岸田内閣の支持率 過去最低更新中

岸田内閣の支持率 過去最低に 
政府・与党内「危険水域」

政権・政策  説明なし
民に伝わらない 理解されない  期待されない 
 ないないづくし

民をどこに連れて行くのですか ・・・ 

 


 
 
 11/5

 

●自民党県連が政治資金パーティ― 茂木幹事長 「岸田政権の支援」呼びかけ 11/5
自民党広島県連のパーティーに出席した茂木敏充幹事長は経済対策など「大きな課題を解決していくためには政治の安定が必要だ」として岸田政権への支援を呼びかけました。
自民党・茂木敏充幹事長「安全保障問題・少子化対策・経済を30年ぶりに新しい体質に変えていく・こういった大きな課題を解決していくためにはやはり政治の安定がなければできない」
自民党の茂木幹事長はこのように述べ、政府が閣議決定した経済対策を進め、「減税しなくても賃金が上がっていくような好循環に変えていきたい」と抱負を語りました。
自民党広島県連が主催する政治資金パーティーは5年ぶりに通常開催となり、県選出の国会議員を始め、茂木幹事長のほか、岸田政権を支える閣僚も出席し、地元の政財界からおよそ1200人が参加しました。
●橋下徹氏「岸田政権残念」とバッサリ 現役世代への強いメッセージ求める 11/5
大阪府知事や大阪市長を務めた弁護士の橋下徹氏(54)が5日、フジテレビ系「日曜報道 ザ・プライム」に出演し「物価高対策は賛成なんですけれども、岸田政権残念なのが、きちんとした物語、論理、ロジックができないと思う」と岸田文雄首相の推進する経済対策について真っ向から批判した。
国民全体にかかる家計負担について高額所得者も含んだ定額減税に対して、所得制限の是非について論議されているが、橋本氏は「経済の総論から言うと、物価が上がって物価高対策なんだ、と言っているのに、そこで景気対策的なことをやったら」と手振りで右上がりの上昇グラフをつくりながら「そらまた物価がどんどん上がっていくんじゃないですか?」と話した。
同じく生出演した新藤義孝経済再生相(65)は「そこは私も非常に注意していて、前提として、そういうことを言う人は『これはインフレの政策ですか?、デフレの政策ですか?』という。それはポイントだけの理論なんですよ」と話し「賃金が構造的に上がってくるよ、という世の中にしないと、いつまでたっても日本のGDPは上がらないし成長もしない。低成長のままとりあえず現状維持では将来がない」と説明した。
対して橋下氏は「政策をどうとるかは政治家の判断です。一国民としては、この状況で現役世代の可処分所得をとにかくあげて行くんだというメッセージと政策をしてもらいたい」と岸田政権の国民に対する強いリーダーシップの必要性を強調した。
●元NHK岩田明子氏「1強をはき違えている」根回しなし岸田首相 11/5
元NHK解説委員でジャーナリストの岩田明子氏は4日夜、ABEMAの「NewsBAR橋下」に生出演し、岸田文雄首相の政治姿勢に疑問を呈した。政策を決める際の議論や周囲への根回しが見られないとして「サプライズ好きみたいになっている」「『1強』というものをはき違えている」と解説した。
岩田氏は、ANN(テレビ朝日系)の世論調査で首相が打ち出した所得税や住民税の4万円の定額減税について56%が「評価しない」と答えたことについて、「減税と聞いたら国民は喜ぶだろうと思っているところが見透かされたのだと思う。そんなことよりも今、国がどうなっていて、自分は長期的にこういうことをやりたいのかを教えてくださいよ、減税、減税と言っていないでと。そういう数字だと思う」と指摘。大阪府知事や大阪市長を務めた弁護士の橋下徹氏に「世論の状況をじっと見て、そこに乗っかる政治家の感じがしたが、こことなると頑固なんですかね」と問われると「最初は聞く力からスタートしたが、だんだん聞くというところがなくなっていったような気がする」と指摘。防衛費増額や「異次元の少子化対策」などの肝いり政策を決める際も「財源をどうするかとか、トマホークを買いますよというところも、ディスカッションや説明をするプロセスがあまり見られなかった。総理のトップダウンで指導力を発揮していますというものが、増えてきた感じ」と話した。
「大きな議論が全くなくて、サプライズ好きみたいな感じになっている」とも指摘。その上で「(岸田首相は)1強というものをはき違えている」と指摘。自身が食い込んだ安倍晋三元首相の手法との違いに言及し「安倍さんが1強になったのは、根回しを徹底して党が納得したから『官邸の指示通りで』となっていた。そのプロセスを省いて、総理がいきなりトップダウンで落とすことが1強ではない」とも訴えた。
岸田首相が就任直後、大方の予想を覆す形で衆院解散・総選挙の日程を前倒しして行い勝利したことや、ウクライナ電撃訪問に触れ「これでいいんだと、サプライズ好きになってしまっている。驚くのは1回か2回でいいんですよ」とピシャリ。バーテンダー役のサバンナ高橋茂雄は「困ったもんやな。急に驚かすのにはめられても…」と苦笑いで応じていた。
●「100年に1度」の錯覚が生む財政赤字の膨張 11/5
一昨年末、NHK衛星放送が1982年の特集番組「85歳の執念」を再放送していた。第2次臨時調査会の土光敏夫会長の公私に迫ったドキュメンタリーだ。番組は「国の借金、国債発行残高82兆円。国家財政は今、破産の危機に瀕している」とのナレーションで始まる。それから40年余り。土光氏の執念もむなしく、国債発行残高は今や1,000兆円を超える。なぜ、こうなったのか──。
底流には、高齢人口の増加を背景とする社会保障費の増大がある。しかし、それだけではない。図表が示すのは「階段状に発散する」国債発行の姿だ。
日本では「100年に1度」と呼ばれる危機が起きる都度、大量の国債が発行され、収束後も十分に圧縮されないまま、次の危機を迎えてきた。この「100年に1度の危機」が、近年は10年に1度に満たない頻度で起きている。2008〜09年のリーマンショックは、当時の理論モデル上、100年に1度しか起きないリスクが顕在化したものといわれた。11年の東日本大震災は、国内観測史上、最大規模の地震だった。20年からの新型コロナは、世界の死者数が、感染症としてスペイン風邪以来、約100年ぶりといえる水準に達した。
個々の事象は100年に1度であっても、社会全体で見れば、しばしば起きる事象の一つだ。ならば、その理解と覚悟をもって、あらかじめ危機の想定を広げ、被害と支出を最小化する準備が必要である。そうは言っても、すべてのリスクと被害を予測するのは難しいため、まずは危機時の財政出動について、将来の国債償還の道筋を明確にした上で、是非を判断するのが肝心である。危機時にこそ、場当たり的な対応とならないよう、冷静な判断が求められる。それが政治の仕事である。
しかし現実は、「危機」という名のパニックの下、償還財源を問うことなく巨額の国債が発行されてきた。こうなると、収束後に財源議論を蒸し返すのは難しい。選挙が意識される政治の世界では、いったん上った階段を下りるのは至難の業だ。
今年度の新規国債発行額(当初予算)は10年代後半並みの約36兆円とされ、それ以上の削減は行われなかった。さらに今回の臨時国会で、大規模な経済対策が取りまとめられる見込みである。政府は税収増の一部を「国民に還元する」としており、人々の関心はもっぱら還元の方法に向かう。税収増を国債発行の減額に充てる考えは、ほとんど顧みられない。岸田文雄政権が来年度予算の目玉と位置付ける「異次元の少子化対策」も、財源議論は始まったばかりで心もとない。
このままでは、新型コロナという「危機」を経て、国債発行は次の階段を上ることになりかねない。「財政規律」は、すでに過去の言葉となってしまったのだろうか。
 
 
 11/6

 

●自民・梶山幹事長代行「経済対策の内容、国民に伝わっていない」 11/6
(報道各社の世論調査で、岸田政権の内閣支持率が過去最低を更新していることについて)世論調査については常に真摯(しんし)に受け止めなければならない。新たな総合経済対策についても、JNNの世論調査では「期待しない」が72%となっている。所得減税を含む経済対策の内容が十分に国民に伝わっていないことが、要因の一つだと思っている。
与党で連携し、政府とも提言を通じて議論を深めてきたが、世の中に対するアピールというか説明がまだまだ不足している。補正予算案の提出にあわせ、皆さんが実感できるような説明をしていかなければならない。
この経済対策は、経済構造の転換によって投資を拡大し、物価上昇を上回る賃上げを実現していくために必要だ。定額減税は物価高対策よりも、経済の好循環を実現する様々な施策の一つで、そうした点も国民に丁寧に説明していくことが必要だと思う。
自民党の支持率も、急上昇するような特効薬はない。常に国民政党としての原点を忘れることなく、国民の声に寄り添いながら、目の前の課題に一つずつ真摯に取り組んでいく。
●岸田内閣の支持率、JNN世論調査で過去最低に 政府・与党内「危険水域」 11/6
岸田内閣の支持率が30%を切ったことがJNNの世論調査でわかりました。調査の方法は異なりますが、2012年に自民党が政権復帰して以降、最も低い支持率となりました。
岸田内閣を支持できるという人は、29.1%で総理就任後、過去最低となりました。前回の調査から10.5ポイント下落していて、これは過去最大の下げ幅です。一方、支持できないという人は、10.6ポイント上昇し、68.4%で過去最高です。
政府が先週まとめた経済対策について「期待する」と答えた人は18%、「期待しない」と答えた人は72%でした。
経済対策には所得税と住民税、あわせて4万円の定額減税などを盛り込みましたが、この方針を「評価する」が26%、「評価しない」が64%でした。
また、「デフレに後戻りしないための一時的な措置」として、何が良いか聞いたところ、「消費税の減税」が最も多く41%でした。
各党の支持率はご覧のとおりです。
【政党支持率】 自民 26.2%(5.4↓) 立憲 5.1%(0.0→) 維新 5.2%(0.3↓)  公明 2.5%(0.1↑) 国民 1.4%(0.0→)  共産 2.9%(0.2↑)  れいわ 2.3%(1.1↑) 社民 0.3%(0.0→) 女子 0.1%(0.1↑)  参政 0.6%(0.1↓) その他 0.9%(0.4↓) 支持なし 49.2%(3.5↑)
松野博一官房長官「世論調査の数字に一喜一憂はしませんが、世論調査にあらわれた国民の皆様の声を真摯に受け止め、政府としての対応に生かしていくことが重要であると考えています」
調査方法は異なるものの、2012年の政権交代以降、最も低い支持率を記録したことに、政府・与党内では「危険水域だ」などと動揺が広がっています。
自民党議員からは「街頭でも『選挙目当ての減税か』と言われる」「岸田総理の説明力のなさに尽きる」などと、政権が掲げる所得税などの減税方針が一因だとする声が多く聞かれました。
●「場当たり対応、国民見透かす」 元側近・三ツ矢氏、岸田首相に苦言 11/6
自民党岸田派(宏池会)で事務総長代行を務めるなど、就任前の岸田文雄首相を支えた三ツ矢憲生元衆院議員は5日までに時事通信のインタビューに応じ、岸田政権について「表面的、場当たり主義だと国民に見透かされている。小手先のパフォーマンスを続ければ日本が行き詰まるだろう」と苦言を呈した。
主なやりとりは次の通り。
――政権発足から2年。どうみるか。
2021年の自民党総裁選で首相が言っていた「新しい資本主義」は当時から派内でも実体が不明だった。首相には漠としたアイデアがあるのだろうと思っていたが、結局分からないまま言葉だけ先行し、金融所得課税など当初掲げていた公約もいつの間にか消えた。
一方で、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や防衛費増額など、日本の従来の歩みの転換を閣議決定だけで決めるような荒っぽいこともしている。
――24年度の防衛増税を先送りする。
5年間で43兆円の防衛費を確保すると言っているが、具体的にどう財源を用意するかは何も決まっていない。防衛費は国民の生命財産に関わり、税で恒久財源を用意すべきだ。首相が自分自身で43兆円が必要だと判断したなら、その中身を説明し、国民に財源確保の理解を求め、説得しないといけない。
自民党は09年に野党へ転落した際、旧民主党政権の「子ども手当」について、「財源の裏付けもない選挙買収だ」と非難した。あれはどの口が言ったのかという気がする。
――異次元の少子化対策も財源が見えない。
中身を見れば「異次元」でも何でもない。経済的理由で結婚できない人が増え、子どもが減る根本原因を探らないといけない。非正規社員の若者が待遇面などで不安定な立場に置かれる現状を変えるため、労働法制の見直しに踏み込むべきだ。
――所得税減税の意図は。
支持率のためだろう。次期衆院選対策も考えているのだろうが、見え見えだ。経済対策として税制を考えるなら、企業の内部留保や個人金融資産の活用を真剣に考えるべきだ。首相がラッキーなのは党内に強力なライバルがいないことだ。野党もばらばらで、政権が低空飛行で続いていく可能性もある。しかし、国民にとっては不幸だろう。
首相は就任前からよく「自分は現実主義者だ」と言っていたが、実体は表面的な場当たり主義だったのではないか。それが国民に見透かされているように思える。小手先のパフォーマンスばかりでは日本が行き詰まる。本当に首相としてやりたいことがあるなら、真剣に向き合わなければだめだ。
●政府の経済対策・安心感にはつながらない 11/6
政府は17兆円規模の新たな経済対策を閣議決定した。定額減税と現金給付を組み合わせて、長引く物価高による国民の家計負担を緩和するのが柱の一つである。
減税は、扶養家族を含めて1人当たり所得税3万円と住民税1万円の計4万円を、本来の納税額から引く。景気回復に伴う税収増の「還元」という触れ込みだ。所得税と住民税の非課税世帯には、7万円を支給する。これらの予算規模は計5兆円に上る。
確かに、目先の負担感は多少和らぐかもしれない。しかし、視線をもう少し先に向けて考えたい。一時的な「ばらまき」が、果たして消費を喚起し、経済を好循環させる呼び水になるだろうか。
賃上げは物価上昇に追いつかず、世界情勢の不安定化で原料高などによるインフレ進行の懸念がぬぐえない。近い将来には防衛増税も控える。先行きへの安心感を欠いたままで、今回のような大盤振る舞いが効果を上げるかは疑わしい。
岸田首相がこだわった減税には、自民党内でも異論が噴出した。国民から「選挙対策」との批判が出ているのも当然だろう。物価対策は、困窮している人の支援に絞って行うべきである。
ガソリンや電気・都市ガス代を抑える補助金の延長も盛り込まれた。今年末で終了予定だったが、来春まで継続する。
光熱費の一律補助は、富裕層ほど恩恵を受ける傾向があり、国が取り組む脱炭素にも逆行する。化石燃料に対する補助とも言え、産業構造の転換を阻害する要因にもなろう。政府は早急に「出口」を示す必要がある。
ほかには、賃上げした中小企業への税制優遇や半導体の生産支援、宇宙分野の技術開発に取り組む企業や大学を後押しする基金の新設などがメニューに並ぶ。
経済対策の財源の多くは、借金である国債の発行で賄う方針だ。首相は先週の会見で「財政支出を平時のレベルに戻す方針は堅持する」と述べたが、説得力に欠ける。巨額事業を盛り込んだ結果、対策を裏付ける補正予算案の計上額は、新型コロナウイルス禍前の約3倍に膨らんだ。
借金体質の悪化は、将来世代に重いつけを回すことにもなりかねない。岸田政権は「異次元の少子化対策」を看板政策に掲げる。税収の増加分は財政健全化のため国債返還に回し、将来世代の負担を少しでも軽くすることに使うべきではないか。
財政立て直しを先送りし、「増税隠し」にも映る一連の対策が、国民の将来不安を深めている。その点を首相は自覚するべきだ。 
●身内も不支持の岸田内閣「自民より不人気」 「政権末期の症状」慢性化 11/6
岸田文雄内閣の支持率が共同通信の11月調査で28・3%(前月比4ポイント減)となとなり、発足以来最低を更新した。3割を切るのは直後の総選挙で自民党が下野した2009年の麻生太郎内閣以来という低水準だ。所得税減税などを盛り込み大々的に打ち出した経済対策は奏功せず、自民の政党支持率より内閣支持率が低い「政権末期の症状」(自民重鎮)が、人事ミスも絡んで慢性化しつつある。
10月にさかのぼるが、自民の支持率(34・7%)が「内閣のアレ(支持率=32・3%)」(自民重鎮)を逆転した。自民関係者によると党内には「論評禁止」の自粛ムードが漂ったという。「『党総裁が党支持者からも相手にされていない』との評判がはびこるのが恐ろしかったから」(自民幹部)とされる。
そして11月の自民支持率は34・1%で前月と横ばい。だが内閣の「アレ」は続落し、差がさらに開いた。「自分の党にすら応援されない総理大臣ってありなのか?」(経済官庁官僚)。共同通信の支持率が報じられた週明けの6日、永田町や霞が関には首相の存在意義をも問う声が広がった。
低迷の背景には人事のミスもある。関係者の話を総合すると、副大臣・政務官人事の際、法務副大臣は無派閥の星野剛士氏(衆院比例南関東)を内閣府副大臣から横滑りさせることで固まっていた。ところが星野氏が谷垣禎一元総裁のグループに顔を出していたことを理由に同グループ関係者が「この副大臣は無派閥ではなく自分たちの枠」と主張。発表前夜段階でグループ主要メンバーの柿沢未途氏との差し替えを持ち出し官邸は受け入れたという。
柿沢氏は東京都江東区長選を巡るトラブルの渦中。自民政調会長でもある萩生田光一都連会長は柿沢氏の政務三役起用構想に対し、区長選後の混乱を懸念し起用見送りを促した。萩生田氏は「それを無視され人事をいじられたことに怒り心頭」(側近)という。政府関係者は「単に支持率が低いという分析で済まされない。とうとう身内からも見捨てられ始めた」と危機感を募らす。
政務三役を巡っては柿沢氏に先立ち、文部科学政務官だった山田太郎氏が女性問題で辞任。共同通信の調査では両件について72・7%が「岸田首相に任命責任がある」と指摘しており、不評の経済政策同様に支持率を押し下げている。 
●岸田総理「厳粛に受け止め」 性同一性障害特例法 法改正の兆しか? 11/6
戸籍上の性別を変更する際に生殖能力をなくす手術を必要としている今の法律の規定について、最高裁が初めて「違憲」とする判断を示しましたが、岸田総理ら政権幹部が相次いで適切に対応する考えを示しました。
岸田総理「政府としても様々なご意見を踏まえ、与党の皆様とも十分にご相談をしながら適切に対応してまいる所存です」
総理官邸で開かれた政府・与党連絡会議で、岸田総理は最高裁が戸籍上の性別を変更する際に生殖能力をなくす手術を必要としている今の法律の規定について「違憲」と判断したことを受け、「厳粛に受け止める必要がある」と述べました。その上で与党と相談し、適切に対応する考えを改めて強調しました。
公明党 山口代表「見直しに向け速やかな検討が必要だ」
また、公明党の山口代表も記者団に対し、速やかに法改正していくことが望ましいと述べました。
性同一性障害特例法を改正する場合、新たな要件を設けるのか、違憲とされた部分をなくすだけにするのか、今後議論となりそうです。 
●岸田内閣支持率28.3%と過去最低を更新… 11/6
《増税メガネ、お手盛りメガネ、学歴コンプレックスメガネ…。あだ名は何でもいいから、早く交代してください》《この支持率がどこまで下がれば本人は辞める決断をするのか。それを知りたい》
共同通信社が11月3〜5日に実施した全国電話世論調査で、岸田内閣の支持率が28.3%と過去最低を更新したことに対し、ネット上では悲鳴交じりの声が広がった。
同調査では、政府が“肝いり政策”として掲げる「経済対策」に盛り込んだ1人当たり計4万円の所得税、住民税の定額減税などの受け止めについても聞いているのだが、「評価しない」との声が62.5%にも達し、内閣の不支持率は56.7%で前回調査(10月14〜15日実施)から4.2ポイントも上がって過去最高となった。
「令和の所得倍増」「聞く力」などを掲げて自民党総裁となり、総理に就任したものの、所得倍増どころか、いまや実質賃金は17カ月連続で前年同月割れ。「聞く力」も財務官僚に対しては発揮するが、国民の悲鳴は“ノイズ扱い”で一顧だにしない。
岸田内閣が発足した当時と比べて「円ドル相場」は、この2年間で111円から150円に急落。異次元緩和のアベノミクスによる影響があるとはいえ、日本をどんどん「貧しい国」に沈没させているという自覚も危機感もない。
これでは国民の多くが岸田首相に対して「リーダー失格」と思うのも当然だろう。
《ロシアとウクライナの戦争、イスラエルのガザ地上戦突入。あらゆる局面が転換期を迎え、国難のこの時の日本の首相が最低、最悪のヘボ男。これはマズイだろ》
《岸田さんは、つまり、何がしたいのだろうか。国民の生命、財産を本気で守ることなのか。総理大臣にいることなのか。平時ならとにかく、国難時にこの人は使い物にならない》
《岸田ノートは何が書いてあるのか。国民の声とか言っていたが、やはりパラパラ漫画か?いい加減、国民生活も世界の情勢もきちんと見て》
国民の怒りのマグマが、次期衆院選で爆発するのは間違いなさそうだ。
●岸田内閣の支持率、過去最低更新に自民・梶山氏「世の中への説明不足」 11/6
最新のJNNの世論調査で、岸田内閣の支持率が29.1%と就任後最低となったことについて、自民党の梶山幹事長代行は「経済対策について世の中に対する説明が不足をしている」と指摘しました。
自民党 梶山幹事長代行「(経済対策について)世の中に対するアピール、説明がまだまだ不足をしている。補正予算が出てくることに合わせて、しっかりと皆さんが実感して受け取れるような説明をしていかなければならない」
梶山氏は、岸田政権発足後、内閣支持率が初めて30%を切った最新のJNNの世論調査をめぐり、総合経済対策について「期待しない」が72%となったことに触れ、「世の中に対する説明が足りていない」と指摘しました。
調査方法は異なるものの、内閣支持率が30%を切るのは、2012年に自民党が政権に復帰して以降初めてです。
内閣支持率が低迷する中、梶山氏は、政府与党が今国会での成立を目指す補正予算案をめぐる審議などを通じて、「国民に対する説明をしっかりしなければならない」と強調しました。
 
 
 11/7

 

●岸田首相「減税」で政権崩壊か 「何をやりたいのかわからない」迷走 11/7
「何をやりたいのかわからない」。岸田政権に、身内の自民党内からさえ、そんな声がもれる。内閣支持率も急落し、政権の崩壊の可能性も高まってきた。
岸田文雄政権の迷走が止まらない。内閣改造で女性閣僚を5人起用して「女性重視」をアピールしたと思ったら、副大臣・政務官人事では女性がゼロ(その後、文部科学政務官の交代で女性を起用)。防衛費の大幅増額などで増税が控えている中、税収増の「還元」で所得減税を実施するという。物価高で将来不安が募る国民の間では政権不信が高まる。岸田首相には、自民党内からさえ「何をやりたいのかわからない」という疑問が出ている。支持率低下が続く中で、強引に衆院の解散・総選挙に突入して敗退するのか、それとも政策が行き詰まって立ち枯れるのか。このままだと、政権の崩壊は時間の問題となってきた。
日経新聞が10月27〜29日に実施した世論調査結果が政府・自民党に衝撃を与えた。内閣支持率が9月に比べて9ポイント下落して33%、不支持率は8ポイント増えて59%になったのだ。岸田首相が政権浮揚策として打ち出した「所得減税」については「適切だと思わない」が65%に上った。減税を表明した直後の支持率急落という事態に直面し、政権は最大のピンチに追い込まれている。
失われた信頼感
岸田内閣の不支持率は増え続けているが、その内訳を見ると、「岸田首相が信頼できない」をあげる人が多くなっている。とりわけ、6月の通常国会会期末に衆院の解散・総選挙が取りざたされ、結局は見送られたころから、「信頼できない」という反応が目立つようになった。
国会質疑や記者会見で解散・総選挙について問われた岸田首相が一瞬、にやけた表情を見せて「今は考えていない」とけむに巻く場面が続いた。多くの国民は、岸田氏について「まじめ」「誠実」といった印象を抱いていた。前々任の安倍晋三氏、前任の菅義偉氏と比べて、岸田氏は「ひ弱だが、強権とは縁遠い」とみられていた。ところが、現実の岸田氏は「解散権を弄んでいる」「実は権力志向」といった見方が強まってきた。岸田氏への信頼感が失われている中で、様々な施策を繰り出しても支持率は回復しないのは当然だ。
官邸の脆さを露呈
9月、岸田首相は内閣改造・自民党役員人事に着手した。小渕優子元経産相を党選挙対策委員長に抜擢。閣僚では上川陽子氏を外相に、加藤鮎子氏を少子化担当相にそれぞれ起用するなど女性5人を登用。評判は上々だった。だが、直後の副大臣(26人)・政務官(28人)の人事では計54人全員が男性で女性はゼロ。「女性軽視」が与野党から批判された。
この人事が明らかになった時、安倍政権の幹部だった政治家は、こう指摘した。「安倍政権だったら、菅官房長官、今井尚哉・首相秘書官(政務)、杉田和博官房副長官(事務)の誰かが気付いて安倍首相に人事の見直しをもとめていたはず。岸田政権にはそういう政権幹部がいない」
確かに岸田政権の松野博一官房長官、嶋田隆・首相秘書官(政務)、栗生俊一官房副長官(事務)が今回の副大臣・政務官人事で動いた形跡はない。岸田官邸の脆さを露呈する出来事だった。
10月に入ると、岸田首相は「経済対策」を打ち出す。当初は投資減税が柱だったが、次第に「税収増を国民に還元する」と所得減税に踏み出していく。突っ込みどころ満載だった。(1)景気回復下で減税すればインフレを加速する(2)税収増の主因は物価高であり、生産性が向上しているわけではない。財政赤字の削減に充てるべきだ(3)物価高に苦しむ低所得者支援には給付の方が即効性がある、などの指摘が与野党から相次いだ。10月半ばには、岸田政権の政策に好意的だった日経新聞が一連の対応を批判するベテラン記者のコラムを掲載。「『経済対策』を装う選挙対策」と指摘した。首相官邸の官僚たちは動揺した。
「増税メガネ」と言われ
それでも岸田首相は筋の悪い所得減税に突き進んだ。所得税を納めている人には所得税と住民税の計4万円の定額減税、住民税非課税世帯には7万円の給付をそれぞれ実施するという。政府部内でも「給付だけで十分なのに、所得減税に踏み出したのは岸田首相が『増税メガネ』といわれていることを気にしているのだろう」(財務省幹部)といった反応が出た。「増税メガネ」は、防衛増税や少子化対策のための負担増を予定している岸田首相に対し、ネット上で広がっている指摘だ。自民党幹部によると、所得減税は「増税メガネ」の印象を打ち消したいという岸田首相の強い意向の表れだという。「俺は増税だけではない。減税もできるんだ」というわけだ。 
●本音続出!街角景気にあふれる「国民の悲痛な叫び」 11/7
デフレ完全脱却のための経済対策──岸田文雄首相は先週2日、総合経済対策の決定を受けた会見で力説した。物価高対策など5本柱を掲げ、「所得の伸びが物価上昇を上回る状況を確実につくる」とも話したが、“国民の本当の声”は届いているのだろうか。
悲痛な訴えだ。
「3カ月前の6月1日から29日までの売り上げは2586万円であった。9月1日から29日までの売り上げは1814万円で、3カ月前の70.1%となる」
東京都のレストラン経営者は、そうコメントした。
“街角景気”として知られる景気ウオッチャー調査(内閣府、2023年9月調査)で、この経営者は景気の現状判断を「×」と回答。判断理由は「販売量の動き」で、その説明が冒頭の内容となっている。
「GDP(国内総生産)や消費者物価指数など経済指標はたくさんありますが、街角景気は数値だけでなく、国民の生の声であふれています。丹念に見ていくと、生活している人がいまの景気をどう判断しているかが、より深く理解できます」(株式評論家の倉多慎之助氏)
南関東でゴルフ場の経理担当をしている人は次のように回答している。
「新型コロナの感染により就業できない従業員が多く、元より要員不足のなかにさらに負担がかかる状況になっている。円安などの影響で価格が高騰する肥料薬剤の投下量も増え、水道光熱費の高騰も続いており、固定費の回収も容易ではない」
東京都の広告代理店経営者はこうコメントした。
「飲食店のスタッフ離れ、原油高騰に伴う価格変更による経営状態の悪化が激しい。直近で一番悪い」
「直近で一番悪い」
街角景気の9月現状判断DIは49.9(50が良い、悪いの分かれ目)だった。調査結果について、「景気は緩やかな回復基調が続いているものの、一服感が見られる」としているが、感じ方はさまざま。「直近で一番悪い」もあるのだ。
帝国データバンクの景気動向調査(9月)でも景気DIは前月比0.5ポイント減の44.4と2カ月連続で低下した。
国民の苦しい現実は、街角景気からまだまだ伝わってくる。
景気判断は5段階に分かれる。良い(◎)、やや良い(〇)、どちらとも言えない(□)、やや悪い()、悪い(×)だ。
と×の回答から、その声を拾ってみた。
シニアから10代、20代の若者まで利用するコンビニはどうか。
「朝、店に立ち寄る客が少し減っている。物価高による影響かと感じている」(南関東、経営者)
「明らかに客の購入点数が減少しており、購買力や購買意欲の低下がみられる」(四国、店長)
「おにぎりや弁当などの主食食品について、客が価格を気にしながら購入している。客単価も下がりつつある」(北海道、エリア担当)
「ついで買いが激減している」
「ついで買いや衝動買いが激減している。たばこのついでにコーヒーも購入するとか、喉が渇いたからお茶を購入するというような動きが見られない」(東北、店長)
大手チェーンの広報担当者はこう言う。
「人手不足の影響は大きいですね。アジアを中心とした外国人のアルバイトはまだ戻っていません。ギリギリの人数で店舗を回さなければならず、店舗オーナーは苦労しています」
「夜は週末以外、客が来ない」
(街角景気は「国民の生の声」/(C)日刊ゲンダイ)
百貨店やスーパーの街角景気はどうか。
「駅の利用客は多いものの、来客数は減少している」(南関東、百貨店企画宣伝担当)
「必要なものしか買っていないように見受けられる」(南関東、スーパー店員)
「特売日やポイント販売促進強化日は好調であるが、平常時、他社への買い回りが進んでいる」(四国、スーパー財務担当)
家電量販店やレストランなどからの嘆きも相次ぐ。
「冷蔵庫が75%、洗濯機80%、テレビ60%と、主要品目がことごとく前年割れしている」(北関東、家電量販店店員)
「性能より価格重視な商品選びをする人が増え、客単価が下がってきている」(四国、家電量販店店員)
「ランチタイムは、やはり1人ずつの客が増えてきており、夜に関してはほぼ週末以外は客が来ないような状態になっている」(南関東、一般レストラン経営者)
「飲食店への客の流れは新型コロナの感染拡大初期に匹敵するくらい悪い」(東海、酒類小売店経営者)
「売り上げが過去10年で最低」
(訪日客は戻ってきたが…(C)日刊ゲンダイ)
新型コロナが5類へ移行し、インバウンドも急増。土産物店など観光業のなかには、「個人予約は伸び悩んでいるが、企業研修やスポーツイベント、ツアーなどの団体予約は増加傾向」(北陸、都市型ホテル役員)とし、景気判断を「〇」とする回答もある。
だが一方で、政府が打ち出した経済対策では「絵に描いた餅」だと感じざるを得ない生の声がひっきりなしだ。
「海外旅行については、物価高、円安、燃油サーチャージ高騰の影響で旅行料金が大幅に上昇している。客は、コロナ禍前の価格水準をイメージしていることが多いため、見積もりを提出した時点で旅行を見送ることになる」(北海道、旅行代理店従業員)
「8月の新規求人数は、前年比33.2%減少、前月比11.6%減少となっている」(東北、職業安定所職員)
「何となく街に出てきて、世間話をして自分のストレスを解消しようという雰囲気の客がほとんどで、なかなか消費までには回らない」(北関東、衣料品専門店販売担当)
「5月から8月までの今期売り上げが、過去10年間で最低という衝撃の事実が判明した」(北関東、一般機械器具製造業の経営者)
「折り込みチラシが減少している」(東海、新聞販売店店主)
「中国の日本産水産物輸入禁止措置を受け、輸出売り上げが大幅に前年割れ」(北陸、食料品製造業の経営企画)
「物価の上昇が顕著となった前年以降、平均客単価が約50%に下がっている」(近畿、住関連専門店店長)
「インボイス制度への不安などから月末にもかかわらず夜の時間帯は暇である」(近畿、タクシー運転手)
「単価は変わらないが、来店周期が少し延びている」(近畿、美容室店員)
「9月は通常、来店客が増える業界だが、今年は例年より極端に来店客が少なかった」(中国、乗用車販売店店長)
物価高だけでなく、日中関係やインボイス制度、中古車販売ビッグモーター問題などによって生活が脅かされている。生半可な経済対策は期待薄。さらなる節約などで生活防衛するしかない。
●バラマキ策に騙されるな!ついに「花粉税」なる珍妙な増税案も? 11/7
政権発足以来、支持率の低迷にあえぐ岸田文雄首相が、“奇策”に出た。
「10月26日に行われた政府・与党の懇談会で、所得税などの減税策を表明しました。表向きは、税収の大幅な増加分を、物価の高騰に苦しむ国民に還元するとしています。だが、実際は、近い将来の衆院選を意識したバラマキ策=選挙対策の色合いが濃い。“増税メガネ”というイメージの払拭に躍起なんです」(全国紙政治部記者)
では、肝心な減税策は、どのようなものになるのか。
「来年6月から、子どもなどの扶養家族を含めて、1人あたり年間で合計4万円の所得税と住民税を減税。また、それらが課税されない低所得者世帯には、1世帯あたり7万円を給付します」(前同)
だが、経済アナリストの森永卓郎氏は、その効果について疑問を投げかける。
「総額で5兆円くらいのバラマキ策でしょうが、国民はそのまま貯蓄に回すだけで、日本経済へのプラス効果は、ほとんどありません」
さらにこの減税策の裏で、岸田政権は今後、数多くの増税を目論んでいるという。
まずは唐突に延期が発表された、所得税などの増税。
「防衛費増額の財源として、法人税、所得税、たばこ税を増税することが6月に決まっていました。当初は来年度から実施する予定でしたが、減税策との整合性が取れないとの批判が巻き起こり、慌てて延期を発表。ただ、防衛費の財源不足は深刻なため、近い将来、必ず実施される見通しです」(前出の政治部記者)
また、“花粉税”なる珍妙な増税案も。来年度から、1人あたり1000円が住民税に上乗せされる『森林環境税』が、それだ。
「10月7日、岸田首相は、花粉症の主要アレルゲンであるスギ人工林を伐採し、広葉樹に変更するなどの『初期集中対応パッケージ』をまとめると表明しました。国民病の花粉症と地球温暖化の対策を謳っていますが、実際は23年に終了する、住民税に上乗せされている『復興特別税』に変わる税源の確保です」(前同)
●岸田総理の「所得税減税案」、5つの疑問 11/7
突如浮上した、岸田総理の減税案。その中身を見ると、1回限り、ひとり4万円、実施は来年6月となんだかチグハグ! とはいえ、減税自体はわれわれも求めていたはず。何にいったいモヤモヤするのか、5つの軸で解きほぐしてみた!
所得税減税に反対65%の衝撃
岸田総理が10月7日に税収の還元案を発表して以来、メディアや政界内に波紋が広がっている。
その中身をおさらいすると、最も対象者が多いのが4万円の定額減税だ。ひとり当たり所得税3万円と住民税1万円の減税で、扶養家族も対象となるので、4人家族なら16万円となる。これに加えて低所得者向けの給付があり、具体的には住民税が非課税の世帯へ7万円を支給するという。
減税は来年6月以降、会社員であれば給料から天引きされている税金が減り、手取りが増える形。給付金は、12月13日まで続く臨時国会で補正予算を成立させた後、年内に支給するとしている。
手取りが増えるのはありがたい話だし、税金を国民に返すという言い分は筋が通ってる気もする。それなのに、どうもモヤモヤしてしまうのはなぜだろう? 実際、日経新聞とテレビ東京の世論調査では、この所得税減税に対して「適切ではない」と答えた国民が65%にも上っている。
この違和感の正体を探るべく、経済学者の飯田泰之氏に素朴な疑問をぶつけてみた。
【疑問1】なぜ今なの?
まずはタイミングの問題から。
「建前としては、物価高に対する生活支援だといいます。ところが実際には、支持率の回復を狙った施策だというのが本音でしょう。岸田政権の支持率は、複数の世論調査で3割を切るほどの危険水域に達しています。
加えて『増税メガネ』というポップなワードが流行し、総理はかなり気にしているそうです。イメージアップを急いだということでしょう」
弱小派閥を率いる岸田総理にとって、党内基盤の弱さは常に悩みの種。解散・総選挙を勝ち抜くことでこの弱みを克服し、長期政権につなげたい岸田総理にとって、支持率回復に打てる手は12月閉会となる臨時国会中に打っておきたいということなのだろう。
【疑問2】増税はどこに行った?
政権発足以来、あんなに増税と言ってきたのに、チグハグじゃないか?と思う向きもあるだろう。しかし飯田氏によると、実は岸田総理は「増税はしていない」のだという。
「就任当初から、岸田総理は安倍・菅ラインに比べて経済引き締め志向が強いと思われていました。そして就任以来、防衛費の増額や『異次元の少子化対策』の財源確保など、増税につながる話が多々出てきたことは確かです。
ただ、これらは今後財源を決める必要があるものの、現時点で岸田政権が増税を決定した事実はありません。経済分野では特に何もしていないというのが正確です。まあ、これはこれで問題なのですが」
【疑問3】有効性は?
続いて気になるのは、ひとり4万円の還元はあまりにもショボいという点だ。本当に生活支援の効果はあるのか?
「今回の減税と給付は上振れした税収を還元する名目で行なわれます。一般会計の税収は3年連続で過去最高を更新中で、それを国民に戻して苦しい家計を支えるという筋書きは悪くないんです。
ところが物価高は今現在の問題なのに、補正予算で財源を確保すれば速やかに行なえる給付でなく、わざわざ法改正が必要な減税を選択し、実施は来年の夏となる。これは非合理的としか言いようがありません」
実は生鮮食品以外の物価は落ち着きを取り戻している。つまり、来年には物価高が収束している可能性があるのだ。今やらないと意味がないことを、なぜ遅らせるのか?
「岸田総理は自らの増税イメージを気にして、9月に減税を口にしてしまいました。言った手前、減税でやらざるをえなくなったということではないかと思います。
減税も給付も政府がお金を使うことになるので、経済効果はあります。合計で5兆円規模と見込まれていますが、人々が一時的な収入から消費に回す分は1〜2割程度でしかありません。
さらに銀行にお金が振り込まれる給付に比べて、忘れた頃に給料の天引きが減る所得税減税はインパクトが小さい。景気浮揚の起爆剤にはなりえないでしょう」
【疑問4】高齢者へのバラマキでは?
低所得世帯への現金給付についても問題が指摘されている。というのも、対象となる住民税非課税世帯の8割は60歳以上なのだ。
「所得税や住民税の非課税世帯に減税の恩恵が及ばないことは確かです。物価高の打撃を強く受けている層への給付が必要なのは間違いありませんが、結果的に現役世代から得た税収を高齢者に回す側面が大きくなることも事実。
解散・総選挙を視野に入れた高齢者への人気取りと取られても仕方がないと思います」
収入=課税額に基づく給付では、低所得で困っている人と資産があり裕福な高齢者を区別する方法はない。ここは政府も悩みどころではあるだろう。資産への課税が後手に回っている現状のツケが回っているといえそうだ。
【疑問5】現金給付で良かったのでは?
4つの疑問を見てきた上で気になるのは、岸田総理は何をすれば良かったのかということだ。生活支援を目指すならシンプルに現金給付でいい気がする。
「今のところ、物価高は困りものと思われています。ただ、本来この状況は長年、政府と日本銀行が目指してきた姿でもある。今われわれが直面している物価上昇は、世界の先進国ではごくありふれたレベルなのです」
最近ではワイドショーが物品やサービスの値上げを報じなくなった。皆が物価上昇に慣れてきて、ニュースバリューがなくなっているのだ。物価は決して上がらないというデフレマインドが払拭されつつあるわけで、これはいい流れだと飯田氏は評価する。
「あとは賃金上昇がついてくれば、日本が20年にわたって目指してきた、経済成長をする土壌が整います。そのためには、政府が財政出動をして景気を持ち上げ、賃金上昇を後押しすることが重要です。
ちなみに、消費税減税を求める声もありますが、これは慎重になるべきです。というのも、消費税は裕福な引退世代から税金を取れる数少ない手段だからです。また、税率引き下げには時間もかかる。であれば給付のほうがより有効でしょう。
一回きり5兆円では明らかに力不足。国債発行による資金調達に問題がない現状なら、10兆〜15兆円程度は無理なく出せますから、今こそ政府が継続してお金を使うべきです」
今ならまだ間に合う。岸田総理よ、どうか"検討"を!
●岸田首相の所得減税策に、なぜ消費減税ではない? 11/7
岸田首相が4万円の定額減税などを目玉にする17兆円規模の経済対策を11月2日に発表した。岸田首相は「来年夏の段階で国民所得の伸びが物価上昇を上回る状態を確実に作りたい」と力を込めたが、SNSでは〈やっぱりズレてるなこの人〉〈今すぐ一律給付でいい〉〈なぜ消費減税をしないのか〉などと批判の声があがった。専門家からは「増税メガネのイメージ払しょくには不十分」という声が上がる。
「ネットでは増税メガネと呼ばれている。総理についた増税のイメージを気にして、それを払しょくしようとして今回減税に踏み込んだのか」
岸田首相は記者からこう問われると笑みを浮かべながら「様々な呼ばれかたをされてることは承知している。どんなふうに呼ばれても構わないと思っている」などと答えたが、減税に踏み込んだ理由までは言及しなかった。
今回の経済対策の目玉は、来年6月に予定する1人当たり計4万円(所得税3万円、住民税1万円)の定額減税と、低所得者世帯に対する年内での7万円の給付だ。
「岸田首相の増税イメージ払しょくのため」とも言われる経済対策だが、国民の生活を支えるものになっているのだろうか。
第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは、「所得減税まで踏み込んだのは思い切った印象。一定の物価上昇の負担軽減効果はある」と評価するが、「採点するなら60点。目的達成のためにはもっと良い方法があった」との見方を示す。
例えば、現在の消費者物価指数のインフレ率は3%程度の伸びだが、そのうちの2ポイント程度は食料品の値上げだといい、家計の負担を軽減することを最優先するならば、最も効果的な施策は食品類の消費税率を下げることだという。
「ピンポイントで食料品の消費税を下げるほうが経済合理性が高いでしょう。所得減税より消費減税のほうが経済効果も高く、GDPの押し上げ効果もより期待できます」(永濱さん)
岸田首相は11月1日の予算委員会でも「消費税は社会保障のための財源」として消費減税は考えていないとの考えを繰り返し述べていた。
この点について永濱さんはこう指摘する。
「消費税は社会保障財源として結びついているため減税できないという意見もありますが、消費税収のうち5兆円程度は政府債務の返済に回っていますので、この部分を時限措置で使えばいい。食料品の消費税率は8%の軽減税率が適応されていますが、これを0%に引き下げて失われる税収は4兆円程度です。社会保障財政に対する影響が少なく減税することができます」
記者会見後、X(旧ツイッター)のトレンドを見ると、「増税メガネ」といった言葉が入っていた。今回の減税策はイメージ払拭の効果がなかったのだろうか。
永濱さんの見立てはこうだ。
「一時的に減税をしても、賃金の上昇率が物価上昇率を上回るような状況が続けば、やはり増税するのではないかという不安が国民の心理に付きまとうでしょう。イメージ払拭を優先するのであれば、『防衛増税を撤回』とか、『自分の政権のあいだは消費税率を上げない』など打ち出したほうが有効だったと思います」
国民が経済対策の効果を実感できるのは来年6月。それまで岸田政権は存続しているのだろうか。
●所得増税先送り示唆 11/7
公明党税制調査会の西田実仁会長は7日、防衛費増額のための法人、所得、たばこ各税の増税方針に関し、岸田政権が取り組む所得減税と矛盾しないよう所得増税を先送りする考えを示唆した。
●減税不評の岸田首相、総選挙アピールできるか−リーディー 11/7
日本の首相が還付しようとしている税金を国民は「いらない」と言っている。
岸田文雄首相の支持率が主要な世論調査で最低を更新している。JNNの調査では、最新の総合経済対策発表直後で、支持率が11ポイント近く下がり29.1%となった。低支持率を以前克服したことがある岸田氏だが、懸念されるのは目玉政策である減税への反対だろう。
岸田氏は税収の伸びを国民に還元するため、所得税など4万円の定額減税を来年行い、住民税の非課税世帯に7万円を給付すると表明。しかし、JNNの世論調査ではこうした方針を64%が「評価しない」と答えた。エコノミストらはこの政策の経済効果は限定的で、税金の還元分は貯蓄に回されるとみている。
国民がタダでもらえるお金さえ欲しがらないのであれば、岸田氏にとって困った状況になるのは目に見えている。国民の反発は理解できる。岸田氏が自身のプランをうまく売り込むことができず、衆院解散・総選挙をにらんだ選挙対策との印象を国民に抱かせた。
一時的な減税は特にご都合主義的に感じられる。一部のインターネットユーザーに「増税メガネ」と呼ばれるようになった岸田氏は2日の記者会見で、「どんな風に呼ばれても構わない」が、どのように呼ばれようと「やるべきだと信じることをやるということだ」と語った。
ただ、そうした決意も支持率の押し上げにつながっていない。マイナンバーカードを巡り個人情報が誤ってひも付けされるなどのトラブルが相次いだ夏を経て、このところ岸田氏は防衛力強化の財源確保のためにもデフレ脱却を確実にすると訴え、経済を自身最大のテーマとして位置付けし直そうとしている。
先月始まった臨時国会での所信表明演説で、岸田氏は「『経済、経済、経済』、私は、何よりも経済に重点を置いていきます」と明言。
しかし、代表質問で自民党の世耕弘成参議院幹事長から岸田氏の「『決断』と『言葉』については、いくばくかの弱さを感じざるを得ません」と切り返され、減税政策で混乱を招いていると批判された。
実質賃金
海外から見れば、こうした状況は少し不可解かもしれない。日本の国内総生産(GDP)成長率は今年、主要7カ国(G7)で2番目に高くなると予想され、日本株は33年ぶりの高値を付けたばかりだ。
今年の春闘では賃上げ率が約30年ぶりの高水準となり、新型コロナウイルス禍が終わると外国人観光客が戻り、関連業界は潤っている。地政学的観点から見れば、日本の地位はかつてないほど高い。
だが、実質賃金は依然として低下しており、デフレで物価が下がることに慣れた国民にとって、ここ1年半ほどの物価高は受け入れ難い。岸田氏が外交で上げた多くの成果は国民に響かず、就任直後に掲げた経済政策「新しい資本主義」に人々は戸惑うばかりだ。
バイデン米大統領のように功績の評価を得ようともがく岸田氏は、一方でインフレといった自分ではどうしようもない問題でも非難を浴びている。
首相就任から2年が過ぎた岸田氏が直面しているのは、有権者との間で生じるおなじみの問題だ。政権発足当初に高い人気を誇る首相も、しばらくすると支持率が低下する。故安倍晋三氏は例外かもしれないが、同氏でさえその人気に大きなひずみが生じ、それに耐え長期政権を維持した。岸田氏にはそうした持久力があるようには見えない。
説明する力
ただ、これまでのところ岸田氏は運に恵まれている。野党はここ数十年で最も弱体化。総裁を務める自民党の党内でも岸田氏に対する組織的な抵抗はほとんどない。同氏がこれまで見舞われた危機は穏やかなもので、比較的クリーンな政治家と見られていることも有利に働いている。
たが、自民党内で岸田氏が弱いと見なされた場合、2024年9月に予定されている次の総裁選で機を見るに敏な対立候補と厳しい争いを強いられる可能性はある。そして、それに対処する最善の策は衆議院を解散し総選挙に打って出ることだ。 政権を失うという恐れは事実上なく、議席数を大きく減らすことさえなければ、党内の批判を封じ込めることが可能だ。
岸田氏がそうするためには、幾つかの課題がある。国内外の政治日程はぎっしりと詰まっており、25年までに行えばいい総選挙を急ぐ必要はないと国民が考える中で、総選挙の断行を正当化する説得力のある説明をしなければならない。
そして与党のトップとして国民により強くアピールするため、岸田氏は何かをしなければならない。少なくとも、不名誉ななあだ名より首相にふさわしい何かが必要になる。
●自民党幹部「岸田政権は鵺のような政権だ」… 11/7
2021年10月4日から発足した岸田政権。首相になる前から岸田文雄を取材し続けてきた記者を含む朝日新聞政治部が、その特性やクセ、官邸では誰が実質的な力を持っているのかなどに迫った。
鵺(ぬえ)のような政権
2021年12月12日、日曜日の首相公邸。上座についた首相の岸田文雄を秘書官たちが囲んだ。岸田はこの年の10月4日に首相に就任。初めて臨む衆院予算委員会を翌日に控えていた。焦点は、「10万円給付」だった。
子育て世帯を支援するため、児童手当の所得制限を超えた世帯をのぞき、18歳以下の子ども1人あたり10万円を給付する。過去最大の35兆円超に積み上がった補正予算などを使って、岸田政権が最初にぶち上げた現金給付策だ。
だが、新政権の「実績」を急ぐあまり、政策の意義も、制度設計もあいまいで、混乱の種になっていた。
年内に現金5万円を支給し、残り5万円分は翌年にクーポンとして渡す当初の案だと、事務作業にかかる費用が約1200億円に上ることが判明。地方自治体から「ニーズに合っていない」との批判も相次いだ。
12月8日、岸田は衆院代表質問への答弁で「全額現金給付」を容認した。それでも批判は収まらず、今度は分割給付に矛先が向いた。一問一答形式の予算委で岸田が集中砲火を浴びるのは目に見えていた。
混乱の最中の10日ごろ、財務省から岸田のもとに報告が入った。
自治体が年内に10万円を一括給付しても、後から国が5万円を補塡できる。岸田は言った。
「できるんだったらやればいいじゃん。自治体に迷惑かけるのはよくないしな」
そして12日。公邸では、自治体が現金一括給付をする際の条件が話し合われた。用意された資料には細かな条件が書き連ねられていた。
秘書官の一人がこぼした。
「これ、わかりにくいですね」
岸田は言った。
「そうだな。10万、年内、現金、一括、条件なし、でいこう」
政権の目玉政策は、あっさりとその姿を変えた。
受験生への対応「朝令暮改と言われようが……」
首相就任3カ月を迎えた22年1月4日、岸田は新年の伊勢参り後の記者会見で、自らの政権運営を誇った。
「一度物事を決めたとしても、状況が変化したならば、あるいは様々な議論が行われた結果を受けて、柔軟な対応をする。こういったことも躊躇してはならないと思っている」
しかし、「柔軟な対応」に伴う混乱は、「10万円給付」をめぐる方針転換ばかりではなかった。
混乱はその8日前にも起きていた。
年の瀬も押し迫った2021年12月27日、岸田は記者団を前に、切り出した。
「受験生の皆さんの間に不安が広がっている。こうした不安を重く受け止めて、私から別室受験を含め、できる限り受験機会を確保する方策について、昨日、文部科学相に検討を指示した」
新型コロナウイルスのオミクロン株感染者の濃厚接触者となった受験生への対応が問題になっていた。宿泊施設への滞在が求められている期間中は受験できず、追試験で対応するとの通知を文科省が12月24日に出し、批判が高まった。
岸田は文科省が決定したばかりの対応を覆すように指示したと述べ、「一両日中に具体的な方策を示せると考えている」と、むしろ胸を張った。
岸田が11月に出したオミクロン株の水際対策強化の指示をきっかけに、国土交通省が日本に到着する国際線の新規予約を12月末まで止めるよう航空会社に要請し、混乱した問題と構造は同じだ。
海外滞在の日本人が帰国できなくなる可能性が指摘されて批判が噴出すると、岸田は3日後に要請を撤回させた。官邸幹部は「みんな走りながらやっているからこうなる」と拙速さを認めた。
ワクチンの3回目接種でも、前倒し接種を求める声の高まりを受け、時期や対象など詳細を詰めきらぬまま前倒しを表明して地方自治体の混乱を招いた。
別の幹部は「軌道修正は当然だ。朝令暮改と言われようが妥当な判断だ」と話した。
自民党幹部「鵺みたいな政権だ」
このころ岸田が意識していたのは、自民党が政権に返り咲いた2012年以降、長期政権を築いた元首相の安倍晋三と前首相の菅義偉だ。両政権の行き過ぎた点や足らざる点を「反面教師」に自らの立ち位置を定めた。
安倍・菅政権下での「官邸主導」は、民主党政権の「決められない政治」を反面教師に、時に強引な対応で世論の反発を呼んだ。そして、コロナ対策の多くの局面で後手に回ったとの批判を浴び、急速に求心力を失って瓦解した。
それゆえ岸田は先手を打つことにこだわり、批判を受ければ、ためらうことなく方針を転じた。変わり身の早さを、自民党幹部はこう評した。
「鵺みたいな政権だ」
融通無碍を可能にしているのは、岸田自身のこだわりのなさだ。安倍や菅のように、自らが立てた旗を振って政策を推し進めようとはしない。党政調会長時代の岸田とともに仕事をした閣僚経験者は「受け身で、調整型。こだわりのなさから『無色』に映った」と振り返る。
だから時に野党の言い分も丸のみする。
内閣官房参与に任命した元自民党幹事長で盟友の石原伸晃が代表を務める政党支部が雇用調整助成金を受け取っていたことを問題視されると、わずか1週間でクビを切った。
高額な保管費用が批判された「アベノマスク」は、年度内に廃棄することを、自ら記者会見で発表した。結果的に争点を潰してしまうしたたかさに、野党からは「やりづらい」との声が漏れる。
「聞く力」を盾にした「安全運転」に、報道各社の世論調査は上向き傾向を示した。
12月の朝日新聞の調査では内閣支持率が49%で、10月の内閣発足直後の45%を上回った。首相官邸には、高揚感すら漂った。政権幹部は「もしかしたら長生きするかもしれない」と自信をのぞかせた。
ただ、柔軟さはもろ刃の剣でもある。羅針盤なき政策で不安定なかじ取りを重ねれば、政権は迷走するほかなく、そのツケは国民に及びかねない。そもそも求心力の源泉となる「旗」を持たない岸田には、遠心力が働きやすい。
安倍・菅両政権の中枢を務めたある議員は、岸田政権が内包する危うさに警鐘を鳴らした。
「一度決めたことが変わってしまうと、『首相の決定事項』という重さがなくなる。今後、国民に負担を求めるような厳しい政策に取り組むとき、ぐらつき、何も決められなくなるだろう」
見据えた「黄金の3年」
衆院選の勝利から1カ月後の2021年11月30日、自民党本部4階にある総裁執務室で、首相で総裁の岸田と副総裁の麻生太郎、幹事長の茂木敏充は参院選の投開票日を協議していた。
「参院側は、できるだけ早い方がいいと言っている」。
通常国会の召集日と参院選の日程を組み合わせた複数のシナリオを示した資料を手元に、岸田は述べた。
7月10日や17日、24日が投開票日候補だったが、事実上、10日を推した。17日だと若者の投票率が下がることが想定される3連休ということもあり、麻生は「今の自民党は若者の支持が強いですからねえ。投票率は森政権なら低いほうがいいが、いまは高いほうがいい」。
茂木は「公示日が沖縄慰霊の日(6月23日)と重なるので1日早めては」と述べ、政権が最重視する参院選の日程が固まっていった。
「官邸にいると情報が入ってこない」
歴代の自民党総裁は首相に就いてからは官邸にいることが多い。総裁執務室を活用する機会は少ないが、岸田は好んで足を運び、政権の重要課題を協議する。
2021年11月から12月に党本部に入ったのは13回。2020年の同じ時期に前首相の菅義偉が7回、19年に元首相の安倍晋三が1回だったのに比べて抜きんでている。
安倍・菅両政権では官邸の力が圧倒的で党の力が弱い「政高党低」と言われたが、ひずみも大きかった。
岸田自身も政調会長時代、党の意向が政府方針に反映されない場面があり、党内に不満がたまっていることを熟知している。総裁選では「政高党高」を打ち出していた。岸田は茂木とは直接会うだけでなく、週2回は電話で意思疎通を図った。
党を重視する事情は他にもある。
岸田は党内派閥「宏池会」の会長だが、勢力は党内5位(当時)。党主流派の支えがなければ、一気に政権を失う恐ろしさは、無派閥の菅が首相だった政権末期に目の当たりにしたばかりだ。
岸田は周囲に「官邸にいるとなかなか情報が入ってこない。意思疎通を図ることは大事だ」と話す。
党への配慮は欠かさない。「アジアで民主主義国のリーダーにならなきゃダメだ。そのために日本が(ボイコットを)言わなきゃ」
2021年12月23日、岸田は安倍から翌年の北京冬季五輪・パラリンピックを「外交ボイコット」するよう求められると、「近いうちに」と応じ、その翌日には政府関係者を派遣しない方針を表明した。
新型コロナウイルス対応で3回目のワクチンを医療従事者に接種してもらうことは前厚生労働相の田村憲久らが主導。「こども庁」の名称をめぐり党内や公明党から変更を求められると「こども家庭庁」に変えた。
かつての自民党政権のように党が強くなりすぎると、「権力の二重構造」や「透明性の確保」といった課題も再燃しかねないが、岸田に迷いはなかった。
見据えていたのは2022年夏の参院選。ここで勝利すれば、「黄金の3年」と呼ばれる国政選挙をしなくてもいい期間が手に入るとみられていた。
雇用保険料率の引き上げは先送りーー。当初予定していた引き上げ時期を春から秋に先送りすることが2021年12月末の予算編成の最中、急きょ決まった。これも党主導だった。
働き手や企業の負担が参院選直前に増えることを嫌った参院幹事長・世耕弘成の意向に官邸が即座に応じた。参院選に向けた不安材料を少しでも取り除くためだ。
通常国会では野党の反発を招く可能性がある法案は極力抑えた。首相周辺は「参院選まで、のらりくらりいく」と語った。
不満募らせる安倍氏、声を掛けた先は
2021年10月の衆院選では「絶対安定多数」の261議席を確保した。
党内への配慮の積み重ねもあって、永田町は表向き静かにみえるが、火種はあった。
最大派閥会長の安倍は、勢力が同数で第2位の派閥を率いる麻生や茂木ほどの処遇を受けているわけではなかった。
外交ボイコットも、早いタイミングで発すべきだと繰り返していたが、岸田はすぐに動かなかったため、不満を募らせていた。
菅周辺によると、その安倍はこの頃、菅に「早く派閥をつくったら?」と声をかけた。
安倍は岸田が同じ宏池会を源流とする麻生派や谷垣グループと一緒になる「大宏池会」構想を進めると警戒していたためだ。単純に足すと安倍派を上回る最大勢力となる。
菅に派閥をつくる考えはなかったが、政権中枢と距離ができている元幹事長の二階俊博が率いる二階派、前国会対策委員長(現選挙対策委員長)の森山裕率いる森山派などと連携する選択肢もあった。
与党が衆院選で勝っても次の参院選で負ければ、政権は暗礁に乗り上げる。過去に繰り返された歴史を意識しない与党政治家はいない。
菅に近いある議員は「参院選の結果次第で政局は大きく動くだろう」と語った。
●岸田さんの総合経済政策はホンモノである〜 11/7
岸田総理は大型の総合経済対策について発表した。総額17兆円台、物価高対策としての所得税と住民税の減税がおおきな話題になった。3.5兆円増えた税収分を定額減税で戻す形で、
・4万円の減税を受けるのは8600万人
・住民税非課税世帯1500万人には7万円
という国民への還元である。足元の物価高対策としては、ガソリン価格を平均175円程度に抑えるための補助金、電気・ガス料金の負担軽減措置も延長された。
「マイナンバー公金受取口座の普及にも役立つし10万円給付すればよいでしょ」という声も国民の中にはあったし、いきなり減税を言い出したことで「誤解」はされているが、話題になった部分以外は相変わらず着実な経済政策を行っている。
ニュースでは給付や減税のことばかりで、経済政策の本質を見誤らないことが重要である。
総合的な対策
皆さんが誤解してしまうのはその詳細が明らかにされない、明確にアピールできていないからである。基本認識は、「日本経済を熱量溢れる新しい経済ステージへと移行させるためのスタートダッシュを図るためのもの」(内閣府「デフレ完全脱却のための総合経済対策」より)であることを忘れてはいけない。そもそもの目的である。
当面は、物価対策であるが、中長期的な視点での政策である。特に、それは方針で明らかになっている。「足元の物価高から国民生活・事業活動を守る対策に万全を期す。併せて、賃上げの流れを地方・中堅・中小企業にも波及させ、賃上げ のモメンタムの維持・拡大を図る」のが第一方針であるのだ。
物価高対策は優先順位が高いものの、それだけでもない。とりあえず当面の物価高対策。そして賃上げということだ。詳細を見ていっても、多岐にわたることがわかる。
T.物価高から国民生活を守る <財政支出> 6.3 兆円
U.地方・中堅・中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長を実現する <財政支出> 3 兆円
V.成長力の強化・高度化に資する国内投資を促進する <財政支出> 4.7兆円
W.人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革を起動・推進する <財政支出> 1.6 兆円
X.国土強靱化、防災・減災など国民の安全・安心を確保する <財政支出>6.1 兆円程度
給付や減税ではない、全体感のある政策がそこにはある。
好循環ストーリー
岸田政権の基本的な認識は、潜在成長率をあげることであり、賃金上昇→購買力上昇→適度な物価上昇のサイクルであると明言している。これについてはまっとうな方向性だと考えられる。
特に、難しいのは賃上げである。これは政府だけで進められるようなものではない。一部の大手企業が賃上げを進めていて、賃上げに取り組んだ企業を奨励し、中小企業にも普及・促進していくということをどう設計するかは課題だろう。賃上げは国是であるが、なかなか企業が取り組むのも難しい。租税特別措置や各種補助金・助成金の給付を受ける企業は率先してもらいたいと思うのだが、なんとかしてインセンティブや行動をおこしてもらわないといけない。悩ましいところである。
また、物価上昇→賃上げ→成長へとつなげていく際に、もちろん日本銀行の動きも注目だ。金利の引き上げなどもみていかないといけないだろう。さらに言うと、エネルギーの価格高騰が今後も続く中、中東への石油の依存度は90%近くと、あのオイルショック時と比較しても高い。エネルギーをどうするか。岸田政権は危機感をもうちょっと明確に打ち出してもよいとは思う。
年GDP押上効果は1.2%
メディアの報道においては国民生活が大事なのでどうしても減税、給付の話ばかりになってしまうのはわかる。メディアも政治家も国民も自分にどれだけ得があるか、ばかりを追いかけているので余計に短期的、ミクロ的な視野に陥りがちであるので、全体感のある日本経済再生、ターンアラウンドの可能性を見定めて欲しいものだ。
総合経済対策による経済押し上げ効果は実質GDP換算で19兆円程度 、年成長率換算 1.2%程度と想定されている。その想定のEBPM(エビデンスに基づく政策立案)やエビデンスはおいておいても、効果も積算し経済政策全体を進めている岸田政権に期待したい。
●内閣支持率の下落に与党が危機感、各社世論調査…「青木の法則」が現実味 11/7
与党が内閣支持率の下落傾向に危機感を強めている。岸田首相が経済対策として打ち出した所得税などの減税が不評で、政権浮揚につながるどころか裏目に出ているためだ。政府・与党は説明を尽くして理解を得たい考えだが、政権運営には不透明感が増しつつある。
「経済対策ですぐに内閣支持率が上昇するものではないが、やるべきことは、はっきりしている」
自民党の茂木幹事長は6日の記者会見でこう述べ、減税や給付を盛り込んだ経済対策を丁寧に説明する姿勢を強調した。公明党の山口代表も同日、首相官邸で記者団に「経済対策は国民に意義や仕組みが十分に届いていない」と指摘した。
自民は街頭演説などで経済対策を分かりやすく説明するための資料の作成を検討しているという。
自民内では、青木幹雄・元官房長官が唱えたとされる「青木の法則」が現実味を帯びてささやかれ始めた。内閣支持率と与党第1党の支持率の合計が50%を切れば、政権は瓦解する――というものだ。
読売新聞の世論調査によると、最近では、政権末期の森内閣(内閣支持率8・6%、自民支持率22・5%)、麻生内閣(同22・2%、23・4%)、鳩山内閣(内閣支持率19%、民主党支持率20%)などがあてはまる。
報道各社の世論調査で内閣支持率の下落傾向は際立っている。所得税減税が取り沙汰され始めた後の10月13〜15日に読売新聞が実施した調査では、2021年10月の内閣発足以降最低となる34%となったほか、共同通信の調査(11月3〜5日)で28・3%となるなど、危険水域とされる2割台の調査も相次ぐ。
世論の厳しい目は自民党支持率にも表れ始めた。
自民党支持率は、読売新聞の調査では、第2次安倍内閣以降、おおむね40%前後で推移していたが、岸田政権発足時の43%から5月に38%、10月に30%と下落傾向にある。
今年の通常国会では、性的少数者(LGBT)理解増進法の成立を主導したことで保守層が離れたとされる。9月に洋上風力発電事業を巡る汚職事件で秋本真利衆院議員(自民を離党)が逮捕され、10月下旬に山田太郎・前文部科学政務官と柿沢未途・前法務副大臣が辞任するなど、相次ぐ不祥事が追い打ちをかけたとみられる。
閣僚経験者は「09年の政権交代前に雰囲気が似ている。立て直しができなければ次期衆院選に大きく影響する」と指摘した。
● 経済対策発表後も支持率低迷 奇妙なバランスで安定する岸田政権 11/7
政府は11月2日の閣議で、一人あたり4万円の定額減税や非課税世帯への7万円給付などを盛り込んだ事業規模37兆円超の経済対策を決定した。裏付けとなる補正予算案を20日にも提出し、月内の成立を目指す。定額減税は岸田文雄首相主導で決めたとされるが、狙いだった支持率回復どころかバラマキ批判で支持率はさらに低下。“岸田降ろし”につながりかねない事態となっている。
物価高対策には定額減税や給付金を導入
「賃上げと所得減税を合わせることで、国民所得の伸びが物価上昇を上回る状態を確実につくりたい」。岸田文雄首相は、経済対策決定後の記者会見でこう意気込んだ。
経済対策に盛り込んだ物価高対策の柱は、一人あたり所得税3万円、住民税1万円、あわせて年間4万円の定額減税だ。納税者本人と扶養者が対象で、例えば夫婦と子ども2人の家庭なら16万円の減税となる。減税の総額は3兆円台半ばとみており、2022年度までの2年間で所得税と住民税が3.5兆円上振れた分の還元と位置付けている。
政府は所得制限を設けずに2024年6月に減税を実施する方針だが、与党内では2000万円程度の所得制限を設けるべきとの声もあり、与党の税制調査会などで年末に詳細を決める。
一方、住民税の非課税世帯には、1世帯につき7万円の追加給付を決めた。すでに発表した物価高対策の3万円給付と合わせ、合計10万円の給付となる。所得税が非課税だったり、納税額が減税額未満で恩恵を受けきれなかったりする“隙間世帯”にも給付金を支給する。
また、ガソリンの価格上昇を抑える補助金や電気、ガスの料金を差し引く措置は、2024年4月まで延長する。物価高対策の財政支出の総額は6.3兆円を見込む。
賃上げ対策や国内投資の促進なども積極的に推進
賃上げ対策としては、従業員の賃金を積極的に引き上げた企業への税優遇や補助金を拡充するほか、主婦などの労働時間短縮の原因といわれる“年収の壁”への対策、リスキリング(学び直し)を支援するための給付金の拡充、高速道路の通勤帯割引の拡大などを盛り込んだ。賃上げ対策の総額は3兆円。
このほかにも国内投資の促進や国土強靭化などに7.7兆円程度を投じ、国と地方自治体、民間投資を含む事業規模は総額37.4兆円となる。当初予算で計上した予備費なども活用し、補正予算案の一般会計は13.1兆円程度となる見込みだ。政府は消費者物価を1%引き下げ、実質GDP(国内総生産)を1.2%押し上げる効果が見込めると説明している。
経済対策を講じてもつきまとう、強力な“増税”イメージ
経済対策は支持率低迷に悩む岸田政権にとって起死回生の一手になる……はずだった。岸田首相はSNSなどで「増税メガネ」と揶揄されているのを非常に気にしているとされ、自ら主導して定額減税を決定。与党の一部から批判を受けても撤回しなかったという。
しかし、共同通信社が11月3日から5日かけて実施した世論調査によると、定額減税や非課税世帯への給付について「評価しない」が62.5%にのぼり、「評価する」は32.0%にとどまった。経済対策を評価しない理由については「今後、増税が予定されているから」が40.4%と最多で、「経済対策より財政再建を優先すべきだ」が20.6%、「政権の人気取りだから」が19.3%で続いた。財政が厳しいなかでの減税や給付は一時しのぎの“バラマキ”だと国民は見透かしているのだ。
経済対策への批判が追い打ちとなり、内閣支持率は前回調査より4.0ポイント減の28.3%で過去最低を更新した。不支持率は4.2ポイント増の56.7%で過去最高。JNNが11月6日に発表した世論調査でも支持率は10.5ポイント減の29.1%で過去最低、不支持率は10.6ポイント増の68.4%で過去最高となった。7割近くの有権者が不支持を表明するのは異常事態といえる。
支持率低下でも奇妙なバランスで政権は安定
さらなる支持率低下で年内の解散はさらに遠のいたといえるが、与党内では不思議と“岸田降ろし”の風が吹いていない。自らが率いる第4派閥の岸田派に加え、最大派閥である安倍派や第2派閥の麻生派、第3派閥の茂木派が支える安定した政権基盤を構築できていることに加え、過去に総裁選を争った高市早苗経済安全保障担当相や河野太郎デジタル相らを閣内に封じ込めているからだ。
一時は茂木敏充幹事長がポスト岸田に公然と意欲を示していたが、先の内閣改造・自民党人事で同じ茂木派の小渕優子氏を党4役に取り込んだことを機にトーンダウンした。かつて谷垣禎一総裁を差し置いて石原伸晃幹事長(当時)が総裁選に挑んで“裏切り者”のレッテルを張られたことから、二の舞になるのを避けようとしているとの見方もある。
非主流派である石破茂元幹事長や二階俊博幹事長、菅義偉前首相らの動きも不透明だ。子育て対策や防衛費の増額に向けた増税議論が控えるなかで、火中の栗を拾いたくないとの狙いも透ける。ただ、2024年9月には首相の自民党総裁としての任期満了が控えており、総裁選が近づけば否が応でもポスト岸田争いは熱を帯びるだろう。
野党からも表向きな批判は聞こえるが、本格的な政権打倒への気迫は感じ取れない。野党第1党の立憲民主党が支持率で野党第2党の日本維新の会に遅れをとっており、野党内の連携協議への機運も高まっていないからだ。表向きは選挙を望んでいても、実際には今やっても勝てないのは明白。であればしばらくじっとして、自民党政権の自壊を待つのが得策というわけだ。
バラマキ経済対策でさらに支持率を落とした岸田政権。奇妙なバランスでどうにか安定感は保っている。 
●「5年で政権交代」発言に波紋 立民代表、支持離れ懸念 11/7
立憲民主党の泉健太代表による「5年で政権交代と考えている」との発言が党内で波紋を広げている。伸び悩む党勢を踏まえた現実的な目標との擁護論もあるものの、2度の政権交代に関わった小沢一郎衆院議員は「野党第1党が次の総選挙で政権を目指さないと言ったら、支持する国民はいない」と懸念を示した。
発言は4日の法政大の講演で飛び出した。来場者の「何年で本当に政権交代できるのか」との質問に対し、泉氏は「理想論は間違いなく次の総選挙で政権交代だが、候補者もいなければいけないし、勝てる状況をつくらないといけない」と回答。党勢回復には時間がかかるとの認識を示した。
●「増税メガネ」の破壊力「アベノマスク」なみ… 「岸田首相の電撃辞任」に備えも 11/7
岸田政権の支持率下落が止まらない。ジャーナリストの鮫島浩さんは「1人4万円の定額減税などを打ち出しているが、安倍元首相の『10万円の一律給付』に比べて、せこい、遅い、わかりにくい、不公平という批判を受けている。来年秋の自民党総裁選までは続きそうだが、その前に電撃辞任する可能性も捨てきれない」という――。
起死回生の減税が完全に裏目に出た
異例ずくめの所得税減税である。首相が「増税メガネ」という不名誉なあだ名を嫌って減税を打ち上げたことも、その減税が国民から総スカンを喰らって内閣支持率を押し下げたことも、前代未聞だ。
物価高が加速する中で断行した9月の内閣改造・自民党役員人事は不発に終わり内閣支持率は下落した。ネット上では岸田文雄首相を「増税メガネ」と揶揄する言説が左右双方から飛び交い、トレンド入りした。
首相自身が昨年末に防衛力強化の財源を確保する「防衛増税」(所得税、法人税、たばこ税)を表明したことや、財界から消費税増税を求める声が相次いだことから、岸田首相には増税イメージがすっかり定着していたのである。
岸田首相が起死回生の人気回復策として執着したのが所得税減税だった。
これが不人気に拍車をかけた。所得税減税を柱とする経済対策の骨格が固まった時点でANNが行った世論調査で、内閣支持率は政権発足以降最低の26.9%に急落。所得税減税を「評価しない」と答えた人は56%にのぼり、その理由として41%の人が「政権の人気取りだと思うから」と答えた。
自らの増税イメージを払拭するための減税、つまるところ「岸田首相による岸田首相のための減税」であることを世論は見透かしている。何をやっても嫌われるのが今の岸田首相だ。
自民党政権が左右双方からここまで見放されたのは、支持率が一桁まで落ち込んだ森喜朗首相や総選挙で大敗して自民党を下野させた麻生太郎首相以来だろう。
せこい、遅い、わかりにくい、不公平
所得税減税の中身も国民の怒りを燃え上がらせた。
まずは、せこい。減税実施は1年限り。しかもひとり4万円の定額減税だ。安倍政権がコロナ対策で現金10万円を全員に一律給付した特別定額給付金と比べて見劣りする感は否めない。
次に、遅い。減税が実施されるのは来年夏。国民は日々の物価高騰に直面している。半年以上も先の減税などあてにできない。安倍晋三首相が10万円の一律給付を記者会見で表明した2カ月後に給付率が5割を超えたのと雲泥の差だ。
そして、わかりにくい。納税額は所得や家族構成などによって千差万別。我が家がいくら減税されるのか、すぐに理解できる人のほうが少ないだろう。そもそも防衛財源を大幅に増やすために所得税の増税を表明しながら、物価高対策で減税を行うというのは支離滅裂だ。ひとり10万円の一律給付は簡潔明瞭だった。
最後に、不公平感が強い。住民税非課税世帯には7万円が給付される。働く人は納税額が4万円減るだけなのに、働いていない人は7万円を受け取れる。しかも非課税世帯の8割近くが60歳以上の高齢世帯だ。物価高に加えて社会保障費の負担が重くのしかかる現役世代が不公平感を募らせたのは無理もない。世代間対立を煽る結果となった。
増税メガネと呼ばれたくはないだけ
所得税減税を柱とする経済対策の規模は17兆円を超え、一般会計の歳出追加額は13.1兆円にのぼる。コロナ禍の「現金10万円の一律給付」に要した予算は12.9兆円。ほぼ同額だ。今回の経済対策に盛り込まれた所得税減税や企業減税などをやめれば「現金10万円の一律給付」の財源は十分に確保できる。
国民が納得する金額を、わかりやすく、平等に配ることは、今すぐに実現可能なのだ。
それなのに、なぜ、現金一律給付ではなく、減税なのか――。野党は国会でここに照準を絞って追及しているが、野党でなくても当然に浮かぶ疑問である。その答えは、首相自身が認めなくても、明白だ。「増税メガネと呼ばれたくはない」だけである。
首相のあだ名で思い出すのは「アベノマスク」だ。コロナ禍の行動制限で国民の不満が鬱積するなか、安倍首相は現金一律給付に加えて、一世帯に2枚の布マスク(アベノマスク)2億8700万枚の配布に踏み切った。
ところが、不織布マスクに比べて感染予防効果が疑問視されたうえ、全体の3割が配布されず保管費用がかさんだこともあり、「天下の愚策」として批判が噴出。異次元の金融緩和政策「アベノミクス」をもじって「アベノマスク」と揶揄されたのである。内閣支持率は落ち込み、安倍首相は体調不良を理由に退陣したのだった。
「アベノマスク」に匹敵する破壊力
安倍政権は衆参選挙に6連勝し、憲政史上最長の7年8カ月続いた。森友学園事件をはじめ「モリカケサクラ」と呼ばれた権力私物化スキャンダルや財務省による公文書改竄、国論を二分した安保法制、二度の消費税増税といった逆風を次々にかわしてきたが、コロナ禍は乗り切れなかったのである。
なかでも「アベノマスク」の汚名は安倍首相を追い詰めたに違いない。やや小さすぎる印象の布マスクを頑なに着用し続ける安倍首相の姿が私の脳裏には焼き付いている。
岸田首相の「増税メガネ」は「アベノマスク」に匹敵する破壊力を持っている。
岸田首相にとってメガネは自慢だった。色違いの同じメガネを数点買うほどのメガネ好きとして知られ、外相時代の2015年には「日本メガネベストドレッサー賞」を受賞してご満悦だった。ブルガリやカルティエ、グッチなど高級ブランドが並ぶ東京・渋谷の老舗眼鏡店に若い時から通い、首相就任後もしばしばメガネの修理に訪れている。
安倍氏は生前、「同期一番の男前は岸田文雄、一番頭がいいのは茂木敏充、そして性格が良いのが安倍晋三」と笑いを誘ったが、岸田首相にとって「男前」は政治家として重要なセールスポイントであり、メガネはオシャレのキーアイテムだった。
「増税メガネ」は政治を動かした
このあだ名を最初につけた人の意図は知る由もないが、ご自慢のメガネを揶揄されたのだから、野党やマスコミの「お行儀の良い追及」を遥かにしのぐダメージを岸田首相に与えたに違いない。首相は国会審議で「どんなふうに呼ばれても構わない」と平静を装ったが、自民党内からは「増税メガネを異常に気にしている」との声が相次いでいる。
日本維新の会の衆院選候補予定者が「増税メガネ」を批判するチラシを作成したことがテレビで報道され、「品性に欠ける」「メガネ着用者への差別」と批判されて「多くの方に不快な思いをさせ、軽率だった」と謝罪した。維新の音喜多駿政調会長も「(増税メガネを)軽い気持ちで使用してきた」として岸田首相に直接謝罪した。これを契機にマスコミにも「増税メガネ」の使用を躊躇する気配が漂っている。
だが、私は最高権力者が愛用する「メガネ」を揶揄して批判することは、政治風刺の文化として許されると思う。メガネ着用者は極めて多く、ファッションとしても定着していることを踏まえると、この政治風刺を差別一般として抑え込むことは権力批判を萎縮させるマイナス効果のほうが大きいのではないだろうか。
岸田首相が就任以降、「聞く力」「丁寧な説明」を連呼しながら防衛増税をいきなり打ち上げ、中小零細にとっては事実上の増税となるインボイス制度を強行するなど強権政治を推し進め、それに対する野党やマスコミの政権批判が迫力を欠くなかで、大衆が最高権力者に対抗する数少ない手段として「増税メガネ」の政治風刺ほど効果を発揮したものはない。
この汚名が世間に広まることがなければ、所得税減税が実現することもなかっただろう。「増税メガネ」は政治を動かしたのだ。
上から目線、自民党内でも孤立無援に
岸田首相は臨時国会の審議で、自民党の萩生田光一政調会長から「所得税も住民税も支払っていない国民に対してどうするのか」と問われ、「より困っている方に的確に給付を与える」と口を滑らせ、あわてて「給付を支給する」と言い直す場面があった。
ネット上では「上から目線」に批判が噴出したが、首相は「減税も給付もするというのに、なぜ国民に歓迎されないのか」と苛立っているとの見方が自民党内には広がっている。首相と国民の距離は開く一方だ。
岸田首相は9月の内閣改造人事で主流派の茂木幹事長の交代を画策した。麻生太郎副総裁に猛反対されて土壇場で断念したものの、麻生・茂木両氏ら主流派には首相への疑念が残った。一方、菅義偉前首相や二階俊博元幹事長ら非主流派は人事で干され、怒り心頭である。
最大派閥・安倍派は会長職を争う5人衆(萩生田政調会長、西村康稔経産相、松野博一官房長官、世耕弘成参院幹事長、高木毅国会対策委員長)は全員留任したため、中堅・若手にポストが回らず不満が募る。
頼れるのは最側近の木原・前官房副長官だけ…
最後の砦の岸田派も穏やかではない。ナンバー2の林芳正氏は親中派であることが米国のバイデン政権に疎まれ、9月の人事で外相を外された。さらに首相の従兄弟である宮沢洋一税調会長も、首相が独断専行的に所得税減税を進めたことに不満を募らせている。
岸田首相が耳を傾けるのは、最側近の木原誠二幹事長代理(前官房副長官)だけだ。英語が堪能な木原氏は米国のエマニュエル駐日大使と毎週のように接触し、バイデン政権の意向を岸田首相に伝えてきた。岸田首相にとって、菅氏や茂木氏らライバルが影響力を残す外務省を介さずに米国の意向を受け取る貴重な窓口なのである。
木原氏の妻が元夫の不審死事件の重要参考人として警視庁に事情聴取されながら捜査が不自然な形で打ち切られた疑惑に世論の批判が高まった後も、木原氏を要職にとどめたのは、木原氏なしでは政権運営が立ち行かなくなるからだ。岸田首相は9月の人事構想も木原氏とふたりで練り上げた。そして今回の所得税減税を木原氏の強い進言を受け入れたものと言われている。
いまや木原氏を除いて岸田首相を全力で支える勢力は自民党内にない。首相は党内で完全孤立の状態に陥ったのだ。
岸田首相の再選は「かなり困難」
それでも内閣支持率が堅調ならば、ただちに「岸田おろし」が起きることはなかろう。しかし人気回復策の減税カードを切っても支持率は続落。ウクライナに続いてイスラエル・パレスチナ問題でもバイデン政権への追従外交の実態が露呈したいま、今年春のキーウ電撃訪問やゼレンスキー大統領が来日した広島サミットで支持率を急回復させた「首脳外交マジック」の再現も難しそうである。内政でも外交でも手詰まりなのだ。
来年秋の自民党総裁選まで支持率が再浮上する気配はなく、総裁選前に解散総選挙を断行するのは難しいとの見方が自民党内では強まっている。再来年は夏に参院選が控え、秋に衆院の任期満了を迎える。来年秋は「選挙の顔」を決める総裁選になることは確実だ。
支持率低迷にあえぐ岸田首相が再選を果たすのはかなり困難になってきた。衆院任期満了を目前に総裁選不出馬に追い込まれた菅前首相と同じ道をたどる展開が十分に予想される。
他方、自民党内にポスト岸田の有力候補は見当たらず、ただちに「岸田おろし」が動き出すエネルギーは乏しい。茂木氏は岸田首相が総裁選に出馬する場合は支持すると表明しており、岸田勇退をじっと待つ戦略だ。
河野太郎デジタル相はマイナンバーカード問題で失速した。安倍派は5人衆が牽制しあい、総裁候補を絞り込めない。岸田政権が国民の支持を失って低迷したまま、来年秋までダラダラ続くシナリオが現時点では最も有力だ。
政権を放り出す急展開にも備えておくべきだ
ウクライナやパレスチナを巡る国際情勢は激しく動き、国内では物価高が止まらず貧富の格差が拡大して国民生活は危機に直面している。岸田首相は孤立感を深めながら政権トップに居座り、国民から総スカンを喰らっている状況だ。これで「国難」を乗り切ることができるのか。
最近の岸田首相で気になるのは、カメラの前で「不敵な笑み」を浮かべる場面が増えたことだ。ライバル不在で「岸田おろし」は起きないという強気からか、それとも四面楚歌(そか)で追い詰められていることを覆い隠すために余裕綽々の表情を必死に取り繕っているのか。
「男前」を何よりも重視する岸田首相である。何かの拍子にあっけなく政権を放り出す急展開にも備えておくべきだろう。
●岸田首相、事実上の「官製春闘」宣言 身内離れ、さらに悪化する気配 11/7
岸田文雄首相が6日の政府経済財政諮問会議で「来年の春闘に向けて先頭に立つ」と明言したことが波紋を広げている。事実上の「官製春闘宣言」だが、自民の強固な支援母体である企業経営者の離反を招く危険をはらむ。すでに内閣支持率が自民党支持率を下回る現象が慢性化している中で、「打つ手が裏目裏目。経済界など身内が見放し離れていく状態」(自民幹部)がさらに悪化する気配だ。
岸田首相の発言は経団連の十倉雅和会長が出席した場であった。「来年の春闘に向けて経済界に対して私が先頭に立って賃上げを働きかけていく」との内容。経団連関係者は「首相官邸で団交まがいの場面とは驚いた」と苦笑いだ。
6日夜に横浜市内であった県内経営者有志の懇親会でも話題となり、政府や首相への不信が漏れた。
「岸田総理がはちまきをして経営者と闘うというわけか」。横浜市内の中堅企業の社長はそう皮肉り「それなら自民党が率先して企業・団体献金を禁止し、その分を人件費に回せば納税で優遇するといった新たな法律をつくればよろしい」と注文を付けた。
政府関係者によると、首相は今月中に経済界や労働団体の代表者と意見交換する「政労使会議」を開く調整に入った。この中では賃上げに向けて、人件費上昇分や原材料費高騰分を製品やサービスの価格に上乗せする「価格転嫁」が議題となる見通し。「議論の中身が『物価高をさらにあおる』との批判対象になりかねない」(自民政調関係者)との懸念も広がる。
 11/8

 

●所得税減税は「1年」 公明と考えに開き―宮沢自民税調会長 11/8
自民党税制調査会の宮沢洋一会長は8日、報道各社のインタビューに応じ、岸田政権が取り組む所得税などの定額減税の期間について「当然、1年にならざるを得ない」との考えを改めて示した。公明党からは経済情勢を踏まえ、柔軟に対応すべきだとの声が出ており、年末の2024年度税制改正の議論で焦点となりそうだ。
定額減税は、岸田政権が打ち出した経済対策の目玉。24年6月に1人当たり所得税3万円と住民税1万円の計4万円を減税する。全体の減税規模は3兆円台半ばで、宮沢氏は「相当思い切った減税だ」と強調。所得制限に関しては「税制改正の議論でしっかり結論を出していく」と語った。
●「嫌われ」ぶりがますます如実に…岸田政権に「いずれ増税」の不信感 11/8
岸田文雄政権の国民世論からの「嫌われっぷり」が、ますます如実になっている。
共同通信が5日に公表した世論調査で、内閣支持率は前回比4ポイント減の28・3%まで下落し、過去最低を更新した。自民党政権で内閣支持率が30%を割り込むのは、2009年の麻生太郎政権末期以来だという。
岸田政権は「税収増の国民還元」「減税」を相次いで打ち出した。2日には所得税・住民税の定額減税や、低所得世帯への一律7万円の給付を含む17兆円規模の経済対策を発表したばかりだった。
その評価は悲惨なものだ。
今回の共同調査によると、減税や給付金支給を「評価しない」とする回答が62・5%を占めた。その理由は、40・4%が「今後、増税が予定されているから」だ。付け焼刃のバラマキ≠ヘ、もはや通用しないということだ。
それにしても国民の「岸田政権離れ」「自民党離れ」は著しい。10月22日の衆参補選で、参院徳島・高知選挙区で自民党は大敗した。
衆院長崎4区でも自民党の金子容三氏が初当選したが、薄氷の勝利だったようだ。投開票翌日の23日、西日本新聞がその内幕を報じている。
告示前、金子氏と、父で昨年、政界引退した原二郎氏の親子が福岡市を訪問した。面会相手は創価学会の重鎮。公明党の推薦をもらう代わりに、次期衆院選の比例代表での支援を約束したという。
公明党は告示日、金子氏へ推薦状を手渡した。投開票日当日の共同通信の出口調査によると、公明党支持層のうち91%が金子氏に投票したと答えた。これがなければ勝利は難しかったかもしれない。
衆参補選に続き、同29日に投開票された長崎・大村市長選も自民党を驚愕(きょうがく)させたはずだ。現職の園田博史氏が2万8434票を獲得して当選。自民党と公明党が推薦した北村貴寿氏は1万607票にとどまり、ほぼトリプルスコアの惨敗だ。
原因は、いろいろあるだろうが、いわゆる「公明票」が機動的に動かなかったのか。
10月15日投開票の東京都議補選(立川市選挙区)でも、前回の同市議選でトップ当選した自民党の木原宏氏が、立憲民主党の鈴木烈氏に91票差で敗れ、話題になった。だが大村市長選敗北の衝撃は、その比ではない。自公連立の意義、協力関係が、いよいよ危うくなっているのか。
自公連立のきしみは、岸田首相のガバナンス不全に要因があるとの指摘もある。いまだ「衆院解散・総選挙」への意欲を失っていないともされる岸田首相だが、解散権≠ナもチラつかせなければ、いよいよ引き締めを図れなくなっているということか。
●鬼の岸田政権に国民が怒り「詐欺的減税政策」に騙されてはいけない 11/8
自らの年収も30万円上がる閣僚らの賃上げ法案が提出されて話題を呼んだ岸田文雄総理大臣。そんな岸田総理は10月31日の参議院予算委員会で「減税などが1回で終われるよう経済を盛り上げていきたい」と、自身の考えを強調した。また、年末に向けて、扶養家族を含めて1人4万円の所得税などの減税と、住民税非課税世帯に1世帯あたり7万円の給付を行う方針を固めるなど、積極的に行動しようという意志も見える。だが、国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は「まるで減税とは言えないもの」と厳しく指摘する――。
岸田政権が検討している減税案は「詐欺的政策」
岸田首相の言葉遊びがあまりにも酷い。減税や増税という言葉を都合良く解釈し、減税でないものを減税とし、増税を他の文言に言い換えて分かりにくくする詐欺的手法が横行している。
岸田政権が検討している減税案は、当初議論されていた適用範囲を拡大し、納税者本人だけでなく扶養家族を含めて1人4万円程度(所得税3万円・住民税1万円)に落ち着きそうだ。
しかし、少し考えれば分かるが、このような減税は給付とほぼ変わらないものだ。本来であれば所得税減税は本人のみに適用されるべきものだ。直接的な納税者ではない扶養家族分まで含めた減税は、事実上現金をそのまま渡す給付に等しい。
当初、岸田首相が減税4万円、給付金7万円を区別することなくセットで述べたことで、国民からは給付金と比べて少なすぎるという不満が吹きあがった。そのため、選挙対策として、岸田政権は上述のような減税適用範囲の拡大を図ったものと思うが、結果として、減税とは言えないものを「減税」と呼ぶ詐欺的な政策となってしまった。
首相には「減税」と「給付」の概念の違いを理解する哲学がない
残念だが、岸田首相には「減税」と「給付」の概念の違いを理解する政治哲学がない。どちらの政策も「政府がお金を国民に還元する」という程度の認識しかないのだろう。そのため、「景気対策」としての減税または給付という話だけが横行しており、国民からは、「減税にどのような意義があるのか」や「なぜ給付単独ではいけないのか」などの様々な疑問が呈されている。
そもそも「減税」は納税していることが条件であるのに対し、「給付」は納税していることを条件としない、という決定的な違いがある。この前提条件の差は、国家としてどのような国民の在り方を重視しているのか、を明確に表現することに繋がる。
たとえば、所得税減税は所得を稼いでいる人を重視する、というメッセージとなる。そのため、国民は所得を増やすように努力を重ねるようになる。しかし、給付を増やせば、国民にはその逆のメッセージを送ることになる。つまり、所得を稼いで納税しないほうが“お得”ということになる。
理念なき政策は国民から支持されることはない
一見すると、扶養家族まで含めた1人4万円の減税は「減税政策」のように見えるが、実際には本来の減税すべき対象は所得を稼いでいる1名に過ぎない。残りの扶養家族分はただの「給付」である。岸田政権は税制に対する確固たる政治理念がないので、本来は同じ政策の中に詰め込むべきではない要素を抱っこ販売している。「増税メガネ」のレッテルを払しょくするために、岸田首相には見かけ上の減税額を嵩上げしたいという動機があり、事実上の給付を所得税減税のパッケージの中にねじ込んだだけとも言える。
だが、このような理念なき政策は国民から支持されることはない。実際、岸田首相がこの減税政策と呼ばれる政策を提示しても、同政権の内閣支持率は低下し続けている(扶養家族まで含めた減税政策は少子化対策のように見えなくもないが、少子化の原因は独身者の増加であって、既に結婚している家庭に対して現金を渡しても相対的に効果が高い政策とは言えないだろう)。
さらに、より根本的な問題としては、この減税が1年間の期間限定であり、その翌年度から「防衛増税」が始まることが閣議決定されていることにある。岸田政権は所得税増税に繋がる「減税+増税」の実質的なパッケージの政策のうち、その前者を先出しすることで「減税」であると嘯いているに過ぎない。少し儲けさせて後から大損させるまるで詐欺師のようなやり方だ。
●いま総選挙なら自民「40議席減」予測 岸田首相が年内解散を見据える事情 11/8
所得減税への支持が広がらず、内閣支持率が急落した岸田政権。逆風の中でも、年内に衆議院解散に踏み切る見方もある。一体なぜなのか。
岸田文雄首相が減税の先に見据えているのは衆院の解散・総選挙だ。自民党幹部によると、経済対策を盛り込んだ補正予算案が11月下旬に提出され、可決、成立直後に解散に踏み切れば、12月17日や24日投開票の日程も可能だという。
もっとも、自民党内では、この状況での解散は「無謀だ」という声が強まっている。内閣支持率は低迷し、自民党の支持率もじりじりと低下。10月22日に投開票された衆参の補欠選挙でも、参院の徳島・高知選挙区では自民党公認候補が野党系の元職に惨敗。衆院長崎4区では、自民党新顔が立憲民主党の前職に猛追された。山田太郎・文部科学政務官が、女性問題が発覚して辞任。柿沢未途・法務副大臣が地元の東京都江東区長選の候補者に有料ネット広告利用を提案したとして辞任という不祥事が相次ぎ、政権への逆風が続いている。
自民党本部の情勢調査では、いま総選挙となったら現有の263議席から40議席ほど減らすという情報もある。与党の公明党も、大阪府や兵庫県の現職に維新が対抗馬を擁立することから苦戦が予想されている。
与党惨敗なら岸田首相の退陣は避けられない。岸田首相が率いる自民党宏池会からも「イスラエル・ハマス戦争で国際情勢も不安定になっている。解散は急がずに、年明けの通常国会以降、9月の自民党総裁選までのタイミングで考えればよいのではないか」(閣僚経験者)といった意見が出始めている。
それでも岸田首相が年内解散をあきらめないのはなぜか。
まず、政権を取り巻く環境は年末以降、さらに悪くなるという判断がある。年末の来年度予算案の編成では、防衛増税の方向性を示すことになるほか、少子化対策の財源3.5兆円についても社会保険料の引き上げや医療費の削減方針などを固めなければならない。増税・負担増のオンパレードだ。2024年1月からの通常国会では、野党が増税批判を強めるほか、閣僚の不祥事などが表面化する可能性もある。
経済情勢も不安材料だ。アベノミクスの金融緩和が続き、日本はマイナス金利のままだ。欧米との金利差による円安が日本の物価高を招いている。日本の物価高を抑えるために日銀が金利引き上げに転じれば、景気は減速必至だ。
一方で、岸田首相が無理筋の経済対策を進めて政権浮揚を図り、解散のタイミングを狙うことには、別な事情もあるという見方が自民党内でささやかれている。ベテラン議員が語る。
「来年にかけて、自民党の政治とカネをめぐるスキャンダルが出るのではないか。解散・総選挙が遅れれば自民党へのダメージは深刻で、場合によっては政権を失いかねない。岸田氏はその事情を知っているから早めの解散を模索している。ただ口外できないので、その事情には触れず、経済対策で政権を浮揚して総選挙に臨もうとしている」
「減税」への批判を浴び続けて失速していくか、解散で一気に局面転換に出るか。岸田首相がどちらを選択しても政権崩壊につながりそうな政局である。
●最大7割補助でも“リスキリング支援”が不発な理由 転職ありきの制度に「ズレ」 11/8
「リスキリングに取り組もうと思っても、役に立つような政府の補助って全くないんですよ。なんなら転職までお勧めされるので、制度設計がちょっとズレているなと感じます」
都内のSaaSスタートアップに勤務するミキさん(仮名、35歳)は、そう話す。
岸田政権が「5年で1兆円」をリスキリング支援に当てると発言してから、はや1年が経過した。
この間に打ち出されたリスキリング関連の施策はいくつかあるが、一つの目玉は経済産業省が2023年6月から新しく開始した「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」だ。
2022年度補正予算では753億円と、決して少額ではない予算が充てられたがこの制度の認知度は低い。
リスキリングプログラムの受講料を最大7割、最大で56万円も補助する制度だが、認知が進んでいない理由の一つが「一定期間のリスキリングを受けた後で転職すること」を狙っていることだろう。
この支援事業では、今の会社で働き続けながらリスキリングに取り組みたいという人は、対象から除外されているのだ。
LINEヤフーの講座55万円が「20万円」に
LINEヤフーは2023年10月12日、未経験者からITエンジニアへの転職を支援する新たなリスキリングプログラム「LINEヤフーテックアカデミー」を開設した。
このプログラムの受講費用は税込55万円だが、条件を満たせばそのうち35万円が還元されるため、実質の負担は20万円に抑えられる(受講を終えた時点で25万円が支給され、転職して1年勤務している場合にはさらに10万円が支給される)。
ただこの補助の条件は「雇用主の変更に伴う転職を目指している方で、企業・会社と契約し働いている方が対象」と明記されている。
ヤフーは2022年にリスキリング事業に参入しており、第1回の開催時にはこの補助制度はなかった。それでも1期生は募集開始からの3日間で当初の定員100人を超える申し込みがあったため、定員を140人に拡大するほど注目された。
1期生のうち、転職を希望していた受講生の割合は38%だった。つまり6割を超える受講生は、転職を目的とはせずに、プログラミングを学んでいたことになる。転職を希望しない層にも、根強いプログラミング学習のニーズがあるといえる。
「最大56万円の負担軽減」をアピール
経産省の「リスキリングによるキャリアアップ支援事業」は、「在職者のキャリア相談、リスキリング、転職までを一体的に支援する」とする制度だ。
具体的には、転職支援を手掛ける事業者を経産省が「採択事業者」に認定し、補助金を支払う。
採択事業者の認定条件は、「1.キャリア相談、2.リスキリングの提供、3.転職支援、4.転職後のフォローアップ」の4段階を全て実施することとされている。
受講者はリスキリング講座の受講を修了した場合、40万円を上限に受講費用の2分の1の補助を受けられる。
また講座後に実際に転職し、その後1年間継続的な就業が確認できた場合には、16万円を上限に講座の受講料の5分の1が追加で補助される。そのため経産省は「受講者は最大56万円の経費負担を軽減できる」とうたっている。
補助金を受け取る認定業者は、公募で受け付けており、1次公募で51事業者、2次公募で36事業者が採択されており、今は3次公募受付が終了した段階だ。
採択事業者には、IT人材育成を手がける事業者に加え、主に人材派遣を手がける企業などが並ぶ。
政府が進める「三位一体の労働市場改革」とは
そもそも、なぜ政府は転職ありきの制度設計にしているのか?
その理由の一つが、岸田政権の「新しい資本主義実現会議」が打ち出す「三位一体の労働市場改革の指針」(5月16日)にみてとれる。
「三位一体の労働市場改革」が目指すのは、具体的には以下の施策だ。
・ 個人に対して時代が求めるスキルを修得するリスキリングを支援する
・ 企業に対しては求めるスキルを明確にした「ジョブ型賃金」の導入を促す
・ 学んだスキルと企業が求める職務をマッチングすることで、成長分野への労働移動の円滑化する
これらの結果、転職が促進され賃金が上がっていく仕組みを作ることを狙っており、今回の経産省のリスキリング支援事業についても、同様の狙いがある。
経産省「利益を上げにくいビジネスモデル」
2023年9月1日の「日経リスキリングサミット」に登壇した経済産業省経済産業政策局長・山下隆一氏は、同サミットの講演で「日本が成長するためには、個人が成長分野の新しい業務のためにスキルを獲得することと、成長分野への円滑な労働移動をこれ同時に進める必要がある」と述べ、リスキリング支援事業についてこう説明した。
「リスキリングと労働移動を同時に進めるための転職支援は、求人と求職者をマッチングするビジネスと比べると回転率が悪く、利益を上げにくいビジネスモデルになっている。リスキリングと労働移動の一体的な推進への支援に必要な最初の初期投資、システムの構築を支援することで持続的なものにしていこうと思っている」
また山下氏の講演では、以下のようなリスキリング成功例が紹介されていた。
・ キャリアアップやライフイベントに不安を抱える女性が、在宅企業が可能なIT業界やスタートアップに転職
・ コロナ禍の影響を受けたアパレル、ブライダル、飲食店などの従業員が、Web開発エンジニアとして事業会社へ転職
こうした例示からも経産省のリスキリング支援事業が「構造的な賃上げ」を目指していることが分かる。
「本質的なリスキリングとは言えない」と批判も
ただ今回のリスキリング支援事業が、あらゆるケースで賃上げにつながるのかどうかは疑問が残る。
経産省が参考として提示している「キャリアアップにつながるリスキリングのイメージ」では、リスキリングの内容が列挙されているが、その内容は多岐に渡り、かつレベルもさまざまだ。
IT分野の「データベーススペシャリスト」「オラクルマスター(ゴールド)」などの資格が示されている一方で、「フィナンシャルプランナー2級」や「ITパスポート」「PCスキル基礎+ビジネスマナー」まで例示されており、スキルを身につけて成長分野に転職するという目的に必ずしも合致しないように思えるものもある。
リスキリング関連事業の関係者は、こうした現状を「たった数カ月のリスキリングを通して転職できる職種は限られている。本質的なリスキリングとは言えない」と批判する。
「リスキリングをした結果、転職してしまうのであれば企業にとってリスキリングは悪という発想につながる。企業がリスキリングに消極的になってしまることを懸念している」(リスキリング事業関係者)
今回の経産省の支援事業について、こうした疑問に答えていくことが求められている。
新たな経済政策にも盛り込まれた「リスキリング」
もちろん政府のリスキリング補助は、経産省の「キャリアアップ支援事業」だけでない。
厚生労働省は年間40万円を上限に受講費用の50%を負担する「教育訓練給付金(専門実践教育訓練給付金)」や、社員を教育する事業者を支援する「人材開発支援助成金」制度もあるが、それぞれ受講できる講座の偏りがあったり、申請の負担が大きいという声もある。
一方で政府は11月2日の臨時閣議で、新たな経済政策「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を決定。75ページの資料のなかには、「リ・スキリング」という言葉が9回登場する。
具体的な施策としては、「在職中の非正規雇用労働者の支援の創出」や、「教育訓練給付の対象講座の拡大に向け、(中略)業界団体等に対し指定申請の呼びかけ・PRを強化」、「企業及び高等教育機関による共同講座の設置等を支援」など、さまざまな取組みが並ぶ。
政府が推進するリスキリング施策は本当に適切なものなのか。注視してチェックしていく必要があるだろう。
●「専門家に言わせておいて、世論を見て追従」政治的判断ができない岸田政権 11/8
岸田政権が発足してから2年が経つが、つきまとう評価は「首相として何がやりたいかわからない」「首相でいることだけが目的」といった後ろ向きなものが多いが、いったいなぜそのようなイメージがついたのか。
水際対策、狂った目算
「追い返せないか」
2021年11月26日、首相官邸幹部が「今夜も対象地域から1便入るようです」と伝えると岸田が言った。岸田はいら立っていた。
この日、WHO(世界保健機関)は南アフリカで報告されたコロナウイルスの変異株を「オミクロン株」と命名。日本政府は、南アフリカなど周辺6カ国を対象に水際対策の強化を発表したばかりだった。
岸田政権の発足から約2カ月。岸田の脳裏をかすめたのは、コロナ対応が「後手」に回り、政権運営が窮地に陥った安倍・菅政権の失敗だった。
2022年夏の参院選を安定政権の足がかりにしたい岸田にとって、まさに初めて迎える正念場だった。
「いや、全部だ」秘書官の提案に首を振った
自民党内の激しい政治抗争を経て岸田が首相の座を手にしたのは2021年10月4日。
コロナ対応を前面に掲げ、わずか10日余りで、「第6波」に向けた対策の大枠となる「全体像の骨格」を発表。感染力が「第5波」の2倍、3倍になるシナリオを想定したもので、「最悪の事態を想定した危機管理を行い、対策に万全を期す」と訴えた。
衆院選に勝利した後、11月12日には、骨格を具体化した「全体像」を打ち出す。病床の増床や「見える化」、検査の拡充、治療薬の確保などを盛り込んだ。
当時、菅前政権が注力したワクチン接種が進んだことなどから、感染は収まり、東京都の新規感染者数は、1日10人を下回る日もあった。
水際対策では11月8日、原則停止していた海外のビジネス関係者や技能実習生らの新規入国を認めるなど大幅に緩和。コロナ禍の「出口」も見えかけた空気感だったが、コロナ対応に注力したのは「政権安定のためにはコロナ対策を国民に示す必要がある」(内閣官房幹部)との思いがあったからだ。
急拡大するオミクロン株
しかし、「第6波」は突然襲いかかる。
2021年11月25日、南アフリカの保健当局が新たな変異株の出現を発表。官邸側は「首相のトップダウン」(官邸幹部)で、すぐに外務省などに水際対策強化を次々と指示した。変異株への対応を誤ると一気に求心力が低下しかねず、岸田は警戒感を強めていた。
翌26日には南アフリカやその周辺国など計6カ国に対する水際対策強化を表明。しかし、オミクロン株は、欧州やアジアで急速に拡大を続けていく。
日曜日の28日。岸田は官房長官の松野博一や首相秘書官らに電話などで相次いで連絡を取った。水際対策強化をどこまで広げるかーー。対象国が広すぎると、混乱や経済界からの反発が予想された。
一方で、小出しの対策では「後手」との批判を招きかねない。首相秘書官が「感染が広がっている地域を中心に対象を検討しましょうか」と話すと、岸田は首を振った。
「いや、(対象国は)全部だ」
岸田の判断は、外国人の全面的な新規入国停止。主要7カ国(G7)で最も厳しい対応だった。そこから秘書官らがほぼ徹夜で調整にあたり、岸田は翌29日、記者団に、年末までの「緊急避難的な予防措置」として、こう強調した。
「慎重の上にも慎重に対応すべきと考えて政権運営を行っている。岸田は慎重すぎるという批判は私がすべて負う覚悟だ」
日本国内初のオミクロン株の感染者が確認されたのはこの翌日だった。岸田の決断は好意的に受け止められ、その後の内閣支持率の上昇をもたらした。
官邸幹部は「うまくいっている」と自信を深めた。水際対策の強化も官邸幹部は当初、「1カ月もすれば状況は見えてくる」と楽観していた。
ところがこの目算はその後、狂い続ける。
そして、この時の岸田自身の「成功体験」が、世論を気にするあまり、ワクチン接種などの対応変更や出口戦略といった政治判断への足かせとなっていく。
繰り返された過ち
岸田政権にとって最大の誤算は、新型コロナワクチンの3回目接種の間隔だった。
「自治体が混乱している。原則は8カ月だということを丁寧に説明してほしい」
2021年11月26日、首相官邸の執務室。岸田は、ワクチン接種を担う厚生労働相の後藤茂之とワクチン担当相の堀内詔子から状況説明を受けると、迷いなくそう指示した。
その10日ほど前。2回目からの接種間隔について、厚生労働省は当時海外で主流だった8カ月を採用。ただし、状況次第で6カ月に前倒しできる「例外」をつけたことで、自治体から「準備が整わない」などと反発を招いていた。
「急所になる」聞き入れられなかった河野の助言
「聞く力」を掲げる岸田は、原則8カ月を徹底させることで問題を収めようとした。
接種前倒しによりワクチンの数量が不足する懸念があったことや、オミクロン株へのワクチンの効き目について科学的知見が出るのを待つ慎重さも、判断を後押しした。
ところが、2大臣との協議からわずか4日後のことだ。感染力の強いオミクロン株が国内で初確認されると、状況が一変する。
政府の水際対策を破って感染は瞬く間に広がり、3回目接種の「8カ月」からの短縮が、皮肉にも最大の焦点となっていく。
大阪府知事の吉村洋文はその日、府庁で記者団に「8カ月経たないと接種できないというルールは問題だ。感染が急拡大してからでは遅い」と、疑問を投げかけた。
もともと2021年10月の岸田政権発足前後は、感染状況の下火が続き、「第6波」に備えた病床確保策に比べると、3回目接種の優先度は低かった。
新政権の姿勢を苦い思いで眺めていたのが、菅前政権でワクチン担当相だった河野太郎だ。
「ワクチン接種の対応はちゃんとしておかないと、政権の急所になる」
2021年10月、河野は政権運営を担う岸田側近に助言したが、聞き入れられなかった。
むしろ、別の政府高官は「ワクチン担当は時限的なもの。来年の供給のめどさえつけばいい」と楽観していた。
その言葉通り、河野の後任には、初入閣で政治経験の浅い堀内が五輪相と兼任する形で就いた。大臣直轄のワクチンチームも縮小され、合同庁舎11階の大臣室近くにあった作業部屋は、別棟の地下1階へと移された。
オミクロン株の出現により政権のワクチン軽視は裏目に出て、12月以降、泥縄式に高齢者や現役世代の6カ月への短縮を迫られた。
新規感染者は年明けから爆発的に増え、2022年1月23日には初めて全国では5万人、東京では1万人をそれぞれ超えた。高齢者施設でのクラスターも目立ち始め、その後の死者数が増える要因となっていった。
「結局は何も学んでいなかった」
「なんで進まないの。もっと増やせないのか」
岸田のいら立つ声が官邸執務室に響き渡ったのは、年が明けた1月下旬だった。
居並ぶ官邸幹部は黙ってうつむくしかなかった。岸田の手元には3回目のワクチン接種の回数が記された資料。接種回数は前日から1万回しか増えておらず、想定したペースには遠く及ばなかった。
国会に目を転じると、与野党から3回目接種のスピードが上がらないことへの批判が強まっていた。圧力に押し切られる形で、岸田は菅前政権を踏襲するかのように「1日100万回接種」を宣言せざるを得なくなった。
岸田はようやくワクチンチームの強化を指示した。
人員を20人ほどに増やし、作業部屋も大臣室の近くに戻した。政府も自治体も、ワクチン接種加速に向けた態勢が整ったのは、2月に入ってから。それでも、2回目までと違うワクチンを打つ「交互接種」への不安などから、重症化リスクの高い高齢者への接種は思うように進まず、「第6波」が長引く要因となった。
ある政府関係者は、こうため息をついた。
「菅政権もワクチンに翻弄されたが、岸田政権は同じ過ちを繰り返しただけで、結局は何も学んでいなかった」
早い段階で3回目接種の前倒しに踏み切れず、リスクを取ることなく後手に回った岸田。その後の爆発的な感染拡大のなかで、専門家頼みの対応が際立っていった。
専門家追従、「もろ刃の剣」
日本で最初にオミクロン株の猛威に見舞われたのが、沖縄だった。
在日米軍基地由来とみられる感染がまたたく間に市中へ広がり、2022年1月7日に新規感染者数が初めて1千人を超えた。濃厚接触者となった医師や看護師が出勤できないという、これまでにない問題に直面していた。
翌8日、東京都内でも2021年9月以来となる1千人超えを記録し、社会機能が維持できなくなる恐れが現実味を帯びる。当時14日間とされていた濃厚接触者の待機期間の短縮は、政府にとって急務の課題だった。
専門家主導のアドバルーン
「エビデンス(科学的根拠)が欲しい。『えいや』では決められない」
1月中旬、岸田は口癖のように周囲に話し、ある「リスク」について悩みを深めていた。それは、「10日間への短縮で1%」「7日間で5%」とされる濃厚接触者の発症率だった。
オミクロン株は従来のデルタ株などに比べ、発症までの潜伏期間が短いことを根拠にしており、海外では5日間に短縮する動きも出ていた。
しかし、外国人の新規入国を原則禁止した水際対策を「G7で最も厳しい水準」と胸を張る岸田にとって、コロナ対策を緩める判断はためらわれた。
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家の有志は、7日間に短縮するよう迫り、厚労省幹部も「もう知見は出し切った。あとはリスクを許容するかどうかだ」と政治判断を待った。
「5%」のリスクを引き受けるのか――。14日、岸田が選んだのは、発症率が「1%」の10日間への短縮だった。
感染はすでに全国で爆発的に広がり、岸田の決断の5日後には、東京都など13都県に「まん延防止等重点措置」の適用を決めた。7日間への短縮は、もはや不可避にみえた。
それでも岸田は躊躇した。政権内では「政治判断は難しい」(官邸幹部)との見方が広がった。
ついに連立を組む公明党がしびれを切らして見直しを要求。政府は28日になってようやく7日間への短縮を発表した。専門家の提言から、2週間が過ぎようとしていた。
そんな岸田を専門家は、くみしやすい相手とみた。前首相の菅は専門家の意見を軽んじ、東京五輪の開催に突き進むなど、不協和音が生じた。
それに対し、岸田政権では専門家主導でアドバルーンを上げ、政府が世論の反応をみながら追随するというスタイルが確立した。
濃厚接触者の待機期間だけでなく、オミクロン株感染者の全員入院の見直しや、低リスクなら検査のみで受診せず自宅療養を可能とする措置など、従来のコロナ対策の根底を覆す転換を次々と進めた。
専門家追従のきっかけは2021年9月の自民党総裁選にあった。
激しい選挙戦の末に総裁に上りつめた岸田は、政権発足への準備を進めているさなか、いまの官邸中枢との間で「約束」を取り交わした。「専門家とはしっかり連携し、意見を尊重する」との基本原則だ。
菅前政権の反省から生まれたもので、その雰囲気を察してか、尾身は「岸田さんは話を聞いてくれる」「最終的には政治が判断すればいい」と、周囲に漏らすようになった。
ただ、蜜月にみえる政権と専門家との距離感は、誰が決めているのかを見えにくくする「もろ刃の剣」でもある。
社会機能の維持のため、対策を緩める過程で1月19日には尾身から「ステイホームなんて必要ない」との発言が飛び出し、大きな波紋を広げた。政府は慌てて火消しに走ったが、尾身のように岸田が大きな方向性を国民に示すことはなかった。
自ら方針転換のメッセージを打ち出すことは、反発のリスクをも引き受けることを意味する。専門家任せで、煮え切らない岸田の姿勢は、出口戦略を描ききれないまま、重点措置がドミノ倒しのように全国へと広がる一因となっていった。
●岸田首相が「国民の資産1100兆円」を「海外流出」させようとしている…黒幕 11/8
ついにメガネが曇って何も見えなくなったのか。国民の財産を守るのが政治家の仕事のはずが、岸田首相はまったく逆の手を打とうとしている。タチの悪いことに、本人はそのことに無自覚のようだ。
1100兆円の博打
ついに政権維持の危険水域である「支持率20%台」に突入した岸田内閣。外交では存在感を発揮できず、物価の上昇に反比例するように人気は急降下。このままでは、早期の退陣は免れない。
追い込まれた岸田文雄首相は、政権浮揚の最後の「賭け」に出ようとしている。恐るべきことにその賭け金は、日本国民の現預金1100兆円。しかも、どうやらこのギャンブル、負ける可能性が濃厚なのだ―。
10月20日から召集された臨時国会。その所信表明演説で岸田首相は「経済! 経済! 経済! 何よりも経済に重点を置く!」と、「経済」という言葉を連呼した。この演説の直前、岸田首相は側近らに、まるで何かに取りつかれたようにボソボソとつぶやいたという。
「知ってるだろ? 俺は元銀行員だよ。最近の総理の中では一番経済に精通してるんだ。国民だってそれをわかってるだろ。だから、俺が説明すれば、みんな理解してくれるはずだ……」
これまでは「外交の岸田」を自負してきたはずなのに、突然「俺の強みは経済」と転向した岸田首相。ひょっとすると、岸田さんの頭の中は「彼ら」に乗っ取られてしまったのではないか―首相周辺からはこんな声が聞こえてくる。
「彼ら」とはだれか
所信表明演説から遡ること1ヵ月。国連総会に出席するため9月19・21日にかけて訪米していた岸田首相。タイトな日程を縫うようにして最終日に向かったのは、ニューヨークにある5つ星ホテル「ザ・ピエール・ア・タージ」だ。この日、同ホテルでは米財界の大物が集うニューヨーク経済クラブ主催のパーティーが開かれていた。
ここに、岸田首相はゲストスピーカーとして招かれたのだ。それも、同クラブの長い歴史の中で、日本人としてはじめて、だ。
「かつてはチャーチルやゴルバチョフら主要国のトップが演説をした名門クラブですが、日本の宰相は、吉田茂さんでも安倍晋三さんでも立つ機会がなかった。そこに岸田さんが呼ばれた。岸田さんは金融界の大御所たちを前に、お得意の英語で、今後の岸田政権の金融政策について披露したのです」(官邸関係者)
安倍さんでさえ立てなかった国際金融の中心の舞台に、自分が立っている―岸田首相の高揚感は筆舌に尽くしがたいものがあったのだろう。帰国後も「金融の世界では俺の名前が轟いているってことだな」と自信満々だったという。
実はこの場所に、岸田首相が心酔する「金融集団」がいたことは、日本人にはあまり知られていない。
「ブラックロック」。運用資産総額約1400兆円と世界最高を誇る米資産運用会社の幹部だ。この金融集団こそ、首相周辺が懸念を示した「彼ら」だ。
「ブラックロックは世界約30ヵ国に展開する巨大金融企業です。米バイデン政権の国家経済会議委員長と財務副長官が同社の元幹部であることからもわかるように、世界の経済・金融政策にも多大な影響力を持っています」(経済ジャーナリストの磯山友幸氏)
●“増税メガネ”岸田総理に降りかかる「政治資金パーティー」過少申告問題 11/8
ぶち上げた「減税策」が不評すぎて、支持率が上向く様子もない岸田政権。さらに追い打ちをかけそうなのが、自民党内の各派閥の政治資金パーティーの問題だ。
計1946万円の不記載
11月2日、読売新聞が「自民5派閥 過少記載疑い 告発状提出 パーティー収入4000万円」という記事を掲載した。
記事では自民党派閥の政治団体である「清和政策研究会」など5つの政治団体が派閥の政治資金パーティーの収入を過少記載していたとしている。神戸学院大学の上脇博之教授が政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)容疑での告発状を東京地検に提出しており、それを受けての報道だった。
「きっかけは『しんぶん赤旗』の報道でした」とは、当の上脇教授。
「昨年、『しんぶん赤旗日曜版』が安倍派などの5派閥が20万円超のパーティー券を政治団体に購入してもらったにもかかわらず、各派の政治資金収支報告書に記載していない疑惑を報じたのです。政治資金規正法では政治資金パーティーの透明性を図るため、20万円を超えて購入した個人や団体について、収支報告書に購入者の明細を記載するよう義務付けています。これが記載されていないのですから、政治資金規正法上の『不記載』にあたる。昨年11月の時点で清和会(安倍派)については、2018年から20年までで計1946万円を記載していないとして、すでに告発状を提出しています」
上脇教授は、この報道をきっかけに断続的に東京地検に各派についての告発状を提出している。平成研究会(茂木派)は計620万円の不記載、岸田総理が会長を務める宏池会(岸田派)の政治団体である宏池政策研究会は212万円、志師会(二階派)は754万円、志公会(麻生派)は410万円の不記載が確認されたという。
不記載の問題は氷山の一角
「20万円を超えるパーティー券を販売していながら、記載せずに見落とすというのはありえません。今回の件が悪質なのは、1年だけでなく複数年、しかも複数の派閥にまたがって、不記載が行われていることです。今回はパーティー券を購入した政治団体の収支報告書をチェックし、20万円超の記載があるかどうかを確認の上、さらに派閥の報告書をチェックする形で、不記載の事実が分かりました。しかし、収支報告書の提出義務のない個人や企業に20万円を超えるパー券を販売していたとしたら、調べようがありません。ですから、この不記載の問題は氷山の一角と言えるのです」(同)
では、なぜこのような事態を招いてしまったのか。
「派閥では誰がどこにパー券を何枚売ったか、という情報を把握していないからですよ」と解説するのは、さる主要派閥に属するベテラン秘書である。
「派閥のパーティー券は所属する議員それぞれに販売枚数のノルマが課されています。概ね1事務所で数百万円分、派閥の幹部になれば1000万円を超えることもあります。それを支援者らに売って回るのですが、特定の企業や政治団体には複数の議員が“売り込み”をかけます。その団体に同じ派閥のA議員から10万円分、B議員から10万円分、C議員から10万円分を購入してもらうと、この団体は派閥のパー券を30万円分購入したことになる。ところが、派閥はその詳細までは知らないのです」
議員ごとの口座を作る
一体どういうことか。
「パー券を購入してもらった際、銀行口座に代金を振り込んでもらいます。その際の口座は派閥の口座ではなく、派閥の名前を冠した議員ごとの口座を作り、そこに振り込んでもらうのです。派閥の口座で振り込んでもらうと、最終的に、誰が売ったパー券なのかの判別ができませんから。しかし、差し当たって、派閥には売った額だけを報告し、誰がどこに売ったのか、という明細までは派閥事務局に報告するわけではない。そのため、複数の議員が同じ団体に購入してもらっても、派閥で把握できず、記載からも漏れてしまっている、というわけなんです」(同)
しかし、主要派閥の中には今回の一件で慌てた人たちもいた。
「ある派閥ではノルマを超えた分については、販売した事務所の収入になると取り決めていたところもあったようです。確かにそうしないと、派閥のパー券を売るモチベーションにつながらないですよね。すると本来売った額より少ない額のノルマ分だけを派閥に報告し、派閥は報告書にその額だけ記載することになる。そのため、この報道後、その派閥では慌てて、ノルマを超えた分のパー券代を確認し直したそうです。また、別の派閥では、ノルマを超えた分は一度派閥に納めて、その後、寄附という形で議員事務所に戻しています。しかし、そういう金の流れをしていないのであれば、事実上の裏金ですよね」(同)
裏金を作りやすい
再び、上脇教授が指摘する。
「今回の告発では岸田総理が会長を務める宏池会が他派閥に比べ、比較的少ない不記載額になっています。というのも、岸田総理の地元である広島県の選挙管理委員会では政治資金収支報告書をウェブで公開しておらず、調査できなかったからです。それがもし分かれば、より多い額の不記載を指摘できたかもしれません。また、各派が購入してもらったパー券の額よりも少ない額を報告書に記載していたら、その過少分は裏金になっている可能性もあります。政治資金パーティーは裏金を作りやすい温床になっていると言えるでしょう」
●「嫌われ」ぶりがますます如実に…岸田政権に「いずれ増税」の不信感 11/8
岸田文雄政権の国民世論からの「嫌われっぷり」が、ますます如実になっている。
共同通信が5日に公表した世論調査で、内閣支持率は前回比4ポイント減の28・3%まで下落し、過去最低を更新した。自民党政権で内閣支持率が30%を割り込むのは、2009年の麻生太郎政権末期以来だという。
岸田政権は「税収増の国民還元」「減税」を相次いで打ち出した。2日には所得税・住民税の定額減税や、低所得世帯への一律7万円の給付を含む17兆円規模の経済対策を発表したばかりだった。
その評価は悲惨なものだ。
今回の共同調査によると、減税や給付金支給を「評価しない」とする回答が62・5%を占めた。その理由は、40・4%が「今後、増税が予定されているから」だ。付け焼刃のバラマキ≠ヘ、もはや通用しないということだ。
それにしても国民の「岸田政権離れ」「自民党離れ」は著しい。10月22日の衆参補選で、参院徳島・高知選挙区で自民党は大敗した。
衆院長崎4区でも自民党の金子容三氏が初当選したが、薄氷の勝利だったようだ。投開票翌日の23日、西日本新聞がその内幕を報じている。
告示前、金子氏と、父で昨年、政界引退した原二郎氏の親子が福岡市を訪問した。面会相手は創価学会の重鎮。公明党の推薦をもらう代わりに、次期衆院選の比例代表での支援を約束したという。
公明党は告示日、金子氏へ推薦状を手渡した。投開票日当日の共同通信の出口調査によると、公明党支持層のうち91%が金子氏に投票したと答えた。これがなければ勝利は難しかったかもしれない。
衆参補選に続き、同29日に投開票された長崎・大村市長選も自民党を驚愕(きょうがく)させたはずだ。現職の園田博史氏が2万8434票を獲得して当選。自民党と公明党が推薦した北村貴寿氏は1万607票にとどまり、ほぼトリプルスコアの惨敗だ。
原因は、いろいろあるだろうが、いわゆる「公明票」が機動的に動かなかったのか。
10月15日投開票の東京都議補選(立川市選挙区)でも、前回の同市議選でトップ当選した自民党の木原宏氏が、立憲民主党の鈴木烈氏に91票差で敗れ、話題になった。だが大村市長選敗北の衝撃は、その比ではない。自公連立の意義、協力関係が、いよいよ危うくなっているのか。
自公連立のきしみは、岸田首相のガバナンス不全に要因があるとの指摘もある。いまだ「衆院解散・総選挙」への意欲を失っていないともされる岸田首相だが、解散権≠ナもチラつかせなければ、いよいよ引き締めを図れなくなっているということか。
●企業は儲かっても賃金が上がらない構造〜 家計はインフレ困窮 11/8
内閣支持率、政権発足後最低
岸田文雄内閣の支持率が政権発足以来最低に落ち込んでいる。日本経済新聞社とテレビ東京が10月27〜29日に実施した世論調査では、内閣支持率が33%で2021年10月の政権発足後最低。共同通信社が11月3〜5日に実施した全国電話世論調査でも28.3%と過去最低を更新。JNNの調査でも29.1%と3割を下回って最低となった。
支持率急落の原因ははっきりしている。政府が11月2日にまとめた総合経済対策が不評だったからだ。JNNの調査では、経済対策に「期待する」と答えた人はわずか18%。72%の人が「期待しない」と突き放した。「目玉」だったはずの所得税・住民税合わせて4万円の定額減税についても、「評価しない」が64%で、「評価する」は26%にとどまった。
それだけ多くの人たちが足下の「経済」に不安を抱いているということだろう。消費者物価の上昇率は9月には前年同月比2.8%で、上昇率が鈍化したという解説もあるが、実際には昨年9月もその1年前に比べて3.0%上がっているので、物価上昇が止まらないというのが生活者の実感だろう。しかもこれはエネルギーを含んだ総合指数の伸びで、実際にはガソリン代や電気・ガス代の抑制に巨額の国費が投じられた後の物価。エネルギーを除いた指数では前年同月比4.2%の上昇と1年前の1.8%の上昇からさらに拍車がかかっている。食料品は1年前に比べて9%も上昇している。
一方で給与は上がらない。賃金から物価上昇分を差し引いた実質賃金は2023年8月まで17カ月連続でマイナスとなっている。岸田首相は賃金は上昇し始めていると胸を張るが、まったく物価上昇に追いついていない。政府が影響力を持つ最低賃金にしても、今年は時給1004円と初めて全国平均で1000円を突破したが、上昇率は4.4%。年間の物価上昇率を3%としても実質は1.4%に留まり、安倍晋三内閣時代の2%台に及ばない。円安が進んでいることもあり、ドル建ての最低賃金はむしろ下落しており、外国人労働者の日本離れの引き金になっている。
最低賃金の引き上げくらい思い切りやってはと思うが、岸田首相の賃上げに対する本気度が疑われる。8月には最低賃金1500円を目指すと発言したが、実現の時期を「2030年半ばまでに」としたのには耳を疑った。そんな姿勢で物価上昇を上回る賃上げは実現しそうにない。
企業は空前の好決算
「家計」は物価上昇で困窮しているが、「企業」は空前の好決算に沸き、それに伴って「政府」は税収増で潤っている。物価が上昇していることで企業の売り上げが増えていることから、結果的に利益も納税額も増える結果になっている。売り上げが増えれば消費税収は増えるので当然と言えば当然だ。「企業」と「政府」はインフレが追い風になっている。
9月1日に財務省が発表した2022年度の法人企業統計によると、企業(金融業・保険業を除く全産業)の売上高は9.0%増加、当期純利益も18.1%増えた。新型コロナ前のピークである2018年の利益水準62兆円を大きく上回り74兆円に達している。
その利益を企業はしっかり抱え込んでいる。内部留保(利益剰余金)は過去最高を更新し続け、554兆円に達している。1年で7.4%も増えた。一方で、企業が払った人件費は3.8%の伸びにとどまっている。2019年度、2020年度と人件費は大きく減ったが、内部留保は一向に減ることなく増え続けた。内部留保は危機の時への蓄えだと言いながら、まったく取り崩されることなく増え続けている。
次の春闘での大幅利上げが無い限り
かつて麻生太郎氏が財務大臣だった時、法人税率の引き下げに対して、税率を下げても内部留保に回るだけでは意味がない、と苦言を呈していた。法人税率の引き下げによって、増えた利益が配当に回ったり、次なる投資へと使われることで、日本経済が活性化することが狙われたが、結果は思うように進まなかった。
配当こそ32兆円あまりと、新型コロナ前の2018年度の26兆円から大きく増えたが、利益の何%を配当に回したかを示す「配当性向」は42.2%から43.8%に僅かながら上がったに過ぎない。結果的には麻生氏の危惧する通りとなった。
2018年度から2022年度の間で、内部留保は463兆円から554兆円に19.8%も増えたが、人件費総額は208兆円から214兆円に2.8%増えただけにとどまっているのだ。
増え続ける内部留保に対して、課税すべきだという声が上がったことがある。財界は「二重課税だ」として強硬に反対した。内部留保は法人税を支払った後のお金なので、それにさらに課税するのはおかしい、というわけだ。また、貸借対照表の貸方にある利益剰余金の反対側、つまり借方は「建物や設備」などになっていて、「現金」が積まれているわけではない、という主張もある。
だが、ここまで会計上の剰余金が増えるのは異常だろう。企業がもっと利益を上げる資産に資金を回したり、財産である社員の待遇を引き上げることが重要ではないか。
果たして来年の春闘に向けてどれだけの賃上げを実現するのか。内部留保を積み上げている大企業を中心に思い切った賃上げが実現しないと、来年の自民党総裁選に向けて岸田内閣の支持率回復は望めないだろう。 
 11/9

 

●岸田首相、年内の衆院解散見送りを事実上表明…内閣支持率低迷 11/9
岸田首相(自民党総裁)は9日午前、年内の衆院解散・総選挙について、「まずは経済対策、先送りできない課題一つ一つに一意専心取り組んでいく。それ以外のことは考えていない」と述べ、見送る意向を事実上表明した。首相官邸で記者団の質問に答えた。
内閣支持率が低迷していることから、首相は当面、経済の立て直しに専念する。所得税などの減税について、評価が芳しくないことも考慮した。国民の信頼回復を図りつつ、来年9月の任期満了に伴う自民党総裁選の前に解散する機会を探る構えだが、支持率の低迷が続けば、総裁選に影響することも予想される。
政府は経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案について、20日に国会へ提出し、今月末の成立を目指す。その後は24年度予算の編成が本格化する見通しだ。
首相は11月末から、アラブ首長国連邦(UAE)で開かれる「国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)」への出席を検討している。12月16〜18日には日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の特別首脳会議が控えており、外交日程が立て込んでいることも踏まえたとみられる。
首相は9月に内閣改造を行って政権浮揚を図ったが、自民党は10月の衆参2補欠選挙で「1勝1敗」と苦戦を強いられた。10月下旬には、山田太郎・前文部科学政務官と柿沢未途・前法務副大臣が辞任に追い込まれるなど政務三役の不祥事が続いていた。  
●総理や閣僚らの“給料アップ”分は自主返納へ 岸田総理、年内解散見送り 11/9
岸田総理は、年内に解散総選挙を行うことを見送る方針を固めました。内閣支持率が過去最低を記録する中、自民党内からは「選挙は新しい顔で臨んだ方がいい」などの声もあがっています。
岸田総理「まずは経済対策、先送りできない課題一つ一つに、一意専心取り組んでまいります。それ以外のことは考えておりません」
けさ、記者団から解散総選挙について問われ、「まずは経済対策」と強調した岸田総理。早期の解散総選挙に打って出るタイミングを模索し続けていましたが、事実上「年内見送り」を表明した形となりました。
9月に行われた内閣改造で、岸田総理は政権浮揚をねらったものの、不発に終わりました。政府関係者によりますと、この頃にはすでに解散見送りの方向に気持ちが傾いていたといいます。
岸田総理(周囲に)「今は経済対策をやって、経済を好循環に乗せることのほうが大事だ」
そして、今週には与党幹部にもこうした考えを伝えたということです。
当面は経済対策に集中したいとする岸田総理ですが、ここに来て政権の不安定ぶりが目立つようになっています。
立憲民主党 山岸一生 衆院議員「上げるのは違うでしょう。今は政治家の給料を上げるのは違うでしょう」
きのう審議入りした国家公務員特別職の給与法改正案は、成立すれば岸田総理は年間で46万円、閣僚は年間32万円、それぞれ給与を増やす内容が盛り込まれていて、与野党から「国民の理解が得られない」などと批判を浴びました。
松野博一 官房長官「今回の給与増額分を全て国庫に返納する旨を申し合わせることといたします」
結局、松野官房長官はさきほど、総理や閣僚ら政務三役について、給与の増額分をすべて自主返納すると表明しました。
来年9月の自民党総裁選挙で再選を目指す岸田総理は、引き続き、総裁選前に解散に打って出るタイミングを模索する考えですが…。
自民党 武田良太 元総務大臣「支持率が低い状況での総裁選挙になれば、チャレンジャーのほうにアドバンテージが働きやすい傾向があるんじゃないかなと思います」
岸田内閣の支持率が過去最低を記録する中、いわゆる“非主流派”である二階派の武田元総務大臣は、総裁選で岸田総理以外の候補者が有利になる可能性に言及しました。
自民党内からはすでに「選挙は新しい顔で臨んだ方がいい」などの声も漏れていて、岸田総理の進む道のりは険しさを増しています。
●岸田“デタラメ”減税に身内も嫌気露わ…財務大臣の「原資はない」暴露 11/9
岸田首相の見え透いた人気取りが嫌気され、評判が最悪となっている所得税減税。政府は今月20日に予定する補正予算案の国会提出に向け準備を進めているが、とうとう政府内から「岸田発言」を否定するような動きが出てきた。これは何を意味するのか。いよいよ政権末期だ。
驚きの答弁だった。8日の衆院財務金融委員会。岸田首相は2022年度までの2年間で所得税と住民税の税収が合計3.5兆円増えたことを踏まえ「減税で還元する」と説明してきた。これについて、立憲民主党議員に問われた鈴木俊一財務相は、過去の税収増分は使用済みで、「政策的経費や国債の償還に既に充てられてきた」と答えたのだ。つまり、岸田首相が「還元」と主張するような原資はないと“暴露”したのである。
さらに鈴木大臣は、今回の減税策を実施すれば国債発行額が増えることも明言。つまり借金が膨らむということだ。だったらなぜ首相は「還元」などと言ったのかだが、これについて鈴木大臣は「財源論ではなく、国民に、どのような配慮をするかとの観点」と苦しい弁明だった。
岸田首相がこの1カ月以上こだわってきた「還元」を事実上、否定したわけで、閣内の、それも財務相がこうした答弁をするのは異例のことだ。
実は、8日の日経新聞朝刊に掲載された自民党の宮沢洋一税制調査会長のインタビューの見出しも〈所得減税「還元ではない」〉だった。宮沢氏は、所得減税について、〈「還元」といっても税収は全部使ったうえで国債を発行している。それは還元ではない〉と断言していた。
「財務省」「岸田派」2つの支柱がグラグラ
岸田政権は「財務省政権」と呼ばれるほどに、官邸を固める側近も政策面でのサポートも財務省やその出身者が中心になっている。鈴木大臣は麻生前財務相の派閥に所属し、宮沢氏は財務省OBのうえに岸田首相のいとこで岸田派幹部。そんな身内中の身内が岸田発言を否定とは、減税策があまりにデタラメすぎて、ついにサジを投げたということなのか。「財務省」「岸田派」という岸田政権の2つの支柱がグラついている。
「鈴木財務相、宮沢税調会長という2人がこうした発言をしたのは、『国民に還元なんていう“嘘”をついたら大変なことになりますよ』と財務省に言われたからでしょう。財務省も含め、岸田首相に呆れているということです。今の岸田政権は砂上の楼閣。国民の信頼も失い、ひと押しされたらすぐひっくり返る状態にまできています」(政治評論家・野上忠興氏)
自公のズレも露呈
連立を組む公明党も岸田首相との一蓮托生を避けようとしているのか、所得減税について「1年限りと今から決め打ちする必要はない」「所得制限は設けるべきではない」と主張し、自民党とのズレが目立つ。8日は世論の猛反発を招いている「閣僚の給与引き上げ法案」の凍結まで口にし始めた。
財務省、岸田派、そして公明党と身内が首相の足を引っ張る断末魔。もはや与党議員の大勢は「岸田首相、自分から辞めてくれ」と願っているのではないか。政権は内部から崩壊し始めた。
●岸田首相 年内解散見送り 支持率低迷・所得減税評価されず 11/9
岸田首相は、年内の衆議院解散・総選挙を見送る意向を表明した。
岸田首相「まずは経済対策、先送りできない課題1つ1つに一意専心、取り組んで参ります。それ以外のことは考えていません」
年内の解散も視野に入れていた岸田首相だが、内閣支持率の低迷に加え所得減税も評価されず、決断を迫られた形。
関係者によると、与党幹部にも経済対策などに専念する考えを伝えたという。
立憲民主党・泉代表「常に『場当たり的』ですね。では、今まで経済の立て直しに専念していなかったんですか」
日本維新の会・馬場代表「政務三役の不祥事やスキャンダルというものが、次から次へと出ている状況だ。国民に信を問える状況ではない」
こうした中、政権と距離を置く自民党の菅前首相や二階元幹事長らが9日夜、東京都内で会談した。
党内の情勢についても意見交換したものとみられる。
● 年内解散見送り表明、首相「経済対策に一意専心」 11/9
岸田首相(自民党総裁)は9日、年内の衆院解散・総選挙を見送ることを事実上表明した。「経済対策、先送りできない課題一つ一つに一意専心、取り組んでいく。それ以外のことは考えていない」と述べ、物価高などの対応に集中する考えを示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。
9月の内閣改造後、法務副大臣と文部科学政務官が辞任に追い込まれるなど、新体制では不祥事が相次いでいる。首相は物価高対策で所得税と住民税の定額減税を打ち出したが、国民の受け止めは厳しく、内閣支持率は低迷したままだ。
首相は来年9月の任期満了に伴う党総裁選での再選を目指し、解散戦略を練り直す。解散時期は来年度予算や税制関連法が成立する来年3月以降が有力となる。それまでの間、経済再生や賃上げに注力し、政権の立て直しを図る考えだ。
解散の見送りは、年末に向け、外交日程が続くことを考慮した面もあるとみられる。首相は11月末から、アラブ首長国連邦(UAE)で開かれる「国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)」への出席を検討している。12月16〜18日には、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の特別首脳会議が東京で開かれる予定だ。
●「しっかりしろ」「信念を強く持ってほしい」最近の総理に街の声… 11/9
岸田総理は、年内に解散総選挙を行うことを見送る方針を固めました。何をやっても裏目に出てしまう最近の岸田総理について、街の人は?
支持率急落で?解散は“見送り”
加藤シルビアキャスター:
年内の解散見送りということを固めた岸田総理ですが、まずは支持率の推移を見ていきたいと思います。
去年の8月には6割ほどあった支持率ですが、徐々に下がり、直近では29.1%と過去最低となっています。
さらに3月にはウクライナの訪問、5月にはG7広島サミットが行われ、少し支持率を持ち直した場面もありました。このとき“解散に含みを持たせる発言”があったということで、永田町には解散風が吹きました。
しかし、直近の支持率の影響か、岸田総理は年内の解散を見送る方針を固めたということです。
さらに今国会に政府が提出している給与アップ法案について、総理の給与やボーナスなど合わせて年間46万円増えるという法案ですが、これについて野党側から反発が相次いでいます。
今月1日には、日本維新の会の音喜多政調会長が「到底国民の理解は得られません」と発言。これに対し「不信を招かないよう努力を続けていきたい」と岸田総理は話していました。しかし、法案の見直し、取り下げなどについての言及はありませんでした。
8日は衆議院で審議入りしたこの法案、柚木議員は「本当に耳を疑ったどういう感覚をしているのか」と反発は相次いでいましたが、9日、松野官房長官は給与の増額分を全て国庫に返納すると表明しています。
総理の給与増街の声は?
加藤キャスター:
こうした最近の岸田総理について、街の声を聞きました。
「給与を上げるといったり返すといったり・・・信念を強く持ってほしい」
「軸がぶれている。国民のために力を注いでほしい」
「リーダーとしての信念があるのか?しっかりしろと背中をたたきたくなる」
このような声がありました。
ホラン千秋キャスター:
今、岸田総理の頭の中にはどんな思いが去来しているのでしょうか。
星浩コメンテーター:
政権浮揚をして解散をして、もう少し自前の政権を作りたい。
それから様々な政策をやるにも、強力な体制を作りたいという気持ちはあったのですが、この間やることなすこと全て裏目に出てますので、この状況で解散をしたらもう自民党は負けてしまって、場合によっては政権を失うということもありうるので、これはできないなという急ブレーキをかけたと。
次のチャンスを来年考えようかと少しクールダウンしているところじゃないですかね。
井上貴博キャスター:
“中継ぎ政権”なんて言われる中で、岸田さんがついて、年内解散ができなくなったことは痛手だと思いますが、来年について考えると、例えば6月の会期末でタイミングをどう図るのか、岸田さんがそのタイミングをどう図っているのか。
また自民党内で岸田さんおろしと言いますか、ポスト岸田さんだとすると誰なのか、そういう話が上がっているのかっていうことに関してはいかがですか。
星コメンテーター:
例えば昔の小泉さんとか、元々想定されていなかった人が急速に出てくるっていうことだってよくあるパターンですので、岸田さんが今の20%台の支持率だと、やはり別の人で選挙に臨みたいなというのは自民党の中で相当強まってきます。
そうなると、誰でもいいというわけにもいかないでしょうけど、それなりの人ならもうポスト岸田の有資格者ということになると思います。
井上キャスター:
来年あたり出てくるってことですね。
星コメンテーター:
むしろ早いんじゃないでしょうか。来年の春ぐらいにはもう出てくるでしょうね。
支持率狙いの「憲法改正」?
加藤キャスター:
支持率が低迷している中で、もう一つ、注目されている発言がこちらです。
岸田総理
「憲法改正を実現したいという思いはいささかも変わらない。任期中に最大限努力する」
と発言がありました。これにつきまして、星さんに聞きました。
星浩氏
「保守層狙いの発言。そもそも改憲派と思われていない。支持率アップにはつながらないのでは」
ということでした。
ホランキャスター:
星さん、この動きとスケジュール感について、本当にどれだけ実現可能なのか、するべきかどうかなどはいかがでしょうか。
星コメンテーター:
安倍政権のときは、安倍さんはどちらかというと保守派右派だったので、政権の調子が悪くなると右バネって言いますか、右エンジンをふかして民主党政権の批判をしてみたりして立て直してきました。岸田さんもその真似をして右エンジンを吹かすために憲法改正も考えているということですけど、岸田さんは元々あんまり憲法改正に熱心に取り組んできたとは誰も思っていないですので、右エンジンをふかそうとしても空ぶかし状態になってしまっていいて、なかなか党内からも求心力は回復していかないという状況だと思います。
井上キャスター:
そもそも改正するしないに関わらず議論が深まっていないので、それどころじゃないですよね。
星コメンテーター:
物価高や生活が苦しい中で、憲法改正どころじゃないというのは国民の意識でしょうね。 
 11/10

 

