに高くなっている。思い切った対策を実行する」とコメントしたことに関連して、「今回の経済対策で、その解決策は見当たらない」「いつまで続くか分からない物価高に加え、増えない収入の中、限られた家計でやりくりして、いかに安く食事をつくるか頭を悩ませている私たちの生活の声は届いたのか」と疑問を投げかけ、「1円の重みをかみしめている八百屋の娘として、生活の現場の声を代弁し、岸田総理に質問する」と述べました。
天井知らずの大阪万博予算、政府は国民負担増
吉田議員は、大阪万博の建設費が当初の1.9倍、1100億円の予算超過の、2350億円に膨らむことが明らかになったと指摘し、「このまま税金投入が続けば、天井知らずの無駄遣いになる」「少子高齢化で、世界でも極めて深刻な人手不足問題を抱えている。この現実から目をそらし、かつての古き良き時代で、思考が止まっていないか。政治の貧困さがこの万博予算倍増の問題に表れている」と政府の姿勢を批判しました。
一時的な減税と、恒久的な増税
吉田議員は、今回の所得減税については期限付きであるため「偽装減税」と指摘し、「法人税、所得税、たばこ税の増税によって財源を確保する見込み、防衛増税は恒久的な国民負担となると言いながら、一方で、この防衛増税に恒久的な所得税増税が含まれているにも関わらず、今回、所得税の一時的な減税を検討している」と指摘し、「ちぐはぐ」だと矛盾を指摘しました。また、政府が検討している高校生子育て世帯の扶養控除の廃止については、岸田総理は「高校生の扶養控除の廃止を検討する事実はない」と発言しました。
埼玉県議会自民党の「子どもだけの留守番禁止の児童虐待防止条例」
自民党が提出した埼玉県の「児童虐待防止条例の一部を改正する条例案」について、吉田議員は自身の経験に触れながら、母親の気持ちや、子育て現場の現実からかけ離れた条例案を、埼玉県議会の自民党が提出し公明党も賛成したことに触れ、「与党は、時代に背を向けているのはではないか」と述べました。立憲民主党が「チルドレンファースト」を掲げてきたこと、「子どもを家族とともに社会全体で支える時代」と訴えました。
子どもの貧困対策、ひとり親家庭の支援強化
吉田議員は、子どもの貧困対策の切り札として、昨日、子ども1人当たり月1万円増額する「児童扶養手当増額法案」を国会に提出したことに触れ、「政府が年末に決定する、少子化対策財源のうちの5000億円の中で、この児童扶養手当増額に充て、低所得のひとり親家庭、貧困に苦しむ子どもたちをしっかり支える」よう政府に求めました。
子ども予算・給食の無償化・教育の無償化
立憲民主党の経済対策について、「児童手当月1万5千円を高校生に、今月10月から支給を前倒し実施する。また、低所得子育て家庭の子ども一人当たり5万円の『子育て世帯生活支援特別給付金』を再支給する。さらに、小中学校の給食も10月から無償化する。介護職員、障がい福祉職員、保育士などの月給も1万円引き上げる。これらを10月分からさかのぼり恒久政策として行う。さらに、この10月から奨学金の返済利子をゼロにし、加えて奨学金の返済額を所得控除の対象とする。このような政策こそが、バラマキではなく限られた予算を有効に使い、必要な方に届ける経済対策」と訴えました。本年6月に立憲民主党が国会に提出した「給特法廃止・教職員の働き方改革促進法案」について、「現在、学校現場では、教職員の過労死ラインを超えた長時間労働や膨大な業務量が常態化し、休職者の増加や教職希望者の減少などによって、深刻な教員不足に陥っている。ついては、事実上、残業代がほとんど払われず長時間労働の原因となっている給特法を廃止して、教員の業務量の削減や、教職員の確保をすべき」と法案の成立を訴えました。
細田前議長のセクハラに対する認識
細田前議長が、先日の会見で、「セクハラの被害者が名乗り出ていないから、セクハラは無かった」と発言したことについて吉田議員は、「これは被害女性が簡単に名乗り出ることができない、根本的なセクハラ問題を理解していない発言であり、受け入れることができない」と批判しました。岸田総理も「一般論として、名乗り出る人がいなければセクハラでないと言う考え方は適切でない」と述べました。
最後に吉田議員は、立憲民主党が「今年に入って33本の議員立法を提出しており、今日だけでも、泉代表と私を含めて、21本の議員立法に触れながら、多くの具体的な提案をした」と語りました。「私たち国会議員は、国民への奉仕者です。互いの違いを力に変え、建設的な、まっとうな国会議論をしましょう。国民の生活を支え、誰も取り残さない、国民一人ひとりが大切にされる日本を、未来につなぐ責務がある」と述べて質問を終えました。
吉田議員は、本会議終了後に記者団からの取材に応じました。本会議場のひな壇に女性大臣が数人座っていても岸田政権に女性の副大臣、政務官がいないことを指摘。「女性の係長や課長等ラインマネージャーと呼ばれる方々がいない状況で、取締役だけ女性を据えても何も変わらない。政治も同じで、衆議院は女性議員が1割しかいない中、大臣だけ女性を見せるのは、問題の解決になっていないと改めて感じました」と述べました。
●来秋のマイナ保険証移行、「さらなる期間必要なら対応」と首相 代表質問 10/24
岸田文雄首相は24日の衆院本会議で、2024年秋に健康保険証をマイナンバーカードと一体化する計画について「さらなる期間が必要と判断されるなら必要な対応を行う」と述べた。立憲民主党の泉健太代表への答弁。
国会ではこの日、23日に行われた岸田首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が始まった。
岸田首相は、日本経済に30年来のデフレを脱却する「千載一遇のチャンス」が訪れているとする一方、足元で賃上げが物価上昇に追いついていないため、「放置すれば再びデフレに戻りかねない」との懸念を表明した。
策定中の経済対策でガソリンや電気・ガス代の激変緩和措置を来春まで継続する理由については、賃上げが物価上昇に追いつくまで政府による支援が必要だと説明。激変緩和措置によるガソリン価格の下押しは1リットルあたり35円で、野党が求めるガソリン税の一部を軽減するトリガー条項による押し下げ25円を上回るとも述べた。
4─6月に日本経済の需要不足を示す需給ギャップがプラスに転じたのを踏まえ、経済対策はいたずらに規模を求めないと指摘する一方、成長力に資する分野は厳選して支援すると強調した。
泉氏は物価上昇局面では財政出動がインフレを助長しかえって消費を冷やすと指摘したが、首相は「経済対策がインフレを加速することがないよう適切に対応する」と回答した。
自民党の稲田朋美議員は、経済財政運営に関連してアベノミクスの評価などを質問した。
岸田首相はアベノミクスについて「デフレでない状況を作り出し、GDPを高め、雇用を拡大した」と評価。岸田政権では「アベノミクスの成果の上に、持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済への変革を果たすため、思い切った取り組みを講じていく」と語った。
経済財政運営については「有事に十分耐えられる財政基盤を平時より備えることは不可欠」であり、「経済再生と財政健全化の両立に取り組む」と語った。
立憲民主党の吉田はるみ議員は、大阪万博の予算倍増問題、旧ジャニーズ事務所での性加害問題、子ども・子育て政策、細田博之前衆院議長の発言などについて、政府の考えや取り組みを質した。
岸田首相は細田氏の発言に関し「一般論として申し上げれば、名乗り出る人がいなければセクハラはないという考え方は適切ではない」との考えを示した。
細田氏は13日の記者会見で、健康問題を理由に衆院議長の辞任を表明。週刊誌などが指摘してきた自身のセクハラ疑惑について、被害者がセクハラを受けたと名乗り出て初めてMeTooが成立する、という趣旨の発言をしていた。
●「極めて悪質、許されない」 性加害問題で岸田首相 10/24
岸田文雄首相は24日の衆院代表質問で、旧ジャニーズ事務所の性加害問題について「子どもや若者への性暴力は心身に深刻な影響を及ぼす極めて悪質な行為で、許されない」と指摘した。立憲民主党の吉田晴美氏への答弁。
代表質問後に国会内で取材に応じた「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の平本淳也代表は「本会議で総理の口からジャニーズという言葉が出たことは大きな一歩」と評価。石丸志門副代表は「予算委員会での議論に期待したい」と語った。
また首相は「当事者の声を聞くことで被害実態の把握に努めることは大切だ」と発言。石丸副代表は「被害者の窮状を直接お話しできればと思っている」と語った。
●新経済対策 立民 泉代表“給付を” 首相“所得税減税検討” 10/24
国会は、24日から衆議院本会議で、岸田総理大臣の所信表明演説に対する各党の代表質問が始まりました。立憲民主党の泉代表が物価高を受けた新たな経済対策は所得税減税ではなく給付を中心にすべきだとただしたのに対し、岸田総理大臣は税収増を国民に還元するため、給付とともに所得税減税の検討を早急に進める考えを示しました。
立民 泉代表 新たな経済対策について
立憲民主党の泉代表は、物価高を受けた新たな経済対策について「あまりに遅すぎる。また、物価上昇局面で過度の財政出動を行えば、一層のインフレを招き、さらに物価が上がる。対策の重点化を図るべきだ。国民が望むのはことし中の『給付・給付・給付』だ。全体の6割の世帯に3万円の『インフレ手当』の給付を求める」とただしました。
これに対し、岸田総理大臣は「国民への還元は所得税減税を含め早急に検討を進める。同時に供給力強化のための政策を車の両輪として行い、インフレが加速しないよう適切に対応する。物価高に最も切実に苦しんでいるのは低所得者で、『重点支援地方交付金』の支援枠を追加的に拡大する」と述べました。
立民 泉代表 旧統一教会の問題について
また泉氏は、旧統一教会の問題をめぐり「被害救済に必要な財産が散逸しないよう、教団の財産を保全する手だてが不可欠だ。財産保全を行う議員立法を超党派で議論し成立させようではないか」と求めました。
これに対し、岸田総理大臣は「旧統一教会の資産状況を注視しつつ、速やかに被害者の救済が図られるよう、現行法上のあらゆる制度を活用し、被害者救済のために最大限取り組んでいく。議員立法の法案を含め、各党にさまざまな動きがあると承知しており、こうした動きも注視していく」と述べました。
自民 稲田幹事長代理 少子化対策の財源確保策について
自民党の稲田幹事長代理は、少子化対策の財源確保策について「実質的に追加負担を生じさせず、社会保障改革で保険料を抑制していく方針が示されている。保険料を改革によって抑制することで負担増はなくなるという理解でいいのか」と質問しました。
これに対し、岸田総理大臣は「徹底した歳出改革などを行い、その効果を活用するなどして国民に実質的な追加負担を生じさせないことを目指す。法制化が必要なものは次の通常国会への法案提出に向けて準備し、制度設計を含め速やかに具体化していく」と説明しました。
自民 稲田幹事長代理 外交・安全保障政策について
一方、稲田氏は、外交・安全保障政策をめぐり「ロシアがウクライナを侵略し、中東ではハマスによる残虐なテロ行為が発生するなど暴力で国際社会の秩序が壊される事態が相次いでいる。国際社会の分断が深まる中、積極的な外交を展開しなければ取り残されてしまう」とただしました。
これに対し、岸田総理大臣は「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化すべく、同盟国や同志国との連携を推進しつつ、いわゆるグローバル・サウスと呼ばれる国々を含む国際社会の幅広い支持と関与を得るため、多角的な外交を推進していく」と強調しました。
また岸田総理大臣は、イスラエル・パレスチナ情勢をめぐり「刻々と動く現地情勢を踏まえ関係国との間で意思疎通を行い、在留邦人の安全確保に万全を期しながら、事態の早期の沈静化と人道状況の改善に向けた外交努力を積極的に続けていく」と述べました。
自民 稲田幹事長代理 憲法改正について
さらに稲田氏は、憲法改正をめぐり「自衛隊の明記は現在の厳しい安全保障環境と防衛力の抜本的強化の必要性に鑑み、各党との協議を加速化し、速やかな実現を図ったうえでさらに踏み込んで検討していく必要がある。憲法改正実現に向けた決意を示してほしい」と求めました。
これに対し、岸田総理大臣は「国会の発議に向けた手続きを進めるためにも、国会でこれまで以上に積極的な議論が行われることを期待する。自民党総裁として、あえて申し上げれば、党内の議論を加速させるなど憲法改正の課題に責任を持って取り組む決意だ」と述べました。
立民 吉田晴美氏 ジャニー喜多川氏の性加害問題について
立憲民主党の吉田晴美氏はジャニー喜多川氏の性加害の問題について「有効な再発防止策を講じるため、被害者に会ってヒアリングすべきではないか。児童虐待防止法の改正案について与野党協議に応じてもらいたい」と求めました。
これに対し、岸田総理大臣は「当事者などの声を聞き、被害の実態把握に努めることは大切だ。これまでも関係府省で被害当事者や支援者などから直接、話をうかがい、子どもの性被害の特徴などを十分に踏まえたうえで緊急対策を立案し、実施してきた。改正案は議員立法として提出されたもので、取り扱いなどは今後、国会で議論いただくものだ」と述べました。
このほか岸田総理大臣は、今の健康保険証を来年秋に廃止してマイナンバーカードと一体化する方針について「ひも付けの総点検とその後の修正作業の状況も見定めた上で、さらなる期間が必要と判断された場合には必要な対応を行っていく」と述べ、総点検などの状況次第では廃止の延期も含め必要な対応を取る意向を示しました。
また岸田総理大臣は、少子化対策の一環としての児童手当の拡充に伴い、高校生の扶養控除を廃止するかどうかについて「今後、整理を進める必要があるとしても、高校生の扶養控除の廃止を前提とした議論や検討をしている事実はない」と述べました。
●“所得減税”定額4万円を検討 非課税世帯に7万円給付案も 10/24
24日にスタートした国会論戦で「所得税減税を含めて早急に検討を進める」と強調した岸田総理大臣。その具体的な内容ですが、政府が所得税などを定額で4万円減税し、非課税世帯に7万円程度を給付する案などを検討していることが分かりました。
岸田総理“意欲”国会でも論戦
23日の所信表明演説で経済と連呼し「経済対策」を強調した岸田総理大臣。すると、24日は。
立憲民主党 泉代表:「国民が望むのは今年中のインフレ手当の給付、給付、給付じゃないですか。ガソリン減税、ガソリン減税、ガソリン減税と繰り返すべきではないでしょうか。そして賃上げ、賃上げ、賃上げ」
立憲民主党の泉代表、代表質問で「連呼」返し。家計負担軽減へ向けた論戦が始まりました。
立憲民主党 泉代表「所得税減税は行うのか行わないのか。行うならばそれは1年のみなのか、恒久なのか」
岸田総理大臣「具体的な指示は明後日26日の政府与党政策懇談会で行う予定です。国民への還元については所得税減税を含め、早急に検討を進めて参ります」
立憲民主党 泉代表「自民党幹部は所得税減税を念頭に『来年夏のボーナスぐらいに間に合うように』と発言しています。これあまりに遅すぎませんか?全体の6割の世帯に3万円のインフレ手当の給付を求めます。これであれば今年中に給付が可能です」
岸田総理大臣「多くの自治体ではこの夏以降、低所得者世帯に対して1世帯あたり3万円を目安に支援を開始してきました。この低所得者世帯支援枠を追加的に拡大することとし、これを経済対策に盛り込んで参ります。国民への還元について、その実施時期も含め早急に具体化して参ります」
非課税世帯に7万円給付案も
政府は所得税などを定額で4万円減税することと合わせて、低所得者対策として非課税世帯に7万円程度を給付する案などを検討しています。
立憲民主党 泉代表「もうそろそろいい加減、この国会で党首討論をやりませんか?受けて立つような表情ですね」
代表質問ではこの問題も取り上げられました。
ジャニーズ性加害問題に言及
立憲民主党 吉田はるみ衆院議員「ジャニーズ性加害問題はすでに325人が被害を申請し、これは世界最大規模の子どもへの性加害事件です。ジャニーズ性被害の被害者に会っていただき、ヒアリングをすべきではないでしょうか」
岸田総理大臣「決してあってはならないことであります。被害当事者等の声をお聞きすることを通じて被害実態の把握に努めることは大切なことだと認識を致します」 
●ガソリン・電気・ガス補助恒常化 政策に投じる国費11兆円超に 10/24
ガソリンなどの燃油や電気・ガス代を抑えるための補助金政策は、政府が24日に来年4月末まで延長する方針を示し、延長を重ねてやめ時を逸したまま恒常化している。物価高による家計や企業の急激な負担増を避けるための一時的な激変緩和策として始まった政策に投じる国費は、11兆円超まで膨らむことになる。
政府がまとめた経済対策原案では、電気・ガス代の補助は来年5月以降に縮小するとしたが、ガソリン補助金の縮小時期は示さなかった。円安の進行による原油の輸入価格の高騰に加え、7日に始まったイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘を巡る中東情勢の緊迫化で原油市場にも供給不安がくすぶっており、期限を区切るのは難しい局面にある。経済産業省幹部は「政治主導でズルズルと続けている間に出口戦略はより難しくなった。税金で市場価格を抑える構図が当たり前になってしまう」と肩を落とした。
政府は2022年1月、ウクライナ情勢の緊迫化による原油価格高騰を受け、石油元売りに対する補助金支給で小売価格を抑える政策を始め、その後、延長と拡充を繰り返してきた。価格下落に伴い、今年1月からは段階的に補助金を縮小していたが、円安の進行により8月下旬にレギュラーガソリン価格の全国平均小売価格が1リットル当たり185円超と過去最高を更新。それに合わせて政府は175円程度に抑えるよう補助金を拡充し、年末までの延長を決めていた。ガソリン価格は10月16日時点で174円70銭となり6週連続で値下がりしているが、補助金がなければ200円超となるため補助金への依存が続く。
一方で、今年1月に始まった電気・ガス代の補助は上昇の要因だった火力発電の燃料である液化天然ガス(LNG)などの価格は落ち着いており、必要性は乏しい。だが、与党から「ガソリン代に限るのでは国民の不安に応えることにならない」(公明党の山口那津男代表)と政治的な声が強まり、延長を決めた。
その分、財政負担は増える。政府はこれまでにガソリン補助に6・2兆円、電気・ガス代の補助に3・1兆円を投じている。今の原油価格や為替水準が続けば、4月末までの延長で追加で2兆円規模が必要になる見込みだ。一橋大の佐藤主光教授(財政学)は「激変緩和措置は、期間中に生活を変える準備を求めるためにあり、半年程度にとどめるべきだった。財源は限られており、生活に困る低所得者層や公共交通機関のない地方への支援に対象を絞りながら、どう補助を終えるのかを示さなければならない」と指摘する。
脱炭素化に向けた世界の潮流にも逆行するとの指摘も根強い。日本は1970年代の石油危機時に家電の省エネ性能や自動車の燃費技術を高めた経験を持つ。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「政府は電気自動車の購入補助などガソリン車をやめる方向に財源を投じるべきだ。世界は高い原油価格を前提に対応を始めており、補助を続ければ日本だけ産業転換から取り残される」と指摘する。
●「減税」言及も議場騒然 対案突っぱねる首相に野党「それなら消費税こそ」 10/24
岸田文雄首相は24日から始まった衆院代表質問で立憲民主党の泉健太代表との質疑に臨んだ。総合経済対策を巡り、「所得税減税を含め早急に検討したい」と国会の場で初めて「減税」に言及。立民の給付方式の対案を突っぱねた際には議場は騒然となった。自民党総裁でもある首相の減税検討指示に対しては自民内の反発ものぞき、補選苦戦の余波は収まる気配がない。
質問の中で泉代表は、中間層から低所得層までの国民支援に向け「税負担の一部を家計に戻す消費税還付法案を立民は示している」と説明。「逆進性解消につながる」などとして採用を促した。
しかし首相は「給付付き税額控除では消費税そのものの負担が直接軽減されるものではない」と対案を全面否定。「それなら消費税こそ減税しろ」などと怒号を浴びた。
減税を巡って泉代表は「自民・公明両党に所得税減税の検討を指示しながら所信表明演説には入れていない。行うのか行わないのか。行うなら1年のみか恒久か」と追及。首相は「与党で正式な議論も始まっていない段階で所信表明で政府の考えとして述べることは控えなければならないと考えた次第」と釈明し、期間などには言及しなかった。
「私は八百屋の娘。1円の重みを知っている」とアピールした立民の吉田晴美氏からは「所得税を減税と防衛増税の対象にするのは全くちぐはぐだ。支持率が低いのは総理が何をしたいのか分からないからだ」と責め立てられ、自席で何かをつぶやきながらにらみつけていた。 ・・・
●所得減税、4万円案 非課税世帯に給付7万円 政府・与党 10/24
政府・与党が物価高への対応を柱とする新たな総合経済対策で、税収増の一部を国民に還元する具体策として、所得税を定額で4万円減税し、住民税が課税されない低所得者世帯に7万円を給付する案が浮上していることが24日、分かった。
所得減税は本人のほか、扶養家族1人につき同額の減税を行う方向で調整。減税と給付による還元総額は5兆円規模になる可能性がある。
政府は経済対策の原案を同日、自民、公明両党の政調全体会議に提示。11月2日の閣議決定を目指す。
岸田文雄首相は今月26日に開く政府与党政策懇談会で、両党の税制調査会に国民への還元措置の具体化に向けた早急な検討を改めて指示する。所得税を含む減税の詳細な制度設計は、政府・与党が年末にかけて行う税制改正作業で詰め、2024年の通常国会に税制改正法案の提出を目指す。所得減税の実施は来年夏ごろになる可能性がある。
岸田首相は24日の衆院代表質問で経済対策について「所得税減税を含め早急に検討を進める」と強調した。 
 
 
 
 

 

●岸田政権、英国の失敗から学べるか 借金大国、減税にリスク 10/25
2022年秋、英国の首相に就任したリズ・トラス氏が打ち出した経済対策が市場の厳しい洗礼を浴び、英史上で最短の在任49日で退陣に追い込まれた。財源の裏付けがない大型減税で財政が一段と悪化し、歴史的な物価高に歯止めが利かなくなるとの懸念が強まったためだ。あれから1年。岸田文雄政権は新たな経済対策として、所得税を含む減税の検討に入った。先進国で最悪の財政状況の日本は、英国の失敗を教訓にできるか。
「バラマキ」が引き金に
所得税減税、法人税増税計画の凍結、エネルギー料金の負担軽減策。発足間もないトラス英政権が昨年9月にバラマキ色の強い経済対策を発表すると、英国の通貨、株式、国債が同時に売られる異例の「トリプル安」が起きた。長期的な成長をもたらす規制改革や資金繰りについて信頼できる計画を示さないまま、大型減税の即時断行を目指したことが「金融の時限爆弾」(英エコノミスト誌元編集長のビル・エモット氏)となったためだ。
新型コロナのパンデミック(世界的大流行)とウクライナ戦争の勃発で、エネルギー資源や食料価格が高騰する中、分裂していた英与党保守党の党首に就いたトラス氏は、国民生活を直撃する物価高の痛みを和らげるために大胆な財政出動を推進し、将来の総選挙で勝利することを狙った。だが、目玉の大型減税は財源の手当てがなく国債発行に依存。減税や補助金で過度に景気を刺激すれば、物価高を助長するリスクもはらんでいた。
世界の債務は増え続けている。国際金融協会(IIF)の集計によると、今年6月時点で307兆ドル(約4京6000兆円)と過去最高額を更新した。コロナ対策に加えて物価高対策の財政支出が膨らんだのが主因だ。今年の債務残高の国内総生産(GDP)比は日本が255%超と突出し、先進国で最悪の財政状況にある。
有権者におもねる「ポピュリズム政治」が世界に広がる中、「トラスノミクス」の失敗は、国債を増発して借金財政を続ける日本をはじめとした他国にも警鐘を鳴らした。エモット氏は日英の経済状況について、低成長、物価高、極めて長い金融緩和政策の継続という点で似ていると指摘した上で、財政・金融政策運営に不手際があれば「日本売り」という不測の事態を招きかねないと主張する。
日英に類似点
岸田政権が近く取りまとめる経済対策は、所得税減税や物価高抑制に重点を置いたトラス政権の対策と類似点が少なくない。総選挙をにらんで歳出圧力が強まっているという政治的な環境も、当時の英国と共通する。与党自民党からは15兆〜20兆円の対策を求める声が上がっており、規模が大きく膨らめば、財源を国債発行に頼らざるを得ない。
一方、国債保有の在り方については日英間で事情が異なる。国内保有率が高い日本では、増発された国債を日銀や国内機関投資家が引き受けるため、資金調達が不安視されることはほとんどなかった。だが、英国は海外保有率が比較的高いことから、逃げ足の早い海外投資家による「英国売り」が危機を増幅させたとみられる。
ニッセイ基礎研究所経済研究部の伊藤さゆり常務理事は、トラス政権が市場の信認を失った理由として、財政を監視する独立機関である英予算責任局(OBR)の検証を受け付けない形で経済対策を発表したことを挙げている。財政健全化を露骨に棚上げした同政権の姿勢に対して、市場が「ノー」を突き付けた格好だ。
独立財政機関も選択肢
経済協力開発機構(OECD)によると、英国を含む加盟38カ国のうち8割が財政収支や債務残高などの長期予測を行う独立組織を設けており、先進7カ国(G7)でこうした組織がないのは日本だけという。国際通貨基金(IMF)の対日審査団長を務めるラニル・サルガド氏は、独立財政機関の創設を強く提唱してきた。
民間レベルでも長期的視点に立った財政運営を求める声が高まっている。産学の有識者でつくる「令和国民会議」(令和臨調)は今月6日、独立財政機関を国会に設置するよう求める提言を発表。まとめ役を担った三菱UFJ銀行の平野信行特別顧問は会見で「不都合な真実を含めて将来の姿を客観的に直視すべきだ」と訴えた。
岸田首相は経済対策の策定に際し、景気回復に伴う税収増を「国民に還元したい」と表明。期限付きの所得税減税を検討するよう与党幹部に指示した。一方、防衛費の抜本的強化に伴う増税や、異次元の少子化対策では財源論議を年末に先送りしたままだ。内閣支持率の低迷が続く中、政権浮揚への思惑が透けて見える。
日本も英国と同様に、「人気取り」を優先して財政規律の緩みが限度を超えると、市場の反乱を誘発するリスクを帯びている。税収増でも国の歳出を賄うには足りず、「借金頼み」に変わりはない。国民に痛みを求める増税と減税をどう両立させるか。岸田首相は丁寧な説明が求められている。
●世耕弘成参議院自民党幹事長 代表質問 10/25
自由民主党の世耕弘成です。会派を代表して、岸田総理の所信表明演説について質問をいたします。
岸田総理、最初に明確に申し上げますが、私は総理を支持し、総理が目指されている国の姿や政策の実現に少しでも協力したいと思っています。総理は総裁選を勝ち抜かれた、我々が選んだ自由民主党総裁であります。岸田政権は安倍政権以来の基本政策を堅持され、経済、外交などの重要政策においてもこれまで大きな失敗も犯されていません。さらに、地道に仕事に取り組まれ、長年の懸案であった安保関連3文書の策定と防衛予算の大幅拡充、原発新増設・リプレイスの方針決定などを断行されました。また喫緊の課題であった新型コロナの5類感染症への移行、統一教会への解散命令請求も実行に移されました。国際情勢が緊迫する中でのG7議長としての議論の取りまとめ、ウクライナへの支援、日韓関係の改善など、外交上の難題にも懸命に取り組んで成果を出しています。経済全体の指標は決して悪くはなく、賃金も税収も伸びています。我が国は、世界の中で最もまともな経済状況にあると評する方もいます。確固たる姿勢で国民に賛否のある政策を推進した安倍政権や菅政権から、「聞く力」を重視し、国民に寄り添う姿勢を鮮明にする岸田政権へとバトンが引き継がれたことは、外交安全保障政策を重視し、安保改定という国論を二分するテーマに正面から取り組んだ岸信介政権の後を継いだのが、「低姿勢」と「寛容と忍耐」をキャッチフレーズに、世の中の安定と国民の豊かさを指向した池田勇人政権であったことを彷彿とさせます。池田元総理も同じ広島県選出であることも相まって、岸田総理の登場には、個人的に、歴史の必然さえ感じています。しかし、現状において支持率は低空飛行、補欠選挙の結果も1勝1敗。「こんなに頑張って成果を出しているのに、なぜ評価されないのだろう?」これが現在の岸田総理の率直なご心境ではないでしょうか。政権の置かれている現状について、総理はどうお感じになっているでしょうか?率直にお考えをお聞かせください。
支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待するリーダーとしての姿が示せていないということに尽きるのではないでしょうか。リーダーの役割とは何か?サラリーマン時代からずっと、私は、自分自身に問いかけ続けてきました。上司や先輩の言動を見つめ、過去の偉大な政治家や経営者が残した言葉から学び、そして自分自身の数多の失敗から教訓を得て、私なりのリーダー像を作り上げてきましたが、まだ道半ばです。いや、永遠に完全な答えを得ることはないでしょう。岸田総理ご自身は、リーダーとはどうあるべきとお考えでしょうか? 本音をお聞かせください。
私が現段階で考えているリーダー像は、「決断し、その内容をわかりやすい言葉で伝えて、人を動かし、そしてその結果について責任を取る」という姿です。しかし残念ながら、現状において、岸田総理の「決断」と「言葉」については、いくばくかの弱さを感じざるを得ません。その弱さが顕著に露呈したのが、今回の減税にまつわる一連の動きです。9月25日に総理は「税収増を国民に適切に還元する」と表明されました。しかしこの「還元」という言葉が分かりにくかった。自分で決断するのではなく、検討を丸投げしたように国民には映った。総理のパッションが伝わらなかった。その後「還元」という「言葉」が一人歩きして、「給付なのか減税なのか」、「はたまた両方なのか」、総理の真意について与党内でも様々な憶測を呼んでしまいました。世の中に対しても、物価高に対応して総理が何をやろうとしているのか、全く伝わりませんでした。もし、9月25日に総理が、「物価高による生活困窮世帯の苦境は深刻なので十分な給付を迅速に行う。一方で、物価高は中間層の家計も圧迫しており、消費の停滞にもつながっている。これには所得減税で対応する。どのような手法を取るかについては技術的な問題もあるので、党税調の専門家とも相談しながら決めていきたい。」とわかりやすく述べておられたら、政府与党での議論が混乱することもなかったでしょうし、多くの国民も物価高に対する総理の姿勢をよく理解してくれたことでしょう。総理は過去の総理よりも頻繁に会見に応じられるなど、国民への情報発信に心を砕いておられます。しかし「綸言汗の如し」と申します。リーダーの発した「言葉」はかいた汗のように、元に戻すことはできません。今後重要な局面で発信される際には、総理ご自身がじっくりと考えて決断し、水面下の根回しも入念に行なって、その発言により政権の政策の方向性を確定させ、なんとしてでも国民の支持を得るという覚悟で、政治家としての言葉で発信していただきたいと思います。「そんな確定的な『言葉』で全てを発信することは難しい。発言の修正に追い込まれたらどうするのだ、逃げ道を作っておかなくては」と思われるかもしれません。ウインストン・チャーチルは、政治家に必要な資質として、以下の言葉を残しています。「政治家に必要な能力とは、明日、来週、来月、来年何が起こるかを予言すること。そしてそうならなかったときに理由を説明できることである」と。変更を迫られた時は、また真摯に自分の言葉で説明すればいいのです。総理、「言葉」の重みと発信の在り方について、どのようにお考えか?率直にご意見をお聞かせください。
さて、経済政策の根本について議論させていただきたいと思います。私は財政健全化を決して軽視はしておりません。財政が健全化の方向に向かうことは、政策の選択肢を増やし、諸課題に機動的に対応できることにほかならず、好ましいことだと考えています。しかし一方で、近視眼的な増税によって財政が健全化するとは考えておりません。増税すれば税収が増え、財政が健全化すると短絡的に考えるのは、誤りです。逆に減税してでも、消費や投資を増やし、経済を活性化することで、結果として税収が増え、財政健全化につながっていくと考えます。近年税収が毎年大幅に増加し、昨年度は過去最高の71兆円を記録し、これから数年は税収増が続くと予想されています。このことは今後の財政健全化にも資することでしょう。これは積極財政政策を取り続けてきた成果に他なりません。今、「GDPギャップがプラスに転じたのだから、もう積極財政は必要がない、増税してもいい」という議論がありますが、賛成できません。アベノミクスでデフレから脱却できなかった大きな原因の一つは、2本目の矢である財政出動が十分でなかった点にあると私は考えています。アベノミクスが始まる前の2012年度とコロナ直前の2019年度を比較すると、国民から頂いた税と社会保険料は153兆円から192兆円へと約40兆円増加しているのに対して、国民に支出した国と地方自治体の歳出と社会保障給付は193兆円から209兆円と約15兆円しか増加していません。実は差し引き25兆円ほど緊縮した財政になっていたのです。アベノミクスの間にも大きく2回GDPギャップがプラスに転じた時期がありました。しかし2回ともその直後に消費税を増税したことによって消費が落ち込み、GDPギャップは再び大きくマイナスに転じてしまいました。総理、アベノミクスがやり切れなかった点を教訓にしなければなりません。GDPギャップがわずかにプラスに転じた今こそがデフレ脱却への正念場です。安易に緊縮財政や増税に走るのではなく、減税や積極財政と成長戦略によって今後も安定的にGDPギャップがプラスになることを確定させ、デフレ脱却を宣言し、本格的に税収を増して、結果として財政健全化を達成すべきだと考えますが、総理のお考えはいかがでしょうか?
経済対策策定の際に、規模の議論をすると、必ず「規模ありきではない、中身が重要」との批判にさらされます。私は規模も中身も重要と考えます。中身の吟味はもちろん重要です。しかしマクロ経済全体にどのようなインパクトを与えるべきか?規模の議論も極めて重要です。今回の補正予算で行うべき物価高への対応や生活困窮世帯への給付は、現在行っている、あるいは過去に行った施策をレビューすれば自ずと規模感は導き出されます。よく検討しなければならないのが、所信表明で総理が1番目のポイントとして挙げられた「供給力の強化」のために必要な対策の規模です。確かに現在GDPギャップは縮小し、税収は右肩上がりではありますが、果たして、我が国の経済は本当の意味で成長しているのでしょうか。現在の経済指標は、強い外需の影響によって引き上げられており、我が国の内側から湧き出てくる力強い成長があるとは思えません。ここで重要になってくるのが総理のおっしゃる「供給力の強化」であり、その指標となるのが「潜在成長率」です。「潜在成長率」とは、わかりやすく言えば国内経済における供給能力の伸びであり、一時的な景気や物価に左右されない中長期的な経済力を表します。9月の月例経済報告関係閣僚会議では、我が国の潜在成長率は0.5である一方、アメリカは1.8、カナダが1.5、英仏が1.2となっており、日本はG7諸国の中で最も低い水準と報告されています。現時点での日本の真の経済力は極めて低いと言わざるを得ません。潜在成長率は、工場、機械などの設備の量を示す「資本」と、労働者数に労働時間をかけた「労働」、そして「生産性」の3つの要素で構成されます。人口減少による働き手不足により、「労働」の増加には期待できない以上、設備投資による「資本」の拡大、新技術による「生産性」向上に向けて、大胆に予算を投下し、供給力を強化しなければ、潜在成長率、即ち、中長期的な経済力は上がってきません。今後、労働力人口の減少が潜在成長率にマイナスに働くことを踏まえた上で、欧米並みの潜在成長率まで引き上げることを考えると、大規模な「資本」の増加、すなわち設備投資を増やすことが不可欠です。今回の経済対策と補正予算では、物価対策としての給付や減税に注目が集まっていますが、民間の設備投資を後押しする施策の内容と規模も極めて重要です。総理は、潜在成長率を欧米並みに引き上げるための民間設備投資はどの程度必要と考えますか?またそのために政府としてどのような内容でどれくらいの規模の補助金や税制による支援が必要と考えますか? 具体的にお答えください。
もう一つ目を配っておかなくてはならないのは、不確実性の時代に突入している世界経済です。世界的なインフレ基調はいまだ根強く、それに伴う欧米の政策金利の上昇が、経済の下押し要因となっています。中国経済の急激な減速も大きな懸念材料です。米中対立の激化もまた、世界経済のリスク要因です。途上国の債務問題は、深刻さを増しています。さらには、中東情勢の悪化により、エネルギー価格のさらなる高騰も予想されます。こうした世界経済のリスクをしっかりと見据えたとき、今回の経済対策とその裏付けとなる補正予算の規模は、日本経済を下支えする観点からも極めて重要です。今回の経済対策について、物価対策や生活困窮世帯の生活支援などを中心に意味のある「政策」を積み上げていくべきことは言うまでもありません。しかし、同時に、真の日本の経済力をつけるための設備投資促進と世界経済のリスク対応に必要な経済対策の規模を吟味し、十分な、いや十二分な「規模」の対策とすることもまた、不可欠であります。経済対策の「規模」を確保することについて、岸田総理の確固たる決意を伺います。
さて、供給力の強化にあたっては、薄く広く投資するのではなく、今後の日本の「食い扶持」となり得る分野に重点投資することも重要です。自動車等の世界の消費者に売れる商品はもちろんですが、素材、工作機械など日本企業が強みを持つ産業について「強いものをさらに強くする」観点からの積極的な後押しが必要です。例えば、半導体製造装置については、世界市場で日本が依然として1/4程度のシェアを持っており、製造工程によっては日本企業が9割のシェアを有するものもあります。素材、工作機械といった産業は派手さはありませんが、世界各国の産業を維持する上でなくてはならないものです。こういった分野で日本企業のシェアを高め、知財を押さえ、価格決定権を握っていくことこそが、日本の生産性を高めることとなり、海外との交渉力強化にも直結します。例えば、グリーン水素の製造については日本にはその基盤となる再生可能エネルギーの適地が少なく、将来世界で水素利用が普及した場合、日本は水素の輸入国になると予想されています。しかし、現在日本が世界をリードしている水素製造技術、輸送技術、利活用技術をしっかり抑えておけば、将来にわたって、水素生産国との交渉力が高まり、水素を安定的に確保することが出来ます。こういう分野の中長期的戦略を国として立てて、重点投資を行なっていくことは極めて重要であり、今回の経済対策にも盛り込まれるべきと考えますが、総理のお考えを伺います。
そして、経済安全保障もまた、国民生活に直結する極めて重要な課題です。経済産業省で現在、新たな行動計画の検討が進んでいますが、とりわけ、重要鉱物や永久磁石、蓄電池、半導体、医薬品などの重要物資について、その供給を、特定国に過度に依存している現状は、早急に改善すべきです。新型コロナウイルスが世界を覆ったとき、そして、現在も続くロシアによるウクライナ侵略が勃発した際にも、安定したサプライチェーンの重要性を、私たちは身をもって実感しました。それだけではありません。私たちは過去に、レアアースの輸出規制で苦しんだ経験があります。ガリウム・ゲルマニウムの輸出管理も急遽始まりました。国民の暮らしや生産活動に不可欠な重要物資の供給を、特定の国に依存することは、それ自体が大きなリスクです。経済的な威圧行動を予防、抑止するためにも、特定の国への重要物資の依存を低減し、サプライチェーンの多様化を進めていかなければなりません。最大の課題は、一部の物資に関して特定の国が圧倒的な価格競争力を持っていることです。とにかく安い。そのために、特定国への依存度が上がってしまっている現実があります。しかし、その値段の安さの原因が、もし、その国の政府による莫大な補助金であったとしたら、それは公正な競争とは言えません。CO2をたくさん排出し、環境への負荷を垂れ流すことで、コストを抑えているとしたら、それもまた見過ごすことはできません。強制労働によるコスト減も許容できません。こうした点について、平等な競争条件を回復しなければ、強靱なサプライチェーンの構築など、絵に描いた餅になってしまいます。そのためには、環境や労働・人権などの国際スタンダードを満たし、持続可能な形で生産された重要物資に対して、大胆な購入インセンティブを与えたり、政府調達で優遇するなど、新たな産業政策を進める必要があると考えます。サプライチェーン強靱化に向けた総理の見解を伺います。
国民が岸田政権に対し、もう一つ物足りないと感じているのは、スピード感ではないでしょうか。例えば、民間も含めたAIや防衛関連技術の漏洩を防ぐセキュリティ・クリアランスの制度化にどれだけの時間をかけているのでしょうか。来年の通常国会に法案が提出されるとは聞いていますが、有識者会議などによる詳細な詰めはこれからだとも聞きます。もう導入は決まっているのですから、総理が明確に期限を切って気迫を見せしっかりと実行に移すべきです。また、コロナ後の需要回復などにより、各地でタクシー不足・バス不足が顕在化し、地方における生活、観光が破綻しかかっています。ライドシェアについてもいつまでも議論するのではなく、期限を切ったスピード感を持って関係者の調整を行い、腹をくくって、実現しなければなりません。岸田政権における政策実現のスピード感について、総理はどうお考えでしょうか?
外交に目を転じると、厳しさを増す国際情勢の中で、年が明ければ、台湾の総統選挙から始まり、欧州議会選挙、そして米国大統領選挙があり、英国下院でも総選挙があるとされています。世界的な選挙イヤーにあって、権力の空白が生じるかもしれない中、その隙を突いて国際政治がさらに混乱する事態が起こることも懸念されます。我が国は、今年、G7の議長国でありましたが、引き続き、国際社会でしっかりとリーダーシップを発揮していく。世界と日本の安寧のための外交努力の重要性は、言うまでもありません。これまで日本は、ウクライナ支援をはじめ様々な局面で、同盟国であるアメリカと常に同一歩調を取ってきています。一方でイスラエル・パレスチナ武装勢力間の武力衝突への対応に関しては、日本の対応とアメリカの対応には若干の違いも出てきています。こうした状況の中では、同盟国アメリカとの連携を最重視しつつも、「ついて行く外交」だけでなく、日本独自の存在感を示し、自ら「道を切り拓く」外交を模索していくべきではないでしょうか。かつて日本はグローバルな外交の舞台での存在感が希薄でした。しかし、今や日本は東アジアという世界で最も地政学的リスクが高い場所に位置する最大の民主主義国家であるという位置づけ。世界第3の経済大国で重要な技術を多数保有するという経済的重要性。そしてインドやインドネシアといったグローバルサウスのリーダー国やASEAN各国とは歴史的に良好な関係を構築してきたこと。さらには中東諸国とも独自の関係を築いていること。こうした各種の現実により、その存在感が大幅に増しています。安倍元総理が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」は、今や自由主義を標榜する各国の間で共通の理念となっています。岸田総理が提唱された、アジア各国が脱炭素化に向けて協調し、エネルギー安全保障を確保し、共に経済成長を目指すというアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)はアジア各国で高く評価されています。この夏、尾辻議長に同行してベトナムとシンガポールを訪問しましたが、両国要人と尾辻議長との会談でも、相手側からAZECについて何度となく話題として持ち出され、その期待の大きさに驚かされました。経済的、歴史的、文化的な関係を大切にしつつ、大国と堂々とフェアに渡り合う。アジアの国々や地域の利益も踏まえた新しい枠組み構築に大きな役割を果たす。国と国との間に立って、汗をかく。これこそが、日本が独自の存在感を発揮していく道ではないでしょうか。この観点から、焦眉の急となっている中東情勢とウクライナ情勢について申し上げます。まず中東です。今、中東情勢が緊迫しています。多数の死傷者が出ている現状を深刻に憂慮しています。我が国は、長年、中東地域の和平のため独自に力を尽くしてきました。ヨルダン川西岸に「平和と繁栄の回廊」を築く。その一つの実績でもあるジェリコの農産加工団地には、私も平成29年に経産大臣として足を運びましたが、日本として15年以上、我が国は、パレスチナの経済社会開発を通じ、中東和平の実現のために力を尽くしてきました。
豊かさこそが平和の苗床であり、繁栄こそが安定の基盤である。その信念こそが、我が国の中東外交の原点であります。ですから、今、中東で起きている現実を目の当たりにするとき、大きな失望の念を禁じ得ません。しかし私は、こうした時だからこそ日本の役割があると信じます。8年前、当時の安倍総理が、イスラエル、パレスチナを含む中東各地を訪問した際、官房副長官として同行しましたが、その時の政策スピーチで引用された、中東に古くからある言葉を思い出します。「中庸が最善」である、というものです。伝統を大切にし、中庸を重んじる態度。過激主義ではなく漸進主義。憎しみではなく、寛容。イスラエルとも、アラブの国々とも、長年にわたり友好関係を築いてきた日本にしか出来ない平和外交の余地がある。そう信じています。岸田総理を先頭に日本政府には、事態の沈静化に向けて、国際社会と連携しながら、最大限の外交努力を尽くしていただきたいと思いますが、総理のお考えはいかがでしょうか?
次にウクライナ情勢です。一旦話が逸れるように見えるポーランドの話から申し上げたいと思います。
第一次世界大戦前、帝政ロシアにより政治犯として流刑に処されるなどして、シベリアには多くのポーランド人が暮らしていました。そして、ロシア革命とその後の内戦で多くの子どもたちが親を亡くし、飢餓や病気に苦しむ中、ポーランドの救済委員会は、孤児たちを救出してくれるよう、当時シベリアに出兵していた各国に要請しました。手をさしのべたのは、唯一日本だけ。それも要請からわずか2週間余りの短期間で支援を決めるという、異例の英断でありました。日本陸軍の手で、760人を超える孤児が助け出されたそうです。福井県敦賀の港では、子どもたちの到着を、町をあげて歓迎したと言います。東京と大阪で献身的な看護を受ける中、日本中からポーランド孤児たちのためにと、服やお菓子、絵本などが送られてきたそうです。そして子どもたちは、日本で体調を回復し、祖国ポーランドの地を踏むことができました。その中の一人、イェジ・ストシャウコフスキさんは、帰国後、教育者として、多くの貧しい子どもたちの世話をしました。今もワルシャワ近郊に、イェジさんの名前を冠した特別養護学校があります。ロシアによるウクライナ侵略で、たくさんのウクライナの人々がポーランドに避難する中で、この学校では母子多数を施設に受け入れました。侵略直後ただちに決断したと言います。校長先生は、こう語っています。「日本が孤児たちに示した人道の精神を、私たちが示す番だった」先人たちの気高い精神と、大胆な決断が、世紀を超えて、遠くポーランドの地に根づき、そして今、ウクライナの人たちを支えています。そのことに静かな誇りを持ちながら、100年後の今を生きる私たちもまた、先人同様、しっかりとウクライナへ独自の支援の手をさしのべるべきであります。今この瞬間も、ウクライナの大地では、祖国の独立を守り、愛する家族を守るため、勇敢に戦っているウクライナの人々がいます。改めて、心からの連帯の気持ちを表明します。年明けにも、日本政府が主導して、「日ウクライナ経済復興推進会議」が行われると聞いています。我が国として、ためらうことなく、できうる限りの支援を行っていく。そのためには、今回の経済対策で、ウクライナで事業展開する日本企業への新たな補助制度の創設、100%補助なども視野に入れたテコ入れなど、異例かつ、これまでにない、大胆な支援を行っていくべきと考えますが、岸田総理の決意をお伺いします。
最後になりますが、岸田総理、繰り返しになりますが、総理は今「いくら頑張って成果を出しても、国民から評価されない」という焦りの気持ちをお持ちではないでしょうか?「拱手傍観、坐して敗るるを観ているのは果たして如何であろうか。・・・四夷に武威を示せ。」安政三年、開国への圧力が高まる中で、松下村塾生の久坂玄瑞は、自分が思い描く攘夷が十分に実行できない日本の現状を憂い、自分一人でも結果を出したいと功を焦っていました。これに対して、吉田松陰は、こう諭しました。「天下後世を以て己が任と為すべし」。この国のことと、その未来をどうするかということこそを、自らの任務と自覚すべきである。目先の結果を出すことに焦るより、もっと大きな視点で取り組むべきだと説いたのです。世界に目を向ければ、これまでにない荒波の中に、我が国は置かれています。国内に目を向ければ、物価の高騰、さらには少子高齢化に伴う諸問題は待ったなしの課題です。社会保障制度の再構築をはじめ根本から日本の構造改革を進めていかなければなりません。岸田総理。どうか、こうした大きな課題。総理大臣という地位にある者にしかチャレンジできない課題にこそ、真正面からぶつかっていく。そのことに集中していただきたい。様々な声に耳を傾けることは重要ですが、目先のことに汲々とする必要はありません。どうか、「天下後世を以て己が任となすべし」。参議院自民党も、その思いで、共に、国内外の重要課題に立ち向かっていく。そのことを、同僚議員と共に、お誓い申し上げ、私の代表質問を終わります。
●自民・世耕氏の代表質問の話題 10/25
●参院本会議 代表質問で自民幹部から首相に異例の苦言 10/25
25日、参議院本会議で行われた代表質問では、経済対策などをめぐって、自民党の幹部から岸田総理大臣に異例の苦言が呈されました。
自民 世耕参院幹事長「何をやろうとしているのか全く伝わらず」
自民党の世耕参議院幹事長は、岸田総理大臣の政権運営をめぐって「現状、支持率は低空飛行で、補欠選挙の結果も1勝1敗だった。支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待するリーダーとしての姿が示せていないということに尽きるのではないか」と指摘しました。
さらに、「岸田総理の『決断』と『言葉』はいくばくかの弱さを感じざるをえない。その弱さが顕著に露呈したのが今回の減税にまつわる一連の動きだ。『還元』という言葉が分かりにくく、物価高に対応して総理が何をやろうとしているのか全く伝わらなかった」と苦言を呈しました。
これに対し、岸田総理大臣は「リーダーは強い意志を持って政策実現していく姿勢を示すことが重要だと考える。変化の流れをくみ取り『あすはきょうよりよくなる』と信じられる時代を実現することを明確に誓い、有言実行を貫いていく」と述べました。
そのうえで「デフレ脱却を確実なものにする一時的な措置として、国民の可処分所得を直接的に下支えし、物価高による国民の負担を緩和するという私の考え方をしっかり伝えていく。この国会でも経済政策や物価対策を中心に議論を重ね、国民に丁寧に説明していきたい」と強調しました。
維新 遠藤国対委員長「与党か野党か分からないような質問」
日本維新の会の遠藤国会対策委員長は、党の代議士会で「与党か野党か分からないような質問だった。これほど、けなす質問があるのかと感じた。自民党の中でも岸田総理大臣が何をしているのかよく分からないというのが表れている。どう突破していくのか見ものだ」と述べました。
●「首相支持」だった自民・世耕氏が一転、「首相の資質は?」と質問 10/25
ほかの自民党幹部に先駆けて、岸田文雄首相の総裁選での再選を「支持」していた世耕弘成参院幹事長が25日の参院代表質問で一転、首相の資質に疑問符をつけた。内閣支持率の低下を受け「親岸田」の立場から「中間派」に距離を取り直す思惑があるようだ。
世耕氏は冒頭で「首相への支持」に触れたが、その後は「支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待する『リーダーとしての姿』が示せていないことに尽きる」。野党議員と見まがうような発言に、野党席から「そうだ、そうだ」と合いの手が上がった。
政権発足以降、世耕氏は過去2回の代表質問で、首相への共感、提案を強調してきたが、この日は一変。下落傾向の支持率のほか、自民が有していた2議席維持を逃し、1勝1敗に終わった衆参ダブル補選にも触れ、首相をただした。
●自民・世耕氏、首相に「上から目線」で助言 還元発言に次々不満 10/25
「物価高に対応して、岸田文雄首相が何をやろうとしているのか、まったく伝わらなかった」。自民党の世耕弘成参院幹事長は25日、参院本会議での代表質問で、首相が9月に経済対策の策定を指示した際、「税収増を国民に『還元』する」と述べて、所得減税や給付金支給など具体策を示さなかったことに苦言を呈した。
自民会派を代表して登壇した世耕氏は、岸田政権の内閣支持率低迷について「最大の原因は(首相が)国民が期待するリーダーとしての姿が示せていないということに尽きる」と指摘。「首相の決断と言葉について、いくばくかの弱さを感じざるを得ない」とも述べた。
首相の指導力不足や弱さにまで言及して厳しく注文を付けたため、議場内がざわめく場面もあった。世耕氏は首相の「還元」発言に関して「検討を丸投げしたように国民には映った」「首相のパッションが伝わらなかった」などと次々不満を列挙。重要局面での発信について「じっくりと考えて決断し、水面下の根回しも入念に行って、なんとしてでも国民の支持を得る覚悟で政治家としての言葉で発信してほしい」と「上から目線」で助言した。
答弁に立った首相は、原稿に目を落としながら淡々と「還元との言葉が分かりにくいとの指摘については、今後その内容を具体化させる段階で、私の考え方をしっかり伝える」などと答弁。「これまでも自ら決断し国民に直接発信することを心がけてきた。国会でも経済政策や物価対策を中心にしっかりと議論を重ね、国民に丁寧に説明する」と釈明した。
●岸田首相に自民も酷評「国民が期待するリーダー像、示せてない」 10/25
「(内閣)支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待するリーダーの姿を示せていないことに尽きる」
「決断と言葉に弱さを感じる」
自民党の世耕弘成参院幹事長は25日、参院本会議での代表質問で、岸田文雄首相の指導力に厳しく注文を付けた。所得税減税を巡る首相の発信についても「首相の『決断』と『言葉』には、いくばくかの弱さを感じざるを得ない」と酷評。代表質問で首相が「身内」の与党議員から重ねて苦言を呈されるのは極めて異例で、議場からはどよめきが起きた。
世耕氏は参院自民の有力者で、党内最大派閥の安倍派を率いるいわゆる「5人衆」の一人。支持率が低迷する首相に対する与党内の不満を突き付けた形だ。
給付なのか減税なのか「言葉が弱い、全く伝わらない」
世耕氏は、首相が所得税減税に関して9月25日に「税収増を国民に適切に還元する」と表明したことについて、「還元という言葉が分かりにくかった。自分で決断せず、検討を丸投げしたように国民に映った」と指摘。「還元」が現金給付なのか減税なのか、その両方を指すのか不明で、与党内でも臆測を呼ぶ事態を招いたとして、「物価高に対応して何をやろうとしているのか、世の中に全く伝わらなかった」と強調した。その上で、今後は「政治家としての言葉で発信してほしい」とくぎを刺した。
世耕氏はさらに「国民がもう一つ物足りないと感じているのは」と続け、岸田政権には政策を実行に移すスピード感が欠けていると訴えた。一例として防衛関連技術の漏えいを防ぐ「セキュリティー・クリアランス」の制度化を挙げ、「どれだけ時間をかけているのか」と不満を示した。
首相は表情を変えずに、「これまでも自ら決断し、国民に直接発信することを心掛けてきたが、国会でも経済政策や物価対策を中心にしっかりと議論を重ね、国民に丁寧に説明していく」と答弁した。
●「国民が期待するリーダーの姿示せていない」支持率低迷にも言及 10/25
国会では岸田首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が行われているが、首相の身内であるはずの自民党の世耕参議院幹事長が公然と批判を展開した。
一体、何があったのか、国会記者会館からFNN政治部・木村祐太記者が中継でお伝えする。
現職の自民党幹部から飛び出した厳しい言葉に、与党からはどよめきが、野党からは拍手が起き、本会議場は異様な空気に包まれた。
自民・世耕参院幹事長「残念ながら現状において岸田総理の決断と言葉については、いくばくかの弱さを感じざるを得ない。物価高に対応して総理が何をやろうとしているのか、全く伝わらない」
中でも、議場を最もザワつかせたのが低迷する支持率についての、この言葉だった。
自民・世耕参院幹事長「支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待するリーダーとしての姿が示せていないということに尽きるのではないか」
自民党の若手議員は「こんなの聞いたことがない」と驚いていたが、背景にあるのは、党内で徐々に広がる岸田首相への不満だ。
あるベテラン議員は、「物価高対策も迷走しているし、みんなが思っていたことを言ってくれた」と話していた。
岸田首相は「強い意志をもって政策を実現する姿勢を示していくことが重要だ」と応じたが、決断力を高められるかが党内で求心力を保つカギとなりそう。
●参院本会議 代表質問 経済対策や閣僚資質などめぐり論戦 10/25
国会は25日から参議院本会議でも、岸田総理大臣の所信表明演説に対する各党の代表質問が始まり、物価高を受けた新たな経済対策や、閣僚の資質などをめぐって論戦が交わされました。
立民 田名部参院幹事長「インボイス制度」について
立憲民主党の田名部参議院幹事長は消費税の納税額を正確に把握するための「インボイス制度」について、「私たちは導入に反対し、複数税率を改め、給付付き税額控除を導入する法案を提出している。インボイスを廃止し、負担や再分配のあり方を根本的に議論するつもりはないか」とただしました。
これに対し、岸田総理大臣は「給付付き税額控除は消費税そのものの負担が直接、軽減されるものではなく、消費者にとって痛税感の緩和の実感にはつながらない。インボイス制度は複数税率のもとで課税の適正性を確保するため必要な制度で、廃止することは考えていない」と述べました。
立民 田名部参院幹事長 防衛相の“自衛隊に報いる”発言について
また、田名部氏は木原防衛大臣が選挙の応援演説で、自民党候補への支持が自衛隊に報いることになるという趣旨の発言をしたことについて、「自衛隊の政治利用と受け止められる発言をしただけでなく、『一議員としての党活動』と開き直り、反省もなく、大臣としての自覚が足りない。大臣としての資質が問われるのではないか」と追及しました。
これに対し、岸田総理大臣は「発言については木原大臣本人が自衛官とその家族への敬意と感謝を述べたもので、自衛隊を政治的に利用するような意図はないと説明し撤回した。自衛隊が政治的に中立の組織だと本人も十分に認識しており、引き続き職務に当たってもらいたい」と述べました。
自民 世耕参議院幹事長 岸田首相の政権運営について
自民党の世耕参議院幹事長は岸田総理大臣の政権運営をめぐって、「支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待するリーダーとしての姿が示せていないということに尽きるのではないか。物価高に対応して総理が何をやろうとしているのか全く伝わらなかった」とただしました。
これに対し、岸田総理大臣は「変化の流れをくみ取り『あすはきょうより良くなる』と信じられる時代を実現することを明確に誓い、有言実行を貫いていく。デフレ脱却を確実なものにする一時的な措置として、国民の可処分所得を直接的に下支えし、物価高による国民の負担を緩和するという私の考え方をしっかり伝えていく」と強調しました。
自民 世耕参議院幹事長 物価高受けた新たな経済対策について
また、世耕氏は物価高を受けた新たな経済対策について、「裏付けとなる補正予算の規模は日本経済を下支えする観点からも極めて重要だ。日本の真の経済力をつけるための設備投資促進などに必要な対策の規模を吟味し、十二分な規模の対策とすることが不可欠だ」と求めました。
これに対し、岸田総理大臣は「デフレ脱却のための供給力強化と、デフレに後戻りしないための一時的な措置としての国民への還元を車の両輪として取りまとめていく。規模はこうした政策の積み上げの結果であり、わが国の経済がデフレから脱却し、新しい経済ステージに確実に移行するため、効果的な政策をしっかり積み上げ、規模を決定していく」と述べました。
このほか、岸田総理大臣は、一般のドライバーが自家用車を使って有料で人を運ぶ「ライドシェア」の導入をめぐり、「わが国で生じている地域交通の担い手不足や移動の足の不足といった深刻な社会問題に対応しつつ、『ライドシェア』の課題について取り組み、方向性を出していく」と述べました。
●岸田首相が減税の意義を強調「国民の可処分所得を直接下支えしたい」 10/25
国会では25日、参院での代表質問が始まり、立憲民主党の田名部匡代参院幹事長が岸田首相に質問した。
田名部氏は、岸田首相が所得税増税に関して、きのう国会では具体的に語らなかった一方で、夜のテレビ番組で減税期間は1年が軸となると発言したことを問題視し、しっかり国会でも説明するよう求めた。
そして、岸田政権が検討している減税を国民は冷ややかな目で見ていると指摘した上で、「税収増を安易に経済対策の財源とすることは今後の日本の財政に対する信認を揺るがすことにならないか」と質した。
これに対し岸田首相は「我が国の財政は、30年来続いてきたデフレを脱却できる千載一遇のチャンスを迎えているが、賃金上昇が物価高に追いついておらず、これを放置すれば再びデフレに戻りかねない」と指摘した。その上で、デフレ脱却のための一時的な措置として国民の可処分所得を直接的に下支えし、物価高による国民の負担を緩和したいと考えている」と経済対策の意義を強調した。
さらに「私の経済財政運営の基本は経済あっての財政だ。デフレから脱却し、財政健全化に取り組むことで中長期的な、財政の持続可能性の信認の確保にも努めてまいりたい」と、財政健全化の前提として、デフレ脱却を優先する考えを示した。
●定額1人4万円の所得減税、納税者に加え扶養家族も対象…「早急に検討」 10/25
政府・与党は、岸田首相が意欲を示している税収増の還元策に関し、来年度に限り、所得税などを定額で1人あたり4万円減税するとともに、低所得世帯向けに1世帯あたり7万円程度を給付する案を軸に具体策の調整に入った。
減税は、納税者本人に加え、扶養家族を対象とすることも検討する。家族3人を扶養している場合、計16万円の減税となる。所得税と住民税の減税は3・5兆円規模、給付を合わせた総額は5兆円規模に上る見通しだ。
給付金の対象は、住民税の非課税世帯とすることが有力となっている。政府は今年3月に策定した物価高対策でも、約5000億円を投じ、住民税非課税世帯などに3万円を目安とした給付金の支給を決めた。
首相は24日の衆院代表質問の答弁で還元策について、「所得税減税を含め、早急に検討を進めていく」と強調した。26日の政府与党政策懇談会で正式に具体化を指示し、11月2日に策定する予定の経済対策に盛り込む考えだが、自民党内には減税に慎重論があり、調整に手間取る可能性もある。
政府は、税制改正関連法案を来年1月に召集される通常国会に提出し、3月末までの成立を目指す。4月頃に給付金の支給、夏頃までに減税を実施する計画を立てている。
首相は24日のテレビ東京の番組で「来年には物価高に負けない賃上げを実現したい。それまでの間、しっかり支えるための還元を考えたい」と述べ、所得税減税の期間は1年が軸になるとの認識を示した。
●迷走批判、払拭に岸田首相躍起 立民、「減税ばらまき」追及 代表質問 10/25
臨時国会の与野党論戦が24日の衆院代表質問でスタートした。
物価高騰を踏まえ、岸田文雄首相は所得税減税を含む国民の負担軽減に取り組む方針を強調。経済対策に関する「迷走」批判の払拭に躍起となったが、具体策には触れなかった。これに対し、先の衆参2補欠選挙で一矢報いた立憲民主党は政府対応の遅れなどを厳しく追及した。
「賃金上昇が物価高に追い付いておらずデフレに戻りかねない。国民の可処分所得を下支えし、負担の緩和が必要だ」。24日の衆院本会議で首相は、所得税減税などを念頭にした物価高対策に重ねて理解を求めた。
首相と立民は経済対策を巡り、真っ向から対立。立民の泉健太代表は、経済対策に関する首相指示が9月下旬だったことを問題視し「なぜ7、8月でなく、この時期まで遅れたのか」とただした。首相は「それ以前からガソリン価格の補助拡大など、機動的な対策を講じてきた」と語気を強めて反論した。
最近の首相は経済分野への傾注が目立つ。24日の代表質問でも、「デフレ脱却の千載一遇のチャンス」を迎えていると指摘し、今が経済再生への好機だと訴えた。
ただ、経済対策に関する24日の自民党会合では、富裕層も含む一律の所得税減税ではなく「低所得者支援に集中すべきだ」との声も出た。代表質問に立った自民の稲田朋美氏も「ここ2年、補正予算で約60兆円の追加歳出を行っていることを忘れてはならない」と財政規律への配慮を求めた。自民税調でも減税への異論が依然根強い。
こうした党内情勢に配慮してか、首相は所得税減税に関し、実施時期や規模などの具体策は明言しなかった。防衛費増額のための増税時期や少子化対策の財源確保策についても、従来の見解を繰り返すなど、歯切れの悪い答弁ぶりが目立った。
代表質問終了後、泉氏は記者団に「(首相は)検討するし注視もするが、結局何も答えない」と皮肉った。
一方、泉氏は経済対策で政府との違いをアピールするため、「規模ありきや『ばらまき』ではなく、重点配分することだ」と強調。「国民が望むのは今年中の給付、給付、給付だ」と首相の所信表明を当てこすった。
衆参補選にも触れ、泉氏は「徳島・高知で勝利し、長崎で肉薄した。政策を動かし論戦できる国会にするため私は戦う。どうか力を貸してください」と野党に共闘を呼び掛けた。ただ、24日に予定されていた国民民主党の玉木雄一郎代表との面会はキャンセルされるなど、共闘の先行きは不透明だ。 
●首相、インボイス制度廃止せず 10/25
岸田文雄首相は25日の参院本会議の代表質問で、10月に導入された消費税のインボイス(適格請求書)制度に関し「複数税率の下で課税の適正性を確保するため必要な制度だ。廃止は考えていない」と述べた。立憲民主党の田名部匡代参院幹事長は制度導入を「事業者の声を無視している」と批判し、廃止を求めた。
首相は、22日に投開票された衆院長崎4区補欠選挙の応援演説で「自衛隊」に言及した木原稔防衛相を巡り「本人が発言を撤回した。引き続き職務に当たってもらいたい」と表明した。
政府が策定する経済対策の財源について、税収増分を安易に充てるのは財政への信認を揺るがすとの指摘に対しては「財政健全化を取り組むことで中長期的な財政の持続可能性への信認確保に努めていきたい」と強調した。
機密情報の取り扱いを有資格者のみに認める「セキュリティー・クリアランス」制度に関し、来年の通常国会の法案提出に向け、準備を進める考えも示した。
25日午後は衆院で代表質問を行う。参院は26日も実施する。
●減税めぐり参院でも野党追及 岸田首相へ“身内”からも... 10/25
減税を含む経済政策が、国会で論戦となっている。
25日から参議院でも始まった各党の代表質問について、国会記者会館から最新情報をフジテレビ政治部・胡子美佳記者が伝える。
岸田首相が訴える減税について、“国民も冷ややかな目で見ている”と、徹底追及する野党。
さらには、“身内”の与党からも苦言が呈される異例の展開となっている。
立憲・田名部参院幹事長「大事なのは勢いのある言葉でも、メガネのかけ替えでもない。メガネの奥の総理の目に、国民の姿がきちんと映っているかどうか。国民はそこを見ている」
岸田首相「一時的な措置として、国民の可処分所得を直接的に下支えし、物価高による国民の負担を緩和したいと考えている」
懸命に野党と対峙(たいじ)する岸田首相だが、25日午前、質問に立った自民党の世耕参議院幹事も、「総理の決断と言葉はいくばくかの弱さを感じざるを得ない」、「『還元』という言葉がわかりにくい」、「物価高に対し、何をやろうとしているか、まったく伝わらない」と酷評し、議場がどよめいた。
代表質問は26日まで行われる。
●「4人で16万円」“岸田減税”案 所得制限なし「不公平」の声も 10/25
経済対策として岸田政権が調整を進める所得減税。
街の人に話を聞くと、「収入や納税の不公平感がないといい」といった声が漏れ聞こえてきた。
政府が検討する減税案は納税者本人に加え、子どもなど扶養する家族も含め、所得制限を設けずに1人当たり年4万円減税するもの。
4人家族の場合は、あわせて16万円の減税となる。
この内訳は、所得税が3万円、住民税が1万円とする案が検討されている。
また住民税が課税されない低所得世帯には、現在の3万円に加えて、7万円を給付する案が検討されている。
「イット!」は街の人に、「あなたの家はいくら減税があるのか」を聞いた。
50代「4人家族で16万円です。物価が上がっているので、助かるのが第一印象です」
1人4万円の減税では足りないという声も上がった。
30代と40代の夫婦「全然足りないというか。ミルクも1カ月ちょっとで1万円とかするので、それが浮いたぐらいの感覚なのかな」
夫と共働きで2人の子どもを育てる女性からは、同じ4人家族でも1人しか納税していない家庭と減税額が変わらないことに不公平さを感じていた。
30代(共働き)「4人家族で16万円です。子どもの教育費とかいろいろあると考えると、足りないのかなって。1年に1回16万円もらえるんだったら助かります。共働きのほうが大変なので、もうちょっともらえたらって思います。不公平に感じます」
東京都内のアパートで1人暮らしをする鈴木ミヨ子さん(70)。現在は働いておらず年金生活を送っている。
非課税世帯・鈴木ミヨ子さん(70)「(冷蔵庫は)これです。何もないです、からっぽです。食費なんて買えないもん」
鈴木さんは低所得の非課税世帯となるため、7万円の給付となる予定。
鈴木さんのひと月の年金額は7万8,000円ほど。
家賃5万3,000円と、電気やガス代などの生活費を差し引くとほとんど年金は残らず、現在、生活保護を受給して何とか暮らしていけるのだと話す。しかし給付が1回だけなのは少ないと訴える。
非課税世帯・鈴木ミヨ子さん(70)「今は貯金しろと言っても、貯金はできない。給付をくれれば助かる。もう少し生活が楽になる」
不公平性について、フジテレビの智田解説副委員長は次のように解説する。
フジテレビ・智田裕一解説副委員長「4万円の減税を受けきれず、給付金の対象でないケースが出てくる。こうした人たちをどうするか問題。所得税と住民税という基準が違う2つの税をめぐって、減税や給付を行おうとすることで、仕組みはかなり複雑なものになる。政府与党は、難しい制度設計を迫られる」
 