●「先憂後楽」岸田首相に欠ける資質 「道半ば」でも給与は上げる 11/10
お客様から預かったクルマにわざと傷をつけて修理代金を増やしていた、と問題となったビッグモーター(BM)。そんな違法行為を知りながら、他社に先駆けてBMとの保険契約を再開した損保ジャパン。契約再開を主導したのは社長だった白川儀一氏とわかり、社長を辞任。これにて一件落着かと思われたが、終わらなかった。金融庁は損保ジャパンの親会社SONPOホールディングスに立ち入り検査に踏み切った。
「親会社の責任」が焦点となっている。なぜか? SONPOホールディングスの櫻井謙吾グループCEO兼取締役兼代表執行役会長のワンマン体制に問題の根源がある、と金融庁は疑っている。ワンマンぶりの表れが「飛び抜けて高い」とされる櫻井氏の報酬だ。損保業界首位の東京海上HD小宮暁社長の報酬が1億7000万円程度であるのに、業界3位のトップ櫻井氏は4億7000万円(2023年度)。この「不釣り合いぶり」が業界で話題になっていた。
白川社長は親会社の意向に沿ってBMに甘い決定としたのではないか。櫻井ワンマン体制は4億7000万円の報酬に値する立派な経営をしていたのか、金融庁の検査の注目が集まっている。
燃え広がる前に手を打つ「自主返納」
そんな時、国会で問題にされているのが「首相の給与」。年額4015万円を4061万円に引き上げることが妥当か、が議論されている。SONPOホールディングス櫻井会長の10分の1にも満たない給与でわが国の総理は働いている。政治家の報酬とはなんだろうと、と考えさせられる課題でもある。
首相の給与は「二層構造」になっている。国会議員としての歳費・年2187万8000円(月額129万4000円+期末手当635万円)。これに首相という職務に対する報酬1928万円が上乗せされ、現行の給与は4015万円。だが満額が支給されているか、というとそうではない。様々なことで自主返納が繰り返され、実額は2811万円というのが現状だ。
「法改正で増額となっても実際の取り分は2843万円だけ」というのが首相側の言い分だ。責任の重さを考えると、決して高額とは言えないだろう。その一方で、首相の報酬は国民の税金で賄われる。国民の暮らしぶりとかけ離れた報酬というわけにはいかない。労使交渉のない政治の世界だ。
そこで、よりどころになるのは公務員給与についての人事院勧告である。
人事院は8月、一般の国家公務員に対する給与引き上げを勧告した。これに併せ高級官僚である「国家公務員特別職(審議官以上)」の給与も上げようというのが今回の給与改正法案だ。ところが「なんでいま首相の給与を上げるのか」という声がわき上がり、野党は「暮らしの悪化に国民が苦しんでいる時、首相や閣僚が自分たちの給与を増やすことに理解が得られるのか」と批判する。
地元の区長選で現金を配り公選法違反が疑われている柿沢未途法務副大臣、女性と不適切な交際が明らかになった山田太郎文部科学政務官。任命したばかり政務三役に不祥事が続き、政権への信頼は揺らいでいる。支持率が下降する中で、「お手盛り賃上げ」は岸田内閣への不信をますます強めかねない、との配慮から、首相官邸は「増額分は自主返納」を打ち出した。世間を騒がせる話題は燃え広がる前に手を打つ、という対応である。しかしまたいつもの「自主返納」である。返納すれば文句はないだろ、という対応である。
暮らしの崩壊、現実に不満抱く国民
今の臨時国会で政府は17兆円という巨額の経済対策を予算化した。「所得税減税」として1人当たり4万円を税から差し引く。納税していない低所得者に対しては1世帯ごと7万円を給付する。そのほか、ガソリン価格の高騰を抑えるため石油元売業者に補助金を出すなど「上昇する物価への対応策」に巨額のカネを使う。
ことほどさように、政府が今取り組んでいるのは「物価対策」だ。賃金が少しばかり上がっても物価上昇に追いつかない。実質賃金は18か月連続してマイナス。賃金を上げることが政治にとって重要な課題になっている。最低賃金や公務員給与の引き上げはそんな文脈から行われてきた。「特別職給与も増額」も、この流れに沿っているように見えるが、大間違いだ。
高級官僚や閣僚級政治家・首相は「お上=この国の支配者」と人々は見ている。自分たちが苦しい時、なぜ支配者がお手盛りで給与を膨らますのか、と複雑な思いになる。「4000万円ももらっていません」「これまでも自主返納してきました」「今回も自主返納します」と言っても、怒りは収まらないだろう。
非正規で十分な給与が得られないから、夜はバイトする、食料品の値上がりで1日2食にした、こどもの給食費が払えない――などという暮らしの崩壊が始まっている。労働組合の連合が発表する春闘の賃上げ率は大企業の数字で、中小企業の賃上げは定率にとどまっている。強い者だけ給与が上がる、という現実に不満を抱く人にとって「返納するからいいじゃない」「首相の給与は決して高くない」と言われても納得いかないだろう。
世間常識がわからないのが岸田首相最大の欠陥
「先憂後楽(せんゆうこうらく)」という言葉がある。「世の中に先んじて事態を憂い、皆が安心きるようになった後に楽しむ」という指導者の心得を説いたものだ。
物価を上回る賃金が政治課題だ。それには物価を抑える政策が欠かせない。インフレの主要因である円安に歯止めをかけることが必要だ。そして賃上げ。不当に引き下げられた労働分配率を拡大する。大企業には、たまった内部留保を吐き出させる。中小企業の賃上げは、系列を通じた搾取(さくしゅ)をやめさせ、正当な対価を払わせる「下請け構造の是正」が急がれる。円安を誘導する「内外金利差の拡大」の是正には、日銀の政策金利を引き上げることも課題だろう。
首相が激務であることはほとんどの人は知っている。求められているのは、忙しそうにすることでなく、働いた成果だ。「特別職の賃金改定」は、賃金上昇が物価を上回ったことを見届けてから「おかげさまで」と行えばいい。
政策の未達はいつも「道半ば」と言い訳されてきた。道半ばでも給与だけは上げる、というのは理屈が通らない。「聞く耳」はあっても理解する神経がないのでは困る。世間常識がわからないことが岸田首相最大の欠陥ではないか。
●きょう午後閣議決定の補正予算案、経済対策への本気度は? 11/10
きょう午後閣議決定の政府の補正予算案。経済対策の裏付けとなるもので、関係費は一般会計で13兆円を超えます。
「国民に還元する」
「物価高対策を重視する」
岸田総理が声高にアピールしてきた経済対策ですが、補正予算案からはその本気度は伝わってきません。
岸田総理[2日]
「この政権は何よりも物価高対策、そして経済対策を重視しているとの決意を申し上げました」
先週、経済対策で“何よりも物価高対策”を重視すると強調した岸田総理。
その裏付けとなる補正予算案の13.1兆円の内訳を見てみると、岸田総理が“何よりも重視”と強調する物価高対策は2.7兆円で、最も大きな割合を占めるのは国土強靭化で4.3兆円です。
国民が物価高にあえぐなか税収が増えた分を還元するとしながら、一番国民が困っている物価高対策より、結局いつもと同じ公共事業などに、より多くを割り当てることになります。
物価が上がるなか、負担増に苦しむ国民の方を向いたお金の使い方なのか。総理がどれだけ物価高対策を重視しているか伝わってこない補正予算と言わざるを得ません。
●「ばら撒きメガネ」岸田首相が海外ばかり経済支援する理由は? 11/10
インボイス制度をはじめ様々な増税策を実施・検討していることから、岸田文雄首相をSNSで「増税メガネ」と揶揄されている。また、海外に積極的な経済支援を実施していることから、「バラマキメガネ」と呼ぶ声も少なくない。
実際、ASEANに2兆8000億円の投資したり、アフリカに3年間で4兆円の支援を実施したりなど、大胆かつ積極的な海外支援が岸田政権では目立っている。岸田首相がなぜ海外への経済支援を繰り返すのか。経済的に困窮している人が少なくない昨今、今すぐに講ずべき政策などを経済アナリストで『「国の借金は問題ない」って本当ですか?〜森永先生!経済ど素人の私に、MMTの基本を教えてください。』(技術評論社)の著者・森永康平氏の意見を聞いた。
軍事力や資源がないからこその一手
故安倍晋三氏が首相の時から、フィリピンに5年間で1兆円規模の支援実施を決めたりなど、国外への経済支援は数多く実施されてきた。そもそも、日本が発展途上国に対して経済支援することの妥当性について聞くと、「国際社会における日本という立場から考えれば、それなりの合理性や正当性はあると考えます。かつては日本も被援助国であり、相互扶助という観点を忘れてはいけません」と一定の理解を示す。
「特に国際社会が平和になり、情勢が安定することは日本にとっても国益となります。軍事力や資源があれば、交渉を有利に進めたり、外交カードにできますが、日本にはどちらもありません。ですが、発展途上国に対する支援を実施して国際的な格差を是正できれば、争いが生じる可能性を低下させ、軍事力の影響力を抑えられます。
そして、その立役者が日本であれば、国際的な存在感も高まり、外交において有利に交渉を進められるでしょう。要するに外交をうまく進めるためのカードとして、海外援助の重要性は他国以上に高いのです」
「日本だけバラ撒いている」ワケではない
ちなみに日本以外の先進国でも発展途上国に向けた支援策は講じられているのか。
「開発援助委員会(DAC)30か国のODA(政府開発援助)を実績支出純額(ネット)でみてみると、 2021年の約1850億ドル(確定値)から、2022年は約2060億ドル(暫定値)に増加しています。『日本だけが海外にお金をバラ撒いている』という評価は誤りです」
とはいえ、岸田政権になって以降、経済支援が活発になっている印象を受ける。その背景について森永氏は「コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻、世界的な食料・エネルギー価格の高騰、イスラム過激派によるテロ、地球温暖化、難民の増加など、経済支援をする理由が増えたことが大きいです」と回答した。
「国内の経済政策があまりにもお粗末」だから…
国際情勢が揺れ動くタイミングで岸田内閣が発足されたため、「岸田首相は海外へのバラマキを続けている」というイメージが根付いてしまったのかもしれない。実際、森永氏も「国際的な観点からすれば、非難するような話でもないと思います」と話す。
ただ、「海外への経済支援に批判が殺到するのは、国内における経済政策があまりにもお粗末だからでしょう」と「バラマキメガネ」と首相が揶揄されている背景を口にして、日本経済を立て直すために必要な政策を提案する。
「一番シンプルなのは消費減税です。少なくとも現在も軽減税率の対象となっている食品などをより減税したり、もっと言えば一時的に食品だけは消費税を廃止しても良いと考えています。また、社会保険料の減免を実施すれば、現役世代の負担を減らすことが可能です。少子化対策につなげることができるため、検討する必要があります」
現在、租税負担率と社会保障負担率を合計した “国民負担率”は46.8%と非常に高い。働いても給料の半分を税金などに取られている現状であり、減税や社会保険料の減免などによって生活が安定する国民は多いだろう。早急に検討してほしい策と言って良い。
消費税の減税が遅々として進まないのは…
消費税減税を求める国民は以前から少なくなかったが、政府は消費税は減税どころか増税する方向で検討しがちである。なぜ前向きに議論されないのか。
消費税減税のハードルとして、「『政府は収入の範囲内で財政政策をすべきである』という考えの“財政均衡主義”に陥っているため、基本的に歳出は税収の範囲に収めたがっています。そのため、何かをする時は『必ずどこかを削るか』『税率を高めたり、新たな税を創設したりなどして税収を増やそう』という方向になるのです」と説明。
「知識と行動力を備えた政治家」を国会に送り込むには…
それでは政府が財政均衡主義を脱するために、私達ができることは何なのか。
「民主主義国家なので、国民としてできることは、正しい経済政策を実現できるだけの知識と行動力を備えた政治家を国会に送り込む必要があります。しかし、現状は多くの国民が投票に行きもしません。加えて、『誰に投票すべきなのか』を自らの頭で考えられている人ばかりとは言えません。とにかく国民も経済について知識を身につけなければいけないと思います」
次の大きな選挙は2025年の衆議院選挙が予定されている。一人ひとりの有権者が自分の頭でしっかりと考えたうえで票を投じることこそが、今の苦しい生活を脱するために不可欠な要素。たかが一票と思わず、その重みを大切に扱いたいところだ。
●年内解散できなかった岸田政権の運命はもう風前の灯火なのかもしれない 11/10
解散「しない」でなく「できない」
岸田文雄首相は9日、「経済対策に取り組む。それ以外のことは考えていない」と述べて年内解散しないことを明らかにした。だが「しない」ではなく「できない」であることを誰もが知っている。
岸田氏が解散を「できない」のはこれで2度目だ。前回は通常国会終盤の6月。その時は筆者の元に旧知の官僚から、「明日解散。投票日は7/23」というガセ情報が寄せられたくらいだったから、状況はかなり緊迫していたと思う。
しかし今回は1週間前に、ある野党幹部から「まだクリスマス選挙(12/24投票)の線が消えてないんだよな」と半信半疑の様子で言われたくらいで、永田町はずっと静かだった。
と言うか1人の首相が解散風を吹かせた後に、「やっぱりしません」とわざわざ宣言することを短期間に2度もやったというのはあまり記憶にない。これはあまりカッコいい話ではない。
これで岸田氏のリーダーシップにかげりが出るのは当然だろう。評判の悪い所得税減税については引き続き批判されるし、本来やらないといけない防衛力強化のための増税や、少子化対策の財源としての社会保険料の引き上げの議論などは、袋叩きにされて支持率がさらに下がってしまうので、進まなくなるのではないか。
岸田政権はドツボにはまっている
それにしても首相の後見人である麻生太郎自民党副総裁の義弟、鈴木俊一財務相の「税収増分はすでに使っている」発言や、首相のいとこ、宮沢洋一税調会長の「所得減税は当然一年限り」という発言はなぜ出てくるのか。
2人とも正しいことを言っているのだが、このタイミングで「身内」がわざわざ言わなくてもいい。特に宮沢氏の「当然一年限り」というワードは「反岸田」の人たちにとって実に癇に障ると思う。いくら正しいことを言っても政権がコケたらどうしようもないのに。
首相や閣僚の給与が上がる問題も、公務員の賃上げのために必要なのだからやるべき話なのだが、なぜ先に「私たちは返納します」と言わないのか。首相の年収が46万円上がったら何も知らない人は怒るし、野党やメディアは大喜びで突っ込んでくるくらいわかりそうなものだ。
笑ってしまったのは税金を担当する財務省の副大臣が「仕事が忙しくて税金を滞納していました」という話だ。これは悪い冗談かと思った。しかも辞任は否定した(10日現在)。これはヤバい。
つまり岸田政権は今やドツボにはまっている。何をやっても支持率は上がらない。逆に何か少しでも国民の気に障ることをやると支持率は下がる。野党もメディアもそれを待っている。
先行きは全く読めない
岸田氏が今後やるであろうことは、賃上げへの努力を続ける、ガソリン、電気代への補助金など家庭へのバラマキも盛大にやる。でも増税や社会保険料の値上げはできないし、歳出削減も必ず文句言う人がいるのでできない、つまり国債をひたすら出し続けるしかない。
そうやって来年9月の自民党総裁選までに支持率が上がって解散するチャンスをじっと待つのだ。6月に所得減税が実施され、支持率が上がれば解散という声もある。
幸い日本経済は上向きだ。インバウンドが戻りGDPギャップもプラスに転じたことで、これから供給側を強くすれば経済はさらに良くなる。株も高く、税収も今後数年は上振れるらしい。物価高も少し落ち着き始めた。来春には実質賃金がプラスになるとの予想もあり、そうなれば国民の気分はずいぶん変わるだろう。
だが岸田氏にもう解散する力は残ってないと思う。選挙の顔になるのはもう無理だからだ。あとはいかにポスト岸田を決めるかだ。しかし最有力とみられる茂木敏充幹事長は「令和の明智光秀にはならない」と述べ、不出馬を示唆している。
他の河野太郎、高市早苗、石破茂氏らは議員票を集めるのに苦労している。岸田氏がレームダックになりつつあるのに次を決められない。これでは先行きが読めない。
このままでは総裁選は岸田氏再選となるかもしれない。そのまま任期満了まで行って岸田氏かあるいは誰か弱い首相が衆参ダブル選挙をやり、もし与党が過半数割れになったら日本維新の会や国民民主党に連立入りしてもらう、先行きについては今のところそれくらいしか思いつかないのだ。
●補正で財政投融資8860億円追加、供給網強化へ金融支援=政府筋 11/10
政府は、2023年度の財政投融資計画を見直し、新たに8860億円を追加する方針を固めた。半導体など重要物資の供給力強化や先進的な物流施設の建設を視野に、政府系金融機関を通じた金融支援を拡充する。複数の政府筋が明らかにした。
年度当初の財投計画は16兆2687億円だった。今回の改定で計画額は17兆1547億円となる。23年度補正予算案の閣議決定と併せてきょう発表する。
岸田政権が重要課題に掲げる国内投資の促進では、重要物資の供給力強化や先進的物流施設・データセンター建設のほか、再生可能エネルギー供給に向けた送電網整備に、日本政策投資銀行を通じて1500億円の資金供給を行う。
グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国からの重要資源確保に向けては、日本企業の供給網を強化するため、国際協力銀行を通じた3000億円の金融支援を追加する。
併せて途上国との連携を促進するため、インフラ輸出に対する4060億円の円借款を行う方針だ。
●岸田首相の補正予算案に込めた狙い デフレ脱却「レガシーになる」 11/10
岸田文雄首相は定額減税や低所得世帯への給付が柱の経済対策の裏付けとなる令和5年度補正予算案を臨時国会で早期成立させ、最重要課題に位置付ける「デフレからの脱却」の達成を目指す。首相は、バブル崩壊以降30年続くデフレからの脱却が「レガシー(政治的遺産)」となることを強く意識しており、当面は解散カードも封印して経済に注力する構えだ。
「来年は賃上げをどんどん盛り上げていくつもりだが(ウクライナ情勢など)外的要因で物価高は続くので消費に回らない可能性がある。デフレに後戻りしないために思い切った対策が必要だ」
首相は補正予算案の閣議決定にあたり、周囲にそう語った。
デフレ脱却の兆候を示すのは、首相の旗振りで機運が高まった賃上げだ。今年の春闘では約30年ぶりの水準となる3・58%の賃上げが実現した。
一方で物価高に収束の気配はなく、来年以降に賃上げが軌道に乗っても消費は後退しかねない。そこで家計を下支えし、消費を促すための複合的な手当てとして用意した策が定額減税や給付だ。首相は「賃上げや減税、さらにNISA(少額投資非課税制度)の拡充などで一気に消費につなげる」と語る。
ここに来て、首相は年内の衆院解散を見送る方針も固めた。政権内には「国民に『解散のための減税ではないか』と思われ、経済対策そのものが不評を買っている」(高官)という危機感がある。解散という最強カードを当面封印したのは、経済最優先で国民生活の向上に注力する姿を見せるためでもある。
減税などを打ち出す過程では「首相が何をしたいのか全く伝わらない」(自民党の世耕弘成参院幹事長)と身内からも厳しい評価が出た。岸田政権は令和3年10月の発足以降、防衛力の抜本強化や原発再稼働など、歴代政権が積み残した懸案を片づけてきたが、その反動で「脱力状態になってしまった」(政府関係者)との指摘もある。
ただ、首相は周辺に「減税したいんじゃない。デフレから脱却したいんだ。それはすごいレガシーになる」と語る。自らの手でデフレ脱却を導くためにも政権基盤の立て直しは急務となる。
●神田副大臣進退で政権苦慮=立民代表「補正審議は不可能」 11/10
税金滞納が発覚した自民党の神田憲次財務副大臣の扱いに岸田政権が苦慮している。不祥事で政務三役の辞任が相次ぐ中、さらなる「辞任ドミノ」は避けたいのが本音。攻勢を強める立憲民主党は、続投したままでは経済対策などを巡る国会審議に影響しかねないと警告しており、岸田文雄首相の判断が焦点となっている。
神田氏は自身が代表を務める会社が保有する土地・建物について、固定資産税の滞納により過去4回、差し押さえを受けたことを認めた。10日の衆院内閣委員会で立民の本庄知史氏から詳細な説明を求められた神田氏は「精査している」と繰り返した。進退に関し「言及を控えたい」と述べ、歯切れの悪い答弁に終始した。
10月下旬には山田太郎氏(自民)が不倫問題で、柿沢未途氏(同)は公職選挙法違反の疑いのある事件に絡み、それぞれ文部科学政務官と法務副大臣を辞任。内閣支持率が低迷する首相にとって「3人目の辞任」となれば打撃は必至だ。
松野博一官房長官は10日の記者会見で「財務副大臣の自覚を持ち説明を尽くしてもらいたい」と推移を見守る考えを示した。自民幹部は神田氏について「首相官邸は『法には触れていない』と線引きしており、辞任はない」と語った。
新たな「追及カード」を手にした野党は勢いづく。立民の泉健太代表は10日の会見で、神田氏の即時辞任を要求。応じなければ、政府が今国会成立を目指す2023年度補正予算案の審議は「不可能だ」と明言した。安住淳国対委員長は「なぜ『適材適所』なのか首相に聞きたい」と、首相の任命責任を問う考えを表明。国民民主党の榛葉賀津也幹事長も「早く辞めた方がいい」と断じた。 
●『モーニングショー』呆れてものが言えない…4回繰り返し「バカなの?」 11/10
自民党・神田憲次財務副大臣の会社が、過去に税金を滞納し、差し押さえを受けていた問題が発覚し、翌10日放送の「羽鳥慎一 モーニングショー」でもこの話題について取り上げたという。
コメンテーターでタレントの長嶋一茂は「呆れてものが言えないとはこのことで、どうなってんですかね」と口火を切ると、岸田文雄総理の任命責任について言及。身辺調査の甘さを指摘し、「みんな納税している中、財務副大臣でしょ? 税理士。どうなってんのかな」と疑問の声をあげていたとのこと。
その後、テレビ朝日元社員でコメンテーターの玉川徹氏が、4回の滞納について「1回は忘れるってことあるかもしれないけど、その後、何度も電話があって差し押さえされて、お金払ってまた差し押さえされてって、4回繰り返しているんでしょ? 全部それが“忘れた”だったら国会議員としても資質を疑いますよ」と批判していたといい、さらに11月8日には鈴木俊一財務大臣が、過去の税収増分はすでに使用済みと答弁したことに触れて、「減税は余ったから返しますって話だったのが、じつはそうじゃなくて、借金して減税しますって話でしょ?」と指摘し、「悪い冗談としか思えなくて、むしろ呆れて笑ってしまうというか、お笑い岸田内閣って感じになってる」とコメントすると、出演者からは「なんなんだ」「なんなんだろう」「なんなんだ」とツッコミの声が上がっていたという。
これに一茂は「バカなの?」と直球発言。「バカなの?ってことでしょ、だって。入ってくるお金の計算ができていないって話でしょ」と切り捨てていたという。
「一茂さんの『バカなの?』というツッコミにはネット上でも話題となり、『一茂にバカ呼ばわりされる岸田内閣』『岸田にバカって…その通り』などと賛同の声が続々。確かに税収増の3.5兆円を還元すると大風呂敷を敷いたものの、じつは政策的経費などで使い切っていたことが発覚。減税のための国債発行となると、ますます国の借金は増える一方で、近い将来の大増税につながることは必至。一茂さんが『バカなの?』と批判するのも理解できます」(メディア誌ライター)
岸田政権の支持率の浮上は望めそうにないと「アサ芸ビズ」が報じている。
●「ポスト岸田」有力候補、政治のプロが分析 高市氏・萩生田氏・茂木氏… 11/10
岸田文雄首相が「年内の衆院解散見送り」の意向を固めたことで、自民党内で首相の求心力低下が懸念されている。何度も解散の機会を逃したことで「決断できないリーダー」というイメージが定着し、内閣支持率の下落を含めて「選挙の顔」への不信が高まりかねないのだ。政権浮揚策が相次いで不発となるなか、政局は今後、「岸田離れ」「岸田降ろし」に発展していくのか。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増すなか、日本の国力を高めて、平和と安定を維持できるリーダーは誰なのか。永田町を知り尽くした政治のプロに、「ポスト岸田」を分析してもらった。
「まずは経済対策、先送りできない課題一つ一つに一意専心取り組む。それ以外のことは考えていない」
岸田首相は9日朝、官邸で報道各社のインタビューに応じ、こう語った。その後、自民党の麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長ら幹部5人と党本部で会談し、「解散するなど、ひと言も言っていない」といい、経済対策に注力する考えを伝えた。
自民党ベテラン議員は「岸田首相は、常に解散のタイミングを模索していたが、自ら機会を見送り、四面楚歌(そか)になった。政権は『レームダック(死に体)化』してきた」とあきれた。
報道各社の世論調査で、岸田内閣は「危険水域」とされる支持率30%以下を6社が記録している。国民の「岸田離れ」は明白だ。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「自民党内で『岸田首相の顔≠ナは選挙を戦えない』との声が強まっている。こうした流れが『岸田降ろし』につながるのは確実だ。次期総裁に求められるのは『選挙に勝てる顔』だ」と強調する。
あくまで、岸田首相が次期総裁選出馬を見送るとして、「ポスト岸田」の顔ぶれ、構図はどうか。
鈴木氏「岩盤保守層の動向も重要」
鈴木氏は「まず、前回の総裁選で敗れた高市早苗経済安保相は『保守派の顔』として名乗りをあげる。河野太郎デジタル相も出るだろう。国民の知名度が高く、一部に待望論≠ェある石破茂元幹事長を加えた3氏が争う構図が予想される。勝敗のポイントは、選挙の強さに加え、岸田政権の官僚主導政治を、安倍晋三、菅義偉両政権が進めた政治主導に引き戻せるか。また、岸田政権で離れた岩盤保守層の動向も重要だ」という。
安倍イズム継承するのは誰だ
岸田政権は、岸田首相の岸田派と、麻生太郎党副総裁の麻生派、茂木敏充幹事長の茂木派が主流3派だ。これに対し、菅前首相のグループと、二階俊博元幹事長の二階派が反主流派。その中間が、安倍元首相の率いた最大派閥の安倍派とされる。
茂木氏や、岸田派の林芳正前外相、安倍派の萩生田光一政調会長と西村康稔経産相の動きも注目だ。
政治評論家の有馬晴海氏も「『ポスト岸田』の条件は『選挙で勝てるか』だ。自民党はガラリと雰囲気を変えなければ選挙は勝てない。上川陽子外相は安定感があり、仕事も優秀だ。『女性初の首相』なら、新味が出る。『自民党の救世主』として推す声がある。一方で、岸田政権を支えてきたのは、麻生、茂木両氏だ。党内の政治力学を踏まえれば年齢的にも、順番的にも茂木氏だろう」と語る。
ただ、日本は国内外で難局に直面している。旧来の政治力学で、この逆風を突破できるのか。識者が求める「ポスト岸田」の条件は何か。
国際政治に詳しい福井県立大学の島田洋一名誉教授は「国益を第一に『地球儀を俯瞰する外交』を確立した安倍氏の外交路線を取り戻さねばならない。安倍氏が育てた萩生田氏、高市氏に絞られてくる。覇権を強める中国への対処は急務だ。日本人拉致問題の解決に応じず、核・ミサイル開発を進める北朝鮮も危機的だ。ロシアも加えた三国は連携して日本への圧力を強めている。日米安保を強化するため、米国保守派との連携がカギとなる。安倍氏は、それを重視していた。次期首相は、普遍的価値観で一致する各国保守派とも足並みをそろえることが必要だ」と語った。
物価高や負担増にあえぐ国内経済対策の観点からはどうか。
経済学者で上武大学の田中秀臣教授は「主流派の茂木氏が現実的だが、茂木政権ではアベノミクス継承はさらに薄れ、財務省に近い経済政策が採用されかねない。『岸田政権の再来』のような政権になる。保守派では、西村氏は海外人脈が太く国際感覚にあふれ、資源外交、経済安全保障などで責任を果たせそうだ。高市氏は、安倍氏の精神を純粋に受け継ぎ、保守派の期待も高い。萩生田氏の経済政策も問題ないだろう」と分析した。
「ポスト岸田」の動きは本格化するのか。
前出の有馬氏は「衆院選の大敗北など、よほどの失態や、辞職でない限り、首相・総裁を強引に交代させるのは難しい。ただし、『政界の一寸先は闇』だ。岸田首相の周囲から公然と反旗を翻す雰囲気が出てきており、油断のならない情勢だ」と語った。
●赤字国債6.3兆円増発=補正予算、財政悪化一段と―10日閣議決定 11/10
政府は10日、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」の裏付けとなる2023年度補正予算案を閣議決定する。一般会計の歳出総額は13兆1992億円に上り、このうち7割近くに当たる8兆8750億円を新規国債(借金)の追加発行で賄う。歳入不足を穴埋めするための「赤字国債」が6兆3650億円含まれており、財政に対する信認を低下させる可能性もある。
政府は補正予算案を20日に臨時国会に提出し、月内の成立を目指す。
補正予算案の歳出総額のうち、経済対策に関わる経費は13兆1272億円。物価高に苦しむ家計支援策として、低所得の住民税非課税世帯に7万円を給付するための1兆592億円が含まれる。一方、所得税・住民税を1人当たり計4万円減税する総額3兆円台半ばの定額減税は、補正予算案には含まれていない。減税の詳細な設計は年末にかけて与党税制調査会などで調整する。
歳入には財源として、23年度の税収の上振れ分1710億円、税外収入の上振れ分7621億円をそれぞれ計上。同年度当初予算に新型コロナ対策やウクライナ情勢対応などで計上した計5兆円の予備費のうち、2.5兆円を減額して財源の一部に充てる。大部分は国債で補う計画だ。
国債発行の内訳は、幅広い用途に充当できる赤字国債6.3兆円のほか、インフラなど公共事業費に充てる「建設国債」が2兆5100億円。赤字国債と建設国債を合わせた23年度の新規国債発行総額は44兆4980億円となり、歳入全体に占める国債の割合は34.9%と、依然として借金頼みの状況が続く。
●金利を上げるわけにも、下げるわけにもいかず「苦しい立場」の植田総裁 11/10
ジャーナリストの佐々木俊尚が11月9日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。衆議院財務金融委員会での日銀・植田総裁の発言について解説した。
日銀・植田総裁、「物価見通しに誤りがあったことは認めざるを得ない」と発言
日本銀行の植田総裁は11月8日の衆議院財務金融委員会で、物価上昇率の見通しを繰り返し上方修正していることについて、「見通しに誤りがあったことは認めざるを得ない」と話した。一方、賃金と物価の好循環による物価の押し上げがまだ弱いという部分は「あまり大きく外していない」と強調。こうした見方に基づいて金融政策を行ってきたことに「大きな誤りはなかった」と語った。
飯田) 立憲民主党・階猛議員の質問に対する答弁です。
物価高の原因はウクライナ情勢からのエネルギー・食料の高騰と円安
佐々木) 植田総裁は、物価高の原因が2つあると説明していて、1つはウクライナ侵攻から始まるエネルギーや食料の高騰です。
飯田) ウクライナ情勢の影響。
佐々木) 輸入するものの値段が上がり、それを価格転嫁する、いわゆるコスト高によるコストプッシュインフレの影響です。もう1つは、「賃金を上げると物価も上がる」、「物価が上がると賃金も上がる」という2つの力があるのだけれど、まだ後者があまりうまくいっていない。前者に関しては、ウクライナ侵攻が落ち着つけばエネルギー・食料の値段も少し下がるので「収まっていくだろう」というのが、当初の見通しだったと思います。しかし、それがまったく下がっていない。
飯田) 物価が下がらない。
佐々木) おそらく最大の理由はウクライナ侵攻というよりも、円安が続いているからです。なぜ、こんなに円安が続くのかと言うと、アメリカの長期金利が5%くらいまで上がりっぱなしになっているからです。
ここまで円安が続くとは予想していなかった
佐々木) アメリカやヨーロッパはとても景気がよく、賃上げも進んでいます。その結果、金利を上げないとインフレが収まらない状況になっているので、金利を上げている。この状況が1年ぐらい続いているのです。そうすると、日本だけ金利が低いので、円がどんどん売られていく……ということで円安が続いています。おそらく日銀は、円安がここまで続くと予想していなかったのではないでしょうか。
飯田) 当初は「今年(2023年)の春先、夏前ぐらいにはアメリカが利下げに転じるのではないか」と言われていましたが、どんどんうしろに倒れてきている。
佐々木) 長期金利が5%ですからね。日本だと昭和の時代の金利です。いまは1%未満ですが、昔は銀行口座の金利が5%くらいでした。1億円ぐらい預けておけば、年間500万円ずつ入ってくるから、「宝くじで1億円当たれば一生食っていける」と言われていた時代もありました。アメリカはそのぐらいの金利になっているわけです。
飯田) 5%。
佐々木) 金利が高すぎてクレジットカードの支払いができなくなる人が増えていて、企業の倒産も相次いでいます。最近だと、米シェアオフィス大手「WeWork」が経営破綻しました。オフィス自体がコロナ禍で儲からなくなってきたところに加え、金利の支払いが大変なので破綻してしまった。
金利を上げるわけにも、下げるわけにも維持するわけにもいかず、苦しい立場の日銀
佐々木) かなり激しい状況になっています。金利を上げすぎて、アメリカ経済が一旦失速する可能性もあるわけです。それはそれで別のハレーションが起きてしまう。少なくとも現状の金利が続いている限り、特に日本では、日銀はこれ以上の利上げはしないでしょう。とりあえず長期金利の上限を1%までは認めるという状況であり、金利を上げることはない。金利を上げてしまうと、また日本経済が失速しかねないですから。
飯田) そうですよね。
佐々木) だからと言って、これを維持すると円安が続いてしまう。日銀としては金利を上げるわけにもいかず、下げるわけにもいかず、維持するわけにもいかない。非常に苦しい状況だと思います。
飯田) 政府の政策待ちという感じですが、その部分はどうですか?
佐々木) 賃上げがどうして進まないのかと言うと、当初の見通しとしては、物価が上がれば最初はコストプッシュインフレになるけれど、「上がっても仕方ない」という物価許容度が高まる。そうなれば、それに合わせて「賃上げもしようという話になるはずだ」というのが、当時の日銀の政策見通しだったと思います。しかし、なかなか賃上げが進まない。ユニクロが初任給を30万円にしたように、一部では上がっているのですが、なぜ賃上げが進まないのかをもう少し考えなくてはいけないですよね。
賃金を上げられる企業と上げられない企業で二極化している
飯田) 一方で植田総裁は、賃上げと物価上昇に関し、衆議院の財務金融委員会のなかで「物価と賃金の好循環が少しずつ起きている」という認識を示しました。
佐々木) 大企業を中心に賃金が上がっているところもありますが、建設や物流関係などはコストが強すぎて、価格転嫁してしまったら終わりなので、賃金を上げる余裕がないのです。コロナ禍にK字型回復と言われましたが、いまは賃金(の上昇)がK字になっており、上げられないところと上がるところで二極化しているのが1つの問題だと思います。
転職市場が流動化しない日本
佐々木) もう1つは転職の問題があります。日本はこれまで終身雇用、年功序列で、基本的に転職しない社会でした。「正社員の待遇を安定させる」という意味ではよかったけれど、一方で転職しなければ賃金が上がらないではないですか。日本人は真面目なので、安い給料でも文句を言わず、一生懸命働きます。だから、わざわざ「賃金を上げよう」というモチベーションが経営者にあるかと言うと、よほどいい人でなくては、そう思わないですよね。
飯田) 転職しなければそうなりますね。
佐々木) 例えば、いまは人手不足になりつつあり、中途採用で人を雇わなくてはいけない。「この給料だと、前の給料より下がるので行きません」となれば、賃金を上げざるを得なくなり、転職市場が活発になります。構造的に賃金が上がりやすくなるわけです。
転職希望者が増加 〜転職市場が流動化すれば、賃上げしやすくなる
佐々木) 日本はまだその部分が弱い。ただ、以前に比べれば転職は増えており、ある調査によると転職希望者がここ10年で2割増え、今年は1000万人超えが予想されるそうです。実際に転職する人も300万人以上いて、増えています。昔は「悪いことをして転職せざるを得なくなったから給料が下がる」というようなイメージが強かったのですが、いまは転職すると、約4割の人の年収がアップしているそうです。
飯田) そうなのですね。
佐々木) 年収を増やすために転職する人が増えています。欧米のように「転職を繰り返すことによってキャリアアップしていく」という方向に、日本社会も進みつつあるのです。しかし、全体がそうなっているわけではありません。転職が当たり前になって、転職市場が流動化すれば賃上げしやすくなり、日銀や政府の望む方向に進みやすくなると思いますが、まだ道半ばですね。
1回だけの減税であれば消費にはつながらない
飯田) いままでのデフレ、コストカット至上主義のような状況から一気に流動化してしまうと、底辺への賃下げ競争のようになってしまう部分があった。「いや、雇用流動化と言いましても」と……。
佐々木) 平成における30年の不況の間は、「正社員の身分を守らないと、みんな貧しくなるだけだから」と言われていたわけです。
飯田) 一方、正社員の待遇は維持されるけれど、入り口で門前払いされてしまった非正規労働者たちは、底辺の競争を強いられてしまった。
佐々木) しかし、令和に入ったこの5年ぐらいの間に、日本経済も見通しが明るくなってきています。実際、「投資の神様」と言われるウォーレン・バフェット氏は、日本の総合商社に積極的に投資している。日本株は割安感があるので、世界的に金融市場で注目されている部分もあるわけです。成長のポテンシャルが高いという見方が強くなり、株価も上がっています。この状況であれば、正社員でなくても「別の会社に行って賃上げを狙える」という期待感が高まる。つまり、いちばん大事なのはマインドだと思うのです。
飯田) マインド。
佐々木) 「正社員の身分にしがみつかなければ給料が下がる」と思うか、「転職すれば給料が上がる」と期待できるかどうかです。消費も同じです。岸田さんが2024年に「4万円減税する」と言っているけれど、今後も減税が続くと思えば、もっとお金を使おうかと考えます。しかし、「1回だけです。これ以上は減税しないし、消費減税もありません」と言われると、「将来どうなるかわからないからお金を貯めなければ」と考え、使わないわけです。
飯田) そうですよね。
佐々木) 「将来に対する期待感が持てるか」がいちばん大きいのではないでしょうか。昭和のころは「いまより豊かになっていく」とみんなが思い込んでいました。いまよりも金銭的には貧しかったと思います。でもその期待感があったから、みんな消費していたのです。
飯田) 期待感で消費することによって、経済が回っていくわけですね。
佐々木) しかし、みんなが守りに入ったデフレの30年は、「持っているお金を守らなくては」と思うので、誰もお金を使わず、ますます経済が冷え込むという悪循環でした。
岸田総理「税収増加分を国民に還元する」に対してなぜ、財務大臣が「税収増分は使用済み」と言うのか
佐々木) 岸田政権の問題はそこだと思います。期待感がなさすぎる。
飯田) 打ち出し方の問題でしょうか?
佐々木) 国内総生産(GDP)が増え、税収が過去最高になったことから、岸田総理が臨時国会の所信表明演説で「税収増加分を国民に還元します」と言いました。それなのに、そのあと鈴木財務大臣が「過去の税収増分は使用済みで還元する原資はない」と言っている。ああいうことを言うからマインドがまた冷え込むわけです。
飯田) 酷い梯子外しですよね。
佐々木) 税収が増えたのだから、みんな「これから還元してくれるのかな」と期待していたのに、なぜ財務大臣が「そんなものはない」とわざわざ言うのか。
飯田) 呼応するように税調会長も、「減税は1年ぽっきりです」と平気で言い放つ。
佐々木) マインドの問題を、岸田さんのみならず閣僚の人たち、あるいは自民党政権そのものがあまり理解していない感じがします。なぜあのようなことを言うのか。理解できていないのか、それとも財務省に何か言われているのか……。その辺りはよくわかりません。
飯田) ここで岸田さんが「いや、減税するのだ」と言ってくれれば、支持率も上がると思うのですが。
佐々木) 言ってくれればいいのですけれどね。 
●デフレ完全脱却、13兆1992億円=物価高に対応、賃上げ加速―政府 11/10
政府は10日午後、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」の裏付けとなる2023年度補正予算案を持ち回り閣議で決定した。一般会計総額は13兆1992億円。国民生活を圧迫する物価高への対応とともに企業の賃上げや国内投資の促進へ、補助金給付や基金上積みなど政策を総動員。コロナ禍から回復途上にある経済を下支えする。
積極的な支出で支持率低迷が続く政権の浮揚につなげる思惑も透けるが、借金頼みの財政は厳しさを増す。政府は20日に補正予算案を臨時国会に提出し、月内の成立を目指す。
歳出のうち経済対策費は13兆1272億円。分野別には(1)物価高への対応(2兆7363億円)(2)持続的賃上げや地方の成長(1兆3303億円)(3)半導体や宇宙開発など成長力強化・国内投資促進(3兆4375億円)(4)人口減少対策と社会変革推進(1兆3403億円)(5)国民の安全・安心確保(4兆2827億円)―を投じる。
歳入(財源)は予算額の7割近い8兆8750億円を新規国債(借金)発行で賄う。23年度の税収の上振れ分はわずか1710億円。同年度当初予算に新型コロナ対策やウクライナ情勢対応などで計上した計5兆円の予備費も2.5兆円を減額し財源の一部に充てる。
物価高対策では、低所得の住民税非課税世帯に7万円を給付するため1兆592億円を計上。24年4月末まで期限延長を決めた電気やガス、ガソリン代の負担軽減策にも7948億円を充てる。中堅・中小企業の賃上げ環境整備などが5991億円。経済安全保障上、重要な半導体関連支援策は特別会計や基金活用を含め2兆円規模となる。
補正予算と当初予算を合わせた23年度の歳出総額は歴代4位の127兆5804億円まで膨張。24年度当初予算には、物価高対策の目玉として所得税・住民税を1人当たり計4万円減税する総額3兆円台半ばの定額減税も加わる。鈴木俊一財務相は閣議決定後、記者会見で「減税をすればその分、国債の発行が必要になる」と語り、厳しい財政運営が続くとの見通しを示した。
●岸田首相は「国内だけでなくASEAN諸国からも見透かされている」 11/10
なかなか支持率が上向かない岸田首相。先週末の調査ではむしろ、さらに下がってしまった。自身も自負する「外交の岸田」で面目躍如と行きたいところなのだろうが、そのことを「見透かされている」と厳しい指摘をするのは、東アジア情勢に詳しい、飯田和郎・元RKB解説委員長だ。
「見透かされている」総合経済対策
先週から今週にかけての岸田首相を振り返ってみよう。11月2日の記者会見で、総合経済対策を発表した後外遊に出発し、フィリピン、マレーシアそれぞれで首脳会談に臨んだ。私はこの内政と外交。共通しているキーワードは「見透かされている」ではないか? と思う。
まず、外遊前の総合経済対策だが、その中身は国民一人4万円の定額減税、住民税の非課税世帯への7万円給付などで規模は17兆円だ。岸田首相が「国民に還元する」という根拠である税の自然増収は、財務省が以前に試算した税収見積もりからの上振れしたから、というものに過ぎない。
実態は、巨額の財政赤字を出していることこそ問題だ。財源の多くは国債の発行、すなわち国の債務(借金)に頼る。国債残高は1千兆円を超え、先進国で最悪の水準だ。金利も上がっており、国債の利払い費に影響が及ぶ。その場しのぎで子や孫の世代に、負担を背負わせて本当にいいのだろうか。
岸田首相には、防衛増税など、増税イメージがある。だから「総選挙や内閣支持率を意識して人気取りに走った。そして減税に踏み切ったのだろう」と言われる。そんな腹の中を、与党内でも「見透かしている」と指摘されている。
さらに、外遊で訪問した相手国(フィリピン、マレーシア)から、窮地の岸田政権は「見透かされている」。首相の視線の先にある中国からも「見透かされている」。私は、そういうふうに受け取っている。
「ASEANに向けて一歩踏み出した」という歴史的意義
今年は日本とASEANが交流を開始して50周年だ。その節目を記念して12月、東京にASEANの10か国首脳を招待して特別首脳会議を開く。岸田首相のフィリピン、マレーシア訪問も、その事前準備とされている。
上川外務大臣も別途、ASEAN加盟国のベトナム、タイなどを回って来た。ただ、岸田首相のフィリピン、マレーシア歴訪は、ASEAN特別首脳会議への準備とは違う意味合いが濃い。特にフィリピンだ。
岸田首相は、フィリピンに対し、軍事用の沿岸監視レーダーの供与を決めた。日本政府は今年4月、同志国(=同じ志を持つ国)の軍を支援する枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」を創設した。
これを初めて適用した相手がフィリピンであり、この枠組みで初めて供与するのが、この監視レーダーだ。約6億円という額は防衛装備品としてはびっくりする額ではないが、「ASEANに向けて一歩踏み出した」という歴史的意義を考えたい。
アメリカと連携をしつつ、覇権主義的な動きを強める中国への包囲網構築を図る――。そんな狙いに思える。「第一列島線」ということばを聞いたことがあるだろうか。中国が描く軍事防衛ラインのことで、東シナ海、南シナ海をぐるっと囲む形になっている。沖縄県の尖閣諸島もこの中に含んでいる。
中国はこの第一列島線の中にある島々を、東シナ海海域で日本と、南シナ海海域でフィリピンと争っている。そういう情勢の中で、日本とフィリピンが共に向き合う相手・中国への包囲網を形成しようとなる。
日本とフィリピンの関係は「準同盟国ランク」
日本は半世紀前のASEANとの交流スタートを含め、途上国への支援は非軍事部門が中心だった。だから、フィリピンへの偵察レーダー供与は、これまでの路線から大きく転換するものだ。また今回、自衛隊とフィリピン軍がスムーズに往来し合えるようにする協定(「円滑化協定」)の締結に向けた話し合いにも入ることが決まった。
日本とフィリピンの関係は、「準同盟国ランクに上がった」という指摘もある。死者が1万人を超えだパレスチナの混乱や泥沼のウクライナ紛争などで、国際ニュースはそちらへ目が行きがちだが、このレーダー供与も大ニュースだと思う。
日本はアメリカと同盟関係にある。一方のフィリピンもアメリカと同盟国の関係。そのアメリカも、この海域における中国の海洋進出「力による一方的な現状変更の試み」を強く警戒している。
「アメリカを頂点に、三角形をつくる。日本とフィリピンが準同盟として、アメリカの安保政策を下から支える」――。そんな構図が見えてくる。フィリピンは、南シナ海で中国と対峙することもあって、マルコス大統領がアメリカに接近。その延長線上に日本との協力も進めているように思える。
ASEANは岸田首相の窮地を見透かしている
ただし、懸念も生まれてくる。私が指摘したいのは、南シナ海における、これら国々の領有権争いに日本も巻き込まれる危険性だ。日本が一歩踏み出す、すなわち軍事的な関与を深めることによって。中国はそう見做すだろう。
ASEANの国々は、したたかだ。アメリカや日本と接近する一方で、中国は大切な貿易相手国、また自分の国へ投資をしてくれる相手国でもある。中国を敬遠して日本にだけ肩入れしない。ASEAN10か国もそれぞれ国情が違い、中国との距離も違う。共通しているのは、アメリカを選ぶのか、中国を選ぶのか、という二者択一を嫌うことだ。
さらには、日本の国内政治もよく観察している。岸田政権が弱体化して、自分たちASEANとの国々との外交で得点を稼ごうとしているのもわかっている。それが「ASEANは岸田首相の窮地を、見透かしている」と私が指摘している点だ。
フィリピンも防衛装備品だけでなく、最大の援助供与国であり、前のめりになっている日本を、うまく利用・活用しているようにも見える。
山ほど懸案事項がある日中で話し合う場を
ではいま、日本の外交で必要なことはなんだろうか? やはり、中国との対話をもっと進めてほしい。アメリカは中国と対峙しながら、このところ、対話が一気に進んでいる。米中間の高官レベル協議が活発化している。核を含む大量破壊兵器の問題、地球温暖化対策などなど多くの分野に及ぶ。
日本はどうだろうか? アメリカ・サンフランシスコでのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議の場で、岸田首相と習近平主席は個別に会談するのか、その会談は突っ込んだ話し合いになるのか、形だけのものなのか――。日中2国間でも山ほど懸案事項があるのに、しっかり話し合う場をつくってほしい。
仲のいい周辺国や相手の付き合いは大事だが、安保協力への急速な傾斜は中国を刺激し、地域の不安定化を招く危険性もある。パワーゲームに巻き込まれてはいけない。
●「異次元の少子化対策」医療保険上乗せ徴収案に怒りの声 11/10
「岸田ビジョン 分断から協調へ」の著書がある岸田文雄首相だが、岸田政権によって国民の分断がますます広がりつつある。政府は9日、少子化対策の財源となる「支援金制度」について議論する初めて会議を開き、負担能力に応じて医療保険料に上乗せして徴収する案を提示。支援金は妊娠・出産期から0〜2歳の支援策にまず充当するという。
加藤こども相は「新しい分かち合いの仕組み」と説明
政府案によると、子育て世帯は給付が拠出を大きく上回る一方、それ以外の人は負担が増える。加藤鮎子こども政策担当相は「この新しい分かち合いの仕組みである支援金制度をどのように伝えていくか」と述べたが、国民の納得を得るのは容易ではなさそうだ。
9日は「#子育て世帯以外」がトレンド入り。《つまり我が家みたいな子供がいない世代への『子無し増税』。子育てしてないんだから金払えよってことだよね。何の為に働いてるのだろう。負担ばかり》《国は独身世帯には厳しいですねー。全部しわ寄せがくるようにしている。日本国全体で子供のためにとか言いながらこのように負担を強いる》と怒りの声が上がった。
もっとも、子育て世帯の全てが今回の政府案を歓迎しているかといえば、それも違う。《子育て世帯は異次元ではなく、継続可能な対策を求めていると思います。個人的には、保育園・子ども園・幼稚園の給食費及び教材費の無償化、小中学校の給食費・教材費の無償化をお願いしたいです》と、唐突な医療保険料への上乗せ案に戸惑う声も目立った。
立憲民主党の小沢一郎衆院議員は9日、自身の事務所名義のX(旧ツイッター)を更新。政府の医療保険料への上乗せ案について、「予想通り、むしり取ったものをまたばら撒くだけ。異次元どころか低次元の少子化対策。逆に負担が増えて子どもが減る悪循環。無駄が増え、効果も薄い。総理はこれのどこが異次元か説明を」と投稿した。
●支持率急落!年内解散見送り!「ポスト岸田」はこれだ! 11/10
岸田政権支持率急落!年内解散見送り!二階派参謀、政局のプロ武田良太元総務大臣がズバリ斬ります。
今回の「年内解散見送り」情報を漏らしたのが「岸田おろし」なら、「言語道断!!」と熱く語り、「ポスト岸田」をめぐっては、支持率低下の中なら総裁選は「チャレンジャーが有利だ」と鋭く読み解きます。
緊迫の事態の中、熱い語りを是非ご覧ください。
亀井静香氏の元秘書を務め…「小選挙区が政治家の本質を変えた」
――ご覧の映像は2005年の衆院選当時のものです。武田さんは、亀井先生の秘書をなさっていたわけですけれども。何か印象に残る思い出はございますか。
武田良太 元総務大臣: (2005年衆院総選挙は)郵政選挙ですね。亀井さんが国民新党を立ち上げられて、地元の庄原市でやった、熱狂した選挙でしたね。
――もちろん勝ったわけですよね?
武田良太 元総務大臣: ホリエモン(堀江 貴文さん)ですよ、相手が。
――あのときですか。何とも迫力ありますけど昔の自民党にはこういう迫力のある政治家がゴロゴロいたんですね。最近はどうですか?二階元幹事長はそういう伝統を残す迫力のある政治家ですが。
武田良太 元総務大臣: 小選挙区制度という選挙制度が、政治家それぞれの価値観と体質を変えたっていうのは、これはもう否めないところだと思います。やはり同じ政党の者同士が同じ選挙区で戦う。本当の権力のぶつかり合い、こういったものがなくなった時代の政治家の価値観と政治手法というのは、過去のそれと比べて全然違いがありますね。
「減税すれば国民の支持を得られるという簡単なものではない」
――内閣支持率ですが、直近11月4日5日のTBS系列JNNの世論調査で支持率が10.5ポイントも落ちて29.1%。政権奪還以来最低の数字。不支持も7割近くいるわけですね。この急落を武田さんはどうご覧になりますか。
武田良太 元総務大臣: よく支持率を見て一喜一憂するなとは言うんですけども、やはりこの原因というものはちょっと真剣に考えていかなくちゃならんと私も思っています。スポットで見たときの原因究明と、流れで見たときの原因究明とではまた違ってくると思うんですけども、やはり経済政策を発表した後の下落ということに関しては、政策面でももうちょっと考え直していかなくちゃならない部分もあるんではないかなと思いますね。
減税というのは過去の橋本内閣のときも経験しましたけども、減税すれば国民の支持を得られるという簡単なものではないと思いますし、やはり今回の支持率下落に関しては、それぞれの国会議員が地元に帰って、有権者の声に耳を澄ましてね、原因を究明するってことが一番、私は大事だと思いますね。
自民党が責任を果たしていない状況での『岸田おろし』は言語道断
――11月9日の朝刊では、「年内解散見送り」の記事が一紙だけじゃなくて、二紙に出てるんですよね、朝日と読売と。しかも一面の頭ですよね。普通だったらやっぱり相当確度がなければね、ここには持ってこないであろうと。つまり、総理に近い人が、これを漏らしたということですよね?ここが最大の残されたチャンスだったはずが、こういう形で潰れたと。これはどういうふうにご覧になります?
武田良太 元総務大臣: いろんな思惑が絡んでくるのが政局ですからね。片方から見てそれを断定するということは、これは非常に危険なことになると思うんですけれども、やはりこれはメディアを通じて国会議員ないしは、国民の広く多くの方々に「こういったことを伝えた方がいいんではないか」と思った人の思惑だったと思うんですけども。
必ずしも総理自身がこれを伝えたかったかというところの確証はつかめないわけだから、今私がどうこう言うことはないんですけど。ただ先ほど言いましたように、国会日程が非常にタイト、そして重要な政策案件も山積みになっているという中で、やはり「審議に支障を与えるような状況というものは作っちゃならん」という考えが働いたんじゃないかなというふうに、私は一方で思いますね。
――マイナス面の方が大きいわけで、これをもって『岸田おろし』じゃないかと指摘する人もいるわけですよ。
武田良太 元総務大臣: 今まだ十分なる経済対策を果たしてない、国民に対して自民党が責任を十分に果たしてない状況でね『岸田おろし』なんてことは、これは言語道断だと私は思いますね。
――もしそんなことをやる人がいたら?
武田良太 元総務大臣: ちょっと考えなきゃ駄目ですね。
総裁選は「国民的な注目集まる催し」 党の力をアピールせよ
――そして(来年9月の)総裁選に関して岸田総理自身、この間の内閣改造では再選目指して各派バランスを取った起用という形にしているわけで。(総裁選を)頭の真ん中に置いて岸田総理は動いているということですけれども、この総裁選はどういうような意味合いを持つと思われますか?
武田良太 元総務大臣: それについても、そこまでの政治状況によって図式は変わると思いますね。ただ20人の推薦人を集めれば出馬できるわけですから、毎回、自民党の総裁選というのは非常に国民的な注目も集まる一つの催しになってるわけだから、やはり自民党の国会議員として「我こそは」と思う人が、この場を借りて自民党の力というものをアピールするというのは重要なことだと思いますよね。
――地方票を含めてフルな形でやるべきか?ややもすると緊急の場合、両院議員総会とかいう話にもなりますけど。
武田良太 元総務大臣: なかなか今の時代よっぽどのことがない限りね、国民が緊急事態というふうなことをしっかり認めてくださる状況でないと、そのことは使えないと思うんですよね。今から来年、年が明けて、各地方選挙とかもありますし、またいろいろな評価というかね、政権に対する、それも変わってくると思うんでね。柔軟に対応していかなくちゃいかんと思いますね。
支持率急落で『ポスト岸田』は「チャレンジャーにアドバンテージ」
――支持率急落の中で、注目されているのが「ポスト岸田」。支持率上位を見ていくと共通するのは「数の背景を持ってない方」なんですよね。この顔ぶれをどうご覧になりますか?
武田良太 元総務大臣: この支持率っていうのもね、総裁選挙直前になったり、入ったときのラインナップでまた変わってきますので。これは慎重に見極めていかないといかんと思いますね。ただやはり大統領制じゃないんで、議院内閣制なんで、当然、こうした国民の支持率というものも重要な参考にはしていきながらも、やはり党内の支持というものをやはりいかに集めるかということが一番のポイントになってきますので。
――ここに至るまで解散がなければ、この総裁選というのは前回の総裁選と意味合いが変わってくるわけであって、それをどういうふうにご覧になっていますか?
武田良太 元総務大臣: 前回の総裁選挙は、やはり菅さんが直前に辞意を表明されたということで、我々もちょっとポカンとしたとこあったんですよね。積極的に次の総裁選挙に総力を挙げて臨むモチベーションっていうかね、マインドになかなかなれないっていうか。これは私も閣僚をしてましたし、二階さんも幹事長としてね、中心で支えておられましたので、その総理が辞意を表明されたということを受けた直後の総裁選挙にはね、ちょっと空虚感というのがあったというのは否めないんですけども。
けれども、政権が急に弱く支持率が下がったりしたときの後の総裁選挙っていうことは、新たなる候補者にアドバンテージが出やすいことってあると思いますよね。しかも前回の選挙は、もう直後に任期満了を迎えてましたんでね。もう選挙がもうすぐだというところで、ここでも選択する意識っていうか、変わってくると思うので。今回は2年間残ってるというところで、前回とその政治状況が日程的なものが違いますので一概には言えませんけども、今からの状況を見極めていかなくちゃならんと思います。
――つまりチャレンジャーの方に、有利になる。
武田良太 元総務大臣: そうですね、やっぱり支持率が低い状況での総裁選挙になれば、チャレンジャーの方にアドバンテージが働きやすい傾向になるんじゃないかなと思いますよね。
『評価しない』が6割…「今の状況を突破する経済政策になっていない」
――今回の経済対策は、残念なことに「評価しない」が6割。まず理由に「今後増税が予定されている」というのは、実際そうですよね。防衛増税と異次元の少子化対策のために社会保険料を上げるとされていて、その中での減税、これが理解してもらえてないと。これをどうご覧になりますか?
武田良太 元総務大臣: 私の耳に届くのは、やはりこの今の状況を突破する経済政策にはなっていないというか、所得税減税されるのは来年の6月という日程が決まってますし、そういったところが国民の今の生活とはちょっと距離があったんじゃないかなと。「今後増税が予定されている」ということ。今一番大事なことは、もうちょっと日本の社会保障の中でも老後の安心を作り上げていくことが大事じゃないかと思うんですよ。
老後はしっかりと安心したものになるんであるならば、やはり貯蓄から消費に回す額も増えるであろうし、その分やっぱり可処分所得が選択して増えていくと思うんですよね。老後に不安を感じていく限りにおいては、やはり自分の身は、自分の老後は守らなきゃいけないということで、やはりなかなか経済消費には結びついていかない。ですからそのためには、ただどうやって社会保障費を維持していくかとなれば、これは性別にも所得にも職業にも住む地域によっても変わりがない共通の問題ですので、こういったことは広くお互いに税で負担していこうと。それは自分たちの将来に対する貯蓄じゃないかという形をしっかり明確に持っていくことがね、私は何よりも今から経済対策になってくると思うんですよね。
岸田総理は「思い切ったカラーやビジョンを示すことが大事」
――武田さんに聞いておきたいのは、この解散の使い方ですよね、ギリギリで判断するとかで(岸田総理)自ら風をバーっと上げて結局それを消す。要はその解散っていうのを求心力の道具にしてるんじゃないかっていう見方が出ちゃう。それはどうご覧になりますか?
武田良太 元総務大臣: そう見られるっていうのは非常に残念な、我々自民党としては残念なことになるんですけども、とにかく明確なるビジョンと旗をきちんとあげることが大事だと思いますよ。こういった岸田内閣が上げる政策によって、あなたの生活はどう変わるんだ、日本の社会はどう変わるんだっていうところをねやっぱりやっていかんと、このまま支持率って上がらないんじゃないかなっていう予感はしますね。岸田総理も思い切ったカラーをね、今から少子化で高齢化社会を迎えて、全ての構造、社会構造変わっていくわけですから、思い切った新たなる次の時代のビジョンをね、示すことが大事だと思います。
●苦難の3党首、衆院選にらみ対峙 自民・岸田、立民・泉、維新・馬場各氏 11/10
岸田文雄首相は、模索していた年内衆院解散の断念に追い込まれた。一方、立憲民主党の泉健太代表は次期衆院選に向けた発言から、野党第1党の党首としての資質が党内で問われ、馬場伸幸代表率いる日本維新の会も、所属議員の相次ぐ不祥事などから、勢いに陰りが見える。自民、立民、維新の与野党3党首は衆院選をにらみ、苦難を抱えながら対峙している。
   減税不評、封じられた解散権―首相
読売、朝日の両紙が9日付朝刊トップで、「年内解散、見送り」と報じると、首相は同日午前、首相官邸で記者団に「まずは経済対策。先送りできない課題に一意専心取り組む以外のことは考えていない」と述べ、報道内容を事実上認めた。
首相は9月に内閣改造を断行し、過去最多と並ぶ女性5人を閣僚に起用して刷新感を演出。10月には世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令を東京地裁に請求するなど、衆院解散の環境整備に努めた。しかし、報道各社の世論調査で、内閣支持率は上向かなかった。
こうした状況を踏まえ、首相は税収増の国民への「還元」を唐突に表明。物価高対策として、党内の慎重論を押し切り、1人4万円の所得・住民税減税を打ち出したが、逆に多くの有権者に「選挙目当て」などと不興を買い、支持率は軒並み、発足以来の最低を更新した。
首相は来年9月の党総裁選で再選を果たし、長期政権に道を開くことを目指している。それまでに、衆院選で勝利し、無風で総裁選を乗り切ることを基本としつつ、解散せずに総裁選を迎えても、党内各派の支持で再選を果たす「二つの再選戦略」を描いているとされる。首相が9月の内閣改造で、各派に配慮し、11人を初入閣させたのも、解散せずに総裁選に臨む展開も意識してのことだ。
確かに、先に閣議決定した総合経済対策を財源面で裏付ける2023年度補正予算案の成立が、早くても今月下旬となることや、年末の24年度予算編成を控え、外交日程が詰まっていることなどから、年内の解散が日程的に極めて厳しかった面はある。
とはいえ、自身の判断で所得減税を打ち出した結果、内閣支持率の一層の低下を招いたことで、党内で首相への不満が広がり、求心力を低下させた。本来、首相の解散権は、党内を引き締め、野党の抵抗を排除して国会を乗り切る上で、最も強力なカード。それを封印してでも、党内の不満に配慮し、足元を固めざるを得なかったのが実情だ。
衆院の自民党の勢力は263議席で、過半数(233)を大きく上回っている。そして、この逆風下で解散すれば、「現有議席の維持はとても期待できず、どの程度議席が減るか読めない」。多くの自民党議員の見方は、一致する。支持率が低迷し続ける限り、解散は事実上、切れないカードでもある。
二つの再選戦略、破綻が現実味
時事通信社の10月調査(6〜9日実施)で、岸田内閣の支持率は26.3%、不支持率は46.3%。報道各社の調査は、支持が30%前後で、不支持が支持の2倍近い点で共通だ。首相は年明け以降も、解散のタイミングを探ると見られ、想定される時期は(1)24年度予算案成立後の来年3月末から4月初め(2)通常国会会期末の来年6月―の二つ。
しかし、(1)のケースは、通常国会に新たに提出する法案や継続審査の法案が廃案となる(2)は、東京都知事選と重なることで関心が高まり、首都圏を中心に投票率が上昇。無党派層の支持が低い自民党に不利に働くことが想定される。いずれのケースも、解散するには大きな障害がある。
そもそも、首相がどのタイミングで解散するにしても、支持率が一定程度回復していることが大前提。しかし、党内では、来年夏までの政治日程を見る限り、「支持率の回復につながりそうな材料がない」(中堅)との声が多い。
支持率が低迷した状況で、首相が解散を打とうとする可能性は否定できないが、党内の激しい抵抗に遭うのは必至。解散できずに退陣という展開もあり得よう。実際、菅義偉前首相は再選を目指し、総裁選直前の解散を模索したが、党内の抵抗で封じられ、不出馬に追い込まれている。
首相は、物価高が落ち着き、春闘で大幅な賃上げが実現することで、有権者の政権への評価が上向くことに期待し(1)を当面は狙うとみられる。これを逃せば、来年6月に減税が実施され、痛税感が和らぐことを前提に、(2)に期待をかけるだろう。
一方、支持率が回復せず、解散もできないまま総裁選となれば、1年超以内にある衆院選(衆院議員の任期満了は25年10月末)や同年夏の参院選の「顔選び」の場となる。首相が各派の支持を取り付けても、党内で「岸田首相では選挙を戦えない」との声が広がれば、派閥の引き締めは利きそうにない。
さらに、国会議員票と比重が同じ党員投票で、首相の対抗馬に多くの票が集まることも考えられる。首相の再選は全く見通せないのが実情。二つの再選戦略の破綻が現実味を帯び始めたと言えるゆえんだ。首相に批判的な議員からは「これ以上支持率が下がったら、そもそも総裁選まで政権が維持できるかも分からない」との声も漏れる。首相には、苦難の政権運営が続くことになるだろう。
「5年で政権交代」―立民・泉代表
講演する立憲民主党の泉健太代表=4日、東京都千代田区
「次の総選挙で基盤を築いて、5年で政権交代を目指す」。立民の泉代表は4日、都内の法政大学での講演で、次々回の衆院選で政権交代を目指す考えを明らかにした。その理由として、前回衆院選で政権奪取への基盤となる150議席を取れておらず、党の再生には「手順」が必要と指摘した。
これに対し、小沢一郎氏は7日、自身を中心とするグループ「一清会」の会合後、記者団に「野党第1党が『次の総選挙で政権を目指さない』と言えば、ますます支持者は離れる」と批判。政権交代が常に頭にないのなら「(政治家を)辞めた方がいい」と断じた。
岡田克也幹事長は同日の記者会見で「1回の選挙で政権交代を実現するのは難しい。150議席が現実的で分かりやすい」と、泉氏を擁護した。
確かに、立民の党勢や小選挙区での候補者擁立状況を考慮すれば、次の衆院選での政権交代は非現実的。そうであっても、それを、心の中にとどめておくのと、代表として口にするのとでは全く違う。
たとえば、ボクシングのタイトルマッチで、挑戦者が試合前に「チャンピオンにはパンチ力、テクニックともに劣る。今回は何とか善戦し、次にタイトル奪取を目指す」と言ったら、観客は興ざめするに違いない。泉代表の発言は、軽率のそしりを免れないだろう。
泉代表は自身のX(旧ツイッター)で、次回衆院選で政権交代を目指す考えについて「理想論はまちがいなくそうだ」としつつ、「候補者がいて、一人ひとりが勝てるような状況も作らなくてはいけない」と、自身への批判に反論した。
   低下する求心力、厳しい150議席
立民は昨年7月の参院選で、6議席減の敗北を喫し、今年4月の衆参5補選でも、支援した無所属候補を含め、擁立した4選挙区で全敗した。しかし、泉代表は続投し、5月に、次期衆院選で150議席を得られなければ代表辞任を表明し、退路を断った。
当時、立民の有力議員は「続投を決断したからには、代表としての覚悟が問われる。次の衆院選で野党第1党の維持ではなく、政権交代を目指すくらいの気概がないとだめだ。分かっていると思うが…」と周囲に漏らしていた。泉代表の発言は、沁み付いた野党体質の表れに思え、有力議員の不安が的中した形だ。
「5年で政権交代」発言により、泉氏の代表としての資質が問われ、求心力がさらに低下したのは間違いない。立民は首相が出席する衆参予算委員会での補正予算案の審議で、所得減税を含めた経済対策や財源が明確でない少子化対策、副大臣・政務官の相次ぐ不祥事、会場建設費が当初見積もりの2倍近くにまで増えた大阪・関西万博の問題などで、政権を追及する方針だ。
論戦を通じて、政権に打撃を与えることができても、低迷する党の支持率が上向くとは限らない。各社の調査で、立民の支持率は、維新を下回ったままだ。
また、小選挙区の候補者選定も遅れ気味で、約160人にとどまっている。本来なら、不人気の岸田首相を相手に、衆院選を戦った方が有利。しかし、現状のまま解散に追い込めたとしても、自身の進退がかかる150議席の確保は容易ではないだろう。もし、議席数で維新に負け、野党第2党に転落すれば、党の存続すら見通せなくなる。
どのタイミングで解散に追い込むのが、党や自身にとって最も有利か? 内憂外患の苦しい状況に置かれた泉代表は、衆院選を意識しながら引き続き、首相と対決する。
相次ぐ不祥事、勢いに陰り―維新
4月の統一地方選で、地方議員数を1.7倍に増やし、衆院和歌山1区補選で、公認候補が勝利するなど、躍進した維新。馬場代表は次期衆院選で野党第1党になり、10年以内での政権獲得を目標に掲げる。大阪府以外の小選挙区でも議席を得て、大阪・関西の党から、「全国政党」への脱皮が課題だ。また、野党第1党を目指す手前、「立民以上の候補者を小選挙区に立てる」(幹部)方針だ。既に、約150人の候補者を決めた。
一方で、統一地方選以降、所属議員の不祥事が相次ぎ、勢いに陰りも見え始めた。5月に大阪府議団代表の大阪市議へのセクハラが判明し、除名。9月には藤田文武幹事長が、寄付60万円を政治資金収支報告書に記載しておらず、陳謝。池下卓衆院議員が兼職届を出さずに、市議2人を公設秘書に採用していたことも明らかになった。
このほかにも不祥事が幾つかあり、党のイメージを低下させ、勢いに水を差しつつあるようだ。時事通信社の世論調査で、統一地方選直後の5月に5.9%あった同党の支持率は、10月に3.9%まで下落した。立民を上回ってはいるものの、躍進した4月当時ほどの勢いがないことがうかがわれる。
こうした中、維新の人気に、さらに影響を与えそうなのが、万博の建設費増の問題だ。特に、木造建築物「大屋根(リング)」に350億円が費やされることに、ネットなどで批判が出始めている。
万博は、松井一郎大阪府知事、橋下徹大阪市長時代に招致した。国の事業とはいえ、維新を象徴するビッグイベントで、建設費の増大は、党の看板である「身を切る改革」に逆行しているように見える。「大屋根」は、万博終了後に取り壊されることになっており、効率性も問題視されている。
維新共同代表の吉村洋文大阪府知事は9日の記者会見で、「大屋根」について「参加する150カ国の価値観や多様性が一つの輪になってつながるという、万博の理念に根差したものだ」と述べ、建設の妥当性を強調した。「大屋根」を含めて、建設費増への批判が高まれば、維新には痛手となるだろう。
「当初計画にはなかった。リングだけで350億円かかるようになった」。立民の杉尾秀哉氏は先月31日の参院予算委員会で、建設の見直しを求めた。同党がこの問題を取り上げるのは、岸田政権と維新の両方にダメージを与える狙いもあるだろう。
首相が年内解散を断念したことについて、馬場代表は9日の記者会見で「時間がたつほど、(候補者の)擁立が進む」と述べ、歓迎した。とはいえ、基盤がない地域で有能な候補者を発掘するのが課題だ。
万博の問題で立民などの攻勢を受けつつ、どう勢いを維持し、衆院選を迎えるか? 「第三極」維新の馬場代表は不安を抱えつつ、岸田首相や立民の泉代表との対決が続く。
解散、来年秋が本命?
岸田首相の総裁任期が切れる来年9月は、衆院議員の任期満了の1年超前。総裁選は、政権政党による政策論争の場となり、世間の注目を集めるのは確実だ。仮に岸田首相が解散できぬまま出馬し、再選を果たせば、いわゆる「追い込まれ解散」を避けるためにも、直後の解散が最も有力な選択肢。
新総裁の誕生の場合は、これまでの例から「ご祝儀相場」が期待でき、岸田内閣より高い支持率で新政権が発足することが予想される。そして、直後に解散しなければ、1年の間に、政権が失速する展開があるかもしれない。菅前首相が「実績作り」を優先し、就任直後の解散を見送った後、コロナ禍などで有権者の支持を急速に失い、総裁選不出馬に追い込まれたのが好例だ、
「岸田首相が再選されるかどうかに関係なく、総裁選で盛り上げた後、解散するのが自民党にとってベスト」。ある閣僚経験者は、こう指摘する。年明け以降も岸田内閣の支持率が低迷し続ければ、「秋の解散が最有力」との見方が、党内で広がるだろう。
●首相、改憲で自衛隊明記に意欲 「違憲論争に終止符を打つ」 11/10
岸田文雄首相は10日、国会内で開かれた憲法改正に関する学生イベントに出席し、憲法9条への自衛隊明記に意欲を示した。「国民の命や暮らしを守るために必要不可欠な自衛隊を明確に位置付けることは、違憲論争に終止符を打ち、国の姿勢を示すために大切な課題だ」と強調した。
9条への自衛隊明記は安倍晋三元首相が議論を主導した経緯がある。内閣支持率が低迷する中、保守層の関心が高い改憲に取り組む姿勢をアピールした形だ。
首相はイベントで「世界が大きく変化する中、憲法が今の時代に合っているかどうか議論し続けていく姿勢は大事だ」と指摘した。
 11/11

 

●政務三役の不祥事 これが「適材適所」なのか 11/11
岸田文雄首相が言う「適材適所」とは一体何なのか。実態がかけ離れ過ぎている。
9月に発足した第2次岸田再改造内閣で、政務三役の不祥事が止まらない。先月下旬、女性問題で山田太郎文部科学政務官が辞任した5日後に公選法違反事件に関与したとして柿沢未途法務副大臣が辞任した。さらに今週になって神田憲次財務副大臣の税金滞納問題が発覚している。いずれも自民党に所属する。
法秩序の維持を担う法務省の副大臣が選挙の不正に絡んだ事実は深刻だ。柿沢氏は地盤とする東京都江東区で4月にあった区長選で、木村弥生区長への投票を呼びかける有料のインターネット広告を掲載するよう陣営に提案した。選挙期間中にユーチューブで約38万回再生されている。
公選法は選挙運動で候補者名を挙げ、有料でのネット広告を出すことを禁じている。東京地検特捜部が公選法違反の疑いで強制捜査に踏み切り、木村氏の辞職表明にまで発展した。主導した柿沢氏は、違法性の認識がなかったという。民主主義の根幹に関わる選挙のルールを知らなかったのなら法務副大臣の適任者とは到底言えない。議員としての適性さえ疑われよう。
週刊文春で滞納を報じられた神田氏は、自身が代表取締役の会社が保有する土地・建物の固定資産税を滞納して4回にわたり差し押さえを受けた事実を認めた。税理士の資格を持ちながら税理士に義務付けられた研修も受講していなかった。これで所得税減税や防衛増税といった重要政策に携わる財務省の副大臣が務まるのか甚だ疑問である。
不祥事の連鎖は、昨秋の臨時国会以降に4人の閣僚が相次いで交代した「辞任ドミノ」と状況が似ている。内閣改造から2カ月もたたずに足元がぐらついていると言えよう。それでも、首相から危機感は伝わってこない。
柿沢氏が辞任した当日の参院予算委員会で、首相は「必要に応じて政治家としての説明責任を果たすべきだ」と人ごとのように答弁した。その柿沢氏は野党の参院予算委への出席要求に応じず、記者団の質問にも答えていない。
事態の重大さを考えれば、任命権者の首相が本人に説明させることもできるはずだ。自身の任命責任を問われるたびに「重く受け止める」と決まり文句を繰り返しても国民には響くまい。
政務三役の起用を巡っては、スキャンダルの有無を確認する「身体検査」が十分に機能していないと自民党内にも指摘がある。先の内閣改造では首相が来秋の自民党総裁選での再選を重視して派閥のバランスや意向に配慮したとされる。こうした内向きな姿勢が不信を招く事態の遠因になった面は否めない。
直近の共同通信の世論調査では内閣支持率が初めて30%を割り込み「危険水域」に入った。首相は国民の厳しい視線を強く自覚すべきだ。
●年内の衆院解散断念 11/11
岸田文雄首相が、年内の衆院解散・総選挙を断念する意向を固めた。国会は、物価高騰を受けた経済対策を裏付ける2023年度補正予算案など十分な審議が求められる課題を抱えている。衆院の解散で国政に空白期間をつくる余裕はない。
首相の判断は妥当だが、内閣支持率が低迷する中、政権の座を揺るがしかねない衆院選の断行は得策でないとの考えがあったことは想像に難くない。政権延命を目的に解散時期を探るような姿勢は「岸田政治」への不信感を増幅するだけだ。
6月の通常国会最終盤の会見で、衆院解散の可能性について首相は「会期末の情勢をよく見極めたい」と表明。解散権行使を示唆したと受け取られることを承知した上での発言で、野党の抵抗を抑え最重要視した防衛財源確保法の会期内成立に持ち込んだ。このときも内閣支持率がマイナンバーを巡るトラブル拡大で頭打ちになり、衆院選には不安を感じていたはずだ。
今の臨時国会では、補正予算案の取り扱いが焦点だった。補正を提出せず経済対策だけまとめて国会冒頭、提出しても成立前―の衆院解散があり得るとの観測が与野党にあったからだ。首相が9月末に補正提出の意向を示し、10月に入ってから今国会で成立を目指すと明言したことで早期解散論は沈静化した。
さらに年明け以降の解散になったのは、首相が補正成立とともに所得税と住民税減税に関わる税制改正論議を優先させる必要性を感じたためであろう。13兆円超の補正予算案の中身には異論があるが、経済や国際情勢、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を巡り論戦を交わす時間が確保されたのは評価していい。
しかし、何より首相の判断に影響したのは、内閣支持率の下落ではなかったか。共同通信の直近の世論調査で内閣支持率は28・3%と、12年の自民党の政権復帰以降で最低を記録した。
政府は首相の主導によって課税世帯で1人当たり4万円の減税、非課税世帯で7万円の給付を打ち出した。にもかかわらず世論調査では「評価しない」との回答が60%を超え、内閣支持率に直結したとみられる。
これでは来年秋の自民党総裁選での再選を狙い、衆院選に打って出るわけにはいかないだろう。そうした思惑も国民に見透かされていると、首相は自戒しなくてはならない。
衆院の解散は、首相の「専権事項」とされる。だが、選挙を経た議員の身分を一斉に奪う解散権の行使は慎重であるべきだ。岸田首相は「保身」を図るより、国民の疑問に丁寧に答え、政治への信頼を回復していく必要がある。
●鬼の岸田首相はよまやの年収30万超アップに「返せばいいんだろ!」 11/11
物価高で国民が厳しい生活を強いられている中、「経済、経済、経済」と認識を改めて減税方針を打ち出した岸田文雄首相。総合経済対策の1人あたり4万円の減税や低所得者世帯への10万円支援は生活を支える上で「大きな額」と強調する。ただ、食料品を中心に生活必需品の価格が上昇を続ける今、「月に3333円」のレベルでは負担軽減効果は限定的との見方が広がる。
その一方で、首相は自らの給与を「月額6000円」、閣僚らは「月額4000円」をアップさせる法案を臨時国会に提出しており、国民感覚とのズレは一向に埋まらないままだ。
経済アナリストの佐藤健太氏は「物価高で国民が苦しんでいる中、岸田首相はちゃっかり自分の給料を年間30万円超もアップさせた。しかし一方で、国民の減税額は4万円と微々たるものだ。やはり首相は自分のことしか考えていないのではないか」とぶった斬るーー。
岸田首相はスーパーを視察し、持ち前の「聞く力」を披露したつもりが…国民とのズレは広がっている
「首相になる前は息子と過ごしていた。男所帯で鍋物をつくるとき、肉や野菜をスーパーによく買いに行った。比較しやすいので野菜や肉を中心に見たが、たしかに高くなっている」。岸田首相は10月16日、東京・江東区のスーパーマーケットを視察し、従業員から価格が高騰している現場の状況を聞いて回った。
ネット上で「増税メガネ」と評されていることを気にしているという首相は、自らが特長にあげる「聞く力」を発揮したつもりなのだろう。だが、自身が語る通り「首相になる前」と言えば2021年10月以前であり、物価上昇が止まらない首相就任後のことは分からないらしい。激務やセキュリティ上の問題などで「現場」を知る機会が減ったとはいえ、その感覚のズレが政策上にも現れているように見える。
岸田首相が信頼する自民党の麻生太郎副総裁は首相在任中の2008年10月、国会でカップ麺の価格を問われた際、「最初に出た時、えらく安かったと思いますが、今は400円くらいします?」と答弁して失笑されたことがある。首相就任後の岸田氏が麻生氏と似たような感覚を持っているのか否かは知らないが、物価上昇局面における増税プラン打ち出しなどを見ていると国民とのズレは日増しに広がっているのではないか。
あれだけ増税推しだった岸田首相が、なぜいま減税に踏み切ったのか
首相は昨年末、防衛費大幅増に伴う増税プランを決定した。財源確保のために法人税、所得税、タバコ税を増税するというものだ。当時、岸田氏が強調したのは防衛力を強化するための財源が足りず、やむなく増税に踏み込むというものであったはずだ。だが、あれから1年も経たずに今度は「税収増を国民に還元する」と言い出した。自らが決めた防衛増税の実施時期は先送りしつつ、「異次元」とまでうたった少子化対策の財源確保策が見つからない中でのことだ。
首相は10月30日の衆院予算委員会で「減税は経済政策としてデフレからの脱却を完成させるためにどうしても必要だ。防衛力の強化も経済や賃金、物価などに最大限配慮した上で実施の時期を決めるもので、両者は矛盾するものではない」と述べている。だが、歳出削減などを徹底しても不足するから増税するとしていたにもかかわらず、内閣支持率が下落すると国民の歓心を買うために減税するというのでは政権の信頼性が問われる。少なくとも税収増になる見通しを誤っていたか、あるいは把握しながら国民にさらなる負担を強いるつもりだったということになるのではないか。
国民が物価高と上がらない賃金で苦しむ中、岸田首相は30万円超、閣僚は25万円超も給与アップ
国民感覚とのズレは臨時国会に提出された法案からも見て取れる。突如として「賃上げ」を連呼し始めた時から不思議な感じを持っていたが、実は今国会に首相を含めた閣僚など特別職国家公務員の給与を上げる法案が提出されているのだ。この法案は人事院勧告に基づく一般職の国家公務員の給与引き上げに合わせたものだが、実施されれば首相は月額6000円アップの201万6000円、閣僚は147万円(月額4000円増)、副大臣は141万円(同)、大臣政務官は120万3000円(同)になる。ボーナスも0.1カ月分増額され、首相の年収は30万円超、閣僚は25万円超もアップすることになる。
国税庁の「民間給与実態統計調査」(2022年)によれば、我が国の給与所得者の平均給与は前年比11万9000円増の458万円だ。ただ、厚生労働省が10月6日発表した8月の毎月勤労統計調査(速報)を見れば、物価を考慮した実質賃金は前年同月比2.5%減で17カ月連続のマイナスとなっている。首相や閣僚、国会議員には様々な「議員特権」があるものの、一般の国民は物価高騰という厳しい逆風に遭っている。
その後首相は増額分の返納を表明した。が、国民から批判さえなければ平然ともらっていたであろう。国のトップとしてセンス、器の大きさに疑問が残る。
減税は「1回限り」とする岸田首相。1回だけで本当に景気は良くなるのか
さて、首相は所得税と住民税を合わせて1人あたり合計4万円の減税方針を打ち出したものの、その規模で本当に国民生活を守ることができるのか懐疑的な見方が広がる。さらに定額減税の実施時期は2024年6月と8カ月も先だ。「明日は今日よりも良くなる」などと首相は述べているが、今日の厳しい生活に頭を抱える国民からは遅すぎるとの批判は尽きない。
岸田氏は「来年は賃上げにとって大変重要なタイミングを迎える。賃上げを実現し、デフレに後戻りさせないために国民への還元、減税を考えている」と述べ、定額減税は「生活を支え、可処分所得を増やす意味はある」と強調する。
ただ、実質賃金が1年半もマイナスが続いているにもかかわらず、岸田首相は10月31日の参院予算委員会で「1回で終われるよう経済を盛り上げていきたい」と語り、減税期間は「1年」限りとの見方を示す。さすがに与党内には、公明党の山口那津男代表をはじめ「物価高が続くならば1回で終わりにならない」との意見が根強いが、なぜか首相にはこうした国民の切実な声が届いていないようだ。
「増税メガネ」を気にして減税しても、支持率は政権発足以来最低の26.9%まで下落。岸田政権はもう終わりだ
ANNの世論調査(10月28、29日実施)によると、岸田内閣の支持率は6カ月連続で下落し、政権発足以来最低の26.9%となった。定額減税の検討に関しては「評価しない」が半数を超え、「政権の人気取りだと思うから」と答えた人が41%に上っている。また、日経新聞とテレビ東京の調査(10月27〜29日)でも支持率は前月から9ポイント減となり、過去最低の33%に下落。不支持率は8ポイント増の59%に達した。
自民党の伊吹文明元衆院議長は「増税メガネと言われたことを(首相が)気にしているらしい」と明かしているが、増税と減税というアクセルとブレーキを同時に踏むような矛盾を国民が気づかないわけがないだろう。加えて、自分たちは身を切るのではなく、むしろ国会での法案成立を受けて年収がアップする。こうした訳の分からない姿勢だからこそ、内閣支持率が下落していることを首相は知るべきではないか。
首相は10月30日の自民党役員会で「現金を一律給付する手法は、国難とも言える事態に限る」と述べている。岸田氏が「国難」をどのように定義づけているのかは分からないが、物価高騰に国民があえぐタイミングで自分たちの年収をアップさせる法案を着々と提出する感覚は理解に苦しむ。
「政権の人気取り」のつもりが、「政権の命取り」に繋がるかもしれない―。首相には来年夏の自民党総裁選で再選を果たしたいとの思いが強いのかもしれないが、庶民感覚を失った宰相に強い危機感を抱く自民党議員が日増しに増えていることだけは忘れない方が良いだろう。
●国費4.3兆円を埋蔵金に 補正予算案 膨れ上がる基金残高は16.6兆円に 11/11
政府は10日、2023年度の一般会計補正予算案を閣議決定した。補正予算案には、各府省庁が所管する基金向けに、特別会計分などを含めて約4兆3000億円が計上された。基金への補正予算支出はコロナ禍を契機に急増したまま、歯止めが利かない状況となっている。残高は22年度末にコロナ禍前の6〜7倍となる16兆6000億円にまで肥大化。財政法上の「緊要な予算の追加」のために編成される補正予算を使い国費を「埋蔵金化」する手法に、野党からは疑問の声が上がる。
歳出を「平時に戻す」と掲げていた
基金向けの補正予算額は19年度以前は数千億円だったが、コロナ禍が始まった20年度は約10兆7000億円、21年度に約5兆2000億円、22年度に約10兆1000億円を充てた。政府は今年6月に閣議決定した骨太方針で、コロナ禍が収束しつつあるとして「歳出を平時に戻し、緊急時の財政支出を必要以上に長期化・恒常化させないよう取り組む」と掲げていた。
だが、今回の補正予算案でも31基金に計約4兆3000億円が積み上げられた。うち過半を占めるのが経済産業省所管の基金。半導体の生産施設の整備費を助成する「特定半導体基金」(6322億円)など半導体関連が目立った。
「さまざまな批判がある」と松野博一官房長官
松野博一官房長官は10日の記者会見で、「さまざまな批判があることも踏まえ、各省庁で適正な執行管理が行われることが重要だ」と述べた。
立憲民主党の長妻昭政調会長は、取材に「今回も各府省庁が安易に予算要求したため、常軌を逸した額が計上された」と批判。「基金に予算が投じられた後は国会のチェックが行き届きにくくなるため、基金は原則禁止し、設ける場合も要件を厳格化すべきだ」と話した。
●補正予算、岸田政権で累計80兆円 安倍政権超え間近 借金は1000兆円 11/11
政府は10日、経済対策を裏付ける2023年度の一般会計補正予算案を閣議決定し、歳出(支出)総額は13兆1992億円となった。岸田政権として約2年で計4回の補正予算の累計額は80兆8118億円に達し、7年余で計13回編成した安倍政権の91兆7050億円に迫る。コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻といった危機が大型編成の理由とはいえ、物価抑制や景気への効果は明確ではなく、借金だけが確実に増える構図となっている。(市川千晴)
補正予算は予算の膨張を防ぐため、財政法で「特に緊要となった経費の支出」に本来限定されている。
だが、新型コロナウイルスが流行した20年以降、補正の規模が一気に膨らむ中で、緊急性が乏しい事業も紛れ込む。今回は低所得世帯への給付金で1兆592億円、電気とガス、ガソリンの価格抑制に7948億円が柱の事業として計上される一方、公共事業関係2兆2000億円、宇宙戦略基金3000億円なども入った。
「補正予算は確保しやすい上に…」
ある与党議員は「当初予算は査定が厳しいが、補正予算は確保しやすい上に、国会の審議時間も短い」と明かし、補正予算が規模ありきで、ばらまきの手段になっていることを認める。
岸田政権が6月に閣議決定した「骨太の方針」では、予算を「平時に戻す」と明記されたが、今回の補正予算はそれにほど遠い。仮に、次回の編成が今回と同規模になれば、岸田政権の累計額は安倍政権を超す。
「予算の効果を検証し、情報公開の仕組みを」
補正の財源は7割近くを国債に依存。国債の発行残高はすでに1000兆円を超え、補正が財政悪化に拍車をかける。経済対策の柱となる所得税(1人3万円)と住民税(1人1万円)の減税は来年6月の実施。今回の補正ではなく、12月の24年度当初予算編成で手当てされるが、借金で穴埋めされる公算が大きい。
第一生命経済研究所の星野卓也氏は、宇宙関連事業などは「緊急性が要件の補正ではなく、当初予算で計画的に財源を確保することが望ましい」と指摘。その上で「政府は補正を含めた予算の効果を検証し、分かりやすい情報公開の仕組みを整えるべきだ」と話した。
●減らしてほしい負担 3位医療保険料、2位所得税を抑えた圧倒的1位は? 11/11
止まらない物価の上昇。今年9月の実質賃金は、前年同月比2.4%減少し18カ月連続でマイナスとなった。
直近の物価高だけでなく、長年続く社会保険料の増加も重荷となっている。総務省の家計調査によると、二人以上勤労世帯の’00年における社会保険料の負担は48,019円だった一方、‘22年の社会保険料負担は67,175円と39%増加した。実収入も増えてはいるものの、税や保険料などの負担増によって増加の実感は得にくくなっているとみられる。
租税負担率と社会保障負担率を示す令和5年度の国民負担率は、46.8%となる見込みで、これは’00年の35.6%から10%以上増加した数字。そのうえ、現在「異次元の少子化対策」の財源として、社会保険料率の上乗せが検討されており、今後社会保険料負担はさらに増す可能性さえある。
そんななか岸田文雄首相(66)は、来年6月に1人当たり4万円の定額減税を行う方針を示した。しかし、世間の反応は芳しくない様子だ。では、庶民はいったいどの負担を減らしてほしいと感じているのか? そこで、身近な国税である所得税、相続税、贈与税、消費税、酒税、たばこ税、ガソリン税と社会保険料である年金保険料、医療保険料、介護保険料のうちどの負担を最も減らしてほしいかを、20代以上の1000人を対象に調査した。
3位に選ばれたのは医療保険料。高齢化や医療の高度化によって保険組合の支出が増えるなか、保険料負担も増加してきた。会社員は基本給に残業代や通勤手当などの諸手当を含めた支給額(額面給与)のおおむね8〜10%を会社と折半して負担する。東京都の協会けんぽに加入する会社員の場合、額面給与が月40万円だとすると20500円が引かれる。
自営業者が加入する国民健康保険は特に財政状況が厳しく、’24年度からは年間保険料の上限を2万円引き上げて106万円とすることが発表された。また、後期高齢者医療制度の年間保険料も’24、’25年度にかけて全体平均で約5,200円引き上げられる。
調査では、現在医療サービスを受けていない人からの不公平感のほか、保険料の高さを嘆く声が聞こえてきた。
「他の税金は控除後の金額に税率を掛けているが、健康保険料は控除前の金額に税率を掛けているので、高すぎる」(埼玉県・自営業・50代)
「月々の給与から引かれるのが痛い」(埼玉県・会社員・20代)
「ほとんど医療費を使ってないので、利用者の負担割合を増やしてほしい」(広島県・専業主婦・60代)
「退職して全額負担しているので健康保険料の負担が一番重く感じる」(大阪府・無職・70歳以上)
「国民健康保険料の負担が、年収の1割を占めているから」(大阪府・パート・50代)
第2位に選ばれたのは所得税。課税対象額の増加に応じて、一定金額を超えた部分のみにより高い税率を課す「超過累進税率」が取り入れられている。来年6月には、所得税3万円の減税が行われる予定だ。
収入の高い層からの所得税負担の削減を求める声のほか、所得税に限らず社会保険料なども含めた多額が給与から控除され、手取り金額が少なくなることを嘆く声が多数見られた。
「最も税率が高い上に使い道がわからないので」(東京都・会社勤務、管理職・40代)
「手取りが少なくなりすぎている」(大阪府・公務員・20代)
「年金生活なので、所得税が少ないことがベスト消費税は購入を控えることで負担を減らしたい」(千葉県・無職・70歳以上)
「稼いでもザルのように抜けていっては労働意欲がなくなる」(兵庫県・公務員・60代)
「物価高騰で生活費の割合が増えた」(兵庫県・医師等医療系専門職・50代)
「賃上げしても、所得税と年金、健康保険で消える」(埼玉県・医師等医療系専門職・30代)
第1位に選ばれたのは消費税。得票数で、2位の所得税に2倍以上の差をつけた。社会保障の財源にするという名目で、’19年に税率8%から10%に引き上げられた。物価が上がるとともに負担が増えることから、今もっとも疎まれている税だろう。しかし、岸田首相は11月1日の参院予算委員会で「そもそも(消費税を)引き下げるということは考えておりません」ときっぱり断言している。
ふだんの買い物を楽にしてほしいとの声ほか、減税の実感が大きい事や、平等に減税されるという意見があがっていた。また、消費税をなくすことでお金のある人はより消費行動をとり経済をまわしてくれるのではないかという期待も寄せられた。
「レシートを見た時高くてびっくりするときがあり、なるべく買わないように我慢しようと思うことが多くなった」(岩手県・20代・会社員)
「誰でも減税するからです。貧困層対策にもなるからです」(埼玉県・パート・30代)
「物価高騰で家計が悲鳴を上げている」(神奈川県・専業主婦・60代)
「逆進性が高いうえに、個人消費を落ち込ませている主因だから」(千葉県・会社員・40代)
「減税が実感できるから」(兵庫県・会社員・40代)
「あらゆるモノやサービスが物価高で余計に高くなり、家計を圧迫していて困っているから」(埼玉県・専業主婦・70歳以上)
「誰もが払うものなので公平性がある」(京都府・パート・50代)
「みんなが平等に減税になるようにしてほしい。ただ低所得者にばら撒けばいいわけではないし、小さい子供がいる世代や母子家庭ばかりが優遇されるのもおかしい。みんな苦しいのは同じ」(神奈川県・専業主婦・40代)
【岸田政権に減らしてほしい負担ランキング 1〜5位】
1位:消費税 479票
2位:所得税 200票
3位:医療保険料(国民健康保険、健康保険などの保険料) 79票
4位:ガソリン税 74票
5位:年金保険料(国民年金、厚生年金などの保険料) 61票
【岸田政権に減らしてほしい負担 全順位】
1位:消費税 479票
「レシートを見た時高くてびっくりするときがあり、なるべく買わないように我慢しようと思うことが多くなった」(岩手県・20代・会社員)
「誰でも減税するからです。貧困層対策にもなるからです」(埼玉県・パート・30代)
「物価高騰で家計が悲鳴を上げている」(神奈川県・専業主婦・60代)
2位:所得税 200票
「手取りが少なくなりすぎている」(大阪府・公務員・20代)
「年金生活なので、所得税が少ないことがベスト消費税は購入を控えることで負担を減らしたい」(千葉県・無職・70歳以上)
「稼いでもザルのように抜けていっては労働意欲がなくなる」(兵庫県・公務員・60代)
3位:医療保険料(国民健康保険、健康保険などの保険料) 79票
「他の税金は控除後の金額に税率を掛けているが、健康保険料は控除前の金額に税率を掛けているので、高すぎる」(埼玉県・自営業・50代)
「月々の給与から引かれるのが痛い」(埼玉県・会社員・20代)
「ほとんど医療費を使ってないので、利用者の負担割合を増やしてほしい」(広島県・専業主婦・60代)
4位:ガソリン税 74票
「税金に税金を上乗せして払うのはおかしい」(長野県・会社員・20代)
「生活に直結していて、現状高すぎるから」(千葉県・専業主婦・30代)
「国際情勢等によりガソリン代が高騰している上に二重に課税されているから」(岡山県・専業主婦・40代)
5位:年金保険料(国民年金、厚生年金などの保険料) 61票
「年金の将来は受けとる額が減っていき自分で老後の資金は工面するほうが確実だと感じる。いま所得税減税して赤字国債の返済はいったいどこまで先延ばしにするのか疑問」(大分県・パート・50代)
「支払った分に足りるリターンを将来得られる確証がないので」(神奈川県・会社員(管理職)・50代)
「支払う割に将来もらえる額が減ることが予想されるので割に合わない」(東京都・派遣社員・30代)
6位:介護保険料 51票
「年金から差引かれるのは非常に負担に感じる」(北海道・無職・70代)
「年金から介護保険料が引かれて、生活費に影響を及ぼすことが多い」(山口県・無職・70代)
「年金支給額に対して、高すぎるから」(岡山県・無職・60代)
7位:相続税 23票
「所得税とかの基本税は今の国の財政から考えて減税すべきじゃない」(兵庫県・50代)
「なぜ、両親が蓄えた資産を相続するのに、多くの相続税を支払う必要があるのか??とくに10年ほど前に非課税対象額が6割になったこと、納得がいかない」(千葉県・無職・60代)
8位:たばこ税 16票
「タバコの値段がどんどん上がっていくから」(愛知県・派遣社員・40代)
「値上がり幅が半端ないから」(福島県・会社員・40代)
9位:贈与税 10票
10位:酒税 7票
●自民党幹部が嘆きの告白「追い込まれ解散」すら難しくなった「哀れな末路」 11/11
11月9日、マスコミ各社は「岸田文雄総理が年内の衆院解散・総選挙を見送る意向を固めた」ことを一斉に報じた。ただし、解散するか否かは総理の「専権事項」であり、永田町には「解散時期についての総理のウソだけは許される」との不文律も存在する。したがって、岸田総理が解散見送りを口にしたからといって、年内解散が100%ないとは言い切れない。
しかし、国民から「増税クソメガネ」と揶揄され、支持率が続落している現実を考えると、解散カードを切りうる状況にないのは明らかだ。事実、政権内や自民党内でも「年内解散などできるわけがない」との声が圧倒的多数を占めている。
ならば岸田総理は、いつになれば「伝家の宝刀」を抜くことができるのか。この点について、総理に近い岸田派の有力議員は、苦渋に満ちた表情で次のように話す。
「岸田さんは年明けに召集される通常国会で、2024年度予算が成立した後の来年4月から、自民党総裁の任期が満了する来年9月までのおよそ半年間のいずれかの時期に、解散に打って出たいと考えているようです。しかし、来年9月までに事態が好転する可能性は極めて低い。結局、解散カードを切れない状況がズルズルと続いたあげく、総裁任期満了直前での『追い込まれ解散』ということになっていくでしょう」
だが自民党内からは、その「追い込まれ解散」すら難しい、との声も聞こえてくる。
「岸田総理が最悪とされる『追い込まれ解散』を選択すれば、自民党内で猛烈な『岸田降ろし』が勃発するのは確実です。そうなれば政権も党内も大混乱に陥り、解散どころの話ではなくなる。最終的には、過去の例に倣って『総裁任期の満了とともに総理・総裁を退任』ということになる」(自民党執行部幹部)
解散カードを封じられての強制退任。岸田総理にとって、これほど哀れな末路はない。
●岸田さんに今辞めてもらっては困る “バラバラ野党”が与党を追い詰める? 11/11
先日行われたANN世論調査では、岸田内閣の支持率が政権発足以来最低の26.9%を記録。そして、事実上の与野党対決となった10月の衆参補欠選挙でも、野党候補が1勝1敗となり、「野党がまとまれば与党に勝てる」という結果となった。
支持率が低迷する岸田政権を野党は今後も一致結束して追い詰められるのか? 野党事情をテレビ朝日政治部の村上祐子記者に聞いた。
――野党が存在感を示せていないのはなぜか?
一言で表すと、バラバラだからだ。“バラバラ”の要因は共産党に対する各党のスタンスの違いにある。
まず野党第一党の立憲民主党は、前回の衆院選で安全保障政策などが異なる共産と政権枠組みの合意まで結んで臨んだものの、与党からは「立憲共産党」と揶揄されて結果的に議席を減らした。その後、代表に就いた泉健太氏は一旦共産との連携を白紙にしたところ党内からの猛反発が起きた。というのも、共産党と選挙協力しなければ勝てない選挙基盤の弱い立憲議員が一定数いるからだ。その後やむなく方針を転換し、野党の一本化を目指すという二転三転があった。
続いて日本維新の会は次の衆院選ではすべての小選挙区に独自の候補を擁立予定。つまり、他の野党と連携せずに自分たちだけで闘うスタンスを表明している。
そして国民民主党。最近は政権に連立入りするのではという話もくすぶるが、そもそも国民民主は共産党と距離を置いている。元々立憲と国民民主に分かれる前はどちらも「民主党」だったが、共産党との距離をめぐって当初から党内で意見が分かれていた。国民民主としては、共産党と選挙協力する政党とは一緒にやれないというスタンスを明確にしている。
このように共産党をめぐる立ち位置の違いが表面化しているが、そのせいでまとまって政権に立ち向かえない状況になっている。
――10月22日に長崎と徳島高知での衆参補欠選挙は事実上の与野党対決となり、野党候補が1勝1敗となった。この結果を野党はどう見ているのか?
1勝とはいえ勝ちは勝ち。立憲としては間を空けずに各党に呼びかけたかったが、きっかけがなく頭を悩ませていた時に10月20日から臨時国会が始まった。通常、与党も野党も新執行部が発足すると、国会での「挨拶回り」といって、各党に挨拶して回る慣例がある。このセレモニーを利用して、立憲は各党に接触を図った。執行部自体は変わらない状態でのあいさつ回りは極めて異例だが、ある幹部は「選挙に向けて連携を呼び掛けるためには『渡りに船だった』」と話す。あくまで「ご挨拶」という形で各党に接触し、「臨時国会頑張りましょう」「次の選挙に向けて連携しましょう」と声をかけた。
――その挨拶回りが思わぬ波紋を呼んだそうだが。
共産党が思いのほか挨拶回りに大きく反応した。挨拶回りを「党首会談」と捉え、各党への「次の選挙に向けて力を合わせましょう」といった呼びかけを、「次期衆院選挙での連携確認」と赤旗新聞の一面で大々的に報じたのだ。これに共産党と距離を置く国民民主がさらに反発し、翌日に控えていた立憲からの挨拶回りを拒否。SNS上で党首どうしが応酬するというカオスな状態になっている。本来、言いたいことがあれば党首同士が会って話すものだが、お互いが会見やSNSで相手を批判していること自体が、今のバラバラぶりを露呈している。
――そんなバラバラな状態の中、次の衆院選に向けて各党は準備を進めているのか?
少なくとも維新は独自候補を立てる方針のため、野党が連携する枠組みには入らない。次に、立憲と共産。共産党としては、速やかに政策のすり合わせをしたうえで具体的な選挙区調整に入りたいものの、立憲の泉代表は明言を避けている。現在は約50の選挙区で両党の候補者が競合していて、野党の議席を伸ばすためには本音では協力したい。今後は、表立った形ではアピールせず、協力できる選挙区でそれぞれが協力するという「ステルス戦略」が落としどころだと言われていて、実際に東京では30ある選挙区で候補者を一本化することが内々に決まる見通し。
実際に候補者調整の話し合いをしているのは国民民主だが、立憲が共産に近づくほど立憲と距離を置くので、野党全体での選挙区調整はかなり難航が予想される。国民民主の玉木代表は「政策を脇において『選挙を一緒にやれば何とかなる』という考え方には立たない」「立憲がだんだん近づきにくい存在になってきた」とけん制している。
――立憲はかなり苦労しているようだが。
共産と連携すれば国民民主が逃げる一方、共産と協力しなければ勝てない議員もいる。各党との接触の場も、あくまで臨時国会召集に伴う「挨拶回り」という建て付けにした。さらに、使う言葉にもこだわった。ある幹部によると、キラーワードは「連携」。他党を刺激しないように、「協力」「共闘」というワードを使わずに「連携」が多用されている。
泉代表は決して「野党共闘」「選挙協力」という言葉は使わず、「各党との連携」「野党議席の最大化に向けて力合わせに取り組む」と述べていて、共産党にも「協力」「共闘」という言葉は使わないで欲しいと伝えていた。共産としては、むしろ「野党共闘」という言葉を積極的に使用してきたが、立憲の意図をくみ取って「連携」という言葉を使って「あげて」いる。ただ、志位委員長は「立憲と連携することで将来的な選挙区調整も想定している」と述べているため、あくまでも選挙区調整をやることにこだわっている。
――年内解散が見送られた中、野党の選挙に対する思惑は?
衆議院議員の任期は10月30日で折り返しを迎えたので、いつ選挙があっても対応できるように準備を本格化させる必要がある。そんな中、ある中堅議員は「早く解散して欲しい」と漏らす。「支持率が低迷する中で解散すれば、政権交代は起きなくても自民党の議席を過半数割れに追い込めるので、岸田さんに今辞めてもらっては困る」「むしろ支持率が少し上がって、岸田さんが解散してくれた方が与党の議席を減らせるからありがたい」と述べている。一回の選挙で政権交代できないことを見越して、まずは自民党を過半数割れに追い込み、岸田総理を「生かさず殺さず」でじわじわ追い込みたい考え。
別の野党議員は「本当は維新と選挙協力したい」とぼやく。立憲と維新の議席を足すと137議席。まだまだ政権交代には程遠いがかなりの議席を上積みすることが出来る。ただ、そうなると憲法改正など見解が違うイシューで立憲が歩み寄らないと難しいので、実現性は低い。
――ここまで支持率が下がっても与党が強いのは野党が一枚岩になれないから、ということに尽きるようだが。
野党の内輪もめは昔から繰り返されてきた。かつての民主党が「民進党」「希望の党」「立憲民主党」「国民民主党」と党名を変えたりくっついたり離れたりしてきた歴史がある。今も昔も野党に求められているのは、まとまること。考え方の異なる政党が選挙のためにどこまでお互いが譲歩できるかで、今後の命運が決まることになる。
●内閣支持率"相当な危険水域" 11/11
JNNが行った最新の世論調査で岸田内閣の支持率が先月の調査から10ポイント以上、下落。政権発足後、初めて30%を切り、過去最低となった。
11月2日に経済対策をとりまとめた直後の調査なだけに永田町では「相当な危険水域」だと衝撃が走っている。なぜ支持率はここまで急落したのか。
「経済対策」取りまとめ直後に「29.1%」政権交代後最低に
11月4日、5日に実施したJNN世論調査で岸田内閣を「支持する」と答えた人は前回の調査から10.5ポイント下落し、29.1%と過去最大の下落で、政権発足後過去最低となった。「支持できない」という人も68.4%で過去最高だった。
JNN世論調査は2018年10月から調査方法を変更したため単純に比較できないが、30%を切ったのは、2012年12月に自民党が政権に復帰して以降、最低である。
例えば、第2次安倍内閣の最低支持率は、コロナ禍の35.4%(20年8月調査)、菅前内閣は、政権末期の21年8月の32.6%だった(翌9月に退陣表明)。ともにコロナ政策で評価を落としたことが主な要因だった。
最近30%を切った例は、2012年11月の民主党・野田政権の末期で25.2%、自民党政権では世界金融危機の対応などで支持を落とした2008年12月の麻生内閣(23.9%)まで遡る。今回はおよそ15年ぶりの低水準となった。
不評を買った経済対策「期待しない」72% 橋本政権の「減税」のときは?
今回永田町でこの調査が驚きを持って受け止められた理由は、11月2日に政府がまとめた「経済対策」の直後の調査での急落だったことだ。
岸田総理は、今回の経済対策に「デフレに後戻りしないための一時的な措置」として、所得税3万円と住民税1万円、あわせて4万円の定額減税などを盛り込んだが、これを「評価しない」人が6割以上にのぼり、「経済対策」全体を「期待しない」人は7割以上に及んだ。
とくに、所得税などの「減税政策」をめぐっては、「自民党支持層」でも半数以上が評価していない。
年齢別ではとくに40〜60代の男性の7割以上、50代男性は8割以上が評価していない。
歴代政権を振り返ってみると、同じように減税政策を行ったのは橋本龍太郎総理だ。アジア通貨危機や山一証券の破綻が起きた1997年末に2兆円の特別減税を表明し、翌1998年2月から特別減税をスピード実施している。その直後の、3月のJNN世論調査ではこれまで下降傾向だった内閣支持率が一時的に上昇している(2月36.7%→3月39.1%)。ただその後、減税の恒久化を巡って橋本総理の発言がぶれ、98年の参院選で惨敗し、退陣に追い込まれた。
今回、岸田総理の「減税」対策が最初から不評を買っている理由として、取材をしていて感じるのは、再来年(以降)に防衛費や少子化対策で国民負担が増えることが分かっていて、来年は「減税」することの“ちぐはぐ感”をしっかり説明できていないように感じる。さらに住民税非課税世帯に対しては「現金給付」をするという、減税と給付の混在がよりわかりにくくしている。
岸田総理は将来の国民負担について「社会保障改革を進めることで、実質的な国民負担の増加にならないよう検討する。今回の所得税減税と矛盾するものではない」と繰り返し強調しているが、額面通り受け取られていないようだ。
ある自民党幹部は「選挙目当ての減税だと裏読みされている。今は何は何をやっても全部が裏目に出る」と語る。別の自民党中堅議員は「やっていることは悪くないが、地元に帰っても選挙目当てのバラマキだと見透かされている。総理の熱意が伝わっていない、ひとえに総理の説明の仕方の問題だ」と嘆いた。
1か月で10ポイント以上の下落 過去には30ポイント近くの“大暴落”も
支持率が30%を切ったと同時に、永田町に衝撃が走ったのは、1か月の間に10ポイント以上支持率が下落したことだった。
再び過去の政権を振り返ってみると、内閣支持率が前の月と比べ10ポイント以上急落することは、一内閣で、平均で1〜2回はある。
2000年以降のJNN世論調査を分析すると、森喜朗総理が2000年5月に「日本は天皇を中心としている神の国」と発言し、前の月と比べ15ポイント以上下落した。
平成以来最大の「落ち幅」でいうと、小泉純一郎総理が2002年1月29日、当時人気絶頂だった田中真紀子外務大臣を更迭し、翌2月の調査で28パーセント下落したこともあった。
ただ、この表をみると、支持率急落の要因の多くは、自らの失言、身内の不祥事などが多く、政府の政策(しかも今回は減税)が不評を買うケースでの下落は珍しいことがわかる。
必要とされる経済対策は?「消費減税」が41%で最多
今回の経済対策について、岸田総理は「デフレ完全脱却のための総合経済対策」と名付け、「デフレから脱却し経済を成長経路に乗せる」ことを最優先にすると11月2日の記者会見で強調した。その「デフレに後戻りしないための一時的措置」の目玉が今回、所得税などの減税だったわけだが、その評価が良くない。
では望ましい経済対策とはなにか。JNNは今回、国民が求める「デフレに後戻りしないための一時的措置」で何が良いかを聞いた。選択肢はこれ以外でも複数あるとおもうが、予算委員会での野党の主張を総合すると、おおむね以下の5点に集約される。
結果は、「消費税の減税」がもっとも多く41%だが、岸田総理は「いまは考えていない」と繰り返し述べている。
その際、総理が毎回持ち出す常套句は「かつて社会保障と税の一体改革の議論で決まったこと」という答弁だ。2012年の野田内閣下において民主党、自民党、公明党の三党間において取り決められた合意、つまり消費税の税収は「年金、医療、介護、少子化対策」の社会保障4経費に充てるということを当時の与野党合意で決まったことだから、覆すことはできないと強調する。これにより旧民主党系の財政規律派の口を封じている。
ただ一方で、将来の消費税引き下げについては「全く今から否定するものではない」と含みも残している。
支持率「危険水域」でも“岸田おろし”の動きなし
6月に亡くなった青木幹雄元官房長官は、内閣支持率と与党第一党の政党支持率を足した数字が「50」を切れば政権が倒れるという「青木の法則」を提唱したとされる。今回のJNN世論調査で照らし合わせれば、内閣支持率「29.1」、自民支持率「26.2」で「55.3」となるので、まだ大丈夫とみるべきか、危険水域とみるべきか。いずれにせよ、この“危険水域”でも「岸田おろし」は起きそうもない。自民党の世耕弘成参院幹事長が「物価高に対応して何をやろうとしているのか、世の中に全く伝わらなかった」などと代表質問で公然と反旗を翻したが、このような身内からの反発は、広がりに欠いている。
その理由は、衆目一致する「ポスト岸田」が不在なこと、野党がまとまりに欠いていること、衆院選挙まで時間がある、ことなどだろう。この点、総裁選と衆院選挙まで時間がなかった菅前総理とは事情が異なる。
今回の世論調査の結果をみても「岸田総理にいつまで続けて欲しいか」との問いに対し、半数以上(自民党支持層では6割以上)が「来年9月の総裁任期まで」と答え、「すぐに交代して欲しい」と答えた人は全体で28%、自民支持層では15%だった。
8月にも同じ調査をしたが、「すぐに交代して欲しい」はこの3か月で微増(+5%)だった。おそらく有権者も、なかなか次の総理像を描けていないのが現実だろう。
一方、「次の総理にふさわしい人」も大きな変動はない。小泉進次郎元環境大臣、石破茂元幹事長、河野デジタル大臣の3人の“常連”は3か月前の調査と比較しても、誤差の範囲でそんなに数字に変わりない。
ただ3か月まえの調査では「その他議員」を答えた人が全体の3%だったのに対し、今回は16%に上昇していて、「次の総理」も群雄割拠の状態といえる。「それだけ自民党議員は層が厚い」と主張する人もいるが、あくまで野党と比較であって、有力な“ポスト岸田”がいないのが、与野党関係者の大方の見方だ。
このまま岸田内閣の支持率が続落するのか、まだ予断を許さないが「今は先送り出来ない課題に、一意専心取り組む」この総理の決意通り、国民が求める物価高対策やデフレ脱却、賃上げなど、結果を出さない限り支持率回復は見込めない。
●借金依存、遠のく正常化 「緊急性」に疑念―補正予算 11/11
政府は10日、総合経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案を閣議決定した。一般会計の総額は13兆1992億円。このうち、7割近い8兆8750億円を新規国債(借金)の追加発行で賄い、23年度末の普通国債発行残高は1075兆7000億円に膨らむ。物価高に苦しむ家計や企業を支援して「デフレ完全脱却」への糸口にする考えだが、緊急性の疑わしい支出も目立つ。コロナ禍で膨らんだ歳出構造の正常化は一段と遠のいている。
財政法は「特に緊要となった経費の支出」について補正予算の編成を認めている。今回の目玉は、低所得世帯に対する7万円給付などの物価高対策だが、巨額の公共事業費や工場・事業所の省エネ支援策のように来年度予算で手当てしても差し支えなさそうな事業が目に付く。
岸田政権は、予算を年度内に使い切る「単年度主義」の弊害を是正する手段として基金を活用する方針を掲げ、今回の補正では新設する4基金を含め、計31基金に約4兆円を投じる。ただ、基金の事業は運営が外部に委託されて国会のチェックが行き届きにくいため、無駄遣いの温床になりかねないとの批判もある。
コロナ禍を脱して経済活動が正常化に向かう中、巨額の補正予算が本当に必要なのか疑問符も付く。今回は、総額70兆円を超えた20年度の規模よりは小さいが、東日本大震災やリーマン・ショック後に匹敵する。
日本経済の潜在的な供給力と実際の需要の差を表す「需給ギャップ」は今年4〜6月期にプラスに転じ、景気の足かせとなっていた「需要不足」は解消されつつある。巨額補正に加え、1人当たり4万円の所得・住民税減税などで需要を過度に刺激すれば、物価高を助長するリスクもある。
●年内解散断念 国民を甘く見る限りは 11/11
「減税解散」不発―。きのうの紙面にこんな見出しが躍った。
政権浮揚を狙い、岸田文雄首相が打ち出した減税策は「選挙目当て」と見抜かれ、国民の強い反発を買った。
支持率は危険水域とされる20%台に落ち込んでいる。解散はできなかったのが実情だろう。
岸田内閣は、その減税を柱とした経済対策を裏付ける13兆1992億円の補正予算案を閣議決定した。歳入に充てる税収の増加分は1710億円にとどまる。
首相は所得税と住民税で1人4万円を差し引くとする。2020年度から3兆5千億円ほど増えた税収を「国民に直接還元する」と説いている。
国会で鈴木俊一財務相は、この増収分は使用済みで残っていないと明らかにした。税収が見積もりを上回れば、政策経費や国債(借金)の返済に回して当然だ。借金の残高が1千兆円を超える国の財政に、実質的な剰余金などもとより存在しない。
首相は「賃上げが物価高に追いついていないための一時的な措置だ」と主張する。防衛財源となる年1兆円強の増税は先送りし、減税との矛盾を取り繕う。
補正予算案には燃油・電気・ガス代の補助金、半導体支援の基金積み増し、防衛装備品の取得費や施設整備費といった規模の大きな項目が並ぶ。
歳入の7割近い8兆8千億円余は借金で賄う。放埒(ほうらつ)な財政運営で健全化は遠のくばかりだ。
コロナ禍に続く物価高で暮らしぶりは苦しくなっている。にわかに減税を言い出したところで国民がなびくはずもない。どこまで税と社会保険料の負担は膨らむのか、むしろ不透明感が増す。
防衛費の大幅増額、原発の利用促進、マイナンバーにしても、首相は与党の意見に偏重した政策判断を繰り返してきた。
「まずは経済を立て直す」「政策は順番が大切」と会見で述べた一方、国会では追及をはぐらかしている。丁寧に持説を語り、国民の理解を得て、信頼の土台から築き直していくほかない。
首相は来秋の自民党総裁選前後に解散時期を探るという。全衆院議員を失職させる「解散権」の行使は、予算案が否決された時や重要政策の変更があった場合に限るというのが通説だ。
国民の支持あっての総裁再選だろう。保身に躍起になって解散権をもてあそび、政策を利用する姿勢を正さなければ、先に政権の体力は尽きるに違いない。
●神田副大臣の進退に政権苦慮 11/11
税金滞納が発覚した自民党の神田憲次財務副大臣の扱いに岸田政権が苦慮している。不祥事で政務三役の辞任が相次ぐ中、さらなる「辞任ドミノ」は避けたいのが本音。攻勢を強める立憲民主党は、続投したままでは経済対策などを巡る国会審議に影響しかねないと警告しており、岸田文雄首相の判断が焦点となっている。
神田氏は自身が代表を務める会社が保有する土地・建物について、固定資産税の滞納により過去4回、差し押さえを受けたことを認めた。10日の衆院内閣委員会で立民の本庄知史氏から詳細な説明を求められた神田氏は「精査している」と繰り返した。進退に関し「言及を控えたい」と述べ、歯切れの悪い答弁に終始した。
10月下旬には山田太郎氏(自民)が不倫問題で、柿沢未途氏(同)は公職選挙法違反の疑いのある事件に絡み、それぞれ文部科学政務官と法務副大臣を辞任。内閣支持率が低迷する首相にとって「3人目の辞任」となれば打撃は必至だ。
松野博一官房長官は10日の記者会見で「財務副大臣の自覚を持ち説明を尽くしてもらいたい」と推移を見守る考えを示した。自民幹部は神田氏について「首相官邸は『法には触れていない』と線引きしており、辞任はない」と語った。
新たな「追及カード」を手にした野党は勢いづく。立民の泉健太代表は10日の会見で、神田氏の即時辞任を要求。応じなければ、政府が今国会成立を目指す2023年度補正予算案の審議は「不可能だ」と明言した。安住淳国対委員長は「なぜ『適材適所』なのか首相に聞きたい」と、首相の任命責任を問う考えを表明。国民民主党の榛葉賀津也幹事長も「早く辞めた方がいい」と断じた。
●岸田首相の国家観で大丈夫か 11/11
真っ先に岸田首相の責任を問わなければならない。日本の学校教育レベルの低さは何だ。これは一教師の怠慢とか不注意で済まされることではない。家に出入りの看護師さんが、「台湾」の存在を知らなかったのだ。
台湾と言えば小学校か中学校の地理というより社会科で出て来る問題である。日中問題を勉強すれば、必ず出て来る。地図を開けば日本の南の島国として必ず出て来る。全小学生が台湾の存在と日本との歴史を知らないことは、教育現場は勿論、総理大臣の責任でもある。
日本人が台湾を意識しながら、何となく話題にしにくかったのは“台湾”の持つ政治的な意味だろう。日本人は昔から台湾が好きだった。今もなお深い愛着がある。台湾の難事には立ち合いたい。その気持ちを表現することが難しかった。
その表現しにくい関係を、「台湾有事は日本有事だ」と一言で表現したのが安倍晋三元総理である。これほど日台の地政学的位置と日本人の心を正確に語ったのは安倍氏だけだ。これ以外に日台関係をうまく表現する言葉はない。
台湾は「化外の地」と言われて、主人のいない島国だった。そこで日清戦争の勝利を機に下関条約によって日本に割譲された。以来50年経って日本が第二次大戦で敗北すると中華民国の一部とされた。しかしその帰属に台湾人の誰も承諾していない。残っているのは50年間日本領だったという事実である。
当初は中華民国に帰属すべきという論もあったが、世論は民主化し、陳水扁総統の頃から、中国帰属反対が強くなった。来年1月の総統選に向けて中国系が野党連合を企てているようだが、歴史的に台湾外からの干渉は逆効果の場合が多い。
中国の習近平主席は「台湾を獲る」と公言し、その時期を2027年と宣言している。それに対して日米両国は周辺国を話し合いに巻き込んで、中国包囲網を築こうとしている。
最近、日本は集団的自衛権も視野に戦闘機を使った日豪共同訓練を本格化させる。これは一方で自衛隊の活動範囲を際限なく広げ、憲法が禁じる海外での武力行使の道を開く恐れがある。岸田氏にとって「憲法改正」が喫緊の事態ではないか。
最近、世論調査をやるたびに岸田内閣の支持率が下がっているのは、減税だ、増税だという税のやり取りよりも、国家の土台は大丈夫かということではないのか。
日本は最近の日豪との接触に加えて2016年、英国空軍の最新戦闘機「ユーロファイター・タイフーン」と航自の「F-15とF-2」とのガーディアン・ノース16を行った。さらに22年、ドイツがユーロファイターを日本へ、23年にはインドがスホイ30を日本へ、さらにフランスが航空自衛隊にラファールを派遣した。いずれも初の派遣で、ロシア・ウクライナ戦争をきっかけに始まったものだ。対ロシア組織は既に出来上がっており、同様に対パレスチナ戦略も形成されつつある。 
●岸田首相の“形だけ”な皇位継承策…「このままでは皇室がなくなる」 11/11
秋にはめずらしく、東京の都心が24.9度を記録した11月2日、天皇陛下と雅子さまが主催される秋の園遊会が開かれた。園遊会では、両陛下は招待者と交流される前に、首相など三権の長から挨拶を受ける慣例がある。今回も、岸田文雄首相夫妻を先頭に、両陛下への挨拶が行われた。
「じつは、丘を下りられる直前に、雅子さまのご表情に、ほんの一瞬厳しさが滲んだようにお見受けしました。やはり、岸田総理が自民党に設置した“新機関”に対して、失望感を抱かれていらっしゃるのでしょうか……」(宮内庁関係者)
10月下旬、自民党は安定的な皇位継承策などを検討するため、党内に“総裁直轄の新組織”を立ち上げる方針を打ち出した。
「この“総裁直轄の新組織”は、自民党則79条に定められた特別な機関を指します。『こども・若者』輝く未来創造本部などがこの機関にあたり、時の自民党総裁が、重点的に力を入れたい政策立案を進めるために立ち上げることができます。自民党内には、昨年1月に『皇室問題等についての懇談会』が麻生太郎副総裁を座長として立ち上がっていましたが、初会合以降は一度も会合は開かれず、議論は進まない“休眠状態”でした。臨時国会が開会したタイミングに、岸田首相が“新組織”の立ち上げを表明したことは、まるで皇室典範の改正に向けて熱意を燃やしているように映ります。しかし実際は、首相の姿勢を評価しない声のほうが党内では多いのです。“新組織”の事務局の陣容もこれから固めていくようですし、何よりも“いつまでに何を決める”といった具体的なスケジュールが決まっていません。また、『懇談会』の座長だった麻生氏がトップに就きますが、麻生氏を巡っては“次期衆院選へ出馬せず引退する”という見方が広がっています。近く引退するかもしれない人物をトップに就けたところに、“岸田首相の本気度はきわめて疑わしい”という声は少なくないのです」(政治部記者)
“保守派”からの支持を固める狙いが
まるで“欺瞞”のような岸田首相の姿勢だが、なぜ今国会で皇位継承問題についての議論を加速すると打ち出したのか。現在、自民党が議論を進める“前提”としているのが、2021年に政府の有識者会議が取りまとめ、国会に対して提出された報告書だ。
前出の宮内庁関係者は、「報告書では、戦後に皇室を離脱した旧宮家に連なる男系男子を養子に迎える案、女性皇族が結婚後も身分を保持できる“女性宮家の創設”という案が示され、国会で議論されるはずでした。しかし岸田政権の旧統一教会問題や物価高対策への迷走ぶりにより、岸田総理や自民党に対して世論の風向きは厳しく、とても着手できる状況ではなかったのです。皇室が直面している課題に対して、岸田総理が関心を持っているという話は聞いたことがありません。最近になって所信表明演説や委員会での答弁で発言しているのは、皇室の問題に関心が強い党内保守派の政治家と有権者へのアピールにすぎないと思います。岸田総理による“皇室利用”と批判されても仕方がないでしょう」
政府と自民党が前提としている有識者会議の報告書の内容で議論が進むことに警鐘を鳴らすのは、元最高裁判事の園部逸夫さんだ。園部さんは、2005年に“女性・女系天皇を認める”という提言を行った、小泉政権時に設置された政府有識者会議の座長代理も務めている。
「このままでは皇室がなくなります」と語り、こう続ける。
「現在の制度では、天皇陛下、秋篠宮さまに続く皇位継承資格者は、悠仁さまお一人です。しかし将来、悠仁さまが結婚されても、男子がお生まれになるかはわかりません。皇統を維持するためには、女性・女系天皇を認めることを否定できないのに、政治家は誰も言い出さないのです。また女性皇族は結婚によって皇室を離れなくてはならず、皇位や宮家当主も女系による継承が認められない制度のままでは、皇族数の減少に歯止めがかかりません。本来、悠仁さまご誕生後も、皇室の安定のために何が必要なのか、議論を止めるべきではありませんでした。歴代内閣や国会がその責任を放棄してきたために、皇室の危機は深まり続けています」
そして雅子さまにとっては、岸田政権の怠慢によって、愛子さまの自主的な意思に基づく将来を決められない状況が長引くことにほかならない。
「岸田総理は、いわば“形だけ”の新組織を立ち上げ、皇室が直面している問題を先延ばしにしようとしています。今後、愛子さまが結婚を決められ、皇籍を離脱することになったときに、皇室の存続が危機に瀕している状況に変化がなければ、愛子さまのご選択に対して政治家から異議を唱える動きが生まれないとは言い切れません。そうなったときも雅子さまは、愛子さまのご意思に寄り添い、全力で守られようとお気持ちを固めていらっしゃるのでしょう」(前出・宮内庁関係者)
晴れやかな園遊会で、一瞬見せられたご表情には、“愛子を守る”という雅子さまの決断が秘められていたからだったのか。
●支持率低迷で解散見送り、年末ジャンボ増税へ…国民だまし打ち 11/11
みんかぶプレミアム特集「税金下げろ、規制をなくせ」第1回は早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏がぶった切る。渡瀬氏は「日本人は世襲の貴族政治家の奴隷ではない。全国の納税者は今こそ「全ての増税に反対」の声を上げるべきだ」と主張する。増税がもたらす影響をほとんど説明しない政治に、怒り散らすーー。
衆議院解散見送りの本当の意味…いよいよ増税の詳細が決まる
岸田首相が衆議院解散総選挙を見送り方針を固めたという。したがって、年末の与党税調や政府審議会の議論を経て、岸田政権において防衛増税及び少子化対策財源の詳細が決定する見通しとなった。
ただし、当然だが、岸田首相は年内の解散総選挙を見送るのであれば、新たな増税を確定させるべきではない。民主主義の基本的な原則は「代表無くして課税なし」である。選挙で選ばれた国会議員であっても、直近の国政選挙で国民に信を問うた増税以外のものを安易に国民に課すべきではない。そんなことは中学生でも分かっていることだ。
一方、今年年末の税制を巡るドタバタの中で「所得減税は選挙の大義になる」と一部の自民党議員が主張していたが、政権が減税する場合に選挙は不要だ。減税の是非について増税よりも大議論になっている国会議員に違和感を覚えざるを得ず、民主主義の基本的な約束事すら忘れてしまった現在の政治の在り方に愕然とする。
国民に対するだまし討ちを選挙無しで実施
岸田政権が選挙を経ずに決定した看板増税政策は「防衛増税」である。防衛増税は昨年の参議院議員選挙後に突如として打ち出されたものであり、岸田政権が国政選挙で明確に打ち出し、国民の審判を受けた政策ではない。岸田政権が閣議決定で、所得税、法人税、たばこ税の大増税を決めただけであり、国民側は防衛増税に対する賛否を示す機会は一度も与えられてこなかった。
所得税は国民生活に直接的に影響を与えることになる。たとえ復興所得税の増税期間を延長するというテクニカルな内容であったとしても、それが中長期に渡って国民生活に影響を与えることは間違いない。また、岸田政権が恩着せがましく、所得税定額減税を1年間実施したとしても、2年目以降は既に増税が内定している現状では、その減税の効果も限定的なものとなる。岸田内閣や財務省が「減税に効果なし」と結論し、更なる「所得税大増税」に踏み切ろうとしていることは明らかだ。国民に対するだまし討ちを選挙無しで実施しようとすることは極めて不誠実である。
法人税の本質は株主や労働者に対する課税だ
政権与党内には所得税増税を一旦切り離して、法人税とたばこ税の増税に先行して踏み切ろうとする意見もあるようだ。
一見すると、法人税は大企業に対する課税のように見えるため、庶民からの反発は少ないように思える。しかし、法人税の本質は株主や労働者に対する課税である。今や個人株主が1500万人を超えた日本、そして、多くの人々が確定拠出型年金で退職後の人生設計をしている現状において、大企業に課税することは庶民投資家層に対する課税となる。
また、結果として、法人税増税は労働者給与に転嫁されるという調査・研究も存在しており、実は大企業に課す税金は働く人の負担を間接的に増加させている。したがって、法人税増税を実行する場合でも、その意味をしっかりと説明した上で、その是非を問うべきであろう。法人税増税の議論が単なるルサンチマンや担税力の話題に終始することは間違いだ。
さらに、多くの国民から嫌われている「たばこ」増税についても、やはりその増税内容を選挙によって審判を受けるべきである。
●岸田首相「四面楚歌」の経済対策、問われる政権の正統性 批判一色 11/11
岸田文雄政権が2日、閣議決定した、「減税」を含む総額17兆円余の経済対策に対する評判がすこぶる悪い。
批判する理由は論者によってまちまちだ。
全国紙各紙は翌3日、軒並み批判的な社説を掲げた。その内容は、1経済は好転しており、経済対策で需要を刺激すべき局面ではない2わが国の財政は悪化しており、これ以上の国債発行は抑制すべきだ3所得税(に限らず)減税は効果が薄い―といった、財政健全派的な立場からの主張だった。
だが、これが多数意見とは必ずしも言えない。むしろ、積極財政の考え方からすれば、こうした考え方こそが長年、デフレ脱却を阻んできたと異を唱えるかもしれない。
では、積極財政派は今回の経済対策をどう見るのか。全国紙が批判するほどの財政支出を決定したにもかかわらず、「対策の時期が遅い」「規模が小さい」「消費税減税が含まれていない」など、これまた批判の大合唱だ。
政策論ではなく、岸田首相の発言や姿勢への批判も少なくない。
「減税は選挙目当てのバラマキ」「首相は財務省の言いなり」「リーダーシップが見えない」などが代表的なものだ。これとて、「一方的な決めつけだ」「リーダーシップがないどころか、独断専行し過ぎる」との異論もあり、論者によってバラバラだ。
いずれにしても、批判一色であることに変わりはない。まさに「四面楚歌」の状況と言っていいのではないか。
「信なくば立たず」という言葉がある。「信」がなければ、どのような政策を打ち出しても、国民の理解を得ることは難しい。今回の経済対策も同様だ。どんなに政策の妥当性を説明しようと、「信」がなければ国民の耳には届かない。
要するに、問われているのは、対策そのものではなく、岸田政権の「正統性」、すなわち、政権が国民の「信」に立脚しているかどうかということではないか。岸田首相はその自覚を持つ必要がある。
筆者は、岸田首相が「先送りできない」とする課題に取り組むのであれば、衆院解散・総選挙で国民の信を問うのが「憲政の常道」ではないかと指摘してきた。そろそろ、国民の信を問うことなしに、岸田政権が存続することが難しくなってきているように思える。
このままいけば、支持率のさらなる低下は避けられず、政権内の求心力低下もさらに加速するだろう。それが一層の支持率低下を招く負の連鎖に陥ることは避けられない。
「解散なし」が確定すれば、徐々に「岸田おろし」が顕在化していくと考えていたが、世論の反応からすると、そのスピードは予想よりも早いと見た方がよいのかもしれない。
●小渕優子選対委員長「岸田政権は日本の課題に向き合っている」… 11/11
自民党の小渕優子選挙対策委員長は11日、神戸市内で開かれた党兵庫県連の会合であいさつし、「なかなか(内閣)支持率が上がらない状況だが、岸田政権は日本が積み残してきた少子化、防衛力強化、日米同盟の深化、日韓関係(などの課題)に逃げることなく向き合っている」と理解を求めた。
岸田首相が年内の衆院解散・総選挙を見送ったことに関連して、「事実だけ申し上げれば、衆院任期が2年を過ぎた。いつ解散があってもおかしくない。我々は常在戦場にいる」と強調した。 
 11/12

 

●「一発アウト」税金滞納の神田財務副大臣を切れない岸田首相 11/12
二度あることは三度あるー。ちょうど1年前、岸田政権の閣僚の「辞任ドミノ」が起き始めた時、永田町でささやかれていたフレーズだ。このフレーズを1年ぶりに、再び耳にする事態になるとは思わなかった。「辞任ドミノ」の悪夢が、1年ぶりに岸田文雄首相にのしかかろうとしている。
思えば昨年の「辞任ドミノ」は大臣が中心だった。8月の内閣改造後、旧統一教会との関係をめぐり国会で野党の追及を受けていた山際大志郎・経済再生担当相が、岸田文雄首相が更迭をずっと否定する中で結局、更迭されたのに端を発し、死刑執行をめぐる失言をした葉梨康弘法相が続き、さらに「政治とカネ」が取りざたされた寺田稔総務相も辞任。1カ月もたたない間に3人の閣僚が相次いで職を追われる(事実上の更迭)事態にになった。岸田首相の求心力は一気に低下し、内閣支持率も下落。年末にはやはり「政治とカネ」が指摘され続けた秋葉賢也復興相も事実上の更迭され「辞任ドミノ」が年の瀬まで4人続く、なんとも締まりのない年末になった。
一方、今年も9月の内閣改造で起用された山田太郎文科政務官が10月26日に不倫問題で、柿沢未途法務副大臣が地元の東京・江東区長選をめぐる公選法違反事件への関与で同31日に、相次いで辞任。スピードは昨年のドミノよりも速い。さらにここにきて、税理士資格を持つ神田憲次財務副大臣が、自身が代表取締役を務める会社が保有する土地・建物の固定資産税を滞納し、4回も差し押さえを受けたことを「週刊文春」の報道を受けて認め、辞任は不可避との見方が強まっている。
取材した野党議員は「2人ではまだドミノといえないが、3人なら立派なドミノ。でも神田副大臣の辞任のタイミングが意外に遅い。切って『ドミノ』と言われたくないから、岸田総理がもし神田副大臣を守ろうとしているなら論外だ」と、批判する。別の政界関係者は、昨年の「閣僚辞任ドミノ」より、今年の政務三役の辞任&辞任危機のほうが、より深刻だと指摘する。「文科政務官が女性問題で、法務副大臣が公選法違反事件への関与で、辞任した。いずれも担当分野での問題発生だ。神田氏は、税理士資格を持つ財務副大臣なのに、よりによって税を滞納。その前に辞めた2人よりさらに悪質だ。普通の感覚なら『一発アウト』なのだが」。
政権浮揚を狙って行った内閣改造で起用された政務三役が、浮揚どころか政権の足を引っ張るパターンが、岸田内閣では定着してしまった。辞任ドミノは、何か明確な理由があって起きるものではない。今回は不倫報道の山田氏の辞任が発端だが、柿沢氏の問題がそれに関連して起きたわけではなく、神田氏の問題も同様。昨年も、山際氏の後に辞任した葉梨氏は想定外の失言が理由で、そこにかねて政治資金の問題がくすぶっていた寺田氏、秋葉氏が続く形になった。
「一寸先は闇」といわれる永田町では、悪い方向にいく時は、想像もしないような悪い方向に流れが進んでしまうこともある。そんな悪循環にはまってしまっている今の岸田政権は、「政治とカネ」をめぐる閣僚の辞任や交代が5人続き、途中挟んだ参院選の惨敗もあって退陣に追い込まれた第1次安倍政権の流れと、似ている様に感じる。当時も、5人のうちの1人は失言が理由の辞任だった。
増税イメージがついて回り、分かりにくい減税政策や国民への説明力不足での岸田首相は、模索してきた年内の衆院解散・総選挙を見送る方針だといわれている。もし第1次安倍政権のように日程が決まった大きな選挙があった場合、厳しい結果になった可能性だって否定できない。
与党関係者からも「今の政権は、増税イメージや減税政策、神田氏の税金滞納など、お金がらみの問題が多すぎる。これでは今、選挙ができる環境にない」との声を聞いた。政権には、加藤鮎子こども政策担当相や武見敬三厚労相ら「政治とカネ」が指摘されている閣僚がいる。政務三役に新たなスキャンダルが出ないとも限らない。
「ポスト岸田」の不在や野党の脅威感のなさなどで、ピンチになってもなんとなく乗り切ってきた岸田首相だが、「二度あることは三度ある」の辞任ドミノが2年連続で起きようとしている「珍事」(野党関係者)に直面。これまでとは比べものにならないピンチであることは確かだ。
●解散断念の「首相の誤算」は有権者にとっては朗報 11/12
世論調査は6割が反対
岸田首相は年内の衆院解散を見送ることにしました。主要新聞は「首相の誤算」とか「支持率低迷で追い込まれた」などと書いています。首相にとっては誤算であっても、物価高対策としては無益な定額減税、選挙目当ての浪費とみて、6割が解散に反対(世論調査)していた有権者にとっては「勝利であり、朗報」であると思います。
日本の政治ジャーナリズムは、権力者の政治戦略、舞台裏の駆け引きなどの「政局記事」で多くが占められ、有権者の目からみたら「進行中の政治がどのような意味を持つのか」は二の次になっている。そのこともあって読者は新聞からどんどん離れていっている。目覚めてほしい。
各紙とも世論調査を定期的、精力的に行っているのに、それを政治記事のあり方に生かしていない。解散見送りは「世論の勝利、有権者にとって朗報」と書く新聞が一紙くらいあってほしい。
舞台裏情報では「自民党が5-9月頃、極秘に続けた情勢調査の結果は毎回『ほぼ現状維持』と上々の手ごたえだった。このため首相は年内解散を視野に入れ、次々と政権のてこ入れ策を繰り出した。切り札として所得税と住民税の定額減税を打ちだした」(読売新聞)そうです。「政局記事」から脱皮できない日本の政治ジャーナリズムの一例です。
本当は「極秘」ではないのに、「極秘」と称して新聞に漏らし、解散ムードを高めることにメディアを使ったのだと思います。広島サミット、旧統一教会の解散命令請求、定額減税・経済対策などのたびに、解散風が煽られ、岸田首相は本気で解散のタイミングを図っていたのは事実でしょう。
権力維持のために、首相らが煽る解散風を批判する主要紙は見当たらず、首相らとの共同作業を続けたのです。それが日本の政治ジャーナリズムの特性です。解散カードを使う首相の政治手法に対する批判、首相の解散権に対する疑問などを正面きって、問題提起をしてほしかった。
それにしても内閣支持率が下落を続ける不人気ぶりをみて、日経新聞は10月下旬には「年内解散の日程は窮屈。12月10日の投開票は無理」と見切りをつけた情勢展望記事を書いています。
そうした読みをしていたので、首相の解散見送り表明(11月9日)を受けた翌日朝刊では日経は1面では扱わず、3面肩で「解散断念、支持率低下、経済優先」という解説雑報で処理しました。他紙のように大騒ぎをせず、醒めた目で政局を観察したのです。これが正解でしょう。
朝日新聞は「解散カードを失った影響は大きい。政権運営で主導権をとるため、解散をちらつかせて与野党議員を浮足立たせるなど、首相はカードの力を積極的に利用してきた」と。そこまで指摘するのなら、政治部長か編集員が署名入りで「首相は解散権を誤用している。解散すべきではない」と、政局記事と連動して、記事を掲載すべきでした。それができない。
読売新聞は「首相に対する世論の反応は冷たく、支持率回復に結びつかなかった。国家財政が窮迫する中での減税は『人気取りにすぎないと見透かされた』(自民党閣僚経験者)ことが大きいとみられる」と。
そうした指摘を閣僚経験者の裏声ではなく、責任を負って記者自身の筆でなぜ書かないのか。政権批判を閣僚経験者の裏声(匿名)で報道しておけば、政権、官邸などから批判を受けないで済むからでしょう。政治ジャーナリズムの常套手段です。お茶を濁すの類でしょう。
世論調査によると、「物価高による家計の負担を感じていますか」の問いに「多いに感じる49%、多少は感じる37%」(読売、10月16日)で、86%が物価高に不満を持っています。ついでにいうと「多少は感じる」の「多少」の語感はよくない。「ある程度」が正しいのです。
さらに衆院の解散・総選挙については「来年度以降に行う33%、再来年秋の任期満了まで行う必要がない31%」が首相の思惑に反対なのです。首相のいう「車座の対話政治」が本心なら、世論の動きをみて、4年間の議員任期を全うする選択こそすべきなのです。
選挙をやるたびに、財政面からあの手この手の政策を打ち出し、財政状態が悪化する。しかも首相は「税収増を還元する」と胸を張りました。実際には税収は伸び悩んでおり、鈴木財務相が「減税すればその分、国債の発行が必要になる」と白状するありさまです。
さらに納税者全員に一律4万円(所得制限なし)、低所得層(課税最低限以下)の世帯には7万円の給付金を支給するといいます。低所得層向けにはいいにしても、定額減税までしたら、需要が増え、物価押し上げ要因なる。物価高対策費が物価を押し上げる。経済理論家はそういっています。
個人が持つ金融資産は22年に2023兆円で史上最高を更新しました。2020年は1870兆円でした。個人の現預金は22年は1100兆円、20年は1030兆円でした、3年で80兆円も増えています。そうした世帯向も定額減税の対象とすると、高所得層の場合は、国債がかれらの貯蓄に回るだけです。
岸田政権の経済政策の混乱ぶりは目に余ります。一方、異次元金融緩和の軌道修正が小出しの繰り返しで、大規模緩和が長期化するとみられて、相場は1ドル=151円まで値下がりしています。外国ファンドが低金利の日本で資金を調達して、外貨で運用すればボロ儲けできる。
ドル建てでみた日本の経済力は低下の一途です。GDPの国際ランキングでは、ドイツに抜かれて4位に転落です。26年には現在6位のインドが日本を抜いて5位に浮上する見通しです。政府、日銀が円安政策をとってきたため、輸入物価が上昇し、国際比較したGDPは下落する。
解散などを念頭に置かず、4年の任期満了を全うする方向に気持ちを切り替えたほうが、内閣支持率は上がるかもしれません。あわせて政治ジャーナリズムも目覚めてほしいのです。
●年内解散見送り 国民向き政策に専心を 11/12
先の通常国会中を含め、衆院解散の機会を探ってきた岸田首相が、年内は見送りの意向を固めた。内閣改造や所得減税を含む経済対策を打ち出しても、支持率は回復せず、日程的にも厳しい状況に追い込まれた末の判断だ。自業自得というほかない。
解散権は「首相の専権事項」「伝家の宝刀」などと言われ、時の首相が「今なら勝てる」というタイミングを選んで、恣意(しい)的に運用しているのが実態だ。
現在の衆院議員の任期は、先月ようやく2年の折り返し点に達したばかりである。また、与党は衆参両院で野党を大きく上回る議席を確保している。それでも首相がこの間、解散の時機をうかがってきたのは、来年秋の自民党総裁選の前に衆院選で勝利し、再選を確実にしたいという思惑からだろう。
しかし、解散を視野に入れた布石は、ことごとく裏目に出ている。
9月の内閣改造では、過去最多に並ぶ5人の女性閣僚の任命をアピールしたが、旧態依然の派閥順送り人事も際立ち、政権浮揚にはほど遠かった。当初女性の起用がゼロだった副大臣・政務官人事のほころびも隠せず、すでに2人が辞任したほか、神田憲次財務副大臣の税金滞納が明らかになっている。
経済対策の柱として、首相が主導した所得・住民税の定額減税も、必要性や効果が疑問視され、国民の受け止めは冷ややかだ。ただでさえ国の財政が借金頼みのうえ、防衛費の大幅増や少子化対策の財源を賄うための負担増も控えるとあっては無理もない。
結局のところ、首相の判断の起点が、国民ではなく、総裁再選という自身の権力維持にあると見透かされていることが、政権発足以来最低水準に落ち込んだ支持率が、なかなか反転しない根本にあるのではないか。
社説は、恣意的な解散権の運用の弊害を指摘し、内閣が重要政策の転換をめざす場合などを除き、衆院議員は任期を全うし、腰を据えて活動するのが筋だと主張してきた。
首相は年明け以降、総裁選前の解散の機会を、引き続き探り続けるのだろう。首相があおった「解散風」で国会審議が形骸化した、先の通常国会のような事態が繰り返されてはならない。
首相はこのところ、諸課題に取り組む姿勢として「一意専心」を繰り返している。その言葉通り、策を弄(ろう)するのではなく、国民のことを第一に考え、地道に取り組んでいく先にしか、道は開けないと心得るべきだ。
●松川るい議員のフランス研修巡る外務省公電 11/12
“エッフェル姉さん”松川るい氏の外務省公電入手!フランス研修の衝撃事実
所得税減税の評判がすこぶる悪く、岸田文雄首相が「減税」を連呼しても「増税メガネ」と酷評される政権は、政務三役が2人続けて辞任する事態に直面し、断末魔の様相を呈している。
そんな中、本誌は世間からひんしゅくを買った7月の自民党女性局のパリ視察をめぐり、松川るい前女性局長(52)が外相に提出した便宜供与の依頼書と外務省の公電を入手した。そこに書かれた恥も外聞もなく便宜供与を求める姿は、まさに自民党の体たらくを象徴しているのだ。
「内閣支持率と与党第1党支持率の和が50%を切ると、政権は倒れるか政権運営が厳しくなる」
これは6月に死去した自民党の青木幹雄元参院議員会長が唱えていた「青木の法則」だが、ここにきて報道各社の内閣支持率は軒並み発足以来最低を記録。毎日新聞と時事通信の調査では、2つの支持率を足したその青木率≠ェついに50%を切ってしまった。
しかも、そんな状況下で山田太郎参院議員が不倫問題で文部科学政務官を辞任。さらに柿沢未途衆院議員が、4月の東京都江東区長選で当選した木村弥生区長陣営に、公職選挙法で禁じられる有料インターネット広告を出すよう指南したとして、法務副大臣を辞任した。
木村氏の関係先に東京地検特捜部が家宅捜索に入り、木村氏が辞職を表明したのは周知の事実だが、柿沢氏には区長選前に区議に現金を配った疑惑まで浮上しているのだ。
全国紙社会部記者が言う。
「柿沢氏は『これまでも陣中見舞いとして現金を配ったことがある』と話しているようですが、果たしてその説明が通用するかどうか。特捜部は、重大な関心をもって現金配布の捜査を進めているのです」
アリバイ作りのためか…
加えて、自民党女性局のパリ視察をめぐる問題は、ネット上でいまだにくすぶり続けている。
「エッフェル姉さん」との異名がすっかり定着してしまった松川氏は、地元・大阪で清掃活動をしている様子をX(旧ツイッター)にアップしたところ、「報告書はまだか?」「必死ですね」などの批判や嫌味が相次いだほど。もっとも、本人によると、報告書はすでに党側に提出済みのようで、ブログでも「フランスの『3歳からの幼児教育の義務教育化』の経緯と成果と我が国への示唆」とのタイトルで、視察報告らしきものを公表しているのである。
「ただ、このブログ記事にしても批判が多い。わざわざパリに行かなくても日本で文献を見て書ける内容で、パリ視察への批判をかわすためのアリバイ作りにしか見えないからです。おまけに、そのアップした報告記事について『全く報道頂いていません』と不満まで書き連ねていて、プライド高き東大法学部卒、外務省出身のエリートらしい傲慢ぶりが見て取れるのです」(全国紙政治部記者)
そんな松川氏だけに、海外視察の際に外務省が議員に便宜供与を図るのは当然と思っていたに違いない。
公電には「大至急」の文字!
本誌が入手した松川氏の林芳正外相(当時)宛ての「便宜供与方依頼の件」と書かれた文書には、「貴省の特段のご高配を賜りますようお願い申し上げます」と書かれている。具体的には、在仏日本大使館員または総領事館員の同行/通訳の手配/現地空港における出入国・関税手続きの簡素化/現地情勢に関する事前ブリーフィングと資料の提供などを求めていた。
しかも、視察先の希望はすべて「パリ」となっており、これでは初めからパリ以外に足を運ぶ気はなかったと言われても仕方がない。視察は松川氏のほか、今井絵理子前女性局長代理、広瀬めぐみ同局次長、地方議員ら総勢38人で、7月下旬に行われた。
ちなみに、松川氏から便宜依頼の文書が出されたのは7月14日で、外務省はその1週間後の21日に、在仏日本大使へ依頼内容を公電で伝えている。依頼からなぜ1週間も放置されたのかは不明だが、この公電には「大至急」と書かれており、外務省の慌てぶりが窺えるのだ。
また、公電によると視察日程は7月24〜28日までだが、松川氏の滞在期間はなぜか同23〜27日となっていた。前乗りした上で1日早く帰国するスケジュールが組まれていたことになるが、この日程は松川氏の他にもう1人いて、その人物の名前が黒塗りされている。そのため、小学生になる松川氏の娘ではないかとみられているという。
全国紙政治部デスクがこう語る。
「親子で前乗りしてパリを満喫した上、視察は他のメンバーより短く済ませて帰国しようとの魂胆だったのではないかとの声もある。もしもそうなら、国と国民をなめきった行いとも言えるでしょう」
その松川氏は9月の自民党役員人事で女性局長から外れ、無役になるかと思いきや、副幹事長に就任した。こんな甘々体質では自民党は今後、どんどん支持を失っていくことだろう。
岸田首相は11月2日に行った記者会見で「増税メガネ」と呼ばれていることについて質問され、こう答えた。
「どんなふうに呼ばれても構わない。どんな呼ばれ方をしようともやるべきだと信じることをやるということだ」
もはや事ここに至っては、開き直るしかないようで、岸田内閣は崖っぷちに立たされていると言える。
まさに、ああ無情とはこのことだ。
●青梅市長選、現職敗れる 多摩の選挙で自民系候補が3連敗「政権へ不信」 11/12
強固な保守地盤とされてきた東京都青梅市の市長選で、3選を目指した無所属現職の浜中啓一さん(71)=自民、公明推薦=が、無所属新人で元市議の大勢待利明さん(48)=国民民主、都民ファーストの会推薦=に敗れた。東京・多摩地域の選挙で自民系候補は9月の立川市長選、10月の都議補選立川市選挙区に続く3連敗。地元の自民関係者からは、内閣支持率の下落が続く岸田政権への恨み節も聞かれた。
「不徳の致すところ」
大勢待さんの当選が確実になると、浜中さんは12日夜、青梅市の事務所で敗戦の弁を語った。「私の不徳の致すところ。みなさん一丸となって戦った結果。私も皆さんの期待にこたえるよう一生懸命努力したつもりだったが、まだまだ力が足りなかった。私自身への高齢批判が一番風当たりがきついと思った」
しかし、支援した自民市議の1人はこう語った。「本人は『高齢批判で負けた』と言っているが、自民への風当たりの強さをまともに受けたのは明らか。公明党にもがっつり応援してもらったのに、自民が不甲斐ないせいで負けた。政権への不信感がそのまま結果に表れたし、票差に影響してしまった」と肩を落とした。
得票数は、大勢待さん2万6042票に対し、浜中さんは 1万7152票。8000票以上の大差での敗戦だった。
萩生田政調会長らてこ入れも…
自民にとって危機感を抱いて臨んだ選挙だった。2カ月前の立川市長選は、推薦した元自民都議の新人が元立憲民主都議の新人に僅差で敗北。東京での公明との選挙協力解消と協力復活の流れが尾を引いていた。続く都議補選立川選挙区では、公認した新人が、小池百合子都知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」公認の新人に大差を付けられるなどして落選した。都県境を挟んだ近隣の埼玉県所沢市の市長選でも、4選を目指した自民、公明推薦の現職が落選し、地殻変動は続いた。
浜中さん陣営には選挙期間中、萩生田光一政調会長や自見英子万博相、今井絵理子参院国対副委員長らが応援入りし、てこ入れを図った。一方、国民民主と都民ファの推薦を受けた大勢待利明さん陣営に、小池知事の姿はなかった。「それでも勝てなかった」と別の市議はショックを隠せない。
風向きの悪さは感じていた。「電話作戦をしても有権者の反応はいまひとつ。組織の動きもまとまっていなかった」と振り返り、先行きを案じた。「この流れをどうしたら止められるのか。政権運営に影響しなければいいのだが」
●「なし」ばかりが続き、今や四面楚歌 支持率急落になすすべ「なし」! 11/12
内閣支持率10ポイント減の衝撃!
岸田政権には、いったいいくつの「なし」が続くのだろうか。11月6日に公表されたJNNの世論調査では、内閣支持率は前回比10.5ポイント減の29.1%まで下落した。不支持率は10.6ポイント増の68.4%で、いずれも過去最悪の数値を記録。「国民の人気なし、支持なし」が伺える。
その大きな原因は11月2日に発表された、生活困窮家庭に対する1世帯7万円の追加支援と課税世帯に対して1人あたり4万円の減税を行うことを盛り込んだ経済対策だろう。通常なら支持率アップに寄与するはずの施策に対して、実に64%が「評価しない」と答えたからだ。
この“減税政策”について岸田首相は、10月23日の所信表明で「国民の努力によってもたらされた成長による増収の増加分の一部を、公正かつ適正に還元する」としてアピールした。あてにしているのは最近の税収の上振れ傾向で、たとえば2022年度の税収は71.1兆円を超え、当初の見通しより6兆円ほど多かった。
岸田首相の減税案に閣内と党内、財務省まで“造反”か?
しかし鈴木俊一財務大臣はこの“税収の上振れ”について、11月8日の衆院財務金融委員会で「政策的経費や国債償還に充てられてきた」と述べ、「減税の財源なし」と明言した。さらに自民党の宮澤洋一税制調査会長も、7日付けの日経新聞で岸田首相が主張する「税収増の還元」を否定した。閣内と党内から「なし」が出たわけだ。しかも宮澤氏は岸田首相の従兄でもある。
だが減税施策は岸田首相の独断ではないと見るべきだろう。留意すべきは岸田首相の“懐刀”と言われる木原誠二前官房副長官が9月19日に出演した動画で、「減税やりゃいいんだよ」と発言したことだ。木原氏は同月13日の内閣改造でその職を外れたが、岸田首相に先んじた発言が注目された。
また木原氏は9月13日に官房副長官を解任されて以降も、頻繁に官邸に出入りしていた。日経新聞が10月25日に、「改造後、茂木・麻生両氏に次ぐ7回」と報道したほどだ。
これらを考えると、岸田首相の減税案は木原氏が関与していた可能性は高く、その背後に財務省の影が垣間見えるが、結果的に財務省が岸田内閣を見放したことになるだろう。
諦めムード漂う?
さすがにこれではやりきれないということだろう。岸田首相が11月9日、記者団に対して「まずは経済対策、先送りできない課題ひとつひとつに一意専心取り組んでいく。それ以外のことは考えない」と述べ、年内の衆院解散総選挙を見送る意向を事実上表明した。岸田首相は2024年9月に予定される自民党総裁選に勝ち抜くため、その前に衆院選を行いたいという意向だが、高支持率が見込まれた広島サミット直後の6月には麻生太郎元首相らに阻止されたことがある。その後、内閣支持率は下落の一途で、とうとう2012年に自民党が政権を奪還して以来の数字にまで悪化した。岸田首相のその言葉には、首相の専断事項である解散権を行使できないもどかいさとともに、他になすすべがない総理大臣の孤独さえ漂っている。
そして、水面下では密かに“岸田降ろし”が始まっているようだ。岸田首相が「解散諦め発言」をした9日夜、“非主流派”の菅義偉前首相や二階俊博元幹事長、森山裕総務会長らが都内で会食し、意見交換したのだ。二階氏の「備忘録役」と言われる林幹雄元幹事長代理や二階派事務総長の武田良太元総務大臣も同席した。
もっとも武田氏はこの日、インターネット番組に出演して「十分な経済対策を果たしていない状況で、岸田降ろしなんて言語同断」と述べたが、このままでは来年の総裁選で「挑戦者に有利になりやすい」と“岸田政権の終焉”の可能性についても言及した。
イチかバチか。それとも……
内閣の低支持率が続く限り、岸田政権の出口が見えない状況だが、このまま年を越しても状況が好転する要素がない。唯一の頼みは「野党の政党支持率がおしなべて低いこと」だが、岸田首相としては総裁選前に衆院解散に打って出て、求心力を回復したいところだろう。
しかしそれには、その前に党内で岸田降ろしが加速化する危険性もあり、自分で自分の首を絞めることにもなりかねない。野党から「検討使」と揶揄された岸田首相だが、政権の今後も「検討」するに終始するのだろうか。何も生み出さない「検討」の結果、「なし」が増えるばかりの岸田政権だが、国民にとって「将来の展望なし」という事態になるのなら、その前にさっさとご退場願いたい。
●介護人材の不足 抜本的な処遇改善が急務だ 11/12
介護サービスを支える人材の不足が続いている。少子高齢化のさらなる加速を見据えた担い手確保が急がれる。
国の推計によると、団塊の世代が全員75歳以上となる2025年には介護職員が約243万人必要となるが、現状のままでは約32万人足りないという。
在宅サービスを担う訪問介護の現場では、深刻な人材不足に直面している。
全国の市区町村にある社会福祉協議会が運営する訪問介護事業所のうち、過去5年間に少なくとも218カ所が休廃止されたことが共同通信の調査で判明した。約13%の減少で、23年度は1302カ所となっている。京都府は7・4%減、滋賀県は24%減だった。
休廃止の要因は訪問介護員(ヘルパー)の高齢化や人材不足、事業の収支悪化という。公的な存在といえる社協が事業を止めれば、訪問介護の空白地域が広がることが懸念される。
介護労働安定センターの22年度調査で、不足と感じている職種を全国の事業所に聞いたところ、ヘルパーが8割を超えた。施設内の介護職員が約7割、看護職員が5割近くという結果だった。
ヘルパーの4人に1人は65歳以上で他職種より高齢者の割合が高く、労働条件の悩みとして従業員の多くが「人手が足りない」「仕事内容の割に賃金が低い」を挙げた。
訪問介護は、住み慣れた地域で長く暮らすため、国が進める「地域包括ケア」の核となるサービスである。その現場が青息吐息の運営では、介護保険制度が空洞化しかねない。
政府は今月まとめた総合経済対策で、介護職員らの賃金を月6千円程度引き上げる方針を固めた。看護助手や障害福祉サービス事業所の職員も含める方向で、早ければ来年2月からの開始を見込む。
新型コロナウイルス対応で21年にも9千円相当を引き上げたが、その後の物価高もあり、賃上げが広がる他産業との格差が指摘されていた。
介護職の給与水準は依然として全産業平均より月7万円近く低く、人材確保につながる改善はおぼつかない。
事業所運営の基盤となる介護報酬は3年に1度の改定を来年度に控えている。
国は職員の処遇改善と介護ロボットの導入により負担軽減を図るとしているが、思い切ったてこ入れが必要だろう。
岸田政権が重点を置く少子化対策の財源確保策では社会保障費の歳出改革が焦点とされる。
負担と給付の両面から制度の見直し議論が本格化するが、苦境にある介護現場をさらに追いつめてはなるまい。
地域のニーズに応え、持続可能な介護環境を担う人材確保に向けて、賃金をはじめ抜本的な処遇改善を図る必要があろう。 
 11/13

 

●岸田政権に激震! また地方選敗北、岸田首相「選挙の顔」失格か 11/13
岸田文雄政権が、地方選挙で深刻な痛手を受けた。12日に投開票された福島県議選では自民党が単独過半数を割り込み、堅い保守地盤とされる東京・青梅市長選でも自公推薦の現職候補が大敗を喫したのだ。自民党は先月の宮城県議選でも、公明党との合計で過半数割れしている。報道各社の複数の世論調査で、内閣支持率が30%以下の「危険水域」に突入するなか、岸田首相を「選挙の顔」として戦うことへの危機感がさらに高まっている。政権浮揚策が次々に不発となるなか、岸田首相は、過去の税金滞納を認めた神田憲次財務副大臣の進退問題でも結論を先送りして、納税者の怒りを買っていた。「岸田不信」「岸田降ろし」が加速しかねない状況だ。
「政権への不信、怒りが突き付けられている。党幹部は焦りを感じていないのか。認識が甘いのではないか」
自民党ベテラン議員は険しい表情で語る。週末の地方選挙は厳しい結果が相次いだ。
東京・青梅市長選では、自民、公明両党が推薦し3選を目指した現職の浜中啓一氏が、国民民主党、都民ファーストの会の推す新人、大勢待(おおせまち)利明氏に、大差で敗れた。
自民党は、9月の立川市長選、10月の埼玉県所沢市長選に続く市長選での敗北だ。10月の都議補選立川市選挙区でも自民党候補が落選しており、青梅には今回、萩生田光一政調会長ら幹部が続々と現地入りする組織戦を展開したが、実らなかった。
自公の選挙協力では今年、公明党が衆院選の選挙区調整に不満を表明し一時、東京での決別≠宣言した。この後遺症を指摘する声もあるが、都の自民党関係者は「自公協力は機能した。岸田政権、自民党への批判が、最大の逆風になった」と明言する。
同じ12日投開票の福島県議選でも、自民党は過半数を割り込む痛恨の敗北となった。9月の岩手県知事選で支援した候補が敗北し、10月の宮城県議選では公明党との合計で過半数割れしていた。
ただ、与党ベテランは「雪崩的に負けないのは、野党の足踏みに助けられているからだ」とも指摘する。
福島県議選では、野党陣営も立憲民主党の泉健太代表らが駆け付ける力の入れようだったが、立憲民主党、共産党は1議席ずつ減らすお付き合い≠セった。「世論は自民党だけでなく、リベラル野党にも期待していない」(前出のベテラン議員)と言えるのだ。
岸田内閣は、経済対策や所得税減税などの政策が不評で、手詰まり感が漂う。各世論調査では、支持率が軒並み30%以下に下落して発足以来最低を更新している。
不祥事の続発も危機的だ。
直近でも、神田財務副大臣が、自身が代表取締役の会社が保有する土地・建物の固定資産税を常習的に滞納していたことが明らかになった。
第2次岸田再改造内閣は9月に発足したばかりだが、すでに山田太郎文科政務官、柿沢未途法務副大臣が不祥事で辞任している。「適材適所」と断言した岸田首相の面目は潰され、窮状に追い打ちをかけている。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「自民党は、地方選挙で苦杯をなめ続けている。政策が評価されず、内閣支持率と自民党の支持がともに下落している。自民党の強みは、全国津々浦々に地方組織を持つことだが、ここから、『岸田首相の顔では選挙に勝てない』と悲鳴が上がっている。今後も地方選挙が続くが、当事者の危機感は相当なものだ。衆院の解散・総選挙は地方組織が屋台骨となるだけに、安易な解散は許容されない。岸田政権は、発足当初から危機管理が欠如し、人事の決断も遅い。今後『岸田降ろし』の流れは強まっていくだろう」と語った。
●福島県議選、宮城に続き自民党過半数割れ 地方に見限られた自民の惨状 11/13
10月22日に投開票された宮城県議会選挙で、公明党と合わせても議会の過半数を維持できなかった自民党。そのショックがまだ残る11月12日、福島県議会選挙がおこなわれた。
自民党は現職28人、新人5人の33人を擁立したが、4人が落選。議席を改選前の31から29に減らして、単独過半数を維持することができなかった。宮城県議会選挙に続く敗北となった。
「どちらの選挙も、投票直前の世論調査で内閣支持率・政党支持率が悪くなっていたので、陣営は厳しい戦いを覚悟していました。両選挙ともベテラン議員の落選と苦戦が目立ちましたね。古い自民党体質に嫌気がさした有権者も多かったようです。自民党内には『これだけの議席減で済んだのは、健闘したほうだ』という声さえあります」(政治担当記者)
国政選挙では「地方組織の足腰の強さが勝敗を左右する」といわれる。その「足腰」になるのは地方議員だ。その人数が少なくなるというのは、自民党にとっても大きな痛手である。
「そういったこともあり、今回の結果は福島出身の国会議員にとっては深刻だと思います」と自民党関係者。それは、国民と議員がつながるツールのひとつであるX(旧Twitter)を見ても想像できる。おもだった福島出身の国会議員が、選挙結果に触れていないのだ。
“ヒゲの隊長”こと佐藤正久参議院議員(全国比例)のXには、13日の朝《おはようございます。今日も国会の院内一番乗り、国対の仕事故、平日はこんな感じ。毎週、いろいろな動きがありますが、今日も委員会運営に尽力いたします。今日も一歩、一歩》の文章とともに、登院表示板のランプを灯した写真が載っていた。前後に選挙結果のコメントはなかった。
ブライダル業界への補助金事業で不透明さが指摘され、SNSで「ブライダルまさこ」とあだ名をつけられた森まさこ参院議員も福島県出身。この騒動が影響して「応援お断り」かと思ったら、選挙期間中は各候補の応援に駆けつけ、マイクを握り、演説をしていたようで、その姿をいくつもXにアップしている。しかし、選挙結果を受けた書き込みは見当たらなかった。
厚生労働大臣、復興大臣などを歴任した重鎮の根本匠衆院議員(福島新2区)も、同じく選挙結果についてはスルーしていた。
「議員の落胆と危機感がうかがえます。しかも最近は、これまで自民党の“牙城”と呼ばれてきた地域でも負けることが多くなり、市長選や町長選で『現職で自民党公認』の候補が苦杯をなめることもありますから、地方で自民党の支持組織が瓦解していることがわかります。衆院の解散総選挙を考えると、衆院議員は憂鬱になるのではないでしょうか」(政治ジャーナリスト)
内閣支持率とともに、地方組織の結束も危険水域に入っているようだ。
●神田財務副大臣が辞任 税金滞納、岸田政権に打撃 11/13
過去の税金滞納を認めた神田憲次財務副大臣が鈴木俊一財務相に辞表を提出した。政府は持ち回り閣議で辞任を正式決定した。複数の政府関係者が13日、明らかにした。岸田文雄首相は続投させれば国会審議に影響すると判断したとみられる。9月の内閣改造から約2カ月で政務三役3人が辞任することとなり、政権への打撃は必至だ。
立憲民主党の泉健太代表は神田氏の辞任について「当然だが遅過ぎる。首相の任命責任が問われる」と記者団に述べた。
神田氏は10日の衆院内閣委員会で、自身の税金滞納問題を巡り野党から進退への考え方を問われ「私の立場についての言及は控えたい」と述べた。9日は辞任しない意向を示していた。
松野博一官房長官は13日午前の記者会見で「政治家としての責任において、引き続きしっかりと説明責任を果たすことが重要だ」と述べるにとどめていた。
税理士でもある神田氏は衆院愛知5区選出で当選4回。自民党安倍派に所属し、内閣府政務官などを歴任していた。
●岸田首相、神田副大臣を更迭 今国会3人目、政権に打撃 11/13
政府は13日の持ち回り閣議で、過去の税金滞納が発覚した自民党の神田憲次財務副大臣(60)=衆院愛知5区=の辞任を決めた。岸田文雄首相による事実上の更迭で、政務三役の交代は今国会3人目。内閣支持率が政権発足後の最低水準に低迷する首相にはさらなる打撃となる。後任は同党の赤沢亮正政調会長代理を充てる方針だ。
神田氏の国会答弁などによると、自身が代表取締役を務める会社が固定資産税の滞納を繰り返し、同社所有のビルが過去4回差し押さえを受けた。
政府は当初、神田氏に説明責任を果たすよう促しつつ世論の反応を見極める考えだった。だが、与党内でも辞任論が強まり、来週から2023年度補正予算案を審議する衆参予算委員会が行われることから、更迭はやむを得ないと判断した。
●内閣支持率 “危険水域”過去最低27.8% 経済対策「評価しない」66.6% 11/13
FNNがこの週末に実施した世論調査で、岸田内閣の支持率は、政権発足以来、はじめて3割を割り込み、27.8%となった。
岸田内閣の支持率は、7.8ポイント急落し27.8%で支持率は、10月に続いて最低を記録するとともに「危険水域」とも言われる20%台に初めて落ち込んだ。
「支持しない」は68.8%に上った。
11月、岸田首相が発表した物価高への対応を盛り込んだ経済対策は「評価する」が27.2%、「評価しない」は66.6%だった。
経済対策を評価しない理由については「今後、増税が予定されている」が39.9%と最も多く、「政権の人気取りだから」が20.6%だった。
岸田首相は、所得税などの減税と今後の賃上げで、2024年夏には所得の伸びが物価の上昇を上回る状況を目指すとしているが、7割が「期待しない」と答えた。
岸田政権は、経済対策で減税を行うことに伴い、防衛増税を2024年度は見送り、2027年度に向け段階的に行うことを表明していることについては「評価する」が42.4%、「評価しない」は51.2%だった。
また、岸田内閣では、9月の内閣改造以来、柿沢法務副大臣ら、政務三役2人が辞任したが、任命権者としての岸田首相の責任について「大きい」「やや大きい」との答えがあわせて7割に上った。
政府は、特別職の公務員の給料を引き上げる法案が成立すると、岸田首相の給料が年間46万円アップすることから成立後、国に増額分を返納する方針を表明している。
この姿勢を「評価する」は51.6%、「評価しない」は45.6%で評価が分かれた。
また、次の首相にふさわしい人について、岸田首相は10月の調査では7.8%で4番目だったが、2.8%に急落して6番目に下がった。
●岸田内閣支持率27% 過去最低 経済対策「評価せず」が66% 11/13
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が11、12両日に実施した合同世論調査で、岸田文雄内閣の支持率は前回調査(10月14、15両日)比で7・8ポイント減の27・8%となり、令和3年10月の第1次政権発足後最低を2カ月連続で更新した。不支持率は過去最高の68・8%(前回比9・2ポイント増)だった。
物価高対応のために政府が決定した約17兆円規模の経済対策への評価を尋ねたところ、「評価しない」が66・6%で、「評価する」の27・2%を大きく上回った。評価しない理由は「今後、増税が予定されているから」(39・9%)が最も多く、「政権の人気取りだから」(20・6%)▽「経済対策より財政再建を優先すべきだから」(17・3%)−と続いた。
首相が、来年夏の段階で賃上げと所得税減税を合わせ、所得の伸びが物価上昇を上回る状態をつくると表明したことへの評価では、実現に「期待しない」の71・0%に対し、「期待する」は27・0%。5年度補正予算案が一般会計で約13兆円規模となることに関し、国の財政状況への認識を尋ねたところ、「大いに不安」「やや不安」は計88・7%だった。防衛力強化のための防衛増税について来年度は行わず、9年度に向けて段階的に行う方針は「評価しない」(51・2%)が「評価する」(42・4%)を上回った。
東京都江東区長選を巡る公職選挙法違反事件で柿沢未途前法務副大臣が辞任したことに関し、任命権者である首相の責任が「大きい」「やや大きい」の回答は合計で70・6%となった。
今国会で成立予定である特別職の国家公務員の年収を引き上げる給与法改正案で、政府が首相と政務三役は増額分を国庫に返納する方針を示したことについては「評価する」(51・6%)が「評価しない」(45・6%)を上回った。
会場建設費が最大2350億円に上振れする見通しとなっている2025年大阪・関西万博の開催の是非を聞いたところ、「費用を削減して開催」(56・7%)が最も多く、「開催中止」が26・9%、「このまま開催」が15・2%だった。
●神田財務副大臣が辞任 後任は赤澤亮正 元内閣府副大臣で調整 11/13
過去に税金を滞納していた神田財務副大臣の更迭を受けて、政府は後任に、自民党の赤澤亮正 元内閣府副大臣を起用する方向で調整を進めています。
税理士資格を持つ神田財務副大臣は、週刊誌報道を受けて自身が代表取締役を務める会社の土地や建物が税金の滞納により4度差し押さえを受けたことを国会で明らかにし陳謝しました。
これに対し野党からは辞任を求める声が相次ぎ、与党からも国会審議への影響を懸念する見方が出ていました。
こうした中、岸田総理大臣は国会審議を停滞させてはならないとして、神田副大臣を更迭する意向を固め、神田副大臣は辞表を提出しました。
そして、政府は13日昼ごろ持ち回りで閣議を開き、神田副大臣の辞任を決めました。
これを受けて政府は、後任の財務副大臣に、自民党の赤澤亮正 元内閣府副大臣を起用する方向で調整を進めています。
赤澤氏は衆議院鳥取2区選出の当選6回で、62歳。国土交通省の企画官などを経て、平成17年の衆議院選挙で初当選し、これまでに内閣府副大臣や国土交通政務官などを歴任しました。
岸田内閣では先月、法務副大臣と文部科学政務官が相次いで辞任していて、神田氏が辞めたことで、今の国会で3人の政務三役が交代することになりました。
   政府・与野党の反応
立民 泉代表「任命責任も問われる」
立憲民主党の泉代表は記者団に対し「辞任は当然だが、遅すぎる。不注意では済まされず、議員も辞職すべきだ。相次ぐ政務三役の辞任は異常事態で、全く適材適所ではなく、岸田総理大臣の任命責任も問われる。政権基盤の弱体化を嫌がったことが、辞任の遅れにつながったのではないか。保身や政局を優先し、国民を見ていないことが明らかになった」と述べました。
その上で「補正予算案の審議に入る前に、なぜここまで更迭が遅れたのか、就任以前にどのような検査をしてきたのか、岸田総理大臣はみずから語るべきだ。審議の中でも、しっかり説明をしてもらわなければならない」と述べました。
維新 藤田幹事長「辞任は当然 遅すぎる」
日本維新の会の藤田幹事長はNHKの取材に対し「国民に納税をお願いする立場の財務副大臣が、税金の滞納や差し押さえを繰り返していたのは、国民の信頼を著しく逸する行為で、信じられないことだ。辞任は当然のことで遅すぎるくらいだ」と述べました。
国民 玉木代表「適材適所はもう崩れた」
国民民主党の玉木代表は記者団に対し「財務省の副大臣が税金を滞納し、差し押さえまで受けていたのであれば、税務行政をつかさどる資格はなく、辞任は当然で、判断が遅いと言わざるをえない。政務三役の相次ぐ辞任で、適材適所はもう崩れた。落ち着いて建設的な議論ができる環境を、政府・与党の責任で整えてもらいたい」と述べました。
共産 小池書記局長「岸田政権のずさんな政権運営の象徴」
共産党の小池書記局長は記者団に対し「辞任は当然だが、事態が明らかになってから、ここまで引き延ばした岸田総理大臣の責任は重大だ。単なる税の滞納ではなく、差し押さえまで受けている人物を財務省の副大臣に据えてきたのは、根本的に任命責任が問われる。岸田政権のずさんな政権運営の象徴と言えるのではないか。退陣を求めていきたい」と述べました。
●岸田政権に有権者の怒り爆発!青梅市長選、福島県議選…地方でボロ負け 11/13
迷走続きの岸田政権への「怒り」が次々と伝播だ。各地の地方選で自民の推薦候補が相次いで大敗を喫している。
任期満了に伴う東京都青梅市長選が12日、投開票。自公推薦の現職・浜中啓一氏(71)が、一騎打ちとなった元市議で新人の大勢待利明氏(48=国民民主・都ファ推薦)に敗れ、3選を逃した。
青梅市は都内でも自民の支持基盤が厚い地域。浜中陣営には萩生田光一政調会長や自見英子万博相らが応援入りするも、開票結果は大勢待氏の2万6042票に対し、1万7152票と実に約9000票差の惨敗だ。浜中陣営の敗戦の弁から政権への恨み節は聞かれなかったが、「減税詐欺」による支持率低迷や政務三役の度重なる不祥事などが直撃したのは間違いない。
これ以上、地方選で負けが込むと…
自民は9月の立川市、10月の埼玉県所沢市に続き、近隣の市長選で推薦候補が3連敗。立川市では2議席を争った10月の都議補選でも立憲民主の候補らに敗北し、改選前の議席を失っていた。
12日は福島県議選(定数58)も投開票され、最大会派の自民候補3人が落選し、改選前31議席から2つ減らし、単独過半数を割り込んだ。開票確定時点では2015年以来8年ぶり。10月の宮城県議選は公明との合計でも過半数割れし、東日本大震災により統一地方選と別日程となった東北の県議選で連敗だ。
自民は9月の岩手県知事選でも支援候補が敗れ、今回は小渕優子選対委員長らが応援に駆け付けるなど力を入れたが、「負の連鎖」は断ち切れなかった。これ以上、地方選で負けが込むと、岸田政権はいよいよ持たない。
●岸田首相 「介護離職」防止に向け両立支援の加速指示 11/13
岸田首相は13日、政府の「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」で挨拶し、「認知症になっても働き続けたい、地域に貢献したいという希望を叶える場所が身近にあることは重要だ。地域社会や仲間とのつながりを維持できる居場所を全国に広げる必要がある」と指摘した。
その上で、介護離職を防ぐため、「仕事と介護の両立支援制度の周知とあわせ、働く家族の方が制度を利用しやすい環境を整備することが喫緊の課題だ」として、来年の通常国会への法案提出に向け、仕事と介護の両立支援制度の仕組み作りの結論を早急にまとめるよう要請した。
会議では今後、認知症の人や家族が安心して暮らせる社会の実現に向け、年内に有識者の意見を取りまとめた上で、基本計画を策定する。
●経済政策「しっかり説明する必要ある」と菅前首相チクリも… 11/13
「まさか俺の出番だと思っているんじゃあ」「安倍元首相のように再登板ありかも、と考えているのでは」
岸田政権の内閣支持率が2割台と低迷する中、与野党内から“ポスト岸田”として一部で名前がささやかれているのが、自民党の菅義偉前首相(74)だ。菅氏は9日に二階俊博元幹事長(84)や森山裕総務会長(78)らと会食し、一部メディアでは「内閣支持率の低迷を受け、岸田文雄首相(66)の政権運営や衆院解散の時期などが話題になったとみられる」などと報じられたばかり。
12日のフジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」にも出演し、岸田首相が打ち出した経済対策に対する国民の理解が得られていないことに対し、「しっかり説明をする必要があると思う」と指摘していた。
菅氏といえば、自身も政権発足当初こそ「パンケーキ総理」「ガースー」などと持ち上げられ、順調な滑り出しを見せていたものの、次第に強権的な政治姿勢が問題視され、さらに新型コロナ対策への遅れなどから今の岸田政権のように支持率が急落。結局、総理大臣の在職日数が、わずか384日という短命政権に終わった。
自民党総裁選「次の総裁」にふさわしい政治家の上位に名前なし
それだけに、菅氏が再び「総理のイス」を狙う気持ちが芽生えたとしても不思議ではないが、SNSでは菅氏の「再登板」に批判的な意見が少なくないようだ。
《「しっかり説明をする必要」って(笑)。おまいう。学術会議の問題は?自分の息子と広告代理店、総務官僚の関係は?あなたが一番説明しなかったヒト》
《国民のために働く内閣なんて、当たり前のこと言いながら、国民に対して何も説明しなかったのが菅さん。ワンチャン総理あり、なんて冗談じゃない》
《岸田首相は安倍・菅政治を継承すると言っていた。つまり、今の岸田政権の姿は菅前政権と同じということ。自分も説明していなかったって、ようやく菅さんも気づいたかな》
共同通信社が行った世論調査で、来年9月に予定される自民党総裁選で「次の総裁」にふさわしい政治家として上位に名前が挙がらなかった菅氏だが……。
●打つ手なし…財務省の「ハシゴ外し」で支持率回復どころか「党内分裂」へ 11/13
想定よりも「不評」だった
JNNが11月4,5日実施した世論調査によれば、岸田内閣の支持率が先10月の調査から10.5ポイント下落し。政権発足後、初めて30%を切り、29.1%と過去最低となった。11月2日に政府がまとめた経済対策の直後の調査であったが、今回の経済対策について、期待するが18%、期待しないが72%だった。 先週の本コラム〈岸田首相の「減税を含む経済政策」はまったく不十分だ…データで検証してみると〉で、今回の経済対策を不十分と書いたが、予想以上の不評なので驚いた。
その後、政府与党内からも驚きの発言がでてきた。減税に関する宮沢自民党税調会長の発言「国民への還元ではない」や鈴木財務相の発言「税収増分は使用済み」発言だ。その意図や背景は何か。今後の岸田政権の経済運営についての影響はどうか。7日、宮沢氏は経済紙のインタビューで、岸田首相が「税収増の還元」としたことについて「『還元』とはいっても税収は全部使ったうえで、国債を発行している。それは還元ではない。」と発言した。8日の衆議院財政金融委員会で、鈴木財務相は、還元策の税収増をついて「すでに使っている」と答弁した。 この両者の発言は完全に連動している。しかも、2日の閣議決定では、「過去2年間で所得税・個人住民税の税収が3.5兆円増加する中で、国民負担率の高止まりが続いてきたことも踏まえ、この税収増を納税者である国民に分かりやすく『税』の形で直接還元することとし、令和6年度税制改正として本年末に成案を得て、3兆円台半ばの規模で所得税・個人住民税の定額減税を実施する」 と書かれていたが、これを一週間もたたずにひっくり返した。
そもそも、2日に閣議決定された経済対策が奇妙だ。国の財政支出は17兆円、そのうち今臨時国会で13兆円、残り4兆円は来年通常国会回しとなっている。要するに、年末に行われるのは給付金など13兆円、来年6月以降に実施されるのは所得税減税4兆円。本コラムで指摘してきたように、全部を今臨時国会で処理すればいいものを、来年度予算回しになっているのがおかしい。
「減税回避」が露骨に出てきた
なお、細かい文章上のことだが、「この税収増」とあるのは、「この税収増相当分」と書くべきであったのに、そうしなかったのは不可解だ。いずれにしても、経済対策を今臨時国会分と来年度予算分に分割する芸当ができ、さらに閣議決定分の詳細を書けるのは、財務省であるので、今回の宮沢発言や鈴木発言の裏には当然財務省が控えていると考えたほうがいい。そもそも過去2年度分の上振れ税収は既に決算処理で国債償還と他の政策経費で使われている。しかし、政治的なレトリックとして、余分にとりすぎた税収を国民還元するのか、いいだろう。もっとも、本コラムでは、そうした政治レトリックではなく、本年度の税収上振れや外為特会評価益を含めて50兆円程度の財源を示しており、過去2年度分の数字はわずかなので本コラムの議論では影響ない。しかし、閣議決定した今回のものをどうするのか。宮沢発言や鈴木発言は、財務省の減税回避が露骨に出てきたものとみえる。重要なのは、岸田首相の政治的な「ハシゴ外し」ているように見えることで、ある意味岸田政権の倒閣運動にもつながる動きになるかもしれない。いずれにしても、宮沢発言や鈴木発言のように所得税減税が国債発行につながるのかどうか。今年度の税収上振れや外為特会評価益などを活用すれば、その心配無用だが、これからの国会で大いに与野党で論戦を闘わせてもらいたい。別に国債発行してもいい。宮沢氏がインタビューで「減税をして好循環が生まれることで将来の所得税収や消費税収、法人税収に影響を与える可能性はある」としているがそのとおりだ。
「支持率回復」の逆転はあるのか
支持率の低下や所得税減税でのハシゴ外しなどもあり、年内解散を見送った岸田首相だが、今後、支持率回復など逆転の手段はあるのか。結論からいえば、これはかなり難しい。現状は年内解散を見送ったというよりも、既に解散権が封じられていると言った方がいいだろう。解散権を封じられた首相にパワーはないので、党内政局の動きになる可能性もある。実際、所得税減税について岸田首相は財務省からハシゴを外されていると書いたが、来年度予算回しにされた所得税減税が実施されない可能性すらある。本年度の税収上振れや外為特会での評価益などで財源は十分にあるのだが、宮沢自民党税調会長や鈴木財務大臣は所得税減税をするのであれば国債発行が必要としている。これを真に受けて国債発行するくらいなら所得税減税は不要という世論が出てくるのを財務省は待っているのであろう。 さらにここにきて、岸田政権には災難が降りかかっている。
8日、週刊文春が報じた神田憲次財務副大臣の度重なる税金滞納だ。
余裕のない岸田政権
9日、参院財政金融委員会で、2013年以降、固定資産税を滞納して計4回の差し押さえを受けたことを認めて陳謝した。「税金の滞納により市税事務所から差し押さえを受けたことがあるのは事実だ。深く反省している」と述べた。納期までに正しく税金を納めないとどうなるか。所定の期日までに支払わなかった場合、税務署から督促状が送られてくる。未納の税金に対する延滞税も含めた額が督促対象となる。督促があっても、なお支払わなかった場合は財産差し押さえなどの滞納処分を受けることがある。税務署によって財産調査が行われ、差し押さえ対象となるのは不動産や預貯金、生命保険などが一般的。差し押さえられた財産は自ら売買することができなくなり、競売にかけられ未払分に充当されることになる。督促や滞納は、税金を払う意思があるので、脱税とは違う。世の中には、結構ズボラな人は多いので、督促や滞納処分は結構多い。ただし、それらは税務当局は当然知っているが守秘義務があるので、今回のように世間の目に触れることはまずない。政権が弱くなると、弱り目に祟り目というか、不祥事情報がでて、悪循環になってくる。今の岸田政権はそうした事態に陥っているのかもしれない。税務当局は、神田氏の滞納状況を知っていたはずで、こんな人が自分達の上に来ることが我慢できなかったので、反発分子があえてリークしたという見方もあり得る。もちろんこれは邪推である。これから岸田政権が行うことは悉く批判されるだろう。折しも、9日こども家庭庁は少子化対策の財源に充当するため創設する、「支援金」制度について、支援金は負担能力に応じ、公的医療保険の保険料に上乗せして徴収するほか案を提示した。税でもなく保険料でもないので、財界や労働界からも総スカンになってものなので、批判されてしかるべきだが、悪いときに悪いことは重なるという典型例だ。もう少し政権に力があれば、こうした案はもっと政権内で練られるが、今はそうした余裕は岸田政権にはないのだろう。そうした政府与党の体たらくは、自民党内部からの崩壊を招くきっかけになる可能性もゼロではない。その萌芽が、自民党参院議員青山繁晴氏の総裁選出馬宣言である。実際問題として選挙人20名の確保は難しいが、何が起こるかはわからない。さらに、自民党内実力者の水面下の動きもある。いずれにしても、財務省のハシゴ外しは自民党内のマグマを動かし、政局の誘発するかもしれない。 
 11/14

 

●岸田首相、財務副大臣辞任を陳謝 公明党・山口代表に 11/14
岸田文雄首相は14日、首相官邸で公明党の山口那津男代表と会談した。財務副大臣を辞任した神田憲次氏を巡り「ご迷惑をかけて大変申し訳ない。体制を立て直してしっかり取り組んでいく」と陳謝した。山口氏が会談後の記者会見で明かした。
山口氏は会談で「国会の始まった矢先にこうした事態が続いたことは誠に遺憾だ。引き締めてやってもらいたい」と答えた。「与党として政府・与党の政権運営に襟を正して臨みたい」とも強調した。
神田氏は固定資産税を滞納していたとの指摘を受け、13日に辞任した。政務三役を巡っては、文部科学政務官だった山田太郎氏が10月26日に、法務副大臣だった柿沢未途氏が31日に辞めている。
●「誰もやりたくないから岸田総理続投」の可能性も…来年の「解散タイミング」 11/14
年内の解散総選挙を見送る方針を固め、先週、自民党幹部らに対し経済対策に集中する考えを伝えたという岸田総理大臣。
ここまでの道のりは“逆風”続きだった。最近では、自身を含む「特別職」の国家公務員の給与を引き上げる法案を巡り批判を受け、10月には1人4万円の減税などの方針を打ち出すも自民党内からも「何をしたいのか分からない」と異例の苦言を呈された。
さらには相次ぐ政務官・副大臣の辞任。神田財務副大臣を巡っては、自身が代表取締役を務める会社が税金を滞納し、13日に辞任した。
そんな苦しい政権運営の最中にいる岸田政権の解散タイミングと来年の政局について、東京工業大学の西田亮介准教授と考えた。
まず、年内解散が見送られたことについて、西田准教授は「内閣支持率も極めて低い状態が続いている。解散に打って出ると想定以上に自民党が負けるかもしれない。そのリスクを許容できなかったのではないか」と述べた。
続いて、5月の広島サミットの後、支持率が上昇したにもかかわらず「秋解散が本命」と見られていた要因については「欲が出たのではないか」との見方を示す。
「閣僚級会合は一年中開かれているが、春から秋にかけてはスケジュールがぽっかり空いていた。この間に解散・選挙があるのではと思われていた。広島サミットの後、自民党の支持率は上がっていたが、日本維新の会も統一地方選挙などで議席を伸ばすなど人気が高かった。そのため、岸田政権は『もう少し後の方がいいのでは』と判断。そしていざ秋になり、維新の支持率が下がったにもかかわらず解散できなかったのかもしれない」
相次ぐ政務官・副大臣の “辞任ドミノ”の影響については「影響はある。事前のスキャンダルの予想は難しく、岸田政権は相当追い込まれている」と述べた。
来年の解散のタイミングについて西田准教授は「最終的には岸田総理にしかわからない」としながらも「予算の審議の最中に解散に踏み切ると『来年度の予算の審議をほったらかして選挙にかまけているのか?』と批判されるため、通常国会後の時期が有力だ。ただし、夏の解散には、『9月の総裁選の前に負けたらどうするのか?』という懸念に加えて、“体力的な厳しさ”を理由に嫌がられる傾向がある」と分析した。
また、「総裁選の前に解散できない可能性」については「あり得る。とはいえ、対抗馬はあまりおらず、出てきても岸田政権からの引き継ぎは貧乏くじ。内閣支持率は低く、難しい運営を余儀なくされる。『誰もやりたくないから岸田総理続投』の可能性もある」と推測を口にした。
逆風が続く岸田総理の「求心力」と「今後」については「落ちている。そもそも岸田派は少数派閥であり、筆頭派閥の安倍派などの顔も立てなければいけない。そうした舵取りをしながら、自民党全体を勝たせることで党勢を回復し、尚且つ岸田政権を維持させる、そんな解を模索しているのだろうが、果たして見つかるのか」と述べた。
●岸田首相、15日訪米 政府発表、APEC出席へ 11/14
政府は14日、岸田文雄首相がアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するため、15〜19日の日程で米サンフランシスコを訪問すると発表した。政府関係者によると、16日にも中国の習近平国家主席との首脳会談を調整。バイデン米大統領との会談も検討している。
15〜17日のAPEC首脳会議では自由で開かれた貿易・投資の推進やデジタル技術、気候変動対策などが議題となる予定で、松野博一官房長官は記者会見で「重要課題について積極的に議論をけん引する」と説明した。
16日には14カ国が参加する「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」首脳会合に臨み、「持続可能で包摂的な経済成長の実現に向けた日本の立場」(松野氏)を発信する。17日には韓国の尹錫悦大統領と共に、スタンフォード大での先端科学技術に関する討論会に参加。尹氏との個別会談も調整している。
●岸田政権また「辞任ドミノ」 立て直し困難との声も 11/14
岸田文雄首相が、税金滞納を繰り返した神田憲次財務副大臣を事実上更迭した。政務三役の退場はこの3週間足らずで3人目。「辞任ドミノ」が再び現実となった形だ。首相の判断が後手に回ったことで政権の傷口は拡大。自民党内から立て直しは困難との声も出始めた。
「国民におわびする。一層緊張感を持って職責を果たし、国民の信頼回復につなげる」。首相は13日夕、首相官邸で記者団にこう強調した。
首相は、9月発足の第2次岸田再改造内閣について「適材適所」と胸を張ってきた。しかし、先月20日に臨時国会を召集して以降、同26日に山田太郎文部科学政務官(当時)、同31日に柿沢未途法務副大臣(同)が辞任。閣僚4人が辞任した昨年の「悪夢」を繰り返している。
一連の辞任理由はそれぞれ、山田氏が女性問題、柿沢氏が選挙違反事件への関与、神田氏が税金滞納だった。党関係者は「最も不適切な人材を最も不適切なポストに就けていたと批判されても反論できない」と頭を抱える。
今回、首相の「判断の遅れ」(党関係者)も政権批判を増幅させる要因となった。山田、柿沢両氏は問題発覚の当日に処分した首相だが、神田氏の税金滞納が8日に報じられても即座に動かなかった。
党幹部は「首相官邸が『3人目の辞任』を嫌った。最終的に税金を納めて違法性は解消された、との理屈で流れを変えようとした」と明かす。
政権幹部によると、首相は13日午前の段階でも判断に迷っていた。野党が2023年度補正予算案の審議拒否をちらつかせる中、自民党側は「国会の厳しい空気」(幹部)を官邸側に報告。首相が更迭方針を伝えたのは正午近くだった。
党重鎮は「判断が遅過ぎた。さっさと切るべきだった」と吐き捨てるように語った。
自民党は12日投開票の福島県議選で過半数を割り込み、現職を推薦した東京都青梅市長選で敗北。党内からは次期衆院選に向けて不安の声が広がりつつある。落選中の前衆院議員は「党の顔を代えた方がいい」と本音を隠さなかった。
●「岸田降ろし」の影 経済回復する前に緊縮財務省のやり口=@11/14
「岸田降ろし」が話題である。岸田文雄首相は、経済対策の原資として「税収増の還元」を強調してきた。だが、鈴木俊一財務相や宮沢洋一自民党税調会長らは「国債償還などに使ってしまい、税収増分はもうない」と否定した。嘉悦大学教授の高橋洋一氏が指摘するように、これは「財務省の減税潰し」かもしれない。内閣支持率が相変わらず低迷しているので、財務省主導の「岸田降ろし」につながることもありうる。
経済が十分に回復する前に財政を緊縮させるのが、財務省のやり口である。ある国会議員が「景気回復してしまうと(税収が増えるため)増税できない」という発言をしたことがある。
おそらくこれは財務省の本音でもある。いままでも一部の官僚とそのポチ政治家≠スちによって、日本経済は何度も打ち砕かれてきた。今回こそはこの悪いパターンを避けなければいけない。だが、そもそもの岸田政権の経済対策が、財務省の緊縮病に打ち勝っているかが問題になる。
世間の増税メガネ#癆サを背景に、岸田首相は「税収増の還元」を掲げて、意欲的な景気対策を行うと表明した。日本の実体経済は、いまだ油断するとデフレ経済に戻るほど、内需が弱いままである。だから岸田首相が経済対策で「デフレ完全脱却」を打ち出したのはスジがいい。
また補正予算の規模は、来年度実施予定の所得減税を抜かすと約13兆円だ。日本経済全体のおカネ不足は最低でも10兆円はあると見込まれる。その意味で総額はなんとか合格点だ。
ただしおカネを増やす効果が低いものが具体策に並ぶ。賃上げ支援などその典型だろう。見掛け倒しの金額が並んでいる可能性が大きい。要するに、しょぼいのだ。ただし、この景気対策さえも否定しようというのが今の財務省であることを忘れてはいけない。
現在の日本経済の問題は、消費の低迷にあることは間違いない。そこでは消費を増やす経済対策が必要になる。つまり消費税の減税がベストだ。ところが、岸田首相は消費減税を断固否定している。社会保障の安定財源だとか、「消費減税してしまうと高所得者に有利になる」という珍妙な理屈に染まっているのだろう。
だが増税メガネ≠ニの批判を回避するために減税はしたい。その結果、生み出されたのが来年夏の所得減税だ。どう考えても遅いし、金額も少ない。さらに「異次元の少子化対策」などで将来の負担増をちらつかせている。1年だけ減税されてハイそうですか、と国民が消費を増やすわけもない。
財務省の「岸田降ろし」に対抗するには、国民を味方につける必要があるが、いまの「しょぼい、遅い、すぐに負担増」では、国民の支持を得るのは難しい。
●補正予算案はデタラメ 7割は借金で賄い、経済対策は10兆円のムダ遣い 11/14
支持率低迷から年内解散の断念に追い込まれた岸田首相。「まずは経済対策、先送りできない課題一つ一つに一意専心、取り組んでいく」と強がっているが、肝心の総合経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案はデタラメの極みだ。ほとんど借金で賄うのに、緊急性が疑われる事業のオンパレード。ムダな予算は実に10兆円に上る。
岸田政権は10日、補正予算案を閣議決定。一般会計の総額13兆1992億円のうち、7割近い8兆8750億円を新規国債の追加発行で賄う。「税収増の還元」の掛け声とは裏腹に財源は借金頼み。23年度末の普通国債の発行残高は1075兆7000億円に膨らむ。
経済対策の趣旨である「物価高対策」に投じるのは2兆4807億円。全体の2割にも満たない。ちなみに、来年6月の実施を目指す「定額減税」は含まれていない。財政法は災害や景気対策など「特に緊要な支出」にのみ補正予算の編成を認めているが、目につくのは来年度予算で手当てしても差し支えのない事業ばかり。「防災・減災、国土強靱化対策」などを名目にした公共事業費も、計2.2兆円と巨額だ。
半導体やAIなどの国内投資促進策は2兆9308億円。具体策として想定するのは、台湾の半導体製造大手「TSMC」や先端半導体企業「ラピダス」への補助金などで、ロコツな大企業優遇策である。
さらに、補正では「宇宙戦略」など4つの基金を新設。既存の27基金への予算も積み増し、計4.3兆円を振り向ける。基金は予算を年度内に使い切る単年度主義の例外と位置づけられ、事業運営は外部に委託される。国会のチェックが行き届きにくいブラックボックスは、ムダ遣いの温床となっている。
実際、22年度末時点で基金事業は180を超え、残高は計約16.6兆円に膨らみ、使われないまま、ムダに積み残されている。政府は11〜12日に国の事業を公開で検証する「秋の行政事業レビュー」を実施。基金事業に関し、河野行改担当相は「今あるすべての基金について、横串を通した点検、見直しをやっていきたい」と息巻いたが、ならばなぜ、閣議決定で基金の新設に反対しなかったのか。支離滅裂である。
経済対策に名を借りたデタラメ事業
そのクセ、河野が所管するマイナンバーカード関連事業には計1786億円を計上。不人気の「マイナ保険証の利用促進・環境整備」に887億円を費やし、うち217億円は利用増の医療機関にバラまくニンジン作戦である。
一方、介護職員の報酬アップに投じるのは581億円。給与の増額は月平均6000円にとどまり、賃上げよりもマイナ保険証の普及を優先と言わんばかりだ。
「ここ数年、各省庁とも『経済対策』を口実に不要不急な事業を補正予算に潜り込ませる悪癖が常態化。大半はムダと言っていい。防衛費にも『安全保障環境の変化への対応』と称して補正として過去最大8130億円を計上。敵基地攻撃能力の保有につながるスタンド・オフ・ミサイルの整備費に1523億円などを盛り込んでいます。経済対策でなく、まるで軍需産業対策。国民生活に背を向けた補正で、本来なら物価高対策に絞り込み、もっと予算を振り向けるべきです」(立正大法制研究所特別研究員・浦野広明氏=税法)
経済対策に名を借りたデタラメ事業はキリがなく、ムダな予算はザッと10兆円に達する。岸田首相の「還元詐欺」に国民はもっと怒った方がいい。
●「尖閣諸島に中国が海上ブイ」 女性閣僚2人の激突と「ポスト岸田」バトル 11/14
沖縄県尖閣諸島周辺の排他的経済水域(EEZ)に中国が設置したブイについて、岸田政権で閣内不一致が起きている。上川陽子外相は国連海洋法条約など国際法に関連規定がないとして、撤去に慎重姿勢を示したのに対し、高市早苗経済安全保障担当相は「日本が撤去しても違法ではない」との見解を示したからだ。
高市氏は10月28日、自身のYouTube番組で、中国の海上ブイについて「本来なら(日本が)撤去すべき」とし「放置はできない」と強調した。11月3日夕にはXへの投稿で「(中国のブイ設置は)『国連海洋法条約』違反ですが、同条約には『撤去』に関する規定がなく、今も外務省が中国に撤去を要請中。規定がないなら日本が撤去しても違法ではないと思うが…」と発信した。
「この2人の意見対立は、ブイをめぐる対応だけでない。『ポスト岸田』も絡んでいる」と明かすのは、さる閣僚経験者だ。
高市氏は2021年の自民党総裁選で、岸田文雄総理と争った。10月3日のBSフジ「プライムニュース」に出演した際、来年9月の自民党総裁選について、担当相として「セキュリティー・クリアランス(安全保障上の機密を扱う人の適格性評価)を仕上げさせていただいた後に」と前置きした上で「また戦わせていただく」と述べ、事実上の立候補表明を行っている。
一方の上川氏は岸田派の一員として政権を支える立場だが、岸田総理の支持率がこのまま低迷を続け、総裁選出馬断念に追い込まれた場合には、後継候補に名乗り出るのではないか、との観測が出ている。上川氏を外相に起用することは、岸田総理の後ろ盾である麻生太郎副総裁も推していた。
2021年の総裁選では、安倍晋三元総理が高市氏を支援したが、安倍氏が暗殺された後、高市氏を取り巻く状況は厳しくなった。対して上川氏は麻生氏だけでなく、岸田総理とは距離を置く菅義偉前総理とも関係が良好であり、いったん出馬に踏み切れば、一気に「女性初の宰相」という流れができるかもしれない。先の閣僚経験者は、「高市氏としてもブイ撤去を主張することで、中国に配慮する上川氏との立場の違いをアピールする意味合いがあったのだろう」
岸田総理の求心力が急激に低下する中で、「ポスト岸田」に向けた女性政治家たちの動きが活発化しそうである。
●税収増「すでに使っている」鈴木財務相と自民税調会長発言の裏…倒閣運動 11/14
岸田文雄首相が打ち出した所得税と住民税の減税をめぐり、自民党内からの発言が波紋を広げている。その意図や背景は何か。今後の岸田政権の経済運営に影響は出るだろうか。
自民党税調会長の宮沢洋一氏は7日、経済紙のインタビューで、岸田首相が「税収増の還元」としたことについて「『還元』とはいっても税収は全部使ったうえで、国債を発行している。それは還元ではない」と発言した。8日の衆議院財務金融委員会で、鈴木俊一財務相は、税収増について「すでに使っている」と答弁した。
この両者の発言は完全に連動している。しかも、2日の閣議決定では《過去2年間で所得税・個人住民税の税収が3・5兆円増加する中で、国民負担率の高止まりが続いてきたことも踏まえ、この税収増を納税者である国民に分かりやすく「税」の形で直接還元することとし、令和6年度税制改正として本年末に成案を得て、3兆円台半ばの規模で所得税・個人住民税の定額減税を実施する》と書かれていたが、これを1週間もたたずにひっくり返した。
そもそも2日に閣議決定された経済対策が奇妙だった。国の財政支出は17兆円で、そのうち今臨時国会で13兆円、残り4兆円は来年の通常国会回しとなっている。要するに、年末に行われるのは給付金など13兆円、来年6月以降に実施されるのは所得税などの減税4兆円ということだ。本コラムで指摘してきたように、全部を今臨時国会で処理すればいいものを、来年度予算回しになっているのがおかしい。
経済対策を今臨時国会分と来年度予算分に分割する芸当ができるのは財務省なので、今回の宮沢発言や鈴木発言の裏には財務省が控えていると考えるのは自然だろう。
過去2年度分の上振れ税収は既に決算処理で国債償還とほかの政策経費で使われているといっても、政治的なレトリックとして、「余分に取りすぎた税収を国民還元する」というのは認められるだろう。もっとも、本コラムでは、本年度の税収上振れや外国為替資金特別会計の評価益を含めて50兆円程度の財源があると指摘している。その観点では過去2年度分の数字はわずかな額であり、本コラムの議論には影響しない。
それにしても、閣議決定したものをどうするのか。宮沢発言や鈴木発言は、財務省の「減税回避」の姿勢が露骨に出てきたものとみられる。重要なのは、政治的に岸田首相のハシゴ外しをしているようにみえることで、ある意味、倒閣運動にもつながることになるかもしれない。
宮沢発言や鈴木発言のように所得税減税が国債発行につながるのかどうか。今年度の税収上振れや外為特会評価益などを活用すれば、その心配は無用だが、国会で与野党が大いに論戦を闘わせてもらいたい。
その結果、別に国債発行してもいいのだ。宮沢氏がインタビューで「減税をして好循環が生まれることで将来の所得税収や消費税収、法人税収に影響を与える可能性はある」と述べているが、そのとおりだ。
●岸田政権は終わりの始まり? 11/14
もはや岸田政権は終わりの始まりなのだろうか?
臨時国会の中身は、本会議における総理の所信演説の中身を踏襲し、政府は岸田総理がぶち上げた減税策の中身を説明することに奔走しているようだ。
ただ野党の追求姿勢が弱腰なのも頷ける理由がある。
岸田政権の支持率は下降の一途だが、実は野党の支持率も目覚ましく上昇しているとは言えない。
保守層の中で鳴り物入りで立党した日本保守党も、その中身において今の自民党を二分するような中身とは言えない。創価学会は統一教会の宗教法人格取り消し問題を受けてか、目立った発言を控えているように見える。
野党はこの機に、予算委員会等の場で、創価学会の傀儡政党である公明党に対して統一教会問題を追求すればいいと思うのだが、そんな根性も見当たらない。
安倍政権下においてあれだけ打倒安倍晋三に執着した立憲民主党も、今は鳴りを顰めている。岸田政権では政権内部の不祥事が相次ぎ、今こそ岸田政権の総辞職に追い込めばいいと思うのだが、肝心の立憲民主党の支持率も一向に伸び悩んでいる。
また、一貫性が無いのは立憲民主党も同様で、本来、弱者を救済するという謳い文句であったはずの立憲民主党が、財政規律を重視して、脱「消費税減税」に舵を切ったという報道が流れた。
立憲民主党は公称野党第一党ということになっているが、その野党第一党が庶民の声を無視して、財務省のプロパガンダに汚染されていることを露呈してしまった形だ。
立憲民主党には期待してはいけない
仮に解散風が吹いたとしても、今の立憲民主党が政権を奪取できる可能性は限りなくゼロに近いのだが、少なくとも野党共闘の方向性だけは示す必要があっただろう。そこには、不可能であったとしてもワンイシューを掲げて有権者に分かりやすい選挙戦を掲げるべきなのだ。政権内の不祥事追求はあくまで戦略の一つであり、政権を奪った後に何をするのか?について、明確なビジョンを持っている必要があるだろう。その点で、日本共産党との共闘は、悪手意外の何ものでもない。
元々、日本人は子供の頃から左派メディアを信奉し学校教育等によって左翼思想に染まった、ごく限られた人たち以外、共産主義には嫌悪感がある。立憲民主党は自分たちの支持者が連合だけだと思っているかもしれないが、一般の人でも、少なからず、立憲民主に期待する声はある。その僅かな声すら無視して、日本共産党と共闘するなど、有権者の意識が見えていない表れだろう。
そして、減税策の旗を下すなど、財務省のレクチャーに抗しきれない経済や財政の問題に立ち向かえない弱さを露呈している。これでは支持率は上がらない。
そんな中、岸田総理は年内解散はしないという意向を示したという報道が流れた。
Abemaニュースによると、伸び悩む支持率と、閣僚の不祥事によって、年内解散を諦めたということらしい。
本来、秋の解散を念頭に置いていた岸田総理は、腰折れしてしまった形になった。当然、衆院選の結果如何で党内の岸田下ろしの風が吹くことに抗しきれず、衆院選で惨敗を喫すれば総裁辞任、内閣総退陣の最悪の結果が見えてくることに危機感を感じたのだろう。
では、次の解散のタイミングとは、いつになるのだろうか?
●自民支持層も「岸田離れ」内閣支持率 27・8%危険信号=@11/14
岸田文雄内閣にまた、厳しい現状が突き付けられた。産経新聞・FNN(フジニュースネットワーク)と、NHKが13日、それぞれ公表した世論調査で、内閣支持率は発足以来、最低を記録した。自民党支持層の内閣支持率も急落しており、政権運営は、さらに厳しさを増しそうだ。減税方針が目玉の経済対策が不評だったうえ、政権内の不祥事が相次いでいる。岸田首相は立て直しを図れるのか。
衝撃の内閣支持率は別表の通り。ともに、政権維持の「危険水域」とされる30%以下に沈み込んだ。NHK調査では、自民党が2012年12月に政権を奪還してからの歴代内閣でも、最低水準に落ち込んだ。
岸田首相周辺は「報道各社の調査が一斉に下落したのは危険信号≠セ。特に、自民党支持層が『岸田離れ』を加速させているのが危うい。支持率下落の底が抜けたように感じる」と焦りをにじませた。
確かに、産経・FNN調査では、自民党支持層の内閣支持率が、前月比9・1ポイント減の64・5%と急落している。
岩盤保守層をはじめ、各方面から批判が強かったLGBT法が成立した6月でも、自民党支持層の内閣支持率は78・6%だっただけに、「岸田離れ」が如実になった。
政策の評価も低い。
産経・FNN調査では、17兆円規模の経済対策について、「評価しない」が66・2%に達した。評価しない理由は、「今後、増税が予定されているから」が39・9%で最多になっている。
NHK調査でも、所得税・住民税の減税方針を「あまり評価しない」「まったく評価しない」がおよそ6割を占めた。評価しない理由は、「選挙対策に見えるから」が38・4%と最も多く、厳しい政治不信が浮き彫りになった。
政治評論家の有馬晴海氏は「政権浮揚するプラス材料がない。税金滞納問題が浮上した神田憲次財務副大臣が辞任したが、政務三役が不祥事で短期間で3人も辞めた。世論の評価はいよいよ厳しくなり、支持率はさらに落ちる可能性がある。支持率下落の幅が大きいのは、二転三転した減税方針などに対する不信感だ。世論が岸田政権に感じていた『違和感』が、より具体化している」と指摘した。
●内閣の物価高対策「7割以上評価しない」 少子化対策「6割以上期待しない」 11/14
岸田内閣の政策について世論調査が行われました。「物価高対策」については、7割以上が「評価しない」と答えました。
調査は長野県世論調査協会が、10月5日から31日に県内に住む18歳以上の1200人を対象に行い、693人から回答を得ました。
このうち物価高への対応について、「評価する」は15.9%、「評価しない」は72.1%。
明確に評価しないと答えた人が4割を超え、不満の大きさを示しました。
岸田内閣が掲げる「異次元の少子化対策」については、「期待する」「ある程度期待する」が26.4%。
一方、「期待しない」「あまり期待しない」が65.3%で3分の2近くにのぼり、看板政策への期待が十分高まっていないことがわかりました。
岸田内閣の支持率は「支持しない」が62.8%で「支持する」の36.2%を大きく上回りました。
●内閣支持最低 政務三役辞任 減税論議の行方は 11/14
岸田内閣の支持率下落が止まらない。岸田首相は年内の衆議院解散を見送り物価高などへの対応に集中するとしているが、政務三役の辞任が相次いでいる。不透明感が漂う政治の現状と今後について考える。
内閣支持率急落
11月の内閣支持率は10月より7ポイント下がって29%。「支持しない」は8ポイント上がって52%だった。不支持が支持を上回るのは5か月連続。内閣発足時から20ポイント下げ、最も低くなった。支持率が内閣の「危険水域」とされる20%台になったのは菅内閣末期の2021年8月以来で、自民党が政権復帰後最低の数字に並んだ。
支持が低迷しているのは内閣だけでない。
自民党の11月の支持率は37.7%。10月より増えはしたが、政権発足時からは4ポイント弱減らしている。また特に支持する政党はない「無党派層」を7か月連続で下回った。
年内解散見送り
岸田首相が年内の衆議院解散を見送ったのは、今は選挙を有利に戦える環境にないと判断したためだろう。岸田首相は9日、衆院解散について記者団から問われ「まずは経済対策。先送りできない課題に一つ一つ取り組んでいく。それ以外のことは考えていない」と答え、これまで付け加えてきた「今は」「現在は」というフレーズは消えた。
選挙で勝つには所属する政党の支持を固めたうえで、無党派層の支持を少しでも拡げるのが鉄則だ。しかし11月、与党支持層の内閣支持が53%にとどまり、「無党派層」の支持は「野党支持層」と同じ12%にまで落ち込んだ。それだけに今回の発言は「解散を見送った」というよりむしろ、「解散したくても、当面できなくなった」「解散権が事実上封じられた」と解釈する向きも政界では少なくない。
今年に入り「解散風」を利用して与党内の求心力を維持し、時にはけん制もしてきた岸田首相だが、内閣支持率が自民党の支持を9ポイント近くも下回ったことで今後党側の意向をこれまで以上に配慮を迫られるなど力関係に変化が生じ、さらに苦しい立場に追い込まれる可能性も否定できない。
減税と給付
支持低下の要因はいくつか考えられるが、先に打ち出した経済対策や、所得税などの減税と給付に対する国民の冷めた評価が大きく影響したのは間違いない。一連の経済対策を通じて岸田首相は来年夏には、所得の伸びが物価上昇を上回る状態にしたいとしているが、これに「期待しない」という人は「あまり」「まったく」あわせて65%。一方「期待する」は「大いに」「ある程度」あわせて30%。また政府は所得税などを1人あたり4万円減税し、住民税非課税世帯には7万円を給付する方針だが、これを「評価しない」という人はあわせて59%。一方「評価する」は36%だったことからも明らかだ。「経済対策」は全ての世代の6割以上が、「減税と給付」は30代以上の過半数が、期待や評価していない。このため岸田内閣を「支持しない理由」として「政策に期待が持てない」という人は11月57%と、2か月連続で5割を超える結果となった。
減税と給付、評価が低い理由は何が考えられるのか。その点について聞いたところ「選挙対策に見えるから」が最も多く38%、次いで「物価高対策にならないから」は30%、「国の財政状況が不安だから」は24%、「実施時期が遅いから」は4%だった。
選挙対策と受け取られているのは、岸田首相が減税の検討を与党側に指示したのが10月の衆参補欠選挙直前で、早期の解散総選挙の観測もくすぶる時期と重なった点が大きく影響しているとみられる。政府は防衛費について今年度から5年間で43兆円程度確保しその財源の一部を法人税、たばこ税とともに、所得税の増税で賄うとしてきた。こうした将来の増税と今回の減税は「矛盾しない」と岸田首相は説明しているが、「納得できない」は67%に上り、「納得できる」は19%にすぎない。与党支持層でも「納得できない」は57%、無党派層では76%だった。賛否両論がある中、防衛増税を決めた去年暮れから1年も経たないうちに減税の方針が示されたことに国民の多くが唐突感を覚え、これまでの説明との整合性に疑問を感じている。岸田首相は、こうした声を真摯に受け止め、もし事実と異なるというのであれば国会できちんと説明すべきではないか。
また「物価高対策にならない」「実施時期が遅い」があわせて3割余りを占めたのは、減税実施には法改正が必要で開始は早くても来年6月と、給付に比べて即効性に欠けるためだ。また岸田首相は減税を「1回で終えられるよう経済を盛り上げていきたい」と述べているが、1回では多くが貯蓄に回り効果が薄いという指摘や、消費拡大には消費税の減税の方が有効だという見方もある。さらに国債の発行残高が1000兆円を超え、4人に1人が財政状況に不安を感じる中で、岸田首相が「税収増の一部を国民に還元する」と述べる一方、鈴木財務相は「過去の税収の増加分は政策や国債の償還などですでに支出しており、減税を行えばその分、国債の発行額が増える」と答弁したことも国民にはわかりにくい。
制度の詳細は与党の税制調査会で年末にかけて議論されるが、自民党内にはその効果を疑問視する見方もある。また富裕層も対象に含めるのか。また実施は1回きりか、それとも物価高が続いた場合に期間を延長するのかなど、自民・公明両党で意見が分かれる点も少なくない。さらに当初首相周辺のみで検討が進められたことへの不満や、支持率低下を招いた責任を問う声もくすぶっており、議論は紆余曲折も予想される。
政治の行方は
政治の今後の行方は物価と賃金の動向に大きく左右されるとみられるが、ここにきて波乱要因となりつつあるのが内閣改造から1か月余りの間に、政務三役が様々な理由で相次いで辞任に追い込まれていることだ。10月の山田文部科学政務官、柿沢法務副大臣に続き、13日には過去に税金の滞納を繰り返した神田財務副大臣が辞任したことで、来週からの補正予算案の審議、さらには政権運営への影響は避けられそうにない。
岸田首相は先の内閣改造を「適材適所」とする一方、「国民におわびしなければならない」とも述べている。ただ岸田首相に「任命責任がある」という人は「大いに」「ある程度」あわせて67%と、「ない」の26%に大きく差をつけている。去年秋にも初入閣の閣僚4人の相次ぐ辞任が支持低迷のきっかけともなっただけに、一連の問題が政治の先行きをさらに不透明にする可能性も否定できない。
●税収増による還元策が「偽装減税」と批判高まる 11/14
政府は11月2日、物価高に対応する総合経済対策を閣議決定した。目玉となる減税と給付措置は計5兆円超の規模で、1人あたり年4万円の定額減税に3.5兆円、住民税非課税世帯などへの給付に1兆円超を充てる方針だ。
岸田文雄首相は「増税メガネ」との揶揄を払拭するかのように、税収増を国民に還元するとして減税措置を打ち出したが、報道各社の世論調査で内閣支持率は過去最低水準のままだ。国会でも野党から「偽装減税」などと批判が強まっており、局面打開は見通せない。
国会審議でめったに答弁しない鈴木俊一財務相が、10月30日の衆院予算委員会で、立憲民主党の逢坂誠二代表代行の質問に応じた。
逢坂氏が防衛費増額に伴う財源確保のための増税と今回の減税措置の整合性を巡り、「歳出改革は財源になり得るのか」と質すと、鈴木氏は「社会保障費を高齢化の枠内に抑える」として数字を列挙して説明した。
これに対し、逢坂氏は「何を言っているのか全くわからない」と斬って捨てた上、「本来伸びるであろう予算を抑え込むから財源だと言っている。詭弁だ」とたたみかけた。鈴木氏は首相を援護射撃するどころか、野党からさらに突っ込まれる展開になってしまった。
減税を巡る政府の発信力不足が首相への逆風になっているにもかかわらず、平時と同じ説明を続ける鈴木氏の姿勢は政権運営の足かせになっている可能性がある。自民党内からは「税は政局だ。首相や財務相が説明できなければ、『岸田政権は財務省の言いなり』という印象が強まるだけだ」(閣僚経験者)と肩を落とす。
●「還元」の矛盾が露呈した 11/14
政府は、物価高に対応した経済対策の裏付けとなる総額13兆1992億円の2023年度補正予算案を決定した。
岸田文雄首相は閣議や臨時国会で、「成長の果実である税収増を国民に適切に還元する」と述べていた。ところが予算案の財源をみると、首相が掲げた税収の増加分は1710億円にとどまった。全体の7割近くの約8・8兆円を国債発行に頼っている。
経済対策の目玉である所得税と住民税の減税は24年6月実施なので今回は計上されていないが、さらに5兆円規模の財源が必要となる。鈴木俊一財務相は国会答弁で、これまでの税収増加分は国債の償還などに充てたため残っていないと述べた。これから税収が数兆円も増えるとは考えにくい。
財源の国債頼みが繰り返されそうだ。首相の言う「還元」のために、新たな借金に頼る矛盾が露呈したと言わざるを得ない。借金の山をこれ以上高く積み上げ、財政規律を緩ませてまで減税を講じるほど厳しい経済状況なのか。臨時国会の論戦を通じて、与野党は厳しく見極める必要がある。
補正予算案の内容で見逃せないのが、さまざまな政策課題についての基金に4・3兆円を投じる点だ。半導体支援など既存の27の基金に積み増すほか、宇宙戦略など新たに四つの基金を設ける。
基金は中長期的な政策推進に充てるため複数年度にわたり予算を積み立てる。新型コロナ禍で相次いで新設された結果、その数は180を超え、残高は16兆円を上回る。
国会などのチェックが利きにくい上、成果目標がなく費用対効果が不明瞭だったり、実務を民間に丸投げしたりといった例も少なくない。そもそも政策遂行に必要なら、補正ではなく当初予算段階から手当てするのが筋だろう。
現状のまま基金に巨額の予算を投じることが、賢明な支出とは言い難い。基金制度そのものについて見直しを考える必要がある。
内閣支持率の低迷が続き、首相は年内の衆院解散を断念した。今回の補正予算案で内閣支持率を向上させて総選挙を勝ち抜き、さらには来年の自民党総裁選を有利に戦う思惑があったとされる。
防衛増税など将来の負担増を打ち出す一方で税収増を還元するとしたちぐはぐさが、国民の支持を得られないのは当然だ。
しかも税収増自体が実態の乏しい内容とあっては、首相の発言に対する国民の不信はいっそう募る。首相は改めて真摯な姿勢で政権運営に当たらねばならない。
●所得税減税の方針めぐり 地方が政府に補てん求める 11/14
所得税減税の方針をめぐり、全国知事会が地方交付税の減収につながる懸念を示し、政府に穴埋めを求めた。
政府主催の全国知事会議で岸田首相は、所得減税を含む経済対策について「速やかな執行に都道府県の協力が不可欠だ」と述べた。
一方、知事会側は、減税により所得税収を原資としている地方交付税が減ることへの懸念を表明した。
全国知事会長・村井宮城県知事「地方交付税の減収となるため、大変懸念をしております。国において、この補てんをぜひともお願いしたい」
岸田首相は、「地方の財政運営に支障が生じないよう、年末に向けて関係省庁で協議し、適切に対応する」と応じた。
●日本の半導体は復活するのか〜鍵を握るTSMCとラピダス 11/14
中国の経済・軍事の急激な台頭に伴い、東アジアの安全保障体制は一気に不安定化した。危機感を抱いたアメリカは、中国の急成長を抑止するため、様々な対交策を打ち出している。生産・流通(貿易)・金融の主要な経済分野を巡る対立ばかりか、軍事分野での相互不信に基づく緊張状態が相乗されている。GDP で世界第 1 位と第 2 位の経済力を有する米中が経済・軍事両分野で厳しく緊張している状態が、国際政治経済を俄かに不安定化させる原因となっている。さらにロシア・ウクライナ戦争など世界各地で頻発している軍事紛争、EU への難民の流入と加盟国内の右傾化、同盟国間の対立など、米中関係の緊張がその解決を一層困難にしている。この状態を一般的に「米中新冷戦」と呼んでいる。
中でも半導体はデジタル経済が拡大する中、その重要性はますます高まっている。2020年には新型コロナウィルスの蔓延による半導体工場の操業停止などにより、全世界的な半導体不足があらゆる産業に大きなダメージを与えた。ここで安全保障上の懸念材料となったのが台湾だ。台湾は、世界トップレベルの半導体製造企業TSMCを擁し、世界の半導体の約60%、最先端のロジック半導体の90%以上を製造している(ロジック半導体とは、世界最先端の通信機器やコンピュータの頭脳の役割を担う主要部品で、人口知能の主導権争いにおいても重要な役割)。この台湾を中国が政治的経済的にコントロールするようなことがあれば、中国は世界で最も重要な製品の支配権を握ることになるだろう。アメリカは、同盟国やパートナー国との緊密な関係を活用して、半導体のサプライチェーンのレジリエンスを高め、台湾と協力して軍事力と経済力を強化する必要に迫られている。
我が国はどう対応していくべきなのだろうか。ここで日本の経済安全保障について簡単におさらいしてみよう。
日本の経済安全保障
日本政府は、国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、安全保障を確保するためには、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大しているとの観点に立ち、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するため、「経済安全保障」を政策の主要な柱とすることを決定している。
日本の経済安全保障の目的は、第一に「戦略的自律性の確保」であり、第二に「戦略的不可欠性の獲得」である。「戦略的自律性の確保」とは、国民の生活や社会経済活動の維持に不可欠な基盤を強化するためのサプライチェーンの確保のことであり、例を挙げれば、コロナ禍におけるマスクや人工呼吸器の確保などがある。「戦略的不可欠性の獲得」とは、我が国の産業の存在が国際社会にとって不可欠であるような分野を戦略的に拡大することであり、例を挙げれば、半導体の復興、AI、量子コンピュータなど重要技術の発展と流出防止などがある。
そして政府は、2022年5月、経済安全保障推進法を成立させて、(1)重要物資の安定的な供給の確保、(2)基幹インフラ役務の安定的な提供の確保、(3)先端的な重要技術の開発支援、(4)特許出願の非公開という4つの制度を創設した。この中で半導体は、「国民の生活や社会経済活動の維持に不可欠な重要物資」であると同時に「我が国の産業の存在が国際社会にとって不可欠であるような分野」として取り上げられ、極めて重要な役割を持つ。
経済産業省の半導体産業復興戦略
1980年代、半導体は日本の代表的な産業の1つであり、世界シェアの50.3%を占めていたが、今では10%程度のシェアに低下している。その原因について経済産業省は次のように分析している。
   日米貿易摩擦によるメモリー敗戦
1980年代、世界を席巻した日の丸半導体メーカーは、日米半導体協定による貿易規制が強まる中で衰退。その後、1990年代、半導体の中心が、メモリー(DRAM)から、ロジック(CPU)へと変わる潮流をとらえられず。
   設計と製造の水平分離の失敗
1990年代後半以降、ロジックの設計・製造が垂直統合型から、オープンなアーキテクチャ(ARM)を用いたファブレス企業/ファウンドリー企業の水平分離型の新潮流へ。しかしながら、日の丸半導体メーカーは電機・情報通信機器の親会社が競争力を失う中で、半導体製造部門の切り出し・統合が難航。
   デジタル産業化の遅れ
21世紀に入り、PC、インターネット、スマホ、データセンタの普及など、世界的にデジタル市場が進展する中で、国内のデジタル投資が遅れ、半導体の顧客となる国内デジタル市場が低迷。必要な半導体の国内設計体制を整えられず、現状、先端半導体は海外からの輸入に依存。
   日の丸自前主義の陥穽(かんせい)
1990年代後半以降、多額の研究開発・技術開発予算を投じてきたものの、日の丸自前主義に陥り、供給側(設計・製造・装置・素材)の担い手はもとより、需要側(デジタル産業)も含め世界とつながるオープンイノベーションのエコシステム(欧州Imec、米国Albany)や国際アライアンスを築けず。
   国内企業の投資縮小と韓台中の国家的企業育成
バブル経済崩壊後の平成の長期不況により将来に向けた思い切った投資ができず、国内企業のビジネスが縮小。 一方で、韓国・台湾・中国は、研究開発のみならず、大規模な補助金・減税等で長期に亘って国内企業の設備投資・支援して育成。
こうした日本の半導体産業の現状を踏まえて、経済産業省は、「半導体は、デジタル社会を支える重要基盤・安全保障に直結する戦略技術として死活的に重要であり、経済安全保障の観点から、国家として整備すべき重要半導体の種類を見定めた上で、必要な半導体工場の新設・改修を国家事業として主体的に進めることが重要である」と認識し、具体的には、「先端半導体を国内で開発・製造できるよう、海外の先端ファウンドリーの誘致を通じた日本企業との共同開発・生産や、メモリ・センサー・パワー等を含めた半導体の供給力を高めるための我が国半導体工場の刷新等について、他国に匹敵する大胆な支援措置が必要」との基本方針を決定した。
この基本方針に基づいて、台湾のファウンドリーTSMCの誘致とラピダスの新設が具体化した。
   図1 半導体の製造工程のイメージ
半導体製造工程は主に設計、前工程、後工程、販売に分かれる。ファウンドリーとは、半導体委託製造会社のことで、設計と販売を除いて半導体集積回路の生産を専門に行う企業・工場を言う。
台湾積体電路製造(TSMC)の誘致と半導体委託製造会社「ラピダス」の新設
   (1)台湾積体電路製造(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company、略称TSMC)
熊本県菊陽町の工業団地「セミコンテクノパーク」に近接する約21.3haの敷地に日本最大級の半導体工場が建設されている。スマートフォン、車載用ロジック半導体(22/28nmと12/16nmプロセス)を、12インチウエハ換算で月産5.5万枚を生産する計画で、初回出荷は2024年12月を予定する。このプロジェクトには、ソニー・セミコンダクタ・ソリューションズ(SSS)とデンソーが参入しており、投資額は1兆1,000億円(うち日本政府は4000億円を補助)に上る。
工場の建設は鹿島建設が受注し、他にも関連企業約80社(素材、化学製品、ガス供給など)の施設が建設されている。従業員用の賃貸住宅700〜800世帯などが続々と新設されており、周辺はにわかに不動産バブルの状況となっている。また工事車両の往来により道路渋滞が発生しており、工場完成後も通勤による渋滞が予想されるため、複数の道路整備が計画されている。
熊本県の雇用は、TSMCの1,700人〜3,000人を含み関連会社計7,500人が見込まれており、熊本大学では、2022年に半導体分野で新しいセンターを設置するなど人材育成に力が入れられている。こうした一連の経済効果は10年間で4兆2,900億円と推計される。
   (2)半導体委託製造会社ラピダス
トヨタ自動車、NTT、ソニーグループ、ソフトバンク、NEC、デンソー、キオクシア、三菱UFJ銀行の8社が計73億円を出資して、半導体委託製造会社ラピダス(Rapidus、本社東京)を北海道千歳市に新設する。ラピダスはラテン語で「速い」を意味する。経済産業省は、補助金2600億円を支給して支援して、米国IBMと手を組み2nmの次世代半導体の国産化を目指す。
研究開発を含めて5兆円規模の投資が見込まれており、千歳市周辺に関連産業の集積も進む可能性が高い。さらに経産省は「技術研究組合最先端半導体技術センター(Leading-edge Semiconductor Technology Center、略称LSTC)」を設立し、産業技術総合研究所や理化学研究所、東大などが共同参画。海外研究機関・企業との共同研究プロジェクトを組成し、ラピダスが目指す次世代半導体の量産化技術に応用させていく予定だ。
半導体産業を復興させるためには
TSMCの誘致とラピダスの新設は、日本が半導体産業の復興を目指すための「はじめの一歩」でしかない。東京エレクトロンなど世界的な半導体製造装置メーカーが揃っている日本だが、外国のファウンドリーに左右される現状では、その地位が不安定化する恐れがある。まずは国内に大規模なファウンドリーを設置して半導体製造装置産業や大学、産総研などとのエコシステムを構築する。加えて、国際的な民主主義国の連帯による半導体サプライチェーンを作って、世界的に需要と供給のバランスを図る必要がある。また将来のIoT社会を視野に入れれば、ラピダスが開発しようとしている線幅2ナノレベルの最高水準の半導体は完全自動運転の実現などに必須である。さらにメモリーやセンサー、パワー半導体など、ロジック半導体以外の多様な半導体の生産力を確保する。そして、今でも国際的に大きな影響力を持つ半導体製造装置や素材関連の日本企業の強みを伸ばすため、研究開発や設備投資を一層強化するべきだ。最後に忘れてならないのは人材育成だ。JEITA(電子情報技術産業協会)は「半導体業界の未来のためには若手人材の採用が急務だ」とし、キオクシア、マイクロン メモリー ジャパン、三菱電機、ヌヴォトン テクノロジージャパン、ルネサス エレクトロニクス、ソニー、東芝、ロームの主要8社で、10年間で4万人の半導体人材が必要だと説明している。
   図2 素材・製造装置産業等と連携した先端半導体製造プロセス
日本の1製造装置・素材産業の強み、2地政学的な立地優位性、3デジタル投資促進をテコに、戦略的不可欠性を獲得する観点から、日本に強みのある製造装置・素材のチョークポイント技術を磨くために、海外の先端ファウンドリーとの共同開発を推進する。さらに、先端ロジック半導体の量産化に向けたファウンドリーの国内立地を図る。具体的には、先ず先端半導体製造プロセスの1前工程(微細化ビヨンド2nm)、2後工程(実装3Dパッケージ)で、我が国の素材・製造装置産業、産総研等と連携した技術開発を順次開始。さらに、こうした開発拠点をベースに、将来の本格的な量産工場立地を目指す。
一方、安全保障に目を向ければ、米中新冷戦の行きつく先にあるとされる「台湾有事」の問題がある。台湾は中国が自国の領土と主張しており、2027年までに軍事的に併合する可能性が高いと指摘されている。台湾が世界的な半導体供給地であることから、台湾有事は世界の半導体供給に壊滅的打撃を与えるおそれがある。日本が台湾のTSMCを誘致して半導体生産を維持することは日本の半導体需要に応えるだけではなく、台湾のリスクを分散して世界の半導体の安定供給に貢献することにもなるのだ。 
 11/15

 

●さえない内需、GDP下押し補えず デフレ脱却「宣言には距離」 11/15
日本経済を支える内需がさえない。2023年7―9月期実質国内総生産(GDP)は外需の下押し要因も重なり、成長率が3・四半期ぶりのマイナスに転じた。「デフレ完全脱却」を掲げて経済の立て直しを急ぐ岸田政権が、デフレ脱却を宣言できる環境とするには依然として距離がありそうだ。
けん引役不在の日本経済
7―9月期のGDPは物価変動の影響を除く実質で前期比0.5%減、年率換算で2.1%のマイナス成長となった。外需がけん引した4―6月期の高成長から一転して外需がマイナス寄与となり、内需も振るわなかった。
内需はコロナ禍からの回復の足取りが鈍い。内閣府によると、GDP全体では21年10―12月期にコロナ前のピーク(19年10―12月期)を上回ったが、個人消費は14年1―3月期(約310兆円)になお届いていない。
内需を両輪で支える企業の設備投資も、これまで最大だった19年7―9月期(約93兆円)に達しておらず、「景気が緩やかに回復しているという判断そのものに変化はないものの、けん引役不在の状況は否めない」と、政府関係者の1人は語る。
総務省が7日発表した9月の家計調査によると、2人以上の世帯の実質消費支出は前年比2.8%減となり、マイナスが7カ月続いた。家計では物価高の影響から足踏みが目立つ。
不透明感漂う原油動向
先行き10―12月期の実質GDPは「自動車の挽回生産やインバウンド(訪日外国人)需要の回復に支えられ、プラス成長に復帰する」(日本総研の後藤俊平研究員)との見方が多い。
もっとも欧米で金融引き締めの影響が強まれば輸出が伸び悩み、引き続き外需がマイナス寄与となる懸念は拭えない。暗雲漂う中国経済にも期待できず、内需でどこまで支えきれるかが焦点となる。
原油価格の不安定な動きもリスク要因となる。イスラエル・ハマスの衝突で軒並み原油先物価格が急騰したが、足元では一転して安い。オイルマネーの縮減が「アラブの春」と呼ばれる民主化運動に発展した過去もあり、泥沼化すれば、原油価格は再び騰勢を強める展開も予想される。
今のところはプラスを予想しているとはいえ、「原油価格が直近ピーク(1バレル=130ドル)まで上昇した場合、個人消費を年率で0.2%ポイント下押ししかねない」(前出の後藤氏)との懸念が残る。
来年半ば以降の判断か
GDPの公表に先立ち、政府は、所得税減税を含む17兆円台前半の経済対策を打った。経済押し上げ効果を実質GDP換算で19兆円程度と想定し、デフレからの完全脱却をうたう。別の政府関係者は「デフレ脱却の千載一遇のチャンス」と強調し、脱却宣言にこぎ着ければ政治的成果としてレガシーになる、としている。
とはいえ、デフレ脱却の4条件のうち、23年4―6月期に3年9カ月ぶりのプラスに転じたGDPギャップは今回、再びマイナスになることが予想され、先行きもゼロ近傍で推移する見通しだ。デフレに逆戻りする危うい状態からは脱しきれていない。
市場には「実質賃金のマイナスが続く現状では、好循環実現をアピールしにくく、来春のデフレ脱却宣言は難しいと政府が判断する可能性がある」(みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介・主席エコノミスト)との見方がある。
早くても24年6月の所得税減税で可処分所得が引き上げられ、実質賃金のプラスが視野に入る「来年半ば以降の判断となる可能性が相応に高い」と、前出の酒井氏は言う。 
●岸田首相 三宅防衛政務官のセクハラ報道受け「より適切に説明を」と指示 11/15
岸田首相は15日、三宅伸吾防衛政務官が、10年前に事務所スタッフにセクハラを行っていたと報じられたことについて記者団から問われ、「本人から防衛大臣に対して報告が行われたと承知している。防衛省・自衛隊においては現在、木原防衛大臣のもとであらゆるハラスメントを根絶すべく組織を挙げて取り組んでいるところだ。こうした状況を受けて、防衛大臣を補佐する立場にある大臣政務官に対する報道については、より適切に説明が行われるべきである旨を私の方から指示を出しているところだ」と述べた。
三宅防衛政務官は文春オンラインで、2013年に当時、自らの事務所スタッフだった女性に対し、カラオケ店の個室で体をまさぐったり、服を脱がそうとしたり、無理矢理キスをするなどセクハラ行為を行ったと報じられた。
これを受けて三宅政務官は15日、報道内容について「全く身に覚えがない」と否定した上で、16日にも文春に抗議文を送る意向を示した。ただ詳細を尋ねる記者団に対して「改めて機会を見て説明させていただく」と述べるにとどめ、詳しい説明は避けた。
●親中リベラルではダメ!高市早苗氏が決起、現職閣僚の異例の勉強会発足 11/15
政界有数の保守政治家である高市早苗経済安全保障相が15日、自民党内に勉強会を発足させる。現職閣僚としては異例の動きで、来年秋の総裁選に向けて党内の支持基盤を固める意向とみられる。内閣支持率の急落に直面する岸田文雄政権だが、リベラル・親中色の強まりを嫌気する「岩盤保守層」の離反が加速したとの観測もある。「女性初の宰相」としても期待される高市氏の動向が注目を集めそうだ。
勉強会の名称は「『日本のチカラ』研究会」で、高市氏自身が会長に就く見通しだ。15日に初会合を開き、初回は日本大学危機管理学部教授の小谷賢氏から「インテリジェンス」のレクチャーを受ける。小谷氏は、防衛省防衛研究所主任研究官、英国王立統合軍防衛安保問題研究所客員研究員などを歴任したスペシャリストだ。
同会は今後、月に数回のペースで会合を開く予定というが、狙いはどこにあるのか。
ベテラン議員は「岸田政権で、自民党は『保守層』の支持を失った。保守派が一致結束しなければならない危機だ」と語る。
最近の世論調査では、自民党支持層の内閣支持率が急落している。中でも、LGBT法の拙速な法制化や、中国が、沖縄県・尖閣諸島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内に無断で設置した「海洋ブイ」について、毅然(きぜん)とした対応を取れない外交姿勢などが、岩盤保守層の反発を招いているとされる。
中堅議員は「自民党を支えてきた岩盤保守層の支持を取り戻すには、保守派の政治家が主導権≠取り、党をリードする姿をみせるしかない。『ポスト岸田』が親中リベラルでは、二度と保守層の支持は戻ってこない」という。高市氏は旗頭というわけだ。
その先には、次期総裁選もある。
2021年の総裁選で、安倍晋三元首相は高市氏を推した。岸田首相に敗れたが、高市氏自身は、総理・総裁に強い意欲を示し続けている。
今後、「ポスト岸田」の動きが加速するのか。
政治評論家の有馬晴海氏は「岸田首相の『次』は具体化しておらず、『運動』としての広がりはない。目的をつくって塊を形成するのは重要で、早く手を挙げた高市氏に支持が集まる可能性がある。一方で、高市氏は無派閥で直系の『親分』『子分』がいない。どれだけ支持が広がるかは不透明だ」と語った。
●年内解散断念に追い込まれた要因 岸田首相に「瞬時の決断力」欠如 1/15
岸田文雄首相(自民党総裁)が、年内の衆院解散・総選挙を見送る方針を固めたという報道が先週、続いた。首相自身は、解散するもしないも言わないのが永田町の常識であり、岸田首相も明言はしていない。だが、自民党内も「年内解散断念」という空気に包まれている。
直近の報道各社の世論調査では、内閣支持率が「過去最低」という結果が相次いでいた。この情勢を受け、党内には「解散させたくない」という有力者の存在もあり、岸田首相は追い込まれて、現在の状況に至った感が強い。
ここまでジリ貧となった要因は、岸田首相が重要局面で「瞬時の決断」を下せなかったことにあるのではないか。
その典型例は、6月の「解散騒動」だ。5月19〜21日に広島県で開かれたG7(先進7カ国)首脳会議の直後、衆院解散がささやかれた時期があった。岸田首相自身が6月13日、「諸般の情勢を総合して判断する」と笑みを浮かべて解散風をあおるような発言をしたものの、わずか2日後に「今国会での解散は考えておりません」と述べ、自ら火消しを行った。
首相にとって「伝家の宝刀」である解散権。「刀の鞘に手をかけた以上抜ききらないと、その後は思うようにいかなくなる。いわんや、解散権を弄んだ場合をや」。理屈では説明のつかぬ「魔の法則」のようなものがあると永田町では語り継がれている。
6月に解散を決めきれなかったことがつまずきとなり、岸田政権はその後、坂を転げ落ちるように支持率が低迷していく。
支持率回復を期したであろう、人事や政策も功を奏しなかった。
岸田首相は9月に内閣改造を行ったが、山田太郎参院議員が女性問題で文科政務官、柿沢未途衆院議員が公職選挙法違反事件に絡んで法務副大臣を辞任した。神田憲次財務副大臣が代表取締役を務める会社が保有する土地・建物について、固定資産税の滞納で差し押さえを受けていたことも明らかになり、13日に辞任が決まった。自民党の5派閥に対する政治資金規正法違反容疑での告発も懸念材料だ。
一方、政策では「税収増などを国民に適切に還元する」として打ち出した経済対策も、批判を浴びている。岸田首相が描く全体像が一向に見えず、対応が場当たり的に変化したように見えたことが不評の要因と思われるが、その過程でも、首相の決断力の欠如が垣間見えた。
最高権力者は、毎分というレベルで「瞬時の決断」を求められる。安倍晋三元首相は、政策の全体像や解散戦略を事前に練りに練っていたため、一度決めたら揺るがず、突き抜けた。岸田首相は、しっかりとした政策パッケージを示しておらず、全体像を描いていないことが、今回の経済対策策定における決断の揺れにつながっているのではないか。
自民党内では、年内解散断念を受けた有力者の動きが活発化している。
10日には、岸田首相が麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長と東京都内のホテルの中華料理店で会食し、その前日には、菅義偉前首相が二階俊博元幹事長、森山裕総務会長らと都内の日本料理店で会食を行った。
注目は、岸田首相が反転攻勢に出られるのか、逆に「ポスト岸田」に向けた動きが強まるのかという点だ。激しさを増すであろう自民党内の駆け引きから、目が離せない状況となってきた。
 11/16

 

●菅義偉前首相、岸田政権に苦言「説明が足りない」 11/16
菅義偉前首相(74)が15日、ABEMA「Abema Prime(アベプラ)」(月〜金曜後9・00)に生出演し、岸田文雄首相の政権運営について苦言を呈する場面があった。
番組の進行役を務めるテレビ朝日の平石直之アナウンサーから「岸田さんが今苦労されているところもあって、おっしゃりにくいかもしれませんが、どんなふうに見てらっしゃいますか?」と聞かれると、「おっしゃりにくいですが」とスタジオの笑いを誘った菅前首相。
総理時代にやり残したことを聞かれると少子化対策を挙げ、「準備はしたが途中で退陣したので」。そして岸田首相が掲げる“異次元の少子化対策”について「そこに集中してやることが必要。軸を作ったら方向性がきちっと進んでいくまでしっかりやっていく必要がある」と語った。
そして経済政策について「今回の所得税の減税のように国民の皆さんになかなか届かないというのは、やはりきちっと説明していく必要があると思う。説明が足りない」と岸田政権に苦言も。
自身は官房長官として安倍政権を支えたが岸田首相にはそのような側近がいないのでは?と聞かれると「そんなことはないですよ。しっかりした人たちが付いていると思います」とした。
また、自身の首相再登板の可能性について問われると「私はもうやることはない」と改めて否定。「官房長官7年8カ月、総理1年でしたけど、その期間は緊張の連続だった。もう1度というのはなかなか難しい」と話した。
●消費低迷で景気腰折れ懸念 7〜9月期GDP、3期ぶりマイナス成長の急変 11/16
景気回復に急ブレーキだ。内閣府が発表した2023年7〜9月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、物価変動を除く実質で前期比0・5%減、年率換算は2・1%減とマイナス成長だった。食品価格の上昇などで家計の節約志向は強く、GDPの5割超を占める個人消費が減少した。岸田文雄首相は所得税・住民税の減税と来年の賃上げを強調するが、国民の生活と日本の景気を守ることができるのか。
年率換算の成長率は1〜3月期と4〜6月期はそれぞれ3・7%増、4・5%増と高水準だっただけに、景気の急変ぶりが際立っている。
7〜9月期の実質GDPの内訳を見ると、個人消費は前期比0・04%減だった。GDPへの寄与度は「内需」がマイナス0・4ポイント。GDPが減少した理由のほとんどを、個人消費、設備投資、住宅投資、公共投資など「内需」の不振で説明できる。
政府は年内にも住民税の非課税世帯に7万円の給付を始める。来年6月には4万円の所得税減税を行う予定だ。
岸田首相は15日、来年の春闘で今年を上回る賃上げを経済界に要請した。大企業は賃上げに積極的だが、中小企業にも波及するのか。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は「中小、零細企業の経営者の立場からすると、いったん賃金を上げると、その後、簡単に下げることはできないので、賃上げに慎重になるのは当然だ。緊急経済対策では可処分所得の低い人ほど恩恵を受ける消費税を下げるべきだ。岸田政権は『減税』という言葉でごまかしたかったのだろうが、庶民は『結局は増税になる』と見抜いている」と指摘した。
●内閣支持21.3%、最低更新 自民も下落19%―時事世論調査 11/16
時事通信が10〜13日に実施した11月の世論調査によると、岸田内閣の支持率は前月比5.0ポイント減の21.3%だった。岸田政権で過去最低だった前月をさらに下回り、2012年12月の自民党政権復帰後に実施した調査でも最低となった。不支持率は同7.0ポイント増の53.3%で岸田政権として最も高くなった。
内閣支持率が政権維持の「危険水域」とされる2割台となるのは4カ月連続。自民党の政党支持率は19.1%で、政権復帰以来最低だった前月からさらに1.9ポイント減らした。総合経済対策に盛り込まれた定額減税への厳しい評価や、自民所属の政務三役の相次ぐ辞任が影響した可能性がある。
岸田文雄首相が打ち出した所得税・住民税の計4万円減税に対しては「評価しない」が51.0%と半数を超え、「評価する」は23.5%。住民税が課税されない低所得世帯への7万円給付は「評価しない」44.4%で、「評価する」は33.4%だった。
10月26日に山田太郎氏が文部科学政務官を、同31日に柿沢未途氏が法務副大臣を辞任した。首相の任命責任について「重い」と答えた人は57.5%に上り、「重くない」は14.7%にとどまった。調査最終日の今月13日には神田憲次氏も財務副大臣を辞任した。
内閣を支持する理由(複数回答)は、多い順に「他に適当な人がいない」9.8%、「首相を信頼する」3.8%、「印象が良い」3.5%など。支持しない理由(同)は、「期待が持てない」(31.8%)、「政策がだめ」(27.3%)、「首相を信頼できない」(20.0%)の順だった。
政党支持率は自民に続き、日本維新の会4.6%(前月比0.7ポイント増)、公明党4.1%(同1.0ポイント増)、立憲民主党2.7%(同0.4ポイント減)の順。以下、れいわ新選組1.6%、共産党1.1%、国民民主党0.9%、社民党と参政党がいずれも0.5%、みんなでつくる党(旧政治家女子48党)0.1%。「支持政党なし」は62.5%だった。
消費減税「賛成」6割 「反対」は2割
時事通信が10〜13日に実施した11月の世論調査で消費税減税の賛否を尋ねたところ、「賛成」が57.7%、「反対」が22.3%だった。「どちらとも言えない・分からない」は20.0%。
支持政党別では、自民党支持層で賛成48.2%、反対33.9%。賛成は立憲民主党支持層で71.0%、日本維新の会支持層で58.5%。反対はいずれも22.6%だった。ほぼ全ての政党で賛成が反対を上回った。
万博開催「不要」55.9% 「必要」は2割
時事通信が10〜13日に実施した11月の世論調査で、会場建設費が膨らんでいる2025年大阪・関西万博の開催の必要性を尋ねたところ、「必要ない」が55.9%だった。「必要だ」は20.3%、「どちらとも言えない・分からない」は23.8%。
支持政党別にみると、自民党支持層では「必要だ」23.9%、「必要ない」49.5%。関西地域を支持基盤とする日本維新の会支持層では「必要だ」34.0%、「必要ない」47.2%だった。立憲民主党や公明党支持層では「必要だ」は2割に満たず、「必要」が「不要」を上回った政党はなかった。
万博の会場建設費は当初1250億円とされていたが、物価高騰などを背景に2回にわたり増額され、約1.9倍の最大2350億円になっている。
●岸田内閣醜聞ラッシュが止まらない!三宅伸吾防衛政務官に性加害疑惑 11/16
文科政務官、法務副大臣、財務副大臣と辞任ドミノが続く岸田内閣の政務三役にまた醜聞だ。こんどは防衛政務官のセクハラ疑惑が報じられた。
16日発売の「週刊文春」で、三宅伸吾防衛政務官の議員会館事務所で働いていた女性スタッフ(A子さん)がセクハラ被害を告発している。
「女の子はみんな人魚に…」
被害を受けたのは、三宅氏が参院議員に初当選した2013年のこと。事務所の人間関係に悩んでいたA子さんが相談メールを送ると、食事に誘われ、西麻布のフランス料理店を指定された。食事後、三宅氏はA子さんを連れて看板のないカラオケ店に移動。大きな水槽が置かれた個室に入るなり、「ここに来ると、女の子はみんな人魚になるんだよ」と囁き、A子さんにキスをせがんだという。
「そのまま体をまさぐられ、服を脱がされかけました」とA子さんは証言。三宅氏と顔を合わせるのが怖くなり、事務所を退職したというのだ。
事実ならセクハラどころか卑劣な性加害というべき事案で、いったい何人の女性を人魚にしてきたのかという疑念を抱かざるを得ないが、三宅事務所は文春の取材に対して「(セクハラは)事実ではない」と否定。15日報道陣のぶら下がり取材に応じた三宅氏も「全く身に覚えがない」と話した。代理人を通じて文春に抗議文を送るという。
元日経新聞記者の三宅氏は、13年に参院香川選挙区から初出馬して当選。現在2期目で、派閥には所属していない。公式HPを見ると、プロフィルに「趣味 カラオケ」とある。
「官邸は、とりあえず三宅本人に説明させるスタンスで、様子見の構えですね。仮にセクハラが事実だったとしても、10年前の話で現在進行形ではないから逃げ切れると判断したのだろう。だが、第2、第3の被害者やセクハラの証拠音声が出てきたらアウトだ。4人目の辞任ドミノになれば、政権へのダメージは計り知れないよ」(自民党の閣僚経験者)
5人目、6人目も時間の問題
11日に航空自衛隊の観閲式で訓示を行った岸田首相は、「あらゆるハラスメントを一切許容しない組織環境を作り上げ、ハラスメントを根絶」と綱紀粛正を求めたばかり。自衛隊でセクハラなどの不祥事が相次ぐ中、防衛政務官に性加害疑惑ではシャレにならない。身に覚えがないならなおさら、三宅氏は説明責任を尽くす必要があるだろう。
「続報の可能性を考えると、三宅さんも下手なことは言えない。厳しい立場だと思います。もっとも、永田町では早くも三宅さんの“次”の政務三役が話題になっている。某省の副大臣が何かやらかして雑誌メディアに追いかけられているとか、パワハラ疑惑じゃないかという噂も流れています。9月の内閣改造で、官邸サイドは副大臣・政務官人事は派閥の推薦をそのまま受け入れ、ロクに“身体検査”も行われなかった。スキャンダルが続出するのは当然という気もします。5人目、6人目が出てくるのは時間の問題でしょう」(官邸関係者)
岸田首相が各派閥に配慮したのは、来年の自民党総裁選で支えてもらうためだ。再選戦略を重視した人事に足をすくわれ、支持率下落が止まらない。政務三役の醜聞ラッシュは、自分の再選しか頭にない岸田首相の自業自得だ。
●3年目の岸田内閣、世論調査から見えた「若者がどんどん離れていく」理由 11/16
岸田内閣が発足から3年目に入った。参院選で大勝した2022年7月までは5〜6割台に上っていた高い支持率も、23年10月に実施した読売新聞社の最新の全国世論調査では、政権発足以降で最低の34%まで下落した。支持率低迷の背景を探ると、政策に希望を持てない若年層の存在が浮かび上がる。参院選で自民党が大勝し、支持率が高まった政権の絶頂期に若者離れはすでに始まっていた。
最新の調査は10月13〜15日に電話方式で実施した。内閣支持率が3割台になるのは7月以降、4か月連続になる。岸田内閣の2年間の実績を評価する人は「大いに」の4%と「多少は」の40%を合わせて44%。評価しない人は「あまり」の36%と「全く」の17%を合わせて53%と半数を超えた。岸田首相は9月から10月にかけて、内閣改造や経済対策の方針表明、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令請求などを相次いで打ち出したが、支持率回復にはつながっていない。
22年7月の参院選以降、浮き沈みが顕著に
この2年間の支持率は、安倍元首相銃撃事件と参院選があった22年7月を境に、安定期と不安定期に大別される。
2021年10月の内閣発足後、22年7月までの安定期には、多少の増減はあるものの5〜6割の高い支持率を維持した。就任直後の衆院選は圧勝。新型コロナウイルス対応では、安倍、菅両内閣とは異なり、目立った失策もなかった。22年2月のロシアによるウクライナ侵略でも、政府対応への評価は高く、支持率は安定した。
政権発足から半年たった22年4月の内閣支持率は59%。読売新聞社が定例の世論調査を開始した1978年3月より後に発足した大平内閣以降の歴代内閣で比較すると、半年間にわたって5割以上を維持し続けたのは、岸田内閣以外では細川内閣、小泉内閣、第2次安倍内閣の3内閣だけだ。当時の読売新聞は「岸田内閣の安定感は異例と言える」(22年4月4日付朝刊)と報じた。
安倍氏国葬・マイナカードなどマイナス要因に
G7サミットの成果は内閣支持率を押し上げたが……。左からショルツ独首相、バイデン米大統領、岸田首相、ウクライナのゼレンスキー大統領、マクロン仏大統領(5月21日、広島市南区で)
この年の7月8日、安倍元首相が参院選の街頭演説中に銃撃されて死亡し、2日後の参院選で自民党は大勝する。直後の調査では、内閣支持率は発足以降2番目に高い65%となったが、その後は安定感が失われ、浮き沈みを繰り返す。
安倍氏の銃撃で発覚した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への対応や、開催で賛否が分かれた安倍氏の国葬をきっかけに、支持率に陰りが見え始めた。閣僚などの不祥事、物価高もマイナス要因となり、22年11月には36%にまで低下したが、年明け以降は回復基調に転じた。
23年5月に広島市で開催された先進7か国首脳会議(G7サミット)を前に、日韓首脳会談や首相のウクライナ電撃訪問といった外交成果がプラス材料となり、支持率はゆるやかに上昇。サミット開催の5月には政権発足時と同レベルの56%に達し、衆院解散も取りざたされた。しかし、直後にマイナンバーカードをめぐるトラブルや首相の長男を巡る問題が発覚すると、再び下落に転じ、10月には過去最低を更新するに至った。
第2次以降の安倍内閣で支持率が最も低かったのは、森友学園や加計学園を巡る問題で大きな批判を浴びて東京都議選で自民党が大敗した17年7月の36%。退陣表明直前の20年8月でも37%を保っていた。現在の岸田内閣の支持率はそれを下回る状況が続いており、政権は2度目の危機の最中にある。
若年層、絶頂期にすでに離反傾向
支持が失われた背景を、(1)発足当初の2021年10月、(2)絶頂期の22年7月、(3)過去最低を更新した23年10月の三つの調査データから考えてみよう。
まずは発足時。内閣支持率(全体56%)を年代別にみると、18〜39歳の若年層で62%、40〜59歳の中年層で54%、60歳以上の高齢層で53%となり、若年層の支持が最も高かった。
しかし、絶頂期の22年7月調査(全体65%)にはすでに、年代別の支持に変化が見られる。中年層が9ポイント増の63%、高齢層に至っては21ポイント増の74%へと支持率が高まったのとは裏腹に、62%だった若者の支持率は8ポイント減の54%に低下した。中高齢層の支持が全体の支持率を押し上げる一方、年代別の支持の構造は「若高老低」から「若低老高」に切り替わっていたことが分かる。
過去最低となった23年10月調査(全体34%)でも、この「若低老高」の傾向は変わっていない。若年層が26%、中年層が29%、高齢層が43%と、全体的に目減りしながらも、引き続き高齢層が内閣支持率を下支えする構造となっている。
早稲田大学の遠藤晶久教授(投票行動論)は、「伝統的な自民党政権は、高齢層の支持が強いのが特徴だった。若年層の支持率が高かった時期の岸田内閣は、第2次以降の安倍内閣とその後継の菅内閣と同様の支持構造だったが、現在は安倍内閣以前の支持構造に回帰している」と指摘。その要因については、「安倍政権は『改革的』というイメージが若者の中にあったが、岸田政権にはそのようなイメージがもたれておらず、『自民は支持しないけど安倍さんは支持』といったパターンが減ったのではないか」と分析している。
少子化対策・物価高対策…軒並み低い評価
支持が上向かない要因として考えられるのが、内政面を中心とした政策への低い評価だ。
内閣改造直後の今年9月調査では、「岸田内閣に優先して取り組んでほしい課題」(複数回答)で、「景気や雇用」87%、「物価高対策」86%などが上位を占めていた。
しかし、10月調査で岸田内閣の「取り組みを評価するもの」を複数回答で聞いたところ、「少子化対策」が30%、「景気や雇用」が24%、「物価高対策」は17%と内政面で首相が力を入れる政策の評価はいずれも低かった(トップは「福島第一原発の処理水と風評被害対策」の51%)。
政府が検討している経済対策に「期待できる」とした人はわずか21%。「期待できる」は若年層では19%と1割台だ。自民党支持層で38%、内閣支持層ですら43%と半数を下回った。内閣を支持しない人に、その理由を聞くと、「政策に期待できない」(全体で42%)は若年層では61%に達した。中年層の45%、高齢層の23%と比べて極端に高く、失望の強さがうかがえる。
増税への拒否感、若年層でも顕著
SNSではこの秋「増税メガネ」というフレーズが流行した。政府が防衛費増額の財源で増税を打ち出したことや、政府税制調査会の中間答申を巡り、通勤手当への課税など「サラリーマン増税」が報道で取りざたされたことに端を発したものだった。増税への拒否感は、若年層の支持離れの要因の一つになっている可能性がある。
読売新聞社が今年7〜8月に早稲田大学と共同で実施した郵送方式の世論調査では、防衛力強化のための財源として、増税することの賛否を「賛成」「どちらかといえば賛成」「どちらかといえば反対」「反対」の4段階で聞いている。
賛否と内閣支持率の関係をみると、増税にもっとも強い拒否反応を示した「反対」の人の内閣支持率が21%だったのに対し、不支持率は71%に達した。全体は支持が37%、不支持が54%だった。若年層に限って見ると、支持は10%で不支持は81%。増税への拒否感が内閣支持に与えた影響は他の年代より強かった。少子化対策の負担増に関する設問でも同じ傾向だった。
政府は11月2日に決定した経済対策で、来年6月に約9000万人を対象に1人あたり4万円の定額減税を行うことを盛り込んだ。記者会見で岸田首相は「来年夏の段階で賃上げと所得税減税を合わせ、国民所得の伸びが物価上昇を上回る状態を作りたい。あらゆる政策を総動員し、国民の可処分所得を拡大する」と述べ、増税イメージの打ち消しを図ったが、世論の評価は冷ややかなままだ。
高齢層の支持も盤石にあらず
衆院の解散総選挙はいつ?(2021年に行われた衆院選の開票作業、東京都新宿区で)
低迷する岸田政権の支持率を下支えしている高齢層の支持は必ずしも盤石ではない。この2年間の推移をみると、ウクライナ問題への対応が注目を集めた22年春、サミット前の23年春には他の年代より支持の上昇幅が高くなる傾向がある一方で、22年秋の旧統一教会問題やマイナンバー問題などに揺れた時期の下落局面では他の年代よりも落ち込みが激しかった。高齢層では政治ニュースが支持動向に敏感に反映される傾向が見て取れる。今後、深刻な不祥事などが発覚した場合、内閣の足元が一層危うくなる可能性もある。
衆院議員の任期は10月末で2年の折り返し地点を越えた。年内解散は見送られたが、解散総選挙の時期が取りざたされている。内閣支持率が低迷する中、基盤となる自民党の政党支持率も低下傾向にある。首相の自民党総裁としての任期は来年9月末まで。不人気な状況が続く中、自身の再選に向けた戦略をどう描くのか。まずは経済対策で着実な成果を上げることがカギとなりそうだ。
●「ポスト岸田」政局が加速、高市早苗氏の勉強会初会合 真の「保守政治」 11/16
政界有数の保守政治家である高市早苗経済安全保障相が自民党内に発足させた勉強会「『日本のチカラ』研究会」が15日、国会内で初会合を開いた。岸田文雄政権の内閣支持率が急落し、自民党を支えた「岩盤保守層」の離反が指摘されるなか、党内外の保守派や保守層を糾合できるのか。高市氏は来年秋の総裁選出馬へ意欲的で党内基盤を固める狙いがあるとみられ、今回の動きが「ポスト岸田」の動きを加速させる可能性がある。
「メッチャ勉強した。良い会になりましたよ」
初会合を終えた高市氏は、報道陣に笑顔でこう答えた。
非公開で外部の有識者を招き、サイバーセキュリティー対策などのレクチャーを受けた。出席者によると、高市氏は「さっそくお話を聞こう」と短くあいさつし、熱心に耳を傾けていたという。
真の「保守政治」復権へ
会合には、いずれも安倍派の山田宏参院議員や杉田水脈衆院議員、有村治子参院議員(麻生派)らを含め、派閥横断的に13人が参加した。今後は議員連盟とし、毎月、定期的に会合を開く方針だ。
高市氏ら出席者は「あくまで勉強会」と強調したが、額面通り受け止める向きは少ない。総裁選に向け「仲間づくりを急ぐ必要がある」(中堅議員)とみられているのだ。
関係者によると、入会者は数十人で、総裁選立候補に必要な推薦人数の20人を超えるという。この日の出席者に岸田首相率いる宏池会の議員はおらず「会合にはピリピリした雰囲気もあった」という。
リベラル・親中色の強い岸田政権だけに、保守の代表格で、「女性初の宰相」とも期待される高市氏には警戒感がある。総裁選まで1年を切るなか、現職閣僚としては異例の勉強会発足に「政局」を見て取っているのだ。
高市氏自身も、次期総裁選について「戦わせていただく」と言明している。2021年の前回は、無派閥ながら安倍晋三元首相が後ろ盾となり、国会議員票で善戦した。
勉強会や議員連盟は政局を動かすテコになる。菅義偉政権末期には、安倍氏らが「半導体戦略推進議員連盟」を設立し、政権の重圧となった。
一方で今月、小泉進次郎元環境相が、タクシー不足に対応する「ライドシェア」の超党派勉強会を発足させた。岸田政権に距離を置く菅氏がぶち上げた政策テーマだ。その菅氏は、進次郎氏を評価しており、勉強会は「総裁選へののろし」との観測もある。
高市氏の動きは政局につながり、支持は広がるのか。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「『ポスト岸田』につながる政局が動き始めた。支持率低迷で地方選挙は苦戦が続き『岸田首相では厳しい』との声が上がっている。次期総裁の条件は第一に『選挙で勝てる顔』だ。そして、自民党支持の3割を担う『岩盤保守を呼び戻す』こともカギになる。安倍氏の急逝で、保守はさまよった。岸田政権は迷走し、保守層が業を煮やした。百田尚樹氏の日本保守党設立は、そうした動きの一つだ。自民党の中で保守を代表するのは高市氏に他ならない。高市氏が出馬すれば自民党を離れた保守層が戻ってくる。ただ、高市氏の前途は簡単ではない。国民的知名度では高市氏を上回る候補≠烽「る。誰が主導権を握るか、混戦と仕掛け合いが続く」と語った。
●高市早苗氏の勉強会初会合はお寒かった…参加者13人 11/16
岸田内閣の一員でありながら、「ポスト岸田」に意欲をみなぎらせている高市経済安保担当相が自民党内に自身が主宰する勉強会を立ち上げた。来秋の党総裁選の足がかりとし、党内基盤を固める狙いだ。
ところが、15日の初会合は閑古鳥。本人を含め、衆参13議員しか参加しなかった。推薦人20人には及ばない。寂しい船出は行き先を暗示しているようだ。
取材NGのセコイ狙い
高市勉強会の名称は「『日本のチカラ』研究会」。月に1〜2回ペースで開催し、国力強化に向けた具体的な施策を議論すると力強いが、衆院議員会館で開かれた初会合はクローズド。
取材はNGだった。
「撮影を許可すれば、顔ぶれや人数がすぐに拡散してしまう。こぢんまりしていれば総裁選なんて無理なんだよという評価が固まるし、メンツが割れれば各派閥の締め付けも厳しくなる。それじゃ都合が悪いということなんでしょう。高市さんは初出馬した前回2021年総裁選で、岸田首相に次ぐ国会議員票を集めたと大きな顔をしていますが、首相を圧勝させたくない安倍元首相が当て馬として担いだに過ぎないんだから」(自民中堅議員)
なぜこの時期に初会合なのか
総裁選をめぐり、高市大臣が報道番組で「また戦わせていただきます」と宣戦布告してから1カ月あまり。松下政経塾の先輩の山田宏参院議員が仲間づくり勉強会の事務局長を務め、札幌法務局などに人権侵犯認定されてもヘイト発言を繰り返している杉田水脈衆院議員や、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)とベッタリの有村治子参院議員が参加。
いずれも、高市大臣同様に岩盤保守層を意識しているウヨ系面々だ。前回、推薦人に名を連ねていた参加者は山田氏のほか、小野田紀美元防衛政務官ら計4人のみ。全体の半数近くが中座していたが、終了後の高市大臣は「面白かった〜っ」と充実感をふりまきながら去って行った。
それにしても、なぜこの時期に初会合なのか。内閣支持率は政権発足後最低水準に落ち込み、防衛政務官のセクハラ疑惑で辞任ドミノはまだ続きかねない勢い。水に落ちた犬を打つのは信義にもとるともっぱらだ。
「総裁選から逆算し、政権の求心力が低下し始めたところに仕掛けようとはしていたものの、ここまでガタつくタイミングに重なるとは本人も周辺も想定外だったようです」(自民関係者)
ポスト岸田をさらに遠ざけた。
●自民 派閥会合 “政策実現に向けて結束すべき” 11/16
政務三役の辞任が相次ぐ中、自民党の派閥の会合では今年度の補正予算案の成立など、政策実現に向けて結束していくべきだといった意見が出されました。
麻生派の麻生副総裁は「3人の辞任は甚だ遺憾だが、こうした時は懸念や不安を口にせず、一人一人が襟を正して真摯(しんし)に精励するのが一番大事だ。補正予算案の審議など責任政党として大事な場面であり、気を引き締めてほしい」と述べました。
森山派の森山総務会長は「内閣と党の支持率が少し下降気味だが、一喜一憂せず協力すべきだ。補正予算案の成立をできるだけ急ぐのが今は一番大事であり、政策実現のための努力に徹したい」と述べました。
岸田派の林・前外務大臣は「後半戦の国会は『波高し』という状況だ。一致団結して岸田総理大臣を支え、総裁派閥としてまとまって行動したい」と述べました。
一方、安倍派の塩谷・元文部科学大臣は記者団に対し「不祥事が相次ぎ誠に残念だ。閣僚人事のあと副大臣と政務官の人事はバタバタと決まるが、適材適所にするためにもう少し時間をかけたほうがよい」と述べました。  
●自民党が直面「淘汰の季節」10年以上続いた春が過ぎ去り…国民の「評価」 11/16
国会議員は、「選良」とも呼ばれる。「選ばれた優れた人」という意味だ。だが、実際の選挙では、必ずしも「能力的にも人格的にも優れた人」が選び出されるとは限らない。大臣や副大臣、政務官など、役職の任命もそうだ。
第二次岸田文雄再改造内閣で辞任ドミノが起きている。
文科政務官だった山田太郎氏は、若い女性との不適切な関係を週刊誌に報じられて辞任した。法務副大臣だった柿沢未途氏も、木村弥生江東区長(15日付の辞職を表明)陣営が選挙期間中、有料広告をネット配信した公職選挙法違反事件に絡み、辞任した。
さらに、神田憲次財務副大臣にも不祥事だ。税金未納により、4度にわたって自社ビルを差し押さえられたことを週刊誌に暴露され、本人もその事実を認め、辞任した。
神田氏は、9日の参院財政金融委員会で「議員の職務が多忙になる中で、(納税を督促する)郵便物を見るのが遅れた」と弁明したが、釈明としては厳しいものがある。
秘書へのパワハラも指摘されている。神田氏の国会事務所、さらに地元事務所からも秘書が身を引き、「神田事務所には秘書がゼロ」の状態になった時期もあったという。
来客対応も印象的だった。議員会館の神田事務所には、「ノート」が置いてあり、来客は事務所に来た「日時」と「用件」を書き込むよう求められた。これだけ情報管理に厳格なのに、重要な納税の期限は見逃したということか。
国会で野党から厳しく追及された神田氏は「職責を全うしたい」と財務副大臣の辞任を否定した。さらに、内閣改造で「適材適所」と胸を張った岸田首相は、進退の結論を先送りし、さらに国民の怒りを買ってしまった。
税理士資格を持ちながら4度も税を滞納する人物に、財務副大臣は適任だったのか。政治家としての責任をどう考えるのか。ジリ貧の内閣支持率であえぐ岸田内閣の足を、さらに引っ張る形となった。
2012年に民主党から政権を奪還して以来、自民党は10年以上、一強体制を維持し、「わが世の春」を謳歌(おうか)してきた。
だが、世論調査が示す数字は、「春」が過ぎ去ったことを示している。いよいよ「淘汰(とうた)の冬」が始まった様相だ。その厳寒の中で生き残れるのは「本物の選良」のみに違いない。
神田氏も12年の衆院選で初当選した。早晩、「国民の信」は問われる。神田氏に限らず、「春」の恩恵を享受した自民党議員たちは、どのような成果≠残したのか、厳しく問われることになる。
●鳩山由紀夫氏、岸田首相を猛批判「この内閣はどこまで落ちるのか」 11/16
鳩山由紀夫元首相が16日、X(旧ツイッター)を更新。不祥事が相次ぐ岸田政権について「任命責任も当然」と指摘した。
内閣改造から約2カ月で政務官と副大臣の計3人辞める「辞任ドミノ」となり、自民党参院議員の三宅伸吾防衛政務官も、10年前に事務所スタッフだった女性にセクハラ行為を行ったとする内容の記事が「文春オンライン」に報じられた。
鳩山氏は「この内閣はどこまで落ちるのか」と言及。「他人に教育指導する文部科学政務官が不倫疑惑で辞め、法の番人の法務副大臣が公職選挙法違反の疑いで辞め、財政を預かる財務副大臣が税金滞納で辞め、今度は元々セクハラで揺れていた防衛省の政務官がセクハラ疑惑に晒され逃げられまい。こうなれば任命責任も当然だ」と指摘した。
岸田文雄首相は、政務三役の人事について「適材適所」を繰り返してきたが、10月26日に山田太郎文部科学政務官が女性問題で辞任。同31日には東京都江東区長側の公選法違反事件に絡んで柿沢未途法務副大臣が辞めた。今月13日には、過去の税金滞納を認めた神田憲次財務副大臣を事実上更迭した。内閣支持率は政権発足以来初めて3割をきり過去最低の”危険水域”となっている。
●岸田内閣の支持率、時事通信報道で21.3%まで下落 11/16
時事通信社は16日、11月の世論調査(11―13日)の結果を速報し、岸田内閣の支持率は前月比5ポイント下落し2012年の自民党政権復帰後最低となる21.3%、不支持率は7ポイント増の53.3%になったと報じた。自民党の政党支持率も19%台に落ち込んだ。
大手メディアでは唯一の個別面接方式での調査結果に、ジャーナリスト出身の保坂展人世田谷区長は自身のX(旧ツイッター)で「『青木率』(内閣支持率と政党支持率の合計が50を割ると政権運営が厳しくなるとされる青木幹雄元官房長官の経験則)も大きく割っている。まるで日が短くなるように支持率が落ちている」と感想を語った。
ネット上では「まだ、こんなにあるの? 衝撃的」「内閣支持率が過去最低だろうが選挙は自民党が勝ちます。何故なら政治無関心不参加層という実質支持層が日本の大半を占めてるからです」など、さまざまな感想が寄せられた。
 11/17

 

●高市氏「勉強会の狙いは国力の深掘り」入会者は45人 “党内基盤作り”か 11/17
高市経済安全保障担当相は17日、自身が主催する勉強会の狙いについて、「国家安全保障戦略の中の、国力の各要素を深掘りする」と説明した。
高市氏が主催する「『日本のチカラ』研究会」は、15日に初会合を行い、呼びかけ人の山田宏副幹事長のほか、有村元行革相、杉田水脈議員ら13人の自民党の国会議員が参加した。
高市氏は17日の記者会見で、この勉強会の狙いについて「岸田内閣が閣議決定した国家安全保障戦略の中の、国力の各要素を深掘りする」と説明した上で、「勉強の成果の内容によって、各所管大臣に申し入れをすることも可能だ」と強調した。
また、勉強会の入会者が、現時点で45人いることを明らかにした上で、「自民党の政調会の中での議論に役立ててもうらうことを想定している」と述べた。
この勉強会をめぐっては、来年秋の総裁選挙を見据えた動きとみられていて、派閥に属さない高市氏にとって、党内基盤作りにしたい狙いとみらているが、現職の閣僚の勉強会立ち上げは、異例の動きで、岸田内閣の支持率が低迷している中、党内に波紋を呼んでいる。
●安倍晋三元首相亡き後の日本政治は混乱に陥っている 11/17
岸田首相は「サザエさん」を見ているか
「サザエさん症候群」という言葉があるらしい。「サザエさん」(日曜pm6:30放送)の時間の頃になると、翌日の月曜に会社や学校に行くのがイヤで、憂鬱になることなのだそうだが、岸田文雄首相も最近は「サザエさん」を見ながら暗い気持ちになっているかもしれない。
なぜなら月曜には大体どこかのメディアが新しい世論調査の結果を発表するのだが、ここのところ毎週のように内閣支持率が「発足以来の最低記録」を更新し続けているからだ。
そして今週もFNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞の調査で8ポイントダウンの28%、NHKが7ポイントダウンの29%で、いずれも「発足以来の最低記録」、かつ「政権維持の危険水域」である30%を割り込んだ。
何をやっても裏目に出て、支持率が上がる気がしない。なぜここまで人気がないのか。
日本保守党への期待
一方で、作家の百田尚樹氏らが立ち上げた日本保守党の大阪での街宣の熱狂ぶりには驚いた。想定以上の人が集まったため危険であるとして、警察の要請で中止になったのだが、画面で見ているとすごい数の人が集まっているのに、ほとんどの人が静かに百田氏の演説を待っていた。
人々が「政治の変化」を熱望する一つの理由は岸田政権への不満だ。
日本保守党の結党宣言には「LGBT理解増進法にみられる祖国への無理解によって、日本の文化や国柄、ナショナル・アイデンティティが内側から壊されかかっています」とある。
このLGBT法の成立を境に岩盤保守層が自民支持から離れた、だから支持率が低迷している、とよく言われるのだが、実は離れただけではない。彼らは岸田政権の敵に回ってしまった。
今回の「減税騒動」では、当初多くの保守派論客が減税を求めたのだが、岸田首相が打ち出した所得減税には満足せずに批判を繰り返し、これがネット上で「増税メガネ」という悪口につながり、保守派でない人達にも広がった。保守派が火をつけた「減税騒動」は今や岸田政権を倒せという国民的なムーブメントにもなりかねない勢いになっている。
権力の空白による政治の混乱は拡大する
安倍晋三元首相が暗殺されて1年4カ月がたった。安倍氏が日本政治の中に持っていた強大な権力が突然なくなり、そこは空白のままだ。ぽっかりと穴があいたようになっている。そして権力に空白ができると必ず政治的混乱が訪れる。
安倍氏は生前、保守層の自民離れに危機感を持ち、一昨年の自民党総裁選では高市早苗氏を推して、党内の政策論争の軸を左寄りから真ん中から右に戻す役割を果たした。リベラルな河野太郎氏が脱原発や女系天皇論を封印したのは安倍氏ら党内保守派への配慮だったと言われている。
しかし安倍氏の死後、岸田政権の政策の軸は左に触れ、保守層は敵になってしまった。
ここまで書いたところで時事通信の世論調査の結果が入ってきた。内閣支持率が5ポイント減の21%というのも、20%を切りそうですごいが、それより驚いたのは自民党の支持率が19.1%に落ち込んでいるのに、野党第一党の立憲民主党も2.7%に下がっていることだ。そして支持政党なしが60%を超えている。空白は権力だけでなく政党支持にも及んでいる。
権力の空白を誰が取るのか、そして支持先を失った有権者がどこに向かうのか、今は見当もつかない。いずれにしてもしばらく政治の混乱は続くのだろう。
●麻生か、茂木か、萩生田か...岸田「年内解散なし」をリークした“真犯人” 11/17
これまで何度も永田町に吹きすさび、そのたび議員たちが右往左往させられてきた解散風。しかし今月9日、首相が年内の解散を見送ったとの新聞報道がなされました。いったい誰が、どのような狙いを持ってこの情報をリークしたのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、その出所を考察。さらに窮地に立たされた岸田首相の今後の行く末を推測しています。
官邸発の情報ではない。誰が衆院「年内解散なし」をリークしたのか
内閣支持率が危険水域に入り、自民党内ではポスト岸田をにらんだ動きがはじまったようだ。
11月9日早朝、朝日新聞、読売新聞の報じたニュースが、それを感じさせる。岸田首相が年内の衆院解散を見送るという内容。むろん、岸田首相がそのように表明したのではない。誰かがリークしたのだ。
その「誰か」だが、両社の記者とも同じ人物から聞いたと考えるのが自然だ。朝日は「政権幹部が明らかにした」と書いた。読売は「与党幹部」である。
これでわかるのは、官邸から出た情報ではないということだ。官房長官や官房副長官なら「政府高官」、岸田首相の秘書官なら「首相周辺」などとするだろう。
読売は、「与党幹部」が岸田首相から聞いた内容について、次のように書いている。
「首相は、複数の与党幹部に対し、経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案の早期成立や経済対策の実施に「集中したい」との考えを伝えた。」
与党といっても、公明党ではなく、自民党幹部ということだろう。首相が直接会ってそんな話をする相手といえば、ごく限られてくる。麻生副総裁、茂木幹事長、森山総務会長、萩生田政調会長…。彼らなら朝日のように「政権幹部」と言っておかしくない。そのうちの誰かが、自民党を担当する平河クラブの記者にリークしたと考えられる。
ここからは、筆者の“勘”になるが、ずばり言って茂木幹事長ではないだろうか。衆院解散のタイミングは彼の利害にかかわると思うからである。
岸田首相を支え続けると相変わらず茂木氏は言う。幹事長としての表向きはそうせざるを得ない。だが、年齢も岸田首相より上の68歳に達し、岸田政権がレームダック化したといわれる今が、総理をめざすラストチャンスかもしれないのだ。来年の総裁選への出馬を問われると決まって茂木氏の口から飛び出す「令和の明智光秀にはならない」という言葉じたいが、じつにキナ臭い。
ともあれ、自民党幹事長がオフレコで「年内の解散はない」という趣旨の話をしたとすれば、それを聞いた記者が記事にしない手はない。9日の朝日、読売の朝刊に掲載されるや、その日のうちに主要メディアがこぞって後追いしたことからも、情報源の“重量感”が伝わってくる。
実際には、予算案の成立や経済対策に集中したいとだけ岸田首相は語ったのだろう。それを聞いた自民党幹部が「年内解散はない」と解釈するのは当然のことといえる。しかし、岸田首相も、さっそくメディアに漏れるとは想像していなかったにちがいない。
記事を読んで、岸田首相はリークした人物を想像し、してやられたと歯がみしたのではないだろうか。年内の解散はないからゆっくりしてくださいとなったとたん、首相の求心力はゆるむ。解散する気はなくとも、反乱を抑え込む「解散権」は持っておきたい。伝家の宝刀を奪い取られたようなものである。
政権支持率の低下に色めき立つ「ポスト岸田」を狙う面々
記事の出た10月9日の午前9時40分、公邸から官邸に到着した岸田首相は、待ち受けていた内閣記者会のメンバーに取り囲まれ、衆院解散に関する質問にこう
答えた。
「まずは経済対策、先送りできない課題一つ一つに一意専心取り組む。それ以外のことは考えていない」
報道を肯定することもできないし、否定したらしたで、またぞろ首相自ら「解散風」を煽っているなどと批判されかねない。とどのつまり「経済対策に集中」と言うほかなく、それを「年内解散はない」という記事に仕立て上げられて、既成事実化する。
岸田首相は記者の取材に応じた後、自民党本部に向かい、午前11時から約50分間、麻生副総裁、茂木幹事長、森山総務会長、萩生田政調会長、小渕選対委員長が居並ぶ会議に出席した。
そのさい、岸田首相はこう話したという。「解散するなど、ひと言も言っていない」
つい、口からこぼれ出た愚痴だったのか、“犯人捜し”のため探りを入れる目的があったのか。これに対する一座の反応は伝えられていないが、さぞかし気まずい空気が漂っていたことだろう。
岸田首相は来年秋の総裁選で再選されることを念願としている。そのためには、内閣支持率が高くなったタイミングで衆院を解散し、総選挙で圧勝して「岸田降ろし」を封じるのが近道であり、事実、岸田首相はその好機をうかがってきた。
今年5月のG7広島サミットは政権浮上のきっかけとなるはずだったが、案に相違して、それから支持率は低下の一途をたどり、いまやメディア各社の調査で軒並み30%を割っている。
こうした状況に、「ポスト岸田」を狙う面々が色めき立つのは当然のことである。だが如何せん、強力な候補者が見あたらないのも事実だ。「次の首相」世論調査で人気の高い河野太郎デジタル相はマイナ問題で失速ぎみだし、石破茂氏は党内基盤が弱すぎる。萩生田政調会長は所属する安倍派がまとまらず、統一教会問題がらみの悪イメージも払しょくできていない。
茂木幹事長も頭脳明晰のわりに、国民的人気はさっぱりで、党内の人望もパッとしない。とはいえ、麻生副総裁の後ろ盾があり、党内基盤という点では他のライバルをしのぐ。今度こそ自分が、と思っているはずだ。8月の党役員人事で幹事長に留任、総裁選への出馬意欲をいったん封印したものの、岸田首相とともに泥船で沈むのは御免だろう。いずれかの時点で、岸田首相に反旗を翻し、総裁選に打って出るチャンスを狙うのではないか。
そんな茂木氏にとって最悪のシナリオは、悪材料が積み重なって追い込まれた岸田首相が、一か八かの勝負に出て解散・総選挙を決行するケースだ。
いくら支持率が低下したといっても、対する野党は相変わらず弱いままである。大きく議席を減らすにせよ、自公で過半数の233議席(現有294)を超える可能性は十分ある。そうなると、岸田首相は国民の信任を得たと強引な解釈で党の重鎮らを説得し、総裁選を切り抜けるかもしれないのだ。
自分が置かれた状況を誰よりもよくわかっているはずの首相
今回、「年内の解散」を封じ込まれて、岸田首相の自由度はかなり狭まった。もちろん、来年1月召集の通常国会冒頭での解散もありうるが、それだと3月末までに来年度予算を成立させるためには、窮屈な国会日程となってしまう。4月以降では、通常国会会期末の6月解散が視野に入るが、これを逃せば総裁選前の解散はきわめて難しい。
支持率の急回復も考えにくい。なにしろ政権のイメージはいまや最悪だ。所得減税をするという甘い政策さえ、国民にそっぽを向かれる始末だし、政務三役の辞任ドミノ症候群も再発した。
税理士でありながら固定資産税を滞納して4回も差し押さえを食らった神田憲次衆院議員を、こともあろうに徴税の大元締めである財務省の副大臣に起用したというのは、タチの悪いブラックジョークとしか思えない。官邸の“身体検査”に問題はあるのだろうが、つまるところ任命権者である岸田首相の目が節穴だということになる。
岸田首相は先の内閣改造・党役員人事で、各派閥から出てくる要望を最大限受け入れて、党内の足場を固めたつもりだった。これにより、解散を見送っても総裁選を乗り切れると踏んでいたのではないか。
しかし、このままズルズルいけば、「選挙の顔」として不適格の烙印を押され、岸田首相を引きずり降ろす動きが出てくるのは避けられそうもない。前の総理、菅義偉氏の場合も、総裁選間近のタイミングで衆院解散をもくろんだが、党内からの圧力で阻止され、急速に求心力を失って退陣した。
岸田首相は党人事の刷新を旗印に「菅降ろし」の先頭に立ち、政権を奪った当人である。それだけに、いま自分が置かれた状況を誰よりもよくわかっているはずだ。うすら笑いを浮かべ落ち着き払っているように見せているのは、内心の乱れを覆い隠すためなのかもしれない。
●中小企業は人手不足、大企業はリストラ…なぜサラリーマンは悲惨なのか? 11/17
日本は「人手不足」と「人余り」が同居
日本は、少子高齢化の人口減少が進み、「人手不足」ということが盛んに叫ばれています。しかし、それは「低賃金・ブルーワーカー」の労働者が不足していることとイコールにすぎません。
日本中が、いっせいに人手不足なのかといえば、まだまだそこには至っていないのです。
現に大企業では、40代・50代のホワイトカラー職があり余っており、すさまじいまでのリストラと称する「首切り」が続いているからです。
2021年に上場企業では、84社が希望退職者の募集を行いました。過去10年間の上場企業の退職者数の推移を見ても、毎年平均すると9,700人余が希望退職(早期退職)しています。ほぼ毎年1万人近くが、定年退職を待つことなく、途中で上場企業から退職しているのです。
それもそのはずで、帝国データバンクによる2023年3月時点の企業動向調査によれば、有効求人倍率そのものが、事務系職業においては0.51しかありません。
人手不足が深刻なのは、サービス業(生活支援・介護含む)の2.98、保安6.58、輸送・機械運転2.15、建設・採掘5.16といった業種であり、これらの有効求人倍率の高さをみると一目瞭然なのです。
要するに、人手不足といわれる職業は、ブルーワーカー職で、夜勤があったりする現場仕事が多いわけです。
こうした現場作業での最低賃金の全国平均もようやく時給が1,000円台に乗り、巷では経済学の教科書通りの賃金アップも始まっています。
賃金が上がらない国にしてきたのが自公政権
しかし、外国人技能実習生などの受け入れをやめていれば、もっと時給も上がるはずなのです。
自公政権は、さらに新制度で外国人労働者の受け入れをスタートさせる予定で、岸田政権は一方で「賃上げ」と言いながら、やっていることは日本人労働者の賃金水準を下げる方向にすぎず、アベコベなのです。
消費税率アップで購買力を低下させ、円安に導いても国内空洞化で、輸出数量の増大に結び付かず、デフレ脱却もできなかった安倍政権のアベノミクスと同様の「アベコベノミクス」という逆効果の弊害を招いただけだったのと同じ構図です。
自民党政権は、毎年20数億円程度の政治献金を恵んでくれる大企業には、「派遣」という名の非正規雇用導入で賃下げに貢献し、消費税率アップによって輸出大企業への消費税還付金を毎年6兆円にも増やしてあげています。
たったの20数億円の大企業からの献金で2,500倍の6兆円ものリターンをプレゼントされているのが輸出大企業なのです。経団連が消費税をもっと上げろ――というゆえんです。
おまけに税率をアップしてきた消費税収入の7割強が、過去の法人税率の引き下げと所得税率の累進緩和で消えています。
そのうえ、大企業は30.62%の法人税実効税率に対して、数々の特例減税措置の恩恵を受け、実質20%前後の法人税実効税率にしかすぎません。
黒字の中小企業がまともな法人税の実効税率を払っているのに、大企業は税金を大幅に負けてもらってきているのです。
こんな不公平この上ない政治を行ってきたのが、自公政権でした。
そのくせ、岸田自民党政権は国民向けには「所得倍増(後から資産・所得倍増と修正)」だの、「異次元の少子化対策」だのと大風呂敷を拡げ、「大軍拡」に舵を切りながら「賃上げ」だの、「減税」だの、「マイナンバーカードの健康保険証紐づけ」などと、何をやりたいのか、さっぱりわからない、ほとほと呆れるばかりの無責任な政権運営で支持率を下げまくっているわけです。
「賃下げ」と「賃上げ」のアベコベの迷走政策が続く、日本の未来図は、ますます閉塞感に覆われるばかりなのです。
したがって、こんな日本で勤め人(サラリーマン)を続けていても、政府や大企業に搾取されるばかりでしょう。貴重な自分の人生を豊かにするためにも、大いなる発想の転換が必要な時代ともいえるのです。
搾取されるばかりのサラリーマンの身分では一生「金持ち」にはなれない
さて、世の中には「お金持ち」と呼ばれる純資産が1億円以上にのぼる人たちが、数%の割合で存在します。
こうした「お金持ち」になるには、どんな方法が考えられるのでしょうか。一般的には、次のような方法があるといわれます。
・金持ちの親から莫大な「遺産」を受け継ぐ
・金持ちの子息や令嬢と結婚して、裕福な一族に加わる
・医師や弁護士などのエリート資格で稼ぎ富裕層に連なる
・外資系金融エリートなどの高額報酬の仕事に就き蓄財する
・会社員の本業以外に効率のよい副業で稼ぎ蓄財する
・株式や不動産への投資で成功し、富裕層に連なる
・起業に成功して富裕層に連なる
・スポーツや芸能、エンタメ作品制作など特殊技能で儲ける
・画期的発明での特許収入で儲ける
ざっと以上でしょうか。いずれのパターンも、搾取される立場でない人であることが窺えます。
しかし、金持ちや富裕層になるための方法を、こうして並べて見ただけでも、どれも簡単そうではないのです。よほどのチャンスと僥倖に恵まれないと、こういうケースに連なることは難しいのです。
富裕層というのは、年収(フロー)で見るのではなく、金融商品や不動産などの純資産(借金を除いた資産)を、少なくとも1億円以上保有しているのが、基準値になっています。
最低のステータスでも、純資産1億円なのです。
こうした純資産を蓄えるには、フローの収入がほとんど生活費で消えてしまうような搾取されるばかりのサラリーマン人生では、到底不可能なのです。
いったん、潤沢な純資産を築けば、その純資産が、毎年インカムゲイン(純資産が生み出す収益)をもたらしてくれ、純資産が増え続けていくイメージ……となるのが富裕層です。
一時的に、たまたま年収が1,000万、2,000万円あるといったフローで見ただけでは、到底お金持ちとはいえないのです。せめて、1億円以上の永続的な資産を借金無しで保有していなければなりません。
ここまでで、最もはっきりしているのは、生涯サラリーマンの身分のままでは、一生かかっても、こうした富裕層の仲間入りはできそうにない――ということなのです。
サラリーマンの生涯収入は少なすぎる
なぜなら、大卒男性サラリーマンの生涯収入の平均値は、概ね2億5,000万円前後です。
しかし、そこから税金や社会保障費などを支払うと、7割程度の手取りになるので、定年退職までの現役の期間で、1億6,000〜1億7,000万円が実質収入となるのです。
これで生活費や住宅ローン、教育費などを40年間賄ったとすると、余剰で投資や貯蓄に回せる金額はとてつもなく小さくなるでしょう。
生涯(40年間)の手取り収入が1億6,000〜1億7,000万円というのでは、1年あたりでは、せいぜい400万円程度の収入にしかならないわけですから、それも当然なのです。
ようやく住宅ローンの返済が終わって、老後に老朽化したマイホームなどがあれば、それが老後の純資産のすべてといってもよいくらいなのです。これでは貧困老後は必定でしょう。
あるいは、夫婦揃って人口規模の大きな自治体の公務員になり、世帯年収1,000万円以上のパワーカップルであれば、定年後には金融資産などが膨らんで、多少裕福な老後になれるかもしれませんが、こういうケースもまた、そうそう多くはないでしょう。
つまり、サラリーマンは「生かさず殺さず」という残酷な人生といえないこともないのです。これでは、人生100年時代といわれても、65歳以降の老後の人生設計が心配になるのも無理はないのです。
労働者は「労働力」をお金に代えるだけという哀しい現実
フランスの新進気鋭の経済学者トマ・ピケティが2013年に著した世界的ベストセラー「21世紀の資本」で喝破した通り、資本主義社会は「r>g」の不等式が支配しているからです。
すなわち「r」が資本収益率(純資産の成長率)であり、「g」の国民所得の成長率(GDP)よりも、つねに「大きい」からなのです。
「r=g」となるなら、資本の収益率も国民所得の成長率も同じですから、国民所得に占める労働所得の分配率も一定になって、問題はありません。
しかし、現実は「r>g」なので、格差も大きくなり、不平等が広がるのです。貧富の差は拡大し、資本家はますます資本を増やし、労働者はカツカツの生活と人生を強いられます。
自らの労働力を売るだけのサラリーマンでは、現役時代を終えて老後になると、収入がなくなるわけなので、当然と言えば当然の結末なのです。
ゆえにサラリーマンのままでは、一生裕福にはなれず、資本を転がす資本家の人のほうが裕福になりやすい――というわけです。
「いい学校を出て」「いい会社に入る」と「幸せで安定的な人生が手に入る」というセオリーが、いかに幻想かがわかるでしょう。
小規模事業の「大廃業時代」ゆえに面白い人生の選択肢が登場
ところで、前述した、いくつかの「お金持ちになれるコース」では、いずれもが難しいコースになりますが、実はこれらの方法以外にも、近年お金持ちになれる道が、新しく生まれてきているのです。
それが「小規模な黒字事業の事業継承」です。
なぜなら、今や日本中の「中小零細事業が大廃業時代」を迎えようとしているからなのです。もうお気づきでしょうが、「M&A」というのが近年ものすごく活発に行われるようになっているのです。
「M&A」とは「買収・合併」のことですが、かつては大きな企業同士のモノと考えられていましたが、近年は大きく様相を異にしています。なんと、今までは企業同士のM&Aを指したのが、近年はサラリーマンという個人の立場でもM&Aに乗り出す人が増えているからなのです。
その理由は、意外に少ない金額で事業そのものを買えることが注目されているからです。当然ですが、300万〜500万円といった、極めて少ない金額で事業そのものが買えるのは、事業規模が小さいからに他なりません。
一生サラリーマンのままでは老後資金に不安があるのと、ましてや40代〜50代になると、役職定年や給料減額が視野に入ってきます。こうしたことを考えると、定年までにひと稼ぎして老後資金を確保したい思いと、自分の実力を発揮できる経営者の立場に憧れる人も少なくないわけです。
そうした人たちが、「個人M&A」に乗り出して、事業経営者になる人が増えている――といった現状があるのです。
M&Aの仲介企業も急成長
それに伴いM&Aの仲介企業も繁盛しています。
この方法は、ゼロからスタートする「独立開業」といった起業とは明らかに異なります。黒字事業をそのまま継承できる――というのが魅力であり、これが個人によるM&Aへと背中を押す理由になっているのです。
資本を投じて、ゼロから事業を起こすのとは異なり、黒字事業の継承なので、リスクが限定的なのが、最大の強みといってよいでしょう。
ゼロからお客さんを作って稼いでいくのと、最初からお客さんのいる事業をそのまま継承できる――のでは、雲泥の違いがあるからです。
現在は、国や地方自治体までもが、中小企業の事業継承支援に乗り出しています。その理由は、今が零細・中小企業の大廃業時代になっているからなのです。
日本の雇用労働者の99.7%が中小企業に勤めているのですから、日本社会における雇用の維持は重要です。
ただし、過去20年で100万件以上の事業者が減ってきたのは、従業員数が20名未満の零細・小規模企業が中心なのです。これらは法人でない個人経営が半数あまりも占めています。
零細な小規模事業者が減少しているのは、経営者の健康不安や高齢化によるもの。経営者も、黒字の事業ならば、何とか継続させたいものの、従業員も高齢化していると、従業員の中から手を上げて事業を継承してくれる人もいないわけです。
そのため、自分の事業をM&A斡旋会社に託すケースが増えてきたのです。また、M&Aマッチングサイトも増え、サラリーマン個人でもM&Aがしやすくなっているのが現状です。
多種多様な事業が売り出されている
M&Aの仲介サイトを覗いてみると、小規模ビジネスの多種多様な事業が売り出されています。
物販店、飲食店、アクセサリー工房、不動産店舗、通販サイト、塾、医院、工場…など実にさまざまな業種があります。
数百万円から数億円する事業など、まさに百花繚乱なのです。
M&A成立までの流れとは?
では、ここでM&A成立までの流れを見ておきましょう。
まずは、どんな業種が自分の適性に合っているかで事業を絞り込みます。次いで、選んだ事業の詳細を調べます。そして相手方との売買交渉です。秘密保持契約を結んでから、事業内容について細かくチェックします。
事業譲渡の方向性が見えてきたら、まずは基本合意契約を交わし、デューデリジェンス(リスクチェック)を法務面、労務面、借入金の有無や買掛金、売掛金など詳細にチェックしていきます。
そして、問題なければ譲渡契約成立となります。法人なら、譲渡成立後にただちに法人登記などを書き換えます。
うまく事業継承する方法とは?
ところで、サラリーマンが、いきなり事業経営者になるわけですが、うまく経営ができるのでしょうか。
問題が多いのは、従業員との関係がうまく取れるかどうかといわれます。
小規模事業経営者の場合、経営者の個性が魅力となって、従業員を引っ張ってきた面が強く、サラリーマン上がりの人がいきなり新しい経営者になると、従業員は当惑することが少なくないからです。
現場の仕事を回してくれているのは従業員なので、コミュニケーションがうまく取れないと、従業員に去られてしまい、事業が空っぽになるということさえあるのです。
また、取引先との関係も、従前の経営者との関係が深いので、新しい関係性構築までは時間もかかります。
そうした意味でも、事業を成功させやすいのは、いきなり新経営者として事業を引き継ぐよりも、最初は「弟子入りする」つもりで半年なり1年間、今までの経営者の下で従業員として働かせてもらうことがよい――といわれています。
周囲の従業員や取引先との人間関係構築には時間をかけたほうがよいからです。
小規模事業者はどんどん減っていく日本社会
経済産業省の調査では、2025年までに70歳に到達する小規模事業経営者は30.6万人、75歳に到達する経営者は6.3万人です。
これらの経営者の事業継承がうまくいかないと、2025年までに660万人の雇用が奪われ、22兆円のGDPが消失するとさえ予測されているのです。
コロナ禍で売り上げが激減してしまった事業も多く、日本の小規模事業経営者が消えていくスピードは、さらに速まるかもしれません。
一生涯サラリーマンでは、金持ちになりにくいのが現実です。
実力のある人にはチャンス到来の時代なのかもしれません。
皆様も、自分の人生をより豊かなものにするべく、こうした個人M&Aについて、考えてみるのもよいのではないでしょうか。
若い人であるほど、チャンスは大きい――と言えるでしょう。また、年配の人でも、実人生の豊富な経験をチャンスに変えるという意味での「個人M&A」なら魅力的でしょう。
読者の皆様は、一度ぜひ、M&Aのマッチングサイトを覗いて見ることをおすすめします。そこには、夢の広がる事業が群れを成して存在しているからなのです。
●「影の財務次官」が書いた“増税クギ刺し” 財務省が岸田首相と与党を牽制 11/17
「過去2年分の税収増を国民に還元する」──。ドヤ顔で所得税の定率減税を打ち出した岸田文雄・首相が“身内”から冷や水を浴びせられた。
「『還元』といっても税収は全部使ったうえで国債を発行している。それは還元ではない」
減税策をまとめる責任者の宮沢洋一・自民党税調会長がそう言えば、鈴木俊一・財務相も国会答弁で、「過去の税収増は、政策的経費や国債の償還に既に充てられてきた。減税をするとなると、国債の発行をしなければならない」と言い放った。
宮沢氏は言わずと知れた首相の従兄弟で財務官僚OB、鈴木氏は首相の後見人である麻生太郎・前財務相(現・自民党副総裁)の義弟である。
財務省とパイプが太い岸田ファミリーと麻生ファミリーが声を揃えて首相に異論を唱え、しかも、そのタイミングで神田憲次・財務副大臣が税金滞納問題で辞任し、政権には大打撃となった。
「総理が減税を掲げた途端に、財務副大臣が税金滞納なんてせっかくの還元をぶち壊しにするようなものだ」(自民党議員)
政界では「ついに財務省が首相を見限った」「減税潰しに動き出した」という見方が強まっている。ジャーナリストの長谷川幸洋氏(元東京・中日新聞論説副主幹)の指摘だ。
「所得税減税については11月2日の経済対策の閣議決定に、〈税収増を納税者である国民に分かりやすく「税」の形で直接還元する〉と書かれている。書いたのは財務官僚です。それを財務大臣が国会答弁で否定した。大臣答弁を書いたのも財務官僚ですから、背後から弓を射かけたようなものです。岸田首相は人気取りのつもりで減税を掲げたのに国民の評判は最悪、財務省はこれまで首相を支えてきたが、もう政権の先行きは見えたと見切りをつけたわけです。
そもそも国税庁が数年前に把握していたはずの税金滞納が、“身体検査”を通過して財務副大臣に就任した直後に明るみに出たことにも何らかの思惑を感じます」
“見せかけ減税”オペレーション
そもそも首相に「減税」をそそのかしたのは財務省だ。今年7月の官邸人事で財務省は首相と同じ開成高校出身の一松旬氏(主計局主計官・総務課)を首相秘書官に就任させた。
「一松氏は東大法学部を経て1995年に入省。エリート揃いの財務省でも『10年に1人の逸材』とされ、将来の次官候補との呼び声が高い。主計官時代は岸田政権の看板政策である異次元の少子化対策や防衛費増額を手がけたから、次は官邸で防衛財源や少子化対策財源の増税スキームをつくるために首相秘書官に送り込まれた」(財務省OB)
いわば“増税請負人”としての起用だった。
ところが、官邸に来たものの、内閣支持率はみるみる低下し、岸田首相は「増税クソメガネ」と批判されて、とても増税を言い出せる状況ではなくなった。
支持率急落は財務省にとっても誤算だった。増税路線を敷くには、まずは支持率を上向かせなければならない。
「原点に戻ってこれからは経済、経済、経済でいこう」
首相が周辺にそう言いだしたのは、一松氏が秘書官になって1か月ほど経った今年8月、原発処理水の放出方針を決定するために福島を視察した時だったという。
そこから官邸では「支持率回復」のための“見せかけ減税”のオペレーションがスタートした。官邸官僚の1人が明かす。
「税収増の還元というのは財務省の新川浩嗣・主計局長のアイデアだ。財務省はいったん税収増分を1年限りの減税などで還元したうえで、コロナ対策で肥大化した財政を引き締めることを考えた。
減税で支持率が上向けば、その後、『財源は使い果たした』と増税に向けた環境も整う。還元の具体策の話は、最初は総理と側近の木原誠二・前官房副長官で進めていたが、9月の内閣改造で木原氏が官邸から去った後は、総理お気に入りの一松秘書官を中心に新川主計局長、青木孝徳・主税局長ら財務省ラインが定額減税をまとめた。実際には、今回の経済対策の原案も補正予算案の骨格も、一松氏がほとんど睡眠を取らずに1人で書き上げた」
いまや官邸で財政運営を仕切る一松氏は「影の財務次官」とも呼ばれる。
与党全体への見せしめ
とはいえ、財務省にとって「定額減税」は増税環境を整えるための国民への撒き餌にすぎない。だから税収増で財源が余っていると思われては困る。そこで岸田首相を操って軌道修正させていく。
本誌は一松氏が書き上げたとされる『令和5年度一般会計補正予算(第1号)フレーム』と題する文書を入手した。右肩に「計数精査中・厳秘」と印字され、内容は予算規模13.2兆円、財源は税収が1710億円で、大半は国債発行で賄われる。
一松氏は高校の先輩である岸田首相に「減税で支持率回復」を吹き込んでおきながら、補正予算の草案には財務省の至上命令である「減税の財源はない」と、矛盾する内容を埋め込んだのである。(財務省広報室は「財務省が作成・公表する個別の資料の作成に係る具体的な経緯等につきましては、今後の円滑な業務に影響を及ぼす恐れもあり、詳らかにすることは差し控えさせていただければと存じます」と回答)
一松氏に対する“学歴コンプレックス”もあったのだろうか、首相はそれに従うしかなかった(岸田首相は東大受験に2度失敗して早大に進学)。財務省OBが語る。
「宮沢さんや鈴木大臣が税収増はすでに使ったと強調した第一の狙いは、与党に対する牽制です。総理は定額減税を1年間に限定する方針だが、自民党や公明党からは2年以上続けるべきという声が強まっており、減税を何年も続けられたら、増税ができない。財務省は与党議員に『税収増はあんたたちがバラ撒いてしまっただろう』と牽制し、岸田首相にも与党の言い分に引きずられないように強くクギをさした」
タイミングが“絶妙”だった神田財務副大臣の税金滞納辞任も、財務省にとっては政権にダメージを与えただけでなく、“言うことに従わなければこうなるぞ”という与党議員全体への見せしめになったと捉えられる。
岸田政権が弱体化することは、財務官僚にとってはむしろ都合がいい。
総理が人気取りの減税をしたくても、選挙対策のバラ撒きも、予算と税制を握る財務省の協力がなければ実現できない。政権基盤が弱い総理のほうが、総理の座を維持するために財務省により深く依存するようになるから操りやすいのだ。
「岸田首相が見せかけ減税の後、財務省の言うとおりに増税するなら協力するが、従わなければいつでも切り捨てる。たとえ政権が潰れても、増税路線だけ敷いてもらえばいい。財務省はこれまでもそうやって総理を使い捨てにしてきた」(同前)
いまや岸田首相の生殺与奪の権は完全に財務省に握られている。
●岸田政権は失速するのか?  11/17
岸田内閣の支持率低下に歯止めが掛からない。経済対策の柱とした所得税減税は逆効果になった。岸田文雄首相にとって、来年9月の自民党総裁選までの解散が難しくなった可能性も強い。ただし、自民党内で「岸田降ろし」が盛り上がらない一因は、同首相に替わる有力なリーダーの候補が不在だからではないか。岸田首相は改憲などを前面に指導力の回復を目指すと見られる。
難しくなった総裁選前の解散
11月に入り、共同通信、NHKが実施した世論調査において、岸田内閣の支持率は30%を割り、政権発足以来の最低水準となった。経済対策の一環とした所得税減税は、むしろ厳しい批判に晒されている。「物価高から国民生活を守る」として給付金、所得税減税を決めながら、経済対策の正式名称は『デフレ完全脱却のための総合経済対策』だ。この分かり難さが、有権者の支持を得られない背景だろう。
加えて、内閣総理大臣や閣僚など公務員特別職の報酬引き上げ法案を敢えて臨時国会に提出したこと、9月13日の内閣改造で任命した山田太郎文部政務官、柿沢未途法務政務官、神田憲次財務副大臣を相次いで実質的に更迭せざるを得なくなったことが、政権を苦境に追い込んでいる。
自民党が結党された1955年11月以降、解散は21回あったが、そのうち12回は秋の臨時国会が開かれる9、10、11月に集中していた。12月〜翌年5月までの半年間、解散が4回に止まるのは、予算編成及び通常国会での予算、重要法案審議が続く時期だからだろう。
岸田首相は年内の解散を見送る意向を固めたと報じられている。過去の例から見れば、次の解散のチャンスは来年の通常国会会期末となる6月だ。そこで国民に信を問わなければ、自民党総裁選が行われる9月までに岸田首相主導で衆議院を解散するのは難しいと考えられる。
リスク要因は政治
共同通信の世論調査によれば、「次の自民党総裁に誰がふさわしいか」との設問に関し、石破茂元自民党幹事長との回答が20.2%、河野太郎デジタル担当相14.2%、小泉進次郎元環境相14.1%、高市早苗経済安全保障担当相10.0%の順だった。これら上位4名に茂木敏充自民党幹事長を加えた5名が、現時点で岸田首相のライバル候補と言えるかもしれない。
一方、岸田首相を支える自民党主流派は、安倍、麻生、茂木、岸田の4派閥に谷垣グループであり、数的には国会議員269名、自民党所属国会議員の70.8%に達する。総裁選では、一般党員票を集めて1回目の投票で2位以内に残っても、国会議員と47都道府県連のみで争われる決選投票は、派閥の力が結果を大きく左右するだろう。安倍派や麻生派の支持を得られなければ、総裁選で勝つことは難しい。
河野氏は麻生派の所属だが、同派の支持をすんなり得られる状況ではないようだ。また、石破、小泉、高市3氏の場合は無派閥であり、推薦人の国会議員20名確保に苦労する可能性が強い。
そうしたなか、岸田後継に最も近い位置にいるのは茂木幹事長ではないか。2025年7月に参議院選挙があり、同年10月には衆議院の任期満了だ。来年9月までに解散がなければ、自民党総裁選は同党にとり「選挙の顔」を選ぶイベントになる。内閣の支持率が低迷、岸田首相が自ら総裁選への出馬を見送る場合、主流派が一致して推せる候補として同幹事長が浮上する可能性がある。
もっとも、現在の派閥のバランスから考えると、岸田首相の続投が消えたわけではないだろう。同首相は、党内を固めるため、今後、改憲など自民党の積年の課題に取り組む姿勢を見せることも考えられる。一方、世論を二分するような経済構造の改革策に踏み込むことは難しいだろう。
●デフレ「完全脱却」、政府の強い決意示す言葉=井林内閣府副大臣 11/17
内閣府の井林辰憲副大臣は17日、「デフレ脱却」と、岸田政権が掲げる「デフレ完全脱却」の違いについて、完全脱却との言葉を用いることで「デフレからの脱却だけでなく、30年ぶりに新たな経済ステージへの移行を実現するという政府の強い決意を示している」と説明した。
衆議院財務金融委員会で道下大樹委員(立憲)の質問に答えた。
井林副大臣は、デフレ脱却の定義について「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないこと」とあらためて言及した。現状では賃金の上昇が物価高に追いついておらず、消費は力強さを欠く状況だとし、「これを放置すれば再びデフレに戻りかねず、現時点ではデフレから脱却したとは言えない」と指摘した。
その上で、総合経済対策を進めることで日本経済を一段高い成長経路に乗せ、「賃金と物価の好循環のもと、消費と投資が力強く拡大する熱量あふれる新たなステージへの移行を実現したい」と語った。 
●政権交代はあり得ないのだから、岸田首相は居座るべきだ… 11/17
岸田内閣の支持率が下落を続けている。八幡和郎さんは「早くも『岸田おろし』を望む声があるが、日本の首相はあまりに早く交代しすぎだ。主要国の大統領や首相の平均在任期間は5〜10年であり、岸田首相もそれくらいの長期政権を前提に、骨太な政策を進めるべきだ」という——。
日本の首相はコロコロ交代しすぎている
岸田首相の在任期間が、10月で2年に達したのを機に、「もう交替したら」という声が高まっている。だが、日本の首相の任期は、世界各国の大統領や首相、国内の知事や社長たちと比べて異常に短い。
日本は戦後78年間で35人の首相が誕生した。とりわけ、1993年〜2012年は20年足らずの間に延べ14人と、目まぐるしく首相が交代した。2012年以降は、第2〜4次安倍内閣が約8年間続いたものの、菅義偉首相は約1年で岸田首相にバトンタッチした。
かつて、「首相が短命」といえばイタリアが有名だったが、最近では日本の代名詞となりつつある。このことは特に、外交の世界で日本の信頼性を著しく傷つけている。
本記事では、主要国の制度や首脳と比較し、どうして日本では短いのか原因を探ってみたいと思う。
「並み以上」のアメリカ大統領は2期8年
主要国のリーダーの選ばれ方と任期を見ると、大統領直接選挙を実施しているのが、アメリカ(各州で選挙人を選ぶという変則的な形)、フランス、ロシア、韓国だ。
アメリカは4年任期で、戦後に憲法を改正して連続3選を禁止にした。戦後、選挙で選ばれた大統領のなかでは、アイゼンハワー、レーガン、クリントン、ブッシュ(子)、オバマの5人が2期目を最後まで務めている。再選に失敗したのが、カーター、ブッシュ(父)、トランプの3人だ。
ニクソンは再選されたが、ウォーターゲート事件で失脚し、ケネディは最初の任期の後半に殺害された。副大統領から昇格したなかでは、トルーマン、ジョンソンは再選に成功し、フォードは失敗した。
普通に選ばれて2期目に挑戦した場合だけみれば、6勝3敗なので、並み以上なら2期8年が標準ということになる。
フランスは、ド・ゴールが2期目から直接選挙で選ばれるようになった。当初は任期7年、再選制限なしだったが、現在では任期5年、3選禁止である。第五共和制になってからの8人の大統領のうち、ド・ゴール、ミッテラン、シラク、マクロンが再選、ジスカール・デスタン、サルコジが再選に失敗し、オランドは立候補しなかった(ポンピドゥーは1期目任期途中で死去)。アメリカほどでないが、再選されて計10年務めることが基本だ。
プーチン大統領は「最長6期」に布石
ロシアも3選禁止で、当初4年だった任期が6年に延長された。エリツィンが再選されたものの任期途中で辞任し、大統領代行から2期務めたのがプーチンだ。他の人を挟めば再び大統領になることができるため、2008年にメドベージェフに譲って自らは首相に就任し、4年後の2012年に復帰した。
本来ならば、プーチンは2024年に任期満了を迎えるはずだったが、2020年の法改正で、任期上限を「通算2期」とする一方、大統領経験者の任期数をゼロとみなすことが決まった。この結果、来年の選挙にも立候補することができ、再選されればさらに2期、83歳となる2036年まで大統領にとどまることが可能になった。
韓国は、任期は5年で再選できない。1988年に第六共和国となり、盧泰愚が大統領となってから現在の尹錫悦に至るまで8人の大統領が当選している。そのうち、朴槿恵は4年足らずで職務停止になったが、ほかは任期を満了している(盧武鉉は途中、2カ月ほど職務停止)。
イギリスの「名首相」は10年務めている
国会の多数派が首相を出す議院内閣制は、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、インドがその代表だ(形式的には投票でなく国王や大統領が任命するところも多い)。
英国では任期5年だが、途中で解散されることが多い。終戦直前の総選挙で労働党が勝利して以来、労働党2期、保守党3期、労働党2期、保守党1期、労働党2期、保守党4期、労働党3期、保守党が4期目となっている。
総選挙で敗北したときに首相が交代するほか、長期政権になると任期半ばあたりで交代して次の総選挙に備える。戦後の首相は延べ18人(ウィルソンが返り咲き)で平均在任期間は、4.3年だ。
最近ではトラスがわずか49日の在任期間で退任し、イギリス史上最短となったが、サッチャーとブレアが10年余り、マクミラン、ウィルソン、メージャー、キャメロンが5年以上だから、普通は4〜5年、評判が良ければ10年というあたりである。
ドイツの外交力強化は長い首相在任の成果
ドイツでは、下院の任期が4年で、総選挙で敗れるか、高齢で引退したり死去したりしない限り、首相が途中で辞任することはない。ただ、比例代表制であるので、任期途中で連立の組み替えがあることがある。
戦後の首相はわずか9人で、平均で10年足らず。アデナウアーが14年、コールが16年、メルケルも16年である。ブラントは5年足らずで死去し、それを引き継いだシュミットは8年も首相の座にあった。戦敗国として不利な立場にあったドイツが外交で上手に立ち回れているのは、この政権の安定性が大きいと思う。
イタリアは、比例代表制のために政権交代が多かった。一時は選挙制度を改正して二大勢力に収斂されたが、また、もとの木阿弥。それでもかつてよりは安定しているし、政党人抜きの実務者内閣なども登場して、かえって評判が良かったりする。
1946年の共和国発足以来、現在のメローニ首相は31人目であるから、平均2.5年である。ファンファーニが5回、アンドレオッティとベルルスコーニが3回、ほかに6人が2回就任しているから、政権自体はもっと短いスパンで交代していることになる。
カナダもインドも「平均寿命」は5年前後
戦後のカナダの首相は13人で、現在のジャスティン・トルドー首相の父親のピエール・トルドーが2度政権を担っているから、政権の平均寿命は5年半である。
インドは初代のネルーから数えて現在のモディが14人目だが、うち2人が2回務めているので、政権の平均寿命は5年足らずである。国民会議派と人民党系で政権交代が比較的円滑だ。
中国は一党独裁国家であり、毛沢東が20年余支配したあと、ケ小平がいわば闇将軍のような存在だったのでややこしい。ケ小平、江沢民、胡錦濤が10年ずつくらい支配し、習近平も同じかと思っていたが、規約を改正して「2期10年」制限を撤廃した。今年3月から3期目に入り、さらに権力に留まる見通しで、独裁化が心配だ。
これまでは、だいたい10年という長さがひとつのめどになっているのは、安定性と行き過ぎた長期政権の弊害除去とのバランスがほどよいところで、それが中国経済の大発展をもたらしたといえるのに心配だ。
一方、日本の首相は、戦後78年間で延べ37人に上る(吉田茂と安倍晋三は再登板)。政権の平均寿命は平均2.1年で、極端に短い。
これでは、外交上の信用もさることながら、国内でも大きな改革はできない。新しい政策を提案し、法律を成立させ、細則を決めて予算化し実行するには、3〜4年はかかるものだし、官僚にとってもすぐに交代する首相は怖くもなんともなく、官邸主導など無理である。
岸田首相は「早く辞めてほしい」「総裁任期まで」
毎日新聞が9月に行った世論調査で、在任期間2年を迎える岸田文雄首相について、いつまで首相を続けてほしいか尋ねたところ、「早く辞めてほしい」が51%、「来年9月の自民党総裁選任期まで」が25%、「できるだけ長く」は12%だった。
同様の問いで8月に行われたJNNの調査では、それぞれ、23%、57%、14%だったが、いずれにしても、来年の自民党総裁選挙の岸田再選を支持する人は、回答なしを除いて計算すると、15%以下にとどまる。
また、7月には親戚である宮沢喜一氏の在任期間を超えたとか、来年2月には鈴木善幸氏を超えて、戦後トップ10入りするという記事も出ている。これまでの総理のなかでとくに評判がいいわけではないので、そろそろ辞めろといわんばかりである。
だが、全国47都道府県のトップである知事はどうだろうか。1947年に公選で選ばれるようになってから71年が経過しているが、総計で約340人が務め、だいたい10年間、つまり、2期ないし3期が平均的な在任期間だ。
日本の首相が短命になってしまった理由
東証第一部上場企業の社長は、平均7.1年(会社四季報をベースにした東京経済大学の柳瀬典由ゼミの学生たちの計算)だそうだ。
こうした数字と比較して、どうして首相だけが、そんな頻繁に交替してしまうのか理解に苦しむ。
その理由のひとつは、中選挙区制の時代に派閥が異常に強くなり、その思惑によって短期で派閥の領袖(りょうしゅう)が総理となる慣習が残っているためである。
それから、与党と野党の関係も影響していると言えるだろう。55年体制で自民党・社会党の二大政党が成立し、その後も、だいたい自民党が与党で左派的な野党が第二党という状態が続いているのだが、与野党の最大の対立は憲法改正の是非である。
そのため与野党の攻防戦は、自民党とその連立勢力が国会で3分の2を制するかどうかが焦点となる。立憲民主党は口では「政権交代」と言うが、自民党以外の政党は改憲を阻止することを目標にしていて、政権を取ることはそもそも狙っていない。
「強い野党」の不在が、政権を傲慢にさせている
有権者も同じだ。過去記事でも指摘したように、野党の支持率は合計で15%ほどしかなく、国政選挙で30%以上の得票をしたとしても、投票の過半は、政権交代を希望してのものでない。
海外の事例を見ても分かるように、主要国の大統領や首相の平均の在任期間は5〜10年。日本のように、任期途中で与党内から辞任要求が高まるのは稀であり、長期政権になって連続登板が禁止されていたり、次の選挙は新首相で臨むほうがいいと判断したら交替するだけである。
政府が傲慢(ごうまん)にならないようにさせる抑止力は、政権を奪取するかもしれない野党の存在が大きい。その意味で、現在の日本の自民党永久政権というのは、民主主義の利点を発揮しにくい体制である。だからこそ、国民の意思とはかけ離れた政策ばかりが実行され、自民党の派閥の都合で政権がコロコロと変わってしまうのだ。
日本の首相も5〜10年は務めたほうがいい
いつまでも憲法改正問題を引っ張るのは、国益を損ねることにつながる。ほどほどのところで片付けて、二大政治勢力が10年〜20年ごとに政権交代するという状態が、日本にとって好ましいのではないか。少なくとも、首相は主要国のように5〜10年は務めたほうがいい。
岸田内閣の支持率は減っているが、数字ほど深刻に受け止める必要はない。支持率低下に怯え、人気取りのような中途半端な政策を打ち出しているのが、むしろ逆効果になっている。
安倍晋三元首相の場合は、30%といわれる保守層を固めて党内から崩されないようにしてから落ち着いた政策運営ができ、選挙を打つタイミングでは中道リベラルにすり寄った。だからこそ、歴代最長となる8年8カ月、首相であり続けた。
岸田首相は、安倍路線の基本を維持する姿勢を示し、憲法改正や皇位継承問題は安倍氏との約束だからしっかり取り組むと明言して総裁選に臨めばいい。ただし、経済政策は生き物だから、最晩年の安倍氏が言っていたことに囚われていてはダメだ。
一方、公明党との関係や無党派層は確保しておいたほうが賢明だ。保守派の離反は放っておけばいい。保守派は岸田内閣を支持しなくても、自民党候補への投票はやめないし、離党する国会議員などほとんどいるはずない。岸田首相は、自ら辞めると言わない限り、来年の秋は再選だというくらいの余裕をもったほうが右顧左眄(うこさべん)しない国政ができるだろう。  
 11/18

 

●岸田首相、支持率低迷「謙虚に受け止めたい」 訪問先の米国で会見 11/18
岸田文雄首相は17日午後(日本時間18日午前)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議のため訪問中の米サンフランシスコで記者会見し、報道各社の世論調査で政権への支持率が低迷している現状について「謙虚に受け止めたい」と述べた。
首相は総合経済対策の柱に掲げている所得税の減税方針について問われ、「デフレに後戻りさせないための一時的な措置として、定額減税によって、国民の可処分所得を下支えする取り組みを進めていく」と説明した。
一方で、経済対策の打ち出しが支持率回復につながっていないことについて「(世論)調査の結果や指摘は謙虚に受け止めたい」とした上で、「(臨時国会の)審議で丁寧に説明するとともに、経済対策の裏付けとなる(今年度)補正予算の成立に全力で取り組みたい」と述べた。
また、訪米中に臨んだ中国の習近平(シーチンピン)国家主席との首脳会談で、習氏が東京電力福島第一原発の処理水を「核汚染水」と表現したことに対し、首相は「科学的な分析と事実に基づく冷静な判断、建設的な態度を促していきたい」と述べた。首脳会談で首相は、中国による日本産水産物の全面禁輸の即時撤廃を要求。打開策は見いだされなかったが、両首脳は処理水問題について対話で解決を図ることで一致した。
●自民党から離れる岩盤保守層 圧倒的人気の日本保守党 11/18
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が11、12日に実施した世論調査で、岸田文雄内閣の支持率は10月の前回調査から7・8ポイント下落し、27・8%となった。
JNNが11月4、5日に実施した世論調査では前回から10・5ポイント下落して29・1%、NHKが10〜12日に実施した世論調査でも7ポイント下落し、29%となった。いずれも同じような結果で、岸田政権はかなり危険水域になっている。
昨年7月の参院選は、安倍晋三元首相の非業の死もあり、岸田政権は勝利し、2025年まで国政選挙がない「黄金の3年間」といわれた。
今年5月までは、岸田政権には先進7カ国(G7)広島サミットの成功という目標もあり、やりたいことがよく分かった。しかし、サミット後、何をやりたいのかさっぱり分からない。
岸田首相は、やりたいことは何かと問われて「人事」と答えたことがあるくらいで、結局どんな政策をやりたいのか見えにくいが、サミット後はその感が特に強い。
年内の衆院解散を事実上見送るというが、実際には支持率の低下で解散権が縛られている。解散権のない首相は党内掌握も厳しい状況で、求心力は既にない。
もし今の段階で解散を言い出したら、あっという間に党内で「岸田降ろし」の動きが出てくるだろう。既に事実上、岸田首相はレームダック(死に体)に陥っているとの見方もできる。
となると、岸田首相は「やぶれかぶれ解散」に出るか、来年秋の自民党総裁選までしのぐしか選択肢は残されていない。どちらにしても、党内政局を引き起こす要因になる。
今月11日には日本保守党が大阪・梅田で街宣活動を行い、主催者も警察も予想できなかったほどの多くの聴衆を集めるなど圧倒的な人気を呼んだ。
岩盤保守層が自民党支持から離れていくのは我慢ならない保守系自民党議員には危機感が強い。
その萌芽(ほうが)が、自民党の青山繁晴参院議員の「総裁選出馬宣言」である。実際問題として推薦人20人の確保は難しいかもしれないが、何が起こるかは分からない。
さらに15日には、高市早苗経済安全保障担当相が自ら主宰する勉強会「『日本のチカラ』研究会」を立ち上げた。高市氏は前回の総裁選に立候補しており、推薦人20人の確保はそれほどハードルは高くない。
関係者は「あくまで純粋な経済安全保障などの勉強会」というものの、政治的には絶妙なタイミングであり、額面通りには受け取れない。ここにきて、自民党内実力者の水面下の動きもあるらしい。
山田太郎文科政務官、柿沢未途法務副大臣、神田憲次財務副大臣がそれぞれ不祥事で辞任した。さらに三宅伸吾防衛政務官のスキャンダルも報じられたが、三宅氏は否定しているという。
いずれにしても、岸田政権はボロボロだ。ある自民党関係者は、年末までもつのだろうかと心配していた。
●岸田首相、池田大作氏死去に「深い悲しみ」 追悼コメントを投稿 11/18
岸田首相は18日、創価学会の池田大作名誉会長が死去したことを受け、自身のX(旧ツイッター)に「池田大作氏の御逝去の報に接し、深い悲しみにたえません。池田氏は、国内外で、平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました。ここに謹んで御冥福をお祈りするとともに、御遺族の方々および御関係の方々に対し衷心より哀悼の意を表します。内閣総理大臣 岸田文雄」と投稿した。
創価学会は、自民党が連立政権を組む公明党の支持母体にあたる。
●岸田首相の追悼メッセージに「政教分離どこいった?」SNSが大いにざわつく 11/18
創価学会の池田大作名誉会長が死去したことを受け、岸田文雄首相は18日、X(旧ツイッター)で「歴史に大きな足跡を残されました」などと哀悼のメッセージを発信した。創価学会は公明党の支持母体として知られていることもかさなり「政教分離どこいった?」と、SNSが大いにざわついている。
岸田首相はXに「池田大作氏の御逝去の報に接し、深い悲しみにたえません。池田氏は、国内外で、平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました」と投稿。「ここに謹んで御冥福をお祈りするとともに、御遺族の方々および御関係の方々に対し衷心より哀悼の意を表します。内閣総理大臣 岸田文雄」と記し、首相の立場としてメッセージを発信した。
●柿沢前法務副大臣“年内逮捕”へ!? 萩生田氏との遺恨の“江東区長選” 11/18
岸田政権は不倫、選挙戦での現ナマ乱舞、悪質な税金滞納と不祥事の火薬庫≠ニ化しているが、その統率力の無さは、今に始まったことではないようだ。実は、江東区長選をめぐる柿沢未途衆院議員の現金配布騒動の裏に、自民党を二分する遺恨≠ェ渦巻いていたのである。
4月に行われた東京都江東区長選をめぐる公職選挙法違反事件で、木村弥生前区長を支援した自民党衆院議員・柿沢未途前法務副大臣の「年内逮捕説」が、永田町を駆け巡っている。
東京地検特捜部は、柿沢氏側が区長選前に区議らに現金を配っていたことを突き止めており、「Xデーが近い」とみられているのだ。過熱した区長選の裏で一体、何が起きていたのか――。
区長室など木村氏の関係先に家宅捜索が入ったのは10月24日。このとき、自民党幹部は、区長選が行われてから約半年も経っていたことに、妙な違和感を覚えたという。同幹部は当時こう語っていた。
「特捜の狙いが区長のはずはない。これは萩生田光一政調会長による柿沢潰しだ。慎重に捜査を進めたから、ガサ入れが半年も後になったのだろう。萩生田サイドは、特捜部への情報提供に勤しんでいたのでないか」
案の定と言うべきか、その後、柿沢氏をめぐるニュースが世間を騒がせたが、事件の契機となった選挙中の違法な有料ネット広告の掲載は、柿沢氏の勧めによるものだった。
また、柿沢氏は10人以上の区議に1万円〜数十万円の提供を申し出ており、受領した区議がいたことも分かっている。この現金に区長選での投票依頼や選挙運動の謝礼の意味合いが含まれていれば、買収容疑で逮捕される公算が高いのだ。
萩生田氏は煮え湯を飲まされた!?
もっとも田舎ならまだしもメディアの注目度も高い東京の区長選がここまで過熱した理由は、裏に醜いつばぜり合い≠ェ渦巻いていたからだとみられている。
自民党関係者が言う。
「この区議選で自民党都連が組織を挙げて支援した候補は、4月に死去した山崎孝明元区長の長男で元都議の一輝氏。都連会長の萩生田氏は懸命に彼を支え、柿沢氏にも支援を働きかけたが、柿沢氏はあいまいな態度を取り続け、木村氏を支援して当選に導いた。メンツを潰された萩生田氏は『許せない!』と怒りをあらわにしていたが、もともと2人には過去に遺恨があったのです」
柿沢氏は今でこそ自民党議員だが、以前は民主党、みんなの党、維新の党、希望の党などを渡り歩いてきた政界渡り鳥=Bそのため、自民党内の評判はいまだ芳しくないが、遺恨が生じたのは自民党に入党する前の無所属時代だった。
「当時、柿沢氏は衆院東京15区(江東区)で、自民党の秋元司元衆院議員とシーソーゲームを繰り返していたが、その秋元氏が2019年にカジノを含む統合型リゾート事業をめぐる汚職事件で東京地検に逮捕された。これを好機とみた柿沢氏は21年10月の衆院選に、入党含みの自民公認で出馬する意向を同党に打診したのです」(全国紙政治部記者)
ところが、当時、自民党都連の総務会長をしていた萩生田氏らがこれに反発。別の人物を擁立したものの結局調整がつかず、共に2人は推薦を受けて無所属で戦うことに。その熾烈な選挙戦で当選をもぎ取ったのが、柿沢氏だったのだ。
「このときの柿沢氏の勝因は父、柿沢弘治元外相の地盤が強固だったこと。また、自民の推薦も効力を発揮したが、これが得られたのは谷垣禎一元自民党総裁が柿沢氏の母校・麻布高校の先輩で、谷垣グループの代表世話人で選対委員長だった遠藤利明衆院議員が承諾したから。柿沢氏に煮え湯を飲まされた萩生田氏は、怒り心頭だったのです」(同)
要は、この際に柿沢氏と萩生田氏の間には決定的な軋轢が生じ、その遺恨試合≠ェ今回の江東区長選だったというわけなのだ。
岸田政権の危機にも…
ただ、水面下で現金が飛び交うほど過熱した要因には、同区長選が分裂選挙だったという側面もある。柿沢氏と萩生田氏だけでなく、自民党の保守とリベラルが二手に分かれ、激しい選挙戦を繰り広げたことが火に油を注いだとみられているのだ。
「山崎一輝氏を支援した萩生田氏は故安倍晋三元首相の最側近だが、『安倍チルドレン』でもある都連会長代行の丸川珠代参院議員も応援に回り、出陣式では『自民推薦で戦うのは山崎氏1人』と絶叫したほど。この一輝氏陣営の保守系議員の布陣に対し、木村氏側は柿沢氏のほかに野田聖子元総務相、稲田朋美元防衛相が支援に回ったのです」(前出・自民党関係者)
ちなみに、野田氏は共産党機関紙『赤旗』のインタビュー記事に登場したこともある古賀誠元幹事長の寵愛を受けてきたリベラル系議員。一方、稲田氏は安倍派に属し、安倍元首相から「自民党のジャンヌ・ダルク」と評されたが、同氏の死後はリベラルに転向したのか、国会で成立したLGBT理解増進法の旗振り役として活躍。今や萩生田氏や丸川氏が所属する安倍派内では、裏切り者扱いだ。そのためか、両派の激突は告示前から「保守分裂で大激戦」と評判だったのだ。
政治部デスクが言う。
「柿沢氏と萩生田氏が対峙した江東区長選は、遺恨含みの安倍派vsリベラル派という代理戦争に発展したが、これが柿沢氏を違法行為へと走らせた可能性も高い。特捜の捜査が同氏に向けられた裏に萩生田氏が絡んでいるかは不明なものの、萩生田氏がほくそ笑んでいるのは事実だろう。木村氏の辞任で再び12月10日に投開票される江東区長選も、候補を担ぐ萩生田氏の独断場になる可能性が高いのです」
ただ、柿沢氏が逮捕されれば、岸田政権は万事休す。いよいよ、断末魔の悲鳴が聞こえてきそうだ。
●APEC終了 中国・韓国・アメリカとの首脳会談で成果も求められる政権基盤 11/18
APEC=アジア太平洋経済協力会議に出席していた岸田総理は、すべての日程を終えて帰国の途につきました。同行していた政治部官邸キャップ・川西記者の報告です。
「こんなに詰め込んだ日程を文句ひとつ言わずこなしている」。同行筋も驚く中、岸田総理は精力的に中国、韓国、アメリカなどの首脳と会談しました。
韓国の尹錫悦大統領との間では、各分野における協力関係をさらに深めることで一致し、その後、脱炭素燃料の供給網を共同で創設すると表明しました。
また、当初5分間の予定だった日米首脳会談も15分間行い、来年早期に国賓待遇で公式訪問するよう招待を受けました。
岸田総理(日本時間きのう午後)「戦略的互恵関係を包括的に推進していくこと、これを再確認いたしました」
中国の習近平国家主席との間で確認されたのは、2006年以降日中関係を定義づけてきたこの「戦略的互恵関係」という言葉です。
最近は使われていなかったこの言葉が復活したことについて政府関係者は、「将来を見据え、いったん関係をリセットするという中国側の意思ではないか」と解説しています。
いずれも来年以降の各国との関係改善・強化に向け一歩前進と言えますが、外交を推し進めるにはしっかりとした政権基盤が必要で、結局は内政面での成果が求められることになります。
●岸田総理「デフレ脱却の千載一遇のチャンス」 補正予算案に意欲 11/18
週明け20日から始まる2023年度補正予算案の審議について岸田総理大臣は「デフレ脱却の千載一遇のチャンスをつかみとる」として成立に向けて全力で取り組む考えを強調しました。
「デフレ脱却の千載一遇のチャンスをつかみ取って物価上昇を上回る、持続的で構造的な賃上げが行われる経済の実現に向けて、政府一丸となって取り組んでいきたい」(岸田総理大臣)
岸田総理は、訪問先のアメリカ・サンフランシスコでスタートアップ企業らと会談し、「昨今の著しい変化の流れをつかみ、力にしていく決意をこの地で新たにした」と述べました。
帰国後は、20日に新たな経済対策の裏付けとなる補正予算案を閣議決定し、国会での審議が始まります。
所得税などの減税をめぐり各社の世論調査で厳しい評価がされていることについて岸田総理は「謙虚に受け止める」としました。そのうえで、さらなる賃上げまでの一時的な措置として定額減税の必要性を改めて強調しました。
●岸田首相「定額減税は一時的措置」 “愚策”に集まる批判「アピールだけ」 11/18
アジア太平洋経済協力(APEC)会議に出席するため、米サンフランシスコを訪れている岸田文雄首相。中国の習近平国家主席と首脳会談をおこない、福島第1原発の処理水の海洋放出に伴う日本産水産物の輸入停止措置撤廃を求めるなど「成果づくり」を狙っている。
「内閣支持率が20%前半ですから、焦りもあるはずです。首相就任以来、『外交の岸田』を自認していますし、支持率が上がったG7広島サミットの『成功体験』があるので、その再来を目論んでいるのでしょう」(政治担当記者)
そうしたなか、岸田首相は会見で、所得税と住民税の定額減税について言及。「デフレに後戻りさせないための一時的な措置だ」と語った。
「これまでも、自民党の宮沢洋一税制調査会長が『1年がきわめて常識的だろう』と語っていたので、既定路線ではあるのですが、野党はもちろん、与党内からも『1年限りでは効果が期待できない』『国民が負担減を実感しにくい』と、評判が悪いものでした。さらに、時事通信の世論調査でも、51%の有権者が所得税・住民税減税に期待していないという結果が出ました。
しかも『税収の増加分を還元する』と言いながら、その増加分は、国債の償還などですでに支出していて、スッカラカン。さらに国債を発行して賄うことになるという赤っ恥の事態になりました」(経済担当記者)
「米櫃が空っぽ」(野党議員秘書)なら「1回だけ」にならざるをえない。国民もいまさらながらあきれている。「一時的な措置」を報じたニュースサイトのコメント欄には《減税したぞアピールだけだね。おまけに一時的にしょぼいから効果は薄い》《デフレ脱却もしていないのにたった一回の減税で後戻りしない? デフレ脱却してから言って下さい》《デフレに戻さないためだったら1年ではなく数年実施されるべきではないでしょうか。企業の賃上げ任せではダメですよ》などの批判が殺到している。《一時的な措置で終わるように賃金を上げると言ってましたね。実際賃金はすぐに上がりましたね、税金が原資である議員や公務員の給料は》と、嫌味の声も多くあった。
「国民からは『選挙目当ての減税』と見透かされ、永田町でも『愚策』とこき下ろされていますが、岸田首相は『2024年の春闘で企業が大幅な賃上げをして、経済の好循環を達成する』と青写真を描いています。しかし、それが達成できなかったら一気に政局になるでしょう」(前出・政治担当記者)
愚策の上に無策では、国民が不幸になるばかりだ。
●野党転落前夜?麻生政権末期に近づく 岸田内閣、止まらぬ支持率低下 11/18
政権復帰後初の20%割れ―自民
時事通信社の11月世論調査で、岸田文雄内閣の支持率は21.3%(前月比5.0ポイント減)、自民党の支持率は19.1%(同1.9ポイント減)で、いずれも岸田政権発足以来の最低を更新した。特に、自民党の支持率が20%を切ったのは、2012年12月の政権復帰後、初めて。岸田政権に対する有権者の厳しい評価は、衆院選惨敗で野党に転落した麻生太郎政権末期に近づきつつあることが、調査結果から読み取れる。(時事通信解説委員長 高橋正光)
調査は10〜13日に、全国18歳以上の2000人を対象に個別面接方式で実施。有効回収率は57.2%。それによると、岸田内閣の不支持率は53.3%(同7.0ポイント増)、「わからない」が25.5%(同1.9ポイント減)。世代別の支持率を見ると、「18歳〜29歳」で若干持ち直したが、それ以外の世代では全て減少。50歳代以下の世代はいずれも2割に届かず、60歳代も22.0%(同10.4ポイント減)と大きく落ち込んだ。不支持率は全世代で上昇した。
性別では、男性の支持率は21.8%(同8.1ポイント減)、不支持率は56.2%(同9.3ポイント増)。女性の支持率は20.7%(同1.8ポイント減)、不支持率は50.3%(同4.6ポイント増)。男性の支持が大幅に低下した結果、男女がほぼ同水準となった。
自民支持層の内閣支持も50.0%(同10.7ポイント減)と大きく減り、「支持政党なし」(無党派層)の内閣支持も13.9%(同3.2ポイント減)で、低下した。
一方、自民党支持(19.1%)の性別では、男性22.5%(同2.3ポイント減)、女性15.5%(同1.5ポイント減)。女性の支持が低い。世代別では、50歳代以下は全て2割に届かず、15%前後。60歳代が20.1%、70歳以上が28.4%。このうち、60歳代は、前月比9.9ポイント減で、内閣支持率と同様に大幅に下落した。
「民主主義の危機」菅政権より進む
今回の結果を、菅義偉前首相が党総裁選への不出馬を表明する直前の菅内閣(21年8月調査)、衆院選を控えた麻生内閣(09年7月調査)とそれぞれ比べると、菅内閣よりはるかに厳しく、麻生内閣に迫りつつあることが分かる。それによると、菅内閣の支持率は29.0%、不支持率は48.3%。自民党支持率は23.7%で、同党支持層の内閣支持率は59.4%だった。
政界では、内閣支持率と自民党支持率を足した数字が50%を切ると、政権維持に早晩行き詰まる、との説(青木の法則)が広く知られる。菅政権は1回も「青木の法則」を下回ることがないまま、退陣に追い込まれた。岸田政権は、「青木の法則」から約10%も割り込んでおり、政権運営がはるかに厳しい状況にあると言える。
岸田首相は21年9月の党総裁選で、当時の菅政権を「国民の声が自民党に届いていない。民主主義の危機」と断じ、厳しく批判した。調査結果は、岸田政権で「民主主義の危機」が、菅政権より進んだことを示している。
自民支持層の内閣支持、麻生政権と同水準
一方、麻生内閣の支持率は16.3%(不支持64.2%)、自民党の支持率は15.1%。「青木の法則」から、2割近く割り込んでいる。また、自民支持層の内閣支持率は48.0%、無党派層では11.1%。内閣、自民党の支持率とも、麻生内閣より若干高いが、自民支持層、無党派層の内閣支持率は、麻生内閣時の水準に迫りつつある。今後、内閣、自民党の支持率低下に歯止めがかからなければ、政権交代前夜の麻生内閣の様相を呈することになろう。
もっとも、岸田内閣と麻生内閣で、決定的に異なる点が一つある。それは、野党の支持率だ。岸田内閣の支持率低下が進んでも、野党の支持率は低迷したまま。これに対し、麻生内閣当時、野党第1党・民主党の支持率は18.6%で、自民党を上回っていた。政権批判票の受け皿ができていたことが、直後の衆院選で自民党の惨敗、野党転落につながった。
今回11月の世論調査での、自民党以外の支持率は、維新4.6%(前月比0.7ポイント増)、公明4.1%(同1.0ポイント増)、立憲民主2.7%(同0.4ポイント減)の順。これに、れいわ新選組の1.6%(同0.5ポイント増)が続き、共産(1.1%)と国民民主(0.9%)を上回った。「支持政党なし」は62.5%(同1.4ポイント増)。
政党支持率は、「自民1強」「他弱野党」の状態。自民支持から離れた有権者は、既成野党には向かわず、野党全体で支持の分散化が進みつつあることがうかがえる。岸田首相は年内の衆院解散を断念し、経済対策の実行に全力を挙げる考えだ。
こうした状況を踏まえ、次期衆院選を占うと、カギを握りそうなのは、野党側の候補者調整と無党派層の動向。岸田首相が現状で解散しても、小選挙区で野党の候補者が乱立し、投票率(前回21年10月は55.93%、自民が惨敗した09年8月は69.28%)が上がらなければ、自民党の議席(262、過半数は233)は、それほど減らないかもしれない。
●〈内閣支持率21.3%〉過去最低を更新で“岸田おろし”が加速 11/18
岸田文雄首相が発表した17兆円規模の大型経済対策の目玉は所得税と住民税の減税だが、国民にその恩恵が届くのは来年6月と遅く、その評判は徹底的に悪い。さらに副大臣や政務官の不祥事、辞任が相次ぎ、国民からの信頼はいまや地に落ちている。こうしたなか、「岸田おろし」を思わせる動きが自民党内で徐々に出始めた。
裏目の経済対策と閣僚の「自民ドミノ」で崖っぷちの岸田内閣
岸田政権の支持率低下が止まらない。
時事通信社が11月16日に発表した世論調査の結果=内閣支持率21.3%。は、2012年に自民党が政権に復帰して以降、歴代内閣で過去最低の数字となった。
同社が10月に実施した前回調査時の支持率26.3%ですら岸田政権で最低の数字で、政権を維持するには「危険水域」と言われていた。にもかかわらず、そこからさらに5ポイントも下げたことは永田町でも驚きを以って受け止められている。
永田町関係者からは「岸田政権の支持率は下げ止まらず、このまま2割を切るのではないか」との声も。
支持率が暴落している背景には、岸田首相が打ち出した経済対策が国民生活と乖離しており裏目に出ていることが挙げられる。
17兆円規模にも及ぶ経済対策では、岸田首相が「増税メガネ」のニックネーム払拭にこだわるあまり、来年6月になってようやく恩恵が届く所得税や住民税の4万円減税が目玉となっている。
そのなかで、内閣府が15日に発表した7〜9月期の国内総生産(GDP)は年率換算で2.1%減となり、3期ぶりのマイナス成長に。
これは物価高によって個人消費が伸び悩んでいるためだろう。岸田首相のズレた減税策よりも、年内に恩恵が届く給付金などのほうが必要とされていることが浮き彫りになった。
それに加えて、9月に発足した新内閣の政務官や副大臣の不祥事も相次いでいる。
山田太郎文科政務官は20代女性との不倫関係が報じられ、辞任。柿沢未途法務副大臣は4月の江東区長選で違法な有料ネット広告を勧めたほか、選挙前に複数の区議に現金を配っていたことも発覚。神田憲次財務副大臣も税金滞納を繰り返していたことが問題となり、次々と“更迭”された。
きわめつけは15日、三宅伸吾防衛政務官が事務所の女性スタッフに、体を触ったりキスをしたりする性加害を行った疑惑を週刊文春が報道。本人は「まったく身に覚えがない」と否定しているが、岸田政権の新たな火種となっている。
これら以外にも、永田町内では次に狙われる自民党議員の名前が出回っており、不祥事の連鎖は尽きそうにない状況で、あらためて岸田人事の「不適材不適所」ぶりが露わになっているといえるだろう。
存在感を増しつつある菅義偉前首相
そんななか、自民党内では「岸田おろし」につながるような動きも出始めている。
15日には経済安全保障大臣の高市早苗衆院議員が、国力増強をテーマにした勉強会「『日本のチカラ』研究会」を発足し、初会合を開いた。
現職の閣僚が自身主宰の勉強会を立ち上げるのは異例で、来年9月に想定されている自民党総裁選で岸田首相に対抗する狙いがあると見られている。
しかし、この初会合に集まった国会議員はたった13人。総理総裁を目指す政治家としての求心力の弱さが浮き彫りになってしまった。
もともと高市氏は党内の名門派閥である清和会に所属していたが、当時は町村派だった2011年、翌年の総裁選で派閥会長の町村信孝氏ではなく、安倍晋三氏を応援するために派閥を離脱。
その後は無派閥で活動を続けているが、過去の経緯から清和会(現在の安倍派)とは溝がある。
これまで、その間を取り持っていたのが安倍晋三元首相であったわけだが、安倍氏が銃撃事件で亡くなって以降は後ろ盾を失い、今回の初会合ではそれが如実に表れたといえるだろう。
一方でメディアへの露出が増えて存在感を増しつつあるのが菅義偉前首相だ。
12日に出演した「日曜報道 THE PRIME」(フジテレビ系)では、インバウンド政策として江戸城再建計画が取り上げられ、「推進するためにはひとつの大きな方向性と世論をつくらないといけない」と語ったことが話題に。
また、15日に出演したインターネット番組「ABEMA Prime」では、岸田首相の経済対策について「国民になかなか届いていないのは、きちんと説明をする必要がある」と苦言を呈した。
番組で菅氏は自身の首相再登板については「ない」ときっぱり否定し、小泉進次郎元環境大臣について「(総理総裁の)道を歩んでいくようになると思う」と持ち上げたが、永田町では「来年の総裁選政局に絡んでいこうとしている意欲の表れだ」と囁かれている。
近づく総裁選で問われる自民党議員の姿勢
こうした「岸田おろし」の前触れとも取れる動きは今後大きくなっていくのか。それを占うのが安倍派の動向だ。
現在の岸田政権は、首相自ら率いる岸田派、茂木敏充幹事長が率いる茂木派、麻生太郎副総裁が率いる麻生派の三派連合によって成り立っている。
これらを突き崩し得るのは99人を抱える党内最大派閥である安倍派だが、その肝心の安倍派は安倍氏に代わる次のリーダーを決められず、未だに「安倍派」として集団指導体制を敷いており、派閥としての意思決定力は鈍い。
現在の中途半端な状態を脱却するためには、派閥としての方向性をしっかりと決める必要があるが、自民党関係者は「99人の大所帯を持つ安倍派が無理に方向性を決めようとしてしまえば、意見が割れて派閥が分裂してしまう可能性がある。そのため総裁選への対応は慎重にならざるをえない」と解説する。
しばらく安倍派は「岸田おろし」の動きについても静観の状態が続きそうだ。
しかし、来年9月に想定される自民党総裁選は着実に近づいてきている。総裁選に向けて「岸田おろし」の動きがこれから大きくなっていけば、衆議院の解散戦略にも影響を与えることになるだろう。
もし、岸田首相が総裁選前に解散を決断するとすれば、タイミングは来年1月の通常国会冒頭か、来年6月の国会終盤に絞られてきているが、いずれにせよ、選択の猶予はそれほど残されていない。
そして、判断を急かすかのように、報道各社の世論調査では支持率が下がり続けている。
このまま漫然と岸田政権を続けて、悠長に政局を見極めている場合なのか。自民党議員ひとりひとりの姿勢が世論から問われている。
●支持率急降下中!岸田首相が狙う起死回生...悪評嘖々の総合経済対策 11/18
岸田支持率急降下
岸田文雄政権は11月10日、経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案13.1兆円を閣議決定した。
岸田首相が低迷する内閣支持率打破のため起死回生とばかりに投じた事業規模37.4兆円の総合経済対策の目玉である所得税減税と給付金そのものが悪評嘖々である。
最新の産経新聞とフジテレビ(FNN)の合同世論調査(11月11〜12日実施)の内閣支持率は前回比7.8P減の27.8%、不支持率が同9.2P増の68.8%である。
そして衝撃的だったのはNHK調査(同10〜12日)の数字である。支持率7P減の29%、不支持率8P増の52%。何とNHK調査も支持率が30%を下回ったのだ。先週末までの各社調査に追い打ちをかける支持率急降下となった。
すなわち、TBS(JNN。同4〜5日):支持率10.5P減の29.1%、不支持率10.6P増の68.4%、共同通信(3〜5日):支持率4P減の28.3%、不支持率4.2P増の56.7%である。支持率が「30%」を切ったのは時事通信(10月6〜9日)26.3%、毎日新聞(同14〜15日)25%、朝日新聞(14〜15日)29%、テレビ朝日(ANN。28〜29日)26.9%に加えて8社となった。
因って、読売新聞(10月13〜15日):支持率前回比1P減の34%、不支持率1P減の49%、日本経済新聞(同27〜29日):支持率9P減の33%、不支持率8P増の59%―の2社だけが支持率「30%」を上回る。
こうして岸田内閣支持率の相場観は、29%(NHK)%+28.3%(共同)+29%(朝日)÷3=28.8%と言える。このトレンドは恐らく所得税・住民税減税が実施される来年6月頃まで続くと見ていい。
だが本稿では、国民の関心がなかなか向かわない総合経済対策の具体策を公正に評価したい。筆者が注目したのは、経済対策の前提となる基本的な考え方「経済産業政策の新機軸」である。
国内で不評の経済対策
「産業政策」と言えば、1980年代末から90年代初頭に対日貿易赤字解消を求めたブッシュ(父)米政権の通商代表部(USTR)主導で始まった日米構造協議(SII)を想起する。全ては日本の「政・官・民癒着のトライアングル」に起因すると「日本異質」論が噴出し、その後の90年代後半のクリントン政権下で展開された日本叩き(ジャパン・バッシング)のトリガー(引き金)となった。
しかし、時代は大きく変わった。今や米国も官は民を邪魔しないことに徹する新自由主義的政策でもない、社会・経済課題解決に向けて、官も民も一歩前に出て、あらゆる政策を総動員する新たな産業政策をその枠組みにまで遡って検討する必要があるという理解に至った。要するに、政府が積極的に介入することで民間投資・イノベーションを促すことの効果を認めているのだ。
事実がそれを証明している。経済産業省が経済産業政策の新機軸を打ち出したのは2年前の2021年11月。そして今年の9月、同省の西川和見官房参事官(経済安全保障担当)が訪米し、ホワイトハウスで米国家安全保障会議(NSC)のタルン・チャブラ技術・安全保障担当上級部長と経済安全保障問題について協議した。その際に日米の産業政策連携を提案されたというのだ。まさに隔世の感がある。
兆しはあった。バイデン大統領が22年8月に署名・成立したインフレ削減法(総額4330億ドル=約58.5兆円)には気候変動対策からEV(電気自動車)税額控除に国内(北米)組立要件、水素製造装置税額控除に実勢賃金・CO2排出基準要件まで盛り込まれていた。
その後の今年6月に発表した「国内発明・国内製造(invent it here, make it here)」政策も言わば産業政策である。こうした流れは今夏以降、欧州連合(EU)主要国のドイツの成長機会法制定やフランスのEV補助金制度の変更などに継承されている。
日本の先駆的な経済産業政策はミッション志向の社会・経済課題の解決を目指して進められてきたのだ。それは、GX(グリーントランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)を核とする8分野での国内投資拡大のための官民連携であり、その具体策がきちんと総合経済対策に盛り込まれている。
岸田首相は米サンフランシスコで15〜17日に開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席後の17日、同地シリコンバレーのスタンフォード大学で行われた討論会でも10年間に20兆円の国費を投じ、150兆円の官民投資を集める意向を改めて発言した。国内で不評の経済対策をシリコンバレーの投資家や起業家はどう評価するのだろうか。
●政務三役「辞任ドミノ」スキャンダル続発でも岸田総理が「俺の責任ではない」 11/18
10月下旬からわずか3週間足らずで、3人の副大臣・政務官の「辞任ドミノ」が発生した岸田政権。その影響で、内閣支持率は下がりっぱなしだ。閣僚・政務三役のスキャンダルはまだまだ続きそうな気配だが、当の岸田文雄総理自身は「俺の責任じゃないから」とアッサリしているという。神田憲次衆院議員を財務副大臣から更迭した際は「安倍派は俺の責任を問えないな」と漏らしたというエピソードが永田町を駆け巡っている。
岸田総理はAPEC(アジア太平洋経済協力会議)出席のため、5日間の日程で11月16日から訪米中。「外交の岸田」で支持率回復を目指そうと、生き生きしている。全国紙政治部デスクが言う。
「9月に発足した第2次改造内閣は、各派閥の考えを最重要視した内閣です。岸田総理周辺では『身体検査は各派閥の仕事。野党はともかく、党内で問題にすれば信義違反だ』との声があります。だから外交に集中できるのでしょう」
副大臣・政務官の人事は、各派閥の代表として幹事長室に陣取る数名の副幹事長が、派閥の意向を調整しながら決める。総理は関与せず、官房長官、副長官と政務の秘書官らが連絡役となり、チェックする。今回はこの機能が働かず、そこに岸田政権の責任はあるが「それくらいは各派閥でやってくれ」というのが、岸田総理の言い分というわけだ。
日本維新の会を離党した鈴木宗男参院議員は11月14日、自身のブログでこう書いている。
〈内閣の一員が辞めるとよく「総理の任命責任」という言葉が出てくるが…副大臣、大臣政務官人事は…派閥からの推薦を受け、希望するポストを調整し、決定していくのが流れである。任命責任というなら推薦した派閥の長に責任があることになる〉
鈴木氏の意見は永田町の常識だが、各派閥は世論に迎合し、政権批判をする。岸田総理は文句のひとつも言いたいところだろう。
辞任した神田氏は安倍派で、もちろん安倍派が推薦した。神田氏を副大臣にした実質上の責任者、松野博一官房長官も安倍派で、ダブルチェックをスリ抜けた醜聞の責任はどこにあるかということだ。安倍派は100人を誇る自民党最大派閥だが、筋を通せば一連の辞任ドミノで岸田おろしには動けない。
「安倍派が動かなければ、総理の座から引きずり降ろされることもない。それが総理の精神安定剤になっているのでは」(前出・政治部デスク)
国民がまるで支持しなくとも全く問題はない、ということなのだろう。  
●池田氏死去、外国メディアも速報=「ゴルバチョフ氏らと交流」 11/18
創価学会の池田大作名誉会長の死去について、外国メディアも18日、速報で伝えた。公明党の結成や、故ゴルバチョフ元ソ連大統領ら著名政治家との交流などを報じ、影響力を指摘した。
AFP通信は「日本で最も大きく、政治的影響力がある」宗教団体の一つを率いたと強調。「国際交流に力を注ぎ、ゴルバチョフ氏らと会談した」と報じた。ロイター通信は、信者として英俳優オーランド・ブルームさんや元サッカーイタリア代表ロベルト・バッジョ氏らを紹介した。
●創価学会の池田大作名誉会長を与野党が追悼 「平和」「中国との親善」 11/18
創価学会の池田大作名誉会長が死去したことを受け、与野党各党が追悼のコメントを発表した。
自民党の茂木幹事長は「池田大作名誉会長の御逝去の報に接し、深い悲しみにたえません。池田先生は、永年に亘り国際平和の推進、文化、教育の振興などに大きく貢献され、歴史に大きな足跡を残されました。ここに謹んで御冥福をお祈りするとともに、御遺族および関係の皆様に衷心より哀悼の意を表します」とコメントした。
岸田首相も党総裁として「池田名誉会長は、国内外で、平和、文化、教育の推進など幅広い分野で極めて重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました」などと綴った哀悼のコメントを投稿し、自身のX(旧ツイッター)にも内閣総理大臣名で投稿した。
立憲民主党の泉代表は「心より哀悼の意を表します。池田大作名誉会長は、長年にわたり創価学会において卓越した指導力を発揮され、日本の平和運動、福祉の推進、そして中国をはじめ世界各国との友好親善に力を尽くしてこられました。ここに、生前のご功績に深く敬意を表し、謹んでお悔やみを申し上げます」とコメントした。
●「物価高で税収増、得するのは政府だけ」 田村秀男特別記者が講演 11/18
静岡県産経会は18日、本紙の田村秀男特別記者による講演会「日本再生のチャンス!! 岸田政権は活かせるか?」を浜松市地域情報センター(浜松市中区)で開いた。
田村氏は、ロシアのウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化、米中摩擦などを例に挙げ、「世界では覇権争いが激化し、消耗戦が続いている」と指摘。そうした中で、多額の日本マネーが米国や、米国経由で中国に投資されているほか、日本の円や国債が売られる傾向にあるとした。
足元の円安については、「物価高となり、(消費税などの)税収が増える。この状況下で得をしているのは日本政府だけだ。国民は苦しんでいる」と強調した。
その上で、「円安メリットを生かして資金を国内投資に循環させ、難局を日本再生のチャンスに変えていくべきだ」などと訴えた。
●「言いにくいこと言う政治を」 自民・森山総務会長 11/18
自民党の森山裕総務会長は18日、岸田内閣の支持率低迷に関し、「国民の信頼を取り戻し、やるべきことをしっかりやる。言いにくいことも言って理解してもらう。そういう政治を進めていくことが大事だ」と述べた。
福岡県粕屋町で開かれた同党衆院議員の会合で講演した。 
●自民5派閥の団体 約4000万収入不記載で告発 特捜部が任意聴取 11/18
自民党の5つの派閥の政治団体が政治資金パーティーに20万円を超える支出をした団体の名前など、合わせておよそ4000万円分を収支報告書に記載していなかったとして告発状が提出され、東京地検特捜部が5つの派閥の団体の担当者に任意の事情聴取を要請し、聴取を進めていることが関係者への取材でわかりました。
自民党の5つの派閥の政治団体、「清和政策研究会」、「志帥会」、「平成研究会」、「志公会」、「宏池政策研究会」をめぐっては、おととしまでの4年間の収支報告書にそれぞれが主催した政治資金パーティーに20万円を超える支出をした団体の名前や金額など合わせておよそ4000万円分を記載していなかったとして、大学教授が5つの派閥の会計責任者らに対する政治資金規正法違反の疑いでの告発状を東京地方検察庁に提出しています。
この問題で東京地検特捜部が5つの派閥の政治団体の担当者に任意の事情聴取を要請し、聴取を進めていることが関係者への取材でわかりました。
政治資金規正法は1回のパーティーで20万円を超える支出をした団体や個人について、名前や金額を収支報告書に記載することを義務づけていますが、
告発状では
・「清和政策研究会」がおよそ1900万円分、
・「志帥会」がおよそ900万円分、
・「平成研究会」がおよそ600万円分、
・「志公会」がおよそ400万円分
・「宏池政策研究会」がおよそ200万円分の
パーティー券収入を記載していなかったとしています。
特捜部は収支報告書が作成された経緯や派閥の政治資金パーティーをめぐる資金の流れなどについて調べを進めるものとみられます。
●岸田首相、政権運営いばらの道 外交日程終え再び内政局面へ 11/18
米国を訪問していた岸田文雄首相は17日(日本時間18日)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議などの一連の外交日程を終え、帰国の途に就いた。20日からは令和5年度補正予算案の国会審議が始まり、再び内政の局面となる。ただ、所得税減税を含む経済対策に関する国民の理解は浸透せず、内閣支持率は低迷。政務三役3人の「辞任ドミノ」の余波も収まっておらず、政権運営は年末にかけていばらの道が続く。
外遊のハイライトは中国の習近平国家主席との1年ぶりの首脳会談だった。首相は帰国に際しての記者会見で「建設的かつ安定的な日中関係の構築という大きな方向性を確認した」と成果を強調し「引き続き活発な首脳外交を行い、日本の平和と安全を守り、国際社会を協調に導くため尽力したい」と意欲を語った。
一方、内政では厳しい現実に直面している。経済対策として思い切った減税を打ち出したものの、世間の反応は芳しくない。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の11月の世論調査での内閣支持率は27・8%で、「危険水域」とされる3割未満となった。
支持率低下に関し、首相は会見で「調査結果や指摘は謙虚に受け止めたい」と表明。所得税減税や賃上げなど、最重要課題とするデフレ脱却の取り組みについて「国会でも丁寧に説明し、補正予算成立に全力で取り組んでいきたい」と語った。
新たな火種も浮上している。最大2350億円に上振れする見通しとなった2025年大阪・関西万博の会場建設費問題だ。補正予算案にも増額分などが盛り込まれており、立憲民主党などは予算審議で追及していく構えだ。
政務三役3人は、それぞれの所管事項をめぐる不祥事で辞任しており、「適材適所」と説明してきた首相の任命責任も問われる。
辞任後も不祥事は幕引きに至っておらず、自民党の柿沢未途元法務副大臣に関する公職選挙法違反事件では、16日に同氏事務所へ家宅捜索が入った。他の政務三役らにもスキャンダルが報じられており、政権に対する国民の目はさらに厳しさを増す可能性がある。
 11/19