●衆院本会議 代表質問 新たな経済対策などめぐり論戦 10/25
国会では25日午後、衆議院本会議で2日目の代表質問が行われ、物価高を受けた新たな経済対策などをめぐって論戦が交わされました。岸田総理大臣は、26日に国民への還元策の具体化を与党に指示する考えを示す一方、消費税率の引き下げは否定しました。
維新 馬場代表 経済対策について
日本維新の会の馬場代表は、経済対策について「低所得者と現役世代の双方に迅速に恩恵が届き、賃上げを実感できるよう可処分所得を上げるための方策が必要だ。社会保険料を低所得者は半減し、その他は3割減免することや、消費税率を8%に引き下げ、軽減税率は廃止することを提案する」と訴えました。これに対し、岸田総理大臣は「幅広い社会保険料の減免は給付と負担の関係をゆがめるなど制度に与える影響が大きく、慎重な検討が必要だ。消費税は社会保障の財源として位置づけられており、税率を引き下げることは考えていない。軽減税率制度も消費税の逆進性を緩和する効果があり、廃止することは考えていない」と述べました。
維新 馬場代表 憲法改正について
また馬場氏は、憲法改正をめぐり「今の国会で緊急事態条項の創設を軸に改正案を取りまとめ、来年の通常国会で国会発議すると約束してもらえるか。この自民党総裁としての任期中に憲法改正を果たせなかったら次期総裁選挙への出馬はしないと退路を断ち、改憲に立ち向かう覚悟はあるか」と質問しました。これに対し、岸田総理大臣は「自民党総裁としてあえて申し上げれば、総裁任期中に憲法改正を実現したいという思いに、いささかの変わりもない。党内の議論を加速させるなど、憲法改正の課題に責任を持って取り組む決意だ」と述べました。
公明 石井幹事長 経済対策について
公明党の石井幹事長は、経済対策について「国民の多くは具体的な還元策を期待している。所得税減税は、公明党としては定額減税が望ましいと考える」と訴えました。これに対し、岸田総理大臣は「国民への還元の具体化に向けて、あす政府与党政策懇談会を開催し、与党の税制調査会における早急な検討を指示する。過去2年のコロナ禍における税収の増収分の一部を分かりやすく国民に還元できればと考えている」と述べました。
公明 石井幹事長 中国の水産物輸入停止について
また石井氏は、中国などによる日本産水産物の輸入停止措置をめぐり「ホタテ産業をはじめ多くの水産業者が厳しい経営状況に直面している。希望を持って事業を継続できるよう基金を活用した機動的な対応や加工機器などの導入支援を迅速に実施するとともに、新たに建屋などの施設整備に向けた支援を実施すべきだ」と求めました。これに対し、岸田総理大臣は「一部の国による輸入規制強化を踏まえ、国内水産業を守るために総額1007億円の政策パッケージを取りまとめ、国内の消費拡大や代替輸出先の販路拡大、設備強化支援などに取り組んでいる。今後も施設整備支援なども含め必要に応じて機動的に予算の確保を行っていく」と述べました。
国民 玉木代表 経済対策について
国民民主党の玉木代表は、経済対策について「賃上げ、賃上げ、賃上げと三唱させてほしい。賃上げが実現すれば年金も上がり、子育てもしやすくなる。3年連続の賃上げを実現するため、ありとあらゆる政策手段を講じてほしい」と求めました。これに対し、岸田総理大臣は「賃上げは言うまでもなく岸田政権の最重要課題で、物価上昇を上回る持続的で構造的な賃上げが行われる経済を目指す。ことしの春闘で得られた賃上げの流れを来年も持続させることが重要で、あらゆる政策手段を集中的に講じていきたい」と述べました。
共産 志位委員長 最低賃金について
共産党の志位委員長は、最低賃金について「全国加重平均で1004円では労働者の生計費を満たしていない。岸田総理大臣は2030年代半ばに1500円にと言うが、生計費に満たない現状を十数年先まで我慢せよというのか」とただしました。これに対し、岸田総理大臣は「今後も着実に引き上げを行うため、最低賃金審議会で毎年の賃上げ額についてしっかりと議論してもらい、その積み上げによって2030年代半ばまでに全国加重平均が1500円となることを目指す」と述べました。
岸田首相 「トリガー条項」凍結解除について
このほか岸田総理大臣は、ガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」の凍結解除について「灯油や重油などが支援の対象外となるほか、ガソリンの買い控えやその反動による流通の混乱が生じる可能性があるなど課題がある。このため、燃料油価格の激変緩和措置を今回の経済対策で来年春まで継続することとしている」と述べました。
岸田首相 安定的な皇位継承のあり方について
また岸田総理大臣は、安定的な皇位継承のあり方について「皇族数の減少への対応は国の基本に関わる重要な課題で、立法府の総意が早期に取りまとめられるよう衆参両院の議長のもとで国会での積極的な議論が行われることを期待する。自民党でも国会での議論に資するよう、責任ある政権与党として活発な議論を率先して行っていく決意だ」と述べました。
岸田首相 北朝鮮の動向について
さらに岸田総理大臣は、北朝鮮の動向をめぐり「北朝鮮が仮に偵察衛星を保有するに至った場合、北朝鮮の核・ミサイルの運用能力はさらに向上し、わが国や地域、国際社会の平和と安全を一層脅かすおそれがある」と述べました。
●二階氏「機運ない」早期解散を牽制 減税にくぎ「目先喜ばせるより」 10/25
自民党の二階俊博元幹事長は25日、東京都内で講演し、岸田文雄首相が早期の衆院解散・総選挙に踏み切るとの臆測について、「国民の間に選挙をやろうという機運が醸成されてこないと。適当な状況ではない」と述べ、牽制した。政府が物価高に対応する経済対策として減税を検討していることに関しては「言った以上、直ちに実行すべきだ」と話した。
二階氏は、報道各社の世論調査で内閣支持率が低調な状況でも選挙ができるかどうかを問われると、「いつでもできます。相手が弱いからですよ」と断言。その上で「いつでもできるが、いつやってもいいというもんじゃない」と指摘した。
また、減税に関しては首相が言及した「税収増の国民への還元」の有言実行を求めた一方、「目先のことで(国民を)喜ばせることよりも財政を講じるのは難しい。率直に国民に協力を呼びかける姿勢が大事だ」と財政健全化にも配慮するようクギを刺した。
岸田政権とは距離を置く二階氏は、来年9月の党総裁選で首相の再選を支持するかを問われると、「それは、その時の考えだ」と含みを残した。
●馬場氏「改革、改革、改革、改革」=岸田首相「経済」三唱を当てこすり 10/25
日本維新の会の馬場伸幸代表は25日の衆院本会議の代表質問で、政府が近くまとめる経済対策に関し、「必要なのは改革、改革、改革、改革だ。惰性化した自民党流の無駄遣いを一掃する『異次元の歳出改革』だ」と述べ、財政支出を適正化する必要性を訴えた。
岸田文雄首相が所信表明演説で「経済、経済、経済」と三唱したのを当てこすった形だ。馬場氏は、立憲民主党の泉健太代表が24日の代表質問で「国民が望むのは給付、給付、給付だ」と発言したことにも触れ、「どちらもバラマキに偏っている」と批判した。
●山田文科政務官が辞意 20代女性と不倫報道、改造後初 10/25
自民党の山田太郎文部科学兼復興政務官(56)=参院比例代表=は25日、政務官を辞任する意向を固めた。複数の政府・与党関係者が明らかにした。週刊文春(電子版)は同日、山田氏が20代女性と不倫関係にあり、山田氏も「男女の仲」を認めたと報じた。
9月の内閣改造後、政務三役の辞任は初めて。内閣支持率が政権発足後の最低水準にある岸田文雄首相にとって痛手だ。
山田氏はホームページにコメントを掲載し、「妻以外の女性と男女の仲になったのは事実だ。支援者と国民の信頼を失うことになり、誠に申し訳ない」と謝罪した。相手の女性に現金を支払ったことはないと説明。「言葉だけでなく私の姿勢を見せることで、信頼を取り戻せるよう誠心誠意努める」として議員辞職は否定した。  
●岸田首相増税メガネ≠フ称号に込めた怒り 「所得損失」「増税感」の背景 10/25
「増税メガネ」と岸田文雄首相のことを呼ぶ人たちがいる。ひどいネーミングだが、そこには国民の怒りに似た感情がある。「増税メガネ」に対しては、岸田首相も神経質になっているようだ。自民党の遠藤利明前総務会長が派閥の会合で、首相が「増税メガネに若干過剰に反応」していると発言した。その「若干過剰な反応」なのか分からないが、岸田首相は期限付きの所得税減税に意欲を示している。
「岸田首相は増税を実際にしていない」と評する人たちは、緊縮派だけではなく、野党の党首や政権に批判的な評論家などでも多い。だが、それは国民の「増税感」を理解していない。
経済学に「機会費用」という発想がある。自分たちが実際に行った選択によって、取られることがなかった選択を「費用」とみなす考え方だ。例えば、働くことを選ばずに、大学に進学したとする。この時の機会費用は、大学に行っている間に得たであろう所得である。似た発想で日本経済を考えると国民の増税感が分かる。
先進国の経済は最低でも1%以上の経済成長をするものだ。同じように国民1人当たりの実質国内総生産(GDP)も1%ほど成長できるとしよう。日本の2018年度の国民1人当たり実質GDPは、約437万6000円である。そこから仮に22年度まで毎年度1%で拡大していったとすると、現状では455万3000円ほどになる計算だ。
だが実際にはどうか。19年の消費増税での景気後退の拡大、20年からの新型コロナ禍、そしてウクライナ戦争などで日本経済はダメージを受け続けた。22年度の1人当たりGDPは、439万6000円ほどだ。22年度だけでも約15万7000円不足している。これが本来なら国民が得たであろう所得から、実際には得られなかった損失分となる。「機会費用」というよりも「所得損失」と言った方が分かりやすい。
19年度から22年度までの所得損失の総額は、国民1人当たり71万円に達する。他方で、政府予算は、毎年度4兆円以上の税収増を続けた。これが国民の増税感の背景にある理由の一つではないか。自分たちの所得は予想よりも大きく落ち込んでいるにもかかわらず、税収だけが増えている。この事態を放置していたとしたら、岸田首相に「増税メガネ」の称号はむしろ適切だ。
だが、名誉回復の時がきた。低所得層への給付と合わせての所得減税はぎりぎり合格点だ。本来なら消費税減税が一番景気に効く。それができないのはやはり情けない。だがやらないよりは格段にいい。問題は規模と「期限付き」の中身だ。これ以上、しょぼいことをすると「増税メガネ」ではなく「増税人間」の評価がついてしまうだろう。
●総裁任期中の改憲意欲「いささかも変わらず」 岸田首相 10/25
岸田文雄首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が25日、衆参両院の本会議でそれぞれ行われた。首相は、来年9月までの自民党総裁任期中の実現を目指す憲法改正に関し「総裁任期中に実現したいという思いにいささかの変わりもない」と重ねて意欲を示した。
皇位継承策を巡っては「自民党でも、国会での議論に資するよう、責任ある政権与党として活発な議論を率先して行っていく決意だ」と述べた。
経済対策に絡む消費税減税の是非については「社会保障の財源として位置付けられており、税率の引き下げは考えていない」と表明。消費税軽減税率に関しても「幅広い消費者の負担を軽減し消費税の逆進性を緩和する効果がある」として廃止しない考えを示した。
また、一般ドライバーが自家用車を使って客を有償で運ぶ「ライドシェア」導入について「課題を含め、徹底した規制改革にスピード感を持って取り組む」と意欲を強調。配偶者に扶養されるパート従業員らが社会保険料負担の発生を避けるため働く時間を抑える「年収の壁」対策にも言及し、「壁に近づく可能性のある全ての方が乗り越えられるようにしたい」と説明した。
代表質問は26日は参院で実施する。  
 
 
 
 

 

●希望持てる還元策に 10/26
衆院は25日の本会議で岸田文雄首相の所信表明演説に対する各党代表質問を行った。公明党の石井啓一幹事長は、コロナ禍を乗り越え、経済状況も改善しつつある一方、物価高や円安圧力が家計や中小企業に重い負担感を与えていると指摘。新たな経済対策の策定に向け、公明党が政府に申し入れた提言を踏まえ「生活者や中小企業などが希望の持てる力強い経済対策を策定し、一刻も早くその恩恵を届け、物価高を乗り越えることが重要だ」と訴えた。
【税収増の還元策】石井幹事長は、税収増を国民に還元する“3つの還元策”として1所得税減税2低所得世帯への給付金3電気・ガス料金、ガソリン代などの補助の来春までの延長と自治体向けの「重点支援地方交付金」の増額――を主張。中でも所得税減税については「定額減税が望ましい」との考えを示し、実現を訴えた。岸田首相は、還元策について「国民の可処分所得を下支えし、物価高による国民の負担を緩和したい」と述べた。
【賃上げ促進】石井幹事長は、今年の春闘の賃上げ率が30年ぶりの高水準となったことに言及。その上で医療・介護・障害福祉など公的部門の報酬について、次期改定を待たずに、物価高騰や賃金上昇などを踏まえた必要な対応を前倒しで実施するよう求めた。
【子育て・教育】石井幹事長は、奨学金の減額返還制度について、来年度から利用可能な年収上限が400万円に広がるなど対象が拡充されるとし、高校生や保護者らへの周知を要請。自治体や企業が奨学金の返還を肩代わりする「代理返還」の有用性を訴え、「全国に取り組みが広がるよう支援を」と求めた。岸田首相は「全国での利用拡大に努める」と応じた。
【性犯罪対策】子どもと接する職に就く人に性犯罪歴がないことを確認する「日本版DBS」の創設法案に関して、石井幹事長は「実効性ある制度設計を行い、早期に導入すべきだ」と主張。岸田首相は「次期通常国会以降、できるだけ早い時期に提出できるよう努める」との方針を示した。
【認知症施策】石井幹事長は、公明党の推進で6月に成立した認知症基本法の施行に先立ち、政府が認知症の人や家族らを交えて「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」を開催していることを評価。同会議の議論も踏まえ「(基本法に基づいて国で)認知症の人や家族らの思いを的確に反映した施策推進基本計画を策定し、地域における総合的な取り組みを加速してほしい」と訴えた。
岸田首相は「都道府県などに対する計画の策定支援など、総合的に施策を推進する」と答えた。
【SDGs推進】石井幹事長は、SDGs(国連の持続可能な開発目標)に関して、評価可能な約140の目標のうち、順調に進んでいるのが15%にとどまっているとの国連の報告に言及。日本はジェンダー平等や気候変動対策などが課題だとし、政府のSDGs実施指針に関して「本格的な行動の加速と拡大につながる見直しを」と訴えた。
●物価高対策 身内も“異例”の首相批判 「何をやろうとしているのか」 10/26
25日の臨時国会では、岸田首相が物価高対策で検討を指示した減税について質問が相次ぎ、身内からも批判を交えた厳しい言葉を受けました。政府与党内では一律4万円の減税をする案などが検討されています。その根拠や首相の思惑を掘り下げます。
世耕氏は「低支持率」の原因を指摘
25日にあった参院の代表質問。与党自民党の幹部、世耕参院幹事長は冒頭に「総理を支持する」と述べた上で、岸田首相の政治姿勢などに異例の批判をしました。
「現状において支持率は低空飛行。支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待するリーダーとしての姿が示せていないということに尽きるのではないでしょうか」
「残念ながら、現状において岸田総理の『決断』と『言葉』については、いくばくかの弱さを感じざるを得ません。世の中に対しても、物価高に対応して総理が何をやろうとしているのか、全く伝わりませんでした」
物価高対策の「減税」に質問相次ぐ
次々と出る批判交じりの質問を、岸田首相は世耕氏のすぐ近くで、複雑な表情で聞いていました。資料を見ながら、何かつぶやいているような様子もありました。
身内からの厳しい言葉に岸田首相は「リーダーには強い意志を持って政策を実現していく姿勢を示していくことが重要だと、私も考えます。本国会でも、経済政策や物価対策を中心にしっかりと議論を重ね、国民の皆さんに丁寧に説明してまいりたい」と答えました。
この日も質問が相次いだのは、首相が物価高対策として検討を指示した減税についてでした。立憲民主党の田名部参院幹事長は「時間もかかるのに、わざわざ減税にこだわる理由も分かりません」と追及しました。
政府与党の検討案に街の人は…?
政府与党内で出ている案では、所得税3万円、住民税1万円の1人あたり年間計4万円を減税するというものです。さらに低所得者(住民税非課税世帯)への支援として、1世帯あたり年間7万円を給付することが検討されています。
これについて25日、都内で聞きました。
共働き夫婦は「ないよりはマシですけど」「年間4万円では何か変わる感じはしないですよね」、子どもが4人いる専門職の人は「給付金とかで月々ほしいですね」と話しました。
疑問の声も上がる中、今減税が検討されている狙いとは何でしょうか?
「一律4万円」とはじいた背景は?
有働由美子キャスター「減税はなぜ一律4万円なのでしょうか?」
小栗泉・日本テレビ解説委員長「首相は『増えた税収を国民に還元する』と言っていて、政府関係者によると直近の2年間で3.5兆円増えました。これを納税者と扶養家族を合わせた約9000万人で割ると、約4万円という計算になります」
「そして定額の減税であれば、納税額の少ない低所得者ほど減税割合が大きくなるので、低所得者に配慮したものになります」
「さらに1998年の橋本政権で同じように定額減税をした時は3万8000円でした。24日に公明党の山口代表は『低所得者に既に給付している3万円を下回るのは心細い』と会見で発言。こういったことも、4万円の背景にはあるようです」
有働キャスター「低所得者世帯への7万円給付の話もありましたが、みんな給付にした方がいいのではないでしょうか?」
小栗委員長「所得税減税をするには法改正も必要で、実施するとしても来年の夏頃になるとみられています。物価高対策のスピード感という点でも、給付を望む声は確かにあります」
自民幹部「政策打ち出す目的が不明確」
小栗委員長「首相は、徴収した税の上振れ分を還元する上で税は分かりやすいと考えているようですが、給付で還元できない理由にはなっていないですよね」
「このため、ある自民党幹部は『政策を打ち出す目的が明確ではない』、財務省のある幹部は『増税イメージの払拭という政治的な意味しか思いつかない』と話しています」
有働キャスター「国民もそう思っているのではないでしょうか。首相は所信表明演説でも『所得税減税』とはっきり言いませんでした。一体何をしたいのか、やはり国民に向けて分かりやすい言葉で、リーダーシップと覚悟を示してほしいです」
●参院 代表質問 新たな経済対策などめぐり論戦 10/26
国会では参議院本会議で2日目の代表質問が行われ、物価高を受けた新たな経済対策などをめぐって論戦が交わされました。
公明党の山口代表は新たな経済対策について「長引く物価高騰はまだ出口が見えておらず、国民が賃上げの効果を実感するまで、生活者や事業者を守り抜く有効な支援策の継続が不可欠だ。特に家計への影響が大きい低所得世帯や低所得の子育て世帯に対し、給付措置の速やかな実施を強く求める」と訴えました。
これに対し岸田総理大臣は「政府は『重点支援地方交付金』を措置し生活困窮者や子育て世帯、中小企業への支援を含めた地域の実情に応じた取り組みを支援してきた。今回の経済対策でもこの交付金を追加し『低所得者世帯支援枠』も拡大する。重層的な対策を講じて物価高から国民生活と事業活動を守り抜いていく」と述べました。
日本維新の会の浅田参議院会長は、一般のドライバーが自家用車を使って有料で人を運ぶ「ライドシェア」の導入をめぐり「岸田総理大臣は所信表明演説で『ライドシェアの課題に取り組む』と極めて微妙な表現をしたが、新たなサービスとしての導入にかじを切るという宣言と理解してよいか」とただしました。
これに対し岸田総理大臣は「多くの国がデジタル技術を活用しながら自家用車の有償利用を進めている。日本ではこれまでかなり限定された地域と厳しい条件で認めてきたが、地域交通の担い手や移動の足の不足といった深刻な社会課題に対応しつつ、ライドシェアの課題に取り組み早急に方向性を出していく」と述べました。
また岸田総理大臣は、核軍縮をめぐり「ことし12月8日と9日に核兵器国と非核兵器国の双方からの出席を得てそれぞれの立場を超えて自由かったつな議論を行う、核兵器のない世界に向けた『国際賢人会議』の第3回会合を長崎で開催することにした。私自身も出席すべく調整を行っている」と述べました。
●国会代表質問 野党側“消費税の減税を行うべき” 10/26
国会では、岸田首相の所信表明演説に対する代表質問が続いています。物価高対策として所得税減税が検討される中、野党側は消費税の減税を行うべきだと迫りました。
岸田政権が検討している所得税減税をめぐって経済対策として「効果が限定的」との声が出る中、国民民主党の大塚政調会長は消費税の減税を迫りました。
国民民主党・大塚政調会長「10月からインボイス制度がスタートし、 納税義務者である事業者は事務負担及びコスト増加に直面しています。 消費税減税とインボイス中止について、 総理の認識をおうかがいいたします」
岸田首相「消費税については、急速な高齢化に伴い、社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられており、その税率を引き下げることは考えてはおりません」
岸田首相はインボイス制度についても「中止は考えていない」と強調しました。
また、共産党の小池書記局長は岸田政権が防衛増税を打ち出していることを踏まえ、「一年限りの減税の直後に恒久的な増税というのは、国民を愚弄するものだ」と追及しました。
これに対して岸田首相は、防衛増税の財源確保の議論において、「所得税については家計の負担増にならないような仕組みとしている」とした上で、実施時期についても「景気や賃上げの動向、政府の対応を踏まえて判断していく」と述べました。
●首相、「核なき世界」めぐる賢人会議に出席へ 12月に長崎で 10/26
岸田文雄首相は26日の参院本会議で、「核兵器のない世界」への道筋について議論する「国際賢人会議」の第3回会合を12月8、9日に長崎県内で開き、自身も出席する方向で調整していると明らかにした。公明党の山口那津男代表の代表質問に答えた。
同会議は核保有国と非保有国の有識者が率直に意見交換する場として、岸田首相が昨年12月に立ち上げ、これまで広島、東京で会合を開いた。首相は26日の答弁で「核軍縮をめぐる情勢が一層厳しくなっている今こそ、現実的な取り組みを着実に進めていかなければならない」と語った。
一方、米国の「核の傘」の下にある日本は核兵器禁止条約には署名・批准をしていない。山口氏は11月の同条約の第2回締約国会議にオブザーバー参加するよう求めたが、首相は「重要な条約だが、核兵器国は1カ国も参加しておらず(核廃絶への)出口に至る道筋に立っていない」と述べるにとどめた。
●グローバル・サウスなど連携強化へ 1400億円の支援策 経産省 10/26
グローバル・サウスと呼ばれる国々などとの連携強化に向けて、経済産業省は、各国に進出する日本企業を後押ししようと、1400億円に上る支援策をまとめました。必要な費用を今年度の補正予算案に盛り込む方針です。
米中の対立やロシアによるウクライナ侵攻などで国際情勢が厳しさを増す中、グローバル・サウスと呼ばれる新興国や途上国の存在感が高まっていて、日本にとっては、こうした国々との関係強化が課題となっています。
こうした中で経済産業省は、グローバル・サウスの国々との連携強化に向けて、各国に進出する日本企業を後押ししようと、1400億円に上る支援策をまとめたことがわかりました。
具体的には、日本企業が進出することで、日本からの輸出の増加や、日本とグローバル・サウスの国々にとって重要な物品のサプライチェーン=供給網の強じん化などにつながる場合には、補助金を出すとしています。
一方、こうした支援策とは別に、経済産業省はウクライナの復興支援に向けて、現地でスタートアップを含む日本企業が行う実証事業などに対し、260億円かけて支援する方向でも検討を進めています。
経済産業省は、これらの取り組みに必要な費用を今年度の補正予算案に盛り込む方針で、政府内で詰めの調整を進めています。
●橋下徹氏 政府の所得減税案に「納税者は納税するのがばからしくなる」 10/26
元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏(54)が26日までに自身の自身のSNSを更新。政府が検討する税収増の還元策として、所得税などを1人当たり年4万円減税し、低所得や高齢の非課税世帯に7万円を給付する案が浮上していることについて言及した。
また、政府は非課税世帯以外の所得が低い人に対しては減税措置ではなく、10万円の給付を検討している。減税は法改正が必要なため、国民が納税額の減少を実感できるのは来年夏頃で、現金給付は年度内に開始する見通し。岸田文雄首相は24日の衆院本会議の代表質問で、経済対策に関し「所得税減税を含め、早急に検討を進める」と強調した。
減税期間は今後詰めるが、首相はテレビ番組で「来年には物価高に負けない賃上げを実現したい。それまでの間、支えるための還元を考えていきたい」と述べ、1年になる可能性を示唆。政府は法案を年明けの通常国会に提出する方針だが、成立した場合でも企業のシステム対応などに時間を要するため、減税の実施は来年夏頃になるとみられる。
橋下氏は、低所得世帯に10万円給付を検討するなどしている政府案について「もう日本の政治はぐちゃぐちゃ。先にきちんと議論をしようよ。それが高給取りの国会議員の仕事。政治がこんなことばかりやってたら納税者は納税するのがばからしくなるで。減税策で支持率を落とす過去の例と全く同じ状況」と投稿。
続けて、4万円の定額減税に年収2000万円の所得制限案が自民党税制調査会内で出ていることに対し「ほんと今の政治に国家の統治能力なし。まずきちんとした枠組みの中で徹底議論をしてよ。こんな国会議員たちが有事の際に国家を動かすことができるのか。緊急事態条項なんて無理やろ」とつづった。
●今井絵理子参院議員 「国民の皆さんには見えづらいハードな裏方の仕事」 10/26
自民党の今井絵理子参院議員(40)が26日までに自身のSNSを更新し、現在開かれている臨時国会での自身の“役職”を報告した。
X(旧ツイッター)やインスタグラムで「第212回臨時国会が20日に召集されました。私は2度目の国会対策副委員長を拝命しました」と報告。「なかなか国民の皆さんには見えづらいハードな裏方の仕事ですが、円滑な国会運営ができるよう努めてまいります」とつづった。
国会では26日、岸田文雄首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が参院本会議で行われている。午後は、国民民主、共産、立憲民主、自民各党の順に質問を予定しており、3日間の代表質問の日程を終える。
今井氏のホームページによると、プロフィルとして、自民党の女性局・局長代理のほか、文部科学部会・部会長代理などの役職を務めている。
●山田文部科学政務官 女性問題で辞表提出 野党は任命責任追及へ 10/26
山田文部科学政務官は25日、女性問題を報じられて辞表を提出しました。政府・与党は速やかに後任を決め、政権運営や国会審議への影響を最小限にとどめたいとしているのに対し、野党側は岸田総理大臣の任命責任を追及する方針です。
山田文部科学政務官は25日「文春オンライン」でみずからの女性問題が報じられたことを受けて盛山文部科学大臣に辞表を提出しました。
政府・与党は速やかに後任を決めるとともに、個人的な問題だとして早期に収拾を図ることで政権運営や国会審議への影響を最小限にとどめたい考えです。
これに対し野党側は「辞任は当然で、岸田総理大臣の任命責任が問われる問題だ」と批判していて、26日の参議院本会議での代表質問や、27日から始まる衆議院予算委員会での質疑で岸田総理大臣を追及する方針です。
また、25日の参議院本会議では自民党の世耕参議院幹事長が岸田総理大臣を支持すると述べたうえで「支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待するリーダーとしての姿が示せていないということに尽きるのではないか」などと苦言を呈する場面がありました。
自民党内からは次のような指摘が出ています。
「政権のサポートになるのか疑問だ」(自民党内)
一方、内閣支持率の推移を踏まえ、好意的に世耕氏の発言を受け止める声も出ています。
「党内の声を代弁したものだ」(自民党内)
●埼玉の「留守番禁止」条例案撤回、岸田首相の見解は? 国会で話題に 10/26
岸田首相は24日の衆院代表質問で、自民党埼玉県議団が県議会に提出して撤回した埼玉県虐待禁止条例の改正案を巡り、子育ての現場の実態を把握することが重要との認識を示した。立憲民主党の吉田晴美氏の質問に対して答弁した。
「私も虐待か」立憲・吉田晴美氏が質問
吉田氏は虐待禁止条例の改正案について、自身がワンオペ育児だった経験を踏まえて「この基準では、私は何度娘を虐待したことになるんでしょうか」と切り出し、「子育て現場の実態や当事者の苦労をまったくわかっていません」と批判した。
さらに「今は子どもを家族とともに社会全体で支える時代です」とした上で「この条例案は自民党の子育てに対する考え方ですか。岸田総理もこの埼玉県議団と同じ考えですか」と問いかけた。
「負担や困難を社会で支えることが重要」
岸田首相は「地方議会における条例案について政府としてコメントすることは控えますが」と断ってから、「その上で申し上げれば、子育ての現場の実態を十分に踏まえた上で、子育て家庭が孤立することがないように、仕事との両立や、子育てにおける負担や困難を社会全体で支えていくことが重要だと考えます」と述べた。
虐待禁止条例改正案は自民県議団が9月の埼玉県議会に提出。小学3年生以下の子どもだけの外出や留守番を放置による虐待として禁止する内容で、SNSなどで強い反発が広がり、県議団は10日に撤回方針を表明した。
●減税4万円案 首相は語らずまた独走か 10/26
国会での説明もなく事が運ばれていく。
税の増収分を国民に還元するとした、岸田文雄首相の方針を巡り政府・与党内で所得税を軸に年4万円を減税する案が浮上している。対象から漏れる住民税非課税世帯には7万円を給付するという。
減税論議に火を付けた首相は、所信表明では具体的な税目に言及しなかった。代表質問でただされても「与党に検討を指示する」と答えただけだ。
自民党役員会では、2022年度までの2年間に増えた所得税収3兆円を還元する、と述べたとされる。党内では減税を「悪手」と見る向きも強い。
減税には法改正が伴い、即効性が求められる物価高対策として適当でないとの理由が挙がる。一時的では貯蓄に回りがちで、税を元の水準に戻す際、国民に負担感が生じるとの声もある。
主に60歳以上が対象となる給付と組み合わせた還元額は、5兆円規模に膨らむ見通しだ。
減税が必要とするなら、首相は国会で国民に向けて持論を丁寧に説く責任がある。「与党に検討を指示し、その結果を待つ」は言い訳にならない。
野党側は、生活困窮者に重点配分する給付措置、社会保険料の減免、消費税率引き下げなどを提案している。暮らしを下支えする対策は、国民に見えるよう国会でこそ煮詰めるべきだ。
日本の予算は毎年度、膨大な借金をして賄っている。金利は上昇してきており、国債(借金)の利払いが増えれば、財政は一層硬直化する恐れが強い。
財政法は、税収を含む決算剰余金の半分以上を借金の返済に充てるよう定めている。残りは補正予算の財源としてきたが、岸田政権はこれを防衛費に回す仕組みを整えてしまっている。
3兆円の増収は預貯金には当たらない。減税する分、政策経費を借金で調達するなら、付けは結局国民にはね返ってくる。
人口減・超高齢社会で財政を維持できるのか。どれほどの税と社会保険料を国民は負うのか。甘言より先に、見通しを語らなければ将来不安は拭えない。
衆参補欠選挙を控え、首相が所得税減税を言い出したのは、支持率が低迷し、党総裁再選への戦略が狂ったために放った窮余の一策ではなかったか。
その思惑は国民に見透かされている。また政府と与党だけで“ばらまき”を押し通すなら、目算は外れるに違いない。
●「減税」を表明で迷走、岸田首相の不透明な解散戦略 10/26
岸田文雄首相が政権運営の正念場を迎えている。10月20日の臨時国会召集に合わせて、「減税」実施を表明したが、具体化は与党の税制調査会に丸投げしたことで先行きは不透明。「すっかり定着した『増税メガネ』に過剰反応した」(自民長老)との指摘もあり、所信表明を受けた代表質問などで野党側から集中砲火を浴びている。
永田町では、突然の「減税」宣言を早期衆院解散への布石と受け取る向きも多く、岸田首相が確約した大型補正予算成立直後の解散断行による衆院選の投開票日を「12月17日」や「12月24日」と予測する向きもある。
しかし、各メディアの最新の世論調査で、岸田内閣の支持率は軒並み2012年の自民政権復帰以来の最低を記録。その影響からか、臨時国会召集直後の22日に実施され、いずれも与野党対決となった衆院長崎4区、参院徳島・高知選挙区の補欠選挙は「1勝1敗」となり、票差などから自民苦戦が際立った。
「余裕の笑顔」を振りまく岸田首相
これを受け、自民党内からは「早期解散などあり得ない」(安倍派幹部)との声が噴出。「このまま支持率が低迷し続ければ、岸田降ろしが始まる」(同)との指摘も多く、政権危機は拡大する様相となっている。
にもかかわらず、岸田首相は所信表明やそれに対する代表質問への答弁で「余裕の笑顔」を振りまくなど、人気お笑いタレントのような「とにかく明るい岸田」が際立ち、与党内にも「何を考えているのか」(同)との困惑が広がる。 
そこで注目されるのが、解散戦略も含めた岸田首相の「本音」だ。首相自身は24日夜のテレビ東京情報番組に出演した際、まず「先送りできない課題の処理に専念すること以外考えていない」と早期解散説を否定。そのうえで、来年9月の任期満了に伴う自民総裁選まで解散しない可能性についても初めて言及し「来年については、今は考えていない」と意味ありげに語った。
岸田首相のここにきての一連の言動について、周辺は「もともと首相の解散戦略は『来夏』と『総裁選後』の2択。しかも、3年の総裁任期全うを優先し、状況次第では総裁選直前の“勇退宣言”も視野に入れている」(最側近)との見方を示す。
そのうえで、岸田派幹部などが振りまく早期解散説を「求心力維持のための撹乱戦術」としたり顔で解説。このため、「岸田流戦略ににじむ権謀術数が、今後の政局の混乱要因になる状況」(自民長老)を招いている。
「不撓不屈」「粉骨砕身」と“覚悟”をアピール
岸田首相は23日午後、衆参本会議でそれぞれ行った所信表明演説の序盤で「経済、経済、経済」と連呼し、演説の随所で「変化の流れをつかみ取る」との表現を繰り返した。さらに、これまでも好んで使ってきた「明日は今日よりよくなる時代を実現する」とし、演説のハイライトとなる「はじめに」と「結び」では、「不撓不屈」「粉骨砕身」という時代がかった表現で「覚悟の強さ」をアピールしてみせた。
その際、不敵な笑顔も交え、高揚した表情で語る岸田首相に対し、議場内では与党議員が大きな拍手で称える一方、野党席からは「増税!」「遅い!」などの野次が飛び、騒然となる場面が相次いだ。
とくに、岸田首相が突然打ち出した「減税」について、所信表明では具体的内容に踏み込まなかったため、代表質問のトップバッターとなった泉健太・立憲民主党代表は「(与党に)所得税減税の検討を指示しながら、演説では『所得税減税』を入れなかったのはなぜか」と執拗に問い詰めた。
岸田首相は「与党で正式な議論も開始していない段階で、政府の考えとして述べることは控えなければいけない」と体をかわしたが、泉氏は「『経済、経済、経済』と言ったが、国民が望むのは、ことし中のインフレ手当の『給付、給付、給付』だ」と勢い込んで批判した。
岸田首相が掲げた「国民への還元のための減税」については、間を置かずに政府・与党関係者から、1所得税と住民税で1人当たり4万円の定額減税、2非課税世帯など恩恵が受けられない層には1人7万円給付――との案が浮上している。
ただ、自民内から「所得減税は効果が出るまで時間がかかる。消費減税をやるべきだ」(無派閥若手)などの不満も相次ぎ、26日の政府与党政策懇談会で岸田首相が具体策の検討を指示して始まる自公税制調査会での協議は難航必至だ。
野党第1党争いが「政権への援護射撃」に
そうした中、一連の「減税」も含めた岸田首相の「思い付きのようなその場しのぎの対応」(閣僚経験者)が国民的不信と批判を招き、支持率下落につながっている。その一方で、次期衆院選に向けた野党陣営の足の引っ張り合いが、「自民の漁夫の利につながり、結果的に岸田政権への援護射撃になっている」(同)ことも否定できない。
22日の衆参補選は「与野党一騎打ち」となったことで、自民の苦戦につながった。しかし、それが次期衆院選での「野党統一候補」にはつながりそうもないのが実態だ。野党第1党を争う立憲民主と日本維新の会が、それぞれ全国の各小選挙区に「最大限の候補者擁立」を目指して競い合っているからだ。
そもそも、野党選挙協力は「立憲民主、共産、社民」と「維新、国民民主」が相互に対立する構図だ。さらに、立憲と国民がともに支持を期待する労働組合組織の「連合」は、芳野友子会長を筆頭に「反共産派」が主流で、しかも、賃上げなどでは自民との連携強化に踏み込んでいるため、自民が画策してきた「野党分断策」が功を奏しているとみられている。
そうした状況も踏まえ、岸田首相は当面「解散風は吹かせるが、実際には解散しないで、野党分裂を見極める構え」(官邸筋)とされる。とくに、自民の保守票を奪うことで自公政権に打撃を与え、「10年以内の政権奪取」を狙う維新に対し、岸田首相や自民執行部は、大阪・関西万博開催での政府全面支援を打ち出す一方、大阪以外の大都市での維新の躍進阻止に様々な手を打つなど、硬軟両様の揺さぶりに腐心している。
岸田首相にとって「維新の勢いが止まれば、解散のチャンス」(側近)であることは間違いない。それだけに、今春の統一地方選で大躍進した維新が、ここにきて政党支持率が下落し続けるなど、勢いが止まりつつあるのは「岸田政権にとって朗報」(自民選対)だ。
しかも、維新が最大のアピールポイントとしてきた大阪・関西万博の開催経費が「当初予測の2倍近く」となったことで、維新が唱えてきた「身を切る改革」が色あせ始めている。そもそも、メディアの世論調査でも「全国レベルでは大阪・関西万博の開催に反対する声が多数派」(アナリスト)で、「地元財界も負担額倍増に腰が引けている」(自民大阪府連)とされる。
このため、岸田首相側近は「万博開催まで1年となる来年4月には、開催延期や中止論が一気に拡大するはず。そうなれば、維新に奪われそうな保守票を取り戻すことで、解散しても自民の議席の大幅減は避けられる」と秘かにそろばんを弾く。
ただ、今回の「減税」騒ぎのように、「岸田首相の迷走ばかりが目立つ」(安倍派幹部)ことが続けば、「いくら野党が分裂状態でも、自民の議席減は避けられず、解散が自殺行為になる可能性」(同)は少なくない。
長期政権狙いという前提自体が「間違い」? 
ただ、岸田首相自身が「3年の任期完投最優先」との考えなら、「解散さえしなければ、任期中の退陣は避けられる」(最側近)ことになる。そもそも、与党議員の大多数による「岸田首相が長期政権を狙うためには、総裁選前の解散断行・勝利しかない」という思い込みは「前提自体が間違っている」(同)ことになる。
そもそも、岸田首相は「もともと誰にも本音を吐露せず、側近といえども全面的に信用しない人物」(岸田家関係者)とされる。政権の大黒柱で岸田首相の後見役を自認する麻生太郎副総裁も「何を考えているかわからない」と苦笑する。
こうしてみると「岸田首相が本音を漏らさないことが、求心力維持の最大の要因になっている」(自民長老)ことは明らかだ。その一方で「それによって生じた国民的不信感が、政権の命取りになる可能性」(同)も拡大しており、「岸田流の政権維持戦略の前途は極めて不透明」(閣僚経験者)であることは間違いない。
●首相の経済政策 全体像描けているのか 10/26
岸田文雄首相の所信表明演説に対する各党代表質問では、物価高による国民負担の軽減に向けた所得税減税など首相が打ち出した国民への還元策が論点になった。
首相は「職を賭して」取り組むというが、答弁から覚悟や熱意は伝わらない。過度の円安や資源高への対応など経済運営の全体像を描けず、その場しのぎの対応に追われているからではないか。
税収の増収分の一部を充てる還元策を巡り、政府与党内の協議では所得税を1年に限り1人4万円減税し、低所得世帯には7万円を給付する案が浮上している。
減税や低所得者への給付自体は歓迎するが、減税の一方で「軍拡増税」方針を堅持することの整合性や、経済効果の乏しさを問う意見は与党内にもある。
そもそも首相が職を賭すというのなら、なぜ23日の所信表明演説で言及しなかったのか。与党に減税の検討を指示しながら、なぜ国会では説明しないのか。
首相は、減税内容をただす立憲民主党の泉健太代表の質問に、与党で正式協議が始まらない段階で「政府の考えを述べることは控えなければならない」と語った。
国権の最高機関たる国会で説明を拒み続けるのは、国会に代表を送り出している納税者や有権者を軽視することにほかならない。
自民党の世耕弘成参院幹事長は25日の代表質問で「『還元』という言葉が分かりにくかった。自分で決断するのでなく、検討を(与党に)丸投げしたように国民に映った」と苦言を呈した=写真。
与党からの厳しい指摘は耳に痛いはずだが、首相は「私の考えをしっかり国民に伝えていく」と答弁書を淡々と読むだけだった。
「聞く力」があると言いながら苦言や批判、反対意見には耳を傾けず、安全保障や原発政策を巡る政策転換を独断で決める。そうした政治姿勢が国民の政権不信を招いているのではないか。
物価高の負担を軽減する還元策は1年限りという。ならば、それまでに過度な円安や資源高を収束させる政策も合わせて検討されねばなるまい。国会ではそうした根幹の議論こそ深めるべきである。
●消費税引き下げは「考えていない」 「方向性」が見えない岸田総理 10/26
慶應義塾大学教授で国際政治学者の細谷雄一が10月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。衆院本会議での消費税に関する岸田総理の答弁について解説した。

岸田総理)消費税については、急速な高齢化等に伴い、社会保障給付費が大きく増加するなかで、すべての世代が広く公平に分かち合う観点から社会保障の財源として位置付けられており、その税率を引き下げることは考えておりません。

飯田)所信表明演説に対する各党代表質問が10月26日まで行われます。岸田総理は「経済、経済、経済」と強調しましたが、どうご覧になりますか? 
官邸主導ではなく、各省庁に政策を任せる岸田政権 〜政策の質は高いが「何をしたいのか」が見えない
細谷)自民党の世耕参院幹事長が「リーダーとしての姿が示せていない」と発言していましたが、小泉元総理や安倍元総理がトップダウンで官邸主導の政治を行っていたのに対し、岸田政権は旧来型のボトムアップ、言ってみれば各省庁に政策を任せる形を取っています。
飯田)岸田政権は。
細谷)そういう意味では安定感がありますし、現実の課題に上手く対応するという面も見えます。政策の質は高いと思いますが、逆に言うと、トップダウンとして「何をしたいのか」という方向性が見えない。そして、それぞれの政策省庁の違いを乗り越え、「全体としてどういう哲学があるのか」が見えないわけです。
2つの戦争が起きているなか、G7議長国として外交・安保を無視して「経済、経済、経済」でいいのか 〜経済第一ならば防衛費は上げられないはず
細谷)広島サミットでは、岸田総理はG7議長国として優れたリーダーシップを発揮されたと思います。一方で、議長国はまだ続いているわけです。ウクライナをはじめ、世界でこれだけ深刻な課題があるなかで、本当に「経済、経済、経済」で外交・安保を無視していいのかという疑問もあります。
飯田)イスラエル、パレスチナ情勢もあり。
細谷)1年前は安保3文書で大幅に防衛費を上げる方向に動いたわけですから、もしも「経済、経済、経済」であるならば、防衛費は上げられないはずですよね。外交・安保が必要だから、安保3文書で防衛費を上げたわけです。
飯田)そうですね。
細谷)個別的な政策自体は、それぞれ合理性があると思いますが、個別的な政策を超えた政権、あるいは総理の哲学として「どういう国をつくりたいのかが見えない」と多くの人が感じているのではないでしょうか。
飯田)個別ではいいけれど、すべてを合わせて行おうとするとバッティングしてしまい、結局は全部うまくいかない。よく「合成の誤謬」などと言いますが、それが起こっているような状況ですか?
細谷)55年体制の自民党はそういう傾向が強かったと思いますが、2001年に官邸機能を強化し、首相官邸が政策を立案する機能を持ち、企画・立案機能を持った。これを上手く使ったのが小泉政権、安倍政権です。ですので、いまの法制度では、首相官邸が一定程度リーダーシップを発揮できるような形であり、そのために国家安全保障局もつくったわけです。
飯田)そうですね。
細谷)安倍政権はそれを上手く活用し、1年間で40回近く国家安全保障会議を開いていました。しかし、岸田政権は1年間で13回しか開いていないのです。つまり、これだけ危機が連続しながら、国家安全保障会議を十分に開催していない。開くかどうかは、当然ながら総理の関心によるものです。G7議長国として、ウクライナ・中東で2つの戦争が起きていることを考えると、「経済、経済、経済」として外交・防衛を脇に置いていいのか? そういった疑問も出てくると思います。
イスラエル、パレスチナ情勢に関して「日本独自のメッセージ」を出すべきだった
飯田)中東に関しては、G7で日本を除いた6ヵ国が声明を出しました。これが「あえて」日本は参加しないという選択であれば、一定程度の意志も感じるのですが、「スーッ」と過ぎていきましたね。
細谷)ウクライナのときも、多くの国民は「他の国が行っているから行かなければならない」という、子どもが「みんながおもちゃを買ってもらっているから、自分も買ってくれ」というように感じてしまったと思うのです。今回、逆にもしも声明に参加しないのであれば、独自にイスラエルの問題に対して総理・政府としての見解を明白に世界に向けて示す、あるは在京イスラエル大使と会談して総理の思いを伝えるなど、いろいろなアプローチがあったと思います。
飯田)声明に参加しないのであれば。
細谷)それとセットなら、「日本には独自のアプローチがある」と伝えられたはずです。日本はODAも含め、パレスチナに対して人道支援を続けてきました。そう考えると必ずしも日本は、他の国とG7で足並みを揃える必要はないと思います。この問題に対して、日本独自のメッセージを出すべきだったのではないでしょうか。
飯田)総理はパレスチナ情勢について、最初はX(旧ツイッター)でポストしましたが、その後は演説のなかで「イスラエル」という名前は出したけれど、明確なものは出ていません。
細谷)そうなのですよね。やはり政策演説と言われるような、体系的な日本政府の考え方を示す外交演説などを、G7議長国として多くの紛争、対立があるなかで示して欲しいですね。
●岸田首相酷評の世耕氏にも問題と立民幹部 税巡る自民内の迷走批判 10/26
立憲民主党の長妻昭政調会長は26日の記者会見で、自民党の世耕弘成参院幹事長が参院代表質問で岸田文雄首相の政治姿勢を酷評したことに関し、世耕氏自身にも問題があると批判した。減税策を巡り自民内が迷走していると指摘し「世耕氏を含む幹部がちぐはぐな発言をしている。自分だけがいい子だというのは、非常にあきれた」と述べた。
同時に「何をやろうとしているのか全く伝わらないのは世耕氏を含む幹部だ。政権与党の責任を自覚してほしい」と求めた。
世耕氏は25日、内閣支持率が低迷している要因を「国民が期待するリーダーの姿を示せていないことに尽きる」などと指摘した。
●所得税減税は愚策、国民が求めるのは物価対策 消費税減税するしかない 10/26
 岸田首相は「増税メガネ」というあだ名を大いに気にしているようだ。
10月19日、与党に対して所得税の減税を検討するよう指示した。上ブレした税収を国民に還元するという触れ込みだ。22日に行われた衆参の2補選を前にした露骨な人気取りとも取れるタイミングだが「減税の岸田」をアピールしたいらしい。
減税が国民受けするようであれば、その後の解散総選挙を考えているのかもしれない。しかし、所得税の減税とは、経済政策的にも政治的にも全くセンスがない愚策と言うしかない。
減税は、短く期間を区切ったものになるだろう。財務省としては税率を元に戻すのに苦労したくないからだ。すると、岸田氏のあだ名に共感しているような国民は次のように思う。
「減税はどうせ選挙用の一時的な人気取りだ。防衛費やら、少子化対策やらを理由に後から増税するつもりに決まっている」
今からその「つもり」かどうかは本人に聞いてみないと分からないが、どうせそのように流されるのではないか、ということに対しては筆者もリアリティーを感じる。過去の発言や財務省の影響の強い政権運営を見て、国民は岸田首相の底意を増税と感じるから「増税メガネ」に共感するのだ。
ついでに、メガネ呼ばわりされることの理由を説明しておこう。岸田氏の演説はいかにも原稿を読んでいるかのようで本人の言葉としての力がない。まるで、しゃべる空き箱だ。表情にも顔にも注意が向かない。従って、国民にはメガネしか印象に残らないのだ。
所得税減税は年末まで議論して来年の通常国会で法案を通すことになるだろう。いかにも時間がかかる。また、普通に減税するとメリットが高所得者に集中する。景気対策としても、物価高に苦しむ困窮者救済としてもピント外れだ。
おそらく、所得別に減税率を変えたり、給付金を組み合わせたりすることになるだろう。官僚や一部の税マニアの議員にはいい検討材料だが、国民には分かりにくい。政治的には全くだめだ。
国民が求めているのは物価対策だ。分かりやすいのは消費税率の引き下げだ。岸田首相は、期限など一切の条件を付けずに(ここが肝心だ)「物価高に対する対策として、消費税率を5%に引き下げることにしました」とプロンプターの原稿なしに、国民に語りかけるといい。国民は、初めて岸田氏の肉声を聞き表情を見ることになり、メガネは遠景にかすむ。
消費減税にもツッコミ所はあるが、国民は買い物の際に効果を実感する。純粋に経済学的には、一時的でなく恒久的な定額給付や「負の所得税」による再分配がいいが、制度設計に時間がかかる。首相には時間がない。政治的に勝つための方法は消費減税しかない。 
●「腰抜けメガネ」世耕氏、岸田首相を痛烈批判もすぐさま謝罪 10/26
「総理の決断と言葉は弱さを感じる」「支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待するリーダーとしての姿が示せていないということに尽きるのではないでしょうか」「残念ながら、現状において岸田総理の決断と言葉については、いくばくかの弱さを感じざるを得ません」
10月25日の参院本会議。自民党の世耕弘成参院幹事長が、代表質問で岸田文雄首相に対し痛烈な批判の演説をおこなった。
「国会議員にとって、代表質問は晴れ舞台です。演説後、世耕氏は意気揚々と自席につき『してやったり』の気分だったのか、満足そうに笑顔を浮かべていました」(国会担当記者)
各マスコミも「異例の代表質問」として大きく取り上げ、自民党内の一部からは「よく言った」と評価する声もあったようだが、その風向きは、一夜も持たずに変わってしまった。
「ベテラン議員などから『世耕は何を考えているんだ。倒閣運動でもするのか』と厳しい意見が相次いだのです。
もともと、世耕さんは目立ちたがり屋です。定例会見でも『所得税減税』をぶち上げたり『給付』を言ってみたり、減税時期をフライングで言ってしまうこともありましたね。だから今回の代表質問も、その『目立ちたがり』の延長だっただけともいえます。
しかし、予想外に首相の怒りはすごかった。通常は批判に対しても、答弁で『ご意見を拝聴し』とか『今後の政策にいかして』などと言うのですが、首相は答弁で世耕氏の批判には触れませんでした」(政治担当記者)
そして26日、発言内容の重大さに気がついたということなのか、世耕氏は朝いちばんで岸田派幹部に謝罪した。「TBS NEWS DIG」が報じている。
ニュースサイトのコメント欄には《国会の場での発言を後日裏で謝罪するとは情けない政治家ですね》《ここで謝ってしまうことが、世耕が小物界の大物と言われる所以だ》《腰抜けメガネ 増税メガネ一派に屈する》《謝罪するなら喋るなよ。情けない》とあきれる書き込みがあった。一方で《身内から批判が出たとしても、度量の大きさを見せるぐらいの肝っ玉が欲しかった》と岸田派への苦言も見られた。
メガネ同士のいさかいは、国民のメガネにはかなわなかったようだ。
●共産・小池晃書記局長が岸田首相の答弁を総括「歯ごたえのないせんべい」 10/26
日本共産党の小池晃書記局長は26日に行われた参院本会議の終了後に開いた会見で、岸田文雄首相の所信表明演説に対する衆参各党代表からの質問の答弁について言及した。
岸田首相は23日の同演説で「経済、経済、経済」と連呼。この手法を各党代表が敏感に反応し質問を行った。
衆議院では立憲民主党の泉健太代表が「インフレ手当ての給付、給付、給付」、日本維新の会・馬場伸幸代表「いま必要なのは改革、改革、改革だ」、国民民主党の玉木雄一郎代表も「賃上げ、賃上げ、賃上げ」と連呼している。
この日、国民民主党の大塚耕平氏は参院代表質問で、岸田首相の経済連呼≠「かつて英国のブレア首相が『教育、教育、教育』と述べた有名な演説を意識した工夫かと拝察した」と皮肉を込めた表情を見せながら指摘した。
続いて質問に立った小池氏は、同本会議質問の冒頭で岸田首相に「必要なのは反省、反省、そして転換ではないのか」と追及し質問をスタートさせている。
終了後の会見で小池氏は岸田首相の答弁について「全般でね、具体的に国会では語らないわけですよ。所得税減税や給付金の額の対象にしても。ところが新聞やテレビを見ると所得税が3万円、住民税が1万円、所得制限がどうのこうの…住民税非課税世帯には7万円の給付金、住民税の非課税世帯でもなく所得税の対象でない人には10万円。国会でね、本来説明し、議論すべきものを国会で聞いても答えずにメディアから出てくるのは、国会を軽視していると言われても仕方のない対応ではないかなと言わざるに得ないと思います」と厳しく批判した。
岸田首相の国会対応を「目に余る気がします」ともした小池氏は「率直に言って(答弁に)力がない。政策を実現する情熱を感じない、伝わってこない。歯ごたえや中身がない、しけたおせんべいみたいな、国会での答弁ぶりではないかなというふうに思います」と話した。
● 参院本会議 代表質問 中小企業の賃上げや少子化対策めぐり論戦 10/26
国会では参議院本会議で2日目の代表質問が行われ、中小企業の賃上げや少子化対策などをめぐって論戦が交わされました。また山田文部科学政務官が女性との不適切な関係を報じられ辞任したことについて岸田総理大臣は「任命責任を重く受け止めている」と述べ信頼回復に努める考えを示しました。
公明党の山口代表は医療機関に支払われる診療報酬と介護事業者への介護報酬の同時改定について「高齢化の進展で医療と介護、双方のサービスが必要な高齢者の増加が見込まれる。ニーズに対応できる体制を構築するため年末に控えた改定は極めて重要だ」と指摘しました。
これに対し岸田総理大臣は「今回の経済対策における物価高騰や賃金上昇への対応を踏まえつつ人材確保の必要性、患者や利用者の負担、それに保険料負担への影響も踏まえ、必要なサービスを受けられるよう対応していく」と述べました。
日本維新の会の浅田参議院会長は中小企業の賃上げについて「まだまだ隅々まで波及しているとは言えない。岸田総理大臣は『持続的な賃上げが可能となるよう、転嫁対策を強力に進める』と表明したがどう講じるのか。具体策なしに唱えてもから念仏だ」とただしました。
これに対し岸田総理大臣は「具体的な価格転嫁対策として発注企業の価格交渉や価格転嫁の状況を公表するほか『下請けGメン』による調査などを着実に進める。賃上げ費用を適切に転嫁するため価格交渉に関する指針を年内に策定し、中小企業の賃上げを後押ししていく」と述べました。
国民民主党の大塚代表代行は少子化対策をめぐり「必要なのは子どもを産み育てやすい社会だ。子育て支援や教育に関する施策の所得制限の撤廃や所得税などの『年少扶養控除』の復活をどう考えるか」と質問しました。
これに対し岸田総理大臣は「各制度で所得制限を設けるかは、個々の制度の目的や支援方法などに応じて判断されるものだ。政府として歳出面での取り組みにより前例のない規模でこども・子育て政策の強化を図っており、かつて廃止された『年少扶養控除』の復活は検討課題としていない」と述べました。
共産党の小池書記局長は再来年の大阪・関西万博について「岸田総理大臣は『オールジャパンで進める』と述べているが、工事は遅れ会場の建設費用は当初の見積もりの2倍近くに膨らんでいる。理解は得られるのか」とただしました。
これに対し岸田総理大臣は「会場建設費の増額は、必要額が適切なものとなっているか精査を行っており国民の理解が得られるよう政府を挙げて取り組んでいく。建設工事の時間外労働の上限規制を適用外にするといった要請を受けて政府として検討している事実はない」と述べました。
立憲民主党の古賀之士氏は山田文部科学政務官が女性との不適切な関係を報じられ辞任したことについて「岸田総理大臣はきのう副大臣や政務官の人事を『本人の人格、識見を踏まえ、適材適所の考え方で行っている』と答弁した。『適材適所』と評したばかりの政務官の1人が早々に辞任し任命責任は重い」と追及しました。
これに対し岸田総理大臣は「誠に遺憾で任命責任を重く受け止めている。私自身が先頭に立ち内閣として緊張感をもって先送りできない課題に全力で取り組み、国民の信頼回復に努めていく」と述べました。
自民党の牧野幹事長代理は静岡県が県内での着工を認めていないJR東海の「リニア中央新幹線」について「静岡県とJR東海の主張がかみ合わず、いまだ工事着工の見通しがたたない。建設工事が進むよう課題の解決に国として大きく動き出す時だ」と求めました。
これに対し岸田総理大臣は「日本経済をけん引する国家プロジェクトだ。名古屋・大阪間の環境アセスメントの年内の着手を目指すなど早期の整備に向けた環境を整え一日も早い開業に向けて関係自治体やJR東海と連携し丁寧に取り組んでいく」と述べました。
このほか岸田総理大臣はNTT法の見直しについて「現在、総務省の審議会などで議論が行われているが、中でも安全保障の確保は重要な論点の1つだ。こうした観点も踏まえながら検討を進めていくべきだ」と述べました。
●「党と連携を」安倍派からまた苦言 10/26
自民党の世耕参院幹事長が国会の代表質問で岸田総理大臣に対し、「言葉に弱さを感じる」などと苦言を呈したことについて、安倍派の塩谷座長は「苦言ではなく助言だ」との認識を示しました。
安倍派 塩谷座長:「(Q.総理の言葉が物足りない?)だから、明確な割合ストレートに来ないじゃないですか総理、そういうことですよ。我々にも分からないことが国民に向けてはなかなか伝わらないことがたくさんある」
塩谷氏は「安倍派は岸田政権を支持している」と強調したうえで、世耕氏の発言については「苦言ではなくて助言、言うべきことは言う必要がある」と擁護しました。
ただ、26日に岸田総理が「国民への還元」について与党に正式に指示することについては、「今日出すならもっと早く出して党と連携を取る必要があった」と苦言を呈しました。  
 
 
 
 

 

●衆参代表質問 首相の国会軽視目に余る 10/27
岸田文雄首相の国会軽視は今に始まったことではないが、今臨時国会での姿勢は目に余ると言われても仕方がないだろう。所信表明演説に対する衆参両院の代表質問では、焦点の所得税減税を巡り「正式な議論が開始されていない」と具体的答弁をしなかった。
首相は臨時国会召集日の20日に与党幹部と協議。その後、記者団に「所得税減税も含めて党での検討を指示した」と明言した。ところが23日の所信表明演説では「国民への還元」と繰り返すのみで「所得税減税」には一切触れなかった。
代表質問で野党議員から「大事なことはテレビではなく国会で議論すべきだ」「所得減税は行うのか。1年のみか、恒久なのか。国民は分からない」など抗議や追及を受けたものの、首相は「具体化に向けた正式、具体的な指示は26日の政府与党政策懇談会で行う」として、その前の方針表明は控える必要があると答弁した。
この間にも、政府与党からは所得税減税などに関して「1人当たり年4万円、非課税世帯には7万円の給付」などと検討内容が漏れ伝わった。しかし国会は蚊帳の外だ。さらには、物価高騰などに対処する経済対策は、衆参の予算委員会が終わった後の11月2日に閣議決定する予定という。
野党に吟味や反論の機会がないまま重要政策を決めて、議論にフタをするつもりなのか。国会で野党と議論するのを意図的に回避しているとしか思えない。所信表明演説で「職を賭して取り組む覚悟だ」と強調した以上、堂々と審議に応じるのが筋だ。議会制民主主義を形骸化させる国会軽視は直ちに改めるべきだ。
こうした姿勢は少子化対策の財源確保でもあった。首相は施政方針演説などで「6月の骨太方針までに将来的な子ども予算倍増の大枠を示す」としたが、6月には「新たな支援金制度は年末に結論を出す」などとトーンダウン。今回の代表質問でこれを批判されると首相は「財源の基本骨格は既に明らかにした。先送りとの指摘は当たらない」と突っぱねた。
具体的財源の積み上げもなく、達成時期の見通しも明らかにしていない。「年末に結論」では今国会は閉じた後であり、またも審議の俎上(そじょう)に載らないことになる。防衛費増額の財源確保策も同様だ。いったんは昨年末「2024年以降の適切な時期」に法人税や所得税などの増税を実施すると決めながら、今回の代表質問で首相は「景気や賃上げの動向を踏まえて判断する」とけむに巻いた。
首相の決意は変わったのか。国民はそれを知りたいだけだ。このままでは首相自身が政治を空洞化させていると言わざるを得ない。
●首相の「逃げ」が目に余る/臨時国会代表質問 10/27
岸田文雄首相の所信表明演説に対する衆参両院の代表質問が終わった。焦点の所得税減税を巡り首相は「正式な議論が開始されていない」として具体的答弁を避けた。
自身が「職を賭して取り組む」と強調する重要政策なら「逃げ」に終始せず、堂々と審議に応じるのが筋だ。首相の態度は「内閣は国会に対し連帯して責任を負う」と規定した憲法の趣旨にも反する。議会制民主主義を形骸化する国会軽視を直ちに改めるべきだ。
首相は臨時国会召集日の20日、与党幹部と協議。その後、記者団に「所得税減税も含め党での検討を指示した」と明言した。ところが23日の所信表明演説では「国民への還元」と繰り返しつつ、結局は「所得税減税」に触れなかった。
立憲民主党の田名部匡代参院幹事長は「大事なことはテレビではなく国会で議論して」と抗議。泉健太代表も「所得減税は行うのか行わないのか。1年のみか恒久なのか。国民は分からない」と追及した。当然の疑問だ。
すると首相は「具体化に向けた正式、具体的な指示は26日の政府与党政策懇談会で行う」として、その前の政府方針表明は控える必要があると述べた。全く筋違いだ。指示前でも記者との立ち話では言えて、なぜ国権の最高機関に言えないのか。
そもそも政府与党協議の日程を代表質問終了後に設定したのは首相らだ。しかも所得税減税を柱とする経済対策は、衆参の予算委員会審議も終わる後の11月2日に閣議決定する方針だ。国会で野党と議論するのを意図的に回避しているとしか思えない。
この間にも、所得税減税などについて「1人当たり年4万円、非課税世帯には7万円給付」との検討内容が政府与党から漏れ伝わった。しかし国会は蚊帳の外だ。野党に吟味や反論の機会がないまま重要政策を決定し、議論にフタをするつもりなのか。
国会回避は少子化対策の財源確保でも同様だ。首相は施政方針演説などで「6月の骨太方針までに将来的な子ども予算倍増に向けた大枠を示す」と約束しながら、6月には「新たな支援金制度は年末に結論を出す。2028年度までに安定財源を確保する」などとトーンダウンした。これを今回の代表質問で批判されると、首相は「財源の基本骨格は既に明らかにした。先送りとの指摘は当たらない」と突っぱねた。
「倍増に向けた大枠」とは、具体的財源の数字を積み上げ、達成時期の見通しを明らかにすることではないか。「年末に結論を出す」は先送りとしか取りようがない。年末では今国会が既に閉じ、またしても審議の俎上(そじょう)に載らないことになる。
政府与党は防衛費増額の財源確保策で、昨年末「24年以降の適切な時期」に法人、所得税などの増税を実施するといったん決めた。今回の所得税減税案と大きく矛盾するが、代表質問で首相は「景気や賃上げの動向を踏まえて判断する」と煙幕を張った。
「未来世代への責任」と言って防衛力強化のための増税にこだわってきた首相の決意は変わったのか否か。国民はそれを知りたい。与党幹部は防衛増税を「来年はやらない」と明言するが、首相は国会で野党の質問に答えない。これでは首相自ら政治を空洞化させていると言わざるを得ない。
●岸田首相 所得税・住民税の減税「国民生活支える上で重要」「スピード支援」 10/27
国会では、衆議院予算委員会で、岸田首相が掲げる経済対策などを巡る本格論戦が27日から始まった。
岸田首相は、経済対策で、所得税と住民税の減税を行うことについて「物価高の中で頑張ってもらうために、わかりやすく所得税・住民税という形でお返しするのが、国民生活を支える上で重要だ」と述べた。
その上で、低所得者世帯への給付については「所得税・住民税を払っていない、より厳しい中で苦しんでる方には所得税で返すことができない。さらにより厳しいわけなので、スピード感をもって支援をしなくてはいけない。この部分については給付をする」と述べた。
●首相は国会軽視を改めよ 10/27
岸田文雄首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が行われた。
物価高対策として政府が検討する所得税減税に焦点が当たったが、首相は具体的な答弁を避け続けた。議論が本格化する防衛費の大幅増に伴う増税や、「異次元」の少子化対策の財源の詳細についても、踏み込んだ発言はなかった。誠実さを欠き、国会軽視が甚だしい。
首相は国民負担を伴う問題からも逃げずに議論に応じるべきだ。
最初に登壇した立憲民主党の泉健太代表は、政府の物価高対策の遅れを批判し、対決姿勢を強めた。首相が所信表明演説に所得税減税を盛り込まなかった点を問題視し、実施する場合の期間や対象者の範囲を明確にするよう迫った。
これに対し、首相は「所得減税を含め、早急に検討する」と明言したものの、具体的な中身については「与党の議論が始まっていない」として何も語らなかった。国会での追及を最小限に抑えつつ、減税に道筋を付けたい思惑が透ける。
一方、政府内では所得税などを1人当たり年4万円減税し、低所得者や高齢の非課税世帯に7万円を給付する案が浮上している。長引く物価高に苦しむ国民の負担緩和策は不可欠だが、首相が国会で具体的な道筋を示し、自らの考えを率直に語ってこそ、議論は深まり国民の理解や共感を得られるのではないか。
首相の政治手法には与党内でも不満がくすぶる。自民党の世耕弘成参院幹事長は「還元という言葉が独り歩きして、減税か給付か、何をやろうとしているのか、全く伝わらなかった」と異例の苦言を呈した。
防衛増税は所得、法人、たばこの3税が対象となることが決まっている。少子化対策の財源確保策として保険料の上乗せ徴収も検討される。減税の後に増税や負担増が待ち構えているのは明らかで、政策の整合性を巡る批判が出るのは当然だ。
政府は11月末までにマイナンバーの総点検を完了させる。泉氏は、紙の健康保険証を来年秋に廃止しマイナカードと一体化する政府方針についてもただした。首相は「さらなる期間が必要と判断された場合には必要な対応をとる」と延期に含みを持たせた。トラブルが相次ぐマイナンバー制度の信頼回復が先決だろう。
首相が語ろうとしない痛みや矛盾をあぶり出し、独走に歯止めをかけるのが野党の重要な役割だ。野党側も給付や減税を主張するが、ばらまき競争に陥らず暮らしを守るための建設的な議論を望みたい。
論戦の舞台は予算委員会に移る。首相は厳しい質問や指摘にも真摯(しんし)に向き合い、国民に響く言葉で説明を尽くさねばならない。
●「インフレ手当」に消費税減税…野党各党が掲げる経済対策の中身 10/27
岸田政権が「税収増の還元」を柱とする経済対策をアピールし始めたのと前後し、野党も相次いで独自の経済対策を打ち出している。政府・与党が想定する所得税減税などでは対策のスピード感に欠け、現在の物価高に十分対応できないとの認識が共通している。政権与党との対立軸を明確にする狙いもある。
「インフレ手当なら今年中に給付可能」と立民・泉代表
立憲民主党は18日に発表した緊急経済対策で、中間層を含む約6割の世帯に向けた3万円の「インフレ手当」を提案。泉健太代表は24日の衆院代表質問で「インフレ手当なら今年中に給付が可能だ」と強調した。
ガソリン税の一部を軽減する「トリガー条項」の発動や、10月に始まった消費税のインボイス(適格請求書)制度の廃止も掲げた。
維新は社会保険料減免、国民民主は減税
日本維新の会は、18日に社会保険料の減免を柱とする経済対策を決定。23日に岸田文雄首相に提出した。藤田文武幹事長は記者会見で「社会保険料減免は法改正せずにできる。広く素早く恩恵を届けられる」と訴えた。
後期高齢者医療制度と介護保険、国民健康保険の65歳未満の負担分について、低所得者層は5割、その他は3割の減免を想定。消費税率の一律8%への減税も掲げた。
国民民主党は11日に経済対策をまとめ、23日に首相に手渡した。所得税、ガソリン税、法人税の減税と、消費税率5%への引き下げを求めた。旧民主党政権で子ども手当の創設に合わせて廃止された年少扶養控除の復活も掲げ、15歳以下の子を育てる世帯の税負担軽減を打ち出した。
共産は時給1500円、れいわは消費税廃止、社民は賃上げ
共産党は9月28日に「経済再生プラン」を発表し、最低賃金の時給1500円への早急な引き上げを表明。中小企業に10兆円規模の賃上げ支援を行うとし、消費税廃止に向けた緊急的な5%への減税も明記した。
れいわ新選組の山本太郎代表は10月23日の記者会見で「全ての人に恩恵が届き、時間も短くて済む消費税廃止が必要だ」と主張。給付金や社会保険料減免の必要性を訴えた。
社民党の福島瑞穂党首は、9月27日の記者会見で「人々の生活応援には、消費税減税、抜本的な賃上げしかない」と説明し、インボイス制度の中止も求めた。
●代表質問終わる 国の根幹政策置き去りか 10/27
岸田文雄首相の所信表明演説に対する衆参両院の代表質問が終わった。
論戦は経済対策が中心となったが、首相は所得税減税の具体的な中身を語らず、野党は「バラマキ」を競い合うなど、議論が深まることはなかった。
首相は所信表明に「所得税減税」を入れなかった理由について、「与党で正式な議論も開始されていない段階で、具体化の方向性を述べることは控えなければならない」と答弁した。所得税減税の効果などに疑問符がつけられる中、詳細を分かりやすく語るべきだ。
野党も人気取りに走っていては、信頼は得られまい。立憲民主党は「インフレ手当」の給付、日本維新の会は社会保険料の減免、国民民主党は所得税や消費税などの幅広い減税、共産党は消費税率の引き下げを求めた。世論の気を引くことに血眼になるのは、感心しない。
一方で、国の根幹をなす安全保障や憲法改正などを巡る論議はかすんだ。
イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの紛争やロシアのウクライナ侵略、これらが日本周辺に与える影響に関し、突っ込んだ論争はなかった。
中国が台湾併吞(へいどん)をにらみ軍事的圧力を強め、北朝鮮は核・ミサイル開発に余念がない。防衛力の抜本的強化について議論を尽くすべきなのは当然だ。
改憲については日本維新の会の馬場伸幸代表が、首相が来年9月までの自民党総裁任期中の実現を表明していることを踏まえ、果たせなかったら次期総裁選に再選出馬しない、と退路を断って取り組むよう迫った。
残念なのは、首相が所信表明で「条文案の具体化」に向けた議論を期待すると述べたにもかかわらず、自民の世耕弘成参院幹事長が改憲に触れなかったことだ。
世耕氏は首相の決断と言葉に関し、「いくばくかの弱さを感じざるを得ない」と苦言を呈していた。政治家にとって言葉は極めて大事である。それだけに、世耕氏も改憲の決意を語るべきだった。
立民の田名部匡代参院幹事長は「内閣が干渉すべきではない」と批判した。国会に議論を呼びかけることは、三権分立に反するものではなく、不見識だ。首相は自民総裁として指導力を発揮せねばならない。
●「減税」巡る首相答弁 ちぐはぐさ隠しきれない 10/27
所得税の減税がどうして必要なのか。岸田文雄首相から納得のいく説明はなかった。
所信表明演説に対する各党の代表質問が行われた。物価高に対応した政府の経済対策に関連し、首相が唐突に所得減税を打ち出したことが焦点となった。
まず問われたのは、時宜にかなった政策かどうかだ。
日本経済は新型コロナウイルス禍から回復過程にある。立憲民主党の泉健太代表ら野党だけでなく与党からも、減税による過度な景気刺激は逆に物価高を助長するのではないかとの懸念が相次いだ。首相は「インフレが加速することがないよう適切に対応する」と答えたが、説得力に乏しかった。
国の借金が膨らみ続ける中、野党は「財政に対する信頼を揺るがす」とただした。首相は「デフレから脱却するための一時的な措置」と述べただけだった。
日本維新の会の馬場伸幸代表は「最低限の物価高対策と生活困窮者への手当てが合理的だ。国の財布は政権維持のための打ち出の小づちではない」とクギを刺した。首相は「国民生活に高い効果のある具体的な政策を積み上げる」などと、あいまいな答弁に終始した。
防衛費増額と「次元の異なる」少子化対策の財源すら確保できていない。そのような中で減税を打ち出したことも、「ちぐはぐだ」と指摘された。首相は「行財政改革」や「歳出改革」を徹底すると繰り返すばかりだった。
正面から答えられないのは、そもそも場当たり的な政策だからではないか。身内である自民党の世耕弘成参院幹事長も「首相が何をやろうとしているのか、全く伝わらなかった」と苦言を呈した。
政府は臨時国会に提出する今年度補正予算案に、低所得世帯向け給付金などを盛り込む方針だ。来年の通常国会で法改正が必要な所得減税は即効性を欠く。その上、富裕層も対象となるためバラマキとの批判が出ている。
それでも首相がこだわるのは、政権につきまとう「増税」イメージを拭い去るためではないか。そう見られても仕方あるまい。政権浮揚や選挙対策の思惑を優先しているなら言語道断だ。
国民の疑問に真摯に向き合えないようでは信頼は得られない。
●岸田首相の減税額明示、与党冷ややか 手法に不満、所得制限で溝も 10/27
岸田文雄首相が26日、与党幹部らに所得・住民税減税を指示した。
「1人当たり4万円」と明示。自身の指導力アピールに躍起だ。ただ、所得制限を巡る溝が早くも表面化。強引と映る手法に対しても、与党内から冷ややかな声が漏れる。
「千載一遇のチャンスを逃すことなくデフレ脱却を確実にする」。首相は同日の政府与党政策懇談会でこう力を込めた。
複数の政府高官は当初、同懇談会で「減税額は示さない」との見通しを語っていた。自民党では長年、税制に関しては党税制調査会の「聖域」とされ、歴代政権も尊重してきたためだ。
しかし、首相は今回、官邸主導を印象付けるため、あえて明言に踏み切った。年末に向けた党内の議論にたがをはめる進め方に、税調幹部の間では「何を議論しろというのか」などとの不満が渦巻く。
所得減税を巡っては、そもそも経済対策として「意味があるのか」(自民若手)と疑問視する向きが強い。実施時期は来年6月で、首相の掲げる「国民への還元」を早期に具体化するには、給付金の方が望ましいとの意見は消えない。
今後の焦点は所得制限の有無だ。首相は26日夜、記者団に「子育て世帯の分断を招くようなことはあってはならない」と表明。政府側は原則、納税者全員を対象とする方針だが、与党側は一定の「線引き」が必要との意見が支配的だ。「上位5%」や「年収2000万円超」を対象外とする案などが飛び交う。
与党幹部は「これで実現できなければ首相が持たない」と指摘。4万円の減税額については「税調も最後は従うだろう」との見通しを示すが、所得制限を巡る議論は曲折も予想される。
1998年の参院選では、所得減税を巡る橋本龍太郎首相(当時)の発言が変遷し、自民党の敗北につながった。「税でぶれてはいけない」。政府関係者は、自らに言い聞かせるように語った。
●改憲で「責任」、保守層にアピール 旧統一教会は踏み込まず 岸田首相 10/27
9月の内閣改造後初の本格論戦となった各党代表質問が26日、終わった。
岸田文雄首相(自民党総裁)は、憲法改正や安定的な皇位継承など保守層が関心を寄せる政策を推進する決意を強調した。政権運営の不透明感が増す中、党内基盤強化に向け「保守層へのアピール」(自民党中堅)を図ったとみられる。
「党内議論を加速させるなど憲法改正の課題に責任を持って取り組む」。首相は24日の衆院本会議で、自民党の稲田朋美幹事長代理から「憲法改正実現の決意」を問われたのに対し、党総裁としての「責任」に言及した。
25日も、馬場伸幸日本維新の会代表が「総裁任期中の改憲への覚悟」をただしたのに対し「任期中に実現したいという思いにいささかの変わりもない」と断言した。与野党の議論が停滞する皇位継承や皇族数確保を巡っても、「責任ある政権与党として活発な議論を率先して行っていく」と強調した。
首相は伝統的にハト派に位置付けられる宏池会(岸田派)の会長で、故安倍晋三元首相のように保守層に確固とした基盤を持たない。自民党の閣僚経験者は「皇位継承や憲法改正で前のめりだった。保守層を取り込もうとしているのだろう」と語った。
首相は、一般ドライバーが自家用車を使って有償で乗客を送迎する「ライドシェア」についても25日に「課題に取り組み、方向性を出していく」と表明。ライドシェアは党内非主流派の菅義偉前首相らが解禁を求めている。賛否が割れる中での首相の発言に対し、「党内での求心力を維持しようと焦っている」(閣僚経験者)との声も漏れた。
一方、政府が解散命令請求に踏み切った世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に関しては、首相から踏み込んだ答弁はなかった。立憲民主党の泉健太代表が24日に「被害救済に旧統一教会の財産保全の手だては不可欠だ」と迫ったのに対し、首相は「議員立法を含めた各党の動きを注視していく」と述べるにとどめた。
26日は共産党の小池晃書記局長が過去にさかのぼって自民党と旧統一教会の関係を調査すべきだとただしたが、首相は「大切なことは未来に向かって関係を断つことだ」と取り合わなかった。 
●岸田首相 防衛増税「来年度は実施する環境にない」と明言 10/27
岸田首相は、衆議院の予算委員会で防衛増税について「来年度から実施する環境にない。定額減税と同時にこれを実施することにならない」と述べた。
また、防衛増税を今後行う中で今回、所得税減税を行うことは矛盾しているとの指摘があることについては、防衛増税は、2013年から所得税への上乗せが続いている「復興特別所得税」の一部を防衛力強化の財源とするものであることを念頭に「現下の家計の負担にならない仕組みを考えていて、増税ではない」として矛盾しないとの考えを強調した。
●岸田首相バラマキ減税案「キシダノミクス」は《公選法違反に等しい脱法行為》 10/27
「異次元緩和」と言って資金を市場にばらまくのが「アベノミクス」なら、「還元」と叫んで現金をばらまくのが「キシダノミクス」なのか──。
もはや何をやりたいのか。何を目的とした政策なのかがサッパリ分からず、早くもグダグダになってきた。岸田政権が検討しているという税収増に伴う減税案のことだ。
減税案の中身は今のところ、所得税3万円、住民税1万円の定額減税とし、所得制限を設けずに来年6月をめどに実施することや、住民税非課税の低所得世帯に対して、年内にも1世帯あたり7万円を給付することが検討されているという。
さらに一部報道によると、非課税世帯以外の所得の低い世帯についても、1世帯あたり10万円を給付する案が浮上しているというから、まさに“大盤振る舞い”と言っていいだろう。
こうした政府方針に対し、SNS上で目立つのが批判的な投稿だ。
振込手数料や膨大な事務作業費はだれが負担するのか?
《いろいろな理由をつけて税金を集めながら、余裕ができたから配るねと。何という無駄。ならば最初から取らない仕組みにするべき》
《現金給付とか簡単に言っているけれど、それに伴う振込手数料や膨大な事務作業費はだれが負担するの?すでに複雑になっているし、余計なカネがかかるだけの無駄遣い》
《「経済、経済、経済」とは、とにかくカネを「配る、配る、配る」ということか。考えていることは安倍政権と変わらない》
辛辣な意見が多いのも当然だ。「減税」と言えば聞こえはいいが、「1年限定」となれば、その後に待ち受けている防衛費負担などの「大増税」に備えて国民は減税分を貯蓄に回すだろう。つまり、消費は今以上に冷え込むことが容易に想像がつくわけで、この政策のどこが「経済対策」になるのか。
《選挙で勝つためのバラマキ以外の何物でもない。もはや公選法で禁じられた買収に等しい脱法行為だ》
岸田首相は今こそ、国民の声に対して「聞く力」を発揮する時ではないか。
●子育て世帯の明暗クッキリ 岸田政権「偽装減税」が招く異次元の貧富格差 10/27
「パッパカ、パッパカ、バラまいて。こんな楽な政治するなよって言いたい」──。元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏が、24日に出演した関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」でそう吠えていた。批判の矛先は、岸田政権が物価高対策の目玉に検討している1人あたり4万円の定額所得減税。低所得者や高齢の非課税世帯への7万円給付とワンセットで、バラマキの規模は総額5兆円になる見通し。減税は納税者本人に加え、扶養家族を対象とする方向だが、次元の異なる格差を生じさせるだけだ。
橋下ファミリーは36万円、低所得層は一律7万円
扶養家族1人につき4万円を減税すれば、納税者が家族2人を扶養している3人世帯の場合、「還元」の恩恵は計12万円。子だくさんで知られる橋下氏には妻との間に7人の子がおり、全員扶養していれば計36万円の減税となる。もちろん、テレビのコメンテーターに引っ張りだこの橋下氏にすれば物価高の影響なんて、どこ吹く風だろう。
減税の対象からこぼれ落ちてしまう低所得層にも7万円をバラまくが、こちらはあくまで「1世帯あたり」だ。子どもが何人いようと配られる額は変わらない。「還元」を幅広い層に行き渡らせる支援策のはずが、あの「ビッグダディ」さながらの大家族であれば微々たる恩恵にしかならない。
「育ち盛りのお子さんを多く抱える世帯にとって、悩みの種は食費です。あらゆる食料品が高騰する中、7万円を給付されても焼け石に水です」(立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏=税法)
子育て世帯の明暗クッキリ、異次元レベルの貧富の格差を招く「偽装」減税だ。24日の番組で橋下氏は「本当に困っている人に、もっと渡すようにすればいい」と苦言を呈したが、似た光景は2020年にもあった。安倍政権がコロナ禍にバラまいた1人10万円の一律給付に対し、当時、橋下氏は「僕んところは90万円。いいの?」と疑問を投げかけたものだ。
先例に学べないのは、岸田首相の減税方針が選挙対策の場当たり策に過ぎない証拠だ。
唐突に打ち出したから、制度設計も生煮え。票欲しさに「規模を大きく、対象を広く」を目指す突貫工事の弥縫策だけに、朝令暮改が続いている。批判が出るたび給付額を子どもの人数に応じて増やしたり、所得制限で富裕層を減税の対象外にしかねない。
還元するなら消費税
そもそも岸田首相は「税収増の還元策」と言い張るが、税収増を牽引したのは消費税である。過去最高を更新した22年度の税収71兆1373億円のうち、消費税収は23兆792億円。全体の3分の1を占め、3年連続で所得税収を上回り最大の税目に。税率を10%に引き上げる前の18年度と比べ、実に31%も増えている。
「消費税収が伸びたのは円安や資源高による物価高が要因です。物価高対策をうたう税収増の還元なら、消費税の減税がスジ。所得税の減税に費やす5兆円は消費税収の2割超にあたる計算です。日々の飲食料品が対象となる軽減税率だけでも8%から5〜6%に引き下げれば、エンゲル係数の高い低所得層ほど負担が和らぐ。いっそ軽減税率も撤廃して一律5%に減税すればインボイス制度も不要となります。どう考えても消費税減税の方が『還元』効果は絶大です」(浦野広明氏)
財政逼迫の折、偽装減税の財源を赤字国債などに頼れば、貧富に関係なく将来の子どもたちが岸田首相の人気取りのツケを払うハメになるのを忘れてはいけない。
●賃上げ促進減税や資産運用特区が象徴する「経済政策のレベル低下」 10/27
経済対策作りが浮き彫りにした「貧困」本来行われるべき政策はなおざり
岸田文雄政権は11月初旬をめどに、物価高への対応や持続的成長を目指した総合経済政策をまとめる。その詳しい内容はまだ十分には明らかになっていないが、岸田首相が強調するのは、「税収増の国民への還元」だ。
10月20日には新たに所得減税の検討を指示し、政府与党内では来年度限りの「定額減税」が検討されている。だがいま必要なのは減税か?またこれまで論議されているものは、効果が期待できそうにないものが目立つ。本来行われるべき政策がなおざりにされ、些細なことばかりが取り上げられている。
経済政策は、信じられないほどのレベルに低下してしまった。本当に必要とされる政策に注力しない限り、日本の経済の復活は到底、無理だと考えざるをえない。
賃上げ減税、効果ないことは実証済経費増で税引き後利益はむしろ減る
とりわけ経済政策の「貧困」を象徴するのが、賃上げ促進を掲げた減税だ。
賃上げをした企業には一定の条件のもと法人税額を一定割合、特別控除する「賃上げ促進税制」は、2013年に安倍晋三政権で導入されたが、延長が繰り返され、今回、総合対策に盛り込まれることが検討されているのも、来年3月末に切れる期限の延長と拡充だ。
●岸田首相の所得税の減税政策で「物価高を止められなくなる」専門家が警鐘 10/27
10月20日に“期限付き”の所得税の減税を検討するように指示を出した岸田文雄首相(66)。収入にかかる所得税を減税することで、自由に使えるお金を増やす狙いだ。
しかし、元経済産業省官僚で政治経済評論家の古賀茂明さんは、こう指摘する。
「短期的に、国民生活を改善する効果はあるかもしれませんが、長期的に見れば、税収を減らすことで国の借金を増やし、将来にツケを回す結果になります」
所得税を減税するなら、歳出の削減や大企業に負担を求める政策も行うべきという。
「国民の支持を得られない大阪万博は中止にすべきです。また、円安でボロ儲けの輸出大企業に臨時増税して、円安で苦しむ庶民の支援策の財源に充てれば、財政負担を軽減できます」
さらに、特定の目的のためにお金をプールしておく“基金”の膨張も問題だという。研究開発などを名目に、国が補助金をつぎ込んで作られる“基金”だが、岸田政権下でその額は急激に増え、2022年度末の段階で、残高は16兆円にも膨らんでいたという。なぜ、ここまで膨張したのか。
「一つには、政府が予算規模を大きく見せたいからです。何十兆円予算を組みました、ということが国民へのアピールになる。つまり“やってる感”の演出です。とくに基金の場合、国民に配る給付金と違ってすぐに使わなくてもかまわない。だから“見せ金”としての効果があるんです」
そのうえ、大企業などに恩を売ることもできるという。
「基金の受け皿は、大企業や大学、研究所などですから、基金を積んでおけば選挙の際の票集めにもなる。いわば賄賂みたいなものです」
百歩譲って、こうした基金が、将来的に国民のために使われるならいいが……。
「予算規模を膨らませるためなので、中身は二の次。予算“ありき”で作られた基金ですから、大部分が無駄になる可能性が高い。しかし予算を余らせると、官僚は『失敗した』と責められるので、無理にでも使おうとします。結局、国民の役に立つことはなく、特定企業の“補助金”のように使われるのではないでしょうか」
このような無駄な歳出を放置したまま、行われようとしている所得税の減税。
「現状でも、GDPの約2.6倍もの借金がありますが、その額はますます増えていくことになります。物価の上昇を止めるには、欧米諸国のように、金利を上げる必要があります。しかし、巨額の借金を抱えた日本は、金利を上げると、国債の“利払い費”が急増してしまう。有効な物価高の対策が打てない状態なのです。一方、諸外国との金利差は円安を進行させる。今後も、輸入品の価格が上がり、物価高は進行していくでしょう」
ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんは「残念ながら、“自己責任”で何とかするしかない時代にきている」と語る。
「物価高が進行するなか、資産を銀行に預けているだけでは、“もはやリスク”。お金の価値が目減りしていくだけです。貯蓄を目減りさせないために、iDeCoやNISA口座を使い、リスクを抑えた積立投信で、資産運用していくしかありません。
とはいえ、50代前半は、まだまだ働き盛り。子育ても終えて貯蓄に回せるお金が増えるので、希望はあります。厳しいのはすでに定年退職をした世代。ふたたび働き始めるか、抜本的な支出の見直しが急務です」
●課題山積の植田日銀 政策修正を求める声も強まる 10/27
日銀総裁に初の学者出身となる植田和男氏が就任して半年が過ぎた。7月には長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を修正し、長期金利(10年物国債利回り)の上限を0.5%から事実上1.0%に引き上げた。さらに、9月上旬には新聞のインタビューで短期のマイナス金利解除にも言及し、黒田東彦前総裁が10年間にわたって続けた異次元緩和策の出口に前向きな姿勢を示した。
植田氏は緩和修正に積極的な姿勢をアピールしたが、輸入コスト増大で「悪い物価上昇」を助長する行き過ぎた円安を是正したいとの思惑が滲む。
米国でインフレ圧力が収まらず、米連邦準備理事会(FRB)が追加利上げを示唆する中、日銀が異次元緩和に固執したままでは「1ドル=150円台を大きく突き抜けて円安が進み、歯止めがかからなくなる」(米証券アナリスト)との懸念も出る。
日銀には円安・物価高に暮らしを圧迫される国民や中小企業経営者らから「いつまで異次元緩和を引っ張るつもりか」などと批判の声が多数寄せられているといい、追加の緩和修正のタイミングを図る局面にある。
最大の障害と言えるのが、「今や衆院解散・総選挙をいつ打つかしか眼中にない」(財務省筋)とされる岸田文雄政権が再び大規模な経済対策・補正予算編成をぶち上げていることだ。
国の借金が国内総生産(GDP)の250%超にも膨らむ中、事実上の財政ファイナンスを担う日銀が緩和の再修正に動けば、バラマキ財政の継続と相まって長期金利の急騰を招き、国の財政運営を混乱させかねない。円安・物価高の是正と国家財政の資金繰り維持という相矛盾する2つの課題を背負わされた日銀は、孤立感を深めている。
日銀は財政の混乱を招かないことを最優先せざるを得ず、大規模緩和を続け、その結果、円安に歯止めがかからない。物価上昇に家計や中小企業の不満が募る中、政府はそれを宥める為に財政出動で物価高対策を講じるという悪循環の繰り返しが懸念されている。YCC撤廃など政策修正を求める声も強まる。日銀は早くも正念場を迎えているようだ。
●消費税減税は?野党質問に首相「考えていない」 10/27
国会は、3日間にわたる各党の代表質問を終え、27日から予算委員会での一問一答式の論戦が始まる。
26日の参議院本会議では、与野党が減税を含む経済対策などについて、岸田首相をただした。
共産・小池書記局長「先進国で唯一、賃金が上がらない国にしたのは誰か。必要なのは反省、反省、そして転換ではありませんか」
岸田首相「30年ぶりにめぐってきた新たな経済ステージに移行できる大きなチャンスをつかみ取り、持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済への変革を実現してまいります」
野党は、消費税を減税することや、インボイス制度の廃止を求めたが、岸田首相は「考えていない」と否定した。
また、与党の質問に答える形で「核兵器のない世界」への道筋について話し合う「国際賢人会議」を12月8日から長崎県で開き、自身の出席も調整していると明かした。
27日からは、一問一答形式の予算委員会の基本的質疑が始まり、野党は、新たな閣僚の資質なども追及する構え。
●10月の東京都区部物価2.7%上昇 4カ月ぶりに伸び拡大 10/27
総務省が27日発表した、10月の東京都区部の生鮮食品を除く消費者物価指数は、前年同月比2.7%上昇した。
前年同月を上回るのは26カ月連続。政府による電気代、都市ガス代の補助が半減したことが全体を押し上げた。
品目別では、生鮮食品を除く食料が、原材料価格の高騰などを販売価格に転嫁する動きが続いていることを受け、7.3%上昇した。
また、宿泊料は42.8%伸び、インバウンド需要の増加などが押し上げた。
東京都区部の消費者物価指数は全国に先駆けて発表され、先行指標とされている。
●米GDP、第3四半期は4.9%増 約2年ぶりの高い伸び 個人消費堅調 10/27
米商務省が26日発表した2023年第3・四半期の実質国内総生産(GDP)速報値は年率換算で前期比4.9%増と、21年第4・四半期以来約2年ぶりの高い伸びとなった。景気後退懸念にもかかわらず、底堅い労働市場を背景に堅調な個人消費が主導し、市場予想の4.3%増も上回った。
9四半期連続で減少していた住宅投資の回復も成長率押し上げに寄与したほか、企業も在庫を積み増した。一方、企業の設備投資は減少した。
フィッチ・レーティングスの米経済部門責任者オル・ソノラ氏は「米連邦準備理事会(FRB)の積極的な引き締めサイクルや金融情勢の逼迫を寄せ付けず、経済成長は回復から再加速に移行した」と述べた。
ボストンカレッジのブライアン・ベスーン教授(経済学)は「米経済に驚くほどのレジリエンス(強靭さ)がある。23年は2四半期連続で生産性主導の成長が見られた」と指摘した。
米経済活動の3分の2超を占める個人消費は4.0%増と、前四半期の0.8%増から大きく加速。モノとサービス双方への支出が見られた。
しかし、消費支出を圧迫するリスクは増大しているようにみえる。10月に再開された学生ローン返済は、エコノミストの試算によると、約700億ドルで、個人の可処分所得の約0.3%に相当する。
金利上昇に伴い、クレジットカードの滞納も増加している。また、税金が世帯の可処分所得への重しとなる中、貯金を切り崩す動きも出ているもようで、第3・四半期の貯蓄率は3.8%と、5.2%から低下した。
税引き後の家計の可処分所得は1.0%減。
FRBが物価の目安として注目する食料とエネルギーを除くコア個人消費支出(PCE)指数は2.4%上昇と、前四半期の3.7%から鈍化し、20年第4・四半期以来の低い伸びとなった。
在庫は806億ドル増加。GDP伸び率を1.32%ポイント押し上げた。
第2・四半期のGDPは2.1%増だった。FRB当局者がインフレを伴わない成長率とみなす1.8%前後を上回るペースで拡大している。
第3・四半期の大きな成長ペースが続く可能性は低いものの、FRBの積極的な利上げにもかかわらず経済が底堅いことを裏付けた。第4・四半期は、全米自動車労働組合(UAW)のストライキや学生ローン返済の再開による影響で成長が鈍化する可能性がある。
大部分のエコノミストは従来の予想を修正し、今ではFRBが経済の「ソフトランディング」(軟着陸)を実現できると考えている。第2・四半期に労働生産性が堅調に推移し、単位労働コストの伸びが緩やかになった傾向が第3・四半期も続くと見込んでいるためだ。
ただ、米国債利回りの上昇と株価下落によって金融情勢が逼迫する中、GDPによる金融政策決定への影響は限定的なもよう。ウィリアム・ブレア(ロンドン)のマクロ・アナリスト、リチャード・デ・チャザル氏は「FRBが利下げに着手する必要を示唆するものはなかった。同時に、再利上げの差し迫った必要性を示唆するものもなかった」と述べた。
GDP発表後、米金利先物市場ではFRBが年内は金利を据え置き、来年半ばに利下げを開始するという観測が強まった。
●NYマーケット続落 ダウ平均3万2784ドル30セント ナスダック1万2595.61 10/27
26日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は続落した。
7月から9月期のアメリカのGDP(実質国内総生産)速報値の伸び幅が市場予想を上回った。これを受けてFRB=連邦準備制度理事会が政策金利を高水準で長期間維持するとの見方が強まり、売り注文が優勢となった。
結局、前日比251ドル63セント安の3万2784ドル30セントで取引を終えた。
ハイテク株主体のナスダック総合指数も続落し、225.62ポイント安の1万2595.61だった。  
●防衛増税、24年度から実施する環境にはない=岸田首相 10/27
岸田文雄首相は27日の衆院予算委員会で、来年実施を検討している所得税・住民税の定額減税と、防衛力強化のための増税は政策的に矛盾しないと述べた。防衛増税については2024年度から実施する環境ではないとの認識も示した。公明党の高木陽介委員の質問への答弁。
高木氏は、所得税・住民税を減税するのに防衛増税するのは矛盾しているとの意見があるが、その指摘にどう答えるかと質問した。
首相は、所得税・住民税の減税は物価高への対応として行うものであり、防衛増税とは異なる課題に対処するものだと説明。さらに、防衛増税は家計の負担にならない仕組みとしているほか、法人税の部分でも全法人の94%を対象にするなどの配慮をしていると述べた。
防衛増税の実施時期についても、27年度に向けて複数年かけて段階的に実施する枠組みのもと景気や賃上げの動向などを踏まえて判断するということになっていると説明。24年度から実施する環境になく、「定額減税と同時に実施することにはならない」との見解を示した。
●争点は「経済、経済、経済」 岸田首相の「減税」で攻防激化へ 10/27
今国会は衆参本会議での各党代表質問に続き27日、衆院予算委員会が開かれ、本格論戦が始まった。最大の争点は岸田文雄首相が23日の所信表明演説で「経済、経済、経済」と最優先課題に掲げた経済対策だ。中でも所得減税は即効性に欠けるなどと野党に批判されている。攻防の行方は政権運営に大きく影響する。
首相は27日の衆院予算委で「所得税減税の手段を使い、何としてもデフレからの脱却を完成させなければならない」と強調した。首相は「税収増の国民への還元」のため、1人あたり年4万円の所得税・住民税の定額減税を来年6月から行い、低所得の住民税非課税世帯には1世帯当たり7万円を給付する方針を示している。
野党各党はこの首相方針に対抗し、「給付」「消費減税」「賃上げ」などを訴える。
立憲民主党の後藤祐一氏は減税実施が来年6月となることに関し「今、物価高対策が必要なのであり、遅すぎではないか」と批判した。立民は全世帯の6割にあたる中間層以下を対象にした3万円の「インフレ手当」の年内給付を主張。泉健太代表は24日の代表質問で「国民が望むのはインフレ手当の『給付、給付、給付』」と語った。
日本維新の会の馬場伸幸代表は25日の代表質問で、消費税率を現行の10%から8%に引き下げるよう提案し、「異次元の歳出改革」断行も訴えた。国民民主党の玉木雄一郎代表は「賃上げ、賃上げ、賃上げ」と繰り返し、自民党に先駆けて主張してきた所得税減税に加え、消費税とガソリン税の減税も掲げた。
11月下旬にも、経済対策の裏付けとなる令和5年度補正予算案を審議する予算委が衆参で開かれる見通し。野党が首相に経済対策を追及する論戦が続く。首相が政権浮揚の目玉に位置付ける「減税」が国民の支持を得られなければ政権運営は厳しさを増す。一方、低迷する内閣支持率が上向けば早期の衆院解散・総選挙も視野に入る。
●小泉進次郎氏「紙ですか?」 国会改革巡り持論 10/27
自民党の小泉進次郎元環境相は27日の衆院予算委員会で、ペーパーレス化進展などの国会改革について持論を述べ、岸田文雄首相の見解を求めた。
小泉氏は、立憲民主党の泉健太代表が国会改革を提唱していることを紹介し「野党第一党の代表が言ってくれたわけだから、ぜひ進めてほしい」と語った。
予算委などで質問の残り時間をペーパーを示して告知する職員を配置していることに触れ「やめたほうがいい。時計があるのだから」。続く言葉で「河野太郎デジタル相がデジタル改革、行財政改革(を主導している)。それで『紙』ですか」と問いかけ、河野氏も苦笑いを浮かべた。
首相は「共感を持ちながら話を聞いた。与野党問わず、それぞれが思うことを国会運営の中で変化につなげていく姿勢は大事だ」と応じた。
●小泉進次郎氏… 長年持論の国会改革実現への覚悟を岸田首相にただす 10/27
自民党の小泉進次郎元環境相は27日の衆院予算委員会で質問に立ち、長年必要だと訴えている「国会改革」について、立憲民主党の泉健太代表の提言を引き合いにしながら、岸田文雄首相に対し、実現への覚悟をただした。
進次郎氏は「今回の代表質問を聞いていて、立憲民主党の泉健太代表が『国会改革を進めましょう』という提言をされた。総理は、(所信表明の中で)『変化の流れをつかみ取る』とおっしゃったが、野党の皆さんが言い出さないと、大きな流れが生まれないのが国会改革だ。せっかく野党第1党の泉代表が言ってくれたのだから、ぜひ進めていただきたい」と述べた。
国会閉会中に読んだ野党の若手議員の著書に、委員会の質問中、残りの質問時間を記した紙を複数回渡しに来る「紙出し」と呼ばれる業務を担当する職員に関するくだりがあったとして、「野党の方は、止めた方がいいのではないかと。確かにその通りです。部屋の中にはこんなにたくさん時計もある。河野デジタル大臣が、デジタル改革、行財政改革と言っているのに、それで『紙』ですか」と指摘。「ちっちゃいことだよ」というヤジが飛ぶと「ちっちゃいことですが、それも1つのことだなと思います」と、野党議員の主張に歩調を合わせた。
質問の前に、パネルの使用の有無を問う電話が事務所に5回あったことも明かし「こういう働き方を強いているのが国会だ。我々の中から(変化を)国民の皆さんに見せていかないといけない」と主張。「野党の皆さんは、国会改革(の必要性)を言っていただいている。ぜひ変化の流れをつかみ取っていただきたい」と、首相に促した。
岸田首相は「変化ということについての指摘、全く共感を持ちながら話を聞いた」と理解を示し「世界も日本も大きな変化の中にあるが、私たちの身のまわりでも、変化しなけらばならないと誰もが思うことは、いっぱいある。与野党それぞれが国会運営の中で変化につなげていく姿勢は大事だ」と応じた。また「みんな思っているが、なかなかくみ取られずに何十年も続いてきた慣行は、いっぱいある。そういった声をどうくみ取るのか。議運なのか、どこなのか。仕掛けを考えていただくことも必要ではないか」とも、口にした。
●早期改憲促す維新・国民 岸田首相の本気度は判然とせず 10/27
衆院予算委員会が27日開かれ、本格論戦が始まった。今国会での憲法改正を巡る論戦は、改憲論議で存在感を示してきた日本維新の会と国民民主党が、岸田文雄首相に対して早期改憲実現を促す展開となっている。
来年9月までの自民党総裁任期中の憲法改正実現を掲げる岸田首相にとって、今国会は重要な局面だ。改憲の是非を問う国民投票は国会発議から60〜180日間の周知期間を設けることになっており、今国会で改正案をまとめなければ実現には黄信号がともる。
25日の衆院代表質問では、維新の馬場伸幸、国民民主の玉木雄一郎両代表が、改憲に向けた首相の「覚悟」と「本気度」をそれぞれ尋ねた。
首相は「思いにいささかの変わりもない」と応じたものの、それ以上の具体的言及はなく、本気度は判然としないままだ。維新や国民民主が首相を突き動かすことができるかは見通せない。
一方、野党第一党の立憲民主党は改憲への後ろ向きな姿勢が際立つ。立民の田名部匡代参院幹事長は25日の参院代表質問で、首相の所信表明演説の内容を「憲法条文案の具体化を求めるような踏み込んだ発言をした」と批判した。
維新、国民民主両党に比べると、立民の立ち位置は改憲に反対する共産党に近い。憲法を巡る論議が本格化すれば、「維国」「立共」という主要野党の色分けが一層鮮明になることは避けられない。
●世耕さんにまで叱られた!「岸田減税」はなぜここまで叩かれるのか 10/27
最も強烈な批判は「仲間」から
臨時国会は予算委員会に議論の場が移ったが、世間の関心は「岸田減税」一本だ。岸田文雄首相は26日の政府与党政策懇談会で、来年6月に1人当たり4万円の所得税減税と低所得者世帯への7万円の給付を実施すると表明した。
これに対し野党からは批判が相次いでいる。代表質問では「減税の来年実施は遅すぎる。現金給付を急ぐべき」(泉健太・立憲民主党代表)、「社会保険料の減免を」(馬場伸幸・日本維新の会代表)、「消費税の減税を」(玉木雄一郎・国民民主党代表)など、様々な「対案」が出された。
だが最も強烈だったのは「仲間」であるはずの世耕弘成・自民党参院幹事長による「世の中に対しても総理が何をやろうとしているのか全く伝わらなかった」という言葉だった。
世耕発言に対しては「異例の酷評」(フジテレビ)、「世耕氏から疑問符」(朝日新聞)、などメディアが大きく取り上げ、永田町では「岸田おろしが始まったか」とささやかれた。
確かに世耕氏は首相の減税の「打ち出し方」に苦言を呈しているが、本当に言いたかったのはその後の「アベノミクスがやり切れなかった点を教訓にしなければならない。GDPギャップがわずかにプラスに転じた今こそがデフレ脱却の正念場」という部分だと思う。
「アベノミクスを忘れるな」
世耕氏は「安易に緊縮財政や増税に走るのではなく、減税や積極財政と成長戦略によって、デフレ脱却を宣言し、本格的に税収を増して、結果として財政健全化を達成すべき」と述べている。つまり「アベノミクスを忘れるな」という事だろう。
世耕氏は3週間ほど前に岸田氏の再選を支持する発言をしていたため、今回の「苦言」は余計に注目されたのだが、実は再選支持の前提として「安倍政権の路線の継承」を挙げていた。つまり今回の発言は「岸田おろし」ではなく、「アベノミクスを忘れたら支持しないよ」という注意喚起ということだろう。
首相はおそらくアベノミクスを継承しつつ、次の段階に進もうと思っているのだろうが、それは言うほど簡単ではない。ブレーキとアクセルを交互に踏みながら新しい日本の形を作っていくしかないのだろう。
ただ現状で国民は「岸田減税」に殺気立っている。
一番怖いのは減税をやめるとき
たとえば低所得世帯には7万円が給付されるが、低所得世帯イコール貧困世帯ではない。貯金が1億円ある年金受給世帯、すなわち富裕高齢者も7万円はもらえる。これに「金持ち優遇」との批判が出ている。現役世代の負担を減らすためには維新の「社会保険料の軽減」の方が優れているのではないか、という指摘もある。
また減税は来年の6月に行われる。8カ月後だ。所得減税と同じ額のキャッシュを今配ればいいじゃないかという声は自民党内にも多い。だから自民が政府に出した経済対策には賃上げ減税と給付金は盛り込まれたが、所得減税は入らなかった。立憲の「減税の来年実施は遅すぎる。現金給付を急ぐべき」という主張は一理ある。
「所得減税に2000万円の所得制限を検討」というニュースが流れた時は、SNSに所得2000万円越えとみられるインフルエンサーの皆さんが怒りの投稿をしていたのも面白かった。
おそらくみんな自分がいくらもらえるのか、あの人はいくらか、で殺気立っている。だからせっかく首相が減税すると言っているのに、喜ぶどころかみんなで文句ばかり言っている印象だ。これでは内閣支持率は上がらない。
そして期限を切った減税の一番怖いところはいずれやめる時が来る、ということだ。その時には「延長しろ」「やめるな」「恒久減税にしろ」という声が必ず出る。過去にはそれで橋本龍太郎政権が倒れた。岸田首相はそのリスクを背負う覚悟はあるのだろうか。
●岸田首相、改憲の意欲アピールも本気度は? 10/27
岸田文雄首相が「憲法改正」への意欲をアピールしている。26日発売の月刊誌「Hanada」のインタビューや、臨時国会の所信表明演説(23日)で、「総裁任期中の実現」などを強調したのだ。内閣支持率が低迷する背景には、安倍晋三、菅義偉両政権を支えた「岩盤保守層」の岸田政権離れがあるとされる。首相の本気度が問われそうだ。
「議論を増やしてもう1段階、いや2段階ギアをアップして進めたい」「(憲法改正原案の発議は)各党の協力を得なければならないが、一方で自民党が先頭に立っていかなければならない」
岸田首相は「Hanada」のインタビューで、こう語った。衆参両院憲法審査会の議論を歓迎したうえで、党憲法改正実現本部などの体制を整えているとした。
所信表明演説でも、岸田首相は「国家の基本法たる憲法の改正もまた、先送りのできない重要な課題だ」「条文案の具体化など、これまで以上に積極的な議論が行われることを心から期待する」と述べていた。
相次ぐ改憲アピールの背景には、LGBT法の拙速な法制化などで、岸田政権から離れたとされる「岩盤保守層」への働きかけがありそうだ。
一部野党も保守層を意識している。
日本維新の会の馬場伸幸代表は25日の衆院本会議の代表質問で、来年秋までの自民党総裁任期中に憲法改正を図るよう岸田首相に要求。「『果たせなかったら次期総裁選への再選出馬はしない』と退路を断つ覚悟はあるか」と迫った。
維新は改憲方針で、「緊急事態条項の新設」と「9条への自衛隊明記」を掲げる。岸田首相は「任期中に実現したい」と繰り返した。
国民民主党の玉木雄一郎代表も同日の代表質問で、「今の任期中に憲法改正を実現するのであれば、この臨時国会が勝負だ」と主張した。
岸田首相の本気度をどう見るか。
麗澤大学の八木秀次教授(憲法学)は「岸田首相は、次期総選挙や自民党総裁選を意識しているのだろうが、保守層は冷めた目で見ているのではないか。議論の中身も抽象的で、取るに足りない内容だ。本気ならば、9条改正など具体的な内容を掲げるべきだ。そして、今の臨時国会中に動き出すべきだ。憲法審査会を動かし、改憲勢力だけで前進させるか、護憲政党も取り込むか、判断しなければならない。国民的な機運醸成も必要だ。できもしないことを述べるだけでは、かえって政権運営に悪影響を及ぼしかねない」と語った。
●岸田文雄首相が「増税クソめがね」から「減税ウソメガネ」に進化!? 10/27
ネット上で「増税めがね」「増税クソめがね」などとやゆされている岸田文雄首相。27日の国会では「増税メガネという言葉は気になるか」と質問され、苦笑する場面も。増税分の還元策も国民の評価はかんばしくなく、新たなあだ名「減税ウソメガネ」がトレンド入りした。
「増税めがね」呼ばわりされているのをかなり気にしており、「俺レーシックやろうかなって言った」などともちまたでささやかれる岸田首相。この日の衆院予算委員会では、増税めがねを気にして減税に走ったとも言われることを念頭に立憲民主党の長妻昭氏が、「一回総理に聞きたかったが、増税メガネという言葉は気になるか」と質問。首相が「いろいろな呼び方があるものだなと思っている」と苦笑いを浮かべながら答弁する一幕があった。
検討している税収増の還元策も批判が殺到している。来年6月に1人当たり4万円の定額減税をし、低所得者世帯には7万円を給付する内容だが、働く世代には不平等なばらまき政策と映るためだ。
あらたに生まれた「減税ウソメガネ」はこの還元策案を受けたあだ名。ネット上では「還元になってない!」「働いてる方がばかばかしくなるよね」「パフォーマンスにしか見えない」「このあだ名にご不満あるから、コンタクトにすれば」「もはや○○めがねで大喜利状態」など首相を非難するコメントであふれた。
●旧統一教会被害者「はっきり態度示すべき」 教団の要望文書めぐり 10/27
被害者救済のため、旧統一教会の財産保全を可能とする法案をめぐって、教団側が一部の自民党議員に加えて岸田総理にも文書を送っていたことを受け、被害者たちは「法案を成立させ、教団に対してはっきり態度を示すべきだ」と訴えました。
この問題をめぐっては、旧統一教会側が教団の財産保全を可能とする法案を提出しないよう求める文書を一部の自民党議員に送っていたことが、JNNの取材でわかっています。
岸田総理も27日に行われた衆院予算委員会で、自身の事務所にも文書が届いていたことを明らかにしました。岸田総理は文書について「一方的に送られてきた」とした上で、教団から「不当な影響を受けるということは金輪際ないと確信をしている」と述べました。
予算委員会でやりとりを傍聴した被害者は。
中野容子さん(仮名)「一方的に旧統一教会が送りつけてきたものであろうとも、解散命令請求まで出ているこの事件の経過から見て、そういったものがあれば、やはりはっきりした態度を取られるのが当然ではないか」
旧統一教会からの被害を訴える女性は、教団の文書について「実にひどく、欺瞞的な文書だ」と指摘。政府与党に対し、教団の財産保全を可能とする法案を成立させるよう訴えました。
●岸田事務所にも旧統一教会から「財産保全法案の提出控えて」文書 10/27
旧統一教会の被害者救済のため、教団の財産保全を可能とする法案をめぐって、教団側が一部の自民党議員に文書を送っていたことについて、岸田総理は、自身の事務所にも同じ文書が一方的に送りつけられたとしたうえで、「文書が送られたことをもって、関係があるのではないかということにはならない」と訴えました。
立憲 西村智奈美 衆院議員「与党のPT、その中でも自民党のメンバーの方々にも、もしかしたらこのペーパーが届いているんではありませんか」
岸田総理「ご指摘のような文書、FAXで私の文書、事務所にも一方的に送られております。これはですね、どの国会議員にも、一方的にFAXが流されているということであります」
旧統一教会の被害者救済をめぐり、与党はプロジェクトチームを立ち上げ対応を検討していますが、これに対し旧統一教会側が教団の財産保全を可能とする法案を提出しないよう求める文書を一部の自民党議員に送っていたことが、JNNの取材で明らかになっています。
岸田総理は衆議院予算委員会で、自身の事務所にも文書が一方的に送られてきたと明らかにしたうえで、「我が党として、旧統一教会との関係を絶つ、これはもう方針を確認しており、不当な影響を受けるということは金輪際ないと確信をしている」「この文書が送られたことをもって、関係があるのではないかということにはならない」などと訴えました。
●ライドシェア、マイナ信頼回復など議論かみ合うか 各党の論戦スタート 10/27
衆院予算委員会は27日、スタート。岸田文雄首相が推進する「デジタル行財政改革」を巡っても、与野党の本格論戦に突入する。
岸田首相は23日の所信表明演説でデジタル行財政改革を推進する考えを示した。中心となるのは、一般ドライバーが自家用車で客を運ぶ「ライドシェア」導入を巡る議論や、トラブルが相次いだマイナンバー制度に対する国民の信頼回復だ。ただ、各施策に対する姿勢は党により濃淡があり、かみ合った議論になるかは見通せない。
ライドシェアについて、河野太郎デジタル行財政改革担当相は27日の衆院予算委員会で「年内に取りまとめをしたい」と、積極的に検討する姿勢を見せる。日本維新の会の馬場伸幸代表も25日の代表質問で首相に対し「ライドシェアを導入し、規制改革を進めることを宣言いただけないか」と述べた。
一方、立憲民主党の田名部匡代参院幹事長は25日の代表質問で「安全性や運転手の労働条件などの課題がある」と指摘した。
マイナンバー制度への信頼回復についても各党で立場が異なる。マイナンバーカードに機能を統合することで現行の健康保険証は廃止を予定するが、維新の馬場氏は「先送りになれば日本のデジタル化がさらに停滞しかねない」として予定通りの機能統合を求めた。
一方、立民の泉健太代表は24日の代表質問で、不安を感じている国民が多いとして廃止の延期を要求した。
●“減税と給付”めぐり野党側「不公平生じる」岸田首相を追及 衆院予算委員会 10/27
衆議院予算委員会では所得税などの減税と給付をめぐり、野党側が岸田首相に対し、「不公平が生じる」などと追及しました。中継です。
立憲民主党の長妻政調会長はSNS上などで揶揄されている「増税メガネ」という言葉について岸田首相本人に受け止めを聞きました。
立憲民主党・長妻政調会長「ちょっと1回総理に聞きたかったんですけども。総理あの『増税メガネ』っていう言葉は気になりますか」
岸田首相「いろいろな呼び方はあることだなと思っております」
立憲民主党・長妻政調会長「私も眼鏡なんでね。ただこれ『増税メガネ』ということを気にするあまり、減税に走ったというふうに言われておりますから」
岸田首相「所得税、住民税の減税によって、2年間の税収の所得税、住民税部分を還元することで、この物価高に対して支援を行う。こういったことを基本にしています」
長妻政調会長はさらに「減税」と「給付」の両方を打ち出し、対象も個人・世帯としていることについて、「混在して手間もかかる。不公平もあると。なぜ給付だけにしないのか」と追及しました。これに対して岸田首相は「不公平が生じないような工夫を指示している」と強調しました。
また、所得税などの減税と防衛増税を同時に打ち出す整合性について問われた岸田首相は、防衛増税の財源として「所得税は家計の負担にならない仕組みとしている」として「定額減税との整合性の問題は生じない」と強調しました。その上で防衛増税の開始時期については「定額減税と同時に実施することはない」と来年度には行わないと明言しました。
●衆院予算委で減税論戦 岸田首相「わかりやすくお返しする」 10/27
なぜ減税なのか、国会では衆議院の予算委員会が開かれ、減税など政府の経済対策について論戦が行われた。
27日から始まった衆議院予算委員会。
減税をめぐって議論が白熱した。
自民党・萩生田政調会長「なぜ減税に踏み切るのか、なぜ給付ではだめなのか。どうして所得税なのか?」
岸田首相「物価高の中で頑張っていただくために、わかりやすく所得税・住民税という形でお返しする」
給付ではなく減税とする理由を、「わかりやすさ」だと強調した岸田首相。
立憲民主党・長妻政調会長「一回総理に聞きたかったんですが、“増税メガネ”という言葉は気になりますか?」
岸田首相「はい、いろいろな呼び方はあるものだなと思っております」
自身が一部で「増税メガネ」とやゆされていることを、立憲民主党の長妻政調会長に問われ思わず苦笑い。
立憲民主党・長妻政調会長「“増税メガネ”ということを気にするあまり、減税に走ったといわれていますから、まさかそんなことはないと思いますけど」
岸田首相「不公平、こういったことが生じないような工夫をする。こういった取り組みを指示している」
こうした中、自民党の税制調査会は非公式の幹部会合を開き、岸田首相が指示した所得税減税などの具体化に向けて意見交換した。
自民党・宮沢税調会長「(減税について、所得制限を設けるべきとの意見も党内で出ているが?)これは、これからの税調(税制調査会)のなかで検討しましょうということであります」
自民・公明両党は2024年6月の減税実施に向けて議論を進め、12月前半にも具体案を取りまとめたい考え。
●「税収増の還元」 所得税減税の検討を指示。後には引けない岸田総理 10/27
毎月値上がりする食料品など、物価の高騰に国民生活は苦しくなるばかり。「お金に余裕がない」というのが多くの国民の思うところではないだろうか。岸田総理は臨時国会での所信表明演説の中で、急激な物価高に対して賃金上昇が十分に追いつかない現状を踏まえ、税収の増収分の一部を「国民への還元」という形で物価高による国民の負担を緩和するとした。国会が始まる前から還元の手法について、「所得税減税」ということが出たり引っ込んだりと迷走し、反論も続出。そのことが影響したのか、衆参ダブル補選で自民党は1勝1敗。また地方自治体の選挙で自民党には逆風が吹いた。「経済・経済・経済」と連呼する岸田政権の経済政策と、地方の逆風をどう捉えているのか、自民党の牧原秀樹衆院議員に聞いた。
衆参ダブル補選で自民一勝一敗「相当な負けに近い」
――2つの補欠選挙がありましたね。衆議院の長崎4区と参議院の徳島・高知選挙区で「1勝1敗」ということですが、結構厳しい結果?
牧原秀樹 自民党衆院議員: 1勝1敗って言われていますけど、私はもう「相当な負けに近い」というふうに思っていまして、それは三つあります。一つは両方とも自民党にとっては盤石の「今まで負けたことがない地盤」です。長崎4区は、2009年に自民党がボロ負けしたときでも小選挙区で当時の北村先生が勝っています。それから徳島・高知は合区になってからの参議院選挙で一度も自民党は負けたことがない選挙区です。そうした盤石のところであっても、こういう結果だったってことが一つ。それから投票率がすごく低かったわけです。4割とか。徳島と高知では、(投票率)だいぶ違ったのですけれど、合区の問題があって、ただやっぱり非常に低い、通常の選挙と比べるとすごく低い4割とかですね。そういう投票率でそういうときは通常は組織票を持っているところが強い。通常はそういう、無党派層の方とか、割と関心の薄い方は行かれない分、非常に盤石なはずなのですけど、それでもこの結果になっているということですね。それから三つ目は各種の世論調査によりますと、例えば長崎4区は、勝っているけれども、それは元々自民党がめちゃくちゃ強い地盤なので、自民党票を7割ぐらい固めて勝っている、公明党票の8割ぐらいはまとめて勝ったのですけど、無党派に限って言うと、(自民)25対(立民)72とか、もう1対3ぐらいで負けています。こちら(参院徳島・高知選挙区)にいたっては1対9で負けている。
牧原秀樹 自民党衆院議員: 知名度もあります。ただやっぱり無党派の方は、両方とも同じようにもう大差で自民党が負けているということですね。さっき申し上げたように投票率がもし高かったら、もうこちら(長崎4区)も負けていました。
地方選も自民党は負け続け「いま解散総選挙は相当難しい」
――宮城県議会議員選挙では自民が大幅に議席を減らしましたね?
牧原秀樹 自民党衆院議員: これもやっぱりどちらかというと都市部の方で落としているわけですね。つまり無党派層の人が、やっぱり自民党に対して非常に厳しい目を注いでいて、変な話、自民党だけが減らしたわけですね。立民は1個増えています。維新は初めて。無所属の方も3人増えています。無所属の方で今後自民党に入る人がいるだろうと言われていますけれど、非常に厳しかったってことです。
――所沢市長選挙では、埼玉県の児童虐待防止条例の改正案(自民党県議団が提出。”子供の留守番は虐待”などとする内容に反対の声があがり撤回)ですが、あれがすごく効いているのではないかと思うのですがどうですか?
牧原秀樹 自民党衆院議員: 正直、私は反対を表明したのですけど、週末(地元・埼玉を)回っていますとすごく言われます。ですから全く影響しなかったなんていうことはあり得ないので、やはりそうした県議会の条例のことは、かなりのダメージになって影響しているというふうに考えるのが自然だと思います。
――こういうの見ていると、これから(衆院)選挙は大変になりますね。解散をいつするか、すごく話題になるけれども、岸田さんって支持率も下がっていますし、今年中に解散できるのかと思いますが、その辺はどういうふうにお考えになりますか。
牧原秀樹 自民党衆院議員: 国会が始まりましたので、そういうような内輪の話もするのですけれども、やはり今の選挙のこういう流れとか、それからこの前に都議会議員補欠選挙があって、立川(選挙区)で二つの議席に自民党、都民ファースト、立民って出て自民党が落ちたのです。これはちょっと考えられないことでして、公明党の方の推薦がなかったとか言っていますけど、しかし、その数2議席で、その3人が出て自民党だけが落ちるとていうのは、まさに無党派層の方が相当に「違うところを向いちゃっている」ことだとすると、普通に考えると今、(解散総)選挙があるのは相当難しいというのが私達の受け止め方だとは思います。
所得税減税 総理が「我々の出口を塞いだ」
――(「税収増の国民への還元」で)みんなが指摘するのは所得税減税っていうのは「即効性がない」ということですね。これから税制改正しなきゃいけないから、来年の夏以降ってことになりますから、やっぱり実感できないですね?
牧原秀樹 自民党衆院議員: そこはおそらく悩まれたと思うんですけれど、いわゆる給付金という、みんなに給付金をあげるやり方があって実際にコロナ禍に10万円の給付金をやりましたけれど、しかしあの10万円の給付金もやっぱり手続きに時間がかかって、膨大なコストがかかるんですね。それに比べると、所得税減税は事務コストはほぼかからないので、もちろん所得税を払ってない方がいらっしゃるので7万円の給付をするということで、ここには事務経費かかりますけど。ただいわゆる住民税非課税の方は、もう既に自治体でそういう方に給付金を配るということは、実務的にずっとやってきているので、外部の事務を雇って2000億とか3000億、事務経費をかけるっていう必要はないんですね。そうした事務の手間とか、そこにかかってしまうコストについて、コロナ禍に度々「巨額の事務経費だ」って批判をされたことを考えると、所得税減税というのは事務経費ほとんどかからないし、確実に所得のある人たちみんなに、いわば賃金に変えてお届けできるし…ということを多分選択されたんだと思うんです。
――ただ所得税減税に行き着くまでに何か二転三転っていうか、自民党が決めるのか、それとも官邸の岸田さんのイメージアップで「選挙に勝つためにじゃないか」とか、いろいろ言われましたよね。そうすると聞いてる方も「何なんだこれは?」と思うわけです。そこら辺はどう見ていらっしゃいますか?
牧原秀樹 自民党衆院議員: 自民党は、税のことは党の税制調査会で決めるっていう昔ながらのルールがあるんですけれども、やはり去年の防衛の抜本的強化で、3つの税目について増税をするということを方向性として決めました。その中に復興の所得税について、その一部を充てるというふうにして。増税ではないんですけども、税を払う期間が長くなるって意味では増税になるわけですね。そこをやってるのに今回、所得税を返しちゃうっていうのは、なんか「将来増税されるのに先に減税されちゃうと…」そういうふうに思われてしまう。それから昔、橋本内閣で決めて小渕内閣で実施した…バブルの崩壊から復帰するために所得税減税をしたんですけど、そのときに「あんまり当時は効果ないよね」っていうふうに言われて、小泉内閣でやめちゃったんですけど、意外に実は所得税減税ってやってないんですね。
――世耕(自民党参院幹事長)さんはじめ「やっぱり所得税減税だ」っていう声が大きかったじゃないですか。それが、自民党が政策提言を出したときには(所得税減税が)入ってなかった。「これ何なんだ?」と思ったんですが。
牧原秀樹 自民党衆院議員: 自民党の中で政調会長とか税調会長とかが多分議論されて、あるいは各部会で議論をしたときに、そういうのは検討した上で、(自民党としては)今回の補正予算ないし、景気対策の中には所得税減税は入らない方がいいよねという結論を出して、総理に出したわけです。ところがもう1回差し戻しになって、正式には26日連絡会議をやって、そこで総理指示があるはずなので、そこで下りてくるってことだと思います。だから我々の出口を塞いじゃったわけです。
所得税減税は、防衛費増額・こども政策財源確保に「矛盾しないのか」
――防衛費増額の話は萩生田(政調会長)さんは1年以上先だっておっしゃってましたよね
牧原秀樹 自民党衆院議員: ですから、ここで所得税減税をやると、復興の話は去年決めた方向性でいいのか?矛盾しないか?っていう議論は当然出ますので、防衛の方の財源の話にも当然はねていくということになるので、去年の既定路線はもう通用しないんじゃないかと個人的には思っています。
――また少子化対策など、こども政策の予算を社会保障費から出そうという話もありますよね?
牧原秀樹 自民党衆院議員: これもすごい難しいので、私は社会保障の関係を専門の一つとしてやってるんですけど、率直に言って、例えば介護の現場、医療の現場で働いている人のお給料がこれでいいのかっていう意識は、総理もお持ちで、そのときにますます高齢化して、若い人が減っていく中、保険料もそもそも高いわけですよね。そこにそれ(こども政策のための負担)を加えるというのが本当に正しいのかっていう議論は、かなり国民の皆さんに受け入れていただくのは、大変なことだなと思ってます。
――一方、野党は所得税の減税じゃなくて消費税の方を減税しろって意見がありますけど、これはどうなんですかね?
牧原秀樹 自民党衆院議員: それ(消費税減税)はもう総理もはっきりと難しいって言ってますね。やはり、年金医療等の社会保障が、医療費が45兆円だったっていう話が出てましたけれど、それを安定させるために消費税をやってきているので、私はそこをやめた方がいいと、手をつけない方がいいと思ってます。
将来の日本の経済構造に「刺さる」先を見据えた経済政策を
――本当に私達の暮らしが1日でも楽になるようにっていうのをやってほしいんですけれども。
牧原秀樹 自民党衆院議員: 私は岸田さんがおっしゃっていることで、前向きな話、例えば半導体のことです。それから私はe-fuel(合成燃料)っていうことを言っているのですけれど、そういう将来の日本の大きな経済構造にちゃんと刺さるような、少し先を見据えた経済政策っていうのはガンガンやっていくべきだと思っていますので、総理が「経済・経済・経済」とおっしゃった中で、そこをとにかくブルドーザーのように一生懸命やるのを期待したい。
――やはり供給力の強化、そっちの方をメインにやっていただくと、こっちもまたその賃金だって上がるかもしれないし、企業が元気になればね?
牧原秀樹 自民党衆院議員: やっぱりそういう日本の将来の人口構造とか人口減少とか、あるいは世界のいろんな国がどんどん資源の争奪戦になるとか、経済安全保障とかそういうことを考えたときに、やっぱりそうした半導体の国内生産とか、e-fuel(合成燃料)だとかエネルギーの新しい政策とかこういうのは今進めないといけないので、そこは遠慮なくやってほしいなと思います。
 
 
 
 

 