 

●2024年「壊滅的な巨大地震が世界で最も裕福な場所を襲う」不吉すぎる予言 11/19
“世界で最も富裕な場所”で壊滅的な大地震が起きる――。現代のノストラダムスが語る「2024年予言」が不吉すぎる内容だ。
2024年、アメリカで大地震と大停電か
現代のノストラダムスとも呼ばれているイギリスの霊能力者、クレイグ・ハミルトン・パーカー氏は、自身のYouTubeチャンネル「Coffee with Craig」に投稿した動画「2024 World Psychic Predictions」の中で来年に起きることについて語っている。パーカー氏によれば“世界で最も富裕な場所”に大きな影響を与えるイベントが発生するという。
2時間半ほどの動画の序盤でパーカー氏は世界情勢の大きな動きについての話にしばらく時間を費やし、ロシアと中国がますます接近しそこには北朝鮮も加わり、国際政治におけるアメリカの影響力が低下することについて憂慮している。アメリカが失墜していく中、インドの影響力が日増しに強まってくるという。
国際的なプレゼンスの減衰だけではない。2024年にアメリカは“実害”も受けるという。
「私がもうひとつ予想しているのは、アメリカでの電力不足と停電です。 特にカリフォルニアとテキサスで大規模な停電を目撃しました。テキサスには石油が豊富にあり、カリフォルニアには石油が大量にあります」(パーカー氏)
もちろんアメリカ本土でエネルギー危機が起こるわけではなく、甚大な自然災害などで大規模停電が発生することになるという。そしてその場所は米カリフォルニアなど“世界で最も富裕な場所”の1つで起きるというのだ。
「インフラ被害か何かのようなものだとも考えられます。おそらく気象現象やハリケーンなどによって損傷する可能性があります。これは単にケーブルが切れただけでは済まずに修復するのが非常に難しいものです」(パーカー氏)
発電所や石油精製工場などが重大な被害を被るのだろうか。
「エネルギーを生産するインフラの一部が停止します。もしかしたらとんでもない被害になるでょうか。そのようなレベルでインフラの一部に問題が発生します」(パーカー氏)
さらに不吉なことにパーカー氏は2024年にはアメリカで大地震がいくつか起こることを予想している。そしてこの大地震によってもインフラ施設が甚大な被害を受けるという。
来年の2024年はアメリカにとっての“厄年”になるのだろうか。「アメリカがくしゃみをすると日本が風邪をひく」ということなら日本への影響も無視できないだろう。そしてパーカー氏は日本のオンラインゲームサーバーが大規模なサイバー攻撃を受けるとの発言も行っている。
長時間に及ぶ言及の中で、ヨーロッパでは極右勢力のさらなる台頭や、プーチン大統領の死とロシア初の女性大統領が誕生する可能性、さらには中国の台湾進攻にも触れているパーカー氏だが、一方でAI(人工知能)の活用による医療技術の画期的な進歩などのポジティブな見通しについてもコメントしている。
2024年の3月と6月に暗号通貨危機!?
この「2024年予言」に先立つ今年9月、パーカー氏は2024年の仮想通貨の動向についての見通しも語っている。
「2024 Crypto Warning」と題された動画でパーカー氏はキャッシュレス社会とテクノロジーへの依存の増大は、企業の支配、プライバシーの喪失、財政破綻、ディストピア社会の可能性などの重大なリスクを招くことを警告している。
パーカー氏はインターネットの電源が切られる可能性と、インターネットにアクセスできなくなる可能性について不安を表明し、暗号通貨にまで影響を及ぼす何か大きな出来事が2024年に2度起きると語っている。これはつまり暗号通貨の暴落やあるいは消失を暗示しているということだろう。
その大きな出来事が起きる時期は2024年の3月と6月であるという。この出来事は中国の経済崩壊を端緒に発生するということだ。また太陽黒点の影響で人工衛星が機能しなくなることも“システムダウン”の原因として考えられるという。
インターネットの潜在的な脆弱性とそれが引き起こす可能性のある損害は、重大な財政破綻につながる可能性があるとパーカー氏は警鐘を鳴らす。
日本でもここのところ大手銀行やクレジットカード決済のシステム障害が起きているが、今後さらに大規模の障害が起きる可能性は払拭できないだろう。
アメリカでの大地震に暗号通貨危機と、パーカー氏によれば2024年はかなりの試練に見舞われることになる。あと少しで否応なくやってくる新年に向けてさまざま準備と覚悟が求められているとも言えそうだ。
●岸田首相、APEC「貢献」誇示 米韓と蜜月、外交継続に意欲―尽きぬ内憂 11/19
岸田文雄首相は17日(日本時間18日)、米サンフランシスコ訪問を終えた。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の議論に「貢献」したと成果を誇示し、「岸田外交」の継続に意欲を示した。ただ、政権基盤は揺らいでおり、週明け以降も2023年度補正予算案の審議など厳しい局面が続く。
「ロシアのウクライナ侵略が持続可能な発展を揺るがすと主張し、議長声明に盛り込まれた」。首相は17日の内外記者会見でこう強調。公正な投資環境確保や人工知能(AI)活用の環境整備も唱え、関連文書に反映されたと訴えた。その上で年内の外交日程に触れ、「引き続き活発な首脳外交を行い、国際社会を協調に導く」と表明した。
米国のバイデン大統領、韓国の尹錫悦大統領との「蜜月」関係のアピールにも余念がなかった。今年4回目となった16日の日米首脳会談では、中国の軍事的威圧や中東、ウクライナ情勢を巡り緊密な連携を確認。来年の早い時期に公式訪問するよう招待を受けた。異例の国賓待遇となることに関し、日米外交筋は「バイデン氏は首相に好印象を持っている」と語る。
尹氏との同日の会談は、関係正常化で合意した今年3月以降の約8カ月間で実に7回目。これについて首相は翌17日に共に参加したスタンフォード大の討論会で「新記録だ」と誇り、「共通点はおいしい食事とお酒が好きということだ」と親密さの理由を述べた。
首相が訪米の成果を強調したのは、「内憂」が尽きないためだ。起死回生を狙った所得税の定額減税が不評で、政務三役の不祥事も続出。補正審議で野党は厳しく追及する方針だ。内閣支持率は各種世論調査で軒並み政権発足後の最低値を記録。地方選挙でも自民党の負けが込み、求心力は急速に低下している。
16日の日中首脳会談では溝を埋められなかった。首相は日本産水産物禁輸の即時撤廃を要求。習近平国家主席は東京電力福島第1原発の処理水を「核汚染水」と表現した。対話で解決を図ることでは一致したが、首相は内外会見で禁輸解除について「具体的な時期は言えない」と答えざるを得なかった。スパイ容疑で拘束された邦人の解放も実現しなかった。
年内の外交案件としては、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)や東南アジア諸国連合(ASEAN)との特別首脳会議が残っている。だが、自民幹部は「外交で支持率はそれほど上がらない」と断言。閣僚経験者は「目の前の課題にこつこつ取り組むしかない」と語った。
●岸田首相 会見「国際社会を協調に導くため 首脳外交に尽力」 11/19
岸田総理大臣は、アメリカで記者会見し、今回の一連の訪問について、日中首脳会談で大局的な観点から建設的な対話を行ったなどと振り返った上で、国際社会を協調に導くため、今後も首脳外交に力を尽くす考えを示しました。
この中で岸田総理大臣は、APEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議について「国内で重視している政策も念頭に、日本の考え方を発信し、議論に積極的に貢献した」と述べました。
そして、公正で透明性のある貿易・投資環境の確保や脱炭素社会の実現に向けた日本の貢献を明確にしたほか、ロシアのウクライナ侵攻や核の威嚇などを認めない立場を示し、議長国のアメリカが発出した声明でも共有されたと説明しました。
またアメリカのバイデン大統領との日米首脳会談について、中東情勢やウクライナ情勢、それにインド太平洋地域の諸課題がある中、同盟国としていっそうの連携を確認したとして「大変有意義だった」と述べました。
その上で1年ぶりとなった中国の習近平国家主席との日中首脳会談について「およそ65分間にわたり、大局的な観点から率直かつ建設的なやりとりを行った。日中間にはさまざまな協力の可能性と課題や懸案がある中、日中平和友好条約の締結45年の節目にあたり『建設的かつ安定的な日中関係』の構築という大きな方向性を確認した」と述べました。
また日本産水産物の輸入停止措置の即時撤廃を求めたことなどに触れ「諸懸案についてもしっかりと提起した」と述べ、今回の一連の外交成果を強調しました。
そしてことしのG7=主要7か国の議長国として各国の議論をけん引してきたとした上で「来月は日本とASEAN=東南アジア諸国連合との特別首脳会議も開催する。国際情勢が混とんとする難局において、引き続き活発な首脳外交を行い、日本の平和と安全を守り、国際社会を協調に導くために尽力していく」と訴えました。
処理水や水産物輸入停止をめぐる対話は
岸田総理大臣は記者会見で、習近平国家主席が福島第一原発の処理水を「核汚染水」と言及したとされていることに関して「首脳会談における相手方の発言や具体的なやり取りについてコメントは控える。処理水の科学的な分析と事実にもとづく理解は国際的にも幅広く共有されていると認識している」と述べました。
また、日本産水産物の輸入停止措置をめぐる日中両国の対話について「専門家のレベルで科学に立脚した議論を行っていくことになる。あらゆる機会を捉えて規制の即時撤廃を強く働きかけていく。科学的分析と事実に基づく冷静な判断、建設的な態度を促していきたい」と述べました。
日本産水産物の輸入停止措置の撤廃に向けた見通しについては、「率直に申し上げて輸入規制の解除の時期を予断できる状況ではない。政府としては国内需要の拡大、輸出先の多様化、水産関係事業者の支援などすでに用意したおよそ1000億円の基金を活用し、全力で影響の緩和につとめていく」と述べました。
一連の日程を終えて帰国
岸田総理大臣は19日午前0時10分すぎ、政府専用機で羽田空港に到着しました。
岸田総理大臣は20日、国会で審議入りする新たな経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案の審議に臨むことにしています。
●ホリエモン“政権内支持率”「下がらない」 岸田首相は「細かくやってる」 11/19
実業家のホリエモンこと堀江貴文氏(51)が19日放送のTBS「サンデージャポン」に生出演。岸田文雄首相について語った。
支持率低下、内閣の“辞任ドミノ”が起きる中、出演者の元衆院議員でタレントの杉村太蔵は「政策を大胆に改革するんじゃなくて、今ある制度を微調整して、なんとか国民の負担を下げようと。なのでわかりづらい。でも、誰がやってもこうやらざるを得ない状況なんじゃないかなって思う政策をやってる」と評した。
堀江氏も共感。「太蔵くんが言っている通り、ちゃんと細かくはやってるし。やることはやってる。微調整って意味で、過去にあった制度をうまく改革して。若手の政治家が“こういうことやりたいんです”って言ったら、ちゃんと見て。いいなと思ったらやってる。支持率下がってもそれは世間の支持率。政権内では支持率下がらない。意外と使えるなってみんな思ってる」と述べた。
「何が足りないのかって言ったら、国民に対するアピールが足りない。発信力がない」と指摘した。
●いずれ中国がしれっと取り下げる「処理水問題」 11/19
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が11月17日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日中首脳会談について解説した。
日中首脳会談、「戦略的互恵関係」を確認
アジア太平洋経済協力会議(APEC)出席のため、米サンフランシスコを訪れた岸田総理大臣と中国の習近平国家主席との首脳会談が、11月17日に行われた。経済が苦しいのだからもっと下手に出るべき中国だが、そうはしない。
宮家)中国は焦らすのです。「俺は偉いのだぞ」とね。
飯田)そういうものですか。ずっと「調整中」とされていましたが。
宮家)本当は経済が苦しいわけだから、アメリカと日本が投資を続けてくれないと困るのです。その意味で中国は、もっと下手に出るべきだと思いますが、そこは違う。
2006年に安倍元総理が訪中して打ち出した概念「戦略的互恵関係」
宮家)産経新聞で連載している私のコラム「宮家邦彦のWorld Watch」では「ありえない7つ」と書きましたが、そのうちの1つが、「処理水問題の批判をやめないだろう」ということです。大きな流れで言うと、1972年に共同声明が出て、今までに4つの文書ができた。2006年に安倍さんが1回目の首相を務めた際は、中国に行き「戦略的互恵関係」をつくりました。この戦略的互恵関係は、「中身がないところ」がいいのです。
飯田)中身がないところがいいのですか?
宮家)何だかよくわからないところがいいわけです。歴史や領土などややこしいものが入ってなく、そういう意味では「いい文書」だった。ところが、そのあと政権が代わり、2013年に安倍首相はまた中国へ行くわけです。当時、安倍さんは戦略的互恵関係に帰りたかったのですが、その間に尖閣問題が起きたでしょう。それで中国側は、いわゆる戦略的互恵関係の合意に加え、新たに領土問題や靖国問題を持ち込もうとしてきた。それでこじれて以来、大きな日中首脳レベルの会合で文書がまとまったことはほとんどないと思います。
中国とは「対話を続けること」が大事
宮家)そういう経緯があるので、これから劇的に日中関係がよくなるかと言えば、それは難しいと思います。中国側にそんな気はないのだから、あまり期待値を高めても仕方がない。不愉快ですが、彼らにとって今はアメリカとの関係がいちばん大事なのです。
飯田)中国にとって。
宮家)アメリカとの関係が上手くいけば、日本など何とでもなると思っているかも知れない。しかし、日米の絆は強いです。彼らもそれがわかっているから、何とか日米を分断しようとするのですが、我々はがっちりスクラムを組んでいればなかなか離せません。そうなれば、下手に出てもおかしくないのだけれど、いまの中国にはそれができないのです。そんなことをしたら、「日本相手になぜそんなに弱腰なのだ」と言われてしまうので。
飯田)中国国内で。
宮家)そうかも知れません。いろいろな理由があるでしょう。あまり期待を高めてはいけないけれど、決裂されても困るので、アメリカと同じように日本も中国との対話は続けなくてはいけません。
飯田)対話を続けることが大事。
宮家)我々の原理原則を譲歩する気はないけれど、中国と不必要な衝突や誤算に基づく紛争、戦闘が起こってはいけないので、そうならないように中国と対話し、お互いの立ち位置なり言い分を理解し合う。お互いに同意はしませんが、理解し合って、何とか地域の安定を図ることが大事だと思います。
これ以上の関係悪化を止める
飯田)お互いに「違いがあることを認める」ということですか?
宮家)戦略的互恵関係とはそういうことなのです。「お互いに言い合っているけれど、関係は大事だ」と考え、対話は続ける。「戦略的」という良い言葉と「互恵」という良い言葉をつないだら、「良いもの」ができたわけです。
飯田)何だかいいぞと。
宮家)そこに戻るには、相当時間が掛かるでしょう。とにかく、これ以上の関係悪化は止めなくてはいけません。
中国がしれっと取り下げることになる処理水問題
飯田)処理水について、中国側は核汚染水と呼んでいます。
宮家)これを言い出した時点で実は勝負あったわけです。日本には国際原子力機関(IAEA)が科学的なお墨付きを出していますから。我々も放水は突然進めたわけではなく、時間を掛け、タンクが限界になっても、いろいろ根回しを行って、ようやくここまできた。それに言いがかりをつけるというのは、中国が値段をつり上げようとしているとしか思えません。
飯田)値段をつり上げる。
宮家)交渉し、値段を上げて、「値引きしますよ」と言って下げるのだけれど、よく見れば「もとと同じ値段ではないか!」という、中国のいつものやり方です。処理水については、中国はそのうちしれっとと取り下げることになると思います。ただ、今回行うわけではないでしょう。また、これ以外にも日本人の拘束など、いろいろ問題があるわけですが、中国側の「処理水」に関する言い方によっては、もしかしたら将来の日中関係の方向性が見えてくるかも知れません。例えば「科学的に一緒にモニタリングしましょう」といった言い方をするなら、少し態度が変わる可能性はもある。「やはり中国は日本との関係を改善したいのだな」という考えが見えてくるかも知れません。
飯田)そのシグナルを受け取った中国国内の税関など、そういうところも少し変わるかも知れないですか?
宮家)でも、当分は無理でしょうね。
●ふざけるな!国会議員もボーナス18万7600円増…岸田政権”異常な末路” 11/19
「特別職の職員の給与に関する法律」は、14日衆院本会議で可決された。参院に送られ可決されれば、総理大臣や大臣の報酬があがる。実質賃金のマイナスが続く日本で国民の給料が上がらない中での法案に批判が殺到。岸田首相は増額分を国庫に返納すること表明した。しかし、この法案は国会議員の報酬も増えることになる、その額、年間18万7630円。ルポ作家の日野百草氏が取材した――。
何が適材適所だ。ただのに皮肉にしかなってない
「国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐ」
これは、財務省のホームページに大きく謳われているメッセージである。
その財務省、日本の経済活動の予算と税を司る「国の金庫番」とされる財務省の財務副大臣、神田憲次議員が過去、4回にわたり固定資産税などの税金を滞納、税務署からの差し押さえを4回も受けながら今年2023年9月、財務副大臣に就任した。
そのわずか2ヶ月後、これら税金滞納の発覚によりスピード辞任。事実上の更迭とも報じられている。
ちなみに神田議員、なんと税理士の資格を持っている。つまり、税金についてよく知る人物、とみなして問題ないだろう。実際に財務副大臣就任直後の会見でも「20年以上にわたって地元愛知県で税理士をやっておりました」(就任記者会見、9月19日)と語っている。
その時点では、任命権者である岸田文雄首相が日ごろから口にする「適材適所」ということか。内閣改造の際にも岸田首相は「人事については適材適所、どうあるべきなのかで考えていきたい」(2023年8月10日)と語っている。
しかしその「適材適所」、今年だけでも息子である岸田翔太郎政務担当首相秘書官、山田太郎文部科学政務官、柿沢未途法務副大臣、そして今回の神田議員と「適材適所」で選んだはずが不祥事や批判によって辞任、を繰り返している。
税理士資格保持者で税金滞納や差し押さえを繰り返していたとは…
神田議員は中京大学文学部、中京大学大学院法学研究科(修士)、愛知学院大学大学院商学研究科(修士)を経て税理士登録、2012年に初当選を果たしている。これまでも経歴を活かして財政・金融・証券関係団体委員会委員長や内閣府大臣政務官、決算行政監視委員会理事を歴任してきた。
こうした経歴、ましてや税理士資格保持者で税金滞納や差し押さえを繰り返していたとは。ましてや財務副大臣の打診を承諾している。
先の9月19日の就任記者会見では「20年以上にわたって地元愛知県で税理士をやっておりました」「税理士として、長年中小企業の実情を見てまいりました」と自己紹介の後、神田議員はこのように述べている。
「構造的な賃上げの実現、官民連携による投資の拡大、子ども・子育て政策の抜本的な強化を含めた新しい資本主義の実現の加速、防衛力の抜本的な強化を始めとした、我が国を取り巻く環境変化への対応とそれを裏付ける安定財源の確保、これらに取り組んでまいりたい」
「防衛力の強化、それから少子化対策をはじめとして、現在抱える様々な政策課題、骨太方針2023に基づきまして必要な対応はしっかり行いつつ、その上で歳入歳出両面の改革を進めることで行ってまいりたい。経済成長の実現と財政健全化の目標の達成、この目標に向けて努力していくことが大事だというふうに考えております」
「職務が忙しかった」「事務所スタッフに任せていた」の言い訳
いまとなっては、だが、故意かどうかはともかくとして、結果的にこれだけの滞納と差し押さえを繰り返していたにも関わらず、なぜ、よりにもよって財務省の財務副大臣など引き受けてしまったのか。
11月14日、神田議員は財務副大臣辞任後の会見でこう述べている。
「税金を一時滞納してしまったこと、これはですね、断腸の思いですし、お詫びを申し上げなきゃならないと感じております」
しかし、議員辞職に関しては、「反省の上に立って、一議員の立場から精進」と否定した。
また滞納を繰り返した理由については、「職務が忙しかった」「事務所スタッフに任せていた」と釈明している。
国民から増税やバラマキを指摘されて人気がまったく上がらない、そこに不祥事
身内である自民党内からも、森山裕総務会長から「異常な状態」という声が上がった。そもそも発覚の時点で筆者の知る与党関係者からは「とっととクビにしろ」と憤る声も聞いている。財務省の財務副大臣で税理士資格持ちが滞納と差し押さえを繰り返していたというのは確かに「異常な状態」だろう。
自民党系の地方議員はこう語る。
「岸田首相の支持率は20%台、国民から増税やバラマキを指摘されて人気がまったく上がらない、そこに不祥事、まして税金を扱う国税庁(外局)を持つ財務省の副大臣が滞納やら差し押さえなんて」
党内関係者からは「それが故意かわからない、だから岸田首相は様子を見たのでは」という意見もある。
「でも税理士さんですよね、さすがに身内でもかばいきれないどころか早く辞めてくれ、ですよ」
身内である森山総務会長の言う通り「異常な状態」
自民党内には「岸田首相の更迭判断が遅すぎる」という苦言もある。元革新系のベテラン議員の話。
「任命して2ヶ月で3人目の辞任を出したくなかったのだろう。さすがに任命責任は問われかねない」
かねてよりSNSを中心に国民は岸田首相を増税メガネ、ばら撒きメガネと揶揄してきたが、あまりの見る目のなさに「メガネが曇ってる」とまた辛辣な声が飛び交っている。
増税と物価高、インボイス制度の開始と一般国民の可処分所得は減り続けている。5公5民どころか6公4民ともされるこの国の税負担にサラリーマンも自営業者も苦しみ続けている。それでもみな納税し続けている。にもかかわらず財務省の副大臣が「これ」である。
そして自分の「賃上げ」だけは成功した?神田議員
ましてや減税に否定的と多くの国民から不評を買い続ける財務省、自賠責保険をユーザーである一般国民から約6000億円も借りておきながら長年返済を無視、ようやく返済し始めても微々たる返済額で完済は来世紀以降までかかるとされて総スカンになったことも記憶に新しい。2024年度から国民1人につき1000円徴収される「森林環境税」も廃止となる復興特別税のすり替えであり、意地でも減税したくない財務省の思惑では、という複数の識者の声もある。
さらに、この「異常な状態」 にもかかわらず、同日11月14日には岸田首相を始めとする閣僚らの給与アップの法案が衆議院本会議で可決した。実のところ、これに連動して国会議員のボーナスもアップする。もちろん神田議員のボーナスもアップする。先の財務副大臣就任時の「賃上げの実現」について、自分の賃上げは奇しくも実現しした格好となってしまった。
岸田内閣、身内である森山総務会長の言う通り「異常な状態」 と言わざるをえない。「国民が、明日は今日より良くなると信じられる時代を実現する」という所信表明演説の言葉、この「異常な状態」を前に、国民は本当に信じてくれるのだろうか。
●岸田総理、大誤算…いよいよ「二階」元幹事長が動きだした! 11/19
朝起きたら状況が一変していた。「総理、解散は見送るのですか!?」。私はそんなこと言ってない。いったい誰が……。しかし、もう打てる手がない。―身内が放った火で、岸田の城は燃えている。
前編記事『岸田総理の「味方」だったはずの「財務省」がまさかの裏切り…! 「年内解散」「所得税減税」を封じた「すべての黒幕」の名前』からつづく。
「徹底的にやるぞ」
言うまでもなく、その小石河連合の背後には、非主流派の大親分が控える。菅義偉前総理と二階俊博元幹事長だ。
2人は9日、森山裕総務会長をまじえ、銀座の日本料理店「川端」で会食した。二階最側近の林幹雄元経済産業大臣、二階派事務総長の武田良太元総務大臣も同席した。
会のさなか、興が乗った二階は手のひらをひっくり返す素振りを見せながら、こう呟いたという。
「徹底的にやるぞ」
二階派関係者が言う。
「政局が動き出したら一気にやり切らないとダメだという意味です。二階さんは安倍さんが辞任を表明した際も、その瞬間から動き出して、菅さんにすぐに総理になる意思を確認し、一気に周りを固めて総裁選を前にして勝負を決めてしまった」
しかし、菅を毛嫌いする麻生にとって、菅や二階の復権は許しがたいことだ。
菅の天下になるくらいなら…
財務官僚にとっても菅は天敵である。霞が関の人事を握り、官僚を脅して従わせる─その手法で菅は、官房長官在任時から絶大な力を振るってきた。
「小泉、河野、石破に加えて菅さんが裏で仕切る政権となれば、また財務省も官邸にひれ伏すハメになる。彼らも菅だけは御免だと思っているのです」(立憲民主党中堅議員)
死に体の岸田が来年、解散を仕掛けて大敗でもすれば、自民党内で「政権交代」が起こる。菅の天下になるくらいなら、いっそ先手を打って、首をすげ替えてしまえ─。利害の一致した麻生と財務省が、岸田に引導を渡そうとしている、と見る議員も少なくない。
総裁が任期途中で退く場合の臨時総裁選は、党員・党友投票がないため、派閥の多数派工作で勝負を決めることができる。
「次の総理をリリーフで選び、その勢いのまま総裁選前に解散選挙を打って勝つ、と麻生と財務省は考えているのだろう。次の総理に実績を積ませるためにも、岸田の退陣は早ければ早いほうがいい。年内がベストだ」(自民党関係者)
「オレは最後に天下をとってみせる」
この状況を一人ほくそ笑んで眺めている男がいる。茂木敏充幹事長だ。
「今回の岸田総理の解散見送りの一連の流れには、茂木幹事長も一枚噛んでいます。朝日や読売新聞に『解散見送り』と書かせたのは茂木幹事長といわれているのです。岸田総理が退陣となれば、麻生氏は、自分を総理に指名すると踏んでいるわけです」(前出とは別の全国紙政治部記者)
茂木は雑誌のインタビューや講演で「明智光秀は好きではない」と語ってきた。表向きは「岸田を裏切るつもりはない」と恭順の意を示しているように見える。しかし、その真意は「光秀と違い、オレは最後に天下をとってみせる」という野心に他ならない。
岸田退陣のカウントダウンが始まった。その足元はすでに燃え盛っている。
●IPEF首脳声明 残る「貿易」も交渉加速を 11/19
日米韓など14カ国が参加する「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」で、新たに2つの交渉分野が実質的な妥結に至った。
米国でバイデン米大統領や岸田文雄首相らが首脳会合を開き、これに先立つ閣僚会合の結果を受けて妥結を確認する首脳声明を発出した。
新たな2分野は、脱炭素などの「クリーン経済」と汚職や腐敗を防ぐ「公正な経済」だ。5月には重要物資などのサプライチェーン(供給網)分野でも合意しており、これで交渉4分野のうち3つで成果を出した。
残る貿易分野で歩み寄れなかったのは残念だが、交渉開始から1年余りで合意を積み重ねたことは評価できる。各分野とも実効性の高い協力関係を確立できるよう、具体化に向けた国内手続きなどを急いでほしい。
IPEFは、地域覇権を追求する中国への対抗軸にしようとバイデン米政権が提唱した枠組みだ。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を離脱した米国にとって、この地域への関与を再び強める意義は大きい。
日本にとってもその成果は中国の経済的威圧に対峙(たいじ)する布石となる。岸田政権は残りの交渉にも全力を尽くすべきだ。
クリーン経済分野では、脱炭素化に向けた投資を促す基金を設置し、日米などが資金を拠出する。公正な経済は、マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金対策での協力などだ。
IPEFには関税交渉が含まれず、新興国側には関税撤廃による対米輸出の拡大という恩恵がない。逆に先進国側から労働における人権保護などを求められることに反発もある。その中で新興国を引き付けるには、先進国からの投資を増やすことが有効だ。新たな合意でその流れをより確実にしたい。
残りの貿易分野はデジタル経済のルール作りなどで調整がつかなかった。国境を超えたデータ流通で、ほかならぬ米国にも自国対応を優先させたい事情がある。それが合意への推進力を落とした面もあろうが、迅速に一致点を見いだしてほしい。
中国はIPEF参加国でもあるシンガポールやニュージーランドなどとデジタル貿易関連の協定で手を結ぼうとしている。そうした中でIPEF交渉を停滞させるわけにはいかない。米国はもちろん、日本もその点を厳しく認識すべきである。
●首相と木原氏、一対一目立つ面会 パイプ役果たしていないと指摘も 11/19
9月の内閣改造・自民党役員人事後、岸田文雄首相と自民党の木原誠二幹事長代理が面会を重ねている。自民幹部では4番目に多く、とりわけ「一対一」が目立つ。官房副長官退任後も最側近として「首相の右腕」(周辺)を務めていることが数字の上でも裏付けられた形だ。ただ内閣支持率は上向かず、官邸と自民のパイプ役を果たしていないとの指摘もある。
第2次岸田再改造内閣が発足した9月13日から11月13日まで約2カ月間の共同通信の首相動静によると、自民幹部の中で面会が多いのは茂木敏充幹事長16回、麻生太郎副総裁15回、萩生田光一政調会長10回、木原氏9回と続いた。
●「次の総裁」石破氏が首位 2位河野氏、首相は5位 1/19
共同通信社の世論調査で、来年9月に予定される自民党総裁選で次の総裁に誰がふさわしいか聞いたところ、石破茂元幹事長が20.2%でトップになった。河野太郎デジタル相が14.2%、小泉進次郎元環境相が14.1%、高市早苗経済安全保障担当相が10.0%で続いた。岸田文雄首相は5.7%で5位にとどまった。
8月実施の調査に入っていなかった小渕優子選対委員長が今回加わったため単純比較はできないが、首相は4.5ポイント減り、順位も4位から下がった。
自民党支持層に限ると、小泉氏が17.3%でトップ。河野氏が16.6%、石破氏が15.8%で、順位が入れ替わった。
●首相帰国、物価高対策に全力 相次ぐ辞任、立て直し課題 11/19
岸田文雄首相は19日未明、APEC首脳会議など米国での外交日程を終え、羽田空港に帰国した。20日から経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案の国会審議に臨む。所得税と住民税の定額減税や低所得世帯への給付について理解を求めるなど物価高対策に全力を注ぎ、月内の成立を図る。不祥事で政務三役の辞任が続き、揺らぐ政権の立て直しが課題だ。
首相は「デフレからの完全脱却」を掲げ、賃上げと減税を2本柱に据える。サンフランシスコで開いた記者会見で、賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を強化すると表明。「デフレ脱却の千載一遇のチャンスをつかみ取り、物価上昇を上回る持続的な賃上げに政府一丸で取り組む」と強調した。
補正予算案には所得税と住民税が非課税の低所得世帯に各7万円を給付する費用1兆592億円を計上した。成立後、速やかに手続きを進め、年内の給付開始を目指す。
一方で政権を取り巻く環境は厳しさを増している。共同通信が11月3〜5日に実施した世論調査で、内閣支持率は28.3%と過去最低を更新した。
●高市氏が自民党総裁選へ勉強会旗揚げ〜第三極で参戦 11/19
自民党の高市早苗経済安保相が来年の総裁選を視野に自ら主宰する勉強会「『日本のチカラ』研究会」を発足させた。水曜日を定例日とし、月1回か2回のペースで会合を開くという。現職閣僚が総裁選出馬を見据えて勉強会を立ち上げるのは、岸田内閣の求心力低下を象徴する現象だ。
高市氏は無派閥ながら安倍晋三元首相の強い支持を受けて前回総裁選に出馬し、岸田文雄首相や河野太郎デジタル相と闘った。安倍氏が他界して唯一の後ろ盾を失った後、安倍支持層には根強い人気があるものの、自民党内では孤立しつつあり、来年の総裁選に出馬できるか見通せない状況だ。
勉強会の旗揚げには、党内右派を中心に政治基盤を整備し、総裁選出馬に必要な推進人を確保する狙いがある。
内閣支持率が続落して岸田政権が危険水域に入るなか、非主流派の菅義偉前首相は河野太郎デジタル担当相、小泉進次郎元環境相、石破茂元幹事長との連携を強めている。二階俊博元幹事長や森山裕総務会長も菅氏と連携することが見込まれている。
これに対し、岸田首相は支持率急落で総裁選出馬そのものに黄信号が灯っている。岸田首相の後ろ盾である麻生太郎副総裁は、首相が再選を断念した場合は来春にも電撃辞任させ、臨時総裁選に茂木敏充幹事長を担いで主流派体制の維持を図るだろう。
いずれにせよ、「麻生・茂木・岸田の主流3派vs菅・二階・河野・小泉・石破の非主流派」の対決構図となる可能性が極めて高い。
高市氏は第三極の立場といえる。総裁選に勝利することは難しくても、キャスティングボードを握ることで次期政権でも要職にとどまり、一定の発言力を得る狙いだ。
高市氏にとっての誤算は、安倍氏が他界した後の最大派閥・安倍派が高市氏を受け入れず、5人衆(萩生田光一政調会長、西村康稔経産相、松野博一官房長官、世耕弘成参院幹事長、高木毅国対委員長)の集団指導体制に入ったことだ。5人衆には、そもそも安倍氏が前回総裁選で無派閥の高市氏を支持したことへの不満があり、高市氏との関係は冷え込んでいる。
一方、5人衆は後継会長の座をめぐって激しく牽制し合っており、岸田首相が電撃辞任してポスト岸田を争う総裁選に突入した場合は、誰を担ぐかをめぐって派閥分裂に発展する可能性がある。その場合、安倍氏に近かった右派の一部が高市氏支援に回ることが期待できるだろう。安倍派が総裁選を機に分裂する可能性もあり、その場合は安倍派の一部を吸収するかたちで「高市派」が誕生する展開もありえる。
また、作家の百田尚樹氏や名古屋市長の河村たかし氏が立ち上げた日本保守党の動きも注目だ。安倍支持層をはじめ右派での期待感が高まっている。この支持層は高市支持層とも重なるため、高市氏に日本保守党入りや連携を期待する向きもある。
高市氏はただちに自民党を離れるつもりはないだろうが、次の総裁選に敗れて干されることがあれば、日本保守党入りもひとつの選択肢として浮上してくるだろう。裏を返せば、日本保守党との連携をちらつかせながら、自民党内での発言力をキープしていくとみられる。
麻生・茂木氏は連合と関係を強化し、菅氏は維新との関係を強化し、高市氏は日本保守党との関係を強化する。野党を巻き込みながら自民党内政局が激しさを増していくことになりそうだ。  
●高市早苗氏が勉強会への批判にXで反論3連投「意味が分からん」 11/19
自民党の高市早苗経済安全保障相は19日、自身のX(旧ツイッター)を更新し、15日に初会合を行った勉強会に対する批判が出ていることに反論する投稿を、3連投した。
岸田文雄首相を閣内で支える閣僚の立場ながら勉強会を立ち上げた背景には、来年秋の自民党総裁選出馬をにらんだ「仲間集め」との見方があり、批判が出る要因となっている。これに高市氏は「現職閣僚が担務外の政策を同僚議員と一緒に勉強する事の何が悪いのか、意味が分からん」などと主張した。
高市氏は「議員連盟『日本のチカラ』研究会に参加した事で、散々叩かれています。岸田内閣の政策に反対する会合ならともかく、岸田内閣で閣議決定した『国家安全保障戦略』に記された理念を掘り下げる事を目的とした議員連盟です」とし、勉強会ではなく「議員連盟」だと主張。続く投稿では「過去に、森内閣の支持率が一桁台になった時、『首班指名選挙の本会議で国民の皆様の代わりに森総理のお名前を書いた限り、与党議員には支持率が1%になっても支える義務がある』と発言し、大バッシングを受けましたが、それは今でも私の矜持です。岸田総理をお支えするべく、懸命に働いています」として、岸田首相を支えていると強調した。
さらに「先輩政治家のお通夜に出かけるギリギリの時間帯に純粋に勉強をしに来られた議員の氏名や派閥名を晒して政局扱いにした一部記者にも憤慨しましたが、テレビ番組で政府与党の批判をしたり、本会議場で総理の批判をされた方々に、まるで私が謀反を起こしたかの様な発言をして頂きたくはありません」とも投稿。「本会議場で総理の批判をされた方々」は、先月末の参院代表質問で岸田首相への苦言や疑問を連発した自民党の世耕弘成参院幹事長を念頭に置いたものとみられる。世耕氏は17日の会見で、現職閣僚の立場で勉強会を立ち上げた高市氏に疑問を呈していた。
高市氏は17日の閣議後会見で、勉強会の入会者は45人と明かした。自民党総裁選に出馬する際は20人の推薦人が必要となっている。
●総額4000万円・自民党、派閥パーティ収入不記載 11/19
自民党とカネの問題は、まさに「底なし」の様相である。
2023年9月、岸田文雄首相が代表を務める自民党広島県第1選挙区支部が、2021年に自民党柔道整復師連盟支部からの寄付金10万円を政治資金収支報告書に記載していなかったことや、自身の政党支部から500万円の寄付を受けた日付、自身の後援会と資金管理団体で650万円をやりとりした日付などが間違っていたケースが、計9件あったことが発覚した。さらに11月18日には、自民党の5つの派閥の政治団体が、政治資金パーティに20万円を超える支出をした団体の名前など、合わせておよそ4000万円分を収支報告書に記載していなかったとして、大学教授らが東京地検に告発状を提出、受理されたことが報じられた。
「政治資金規正法は、1回のパーティで20万円を超える支出をした団体や個人について、名前や金額を収支報告書に記載することを義務づけていますが、2021年までの4年間で『清和政策研究会』が約1900万円分、『志帥会』が約900万円分、『平成研究会』約600万円分、『志公会』が約400万円分、『宏池政策研究会』が約200万円分の記載漏れがありました」(政治担当記者)
11月19日放送の『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ系)に、自民党岸田派(弘池政策研究会)で座長を務める林芳正前外務大臣が出演。「指摘を受けたのであればしっかりと確認して適切に対応すべきだ。また、そうしていると報告を受けている」と語った。
またも明らかになったパーティ収入の問題に、ニュースサイトのコメント欄には《政治家のお金にまつわる疑惑や不信、不公平をほとんどの国民は感じている》《そもそも適切に管理、報告されなければいけないものを、事後発覚したものを、「適切に」って感覚が、本当にわからない》など厳しい意見が多かった。
また、実業家のひろゆき氏も自身のX(旧Twitter)で、報道を引用しながら
《総理大臣や閣僚の給料を上げて、税金から出る政党助成金でフランス旅行をして、4000万円の脱税をしても、政治家になれば無罪です。 企業が収入4000万円を申告しなかったら普通にアウトですけどね》
と指摘している。国民の政治不信は深まるばかりだ。
●自民5派閥の団体を計約4000万円分の収入不記載で告発 11/18
自民党の5つの派閥の政治団体が政治資金パーティーに20万円を超える支出をした団体の名前などあわせておよそ4000万円分を収支報告書に記載していなかったとして告発状が提出され、東京地検特捜部が5つの派閥の団体の担当者に任意の事情聴取を要請し、聴取を進めていることが関係者への取材でわかりました。
自民党の5つの派閥の政治団体、「清和政策研究会」、「志帥会」「平成研究会」、「志公会」、「宏池政策研究会」をめぐっては、おととしまでの4年間の収支報告書にそれぞれが主催した政治資金パーティーに20万円を超える支出をした団体の名前や金額などあわせておよそ4000万円分を記載していなかったとして、大学教授が5つの派閥の会計責任者らに対する政治資金規正法違反の疑いでの告発状を東京地方検察庁に提出しています。
この問題で東京地検特捜部が5つの派閥の政治団体の担当者に任意の事情聴取を要請し、聴取を進めていることが関係者への取材でわかりました。
政治資金規正法は1回のパーティーで、20万円を超える支出をした団体や個人について名前や金額を収支報告書に記載することを義務づけていますが、告発状では「清和政策研究会」がおよそ1900万円分、「志帥会」がおよそ900万円分、「平成研究会」がおよそ600万円分、「志公会」がおよそ400万円分「宏池政策研究会」がおよそ200万円分のパーティー券収入を記載していなかったとしています。
特捜部は収支報告書が作成された経緯や派閥の政治資金パーティーをめぐる資金の流れなどについて調べを進めるものとみられます。
 11/20

 

●「政治団体が適切に対応」自民5派閥パーティー収入4000万円未記載告発 11/20
自民党の5つの派閥の政治団体が、政治資金パーティーの収入およそ4000万円分を収支報告書に記載していなかったとして告発されている問題で、岸田首相は20日、首相官邸で記者団に対し、一般論とした上で、「政治資金の収支報告等において指摘があるならば、それぞれの政治団体において、責任を持って点検し、適切に対応するべきものである」と述べた。
さらに、「それぞれの政治団体において対応しているものであると考える」と強調した。
自民党の清和政策研究会(安倍派)、志帥会(二階派)、平成研究会(茂木派)、志公会(麻生派)、宏池政策研究会(岸田は)は、2021年までの4年間の収支報告書に、主催した政治資金パーティーの収入のうち、およそ4000万円分を記載していなかったとして、派閥の会計責任者らに対する告発状が提出されている。
関係者によると、東京地検特捜部は、5つの派閥の担当者や関係者から任意で事情を聴いているという。
●日米株価が再逆転する「世界インフレ時代」突入へ 11/20
「世界は『大乱の時代』に入った」と主張するのは、国際投資アナリストの大原浩氏だ。1990年前後の日本のバブル崩壊、ベルリンの壁崩壊、旧ソ連崩壊以来、30年以上続いた「低インフレ(デフレ)・低金利(資金過剰)」時代が終焉(しゅうえん)し、今後30年間はインフレの時代が来ると指摘する。
「現在の(急激な)インフレは一時的現象だ」と「デフレ脳」から脱却できていない意見も見かけるが、明らかに世界は「インフレの時代」へと突入している。
その証拠は、昨年2月24日から続くロシアのウクライナ侵攻や、今年10月7日に始まったイスラエルとガザの戦闘だ。戦争は「軍事費」と「(生産設備などの)破壊による供給の縮小」の2つの側面で、大きなインフレ要因だ。この「地政学リスク」が台湾など他の地域に拡大することも現実味を帯びている。
それだけではない。日本の合計特殊出生率は「1・26」で、少子高齢化が進んでいるが、一人っ子政策を続けてきた中国は、同国メディアのデータによると「1・09」だ。韓国は「0・78」と深刻な状況だ。
世界的に見ても人口増加は頭打ち傾向であり、物やサービスを供給する「生産年齢人口」は減少に向かっているといえる。それに対して高齢者ら非生産年齢人口はそれほど減らない。
したがって、供給が減り、需要が増えることで生じるインフレは少なくともこれから30年の世界を考えるうえで大前提となる。そして、インフレが「安定した世界秩序」を破壊すると考える。
米ソ両大国の対立による「冷たい戦争」が続いたが、ソ連が崩壊した1991年以降は、「米国の一極支配」が続いた。その間、世界は低インフレ・低金利の安定した時代を経験した。
日本はその恩恵をほとんど生かせなかった。日本の製造業は生産効率が高いがゆえに、物やサービスが売れないデフレ時代における生産調整が難しかった。また、物価が下がるので次々と新製品を買い替えることができるデフレ時代には、長く使える良いものを目指す「日本品質」は大きな武器にならなかった。
インフレ時代には全てが逆転する。物やサービスの供給が不足するのであるから、日本の生産性の高さや「日本品質」が強力な武器になる。それに対して、低インフレ・低金利の恩恵を受けてきた大半の国々は苦境に立たされる。特に、低金利で大量に供給される資金で「マネーゲーム」を続けてきた米国のバブル崩壊は近いと考える。
1989年の世界の株式時価総額ランキングでは、トップのNTTを始め、日本の都市銀行(メガバンクの源流)が上位を独占していた。現在アップルを筆頭に米国企業が上位を独占している姿は既視感がある。
米テスラの時価総額はトヨタ自動車を大きく上回っているが、それほど遠くない将来に両者の関係は逆転してもおかしくない。同様に、日経平均株価とダウ工業株30種平均の「ポイント数」が逆転することもあり得る。
もちろん、米国をはじめとする世界経済の混乱は日本にもおよび、一時的な連れ安もあるだろう。ITを中心としたベンチャーバブルに踊った日本企業も淘汰(とうた)されるかもしれない。さらには、岸田文雄政権の体たらくを見て、日本の政治や年金、保険、財政に不安を感じる人もいるだろう。
しかし、それでも「優良な日本企業」は困難を乗り越えて発展していくと思う。筆者だけではなく、投資家で世界的な富豪のウォーレン・バフェット氏やその相棒のチャーリー・マンガー氏も「優良な日本企業」を信頼している。
●「こういうの言えばいいんですよ」 岸田政権が抱える3つの爆弾を静める 11/20
11月20日の「おはよう寺ちゃん」では、月曜コメンテーターで経済評論家の上念司さんと番組パーソナリティーの寺島尚正アナウンサーが、岸田政権を巡る「政治とカネ」の3つの問題について意見を交わした。
恒久措置をやんなきゃダメです!
政府は今日、新たな経済対策を裏付ける2023年度補正予算案を国会に提出する。低空飛行が続く岸田政権の浮揚を懸けた経済対策に関して、明日、明後日には岸田文雄首相と全閣僚が出席する基本的質疑が行われる。自民党5派閥のパーティー収入の過少記載問題、柿沢未途前法務副大臣を巡る公選法違反(買収)疑惑、東京五輪招致に関する馳浩石川県知事の内閣官房機密費流用発言と、「政治とカネ」の3点セットで野党から集中砲火を浴びるのは必至だ。
「こう、スポーツニッポンに出ています。」(寺島アナ)
自民党5派閥のパーティー収入過少記載問題については、東京地検特捜部が各派閥の担当者から任意で事情を聞いていることが、おととい関係者の取材で分かった。告発状によると、5つの団体の会計責任者らは、平成30年から令和3年の政治資金収支報告書で、東京都内の政治団体などに販売したパーティー券の収入を記載しないなどして収入を合わせて4000万円少なく記入したとしている。
「これは上念さんどうとらえますか?」(寺島アナ)
「読売新聞の世論調査でもだいぶ支持率が低下して20%台ということで、読売基準で見た青木率は、もう60%切ってるんですよ。そうすると内から外から岸田降ろしの圧力がかかってくるということでまさに弱り目に祟り目と。これは自ら“ババ” を引きに行っちゃいましたね。あんな出来もしない減税なんて口走って期待値を上げて、自らその期待を裏切るようなことをやって。だから甘く考えてたんでしょうね。一時減税でもなんでも減税って名前が付いたものをやればマスコミがそれを減税だと報道して、国民はそれで喜ぶと。そんな“毛ばり”をぶら下げても国民は賢くて「いやこれ減税してもまたどうせ上げるんでしょ」ってみんな思ってるので、やっぱ恒久措置をやんなきゃダメですよ。そういう意味で言うと、新NISA は恒久投資減税ですよ。そういうの言えばいいんですよ。」 (上念氏)
●ビートたけし、国民年金「月6万円、めまいがして倒れた」 11/20
ビートたけし(76)が、11月19日放送の『ビートたけしのTVタックル』で、日本の年金制度について語った。
たけしは「オレ、国民年金って(通知書を)びーっとはがしてみたけど、1カ月に6万円だったもん。めまいがして倒れた。(会社員などが加入する)厚生年金とか、ないからね、結局」と告白。だが、パトリック・ハーランから「多くの国民は、たけしさんに(年金は)給付しなくてもいいと思っている」とツッコミを入れられた。
また、たけしは「リタイア」について「欧米はとくに、いかに若くしてリタイアするかで仕事をして、あとは悠々自適で、ゴルフをやったりして、マイアミかなんかに住むのが夢だもんね」と指摘。さらに「オレはずっと言ってるのは、リタイアしたときには、なに(か新しいことを始めようと)したってどうせ(どうすればいいか)わからないんだから、現役のときに『辞めたら、これがやりたい』というのを早めに作っとかなきゃだめだよ」と話していた。
年金について語ったたけしにSNSではさまざまな意見が寄せられた。
《(年金心配しなくても)たけしさん、生活できる収入あるでしょうが(笑)。》
《どうせ年金給付されないんだから安楽死整備してくれ》
《年金についてTVタックルで話してるけど、物価高に対して年金の額の価値ってめちゃくちゃ下がってる気がするし、それなら年金分をNISAとかで自分で入れられる制度を作って欲しいな》
「たけしさんは、11月12日放送の同番組では、岸田政権が『困窮世帯への7万円給付』『課税世帯への4万円減税』を打ち出したことにコメントしていました。
『はたして、国の経済対策によって我々の生活は、いまより豊かになるのだろうか』というナレーションに対し、たけしさんが『(豊かに)なるわけねえよな。4万円じゃあな』とダメ出し。
また、共演する大竹まことさんは『俺はいま、年金6万5000円もらってるけど、電気代にも足りません。俺たちが若いときに払った年金は、俺たちのために使ってないんだよ』と苦言を呈していました」(芸能ライター)
たけしが納得できる生活をするには、後期高齢者となってもまだまだ仕事をし続けなければならないということか。
●岸田首相による「増税メガネへの過剰反応」の深刻さ… 11/20
岸田内閣は11月2日、所得税・住民税を減税し、低所得世帯へ給付を行う経済対策を閣議決定した。
防衛費増額に伴う法人税や所得税の増税が控える中、岸田文雄首相が逆行するように映る減税に踏み切った背景を、自民党の有力者の一人である遠藤利明前総務会長はこう指摘する。「『増税メガネ』と言われることに少し過剰反応している」。確かに、交流サイト(SNS)などでは首相を増税メガネと呼んでやゆする声が絶えない。
自民党関係者はこうした「増税イメージ」の広がりに危機感を募らせている。過去に税金を巡る批判が退陣につながった政権は少なくないからだ。「税は鬼門だ。批判が高まれば命取りになる」
岸田首相の現状はどうなのか。専門家は「迷走している」と指摘し、厳しい見方を示す。「税で国民の不信を買ってしまうと深刻だ。挽回のハードルは高い」(共同通信=中田良太)
「増税メガネ」の由来
「どんなふうに呼ばれても構わない。やるべきだと信じることをやる」。首相は11月2日の経済対策決定後、記者会見で増税メガネという自身の「あだ名」について問われ、こう強調した。時折笑みを浮かべて熱弁を振るう姿は、自分に言い聞かせているように見えた。
そもそも首相は、なぜこんなあだ名を付けられたのだろうか。
きっかけは「サラリーマン増税」と言われている。岸田政権は6月に決定した経済財政運営の指針「骨太方針」に、同じ会社に長く勤めるほど退職金への課税が優遇される現行制度を「見直す」と明記。首相の諮問機関である政府税制調査会は、中期答申で退職金課税に関する検討を求めた。
さらに、この答申が現在は一定額が非課税となる通勤手当に触れていたことで、課税されるのではないかとの警戒感がインターネット上で広がった。首相は「全く考えていない」と火消しに追われた。
防衛増税の方針なども相まって「増税批判」が強まる中、首相は10月26日、所得税減税などを来年6月に実施すると表明した。翌27日の衆院予算委員会で、来年度からの防衛増税開始を見送る考えも示した。
消費税で憂き目に遭った自民党政権
首相が「過剰反応」するのも無理はない。税負担増加を巡る国民の批判は、しばしば自民党政権に大ダメージを与えてきた。国民にとって最も身近な税金の一つである消費税は、その最たる例と言える。
憂き目に遭った一人に、首相が会長を務める党内派閥「宏池会」の先輩で、1978〜1980年に政権を担った大平正芳元首相がいる。
オイルショックなどによる国の財政状況悪化を踏まえ、自民党は1978年、税率5%を課す「一般消費税」を1980年から新設する方針を決めた。大平内閣は1979年1月に導入準備の実施を閣議決定した。
世論の反発は強く、大平首相は10月に行われた衆院選の期間中に撤回を表明した。だが自民党の獲得議席は当時の定数の過半数に届かなかった。衆院選の不振は党内対立を増幅させ、1980年5月に再度衆院を解散すると、大平首相は衆院選公示後の6月12日に急死した。
1982〜1987年に約5年間の長期政権を築いた中曽根康弘元首相も痛い目を見た。
1986年の衆参同日選で「国民が反対する大型間接税と称するものはやらない」などと遊説で発言し、圧勝した。だが1987年2月、消費税に類似する「売上税」の創設を盛り込んだ税制改革関連法案を国会に提出。これに反発が集中し、3月の参院岩手選挙区補欠選挙で自民党候補は社会党候補に敗れた。国会は大荒れとなり、売上税は廃案に追い込まれた。
消費税を導入したのは竹下登元首相だ。1989年4月に税率3%でスタートしたが、国民の厳しい目にさらされた。リクルート事件による政権批判も重なり、竹下内閣は6月に総辞職した。
翌7月、後継の宇野宗佑首相の下で臨んだ参院選は、獲得議席が改選前69議席からほぼ半減の36議席に落ち込む大敗に終わった。責任を取って宇野首相は退陣。首相在任はわずか69日だった。
「消費増税」はたびたび政権を苦しめた
消費税が打撃となったのは自民党政権だけではない。
1993年に非自民連立政権を樹立した細川護熙元首相は、唐突に掲げた「国民福祉税」構想があだとなった。
これは税率3%の消費税に代わり7%の「国民福祉税」を導入するとの内容だった。在任中の1994年2月に突然発表すると、連立与党内でも批判が殺到し、結局1週間足らずで白紙撤回。自身の借入金問題なども影響し、求心力が低下した細川首相は4月に辞意を表明した。
民主党政権は、消費税増税で党が分裂した。2012年3月に野田佳彦内閣は税率を8%、10%と段階的に引き上げることを盛り込んだ「社会保障と税の一体改革関連法案」を国会に提出。野党だった自民党、公明党との3党合意を経て、8月に成立した。
法案に反発した小沢一郎氏らは民主党を離れ、造反者も出た。11月に野田首相が衆院を解散すると、12月の衆院選で民主党は政権から転落した。
減税も退陣の要因に
減税や給付を打ち出した政権が国民に支持されてきたかと言えば、必ずしもそうではない。退陣の要因になった例はある。
1996年〜1998年に政権を担った橋本龍太郎政権は、1998年7月の参院選前に所得税と住民税の減税を打ち出した。橋本首相は当初、この減税を「恒久減税」とする意欲を見せていた。だが、その後発言がぶれ、政権内の迷走も目立った。
結局、参院選は改選前の60議席を大きく下回る44議席獲得にとどまり、橋本首相は投開票の翌日に退陣を表明した。
2007年〜2008年の福田康夫政権は、所得税・住民税の定額減税を単年度限りで行う総合経済対策を策定した。だが後を継いだ麻生太郎首相は1人当たり1万2千円(65歳以上と18歳以下は2万円)の「定額給付金」に転換。野党から「ばらまきだ」と批判された上、高額所得者の受け取りなどに関する麻生首相の発言が迷走を重ねたことから、国民に広がっていた政権不信に拍車がかかった。2009年衆院選で自民党は民主党に政権を奪われた。
「首相はこれ以上ぶれてはいけない」
過去を振り返れば、冒頭の自民党関係者の言葉通り、税は鬼門と言える。対応を誤った政権は、退陣や選挙大敗といった散々な目に遭ってきた。
岸田首相を取り巻く状況は厳しさを増している。11月2日に決まった経済対策を巡っては、共同通信が直後の11月3〜5日に実施した世論調査で62・5%が「評価しない」と回答。岸田内閣の支持率は前回調査(10月14、15日)から4・0ポイント下がり、政権発足以来最低の28・3%に落ち込んでしまった。
専門家は今回の減税判断をどう見ているのか。東京大の内山融教授(日本政治・比較政治)は、増税イメージが広がった後に唐突に打ち出した感があり「政権運営がダッチロールのような状態になっている」と指摘する。「迷走を国民に印象付けてしまった」
その上で「税を巡る行動のぶれは、信頼喪失に直結する。防衛増税に関する説明不足や、マイナンバーカード問題などで募った国民の不信感が助長された」と分析。神田憲次財務副大臣の税金滞納による辞任を問題視し「税関連で政務三役の不祥事まで起こった。国民は岸田政権に呆れているだろう」と批判した。
首相がこの状況から浮上するにはどうしたら良いのか。内山教授は険しい表情で語った。「少なくとも首相はこれ以上、税に関する行動がぶれてはいけない。信頼回復はかなり難しいだろう。一気に支持を取り戻す良案は思い付かない。外交などで成果を重ね、支持を広げていくしかないのではないか」
●岸田内閣の支持率、軒並み20%台に下落 各社世論調査 11/20
岸田文雄内閣の支持率が報道各社の11月の世論調査で軒並み20%台に下がり、2021年10月の政権発足以降で最低水準となった。所得税減税や低所得者向けの現金給付を含む総合経済対策への低評価や相次いだ政務三役の辞任が影響した。
読売新聞が17〜19日に調査した内閣支持率は前回から10ポイント下落し、政権発足後で最低の24%となった。2割台は初めて。不支持率は62%と前回より13ポイント上昇した。
朝日新聞が18〜19日に実施した調査は、内閣支持率が25%だった。前回調査から4ポイント下がった。不支持率は65%で最高だった。
読売と朝日の調査は政府が経済対策に盛り込んだ所得税減税と現金給付を「評価しない」がいずれも6割を超えた。「評価する」は2割台にとどまった。
他の報道機関も傾向は同じだ。10〜12日のNHKによる調査は内閣支持率が前回より7ポイント低い29%と、政権発足以来、初めて30%を下回った。11〜12日に実施した産経新聞の世論調査も岸田政権下で過去最低の27%だった。
読売新聞によると自民党の政党支持率は28%と前回より2ポイント下がった。故青木幹雄元官房長官はかつて、内閣支持率と与党第1党の政党支持率を足した数字が50を下回ると政権運営が危うくなると指摘した。読売と朝日はこの数字がいずれも52となっている。
臨時国会の開会から1カ月足らずで政務三役が3人相次いで辞任したことも政権のダメージにつながったとみられる。読売で「政権運営にどの程度影響があるか」の回答で「大いに影響がある」と「ある程度影響がある」は合計68%を占めた。
10月26日に文部科学政務官だった山田太郎氏が女性との不適切な関係を報じられて辞任した。5日後の31日には柿沢未途氏が東京都江東区長側の公職選挙法違反を巡り法務副大臣を辞めた。3人目は税金滞納問題を抱える神田憲次財務副大臣で、岸田首相が11月13日に事実上更迭した。
●内閣支持率、20%台で自民政権復帰後で最低−朝日、読売、毎日調査 11/20
岸田文雄内閣の支持率は、先週末に実施された朝日、読売、毎日の主要各紙の世論調査でいずれも20%台となり、2012年12月に自民党が政権復帰して以来の最低を更新した。国会での今年度補正予算案の審議を控え、政権運営は厳しさを増す。
内閣支持率は読売新聞が前回10月調査から10ポイント低下の24%となったほか、毎日が21%、朝日が25%だった。毎日は調査方法が異なるため単純比較はできないとした上で、旧民主党・菅直人政権末期の2011年8月に記録した15%以来の低い水準という。
政界では内閣支持率が30%を割り込むと政権運営に影響が出る「危険水域」に入ったとみなされる。アジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて約1年ぶりの日中首脳会談も実現させた岸田首相だったが、支持の回復にはつながらなかった。来年秋の自民党総裁選まで1年を切る中、下落傾向に歯止めがかけられなければ、党内で「ポスト岸田」に向けた動きが活発化する可能性がある。 
松野博一官房長官は会見で、「国民の声を真摯(しんし)に受け止め、政府としての対応に生かしていくことが重要だ」と述べた。支持率低下の一因とみられる3人の副大臣・政務官が辞任した問題については「重く受け止め、一層の緊張感を持って職務に当たっていく」と語った。
経済対策への評価低く
国会では20日午後に鈴木俊一財務相の財政演説が行われ、今年度補正予算案の審議が始まる。ただ、定額減税などを盛り込んだ経済対策に関しては読売の調査で「評価しない」が66%、「評価する」は23%にとどまり、こうした不満が支持率下落に拍車をかけたと同紙は分析している。
鈴木財務相は同日の閣議後会見で、世論調査では「大変厳しい数字が出ているなというのが率直な思い」と述べた。その上で、「一喜一憂することなく、先送りできない課題にしっかり対応していくのが総理の基本的な考えだ」と語った。国民には減税を含む経済対策の意義や狙いが十分伝わっておらず、国会審議を通じてしっかり説明するとした。
西村康稔経済産業相も会見で、経済政策について「多くの皆さんに理解、支持いただく方が望ましい。内容をこれからも丁寧に説明をし、予算をうまく活用していただけるように取り組んでいきたい」と述べた。
●岸田内閣支持率24% 最低を更新「かなり追い込まれ手の打ちようがない」 11/20
NNNと読売新聞が行った世論調査で、岸田内閣の支持率が24%と、政権発足以来、最低を更新しました。中継です。
支持率は前の月より10ポイント急落しました。ある政府関係者は「政権はかなり追い込まれていて、手の打ちようがない」と政権運営の厳しい状況を語っています。
支持率低下の原因について、別の首相周辺は「“人事”と“減税”だ」と分析しました。相次ぐ政務三役の辞任に加え、所得税などの定額減税が「選挙対策に見える」などと不評を買い、支持率低下につながったと分析しています。別の首相周辺は「しばらく耐えるしかない」と述べています。
一方、自民党内では、ある閣僚経験者は「年内で“岸田おろし”が始まってもおかしくない。支持率が10%台まで落ちたら耐えられない」と政権運営を不安視しています。
こうした中、20日から補正予算案の審議がスタートします。
立憲民主党・安住国対委員長「一過性の支持率の下落ではなくて、下がった支持率が定着したということも言えるのかなと思っています」
野党側は新たに浮上した、自民党の派閥の政治団体が政治資金パーティーの収入を過少記載したとされる問題を巡り、追及を強める構えです。
一方、立憲民主党のある議員は「支持率の低さは麻生政権末期と同じだが、立憲民主党の支持率も上がってこない」と野党側への支持が伸びない苦しさも指摘しています。
●減税など補正予算案審議へ 派閥の“政治とカネ”に危機感 11/20
国会では20日午後から、今年度補正予算案の審議が始まります。所得税減税などの経済対策や政治とカネなどを巡り、論戦となります。
岸田内閣の支持率が軒並み政権発足後最低の20%台に落ち込むなか、野党は追及を強める方針です。
立憲民主党 安住国対委員長「小手先の所得税減税を行って、それが選挙目当てで見透かされてるわけだから、私はこういう補正予算案は撤回すべきだと思っています」
鈴木財務大臣「今回の経済対策の意義、そして狙い、これが心に響かないというんでしょうか。そういう状況になっている」
岸田総理としては「30年続いたデフレから脱却する千載一遇のチャンスだ」として理解を求めたい考えです。
ただ週末、政権だけでなく自民党全体を揺るがしかねない「政治とカネ」の問題が表面化しました。
政治資金パーティーの収入を過少に記載したとの告発を受け、東京地検特捜部が自民党の主要5派閥の担当者から任意で事情を聴いています。
自民党のベテラン議員は「これは氷山の一角に過ぎない」と各議員への広がりを懸念しています。
自民党内の危機感は高まっていて「さらに風当たりが強まる」「機能不全が続くだろう」などの声が漏れてきます。
●補正予算案審議入り 正念場の岸田政権 11/20
政府の新たな経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案が、11月20日、国会で審議入りします。
Q)岸田総理大臣が土俵際まで押し込まれていますね。
A)NHKの11月の世論調査で、岸田内閣の支持率は、発足以降、最も低い29%。
「危険水域」とも指摘される20%台まで落ち込みました。
岸田総理大臣にとっては、状況の打開が課題で、国会審議では、2つの「説明責任」がカギを握っています。
Q)それは何ですか。
A)1つは、過去に税金を滞納していた財務副大臣をはじめ、3人の副大臣と政務官が不祥事で相次いで辞任したことについて、任命責任の説明を十分に果たせるかです。
野党側は「全く適材適所でなかった」と批判し、追及を強める構えで、与党内からも「極めて異常な状態」という指摘が出ています。
国民が納得できる説明を行い、信頼回復につなげられるかが問われています。
Q)もう1つの「説明責任」とは何ですか。
A)減税と給付が柱の経済対策の必要性や効果についてです。
岸田総理大臣は、2024年の夏に所得の伸びが物価上昇を上回る状態をつくるために必要な対策だと強調します。
ただ、「国民に還元する」とした税収の増加分については、鈴木財務大臣が「すでに支出していて、減税を行えば、国債の発行額が増える」という認識を示し、ちぐはぐな印象も受けます。
野党側からは「事実と違うので、『還元』の発言を修正すべきだ」という批判が出ています。
「防衛力強化や少子化対策などの財源確保も必要なのに、なぜ今、減税なのか」という国民の疑問も完全には解消されていないのが実態です。
岸田総理大臣は、年内の衆議院の解散を見送りました。
国会審議で説明を尽くし、支持を回復させ、解散に打って出るタイミングをうかがいつつ、2024年秋の自民党総裁選挙での再選につなげたいのが本音だと思います。
態勢の立て直しに向けて、今が正念場と言えそうです。
●日経平均がバブル後の最高値更新 一時3万3800円台 33年ぶり高値水準 11/20
日経平均株価が取引時間中として、バブル後、33年ぶりの最高値を更新。
週明けの東京株式市場は、取引開始直後、売りが優勢だったが、堅調な決算を受け、買い注文が広がった。
平均株価は一時3万3,800円台をつけ、取引時間中としてバブル後の最高値を更新し、33年ぶりの高値水準となった。
市場関係者からは、「アメリカで長期金利が低下し、主要な株価指数が上昇していることも安心感につながっている」との声も聞かれる。
20日の東京株式市場の日経平均株価、午前の終値は、先週末17日に比べ、22円79銭安い、3万3,562円41銭、TOPIX(東証株価指数)は、2,383.67だった。
●財源の3分の2は借金、基金に4兆円 今年度補正予算案を国会に提出 11/20
政府は20日、物価高への対策などを盛り込んだ今年度補正予算案を開会中の臨時国会に提出した。一般会計の歳出は13兆1992億円で、歳入の67%を国債(借金)でまかなう。21日から始まる衆参の予算委員会で、補正予算の是非を問う与野党の論戦が交わされる見込みだ。
補正予算案には、住民税非課税世帯向けの1世帯あたり7万円の給付に1兆592億円、今の価格抑制策を来年4月まで延長するガソリン、電気・ガス代の補助に7948億円を使う。全体の約3分の1にあたる4・3兆円を基金に充てて、半導体メーカーの支援や宇宙開発などに使う。減税規模3兆円台半ばを想定する来年6月に実施する1人4万円の定額減税(所得税と住民税)の財源は、補正予算には含まれていない。
減税や現金給付は、世論の評価が高くはない。岸田政権にとっては、相次ぐ副大臣・政務官の辞任もあって支持率が低迷する厳しい環境下での予算審議となる。
●「定額減税」で「住宅ローン減税」が“大幅減額”も “制度設計”焦点に 11/20
政府が実施する定額減税をめぐり、今の仕組みのままだと「住宅ローン減税」などの利用者に影響が出る可能性があることがわかった。
今後の制度設計が焦点になる。
定額減税では、1人あたり所得税で3万円など、あわせて4万円が減税される。
一方、住宅ローン減税は、ローンを組んだ購入者が減税してもらえる仕組み。
年収650万円の4人世帯の試算では、本来の所得税がおよそ14万円で、14万円のローン減税を受ける場合、全額が還付され戻ってくるが、先に定額減税が実施されると所得税額は2万円に減って、還付される税額も2万円にとどまり、想定していた効果が十分得られないと感じるケースが出てくる可能性がある。
また、「ふるさと納税」でも減税分が減ったり、自己負担分が増える可能性が指摘されていて、制度設計の行方が焦点になる。
●内閣支持率低迷 松野官房長官「真摯に受け止める」 11/20
毎日新聞が18、19の両日実施した全国世論調査で岸田内閣の支持率が政権発足後最低の21%となるなど最近の世論調査で支持率が低迷していることについて、松野博一官房長官は20日の記者会見で「世論調査の数字に一喜一憂はしない」としたうえで「世論調査に表れた国民の声を真摯(しんし)に受けとめ政府としての対応に生かしていくことが重要」と述べた。
また不祥事を受けて副大臣や政務官の辞任が相次いだことについて「一連の辞任を重く受け止め一層の緊張感を持って、職務にあたっていく」と発言。「引き続き政府の取り組みを丁寧に説明するとともに、先送りできない課題に一つ一つ結果を出していけるよう全力で取り組んでいく」と述べた。
●「国民に尊敬されない総理」は「単独過半数割れが見えてきた」と焦ってる 11/20
表向き平静を装っているが
世論調査をするたびに内閣支持率が下がる岸田政権。政務3役が不祥事絡みで相次いで交代し、保守系の牙城とされた首長選でまさかの敗北と逆風が続き、いよいよ「このまま選挙をすれば自民党は単独過半数割れする」との声が上がり始めた。
「11月12日に投票が行われた東京・青梅市長選は自公が推薦する現職と国民民主と都民ファーストが推薦する新人とがぶつかり、現職が破れました。選挙中からもしかしたら厳しい結果が出るかもしれないとささやかれていましたが、本当にそうなってしまって関係者は一様にショックを受けています」と、政治部デスク。
「岸田文雄首相や側近らは表向き平静を装っているようですが、本心では焦りまくっているはずです。青梅市は東京25区に組み込まれていますが、ここは自民が民主に政権を明け渡すことになった2009年の衆院選でも自民候補が対立候補にダブルスコアで勝利しています。そんな保守系の牙城での敗北は想定外で、自公の関係者は慌てて敗因分析をしていましたが、なかなか深刻なようですね」(同)
脚本家でも書けないシナリオ
「2009年の政権交代の頃までは、国民の間で“自民に失望した、民主に一度やらせてみたい”といった雰囲気が醸成されていたことがありました。が、今は自公政権への失望はあっても民主や他の野党にやらせてみたいという空気はありません。それだけに敗因分析が難しいようです」(同)
表向きには、政務3役が不祥事絡みで相次いで交代したということがあるのだろう。
「それぞれが各々の担務に絡んだスキャンダルでしたから悩ましい事態です。特に神田憲次財務副大臣の場合は、税理士資格を持ちながら代表取締役を務める会社が税金を9度も滞納し、土地や建物の差し押さえは4度にわたり、立て替えてくれていた知人に返金されていないとの報道もありました。“脚本家でも書けないシナリオだよなぁ”とボヤいている閣僚経験者がいましたね(笑)」(同)
そんな中、自民党内からは「このまま選挙をすれば自民党は単独過半数割れする」との声が上がり始めたという。
国民からの尊敬
「自民党の衆院勢力は現在262。イメージ的に290くらいあると思っている人も割といるのではないでしょうか? 過半数は233なので30議席減らすと単独過半数割れとなります。公明は現在32議席で、こちらも支持率が低下傾向であるのに加えて支持母体・創価学会の池田大作名誉会長が死去したことが何より大きく、今後の選挙では苦戦を強いられる可能性が高い。仮に25議席程度とすると、自公合わせても常任委員会の全てで委員長を出したうえで過半数の委員を確保できる絶対安定多数(261)を確保できない可能性があります」(同)
それが現実となれば岸田首相の退陣は避けられないわけだが、自民党内ではそうならないための「選挙の顔」選びがうごめき始めてもいる。
「このまま解散できない状況が続けば、来年9月の自民党総裁選で総裁に選ばれた人が次の衆院選を戦うことになりそうです。それまではまだ時間もあるので、岸田政権の方に支持の揺り戻しが起こる可能性はもちろんあります。ただ、永田町関係者との会話の中でよく出てくる話として、“岸田首相が国民から支持されていないという以上に国民から尊敬されていないのでは?”というものがあるんです」(同)
「あなたは今の総理大臣を尊敬していますか?」……そういう項目が世論調査に組み込まれているなら、国民からの評価の低さがよりクリアになってしまうのではないかという指摘だ。もちろん歴代首相とて、万人に尊敬されていたとは言えないのだが、岸田総理の場合、熱い支持者のようなものが見えづらいという点は否めない。かの麻生太郎首相(当時)ですら、一部には熱烈なファンを抱えていたのだ。
裏返せば、目に見えている数字以上に岸田政権は国民から支持されていないということになるのだろう。
●維新代表、補正予算案を批判 11/20
日本維新の会の馬場伸幸代表は20日の党会合で、2023年度補正予算案について、「非常に受けが悪く、(内閣)支持率もだだ下がりだ」と批判した。予算案審議に関しては「スキャンダルを追及したり、揚げ足を取ったりするのではなく、政権与党ならどうするかの観点で議論を挑んでほしい」と強調した。
●岸田政権の「レームダック化」が止まらない...!支持率低下、首相の末路 11/20
「危険水域」をたどる岸田政権
各種の世論調査で内閣支持率が低下している。地方選挙でも敗北が目立つなか、党内にポスト岸田をめぐる動きが出てくるのか。
最近の世論調査は以下の通りだ。
共同通信が11月3〜5日に実施した世論調査では岸田内閣の支持率は先10月から4.0ポイント下落し28.3%となった。JNNが11月4、5日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月から10.5ポイント下落し29.1%となった。
FNNが11、12日に実施した世論調査では内閣支持率は先10月から7.8ポイント下落し27.8%となった。NHKが10〜12日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月から7ポイント下落し29%であった。
時事通信が10〜13日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月から5.0ポイント下落し21.3%、毎日新聞が18,19日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月より4ポイント低下し21%となった。
また、読売新聞が17〜19日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月より10ポイント低下し24%となった。
いずれも、内閣支持率30%割れと同じような結果となり、岸田政権はかなり危険水域になっている。
ちなみに、内閣支持率と自民党支持率を合算した数字は「青木率」として知られ、かつては青木率が50%を割ると内閣は倒れるとされていた。
NHKの調査では下図のとおりだが、まだ自民党支持率が高いので、それほどの危険水域でないが、自民党支持率が下がるとさらに不味いだろう。一部の世論調査ではその兆候もある。
財務省がハシゴを外した
昨年7月の参院選は、安倍晋三元首相の非業の死をうけた「弔い選挙」の様相もあり、岸田政権は勝利し、2025年まで国政選挙はない「黄金の3年間」といわれた。
今年5月の広島サミットまでは岸田政権は「サミット成功」と明確な目標もあり、やりたいことが外からもよく分かった。しかし、サミット後、今となっては何をやりたいのかさっぱりわからない。
岸田首相は、やりたいことは何かと問われて「人事」と答えたことがあるくらいで、結局どんな政策をやりたいのか見えにくい人だが、サミット後はその感が特に強い。
何か手当たり次第に発言しているみたいだ。増税メガネといわれると、かなり気にしているようで、とうとう経済対策で「減税」を口に出すようになった。
その方向性はいいのだが、それまで財務省のいいなりだったために唐突感があった。そして前回の本コラム〈岸田首相、打つ手なし…!財務省の「ハシゴ外し」で支持率回復どころか「党内分裂」へ〉で指摘したように、やはり財務省にしてやられた。
この状況について、先週土曜日の大阪朝日放送「正義のミカタ」で、「自我が芽生えたので、財務省がハシゴを外した」と表現したら、一同大いに納得したようだ。
岸田首相は年内解散なしと宣言してみたものの、支持率低下で解散権が縛られている状況だ。解散権のない首相は党内掌握に厳しい状況で、求心力は既にない。
レームダック化した岸田首相
もし今の段階で解散を言い出したら、あっという間に党内で岸田下ろしが出てくるだろう。既に事実上岸田首相はレームダック(死に体)に陥っている。
となると、岸田首相は「やぶれかぶれ解散」か、来年9月の自民党総裁選までに耐え凌ぐしか、選択肢は残されていない。
どちらにしても、党内政局をひき起こす要因になる。
今月11日に大阪梅田での街宣活動で、主催者も警察も予想できなかった人数を集めた日本保守党が圧倒的な人気を呼んだ。
その点、岩盤保守層が自民党支持から離れていくのは我慢ならない保守系自民党議員には危機感が強い。
その萌芽が、10日の自民党参院議員青山繁晴氏の総裁選出馬宣言である。実際問題として選挙人20名の確保は難しいが、何が起こるかはわからない。
さらに、15日、高市早苗経済安全保障担当相が自ら主宰する勉強会「日本のチカラ研究会」を立ち上げた。高市氏は前回の総裁選に立候補しており、選挙人20名の確保のハードルはそれほど高くない。
関係者はあくまで「純粋な経済安全保障などの勉強会」ととするものの、政治的には絶妙なタイミングであり、その額面取りには受け取れない。
ここにきて、自民党内実力者の水面下の動きもあるらしい。菅義偉前首相は、15日インターネット番組に出演し、政府が来年6月にも実施する所得税減税について、「国民になかなか届いていない。説明も足りない」と述べた。
日中首脳会談もダメダメ
遡ること3週間前に山田太郎文科政務官、2週間前に柿沢未途法務副大臣、1週間前に神田憲次財務副大臣が相次いで不祥事で辞任した。3週連続で週刊誌報道がきっかけで岸田政権の副大臣・政務官が辞任しているが、4週目は三宅伸吾防衛政務官や自見英子万博担当相が報道されていた。
ここまで来ると、岸田政権はボロボロだ。ある自民党関係者は、年末まで持つのだろうかと心配していた。
そうした中で行われた日中首脳会談はAPEC首脳会議が開催されたアメリカ・サンフランシスコで17日午前中に行われた。
首脳会談はどちらが「マウントを取る」かが重要だが。場所は習近平国家主席の滞在するホテルで行われた。しかも、岸田首相の車がホテルに着けずに、岸田首相がホテル近くで車を降りて小走りで会談に向かうというありさまだった。
前日には米中首脳会談が行われたが、成果といえば、昨年8月のペロシ下院議長の訪台以降、米中間で切れていたホットラインを復活させたことだ。
中国軍が挑発行動に出て、米軍機との異常接近事故が相次いでおり、偶発的衝突の可能性があったが、今回のホットラインでその可能性が低くなったのは、日本、極東アジアにとってもいいことだ。
もっとも、バイデン氏は習氏歓迎の赤絨毯なしとか、記者会見後にわざわざ記者の追加質問に応じて、習氏を独裁者呼ばわりするなど、来年の大統領選挙を意識し、対中強行姿勢を見せざるを得なかった。中国も、アウェイのアメリカに来ざるを得ない厳しい状況で、互いに手詰まり感がある。
その翌日ということで、日中首脳会談は日本には比較的有利な状況だったが、初めからしてやれた。
岸田首相は、中国による日本産水産物の輸入規制の即時撤廃、日本のEEZ内に設置されたブイの即時撤去、中国における法人拘束事案について邦人の早期解放を中国側に求めたという。
強い国内基盤がまず必要
しかし、ブイについてはすみやかに撤去してもいい話だし、邦人の早期開放は日本側も在日中国人を逮捕してから交換すべき案件なので「お願いベース」ではなかなか解決しない。
そもそも相手が中国という非民主主義国なので、それなりの対応が必要なのだ。
しかも、岸田政権の支持率が低下しレームダック状態なので、残念ながら習氏はそれほど岸田首相を相手にしないだろう。となると、一年ぶりに首脳会談ができたことが成果とも言える。毅然たる外交のためには国内基盤の強い政権が必要だ。
●岸田内閣支持率10%台*レ前 毎日調査で「早く辞めてほしい」が55% 11/20
岸田文雄内閣の支持率急落が止まらない。読売新聞と毎日新聞が20日朝刊、時事通信が先週16日公表した世論調査で、いずれも政権維持の「危険水域」とされる30%以下に下落した。毎日と時事の調査では21%台と、10%台突入もあり得る状況となっている。
まず、岸田首相が、政権浮揚策に位置付けた経済政策の評判が悪い。読売調査では、経済対策を「評価しない」が66%。毎日調査では、所得税・住民税減税を「評価しない」が66%だった。
いつまで岸田首相に首相を続けてほしいかという質問は痛烈だ。毎日調査で「早く辞めてほしい」が55%、「(自民党総裁の任期が切れる)来年9月まで」が28%。読売調査では「来年9月まで」が52%、「すぐに交代」が33%だった。
岸田首相に近いベテラン議員は「八方ふさがりだ。このままでは『岸田降ろし』が始まる」と警戒している。
●毎日読売調査とも内閣支持率また過去最低更新…「早く辞めて」55%に上昇 11/20
大手新聞2社が先週末に行った世論調査で、岸田内閣の支持率が、また過去最低を更新した。
毎日新聞が18、19日に実施した全国世論調査では、支持率は21%で、10月の前回調査から4ポイント下落し、岸田内閣発足以降で過去最低を更新。岸田首相にいつまで首相を続けてほしいかについては「早く辞めてほしい」が55%で、最も多かった。同じ質問をした9月調査でも51%と過半数だったが、さらに4ポイントも上昇する結果となった。
また、読売新聞が17〜19日に行った世論調査でも、支持率は内閣発足以降、過去最低の24%で、前回10月調査から10ポイントも下落。読売の調査では、21年9月に当時の菅首相が退陣を表明した後の31%にも及ばなかった。
岸田首相の経済対策に盛り込まれた所得税・住民税減税措置については、毎日調査で「評価しない」が66%に上り、読売も61%と高水準だった。読売の調査によると、「評価しない」の理由は「選挙対策に見えるから」が44%で最も高かった。
政務三役3人が不祥事で相次ぎ辞任したことへの評価も厳しい。毎日の調査では、岸田首相の任命責任について「大いに責任がある」「ある程度責任がある」と答えた人が計86%にも上った。
自民党を巡っては、5派閥に政治資金規正法違反の疑惑がくすぶるなど、マイナス材料がまだある。既に“危険水域”だが、この程度では終わらない可能性がある。
●支持率急落、鬼の岸田にはもううんざり…国民が求める総理候補 11/20
岸田文雄政権の内閣支持率が、各メディアの世論調査で軒並み2割台に突入した。解散したくてもできない状況に、自民党内では「いつ退陣するのか」と議論を呼んでいる。政治事情にも詳しい経済アナリストの佐藤健太氏は次の総理に4人の名前を挙げる。混迷極める永田町で誰か動き出すのかーー。
「いつか解散か」ではなく「いつ退陣か」のフェーズに
岸田文雄首相の支持率が続落し、各種世論調査で軒並み過去最低を記録している。逆風のあおりを受ける自民党は福島や宮城の県議選で過半数割れという深刻な痛手を受け、東京・青梅市長選などの地方選でも支援候補の敗北が続く。岸田氏が再選を目指す来年の自民党総裁選まで1年を切る中、危機感を強める「ポスト岸田」はついに不気味な動きを見せ始めている。
「もはや岸田首相が『いつ解散を打つのか』ではなく、『いつ退陣するのか』にフェーズは移っているよ」。自民党ベテラン議員はこう危機感を強める。岸田氏は6月に衆院解散を模索したが、周囲の反対で断念。さらに起死回生を狙った年内解散も見送らざるを得ない状況に追い込まれた。
実際、岸田首相への逆風は止まらない。JNNが11月4、5日に実施した世論調査で内閣支持率は10月から10.5ポイントも下落し、29.1%と過去最低を記録。政権発足後初めて3割を下回って「危険水域」に突入した。NHKの調査(11月10日から3日間)でも10月調査時から7ポイント下落の29%となり、産経新聞とFNNの合同世論調査(11月11、12日)では10月比7.8ポイント減の27.8%と2カ月連続で過去最低を更新している。
支持率の高低よりも「不支持率」の高さがひどいことに…
時の政権の勢いをはかる目安としては、かつて「参院のドン」と呼ばれた青木幹雄元官房長官が示した法則がある。内閣支持率と与党第1党の政党支持率を足した数が50%を下回れば政権運営は行き詰まるというものだ。これを今回の調査で計算すると、JNNは「55.3%」、NHKは「66.7%」、産経などの調査では「56.8%」となる。数字だけを見れば上回っているものの、もうギリギリのところまで来ていると言えるだろう。
注目すべきは、支持率の高低よりも「不支持率」の高さだ。岸田内閣の不支持率はJNNで68.4%に達し、NHKは10月から8ポイント増の52%、産経などでは過去最高の68.8%に上っている。調査によってバラツキがあるため、NHKに絞ってみれば内閣支持率は首相が防衛費大幅増に伴う増税プランを決めた昨年末に3割台前半に落ち込んだものの、2021年秋の政権発足後の不支持率は46%が最高だった。5割を超えたのは初めてのことで、首相の不人気ぶりが止まらないことを表している。
その要因としては岸田政権が数々の増税プランや社会保険料アップという国民の負担増を模索し、「増税メガネ」との異名が首相に向けられたことにあるのは間違いない。岸田氏は「どんな風に呼ばれても構わない」と強がるが、突如として「税収増を国民に還元する」と減税策を打ち出したのは国民の不満を恐れたからだろう。
思い出される「漢字が読めない総理」
ただ、首相が挽回を狙った経済対策も不人気だ。JNNで「期待しない」は72%に上り、「評価しない」はNHKで6割近く、産経などの調査でも約7割に達している。首相は来年9月の自民党総裁選での再選を有利にするために年末の解散総選挙を虎視眈々と狙ってきた。その魂胆を国民に「バラマキという人参をぶら下げるつもりか」と見透かされ、逆に怒りを買っている形だ。首相が任命した副大臣や政務官の相次ぐ不祥事に加え、政権内のガバナンスも崩壊寸前にある。閣僚経験者の1人は「悲しいことに不名誉な異名がついた首相の下では政権が浮揚することは難しいだろう」と突き放す。
思い出されるのは、自民党が下野することになった2009年の総選挙前のことだ。現在は自民党副総裁を務め、岸田首相の信頼も厚い麻生太郎氏が首相に就いていた時である。麻生氏は、不人気だった前任の福田康夫首相から代わって早期の解散総選挙による事態打開を期待された。
「ポスト岸田」として誰が飛び出すのか
しかし、2008年9月の自民党総裁選はリーマン・ショックによる経済危機と重なり、早期解散を断念。その後は閣僚の失態に加えて、麻生氏が未曾有を「みぞうゆう」と誤読するなど「漢字の読めない首相」との異名もつけられた。
当時のNHK調査によれば、2008年12月に麻生内閣の不支持率は65%に上がり、最後の2009年9月は74%に達している。当時の自民党は2009年6月の千葉市長選で推薦候補が敗北し、東京都議選など地方選で惨敗。危機感を抱いた自民党議員は「麻生おろし」に動き回った。
結党以来の歴史的大敗を経験した麻生氏は、早期解散を狙う岸田首相に「なにも急ぐ必要はない」と進言してきたとされる。だが、解散見送りとともに不支持率が上昇する中で同じ轍を踏む可能性は決して低いとは言えない状況だ。民主党が勢いを持っていた当時とは異なり、期待が高まっていない野党をにらめば再び自民党が下野することは考えにくいが、「岸田おろし」襲来は十分にあり得るだろう。
では、その頭目となり得る「ポスト岸田」として誰が飛び出すのか。次期首相候補として名があがるのは、高市早苗経済安全保障担当相、河野太郎行政改革担当相、茂木敏充自民党幹事長の3人だ。いずれも党幹部または閣僚に就いており、表だって首相批判をすることはないものの、虎視眈々とタイミングをうかがっているのは間違いない。
高市早苗、河野太郎…突破力と発信力に長けた2人に共通する悩み
高市氏は来年の党総裁選への出馬をにらみ勉強会を発足。河野氏は予算執行の無駄などを検証する「行政事業レビュー」を舞台に、膨張が問題視される基金のあり方に切り込むなど露出を増やしている。
ただ、突破力と発信力に長けた2人に共通する悩みは「支持基盤の弱さ」だ。高市氏は、岸田氏と対決した党総裁選で善戦したものの、後ろ盾となった安倍晋三元首相の支援はもうない。派閥会長が決まらない自民党最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)が一枚岩となって高市氏を推すことは考えられず、推薦人集めから挑戦しなければならない。
河野氏にしても、所属する麻生派を率いる麻生副総裁の全面支援が欠かせない。改革イメージが先行する河野氏に対しては若手議員に期待する声がある一方で、ベテラン議員には抵抗も根強い。岸田首相と二人三脚で歩む麻生氏が、再選を目指す現職宰相のハシゴを外してまで河野氏に「GO」を出すことは考えにくい。
茂木は令和の明智光秀になる覚悟はあるのか
もう1人の茂木幹事長にも「壁」がある。茂木氏はトップに立つ意欲を重ねて示し、自ら率いる派閥を中心に同志を着々と増やしている。ただ、首相から起用された党ナンバー2の幹事長として岸田氏を支え続けなくてはならず、逆に「次」へ向けた動きは取りにくい。
野党時代の谷垣禎一党総裁が政権奪還直前の総裁選出馬を断念することになったのは、当時の石原伸晃幹事長が強行出馬したからだ。茂木氏がトップに立つために協力が欠かせない麻生氏は当時、「石原氏は『平成の明智光秀』といわれている。私の人生哲学には合わない」などと厳しく非難している。
仮に主君を討つようなイメージがつきまとえば、逆バネが働くのは必至だ。茂木氏が11月11日の講演で「光秀は好きじゃない」などと反旗を翻す考えはないと強調したのは、静かに「時」を待つスタンスに徹するしかないからだろう。
そんな中で注目集めるのは…
ポスト岸田の有力候補である3人が抱える事情を考えれば、逆に現時点で党幹部や閣僚に入っていない人物の方がチャンスと言える。その筆頭格は石破茂元幹事長だ。各種世論調査では「次の首相にふさわしい人物」としてトップに名があがり、現政権とも一定の距離を置いて準備を重ねている。
石破氏が自覚するように仲間が少ない点が総裁選で不利との見方がつきまとうが、仮に非主流派の二階派や菅義偉元首相に近い議員グループが推すことになれば流れは変わる。それだけでは勝利をつかむだけの議員数は足りないものの、二階・菅両氏と近いベテラン・中堅議員たちが協力することにすれば情勢は一変するだろう。
何より、岸田首相の不人気から「選挙の顔」を探す動きが強まれば、世論調査で支持率が高い石破氏に票が流れる可能性は高いと言える。政府関係者によれば、岸田氏はこうした石破氏周辺の動きに警戒を強めているという。
一度は率いた派閥を解体し、孤独感も漂う石破氏が一気に息を吹き返すことはあるのか。「火中の栗」をつかむことになりそうなポスト岸田から目が離せない年末年始を迎えようとしている。  
●岸田政権の減税策 「選挙目当ての下心が見え見えだ。意味がない」 11/20
ジャーナリストの須田慎一郎氏が11月20日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。岸田文雄政権が打ち出した所得税などの減税策について、「選挙目当ての下心が見え見えだ。意味がない」と批判した。
経済対策に専念するとして、噂された年内の解散総選挙を見送ることを9日、表明した岸田文雄首相だが、2024年6月にも実施される所得税などの減税策は国民からあまり評価を受けていない。内閣支持率も最低を更新し、求心力を失いつつある岸田首相。果たして、日本経済の行く末は大丈夫なのか―。
須田)岸田文雄政権の減税策は、意味がないです。選挙目当ての下心が見え見えだからです。
10月22日に投開票された衆参2補欠選挙に、自民党は非常に厳しい状況で臨みました。この補選で負けると「いよいよ退陣」「ポスト岸田」などと言われかねないため、岸田首相は何としても勝たなければならなくなりました。そこで、「減税」と言っておけば勝てるのではないかと考え、減税策を打ち出したわけです。
要するに、選挙を前に国民の関心を買うための減税策です。しかし、減税を巡っては、鈴木俊一財務相が後に、税収増分は使用済みだと答弁しました。つまり、「岸田政権の減税策とは何だったんだ」という話です。
●支持率下がる岸田政権…野党側が攻勢強める 補正予算案審議始まる 11/20
20日から補正予算案の審議が始まりました。支持率が下がる岸田政権へ野党側は攻勢を強めています。
立憲民主党・熊谷参院議員「総理は経済・経済・経済と宣言していましたが、ふたをあければ、辞任・辞任・辞任でありました。このような状況を私は残念・残念・残念でなりません」
岸田首相「任命責任者として、その責任、重く受け止めているところです。国民の皆様の信頼を回復できるよう、内閣として一層の緊張感を持って、与えられた課題に全力で取り組んでまいります」
岸田首相は副大臣や政務官など政務三役の辞任が相次いだことについて、改めて陳謝しました。21日からは予算委員会での審議が始まります。野党側は、新たに浮上した自民党の派閥の政治団体が政治資金パーティーの収入を過少記載したとされる問題をめぐり、追及を強める構えです。
●自民5派閥 政治資金収支報告書に4000万円“不記載”告発に「精査中」 11/20
自民党の5つの派閥の政治団体が政治資金パーティーの収入およそ4000万円分を収支報告書に記載していなかったとして告発されている問題で、各派閥が対応に追われている。
宏池政策研究会(岸田派)はFNNの取材に対し「ご指摘の件に関しては、事実を確認した上で適正に対応する予定です」とのコメントを出した。
また、志公会(麻生派)は取材に対し「指摘の件に関しては、事実を確認した上で適正に対応する予定です」と応じた。
一方、清和政策研究会(安倍派)、平成研究会(茂木派)、志帥会(二階派)は現時点でのコメントは控え、事実関係を精査している。
岸田首相は20日首相官邸で記者団に対し、一般論とした上で、「政治資金の収支報告等において指摘があるならば、それぞれの政治団体において、責任を持って点検し、適切に対応するべきものである」と述べている。
●「歳出を平時に戻し、財政健全化を」 財政審が24年度建議 11/20
財務相の諮問機関である財政制度等審議会(会長・十倉雅和経団連会長)は20日、2024年度予算編成などに関する建議(意見書)をまとめ、鈴木俊一財務相に提出した。建議では、物価上昇(インフレ)や金利上昇などで経済状況が「これまでとは異なる局面に入っていく可能性がある」と指摘。歳出を新型コロナウイルス禍対応から平時に戻し、財政健全化を進めるよう提言した。
建議では、国際的に低インフレ・低金利から高インフレ・高金利に経済の潮目が変化していると強調。国債発行残高が1027兆円(9月末時点)と「世界最悪」(鈴木氏)の財政状況となるなか、金利上昇で利払い費が増加すれば「財政運営に支障を来す恐れがある」と懸念を示した。
その上で「責任ある財政運営が一層重要」とし、有事にも対応できるよう「常に財政余力を確保しておくことが求められる」とした。
財政健全化に向けては、年々増大する社会保障費の抑制などがカギとなる。そのため、来年度予算編成は医療サービスの対価として医療機関に支払われ、来年度が見直しのタイミングとなる診療報酬について、全体の改定率をマイナスとするよう求めた。
財務省の全国調査で、診療所の利益率が他産業と比べて高いことが明らかになったことを受け、診療所の報酬単価の引き下げを提言。報酬単価を5・5%程度引き下げると、保険料負担が年間約2400億円減るとの試算を示した。
医療業界は物価高や賃上げを受け報酬引き上げを求めているが、診療所の利益剰余金や賃上げ税制の活用で対応できると訴えた。
岸田文雄政権が打ち出した児童手当の拡充など少子化対策の費用は、医療保険に上乗せして広く国民から徴収する方針だが、歳出改革などを通じて他の負担を減らし、実質的に負担を生じさせないようにすべきだと盛り込んだ。
一方、防衛費増額のための所得・たばこ・法人税の具体的な増税時期については、言及しなかった。
財政審財政制度分科会の増田寛也会長代理(日本郵政社長)は提言手交後の記者会見で、来年度予算編成について「財政健全化に切り替えていく大きな節目だ」と強調。診療報酬については「診療所の利益を守るのか、勤労者の手取りを守るのかという形での国民的な議論をお願いしたい」と話した。
 11/21

 

●2024年自民党を襲う特大スキャンダル 選挙大敗、ブタ箱送りも 11/21
なす事すべてが裏目となり、支持率も下落する一方の岸田政権。完全に国民から見限られた感が強い首相ですが、もはやこのまま去りゆくしか道はないのでしょうか。年内の解散総選挙を断念した岸田首相の行く末を予測。さらに来年9月の総裁選までに残された、総選挙に打って出られる「唯一のタイミング」を考察します。
年内解散総選挙を決断できず。ついに見えた岸田政権の終わりの始まり
岸田総理が年内の解散、総選挙を断念したと『朝日新聞』(1面)とNHKニュースが報じたのは、11月9日だった。
政権が驚愕したのは、毎週1人(山田太郎文科政務官、柿沢未途法務副大臣、神田憲次財務副大臣)の辞任も反映して、世論が離れているからだ。
11月13日に公表されたフジテレビと産経新聞の世論調査では、内閣支持率が27.8%(前回は35.6%)、不支持率が68.8%(前回は59.6%)だ。
もはや危険水域に入り、「春にも電撃退陣」と断定して煽るメディアまで現れている。菅義偉政権が選挙を前にして退陣したのと同じ空気が流れている。
私の実感としては、2009年夏の政権交代選挙に至る麻生政権のときのようだ。9月にリーマンショックが起き、世界経済に波乱が襲い、日本経済も先行き不透明になった。
麻生政権の支持率も低下し、いつ解散、総選挙に向かうかと、毎日のように観測情報が流れた。
私は「新党日本」公認、「民主党」推薦で東京11区(板橋)で立候補する予定で、毎日毎日地元を歩いていた。
私にとっては初めての衆議院選挙だった。参議院選挙と違って、いつ解散があるかは総理の腹次第だった。正直にいって毎日のように不安と不満が溜まっていった。「早く解散してくれ」という思いだ。
いままた多くの予定候補者の心境がわかる。勝利するか敗北するかではない。時間が延びれば勝つ条件ができていくというレベルではないのだ。
選挙の臨戦態勢を取っていた創価学会
岸田文雄総理は今年夏の通常国会明けに解散と総選挙を想定していた。公明党も維新との対抗でそう望んでいた。
実際に支援団体の創価学会は夏からつい最近まで選挙の臨戦態勢を取っていた。組織は北海道から沖縄まで13の方面がある。とくに兵庫に2区と8区は1996年に小選挙区制になってから、2009年の政権交代選挙での8区を除けば公明党が勝ってきた。
大阪と同じく創価学会にとっては「常勝関西」なのだ。だから公明党=創価学会は維新が候補者を立てる兵庫で浸透が進まないうちに総選挙をやってもらいたかった。
「12月10日」「12月17日」と具体的な投票日まで創価学会は想定していた。
ところが岸田首相はまったく煮え切らない。所得減税の経済対策を打ち出しても、支持率は上がらないどころか低下していった。
2000年の森喜朗政権のときには支持率が16%台にまで低下した。それでも解散、総選挙を行ったが自民党は微減で済んだ。世論調査一般と現実の投票行動は違う。あとは総理の覚悟なのだ。
岸田総理にはそれがない。野党の候補者擁立が進まず、連携が取れていないいま。挑戦無くして勝利なし。岸田総理にはこれからも厳しい道が続く。
2024年、自民党を襲う大スキャンダル
公明党=創価学会だけではない。来年になると自民党に大スキャンダルが襲う気配がある。
派閥パーティーで得た資金を政治資金規正法で適正に報告していないことを指摘され、東京地検に告発されている問題があるからだ。
1回のパーティで20万円を超える購入者を収支報告書に記載することは義務付けられている。2018年から21年では5派閥で約4,000万円が記載されていなかったことが明らかになったのだ。
清和政策研究会(安倍派)約1,900万円、志帥会(二階派)約950万円、平成研(茂木派)約600万円、宏池会(岸田派)約200万円。パーティ券を購入した団体が収支報告書に記載しているのに、買ってもらった団体が記載していないのだ。
昨年12月に薗浦健太郎議員(当時)が、政治資金の過少記載で略式起訴され、公民権停止となったように、悪質なケースは立件される。
この疑惑を知った岸田総理は年内解散に進まないと来年は危険だと判断した時期があった。しかし解散を断念した。
来年9月の総裁選までに総選挙に打って出ることを総理なら考える。1月の通常国会冒頭は難しい。6月の会期末なら東京都知事選と重なる。そうすると予算成立の3月末が想定される。そこで覚悟できないならば、岸田退陣の動きは加速する。
●出番だぞ!小泉総理説…地獄の岸田政権、支持率21%

で岸田オロシ開始 11/21
時事通信の11月の世論調査によると、岸田内閣の支持率は前月比5.0ポイント減の21.3%となり、12年の自民党政権復帰後の最低を記録した。年内の解散もなくなったことで、そろそろ自民党内には「岸田おろし」が始まってもおかしくなさそうな気配だ。
しかし、次の総理は誰なのか。9月13日、14日に日本経済新聞社とテレビ東京が実施した緊急世論調査では、「次の自民党総裁にふさわしい人」は小泉進次郎元環境相が16%で首位に立ったという。東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出後、その安全性を自らサーフィンすることでアピールしたことが国民に好感を持って受け止められたためだろうか。
フランス哲学者の福田肇氏によれば、「意外かもしれないが、実は小泉進次郎氏はフランスでも人気がある」というーー。
小泉進次郎は、なぜフランスで好意的に受け止められているのか
2020年1月15日、フランスの新聞「ル・フィガロ」(Le Figalo)紙は、こう報じた。「ある大臣が父親育児休暇の取得へ」。「ある大臣」とはいうまでもなく小泉進次郎のことである。
「職務中のいかなる大臣も今までこうした申請をしてこなかった。高齢で大臣職を得るのが一般的なかの国で、もっとも若い大臣がルールを変えようとしている」と、同紙は興奮気味に報じている。
この、フランスで最古の歴史を誇る新聞によれば、小泉進次郎の声明は、「妊娠に関する話題が日本ではタブーであり、日本企業内では男性優位論調がお決まりであることを知っているならば、衝撃的な宣言」である。
同紙は、我が国の会社内で、妊娠が重ならないよう順番を調整する暗黙の掟が女性に課されること、2015年の国政調査で、妊娠中の有職女性の半分がいわゆる「マタハラ」を受けた経験をもち、そのうちの20%が妊娠の理由で退職せざるを得なかったこと、法律上は母親も父親も育児休暇が認められながらも、男性の家事従事にたいする慣習的な偏見のせいで、わずか6%の父親しか育児休暇を取得しないということ、等々の惨憺たる現状を論じつつ、妊娠をめぐる理不尽な風潮にあらがう小泉進次郎の決意と行動を高く評価している。
「ル・フィガロ」紙の小泉進次郎に対する賞賛は、フランス社会の父親育児休暇という制度にたいする姿勢をみればよく理解できる。小泉進次郎が育児休暇を取得した当時、フランスでは父親は出産時に11日間の父親休暇にくわえ、3日間の「法定休暇」つまり義務づけられた休暇を取得することができた。小泉進次郎の14日間の休暇申請も、フランスのこの制度にならっているのだろう。
家族は大切なのだ
それだけではない。2020年9月23日、フランスのマクロン大統領は、出産時の父親の休暇日数を、2021年7月から25日間とし、さらに3日間の法定休暇を加えた最長28日間の職務免除を申請できるようにすると発表した。そして現在は、そのように改正された法律が施行されている。
フランス人にとってもっとも大切なものは「家族」であるといわれる(ちなみに、2番目に大切なのは、「ヴァカンス」である)。フランスがここまで父親育児休暇に熱心である理由もうなずける。家族を思い、当時のフランスの制度を意識して[連続ではないにせよ]きっちり14日間∴邇凾ノ専念すると宣言した小泉進次郎が、フランス人たちに圧倒的な好感度をもって支持されることは疑いない。
原発大国フランスでは、原発処理水放出は必須
2023年9月14日、フランス外務省は、次のような声明を発表した。
「福島第一原発の原子炉に由来する処理水の海洋投棄 (le rejet en mer des eaux traitées)に関して、この数ヶ月にわたって営まれた日本との継続的な対話に、フランスは敬意を評する」
フランス外務省は日本を二つの点において評価する。第一に、「処理水の海洋投棄の作業が、核の安全性と放射線防護の最高基準をじゅうぶんに尊重していることを確認するために日本が払った努力」。フランス外務省は、「海洋投棄は、人と環境に対して無視できるほどの放射能の影響しかもたない」と結論づけてさえいる。第二に、原子力エネルギー国際委員会(AIEA)との協力作業で日本のチームが示した透明性」。つまり、フランスは、「IAEAおよび周辺国との協力を推進するうえで透明性を保ったアプローチを追求する」日本の姿勢に対して賛辞を送っているのである。
処理水をめぐる画策と対応に関して、フランス外務省がここまで日本を熱狂的にホメ殺しているのはゆえなきことではない。
フランスは原発大国である。電力のおよそ70%を原子力に依存している。福島第一原子力発電所の2011年の事故は、当時のオランド大統領に、原子力発電に対する依存度を引き下げる決断を強いた。その方針を、現マクロン大統領も当初は継承していた。しかし、マクロンは、エネルギーの脱炭素化と安定供給の観点から、原子力発電の再生に努めるべきだとして、2022年、政策の転換を宣言したのである。
2019年12月、欧州委員会は「欧州グリンディール」(EUGreenDeal)という成長戦略を発表した。その目的のひとつが、「2050年までに気候中立[=温暖化ガスの排出量実質ゼロ]を実現する」ということである。さらに2022年2月2日には、同委員会は、「気候委任法(Complementary Climate Delegated Act)が、EUタクソノミー[=持続可能性に貢献する経済活動への分類]がカバーする経済活動のリストに、厳密な条件のもとで、原子力エネルギーに関する活動を加える」ことを決定する。
サーフィンを楽しむ様子
マクロンの政策転換は、これを背景にしているのだろう。同法は、2023年1月1日をもって適用が開始された。
さらにこうした事情のもとで、2023年5月、西村康稔経済産業大臣とアニエス・パニエ=リュナシェ仏エネルギー移行大臣の会談が実現し、そのなかで両者は日本とフランスの協力関係をさらに深めるための共同声明に署名している。共同声明の項目の一つが、「もっとも高い水準の安全性をともなう、福島第一原子力発電所の廃炉」へ向けた技術協力関係の構築である。というのも、「事故から引き出された分析と教訓、そして廃炉に結びついた努力が、両国における核エネルギーの安全な使用を改善することになる」からだそうだ。
原発大国フランスにとって、核廃棄物の処理、老朽化した原発の廃炉のための技術開発は深刻な問題である。このとき、福島第一原発の事故処理をめぐって蓄積される技術的ノウハウとその適用の結果は、「欧州グリンディール」戦略のもとでビジネスチャンスの創出を目論むフランスにとっては、貴重な情報にちがいない。処理水の海洋放出に対してフランスが手放しの支持を表明するのには、このような背景があるのである。
9月3日、自民党の小泉進次郎元環境相が福島県を訪れ、地元の子どもたちとともにサーフィンを楽しんだことがメディアで話題になった。もしかすると、フランスでもこのアピールは好意的に受け止められたことだろうと思いフランス在住の知人に聞いてみたが、「そんなことは話題にすらならなかった」という。
フランスでは、小泉進次郎に追い風が吹いている。

●岸田政権を揺るがせるか…「派閥とカネ」の醜聞 11/21
内閣支持率の低下や政務3役の「辞任ドミノ」でぐらつく岸田政権。これに加えて一つの告発状が永田町をざわつかせている。
東京地検が自民党5派閥を事情聴取
東京地検に告発状を提出したのは上脇博之神戸学院大学教授。
「自民党5派閥の政治団体が、政治資金パーティー収入を過少記載した」とし、各団体の会計責任者らを政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)で刑事告発した。
告発状によると、2018年〜21年分の政治資金収支報告書に、安倍派1900万円、二階派900万円、茂木派600万、麻生派400万円、岸田派200万円の計4000万円分が記載されていなかった。
告発を受け、東京地検特捜部は各派閥の関係者などから事情聴取している。
同法違反の「不記載・虚偽記入」の発覚自体は珍しくない。多くは「事務的なうっかりミス」として事後の修正・訂正で済まされてきた。
しかし、今回の場合は、「不記載が継続的に行われ、かつ多額で、単純な記載ミスとの言い訳は通じない」(自民党関係者)という。
最大派閥・橋本派の日歯連ヤミ献金事件
派閥とカネを巡っては、日本歯科医師連盟(日歯連)によるヤミ献金事件(2004年)を思い起こす人がいるだろう。
都内の料理屋で、日歯連側から橋本竜太郎元首相に小切手1億円が手渡された。橋本派は収支報告書にこれを記載せず、裏金処理した。政治資金規正法違反で会計責任者が逮捕、会長代理だった村岡兼造・元官房長官が起訴された(橋本氏は嫌疑不十分で不起訴処分)。
かつて私は政治記者として自民党最大派閥の橋本派を担当し、ヤミ献金事件の際は、読売ウイークリー誌の記者として取材した。逮捕された金庫番(会計責任者)はよく知る人物だっただけにつらい取材だった。
派閥の中堅議員は当時、こう証言した。
「事件の背景には、旧田中派以来のズサンな会計慣行があります。派閥の財布と派閥を仕切る幹部の財布がごっちゃになり、会合費や親睦ゴルフの費用、選挙対策費などが個人的なものか、派閥のものか区別がつかず出ていったのではないか」
収支資金報告書に記載されず支出された金が、会計上は毎年の「繰越金」として計上された。その粉飾決算の「穴埋めとして1億円が使われた」と、この中堅議員は説明した。
事件では橋本派の大金庫の存在も注目された。会長室わきの小部屋に置かれ、開け閉めのカギは逮捕された会計責任者が管理していた。実物を一度見せてもらったことがある。黒光りして大人一人が入れる大きさだったと記憶する。「派閥とカネ」を象徴する存在だった。
パーティー収入の不記載4000万円は「氷山の一角」
今回の過少記載も各派閥に「いいかげんな会計慣行」がまかり通っていた結果なのではないか。日歯連事件の場合は橋本派だけの話だったが、今回は5派閥が対象である。告発内容が事実であれば、各派閥が横並びでやっていたことになる。政治資金パーティーが裏金づくりの温床になっていたのではないか。 ・・・
●信頼回復へ「結果出す姿勢持ち続ける」  衆院予算委で本格論戦スタート 11/21
政府の経済対策の裏付けとなる令和5年度補正予算案を審議する衆院予算委員会の基本的質疑が21日午前、始まった。経済対策の柱である所得税・住民税の定額減税、大阪・関西万博の会場建設費問題、政権の不祥事などを巡る本格的な論戦がスタートした。岸田文雄首相は副大臣・政務官3氏の相次ぐ辞任について「任命責任者として重く受け止めている」と述べた。
報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率は過去最低に落ち込んでいる。自民党の若宮健嗣氏に「傷ついた国民からの信頼をどのように回復するか」と問われた首相は、物価高騰対策を挙げ「先送りできない課題について臆することなくしっかり判断し、結果を出していく姿勢をこれからも持ち続け、努力していくことを通じて国民の信頼回復に努めていく」と強調した。
また、賃上げに関し「来年、再来年と続けていかなければいけない」と意欲を示した。
●片山さつき氏が岸田首相に認識問う「心は女」事件 女性の安心・安全? 11/21
三重県桑名市の温泉施設で「心は女」と主張する男が女性風呂に侵入した事件を受け、自民党の片山さつき元地方創生相が20日の参院本会議代表質問で、岸田文雄首相に見解をただした。さまざまな問題・疑問が指摘されながら、LGBT理解増進法の法制化を急いだとされる岸田政権や、積極推進派の責任ある対応が求められそうだ。
「(LGBT法によって)全国の女性や、女児を持つ親から、『本人の性自認のみで(女性専用スペースに)入れるようになる危険性があるのでは』という非常に強い不安の声が押し寄せている」
片山氏は「心は女」事件を示し、強い危機感を岸田首相に投げかけた。
さらに、LGBT法の成立や、「性転換手術なしで戸籍上の性別を変更できる」とした最高裁判断を引き合いに、「国民は『(今回の事件と同じケースで)今後も逮捕できるのか? 注意した側が差別だと訴えられないか?』と心配している」と強調した。
これに対し、岸田首相は「女性の安心と安全を守ることは重要だ。性的マイノリティーもマジョリティーも含め、生き生きとした人生を享受できる社会の実現に取り組む」などと答弁した。
片山氏は同法施行後、自民党有志による「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」を立ち上げ、「女性専用スペース」の安全確保などを訴えている。この日も「全国6400万人の女性の安心と安全、究極の生存権を1ミリたりとも危うくすることないように」と訴え、女性専用スペースの安全確保を担保する議員立法などを提言した。
ところが、議場の一部から「人権侵害だ」「やめろ!」などと激しいヤジが飛んだ。まさか、女性の安心・安全に反対するのか?
片山氏は代表質問後、「(浴場などの)事業者からも不安、苦情、営業権への侵害という声があがっている。現状や国民の不安をしっかりと把握し、それを取り除く対応策が早急に必要だ」と語った。
●内閣支持率25%…自民党政権復帰後11年間で最低 人物も政策も信頼されず 11/21
朝日新聞社は18、19日に全国世論調査を実施した。岸田文雄内閣の支持率は25%(前回10月調査は29%)に低下。不支持率は65%(同60%)に上昇した。
政府が経済対策に盛り込んだ減税と現金給付は「評価しない」が68%で、「評価する」の28%を大きく上回った。
その減税と現金給付を打ち出した首相が考えたのは「国民の生活」と答えた人はたったの19%。対して「政権の人気取り」は76%に達した。
支持率は2012年12月に自民党が政権に復帰して以降の11年間で、菅義偉内閣の21年8月の28%を下回り、最低。不支持率も、最高だった前回を更新した。支持率が25%以下になるのは、民主党の野田佳彦内閣時代の最後の調査となった12年12月上旬の21%以来だ。
仕事ぶりから首相を「信頼できる」と答えた人は26%(同30%)にとどまり、「信頼できない」は67%(同62%)にのぼった。政務三役3人の辞任について、任命した首相の「責任は大きい」は61%で、「それほどでもない」は35%だった。
人物も政策も信頼されない岸田首相。毎日、読売に続き支持率ガタ落ちも当然だろう。
●岸田内閣支持率の低迷「非常に危機感」 自民・森山氏 11/21
自民党の森山裕総務会長は21日の記者会見で、報道各社の11月の世論調査で岸田文雄内閣の支持率が低迷していることに関し「非常に危機感をもって受け止めている」と述べた。各社の支持率は20%台に下がり、2021年10月の政権発足以降で最低水準となった。
森山氏は「今は党をあげて首相をしっかり支え、信頼回復に取り組むことが大事だ」と強調した。「やるべき政策を一つ一つ前に進め、危機感と緊張感をもって事にあたっていく」と話した。
梶山弘志幹事長代行は同日の記者会見で内閣支持率の低迷を巡り「週末を利用して地元に帰り説明していくことが大変重要だ」と説明した。
党内で首相の政権運営への不満が高まっているとの見方に関し「善後策も含めてたまったものをしっかり良い議論の場で出していくことが重要だ」と語った。
●「解体後に転売」疑惑も浮上して...自衛隊「軍用車」がロシアと北朝鮮に流出 11/21
2022年11月、ウクライナのテレグラムサイト「NMTE」に投稿された1枚の写真。そこにはロシア軍が使用している軍事車両が写されていたのだが、その車両というのが、かつて日本の自衛隊が使用していた「高機動車」であるという疑惑が浮上して、国会でも取り上げられるなど大騒動となったことは記憶に新しい。
「今年3月の衆院外務委員会でも、自身も予備自衛官の経験がある国民民主党の議員がこの高機動車疑惑を指摘したのですが、車両を管理する防衛装備庁は『自衛隊で使われている高機動車に外観は似ているが確実な証拠がない』と、これを否定。その後も調査結果は明らかにされていません。ただ、以前から、自衛隊が廃棄した装備品などがタイやフィリピンなどを経由して海外に転売されているという噂はありました。仮にそれがウクライナを攻撃するロシア軍の軍事車両として使われているとしたら、大問題だと言わざるを得ません」(全国紙政治部記者)
高機動車とは、トヨタが製造する最大10人乗りの汎用4輪駆動車で、1990年代前半から普通科連隊を中心に配備が始まり、現在も陸上自衛隊に配備されている軍用車だ。
「高機動車本来の目的は、人員輸送やトレーラーの牽引ですが、荷台部分には各種ミサイル搭載も可能で、移動式発射台としても使用でき、レーダー装置も搭載しています。転売されたと言われている車両は、自衛隊で使用済みとなったものだと思われますが、使用済み車両の民間への払い下げは禁止されており、使用済み車両は再利用できないよう、原型を留めないまでに破砕、溶解させ、鉄くずとして処理するという厳しい規則があります。にもかかわらず、それが海外に出回っている可能性があるんです」(軍事ジャーナリスト)
陸自では、転売や再利用防止のため、2018年と2022年に関連規則を改正している。しかし、高機動車などは、戦闘に特化した戦車などに比べ、解体処理の実態はそれほど厳しくはないとも言われている。
「むろん、解体については、陸自の定めた仕様書にある、解体・処分要領に従うよう義務付けられています。ですが、実際には書類さえ整っていれば問題なしとされる、という話も聞こえてきます。そのため、悪質な業者は、提出が義務付けられている破砕溶解後の写真を他車と使い回ししたり、いったんバラバラにしたパーツを輸出し、海外で新たに組み立て直して再利用するという話もあるほどです」(前出・ジャーナリスト)
数年前には陸自の「軽装甲機動車」に酷似した4輪装甲車が北朝鮮の軍事パレードで目撃され、話題になったこともある。
参議院決算委員会で質疑に立った浜田靖一防衛大臣は、「請負業者の破砕現場に防衛省の職員が立ち会うなど細部要領を検討している」と答弁したが、防衛省や防衛装備庁は、二重三重のチェックで海外流出を防止するべきだろう。  
●岸田首相、またもや現役世代を “生贄” に…子育て「支援金」という「税金」 11/21
岸田政権が少子化対策の財源として検討している「支援金」に対する批判が高まっている。
支援金は公的医療保険の保険料に上乗せして徴収され、国民1人あたり月500円の負担増となる見込み。支援金とはいうものの、実質的には税金で、増税となる。
さらに、この支援金について、低所得者の負担軽減措置を設ける方針だと、共同通信などが報じている。軽減措置を受けるのは約2600万人で、低所得の国民健康保険加入者約1400万人、後期高齢者医療対象の約1200万人としている。
実業家のひろゆき氏は11月21日、自身の「X」を更新。このことを報じた記事を引用し、
《自民党「年金は、全世帯で払いましょう。少子化対策支援金は、後期高齢者は払わなくていいです。」( ´_ゝ`) フーン》 と皮肉った。
日本維新の会・政調会長の音喜多駿衆院議員も、「X」に
《「低所得者」の多くは高齢者。全世代で負担を分かち合うと綺麗事を言いながら、結局は現役世代に負担を押し付けるいつものパターン。断固反対》(11月20日投稿) と、この案を強く批判している。
「こども家庭庁が11月9日に開いた有識者会議の会合で、支援金を保険料に上乗せする案が示されました。税金では風当たりが強いため、反発が薄く徴収しやすい支援金にしたというのが見え見えです。また、医療保険を医療以外の目的で使うことも問題視されています。
厚労省によると、2021年度の後期高齢者医療制度の支出は16兆6129億円で過去最高。このうち、現役世代の健康保険組合や国民健保からの支援金は6兆5266億円ですから、約4割を現役世代からの支援金で支えているんです。
いっぽうで、75歳以上の高齢者が支払っている保険料は1兆3893億円ですから、自分たちではわずか8%しか負担していない計算になります。そのうえで、子育て支援金も現役世代からはしっかり取り、高齢者は負担減となれば、不公平感が高まるのは当然です」(週刊誌記者)
「X」には、
《低所得者の多くは高齢者。結局は高齢者の負担減で現役世代の負担増。毎度毎度のパターン。何でこーなるの?》
《子育て支援金。応能負担って所得に応じて??ならたんまりお金をお持ちの高齢者も低所得に分類されちゃうわけだから、結局稼げる現役世代がまたもや生贄》
《低所得者の中には、退職した資産のある高齢者もたくさんいるよね。現役世代は税と社会保険料を身の丈に合わないほど負担してきてる人たちも多く、もう限界》
《少子化対策を一切やめて、その分を返した方が子供増えそう。》
など、批判的な声が渦巻いている。加藤鮎子こども政策担当相は、この支援金を「新しい分かち合い、連帯の仕組みだ」というが――。
●大阪関西万博の成功は「人が集まる、日本の魅力を世界に発信できたとき」 11/21
岸田総理は、2025年の大阪・関西万博は何をもって成功と言えるかと問われ、「未来を考えるための機会とか分断が進む世界において人が集まる機会とか、日本の魅力を世界に発信する機会とか、こういった目的を果たすことができたと感じられるときが成功したと評価されることになるんだと思っている」と語りました。
衆議院予算委員会で公明党の伊佐進一衆院議員の質問に答えました。
 11/22

 