●維新・馬場氏「岸田首相に改憲に立ち向かう覚悟はあるか」 10/28
選挙戦略や党運営、重要政策を巡る方針と、さまざまな懸案に関する野党幹部らの発言を採録した「今週の野党」をお届けします。
給付、給付、給付 立憲民主党・泉健太代表
首相は「経済、経済、経済」と言ったが、結局、国民に何を届けるのか分からない。国民が望むのは、今年中のインフレ手当の「給付、給付、給付」ではないか。わが党は緊急経済対策として、中間層の現役世代を含めた全体の6割の世帯に、3万円のインフレ手当の給付を求める。(24日の衆院本会議、岸田文雄首相の所信表明演説に対する代表質問で)
約束を果たすには 日本維新の会・馬場伸幸代表
首相は来年9月までの自民党総裁任期中の憲法改正実現を目指すと公言している。タイムリミットはあと1年。国民投票の実施には国会発議後60日から180日必要であることを踏まえれば、総理が約束を果たすには、来年の通常国会終盤までに発議しなければならない。「総裁任期中に憲法改正を果たせなかったら次期総裁選への再選出馬はしない」と退路を断ち、改憲に立ち向かう覚悟はあるか。(25日の衆院本会議、岸田文雄首相の所信表明演説に対する代表質問で)
はっきり言ったらええのに 日本維新の会・藤田文武幹事長
どっちみち(共産党との連携を)やるのだから、はっきり言ったらええのに、というのが僕のスタンスだ。それはそれで彼らは合理的だと思っているのだろうから、正々堂々とやればいい。何も恥じることはないのではないか。(26日の記者会見、次期衆院選に向けた共産党との連携の可否に関する立憲民主党の態度について)
この臨時国会が勝負 国民民主党・玉木雄一郎代表
国民民主党は、日本維新の会、(衆院会派の)有志の会とともに、国会機能の維持を目的とした緊急事態条項の憲法改正条文案をとりまとめた。首相が今の(自民党総裁)任期中に憲法改正を実現するのであれば、この臨時国会が勝負だ。臨時国会で憲法改正条文案をとりまとめ、来年の通常国会で発議しないと間に合わない。(25日の衆院本会議、岸田文雄首相の所信表明演説に対する代表質問で)
消費税率を5%に 共産党・志位和夫委員長
所得税減税は所得の少ない人への恩恵がない上、長期の実質賃金減少のもとでの時限的措置では、焼け石に水だ。「減税」と言いながら、なぜ消費税減税だけはタブーにするのか。物価高騰は食料品を中心にあらゆる品目に及んでいる。富裕層と大企業に応分の負担を求め、消費税は廃止を目指し緊急に5%に減税すべきだ。(25日の衆院本会議、岸田文雄首相の所信表明演説に対する代表質問で)
●首相の減税表明 甚だしい国会軽視姿勢 10/28
食料品や光熱費をはじめとする物価高で国民生活は厳しさを増す一方だ。その対策として岸田文雄首相が「税収増を還元する」と減税・給付策を表明した。
岸田首相が示した還元策によれば、所得税と住民税の減税は子どもなどの扶養家族を含め、1人当たり4万円で来年6月から実施する。所得税と住民税が課税されない低所得世帯には1世帯7万円を給付し、減税に先行して年内に始めるという。
減税は1〜2年など期限付きとなることも取り沙汰される。あくまで議論のたたき台というべき減税・給付策である。
減税や給付があれば助かるという家庭が大半だろう。予算の出どころは過去2年間の所得税と住民税の税収増分3兆5千億円。これを大幅に上回る5兆円規模の経済対策になるという。
新型コロナ対策もあって近年は当初、補正とも超大型予算が続く。その結果として国債発行残高は優に1千兆円を超えた。
そんな厳しい状況で税収が予算より多かった分を国民に還元という姿勢で大丈夫なのか。財政健全化へ向け借金を返すのが先という声もある。立ち止まって考える必要があろう。
一方で岸田政権は防衛費大幅増、将来的な子ども予算倍増を決めている。防衛費増の財源の一部は法人税、所得税などの増税で賄うとしながら、実施は先延ばしの見込み。子ども予算財源の結論は年末に先送りする。
そうした中での減税や給付である。与野党の中に真に必要な世帯に絞って給付してはどうかという考え方もある。コロナ禍が一段落してなお大盤振る舞いを続けるのなら、その必要性や将来の財政見通しなどの説明を尽くすべきだ。
ところが岸田政権は国会で野党との議論を避けているようにしか見えない。岸田首相は臨時国会召集の20日に与党幹部と協議した後「所得税減税も含め検討を指示」と明言。23日の所信表明演説では減税に触れず、衆参代表質問でも経済対策の内容を多くは語らなかった。
具体策を示したのは代表質問が終わった後の政府与党政策懇談会だった。この会で減税・給付策を明記した経済対策を11月2日に閣議決定すると明らかにしたのも性急過ぎる。
今国会の焦点ともいえる物価高に対応する経済対策である。その肝心な内容を国会に伝えて議論することなく、与党の集まりで示すのでは国会軽視の姿勢が甚だしい。
国民に歓迎されそうな経済対策を政府・与党が決定するとアピールしたかったのだろうか。もし巨額を投じる経済対策を政権浮揚の足掛かりにしようとする姿勢なら見過ごせない。
本来なら、国民の負担増を伴うであろう防衛予算や子ども予算と併せて議論すべき問題だ。岸田首相には国が直面する重要課題と正面から向き合い、国会で与野党とじっくり議論を深めることが求められる。
●自民の首相批判 矛先は自らにも向けねば 10/28
自民党参院幹事長の世耕弘成氏の発言に議場がざわついた。
代表質問で、内閣支持率の低迷は「国民が期待するリーダーの姿を示せていない」からだと指摘。減税を念頭に「世の中に対して何をやろうとしているのか全く伝わらなかった」と岸田文雄首相を公然と批判した。
参院徳島・高知の補欠選挙で自民は惨敗した。投票日を目前にした首相の所得税減税の指示が選挙目当てと見透かされた―との不満が党内でくすぶる。
衆参の代表質問を通じて、首相答弁には、どこか“上の空”の感が漂っていた。
改憲や安全保障、財政、核なき世界…。経済政策でも従来の見解を繰り返す。「取り組む」「進める」との意欲だけで、具体的に答えない場面が際立った。
一方、政府与党政策懇談会で首相は、所得税と住民税で4万円を減税し、来年6月に実施する、と国会では説明しなかった方針を表明している。
支持回復をかける経済対策に気を奪われ、国会論議をやり過ごすつもりなら、言語道断だ。
そんな首相に、自民からは「真意が分からない」「財政規律は大事だ」「安保に関心がなくなっている」との声が相次ぐ。
ただ、事の是非はともかく、防衛費の大幅増額を要請しておきながら、首相が年1兆円超の増税を掲げると、強く反対したのは党の側だった。いまだ増税時期を定められずにいる。
「異次元の少子化対策」を巡っては、与党があれもこれもと施策を盛るよう迫り、何が異次元か不明瞭になっている。予算規模は膨らみ、年3兆5千億円の追加予算は財源が確保できていない。
党は夫婦別姓や性的少数者の人権保障に二の足を踏む。旧統一教会との関係を検証せず、「政治とカネ」の問題が頻発しても防止策を練ろうともしない。
確かに「世の中に対して何をやろうとしているのか」が分からない。衆参補欠選挙や地方選挙の結果に表れたように、国民の不信は次代の構想を描けず、党利党略で政治を揺さぶってきた自民党そのものにも向けられている。
党税制調査会は格差是正や財政再建につながる税制案をまとめ、整合性を欠く首相の減税方針と対比させ、国民に問うくらいの責任を果たしてほしい。
信頼回復を図る努力も行動もなく首相だけを責める。自家撞着(どうちゃく)に陥るかのような「身内」への憤まんは、聞き苦しい。
●所得減税、自民税調「1年限り」=防衛増税と整合性議論―公明も検討開始 10/28
自民、公明両党の税制調査会は27日、非公式の幹部会合をそれぞれ開き、2024年度税制改正に向けて、所得減税の具体策の検討を始めた。自民党の宮沢洋一税調会長は1人当たり計4万円の所得税と住民税の定額減税について、「1年限り」との認識を示した。今後、25年以降に見込まれる防衛増税との整合性についても議論する見通しだ。
政府は来年6月に所得税を3万円、住民税を1万円、それぞれ定額で減税する方針を決めた。会合後に記者団の取材に応じた宮沢税調会長は、所得減税の延長の可能性について「当然1年限りという認識だ」と強調した。また、経済状況次第で減税を継続できるようにする「景気条項」を盛り込む考えは「全くない」とした。
宮沢氏は幹部会合で、減税に所得制限を設けるかどうかを検討すると明らかにした。岸田文雄首相が「(定額減税は)子育て世帯支援の意味合いを持つ」と慎重な姿勢を示す一方、与党内では減税対象から富裕層を除外すべきだとの考えも根強い。減税の対象を「年収2000万円以下」に絞る案も浮上しており、詳細を詰める。
年末にかけて行う税制改正論議では、防衛費増額のための増税実施時期を決められるかも焦点。復興特別所得税の転用という形で所得税の増税が含まれるため、公明の幹部会合出席者からは「所得税を減税するのに、増税というのは分かりにくい」との意見が出たという。 
首相は27日の衆院予算委員会で防衛増税について「24年度から実施する環境にはない。定額減税と同時に実施することにはならない」と明言した。宮沢会長は増税時期に関して「しっかり議論はしなければいけない」と述べたが、今後の議論次第ではさらに先送りされる可能性もありそうだ。
24年度税制改正論議では、半導体や蓄電池などの国内生産拡大を後押しする「戦略物資生産基盤税制」、知的財産から生じる収入を税優遇する「イノベーションボックス税制」の創設を検討する。賃上げに積極的な企業の税負担を減らす「賃上げ促進税制」も拡充する方向で調整を進める。
●あの日本経済新聞が岸田政権に「苦言」を呈した“大きな意味” 10/28
国の未来を見据えているとは思えぬ、その場しのぎの政策を連発する岸田政権。先日も突如「所得税減税」の方針を打ち出しましたが、これに日経新聞が他紙に先駆けて社説で苦言を呈し、その存在感を見せています。今回のメルマガ『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』〜時代の本質を知る力を身につけよう〜』では、『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』等の著作で知られる辻野さんが、「追及が中途半端な感はあるものの、大手メディアがはっきりと苦言を呈したことの意味は大きい」と評価。その上で、政局のために基幹税に手を出す首相を厳しく批判しています。
日経新聞が指弾。増税●●メガネに大手メディアが呈した苦言
ここのところ、権力に飼い慣らされてきた感の強い大手メディアですが、10月21日の日経新聞が『岸田文雄首相の所得減税指示は疑問だらけだ』という社説を掲げていて、思わず目を引きました。
「増税メガネ」と呼ばれることを異常なくらい気にしているという岸田首相は、いきなり所得税を対象とした減税を言い出し、23日から始まった今国会でも争点になると思われますが、岸田首相の脈絡のない迷走ぶりを批判する内容となっています。
「人気取りにもほどがある。」という書き出しで始まるその社説は、いつになく厳しいトーンで岸田首相を批判しています。それを読んで、私は思わず以下のようにX(旧ツイッター)へポスト(ツイート)しました。
突っ込みがまだまだ中途半端な感はあるが、珍しく #日経新聞 が社説で首相に苦言。世論に迎合しているだけかもしれないが、指摘すべきは遠慮会釈なくどんどん指摘して欲しい。
突っ込みがまだまだ中途半端な感はあるが、珍しく #日経新聞 が社説で首相に苦言。世論に迎合しているだけかもしれないが、指摘すべきは遠慮会釈なくどんどん指摘して欲しい。
[社説]岸田文雄首相の所得減税指示は疑問だらけだ – 日本経済新聞
社説の要旨は、「岸田首相が、10月末に策定する経済対策の柱として、時限的な所得税減税の検討を与党幹部に指示した。経済成長で増えた税収を国民に還元すると言うが、必要性にも一貫性にも欠けるバラマキは止めるべきだ」というものです。
さらに、「増税論者とみなされるのを気にするあまり、22日の衆院長崎4区と参院徳島・高知選挙区の補欠選挙に向けた単なる人気取りではないのか。昨年、防衛費の増強を決めて増税を見込んでいるのに、ここで減税を進めようとするのは矛盾している。足元の経済対策と基幹税見直しの議論は切り分けるべきであり、場当たり的な減税に走るのは無責任だ」と指弾しています。
まことにごもっともな指摘です。岸田首相は、減税を物価上昇に賃上げが追いつくまでのつなぎと位置付けるそうですが、手続きとしては、与党の税制調査会で年末までに詳細を決め、関連の法案を成立させねばなりません。成立しても、恩恵が生じるのは来春以降になる見込みで、消費ではなくて貯蓄に回る可能性もあります。また、「賃上げが追いつくまでのつなぎ」とは、まさに場当たり的ですし、賃上げが簡単に実現できるとでも思っているのでしょうか。
物価高対策ということであれば、消費税を下げる方が簡単で効果的と思われますが、それには財務省が抵抗するので、時限的な所得税減税という奇策を持ち出したのでしょう。しかし、その後の報道では、一人当たり年間4万円程度で検討するということで、これでは物価高対策にも景気浮揚にも到底つながりそうにはありません。
この記事の著者のメルマガ
税制についての正確な見識すらもない首相
この社説では、防衛費の大幅増強そのものの是非や、少子化対策のための安定財源確保の問題等には切り込んでいないので、追及が中途半端な感はあるものの、政権発足以来、支離滅裂で何をしたいのかが一向に見えない岸田政権に大手メディアがはっきりと苦言を呈したことの意味は大きいです。国民は、わずかばかりの一時的な減税などに惑わされてはいけません。防衛費増強その他の財源確保のため、結局は増税に向かうことは明らかです。本来であれば、社説もそこまで踏み込み、内訳さえ不明確なまま強行された防衛費の大幅増強の見直しそのものについて問題提起すべきです。
ところで、インボイス制度を前国会で議論していた時に、岸田首相は、消費税の法的定義について正しく理解していないことを幾度となくさらけ出していました。自身の政権維持にしか興味がなく、国家の運営にとって最も重要な税制についての正確な見識すらもない首相が、単なる一時的な人気取りや政局の為に脈絡もなく基幹税に手を出すのは明らかに一線を超えています。
今回取り上げた日経新聞の社説は、単に世論に迎合しただけなのかもしれませんが、「権力の監視」という本来メディアが果たすべき役割がまともに果たされなくなって久しいので、少し新鮮に映りました。
「経済、経済、経済」と連呼する岸田首相の所信表明演説で臨時国会が始まりました。「経済成長で増えた税収を国民に還元する」そうですが、短期的に好調に見えても、コロナ禍の落ち込みや物価高を加味すれば、日本経済は成長していませんし個人消費も伸びていません。参院本会議の代表質問では、身内である世耕弘成参議院自民党幹事長からも異例の突き上げを食らう始末です。今後の国会での議論とメディアの姿勢には引き続き注目していきたいと思います。
●鬼の岸田政権、所得税の減税指示も…あまりののんびりさに絶望 10/28
衆参補選は自民党の1勝1敗で幕を閉じた。元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏は、「地方では、自民党の世襲候補が勝ってしまう構造的な問題がある」と指摘するーー。
自民党の世襲候補・金子容三氏の選挙は、父親の選挙のようだった
またしても世襲の勝利。岸田文雄首相の支持率がどん底にまで落ちきった衆参補選であったが、蓋を開けてみれば、自民党の1勝1敗で幕を閉じた。自民党がここまでひどい状況で勝ったのは、長崎四区の金子容三氏、父・原二郎氏が県知事、農水大臣を歴任した世襲候補である。
12日間の選挙期間中、戦術として二人が並ぶ姿を見せることをせず、裏では、徹底した父親による選挙応援が行われていた。このあたり、朝日新聞(10月23日)の取材力がすさまじい。
<実態は原二郎氏の選挙そのものだった。その戦いぶりに、陣営内では「原二郎氏の14回目の選挙戦じゃないか」とささやかれた>
<小学校を卒業して以来、佐世保を離れていた容三氏に、同年代の人脈はない。原二郎氏の後援会長だった元佐世保市助役が会長に就いた>
<数日後に集会を開く予定だったが、来場を見込める支援者が伸び悩んでいた。業を煮やした原二郎氏が、直々に市議に電話をかけた>
<懇意にしている会社役員らにも電話をかけ、息子への支持を訴えた。選挙事務所にも、原二郎氏はたびたび支援者を呼び寄せては自ら出迎えた>
「世襲ぼんぼん」と言われることに逆ギレ。その通りなのに…
要するに、地盤・看板・カバンのすべてを父親が子どもに与えたわけだ。選挙終盤になって、候補者である容三氏は「いろんな苦労をしてきた。そんな私がまだ『世襲ぼんぼん』と言われなきゃいけないんでしょうか。顔も見たことのない方に言われる筋合いはない」と訴えたようだが、失笑を禁じ得ない。当選したのは、「世襲ぼんぼん」だったからでしかないのに、逆ギレしたところで、その現実は変わらない…。
世襲のすべてが悪いとは思わないが、成果を出さなかった先代の跡を継いだとして、その人物に何ができるのか大いに疑問である。長崎は、現在、九州で一人負けの状況だ。上場企業が全国で唯一1社もなく、人口もさらに悲惨な状況になっている。『「長崎市中央部・臨海地域」 都市再生委員会(第2回)資料 現状、特性と課題』において、「九州県都の人口増減の予測(2005年→2030年)」では、福岡が+11.5%、那覇+8.5%と増加しているのに、長崎は-25.8%とダントツの最下位だ。同じ調査で、20〜29歳の人口増減を見ると、なんと長崎は-49.7%と半減することがわかっている。
それでも自民党が勝てるのが世襲というメカニズムであろう。活力を無くした地方は、東京、大阪、福岡からのお金を当てにするしかなくなる。お金を分配するのは、なんとなく信頼ができる人がいい。よって世襲政治家がその役割を担うことになる。若者は、補助金を当てにする事業しかない地方に絶望し、都会へと出ていく。ますます地方が疲弊していく。長崎の立派な県庁が、見事に長崎の現在を映し出している。
県庁を立派にしたら、普通、税金の無駄遣いだと批判がでるものである。しかし、長崎では問題がなかった。この県で成功するには、県庁に入って公務員になるしかないと、建物が雄弁に語っているのだ。今後、金子家と共に、長崎は没落の一途を辿るのだろう。
選挙を控えて減税アピールが始まったが、1年後には大増税が待っている
選挙終盤になって、岸田政権の「減税リーク」が激しくなった。毎日のように減税する、減税すると、メディアに流し、それをメディアも国民に垂れ流した。そうか、岸田首相は、増税メガネと呼ばれたのが嫌で、改心したのか、そう期待した国民も多かっただろう。いつものことだが、選挙中になると大盤振る舞いばかりをメディアに垂れ流す。その先に増税が待ち受けていることなど、一切触れられることはない。
そして、選挙が明けて、その「減税」の全貌が明らかになってきたが、やはり選挙前の「ふかし」とは、まったく違う姿になってしまった。
政府・与党内で、岸田首相が検討を指示した税収増の還元策を巡り、所得税などを定額で年4万円減税し、低所得者向けに年7万円程度を給付する案がでている。
税収増について還元するというのなら、すべて減税に回さなくてはならないはずだ。払った分を還元するから、還元策なのである。しかし、還元策とは別に給付金を7万円支払うのだという。しかも、所得税は防衛費増税の財源として岸田首相が(開始時期以外)決めたものである。つまり、このままいくと、1年程度の限定的な期限付きの減税の後で、ずっと続く大増税が始まるということになる。わけのわからないことをしていないで、歳出削減に努力すべきだというのはいうまでもない。出生率アップに効果のないことが判明している「異次元の少子化対策」、症状が改善することのない「認知症薬」に莫大な税金をつぎ込んでいる場合ではないのである。
嫌われてしまっている岸田首相に減税と歳出削減はできない
減税したら、歳出削減はセットだ。放っておけば、単純に財政が悪化するだけなのだから。みんなに嫌われたくない岸田首相に、歳出削減という一番の嫌われ仕事ができるとは思えない。
さらに、戸惑うしかないのは、岸田首相が与党に検討を指示した所得税の減税について「来年夏のボーナスぐらいに間に合うように『手取りが増えたな』『減税になったな』とわかるような対策をとっていく」と自民党の世耕弘成参院幹事長が語ったことだ。
日本は、減税というと、呪いの呪文にかけられたかのように、行政や政治家はやらない言い訳を次々と繰り出し、ノロノロと歩みを遅くする。のんびりやってるのも、いい加減にしろよというのが、国民の思いだろう。
世襲候補が一番やりたくない地元・支援団体へのバラマキをカットすることが本当にできるのか
とはいえ、今回、ポジティブな面に目を向けてみたい。
減税をやるには、たしかにシステム面での更新が必要となるかもしれない。法案も日本という国では減税をしなかったがために、条文をどう構成するかにも時間がかかるのかもしれない。
しかし、はじめの一回がとても大事だ。今後、違う税制で減税したいと考えれば、同じことをすればよいということになる。財務省が、減税の法案をつくらされているころであろうから、今後は、その出来上がった条文をもとに、議員立法も容易くなるということだ。
海外では、減税政策は日常的に行われている。岸田政権、自公政権が多用してきた「補助金」「給付金」のやり方では、莫大な中抜きが発生すること、さらに手続きが面倒で結局給付を受けられない人がでてくるという問題がある。しかし、減税であれば、今まで取っていた分の額が減るだけなので、国民は何もアクションを起こさずとも、減税の恩恵に預かれるということだ。
ガソリンの補助金をみても、政府が支出した金額とガソリン代が安くなった金額では大きな乖離があることがわかっている。
岸田政権は藁をも掴む思いで、減税を実施するまでに追い込まれたわけだが、減税が増えれば触れるほど、政府は行財政改革を実施せねばならず、力量が試されることになる。世襲候補が一番やりたくないこと、それは地元や支援団体へのバラマキのカットだ。選挙に応援した各種団体を片っ端から切り捨てることができるのか。今回の衆参補選は、勝敗以上に、歴史的に大きな一歩となった。
●財務省に「洗脳」された岸田がボヤく「減税なのになぜ悪く言われるか」の愚 10/28
自民党内からも反発の声が噴出している、岸田政権の所得税減税。冷静に考えれば、子育て世代に絞った減税・給付金、社会保障費削減、思い切ったガソリン減税、一時的な消費税引き下げなど、5兆円規模の財源があれば、妙案はいくらでも浮かぶ。岸田文雄総理はなぜ、悪筋の所得税減税に固執しているのか。自民党議員のベテラン秘書は、
「2浪をしても東大に合格できなった岸田総理は、東京大学の秀才ぞろいの財務省幹部を動かすことが楽しいようだ。ただ、それは逆に、財務省の手のひらで踊らされていることになる。総理はそれに気づいていない」
財務省は巧みに総理の東大コンプレックスを利用。森永卓郎氏の著書のごとく「ザイム真理教」にまんまと「入信」させた、財務省の勝利なのだ。
子育て関連の給付金、制度改革となると厚生労働者などが関係し、財務省の思惑通りにはいかない。ガソリン税、消費税などの仕組みに関することは「一度決めたことは絶対に妥協しない」という財務省の鉄の掟がある。そうなれば選択肢は一気に狭くなり、増収分をどう還元するか。所得制限や額を調整するだけなら、財務省内だけで解決できる。総理はこの手に乗っかってしまった。
先に触れた森永氏の著書「ザイム真理教」は、財務省の実態を赤裸々に描いたもの。政治家をいかにシンパにするか、その「手口」も明らかにしている。安倍晋三元総理は経産省を重用し、財務省の影響力をそいできたが、岸田総理は見事に「洗脳」されたのだ。
岸田総理は開成高校出身。同校は多くの東京大学合格者を輩出し、早慶レベルは劣等生扱いされるほどの名門だ。2浪したが東大入試に失敗し、早大法学部に入った岸田総理は、東大に劣等感を感じていた。
だが日本のトップに上り詰め、東大出身高級官僚をアゴで使えるようになった。こんな快感はないだろうが、それこそ財務省の思うツボだった。操られるフリをして操る。「傀儡・岸田政権」を維持するため、財務省の省益に反する減税はさせなかった。だが国民は、それを見透かしている。岸田総理は「減税なのになぜ悪く言われるのか」と周囲に話しているという。
物価対策も踏まえ、消費税の一時引き下げにまで踏み込んで衆院解散をすれば、与党の大勝は間違いない。だがそれは、財務省が許さない。今のままの減税案なら年内解散は難しく、来秋の自民党総裁選前まで、解散は引き延ばすしかなくなる。東大コンプレックスが、政権基盤をじわりじわりと溶かしているのだ。
●「還元」という名の甘言 10/28
「還元」という言葉がどうにも釈然としない。岸田文雄首相が税収の増加分で所得税減税を実施するという「国民への還元」のことだが、物価高対策としての妥当性を問う以前に「還元」という言葉を使うことへの違和感を覚えるのだ。
真に必要な減税なら正面からその意義を説けばいいのに、儲(もう)かった分をおすそ分けしますと言わんばかりの持って回った物言いをするから、おためごかしの印象しか伝わらない。商店の還元セールでもあるまいに。
国債頼みの財政状況で還元する余裕があるのかとも思う。だから誰しも「還元」ではなく「甘言」と捉える。さらに換言すれば、ネット上で「増税メガネ」と揶揄(やゆ)され、支持率の低下に悩む首相の足元が見透かされているということだ。
景気が回復しても、その恩恵が一部に限られ、暮らしが上向く実感が得られない状況は、安倍晋三政権時などでもしばしば指摘されたことだ。物価高が深刻な現在、その傾向が強まっているのは確かだろう。
ただし、減税か現金給付かを問わず、国民の懐を一律に潤そうとする政策は新型コロナ対策で行われた手法でもある。岸田政権は今年の「骨太の方針」で、コロナ対策で膨張した歳出構造を平時に戻す方針を明記した。その点の整合性をどう取るのかもはっきりしない。
折しも国会では、岸田政権の経済政策を巡り、与野党で論戦が展開されている。
立憲民主党が3万円のインフレ手当、日本維新の会が社会保険料減免、国民民主党が所得税や消費税などの減税を訴えているように、野党にもさまざまな独自政策がある。与野党双方が国会の場で、これらを論じ合うことはもちろん大事だ。
だが同時に、各党の政策が甘言にすぎないかどうかは、岸田首相の還元策と同様、厳しく見極めなくてはならない。選挙を意識し、各党が減税や現金給付などのバラマキを競うことが最近は常態化している。それが功を奏し議席を大幅に伸ばした政党がどれほどあるのか。国民は甘言に踊らされまい。
防衛力の抜本的強化や少子化対策は、岸田政権に限らず推進すべき重要な政策課題だ。そのためには負担増の議論も避けられない。そこを覆い隠して聞こえのいい政策で世論の歓心を買おうとしても、説得力はない。諫言というには及ばない当たり前の話である。
●岸田首相「女性ならではの感性と共感力」で漏れた自民党の古い政治の本音 10/28
世界と比べて女性議員の比率が低い日本。世界経済フォーラムの2023年「ジェンダーギャップ報告書」によると、政治分野は146カ国中138位と下から8番目だ。自民党女性議員はこの現状をどう見ているのか。小塚かおる氏の新著『安倍晋三 VS. 日刊ゲンダイ 「強権政治」との10年戦争』から解説する。
自民党内にも伝統的家族観に固執することは社会が多様化している今の時代に合わず、弊害ばかりが顕著になっていくことを理解している男性議員はいる。しかし、安倍政権時代に強まった保守化傾向に選挙対策も絡み、議員は声を上げない。「女性は家庭」が当たり前で育った世代が党内で実権を握り続けていることも自民党の古さの一因だ。
そして、自民党で意識改革が広がらないのは、女性国会議員の少なさと相関関係があると私は考える。
内閣府の男女共同参画局が2023年8月にまとめたところによれば、女性国会議員は、衆議院が464人中48人、参議院は247人中66人。衆参合計114人だ。比率にすると、衆院は10.3%、参院は26.7%で、衆参合わせて16.0%である。
このように国会全体で女性議員は2割に満たない。その点では他党も努力不足なのは間違いないが、圧倒的多数の国会議員を抱える自民党は所属する全381人に対し、女性は衆院21人、参院24人の計45人で、比率は全体平均より低い11.8%だ。衆院に限ればわずか8%しかいない。
ようやく自民党は、23年6月に党改革として「女性議員の育成、登用に関する基本計画」をまとめ、「今後10年間で女性国会議員の割合を30%に引き上げる」という目標を掲げた。活動費の支援策も創設する。これまで女性議員を増やすことにほとんど関心がなかった自民党が、こうした数値目標を支援策とセットで打ち出したことは歓迎されるが、10年後に30%とは、あまりに遅すぎるし、どうして思い切って「50%」と打ち出せないのか。茂木敏充幹事長は「レベルの違った改革を党として進めていきたい」と言ったが、そんな胸を張れるレベルではない。
グローバルでは、国際的な議員交流団体「列国議会同盟(IPU、本部スイス・ジュネーブ)」の2023年の集計によれば、世界の下院(衆議院)における女性議員数で、日本は186カ国中164位と下位に沈んでいる。世界経済フォーラムの2023年「ジェンダーギャップ報告書」でも政治分野は146カ国中、138位だ。
政党に男女同数の候補者擁立を促す「政治分野における男女共同参画推進法」が2018年に制定されたが、罰則がないのでなかなかエンジンがかからず、施行後初の2021年の衆院選では、候補者の女性比率はほとんどの党で5割にほど遠かった。中でも自民党は現職が多いこともあり、女性の擁立に消極的だった。
こういう党の現状を自民党女性議員はどう見ているのか。
取材で本音に触れたことが何度もある。ある中堅議員は自嘲気味に語った。
「国会議事堂に女性トイレがなかった時代からすれば、政界も少しは進歩しているとは思いますが、侮辱されているなと感じるのは、閣僚ポストの『女性枠』という発想です。自民党内では当選5回以上が入閣の適齢期とされてきた。最近は一本釣りの抜擢で4回以下の入閣もたまにありますが、やはり原則は5回以上というのが共通認識です。ところが女性は例外で別枠扱い。当選3回程度でも選ばれる。特に安倍政権時代に『女性活躍』を打ち出していた頃は、まず『今回は何人女性を入れる』という『枠』を決めて、ならば誰、という人選だった。女性を登用してもらうのは嬉しいですが、個人の能力を見て判断してもらっているのではなく、“花を添える”意味合いなのかな、と。それに、男性に媚びる女性の方が登用されやすい。まあ、『女性がいる会議は時間がかかる』と発言した森喜朗元首相が、いまだ総理に助言したり、派閥に影響力を持っている党ですから」
稲田朋美衆院議員がゲンダイのインタビュー(2020年1月23日発行)で語ったエピソードがわかりやすい。地元(福井)はとりわけ保守的だと前置きして、こう続ける。
「自民党が強い地域なんです。年末年始に帰ると、政治的な集会で私の話を聞いている人はほぼ男性。女性は賄いをしているんですね。集会の半分くらいを女性が占め、男性もエプロンをかけて豚汁を作ったりする。そういうふうに風景を変えたいと思うんです。(中略)女性活躍にしても、現状の固定的な雇用制度では難しい。雇用改革に切り込み、日本の生産性を引き上げ、財政再建にもつなげていく。日本の風景を変えるキーワードが女性活躍なんだと考えるようになりました」
国際社会からの厳しい視線もあり、23年9月の第2次岸田文雄再改造内閣で、過去最多タイの5人の女性議員が閣僚に起用された。閣僚枠の19人から考えれば、もっと女性大臣が増えていいし、これが一時的ではなく、女性大臣が半数ぐらいいるのが当たり前の光景になって欲しい。
しかし、閣僚に続く副大臣・政務官人事では、計54人のすべてが男性議員で女性議員はゼロになってしまった。岸田首相は「チームとして人選を行った結果だ」と強弁したが、こうなると過去最多タイの女性閣僚も、宣伝効果を狙っただけの「数ありき」だったと自ら暴露してしまったようなものだ。
一連の流れの中で、特にがっかりさせられたのは、内閣改造後の記者会見で、岸田首相が女性閣僚について「女性ならではの感性や共感力を十分発揮していただきながら、仕事をしていただくことを期待したい」と発言したことだ。自民党の古い“オッサン政治”の本音が出てしまった。岸田首相本人はその「違和感」を、何ひとつ感じていない。
少なくとも言えることは、安倍政権以降で多用されている「女性を活用する」だの、「組織の何割を女性にする」では、所詮それを言い換えるならば「あくまでも男性が中心で上に立って、上から目線で女性にポジションを与えてやること」でしかない。
そうした「男目線」を跳ね返し、本当に女性が力を発揮する社会を実現するための象徴は、やはり女性が名実ともにトップに立つこと、要は、「女性首相」を誕生させることしかないのかもしれない。
●岸田政権が一律給付金でなく所得税「4万円減税」にこだわる理由 10/28
政府が物価高への対策で、一時的な所得減税策を打ち出しました。来年6月をめどに国民1人当たり4万円が所得減税されます。扶養家族がいればその人数分減税されます。ここで、素朴な疑問が浮かびます。なぜ、一律4万円の給付金にしなかったのでしょうか。政府には「給付金ではなく減税でなければいけない事情」があるのです。
岸田政権はなぜ「所得減税4万円」を打ち出したのか
政府の経済対策の五本柱の一番目に来るのが「物価高から国民生活を守る」です。先にやぼな話を済ませておきますと、二番目の柱が「持続的賃上げ」なのですが、賃上げをすれば物価は上がります。全体的に注意が必要な政策だとだけ指摘しておきます。
さて、政府は物価高への対策で一時的な所得減税策を打ち出しました。報道で明らかになった案によれば来年6月をめどに国民1人当たり4万円が所得減税されます。扶養家族がいればその人数分減税されます。
一方で、所得が低くて所得税も住民税も課税されていない人には7万円が給付されます。今年の春に3万円の物価対策の給付金があった家庭は、その対象になる可能性が高いでしょう。この減税と給付金合計で5兆円を国民に支払ってくれることになります。
さて、今回の減税ですが、4万円ないしは7万円のどちらも得られない人たちが900万人ないしは400万人出てきそうだということが課題になっています。このもらえない層が、実は物価高で生活に一番困っている層だということで話題にもなっています。
ここで、素朴な疑問が浮かびます。なぜもっと簡単に一律4万円の給付金にしなかったのでしょうか。政府には「給付金ではなく減税でなければいけない事情」があるのです。
減税よりも給付金の方が即効性とシンプルさでは勝る
今回の政府案の骨子は「税金を多く払っている人は最大で4万円×人数分を減税。税金を払っていない人には7万円×人数分を給付」です。政府の試算では8600万人が減税の対象となり、1500万世帯が給付金の対象になります。
問題は、そのどちらにも当てはまらない人です。税金を払っているけれども払っている税金が家族1人当たり4万円よりも少ない人が該当します。たとえば年収400万円の4人家族はそうなるのですが、そういった隙間の層が900万人ほど存在します。
このうち国税を払っていなくて住民税だけ払っている層が500万人いるのでそこを給付金の対象にする案があって、その案ならば隙間の層は400万人にまで減ります。
物価高で一番苦しい層が救えないのは、政策上では問題です。政府もその問題は理解していて、この400万人の隙間層についても何らかの給付金など支援策を年末に固めたいとしています。「隙間の層に一律10万円給付を検討」などの新情報もありますが、その制度設計が複雑になることが懸念されています。
さて、冒頭でも取り上げたように、今回の政府案について素朴な疑問が浮かびます。なぜもっと簡単に一律4万円の給付金にしなかったのでしょうか。
コロナ禍では国民に一律10万円の給付が行われました。市区町村が住民台帳に載っている世帯主向けに給付金の申請書を送り、それを世帯主は郵送かオンラインで申請すれば口座に家族1人当たり10万円が振り込まれました。このときはDV被害者など世帯主とは別に暮らしている家族への救済策も用意されました。
12.7兆円を給付する事務費は約1460億円と1%ほどの経費がかかりましたが、事務費がかかるのは今回の減税でも似たようなレベルでしょう。
同じ仕組みでやれば、隙間の層など関係なく一律4万円が給付されますし、所得が低くて所得税も住民税も課税されていない人には今年の春同様に追加で3万円の給付金を出せば合計で7万円の給付になります。何より、給付金なら年明け早々に実施することも可能です。国民が物価高で苦しんでいるのですから、来年6月まで時間がかかる減税にするよりも給付金の方が即効性があります。なぜ、そのようにシンプルな仕組みを取らないのでしょうか?
わざわざ制度を複雑にしている理由としてすぐ頭に浮かぶのは選挙です。今の政府案を通せば、自民党・公明党ともに「与党は減税を実現した」と選挙でアピールすることができます。
ただそれを、「与党は給付金を実現した」というアピールだとダメなのでしょうか? おそらく給付金ではダメだという事情が隠されているのでしょう。さまざまな背景事情から、そのことが推測できます。説明していきましょう。
「防衛費の増額」と「異次元の子育て支援」は将来的には増税でまかなうことに
このあと解散・総選挙がいつ行われるのかが焦点になっています。来年9月に自民党の総裁選がある関係で、来年6月頃には解散・総選挙があるかもしれません。先日の国政補選では、与党は1勝1敗に終わりました。正直、このままの状況だと解散をすれば与党は議席を減らしかねません。なにしろ内閣の支持率は低いのです。
一方で今の政府は大阪万博でお金が足りなくなるとぽんと予算を出すなど、どうも支出にゆるい傾向があります。大阪万博は予算がどんどん増えているとはいっても2350億円ほどの話なので、よくないとはいってもまだいい方なのですが、特にお金がかかるのが防衛費の増額と異次元の子育て支援です。どちらも3兆円規模の予算増が必要でかつ、一回きりではなく継続的にお金がかかります。
以前であれば、こういった政府予算については大蔵省主計局が目を光らせていたのですが、財務省になってからは幹部人事を官邸が握っているので歳出はどうしてもゆるゆるになります。
今の内閣が目指している異次元の子育て支援ですが、おそらく参考にしている成功例はハンガリー政府の子育て施策です。ハンガリーでは子どもが多い家庭が経済的に優遇されます。
有名なのは4人子どもを産んだ母親は生涯、所得税がゼロになることです。他にも車を買ったり不動産を買うのに100万円規模の補助金が出るとか、教育ローンが返済免除されるとか、とにかく子どもの多い家庭はお金がかからない制度になっているのです。
やっていることは金額的にまさに異次元で、そこまで子育て支援にお金をつぎ込んだことでハンガリーでは人口減少に歯止めがかかっています。一方でこの子育て支援は、ハンガリーの一般国民に隣国よりも多い税負担を強いていることで国内でも賛否があることも事実です。
ハンガリーでは、GDP比5%の規模で子育て支援にお金が投入されています。その背景は、長期的に見て人口が減ることが国の衰退につながることへの危機感がコンセンサスになっていることです。
日本でも異次元の子育て支援政策が打ち出されましたが、国民の目は冷ややかです。要は「その程度の施策で人口減少に歯止めがかかるとは思えない」という意見です。
仮に日本でGDP比5%の支援策を打ち出すとしたらそれは年間で29兆円の支出になるわけで、それが実現できたら確かに人口減少に歯止めがかかるかもしれません。しかし、その支出は消費税の税収額に匹敵します。
要は消費税を20%に上げてまで少子化対策を行えば日本の人口減少には歯止めがかかるかもしれませんが、それが国民のコンセンサスになるのは無理でしょう。一方のハンガリーは、27%と世界一消費税が高い国です。
将来的には増税もあり得るからこそ選挙前に「減税」しておきたいのが本音
さて、話を減税に戻しながら、あらためて考えてみましょう。政府はここのところ、とにかくお金がかかる政策を打ち出しています。中でも課題になっているのが繰り返しになりますが防衛費と少子化対策で、どちらも不足財源については将来的に増税が充てられる構想になっています。
そこで選挙です。将来的には増税がありうるが、与党は減税もちゃんとやっていると言いたいというのが、今回、どうしても給付金ではなく減税にしたいという背景事情なのではないでしょうか。あくまで推測の話であり、政府が公式にそのような意見を口にするとは思いませんが。
世論は減税については消費減税を望む声が大きいようです。ただ、それが恒久化されては逆に財源が減ります。そこで、1回切りで済むように、定額で1人当たり4万円を減税するという話が今回浮かび上がったわけです。その話に若干の無理があり、現状としては900万人ないしは400万人の隙間層が減税の恩恵を得られないことが危惧されているのです。
最終的には、優秀な官僚が何らかの形でこの400万人を救う方法を考えてくれるとは思うのですが、起きていることを俯瞰(ふかん)して眺めるとやはり、全体像に無理があることが根本の問題に思えます。それは減税の話だけではなく、政策の全体像を含めての話です。
●防衛費確保、一段と不透明 岸田首相「増税延期」明言、与党が圧力 10/28
岸田文雄首相が27日に始まった衆院予算委員会の質疑で、2024年度からの「防衛増税」の先送りを明言した。物価高を受けて同年度の実施を目指す所得税減税と方向性で矛盾する点などから、与党内では巨額の防衛増税について先送り論が強まっており、首相がこれを追認した格好。政府は5年間で防衛費を43兆円程度確保する方針だが、具体策は急速に不透明さを増している。
「景気、賃上げの動向などを踏まえて判断する。よって24年度から実施する環境にはない」。首相は予算委で、防衛増税の時期についてこう説明。「定額減税との同時実施」を明確に否定した。
防衛力強化は対米公約ともなっている。政府は23〜27年度に17兆円規模の追加財源を確保し、歳出改革や決算剰余金などに加え、3.5兆円分は法人税、たばこ税、所得税の増税で賄うとしている。これに対し、自民党内では国債発行(借金)に前向きな「積極財政派」を中心に増税回避を求める声が上がっていた。
こうした圧力を受け、6月に決定した経済財政運営の基本指針「骨太の方針」は防衛増税について、25年以降も含め「柔軟に判断する」と先送りを示唆。26日に首相が所得・住民税減税を24年6月に行う方針を表明したことで、27日の予算委では与党から「分かりづらい。当然、来年は防衛増税はやらないと受け止める」(自民・萩生田光一政調会長)、「防衛増税と矛盾するとの意見もある。どう答えるのか」(公明・高木陽介政調会長)と包囲網が敷かれ、首相の背中を押した。
首相が景気や賃上げ状況を先送りの理由に挙げたことで、実施時期はますます見えづらくなった。自民の積極財政派は勢いづき、その一人である世耕弘成参院幹事長は27日の記者会見で「もし万一増税する必要がある場合は、近いところで決定すればいい」と強調した。25年は東京都議選、参院選が予定されており、「負担増」につながる判断は避けたいとの心理が働きそうだ。
仮に防衛財源に当て込む決算剰余金などが見込みを下回れば、「国債を増発して賄うしかない」(防衛省幹部)とみられている。年末に向けては少子化対策の財源確保策の検討も控えるが、首相は国会審議で明言を避け続けている。防衛相経験者は政権の姿勢について「全く賛成できない」と語った。  
●5年間で43兆円の防衛費 円安で輸入装備品調達に影響 10/28
防衛省が、令和9年度までの5年間で防衛力を抜本的に強化するために必要な防衛費約43兆円について、円安などの影響で1兆円程度の実質的な減額になると見通していることが28日、分かった。
複数の政府関係者が明らかにした。計画策定時に設定した為替レートが現在の水準とかけ離れ、輸入装備品の調達費が上昇していることが要因だ。政府は43兆円の大枠は変更しない方針で、円安が続けば計画数量の装備調達が難しくなる。
政府は昨年12月に閣議決定した防衛力整備計画で、9年度までの防衛費総額を約43兆円と定めた。為替レートは、5年度が当時の水準に合わせ1ドル=137円の一方、6〜9年度は、これまでの整備計画と同様、直近の過去5年間の平均値とし、同108円の設定で総額をはじき出した。
しかし、円安が続いており、実際の予算額と計画額で差が生じている。
反撃能力(敵基地攻撃能力)の柱となる巡航ミサイル「トマホーク」やF35戦闘機などは外国製で、輸入調達する。米国の「対外有償軍事援助(FMS)」で調達する最新鋭ステルス戦闘機F35Bは、単価が計画額の160億円から6年度予算の概算要求では約179億円に上がった。
F35Bは計4千億円で25機を調達する計画だ。5年度予算には8機計1435億円、6年度予算の概算要求には7機計1256億円を計上。9年度までに残り10機の調達を控えるが、現在の円安水準が続けば計画額を上回る可能性がある。
国産でも外国製部品に頼る装備品も多く、34機の調達を計画する輸送ヘリCH47は6年度概算で17機の調達費を要求し、平均単価は計画より47億円上昇した。2隻を新造するイージス・システム搭載艦は5年度と6年度概算で計6005億円を計上しており、計画額4千億円を超えた。
調達費用はかさむが、岸田文雄首相は27日の衆院予算委員会で、「43兆円の規模を超えることは考えていない」と述べた。
●失敗繰り返そうとする岸田政権 10/28
難問に直面した人は2通りに分かれる。
ひたすら正解を考える者と、正解には背を向ける者である。政治家が後者であれば、国民の災いになる。財務省主導の岸田文雄政権はどちらなのか。
岸田首相は23日の国会所信表明演説で、「デフレ完全脱却のための一時的緩和措置として、税収の増収分の一部を公正かつ適正に還元」と宣言した。岸田氏が所信表明で「デフレ脱却」を口にしたのは2年前の首相就任時以来である。
「税還元」とは何か。各紙報道によれば、所得税の定額減税で、納税者一人当たり一律4万円、低所得や高齢の非課税世帯には7万円を給付するという案が有力という。その効力はいかばかりか。
グラフは、国税庁がまとめている民間給与実態調査データから作成した所得階層別の比率で、デフレが始まった1997年と昨年分を比較している。国民経済はどの主要国でも、中低所得層によって支えられている。日本の場合、所得層をどう分類するかは専門家によって分かれるが、年収500万円未満を「中低所得層」、500万円以上800万円未満を「中間層」とみなしてみた。なぜ500万円未満が中低所得層とするのか、異論が生じようが、筆者周辺で年収500万円を超えない勤労世代の男性には結婚をあきらめる者が多い。10年以上前だが、女性評論家の某氏との対談で、「東京ではね、女性が年収700万円に届かない男とは結婚しないよ」と言われ、実際に何人かの独身女性に聞いてみると確かにそうだった。それは東京の話だから、全国平均では500万円を基準にした。
グラフでは、中低所得層は大きく拡大し、中間層は萎縮している。日本の屋台骨である所得層の貧困化が明らかなのだ。
納税者一人当たりの所得税負担額はどの程度か。国税庁によれば、200万以上300万円未満の階層で4・4万円、600万以上700万円未満で21・4万円である。4万円の給付は一見すると、税負担の大幅減となる。
だが、中低所得層困窮化の根因は物価、特に食料品の高騰(9月の上昇率は9%)である。そこに消費税率8%が家計負担を膨らませている。総務省の家計調査から計算すると、食料品にかかる消費税負担は2人以上の世帯当たり平均で7万円を超える。食料品の消費税率をゼロにすれば、消費者は日々の買い物での憂鬱がかなり取り除かれ、デフレ心理は解消に向かうだろう。
思えば、これまで四半世紀以上の慢性デフレは1997年4月の消費税増税が端緒になった。当時の橋本龍太郎政権は98年にあわてて3万8000円の所得税定額減税に踏み切った。ところが、結果は無残で、デフレは進行する一方だった。元凶である消費税増税を撤回せずに、一度きりの給付で済ませたからだ。橋本政権が消費税増税にこだわる財務省にひきずられ、間違った回答を出した結果による。岸田政権はその失敗を繰り返そうとしている。
●ベビーシッター割引券で二転三転…国民の反発で方針転換を繰り返す行政 10/28
1度は配布を停止するも…ベビーシッター割引券配布再開
仕事と育児の両立を支えるべく、ベビーシッターを利用した際の費用を一部補助する「ベビーシッター割引券」。これは企業で働く人が子どもを預ける場合、1人につき1日最大4,400円の補助が受けられるというもので、共働き世帯の増加に伴い利用を希望する人が増加。
主管するこども家庭庁は、10月3日に今年度の上限枚数39万枚に至ったとして配布を停止していましたが、子育て世帯からの要望が強まっていたことなどから岸田首相は17日から配布再開を表明。今年度に関しては上限を設けない方針で、これまで配布した割引券39万枚のうち未利用の19万枚分についても使用を呼びかけています。
発行再開に、スタジオでの反応は…
この件に対し、過去にベビーシッターを利用していた経験を持つキャスターの豊崎由里絵は、「(ベビーシッターは)1週間のプログラムの中に自分で組み込み、どれくらいの金額で利用できるのか計算に入れて動いているので、(ベビーシッター割引券の配布枚数に)上限があるのは仕方がないと思うが、突然配布をやめると生活がうまくいかなくなってしまう」と上限の撤廃を切望。
キャスターの堀潤も「(配布枚数の)上限はいらないんじゃないか」と同意しつつ、子どもを第一に考えるとしていた岸田政権とあって、対応に右往左往していることを不安視。
タレントのREINAさんは「なぜ(配布停止への反発があることを)予想できなかったのか」と呆れ、昨今、政策と子育ての実態に大きなギャップがあり、市民からの反発で政策を転換する流れがあることを悲嘆します。
さらに、堀は政府や自治体がEBPM(データやエビデンスに基づく政策立案)の取り組みができていないことを悔やみ、「政策実行の舞台裏はどうなっているのか」と危惧。というのも、政策立案の際には多くのコンサルタント会社が関わり、そこに税金が使われているにも関わらず、情報は一切公開されていないから。
Fridays For Future Tokyoオーガナイザーの黒部睦さんは「その構造を感じることは多い」と堀に同意。「コンサルタント企業が入ることも大事だと思うが、そこに国民もしっかりと入って決めないといけない。そうでないとこうして反発が起こり、変える、2度手間のようなことになるので、最初からみんなで決める、みんなの意見を反映させる仕組みにしないといけない」と意見します。
国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソンさんは、ベビーシッター割引券のような具体的な補助も大事なものの「子育てをすることに対しての本当の意味での励まし、応援されて頑張れるということを二足の草鞋を履く親が感じられる長期的なビジョンが必要」とし、ベビーシッター割引券も上限をなくせば、そうした効果があると示唆します。
また、政策が二転三転する政府に対してREINAさんは「1個1個のプロジェクトのような形で進めている。もう少し全体を見て、設計している人がいないのが根本的な問題」と課題を挙げると、堀は「本来、それをやるのがこども家庭庁」と指摘します。
さらに、豊崎は今回の件を通して「(関係者の人たちは)ベビーシッターをどういうものだと思っているんだろう」と疑問視。「(ベビーシッターは)ピンチのときに来てもらうものではなく、事前に面談したり、家に入ってもらうので(家財の)使い方なども説明しないといけない。普段から利用しておいて、緊急のときに助けてもらう感じなので、それを分かっている人がいなかったのか」と案じると、堀も大きく頷きつつ「それも含め、政策決定の舞台裏に関しても大臣に説明してほしい」と望んでいました。
●岸田政権の経済対策では日本の経済は再生しない理由とその対案 10/28
「経済、経済、経済」
岸田文雄首相が今国会の所信表明演説で高らかに掲げたキーワードだ。
しかし、「経済の岸田」を自負する首相が出してきた経済対策は、残念ながらあまり効果が期待できそうにない。
9月末に発表した「経済対策の5本柱」をもとに、岸田政権は総合経済対策なる本格的な経済対策を11月2日に発表する。まだ全体の予算規模は明らかになっていないが、10兆円を超える大型の補正予算案が出てくる見込みだ。ところが、これまでに明らかになった対策の中身を見る限り、今多くの国民が痛みを感じている問題への有効な手立てがほとんど見つからないのが実情だ。
「経済対策の5本柱」は、物価高対策、持続的な賃上げ、国内投資促進、人口減少対策、国土強靱化から成る。最優先課題として挙げられている物価高対策としては、所得税・住民税減税や、ガソリン、電気・ガス代補助金の2023年4月末までの延長などが含まれる。
減税は1人あたり3万円の所得税、1万円の住民税減税に加え、住民税を納めていない世帯に対しては7万円の給付を行うという。ただし、いずれも実施されるのは来年6月になる。既に6兆円を超える税金が投入されているガソリンの補助金については、元々これは時限的措置だったはずだが、これを廃止した瞬間にレギュラーガソリンがリッターあたり200円を超えてしまう状態が続いているため、政府としてはやめるにやめられない状態だ。
第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は、今、一番国民が痛みを感じているのは食料品の値上げであることを指摘した上で、家計の消費支出の3割を占める食料品の値上がりをそっちのけにした物価高対策はピントがずれていると語る。2023年9月の生鮮食品を含む食料品の消費者物価指数は、2022年9月から9.0%も上がっているのだ。
経済の話はとかく難しくなりがちだが、熊野氏の説明は非常に明快だ。要するに今日本が抱えている問題は大きく分けて3つ。日銀の金融緩和が不必要に続いているために物価が上がっていること、物価が上がっているのに賃金、とりわけ企業数で99.7%を占める中小企業の賃金が上がらないこと、そして少子高齢化とそれに伴う労働力不足の3つだ。
そもそも今の日本を襲う物価高の根本的な原因は円安にある。そして日本の食料自給率は38%、エネルギーの自給率も12%と先進国としては最低レベルにある。円が安くなれば、その分輸入製品の物価が上がるのは当然だ。食料とエネルギーという国民生活にとって不可欠な商品を過度に輸入に頼っている日本は、円安が即消費者物価の高騰を招く。
また、今の円安の原因が日本のマイナス金利政策にあることも明らかだ。リーマンショック後、日本と同様に一時は金融緩和に走ったアメリカやEUは早々に出口戦略を実施し、金利の引き上げを繰り返し行ったが、日本だけがマイナス金利のまま取り残されてしまった。内外の金利差が広がれば広がるほど、円安は進み、輸入物価は上がり続ける。
本来、日銀はインフレ目標を2%と定め、それが達成されるまでは「異次元」の金融緩和を続けるという話だったが、既に日本のインフレ率は2%を大きく上回っている。にもかかわらず、金融緩和路線を変更できないのは、あまりにも長く事実上のゼロ金利が続いたため、日本企業がゼロ金利を前提とした体質となっていて、金利上昇に堪えられなくなっているからだ。また、金利があがった場合の日本の財政への影響も大きい。低金利に慣らされ、甘やかされた日本は金利引き上げに転じた時の経済への影響が余りにも大きいため、そう簡単には脱金融緩和に踏み出せないのだ。
しかし、熊野氏は日銀が異次元の金融緩和をやめない限り、この物価高は収まらないと言い切る。
熊野氏はまた、ガソリン補助金も問題のある施策だと言う。市場原理では本来、値段が高くなると消費を控えるようになり、再び値段が下がっていくが、政府が大量の補助金を投入している今、税金という形で国民自身が負担していることに変わりはないが、ガソリンスタンドでは痛みを感じないため、今まで通りガソリンを消費してしまう。EVの急速充電器の設置にあてることもできた税金をガソリン補助金に使うことは、EVへのシフトを妨げていると見ることもできる。
逆の見方をすると、岸田政権がやっていないところに、本来実施されなければならない正しい経済対策が潜んでいると見ることもできる。ガソリンの補助金に6兆円からの大枚を注ぎ込むのなら、むしろ日本が世界から遅れを取っているEVシフトをこの原油高を奇貨として思い切って行うべきではないか。また、これはある程度時間をかけて実現せざるを得ないが、食料自給率やエネルギー自給率の低さが日本にとっては大きな経済安全保障上のリスクになっている以上、少しずつでも自給率を上げる施策に思い切って踏み出してはどうか。
日銀の金融緩和と並んで今日本が必要としている施策は、中小企業の賃上げを後押しすることだと熊野氏は言う。日本の中小企業は企業の利益に占める賃金の割合である労働分配率が極端に高いため、簡単に賃上げができない。そのため労働分配率が低い大企業がまずは賃上げを実行することで経済の回転を良くすることで、中小企業が賃上げを行いやすい環境を作っていく必要があると言う。
また、少子高齢化についても、仮に今政府が有効な手立てを実施できたとしても、それが経済面で効果を生むのは20〜30年先になることを考えると、より即効性のある対策が待ったなしだ。その一助として、現在日本が行っている技能実習性のような抜け穴に頼るのではなく、本格的な外国人労働者の受け入れを検討すべきだと熊野氏は言う。
こうして見ていくと、結局のところ、今回の経済対策を見るにつけ、岸田政権も、そして広い意味で自民党政権も、現在日本が抱える根本問題に手当てする気がないとしか思えない。そもそもそのような施策を実施する能力がないのか、あるいは自民党政権ではその支持基盤とバッティングするためやりたくてもできないのか。どちらにしても、仮に今回のような一時的なバラマキで支持率が多少回復したとしても、本気で日本を変えていく気概がないことを国民から見透かされている限り、政権の支持率は回復しないだろう。
岸田政権の経済対策は妥当なのか、問題はどこにあり、本当に必要な対策は何かなどについて、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
 
 
 
 

 

●岸田首相への「ダメ出し」代表質問で思い出す「参院のドン」と小泉元首相 10/29
臨時国会が召集され、岸田文雄首相が「経済、経済、経済」と3連呼、三唱して経済対策への取り組みへの決意の強さを強調した所信表明に対し、自民党幹部の世耕弘成参院幹事長が、その内容に異例の「ダメ出し」を連発して、永田町をざわつかせた。
「支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待するリーダーとしての姿が示せていないことに尽きる」「首相の決断と言葉に、いくばくかの弱さを感じざるを得ない」と、政治姿勢への苦言に加え。首相が躍起になっている「税収増の国民への還元策」についても「物価高に何をしようとしているのか、まったく伝わらなかった」「重要な局面で発信する際はじっくりと考えて決断し、水面下の根回しも入念に行って、政治家としての言葉で発信していただきたい」と、次々と厳しい注文をつけた。
確かに、岸田首相の言葉はダイレクトに国民の気持ちに響くほどのインパクトはないように思うし、3連呼を上回る「増税メガネ」などの増税イメージがついて回っている現状は変わらない。ポジティブな言葉でもなかなか前向きにとらえてもらえない状況は、国会審議を取材していても変わっていないように感じる。
時の首相だからと、党内から批判や文句を言ってはいけないきまりはない。今年7月に石破茂元幹事長にインタビューした際、「安倍1強」の時代を経て、自民党内が「物を言えない」状態となり、岸田政権になった今も続いていると指摘していた。「物言わない」ことに慣れてしまったこともあるからなのか、世耕氏が会派を代表しての代表質問の場で、首相の目前でダメ出しを連発したことにはかなり波紋が広がった。
ただ、代表質問の場で自民党幹部による時の首相への「ダメだし」は、今回が初めてではない。
2002年10月の参院代表質問を思い出す。「参院のドン」といわれた自民党の青木幹雄参院幹事長が、小泉純一郎首相の経済政策を公然と批判した。「政策の内容が乏しい。経済政策で総理のリーダーシップが発揮されていると思わない」と批判したが、今回の世耕氏と同じような内容だった。肩書は同じだが、現在の世耕氏の立場よりさらに強い力を持っていた実力者の青木氏が、「内閣の方針に反対する者はすべて抵抗勢力」と言い切っていた小泉氏に「指導者は、頑固頑迷であってはならない。君子豹変すべき」と説教するような場面は、取材していて緊迫感があった。
ただこの時、小泉氏は質問の前に、青木氏と会った際に「代表質問できついことを言うかもしれん」と、予告されていたといわれる。青木氏は「今、まさに求められているのは、デフレや金融対策に関しての指導力、リーダーシップだ。私は、それができ得る総理だと信じております」と、批判しっぱなしではない部分もあった。
ドンの苦言に小泉氏は「質問に加えまして率直なご意見、激励。ありがとうございました」と切り返し、身内からの批判というダメージ色をうまく薄めた。小泉、青木両氏は、気脈を通じた関係でもあった。一方、今回の岸田首相は世耕氏の苦言に真正面から答えず、小泉氏のような懐の深さも感じられなかった。
代表質問の翌日、世耕氏は所属する安倍派の会合に出席した際「けして苦言ではなく助言」と助け舟を出した塩谷立座長の言葉に笑顔でうなずいていたが、この時、塩谷氏は、党税制調査会幹部の間にも世耕氏と同様の意見があったことを認めた。「首相の言葉は割合、ストレートにこない。我々にも分からないことは、国民にもなかなか伝わらない」。自民党内では「世耕氏の苦言が、今の自民党内のリアルな岸田評だ」という声があるとも聞いた。
ところで、世耕氏は国会議員になる前、NTTで広報を担当した経歴がある。報道担当課長として、企業PRの「プロ」でもあっただけに、「伝える」手段には自分なりのこだわりもあるのかもしれない。2005年に小泉氏が郵政選挙に踏み切った際には、小泉氏の側近だった飯島勲氏(現・内閣官房参与)が演出した「小泉劇場」の一端も担った。当時「コミュニケーション戦略チーム」を率いて選挙対応に当たり、著書を出されたこともある。
発信してもなかなか伝わらない岸田首相の言葉。世耕氏はダメ出しだけでなく、プロの流儀を伝授してみてはどうだろうか。そんなことまで考えてしまう代表質問の場だった。
●『当事者の会』会員が耳を疑った石丸志門副代表の”政界進出宣言” 10/29
今月に入り元「忍者」の志賀泰伸氏、元ジャニーズジュニアの大島幸広氏、さらに9月に入会したばかりの「Kis-My-Fit2」の元メンバーの飯田恭平氏が相次いで退会し、分裂状態に陥りつつある「ジャニーズ性加害問題当事者の会」。
きっかけとなったのが3日に行われた同会と旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)との面会だ。その席で代表の平本淳也氏と石丸志門氏が東山紀之社長と藤島ジュリー景子氏に対し「SMILE-UP.に入れてほしい」と要請したことで、志賀氏が「方向性の違い」を理由に脱会。大島氏、飯田氏も続く形となった。
さらに当事者の会の足を引っ張る形となっているのが石丸氏の発言だ。東京新聞・望月衣塑子記者らが運営する「Arc Times」のライブ配信に出演した際に、「誹謗中傷で『金目当てか!』と言われることが多々ありました。あえてここで言わせていただきたいのは、お金目当てです!」と発言。しかし、理解は得られず同会は「被害者ビジネス」と揶揄される結果となってしまった。
「そもそも彼は億単位の補償金が取れると本気で思っていた可能性があります。同会は旧ジャニーズに財団を設立し、毎年売り上げの3%を渡すように要求していました。しかし、報道などで補償金が数百万円程度という話が出てきてから、方向性がおかしくなりました」(スポーツ紙記者)
同会の広報担当的な役割を果たしている石丸氏だが、同会の中でも彼の暴走≠ェ危惧されているという。
「ジャニー喜多川氏がすでに亡くなっており、補償を求めていくことは当然ですが『お金目当てです』発言はタイミングとしてよくなかった。会の中でも『石丸さんに喋らせない方がいいのでは』という声が上がっています。
以前も『時効撤廃をマニフェストに出馬する』と、突然、国会議員への出馬を宣言したそうで、会員たちは耳を疑ったそうです」(テレビ局関係者)
故ジャニー喜多川氏をめぐる一連の性加害によって、確かに時効撤廃は完全に無関係とは言えないが…。
「それと出馬宣言は全く別の話です。”暴走”し始めたのではと感じた瞬間でした」(当事者の会の1人)と、会員からも支持を得られていないようだ。そんな石丸氏は、24日に平本氏と国会に赴き、岸田文雄首相の所信表明演説を受けての代表質問を傍聴。報道陣の取材に対して、「岸田首相と面会させていただき、被害者の窮状を直接お話しできればと思っている」と面会を熱望した。
「国会でもしっかり議論してもらいたいという熱意なのか、それもと、政治家になるためのパフォーマンスなのか……。旧ジャニーズに被害者全員がしっかり補償してもらうための当事者の会ですから、石丸氏には初心に立ち返って、しっかり交渉していただきたいです」(前出・会員)
このまま空中分解しなければ良いのだが……。
●防衛増税、自民党・萩生田光一政調会長「安易に始めず」 10/29
自民党の萩生田光一政調会長は29日のNHK番組で、防衛費増額の財源を確保する増税の開始時期を巡り「安易に増税を開始するのではなく、できる限り税以外の品目で予算確保できないか議論している」と述べた。増税を急がず税外収入の積み上げなどで対応すべきだとの考えを示した。
具体的な増税の開始時期には触れなかった。公明党の高木陽介政調会長は「経済が見えてきた段階で最終決着するだろう」と語った。岸田文雄首相は27日の衆院予算委員会で2024年度からの増税開始は見送ると明かしていた。
政府・与党が税収増の還元策として検討する減税や給付で、萩生田氏は低所得の課税世帯も給付の対象にする方針を表明した。「課税世帯でもなかなか収入が上がらない人たちに目配りする」と説明した。
減税期間は「あらかじめ1年限りということを今の段階で決定をしているわけではないが、永遠にできることではない」と指摘した。高木氏は賃上げの状況を考慮し判断すべきだと強調した。
立憲民主党の長妻昭政調会長は「来年6月(の減税)は遅い。給付は年内にできる。増税のイメージを払拭したいだけであれば、非効率な減税は考え直してほしい」と減税ではなく給付を求めた。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済の原資になる財産の保全に関し、萩生田氏はまずは現行制度で対応できないか検討すると話したうえで「必要な法律があればつくっていかないといけない」と発言した。
与党は財産保全のプロジェクトチームで11月中旬めどに方向性をまとめる。萩生田氏は保全策について野党と協議する意向を言明した。
財産保全の特別措置法案を臨時国会に提出した立民の長妻氏は「腰が引けているといわざるを得ない」と与党の対応を批判した。
●野党「少子化」財源追及へ 予算委で国会序盤ヤマ場 10/29
国会は週明けの30日、岸田文雄首相と全閣僚が出席して衆院予算委員会で2日目の基本的質疑が行われる。
31日からは参院予算委に舞台を移し、国会序盤のヤマ場を迎える。野党側は、首相が所得税などの減税で国民へアピールする一方、少子化対策や防衛力強化に伴う負担増の議論を先送りしているとして、追及を強める構えだ。
首相は26日の政府与党政策懇談会で、来年6月に1人当たり4万円の定額減税を行う方針を表明。27日の衆院予算委では「国民に物価高の中で頑張っていただくため、所得税、住民税の形でお返しする」と意義を強調した。防衛力強化のための増税については、2024年度には実施しない考えも示した。
これに対し、野党は「目先のいいことばかりを言ってる。負担増隠しだ」(山井和則立憲民主党国会対策委員長代理)として厳しく批判。首相は自ら掲げる「異次元の少子化対策」の財源について明言を避けており、立民は予算委で説明を引き続き求める。税収増の還元策として、給付ではなく時間を要する減税を選んだ理由も問う方針だ。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令請求を受け、野党側は被害救済を目的とした教団の財産保全に取り組むよう政府に迫る考え。政府・与党内には、立民と日本維新の会がそれぞれ提出した法案について「憲法に抵触する恐れがある」との根強い懸念がある。
一部で報じられた武見敬三厚生労働相、新藤義孝経済再生担当相らの「政治とカネ」の問題も十分な説明を求める考えだ。 
●円安放置 定額減税効果なし? 10/29
「小泉元首相の郵政民営化くらいの覚悟でやる」──。「定額減税」について岸田首相は周囲にそう強い意欲を示してきたという。唐突に打ち出した所得税減税は、物価高の家計への影響を和らげるための目玉政策だが、肝心のインフレ退治は円安放置の無策が続く。物価高が収束に向かわなければ、1年限りの減税の効果はなきに等しい。
扶養家族含めて1人当たり所得税3万円、住民税1万円の定額減税は来年6月から実施。住民税非課税の低所得世帯向けの7万円給付は年内に開始する。
「家計を助ける効果はありますが、1回限りで継続性がない。インフレが続けば、すぐに国民の懐は苦しくなります。物価高の元凶は円安ですが、足元よりも進む恐れがあります。手を打つ必要がありますが、政府・日銀はお手上げのようです」(金融ジャーナリスト・森岡英樹氏)
期待の「緩和修正」も焼け石に水
足元は1ドル=150円の円安水準。円買い介入への警戒から膠着状態が続くが、仮に実施しても効果は小さく、一時的だ。そこで注目を集めているのは、30、31日の日銀の金融政策決定会合。これ以上の円安は容認できないとして、政府内の一部で金融緩和の修正に期待を寄せる声が上がっているのだ。
「逆に今回の会合で緩和を維持すれば、一気に円安が進むでしょう。では、緩和を修正した場合に期待通りに円安を止められるのか。日銀が少し金利を上げたところで、絶好調な米経済に歯が立たず、円安は解消されない可能性が高い。つまり、誰にも円安は止められないということです」(森岡英樹氏)
26日に発表された7〜9月期の米GDP(実質国内総生産)は、年率換算で前期比4.9%増だった。4〜6月期の2.1%増から大幅アップだ。利上げでも衰えない個人消費が成長を引っ張った。米経済の強さが改めて示され、高金利が長期化するのは必至。植田総裁が満を持して、修正に踏み切ってもドルの優位は揺るがないとみられる。
実際、7月会合で長期金利の上限を事実上1%に引き上げたが、円安は収まるどころか、わずか3カ月で10円近くも安くなっている。
27日の衆院予算委員会で立憲民主党の長妻昭議員は「異次元の金融緩和により、日米金利差がどんどん開いて円安が加速する。これは人災だ」と追及。岸田は「物価高の背景には世界的なエネルギー危機や食料危機で世界中の国々が物価高で苦しんでいる。それが基本だ」と円安から目をそらした。
10月の東京都区部の消費者物価指数は前年同月比2.7%上昇。鈍化どころか、前月より伸び率が拡大した。雪印はバターなど12月1日から最大7%値上げすると発表。佐川急便は宅配便の基本運賃を来年4月に平均7%程度引き上げる。
「電気・ガスやガソリンの補助金、それに今回の定額減税はその場しのぎに過ぎない。本当の物価対策は、消費を盛り上げ、日本経済を好転させることで円を強くすることです。ただ、それは一朝一夕で実現するものではない。円安・物価高により生活苦は長く続くことになりそうです」(森岡英樹氏)
“絶望”以外の言葉が見つからない。
●所得・住民税の定額減税 現役人口が減少で「高福祉・低負担」は無理 10/29
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が10月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理が与党幹部らに指示した所得税と住民税の定額減税について解説した。
岸田総理大臣は10月26日、税収増の国民への還元策として、来年度の税制改正で所得税と個人住民税の定額減税を実施するよう、与党幹部らに指示した。具体的には2024年6月に1人につき4万円の減税を行いたい考えを示した。
飯田)住民税非課税世帯には一世帯あたり合わせて10万円。現行で配っていた3万円に加え、7万円を目安に支援を行うと述べています。経済対策は11月2日をめどに取りまとめる考えも示したようです。
現役人口が減少するなかでの「高福祉・低負担」は無理がある
宮家)一般論として言えば、税収が増え、ある程度余裕ができたから国民に還元する。それは当然の判断だと思います。他方で、確かに短期的には増収なのですが、よく考えると、実は今も大きな借金があるわけです。
飯田)そうですね。
宮家)選挙もあるし、政治家ですから、人気を取らなければいけない。与野党ともばら撒き的な部分があるのは辛いところです。私は増税論者ではありませんが、よく問題の本質を考えると、(家庭に例えるなら)我が家でも収入はときどき増えるけれど、あまり増えない時もある。
飯田)収入は。
宮家)しかし支出は増えていく。大家族であり、おじいさん、おばあさんも子どもたちもいますから。となると、やはりお金が掛かります。しかし、収入はそこそこでも、支出は増えてしまっている。その上借金をしている。……これはどこかで何とかしないといけないのです。もちろん国家の財政、特に日本の経済状況を考えたとき、そうではないのだという議論があるのも知っています。
飯田)日本の経済状況を考えたときには。
宮家)私は経済の専門家ではないから、無責任なことを言うつもりはないけれど、一般的に高福祉は高負担で行うものです。ヨーロッパがそうです。
飯田)北欧はそうですね。
宮家)アメリカの場合は、低福祉だから低負担で済むわけです。しかし、日本のサービスはヨーロッパ並みですが、負担はアメリカ並みにする、となるとこれは難しい。
飯田)現役の人口が多かった時代はそれで賄えたけれど。
宮家)当時は何とか賄えましたが、人口が増えず、むしろ減るとなればピラミッドは逆三角形になるわけで、やはりどこかで無理が出てきます。
世代観をすり合わせるのは政治の仕事
飯田)国民民主党の玉木さんや維新の会はそういう話をしようとするけれど、政権与党となると、大票田は逆三角形のピラミッドにおける上の人たちです。
宮家)しかも彼らは投票しますからね。現実的な若い人が育ってこないと、この傾向は変わらないと思います。実は先日、私も70歳になったのです。
飯田)おめでとうございます。
宮家)あと5年したら後期高齢者です。自分の問題として、若い人たちにもお金を回さなければいけないと思うときもあるのですが、そうは言っても、食えない人も居るわけですから。それは何とかして欲しいという気持ちもあり、心は揺れ動いています。
飯田)子や孫の世代を思うと、考えが変わるところもあります。「こうしたらいいのではないか」という政策のメニューがたくさんあるなかで、結局、世代観をすり合わせるのは政治の仕事なのですよね。
宮家)政治にしかできないのです。役人にはできません。法律の制度や予算の使い方を変えなくてはいけないのだから。役人は、法律に基づいて案はつくれるけれど、法律自体を作るのは立法者です。……と言いながらも、なかなかね。
飯田)目先の選挙というよりは、先を考えて欲しい。
宮家)これは理想論なのかも知れませんが。
支持率を気にする岸田政権
飯田)その辺りについて、建前でもいいから青写真を見せるのが演説の機会なのですが。
宮家)選挙演説で財政赤字のことを言うと嫌われてしまい、「勝てなかったらどうするのだ」と言われてしまうから、政治家は辛いと思います。
飯田)岸田政権は「支持率を気にしている」というような報道も出ますが、その部分を感じるところがあるのですね。
宮家)岸田総理はよくやっていると思うのです。特に外交は素晴らしいですよね。安全保障は素晴らしいけれど、どうも国内政策に関しては、与野党間でコンセンサスができそうもないですね。
飯田)防衛費の増額や安保3文書の改定などは、昔であればマスコミも含めて袋叩きにされていたような案件ですよね。
宮家)私も防衛費を2%にするという流れには驚きましたよ。
飯田)防衛費を国内総生産(GDP)比2%にすると。
宮家)2%への言及なんて、昔なら夢のような話だったのだから。
●秘書が一斉にクビに…稲田朋美事務所で異常事態が起きた 10/29
秘書の「円満退職」
かつて「安倍ガールズ」の筆頭格で鳴らし、内閣府特命担当大臣や防衛大臣を歴任した稲田朋美氏。岸田政権では冷や飯を食わされていたが、9月の内閣改造で自民党幹事長代理に就き、久々に露出も増えつつある。
その足元で異変が起きた。政策秘書の大河内茂太氏が事務所を退職、次の衆院選で東京9区から出馬すべく、維新の会の公認候補となったのだ。
「稲田さんといえば、党内で反対の多かったLGBT理解増進法案を推進し、保守派から猛批判されて話題になりました。実は、その方向性を指南したのがリベラルな考えの持ち主の大河内さんだったといいます。彼に対する稲田さんの信頼は絶大で、今回も円満退職だったと聞いています」(安倍派所属議員)
ところが、それを報告するために党本部を訪れた稲田氏に、東京の選挙を取り仕切る都連会長と党政調会長を兼務する、萩生田光一氏からカミナリが落ちた。
稲田事務所の「謎ルール」
「稲田さんにしてみれば、元秘書が東京で他党から選挙に出るわけですから、いちおう仁義を切っておこうと軽い気持ちで行ったみたいです。しかし萩生田さんは『いったい何を考えてるんだ』『もうあんたの秘書はどうでもいい、次の選挙ではあんたがとにかく応援に入れ』と延々説教し、出てきた稲田さんは顔面蒼白になっていました」(自民党関係者)
問題はその直後である。事務所に戻った稲田氏は、何を思ったか、残る2人の秘書に突然「あなたたちにも今月で辞めてもらうから」と告げ、馘首してしまったというのだ。
「実は、稲田事務所の秘書が一斉にクビになったのは今回だけではありません。どうも稲田さんには、秘書が一人辞めると他も辞めさせるという謎のルールがあるらしいんです。
金曜日には『お疲れさま、来週もよろしくね』と言っていたのに、月曜には『今月で終わりね』と言い出すので、恐れられている。姫の『ご乱心』と言うほかありません」(前出・安倍派議員)
「誰もいなくなった」理由がミステリーを通り越して、もはやホラーだ。
●岸田政権「バランス外交」の危険性 イスラエル情勢で「腰砕け」露呈 10/29
イスラエル軍報道官は27日夜(日本時間28日未明)、イスラム原理主義組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへの陸上部隊による越境作戦を拡大すると表明した。1500人近いイスラエル人らが虐殺され、外国人を含む200人以上が人質として拉致されたハマスの大規模テロは決して許されない。一方で、ガザでの民間人の犠牲拡大には人道上の懸念がある。こうしたなか、米軍は26日、シリアにあるイラン革命防衛隊の関連施設2カ所を空爆した。中東情勢が緊迫するなか、岸田文雄政権の外交姿勢が注目されている。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、価値観の一致する欧米諸国と歩調を合わせず、「バランス外交」を模索する岸田政権の危険性に迫った。
米欧G6共同声明に腰が引けた
イスラエル情勢をめぐって、日本の「腰砕け」が露呈している。米欧のG6(先進6カ国)首脳は22日、共同声明を発表し、イスラム原理主義組織ハマスの大規模テロを非難してイスラエルの自衛権を支持する一方、民間人の保護を含む国際人道法の順守を求める姿勢を改めて示した。だが、日本はこれに加わらなかった。
今回のテロ攻撃で、日本は最初から腰が引けていた。
岸田首相は8日、X(旧ツイッター)で、イスラエルを含めた「すべての当事者に自制」を求めた。「テロ」という言葉さえ使っていない。米国、英国、フランス、イタリア、ドイツの5カ国首脳が9日に出した共同声明にも、日本は加わらなかった。
ところが、これを批判されると、外務省の事務次官は11日、慌てて駐日イスラエル大使を外務省に招いて、「テロを断固、非難する」と軌道修正を図った。G7財務相・中央銀行総裁会議が12日に出したハマス非難声明には、日本も加わったが、今回はまた抜けた。
一体、なぜ、これほど迷走するのか。
最大の理由は、外務省や経産省を中心に、「イランやアラブ諸国を敵に回して、原油輸入の9割を中東に頼る日本の資源外交に悪影響を及ぼしたくない」という思惑があるからだ。彼らは、かねて「イランは『親日』国家。日本は、対立する米欧とイランの間に立って、橋渡しができる」などと宣伝してきた。マスコミもお先棒を担いできた。
間違ってはいけない。
日本のテレビドラマ「おしん」が人気を呼ぶなど、イラン国民の間に「親日」感情があったとしても、イランの政治体制は過酷な暴力的支配で国民を抑圧している独裁国家だ。今回のテロ攻撃の背後にも、イランが控えている。
岸田政権は「ハマスを強く非難すれば、イランを怒らせ、ひいてはアラブ諸国との関係も悪化する。ここは中立的なスタンスを取るのが得策」と踏んでいるのだ。Xへの投稿に、それがにじみ出た。
頭にあるのは原油ばかり
だが、イランを敵に回したところで、日本は困らない。
イランからの原油輸入は2008年まで3位を占めていたが、核開発疑惑の制裁で、いまやゼロだ。アラブ全体を敵に回すことにもならない。
イランと組んでいるのは、ハマスやイスラム過激組織「イスラム聖戦」、レバノンのイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」、イエメンの親イラン武装組織「フーシ派」といった民兵組織であって、日本の原油輸入先で上位を占めるサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、クウェートなどはテロを苦々しく思っている。
つまり、イランが大事だったのは昔の話なのだ。
逆に、いまハマスやイランに甘い顔をすれば、いずれ戦火が収まったときに、欧米だけでなく、サウジやUAE、クウェートのような親米スタンスの国からも、「日本は原油欲しさに腰砕けだった」とバカにされるだろう。
松野博一官房長官は23日の記者会見で、日本の共同声明不参加について、「6カ国は誘拐、行方不明者が出ている国だ」と述べた。これでは「自分に災難が及ばなければ、日本はテロを非難しない国」という話になってしまう。まさに「恥の上塗り」である。
欧米は、イランを中国、ロシア、北朝鮮と並ぶ専制独裁勢力の中軸であり、「自由民主主義勢力の脅威」とみなしている。
頭にあるのは原油ばかりで、世界情勢の変化を読み取れず、テロに対する怒りも、人権意識もない日本に「橋渡し」などできるわけがない。「外交の岸田」などと吹聴した政権とマスコミのピンボケが、ますます鮮明になっている。
●4万円減税などの岸田政権の物価高対策 経済専門家「あまりプラスには」 10/29
野村総合研究所の木内登英主席研究員が29日、TBS「サンデーモーニング」(日曜前8・00)にVTR出演。岸田文雄首相が26日、物価高の家計への影響を和らげるため、子どもなどの扶養家族を含めて1人当たり合計4万円の所得税と住民税の減税を来年6月から実施すると表明したことに言及した。
所得税と住民税が課税されない低所得世帯への給付は1世帯7万円とし、減税に先行して年内に始める。減税と給付を明記した経済対策を11月2日に閣議決定することも明らかにした。税収増の還元策の総額は5兆円規模となる。
減税方式は、所得が多いほど減税額が大きくなる「定率」ではなく、所得にかかわらず一定額を差し引く「2024年度税制改正での定額減税」と明言し、関係閣僚と自民、公明両党の幹部に制度設計を急ぐように指示。
政府は4万円減税の内訳を所得税3万円、住民税1万円とする方針。約9000万人が対象で、減税規模は3兆円台半ばとなる。納税者が会社員の場合、企業が給与から税金を天引きする源泉徴収の際に減税する。年明けに召集される通常国会での税制改正法の成立と企業の給与システム変更期間を考慮し、来年6月からの実施とした。
所得税と住民税が非課税世帯への給付は、今年3月の物価高対策で決まった3万円と合わせて計10万円となる。約1500万世帯が対象で、子育て世帯への給付は子どもの人数に応じて上乗せする方針。給付に必要な予算は少なくとも1兆円と見込み、経済対策の裏付けとなる23年度補正予算案で手当てする。開会中の臨時国会での補正予算成立は11月下旬と想定し、その後、地方自治体を通じて給付する。
木内氏は、減税の効果について「時限的な減税だったり給付は貯蓄に回る部分が大きい。あまり経済にとってプラスにはならないと思うし、物価の痛みを和らげる効果もあまり大きくはない」と自身の見解を述べた。そして、「国の予算は税収などでまかなえておらず、毎年借金をしている中、全員に配っている場合ではない」とした上で、「今、必要な政策は、生活が苦しい低所得の方に集中的に給付すること」とした。
●与党対峙の選択肢へ国民民主より共産と連携が効? 10/29
事実上の与野党一騎打ちとなった今月22日投開票の参議院高知・徳島選挙区補選は無所属で出馬した元立憲民主党衆院議員の広田一氏(55)が、公明党推薦で岸田文雄総理自ら選挙区入りし応援した自民党公認・西内健氏(56)に9万票の大差をつけ勝利した。合区選挙区で自民候補が敗れたのは初めて。
当選確実の速報に「立憲、共産など支援の広田候補当確」のテロップが流れたのが印象的だった。国民民主、社民も支援していた。
衆議院長崎補選では自民候補が接戦を制したが、もともと保守地盤の選挙区で接戦に持ち込んだ野党の善戦は岸田政権が国民から如何に評されていないかをうかがわせた。
補選結果を受けて、立憲民主党・泉健太代表は岡田克也幹事長、安住淳国対委員長とともに日本共産党・志位和夫委員長、小池晃書記局長、穀田恵二国対委員長と会談。泉氏は「次期総選挙で与党の議席を最小化するため力を合わせたい」と語り、志位氏は「市民と野党の共闘、連携し力を合わせていくことは大事」と歓迎。
一方、共産党との選挙での連携を拒否している国民民主党の玉木雄一郎代表は泉氏との会談にさえ「生産性がない」とテーブルにつかなかった。原発と安保で沿わないようだ。ただ、この反応に驚くこともない。玉木氏は奈良市内で7月に記者団に「共産や共産と組む政党とは一切調整しない。立憲民主党が共産と組むなら、候補者調整や選挙協力はできない」とすでに語っていた。
立憲としては連合との絡みから国民民主党を無視できないだろうが、衆院小選挙区で勝利に持ち込むには国民民主党を選択するより、日本共産党を選択することが実効性が高いことは明らかだ。「立憲共産党」と自民支持者や保守派から揶揄・攻撃されるだろうが、巷では「自民統一党」と反撃する声もあるようだ。
ともあれ、小選挙区で「野党共闘」の一歩を踏み出す機会が生まれたことは中道・革新支持者にとって大きな選択肢を得る機会になったことは間違いない。
岡田氏は「保守だけでどんどん右に向いていく今の政治でいいのかが問われている。リベラルや真ん中などを包含するような野党が、保守の与党と互いに競い合い切磋琢磨していくことを目指している」と市民対話で語っている。リベラル・真ん中を包含する野党の支持者に選択肢を提供することが、自公政権に対峙する選択肢として重要なのだと思われる。
次期総選挙を占う参院高知・徳島補選、衆院長崎補選は与野党「1勝1敗」となった。年内解散の可能性が全く消えたかといえば、そうとも言えない。国会論戦の成り行き次第ともいえよう。立憲は選挙戦で自民に対峙できる選択肢を提供できるよう努めよ。野党第1党の責任でもある。
●岸田総理「増税メガネ」からの「減税やるやる詐欺」で国民はブチギレ...10/29
「鈍感力のすごさ」はかねてからウワサになっていた
10月23日、臨時国会で所信表明を読み上げる岸田文雄総理は時折、口角をつり上げ、笑みを浮かべていた。ユーザーが画面上にコメントを投稿できる動画配信サービス「ニコニコ動画」でも演説の様子が配信され、「楽しそう」「真面目にやれ」などのコメントがついた。
本来なら笑っている場合ではないはずだ。なぜなら前日に投開票が行われた衆参ダブル補選は、1勝(衆議院長崎4区)1敗(参議院徳島・高知選挙区)で、「もともと自民党が2議席持っていたから完全な敗北」(自民党閣僚経験者)という手痛い結果となったからだ。
しかも報道各社が行った「10月世論調査」で岸田内閣の支持率は、時事通信26・3%、読売新聞34%など軒並み「内閣発足以来最低」を記録した。
にもかかわらず、同じ日に国会で岸田とすれ違った議員も「やけに明るかった」と言う。危機感を抱いている様子がどうも見えない。
なぜなのか?
岸田に近い議員はこう見る。
「補選の結果にホッとしているんです。もちろん本来なら危機感を持つべきタイミングですよ。2敗を免れ、首の皮がつながったからまあ元気にやろうという雰囲気です。『増税メガネ』を気にしての暗さがかなり晴れた」
本人はひと安心かもしれないが、東京都議会議員の補選や宮城の県議選では、自民党が議席を落としている。党内の議員の気持ちを考えれば、もう少し殊勝にしてもよさそうなものだ。実際こうした岸田の姿に不満を述べる議員も少なくない。
しかし、岸田とつき合いの長い議員にとっては、これが岸田の「通常運転」である。
「宏池会では総理になるまえから、『鈍感力』がスゴいと言われてきた。人の気持ちや世間の動向がいまいちわからない『ズレた』ところがあるんです」(全国紙総理番記者)
政治家にとって人の気持ちがわからない「鈍感力」は武器にもなる。安定感やブレなさにもつながるからだ。
”増税メガネ”から”世間知らずの殿様”へ
しかし「鈍感力」は諸刃の剣である。本人に人気があるときはいいが、一度、国民や周囲の議員が「違和感」を抱けば、その「ズレ」は政治家本人に向かって牙を剥く。
国民が増税に不満を抱いていることに気づけず、ついに「増税メガネ」と揶揄されるに至ったのは、そのあらわれだろう。
「当初は圧勝ムードだった」(自民党関係者)衆議院長崎4区が接戦になってしまったのも、岸田の「ズレている行動」の影響が大きかったという。
「長崎4区は北村誠吾元地方創生担当相の死去に伴う補選でしたが、党は北村さんが生前、後継に指名していた県議を蹴って、金子容三氏を候補に決めてしまった。にもかかわらず岸田総理は応援演説で長崎入りすると早速、北村さんの納骨堂を訪れ、『弔い選挙』を演出した。支援者たちの気持ちを逆撫でして、かえって票を減らすことになった」(岸田派関係者)
「鈍感」と評されるのとはチグハグな印象だが、一方で岸田は周知のように、いったん「増税メガネ」と批判されていることに気づくと、それには強く反応してきた。
これまで自分が先導してきた増税の方針をかなぐり捨てて、増税イメージ払拭のために、あらゆる方法を動員する。その様子からは「政治家としてやりたいこと」は伝わってこず、有権者には、日和った人気取りの振る舞いに映る。
しかもその方法が微妙にズレており、国民の気持ちはさらに離れていく。
手始めに向かった先がイトーヨーカドー木場店(江東区)だった。スーパーで物価高を確かめ、庶民と実感を共有しようというわけだ。野菜や精肉コーナーを眺め、顎に手を当て、「確かに高くなっている」と呟いた。
「こんな世間知らずの殿様みたいなことをしては反感を買うのは当然。それがなぜわからないのか。しかも商店街や個人経営のスーパーではなく、わざわざイトーヨーカドーへ行って、ロゴを背景に記者会見を受けている。国民へのパフォーマンスだけではもったいないから、財界への貸し作りを同時にやってしまおうという魂胆です」(全国紙政治部記者)
打ち出している政策にも一貫性が見られない。
「10月13日に菅義偉前首相と会談すると、岸田さんは直後に、それまで菅さんらが中心になって進めてきた、一般ドライバーが自家用車で客を有償で運ぶ『ライドシェア』の導入を、所信表明に盛り込むことを決めてしまった」(政府関係者)
関心などいっさいなかったくせに、人気取りに使えそうなものは短絡的になんでも利用する。
「岸田さんは何をやりたいのかわからない」
菅は周囲にこう漏らす。
セコい
自分の人気のためには、こんなセコいやり方もする。補選投開票直前の10月20日、岸田は唐突に所得税を含む減税策の検討を与党に指示したのだ。
「岸田総理は9月に税収増を国民に『還元』すると述べて、減税を打ち出しましたが、そこでは所得税の減税には触れてこなかった。最初に所得税減税を口にしていたのは与党幹部でした。
ところが、10月17日に自民党と公明党が官邸に提出した経済対策の提言案には『所得税減税』というワードが入っていなかった。実は前日に官邸から『所得税減税は盛り込まないように』というお達しがあったのです。岸田さんが減税を指示するという形をとることで、政権浮揚を狙った」(前出・全国紙政治部記者)
自民党関係者からは「こちらが書こうとしたのを止めてまで、岸田さんのアピールに使われた」と不満の声が上がった。
だが鈍いので、そうした不満に気づけない。補選でひとつ勝てば、とりあえずひと安心して、「ま、いっか」となってしまう。
しかし、岸田の思いに反して、国民も、党内の人間も、ゆっくりと岸田から離れ、政権は土俵際に追い詰められている。
岸田によって非主流派に追いやられた二階俊博元幹事長は、これを敏感に感じ取り、”ポスト岸田”を見据えて、すでに動き出しているという。
「近く菅氏、石破茂氏を交えた会食を開くつもりです」(二階派幹部)
岸田はすでに「死に体」、そのことに気づいていないのは本人だけかもしれない。
●副大臣・政務官、女性ゼロ 10/29
ジェンダーを考える / 岸田文雄内閣は9月の内閣改造で、最多タイ5人の女性閣僚を起用した一方、副大臣・政務官は初めての「女性ゼロ」でした。ジェンダーギャップ指数(2023年)で、146カ国のうち125位と低迷する日本。国政における女性登用について、どう考えますか。
「シンデレラ登用」「刺客」挑戦や継続に壁 伊藤孝恵・参院議員に聞く / 政治の世界で女性リーダーを増やすにはどうしたらよいのか。会社員生活を経て子育てしながら選挙に挑戦して参院議員となり、現在は国民民主党の選対委員長代理として女性候補者の擁立に取り組む伊藤孝恵さん(48)に聞いた。