●自民5派閥 政治資金問題 総理“速やかに説明を”幹事長に指示 11/22
自民党の派閥の政治資金を巡る問題で、岸田総理大臣は各派閥が速やかに説明するよう茂木幹事長に指示を出したと明らかにしました。
この問題が火種となって国会審議に影響が出ています。予算委員会は50分遅れで始まりました。
立憲民主党 野田元総理大臣「自民党の主要の派閥5つの派閥で同じ事が起こっていた。政治に対する信頼を取り戻すために党の総裁として、もっとリーダーシップを振るって、どぶさらいをしなければいけないと私は思うんです」
岸田総理大臣「国民の信頼という観点から、重大な危機感を持たなければならない」
また、立憲民主党の岡田幹事長が「減税は1年限りなのか」とただしたのに対し、岸田総理は「来年は減税で可処分所得を下支えし、再来年に持続的賃上げを実現する」として明言を避けました。
引き続き、野党は「減税措置」「政務三役の辞任ドミノ」「政治とカネ」の3点セットで迫る考えです。
ある立憲のベテランは「政権を追い込むなら今しかない」と意気込んでいます。
●小池百合子の名前まで浮上。岸田文雄の次に総理大臣の座に就く人物 11/22
マスコミ各社による世論調査でも支持率が軒並み過去最低を記録するなど、もはや打つ手なしの状況に陥ったと言っても過言ではない岸田政権。なぜ首相はここまで国民からの信頼を失ってしまったのでしょうか。米国在住作家の冷泉さんが、支持率低下につながった4つのポイントを指摘。さらに日本における「政界再編」の可能性を探るとともに、政党や政治家たちの具体的な動きを大胆予測しています。
予兆あり。政界再編で日本に生まれる2大政党のメンツ
まず、現在の日本の政局ですが、11月13日までに時事通信が実施した月次の世論調査によると、岸田内閣への支持は21.3%となり、内閣発足以来の最低を更新したようです。また自民党の支持率も下落しており19%になっています。合計でも40%しかなく、俗に言う「方程式」理論から言えば足して50を割ると危険水域なのだそうですから、極めて危険ということになります。
一般的に、議院内閣制の宿命としては不人気な内閣を担ぎ、更に政党支持率まで下がってしまうと首班指名の支持母体である自民党の議員団としては、個々の議員が「自分は次の選挙が危ない」という危機感を抱いてしまうことになります。その場合に、衆議院の小選挙区から選出された議員などは、当に「選挙に落ちてタダの人になる」という恐怖を実感してしまうことになります。比例の名簿順位が下位の議員の場合は、それこそ絶望的になります。
国政選挙が当面はなくても、支持率低下が問題になるのは、そうした「瀬戸際議員」の場合は、2年とか3年先のことでも恐怖のエネルギーは小さくないからです。こんな総理総裁を担いでいては、自分が落選してしまうという恐怖は、この種の政治家にとって決定的だからです。
では、どうして支持率が急落しているのかというと、具体的には4つぐらいの原因があるようです。
1つは、とにかく定額減税が不評だということです。順序として「異次元の子育て対策」があり、その財源は「増税」だと明らかになると世論が猛反発したので、「だったら減税」だけれども「恒久減税ではなく定額」という流れでした。その場当たり性が余りにも露骨であったことが、世論の怒りを買ったわけです。
2つ目は、副大臣、政務官レベルの辞任が3名続いたことです。原因は全て個別で、不倫、公選法違反、脱税ということで、お粗末な内容です。ただ、総裁選に勝ち、組閣して総理の座にとどまるには他派閥の協力は欠かせません。その際に決め手になるのは人事です。当選回数を重ねながら、要職に就いたことのない人物「派閥に押し込まれる」という意味では、総理には100%の任命権はないわけで、そんな中でしっかり「身体検査」を行うノウハウが欠けていたとなると、周囲が騒がしくなるのは抑えられないということになります。
3つ目は、中東情勢です。ここへ来て世論の風向きが変化しているので、また少し違うトーンになってきたのですが、10月7日のハマスによる奇襲テロ攻撃の直後は、若い世代を中心に岸田総理の態度に違和感が出たようです。つまり、ウクライナに対しては被害者の正義を認めて即座に100%の支持をしたのに、テロ被害者のイスラエルに対しては曖昧な態度を取ったことがイメージ低下に繋がったようです。
これは、日本がG7の中では特殊な「中東における中立外交」を行ってきたことが、しっかり若い世代に伝わっていなかったのが原因です。ですが、総理として、この機会にその「国是」を自分の言葉で説明する努力は全く足りませんでした。
何をやっているのか、何をやりたいのかが分からない岸田政権
4つ目は、経済政策です。円安がジリジリと進行することで、原油、そして輸送費が上昇し、更に穀物など食料品が上がっています。そして建設資材なども高くなり、全国的に影響が出ています。安倍政権時代には意図的に実施していた円安ですが、現在は全く違う様相になっています。エネルギー高と円安がダブルで効いていること、ドル円水準が120円前後ではなく、150円という弱さを見せていることを考えると、安倍=黒田時代とは構造的な違いが出てきています。
では、岸田氏は現状をどう認識して、どんな政策を打って行くのか、これがサッパリ見えません。デジタルの関連も総理のメッセージ発信は弱く、担当大臣に丸投げですし、ライドシェアの問題も総理としては「知らぬ存ぜぬ」に見えます。
4点ほど「現象面」からの指摘をしましたが、全体的に言えるのは、政策の方向性が全体的に見えないことで、内閣の存在感が希薄になっているということです。過去の政権と比較すると、例えば小泉政権は(徹底的に骨抜きになっていたにしても)構造改革を前向きに売り込むという「姿勢」がありました。安倍政権(第二次)は保守派の支持を取り付けることで、政治も経済も外交も中道政策で課題を解決するという手品を続けた政権でした。例えば前世紀になりますが、小渕政権などは、結果的に捨て金になったにせよ、バブル崩壊で傷んだ経済に対して公共投資のバラマキを必死に続けた政権と言えます。
そうした過去の政権と比較すると、岸田政権というのは何をやっているのか、何をやりたいのかが分からないわけです。安倍政権より中道寄りかと思うと、いきなり防衛費を倍増するとか、ウクライナに100%のコミットをしてしまうとか、その一方で、広島サミットでは核廃絶に情熱を込めるなどという発言が出るわけです。では、核禁条約と核不拡散の二重体制というウルトラCをやるかというと、この点ではアメリカ追随の現状維持にとどまるわけです。
その結果が最初に述べたような「子育て政策の財源は増税で、それを批判されたら定額減税」という世論の「尾を踏む」ような迷走になっているわけです。つまり、一貫性、左右のマトリックスにおける立ち位置というものがハッキリしないと言いますか、伝わって来ないのです。
国会答弁について言えば、小泉、安倍のように「俺様の本音はもっと右だけど、官僚の建前と憲法の建前があるので、ここは官僚の作文をイヤイヤ読んでおこう」というような態度は、勿論ですが、決してお行儀が良いとは言えません。気持ちが入っていないので棒読みを批判されたり、見苦しい局面が多かったのは事実です。
一方で、岸田氏の国会答弁を聞いていると、塾世代のガリ勉タイプですからさすがに読み間違えとかは少ないのです。ですが、とにかく彼の本音はどこで、そこからどのぐらいズレた建前を喋っているのか、あるいは理想論はあそこだが今喋っているのは現実だとかという「政治の位置感覚」があるのかないのか、分からなくなるのです。もっと言えば思想的、政策的な「ホンネ」そのものが欠落しているか、もしくは極端に現実離れした社会観を持っているのかもしれません。
多分、本当に中長期ビジョンはないし、左右のプロッティングと言いますか、あるいは改革か守旧か、短期か長期かといった判断の感覚というのが、もしかしたら決定的に欠けているのかもしれないのです。それでいて、どうやら舞台裏での暗闘に関しては敵味方を峻別してネチッこくやっているフシもありますが、世論にはそれも良くも悪くも伝わっていないようです。
そうしたことの全体が、どうも「この総理では不安だ」ということになっているのではないかと思うのです。
対立軸が良くも悪くもハッキリしているアメリカ
こういう場合は、やはり政策論議に戻るのが一番です。確かに、岸田政権への不安は属人的であり、具体的にはコミュ力を中心とした統治スキルの問題だと思います。ですが、例えば岸田がダメなら、茂木はどうか、河野は危ないので菅の復帰でどうか、あるいは選挙対策で上川を担げなどという中で、一々それぞれのスキルを比較しようにも、徹底的に各人のスキルを追及する場というのがそもそもありません。
とにかく、日本の総理選出のシステムは、総理総裁になる直前までの権力闘争は密室政治であり、就任した途端に「国民との直接対話」という未経験のガチンコ演技が求められるというギャンブル性の高い制度になっています。これを、すぐに変えることができないのであれば、政権が弱まった際にはやはり政策論議という基本中の基本に戻るのが重要と思うのです。
この政策の対立軸ということでは、日本とは反対に「良くも悪くもハッキリしている」のが、アメリカの場合です。単純化をするのであれば、大きく分けてアメリカの政界には4つのグループがあると考えられます。
   民主党主流派=オバマ、ヒラリー、バイデンなど
インフラ整備に積極的、環境政策は受け身ながら積極的、格差問題には受け身、移民は世論を気にしつつもまあ寛容、ウクライナ全面支持で援助継続、NATOと国連+西側同盟の結束を特に重視、イスラエルを積極的に支持、グローバル企業にはフレンドリー、医療保険は現在のオバマケア(民間保険+政府補助)、対中政策は政冷経熱、保護貿易と自由貿易の中間、LGBTQや中絶問題では支持で結束
   民主党左派=サンダース、AOCなど
インフラは環境中心、環境は政策の柱、格差是正に極めて積極的、移民の人権にも積極的、ウクライナ支持でNATOと国連+西側同盟の結束は尊重するがホンネは孤立主義+絶対反戦、パレスチナ支持に近い、グローバル企業にはシャープに敵対、医療保険は公営化、対中政策には是々非々で緊張拡大には興味ない、保護貿易に近い、LGBTQや中絶の権利では主流派以上に熱心
   共和党主流派=ヘイリー、クリスティ、マッカーシーなど
インフラ整備には反対、格差是正にも興味なし、基本は小さな政府論と自己責任、移民は労働力として寛容な面もあるが保守世論に乗って一応厳格、ウクライナ支持で徹底抗戦、NATOと国連+西側同盟の結束を特に重視、イスラエルを徹底支持、グローバル企業にはフレンドリー、医療保険は民営、対中政策は政冷経熱、自由貿易、LGBTQや中絶問題では保守派に迎合するが関心薄い
   共和党保守派=トランプ、ジョーダンなど
インフラ整備には絶対反対(トランプは不徹底だが)、格差是正に全く興味なし、むしろ富裕層への減税を推進、国家の主流派を潰すのが目的で小さな政府論や自己責任にも実は余り興味がない、移民はパフォーマンス的に排斥して民意を扇動、ウクライナ支持反対、NATOと国連+西側同盟の結束を破壊しても米国の徹底的な孤立を実現したい、イスラエルを徹底支持するがトラブルには関与したくないしホンネにはユダヤ差別の感情も内包、グローバル企業は庶民の劣等感を喚起するので徹底的に叩く、医療保険改革は民営(ジョーダンなど)と言いつつトランプは高齢票を意識してバラマキ的な側面も、対中政策は表面強硬で内実は行き当たりばったり、トランプの場合は徹底した保護貿易、LGBTQや中絶問題では徹底的にリベラル叩き(但し東部のトランプは賛否に消極的)
とまあ、何ともメチャクチャな違いがあります。現在の政局は、民主党も共和党も内部分裂の動きがあり、同時に世代交代のマグマも燃えているわけですが、その動きの方向性については、この4つのグループの力関係で見えてくることになります。また世代別の支持なども、この4つのグループの政策のマトリックスの中で可視化できるわけです。
見事なほどに政策のマトリックスが見えない日本
こうした状況と比較しますと、日本の場合は「見事なほどに政策のマトリックスが見えない」ことになっています。また、政策の違いがあっても可視化できない形で政策が動いてゆくという面があるようです。
例えばですが、安倍晋三氏亡き後の「保守派」というのが、自民党を割る動きにもなるかもしれないとか、いやいや清和会などを通じて影響力を維持するとか、派閥横断で勉強会がどうとか注目されているわけです。では、彼らは具体的な憲法改正案を持っているのかというと、国軍設置か9条加憲なのかハッキリしません。例えば東シナ海政策でも、大局的にどんな抑止プランがあるのか不明です。
個別の問題、例えば東シナ海のブイ問題とか、トランスジェンダーの問題など個々の問題が出てくると右から盛大に色々と繰り出してくるわけですが、それならヤフコメと変わりません。一貫した政策がないとか、中長期展望がないということでは、岸田政権とは変わらないのです。
左派も同様です。共産にしても、立憲にしても、例えば処理水には反対する、辺野古には反対する、などまるでデパ地下の「プラ食器の試食」のようなもので、味見程度の話で、食べたらポイというレベルであるわけです。例えば脱原発の経済成長というシナリオ、沖縄の非武装化による台湾海峡の安定と尖閣の保全といったシナリオを彼らが持っているのかというと、全く無いわけです。
例えばですが、直近の問題、それも重要な問題について考えてみても、円安問題、中東情勢、ライドシェア、AIなどについて、野党が「具体的な政策」を持っているのかというと全く怪しいのです。共産党などはライドシェアに反対ですが、「バス、タクシー輸送力の維持」についてシナリオを持っているわけではありません。とにかく味が漠然と和風とか中華ということを「試食」する程度の政治と言えます。
似たような問題としては、維新とか都民ファのような「都市型の小さな政府論」政党の問題があります。この2つのグループ(プラス旧みんなの党)というのは、要するに都市の納税者の反乱に過ぎないわけで、納税額のリターンがないことへの怒りが原動力になっています。
ただ、この2つのグループには共通の根本的な欠陥があります。
1つは「小さな政府というコストカット戦略」はあっても「民間活力による成長戦略」はないということです。どちらも「ある」と強弁していますが、実際はありません。そして維新は現時点では万博企画の行き詰まりという問題を抱えています。また都民ファはコロナ禍におけるバラマキ政策で一気に都財政を悪化させて将来の高齢単身世帯群を支える資金を喪失したという大罪を抱えています。つまり偉そうに自民を批判していたくせに、経済という点で大失点を抱えているのです。
2つ目は、これは党派の成り立ちからくる欠陥ですが、地方政策がないことです。現在の日本の各地方は、道州制による県庁リストラ効果などでは埋めることのできないマイナスを背負いつつあります。これは観光収入などでもチャラにはできません。人口の分散をどう集約するのか、過剰な交通インフラを持続可能な姿に「まとめ」つつ交通や流通、あるいや防災や除雪を支える人材をどう確保するという「サバイバルの段階」に入っています。
維新や都民ファといった都市政党はあくまで地方を無視するのか、あるいは積極的に税金の地方還流を止めて地方を追い詰めて改革へと向かわせるのか、それとも全国政党を目指して、突然地方にバラマキをするのか、良くわからないのです。
つまり、2つ目の地方行政に解答をもっていないが故に都市政党にとどまり、その一方で、リストラ政党だけではネガティブなので、大阪では万博、東京ではコロナ禍のバラマキをやって、どっちも「統治能力の欠陥」をさらけ出しているわけです。ちなみに、国民民主というのは、表面的には民主党分裂の際の受け皿と、希望の党の失敗の受け皿に見えますが、本質は旧同盟系の票の受け皿という特殊な政党です。この際、民社党とでも名乗ったほうが正直かもしれません。
維新と都民ファが手を組む?「政界再編」の可能性はあるか
というわけで、各政党、各派閥には傑出した政策というものはないし、有権者が特定の政策を実行してもらうと思っても、政策的な選択が難しい状況です。例えば、円安をある程度是正してもらいたいが、失敗して円高が暴走するのは困るというような「票」、あるいは中国を経済のパートナーとして良好な関係を続けたいが、自由と民主主義とか台湾海峡の安定ということは維持してもらいたいというような「票」は、一体どこへ入れたら良いのか分からないということになります。
では、イデオロギー、政策と政党や会派、あるいは派閥というものが合致していない、あるいは合致していても余計なものがついてくる場合に、今度は政党や政治家の統治能力を考えて選択をするということになります。
実はこの「政策より統治能力を優先して選択する」という有権者の行動は、21世紀に入ってからの政権選択ではこちらがメインであったのかもしれません。第一次安倍政権は格差問題への対処で政権が崩壊、麻生太郎政権も、野田佳彦政権も同じことです。菅義偉政権も「五輪を強行」したことで崩壊したのではなく、有権者は「五輪を止めることのできる統治能力がない」という判断をしたように見受けられます。
今回、岸田文雄政権が非常に厳しい状況に追い詰められているのも、このパターンです。例えば、先週サンフランシスコに出張した岸田総理は、バイデン大統領から「来年前半に国賓待遇で米国へ」という招待を受けました。これは、上川外相あたりが、根回ししたのかもしれませんが、バイデンの招待があるからということで、倒閣運動に対抗しようというのはミエミエです。もっとも、半年先などという遠い将来のことなどは全く「誰にも分からない」のであって、バイデン政権がどうなっているかも分かりません。
いずれにしても、岸田氏の不人気により年内解散というのはほとんど消えたようです。では、今後の政局はどう動いていくのか、以降は1つの仮説です。「こういうこともある」という仮のストーリーで、どの程度の可能性があるのかは私には全く分かりません。ですが、日米の様々な政争の様相を見てきた私としては「1つの可能性」を感じているのは事実です。それは「政界再編」の可能性です。
まず、維新と都民ファという2つの都市政党は、これまでは微妙にと言いますか、かなり距離を置いて動いていました。維新はアンチ東京という感情論が支えているというのが一番の理由ですが、維新が大阪の自民党を敵視しており国政レベルでもケンカしていますが、東京では国政では都民ファは弱いので自民党とは一定の関係があります。もっと言えば、小池と橋下という2人のキャラは重ならないという問題があります。
ですから、両者が手を組むという可能性は低かったのです。ですが、ここへ来て両者が接近するという環境が少しですが整ってきたようです。
大阪の維新は万博、東京の都民ファでは財政悪化という問題があり、どちらも看板の掛け替えで印象を刷新したい動機がある。
小池の場合は、来年7月に知事の改選を控えている。国政に勝負をかけるのであれば、その前。71歳の小池には完全にラストチャンス。
自民党の中で特に「保守派」という部分が浮いており、これを外から引っこ抜く可能性は出てきた。
小池、吉村、高市などは少なくともパブリックなコミュ力では場数を踏んでおり、岸田、菅のようなダメダメよりは格段に安定感がある。
急浮上した上川待望論は、実は小池待望論のダミーかもしれない。言い方を変えれば、上川の待望論が出てくるようだと、小池が黙っている訳はないのであって人生最後の勝負に出てくるかも。
つまり、地方向けには保守イデオロギーを掲げつつ、大都市の「小さな政府論」と「アンチ自民党」の感情論を糾合して全国レベルの集票というスキームは整理するかもしれません。そこに、イデオロギー運動としての「日本保守党」なども流れ込めば、政権の受け皿としては成立します。これをグループAとしましょう。
ハト派+経済成長という「食い合わせの良い」グループB
問題は、接着剤になり影の仕掛け人になるような人物がいそうもないことです。小池にはしっかりした参謀はいた試しがないし、維新の人材難もダメダメです。高市自身にその覚悟はないだろうし、恐らく高市も参謀がなく、そのくせ小池を立てるような知恵も薄そうです。選挙に勝つには国民民主の旧同盟票とか、保守系の宗教票なども必要ですが、そうした部分を「ひっかき集めてくる」ような泥臭い行動力がある人物はいそうにありません。
しかしながら、仮にこうした動きがあるとしたら、その反力が生じます。例えばですが、自民党の「茂木派+石破+河野+菅」が結託して、立憲を取り込み、更には公明を取り込み、場合によっては国民民主を取り込むということはあると思います。そうすると、一応、ハト派+経済成長という「食い合わせの良い」セットになるわけです。
個人的には、原発が動かなくなると経済が破滅するのと、立憲や公明が入ると改革が潰されるので良い感じはしません。ですが、保守イデオロギーと改革は両立しないのは安倍政権ではよくわかったので、違う組み合わせで試みてもらいたい気はします。超ウルトラCとしては、このグループ(仮にグループBとしましょう)が小池を担ぐというような寝技ができれば、強力ではあります。
ちなみに、周辺の環境としては、
団塊の保守派がどんどん隠居している中では、日本の政治風土もやや左にシフトしているかもしれず、このグループBが成立する条件はある。
若者票は保守化しているのではなく、改革を旗印にすればこちらに来るかも。
池田大作が亡くなったので、公明は動きやすくなったかも。
このぐらいやらないと、立憲は党勢挽回できない。
菅とか、枝野、岡田とか、あるいは茂木とか、老獪な寝業師はこっちのグループの方がいそうな感じ。
更に勝手なエンタメ話にするのであれば、
   グループA
ボス高市(または小池)、サブ吉村、これに自民保守派、日本保守党、維新、都民ファが加わる。内容は保守+小さな政府論。
   グループB
ボス河野+サブ玉木(但し小池を担ぐ可能性あり)、これに平成研、石破G、菅G、二階派、立憲、公明、国民民主(場合によっては更に都民ファ)が加わる。内容は中道+構造改革+先端投資路線。
という2大政党の対立構図という「デッサン」を描くことはできます。ちなみに、こうしたダイナミックな動きとなれば、岸田派(宏池会)と清和会(旧安倍派)は解体してABの草刈り場になるかもしれません。勿論、このストーリー、現時点では「エンタメ芸」の域を出ないかもしれません。ですが、予兆はあるのです。予兆と言えば、まず、唐突な上川待望論が、小池とか高市への起爆剤になる可能性はあると思います。
加えて、非常に小さな動きですが、直近の2つの事件というのが、個人的には引っかかります。まず、副大臣、政務官のスキャンダル問題ですが、神田憲次議員の場合は、旧統一との関係を切れないし公表もできない地雷議員なのでリスクを切った格好というようにも見えます。恐らく真相はその近辺でしょう。
一方で、山田太郎議員柿沢未途議員の場合は「旧みんなの党」というのが気になります。仮の話として、水面下で政界再編などの「自民党離脱」の動きをしていたのなら、岸田周辺が「先に泥を塗って切った」のかもしれません。
もう1つの政界再編への動きの「初期微動」
もう一つ、妙な動きがあります。18日(土)に明るみに出たのですが、自民党の五派閥について、傘下の政治団体が、政治資金パーティーの収入およそ4,000万円分を収支報告書に記載していなかったとして告発されているというのですが、この問題で、東京地検特捜部が、各派閥の担当者から任意で事情を聴いているという報道があったのです。
その五派閥というのは清和会(旧安倍派、1,900万円)、志帥会(二階派、900万円)、平成研(茂木派、600万円)、志公会(麻生派、400万円)、宏池会(岸田派、200万円)です。告発というのは、要するにタレコミがあったということです。岸田派が少なく、岸田に近い順に少なく、遠い順に多くなっているので、タレコミは岸田周辺からという可能性もありますが、どう考えても不自然です。
特捜が動いていることも含めて、これは党外からの力学が動いているのかもしれません、としたら政界再編への動きの「初期微動」である可能性を感じます。もしかしたら、若狭(希望の党失敗の際に、小池と組んだ特捜OBの若狭勝氏)人脈などが動いているのかもしれません。
それはともかく、現在の日本において政治に閉塞感があるのは、岸田総理1人の責任ではないと思います。明らかに選択の必要な問題があるのに、選択可能なセットで選択肢が示されていません。そこを直してゆくということは、理想論でもなんでもなく、民主政治を機能させるためには普通の動きだと思います。
そう考えると、政界再編をやって必要な選択肢を用意するというのは、国民、すなわち有権者に対する政治の側の義務であるようにも思うのです。
●野田元首相「岸田首相から危機感を感じられない、うっかりミスか」と追及 11/22
国会は衆議院予算委員会で22日、立憲民主党の野田元首相が、岸田首相に対し自民党派閥の政治団体が政治資金収支報告書に、合わせて約4000万円の収支未記載があったことを追及した。
野田元首相は、自民党の現状について「一強の奢りと歪みがでている」と指摘した上で、岸田首相に対し「政治と金の不祥事が多発してきたことに危機感を持つべきだ」「岸田首相からは危機感が感じられない」と追及した。
さらに「岸田総理は適切に対応するという言葉を使うが『各政治団体に任せる』と、適切な対応との内容は、ミスをしたら修正すればいい、うっかりミスが続いているかのような言い方だ」と「政治とカネ」の問題に対する岸田首相の対応に問題があると指摘し、「政治に対する信頼を取り戻すためにリーダーシップを奮ってドブさらいをしなければいけない」として自民党総裁として責任ある姿勢を求めた。
岸田首相は、これに先立ち、予算委員会冒頭で「具体的な訂正内容について各政治団体において適切に説明を、できるだけ速やかに行うよう幹事長を通じて指示した」と発言して、幹事長を通じて、自民党に対し初めて具体的な説明を行うように指示した。
岸田首相は、野田氏への質問に対しては「重大な危機感を持たなければならないというのは仰るとおりだ」と指摘を受け入れた。さらに「党の総裁として幹事長に指示を出し、説明責任、適切な説明がおこなわれることを徹底したい」と重ねて強調した。
ただし、収支報告書への未記載があった派閥の政治団体について「政府とも自民党とも別の政治団体だ」と述べた際には、野党から「おかしい、派閥は自民党とは違うのか?理解されない」と指摘する声が委員会室の野党委員から上がった。
●子どもが多いほど住宅ローンの金利引き下げ、国交省“少子化対策”は詭弁 11/22
国会で審議真っ最中の2023年度補正予算案。その中に国土交通省がひっそりと紛れ込ませたのが、子どもの数が多いほど住宅ローン金利を引き下げる新制度だ。しかし「少子化対策」と銘打たれたその中身は、子育て世帯に「お得」といえるようなものではなく——。
子ども1人につき年0.25%引き下げ
制度は住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」に新設される予定だ。
18歳未満の子ども1人につき、借り入れから当初5年間の金利を、年0.25%引き下げる。2人なら0.5%、3人なら0.75%と子どもの数が増えるほど下げ幅は広がり、最大で子ども4人で1%を引き下げる。
5人以上の場合は年0.25%の引き下げを、子どもの人数に応じて期間を延長して実施する。例えば子どもが5人いたら、借り入れ6〜10年目も年0.25%金利を引き下げる。
制度は法律婚の夫婦だけでなく、事実婚や同性パートナー、ひとり親も対象だ。
加えて夫婦などカップルのどちらかが40歳未満であれば、子どもがいなくとも年0.25%引き下げの対象になる。
住宅金融支援機構は同制度を「少子化対策」と説明しており、国交省は同制度のため2023年度の補正予算で13億1400万円を盛り込んだ。
なお、フラット35では省エネ性能の高い住宅などを対象に、条件によって固定金利を一定期間、一定程度引き下げる仕組みがもともとあった。今回の改定に合わせて、既存の制度で金利引下げの条件に該当していた場合の下げ幅を最大1%まで拡大する。
本当にトクする?むしろリスク
しかし、この施策を「子育て支援や少子化対策」と主張するのは「詭弁だ」と言うのが、LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所・副所長兼チーフアナリストの中山登志朗さんだ。
住宅ローンの変動金利はSBI新生銀行が業界最低水準で年0.29%、大手銀行で0.3%台もめずらしくは無い。一方で、固定金利であるフラット35の場合、返済期間21〜35年の金利は年1.96〜3.53%だ。
「住宅ローンの金利は変動より固定のほうがはるかに高いのに、子ども1人につき0.25%安くなるというだけの理由でフラット35を選ぶでしょうか? 子どもが欲しくなるでしょうか? そもそも金利引き下げも初めの5年間だけで、その後は上がってしまいます。たとえば子どもが3人いる場合は6年目以降は0.75%金利が上がることになるわけですが、変動金利でもこんな急激な利上げはありません。政権の支持率が低下する中で生活者目線の政策を打ち出したのでしょうが、お得でもなく、むしろリスクが高い、子育て世帯を騙すような施策になってしまっていることに疑問を覚えます。」(中山さん)
岸田政権の迷走する子育て政策を象徴するような今回の施策。住まいのサポートは必須だが、真に支援になっているのか? 再考が必要だろう。
●膨らむ国の基金 監視する仕組み欠かせぬ 11/22
複数年にわたる事業のため国が積み立てている基金が、膨張し続けている。
残高は2022年度末時点で計約16兆6千億円に上る。19年度末は約2兆4千億円だった。
新型コロナの対策や経済安全保障関連の事業で、政府が補正予算などを通じ大型の予算を投入し続けてきた結果だ。
各年度の必要額をあらかじめ見込むのが困難な場合などに、予算の単年度主義の例外として限定的に認められた手法である。ここまでの規模に膨らむと、予算編成で常態化した感すら漂う。
基金の活用には、中長期的な政策の予算を安定して確保できる利点がある一方、必要性が十分に吟味されず無駄な支出につながっているとの批判がある。
外部有識者が予算執行の無駄を点検する「行政事業レビュー」で今月、企業支援や農業強化の基金について、ずさんな運用の改善を求める指摘が相次いだ。200ほどある基金のうち約3割の基金が事業の終了時期を定めていなかったことなども問題視された。
こうした状況を踏まえ、河野太郎・行政改革担当相が全基金を点検する考えを表明した。使う見通しのない資金を国庫に返納させるなどの対応を取るという。
当然の対応だ。現状の点検にとどまらず、基金に対する政府の姿勢を振り返り、活用のあり方を考え直していく必要がある。
岸田文雄首相はこれまで、「単年度主義の弊害を是正し、国家課題に計画的に取り組む」として基金の積極活用を掲げてきた。いまはむしろ、基金を多用することの弊害に目を向けなくてはならない状況になっている。
基金は管理上の課題が多い。いったん積まれた後は単年度の予算と違って国会の監視が効きにくくなる。実際の運営は各省庁の外郭団体などに委ねられ、責任の所在が曖昧になるとの指摘もある。監視を行き渡らせる具体的な仕組みを検討しなければならない。
岸田政権は開会中の臨時国会に提出した23年度補正予算案で、各種の基金に投じる資金として計4兆3091億円を計上した。
半導体関連の支援に2兆円近くを盛ったほか、新設では宇宙分野の技術開発を支援する「宇宙戦略基金」に3千億円を投じる。
財政法は、補正予算の編成を「特に緊要となった経費の支出」などに限定している。大型対策をアピールして基金を膨らませる補正対応に緊急性があるのか。国会は精査しなくてはならない。
●「令和の若者=超ツライ」証拠の数字、1980年代若者との生活の差 11/22
岸田政権に対する若年層の支持率の低さが目立つなど、若年層と高齢者層における政治意識の乖離が激しくなっている。若年層は今の高齢者層が若かった時代と比較して、税金や社会保障の負担が増えており、こうした実情も影響していると考えられる。国民負担における世代間格差は実際、どの程度、大きいのだろうか。
若年層からの支持が著しく低い
このところ岸田政権の支持率低下が顕著となっているが、中でも若者からの支持が著しく低い。時事通信の10月調査によると、「70歳以上」では36.0%の支持があるのに対して、「18〜29歳」の支持率は10.3%だった。安倍政権や菅義偉政権では、若年層の支持率は高かったという現実を考えると、首相のイメージが大きく影響しているのは間違いない。若年層の経済的負担は年々増加しており、もともと支持率が低下しやすい土壌があった。ここに岸田氏のイメージが重なり低支持率になったと考えるのが自然だろう。
日本では高齢化の進展に伴い、有権者の比率が高齢者に偏っていることから、高齢者向けの政策ばかりが実施されるという、いわゆる「シルバー民主主義」が顕著となっていた。これは人口構成上、ある程度は仕方のないことかもしれないが、若年層から見ると自分たちは放置されているという感覚を持ってしまう。こうした中で政策を立案する場合には、可能な限り世代間格差を縮小させる工夫を行うことが重要となってくるが、そのためには、若年層と高齢者層で、どの程度、負担が違うのかについてしっかりと認識しておく必要がある。
若年層が中高年世代に対して、最も世代間格差を感じているのは、やはり年金だろう。
日本の年金は現役世代が支払う保険料で高齢者の給付を賄うという賦課方式となっている。現役世代の人口が減り、高齢者世代の人口が増えると、当然のことながら現役世代の負担は大きくなる。
現時点で年収400万円程度のサラリーマン(ボーナスが70万円と仮定)における月々の年金保険料は約3万円となっている。一方、1980年代の後半に若者だった世代は、そろそろ年金をもらう年齢に差し掛かりつつあるが、この世代が若い時には、同じ年収400万でも月々の負担は1万7,000円程度で済んでいた。
つまり30年程度の期間を経て月あたり1万3,000円程度、負担が増えた計算となる。この違いが許容できないレベルなのかは人によって感覚が異なるかもしれないが、やはり月1万3,000円の負担増は大きい。
政府も世代間格差の縮小を進めている
政府もこうした状況を放置していたわけではなく、現役世代の負担があまりにも重すぎることから、これを是正する改革を進めてきた。その中核となっている仕組みが「マクロ経済スライド」である。
先程、説明したように、日本の年金は現役世代が納めた保険料を高齢者に支払う方式なので、年金財政の悪化を回避するには、現役世代の保険料をさらに引き上げるか、高齢者の年金給付を減らすかのどちらかしかない。政府はこれ以上、現役世代の保険料を引き上げることは難しいと判断し、段階的に高齢者の年金給付を減らす「マクロ経済スライド」を発動した。
このため、今、高齢者が受け取っている年金は、毎年少しずつ減額されている。40代の頃、400万円台の年収を得ていた人は、現時点では月15万円程度の年金を受け取れているが、年金額は毎年減らされており、20年後には月12万円程度まで下がる可能性が高い。このところ物価上昇が顕著になっているにもかかわらず、年金が増えないため生活が困窮しているというニュースをよく目にするが、これは若年層の負担を軽減するため、高齢者の給付を削減したことの要因が大きい。
しかしながら、この減額制度はあくまでも高齢者の給付を引き下げるという話であって、現役世代の負担が直接的に減るわけではない。こうした状況から、世代間格差を本当に解消するためには、若年層の保険料を引き下げる必要があるとの意見も出ている。
では、高齢者が若かった頃のレベルまで、つまり月3万円から月1万7,000円程度まで負担を減らした場合、年金はどうなるだろうか。年金の場合、徴収と給付はセットで考える必要があるため、保険料を引き下げれば、理屈上、その分だけ給付を減らす必要が出てくる。
上記のケースでは、保険料を43%減額することになるので、給付も同じ割合だけ減らさなければ年金財政は破綻してしまう(企業がその分を負担すれば話は別だが)。ここで給付を維持するため税金から補填してしまえば、結局のところ現役世代の稼ぎの一部を充当することと同じになり、不公平を解消できない。
保険料の減額は最終的には若年層にも影響を及ぼす
先ほど、月15万円ほどの年金をもらえている人は、20年後には月12万円程度に下がるという話をしたが、ここに先ほどの保険料減額分を単純適用すると、月々の年金は約7万円まで下がる。この金額で高齢者が納得すれば、世代間の不公平を解消することが可能だ。
この金額で高齢者に納得してもらえるのかが最大の政治的課題だが、保険料を減額した場合の問題点がもうひとつある。それは保険料を減額してしまうと、若年層の人が年金をもらう時にも十分な年金が手に入らず、老後貧困の問題がつきまとうことである。
現役世代の保険料を減額し、その制度を続けるということは、若い世代の人が年金を受け取る頃にも、同じような額の年金しか受け取れないことを意味する。
近年は持ち家信仰が薄れ、一生賃貸と考える人が増えている。マイホームは下手をすると「負」動産になりかねない現実を考えると、一生賃貸で通すということにもそれなりに合理性がある。ただ、一生賃貸というライフスタイルを実現するにあたっては、絶対にクリアしなければならない条件がある。それはしっかりと資産形成を行い、年金収入に加え、資産からの所得も見込めるようにすることである。
若い時には、あまりイメージできないかもしれないが、高齢になると多くの人が疾患を抱え、体が思うように動かなくなる。月7万円しか年金がなく、十分な収入を得られない中で、その中から家賃を支払って生活することは極めて難しい。
無関心でいられない? 年金問題をホンキで考えるべき理由
筆者が若い頃、年金財政の問題は取り沙汰されており(そうだからこそ消費税の導入が決定された)、「どうせ年金はなくなるのだから保険料など払いたくない」「年金はないものと思っている」と強く主張する知人も多かった。
当時の若者(今の中高年)の口から出ていた台詞は、今の若年層と大きな違いはない。だが、実際に年金をもらえる年齢が近づいた今、彼らはどうなったのというと「自分はいくら年金がもらえるのか?」という話ばかりするようになっている。
厳しい言い方になるが、若年層の多くが、今は無関心であっても、年齢が高くなると「年金、年金」と騒ぎ出すのはほぼ確実だ。こうした現実を踏まえた上で、どこまで保険料を減額するのが妥当なのか、腰を据えて考えていく必要があるだろう。
●老人医療への「支援金」をやめれば健康保険料は半分に減らせる 11/22
岸田政権の政策の特徴は、目的がはっきりせず、場当たり的に財源を求めることだ。少子化対策の財源も、増税ではなく医療保険に上乗せして徴収するという。なぜ少子化対策の財源が医療保険なのか。リスキリング(職業訓練)の予算は雇用保険(失業手当)から支出される予定だ。政府の審議会でも、目的外使用に疑問の声が相次いだという。
サラリーマンの健康保険料の半分は老人医療の「支援金」
こうした政策には、一つだけ一貫した方針がある。それは消費税は上げないということだ。社会保障給付が急速に膨張している状況で、その財源となる消費税の増税から逃げるので、社会保険料の流用が行われるのだ。これは少子化対策が初めてではない。次の図のように後期高齢者の医療給付の40%が、それ以外の保険から流用した後期支援金6.3兆円でまかなわれている。
それ以外にも市町村国保の赤字(主として前期高齢者)3.6兆円をサラリーマンの組合健保・協会けんぽが埋めている。この結果、組合健保の保険料収入6.9兆円の半分が支援金などに流用され、組合員への給付には半分しか使われていない。
負担は健保組合のサラリーマンが負うが、彼らには給付を受ける権利はなく、その使途もチェックできない。この負担のおかげで健保組合の8割が赤字になり、解散が相次いでいる。
「国民皆保険」の矛盾をとりつくろう支援金
この根本には、国民皆保険の矛盾がある。戦前からの健康保険は企業の従業員を対象とするもので、自営業者を想定していなかったが、岸信介が自民党の集票基盤だった農村に支持を広げるために国民年金と国保をつくった。
しかし皆保険は源泉徴収のサラリーマンならできるが、自営業者や非正規労働者は未納が多いため、保険会計は赤字になる。それを税金で埋めると財政赤字が膨大になるので、取りやすいサラリーマンから取ることにしたのだ。
このような財政調整が始まったのは、1982年の老人保健法からである。これは1973年に老人医療の無料化で負担が市町村の国保に集中したことから、給付の30%を国庫負担し、70%を各保険者(健保組合)が拠出することにしたものだ。
しかし老人医療費は急速に膨張し、国保の赤字を埋める健保組合が1999年に不払い運動を起こした。その結果、2002年に老人医療が1割負担になり、2008年に後期高齢者医療制度ができたが、財政調整の制度は残った。不明朗な支援金は、30年も続いた老人医療無料化のなごりなのだ。
消費税を上げると健康保険料は半減する
この矛盾が超高齢化で顕在化した。今の後期高齢者は現役のときほとんど保険料を払っておらず、企業と雇用関係もないので、本来は自分で保険料を払わないといけないが、後期高齢者の保険料は、給付の1割にも満たない。これは実質的には国営なのだから、すべて税で負担するのが筋だが、それだと消費税を増税するしかない。
しかし消費税は橋本内閣で大事件になってから増税が封印され、特別会計の中でやりくりすることが常態になり、自公政権はこの支援金を既得権として守った。このため後期支援金と前期調整額の合計9.9兆円が現役世代から支出されている。
この支援金をすべて消費税に置き換えると5%の増税が必要になるが、それだけ保険料が減る。特に健保組合の保険料は半分に減らせるが、全体としての負担額は同じだ。
後期高齢者医療の給付は9割が税金になり、実質的に国営化される。財源が税金になれば、いま話題の診療報酬引き下げのように財務省がきびしく査定できるので、今の無責任な支援金よりはましだろう。
医療は最大の成長産業
支援金や拠出金は廃止し、保険料で足りない部分は税でまかない、窓口負担は一律3割とすべきだ。高度医療や延命治療は保険適用外とし、民間保険を活用して自由診療でやればいい。医療・福祉はこれから製造業を超える944万人の雇用を吸収する国内最大の産業になる。豊かな老人は豊かな医療サービスを受けることが、経済成長の源泉にもなる。
最大の難関は増税だが、これは消費税である必要はない。医療保険の本質的な機能は所得再分配なので、所得税・住民税と社会保険料を一体化した社会保険税という目的税にする案もある。低所得者が人工透析などの高価な医療を必要とする場合は「負の社会保険税」を給付してもよい。
税に一元化すると一般会計は増税になるが、特別会計の減税で相殺できるので、国民負担は変わらない。逆進的でサラリーマンに負担が集中する健康保険料より、高齢者も負担する消費税のほうが公平だ。一時的には国債でファイナンスして、徐々に増税することも考えられる。
政治家が不人気な増税を避けるために、サラリーマンに過大な負担を押しつけているのは理不尽である。現役世代は声を上げるべきだ。また健保組合が不払い運動を起こせば、政治は変わるかもしれない。
●底が見えぬ支持率低下…国民に愛想を尽かされた「政治屋による政治」 11/22
11月22日 連日のように岸田文雄内閣の支持率低下報道を見聞きする。最新は毎日新聞の世論調査(18〜19日)で支持率は先月に比べ4ポイント減の21%。もう低下には驚かないが、あの菅直人民主党内閣の15%(2011年8月)に次ぐ低水準と聞くと来るべき時が来たかの感がある。「早くやめてほしい」が55%はさもありなんだ。
経済対策の切り札とした所得税減税は逆に国民の不評を買い、税金滞納で4度も差し押さえを食ったトンデモ副大臣ら政務三役3人の辞任ドミノが追い打ちをかけた。さらに自民党5派閥の政治資金パーティー収入の過少記載という、いずれ大ごとになりそうな問題も浮上してきた。
かと思えば石川県の馳浩知事は衆院議員時代、東京五輪招致活動で内閣機密費を使い1冊20万円のアルバムをIОC委員全員に贈ったことを自慢げに明かした。その後、事実誤認と謝罪したが「綸言(りんげん)汗の如し」で言葉は取り消せない。機密費がそんなものに使われたのかと呆れる。地方からも足を引っ張られては首相もたまらない。
もはや政権は末期的症状に見えるが、党内では「岸田おろし」のゴングはまだ鳴ってないというからフシギだ。高市早苗氏の「勉強会」という名の仲間作りが前触れに見える程度。選挙など先のことを考えればわが身大切が一番で引きずり降ろすまでの動きはないらしい。
かつて漫才師から参院議員になったコロンビア・トップは「日本の政治家は政治屋だ」と毒舌を吐いた。先見の明か、今や家業を継ぐ世襲議員だらけ。世間にはそんな政治屋サンの動きが透けて見えるのか。ある調査では支持政党なしが60%。政治は愛想を尽かされたということだろう。 
●支持率低下止まらない岸田政権 「アメリカ訪問」と「予算案成立」を花道に 11/22
数量政策学者の高橋洋一が11月22日、ニッポン放送に出演。衆議院予算委員会での実質的な審議が始まった補正予算案について解説した。
衆議院予算委員会、補正予算案の実質的な審議始まる
国会では、衆議院予算委員会で経済対策の裏付けとなる補正予算案の実質的な審議が始まった。新たな経済対策について、岸田総理は「今回の経済対策はデフレからの脱却が大きな目的。賃上げは道半ばであり、給付や減税といったあらゆる政策を用意し、国民の自由に使えるお金を確保することで消費を落ち込ませないよう配慮する必要がある」と述べた。
飯田)岸田総理の答弁だけを聞いていると、「そうなのか?」という感じですが。
高橋)一方では物価高対策に関し、「デフレからの脱却が目的」と言っていますが、デフレからの脱却で物価高対策を行うのは少しおかしいですよね。
飯田)デフレはむしろ物価が伸びない現象です。
高橋)「可処分所得を増やす」というだけであれば結構なのです。しかし、「デフレからの脱却」にこだわっているように思える。誰が考えているのか知りませんが、「デフレからの脱却と物価高対策」というのは、きちんと説明しないとわかりにくいですよね。
飯田)そのまま聞くと「アクセルとブレーキを同時に踏むのか?」と感じてしまいます。「ちょうどいいところを狙う」というようなイメージでしょうか?
税収増が1710億円であるはずがない 〜もっと多いはず
高橋)よくわかりません。岸田さんの政策はいつもわからないのですが。補正予算については、国会できちんと議論してもらいたいですね。補正予算にはフレームがあるのです。「歳出がどんな項目か」というところばかりにみんな着目しますが、予算だから歳入と歳出は全部載っているのです。歳入のところを見ると、実は税収増で、年度途中に補正予算を出すから、年度予算の改定になるため、税収のところだけ直さなくてはいけないのです。
税収増を見積もれば特例国債なしでも賄える 〜歳入についての数字がデタラメ
高橋)税収増の項目を見ると、1710億円とされています。しかし、税収の改定でこんなに少ないはずがないのです。そもそも年度の名目経済成長率を4.4%で計算しているから、税収弾性値はすごく低く見積もっても、ギリギリで1.1なのです。そうすると4.8%伸びるから、これだけで5〜6兆円にいくわけです。もう少し真面目にやれば、6〜8兆円くらいの数字でもいいような話です。
飯田)なるほど。
高橋)一方で、特例国債(赤字国債)が6兆3650億円と書いてあるわけです。私がいま言ったように、普通に税収増を見積もれば、特例国債はなしなのですよね。
飯田)それで取れてしまうと。
高橋)なぜ、このようにするのでしょうか。歳出の話に関して、いろいろなものがあるのはいいですよ。しかし、それを賄う歳入の方はデタラメなのではないかと、正直言って思いましたね。ここまでデタラメだと、誰かが質問しなければおかしいです。
これまで法人税を払っていなかった企業が法人税を払うのだから税収が伸びるのは当然
飯田)税収弾性値の話がありましたが、いままではデフレもあって、あまり景気もよくならず、赤字企業が法人税を払っていないなど、いろいろありました。しかし、これだけ名目の成長があったということは 、GDPの成長以上に税収も伸びるのではないでしょうか?
高橋)税収弾性値1.1という数字も信用できないのですけれど。本当に測ると、2か3だと思います。
飯田)経済成長以上に税収は伸びる。
高橋)いま話があったように赤字企業など、0だったところが払うのだから、税収弾性値はすごく伸びるに決まっているではないですか。
飯田)いままで払っていなかったところが払えば。
高橋)結果、2か3だと思うけれど、そこは議論があるからさて置き、1710億円は少なすぎます。兆単位までいかないとおかしいですよね。つくっているのは財務省なのですが、こういう数字に対し、国会で誰がきちんと質問するのか見ていますよ。
税収が上振れしているはずなのに
飯田)確かに為替がこれだけ変わっていて、特に海外に資産を持っていたり、輸出企業などはかなり伸びているはずです。
高橋)そもそも為替値が円安になるとGDPが伸び、それだけで増収要因になりますから。財務省にいて為替が安くなれば、全体の税収が増えることはわかるはずです。見積もりとは言え、酷い計算だなと思いました。最終的には税収が増えると、国債の発行額が減るだけなのです。人畜無害と言えば人畜無害ですが、それにしても酷い計算です。
飯田)これだけ公債を増やすというのは、また「財政規律が大変だ」ということを言いたいのでしょうか?
高橋)「言いたいから」としか思えませんね。真面目な人の計算ではありません。桁が違います。
飯田)最近は毎年「税収が上振れした」という話が出ますよね。
高橋)上振れして大変なのでしょう? それなのに、これは何なのでしょうか。もう少し言うと、外為特会の益も繰り入れられますしね。
飯田)外為関係の特別会計には米国債などがあって、当然、円安になれば円での評価額は高くなる。
高橋)評価額のみならず、普通は3年債だから、50兆円くらいは償還が来るのですよ。
飯田)自然に償還期が来る。
高橋)普通ならロールオーバーするだけでも含み益が出るのです。3分の1の含み益を出したら、それだけでも10兆円以上です。
飯田)十分に補正を賄える。
約50兆円の「貯め込んだ財源」を国民に還元するべき
飯田)その辺りを探していくと、財源が……。
高橋)50兆円くらいはあるでしょう。
飯田)それだけで補正どころか、本予算も「半分くらい賄えるのではないか」という話になりますね。
高橋)できるでしょう。そんなに貯め込んでいても仕方ありません。早く国民に還元しなければ、経済が好循環になりませんよ。
飯田)岸田総理は「可処分所得を増やす」と言ってはいますが。
高橋)具体的な策としては、いま言ったように「貯め込んでいる部分を吐き出す」ことがいちばん簡単です。政府が貯め込んだ分を国民に吐き出せば、好循環になるのです。景気がよくなって賃上げもされ、税収も増える。そして、またそれを吐き出す。その循環をグルグルと回すのですよ。
飯田)そうすれば「規律が」と言っている国の財政も、よくなるのではないですか?
高橋)結果的によくなっていくので、なぜ、そういう単純な話をしないのだろうかと思います。
支持率が下がっていても緊張感が感じられない岸田総理
飯田)昨日(11月21日)は衆議院予算委員会で、自民党、公明党、立憲民主党の方々が質問していました。22日には国民民主党の玉木雄一郎さんが質問しますが、このような内容を聞きそうな感じがします。
高橋)いちばんしそうですね。野党は頑張って、みんなで質問したらよろしいと思います。
飯田)議論が深まり、中身が変わっていけばいいのですが、国会で中身は変わるのでしょうか?
高橋)なかなか変わらないでしょうね。「岸田総理が何をしたいか」によりますが。支持率が下がっているのに、本人は全然平気らしいのです。バイデン大統領から来年(2024年)早期に向け、国賓待遇で招待を受けたようですが、それで喜んでしまっています。招待されたので、「そこまでは大丈夫だな」と本人は思っているのでしょうね。
2024年春の「アメリカ公式訪問」と「予算案成立」を花道に「退陣」というストーリーも 〜「退陣、新総理で解散総選挙」が自民党には好都合
飯田)2024年の本予算が成立したあと、3〜4月くらいにアメリカから国賓待遇で招待を受けている。
高橋)逆に言うと、「それが花道かな」と思ってしまうくらいに支持率が下がっていますよね。「予算とアメリカ招待」を花道に退陣し、総裁選をするかどうかはわかりませんが、新総理になり、そこで解散総選挙を行うのが自民党にとってはありがたいでしょうね。
飯田)看板を変えてフレッシュな形にして、「支持率の高いうちに」と考える。
高橋)そうすると「年内の岸田下ろしはないな」と思っているのかな、と想像してしまいます。
飯田)さまざまな勉強会が立ち上がり、「閣僚なのに何をしているのか」と高市さんが批判されたりしています。結果的に高市さんの動きから、いろいろな候補が名乗りを上げるという動きにもなっていますね。
高橋)それはそうでしょうね。菅さんも「政策が届いていない」など、最近いろいろと言っています。
飯田)ネット番組などでいろいろと発言されています。
「税収増分は使用済み」と財務大臣に言われ、はしごを外された岸田総理 〜財務省が仕掛けた罠のようなもので主流派は容認
高橋)そういう非主流派の動きは必ず出てきます。でも、今回は主流派の方がやっていますからね。財務大臣に「還元する原資はない」と言われてしまった。税収増分を還元する話があったでしょう。あれは財務省が仕掛けた罠のような話です。要するに、岸田さんに関してはしごを外すことを、麻生さんなどの主流派は容認していますよね。主流派の人がはしごを外しているから、非主流派も「いいのね」という感じでやっていると思いますよ。
飯田)主流派と言いながら、一枚岩ではないのですか?
内閣支持率が下がり、自民党の支持率が下がっていないときが最も代えやすい
高橋)この支持率ではもう無理でしょう。「次が有利になるよう、早く挿げ替えたい」と考えているはずです。これだけ下がってから復活した人は記憶にありません。自民党の支持率が下がってきたら、収拾がつかなくなりますからね。
飯田)下野してはまずいので、「だったら代える」というような流れになっています。
高橋)自民党の支持率も下がりかけています。内閣支持率が下がり、自民党の支持率が下がっていないときが最も代えやすいのです。
飯田)いまはその状態ですか?
高橋)ギリギリです。危ないですね。内閣支持率が下がっているのは間違いありませんが、自民党の支持率も下がってきていますから、麻生さんのときと同じようになってしまうかも知れない。
飯田)2009年の政権交代のとき。
高橋)「野党が強くない」という理由だけで、いまは持っているのです。
●発言迷走で退陣の過去も…減税「鬼門」の歴史 景気浮揚効果は限定的 11/22
岸田文雄政権が経済対策の目玉とする所得税減税は過去の政権でもたびたび実施されてきたが、景気回復や政権浮揚にはつながらず失敗例が目立つ。首相退陣の引き金になったケースもあり、時の政権の「鬼門」とされるゆえんだ。現政権の減税も各種世論調査で多くが評価しておらず、リスクとなる可能性をはらむ。
昭和末期以降の政権では橋本龍太郎政権が減税を巡る橋本首相の発言の迷走により退陣に追い込まれた。
1997年4月の消費税率引き上げで消費が冷え込み、アジア通貨危機や山一証券破綻で金融不安が拡大。橋本氏は同12月に定額減税を表明、翌98年1月に関連法成立、2月に実施とスピード対応だったが、7月の参院選で減税の恒久化を「する」「しない」でぶれたと批判を浴びた。橋本氏は事態収拾へ恒久減税を打ち出したものの、自民党は惨敗して内閣総辞職した。
続く小渕恵三首相は「恒久的な減税」を掲げ99年から定率減税に変更。所得税を一律20%差し引いた。期間は「経済の状況等を見極める」との条件付きだったが、税率を元に戻すと増税感が出るため景気が持ち直した後も継続。小泉純一郎政権が2005年に段階的な廃止を決定し、安倍晋三政権の07年に全廃されるまで続いた。約8年にわたる減税は財政悪化を招いた。
福田康夫政権は08年、公明党の意向を受けて経済対策に定額減税を盛り込んだが実現しないまま退陣。
麻生太郎政権はリーマン・ショックによる景気悪化を踏まえ、即効性や非課税世帯への恩恵を考慮して定額減税を給付金に切り替えた。一方、給付金は全世帯を対象としながら、麻生氏は高額所得者が受け取ることを「さもしい」と発言。支持低迷の一因となった。
これまでの減税策は景気押し上げ効果は限定的で、政権の局面打開の起爆剤になったとは言い難い。岸田首相側近も「過去の例は相当勉強した」と明かす。官邸側は国民への丁寧な説明や与党との調整などを慎重に進め、歴代政権の轍(てつ)を踏まないよう実現を目指す。
ただ共同通信社の今月の世論調査によると定額減税を「評価しない」は62・5%に上り既に風向きは良くない。内閣支持率は過去最低の28・3%で、来年6月から実際に減税が実施されたときにどれほど支持が回復するかも未知数だ。与党重鎮は「税は国民の関心が高いだけにダメージが大きい。先が思いやられる」とこぼす。
●どうにも不自然な自民党の政治資金記載漏れ問題 11/22
自民党の「五大派閥」が設立しているそれぞれの政治団体が、合わせておよそ4000万円分を収支報告書に記載していなかったとする告発状が提出されたことが、11月18日土曜に明るみになりました。具体的には、政治資金パーティーに20万円を超える支出をした団体の名前など、記載すべき事項が記載されていないということで、東京地検特捜部が捜査を始めたようです。
具体的な捜査としては、東京地検特捜部が、各派閥の担当者から任意で事情を聴いているという報道がありました。その五派閥と、それぞれの「記載漏れ金額」も公表されています。具体的には清和会(旧安倍派、1900万円)、志帥会(二階派、900万円)、平成研(茂木派、600万円)、志公会(麻生派、400万円)、宏池会(岸田派、200万円)です。まさに自民党の「五大派閥」が揃い踏みというわけです。
しかし、告発というのは、要するに情報提供、もしくは内部告発があったということです。内部告発は、例えば営利企業の反社会的な行動に関しては、内部告発行為そのものが社会的な利益になるので、告発者を守る必要があります。もちろん今回の内部告発も、脱法行為を明らかにするという社会的正義はあるわけです。ですが、政治の世界は企業活動とは性格が異なります。そう考えるとこうした告発そのものが政治的な意味を持ってしまうことは避けられません。
つまり、どうしても告発の背景というところに想像を巡らせてしまうことになります。まず、純粋に考えると、政治とカネに関する自民党の姿勢を正すために、まさに社会正義の立場から告発したということは考えられます。ですが、全く別団体の各派閥の収支状況とか、政治資金パーティーの収支などにアクセスするには、例えば政治家の秘書としての同業者の裏のネットワークなど、本当に「内部」の情報に接する人脈が必要です。そんなことまでして、社会正義を貫こうというのはストーリーとしてやや不自然です。
告発の背景には何がある?
そうなると、どうしても政治的意図を疑ってしまいます。
まず考えられるのは、記載漏れ金額について、岸田派が少なく、岸田派に近い順に少なく、遠い順に多くなっているという点です。これは偶然かもしれませんが、このまま公表すれば、例えば清和会(旧安倍派)は金額が多いので批判されるが、宏池会(岸田派)は比較的金額が少ないので、ダメージは小さいかもしれません。ですから、岸田派の周辺の人物が「ライバル派閥を貶める」ために、自派閥にもダメージを受ける形で、告発に踏み切ったという可能性は考えられます。
もっと言えば、岸田政権周辺の考え方として、「仮に自民党にダメージになるにしても、正義の告発をして自浄作用を促す」方が正しいし、結果オーライになるという考え方をした可能性はあるでしょう。
ですが、こうしたストーリーはどう考えても不自然です。内閣支持率が低迷しており、様々な批判を浴びている岸田政権には、こうした告発はダメージになりこそすれ、何も得をすることはないと思われるからです。何よりも、岸田首相は自民党総裁であり、今回の事件の全体に責任を負う立場でもあるからです。
考えられる党外からの力学
そうなると、もう1つ別のストーリーが考えられます。それは党外からの力学です。総選挙を意識して、自民党全体のイメージを下げたいという動機は野党各党には濃厚にあります。その中でも、保守系の野党は、自民党との間では秘書同士の人事交流もあり、ネットワークもあります。だとしたら、保守系野党の政治家秘書などが、個人的な人脈から「政治資金の記載漏れ」というネタを握って、特捜部に告発をしたことは考えられます。
ですが、これもまたやや不自然です。政治資金の記載漏れというのは、違法行為ですが、だからといって、選挙を意識してそこまで露骨な暴露をやるというのは、過去に聞いた事はありません。特捜部にしても、余りに露骨な格好で野党を利するような捜査を行えば、公正中立であるべき検察としての汚点になります。
そう考えると、もっと別の背景の想像が必要でしょう。例えばですが、このままでは自民党が総選挙で大敗し、自分が秘書をしている政治家の議席も危うくなるという危機感から、一部の自民党の秘書などが動いているという可能性です。同業のネットワークを使って情報を集め、これを告発したとして、仮にその「大義」として政界再編という目的があれば、話は変わって来ます。
単に野党による政争に加担するのではなく、政界再編という大義がウラにあるのであれば、協力者も増えるでしょうし、検察も動きやすくなるのかもしれません。特捜部のOBの中には、過去にも政界再編の仕掛け人として動いた人物もあり、こうした可能性は全く否定はできないと思います。
いずれにしても、今回の告発劇には、何らかの政治的意図がある可能性は否定できないし、もしかしたら政界再編の予兆かもしれません。政界再編ということでは、大阪万博で行き詰まった維新、コロナ禍で都財政を悪化させた都民ファーストなど、保守系の野党には「看板を書き換えたい」動機があることも指摘できます。内閣支持率が極端に低迷していることと併せて、何かが起きる予兆かもしれません。
●「完全に野党ペース」の声も…衆院予算委で野田元首相が岸田首相追及 11/22
衆議院の予算委員会では、自民党の派閥の政治資金問題をめぐり、岸田首相に対する野党の追及が勢いを増している。
国会記者会館から、フジテレビ政治部・福井慶仁記者がお伝えする。
首相周辺から「完全に野党ペースだ」との声が漏れる中、22日朝は委員会に先立つ理事会で、野党側が首相の姿勢に抗議し、1時間近く開会が遅れた。
およそ4,000万円の資金の未記載をめぐり、「自民党と派閥は別団体だとして、岸田首相らが回答を避けている」などと野党が指摘し、委員会の冒頭で岸田首相が説明をすることになった。
岸田首相「具体的な訂正内容等について、各政治団体において、適切に説明をできるだけ速やかに行ってもらうよう幹事長に指示をいたしました」
これに対し、首相経験者の立憲民主党・野田最高顧問が追及を続けた。
立憲民主党・野田元首相「まだまだ危機感が足りない。これ氷山の一角じゃないか。なぜこんなことが起こっているのかということを解明するところまでが調査だと思いますよ」
岸田首相「政府とも違う、自民党とも別の政治団体、それぞれにおける、さまざまなこの政治とカネの問題。それぞれの立場から信頼回復に向けて努力していく」
支持率が低迷する岸田政権は、野党の攻勢を前に正念場が続くとみられる。
●岸田内閣の支持率低下と池田大作の死は、日本政治の新たな「転換点」に 11/22
岸田内閣の支持率低下が止まらない。自民党内で「岸田降ろし」が始まってもおかしくない状況だ。
そんな中、11月15日、連立政権のパートナーである公明党を創設した創価学会の池田大作名誉会長が95歳で死去した。公明党はもちろん、自公連立政権の今後にも大きな影響を与えそうである――。
支持率低下が止まらない岸田政権
マスコミ各社の10月の世論調査では、岸田内閣の支持率は内閣発足以来最低を記録したが、11月の調査の結果は、もっと悪くなっている。
11月10〜13日に行われた時事通信の世論調査では、内閣支持率は21.3(-5.0)%で過去最低であった。不支持率は53.3(+7.0)%である。政党支持率を見ても、自民党支持率は19.1% で政権復帰以来最低である。
かつて参議院のドンと称された故青木幹雄は、内閣支持率と与党第一党の支持率の和が50%以下になると政権は倒れると言ったが、これが「青木の法則」と称されている。21.3+19.1=40.4と50%以下であり、岸田内閣は倒れるということである。
政策の評価については、「減税」を評価するのは23.5%のみで、評価しないという回答が51.0%であった。
17〜19日に行われた読売新聞の世論調査でも、内閣支持率は24(-10)%で内閣発足以来最低であるのみならず、2012年12月に自民党が政権復帰して以来でも最低である。
これまでの最低は、2021年9月の菅内閣のときである。政党支持率では自民党は28(−2)%である。不支持率は62(+13)%である。
政府の経済対策については、「評価する」が23%、「評価しない」が66%である。「減税」については、「評価する」が29%で、「評価しない」が61%である。
また、文部科学政務官、法務副大臣、財務副大臣が不祥事で辞任したことについて、政権運営に「影響がある」としたのは68%にのぼった。
岸田首相にいつまで首相を続けてほしいかという問いに対しては、「自民党総裁任期が切れる来年9月まで」が52%、「すぐに交代してほしい」が33%、「できるだけ長く」が11%である。
18〜19日に実施された毎日新聞の世論調査では、内閣支持率は21(-4)%で内閣発足以来最低で、不支持率は74(+6)%と過去最大である。自民党支持率は24%であった。この調査でも「青木の法則」の50%以下である。
減税については、「評価する」は22%のみで、「評価しない」が66%にのぼった。7万円の給付についても、「評価する」は30%で、「評価しない」が60%である。3人の副大臣や政務官の辞任については、総理の任命責任が「ある」は86%で、「ない」は11%にとどまった。
18〜19日におこなわれた朝日新聞の世論調査も同じ傾向である。内閣支持率は25(−4)%で、自民党が政権に復帰してから最低である。支持率は、自民党支持層でも59%であり、無党派では10%である。
内閣不支持率は65(+5)%で過去最大である。自民党支持率は27(+1)%で、7月以来、連続で30%割れをしている。
経済対策では「評価する」が28%、「評価しない」が68%となっている。「減税と給付」について首相が考えたのは、「国民の生活」が19%、「政権の人気取り」が76%である。
岸田首相はなぜここまで不人気なのか
国会では、補正予算案の審議も始まったが、以上のような世論調査結果は野党を勢いづかせている。
岸田首相の最大の弱点は国民へのアピール力の欠如である。物価高騰の今、減税や低所得世帯への給付は大いに助かるはずである。ところが、先に見たように、世論調査では評価するのは2割あまりしかいない。この政策の利点を分かりやすく大衆に説明すべきである。
それには、演説に抑揚が必要である。岸田の演説は平板な一本調子で、どこにアクセントがあるのかわからない。官僚が作文した文章をただ読んでいるような感じで、政治家の言葉ではない。
アクセントが効き過ぎると、ポピュリズムになりかねないのでリスクはあるが、そのリスクを冒すことがカリスマにつながるのである。
経済政策にしても即刻性が必要で、その成果が出たならば、マスコミを動員して大々的に宣伝すべきである。たとえば、ガソリン価格は、1リットル当たり、レギュラーで2ヵ月前には180円台だったのが、今は160円台である。それは対策の効果なのであるが、政府からの十分な説明はない。
また、物価の上昇に賃金の増加が追いついていない状況に対しては、強制はできないまでも、少なくとも利益を上げている企業については、賃上げを強力に要請すべきである。そして、それに応じた企業を称え、広く知らせるとよい。
そのためにはマスコミを活用することが不可欠である。岸田側近にはマスコミ対策に長けた人材が不足しているようである。
3人の副大臣や政務官が不祥事で辞任したことについても、事前の「身体検査」が徹底していなかったきらいがある。そのことは、官僚機構の掌握が上手くいっていないことを示しているのかもしれない。国税庁、警察庁、総務省などの調査機能を活用すれば、辞任を招きそうな事案はチェックできるはずである。
その点では、安倍政権は官邸主導の体制を構築して、人事についてもミスを最小限にしたが、岸田政権はそのような体制の整備には至っていないようである。
公明党、自公連立政権の今後
11月15日、創価学会の池田大作名誉会長が死去した。1960年に第三代会長に就任して以来、国内会員数を140万世帯から800万世帯に拡大させた。海外にも進出し、世界192ヵ国・地域で280万人の会員を獲得した。
1964年には、公明党を創設し、政治の世界でも大きな影響を及ぼしてきた。その過程で「言論出版妨害事件」なども起こし、政教分離の議論を巻き起こした。
1999年10月5日に、公明党は自民党と自由党の連立政権である小渕内閣に参加した。その後、自由党が連立から抜け、保守党が加わったが、2003年11月に保守新党は自民党に吸収され、自公連立政権となった。
2009年夏の政権交代で民主党に政権が移ると、公明党も下野したが、2012年12月の総選挙で民主党が敗北し、自公連立政権が復活した。
1994年、細川内閣の下で、小選挙区比例代表並立制が導入され、1996年の衆院選から実施された。小選挙区制では、選挙区で1人しか当選しないため、自民党の候補は、創価学会の集票力に依存することになっていった。
これはいわば麻薬のようなもので、いったん依存すると、それなしには当選できないような体質になってしまう。
私は、現役時代に何度も自民党、公明党候補の応援に行ったが、創価学会の集票マシーンの凄まじさ、票読みの正確さには舌を巻いたものである。今の自民党の衆議院議員で公明党の援護なしで、自らの票のみで当選できるのは圧倒的に少数である。とくに、野党の相手候補との接戦となったときには、公明党票が決定的に重要な意味を持つ。
その集票力こそが、連立政権内で公明党が影響力を増す理由になっている。
池田大作の天才的なところは、選挙活動を宗教活動の一環として位置づけ、功徳を増す道だとしたことである。いわば無料奉仕の選挙活動であり、街頭演説での聴衆動員、学会員ではない友人・知人(F・フレンド)への働きかけなどを徹底的に行う。
しかし、最近は創価学会員も高齢化し、そのような活動を以前のようには行えなくなっている。「聖教新聞」などの配達も学会員の無料奉仕に頼っていたが、今では人が足らず、外注に出している地区もある。
公称827万世帯の会員世帯数を誇る公明党であるが、2019年の参院選比例区で公明党が獲得したのは653万票で、2022年にはさらに減って618万票であった。
2021年11月、選挙で実働部隊として辣腕を振るってきた「婦人部」がなくなり、「女子部」と統合されて「女性部」となった。女性会員の減少を物語るエピソードである。
宗教2世の若い世代の学会離れも目立ってきている。池田大作というカリスマの死によって、今後、創価学会の凋落傾向に拍車がかかる可能性がある。そうなった場合、自民党は連立のパートナーを日本維新の会や国民民主党に代えることも可能である。政策的に大きな隔たりはないからである。
岸田首相の不人気と池田大作の死は、日本の政治に新たな胎動をもたらすかもしれない。
 11/23

 

●暗黒クソメガネ政権「4000万円裏金スキャンダル」で東京地検特捜部が狙う 11/23
支持率20%台に低下して存続の危機に瀕する岸田文雄内閣に、新たな大問題が浮上した。岸田派を含めた自民党5派閥の政治団体が、政治資金パーティーの収入を過少申告していたのである。その額、なんと約4000万円。「裏金」として扱われていたのでないかと、衆院予算委員会では猛烈な追及を受けた。永田町を揺るがす「政治とカネ」のスキャンダルへ発展する局面になっている。永田町関係者が声を潜めて言う。
「告発を受けて各派閥の担当者に任意で事情を聞いている東京地検特捜部が、どこまで本気でやるかがポイントになります。『記載ミス』という言い逃れが成り立たない物的証拠を集めることができるか、捜査力が問われるでしょうね」
これまでにも岸田内閣では次々とスキャンダル、不祥事が発生。不倫問題の山田太郎前文部科学政務官、東京都江東区長選の公職選挙法違反事件で捜査されている柿沢未途前法務副大臣、税金を滞納した神田憲次前財務副大臣の政務三役3人が辞任した。そればかりか、足元の自民党では「舌禍女王」の杉田水脈衆院議員がまたしても問題発言でバッシングされるなど、火に油が注がれている。岸田総理は年内の衆院解散・総選挙を見送らざるをえない状況に置かれているが、失地回復は難航を極め、いよいよ沈没へと追い詰められつつある。
「負のイメージがこびりついた岸田総理では選挙を戦えないとして、自民党内からも退陣コールがくすぶっています。次期衆院選は自民党にとって大逆風となるのは確実。旧統一教会と決別宣言をして初の選挙となり、カルト教団の支援を受けていた自民党議員は軒並み、落選が予想されている。自民党が選挙協力している公明党では、創価学会の池田大作名誉会長が死去したことで、学会組織票の集票力が低下するとみられます。選挙基盤の弱い自民党議員は特に、新たな顔で選挙をやってほしいと願っていますよ」(前出・永田町関係者)
もはや「終わり」を待つのみの暗黒クソメガネ政権に、光が差す気配は全くない。
●岸田首相が池田大作氏弔問で政治不信深まる 11/23
時事通信は11月20日、「岸田首相弔意、政教分離で波紋 政府『前ローマ教皇にも』 池田氏死去」の記事を配信した。11月15日、創価学会の池田大作名誉会長が老衰で死去。18日に事実が明らかになると、まず岸田首相はX(旧Twitter)に「深い悲しみにたえません」などと投稿した。
さらに19日、岸田首相は東京・信濃町にある創価学会本部別館を弔問のため訪れた。時事通信は、現職の首相が学会施設を訪れるのは《異例》と指摘。池田氏が学会を支持母体とする公明党の創立者であることから、《連立政権を組む同党に配慮したとみられる》と伝えた。
ところが岸田首相の行動を、政教分離の観点から問題視する意見が相次いだ。例えば18日のコメントは「内閣総理大臣」と「自民党総裁」の肩書で出された。19日の弔問も首相としての行動だったのは、時事通信が報じた通りだ。
特にSNSでは批判が殺到。時事通信も記事で《政教分離と関連付けて疑問視する意見が続出》と紹介し、ネット上における岸田首相の“炎上”を、ニュース価値が高いと判断したことを伺わせた。それではSNSがどんな状況なのか、具体的にXからいくつかのポストをご紹介しよう。
《政教分離の原則をなげ捨ててるじゃん》、《政教分離できずに脊髄反射でポストする総理の政治力低過ぎ》、《政教分離を無視して、誰に向かってアピールしたいのでしょうか》、《政教分離のはずなのに、選挙協力してもらったからですか? 》……。
「創価学会は憲法違反」
政府は火消しに躍起となった。松野博一官房長官は20日の記者会見で、岸田首相がXに投稿を行ったのは《個人として哀悼の意を表するため》と説明。他にも宗教団体幹部の死去に伴ってコメントを出した具体例として前ローマ教皇ベネディクト16世を挙げた。
だが、この“釈明”にもXでは異論が相次いだ。例えば「岸田首相は個人として弔意を示した」との説明には、《【内閣総理大臣 岸田文雄】って長い名前の個人はいないよ》と揶揄。
ベネディクト16世の名前が出たことには、《ベネディクト16世名誉教皇と創価学会池田大作名誉会長を同列にするの? 》、《大川隆法さんが亡くなられた時は何も言わなかったよな? 》──といった具合だ。
さて、先に紹介した投稿以上に、厳しく創価学会や公明党を批判したコメントをご紹介しよう。ひょっとすると、かなりの方々が「まさに正論」と頷かれるかもしれない。
《一つのポイントは憲法第二〇条。二〇条には、(信教の自由の保障と同時に)いかなる宗教団体も政治上の権力を行使してはならない、とありますが、創価学会はまさにこれに触れている状況にあるのです》
《日本の議員内閣制の場合、政治権力の最終決定権は、総理ではなく各大臣にあるんです。各省の決済は大臣で最終決済でしょう。それが池田大作の子分になっちゃっているんです。政治権力を行使する大臣が、池田氏の完全な支配下にある(略)それは憲法違反の状況なんですよ。これだけで内閣不信任の理由になると思いますよ》
政教一致の政権
発言の主は誰なのか。岸田政権を批判する立憲民主党や日本維新の会の議員だろうか。いや、それは違う。あろうことか当時は自民党の衆議院議員だった、亀井静香氏が週刊新潮の取材に応じて語ったコメントなのだ。
亀井氏が、なぜこれほど創価学会や公明党を糾弾していたのか、今ではピンとこない方もいるだろう。ベテランの政治記者が解説する。
「亀井さんが上記の発言を週刊新潮に対して行ったのは1994年5月のことで、当時は羽田孜さんが首相でした。与党は非自民・非共産8党派という連立政権だったので、公明党は与党だったのに対し、自民党は野党でした。つまり自民党と公明党は敵対関係にあり、自民党の国会議員は公然と公明党や創価学会を批判していたのです」
振り返れば、1993年7月の衆議院議員選挙で自民党は過半数割れに追い込まれた。8月に細川護熙氏が首相に就任すると、自民党は「憲法20条を考える会」という勉強会を発足させた。創価学会を支持母体に持つ公明党が連立政権に参加している以上、細川内閣は政教分離ではなく政教一致という批判を行った。
“反創価学会キャンペーン”
「憲法20条を考える会」の初代会長は亀井氏。96年に亀井氏は入閣したため、会長職は白川勝彦氏が引き継いだ。
参加した国会議員は約50人。幹事や顧問には、野中広務氏や石原慎太郎氏も名を連ねた。2人とも“反公明・反学会”の立場を鮮明にしていたことで知られる。今となっては興味深いが、10人を超える副代表には麻生太郎氏、9人の事務局には安倍晋三氏の名前も記載されていた。
「この『憲法20条を考える会』を母体として、1994年5月に『四月会』が誕生しました。創価学会に批判的な宗教法人や学識者が中心メンバーでした。設立総会には自民党総裁だった河野洋平氏、社会党委員長だった村山富市氏、新党さきがけの代表だった武村正義氏が出席し、大きな注目を集めました」(同・記者)
自民党は「憲法20条を考える会」や「四月会」における議論も参考にし、【1】創価学会の税金問題、【2】政教一致の問題、【3】欧州の創価学会インタナショナル(SGI)など、海外組織への送金問題──などを問題視した。
そして自民党の機関誌「自由新報」で“反創価学会キャンペーン”を展開し、国会でも池田大作氏の証人喚問を求めるなど強硬姿勢で臨んだ。
自民党の“変節”
先に亀井氏が週刊新潮の取材に「大臣が池田大作の子分になっている」と問題視していたことをご紹介したが、これは羽田内閣の顔ぶれを踏まえての発言だった。21の閣僚ポストのうち、浜四津敏子氏など6人が公明党の議員だったのだ。
94年6月に羽田内閣は総辞職。すると社会党が連立を離脱し、「自社さ」連立による村山政権が誕生した。「憲法20条を考える会」や「四月会」が自民党の政権奪取に大きな役割を果たしたのは間違いない。
亀井氏は村山政権が誕生した際も週刊新潮の取材に応じ、改めて公明党と学会を厳しく批判した。
《羽田政権では何と三分の一の大臣が池田大作の子分だったわけですが、大統領制のアメリカと違って議院内閣制の日本では最終決定権は大臣にある。言ってみれば、一宗教団体が国政を牛耳っていたようなものです》
ところが1998年の参議院議員選挙で自民党は大幅に議席を減らしてしまう。橋本龍太郎内閣は総辞職し、小渕恵三内閣が発足。政権基盤が弱体化していたことから、まず自由党と連立を組み、さらに公明党も参加した。こうして現在にまで至る「自公連立政権」が誕生したわけだ。
政治不信の元凶
「自民党は、なりふり構わず政権を取り返しました。その際、党幹部は公明党に謝罪し、反創価学会キャンペーンを終わらせてしまったのです。以来、自民党の議員が学会や公明党の政教一致問題を指摘することはなくなりました。今回の岸田首相による弔問は、長きに渡る連立政権に対する感謝の意を表したようなものです。結局、与党に返り咲くためなら、公明党と学会の政教一致問題など、どうでもよかったのです。今でも自公連立の枠組みに釈然としない想いを抱いている有権者は存在するでしょうし、実際、SNS上では自公連立を野合と批判する投稿は少なくありません。日本において政治不信が加速している元凶の1つと言えるでしょう」(同・記者)
●石破氏、岸田総理に苦言 「何をやりたいのか分からない」 11/23
自民党の石破元幹事長は東京都内で講演し、岸田総理大臣は「何をやりたいのかよく分からない」と苦言を呈した上で明確に国民に考えを伝えるべきだと指摘しました。
「何がやりたいの、ということがよく分からない。総理はあるんでしょう、きっと。何をおやりになりたいんですかっていうことをもっとクリアに国民に正面から語るということが必要で、支持率が低いことそのものが問題だと私は思っておりません」(石破元幹事長)
その上で、総理大臣指名選挙で「『岸田文雄』と書いた責任は負わねばならない」と述べ、引き続き政権を支える考えを示しました。また、2024年秋の自民党総裁選挙に出馬する意欲について問われると「ないと言うと嘘になる。状況によってはだ」と含みを残しました。
●岸田首相が開けた政権崩壊への「パンドラの箱」 11/23
岸田文雄首相が「絶体絶命の大ピンチ」(自民長老)を迎えている。「増税メガネ」に端を発した“メガネ騒動”の果ての減税への「国民総スカン」状態に、「超お粗末な理由」(閣僚経験者)での政務3役3連続辞任も重なり、内閣支持率下落が“底なし沼”になったからだ。
これに連動したような高市早苗経済安保相の「決起」を始めとする自民党内の反岸田勢力の胎動と、財務省や検察の政権からの離反、さらに創価学会の池田大作名誉会長の死去も絡み、「政権崩壊への“パンドラの箱”が開いた状況」(同)に。これを受け、週刊誌など多くのメディアが「首相の早期退陣」と「ポスト岸田候補の品定め」を競い合うなど、永田町はまさに「政権崩壊前夜」の様相となりつつある。
“底なし沼”の支持率下落
臨時国会が中盤を迎えた段階で各種メディアが実施した世論調査では、岸田内閣の支持率が2012年末の自民党政権復帰以来の「最低・最悪の数字」(アナリスト)となった。ほとんどの調査で内閣支持率は2割台まで落ち込み、不支持率は7割近くに達するありさまだ。
しかも、これに連動するように自民党支持率も下落傾向が際立ち、唯一の対面調査となる時事通信調査では内閣支持率21.3%―自民支持率19.1%にまで落ち込んだ。この数値は、故青木幹雄元自民党参院議員会長が唱えた「政権の寿命は1年以内」とする、いわゆる「青木の法則」に当てはまる。
岸田首相肝いりの超大型補正予算案の国会審議が始まった20日も、朝から首相官邸や自民党の幹部らの間では、与野党論戦そっちのけで週末の世論調査の話題ばかりに。時事通信だけでなく、朝日新聞25%、毎日新聞21%、読売新聞24%など大手紙の調査でも軒並み過去最低の支持率を記録したからだ。
これに対し、岸田首相は直前までアメリカ・サンフランシスコでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席し、習近平中国国家主席との日中首脳会談を実現するなど、岸田外交を内外にアピールすることでの態勢立て直しに躍起となった。しかし、結果的には「支持率下落の歯止めにはならなかった」(官邸筋)のが実態だ。
岸田首相周辺も「首相がこだわった『減税』が批判のキーワードになり、いくらあがいても逆風は収まらない」(官邸筋)とうなだれるばかり。こうした状況について、自民党中枢の1人の森山裕総務会長も21日の記者会見で、「非常に危機感を持って受け止めている」としたうえで「今は党を挙げて岸田首相をしっかり支え、信頼回復に全党で取り組んでいくことが大事だ」と厳しい表情で繰り返した。
岸田首相への逆風が、自民党そのものへの逆風に
多くの世論調査をみると、岸田首相が「適材適所」を強調してきた政務3役で、職責に絡んだ辞任ドミノが起きたことについて、大多数が「首相の任命責任は重大」と受け止めている。さらに岸田首相が打ち出した所得減税や現金給付も「評価しない」が平均で6割以上にとなり、自民党内からも「1年限定での税金の還元という発想自体が『馬鹿にしている』と国民を怒らせた」との指摘が相次ぐ。
さらに「岸田首相への逆風が、自民党そのものへの逆風になりつつある」(麻生派若手)との不安も広がり、党有力幹部も「世論全体が『岸田さんを支持する』と言いにくい空気になっている」と天を仰ぐ。
そうした状況に追い打ちをかけたのが、自民党5派閥の政治団体が政治資金パーティーの収入を政治資金収支報告書に過少記載したとする告発状をうけての東京地検特捜部の捜査だ。各メディアは同特捜部が各派閥の担当者に任意の事情聴取を進めていると報じ、21日から始まった衆院予算委で泉健太立憲民主代表を先頭に「各派閥の収入の不記載は合計4000万円を超える」と指摘し、自民党総裁で岸田派会長でもある岸田首相に対して説明を求めた。
これに対し岸田首相は「岸田派の政治資金収支報告書の訂正」を認めるなど、防戦一方となり、野党側は「閣僚の中に収支報告の責任者となる派閥の事務総長や経験者がいる」として茂木派事務総長の新藤義孝経済再生担当相、安倍派の元事務総長の松野博一官房長官と西村康稔経済産業相に対して「会計担当者から相談を受けているかどうか」などをただしたが、新藤、松野、西村3氏は「政府にいる立場としてお答えは控える」の一点張りでかわした。
これに怒りを隠せない立憲民主は、22日午前の衆院予算委前の理事会で激しく抵抗、野党側が不記載の金額などを明示するよう要求したが、自民は拒否し、結局、岸田首相が委員会の冒頭に発言することで折り合った。これを受け岸田首相は各派で政治資金収支報告書の訂正をしていると強調した上で、「適切に説明を速やかに行ってもらうよう茂木敏充幹事長に指示した」と答弁したが、野党側はなお追及を続ける構えだ。
与党内には今回の検察当局の動きについて「早期の政権崩壊を見越して、検察が独自に動き出した。減税の原資は赤字国債だと主張した財務省も合わせて、明らかに政権離反の動きにみえる」(公明党幹部)との指摘も出ており、官邸サイドも深刻さを隠せない。
意気盛んな高市氏、菅・二階両氏もうごめく
そうした中、民放テレビ番組などで次期総裁選について「戦わせていただく」と明言している高市経済安保相は、15日に自らの勉強会の初会合を行って党内から批判された。しかし高市氏は19日に自身のX(旧ツイッター)を更新し、「現職閣僚が担務外の政策を同僚議員と一緒に勉強する事の何が悪いのか、意味が分からん」などと反論するなど意気盛んだ。
この高市氏の動きと連動するように、菅義偉前首相と二階俊博元幹事長も9日に森山総務会長を交えて密談。二階派関係者によるとこの席で二階氏は「手のひらをひっくり返す素振りを見せながら『徹底的にやるぞ』とうそぶいた」とされる。
さらに菅氏もこの席で首相批判を繰り返したうえで、各世論調査でポスト岸田候補の上位に並ぶ石破茂元幹事長、河野太郎行革担当相、小泉進次郎元環境相のいわゆる「小石河連合」との連携もほのめかしたといわれる。
こうした現状は「党内の岸田包囲網の広がり」(岸田派幹部)だが、その最中の池田大作氏の死去も岸田政権を揺さぶる要因となった。創価学会は18日、「池田氏が15日夜に新宿区の居宅で老衰のため亡くなった」と発表したが、この18日は創価学会の創立記念日でもあり、機関紙の聖教新聞はお祝いムードの報道があふれていただけに、SNSを中心に違和感を指摘する声が相次いだからだ。
これに対し、学会関係者は「創立記念日にわざわざ訃報を伝えることは学会側にメリットがなく、意図的に発表を3日待ったということはありえない」とし、学会の内部では池田氏の存在がすでに過去の人になっていることをにじませた。
池田氏死去で「自公協力弱体化」も
ただ、池田氏の訃報を受けて岸田首相が19日夜、東京都新宿区の創価学会本部を自民党総裁として弔問し、原田稔会長や池田氏の長男、博正主任副会長と面会したことも、波紋を広げた。SNS上では憲法が定める政教分離と絡めて疑問視する意見が相次ぎ、松野官房長官が20日の記者会見で「個人としての弔意で問題はない」と釈明する事態となった。
こうした状況を予測したかのように、21日発売の週刊文春は「池田大作(創価学会名誉会長)“怪物”の正体」という特集記事を掲載。その中で「公明票への影響は『マイナス200万票』の衝撃」としたことも政権を揺さぶった。
そもそも、直近の国政選挙での公明党の得票は最盛期の約3割減ともなる600万票余まで落ち込んでいる。それがさらに200万票も減るとなれば「自公選挙協力の弱体化を露呈する」ことは明らかだ。特に、「平和を訴え続けた池田氏に共鳴した学会員たちが、自民党の保守・右傾化に愛想をつかして投票に行かなければ、首都圏などの自民党候補はバタバタと落選する」(自民選対)という事態を招きかねない。
こうした状況にもかかわらず、岸田首相自身は首脳外交に勤しみ、政権批判にもあえて笑顔を絶やさず「どうする文雄」どころか「とにかく明るい岸田」を演じ続け、この「ミスマッチ」がさらに岸田首相への国民的不信を増幅させるという悪循環に陥っている。
ここにきて永田町では、「解散権を奪われたかにみえる岸田首相が、やけくそでの『七夕選挙』を狙っている」との臆測も飛び交う。「まさに、年末以降の政局は、何でもありの出たとこ勝負」(自民長老)になりつつあるわけだが、「こうした自民内の闇試合が、さらに国民の政治不信をかき立てる」(同)ことだけは間違いなさそうだ。
●立憲民主党・野田氏 世襲多い岸田政権批判「ルパンだって3世までだ」 11/23
立憲民主党の野田佳彦氏は22日の衆院予算委員会で、岸田文雄首相の政治姿勢を批判した。自民党に世襲議員が多すぎるとして、人気アニメ「ルパン三世」を引き合いに「首相は3世で、ジュニア(翔太郎氏)に委ねると4世だ。ルパンだって3世までだ。歌舞伎役者じゃないんだから」と述べた。
現閣僚の約半数も世襲だとして「父親や祖父の顔が思い浮かぶ。適材が世襲ばかりなのは異常な事態だ」と指摘。首相は「国民が幅広く有能な人材を選べる制度や仕組みをつくる努力は、絶えず行わなければならない」と語った。
野田氏は、北朝鮮の軍事偵察衛星打ち上げに備えた自衛隊への破壊措置命令が続く中、首相は政治空白をつくる衆院解散風を繰り返し吹かせたと指摘。「危機管理より政局を優先してきたのは残念だ」と非難した。首相は「先送りできない課題に一意専心取り組むとの発言を繰り返してきた」と反論した。  
●内閣支持率“危険水域” 岸田政権に3つの逆風 11/23
岸田内閣の支持率の低下が止まりません。週末に行われた報道各社の世論調査の結果は、軒並み20%台で過去最低を更新しました。こうしたなか、自民党の5つの派閥に対して、過少申告の疑いで東京地検特捜部が任意で事情を聴いていることが明らかになるなど、新たに3つの逆風が吹き荒れています。
週末に行われた報道各社の世論調査で内閣支持率が軒並み危険水域とも言われる20%台となった岸田政権。いずれの調査でも政権発足以来、過去最低を更新しました。
こうした中、審議入りしたのは、経済対策の財源の裏付けとなる政府の補正予算案です。経済対策に盛り込まれた所得税などの減税について、岸田総理は「国民から見れば、新型コロナウイルス禍の際に納めた税金が戻ってくる。還元そのもの」と減税の意義を強調しました。
ただ国民に還元されてもいいはずの経済対策は、かえって支持率下落に拍車をかけました。
「国民の皆さんに伝わっていない。従ってこれが今度は心に響かない」(鈴木財務大臣)
支持率低迷の中で、更なる逆風となるかと懸念されているのが、「創価学会」池田大作名誉会長の死去です。創価学会は、自民党と連立を組む公明党の支持母体で、創価学会の集票力を背景に自公の選挙協力が定着しています。その得票数は1小選挙区あたり2万票とも言われ、多くの自民党議員を支えてきました。
ただ、近年は学会員の高齢化から、集票力の低下も指摘されていて、そこに創価学会の象徴的な存在だった池田名誉会長の死が更なる影響を与えかねないという懸念もあるのです。
創価学会の本部がある信濃町周辺に集まっていた学会員たちは「毎月読書会があって本(人間革命)を買った。(池田大作名誉会長は)私の兄のような何でも相談したい感じ。(創価学会の結束力は)自信がなくなっちゃったような感じ」「覚悟はしていた。後継者も作られているので、これで揺らぐということはないと思う」と話します。
不安の声も上がる中、国会で開かれた公明党の会合で山口代表の口から語られたの「これからの公明党はどうなるのかといろいろな声もあるかもしれない。名誉会長から示された立党精神。『大衆とともに語り、大衆のために戦い、大衆の中に死んでいく』。これを変わらぬ原点として、永遠に守り抜きたいと思うが、皆さんいかがか」との言葉でした。
こうした中、政治と金を巡る2つ目の逆風が吹いています。
問題となっているのは自民党の5つの派閥の金について。岸田総理が率いる宏池会も含まれます。政治資金収支報告書にパーティー券収入合わせて4000万円分が記載されていない疑いで、告発を受けています。
「それぞれの政治団体が責任を持って点検し、適切に対応するべきもの」(岸田総理)
一方、思わぬところから3つ目の逆風が。
東京五輪で、招致推進本部長を務めた馳浩石川県知事が官房機密費で、IOC(国際オリンピック委員会)の委員およそ100人への贈答品として、1冊20万円でアルバムを制作したと発言したのです。その後、発言を撤回しましたが、事実関係を巡り、岸田政権に飛び火しかねない事態になっています。
「内閣官房報償費(機密費)は、国の機密保持上、使途などを明らかにできない」(松野官房長官)
●岸田文雄首相に日本医師会側から1400万円献金 医療政策を左右? 11/23
岸田文雄首相が日本医師会(日医)の政治団体から高額献金を受けているとの報道を受け、ネット上では怒りのコメントが殺到した。
日本維新の会の青柳仁士議員が22日の衆院予算委員会で、「日本医師連盟(日医連)」からの高額献金により、政府の医療政策がゆがめられていないかを追及。首相は「献金によって政策が変わることはあってはならない」と政策判断への影響を否定した。
日医連は2021年、首相に1400万円、武見敬三厚生労働相には1100万円を献金。青柳氏は「医療業界が嫌がるような改革が実行できない」と今後は受け取らないよう求めたが、首相は直接の回答は避けた。
内閣支持率が20%台に低迷する中で、国民の感情を逆なでするような「政治とカネ」の問題の浮上にネットも紛糾。X(旧ツイッター)には、「ゴリゴリの利権」「あってはならないって⁉ いつも他人事だなぁ」「賄賂メガネ??」などの声が殺到。「何にもメリットが無かったら1400万円もの献金なんかするわけないじゃない」との指摘や、「変わることはないよね 元々医師会寄りだもん」と皮肉るコメントも見られた。
日医は、医療サービスの対価である診療報酬を巡り、医療従事者の賃上げを理由に、24年度の改定で引き上るよう求めている。
●医師会から首相&厚労相に2500万円の高額献金 11/23
岸田文雄首相に1400万円、武見敬三厚生労働大臣に1100万円。2021年、日本医師会(日医)の政治団体「日本医師連盟(日医連)」が、2人にパーティ券購入などを含めた、計2500万円の巨額献金をしていたことが、11月22日の衆院予算委員会で明らかになった。
「日本維新の会の青柳仁士議員が質問しました。この献金によって、医療政策が医師会に有利になることが懸念されますが、首相は青柳議員の質問に『献金によって政策が変わることはあってはならない』と否定しました」(政治担当記者)
しかし、厚労大臣に任命されたときから、武見氏は「医師会のスポークスマン的立場」(永田町関係者)とも言われていた。
「武見大臣の父親は、25年にわたり日医の会長を務め、『日医のドン』とも呼ばれた故・武見太郎氏です。『ケンカ太郎』とあだ名されるほど熱量が高い方で、医師会は診療報酬改定などでは、カネと票をチラつかせながら政権政党の自民党に影響力を保ってきました。武見議員自身も、日医連などから支援を受けている、いわば“お抱え議員”です。
9月14日の大臣就任会見でも、そのことが質問され、大臣は『私はけっして医療関係団体の代弁者ではない』と胸を張りましたが、額面どおりに受け取る有権者はいないんじゃないですか」(自民党関係者)
2024年度は、診療報酬の改定年度である。そのための予算審議が本格化する2023年、武見「大臣」が誕生したのだ。日医は2024年度の改定で、診療報酬の引き上げを要望している。
「しかし、財務省は医療側の収入が多いことから『マイナス改定』を主張しています。もちろん、日医は抵抗するでしょう。武見大臣のもとで『日医寄りの裁定になるのでは』と国民が不安を抱くのも当然です」(前出・政治担当記者)
ニュースサイトのコメント欄にも《素直にただの清らかな心で1千万円単位を献金するわけがない。 何がしかの目的、魂胆がある。受け取る側も相応の見返りをするのが当たり前》《岸田さんはそんな献金では政策が左右されることがないと答弁しているとの記事だが、それだったら医師会はそんなばからしい献金を何故したのか不思議でしょうがない》《献金という名前の賄賂だろうね。政治献金は何かの意図や意思があってのことだろうから日本医師会に不利な政策は出しづらくなることは明白》など、批判の声が多く寄せられていた。
内閣改造人事での「適材適所」を強調する岸田首相だが、誰にとっての「適材適所」なのか――。
●政教分離に誤解も?総理が池田大作氏追悼メッセージ 11/23
創価学会の池田大作名誉会長の死去を受け、岸田総理大臣が弔意を示したことに対して「政教分離の原則」から逸脱しているのではという声が上がっています。
東京・新宿区にある創価学会の本部には半旗が掲げられていました。老衰のため95歳で亡くなった池田大作名誉会長。23日に都内で「創価学会葬」が執り行われ、多くの関係者が参列しました。
その足跡や影響力など連日、報道されるなか、再び議論になっているのが「政教分離」です。
きっかけとなったのは岸田総理の弔意表明と弔問でした。
岸田総理公式HP「池田大作氏の御逝去の報に接し、深い悲しみにたえません。池田氏は、国内外で、平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました」
そして、追悼文の最後には「内閣総理大臣 岸田文雄」と記名。さらに翌19日には「自民党総裁」として、創価学会の本部を弔問に訪れました。
これに対し、政教分離の原則に反するのではないかと批判の声が殺到したのです。政府はあくまでも個人による哀悼の意だと説明。
松野官房長官「公明党の創立者である池田大作氏に対して、個人としての哀悼の意を表するため、弔意を示したものと承知をしています」
SNSでもこれが「政教分離」の原則に反するか否か論争に。
X(旧ツイッター)への投稿:「内閣総理大臣の記名はだめでしょう」「弔問は選挙のため?政権に公明党がいること自体が疑問」「これが駄目なら伊勢神宮参拝も亡くなったローマ法王への弔意もNGでは?」
そもそも政教分離とは、どういうものなのか。
憲法20条には、信教の自由とともに「いかなる宗教団体も国から特権を受け、または政治上の権力を行使してはならない。国、及びその機関は宗教教育その他、いかなる宗教的活動もしてはならない」などと定められています。
それを踏まえ、多くの人が問題点として挙げているのが創価学会が支持母体となっている公明党です。
約60年前の1964年に結党されたのですが、池田氏は公明党と創価学会の関係について、分離されたものと説明していました。
 11/24

 

●岸田内閣“辞任ドミノ”の根底には首相から就活生まで逃れられない宿痾が 11/24
和を大事にする日本人はバランス感覚を重視する。それはビジネスパーソンにとって、利害調整など円滑な業務遂行のためにも必須項目である。しかし、変革やイノベーションが急務の時代において、バランス感覚が阻害要因になっている。岸田内閣の“辞任ドミノ”の根底にある「派閥順送り人事」はその典型だが、バランス感覚の呪縛は日本の隅々に絡みついている。
メッキが剥がれた岸田首相
岸田内閣の支持率が低迷しています。報道各社が実施した11月の世論調査では、軒並み20%台という支持率となり、2021年10月の政権発足以来最低水準となりました。毎日新聞の調査では21%の支持に対し、不支持が74%という結果でした。
岸田首相は10月の所信表明で「経済、経済、経済」と連呼し、「経済に重点を置く」と訴えました。しかし、国民の期待と政策との乖離が目立ち、それが支持率の低下を招いているようです。「経済」ではなく「体裁」ばかり気にしているのではないかと、首相の言葉には虚無感さえ漂います。
岸田氏は自身の強みとして「聞く力」を挙げていました。多種多様な意見を聞き入れて決断するタイプであると自己PRしたのは、バランス感覚を持った人物であると言いたかったのでしょう。日本人の中には、聖徳太子の「和を以て貴しとなす」の精神が息づいており、独断専行型より調整型のリーダーに安心感を覚える傾向があります。岸田氏がバランス感覚を大事にする「いい人」をアピールするのは巧妙な戦術だと思っていました。
それが今や、「聞く力」「バランス感覚」「いい人」アピールのメッキは剥がれています。支持率が示す通り、発足当初の期待感は大きく低下しました。調整型とされる岸田氏の存在は、日本の閉塞感を体現していると感じています。
企業も然りです。新陳代謝や創造的破壊が日本企業の復活に必要だと言われながら、過去の成功体験の思い出に浸るばかりで、なかなか成長軌道に戻れません。
新陳代謝や創造的破壊を平易な言葉で言えば「変革」「イノベーション」です。しかし、残念ながら、実現させることができず、日本経済は長期低迷から脱していません。 
では、なぜ官民挙げて挑戦しているはずの「変革」「イノベーション」が実効性を持たず画餅に終わってきたのでしょうか?
強烈な自己PRから一転、黙り込む就活生
私は、テレビ朝日で経済記者や人事部長として企業から学生まで見てきました。その経験から、課題山積なのに変革が進まない障害の一つは、日本の隅々に染みついている「バランス感覚」にあるのではないかと考えています。
企業が変革に大ナタを振るわなければならないとき、経営者に求められるのは「バランス感覚」ではありません。しかし、そんな企業で調整型の人物がトップに選ばれ、局面を打開できずに終わるケースは往々にしてあります。
個人もバランス感覚の呪縛は根強いものがあります。ひとつエピソードを紹介しましょう。テレビ朝日の人事部長として、私が実際に経験したことです。
毎年の新卒採用で企業は、様々な選考プロセスを経て内定者を決めます。その選考方法の一つに「グループディスカッション」があります。何人かのグループに分けられた応募者が、与えられたテーマについて議論し、より良い合意形成を導くというものです。
ただ、このグループディスカッションについて、かねて私は半信半疑でした。対策マニュアルや要領が学生に浸透していること、協調性を判断するには面接で十分だと考えていたことが理由です。そこで、突破力を持った学生を求めるべく、「トークバトル」という新しい選考を考案し、数年間実施しました。
グループでディスカッションするという点では同じですが、トークバトルでは、あるテーマについて自分の考えがベストだとして最後まで貫き、全員を合理的に納得させるというものです。毎回、事前に通常のグループディスカッションとの違いをくどいほど説明し、始めてもらいました。
するとどうでしょう。それまでの面接で強烈に自己PRしていた学生が、黙り込んでしまうことが少なからずありました。議論を見渡すと、当たらず障らずというバランス感覚が充満したグループが多く見られました。
また、こんなことを言い出すケースに何度も遭遇しました。
「AさんとBさんの案を融合しましょう」
「AさんとBさんの案を融合しましょう」
「一人ずつ、他者の案の良い点を挙げましょう」
始める前に「合意形成が目的ではない」「突破力が大事である」と丁寧にルールを説明したにもかかわらず、です。やはり、日本人は同調に安堵を覚え、集団の和を重んじる気質なのだと実感しました。
期待していた突破力を発揮できる学生は一定程度いることは確認できたものの、それまでの選考で見せていた激しい自己アピールの姿とは打って変わって、議論を丸く収めようとする学生は想像以上に多かったのです。結果的に、「選考」という意味で有効ではありましたが、バランスを重視しようする意識がここまで働いているのかと痛感しました。
自分の意見を合理的に説明し、他者に納得させる。これはある種のプレゼンテーションです。最近の学生は、パソコンで制作したスライドを使って説明する技術は、上の世代に比べると秀でているはずです。本来はもっとうまく人を説得できるはずなのに、バランス感覚がその邪魔をしているのです。
日本人は幼少期から、仲間、チーム、組織の和を大事にすることを叩き込まれ、バランス感覚が鍛えられます。そして、和を乱すような発言や振る舞いは、世間から笑われたり、敬遠されたりすると戒められます。
企業社会でも「バランス感覚」という言葉は、どちらかというと褒め言葉として使われ、それを持った人に安心感を抱く傾向がないでしょうか。利害関係の対立を乗り越えて、難度の高い調整をすることができる人は、バランス感覚があると評価されます。
スティーブ・ジョブズが遺した言葉
しかし、AI(人工知能)などテクノロジーの進化が著しい社会の中で、旧来の価値観の中でバランス感覚に依存し過ぎるのは危ういことです。バランス感覚は冒険やリスクと対極にあるものなので、リスクを負ってイノベーションを追求することが求められるご時世には、成長の阻害要因になる可能性があるからです。
変革をもたらすためには、前例踏襲からの脱却、既成概念の否定が必要です。そうした時、全体の調和を図るよりも、新しいアイディアやチャレンジを尊重するべきです。なのに、バランス感覚がどこからともなく入り込んで曖昧になり、常識的な線に落ち着く・・・そういうことはよくあるのではないでしょうか。 
まるで「反復横跳び」をしているかのようです。左右に動きますが、結局、中心線に戻るだけです。前に進むことはありません。
自分が出したアイデアを少なくとも1回は人に笑われるようでなければ独創的な発想とは言えない——。
これは、米マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏の言葉です。常識的な発想では、たいした結果は生まれないということです。米アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏も米スタンフォード大学の卒業生に「Stay hungry,Stay foolish」と語りかけましたが、これも「常識にとらわれるな」という趣旨です。
イノベーションを起こした先駆者たちは、人は常識に囚われやすいことを注意喚起し、常識が邪魔になると訴えています。常識的な着地点に導くバランス感覚も同じようにイノベーションの阻害要因になると言えます。
スタートアップを成長させるために
内閣官房の新しい資本主義実現本部事務局が2022年10月に発表した「スタートアップに関する基礎資料集」によると、日本の開業率と廃業率はアメリカやヨーロッパ主要国と比べて、最も低いレベルで推移しています。経済社会の新陳代謝は進まず、起業家も少ないということです。
それでも、若い世代で起業したい人は増えています。東京商工リサーチによると、その背景に終身雇用制度の崩壊や副業の解禁があり、政府の後押しも大きいとのことです。日本のスタートアップの資金調達額は、2013年に877億円でしたが、2022年は8774億円と約10倍に伸びています。そして、2027年に10兆円に伸ばす計画を政府は掲げています。
岸田首相は9月に内閣改造を実施しましたが、副大臣2人、政務官1人が相次いで辞任しました。適材適所ではなく、自民党の派閥順送りの力学においてバランスを取った人事だったということです。岸田首相のバランス感覚が通用するのは、旧態依然の永田町の世界だけかもしれません。若い世代は、改革を阻害する「バランス感覚」にとらわれず、起業家精神を発揮して、新しい価値を創造するゲームチェンジャーになってほしいものです。
●60年超運転へ 岸田政権の原子力政策大転換 : 揺らぐ「推進」と「規制」 11/24
原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁の長官、次長、原子力規制技監のトップ3全員が経済産業省出身者になり、同省と原子力規制庁の蜜月は深まったように見える。史上最悪とも言われる東京電力福島第1原発事故への反省から原子力の推進と規制を分離するために規制委が発足したのだが、今、推進と規制は癒着しつつあるのではないか。
「可能な限り低減」から「最大限活用」へ
岸田文雄内閣は2023年2月10日、「GX(グリーン・トランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」を閣議決定し、原子力政策を大転換した。
安倍晋三内閣、菅義偉内閣は、原子力発電所の再稼働は進めつつも、原発依存度を「可能な限り低減する」とし、原発の新増設やリプレース(建て替え)は現時点では想定していないとの立場をとってきた。
これに対しGX基本方針は、「エネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い」原子力を「最大限活用する」とし、次世代革新炉の開発・建設に取り組み、まずは廃炉を決定した原発の敷地内での建て替えから進めていくことを明記した。
また、福島第1原発事故後、新規制基準に基づく審査や、裁判所からの仮処分命令などにより原発が停止していた期間を運転期間から除くことで、「原則40年、最長60年」と定められていた原発の寿命を延ばすことも決められた。この基本方針に基づく「GX脱炭素電源法」は、5月31日に成立する。
福島第1原発事故の傷は未だ癒えてはいない。最長40年とされた廃炉作業は、約880トンある燃料デブリの取り出しができず、完了の見通しが立たない。2023年になっても、7市町村にまたがる帰還困難区域の総面積は337平方キロメートルに及び、福島県からの避難者は2万6808人に上る(8月1日現在。福島県発表)。8月24日からは、地元漁業者の反対を押し切って、放射性物資のトリチウムを含むALPS処理水の海洋放出が開始された。原発の安全性への懸念が依然として強い中、なぜ原子力政策は転換されたのであろうか。
政策転換に慎重だった安倍・菅内閣
原発の発電コストは、バックエンド費用(使用済燃料再処理費用、放射性廃棄物処分費用、廃炉費用)や事故リスク対応費用、さらに建設費と安全対策費が福島第1原発事故後に大幅に上昇したことなどを勘案すると、低いとは言えない。しかし既存の原発については、燃料費だけを考えると発電コストは低く、電気料金の抑制につながる。また原発は、停止期間中も高い維持管理費がかかる。
このため電力会社、産業界、経済産業省は、新規制基準に基づく審査で停止した原発の再稼働を強く要請してきた。また安倍内閣のときから、発電コストの抑制や電力の安定供給、エネルギー自給率の向上、気候変動対策としての脱炭素化を理由に、今後も原発は必要だとして、原発の新増設をエネルギー基本計画に明記するよう求めてきた。原発が新設されなければ、原発に関わる専門人材や技術が失われていくからである。
しかし首相官邸は、内閣支持率への悪影響を危惧して、原発の新増設やリプレース(建て替え)は現時点では想定していないとの立場をとり続けた。朝日新聞の世論調査では、原発の再稼働に賛成が3割前後、反対が5〜6割で推移するなど、世論は原発に厳しい目を向けてきたからである。
菅内閣も、この方針を踏襲する。菅首相は、脱原発派の河野太郎や小泉進次郎を閣僚に登用し、再生可能エネルギーの推進に力を入れた。岸田首相も、政権発足当初は原子力政策の転換に「そこまで意欲的ではなかった」という。岸田は自著で、「将来的には、洋上風力、地熱、太陽光など再生可能エネルギーを主力電源化し、原発への依存度は下げていくべきだというのが私の考えです」と記していた。
エネルギー価格高騰・円安が推進派の神風に
ところが、原発推進派に「神風」が吹く。エネルギー危機の到来である。2021年に入ると、欧米諸国では新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着き、エネルギーの消費量が増えた。これに生産が追いつかず、エネルギー価格は上がり始める。消費も活発化し、物価が高騰したため、各国は利上げに踏み切る。それに対し日本は異次元緩和を続けたことから、円安が進み、円建てでの石油・天然ガス価格が一層上昇した。さらに2022年2月24日にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始したことで、資源の供給不安からエネルギー価格が急騰し、電気料金は大きく値上がりする。
他方、気候変動対策として脱炭素化が求められており、火力発電所の新規建設が進まず、効率の悪い老朽火力の廃止も相次いだ。このため、日本の電力供給力は低下し、2022年3月には東京電力管内と東北電力管内で「電力需給ひっ迫警報」が初めて出されるなど、大規模停電のリスクが高まった。
電気料金の値上がりと電力不足に直面して、世論も変化し始める。2022年2月の朝日新聞の世論調査では、原発再稼働への反対が5割を下回った。岸田首相の政務秘書官・嶋田隆は、経済産業省の元事務次官で、実質国有化後の東京電力の取締役も務めた。嶋田は秘書官就任直後に「リプレースには、この政権で手をつけてもいい」と語っていた。経済産業省内では「今決めるしかない」との声が広がり、岸田も、「古いものを使い続けるより、新しくした方がよい」と、原発の新増設、建て替えを推進するようになる。
2022年7月10日の参議院選挙に勝利し、衆議院の解散がなければ国政選挙がない「黄金の3年」を手に入れた岸田は、7月27日に「GX実行会議」の初会合を開き、原発の新増設や運転期間延長に動き出す。原発の運転期間延長や新規建設の効果が出るのは10年以上先のことで、現下のエネルギー危機の解決にはつながらない。しかし、それが錦の御旗として用いられたのである。
このように原子力政策の大転換は、もともと政策転換を図っていた産業界や電力会社、経済産業省が、エネルギー危機を利用して実現したものである。それでは、なぜ岸田は安倍や菅とは異なり、内閣支持率の低下につながりかねない原子力政策の転換に踏み切ったのであろうか。
「安倍さんもやれなかったことをやった」
岸田は首相就任以前から「やりたいことが見えない」と批判されていた。その岸田が2022年12月に、原子力政策の大転換に加えて、安保関連3文書を改定して敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を決めるという安全保障政策の大転換にも打って出た。
岸田は周囲に「俺は安倍さんもやれなかったことをやったんだ」と高揚感を隠しきれない様子で語っていたという。さらに岸田は、2023年1月4日の記者会見で、岸田政権の歴史的役割として、「これ以上先送りできない課題に正面から愚直に挑戦し、一つひとつ答えを出していく」と述べ、「異次元の少子化対策」を掲げた。
要するに岸田は、やりたいことがあって首相になったわけではなく、首相になることが目的であった。そこで「これ以上先送りできない」困難な課題に取り組み、政府・自民党内での評価を得て政権の求心力を高めることで、政権の長期化を図ろうとしていると考えられる。
核燃サイクルの破綻、最終処分場未定という難題
原子力政策の大転換には、多くの課題が指摘されている。原発の新規建設については、はたして現実的なのか、疑う声が多い。次世代革新炉の中では、欧州の最新型原発に取り入れられている革新軽水炉が有望視されているが、建設費は1兆円規模になると見られている。地域住民の反発も予想される。また、原発の運転期間の実質的延長については、設計の古さや設備の劣化に対して実効性のある安全規制が可能なのか、懸念の声が上がっている。
従来から原発を推進することには、六ヶ所村の使用済核燃料再処理工場の完成が見込めないなど、核燃料サイクル政策が破綻していることや、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場が決まっていないことから、批判がなされており、こうした問題は解決されていない。また原発事故時の避難計画を策定できていない周辺自治体も多く、避難計画が策定されていたとしても、複合災害が発生した場合に住民の避難が本当に可能なのか、その実効性が疑われている。さらにロシアがウクライナの原発を攻撃して占拠したことから、原発が軍事攻撃やテロの標的になる可能性が現実味を帯びて指摘されるようになった。
原発の再稼働も十分には進んでいない。与党や経済界からは、審査が長期化していることについて、原子力規制委員会への不満の声が上がっている。だが、審査が長期化している原発は、自然条件が厳しい場所にあるものが多く、電力会社が災害時の原発の安全性を示せないことが、再稼働が進まない原因である。電力会社が提出した資料の間違いが指摘されることも多い。
揺らぐ推進と規制の分離
さらに問題なのは、運転期間の実質的延長の決定にあたり、原子力規制委員会の独立性に疑いが持たれたことである。2022年7月1日付で原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁の長官、次長、原子力規制技監のトップ3全員が経済産業省出身者になり、経済産業省と原子力規制庁の蜜月は深まったように見える。その後のGX脱炭素電源法の策定過程では、原子力規制委員長への報告なしに、原子力規制庁と経済産業省資源エネルギー庁の担当者が、法改正の検討を重ねていたことが発覚している。
2023年2月13日に原子力規制委員会は、所管する原子炉等規制法から運転期間の規定を削除して経済産業省所管の電気事業法に移す法改正案を審議する。石渡明委員が「安全側への改変とは言えない」と反対する中、異例の多数決をとり、4対1で法改正案を了承した。ところが賛成した複数の委員からも、「外から定められた締めきりを守らねばならないという感じでせかされて議論してきた」「(60年超の審査手法など)重要な指摘が後回しになったのは違和感がある」といった不満の声が上がった。この決定は、法改正を急ぐ政府が原子力規制委員会に圧力をかけた結果と見られている。
岸田内閣は原子力を最大限活用するため、原発事故の教訓から採用された「推進と規制の分離」を揺るがしている。だが、これにより安全規制への信頼が損なわれれば、原発の活用はかえって困難になるであろう。
●植田日銀と岸田政権の減税・解散、思惑が交差する来年の緩和修正 11/24
円安はすでにピークを越えたという見方が広がっている。米連邦準備理事会(FRB)の利上げはもう打ち止めになり、2024年のどこで利下げに転じるかが焦点に変わっている。
米債務上限問題も、11月17日の期限の間際でつなぎ法案が成立し、一部の政府機関について2024年1月19日、それ以外は2月2日まで閉鎖を回避できることになった。これは米金利低下要因である。また、それ以外のいくつかの要因が重なって、円安が修正されつつある。
裏目に出た岸田政権の減税
しかし、日本側の要因でみると、まだ根強く円売りの材料があり、それほど急激には円高に振れないのではないか。
第1の理由は、岸田文雄政権が所得減税を軸に経済政策を打ち出したことが裏目に出ている点だ。この苦境から挽回するのは相当に難しい。
内閣支持率が大きく低下していることで、夏場までのように思い切った政策(例えば防衛増税)が打てなくなる。やはり、所得減税で支持率を回復できると読み違えたことが、今後、経済政策で高評価を受けにくい素地をつくってしまった。
岸田首相は、所得減税を実施することの理由付けとして、デフレ脱却のためと説明した。筆者はこの言葉に耳を疑った。6月の所得減税の実施まで日銀のマイナス金利解除が封じられる選択もあるのではないかと感じた。
ならば、岸田首相の経済対策は円安要因となるのではないか。もしも、日銀が微妙に政治的意向を感じ取れば、これまでよりもデフレ脱却に対して慎重なトーンに変わっていくという可能性もある。
未来志向はどこへ行ったか
岸田政権の政策には、これまでも現状維持的な性格が目立っていた。例えば、ガソリンなどの価格維持、電気・ガス代への補助を延長し続けることがそうだ。今回の補正予算でも、4月末まで当面延長する。おそらく、この現状維持はもっと延長されるだろう。
本当は、脱炭素化に向けて、電気自動車(EV)化や産業のエネルギー転換を図るべきだが、化石燃料消費への支援が強い分、そうした構造転換は鈍くなる。電力も原発再稼働がもっと急ピッチで進むかと期待したが、こちらも鈍い。
貿易赤字が改善しにくいことは、構造的な円安要因となる。ガソリン補助金を延長し続けることは、結果的に円安の原因になる。円安はエネルギー価格を押し上げるので、補助金支出を政府が増やすことにつながる。現状維持のための政策は、財政依存を強める悪い循環にはまっていく。
今の日本に必要なものは、現状をより良い未来に変革していく改革志向だ。EV化は、中国、欧州、そして遅れていた米国でも加速しようとしている。日本の自動車メーカーもEV化・電動化にかじを切ろうとしているのに、ガソリン補助金を単純延長するのは、どの方向を向いて政策を決めているのかと不思議に思える。
自動車産業は、日本の輸出の柱であり、世界のマーケットが脱ガソリン車へとシフトしていこうとする中で、日本政府も本来はその流れを後押しするのが望ましいはずだ。
岸田政権は、これまでの円安によって、輸出拡大が十分に進んでいない点にもっと危機感を抱いた方がよい。半導体の復活だけに夢を託すのではなく、もっと幅広い輸出振興に力を尽くすべきだ。
トラス政権の二の舞は避けたい
岸田政権は苦しい手詰まり感に直面している。減税が裏目に出たことが原因だ。支持率アップが狙える外交イベントも当面ない。
目先、大きな実績を得られるかもしれないのは、賃上げである。来春に向けて、今年を大きく上回る春闘の成果が得られれば、少しは支持率を挽回できるだろう。
ところで、賃上げは円安要因であろうか、それとも円高要因であろうか──。
好循環シナリオが実現していくと、日銀の利上げも違和感なく行われる。今回のような大型補正予算を敢えて組まなくても済む。政府が必要以上の財政拡張をしなくなれば、日銀への超低金利に依存しなくて済む。賃上げがしっかり行われることは、円安是正になると考えられる。
筆者は10月中旬に、岸田首相が5兆円規模の所得減税を口にしたときに、以前の英国のトラス政権の「二の舞」になりはしないかとヒヤリとした。10月末に1ドル=151円台まで円安が進んだ。
しかし、その後に米消費者物価指数(CPI)が予想よりも低い伸び率になるなど、米長期金利が低下してドル安・円高へと方向転換した。失策により、円売りが進むようなことになっていない点は、不幸中の幸いだったと思う。
植田総裁の正念場
岸田首相は、日銀に金融緩和の是正をしてほしくないかもしれない。植田和男総裁は、賃上げを確認して、マイナス金利を解除するところまでは歩みを進めたいと考えているだろう。どこまで植田総裁が思い通りの政策運営ができるのかを注目したい。
もしも、岸田首相が年内に衆院を解散をしていれば、来年の緩和解除はやりやすかっただろう。現在は、解散の日程が大きく後ずれしている。岸田首相の自民党総裁任期は2024年9月である。
解散の日程がどこに来るかがわからない中で、植田総裁は2024年のなるべく早いタイミングでマイナス金利解除をしたいはずだ。そう考えると、6月の所得減税をデフレ脱却のために行うという建前がどうにも邪魔になる。
そのハードルをどう跳び越えるかが本当の正念場になる。6月を待って、7─9月に解除をしようとすると、今度はそこで解散の日程と接近してしまう。日銀は苦しい立場である。
●「“結局は票”に無力感」 生長の家総裁が語る政治と宗教の関係 11/24
かつて世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治運動で共闘し、日本最大の右派団体「日本会議」を生み出すもとにもなった宗教法人「生長の家」の谷口雅宣総裁(71)が毎日新聞のインタビューに応じた。政治と宗教との関わりや旧統一教会を巡る一連の動きについて答えた。
旧統一教会を巡る政府・自民党の対応について、谷口氏は「おかしいなというのが一番の印象。自民党は教会側から長年、絶大な支援を受けてきた。『不都合』が起きたので今度は切り捨てようとしているのではないか」と指摘。政府の解散命令請求についても違和感をにじませ、「検討することに反対はしないが、政治の都合で宗教団体をどうにでもできる枠組みにしようとしていないか注視していく」とした。
1960〜80年代は谷口氏の祖父で教団創始者、谷口雅春氏(1893〜1985年)の主導で政治団体「生長の家政治連合」(生政連、64年設立)をつくり、「明治憲法復元」など、右派色の強い政治運動を展開した。3代目の総裁にあたる谷口氏は「当時は東西冷戦のまっただ中。旧統一教会も『反共』を掲げていたので協力関係にあった」と証言する。旧統一教会の教義で日本は「韓国に仕える国家」などとされるが、「あくまで(反共という)同じ政治目標で一つになっていたのであって、互いの教義については触れなかったと思う」と振り返った。
教団として玉置和郎元総務庁長官や「参院のドン」と呼ばれた村上正邦元労相を参院に送り出したが、83年に生政連の活動停止を決め、政治運動から手を引く。当時の自身と玉置氏らとの考えの違いに触れ、「政治家は結局、票になるかどうかしか考えない」という「無力感」を教団が覚えたことが背景にあった、と明かした。
生政連の活動停止を機に、後に「日本会議」(97年設立)の中核となる人々が教団を離れた。日本会議には今も「明治憲法復元」といったことを唱える人もいる。谷口氏は人権に制限をかける明治憲法が「理想的だ、とは必ずしも言えない」と述べ、防衛費倍増による「軍拡」を進める岸田文雄政権については「憲法無視だ」と批判した。
旧統一教会の問題でクローズアップされた宗教と政治。政治権力と一体化した宗教の「堕落」の歴史を振り返り、谷口氏は「政治と近づくと権力が手に入り、お金も入るようになる。それが『うまみ』に映ったとしても、宗教としては一番まずいことなのではないか」と指摘した。
●維新、補正予算案に賛成へ 岸田内閣では初 経済対策と万博を考慮 11/24
日本維新の会は22日、政府の総合経済対策の裏付けとなる今年度補正予算案に賛成することを決めた。
維新は「野党第1党を目指す」とし、政権と一定の距離を置いてきたが、デフレ脱却のための経済対策の必要性を考慮したという。
この日の両院議員総会で、所属議員による多数決で決めた。維新が岸田内閣提出の予算案に賛成するのは初めて。会見した藤田文武幹事長は「デフレ脱却のラストチャンス」としたうえで「現役世代の可処分所得に直接アプローチするべきだ。(政府の)問題意識は一定の評価ができる」と賛成する理由を説明した。
今回の補正予算案は、維新が推進する大阪・関西万博の関連経費も盛り込まれており、反対に回りにくかったとの事情もある。藤田氏は「評価すべきだとの意見もあった」とも語り、維新中堅は「幹部から万博があるから賛成に回ってほしいと説得された」と話す。
補正予算案をめぐっては、与野党が24日に衆院予算委と本会議で採決することで合意。与党などの賛成多数で可決し、参院に送られる見通しだ。
●アベノミクスについて考えていく必要ある=検証必要性で岸田首相 11/24
岸田文雄首相は24日の衆院予算委員会でアベノミクスについて「これまでのありようや、今後何が求められているか考えていく姿勢が必要」と述べた。逢坂誠二委員(立憲)によるアベノミクスの検証が必要ではないかとの質問に対する答弁。
円安・物価高の背景にアベノミクスがあるのではとの質問に対して、首相は、「金融政策の具体的手法は日銀にゆだねないといけない」としつつ「円安の要因は一概に言えないが、そのなかで金融政策が議論に挙げられる」と指摘した。政府としては円安のプラス面活用としてインバウンドや、マイナス面抑制のための物価対策などを進めると強調した。
●前原誠司氏、国民民主党離党報道を否定 11/24
国民民主党の前原誠司代表代行は24日、自身のX(旧ツイッター)を更新し、党が23年度補正予算案に賛成する場合は離党する意向を関係者に伝達したという同日の報道を否定した。
「補正予算の賛否を理由に、重大な政治決断をすることはありません。本人に確認することなく、この様な記事を書くとは。誤報です!(誠)」と投稿した。
国民の玉木雄一郎代表は22日の衆院予算委員会で、ガソリン税を引き下げる「トリガー条項」について、来春以降の凍結解除を岸田政権が決断すれば「補正予算案に賛成してもいい」と提案。これに対し、岸田文雄首相は自民、公明、国民3党による協議の検討を表明した。国民はかねて、連立政権入りも取りざたされるなど、政権との距離感の近さが指摘されている。
一方、前原氏は、政策実現を優先する現実路線の玉木氏に対し「非自民・非共産」の枠組みによる野党共闘による政権交代を目指すとの立場。2人の目指す党の路線は異なる。
前原氏は今年9月の党代表選で玉木氏と戦い、敗れたが、党内融和の観点から、代表選後の人事では前原氏は留任となった。
●減税表明が支持率低下に拍車、日本経済反転へ「決め手」欠く 11/24
岸田文雄内閣の支持率低下が止まらない。所得税減税を打ち出した後に、低下が加速しているところが特徴的だ。物価が上昇する中、減税では生活の不安が消えないと感じる人びとが多いことを示している。世論には選挙目当ての弥縫策と映り、日本経済を反転に導くだけの決め手に欠けると受け止められたことが、政権の浮揚力を失わせていると筆者は考える。
「ゆとりなし」との回答と政策のぶれ
国内メディアの世論調査では、内閣支持率が20%台に低下した結果が続出している。岸田首相が与党内の異論を抑え込んで決断した所得税などの定額減税に対し、評価しないという割合が過半数を占める調査が多く、その理由として「選挙対策に見える」との回答が上位を占めている。
この世論調査の結果は、岸田首相にとって相当にショックだったのではないか。国民に支持されるはずの減税の評判がどうして悪いのか──。それは、これから先に「こども・子育て政策」や防衛費の増強で増税が控えていることを多くの人々が予想しているからだと思われる。
根底には、物価上昇による実質賃金のマイナスと購買力の伸び悩みがある。9月の実質賃金は前年比2.4%低下と18カ月連続のマイナスを記録。日銀の生活意識に関するアンケート調査(9月調査)では、現在の暮らしに「ゆとりがなくなってきた」との回答が57.4%に上った。
そこに岸田首相の政策判断の「ぶれ」とも見える曲折がある。これまで検討を拒んできたガソリン税を一時的に下げる「トリガー条項」の凍結解除について、岸田首相は22日の衆院予算委で「凍結解除も含めて与党と国民民主党で検討したい」と述べた。国内メディアによると、岸田首相はこの後、自民党の萩生田光一政調会長に対し、自民、公明、国民民主3党の政策責任者による協議を行うよう指示した。
岸田政権の目指している日本経済は、どのような姿なのか──。国民が不安に思っても致し方ない状況が表れ出している。こうした中で一人当たり4万円が支給されても、それで消費を増やす人は広がらないとみられる。
今年のGDP、ドイツに抜かれて4位に
現実の経済に目を向けると、世界の中で相対的な地位がじりじりと下がる日本の実態がある。
国際通貨基金(IMF)は、国内総生産(GDP)で3位の日本が2023年にドイツに抜かれて4位になるとの見通しを発表した。一人当たりGDPは22年の段階で主要7カ国(G7)の中で最下位の32位に下がった。
IMFは成長率が加速しているインドが、27年に日本とドイツを抜いて3位になると予想している。このまま手をこまねいていては、世界経済における日本の相対的地位の低下に歯止めをかけることはできないだろう。
経済成長率を反転させるには、労働投入量の増加と技術革新、資本が必要な3要素だが、岸田政権の政策には決め手がない。
こども政策から抜け落ちた40%近い低所得層
最も深刻なのは、生産年齢人口が減少しつづけていることだ。岸田政権は「こども・子育て政策」を打ち出して「今からの6─7年がラストチャンス」と訴えているが、政策メニューを見ていると、大切な部分が抜け落ちていると指摘したい。
例えば、児童手当の拡充や高等教育費の負担軽減などを重要な項目として取り上げているが、これらは一定以上の所得水準がある階層に出産・育児への意欲を高めてもらう政策のように映る。
言い換えれば、正規社員を家族に持つ階層を対象にしているのではないかと筆者には見える。国税庁の調査によると、2022年の非正規社員の平均年収は205万円(46歳)で、正規社員の523万円(同)と大きな差がある。
結婚を考えている若い世代の年収は平均よりも下がるので、非正規社員の場合は200万円以下の年収で結婚と出産を組み込んだ人生設計をすることになる。これは相当に高いハードルが待ち受けていると言えるのではないか。
総務省によると、2022年の雇用者全体に占める非正規社員の割合は36.9%。正規社員63.1%だけを対象にしたかのような政府の「こども・子育て政策」では、少子化に歯止めをかけることはできないだろう。
増加する空き家、低所得層に公費で貸し出し
低所得層にとって安い家賃で住宅を借りることができれば、可処分所得が相対的に増えて生活に余裕が生まれやすい。そこで注目したいのが、全国で急増している空き家の利用だ。2018年に全国で全戸数の13.6%にあたる約848万戸が空き家になっている。
空き家と言えば、地方の人口過疎地域で多いというイメージが強いが、最近は都市部での急増が目立っている。18年に東京都内の空き家は約81万戸、空き家率は10.6%。23区では世田谷区が約5万戸、大田区が約4.8万戸と上位を占めている。
自治体は今、空き家情報を提供してマッチング促進を図っているが、国や自治体が補助金を出して低所得の階層に安い賃料で貸し出せば、年収200万円でも可処分所得が増え、結婚・出産を検討する人が増えるのではないかと提案したい。幅広い階層の人々が安心して生活できる環境づくりが、少子化防止への「近道」だと考える。
新しい技術の振興に関しては、半導体受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)(2330.TW)の工場を熊本県に誘致するなど半導体分野で、ようやくキャッチアップへの第一歩を踏み出し始めた。
今後は、年間で4兆円を超えるサービス赤字を計上しているプラットフォームサービスに代表されるデジタル赤字の縮減に向けて、国内企業の技術開発・新規投資に政府が財政支援する仕組みを作るべきだ。
年明けの通常国会で示される施政方針演説で、岸田首相は国民が不安に思っている点を自覚し、どのような未来像を描いているのか、はっきりわかるように語ってほしい。
●岸田政権の支持率下落の原因、「51.5%が減税政策ではない」と回答 11/24
一般社団法人救国シンクタンクでは、2023年11月14〜16日、大手インターネット世論調査会社に委託し、有効回答数1044人(18〜79歳の男女/全国/人口構成比割付)で、減税に関する世論調査を実施いたしました。
特に、岸田政権と減税政策に関する詳細な世論調査を実施し、同政権における減税政策に対する有権者の受け止めを分析いたしました。その結果を下記、取りまとめております。
(1)岸田政権の支持率下落原因は「減税政策そのもの」ではない
・「あなたは岸田内閣を支持しますか?」という設問に対して、「支持する」「やや支持する」の合計が16.8%、「あまり支持しない」「支持しない」の合計が74.7%。支持を不支持が大幅に上回る回答結果となっています。
・「岸田内閣が任期途中で退陣した場合、その原因は減税政策を主張したからだと思いますか?」という設問に対して、「そう思う」が11.0%、「そう思わない」が51.5%、「分からない」が37.5%。岸田政権の支持率下落の主因として、減税政策そのものが理由とは考えられていないことが分かります。
(2)岸田政権の所得税減税に対する「世代間のギャップが浮き彫りに」
・「あなたは岸田政権が提示した『所得税減税』政策を支持しますか?」という設問に対して、「支持する」「やや支持する」の合計が28.4%、「あまり支持しない」「支持しない」の合計が55.3%。支持を不支持が大幅に上回る回答結果となっています。
・不支持理由は1位「短期間の減税後にそれ以上に増税されることがわかっているから」53.6%、2位「岸田首相の減税政策が単なる選挙対策に思えるから」45.9%、3位「恒久減税または複数年に渡る減税を行うべきだから」29.8%であり、岸田首相の一時的なパフォーマンスに過ぎないと有権者が受け止めていることが分かります。
・年代別データでは、支持者は18歳〜40代合計33.8%、50代以上の合計23.8%と所得税減税に関する世代間ギャップが背景にあることが分かりました。
(3)社会保険料・子育て財源については「総論賛成」「各論反対」
・社会保険料の引き下げについては全世代肯定的な評価を下しているものの、後期高齢者の窓口負担3割引き上げについては高齢者を中心に根強い反発があり、「反対である」「どちらかというと反対である」合計は60代・75.9%、70代以上・83.9%が存在しています。
・少子化対策の財源は「歳出削減によって賄うべきだ」34.5%、「経済成長による自然増収により賄うべきだ」24.2%が多く、「増税によって賄うべきだ」に関しては4.7%の回答者しか容認していません。
(4)約過半数45.6%の回答者は、岸田首相は「増税に関して国民の信を問うべき」と主張
・「政権与党がマニフェスト(選挙公約)に掲げていない増税を決定する場合、直近の国政選挙で国民の信を問うことについて」という設問に対して、「賛成である」「どちらかというと賛成である」の合計が45.6%、「反対である」「どちらかというと反対である」の合計が28.0%となっています。
●立民・泉健太代表「魂まで売ってしまったらおしまい」 維新、国民民主を批判 11/24
立憲民主党の泉健太代表(49)が24日、国会内での定例会見で、政府の2023年度補正予算案に賛成する方針を示した日本維新の会と国民民主党に「取り引きをしなきゃ政策って実現しないものなのか。魂まで売ってしまったらおしまい」と批判した。
泉氏は「我々は明確に反対という姿勢で臨みたい」と、立民の姿勢を示した上で「他の野党で、大変どうかと思う賛否の声が聞こえてきております」と切り出した。
維新が、岸田政権下で初めて補正予算案に賛成する方針を決めたことに泉氏は「維新さんは万博予算がちらついてしまうと、そもそも反対できない。予算の問題点については考え方が相当、同じところがあるんじゃないかなと思いますが、万博予算等が入っているものですから。賛成せざるを得ないとか、大事な部分を握られている。物を言えなくなっている」と懸念した。
国民民主が、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結解除を与党と協議することで合意したことで、補正予算案に賛成することを決めたことにも「トリガーの凍結解除というのが判断基準ということ。前回確か、トリガーを凍結解除するということで補正予算案に賛成した国民民主党でしたが、その時は完全に裏切られた。それも分かって賛成したのか。そういうことが過去にもあって、今回さすがに一度ならず二度もないだろうという風に思ってましたが…」と皮肉った。
泉氏は「急に国民民主党が凍結解除だったら(補正予算案に)賛成しますと言った途端に、政策の検討を開始するっていうのは極めて不見識で、不誠実」と、岸田文雄首相(66)の姿勢もとがめた。「その取り引きが国民から評価を受けるかどうかということ。取り込まれてしまったらミイラ取りがミイラになる。野党の『新しい政権づくりのためにやるんです、徹底批判しまう』ということができるのか」と維新、国民民主両党の姿勢に苦言を呈した。
●財務省、特捜が岸田首相に引導≠アの先も大スキャンダル「一寸先は闇」 11/24
岸田文雄内閣の支持率低下が止まらない。報道各社の世論調査は軒並み、「危険水域」とされる30%以下に落ち込み、10%台突入も視野に入ってきた。LGBT法の拙速な法制化などで、安倍晋三、菅義偉両政権を支えた岩盤保守層は距離を置き、自民党5派閥の政治資金パーティー券疑惑の影響か、政党支持率まで落ちてきた。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は「一寸先は闇」といえる岸田政権の現状に迫り、「ポスト岸田」や、警戒される最強官庁・財務省と、東京地検特捜部の動きに迫った。
岸田内閣の支持率が急落している。報道各社の世論調査では、内閣支持率は軒並み、20%台に突入した。では、自民党に「ポスト岸田」にふさわしい候補者はいるのか。私は、高市早苗経済安全保障相を推す。
高市氏は、中国に一貫して厳しい姿勢を示してきた。前回の自民党総裁選(2021年9月)では、金融緩和と戦略的な財政出動、大胆な投資を掲げて、基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化目標の凍結を明言した。憲法改正も訴え、全体として、安倍元首相の路線を継承している。それが支持する理由だ。
萩生田光一政調会長や西村康稔経産相など、ほかにも人材はいるが、総裁選に手を挙げた実績を評価したい。
課題は「党内で、どこまで支持が広がるか」だ。とりわけ、かつて所属していた安倍派(清和会)には、「彼女だけはダメだ」という声が少なくない。派閥を飛び出しておきながら、安倍氏に重用され、日の当たるポストを得てきた経歴に対する嫉妬が主な理由だろう。
だが、ここまでくると、「そんなことは言っていられない」という声が強まる可能性がある。自分の選挙を考えて、「自民党の人気が回復できるなら、何でもいい」という話になるかもしれない。
かつての自民党には、「リベラルがダメなら、次は保守路線で」というダイナミズムがあった。党内で「疑似政権交代」を繰り返し、長期政権を維持したのだ。このメカニズムがいまも健在なら、高市氏にも目が出てくる。女性である点も有利に働く。
最大の問題は「岸田政権が倒れるのかどうか」だ。
健康問題で辞任した安倍氏と、衆院選で敗北した麻生太郎氏を別にすると、直近で自ら退陣した首相は福田康夫氏と菅義偉氏である。2人の場合はどうだったか。
福田退陣への引き金を引いたのは、公明党と麻生氏の存在だった。当時は民主党が参院で多数を握る「ねじれ国会」だったが、公明党は翌年に迫った東京都議選や衆院選を控えて、「支持率が急落した福田政権では戦えない」とみていた。そこで、税制改正法案に反対する意向をにじませて事実上、福田氏に退陣を迫ったのだ。
この先も大スキャンダルあるか
公明党の賛成が得られなければ、衆院で法案を再議決できず、公明党がキャスチングボートを握っていた。
菅氏の場合は新型コロナ対策に忙殺され、衆院を解散する機会を逸したまま、総裁選が迫った事情が大きかった。無役だった岸田氏が総裁選に立候補するなか、支持率が落ちていた菅氏は総裁選を辞退し、退陣表明した。
現状はどうか。
内閣支持率は急落しているが、公明党は所得税の定額減税と低所得者への補助金支給を勝ち取り、岸田氏に反旗を翻す理由がない。高市氏をはじめ、ライバルは政権内に取り込んでいる。総裁任期も衆院の任期も残っている。
となると、誰が岸田首相に弓を引くのか。
私は財務省と東京地検の動きに注目している。財務省は増税を封印し、減税を言い出した岸田首相に内心、怒りをたぎらせている。税金の滞納問題で辞任した財務副大臣の税務情報を握っていたのは、財務省だ。
東京地検特捜部は、自民党5大派閥の政治資金不適切処理問題をメディアにリークした。彼らは岸田倒閣に動いている。
この先も大スキャンダルが火を噴く可能性がある。まさに、「一寸先は闇」だ。
●岸田総理の池田大作氏弔問が物議 11/24
23日、老衰のため95歳で亡くなった池田大作名誉会長の創価学会葬が執り行われ、多くの関係者が参列した。一連の動きのなかで岸田内閣総理大臣が弔意表明と弔問を行い、政教分離が再び議論になっている。
「池田大作氏のご逝去の報に接し、深い悲しみにたえません。池田氏は、国内外で平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました」(岸田総理のXから)
追悼文の最後には「内閣総理大臣 岸田文雄」と記名し、翌19日には、「自民党総裁」として、創価学会の本部を弔問に訪れた。これに対し、政教分離の原則に反するのではないかと批判の声が殺到。松野官房長官は「公明党の創立者である池田大作氏に対して、個人としての哀悼の意を表するため、弔意を示したものと承知をしている」(総理官邸・20日)と述べた。
SNSでも「内閣総理大臣の記名はだめでしょう」「弔問は選挙のため?政権に公明党がいること自体が疑問」「これがダメなら伊勢神宮参拝も亡くなったローマ法王への弔意もNGでは?」などの声が上がり、議論になっている。
果たして、岸田総理の弔意と弔問は憲法の政教分離に反するものなのか。23日の『ABEMA Prime』では、宗教学や宗教社会学の専門家を招き、政治と宗教の距離感について考えた。
弔意は憲法違反に該当しない“社会的な儀礼”
政教分離について、憲法20条には、信教の自由とともに、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、または政治上の権力を行使してはならない。国及びその機関は、宗教教育、その他いかなる宗教的活動もしてはならない」などと定められている。
この前提を踏まえ、作家・宗教学者の島田裕巳氏は岸田総理の弔問を、「憲法は宗教団体に特権を与えないことを規定している。宗教団体は政治上の権力を行使してはならないということだ。今回のケースは、その範囲には入らない“社会的な儀礼”と考えていいだろう。最高裁もこれは憲法に違反しないと言っている。弔意だからセーフという感じはある」と述べた。
政治と宗教の関連では、歴代総理の靖国神社参拝が問題視されたケースもあったが、島田氏は「問題は2点ある。1つ目は公金を支出するかどうか。中曽根康弘元総理は公式参拝と称して公金を支出した。これは憲法違反の疑いが濃厚になる。小泉純一郎元総理も参拝を繰り返したが、当時の裁判では、靖国神社の宗教活動を総理の立場で支援しているということで違反との判決が下った。この2点では憲法違反になってくる」と指摘。
そのうえで「裁判所の判断は目的効果論だ。例えば政治家の行為が、ある宗教団体の利益になり、布教や宣伝活動に資する場合はダメという原則だ。非常に曖昧な部分であることは確かだが、人間が亡くなったことに対して意思を表明する“弔意”まで政教分離の議論になるのか」と述べ、総理が弔意を示したことは問題ないとの見方を示した。
一方で「こうしたケースが今までになく、岸田総理が最近、手のひら返しのように態度を変えてしまうことが不信感を助長している。最初から内閣総理大臣と記名せず、自民党総裁と名乗っていれば問題にならなかったのではないか」とも指摘した。
創価学会票への意識が「見え見え」と批判も
今回、岸田総理は総理大臣として哀悼の意を表した。これは宗教的活動に含まれないのか。
島田氏は「岸田総理の支持基盤が弱くなっているなかで、創価学会の票を意識して発言し、行動しているのが見え見えという部分はある。総選挙で大きな意味を持つ大票田を手放したくない意思が先走っている。他のことに対する配慮はないことが見えてしまった」と述べた。
公明党は創価学会が支持母体となっているが、池田氏は両者の関係について、「創価学会と公明党の関係は制度の上で、明確に分離していく」(東京・日大講堂 1970年)と述べており、公明党のホームページによると、あくまでも支持団体と支持を受ける政党という関係であり、憲法違反にはあたらないとの姿勢を示してきた。
今回の公明党と総理の対応を比較して島田氏は「公明党の山口那津男代表は今中国にいて学会葬には出ていない。創価学会が支持母体であることを公言しているなかで学会葬に出ないのは、政教分離を相当気にしているから。ところが岸田総理は、あまり気にしていない。対照的だ。総理の行動は、こうした前提を破壊するようなものだから、学会・公明党にとっても迷惑なのではないか」と分析する。
弔意が不適切との見方も 難しい政教分離の線引き
一方で総理の弔意は不適切だと考える専門家もいる。
宗教社会学が専門で社会学者の橋爪大三郎氏は「政教分離の一番大事なところは、国や国の職員は特定の宗教に関与をしてはならないことだ。岸田総理はまず総理と名乗ってはいけない。それから勤務時間内に弔問をしてはいけない。個人として弔意があるなら誤解のない形でやらなければならない。政治家として弔問するのであれば、行き先は公明党であって、創価学会に弔意を示す必要はない」との見方を示した。
これまでの国会答弁や最高裁での判決(【図】政治家・政党と信教の自由を参照)を見ると、1946年の金森国務大臣の発言を筆頭に、宗教関係者が政治に参加することを禁止するものではないという憲法解釈がなされてきた。
しかし、橋爪氏は「今回の件で岸田総理は政治的効果を狙っている。総理として創価学会に配慮することが選挙や政権運営にプラスになると考えているから、個人として見えない方がいいと考えている。これが憲法の禁じている行為に似てきてしまう。憲法よりも政治的効果を優先している点で、大変問題があると思う」と述べた。
また、政教分離について「日本やアメリカ、多くの国の憲法で政教分離が書いてあるのは近代国家の根本だからだ。この原則がなかった時代に多くの人が血を流し、殺され、差別され、大変な目に遭った。そういうことが起きないように近代国家の大原則として、政府は宗教活動から距離を置き、政府職員はそれに間違えられるような行動をしないようにしようとなっている」と指摘。
さらに「人々の利益はさまざまなグループ間で相反している。それぞれの利益団体が自分の利益を政治に反映させたいと思うのは当たり前だ。それを憲法は禁じていない。だが、信仰は利益ではなく、人々の内心と良心に関わることで、国や第三者に踏みにじられてはいけない。それを守るため、国は特定の宗教を応援しない、レフェリーの立場だ」と述べた。
一方、島田氏は「政教分離はどの国でも規定されているわけではなく、イスラム国家などは政教一体だから、国によって政教分離の在り方は違う。そこを含めて議論して考えないとこうした問題の答えは出ない」と述べた。
●池田大作氏ヨイショで炎上!岸田首相は「創価学会」につぶされる 11/24
創価学会は岸田政権の「アキレス腱」
「国内外で、平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました」――。
新興宗教「創価学会」の池田大作名誉会長が亡くなったことを受けて、岸田文雄首相がSNSに投稿をした哀悼コメントが「政教分離はどこいった?」と炎上している。
ただ、個人的には、岸田首相が旧統一教会を「社会的に問題が指摘される」ことを理由に政治決断で解散命令請求を下した時点から、創価学会との関係で炎上することはわかりきっていた。「いよいよ“終わり”のはじまりだなあ」くらいの感想しかない。
なぜわかりきっていたか。ちょっと長いが、その理由を一言で言ってしまうとこうなる。
「自民党は、さまざまな宗教団体の支援を取り付けて、“政教分離”をなあなあにすることで大きくなってきた政党なので、どこかの宗教を切り捨てればそのロジックがそのまま特大ブーメランになって突き刺さる」
手前みそで恐縮だが、筆者は1年以上前から以下のような記事で、岸田政権にとって「創価学会」がアキレス腱になると予想してきた。
《創価学会へ統一教会批判が飛び火!それでも被害者救済法が「骨抜き」にされそうな訳》(22年11月10日)
今、旧統一教会が指摘されている高額献金や宗教2世などの問題は、創価学会をはじめ、あらゆる宗教団体にあてはまる普遍的な問題だ。うそだと思うなら、「創価学会 被害者 高額献金」などでググってみればいい。旧統一教会の「被害者」と同じく、「人生をめちゃくちゃにされた」と訴える被害者が出てくるはずだ。
つまり、政治が旧統一教会との関係を清算するのなら、同じく「被害」を訴える人が存在している創価学会との関係も清算しなくては、筋が通らないのだ。
解散命令請求で「バンドラの箱」を開けてしまった
関係を見直さなければいけないのは、創価学会だけではない。
「自民党と旧統一教会の蜜月関係が問題だ!」と怒っている人たちはあまりご存じないだろうが、自民党に選挙応援をしている宗教団体など日本中に山ほどある。党内の保守系議員は、日本全国の神道系の宗教団体からなる「神道政治連盟」や「日本会議」の支持を受ける。他にも仏教系団体や、ローカル新興宗教に応援されている議員もいる。そして、ここが大事なポイントだが、そういう宗教団体の中には、元信者や信者のその家族が「だまされた」と訴えている「社会的に問題が指摘されている団体」もある。
これらの宗教団体は、ちゃんと政策に影響を与えている。
例えば、政府与党が選択的夫婦別姓に消極的だったり、LGBT法案を「骨抜き」にしたのは、神道系団体がこれに反対をしていることが影響している。ネットやSNSの陰謀論者の間では、すべて旧統一教会の仕業ということになっているのだが、団体の多さ、すなわち選挙や政治への影響力からいってありえない。旧統一教会の政治団体は、無数にある自民党支持の保守系政治団体の中の「ワン・オブ・ゼム」に過ぎないのだ。
ということは、旧統一教会と同じようなことを主張して、同じように蜜月関係で、同じように自民党議員が会合に参加したりする神道系の宗教団体についても、マスコミは「宗教汚染」「ズブズブ」とメスを入れなくてはダブルスタンダードになってしまう。
旧統一教会を「政教分離に反する」と切り捨てるということは、政府や自民党は創価学会や神社本庁ともしっかりと距離を置かなければいけない。それができなければ、「二枚舌メガネ」などと叩かれて炎上するのも当然なのだ。
そんな「宗教ブーメラン」にさらに破壊力をもたせてしまったのが、「解散命令請求」だ。『解散命令請求背景に岸田首相の強い意志 選挙もにらむ』(産経ニュース10月13日)という報道からもわかるように、岸田首相にとってこれは「カルトをこらしめて国民の溜飲を下げて支持率V字回復」という狙いがあった。
しかし、それは目先の利益しか見ておらず、中長期的には岸田政権どころか自民党まで崩壊させてしまう「バンドラの箱」を開けてしまったと言わざるを得ない。解散命令請求時、この政治決断の問題点を指摘した箇所を再掲しよう。
《理屈上はあらゆる新興宗教をターゲットにできる。反政府運動にも利用できる。自民と連立を組む公明党の支持母体・創価学会の被害を訴える「元信者」をたくさん集めて民事訴訟を起こして、政府に迫れば連立も解消させられる。「社会的に問題がある団体」とは関係を断つと岸田首相が宣言している以上、自民党は「問題」を指摘された団体はすべて切らなくてはいけない》(10月12日)
創価学会との蜜月関係にも厳しくなった民衆の目
これまで説明してきたように、自民党の議員はそれぞれの選挙区で、さまざまな宗教団体の支援を受けている。その中には“被害者のいる宗教団体”もある。そういうところの信者が、選挙ボランティアをしてくれるし、名簿づくりを手伝ってくれたりもする。だから、自民党議員としては、ギブ・アンド・テイクでそれらの宗教団体の会合があれば顔を出す。頼まれたらスピーチもするし、教祖やら幹部との記念写真もたくさん撮影する。
それが政治の世界では「常識」だったが、これからはすべて「アウト」になる。そして、ここが大事なポイントだが、野党や反政府運動をする人々はそこを戦略的につけば、自民党をガタガタに崩壊させることができるということだ。
今、旧統一教会の「被害」を訴えている人々の話が大体20年、30年前の話だということからもわかるように、宗教というものは、「信仰を失った人々」にとって長く憎悪と敵意の対象になる。それは裏を返せば、元信者や家族に水を向ければ、「○○教の被害者」などいくらでも見つけることができるということだ。そういう「被害者」をまとめて民事訴訟を起こせば、ほとんどの宗教団体は「社会的に問題を指摘される団体」にできる。
そして、もし筆者が反自民の人間なら、このスキームで狙うのは、やはりもっとも自民党と蜜月である「創価学会」だ。
ご存じのように、この宗教団体の信者は、自民党と連立を組んでいるので、大臣や政務三役になっている。しかも、政策に影響力がある。岸田政権でも公約になかった「18歳以下を対象にした10万円バラまき」が強行されたのは、公明党、つまりは創価学会からの強い要望を受けたからだ。そんな政権のコントロール力を公明党側も隠さない。
《公明党は「小さな声を聴く力」を生かし、子育て支援やバリアフリーを大きく拡充させてきました。また、経済再生にも成果を上げています。近年の国政選挙を見ても、掲げた公約を着実に実現しています。参院選では、各党が公約を掲げて支援を訴えていますが、日本を前へ進めることができるのは公明党です》(公明党ホームぺージより)
「日本を前に進める」というのは内政だけではない。
旧統一教会より創価学会の方がよほど問題では?
山口那津男代表は22日、中国の北京を訪問して、岸田文雄首相からの親書を携えて習近平国家主席ら要人との会談を打診している。日本産の水産物の輸入停止措置を解除するよう求めるという。日本政府は「親中」で知られる創価学会のコネクションに依存して、中国外交をしているのだ。
ここまで世話になっているならば、その献身に対して自民党が創価学会へ何かしらの「見返り」を用意しているのではないかと考えるのも当然だ。
この1年半ほどマスコミは「旧統一教会が政教分離に反する」と大騒ぎをしていたが、創価学会の方がよほど問題のような気がする。
ジャーナリストの櫻井よしこ氏がフジテレビの報道番組で「旧統一教会は6万票から8万票ですよ、創価学会は600万票から800万票ですよ」と述べていたが、旧統一教会と創価学会では集票力も資金力も雲泥の差だということは、政治を取材してる人間ならば「常識」だ。
旧統一教会が「創価学会に比べて大したことのない影響力」だということは政策を見てもわかる。旧統一教会を母体とする反共団体「国際勝共和連合」が掲げている政策も「憲法改正」や「選択的夫婦別姓反対」「LGBT法案反対」など他の神道系政治団体の政策と丸かぶりだ。旧統一教会の教祖・文鮮明氏が提唱していた「日韓トンネル」(日本と韓国を海底トンネルで繋ぐ構想)を安倍政権が成長戦略に入れたとかの事実があれば、「日本を裏で支配するカルト」という主張にも納得だが、そういう話もない。
また、安倍元首相とズブズブだったおかげで、やりたい放題の悪事ができたとか主張をするような人もいるが、事実は逆で、安倍政権は2018年に消費者契約法を改正して、「霊感商法」のような詐欺商法にひっかかっても、お金を取り戻せるような法整備をした。ストーリーがあまりに「雑」なのだ。
このように、選挙的にも政策的にもそれほど大きな影響力があったと思えない旧統一教会が「巨悪」として解散命令請求をされている中で、櫻井氏の言葉を借りれば、100倍の集票力があり、中国の国家主席ともパイプのある創価学会と自民党との蜜月関係を「政教分離に反さない」というのはさすがに無理があるのではないか。
その場しのぎの「二枚舌」は炎上する
事実、歴史をひも解けば自民党は「公明党」の存在そのものを政教分離に反すると認めていなかった。
1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件を受けて、「カルト宗教問題」が大きな社会テーマになり、翌96年に自民党が「宗教問題ワーキングチーム」を立ち上げて、「宗教法人基本法案」の骨子をまとめた。
『自民党が検討している「宗教法人基本法案」(仮称)の骨格が四日までに固まった。宗教団体の政治活動の「政教分離」に関する憲法二〇条の政府解釈を見直し、宗教団体の政党創設を禁じたほか、靖国神社への首相、閣僚の公式参拝も事実上、禁止している。また、「信者の脱会の自由」や「霊感商法の禁止」などの規定を盛り込んでいるのが特徴だ』(読売新聞1996年1月5日)
これを聞くと、驚くだろう。実はこの時代、自民党は社会党、新党さきがけと連立を組んでいた。公明党は分裂して、その一部は小沢一郎氏率いる新進党と手を組んでいた。要するに自民の「敵」だったのだ。
だから、この時期の国会では亀井静香氏や島村宜伸氏らが、今の旧統一教会への批判がかわいく思えるほどの創価学会バッシングを展開した。亀井氏にいたっては、池田大作名誉会長から公明党に指示があるのかなどを確認するため、池田氏の国会招致を請求。学会員の皆さんから「仏敵」などと憎まれていたのだ。
そんな自民党の「宗教団体の政党創設禁止」という案はほどなくして闇に消えた。先ほども述べたように、自民党は当時からもあまたの宗教団体から支持を受けており、その方面からクレームが入ったからだ。
そして、もう二度とこのような法案が自民党から出ることはなくなった。公明党と連立を組んだからだ。
何が言いたいのかというと、自民党と宗教団体との関係における「政教分離の解釈」なんて、こんな程度だということだ。宗教によって自分たちが「損」しそうになれば、容赦なく切り捨てるし、「得」になればズブズブの共生者となってヨイショもすれば祝電も送る。
ただ、そういう節操のないことをしていると「因果応報」ではないが、自分自身も必ず同じようなひどい目に遭うだろう。
旧統一教会という特定の宗教団体にすべての「罪」を押し付けてその場しのぎで延命できても、これまで宗教団体と同じようなズブズブの関係を続けてきたのだ。その「二枚舌」はいつか白日のもとにさらされて大炎上する。
「人を呪わば穴ふたつ」ではないが、「宗教をつぶした政治家は、宗教によってつぶされていく」ということかもしれない。
●岸田さんはそんなにダメな首相なのだろうか。こんなに実績があるのに 11/24
岸田氏は今週もブルー
先週、サザエさん症候群(月曜に会社や学校に行くのが嫌で日曜夜に落ち込むこと)について書いたが、今週も岸田文雄首相にとっては辛い月曜となったであろう。読売新聞の支持率が初めて20%台となり、朝日、毎日も続落したからだ。
しかも火曜からは国会の予算委員会が始まり、支持率低下の一番の原因である所得税減税のほか、政務3役の不祥事、大阪万博の経費問題など、野党にボコボコにされ、ほぼサンドバッグ状態だった。今週末調査をやったら来週も支持率は必ず下がる。
おそらく今、テレビ局や新聞社から電話がかかってきて「岸田内閣を支持しますか」と問われた時、よほど熱心な自民党員でない限り、「はい支持します」とは言いにくいと思う。
つまり世間は岸田首相を支持したり、ほめたりするのが、はばかられる雰囲気になっている。私も岸田政権を評価する記事を書くと読者の皆様からものすごくお叱りを受ける。
しかし冷静に考えてみて、岸田さんというのはそんなにひどい首相なのだろうか。就任して2年がたつが実は実績は色々挙げているのだ。だから天邪鬼な私は叱られる覚悟で岸田政権の実績を挙げてみることにする。
岸田政権の実績を挙げてみよう
直近では原発処理水の放出を断行した。決めたのは菅義偉前首相だが、やはり実行に移す方が大変だ。案の定一部の野党やメディアは大騒ぎしたし、中国は海産物の禁輸に踏み込んだ。
だが先日のサンフランシスコでの日中首脳会談での習近平主席の言い方は「適切に処理すべきだ」という表現で、中国が国内にいろいろ問題を抱えていることを差し引いても、ずいぶんおとなしかった。
処理水問題では中国は国際社会では明らかに孤立しており、もうほぼ「終わった」話だと思う。多くの国を味方につけた日本の外交的勝利だが、特に韓国の対応が大きかった。韓国野党は「処理水けしからん」と騒いだので、中国としては是非韓国に「あちら側」に来てほしかっただろうが、尹錫悦大統領はブレずに、日本側についた。
その対韓関係の改善も大きな実績だ。日韓のトラブルは慰安婦、徴用工で長期的に厳しい状況だが、尹政権が頑張ってここまで戻してきた。日本も余計なことをせず、輸出手続きのホワイト国再指定など最低限の妥協にとどめて、うまく軟着陸した。
他にも外交では、危険を冒してあえて行ったウクライナ訪問、バイデン米大統領らを原爆資料館に招いた広島サミット、安全保障では反撃能力保有の容認、エネルギーでは原発への積極的な関与など、多くの実績がある。
防衛増税に批判が多いが、防衛力強化に税金を払うのは当たり前で、しかも所得税は今の50歳以上の人にはほとんど関係ない。事実上、若者や子孫に「つけ」を回すのに「増税許すまじ」と叫ぶのは身勝手を通り越してピンボケだ。
不人気の理由は発信力ではなく国民の気分?
もちろん文句を言いたいこともある。LGBT法の拙速な成立は、バイデン氏の原爆資料館訪問のバーターだったのかもしれないが、維新と国民の案を丸呑みするという極めてみっともないやり方で保守派の離反を呼び、今の支持率低下の遠因となっている。
また「異次元の少子化対策」をするのはいいのだが、所得が2000万円や3000万円の人たちに児童手当をあげるために現役世代が多く負担する社会保険料を値上げするのはナンセンスだ。これでは子供は増えない。
こんな風に書いていくと、ダメなところより実績の方が多いような気もするのに、なぜこんなに不人気なのだろうか。よく「岸田首相は発信力が弱い」という批判があるのだが、実は国民が首相に求めるのは「発信力」や「説明力」ではなく「実行力」だという調査結果が出ている。
だからもしかしたら今の不人気の理由は国民の「気分」ではないのか。だったら年が明けて賃金が上がり、物価も落ち着いて、減税も実施されて、一息つけば国民の「気分」も晴れるのかもしれない。どうやら今の自民党には岸田氏をおろして誰か代わりを立てる「あて」はないようだから、それまでじっと我慢するしかないと思う。 
●立憲・泉代表「ミイラ取りがミイラに」国民民主党の補正予算案賛成を批判 11/24
今年度の補正予算案に国民民主党が賛成したことについて、立憲民主党の泉代表は「ミイラ取りがミイラになる」と国民民主党の姿勢を厳しく批判しました。
国民民主党はガソリン税を引き下げる「トリガー条項」をめぐり、自民・公明と協議を進めることで合意したとして、24日の衆議院・予算委員会で補正予算案に賛成しました。
立憲民主党 泉健太代表「魂まで売ってしまったらおしまいだし、取り込まれてしまったら、ミイラ取りはミイラになる」
立憲民主党の泉代表は国民民主党の姿勢について「岸田政権から材料をまかれて、そこに飛びつかざるを得ない状況は本当に残念だ」と指摘。「自民党との取引によって政策が変わるのかと問われる」と厳しく批判しました。
また、泉氏は「国民民主党が補正予算に賛成するということは連合側も想定してないだろう」として、今後、連合の芳野会長と協議したいとの考えを示しました。
●実質賃下げになってしまった国家公務員給与法改定 11/24
実質賃下げになってしまった給与法改定。非正規も含めてあげるべきですね!これだけ物価が上昇している中では人事院勧告に囚われていたら遅れてしまいますしね。春闘だけでなく秋闘も必要な段階でしょう。
れいわ新選組は、国家公務員の一般職給与法、裁判官報酬法、検察官俸給法、防衛省職員給与法の4法案に「給与の引き上げが不十分である」という理由で、反対した。また、総理などの給与を決める特別職給与法案には「引き上げる必要がない」として反対した。私たちは、国民経済の再生のために、今、岸田政権が公的部門の賃上げを主導するべきであり、国家公務員に対しても十分な賃上げが必要だと考える。国家公務員給与の金額は、地方公務員給与に波及し、来年の春闘や民間給与にも影響を及ぼしていくからだ。今回の法案は、人事院勧告に基づき国家公務員給与を「少しだけ引き上げる」ものであるが、引き上げがあまりにも不十分だった。例えば一般職給与法はたった0.96%の引き上げとなり、物価高騰をふまえれば実質の賃下げとなる。2022年以降、コスト高による悪い物価高が襲いかかり、直近の調べとなる2023年9月時点で、物価は2020年と比べ6%を超えて上昇している。それによって、18か月連続で民間の実質賃金は下がっている。この物価高を超える賃上げがなされない限りは、実質的に賃金は目減りする、つまり暮らしは貧しくなる。民間労働者も公務員も、この国の生産・供給を支える労働者であり、そして消費を支える重要な主体である。岸田総理は、公的部門の賃上げを、目標をもっておこなうべき。内閣人事局も「政府が人事院勧告に必ず従うとの法的な義務はございません」と回答している。政治のリーダーシップで「人事院勧告+α」の増額をおこなうことは可能である。次に、特別職給与法案については、総理大臣などの特別職は、現状、経団連とアメリカの顔色を伺う上級国民がその席に座っていることから、「所得向上」の対象外とし、増額改定には反対した。また、この法案に含まれる万博政府代表の給与引き上げについても、れいわ新選組は「万博中止」を求める立場からも反対した。公務員給与については、「身を切る改革」や「構造改革」によって、公務員バッシングのやり玉に挙がってきた。しかし、今こそ、正規一般職だけではなく、非常勤職員も含めて、総理の責任で徹底的に底上げし、「30年以上続いたコストカット経済」からの脱却の第一歩とすべきだ。れいわ新選組は、一人ひとりの徹底した所得向上と、それによる日本経済の再生を、これからも求めていく。
●補正予算案 衆院本会議で可決 自民 公明 維新 国民など賛成 11/24
経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案は、衆議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決されて参議院に送られました。
一般会計の総額が13兆1992億円となる今年度の補正予算案は、24日の衆議院予算委員会で、岸田総理大臣とすべての閣僚が出席して締めくくりの質疑が行われたあと、採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会、それに国民民主党の賛成多数で可決されました。
これを受けて、午後に衆議院本会議が開かれ、討論で自民党は「デフレに後戻りしないよう大胆な政策を総動員することが急務だ。日本経済を一段高い成長軌道に乗せ、物価高に負けない賃上げを達成し成長と分配の好循環を実現することがわれわれの責任だ」と強調しました。
これに対し、立憲民主党は「岸田総理大臣は突如として所得税などの減税を打ち出したが、始まるのは来年6月で物価高対策としては遅すぎる。新規の赤字国債の発行が必要となり、還元どころか負担を将来に付け回す大盤ぶるまいで、国民を欺くものだ」と訴えました。
そして採決が行われた結果、補正予算案は自民・公明両党と日本維新の会、それに国民民主党などの賛成多数で可決されて、参議院に送られました。
補正予算案には物価高への対応として、住民税が非課税の低所得者世帯に対する7万円の給付や、ガソリン代や電気代・ガス代の負担軽減措置の延長が盛り込まれているほか、持続的な賃上げの実現や国内投資の促進に向けた費用などが計上されています。
補正予算案は、来週27日と28日の2日間、参議院予算委員会で岸田総理大臣とすべての閣僚が出席して質疑が行われることになっていて、与党側は来週中に成立させたいとしています。
岸田首相 維新と国民民主の控え室を訪れ謝意
補正予算案が可決されたあと、岸田総理大臣は、自民・公明両党に加え、賛成した日本維新の会と国民民主党の控え室を訪れて謝意を示しました。
このうち国民民主党の玉木代表が「覚悟を持って賛成したので『トリガー条項』の凍結解除をやりきりたい。岸田総理大臣も覚悟を持ってほしい」と求めたのに対し、岸田総理大臣は「与党と国民民主党の間でしっかり議論と検討を進めていきたい」と応じ握手を交わしました。
また日本維新の会の馬場代表とは、23日夜、総理大臣公邸の居住スペースの設備に不具合が生じ、岸田総理大臣が急きょ、近くのホテルに宿泊したことが話題になり、岸田総理大臣は「きのうはちょっと不都合があった。きょうは公邸に帰れると思う」と述べました。
森屋官房副長官「与野党を超えて理解していただいた」
森屋官房副長官は記者会見で「総合経済対策の裏付けとなる補正予算案は国会で精力的に審議され、デフレ完全脱却のための千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかないという趣旨に対し、与野党を超えて理解していただいたと受け止めている」と述べました。
その上で「補正予算案に盛り込まれた取り組みを国民に理解してもらえるよう、引き続き参議院でも丁寧な説明に努め、一日も早い成立に向け努力していきたい」と述べました。
立民 泉代表 “物価高や生活への支援になっておらず反対”
立憲民主党の泉代表は記者会見で、「補正予算案に反対の立場だ。時期はずれの所得税の減税は今の物価高や生活に対する支援になっておらず、結局は国債を余分に発行することになり、大盤ぶるまいの人気取りの減税には賛成できない」と述べました。
その上で、野党の日本維新の会や国民民主党が補正予算案に賛成することについて、「自民党からすればしてやったりで、岸田政権に賛成の材料をまかれ、飛びつかざるをえないという状況は残念だ。国民民主党は『トリガー条項』の協議が判断基準だと言うが、これまでも自民党に裏切られている。取り引きをして取り込まれてしまったら、『ミイラ取りがミイラになる』のではないか。国民民主党が政治に緊張感を持たせようという考え方を持っているのか、連合の芳野会長と今後の対応を協議しなければならない」と述べました。
維新 馬場代表「苦渋の判断だが賛成」
日本維新の会の馬場代表は、記者会見で「政府の経済対策は決して十分ではなく、『やらないよりまし』という50点くらいの評価だ。大阪・関西万博の会場建設費の増額分のうち、国の負担分が計上されており、大阪府などでも負担分を議会に諮るなか、反対するのは矛盾する面もあり、苦渋の判断だが賛成した」と述べました。
一方、「トリガー条項」の凍結解除については「発動されれば即効性があり、日々の暮らしの物価にも反映されるので賛成だが、そもそもガソリン税の暫定税率を廃止すべきだ」と述べました。
公明 石井氏 「維新と国民民主賛成 補正予算案が必要との認識」
公明党の石井幹事長は記者団に対し「野党の日本維新の会と国民民主党も賛成したことは、多くの国民が補正予算案が必要だと認識していることの反映ではないか。重要な課題に応える中身なので、いち早く成立を期したい」と述べました。
共産 田村政策委員長「参議院でも徹底的に追及したい」
共産党の田村政策委員長は、記者会見で「国民が全く期待していない経済対策の中身で、消費税の減税こそ、物価高騰対策として求められている。自民党の派閥のパーティー券の問題も、裏金に回っている疑念は払拭(ふっしょく)できず、参議院でも徹底的に追及したい」と述べました。
一方、日本維新の会や国民民主党が賛成したことについて、「大変疑問だ。岸田内閣の経済政策には日本維新の会もかなり厳しい質問をしており、国民民主党も『トリガー条項』を検討するから賛成というのはいかがなものか。対決する野党の立場ではない」と述べました。
国民民主 玉木代表「覚悟を持った賛成」
国民民主党の玉木代表は記者団に対し「覚悟を持った賛成だ。長年の課題だった『トリガー条項』の凍結解除を必ず勝ち取りたい。ガソリン減税はわかりやすく、中小企業や地方の賃上げの後押しにもなるので、内閣支持率が上がらない岸田政権にとっても正念場だ。実現しなければ、厳しく批判しなければならず、政府・与党との関係も大きな岐路を迎える」と述べました。
また「トリガー条項」の凍結解除が実現できなかった場合の自身の責任について問われたのに対し、「背水の陣で臨みたい。進退の覚悟はできており、幹部も共有している」と述べました。
●10月消費者物価、前年同月比2・9%上昇…4カ月ぶり拡大 物価高 11/24
総務省が24日発表した10月の全国消費者物価指数(2020年=100、生鮮食品を除く)は、前年同月比2・9%上昇の106・4だった。前月の2・8%から拡大した。拡大は4カ月ぶりで、物価高が収まらない状況だ。
宿泊料が前年同月比42・6%、トマトが41・3%、リンゴが29・4%、牛乳が19・8%それぞれ上昇した。
総合指数は3・3%上昇、生鮮食品とエネルギーを除く指数は4・0%上昇だった。
●自民・世耕氏、岸田首相にまた苦言=「言葉に情熱感じない」 11/24
自民党の世耕弘成参院幹事長は24日発売の月刊誌「WiLL」の対談記事で、岸田文雄首相がリーダーシップを示せていない原因について問われ「言葉に情熱を感じない」と苦言を呈した。世耕氏は「首相自身、やりたい政策はあるだろうし、懸命に仕事をされていると思う。しかし熱意がいまいち伝わってこない」と述べた。
世耕氏は10月25日の代表質問で首相の政権運営に苦言を呈したことについて「毎回厳しいことを申し上げている。ところが、返ってくる答弁は無味乾燥なことが多い」と主張。代表質問の際も官房副長官を通じて「政治家としての言葉で返してほしい」と事前に伝えたことを明かした。
 11/25

 

●政務三役の辞任/適材適所が聞いてあきれる 11/25
岸田文雄首相は昨年来、閣僚などが辞任する度に「任命責任は重く受け止めている」と述べてきた。しかし、その発言があまりに軽い。本当に自身の責任を重く受け止めてきたのであれば、1カ月で政務三役が3人も辞任に追い込まれることなどあるはずがない。
神田憲次財務副大臣、柿沢未途法務副大臣、山田太郎文部科学政務官・復興政務官が相次いで辞任した。税理士でもある財務副大臣が税の滞納を認め、法務行政を監督する副大臣が選挙違反への関与を疑われ、教育行政を所管する政務官が女性との不適切な交際があったことが直接の理由だ。
岸田首相は9月に副大臣・政務官人事を行った際、「適材適所で人選した」と説明した。それぞれの役職が泣くような不祥事が相次いだ原因は任命権者が適材を配さなかったか、人を見る目に誤りがあったかのどちらかだ。適材適所が聞いてあきれる。
改造内閣の発足以降、副大臣などの不祥事が続いている背景に、岸田首相が来年の総裁選をにらんで、各派閥の推薦を丸のみしたためとの指摘がある。派閥の推薦は当選回数などによるもので、職務への適性を示すものではない。
就任してほどなく不祥事が露見するのは、官邸のチェック機能が低下していることの表れとみるのが自然だろう。
今回の辞任の連鎖を、これまでの派閥重視から脱却し、登用の理由付けを明確にした人事に転換する契機にすることが重要だ。
気になるのは、岸田首相が閣僚などの問題が明らかになる度、任命責任を認めるのみで、説明責任を果たさせるのに消極的な姿勢に終始していることだ。自身の責任に言及することで幕引きを図ろうとしているようにも見える。国民の不信を招いたのであれば、当事者に説明させるべく指導力を発揮することが任命権者の責任の果たし方ではないか。
今月の共同通信世論調査で、内閣支持率が政権発足後初めて30%を割り込んだ。経済対策への期待感の薄さに加えて、不祥事などに対する政権の対応への不信も影響しているとみられる。
岸田首相は、既に使い道の決まっている税の増収分を「国民に還元する」と述べるなど、実質の伴わない発言が最近特に目立つ。総裁選での再選をにらむのであれば、求められるのは言行一致だ。適材適所と言葉にする前に登用する人材を厳選し、経済を成長させるとの決意表明に語気を強めるより、国民誰もが認める成果を上げることにこそ力を注ぐべきだ。
●「ルパンだって3世までだ」 立民・野田佳彦元首相、自民の世襲体質を批判 11/25
選挙戦略や党運営、重要政策を巡る方針と、さまざまな懸案に関する野党幹部らの発言を採録した「今週の野党」をお届けします。
ミイラ取りがミイラに
立憲民主党・泉健太代表「今の政治に緊張感を持たせる、という考え方に本当に立っているのかを改めて確認しなければいけない。(特定の政策の推進を条件に予算案に賛成するという)取引が国民から評価を受けるかどうかということだ。魂まで売ってしまったらおしまいだし、取り込まれてしまったら、ミイラ取りがミイラになる。」(24日の記者会見、国民民主党が令和5年度補正予算案に賛成する方針を決めたことを受けて)
歌舞伎役者じゃないんだから
立憲民主党・野田佳彦元首相「首相は3世で、ジュニア(息子)に委ねると4世だ。ルパンだって3世までだ。歌舞伎役者じゃないんだから。」(22日の衆院予算委員会、岸田文雄首相に対し自民党の世襲議員の多さを指摘して)
少しずれるが…
日本維新の会・藤田文武幹事長「デフレ脱却のラストチャンスだ。経済対策の必要性は(政府とも)共有している。われわれの政策と少しずれるが、中長期的に国民の可処分所得を上げていくとの問題意識は評価する。」(22日の記者会見、令和5年度補正予算案に賛成する方針を決めた理由について)
支持率の低い内閣であっても
国民民主党・玉木雄一郎代表「われわれの立場は変わらない。「対決より解決」だ。支持率の低い内閣であっても、いいことをやっていれば協力するし、支持率が高くても「だめなものはだめだ」と言っていく。持続的賃上げにとっても重要な局面を迎えている。われわれの積極的な政策提案や政策を先導していく姿勢が重要になってきている。」(21日の記者会見、岸田文雄内閣の支持率下落に関連して)
●補正予算案衆院通過 国民の生活、救えるのか 11/25
2023年度補正予算案がきのう衆院を通過した。経済対策を軸にした一般会計で13兆1992億円の大型予算案には与党の自民、公明両党に加え、日本維新の会、国民民主党も賛成した。
日本は歯止めの掛からない物価上昇や歴史的円安に直面している。補正予算で国民の暮らしを下支えすることは理解できる。
だが、政府の経済対策は与党からも「国民への説明が足りない」などと不評を買う始末だ。しかも目玉とする所得税減税は今回の補正予算案に含まれていない。
政府側の答弁は一貫性を欠き、政策そのものより次期衆院選への対応や政権維持を優先しているようにしか感じられない。内閣支持率の下落が著しいのも、岸田文雄首相のそうした思惑が国民から見透かされているのではないか。
岸田政権は6月に閣議決定した「骨太方針」で、新型コロナウイルス禍が落ち着き、歳出構造を平時に戻すと掲げた。それに反する大型の補正編成である。それなりの理由と説明が必要なはずだ。
ところが、規模が大きい割に物価高に対応する具体策が乏しいのはなぜだろう。半導体生産支援などの基金に4兆円以上を積み立てることが、今回の補正にどうしても必要だったとは思えない。
驚くのは首相が「税収増を国民に還元する」と強調したのに対し、鈴木俊一財務相が「減税の元手はない」と否定したことだ。増収分は既に使われ、実際の財源は借金である国債発行だ。補正予算案も7割近くを借金で賄う。すると首相は「還元が目的ではない」と言い、放漫な財政運営が物価高を加速させる懸念にはまともに答えなかった。
肝心の所得税減税の実現は来年6月になる。首相は「給付の方が即効性があるのは指摘の通りだ」と野党の言い分を認めている。賃上げと減税のセットにこだわる理由がよく分からない。実質賃金の目減りは18カ月続いている。来年6月の減税では景気下支えが手遅れになる恐れもある。通常国会後に経済対策を検討する時間はあったはずだ。
自民党5派閥の政治資金収支報告書の過少記載問題では、自身が派閥会長なのに人ごとのような答弁を続け、リーダーシップを発揮できていない。求心力を急速に失っている感は否めない。
一方、野党も心もとない。立憲民主党は対案は示したとはいえ、給付金か減税かの議論に終始した感がある。日本維新の会は「大阪・関西万博の予算が付いていることを評価すべきだ」という意見もあったなどとして賛成した。
国民民主党は、ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除を政府が検討する方針を示したことで賛成に回った。予算の内容より、それぞれの党内事情を優先したと国民の目には映ったのではないか。これでは政治不信はさらに深まってしまう。
国民の生活をいかに守るかは、与野党がなれ合いで決められるテーマではない。参院では、もっと突っ込んで議論を尽くしてもらいたい。
●パーティー券で「裏金」つくる自民党のやり方…5派閥の過少記載問題 11/25
自民党5派閥が2018〜21年の政治資金収支報告書にパーティー収入約4000万円分を過少記載したとして告発された問題が、政権を揺るがす新たな材料となっている。岸田派会長を務める岸田文雄首相(党総裁)らは、あくまで事務的なミスと主張するものの、現行のルールには抜け穴があり、「意図的」との疑念は払拭(ふっしょく)されないままだ。識者は早急なルール見直しを訴える。
「ノルマ以上の券を売ると議員個人の収入になる」慣習
自民党の各派閥は、年1回政治資金パーティーを開くのが通例で、1枚2万円が相場とされるパーティー券を団体や企業などに販売することが最大の収入源だ。パーティーなどを通じた派閥の収入は、22年は麻生派が2億9000万円近くで最多だった。
派閥の所属議員には当選回数や閣僚経験に応じて、販売ノルマがあるが、「ノルマ以上の券を売ると議員個人の収入になる」(自民関係者)。政治家個人に対する企業・団体献金が禁止されている中、パーティー券収入が議員にキックバックされて「裏金」になっている実態があるとされる。
20万円を超える購入者の氏名や金額は記載義務
政治資金規正法は1回のパーティーにつき、20万円を超える購入者の氏名や金額を収支報告書に記載するよう義務付ける。5派閥は記載漏れの指摘を受け、相次いで訂正した。
首相は、複数議員が同じ団体に券購入を依頼し合計した結果、20万円を超えたケースで記載が漏れていたとするが、22日の衆院予算委員会では立憲民主党の渡辺創氏が「一度に20万円超が振り込まれた例も確認した。容易に気づけたはずだ」と指摘した。
20万円以下に分割すれば「セーフ」? なんともユルい規制
こうした政治資金のずさんな取り扱いが起きる背景には、パーティー収入を巡る規制の緩さがある。
「ブラックボックスどころかブラックホール。誰にどれだけ券を売ったか分からない」。ある自民議員秘書は実情を率直に語る。購入額が20万円以下なら記載が不要なため、例えば22万円分を購入しても、11万円ずつに分ければ誰が買ったかは表に出ない。
今回の過少記載は20万円超の券を購入した政治団体側の収支報告書に支出の記載があり、派閥側の報告書の収入と突き合わせて発覚した。購入者が企業や個人ならば支出を公表する義務はなく、寄付にも当たらないため、売った側が記載しなければ把握できない。
日本大の岩井奉信(ともあき)名誉教授(政治学)は「過少記載してもチェックがほとんど働かないので、丼勘定で資金を集めていたのでは」と指摘。「現金での直接のやりとりを一切禁止し、振り込みで記録を残すなどの見直しが必要だ」と話す。
●自民5派閥、558万円不記載 22年のパーティー収入など―政治資金規正法 11/25
総務省が24日公表した2022年の政治資金収支報告書で、自民党安倍派など5派閥の政治団体が政治資金パーティーの会費などとして支出を受けたうち、少なくとも計558万円分について記載がなかったことが分かった。
政治資金を巡っては、自民党の複数の政治団体が21年まで4年間のパーティー収入計約4000万円を記載しなかったとして政治資金規正法違反容疑で刑事告発され、東京地検特捜部が捜査している。今回判明した22年分も同法違反に当たる可能性がある。
5派閥は、安倍派(清和政策研究会)、麻生派(志公会)、茂木派(平成研究会)、二階派(志帥会)、森山派(近未来政治研究会)。
同法は、1回のパーティーで20万円超の支出をした個人・団体の名前や金額を収支報告書に記載するよう義務付けている。
公表された収支報告書で、「パーティー券購入」や「会費」などの名目で政治団体が各派閥側に支出したとされる金額が、派閥側の収入として記載されているかどうかを調べた。
その結果、清和政策研究会は1団体からの28万円について記載がなかったほか、別の1団体からの収入を6万円過少記載していた。志帥会は4団体からの計286万円、平成研究会は1団体からの26万円を記載していなかった。
志公会は1団体からの180万円を記載していなかったほか、別の団体からの収入を2万円過少記載していた。森山派は1団体からの30万円が不記載だった。
各派閥は「事実を確認し適切に対応する」などとしている。
政治資金に詳しい岩井奉信日本大名誉教授(政治学)は「最近は『見つかれば修正すればいい』と政治家が制度をないがしろにする傾向がある。報告書を電子化するなど、在り方を考えていかなければいけない」と話した。
●自民派閥収入、麻生派が首位 二階派後退、総額12.8%減―政治資金 11/25
総務省が24日公表した2022年の政治資金収支報告書によると、自民党6派閥の収入総額は前年比12.8%減の11億8371万円だった。総裁選や衆院選を見据え集金が活発化した21年と比べ、4派が収入を減らした。
トップは2億8658万円を集めた麻生派で、前年の2位から浮上した。岸田政権を支える主要派閥として存在感を示し、4月に開いた政治資金パーティーの収入は6派中で最多の2億3511万円に上った。
岸田文雄首相が率いる岸田派が2位。パーティー収入が2割増となる一方、個人や政治団体からの寄付が減少し、前年比10.4%減の2億2935万円となった。
3年連続首位だった二階派は、同34.2%減の2億2094万円で3位に後退。柱となるパーティー収入が約9000万円落ち込んだことが響いた。長年、幹事長派閥として影響力を持ってきたが、岸田政権では非主流派と位置付けられ、集金力にも影を落とした形だ。
茂木派は同2.7%減の2億1612万円で、前年と同じ4位だった。最大派閥の安倍派は1億8635万円、森山派は4436万円を集め、いずれも増収となった。
派閥の政治資金を巡っては、森山派を除く5派が、政治資金パーティーの収入計約4000万円を18〜21年の収支報告書に記載していなかったとして告発され、東京地検特捜部が各派の担当者から事情聴取している。
●池田大作・創価学会名誉会長が死去 「後継者問題」と「岸田政権の崩壊」 11/25
FRIDAY記者の手元に、1枚の写真がある。撮影場所は、静岡県富士宮市にある日蓮正宗総本山・大石寺。約700年前に開創されたこの巨大な寺院は、’91年に日蓮正宗に破門されるまで、創価学会にとって聖地≠ニ言える場所だった。’68年、その大石寺で創価学会婦人部の幹部457人が参加する夏季講習会が行われていた。境内を埋め尽くさんばかりの女性幹部に囲まれ、両足を広げて椅子に座っている恰幅のいい男は――今年11月15日に95歳で死去した池田大作創価学会名誉会長だ。
「全盛期に500万人近い数の部員を抱えていた婦人部は、″先生″にとって、そして学会にとって最も重要な存在でした。’64年の公明党結成以来、選挙戦において彼女達は徹底した集票マシーン≠ニして活躍していた。全国各地に散らばった婦人部員が非学会員に声をかけ、時には家庭訪問までして、投票を呼び掛けました。先生はその労をねぎらうため、女性幹部を集めて講習や研修会を開いていました。成果をあげた学会員には自ら近寄り、直接言葉を交わした。それを見た婦人部の面々は、『私もいつかは先生からお言葉を……』とさらに選挙活動にのめり込んだのです。結果として公明党は、ピークの’05年には898万票を獲得する一大政党に成長しました」(学会関係者)
政界にも多大な影響を及ぼした池田氏だが、その晩年は謎のベールに包まれていた。死去が発表されるまで10年以上、表舞台に一切姿を現さなかったのだ。
「’10年6月の本部幹部会を池田氏が突如欠席し、現会長の原田稔氏(82)に実務を全て引き継ぎました。以降、学会員へのメッセージを、長男で主任副会長の博正氏(70)が代読する形で求心力を保っていた。池田氏がいなくなることで、心が離れてしまう学会員が少なくないことを、幹部たちはよく理解していたのでしょう」(ジャーナリストの山田直樹氏)
「池田教」と揶揄されることもあった創価学会。″神格化″されていたカリスマの死は、学会内に混乱をもたらしている。
「10月27日に5期目を迎えることが発表された原田会長が82歳、理事長の長谷川重夫氏も82歳。4年の任期を終える頃には、ともに86歳です。次期会長候補と目される66歳の谷川佳樹氏は4年後に70歳。もう一人の候補である萩本直樹氏、池田大作氏の長男である博正氏は二人とも70歳で4年後には74歳。幹部陣は皆、高齢者なんです。それなのに、創価学会が打ち出した来年のテーマが『世界青年学会 開幕の年』というのはおかしな話。
創価学会内部には、抜本的な世代交代や内部改革を求める会員が存在し、現執行部を批判する声もあがっていました。ところが唯一のカリスマの池田氏が鬼籍に入った。教団にとっては危急存亡の秋ですから、当面は池田氏の死をバネにして組織を引き締め、少なくとも、次の総選挙くらいまでは現行の体制で乗り切るでしょう」(創価学会ウォッチャーのジャーナリスト・乙骨正生氏)
その「次の総選挙」が行われるのはいつなのか。支持率低下に苦しむ岸田内閣が、池田氏の「弔い合戦」に燃える学会員の熱量に期待し、最後の一手として年明けに解散総選挙を仕掛ける可能性もくすぶっているが――。
「信者も高齢化が進んでおり、もはや弔い合戦に燃える人は少ない。彼らがカリスマを失った喪失感や混乱に耐え、まともな選挙活動ができるとは考えづらい。最大898万あった公明党の得票数も、昨年の参院選では618万と280万減り、今年の統一地方選でも苦戦。そんな状態で奮戦を期待するのは博打が過ぎますし、公明党も今すぐに国政選挙の準備はしたくないでしょう」(自民党関係者)
そもそも、外交や安全保障の分野で成果を上げてきた岸田政権と、池田氏の掲げる平和主義の理念を信ずる創価学会員の相性は悪かった。
「それでも、池田氏が存命の間は『先生にもなにか考えがあって自民党と組んでいるのだろう』と納得できたわけです。しかし池田氏亡き今、『平和を愛する先生ならこんなことはしなかった』とか、『先生の理念から公明党は離れてしまった』と防衛力強化を掲げる自民党と組むことをよしとせず、優秀な集票部隊が選挙協力に消極的になる可能性もある。
池田氏の死は、自民党と公明党のどちらにも大打撃です。公明党との連立だけでは政権を維持できないと判断した自民党が、維新や国民民主と組む可能性だってあります。政界再編≠ェ起きるかもしれません」(宗教問題に詳しいジャーナリストの藤倉善郎氏)
岸田文雄首相(66)は池田氏死去の報を受け、Xに〈池田大作氏の御逝去の報に接し、深い悲しみにたえません。池田氏は、国内外で、平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました〉と追悼文を投稿。立憲民主党の泉健太代表(49)や国民民主党の玉木雄一郎代表(54)らもそれに続いた。
「正直驚きました。ゴルバチョフ元ソ連大統領や胡錦濤前中国国家主席と友好な関係を築くなど、日本の民間外交で大きな業績を上げた功労者としての池田氏を追悼するという建て前なので、法的には政教分離の原則に反しないとは思いますが、特定の宗教団体のトップを国政政党の代表が称賛するのは不適切ではないでしょうか」(藤倉氏)
岸田政権は支持率が危険水域の10%台に近づいているうえ、起死回生の総選挙に踏み出すこともできない。池田氏の死去によって、いよいよ″崩壊″に向けたカウントダウンが始まった。
●霞が関「2大権力」検察と財務省が岸田政権に離反か… 11/25
忖度横行した安倍政権時とは様変わり──
ついに霞が関も「倒閣」に動きはじめたのか。内閣支持率が“危険水域”の20%台まで下落し、“早期退陣”の声もあがる岸田内閣。岸田氏周辺は、霞が関の「2大権力」とされる検察と財務省の動きに神経をとがらせているという。政権離反した疑いがあるからだ。
自民党の5大派閥が、政治資金パーティーの収入を政治資金収支報告書に記載していなかった問題に、東京地検はどこまで切り込むのか、自民党議員は戦々恐々としている。
東京地検は各派閥の職員を任意に聴取し、大物議員からも話を聴いた、という話も飛びかっている。政治資金パーティーを利用して「裏金」をつくっていたとしたら、政治資金規正法違反の罪で立件された自民党の薗浦健太郎前衆院議員とまったく同じだ。特捜部の捜査次第では、派閥幹部が立件される可能性がある。
「まさか地検特捜部が、ここまで本腰で捜査を進めるとは思わなかった。岸田政権への打撃は大きいですよ。さらに、公職選挙法違反の疑いがかかっている柿沢未途議員の捜査もつづいている。もし、柿沢議員の身柄を取られるようなことがあったら、岸田政権への批判が強まるのは確実です。安倍政権の時は、こんなことはなかった。やはり政権が弱体化していると、捜査をやりやすいのだろうか」(自民党関係者)
弱体化に拍車
岸田内閣を支えてきた“最強官庁”である財務省も、岸田政権と距離を置き始めたのではないか、と指摘されている。岸田首相が強調してきた「税収増を還元する」という所得税減税の理屈を真っ向から否定したからだ。
鈴木俊一財務相は、国会で「税収の増えた分は、政策的経費や国債の償還などにすでに使っている」と平然と答弁している。還元する財源はない、と認めてしまった。財務大臣の答弁は、財務省が作っている。岸田氏は財務省からハシゴを外された格好だ。永田町では一時「財務省の倒閣運動が始まったのか」と騒然となったらしい。
「さすがに財務省や検察が倒閣に動くことはないですよ。偶然が重なっただけでしょう。でも、安倍官邸が霞が関を強権支配していた時なら、忖度がはたらき、政権を困らせるようなことはやらなかったでしょう。いまは財務省も検察も、やるべきことをやっている、ということだと思う。ただ、それが結果的に岸田首相を窮地に立たせていることになっています」(霞が関事情通)
弱体政権の退陣も近いのか。 
●岸田首相が方針転換、本気か? トリガー条項の凍結解除を議論 11/25
岸田文雄首相の方針転換に疑念・懸念が広がっている。ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除について「議論」を指示したかと思えば、中国が日本の排他的経済水域(EEZ)に無断設置した「海洋ブイ」について撤去の「検討」を明らかにしたのだ。報道各社の内閣支持率が30%以下の「危険水域」に突入し、「岸田降ろし」の政局がくすぶるなか、岸田政権を支える財務省や、習近平国家主席率いる中国への配慮・弱腰を封印したのか。それとも、ポーズだけなのか。リーダーは、他人の意見に耳を傾けることも大切だが、危機を前にジタバタしないことも重要だ。岸田首相は政権運営の正念場を迎えている。
「(自公)与党と国民民主の政策責任者で議論、検討を進めたい」
岸田首相は24日、2023年度補正予算案の衆院通過を受け、国会内で国民民主党の玉木雄一郎代表と面会した。玉木氏が「覚悟を持って(補正予算案に)賛成した。(トリガー条項)凍結解除はやりきりたい。覚悟を持って取り組んでほしい」と求めたのに対し、こう応じた。
これまで岸田首相は、トリガー条項の解除について、灯油や重油が支援対象外となり、流通を混乱させるとして慎重な考えを示していた。昨年春に公明党も含めた3党で解除を協議したが結局、見送られた経緯がある。
早速、財務省の牽制(けんせい)が始まった。
鈴木俊一財務相は24日の記者会見で、「(トリガー条項の解除には)国、地方合計で1兆5000億円もの巨額の財源が必要」などとクギをさしたのだ。自民党内でも、慎重論が大勢を占めるとされる。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は「ガソリン価格は下落傾向だ。厳しい値上がりで庶民の家計が苦しいときには真剣に議論せず、いまさら『議論』『検討』とは国民をバカにしている。そもそも、関係法令の改正に時間がかかる。本当に国民の苦難を思うなら『消費税減税』が一番効果的だが、その議論に真剣さは感じられない。結局、政局や選挙を見据えた打算の思惑に見えてならない」と語った。
中国が、沖縄県・尖閣諸島近くの日本のEEZ内に無断設置した海洋ブイについても、岸田首相の方針に変化が見られる。
岸田首相は22日の衆院予算委員会で、日本維新の会の三木圭恵議員から「中国が撤去しないのであれば、日本が回収して(ブイの)中身を調べた方がいい」などと迫られ、「ブイの撤去も含めて、可能、かつ有効な対応を関係省庁で連携して検討していく」と答弁したのだ。
度重なる右往左往に支持率低迷スパイラル
日本政府はこれまで、国連海洋法条約に規定が明記されていないとして、撤去に後ろ向きの姿勢で、中国への抗議と撤去要請に留めていた。
これに対し、日本と同様、中国の覇権主義的行動と対峙(たいじ)するフィリピンは、中国海警局が勝手に設置した長さ約300メートルの浮遊障壁を撤去している。
国際関係に詳しい福井県立大学の島田洋一名誉教授は「相手国に圧力をかけて反応を瀬踏みするのは、中国の常套(じょうとう)手段だ。フィリピンの毅然(きぜん)とした対応は、米国でも広く報道された。日本も海洋ブイを発見後、すぐに『危険物』として撤去すべきだった。いまさら『検討』では遅きに失しているが、淡々と撤去してブイの構造を調査したうえで『必要ならお返しする』と通達すればいい。中国が行動をエスカレートさせる局面で試金石になる。これで撤去できなければ、中国側に『日本は口だけ』という誤ったシグナルを送ることになる」と懸念した。
それにしても、岸田首相が「年内の衆院解散」を見送る意向を示した後で、方針転換が続くのを、どう評価するのか。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「あまりにも唐突で、支持率狙いの対応としか受け止められない。重要な外交案件で熟議もせず、唐突に方向性を示す姿勢は危うささえ感じる。トリガー解除も、やるべき時に踏み切らなかった。所得税などの減税策でも、唐突に岸田首相が方針を示し、後々の調整で大混乱した。度重なる右往左往が国民の疑念を招き、支持率低迷のスパイラルを招いた。国民は一連の対応を『聞く力』ではなく『場当たり的』だと、厳しく判断している」と突き放した。
 11/26