閣僚への「シンデレラ登用」と副大臣と政務官の「女性ゼロ」で見えた闇を通じて、日本政治の深刻な病巣が浮かび上がりました。
一つ目は、岸田政権は本気で男女共同参画を考えていないこと。二つ目は、人材プールに女性が少なすぎること。三つ目は、各派閥からの候補者リストを丸のみする派閥政治の弊害。四つ目は、当選を重ねないと意思決定権者になれない当選回数の壁。特に若くして閣僚になるなら、二世、三世議員でないと難しい。こうした課題が見えた内閣改造人事でした。
そもそも女性議員が増えない背景には、五つの壁があります。
志を立てる壁。「女のくせに政治?」「母親のくせに選挙に出るなんて」。こうした無意識のバイアスがある。私はリクルート社員で第2子の育休中に参院選に出ました。義両親は大反対でした。
候補者になる壁。公募といっても基本は出来レース。タレントやお金持ち、団体役員などでないとなかなか難しい。刺客として女性が擁立されることもありますが、選挙で生じる家庭の混乱などには皆、興味がなく、ケアしない。
選挙の壁。ここが一番高い。「24時間滅私奉公」と言われる。家事、育児、介護などとの両立が非常に厳しい。所属政党や支援団体などから「これまでの選挙ではこうやってきた」と言われる。
両立の壁。朝から晩まで国会活動があり、夜や週末も会合や催しがある。我が家は子どもが保育園に入れず待機児童だった時期があり、議員会館の自室におもちゃを置いて子どもたちが過ごせるようにしました。すると、「税金で賄われている施設に子どもがいていいのか」など、批判のメールや電話が多数寄せられました。
継続の壁。前述したように、当選回数を重ねないと意思決定権者になれない。そして、選挙のたびにまた「選挙の壁」に戻る。無限ループです。
先日、自民党の女性議員らと話した際、「女性議員を増やすには今まで息子を後継に指名していたところを娘にすればいい」という意見が出ました。「なるほど」と言う人もいた。でも、私は「増えるといえば増えるけど……」とモヤモヤした気持ちでした。
「こんな時は黙ったほうがいい」「この人の言うことは聞く」という政治家の「帝王学」を体得している人たちが、自由にものが言えるでしょうか。二世、三世しか大臣になれないのでしょうか。
「女性議員を増やそう」と言うとき、どんな議員をイメージしていますか。性別が女性というだけで良いのなら、「後継指名を娘に」が一番近道でしょう。でも、そういう話ではない。おかしいことはおかしいとはっきり言える人。いろいろなバックグラウンドをもった人が挑戦できるよう、変えていかなければいけません。
私自身、生涯政治家をやるために活動しているわけではありません。回転ドアのように、別の仕事をしていた人が政治の世界に入り、そこで学んだ経験や人脈をいかしてまた社会に帰っていく。そういう形にして、政治に挑戦しやすい環境を作っていきたいと思います。(聞き手・松井望美)
将来につながるポストなのに/世界的な視野の人材を
アンケートは、10代から90歳以上まで、幅広い年代から回答が寄せられました。
・大臣登用よりも大事 副大臣・政務官はあまり注目されないが、将来の女性活躍につながる重要なポストなのだから、正直大臣登用よりも大事だったと思う。仮に大臣が最多タイでなくても、副大臣・政務官の半数を女性が占めていれば、自民党は女性活躍に本気なのだと感じられたと思う。(静岡、女性、10代)
・支持につながらない 女性を登用したからといって支持することにはつながらない。誰を登用したかではなく、国民にとってプラスとなる、何をしていくかで支持を集めて欲しい。今、国民の目はとても厳しくなっている。(群馬、女性、20代)
・ポーズも重要 政策も適材適所も大切だが、ポーズを見せることだって重要だ。大臣は最多タイなのはいいが、せっかくならばそこまででとまるのではなく政務官まで広げていってほしい。(千葉、男性、20代)
・女性の視点持てない 既得権益を持った男社会の中で成功体験を積んできた男性ばかりが集まる中で、女性やマイノリティーの視点を持つのは不可能に近いと思う。(福岡、女性、40代)
・リクルートの努力を もうちょっと、政治家向きの女性をリクルートする努力が欲しい。二世議員や芸能人出身者ではいまひとつだ。(京都、男性、60代)
・クオータ制が必要 国内の半数は女性。トップのポスト半数は女性が当然になるようにクオータ制度が必要。それに並行して、広範なバックグラウンドの人材が国政に参加しやすいよう供託金を下げてほしい。自民は女性議員も二世議員が多いので。(神奈川、女性、40代)
・女性の代弁者が不在 自民党の女性議員、特に大臣などの役職に就く議員には、本当に女性の立場を理解し、代言してくれるような人間はほぼ皆無。男性か女性かではなく、世界的な視野で日本社会の現状をきちんと捉え、問題意識を持てるような人材を増やしてほしい。(東京、女性、60代)
・能力主義で 性別関係なく能力主義で選ぶべきだ。女性がいたから良いというもんじゃないだろ。(東京、男性、20代)
・家父長制の廃止を 現在の日本は女性の労働力が必要であることは明確です。しかし現政権はいまだに家父長制を重視しています。家父長制は女性を抑圧するものであるため、まずは全政策の策定のベースに、男女平等と家父長制の廃止があるべきです。(兵庫、女性、60代)
《取材後記》 驚きの「適材適所」、問題意識の薄さが残念
54人のなかに女性が一人もいないなんて――。9月15日朝、同僚が事前に入手した新任の副大臣と政務官の名簿をみて、驚いた。正式発表までに差し替えがあるかもしれないと期待したがそのままだった。
発表後に、副大臣と政務官が導入された2001年以降の内閣改造人事の名簿をすべて当たったが、「女性ゼロ」は今回が初めてだった。政権として女性活躍を掲げていながら、なぜこんなことになったのか。再び、驚いた。その後、政務官の一人が女性を巡る問題で辞め、後任に女性が起用されたために「女性イチ」になったものの、当初の判断は覆らない。
女性を起用しなかった理由はなにか。夕方、そう問われた岸田文雄首相は「適材適所。チームとして人選を行った結果」と述べた。その夜、首相周辺は「女性閣僚は最多タイの5人もいるから」「そもそも自民党には女性議員の数が少ない」と説明した。疑問や違和感をぶつけても「メディアは騒ぐかもしれないけどね」。その温度の低さにがくぜんとした。
思い出したのは、前日14日に見た官房副長官の退任セレモニーの光景だ。官邸職員150人以上がエントランスに集まっていた。花束贈呈役の2人以外の女性職員の姿を探したが、私がいた場所からは見つけることはできなかった。
「永田町は男性社会」と先輩からは聞いていたし、取材先だけでなく朝日新聞も含めて官邸詰めの記者は男性が多い。政治部に配属されて4カ月余りが経ち、男性ばかりの光景もすっかり見慣れたと思っていたが、官邸エントランスで目にした男女比は衝撃だった。
2日続けて驚きの出来事が続いたが、一方で、「女性ゼロ」に違和感を持ち、待ったをかける人がいなくても不思議ではないとも感じた。副大臣と政務官は各派閥の意向を踏まえて人選されているが、名簿作成の中心メンバーである官房長官、副長官、事前に報告を受けているであろう首相やその秘書官など、重要な決定をする際に関わる人たちは全員男性だ。
政治家であれ、官僚であれ、女性は母数が少ない。一気に幹部の数を増やすのは難しい、という主張は理解できる。それでも「女性ゼロ」に疑問を持ち、指摘できるような「当たり前」の感覚を持つ人が、官邸内に一人もいなかったことを残念に思う。
今回は、女性閣僚が最多タイの5人だったからこそ、副大臣と政務官の「女性ゼロ」が際立った。官邸中枢の人たちが何も感じなかったのであれば、女性の閣僚起用自体が目的化していて、政権の人気取りに女性を利用していると言われても仕方がないのではないか。閣僚数だけ増やすようなちぐはぐな女性登用は逆効果でしかなく、「適材適所」ともいえない。
女性議員の割合は衆院が10%、参院が26%。自民党では11.8%に過ぎない。そもそもの少なさを解消する取り組みはもちろん、首相を含めた政府高官らの感覚のアップデートが必要だ。男性の多い永田町で、私も「当たり前」を失ってはいけないと感じた。 
 
 
  
  

 

●岸田首相も財務省に「毒されている」…頑なに消費税減税しないワケ 10/30
「遅く、ショボい」経済対策
現在政府・与党は所得税減税1人4万円と、非課税世帯への7万円の給付金を軸に検討しているが、この評判があまり芳しくない。
原稿執筆時だが、テレビ東京と日本経済新聞社が実施した10月の世論調査で岸田内閣の支持率は33%で政権発足以降で最低、前回9月調査から9ポイント減少した。その中で、所得税減税を「適切だとは思わない」は65%だった。
岸田首相としては、満を持して「増税メガネ」を払拭するつもりだったのだろうが、「減税ウソメガネ」とまで揶揄されるようになってしまった。
その理由を本コラムでは考えてみたい。
結論から言うと、「遅く、ショボい」からだ。
先週23日の本コラム〈「増税メガネ」岸田首相の「失策」がここで連発…所得税減税でブレブレの自民党〉でも、財源は50兆円程度あるがそのうちの15兆円程度の規模感があればいいが、その議論がないと指摘している。
さらに、税法改正案が臨時国会か来年度通常国会なのかがポイントであるが、来年のような気がすると懸念している。
悪い予感はあたるもので、23日の本コラム公開後に行われた所信表明演説とその後の展開をみるとわかる。
経済に着目するのはいいが
23日岸田首相は所信表明演説で「経済、経済、経済、私は、何よりも経済に重点を置いていきます。」と語った。
さらに、「変革を力強く進める「供給力の強化」と不安定な足下を固め、物価高を乗り越える「国民への還元」。この二つを「車の両輪」として総合経済対策を取りまとめ、実行してまいります」、「なお、還元措置の具体化に向けて、近く政府与党政策懇談会を開催し、与党の税制調査会における早急な検討を、指示します」としている。
まず、経済に着目するのはいい。そのために、供給と需要に働きかけるのもいい。
ただし、供給のほうは効果がすぐ出ないので、需要対策を先に述べるのが普通だ。供給対策として、賃上げ減税など各種の企業向け減税措置が書かれている。
一方、需要対策として、所得税減税は明記されていない。所信表明で書かれているのは、与党税制調査会への指示だけだ。自民党税制調査会長は、岸田首相のいとこで財務官僚だった宮澤洋一氏だ。
さらに、還元すべきものが「成長による税収の増収分の一部」とされ、金額が書かれていない。
その翌日24日の代表質問において、岸田首相は所得税減税を明言した。また、還元する税収は過去2年度分であるとも答弁した。
来年6月以降の実施
その後、26日の政府与党政策懇談会で、一時的な措置として所得税・個人住民税の減税をするのが最も望ましいと指摘、過去2年間の税収増分を還元すると語った。
所得税減税について、所信表明演説に書かれなかったことは、今臨時国会ではなく来年の通常国会に税法改正案を提出するということだ。
しかも、規模も23日所信表明演説では言及せずに、その後の24,26日に、首相は、過去2年間で所得税・個人住民税の税収が3.5兆円増加する中で国民負担率が高まってきたことも踏まえ「この税収増を国民に税のかたちで直接還元する」と語った。
これで、筆者が冒頭に「遅く、ショボい」という意味がわかるだろう。
所信表明演説で所得税減税を明記すれば、今臨時国会に税法改正案が提出され、最速では年末調整にも間に合う。その場合、規模は15兆円程度だ。
一方、岸田首相が「所信表明演説以降に話したことは、3.5兆円規模で来年税制改正において実施するということは最速で来年6月以降で実施するということだ。
今年年末のはずが来年6月、15兆円のはずが3.5兆円というのだから、まさに「遅く、ショボい」のだ。
ちなみに、筆者は、28日放送の大阪朝日放送「正義のミカタ」において、財源が50兆円もあるから、今年の年末に第1段として15兆円減税、その後、景気回復がうまく行かない場合には二の矢、三の矢として15兆円減税を連発する用意があるというメッセージを打ち出せるとも言った。それと、来年6月に3.5兆円の1回だけというのとでは雲泥の差があるだろう。
財務省の手で踊らされている
消費税減税でなかったことも、人々の不満がある。先週の本コラムでかいたが、これは、消費税については社会保障目的税なので減税はできないと財務省の説明に毒されている。
本コラムで何度も指摘しているが、消費税は先進国でどこでもあるが社会保障目的税なのは日本だけだ。
その経緯を今回は書いておこう。
実は、1990年代までは大蔵省も、消費税は社会保障目的税でないと主張していた。しかし、1999年の自自公連立時に、財務省が当時の小沢一郎自由党党首に話を持ちかけて、消費税を社会保障に使うと予算総則に書いた。ただし、2000年度の政府税制調査会答申では、「諸外国においても消費税等を目的税としている例は見当たらない」と書かれている。
社会保障論からみれば、消費税を社会保障目的税化とするのは間違いだ。社会保障は、日本を含めて給付と負担(保険料)に関係が明確な社会保険方式で運営されている国が多いが、日本のように消費税を社会保障目的税とし税金が半分近く投入されている国はない。税の投入が多いと、給付と負担が不明確になるからだ。
もし、日本でも他の国と同様に消費税が社会保障目的税でなければ、消費税を減税できないとの恫喝とも言える暴論はできない。
なお、給付と負担が不明確になると社会保障費は膨らむおそれがある。この社会保障論から、消費税を社会保障目的税とせずに、保険料で賄うほうが望ましい。保険料は究極の社会保障目的税だ。
ちなみに、保険料といっても、その法的性格は税と同じで強制徴収なのは世界共通である。このため、保険料とはいえ、世界では社会保険「税」として、税と同じ扱いである。ただ、日本は、世界常識になっている「歳入庁」がなく先進国の中で珍しい。
財務省にとって、消費税の社会保障目的税と歳入庁がないのは好都合だ。
保険料は労使折半なので企業負担もあるが、消費税は企業負担がないと経済界は考えて、消費増税前向きだ。その上に、財務省が消費増税と法人税減税のバーターを持ちだすので、さらに経済界は消費増税に前のめりになる。歳入庁がないのは国税庁支配力の維持に好都合だ。岸田首相も財務省の手の上で踊らされている。
●衆院任期折り返し 解散風の余波が目につく 10/30
国会が浮き足立っていないか。地に足を着け、国民生活を守るための政策論議を深めねばならない。
衆院議員は任期の折り返しを迎えた。国民から4年間の負託を受け、取り組むべき課題は多いにもかかわらず、この数カ月は解散・総選挙の観測が消えない。
発端は岸田文雄首相が自ら吹かせた解散風だ。今年6月の通常国会最終盤の記者会見で「いつが適切か、諸般の情勢を総合して判断していく」と解散の可能性をにおわせた。その後に見送りを表明した際に「重要法案は全て成立させられた。解散風の効果は絶大だ」と語ったとされる。
近く取りまとめる経済対策もそうだ。裏付けとなる補正予算案の国会提出の時期は明言を避けていたため、臨時国会の冒頭解散などさまざまな憶測を呼んだ経緯がある。
これほど首相が発信源となって解散が取り沙汰されるのは異例だろう。権力の味をしめ、もてあそんでいるとのそしりは免れまい。
直近の共同通信の世論調査では内閣支持率が過去最低の30%台前半に落ち込み、先の衆参2補欠選挙で自民党は1勝1敗に終わった。逆風に日程的な制約が重なり、自民内からも「年内の解散・総選挙は困難」との声が広がる。
それでも解散風の余波か、与野党は選挙に前のめり気味だ。物価高対策が焦点となっている臨時国会の代表質問では、所得税の減税を与党に指示した首相に対し、野党側は現金給付や消費税率の引き下げといった独自の対策をアピールした。次期衆院選を意識しているのは明白だろう。各党が人気取りで「ばらまき」を競った感は否めない。
そもそも、憲法で解散は7条と69条に規定されている。「69条解散」は内閣不信任決議案が可決された時で事例は少なく、大半は「7条解散」だ。7条は解散を内閣の助言と承認に基づく天皇の国事行為と定めている。天皇は国政に関する権能を有せず、事実上首相が判断するため「首相の専権事項」とされる。
解散権を巡っては、首相が政権に有利なタイミングで解散できることを問題視する意見がある。1978年に故保利茂衆院議長が作成した議長見解は「内閣の恣意(しい)によるものではなく、あくまで国会が混乱し、国政に重大な支障を与える場合に、立法府と行政府の関係を正常化するためのもの」と乱用を戒めている。
それでも「党利党略」と批判されるケースが目立つ。議員の地位を失わせる強権がちらつかされては政治の安定を欠こう。立憲民主党は首相による恣意的な解散を制約する法案提出を目指している。与野党で検討してはどうか。
首相は次期衆院選で勝利を収め、来秋の自民党総裁選を無投票で乗り切るシナリオを描いているとされる。自身の戦略のために解散権でにらみを利かせるだけでは、この先も政権浮揚はかなうまい。
● “経済対策” “旧統一教会被害者救済” 衆参予算委で論戦続く 10/30
国会は今週、衆参両院の予算委員会で岸田総理大臣らが出席して質疑が行われます。
政府・与党が検討する減税と給付を組み合わせた経済対策や、旧統一教会の被害者を救済するための法整備などをめぐって与野党の論戦が続きます。
国会は先週、岸田総理大臣の所信表明演説と各党の代表質問が行われたのに続いて、衆議院予算委員会で基本的質疑が行われ、与野党の論戦が始まりました。
序盤の論戦では物価高対策が焦点の1つになっていて、自民党の萩生田政務調査会長は、NHKの「日曜討論」で、政府・与党が検討する減税と給付を組み合わせた経済対策について「最終的な目標はデフレからの完全脱却で、賃上げを継続的に底上げしていく」と述べました。
一方、立憲民主党の長妻政務調査会長は「減税の実施は来年6月と遅い。給付は年内にできる。非効率なことは考え直してほしい」と求めました。
衆議院予算委員会では30日も基本的質疑が行われ、野党各党が質問に立ち、31日と11月1日は参議院予算委員会で質疑が行われることになっていて、政府・与党が検討する経済対策や、旧統一教会の被害者を救済するための法整備などをめぐって与野党の論戦が続きます。
●岸田文雄首相、所得税減税と防衛増税「矛盾せず」 10/30
岸田文雄首相は30日の衆院予算委員会で少子化対策にかかる年3兆円台半ばの財源確保策を巡り説明した。「徹底した歳出改革を行った上で国民に実質的な追加負担を生じさせないことをめざす」と言明した。
防衛力強化のための増税を巡っては経済対策で検討する所得税などの減税と矛盾しないと強調した。
立憲民主党が増税と減税との整合性を追及したのに答えた。首相は「防衛力強化の中身は経済や物価に最大限配慮した上で実施の時期を決める。両者は矛盾するものではない」と反論した。
政府は2023〜27年度の5年間の防衛費総額を43兆円ほどにする方針だ。増額分の財源として法人、所得、たばこ各税の増税を想定する。
首相はマイナンバーカードと健康保険証を一体にした「マイナ保険証」について国民の不安払拭の取り組みを進める意向を示した。利用率が低いことに触れ「メリットについても積極的に発信していく」と強調した。
●防衛増税と所得減税は「矛盾しない」 衆院予算委で岸田総理が認識 10/30
国会では、衆議院の予算委員会が行われており、政府・与党が検討している所得税などの減税をめぐって野党側の追及が続いています。国会記者会館から中継です。
立憲民主党は、岸田総理が訴える「減税」の評判が悪いのは、防衛力強化や少子化対策の財源が安定的でないことが国民に見透かされているからだなどと問いただしました。
立憲民主党逢坂誠二代表代行「(防衛費は)5年間で43兆(円)、恒久的安定財源は増税だけ。その他は全く安定的な財源ではない。こんな状況の中で総理が減税減税って言うから、国民の皆さんはそんなこと大丈夫なのかって、そう思うんじゃないですか」
岸田総理「経済政策と防衛力の強化、これはそれぞれ重要な課題であり、そして防衛力の強化も、経済あるいは賃金、物価等に最大限配慮した上で、実施の時期等も決めるなど、経済に最大限、配慮した形で行うということであります」
岸田総理は財源についてこのように述べたうえで、防衛力強化に伴う増税と所得税などの減税について、「両者は矛盾するものではないと考えている」との見方を示しました。
また、野党側は国の基金のうち経済産業省が所管する17の基金が“休眠状態”にあり、管理費だけで年間2億円以上が無駄に使われていると指摘しました。
岸田総理は「交付が既に終了し、事業のモニタリングなどの管理業務を終了した基金は、速やかに廃止をし、国庫に返納すべき」との認識を示しました。
●岸田首相「国民負担率増やさず」 10/30
衆院予算委員会は30日午前、岸田文雄首相と全閣僚が出席し、基本的質疑を行った。首相は少子化対策の財源について「所得を増やす中で、国民の負担率は決して増やさないよう制度を構築していきたい」と述べた。
●岸田首相「国民負担率増やさず」 少子化対策財源で―衆院予算委 10/30
衆院予算委員会は30日午前、岸田文雄首相と全閣僚が出席し、基本的質疑を行った。首相は少子化対策の財源について「所得を増やす中で、国民の負担率は決して増やさないよう制度を構築していきたい」と述べた。
首相は「児童扶養手当の拡充は重要であり、『こども大綱』の策定に向けて具体化していく」と明言。防衛費と少子化対策の財源確保のために歳出改革を進める方針も表明し、このうち少子化対策については「社会保障に関わる部分の歳出改革だ」と説明した。
所得税と住民税の定額減税に向け「これからも丁寧に説明を続けていかなければならない」と語った。複数年度にわたる支出を可能にする国の基金に関し、「適正運営について、不断の管理を続けていくことは重要だ」と指摘した。立憲民主党の逢坂誠二代表代行らへの答弁。
日本維新の会の漆間譲司氏は、憲法改正への取り組みをただした。首相は「目の前の(自民党総裁)任期中に改正できるよう最大限努力する」と強調。「党内議論が加速するよう責任を持って取り組んでいく」と述べた。
●少子化対策、追加負担なし目指す 首相、財源「歳出改革で」 10/30
岸田文雄首相は30日の衆院予算委員会で少子化対策を巡り、追加で必要となる最大で年3兆円台半ばの財源について「徹底した歳出改革を行った上で国民に実質的な追加負担を生じさせないことを目指す。年末に向けて考えていく」と語った。防衛力強化のための増税と、経済対策として掲げる減税の整合性に関し「防衛力強化の中身は経済や物価に最大限配慮した上で実施の時期を決める。両者は矛盾するものではない」と述べた。
立憲民主党の逢坂誠二氏は2023〜27年度の5年間で防衛費を約43兆円に増やす政府方針を踏まえ、減税の具体策を追及した。首相は経済対策について「これからも丁寧に説明を続けていかなければならない」と強調。立民の早稲田夕季氏は「偽装減税、増税隠し減税、選挙対策減税だ」と批判した。
首相は少子化対策を巡り「所得を増やす中で、国民の負担率は決して増やさないよう制度を構築していきたい」とも説明した。
衆院予算委は首相と全閣僚が出席し、2日目の基本的質疑を実施した。
●野党側、所得税などの定額減税を厳しく追及 衆院予算委 10/30
国会です。衆議院の予算委員会では、野党側は岸田政権が打ち出した所得税などの定額減税を30日も厳しく追及しています。
立憲民主党の早稲田議員は、所得減税などへの国民の理解が深まらないのは、減税が一時的で、その後に防衛増税など多くの増税が控えている「偽装減税」だからだと批判しました。
立憲民主党・早稲田夕季議員「この反対のほうが多い減税、これは偽装減税だからじゃないですか。選挙目当て、一時的の減税、そして、その陰には、これからの国民負担増がどんどん増えるということがわかっている。こういうことをだまさずに、国民の皆さんに、しっかりと説明をすべきではないでしょうか」
岸田首相「今まさに、その正念場を迎えているときに、物価高騰で国民が苦しんでいる。よって賃金が物価高騰に追いつくまでは、一時的に国民生活を支えなければならないということで、所得減税等、国民への還元、これを考えたと」
早稲田議員は「偽装減税」だと批判した理由について、防衛増税に加え「異次元の少子化対策の財源論も見えてこない」ためと指摘しました。
これに対して、岸田首相は所得減税を行う理由について「デフレから完全脱却を果たす千載一遇のチャンスだ」と強調しました。また、少子化対策の財源確保については「国民の負担率は増やさないよう制度を構築したい」と述べました。
●閣僚の資質や減税...与野党論戦 野党追及「偽装減税だ」 10/30
国会では、先週に続いて衆議院の予算委員会が開かれ、野党側は、加藤少子化担当相など、新閣僚の資質について追及を本格化させている。
国会記者会館から、フジテレビ政治部・鈴木杏実記者が中継でお伝えする。
野党側は、岸田政権の目玉閣僚として注目度の高い加藤大臣をターゲットに、加藤大臣が実の母親の所有する建物を事務所として利用し、賃料を支払っていた問題を追及した。
加藤少子化相「別人格である実母の個人情報であるので、資料を提供することは慎重に考える必要があると思う」
また野党は、防衛増税などを念頭に、岸田首相が表明した所得税減税は「偽装減税」だと追及した。
立憲民主党・早稲田夕季衆院議員「偽装減税、増税隠し減税、選挙対策減税である」
岸田首相「経済対策を進めて賃金、所得が増えることをもって、防衛とか子育てとか、しっかりとした取り組みを進める際に、国民の皆さんにも一定の負担をお願いしていける体制をつくっていくことが重要である」
岸田首相は、少子化対策の財減について、「国民に実質的な負担を生じさせないことを目指す」と強調した。
●原発廃液事故は「報道で知った」 復興相答弁、立民「非常に問題」 10/30
土屋品子復興相は30日の衆院予算委員会で、東京電力福島第1原発で作業員が放射性物質を含む廃液を浴びた事故について「報道で知った次第だ」と明らかにした。質問に立った立憲民主党の岡本章子氏から「非常に問題だ」と指摘されると「いろいろな省庁と連携すべきだと反省した」と応じた。
岸田文雄首相は「私は秘書官から報告を受けた」と説明。土屋氏の答弁を受けて「関係省庁の連携や、意思疎通は重要だ。いま一度点検させたい」と強調した。土屋氏は「復興庁は司令塔。これからしっかりと機能を果たしたい」と述べた。
●岸田内閣支持率6カ月連続下落でついに危険水域… 10/30
ANNが10月28〜29日に行った世論調査で、岸田内閣の支持率が6カ月連続で下落し、政権発足以降、過去最低の26.9%になったと報じられた。
政界では一般的に内閣支持率が3割台を割り込むと退陣の言葉がチラつく「危険水域」と言われるが、岸田内閣の場合、ANNの調査では前回から3.8ポイントも急落。このままだと最悪の場合、2割台を切るかもしれない。
岸田文雄首相(66)は名誉挽回とばかり、過去最高となった税収を国民に「還元する」と言い出し、所得税などを定額で4万円減税することを軸に検討を進めているものの、この方針を「評価しない」との回答は56%にも達しているから、実現しても政権浮揚策に結びつかない可能性が高い。
2001年の森内閣末期の支持率8.6%には及ばないものの、岸田内閣の支持率2割台に対して衝撃を受けている人が多いのかと思いきや、ネット上での反応は違った。岸田内閣が「まだ2割台を維持」していることに対し、驚いている声が少なくないのだ。
「4人に1人が岸田政権支持」に疑問の声
《まだ?まだ?4人に1人が岸田政権を支持しているのか?マジか》
《岸田さんが今やっていることを見れば、支持率26%は高すぎるだろう。支持者って何見てるの?》
《消費税も減税しない。トリガー条項も発動しない。国民が求めていることは何もしないが、身内や取り巻きには手厚い。支持率1割あるかないかだろ》
昨年11月末の参院本会議で、自民党議員から急落している政権支持率に対する受け止めを問われた岸田首相は、「政権に対して厳しい御意見があることは、これは真摯に、そして謙虚に、丁寧に向き合っていかなければならない、このように考えております」「何が国民にとってベストなのかを考えながら、総理大臣として決断と実行を積み重ね、一つ一つ結果を出すことが、結果として国民の皆さんからの支持につながる」などと答弁していた。
あれから約1年過ぎ、当時よりも支持率がさらに坂道を転げ落ちるかのような状況は、岸田首相がこれまで何ら結果を出しておらず、「国民にとって何がベストなのか」についても全く考えていない証左と言っていい。
《もしかしたら、サメの脳みそ、森政権のどん底支持率8%を切る日も近いのでは…》
《最低支持率は森か岸田か。興味深いな》
SNS上でこんな投稿がみられるのも無理はない。
●岸田政権ゴリ押し「マイナ保険証一本化」に“黄信号” 利用率5カ月連続減少 10/30
低空飛行どころか“墜落”しつつある。健康保険証とマイナカードが一体化したマイナ保険証の利用率のことだ。
厚労省によると、マイナ保険証の9月の利用率は4.5%。8月の4.7%からさらに落ち込み、5カ月連続の減少となった。
マイナカード普及の旗振り役である河野デジタル相は29日、利用率について「便利ということが伝われば増えていくと思うので、今のところあまり心配はしていない」と強弁。神奈川県二宮町で開かれたマイナ保険証の体験会を視察後、記者団に語った。
河野氏は体験会で「(マイナ保険証は)簡単に使える」「病院や薬局に出かける際は使って欲しい」と呼びかけたが、マイナ保険証は登録率7割超にもかかわらず、利用率は下落の一途だ。保団連の竹田智雄副会長(竹田クリニック院長)がこう言う。
トラブルや混乱絶えず、医療機関は負担増
「政府は来秋に予定している健康保険証の廃止とマイナ保険証への一本化について、『国民の不安払拭が大前提』と繰り返してきました。しかし、利用率4.5%の数字こそ、不安払拭ができていないことの表れだと思います。正直、河野さんが心配していない方がおかしい。患者さんには高齢者が多く、マイナ保険証の使い方が分からなかったり、窓口負担の割合が誤表示されたり、とにかくトラブルや混乱が絶えません。患者さんだけでなく、医療機関にとっても逆に業務負担が増え、メリットなんて感じられない。政府はマイナ保険証の利便性を強調していますが、医療現場の実態との乖離が激しいのが実態です」
利用率が低いままだと、来秋の保険証廃止に影響する可能性がある。
岸田首相が「(マイナンバーの)ひも付けの総点検と修正作業を見定め、さらなる期間が必要とされた場合には必要な対応を行う」と明言している以上、利用率の低さは無視できないはず。保険証廃止に“黄信号”だ。
「マイナ保険証が本当に便利なら、健康保険証との併用を認めても勝手に利用率は上がっていくはずです。今の利用率のまま保険証廃止に突き進むことは到底、受け入れられません」(竹田智雄氏)
政府のゴリ押しには、ほとほとウンザリする。
●「謙虚に受け止める」ANN世論調査で所得減税評価しない56%受け岸田総理 10/30
岸田総理大臣は、ANNの世論調査で所得減税などの検討を「評価しない」とした人が半数を超えたことについて、「謙虚に受け止めなければならない」と述べました。
立憲民主党 早稲田衆院議員:「所得減税など定額で4万円減税をすることを軸に検討、この政策をどう評価しますか。これについては評価しないが56、そして評価するの31の2倍近くとなっております」
岸田総理大臣:「国民の声、これは謙虚に受け止めなければならないと思いますが、30年続いたデフレから脱却できるかどうか、正念場を迎えている。そこにあたって国民への還元をしっかり考えていかなければならない」
また、内閣支持率が政権発足以来、最低となったことについて岸田総理は「丁寧に説明を続けていかなければならない」と答えました。
●岸田内閣を支持しないワケ「短期的ではなく長期的に国民は考えている」 10/30
羽鳥慎一アナウンサー(52)が30日、司会を務めるテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」に出演。ANNの世論調査で、岸田内閣の支持率が6カ月連続で下落し、政権発足以降、過去最低の26・9%になったことについて言及した。
番組では、ANNは28、29日に世論調査を行ったとし、所得税などを定額で4万円減税することを軸に政府が検討を進めていることについては、「評価しない」と答えた人が半数を超えて56%、「評価する」が31%。「評価しない」主な理由については、「政権の人気取りだと思うから」と答えた人が最も多く、41%だったとした。
また、住民税の非課税世帯などを対象にした給付金の支給については、「評価しない」が48%で、「評価する」が41%などと伝えた。
羽鳥アナは、岸田内閣を「評価しない」主な理由で最も多かったのが「政権の人気取りだと思うから」で、次が「財政への懸念があるから」だったことに言及し、「短期的ではなくて、長期的にって国民は考えているっていうこと」と指摘していた。
●減税2年超も!?岸田政権また迷走 世論の不信・不満、内閣支持率下落 10/30
岸田文雄首相が自公与党に検討を指示した所得税など「1人当たり4万円」の減税策の評判がよくない。政権浮揚の切り札のはずだったが、内閣支持率の下落基調は止まらず、日経新聞の世論調査では「(物価高対策として所得税減税は)適切だとは思わない」との回答が65%に上った。減税期間についても、自民党税制調査会は「1年限り」とすることでおおむね一致したが、この程度の減税策では物価高や実質賃金の減少に対応できるわけもない。危機感を強める与党内からは「1年限りと決定しているわけではない」「1回で終わらない」との声が上がっている。岸田政権のさらなる迷走が避けられない状況だ。
「今の段階で1年限りと決定しているわけではないが、永遠にできることでもない」
自民党の萩生田光一政調会長は29日のNHK番組「日曜討論」で、注目の減税の期間をめぐり、こう語った。
公明党の山口那津男代表は28日、福岡市で街頭演説し、減税や給付をめぐり、「物価高が続くなら、1回で終わりにはならない」と述べた。その後、景気が悪化した場合に減税期間を延長する「景気条項」について、「経済と賃上げの状況をよく見極めながら検討するべきだ」と記者団に語った。
減税をめぐる自公与党の方針が揺らいでいる。
自民、公明両党の税調は27日、非公式の幹部会合を開き、所得税と住民税の減税期間について協議した。宮沢洋一税調会長は会合後、「当然1年限りという認識だ」としたうえで、他の幹部も同様の考えだと明言していた。
前出の景気条項についても、宮沢氏は「まったくない」として、減税は2024年の1年で終える考えを強調していたのだ。ただ、公明党の税調幹部は「今後の議論だ」と含みを持たせていた。
岸田政権は扶養家族を含め、「1人当たり4万円」の減税を来年6月から、所得税と住民税が非課税の「低所得世帯への1世帯7万円の給付」を年内に始める方針だが、1年限り、1回限りの減税や給付に対して世論の見方は厳しい。
日経新聞とテレビ東京が27〜29日に実施した世論調査では、岸田内閣の支持率が33%となり、21年10月の政権発足後、最低を記録した。支持しない理由のトップは「政策が悪い」で52%だった。物価高対策としての所得税減税を「適切だとは思わない」とする回答は65%で、「適切だと思う」の24%を大幅に上回った。
臨時国会の所信表明演説で、「経済! 経済! 経済!」と強調した岸田首相の経済政策が有権者に受け入れられていないことを示している。
政治評論家の小林吉弥氏は「防衛増税が既定路線であることや、減税案を小出しするなど二転三転する岸田政権の姿勢に『国民の不信感』が反映されている。岸田首相自身にも『確固とした考え方がない』ようにみられている。支持率を上げる材料は見当たらず、ここまで混迷すると減税の問題は政権の足を引っ張る要因になっているといわざるを得ない」との見方を示す。
萩生田、山口両氏の発言は、世論の不信・不満を受けて、方針転換の可能性を示唆したものだが、岸田首相が「聞く力」を発揮することで支持率が下げ止まるかどうかは分からない。
これまでも世論を意識しすぎた結果、政策が迷走し、有権者の不信感を買っているとも指摘されている。
岸田首相はSNSなどで広がった「増税」イメージを払拭するために、「減税」を打ち出したとみられる。「成長の成果である税収増を国民に適切に還元する」と強調するが、中身は変遷が目立つ。
当初は賃上げや半導体などへの投資を支援する法人税減税など企業減税が軸だったが、家計への恩恵が少ないといった批判が出ると、「所得税減税」の検討を指示した。一方で、消費税の減税については否定している。
早稲田大学公共政策研究所招聘研究員の渡瀬裕哉氏は「有権者に『支持率が上がらないから嫌々ながら減税する』という姿勢が見透かされているのではないか。税のあり方は、国のあり方や政治理念も示すものだが、場当たり的で選挙対策でしか物事を考えていないことを示している。本来は『恒久減税』を実施してもいい局面だが、断行できないのは理念のなさの表れだ」と語る。
1998年の参院選では、当時の橋本龍太郎政権が所得税について、一時的な「特別減税」か「恒久減税」かをめぐり発言が迷走したあげく、自民党は大敗した。
前出の小林氏は「当時の橋本政権も『減税してやる』というような上から目線の姿勢が有権者の反感を買う決定打となったが、岸田政権にも同様の空気を感じる。補正予算をしっかり組んで、国民の判断に委ねるしかないが、年内解散はやはり厳しい状況だ。普通ならば『岸田降ろし』が起きてもおかしくない段階だ。もはや政権を維持している要因は『ポスト岸田』がいないという点に尽きるのではないか」と指摘した。
●岸田首相捨て身の減税方針にムッとしつつも口をつぐむ麻生副総裁 10/30
岸田文雄首相が検討を指示したいわゆる税収増の還元策について、政府は来年度に限り1人あたり年4万円差し引く「定額減税」を実施する方向だ。住民税非課税世帯については1世帯あたり約7万円の現金給付も検討されている。これについて渋い顔をしているのが、自民党の麻生太郎副総裁なのだという。
「降って湧いたような減税方針について、与党のみならず野党も冷ややかな視線を投げかけています。“どうせ人気取りでしょ。それで人気なんか出ないよ”との評価まで一致しています」と、政治部デスク。
「これまで官房副長官を務めてきた木原誠二自民党幹事長代理兼政調会長特別補佐や元宿仁自民党事務総長、そして公明党といった面々で話を進めたと言われています。木原氏は官邸を離れても首相の懐刀ですし、元宿氏は長年、自民党で選挙を取り仕切ってきた人物。これらの顔ぶれから解散総選挙対策とみられても不思議ではありませんね」(同)
防衛増税宣言から1年弱
とはいえ、総選挙が近いということではないらしい。
「先の補選で2敗は回避できたものの1勝1敗で政権批判が根深いことを意識させるものでした。解散総選挙に打って出たところで勝てない、そんな勇気はないと足元を見るような見方も少なからずありますね。岸田首相は解散をちらつかせることで各方面をけん制したいとの思惑があるようですが、実際、年内解散の可能性は極めて低いと見ています」(同)
岸田首相は「低位安定」する内閣支持率好転のため、様々な手を打ってきたが、いずれも奏功することはなかった。そこで出してきたのが奥の手とされる減税策だった。
「去年末に岸田首相は防衛増税を打ちだしましたね。将来世代に先送りするのではなく責任をもって今を生きる我々が対応していくというスタンスだったわけですが、物価高という現状はあるにせよ1年も経たないうちに減税を打ち出したことで、戸惑いの声が拡がっています。加えて今回の所得減税を進めるとしても実施は来年6月。岸田政権が続いているのか否かも疑問視されつつあります。支持率アップのために減税以外にできることはなく“最後の手段”ではないかとの指摘もありますが、思った以上の効果は得られなさそうで、いよいよ外堀が埋まってしまった印象もありますね」(同)
麻生氏のスタンス
一連の岸田首相の「乱心」を苦々しく見てきたのが、麻生自民党副総裁だったという。
「財務相を長らく務め、大臣を辞めた後も財務省寄りのスタンスを継続していることから、減税についてはムッとしていたようです。一方で、岸田政権の生みの親として支えることを公言している立場もあり“減税を再考すべし”とも言いづらい。ひとまず静観をしているようですね」(同)
首相経験者として、政権浮揚策を何とか打ち出そうとする岸田首相の思いに一定の理解を示しているということなのだろう。
「麻生氏は安倍晋三元首相なき後、キングメーカーとしての立場を改めて意識しているようですが、その点、“次の首相のメドが立たない”という思いも抱えているとのこと。ここ最近、次期総選挙に出馬せず、子息に地盤を譲ると一部で報じられましたが、本人にそのつもりは一切なく、国会議員を続ける意向のようです。長らく麻生氏を支えてきた秘書らの側近も“オヤジがそのつもりならいつまでも”との思いがあり、まだまだキングメーカーとして君臨することになりそうです」(同)
在職たった358日で政権を野党に明け渡すことになった麻生氏だからできるアドバイスというものもあるのかもしれないが……。 
●「偽装減税、増税隠し減税、選挙対策減税だ!」“減税国会”白熱 10/30
10月30日の衆議院予算委員会。野党が追及したのは、世間も関心を寄せる“岸田減税”だ。
“減税国会”で激論 詰め寄る場面も
立憲民主党の逢坂代表代行は、「防衛力強化や少子化対策の財源が安定的ではない」などと岸田首相を追及した。
立憲民主党 逢坂代表代行: 本来伸びるであろうはずの予算を伸びないように抑えたから、それが財源になる。そんなの詭弁ですよ!(防衛費は)5年間で43兆円、恒久的安定財源は増税だけ。こんな状況の中で総理が減税減税って言うから、国民の皆さんはそんなこと大丈夫なのかって、そう思うんじゃないですか。
岸田首相: 経済政策と防衛力の強化はそれぞれ重要な課題であり、そして防衛力の強化も経済に最大限配慮した形で行う、ということであります。
その上で岸田首相は、防衛力強化のための増税と、一時的な減税による経済対策は矛盾しないと強調した。
“異次元の少子化対策”をめぐる議論も白熱。政府がその財源について「増税しない」などとしている点について、野党側は「本当に国民の負担は増えないのか」と迫った。
立憲民主党 逢坂代表代行: 追加負担しない、増税しないということは、国民の負担は1円たりとも増やさないという意味でしょうか。
岸田首相: 国民に実質的な負担を生じさせないことを目指す。これを明記しております。
この答弁に「目指すだけか!」「目指すだけじゃダメだぞ!」とのヤジも飛んだ。
立憲民主党 逢坂代表代行: (国民の負担は)1円も増えないんですね?増えるんですか?いかがですか。
岸田首相: 実質的な追加負担は生じさせない。これを目指していくと。
続いて質問に立った立憲民主党の早稲田議員も、国民の負担について追及した。
立憲民主党 早稲田議員: 社会保険料は上がるんですか?下がるんですか?
岸田首相への質問に委員長は、加藤少子化相を指名。早稲田議員が「総理にお願いします!」と求める中、加藤大臣は席を立ったものの、行ったり来たり…。戸惑いながら答弁に立つと、「時間の無駄だって!」との声が上がった。
岸田首相は、少子化対策の財源についてこう繰り返した。
岸田首相: 所得を増やす中にあって(国民の)負担の率は決して増えることがないよう、制度を構築していきたい。
立憲民主党 早稲田議員: 1回きりの4万円の減税で、ごまかしていただきたくない。偽装減税、増税隠し減税、選挙対策減税であると私は思います。
岸田首相: 経済対策を進めて賃金・所得が増えることをもって、国民の皆さんに一定の負担をお願いしていける。こうした体制を作っていくことが重要であると考えています。
熱を帯びる“減税国会”。31日は舞台を参議院に移し、議論が交わされる。
 
 
 
 

 