 

●森喜朗氏、今こそ安倍派が支えるべき  年内解散、まだ可能性ある 11/26
極めて軽率
(東京五輪の招致活動で機密費を使って贈答品を渡したという)馳浩知事の発言は軽率も軽率、極めて軽率です。知ったかぶりをして言ったんでしょう。すぐに全て撤回したのはよかったですがね。
だいたい馳さんは、スポーツだとか五輪だとか得意分野で調子に乗りすぎるところがあります。「俺はこんなこともしてきたんだ」と誇示したかったのでしょう。私に言わせれば、幼いというか、いまだに学生気分、選手気分が抜けていない、かわいらしさがあります。
ただ、相手との面会や交渉の内容をしゃべり過ぎたり、ブログに載せたりすると、せっかく良好な関係を築いた富山や福井の知事からも警戒されかねません。大知事を目指すのなら、言動だけで注目を集めるのでなく、広い視野に立った政策で「なるほど」とうならせないといけません。
亀井氏が画策
目下、岸田内閣の支持率が下がっています。高市(早苗経済安全保障担当相)さんが勉強会を始めるなどいろんな動きが出てきましたが、高市さんは内閣の一員なんだから今は助けてあげるべきではないでしょうか。こんな時こそ、自民党は踏ん張って岸田(文雄)総理を支えないといけません。
この前、亀井(静香)さんから電話があって「いっぺん集まらないか」と言うんです。私は「足が悪いから無理だ」と断りました。小泉(純一郎)さんや山崎(拓)さんにも声を掛けているようで、何かを画策しているんですよ。だからと言って党内で「これは大変だ」とはなりません。「年寄り連中が何を考えてんだ」と言われるだけですよ。総理があっぷあっぷで溺れそうになっているところを頭の上から押さえつけることないでしょう。みんな自民党の仲間じゃないですか。
麻生(太郎)さんはどこまで本気で岸田さんを支えるつもりか分からないし、茂木(敏充)幹事長も自分からは仕掛けられなくても次にやりたくてしょうがない。
だから今こそ、清和政策研究会(安倍派)が岸田さんをしっかり支えないといけない。
岸田さんを総理に、という原点は安倍(晋三)さんの意向です。岸田さんもわが派に配慮してくれているじゃないですか。幹部の「5人衆」は今もいいポストに収まっていますし、初入閣もちゃんと2人起用してくれた。それなのに、ピンチになったら急に手のひらを返すようなまねをしてはいけません。この苦難をともに乗り切る覚悟が必要です。それが安倍さんの遺志でもあると思いますよ。
近々また5人が集まるようです。5人には「次の選挙までには決めろ」と言っていますが、会長が決まりそうな雰囲気はありません。いつまでもグチグチ言ってないで、西村(康稔)さんなのか萩生田(光一)さんなのか早く誰かが覚悟と責任を示すべきです。減ったとはいえ99人の議員を抱えている大派閥なんですから。
このままだと結局、私がわざと会長を決めるのを先延ばししているんじゃないかと邪推されるんです。会長不在の方が森は影響力を発揮しやすいだろう、などと思われるのは大変心外です。
福田達夫(元総務会長)さんは「リーダーが必要だ」と現在の集団指導体制に異を唱えました。若手らしい正論です。佐々木(紀衆院議員)さんと同じ4期でしょ。こういうことを、本当は佐々木さんに言ってほしいのです。
「しっかり頑張ります」
岸田さんには「自分が辞めたら誰がやるんだ、そういう気概でやりなさい」と励ましました。「しっかり頑張ります」と言っていましたよ。幸い、最近も岸田さんの表情は明るい。歩いている姿も下を向いていないし、堂々としたものです。大変な時期でも、そういう姿勢は実にいい。
私が多少心配しているのは、岸田さんは人が良すぎることなんです。宏池会(現岸田派)は伝統的に大蔵省に近いですが、岸田内閣も財務省のペースに乗せられている。最近は外務省の言いなりにもなって、バイデン米大統領に高い買い物をさせられている。軍事的圧力を増す中国とどう対峙するかを考えた時、ロシアとの関係はどうあるべきなのか。日本の安全保障をしっかり見据えて戦略的に対応すべきだと思います。
内閣支持率が20%台になると騒がしくなりますが、私が総理の時は一切無視しました。小渕(恵三)さんの後を救援した私は「やれるところまでやったら、いつでもやめてやる」と思っていましたから。
年内の衆院解散は見送りという報道が出ましたが、まだ分かりませんよ。岸田さん本人は何も言ってませんからね。党内をあっと言わせるために、解散に持ち込む可能性はまだありますよ。
今の状況をがらっと変えるために、一度思い切ってやってもいいんじゃないですか。私も内閣支持率20%台で解散に踏み切りましたが、負けませんでしたよ。
●「日本の首相9人のうち好感度1位は小泉元首相」…岸田首相は? 11/26
25日付の読売新聞によると、スマートニュースメディア研究所は「メディア価値観全国調査」を実施した結果を24日発表し、小泉純一郎元首相が2001年以降に就任した日本の首相9人のうち好感度1位となった。岸田文雄首相は6位にとどまった。
小泉元首相は10点満点で6.6点を獲得し1位を占めた。次に安倍晋三元首相と菅義偉元首相が5.4点で2位タイを占め、福田康夫元首相が4.8点で4位につけた。
小泉元首相は2001年4月から2006年9月まで在任し、菅元首相は岸田首相の前に約1年間国政を運営した。福田元首相は第1次安倍内閣後の2007年に首相になった人物だ。安倍元首相はこの中で最も長い間首相を務めた。
好感度5位から9位は野田佳彦元首相(4.4点)、岸田首相(4.2点)、菅直人元首相(3.6点)、麻生太郎元首相(3.5点)、鳩山由紀夫元首相(3.1点)の順だった。
野田前首相、菅前首相、鳩山前首相は2009年から2012年の民主党政権時代に首相を務め、現在の自民党副総裁の麻生前首相は2009年に民主党に政権を譲る前に国政を運営した。
今回の調査で岸田首相に対する好感度は、新聞やテレビなどの既存メディアを好む高齢層で高くなった。SNS利用者は年齢に関係なく岸田首相に対する好感度が低くなる傾向があった。
調査に参加した東京大学の前田幸男教授は「岸田総理は安倍元総理に比べてSNSで否定的な情報が拡散し、その影響を受けた可能性がある」と分析している。
●ボロボロの岸田首相が「保守層」にアピールか  「天皇について驚きの見解」 11/26
ついに動き出した
天皇制を巡って長らく懸案となっていた問題が、ついに動き出すかもしれない。
自民党は11月17日、岸田文雄首相が主導して立ち上げた「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」の初会合を開いた。そして、時期を同じくして、国会では非常に重要な政府の見解が示されていた。いったいどのような見解だったのか。
まずは皇室の現状について簡単におさらいしておこう。
周知のとおり、いま、天皇の皇位継承は危機的な状況にさらされている。
これまで、天皇家は男系によって継承されてきたとされる。皇室について定めた法律「皇室典範」においても男系男子が皇位を継承すると決められているが、現在の皇族で将来的に皇位に就く可能性があるのは秋篠宮さまや、その長男・悠仁さまなどに限られている。
そして今後、さらに皇位を次代に引き継ぐためには、悠仁さまがご結婚し、男子が生まれる必要がある。そうでなければ天皇家が断絶してしまうという事態になっているのだ。
この問題を解決する方法は大きく2つある。
1つは戦後、現行の皇室典範が施行される中で、皇籍を離脱した旧皇族(旧宮家)を皇族に復帰させるという案だ。
2021年に菅義偉政権、岸田政権下で設置された有識者会議が提出した報告書でも、いまは皇族に認められていない「養子縁組」を皇室典範改正で可能とし、皇統に属する男系男子を新たに皇族として迎え入れるという方策が検討されている。
そして、もう1つが皇位継承を女性や女系へも拡大させるという案だ。
これは2005年に小泉純一郎政権下で設置された有識者会議で提案され、一時は報告書に沿った皇室典範の改正法案も準備されたが、翌年に男系男子の悠仁さまがお生まれになったことで改正が見送られた。
衆院内閣委員会で語られたこと
今後、安定的な皇位継承を実現するためには何らかの方策を取る必要があり、自民党も懇談会を開くなかで問題解決に本腰を入れている形だが、そうしたなか、国会では皇位継承に関する政府の重要な見解が示された。
見解が示されたのは11月15日の衆議院内閣委員会。
立憲民主党の馬淵澄夫議員が、旧宮家の男系男子を皇室への養子縁組の対象として選ぶことは、憲法14条における「法の下の平等」に反するのではないかと質問したことに対し、内閣法制局の木村陽一第1部長が「皇族という憲法14条の例外として認められた特殊な地位を取得するものであり、問題は生じない」と答弁したのである。
きわめてややこしい話だが、どういうことか。
日本国憲法では第14条で「法の下の平等」を定めており、「すべて国民は、人種、信条、性別、社会的身分または門地により差別されない」としている。しかし、天皇の地位は例外的なものである。職業選択の自由などがない、やや特殊な存在だ。もっとも、特殊ではあるものの、その地位は同じく憲法で定められているため、14条の例外として認められている。
ただし、旧宮家は既に皇籍を離脱しているため一般国民となっており、14条の定める平等原則が及ぶ。そこから養子を選んで皇族に復帰させることは憲法違反になるのではないかという指摘が一部の憲法学者からも出ているのだ。
保守層の取り込み…?
実は政府はこれまで、この指摘に対して見解を示すことを避けていた。
今年2月の内閣委員会では、同様の質問を受けた松野博一官房長官が「(憲法14条との整合性については)実際に制度化が図られる際に検討されていくもの」とのみ答弁してお茶を濁している。
それが、今月15日の内閣委員会では「問題は生じない」という明確な見解が示されたため、永田町では「いよいよ政府が皇室典範の改正に向けて布石を打ってきたのではないか」という見方が広がっている。
現在、岸田首相は各社の世論調査で内閣支持率低下にあえぎ、来年9月に自民党総裁選が想定されるなか、自身の求心力をどう保つかが喫緊の課題になっている。
そのため、来年の通常国会で旧宮家の皇籍復帰によって男系男子の皇族を増やす皇室典範の改正を進め、保守層からの支持をとりつけようとしているのではないかとも見られている。
しかし、日本国の象徴である天皇について定める皇室典範の改正は、与野党を超えて、多くの国民が理解、納得する形で進めることが重要で、高度な調整力、政治力が求められる。
皇室の問題は、決して支持率や求心力を回復させるための手段として使われ、拙速な議論に終始するようなことはあってはならない。
その胆力が岸田首相に残っているのか。これから問われていくことになりそうだ。
●ポスト岸田に急浮上「上川陽子外相」の豪胆素顔 11/26
「2浪して東大」人呼んで「不屈の人」
やることなすこと裏目ばかり。見当違いな減税カラ手形に、内閣改造直後の政務三役のドミノ辞任。もはや中折れ状態の岸田政権を見限って、水面下では“ポスト岸田”探しが進行中だ。すると意外にも「日本初の女性総理」が急浮上してきた。
岸田文雄総理(66)が誇らしげに強調した「適材適所」の人事は、あっさりと崩壊。昨年末は、わずか2カ月余りで4人の閣僚が辞任。10月20日に捲上重来の臨時国会が始まってからは、3人の政務三役がドミノ倒しで辞任する異常事態だ。
内閣支持率は過去最低の21.3%(16日発表、時事通信)まで落ち込み、相次ぐ地方選でも敗北。危機的状況に追い込まれているが、岸田総理の近況について官邸担当記者が解説する。
「経済対策に盛り込んだ所得税減税が評価されず、支持率の低迷には顔をこわばらせ、ショックを受けている様子でした。それでも、退陣に追い込まれるほどの政局になるとは思っておらず、野党の弱さも相変わらずとあって、焦りは見られません」
今では「増税メガネ」と揶揄され、断末魔にも“聞かない力”で無視を決め込み、増税路線をひた走る構えだ。
目下のところ、年内解散は見送られたとはいえ、次期衆院選に向けてこれ以上の逆風は避けたいところ。
先を見据えて「ポスト岸田」が最大関心事になり、茂木敏充幹事長(68)や河野太郎デジタル相(60)とともに、急浮上しているのが、上川陽子外相(70)だ。
名前を聞いてもすぐに顔が浮かばないほど地味な存在だが、政治ジャーナリストの山村明義氏は、「自民党の中では数少ない人材」と、評してこう話す。
「これまで日本初の女性総理候補に、高市早苗経済安全保障担当相(62)や野田聖子衆院議員(63)、小渕優子選挙対策委員長(49)などの名前が挙がっていましたが、一番下からごぼう抜きして躍り出ました。世襲でもなく、重鎮に気に入られて出世したわけでもなく、実績で評価された本格派です」
その経歴は華々しく、東京大学卒業後、米ハーバード大学で政治行政学修士号を取得。現在、当選7回で岸田派に所属。東大の同級生で日銀マンだった夫との間には娘が2人。少子化担当相を2期、法相を5期務めて、総理大臣の有資格者として申し分なし。ただ、キャリアウーマンだが苦労人でもある。
東大卒でも現役ではなく2浪での入学、96年の衆院選初出馬も静岡1区から無所属で出馬して惨敗。その後、自民党に入党するも、00年の衆院選は公認争いで敗れた。しかし、出馬を強行し、除名されながらも初当選を果たし、見事にリターンマッチ復党にこぎつけた根性の持ち主なのだ。
「1回目も2回目も選挙区で取材しましたが、普通は惨敗を経験したり、除名までされたら政治家をあきらめてもおかしくありません。それでもへこたれる姿は見せない不屈の人。地味だけど芯があって、タダモノではないすごみを感じました」(山村氏)
一方で、先の自民党関係者はしたたかな素顔をこう明かす。
「キャリアがあってプライドは高いけど、選挙になると有権者の前で平気で泣けるタイプ。ウソ泣きだろってツッコまれることもあるけど、しれっと心をつかんじゃう。ありゃ寝業師だよ」
頼もしさも見せる上川氏の成り上がり伝説は、まだほんの序の口だった。
オウム信者ら16人の死刑執行を命令
一躍、注目を集めた法相時代には、オウム真理教の教祖・麻原彰晃をはじめ、計16名の死刑執行を命じて関係者の度肝を抜いた。
「麻原を死刑にすれば必ず信者がテロを起こし報復するという話は、永田町や法務省関係者の間で周知の事実。それでも上川氏が決断したことで、安倍晋三元総理は生前に『肝が据わっている』と絶賛していました」(山村氏)
それでも代償は大きく、生涯にわたって、24時間の厳重な警護体制が敷かれることになった。
武闘派の一面も兼備している。安倍政権下の法相時代、検事総長の最有力候補だった林眞琴氏(66)との対立が表面化した時など、
「上川氏が推進していた『国際仲裁センター』の日本誘致を巡る計画に林氏が真っ向から反対したんです。これに怒った上川氏は菅義偉官房長官(74)を説得し、18年1月に林氏を名古屋高検検事長に転出させました」(政治部デスク)
実は、岸田派でありながら、岸田総理とも反りが合わないと言われている。
「20年の菅政権の時、一本釣りで3度目の法相に就任しました。この時、もはや安倍さんから岸田総理への禅譲はないと見たか、派閥の領袖である岸田さんに打診されたことを黙っていたんです。それで不仲説がささやかれ、上川さんは“隠れ菅派”と揶揄されていました」(自民党関係者)
岸田政権誕生後も蚊帳の外に置かれたが、今年9月に行われた内閣改造で今度は外相に起用される。その一方で、留任が有力視されていた岸田派の林芳正氏(62)とのバトンタッチは、「最大のミステリー」と物議を醸した。
岸田総理の心変わりには麻生太郎副総裁(83)の鶴の一声があったと、自民党関係者は耳打ちする。
「岸田総理と人事の話をしていた時に麻生さんが、『1週間分の新聞を持ってきてみな。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻や台湾有事の緊張が高まっているのに、どこに林の名前があるのよ。何にもやっていないじゃないか』と進言したんです。それで私情を挟んでいる場合ではなくなり、岸田派で実力のある上川さんに白羽の矢が立った」
このたびの外相就任で総理待望論も浮上。これまでは野望を口にしたことはなかったが、
「2年くらい前から『政治に大事なのは調整力。いつか総合調整をさせていただけるなら、やってみたい』と、口にするようになったんです。『総合調整』とはすべてに関わることで、いわば、総理大臣の仕事。それで周囲はやる気まんまんだと、気づいたんです」(自民党関係者)
神輿を担ぐのが趣味だという上川氏。日本初の女性総理という神輿に担がれる日は来るか。
●短命化する日本人 11/26
日本人の平均寿命が2年連続で短くなっている事実をご存知だろうか。女性の平均寿命は、20年の87・71歳をピークに、21年87・57歳、22年87・09歳と2年間で0・62年短くなっている。男性も、20年の81・56歳をピークに、21年81・47歳、22年81・05歳と2年間で0・51年短くなっている。高齢社会の到来で、社会保障費の負担がとんでもない重荷になると言われながら、日本人が短命化するという思わぬ変化で、その問題が緩和されてきているのだ。
もちろん、この短命化は一時的な現象だとする見立てが多いし、政府もそう解釈している。新型コロナの感染拡大で亡くなる人が増えたのが短命化の原因だと言うのだ。だから、新型コロナが落ち着いた今年は、再び長寿化のトレンドが戻るだろうというのが、大方の見方だ。
ただ、私はそうではないだろうと考えている。22年の平均寿命は、前年と比べて男性は0・42年縮んでいるが、そのうち新型コロナの影響は0・12年に過ぎないと厚生労働省の寄与分析が明らかにしているのだ。女性も、ほぼ同様だ。つまり平均寿命が縮んだことの3分の2以上は、新型コロナ以外の要因なのだ。
それでは何が起きたのか。明確な因果関係を立証するデータは存在しないのだが、近年、高齢者が医療や介護サービスを利用する際の自己負担が、どんどん引き上げられている。そのため、お金がなくて、体調が悪化しても医療にかかれず、介護サービスを利用できない高齢者が増えているのではないだろうか。
すべての政策の評価は、平均寿命に集約されると言われる。その意味で、岸田政権の政策は、これまで最悪の結果をもたらしている。岸田政権が続く限り、短命化は続くのではないか。
●政府の少子化対策は「やってる感」を醸すだけ…人口減が爆速で進む日本 11/26
先進国で進む急激な少子化問題。これは資本主義システムに限界が来ている証左に他ならない。なぜ政府による少子化対策はことごとく失敗するのか? マルクス経済学に精通した2人が解き明かす。
あらゆる業界が人手不足
少子高齢化の悪影響が労働力不足という形で日常生活に押し寄せている。人口は14年連続で減少し、昨年はマイナス80万人。これは減少率・減少数とも過去最大だ。こんな事態を招いた元凶は何なのか。岸田政権の少子化対策は大間違いと喝破する経済学者と思想史家による白熱の議論。
白井 日本では労働力不足が私たちの日常生活の中で顕著に表れています。たとえば、来年にはトラックドライバーの労働時間の規制が強化されることで、圧倒的なドライバー不足に陥ることが見込まれています。この規制強化自体は歓迎すべきことですが、即日配達のようなサービスは今後、難しくなるでしょう。
新幹線の車内販売をやめるのも、人手不足がいちばんの理由だそうです。首都圏の電車でワンマン運転が増えているのも、かつてのようなコストカットが目的なのではなく、人手不足への対応が背景にあります。
大西 報道番組はよく人手不足問題を扱いますが、大抵は労働力の代替としてのAIやロボットのほうに焦点が当てられ、その根源が人口減少なのだという根本の問題は正面から取り扱われません。「人口減」とは、要するに資本主義が「人口再生産のコスト」を払わなくなっているということですが、それはつまり若者の貧困を放置し、子どもを育てられなくしているということですね。「人口を維持する」ためには、それだけのコストを払う必要があるのですが、多くの場合、資本主義は、農村社会からの人口移動や移民に頼ってきました。欧米の場合は特に移民ですね。
白井 大西さんの最新刊である『「人口ゼロ」の資本論 持続不可能になった資本主義』(講談社+α新書)でも触れられているポイントですね。高度資本主義の果てである人口減少問題を根本的にえぐる視点が、いわゆるマルクス経済学の方法から出てくることに衝撃を受けました。
労働力を確保するための人口流入は、歴史的には戦争奴隷という形を取っていました。現代では、さすがに人狩りをするわけにいかないので、自発的な出稼ぎや移民、場合によっては難民という形を取るわけです。しかし、これらの人々も、元の生活に不満がなければ来るはずがありません。言ってみれば、極度の低開発状態、あるいは戦乱状態に置かれている国があることが、先進資本主義国が繁栄するためには必要だということになります。
中国もついに人口減
白井聡氏 白井 岸田首相が「異次元の少子化対策」を掲げていますが、2児の親である私の立場からすると、まずは子どもがいる家庭への減税をするべきです。
生まれた子どもは誰かが育てなければなりません。それには必ずコストがかかる。年少扶養控除(16歳未満の子どもがいる場合に所得から38万円を控除する制度)を復活しないかぎり、そのコストを無視していることになります。「この社会は存続しなくていい」と宣言しているに等しいような凄まじい話です。「異次元」の前に、一丁目一番地から着手するべきです。
大西広氏 大西 ヨーロッパと日本の家族対策費をGDP比で比較すると、全然数字が違います。ただ、ヨーロッパの大規模な対策でも、合計特殊出生率レベルでせいぜい0.3程度の改善にしかなっていません。つまり、人口置換水準(人口の増減がない状態になる水準の合計特殊出生率)である2.07に戻すには、資本主義がこれまで放置してきた「貧困」を根本的になくさなければならない。そうでなければ、少子化対策は「やってる感」を醸し出すだけの「アヘン」にしかなりません。
白井 出生率の低下は世界でも東アジアにおいて顕著で、中国は日本よりも数字が悪くなっています。この問題を正面から見据えている国はないでしょう。保守的な価値観を掲げて家族を重視したハンガリーのオルバン政権の政策が日本でも注目されていますが、こちらも出生率2.07どころか、他の欧州諸国並みの1.56に過ぎません。
日本の合計特殊出生率は1.26('22年)で過去最低となったが、韓国は0.84、香港は0.88、台湾は0.99(すべて'20年)と1を割り込んでいる。中国も1.09('22年)で日本より低い。
大西 中国もついに人口減という後期資本主義の問題が表面化しました。結局、イスラエル(2.90)を除いたすべての先進国で出生率は2を下回っています。これは個別の国の問題ではなく、資本主義の問題なのです。だから資本主義を乗り越える国が出ない限り、元には戻らないと思います。
●「全ての既存政党を壊す」泉房穂氏が語った政権奪取の青写真 11/26
東京都立川市、埼玉県所沢市の市長選で当選した「非自民」候補を応援し、交流サイト(SNS)などで注目を集めている兵庫県明石市の前市長、泉房穂氏(60)が本紙のインタビューに応じた。泉氏は、物価高などの影響で「国民の生活は持ちこたえられなくなっている」と岸田政権を批判。地方選での自身の勢いを次期衆院選につなげ、国民負担増から国民を救う政治へと転換する「救民内閣」の発足に向け、政権奪取構想を練り始めていると明らかにした。主なやりとりは次の通り。
勝因は、候補が組織と市民のどちらを向いているか
――東京都立川市、埼玉県所沢市の市長選で支援した候補の勝因は。
「候補が、組織と市民のどちらを向いているかの違いだ。自治体の選挙は市民に近い。政党ではなく市民を向いていれば、既存政党に飽き足らない人が投票してくれて勝てる」
――マスコミの予測では、あなたが支援した候補は劣勢との見方も強かった。
「マスコミは、政党や有力団体ばかりを取材するから間違う。これらの選挙は与野党対決ではない。今の国民は与党も野党もNO。自分たちの生活が大変だから、これ以上負担を課すなという思いを持っている。野党が良いとも思っていない。完全無所属市民派だと野党支持層はもちろん、無党派層も大挙して流れ、与党支持層も票を入れる」
――どうして、それが分かるのか。
「街頭演説をすれば票読みはできる。駅を利用する有権者が候補者を無視するのか、顔を向けるのか、立ち止まるのか。1〜2分でも演説を聞くのか。電車を1本遅らせて話を聞き続けるのか。これを見れば、票は読める」
『明石モデル』を全国で知らせるには首都圏で勝利が必要だった
――首都圏の自治体選挙で応援をする理由は。
「明石市長として、18歳までの医療費無料化などを実現し、10年連続で人口が増え、税収も増やした。この流れを他にも広げたいと、市長退任直後で同じ兵庫県で行われた三田市長選に注目した。現職は自民と公明、立憲民主、国民民主の推薦で3選を目指したが、私は元銀行員の新人を応援して勝利した。しかし、全国的なインパクトは弱かった。『明石モデル』を全国で知らせるには首都圏の有名な街での勝利が必要と考え、人口30万人の明石市と同規模の所沢市をその一つに選んだ」
岸田首相には国民への愛も、国家への責任感もない
――今の国政をどう見る。
「岸田文雄首相は首相をやりたかっただけで、国民に対する愛も、国家に対する責任感もない。『異次元の少子化対策』と言いながら、財源も確保せず、国民の負担だけを増している。そんな人が長期政権を敷いているのが今の日本の不幸。国民は疲弊しているのに、毅然と反論する与党議員もいなければ、野党も体たらくで、国民には選択肢がない。仮に岸田首相が退いても、国民の生活不安は変わるはずはなく、劇的な方針転換を求めている」
――物価高対策として、岸田政権は4万円減税や低所得世帯への7万円給付などの経済対策を行う。
「何の意味もない。国民にすれば、給料は上がらないのに、税金や保険料は取られ、物価も上がっているのに、たかだか4万円減税かという思い。その支援をはるかに超える将来の負担増がセットになっていて、整合性が取れていない。ドイツなどは日本と変わらない国民負担率なのに、教育は無償だ。どうして日本ができないのか。それは、お金がまともに使われずに消えているからだ」
「救民内閣」子ども・教育予算を倍増、食料品の消費税率ゼロに
――地方選挙の勢いを今後、どう展開する。
「明石市の成功事例を他の自治体に広げる『横展開』だけでなく、その施策を国政に広げる『縦展開』、自分の命には限りがあるから未来につなげる『未来展開』がある。そのために考えているのが救民内閣創設だ。これ以上の国民負担増はせず、子ども予算と教育予算を倍増させる。食料品の消費税率はゼロにする」
――次期衆院選にはどんなイメージで臨むのか。
「これまでのような右や左の対決ではなく、『国民の味方』対『国民の敵』の戦い方に持ち込む。2005年の郵政選挙で自民党が大勝した時、4年後に民主党政権が誕生するのは誰も想像しなかった。私は救民内閣創設を訴え、政治の流れを一瞬で変える。1回の衆院選で政権は取れる」
全ての既存政党を壊す。政治の夜明けを国民に
――その流れをどう作る。
「既存政党とは別の新党を立ち上げるというよりも、全ての既存政党を壊すイメージ。衆院選は小選挙区制だから、今はいずれの政党の議員であったとしても、『国民の味方』が勝てると思えば、こっちに流れてくる。国民の負担増を許さない勢力を一つにまとめるのか、連合軍で戦って勝つのかは、いずれでも良い」
――あなたはどんな立場を取るのか。
「自分が国会議員の1人になるかどうかに意味はない。政治映画を製作するイメージで言えば、主演を務めるのではなく、シナリオを書いてキャスティングもした上で、総監督として、政治の夜明けを国民に届けたい」
●支持率が最低水準の岸田総理に元側近が苦言 11/26
「信念がないから“語る力”がない」「奥の座敷には入れてくれない」
自分でブレーキをかけている
「岸田さんは“聞く力”よりも“語る力”が問題だと感じています」
と話すのは、元衆議院議員の三ツ矢憲生氏(72)。2003年に初当選後、2期目から現在、岸田総理が会長を務める宏池会に在籍した。一昨年に政界を引退し、現在は国会近くに事務所を構え、宏池会所属議員の相談相手にもなっている。
宏池会のご意見番とも言える三ツ矢氏にいまの岸田総理と政権についてどう思っているかを問うと、口にしたのは厳しい言葉の数々だった。
「岸田さんは昔から、自分の言葉で話しているという印象がないんです。性格的なものが大きいのでしょうけれど、他の政治家が失言しているところを見て、自分でブレーキをかけているのかもしれません。自分で考え、自分の言葉で話せば、もっと国民に届くのではないでしょうか」
11月に入り、各社が実施した世論調査によれば、毎日新聞の内閣支持率21%、不支持率70%を筆頭に、NNN・読売新聞が支持率24%、不支持率62%、朝日新聞が支持率25%、不支持率65%と軒並み過去最低を記録した。
菅義偉前 政権の最低支持率は28%(朝日新聞)だった。これよりも、支持率が下がってしまった格好だ。政権としては末期的とも言える状況だろう。
「支持率が低い上に、前回調査からの落ち方が激しいですよね。政務三役が立て続けに辞任していることも影響していると思います。特に財務副大臣の税金滞納問題は効いている。やはり早くに辞めさせるべきでした。これは推測ですが、岸田さんが三役を早く辞めさせる決断ができない背景に派閥の推薦があったのではないでしょうか。自分で選んだ人事ではないので、派の様子を窺いながら、政権運営をせざるを得ない。それがいまも続いているということでしょう」
“自分は現実主義者なんです”
では、支持率急落を招いている岸田総理の「語る力」のどこが問題なのか。
「そもそも、岸田さんの中に“語るべきもの”があるのか、疑問です。一昨年の自民党総裁選の直前、現在官房副長官を務める村井英樹が私のところに来たんです。そこで彼は“新しい資本主義について三ツ矢さんに相談してこい、と岸田さんに言われた”というんです。では、“新しい資本主義って何をやりたいのか”とこちらから聞くと何もなかったんですね。キャッチフレーズはいいんだけど、自分がこの路線で行くんだ、という信念がないように感じます。信念があれば、国民に語りかける言葉にも力が出てくるはず。会合などの席でも、踏み込んだ話はしてくれません。岸田さんと話していると玄関先から応接間までは入れてくれるけど、奥の座敷には入れてくれない、そんな感じです」
ある時、三ツ矢氏は岸田総理からこんな言葉を聞いたという。
「岸田さんが総理になった後、“どんなことをしたいのか”という趣旨のことを聞いたことがありました。その時、“自分は現実主義者なんです”と言って、目の前の問題を一つ一つ的確に対処していきたいと話していました。しかし、政治家の仕事というのは、問題の対処について“方向性”を示して解決していくことです。ただ問題に対処するだけなら、官僚でもできるし、そちらの方が政治家よりもうまく処理できるでしょう。だから政策と政策の間に整合性がとれなくなってしまう。その“方向性”を示せなかった一例として、少子化対策が挙げられます。仰々しい言葉がついた少子化対策は突き詰めれば、児童手当を増やすという政策です。しかし、児童手当を増やすだけで子どもが増えるのでしょうか。非正規雇用で結婚できない若者など様々な原因が背景にあるはずなのに場当たり的で、方向性を示して対処できているように思えません」
“明日枯れる花にも水をやる心”
三ツ矢氏は初当選後、1期目の時は無派閥で活動し、2期目に宏池会に入会した。そのきっかけになったのは、
「かつて宏池会の会長だった大平正芳さんの言葉でした。大平さんはある時、政治とは何かと問われ、こんな言葉を残しています。“明日枯れる花にも水をやる心”。光の当たらないところにも光を当てる、弱い立場の人にも手を差し伸べるのが、政治の役割だと。その言葉に共感し、入会したんです。当時、宏池会は旧古賀派と旧谷垣派に分かれていましたが、その後、有隣会(谷垣グループ)を立ち上げることになる谷垣禎一さん(自民党元総裁)は非常に懐が深く、この世界で数少ない尊敬できる政治家でした。物事を決めつけるのではなく、多面的に見える方で、教養の深さがそれを裏付けていた。非常に宏池会らしい政治家だと感じ、私は有隣会のチャーターメンバーになったんです。いまの岸田さんは谷垣さんに宏池会らしさを学んだ方がいいですよ」
というのも、
「前回総裁選の半年くらい前でしょうか。いきなり岸田さんから携帯に電話がありました。そこで岸田さんは“自分は発信力が弱いとある人に言われた”と語り、ついてはこういうことを発信したいと、2つの政策を挙げました。一つは敵基地攻撃能力の整備。もう一つは中国の海警が武器を使用できることになったことを受け、海上保安庁も同様に外国船に武器を使用できるようにする海上保安庁法の改正でした。私は岸田さんに“およそ宏池会らしくない政策ですね。安倍(晋三)さんから言われたのですか”と聞くと、“いや直接じゃないんですけど……”と話していました」
所属議員の前で説明してください
結局、岸田総理はこの電話の後、2つの政策について表現を変えて、ツイッターなどで訴えていくことになる。
「その後、私は岸田さんに“宏池会の会長なのだから、あの政策は派の方針になりますよ。正しい、というなら所属議員の前で説明してください”とお願いしたんです。しかし、岸田さんは結局説明することはありませんでした。当時、私は派閥の事務総長代行。説明がないなら代行を辞めさせてくれ、ともお話ししました」
代行辞任問題は岸田総理に慰留され、そのままになったが、いまも政策への疑問は残る。
「防衛費をGDP比2%に増額していくことも、岸田さんが本当に必要だと感じている政策だったのでしょうか。岸田さんは“宏池会らしさ”という言葉を出すと嫌がります。しかし、宏池会らしさというのは決してリベラルであれ、ということではなく、先に大平さんの言葉で触れたように弱い立場の人に手を差し伸べていくことです。国民生活を考えれば、所得税ではなく、食料品にかかっている軽減税率をさらに下げる方がよほどいい。やはり、いま国民が最も関心を持っているのは経済。このままでは日本は本当に沈んでしまう。金をかけずにできる政策はいくらでもあるはずです」
支持率低迷からの打開策が全く見えない岸田政権。“身内”からの苦言を総理は聞くのだろうか。 
●北京では何も見えない何も聞けない 対話と協議は本当に可能なのか 11/26
岸田文雄首相は16日、米サンフランシスコで中国の習近平国家主席と会談した。「戦略的互恵関係」の推進を再確認するなど、意思疎通を強化することで合意したという。日本政府関係者は「トップ同士で話し合えた意味は大きいし、方向性は間違っていない」と語る一方、「これからが大変だ」と語る。東京はともかく、北京で意思疎通の強化を図ることなど、至難の業だからだ。
中国が大きくその姿を変えたのは、一度目の北京五輪(夏季・2008年)と二度目の北京五輪(冬季・2022年)の間だった。夏季五輪の開会式にはジョージ・W・ブッシュ米大統領、韓国の李明博大統領、日本の福田康夫首相ら100人余の世界のVIPが集まり、米中協調の時代を印象づけた。14年後の冬季五輪開会式では、韓国は閣僚を送ったものの、日本は橋本聖子参院議員という立法府からの参加になり、米国は政府代表団の派遣を見送った。冬季五輪の開会式に先立ち、習近平氏はロシアのプーチン大統領と首脳会談を行い、両国の蜜月ぶりを演出した。日本の専門家は「中国がパートナーを米国からロシアに切り替えた、象徴的な瞬間だった」と語る。
新型コロナウイルスが流行したこともあり、日中の対話チャンネルはほとんど封鎖に近い状態になった。ようやく、コロナの感染拡大が収まった今も、チャンネルはもとに戻っていない。関係者の1人によれば、北京の日本大使館が外務省本省に送る政務関係の電報が激減したという。中国が7月、「反スパイ法」を改正したこともあり、北京で本音を語ってくれる人は姿を消した。別の関係者は「コロナの感染が拡大する前の2019年ごろまでは、少ないながら、本音を語ってくれる中国人もいた」と語る。気心が知れた相手と1対1になり、閉ざされた空間で会えば、習氏の悪口を漏らす場面にも出会えたという。「今はとてもじゃないが、そんな会話はできない。自分たちは外交特権で守られているからまだ良いが、相手の中国人にどんな災厄がふりかかるかわからない」
日本は苦しみながら、今年初めから対話再開に向けた手を打ってきた。2月、米本土での中国偵察気球撃墜事件が起きるなか、日本は中国が提案した安保対話の開催を受け入れた。5月には日中防衛当局間ホットラインの開設にもこぎつけた。日本政府は当時、徐々に対話を増やしたうえで、岸田首相の訪中実現を模索していたという。関係者の1人は当時、「(2020年春にコロナを理由に延期されている)習近平氏の国賓訪問は消えていないが、国内世論を考えた場合にハードルが高すぎる。まずは、首相訪中を実現したい」と語っていた。少なくとも、日中外交当局間ではこの方針が共有されていたという。
しかし、今年8月に南アフリカで開かれた新興5カ国(BRICS)首脳会議後、この動きは一時全面ストップした。関係者の1人は「おそらく、中国外交部が上げた提案を、習近平氏が拒否したのだろう」と語る。習氏は保健衛生や国家安全保障を強調していたため、福島第1原子力発電所から出た処理水の海洋放出に強く反応したとみられた。そればかりか、中国は日本産水産物の全面禁輸を発表。永田町では「外務省は事前に情報を把握できなかったのか」という非難の声が渦巻いた。外務省も情報収集をしたくても、手も足も出ないという状況だったのだろう。
さらに、中国では今年に入り、秦剛外相と李尚福国防相が相次ぎ、行方不明になったあげく、解任されるという騒ぎが起きた。習近平氏が指導する中国はもともと、法の支配が弱かったが、習氏が自ら承認した人事すらひっくり返される事態が起き、中国高官たちは我が身を守ることで汲々としている。韓国の専門家たちは、忠誠心競争で必死になる中国人たちを「中国の北朝鮮化」という言葉で揶揄している。
米国も中国との間で対話と協議のチャンネルを増やす努力をしている。しかし、それは何らかの合意を得る目的があるからではなく、偶発的な衝突が全面戦争に発展しないようにする保険としての意味しかない。逆に言えば、米中はいつ、偶発的な衝突が起きてもおかしくない状態に陥っているとも言える。
日中両首脳は16日の会談で、処理水の海洋放出と水産物禁輸の問題を対話と協議を通じて解決することで一致したという。今月末に韓国・釜山で開かれる日中韓外相会議や、それに続いて開かれる日中韓首脳会議を経て、来年前半にも岸田首相の訪中を実現させたいという腹積もりなのだろう。だが、それは外交当局間などの協議と調整があってこその話だ。同じく、中国との対話の強化で合意した米国と同様、日本政府も引き続き、いばらの外交を強いられることになる。
●岸田内閣支持率 政権発足以降でまた最低 11/26
テレビ東京と日本経済新聞社が実施した11月の世論調査で、岸田内閣の支持率は30%で政権発足以降で最低となりました。
岸田内閣を支持するかどうか聞いたところ、支持するは前回10月の調査から3ポイント減少し30%で、2021年10月の政権発足以降で最低となりました。
支持率が最低を更新するのは2カ月連続です。
支持しないは3ポイント増えて62%でした。
政府は所得税減税と低所得者への給付をセットで実施する方針です。
この方針について政府が適切な説明をしているかどうか聞いたところ、適切な説明をしていると思うが11%、思わないが81%となりました。
また政府は経済対策によって、来年夏の段階で所得の伸びが物価上昇を上回る状態を目指しています。
これが実現するかどうかについては、実現すると思うが11%、思わないが82%でした。
岸田内閣の9月の改造後に副大臣や政務官の辞任が相次ぎました。
このことが政権運営に影響するかどうか聞いたところ、影響すると思うが63%、思わないが31%となりました。
岸田総理がどれくらいの期間、総理を続けてほしいか聞きました。
直ちに交代してほしいが30%、来年9月の自民党総裁の任期満了までが56%、できるだけ長くが9%でした。
調査は11月24〜26日に18歳以上の869人から固定・携帯電話による聞き取りで回答を得ました。
●岸田首相、政治資金パーティーで1億4800万円ゲット... 11/26
11月24日、総務省が2022年分の政治資金収支報告書(総務相所管分)を公開した。
直前に、自民党の5派閥で一昨年までの4年間に総額4000万円の記載漏れがあったことが発覚。大学教授らが東京地検に告発状を提出して受理されたことから、例年以上に注目されることになった。
自民党6派閥の収入総額は約12億円。そのうちパーティー収入が8割弱の約9億円になる。
収入が多かった順に麻生派(2億3511万円)、二階派(1億8845万円)、岸田派(1億8329万円)、茂木派(1億8142万円)、安倍派(9480万円)、森山派(4016万円)だった。
岸田文雄首相の資金管理団体「新政治経済研究会」もパーティー収入が1億4872万円になり、林芳正外務大臣(当時)の8150万円、加藤勝信厚生労働大臣(当時)の5884万円などを大きく引き離し、永田町を驚かせた。
「岸田首相の団体は、1回の収入が1000万円を超える政治資金パーティーが6回あり、もっとも多かったのは2022年12月19日に『ANAインターコンチネンタル』(東京・港区)で開催されたパーティーです。参加者は1200人。収入は約3654万円でした。
『赤旗』の計算では、2022年度の合計収入から経費を引いた利益率は89%だったといいます。なんとも効率がいい “集金” です」(政治担当記者)
しかし、「これらのパーティー収入には問題がある」という。
「2001年1月、内閣は『国務大臣、副大臣、及び大臣政務官規範』を閣議決定しています。そのなかに『パーティーの開催自粛』という項目があり、『政治資金の調達を目的とするパーティーで国民の疑惑を招きかねないような大規模なものの開催は自粛する』と明記されています。
これは今も踏襲されていますが、金額が書いていないことから線引きが難しく、時の政権が都合よく勝手に解釈していました。しかし、国民感情からすると、年間1億円を超えるパーティー収入は大規模ですよね」(同)
形骸化されている規範だが、パーティー収入は裏金の温床になりやすい。
「政治資金は非課税なので、税金はかかりません。これだけ不透明だと、裏金を作るのが目的ではないか、選挙の買収資金になっているのではないかとの疑惑を持たれかねません」(同)
ニュースサイトのコメント欄にも、
《12億円もの収入は、係る経費を除いても超優良団体(企業)である。これが腐敗堕落自民党の金権政治ですね》
《政治資金規正法に記載漏れした政治献金は全て没収で良いのでは「指摘されたら修正申告でOK!」なんて、一般社会では通用しない》
など批判のコメントが多く書き込まれていた。「閣議決定」さえも都合よく解釈する岸田首相のようである。
 11/27

 

●自民党への企業・団体献金、2022年分は自工会7800万円 11/27
内閣支持率の低下を更新し続けている岸田文雄首相が会長を務める「宏池会」など自民党の5派閥が、政治資金パーティーの収入を政治資金収支報告書に過小記載したとされる疑惑が表面化しているが、自民党の政治資金団体「国民政治協会」(国政協)への2022年分の企業・団体献金は21年比0.8%増の24億5000万円に上ったという。
献金総額は2年連続で増加
総務省が公表したもので、11月25日付けの日経などが詳しく取り上げていた。それによると、自民党への献金総額は2年連続で増加。企業の最高額は十倉雅和経団連会長の出身会社の住友化学と、トヨタ自動車の5000万円。自動車の個別企業でも最高のトヨタのほか、日産自動車が3700万円、ホンダが2500万円と上位に並んでいた。
また、増額幅が大きかったのは、ソニーグループが500万円増の2000万円、日本電気が300万円増の1800万円などの電機大手や航空大手のANAホールディングスも300万円増の600万円なども献金を増やしていた。
業界団体では日本自動車工業会の7800万円が最高額。2位は7700万円の日本電機工業会。3位は日本鉄鋼連盟の6000万円だったという。
自民党の自動車議員連盟の新会長に甘利氏
こうしたなか、自民党の自動車議員連盟の新会長に甘利明前幹事長を充てると、11月26日付けの日経が報じていた。10年ぶりの会長交代で、現会長の額賀福志郎氏が10月に衆院議長に就任したことを受け、新会長に甘利氏を起用するとともに、議連幹事長には茂木敏充幹事長が就く予定で、12月1日の総会で一連の人事案を諮るという。
甘利氏は過去に経済産業相を務め、経済政策や経済安全保障などに精通する商工族の筆頭。政府は脱炭素化に向け2035年までに乗用車の新車販売で電動車を100%にする目標を掲げており、ガソリン車を主体とした自動車課税の見直しも迫られる。「党税調の会長経験もある甘利氏が選ばれたのは、こうした自動車業界のビジネス環境の変化に政策や税制で対応する必要があったため」とも伝えている。
●岸田首相が創価学会・池田大作名誉会長死去で「異例の弔問」 11/27
公称会員世帯数827万を誇る創価学会の拡大をリードした池田大作・名誉会長の死は、自民党が選挙で頼る「学会票」に多大な影響を与える。「池田氏の弔い合戦」となる次期総選挙を前に、事態は焦眉の急を告げている。
長男が同席していた意味
池田大作氏の訃報に政界で最も敏感に反応したのは岸田文雄・首相その人だった。
〈池田大作氏の御逝去の報に接し、深い悲しみにたえません〉
池田氏が11月15日に死去していたことを創価学会が同18日に公表すると、岸田首相はサンフランシスコで開催されていたAPEC首脳会議への出席のため米国訪問中だったにもかかわらず、ただちに自身の公式サイトとSNSに「内閣総理大臣」として弔慰を発表した。
その直後から、SNSでは〈内閣総理大臣名で宗教法人のトップの訃報にコメントを出すのは問題〉〈政教分離に反する〉などの批判が相次いで炎上。松野博一・官房長官が会見で、「コメントは、個人としての哀悼の意を表するため、岸田総理大臣個人のSNSのアカウントやウェブサイトで弔意を示したものと承知している」と釈明するなど火消しに追われた。
過去に首相名義で政府が宗教指導者への弔意のメッセージを出したのは昨年12月に亡くなったカトリックの名誉教皇ベネディクト16世くらいだ。
支持率低迷のなか、批判には敏感になるものだが、岸田首相は逆に、批判が再燃しても構わないとばかりに翌19日はハードスケジュールを押して池田氏を弔問した。
この日は地元・広島(三次市)で裕子夫人の父、和田邦二郎氏の葬儀が行なわれた。岸田首相は当日未明に米国から帰国したばかりだったが、朝、空路広島入りして義父の葬儀に参列すると、火葬場からそのまま広島空港に向かって東京にとんぼ返りし、羽田からまっすぐ創価学会本部別館を訪れたのだ。
「総理は義父の邦二郎氏には初当選の頃から大変力になってもらったと恩を感じているが、お通夜には行けなかった。だから本当は葬儀で和田家の親類とじっくり話をしたかったはずなのに、池田氏の弔問には真っ先に駆けつけなければならないという総理自身の政治判断でとんぼ返りの強行軍になった」(官邸スタッフ)
首相を乗せた公用車が同別館に入る様子は日本テレビのニュースで報じられた。
そこで首相を迎えたのは原田稔・創価学会会長だけでなかった。池田氏の長男である池田博正・同主任副会長も同席していたという点は見逃せない。宗教専門誌『宗教問題』編集長の小川寛大氏が指摘する。
「岸田首相はこれまで創価学会との関係が比較的希薄だった。原田会長とも親しいとは言いがたく、ましてや博正氏と話す機会など、このタイミングを逃せば二度となかった可能性もある」
集団指導体制とされる創価学会組織のトップは原田会長だが、学会員からカリスマ的支持を集めるのは池田大作氏という二重構造があった。その池田氏亡き後、教団の精神的支柱になるとの見方もある博正氏。直接会える機会を逃したくないのが、岸田首相が批判のなかであえて弔問に出向いた理由ではなかったか。
テレビカメラが待ち構えるなかでの弔問は大々的に報じられ、岸田首相にとっては学会員への大きな宣伝になった。
岸田首相が今回の弔問をそこまで重要視したのには事情がある。
自公の亀裂、軋み
いま、創価学会の会員の間に岸田政治への不満が渦巻いているのだ。東京のある区の創価学会地区幹部が語る。
「学会員は岸田政権には当初からモヤモヤを感じていたが、その不満がかなり強くなっている。それは、安倍(晋三)政権、菅(義偉)政権の時と創価学会へのスタンスが大きく違うからです。学会員はタカ派の安倍政権を警戒していたけど、実際のところ、安倍さんや菅さんは自民党内の反対を押し切って消費税の軽減税率を導入したり、コロナの時も国民全員に10万円給付したりと公明党の主張を聞き入れてくれた。
しかし、学会の上のほうの人が集会で言うには、岸田さんは公明党の提案を全然聞かないそうです。それでいい政治ができるはずがない」
1人4万円の「定額減税」もすこぶる評判が悪い。
公明党は今回の経済対策では「減税措置は効果が出るまで時間がかかる。給付措置は即効性が高い」(北側一雄・副代表)と現金給付を主張していたが、首相は現金給付ではなく減税にこだわった。古参の学会員はこんな言い方をする。
「コロナの時の10万円は有り難かったが、今回は減税実施が来年6月と聞いてなんじゃそれはとガッカリ。岸田さんは庶民の気持ちを全くわかってないね。支持率が下がるのは当然だ」
自民党の「最強の集票マシン」である創価学会の“岸田離れ”は選挙にも影響している。
最近、自民党は地方選で大きく議席を減らしており、とくに東京では、9月の立川市長選、10月の都議補選、11月の青梅市長選と連戦連敗だ。選挙分析に定評がある政治ジャーナリストの野上忠興氏が指摘する。
「立川市長選、都議補選ともに公明党は自民候補を支持せずに自主投票に回った。その結果、市長選は負け、都議補選は定員が2あったのに自民候補は3位で落選。公明票がなければ都市部で自民は勝てない。そればかりか、青梅市長選は自公相乗りだったのに負けた。岸田首相の支持率が下がって公明党と選挙協力しても組織が動かなくなっている」
日程の無理を押しての弔問には、この機会に岸田離れを起こしている学会員に“媚び”を売っておこうという下心が見え隠れする。
死の前日の党首会談
池田氏は創価学会の政界進出を主導し、「日本最強の集票マシン」として育て上げた。
公明党・創価学会にとって、次の総選挙は負けられない「名誉会長の弔い合戦」となる。すでに選挙準備も整えた。選挙の第一線に立つ学会の活動家がこう言う。
「統一地方選が終わった後、今年7月から秋の解散総選挙を前提に全国で準備をスタートさせ、9月からは臨戦態勢です」
山口那津男・公明党代表も10月23日の講演で「ここから先は(解散が)いつあってもおかしくないという心構えで準備をしたい」と語っていた。
だが、その選挙戦略を狂わせたのも岸田首相だ。首相は「減税」を武器に解散に踏み切る構えを見せていたが、支持率急落で断念に追い込まれた。
新聞・テレビが「岸田首相 年内の衆議院解散 見送る意向を固める」(11月9日のNHKニュース)などと一斉に報じた5日後、11月14日に山口代表は官邸で首相と1時間にわたってサシの党首会談を行なった。
政界にはこんな情報が流れている。
「公明党・創価学会はカネも人手もかけて選挙準備をしてきた。今さら止められない。山口代表は岸田総理に年内解散は本当にないのかと迫った」(官邸関係者)
その翌日、池田氏が亡くなった。創価学会の選挙支援を受けてきた自民党ベテラン議員が語る。
「公明党・創価学会としては、池田氏が亡くなったからこそ、学会をまとめるためにも早く選挙で結集して頑張りたいはずだ。解散できないまま選挙の時期がズルズルずれ込み、時間が経つほど弔い合戦という名目を使えなくなる。だから、以前にも増して早く選挙をやってほしい事情ができた。しかし、岸田首相にはもう解散する力はないし、仮に岸田政権のまま選挙になれば自民党も公明党も玉砕になってしまう。公明党も学会も、岸田首相では選挙を戦えないということがわかっているのでは」
自民党では“岸田おろし”の動きが表面化してきた。注目されているのが反主流派の重鎮、菅義偉・前首相の言動だ。
「国民になかなか届いていないのは、きちんと説明をする必要がある」
ネット番組で岸田首相の経済対策を批判し、同じ反主流派の二階俊博・元幹事長、森山裕・総務会長と会合を重ねている。
「菅─二階─森山で加藤勝信・元厚労相を総裁に担ぐ動きがある。加藤氏と仲がいい安倍派の萩生田光一・政調会長がそれに乗れば、強力な候補になる」(政界関係者)
公明党・創価学会はそうした自民党内の“岸田おろし”の行方を見極めようとしているようだ。選挙分析に定評がある政治ジャーナリストの野上忠興氏が指摘する。
「創価学会が自民党で最も信頼している政治家といえば菅前首相です。菅氏が次の総理総裁の擁立に動き、自民党内の流れが決まってくれば、それに連動する形で公明・学会が岸田首相にNOを突きつけ、新たな首相を据えて解散総選挙で弔い合戦に臨むシナリオは十分あり得るでしょう」
そうなれば、まさに“死せる池田、生ける岸田を走らす”ではないか。
●「岸田離れが始まった」自民内で広がる遠心力 保守層つなぎ留めへ麻生氏 11/27
自民党の保守派内で岸田文雄首相(党総裁)の遠心力が強まっている。公然と首相を批判する声が上がり、高市早苗経済安全保障担当相は保守系議員の糾合とも取れる勉強会を設立。内閣支持率が過去最低に落ち込む中、「岩盤支持層」とされる保守層が離反しているとの焦りがにじむ。首相は、安定的な皇位継承策を議論する総裁直轄組織を新設するなど保守派のつなぎ留めに腐心する。
「安倍政権を支えた岩盤保守層が離れてしまった」。14日、安倍派の高鳥修一衆院議員は党有志の会合ではばかることなく恨み節を口にした。高鳥氏は首相が成立にこだわったLGBTなど性的少数者への理解増進法が保守層の反感を買ったと指摘。「内閣や自民の支持率が軒並み下がった大きな要素だ」と不満の矛先を首相に向けた。
翌15日には、前回の総裁選で安倍晋三元首相を後ろ盾に善戦した高市氏が、安保関連の勉強会「『日本のチカラ』研究会」を立ち上げ。この日の出席者は高市氏を含め13人にとどまったが、入会は45人とされる。
「現職閣僚が同僚議員と一緒に勉強することの何が悪いのか」と平静を装う高市氏に対し、自民内には「総裁選への足場固め。『岸田離れ』が始まった」(ベテラン)と波紋が広がる。
伝統的にハト派でリベラル志向とされる宏池会(岸田派)の会長でもある首相。防衛力強化などタカ派的な政策を推し進めるなど、意識的に保守派の取り込みに注力してきた。
しかし、報道各社の世論調査で内閣支持率は軒並み20%台に急落。自民が2012年に政権を奪還して以降、最低に沈む調査も多い。それに引きずられるように自民の支持率も下落している。LGBT理解増進法などで「保守の支持基盤が失われている」との見方もあり、くすぶる不満が表面化し始めている。
一方の首相は保守層の引き留めに神経をとがらす。
党内に皇位継承に関する懇談会を設置し、17日に初会合が開かれた。同様の組織はこれまでもあったが、総裁直轄機関に格上げして本気度を演出した形だ。座長に麻生太郎副総裁を据え、メンバーには男系男子を重視する保守派の重鎮議員も顔をそろえた。
ただ、以前の懇談会は活動が低調で、昨年の会合は1月の1回きり。先延ばしできない重要課題とはいえ、自民幹部は「急に言い始めた。不自然だ」と戸惑う。別の自民関係者は「保守層の取り込みと思われても仕方ない。議論が紛糾するようなことになれば、もっと支持を失う」と話した。
●「次の選挙で与党の過半数割れあり得る」立憲・泉代表に就任3年目の戦略 11/27
11月30日で立憲民主党の泉健太代表は就任3年目を迎える。この1年、岸田政権の支持率が低迷しているにもかかわらず、野党第一党の立憲に風は吹かなかった。
では3年目の泉・立憲にどんな戦略があるのか聞いた。
「5年で政権交代」発言の真意は?
――まず先日発言された「5年で政権交代」について党内から批判の声もあります。あらためて発言の真意を教えてください。
立憲民主党・泉健太代表:勘違いも含めて様々な声もありますが、基本的に私が言っていることはずっと変わっていません。いま我が党は衆議院で95議席なので、150議席に伸ばすのは相当大変なことです。ただ政権交代を1日も早く目指すのは当たり前のことですし、次の選挙で我々が150議席以上に躍進すれば他の野党の議席も増え、与党が過半数割れになるのはあり得ます。現時点では候補者が170人弱の状況なので、とにかく候補者を探すことに全力を尽くしているところです。
――日本の政治のジェンダーギャップをどう見ていますか。
立憲民主党・泉健太代表:まず立憲民主党として1人でも多くの女性候補者を擁立したいし、女性議員を誕生させたいですね。今年4月の統一地方選挙では女性議員を60人増やすことができました。私が党の代表になってからジェンダー平等を最大の重点課題として取り上げ、執行部の半分を女性に、そして参議院選挙の公認候補者も51%を女性にしました。当選者の比率でも53%でしたので、大きな一歩だったと思っています。
政治のジェンダーギャップを無くす
――女性候補者の当選比率を増やすために、どのような施策を行ってきましたか?
立憲民主党・泉健太代表:単に候補者数を増やしたということではありません。党にジェンダー平等推進本部を置いて、女性候補者へのメンター制度や支援交付金の上乗せ、ベビーシッターの整備など物心両面の支援制度をつくり、女性候補者の不安の軽減に取り組んできました。
――クオータ制の導入については賛成ですか?
立憲民主党・泉健太代表:全党的なクオータ制の導入にはもちろん賛成するし、立憲民主党として独自のクオータ制が実現をできればと党内調整を進めています。議会で取り上げられる課題や体力勝負の選挙スタイルなど、政界は男性中心なのが現状で、女性が選挙に出られる環境を作っていかないといけません。
困窮するシングル家庭や若者は給付で支える
――岸田政権の「異次元の少子化対策」についてどう見ていますか?
立憲民主党・泉健太代表:まず国が投じる予算が圧倒的に少なく、政策は小出しです。岸田総理にとっては異次元でラストチャンスなのかもしれませんが、実際に子育てをしている世代、若い世代からすれば「そんなことを言われても困る」「とにかく安心させてほしい」のが本音じゃないかと思います。
――特にいま大きな社会問題となっている困窮するシングル家庭や若者たちに対して、どのような施策をお考えですか?
立憲民主党・泉健太代表:我が党は教育の不安を解消するために、教育の無償化や奨学金を給付型に変えます。若い世代に対しては家賃補助も行います。所得の低い人たちには給付で生活を支える。また人への投資として、教育の無償化とともに社会人のリスキリングが大事なので、子どもを育てながら新しい資格を取れるだけの生活費の支援は特にやっていかないといけないと思っています。
30万人の不登校児に学ぶ環境と居場所を
――いま不登校の児童生徒が30万人となっていますが、この問題の本質と原因をどうお考えですか?また、問題解消のために教育行政は何をするべきだと思いますか?
立憲民主党・泉健太代表:まず私は不登校自体を問題だと思っていません。これは日本で自由を尊重できる社会基盤が整ってきていることだと思うし、より多様性が尊重される社会になってきたことの証明だと思います。しかし30万人の子どもたちに学ぶ仕組みや居場所がまだ整っていないのは問題であって、必ずしも学校に戻すという考え方を取るのではなく、地域や家庭で育っていく環境をより整備していくべきです。
――最近私が取材している中で、小学生が公立の小学校からオルタナティブスクールや一条校でないインターナショナルスクールに移ろうとして、その生徒は行政から「小学校を除籍処分にする」と言われたそうです。
立憲民主党・泉健太代表:チルドレンファーストでなければならないので、小学校に籍を置いたまま他でいろいろ学べることがいいと思います。
日本版DBS・在留特別許可・ライドシェア…
――日本版DBSについてのスタンスを教えてください。
立憲民主党・泉健太代表:子どもに対する性犯罪はあってはならないので、早期に実現すべきだと思っています。いま論点になっているのは、習い事、学習塾のような民間の業種をどこまでカバーするのか。また、いかなる犯罪においても前科が一定期間で消える中で、その人物を子どもに関する職業から永久に追放できるかどうか。これには、たとえばブラックリストをつくる一方で、安全な人物のホワイトリストを作るという考え方もあります。
――今年入管法が改正されましたが、あらためて移民難民問題、特に日本で生まれ育ち在留資格のない子どもたちについてどのようにお考えですか?
立憲民主党・泉健太代表:子どもの在留特別許可は当然の措置であって選別をするべきではないと思います。どんな理由であれ、この日本で生まれ育っている子どもたちもたくさんいる中で、その親が強制退去になったからといって、日本語を話し日本人の友達が大勢いて日本を愛している子どもが一方的に日本から追放されるのはあまりに理不尽です。日本で暮らす様々な国の由来の方々も日本社会に貢献できるという考え方で対処するべきだと思いますね。
――最近ライドシェア導入について超党派の勉強会が立ち上がり、立憲民主党では荒井優議員が事務局を務めるなどしていますが、党としてどのようなスタンスですか?
立憲民主党・泉健太代表:「より便利に、しかし安全に」が考え方です。車両や運転手の質が悪ければ事故や犯罪につながるので、ライドシェアの仕組みをいかに安全に構築していくか。この勉強会も100%自由なライドシェアを目指してはいないと思います。事故や犯罪の責任を大きな規模の事業者が負うようにすることも必要でしょうし、一部地域で始まっている事実上のライドシェアについては、柔軟に考えていいと思います。
共通認識は「自民党政権を変えること」
――最後に、次の選挙での議席増に向けてどのような戦略を描いていますか?
立憲民主党・泉健太代表:立憲民主党の仲間は政権交代を目指して、自民党ではないもう1つの極を作るのに取り組んでいます。野党第一党という立場で、各地域で勝利のために努力をしているわけですから、戦い方を一律に縛るつもりはありません。例えば、連合の推薦や支援を受けようと思えば、連合からは「一線を越えれば推薦を出さない」と明示されているので、我々としては党内に周知をして、その範囲で各議員が判断をしていくと思います。
――ほかの野党、共産党や国民民主党との連携は?
立憲民主党・泉健太代表:いまどこかの党と連立政権を組むという話は、少なくとも党としてしてはいません。まずは立憲民主党の地力を高めないといけない。その中で野党各党と様々な協議をしながら、野党議席の最大化を図るということです。「明確に何かを取り組んでいる党は?」と言われたら、それは唯一国民民主党です。前回の選挙で様々な調整をしましたし、それは現在もいきています。共産党は「立憲民主党と政権に入る」とは言っていないと思います。いまの共通認識としては、「国民のために自民党政権を変えなければならない」までですね。その共通の思いの中で、それぞれの政党がどう行動するかが問われている段階です。
一本化ではなく選挙区ごとに情勢判断
――共産党との選挙区の候補者一本化に向けた調整は進めますか?
立憲民主党・泉健太代表:今のところ党として他党の候補者を応援できる状況は生まれていません。我が党が仮に全選挙区に候補者を立てられない場合、他党が候補者をたてるかもしれない。一本化ではなく一人が立っていることを各党が受け止め、「ここには野党候補がいる」と各党が抑制的に考える選挙区は存在しています。各選挙区の情勢を見ながらどう判断するか。そのまま野党同士が突っ込んだら誰も得しない、政治も変わらないと、各党がいかに思うかですね。
――ありがとうございました。
●玉川徹氏「政権維持のためならやる」ポスト岸田候補は史上初の… 11/27
元テレビ朝日社員の玉川徹氏(60)は27日、レギュラーコメンテーターとして「羽鳥慎一モーニングショー」に出演した。ANNの世論調査で、岸田内閣の支持率が過去最低26・1%を記録したことを受け、苦境を乗り切るため新たな「顔」を選ぶ可能性に話題が及んだ際「このまま(支持率が下がって)行くと、自民党はしたたかだから、上川さんとか出してくるんだろうな」と、上川陽子外相(70)の名前を挙げ、初の女性首相を“推し”とする予想を披露した。
「ポスト岸田」の有力候補に上川氏の名前を挙げた玉川氏の発言に、政治ジャーナリスト田崎史郎氏が反応し「僕は可能性、あると思いますね」も同意。
続けて田崎氏は「本命は茂木敏充幹事長で、あと岸田派では林芳正さんもいらっしゃる。一方、河野太郎さんもいらっしゃるということなんですけれども」と次々に名前を列挙した上で「もし、大胆な局面転換をはかるとしたら、女性ということも十分考えられると思いますよ」と、指摘した。
ここで腕組みをした玉川氏は「なんせ、社会党と一緒にやったことのある政党だから、政権を維持するためならやると思いますよ」と、自民党のしたたかさをあらためて指摘した。
●支持率20%台でも「国民の声」「謙虚に受け止め」「丁寧に聞く」ばかり… 11/27
立憲民主党の辻元清美議員(63)が27日の参院予算委員会で、各メディアの世論調査で内閣支持率が2割台となった岸田政権に触れつつ、「総理は増税メガネの上に減税メガネをかけて、国民の望むことが見えなくなっているのではないか」などと質問。
これに対し、岸田文雄首相(66)は「国民の皆さんの声は、謙虚に受け止めると申し上げている。その上で政治として、日本経済がデフレ脱却に向けて、正念場にあるということを説明させていただいている。そのためにどういった政策が必要なのかを丁寧に説明することが重要だと思っている」と答弁。
さらに「国民の皆さんの声は、謙虚に承りながら、デフレ脱却という課題について、どういった政策を用意するべきか(略)」「意見は丁寧に聞きながら、今重大なこの経済の局面において、政治が何を決断するのかが重要だという思いで政府の経済対策をしっかり説明していきたい」などと訴えた。
「国民の声」を「謙虚に受け止め」「意見を丁寧に聞く」──。岸田首相はこう繰り返したわけだが、過去の国会質疑でも岸田首相が何度も口にしていた言葉だ。
実際は国民の声をてんで聞いていないし、謙虚さや真摯な態度もない
「国民の声なき声に丁寧に耳を傾ければ、そして国民とともに歩めば、おのずと改革の道は見えてきます。信頼と共感の政治に向けて謙虚に取り組んでいきます」(2022年1月の衆参本会議の施政方針演説)
「国民の声を丁寧に聞きながら、国民の信頼と共感を得る政治を行わなければなりません。岸田内閣としては、引き続き、国民の皆様の厳しい声にも、真摯に、謙虚に、丁寧に向き合っていくことをお誓い申し上げます」(22年10月の参院本会議)
そして今年10月の参院徳島・高知選挙区の補欠選挙で、野党系無所属の候補が当選したことへの受け止めを求められた際にもこう答えていた。
「選挙の結果については様々な国民の声が含まれていると認識をしております。(略)これは謙虚に受け止め、その結果を分析しなければならないと思っております」(参院予算委)
まるで壊れたレコードのよう。どれほど内閣支持率が落ちようと、世論批判が高まろうと、岸田首相はこの言葉をずっと言い続けていれば大丈夫と思っているのだろう。
《実際は国民の声をてんで聞いていないし、謙虚さや真摯な態度もない》
《国民をバカにしているとしか思えない。こう言っていれば逃げ切れると思っている》
SNS上の怒りの声は高まるばかりだ。
●辻元清美氏「増税メガネに減税メガネかけるから見えない」と批判 11/27
立憲民主党の辻元清美参院議員は27日の参院予算委員会で、内閣支持率の低迷に悩む岸田文雄首相を「増税メガネの上に減税メガネをかけているから国民の望むことが見えなくなっている」などと批判した。立民の蓮舫氏や小西洋之氏も首相へのヤジで加勢したが、首相の味方となるはずの自民党の議席は静かなままで、首相を援護射撃する場面はほとんどなかった。
「減税の後に大増税が待っている。みんな分かっている。防衛費の倍増だ」
辻元氏は質疑で、岸田政権が経済対策に所得税と住民税の定額減税を盛り込んだにも関わらず、世論の評価が低い理由をこう指摘した。辻元氏は2025年大阪・関西万博の会場整備費に関しても、政府が出展するパビリオン「日本館」の費用が膨らんでいる実態を指摘し、「(当初予定から)倍増以上になっていることを認めてほしい」とたたみかけた。
これに対し、首相は防衛費増額の財源に充てる所得税や法人税の増税に関して、「所得税(増税)で家計の負担は増えない。94%の法人は(増税の)対象外だ」と反論。税制措置について「内容も時期も影響しない最大の配慮をしている」とも強調した。首相は辻元氏の指摘にムッとした様子で、手元の答弁原稿にほとんど目を落とさず、時間をかけて説明を繰り返した。
防衛費の増額指針や万博を巡っては、国民負担増が懸念される背景に外部環境の変化がある。令和9年度までの5年間の防衛費の総額約43兆円を算出した政府の防衛力整備計画に関し、策定時に設定した為替レート(1ドル=108円)が現在の水準とかけ離れ、輸入装備品の調達費が上昇している。万博の建設費に関しても人件費や資材が高騰している実態があり、首相の答弁が明快だったとはいえない。
盛り上がる野党席と静かな与党席
質疑の場となった参院第1委員会室は、盛り上がる野党席と静かな与党席という対照も目立った。野党席からは「為替の上振れ、どうするの」(蓮舫氏)「根拠をまったく出していないじゃん」(小西氏)などとヤジが次々と飛び、辻元氏の追及ムードをあおりたてた。
一方、自民の議員席からは、経済対策などを熱を込めて反論する首相に向け「そうだ!」といった通常上がる援護射撃の声はほとんど聞かれなかった。
この日の質疑では、首相と辻元氏の間で憲法改正を巡る白熱した議論も展開されたが、改憲を党是に掲げるはずの自民席は静かなままだった。辻元氏が、自民が「改憲4項目」に掲げる緊急事態条項の創設や教育の充実について、「法律で対応すべき」と改憲不要論を主張。首相は「根本的な問題だから、法律の背景として憲法で議論することが重要だ」と、これも答弁原稿を読まずに細かく反論したが、自民席からは拍手も合いの手もほとんど起こらなかった。
自民の世耕弘成参院幹事長は、首相が指導力を示せていない理由について「言葉に情熱を感じない」などと批判している。熱っぽく答弁する首相を冷めた目で見る自民席は、党内で首相の今の立ち位置を表しているようだった。
一方、辻元氏は質疑後、記者団に「首相の答弁はすごい抽象的。まるで『エンプティ総理』。安倍晋三元首相とは意見は違ったが、互いに信念に基づき、激論を戦わせた。安倍さんが亡くなってさみしい」とも語った。 
●馳知事“機密費”発言で岸田総理「撤回の経緯踏まえ具体的な対応を」… 11/27
官房機密費をIOC委員への贈答品に使ったという趣旨の発言をして、即日撤回した馳知事。発言の真意は語られないまま、波紋が県内外に広がっています。岸田総理は27日の参院予算委員会で「具体的な対応を考えたい」と述べました。
政治ジャーナリスト 田崎史郎 氏「官房機密費の歴史の中でも初めてなのです。“何々に官房機密費を使った”というのは恐らく馳さんが初めて。馳さんは本当に賢くない人だなと」
ことの発端は、今月17日に都内で開かれた会合での馳知事の発言です。
馳浩 石川県知事(17日・都内)「安倍晋三さんから国会を代表してオリンピック招致は必ず勝ち取れ、金はいくらでも出す、官房機密費もあるから。IOC委員の全員のアルバムを作ってお土産はそれだけ。だけどそのお土産の額を今から言いますよ。外に言っちゃだめですよ、官房機密費使っているから。一冊20万円するんです」
2013年当時、自民党で東京オリンピックの招致推進本部長だった馳知事の生生しい発言…。
馳知事「発言は全面撤回しました」
岸田総理「自民党として具体的な対応を考えたい」
27日の参議院予算委員会でも、野党は岸田総理を厳しく追及。岸田総理は「自民党として発言撤回の経緯もしっかり踏まえ、具体的な対応を考えたい」と述べました。
立憲民主党 石橋通宏 参院議員「具体的な対応を考える…重ねて総理の国民に対する説明責任を果たそうという姿勢がさらさら感じられません」
野党は馳知事を参考人として招致するよう求めています。
立憲民主党石川県連 近藤和也 代表「国際的なルールを破ることにこの機密費を使っていいというのは全く違う。説明責任から逃れることはできないと思う。吐いたものはしっかりと説明していただくと」
TBSの川西全官邸キャップは、国会のようすをこう振り返ります。
「(野党が)ほぼ毎日のようにこの件を取り上げている状況。当時の安倍政権で官房機密費を使う立場にいたのは官房長官だった菅前総理だったということもあって野党の矛先も菅さんに向かっている」
一方で、知事の参考人招致が実現する可能性については。
TBS 川西全 官邸キャップ「(参考人招致が)成立するためには与党側も含めて賛成する必要がある。本人が出席を拒むことができる。馳さんもあまり前向きでない思われる以上実現する可能性は限りなくゼロに近い」
「失言したらすぐに謝って…」はせ日記“アルバム”の有無は?
馳知事(22日・県庁)「改めて、これについては2度とお話することはありません」
Q辞任する考えはあるのか?
「全くありません」
22日に開かれた記者会見では、五輪招致の発言について“全面撤回”から“今後一切発言しない”に変わり、より頑なな姿勢に…その一方で。
馳知事(22日・県庁)「改めて申し上げますけど、ブログに書いてあることは事実です」
馳知事自身が更新しているブログ「はせ日記」。2013年の記事には、当時の菅官房長官への五輪招致活動報告のひとつに「想い出アルバム作戦」と記載されています。
TBS 川西全 官邸キャップ「アルバムが1つのポイントだと思う。“私受けとったよ”とか“現物がこういうのだよ”とか、物証が出てきた場合は国会としても無視できない。与党側としても何かしらの説明が求められることになるので、知事を呼んだ方がいいのではないかという議論になる」
11月16日の「はせ日記」では、愛媛県産のじゃこ天を「貧乏くさい」とけなす発言をした秋田県の佐竹知事による、その後の対応について触れています。
「失言したらすぐに謝って仲直り。国会議員の皆さんも見習いましょう。私も見習います」(11月16日の「はせ日記」より引用)
こうブログに書いた翌日、自身の発言が取り沙汰された馳知事。周囲に見習いましょうと諭すほどの対応は今できているのでしょうか。
「石川どうなっとるんや」「最後まで言ってほしい」
馳知事は性格も豪快で、場合によってはハラスメントにつながるのでは…といった言動は国会議員時代からたびたび取り上げられています。今回も発言とその後の対応に脇の甘さが目立ちますが、石川県議会にも波紋が広がっています。
ある自民党の県議は「ちょっと軽かった。地元の人から“石川どうなっとるんや”と聞かれる。言ってしまったことは消されんやろ」と。また、非自民の議員からは「五輪招致の内実の1つを明らかにした。そこまで言ったなら最後まで言ってほしい」という声もあります。
発言自体を問う声というよりは、すぐさま撤回しそのあとは一切答えない、説明責任を果たさない政治姿勢そのものを咎める意見が目立っています。県議の間では12月1日から始まる12月議会で発言について知事に問う動きもあり、釈然としない態度を続けると今後ますます批判を招きそうです。
●茂木幹事長「国民の不満や不安が政治に」 岸田内閣の支持率下落巡り 11/27
岸田内閣の支持率の下落が続いていることについて、自民党の茂木幹事長は「国民の不満や不安が政治に向かっている」と述べたうえで、支持率の回復に向けて「結果を出すことが大切だ」と強調しました。
自民党 茂木幹事長「国民の皆さんの現状への不満であったりとか、将来への不安、これが今、政治に向かっているということを重く受け止めなければいけない」
ANNの世論調査で岸田内閣の支持率は26.1%と、政権発足以降、過去最低を更新しました。
茂木幹事長はその要因について、「物価高などで生活が厳しい状況が続くなか、政務3役の辞任などが続いた」と説明しました。
そのうえで、補正予算案を速やかに成立させ、物価高や少子化などの課題について「しっかり結果を出すことが大切だ」と強調しました。
また、自民党5派閥の政治資金収支報告書の記載漏れについて、先週、新たに公表された2022年分についてそれぞれの派閥で精査し、必要があれば訂正する作業に入っていると述べました。
茂木幹事長は先週、各派閥に対して再発防止を図るよう指示しています。
●日中韓外相会談4年ぶり開催も…乏しい成果 「上川外相の遺憾砲」 11/27
約4年ぶりの日中韓外相会談が26日、韓国・釜山で開かれた。上川陽子外相は前後して、中国の王毅共産党政治局員兼外相と、韓国の朴振(パク・チン)外相とそれぞれ個別会談し、「遺憾砲」などを放ったが、日本外交に知恵はないのか。岸田文雄政権の内閣支持率が極度に低迷するなか、一部メディアが突然、「ポスト岸田」に持ち上げた上川氏に迫った。
「隣国であるがゆえ、困難な問題に直面することもある」
上川氏は日中韓外相会談の冒頭、3カ国連携の難しさをこう表現したが、現状はまさに課題山積だ。
韓国では23日、いわゆる慰安婦問題をめぐり、ソウル高裁が日本政府に賠償を命じる逆転判決を言い渡した。上川氏は、朴氏との日韓外相会談で、「国際法上の主権免除の原則が否定された。極めて遺憾」と抗議し、是正措置を求めた。
日韓間の請求権問題は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」している。慰安婦問題も2015年の日韓合意で「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権下で、日韓関係は改善したとされるが、異常判決を「遺憾」で済ましていいのか。
日中外相会談も成果は乏しかった。
中国は、国際原子力機関(IAEA)の評価などを無視して、福島第1原発処理水を「核汚染水」と発信し、日本産水産物を禁輸している。さらに、沖縄・尖閣諸島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)にも無断で「海洋ブイ」を設置している。
上川氏は王氏に対し、台湾問題への懸念とともに、禁輸問題の解決を強く求めた。だが、王氏は処理水について、「海洋の安全と民衆の健康に関わる」とし、台湾問題でも「中国の内政に干渉してはならない」と一蹴したという。
日本国内では、「岸田降ろし」の兆しを受けて、上川氏を「ポスト岸田」に推す動きがある。ただ、与党のベテラン議員は「国内外で危機的状況のなか、米民主党とパイプがあるからといって総理総裁が務まるのか」と疑問を呈する。
朝鮮近現代史研究所所長の松木國俊氏は「上川氏の、韓国への抗議は甘すぎる。岸田政権は『日韓関係の改善』を強調するが、レーダー照射事件などでケジメを付けなかったため、今回のような判決が出た。対中国を含め、日本外交の『遺憾砲』は相手国に『効かん砲』だ。日本外交は正念場を迎えている。岸田首相、上川氏は現実を直視した外交を展開しなければならない」と強調した。
 11/28

 

●大阪万博の経費750億円が計上された岸田内閣の補正予算案に維新賛成 11/28
日本維新の会が岸田内閣が提出した補正予算案に賛成した。「自公の補完勢力」と指摘されてきたが、岸田内閣提出の予算案に賛成するのは初めてだ。所属議員による多数決で決めたという。
補正予算案は岸田内閣がまとめた経済対策の財源を裏打ちするもので、一般会計総額は13兆1000億円。内閣支持率を続落させた「岸田減税」に維新は賛成するということになる。
藤田文武幹事長は記者会見で「デフレ脱却のラストチャンス。(岸田内閣の)問題意識は一定の評価ができる」と理由を説明したが、本当の理由は「補正予算案に大阪万博の関連経費750億円が含まれているから」というのが大勢の見方だ。「万博があるから賛成に回ってほしいと幹部から説得された」という中堅議員のコメントも報道されている。
維新の馬場伸幸代表はこれまで「野党第一党を奪取する」ことを最大の目標に掲げ、打倒・自民よりも打倒・立憲を掲げてきた。立憲との対立軸を鮮明にするため、安全保障分野で自民党よりも右寄りな政策を打ち上げ、防衛力強化を進める岸田内閣を後押ししてきた。
それでも予算案に賛成することはなかった。政権批判票が立憲など他の野党に流れることなく維新に引き込むには岸田内閣との対決姿勢を鮮明にしていくことが不可欠であったからだ。
しかし、補正予算案に賛成したことは、岸田内閣を事実上信任したともいえる。「野党」から「ゆ党」(野党と与党の中間)に転じた格好で、「自公の補完勢力」との批判にお墨付きを与えた格好だ。
馬場代表は「第2自民党でいい」と発言して批判を浴びたが、今回の補正予算案賛成で自公政権批判層は維新から離れるだろう。
2022年度予算に国民民主党が賛成した際、維新の松井一郎代表(当時)は「連立を目指していると、ひしひし伝わってきた」、藤田文武幹事長は「政権与党に入りたいと捉えられても仕方ないのではないか」と激しく批判していた。過去の言動との矛盾も問われる。
さらに、賛成に回った本当の理由が「大阪万博の推進のため」というのは、最悪である。
大阪万博の建設費は当初の倍近い2350億円に上振れし、「身を切る改革」を掲げて躍進してきた維新に対して世論の批判が噴出している。とくに世界最大の木造建築という触れ込みで大阪万博の顔になる「リング」は閉幕後に解体されるということもあって「税金の無駄遣いの象徴」になった。
大阪万博は維新の躍進をピタリと止め、立憲を大きく上回っていた政党支持率はこのところほぼ横並びまで追いつかれ、一部調査では再逆転を許している。
それでも維新の吉村洋文・大阪府知事らは大阪万博を推進する姿勢を崩しておらず、維新の失速が止まる気配はない。大阪万博の開幕は2025年春の予定で、次の衆院選(任期満了は25年秋)や参院選(25年夏)まで大阪万博への批判は高まり続けるだろう。
安倍政権や菅政権は野党分断工作の柱として維新を位置付け、維新を後押ししてきた。国と大阪府・市と財界が費用を3分の1ずつ負担する大阪万博は、維新支援策のシンボルといっていい。東京五輪に続く経済活性化の柱として位置付けてきた。
菅政権は東京五輪を国内世論の反対を振り切って強行開催して支持率が下落し、衆院任期満了を目前に総裁選不出馬に追い込まれて退陣した。大阪万博で失速した維新の姿は、菅政権と重なり合う。
岸田政権は維新よりも連合との関係を重視している。岸田首相や麻生太郎副総裁は菅氏をライバル視しており、維新とのパイプを持つ菅氏に対抗して連合を取り込み、連合と密接な国民民主党の連立入りも模索してきた。
維新に近い菅氏と、連合に近い麻生氏の主導権争いのなかで、維新は自民党の距離感を探ってきたといえる。
国民民主党は2022年度当初予算案に賛成し、維新を差し置いて政権入りへ一歩進んだ。玉木雄一郎代表は当時、岸田首相がガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結解除を検討する意向を示したことを理由にあげたが、その後、トリガー条項の凍結解除は棚上げにされたままだ。
玉木代表は今回の補正予算案でも再び「首相がトリガー条項の凍結解除に踏み切る意向を表明すれば補正予算案に賛成してもいい」との考えを11月22日の衆院予算委員会で表明。岸田首相は「トリガー条項凍結解除も含めて、与党と国民民主で検討する」と応じ、国民民主党が補正予算案に賛成した。
維新が補正予算案への賛成を決めたのは、岸田政権と国民民主党の接近に「取り残されたくはない」との焦りもあるとみられる。落ち目の岸田政権は、維新と国民を張り合わせて引き込む野党分断工作でかろうじて延命している格好だ。
国民民主党内で玉木氏の岸田内閣への接近を批判して維新との連携を強化している前原誠司元外相は、国民民主党が補正予算案に賛成する場合は離党する意向を固めたと報じられた。いったん新党を結成し、その後に維新に合流するとの見方も広がっていた。
だが、維新が補正予算案に賛成することを決めた後、前原氏は離党報道を否定した。離党と維新入りの大義名分を失ったためとみられる。
大阪万博を最優先して補正予算案賛成に転じた維新の決断は、世論の反発を招いて政党支持率の低下を加速させることに加え、野党再編の主導権を失うマイナス効果をもたらすだろう。
維新が政権批判票を束ねて野党第一党にのしあがる道筋は「大阪万博」によってかなり厳しくなってきたのではないだろうか。大阪万博への風当たりは地元・大阪でも強いが、全国ではなお強い。大阪から全国に支持基盤を広げて全国政党へ脱皮するシナリオも大きく狂ってきたというほかない。
●岸田政権に「泣きっ面に蜂」の派閥資金不記載問題〜 11/28
内閣支持率、さらに下落
岸田文雄内閣の支持率が「危険水域」に入った。NHKの11月の世論調査(調査期間は11月10から3日間)によると、岸田内閣を「支持」すると答えた人は10月の調査から7ポイント一気に下がって29%となった。
2011年末の第2次安倍晋三内閣以降でこれまでに内閣支持率が30%を下回ったのは2021年8月の菅義偉内閣以来。菅首相は翌月に控えた自民党総裁選への不出馬を表明して政権を放棄する事態に追い込まれた。
今の岸田首相は何をやっても裏目に出る、と自民党内でささやかれる。支持率向上を狙って行ったはずの内閣改造も、直後に副大臣、大臣政務官が次々と辞任に追い込まれた。
物価上昇に喘ぐ国民の指示を取り戻すはずだった経済対策や減税も評判は芳しくない。物価高に対応するため、所得税などを1人あたり4万円減税し、住民税が非課税の世帯には7万円を給付する方針を打ち出したが、NHKの世論調査ではこれを「大いに評価する」が5%、「ある程度評価する」が31%にとどまり、「まったく評価しない」25%、「あまり評価しない」34%に及ばなかった。
「増税メガネ」と揶揄されたことがきいたのか、突然打ち出した「減税」に、解散総選挙を狙った人気取りだと有権者に見透かされたということだろうか。「評価しない」と答えた人の38%が「選挙対策に見えるから」と回答、「物価高対策にならないから」の30%を上回り、最も多い答えだった。
実は派閥問題、パーティー収入不記載
そんな存亡の危機に直面している岸田内閣に、もうひとつ問題が勃発した。自民党の派閥の政治資金収支報告書に、パーティー収入に関わる不記載が発覚したのだ。首相足元の自民党に「政治とカネ」の問題が持ち上がったのだ。
政治資金規正法は1回のパーティーにつき、パーティー券を20万円を超えて購入した個人や団体の名前や金額を収支報告書に記載するよう義務付けている。政治資金パーティーはたいがい1枚2万円なので、名前を出したくない企業や団体、個人の多くは10枚の購入にとどめる。もちろん購入を分割してそれぞれ20万円以下にして子会社の名義などで振り込めばこの規定には抵触せず、「ザル法」と呼ばれてきた。
ところが今回、「しんぶん赤旗」のスクープで発覚したのは、寄付した側が政治団体だったため。政治団体側の収支報告書には20万円を超える支出記載があることが発覚。自民党の5派閥すべてで記載漏れが表面化する結果となった。
自民党の派閥の問題が内閣支持率になぜ響くのかといえば、岸田首相が自民党の総裁であるだけでなく、自身が岸田派の会長を務めているからだ。歴代首相は首相に就任すると派閥の長を外れてきたが、岸田首相はとどまり続けてきた。派閥への国民の批判が一時に比べて弱まったと高を括ったからかどうかは分からない。自ら派閥の会長を務めている立場からすれば、派閥の記載漏れを厳しく批判することなどできるはずがない。あくまで「事務的なミス」だと言い逃れし、各派閥の事務総長などを務める閣僚もまともに国会答弁には応じずに口を閉ざしている。
本来ならば、首相自らが派閥を厳しく批判し、政治とカネの関係を透明化するよう強く指示することで、政権自体への火の粉を振り払うこともできるはずだが、自分自身が派閥の長ではそれもできないわけだ。また、岸田内閣の政権基盤自体が弱く、来年の自民党総裁選での再任のためには各派閥の支持を得る必要がある。それだけに各派閥のカネの問題に厳しく対処することもできないのだ。ちなみに副大臣や大臣政務官の人事もほとんど各派閥の意向で決まったとされ、官邸による「身体検査」がほとんどできなかったことが辞任ドミノの一因になっているとの見方もある。
結局は選挙用「裏金」か
さらに、首相らが口を閉ざす背景には、パーティー券によるグレーな資金集めが横行して背景がある。今回発覚したのはたまたま情報開示義務のある政治団体の購入額だったが、自民党を支える企業の多くが20万円を超える購入をしながら、名前が出ないように偽装しているのではないかという疑念がかつてからあるためだ。自民党の多くの国会議員の資金源である企業によるパーティー券購入を、規制強化で封じることになれば、選挙に使う「裏金」などに一気に窮することになるからだ。
ちなみに、しんぶん赤旗はその後、岸田首相自身が1回の収入が1000万円を超える大規模な政治資金パーティーを2022年に6回も開催し、1億4730万円もの収入を上げていたとを報じている。「政治とカネ」の問題が厳しく問われた2001年に閣議決定した規範によってパーティーについて「国民の疑惑を招きかねないような大規模なものの開催は自粛する」と定められている。それに従って閣僚に自粛を促さなければならないはずの首相本人がそれを違えていたとなれば、当然、内閣支持率に大きく影響することになる。
今、企業ではコンプライアンスやガバナンスが大きな課題になっている。上場企業の場合、年に1回届け出る有価証券報告書に記載する情報が年々増えている。仮に、この有価証券報告書に政治との関係の記載を義務付け、パーティー券を含む政治献金の支出を記載するようになれば、政治とカネ、特に企業と政治家の関係は白日の下に晒されることになる。
もちろん、そんな法改正を誰も言い出さないし、普段は企業のコンプライアンスに厳しく注文を付ける官僚機構もダンマリを決め込んでいる。そうした政治とカネの問題を根本から解決する動きにつながることを岸田首相や自民党の首脳は恐れているに違いない。
●外国人労働者にますます日本が「選ばれない国」に… 11/28
現代の奴隷制度
「現代の奴隷制度」との酷評もあった「外国人技能実習制度」などの見直しを検討してきた政府の有識者会議は先週金曜日(11月24日)、この制度を廃止して、新制度「育成就労制度」の創設を求める報告書を取りまとめた。
だが、目玉と言えるのは、最大の焦点だった別の職場への「転籍」の制限期間を現行の「3年」から「1年」に短縮することを原則として打ち出したことぐらいだ。その目玉でさえ、実際には、「経過措置」を設けて、当分の間は1年を超える制限を容認するよう求めるなど、尻抜けの提言にとどまった。
周知の通り、もはや、日本は、賃金水準の低さが響いて、外国人労働者から「選ばれない国」になっている。報告の内容は、経過措置を設けることによって、その日本国内でも賃金の低さや過酷な労働条件が仇となって人材の確保が困難になっている非効率企業の経営を支援する枠組みの存続を訴えていることに他ならない。
これでは、外国人労働者の賃金上昇をテコにして、日本人労働者の賃金を押し上げる効果や、生産性の向上を促す効果、そして国全体の成長を押し上げる効果も期待できないだろう。
優柔不断でピンボケの政策判断しかできない岸田政権らしい、落第点の外国人労働者の受入制度の改革に終始したと言わざるを得ない。
今回の提言をまとめた有識者会議は、「外国人材の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議」が2022年11月に設置を決めたものだ。政府は、今回の提言をもとに、来年(2024年)1月召集の通常国会に関連法案の提出を目指すとしている。
こうした見直しの根底には、現行の「外国人技能実習制度」に設けられている転職制限が「現代の奴隷制度」と酷評されるなど、内外から職業選択の自由を制限することへの批判が強まっていた問題が存在したことと無関係ではない。
加えて、政府に、今なお日本が圧倒的な経済大国という驕りが横たわっていた問題も見逃せない。「外国人技能実習制度」の目的を、「人材育成による国際貢献」と位置付けていた点が、そうした誤認と驕りの象徴になっていた。
半面、政府部内にも、以前から、国際的な労働市場の実情と日本の問題を適格に把握していた部署もある。例えば、経済産業省が2022年4月にまとめた「未来人材ビジョン」は、「日本は、高度外国人から選ばれない国になっている」との問題意識を明確にしたうえで、「外国人から『選ばれる国』になる意味でも、社会システム全体の見直しが迫られている」と正鵠を射た提言を出していた。
韓国にも水をあけられる
日本の問題の根底にあるのは、日本の賃金水準が決して高いとは言えないことである。経済協力開発機構(OECD)が集計した2021年の各国の平均賃金という統計を見ても、日本は4万1509ドルと、先進37カ国の中で25位という低位に甘んじている。この水準は先進37カ国の平均値(5万3416ドル)を下回っているばかりか、お隣の韓国(19位、4万8922ドル)にも水をあけられている。
発表当時、大きく報じられたことを記憶している人も多いと思うが、前述の「未来人材ビジョン」は、「日本は、課長・部長への昇進が遅い」うえ、「日本企業の部長の年収は、(シンガポールや米国だけでなく)タイよりも低い」といったショッキングな事実も指摘していた。
実際のところ、日本では、「働き手の中心」と考えられる15〜64歳の生産年齢人口の減少が続いており、2050年には5540万人と現状より2割以上も減る見通しだ。日本人の婚姻件数や出産数の回復が見込めない中で、経済の立て直しを目指すとすれば、労働生産性の向上だけでは策として不十分で、併せて、積極的な外国人労働者の受け入れ策の構築も急務となっている。
この点に関連しては、厚生労働省が11月24日に公表した人口動態統計の速報値(外国人らを含む)で、今年1〜9月の出生数(生まれた赤ちゃんの数)が前年同期比5・0%減の56万9656人にとどまっており、このままのペースだと年間の出生数が70万人台半ばに落ち込み、8年連続で過去最少を更新する可能性が高まっている問題も存在する。出生数低下の背景には婚姻数の減少もあり、立て直しが相当困難だ。そうした事情から、外国人労働者への期待が高まっている。
こうした観点から見れば、今回の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」の最終報告書には、食い足りない部分が目立つ。
第一は、避けて通れない問題なのに、端から無視した問題の存在があげられる。今回の報告書で「現行制度と同様、新たな制度及び特定技能制度においては認めないものとする」とされた、家族の帯同は、その代表的なポイントだろう。
家族の帯同に対する消極的な対応は、安倍元政権以来、外国人労働者の受け入れ問題が議論の俎上に上がるたびに、継続してきた問題だ。
今なお、この消極的な対応をする裏には、自民党支持層に移民への根強い反発があることへの配慮があるとみられている。とはいえ、諸外国では「外国人労働者の受け入れ」と「移民の受け入れ」は同義の問題だ。このまま無理な使い分けを続けているようでは、外国人労働者から「日本が選ばれる国」になることは覚束ない。
不可思議なこと
第二に改革したふりをしつつも、実態として現状を維持しようという部分もある。新しい制度の名称を「育成就労制度」とし、目的を「人材育成及び人材確保」とすることは一見したところ見直しだ。が、実際は「単純労働者は受け入れない」という表向きの公約に対する抜け道を引き続き維持しようという目論見がミヱミエになっている。
報告書が廃止を打ち出した技能実習制度の下では、6月末時点で35万8千人が就労している。が、目的に記されてきた、学んだ技能を帰国後活かして貰う「国際貢献」はほぼイル―ジョンだった。このため、目的から「国際貢献」という言葉を消し去るというのは理解できる。
とはいえ、目的をなぜ、ストレートに「人材確保」としないのか。不可思議だ。というのは、来日する多くの外国人の目的は「出稼ぎ」であり、雇用する日本の事業者の目的は「人材(労働力)の確保」なのだから、改めるのならば「就労機会の提供と人材確保」が実態に即しているはずである。
あえて「人材育成」を掲げるのは、「育成中だから」という理由で、「自由な転職を認めない」という本音が透けている。
加えて、事実上の人材ビジネスを営む監理団体の既得権を擁護し、存続を容易にする狙いもあるのだろう。
とはいえ、国内事情を優先した姑息な対応にしか映らない。なぜならば、短期的には、国際的な紛争や景気、外為市場の動向などに左右される面が大きいものの、中、長期的な国際労働市場の流動化が止まることは考えにくいからだ。結局のとこと、アジア諸国は経済成長を続けており、日本との国家間で、労働力の奪い合いがこれまでより激化することは避けられないとみるべきだろう。
「人材育成」に名を借りて、引き続き、転職の自由を制限するようなことを続けていけば、外国人労働者にとって、日本は益々「選ばれない国」になっていく。
今回の報告書で、国の制度改革がアテにならないことが明確になった以上、大切なのは個別企業の取り組みだ。それぞれが生産性を向上させつつ、並行して賃金水準を引き上げて「選ばれる企業・事業者」になる以外の生き残り策は考えにくい。
厳しいようだが、全体としての競争力向上や新陳対処の促進を考えれば、対応できない企業や事業者は市場から退出する以外の選択肢はないはずである。
●ついに麻生からも見捨てられた…「安倍晋三」になれなかった岸田首相 11/28
「悪いことはしていないのだけどな」
メディア各社による世論調査の数字が思わしくない岸田政権だが、11月26日に公表された日経新聞とテレビ東京の世論調査では、岸田内閣の支持率は前回比3ポイント減の30%と、かろうじて3割を維持した。とはいえ、「政権に好意的な数字が出る」と言われる同調査でさえ、不支持率も3ポイント増の62%だから、「嫌われ傾向にある」ことは変わりない。
それにしても、なぜここまで岸田文雄首相は国民に嫌われるのか―。岸田首相が善意を持ってやろうとしていることがことごとく、裏目に出ている印象だ。
たとえば10月20日に始まった臨時国会の所信表明で、岸田首相は税収の上振れを「国民に還元する」と宣言し、減税措置と非課税世帯への助成金支給を表明したが、「増税メガネ」の渾名が消えることはなかった。
「悪いことはしていないのだけどな」
11月21日付けの朝日新聞は、岸田首相が内閣低支持率を嘆いて漏らした呟きを報じている。
確かに岸田首相は精一杯やっている。総裁選の時に表明した「所得倍増」を「資産倍増」に変えながらも、国民の可処分所得が増大する政策を模索。
不穏さを増しつつある東アジアで日本の安全保障を増強するため、2027年度には防衛費を対GDP2%にすることも打ち出した。ウクライナ支援をきっかけに、防衛整備移転3原則の見直しにも積極的だ。その姿はとてもハト派といわれる宏池会の領袖のものとは思えない。
「安倍晋三」になれなくて…
岸田首相が手本にするのは、昨年7月の参議院選の最中に凶弾に倒れた安倍晋三元首相だろう。安倍元首相は2012年12月に民主党から政権を奪還し、第1次政権を含めた在職期間は、歴代最長の3188日にものぼる。
そして国内的にはアベノミクスを実施し、対外的には「地球を俯瞰する外交」を展開。とりわけ安倍元首相はアメリカのドナルド・トランプ大統領(当時)と懇意で、国際政治の舞台で暴走しがちなトランプ大統領を引き留め、先進国の首脳のまとめ役を任じることも多かった。
その安倍政権で、岸田首相は4年7か月もの間、外務大臣を務めた。「私の次は岸田さん」との安倍元首相の言葉を信じ、その側で21世紀の日本のリーダーは何をなすべきかを学んできた。
岸田首相はハト派の宏池会の領袖ながら、時折タカ派の行動をとるのはそれゆえだろう。もちろん党内4位の派閥のトップに過ぎない岸田首相は、安倍元首相を支援してきた岩盤保守層を取り込む必要もある。
しかしそれは国民が望んでいることなのか。安倍政権時の日本は、それまでの経済的閉塞感から脱却しそうでできないままに終わっている。「失われた30年」のために内向きでいた間に、世界からすっかりと遅れを取ってしまっている。
そうしたところから脱却し、これまでの方針を全て変えていかなければならないのに、岸田首相はいまだ「経済大国・日本の総理大臣」のままでいる。またアベノミクスの検証もないままに、新たな“キシダノミクス”ともいうべき「資産倍増計画」をぶち上げたことも問題だ。後者が宏池会の創始者である池田勇人元首相の「所得倍増計画」をモデルとしているのは明らかだが、「中味のない二番煎じ感」が否めない。
もっとも「平時の政治家」なら、それでも良かった。だが現在は平時ではない。コロナ禍後の世界は大きく変わり、日本は様々な内憂外患に脅かされている。
足元から崩れていく
しかも岸田首相の足元の閣内でさえ、意思統一が図れていない。
たとえば鈴木俊一財務大臣は11月8日に開かれた衆院財政金融委員会で、「(過去2年間で)税収の増えた分は、政策経費や国債の償還などですでに使っている。減税をするなら国債の発行をしなければならない」と述べ、岸田首相が打ち出した減税案を事実上否定した。
さらに岸田首相が22日の予算委員会でガソリン税のトリガー条項凍結解除を求める国民民主党の玉木雄一郎代表に対して前向きの姿勢を見せ、萩生田光一政調会長に公明党や国民民主党と協議を進めることを指示したのにもかかわらず、鈴木財務相は24日の会見で、脱炭素に向けた国際的潮流の他に「国・地方合計で1.5兆円もの巨額の財源が必要」と難色を示した。
これは“財務省の反乱”に止まらないものだ。岸田首相の後見人たる麻生太郎自民党副総裁の意向もうかがうことができるからだ。鈴木大臣は安倍・菅政権の9年間を財務大臣として支えた麻生氏の後任で、総理大臣をも務めた麻生氏の義理の弟でもある。
その麻生氏は11月8日に非主流派の二階俊博元幹事長らと会談した。2人は今年5月から、数回にわたって食事をともにし、情報交換に務めている。
またその翌日の9日には、二階氏と菅義偉前首相、森山裕総務会長らが会談。このように続々と大物が連携する中で、岸田首相は孤立感を高めている。
それが減税への“暴走”や、これまで慎重だったトリガー条項の凍結解除への容認に繋がっているのではないか。それらを国民がひしひしと感じ取ってしまうからこそ、内閣支持率の低下が止まらないのではないか。
●自民・茂木氏 支持率低下「国民の不満や不安が政治に」 11/28
岸田内閣の支持率の下落が続いていることについて、自民党の茂木幹事長は「国民の不満や不安が政治に向かっている」と強調しました。
「国民のみなさんの現状への不満であったりとか、将来への不安、これが今、政治に向かっているということを重く受け止めなければいけない」(自民・茂木幹事長)
ANNの世論調査で岸田内閣の支持率は26.1%と、政権発足以降、過去最低を更新しました。
茂木幹事長は、その要因について「物価高などで生活が厳しい状況が続く中、政務3役の辞任などが続いた」と説明しました。その上で、補正予算案を速やかに成立させ物価高や少子化などの課題について「しっかり結果を出すことが大切だ」と強調しました。
●松尾貴史ら、杉田水脈氏の差別的言動への岸田首相対応に疑問 11/28
タレント松尾貴史(63)らが28日までにX(旧ツイッター)を更新。岸田文雄首相が、自民党の杉田水脈衆院議員の差別的言動に「コメントを控える」などと発言したことに疑問を呈した。
岸田首相は27日の参院予算委員会で、アイヌ民族に関する発言で法務当局から人権侵犯認定を受けた杉田議員について「議員の発言に一つ一つコメントすることは控える」と、正面からの回答を避けた上で、「政治家は影響力を十分に自覚し、自らの言動について説明責任を果たしていくことが重要だ」とし、「アイヌであることを理由として差別する。こんなことはあってはならない」と述べた。
松尾は「言うべきことも言わず、すべきこともせずに、なぜ『控える』だけなのか」と首相の発言に疑問を呈し、「『控え』させるべきは差別主義者の狼藉でしょう」とした。
また、元参院議員でジャーナリストの有田芳生氏は自身のXで、「控えてはダメでしょう。自民党の総裁は岸田文雄総理。その自民党が擁護してきたのが杉田水脈議員。人権侵犯が法務省から認定されても見苦しい言い訳を繰り返し、いま。岸田政権は国際的な人権基準に照らしても失格だ。次期総選挙では差別主義者を公認すべきではない」と厳しく批判した。
ジャーナリストの江川紹子氏は自身のXで、岸田首相の今回の発言について「一般論を言ってるだけ」と指摘した。
●支持率21%「ポスト岸田」でうごめく6人 大穴の上川陽子氏の弱点は 11/28
岸田文雄内閣の支持率が急落している。11月の世論調査によると、共同28.3%、時事通信21.3%、読売24%、毎日21%、朝日25%と驚くべき凋落だ。自民党支持率も時事19.1%、読売28%、毎日24%、共同34.1%、朝日27%と急落している。内閣支持率と自民党支持率の数字を足したものが時事と毎日では50を割り、読売と朝日も52となった。50を割ると首相はほどなく退陣するという「青木の法則」(青木幹雄元自民党参議院議員会長が唱えた)が当てはまると話題になっている。
その最大の原因は、岸田首相個人への落胆、憤り、不信が極度に増大していることにある。
「地味だけど真面目そう」「安倍晋三氏や菅義偉氏と違い優しそう」「宏池会出身、広島選出で平和主義者」といったイメージがここにきて一気に崩れた。防衛費爆増の財源として増税を予定しながら、解散総選挙を狙って、増税イメージ打ち消しのために打ち出した突然の減税宣言は、支離滅裂だと酷評された。減税が悪いということではなく、岸田氏の政策が、国民のためではなく、自分の政権維持のためだと国民に見透かされ、岸田氏の人格自体に負の烙印が押されてしまったのだ。
副大臣・大臣政務官の辞任ドミノ、自民党5大派閥による総額4000万円の政治資金収入隠し疑惑、官房機密費を使用した東京五輪誘致のための賄賂工作疑惑などと続くスキャンダルへの不誠実な対応もまた岸田首相への信頼を大きく傷つけた。こうしたことが起きるたびに自民党他派閥が背後から首相批判の攻撃をするのも影響している。
こうした状況を見て、私が思い出すのは、麻生太郎政権末期の様子だ。2008年12月頃から翌年春にかけて、麻生不人気は極限に達し、支持率13.4%、不支持率76.6%(共同)にまで下落した。今でも印象に残っているのは、こんな冗談だ。
「ある小学校で女性教師が授業中に先生に隠れて漫画を読んでいた男の子に注意した。〇〇ちゃんだめよ。漫画ばかり読んでると麻生総理大臣みたいになっちゃうわよ」と。
一国の首相がここまで馬鹿にされるのは異例だ。
こうなると、麻生氏の言動全ては悪く解釈され、支持率回復は不可能。衆議院議員の任期満了ギリギリまで解散もできず、最後にやぶれかぶれの解散総選挙を行ったが、民主党に大敗し、自民党は政権を失った。
岸田氏が、増税メガネ、さらには増税クソメガネというあだ名をつけられて馬鹿にされる状況はこれに酷似している。
だが、実は、違うことが二つある。
一つは、麻生氏が衆議院任期まであと1年で政権に就いたのに対し、岸田首相の場合は、衆議院の任期まであと2年近くあるため、その間は首相が解散しない限り選挙の審判を受けなくてよいこと。
もう一つは、麻生氏の時は、民主党が破竹の勢いで支持を拡大中で選挙をすれば自民党大敗が確実な状況だったが、今の野党には政権交代する勢いは全くないということだ。
そこで、首相としてはこの二つの違いを利用した戦略が可能になる。
一つは、選挙なしで来年秋の自民党総裁選までなんとか低空飛行を続けること。その間に、支持率の若干の回復を図り、党内派閥の談合により、再選を果たす。その後、衆議院の任期が来るまでの1年以内に支持率をさらに回復して解散総選挙を行い、負けを最小限に抑えて、党内の退陣要求を抑え込む。「時間稼ぎ」の戦略だ。
もう一つは、立憲民主党の人気が低迷し、日本維新の会も準備が整わないうちに解散し、過半数プラスアルファで「勝利」宣言をして、党内の岸田おろしを封じる戦略だ。野党が政権交代できる体制にないことを利用するわけだ。来年度のばらまき予算を成立させ、減税が施行される来年6月以降が一つのタイミングになる。
それを狙っているのだろうか、来春には、「国賓待遇」で米国を訪問すると報じられた。国賓待遇だから、普通の訪米よりもはるかに手厚いもてなしを受け、議会での演説など見せ場も設定されるだろう。バイデン大統領とハグして「ジョー」「フミオ」と呼びかわし、バイデン氏に肩を抱かれてフラッシュを浴びる。世界一の大国アメリカの大統領との親密さを見せつける政治ショーで支持率を急回復させたいという「夢」を岸田首相は抱いているのだろう。
しかし、国民はそれほど馬鹿ではない。どんな戦略でも事態打開は至難の業。
それを見越して、すでに岸田首相を退陣させて総裁選を前倒しで行い、人気のある総裁を選挙の顔にして解散総選挙に打って出るという話が自民党内では始まっている。
では、誰を新総裁にするのか。そこには二つのポイントがある。
一つは、選挙に勝てる顔かどうか。
もう一つは、自民党や各派閥の利権を守れるかどうかだ。
ただし、この二つは二律背反になる。利権政治家だと見られれば、国民人気を失い選挙の顔には不向きとなるからだ。
こうした観点から、ポスト岸田について見ていこう。
次の総裁候補としては、最近の世論調査で、小泉進次郎元環境相の人気が急上昇している。
クリステル夫人との間に第二子が誕生したことで露出度が高まったのが最大の理由だが、最近はライドシェアの超党派勉強会を立ち上げるなど、政策面でのパフォーマンスも拡大中だ。ただし、総裁選に向けた準備は行なっていないようで、今回の立候補はないように見える。
2番人気は、石破茂元幹事長だ。石破氏は、自民党以外の有権者、特にリベラル層にも支持を受ける。選挙の顔としては魅力的だ。
一方、石破氏はかつて安倍元首相と激しく対立したために安倍派の反発が非常に強く、他派閥からも唯我独尊という批判が聞かれる。自分の派閥も消滅しており、党内基盤はきわめて弱い。
そこで、岸田氏に恨みを持つ二階俊博元幹事長や菅元首相などの支持を得る方法が考えられる。そうなれば、一気に本命になるかもしれない。
3番人気は僅差で河野太郎氏だ。人気は高く無党派にも強いのが選挙の顔として優位に立てる材料だ。ただし、マイナンバーでつまずき人気に少し翳りがあるのが気になる。
一方、人気の源でもある既得権に切り込む改革派としての過去の行動や脱原発の姿勢が警戒され、党内基盤の拡大には苦戦しているようだ。自分の派閥の麻生元首相の支持もまだ得られない。菅氏や小泉氏、さらには石破氏の支持を得ることで支持を広げたいというところだろう。
国民の立場から言えば、解散総選挙なしのまま自民党政権を続けざるを得ないという状況の中では、せめて石破氏や河野氏のように、従来型の自民党派閥談合政治にノーと言える政治家を総裁に選ぶ良識を自民党に求めたいところだ。
4番手に挙げられる高市早苗氏は早くから立候補に意欲を示している。
岩盤右翼、特に安倍元首相の支持層に強いため、一定の支持を集めるポテンシャルはあるが、党内では嫌われ者なので、現状では立候補のための20人の推薦人集めも難しく、仮にできても過半数の支持には到底届かないだろう。そもそも、こんな人が首相になったら、日本の政治は右翼層に乗っ取られて大変なことになる。国民の立場からは絶対に避けたい選択だ。
世論調査では目立たないものの、この他に政治部記者などの間で名前が挙がるのが茂木敏充幹事長だ。派閥領袖に取り入るのが上手く、特に、麻生元首相の評価は高いと言われる。利権政治家の顔も持ち、派閥の支持は取り付けやすそうだが、国民人気はほぼゼロ。パワハラのエピソードがたくさんあるとの悪評が高く、選挙の顔には向いていない。
さらに、目立たない実力者として林芳正前外相がいるが、岸田派のナンバー2の立場上、岸田内閣の下では動きにくく、岸田氏が責任を取らされた後にその一の子分が総裁になるのは党内の理解を得られない。
以上は有名な政治家であるが、ここへきて、これまで無名の上川陽子外相の名前が挙がり始めた。華がなく地味な印象だが、女性ということで急激に注目度が上がっている。英語が堪能などの面が知られるようになれば、新鮮さもあって支持が伸びる可能性がある。高市氏を悪役に仕立てて「女の戦い」を演出できればなおさらだ。
しかし、この人は、法相を3回務めている間に16人もの死刑を執行した実績の持ち主で、タカ派の顔を持つ。岸田派ではあるが、むしろ安倍元首相の寵愛を受けたこともあり、人柄が知れるにつれて、逆に人気が落ちるリスクもある。
また、経済政策に関する実績がほぼゼロで、日本の最大の課題である経済再生に不向きなことが致命的な弱点だ。
いろいろと書いてきたが、読者からはこんなヨタ話なんか聞きたくないとお叱りを受けるかもしれない。確かに日本の経済はボロボロなのに、国会では亡国予算と言われる23年度補正予算が成立する見込みだが、その間も、日本経済の危機は日々深刻化している。そんな時に「ポスト岸田」の政局話かと思うのも無理はない。
しかし、実際の政治では、むしろポスト岸田の話で持ちきりという感じで、危機感は全く感じられない。
タイタニック号が氷山にぶつかる前に船内の客室でダンスに興じる男女にも似た自民党議員の「政局ダンス」。誰もが踊らなくてはと浮き足立っているが、いつになれば本当の危機に気づくのか。
総裁選前倒しなら、全国の党員を含めたフルスペックの選挙は行われない可能性が高い。国民の声を全く聞かずに国会議員票による事実上の派閥談合決着となるわけだ。ふざけるなという国民の怨嗟の声が今から聞こえるようだ。
自民党議員と同じ船に乗る私たち国民は、今すぐにその舵を自民党から奪い取らないと、本当に日本はこのまま氷山にクラッシュ、沈没ということになりそうだ。そのためには、政局ダンスに興じる自民党議員に警鐘を鳴らすしかない。
選挙の道を封じられた私たち国民としては、声を上げることしか残された手段はないようだ。
●政治資金記載漏れ問題 「誰にとって都合が良いのか考えるべき」 11/28
自由民主党の5つの派閥(安倍・二階・茂木・麻生・岸田派)政治団体が、「政治資金パーティー収支を過少記載した」として政治資金規正法違反で刑事告発された。2018〜2021年までの政治資金収支報告書において、約4000万円分の記載漏れがあったという。
各派閥は既に収支報告書を修正し、再発防止に努力すると表明しているが、納得しないと回答している人は71%となっている。『ABEMAヒルズ』は、この問題について東京工業大学の西田亮介准教授に意見を求めた。
――記載漏れについてどう考えている?
「記載漏れはなぜかよく起きる。人間だから仕方ないともいえるが、たいていの場合、過少記載。その一方で、なぜか過大記載を見かけないのは不思議だ。政治資金規制法には罰則が存在するが『虚偽にも重過失にも当たらない場合』、ペナルティーがない。虚偽や重過失は立証が難しい。つまり、注意を払うインセンティブが設けられていないために、過少記載が頻発している」
――再発防止に努めるために何かペナルティーがあった方がいいのか?
「過少記載が生じやすい状態が、誰にとって都合が良いのか考えるべきだ。国民が物価高で余裕がない時に、パーティ券の売上が大きいと世論の批判を受けやすい。そのため、金額は少なく記載したいのは自然だ。これを防ぐためにも、やはり間違いが起こりにくい制度設計が必要だ。税金の申告間違いがあり、修正申告する場合にも金利が発生するが、同様の仕組みを政治資金規正法上の収支報告書にも取り入れることはできないか」
――さらに、この週末行われたANNの世論調査で岸田内閣の支持率が、政権発足以降、最低の26.1%になったことが明らかになった。この結果についてどうか?
「収支報告書の記載の修正に納得しないと回答する方が7割だった。多くの人たちが政治資金の問題、さらには経済対策についても納得していないという表れだ。修正するだけでは到底納得できないはずで、政権も構造的な問題に手を付けたほうがいいのではないか」
――減税なども打ち出していたが
「減税や給付など、生活者にとって嬉しい政策を打ち出した時、支持率は上がりがちである。しかし、岸田政権でそうならないということは、有権者や生活者がもはや政権の『約束』を信頼していないということである。これは政治不信の一つの表れだ。回復は容易ではない」
●鬼の岸田政権「メガトン増税」がついに始まる!国民負担率が50%を超える 11/28
数々のスローガンを打ち出し、自らのリーダーシップをことさらに強調してきた岸田文雄首相がピンチを迎えている。岸田氏の「言葉力」に国民が幻滅し、内閣支持率が急降下しているのだ。所得税・住民税の定額減税で歓心を買おうと目論んだものの、人々はその先にある“メガトン増税“を見透かしている。経済アナリストの佐藤健太氏は「まさに『言うは易く行うは難し』で、物価上昇に苦しむ国民は実行力や決断力のないリーダーに辟易としている」と指弾する――。
「所得倍増計画」という言葉はいつの間にか「資産所得倍増」にすり替えられた
国家のリーダーが放つ言葉は、時に国民を鼓舞し、時に失望を買う。2021年10月に発足した岸田内閣の歩みを振り返れば、あまりにも軽い首相の言葉によって失点が重ねられてきたことがわかる。首相就任前の自民党総裁選で「令和版所得倍増計画」を掲げたかと思えば、その後も「新時代リアリズム外交」や「新しい資本主義」「デジタル田園都市国家構想」などと、次々にキャッチフレーズを並べてきた。
だが、所得倍増計画という言葉はいつの間にか「資産所得倍増」にすり替えられ、国民が自己責任で資産運用する非課税制度の拡充策を設けただけ。経済成長も分配も実現するとした「新しい資本主義」の中身はいまだ不明瞭で、その多くが掛け声倒れに終わることが懸念されている。
足元の岸田内閣の支持率は各種世論調査で政権発足後最低を記録しているが、いくら言葉選びが上手であるとしても、それが実現できず、共感も得られなければ単なる「言葉遊び」と反感を買うのは当然だろう。象徴的なのは、岸田首相が今年1月4日の年頭記者会見で表明した「異次元の少子化対策に挑戦する」とのフレーズだ。
現役世代の負担増につながる仕組みが浮かび上がる
首相は結婚・子育て世代を中心に「異次元」という言葉への期待値が高まると、1カ月も経たずに「従来とは次元の異なる少子化対策を実現したい」(1月23日の施政方針演説)と言い換えた。6月には具体的な中身となる「こども未来戦略方針」が決定されたが、児童手当の拡充や出産費用の保険適用、保育士の配置基準改善など、従来施策の延長線上にあるものばかりが並んだ。岸田政権の看板政策であるはずなのに、そこに「言葉の重み」を感じることはできない。
さらに驚かされるのは、新たな少子化対策に年間3兆円台半ばの財源が必要になるものの、財源確保策が後回しにされたことだ。政府は歳出改革や既存予算の活用などを念頭に入れるというが、11月9日にスタートした議論を見ると、そこには現役世代の負担増につながる仕組みが浮かび上がる。
それは財源の1つとして政府が創設する「支援金制度」だ。
「さらなる国民の負担増はない」という“ウソ”
今年4月に発足した「こども家庭庁」は戦略方針の中で、「歳出改革等による公費と社会保険負担軽減等の効果を活用することによって、国民に実質的な追加負担を求めることなく、少子化対策を進める。少子化対策の財源確保のための消費税を含めた新たな税負担は考えない」と説明。岸田首相も「徹底した歳出改革を行った上で、国民に実質的な追加負担を生じさせないことを目指す」と述べ、さらなる国民の負担増はないと強調してきた。
だが、支援金制度の具体的設計に関する議論では「全世代が子育て世代を支える、新しい分かち合い・連帯の仕組み」として、公的医療保険料に上乗せして徴収される新たなスキームが検討されている。仮に年間1兆円強の財源を穴埋めすることになれば、国民1人あたり月に500〜1000円程度の負担増になる見込みだ。
新たな税負担は考えない、実質的な追加負担を生じさせないとしながら「第2の税」といわれる社会保険料で埋めるのであれば、もはや「言葉遊び」でしかない。
国民年金の保険料支払い期間が5年延長という新たな「重荷」も
経済同友会は11月22日の提言で「社会保険料を活用することは適切でない」などと現役世代の負担増回避を求めたが、少子化対策が結婚・子育て世代の負担増につながれば本末転倒だろう。病気やケガで受診した際の医療費を負担する公的医療保険をスキームに入れることにも疑問が残る。
そもそも支持率続落を受けた岸田首相が財務省の抵抗を押し切って所得税・住民税の定額減税を打ち出せたのは、のちに「回収」できる計算があるからだ。昨年末に決定された防衛費大幅増に伴う増税プラン(法人税・所得税・タバコ税)に加え、2024年度からは1人あたり年1000円が徴収される「森林環境税」がスタート。後期高齢者医療保険の保険料の上限は現在の66万円から2024年度に73万円、2025年度には80万円へと引き上げられ、一定以上の所得がある高齢者の介護保険料も増額となる見通しだ。消費税率のさらなる引き上げは否定する岸田首相だが、国民には事実上の「メガトン増税」が待ち構える。
加えて、岸田政権は国民年金(基礎年金)の保険料支払い期間を5年延長することも検討している。20歳以上60歳未満の40年間に支払う期間を「45年間」にするもので、5年間延長された場合には納付額が100万円近く増えることになる。退職金の課税見直しといった「サラリーマン増税」は2025年以降に見送られることになったが、税制改正だけではなく、社会保険料アップによるダメージも国民に突き刺さる。
近い将来、国民負担率は50%をゆうに超える
少子化対策と重なるのは、やはり財源問題だ。厚生労働省は11月21日、国民年金の保険料納付期間が延長された場合、給付水準を維持するためには2060年度に3兆3000億円の国庫負担の追加が必要との試算を示した。さらに、急きょ岸田首相が自民党幹部に指示したガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」の凍結解除には、「地方・国合計で1兆5000億円もの巨額の財源が必要」(鈴木俊一財務相)とされている。
国民負担率は2022年度に47.5%と所得の半分近くを占めているが、さらなる負担増は避けられない見通しだ。とりわけ、結婚・子育て世代を中心とする現役世代へのプレッシャーは大きい。首相は「明日は必ず今日より良くなる日本をつくりたい」と繰り返すものの、これだけの増税プランや社会保険料アップをテーブルに並べられれば、その言葉に共感する人は少ないのではないか。
岸田首相が所属する自民党の世耕弘成参院幹事長は10月25日の参院本会議で「支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待するリーダーとしての姿が示せていないということに尽きるのではないでしょうか」と指摘した。
メガトン増税」や社会保険料アップといった「ステルス増税」を模索する首相
さらに「首相の『決断』と『言葉』について、いくばくかの弱さを感じざるを得ません。世の中に対しても、物価高に対応して首相が何をやろうとしているのか全く伝わりませんでした」と苦言を呈した。
一国の宰相よりも、むしろ世耕氏の言葉に共感した人の方が多いだろう。
数々のスローガンを重ね、しばらく続く検討の末に方針を打ち出したかと思えば実現に至らない。ようやく実現すると思ったら裏打ちとなる財源がなく、最終的に国民負担増の形で回ってくる。各種世論調査であらわれた岸田政権による経済対策の不評ぶりや不支持率の高さを見ると、「メガトン増税」や社会保険料アップといった「ステルス増税」を模索する首相の言葉は、もはや国民に響かないように映る。
視線の先にあるのは、やはり宰相の座ただ1つに見える。
読売新聞が11月17〜19日に実施した全国世論調査によれば、内閣支持率は前月から10ポイントも急落し、24%と内閣発足以降最低を記録。毎日新聞の調査(11月18、19日)でも支持率は10月から4ポイント減の21%となり、過去最低を更新した。民主党の菅直人政権末期(15%)以来の低水準で、不支持率は74%に達した。不支持が7割台というのは麻生内閣(73%)以来14年9カ月ぶりという。
国民の支持が1割にすぎない宰相となれば、さすがに衆院を解散することはおろか、自民党総裁選への再出馬すらも困難になる。そこで首相は「止血剤」として公明・学会に急接近を図り、公明支持層からの支援を「内閣総理大臣」として懇願することにしたのだろう。
毎日新聞の世論調査では、岸田氏に「いつまで首相を続けてほしいと思うか」と聞いたところ、最多は「早く辞めてほしい」(55%)だったという。来年春の訪米を調整し、あれだけ頑なに否定してきたトリガー条項発動にも前向きに急変するなど、まだまだ意欲を見せる岸田氏。その視線の先にあるのは、やはり宰相の座ただ1つに見える。
●いつまで続く「地価高騰」…高利回りの「新築アパート投資」は無理か? 11/28
地価高騰、そして建築費高騰と、不動産投資に逆風が吹きすさぶ時代において、いかに「スモールリスク」の賃貸経営を続けていけるかは重要課題だ。この厳しい状況下、一都三県に100棟強の投資用新築アパートを建築してきたハウスリンクマネジメント株式会社はリスクヘッジに長けた企業といえる。同社のオリジナルブランド「カインドネス」シリーズの企画・開発に対する考え方をもとに、逆境を生き抜くアイデアを探っていく。
オリ・パラ後も続く地価高騰の背景にあるものは
2020東京オリンピック・パラリンピックが終了したら「日本国内の不動産価格は下落する」という話題があったが、あれは誰が言いだしたのだろう。とんでもない、地価はいまだ高止まり、または微上昇傾向にある。
地価高騰の一因として、1990年代のバブル経済崩壊以降“塩漬け”となっていた都市再開発事業が、オリ・パラに絡む公費放出によって動き始めたことが挙げられる。地方自治体が主体となり、道路拡張、駅前・繁華街の区画整理工事が全国各地で行われており、「これらのビッグプロジェクトに便乗しない手はない」と大手ゼネコンも再開発エリア周辺の土地買収に躍起となっている。
加えて海外資本もどんどん参入してくる。円安進行により海外市場において「買い負け」気味の日本。東京都心の一等地といえども海外企業にとっては青田買い程度の価格でしかなく、さらなる地価高騰を見込んで破格の買付額を提示してくる。これでは地価が下がるわけがない。
建材・人手不足が建築費を膨張させる
円安が日本の建築費を押し上げている一因であることは間違いない。ロシア・ウクライナ情勢の悪化で木材や石油の流通が停滞し、世界的な「ウッドショック(木製建材不足)」が起きているなか、買い負け続きの日本が確保できる建築資材は微々たるものだ。
コロナ禍の影響も大きい。リモートワークの常態化で、部屋数が多い戸建住宅の重要が急激に高まっているため、国内でわずかに流通する住宅用建材の価格はさらに高騰していく。これらの金額はすべて建築費に上乗せされる。
少子化に伴う労働人口減少の影響によって建築業界の人手不足も深刻化している。現在、建築現場の第一線で働いている作業員の年齢層は50〜60代とかなり高齢だ。若い人を雇いたいものの、建築業は給与水準が低い上に過酷かつ危険な仕事内容であることも相まって嫌厭されてしまう。そのため、多くの建設会社は給与増額によって若手作業員を集める必要がある。これらの人件費は建築費に跳ね返ってくることになる。
地価、及び建築費の高騰が新築アパート投資に及ぼす影響
地価や建物建築費が高騰している今、不動産投資にチャレンジすることは高いハードルであるように思える。大手投資法人ならまだしも、個人投資家にとっては厳しい時期かもしれない。しかし、大抵の人が尻込みするこのタイミングが投資家にとってチャンスとなりえる。ライバルがいない分、安価で収益性の高い物件を優位に手に入れることができるからだ。
では収益性の高い投資物件とはどんなものだろう。第一条件として、交通・商業利便性が高い場所にあること。言わずもがな、それは首都圏主要駅の駅前エリアだ。しかし、駅前の土地は商業地のため価格が高い。商業地とは、都市計画法で定められた用途地域でいうところの「商業地域」や「近隣商業地域」に該当し、建物の建蔽率(敷地面積に対する建築面積の割合)や容積率(敷地面積に対する建物の容積比率)が大きく取れるエリアのことをいう。
こういった土地は資金力のあるディベロッパーや投資法人が購入して投資用ワンルームマンションなどを建設するが、土地取得費や建築費がかさむため利回りが伸びない。良くて3%、都心一等地となると1.5〜2%程度の物件もざらにある。これではローン金利より低いため赤字になってしまう。個人投資家が手を出す場所ではない。
逆風の時代にも打ち勝つ“高収益”新築アパート投資とは
個人であっても堅実に稼げる不動産投資法として注目されているのが「新築アパート投資」だ。しかも首都圏の駅徒歩圏内立地で利回り7%の高利回りを実現している物件がある。それがハウスリンクマネジメント株式会社の新築投資用アパート「カインドネス」シリーズだ。
カインドネスシリーズは、駅前エリアより地価が下がる駅徒歩10分圏内、かつ最大でも3階までしか建てることができない用途地域内で収益性の高い投資用アパート建築しており、一都三県ですでに100棟強の実績がある(2023年8月末時点)。
建築費の低コスト化を重視するものの、建物資産としての品質の向上にもぬかりない。新築建物の劣化対策がどの程度行われているかを評価する基準に「劣化対策等級」があるが、カインドネスシリーズはその最上級である等級3(通常想定される条件のもと、3世代まで大規模な改修工事をせずに使えるように対策されているもの)を取得している。
最も重要な収益性については実例をもとに紹介しよう。小田急小田原線「玉川学園」駅徒歩5分に建つ「カインドネス玉川学園(物件価格9,610万円)」は、ローン返済が年間約540万円(金利4.5%)、家賃収入が年間約672万円で、年間キャッシュフローは約132万円と、約7%の高利回りを実現している。
●今年10月期の企業倒産件数は19か月連続で増加、1〜10月累計で前年超え 11/28
概況〜資金需要が旺盛になる年末を控えて企業倒産は増勢を強める可能性
東京商工リサーチから2023年10月度の全国企業倒産(負債額1000万円以上)に関するリポートが発表された。
まず件数は2022年4月から19か月連続で前年同月を上回った。また5月から700件台で推移した結果、1〜10月累計は7073件に達しており、前年の年間件数(6428件)を超えた。
負債総額も2か月連続で前年同月を上回った。10月度では2010年の5200億5000万円以来、13年ぶりに3000億円を超えた。負債100億円以上が6件(前年同月1件)、同50億円以上100億円未満が7件(同1件)と大型倒産が大幅に増加、負債を押し上げた。
「新型コロナウイルス」関連倒産は263件(前年同月比12.3%増)で、2023年1〜10月累計は2623件(前年同期比42.9%増)と前年同期の1.4倍と大幅に増加している。
産業別〜2か月ぶりに10産業すべてで前年同月を上回る
2023年10月の産業別件数は、10産業すべてで前年同月を上回った。10産業すべてが前年同月を上回るのは8月以来、2か月ぶりで、今年2度目となる。
最多はサービス業他の255件(前年同月比32.1%増)で、14か月連続で前年同月を上回った。月次倒産に占める構成比は32.1%(前年同月32.3%)だった。
次いで、資材価格の高止まりが続く建設業が164件(前年同月比76.3%増)で10か月連続、ウクライナ情勢や円安の影響による仕入コストが上昇している製造業が103件(同27.1%増)で15カ月連続で、それぞれ前年同月を上回った。
このほか、情報通信業27件(同35.0%増)が13カ月連続、小売業81件(同1.2%増)が6か月連続、運輸業34件(同17.2%増)が5か月連続、不動産業27件(同35.0%増)が3か月連続、農・林・漁・鉱業11件(同175.0%増)と卸売業89件(同17.1%増)、金融・保険業2件(前年同月ゼロ)が2か月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
地区別〜東北、北陸、九州を除く、6地区で前年同月を上回る
2023年10月の地区別件数は、9地区のうち、6地区で前年同月を上回った。
関東323件(前年同月比57.5%増)が、2022年5月より18か月連続で前年同月を上回った。このほか、近畿196件(同45.1%増)が11か月連続、中部92件(同6.9%増)と中国40件(同73.9%増)が6カ月連続、四国18件(同100.0%増)が5か月連続、北海道28件(同40.0%増)が2か月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
一方、北陸8件(同38.4%減)が2か月連続、東北33件(同29.7%減)が7か月ぶり、九州55件(同5.1%減)が16か月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。
[負債額上位5社]
1.(株)ガイア/東京都/パチンコ店経営/943億5500万円/民事再生法
2.(株)MG建設/東京都/建築工事/214億5000万円/民事再生法
3.(株)MG/東京都/パチンコホール/174億8800万円/民事再生法
4.(株)ガイア・ビルド/東京都/建築工事/155億1600万円/民事再生法
5.(株)トポスエンタープライズ/千葉県/物流倉庫事業/115億4100万円/民事再生法  
●年少扶養控除復活、検討しないと首相 11/28
岸田首相は参院予算委で、民主党政権が廃止した16歳未満を対象とする年少扶養控除復活に否定的な見解を示した。「検討課題とはしていない」と述べた。
●「増税やり放題がまもなく開始」”鬼の”岸田政権「まさに自転車操業」 11/28
「青汁王子」こと実業家三崎優太氏が21日までに、自身のX(旧ツイッター)を更新。岸田政権の増税問題について私見をつづった。
三崎氏は「鬼の岸田政権の宣言してた増税やり放題がまもなく開始される。年金の支払いが5年延長するけど、そもそも国民負担税が右肩上がりな流れの方が問題です」と記述。そして「日本政府は長期目線の問題から逃げ続け、いつか来る破綻の現実から目を逸らし続ける。これぞまさに自転車操業だね」と述べた。
この投稿に「自転車操業が破綻した際に更なる増税来るのが怖いですね」「年金負担は厳しいです」「最悪の時代ですよ」「増税し放題、税金使い放題プランの始まりですね」「負担が大きすぎる」などと将来を心配する声など、さまざまなコメントが寄せられている。
●菅・河野・小泉氏けん引=岸田首相「積極姿勢」に転換―ライドシェア 11/28
一般ドライバーが自家用車を使って有償で乗客を運ぶ「ライドシェア」の導入に向け、政府が検討を急いでいる。菅義偉前首相が解禁を求めたのを皮切りに、河野太郎デジタル相や小泉進次郎元環境相ら菅氏に近い自民党議員が推進論をけん引。政府内で慎重論が強い中、岸田文雄首相の背中を押した。首相には、運転手不足の解消に加え、政権と距離を置く菅氏らの取り込みを図る狙いもありそうだ。
首相は28日の参院予算委員会で、「担い手や移動の足の不足が深刻な社会問題と指摘される中、ライドシェアの問題に正面から取り組むこととした」と重ねて意欲を表明した。政府の規制改革推進会議は30日に開く会合でライドシェアに関する議論を続行。年内に方向性を示す方針だ。
ライドシェアは都市部や観光地、過疎地での深刻な運転手不足を踏まえ、インバウンド(訪日客)拡大を推進してきた菅氏が8月の講演で解禁を提唱し、議論の口火を切った。
これに呼応した河野氏が「守るべきは規制ではなく移動の自由だ」と主張し、政府内の議論を主導。小泉氏は今月22日に超党派勉強会の初会合で「迅速な対応が求められる。ライドシェア対タクシーではなく、『選択肢のある社会を』という思いだ」と訴えた。3人は党神奈川県連に所属。2021年9月の党総裁選では、首相に敗れた河野氏を菅、小泉両氏が支援した。
ライドシェアを巡っては、安全性確保や事故時の補償、競争の公平性などの課題が指摘され、政府は導入に慎重だった。自民党内でもタクシー・ハイヤー議員連盟の幹部を務める盛山正仁文部科学相が「安易なライドシェアを認めるわけにはいかない」と述べるなど賛否が分かれている。
政府内には「『菅印』の政策はやらないのでは」との見方もあったが、首相は10月の所信表明演説で「ライドシェアの課題に取り組む」と初めて表明し、積極姿勢に転じた。内閣支持率が低迷する中、党内での路線対立を避ける思惑もあるとみられる。菅氏周辺は「菅氏が発言すれば世の中が変わるというアピールになる」と述べ、同氏の影響力が強まるとの認識を示した。
 11/29

 