●岸田首相、少子化財源あいまい答弁 野党「偽装減税」追及 10/31
30日の衆院予算委員会の質疑では、少子化対策など政権の看板施策に関する財源確保策について、岸田文雄首相のあいまいな答弁が目立った。
野党は新たに首相が打ち出した所得税減税との整合性も追及し、所得税引き下げは「偽装減税」と批判。内閣支持率の下落も続き、与党には危機感が広がった。
「社会保険料は上がるのか、下がるのか」。立憲民主党の早稲田夕季氏は、少子化対策の財源で見込まれる公的医療保険など社会保険料の上乗せについて首相にただした。首相は「所得を増やす中で負担率は決して増やさない」と説明。保険料の上昇自体に含みを持たせつつ、詳しい説明は一貫して避け続けた。
政府は歳出改革などを通じ、少子化対策で国民に実質的な追加負担を生じさせないと説明してきた。立民の逢坂誠二氏は「1円たりとも増やさないという意味か」と迫ったが、首相は「年末に向けて考えていく」との答弁に終始した。
逢坂氏は政府が少子化対策以外に防衛費増額でも歳出改革を当て込んでいることを取り上げ、「歳出改革は『打ち出の小づち』か。どれくらい財源が出てくるのか」と具体的な「削減メニュー」を質問。しかし、首相は「防衛力強化での歳出改革は社会保障費以外の部分からだ」と述べ、やりとりはかみ合わなかった。
こうした答弁姿勢に、他の野党からも「詭弁(きべん)だ。実質的な社会保険料の増額ではないか」(日本維新の会・藤田文武氏)「首相は医療分野などの歳出カットをしようとしている」(共産党・宮本徹氏)と批判が相次いだ。
首相は26日に総合経済対策として、与党内の議論を飛び越える形で、来年6月からの定額減税や低所得者世帯への給付金支給を表明した。これに比べ、財源論での歯切れの悪さは鮮明だ。内閣支持率が過去最低水準に低迷する中、「負担増」に直結する議論を避けたいとの思惑がにじむ。
防衛費増額や少子化対策と所得税減税との関係について、首相は30日も「矛盾はない」と改めて理解を求めた。だが、野党には「増税か減税か分からないから、これだけ(支持率が)下がっているのではないか。『偽装減税』という言葉を使うしかない」(立民・早稲田氏)と切り返された。
首相と野党の応酬を聞いた自民党の閣僚経験者は「苦しい答弁だ。野党の指摘が当たっており、防衛費も子育て支援もきちんとした説明ができていない」と苦しげな表情を浮かべた。公明党関係者は「首相の説明が国民に信用されなくなっている」と踏み込み、「早期の衆院解散はますます難しい」との見方を示した。 
●税収還元策の効果 減税も給付金もショボすぎる上に実施も遅すぎ 10/31
現在、政府・与党は所得税減税1人4万円と、非課税世帯への7万円の給付金を軸に検討しているが、この案では経済的な効果はどの程度あるのか。
所信表明演説では、所得税減税は明記されなかったが、その翌日の代表質問において、岸田文雄首相は所得税減税を明言した。また、還元する税収は過去2年度分であるとも答弁した。
経済対策を検討する際、まず財源を考える。今回の場合、需要面での成長による税収増の還元という設定だが、所信表明演説では「成長による税収の増収分の一部」とされ、金額が書かれなかった。
還元すべきは成長・円安による政府寄与分全てだ。具体的には、過去2年度分と今年度の一般会計の税収増加分のほか、過去の経済対策の残余、外国為替資金特別会計など特別会計の増収分だ。既に本コラムで書いたように50兆円程度になる。
今年度の補正予算なのに、過去2年度分だけを還元すべき分とする岸田政権の方法はおかしい。物価高対策というのであれば、物価高にも影響のある円安のメリットを最大限取り入れて、今年度の税収増と外為特会などでの増収分も取り入れないといけない。政府の取り過ぎを吐き出して、初めて経済は正常化する。
もちろん、現在のGDPギャップ(潜在GDPと実際のGDPの差)は所信表明に書かれているように解消されたとは筆者はみておらず、15兆円程度ある。だが、50兆円は単年度で支出すると過度なインフレになるので多年度で還元すべきだ。
所得減税4万円、非課税世帯7万円給付案ということは、減税・給付金規模は5兆円程度だ。これでは、筆者の想定するGDPギャップの3分の1程度なので、GDPギャップの解消ができず、つまり賃金が物価上昇を上回る好循環を示す絶好の経済ポイントである「NAIRU(インフレを加速しない最低失業率)」を実現できない。こうした点は、本コラムで繰り返してきたマクロ経済運営の基本中の基本である。
もちろん、成長や円安による政府の増収をどのように使うかは、国民に一律にバラまくのではなく少子化対策に特化すべきとか、減税より給付金のほうが手元に届くのが早いとか、所得税なのか消費税なのかなどを含めて国会でしっかり議論すべき問題だ。
しかし、そうした議論以前に全体の規模が足りていない。となると、賃金上昇に与える効果は十分にならない。他の手段というか、全体の規模を増やさなければいけない。
世耕弘成自民党参院幹事長の代表質問が話題になっている。まるで野党のように岸田政権の経済政策を批判したのだ。それもそのはずで、世耕氏は以前から15兆円以上の所得税減税を主張していた。党内の積極財政を主張する議連も世耕氏と同じ規模感だった。それらからみると、あまりにショボい額だ。
しかも、所得減税のための税制改正法案の提出は来年で、成立は3月だろう。6月の実施を目指すというが、規模が少なく、実施が遅いので、効果を論じられない。
●岸田首相「増税メガネ」大喜利から脱出への正念場 10/30
岸田文雄首相の所信表明演説に対する各党代表質問で、自民党の世耕弘成参院幹事長が「『決断』や『言葉』に弱さを感じる」などと批判したことが、政界だけでなく国民の間でも物議をかもした。野党陣営が「よく言った」と拍手したのに対し、与党は世耕氏の過去の言動もからめて「お前が言うか」(自民長老)などの揶揄や反発が相次いだ。
当の岸田首相は、思わぬ身内の“口撃”にまともには反応せずにスルーしたが、表情には「怒り」をにじませた。これを恐れてか、世耕氏は翌日の岸田首相の減税表明を高く評価するなど態度を一変。この“腰砕け”振りに与党内からは「あざといパフォーマンスだけの“腰抜けメガネ”」(閣僚経験者)などと揶揄する声が広がり、「“世耕の乱”は1日で終わり」(同)となった。
10月20日に召集された臨時国会は、岸田首相の所信表明演説が召集日から23日にずれ込み、これに対する各党代表質問も間隔なしの24日から3日間という、「過去に例のない日程」(自民国対)に。その最中の25日午前の参院代表質問の中で飛び出したのが、世耕氏の「首相批判」だった。
「リーダーの姿、示せていない」と“口撃”世耕氏は参院幹事長という自民党最高幹部として代表質問で、「国民が期待するリーダーの姿を示せていない」と指摘。岸田首相の「税収増を国民に還元する」との宣言について、「給付か減税か、その両方なのか、まったく伝わらない、重要局面では、政治家としての言葉で発信していただきたい」などと厳しく批判した。
岸田首相は苦笑しながら聞いていたが、答弁では「これまでも自ら決断し、国民の皆さんに直接発信することを心がけてきた」「(批判を)つねに省みつつ有言実行を貫いていきたい」などと、不敵な笑みも浮かべつつあえて反論せず、淡々と答弁メモを読むことで批判を受け流した。
●「給付、給付、給付」の立憲民主・泉代表にガッカリ…野党がだらしなさすぎる 10/31
岸田文雄首相が所信表明演説で「経済、経済、経済」と連呼したことが話題を呼んでいる。この演説に対する代表質問で、立憲民主党の泉健太代表は、国民が望むものは「給付、給付、給付」だと主張するなど論戦を繰り広げた。だが、岸田首相の「新たな経済政策」も、泉代表が主張する「給付」も、いずれも対症療法的な「バラマキ」にすぎない。なぜ野党による代案は面白みや斬新さを失ったのか。歴史的背景を踏まえながら解説する。
岸田首相の「経済、経済、経済」は 英ブレア元首相へのオマージュか
岸田文雄首相は、10月23日の国会における所信表明演説で「経済、経済、経済。私は何よりも経済に重点を置いていく」と訴えた。
思い返せば、英国のトニー・ブレア元首相も、首相就任時の演説(1997年5月)で「私には実行したい政策が3つある。それは教育と、教育と、教育だ」と述べていた。今回の岸田首相の演説は、それに倣ったのかもしれない。
しかし、いくら言い回しを似せても、両者の思想や歴史的背景は大きく異なる。岸田首相はそれを分かっているのだろうか。
ブレア元首相は労働党を率いていた際、過去に労働党が行ってきた「手厚い福祉による弱者救済」から路線を変更した。「訓練や教育による能力向上」によって雇用機会を拡大し、弱者を自立させることを目標としたのだ。
また、ブレア元首相は「ニュー・レイバー(新しい労働党)」を提唱。旧来の労働党の「社会民主主義」路線と、ライバルである保守党が打ち出していた「新自由主義」路線を部分的に組み合わせた。
資本主義と社会主義の長所を生かし合い、短所を補うという思想は、当時としては斬新だった。その一方で、岸田首相の「経済、経済、経済」には、どんな新しい要素が存在するというのか。
というのも、岸田首相は「新たな経済対策」の一環で「4万円の減税」「非課税世帯への7万円給付」といった施策を検討するよう与党に指示したという。
また、ガソリン代・電気代・都市ガス代などの負担軽減を重点的に行い、補助金支給を続けることも決定済みだ。
これらは、ブレア元首相が脱却した「手厚い福祉による弱者救済」に見えてしまう。いわゆる「バラマキ」である。
もちろん、物価高に苦しむ国民の負担を緩和し、一息つかせる意味では必要な施策だ。だが、物価高そのものを防ぐものではない。その効果は一時的なもので、効果が切れたら「また次」の繰り返しになりかねない。
岸田首相の「新たな経済対策」は どれも対症療法にすぎない
岸田首相は「賃上げ」にも取り組む方針だが、自民党政権は安倍晋三内閣期以降、何度取り組んでも賃上げに成功したことがない(第305回・p2)。岸田内閣は「賃上げした企業に対する優遇税制の拡充」などを打ち出しているが、そもそも賃上げを政府の要請で「人為的」に行うのは不自然である。
本来、賃上げは経済や企業業績が良ければ、半ば自然発生的に起こる。生産性が高く、効率良く利益を生んでいる企業では、人件費に回せるお金も自然と増えるからだ。
その条件が整わないから、企業は賃上げを実行できず、毎年のように政府が要請する事態を招いてきた。賃上げ問題の本質的な解決には、「ジョブ型雇用」の導入による生産性向上など、抜本的改革が必要だといえる。
岸田首相による「新たな経済対策」には、他にも「国土強靭化」「少子化対策」などが含まれている。しかし正直なところ、これらにも目新しさはあまりない。
「国土強靭化」とは、インフラ整備を含めた「災害対策の強化」などを指す。伝統的な自民党の経済政策である「公共事業」を大規模に行おうというものだ。ただし土木建設などの業界では、少子高齢化で人手不足が慢性化していて、工事が進まない現実がある。
安倍政権は2019年に、単純労働分野での外国人労働者の受け入れを認めたが、その後も土木建設などの業界では人手不足が改善されていない。低い賃金、劣悪な労働条件、人権侵害問題などで、日本が外国人に「出稼ぎ先」として選ばれなくなっているからだ。
政府は国土強靭化に予算をつぎ込む前に、そうした状況を改善するべきではないか。
さらに、岸田内閣は「異次元の少子化対策」を打ち出し、(1)児童手当を中心とする経済的支援強化、(2)幼児教育や保育サービスの支援拡充、(3)働き方改革の推進――を実行しようとしている。
ところが、これらは「既に結婚して子どもがいる人たち」を支援の対象としており、未婚や子どもがいない人たちは対象外だ。「子育て支援策」にすぎず、真の意味での少子化対策ではない。
真の少子化対策を進めるには、子どもがいない人たちが「産みたい」と思える社会を作る必要がある。現状の対策からは、そのための打ち手が見えてこない。
要するに、岸田内閣が打ち出した経済対策は、問題を本質的に解決するものではない。目の前で苦しんでいる人をとりあえず救う「対症療法」にすぎない。それでは、一時的な救済はできても「カネが尽きたら、またカネがいる」の繰り返しとなる。
そもそも、日本政府は多額の借金を抱えている。この繰り返しが続くと、財政赤字はさらに加速してしまう。
「対症療法」ではない政策を提案できない野党の体たらく
ここで気になるのが「野党」の存在だ。野党はそうした岸田内閣の問題点を指摘し、それに代わる新たな政策を提案できているのか。
残念ながら、現状では必ずしもそうとはいえない。
岸田首相の「経済、経済、経済」に対抗するように、泉健太・立憲民主党代表は国会での代表質問で「国民が望むのはインフレ手当の『給付、給付、給付』ではないか」と述べた。
また、玉木雄一郎・国民民主党代表は街頭演説で「今一番大切なのは、『賃上げ、賃上げ、賃上げ』だ」と主張したという。
要点を連呼するブレア元首相のスピーチをまねしつつも、苦しんでいる人をとりあえず救う「対症療法」を打ち出しているのは、岸田首相と変わらない。岸田内閣の政策が対症療法に終始しているのは、野党の体たらくも一因だといえる。
ただし、それは野党だけのせいではない。かつての野党は発想力・構想力に欠けていたわけではなく、革新的な政策を提示できていた時期もある。決して「なんでも反対」だけではなかったのだ。その力が衰えてしまったのも、実は自民党の影響である。
というのも、自民党は日本国民のニーズに幅広く対応できる、政策的には何でもありの政党だ。野党との違いを明確にするのではなく「野党と似た政策に予算を付けて実行し、野党の存在を消してしまう」のが自民党の戦い方である。
戦後の日本政治では、野党が革新的な政策を示すと、自民党は「野党の皆さんもおっしゃっているので」と躊躇(ちゅうちょ)なく予算を付けて実行してきた。その場合、実績はもちろん野党ではなく自民党のものとなった。
そうした経緯を如実に表す、一つのエピソードがある。
筆者はかつて、社会民主党の政審会長だった伊藤茂氏とお会いしたことがある。伊藤氏は、「戦後、農地改革以降の経済政策は、全部革新が考えた。それを、保守政権(自民党政権)がカネを付けて実行した」と語っていた。
ここでいう「革新」とは、1960〜80年代にかけて全国に誕生した、野党、労働組合、住民団体などに支持基盤を置いた首長が率いる「革新自治体」を指す。
具体的には、蜷川虎三知事時代の京都府、美濃部亮吉知事時代の東京都、長洲一二知事時代の神奈川県、飛鳥田一雄市長時代の横浜市などである。
革新自治体は高度成長期に起きた、公害などの都市問題に取り組む住民運動の高まりの中で誕生した。そして、福祉・公害規制などで新しい政策を生み出した。
しかし、自民党政権はその成果を自らのものとした。環境庁を発足させ、「福祉元年」を打ち出したのだ。そして、革新自治体が実行した環境政策や福祉政策を「国の政策」とし、予算を付けて、全国の自治体で一律に実施したのである。
他人のスピーチをまねるのではなく 奮起すべきだ
言わずもがなだが、この流れは近年も続いている。「女性の社会進出」「子育て支援」「LGBTQをはじめとするマイノリティーの権利拡大」など、安倍政権期に次々と実行された政策も、元々は野党が先行して取り組んでいたものだ。その繰り返しの中で、野党は発想力・構想力を鈍らせてきた。
だが、もちろん与党による政策も成功したとはいえない。前述の通り、今の日本では企業の生産性向上をはじめ、人手不足、少子化など課題が山積している。他の先進国に比べると、デジタル化も大きく遅れている。
そうした状況下では、一連の課題に野党が前向きに取り組み、自民党よりも先進的な政策を提案するべきだ。与野党の間で建設的な議論が尽くされ、政策が練り上げられてこそ、日本は世界に追いつくことができるのではないか。
野党の党首は、ブレア元首相や岸田首相のスピーチをまねしている場合ではない。自らの本当の役割を強く自覚し、奮起すべきだ。
●萩生田政調会長に対する長妻議員の悪質なレッテル貼り 10/31
まさかのラフプレーに驚き憤慨した。ただでさえ時間が短い番組において、貴重な与野党間の建設的な議論が台無しになってしまい、誠に遺憾である。
『日曜討論』(NHK10月29日放送)という公開討論番組内で、あろうことか野党第一党立憲民主党政務調査会長である長妻昭議員が議論の核心から大きく逸脱した言動を展開した。自民党と萩生田政調会長に対する悪質なレッテル貼りを展開し、一時番組の議論が脱線するという珍事が起きた。
しかも整然とした司会進行をも乱す“不規則発言”で番組に迷惑をかけ嗜められるに至り呆れてしまった。通常ならばNHKの議論進行に関する事前説明で議題を外れないような要請があったはずである。
普段から国会でも目にする光景ではあるが、国民の関心の高いテーマに関する議論を不毛にした事について、長妻昭議員には抗議したい。
当該問題言動部分(9時50分〜54分)の文字起こし(※別稿参照)をベースに、簡単に問題点を確認して行く。
問題の悪質なレッテル貼りの場面は、以下の通り「意味の改変(や切り取り)」を防ぐためにやや長いが問題部分の全貌を記載する。また口頭のやりとりは文字にするとニュアンスが欠落するので、雰囲気を残すべく発言タイミングなどを括弧“()”で補う。
発言者はそれぞれ、番組進行のNHKアナウンサーを「MC」、自民党萩生田政策調査会長を「萩生田」、立憲民主党長妻政調会長を「長妻」とした。
番組の場面(9:50〜)状況概要
テーマは『旧統一教会「被害者救済」に関し、解散請求を受けて教団の財産保全の法案に関する議論』に移った。立憲と維新がそれぞれ教団財産保全に関する法案を提出、与党は「必要な法案提出を含め来月中旬を目途に方向性を固める」という状況である。
以下の通り番組では、この状況についての議論が進行して行った(ここからは文字起こし記録、文意の変わらない範囲で口語における不要な発語は削った)。
番組冒頭、MC:国会では代表質問に続き、予算委員会で論戦が始まっています。今朝は焦点となっている重要政策課題について与野党の政策責任者の皆さんに議論して頂きます。
MC:自民党の萩生田さん、与党内で被害者救済に向け検討が行われていますが具体的にどのような方針で対応して行きますか?
萩生田:与党としては「実効的な被害者救済の推進に関するプロジェクトチーム(PT)」を組織しまして、今会合を重ねているところであります。PTではまず財産保全法制や訴訟の現状を認識した上で、現行制度で出来るところ、足らざるところの整理を行って、「どうすれば救済の実効性を上げることができるのか」を考えて行きたいと思います。
例えば、「海外への財産の持ち出しは外為法での規制を強化すること」や「被害者救済の法テラスでの相談体制をさらに強化する」等は速やかな実施の観点から有効だと思っています。
「そこで手が届かない人たちというのはどういう人たちなのか」ということをしっかり整理したうえで、関係者の皆さんにもヒアリングをし、被害者弁護団ともお話をさせていただいて、11月中旬を目途に中間提言というのをとりまとめて行きたいと思います。
いずれにしても被害者の方々によりそった救済というものをしっかり考えて行きたいと思っております。
MC:長妻さんに聞きます。立憲民主党はこの特別措置法案ということですけども、この狙いはどういうところにあるのでしょうか?
長妻:まずは今、萩生田政調会長の話聞いてがっかり致しました。ま、法律は出すんだと思いますけども、法テラスを強化するとか外為法を変えるとかですね、これ国外に資金が流出するという懸念もありますが、国内の別組織に変えると、こういうことも懸念されているのですね。やはり腰が引けていると言わざるを得ません。
私はですね、自民党の中でも萩生田政調会長は最も統一教会と関係の深い議員の一人だと、いう風に思っていますから、まさかそういうことはないと思いますが、いろんな文書がきているらしいですね、旧統一教会から。「こういう法律はやめてほしい」とか「憲法違反だ」とか。萩生田会長のところにも来ているのですか?
これ自民党の中からも、「野党案は憲法違反のパフォーマンスに過ぎない」とこういうような失礼なことをおっしゃっている方がいるんですが、これ徹底的にやっぱりやらないといけないと思うのですね、財産保全は。
我々は特別措置法という新法で「裁判所に請求して裁判所が、適切な範囲、財産保全の状況を見て、そして命令を出す」ということで、裁判所が噛んでいますから憲法違反ではありません。ちゃんと法制局のチェックを受けていますので、ぜひ速やかにやっていただきたい。
MC:萩生田さん、「動きが遅いんじゃないか、与党側は」という指摘ですが。
萩生田:まずこういう公的なところ(筆者注:NHKという公共放送の公開討論番組の場)で、名指しで、関係の深さを一方的にレッテル張りされるのは非常に心外です。
(MCの指名なく不規則発言で)
長妻:深くないんですか?
萩生田:党としては、関係について我々はきっちり説明をしてきたと…(遮られる)
(萩生田発言を遮るタイミングで)
長妻:どういう関係なのですか?反論してくださいよ。
萩生田:私はだから、女性連合の皆さんとご縁があったということは明確にお知らせしている通りでありまして…(遮られる)
(萩生田発言を遮るタイミングで)
長妻: 選挙におけるボランティア支援は?
萩生田:それは女性連合の皆さんによるご支援はあったと明確に申し上げておりますが…(遮られる)
(萩生田発言を遮るタイミングで)
長妻: 旧統一教会主催の会合への出席もあるじゃないですか。
萩生田:だからそれを以て「最も深い関係だ」という風にレッテル張りをされるのが非常に迷惑だと…(遮られる)
(萩生田発言を遮るタイミングで)
長妻:最も深い関係の議員の…(MCに静止される)
MC:長妻さん指名してから発言してください。
(萩生田発言中にかぶせる形で)
長妻:反論があるなら具体的に言ってくださいよ。
萩生田:ですから、そこがね、そこがパフォーマンスだと私申し上げたいのですよ。被害者の皆さんの救済をすることが目的だとすれば、野党の法案の中身についてもしっかり我々は吟味をしたいと思っています。
(萩生田発言中にかぶせる形で)
長妻: 腰が引けてるって。なんでこれ協議しないのよ…(MCに遮られる)
(MCが進行主導権を取り戻す)
MC:いったん音喜多さんにも聞きます…
問題点1 議論自体を毀損した
テーマは『旧統一教会「被害者救済」に関し、解散請求を受けて教団の財産保全の法案』であり、討論番組のこの時間帯はそれに関する貴重な公開議論の場である。にもかかわらず根拠を示さない主張で議論相手の印象を貶める人格攻撃は議論を毀す禁じ手である。もはやそこで何を展開されても誤謬や詭弁に陥ってしまうからである。
有力な野党の重鎮議員でもある長妻議員がこの議論の機会自体を毀損してしまったのは非常に問題である。
問題点2 無責任な放言を放送させた
野党の中の質が悪い一部の議員はこれまでにも、番組中に事実から遠い話や根拠の示せない放言で政権与党の印象を悪くしようとする言動をNHKの日曜討論で行ってきたことを筆者は観測している。
今回もその事例が一つ増えただけであるが、今回の印象付けは特に卑怯な行為である。国会議員がNHK(公共放送)で発言した場合、それが事実と異なっていたとしても広く一般視聴者が“本当のことだ”と信じてしまうことに一定の合理性を発生させてしまうからである。
そしてブラックコーヒーに一度ミルクを入れたらもうミルクを回収できないのと同様に、一度悪印象が混入したらそれを完全に除去することは不可能になってしまうからである。
むすび
今回の行為は、典型的な「野党ラフプレーによる国益毀損行動」である。
一部の野党議員は国会において、不祥事や(マスメディアの虚報を元にした)騒動等に便乗して人格攻撃や政権追及ばかりを行う。これにより国会機能が低下してしまうことが常態化している。その結果、国政に関する建設的な議論ができず、必要な改革に手がつけられずに日本が迷走し続けてしまう。
今回の長妻議員の行為はそんな日本の政治を象徴しているように感じられた。
唯一、萩生田政調会長が正面から堂々と応答していたことはせめてもの救いであった。またサウナでの珍事件で覚醒した音喜多議員がその場を和ませたことには個人的に感謝したい。そして、長妻議員には、まるでいじめのような言い逃げ・レッテル貼りは止めよと言いたい。
最後に、このような悪質な印象操作にも負けず国政を推進する萩生田政策調査会長に敬意を表す。
●岸田首相がハマった“減税地獄”…内閣支持率は今後もジリジリ低下確実 10/31
岸田首相の“異変”が政界で話題になっている。29日、日曜日の首相動静に、こうあったからだ。
<午前11時50分、公邸発。同57分、東京・紀尾井町のホテルニューオータニ着。同ホテル内の「ヘアサロン大野」で散髪>
岸田首相が行く理髪店といえば、鍛冶町の「ヘアモードキクチ神田日銀通り店」と決まっていた。月に2回のペースで、これまで50回ほど通った行きつけだ。
今年4月、和歌山市で岸田首相が衆院補選の応援演説を行った時に爆発物が投げ込まれる事件が起きたが、その日も帰京後にヘアモードキクチで散髪して政界関係者を驚かせた。以来、かたくなにルーティンを守るイメージが定着している。
そんな岸田首相が突然、理髪店を変えたため注目が集まった。心境の変化か。支持率が低迷し、肝いりの減税策も不評で八方塞がりの現状を打開するためのゲン担ぎなのか。
理髪店変更も効果ナシ
しかし、ルーティンを破って心機一転をはかってみても、週明けに発表された世論調査の結果は惨憺たるものだった。
ANN(テレビ朝日系)が28、29日に行った調査で、内閣支持率は前回から3.8ポイント減の26.9%と政権発足以来、最低に落ち込んだ。所得税などを定額で4万円減税することについては「評価しない」と答えた人が56%と過半数で、その理由のトップは「政権の人気取りだと思うから」(41%)だった。
日経新聞・テレビ東京が27〜29日に行った調査では、支持率が前回から一気に9ポイントも暴落して33%。こちらは発足以降最低どころか、2012年に自民党が政権奪還してから最低を更新してしまった。不支持率は8ポイント増えて59%だった。
個別の設問では、所得税減税が物価対策として「適切ではない」と65%が答えている。
「政権寄りの日経新聞でこの数字は衝撃を持って受け止められています。自民党の政党支持率も32%に落ち込んだ。これも政権奪還後の最低です。経済対策を打ち出すタイミングでこれだけ下がったのは、岸田首相の所得減税策が不評だからで、自民党内の危機感は相当なものがある。10月の世論調査で支持率が軒並み過去最低を記録し、慌てて減税を言い出した岸田首相の場当たりを国民は感じ取っているのです」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
支持率はズルズル下がり続けそうだ。
いつ「岸田降ろし」が始まってもおかしくない
実に評判の悪い所得税減税だが、岸田首相にとってつらいのは実施する来年6月まで批判にさらされ続けることだ。6月は通常国会の会期末とも重なり、国会審議で野党からガンガン追及されれば、さらなる支持率低下も考えられる。この不人気の長期化は必至。終わりなき「減税地獄」だ。
こうなると、解散どころではないし、いつ「岸田降ろし」が始まってもおかしくない。 
「11月には、反主流派の菅前首相や二階元幹事長、森山総務会長らが集まる食事会が予定されていて、そこに石破元幹事長を呼ぶ計画もあるらしい。とりわけ菅さんと二階さんは、岸田首相に追いやられた恨みがあるから、この会食の席で“岸田降ろし”狼煙が上がる可能性があります。岸田さんが変わらずに居座っていたら自民党も危ないですからね」(自民党の閣僚経験者)
理髪店を変えて臨んだき31日の衆院予算委員会でも、岸田首相のヘアスタイルや答弁に変化は見られなかった。この調子では、不人気も変化ナシ。
●「マイナ保険証」異次元の嫌われぶり…ポイント予算5000億円未使用 10/31
異次元の嫌われぶりだ。「マイナポイント第2弾」関連予算の未使用額が約5000億円に上ると判明。9500万人がポイントを最大限申請した場合に備えて約1兆8000億円を計上したものの、実に3割近くが余ることになる。30日の衆院予算委員会で鈴木総務相が明らかにした。
第2弾の申請者数はカードの新規取得が約5000万人、保険証登録が約6800万人、公金受取口座登録が約6400万人だった。
「物価高騰が続き、計2万円分のポイントは魅力的なはずが、それでも政府の見立てを大きく下回った。利便性どころか、トラブル多発で“危ないカード”と思われている表れでしょう」(「共通番号いらないネット」事務局の宮崎俊郎氏)
マイナ保険証の利用率もジリ貧だ。厚労省によると、9月の利用率は全国で4.5%。5カ月連続下落。30日の予算委で立憲民主党の井坂信彦議員は「利用率が5%や10%でも健康保険証を廃止するのか。(マイナ保険証を)誰も使っていないのに、来年廃止はできない。利用率も見るべきだ」と追及した。
政府は見て見ぬふり
岸田首相は「総点検をやり、国民の信頼回復に努める。合わせてメリットを説明する。今はそういう段階でそこに専念する。その上で、11月末に作業を進めており、その結果を見た上で、(廃止までの)期間の延長などさまざまな対応について、適切に判断する」と答弁。利用率を判断材料にするとは言わなかった。
「今後、利用率が上向く材料は見当たらず、『利用率を見て判断する』と答弁すると、保険証廃止を延期せざるを得なくなる。岸田首相の答弁からは、利用率が低くても来秋の廃止方針を維持したい意向が読み取れます」(霞が関関係者)
これまでも政府は、廃止を巡って国民の不安を払拭する“措置”の完了を前提に、総点検などを終えれば強行する伏線を張ってきた。河野デジタル相も29日、総点検について「順調にいっている」とし、来年秋の廃止に意欲を示したばかり。
「5%そこそこの利用率で保険証を廃止すれば、医療現場は大混乱に陥る恐れがある。想定外のポイントの不人気を含め、“マイナ保険証ノー”が国民の声。岸田首相は聞く耳を持ち、保険証を存続させる判断をすべきです」(宮崎俊郎氏)
過ちを改むるにしくはなし、である。
●柿沢副法相、辞表提出 東京・江東区長選、ネット広告提案 10/31
4月の東京都江東区長選の選挙期間中に投票を呼び掛けるインターネットの有料広告を掲載したとして公職選挙法違反の疑いが持たれている江東区の木村弥生区長(58)の事件を巡り、地元選出の自民党衆院議員の柿沢未途(みと)副法相(52)が、ネット広告の利用を木村氏側に勧めていたことが31日、明らかになった。柿沢氏は同日、辞表を提出。岸田文雄首相は速やかに交代させる方針。9月に発足した第2次岸田再改造内閣では、文部科学政務官だった山田太郎氏が一般女性との不適切な関係を指摘され、10月26日に辞任したばかりだった。
岸田首相は31日の参院予算委員会で、柿沢氏が辞表を提出したと明らかにした上で、自身について「任命責任を感じなければならない。国民の信頼を回復するために努力する」と述べた。立憲民主党の蓮舫氏への答弁。 ・・・
●岸田首相謝罪 柿沢法務副大臣の予算委員会「出席逃れ」を「申し訳ない」 10/31
岸田文雄首相は31日の参院予算委員会で、江東区長選をめぐる公選法違反疑惑に関与したとしてこの日午前、辞表を提出した柿沢未途・法務副大臣の辞表を、受理したことを明かした。
「先日の山田太郎文科政務官に続いての(政務三役)辞任について、任命権者としての責任を重く受け止めている」と述べた。その上で「今回の件を真摯(しんし)に受け止め、国民の信頼を回復できるよう与えられた課題に全力で取り組みたい」と釈明した。
さらに「辞職願を受理する前の委員会審議で、国会の要請に応じず、柿沢副大臣が出席しなかったことを申し訳なく思っている。今後、二度とこういうことがないよう対処して参ります」と述べ頭を下げた。
柿沢氏の委員会出席は、委員会開会前の理事会で与野党が合意していた。しかし、柿沢氏が委員会開催中に辞表を提出して出席が困難になったため、野党側が「出席逃れ」ではないかと反発。昼前から審議がストップし、午後2時45分になってようやく再開された。首相は再開後の審議開始前に、発言した。
柿沢氏は、東京江東区長選をめぐる公選法違反の疑いで東京地検特捜部の強制捜査を受け、木村弥生区長が辞職を表明したことに関連し、自身の関与を認めてこの日、辞表を提出した。
●岸田首相、相次ぐ辞任に「信頼回復へ先頭で努力」 10/31
岸田文雄首相は31日の参院予算委員会で、文部科学政務官だった山田太郎氏に続く柿沢未途法務副大臣の辞任について「2人の辞任が続いたことに責任を感じる。信頼回復に向け、先頭に立って努力したい」と述べた。
首相は、柿沢氏が野党による午前中の予算委出席要求に応じないで欠席したことについて「正式受理前の審議で国会の要請に応じず、申し訳なく思う」と陳謝した。また、柿沢氏について「必要に応じて政治家としての説明責任を果たすべきだ」と語った。
●児童扶養手当、拡充を検討 加藤こども相 10/31
加藤鮎子こども政策担当相は31日の記者会見で、低所得のひとり親世帯などを対象とした「児童扶養手当」の拡充について検討する考えを示した。年末に閣議決定する指針「こども大綱」の策定に向け、検討を進める。岸田文雄首相が30日の衆院予算委員会で同様に「拡充は重要。(検討を)具体化していく」と説明していた。
現行の児童扶養手当は、所得に応じて金額が異なり、子ども1人の場合に月額で最大4万4140円を支給している。立憲民主党は不十分だとして月1万円を一律上乗せして増額する改正法案を臨時国会に提出した。
●加藤鮎子こども相、蓮舫氏の質問&追及に答弁できず官僚が手助け 10/31
31日の参院予算委員会で、立憲民主党の蓮舫参院議員が、加藤鮎子こども政策担当相に少子化対策の財源をどう確保するかをめぐり厳しく追及する場面があった。加藤氏はすぐ答えられず、たびたび官僚のサポートを受け、蓮舫氏に「大丈夫?」と皮肉られるなど、答弁力の不安定さを露呈した。
社会保障の歳出改革について問われた加藤氏は「社会保障の歳出改革につきましては、各省庁が連携して今後具体的に進めていくものと承知しています」と、まず答弁。蓮舫は続けて「加藤大臣ね、昨年の社会保障費の自然増をいくら抑えましたか?」と問うたが、加藤氏は答えられず、自席で官僚から耳打ちされた後、答弁に臨んだ。緊張なのか「社会保険料は…」と切り出し「社会保険料じゃないよ」と蓮舫に突っ込まれるひと幕も。「社会保障費の自然増につきましては所管が厚労省。厚労省の方にご確認いただきたい」と、逃げのような答弁をした。
これに、蓮舫氏は「あなた、メディアに対しても安定財源を社会保障での歳出改革でやると何度も言っている」と「あなた」呼ばわりで追及。「じゃあ去年の社会保障の自然増をいくら抑えたのか。それくらい(額を)押さえているんでしょ。いくらですか」とたたみかけられたが加藤氏は答弁できず、官僚の方を見やりサポートを促した。
「おおむね1500億円と承知している」と答えた加藤氏に、蓮舫氏は1500億円の内訳を問うたが、この質問にもすぐ答えられない加藤氏に、蓮舫氏は「大丈夫?」とつぶやいた。
加藤氏は「繰り返しになりますが、詳細は所管(の厚労省)にご確認いただければ」と答弁したが、蓮舫氏は「あなたが社会保障費から歳出削減をして安定財源をつくると言っている。去年の1500億円の中身は何だったんですか、と聞いているんです」とあきれたように指摘。答弁できない加藤氏に代わって武見敬三厚労相が答弁に立ったが、武見氏も当初は詳細な内訳を答えられず、「何のために出てきたんだよ」とヤジが飛ぶひと幕もあった。
蓮舫氏は武見氏の答弁を受けて「薬価を下げて雇用調整助成金を引き下げて、75歳以上のご高齢者の医療費窓口負担を倍にしてようやく1500億円を絞った。相当な痛みですよ。加藤大臣はそのことも知らずに、社会保障費の歳出改革で3・5兆円を生むって。本当にできるんですか」と述べ、首相肝いりの少子化対策で新たに必要となる財源確保策の現実性に、疑問を呈した。「大臣も不安なら歳出改革の中身も不安。少子化対策の財源はないんじゃないのですか」とも、指摘した。
●首相、杉田水脈氏への論評回避 「私は差別していない」動画で 10/31
31日の参院予算委員会で、特定民族を巡る投稿で札幌、大阪両法務局から人権侵犯と認定された自民党の杉田水脈衆院議員の問題が取り上げられた。岸田文雄首相は、認定後に「私は差別をしていない」と言明したユーチューブ動画を投稿した杉田氏への受け止めを聞かれると「その後の言動について、一つ一つ申し上げるのは控える」と述べ、論評を避けた。
人権侵犯を認定された杉田氏の投稿は、アイヌ民族と在日コリアンを侮辱する内容。首相は「傷つけられた方々に謝罪した上で、表現を取り消したと認識している」と説明。一般論的な見地から「差別はあってはならない」とも指摘した。
●首相、減税1回で経済活性化 10/31
岸田文雄首相は31日の参院予算委員会で、減税を含む政府の経済対策を巡り「1回で終われるよう経済を盛り上げていきたい」と述べた。1人当たり合計4万円の所得税と住民税の減税方針に関し「大きな額だ。生活を支え、可処分所得を増やす意味はある」と強調した。立憲民主党の蓮舫氏は、減税が来年6月実施となる点を「物価上昇で国民生活は苦しいのに、遅すぎる」と批判した。
首相は減税と防衛費増に伴う増税方針との整合性について「まずは経済を立て直した上で、防衛力や子ども政策についても国民に協力してもらう環境をつくることが重要だ」と説明。防衛力強化で家計負担は増えないとし「決して矛盾しない」と重ねて訴えた。
22日投開票の衆院長崎4区、参院徳島・高知選挙区両補欠選挙で与野党が1勝1敗となった結果を受け「謙虚に受け止め、結果を分析しなければならない。政権運営に反映させたい」と述べた。
「クールジャパン機構」の累積損失が膨らんでいると指摘され「国民の理解を得る観点から、経営改善を求める必要がある」と語った。
●所得税と住民税の減税、首相「4万円は大きな額」 1回での終了を示唆 10/31
国会では参議院でも予算委員会がはじまり、政府・与党が検討している所得税などの減税について野党が追及しています。
立憲民主党は、政府が来年6月にも実施する方針の所得税・住民税の減税について、「1回で終わるものなのか」と岸田総理を問いただしました。
立憲民主党 蓮舫 参院議員「所得税減税は1回で終わらない可能性があるんですかって伺ったんです。1回で終わるんですね」
岸田総理「1回で終われるように経済を盛り上げていきたいと思っております」
続けて、蓮舫氏は「1回の所得税減税でどれだけ家計は助かるのか」「総理は4万円の減税で助けになるか」と追及すると、岸田総理は「1人4万円の減税というのは大きな額である」と述べた上で、「それぞれ生活を支え、可処分所得を増やすという意味はある」と反論しました。
また、自民党の杉田水脈衆院議員が過去にSNSなどに投稿した内容について、札幌法務局、大阪法務局は人権侵犯であると認定しましたが、立憲民主党の徳永参院議員はその後も杉田氏が「差別をしていない」と動画投稿しているなどと批判しました。
これについて岸田総理は「言動について一つ一つ申し上げるのは控えるが、説明責任は政治家として果たし続けていかなければならない」と指摘しました。
●岸田首相、「防衛増税」に続き「退職金増税」見送り…世論に戦々恐々 10/31
政府・与党は「サラリーマン増税」の象徴ともいわれた “退職金への課税見直し” を、今年は見送る方向で調整している。
「政府は6月に発表した『骨太の方針』で、勤続20年を超えると勤続1年あたりの控除額が40万円から70万円に増える、現行の『退職所得課税』の見直しをおこなうと明記しました。この控除があるため、勤続年数が長くなり、労働者の転職を妨げているというのです」(経済担当記者)
日本経済新聞は、8月12日の紙面で、《同じ会社で20年を超えて働く人が対象の税優遇がなくなれば、勤続30年で退職金2500万円を一時金として受け取る人は最大45万円ほど手取りが減る見込み》との試算を報じている。ただし、一時金と年金に分けて受け取れば影響は小さくなる可能性があるという。
「見直し先送りの背景は、政権発足後、最低を記録した内閣支持率に危機感を覚えたからです。当初は年末に詳細を決める予定でしたが、ほとんどのサラリーマンが『増税』になるため、自民党内には『強行したら内閣支持率は1桁になる』といった悲観的な声も出ていたのです」(政治担当記者)
ニュースサイトのコメント欄にも、
《子育てをしているというだけで、税金はしっかり納めて来ていても、所得制限で何もかも弾かれています。それに加えて、退職金にまで手を付けたられたら、たまったものではありません》
《働く意欲を無くすのが本当に得意ですよね》
《減税で釣っておいて選挙後は裏切り。自民党の常套手段じゃないか》
など、政権批判や怒りの声が圧倒的だった。「X」でも、《世論の批判はとても大事 めげないで声をあげよう》《きちんと国民が文句の声を上げることで政治は動く》などの書き込みが目立った。
こうしたムーブメントに、自民党議員は焦りの色を隠さず、こう明かす。
「『増税メガネ』でもわかるように、ネットの拡散力はものすごいですからね。いまはマスコミの世論調査も電話による質問ですが、もしネットで調査をおこなったら岸田内閣の支持率は壊滅的でしょう。『退職金課税見直し』を表明する前の27日、岸田首相は衆院予算委員会で2024年度からの『防衛増税』の先送りも明言しています。岸田首相は否定していますが、所得税減税と防衛費増税は矛盾するということです。これもネットでは以前から盛り上がっていたテーマです」
ネット世論の勢いは止まりそうもない。
●岸田首相、大臣の賃上げ案に与党議員から驚きの声 「全く問題ない」 10/31
臨時国会が始まり、国民生活を支えるための経済対策に注目が集まっているなか、閣僚らの賃上げをする法案が提出されていた。国会議員の給与(歳費)は年収2200万円程度にもなる。それが閣僚ともなれば、年収4千万円とさらに高額になる。物価高などで生活が苦しくなっている国民の不満が噴出しているのに、なぜ首相らの給料を上げるという考えになるのだろうか。
20日に始まった臨時国会に「特別職の職員の給与に関する法律」の一部を改正する法案が提出された。
年間給与は首相で約4千万円、大臣で約3千万円
特別職には、自衛官や裁判官などのほか首相や大臣も含まれる。法案を見ると、首相の給与月額(俸給月額)は201万円から201万6千円に、大臣は146万6千円から147万円に上げるとされている。ボーナス(期末手当)も3.3カ月分だったのが、3.4カ月分に上がる。
いったいいくらの賃上げになるのか、法案を担当する内閣人事局に話を聞いた。
まずは閣僚の現在の年間給与を紹介しておこう。閣僚は前出した給与月額とボーナスの他に、給与月額の20%に当たる金額を地域手当としてもらっている。これらを合計すると、年間の給与額は首相で約4015万円、大臣で約2929万円になるという。
そして今回の法案が成立すると、首相が45万円程度の賃上げで約4060万円に、大臣が32万円程度の賃上げで約2961万円になるようだ。ただ、首相は3割、大臣は2割を国庫に自主返納しているので、それを踏まえると、計算上、首相で31万円程度、大臣で26万円程度の賃上げになる。
与党議員「賃上げを率先してやらないといけない」
報道によると、自民党や公明党の政治家からは「返納しているのだから全く問題ない」「政府は賃上げを掲げているので率先してやらないといけない」といった声があがっているという。
返納しているとはいえ、賃上げの必要性があるほど低い額になるわけではないだろう。焦点となっている減税についても決まっていない状況で、自分たちの給料は率先して上げるとなれば、国民から怒りや批判の声が出てくることはわかっていそうなものだが。それでも特別職の給料を上げる理由は何なのだろうか。
内閣人事局の担当者に尋ねると、「人事院の勧告により、一般職の指定職の給与があがるため」と説明する。
「指定職」とは一般職国家公務員の幹部のこと。本省の部長・審議官級以上や研究所長、病院長などが該当する。人事院は今年8月に、国家公務員の一般職の給与を上げるように勧告している。これを受けて10月、政府は人事院の勧告通りに初任給や月給などを上げることを決定し、今国会にその法案が出されている。
しかし、人事院の勧告には特別職についての言及はない。
内閣人事局の担当者はこう話す。
「一般職の給与が上がったから特別職も上げないといけないという法律はありません。ただ、これまでも一般職の給与改定にあわせて特別職も上げてきました。全体的なバランスをとっての対応です」
専門家はどう見るか。元経産官僚で慶応大の岸博幸教授は「非常に情けない話。政治側で止めるべき話でしょう」という。
細部に岸田政権の本質が出ている
今回の法案は内閣人事局が作ったものだが、自民党や公明党に説明をして了承を得るほか、閣議決定を経たうえで国会に提出される。政治家の判断で法案を修正する機会は十分にあるわけだ。岸教授がこう指摘する。
「役人が機械的に法案を出してきたとしても、それをどうするのか判断するのが政治家の役割です。自衛官らの給与を上げるのは必要だとしても、首相や大臣も上げる必要はないでしょう。国民の賃金が十分に上がっていないなかで自分たちが賃上げしたら国民にどう映るか考えていない。今回の賃上げも微々たるものという認識なのかもしれません。国民に目を向けていないことの表れでしょう。こういう細かいところに岸田政権の本質が出ていると見ています」
それでは岸田首相はどこを見ていたのか。元国会議員秘書で政治評論家の尾藤克之さんはこう見る。
「特別職で多いのは防衛省職員、自衛官などです。ウクライナや中東で戦争が起こり国際情勢が厳しくなっているほか、中国の軍事力増強や北朝鮮のミサイル発射などがあり、自衛隊の役割は高まっています。そんな中で『自分たちは配慮している』という姿勢を見せる狙いがあるのでしょう。言い換えれば、利益誘導、選挙対策でもあります。こうした法案でもごり押しできるという余裕が岸田首相としてはまだあるのだと思います」
国会での審議はこれからだ。果たして法案が修正されることはあるのか。 
● 岸田首相“任命責任 重く受け止める” 柿沢法務副大臣辞任で 10/31
柿沢法務副大臣が辞任したことについて岸田総理大臣は、参議院予算委員会で任命した責任を重く受け止めるとした上で信頼回復に全力で取り組む考えを示しました。
この中で岸田総理大臣は「きょう正午すぎに小泉法務大臣が柿沢法務副大臣と面会し辞表を正式に受理した。山田文部科学政務官に続いての辞任で、任命権者としての責任を重く受け止めている」と述べました。
その上で「今回の件を真摯(しんし)に受け止め、国民の信頼を回復できるよう内閣として与えられた課題に全力で取り組んでいく」と述べました。
一方、予算委員会のさなかに辞表が提出され柿沢副大臣が委員会に出席しなかったことについて、岸田総理大臣は「辞表を正式に受理する前の委員会審議で国会の要請に応じず柿沢副大臣が出席しなかったことを申し訳なく思っており、今後二度とこのようなことがないよう対処していく」と述べました。
小泉法務大臣は「私が委員会に出席中に辞表が提出され、直接確認していなかった。法務省として副大臣を委員会に出席させないという判断を法務大臣に諮らないまま事務方の独断で行ったことが確認された。いわば越権行為であり不適切なもので私自身、監督不行き届きを痛感するとともに二度とこのようなことが起きないよう厳しく事務方を指導する」と説明しました。
これを受けて末松予算委員長は「与野党ともに認めた柿沢副大臣の予算委員会への出席が実現されなかったことは誠に遺憾だ。国民の代表である国会に対する義務を果たしていないことにもなる。勝手な判断を法務省が行い、予算委員会の運営を妨げ、権威をおとしめたといっても過言ではない。以後、こういうことがないように強く注意を促す」と述べました。
首相 “法務副大臣の欠席 国会の権威を損なう行為”
岸田総理大臣は参議院予算委員会で、柿沢法務副大臣が辞任することを理由に委員会に出席しなかったことをめぐり、国会の権威を損なう行為だったとしたうえで、内閣として説明責任を果たしていく考えを示しました。
この中で、立憲民主党の杉尾秀哉氏は、柿沢法務副大臣が辞任することを理由に委員会に出席しなかったことをめぐり「はっきり言って憤っている。公職選挙法違反が疑われる極めて重大な事件で、法の執行に当たるべき法務副大臣の疑惑なのに、なぜ本人に説明させず、辞表を受理したのか。私は質問権を奪われた。憲法違反の行為だという意識はあるのか」とただしました。
これに対し、岸田総理大臣は「質問の権利を奪い、国会の権威を損なう行為であり、重大な行為だったと認識している。内閣として国会における責任をしっかり果たしていきたいし、本人も政治家としての説明責任を必要に応じて果たすべきだと思っている」と述べました。
また、小泉法務大臣は「午前中は電話で、午後は対面で法務省の中で柿沢氏と話したが本人は報道されたことをはっきり認め、非常に深い反省の念を表現し、何としても職を辞したいという強い思いだった。その意を尊重したいと感じ、内閣にその旨上申をした」と述べました。
●「基金の見直しこそが歳出改革」。副大臣辞任「どこが適材適所か」と追及 10/31
参院予算委員会総括質疑が10月31日に開会され、立憲民主党会派からは蓮舫、徳永エリ、杉尾秀哉、横沢高徳各参院議員の4人が質疑に立ちました。
蓮舫議員 政策の財源と歳出改革について議論
   少子化対策の財源
蓮舫議員は、政府が歳出改革や社会保険負担軽減等により年約3.5兆円の財源を確保するとしていることについて質問。昨年、社会保障費の自然増を1500億円分抑えたことについて、加藤こども政策担当大臣は内訳を答えられず、「詳細は所管に確認いただきたい」と答弁。担当大臣として当事者意識が低いことを指摘し、「薬価の引き下げ」「75歳以上の医療費窓口負担増」「雇用調整助成金等の特例見直し」などによる捻出は「ようやく1500億円。相当な痛み」だと述べ、「歳出改革で3.5兆円生むのは本当にできるのか」と厳しく指摘しました。
   官民ファンドと基金の見直し
現在14ある官民ファンド(国の政策に基づく政府と民間が共同で出資する政府系ファンド)の現状について、鈴木財務大臣は、2023年3月末時点で、政府出資が約1.9兆円、民間出資が約0.9兆円、合計約2.8兆円を出資、官民ファンド全体で累積損益は約7598億円で、誘発された民間投融資額は約13.5兆円と説明。蓮舫議員は、「全体として黒字だから良いとの評価は危うい」と指摘。「黒字のうち8割はたった1つの官民ファンド((INCJ)の儲けであり、残り13のうち9は赤字、そのうち4つは3年間で700億円の赤字だ」と述べ、個別に見直すべきだと総理をただしました。
岸田総理は「定期的に検証する取り組みを続けている」と述べましたが、蓮舫議員は(1)官民ファンドの一つであるクールジャパン機構が計画の下方修正を繰り返していたこと(2)同機構が吉本興業、NTTとともに出資したラフ&ピースマザーが、本来の目的であるアジアへの教育コンテンツの配信を一度も行わずに株式を売却したこと(3)同機構によるアジア広域でのライブホール展開事業(Zepp)は、日本のエンターテイメントを発信できる拠点としてアジア各都市に整備をすることを目的をしていたものの、日本人アーティストは1割から2割しか出演していないこと――などを挙げ、改めて見直しを迫りました。
また基金について、将来の支出見込みより基金残高が高い場合、国庫返納の対象となりますが、新型コロナウイルス感染症基金は、事業費は昨年から半減するものの、基金管理法人と再委託先の事務経費が倍増しており、国庫返納「逃れ」ではないかと指摘しました。
190ある基金事業のうち、国庫返納の対象事業数は27で、金額としては16.6兆円のうち1046億円であるとして、全事業を洗い直せば数兆円規模で返納させることができるのではないかと蓮舫議員は述べ、「これこそが歳出改革」だとして岸田総理に精査するよう求めました。
杉尾秀哉議員 「9月の改造後岸田内閣2人目の辞任で任命権者の責任を追及」
杉尾議員は、柿沢法務副大臣の辞任が受理されたこと、辞職願を正式に受理する前に国会の要請に応じず予算委員会に出席しなかったことについて「私の質問権が失われた。院の権威が失われた。辞表を受理する前に国会で説明させるべきではなかったか」と問題視しました。岸田総理の答弁は「任免権者としての責任を感じている」「内閣として責任を果たす。本人も政治家として責任を果たしていく」と一般論に終始しました。杉尾議員は「山田文科大臣政務官に続き二人目の辞任。どこが適材適所か」と岸田総理を批判しました。
報道されている海上自衛隊のセクハラ事案について、杉尾議員は木原防衛大臣に「本事案を認知しているのか。加害者との面会の強要をどう認識しているのか」と質問しました。木原防衛大臣は、「海上自衛隊で起きたことは事実。本件は被害者が拒否したにもかかわらず加害者から直接謝罪をさせた。被害者の心情に寄り添わず行ったことは言語道断。法令に基づき処分していく」と答えました。杉尾議員は「自衛隊内部では、こういったことが実際に相当数ある。これでは女性自衛官の成り手がいなくなる。国防上きわめて深刻な問題」と指摘しました。岸田総理は「ハラスメントを一切許容しないと改めて強く感じている」と述べました。
徳永エリ議員 「総理の『沖縄に寄り添う』は偽り」
徳永議員は、イスラエル・パレスチナ情勢をめぐり、「人道支援」の観点から、現地で活動を続けるNPO法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)への支援を求めました。また、岸田総理が自民党総裁選の公約で掲げていた「国際人権問題担当」の首相補佐官ポストを無くしたことを問題視。自民党の杉田水脈衆院議員によるネット上の投稿が、法務省に「人権侵犯」と認定されたにもかかわらず、認定後も「私は差別をしていない」などとネット上に投稿していることについて、岸田総理総裁の認識をただしました。さらに、辺野古新基地建設に関する国による「代執行訴訟」について、「沖縄県の自己決定権を毀損(きそん)し、地方自治を根底から揺るがす大問題」と指摘し、「総理の言う『沖縄に寄り添う』は偽りだ」と非難しました。
横沢高徳議員 「生活、生活、生活」の視点から質問
横沢議員は冒頭、「生活、生活、生活」の視点から質問すると切り出し、「異次元の金融緩和による円安」が国民生活を苦しめていると指摘。財務省設置法が第3条で「通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保を図る」と規定していることを踏まえ、「(円安は)食料やエネルギー、原材料を輸入に頼るわが国にとって家計、夢や目標をもって海外にチャレンジしようとしている若者、スポーツ選手」などのために「円安を何とかしてほしい、そのために政府は役割を果たすべき」と岸田総理に迫りました。
●異例の緩和路線に変化も=半年で2度修正、「出口」正念場―日銀 10/31
デフレ脱却を掲げ、長期にわたり異例の大規模金融緩和に突き進んできた日銀に変化の兆しが出てきた。31日の金融政策決定会合で、長期金利の1%超への上昇を容認することを決定。植田和男総裁は就任から半年あまりで2度の政策修正に踏み切った。背景には日銀の想定を上回る物価の高騰がある。来年の春闘で賃上げの動きが広がれば、緩和の「出口」を決断する可能性も出てきた。
「変化する芽が出てきている」。植田総裁は31日の記者会見で、デフレの原因とされた物価が上がらないことを前提とした慣行や考え方に変化が生じつつあるとの認識を示した。
日銀は同日公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、2023〜25年度の物価上昇率見通しを上方修正。特に24年度は前回7月の前年度比1.9%から2.8%に大きく引き上げた。日銀の想定をはるかに上回る物価の上振れが続いている。
もっとも、現在の物価高は原油価格上昇や円安を受けた価格転嫁の動きが長引いているのが主因。2%の物価目標の持続的な実現には、賃金も同時に上昇する好循環が不可欠だが、植田総裁も2%の目標達成は「十分な確度を持って見通せる状況には至っていない」と慎重な発言に終始。当面は粘り強く緩和を続ける方針だ。
だが、日銀の緩和策は円安の原因ともなっており、輸入物価上昇を通じた食料品値上げなどで負担を強いられる国民の不満は増している。
岸田文雄首相は31日の参院予算委員会で「海外との金利差などさまざまな要因から為替にも影響が出ている。こういった指摘は日銀も頭に置きながら政策を進めていると理解している」と言及。円安への配慮を暗に求めた。
日銀が今回の政策修正で、長期金利を厳格に抑え込む手法を見直したことから、市場では「長短金利操作の枠組みは一段と形骸化が進んだ」(国内証券)との見方は強い。黒田東彦前総裁から引き継いだマイナス金利政策も、先進国で唯一、日銀だけが維持しており、解除が大きな課題となる。植田総裁が円滑に正常化を実現できるのか、今後の手腕が問われる。
●金利差などが為替に影響、日銀も念頭に置いている=岸田首相 10/31
岸田文雄首相は31日の参院予算委員会で、日銀の金融緩和と為替円安の関係について、金融政策は物価安定を維持するための政策だと指摘しながら、「結果として海外との金利差など様々な要因から為替にも影響が出ているといった指摘は日銀としても頭に置きながら政策を進めている」との認識を示した。横沢高徳委員(立憲・社民)の質問に答えた。
為替は物価高の要因かとの質問に、首相は「物価高の背景には様々な要因がある。為替も1つの要因であると認識している」と答えた。
日銀が31日の金融政策決定会合で、長期金利の事実上の上限だった1%を「めど」と位置付け、一定程度の超過を容認したことに関しては「様々な状況に対応して日銀でも議論を続けている。世界各国の金利状況なども踏まえながら様々な検討が行われている」と述べた。
岸田首相は、政府・日銀が緊密に連携しながら「全体の経済を考えていく体制が重要」とし、引き続き日銀と意思疎通を図りながら経済政策を実施していく考えを示した。
●蓮舫が356億円赤字のクールジャパン機構を痛烈批判 “究極の中抜き装置” 10/31
「22年度の投資実績が161億円、22年度末の累積の損益はマイナス356億円となっております」
これは、10月31日午前中の参院予算委会で立憲民主党の蓮舫議員(55)が民間ファンド「クールジャパン機構」の22年決算を踏まえた直近の投資額と累積損益について質問し、西村康稔経済産業大臣(61)が重い口で回答した同機構の業績だ。
「そもそも“クールジャパン”は、’12年12月に発足した第2次安倍政権が打ち出した戦略で、安倍晋三元首相は最初の施政方針演説で『”クールジャパン”を世界に誇るビジネスにしていこう』と力説しました。同機構は’13年に、日本の食文化やエンタメの海外進出を後押しするために鳴り物入りで発足しましたが、これまでも吉本興業とのズブズブの関係や、巨額の赤字が問題視されてきた経緯があります」(全国紙記者)
“成長戦略の目玉”であったクールジャパンの過去10年の成果を問われた西村大臣はコロナでエンタメ業界が世界的に厳しかったと前置きしつつ、「コロナ前には外国人の3200万人のインバウンドがあった」ので「多くの外国人が日本に対して大きな関心を持っていたということだと思います」とクールジャパンを評価した。
さらに蓮舫議員は、「’22年に263億の投資額を見込んでいたのが、今や154(億)で4割減、累積損益、損は4倍、最終年度の累積損益マイナス500億。これね、ゴールポストをズラしてズラして、なんとなく計画を達成したという、ある種の粉飾じゃないですか?」と3回も計画の見直しが行われたことについて指摘。西村大臣は再びコロナの影響を理由にあげた上で、“見通しの甘さもあった”ため昨年11月に出した”改善計画”にのっとり「収益改善をしていきたい」と発言した。
しかし、蓮舫議員は「コロナの責任にしちゃだめですよ」と、コロナ前から大幅な“下振れ”で計画の見直しをしている点を挙げつつ、「クールジャパン機構への300億円の国の出資は、今や1156億円突っ込んでます。累積赤字は356億。これ、まさかのV字回復であと11年で黒字10億出るって(計画では)言ってるんですよ」と、これまで巨額の赤字続きだったのに“今後11年間は毎年30億円以上の黒字を出し続ける”という計画そのものに疑問を呈した。
「届くのは吉本興業のPRだけ」のコンテンツ配信事業も
さらに蓮舫議員は、同機構の教育コンテンツの配信事業「ラブ&ピース マザー」についても問題があると指摘。
西村大臣は同事業を「日本発で子供向けの教育コンテンツを制作配信する事業」で、海外需要獲得を目指し、配信先はアジアを中心に展開を予定していたものの、有料会員数の低迷によるサービス撤退、沖縄での常設設備計画の中止などを理由に海外展開の計画が頓挫したと説明。
蓮舫議員は「アジアに1回も配信してないで終わっちゃったんでしょ? ここに最大100億の支援、実際に31億円支援してるんですよ。じゃあ収益性は出たんですか? 儲かったんですか?」と追求すると、西村大臣は「トータルで言うとマイナス」と発言した。
さらに、蓮舫議員は同事業と吉本興業との関係性にも問題があると指摘。クールジャパン機構で「アジアに教育コンテンツを流す」ということで視聴案内のメルマガに登録してみたが、届くのは吉本興業のPRだけだったという。
「『よしもとアカデミー 放課後クラブ』の案内、『芸人とネタ作成チャレンジ』、『芸人とユーチューブ動画作成』、『M-1グランプリ予選突破目指した漫才レク』、『“吉本興業の芸人が行うワークショップ”への小中高校生に“有料”で参加をしてください』という案内なんですよ。国が31億円出資して作った会社が、そこで“教育コンテンツを見たい”と契約した人のメルマガに、一企業の広報・広告・案内、届けたの適切ですか?」と、国費を投じた事業が一私企業のPRに使われる事の問題を提起した。
確かに「ラフ&ピース マザー」のYouTubeチャンネルを見ると、会員数は4179人(10月31日時点)で、「未就学児向けコンテンツ」「小学校高学年向けコンテンツ」など項目には吉本芸人の動画がズラリと並ぶ。
蓮舫議員は、昨年末の財政投融資分科会でも委員から「産業投資という名を借りて、事実上の事後的な補助金を当該出資先にくれてやるほど、我が国の財政は楽観できない状況」と厳しく指摘されていることをあげ、「政権に近いと言われている企業への補助金になってませんか?」と問題点を明らかにした。
支援中のZeppの親会社社長は元クールジャパン機構の社長
また、西村大臣が「アーティストの公演を通じて日本のエンターテイメントを発信できる拠点として、アジア各都市に整備をして低コストで公演を行える仕組みを目指し、日本のコンテンツをしっかりと理解をしてもらうという」とする「アジア広域でのライブホール展開事業」という日本人アーティストの支援事業にも蓮舫議員は疑問を呈した。
「マレーシアZepp、今年1月から9月2日、フェイスブック掲載を計上すると85公演に対して日本人アーティスト(の出演)は7.7%のみ。台湾Zepp117公演に対して日本人アーティストは17.6%。K-POP(の出演比率)とほぼ一緒です。1割から2割しか日本人アーティストが出てない」とし、「日本人アーティストが出ることによってマレーシアの日本ファン、台湾の日本ファンを増やして日本に来てもらって、インバウンドで、それがK-POPを超えてそして経済成長につながるといって、50億出資したんですよ。政策性どこにあるんですか?」と追求。さらに「Zeppホールディングス(正式にはZeppホールネットワーク)の親会社の社長は2年前に退任したクールジャパン機構の社長でした」と利益相反であると指摘した。
蓮舫議員によると、クールジャパン機構の投資の失敗はすでに71億円で、累積損益356億円の半分以上の187億円が人件費、調査費、六本木ヒルズの事務所費などのファンドの必要経費であり、現在投資中の954億円についても、すでに108億円の減損が計上されていて、改善計画の実現性は乏しく、「もう10年経ったんです。クールジャパンで日本が稼げるようにしていこうって安倍総理はあんなに言ったけど、10年経って“真っ赤っか”じゃないですか。ぜひこれは見直しをしてもらいたい」と岸田総理に迫った。
この蓮舫議員の迫力の国会質問にはX(旧Twitter)でも話題に。リアルタイムで中継を視聴していた人たちからは、クールジャパン機構の存在意義を問う声が相次いであがった。
《蓮舫さんがクールジャパン機構がとんでもない税金食いつぶし機構であることを暴露w 確かに、クールジャパンっつうより、フールジャパンですねー》
《官民ファンド 国からもらったお金だと思って 六本木ヒルズの事務所とか 贅沢な使い方してるんじゃない?》
《クールジャパン機構のボロボロの赤字。しかも100億をすでに減損へ。うわぁ、普通の会社なら潰れているわ…さすがに西村経産相も口が重い》
《全然稼げなかったクールジャパン機構!!!政治家吉本などが甘い汁吸っただけだった!!!究極の中抜き装置だな!!!》
●辞表提出の柿沢未途法務副大臣を予算委出席させず国会大混乱 10/31
4月の東京江東区長選をめぐる公選法違反の疑いで東京地検特捜部の強制捜査を受け、木村弥生区長が辞職を表明したことに関連し、柿沢未途法務副大臣(52)が31日、自身の関与を認めて辞表を提出、受理された。木村氏の陣営は公選法で禁じられている有料ネット広告をユーチューブに掲載した疑いがあるが、複数の関係者によると、柿沢氏は、自身がネット広告の利用を木村氏側に提案したことを認めたという。
この日柿沢氏と面会した小泉龍司法相は「違法という意識は持ち合わせていなかったが本来、その知識を持つべき立場にいた。大きな過失がある」と柿沢氏が弁明したと明かした。岸田文雄首相は「任命責任を感じている」と述べたが、9月の内閣改造後、不倫報道で文科政務官を辞任した山田太郎氏に続き政務三役の辞任は早くも2人目。適材適所の人選を強調してきたが「人事の岸田」の看板倒れになりかねない事態。減税政策で支持率が急落する岸田首相に追い打ちをかけるような辞任ドミノだ。
柿沢氏の辞任は国会審議も混乱させた。与野党合意のもと、柿沢氏は参院予算委員会への出席を要請されていたが、小泉龍司法相が委員会出席中に辞表を提出し、委員会に現れなかった。「柿沢隠し」「出席逃れ」と野党が反発し、審議は一時ストップした。
再開後の委員会で小泉法相は「副大臣を委員会に出席させない判断を大臣にはからないまま、法務省の事務方が独断で行った。越権行為だ」と、役所の判断を批判。末松信介予算委員長も「勝手な判断を法務省が行い委員会の運営を妨げた」と指摘した。ただ、関係者によると、法務省内には柿沢氏がこのまま副大臣として在籍することへの危機感が強かったという。
柿沢氏は江東区を含む東京15区選出。保守分裂となった江東区長選で、自民党の推薦候補ではなく木村氏を支援した。
●岸田首相、定額減税「1回で終わらせたい」「4万円は大きな額」 10/31
岸田文雄首相は31日の参院予算委員会で、来年6月開始の方針を示している所得税と個人住民税の定額減税について「1回で終われるように経済を盛り上げていきたい」と述べ、1回のみの措置としたい考えを示した。立憲民主党の蓮舫氏への答弁。
首相は定額減税を1人当たり4万円とし、住民税が課税されない低所得世帯には7万円を給付する方針を示している。蓮舫氏への答弁で、4万円の減税効果に関し「大きな額だ。生活を支え可処分所得を増やす意味はある」と強調した。蓮舫氏は「来年6月は遅すぎないか」と指摘した。
一方、自民の世耕弘成参院幹事長は31日の記者会見で、減税の実施回数について「今から回数を決めてという話ではなく、物価高騰の状況を見極めながら対応を決めていけばよい話だ」と述べた。
 
 
 
 

 

●最高裁が性別変更手術要件に“違憲判断” 岸田首相「厳粛に受け止める」 11/1
岸田首相は1日の参院予算委員会で、最高裁が10月、戸籍の性別を変更するには生殖機能をなくす手術が必要だとする法律の規定について「憲法違反」と判断したことについて、「最高裁の判断は厳粛に受け止める必要がある。政府としても立法府とも相談しながら関係省庁と連携して適切に対応する」と述べた。
現在、戸籍の性別を変えるには「生殖腺や生殖機能がないこと」などの条件を満たすことが定められ、事実上手術が必要だが、「手術の強制は重大な人権侵害で憲法に違反する」との訴えを受け、最高裁は手術が必要との規定について「違憲」との判断を示したため、法改正の必要性が生じている。
●岸田文雄のイライラと前官房副長官・木原誠二の不在 11/1
参院予算委員会を見ていると首相・岸田文雄のイライラが募っているのがわかる。31日に辞表を出した法務副大臣・柿沢未途の問題で午後の予算委員会は空転したのち再開し、野党の厳しい追及を受けることになった。4月に行われた東京・江東区長選で初当選した自民党元衆院議員・木村弥生陣営が選挙中に出したネット広告は柿沢の提案とわかり、公職選挙法違反になりそうだ。政界では柿沢の秘書が聴取されているなどのうわさが広がり、法相も質問に追われ、首相は「任命責任を感じている」と答弁は防戦に終始した。
また、こども相・加藤鮎子は少子化対策の財源をどう確保するかと問われ、内訳の説明で立ち往生、助けに入った厚労相・武見敬三も数字が入っておらず、なんとも締まらない答弁になった。岸田内閣肝いりの政策も担当大臣がしどろもどろではどうにもならない。自民党の杉田水脈・環境部会長代理はアイヌ民族や在日コリアンらに対する「人権侵犯」と法務省から認定されたが、動画で「私は差別をしていない」などと主張。「このまま放置するのか」と問われ、首相は「特定の民族や国籍の人々を排斥することは許されない」と一般論でしのいだ。
だが一番は前官房副長官・木原誠二が官邸にいないことだという。現在は党幹事長代理兼政務調査会特別補佐という党の要職だが、2006年に東京・文京区の住宅で妻の元夫が死亡したことをめぐり、遺族が殺人の疑いで警視庁に告訴状を提出し、先月25日に受理された。結果はどうなるかわからないものの、木原の政治的ダメージは大きい。木原は首相が党政調会長時代からの側近で信頼も厚い。財務省出身で同省の政策的振り付けの説明を首相に丁寧に説明してきた首相の政策的ブレーンでもある。「何かの時、木原と話すなどの息抜きや安定剤のような役割がいない中、予算委員会ではこの体たらくでは」とは自民党ベテランの解説。だが国民はこのさまを見てもっとイラついている。
●政府の経済対策めぐり参院予算委で論戦…あす経済対策を決定 首相会見へ 11/1
減税や給付などを中心にした政府の新たな経済対策をめぐり、岸田首相が出席している参議院の予算委員会で論戦が交わされている。
国会記者会館からフジテレビ政治部・門脇功樹記者が中継でお伝えする。
「減税国会」と位置づけられる中、野党側は、岸田首相の減税などの判断について、厳しく問いただしている。
日本維新の会・音喜多政調会長「非課税世代の多くは高齢者で、資産を持っている場合も多々ある。働いている苦しい現役世代から高齢者への所得移転を進め、世代間格差をさらに拡大させるもの」
岸田首相「1人あたり4万円という減税額を設定している。これは子育て、子ども子育て世代にとって、大きな可処分所得の後押しになる。世代間格差を助長するということにはならない」
日本維新の会は、減税や給付ではなく社会保険料を引き下げるよう求めたが、岸田首相は「給付と負担のバランスを崩し、制度自体の持続可能性に影響が出てくる」として、否定した。
政府が2日に閣議で決定する経済対策は17兆円程度の規模となる見通しで、岸田首相は夜に記者会見を開き、自ら説明することにしている。
●将来的な消費税減税「全く否定するものではない」 首相答弁 11/1
岸田文雄首相は1日の参院予算委員会で、将来的に消費税を経済対策などで減税する可能性について、「大きな議論が行われた結果として、消費税について対応を考えることを、全く今から否定するというものではない」と述べた。日本維新の会の東徹氏が「デフレ脱却をしなければならない手法が消費税減税などの場合は考えるか」とただしたことへの答弁。
2日に閣議決定する今回の経済対策に所得税などの減税を盛り込む理由については「所得税、住民税の増収分を同じ形でお返しするのが最も分かりやすい方法であり、こういった観点も踏まえて選択を行った」と述べた。
●岸田首相、賃上げ「来年度が正念場」 日中首脳会談に意欲 参院予算委 11/1
参院予算委員会は1日午前、岸田文雄首相と全閣僚が出席し、2日目の総括質疑を行った。
物価高対策に関し、首相は「来年度は賃上げが物価に追い付くことができるか、まさに正念場だ。ここに的を絞って経済対策を用意しなければならない」と指摘した。自民党の太田房江氏への答弁。
政府は新たな総合経済対策に低所得者世帯への7万円給付を盛り込む方針で、太田氏は12月中に支給するよう求めた。新藤義孝経済再生担当相は「国と地方が連携を取り、速やかな対処ができるようにしていきたい」と応じた。
公明党の谷合正明氏は、地方交付税の原資に当たる所得税が減税となる影響をただした。首相は「地方の財政運営の支障につながらないよう留意する」と語った。
谷合氏は、米国で今月中旬に開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた日中首脳会談の可能性を質問。首相は「現時点では何も決まったものはないが、あらゆるレベルで意思疎通を図っていきたい」と意欲を示した。
戸籍上の性別変更で生殖能力をなくす手術を事実上の要件とする性同一性障害特例法の規定について、最高裁は違憲と判断した。首相は「厳粛に受け止める必要がある。関係省庁間で連携して適切に対応していく」と述べた。
●岸田首相ら給与アップ法案、見直し言及せず すでに3割カットを強調 11/1
政府が臨時国会に提出した首相や閣僚らの給与アップ法案をめぐり、岸田文雄首相は1日の参院予算委員会で「国民の不信を招かないように努力を続けたい」と述べた。だが、行財政改革を推進するためにすでに月給の3割を国庫返納していると強調。法案の見直しには言及しなかった。
日本維新の会の音喜多駿政調会長への答弁。音喜多氏は「首相の給与アップは月給だけで年間7万2千円。経済対策で給付される金額より多い」と批判し、見直すよう求めた。これに対し、首相は「(法案が成立すれば、ボーナスを含め)年間で46万円上がる」と認めた。そのうえで国庫返納額は年間1218万円にのぼると主張。「自らこうした姿勢を示すことで国民の不信を招かないよう努力を続けたい」と語った。
この法案は、一般公務員の給与改定に準じ、首相の月給を6千円引き上げ201万6千円に、閣僚は4千円アップの147万円などとする内容。首相のボーナスも年間3・3カ月分から0・1カ月分増える。
●低所得者対策の重点支援交付金追加、年末までに決定=新藤経済財政相 11/1
新藤義孝経済再生担当相は1日の参院予算委員会で、自治体による低所得者への給付を後押しする重点支援地方交付金の追加に関し、年末までに決定する考えを示した。
政府が策定中の総合経済対策を巡り発言した。
岸田文雄首相は10月26日の政府与党政策懇談会で、低所得者層への支援として、住民税非課税世帯1世帯当たり合計10万円を目安に給付金を出すとともに、物価高対策のための重点支援地方交付金の低所得者世帯支援枠の追加的な拡大を表明していた。
首相は1日の同予算委で、定額減税と給付金の対象の間の所得層を対象に重点支援地方交付金で「丁寧に対応する」と説明した。
●参院予算委 新たな経済対策や賃上げなどめぐり論戦 11/1
国会では10月31日に続いて参議院予算委員会で質疑が行われ、政府の新たな経済対策や賃上げなどをめぐって論戦が交わされました。
自民 太田氏 新たな経済対策について
自民党の太田房江氏は、政府の新たな経済対策について「今、国民が求めているのは、まずはきょうの物価高から私たちの生活を守ってほしいということだ。政府が責任を持って物価高から国民生活を守るというメッセージを総理みずからのことばで国民に伝えていただきたい」と述べました。
これに対し、岸田総理大臣は「まずは所得税減税と給付なども用意して国民の可処分所得をしっかり支えていく。あわせて来年に向けて企業の稼ぐ力や供給力の強化を図って、賃金引き上げの流れも確実なものにしていく。この2つを経済対策の中にしっかり盛り込んで、日本の経済を盛り上げ、国民生活を守っていきたい」と述べました。
公明 谷合参院幹事長 賃上げについて
公明党の谷合参議院幹事長は、賃上げをめぐり「医療や介護、福祉の分野は、年末の報酬改定も視野に入れつつ、賃上げのために必要な対応を、経済対策、補正予算で手当てするべきだ。保育士も処遇改善を図ってきたが、もう一段、大幅な引き上げを図るべきだ」と求めました。
これに対し、岸田総理大臣は「医療や介護、福祉の分野における物価高騰対策と賃上げも重要な課題で、今回の経済対策においても必要な対策を検討していきたい。保育の分野でも、今年度の人事院勧告を踏まえて、さらなる処遇改善を行っていきたい。そして、年末に診療報酬などの改定の議論が行われるが、数字だけではなく、現場の方々の処遇改善につながる仕組みの構築も重要な課題だ」と述べました。
公明 伊藤氏 「ヤングケアラー」について
公明党の伊藤孝江氏は、家族の介護などに追われる「ヤングケアラー」について「学びや経験、進学や就職など将来を諦めたり、孤独・孤立で追い詰められたりすることのないような支援が必要だが、自治体の取り組みや問題意識の格差は引き続き大きな課題だ。地域間格差をなくすために政府として取り組みを着実に進めていただきたい」と求めました。
これに対し、岸田総理大臣は「ヤングケアラーを適切な福祉サービスなどの支援につなぐためのコーディネーターの配置や関係機関の職員への研修などの支援を行っている。今後も地方自治体の状況をしっかりと踏まえながら国としての支援を考えていきたい」と述べました。
岸田首相 経済対策に盛りこむ所得税減税や給付について
このほか、岸田総理大臣は、経済対策に盛りこむ所得税などの減税や給付をめぐり「定額減税の所得制限については子育て世帯の分断を招くことがあってはならないという考え方を示しており、与党税調ではこういった考え方も念頭に検討を進めてもらいたい。また、地方の財政運営への支障や過度な事務負担につながらないように留意することは重要なポイントだ」と述べました。
岸田首相 性同一性障害 性別変更の手術要件について
さらに岸田総理大臣は、性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更するには生殖機能をなくす手術を受ける必要があるとする法律の要件を、最高裁判所が憲法に違反して無効だと判断したことについて「厳粛に受け止める必要がある。政府としても立法府と十分に相談をしながら関係省庁間で連携して適切に対応していきたい」と述べました。
●「弱り目に祟り目」1週間で政務三役2人辞任…岸田首相の求心力低下 11/1
公職選挙法違反事件に関わったとして、10月31日に柿沢法務副大臣が辞任したことを受け、岸田首相の政権運営に与党内から厳しい声が相次いでいる。
国会記者会館から、フジテレビ政治部・福田真子記者が中継でお伝えする。
わずか1週間で政務三役が2人も辞任する事態となり、「適材適所」の人事を強調してきた岸田首相は、求心力の低下に拍車がかかった形。
支持率低迷が続く中での相次ぐ政務三役の交代に、自民党幹部は「弱り目にたたり目だ」と漏らしている。
党内からは「経済対策は不発で、人事はまさかのマイナスだ」、「去年のドミノ辞任の再来だ。この状況では衆議院の解散はできない」と厳しい声ばかり上がっている。
また、11月1日の国会では、与党の公明党からも苦言が呈された。
公明・谷合参院幹事長「相次ぐ政務二役(副大臣・政務官)の辞任、また委員会審議に混乱がもたらされたことについては遺憾であり、政府には緊張感を持って事に臨み、信頼回復に努めていただきたい」
岸田首相は2日、経済対策の閣議決定に合わせて記者会見を開く予定だが、任命責任をどう説明するかも注目される。
●副大臣辞任でまた出た「任命責任はある」ただ言うだけで何もしない岸田総理 11/1
「任命責任」ほど、永田町で軽い言葉はない。岸田文雄総理は10月31日の参院予算委員会で、東京都江東区の木村弥生区長が公選法違反の疑いで強制捜査を受けた事件をめぐり、東京15区(江東区)選出の柿沢未途法務副大臣が関与したとして辞表を提出したことについて、「就任からまもなく辞表を出したことについて、任命責任を感じている」と述べた。
岸田総理は10月26日の参院本会議でも、山田太郎前文部科学政務官が国会開会前夜に20代後半の女性とホテルに行くなど、不倫関係に陥っていたとして辞任したことを受けて「任命責任を重く受け止めている」と陳謝したばかりだった。
本来ならば「任命責任」は重い言葉だが、岸田総理は閣僚の不祥事があるとよく使う。昨年2月にも、同性婚をめぐる発言で荒井勝喜首相秘書官(当時)を更迭した時も「もちろん私が任命したわけですから当然、その責任を感じている」と答えた。これ以外にも閣僚を更迭するたびに「任命責任は私にある」と繰り返してきた。
「任命責任はある」と言うと、神妙にしているように聞こえるが、実際には何か具体的な行動をとったことはない。ただ言うだけなのだ。
立憲民主党の蓮舫参院議員は「総理はずっと『適材適所』と言ってきた。その適材がボロボロと崩れている」と、嫌味たっぷりに批判した。民進党代表時代、人事下手で有名だった蓮舫氏に言われたくないだろうが、さらなる閣僚らの不祥事が出てくるかもしれない。総理として、ここは「忍之一字」あるのみだろう。
●これでもまだ「適材適所」? 岸田政権の政務三役「1週間で2人辞任」 11/1
東京都江東区の木村弥生区長陣営の公選法違反事件を巡り、柿沢未途法務副大臣が31日、木村氏にインターネットの有料広告を勧めたと認め、辞任した。女性問題で26日に文科政務官を辞めた自民党の山田太郎参院議員に続き、1週間足らずで2人の政務三役が内閣を去る異常事態となった。岸田文雄首相は「国民の信頼を回復できるよう全力で取り組む」と語ったが、昨年に閣僚4人が次々と辞めた「辞任ドミノ」を思い起こさせる状況で、野党は「政策遂行能力がなくなってきたのではないか」と追及を強めた。
「えーっ」参院予算委の最中に辞表
柿沢氏は31日午前9時半過ぎ、参院予算委員会が開かれている最中に辞表を提出した。予算委で事実関係を問われた小泉龍司法相は「まだ私もつまびらかではないが、(辞表を)提出されたと報告を受けている」と答弁。人ごとのような応対に野党議員から「えーっ」とどよめきが起きた。
予算委では与野党の合意で柿沢氏の出席を要請していたにもかかわらず、法務省の事務方の判断で出席させなかったため、2時間弱にわたり審議は中断した。身内である自民党の末松信介参院予算委員長ですら「勝手な判断を法務省が行い、予算委の運営を妨げ、権威をおとしめた。強く注意を促す」と批判した。
質問通告していた立憲民主党の杉尾秀哉氏は「質問権が奪われた。柿沢隠しだ」と激しく憤った。首相は「山田文科政務官に続いての辞任について、任命権者としての責任を重く受け止める」と釈明に追われた。
「重く受け止めている」言葉が軽い
首相は9月13日の内閣改造で過去最多に並ぶ女性5人を起用した狙いを「適材適所」と強調。逆に、女性の起用がゼロだった9月15日の副大臣、政務官の人事についても「適材適所」と同じ表現で説明していた。
山田氏が女性との不適切な関係を報じられて辞任した際には「任命責任を重く受け止めている」と陳謝したばかり。言い回しは今回とほとんど変わらず、言葉の軽さが際立つ。
2人の辞任は昨年、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係の問題で当時の山際大志郎経済再生相や「死刑はんこ」発言の葉梨康弘法相、「政治とカネ」の問題で寺田稔総務相と秋葉賢也復興相の4閣僚が相次いで辞任した状況をほうふつとさせる。内閣支持率が低迷する中、首相は所得税減税を打ち上げて挽回を図ろうとするが、不祥事で国民の政治への信頼をさらに失っている。
立憲民主党の安住淳国対委員長は「先週は文科政務官の疑惑があり、今回は選挙違反を主導した人が法務副大臣になっていた。しゃれにならない。政策遂行不可能内閣だ」と厳しく指摘した。国民民主党の玉木雄一郎代表も「こうした方が法務行政をつかさどる政務三役に就いていること自体、(首相の)適材適所という説明が崩れている」と批判した。
●岸田首相に不満爆発 迷走する「減税」で自民政調会議が紛糾 11/1
岸田文雄政権で炎上≠ェ続いている。政権浮揚の切り札になるはずだった「減税」方針は二転三転したうえ、国民には「遅い、ショボい、選挙目当て」などと極めて不評だ。自民党内からも不満が噴出し、10月31日の政調全体会議は紛糾した。岸田首相が力を入れた「人事」でも、柿沢未途法務副大臣(衆院議員)が公職選挙法違反事件に絡んで辞任した。すでに、女性問題を報じられた山田太郎文科政務官(参院議員)が辞任に追い込まれており、「不祥事ドミノ」「辞任ドミノ」を懸念する声もある。G7(先進7カ国)議長国として中東緊張に対する姿勢も疑問視されている。火だるま状態の岸田政権は、波乱の臨時国会を乗り切れるのか。
「地元で評判が悪い」「給付に変更すべきだ」「国民に評価されていない。選挙目当てと見透かされている」「内容が分かりにくい」「減税を撤回すべきだ」
自民党は10月31日、非公開の政調全体会議で、岸田首相が指示した所得税と住民税の1人計4万円の減税方針を含む経済対策について議論した。1時間半を超えた会議では、延べ48人が発言した。
●評判の悪い「4万円減税」の黒幕が判明… 11/1
永田町が岸田文雄総理のぶち上げた減税策で揺れている。政府は一人当たり4万円の定額減税を行うとともに住民税の非課税世帯には7万円を給付するというが、早速与党の面々は大反対の大合唱。その黒幕はやはりあの男だった。
財務省との対決
政府は11月2日に閣議決定する予定の経済対策に、この減税策を盛り込む予定だ。その中身は、与党や税制調査会での議論が始まる前だというのに、すでに概要が明らかになっている。今回の経済対策では1人あたり4万円の減税が予定されており、その内訳は所得税が3万円、住民税が1万円。約9000万人の国民が対象になる。また、住民税が非課税となっている低所得者世帯には7万円の給付を行う方針だ。減税は来年6月に実施される。
岸田総理は10月26日の政府与党政策懇談会で、「国民の負担を緩和するには、直接的に下支えする所得税、個人住民税の減税が最も望ましい」と、発言。自らぶち上げた政策に意欲を見せた。
これまで“増税メガネ”とネット上で揶揄されてきた岸田総理はなぜこのタイミングで減税を打ち出したのか。実は、官邸の総理側近は今回の案について、周囲にこう説明している。
「1年の減税だけれども、来年の賃上げが達成された後に減税になるので、国民は効果をかなり感じるはずだ。実感できるくらいの額を税で引かれることになるから。だから賃上げも大事なんだ」
「財務省は今回の政策を相当嫌悪していますよ。政権はこれまで財務省に近いと言われてきた。増税メガネとか言われてね。じゃあ、政権が一番やりたいことは何か。それは経済。だから減税なんです。狙いは財務省対政権の対立構図を作り、国民の支持を集めること。もちろん、財務省との対決は支持率を上げるためのポーズで、財務省とは一緒にやっていくわけだけど」
岸田総理率いる宏池会(岸田派)は宮沢喜一元総理など、財務省出身者が多いことで知られる。総理自身も財務省に近いとされ、「財務省にベッタリ」などと言われてきた。今回の政策で“脱財務省”を図り、新たな「岸田像」を印象づけたいというわけだ。
“還元する”というアイデア
確かに、10月23日に行われた所信表明演説では「経済」という言葉が総理の口から29回も連呼された。
政治部デスクが解説する。
「これは岸田総理の強い意向が反映されていたようです。こんなに多く“経済”という言葉を入れなくても、という側近のアドバイスがあったものの、結局残すことになった。総理は今年の前半はこれまでの政権が先送りしてきた防衛増税やこども政策などに力を入れてきた。しかし、支持率が上昇する兆しはまったく見えず、経済政策に力を入れざるを得なくなった。そこで岸田政権独自の政策として減税を掲げたのです」
しかし、自民党幹部からは総スカン状態だった。
「10月18日には、“三頭政治”と言われてきた麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長に加え、森山裕総務会長、萩生田光一政調会長、小渕優子選対委員長の6名による『6者会合』を党本部で開きました。しかし、出席者のほとんどは効果への疑問から減税策に反対。25日の代表質問では自民党参院幹事長の世耕弘成さんが“総理が何をやろうとしているのか、全く伝わらなかった”と発言し、大きく報じられました」(同)
では、この減税策は一体誰の発案なのか。
「総理の懐刀である幹事長代理、木原誠二さんです」とは自民党関係者。
「岸田総理は9月25日に記者団に“成長の成果である税収増を国民に適切に還元する”と説明し、10月中の経済対策策定を与党に指示しています。実はこの税収を“還元する”というアイデアを総理に授けたのが、木原さんでした。総理もこの間、自身が“増税メガネ”と呼ばれることに非常に嫌悪感を示しており、この案に飛びついた。結果、総理、木原さん、嶋田隆総理秘書官という3人で減税策を決めていったと見られています。自民党内の議論の前にすでに案ができているのは、根回しして、財務省に作らせたのでしょう」
“解散するのはやめてくれ”
これまで官邸で権勢を振るってきた木原氏にとっては、岸田政権の浮沈は自身の今後にも関わる重大な問題だ。
「木原さんは減税で政権浮揚が可能だ、という判断で提案したのだと思います。しかも、自身は『週刊文春』による“木原事件報道”で次期衆院選が厳しくなるのは目に見えています。官房副長官という官邸の激務を離れ、家族と過ごす時間もできたそうですが、周囲に“総理にいま解散するのはやめてくれないかと言ったんだよ”と話しています。それが本気なのか、冗談なのかはともかく、いま解散されたら困るのは木原さんです。そこで減税策が世論に受ければ、自身の選挙にも有利に働き、当選すれば禊も済ませられる。ただ、この減税策は党内はおろか世論にも受けも悪く、最近の木原さんは不機嫌極まりないですね」
●岸田政権の“亡国”中東外交 国際的孤立を招き、安全保障脅かすおそれも… 11/1
2023年10月7日にイスラム過激派テロ組織ハマスがイスラエルに対する大規模テロ攻撃を開始し、イスラエルが対ハマスの開戦宣言をしたことに対する岸田政権の対応は遅く、場当たり的だった。加えてそこには、日本を国際的に孤立させ、国家安全保障を危うくし、日本への不信感を増幅させる問題がある。
開始5日後に「テロ」と呼称変更
岸田首相がこれについてXで声明を出したのは翌日の8日であり、この声明で岸田氏はハマスの攻撃をテロと認定しなかった上に、「全ての当事者に最大限の自制を求めます」と訴えた。
岸田声明の内容は、他のG7諸国の首脳や外相が、当日直ちにさまざまなかたちでハマスの蛮行をテロと非難し、イスラエルの自衛権を支持すると明言したのとはあまりにも異なっていた。「すべての当事者に最大限の自制を」というのは要するに、イスラエルに自衛権を行使するなとほのめかしたに等しい。
岸田政権は、テロ開始から5日後の10月12日になって突如、ハマスの攻撃をテロと呼ぶと発表した。その理由として松野官房長官は、「多数の一般市民を標的として殺害や誘拐を行う残虐な無差別攻撃である点も踏まえ、テロ攻撃と呼称することとした」と述べた。その事実は当初からすでに明らかであり、呼称変更の説明になっていない。テロと呼ぶかどうかを「検討」するのに5日間を要したということだろう。
ガザの病院爆発 日本は「攻撃」と発表したが…
10月17日にガザの病院で爆発が発生すると、その直後に上川外相は、病院が「攻撃」され、「多数の死傷者が発生」「罪のない一般市民に多大な被害が発生したことに、強い憤りを覚えます」という談話を発表し、暗にイスラエルを非難した。外務省はこれに「10月17日、ガザ地区ガザ市にあるアングリカン・アル・アハリ病院で爆発が発生し、避難していた市民少なくとも500人以上が死傷」という説明を補足した。
しかし、実はガザの病院が「攻撃」されたという事実も、「避難していた市民少なくとも500人以上が死傷」という事実も、それを裏付ける証拠はない。これを発表したのは「ガザ保健当局」であり、ガザ保健当局はテロ組織ハマスの傘下にある。米紙『ニューヨーク・タイムズ』は、ハマスの発表を鵜呑みにし、事実確認をせずに一面で報じたことを誤りと認めた。しかし、岸田政権は上川氏の談話を訂正も謝罪もしていない。
日本除くG7がイスラエルの自衛支持
22日に日本を除くG7諸国(6カ国)が電話会談し、イスラエルの自衛権を支持する共同声明を出すと、岸田政権は日本が参加しなかった理由について、「6カ国は今回の事態の中で誘拐・行方不明者など犠牲者が発生しているとされる国々だ」と述べ、日本人が犠牲になっていないからだと説明した。日本人がハマスのテロの犠牲になっていないので、イスラエルの自衛権を支持しない、という説明に合理性は全くない。
上川外相は27日にも記者会見で、「イスラエルが主権国家として、自国及び国民を守る権利を有することは当然」とは述べたものの、イスラエルの自衛権を支持するとは述べなかった。この場で上川氏は、「我が国は、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、第一に、人質の即時解放・一般市民の安全確保、第二に、全ての当事者が国際法を踏まえて行動すること、第三に、事態の早期沈静化を一貫して求めてきております」と強調している。
8日の岸田首相の「全ての当事者に最大限の自制を求めます」から27日の上川外相の「事態の早期沈静化」に至るまで、岸田政権はイスラエルには自衛権があると言いつつも、自制するよう、早期沈静化のためにその行使を自粛するよう暗に求める態度を続けている。しかもイスラエル非難をほのめかす表現を含む発信も続けている。
上川氏は27日の会見で「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値を共有する我々G7」とか、「日本は、今年G7の議長国であります。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化、そして、国際的なパートナーへの関与の強化等を優先課題として、G7の議論をリードし、成果を挙げてまいりました」と、G7の一体性、日本のリーダーシップを強調した。
しかし日本以外のG7首脳が共同声明を出したことについては、「他国が発出した声明の内容につきまして、コメントすることにつきましては、差し控えさせていただきます」「今般の事案につきましては、我が国は直接の当事者ではなく、個別具体的な事情を十分把握しているわけではないことから、確定的な法的評価を行うということにつきましては、差し控えたい」云々と論点をずらし、木で鼻をくくったような回答に終始した。
また、24日の会見では「従来、国際社会において、中東問題をめぐりましては、様々な枠組みで、議論や立場表明がなされてきております。今回もその一つとして、G7とは別の形で発出されたものと承知しております。このように、国際社会では、その時々の情勢や、また各国が抱える状況等に応じまして、様々な形で連携・協力が行われてきております」と一般論にすり替えて、記者の質問を煙に巻いた。
岸田政権の「中立」外交は“夜郎自大”
テロとの戦いというのは、「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値を共有」するかどうかが、最も端的に試される局面である。テロとは暴力の行使により自らの政治的目的を達成しようとする試みであり、自由や民主主義の対局に位置することは言うまでもない。テロを容認すれば民主主義は崩壊し、法の支配にもとづく国際秩序は瓦解する。
岸田政権は、今でこそハマスの攻撃について「テロは容認できない」「テロを断固として非難」と言ってはいるものの、初動の段階ではそもそもハマスの攻撃をテロと認定することすらできず、一方でテロ組織ハマスの発表を証拠もないのに早急に事実と認定し、暗にイスラエルを非難する談話を発表するという醜態を国際社会にさらした。
しかも日本は、G7とたもとを分かち、テロ攻撃に対するイスラエルの自衛権行使を支持しない道を選択した。岸田政権のこの選択は、日本の有事の際、国際社会が日本の自衛権行使を支持しない可能性を増大させた。日本がテロ攻撃や他国からの軍事侵攻を受けたとしても、「我が国の国民が犠牲になっていないので、我が国は日本の自衛権行使を支持しません。事態の早期沈静化のため、日本には最大限の自制を求めます」と言われることになろう。
中東外交だけは中立でやる、欧米とは異なるバランス外交を、などという掛け声は、日本国内では一定の支持を得るかもしれないが、国際的に客観的に見れば単なる夜郎自大だ。中立には対価が伴う。日本にはその覚悟も準備もない。日本には一国で自国を守れるだけの軍事力も兵力もないのが現実だ。
米国との同盟関係に加え、価値観を共有する諸国と連携した外交を展開することなしには、日本の国防はおぼつかない。
岸田政権の中東外交は、亡国の外交である。
●最高裁“違憲判断” 岸田首相「厳粛に受け止め、立法府と相談し適切に対応」 11/1
岸田首相は1日の参院予算委員会で、最高裁が10月、戸籍の性別を変更するには生殖機能をなくす手術が必要だとする法律の規定について「憲法違反」と判断したことについて、「最高裁の判断は厳粛に受け止める必要がある。政府としても立法府とも相談しながら関係省庁と連携して適切に対応する」と述べた。
現在、戸籍の性別を変えるには「生殖腺や生殖機能がないこと」などの条件を満たすことが定められ、事実上手術が必要だが、「手術の強制は重大な人権侵害で憲法に違反する」との訴えを受け、最高裁は手術が必要との規定について「違憲」との判断を示したため、法改正の必要性が生じている。
●内閣支持率の危機的状況が示すもの 外交の「ブレ」に付け焼刃的な還元 11/1
29日に公表された日経新聞とテレビ東京の共同世論調査で、内閣支持率は33%で前回比9ポイントも下落し政権発足後、最低となった。2012年に自民党が政権を奪還して以降でも最低の支持率だという。
政権に有利な数字が出がちとされる同調査としては厳しい内容だ。そして、自民党の政党支持率が6ポイント減の32%まで下落しているのに驚いた。テレビ朝日の同時期の調査でも、内閣支持率は過去最低の26・9%。状況は厳しくなるばかりのようだ。
最近、自民党議員からこんなぼやきを聞く。「駅前で辻立ちしていても、有権者の反応が冷たい」。国民は岸田離れ≠ゥら、岸田嫌い≠ノ至った恐れもある。
日経・テレ東調査は、26日の政府与党政策懇談会の直後に行われた。懇談会では、「デフレ脱却」への一時的措置として、国民1人当たり4万円の所得税・住民税減税を来年6月から実施することを表明した。低所得者世帯にはただちに7万円を給付し、児童手当の内容、支給方法を拡充する方針も決定した。
にもかかわらず、国民は岸田政権を評価しなかった。「国民への還元」と言いつつ、付け焼刃的な措置であるとみなされたのだろう。
さらに目立つのは岸田首相が「得意」と自負する外交でのブレ≠セ。イスラム武装組織のハマスは7日、イスラエルに大規模な奇襲をかけ、民間人を殺害し、多数の人質をガザ地区に連れ去った。
これを受け、岸田首相は8日、X(旧ツイッター)で「全ての当事者に最大の自制を求める」と発信した。これが、ハマスの「テロ」を軽視しているとの批判も呼んだ。
復讐が復讐を招く悲劇を避けようとの呼びかけだろうが、「テロ行為を許さない」という断固たる覚悟と決意があれば、別の表現になったのではないだろうか。
G7(先進7カ国)のうち日本を除く6カ国は22日、ハマスの蛮行に強く抗議する声明を出した。松野博一官房長官は、翌日の会見で、日本不参加について「在留邦人の生命・身体に被害が及んでいるとの情報がない」との趣旨で釈明したが、あり得ない発言だ。
国民民主党の榛葉賀津也幹事長は、27日の会見で「最悪のコメント」と怒りをあらわに指弾した。「日本は北朝鮮による拉致被害を全世界に訴えている。にもかかわらず、日本人に被害がないので共同声明に加わらないというのは、理解が得られない」
日本の名目GDP(国内総生産)は2023年にドイツに抜かれ、世界4位に転落する見通しになった。経済を背景にした発言力は、どんどん低下している。だが、岸田政権とともに日本が沈むことは、御免こうむりたい。 
●加藤鮎子こども相、蓮舫氏の「千本ノック」質疑にタジタジ 11/1
10月31日の参院予算委員会で、立憲民主党の蓮舫参院議員が、加藤鮎子こども政策担当相と対峙する場面があった。
トップで質疑に立った蓮舫氏は、岸田文雄首相に「所得税減税」などを問うた後、「さらなる負担増が見込めるのが少子化対策です」と述べ、加藤氏を指名したうえで、「これ、年いくらいるんですか?」と質問した。
加藤氏から「3.5兆円を見込んでいる」との答弁を聞いた蓮舫氏は、「安定財源として歳出改革を徹底。社会保障費の歳出改革ってなんですか?」と矢継ぎ早に問う。
加藤氏は「社会保障の歳出改革につきましては、各省庁が連携して、今後、具体的に進めていくものと承知しています」と答弁し、ざわつく委員会室。
岸田首相に答弁させようとする予算委員長を制し、蓮舫氏は続けて「加藤大臣ね、昨年(2022年)の社会保障費の自然増をいくら抑えましたか?」と問うたが、加藤氏は「社会保障費の自然増につきましては、所管が厚労省。厚労省のほうにご確認いただきたい」と、逃げるような答弁をした。
すると蓮舫氏は加藤氏を「あなた」呼ばわりしたうえで、「メディアに対しても、安定財源を社会保障での歳出改革でやると何度も言っている。じゃあ、去年の社会保障の自然増をいくら抑えたのか。それくらい(額を)おさえているんでしょ。いくらですか」とたたみかける。
加藤氏は「おおむね1500億円と承知している」とやっと答弁すると、蓮舫氏は、「1500億円、自然増を抑えたんですね。中身は何ですか?」とさらに質問を重ねた。
加藤氏は「繰り返しになりますが、詳細は所管(の厚労省)にご確認いただければ」と答弁したが、蓮舫氏は「あなたが少子化担当大臣として、社会保障費から歳出削減をして、安定財源をつくると言っている。去年の1500億円の中身は何だったんですか、と聞いているんです」とあきれたように指摘。
答弁できない加藤氏に代わって、武見敬三厚労相が答弁に立った。蓮舫氏は武見氏の答弁を受けて「薬価を下げて雇用調整助成金を引き下げて、そして75歳以上のご高齢者の医療費窓口負担を倍にして、ようやく1500億円を絞った。相当な痛みですよ。加藤大臣はそのことも知らないで、社会保障費の歳出改革で3.5兆円を生むって。本当にできるんですか?」と加藤氏に問うた。
加藤氏は、歳出改革には答えず「支援金制度は、企業を含めた社会の参加者全体が連帯して、公平な立場で広く負担していく、新たな枠組みであります。また、社会保険の賦課(方式による)徴収ルートを活用することとしており、関係省庁と連携しつつ、具体的な制度設計を速やかに進めてまいります」と答弁。
蓮舫氏は「いや、大臣も不安なら歳出改革の中身も不安ですよ。少子化対策の財源はないんじゃないのですか」と指摘し、2人のやり取りは終了した。
蓮舫氏は同日、予算委員会が終わると、自身のX(旧Twitter)こう書き込んだ。
《社会保障費の歳出改革で年3.5兆円の少子化対策財源を安定確保、と加藤大臣。昨年の社会保障費の自然増が「1500億円」抑制されたこと、その中身が「薬価引き下げ」「75歳以上の医療費窓口負担倍」「雇用調整助成金下げ」であることも知らない大臣に財源を任せられるのだろうか。》
2人のやり取りは、SNSで《百戦錬磨の蓮舫さんに千本ノックのように責められまくっている》と注目され、賛否が渦巻いた。
多く上がったのは、蓮舫氏の質疑を称賛する声だ。
《あれ観て、少子化対策ができるなんて国民は思わない。確かにひどい。算数のできないクラスを算数ができない教師に担当させるような空虚。お粗末なのは加藤鮎子議員だけではないが 蓮舫議員の質疑は面白かった》
《午前で加藤鮎子こども担当相のポンコツぶりだけ目立った。蓮舫議員の財源は?の質問にしどろもどろ、しまいには挙手忘れてマイクに向かって議長に指摘されて。世襲でお勉強は優秀でも、臨機応変、そもそも自分の職務範囲を勉強できてないのではないか?ありゃ駄目だって印象のみ残る》
《なんだかんだ蓮舫議員は必要。他の野党議員もこのくらい厳しく追及して欲しいわ。国民の怒りは頂点に達してるのに。こんな人でも大臣が務まるなんて世も末だわ》
一方、蓮舫氏による「千本ノック」状態に、否定的な声も多く上がった。
《蓮舫議員の加藤鮎子新大臣への質疑。質問の言葉使い口調が強く圧力が強すぎ、大臣の回答もしどろもどろで、もはや内容が入ってこない》
《加藤鮎子内閣府特命担当相手に参院予算委員会で“新人いじめ”をして居るらしい立憲の蓮舫議員、まっそんな事しか出番がない人とは言え…その様な光景が逆に「立憲」のイメージダウンになって居る事に早く気が付くべきだ》
《蓮舫さんがいつもの調子で加藤鮎子大臣に質問する姿は意地の悪いおばちゃんが自分より若い女性をいじめてるようにしか見えない(笑) 立民大損。自民は喜んでますよね》
10月26日、岸田首相は、児童手当の支給回数を年3回から年6回に増やす制度改正をすると表明。拡充された児童手当の初回支給は、2024年12月となる予定だ。
だが、財源となる3.5兆円に関する議論はいっこうに具体化しない。蓮舫氏ならずとも「不安」に思うのは当然なのだが……。
●経済対策の財政支出は21.8兆円で最終調整、定額減税など柱−資料 11/1
政府がまとめる総合経済対策で、財政支出は地方分などを合わせて21.8兆円程度で最終調整していることが分かった。所得税の定額減税などが柱となっているが、新型コロナウイルス禍で策定した過去数年の対策に比べ、規模は縮小した。今後、与党内の手続きを経て2日に正式決定する。
ブルームバーグが入手した資料によると、経済対策を裏付ける今年度補正予算は一般会計で13.1兆円で、定額減税による国民への「還元策」と関連経費を合わせると17兆円台前半程度と見込まれる。特別会計の追加額は1.2兆円。補正追加額のほか、既定経費の活用分や地方の歳出を含めた財政支出は21.8兆円程度で、うち0.9兆円程度が財政投融資だ。これに民間資金を合わせた事業規模は37.4兆円程度となる。
今春闘では30年ぶりに高水準の賃上げが実現したが、物価高で実質賃金は前年を下回ったままだ。経済対策ではこの状態を打開するため、所得減税を来年の春闘の成果が反映され始める6月に行い、可処分所得を引き上げる。低所得者への現金給付や国内投資促進策などとの組み合わせでデフレからの脱却を図り、賃金上昇を伴う経済の好循環につなげるねらいがある。
岸田文雄首相は9月、物価高に賃金上昇が追い付いていないとして、税収増を国民に還元するため、経済対策の策定を指示。所得税・個人住民税を合わせて1人当たり計4万円の定額減税に関しては先週、「過去2年間で所得税、個人住民税の税収が3.5兆円増加する中で、国民負担率の高まりが続いてきたことも踏まえ、納税者に分かりやすく税の形で直接還元する」と説明した。住民税非課税世帯には1世帯当たり計10万円を目安に支援する方針だ。
所得・住民税の定額減税を指示、来年6月に1人4万円−岸田首相
しかし、財政の悪化が続く中で定額減税の必要性に疑念が出ている。経済対策の詳細が伝えられる中でも、岸田政権の内閣支持率は複数の世論調査で過去最低を更新。日本経済新聞社とテレビ東京が10月に実施した世論調査では、物価高対策としての所得税減税を「適切だとは思わない」は65%に上り、「適切だと思う」の24%を上回った。
経済対策にはこのほか、物価高対策として電気・ガス・燃料油価格激変緩和措置、持続的賃上げの実現に向けた中堅・中小企業向け補助金や、主婦やパート従業員らが社会保険料の負担を避けるため働く時間を抑える「年収の壁」への対応を盛り込んだ。半導体や省エネ、宇宙戦略基金などの投資支援策なども盛り込まれた。
●所得減税、岸田首相説得力欠く=自民に不満「結果責任取って」 11/1
岸田文雄首相は4日間の衆参予算委員会審議で、所得税などの「定額減税」の意義を繰り返した。ただ、首相の説明は説得力を欠き、足元の自民党内からも異論が相次ぐ。正面突破を図る構えの首相に対し、党内の視線は冷ややかだ。
「物価高に国民の皆さんが負けないためには、減税と給付金を組み合わせることで、可処分所得を支えていくことが重要だ」。首相は1日の参院予算委で、物価高対策に所得税減税が有効だと訴えた。
定額減税は来年6月の実施を目指す。1人当たり4万円で、非課税の低所得世帯には1世帯当たり7万円を給付する。経済が回復する中での減税はインフレを助長するとの指摘もある。
物価高へ迅速に対応するため、立憲民主党は給付金を主張している。首相は先月30日の自民党役員会で「現金を一律給付する手法は国難とも言える事態に限るとの立場だ」と理屈を挙げ、減税が望ましいと強調した。
首相の説明に理解が広がっているとは言い難い。先月31日に開かれた経済対策に関する党会合では「支持率が上がっていない」「防衛増税と所得減税について、地元から『説明が分かりにくい』という声がある」などの不満の声が続出した。
党税制調査会で幹部を務める甘利明前幹事長は自身のホームページで「一時的な支持率対策と受け止められる施策は慎重に扱った方がいい」と指摘した。
減税は首相がこだわっており、ベテランは「もう後には引けない」とこぼし、ある中堅議員は「首相が結果責任を取るしかない」と突き放した。
今月下旬には2023年度補正予算案の審議が控える。立民の安住淳国対委員長は1日の党会合で減税について「人気取りはひどい目に遭うと国民が警鐘を鳴らしている」とあいさつ。日本維新の会の藤田文武幹事長も記者会見で「合理性がなく、国民からの評判も悪い」と指摘した。
立民は1世帯3万円のインフレ手当を掲げる。維新は立民の対策を「バラマキ」と批判し、消費税率の8%への引き下げや社会保険料の減免を打ち出す。対策は各党に違いがあり、政権を一致して追い込むには至っていない。
 