●岸田首相、国民の「痛み」避ける答弁 少子化・防衛財源論に及び腰―予算委 11/29
少子化や防衛力強化を巡る今国会の議論で、岸田文雄首相が国民の負担増に関する答弁を避ける場面が目立つ。低迷する内閣支持率を意識し、国民の「痛み」につながる言質を取られまいとする思惑が透けて見えるが、政権の看板政策に対する不信につながっている面は否めない。
「賃上げと歳出改革で国民負担率を下げる。下げた枠内で、支援金を考えていく」。28日の参院予算委員会で首相は、少子化対策で公的医療保険料に上乗せされる「支援金制度」を創設しても、国民所得に対する税金と社会保険料の割合を示す「国民負担率」は上がらないと強調した。
日本維新の会の清水貴之氏は「負担は増えると言えないのか」と首相を追及。歳出改革の内容をただしたが、首相は医療・介護のDX(デジタルトランスフォーメーション)による合理化などを列挙したものの、具体的な歳出削減効果は明らかにしなかった。
国民負担率はあくまで統計上の指標で、賃上げが追い付かない場合や一部高齢者では、少子化対策で首相が掲げる「追加負担を生じさせない」とする方針が揺らぐ可能性がある。
急速な少子高齢化で、年金・医療・介護制度の持続可能性が危ぶまれ、政府は負担増につながる見直しを進めている。厚生労働省の審議会は今月、65歳以上の高所得者の介護保険料引き上げ案を大筋で了承。国民年金についても、保険料納付期間を65歳まで延長する案がある。
首相は28日の予算委で、少子化対策の必要性について「独身者や高齢者にとっても未来の社会、経済のありようが懸かってくる」と訴えたが、厚労省幹部は「『負担なし』の説明が突出し、本来必要な介護制度見直しなどの議論が進めにくくなった」と話す。
財源論に及び腰な首相の姿勢は、防衛費を5年間で43兆円に増やすことでも見て取れる。27日の参院予算委で質問に立った立憲民主党の辻元清美氏は、政府が昨年末の計画決定時に1ドル=108円で試算したものの、現在約150円まで円安が進んだ点を取り上げ、「装備品を減らすのか、大増税するのかどっちか」と迫った。首相は「装備品のまとめ買いなど工夫を凝らし、実質的な抑止力維持を図っていきたい」などの答弁に終始した。
円安でも43兆円の範囲内で対応する考えを強調した首相に対し、辻元氏は「調達効率化で吸収できるものではない。だから大増税しかないと言っている」と説明に強い疑念を呈した。
●馳知事がうっかり暴露した「東京五輪招致の闇」 11/29
馳浩・石川県知事が自らの東京五輪誘致活動で、官房機密費(内閣官房報償費)を使って国際オリンピック委員会(IOC)の委員全員に「20万円のアルバムを渡した」と口を滑らせたことが、政界だけでなくSNS上も含めて大炎上している。
元文科相で、東京五輪誘致での自民党推進本部長だった馳氏が、「政官界でも口外厳禁」(官房長官経験者)とされてきた官房機密費使用の一端を漏らしたことで、さまざまな疑惑がささやかれてきた日本の招致活動の闇が暴露されるきっかけになるとみられている。
しかも、東京五輪招致と、1年遅れの「強行開催」を主導した故安倍晋三元首相、菅義偉前首相、森喜朗元首相の3氏による馳氏への「具体的指示」にも言及していたことが、支持率下落にあえぐ岸田文雄首相の政権運営の新たな火種になりつつある。
馳氏は慌てて「全面撤回」、口つぐむ“関係者”
騒ぎの大きさに慌てた馳氏はすぐさま発言を「全面撤回」し、その後は「一切言及しない」と貝のように口を閉ざし、嵐の過ぎ去るのを待つ構え。しかし、野党はすぐさま「五輪全体が汚職まみれとされたが、誘致も金まみれだった」(立憲民主)として、国会への馳氏の参考人招致を要求するなど、臨時国会終盤での野党の政権攻撃を勢いづかせている。
馳氏の「機密費」発言は、11月17日に都内で行った講演で飛び出した。2013年に開催が決まった東京五輪に関する自らの招致活動として、「105人のIOC委員全員の選手時代の写真をまとめたアルバムを土産用に作った」と自慢げに披露し「官房機密費を使った。1冊20万円する」と踏み込んだ。事実ならIOCの倫理規定違反にも問われかねない内容だ。
しかも馳氏は、当時の安倍首相から「必ず(招致を)勝ち取れ。金はいくらでも出す。官房機密費もあるから」と告げられたことも明かし、「それ(アルバム)を持って、世界中を歩き回った」と語ったという。
さらに、自らの「はせ日記」と称するブログに、安倍首相の“指示”を受けて、当時の機密費を扱う官房長官だった菅氏にも報告し、同氏から「安倍総理も強く望んでいることだから、政府と党が連携して、しっかりと招致を勝ち取れるように、お願いする」とハッパを掛けられたことも明記。それが判明した際、馳氏も事実関係を認めざるをえなかった。
立憲民主党はこのブログも含めて「IOCの倫理規定違反が疑われる行為。官房機密費が使われていたとすれば大変な話だ」と勇み立つ。同党として終盤国会の攻防の中で馳氏だけでなく菅氏の参考人招致も与党に迫る構えだが、自民執行部は徹底拒否する方針。
菅氏の事務所もメディアの取材に対し「ご質問の件は承知していない。馳氏は発言を撤回したと聞いている」と固く口を閉ざしている。
その一方で、馳氏がブログに記した「ともだち作戦」という言葉について、当時の都知事で現在日本維新の会所属の猪瀬直樹参院議員が、都庁ホームページ「知事の部屋」に「重要なのは友達作戦と絆作戦」と記していたことも判明した。今のところ猪瀬氏もメディアの取材に口を閉ざしているが、維新も巻き込んでの騒ぎともなりつつある。
菅氏は官房長官在任中「86億円」使う
そこで問題となるのが「いわゆる機密費の存在とその使途」(政界関係者)だ。「内閣官房報償費」が正式名称で、「国政の運営上必要な場合に、内閣官房長官の判断で支出される経費」と規定されている。
この機密費が予算に計上されたのは終戦直後の1947年からで、近年は年間16億円余が予算化されてきたが、その後減額され、現在は総額14億6165万円が毎年計上され、そのうち12億3021万円が内閣官房長官の取り扱い分、とされている。
そもそもこの「機密費」は、内閣官房だけでなく各省庁にそれぞれ一定額が予算計上されている。もちろん官房機密費の額が群を抜くが、外交交渉を担う外務省の「機密費」がさらに巨額。ただ、関係者によると「内閣官房と外務省の機密費は事実上一体運用され、首相による首脳外交には双方の機密費がそれなりの配分で使われてきた」(外務省幹部)とされる。
そうした中、今回の“機密費騒動”で俎上に上げられた菅氏が、7年8カ月余の官房長官在任中に使った機密費総額は「86億円超」という巨額に上ることが、すでに明らかになっている。このため、菅氏は首相だった安倍氏の了解も得て、その中から五輪招致の活動費に支出していたと指摘されたわけだ。
今回の騒動に先立ち、過去には「官房長官が機密費を選挙活動に使った」として大阪市の市民団体が告発したケースもある。麻生太郎内閣の官房長官だった河村建夫氏が、政権交代選挙となった2009年8月の衆院選での自民惨敗を受け、在任中に2億5千万円もの機密費を引き出していたとして「背任罪・詐欺罪」で告発されたものだが、後日不起訴処分になっている。
「外遊の選別」「国会対策費」などの“証言”も
もともと、官房機密費の使途をめぐってはさまざまな「疑惑」が取り沙汰されてきた。歴代官房長官の中で「外遊する与野党国会議員への餞別に充てた」「国会対策で一部野党に配った」「有力なジャーナリストを懐柔するために使った」などと“証言”する向きも複数存在するのは事実。
ただ、その実態は「闇に包まれたまま一向に解明されず、現在に至っている」(自民長老)のが実態。今回も馳氏をはじめほとんどの関係者は一様に口を閉ざし、取材も受け付けない対応を続けている。
そうした状況に対し、多くの有識者からは「今回の馳氏の発言を聞き、それを裏付けるブログもみれば、誰が見ても機密費の悪用は隠しようがない。余りにも突っ込みどころ満載で、笑い出したくなる」(民放テレビコメンテーター)との辛辣な声が相次ぐ。
その一方で、与野党から「今回の機密費騒動での自民実力者の利害得失」(同)に視点を据える向きもある。
馳氏を「手先」として動かしたとされる首相経験者の安倍、菅、森3氏は、死去した安倍氏は別として、現在は森氏が麻生太郎副総裁と並ぶ岸田首相の“後見役”を自認する一方、菅氏は党内の「反岸田勢力の旗頭」の立場にある。
しかも、安倍氏に関しては「桜を見る会」への機密費支出問題が取り沙汰された経緯もあり、最大派閥の安倍派にも批判の矛先が向きかねない状況でもある。
これも踏まえて与党内では、「岸田首相にとっては、今回の機密費騒ぎを『安倍・菅政権の汚点』として、岸田降ろしのうごめきを抑え込む要因にもできる」(首相経験者)とのうがった見方すら出始めている。
支持率回復に向け「身を切る改革」の覚悟は…
もちろん、そうした闇試合をうんぬんする前に、膨大な機密費に対する国民の疑惑が、さらなる政治不信拡大につながらないよう、「行政府の政府だけでなく立法府の国会が連携して、現在の機密費制度の改廃に取り組む」(官房長官経験者)ことが必要なのは論を待たない。
それだけに、政権維持の正念場に立たされている岸田首相が、「機密費の縮減」や「一定期間後の使途公開」など“身を切る改革”にまい進すれば、「支持率回復のきっかけになる」(自民長老)という声も出るが、はたして岸田首相にその覚悟があるのかどうか……。
●民間シンクタンク調査「岸田内閣支持率16.8%」の衝撃… 11/29
・必死の大メディア「減税で支持率が落ちた」の大嘘で世論を誘導
岸田政権の支持率下落が止まらない。しかし、その原因を「減税政策を主張したから」とする一部の論調には疑問がある。
連日公表されるメディアの世論調査は、「減税政策を評価しない〇〇%」というストレートニュースを垂れ流しているが、果たして岸田政権の支持率下落は減税政策自体が嫌われているからなのだろうか。
国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は「独自の世論調査の結果、岸田政権の支持率下落要因は、減税政策そのものではないことが分かった」というーー。
岸田内閣を「支持する」「やや支持する」の合計は16.8%
筆者は「減税政策=支持率下落という誤った世論形成が日頃から増税を求める大手メディアによって中心になされること」を危惧したため、民間シンクタンクの調査研究として、大手インターネット世論調査会社に委託し、岸田政権の支持率下落と減税政策の関係について分析した。
具体的には、一般社団法人救国シンクタンクでは、2023年11月14〜16日、大手インターネット世論調査会社に委託し、有効回答数1044人(18〜79歳の男 女/全国/人口構成比割付)で、減税に関する世論調査を実施した。このアンケート設計自体には恣意性はなく、同調査会社のモニター調査システムをそのまま利用した。その結果として岸田政権の支持率下落要因は、減税政策そのものではないことが分かった。
具体的な設問と回答は下記の通りであった。
1 「あなたは岸田内閣を支持しますか?」
「支持する」「やや支持する」の合計が16.8%、「あまり支持しない」「支持しない」の合計が74.7%。支持を不支持が大幅に上回る回答結果となった。
2 「岸田内閣が任期途中で退陣した場合、その原因は減税政策を主張したからだと思いますか?」
「そう思う」が11.0%、「そう思わない」が51.5%、「分からない」が37.5%。岸田政権の支持率下落の主因として、減税政策そのものが理由とは考えられていないことが分かった。
つまり、仮に岸田内閣が支持率下落を受けて、何らかの理由によって退陣したとしても、有権者の多くはそれが「減税政策を主張したからだ」とは思っていない。岸田政権の支持率下落要因を「減税政策そのものにある」と関連付けて報じる大手メディアの報道姿勢は極めて問題だ。
岸田政権が減税を実施したところで、後から増税されるなら意味がない
大手メディアはそもそも増税論調のメディアが少なくない。特に新聞などは自分たちが軽減税率という政府からのお目こぼしを受けているせいか、増税を実質的に礼賛する主張を書き連ねている。軽減税率は増税を求める政府が業界をコントロールするためのツールに過ぎない。したがって、その恩恵を受ける大手メディアはあえて岸田首相以外の他の政治家に見せつけるかような論調を展開し、二度と減税という単語が政治家の口から出てこないようにしようとしているように見える。
では、岸田政権が実施しようとしている減税政策は、何故支持されていないのだろうか。
3 「あなたは岸田政権が提示した『所得税減税』政策を支持しますか?」
「支持する」「やや支持する」の合計が28.4%、「あまり支持しない」「支持しない」の合計が55.3%。支持を不支持が大幅に上回った。
4 「『所得税減税』政策について「あまり支持しない」「支持しない」と回答した方に質問します」その理由について教えてください。
1位「短期間の減税後にそれ以上に増税されることがわかっているから」53.6%、2位「岸田首相の減税政策が単なる選挙対策に思えるから」45.9%、3位「恒久減税または複数年に渡る減税を 行うべきだから」29.8%という結果であった。
5 「あなたが減税すべきと考える国税をお教えください。
1位「消費税」63.5%、2位「所得税」50.2%、3位「ガソリン税」48.5%、4位「相続税」24.6%、5位「贈与税」18.8%
結局、岸田政権の減税政策は「実際には減税政策として受け止められていない」ということだ。つまり、減税政策自体が否定されているのではなく、有権者の多くは「岸田政権の減税政策=偽減税だ」と考えているということだ。
実際、岸田政権の偽減税政策はまがい物だ。僅か1年の所得税減税政策では国民は後に続く増税を前提として貯蓄に回す可能性が高い。減税政策は複数年以上継続する前提で初めて有効に機能する。
大手メディアの世論調査方式は不適切だ
岸田政権が求めているものは、目の前に迫る総選挙のためであって、減税政策の効用を最大化することを目指していない。国民は岸田政権の浅はかな意図はお見通しなのだ。
直近では岸田政権はガソリン税のトリガー条項を検討するとしている。しかし、今から検討するのでは、実際にはその減税は来年の後半以降ということになるだろう。現在、エネルギー価格は既に下落傾向を示し始めており、来年には価格高騰が沈静化する可能性も十分にある。トリガー条項が必要な時にあえて発動せず、それが不要になる時期を見越して検討を開始するなど、国民を愚弄するのも甚だしい。そもそもトリガー条項という名称を返上すべき偽減税議論に辟易する。
さらに、年代別データを見ると、岸田政権の所得税減税政策の支持者は18歳〜40代合計33.8%、50代以上の合計23.8%と所得税減税に関する世代間ギャップが背景にあることも分かった。
所得税を現役で支払っている層の所得税減税を否定する人の割合は相対的に低い。当たり前のことだが、これは重要なポイントだと言える。
大手メディアの世論調査は今回のように日本の人口統計の年代・性別に割り付けた調査ではない。彼らの調査はRDD方式という電話に直接架電し回答を求める方式を取っているため、その回答者は60代以上の高齢者に偏っている。突然、自宅や携帯に見たことない番号から電話がかかってきて、自らの政治的志向について警戒心もなく回答する層をターゲットにした調査なのだから当然だ。本件のように所属する年代で回答内容が大きく異なる調査内容の場合、RDD方式が不適切であることは言うまでもない。
それらの偏ったサンプルによる調査を公表することは「減税政策は支持されない」という世論誘導づくりのためのアンケートのようにも見える。ある種の政治家に対する脅しとも言えるだろう。また、多くの国民も大手メディアの調査結果に違和感を覚えながらも、それ以外の調査がほとんどない中で変だと思いながら調査結果を受け入れさせられている。
アンケート調査は国民の人口構成に合わせた調査が可能であるインターネット調査を基本とするべきであり、なおかつ調査主体である新聞等は自らが軽減税率の対象となっていることを調査分析結果に明記すべきだ。
岸田政権の減税政策は偽減税として国民が理解している
「岸田政権の減税政策は偽減税として国民が理解している」ので支持されていないだけであり、国民は減税政策そのものを否定しているわけではない。正しい世論調査結果の普及が必要である。
ちなみにここで、米国で2023年10月に行われた「The Economist/YouGovpoll」の調査を紹介したい。
米国の世論調査は、調査結果の公表に際して、調査手法や回収サンプル属性だけでなく、クロス集計なども提供している。世論調査の数字を見た人がより深く内容をチェックし、報道内容の反証可能性を残すことは当然のことだからだ。これが本物のプロ意識というものだろう。
逆にそうでなければ、メディアが世論誘導しようとしている、と激しい批判にさらされることにもなるだろう。日本の大手メディアが「国民は減税を望んでいない」と事実上誘導しているように……。
ただし、高齢者に偏った回収サンプルの世論調査でも分かることもある。そのような調査にも関わらず、その結果で内閣支持率が26.9%しかなかったという岸田首相にとって重すぎる事実だ。仮に回収サンプルの年代属性が日本国民の統計データと同一のものだったとしたら、その結果はいかなるものになっていたのだろうか。
●トリガーで鈴木財務相「事前に説明受けていない」 11/29
鈴木俊一財務相は29日の参院予算委員会で、ガソリン税を軽減するトリガー条項の凍結解除に関し、与党と国民民主党が協議入りしたことについて、岸田首相から事前に説明がなかったことを明らかにした。
質疑の中で立憲民主党の杉尾議員は「国民は総理を信じられなくなっている。その最たるものが税をめぐる迷走だ、増税減税、何をやりたいのか、全くわからない」と指摘し、ガソリン税のトリガー条項解除検討について事前に相談があったか鈴木財務相に尋ねた。
鈴木財務相は、トリガー条項については2022年も与党と国民民主党の協議があり、その際に色々な課題を指摘されたと言及し、「また協議をするということについて、事前に私は説明を受けていない」と述べた。その上でトリガー条項の実施には国と地方合わせて1.5兆円の財源が必要であり、協議の中で財源についても検討されるとの認識を示した。
これを受けて杉尾議員は岸田首相に対し「肝心な財務大臣にも説明せず、総理が唐突に持ち出した。一度検討して断念した経緯があるが、今度も検討だけで終わるのではないか」と追及した。
岸田首相は「エネルギーの激変緩和措置を来年(2024年)4月まで継続することを政府として確認しているが、その先の議論として検討するとなっていたトリガー条項について、与党と国民民主党の政策責任者の中で検討していくことは有意義だ」と述べた上で「検討の行方を踏まえつつ、政府としても適切に対応したい」と強調した。
●東海第2原発の重大事故時…人口91万人でも避難は「最大17万人」 11/29
茨城県は28日、日本原子力発電東海第2原発(同県東海村)で炉心が損傷する重大事故が起きた場合、放射性物質が周辺にどのように拡散するかのシミュレーション(予測)結果を公表した。事故対応状況や気象条件を変えた計22パターンのうち、原発から30キロ圏内の避難者は最大で約17万人に上った。県は予測結果を活用し、避難計画の実効性を検証する。
原発30キロ圏内の人口は全国最大の91万人超
東海第2原発は首都圏唯一の原発で、2011年の東日本大震災後、運転停止中。東海村など重大事故時に即時避難する半径5キロ圏内に6万4451人が居住。毎時20マイクロシーベルトの空間放射線量で避難となる半径30キロ圏内を含めると、14市町村で全国最大の計91万6510人が住む。
予測は県が日本原電に要請した。事故状況をフィルター付きベントなど事故対策設備の一部が機能した場合と、「ほぼ全て」が機能喪失した場合の2通りを想定。それぞれ気象条件を
(1)同じ風向きが長時間継続
(2)同じ風向きに加えて降雨が長時間継続
(3)ほぼ無風
と変え、24時間後の放射性物質の拡散範囲を分析した。
避難者が最大となるのは「水戸市方面が風下かつ降雨あり」
避難者が最大となったのは、原発から南西、水戸市の方向が風下となり降雨を伴った場合で、対象人口はひたちなか、那珂両市で計10万5191人。5キロ圏内からの避難者を合わせると計16万9642人となる。同じ風下方向で降雨がない場合でも、水戸市で約5万9000人の避難者が出た。
一方、原子力規制委員会の審査で用いる重大事故を想定したもう一つのケースでは、5キロ圏内を除いて避難が必要となる地域は発生しなかった。
東海第2の事故時の広域避難計画は県のほか周辺5市町が既に持ち、他自治体も今後策定する。県の担当者は「予測結果をもとに、計画での避難にかかる時間や車両配備などの実効性を検証する」としている。
予測結果は県ホームページ「原子力安全対策課」で公開している。(竹島勇)
大井川和彦知事は避難の実効性に自信を見せるが…
茨城県が重大事故時の放射性物質の拡散予測を公表した日本原子力発電東海第2原発は、岸田政権が再稼働を目指す原発の一つに挙げる。再稼働は地元自治体の広域避難計画策定が条件で、予測結果は計画づくりの大前提となるが、想定には甘さが否めない。
東海第2の再稼働を巡っては2021年3月、水戸地裁での訴訟で「避難計画の実効性がない」などの理由から運転を認めない判決が出た。大井川和彦知事は28日の記者会見で「最大でも17万人の避難という結果が出た。相応の準備をすれば(避難計画の)実効性は確保できる」と述べた。
想定が少なすぎる?
ただ今回の予測は、安全対策が「機能した」「機能しなかった」の二つの想定しかなく、放射性物質の放出時間も事故後24時間限定で、想定規模は福島第1原発事故より小さい。避難者が出るケースも隕石(いんせき)落下やミサイル攻撃など「現実的には考えにくい」とするが、ウクライナ紛争では実際に軍事攻撃の標的になるなど「想定外」はあり得る。
実際に重大事故が起きれば、避難対象地域外で自主避難者も出る。原子力防災に詳しい環境経済研究所(東京)の上岡直見代表は「人員や車両を整えれば避難はできても、その間に住民の被ばくが許容量を超えたら意味がない。被ばくに関しどう実効性を検証するのかが見えない」と話す。
県は条件や設定を追加した分析を原電に求めた。真に「実効性ある」避難計画づくりにはまだまだ時間を要する。
●経済音痴の岸田首相が前のめり…年金制度「改悪」に大ブーイング 11/29
政界通 岸田政権がまたも「経済音痴」ぶりをみせ、経済界がブーイングだそうだな。
財界通 企業年金の「改悪案」のことか?
金融庁が旗振り役
政界通 そうだ。年金の資金をもっと積極的に運用しろと年金基金に圧力をかけているが、そうすれば成績がマイナスになるリスクも増す。首相官邸や旗振り役の金融庁の言い分を聞くと、マイナスになることはないと言わんばかりの能天気ぶりだ。
官界通 10月初め、首相肝いりの「新しい資本主義実現会議」の下に資産運用立国分科会が新設され、そこで改革に年内にも結論を出すとなって、霞が関の官僚も「何で?」と驚いていた。
財界通 日本人の大半は「安心・安全」が第一で、年金で高いリスクは取りたくない。そんなことも分からないのかという声が、経済界や労働界に多いね。
官界通 首相は2カ月余り前にも「日本に資産運用特区をつくる」と言い出した。力ずくでも個人の「虎の子」を証券投資へ向かわせようというのは、誰の発想なのかね?
政界通 取り巻きに発案者がいたとしても、首相自身が前のめりになっている。やることが裏目に出て内閣支持率が下がっているので、焦っているのかな。
財界通 確かに、年金基金が加入者に約束する「予定利率」は2%台前半まで下がり、物価の上昇率が2%を超えているから、運用利回りを上げたいのは分かる。でも、運用のプロが工夫してもその程度にしか回らないのだから、無理筋だ。
官界通 議論に参加した経団連代表も「企業年金は、労使自治の下で安全かつ効率的な運営が求められる」と指摘し、株式投資の拡大を狙うような「改悪」にきっぱり反対した。
財界通 当然だ。企業年金は退職金の多くを預けた資金に、企業が掛け金を投じて給付額を維持している。仮に運用成績がよくなっても掛け金が減るだけで、給付額はすぐに上がらない。
政界通 異次元の子育て支援策や医療費膨張への歯止め策など、年末へ向けて舵取りが難しい問題が控えているのに、どう着地させるのか。先が見えないね。
●遂に支持率20%台...ジャーナリストが指摘する「岸田内閣」3つの構造的欠陥 1/29
民間企業なら人事の任命責任者は辞任
内閣支持率20%台の超低空飛行、迷走を続ける岸田文雄政権の構造的な問題はどこにあるか。
それは政策能力云々以前の「危機管理」や「ガバナンス」といった政権運営と維持のための基本中の基本の欠如だと私は思う。
さらに、これを担う「側近」の存在もない。
この2年間、岸田政権はここを怠り、手を打ってこなかったツケがいま支持率となって表れているのではないか。検証したい。
「政権という組織が成り立っているのが不思議。民間企業ならこんなに人事で不祥事が出れば任命責任者は当然責任をとって辞任する。社員も『こんな会社じゃまともに評価されない』と嫌気がさして逃げ出す。それがのうのうと成り立っているのが政治の不思議なところだ」(民間シンクタンク代表)
今年9月に、低迷する支持率の挽回も考慮しながら行った内閣改造人事。ところが、副大臣、政務官人事は異例のスキャンダル続出ですでに3人が辞任した。
岸田首相はいつもの決まり文句「適材適所」と胸を張ったがとんでもない。山田太郎文部科学政務官は女性問題で、柿沢未途法務副大臣は選挙違反事件への関与で、そして神田憲次財務副大臣は税金滞納でそれぞれ辞任。特に神田氏は、補正予算や経済対策を主導する財務省本体の副大臣でありながら、2013年から22年にかけて自身が代表取締役を務める会社が保有する土地と建物の固定資産税を滞納した常習犯で、なんと4回も差し押さえを受けていたことが分かったのだ。
法務副大臣が選挙違反という法を犯した疑惑を招き、財務副大臣が税を滞納するという「まさにその役職と違反の中身がリンクしている。ブラックジョークとしての適材適所」(立憲民主党幹部)だが笑える話ではない。しかも、神田氏の更迭にも時間がかかった。
派閥が推すとそのまま素通り
なぜ、こんなことが起きるのか。これこそ象徴的な「危機管理能力」の欠如だ。
「副大臣と政務官人事は、自民党の各派閥から推薦で上がってきた議員を配分する仕組み。それをやるのは岸田首相ではなく側近や官房長官など。なので、派閥が推してくればそのまま素通りする。任命のあと週刊誌などは総力を挙げて不祥事など取材する。すると出るわ出るわでこんなことになってしまう」(自民党ベテラン議員)
しかし、過去人事で危機管理を徹底していた政権もある。2001年から5年続いた小泉純一郎政権だ。そこには陰で支えた飯島勲秘書官がいた。私が執筆した『汚れ役 側近・飯島勲と浜渦武生の「悪役」の美学』(2008年・講談社)の取材で、飯島氏から聞いた危機管理の鉄則がこの「身体検査」だった。
「まずは政治とカネ。閣僚はもちろん副大臣や政務官なども政治資金収支報告を徹底して調べる。こんなのは当たり前。もし怪しいのが見つかったら、先に修正させるなんていうこともやった」
飯島氏の凄さは、これ以外にも内閣情報調査室(内調)や警察庁などとのパイプを使って情報を確認したことだ。また、永田町の記者クラブに属する全国紙やテレビキー局の政治部ではなく、独自にスポーツ紙や週刊誌などのメディアに強力な人脈を築いてきたこともあって、そうしたところからスキャンダル情報なども大量に収集できた。
岸田政権にここまでチェックする側近はというと「官僚や議員では不在」(岸田派議員)という。仮に飯島氏なら、山田氏のケースは週刊誌筋などから、すでに警視庁が情報をつかんでいたとされる柿沢氏のケースはその筋から、また神田氏のケースは明らかに国税筋から情報を容易くつかみ処理しただろう。
岸田首相の「還元」をひっくり返した鈴木財務相
さらに岸田政権に欠けている「ガバナンス」。
最近の例ではこんなことがあった。岸田首相が政権浮揚の起死回生策として掲げた経済対策。物価高に喘ぐ国民に最も訴える政策だ。
夏ごろからアドバルーンを上げ始め、期待感を持たせたてきた。その中でも、過去2年間で所得税と住民税の税収が合わせて約3兆5000億円増えたことを踏まえ、「物価高対策として、国民に分かりやすく税の形で直接『還元』する」と言い続けてきた。いかにも税を頑張って納めている国民に感謝し、生活が苦しいいま戻しますと耳障りのいいアピールだ。
ところが……。
「(過去2年間で)税収が増えた分は、政策経費や国債の償還などですでに使っている。減税をするというなら国債の発行をしなければならない」
11月8日衆院財務金融委員会で鈴木俊一財務相は、今回の経済対策の財源を聞かれこう答えたのだった。
岸田首相がこれまでずっと使ってきた「還元」をひっくり返すものだ。増えた税収3兆5000億はもう使って財源はない。今後、減税や非課税世帯支援で国民にお金を配るが、その原資は新たに国債で借金する。国債の返還は将来的に国民。つまり、いま配るお金は国民自身が借金して作りいずれ自分たちで返せということなのだ。
岸田首相と距離を置き始めた財務省
さらに、所得税減税もたった一回きりでしかも実施は来年。評判は散々で、メディアの世論調査では、支持率回復どころか「経済政策に期待しない」がゆうに過半数である。
自民党の財務政務三役経験者は言う。
「そもそも財務省とベッタリの岸田首相は、今回の所得税減税や還元なども事前に話をしていたはず。しかし、鈴木財務相が岸田首相の面子を潰すような発言をした背景には、官邸と財務省のパイプ役だった木原誠二官房副長官が週刊誌報道で官邸を離れ、関係が希薄になっていること。また、支持率対策のために人気取りで政策がふらつく岸田首相に財務省が距離を置き始め、主導権を握り始めた」
まさに「ガバナンス」の崩壊だ。
岸田政権の「還元」や「減税」の迷走について安倍政権時代官邸にいた元官僚は言う。
「大きな勝負をするのだから、まず官邸内で官房長官や副長官が方向や戦略を定め、閣僚内や各省庁のトップ、党の実力者などと事前に話をしてストーリーの意思疏通をはかる。現政権はそれがまったくできていない。たとえば、臨時国会前の会見で『還元』や『税制の軽減』など思わせぶりな言葉を使ってしまい、減税世論を盛り上げてしまったために、『なんだ、減税は消費税じゃないのか、所得税か』と逆にがっかりされたり、党内の根回しができていないから所得税減税に批判が出たりする」
かつての「水面下の調整」がなくなった?
この元官僚は、税に関する政策決定で、2018年に安倍政権が消費税10%を決めた舞台裏を挙げる。
当時、政権幹部らはあからさまに賛否両論を展開した。麻生太郎財務相は「やる」とあらゆる場で公言。安倍氏の経済ブレーンの甘利明氏は「慎重」にと発言。そのほか閣内や党内の実力者たちの意見も真っ二つ。
じつは当時、私は官房長官だった菅義偉氏に直接聞いた。閣内不一致、党内不一致じゃないか。決着させられるのか―と。菅氏は笑ってこう答えた。
「大丈夫。ちゃんと(閣議のあとなどに)みんなで顔つき合わせて打ち合わせしてるから」
つまり、麻生氏や甘利氏や党の幹部らの発言はあえて役割分担しているのだった。世論は賛否ある。その中で、政権内や与党内でも賛否議論百出の状態を作り、最後には安倍首相が苦渋の決断をするという流れだ。そうやれば、反対派のガス抜きもできるし、国民からは侃々諤々の末の決断に見えるというわけだ。
また当時、反対していた公明党に対しては、公明党が主張していた軽減税率という交換条件を菅氏がまとめ上げ、創価学会の幹部などと折衝、10%を受け入れさせた。裏で仕組まれた見事な「ガバナンス」だ。
「今回の減税で、こうした水面下の調整があったとは思えない。いま根回し役の側近は一体誰なのか。一事が万事これから他の重要政策でも危ぶまれる」(前出元官僚)
ダブルの危機管理がピンチを救っていた安倍政権
菅氏にはこんなエピソードもある。
2012年、安倍政権発足直後に、私は官房長官に就いた菅氏にまずやりたいことは何かを訊ねた。
「内閣人事局を作りたい」
私は政策を聞いたのに返ってきたその答えにゾッとした。政権運営のためにそこまでやるのかと。つまり、内閣人事局は、官邸が霞が関の官僚人事を決める仕組みだ。政権がやりたいことをやるために抵抗する官僚を人事で黙らせる。言うことを聞かない官僚は飛ばす……。ガバナンスにおいてこれほど効果的で恐ろしい手段はない。
菅氏はその後、この制度を利用して人事を駆使。霞が関の省庁を掌握し、政治主導ガバナンスをキープした。また、警察庁や公安、内調などにも情報網を張り巡らせ、身体検査はもちろん、スキャンダルや不祥事についても情報収集し先手対応した。
安倍政権には、側近に経産省官僚の秘書官だった今井尚哉氏もいた。安倍首相を守る危機管理に徹したため菅氏と対応がぶつかることもあった。
たとえば、閣僚の不祥事が発覚した際に、菅氏は国会運営などを考えて早くクビをきるべきだと首相に進言する。一方の今井氏は、いま更迭すると安倍首相の任命責任に関わってくるので少し待って通常の内閣改造でさらっと代える方がいいと進言する。
政権全体を守るか、安倍個人を守るかの違いはある。しかし、ダブルの危機管理が政権のピンチを救ってきたのだ。
政権運営の絶対条件は「危機管理」と「ガバナンス」
改めて岸田政権の2年間を振り返る。
人事などの危機管理不能の例としては、旧統一協会と関係のあった閣僚の処遇、自らの長男の公私混同を疑われる問題への対応、今回の神田副大臣の更迭のタイミングの遅さなどがある。
一方でガバナンスは、政策を進める際の混乱ぶりを見ると機能していない。旧統一教会の解散命令請求やLGBT関連法案は「やらない」から急に「やる」へ。また、国会議論をすっ飛ばして世論に問うこともなく将来のサラリーマン増税の方針を打ち出したり、防衛費増額や原発運転延長を決めたりする唐突さもある。目玉政策といきなり子育て・少子化対策を打ち出すも財源問題は不透明だ。省庁や与党などとどこまでシナリオを詰めて反対勢力を制しているのか。
政権運営の絶対条件と言ってもいい「危機管理」と「ガバナンス」、そしてその役割を担う側近。それらなくして政権浮揚なし。今後も岸田政権は負のスパイラルを一気に下って行くことになるだろう。
●「現金を封筒に入れて」「教員が回収役に」…なぜ給食費は“昭和的”なのか 11/29
自治体独自で小中学校の給食費を無償化する動きが広がる中、東京23区内だけでも既に無償化を実施している区としていない区があるなど、“自治体格差”が生まれている実情がある。
家族の経済学に詳しい東京大学 経済学部 山口慎太郎教授は「すべての子どもたちが必要とする給食こそ、親の経済面などに左右されることなく国が一律で無償化を実施すべき」と提案する。
さらに山口教授は国が給食費の一律無償化を担うメリットについて「自治体による“子育て世代に人気はあるが効果がない政策”や自治体間の行き過ぎた競争の防止」や「教員が親から給食費を回収する労力のカット」などがあると説明。
一方で、内閣府が6月に公表した「こども未来戦略方針」には「学校給食の実態調査を速やかに行う」と明記されている。いまだに国は一律無償化実施に動けていないのが現状だ。
これに対し山口教授は岸田政権が掲げる「異次元の少子化対策」の中で注目を浴びている「児童手当の拡充」の半分以下の予算で給食費無償化は実現可能であると指摘。「出生数ばかりに目を向けるのではなく、『すでに生まれてきた子どもたち』により良い環境を用意することも社会にとって重要なのではないか」と述べた。
「給食費無償化の受益者は実は親ではなく子どもだ。子どもが将来立派な大人に育ってくれれば、それは社会にとっても大きな利益になる。 税金でカバーすることに全く問題はない」
給食費のキャッシュレス化は実現可能?
この給食費の一律無償化について教育経済学を専門とする慶應義塾大学の中室牧子教授は「子どもに投資をすることで将来社会に還元されるという『教育の投資的な側面』は大事だ」としつつ、「一方で千葉商科大学の小林航教授が指摘している『税金で給食を負担するということは、『子どもがいる高所得の親』の給食費を『子どもがいない低所得の人』の税金で賄うということになり社会の格差を広げる』という観点もある。この不公平感を国民がどう考えるか、ちゃんと議論すべきだ」と述べた。
さらに中室教授は34.8%しか進んでいない給食費の「公会計化」について「『私会計』になっている自治体では、封筒に現金を入れて先生に給食費を渡す必要があるところも。これは保護者の側も不便であり、徴収しなければいけない教員側にとっても大きな負担になっている」と山口教授の指摘に同意した。
なぜ、給食費などをはじめとした公金納付のデジタル化は進まないのだろうか?
中室教授は「官公庁側の言い分は『システムを変えるにはコストがかかる。費用対効果が悪い』というもの。だが、給食費は毎年払い続けるものであり、さらに、保育所の延長料金や入試の検定料・入学金もキャッシュレス化できていない。出張や入院などで現金が用意できないケースもある。現代の暮らしに合わせたやり方に変えていくべきだ」と述べた。
●立憲・安住氏がパーティー収入記載漏れを陳謝 自主点検で判明し修正 11/29
立憲民主党の安住国対委員長は29日、自身の政治資金パーティーの記載について、1団体30万円分の記載漏れがあったとして「私の責任だ」と陳謝した。
パーティー収入の総額は変わらず、団体と金額の内訳の記載が漏れていたという。安住氏によると28日に、2022年分の政治資金収支報告書の訂正を総務省に届け出ているという。
安住氏は記者団に対し、自主的に点検した際に気づいたと明かし、「私の責任だ。申し訳ない。先頭に立つ身として分かった段階で報告するのが義務だ」と陳謝した。
●参院予算委 杉尾秀哉議員「岸田総理は国民に信頼されていない」 11/29
参院予算委員会で11月29日、「令和5年度一般会計補正予算」について締めくくり質疑が行われ、杉尾秀哉議員が(1)岸田総理の政治姿勢(2)大阪万博(3)馳知事の東京五輪誘致をめぐる官房機密費発言――などの問題を追及しました。
(1)岸田総理の政治姿勢
杉尾議員は、岸田政権の支持率暴落の原因を「アピールや工夫の問題ではない。国民は総理を信じられなくなっている」として、岸田総理の「税をめぐる迷走」を指摘しました。
トリガー条項の解除について、昨年春に与党と国民民主党で協議を行い断念したにもかかわらず、岸田総理がまた協議を提案したことについて、杉尾議員は、「岸田総理は財務大臣にも説明せずに唐突に持ち出した。また断念するのではないか」「今度できなかったら総理の信用問題」と強く疑問を表しました。
(2)大阪万博
杉尾議員が1カ月前から要求している資料が出てこないことに触れ、「全体像はいつ示されるのか」との質問に、自見大臣は「早急に示せるように作業を加速する」と答えるにとどまりました。
会場のシンボルとなる「リング」について、わずか5mあげるだけで1億円かかるとの試算について、杉尾議員は「3分の1の予算でできるという専門家もいる。本当に精査したのか」と問いましたが、政府は「プロデューサーから提案があり、前回の増額の時に認めている」と答えました。杉尾議員は、「中抜きしているのかという疑惑がある。1億円の根拠を示してほしい」と述べ、予算委員会に資料を出すように求めました。
また、「パビリオンA50カ国のうち建設事業者が決まっているのは30超」との政府の答弁に対して、杉尾議員は、「本当に間に合うのかというのが大方の国民の意見」と指摘しました。
(3)馳知事の東京五輪誘致をめぐる官房機密費の発言問題
馳知事の官房機密費の発言問題について、官房長官が「誤解を与えかねない」と発言したことについて、杉尾議員は、「機密費をばらしたから不適切なのか。そう言っているようにしか聞こえない」と述べました。
岸田総理に対しては「馳知事が発言を撤回すれば済む問題なのか」と問うと、「統括する立場でない馳知事自身が発言したことが問題」と答えました。杉尾議員は「立場にないといっても政府のお金を使っている。もっと危ない話だ」と指摘し、「事実の精査が必要」と馳知事の参考人招致を予算委員会に求めました。
さらに、杉尾議員は「官房機密費は違法なものに支出してよいのか」と質問すると、松野官房長官は「会計検査を受けている。違法行為に使ってはならない」と答えました。
杉尾議員は、「機密費は問題が多い。何に使われているのか不明、不適切な支出であっても使途を言わないということで国民に明らかにならない。税金なのに、理解が得られない。一定期間後に使途の公開等透明性を高めるべきだ」と訴えました。
質疑終局後、採決に先立ち討論に立った高木真理議員は、冒頭「国民の暮らしは、物価高、エネルギー価格高騰が続く中、実質賃金が18カ月連続のマイナス、年金も実質カットと苦しさを増している。一刻も早い手当が打たれるべきところ、政府の補正予算の提出はあまりに遅いものだった。しかも国民の可処分所得を増すための減税が届くのは来年6月と全く遅すぎることに国民は大いに失望している」と指摘。そのうえで、本補正予算の反対理由として、(1)物価高を加速させかねない大幅な財政出動が盛り込まれる一方でのバラマキ予算であるなど、何を目指しているのか分からないこと(2)補正予算でありながら財政法29条の求める緊要性の要件を満たしていないこと――を挙げました。立憲民主党は、物価高克服の緊急経済対策として家計・事業者への直接支援、省エネ、再エネへの大胆投資に絞った支援策を盛り込んだ組み替え動議を衆院に提出したことにも触れ、「人へ、未来へ、まっとうな政治へ。国民に寄り添い、信頼を取り戻す政治の実現を目指していく」と表明しました。
●岸田文雄内閣の支持率低下要因を分析 「パーソナリティな部分に不信感」 11/29
28日放送の『バラいろダンディ』で、金子恵美が岸田文雄政権の支持率低下の要因を語った。
上川外務相が「ポスト岸田」に?
番組は支持率が低下している岸田内閣で、「ポスト岸田」に上川陽子外務相が候補として挙がっているという話題を取り上げ、出演者がトークをする。
金子は上川外務相について「すごく堅実な方だし、とても面倒見がいい方で。議員をやめた人にその後のことも考えて、手伝ってくれているというか 。そういう姉御肌のところもある方」と語った。
上川外務相に期待感?
さらに金子は「権力闘争、永田町のそういうのはあまり好きではない。ガツガツ行くタイプではないんですが、 ただ党内からは次の選挙のことを考えたときに『岸田さんで選挙を戦うのは厳しい』と思っているから、国民受けするというか、 女性だし、そういう意味では期待感が上がってきているんだろうなとは思う」と解説。
そのうえで「岸田派なので、もう1回次の総裁を岸田派で行くのかなというのもあり」と指摘。さらに岸田派の林芳正議員も首相候補で「派閥のなかでまとまるのかというと、ウーンと思う」と話した。
岸田首相は「パーソナリティに不信感」
支持率が降下している岸田首相には「岸田さんね、上川さんもそうですし、保守派の人たちが担ぎたい人じゃなくなってきてるというふうに思う」と語る。
また「岸田さんももともとは人柄で。強い政策とか政治信条というよりは、なんとなく良い人柄があったはずなのに、なんとなく増税しそうな人とか、パーソナリティの部分で不信感を持たれたのは結構痛いかなと。そこで持っていた支持が失われつつあるなと思う」とコメントした。
アンチもいないがシンパもいない
続けて金子は「ここで岸田さんは、打つ手って結構ないと思うんですけど。アンチ安倍(晋三)は結構いましたけど、安倍さんってシンパも多かった。だからシンパを作る、これだという今までやっていないこと、たとえば憲法改正を真正面からやるとか」と指摘する。
そして「そういうことをしたほうが、党内のなかでもまだ岸田さんに対しては少しは見方が変わるんじゃないかと思うけど、アンチもあんまりいないけどシンパもいない っていうのは、政治家として安倍さんとちょっと違うところかなと思う」と話していた。
増税イメージが定着
岸田政権は支持率の低下が顕著で、各メディアの世論調査で支持率が最低を記録。
ネット上では「増税メガネ」というニックネームがつくなど、増税イメージが定着している。
●政権の発信「ミスマッチある」 萩生田氏 所得税減税などで 11/29
自民党の萩生田政調会長は、28日、東京都内で講演し、岸田政権の所得税減税などの政策発信について、「予告編が長く、本番の中身にちょっとミスマッチがある」と指摘した。
自民党・萩生田政調会長「予告編が長くてですね。予告と本番の中身がちょっとミスマッチがあるということに、たぶん国民の皆さんに違和感があるんじゃないか。例えば異次元の少子化対策。残念ながら異次元というワードから連想すると、ややスモールではないかと」
萩生田氏は、所得税などの定額減税について、「岸田首相は、還元という言葉を使ったあと黙っていたが、周りの人がいろいろメニューを言って、出てきたものの期待値が国民と合わなかった」と述べた。
そして「政策責任者として一緒に反省し、正していかなければいけない」と強調した。  
●岸田政権 立直しの道険しく 11/29
総合経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算が成立した。支持率が低迷する岸田文雄首相は国会審議で、対策の目玉となる所得税減税をアピールしたが、野党だけでなく与党からも効果を疑問視され不発に終わった。年末までに積み残した課題も多く、政権の先行きを危ぶむ声がじわじわ広がっている。
「政策の真意が国民に伝わっていないのではないか」。29日、参院予算委員会の採決に先立つ審議で支持率下落の要因を問われた首相は、率直な感想を語った。これに対し、立憲民主党の杉尾秀哉氏は「国民は首相を信じられなくなっている。最たるものが税を巡る迷走だ」と断じた。
今国会で局面転換を図った首相の思惑は、のっけからつまずいた。減税方針を「税収増の還元」と説明する首相を横目に、鈴木俊一財務相は過去の税収増はすでに振り分けられていると主張し、認識の違いが露呈。予算審議では野党から「還元」のフレーズを訂正するよう突き上げられ、「税金が戻ってくる意味で還元そのもの」と苦しい説明に追われた。
審議では少子化対策や、円安進行下での防衛費増額も取り上げられ、「減税の後には大増税が待っている」(立民の辻元清美氏)と追及される場面も。さらに自民党の派閥でパーティー券収入の政治資金収支報告書不記載が発覚し、「政治とカネ」を巡る問題に再び厳しい視線が注がれた。政府関係者は「予算委は政権の鬼門。予期せぬテーマが降りかかる」と話す。
臨時国会のヤマ場を乗り越えた岸田政権だが、この後も難問が山積する。政府は年末までに少子化対策の財源確保のための「支援金制度」など具体策を詰める。政府内には医療保険料への上乗せ額を「1人当たり月500円程度」とする案などが取り沙汰されているが、首相は「追加負担を生じさせない」と繰り返し、詳しい説明に及び腰だ。
12月前半にはマイナンバー制度で相次いだトラブルの総点検が公表される見通し。結果を受けて首相は焦点の現行保険証の来秋廃止の是非を判断するが、「マイナ保険証」の利用率は数%にとどまっており、廃止には強い反対が予想される。自民党関係者は「今は何をやっても『岸田が悪い』と言われる。森喜朗政権の末期に似てきた」と頭を抱える。
ここへきて首相は自民、公明両党に国民民主党を交え、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」凍結解除に関する協議入りを指示。これまで一貫して慎重だったにもかかわらず突然出てきたトップダウンの決定に、自民内からは「穴埋めの巨額の財源はどうするのか」との戸惑いが広がる。党四役経験者は「安定感が絶対的に不足している」といら立ちを隠さない。
首相が力を入れる減税や賃上げも、効果を実感するのは来春以降にずれ込む見込みだ。岸田派中堅は「浮揚する要素は見当たらない」と指摘。来年秋の総裁選をにらみつつ、「いろんな動きが党内で出てくるだろう。何が引き金になるか、政権が正念場に来ている」と語った。
●岸田首相、補正成立も支持率低迷 政策推進力に陰り 11/29
政府の経済対策の裏付けとなる令和5年度補正予算が29日、参院本会議で可決、成立した。所信表明演説で「何よりも経済に重点を置く」と宣言した岸田文雄首相は、まずは最初の課題をクリアした。ただ内閣支持率は低迷が続き、経済の立て直しという政策の推進力にも陰りが生じかねない状況だ。
補正予算成立を受け、首相は官邸で記者団の取材に応じ、「さまざまな議論が行われたが、日本経済はデフレ脱却に向けて正念場を迎えている。このチャンスをつかみ取らないといけないという点においてはご理解をいただけたのではないか」と審議を振り返った。
ただ、審議が始まって以降の報道各社の世論調査で内閣支持率は20%台となるなど最低を更新し続け、衆院解散・総選挙に打って出る環境は遠のいている。
首相にとっての救いは、野党の支持率も上向いていないことだ。自民党総裁任期は来年9月まであり、現時点で「岸田降ろし」の動きが表面化しているわけでもない。与党内には「今は政権を支えるときだ」(幹部)とのムードがある。
世論調査で経済対策に対する評価は芳しくないが、その裏付けとなる補正予算には、日本維新の会と国民民主党も採決で賛成に回った。国民民主が賛成の条件とした「トリガー条項」凍結解除をめぐる与党と国民民主の3党協議は、30日からスタートする。
協議入りを与党に指示した首相には、ガソリン税の一部軽減という新たな減税策の議論に野党を巻き込み、局面打開を図る狙いがありそうだ。ただ凍結解除には与党内にも反対論が根強く、その成否は見通せない。
 11/30

 

●《増税クソメガネ》岸田首相は「底が抜けた風呂桶」 “嫌われるワケ” 11/30
“増税クソメガネ”こと岸田文雄首相。かつてこれほどまでに嫌われた総理大臣がいただろうか。
「11月20日、読売新聞が行った世論調査では岸田内閣の支持率が24%と政権発足以来、最低を更新しました。同時期の毎日新聞の調査では21%。どちらにしても不支持が70%超という結果です。2012年に自民党が政権に返り咲いてから最低の支持率となっています」(全国紙政治部記者)
なぜこれほど嫌われるのか
前任の菅義偉・前首相の内閣支持率は74%に始まり、2021年9月の退任時には34%まで落ちたものの、岸田内閣よりは10%以上も高い結果に。なぜこれほどまでに岸田首相は嫌われるのか。ジャーナリストの大谷昭宏氏は、「初手から失敗だった」と指摘する。
「ちょうど政権に陰りが出てきたときに、もっと影の薄い岸田さんが総理になった。国民は8年にわたる安倍政権にうんざりしていましたから、安倍さんが辞めた後、精彩を欠いた菅さんが総理になってがっかりしているところにさらに影の薄い岸田さんときた。このとき自分なりのキャラを出して“安倍政権をぶっ壊す”“アベノミクスは失敗した”くらい言うべきだった。現に約30年も賃金は上がってないじゃないですか。さらに円安のため国民の財布の中は実質、3分の2に減っている。その安倍政権を否定できなかったところが最初の誤り」(大谷氏、以下同)
続けて、岸田首相の性格についても分析する。
「国民はそんなにばかじゃない」
「この人は目先のことしか考えられないんですよね。軍事力の増強で40兆円かかりそうだと言ったそばから、減税すると言ってくる。朝日新聞の世論調査ではこの減税政策におよそ7割の人が評価していない。その先に増税があることをわかりきっていて、減税をちらつかされたって国民はそんなにばかじゃない。
それから岸田さんは、開成高校を出ていますが、霞が関の同校卒業生の同窓会をものすごく大事にしているわけです。閣僚に初めて抜擢された小林鷹之・経済安全保障担当相、嶋田隆・元経済産業事務次官など開成OBを信頼している。財務省には開成OBが多く、財務省の言うことを聞きすぎるのも開成人脈を信用しきっているからともいえます。3代続いた政治家セレブという自信が根本にあるんだと思います。たとえそれが間違っていたとしても、安倍さんのようにそれなりのポリシーを持ってやれば一定数の国民には評価されるんです。強烈な個性もなければ政策もその場しのぎ。支持する理由が答えられないんですよね」
一方で岸田首相を支持するというのは杉村太蔵・元衆院議員。支持率が歴代最高を記録した小泉純一郎・元首相のもと誕生した小泉チルドレンの1人だ。
「増税メガネと揶揄されることもありますが、私は国民の皆さんが言うほどダメではないかなって思うんですよ。なぜ増税が必要かといえば、超高齢社会、少子化対策といった社会保障の拡充から、ロシアや中国、北朝鮮などと隣接している日本としては防衛費も増額しなければならない。そのため、方々から少しずつ増税することで国民の負担を小さくして、持続可能な社会をつくっていきたいということが岸田政権のやりたいこと」
と、支持する一方で国民の理解が得られない理由にも言及する。
「小泉さんや安倍さんと比べるとわかりにくい政策だというのは事実だと思います。理由のひとつは数値目標が明確になっていないから。安倍さんは『デフレからの脱却』として物価を2%上げていった。菅さんの場合は『コロナに勝つ』と言って、1日100万人にワクチンを打つという政策を打ち出した。岸田さんにはそれがない。だから具体的にゴールがイメージしづらく国民の皆さんに伝わらないんだと思うんですよ」
“底が抜けた風呂桶”
前出の大谷氏は、「ポリシーがない」とバッサリ。
「本来、政治の目的は2つ。国民の生活を守ること、二度と戦争をしないことに尽きるんです。これは与野党共通の認識です。そこを前面に出してくれば国民は納得するわけですよ。ですが岸田さんの場合、税制に関しては増税をしたいときは減税をちらつかせる。人気がなくなると人気を取ろうとして、自民党内でも安倍さんを支えていた右派を取り込もうとする。彼らの支持が欲しいだけでポリシーもないのに憲法の改憲を持ち出してきたわけなんです。ただ、青山繁晴議員や高市早苗議員のように安倍さんにくっついていた改憲派は筋金入りの右派。半端な人間が改憲を打ち出したって、口先だけで取り込みにきたな、としか思わない。国民に対してだけでなく、党内でもどこでも失敗しているんです。やることなすこと失敗。ここでヒットを打てよ、というところで見事に三振してみせているのが岸田首相です」
さらに岸田首相を“底が抜けた風呂桶”と表現し、
「これだけ落ちたら小手先の作業では底が抜けた風呂桶の修理なんてできるわけがないんです。釘1本だけ持ってきて板を打ちつけたってうまくいくわけない。ドカンとびっくりするような大技を出さないと」(大谷氏) 
岸田首相の支持率を上げるための大技を大谷氏が提案する。
「国民の7割が反対している『大阪・関西万博』の中止を宣言すればいい。かつて東京で計画されていた『世界都市博』を開催中止にした青島幸男・元東京都知事のように“万博やめた、金も出さない、撤退しろ”と言えば何もせずに座っていても支持率は上がるんです」
前出の杉村氏は、
「支持率が低いのは岸田さんだけではない。先進国のリーダーは軒並み支持率が低いです。根本原因は物価高です。支持率回復には物価高対策しかないです」とフォローするが……。
曇りなき眼で世の中を見てくれる首相が求められる。
●来年度予算、議論加速 歳出「平時」回帰が焦点―政府・与党 11/30
2023年度補正予算が29日成立し、政府・与党は今後、24年度予算編成作業を加速させる。デフレ完全脱却を実現するために物価高対策や賃上げ促進に重点配分するほか、少子化対策の財源確保も課題。岸田政権はコロナ禍で膨らんだ歳出構造を「平時」に戻す方針を掲げており、財政健全化と経済再生を両立させられるかが焦点だ。
来年度一般会計予算の概算要求総額は過去最大の114兆3852億円に上り、今年度当初予算額114兆3812億円に並ぶ。医療・介護などの社会保障費、借金に当たる国債の利払い費、厳しい安全保障環境に対応するための防衛費は、今年度より膨らむのが確実な情勢だ。
岸田政権が支持率回復を狙って打ち出した物価高対策は協議の行方が見通せない。今月初めに決定した総合経済対策に定額減税と低所得者向け給付を盛り込んだが、減税の詳細な制度設計は与党の税制調査会に委ねた。原油高対策を巡っては、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結解除を含めて自民、公明、国民民主の3党が今後協議するものの、財源確保などの課題が待ち受ける。
来年度予算では金利の上昇を反映し、国債の利払い費を算出する際に使う想定金利が17年ぶりに引き上げられる方向。これにより、利払い費が増加し、先進国で最悪の水準にある財政がさらに圧迫されるのは必至だ。
一方、歳出改革のカギを握るのは診療、介護、障害福祉サービス報酬の「トリプル改定」。公定価格である各報酬の上げ下げは、少子化対策の財源問題も左右する。膨張が著しい社会保障費にどこまで切り込めるか、財政再建に向けた政権の本気度が問われる。
●政権立て直し、道険しく 「減税」不発、課題山積―補正予算 11/30
総合経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算が成立した。支持率が低迷する岸田文雄首相は国会審議で、対策の目玉となる所得税減税をアピールしたが、野党だけでなく与党からも効果を疑問視され不発に終わった。年末までに積み残した課題も多く、政権の先行きを危ぶむ声がじわじわ広がっている。
「政策の真意が国民に伝わっていないのではないか」。29日、参院予算委員会の採決に先立つ審議で支持率下落の要因を問われた首相は、率直な感想を語った。これに対し、立憲民主党の杉尾秀哉氏は「国民は首相を信じられなくなっている。最たるものが税を巡る迷走だ」と断じた。
今国会で局面転換を図った首相の思惑は、のっけからつまずいた。減税方針を「税収増の還元」と説明する首相を横目に、鈴木俊一財務相は過去の税収増はすでに振り分けられていると主張し、認識の違いが露呈。予算審議では野党から「還元」のフレーズを訂正するよう突き上げられ、「税金が戻ってくる意味で還元そのもの」と苦しい説明に追われた。
審議では少子化対策や、円安進行下での防衛費増額も取り上げられ、「減税の後には大増税が待っている」(立民の辻元清美氏)と追及される場面も。さらに自民党の派閥でパーティー券収入の政治資金収支報告書不記載が発覚し、「政治とカネ」を巡る問題に再び厳しい視線が注がれた。政府関係者は「予算委は政権の鬼門。予期せぬテーマが降りかかる」と話す。
臨時国会のヤマ場を乗り越えた岸田政権だが、この後も難問が山積する。政府は年末までに少子化対策の財源確保のための「支援金制度」など具体策を詰める。政府内には医療保険料への上乗せ額を「1人当たり月500円程度」とする案などが取り沙汰されているが、首相は「追加負担を生じさせない」と繰り返し、詳しい説明に及び腰だ。
12月前半にはマイナンバー制度で相次いだトラブルの総点検が公表される見通し。結果を受けて首相は焦点の現行保険証の来秋廃止の是非を判断するが、「マイナ保険証」の利用率は数%にとどまっており、廃止には強い反対が予想される。自民党関係者は「今は何をやっても『岸田が悪い』と言われる。森喜朗政権の末期に似てきた」と頭を抱える。
ここへきて首相は自民、公明両党に国民民主党を交え、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」凍結解除に関する協議入りを指示。これまで一貫して慎重だったにもかかわらず突然出てきたトップダウンの決定に、自民内からは「穴埋めの巨額の財源はどうするのか」との戸惑いが広がる。党四役経験者は「安定感が絶対的に不足している」といら立ちを隠さない。
首相が力を入れる減税や賃上げも、効果を実感するのは来春以降にずれ込む見込みだ。岸田派中堅は「浮揚する要素は見当たらない」と指摘。来年秋の総裁選をにらみつつ、「いろんな動きが党内で出てくるだろう。何が引き金になるか、政権が正念場に来ている」と語った。
●補正予算成立 国民の疑念晴れぬまま 11/30
臨時国会は2023年度補正予算が成立し、終盤に入った。
岸田文雄首相は論戦のヤマ場を乗り切ったと受け止めているかもしれないが、内閣支持率の下落を招いた国民の疑念は晴れないままだ。残る会期で説明責任を果たさなければ、政権から離反した民意は戻るまい。
10月20日に召集された臨時国会の会期は、12月13日までの55日間。9月に第2次岸田再改造内閣が発足した後、初の本格論戦の場だった。
政府は、物価高の家計負担を緩和するとして新たな経済対策を決定。対策の財源となる13兆1992億円の補正予算案を国会に提出した。首相主導の所得税と住民税合わせて1人当たり4万円の減税は、24年6月からの実施で補正予算の枠外だが、質疑ではその当否が最大の焦点になった。
共同通信の世論調査で、非課税の低所得世帯向けの7万円給付を含め「評価しない」との回答が6割を超え、他社の調査でも同傾向だったからだ。
減税されても、防衛力強化のための増税など負担増が控えていることや、財政悪化への懸念が主な理由だ。減税や給付の財源は、増税回避や財政再建に用いるべきだというわけだ。
首相は「経済を立て直した上で、防衛力や子ども政策について国民に協力してもらう」と強調、増減税は同時実施にならないことから「矛盾しない」と断言した。減税の狙いに関しては、経済の好循環を生むため、物価高を上回る賃上げまで「可処分所得を下支えする」などと繰り返し訴えた。
それでも内閣支持率が20%台に落ち込むのは、国民が減税を次の衆院選に向けて政権浮揚を図る方策とみなしていることも要因だ。首相は「選挙目当て」を否定するが、財政の行く末まで憂慮する国民に対し、首相の答弁は説得力に欠けていると言わざるを得ない。
今国会では、公選法違反事件に関与した法務副大臣や過去の税金滞納を認めた財務副大臣ら自民党出身の3人の政務三役が辞任した。
首相は人選を「手腕、経験、他の候補との比較を踏まえて行った」と釈明した。だが実態は来年秋の自民党総裁選再選の障害となる党内の不満を抑え込むため、派閥推薦や年功序列に重きを置いたはずだ。国民の不信感は、保身を図るかのような首相の姿勢にも根差していると重ねて指摘しておきたい。
国民の疑念をさらに増幅させたのは、自民5派閥がパーティーの収入を政治資金収支報告書に過少記載していたと告発された問題である。
21年までの4年分だけでも計約4千万円に上っている。各派閥は「事務的ミス」として順次報告を訂正しているものの、組織的、継続的な裏金づくりと疑われても仕方ないだろう。
首相は信頼回復のため、党として「どう対応すべきか考えたい」と述べたが、追及をかわす一時しのぎの発言であってはならない。対応策を早急にまとめて明らかにすべきだ。同様の問題は立憲民主党議員の資金管理団体でも発覚しており、与野党で取り組む課題でもある。
内閣支持率の下落原因を聞かれた首相は「一つや二つではないと思う」と分析した。そう認識しているのであれば、国民が抱くさまざまな疑問に国会の場で丁寧に答え、改めるべきは改める謙虚な政権運営に努めなくてはならない。
●官房機密費「月7000万円」 野中広務氏の告白 〜過去の紙面から 11/30
東京オリンピックの招致活動に関する石川県の馳浩知事の発言で、内閣官房報償費(官房機密費)が改めて注目されています。使途を公表していない官房機密費に関し岸田文雄首相も29日の参院予算委員会で、「取り扱いはさまざまな経緯を踏まえたもの。現状の取り扱いを維持していくべきだ」と話しましたが、過去に「目的外使用」が指摘されたことがありました。その一端を明らかにしたのが、小渕恵三内閣(1998年7月〜2000年4月)で官房長官を務めた野中広務氏(18年に92歳で死去)。10年5月、当時84歳だった野中氏が生々しく明かしたインタビューを、再掲載します。(2010年5月21日付・毎日新聞朝刊)
野中広務元自民党幹事長(84)は20日、毎日新聞のインタビューに応じ、小渕内閣の官房長官在任中(98年7月〜99年10月)、内閣官房報償費(官房機密費)を毎月5000万〜7000万円程度使い、国会での野党工作のほか複数の政治評論家にも配っていたことを明らかにした。また、今夏の参院選で「第三極」が伸びる可能性に言及し、選挙後、政治情勢は流動化するとの見通しを語った。
――官房機密費の使途の一部を公表した理由は。
国民の税金を表に出せない形で操作することはある程度必要かもしれないが、ちょっと大まか過ぎる。私も年だし、政権交代で変えてもらうのが一番いいという意味も含めて話した。
――具体的には。
(総額は)月に5000万から7000万円。(自民党)国対委員長に与野党国会対策として月500万円、首相の部屋に1000万円、参院幹事長室にも定期的に配った。政治評論家へのあいさつなども前任の官房長官からノートで引き継いだ。1人だけ返してきたのが田原総一朗さん。「もうちょっと(金額の)ランクを上げてくれ」と言った人もいた。政治家から評論家になった人が小渕(恵三首相)さんに「家を建てたから3000万円、祝いをくれ」と言ってきたときは「絶対だめだ」と止め… ・・・
●支持率低迷の岸田政権 身内からも「ミスマッチ」批判… 11/30
11月28日、自民党の萩生田光一政調会長(60)が、東京都内で行った講演で、岸田文雄首相(66)の情報発信について苦言を呈したことが報じられた。
「各誌によると、萩生田政調会長は岸田首相について、政策的には大きな失敗をしているわけではなく結果は出しているとフォロー。一方で、政策の方向性を示してから具体的な内容が出てくるまでの期間が長いうえ、その後出てくる内容が国民の期待と沿っていないことについて『予告編が長くて、中身がちょっとミスマッチ。国民は違和感があると思う』と表現したそうです」(WEBメディア記者)
防衛費増額のための増税や、会社員などの退職金への課税方式を見直し案、少子化対策のための財源確保手段として社会保険料の上乗せ案などが、さらなる“増税”になるのではないかと注目を浴びた今年。岸田首相についても、“増税メガネ”のあだ名が定着することに。
世間的に“増税する首相”との印象が強くなった岸田首相。イメージ払しょくも狙ってか、9月25日、「成長の成果である税収増を国民に適切に還元する」と、突如“減税”の姿勢を見せた。
「10月中旬以降になってみえてきた具体的な内容は、来夏をめどに所得税などを1人あたり年4万円差し引く”定額減税”と低所得者向けの7万円の現金給付。減税の実施が来夏とスピード感に欠けたことへのがっかり感や、一時的な”減税”は単なる選挙対策ではないかとの指摘が相次ぎました」(全国紙記者)
その後、11月に実施された報道各社の世論調査では、内閣支持率はそろって下落。20%台を相次いで記録し、過去最低を更新した。共同通信が実施した調査では、所得税減税などの経済対策について「評価しない」と回答した人が62.5%にも上った。
さらに、財務省との溝も浮き彫りとなっている。
11月8日、鈴木俊一財務相は過去の税収増分は政策的経費などで使用済みであり、「還元」のために減税するとなると、減収分は国債を発行して埋め合わせをする必要があると明かした。
さらに、岸田首相はガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」の凍結解除について、近く自民党、国民民主党、公明党の3党で協議をするとしている。しかし鈴木財務相は、11月29日の参院予算委員会で、「協議をするということについて、事前に私は説明を受けていない」と述べたほか、1.5兆円の財源が必要になることが課題だと慎重な姿勢をみせたのだ。
冒頭のように自民党内部からも批判され、孤立を深める岸田首相。徐々に、岸田政権の”末期感”が漂い始めている。
「岸田首相の任期は来年9月末。それまでに、衆議院を解散して勝利をおさめ、総裁選で再選するのというのが理想だったはず。しかし、この低支持率では解散も難しくなりそうです。この状況が続けば、9月まで解散せずに総裁選に突入する可能性もありますが、その場合岸田首相が首相で居続けられるのかは怪しいところでしょう」(前出・全国紙記者)
この苦境を乗り越え、国民にとってよりよい政治を行うことができるだろうかーー。
●補正賛否、割れた野党/対政権、異なる思惑/補正予算成立 11/30
2023年度補正予算の採決で、野党の対応が割れた。立憲民主党と共産党が反対した一方、日本維新の会と国民民主党は賛成。次期衆院選をにらみ岸田政権にどう対峙(たいじ)し、距離感を保つべきか−。各党の思惑は異なり、今後の連携に課題を残した。
貫いた反対
「財源のほとんどは国債依存だ。大いに不満な中身であり反対したい」。立民の水岡俊一参院議員会長は29日、参院本会議に先立つ党会合で、岸田文雄首相が成立を急いだ補正予算を批判した。
物価高克服が大きな政治課題となる中、立民筋は「一部の支持者から『賛成してもいいのではないか』との声が寄せられた」と打ち明ける。
だが21年度当初予算以来、立民は政府の経済対策について「生活者に寄り添っていない」(若手議員)と非難し、反対してきた。歳入の7割近くを国債の増発で賄う今回の補正で対応を変える理由はなく、共産と同様に反対を貫いた。
苦渋の決断
立民に代わる野党第1党を目指す維新は、賛成に回った。社会保険料減免を柱とした独自の経済対策を首相に提言したものの、政府の経済対策に盛り込まれず、政府の減税策を国会で追及してきただけに一見、奇異に映る。
それでも賛成したのは、維新が誘致を主導した大阪万博の会場建設費の一部が盛りこまれたことが大きい。藤田文武幹事長は29日の記者会見で「万博は大阪だけの話ではない。多くの人に関わってもらえるような啓発活動に取り組みたい」と意欲を語った。
党内では「成功を期する万博が控えており、補正に反対するのは難しい」(幹部)との声が大勢を占め、執行部は「苦渋の決断」(馬場伸幸代表)で採決に臨んだ。
対決より解決
国民民主も賛成した。玉木雄一郎代表はかねてガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除は物価高に有効だと主張。22日の衆院予算委では「凍結解除を決断するならば、補正に賛成してもいい」とあからさまに迫り、首相は自民、公明、国民3党で検討する意向を表明した。30日には3党の政調会長による初会合が開かれる。
国民は「トリガーを口実」(共産筋)にして、22年度当初予算にも賛成した。党内には、「対決より解決」を掲げる党として、政権に向き合う姿勢の表れだとの好意的な受け止めもある。
維新と国民の対応に関し、首相は早速「デフレ脱却に向け正念場を迎えているという点で、理解いただけたのではないか」と謝意を示した。
ただ他の野党の視線は厳しい。立民の泉健太代表は「万博とトリガーという弱みを握られた。与党と戦えるのか」と指摘。共産の小池晃書記局長は「自民に助け舟を出した」と酷評した。
●気候変動対策会議“COP28”開幕 岸田首相も出席 11/30
国連の気候変動対策会議・COP28が30日、UAE(アラブ首長国連邦)のドバイで開幕し、岸田首相も出席する。
脱炭素の実現に向け進展はあるのか、FNNバンコク支局・田中剛記者の解説。
会議では、各国の温室効果ガス削減目標の進捗(しんちょく)が初めて報告されるが、解決にはほど遠い状況。
COP28では、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えるための各国の取り組みの進捗状況を初めて評価する。
しかし、それぞれの目標を達成しても、今世紀末の世界の気温は最大2.8度上昇するとされ、最新の報告書は、2030年までに排出量を43%削減する必要があるとしている。
EU(ヨーロッパ連合)などは、化石燃料の「段階的廃止」を求めているほか、廃止に前向きでなかった日本も今回、石炭火力発電所の新設停止を表明する見通し。
世界では、地球温暖化による海面上昇で国が水没の危機にさらされたり、異常気象で大洪水などの被害が相次いでいる。
2022年の会議では、災害が多発する途上国を支援する基金の設置が決まったが、費用をどの国が出すかをめぐり対立したまま。
今回の議長国・UAEは、中東有数の産油国でありながら、世界の再生エネルギーを3倍にする目標を掲げているが、イスラエル情勢を受けて各国間の緊張が高まる中、国際社会が協力して脱炭素へ向けて有効な道筋を示せるかが注目される。
●国民民主 前原代表代行 離党の意向固める 新党結成を検討か 11/30
国民民主党の前原代表代行は、離党する意向を固めました。新党の結成を検討しているということです。
前原代表代行は午後4時から記者会見するとしています。
関係者によりますと、国民民主党の前原代表代行は、離党する意向を固めました。
玉木代表らが政策実現を理由に政府・与党と協調する姿勢を強めていることへの反発が背景にあるものとみられます。そして、前原氏はみずからに同調する議員とともに新党を結成することを検討しているということです。
前原氏はことし9月の代表選挙で非自民・非共産での野党結集の必要性を訴えましたが、玉木氏に敗れました。新党の結成により、野党勢力の結集に向けた足がかりにしたいねらいもあるものとみられます。
前原氏は、衆議院京都2区選出の当選10回で、61歳。民主党政権で外務大臣や国土交通大臣などを歴任し、現在は国民民主党の代表代行を務めています。
午後4時から記者会見
前原代表代行は午後4時から記者会見することを明らかにしました。
国会内で記者団から「離党するのか」と聞かれたのに対し「午後4時から記者会見する」と述べました。
離党の理由や検討している新党の結成について説明するものとみられます。
国民民主 緊急役員会で対応協議
国民民主党は、前原代表代行が離党する意向を固めたことを受け、午後1時からおよそ30分間、国会内で緊急の執行役員会を開き、対応を協議しました。
そして今後の対応について、玉木代表と榛葉幹事長に一任することを確認しました。
自民 森山総務会長「今後もいろいろな動きが続く」
岸田総理大臣は30日午前、自民党本部で麻生副総裁、茂木幹事長、森山総務会長、萩生田政務調査会長、小渕選挙対策委員長の党執行部のメンバー5人とおよそ30分間、会談しました。
出席者によりますと、国民民主党の前原代表代行が離党する意向を固め、新党の結成を検討していることが話題になり、今後の政治情勢への影響などについて意見を交わしたということです。
また自民党の森山総務会長は派閥の会合で「今後もいろいろな動きが続くと思うが、今は自民党と岸田政権にとって極めて大事なときだ。一致団結して政権を支え、自民党の将来を間違いのない方向に持っていくことが1番大事だ」と述べました。
維新 馬場代表「『教育無償化を実現する会』と協調」
日本維新の会の馬場代表は、記者会見で「いろいろな場面で前原氏とつきあいがあるので、いつとは言えないが、新党を考えていることは事前に聞いていた。前原氏は議員経験が長く、豊富な経験を持っていて、政策面ではずいぶん勉強している」と述べました。
また馬場氏は、「前原氏が結成する運びの『教育無償化を実現する会』と来年2月の京都市長選挙で協調していくと思う。われわれは、是々非々で各政党とつきあうことを基本原則で政治活動をしているので、前原氏の新党とも協調できる部分は積極的に協調していく」と述べました。
●「岸田降ろし」なぜ起きない? 周辺から聞こえる三つの理由 11/30
「ああ、また下がってしまったか」。岸田文雄首相と気脈を通じる長老の自民党議員は11月10日から13日にかけて時事通信が行った世論調査の結果を知ると、こう言ってため息をついた。
内閣支持率は21.3%。前月比5ポイント減で10%台が目前となったのに対し、不支持率は同7ポイント増の53.3%で過半数に達した。岸田政権が打ち出した物価高対策や所得税減税、政務三役の相次ぐ辞任などが影響したのは明らかだ。特に税金滞納が発覚した神田憲次衆院議員が財務副大臣を辞任したのは調査最終日の13日で、調査期間が2、3日遅ければ、支持率は10%台に落ち込んでいた可能性が大きい。
その後、11月に報道各社が実施した調査結果も軒並み厳しい。毎日新聞の調査(18〜19日実施)で内閣支持率は前月比4ポイント減の21%、読売新聞の調査(17〜19日実施)では同10ポイント減の24%、朝日新聞の調査(18〜19日実施)では同4ポイント減の25%となった。
特に毎日調査では不支持率が同6ポイント増の74%に達した。調査方法が異なり単純比較はできないが、麻生太郎政権時代の2009年2月には不支持率が73%となった。今回はそれ以来の70%台。麻生氏は7カ月後に政権の座から去っている。また、朝日調査の支持率は2012年12月に、自民党が政権復帰してから最低だった菅義偉内閣の2021年8月に記録した28%を4ポイント下回った。菅氏はその後間もなく9月の総裁選出馬を断念し、退陣している。
「早期辞任を」5割超す
毎日の調査では、「岸田氏にいつまで首相を続けてほしいか」を聞いたところ、結果は「できるだけ長く」8%、「来年9月の自民党総裁任期まで」28%、「早く辞めてほしい」55%、「わからない」9%―。早期退陣が過半数に達した。
こうした露骨な世論の「岸田離れ」の実態について、首都圏出身の自民党中堅議員は「地元の支持者と話していると、首相の政治姿勢への不信感の強さを痛感する」と語る。
また、自民党と連立を組む公明党の関係者は「うちの支持者との会合でも、首相批判だけでなく、『ポスト岸田』には誰が望ましいかという話も飛び交った」と明かした。
不発だった内閣改造
振り返って岸田内閣の支持率は2021年10月の発足当初、40〜50%台の水準を維持した。だが、22年7月に殺害された安倍晋三元首相の国葬を決めた後から下落し、不支持を下回る「逆転」状況に陥った。憲法学者をはじめ多くの専門家から「法的根拠不在」との指摘を受けながらも国葬実施に踏み切ったのは、保守層への配慮が強くうかがえたが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党の深い関係が判明したことが、世論の反感を買ったわけだ。
それでも、今年3月のウクライナ電撃訪問、5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を経て、いったん上向きかけたものの、首相の長男が首相公邸で親族と写真撮影した問題や相次ぐマイナンバーカード絡みのトラブルで再度下落に転じた。9月には内閣改造・自民党役員人事を行ったが、支持率対策としての効果はほとんど見られなかった。過去最高に並ぶ女性5人の閣僚起用も不発に終わり、10月以降は「底無し」のような下落が続いている。
総裁選再選の戦略として岸田氏が模索したとされる今秋の解散・総選挙を見送ったとみられているのは「とても選挙ができるような支持率ではなくなった」(自民党選対関係者)ためだ。
高市氏も意欲的だが
そうした中、高市早苗経済安全保障担当相が勉強会「『日本のチカラ』研究会」を立ち上げたことが党内に波紋を広げた。11月15日の初会合には事務局長の山田宏参院議員ら保守系議員13人が顔をそろえた。
高市氏は、かつて安倍氏が率いていた「清和会」に所属していたが、2011年に離脱して以来、無派閥を通している。それでも、前回2021年総裁選では安倍氏の強い後押しで推薦人20人を確保し、国会議員票では岸田氏の146票に次ぐ114票を獲得。引き続き次期総裁選出馬に意欲的で、10月には出演したテレビ番組で「また、戦わせていただきます」と述べている。
ただ、安倍氏という支柱を失った中、推薦人確保が大きな課題となっている。勉強会参加を検討したある議員は「所属派閥の幹部から『今はやめておけ』と自重を促された」という。安倍派幹部の世耕弘成参院幹事長も「現職閣僚がこういう形で勉強会を立ち上げるのは、いかがなものか」と苦言を呈しており、党内では逆風にさらされている。
このほか、11月22日に発足した「ライドシェア」導入に向けた超党派の勉強会は小泉進次郎元環境相が主導し、注目を集めた。ライドシェア導入は、岸田氏と一線を画す菅前首相が旗振り役を務めているテーマであるからだ。このため、背後には菅氏の存在も取りざたされるが、小泉氏自身は「総裁選は視野にない」とされる。
「解散なし」も視野
しかし、現時点で自民党内では、こうした動きが「岸田降ろし」につながる兆候はない。考えられる主な理由は三つある。第1は当面、全国規模の国政選挙がないこと。国政選挙を直近に控えている場合、与野党を問わず、党首は選挙の「顔」としてアピール度が問われることになるのだが、衆院の任期満了は2025年10月30日で、ほぼ2年先だ。
岸田氏に近い党幹部は、支持率低迷で菅氏が衆院解散に踏み切れずに退陣に追い込まれたことを引き合いにこう言い切った。「岸田氏が低い支持率のまま解散できずに総裁選を迎えても、菅氏のケースとは違う。菅氏の場合は総裁選直後に衆院議員の任期がやって来たが、岸田氏の場合は衆院の任期満了まで1年ある。支持率が低くても、慌てて解散しなれば、菅氏の二の舞とはならない」
岸田氏の総裁再選戦略は当初、「総裁選前の解散」が大前提だったが、「今や支持率下落が続く現時点では、解散なしで総裁再選を目指すことも岸田戦略のテーブルに上っている」(岸田首相側近)。また、岸田氏に近い元党幹部は「解散は総裁選後でいい。もし総裁選前に支持率が回復したらしたで、解散せずに総裁選は乗り切ればいい」とも語った。支持率回復を前提にしたこうした楽観シナリオは、「岸田降ろし」が起きていないことも背景にある。
第2は有力な「ポスト岸田」が存在しないことだ。11月11、12両日に産経新聞・フジテレビ(FNN)が実施した世論調査によると、「次の首相にふさわしい人」としては石破茂元幹事長がトップで15.2%。次いで河野太郎デジタル担当相11.6%、小泉進次郎氏9.7%、菅義偉氏8.8%。高市早苗氏6.2%─と続き、前回総裁選の河野陣営が上位4人を占めた。
このうち、トップの石破氏は講演で、総裁選について聞かれると、「ないと言えば、うそになる」と意欲をにじませたが、党内基盤が弱い石破氏にとって、総裁選出馬に必要な推薦人20人確保のハードルは高い。また、前回総裁選に出馬した河野氏は現在、岸田内閣の閣僚としてマイナンバーカード問題に取り組んでおり総裁選への動きを封印している。
一方、「ポスト岸田」を狙う茂木敏充幹事長は、「岸田氏が再選を目指す限り自身は出馬しない」との意向とされる。月刊誌のインタビューで「幹事長は総理総裁を支えるポストだ。私も出るとなれば『令和の明智光秀』になってしまう」と語った。首相は9月の内閣改造・党役員人事に当たって、一時、幹事長交代も検討したとされる。茂木氏を「野に放つと『岸田降ろし』の旗印になるリスクがある」(岸田氏に近い元幹部)ことを懸念したようだが、最終的には取り込むことを選択した。茂木派の参院側には会長の茂木氏の派閥運営に不満が根強く、「一枚岩」になりにくいとの判断からだ。
岸田氏が、茂木氏と溝があった故青木幹雄元参院幹事長が寵愛(ちょうあい)した小渕優子氏を党四役の選挙対策委員長に起用したことには、茂木氏をけん制する狙いもあった。
党内バランスにも配慮
先の内閣改造で党内のパワーバランスに配慮したことも、「反岸田」の動きを封じる形となっている。最大派閥の安倍派と第2派閥の麻生派は改造前の各4人を維持。第3派閥の茂木派からも引き続き3人を閣僚として起用した。また、党役員では「岸田総裁─麻生副総裁─茂木幹事長」の「三頭政治」体制を維持した。
最大派閥の安倍派の萩生田光一政調会長、西村康稔経済産業相、世耕参院幹事長ら「5人衆」を全員続投させた。ポスト岸田に向けて「分裂含み」とされる安倍派については、「5人衆の維持が得策」と判断したためだ。また、安倍派では「会長不在」によって影響力を増している森喜朗元首相が岸田氏支持の立場を示しており、「5人衆」続投は森氏への配慮の面もあった。これは「岸田降ろし」を封じる装置ともなっている。
しかし、岸田氏周辺もこうした状況が、「岸田降ろし」封じとしてどこまで機能するのかについては楽観していない。冒頭の長老議員は言う。「内閣支持率が10%台に落ち込めば、若手は首相交代を求めるのではないか。そうなれば、党内全体が一気に『岸田降ろし』に動く可能性がある」
このまま支持率の下落が続けば、「岸田降ろし」は突然、やってくるかもしれない。 
●なぜ岸田首相は「聞く力」を失ったのか… 11/30
人々が「空気」に支配される日本では、改革はなかなか進まない。批評家・哲学者の東浩紀さんは「いまの日本では、相手の話を聞き自分の意見を変える力、つまり『訂正する力』が失われている。
岸田首相も訂正することができないので、聞くこともできない。『ひとの意見は変わるものだ。われわれも意見が変わるし、あなたがたも意見が変わる』という認識をみなで共有するべきだ」という――。
なぜヨーロッパ人は「ルール」を平然と変えられるのか
訂正するとは、一貫性をもちながら変わっていくことです。難しい話ではありません。
ぼくたちはそんな訂正する力を日常的に使っているからです。
この点でうまいなと思うのは、ヨーロッパの人々です。彼らを観察していると、訂正する力の強さに舌を巻かざるをえません。
新型コロナウイルス禍を思い出してください。イギリス人の「訂正」にはすさまじいものがありました。大騒ぎしてロックダウンをしたと思いきや、事態があるていど収まると、われ先にマスクを外していく。
「自分たちはもともとコロナなんて大したことないと気づいていた」と言わんばかりです。「いや、そうだったかな」と思わずにはいられないですが、彼らはあたかもそれが当然だったかのように振る舞います。
日本人からすると「ずるい」と感じるかもしれません。スポーツでもしばしばルールチェンジが問題になっています。
それでもヨーロッパの人々はルールを容赦なく変えてくる。政治でも同じです。
たとえば気候変動。少しまえまでドイツは、「脱原発」や「二酸化炭素排出量の削減」を高らかに掲げていました。ところがウクライナで戦争が勃発しロシアからの天然ガスの輸入が途絶えると、「やはり原発と石炭火力も必要だ」と言い出す。
これまで観光業でさんざん稼いできたフランスも、最近はオーバーツーリズムを懸念し、「地元コミュニティと環境保護のために観光客数を抑制する」という新たな方針を打ち出しています。華麗な方向転換です。
持続しつつ訂正していくしたたかさ
ただ、ここで大事なのは、そのときに彼らが自分たちの行動や方針が一貫して見えるように一定の理屈を立てていることです。
それはある意味でごまかしですが、そういった「ごまかしをすることで持続しつつ訂正していく」というのが、ヨーロッパ的な知性のありかたなのです。
ヨーロッパの強さは、この訂正する力の強さにあります。それはきわめて保守的でありながら同時に改革的な力でもあります。ルールチェンジを頻繁にすることによって、たえず自分たちに有利な状況をつくり出す。それなのに伝統を守っているふりもする。それはヨーロッパのずるさであると同時に賢さであり、したたかさなのです。
先人たちの「訂正する力」を忘れてしまった日本人
日本にも訂正する力がないわけではありません。
昔からよく指摘されているように、大陸の辺境に位置するこの国は舶来のものに目がありません。中国に接したら中国の文化を受け入れ、欧米がきたらこんどは欧米の文化を受け入れる。それは野放図なようでいて、じつは肝心なところはまったくと言っていいほど変えていない。
たとえば名前です。朝鮮半島やヴェトナムでは中国文明の輸入とともに命名も中国風に変えてしまいました。
他方ぼくたちはいまだに古い名前を保持しています。
科挙も採用していません。日本語をローマ字化する運動も潰れました。なによりも天皇制が続いている。日本は、信念なくすべてを外国に合わせているように見えて、ひどく頑固で根底でずっと一貫している国でもある。つまり、改革に開かれているように見えてきわめて保守的な国でもあるわけです。
日本は日本でしたたかだったということです。ただ、ぼくたちはその先人たちの力を忘れ、うまく使えなくなっています。
日本の改革を妨げ続ける「空気」という問題
どうすれば訂正する力を取り戻すことができるのでしょうか。
身近な例から考えてみましょう。現代日本で改革の障害となっているのは、つねに「空気」、つまり社会の無意識的なルールです。
この空気なるものは、みなが他人の目を気にするだけでなく、同時に気にしている他人もまた他人の目を気にしているという入れ子の構造をもっているので、とても厄介です。たとえば、コロナ禍が終わってもマスクをなかなか外せないという話題がありました。これは、単純に周りのひとから「マスクをしろ」という圧力をかけられ、怖いというだけの話ではありません。
もしかしたら、周りのひとも本音ではマスクを外したいのかもしれない。けれども、彼らが「他人がどう思っているかわからないから、まだ外すのは控えよう」と思っているかぎり、自分だけマスクを外すわけにはいかない。実際にはみながマスクを外したいと思っていたり、無意味だと感じていたりしたとしても、相互の監視が存在するためにだれもが社会の無意識的なルールにしたがってしまう。これが空気の問題です。
山本七平が本当に書いていたこと
その結果、いつまで経ってもだれもマスクを外すことができない。と思いきや、ひとたび一部のひとがマスクを外し始めれば、こんどは逆に、花粉症などでマスクが必要なひとを含め、だれもが外さなければいけないような気持ちにされてしまう。その変化の切れ目がなんなのか、われわれはわからないし、またそれをコントロールすることもできない。
このような厄介な構造をもつ規範意識を、どのようにしたら「訂正」できるのでしょうか。
空気については、評論家の山本七平(やまもとしちへい)による『「空気」の研究』がコロナ禍で再注目されました。1977年に刊行された本ですが、昔から日本人は空気に支配されているという文脈で引っ張り出されたわけです。
ところがこの本を読み返すと、じつは空気という言葉は、いまのような相互監視という意味では使われていません。
同書の中心になっているのは「臨在感的把握」と呼ばれる現象です。ふつうの学問的な言葉で言うと、ある種のフェティシズムです。日本人はアニミズムとフェティシズムが強いから、たとえばいちど「コロナが悪」ということになったらみながそれを呪物のように扱ってしまい、あまり議論ができなくなるということです。
「山本七平が」と喧伝(けんでん)されているわりに、山本七平は実際はその話をしていない。これは今回確認してみて虚を衝(つ) かれました。戯画的に言えば、『「空気」の研究』の内容さえも空気で決まってしまっている。
「空気に差した水」がまた「空気」になってしまう
ちなみに、『「空気」の研究』はいま読むと問題含みな本でもあります。刊行された当時、日本ではイタイイタイ病や自動車の公害が社会問題になっていましたが、山本は懐疑的でした。窒素酸化物は有害か無害かわからないし、カドミウムも有害か無害かわからないのだと記しています。
当時「カドミウムは無害だ」と主張し、実際にカドミウム棒を舐めた学者がいたらしいのですが、その話題に紙面を割いています。『「空気」の研究』は古典ではありますが、気をつけて読まなければなりません。
空気批判が空気になるとはいえ、山本の議論がなにも参考にならないわけではありません。
山本は「水」について興味深いことを述べています。盛り上がりに「水を差す」と言うときの「水」です。この国では、空気に水を差していたと思ったら、水を差すこと自体が空気になっていく。だからいつも空気と水が循環している――。そんな議論で彼の本は締めくくられています。
これはじつは当時の左翼に対する批判です。「かつては軍国主義の空気があった。左翼は戦後そこに水を差すようになったが、しばらくしたらこんどはその水が新しい空気になって、言論が左翼に支配されるようになった」という話です。
半世紀後も通用する重要な指摘
『「空気」の研究』は半世紀前の本ですが、これはいまでも通用する指摘です。メディアでちやほやされる知識人が現実にはぜんぜん力をもたない現状は、おそらくこの空気と水の逆説に関係しています。
空気に抵抗しなければいけない。ルールチェンジをしなければいけない。そう主張するひとは多い。けれども、この国では、そのような主張(水)がそのまま受け取られるのではなく、すぐに「そういう主張をするひとが現れた」という新たな空気の問題として理解されてしまう。つまり、「『ルールチェンジをしなければいけない』と発言するという新しいルールでゲームをするひと」という受け取りかたをされてしまう。
そうすると、こんどはその新たな問題提起に考えなしに追随するひとが現れてしまう。いくら水を差しても、すぐそれが新たな空気になってしまう構造があるわけです。ひらたく言えば、権力批判をしているひとこそ、空気を読むようになる構造がある。
これは重要な指摘です。空気は空気批判もすぐに空気に変えてしまう。日本の閉塞感の原因はそこにある。
いつのまにか「空気」を変えていくしかない
だとすれば、そういった空気=ゲームを変えるためには、空気から素朴に脱出しようとするのではなく、同じ空気=ゲームのなかにいるようでいながら、ちょっとずつ違うことをやることによって、いつのまにか本体の空気=ゲーム自体のかたちが変わってしまうといった、アクロバティックなことをやるしかありません。
言い換えればこういうことです。空気が支配し、水もまたすぐ空気になる日本においては、よかれ悪しかれ、ものごとは「いつのまにか変わる」ことしかありえない。明示的に「変えましょう」と言っても、その水自体が新たな空気を生み出してしまうからです。だとすれば、その「いつのまにか」をどう演出するかが課題になる。その課題に答えるのが、この本の主題である訂正する力なのです。
つまり、空気が支配している国だからこそ、いつのまにかその空気が変わっているように状況をつくっていくことが大事になる。
デリダが唱えた「脱構築」という考えかた
じつはこれは日本だけの話でもありません。この状況認識はジャック・デリダというフランスの哲学者が唱えた「脱構築」という考えかたに似ています。
デリダは、表面上はすごく難しい哲学書を書いている哲学者です。だからふつうはこういう文脈では言及されません。
けれども彼はじつは、伝統的で保守的なルールに則(のっと)っているように見せかけつつ、それを深く追求していくことによって、ヨーロッパにおける哲学の型を根本的に変えてしまうといった試みをして、それが評価されているひとなのです。哲学のかたちを「いつのまにか」変えてしまうという試みを、哲学の方法として提示した。そのようなデリダ的、あるいは「脱構築」的な手法は、日本においても実践的に有効だと思います。
というよりも、日本では脱構築しか有効ではないと言うべきかもしれません。正面から既存のルールを批判しても力をもたない。ルールを訂正しながらも、その新しさを前面に押し出さず、「いや、むしろこっちこそ本当のルールだったんですよ」と主張し、現在の状況に対応しながら過去との一貫性も守る。そういった両面戦略が不可欠となります。
「訂正」に失敗した東京五輪
ところが、現在の日本人はこの訂正する力を失っている。東京五輪をめぐる混乱を思い出してみましょう。
五輪では夏の暑さが問題になっていました。東京都知事として五輪を招致し、多くの批判に晒(さら)された作家の猪瀬直樹(いのせなおき)さんは、五輪開催前にぼくと対談したときに「東京の夏は五輪に適している」と主張したことがあります。
どう考えても過酷な気候だと思うのですが、それでも「ほかの国も条件は同じだ」と譲らない。五輪はどんどん経費が嵩(かさ)み、それも問題になりましたが、猪瀬さんはこちらについてもツイッター(現X)で最後まで「コンパクト五輪のはずだった」と主張していました。これほどわかりやすく訂正する力が失われた例もありません。
猪瀬さんには、『昭和16年夏の敗戦』という名著があります。太平洋戦争開戦前、日本政府は「総力戦研究所」というシンクタンクにエリート官僚を集めて日米開戦の帰趨(すう)をひそかにシミュレーションさせていた。答えは日本必敗だった。にもかかわらず、日本は戦争に突入してしまったという内容です。この歴史と東京五輪の強行は部分的に重なります。
「官僚型答弁」が横行するワケ
猪瀬さんは、撤退を「転進」、全滅を「玉砕」と言い換えてごまかす、日本的な組織体質をよく知っていたはずです。それでもなぜ訂正できなかったのか。
それはおそらく、猪瀬さんが市民を信頼できなくなっていたからだと思います。猪瀬さんも東京の夏が暑いことはわかっていた。経費が想定以上に嵩んでいることも知っていた。ただ、それをひとことでも言ったら、批判勢力からなにを言われるかわからない。いまの日本では、あるていど影響力のある立場になってしまったら、危機管理上、訂正しない人間にならざるをえないわけです。
これは政治家だけの話ではありません。岸田文雄首相は「聞く力」を標榜(ひょうぼう)していますが、とてもその力が発揮されているとは思えない。でもそれは首相だけの話ではない。いまの日本人は全体的にその力がなくなっている。
「聞く力」は、相手の話を聞き自分の意見を変える力、つまり「訂正する力」でもあるはずです。けれども、訂正することができないので、聞くこともできない。
官僚型答弁が横行するのもこのことが理由です。官僚だけが悪いのではなく、日本社会全体で聞く力、意見を変える力がないのです。「最初に言ったことはまちがっていました」という説明ができない。そんなことをしたら徹底的に攻撃されて、自分たちの計画が潰されると、みなが警戒しあっている。
「訂正できない土壌」を変えていく
ぼくはこの10年ほどトークイベントスペースを経営し、そこで聞き手をやり続けています。
そこでも同じことを感じることがあります。登壇者のなかに、事前に用意してきた話題しか話さないひとがいるのです。ぼくが司会として合いの手を挟んだり、観客から質問をもらったりしても、自分が想定した質問でないとごまかしたり答えなかったりする。
それではわざわざ来てもらった意味がないのですが、すごく「見えない攻撃」を恐れている。その警戒心を解くのには苦労します。
つまり、いまの日本には訂正できない土壌がある。だからみな訂正する力を発揮できない。ここを変えねばなりません。
互いに意見を変えていけるからこそ議論に意味がある
これは民主主義の話とも関わります。民主主義の基本は議論ですが、議論を成立させるためには相手が意見を変える可能性をたがいに認めあわなくてはいけません。だれの意見も変わらない議論なんて、なんの意味もありません。
訂正できる土壌をつくることはとても大事です。「ひとの意見は変わるものだ。われわれも意見が変わるし、あなたがたも意見が変わる」という認識をみなで共有しなければなりません。これは教育にも関わります。小学校ぐらいから、話しあいの時間をつくり、「たしかにあなたの意見は正しいかも」と気づき自分の意見を変えていく、また他人の変化も認めあうという訓練を積み重ねるべきです。それは「論破」を目的としたディベートとは似て非なるものです。
●岸田首相への反旗≠ェ意味するものとは 水面下で加速する権力闘争 11/30
財務省が2度も、岸田文雄首相のハシゴ≠外した。
岸田首相は先月23日の所信表明演説で、税収増分の「国民還元」を宣言した。ところが、鈴木俊一財務相は今月8日の衆院金融財政委員会で、増加した税収は「政策的経費や国債償還などにすでに充てられた」といい、還元の原資はないと述べた。
また、岸田首相は22日の衆院予算委員会で、国民民主党の玉木雄一郎代表が求めた、ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除に前向きな姿勢を示した。
これに対し、鈴木氏は24日の記者会見で、「国・地方合計で1・5兆円の巨額の財源が必要になる」と、解除にクギを刺した。
これでは、「内閣不一致」ではないか。憲法66条3項が規定する「内閣の連帯責任の原則」に基づけば、岸田首相は鈴木氏を更迭するか、総辞職するしかないだろう。
鈴木氏は、2021年10月の岸田内閣発足とともに、財務相に就任した。前任者は安倍晋三、菅義偉政権の9年間、財務相を務めた麻生太郎副総裁だ。麻生氏は、鈴木氏の義兄であり、鈴木氏が所属する麻生派の領袖(りょうしゅう)である。鈴木氏の言動には、麻生氏の意向が反映していると見て不思議はない。
一方、麻生氏は岸田政権を支える最重要人物だ。岸田首相が率いる岸田派は47人で第4派閥に過ぎない。それを支えるのが56人の麻生派と、茂木敏充幹事長が率いる53人の茂木派だ。
党内最長老の一人で、首相経験者でもある麻生氏は、岸田政権の守護神≠ニいっていい。にもかかわらず、「予算」「税」といった最重要政策で、事実上造反≠オたことになる。これは一体、どうなっているのか。
永田町では、時を同じくして、上川陽子外相の「次期首相説」が浮上している。9月の内閣改造で、林芳正前外相の後任に抜擢(ばってき)された上川氏は、岸田派の所属だ。「ポスト岸田」の噂は、岸田政権が危機に陥った場合の保険≠ネのか。
岸田首相は今月、米サンフランシスコでの日米首脳会談で、ジョー・バイデン米大統領から、来年早期の国賓待遇での公式訪問の招待を受けたことを明らかにした。
この厚遇≠ヘ、岸田首相の政権運営にどう影響するのか。ポスト岸田をめぐり、水面下では壮絶な駆け引きが行われているのだろう。
内閣支持率に加え、自民党支持率にも陰りが見える現状に、「麻生政権末期に似てきた」との声も聞こえてくる。
自民党は、麻生政権下の09年衆院選で歴史的大敗を喫して下野した。安倍氏のもと、12年衆院選で政権奪取を果たし、自民党は一層したたかになったとの見方もある。
現状は「一強の自民党と多弱の野党」である。自民党を制すれば日本を制す―。権力闘争は、とどまるところがなさそうだ。
●“ガソリン減税”実現できる?自公国の3党協議なぜいま開始? 11/30
ガソリン税を引き下げる「トリガー条項」の発動をめぐる、自民・公明・国民の3党協議が始まりました。なぜ、このタイミングで与党は野党との協議に応じたのでしょうか。
トリガー条項の発動をめぐり、午後3時から始まった与党と野党・国民民主党の3党協議。発端は先週の国会でのやり取りでした。
国民民主党 玉木雄一郎代表「トリガーの発動、ここで決断できませんかね」
岸田総理「トリガー条項の凍結解除も含めて、ぜひ与党と国民民主党で検討したい」
3党での協議が行われているトリガー条項とは、レギュラーガソリンの価格が1リットル160円を3か月連続で超えた場合、25.1円安くなる仕組みのこと。
この3党は去年も検討チームを設け、議論を行いましたが、政府・与党内に地方の税収減に繋がるなど慎重な意見が多く、結論が見送られた経緯があります。
国民民主党 玉木雄一郎代表「われわれ覚悟を持って今回は(補正予算に)賛成しましたので、トリガー条項の凍結解除はやりきりたいと思います」
今も自民党内にはトリガー条項への慎重論が根強く残りますが、なぜ、岸田総理は3党協議を指示したのか。そこには2つの理由があるとの見方が出ています。1つ目は、国民民主党の連立与党入りです。
自民党幹部「自民党幹部の中に、いずれ国民民主党と連立を組もうとしている人がいる」
国民民主党の支援団体である連合の一部を取り込み、政権運営を安定化させようと、自民党内には国民民主党との連立を摸索する動きがあるのです。そして、2つ目はガソリン補助金の出口戦略です。
与党幹部「補助金をやめるタイミングが難しい。トリガー条項へ変えることでガソリン価格が下がれば、自動解除できるというメリットもある」
政権幹部も「岸田総理は非常にフラットな考え方で、最初からやらないとは決めていない」と話していて、トリガー条項の行方は政局含みでの議論に委ねられそうです。
●前原氏、国民民主の玉木代表らを批判 維新との連携示唆 11/30
国民民主党代表代行の前原誠司衆院議員は30日の記者会見で、新党結成に際し、国民民主に離党届を提出したと明らかにした。同党執行部の党運営について「トリガー条項の凍結解除に体重をほとんど乗せ、極めて支持率の低い岸田文雄政権と協力を模索する路線にある」と批判した。
他党との関係については「非自民・非共産の野党協力を求める。理念を共有してくれる方々とは連携したい」と強調。「教育無償化の実現に賛同いただけるのであれば、日本維新の会と連携していきたい」と語った。
前原氏のほか、国民民主から新党「教育無償化を実現する会」に加わる嘉田由紀子参院議員、斎藤アレックス、鈴木敦両衆院議員も離党届を提出した。
●前原誠司氏 離党届提出の国民民主党は「是々是々」 11/30
国民民主党の前原誠司代表代行は30日、国会内で会見し、党に離党届を提出し、新党「教育無償化を実現する会」を結成する予定であることを発表した。前原氏が代表を務め、同様に国民を離党した嘉田由紀子参院議員、斎藤アレックス、鈴木敦両衆院議員と、無所属の徳永久志衆院議員の計5人が参加する。
前原氏は「国民民主党の綱領や考えは極めて私の思いに合致している」としながらも、玉木雄一郎代表がこだわるがガソリン税のトリガー条項凍結解除に「体重のほとんどを乗せて極めて、支持率の低い岸田政権との協力を模索している」と指摘。「ガソリン代の値下げも大事と思うが、それがすべてではない。日本の失われた30年を取り戻すために新たな道を歩みたいという思いを共有し、今日に至った」と説明した。
党のスタンスについて「今は(岸田政権に)『是々非々』ではなく『是々是々』だ。(是々非々という党のスタンスから)かなり変わってきたという判断をしなくてはならない」とも指摘した。
前原氏ら国民所属の4人は会見前に党側に離党届を提出したが受理されなかったとして、離党届を内容証明郵便で送付したという。受理されなかったことは「遺憾」と述べ、玉木雄一郎代表とは「まだ話していない」と述べた。正式な新党結成は、党内手続きがすんだ後で、現在は政治団体としての位置づけになる。
党として訴える教育無償化、教育予算の倍増は「ボウリングでいえばセンターピン」とした上で、「日本の窮状を変えるには、ワンイシューで(与党に)協力するのではなく『非自民、非共産』でしっかり野党結集を進め、政権交代への道筋をつくりたい」と述べ、現在の党の路線との決別と、野党結集に活路を見いだしたい思いを示した。
●定額減税、所得制限設ける意見が大半 自民税調、公明と食い違い? 11/30
30日に開かれた自民党税制調査会の幹部会合で、岸田政権が決めた所得税などの定額減税について、富裕層への所得制限を設けるべきだという意見が相次いだ。会合後、宮沢洋一税調会長が記者団に明かした。一方、公明党の会合では意見が出なかったという。
政府は11月に閣議決定した総合経済対策で、3兆円台半ばの規模の定額減税を実施することを決めた。所得税と住民税を合わせて1人計4万円を来年6月以降に減税する。大枠は決まっているが、実際に法案として国会に提出するには与党税調で詳細を議論して年内に決める必要がある。
宮沢氏は「富裕層に対して制限を加えるべきだという意見が大半で、1人だけ制限がない方がいいという意見があった」と明かした。一方、公明の会合後、西田実仁税調会長は「(公明の会合では)誰もそういう意見は言っていなかった」と話した。
●選挙の顔♀ン田首相の不人気っぷり あまりに悠長… 11/30
「最近は何を打ち出しても、有権者に見透かされている気がするんだ」
旧知の自民党中堅議員が、ため息交じりに言いました。朝、街頭に立っても、今までにないほど有権者の反応が悪いそうです。
「コアな支持者からも『選挙区はともかく、比例は違うところに入れるかも』と言われる」と、こぼしていました。
内閣支持率が、与党の政党支持率を上回る部分を「首相プレミアム」と呼びます。「選挙の顔」としての岸田文雄首相の人気を計るバロメーターです。最近の世論調査の結果は以下の通りです。
朝日新聞(18、19日実施)内閣支持率25%、自民党支持率27%、首相プレミアム=マイナス2%。
読売新聞(17〜19日)内閣支持率24%、自民党支持率28%、首相プレミアム=マイナス4%。
産経・FNN(11〜12日実施)内閣支持率27・8%、自民党支持率29%、首相プレミアム=マイナス1・2%。
軒並みマイナスで、岸田首相の存在が足を引っ張っているようです。先月末で衆院議員の任期の折り返しを越え、ここからは常在戦場。いつ選挙があってもおかしくないとなれば、首相のイメージの悪さに注目が集まります。
しかし、どうして「何を言っても見透かされる」ほど信頼感を失ったのでしょうか?
私が担当しているニッポン放送の番組「OK!Cozy up!」にも、防衛費増額や少子化対策では増税や社会保険料の負担増を匂わせたのに、今回唐突に減税を言い出すのは一貫性がない―という指摘が毎日のように届きます。
一方で、外交では「日中首脳会談で言うべきことを言った!」という評価もあり、内政と外交で分けて考える人も多いようです。ただ、外交は自分の生活に直接影響はないが、内政、特に経済政策は自分の財布に直接影響するので、総体としては厳しい評価が多くなります。
その経済対策も、今年度補正予算は約13・1兆円を出し、減税まで訴えたのに世論には響かない。光明があるとすれば、この財政出動が迅速に世の中に回って経済を下支えし、来年の春闘で今年以上の賃上げ、そして減税が相まっての景況感の好転です。
首相周辺も「じわじわと支持率も上昇するのではないか」と期待しているとも聞きます。ただ、結果が出るのは半年以上先ですから、あまりに悠長です。
その前に「日銀が年明けにも『マイナス金利の解除』を打ち出すのではないか?」という噂もあります。支持率低下で、永田町・霞が関に忖度(そんたく)しないで進めるという見方です。
そうなると、引き締めシグナルで、また景気は腰折れ。岸田政権がますます窮地に陥るシナリオも見えてきます。岸田首相が所信表明演説で語った通り、政権の行方も「経済、経済、経済」なのかもしれません。
  
 
 12/1

 

●自民・二階元幹事長が政局見据えて「意味深発言」、岸田首相が“詰んだ” 12/1
老獪な二階氏の意味深な発言と 岸田首相を襲う3つの逆風
「二階さんは、『徹底的にやる』と明言したらしい」(自民党二階派幹部)
こんな声が聞かれるようになったのは、11月中旬のことだ。この「徹底的にやる」とは、11月9日、自民党の二階俊博元幹事長が、菅義偉前首相や森山裕総務会長らと、東京・銀座の懐石料理店「川端」で会食した際、飛び出した言葉だ。
この話は、これから始まる政局で主導権を握ろうとする決意の表れとして、その翌日の11月10日、産経新聞でも報じられたが、派閥の幹部によれば、確度が高い話のようである。
二階氏といえば、2020年の東京都知事選挙で小池百合子知事が再選を目指して出馬した場合、真っ先に支援する意向を示し、同年、「ポスト安倍」を巡る政局では、いち早く菅氏支持を打ち出し、菅首相誕生への流れを作るなど、先手必勝の「政治勘」には定評がある。
その二階氏が、政局に率先して動くとなれば、
(1)政務三役の相次ぐ辞任と経済対策の不評
(2)岸田派を含む自民党5派閥の政治資金収支報告書に、パーティー券収入4000万円分が記載されていなかった問題
(3)当時、自民党の衆議院議員で、東京五輪の招致推進本部長を務めた馳浩石川県知事が「官房機密費で、IOC(国際オリンピック委員会)の委員約100人への贈答品として、1冊20万円でアルバムを制作した」と発言した問題
これら、3つの問題で逆風にさらされ、すでに報道各社がはじき出す内閣支持率が、軒並み20%台まで下落している岸田文雄首相の足元など、たちまちに揺らいでしまうだろう。
「自民党はかつて当時の社会党とも手を組んだことがある政党。もう限界の岸田首相を降ろして、今の国内外の動きに対応し、衆議院選挙で勝てる総裁を、となれば、ワンポイントリリーフとして石破茂元幹事長を担ぐこともあり得る」(自民党無派閥中堅議員)
この言葉にもにじむように、岸田首相に残されている起死回生策はもうない。岸田首相は「外交の岸田」を自負しているが、来る2024年以降に予想される国際情勢の大きなうねりは、岸田首相のキャパシティーを超えているのではないかと思わざるを得ない。そのポイントを列記してみよう。
三つどもえの台湾総統選挙 中国の介入は実らず
まず、1月13日に行われる台湾総統選挙だ。今回の総統選挙は、「台湾のことは台湾人が決める」と、中国に対し毅然(きぜん)とした態度を貫いてきた民進党・蔡英文総統の後継を決める重要な選挙になる。
すでに、11月24日に立候補の届け出が締め切られ、与党・民進党が擁立した頼清徳氏(64)、中国との関係改善を重視する最大野党・国民党の侯友宜氏(66)、そして、第3勢力として台頭してきた民衆党の柯文哲氏(64)の三つどもえの戦いになることが決定した。
世論調査の支持率で30%台半ばを記録し、常にトップを走ってきたのが頼氏。対する侯氏と柯氏はそれぞれ20〜25%前後の支持率であったため、「野党が分裂したままでは負ける」と、「棄保」(共倒れを避けるため、勝てそうな候補に一本化する)を目指す作戦に出た。これが裏目に出る。
仲介したのは、親中派とされる馬英九前総統だ。馬氏は、11月2〜5日に北京を訪れた側近を通じ、民衆党に譲歩するよう国民党に迫った。国民党内で馬氏の影響力は今なお大きく、同15日には、馬氏が同席する中、両党が一本化に向けて交渉を本格化させ、複数の世論調査を比較して統一候補を選ぶことで合意したのである。
ただ、この交渉は決裂した。世論調査のどの部分を見て判断するのか意見が対立したほか、立候補届締め切りの前日、侯氏と柯氏の交渉の場に、柯氏が「誰も連れてくるな」と要望したにもかかわらず、侯氏が馬氏と国民党の朱立倫党首を連れてきたためだ。これに柯氏側が猛然と反発し、「藍白合作」(藍=国民党、白=民衆党のイメージカラー)は破談となってしまった。
この流れからすれば、頼氏が圧倒的に有利になる。民進党は頼氏でまとまる半面、野党側は2候補に分裂してしまうからだ。しかも馬氏の表舞台への登場は、明らかに「中国の選挙介入」によるものであり、そのことは頼氏の陣営やその支持者を結束させることになる。
もっとも、台湾の美麗島電子報は、最新の世論調査(11月21日〜23日実施)で、頼氏と侯氏が接戦であると伝えており、選挙の行方は予断を許さない。
とはいえ、野党候補の一本化が成功せず、頼氏が勝つとなれば、侯氏か柯氏を通じて台湾統一への足掛かりを作ろうとした中国の習近平総書記は頭を抱えることになるだろう。
習近平総書記が語った 「平和統一」はまやかし
その習氏は、国家主席として11月14日、サンフランシスコ郊外でバイデン大統領と会談した。メディアの中には、軍事対話の再開で合意した点などを取り上げ、米中両国の関係修復に向けて前進したと評価する声もあるが、筆者は「とんでもない誤報」だと感じている。
習氏は、バイデン氏を前に、「アメリカを超えようとか、アメリカに取って代わろうとか、考えたこともない」と述べ、「2027年か35年に台湾を侵攻するような計画は中国にない」と強調した。
しかし、この部分だけで、「台湾有事は杞憂だったか」と安心してはいけない。習氏は首脳会談でも、台湾について「統一することは必然」と決意を示している。さらに、「平和がもとより非常に良いが、時に必要であればより広い解決方法が必要だ」と付け加えているのだ。
これは、平和統一が首尾良く進まなかった場合、「武力行使もあり得ますよ」と述べているに等しい。
岸田首相では 米中首脳と渡り合えない
筆者が思い出すのは、ニクソン政権で国務長官などを務めたヘンリー・A・キッシンジャー氏のこの言葉だ。
「中国の指導者が、一度きりの全面衝突で決着をつけようとすることは、めったにない。中国の理想は、相対的優位をさりげなく、間接的に、辛抱強く積み重ねることだ」(『キッシンジャー回顧録 中国(上)』岩波書店)
仮に、台湾で頼清徳政権が誕生すれば、中国は、習指導部の下、武力行使も視野に、着々と軍事力の増強を進め、国内の統制も強化するはずだ。
すでに、中国軍は、2022年8月のアメリカ・ペロシ下院議長(当時)訪台以降、台湾近海にミサイルを撃ち込むなど予行演習を繰り返している。
頼氏は副総統候補に、駐米大使に相当する役職を経験してきたアメリカ通の蕭美琴氏を指名しているため、米台関係をこれ以上強固にさせたくない中国は、台湾包囲網をよりエスカレートさせていくに相違ない。
国内統制でいえば、中国国内に約20万人いるテレビや新聞の記者を、中国共産党の「世論工作部隊」に仕立て上げようとしている点が何ともおぞましい。
11月4日を皮切りに、習近平思想に関する全国統一試験まで実施し、「台湾統一」などの問題に答えられない記者は排除されるというのだから、言論統制の極みと言うほかない。これらの点では、キッシンジャー氏の指摘以上だ。
対するアメリカも、中国に甘い顔を見せてはいない。訪米した習氏が降り立ったサンフランシスコ空港には、赤じゅうたんは敷かれず、バイデン大統領やブリンケン国務長官が出迎えることもなかった。特別待遇を一切しなかったことは高く評価できる。
また、バイデン氏本人も、最後まで、習氏が引き出したかった「台湾独立を支持しない」という言葉を口に出さず、会談後には習氏を「独裁者」と呼んでみせたところは、いかにも老獪な政治家らしい。
こうしてみると、二人とも実にしたたかだ。このように二枚腰、三枚腰で腹芸もできる政治家と、求心力をなくした岸田首相が渡り合えるとは到底思えない。
トランプ大統領が誕生すれば 岸田政権はさらに危うくなる
もう一つ挙げれば、2024年11月に行われるアメリカ大統領選挙だ。選挙は、民主党のバイデン氏と共和党のトランプ前大統領の再戦になる可能性が極めて高い。
問題は、最新の世論調査でバイデン氏を上回るトランプ氏が、長い選挙戦を制して大統領に返り咲いた場合だ。
トランプ氏による機密文書持ち出しや不倫などは日本にとってつゆほどの影響もないが、トランプ氏が再び大統領になれば、米中関係の悪化は避けられなくなる点はリスクだ。
トランプ陣営では、政権構想の立案を、側近のステファン・ミラー前大統領上級顧問らを中心に進めているが、その政策綱領を見ると、まず、最初に、「中国依存の通商路線からの脱却、中国に対する最恵国待遇の廃止」がうたわれている。
トランプ氏といえば、中国と激しい貿易戦争が記憶に新しいが、強硬な対中政策を掲げるトランプ政権が再び誕生した場合、米中関係はさらに悪化し、台湾だけでなく日本にも大きな影響をもたらすことになる。
こうした中、「外交の岸田」はどうだっただろうか。たとえば、イスラエルとハマスの戦争において日本の存在感を何か一つでも国際社会に示してきたか、そして、北朝鮮の「偵察衛星」発射に関して事前に強いメッセージを送ってきたか、と問われれば、その答えは「NO」だ。
アメリカ大統領選挙が実施されるころには、岸田首相ではないかもしれないが、岸田首相のままであったとすれば、習氏の専横を許すのみならず、トランプ氏が返り咲いた場合に実践するであろう「アメリカファースト」の外交政策に翻弄されることは間違いない。
●”鬼の岸田首相”より酷い…維新議員が断言「ガソリン代は高くていい」 12/1
政府、自治体、経済団体は、こぞって「2050年カーボンニュートラルを目指す」、つまりCO2をゼロにする、「脱炭素社会」を宣言している。だが、脱炭素とは、石油もガスも石炭も禁止するということだ。経済が大きな打撃を受けることは容易に想像がつく。そもそも、脱炭素によって、温暖化が解消されるのだろうか?経済誌プレジデント元編集長の小倉健一氏が解説する――。
「地球温暖化対策」と「脱炭素」に相関性はあるのか
「日本維新の会」所属の足立康史衆議院議員が、11月25日、X(旧Twitter)に「ガソリン代は、高くていいのです」とポスト(投稿)した。続けて、「まさか、このポストだけ読んでリプしてる人は居ないと信じたいけど、先行するポストを読んでない人向けに、文脈を補足しておきます。地球温暖化対策、脱炭素という長期的な経済構造の観点から言えば、『ガソリン代は高くていいのです。』」と自身のポスト内容を補足した。
足立議員のいう「ガソリン代は、高くていいのです」という認識について、今回は考えを述べたい。
まず、文脈を切り取っているという指摘を受けないためにも、まずは「地球温暖化対策」としての「脱炭素」について述べる。足立議員を含む、多くの人も間違った認識を持っている可能性がある。
2023年9月25日に発表された『温室効果ガスの排出によって気温レベルはどの程度変化しているのか?』という検証結果が分かりやすいだろう。検証したのは、ジョン・K・ダグスヴィック氏ら。ノルウェー統計局に所属している。
検証結果の衝撃すぎる中身
これは、2020年に発表された結論である<過去200年間にわたって、人間によるCO2の排出は、気温の変動に大きな体系的な変化をもたらすほどの強い影響を与えているわけではありません>を、気温データに関する過去の統計分析、理論的な議論と統計的な検定を用いて、検証したのだ。
そう、繰り返すが、<過去200年間にわたって、人間によるCO2の排出は、気温の変動に大きな体系的な変化をもたらすほどの強い影響を与えているわけではありません>という結論は、正しかったのだ。つまり、地球温暖化は進んでいるけれど、人類が排出するCO2を減らしたところでどうこうなる問題ではないということだ。
この検証では、以下のようなことが指摘されている。
・過去200年間に観測された気温のデータには、長期的な周期性と温度上昇の傾向が一貫してみられる
・グリーンランドの現在の10年平均気温は、過去4000年間の自然変動の範囲を超えていない
・2031年から2043年の10年間で、地球の平均気温は -1.0℃下がると予想される
・地球の気温変動には複数の要因がありますが、その一つに太陽と月が引き起こす気温の周期があり、この周期は最大で約4450年に及ぶ。また、数十年ごとの気温変動の主要な原因は、木星型惑星(木星、土星、天王星、海王星)と海王星が生成する一定の軌道周期によるもの
・人間によるCO2の排出は、気温の変動に大きな体系的な変化をもたらすほどの強い影響を与えているわけではない
燃料代の高騰によって経済が悪化する実例がある
検証では、地球の気候が複雑で、CO2が地球温暖化に影響を与えることが証明できなかった一方で、過去の気候変動の枠内で現在の気候が変動していることを指摘している。
つまり、地球温暖化対策で、脱炭素を行うのは間違いであるということだ。
では次に行こう。「ガソリン代は高くていい」のかということだ。
これは、現在、失速をはじめたドイツ経済の例を考えるとわかりやすいだろう。国際通貨基金(IMF)の最新報告によると、ドイツ経済は今年-(マイナス)0.5%になるという。IMFによれば、アメリカは2.1%、日本は2%、イギリスは0.5%、ユーロ圏全体でさえ0.7%の経済成長が見込まれる中で、「一人負け」のような状態になっている。
IMFは、ドイツが「世界的に遅れをとっている」原因の一つとして、次のようにいう。
「ロシアのエネルギー輸入に大きく依存していた経済(とりわけドイツ)は、エネルギー価格の急騰と、より急激な景気後退を記録した」
燃料代の高騰がドイツ経済を悪化させている
ドイツ連邦議会では野党のハンスイェルク・ドゥルツ氏(カウダー独連邦議会キリスト教民主同盟・社会同盟)は、「ドイツの現在の経済危機は自業自得だ。グリーンな計画経済の代わりに、古典的で明確な供給サイドの政策が必要だ。官僚的なコストを削減し、税金や賦課金を減らしてエネルギー価格を下げ、企業の研究開発を強化する。そうでなければ、ドイツは長期的に遅れをとる恐れがある」(ドイツ経済ニュース)と批判をしている。
また同記事内では、ドイツ商工会議所(DIHK)のマルティン・ヴァンスレーベン専務理事のコメントも記載されている。
「エネルギー価格の高騰、将来のエネルギー供給に対する不安、高い税金や関税、官僚主義、熟練労働者の不足、世界経済の低迷などが、ビジネスの重荷になっている」
燃料代の高騰がドイツ経済を悪化させているという声を足立議員はどう受け止めるのだろうか。炭素税は日本企業の国際競争力を奪うものだ。
燃料代の高騰がいかに貧困層を痛めつけるか
「長期的な経済構造の観点から言えば、ガソリン代は高くていいのです」という足立議員の主張には、首を傾げざるを得ない。短期的にも長期的にもエネルギー代は安い方がいいと、経営者の感覚なら考えるのではなかろうか。
ちなみに、ドイツ紙で批判される「官僚主義」「計画経済」だが、足立議員は、経産省出身の元官僚だ。今後政権交代をしようという政党の有力議員がこの主張するのでは、警戒するほかあるまい。
最後に、燃料代の高騰がいかに貧困層を痛めつけるかについても述べておこう。
ガソリン・灯油などの燃料、光熱費は、所得が増加するにつれて、より多く消費されるようになる。しかし貧困層の相対的な負担は、可処分所得がはるかに低いことを考えると、より高い。また、容易に想像できることだが、都市部では、灯油暖房代の比率が低く、公共交通インフラが発達しているが、地方では逆だ。収入第T分位(年収・約330万未満の世帯)と呼ばれる所得層の家計消費支出に占めるエネルギー関連の支出は、10%超える水準で推移しているが、地方ではさらに大きな割合を占めていることになる。
足立議員の発言「ガソリン代は、高くていいのです」は倫理的にも間違っている
足立議員のいう「ガソリン代は、高くていいのです」は、倫理的にも誤った認識であることがわかるだろう。足立議員は、かつて貯金を含む金融資産に課税するとして、世論の不評を買った経緯がある。
増税するまえに何かすることがあるというのが、維新の掲げた精神だったと思っていたが、トリガー条項の発動にも否定的な発言を繰り返している。本音が出たのだろう。とても残念だ。
「増税メガネ」と揶揄された岸田文雄首相ですら、こんな認識には至らないのではないのではないのだろうか。政治家の発言として、軽すぎるし、ひどすぎる。
●四面楚歌状態続く岸田首相 「期待できない」のは多くの人々が反対だから… 12/1
岸田文雄政権が決定した経済対策の裏付けとなる今年度補正予算が11月29日、成立した。与党の自民、公明両党に加え、日本維新の会、国民民主党が賛成にまわった。
筆者は9日の当欄で、どこからも評価の声が上がらない岸田政権の経済対策を「四面楚歌(そか)状態」と形容したが、意外にも国会においては大多数の賛成を得るかたちとなった。
国民民主党の賛成については違和感がない。いわゆる、「トリガー条項」の凍結解除への協議開始が賛成の決め手とのことだ。もともと、「需給ギャップは解消していない」として15兆円規模の経済対策を主張するなど、岸田首相と軌を一にする立場だった。
日本維新の会が賛成したのには正直驚いた。10月の同党経済対策提言では、「全体として日本経済は緩やかな回復軌道に乗りつつある」として、「大量の国債発行を原資としたバラマキ型の需要喚起を行うべきでない」としていたからだ。
もしかすると、15日に発表された今年7─9月期の実質国内総生産(GDP)速報値が前期比0・5%減、年率換算で2・1%減となったことが影響したのかもしれない。
3四半期ぶりのマイナス成長で、賃金の伸びが物価上昇に追いついていないことが消費を圧迫した。日本経済のデフレ脱却がそう簡単ではないことを裏付けるものといえる。
日本維新の会が旗を振る2025年大阪・関西万博予算が盛り込まれていた要因があったにせよ、状況に応じて政策のスタンスを変えることはあり得る話だ。
補正予算が成立したとはいえ、岸田政権の経済対策に対する「四面楚歌状態」は依然として続いている。最近の支持率低下の最大要因として挙げられているのは、「政策に期待が持てない」との理由だ。
ただ、これだけ批判一色の論調では、「期待できない」と回答するのは当然の帰結ともいえる。
ちなみに、全国紙各紙は3日、「デフレギャップはほぼ解消しつつあり、景気刺激的な経済対策は必要ない」として、岸田首相の経済対策を批判した。ところが、約10日後の速報値は、「経済は回復しつつあるが、その力はまだ弱い」とする岸田首相の認識の方が正しかったことを証明したといえないか。
多くの人々が反対しているからと言って、それが間違っている政策とはいえない。同様に賛成が多いからと言って、正しい政策ともかぎらない。
筆者は、最近の経済政策論議が、「感情論」的色彩を強めていることに危惧の念を抱いている。岸田首相の政策が正しいのか間違っているのか、現時点では分からない。少なくとも言えることは、感情的な議論をいくら重ねても、正しい結論には到達しないということだ。
●ブレる岸田首相 今こそ問われる政治姿勢 12/1
評者は2019年に『自民党−価値とリスクのマトリクス』という書籍を出版した。自民党の有力政治家9名について、それぞれの過去の発言やインタビュー、対談、論考を徹底的に読み、その政治家の立ち位置を明示する試みを行った。
その中で一番困ったのは、岸田文雄氏の分析だった。とにかく言動にしっかりとした軸がなく、その時々の政権に合わせて変化する。一貫した信念やビジョンがなく、一体、何を実現したい政治家なのかわからない。そのため「ブレることだけはブレない」というのが、当時の私が下した岸田評だった。
政権発足以降、岸田首相の発言はぶれ続けた。首相就任以前は金融所得課税について力説していたにもかかわらず、経済界からの反対があると、あっさりと主張を引っ込めた。「新しい資本主義」を訴え、新自由主義からの脱却を主張したものの、再配分政策が大きく進展したとは言いがたい。むしろ防衛費の大幅増を打ち出し、それに伴う増税方針を示した。
そして、今回の減税の表明である。これを一つの契機として、内閣支持率が大きく下がり、30%を割り込む調査が続出している。
国民に減税政策が支持されていないのではない。岸田首相の信念・ビジョンの欠如と、それに伴って言っていることがぶれ続ける姿に、国民が愛想を尽かしているのだ。
行政学者の牧原出は、「所得減税 なぜ不評? 選挙狙い 有権者が見透かす」の中で、岸田の政治姿勢を厳しく批判する。今回の減税は1年限りで、長期的な視点になっているとはいえない。極めて対症療法的な減税の打ち出しで、選挙狙いであることは明らかである。国民は、岸田首相の魂胆を見抜いている。「『ばらまけば国民は言うことを聞くだろう』という一番やってはいけないやり方」であり、「経済や財政の問題に関する国民のリテラシー(理解力)を尊重しているとは言えない」。
近年の有権者の動向を見ると、概(おおむ)ね2:5:3という投票比率が見えてくる。選挙に行けば概ね野党候補に入れる人が2割、選挙に行かない・関心が薄い層が5割、選挙に行けば与党候補に入れる人が3割というのが、おおよその傾向といえる。自民党は基本的に、低投票率下において、固定票で勝つという選挙戦術をとってきた。そのため、内閣支持率が30%を切ると、固定票の離反が起きていることになり、いつもの選挙戦術が通用しなくなる。だから、内閣支持率が20%台に突入すると、内閣存続に黄色信号がともるのだ。
こうなると、自民党の中から固定票の回復を名目として、タカ派層に訴える主張が目立ってくる。特に注目すべきは、6月に成立したLGBTなど性的少数者への理解増進法への反発である。自民党の高鳥修一衆院議員は、11月14日に党有志が集まる「保守団結の会」の会合で「内閣支持率や政党支持率が軒並み下がった大きな要素は理解増進法の成立だ。安倍政権を支えた岩盤保守層が離れてしまった」と述べた。
この背景には、10月に結党会見を開いた日本保守党の存在がある。この党は、作家の百田尚樹やジャーナリストの有本香らが自民党への不満を共有して立ち上げられたが、そのきっかけは、自民党執行部がLGBT理解増進法を推し進めたことにあった。ジャーナリストの櫻井よしこは、LGBT理解増進法への反発に共感を示した上で、「この百田新党を、自民党は軽く見てはならないだろう」と牽(けん)制する。
自民党よりもタカ派の政治勢力の出現は、固定票に依存してきた自民党議員にとっては、危機と映るだろう。これまで与党が選挙を有利に進めることができたのは、野党支持票が複数の政党に分散してきたことにある。与党議員が恐れているのは、同じ現象が与党側に起きることである。
このような状況下で、低支持率に頭を悩ませる岸田首相が、タカ派議員の主張を取り込み、政権維持をはかる可能性が考えられる。「ブレることだけはブレない」岸田首相の政治姿勢が、今こそ問われる。
●岸田政権の支持率なぜ急落?世論調査で「浮動票が減った」深刻な理由とは 12/1
岸田内閣の支持率が急落している。毎日新聞の2023年11月世論調査によると、支持率は21%、不支持率は74%になっている。10月から比べると、支持率は4.5%ポイントの低下、不支持率は6%ポイントの増加である。もちろん、支持率の低下と不支持率の上昇が大きな話題になっているのだが、私は「分からない、無回答」の人に注目したい。日本では、このように答える人は多い。「どちらでもない」という問いがあれば、さらに大きい比率となるだろう。これらの回答は、白黒はっきりさせたくない日本人の本質を表している。また、分からないことを分からないと答えるのは、日本人の美質を表しているとも言えるだろう。そして、「分からない、無回答」と答える人に見限られたことこそが、岸田内閣の支持率低下の本質を示していることを明らかにしたい。
岸田政権の支持率増減の要因
下のグラフは「支持する」「支持しない」「分からない、無回答」(以下、「分からない」と表記する)と答えた人の割合の推移を示したものである。ここで示したのは、NHKの世論調査である。毎日新聞の世論調査でないのは、NHKの世論調査がより安定した結果を示すとされていること、および、長期の時系列が取りやすい形で提供されていることによる。
   図_岸田内閣の支持率の推移
まず、読者の方々に思い出していただくために、支持率とそれに影響を与える主な事象を整理する。
2021年10月に岸田内閣が発足して以来、徐々に支持率を高めてきた。これは、コロナウイルスワクチンの接種が進み、感染者が減り、コロナ収束の希望が見えたからだと私は思う。ところが、22年8月以降、支持率が低下してきた。その後23年になると徐々に支持率を高めたものの、6月以降は再び低下傾向となった。
2022年8月以降の低下は、旧統一教会と自民党の癒着のスキャンダル、安倍晋三元首相の国葬の決定が影響しているとされている(「旧統一教会、国葬 失速する岸田政権」朝日新聞、2022年9月12日)。
2023年3月の上昇は、戦時下のウクライナに赴き、ゼレンスキー大統領と会って連帯を示したことによる。
23年5月の上昇は、広島サミットで、G7首脳がそろって平和記念資料館を訪れ、献花したからだ。後に歴史の教科書に掲載されるような写真を見れば、支持率が上がるのも当然だ。しかし、外交は票にならないといわれるように、支持率を長期的に維持する効果を持たず、低下していった。
6月以降の低下は、マイナカードを巡る混乱だろう(「内閣支持率の急落、政府・与党内に衝撃…岸田首相はマイナ対策への注力で信頼回復図る考え」読売新聞、2023年6月26日)。
慎重な人々の岸田政権離れ
以上は、支持率と不支持率の動きだが、私が注目したいのは「分からない」と答える人の動きである。こう答える人は通常は25%程度ある。
岸田文雄首相は、安倍元首相のような、一方で根強い支持があり、他方で「安倍嫌い」がいるというキャラではない。どちらかというと、熱心な味方がそう多い訳ではないが敵も少ないというタイプだろう。となると、「分からない」と答える人が一定数で推移しそうだが、実際には傾向的に減っている。
まず、内閣発足直後は「分からない」が多かった。これは、まだ何もしていないのに評価は早いという冷静な判断だろう。その後、「分からない」が減って、支持が増えている。「分からない」から、支持に転換した人がいたのだ。
22年9月では不支持が急増するが、同時に「分からない」が減っている。「分からない」から不支持に変わったのだ。その後、広島サミットで支持率が高まった後、年末の不支持急増へと続く。この時、「分からない」が継続的に減少している。
支持率の低下は、「分からない」と答える慎重な層に徐々に見限られたのが理由ではないだろうか。
支持率急落は減税のせいなのか
ではなぜ、「分からない」と答える慎重な層に見限られたのだろうか。
識者の議論は、所得税などの定額減税が「選挙対策に見える」などと不評を買い、支持率低下につながったというものが多いようだ。しかし、このような議論は、私には、減税しても支持率は上がらないと世論誘導しているような気がしてならない。
減税は、民のお金を民に返すものだからすべて良いことであるのに、減税が悪いかのような議論は私には理解できない。政治家が選挙目当ての行動をするのは当然で、選挙目当てでも減税するのは良いことだと私は思う。
増税主義者と思われていた岸田首相は、「経済成長の成果である税収増などを国民に適切に還元する」と語ったとのことである(「岸田首相『税収増を国民還元』」日本経済新聞、2023年9月26日)。
一般会計税収の対GDP比は、自民党が政権に返り咲いた2012年度の8.8%から2022年度には13.0%まで4.2%ポイント上昇している。GDPとは、国民のすべての所得を足し合わせたものである。税収がそれに対して増えているということは、増税しているのと同じである。うち、国民に明示的に問うて増税したのは、消費税増税の5%分、対GDP比では2.5%分のみである。残りの1.7%分(4.2%−2.5%)は、国民の許可を得ずに増税したのと同じである。
名目GDPが増えれば、名目所得も上昇して累進課税の上の階級に行く。すなわち、例えば、今まで10%の税金ですんでいた人が、所得が330万円以上に上がれば、330万円以上の分については20%の税金を払わないといけなくなる。この結果、税金が重くなる(ブラケット・クリープ)。しかも、一般会計には含まれないが、社会保険料の引き上げもある。国民には、頑張って働いて給料も増えたのに手取りが増えないという実感がある。残念ながら、政治家は、この感覚が分からないようである。この感覚があれば、この増税分のいくらかを還元するのは当然のことと力強く表現できたのではないか。
実は、岸田首相が尊敬するという宏池会の創始者、池田勇人元首相こそ、この感覚が最も分かる人だった。高度成長時代、所得が上がれば、累進課税の上の階級に行って、手取りが目減りする。だから、常に減税をして、税収の対GDP比が上昇しないようにしていたのである。
岸田首相には、池田元首相に学んで、この感覚を理解していただきたい。そうすれば、「分からない」と答える人々の支持を失うことはなかったのではないか。 
●パー券「キックバック」一時認める 自民安倍派、法令違反の疑いも 11/30
自民党安倍派の塩谷立座長は30日、派閥のパーティー券を一定以上売り上げた議員に対し、収入の一部を払い戻す「キックバック」について「(派内に)あったことはあった」と認めた。党本部で記者団の質問に答えた。政治資金収支報告書に記載されていなければ、政治資金規正法違反に当たる可能性がある。その後、塩谷氏は発言を撤回した。
塩谷氏は、所属議員の経歴に応じてパーティー券販売の「ノルマ」があることを認め、「しっかりと販売してもらう」ためだと説明。払い戻した金が、報告書などに記載されない「裏金」になっているか問われると、「しっかりと中身を見てみないと分からない」と述べるにとどめた。「派として内容をしっかり把握する必要がある」とも話した。
塩谷氏はその後、国会内で改めて記者団の取材に応じ、キックバックについて「事実を確認したわけではないので、一切撤回したい」と釈明。その上で「精査して何かあれば、また報告したい」と述べた。販売ノルマの存在は撤回しなかった。
●化石燃料に補助金…脱炭素化に逆行≠キる日本 COP28で強調できるか 12/1
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで11月30日に開幕した国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、深刻化する気候変動問題に対し、協調して脱炭素化の具体策を打ち出せるかが焦点だ。ウクライナ危機の長期化に加え、中東情勢の緊迫化など足元のエネルギー安定供給への懸念材料も多い。ガソリン補助金など脱炭素化と矛盾しかねない政策も散見される日本は、独自の脱炭素化への貢献策で、存在感が示せるかが問われそうだ。
「現実的な転換」を模索
「現実に向き合いながら転換していかないといけない」。COP28での議論に対して、経済産業省幹部はこう指摘する。背景にあるのは、日本の置かれた事情だ。東京電力福島第1原子力発電所事故後の原発再稼働は道半ばだ。急速に普及した再生可能エネルギーも発電量が天候に左右されるため、電力の約7割は今も火力発電に依存している。電力需要が高まる夏や冬は、運転休止中の老朽火力も稼働させて、なんとか需給逼迫を回避する状況が続く。温室効果ガス排出量が多く効率の悪い老朽火力から高効率の新型火力への置き換えも進んでいるとは言い難い。「中長期的な脱炭素化の潮流がある中、火力に大規模な新規投資をするのは難しい」(大手電力関係者)からだ。
補助金、再三にわたり延期
ウクライナ危機に伴う資源価格高騰や急速な円安の影響で、大半を輸入に頼る化石燃料由来の物価高が国民生活を直撃しているが、政府による物価高対策も脱炭素化の流れとは逆行するものだ。
政府は令和4年1月からガソリン補助金を導入。投じられた予算は累計で6兆円を超えた。政府も「いつまでも続けるわけにはいかない」(西村康稔経産相)とするが再三にわたり延期を繰り返しており、終了時期は見通せない。
ガソリン価格高騰対策はウクライナ危機直後の原油価格急騰を受け、先進7カ国(G7)でも相次いで導入されたが大半は終了。続けているのは日本と英国だけだ。日本では補助金終了後を見据え、ガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」の凍結解除に関する協議が与党などで本格化している。トリガー条項が発動されれば、日本だけが化石燃料への補助金を続けている国となる可能性もある。
日本はアジアにおける火力発電への水素・アンモニア混焼の推進など独自の脱炭素化策を打ち出し、貢献をアピールしたい考えだ。ただ日本の難しい事情も丁寧に説明しなければ、脱炭素化に消極的な国とみなされかねない。
●岸田首相を評価して初めて褒められた!本当に不人気なのか… 12/1
もういちいち数字を書かないが、今週も岸田文雄内閣の支持率は、日経新聞・テレビ東京と、テレビ朝日系ANNの世論調査で続落した。
先週から今週にかけて行われた国会の予算委員会では、野党側が支持率低下の一番の原因とされる所得税減税や、政務3役の不祥事、自民党派閥のパーティー券疑惑などで連日、岸田首相をボコボコにした。これでは支持率は下げ止まらない。
ただ、筆者は天邪鬼(あまのじゃく)なので、先週金曜、フジテレビのネットサイト「FNNプライムオンライン」に、「岸田さんはそんなにダメな首相なのだろうか。こんなに実績があるのに」という記事を書いてみた。
最近は岸田首相のことを「良く言う」のは、はばかられる。ネットを見ていると「嫌い」を超えて「憎しみ」の域に達しているようだ。だから世論調査の電話がかかってきても、「岸田さん支持します」とは答えにくいだろうし、筆者も岸田政権を評価する記事を書くと、多くの読者にお叱りを受ける。
だが、今回は少し違った。まずアクセス数が多かった。
例えば、ヤフーに転載された記事についたコメント数は27日現在、1800を超えていた。また、記事をリポストしたX(旧ツイッター)の「いいね」は4000を超え、インプレッション数(表示された回数)は144万回だった。筆者が書く「地味な」記事にこれだけの反応は珍しい。
「お叱り」のヤフコメももちろん多かったのだが、褒めてくれる人もいたし、さらに積極的な議論を展開する前向きなコメントも多かった。
ヤフコメを読んでいて、「本当にこれが支持率30%を切って、政権維持が『危険水域』に入っている政権への反応だろうか?」と不思議だった。もしかしたら、世論調査の数字ほど有権者は岸田首相を「憎んで」いないのかもしれない。そうだとしたら反転攻勢のチャンスはあるのだろうか。
記事では、原発処理水の放出などいくつかの実績とともに、「岸田さんがやったダメなこと」として、特にLGBT法の拙速な成立と、異次元の少子化対策を挙げている。
LGBT法成立をきっかけに、岩盤保守層が自民党を離れただけでなく「敵に回った」と以前書いた。岸田首相のやるべきことは「修正」だ。最近も、「体が男性で心が女性」の人が女湯に入って逮捕された。こういう「女性の安全を脅かすこと」が起きないような「仕組み」をつくり、それをアピールすることだ。
また、異次元の少子化対策は、あれで子供が増えるのか疑問なうえ、財源として現役世代が多く負担する健康保険料を値上げするのは愚の骨頂だ。これは今後、防衛増税よりはるかに批判を呼ぶ。直ちに修正すべきだ。
2度目の安倍晋三政権が7年9カ月も続いたのは、常に政策をリアリスティックに修正したからだ。岸田首相も間違っている部分は修正し、実績を増やせば国民の評価は変わってくると思う。
●巨額裏金疑惑、自民に動揺=広がる疑心―安倍派パーティー券不記載 12/1
自民党派閥のパーティー券収入不記載問題に絡み、最大派閥の清和政策研究会(安倍派)が巨額の裏金づくりを続けていた疑いが発覚した。岸田政権の中枢にいる同派歴代幹部が事情を知っている可能性もあり、野党からは「リクルート事件以来の大事件」との声さえ出る。求心力低迷に苦しむ岸田政権に追い打ちとなるのは必至だ。
「この場は政府の立場としてお答えしている。個々の政治団体や私の政治活動については差し控える」。1日、安倍派で「閥務」を取り仕切る事務総長を務めていた松野博一官房長官の記者会見は裏金疑惑に質問が集中したが、松野氏は事実上のノーコメントを繰り返した。
同派の裏金の総額は2022年までの5年間で1億円以上に上るとみられ、東京地検特捜部が捜査を進めている。この間の事務総長は、松野氏が19年9月から21年10月まで、その後西村康稔経済産業相が22年8月まで、高木毅自民党国対委員長が現在まで務める。
幹部らは1日、一様に「貝」となった。安倍派座長の塩谷立元総務会長は午前、「事実関係を精査する」とコメントした後、報道陣の取材を振り切った。高木氏も国会から雲隠れし、西村氏は閣議後の記者会見で「個々の政治団体の話なので答えを控えたい」と語った。
パーティー券収入の一部を払い戻すキックバックについては、塩谷氏が前日、派内で行われていたことを一時認めたが、すぐさま撤回。参院安倍派会長を務める世耕弘成参院幹事長は1日の会見で、自身がキックバックを受けたことはないか問われ、「慎重に事実関係を調査し、適切に対応させたい」と直接の回答を避けた。
政府・自民党内ではパーティー券収入不記載問題が明るみに出て以降、裏金づくりの存在がささやかれ「この件はさらに進展する」(自民関係者)との見方が広がっていた。
ある安倍派関係者は「安倍派の事務処理がずさん過ぎる」と述べつつも、「うちだけで収まる話のわけがない。他派閥もやっていることだ」と党内に疑いの目を向ける。他派閥の閣僚経験者からも「裏金というと聞こえは悪いが、パーティー券をノルマ以上に頑張って売ってくれた人にお返しするということ。悪質とまでは言えないのではないか」と同情する声が漏れる。
立憲民主党の泉健太代表は1日の会見で、「他派閥でも行われたと想像するのは当然だ」と強調。「この(臨時)国会で岸田文雄首相や自民党に説明を求める」と明言した。
「政治とカネ」の問題では、東京都江東区長選を巡り、自民党の柿沢未途前法務副大臣に対する東京地検特捜部による買収容疑での捜査も進んでいるもよう。政府関係者は「『裏金』スキームは悪質。年明け以降、捜査が本格化するだろう」との見通しを示しており、来年1月の通常国会でも自民党の政治資金の在り方が主要テーマとなる可能性がある。
党内では「これでは衆院解散などとても打てない」(中堅)との空気が大勢を占めつつある。岸田文雄首相は訪問先のドバイで「情勢を確認して答えたい」と述べるにとどめ、政府高官は「当面様子を見るしかない」とうめいた。 
●岸田首相に踏み絵<gリガー条項、政策実現に死に物狂い 12/1
国民民主党の玉木雄一郎代表が、夕刊フジの単独インタビューに応じた。2023年度補正予算は29日、参院本会議で可決、成立した。一般会計の歳出(支出)は13兆1992億円。今回の採決では、自民、公明与党だけでなく、国民民主党や日本維新の会などが賛成に回った。玉木氏は賛成の代わりに、岸田文雄首相にガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除を迫っている。これには、岸田政権に影響力を持つ財務省側が抵抗しているとされる。玉木氏は、トリガー条項の凍結解除について、「国民のための政策実現」「減税にすれば税金が天下り団体に漏れていくことがなくなる」と指摘。岸田首相が言及した憲法改正には、「自民党の保守派へのパフォーマンス」「やるやる詐欺だ」と喝破した。
財務省が牽制か
トリガー条項は、レギュラーガソリンの全国平均価格が1リットル当たり160円を3カ月連続で超えた場合、約25円の課税を停止し、130円を3カ月連続で下回れば元の税率に戻る仕組みだ。民主党政権時代の2010年に導入されたが、11年に東日本大震災後の復興財源確保を名目に凍結され、これまで適用された例はない。
玉木氏は「わが党は、2年前の衆院選から唯一、凍結解除とガソリン値下げを公約に戦った。選挙公約は、死に物狂いで実現せねばならない。野党も与党もその姿勢がないから、政治不信が高まっている」と強調する。
凍結解除のメリットは何か。
「補助制度は時の内閣が裁量で決める。トリガー条項は法制度に基づき、透明性が高い。エネルギー高騰への出口戦略として、補助から減税≠ノ移行すべきだ」
岸田首相が自民、公明、国民民主の3党で凍結解除について協議するよう指示したところ、財務省の牽制(けんせい)も始まった。鈴木俊一財務相は凍結解除について「国、地方合計で1兆5000億円もの巨額の財源が必要」などとクギを刺した。
減税で財政効率上がる
首相自身も灯油や重油が支援対象外となり、流通を混乱させるとして慎重な考えを示してきた。自民党内も慎重論が大勢を占めるが、玉木氏は、こうした指摘を退ける。
「補助金による激変緩和事業のうち、70%超がガソリンと軽油だ。これを補助から減税に振り替える。トリガー対象外の油種は補助金を継続すればいい」「鈴木財務相は1・5兆円の財源が必要というが、補助金ではそれをはるかに上回る予算が費やされている。減税にしたほうが、途中で天下り団体に漏れていくことがなくなり、財政効率は上がる」
凍結解除は、昨年春にも3党で協議したが見送られた経緯がある。玉木氏は今回の協議に「背水の陣で臨む」とし、進退について覚悟≠表明している。
「国民のため政策実現するには野党でも、与党でも協力する。与党にすり寄るのではなく国民生活に寄り添う。凍結解除もそうだ。補助金制度のムダが出たなら弊害を取り除くのはわれわれの責任だ」
岸田政権に是々非々で臨む玉木氏だが、憲法改正の議論については厳しく批判する。
「現場のやる気、熱意が全く感じられない。岸田首相の総裁任期である来年9月までにやろうとしたら、遅くても7月ごろまでに発議し、国民投票に入らねばならない。来年の通常国会の頃には、ある程度の案文がまとまっている必要がある。テーマを決め、たたき台となるような改正条文案をこの臨時国会で作らねばならないが、今のスピード感では到底無理だ」
国内防衛産業強化も必要 独自色のある外交を
玉木氏はこの背景に与野党の慣れ合いがあるとし、ネオ55年体制≠セと喝破する。
「自民党は『保守派』向けのパフォーマンスだけで、憲法改正する気はないのではないか。『やるやる詐欺』で野党を分断し続ける。一方、ひたすら護憲を叫ぶことで選挙には通る一部野党もいる。この奇妙な共闘関係が、憲法改正を阻んでいる」
中国、北朝鮮、ロシアという核保有国に囲まれ、日本の国防は厳しさを増している。岸田外交をどう見るのか。
「受動的外交はそつなくこなしていると思うが、世界秩序、アジアにおける秩序への構想力、能動的な外交の姿が見えにくい。例えば、中国に対して、同盟国や有志国と連携強化する姿は見せた。その結束を背景に、積極的外交を仕掛けていくべきだ。わが国の国益を増進するために何をやるのか。独自色のある外交も必要だと思う」
玉木氏は、国防強化にも、強い熱意を見せる。
「防衛力強化、防衛費を増やすことには賛成だ。自分の国は自分で守るというのが、われわれの安全保障戦略の基本だ。ただ、増えた予算で、単に米国から装備を買うだけという予算の使い方は、結果として国を強くするとは思えない。国内の防衛産業を強化することも必要だ」
衆院解散・総選挙がくすぶり続ける中、党勢拡大へ、国民民主党は何を訴えるのか。
「日本経済も社会も正念場だ。今、高齢者福祉が大切だと言わない政党はない。その陰で、働いている若手世代の給料は上がらない。わが党は賃上げを言い続け、ようやく国の課題にも上がった。給料が上がっても、税金と保険料があがれば手取りは増えない。社会保険料をこれ以上増やさない社会保障制度改革が必要だ。教育国債を発行して子育て、教育、科学技術、人への投資の無償化、あるいは予算を倍にする。次世代への投資、現役世代や若者を徹底的に応援しないと、今働いている人が高齢者を支えられなくなる。今の若者は、給料が低く、国民負担率が高く、結婚も出産も困難な『無理ゲー』(攻略不可能なゲーム)を強いられている。国民民主党は頑張れば報われる社会を作りたい」
●需給ギャップが再びマイナスに、7―9月期は3兆円不足=内閣府推計 12/1
内閣府は、2023年7─9月期国内総生産(GDP)の需給ギャップがマイナス0.5%だったとする推計値を発表した。3四半期ぶりのマイナス成長となった1次速報を反映し、再びマイナスに沈んだ。実質の年率換算では3兆円程度の需要不足となる。
需給ギャップは日本経済の需要と供給のバランスを示したもので、需要が供給を下回ればマイナスとなる。4―6月期には3年9カ月ぶりにプラスに転じたが、プラス基調に戻せなければ岸田文雄政権が目指す「デフレ完全脱却」の実現が遠退く。
●黒田前日銀総裁の目に余る失敗塗り潰し=c大型消費増税で内需不振 12/1
「中国に投資するなんて言おうものなら、お前は正気かと疑われる」とは、最近会ったニューヨーク・ウォール街の著名投資家の言である。「親中」一辺倒だったウォール街ですら「脱中国」が今や当たり前だ。
日本国内をみると、政官財の指導層は相変わらず中国に甘い。岸田文雄政権は先の米国での習近平共産党総書記・国家主席との会談では中身ゼロの「戦略的互恵」を持ち出す始末で、中国当局による理不尽な日本企業駐在員の拘束、福島第1原発の処理水に対する難癖への対抗策を打ち出す気配はまるでなかった。
日本の指導層の弛緩(しかん)した対中認識は今に始まったわけではない。一端は、連載されている黒田東彦前日銀総裁の日経新聞「私の履歴書」に見える。同連載では黒田日銀の失政塗り潰しが目に余るが、今回は第24回「マイナス金利 原油・人民元安に懸念」(11月25日付)を例に取る。「私は16年1月、スイスでの世界経済フォーラム(ダボス会議)に登壇し(中略)『中国は資本規制を強化した方がよい』と発言した。人民元安が再び日本を含むアジアにデフレ圧力を及ぼす懸念があった」「新興国経済への先行き懸念もあり、世界的な株安や円高が進んでいた。スイスに出発する前、私は追加金融緩和の選択肢を議論できるように、内々に準備を要請していた。帰国後、1月29日の金融政策決定会合で、日銀はマイナス金利政策の導入を決めた」とある。
当時、中国は資本逃避が急増し、習政権は追い込まれていた。為替投機家のジョージ・ソロス氏が同じダボス会議で「中国のハードランディングは不可避だ」と言い放ち、中国市場は大きく揺れた。が、黒田氏が助け舟を出した。人民元は前年12月に国際通貨基金(IMF)特別引き出し権(SDR)構成通貨となり、人民元は円を抜いてドル、ユーロに次ぐ第3位の「国際決済通貨」の座を獲得したばかりだった。人民元のSDR入りの条件は市場自由化だったが、黒田氏は約束履行を迫るどころか中国の規制継続を容認したのだ。
新たにマイナス金利が組み込まれた異次元金融緩和とともに大量発行される日銀資金の増発分相当額は国際金融市場に流出し、その多くが中国に投じられた。こうして習政権は金融危機脱出に成功した(詳しくは拙著「現代日本経済史」《ワニプラス刊》参照)。日本国内では、黒田氏が故安倍晋三元首相に飲ませた2014年4月からの大型消費税増税が招いた内需不振のためにカネは回らず、デフレが続いた。黒田氏が犯した重大な誤りについて、リフレ派諸氏は不問に付すが、拙論だけは黙るわけにはいかない。
中国は今、かつてない金融危機に直面している。グラフはその一端を示す。冒頭の発言通り、米国を中心とする海外投資家は人民元資産を大幅に減らし続けている。人民元は当局の介入によってかろうじて暴落を免れている。岸田政権が習政権の横暴を抑えたいなら、この機をどう活かすかだ。
●安倍派の裏金疑惑 言い逃れは通用しない 12/1
もはや「事務的なミス」という言い逃れは通用しまい。政治資金収支報告書の信頼性を根底から覆す行為で、徹底した説明責任と、「闇」の解明が求められる。
自民党の最大派閥・安倍派(清和政策研究会)が開催した政治資金パーティーで、パーティー券の販売ノルマを超えた売り上げを政治資金収支報告書に記載せず、集めた所属議員に還流させるキックバックを続けていた疑惑が表面化した。最近の5年間で1億円以上の「裏金」になった可能性があり、東京地検特捜部が政治資金規正法違反の疑いで調べているという。
不可解なのは、安倍派の塩谷立座長の対応だ。11月30日にキックバックの慣習があるのか問われ、いったんは「そういう話はあったと思う」と事実上認めたものの、その日のうちに「事実を確認しているわけではないので、撤回したい」と述べた。これでは疑念が膨らむばかりだ。なぜ発言を変えたのか、明確に説明しなければ国民は納得しないだろう。
派閥のパーティーを巡っては、2018〜21年に開かれた5派閥の収支報告書に計約4千万円の過少記載があったとして学者が刑事告発し、各派とも慌てて修正した。このケースは購入した政治団体に支出の記録があるにもかかわらず、そのすべてが派閥側の収入として記載されていなかったことから発覚した。複数議員が同じ団体に販売し、「名寄せ」が不十分だったとしている。
「政治とカネ」の問題で、最も肝心なのはカネの「収入」と「支出」を収支報告書に正確に記載して、透明性を確保することだ。ノルマ以上のパーティー券を売った議員に報いたいならば、派閥と議員側の収支報告書にその分を記載すれば法的に問題がないはずだ。
安倍派の今回の疑惑が事実ならば、「収入」も「支出」も隠蔽(いんぺい)した虚偽の報告書を提出していたことになり、極めて悪質だ。パーティー券の代金が議員個人の領収書不要の使い勝手のいいカネに化けたと疑われても仕方ない。政治資金規正法に基づく制度の根幹を揺るがす背信と言える。
政治資金規正法は、1回のパーティーで20万円を超える購入者・団体名を収支報告書に記載することを規定している。5派閥では、一晩で9千万円から2億円余りを売り上げる大きな資金源となっているからこそ、ありのままの収支を記し、国民の不断の監視の下に置く作業が欠かせない。
過少記載が国会で追及された際、岸田文雄首相らは、パーティー収入の総額は変わらないと強調。裏金づくりではないか、との指摘を全面否定した。
ただ、告発はパーティー券を購入した政治団体の収支報告書と照らし合わせて判明したのであって、報告する必要のない企業や個人の購入に関しては把握できないのが実態だ。
物価高に苦しむ国民は、政治とカネの問題に敏感にならざるを得ない。立て続けに明るみに出たずさんな処理に、政治不信は積み重なる。安倍派は憲政史上最長政権を支えた100人規模の集団だけに、重い責任を負う。低支持率に苦悩する岸田首相は自民党総裁として、各派閥に対してパーティーの収支の総点検をさせ、その結果をつまびらかにしない限り、不信を払拭できないと認識しなければならない。
●安倍派、裏金1億円超疑い パーティー収入還流 ―政治資金問題・東京地検 12/1
自民党の派閥による政治資金パーティー券収入を巡る問題で、最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)が、パーティー券の販売ノルマを超えて所属議員が売った収入について、政治資金収支報告書に記載せず裏金として議員側に還流させていた疑いがあることが1日、関係者への取材で分かった。裏金の総額は2022年までの5年間で1億円以上に上るとみられるという。
告発を受けて捜査している東京地検特捜部の任意の事情聴取に、安倍派関係者がキックバックについて説明していることも判明。特捜部は、政治資金規正法違反(不記載など)容疑での立件も視野に資金の流れなどを調べているもようだ。
安倍派の塩谷立座長は1日、記者団の取材に「これから事実関係を精査する」と述べた。
関係者によると、安倍派では派閥のパーティー券販売について所属議員の役職などによってノルマが与えられる。ノルマを超えて売った分は、議員側にキックバックする運用が続けられてきたという。
派閥や議員側の収支報告書に記載していれば法的には問題ないが、安倍派はいずれの収支報告書にも記載せず、裏金にしてきた疑いがある。裏金の総額は、収支報告書の不記載、虚偽記載罪の時効にかからない18〜22年の5年間で1億円以上とみられる。
●松野官房長官 自民・安倍派の1億円不記載疑惑をめぐり言及避ける 12/1
自民党の最大派閥・安倍派が政治資金パーティーの収入を議員側に「キックバック」し、収支報告書に記載していなかった疑いがあることについて、派閥の事務総長を務めていた松野官房長官は「現在、派閥を代表する立場にない」として言及を避けました。
松野博一 官房長官「現在、派閥を代表する立場にありませんので、それぞれの政治団体は事実関係を確認の上で、必要に応じ説明するなど、必要な対応がなされるものと考えています」
松野官房長官は、2019年9月からおよそ2年間、自民党・安倍派で幹部にあたる事務総長を務めていましたが、派閥の政治資金パーティーに関する一連の問題をめぐり、「現在、派閥を代表する立場にない」として言及を避けました。
また、松野氏は「この記者会見は政府の立場としてお答えしていると認識している」と強調した上で、「まずは政治団体において精査した上で説明するということに尽きると思う」と述べるにとどめました。
●安倍派 パーティー収入不記載 5年で数億円か キックバック疑い 12/1
自民党の最大派閥「清和政策研究会」安倍派が、所属する議員がパーティー券の販売ノルマを超えて集めた分の収入を議員側にキックバックし、派閥の政治資金収支報告書に収入や支出として記載していなかった疑いがあることがわかりました。関係者によりますと、議員側にキックバックされた資金の総額は去年までの5年間で数億円に上るとみられ、東京地検特捜部は資金の流れなどについて調べを進めているものとみられます。
自民党の派閥の政治資金をめぐっては、複数の派閥が、所属する議員の役職や当選回数などに応じてパーティー券の販売ノルマを設定し、ノルマを超えて集めた分の収入を議員側にキックバックしていたことを示すリストを作成していたことがわかっています。
このうち自民党の最大派閥「清和政策研究会」安倍派が、議員側にキックバックした販売ノルマを超えた分の収入を、派閥の政治資金収支報告書にパーティーの収入や議員側への支出として記載していなかった疑いがあることが関係者への取材でわかりました。
安倍派のパーティー収入は、去年までの5年間にあわせておよそ6億5800万円と収支報告書に記載されていますが、関係者によりますと収支報告書にはノルマ分が収入として記載されていて、議員側にキックバックされた資金の総額は去年までの5年間で数億円に上るとみられるということです。
また、キックバックを受けた議員側の政治団体も収入として記載していない疑いがあるということです。
政治資金規正法は政治資金パーティーを主催した団体が収入の総額を収支報告書に記載することを義務づけています。
東京地検特捜部もこうした経緯を把握し、派閥の会計責任者などから任意で事情を聴いていて、資金の流れや収支報告書が作成された経緯などについて調べを進めているものとみられます。
塩谷 元文部科学相「これから事実関係を精査」
自民党安倍派の座長を務める塩谷 元文部科学大臣は「これから事実関係を精査する」というコメントを出しました。
岸田首相「国内情勢を確認してから答えたい」
岸田総理大臣は訪問先のUAE=アラブ首長国連邦で、自民党の派閥の政治資金をめぐる問題への見解や対応を問われ「これからCOP28の開会式に臨むところだ。会議に専念しているところなので、国内情勢を確認してから答えたい」と述べました。
松野官房長官「政府の立場で答えること 差し控える」
松野官房長官は記者会見で、記者団から「かつて事務総長を務めていた安倍派ではノルマを超えて集まった収入を所属議員にキックバックしていたのか」と問われ、「個々の政治団体の活動に関して政府の立場で答えることは差し控える。それぞれの政治団体の責任で必要な対応がなされると考えている」と述べるにとどめました。
また「みずからが派閥のパーティー券を販売して得た収入は全額、派閥に納めてきたのか」という質問に対しては、「この場は政府の立場として答えているものと認識しており政治団体や私の政治活動に対するお尋ねについては差し控えたい」と述べました。
宮下農相「私自身の事務所ではキックバックの事実はない」
自民党安倍派に所属する宮下農林水産大臣は、閣議のあとの会見で「私自身の事務所ではキックバックの事実はなく、そうしたことは認識していない」と述べました。
その上で、ノルマがあったのか問われたのに対し、「その時その時で目標額というか、目標に向けてお願いして、ということだ。基本的に、『超えて戻す』ということはなかった」と述べました。
西村経産相「各政治団体の責任で対応や説明がなされるべき」
過去に自民党安倍派の事務総長を務めていた西村経済産業大臣は、閣議のあとの会見で、「報道は承知しているが、個々の政治団体の活動に関して政府の立場で答えることは差し控える。それぞれの政治団体の責任で必要な対応や説明がなされるべきだと考えている」と述べるにとどめました。
高市経済安保相「返してもらう話には至ってなかったと記憶」
かつて自民党安倍派の前身の派閥に所属していた高市経済安全保障担当大臣は記者会見で「派閥のパーティーでは、割り当てられた枚数のパーティー券を売り切るのが精いっぱいだったので、よけいに販売して返してもらうような話には至ってなかったと記憶している。その仕組み自体、私には分からない」と述べました。
自民 世耕参院幹事長「事実関係を調査 確認し適切に対応」
安倍派に所属する自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「慎重に事実関係を調査・確認のうえ、適切に対応していくことが重要だ。政治資金収支報告書の修正が繰り返されているので、われわれは真摯(しんし)に受け止め、再発防止に努めることが重要だ」と述べました。
また「キックバックを受けた経験はないか」と問われたのに対し「政策集団の会計に関わることであり、刑事告発を受けたという報道がある以上は、慎重に事実関係を調査・確認して適切に対応させたい」と述べました。
立民 泉代表「自民党や総理に説明求めたい」
立憲民主党の泉代表は記者会見で「安倍派で裏金があったということであれば、そのお金がどう使われたのか明らかにしなければいけない。安倍派に限らず、ほかの派閥でも同様のことが行われていたのではないかと国民が想像や推測するのは当然で、自民党や岸田総理大臣に説明を求めたい」と述べました。
維新 馬場代表「自浄能力を発揮して調査し国民に説明を」
日本維新の会の馬場代表は、記者団に対し「事実とすればゆゆしき事態だ。自浄能力を発揮してきちんと調査し、国民に説明するよう求める。政治とカネの問題は、政治に対する信頼を低下させる一番の要因になるので、襟を正してもらわなければ政治全体に悪影響が出る」と述べました。
公明 石井幹事長「誠実な対応と説明を」
公明党の石井幹事長は記者会見で「各派閥や政治団体がしっかりと説明を尽くすことが重要であり、国民の信頼が得られるような誠実な対応と説明をしていただきたい。プラスのイメージにはならないが、内閣支持率を上げる奥の手はないので、政府・与党としては直面する課題にしっかり取り組んでいく以外にない」と述べました。
共産 田村政策委員長「首相の説明責任 追及していく」
共産党の田村政策委員長は記者会見で「裏金作りがあったということではないか。岸田総理大臣は、お金の動きをきちんと調査し、国民に説明する責任を果たさなければならず、追及していきたい。抜本的な法改正が必要で、政治資金パーティーを含む企業・団体献金を全面的に禁止する法案を提出したい」と述べました。
●岸田首相トップ、2億円超 党首収入比較、平均4452万円―22年政治資金 12/1
2022年の政治資金収支報告書から与野党各党首の収入を比較したところ、岸田文雄首相(自民党総裁)が2億679万円でトップだった。自民総裁が首位となるのは9年連続で、2位に4倍以上の差をつけた。党首の平均は4452万円だった。
各党首の資金管理団体と政党支部の収入を合計して比較した。共産党、みんなでつくる党の2党首は該当団体がないなどの理由で除いた。
首相は、東京や地元広島で開いた収入1000万円以上の「特定パーティー」7回分について、前年の政治資金パーティー収入を上回る1億4872万円を記載。個人・団体からの寄付では、日本医師会の政治団体「日本医師連盟」などから計3338万円を集めた。
2位は国民民主党の玉木雄一郎代表で4720万円。党からの交付金が減った影響で、前年から総額を2500万円以上減らした。立憲民主党の泉健太代表は3307万円で、前年から減少したものの3位に浮上した。
日本維新の会の馬場伸幸代表が2335万円で4位。収入の柱だった個人献金が大幅減となり、総額は前年の約4割だった。5位は社民党の福島瑞穂党首の2149万円で、個人からの寄付が半分近くを占めた。6位が公明党の山口那津男代表の1176万円。7位のれいわ新選組の山本太郎代表は859万円で、寄付の割合が7割以上に上った。
参政党の神谷宗幣代表は対象が資金管理団体のみで392万円だった。
 12/2

 

●佐藤ゆかり前衆議院議員 「パーティーばっかり…本末転倒」 12/2
11月29日の国会に先立つ予算委員会の質疑で、自民党の政治資金パーティーに関する収支報告書の記載漏れについて、野党が追及した。 政治資金パーティーの実態や問題点について、前衆議院議員の佐藤ゆかりさんに詳しく聞いた。
「政策をやりたいが、パーティーをやらなければいけない」
政治資金パーティーの売り上げは大きな金額となっている。各派閥のパーティー収入報告書によると、2022年は一番多かった麻生派が約2.3億円、岸田派・茂木派・二階派はそれぞれ約1.8億円を売り上げた。これは派閥の収入の8割ほどを占めているそうだ。 これほどまで政治資金って必要なものなのか?
佐藤ゆかりさん: 全てが利益にはならないんです。これは収入で、経費で回っていくわけです。私も議員活動をやっていましたけれども、税金だけでは到底政治活動というのは回らないです。ですからパーティーをやって収入を集めて、そこから私設秘書の人件費を払ったり、活動費を払ったり支出がどうしても必要です。パーティーをするとか、あるいは裕福な方は自己資金を投入して政治活動をやるとか、そういうことでないと今の政治は活動できないです。これでもかつかつぐらいだと思いますね。
政治というのが、こういうことをしないと回らないのなら、日本の政治が回っていないと言えるのではないのか?
佐藤ゆかりさん: 本当にパーティーばっかりやって何してるのか。本来政策についてやりたいところが、パーティーをやらなければいけない。本末転倒で、ちょっとこれは違うなと思いますね。
――佐藤さんご自身、お金集めの必要性は感じていましたか?
佐藤ゆかりさん: 国会議員の時代に、例えば秘書を大体10人ぐらい雇うわけです。そのうちの3人しか税金で人件費が出ないです。残り6、7人は自腹で払いますから、自己資金を持っていない人は当然パーティーをやって収入を集めて、それで人件費や活動費・移動費に出したり、秘書の宿泊費に出したり、広報宣伝費でニュースレターを印刷したり、ポスター刷ったり、いろいろあります。派閥だけじゃなく、個人でもやらないと間に合わないのが現状です。
2万円で「コーヒー1杯・名産品・本」ということも
取材した自民党の中堅議員の個人パーティーの内容で、コロナ禍ではあったが、最も価格と中身に乖離があると記者が感じたケースを紹介する。参加費2万円のパーティーで出されたのは、コーヒー1杯、選挙区の名産品、議員が執筆した本だった。これで2万円だったら、利益率がとても高いとはいえ、結局個人献金ではないかと思われかねないのではないのでは。禁止されている政治家個人への献金のようにみられ、政治不信につながるのではないかと気になった。
佐藤ゆかりさん: そうですね。個人献金は、政治家個人に献金をしてはいけないと禁止されています。パーティーの収入が入る先は、個人ではなくて政党支部に入ります。議員が代表を務めている支部に入るので、違法行為ではありません。ただしこれだけの資金がないと政治活動が回っていかないという、日本の民主主義の仕組みそのものが限界に来ているのではないかなと、やはり私は思います。
収支報告書の記載漏れは「起こり得る」
野党が追及したパーティー収入の記載漏れはなぜ起きたのか。 派閥側の説明では、ある政治団体が同じ派閥に属する議員3人から10万円ずつパーティー券を購入した。この政治団体は派閥のパーティー券を30万分購入しているが、各議員から派閥への報告は10万円ずつで、収支報告書に記載が必要な20万円を超えていない。3件全てが同じ団体からのお金だと確認することをしないため、派閥としては記載する必要がないと判断してしまったということだ。
さらに野党からは現在、記載されていないお金を裏金に回しているのではないかという疑惑も追求されている。
――このようなケースは、実際にあることなのですか?
佐藤ゆかりさん: 起こり得ます。派閥のパーティーですと、複数の議員が一つの同じ団体に対して売りに行くわけです。そうするとその団体はいろんな議員の顔を立てたいと考えて、この人から10万円、この人からも10万円…合計すると団体が派閥に対して30万円支払っていたと。銀行の通帳を見るとカタカナで名称の一部が記載されていますよね。あのカタカナだけだと、3回に分けて入ってくると、なかなか分からないことがあるかもしれません。ただ一つの団体から、一つの派閥に対して30万円であれば、記載しなければいけません。
――記載漏れがあるとすると、裏金になっているのではないかと疑いを持たれることにもなりますよね?
佐藤ゆかりさん: 当然、疑惑を持たれて仕方がないです。記載漏れですから。
不透明なお金の流れは政治不信につながる。チェック体制をしっかり整える必要があるのではないのか。
●武見厚労相、医療界から多額献金 相次ぐ閣僚の大規模パーティー 12/2
2022年の政治資金収支報告書で、野党が問題視する「政治とカネ」に絡む記載が改めて確認された。武見敬三厚生労働相は、医療界から多額の献金を受領。自粛が求められる大規模パーティーを開催する閣僚も相次いだ。自民党派閥の政治資金パーティー収入を巡る「裏金」疑惑が浮上する中、野党は一段と追及を強めそうだ。
武見氏は、父親が過去に日本医師会の会長を務め、自身も医師会の政治団体「日本医師連盟」から推薦を受けたことがあるなど、医療界と関係が深い。報告書によると、資金管理団体が医師や関係団体から、献金や「勉強会」の会費として2000万円超を集めた。過去3年間の総額は少なくとも1億円に上る。
24年度の診療報酬改定で、日本医師会などは大幅な引き上げを求めている。業界から手厚い支援を受けてきた武見氏が議論の調整役を務めることに、野党からは「医師会の代弁者になるのではないか」などと疑問の声が上がる。
政治資金パーティーを巡っては、岸田文雄首相が収入1000万円以上の「特定パーティー」を計7回開いたと報告書に記載。閣僚らに大規模パーティーの開催自粛を求める「大臣規範」に抵触すると国会で指摘された。
岸田内閣では、22年当時に現職だった林芳正前外相、加藤勝信前厚労相らも開催。今後、批判を招く可能性もある。
●資金力トップは西村経産相 「ポスト岸田」比較、茂木氏が2位 12/2
2022年の政治資金収支報告書で、「ポスト岸田」として名前が挙がる自民党議員8人の収入を比較したところ、トップは西村康稔経済産業相の1億8997万円だった。茂木敏充幹事長が1億8526万円で迫り、3位に林芳正前外相が続いた。
各議員が代表を務める資金管理団体と政党支部の収入を合算し、両団体間の資金移動を除いて比べた。
西村氏は22年中に東京都内で大規模な政治資金パーティーを3回開催。地元の兵庫県内を中心にセミナーを重ね、事業収入が1億2100万円に上った。支出も8人中最多で、交際費や渉外費などの「組織活動費」に4800万円を計上。このうち、パーティー券の購入とみられる「会費」が1200万円超あった。支出先には自民党他派閥の議員も広く含まれ、来年の党総裁選をにらんだ支持拡大の意味合いもありそうだ。
茂木氏は伸び率が最も高く、前年比23.9%増だった。パーティーを前年の倍となる4回開催し、収入が6000万円程度増えたことが主因。一方で、支出は前年から3700万円減っており、総裁選を見据え資金を蓄えた可能性がある。
林氏は個人や企業・団体からの寄付が減り、前年を下回る1億2470万円だった。支出は3割近く増加し、飲食代や土産代が目立つなど、関係者との交流を重視したことがうかがえる。
勉強会を立ち上げるなど総裁選への意欲をにじませる高市早苗経済安全保障担当相は、1億2165万円で4位。支出では、パーティーやセミナーへの「会費」の件数が多かった。
5位は小泉進次郎元環境相で、パーティー収入を伸ばし1億1088万円。6位の河野太郎デジタル相は企業・団体寄付の減少が響き、前年より8400万円少ない1億138万円だった。
石破茂元幹事長は4835万円、上川陽子外相は3179万円にとどまり、いずれも減収となった。
●安倍派「裏金」疑惑、自民に逆風必至…要職多数で政権にも影響か 12/2
自民党5派閥が政治資金パーティーの収入を収支報告書に過少記載したとして告発された問題は、最大派閥・安倍派による組織的な裏金作りの疑いが浮上する事態に発展した。党全体への逆風が強まるのは必至で、岸田首相の政権運営に影響する可能性も出ている。
言及避ける
「慎重に事実関係を調査確認の上、適切に対応していくことが重要だ」
同派所属の世耕弘成参院幹事長は1日の記者会見でこう述べ、裏金疑惑について言及を避けた。
自民内では、新たな「政治とカネ」の問題の浮上に危機感が広がっている。読売新聞社の世論調査では夏以降、内閣支持率が続落する一方、自民支持率は大幅には落ち込まず、3割前後で推移してきた。党幹部は「かなりまずい事態だ。個別の派閥の不祥事とはいえ、党全体に批判が飛び火する。党支持率も下がる」と危惧する。
連立を組む公明党からも苦言が相次いでいる。石井幹事長は1日の記者会見で「国民の信頼が得られるような誠実な対応に努めてほしい」と求めた。
不信の目
安倍派は松野官房長官、西村経済産業相、萩生田政調会長ら「5人衆」が中枢を担う。いずれも岸田政権の要職に就いており、国民の不信の目が党や政府に向けられる事態は避けられない。松野氏は1日の記者会見で裏金作りについて問われ、「政府の立場としてお答えは差し控える」と繰り返したが、政府内からは「説明責任を果たさないと、疑惑は深まるばかりだ」(高官)との声があがっている。
野党追及
野党は国会審議などで追及を強める構えだ。立憲民主党の泉代表は1日の記者会見で「安倍派に限らず、他派でも行われていたのではないか。説明責任を果たしてもらわねばならない」と語気を強めた。日本維新の会の音喜多政調会長は「政治とカネの問題は最も国民の信頼を失う。ゆゆしき事態だ」と批判した。
●前原新党 野党結集 口だけでなく 12/2
岸田内閣の支持率は最低水準で推移しているのに、野党への期待は一向に高まらない。野党が分立し、巨大与党に対峙(たいじ)できない「多弱」状況を脱する呼び水になれなければ、生き残りのための離合集散と見透かされよう。
国民民主党の前原誠司代表代行が、新党「教育無償化を実現する会」の結成を表明した。一緒に離党届を提出した3人に、無所属の1人を加えた国会議員5人で構成する。前原氏は会見で、「政策本位で非自民、非共産の野党結集を進め、政権交代の選択肢をつくる」と動機を語った。
前原氏は、政策実現を掲げて政権与党とも連携する玉木雄一郎代表の党運営に異議を唱え、9月の代表選に立候補したが大差で敗れた。玉木氏が、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」発動の検討を大義名分に、問題だらけの補正予算に賛成するなど、岸田政権への傾斜を深めたことから、たもとを分かつ決心をしたようだ。
第2次安倍政権以降、バラバラな野党の非力が、国会審議を形骸化させ、政府へのチェック機能の低下を招いた。自公政権に代わる受け皿をつくり、政治に緊張感を取り戻す必要性に異論はないが、額面通りに受け取れない事情も透けてみえる。
前原氏は綱領で新党を「改革政党」と位置づけた。日本が抱える難題を解決するカギが「教育無償化」だとして、それを党名にし、教育予算の倍増以上、奨学金の返済免除などを前面に打ち出した。
ただ、教育無償化といえば、日本維新の会の看板政策だ。前原氏はもともと維新との連携を探っており、新党は維新への合流の布石ではないかとみられている。
年末間近のタイミングでの結党についても、政党交付金目当てではないかと指摘される。1月1日時点で国会議員5人以上を有する政党は交付対象となるからだ。
あくまで野党の結集が本意だというなら、実行で示すしかあるまい。しかし、野党第1党の立憲民主党と、次の衆院選でその座をとって代わろうとしている維新の手を結ばせるのは容易ではない。維新の馬場伸幸代表はかつて、「第2自民党でいい」と発言し、連立参加の可能性も否定しなかった。「非自民」を本当に貫けるのか。
前原氏は民進党代表だった17年の衆院選に際し、小池百合子東京都知事が率いる希望の党との合流を決め、野党勢力の分立を招いた。その責任を深く自覚するなら、結集の実をあげるべく全力を注がなければならない。 
●世界にアピールする岸田首相のグリーン・トランスフォーメーション(GX)、低評価 12/2
G7(主要7カ国)の議長国を務める岸田文雄首相は12月1日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)に出席し「日本は2030年度に46%減、さらに50%の高みに向け挑戦を続けている。すでに約20%を削減しており、着実に進んでいる」と演説した。
日本はGX(グリーン・トランスフォーメーション)推進法に基づき成長志向型カーボンプライシング構想を進めている。来年には国際認証を受けて世界初の国によるトランジション・ボンドを発行する。排出削減、エネルギーの安定供給、経済成長の3つを同時に実現するGXを加速させる戦略だ。アジアゼロエミッション共同体の首脳会合も初開催する。
福島原発事故で原子力への拒絶反応が根強く残る中、岸田首相は「徹底した省エネ、再生可能エネルギーの主力電源化、原子力の活用を通じたクリーンエネルギーの最大限の導入を図る。私たちには太陽光の導入量が世界第3位という実績がある」と世界で再エネ容量を3倍にし、エネルギー効率改善率を2倍にするCOP28議長国UAEの目標に賛同した。
政府や産業界から独立した環境エネルギー政策研究所によると、昨年の全発電電力量における自然エネルギーの割合は22.7%。化石燃料による火力発電は72.4%と前年の71.7%から増加した。原子力発電は4.8%となり、前年の5.9%から減少した。欧州では自然エネルギーの割合が40%を超える国が多く、欧州連合(EU)の加盟国平均でも38.4%に達している。
「石炭火力については各国の事情に応じて」
化石燃料依存に環境団体から批判の目が向けられる中、岸田首相は「排出削減対策の講じられていない石炭火力発電所については各国の事情に応じたネットゼロへの道筋の中で取り組まれるべきだ。日本も自身の道筋に沿い、エネルギーの安定供給を確保しつつ排出削減対策の講じられていない新規の国内石炭火力発電所の建設を終了していく」と強調した。
演説は日本語で行われたため、会場の拍手はまばらだった。昨年、世界の温室効果ガスの排出量は過去最大を記録し、今年も異常気象が相次ぐ。9月に公表された第 1 回 グローバルストックテイク(パリ協定の目標達成に向け各国が温室効果ガス排出量の削減目標を評価する仕組み)報告書では世界は1.5度目標と整合する道筋から外れているとの警告が発せられた。
地球環境市民会議(CASA)の早川光俊専務理事は「岸田首相のスピーチはまったく評価できない。地球沸騰化や、瀕死の状態といわれる1.5度目標への危機感がない。石炭火力についても石炭火力自体の廃止には言及しなかった。30年までの対策が決定的に重要だとの認識に欠けていると言わざるをえない」と厳しい。
FoE Japanの橋英恵氏は「『排出削減対策が講じられていない新規の国内の石炭火力の建設をやめる』との宣言は非常に周回遅れの発言と言わざるを得ない。日本は国内にあるすべての石炭火力発電所を段階的に早急に廃止するための明確なスケジュールを策定するべきだ。原子力にも頼るべきではない」と強調する。
人生の大半を環境問題に費やすチャールズ国王
日本国憲法前文で「国際社会において名誉ある地位を占めたいと思う」と宣言した高い志はいったいどこに行ったのか。一方、昨年はエジプトのシャルム・エル・シェイクで開かれたCOP27は成長至上主義者のリズ・トラス英首相(当時)から出席しないよう釘を刺されたチャールズ国王だが、今年はCOP28への出席が叶った。
長年にわたる環境問題の活動家として知られるチャールズ国王は自国のスコットランドで開催されたCOP26の開会式で「世界の意思決定者が貴重な地球を救い、危機に瀕した若者の未来を救うために力を合わせられるよう、違いを克服する現実的な方法を見出すことを強く求める」と呼びかけ、喝采を浴びた。
COP28でチャールズ国王は「私は地球温暖化、気候変動、生物多様性の損失など人類が直面する存亡の危機を警告することに人生の大半を費やしてきた。UAEが誕生して数十年の間に大気中の二酸化炭素は30%増え、メタンガスは40%近く増加している。グローバルストックテイク報告書が示すように私たちは軌道から大きく外れている」という。
「私は英連邦内外で気候変動によって生活と生計が破綻し、度重なる衝撃に耐えられなくなった無数の地域社会を見てきた。バヌアツやドミニカのような脆弱な島国ではサイクロンが繰り返し襲い、最も脆弱な被害者の犠牲が増大している。インド、バングラデシュ、パキスタンは未曾有の洪水に見舞われ、東アフリカは数十年にわたる干ばつに苦しんでいる」
英国の温暖化対策を遅らせるEU強硬離脱派リバタリアン
トラス前首相の背後には英与党・保守党内の欧州連合(EU)強硬離脱派リバタリアンが蠢いている。気候変動では「負の外部性(経済活動が第三者に有害な影響を与えること)」が発生するため、規制という政府の介入が不可欠になる。リバタリアンはこれが我慢ならない。彼らが主張する市場原理主義を貫けば英国の温暖化対策は大幅に後退しかねない。
リバタリアンの圧力に屈したのか、リシ・スナク英首相は9月20日「電気自動車への移行を緩和する。2035年までガソリン車やディーゼル車を買うことができる」と発表し、ガソリン車、ディーゼル車の新車販売禁止をこれまでの30年から5年間先送りした。ガスボイラーから環境に優しいヒートポンプへの移行も緩和した。しかし国王の立場は政治とは異なる。
チャールズ国王は「世界の平均気温が記録史上最高というニュースを見たとき、私たちはこれが実際に何を意味するのか一歩立ち止まって考える必要がある。私たちは自然界をバランスの規範や限界から逸脱させ、危険な未知の領域へと踏み込んでいる。私たちはあらゆる生態学的条件を一挙に変化させる広大で恐ろしい実験を行っているのだ」と釘を刺した。
「自然に逆らわず、自然と調和した未来を。皆さんの手には私たちの共通の希望を守り続ける見逃すことのできないチャンスがある。孫たちは私たちがしたこと、あるいはしなかったことの結果を背負って生きていくことになる」。岸田首相もチャールズ国王の演説に耳を傾け、今すること、しないことが未来に持つ意味をもう一度考えてみてほしい。
●75歳医療費、原則2割の検討案 少子化対策の財源に充当へ 12/2
政府内で、月内に策定する社会保障の改革工程表を巡り、75歳以上の人が医療機関で支払う窓口負担の原則2割への引き上げを検討すると盛り込む案があることが分かった。児童手当の拡充など少子化対策の財源に充てたい考え。複数の関係者が2日、明らかにした。現在は多くの人が窓口負担1割のため、負担増となる政策が岸田政権に打撃となる可能性があり、調整は難航しそうだ。
少子化対策は年間3兆円台半ばの追加財源が必要となる。政府は、このうち1兆円超を医療など社会保障の歳出改革で捻出する方針。工程表には2028年度までに取り組むメニューをまとめる。
75歳以上の後期高齢者の医療費は全体の40%弱。
●「池田大作と自民党」知られざる蜜月50年 12/2
「信濃町の2人の池田だ」
公明党と自民党との連立政権が成立したのは99年のこと。現在の協力関係はそこから始まったかに思えるが、実際には先ごろ亡くなった創価学会・池田大作名誉会長が公明党を結党する以前に築かれていた。巨大宗教団体のカリスマはいかにして政界に影響を与え続けたのか。知られざる60年の蜜月に迫る。
去る11月15日、創価学会・池田大作名誉会長が、老衰のため逝去し、3日後の18日に第一報が伝えられると、永田町界隈には大きな衝撃が走った。言うまでもなく、創価学会が連立与党である公明党の最大の支持母体であるからだ。
岸田文雄総理は報道があった同日にすぐさま、自身の公式サイトや](旧Twitter)で、総理大臣名義で異例の追悼コメントを発表。翌19日には弔問にも訪れている。いかに自民党にとって公明党との連携が重要なものかを如実に示す行動と言えるだろう。
両党の関係の源流は、64年の公明党結党以前にさかのぼるとも言われる。季刊誌「宗教問題」編集長の小川寛大氏が、公明党の成り立ちを解説する。
「党ができる前から、創価学会は政界進出を強く意識していました。結党前の選挙でも『創価学会系無所属』として立候補者を擁立、国政選挙で当選者も出しています。そして58年に戸田城聖第2代会長が死去したことを受け、60年に池田氏が33歳の若さで第3代会長に就任しました」
その前後の選挙では、現在の公明党とはかけ離れた政治的主張を掲げていたという。小川氏が続ける。
「当時の立候補者は『王仏冥合、国立戒壇建立』という政策を打ち出していました。有り体に言えば、創価学会による宗教国家をつくる、ということです。当然、拒否反応は大きかった」
結党後初の67年衆院選で25議席を獲得して以降は、創価学会や公明党への批判本も大量に出版された。そんな中の69年に起きたのが、批判本に対する「言論出版妨害事件」だった。
「当時から多数の出版物を出していた創価学会は、版元や取次業者に顔が利きました。そのコネで批判本の出版を取りやめるよう裏で圧力をかけていた、と言われますが、特にテレビなどにも多数出演しタレント教授として影響力が強かった藤原弘達氏の著書『創価学会を斬る』への妨害が明るみに出て、大きな社会問題となりました。公明党から著者との橋渡しを依頼された協力者として、当時自民党幹事長を務めていた後の総理、田中角栄の名が挙がったからです」(小川氏)
池田氏は生前、角栄をはじめ、池田勇人、福田赳夫ら歴代総理大臣経験者との友誼を公言していた。特に池田勇人に関しては、
「一説では池田勇人が創価学会本部のある東京・信濃町に居を構え、よく池田大作氏のもとに通っており、大作氏は『信濃町の2人の池田だ』と周囲に話していたとか」(小川氏)
池田勇人は岸田総理が領袖を務める党内派閥・宏池会創始者としても知られる。公明党結党直後の64年10月に退陣し、その後は療養生活に入ったため、池田大作氏との交流は結党以前のことになろう。
つまり、自民党と「池田・創価学会」の蜜月は現在まで60年以上も続いてきたことになるのだ。
公明党議員が中国で極秘折衝
「2人の池田」が池田勇人の死去後しばらく経ってからの発言であり、両者の年齢も30歳近く離れていたことで、「あれは噓だ」「元総理との仲をアピールしたくて風呂敷を広げている」と断じる永田町関係者は少なくはない。ただ、池田氏がそうした海千山千の大物政治家の懐に入り込む「人間力」の持ち主であったのは確かなようだ。
「田中角栄名言集 仕事と人生の極意」(幻冬舎)などを上梓し、田中角栄研究の第一人者として知られる政治評論家・小林吉弥氏が証言する。
「角栄が、『黒い霧事件』の余波で幹事長を辞したのは66年。池田氏が接触した時期には、再び同職に戻っていました。池田氏や公明党はその政治家としての勢いに頼りたかったのでしょう。池田氏と会食した角栄は帰途の車内、秘書に問わず語りでこう言ったそうです。『あれは食えない男だが、なかなかどうして、しなやかな鋼のようだ』と」
「今太閤」と呼ばれた稀代の政治家も池田氏の器量を認め、公明党との連携を深めていく。前述した「出版妨害」が明るみに出ても、両者に亀裂が入ることはなかった。
「『公明党から頼まれてやったわけじゃない、俺が1人で汗をかいただけだ』と語り、池田氏はそれを恩義に感じて、角栄を『いずれ総理になったら面白い』と讃えていたそうです」(小林氏)
その言葉通り、72年に角栄は総理大臣に就任すると、すぐさま日中国交正常化を成し遂げる。昵懇だった公明党の中央執行委員長・竹入義勝衆院議員に極秘折衝を任せるほど関係は良好だった。
角栄は俗に言う「金脈スキャンダル」で退陣後、76年に「ロッキード事件」により逮捕。その影響もあって同年の衆院選で自民党は大敗し、結党以来、初めて単独過半数を割り込んだ。
「これも、自民党と公明党が近しくなる一因でした。政権維持には野党との協力態勢が不可欠、と判断するきっかけになったのです」(小林氏)
自民党と公明党の「強いパイプ」の原点はこうして構築されたのだ。ただ一方で、池田氏自身は70年代以降、徐々に政治の表舞台から姿を消すようになる。季刊誌「宗教問題」編集長の小川寛大氏が言う。
「70年に池田氏が出版妨害事件の謝罪会見を開きます。そこで創価学会幹部の議員兼職をなくし、公明党の自立性を高めるとともに、自身の政界進出も行わないことを確約します。そして宗教的指導者としてよりも、平和主義を訴える文化人としてのスタンスへ移行していくのです」
これにより、公明党も、池田氏の掲げる平和主義、改憲路線へ政策をシフトしていくことになる。
岸田総理はパイプがなく大炎上
本格的な協力関係が明確になったのは、99年の連立与党の形成だった。だが、宗教団体を支持母体に持つ公明党をいきなりパートナーに据えたわけではない。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は、「その裏には、当時の自民党・野中広務官房長官の暗躍があった」とした上で、連立政権に投下した“爆弾男”の存在を明かす。
「野中にとって仇敵であり、自民党に反旗を翻した自由党・小沢一郎議員(現立憲民主党所属)を先に引き込んだのです。自自連立政権を樹立し、ここに公明が加わり自自公連立、自由党の分裂で保守党が誕生し自公保連立となり、保守党が自民党に吸収され、自公連立政権が誕生しました。野中は、恩師の金丸信元副総理の晩年に見舞いの一つにも来なかった元同門の小沢を嫌悪しながらも、連立のために土下座までします。そして周囲に『政権維持のためなら俺は何でもやる。人間相手に土下座はできないが、小沢は悪魔だから何をしても平気だ。連立を組んだ後はアイツだけ叩き出してやる』と語り、実際にそうなったわけです」
連立は野中の執念の産物だったのだ。一時、民主党に政権を奪われた時期もあるが、ジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう証言する。
「連立のうまみがない野党時代にも、公明党の漆原良夫国会対策委員長(現・公明党顧問)と自民党・大島理森幹事長(当時)らが常に連携を取っていました。議員会館の食堂に2人でいるところを何度見たかわかりません。その後も故・安倍晋三元総理は太田昭宏元国交大臣と、菅義偉元総理は創価学会の佐藤浩・元副会長と、といった具合に強力なパイプを築いていきます。しかし岸田政権にはそのパイプがなく、政策面や選挙区の候補者調整で対立することも増え、両党の間には現在、すきま風が吹いています」
そこで出たのが、公明党との関係を良化させたい岸田総理による追悼コメントだ。しかし、結果的には大炎上してしまうハメに。
「いち早く弔意を示したつもりでも、総理大臣名義では政教分離の原則から外れ、批判されることは当然。これも、岸田総理に公明党と相談できるパイプがないから。スタンドプレーに走り失敗したのです。創価学会で絶対的な存在だった池田氏が亡くなったことで、公明党の今後の選挙を心配する声が聞かれますが、大丈夫だと思います。関係者いわく、池田氏の健康不安があった中、1年ほど前から次世代の体制作りを進め、今はほとんど固まっている。むしろ『選挙があれば、先生の弔い合戦だ』と意気込む会員が多く、選挙への士気は高いそうですから」(鈴木氏)
次なる国政選挙で蜜月60年の真価が問われそうだ。
●気候・中東外交、見せ場乏しく 挽回図るも「内憂」拡大―岸田首相 12/2
岸田文雄首相は2日(日本時間3日)までのアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ滞在中、脱炭素に向けた日本の取り組みをアピールし、中東各国首脳にパレスチナ情勢の沈静化を働き掛けた。内閣支持率が低迷する中、外交で挽回を図ったが、見せ場は乏しかった。国内では自民党安倍派の裏金疑惑を中心とする「政治とカネ」の問題が急拡大し、政権運営は険しさを増している。
「アジアの脱炭素化に向けた取り組みを日本がリードするという考え方を示した」。首相は2日、ドバイで記者団に成果を強調した。
ドバイ訪問の主目的は国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)首脳級会合での演説。首相は、温室効果ガス排出削減対策を講じていない石炭火力発電所の国内での新設終了を宣言し、新興・途上国の脱炭素化支援を訴えた。
16日から東京で開く東南アジア諸国連合(ASEAN)との特別首脳会議に合わせ、日本の技術で脱炭素化を進める「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」の首脳会合に臨む。首相周辺は「アジアをリードする」と意気込んだ。
日本は、石炭にアンモニアを混ぜて燃やす「混焼」技術で二酸化炭素の排出量を減らし、一定規模の石炭火力を維持する方針。演説では稼働している発電所の廃止時期に触れなかった。欧州諸国から「延命策」と批判を受けており、今回の首相の「国際公約」に対しても「新鮮味はない」(自民中堅)と冷ややかな見方が広がった。
訪問のもう一つの狙いは中東情勢の安定化だった。イスラエルのヘルツォグ大統領や、同国とイスラム組織ハマスの一時休戦を仲介したカタールのタミム首長らと相次いで会談し、ガザ地区の人道状況改善や事態の沈静化を促した。
首相はヘルツォグ氏に、戦闘休止や人質解放などハマスとの合意を「歓迎する」と表明したが、この会談直後にイスラエルが戦闘再開を発表。首相は「残念だ」と落胆し、同行した政府関係者は「想定していた展開が変わった」と語った。
原油輸入の9割超を中東に依存する日本は、この地域の安定が死活的に重要だ。ただ、日本外交が果たせる役割は限定的で、外務省関係者は「人道(支援)を前面に出すしかない」と認めた。
●政治資金問題、自民党で対応 安倍派疑惑、首相「説明努力を」 12/2
岸田文雄首相は2日、自民党各派閥の政治資金問題に関し、「各政策グループの活動に、国民から疑念を持たれていると感じる。大変遺憾だ」と述べた。その上で「状況を把握しながら、党として対応を考えていく」と表明した。訪問先のアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで記者団に語った。
自民では、安倍派がパーティー券収入の一部を政治資金収支報告書に記載せず裏金を捻出していた疑惑が浮上している。首相は、同派事務総長の経験がある松野博一官房長官、西村康稔経済産業相に説明するよう指示するか問われ、「政治団体の事情は、最もよく知る人間が説明をしていくことがあるべき姿だ。その努力を続けてもらいたい」と強調した。
首相は安倍派の疑惑に関し「告発を受けている案件で、個々の事案にコメントすることは控える」と述べるにとどめた。自身が会長を務める岸田派での裏金づくりについては「承知していない。聞いていない」と否定。必要な場合は各派閥で収支報告書を訂正した上で、丁寧に説明するよう茂木敏充幹事長に指示したと重ねて強調した。
●岸田総理「国民から疑念もたれ大変遺憾」安倍派パーティー“裏金”疑惑めぐり 12/2
自民党の最大派閥・安倍派が、政治資金パーティーの収入の一部を議員側に「キックバック」し、収支報告書に記載していなかった疑いがあることについて、岸田総理は「国民から疑念をもたれていることは大変遺憾だ」と述べました。
岸田総理「各政策グループの活動について国民から疑念をもたれていると感じることは、大変遺憾なことであります。状況を把握しながら、党としても対応を考えてまいります」
国際会議に出席するためUAE=アラブ首長国連邦を訪問中の岸田総理は、自民党・安倍派の政治資金パーティーをめぐる問題についてこのように話し、党として対応を検討していく考えを示しました。
現在、岸田内閣では、松野官房長官と西村経済産業大臣が安倍派の幹部である事務総長を務めた経験があります。
その松野長官ら閣僚に対して説明するよう指示する考えがあるかを問われた岸田総理は、「各政治団体の事情は最もよく知る人間が説明していくのがあるべき姿だ。その努力を続けてもらいたい」と答えました。
また、自身が会長を務める岸田派でパーティー券の収入を議員にキックバックさせていたことがあるかについては、「指摘のような問題があるとは承知していない」と述べています。
●岸田首相 自民党安倍派 政治資金キックバック疑惑「疑念を持たれ遺憾」 12/2
気候変動に関する国連の会議=COP28に出席するため、アラブ首長国連邦のドバイを訪問中の岸田首相は、政治資金パーティーをめぐる問題で、最大派閥の安倍派がパーティー券の販売ノルマを超えた分の収入1億円以上を、議員側にキックバックしていた疑いが明らかになったことについて「政治資金収支報告書について訂正が必要な場合には、訂正を行い、丁寧に説明するよう幹事長に指示している」と述べた。
そのうえで「各政策グループ(派閥)の活動について、国民に疑念を持たれていると感じることは遺憾、党としても対応を考えていく」と述べた。
さらに、自身の岸田派で政治資金のキックバックがあるかどうかについては「ご指摘のような問題が(岸田派に)あるとは承知していない」と述べた。
また、岸田内閣の閣僚で、これまでに安倍派の事務総長を経験した、松野官房長官、西村経産相に対して、説明をするように首相として指示をするかどうかの質問に対しては「各政策集団において、訂正すべきことは訂正し、説明するように幹事長を通じて要請している。各政治団体の事情は、最もよく知る人間が説明をしていく、これがあるべき姿だと思う」と述べ、閣僚に対し説明をするよう指示するのではなく、各派閥の事情を知る担当が説明をするべきだ、との立場を示した。
●首相「党として対応考える」 安倍派パー券収入キックバック疑惑 12/2
岸田文雄首相は2日、自民党最大派閥の清和政策研究会(安倍派)が政治資金パーティーの収入を所属議員にキックバック(還流)させることが常態化していたとの疑惑について、「各政策グループの活動について、国民に疑念を持たれていることは大変、遺憾。党としても対応を考える」と述べた。
自身が会長を務める宏池会(岸田派)でキックバックがあるかについては「指摘の問題があるとは承知していない。聞いていない」と述べた。訪問先のアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで記者団の質問に答えた。 
 12/3