 
 
 

 

●消費税の増税は?総理「(今は)考えてない」…17兆円規模の経済対策 11/2
政府は所得税などを定額4万円減税し、非課税世帯には7万円の給付を行う方針です。この減税と給付に5兆円程度かかると試算しています。
岸田文雄総理大臣「物価高に賃上げが追いついていない。物価高騰の中で、国民の生活を支えなければいけない」
また、ガソリンなどの燃料油や電気・ガス代の補助金を来年4月まで延長することなども盛り込んでいます。
予算規模は、総額で17兆円規模とする方向で調整しているということです。
参議院の予算委員会で、消費税について問われた岸田総理は、次のように答えました。
れいわ新選組 山本太郎参院議員「消費税の増税、いつやるおつもりですか」
岸田総理「消費税の増税、考えておりません」
消費税率の引き上げを明確に否定しました。
また、消費税率を将来、引き下げる可能性については、「まったく今から否定するものではない」との考えを示しています。
●岸田総理、将来的な消費減税に「今から否定するものではない」 完全否定 11/2
岸田総理大臣は参議院の予算委員会で、消費税を将来引き下げる可能性について「全く今から否定するものではない」と述べました。
「物価高が上がっていてこれに対応していくためには消費税の減税しかないなといった場合には消費税の減税も考えるんですか」(維新・東徹参院議員)
「大きな議論が行われた結果として消費税について対応を考えるということ、これを全く今から否定するというものではないと思いますが、これは大きな議論、大きな判断となります」(岸田総理大臣)
岸田総理は一方で、消費税の引き上げについては明確に否定しました。
「消費税の増税、いつやるおつもりですか」(れいわ・山本太郎議員)
「消費税の増税、考えておりません」(岸田総理大臣)
●谷原章介、増え続ける国の「基金残高」で提言…「減税のための原資に」 11/2
フジテレビ系「めざまし8」は2日、経済対策の補助金などに使われる国の基金の残高が16兆6000億円余りに上っていることを特集した。
これは、約2・4兆円だったコロナ禍前となる2019年の7倍。番組では、10月31日の参院予算委員会で岸田文雄首相は、増え続ける基金の残高について「基金の中身の審査、行政改革推進会議等を中心にこれからも徹底してまいりたいと思います。その上で国庫返納しっかり進めてまいります」などと述べたことを伝えた。
スタジオでは、休眠状態、あるいは、ばく大な予算が使われていない基金などを紹介。その中でAIなど先端技術の研究開発の支援が目的の「経済安全保障重要技術育成基金」は22年度までに使われたのが5億6600万円でこの半分以上が人件費などの管理費用に使われたことを伝えた。
この現状にMCで俳優の谷原章介は「国の未来のための基金なわけじゃないですか。きちんと生かして次の産業作って欲しいですよね」と指摘していた。さらに基金を「減税のための原資にしたり、いろんな増税の予算?そっちに回して欲しい」と提言していた。
●首相給与“年46万円アップ” 閣僚賃上げ法案に「空いた口がふさがらない」 11/2
「青汁王子」こと実業家・三崎優太氏(34)が1日、自身のSNSを更新。臨時国会で提出された閣僚らの給与引き上げ法案「特別職の職員の給与に関する法律」の改正案について言及した。
岸田内閣は臨時国会が開会した10月20日、首相が年間約46万円、大臣が約32万円の賃上げとなる法案を提出した。国家公務員の給与を定めた法律の改正案は、人事院が引き上げを勧告していることに基づいたものだが、勧告の対象外である首相や閣僚についても、同じタイミングで給与の改正案が提出された。
1日の参院予算委員会では、この法案をめぐり、日本維新の会の音喜多駿氏が「今国会に提出した特別職の給与法改正案が成立すると、首相の給与が月給だけで年間7万2000円上がる。経済対策の給付金額より多い。国民の理解が得られない。法案を取り下げるべきだ」と質問。岸田文雄首相は「法律にかかわらず、行財政改革を引き続き推進する観点から、首相は3割、国務大臣は2割を国庫へ返納することを申し合わせしている。給与は上がっても、返納額は1218万円だ。こうした姿勢を示すことによって、国民の不信を招かないよう努力したい」などと答えた。
三崎氏は「空いた口がふさがらない。国民が増額に苦しんでる中、なんと閣僚の賃上げをする法案が出されました。まるで自分たちの懐だけ温かくなればいいという意思を感じます」とし、「自分たちの賃上げをして、私服を肥やす前に、苦しんでる国民の負担をもっと考えるべき。そもそも官僚の給料から減らすべきでは?」(原文ママ)とつづった。
●安住紳一郎アナ、首相・閣僚らの給与増額法案に見解…「紛れ込ませ」 11/2
TBS系「THE TIME,」は2日、岸田文雄首相が1日の参院予算委員会で、首相・閣僚らの給与を増額する法案について「国民の不信を招かないようにしなければならない」と述べたことを報じた。
日本維新の会・音喜多駿氏は「(岸田氏の給与増額は)月給だけで年間7万2千。経済対策で給付する金額より多い」と批判した。
これに対し、岸田氏は「(法律が成立すれば)年間で46万円上がる。内閣として、行財政改革を推進する観点から、総理大臣3割、国務大臣2割を国庫へ返納する」と答弁し「自らこうした姿勢を示すことで国民の不信を招かないよう努力を続けたい」と説明。法案の見直しには言及しなかった。
この法案では、首相の月給は6000円、閣僚は4000円上がり、ボーナスも0・1か月分が増額することになる。
スタジオでは今回の給与増額法案に番組へ1000件を超えるコメントが届いたことを伝え、賛否の意見を伝えた。これに総合司会を務める同局の安住紳一郎アナウンサーは「そもそも国家公務員の給与を上げるという話し合いの中で閣僚や総理の給与も上げる話をそこに紛れ込ませてきたというのが少し感じ方が変わっているのかなという気がします」とコメントしていた。
●総理の年収46万円アップ法案…専門家「国民感情とズレ」「なぜ今なのか」 11/2
内閣総理大臣の年収がおよそ46万円上がる法案について、1日に岸田文雄総理大臣が国会で野党の追及を受けました。岸田総理は見直しに言及せず、国民の理解を求めています。
30年間 平均給与が上がらないなか…
岸田総理「来年度は、この賃上げが物価に追いつくことができるか、これはまさに正念場であります。ここに的を絞って、経済対策を用意しなければならない」
来年ではなく、「今が正念場なのでは?」とSNSなどで指摘する声も上がるなか、物価高に悩まされる国民をざわつかせているのが…。
20代 会社員「全然、賃上げとかないですし、私たちも。ずるい」
そう思うのも無理はありません。
日本維新の会 音喜多駿政調会長「総理や閣僚の給与アップ法案が提出されていることは大きい。可決されれば、総理は月々6000円の給与アップになります」
ここ30年間、日本人の平均給与がほとんど上がらないなか、総理の給与が上がるというのです。
今国会、岸田内閣は「特別職の職員の給与に関する法律」の改正案を提出しました。
これは、今年の人事院勧告で「一般職」の国家公務員の給与が引き上げられるのに合わせ、「特別職」も上げるというものです。
岸田総理「定額を国庫に返納し…」
日本維新の会 音喜多政調会長「国民を差し置いて、総理が給与アップで、月給だけで年間7万2000円です。経済対策で給付される金額よりも多いわけです。これは到底、国民の多くの理解は得られません」
総理大臣の年収はおよそ4000万円。法案が成立すれば、今年4月にさかのぼって、ボーナスを含め総理が年間およそ46万円、大臣がおよそ32万円の賃上げとなります。
日本維新の会 音喜多政調会長「法案を見直すなり取り下げるなりするべきだと思いますが」
野党からこう迫られた岸田総理は、次のように述べました。
岸田総理「内閣総理大臣3割、国務大臣2割を国庫へ返納する申し合わせをしてきている。内閣総理大臣年間法律に従って、46万円上がるとしても、返納額は1218万円であります。国務大臣も引き上がりが32万円だとしても、返納額は592万円であります。閣僚みずからこうした姿勢を示すことによって、国民の皆さんから不信を招かないように努力を続けていきたい」
岸田総理は「定額を国庫に返納し、国民の不信を招かないように努力する」と述べました。
納得できない声の一方…「その分の活躍を」
国民への所得減税は4万円のみ。1度きりです。
今回の“給与アップ法案”は、街の人にはどう映っているのでしょうか?
70代「自分の給料が上がるように法案を出すってことですか?その前にもっとやることがいっぱいあるんじゃないですか」
40代 営業職「率直な感想は、自分たちがあまり上がらないなか、総理が上がってしまうんだというところがあります」
法案の成立には納得できないという声が多く上がる一方で、次のような声も聞かれました。
30代 音楽関係「別に問題はない」
20代 接客業「でも、その分の活躍をしてほしいな」
専門家「国民感情とずれ」「なぜ今なのか」
政治ジャーナリストの細川隆三氏は、とにもかくにも「法案を提出した“タイミングが悪かった”」と話します。
細川氏「岸田政権は賃上げを政策の重要な柱に掲げています。だから、率先してやっていこうということなのかもしれませんけれど。大企業はいい。だけど、中小・零細企業は賃上げしたくてもできない。国民感情とずれてます。総理大臣や閣僚の手取りを増やすと、なぜ今なのか、そんな必要は全くない」
●所得減税、岸田首相説得力欠く 自民に不満「結果責任取って」 11/2
岸田文雄首相は4日間の衆参予算委員会審議で、所得税などの「定額減税」の意義を繰り返した。
ただ、首相の説明は説得力を欠き、足元の自民党内からも異論が相次ぐ。正面突破を図る構えの首相に対し、党内の視線は冷ややかだ。
「物価高に国民の皆さんが負けないためには、減税と給付金を組み合わせることで、可処分所得を支えていくことが重要だ」。首相は1日の参院予算委で、物価高対策に所得税減税が有効だと訴えた。
定額減税は来年6月の実施を目指す。1人当たり4万円で、非課税の低所得世帯には1世帯当たり7万円を給付する。経済が回復する中での減税はインフレを助長するとの指摘もある。
物価高へ迅速に対応するため、立憲民主党は給付金を主張している。首相は先月30日の自民党役員会で「現金を一律給付する手法は国難とも言える事態に限るとの立場だ」と理屈を挙げ、減税が望ましいと強調した。
首相の説明に理解が広がっているとは言い難い。先月31日に開かれた経済対策に関する党会合では「支持率が上がっていない」「防衛増税と所得減税について、地元から『説明が分かりにくい』という声がある」などの不満の声が続出した。
党税制調査会で幹部を務める甘利明前幹事長は自身のホームページで「一時的な支持率対策と受け止められる施策は慎重に扱った方がいい」と指摘した。
減税は首相がこだわっており、ベテランは「もう後には引けない」とこぼし、ある中堅議員は「首相が結果責任を取るしかない」と突き放した。
今月下旬には2023年度補正予算案の審議が控える。立民の安住淳国対委員長は1日の党会合で減税について「人気取りはひどい目に遭うと国民が警鐘を鳴らしている」とあいさつ。日本維新の会の藤田文武幹事長も記者会見で「合理性がなく、国民からの評判も悪い」と指摘した。
立民は1世帯3万円のインフレ手当を掲げる。維新は立民の対策を「バラマキ」と批判し、消費税率の8%への引き下げや社会保険料の減免を打ち出す。対策は各党に違いがあり、政権を一致して追い込むには至っていない。
●政務三役 連続辞任 何と空疎な「適材適所」 11/2
文部科学政務官に続き、法務副大臣が辞表を提出した。1週間の間に2人の政務三役が引責辞任するという異常事態だ。これで「適材適所」を繰り返していたとは、開いた口がふさがらない。
おととい自民党衆院議員の柿沢未途法務副大臣が、公選法違反事件に関与したとして辞任した。
4月の東京都江東区長選で、当選した木村弥生区長側が有料のインターネット広告を出したとされる事件を巡り、ネット広告の利用を提案していたという。
江東区を地盤とする柿沢氏は、区長選で木村氏を支援していた。有料広告は候補者の写真に「木村やよいに投票してください」とのテロップを付けた内容だった。
公選法は選挙運動で候補者名を挙げ、有料でのネット広告を出すことを禁じている。
柿沢氏は違法性について認識していなかったとするが、認識がない時点で不適格なのは明らかだ。法秩序の維持を担う法務省の副大臣という役職からすれば、辞任は当然といえる。
問題はこれにとどまらない。
柿沢氏はこの日の参院予算委員会に与野党合意の下、出席を予定していたが、辞表を出しているとして法務省がそれを拒んだのだ。
「柿沢隠し」ともいえる政府の対応は、議員の質問権を奪い、国会を軽視するものである。
辞任で幕引きを図りたかったのかもしれないが、国会にも出席せず、記者会見も開かず、説明責任を果たさないというのは、議員としての適格性をも欠く。

9月発足の第2次岸田再改造内閣の政務三役では、文科政務官だった自民党の山田太郎参院議員が、1週間前に政務官を辞任したばかりだ。
20代女性と不倫関係にあると週刊誌に報じられ、事実を認めた。
この副大臣・政務官人事では起用された54人全員が男性で、岸田政権が掲げる「女性活躍」に反すると批判された。
その時、岸田文雄首相はこう説明した。「適材適所で人選した結果だ」
法律をつかさどる法務副大臣が選挙不正に絡む問題で、教育をつかさどる文科政務官が女性問題で内閣を去った今、適材適所の言葉が空疎に響く。
来年秋の自民総裁選再選をにらんだ人事だといわれていた。必要な資質よりも派閥の論理が優先された人事だったというしかない。

岸田政権では昨年10月から年末にかけて4閣僚が辞任。首相は不祥事のたびに「任命責任を重く受け止める」との言葉を繰り返してきた。
任命責任はあると語れば、責任は果たされたことになるのか。
任命責任の重さに真剣に向き合うのであれば、何はともあれ柿沢氏に、公の場で事実関係を説明するよう指導力を発揮すべきである。
首相が信念に基づき決断すれば、参院予算委に出席させることもできたはずだ。
任命責任の軽視が政治不信を助長させている。
●「アベノミクスの負の遺産」に振り回される岸田文雄総理 醜聞で岸田降ろしに 11/2
岸田文雄さんが年末に向けた解散総選挙を見込んで断行した内閣改造人事。赤絨毯の上には、今回辞任に追い込まれた法務副大臣・柿沢未途さんの姿もありました。
騒ぎを拡大させてしまった記者会見 
辞任の理由は、今年4月の江東区長選挙で勝利した木村弥生さんに公職選挙法違反となる選挙期間中のネット広告配信を柿沢未途さんがお薦めしたことでした。違法やがな。しかもわざわざ自分から「木村選対に有料広告を提案したけど違法性の認識は無かった」と記者会見をし、騒ぎが拡大してしまいました。
木村弥生さんは自民党大物政治家・木村勉さんのご息女で、1年前まで京都府選出の衆議院議員(ただし比例復活)として公職選挙法を所管する総務省の大臣政務官を務めておられました。分かりづらい公職選挙法の中でも、珍しく分かりやすい形で「やってはいけません」という禁則をそのまんまやらかした木村弥生さんの蛮勇が許されるはずもなく、起訴され有罪となって失職する前に自ら江東区長辞任に追い込まれてしまいます。そのきっかけを作ったのが柿沢未途さんである以上、引責するのも仕方がないと言えます。何してんだよ。
もっとも、本来ならば公職選挙法違反は警視庁が担当するべきところ、わざわざ江東区庁舎や木村さんの自宅にまで家宅捜索に入ったのが東京地検特捜部であったことを考えれば、本来の狙いは木村さんではなくて柿沢さんなんじゃないのという推測が乱舞するのも当然の成り行きと言えます。
そんなのはまあみんな分かっておって、江東区と言えば俺たちの安倍晋三さんが立ち上げみんなの菅義偉さんが無観客での開催を強行した東京オリンピック開催地の地元・江東区と湾岸地域のあれこれで柿沢さんが何をしてきたのかを少しでも掴んでいれば、絶対に副大臣で入閣なんて話にはなりません。と申しますか、柿沢未途さんに副大臣なんて、誰が見てもマズいと思うんですけどね。
そもそも、麻布中高で先輩後輩の仲であることをテコに勇退された谷垣禎一さんのルートから自民党に入ってしまう柿沢未途さんは、東京15区での出馬のいきさつも含めて入党を拒否しなければならなかったのは自明でしょう。
「週刊現代」で、柿沢未途さんが東京15区で無所属なのに自民党推薦を得てしまい、東京都連会長である萩生田光一さんがブチ切れている一部始終を小川匡則さんが書いておられますが、これはすべて事実です。
「増税メガネ」を気にして? 1年限りの減税を発動
また、「週刊文春」が文部科学省の政務官であった山田太郎さんの不倫報道を敢行したのを受けて、こっちはこっちで事実関係を認めて政務官を辞任してしまいました。どうなっているのだ岸田文雄政権、ということで、解散総選挙に向けての支持率アップのはずの内閣改造が身体検査の不全によってあっという間に支持率急落のトリガーとなってしまったのは非常に残念なことです。
そして、ネットではTikTokやYouTubeなどを中心に、生活苦などを理由にした岸田文雄さんに対する揶揄の総称とも言える『増税メガネ』が連日トレンド入り。うっかりそれが岸田さんの耳に届いてしまい、岸田官邸周辺からも「岸田さんが『増税クソメガネ』と酷評されていることを、非常に気にしている」と伝わってきていました。あーあ。そうかと思ったら、突然岸田さん特有のこだわりが発動し、なぜか4万円程度の1年限りの減税という、国民としてはあんまり嬉しくない感じのばら撒き発動になってしまいました。
世界から「インフレを政策で抑え込めた珍しい国」と評価される
ただ、岸田さんが『増税ばら撒きメガネ』と揶揄されていることに怒っているのは単純に「別に岸田さんが決定して増税したものはなにひとつない」からであって、だいたいが社会保険料の一部引き上げや期限付きだった各種控除の廃止など岸田さんとは無関係にすでに決まっていたことばかりです。それに対して、実際にはガソリン代や電気代、小麦なども含めて、岸田政権は「とっくに6兆円以上、価格統制で国民にばら撒いている」というのが実際なんですよ。
ロシアによるウクライナ侵略や今回のパレスチナ・ガザ地区からのイスラエルへの攻撃とイスラエルの苛烈な反撃などの不安定イベントがある中で世界的な資源高になっています。岸田文雄さんや岸田官邸の嶋田隆さんらの主導によって、日本はトリガー条項ほかいろんな政策手段を出動させ、とりあえずガソリン価格、電力価格と小麦に絞って大規模な経済支援をした結果、世界でも「インフレを政策で抑え込めた珍しい国」と評価され、アメリカや欧州だけでなく発展途上国(グローバルサウス)などでも岸田政権を見習えっていう話が出ています。
物価高失業政策に失敗した22年経済悲惨指数ランキングでは、日本はスイス、クウェート、アイルランドに次いで4番目に価格統制に成功し国民経済を守った国になっています。ありがとう、岸田文雄。
上手くやってきたはずなのに…なぜ…
たぶん、23年度版ではその後物価統制に失敗したクウェートやアイルランドを抜いて、スイスに次いで日本の岸田政権は世界的に輝かしい物価統制に成功した国と扱われることになります。
なんせ、日本ではガソリン価格がリットル188円になって、2年前128円の五割増しになったと騒いでいるところですが、 イギリスでは315円(2.08USドル)、香港635円(4.20USドル)になったりしていて、日本は実は非産油国にもかかわらず世界的に安くエネルギー代金が据え置かれている国なのです。
この辺、コロナウイルスの騒動では、医療関係者や政策担当者、地方自治体もかなり頑張って感染症対策を進め日本はかなり成功してきたのに、なぜか反ワクチンや反マスク界隈から、対策に失敗してきたはずの海外を見習え、普通の生活に戻せと防御を下げる方向に政策誘導が進み、コロナウイルスだけでなくインフルエンザやRSウイルスまで蔓延させてしまい学級閉鎖が続発して子どもに健康被害が多発した例と似ています。野党も「トリガー条項ほか生活防衛面では岸田政権は上手くやっている」と評価することはまずありませんし、マスコミも「岸田は無能」という線で報じますから、上手くやって来たのに支持率が伸び悩むのも当然と言えます。
もっとも、そのような政策を実現できたのは、この価格統制のために空前の円安状況であるにもかかわらず累計6兆円を超える国富が突っ込まれ続けてきたからに他なりません。別の言い方をすれば、ガソリンを使うクルマ社会である地方経済は特に、すでに岸田文雄さんから『増税メガネ』どころかとんでもないプレゼントをもらい続けてきているわけですよ。
みんな“はけ口”を欲しがっている?
さらに、岸田政権下になってから雇用が順調で、大卒の内定者の割合は00年代以降過去最高、高卒・専門学校卒もおそらくは最高の内定率を記録すると見られています。物価高に伴う賃上げが追いついていない問題はあり、また、人口減少による人手不足は顕著であるとはいえ、えり好みしなければちゃんと仕事はあるというのは大事なことです。労働人口が減少しているのに失業率が下がらない国はたくさんありますから。
岸田さんは政権運営単体で見れば「まあまあ上手くやっている」はずなのですが、アピールが下手過ぎてみんな生活苦のはけ口を『増税メガネ』にぶん投げていることになります。そして、労働世帯の生活苦の実際は増税(税金)よりも社会保険料の負担増であり、年金世帯の生活苦は物価高に比べてもらえる年金が少なくて生活を維持するにはどうにかして働かないといけないところに問題があります。
問題のほとんどは「あの人」が残した“負の遺産”
シンプルに物価高は基本的に日本円が安いことで輸入物価が上がっていることが原因のひとつで、通貨安ドリブンだから金利上げようぜって話を岸田さんがリーダーシップを取らない限り解決しない面はあります。ただ、うっかり金利を上げると頑張って背伸びしてカネを借りて都内で新築マンションを買ったパワーカップルなどはせっかく実現したマイホームとバイバイすることになりかねませんし、金利が上がると証券で運用してきた俺たちのGPIFが痛むこともあるでしょうし、この辺はトレードオフと言いますか、何を捨て、何を取るかという政策にならざるを得ないのですよ。
このあたりは、ほとんどの経済現象が安倍晋三政権が長年に渡って積み重ねてきた「アベノミクス」の弊害の部分と言えます。要は、低金利で安い国に日本を誘導することで、とりあえず生活できるよう金融緩和をジャブジャブにやって、みんな仕事があって、何とかなってきたという話です。
そういう「アベノミクス」が聳え立つ負の遺産を岸田さんがまとめて背負ってどうにかしなければならないことを考えれば、岸田さんはどうにかしてその「アベノミクス」を超える何かすごい政策テーマや経済政策をでっち上げて、国民にこれをやるからお前ら協力しろという話をしなければならなかったはずです。裏を返せば、別に増税してもいいから国民経済の安定や成長に繋がるこういう新しい試みをやりますよという風呂敷が広がっていれば、無理矢理1年限りの減税とかやらんでも一定の支持は得られたのではないかと思うんですよね。
このままだとレーガンみたいな立ち位置になってしまうのでは
この「岸田さんは頑張ってるんだけど、何をしようとしているのかよく分からない」からテーマ性やメッセージ力不足と判断されて、酷評され、支持を失って迷走し、総合経済対策では最終的に減税までやろうとし、内閣改造と旧統一教会解散命令請求とセットで解散総選挙に打って出ようにもどうにもならなくなってしまった、というのが実際なのではないかと思います。
このままだと岸田さんは来年の総裁任期満了までずるずると政権を引っ張り、しかし選挙の顔としては選挙互助会自民党では無理と判断され総裁選再選に向けて出馬も禅譲・後継指名も出来ず退陣という流れになってしまいかねません。
外交では岸田さんはG7広島サミットが歴史的な大成功に終わり、最近の中国大使・垂秀夫さんから金杉憲治さんへのスイッチ、ガザ地区とイスラエルの問題では米欧とは一線を画した対応をきちんと取るなど優れた手腕を発揮しているのも事実です。大統領としては偉大にはなれなかったけど元大統領として外交面で存在感を示すレーガンみたいな立ち位置になってしまうのでしょうか。
個人的には、繰り返しになりますが「岸田政権が取り組んできて上手くやってきたことのアピール」と、「これから岸田政権がテーマとして全力で取り組み国民生活がこういう感じで良くなるようにしていきますよ」という話とをパッケージにしてきちんと打ち出し直すところからスタートなんじゃないかと、常々思っております。
●まさか減税で岸田内閣の支持率が下がるとは…「社会保障改革」の議論を 11/2
岸田文雄内閣の支持率下落が止まらない。日経新聞・テレビ東京が27〜29日行った世論調査で、岸田文雄内閣の支持率は前回比9ポイント減の33%、テレビ朝日系ANNが28、29日に行った調査では、同3・8ポイント減の26・9%で、いずれも過去最低を更新した。
増税で支持率が下がるのはよくあることだ。初めて消費税3%を導入した竹下登内閣では支持率が5%を切ってしまい、「消費税を下回るのではないか」と揶揄(やゆ)されたのを覚えている。
だが、減税で支持率が下がったのは筆者の知る限り初めてだ。一体どうなっているのか。
ANNの調査によると、「所得減税を評価しない」が56%に上っているのだが、「評価しない理由」のトップが「政権の人気取りだと思うから」の41%だった。
野党やメディアによる「額も少なく時期も遅い」「どうせ後から増税やるんだろ」「選挙目当て」という批判がかなり刷り込まれているようで、政権にとっては危険な兆候だ。
ただ、野党の出している「対案」にも一理ある。立憲民主党の「減税は時間がかかるから給付金で」、日本維新の会の「社会保険料の軽減を」、国民民主党の「ガソリン減税や消費減税を」は、いずれもトンチンカンな主張ではない。
もちろん政府としては反論する材料はあるのだが、国会の論戦を聞いた国民には、野党案の方がよく見えているのかもしれない。
実際、ANN調査で、立憲民主党の政党支持率が前月より3・1ポイント上昇して10・9%に跳ね上がったのは、対案の「給付金」が評価されたのではないか。
減税というのは、そもそも政治家の「人気取り」のためにやるものなのだから、それで岸田首相をいじめるのは少しかわいそうな気もする。だが、今回の減税をめぐる与野党の議論は「社会保障のあり方」について考えるきっかけにはなった。
例えば、日本維新の会の社会保険料の軽減だが、正直言って時限的な軽減はあまり意味はないと思う。ただ、現役サラリーマンの健康保険料と年金保険料はあまりにも高い! しかも企業と折半なので、事実上、その倍額の保険料を払わされていることになる。
さらに健康保険料の半額は、後期高齢者医療や国保(自営業者)に回されている。これは何とかしないとマズイだろう。
解決策は、高齢者の自己負担を現役世代と同じ3割にするしかないと思うのだが、政治的に無理だと言うなら、せめて所得制限を付けるとか、保険適用の範囲を狭めるとかしないと制度そのものがもたなくなる。
「岸田減税」の悪口も結構だが、「社会保障改革の議論」もきちんとやってほしいのだ。
●「例外中の例外」だったはずなのに…川内原発60年運転を認める議論は20分 11/2
九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)が1日、原子力規制委員会から「原則40年」を超えて60年までの運転が認められた。「例外中の例外」とされた運転延長が認可された原発は計6基に。2025年6月からは経済産業省の判断で、60年を超えた運転も可能となる。岸田政権の原発推進政策は、事故リスクが高くなる老朽原発の長期運転という危うさを抱える。
「特段難しい問題や大きな論点はなかった」
「これまでの運転延長で認めたものと変わりはないか」。1日午前の規制委定例会合で、山中伸介委員長が川内原発の審査が過去の実績と同じように進んだことを確認した。
審査を担当した杉山智之委員は「特段難しい問題や大きな論点はなかった」と発言。5人の全委員が認可決定に異論はないことを表明し、委員間の議論は20分足らずで終わった。
会合後の記者会見で、山中委員長は「運転延長の審査経験を積み、今回の審査に生かすことができた」と振り返り、全申請を認可していることについては「規制基準に合致していれば認可する」と述べるだけだった。
原発の運転期間 東京電力福島第1原発事故の反省を踏まえ、2012年に原子炉等規制法を改正して原則40年と定め、1回に限り最長20年間延長できるとした。当時、野党だった自民党も賛成して成立した。岸田文雄首相は昨年8月、運転期間の見直しを指示。今年5月の法改正で、新規制基準への適合性審査などで停止した期間分を追加して延長することで、将来的には60年超運転が可能になった。
新規建設は進まない 老朽化原発を動かし続ける各社
規制委が運転延長を認めた原発は他に、関西電力の高浜原発1、2号機と美浜原発3号機(いずれも福井県)、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)で、既にこの4基は運転開始から40年を超えている。川内1、2号機や運転延長を審査中の高浜3、4号機は37〜39年に達しており、原発の老朽化は進む一方だ。
政府は、廃炉が決まった原発を対象に建て替えを促す方針を打ち出したが、電力各社は1兆円を超えると想定される新たな原発建設には二の足を踏んでいる。それよりもコストがかからない原発の長期運転に注力しているのが現状だ。
この日、規制委事務局の担当者から認可書を受け取った九電の林田道生・常務執行役員も、原発を最大限活用するという社の方針を念頭に「大きな一歩になった」と意義を強調した。
2025年から新制度、議論はまだ始まっていない
60年超運転を可能にする改正電気事業法が施行される25年6月以降、運転延長の可否の判断の担い手は、規制委から経産省に移る。規制委は、運転開始から30年を起点に10年以内ごとに、原発の劣化状況を審査し、東京電力福島第1原発事故を教訓にした事故対策を盛り込んだ新規制基準に適合しているかを判断する。
一方、経産省資源エネルギー庁は改正法の施行後、電力会社の申請を受けて60年を超えて以降の運転できる期間を決める。新基準の審査などで停止していた期間が上乗せされる見通し。
ただ施行まで2年を切ったが、延長期間を巡る有識者の議論は始まっていない。エネ庁原子力政策課は「有識者の議論とパブリックコメント(意見公募)を経て施行までに決める」と説明するにとどまっている。 
●上川外相の「国会はりつき」を免除 9日の衆院安保委、反対論も 11/2
衆院安全保障委員会は2日の理事会で、中東情勢の緊迫化を受け、上川陽子外相と木原稔防衛相の所信に対する9日の委員会質疑について、質問者から要求がない限り上川氏の出席を求めないことを決めた。
所信への質疑は常時、外務、防衛両大臣が出席することが慣例となっている。
理事会にオブザーバーの立場で参加した共産の赤嶺政賢氏は反対の意向を示し、取材に対し「外交が忙しいほど国会に説明すべきだ。国会は政府をチェックしなければいけない」と述べた。与党筆頭理事の小泉進次郎氏(自民)は記者団に「外相の外交的な努力を機動的に遂行できるよう、国会改革を進められないかと(考えていた)」と述べた。
●「検討すらしてない」岸田首相答弁にネット驚愕 消費税減税「考えてない」 11/2
消費税について、岸田文雄首相が国会で「減税は考えてないから効果も考えていない」との内容の発言をしたことが、X(旧ツイッター)上で取り上げられ波紋が広がっている。
参議院で2023年11月1日に開かれた予算委員会では、岸田政権が打ち出す所得税減税への効果について、野党議員らから質問攻めの状態になった。
「消費税を下げることは検討いたしませんでした」
そんな中で、消費税減税についても比較に出され、共産党の山添拓氏は、それを推進する立場から、岸田首相の考えをただした。
山添氏が物価引き下げなどの効果を主張して意見を聞くと、岸田首相は、「そもそも引き下げるということは、考えておりません」と突っぱねた。
「いやだから、考えておりませんので、引き下げの効果ということについても考えておりません」
これに対し、山添氏は、消費税などの選択肢から所得税を選んだと岸田氏が説明したとして、消費税減税の効果の検討をしなかったのか聞いた。すると、岸田氏は、「消費税を下げることは検討いたしませんでした」と最初から考えていなかったことを明言した。
この答弁には、国会内がザワつき、驚きが広がった。
岸田首相の発言に驚く声は、X上でも上がっており、このシーンの動画が次々に投稿され、意見が相次いでいる。「検討すらしてないんかい!」「最初に政策ありきで効果は後付けなの?」「耳を疑った」などと発言に失望する声が多い。
消費税減税については、シンクタンクの研究員らから、経済効果があるとする試算結果も出されている。
「社会保障の財源は消費税を充てるべき」の結論を尊重と説明
あるエコノミストは、消費税減税がGDPを押し上げる効果は、所得税減税の2倍以上だと大手シンクタンクのサイトなどで自説を唱えている。所得税減税分の一部は貯蓄に回ってしまうという点を主な理由に挙げた。
一方、一時的な消費税減税には、弊害が生じるとの指摘もある。引き下げ前後に買い控えや買い急ぎが起きて愚策だとする経済評論家もいるほか、新聞報道などによると、ドイツでは、付加価値税の減税に踏み切った後に、消費がさほど拡大しなかったともされている。
岸田首相は、消費税減税を検討しなかった理由について、11月1日の参院予算委で、別の野党議員の質問に次のように答弁している。
「議論を積み重ね、『社会保障の財源は消費税を充てるべきだ』という結論に達しました。議論の結果は尊重しなければならず、消費税以外の手法をとることが適切だと考えています」
ただ、社会保障の財源を別に考え、消費税減税の効果を考えていく選択肢がなかったかなどについて、議論を呼ぶ余地はありそうだ。
●岸田首相、消費税減税やる気なし「全く今から否定するものではない」発言も… 11/2
岸田文雄政権の物価高対策の柱は、所得税と住民税の減税と低所得世帯への給付金だが、1回限りということもあって国民の不満は収まらない。家計に直接恩恵がある消費税の減税について、岸田首相は1日、「全く今から否定するものではない」と言及した。一方で「減税と給付が最も現実的だ」と受け流し、自ら取り組む意欲はみられなかった。
1日の参院予算委員会で日本維新の会の東徹氏は「物価高に消費税減税以外では対応できない場合は検討するのか」と追及した。
岸田首相は「絶えず経済や社会保障の議論は続けなければならない。大きな議論が行われた結果として、消費税について対応を考えることを全く今から否定するものではない」と応じた。だが、所得税・住民税の減税と給付が最も現実的だと強調した。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は「『否定するものではない』とあいまいに答弁しているが、何を言っているのか理解に苦しむ。やる気があれば『前向きに検討する』などと明確に打ち出すべきだが、結局『消費税減税はしない』と言っているに等しい。岸田首相は、世論の風向きを見てごまかそうとしているが、国民は見透かしているのではないか」と指摘する。
政府は経済対策の規模を、3兆円台半ばを見込む所得税と住民税の減税を含めて17兆円台前半とする方向だ。物価高対策に2兆7000億円程度▽賃上げなどに1兆3000億円程度▽半導体などの国内投資促進に3兆4000億円程度▽人口減少対策には1兆3000億円程度▽防災・減災などの対策に4兆3000億円程度が充てられる。
荻原氏「政権の危機感のなさ感じる。17兆円は個人向けに充てるべきだ」
荻原氏は「物価高対策や、賃上げなど個人向けの予算は少なく、政権の危機感のなさを感じる。17兆円はめいっぱい個人向けの対策に充てるべきではないか」と強調した。
予算委では、国家公務員の特別職の給与法改正案が成立すると、首相の給与が月給だけで年間7万2000円上がり、経済対策で給付される金額より大きいと指摘された。
首相は「首相は3割、国務大臣は2割を国庫へ返納することを申し合わせしている。国民の不信を招かないよう努力したい」と述べたが、不信感を払拭できるか。
●上川外相「撤去」明言せず、尖閣周辺「中国海上ブイ」問題 11/2
それでいいのか―。1日の参院予算委員会で、沖縄県・尖閣諸島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内に中国が設置したブイを撤去する可について、上川陽子外相が「可否を一概に答えるのは困難」と慎重姿勢を示す場面があった。上川氏は法相時代の2018年にオウム真理教の元教祖らに死刑執行を命じたことで知られる。中国相手には弱腰なのかとの嘆息も聞こえそうだが、識者はタイミングの悪さも指摘する。
日本維新の会の東徹氏は、ブイについて「中国に求めても撤去しなかった場合、日本独自で撤去すべきだ」と上川氏にただした。上川氏は「国連海洋法条約には明文規定がない。個別具体的な状況に応じた検討が必要で、可否を一概に答えるのは困難だ」と答えるにとどめ、外交ルートを通じた中国への撤去要請を続ける考えを示した。
問題のブイは、尖閣諸島の魚釣島の北西約80キロに位置し、今年7月に確認された。日本のEEZ内に勝手に設置したことは国連海洋法条約に違反するもので、岸田政権は中国に抗議して「即時撤去」を申し入れたと説明してきた。要請のみの岸田政権には「弱腰」との批判もある。
上川氏は第2次岸田再改造内閣で外相に起用され、法相時代の「胆力」を外交でも発揮することを期待されているが、拓殖大学海外事情研究所の川上高司教授は「日本独自の動きを取りづらい難しい時期」と指摘する。
今月中旬に米サンフランシスコで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、ジョー・バイデン米大統領と中国の習近平国家主席が首脳会談を行うことで原則合意した。
川上氏は「ブイ問題も、米中首脳会談前に差し障りがあってはいけないと日米間でも議論されたはずで、日本側も日米の枠組みを外れて動けない困難さがある。国外問題の対処の難しさを上川氏も感じているだろう」と今回の答弁にも一定の理解を示した。
●「エッフェル姉さん」はノミネートされたのに…「増税メガネ」入らず 11/2
毎年12月はじめに発表される『ユーキャン新語・流行語大賞』にノミネートされる30語が、11月2日に発表された。
昨年(2022年)の年間大賞に輝いたのは、王貞治超えのシーズン56本塁打、史上最年少での三冠王を達成したヤクルト・村上宗隆選手の「村神様」。このほか、トップテンには「きつねダンス」や「宗教2世」「知らんけど」などが選ばれた。
今年はどんな言葉が選ばれるのか。SNSでは予想が繰り広げられており、スポーツ界ではWBCでヌートバーが流行らせた「ペッパーミル」や、阪神の18年ぶりの「アレ」、それ以外では「蛙化現象」「VIVANT」「闇バイト」など、各々が予想をあげていた。いずれも、実際にノミネートされている。
そんななか、多くの人が候補としてあげていたのが、いまのところ、もっとも国民に浸透しているであろう「増税メガネ」(「増税クソメガネ」)だ。
《今年のユーキャン新語、流行語大賞に『増税クソメガネ』がノミネートされなければもう流行語大賞は国民を洗脳するための企画だな あの『アベノミクス』さえノミネートされたのだからな》《今年の新語・流行語大賞は「増税クソメガネ」の一択だよなぁ》といった声のほか、《「増税メガネ」は必ず新語流行語大賞にノミネートされます。昨年「国葬儀」「宗教2世」「悪い円安」がノミネートだけでなくベスト10に選ばれたから》といった声もあがっていた。
当の岸田首相も、「増税メガネ」というあだ名は気にしているようで、11月1日の参院予算委員会では、そのあだ名をめぐって、こんな一幕があった。
れいわ新選組の山本太郎代表から質疑の冒頭で、「『増税メガネ』と呼ばれる政治家がいます。総理、誰の呼び名かご存じですか?」と尋ねられた岸田首相は、苦笑いを浮かべながら「はい。ネット等で、そういった名前で私を呼んでいるという動きがあることは承知しております」と回答。
続けて、山本代表が「このニックネームがさらに『増税クソメガネ』と進化した政治家がいます。総理、誰のことかご存じですか?」と聞かれると、今度は不機嫌そうに「名前が進化したとのことですが、そういったことについては承知しておりません」と回答したのだが――。
はたして、発表された最終ノミネート30語に「増税メガネ」が入ることはなかった。
ここで改めて、ユーキャン新語・流行語大賞のコンセプトを公式サイトで確認してみると、《1年の間に発生したさまざまな「ことば」のなかで、軽妙に世相を衝いた表現とニュアンスをもって、広く大衆の目・口・耳をにぎわせた新語・流行語を選ぶとともに、その「ことば」に深くかかわった人物・団体を毎年顕彰するもの》となっている。だとするならば、「増税クソメガネ」はともかく、「増税メガネ」は入らなければおかしいが……実際、ネット上では、《官邸の圧力が入ったか?》《エッフェル姉さんは入ってるのに…。なんで!?》《増税メガネ ノミネートならず 忖度やな》など、疑問の声が噴出している。ノミネートされなかったのは岸田首相のせいではないかもしれないが、こんなところでもまた首相は国民の不信を買ってしまいそうだ。
●岸田首相 増税メガネ≠ノ開き直り? 「どう呼ばれていても構わない」 11/2
岸田文雄首相は2日に開いた会見の中で、SNS上などで「増税メガネ」と揶揄される騒動について改めて言及した。
れいわ新選組の山本太郎代表は1日の参院予算委員会で岸田首相に対して「『増税メガネ』と進化した政治家がいることをご存じか」と意地悪な質問をぶつけている。
これに岸田首相は「名前が進化したとのことですが、承知しておりません」と冷静に答えたが、席に戻ると不機嫌な表情を見せていた。
この日は所得減税などを軸とした17兆円台前半規模となる経済対策を受けての会見となった。
永田町関係者によると岸田首相は記者からの質問に「(経済の)好循環はまだ完成していない。カギを握るのは賃上げと投資だ。来年の春闘に向けて私が先頭に立って今年を上回る賃上げを(企業に)働きかける。来年6月に1人当たり合計4万円の所得税、住民税の定額減税を行いたい」と語ったという。
そして「増税メガネ」と呼ばれていることについては「どう呼ばれても構わない。やるべきだと信じることをやっていく」と開き直っていた様子だった。
●「庶民には増税、社会保障負担上げまくり」れいわ山本代表が岸田政権批判 11/2
れいわ新撰組の山本太郎代表(48)が、11月1日の参議院予算委員会における質疑冒頭で岸田文雄首相(66)を”増税メガネ”呼ばわりしたことが、不適切ではないかと物議を醸している。一方で、その後に続く山本代表の質疑そのものに対しても、“神回”だとして注目が集まっている。
「11月1日の参院予算委員会で、山本代表が質疑の冒頭で『“増税メガネ”と呼ばれる政治家がいます。総理、誰のことかご存知ですか?』と岸田首相に直接問いかけ、複数のメディアがその場面を取り上げました。公の場での揶揄発言に批判が集まると同時に、その先の発言の中身や、官僚の答弁からデータを引き出して自身の主張を裏付ける質疑の手法を評価する声も。質疑応答の全容を収めた中継を引用した投稿は150万回以上見られていて、国会中継の“神回”などと言われています」(ウェブメディア記者)
いったいどんな内容だったのだろうか。
まず、山本代表は官僚から食料の実質消費支出が11ヶ月連続マイナスになっていることを引き出し、「今年の家庭における節約のトップは”ふだんの食事”。前回から18.8%増加で、60.9%」とコメント。一方、昨年の調査では「節約のトップは”外食”だったんですね。外食を控えることで家計を調整していたけど、それでは間に合わなくなった。毎日の食事を削る人々が激増した」として国民の困窮具合を可視化した。
そのうえで、来年6月とされる所得減税については、「それじゃ間に合わない、大変なのは今。来年の夏、ちょっとだけ”あめ玉舐めさせてやる”じゃどうにもならない」と糾弾。「消費税の廃止」、物価高が収まるまでの「季節ごとの一律給付10万円」、「社会保険料の減免」を提案した。
消費税の廃止については、「参議院調査室のマクロ計量モデルによる試算結果」として10%の減税をした場合、「減税から7年後、1人当たり賃金は何もしない場合に比べ35.7万円増える」とした。また、減税による大幅なインフレは起きないと説明。
一律給付についても、「年4回、1.2億人に10万円を給付した場合、何もしなかった場合に比べて、1人当たり賃金は6年後に約28.5万円増える」と試算。同様にインフレは起きないとして「国を一刻も早く立て直すには、消費税減税と給付金しかない」と岸田首相に迫った。
岸田首相は消費税減税は“検討すらしていなかった”
これに対し、岸田首相は「可処分所得の押し上げが必要との問題意識は各党でも共通している」としながらも「要は手法の問題」で「手法として、政府としては消費税減税、この手法は社会保障との関係で取らない」と所得減税と給付という従来の考えを示した。
山本代表は、岸田首相が検討した「さまざまな手法」の中に“消費税減税が含まれていたか”を質問。岸田首相は「消費税減税については少子高齢化、人口減少が進む中で、増大していく社会保障費を支える重要な財源ということで、今これを引き下げることは考えなかった」と、消費税減税は”検討すらしていなかった”ことを明らかにさせた。
これに山本代表は、不景気でも財源が減らない消費税を「一番やっちゃいけない税金」とし、「生きるために払うしかないでしょ、消費税って。何かを食べるために何かを飲むために、必ず買わなきゃいけないんですよ。無理矢理搾り取ってるんです」と熱弁。さらに消費税の減税について検討をしてこなかったことについて、「自分たちの税務省の、経団連の好みだけピックアップしたって話になるじゃないですか」と指摘した。
「30年かけて日本を貧しくさせたのが自民党と経団連ですよ」
そのうえで「なぜ日本が30年も不況が続くんでしょうか? 総理ご自身が非常に冷静な分析、所信表明でなさってくださいました」と岸田首相の所信表明の抜粋をパネルで紹介した。
《この三十年間、日本経済はコストカット最優先の対応を続けてきました。人への投資や賃金、さらには未来への設備投資・研究開発投資までもが、コストカットの対象とされ、この結果、消費と投資が停滞し、更なる悪循環を招く。低物価・低賃金・低成長に象徴される「コストカット型経済」とも呼び得る状況でした。》
山本代表はこの表明について”全くの他人事”とバッサリ。「あなたたちがやったことでしょ? あなた含め自民党が。自民党が経団連の要望をしっかりと受けて、組織票と企業献金で買収されながら政策を売っていった。非正規などいつでも首を切れる不安定な安い賃金の労働者を大量に増やして資本家がより儲かるような法律を作ったのが自民党じゃないですか? ずいぶん他人、どっかのよその国で起こってるかのような所信表明だったんですよ」とこれまで自民党政権によって行われてきた政策を非難した。
続けて、90年以降非正規労働者が増え続け、それに反比例して実質賃金が低下しているグラフを示し、「30年かけて日本を貧しくさせたのが自民党と経団連ですよ」と強調。消費税が増税されるたびに、法人税が引き下げられているというグラフを示し、「庶民には増税、社会保障負担上げまくり。資本家がより儲かるよう法律を作る、法律を変える」と政策は“金持ち優遇”であると批判した。これらの政策によって、大企業の内部留保が522兆円に膨らんでいるという。
経団連は消費税増税を要求
また、9月に入ってから二週に1度の頻度で経団連が消費税増税を求めていることに触れ、「消費増税、いつやるおつもりですか?」と問い、岸田首相が「消費税の増税、考えておりません」と答えると、「まあ“飼い主”が求めてますから、そのうちやるでしょう」と、首相を“経団連の犬”呼ばわりとも取れる発言も飛び出した。
庶民からの搾り取りと富裕層の優遇を厳しく非難する今回の質疑。山本代表が、高まる岸田首相への反発の感情の受け皿になるかの如く、X上では山本代表の質疑に共感する声が続出した。
《ちゃんと最後まで 山本太郎による質疑を聞きましたか? 官僚たちから大切な数字を引き出してこの30年の日本が如何に経済的に落ちたかを分かりやすく示し 山添拓さんへの岸田の答弁も活用して消費税減税を検討すらしなかった事を言わせた》
《昨日の国会質問を見ていて、岸田に質問という形を取りながら、実はテレビの前の国民に対して売国棄民の自民党の実態を詳細に伝えようという意図があったことが強く伝わってきた》
《内向きに飼い主の顔色伺いながら仕事する政治家 と 外向きに国民の幸福の為に仕事する政治家とじゃ勝負にならないな》
●岸田内閣総理大臣記者会見「デフレ完全脱却のための総合経済対策」 11/2
先週の所信表明演説では「経済、経済、経済」と強調し、この政権は何よりも物価高対策、そして経済対策を重視しているとの決意を申し上げました。その決意を「デフレ完全脱却のための総合経済対策」として、政府・与党で本日決定いたしました。
まず、今回の経済対策の考え方です。
バブル崩壊後の30年間、我が国はデフレに悩まされてきました。日本企業、特に大企業は、短期的な業績改善を優先して値下げをし、そして利益を確保するためにコストカットを進めてきました。あえて単純化すれば、賃金・投資を抑え、下請企業に負担を寄せてきました。
総理に就任した際、私が「新しい資本主義」を掲げたのは、この縮小均衡のコストカット型経済の悪循環を一掃しなければ、日本経済が再び成長することはできないと考えたからです。
この2年間、経済界に賃上げや設備投資、研究開発投資を強力に働きかけてきました。また、価格転嫁の推進など下請企業の取引改善に全力で取り組んできました。この結果、30年ぶりとなる春闘における大幅な水準の賃上げ、過去最大の民間投資、30年ぶりの株価水準、50兆円のデフレギャップ解消が実現し、今年4−6月期のGDP(国内総生産)は名目・実質とも過去最高となりました。
しかしながら、まだまだ道半ばです。
賃金が上がり、家計の購買力が上がることで消費が増え、その結果、物の値段が適度に上がる、それが企業の売上げ、業績につながり、新たな投資を呼び込み、企業が次の成長段階に入る。その結果、また賃金が上がる。そうした好循環はまだ完成していません。
鍵を握るのは、賃上げと投資です。
足元における最大の課題は、賃上げが物価上昇に追いついていないということです。この背景には、余裕のある一部の大企業は賃上げができても、多くの中小・零細企業では、まだまだ賃上げをする余裕がないという事情があります。デフレから完全に脱却し、賃上げや投資が伸びる、拡大好循環を実現するためには一定の経過期間が必要です。
そこで、今回の経済対策では、2段階の施策を用意いたしました。
第1段階の施策は、年内から年明けに直ちに取り組む、緊急的な生活支援対策です。具体的には、生活に苦しんでいる世帯に対し、既に取り組んでいる1世帯3万円に加え、1世帯7万円をできる限り迅速に追加支給することで、1世帯当たり10万円の給付を行います。このことにより生活を支えてまいります。
第2段階の施策は、来春から来夏にかけて取り組む、本格的な所得向上対策です。まず、来年の春闘に向けて、経済界に対して、私が先頭に立って、今年を上回る水準の賃上げを働きかけます。同時に、労働者の7割は中小企業で働いています。このため、年末の税制改正で、赤字法人が多い中小企業や医療法人なども活用できるよう、賃上げ税制を拡充するとともに、価格転嫁対策の強化など取引適正化をより一層進めるなどにより、中小企業の賃上げを全力で応援します。
このように、政府として全力で賃上げを進める環境を整備する予定ですが、それでもなお、来年に国民の賃金が物価を超えて伸びていく状況となるのは確実ではありません。しかし、今回のチャンスを逃せば、デフレ脱却が難しくなります。確実に可処分所得を伸ばし、消費拡大につなげ、好循環を実現する。
そのため、私は、来年の6月のボーナスのタイミングで、本人・扶養家族を問わず、1人当たり計4万円、約9,000万人を対象に、総計3兆円半ばの規模で所得税・住民税の定額減税を行いたいと考えています。本人・扶養家族を問わず、お一人ずつ減税を行うことで、過去に例のない子育て支援型の減税ともなります。例えば子供二人の子育て世帯では16万円の減税となります。
このように、来年夏の段階で、賃上げと所得減税を合わせることで、国民所得の伸びが物価上昇を上回る、そういった状態を確実につくりたいと思っています。そうすれば、デフレ脱却が見えてきます。
さて、「減税ではなく、給付金を支給すれば、もっと早い時期にお渡しできるのではないか」という意見があることは承知しています。先ほど申し上げたように、給付金は第1段階の緊急的な生活支援を行うものです。その上で、今回の所得減税は、第2段階の本格的な所得向上、そして好循環実現のために行うものです。幅広い国民の所得を下支えする観点からは、来年夏のボーナスの時点で、賃上げと所得減税の双方の効果が給与明細に目に見えて反映される、そうした環境をつくり出すことが必要だと考えています。
また、「防衛費や少子化のために、今後、国民負担の増加が避けられないのであれば、減税をすべきではない」という御指摘もあります。しかし、政策には順番というものがあり、そして、順番が何よりも重要です。
防衛費については、GDP比2パーセントに強化された防衛力を(令和)9年度以降維持するため、その9年度に向けて財源を確保することとしております。そのためにも、まずは国民の暮らしを守るため、デフレ脱却を確実にし、成長経済を実現するための取組を先行させることが重要であり、今回の減税と同時に防衛の税制措置を実施することは考えておりません。
少子化については、デジタル化の推進による効率化を含めた社会保障改革を進めることで、実質的な国民負担の増加にならないよう検討してまいります。時期についても、複数年にわたって社会保障改革を進める中で対応することとしており、今回の所得税減税と矛盾するものではありません。
言うまでもなく、強い経済は全ての政策の基盤です。
所信表明演説で「経済、経済、経済」と申し上げたのも、経済活性化なくして強い安全保障も持続可能な社会保障も実現できない、そうした確信に基づいたものです。現下の最優先は、デフレから脱却し、経済を成長経路に乗せるということです。まず経済活性化、その順番を御理解いただきたいと思います。
今正に、デフレ脱却ができるかどうかの瀬戸際だからこそ、あらゆる政策を総動員し、国民の可処分所得を拡大する。所得減税は、そのために行うものであることを改めて強調したいと思います。
国民の可処分所得を後押ししながら、我が国の「稼ぐ力」を強くしていくために全力を挙げます。しっかりと投資を後押しし、過去最大の投資が行われつつある現在の流れを更に強めてまいります。これによって賃上げの流れを確実なものとして、成長と賃金の好循環を回します。
賃上げ促進税制、最も重要な「人への投資」の拡大を図ります。これまで赤字で税制を使えなかった中小企業にも使いやすい形に強化してまいります。
投資減税と戦略投資支援。熊本県では、既に半導体の大型投資によって良質な雇用が生まれ、賃上げが広がっています。半導体、蓄電池、電気自動車などの戦略分野で過去に例のない税制や補助制度を講じ、全国で次々と大型投資を呼び込んでまいります。
中小企業の省エネ・省力化投資。小売、飲食、宿泊業からものづくりまで、人手不足に対応するメニューをカタログから選択し、現場の企業に使いやすい形で支援いたします。
物流・交通のデジタル化。デジタル情報配信道等を整備し、自動運転トラックを活用した物流の実証を行います。2024年問題に直面する物流投資も後押ししてまいります。
暮らしのGX(グリーン・トランスフォーメーション)。御家庭も投資の担い手です。ヒートポンプ設置、断熱窓への改築、電気自動車の購入補助など、光熱費を削減し、快適な暮らしを応援します。
「年収の壁」についても、長年、106万円、130万円の「壁」の存在が指摘されてきましたが、今般、就労時間を気にすることなく働く環境を整えることで、希望する所得を得られ、「壁」を実質的に無くしていくよう、具体的な支援を用意し、既に実行しております。
このように、予算、税、制度・規制改革などあらゆる手法を盛り込みました。特に規制・制度改革については、36項目、2013年以降に取りまとめられた経済対策では最多となります。あらゆる手法を総動員して「稼ぐ力」を強化してまいります。
今回の経済対策の規模は全体で17兆円前半程度を見込んでいます。私にとって、飽くまで最優先しているのは、デフレからの脱却を行い、経済を成長経路に乗せるということにあります。経済が成長してこそ税収も増え、そして財政健全化にもつながっていきます。国民の皆様には、まず経済活性化、その順番を御理解いただきたいと思います。そうした考えの下、一時的な所得減税を含む経済対策を策定しました。
その一方で、大規模な補正予算を講じてきたコロナ禍への対応が一段落した以上、歳出構造を平時に戻していく方針は堅持していきます。今回の経済対策策定に当たっても、合わせて5兆円となる予備費を半減し、財源として活用いたします。年末までの予算編成過程で更なる歳出構造の平時化を検討してまいります。
本日決定した経済対策については、その裏付けとなる補正予算を編成し、臨時国会に提出して、早期に成立させていきます。長く続いたデフレからの完全脱却は、「明日は今日より良くなる日本」を実現していくための最大の課題です。政府、経済界、労働界を始め、国民全体でこれに取り組むことが必要です。政府は先頭に立って全力を尽くします。国民の皆様の御協力を引き続きお願い申し上げます。
― 質疑応答 ―
(内閣広報官)それでは、これから皆様より御質問を頂きます。質問をされる方は、挙手の上、指名を受けてからお近くのスタンドマイクにお進みいただき、社名とお名前を明らかにしていただいた上で、1人1問、御質問をお願いいたします。それでは、まず、幹事社から御質問いただきます。
北海道新聞、藤本さん。
(記者)北海道新聞の藤本です。よろしくお願いいたします。経済対策で発表された減税について質問します。総理は、税収増の還元策として、所得税・住民税の減税実施を表明しました。ただ、実施は来年6月の予定で、国会審議でも「物価高にあえぐ国民への支援としては遅い。より早い支援につながる給付金支給にすべきだ」との声が相次ぎました。なぜ給付では駄目なのか。なぜ減税にこだわるのか。先ほど総理も御説明されましたが、低所得世帯以外の世帯でも、今、生活に困窮している方々は多くいるはずです。こうした状況だと、総理の御説明というものが多くの国民の腑(ふ)に落ちていないのではないかというふうに感じております。より分かりやすいメッセージで、改めてその理由をお聞きしたいと思います。また、支持率低下が続く中で、近年の政権ではなかった所得減税を打ち出すことで、年末あるいは来年の通常国会で減税の是非を問う解散に踏み切るのではないかとの臆測もありますが、そうしたお考えがおありなのかについても、併せてお聞きします。
(岸田総理)まず、所得減税のタイミングについては、今も申し上げましたが、今年7月に公表された内閣府の年央試算においても、来年度中には名目賃金の伸びが消費者物価に追いつくという試算が示されています。また、民間のエコノミストの意見をいろいろとお伺いする中で、実質賃金がプラスに転じるタイミング、2024年度あるいは2025年度と指摘されるエコノミストの方が多いと認識しています。こういったことを考えますと、やはり来年度、これは賃金が物価に追いつく上で、デフレ脱却ができるかどうかということにおいて、これは正念場であると認識しています。ここに的を絞って、デフレに後戻りさせないための一時的な措置として、所得税・住民税の定額減税を行うことを考えました。来年度の賃上げが大変重要であるという中において、減税のスタートの時期については、賃上げとの相乗効果を発揮できるタイミングを考えるべきだということで、来年、ボーナス月である6月であれば、賃上げと定額減税、双方の効果を給与明細において目に見える形で実感することができる、幅広い国民が所得の下支えを実感することができる、このように考えました。そして、御指摘のように、低所得者層の方々に対しては給付で対応するということで、重点支援交付金を約1.6兆円追加する、さらには額だけではなく、よりきめ細かい支援を用意するということで、推奨事業メニュー0.5兆円で地域の実情に応じて生活者、事業者に対してきめ細かい支援を用意する、こういった工夫も行った。こういったことであります。これらは年内の実施開始を目指して努力するということです。そして、それ以外にも、エネルギーの激変緩和措置など、国民生活と幅広い関わりのあるエネルギー分野における激変緩和措置は来年春まで延長する。こういった対策も引き続き続けてまいります。解散についても御指摘がありましたが、解散については、従来から申し上げておりますように、今は先送りできない課題、これに一意専心取り組んでいく、それ以外のことは考えていない。経済について、今、御説明させていただいた思いで、全力で取り組んでいきたい。このように思っております。
(内閣広報官)それでは、次、千葉さん。
(記者)産経新聞の千葉と申します。よろしくお願いいたします。総理、憲法改正についてお伺いしたいと思います。総理は、今国会でも、自民党総裁任期中の改憲を目指すということを改めて表明されました。具体論で言えば、これまでの衆議院憲法審査会の議論では、いわゆる緊急事態条項に関して与野党で原案をまとめられるかということが一つの焦点に絞られているかと思われます。総理は、国会で、自民党内での議論を加速させるということも表明されましたけれども、党の総裁として、憲法の具体的な改正の条文化にどのように指導力を発揮していくお考えか、お聞かせください。
(岸田総理)先の通常国会において、衆議院の憲法審査会において、御指摘の緊急事態条項の論点の整理を取りまとめた。こういったことが行われたと認識しており、こうした活発な議論については歓迎したいと思いますし、関係者の努力に敬意を表したいと思います。ただ、これ以上具体的なことを申し上げるのは、私は行政府の長でありますので、立法府、国会の議論の進め方について何か細かく申し上げる、これは当然控えなければならない立場にあるとは思っています。ただ、憲法改正、これは最終的には国民の皆様の御判断が必要である、こうした議論でありますので、国会における発議に向けて手続をするためにも、より積極的な議論が行われることは期待したいと思っています。そして、あわせて自民党総裁としては、党内の議論を加速させるために、メンバー、陣容の拡充など、議論に向けての覚悟、強い思いを形で示しながら議論を進めていく、こういったことを総裁としては取り組んでいきたいと考えています。以上です。
(内閣広報官)篠原さん。
(記者)テレビ東京、篠原です。よろしくお願いします。総理に直接申し上げるのは大変失礼かもしれませんけれども、インターネットなどでは総理のことを「増税メガネ」などと呼ばれていて、総理自身に増税のイメージがついています。このことについて、総理は率直にどのように感じていますか。また、この「増税メガネ」という言葉に代表されるように、総理についた増税のイメージを総理自身が気にされて、それを払拭しようとして、今回、減税に踏み込んだのではないかという見方も出ているのですが、この点についてはいかがでしょうか。
(岸田総理)まず、御指摘のように「増税メガネ」など様々な呼ばれ方をされているということは、私も承知しております。ただ、どんなふうに呼ばれてもこれは構わないと思っております。どんな呼ばれ方をしようとしても、やるべきだと信じることをやるということなのだと思います。経済対策も、また防衛力の強化も、こども・子育て政策も、またエネルギー政策も、国民の皆様のため、我が国の経済のためにやるべきと信じているものについて、これからもやっていくということに尽きるのだと思っています。政策の順番とかやり方等には工夫をしながら、やるべきだと自分が信じることについて決断し、そして実行していく。こうした姿勢はこれからも大事にしていきたいと思っています。
(内閣広報官)それでは、次の方、東京新聞の大杉さん。
(記者)東京新聞の大杉です。防衛増税の関連をまた伺いたいのですけれども、総理、今、冒頭にも政策の順番が大事だというふうにおっしゃったのですけれども、防衛増税を昨年決めた上で、今年また減税を打ち出すというところが、やはりちょっと理解が得られていないような気がするのですけれども、実施は来年しないというのは法律自体が成立していない、関連法が成立していないので、それはそうかなと思うのですけれども、その打ち出し方として、果たして国民に理解が得られるような順番だったのかどうかというところをどう考えていらっしゃるかということと、一方で、信じることを今やるというふうにおっしゃいましたけれども、であれば、その防衛増税の関連法について、来年の通常国会、臨時国会、来年中に提出するようなお考えがあるのかどうかというところも併せて伺えますか。
(岸田総理)まず、今の経済対策、そして防衛力強化、これはそれぞれ、我が国にとって先送りできない、大変重要な課題だと思います。防衛力強化の議論、御指摘のように去年から行ったわけでありますが、その中で経済というのは絶えず変化しています。2年間新しい資本主義という形で官民を挙げて賃上げ、そして投資に取り組んできた、明るい兆しがようやく見えてきた、このタイミングを逃すことはできないということで、この経済のチャンスをしっかり物にしなければいけないということで、経済対策、今、申し上げています。そして、両者の関係から申し上げますと、防衛力強化に向けての税制措置ですが、その税制措置の中身、所得税については現状の家庭の負担を増やすことがない、こういった対応をするということを申し上げています。要は、所得税について今回減税することと防衛力強化の税制措置、これは矛盾するものではないと思っています。防衛力強化に向けての税制措置は、法人税が大きなものとしてありますが、法人税についても94パーセントの法人は対象外にするなど、配慮をするなど、中身においても経済との関係が矛盾しないように議論を積み上げたわけでありますし、そして、実施時期についても、昨年末の閣議決定において、令和9年度に向けて複数年かけて税を準備していく、9年(度)以降は財源をしっかり維持していくわけですが、それに向けて、9年(度)に向けて財源を積み上げていく、こういったことを確認しています。その際に、賃上げやあるいは経済に十分配慮した上でタイミングを考える、これも閣議決定しております。ですから、先ほど申し上げたように、今は経済対策に専念する。防衛力強化に向けての税制措置については少なくとも来年、(令和)6年度にスタートする環境にはないと考えている。こういったことを私は申し上げてきたわけであります。このように、経済対策、そして防衛力強化、共に大事な課題であります。そして、動いている経済において、経済はまず今のタイミングが大事だ、これをしっかりと進めて、デフレ脱却することが防衛力をしっかり支える上においても大事だ、こういった判断で、今、申し上げているような順番で経済政策を進めていく、こういったことを考えております。
(内閣広報官)それでは、次に、信濃毎日の加賀さん。
(記者)信濃毎日新聞の加賀です。よろしくお願いします。少子化対策に関連して伺います。6月に決定したこども未来戦略方針では、学校給食費の無償化に向けて、まずは自治体の取組の実態や成果、課題の調査などを速やかに行い、1年以内に結果を公表するとしています。子育て支援をめぐっては、給食だけでなく、子供の医療費の助成でも自治体の財政力によって差が生じているのが現状です。子供がどこに住んでも同じ支援を受けられるよう、政府として支援の充実を図る考えがあるかどうか伺います。
(岸田総理)御指摘の学校給食費ですが、無償化に向けては、今、調査を進めている、論点整理をこれから行う、こういった取組を進めるわけですが、学校給食費については、国はこれまで、生活保護による給食扶助あるいは就学援助等を通じて自治体が行う支援を下支えしてきた、こうした取組を進めてきました。そして、今、現下の物価高騰に対して、政府において重点支援地方交付金の奨励メニューを活用し、ほとんどの自治体において値上げが抑制されている、保護者負担の軽減を行っている、こうした状況にあると承知しています。そして、今回の経済対策においても、重点支援地方交付金、この推奨事業メニュー分0.5兆円を追加して、更にこれを活用して負担軽減に努めてもらいたい、こういったことを申し上げています。御質問の趣旨は地域における格差についてどう対応するかということでありますが、今、申し上げた形で国として、地方の学校給食費抑制の取組を下支えする、応援していく、こういった体制でできるだけ幅広い地域において負担軽減の動きが徹底していく、こういった努力を続けていきたい、このように思っております。
(内閣広報官)それでは、NHK、清水さん。
(記者)NHKの清水です。お願いします。財政の考え方をお聞きします。税収が増える中、今回、給付と減税という還元策が盛り込まれました。政府は財政健全化目標の達成時期を2025年度としていますが、これを堅持する考えでしょうか。それとも、経済状況に応じて柔軟に対応することもあり得るのでしょうか。また、先ほど総理、冒頭に言及がありましたけれども、将来の国の財政という面で、今回の対策がどのような効果を持つことを期待しているでしょうか。お願いします。
(岸田総理)まず、結論から申し上げるならば、プライマリーバランスを2025年度に黒字化していく、こういったこれまでの財政健全化目標、この変更は考えておりません。今回の経済対策において、財政的に一時的なマイナスが生じたとしても、我が国の経済が長年苦しめられてきたデフレからの完全脱却、これをもし成し遂げることができたならば、これは中長期的に財政にとってもプラスになると考えています。ストックとしての債務残高が実質的に軽減される、こういったこともありますし、その税収の増加分、これは財政健全化に寄与する、こういったことでプライマリーバランスも改善につながる、こうしたことであると考えています。私自身、従来から経済あっての財政だと申し上げてきました。経済を建て直し、そして、今言ったような形で財政健全化に向けても取り組んでいく、こういった姿勢はこれからも徹底していきたいと考えております。
(内閣広報官)では、ジャパンタイムズのニニヴァッジさん。
(記者)ジャパンタイムズのニニヴァッジと申します。よろしくお願いいたします。インバウンド戦略について伺います。先月10月は、コロナ禍後の観光目的の個人旅行による入国を再開してから1年がたちました。訪日旅行者がコロナ前の水準に回復し、旅行者消費額並びに宿泊者数も高いレベルに達している一方、足元でオーバーツーリズムのような課題も山積しております。政府は2025年までに外国人旅行者数3,200万人超えの目標を打ち出していますが、更に長期的な目標を設定するおつもりはあるのかお聞かせください。また、観光業界においても人手不足が深刻さを増す中、人手の確保にどのように取り組んでいくのか、併せて伺います。
(岸田総理)昨年10月、水際対策緩和をいたしました。その後、観光需要、急速に回復しています。足元では外国人旅行者の旅行消費額5兆円目標、これも前倒しすることができる、こういったことも視野に入ってきている、こういった状況です。これらの対策に引き続き、様々な対策、これからも進めることによって、観光ビジョンに基づいて2030年、訪日客6,000万人、消費額15兆円、こうした数字も目指していきたいと思います。観光地、観光産業の高付加価値化と住民の皆様の生活との調和、これが持続可能な観光地域づくりを実現する上で重要だと思っています。御指摘のように観光客が集中する一部の地域、あるいは時間帯によっては、過度の混雑ですとか、マナー違反ですとか、旅行者の満足度低下、こういった懸念が指摘されています。いわゆるオーバーツーリズムの問題が指摘されています。これに対して政府としては、オーバーツーリズムの未然防止、抑制に向けた対策パッケージを先月取りまとめました。今回の経済対策の中においても、オーバーツーリズムの未然防止・抑制、高付加価値なコンテンツの創設、また観光の人材不足対策など、訪日外国人旅行者の受入れ環境整備、こういった対策を進めることによって、持続可能な観光を実現していくことは重要だと思います。先ほど申し上げました目標に向けて、一方でこうしたオーバーツーリズムに対してもしっかり目配りをしていく、この両方を追求していきたいと思っています。
(内閣広報官)では、朝日の村松さん。
(記者)朝日新聞の村松です。よろしくお願いします。減税について伺います。先ほど増税イメージを払拭するための減税なのではないかという質問がありましたが、そうした見方を強めているのは、やはり減税に唐突感を抱く人が少なからずいるからだというふうに思っておりますが、首相がこの減税をやろうと決めたのはいつなのか、減税を打ち出すまでの経緯を少し丁寧に説明していただけますでしょうか。また、2年分の増収部分を国民に還元するということですが、この2年というのがどういう合理的な根拠があるのか。政権発足2年を迎えた岸田政権の実績という意味での増収という意味なのかどうか、この2年についての合理的な説明をお願いできますでしょうか。
(岸田総理)まず、減税について考えた経緯について御質問がありましたが、これは経済対策そのものを考える中で、今の経済の状況をどう判断するか、そこから議論を始めたわけです。そして、幸いこの2年間の新しい資本主義等の取組によって明るい兆しが見えてきた。しかし、最大の課題はこれを持続できるかどうか、これがデフレ脱却のポイントだ、こういった実情をしっかり把握しながら問題点を整理していった、こういったことでありました。そして、これを、先ほど申し上げたように「稼ぐ力」をつけることによって持続させていくよう努力したいと思いますが、今現在、世界的なエネルギー危機を始め、外生的な要因も多分にあって、大変な物価高騰に見舞われている。物価に賃金が今現在は追いついていないわけです。賃金はまだ伸ばそうといているわけですが、可処分所得、余裕がないと消費が萎縮してしまうことになるわけですから、来年、賃金はもちろん上げるわけですが、そこに可処分所得を支援することによって、消費等も萎縮することなく、賃金と、そして投資の好循環、成長と分配の好循環、これをしっかり回すところに持っていけるかどうか。こういったことを考えますときに、可処分所得の下支え、この方法を考えなければいけない、こういったことになった。そして、可処分所得の下支えの方法として、給付もある、減税もある、そして、緊急に必要とされている方もある、そして一方で、こども・子育てで苦労されている家庭もある、そういった中で、給付のタイミングと、そして増税のタイミング、これをどう組み合わせるのか、こういった議論を行い、結果として、減税としてもいろいろな税はあるわけですが、所得税を来年のボーナスの時期に減税するというタイミングに行き着いた、こういったことでありました。
2年間の意味ということですが、おっしゃるように政権を担って2年間、新しい資本主義という形で民間の方々にも協力していただきながら経済政策を進めてきた、こういった2年間でありましたが、その2年間はコロナ禍において、国民の皆様に御苦労いただいた、こういった時期でもあります。こういった時期、様々な経済活動の結果として、税金、特に所得税・住民税、3兆円余りの増収が示されている。その税の増収を可処分所得の下支えに使う。そして、やはり分かりやすい形が適切である。同じ所得税・住民税で直接国民の皆様にお返しする、こういった方法を採るべきではないか。2年間と、そして税の種類の判断、こういった関係も考えながら結論に行き着いたということであります。様々な検討・議論を積み重ねた結果、先ほど紹介させていただいた今回の経済対策に行き着いた。これが経緯であったと振り返っています。
(記者)いつぐらいに。
(岸田総理)これは、経済対策を今日発表したわけですが、今日、用意するまでの間というか、政府として与党にしっかりと基本的な方向性を示した時期がありましたが、それまでに、今、申し上げた作業を積み重ねてきた、そういったことであります。
(内閣広報官)それでは、大変恐縮ですが、この後、総理の用務が入っておりますので、あと2問とさせていただきます。では、フリーランスの横田さん。
(記者)フリーランスの横田です。よろしくお願いいたします。インボイス制導入についてお聞きします。先般、50万を超える反対署名が提出されたことは総理も認識していると存じます。今後、立場が弱く、所得が低いフリーランスや零細企業にしわ寄せが来るのは間違いありません。3年の控除を設けていますが、逆に支払ができずに廃業を選択する期間が3年伸びたようにも見えます。
総理は、将来的に消費減税を全く今から否定するものではないと答弁なさっていますけれども、そもそも論の複数税率の見直しを行う気はありますか。また、複数税率の是非を国民に問う予定はありますでしょうか。お答えください。
(岸田総理)まず、消費税減税は、今、考えてはおりません。その上で、軽減税率制度ですが、これはそもそも消費税を引き上げたときに、低所得者への配慮として導入された制度です。日々の生活において幅広く消費者が消費したり、活用したりする商品について、消費税負担を直接軽減することによって消費税の逆進性を緩和する、こういった効果を期待して導入された制度ですので、軽減税率制度を廃止する、要は、複数税率を見直す、こういったことについては考えておりません。そして、インボイス制度、こうした軽減税率制度をしっかりと維持するために大切な制度であると考えています。御指摘のように不安の声が中小・小規模事業者の中にある、これは十分承知しております。ただ、インボイス導入を決めてから、長年にわたってこの問題について説明すると同時に、様々な支援策を用意してきました。引き続き、今、実施がスタートしたわけですから、実施状況をフォローアップしながら、不安解消に向けてきめ細かく対応していく、柔軟に対応していく、こういった姿勢は大事だと思います。是非引き続き、このインボイス制度に対する理解、国民の皆様の理解について努力を続けていきたいと私は思っています。
(内閣広報官)AP、山口さん。
(記者)AP通信の山口です。よろしくお願いします。ALPS(多核種除去設備)処理水の海洋放出に関してお尋ねいたします。本日、3回目の放出が始まり、8月24日の開始以来2か月以上がたちました。IAEA(国際原子力機関)などによって、今までのところは問題なく進行しているということですが、中国は、日本の水産物の禁輸措置をまだ続けております。この状態がいつまで続くのか。今後、日本は、中国に対してどのように対応していかれるのでしょうか。例えばWTO(世界貿易機関)への提訴なども視野に入ってくるのかどうか、今後の日中関係も含めて教えてください。よろしくお願いします。
(岸田総理)まず、ALPS処理水については、これまで科学的根拠に基づいて、透明性をもって説明する、こういった姿勢を日本としては貫いてきました。こういった国際社会に対する説明、働きかけによって、国際社会の多くの国々においては、日本の考え方、科学的根拠から御理解いただいてきていると思っておりますが、ただ、御指摘のように、一部の国においては、科学的根拠に基づかず、日本産品の輸入規制を行う、こういった国々があります。こうした国に対しては、引き続きその国に対して、二国間関係においても丁寧に説明を行い、そして、こうした規制について撤廃を要求していかなければならないと思いますが、あわせて、WTOを始め、様々な国際会議の場において、日本として日本の考え方を示していく、こうした取組も重要であると思っています。WTOへの提訴というお話がありましたが、具体的に最もスピード感のある対応は何なのか、これはよく吟味しなければならないと思います。ただ、国際場裏の場をしっかりと使って日本の考え方を示し、理解を広げていく。こういった方策も重要だということは間違いないと思います。いずれにせよ、中国との関係においては、この問題も含めて、引き続き様々な対話を続けることによって、建設的かつ安定的な関係を維持していかなければならないと思っています。隣国であり、日本にとって最大の貿易相手国は中国であるわけでありますし、隣国であるが故に様々な課題がありますが、是非、主張すべきことは主張し、中国に大国としての責任をしっかりと果たしてもらうべく働きかけを行っていく。対話を行って、気候変動などの協力すべきことは協力していく。こういったことで、建設的かつ安定的な関係を双方の努力で進めていくという方針、これはこれからも変わらないと思っています。今後、外交日程において、APEC(アジア太平洋経済協力)を始め、様々な日程の中で対話、会談、今の時点では何も決まってはおりませんが、今申し上げたような姿勢を堅持しながら、ハイレベルの対話も含めて意思疎通を緊密に図っていく、こういった姿勢は日本も大事にしていきたいと考えております。
(内閣広報官)以上をもちまして、本日の記者会見を終了させていただきます。大変恐縮ですが、現在、挙手いただいている方につきましては、本日中に1問、担当宛てにメールでお送りください。後日、書面にて回答させていただきます。御協力ありがとうございました。
(岸田総理)ありがとうございました。
 
 
 
 

 

●経済対策膨張 筋通らぬ財政の野放図 11/3
岸田政権がまたもや大盤振る舞いの「経済対策」を決めた。政権浮揚の思惑ばかりが先走り、経済の実勢に即して政策を吟味する姿勢が吹き飛んでいる。借金頼みで野放図な財政出動を続ける無責任さを自覚すべきだ。
政府がきのう閣議決定した総合経済対策は、予算規模が減税も含め17兆円余りに膨らんだ。今年度の支出に13兆円を追加する補正予算案を国会に出す。財源の多くは国債発行に頼る見通しだ。
コロナ禍以降に繰り返した数十兆円の経済対策よりは少ないが、東日本大震災やリーマン・ショック後に匹敵する巨額の規模になる。経済の回復基調が続き、需要不足もほぼ解消したとみられる中で、明らかに過大だ。
首相が唐突に打ち出した所得税などの定額減税も盛り込み「税収増を国民に還元」とアピールする。だが、現実の財政はコロナ禍後に赤字が大きく膨らんだままだ。「歳出構造を平時に戻していく」という今年の「骨太の方針」の言葉はどこに行ったのか。
支出の中身も焦点が定まらず、緊急性が疑わしいものが並ぶ。賃上げ支援や供給力強化の投資促進、防災など、従来の施策にカネを追加するが、費用に比べてどれほど効果があるのか。大型の基金などは、補正予算に盛り込む理由が見当たらない。
足元の物価高対策の必要性は理解できるが、それもやり方が問題だらけだ。来春まで延長するガソリン代などの補助は、どんな消費も一律に対象になり、バラマキ色が濃い。必需品の高騰には困窮する層に絞った給付で対応するのが筋である。
減税も物価高対策とする一方で、首相は「デフレに後戻りしないため、国民の可処分所得を下支えする」とも説明する。しかし、中高所得層を含め幅広く家計を支援する所得減税は深刻な不況期にとられるような手法であり、現状に合わない。
減税の実施は来年6月で、即効性もない。非課税世帯などには給付金を出すが、減税との兼ね合いで公平な仕組みにできるかも難題だ。
筋が通らず、ちぐはぐさだけが目立つ減税に首相がこだわったのは、防衛増税先行のイメージを気にして、人気取りに走ったからだろう。
だが、国債残高は1千兆円を超え、足元では金利も上がりつつある。財政規律の回復は急務であり、首相を先頭に与野党が負担減や給付を競い合う今の政治は危うい。持続的で責任ある経済・財政運営をどう取り戻すのか。真剣な議論を各党に求めたい。
●「経済、経済…」「異次元」「聞く力」 岸田首相の繰り返し 「欺瞞性認知」 11/3
臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、岸田文雄首相に生じ始めた欺瞞性認知と「増税メガネ」について。
ついに支持率が過去最低の26.9%(ANN世論調査)になった岸田内閣。1人4万円の所得税減税検討を進めているのに、それさえも「評価する」と答えた人は30%ほどで、「評価しない」が50%を超えるという世論調査の結果が出てしまった。聞こえてくるのは「増税メガネ」に「偽装減税」と揶揄する言葉。国民の中に首相や内閣に対する「欺瞞性認知」が広がっているのだろう。
10月23日に国会で行われた所信表明演説では、「経済、経済、経済。私は何よりも経済に重点を置いていく」と新たな経済政策を訴えた岸田首相。だが残念なことに、その言葉に響くものはなかった。経済という言葉を連呼し、そこを強調したはずだが、逆に繰り返されたことで、空回りしている感が強くなっていく。
落ちていく支持率、評価されない政策、増税メガネというあだ名、ここ最近の諸々の報道を見ても、世間では首相への欺瞞性認知が生じ始めている気がしてならない。欺瞞性認知は、嘘ではないかと疑うことだ。ちなみに、心理学の実験には、繰り返しの表現が欺瞞性を高めるという結果もある。そうならば、首相が所信表明で経済、経済と繰り返し、政策を強調するほど人々の欺瞞を強めてしまう結果になりかねない。
これまでの政策で使ってきた表現もそうだ。象徴的なのは”異次元の”という言葉だ。実際には異次元とはほど遠く、大仰な表現だったわりに効果は限定的。他にも”聞く力”をアピールして打ち出してきたものの、その耳に国民の声が届いている印象さえない。根本的なところは何も変わらず、良くなったという声は聞こえてこない。就任以降、そんなことが繰り返されてきたためか、首相の言葉をストレートに受け取ることができなくなっている。これでは減税と言われても政権の人気取りと思い、そのうち増税されると疑う国民が増えるのも仕方がない。
タイミングが悪いのも岸田首相への欺瞞を強める要因になる。過去には朝令暮改と皮肉られたこともある首相の対応。今回は増税メガネというあだ名が注目されてきた中での所得税減税案だ。あまりのタイミングに、あだ名が気になって仕方がなく、それを払しょくするために減税を行うのではないかという見方まで出た。さらに臨時国会では、減税だけでなく、首相の年収を30万円以上、閣僚は20万円ほど上げるという驚きの法案が出されているという。このような法案が出されていると聞けば、給料は上がらず、物価高に苦しんでいる国民にとっては、1年限りの4万円減税でごまかされている気にもなる。
それにしても増税メガネというあだ名はインパクトが強い。言われてみると、岸田首相になってから増税ばかりされているような気になってくるから不思議だ。外見に基づく差別や偏見をいうルッキズム問題もあるが、首相も「いろいろな呼び方がある」と苦笑いしている場合ではない。
印象という側面からいえば、一般的にメガネは、知的なイメージを与えるといわれてきた。だがビジネスの場面ではメガネのフレームは権力の象徴にもなると、ボディランゲージの世界的権威といわれるピース夫妻が著書『本音は顔に書いてある <言葉の嘘>と<しぐさの本音>の見分け方』(主婦の友社)で書いている。国を率いるリーダーとしての姿が見えてこない首相にとって、最も印象に残るのが権力の象徴でもあるメガネだったということだろう。
誰が名づけたのかわからないが、このままいけば国民の記憶に残る岸田首相の印象は増税メガネだけだったということになりかねない。
●「増税メガネ気にしない」岸田首相の給与、46万円増に批判噴出 11/3
政府は2日、17兆円台前半規模の総合経済対策を閣議決定した。目玉は岸田文雄首相肝いりの所得税と住民税の「1人4万円」の定額減税だが、与野党そして国民からも総スカン状態だ。「増税メガネ」との異名について「どんなふうに呼ばれても構わない」と述べた岸田首相だが、自身の給与が「年46万円」上がる「給与アップ法案」への批判も噴出している。
減税策は、岸田政権の増税イメージを払拭する狙いだったが、複数の報道機関の世論調査で内閣支持率が発足後最低となるなど政権浮揚につながっていない。
与党内にも禍根を残した。自民税調幹部からは「所得税減税は意味がありませんよ」とクギを刺された。党内には「現金給付に変更すべきだ」との声も根強い。閣僚経験者は「ごり押しの打ち出しは失敗し、国民にも響かなかった」と話す。
野党からも立憲民主党の泉健太代表が「即効性に欠ける」と語るなど批判の声が出ている。
2日の記者会見で「増税メガネ」との批判に、やや引きつった笑顔で「やるべきだと信じることをやるということだ」と述べた岸田首相だが、国家公務員特別職の給与法改正案もくすぶっている。首相は月給6000円、ボーナスは夏冬の合計で0・1カ月分を引き上げ年収は46万円増、閣僚も年収32万円増という内容だ。首相は年収の3割を自主返納しているが、返納後も32万円増となる。「国民を差し置いて首相が給与を上げることに理解は得られない」(日本維新の会の音喜多駿政調会長)との批判もある。
政治評論家の小林吉弥氏は「減税策を打ち出したことで岸田首相は党内で孤立状態となり、政権運営の上で協調性のなさが目立った。経済的な効果が薄いとの指摘もあるが、政治的な効果も非常に乏しいと言わざるを得ない。このタイミングで給与増を拒否しない感覚もずれている」と指摘した。
●消費税減税しないと政権がヤバい? 岸田総理「いまは考えず」発言の真意 11/3
11月3日の「おはよう寺ちゃん」は、金曜コメンテーターでクレディ・アグリコル証券チーフエコノミストの会田卓司氏と寺島尚正アナウンサーが、消費税減税について意見を交わした。
岸田総理はきのうの記者会見で、消費税減税について「いまは考えてはいない」と述べた。総理はおとといの参院予算委員会では、将来の消費税減税の可能性に触れ、「大きな議論の結果として、消費税の対応を考えることを全く今から否定するものではない」と答弁している。この発言について立憲民主党の長妻政調会長は「総理は明確に消費税減税は考えていないと言ってきた」と語り、世論を気にして発言を変えているのではないかと指摘した。また、日本維新の会の馬場代表は、「政府の経済対策が閣議される前日に大きな方向性を変えるような答弁はいかがなものか」と批判した。
「総理の消費税減税に関する発言。会田さんはどういう印象をお持ちでしょう?」(寺島アナ)
「来年も賃金上昇が物価上昇に追いつかなかった場合には、消費税率引き下げも充分あり得ると思います。そうしないと岸田政権持たないので、こういう発言になったと思います。」(会田氏)
「あー、なるほど!」(寺島アナ)
また岸田総理は消費税が8%と10%の複数税率なのは、軽減税率により低所得者に配慮するためだと言及したうえで「複数税率を見直すことは考えていない」とも言明した。
「この発言はどう理解されますか?」(寺島アナ)
「消費税が社会保障の財源なので引き下げることができない、という固定観念からくるものだと思います。ただ10%の消費税率というのは、将来の社会保障の増加に備えた水準であって、現状ではそこまでいらないわけです。ということは、2%程度は引き下げが可能です。家計が疲弊してるのに、政府が将来に備えて収入の増加を前倒ししているのは異常ですから、2%程度は引き下げることは充分できるんじゃないかと思います。」(会田氏)
「だったらやってもらいたいですよねえ。」(寺島アナ)
●杉田水脈氏「私は差別をしていない」新たな動画が波紋 かばう岸田首相 11/3
ブログの投稿内容がアイヌ民族などへの「人権侵犯」と認定された自民党の杉田水脈衆院議員について、アイヌ民族の人らが1日、国に差別発言を野放しにしないよう強く要望した。だが、この求めに国は正面から向き合わず、岸田文雄首相も国会答弁で杉田氏をかばい続けた。差別発言を法的に止める術は本当にないのか。
10月27日に投稿、自らの言動を正当化?
「政府や行政は、アイヌヘイトをなくすためにどうしたらいいか、もっと真剣に考えてほしい」。1日、オンライン上で行われたチャランケ(アイヌ語で交渉の意味)で、アイヌ民族の多原良子さん=札幌市=らが訴えた。
杉田氏は2016年、多原さんらがアイヌ民族の衣装を着て国連に出席したことを侮辱する投稿をブログで行い、今年9月に札幌法務局から人権侵犯を認定された。だが認定後の謝罪はなく、10月27日に投稿したユーチューブの動画で「逆差別、エセ、そしてそれに伴う利権、差別を利用して日本をおとしめる人たちがいる」と主張。「差別がなくなっては困る人たちと戦ってきた。私は差別をしていない」と過去の言動を正当化したとも取れる発言をし、再び波紋を広げている。
会合で多原さんが「なぜ、アイヌがエセなどと言われなければならないのか」と問うと、内閣官房アイヌ総合政策室の加藤直子参事官補佐は「個別の事案を申し上げることはできないが、アイヌ民族の衣装は大変手の込んだ素晴らしいものだ」と回答。多原さんが「踏みにじられているから聞いているのに」と語気を強める一幕もあった。
内閣担当者は繰り返す「個別の事案に答えられない」
多原さんらは杉田氏以外にも、アイヌ民族への差別発言が相次いだ昨年11月30日〜12月5日のネット上の658の書き込みも法務局に人権救済を申し入れているが、加藤氏は「個別の人権侵犯事案に答えられない」。あまりに同じ回答を繰り返したためか、自分自身に苦笑いする場面も。
法務省人権擁護局付の石井奈沙氏は、本人側が申告しないと人権侵犯かどうかの調査が始まらない現状について問われ、「申告がないのに行政が勝手に動くのは表現の自由への規制になる。投稿を勝手に削除すれば、それが逆に炎上することもある」と答えた。支援者から「だからといって放置し続けていいのか」といった声が相次ぎ、1時間の会合はことごとくかみ合わなかった。
差別に甘い姿勢は岸田首相も同じだ。10月31日の参院予算委員会で一連の問題を問われたが、「本人は謝罪をし、(投稿を)取り消した。今後も説明責任をしっかり果たしてもらいたい」とかばった。そして「アイヌであることを理由に差別するなどということはあってはならない」と従来通りに一般論を繰り返した。
「歓迎したアイヌ新法、ぬか喜びだった」
恵泉女学園大の上村英明名誉教授(国際人権法)は「アイヌ民族は、和人が奪ってきた民族の誇りや差別されない生活を返せと主張している。それがなぜ利権になるのか」と杉田氏の発言を疑問視する。
差別発言を止める術を示せない国の対応については「各地に法務局はあるが、差別を認定するだけで止める制度になっていない。人権救済を目的とした、裁判所とは別の独立した国内人権機関をつくるべきだ。国連から勧告も受けている」と指摘する。
多原さんが代表を務める「先住民族アイヌの声実現!実行委員会」はアイヌ施策推進法でアイヌ差別撤廃を国や自治体の責務とすることや、罰則規定を設けるなどの法改正を行うよう要望。札幌市にも、川崎市のヘイト禁止条例のような罰則付き条例を新設するよう求める。
「こちら特報部」の取材に、多原さんは「アイヌ新法ができた時、もう差別されないと歓迎したが、ぬか喜びだった。アイヌ民族がおとしめられていても国も自治体も何もせず、法が求めた社会とは甚だしい乖離がある」と訴えた。 
●重視するのは「他社の動向」8割 人的資本開示は横並び意識強く 11/3
2023年3月期の有価証券報告書で人的資本の開示が始まった。世界的な無形資産重視の流れに加え、人口減の本格化も日本企業に対応を迫る。だが蓋を開けてみると、最低限の開示内容にとどまる企業が多く、他社動向をにらみながらの姿勢が目立つ。成長と企業価値向上につながる人材戦略を掲げられるか、試行錯誤が始まった。
「投資家や従業員など、ステークホルダーと対話する際の糸口になるような情報開示をしてもらいたい」。2023年8月、経済産業省で開かれた人的資本経営コンソーシアムの分科会で、伊藤邦雄・一橋大学CFO教育研究センター長は、企業の情報開示担当者らを前に、こうあいさつの言葉を述べた。
このコンソーシアムは、企業と投資家らによる、人的資本経営の実践に関する先進事例の共有や効果的な情報開示の検討を目的に、22年に発足した。伊藤氏が発起人代表となり、人的資本投資を軸とした企業価値向上の取り組みが活発化するよう、機運を盛り上げる。
デジタル技術の進展や気候変動問題などで経済・社会情勢がめまぐるしく変わる中、企業成長に向け、工場や機械などの有形資産よりも、人が生み出す技術や経験といった無形資産を重視するのは世界的な流れになっている。人材をコストではなく資産と捉え、その価値の最大化に注力する人的資本経営の重要性は増す一方だ。
資本市場でも、企業価値の源泉を見極めるために、財務情報に加え、人的資本を含む非財務情報の開示を求める動きが進んできた。
米国は20年に開示義務付け
例えば国際標準化機構(ISO)は、18年12月に、人的資本の情報開示のガイドラインに関する初の国際規格「ISO30414」を発表した。米証券取引委員会(SEC)も20年、ISOのガイドラインを順守する形で上場企業に人的資本や多様性の情報開示を義務付けた。
日本でも、岸田文雄政権が「人への投資」を成長と分配の好循環実現に向けた柱の一つと位置づけ、企業に実践を促そうとしている。
第一歩となるのが、23年3月期から始まった、有価証券報告書での人的資本情報の開示義務化だ。人材育成方針とその目標や実績、男女の賃金格差や女性管理職比率など、ダイバーシティー(多様性)に関する指標の記載が多くの企業で義務となったほか、任意ではあるが独自の人材戦略に基づいた、企業価値向上までの戦略・ストーリーを示すことが奨励されている。
自社の強みや課題を明確に示すことができれば、成長ストーリーの説得力は増す。投資の呼び込みにつながり、その企業の国際競争力に寄与する。働く場としての魅力を示せれば、国内人口が減少する中、優秀な人材を引き付けることもできるだろう。
だが、これまで「人材に投資する」視点を持たなかった日本企業の多くは戸惑いを隠せない。
データにもその傾向が表れている。パーソル総合研究所が22年、従業員数1000人以上の企業の役員層、人事部長を対象に実施した「人的資本情報開示に関する実態調査」で、開示で何を重視するか聞いたところ「他社の動向」が77.7%と、「ESG関連の格付けスコアの向上」(69.4%)や「株価への反映」(70.1%)を上回る結果となっている。
他社の動向気になる日本企業
企業向けの人事コンサルティングを手掛けるデロイトトーマツ コンサルティングの上林俊介執行役員は「準備期間が短く、有報という(法定義務のある)媒体で保守的になり、本質的な開示につながらなかった。内容も他社動向をにらみながらになった」と指摘する。
「人的資本開示は単なる『開示』のテクニックではなく、自社の経営方針を世の中に約束すること」。企業文化の変革やコミュニケーション活性化を支援するサービスを提供するUnipos(ユニポス)の田中弦社長は、情報開示義務化を、自分の会社の強みや課題を再確認する機会とすべきだと訴える。だが現実は期待はずれで、上場企業の多くが「多様性に関する指標」の開示にとどまり、具体的な人材戦略について記していない。・・・
●岸田首相“居直り”答弁で大炎上  閣僚給与UP法案を掲げ、庶民に嫌がらせ 11/3
ご自慢の“聞く力”は一体、いつ発揮されるのか。閣僚給与アップ法案が臨時国会に提出され、大炎上している。1日の参院予算委員会で岸田首相は、「国民の不信を招かないようにしなければいけない」などと釈明していたが、何を今更だ。物価高にあえぐ庶民を差しおいて、自分たちだけ賃上げすれば不信を招くのは当然である、と「岸田ノート」に書いていないのか。
問題になっているのは、「特別職の職員の給与に関する法律」の改正案。成立すれば、ボーナスを含めて首相は年46万円、大臣は年32万円の給与アップだ。
岸田首相は予算委で「特別職の公務員の給与については一般職の公務員の給与改定に準じて改定してきている」と説明したが、一般職に連動して特別職の給与も上げなければならないという決まりはない。閣僚給与アップの法案を出すかどうかは、内閣の判断による。
案の定、X(旧ツイッター)上は大荒れ。〈世の中の空気を読めない人なんだな。この時期に、自分の給与を上げる?〉〈「不信を招かないように」も何も、既に不振しかないんだよ、不信クソメガネ〉(ママ)などと批判が続出している。経済ジャーナリストの荻原博子氏がこう言う。
「岸田さんは約30年ぶりの高水準となった賃上げを誇っていますが、物価高騰に追いつかず、庶民の懐は寒くなるばかりです。目玉政策の『令和版所得倍増』は一体、どこへいってしまったのでしょうか。国民生活が苦しくなる中で閣僚給与を上げるとは、国民からすれば嫌がらせに近いでしょう。岸田さんには庶民感覚も政治家としてのセンスも感じられません。国民の怒りの火に油を注ぐ結果になるのも当然です」
庶民感覚も政治センスも感じられない
予算委で維新の音喜多政調会長が「給与アップ法案を見直すなり、取り下げるなりするべきだと思います」と投げかけると、岸田首相は見直しへの言及は避けつつ「閣僚給与については行財政改革を推進する観点から、総理大臣3割、国務大臣2割を国庫へ返納している」と居直り。「(給与アップで)総理大臣が年間46万円上がるとしても、返納額は1218万円であります」などと力説した。
これに対し、音喜多氏は「現状から(給与が)上がるということに対して非常に厳しい国民の目線が注がれるということは強く申し上げたい」と指摘。最近、自身の局部が写りこんだ写真をXに投稿してしまい緊急謝罪しただけあって、「厳しい国民の目線」を訴える音喜多氏の言葉は説得力が違う。
賃上げが物価高に追いつかず、実質賃金は17カ月連続マイナスが続いているのに、岸田首相は「給与の一部を返納しているから、少し上がってもいいじゃん」と開き直っている状態だ。
「国民への『還元』は、来年6月をメドに予定されている所得税など4万円の減税と、低所得世帯向けの7万円給付です。いくら何でも遅すぎます。それなら年末年始に間に合うように一律給付した方がまだマシです。物価高から国民生活を守ると言う割に、スピード感も何にもない。正直、唖然としてしまいます」(荻原博子氏)
報道各社の10月の世論調査で、内閣支持率は過去最低を更新している。どこまで下がるか見ものだ。
●杉田水脈氏「私は差別をしていない」新たな動画が波紋 かばう岸田首相 11/3
ブログの投稿内容がアイヌ民族などへの「人権侵犯」と認定された自民党の杉田水脈衆院議員について、アイヌ民族の人らが1日、国に差別発言を野放しにしないよう強く要望した。だが、この求めに国は正面から向き合わず、岸田文雄首相も国会答弁で杉田氏をかばい続けた。差別発言を法的に止める術は本当にないのか。
10月27日に投稿、自らの言動を正当化?
「政府や行政は、アイヌヘイトをなくすためにどうしたらいいか、もっと真剣に考えてほしい」。1日、オンライン上で行われたチャランケ(アイヌ語で交渉の意味)で、アイヌ民族の多原良子さん=札幌市=らが訴えた。
杉田氏は2016年、多原さんらがアイヌ民族の衣装を着て国連に出席したことを侮辱する投稿をブログで行い、今年9月に札幌法務局から人権侵犯を認定された。だが認定後の謝罪はなく、10月27日に投稿したユーチューブの動画で「逆差別、エセ、そしてそれに伴う利権、差別を利用して日本をおとしめる人たちがいる」と主張。「差別がなくなっては困る人たちと戦ってきた。私は差別をしていない」と過去の言動を正当化したとも取れる発言をし、再び波紋を広げている。
会合で多原さんが「なぜ、アイヌがエセなどと言われなければならないのか」と問うと、内閣官房アイヌ総合政策室の加藤直子参事官補佐は「個別の事案を申し上げることはできないが、アイヌ民族の衣装は大変手の込んだ素晴らしいものだ」と回答。多原さんが「踏みにじられているから聞いているのに」と語気を強める一幕もあった。
内閣担当者は繰り返す「個別の事案に答えられない」
多原さんらは杉田氏以外にも、アイヌ民族への差別発言が相次いだ昨年11月30日〜12月5日のネット上の658の書き込みも法務局に人権救済を申し入れているが、加藤氏は「個別の人権侵犯事案に答えられない」。あまりに同じ回答を繰り返したためか、自分自身に苦笑いする場面も。
法務省人権擁護局付の石井奈沙氏は、本人側が申告しないと人権侵犯かどうかの調査が始まらない現状について問われ、「申告がないのに行政が勝手に動くのは表現の自由への規制になる。投稿を勝手に削除すれば、それが逆に炎上することもある」と答えた。支援者から「だからといって放置し続けていいのか」といった声が相次ぎ、1時間の会合はことごとくかみ合わなかった。
差別に甘い姿勢は岸田首相も同じだ。10月31日の参院予算委員会で一連の問題を問われたが、「本人は謝罪をし、(投稿を)取り消した。今後も説明責任をしっかり果たしてもらいたい」とかばった。そして「アイヌであることを理由に差別するなどということはあってはならない」と従来通りに一般論を繰り返した。
「歓迎したアイヌ新法、ぬか喜びだった」
恵泉女学園大の上村英明名誉教授(国際人権法)は「アイヌ民族は、和人が奪ってきた民族の誇りや差別されない生活を返せと主張している。それがなぜ利権になるのか」と杉田氏の発言を疑問視する。
差別発言を止める術を示せない国の対応については「各地に法務局はあるが、差別を認定するだけで止める制度になっていない。人権救済を目的とした、裁判所とは別の独立した国内人権機関をつくるべきだ。国連から勧告も受けている」と指摘する。
多原さんが代表を務める「先住民族アイヌの声実現!実行委員会」はアイヌ施策推進法でアイヌ差別撤廃を国や自治体の責務とすることや、罰則規定を設けるなどの法改正を行うよう要望。札幌市にも、川崎市のヘイト禁止条例のような罰則付き条例を新設するよう求める。
「こちら特報部」の取材に、多原さんは「アイヌ新法ができた時、もう差別されないと歓迎したが、ぬか喜びだった。アイヌ民族がおとしめられていても国も自治体も何もせず、法が求めた社会とは甚だしい乖離がある」と訴えた。
●杉田衆院議員「制度がおかしい」 自身への人権侵犯認定、Xに投稿 11/3
アイヌ民族や在日コリアンに関する差別的言動を巡り、札幌と大阪の法務局から人権侵犯と認定された自民党の杉田水脈衆院議員は、X(旧ツイッター)への1日付投稿で法務省の認定制度自体を批判した。制度に問題があると指摘した保守系月刊誌の評論記事を添付動画で取り上げた上で「制度としておかしいということがよくわかります」と書き込んだ。自身の正当化を図った形で、レイシズム(人種差別主義)の助長が懸念される。
杉田氏について、岸田文雄首相は10月31日の参院予算委員会で「傷つけられた方々に謝罪した上で、表現を取り消したと認識している」と答弁した。杉田氏の投稿は首相説明と異なっているようにも受け取れる。政府と自民執行部の対応が問われそうだ。
人権侵犯を認定されたのは「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさん」「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」などの言動。杉田氏は1日付の投稿で、月刊誌記事を踏まえ「人権の定義に法的根拠はない」ことが分かったと記し、法務局判断の正当性に疑問を呈した。
●「何が順調だ!」河野担当相 マイナ総点検めぐる発言に批判殺到 11/3
10月29日、河野太郎デジタル相は、マイナンバーの紐づけミスなどのトラブルを受けおこなっている政府の総点検について、「順調にいっている」との認識を示した。現行の健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードに一本化する方針については「来年の秋を目指してしっかり頑張っていきたい」と述べ、予定通り実施する考えを強調した。神奈川県二宮町で開かれた利用体験会を視察後、記者団に語った。
10月27日、厚生労働省は、マイナ保険証の9月の利用率は4.5%だったと公表。5カ月連続の低下で、別人情報のひも付けなどトラブルが発覚した影響とみられている。
だが、河野氏は、「便利ということが伝われば増えていくと思うので、今のところあまり心配はしていない」と述べた。
この河野氏の発言に、SNSでは批判的な声が多く上がっている。
《何が順調だ!振り回されている自治体職員等の苦労を少しは考えろ!》
《トラブルだらけで順調な訳ないじゃん。一旦失った信用は戻らない》
《いやこれなんなん。順調?例えばどこが?ようそんなデマカセがツラツラと出てくるな》
立憲民主党の杉尾秀哉参院議員は、本誌10月24日発売号で、河野氏をこう評していた。
「なにより質疑をしていて感じるのは、少数派への配慮に欠ける点。自分が気に食わないことがあると、すぐ態度で示す。面倒くさい相手は切り捨てて説得する気がなく、まるで唯我独尊。政治家が家業で、同質性の高い環境で育ってきたからでしょう」
10月31日、参院予算委員会で杉尾氏がマイナ保険証について河野氏に質疑をおこなう場面があった。
杉尾氏によると、2022年6月の政府の方針では、2024年度中にマイナ保険証と紙の保険証の選択制を目指し、その後、保険証の原則廃止を目指す二段階方式が取られていた。
だが、同年9月に河野氏がデジタル相に就任すると方針が一変。10月13日に、総務相、厚労相、デジタル相の3閣僚が岸田文雄首相と官邸で協議。同日に河野氏が記者会見で「2024年秋に健康保険証の廃止を目指す」を表明した。
「なぜ選択制を導入しなかったのか?」と杉尾氏に問われ、河野氏はこう答弁した。
「マイナンバーカードを保険証と紐づけし利用する人に、保険証を発行する必要はなくなるので、コストが下がっていく。選択制ではなかなかコストが下がらない」
杉尾氏によると2022年10月28日に、2024年秋の保険証廃止の方針を閣議決定。その後、初めて厚労省の医療保険部会で専門家の議論を聞くことになったという。その点を問われた河野氏はこう答弁した。
「3閣僚で進むべき方向性を決めたうえで、たどりつくためになにをやらなければいけないか、どういう課題があるのか、専門家に議論してもらうのは当然のこと。
専門家といえども、進むべき方向がわからなければ議論が拡散する。進むべき大枠の方向を決めたうえで、なにが必要か議論してもらった」
杉尾氏はさらに、河野氏にこう問いただした。
「専門家の意見も聞かず、政治の都合で勝手に決めて、あとは専門家になんとかしろと。こんなデタラメな行政があるか。いまマイナ保険証で起きているトラブルは河野大臣が元凶。その意識はあるのか? その反省なくして、いまのトラブルは改善できないのでは?」
これに対し、河野氏はこう答弁した。
「マイナンバーカードの保険証としての利便性が周知されるにしたがって、利用率は上がっていくと思うので心配していない」
河野氏のマイナ保険証をめぐる答弁に対しても、SNSでは批判的な声が上がっている。
《マイナ保険証の失敗を認めようともせず、木で鼻を括ったような答弁で開き直る無能ぶり》
《河野太郎の答弁が劣悪すぎる。マイナ保険証の何が駄目なのか? 全く頭に入ってないポンコツぶり 専門家をスルーし問題が出たら専門家に丸投げ》
《今日の河野太郎の答弁で、さらにマイナ保険証の利用率は下がるだろう》
河野氏が語るように、マイナ保険証の利用率は上がっていくのだろうか? 利用率4.5%と低調なまま、2024年秋に紙の保険証が廃止されれば、混乱は避けられない。
 
  
 
 

 

●「年収の壁」助成、企業持ち出しで活用拡大は見通せず 11/4
配偶者に扶養されるパート従業員らの年収が一定額を超えると社会保険料の負担が生じて手取りが減る「年収の壁」問題で、従業員の手取り減少対策に取り組んだ企業に対し、1人当たり最大50万円を助成する制度の申請受け付けが始まった。政府は、収入減を避けるために就業調整をする人を減らし、人手不足解消につなげたい考えだ。ただ、助成があっても労使折半の社会保険料の全額は賄えない。企業にとって経済的なメリットは少なく、活用が拡大するかは見通せない。
厚生労働省が10月20日から申請受け付けを開始したのは、従業員101人以上の企業で週20時間以上働く人が、年収106万円を超えると厚生年金などに新たに加入する必要がある「106万円の壁」への対応策だ。厚労省は「106万円の壁」を意識して就業調整をする可能性がある層は約60万人に上ると推計している。
保険料の相当額を手当として支給したり、賃上げをしたりして従業員らの手取りが減らないように取り組む企業に対し、従業員1人当たり最大50万円を助成することが対応策の柱だ。財源は企業が負担する雇用保険料で、令和7年度末までの暫定措置となる。
厚労省によると、時給1016円で週20時間働き、年収106万円となった従業員の場合、約16万円の保険料が発生する。この約16万円は天引きされ、手取りは約90万円に減る。この際、企業が手当として約16万円を穴埋めすれば、企業に20万円が助成される。
2年目も同様の対応をすれば、企業に再び20万円が支給される。3年目は時給の増額を後押しする。時給増により年収が125万円を超えるようにすれば、保険料天引き後の手取りは106万円を上回る。こうした賃上げを行った企業に対し、10万円が助成される。
ただ、保険料は労使折半で負担する仕組みのため、先の事例の2年間は、企業側にも年約16万円の保険料負担が生じる。従業員らの負担分の約16万円も手当として企業側が支給するため、助成があっても企業の持ち出しが生じる。
厚労省が先月30日に開設した働く人や企業からの相談をワンストップで受け付けるコールセンターには、2日間で計1500件超の問い合わせがあった。武見敬三厚労相は今月1日の参院予算委員会で「大変大きな反響があった」と手応えを語ったが、対策に取り組む企業に負担が生じるため、「賃上げできる体力がある企業しか助成制度を使わないのではないか」(厚労省関係者)との臆測が早くも出ている。
●経済を看板に掲げる岸田政権のおカネに対する考え方が根本的に間違い 11/4
場当たり的なバラマキ政策を羅列した岸田政権の経済対策は、根本的に間違っている。
岸田政権は11月2日、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を閣議決定した。9月末に発表した物価高対策や持続的な賃上げなど「経済対策の5本柱」から成り、総額で17兆円にのぼる大型な景気・貧困対策パッケージだ。
その中の目玉政策として、1回キリの減税と補助金の給付と並んで物価高を緩和するためにガソリン、電気・ガス代補助金の2024年4月末までの延長が含まれている。しかし、元ゴールドマン・サックス金利トレーダーの田内学氏は、補助金自体はその場しのぎで根本問題の解決にはならないという。
ここで言う根本問題とは、日本が一次エネルギー自給率12%、食料自給率38%という先進国中最低水準にとどまったままでは、何をやってもお金が海外に流出してしまうことだ。ガソリンにしても小麦などの食料にしても、補助金そのものは政府から国民に資産を移す政策となるので、それが有効に使われれば日本の富が増えることに役立つ場合もある。しかし、特にガソリンや食料の自給率が低いままでは、いくら補助金を出しても日本の国富が海外に流失するばかりだ。困っている人を一時的に助けることは必要だが、根本原因を放置したままでは問題は解決しない。
もし自給率を簡単に上げることができないのなら、日本はその分だけ、いやそれ以上に、海外に買ってもらえるような付加価値の高い製品を作って輸出しなければ、国富の流出は止まらない。日本の国富が流出し、日本がどんどん貧乏になっているから、円の価値は下がり続け、益々原材料の値段が上がるという悪循環が続いているのではないか。金利政策云々はあくまでその反映であって、それが円安の根本原因と考えるのは手段と結果を取り違えている。
賃上げ政策もピントがずれている。物価が上がれば本来は賃金も上がるはずだ。しかし、日本では賃金が一向に上がらない。今回の経済対策の中にも賃上げ企業への優遇税制などが盛り込まれているが、そもそも民間企業の賃金は政府が命じれば上がるものではない。資源輸入大国の日本企業が海外で求められる付加価値の高い製品を作れなくなっていることが問題なのだ。
岸田政権は今年6月に閣議決定された骨太方針2023の中で「2,000兆円の家計金融資産を開放し、持続的成長に貢献する資産運用立国を実現する」などと言い始めた。そしてその一環として、金融経済教育推進機構なる認可法人を作って国家戦略として投資家になるための金融教育を進めるそうだ。田内氏はこの政策もとんでもなく的外れだと語る。そもそも投資というのは、自分以外の人におカネを渡して稼いで貰う行為だ。もう働けなくなった高齢者が投資に頼るのならいざ知らず、どうすれば自分たちに投資してもらえるかを考えるべき日本の若者たちがアメリカの株に投資して儲ける方法を学んでいるようでは、日本の未来は暗い。実際、今日本では自分たちの力で社会問題を解決していこうという気概さえ失われているようだ。日本財団による18歳の意識調査では、日本で自分の行動で国や社会を変えられると思っている若者の割合が、インドや中国の3分の1、アメリカやイギリスと比べても半分以下にとどまっている。問題は海外への投資での儲け方を教えることではなく、日本人が自分たちの国が直面する諸課題への有効な手立てを自分たちで考え、それを実現するための投資を国内外から引き込めるようにならなければならないのではないか。
田内氏は新著『きみのお金は誰のため』の中で、「お金自体には価値がない」、「お金で解決できる問題はない」、「みんなでお金を貯めても意味がない」の3命題を提示した上で、おカネが人々をつないだり、社会を豊かにするための有効なツールとなる方法を考えることの重要性を強調する。実際のところお金自体は紙きれにすぎず、それを受け取って働く人がいなければ価値はない。お金は人に働いてもらうための道具であるという基本中の基本を踏まえた上で、今日本の円の価値が大きく下がっていることの意味をよく考える必要があるのではないか。円安の本質的な意味は、日本に働いてもらっても良いものが手に入らないと世界が考えているということだ。日本が海外に買ってもらえるようなモノを作る努力と工夫を今すぐにでも始めなければ、日本の国際的な地位の低下は今後も止まらないだろうと田内氏は言う。
お金の本質は何か、岸田政権の経済対策に欠けている視点はどのようなものか、今、日本が本当に考えなければならないことは何かなどについて、金融教育家で元ゴールドマン・サックス金利トレーダーの田内学氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
●内閣支持率、ついに政党支持率を下回る…自民党“岩盤支持層”も見放した 11/4
マスコミ各社の最新世論調査で、岸田文雄内閣の支持率が崩壊状態だ。
直近発表のデータでいえば、日本経済新聞社とテレビ東京が10月27〜29日におこなった調査での内閣支持率は、9月の調査から9ポイント低下して、33%だった。これは2021年10月の政権発足以来最低で、2012年に自民党が政権復帰してからでもっとも低い。
ANNが10月28〜29日におこなった調査での内閣支持率も、前回9月の調査から3.8ポイント低い、26.9%だった。これも、政権発足以降、最低である。
この結果に、中堅自民党議員は「岸田首相が自信を持って打ち出した所得税減税も大不評でしたから、支持率はこの先どこまで落ちるのか。10%台もありうるのではないでしょうか」と表情をくもらせる。数日後には経済対策発表後の調査結果が出てくるので、「支持率は奈落の底を見るかもしれない」(政治担当記者)という悲惨な結果が予想されている。
こうしたなか、永田町で注目されているのが「内閣支持率と政党支持率の逆転」だ。
「自民党支持者が内閣を支持する理由は『支持する政党の首相だから』という、シンプルなものです。つまり、岸田首相じゃなくても支持する“岩盤支持層”です。そのため、もし内閣支持率が政党支持率を下回ったら、それは『岩盤支持層からも見放された』ということを意味します。日経・テレビ東京の調査では、自民党支持率が32%。かろうじて内閣支持率が上回っていました。しかし、ANNの調査では自民党の支持率が38.3%でしたから、内閣の支持率がすでに大幅に下回っているのです。間もなく出る他社の結果でも、逆転は起きると見ています」(前出・政治担当記者)
NHKの過去の世論調査データを調べてみると、岸田首相と同じように「減税政策」で国民から批判を浴びた橋本龍太郎内閣が退陣した1998年6月は、内閣支持率が24%に対して自民党支持率は25.8%。森喜朗内閣が退陣した2001年4月も、内閣支持率はわずか7%に対して自民党支持率は21.4%だった。
永田町には「内閣支持率と政党支持率を足して50を下回ると危険水域」という、青木幹雄元参院議員が提唱した「青木の法則」もあるが、この「内閣支持率と政党支持率の逆転」も気になるところだ。
●高市早苗氏「撤去」「放置できない」中国の海上ブイ設置問題、X投稿 11/4
高市早苗経済安保担当相が、中国の暴挙≠ノ強い姿勢を示している。沖縄県・尖閣諸島近くの日本の排他的経済水域(EEZ)内に、中国が無断で「海上ブイ」を設置している問題で、高市氏は「撤去すべき」「放置できない」「日本が撤去しても違法ではないと思うが」などと発信しているのだ。岸田文雄政権は中国に抗議して「即時撤去」を申し入れたが、「遺憾砲」と受け取ったのか、習近平政権は無視している。識者からは、高市氏の姿勢を評価する声が上がっている。
「(中国のブイ設置は)『国連海洋法条約』違反ですが、同条約には『撤去』に関する規定がなく、今も外務省が中国に撤去を要請中。規定がないなら日本が撤去しても違法ではないと思うが…」
高市氏は3日夕、自身のX(旧ツイッター)でこう言及した=Xの投稿参照。10月28日のユーチューブ番組でも、高市氏は「本来なら(日本が)撤去すべき」「放置はできない」と決然とした姿勢を示していた。
中国は今年7月、尖閣諸島・魚釣島の北西約80キロ、日本のEEZ内に勝手にブイを設置した。国連海洋法条約では、EEZ沿岸国の同意がなければ、ブイなどの構造物設置はおろか、海洋調査を行うことも認められていない。周辺海域は民間船舶の往来も多く、事故など不測の事態が生じかねない。
開会中の臨時国会でも、この問題は議論されている。
日本維新の会の東徹氏は1日の参院予算委員会で、「中国が撤去しない場合、日本独自で撤去すべきだ」と指摘した。
これに対し、上川陽子外相は「国連海洋法条約に(撤去の)明文規定がない」「個別具体的な状況に応じた検討が必要で、可否を一概に答えるのは困難」などと慎重姿勢を崩さなかった。
政府関係者は「(中国の習政権に)抗議は通用しない。尖閣周辺で領海侵入を繰り返し、管轄権を既成事実化しようとしている。中国国内では日本人を相次いで拘束するなど主権侵害を繰り返している。日本が強く要請しても、改善の兆しはないのが現状だ」と語った。
第11管区海上保安本部によると、4日午前2時25分ごろ、尖閣諸島周辺の領海に中国海警局の船2隻が侵入した。
こうしたなか、高市氏の発信をどう見るか。
福井県立大学の島田洋一名誉教授は「高市氏の主張は至極当然。主権侵害に厳格に対応するのは国際社会の常識だが、日本はこの常識から外れている。習政権は独裁を強め、国内の不満をかわそうと、日本への外交圧力に転嫁している。違法なブイ設置を看過すれば、中国に対し、日本は『主権侵害を甘受する』と誤ったメッセージを与える。高市氏は、保守政治家として正念場だ。閣内でも信念を貫き、行動で示してほしい」と強調した。
●「もはや悲劇だ」 総額17兆円「総合経済対策」...悪評に頭抱える異常事態 11/4
岸田文雄政権は2023年11月2日、総額17兆円台前半の総合経済対策を決定した。
首相は同日夕に記者会見に臨み、賃上げを伴う経済の好循環を実現し、デフレ状態からの脱却を確実にすると強調。「この政権は何よりも物価高対策、経済対策を重視している」と胸を張ってみせた。
だが、あまりの評判の悪さに、政府・与党内でもため息ばかりが聞こえる異常事態になっている。
減税策ばかりに話題が集中、それ以外の対策の中身が注目されない コロナ明け、歳出構造を平時に戻していくはずだったのに...
「懸念されていたことが現実になってしまった」
こう吐き捨てたのは霞が関の現役官僚だ。
総合経済対策は「物価高対策」「持続的な賃上げ」「供給力強化・投資促進」「人口減少対策」「安全・安心対策」の5本柱を掲げる。具体的に、ガソリンや電気料金の価格抑制策の継続や、賃上げを促す企業税制、半導体など重要産業の支援なども盛り込んだ。
しかし記者会見では、所得税などの減税策の是非に質問が集中。岸田氏はその「釈明」に多くの時間を費やした。
減税策ばかりに話題が集中し、それ以外の対策の中身にはほとんど注目が集まらない――これが、先の現役官僚が語る「懸念」だ。
実は、今回の経済対策は歴代政権の中でも、かなりの「大型」となっている。秋に経済対策を打ち出すのはもはや政府にとって「恒例行事」と言える。臨時国会で対策の裏付けとなる補正予算を成立させるまでがセットになっている。
思えば、新型コロナウイルス禍前まで、補正予算の規模は4兆円前後がせいぜいだった。
しかし、コロナの「5類移行」――つまり、普通の感染症圧内になって初の補正予算となった今回の対策に伴う補正規模は、一般会計分だけで13.1兆円にのぼっている。
「大規模な補正予算を講じてきたコロナ禍への対応が一段落した以上、歳出構造を平時に戻していく方針は堅持する」
岸田首相は2日の会見でこう明言したが、これが「真っ赤な嘘」であることは補正規模を見ても明らかだ。
しかも13.1兆円には所得税、住民税の減税分は含まれていない。先進国で最悪の財政事情を抱える日本にとって、まさに将来をかけた大盤振る舞いと言っていい。
減税策を含めた経済対策に批判一色の報道 支持率回復の思惑から大きく外れ...
経済対策が大型化した背景には、支持率急落にさらされる官邸の焦りがある。反転攻勢のきっかけが見いだせない中、官邸が経済対策にすがったのだった。
毎年の恒例行事化してはいるが、足元の課題を解決する「カンフル剤」を示すことは政権にとってプラスに働く。
「とにかく大型に」という官邸の要求に応じようと、霞が関は駆けずりまわった。各省庁が24年度当初予算用に準備していた事業の一部を前倒しし、「宇宙戦略基金」など基金の増設などで対策規模を「水増し」し続けた。
しかし、結果は当初の思惑から大きく外れた。メディアの報道は減税策を含めた経済対策の批判一色に染まり、野党だけでなく、与党内からも不満が渦巻いている。
「計算違いどころの話ではない。もはや悲劇だ」
政権に近い関係者からは、こんな嘆き節も聞こえてくる。
臨時国会では来週以降、経済対策に関する議論がさらに加熱するとみられる。
「経済の岸田」のイメージづくりにものの見事に失敗した岸田政権にとって、イバラの道となりそうだ。
●日銀、利上げ容認 険しき金融正常化の道 11/4
今週の火曜日10月31日、日本銀行は、金融政策決定会合で長期金利の事実上の上限だった1%を「めど」とし、一定程度超えることを容認すると決めました。同日付の日経ビジネス電子版では、「税収上振れで所得減税 政権は金利上昇の恐ろしさを認識しているのか」が関心を集めています。本メルマガでは、改めて日銀の動きを日経ビジネスの記事で振り返ってみました。
日銀が金融正常化に向けた動きを進める背景には、円安と物価高があります。7月末に長期金利の上限を1%まで上げたことを受けて、8月15日付の「ビッグマック価格で見れば1ドル81円、為替相場はとんでもない円安」という記事で、相対的な日本の低金利がいびつな円相場を招いていることを示唆しています。
一方、8月17日付の「金利引き上げ前夜 金融正常化へ政治との意思疎通を」では、国民経済に直結する金利については、永田町との意思疎通が欠かせないことを指摘しています。
実際、10月17日付の「岸田政権、還元強調も負担増論議に影 経済対策10月中に取りまとめ」では、税収増を背景に国民への還元をうたう政府の姿勢を紹介しています。でも、金利が上がれば、その負担は国家財政を直撃します。
金融正常化へ覚悟を固めつつあるようにも見える日銀ですが、日本経済を取り巻く国内外の情勢は、決して楽観できるものではなさそうです。日本経済再生への転換軸となり得るか、しばらくは目が離せません。 
 
 
 
 
  
 
 
 

 

 
 
 
   

 

 
  
  
 

 

  
  
 
  
 

 



2023/10

国会 代表質問
衆院予算委員会
参院予算委員会
岸田政権