 

●内閣支持率下落/原点に返り国民の声聴け 12/3
岸田文雄内閣の支持率下落が止まらない。報道各社の世論調査では軒並み20%台を記録するなど危険水域に達している。
物価上昇が賃上げに追いつかない中、総額13・1兆円の2023年度補正予算が成立した。だが首相肝いりの減税を盛り込んだ経済対策は、選挙目当てと有権者に見透かされた。不祥事による政務三役の相次ぐ辞任が追い打ちをかけた。
共同通信が11月初旬に行った世論調査で、内閣支持率は28・3%と過去最低を更新し、不支持率も56・7%と高止まりした。中でも経済対策の減税や給付金は62・5%が「評価しない」とした。その理由で4割を占めるのが「今後増税が予定されている」だった。
一昨年、首相が自民党総裁選に立候補した時に強調したのは「岸田ノート」が象徴する「聞く力」だった。強硬姿勢で政策を進めたそれまでの安倍、菅両政権から政治の姿が変わると多くの国民が期待をかけた。
首相は原点に返り、国民の声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。
首相は減税を「税収増を適切に国民に還元する」「30年続いたデフレから脱却する千載一遇のチャンス」と説明する。しかし、防衛財源確保のための増税時期や少子化対策の財源があいまいな状態で、目先の減税が評価されると考えたなら世論を甘く見過ぎている。補正予算の財源の7割は国債発行で賄い、将来世代の負担をさらに重くする点も、国民は見逃していない。
低支持率について岸田首相は「真意が国民に伝わっていない」と釈明するが、伝わるように言葉を尽くすのが仕事だ。財源が必要なら、痛みを伴う増税についても率直に語るべきではないか。
政権不信は地方の選挙にも響いた。参院徳島・高知選挙区の補選で自民候補が敗れたほか、10月の宮城県議選でも自民公認の5人が落選し、立憲民主党は10人全員が当選した。政権の立て直しは必至である。
米軍オスプレイ機墜落事故や自民党派閥の政治資金過少申告など、課題は山積する。指導力を発揮して解決の道を探り、国民への説明責任を果たして信頼を取り戻すことでしか支持率回復は見通せない。
●「金庫から札束を手掴み」暴露・元官房長官が見た「官房機密費」の全貌 12/3
「いまからしゃべることはメモも取らないでください。(安倍晋三元首相は)『馳、カネはいくらでも出す。官房機密費もあるから』って(笑)」
あまりに唐突な“暴露”だった。11月17日、石川県の馳浩知事が、東京都内の講演で、東京五輪の招致活動をめぐり、2013年に開催都市の決定権を持つ国際オリンピック委員会のメンバーに“賄賂”を渡したと発言したのだ。
「講演のなかで馳知事は、105人の委員らに対し、委員の選手時代の写真などをまとめたアルバムを1冊20万円で制作し、それを持って『世界中を歩きまわった』と発言しました。さらに、安倍元首相から『オリンピック招致を必ず勝ち取れ』と発破をかけられたと明かしています。要するに、官房機密費を使った買収工作をおこなったと暴露したわけです」(政治部記者)
同日夜には、あわてて「全面的に撤回する」とした馳知事だが、それで買収疑惑が氷解するはずもない。
「2013年4月1日、馳知事は自身のブログに『想い出アルバム作戦』を菅義偉官房長官に説明したと書き残していますからね。アルバムの金額と合致する書類もあります」
と語るのは、「しんぶん赤旗」の社会部記者で、官房機密費に詳しい矢野昌弘氏だ。
そもそも官房機密費とは、正式には「内閣官房報償費」といい、政策推進費、調査情報対策費、活動関係費の3種類からなる公金の一種だ。
「国会答弁によれば、『内政・外交を円滑かつ効果的に遂行するため、その都度の判断で、機動的に使用する経費』とされています。使途を公開する必要がなく、官房長官が自由に使えるお金です。これまで何度も、適切に利用されているのか疑われてきましたが、情報公開請求をしても、政策推進費がそのときいくら金庫に残っていたのかを記した『受払簿』など、限られた情報しかわかりません」(同前)
馳知事が「想い出アルバム作戦」に勤しんでいた2013年春。3月14日付の政策推進費の受払簿には、2000万円の残金が記されている。ところが、わずか2週間後の3月29日付の受払簿によると、残額がゼロとなっている。
「20万円のアルバムを約100人分製作し、2000万円が消えた……。金額も時期もぴったりですよね」(同前)
はたして、本当に官房機密費が“買収工作”に使われたのか。2009年、鳩山由紀夫内閣で官房長官に就任した平野博文氏に、その実情を尋ねた。
「官房機密費は、鍵のついたごく普通の金庫に現金で入っています。そこから札束を手掴みで渡すわけです。銀行振込みは、跡がつくので当然だめですよ。金庫の場所は、首相官邸内のどこか、としか言えません」
細かな使途は、議員ではないいまでも話せないという。
「絶対に言えません。オープンにすると、機密費と引きかえに情報提供をしてくれた相手との関係が悪化し、情報が入って来なくなる。私の在任中は、年間12億円に加え、その時々に危機管理上必要な情報収集の報償費として、さらに3億円。計約15億円の予算がありました。私は年度末に余った数千万円を国庫に返納しましたが、周囲から馬鹿にされましたよ。自分の“ポケット”に入れてしまえばよかったのにって」(同前)
毎月1億円、なんにでも使えるカネ――。ベテランの政治ジャーナリストは、歴代官邸の野放図なバラマキぶりを目にしてきた。
「ある官房副長官は、机の右下の引き出しに、30万円、50万円、100万円と、金額別に機密費を入れた封筒を用意していました。国会対策など、必要に応じて関係者に渡すんですよ。たとえば、舌鋒鋭く政府を批判する野党議員。国会での質問前に『どうぞお手柔らかに』と、挨拶代わりに渡したりするわけです」
メディアの“買収”にも使われることがある。
「とくに、テレビに出演する機会が多い政治評論家はターゲットにされやすい。野中広務氏は2010年に『国対委員長に月500万円、首相の部屋に1000万円、参院幹事長室にも定期的に配った』と語り、政治評論家にも渡していたと語っています。現金を嫌がる記者には、背広の仕立て券や靴券を配ることもある」(同前)
前出の矢野氏はこう語る。
「菅官房長官が、トランプ政権の高官に約92万円のウイスキーを贈ったという事例もあります。ほかの税金を使った記録がなく、購入の原資は官房機密費か、菅さんのポケットマネーでしょう。海外視察などの餞別として、現金入りの封筒を議員に渡すケースは多いようです。現在、官房機密費は11年連続でほぼ使い切られています。本来の趣旨どおり、必要に応じて機動的に使われていないのは明らかです」
11月29日、岸田首相は国会で官房機密費の運用を問われ「維持すべきだと考えている」と答えた。“増税メガネ”が、オイシイ金庫を手放すはずもない。
●岸田首相がCOP28終え帰国 「裏金」疑惑への対応は 12/3
気候変動対策を話し合う国連のCOP28のためアラブ首長国連邦(UAE)を訪問していた岸田首相が3日、帰国した。
政府専用機でUAEのドバイを出発した岸田首相は3日午後、羽田空港に到着した。
UAE訪問中に岸田首相は、COP28の会合で、「温室効果ガスの排出削減対策が講じられていない新規の国内石炭火力発電所の建設を終了する」と表明したほか、悪化するイスラエル・ガザ情勢を巡って、中東各国の首脳らと会談を重ねた。
一方、国内では、自民党の派閥が開いた政治資金パーティーをめぐる問題で、最大派閥・安倍派で収入を「裏金」としていた疑惑が浮上。
岸田首相はUAEで記者団に、「国民に疑念が持たれていることは大変遺憾だ。党としても対応を考えていく」と述べているが、厳しい世論に加え、国会での野党の追及も待ち構えていて、険しい政権運営が続くことになる。
●玉木代表が岸田首相をけん制 トリガー解除3党協議の年内決着求める 12/3
国民民主党の玉木雄一郎代表は3日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」に出演し、ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除をめぐる自民、公明両党との3党協議について「いつまでもだらだらやるつもりはない。やるか、やらないか、なので、年内に一定の方向を出したい」と述べた。
方向性が出なかった場合の対応を問われると「これまで同じような岸田政権との付き合いはできない。こっちだって魂をこめ、覚悟をこめてやっている」と、岸田首相や自民党をけん制した。
その上で「今まで(岸田文雄首相は)は言い訳ばかりだったが(今回は)3党協議を指示した。しっかりやっていきたい」とも述べた。
●裏金疑惑に機密費…負のお金ワードに絡まれた岸田首相 12/3
永田町は今、おカネをめぐる問題で大きく揺れている。自民党5派閥の約4000万円にのぼる政治資金収支報告書過少記載問題が出てきたと思っていたら、最大派閥の安倍派で、派閥パーティー券の売り上げの一部を所属議員にキックバックしていたのではないかという疑惑が浮上し、額はこの5年で1億円以上に及ぶのではないかという深刻な問題が取りざたされている。キックバック分はいわゆる「裏金」に形を変えたと指摘する声も出ている。
「政治とカネ」とは永田町でよく使われてきた言葉だが、今回の安倍派のパー券キックバック疑惑については「政治とカネ」というさらっとした表現ではとどまらない、深刻な問題として自民党をはじめ永田町全体でとらえられている。岸田文雄首相にとっても、大きな打撃になっているからだ。
思えば、最近の岸田首相には常に「おカネ」の問題がかぶさってきた。8月にSNS上で出た「増税メガネ」という呼称で大きな批判を受け、首相がそれを払拭(ふっしょく)しようと、所得税と住民税の減税措置を発表したものの、防衛費増額の財源確保をめぐる増税方針が予定されていることから国民の支持は得られておらず「減税なのに不評」というまさかの評価を受けた。この減税方針をめぐっても「財務省にはしごを外されるのではないか」など不穏な声も耳にした。
また、元自民党国会議員だった馳浩石川県知事の東京五輪招致活動をめぐる『官房機密費利用』発言(その後撤回)もあった。
「増税メガネ」以外にも「裏金」や「機密費」など、いつの時代のことなのだろうかと思うような「負のお金ワード」が、令和の世に飛び交う。政治とカネをめぐるさまざま事件が昭和の時代に起きているが、自民党の本質は当時から変わっていないのではないかという疑念の目が注がれており、自民党全体の問題へと移ってきている。
その発信源となっている安倍派は昨年7月に会長を務めていた安倍晋三元首相が銃撃死して以降、次期会長も決まらない迷走を重ねた。かつての派閥オーナー森喜朗元首相の発言や存在感に頼らざるを得ないような、指導力人材のなさが露呈。結局、有力候補5人が「5人組」が中心となり、互いにライバルの動きをけん制し合いながらの集団指導体制という、分かりにくい状態が今も続く。
ただ、今回のキックバック疑惑では、「5人組」の中に、安倍派の運営に当たる「事務総長」をかつて務めたメンバーが含まれている。特に、松野博一官房長官や西村康稔経産相など、現在岸田政権の要となっている役職の人たちだけに「岸田首相にとっても、穏やかではない」(自民党関係者)実態がある。松野氏らは「裏金疑惑」について多くを語ろうとしていない。
すでに、東京地検特捜部のターゲットになる可能性がある議員の名前も飛び交い始めている。最大派閥で、岸田政権を支える立場にもある安倍派ががたつくことになれば、自民党全体ががたつくことにもなりかねない。話を聞いた関係者は「今回の問題は『政治とカネ』なんてレベルではなく、ロッキードやリクルートなど、昭和の時代に自民党を舞台にして起きた疑獄事件に近づく可能性もある」と口にした。別の関係者は「『安倍派つぶし』の動きだ。安倍派が瓦解(がかい)して得をするのは、誰なのか。そこを見ていく必要がある」とも話し、党内の権力闘争の側面もあるとの見方を示した。
かつては金脈問題で田中角栄内閣が倒れ、リクルート事件を受けて竹下登内閣が退陣した。当時と今と、政治の状況や経済情勢は異なるが、お金をめぐる問題にいつも国民は敏感だ。特に今、急激な物価高に襲われている国民にとって、「裏金」などの類いの問題に相当な怒りが湧き上がるのは当然だろう。
政務官や副大臣の辞任ドミノ、減税方針への批判で支持率は下がる一方。政権浮揚に四苦八苦している岸田首相にとっては、自分の足元でいつ発火するか分からない火種を抱えた形になっている。自民党内では「次の支持率発表が怖い」との声も出ている。
●次の政権を取ってほしい党 3位立憲民主、2位維新を抑えた圧倒的1位は? 12/3
支持率が低迷する岸田政権。11月に各社が行った世論調査では、内閣支持率が、朝日新聞で25%、日本経済新聞社とテレビ東京の合同調査でも30%など、相次いで過去最低を記録した。
岸田政権に対して、世間から家計の負担が増えるのではないかという不信感があることは「増税メガネ」のあだ名が体現しているだろう。目玉施策として打ち上げた「異次元の少子化対策」では、必要とされる3.5兆円の財源について、一部を医療保険料として新たに徴収する方向。また、’24年12月から高校生への児童手当の拡充がなされるにあたり、高校生の扶養控除の縮小が検討されていることが報じられると“給付して増税では意味がないじゃないか”と違和感が噴出した。
「増税メガネ」のレッテルを脱すべくかかげた所得税の定額減税についても、実施が来年夏と遅すぎることや、一度きりでは不十分だとして評価はイマイチ。SNSなどでは、物価高対策として「消費税の減税」を訴える声も多く、所得税の減税は期待外れとなったようだ。また、これらは選挙対策としての”バラマキ”であり、「いずれまた増税されるのでは」との懸念も漂っている。
さらに、「辞任ドミノ」もの不信感を増す要素に。10月26日に山田太郎文部科学政務官(当時)が女性問題で、10月31日に柿沢未途法務副大臣(同)が選挙違反事件への関与で、11月14日には神田憲次財務副大臣(同)が税金滞納でと、3週間足らずで3人が辞任となったのだ。
岸田政権への不満が高まっていく昨今。国民ははたしてどの政党に次の政権を取ってほしいと思っているのだろうか? 1000人を対象に「次に政権を取ってほしい党」について、アンケートを行った。
3位に選ばれたのは野党第一党の立憲民主党。116票を獲得した。10月18日に公表した「物価高を克服するための緊急経済対策」には、全世帯の6割に「インフレ手当て」3万円を支給するほか、トリガー条項の発動で1リットルあたり約25円の減税、児童手当の先行拡充、給食費無償化の先行実施、インボイス制度の廃止などの政策が記されている。
民主党時代に、’09年から’12年まで政権を担った経験があることから政権を運営できるのではないかとの期待が寄せられたほか、自民党政権から脱するには立憲ががんばるしかないとはっぱをかける声も。総じて、自民党への不満の受け皿として票を集めたが、「自民党以外ならどこでもいい」と消極的な理由もみられた。
当の泉健太代表(49)は、「あと5年で政権交代を考えている」として、次の選挙はその基盤づくりにあてたいとの考えのようだ。
「腐りきった自民はいらない。今度は頑張ってほしい」(20代・女性)
「自民党に緊張感を持たせるため」(70歳以上・男性)
「野党の中で勢力がある民主党時代に政権の経験がある」(30代・男性)
「自民党よりましで、それなりの経験があるから」(60代・女性)
「ここが頑張らないと日本は良くならない」(30代・男性)
「自民党は嫌」(30代・女性)
158票を獲得し、2位に選ばれたのは日本維新の会。10月23日に公表した「緊急経済対策」には、低所得者は5割、それ以外は3割の現役世代の社会保険料減免、ガソリン税の当分の間税率(暫定税率)の廃止、給食費および高校授業料の無償化、出産費用無償化、消費税減税(最大10%から8%)などが並んだ。
今年春の統一地方選では、大阪府議会と市議会の両方で過半数を獲得するほか全国的にも議席を大きく増やした。府政で議員報酬のカット、外郭団体の削減、小中学校の給食無償化を実現するなど、“有言実行”してきた実績から、大阪府民からの信頼は厚いようだ。
馬場伸幸代表(58)は、約10年で政権交代を実現するとして「できないなら、維新は解散した方がいい」と意気込んでいる。
「自民党でも良いけれど、変化を見てみたいから」(60代・女性)
「少しは日本も変わるのかなあとおもった」(50代・男性)
「大阪での成功事例があり公約に対して唯一コミットしてる政党であるから」(30代・男性)
「暫く自民党で悪い状況になっているので、全て維新に賛成出来るわけではないが、一度やってもらいたい」(50代・男性)
「吉村知事をはじめ、関西では日本維新の力がすごいから。他にも吉村知事は有言実行をしていて信頼を勝ち取っているので、維新のイメージがいいから」(20代・女性)
「一番国民の声に耳を傾けてくれそうだから」(70歳以上・女性)
「ほかに選択肢がない」大差をつけ1位に選ばれたのは?
立憲、維新と大きく差をつける313票を獲得し、1位に選ばれたのは自民党だった。これほどまでに不満の声が噴きあがるにもかかわらず、やはり日本の政権を担当できるのは現状「自民党」しかないとの見方が多くを占めた。
結党以来、長く政権運営を務めてきた実績や、人材の豊富さを信頼する声があがる一方、今回自民党と選択した人の理由の多くが”消極的”なものだった。
「他に選択肢がないから仕方なく」(30代・男性)
「自民党に期待しているわけではないけど、他の政党を信じることが難しいため」(20代・女性)
「自民党も相当酷いけど、それでも他の党が政権を取るよりはまだマシだろうから」(40代・男性)
「野党があまりにもレベルが低いから。消極的に自民党しかない」(20代・男性)
また、自民党以外に政権を任せることへの抵抗感は、民主党政権時代の“失敗”の記憶から生じているようだ。’09年に国民の期待を背負って立ち上がった民主党政権は、政権運営にてこずり支持率を大きく下げ、さらに東日本大震災も重なりわずか3年で幕を閉じた。
「野党が政権を取ると以前の民主党のように今より更に景気が悪くなりそう。消去法で自民党」(60代・女性)
「以前、民主党が政権をとった時の悲惨さをみると、自民党のままのほうがマシ」(40代・男性)
「ほかの党ではできないと思う。いい例が民主党がダメでしたね。なんだかんだ言っても経験のない政党は無理」(70歳以上・男性)
今の自民党に不満があっても、他に取る選択肢がないというのが有権者の本音のようだ。野党は、”政権を運営できないのではないか”という不安を払しょくし、実行力を見せていく必要があるだろう。 
●自民安倍派パーティー券問題 岸田総理「党として対応を考える」 12/3 
自民党・安倍派の政治資金パーティーを巡り、収入の一部が議員側にキックバックされ、収支報告書に記載されていない疑いがあることについて、岸田総理大臣は「党として対応を考える」と述べました。
「国民に疑念が持たれている、こう感じることは大変遺憾なことであります。党としてもこれ対応を考えてまいります」(岸田総理大臣)
安倍派の事務総長を務めた松野官房長官や西村経済産業大臣らに対し、説明を指示する考えがあるか問われると「各政治団体の事情は最もよく知る人間が説明していく。これが、あるべき姿だ」と述べるにとどめました。
●安倍派裏金疑惑 政治の信頼、根幹揺らぐ 12/3
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る問題で、最大派閥の安倍派(清和政策研究会)がパーティー券収入の一部を政治資金収支報告書に記載せず議員側に還流させていた疑いが浮上した。直近5年間で1億円以上が裏金になった可能性がある。東京地検特捜部は政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)の疑いでの立件を視野に調べる。
安倍派はこれが本当なのか、疑問に答えなければならない。事実なら組織ぐるみの違法行為が常態化していたことになり、政治の信頼の根幹が揺らぐ。
安倍派の塩谷立座長は11月30日、還流の慣習があるか記者団から問われ「そういう話はあったと思う」と言及し、その後「事実を確認しているわけではないので撤回したい」とした。重大な発言であり、改めて真意を説明するべきだ。
関係者によると、自民党の各派閥は1枚2万円が相場のパーティー券の販売ノルマを所属議員に課している。ノルマを超えた売り上げが派閥から還流され、議員側の収入になる運用があるとされる。
派閥の支出と議員側の収入を収支報告書に記していれば問題ないが、安倍派では適切に記載されず、裏金になっていたとみられる。2018〜22年の安倍派の収支報告書ではパーティー券収入が計約6億6千万円となっている。実際は少なくとも8億円前後だった可能性がある。
裏金になれば、外部から使途のチェックができない。これでは政治活動に限らず何にでも使えることになりはしないか。
派閥パーティーを巡っては、18〜21年に開かれた5派閥の収支報告書に計約4千万円の過少記載があったとして刑事告発され、各派が訂正した。法は20万円超のパーティー券購入者などの記載を義務付けている。
派閥側は複数の議員が同じ政治団体などにそれぞれ20万円以下で券を販売し、その総額を派閥が把握できていなかったケースで記載が漏れた事務的ミスだとしている。特捜部は安倍派についてミスではなく、故意性が強いとみているもようだ。
各派そろって同じミスを犯すのは不自然だ。他派閥も裏金づくりの疑念を抱かれるのは当然といえる。安倍派の他にも、故意に記載しなかった疑いがないか厳しく調べる必要がある。
過少記載した岸田派の会長でもある岸田文雄首相は、外遊先で記者団の質問に対し「状況を把握しながら党としても対応を考える」と述べた。安倍派の問題に矮小(わいしょう)化せず、指導力を発揮して各派の実態を明らかにしなければならない。
一連の問題はカネの流れを国民の監視下に置き、政治活動の公正を確保するという法の趣旨をないがしろにしている。首相は党としての説明責任を果たすとともに、裏金づくりを可能とする抜け道をなくす抜本的な法改正に踏み出さない限り、信頼回復はないと心得るべきだ。 
●岸田政権「激ヤバ支持率」でいよいよ交代待ったナシ… 12/3
世論調査で岸田内閣支持率が20%台前半まで低下してきた。政権を維持できるかどうかという危機的水準だ。税制や子育て財源の社会保険料上乗せ問題、政務三役の不祥事などが逆風となり、岸田文雄首相が次期自民党総裁選に出られるかは見通せない。他方で浮足立つのは「ポスト岸田」を狙う面々である。現状を俯瞰してみた。
茂木が最有力…?
党内力学的な最右翼は茂木敏充幹事長だ。
キングメーカーの麻生太郎副総裁、森喜朗元首相らを後ろ盾とし、国会議員票獲得に有利な立場にある。実務能力の高さと、時の権力者に平仄を合わせ従うスタイルで、要職を歴任した。いまは「上司」の麻生に忠誠を誓う。
茂木は雑誌インタビューで岸田が次期総裁選に出た場合、自分も出れば「令和の明智光秀になる(ので、出ない)」と打ち消す半面、「仲間や地元支援者の期待は十分自覚している」と意欲もちらつかせた。最近、国会内で茂木と遭遇した議員によると「意気軒高で大変機嫌が良かった」という。
一方で、世論調査での茂木の首相候補としての支持率は低い。官僚や党職員、同僚議員に対して威圧的だった……との情報は事欠かない。茂木の閣僚時代には部下の官僚が、逆鱗に触れぬよう嗜好を細かく書いた「対応マニュアル」を作ったとされ、それがメディアでも報じられた。
幹事長として地方遊説に入った際、近くにいた関係者は「上から目線で話すような態度なので演説しても足を止める人が少なかった」と話す。それなら党員票はおろか、麻生ら権力者が引き締めても国会議員票さえ逃げかねない。故・安倍晋三、菅義偉元首相、岸田ら直近3人の総裁は、いずれも決選投票などを国会議員票で圧倒して制した。それが茂木の場合は、通用しなくなるかもしれない。
そのリスクはキングメーカーらも認識する。そこで幅広い国会議員の支持を得る「みこし」……いわば「救命ボート」として一部で取りざたされ始めたのが上川陽子外相だ。
上川が首相でもいい
9月人事での上川の外相起用は、実は伏線だった。与党筋によると、麻生は以前から上川を将来の首相に適任と評していた。「日本初の女性宰相」を看板に衆院選に臨めば、自民党には「渡りに船」。実際、茂木に近い議員からも「上川が首相でもいい」との声がある。
党関係者によると、上川は近年、若手との会合を持つなど閥務的活動を行い、上昇志向も垣間見せていた。最大派閥の旧安倍派(約100人)でも上川への期待がちらほら聞こえるという。もっとも急浮上して務まるほど首相の座は甘くない。同じ岸田派では12年総裁選に出た林芳正が出馬を目指す事態も想定され、混迷はありうる。
領袖不在の旧安倍派では中心的な「5人衆」のうち、総裁候補として西村康稔経済産業相の比重が高まりつつある。ライバルの萩生田光一政調会長は「党人派的立ち位置で、総裁への執念が見えにくい」(党幹部筋)などの指摘がある。ある旧安倍派議員は最近の西村について「口にこそ出さないが、意気込みは強まっている」と話す。
西村は自身の議員勉強会を長く主催し、西村の地元兵庫など関西選出議員らが中心に参加する。一方、同じ派閥の松野博一官房長官は岸田と気が合うとされるが、西村は「岸田とは一定の距離があり、松野と立ち位置が全く違う」(政府筋)とのことだ。
いずれにせよ推薦人確保を含め、西村が実際に出馬に至るかは見通せない。松野は岸田内閣の支持率下落で政権運営手腕に厳しい目が注がれ、期待はあまり聞かれなくなった。
石破はどうなの?
西村のもう1人のライバル、旧安倍派の世耕弘茂参院幹事長は出馬に必要な推薦人を集められる可能性がある。ただ、参院でライバルだった林が衆院にくら替えを果たしたのに対し、世耕は地元和歌山における政敵、二階俊博元幹事長らが障壁となり転身できていない。これが足かせとなりそうだ。
トップ不在の旧安倍派では「会長萩生田」「総裁候補西村」とする「分離論」があり、そうなると世耕の存在感は下がりかねない。複数の党関係筋によると、従来つながりが薄かったという麻生との距離を急速に縮めているとされる。同時に、森との関係も以前より強まったといい「基盤固めを図っている」(中堅議員)との見方も。もし旧安倍派で誰も総裁選に出なければ、草刈り場と化す恐れがある。
09年総裁選に西村が出た際、加藤勝信元官房長官(茂木派)は推薦人を務めた。加藤はその後に党四役の総務会長も務め、役職歴では西村を逆転。派内では茂木と対立する小渕優子選対委員長の後見人的立場だが、その加藤がじわり注目され始めた。
バランス感覚や実務能力、人物像に定評があり、上川と並び「総裁候補にするのに反対しにくい人材」(自民党ベテラン)だからだ。加藤は党内では「麻生ら主流派と、菅ら非主流派の中間」(閣僚経験者)に位置する。
もっとも本人が積極的に動いているとの情報はなく、上川と同じく「担がれたならば」である。本来は総裁候補の小渕は、事務所による過去の政治資金事件への批判がやまず、身動きが取れない。党内には「もっと打たれ強くなってほしい」との声がある。
世論で人気なのは小泉進次郎元環境相、石破茂元幹事長、河野太郎デジタル相の「小石河」である。これに菅、二階、武田良太元総務相らが非主流派の主要人物だ。最近の世論調査では小石河が「次期首相として期待する人」の1〜3位を占める。
非主流派の有力議員は「河野、小泉、石破で、総裁選に出たら誰が勝てるかだ」と語っており、1人に絞り込む展開がありうる。岸田、河野、高市早苗経済安全保障担当相が争った21年総裁選並みの激突も予想される。
1位が多くなった石破は、党地方組織などでの講演依頼も目立ってきた。総裁選に関する質問に対し「この国をどうするかのビジョンを持つのは国会議員としてのたしなみ」などと語るのは、追い風を反映する。12年の第2次安倍政権発足時には良好ではなかった二階との関係も修復してきた。
とはいえ石破グループは10人程度の小所帯で独力での立候補は難しい。石破を知る経済人は「真面目なのである意味、彼は自民党にはなじまない」と評し、多くを巻き込む協力体制が課題となる。
険しい道のり
小泉は環境相を務めて以降は要職から遠ざかり、逆に「手垢」がついていない。環境相時代は「セクシー発言」などで疑問符が付いたが、国対副委員長などの下積みを経て悪評を「リセット」している。一周回って刷新感や新鮮味を出せる位置とも言える。
閣僚経験者は小泉に関し「もう若過ぎるとか経験不足という印象もない」と話す。一方で無派閥の小泉の出馬には、党内有力者らの支援が不可欠なのは言うまでもない。
前回は岸田に敗れた河野も、内閣支持率下落と反比例して支持は上昇。派閥領袖の麻生との確執は相変わらずとされるが、気兼ねする必要も減ったとみられる。他方、デジタル相としてマイナンバーカード問題などでの批判は気がかりだ。
小石河の誰が打って出るにせよ、一定の合従連衡が不可避だが、生々しい駆け引きは表に出ない。「岸田下ろし」のような足の引っ張り合いは国民に嫌悪感を与え、選挙で党の票を減らす。前回総裁選で河野を支援したが、総務会長に抜擢された重鎮・森山裕は、内閣支持率急落に伴う抗争などは政権を失うきっかけになると、党内を戒めているという。
総裁選を目指すと明言した高市は11月、自身の勉強会を結成し、10人以上が参加した。ただ前回に全面支援を得た安倍は亡くなり、今度は険しい道のりとの見方は多い。
さて、政権運営に赤信号がともっている岸田だが、当面は低空飛行でも来春の大幅賃上げ実現による巻き返しに闘志を燃やしている。「支持率低下はつくられた増税イメージによるものだ」(側近)と、一歩も退かぬ構えだ。ポスト岸田を狙うなら、敵失頼みではなく、これに負けぬ気概は最低限の条件である。腹をくくった岸田は、意外と手強いかもしれない。
●岸田内閣の支持率28.9%で過去最低更新 JNN世論調査 12/3
岸田内閣の支持率が政権発足後、過去最低となった先月の調査からさらに0.2ポイント下落し、28.9%だったことが最新のJNNの世論調査でわかりました。
不支持率も68.0%で過去最高だった前月の調査につぎ、過去2番目に高い結果となりました。
また政党支持率では、自民党の支持が前月の調査から1.9ポイント上昇し、28.1%、日本維新の会は0.4ポイント上昇し、5.6%、立憲民主党は0.1ポイント上昇し、5.2%でした。
 12/4

 

●日本政府の「GX政策」 COP28の場で、「化石賞」を受賞 12/4
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開いている国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で3日、温暖化対策に後ろ向きな国に毎年、贈られる「化石賞」の初日の選定で、日本政府が選ばれた。同賞は国際環境NGOが世界各国の温暖化対策を評価して、後ろ向きの国に「贈呈」するもので、日本政府は4年連続の不名誉となった。石炭火力発電を温存し、水素・アンモニア混焼やCCS等で排出量を減少させるという日本政府の「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」政策が、うわべだけ環境配慮の「グリーンウォッシュ」だと、COPの場で認定された形だ。
同賞は、1999年から毎年、COPの場で選定されてきた。現在は、国際的な環境NGO団体である気候行動ネットワーク(Climate Action Network : CAN)」が主催している。今回のCOP28では「GX」を掲げて、既存の石炭火力発電や原発の温存を図る日本政府のほか、10月の総選挙で右派政権に転じ、気候政策をUターンさせたニュージーランド、「損失と損害」基金への拠出額を「ケチった」 米国の3か国に、まず、贈呈された。
4期連続の不名誉受賞となった日本政府については、「日本には化石燃料に公的資金を提供する『世界的リーダー』として、昨年は「化石賞」を贈ったが、(日本は)これに満足することなく、またもやグランプリに輝いた。岸田首相は『世界の脱炭素化に貢献する』と主張してGX等のイニシアチブを掲げ、グリーンよりもグリーンであるかのように見せようとしているが、国内およびアジア全域で、石炭とガスの寿命を延ばそうとしているのが透けて見える」と、受賞理由を指摘した。
GX政策については「水素・アンモニアを化石燃料と混焼し、火力発電所をずっと先まで稼働させるというグリーンウォッシュ以外の何ものでもないことは明らか。排出量削減を無意味にし、日本のエネルギーの脱炭素化と化石燃料からの脱却の可能性を危うくする。さらに、アジア・ゼロ・エミッション共同体(AZEC)イニシアチブを通じて、これらの『GXウォッシュ技術』を東南アジアに売り込みをかけ、アジア大陸全体で化石燃料ベースのエネルギーを固定化しようとする動きをとっている」と、日本のアジア戦略の「危うさ」を強調している。
COP会場で開かれた「授賞式」では、日本の環境NGO「FoEジャパン」の長田大輝氏が、日本政府の代わりに化石賞を受け取った。メディアによると長田氏は「世界から見ても日本の遅れが著しい。本来は再エネの推進でアジアのリーダーシップを取れる国。一刻も早く政策を改めてほしい」と訴えた。
日本と並んで「化石賞」を受賞したニュージーランドは、10月の総選挙でこれまで気候対策に積極的だった労働党政権が敗れ、右派の国民党を軸とする保守連立政権に代わった。CANは同国について「これまで、ニュージーランドは、先住民の声に耳を傾け、化石燃料の世界的な段階的廃止を唱え、正しいことを言っていたが、新政権はこれらの道を踏み外して、同国の重要な海域での石油・ガス探査計画を発表、先住民主導の闘いを台無しにしようとしている」と述べ、COP28で初めて「化石賞」を受賞した。
米国については、今回の会合の冒頭で合意した「損失と損害」基金の運用に関し、基金への拠出額を1750万jと「ケチった」ことを指摘された。主催国のUAEやドイツは各1億jを表明したが、米国はこれらの額を大幅に下回る金額(日本はさらに少ない1000万j)しか約束しなかった。一方で米国は、イスラエルへの軍事援助に380億j、ウクライナでの戦争に600億j強を拠出しており、「気候変動の傷を癒すためには、わずかな貢献しかしないのは、偽善の極みだ」と批判した。
●日本に化石賞、岸田政権の水素アンモニア政策「グリーンウォッシュ」 12/4
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている国連の気候変動会議(COP28)で、温暖化対策に後ろ向きな国に贈られる「化石賞」に3日、日本が選ばれた。化石燃料への執着が透けて見え、見せかけの環境配慮の「グリーンウォッシュ」だと認定された。
化石燃料回帰を強めるニュージーランドや、途上国支援基金への拠出が少ない米国とともに、環境NGOの国際ネットワーク「気候行動ネットワーク」(CAN)が選んだ。化石賞はCOPの期間中ほぼ毎日発表される。今回のCOPではこの日が初の発表で、日本の「受賞」は4期連続となった。
授賞理由は、石炭や、ガスも含む化石燃料での発電を続けようとする日本政府の姿勢だ。
政府は、アンモニアや水素を燃やしても二酸化炭素を出さないとして、石炭やガスに混ぜて発電する方式で火力発電の排出削減を進めるとしている。一方で、削減効果やコスト、燃料調達に不透明な要素が多い。CANは「石炭とガス(発電)の寿命を延ばそうとのくわだてが、透けて見える」と批判した。・・・
●4回連続で日本に「化石賞」 “温暖化対策に後ろ向きな国” 12/4
国連の気候変動対策会議「COP28」に合わせて、環境NGO(非政府組織)が対策に後ろ向きな国に贈る、「化石賞」に4回連続で日本が選ばれた。
「化石賞」は、国際的な環境NGOがCOP期間中、温暖化対策に後ろ向きな国を毎日選び、皮肉を込めて贈るもので、初日の3日は、日本がアメリカなどとともに第1号となった。
日本が化石燃料での発電を対策を講じながら続けるとする中で、岸田首相が「世界の脱炭素化に貢献する」と演説したことなどを理由に、「再生可能エネルギーへの移行を遅らせている」としている。
●大阪万博のコスト増が次々発覚する本当の理由〜 官僚の本性 12/4
大阪万博の会場建設費が当初の倍近く、2350億円に膨れ上がり、世論の批判が噴出している。岸田文雄首相は「これ以上は増えない」と説明してきたが、臨時国会の審議で新たに国費837億円の負担が生じることが判明した。
岸田首相は「会場建設費とは別」と答弁したが、これまで国民を欺いてきたとの批判は免れない。
なぜ、後からボロボロと追加負担が発覚するのか。マスコミが報じない理由を解説したい。
政府と大阪府・市は当初、大阪万博の会場建設費を1250億円としていた。これを国、大阪府・市、経済界で三分の一ずつ負担するという仕組みだった。
ところが、円安による物価高や人手不足による工期の遅れで会場建設費は1850億円に膨らみ、さらに2350億円へ跳ね上がった。当初の1・9倍である。これに世論の怒りは沸騰した。
今回発覚したのは、この会場建設費2350億円とは別に、日本館建設、途上国支援、安全確保、機運醸成に新たに837億円が必要というものだ。
ほんとうにこれで終わりなのか。まだ追加費用出てくるのではないか。誰もがそう思うだろう。
実際、毎日新聞は「国費負担さらに1600億円 シャトルバスルート整備で」というスクープを放った。万博関連のインフラ整備費として、会場の人工島・夢洲と市街地を結ぶシャトルバスのルートなどの整備費にさらに約2900億円(国費負担は約1600億円)がかかるという内容である。
このような新たな負担について、官僚たちが知らなかったはずはない。それを岸田首相は知らされていなかったのだろう。それはなぜか。
岸田首相が6月、10月、そして年末と衆院の解散風を吹かせてきたからだ。
衆院解散が間近に迫るなかで、大阪万博のコスト増を明らかにすれば、岸田政権は世論の反発を受け、総選挙へ大逆風になりかねない。その結果、自民党や維新が大敗すれば、大阪万博の開催そのものが中止に追い込まれかねない。官僚にとってそれはもっとも避けたいシナリオだ。
それ以前に、解散総選挙が迫る時点で、岸田首相に「大阪万博のコストはさらに増えます」という都合の悪い情報をあげたら、よい顔をされないことは決まっている。それどころか、岸田首相に嫌われて人事で飛ばされるかもしれない。
官僚たちは、自らの保身のため、自ら嫌がられる情報を、権力者にはあげないものなのだ。どのようなタイミングで報告すれば良いか、常に間合いをはかっているのである。
総選挙が終わった後、万博開催が揺るがない時点になって都合の悪い情報を発表するーーというのが基本戦略だったに違いない。
ところが、政局情勢が一変した。岸田内閣の支持率が続落し、岸田首相が年内解散の見送りを表明。首相の求心力は急速に失われ、来春の予算成立後、国賓待遇の訪米を花道に退陣するというシナリオが浮上してきたのだ。
こうなると、官僚たちは一気に動く。
新内閣が発足すれば、ご祝儀相場のなかでただちに解散・総選挙が行われるだろう。だとすれば、その前に、つまり、去り行く岸田政権のうちに、都合の悪い情報はすべて出してしまったほうがよい。岸田首相に睨まれてもどうせ官邸から去っていくのだ。それよりは新しい首相に嫌われたくはない。いまのうちに「コスト増」をすべてオープンにして、すべて岸田首相になすりつけてしまおう!
これが官僚たちの本性である。
政権末期は官僚たちが都合の悪い情報を次々に持ってくるものである。こうして政権は加速度を上げて倒れていく。まさに岸田政権はこのような負の連鎖に立ち入ったのだ。
●安倍派の裏金疑惑は政権揺るがす巨大スキャンダルになる! 12/4
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が4日、カンテレ「旬感LIVE とれたてっ!」に出演し、岸田内閣退陣が早まる可能性について言及した。
最大派閥の安倍派で、政治パーティー収入の一部が議員にキックバックされて裏金化されていた可能性がある問題で、鈴木氏は「すでに東京地検特捜部が動いていると聞いている」と語った。そのうえで「安倍派の事務担当に事情聴取をしていて、裏金やキックバックについてのメモがあり自供をしているようだ。お金の流れも構造的に見えてきている」と明かした。安倍派の“裏金”は5年間で1億円を超えると言われており、特捜部は「国会が終わる13日以降に国会議員を呼んで事情聴取をして、立件も視野に入れている」という。
そうなると超ド級のスキャンダルに発展する可能性もあり、自民党全体の問題となる。鈴木氏は「その場合は岸田首相も退陣せざるを得なくなる」と指摘した。
通常ならば「ポスト岸田」は茂木敏充幹事長や林芳正外相らが候補に挙がるところだが、鈴木氏は「派閥のスキャンダルなので、そこと関係がない人の可能性は十分にある」と語る。そこで浮上するのが高市早苗経済安全保障担当相、石破茂元幹事長などの反主流派。鈴木氏は「菅義偉前首相がこの2人を推す可能性も出てきます」と解説していた。
● 岸田首相「承知せず」 旧統一教会友好団体トップ同席の報道に 12/4
岸田総理大臣は、自民党の政務調査会長だった2019年に、アメリカの元下院議長と会談した際、旧統一教会の友好団体のトップが同席していたと報じられたことについて、元議長の同行者に誰がいたかは承知していないと説明しました。
岸田総理大臣は、自民党の政務調査会長を務めていた2019年10月に、来日したアメリカのギングリッチ元下院議長らと党本部で会談した際、旧統一教会の友好団体「UPF=天宙平和連合」の日本組織のトップが同席していたと、朝日新聞が報じました。
これについて、岸田総理大臣は、4日午前、総理大臣官邸に入る際に記者団に対し「ギングリッチ元下院議長と、私自身、元外務大臣の関係で会った。大勢の同行者がいたと記憶しているが、どなたがいたかは承知していない」と説明しました。
そして、旧統一教会との関係をめぐって自民党の議員らに説明責任を求めてきた立場としてみずから点検するつもりはないか問われたのに対し、「いま点検をした結果、申し上げたように大勢の同行者1人1人については承知していない。それが私の認識だ」と述べました。
また、「当時、名刺交換をしたという情報もある」として事実関係を問われ「名刺交換をしたか、同行者と何をしたかはいま覚えていない」と述べました。
松野官房長官「説明責任果たし関係断つこと徹底」
松野官房長官は午前の記者会見で「岸田政権の閣僚などが旧統一教会との関係を精査し説明責任を果たすとともに、旧統一教会や関係団体との関係を断つことを徹底するという方針は従来から申し上げているとおりだ」と述べました。
●75歳以上の医療費「窓口負担2倍」に…岸田政権 後期高齢者を狙い撃ち 12/4
また、岸田政権が高齢者を狙い撃ちにしようとしている。75歳以上の後期高齢者の「医療費負担」を2倍にするつもりなのだ。
現在、後期高齢者が病院で医療費を払うときの窓口負担は、原則1割となっている。後期高齢者でも一定の所得がある人は2〜3割負担となっているが、後期高齢者の約70%は1割負担だ。ところが岸田政権は、12月中に社会保障の改革工程表を策定し、その工程表に、後期高齢者の負担引き上げを盛り込む方針だ。
後期高齢者の窓口負担を2割に引き上げるのは、岸田政権が打ち出した「異次元の少子化対策」の財源を確保するためだ。
少子化対策には年間3兆円台半ばの追加財源が必要となる。政府は、このうち1兆円超を社会保障の歳出改革で捻出する方針だ。
当初、岸田首相は「新たな国民負担は求めない」としていたが、モノ分かりがよく、文句を言わない後期高齢者に負担させるつもりらしい。
しかし、窓口負担が2倍になれば、安易な医者通いは減るだろうが、後期高齢者が診療を控えて体調を悪化させ、結果的に医療費が膨らむ恐れもある。
なぜ無駄な予算を見直さない
さっそくネット上では批判が噴出している。
<2割にするのは仕方ないと思うけど、なぜそれが少子化対策の財源にまわるのか納得できない。医療費は医療費の中での予算組み、例えば子供の医療費無償化とか>
<とにかく取れるところから税金を取っていくことしか考えていないのかな>
<国民同士で世代の異なる者の間での不公平感や対立を煽る目的でもあるのか。権力を握る自分たちへの民の怒りが向かわない細工>
経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「高齢者の多くは、日本の将来のために自分たちの負担が重くなるのは仕方ないと考えているはずです。でも、的を外した岸田政権の少子化対策では、少子化は止まらないと思う。無駄ガネになるだけです。それに裕福な高齢者ばかりではない。年金だけでカツカツの生活をしている人がほとんどでしょう。高齢者に負担増を求める前に、まず無駄な予算をカットするのが先なのではないか。財源だって、求める先は弱者ではないはずです」
高齢者は年金の実質支給額も減額される予定だ。なのに若者に比べ、なぜか高齢者の内閣支持率は高い。なめられている可能性が高い。
●岸田政権「原発3倍」にあっさり賛同の無責任…福島は復興道半ば 12/4
「原発3倍」に賛同──。UAEのドバイで開かれているCOP28(国連気候変動会議)に合わせ、世界全体の「原発の発電能力」を2050年までに3倍に増やすとの宣言が2日、発表され、日本も賛同してしまった。他に、米、カナダ、英、仏、韓国、ウクライナなど22カ国が名を連ねた。
COP28では世界の「再生可能エネルギー」を30年までに3倍に引き上げる目標も掲げられ、こちらは日本を含む118カ国が賛同している。それと比べれば、「原発3倍」の22カ国は少数だ。ここに日本が加わった格好だ。
NPO法人「原子力資料情報室」事務局長の松久保肇氏が言う。
「賛同した日本以外の21カ国は、もともと原発を推進している国で目新しさはありません。日本は福島原発事故からの復興は道半ば。廃炉のメドも立たず、政府が発令した『原子力緊急事態宣言』もいまだ解除されていません。また、世論調査では原発の賛否は拮抗しており、原発政策をどうするのかは議論の途上と言えます。そういう国内事情がありながら、どうして『原発3倍』にあっさり賛同してしまったのか。あまりにも無責任です」
岸田政権は21年10月に閣議決定した「エネルギー基本計画」で「原発への依存度を可能な限り低減する」と明記。ところが、今年5月成立のGX脱炭素電源法で既存原発の60年超運転を可能にし、次世代原発のリプレース(建て替え)も進める方針を示した。“原発回帰”である。
狙いは世論誘導と推進加速
「原発3倍宣言は、各国が原発を3倍にするという意味ではありませんが、日本が50年までに3倍にするのは実現性に乏しく、その点でも無責任です。それでも、日本政府が賛同したのは、まるで原発推進が世界の潮流かのように思わせる意図があるのでしょう。それに原発3倍という“国際公約”を口実に原発推進を加速させる狙いもあるのだと思います。非常に危険な動きです」(松久保肇氏)
西村経産相は3日のNHK日曜討論で「原発については安全性が確認されたものは、地域の理解を得ながら再稼働を進めたい」と意欲を示した。
メディアは原発3倍宣言に賛同した原発推進国は、世界でも22カ国と“少数”なのを強調すべきだ。岸田政権の誘導に引っかかってはいけない。
●鬼の岸田政権のメガトン増税がこれから始まる…国民全員に「安いサロンパス」 12/4
高校生(16〜18歳)がいる世帯の扶養控除の見直しについて、政府が所得税で38万円、住民税で33万円としている控除の水準を所得に関係なく一律で引き下げて縮小する案を検討していると、共同通信などが報じた。来年12月からの児童手当の高校生への拡大が予定されているが、「これではプラマイゼロでは…」と疑問の声があがる。なぜこのような事態が起きるのか。作家でプレジデント元編集長の小倉健一氏が開設するーー。
政権支持率、自民党が2012年12月に政権に復帰して以降11年間のワースト
朝日新聞(11月27日)によると、岸田文雄政権の支持率は「ワーストずくめ」だという。朝日新聞社が11月18、19日に実施した全国世論調査(電話)をもとに、そう、論評されている。
同調査によれば、支持率はわずか25%、不支持率は65%と自民党が2012年12月に政権に復帰して以降の11年間のワースト記録を更新した。
支持率が低迷してた菅義偉政権に対して、後ろから弓を引き、「国民の声が届いていない」と連呼して菅氏を首相の座から引き摺り下ろした結果、自民党総裁、内閣総理大臣に就任した岸田首相である。いったい何が起きているのだろうか。
岸田首相のいう「聞く力」とは、まさしく自民党のつくりあげた「悪いビジネスモデル」を具現化したようなキャッチフレーズだ。
自民党は、合理的な判断をせずに、支援団体が騒げば手当をし、世論が反発すれば、それに補助金をバラマキすることで権力の座を維持してきた。
ツケは国民負担を増やすことの悪しきビジネスモデルを維持してきた
当然、そんなことをすれば経済成長はできず、財政支出が膨らむばかりなのだが、そのツケは国民負担を増やすことでこの悪しきビジネスモデルを維持してきたわけである。特に顕著なのが、選挙前と後である。「〇〇をゼロ円にします」「無償化します」「予算を倍増させます」などと選挙前・選挙中に連呼し、選挙後には増税を言い出すというやり方だ。これは防衛増税の際に起きており、いまだに大増税となる防衛費の財源について選挙で問うことを、岸田政権は逃げ続けている。
バラマキや補助金を出して、なんらかの意味があることなら、まだ納得もしえようが、岸田政権の繰り出すバラマキや補助金は、金額が多大であるにも関わらず、効果が期待できないものばかりだ。
典型的な例が、「異次元の少子化対策」であり、「ブライダルまさこ炎上事件」であった。そして、ガソリンへの補助金であろう。
日本における少子化の原因の9割は、晩婚化と未婚化で説明ができる。そして、日本人が結婚をすると平均して2人の子供を生むことがわかっている。岸田政権において、ヨーロッパ、特にスウェーデンの少子化対策を手本にしているかのような表明があったが、ヨーロッパで出生率が一部で改善されたように見えたのは、子供をたくさん生む移民を受け入れためだけだ。スウェーデンの出生率は下落傾向にあり、このままではもう少しで史上最低の水準へと到達することがわかっており、現地で大きな問題になっているのだ。
増税を推進する議員ばかり
それなのに、なぜスウェーデンをお手本にしようとしているのだろうか。
それは単純に、少子化対策への予算規模が大きくて、支持母体、業界団体へのバラマキをDNAとして持つ自民党にとって好都合だからである。
大炎上した、参議院の森まさこ議員がつくりだした「ブライダル補助金」に至っては、少子化対策予算にも関わらず、対象者が外国人という謎の補助金だ。この補助金の受給業者は、森氏の地元である選挙区に本社がある、まさしく地元への利益誘導補助金の典型例なのである。
自民党の有力議員には、増税を容認どころか推進する議員ばかりだ。
例えば稲田朋美元防衛相は「増税はつらいですが、国民全体でそれを支えるべき」(5月18日)、高市早苗元総務相は、個人の金融所得課税を20%から30%に引き上げる増税案、企業が保有する現預金課税の導入、炭素税などに言及した。消費税も諸外国と比べて日本は低い水準であることも主張している。たしかに、日本は、諸外国と比べて消費税は少ない水準にあるが、国民負担率は、2022年度に47.5%と所得の半分近くを占めている。
国民負担が増えるに従って経済成長に負の影響を与えるという事実
国民負担率(税・社会保障負担の国民所得に対する割合)が高くなると、国民の貯蓄率が下がり、経済成長に負の影響を与えることが知られている。「潜在成長率を押し下げる国民負担率上昇」(5月29日・第一生命経済研究所)によれば、「国民負担率+1%ポイントの上昇に対し、潜在成長率が0.11%ポイント低下する」という。
これは、国民負担率上昇→家計貯蓄率低下→資本蓄積阻害→潜在成長率下押しという順序を踏んでいると推察されている。国民の手取り収入が減ると、消費支出も減り、貯金も減少するということだ。企業であっても税負担が増えれば、投資に使えるお金がなくなるということだ。
中には、経済の成長には(資本・お金よりも)効率性や技術の進歩(全要素生産性)が重要だと指摘する識者もいるのだが、その効率性や技術の進歩とて、お金がなくては投資ができない。
結局のところ、バラマキなど一切せずに、国民負担率・企業負担を地道に下げること以外に、経済成長につながる道など、ほとんどないということだ。
今さらいうなよ、という人もいるかもしれないが、国民負担が増えるに従って経済成長に負の影響を与えるという事実は、すでに2000年において日銀がレポート<古川 尚史、高川 泉、植村 修一(2000)「国民負担率と経済成長−OECD諸国のパネルデータを用いた実証分析」日本銀行調査統計局ワーキング・ペーパー>にして公にしていることである。
「新しい資本主義」の分配政策(富裕層への増税と低所得者へのバラマキ)
こんなわかりきった事実があるにも関わらず、岸田首相は「新しい資本主義」で分配政策(富裕層への増税と低所得者へのバラマキ)を掲げ、「異次元の少子化対策」で政府支出を無尽蔵に増やしていったのである。
呆れてモノが言えないとはこのことだ。
なんでもかんでも無償にしようという流れも、ムダ遣いでしかない。子ども医療費の助成が自公政権下で進められているが、東京大学の重岡仁教授と飯塚敏晃教授によれば、<通院1回200円の自己負担を無料にすると、医療費は一気に10%も増える結果>となるという。無償になると、一気に過剰受診が増える結果となる。そうでなくても、ドラッグストアで売っているようなサロンパスなどの湿布薬やビタミン剤を求めて、医療機関を利用するケースは多い。医者の診断書があれば、湿布代、サプリメント代金が、2割、3割の値段で買えるためだ。忙しい現役世代と違って、ただでさえ混雑する病院をめがけて”自称”患者が殺到する。当然、そのツケは、主に現役世代の負担となる。維新の掲げる教育無償化も、手放しに喜んでいいのだろうか。
出鱈目な無駄遣いをしていれば、当然始まるのが増税
これだけ、出鱈目な無駄遣いをしていれば、当然、始まるのが増税である。最近では、増税メガネが一段落したのか、「メガトン増税」と呼ばれているようだ。
支持率が低迷する岸田首相が、やらなくてはいけないことはたった一つだ。それは、何もしないこと、それに尽きる。
何か危機が訪れるたびに、政府が何かをしなくてはいけない、という思い込みをやめるべきだ。TPPも、結局、日本の農家は輸出を大幅に増やす結果となった。あのときバラまくだけバラまかれた大量の補助金など不要だったのである。いま、大豆は関税がゼロだが、国産大豆農家は青息吐息だろうか。
もちろん、警察や防衛、道路の整備などは必要だろうが、ほとんどのケースは何もしなくても結果は変わらない。変わらないどころか、国民負担が増えることで経済は悪化する。
対決を避け、何か言われるたびに、あっちへフラフラ、こっちへフラフラ
その補助金が本当に効果があるのかを見極めて、国民負担の負担を減らす政策に舵を切った方がよい。補助金を切られれば、怒るのが業界団体というものだから、その業界団体との対決姿勢を鮮明にしていけば、支持率は必ず上がるだろう。
対決を避け、何か言われるたびに、あっちへフラフラ、こっちへフラフラしているような情けない姿に国民は失望しているのである。国益のために、戦わないリーダーなど、国民にとっては迷惑なだけだ。
●河村建夫元官房長官、馳浩氏の“機密費を五輪招致に使用”発言に重大証言 12/4
これまで語られてこなかった“ブラックボックス”である「官房機密費」について思わぬところから重大発言が飛びだし、大きな注目を集めている。その渦中、麻生太郎政権時の官房長官として機密費のすべてを知る人物が、「機密費と五輪」の疑惑について口を開いた──。森友学園問題をスクープし、安倍政権の疑惑を追及してきたジャーナリスト・相澤冬樹氏がレポートする。
「語らないものなんだ」
秘密のベールに包まれた「官房機密費」(正確には内閣官房報償費)。その実態を垣間見せる発言が、世間を騒がせている。
馳浩石川県知事が講演で、2013年に開催が決まった東京五輪の招致活動に自民党の招致推進本部長としてあたった経験を語った。その場で国際オリンピック委員会(IOC)委員の現役選手時代の活躍を載せたアルバムを、「官房機密費を使って1冊20万円で作成して渡した」と明かしたのだ。
安倍晋三首相からは「必ず勝ち取れ」「金はいくらでも出す」「官房機密費がある」などと言われた裏話も披露。ところが報道で世間の批判を集めるや、「発言を撤回する」と述べたきり一切の説明を拒んでいる。
「馳さんは当たり前のことという軽い感覚で話したんだと思うよ」
そう語るのは15年前、麻生太郎政権で官房長官を務めた河村建夫氏(81)だ。山口県議会議員から1990年の総選挙に自民党公認で初当選。その後、10期連続当選し文部科学大臣などを歴任し、2年前に政界を引退した。
筆者はNHKでの初任地だった山口放送局の頃から33年にわたって河村氏と付き合いがある。
「官房長官は報償費(官房機密費)のことは語らないものなんだ」
河村氏はそう断わりつつも、五輪招致と機密費のありようについて口を開いた。官房長官経験者が機密費について語るのは極めて珍しい。
河村氏は騒動の発端となった馳氏と、五輪招致のための外遊をともにしたことがあるという。
「安倍内閣が五輪招致を進めていた時、馳さんと一緒にハンガリーに行きました。私はハンガリーのIOC委員の担当、彼は北朝鮮の委員の担当でした。当時すでにIOC委員に対して大っぴらに招致活動するのはマズイという空気だったから、日本大使館でハンガリーのリスト・フェレンツ音楽大学に留学中の日本人学生のコンサートを催して、そこにIOC委員も招いて会食をしました。
この委員の奥さんが1964年の東京オリンピック体操の銀メダリストで、そこで東京五輪への支持をお願いした。今思えばあの費用も報償費から出たのでしょうか? あの時、馳さんはアルバムを作ったという話はしていなかったし、私も現物を見ていません。だが、私の経験からしてもありうる話だとは思います」
「国対とかですね」
河村氏は馳知事の発言について、「明かし方がマズイ」と語る。
「そもそも報償費は、国益上必要だけどあまり大っぴらには言わないほうがいいような案件に使うものです。その趣旨から言って、IOC委員へのお土産にアルバムを作って渡すということは、IOCの規程に触れるかどうかはともかく、報償費の使い方としては本来の目的にかなっていると言えます。だから馳さんも気軽に話したのでしょう。
しかし、五輪の招致では色々と裏金が使われたと言われ、汚職にも発展しています。そこでああいう話をすると、『アルバムだけじゃなくて現金も渡したんだろう』と、いらぬ勘繰りをされてしまう。なのに自分の手柄話としてああいう形で大っぴらにするのは少しマズイですよね。そして言ってしまったわけだから、それを今さら『発言撤回』というのも取るべき態度じゃない。政治家の発言は重いわけですから」
そもそもどのような流れで使われるものなのか。
「天皇陛下に奏上した時の発言と、報償費の使い途、この2つについては口外しないというのが歴代官房長官の不文律だ。だからあまり詳しいことは話せませんが、一般論として言えば、報償費というのは年間約10億円あります。それを毎月1億円ほど、内閣総務官が引き出して官房長官室の金庫にしまう。そこから官房長官が引き出して様々な用途に使う。
歴代官房長官から引き継がれる使い途というのがあります。私の場合は町村(信孝)さん(福田康夫内閣の官房長官)から、『あそことあそこに、いつ頃このくらいの額を渡してくれ』という具合に引き継ぎを受けた」
以下、一問一答で記す。
──どんなところに渡したんでしょうか?
「それは言えません(苦笑)。でも歴代長官も言われていて、想像がつきそうなところで言うと、国対(国会対策委員会)とかですね」
──昔から野党対策に使われると言いますよね。
「まあそんなところです」
──麻生内閣の後は政権交代で民主党政権ですよね。民主党の官房長官にもそれを引き継いだ?
「自民党がどこにどう使ったかなんて言うワケないだろ。でも民主党政権が終わって第2次安倍政権ができた時には、私から菅(義偉)さんに引き継ぎました」
──官房長官は言わば「金庫番」の役回り。その使い途を決めるのは誰なんでしょうか?
「麻生内閣は首相自ら色々と仕切るタイプだったから、彼からよく指示があった。あそことあそこに(機密費を)渡してくれと。首相官邸の内部に首相の執務室と官房長官室を直接結ぶ通路があります。官邸詰めの記者たちに見えないところを通って行き来する。そこを通って頻繁に会っていた。そのくらい密接に意思の疎通を図らないと、官房長官は務まりません」
「プーチンを接待した」
──五輪招致は麻生政権の時にはすでに石原(慎太郎)都知事のもとで始まっていたと思いますが、その時も官房機密費は使われたんですか?
「それは、詳細は言えませんね」
──ほかにはどんなことに機密費を使いました?
「差し支えない範囲で言うと、麻生内閣の時にロシアのプーチン首相(当時)が来日したことがあった。その時、首相官邸で宴席を設けましたが、その費用は報償費で賄ったことがあった。外交絡みは相手に色んな事情があるから、使途を明かさない報償費が使われることが多いです。プーチン氏はその後、安倍政権の時も来日しました(2016年)。
あの時、安倍さんは地元(山口県)に招いた。そして地元の日本酒『東洋美人』を振る舞いました。記者会見でプーチン大統領が最後に『東洋の美人がおいしかった』と言ったから、注文が殺到した。あの時、事前に安倍さんに確認した上で話したんだ。これは後で安倍さんから直接聞いたから間違いない。ああいう接待もすべて報償費かもしれないね。そこまで接待したのに、北方領土問題はゼロ回答だったな」
──麻生内閣と言えば、政権交代で退陣する直前に官房長官の河村さんが2億5000万円の機密費を引き出したと批判を浴びて、情報開示を求める裁判にもなりました。
「あれは、鳩山(由紀夫)内閣の平野(博文)官房長官が『(機密費の)金庫を開けたら空っぽだった』と話したから事が大きくなったけど、内閣が退陣する前に清算すべきところの清算を済ませたということなのです。金庫の中は引き継ぎの前に空にしたけど、新政権に必要な分は残しておきました。だからおかしな使い方をしたわけではありませんでしたが、金庫が空だということで騒ぎが広がってしまいました」
──表に出せないお金としてあるということだが、何も記録を残さないというのはおかしいのでは? ある程度時間がたってから事後的に検証できるようにすべきでしょう。
「公式な記録は残していませんし、領収書も必要ありません。しかし、私は自分でノートに記録をつけていました。それがないと自分でもわからなくなりますから。
たしかに報償費のあり方というのも、時代に合わせて見直していく余地はあると思います。このまま何の記録も残さずに続けていくというのは、世間の理解を得られないだろうしね。そうすれば馳さんの発言のような騒ぎもなくなるのではないでしょうか」
歴代長官が語らなかった官房機密費の使途。すべてが語られた訳ではないが、一端でも語ったことに意義があるだろう。政界での評価より後世に事実を伝えることを優先した判断だったと思う。
●元国税調査官が激怒。日本の国力を削ぐ「消費税」という“世界最悪の税制” 12/4
ごく近い将来に15%に引き上げられると囁かれている消費税。防衛費増額や少子化対策のために致し方なしという声も聞かれますが、国民は唯々諾々と従うしかないのでしょうか。元国税調査官で作家の大村さんが、「日本の消費税は世界最悪の税金」としてその理由を専門家目線で解説。さらに低所得者に配慮のない消費税が、日本を「格差の大きい国」にしたと断言しています。
世界最悪の税金。日本を衰退に導く消費税
インボイス制度の導入により、日本はこれまで消費税納税が免除されてきた零細事業者やフリーランサーにも、事実上、消費税の納税義務が課せられるようになりました。
これにより、日本の消費税は、低所得者や零細事業者にまったく配慮のない税金になってしまいました。
世界の多くの国で、消費税のような間接税が導入されており、日本よりも税率が高い国はたくさんあります。
が、日本の消費税のように、低所得者や零細事業者にまったく配慮のない間接税というのは、世界的に稀なのです。このメルマガで何度か触れましたが、消費税というのは低所得者ほど「税負担率」が高くなる「逆進税」です。
たとえば、年収1億円の人は、1億円を全部消費に回すわけではないので、年収に対する消費税負担割合は低くなります。年収1億円の人が3,000万円程度を消費に回した場合、年収に対する消費税の負担割合は3%程度で済むことになります。
が、年収300万円の人は、必然的に年収のほとんどが消費に回ってしまいます。ということは、年収300万円の人は、年収に対する消費税の負担割合は、10%近くなってしまいます。「年収1億円の人は3%で済むけれど、年収300万円の人には10%も課す」それが消費税の実体なのです。
また消費税は零細事業者にとっても負担の大きいものです。消費税は、その建前として「消費者(客)に負担してもらう税金」ということになっています。つまり、事業者は消費税分は価格に転嫁すればいい、というわけです。
が、零細事業者の場合、そう簡単には価格に転嫁できません。フリーランスなどが請け負う料金は、フリーランス側が決めることはほとんどなく、発注側が一方的に決めてくるものです。そして、消費税が上がったからといって、料金が上がるとは限りません。決められた料金の中に消費税も含まれている、という建前になっているので、零細事業者としては文句のつけようがないのです。下手に文句をつけようものなら、仕事を発注してもらえなくなったりします。
つまり、消費税というのは、低所得者や零細事業者にもっとも負担が大きい税金なのです。
その点、間接税を導入している世界中の国々は、承知しています。だから、間接税を導入している国は、低所得者や零細事業者に様々な配慮をしています。
まず先進国では、以前ご紹介したように日本とは段違いに低所得者の社会保障が行き届いています。イギリスでは生活保護を含めた低所得者の支援額はGDPの4%程度にも達します。フランス、ドイツも2%程度あります。が、日本では0.4%程度なのです。
世界どの国にもない日本の消費税のような乱暴で雑な税金
欧米の先進国では、片親の家庭が、現金給付、食費補助、住宅給付、健康保険給付、給食給付などを受けられる制度が普通にあります。また失業者のいる家庭には、失業扶助制度というものがあり、失業保険が切れた人や、失業保険に加入していなかった人の生活費を補助されるのです。
日本では失業保険は最大でも1年間程度しかもらえず、後は非常にハードルの高い「生活保護」しか社会保障はないのです。だから、日本では他の先進国に比べて経済理由による自殺が非常に多いのです。
しかも、これらの国々では、間接税の軽減税率も細やかな配慮があります。日本でも、今回2019年10月の増税からは、軽減税率が適用されていますが、軽減税率と言っても一部の商品が8%に据え置かれるだけですから、たった2%の軽減しかないのです。が、イギリス、フランス、ドイツでは、軽減税率が細かく設定され、食料品や生活必需品は極端に税率が低いなどの配慮がされています。
イギリスでは標準税率は20%ですが、燃料や電気などは5%、食料品、飲料水などは0%となっています。フランスでは標準税率は20%ですが、食料品などは5.5%、医療品などは0%となっています。ドイツでは標準税率は17%ですが、食料品などは7%になっているのです。
このように、間接税が高い国は、低所得者や零細事業者に手厚い配慮をしているのです。
しかも、こういう配慮は、先進国だけではありません。間接税を導入している国のほとんどで、されています。財政事情が非常に悪い国々でも、ある程度の配慮はされているのです。
世界でもっとも財政状況の悪いとされる国の消費税(付加価値税)を見てみましょう。まずはアルゼンチンです。アルゼンチンは、慢性的に財政が悪化しており、2020年にも政府が債務不履行に陥っています。アルゼンチン政府が政務不履行に陥ったのは、実に9度目であり、現在IMFの支援を受けて財政再建を行っています。財政は世界で最悪レベルと言っていいでしょう。
このアルゼンチンの付加価値税の基本税率は21%です。ですが、生鮮食料品はその半分の10.5%です。そして飲料水、書籍などは0%なのです。
次にスリランカを見てみましょう。スリランカも2022年に財政破綻をし、現在IMFの支援を受けています。スリランカの消費税(付加価値税)は、財政悪化の影響で、2022年9月に12%から15%に引き上げられました。が、スリランカでは、年間売上8,000万ルピー以下の中小企業には、付加価値税の納税が免除されています。8,000万ルピーというのは、日本円で約3,500万円です。この免税制度により、個人商店などのほとんどは消費税の納税を免除されているのです。
このように、世界でもっとも財政事情が悪い国でも、低所得者や零細事業者に配慮がなされているのです。日本の消費税のように、どんな商品にもほぼ一律の税率をかけ、どんな零細事業者にも納税義務を負わせるという乱暴で雑な税金は、世界のどこにもないのです。
「族議員」が暗躍。真っ当な間接税すら作れぬ日本政府
それにしても、なぜ日本では諸外国のような丁寧な間接税がつくれないのでしょうか?その原因に、日本の政治の貧困さがにじみ出ているのです。
消費税導入の際、日本でも、生活必需品などを非課税にする案がありました。しかし、非課税品目を作ると、いろんな業界が自分の商品を非課税にしろと運動をしてくるのです。日本の各業界には、「族議員」と呼ばれるその業界の利益を代弁する政治家がいます。そういう政治家が暗躍し、「うちの業界は非課税にしてくれ」「うちの業界の税率は下げてくれ」と言っているのです。
それをいちいち受けていると、課税品目がどんどん減ってしまうということになってしまいます。それで、いろんなところから文句が出ないようにほぼ全品目を課税対象にし、税率も一律にしてしまったわけです。「みんな一緒なら文句はないだろう」ということなのです。
この一律税方式はあまりにも批判が大きかったので、現在は食料品などの一部の品目がわずか2%だけ軽減税率が設定されたのです。
他の先進諸国でも、間接税の非課税品目や税率の多寡を決める際は、もめたはずです。しかし、それをやらないと、ゆくゆくは、国民経済に悪い影響が出る、難しいけれども、それをやるのが、政治であり、行政のはずです。世界中のほとんどの国は、日本よりはそれができているのです。日本だけが、それができないのです。
「生活必需品の税率を低くする」ということは貧富の格差の解消にもつながります。収入のうちに占める生活必需品の割合は、低所得者ほど大きくなります。だから、生活必需品の税率を下げることは、すなわち低所得者の負担を軽くすることにつながるのです。しかし、日本ではこれができておらず、トイレットペーパーもダイヤモンドも同じ税率になっているのです。
そして「日本の消費税が低所得者に配慮がない」ということは理論だけではなく、現実の結果ももたらしています。消費税が導入される前の日本は1億総中流と呼ばれ、「低所得者、貧困層がいない国」とされていきました。が、今の日本はOECDの中でも最悪レベルの「貧困者が多く、格差が大きい国」となっているのです。日本は衰退すべくして衰退しているのです。 
 12/5

 

●財務官僚は記者を「ポチ」と呼んで手懐ける…マスコミと財務省の共犯関係 12/5
消費税がさらに引き上げられる可能性はあるのか。産経新聞特別記者の田村秀男さん「財務省は15パーセント以上に引き上げようとしており、防衛費増額はその踏み台だ。メディアは財務省の思惑に乗せられ、消費税増税に向けた世論を醸成しようとしている」という。
財務省に頭が上がらない新聞社
【石橋】本書の第三章で、財務省のなかでも理財局は軽視されてきたと話しました。
理財局を軽視してきたのは新聞社をはじめとするマスコミも同じで、だから国民には理財局の重要性、理財局の管理する莫大な国有財産の存在が理解されてこなかったのだと思います。
新聞社でいえば、経済部の責任は大きいと思います。
【田村】きちんと理解して伝えられる人材を育てて配置していないという問題が大きい、と思います。
【石橋】財務省の記者クラブは「財政研究会(財研)」という名称です。記者クラブなのに「研究会」は、おかしい。財務省に財政を教えてもらって勉強しています、みたいな意味になりますからね。
まるで財務省の生徒みたいじゃないですか。
官僚に“ポチ”呼ばわりされる記者が出世する
【田村】財務官僚は情報を欲しがる財研記者を“ポチ”と呼んで手懐けます。内心でバカにしている。そんな記者が新聞社のなかでは評価されるのです。
【石橋】財研でキャップを務めて、財務省から覚えめでたい記者が経済部長になります。
そういう人物が経済部を主導するわけですから、財務省の言いなりになるのも無理ありません。
【田村】それから、論説委員も同じです。経済担当の論説委員は、財務省から覚えめでたい人物が就きます。
それで何かあると、「ご説明にあがります」と財務官僚がやってきて簡単に籠絡してしまう。
メディアにも日本経済停滞の責任がある
【石橋】財務省の審議会である財政制度等審議会(財政審)のメンバーになっているマスコミ関係者も同じです。財務省に見事な資料をもらって記事を書いていた人が、財政審のメンバーに選ばれます。
まとめてもらった資料は、もちろん財務省に都合のいいようにつくってある。それをわかってるのか、わかってないのか、そのまま記事にするから、財務省に都合のよい記事しか載りません。
それで覚えめでたくなって、財政審のメンバー入りとなります。財政審メンバーになれば、財務省の口利きもあって、どこかの大学の教授になっていきます。
新聞社と財務省のあいだには、そうした悪しき慣習みたいなものができあがっています。
【田村】そうしたなかでは、まともな記事がなかなか出てこないのも当然です。
財務省は日本のGDPの半分くらいのカネを管理・配分するのですから、国家の命運を左右するのです。メディアがその言いなりになってしまえば、民主主義は形骸化します。
大手メディアにそういう自覚がないまま、「社会の公器」「言論の自由」を看板に掲げるのは欺瞞(ぎまん)です。日本経済が四半世紀も停滞し、給料が上がらないどころか下がり続けてきたのは、財務省の緊縮財政と消費税増税政策が招いたデフレのせいですが、財務省の言いなりになってきたメディアにも大きな責任があります。
安倍さんは脱デフレを目指し、アベノミクスに踏み切ったのですが、財務省寄りのメディアに包囲されて、大きな制約を受けたのです。
防衛増税に向けて世論をつくる「有識者会議」
【石橋】岸田文雄首相が、2023年7月の参院選後に内閣官房に設置した「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」は、防衛費増に伴う増税に向け、コンセンサスを得るために、財務省が主導して設置した会議です。
安倍さんは参院選中の7月8日に凶弾に倒れてしまいますが、元々は「防衛国債」発行を主張していた安倍さんを牽制しようと企てて設置したのです。
そもそも「防衛力を総合的に考える」と銘打っていながら、メンバーに防衛問題の専門家はほとんど入っておらず、日本総研(*1)の翁百合さんや金融機関のトップら財務省の息のかかった人ばかり。
議事録を読んでも、財源論に終始しています。日経元社長の喜多恒雄さん、読売グループ本社社長の山口寿一さん、元朝日主筆の船橋洋一さんらが入っているのも笑えます。
防衛増税に向け、主要メディアを使って世論を醸成しようというのが見え見えじゃないですか。
*1 日本総研 株式会社日本総合研究所。総合情報サービス企業で、シンクタンク・コンサルティング・ITソリューションの3機能を有している。
日経の一面を飾った“大本営発表記事”
【田村】岸田文雄首相は2022年5月に来日したバイデン米大統領に「防衛費の相当な増額」を約束しました。自民党はそのタイミングで国内総生産(GDP)比2パーセントを掲げました。
そこで、防衛費増額論議が始まりましたが、先導するのは例によって財務省です。
岸田首相は「防衛費増額に関する有識者会議」を開いたのですが、「有識者」の人選はほぼ財務省の振り付けによります。
11月17日の『日経』朝刊一面トップはその提言の「原案」を掲載しました。明らかに財務省筋のリークに基づく“大本営発表記事”です。
見出しは〈防衛費増、法人税など財源〉で、〈幅広い税目による国民負担が必要だ。〉〈負担を将来世代に先送りするのは適当でない。国債依存があってはならない。〉と強調しています。
安倍晋三首相が言及した防衛国債論を一蹴したのです。
自民党の増税反対派グループは安倍さんというリーダーがいないと結束力がどうしても弱くなる。財務官僚はそこをついて、「財源はどうするのですか」と迫る。
「有識者会議」が一段落した11月18日には自民党と公明党の税制調査会総会が開かれました。いずれも「防衛財源は法人税を軸にする」と結論を出します。
もとより、財務省の防衛国債否定の論拠は、「安定財源にならない」という屁理屈です。「法人税こそ、景況に左右される不安定財源の代表である」は財務官僚の口癖だったのに、臆面もなく言い切るのは、それだけ反対派を舐めてかかっている証拠です。
しかも経済界の猛反発を食らいかねません。財務官僚はそんな逆風は計算済みだからこそ、「幅広い税目」の増税の必要性を有識者に言わせたのです。
真の意図は「消費税15%以上への引き上げ」
【田村】家計消費は景気如何にかかわらず一定に保たれるので、消費税こそは安定財源の代表税目です。財務省が隠す真の意図は消費税率の15パーセント以上への引き上げで、防衛費増額はさらなる消費税増税へのまたとない踏み台なのです。
消費税増税と緊縮財政が四半世紀もの恐るべきゼロ経済成長をもたらし、国力を衰退させてきました。それを繰り返そうとする財務省に、メディアはやすやすと誘導されるのです。
岸田政権は結局、2027年度までの5年間で必要な防衛力整備費約43兆円の一部を、防衛関連以外の歳出削減や法人税などの増税で賄うことにしました。
2027年度以降は毎年度、約4兆円の財源を必要とし、そのうち歳出削減と増税で1兆円以上ずつ確保する財務省シナリオに従うことを決めたのです。
国内経済のほうは、新型コロナの収束を機に、景気のV字回復、脱デフレの道筋になってきたというのに、この先は増税が待っていると、消費者や中小企業を身構えさせます。その財務省に加担するメディアの罪は大きいです。
「軽減税率を適用して」と陳情した新聞協会
【石橋】消費税率を10パーセントにするときも、新聞の定期購読料に軽減税率(*2)を適用するという、おかしなことがありました。
「週2回以上発行される新聞で定期購読契約に基づくもの」は、食料品などと同じ軽減税率適用で、8パーセントに据え置かれました。
あれは、新聞協会が各社で署名を集めて陳情したからです。財務省に頭を下げて、無理を聞いてもらった。そんな業界が防衛増税を議論するなんておかしな話です。
*2 軽減税率 消費税率は10パーセントになったが、一部の商品は8パーセントに据え置く制度。対象は、酒類・外食を除く飲食料品、定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞。
マスコミは日銀にも頭が上がらない
【田村】陳情する側が、陳情される側に頭が上がるはずがありません。
日銀と記者クラブの関係も同じようなものです。
記者は「教えてもらう立場」で頭が上がりません。日銀総裁会見を見ても、総裁が一方的にしゃべって、記者が疑問を発することがほとんどなく、そのまま送稿するというスタイルです。ネットの時代でマーケット向けの速報が重視されるからです。
それでも、総裁が“法皇”と称され、会見場に入る総裁を記者たちが直立不動の礼で迎えた昔よりはましですが……。
前にも述べましたが、財務省の場合は、官僚たちがネタを欲しがる財研記者を“ポチ”と呼んで、財務省に都合のよい材料をリークするのを“餌をやる”と称していたと、かの橋洋一さんがばらしていました。そんな記者は与えられた情報を鵜吞みにするのです。
【石橋】だから、財務省は記者を軽く見ている。簡単にコントロールできるし、利用する存在くらいにしか考えていない気もします。
【田村】こんなことがありました。1982年3月に、私は日経の日銀クラブのキャップになります。それまでは、産業界、通産省、外務省担当で、日銀の中に足を踏み入れたことは一度もなかったのです。
経済紙の日銀キャップですから、部下の記者の数は5人前後いる大所帯です。金融の知識習得に努めるのに手一杯ですが、上から言われるのは、日銀総裁人事はキャップの専管事項だということです。
大蔵官僚の“餌”を信じた日経の誤報
【田村】すると、日経の財務(大蔵)省担当から私に、当時の前川春雄総裁について、さかんに情報を流してくるのです。
「前川は本来、総裁になれる人物ではなかった」「前川は71歳の高齢だから長くは続けられない」「前川は5年間の総裁任期いっぱいはやらず、途中で退任し、副総裁の澄田智に禅譲するはずだ」と言ってくる。
前川さんが総裁になった1979年12月の人事で、『日経』は大誤報をやっていました。他紙は「前川新総裁」と報じているのに、『日経』だけが「新総裁は澄田智」と報じてしまった。
だから、「今度こそは、他紙を出し抜け、中途退任に備えよ」というわけです。
大蔵官僚としては、もちろん大物次官だった澄田さんを総裁にしようと画策し、1979年12月の交代劇のときも日経に吹き込み、真に受けさせました。日経経済部幹部は大蔵官僚と親しく、その情報を信じて疑わなかったのです。
記者をけしかけて総裁にプレッシャーをかけた
もちろん、狡くて怜悧、つまり“ワル”が多い官僚集団のことです。日経をミスリードしたと負い目を感じ、今度はスクープ情報を提供してあげようというわけではまったくありません。
むしろ、「前川は早めに代わるかもしれんぞ」という無責任な観測をわざわざ流し、あせる日経記者をけしかけて日銀取材に走らせ、前川さんにプレッシャーをかけたというのが真相でしょう。
実際にその当時、たまたま酒席で知り合った大蔵官僚の中堅は、私に情報をさかんに流してくる財研記者のひとりについて話が及ぶと、「あの肥ったポチのことですか、いいですね」と言ってのけた。そこまでバカにしているのです。
【石橋】財務(大蔵)省としては、大蔵省出身で“真の事務次官”でもあった澄田智さんを総裁にしたいわけです。そのために、日経を動かして外堀を固めようとしていたのかもしれません。
●前原新党は結局カネ目当て、再び小池百合子都知事と一緒になる可能性も… 12/5
離党届が受理されなかったらしく、前原誠司氏(61)は依然として国民民主党の議員という。そんな彼が11月30日、新党結成を表明。ネット上には呆れ果てたという声が多数を占めた。YAHOO! ニュースのトピックスには、この件に関する2本の記事が転載された。振り返ってみよう。
1本目は、TBS NEWS DIGが同日に配信した「前原氏ら国民に離党届提出 新党結成を表明『国民民主は岸田政権と協力模索』と批判」という記事だ。
こちらは、前原氏が自身を含む5人の国会議員で新党「教育無償化を実現する会」を結成すると表明したことを伝える、いわゆるストレートニュースだ。
2本目は、選挙コンサルタント・政治アナリストの大濱崎卓真氏が同じく30日に配信した「前原新党はなぜこのタイミングで結成したのか、公選法の移籍禁止規定と財政問題に注目」という記事だ。
この記事で、まず俎上に上がったのは党名だ。既存政党から離党して新党を立ち上げる際に、ワンイシュー(単一論点政治)のみを掲げるのは異例だという。
そして大濱崎氏は、「教育無償化」というワンイシューを党名に選んだ背景として《日本維新の会が掲げている政策と極めて近似している》と指摘した上で、維新との合流の可能性を示唆した。
だが、ここで疑問が生じる。合流するのなら新党結成の必要はない。前原氏たちは直接、維新に合流すればいい。それができない理由として、大濱崎氏は公職選挙法の規定を紹介した。衆議院議員選挙で比例復活した議員は、復活時の政党から別の政党に移ることは禁止されているのだ。
巨額の政党交付金
新党結成を表明した5人の国会議員の中に、国民民主党に所属する比例復活組の衆議院議員がいる。衆議院議員としては維新に移れないため、新党を結成するという“ワンクッション”を選んだことになる。ちなみに、衆議院議員は解散すれば失職するため、その時に彼らは維新に入るのだろう。
そして新党の国会議員が5人という事実からは、政党交付金の問題を浮かび上がらせる。大濱崎氏は、以下の要件を満たせば前原新党は交付金を受給できると指摘した。
【1】国民民主党を離党した4人の離党手続きが完了する
【2】来年1月1日現在でも、前原新党「教育無償化を実現する会」に5人以上の国会議員が所属している
ちなみに、2022年の参院選で、ぎりぎりで政党要件を満たして話題になった社民党でさえ、約2億7000万円の政党交付金を受給している。前原新党が億単位の政党交付金資金を手にいれるのは間違いないのだろう。
前原氏の行動にベテランの政治記者は「呆れて物が言えません。ネットに投稿された怒りの声は当然です」と言う。
「前原さんが憲法や安全保障の政策で論客だったのは認めます。しかし、教育や少子化といった問題では、それほどの見識はないはずです。国民民主と袂を分かち維新に入るのは彼の勝手。ただし、それなら彼1人が無所属議員として移るべきだと思います。一緒に国民民主党を辞めようとしている比例復活組も同じです。解散して失職してから維新に入るのが筋ではないでしょうか」
「いつから維新になったんや」
だが、実際は新党結成となった。こうなると、維新に移ることだけが目的ではないと考えざるを得ない。
「5人のうち1人は元立民の無所属議員です。やはり、最初から5人という人数ありきで計画された新党と言わざるを得ず、『政党交付金というカネ目当て』だと批判されるのは当然でしょう。比例復活組の場合は、衆議院議員という職にしがみつき、歳費や期末手当、調査研究広報滞在費、立法事務費を受け取ろうとする魂胆も透けて見えます。何の理念も感じさせない前原さんたちの行動は、国民の政治不信をさらに加速させるだけです」(同・記者)
前原氏は以前から維新との連携を模索していた。2020年6月には「地方主権」をテーマにした超党派の国会議員による勉強会を、当時は維新の幹事長だった馬場伸幸代表(58)と立ち上げた。
昨年7月の参議院選挙では、自身の地元である京都選挙区から出馬した維新候補を国民民主が推薦。前原氏が積極的に応援する姿を、朝日新聞が皮肉交じりに伝えている(註)。
以下に紹介する文章に《吉村氏》とあるが、これは大阪維新の会代表で、府知事の吉村洋文氏を指している。
《前原氏は吉村氏と同じ維新の選挙カーで演説中、「我々日本維新の会」と言い間違えることも。維新幹部の中では前原氏に「うちに引き入れたい」と秋波を送る声もあった》
《国民の支持者からは前原氏の演説中に「いつから維新になったんや」「がっかりした」とヤジが上がることもあった》
前原氏の“十字架”
政治アナリストの伊藤惇夫氏は「予想されていた動きと言えるでしょう」と指摘する。
「前原さんは以前から維新に秋波を送っていました。そして、今年9月に行われた国民民主党の代表選に立候補したのは、現在の立ち位置に強い不満を持ち、『このまま国民民主党にいたら自分は埋没してしまう』という危機感があったからかもしれません。とはいえ、有権者にとって彼の行動は“見え見え”であり、見透かされた状態だと言えます。年末に政党交付金を巡って新党が乱立するのは風物詩のようなものですが、それに前原さんも参加してしまったというわけです」
前原誠司という政治家は、本来なら重い“十字架”を背負っているはずだ。2017年7月、前原氏は民進党の第3代の代表に就任した。
同年9月、NHKが衆院解散の見通しを報じると、小池百合子・東京都知事(71)は新党「希望の党」を設立。これに前原氏は動く。
小池氏も参加した極秘会談で民進党と希望の党の合流が協議され、合意に達した。ところが、小池氏は記者団の前で、民進党の国会議員を自動的に受け入れることを拒否。テレビカメラの前で「全員を受け入れるということはさらさらありません」「排除されない、ということはございませんで、排除いたします」と明言した。
前原氏と枝野氏の共通点
これが「排除の論理」として流行語になったが、小池氏に対する反発の声は多かった。結局、合流は空中分解してしまう。枝野幸男氏(59)が立憲民主党を結党し、この時だけは世論も無条件で応援した。前原氏は衆院選を無所属で立候補し、当選は果たした。
「前原さんの判断ミスは、政局の一場面における失敗というレベルではありません。日本政治史という観点が必要なほどの悪影響を及ぼしました。何しろ前原さんのせいで野党は有権者の信頼を失い、今に至るまで低迷しているのです。にもかかわらず、今回も前原さんは国民民主党とケンカ別れをしました。最も喜んでいるのは自民党でしょう。彼は何度も与党を利する行動を繰り返しており、自民党にとっては本当に大切な政治家の一人だと思います」(同・伊藤氏)
前原氏と枝野氏は政治的には対立関係にあると言えるだろう。だが、2人には共通点が少なくない。例えば、前原氏は京都大学法学部を、枝野氏は東北大学法学部を卒業している。共に“学歴エリート”と言えるだろう。さらに、国会議員のキャリアも共に日本新党からスタートしている。
小池獲得競争
「私は民主党時代に二人を間近で見ましたが、どちらも理屈を喋らせたら一流です。共に偏差値の高さは明白ですが、理念で有権者の心を打つことは苦手です。要するに政治家としての発信力が低いわけです。とはいえ、そんな前原さんでも維新に移ったら、要職が用意されるなど手厚いもてなしを受けるのでしょう。ただし、その後はどうなるか分かりません。注目点の一つとして、前原さんが大阪に拠点を置く維新のコアなメンバーと意気投合できるかどうかが挙げられます。大阪と京都の物理的な距離が、そのまま政治的な距離に変わったとしても不思議はないのです」(同・伊藤氏)
前原氏の引き込みに成功した維新は、次のターゲットも決めているという。それは小池都知事であり、こちらには自民党も勧誘に熱心だという。
「有権者は与党にも野党にも絶望していますから、総選挙が行われても投票先がありません。次の衆院選で有権者は、いわゆる“寝る”状態になる可能性があります。低投票率になり、与党も野党も勝ちもしないし負けもしないという結果になるかもしれないわけです。となると、総選挙で勝つためには“起爆剤”が必要ということになります。それが小池さんというわけです」(同・伊藤氏)
日本政治の劣化
先に見たように、希望の党ブームはあっという間に終わったが、政界関係者にとっては忘れられない光景らしい。
「あの爆発的なブームをもう一度起こすことができれば、という狙いから、維新も自民も小池さんの発信力に期待して綱引きを行っているわけです。ただし、こういう見取り図を示すと、少なからぬ有権者が辟易するのではないでしょうか。政治の劣化は明らかですし、それを具体的な実例として示したのが前原さんの新党結成ということになるのかもしれません」(同・伊藤氏)
●米国の旧統一教会元会長も同席か 岸田氏面会時とみられる写真も 12/5
岸田文雄首相が自民党政調会長だった2019年に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の友好団体トップと面会していたとされる問題で、その場に米国の旧統一教会の元会長も同席していたと、関係者が取材に証言した。その際に撮影されたとみられる写真を、朝日新聞は入手した。
岸田氏は党政調会長だった19年10月4日、党本部で来日中のニュート・ギングリッチ元米下院議長と面談。関係者によると、教団の友好団体「天宙平和連合(UPF)ジャパン」の梶栗正義議長とともに、UPFインターナショナル会長で米国の教団の元会長、マイケル・ジェンキンス氏も同席していたという。
UPFは、教団の創始者である文鮮明(ムンソンミョン)氏と韓鶴子(ハンハクチャ)総裁夫妻が創設した団体で、UPFインターナショナルは世界に約150あるという支部を統括する組織。ジェンキンス氏は00〜09年に米国の教団の会長を務め、19年5月からUPFインターナショナル会長。友好団体に大きな影響力があるという。
朝日新聞が入手した写真の一枚には、4人とみられる人物が納まっていた。ほかに、面談中とみられる様子もあった。
岸田氏の事務所に4日、梶栗氏やジェンキンス氏との面会について聞いたところ、「数年前、自民党政調会長時代にギングリッチ元米下院議長とお会いしました。その際、大勢の同行者が来られていましたが、その中にどなたがおられたかは承知しておりません」と回答があった。
●「はざま」層の給付財源に予備費、政府検討 「都合いい財布」批判も 12/5
岸田政権が進める所得税などの定額減税をめぐり、減税しきれない「はざま」の所得層を対象とした追加給付の財源について、政府が予備費を使う方向で検討していることがわかった。国会審議なしで使える予備費は、コロナ禍以降、「都合のいい財布」として政府が使ってきた面があり、予備費の乱用との批判が出そうだ。
岸田政権は、先月にまとめた総合経済対策の柱として、1人あたり4万円の定額減税と、減税の対象にならない住民税非課税世帯への7万円給付を決めた。このほか、減税の恩恵を十分に受けられない低所得者など「はざま」の層が約900万人おり、対応に迫られている。
例えば、子どもら3人を扶養している4人家族では計16万円が減税されるが、納税額がそれより少ない所得層は減税しきれなくなるためだ。政府は追加給付で穴埋めすることを念頭に置くが、制度設計が複雑になるため、先月29日に成立した補正予算には間に合わなかった。経済対策では「本年末に成案を得る」としている。
この財源に予備費を使うこと ・・・
●「支持率は鏡に映った姿」 公明・山口那津男代表が岸田政権に注文 12/5
公明党の山口那津男代表は5日の記者会見で、内閣支持率の低迷が続く岸田文雄首相の政権運営に関し「支持率は鏡に映った姿でもある。自らの姿を国民の期待すべきものにしていく努力が重要だ」と注文を付けた。
●安倍派パー券キックバックは政権を揺さぶる激震に 12/5
与党自民党が揺れている。自民党の安倍派が政治資金パーティの収入の一部を議員側に「キックバック」し、収支報告書に記載していなかった疑いが大問題となっているからだ。所属議員の10人以上がキックバックを受けていたという。総額は2018年からの5年間で1億円以上とみられる。
安倍派ばかりでなく二階派でも不記載の疑いが出ており、この問題は政界を大きく揺るがす問題へ発展するのは間違いない。
事の発端は、自民党の5つの派閥が2021年までの4年間に合計約4,000万円分の政治資金パーティの収入を政治資金収支報告書に適切に記載していなかったとして、神戸学院大学教授の上脇博之氏が告発状を提出したことである。東京地検特捜部が捜査に乗り出したことから、各派閥は訂正を行うなど、対応に追われる事態となっている。
こうした動きのなか、二階派所属の桜田義孝・元五輪担当大臣が、所属する二階派(志帥会)に先月末、退会届を提出した。その理由について派閥によるパーティ券の販売ノルマへ不満があったためとされており、桜田氏に続き派閥から離脱する議員が今後も出る可能性がある。
岸田首相は2日、「各政治団体の事情は最もよく知る人間が説明していくべき」との認識を示したが、「総理の発言はどこか他人ごとだ」という批判の声が自民党内からも発せられている。
安倍派元事務総長の松野博一官房長官は連日、記者会見において「お答えすることは差し控えさせていただきます」と繰り返すばかりだ。松野氏は19年9月から2年にわたって同派の事務総長を務めた。現在は、5人衆の1人として安倍派の集団指導体制に責任をもつ立場でもある。このような政治家の姿勢に国民の不信感は強まるばかりである。
臨時国会は13日で閉会するが、東京地検特捜部は閉会後、安倍派の事務総長経験者、キックバックを受けた所属議員や会計責任者に対する事情聴取を行うことを検討しているとされる。特捜部が安倍政権時代の負の遺産について徹底した捜査を行うことになれば、検察人事にまで介入した安倍政権への意趣返しになると指摘する政界関係者もいる。
いずれにしても、今回のパーティ券問題は国民の政治に対する信頼を落とすものであり、徹底した解明が求められる。ただ、こうした政治家のやりたい放題を半ば黙認してきた責任は国民の側にもあるだろう。選挙に行かない政治的無関心層の増加が、特定の支持層や団体に顔向けしておけば、何とかなるという奢りを生んだのではないだろうか。
●“パー券”問題で野党が追及 公明幹部は苦言「納得する回答を・・・」 12/5
国会では、自民党の派閥のパーティー券収入問題をめぐり、野党が、最大派閥・安倍派に所属する閣僚を追及した。
立憲民主党・野田国義議員「キックバックの問題ですね、もらったことがあるのかないのか?」
安倍派・鈴木総務相「派閥において事実確認のうえ、対応するものと認識いたしております」
立憲民主党・渡辺創議員「派閥と連動して、大臣自身が還元を受けているか?」
安倍派・宮下農水相「私の事務所の経理に関しては、政治資金規正法にのっとった処理をしております」
また、安倍派の松野官房長官は会見で、「政府の立場として、個々の政治団体、個人の政治活動についてコメントは差し控えたい」と述べた。
一方、与党内では、公明党の佐藤国対委員長が記者団に対し、「精査している最中とか、政府の立場では言えないというのは、誰一人として納得する回答にはなっていない」と苦言を呈した。
●自民派閥“パー券裏金疑惑”を岸田首相ノンキに傍観… 12/5
自民党の各派閥がパーティー券収入の一部を政治資金収支報告書に記載せず、せっせと裏金づくりに励んでいた疑惑は、この週末に報道が一気に進んだ。
最大派閥の安倍派は、直近5年間で不記載が数億円に上る可能性があり、東京地検特捜部が政治資金規正法違反容疑での立件も視野に調べている。
二階派も所属議員がノルマを超えて販売した分を派閥の収支報告書に記載しないまま、議員側にキックバックしていた疑いがあるという。不記載の総額は5年間で1億円を超えるとみられる。
「安倍派では1000万円超のキックバックを受けていた所属議員が複数いるらしく、13日に臨時国会が閉会したら、特捜部が議員の事情聴取を本格化させるといわれている。過去のリクルート疑獄のように、特捜部に何十人も呼ばれるようなことになれば自民党は大混乱です。万が一、派閥幹部などの大物議員が逮捕でもされたら政権が持ちませんよ」(自民党ベテラン議員)
逮捕者が続出すれば永田町は紛糾、世論の猛反発も必至なのだが、岸田首相は例によって「国民から疑念を持たれるとすれば大変遺憾」とか言うだけで、他人事のような態度を取り続けてきた。
4日の自民党役員会では、事態の深刻さに気づいた岸田首相から各派閥に向けて、何らかの具体的な指示があるのではないかと注目されたのだが、「遺憾であり、状況を把握しながら党としても対応を考えていく」と相変わらずだった。党総裁としての指示はなく、派閥任せのままだ。
ターゲットは安倍派と二階派
パー券裏金疑惑では、政治資金に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授が派閥の会長や会計責任者を刑事告発。慣例に反して、首相に就任しても派閥会長を続けている岸田首相本人も告発の対象になっているのに、岸田首相はまるで危機感がないように見える。
「岸田政権を支える主流派は麻生派、茂木派、岸田派です。一方、特捜部のターゲットは主に安倍派と二階派とされている。総理はこの状況を“ラッキー”と考えているフシがあります。非主流派の二階派と安倍派が身動きを取れなくなれば、岸田降ろしも仕掛けられないからです。2派閥がガタガタになって弱体化すれば、総理にとっては、むしろ好都合なのかもしれません」(官邸関係者)
長期政権を築く野望のために、党内の派閥に過剰なほど目配りしてきたのが岸田首相だ。内閣支持率がこれだけ低迷していても、最大派閥の安倍派と、“政敵”の菅前首相と気脈を通じる二階派が自滅すれば、主流3派に支えられた岸田首相が来年の総裁選でまさかの再選というシナリオもあり得なくはない。
「党内派閥のバランスを重視して、国民の方を見ようとしないのが岸田首相の政権運営ですが、世論を軽んじていたら自民党自体が瓦解しかねません。派閥の裏金問題は、国民から見れば、どこの派閥が悪いというより自民党全体の問題なのです。自民党総裁として指導力を発揮することなく、派閥任せにしている首相の態度は到底、理解されません。来年の通常国会は間違いなく『政治とカネ国会』になる。岸田首相が対応を誤れば、支持率下落に歯止めがかからず、党内政局ではなく国民の怒りの声で退陣に追い込まれる可能性もあります」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
国民の信頼を失った自民党は次の総選挙で下野まで行ってもおかしくない。自分の保身延命で頭がいっぱいで世論が読めない岸田首相はあまりに能天気すぎる。
●岸田首相の「無責任」にア然...核軍縮に「政治家生命」はそっぽを向く 12/5
不拡散どころか、拡散して状況が深刻化
核兵器の開発や保有、使用などを禁じている「核兵器禁止条約」(TPNW)の第2回締約国会議が12月1日、改めて「核兵器による抑止力の強化(核抑止論)」を誤った戦略もしくは考え方であり、「核軍縮の障害になっている」などとする政治宣言を採択して閉幕した。
会議には、米国の「核の傘」の庇護を受けており「核抑止」を直ちに放棄できないと主張するドイツなど北大西洋条約機構(NATO)加盟国を含めて約30カ国のオブザーバーも参加し、大変な盛り上がりを見せたという。
こうした核軍縮論議の盛り上がりの背景には、ウクライナに対する侵略戦争を続けているロシアが繰り返し核の使用をほのめかしていることや、中国が保有核弾頭数を増やしていること、北朝鮮が核弾頭を搭載できる弾道ミサイルの開発を加速していることなどがある。換言すれば、国際社会では、遠からず、ヒロシマ・ナガサキを最後に78年間にわたって回避されてきた核兵器の再使用が現実になりかねないとの危機感が募っているワケだ。
一方、核軍縮に政治家生命を賭けているはずの広島県選出の衆議院議員、岸田文雄氏が率いる日本政府は、体制維持の危機が叫ばれている核不拡散条約(NPT)にしがみつき、核兵器禁止条約にそっぽを向き続けている。日本が「唯一の被爆国」として、国際社会に核軍縮の重要性を訴える重要な機会を逸し続けている。果たして、こうした岸田政権の姿勢が、あるべき日本政府の姿と言えるのか考えてみたい。
まず、紹介しておきたいのは、長崎大学核兵器廃絶研究センターが今年6月に公表した世界に存在する核弾頭数の推計である。それによると、保有国9カ国の合計(世界の総数)は2023年に1万2520発と、一見したところ5年前(2018年、1万4450発)と比べて減ったように見えるが、実態は、現役の弾頭数が9587発と5年前(9251発)に比べて増えており、深刻さを増しているのだ。
現役の弾頭数の国別保有数に目を移すと、米国が3708発と92発減らし、フランスが290発で横ばいにとどめているものの、その2カ国以外は、中国が最も保有数の増加が顕著で170発増の410発、次いでロシアが144発増の4490発、以下、インドが39発増の164発、北朝鮮が25発増の40発、イギリスが10発増の225発、同じくイスラエルが10発増の90発と7カ国がそろって保有数を増やした。
後述する核不拡散条約(NPT)の形骸化を表す現象の1つとも言えるが、同条約で核兵器の保有を認められていないインド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルの4カ国が保有弾頭数を増やしていることは、核が不拡散どころか、拡散して状況が深刻化していることを浮き彫りにしている。
ロシアの傍若無人ぶり
米国の3708発を上回り、4490発と世界最大の弾頭を保有しているロシアの傍若無人ぶりも見逃せない。今年7月に、ロシアが侵略戦争を仕掛けているウクライナとロシアの両国の隣国にあたるベラルーシに、射程が比較的短く、使用しやすいとされる戦術核兵器を搬入したと、プーチン大統領が「核の使用」をちらつかせて「核の威嚇」をしているからだ。
周知の通り、広島と長崎に1945年8月に投下された原爆は同年末にそれぞれ14万人と7万人が死亡する被害を引き起こしたとされている。その後も長年にわたって、後遺症に苦しむ人や亡くなる人が後を絶たなかった。
そして最近になって、新たに核兵器が使用された場合の被害をシミュレートする研究もあった。前述の長崎大学核兵器廃絶研究センターが今年3月に公表した「北東アジアにおける核兵器使用の人道的影響:核リスク削減にとっての示唆」だ。それによると、北東アジアを舞台に5つのシナリオを試算したところ、最悪のケースでは、数カ月のうちに260万人の死者が出るという驚くべき結果が出た。この最悪シナリオは、台湾問題を巡り、中国が核兵器を先制使用し、米国が応戦するケースだ。大小合わせて合計 24 の核爆発が起き、直接的な核兵器の爆発とその後の放射線の汚染に伴うがんの発祥が原因で、わずか数か月の間に壊滅的な死者が発生するとしている。
何を今さらという人もいるだろうが、広島、長崎の歴史的惨劇や、長崎大学のシミュレーションを勘案すれば、核兵器は1発でも使用されれば、とんでもない数の死者を生む大量破壊兵器であることが明らかだ。
にもかかわらず、現役核弾頭が増えているばかりか、拡散にも歯止めをかけられず、ロシアによる「核の脅し」まで横行しているのが、今日の世界の現状である。冷戦終結後に核軍縮の拠り所とされたNPT体制では不十分として、今回第2回締約国会議が開かれたNPNWという新たな枠組みに国際社会の期待が集まるのは必然的な流れである。
ちなみに、NPTは1970年に発効した時点ですでに核兵器を保有していた米、露、中、英、仏の5カ国に対し、核兵器削減交渉に誠実に取り組む「核軍縮」を条件に、保有し続けることを認める一方で、他の諸国には「平和利用」しか認めず、「不拡散」を謳った条約だ。冷戦期以降、「核軍縮」の大黒柱的な存在とされ、191カ国・地域(北朝鮮をふくむが、北朝鮮は離脱したと主張している)が加盟している。
ところが、NPTは2015年と2022年の「再検討会議」で最終文書の採択に続けて失敗するという機能不全に陥っている。2022年の会議は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行で2020年の開催がズレ込んだものだった。が、2会合続けて、最終文書が採択できかなかったことにより、核保有国が誠実に取り組むはずだった「核軍縮」が虚ろになっている。
ちなみに、2022年会合の議長をつとめたアルゼンチン人のスラウビネン氏は、ウクライナのザポリージャ原発の管理を巡る文言などにロシアが最後まで反対したことが採択の障害になったと明かしている。
議長発言を「無視」したかたちに
このようにNPT体制が揺らぐ中で、新たな「核軍縮」に向けた起爆剤として国際社会の期待が高まっているTPNWは、2017年7月に国連加盟国の6割を超える122カ国・地域が賛同し、2021年1月に、50カ国・地域を超える国が批准、条約としては発効した。11月下旬の段階で、批准した国・地域はさらに増え、69になっている。
最大の特色は、第1条で、締約国に対し、いかなる場合も、核兵器の開発,実験,生産,製造,取得,占有,貯蔵、移譲、受領、使用、使用するとの威嚇、禁止行為の奨励・勧誘、援助、援助を受けること、配置、設置、展開などを明確に禁じている点だ。
TPNWの第1回締約国会議は、去年(2022年)6月、オーストリアで開催され、ウクライナ侵攻に踏み切ったロシアを念頭に、プーチン大統領が繰り返していた「核の脅し」を非難した。返す刀で、米国などの核保有国とその核の傘に頼る国々に対しても「核軍縮」に対する真剣味を欠いていると批判。そのうえで、NPTを核軍縮と不拡散の基礎としつつ、新たな核兵器禁止条約によって補完することで「核なき世界」の実現を目指すという「ウィーン宣言」や、そのための行動計画を採択した。
第2回の締約会議は、会場をニューヨークの国連本部に移し、11月27日から5日間の日程で開催された。今回の政治宣言は、「核兵器の近代化や世界情勢の緊張の高まりによって、核のリスクはいっそう悪化している」との状況認識を示した。そのうえで、ロシアによる核の威嚇や、ガザ地区への攻勢を強めているイスラエルの閣僚が核兵器の使用を「選択肢の一つだ」と発言したことなどを念頭に「核による威嚇は国際法に違反し、世界の平和と安全を損なう」と、核保有国などが主張している「核兵器による抑止」という論理を真っ向から否定。結論として、「現在だけでなく未来の世代のためにも、核の無い世界を実現するために不断努力を続けていく」との決意を表明するものになっている。
加えて、今回の政治宣言は、新たに「核抑止に依存しない安全保障論について根拠ある理論を構築する」方針などを打ち出した。この点には、単なる「核抑止論」批判にとどまらないうねりにつながることが期待されている。
これに対し、米国やロシア、中国などの核保有国は従来から、TPNWそのものに反対しており、今回の第2回会議にも参加しなかった。日本政府も、日本が米国の傘の下にいることから、前回に続いて参加を見合わせた。
そうした中で注目したいのは、議長を務めるメキシコのフアン・ラモン・デラフエンテ氏が第2回会議の初日の冒頭で発言、「核兵器の保有や威嚇、さらには使用を求める声を前にして、沈黙を守ることは許されない」と、国際社会に対して危機感を露わにしたことだ。
会議への参加を見送った日本はこの議長発言を無視した形になったが、日本と同様に米国の傘に依存しているNATO加盟国の一部がこの議長発言に呼応する格好で、前回に続いてオブザーバーの資格で出席。それぞれの見解を表明したことは特筆すべきだろう。
広島サミットからの停滞
特に、G7メンバーという点でも日本と立場が同じであるドイツは会議3日目(11月29日)の冒頭で発言し、核抑止論について「あからさまに攻撃的なロシアと対峙している中で、ドイツを含むNATO加盟国の多くにとって重要性が高まっている」と明言。TPNW締約国とは核兵器に対する基本的な考え方がまったく異なることをはっきりと述べたうえで、それでも核軍縮は重要であり、「核兵器のない安全な世界に向けた道を見つけるための、(TPNW締約国とも)真剣で率直な議論を行いたい」と強調した。
また、ノルウェーが「われわれは世界の核軍縮を推進し、この分野での分断を防ぐため、すべての国と建設的な対話を求める」と述べたほか、ベルギーも「他の国の見解を聞くことに関心を持ち続け、互いの努力が核兵器のない世界にどのようにつながっていくのか、検討する用意がある」と述べたという。3カ国とも、TPNW締約国とも真摯に対話を続け、核軍縮に取り組んでいく方針を明確にしたのである。
振り返れば、岸田総理は今年5月、あえてG7首脳らを被爆地・広島に招いてサミットを開催し、将来に向けて核兵器の廃絶を訴えた。
生憎の雨が降りしきる5月19日、広島市の平和記念公園で、議長として岸田総理がG7首脳を出迎える様子を見て、核軍縮への期待を覚えた人も多かったはずだ。
実際のところ、首脳たちがそれぞれ原爆資料館を視察して、被爆者と面会する姿や、歴史上初めて、G7首脳がそろって原爆慰霊碑に献花、戦没者を追悼する場面は感動的だった。記帳内容を見ると、「世界から核兵器が最終的かつ永久になくなる日に向けて、共に進みましょう。信念を貫きましょう」(バイデン米大統領)、「この場所は想像を絶する苦しみを想起させる。核戦争は決して繰り返されてはならない」(ショルツ独首相)と、核の軍縮と廃絶に向けた強い思いを示したリーダーもいた。
広島サミットの共同声明「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」は、「全ての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界の実現に向けた我々のコミットメントを再確認する」としたうえで、ウクライナへの侵略に言及して「ロシアによる核兵器の使用の威嚇、ましてやロシアによる核兵器のいかなる使用も許されない」と、G7の立場を明確にした点や、「世界の核兵器数の全体的な減少は継続しなければならない。NPTは、国際的な核不拡散体制の礎石であり、核軍縮及び原子力の平和的利用を追求するための基礎として堅持されなければならない」と盛り込んだことも、その時点のG7と日本の立場を明確にしたものだった。
しかし、NPTはその後の準備会合でも停滞が明らかになったばかりか、北朝鮮は国連安保理決議に反して弾道ミサイル技術を用いて軍事衛星を打ち上げ、イスラエルも「核の脅し」を使う事態になっている。
国際社会が危機感を強めるように核の脅威は現実味を増すばかりで、NPNW締約国が益々青写真の描きづらくなった核軍縮や核廃絶の道を求めてフラストレーションを高めるのは、ある意味、当然のことだろう。
唯一の被爆国として、最も、核軍縮や核廃絶に向けたリーダーシップを発揮すべき立場にあるのだから、日本も、ドイツやノルウェー、ベルギーに倣い、TPNW締約国との対話に参加するべきではないだろうか。
次のTPNWの締約国会議は、2025年3月に開かれる予定だ。核軍縮と核廃絶の機運を高めていくには、TPNW締約国とオブザーバー参加国を増やすことが重要になっている。もし、それまで岸田総理が政権を維持できれば同政権が、そうでなければ時の政権が、遅ればせながら、代表団を送り込む責務があると筆者は考えている。 
●多額の海外支援金「日本に使え」の政権批判は妥当? 12/5
外国への財政支援表明やパーティー券問題など、岸田政権に対して国民の方を向いていないと批判の声が上がっています。
自民党の最大派閥「安倍派」の議員にパーティー券の販売ノルマを超えた分がキックバックされていた問題。安倍派の政治団体「清和政策研究会」がパーティー券収入を専用口座で管理していたことが分かりました。これに関し、この問題の時期に安倍派の事務総長を務めていた松野官房長官は…。
松野官房長官「この場は政府の立場として、お答えをしているという認識であります。今後それぞれの団体において事実関係を確認し、必要な対応がなされるものと考えています」
5日も「政府の立場」を理由に質問に答えませんでした。
今、日本は物価高の影響で実質賃金は18カ月連続のマイナス。国民が苦しむなか、大臣や閣僚らの給与を引き上げる法案が国会で可決したり、高級店で会食したりと、「お金」に対する国民の目はかなり厳しくなっている状況下。
そんななか、先日に中東を訪問し、外交で存在感をアピールした岸田総理大臣。
岸田総理大臣「我が国の支援に対する高い評価が示され、期待の大きさも感じたところです」
ガザ情勢によて観光客減少などの影響を受けた「エジプト」に財政支援を検討する考えを示したのですが、気になるその額は日本円で最大約340億円。さらに、厳しい財政状況に陥った「ヨルダン」にも約146億円。これにも国民からは不満の声が…。
X(旧ツイッター)から:「なんでいつも海外ばかりにバラまくの!?」「まずは日本国民のためになることが先でしょ!」「庶民感覚がないからお金の無駄遣いばかり」
しかし、本当に岸田総理がやってることは“無駄遣い”のダメダメ政策ばかりなのか。
●時代錯誤、現実無視 岸田政権が招く「さらに失われる30年」の無残 12/5
コロナ禍が明けたら、日本も世界と足並みを揃えて経済復興していくのではないかと、私は密かに期待していた。しかし、その期待はいまや完全に裏切られた。岸田政権の経済対策は、 時代錯誤、現実無視のオンパレードである。
GDPでドイツに抜かれて4位に転落したというのに、この国にはそれを深刻に受けとめる気配もない。
もう絶望するほかない現状で、これでは「失われた30年」は「さらに失われる30年」になるのは間違いない。
岸田内閣の支持率ついに20%割れ!
「所得税と住民税の定額減税 1人あたり年間4万円」という「減税」が目玉という経済対策が発表されて以来、岸田内閣の支持率は急落した。
その極め付けは、11月5日に発表された「社会調査研究センター」(SSRC、本社:さいたま市)のスマートフォンを対象としたインターネット調査方式「dサーベイ」である。
この調査による岸田内閣の支持率は、なんと、前回10月の調査から4ポイント減の19%と、ついに20%を割り込んでしまった。
支持率急落の原因として挙げられているのが、経済対策の不甲斐なさだ。11月2日に決定された政府の経済対策を「評価する」はたったの9%。「評価しない」は、70%にも達した。
減税が評価されないというのは、それが一時しのぎの選挙対策だと見透かされてしまったからである。ただし、ここまで支持率が低下したからといって、倒閣運動など起こらない。国民によるデモもない。いまの日本人には、なんとかこの局面を打開ししてよりよい未来をつくろうという気概がない。
「資産所得倍増プラン」で貯金を吐き出させる
「経済、経済、経済」と3連呼した「増税メガネ」岸田首相だが、あきれるのは、その頭のなかが時代錯誤で、現実と乖離していることだ。
なにしろいまだに「デフレ脱却」などと言うのだから、空いた口が塞がらない。
今回の経済対策のなかで、「減税」と並んで最悪と思えるのが、「資産所得倍増プラン」の現実無視ぶりだ。内閣府のHPには「資産所得倍増元年」という文字が踊っているが、これはいったい誰に向けたものなのだろうか?
日本人の個人金融資産はいまや2000兆円以上に達し、その半分以上が預貯金となっている。これを投資に振り向けて経済を活性化しようというのだが、ではいったい誰がそんな資産を持っているのか?
金融庁によれば、年齢別の金融資産は、70代以上で「金融資産非保有」が約3割いる反面、金融資産「1000万円以上」は4割以上もいる。つまり、金融資産は高齢者に偏っているのだ。ただし、高齢者は「老後に2000万円必要」という脅迫から預貯金を切り崩さないでいるというのが現状だ。
NISA非課税の永続化のどこが経済対策
それでは、若年世代はどうだろうか?
20代を見ると、「金融資産非保有」の割合はなんと3割を超え、「1000万円」以上は、ほとんどゼロである。
資産というのは、収入から支出を引いてできるものだから、いまの低給料で若い世代が、投資のための原資をつくるのはほぼ無理である。となると、いくら国策といえ、誰が投資をするのだろうか?
「資産所得倍増プラン」の目玉は、NISAの非課税期間の無期限化である。NISA投資に関しては永遠に課税しないというのだ。しかし、非課税というのは利益に対する課税免除に過ぎず、当然だが利益だ出ずに損出した場合の補填はない。
経済政策というなら、まずは利益を生みそうな投資先をつくるのが先決である。そして「資産倍増」などより、「給料倍増」のほうが先であろう。
岸田首相というのは、現実無視のまったくの経済音痴というほかない。
●岸田文雄首相、新愛称は『パーティーメガネ』? 12/5
内閣支持率の低迷が続く岸田文雄首相に対するネット上の新たな呼称として「パーティーメガネ」が浮上している。自民党派閥が、政治資金パーティーの券のノルマを超えた販売利益を議員側にキックバックしたとされる問題が11月末に明らかになると一気に広まった。
パーティーメガネといえば、カラフルなフレームや独特な形の目玉が目を引く面白グッズ。だが、政治資金パーティーに関するニュースが増えると、X(旧ツイッター)では岸田首相関連の投稿に「#パーティーメガネ」のタグが目立つようになった。
報道を受け、ユーザーからは「ぼったくりバー顔負けのパーティーメガネか」「パーティーメガネっていうと、楽しいことが見えてそうだな 見えてるんだろうねぇ 自分の楽しそうな姿が」など皮肉を込める声が上がった。
岸田首相についてはネット発の呼称の走りとなった「増税メガネ」が、国会の論戦でも登場。一方で、注目を浴びながら「2023ユーキャン新語・流行語大賞」でノミネート入りしなかったことも議論を呼んだ。
総務省が11月下旬に公開した2022年分の政治資金収支報告書によると、岸田文雄首相の資金管理団体「新政治経済研究会」の政治資金パーティーの収入は、7度で計1億4872万円となっている。
●“ジェットコースターはダメ”中国と対峙した大使会見 12/5
中国に駐在する日本の垂秀夫大使がおよそ3年の任期を終え、日本への帰任を前に記者会見を開きました。
外務省で中国語を専門とする、いわゆる「チャイナスクール」として40年近い外交官生活の大半を中国との関係に費やすなど、キャリア官僚としては異例の経歴を歩んできた垂氏。
習近平国家主席への権力集中が進む中国で、何を目指し、何を感じたのか。離任を前に開いた記者会見の全文で迫ります。
離任の記者会見を行った垂秀夫大使とは
垂大使は、昭和60年に外務省に入り、中国語を専門とする、いわゆる「チャイナスクール」の出身として、中国・モンゴル課長や領事局長、官房長などを歴任し、およそ3年前から中国大使を務めてきました。
いわゆるキャリア外交官は、専門とする国以外に欧米先進国などへも赴任するのが通例ですが、垂氏が駐在したのは中国、香港、台湾で合わせて18年。異例の経歴です。
中国共産党の高官だけでなく、民主化を求め政権に異を唱える人たちにも人脈を築いてきたと言われ、中国政府が日本の政策を批判したときには、SNSも使ってすぐに反論するなど、異色の外交活動が注目を集めたこともありました。
その垂大使の離任に当たっての記者会見は、12月4日午後、北京の日本大使公邸で1時間あまりにわたって行われました。
以下、その全文です。
会見
(垂大使 冒頭発言)皆さん、こんにちは。こんなにたくさんお集まりいただいて感謝いたします。離任記者会見ということで、ちょっとピンとこないですけれども、こういう機会をいただいたことに御礼申し上げたいと思っています。
私は12月6日に任務を終え、この地を離れて日本に帰国することになっています。振り返れば大使の期間もさることながら、40年近い外交官生活の大半を中国関係に携わってきたという意味でそれなりの感慨はあります。
国民の税金で養っていただいたといいますか、公僕として、長年、力をためてきた知見とか経験とか人脈、これらを生かして、何とか大使の任務を、最後のご奉公をかろうじて勤めあげられたのではないかなと安堵しています。
後ほど皆さんから日中関係や中国の問題で質問があると思いますので、最初は私が大使として何をやってきたか、その時どういう気持ちでやってきたかという内容を簡単にご紹介、ご説明させていただければと思います。
私が中国大使として着任したとき、この場で記者会見が開かれました。そこで私は大使館の今後の大きな柱として2つのことを申し上げました。1つは日系企業支援、もう1つは邦人保護、邦人の安全確保でした。
まず日系企業の支援という点については、日々のいわゆるビジネストラブルへの対応、これはもちろんのことながら真剣に取り組んだつもりです。
また、中国で行うビジネスが昔に比べれば非常に難しくなっている昨今、どちらかというと互助団体的であった中国日本商会の組織改革を提案し、大きく改革していただきました。
その結果として、今年の春から日本商会は会長職が固定化されました。また、これまでの任務以外にもロービングや調査業務、発信機能、これらを非常に強化する力強い団体に変貌しつつあるところです。いいスタートを切れたのではないかと思います。
先ほど申し上げました難しい中国ビジネス、とりわけ経済安全保障という観点からも非常にいい動きではないかと思っています。
次に在留邦人の安全確保という点についてです。私は普段から同僚に対して、(大使館の)政治部にいようが経済部にいようが広報文化部にいようが、すべてが領事担当官であると。そう何度も言って常に館内の意識改革を行ってきたつもりです。
私もかつて領事局長を担当した身です。ひとつひとつの領事案件、本当に、なんというか、普通の事務処理で済ませてはいけないような非常に厚みのある案件がたくさんあるんですね。
そうしたときに、もし事件・事故が起きた時に当事者が自分の肉親であったらどうかと。自分の父親が、自分の兄弟が、自分の子どもが事件・事故に遭ったらどういう対応をするかと。常にそういうつもりで対応しようと皆で確認し合ってやってきたつもりです。
ときには涙を流すこともありました。それでも領事担当の同僚は非常によくやってくれたと思います。邦人の安全確保、邦人保護という点はわれわれの大きな柱でした。ただ、この邦人保護、在留邦人の安全確保という観点から申し上げれば、今年の3月に起きた、国家安全当局に拘束された在留邦人の方がまだこう留されているという状況につきましては、私個人としては極めてじくじたる思いです。
この2つの大きな柱に加えて、私は1つの試みを提案しました。それは何かといいますと、この大使公邸の開放です。この北京には多くの外交団がいます。その数ある外交団の中でもわが日本大使公邸は、その美しさ、あるいは格式の高さ、いずれの点においても最も優れた素晴らしい大使公邸だと自負しています。
調度品もたくさん素晴らしいものがありますし、平山郁夫画伯とか絹谷幸二画伯の絵がかけられているなど、本当に美術館、博物館のような大使公邸です。春には桜が美しく咲きますし、秋には紅葉が見事に色づきます。
その美しい庭園も抱えたこの大使公邸を在留邦人に使っていただく。そういう試みでした。この公邸の建設はもちろん、維持管理は全て国民の税金で行われている。そういう観点から言えば使っていただいて当然であると。そういう出発点でした。
当初は、在留邦人の方も半信半疑のところはあったんですけれども、何度もわれわれが使ってくださいとお勧めしているうちにいろんなことで使われ、コロナの時期もありましたが、それでも私の任期中に120回を超える公邸開放、公邸の利用が行われました。
例えば企業間のMOU(基本合意書)の調印式だとか、あるいはジャズのコンサートだとか、あるいは剣道の試合だとか、あるいは某大学の同窓会だとか、もういろんな形で使われました。時には日本人学校の子どもたちを中心にこいのぼり参観、あるいはひな祭り参観、そういうことに使われたこともあります。
普段、公邸とあまり関係のないと思われるような方々には、例えば駐在員の配偶者だとか日本人学校のPTAの方々には一般参観日も設け、対外開放する日もありました。そういう試みを行って、これまで十分に使っていただいたと思っています。この試みは非常に上手くいったのではないかと思っています。
さて、中国で仕事を行っていく上では、特に私の任期中はコロナが非常に蔓延している時期でしたし、また、ちょうど去年は日中国交正常化50周年、今年は日中平和友好条約締結45周年というエポックメイキングなこともありましたが、時には厳しい勤務環境の中で日本ではちょっと考えられないようなことが起きることもありました。
例えば、去年の50周年の関係では、在留邦人の人たちが手作りで祝うために、いろんな交流事業、文化事業を準備したり用意したりしましたけれども、それを日中関係が悪いという状況の中で、コロナを理由に何度も延期されたり中止されたり、そういうことがありました。
また、われわれとしてはなかなか受け入れがたいような理由で、日本の政策を批判されるようなこともありました。そういう時、多くの日本の人たち、とりわけ中国に長く勤務してるような人たちには「中国だからしょうがない、郷に入っては郷に従わないといけない」と理不尽なことを受け入れてしまうきらいが、私はあるのではないかと思っています。
そうしたときに民間の人、それぞれの個人はなかなか言いにくいんだと思うんですね。立場上も言い難い、企業の人も言い難い。でも私は日本の大使として、しっかり主張すべきは主張する必要があるという気持ちで、必要に応じておかしいことはおかしいということを声にしてきたつもりです。
ただ、ここで大事なことは、相手に対して物申すようなときには、その基準が、私は日本の大使ですから、日本の国益、あるいは日中関係をしっかり維持し大局を守っていくためにやるということが基本であるべきだと思っています。
決して反中とか嫌中とかいう感情で批判したり物事を判断したりしてはいけないと自分を戒めてきたつもりです。私のそうしたやり方についてどう評価されるのかについては、これは私自身が決める話でもありませんし、日本の皆さん、あるいは世論が決めることでもないんだと私は思っています。私は常々歴史が決めるものだと。歴史が評価してくれると考えて仕事をしてきたつもりです。
日本では外交に関する資料は30年後には公表されることになるわけですね。その将来の、歴史家か評論家かわかりませんが、そういう人たちがどう評価するのか、判断するのかということが私にとっては一番大きな基準であると、そういうつもりでやってきました。
私は常々同僚に対して、歴史に耐えられる外交をやろうと。歴史に恥じない外交をやろうと。今、その時々を過ごすためのアリバイ作りのためだけの外交をやってはいけないと、そういうことを訴え続けてきました。同僚は皆、本当にそれに応えて非常によくやってくれたと思っています。
そういう意味においては、ちょっととんがっているかもしれませんが、そういう上司、大使を持って非常に大変だったと思いますが、私の同僚は本当によくついてきてくれて非常に良い仕事をしてくれたと思っていて感謝しかありません。
先般、サンフランシスコで岸田総理大臣と習近平国家主席との間で日中首脳会談が開かれました。一番大事な点として、日中両国は全面的に戦略的互恵関係を推進することを再確認するということが示されました。私は非常によい会談だったのではないかと思っています。
これからが実は大変だと思います。大きな方向性を示すこと、これは何とかやれました。ただそれを具体化、実現していくことが、実はある意味ではもっと大事である、そう思っています。そうした意味では、引き続き日中双方の外交当局、あるいは政府全体がともに努力して、日中関係をさらに高みに押し上げていく必要があると。建設的、安定的関係を強化していく必要があると考えています。
冒頭申し上げましたように、40年近い外交官生活において、18年間、中国大陸、香港、台湾と勤務して参りました。私なりに一生懸命やってきたつもりです。精一杯駆け抜けた外交官生活だったのではないかと今思っています。何の後悔もありません。「風光霽月」の心境です。非常に爽やかで、思い残すことは何もないと、そういう心境です。
私の第2の人生の夢は、何らかの形で写真の世界で生きていけないかなと考えています。そのことを考えると、また非常にチャレンジ精神が出てくるという意味では、風光霽月と言いながら、また気持ちが震え上がってくるところがあります。中国も、日本も、あるいは台湾も、自然の美しさや一般庶民の喜怒哀楽には何の変わりもありません。私は中国大陸で撮りためてきた写真、そして日本、台湾で撮りためてきた写真、これらを多くの日本の方に示して、共通点をしっかりと伝えていくことによって、日中関係の更なる強化をお手伝いしたいと思っています。
冒頭私からのご挨拶は以上です。
質疑応答
―――中国に長らく携わってきた外交官として今の日中関係についてどのような感想を。また今後の日中関係はどのようにあってほしいと考えるか。―――
今の質問で思い起こすのは、去年、日中国交正常化50周年のときの大使館公邸での記念レセプションです。私はそのレセプションの挨拶で、こういう風に日中関係をたとえました。これまでの日中関係はジェットコースターのようだと。上がったり下がったり、良くなったり悪くなったりだと。
遊園地で遊ぶジェットコースターは楽しいでしょうが、日中関係というジェットコースターに乗っている両国民はたまったものではないと。今後はジェットコースターではなく、ゆっくりゆっくり走る普通電車がいいのではないかと。要は、日中関係はしっかりと安定的に関係を構築していくことが大事だということを申し上げたつもりです。
日中関係が安定化するためには、やはり一番大事なものは日中間の意思疎通だと思います。日中は永遠の隣人であるのはこれはもう間違いのない事実なんですね。互いに引っ越すことはできないんです。国が違う以上、それぞれ国益を背負っているという意味において、ときには立場の相違だとか摩擦だとかがあるのは正常なことだと思うんです。自然なことだと思うんです。だからそれを恐れる必要は全くないんだと思うんですね。
恐れないといけないのは日中間で意思疎通がなくなることです。摩擦や意見の相違があればあるほど、本来であれば、日中の意思疎通は強化されなければならない。そういうふうに思います。首脳間から本当に民間レベルの交流に至るまであらゆるレベルで意思疎通が行われると。そういう関係が私は望ましいし、それが安定した日中関係につながるのではないかと思っています。
邦人保護の観点から。ことし3月に男性社員が拘束され、いまだ解放されていない。大使は11月28日にみずから領事面会に臨んだ。どういう思いで、なぜこのタイミングで臨んだのか。―――
サンフランシスコの日中首脳会談で、岸田総理は習近平国家主席に対して、できるだけ早期の釈放を要求されています。
それを受けて、この北京の一番の最前線で働く、なおかつその責任者である私が、そのための仕事を行うということ、これは、当然、まずやらないといけないことであると言えると思います。
さらに申し上げれば、私みずからが領事面会に行く必要があるとずっと考えていました。いろいろ事情があってそれは成し遂げられませんでした。
実は私による面会は領事面会としては8回目で、それ以前に7回領事面会が行われていました。その時、毎回、私は面会に行く同僚にメッセージを託していたんです。「われわれとしてはこの問題にしっかり取り組んでいくので気をしっかり持ってください」という趣旨のメッセージです。
今回、私が帰国することになり、やはりこのまま何もなしに本当に帰っていいのかと。私は、それは人の道ではないと。許されるのであれば直接会って帰国するという報告と、私の任期中に結果的には助けることができなかったことについてのお詫びを伝える必要があると感じていました。それが人の道であると感じていました。
また、私が行くことによって、例えば、メディアが関心を持ってくれ、日本政府としてこの問題にしっかり取り組んでいるというメッセージにもなると考えました。そして、非常に重要なことだと思いますが、この問題は決して風化させてはいけないと、忘れてはいけないと。多くの関係者の中でこの問題がだんだんと話題に上らないようになってはいけないと思っていましたので、私は自分が行くことが必要だと感じていました。
―――日中関係に関連した質問を。コロナが明けたあともビザの免除が回復しない状況。日本から中国を訪れる人が少ない状況になっている。今後何に期待するか。―――
人の往来が極めて少ない。とりわけ、日本から中国に来る人の数が極めて少ないです。いろんな理由があると思います。そもそもビザがなかなか取りにくい。昔はノービザということもありましたし。中国から日本へ行く旅行者、こちらも一番多かったときに比べればまだ半分にも達していません。ただこちらはそれでもそれなりの人が日本に行ってくれてはいます。
結果として何が起きるか。何が起こっているか、どういう影響があるかと申し上げれば、生の中国を見る機会があまりない、等身大の中国を知る機会がなく、中国に対する理解が深まらない。
あるいは、万が一中国に対して誤解を持っていたとしたら、それにもかかわらずそれが増長してしまう、それが減じることもない、そういうことにも繋がってしまいます。
いずれにしろ、相互理解が深まらないということが、間違いなく起きています。昨今の日本人の対中感情の低さを表すいろいろな世論調査がありますが、それを見てもそのあたりは歴然と出ているのではないでしょうか。
―――広報スタイルについて。中国が発表した後に日本側が反論するという広報スタイルがあったと思う。それは垂大使から始まった形式だと思うが、この狙いは。―――
私どもからすれば、受け入れがたい理不尽な批判等もあったとき、あるいは申し入れがあったときには、われわれとしてあるいは私個人として、しっかり物申す必要があります。歴代の大使も同様にやられ、しっかりと反論されておられたと私は思っておりますし、信じております。
ただ、今おっしゃられたようなことが、私のやり方が特別に見えているのであれば、若干違いはあるのかもしれません。一般論で申し上げて、例えば中国側が私どもに申し入れをした時、私は必ず、あるいは歴代の大使もきっと同じだと思いますが、必ず反論する、あるいは日本側の立場を言う、日本としての申し入れを行うのです。
ところが、中国は国営の新華社通信がそれを流す場合、われわれの発言は完全に無視されるわけです。中国側の言い分しかないわけです。私はそれでいいのかと考えました。ある問題において、日本の大使が呼びつけられて、それに関する報道が中国側の一方的な主張しかこの世に出ない、それでいいのかという問題意識がありました。
ことばが悪くて申し訳ないのですが、中国が出していないのに、私どもがけんかを売る形で、われわれから直接出すということはなかったと私は信じています。中国側が出した時に、われわれが必ず反論すると。われわれも主張していることを出すということは確かに行いました。この世に中国だけの主張しかないことにならないように心がけたつもりです。
日本の(メディアの)皆さんを批判しているわけではありません。日本の皆さんは非常に立派なんです。中国側の主張も、日本側の主張も書かれるんですね。喧嘩両成敗じゃないですけど、大体、一応2つ書かれるわけです。最初の頃、私の主張がすごくちょっとしかなかった時もありましたが、だんだんと相当たくさん書いてくれるようになりました。
中国側はどんなことをしても自分たちのことしか書かないんです。それでも皆さん(日本のメディア)は書いてくれる。私はそれを信じて、中国側の主張しかないということになってはいけないと思ってやってきました。これは私の信念でやったことです。今後どうかということについては、私は申し上げる立場にありません。
―――大使の任期中、中国では習主席が3期目に入るという政治的に大きな動きがあった。3期目の習主席が率いる中国と日本は今後どう向き合っていくべきか。―――
極めて大事な、いい質問なんですが、私もまだ現役ですので、なかなか入り込めない部分もあり、答えが奥歯に物が挟まってるような言い方になるかもしれません。
中国は非常に変わってきています。どんどん変わってきています。それに応じた付き合い方、あるいは対中政策を考えていく必要があると思っています。一般論として言えば、私は首脳会談、この重要性がますます大事になっているんではないか。そういうふうに申し上げられるとこの場で言っておきたいと思います。
―――習主席になってから社会の統制が非常に厳しくなってきている。中国の人たちの価値観も多様化している。中国は社会統制の厳しさに耐えうるのか。また、仮に内側から変えようという動きが出てくる可能性があるかどうか、その場合日本としてサポートするようなことができるのか。―――
敏感な質問ですね。とても大事な質問なんですよ。いつもみたいに完オフ※だったらいくらでも喋りますが、ここは完オフではないので、そうした意味において申し上げればですね、今、言われたように、中国社会、社会統制がどんどん強くなってきているんじゃないか、それを内側から変えようとする力があるのではないか等々、そういう見方が存在していること自身、私は承知しています。そういうふうにだけ申し上げておきたいと思います。また日本がそれにどういう風に関わっていくべきなのか、あるいは関わっていくのがいいのかということについては、私はまだ現役ですので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。ご理解ください。
   完オフ
「完全オフレコ」のことで、取材相手の名前や発言内容など一切を公表しないこと。
―――福島の処理水の対応をめぐり日本産の海産物の全面禁輸が続いている。この問題について今後どのように対応していくのか。―――
私の見方で申し上げれば、今回の首脳会談でも2つ大事な点があったと思います。1つは、日中関係の位置付け、戦略的互恵関係を再確認すること。もう1つは、処理水の問題について。日中が、例えば専門家どうしがしっかり意見交換する。そういう形で互いにこの問題の解決に向けて知恵を出すといった方向性を確認したことだと思っています。
もちろん日本としては、今の「ALPS(アルプス)」の処理のやり方について、政府の一員として絶対的な自信を持っています。そうではありますけれども、一方で隣国の中国が別の意見を持っていることに対して、その意見、その主張は一切聞かないと、耳も貸さないというような姿勢は必ずしも適切ではないと思っています。
日中の関係当局、あるいは専門家どうしの意見交換、これを通じて、何とか着地点を見いだしていく、一刻も早く中国側の水産物の全面禁輸を解除するために努力することが大事だと思っています。
―――大使の在任中に最も印象に残っていること、また離任に当たって心残りなことがあれば。印象に残っている中国の指導者は。エピソードなどあれば紹介してほしい。―――
まず最も印象がある出来事、これはもういろんなことがありました。コロナについては、皆さんも同じように経験された方はたくさんいらっしゃると思いますが、特に去年の今頃なんかもう大混乱でしたしね。隔離生活も長かったりと、いろんなことがもう走馬灯のようにあるので、どれがと言われるとなかなか難しい。
中国の古い友人、それから新しい友人とまた深い付き合いができたということも私にとっては極めて印象のあることでした。
あえて1つ申し上げれば、先般の日中平和友好条約締結45周年の際に中国が釣魚台迎賓館で行った記念レセプションで、私は大使としてスピーチする機会を与えていただきました。私はその中で、戦略的互恵関係、これが生み出された経緯を紹介するとともに、日中は戦略的関係の再構築が必要であると訴えました。スピーチが終わったあと、壇上から降りてきたときに、皆が座っている中で、1人、王毅中央外事弁公室主任兼外交部長が立ち上がって私のところまで迎えに来て、「大使、スピーチは良かった。素晴らしかった。ぜひ、戦略的互恵関係を再構築しよう」ということを言って、握手を求めてきたことは、とても印象のある出来事だったと思います。
何かやり残したことについてですが、私はやり残したことは、あえて言えば先ほどの邦人拘束の件です。
それ以外に申し上げれば、私は大使になってこういう大使館を作りたい、こういう気持ちで大使としての仕事をやろうと思っていたことについては、ほぼできたと思っています。もちろん、私が独りよがりにできたというよりも、私の同僚たちがしっかりついてきてくれたことが一番大きな理由です。私が思い描いていた大使館像、これをしっかり作れたと思っています。そういう意味では何ら思い残していることはないというのが私の心境です。
それから、心に残った指導者、中国側の指導者でいいですよね。これは、長い外交官生活の中でということで申し上げれば、私はやはり、あえて中国側のことを申し上げます。
日本はまだ何とか頑張ってらっしゃる方がいらっしゃる中で、本当にリスクを取って日中関係をしっかり進めていくんだとか守っていくんだという指導者が、今やそう多くないというかほとんどいない。
そんな中にあって、思い起こせば2009年。詳しいことは申し上げられませんが、2009年に、ある場で引退された曽慶紅※さんに会う機会があったんですね。そこで曽慶紅さんに、私の方から1つ質問したんです。曽慶紅さんは、中央組織部長で、いわゆる江沢民さんの側近中の側近であった方ですが、2002年4月だったと思いますが、訪日しているわけですね。
   曽慶紅氏とは
元国家副主席。江沢民前総書記に近い実力者で、日本の政界にも幅広い人脈をもっていた。習近平氏が中国政治の表舞台に出てきた背景に、曽氏の影響力もあったといわれている。
なぜその訪日が大事だったかというと、実は当時、小泉総理の時代で、小泉総理自身が靖国神社に参拝した直後だったんです。その直後に、曽慶紅さんは日本を訪問されたんです。日本といっても大分県でした。確か私の記憶が間違いなければ武漢と大分のチャーター便を飛ばすか何かそういう話だったかと思います。
私は聞いたんです。「なぜ日本に行けたんですか。いろいろ反対とかなかったんですか」と。
曽慶紅さんは非常に満面に笑みを浮かべて、「日本には私の友人2人が待っていた。1人は野中広務さんで、1人は大分県の平松知事だ。日本の友人が待っているので、私は行かなければならないと思った。私は、2人の指導者に許可をもらった。1人が江沢民さん。もう1人が外交担当の副総理であった銭其シン【※王へんに、深のつくり】さん。2人とも喜んで行ってきなさいと言ってくれたから行きました。友人が待っていたから私は行ったんだ」と。私は本当にリスクを取ってでも日本を訪問する、日中関係を進めるという素晴らしい人だなと感じました。私にとってはとても心に残ったやり取りでした。
―――改革開放で多くの日本企業が中国に来て経済交流を進めてきたが、足元では中国での事業リスクの高まりもあって対中投資意欲を大きく下げているという実情もある。中国で日本企業がおかれている状況や日中の経済関係は今後どうなっていくと考えるか。―――
私は2つのアプローチが大事だとつくづく思っています。1つは攻め、1つは守り。現実問題として、改革開放以降、日本経済、日本のビジネス界は中国との間の経済交流・経済往来を強化させてきました。ある統計によれば、今や中国大陸に、拠点数を入れた数字で申し上げれば、3万以上の日本の会社あるいは拠点があると。中国大陸の中で最も大きなプレゼンスを示しているのが日本企業なんです。
日本経済を考える上で中国経済を抜きに語ることはもうあり得ないと思います。もちろん、中国経済の大きなマーケット、これも非常に魅力的ですし、イノベーションやデジタル経済など、日本から見ても極めて目を見張るような動きを示していることもあります。どういうふうにして日本経済としてこれを活用していくのかというような視点は非常に大事だと思います。そうした意味では、中国との経済関係を能動的にしっかりと強化していくということはとても大切だと思っています。
一方で、中国でビジネスをやっていく上で、今どんどんと難しくなっているわけです。いろんな問題も生じてきています。まず最初に中国経済そのものが、特に今年に入って、あるいは去年ぐらいから、非常に不景気である、デフレ気味の状況を示しているということもあります。それはまだ1つの経済の状況ですが、それだけではなくて、例えば、よく言われる自立自強のサプライチェーン、あるいは自国産品を優遇するような政策があります。
表面的には否定するんですが、内外差別を行っているのではないかと思われるような対応も見受けられます。業種によっては強制的な技術移転というような動きについても、われわれはいろいろ相談を受けていることも事実です。そういう経済安全保障的な側面から見ても、しっかりと守り、しっかり脇を締めて、中国経済、中国とのビジネスをやっていく必要があると。
私は両方が大事だと思っています。決して守りだけではダメだ、もちろん攻めだけでもダメで、攻めがあって守りだと考えています。
―――「ゼロコロナ」政策について。大使は着任から隔離を受け、終了まで全部見届けた。日本と全く違うスタイルをとった「ゼロコロナ」政策をどう総括するか。―――
着任のときは2週間でしたね。10日ではなくて2週間の隔離生活でしたが、総括は、私が行うのではなく本来中国政府ないしは中国共産党が行うべきものです。実際もう何度も総括していて、中国政府・中国共産党としては勝利宣言を行っているので、それに私が横から総括するっていうのは変な話かもわかりませんが、印象だけ申し上げます。
正直申し上げて、前半期は、「ゼロコロナ」、一種の真空状態を中国の中でつくる。そのために隔離を2週間だ3週間だ、地域によっては2か月要求しているところがあったわけですね。そのかわり、そこに入れば無菌状態、実験室みたいな状況をつくって。実はそれはそれでうまく回っていたのも事実なんですね。
ところがオミクロン株の流行となって、それはもう効果を発せられなかった。オミクロンの威力、伝染力がもっと強かったんですね。私は政策を変更するタイミングを逸したんではないかと個人的には思っていますね。そのタイミングは相当間違ったんじゃないかと。それが私の印象です。その結果、後半の方は極めて、世界的にもまれに見るようなロックダウン等があったり、北京では「弾窓(タンチュアン)」という経験した人でないとわからないような政策が取られたり、いろんな不可思議なことがありました。最後は大混乱の中、「ゼロコロナ」政策が取り下げられていく。全体としての評価については、私の個人的印象だけを申し上げれば、タイミングがうまくいかなかったというか、良くなかったと思っています。
   弾窓
「ゼロコロナ」政策のもと、スマートフォンの「健康コード」と呼ばれるアプリに表示されたポップアップメッセージのこと。感染者が出た地域に行ったと認識されると、濃厚接触者でもないのに「あなたはリスクが高い地域を訪問しました」と表示される。この表示は自分では解除できず、数日間建物へ入れなくなったり公共交通機関の利用ができなくなったりする。
―――米中関係について。サンフランシスコで米中首脳会談が行われたが、今後も米中対立の構図は続くとみられている。今後、米中対立が深まる中で日本の役割は何か。また日本政府として現状、どのくらい日本の役割を果たせていると考えるか。―――
日本大使としての立場で第三国どうしの関係である米中関係について、表だった評価をするのはなかなか難しく、差し控えないといけないんですけれども、一般論として申し上げます。
米中関係の安定化は、日本としては非常に希望しているところです。今回のサンフランシスコにおける米中首脳会談についてもいろいろな論調があるのも承知していますけれども、私は今回の会談を歓迎しています。
日本がどういう役割を発揮するかということについて。アメリカはわれわれの同盟国であり、日米同盟という強固な信頼関係のもとで、われわれは必要に応じて中国に対して対話を重ねながら、必要な時には中国に対して大国としての責任を果たしてもらえるように働きかける。そういうふうに考えています。
―――拘束された男性社員に領事面会をした判断理由として、帰国の報告と、任期中に結果として救出できなかったお詫びを伝えたいということだった。実際に伝えて先方の反応はどうだったのか。―――
すみません、私の発言、私の思いはお伝えした通りですが、先方の方の発言、対応等については私の立場上、紹介するのは恐縮ですが、差し控えさせていただければと思います。
●「CO2の排出」で同じラインに立つインドと中国 日米にとって面倒なことに 12/5
南シナ海で中国がアメリカの軍艦を不法侵入と批判
中国軍の南部戦区は12月4日、中国が領有権を主張する南シナ海に米海軍の戦艦「ガブリエル・ギフォーズ」が不法侵入したため、追跡監視を行ったと発表した。
飯田)南シナ海周辺で、さまざまなことが起こっています。5日の新聞によると、フィリピンが排他的経済水域(EEZ)を主張する海域に130隻以上の中国船が集結したということです。フィリピン沿岸警備隊は、これらの中国船は海上民兵であるとして、複数の巡視船艇を派遣しています。どうご覧になりますか?
米中対立のフロントラインであるASEAN
中川)米中対立のいちばんのフロントラインの1つがASEANです。そういう意味では、「フィリピンがアメリカにつく、中国につく」という話ではなく、フィリピンも両方の超大国をにらみながら、なおかつ中国と接しているので、常にASEANのなかで中国に対する疑いの目を向けています。ドゥテルテ政権から現政権になり、対応が変わるところはありますが、いずれにしてもASEANがホットであることは間違いありません。それに対して、日本は介入していくべきです。
飯田)日本が。
中川)もともとアメリカ側には「メコン河下流域開発(LMI)」があり、中国側には「瀾滄江メコン開発協力(LMC)」があったりと、フレームワークとして米中対立はずっとあったわけです。ただ、この辺りはなるようにしかならないと言うか、領海などの話になるので、お互い引くに引けないですよね。
「CO2の排出」で立ち位置が近いインドと中国がつながってしまう
中川)その辺りは我々に見えやすいのですが、対立というところでは、安全保障上の問題が1つある。国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)が開かれましたが、気候変動にはインドも絡んでくるので難しい部分があります。この辺りの動きからすると、フィリピンなどに関してはある意味、流動性が低いわけです。流動性が高いところに注目しておかないと、日本としての戦略を間違えかねないと思います。
飯田)「COP28」で注目されたのは、グローバルサウスと呼ばれる国々との関係性において、先進国がどれだけ支援・技術協力をするかというような話でした。岸田総理は日本国内の話に関し、CO2をたくさん出す石炭火力発電所の新規建設は行わないと発言しましたが、どうアプローチすればいいのでしょうか?
中川)気候変動やエネルギー安全保障に関わるところは、米中対立だけでなく、特にインドが中国側に立ちやすいわけです。
気候変動のラインからインドと中国に同じラインに立たれると面倒なことに
中川)普通であれば米印と、我々のような自由民主主義というイデオロギー的な国と、対中国という構図です。しかし、途上国的な枠組みから言うと、CO2排出に関しては、どちらかと言うとインドと中国の立ち位置が近いので、つながってしまうのです。今回、米中からはトップが出なかったので、モディ首相は首相演説において、アメリカからはハリス副大統領、中国からは丁(テイ)筆頭副首相が出たことを挙げ、「インドは首相が出たのに」と大国を批判しています。
飯田)モディ首相が。
中川)排出に関するスタンスは、インドと中国で近いところがあるのです。我々の枠組みとして、気候変動のラインからインドと中国に同じ立場に立たれると、面倒なことになります。
「これまでCO2を大量に排出していたから発展して先進国になった」という批判を受けてしまう
飯田)そこに楔を打つため、インドに対して技術協力を進めるなど、そういう方向になっていくのでしょうか?
中川)インドのスタンスは、先進国に対してかなり対立的な立場にいるため、原発はフランスやロシアの技術を入れていますが、技術協力は難しいと思います。インドは独立的な動きがあるのです。カーボン・ニュートラルに関してもインドは遅いです。モディさんの宣言では2070年という目標を掲げていますので、先進国の2050年よりも20年くらい遅いのです。中国は「3060」と言っており、2030年までにピークアウト、2060年までにカーボン・ニュートラルとしていますので、途上国の遅れが揃ってしまうのです。
飯田)なるほど。
中川)先進国としてはやりづらいところもありますし、アメリカも大量にCO2を出しており、脛に傷もあります。「CO2を大量に出して発展してきたから先進国の立場になれたのに」という彼らの批判を受けてしまうわけです。
飯田)それには、なかなか反論しづらいですよね。
中川)安全保障よりはハードではないのですが、CO2を基軸としてイデオロギー的な対立につなげられると、自由民主主義との対立とは違う軸での枠組みができてしまいます。その辺りも考えておかないと、誰が敵で誰が仲間かというゼロイチの議論ではなくなるので、難しい計算を迫られると思います。
ASEANの大国として今後キーとなるインドネシア
飯田)中国やインドの次に発展しようとしている国々も、たくさんあるわけですよね。
中川)それらの国々は経済力も弱いので、発言力もまだ強くありません。ただ、その人たちがどこに追随するかと言うと、途上国側ですよね。安全保障や自由民主主義となると、人権などもあり、途上国もついてきているところはあるのですが、CO2に関しては途上国と先進国は立ち位置や利害が完全にバッティングします。途上国の小国はグローバルサウスの盟主を謳うインドにつきやすいですし、中国の立ち位置も比較的近いのです。大変な問題だと思うのですが、COP28の話は、日本ではそこまで大きく話題になっていない気がします。
飯田)インドネシアに関してはどうですか?
中川)インドネシアはASEANの大国なので、アメリカとも中国とも非常に上手くお付き合いをしています。中国もいまインドネシアを巻き込もうとしており、この間もジョコ大統領が行きましたし、外交イベントがある度にジョコ大統領が訪中しています。大統領選を控えていますが、いずれにしてもインドネシアは今後、ASEANでキーとなる大国になっていくと思います。中国も近年は極めて重視しています。
 12/6

 

●首相、派閥パーティーの開催自粛を要請へ 午後、党本部に幹部集め 12/6
自民党安倍派(清和政策研究会)や二階派(志帥会)の政治資金パーティーをめぐる疑惑を受け、党総裁の岸田文雄首相は6日、派閥によるパーティーの開催を自粛するよう求める方針を固めた。政権幹部が明らかにした。
首相はこの問題について、同日昼に首相官邸で開かれた政府与党連絡会議で「政治の信頼を回復するため、自民党としても強い危機感を持って、この問題に一致結束して対応していく。この後、党の幹部とも当面対応について相談する」と語った。
首相はこの後、党本部に幹部を集め、派閥パーティーの自粛を要請する方針だ。麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長、森山裕総務会長の各派閥のトップのほか、安倍派幹部の萩生田光一政調会長らが参加する。関口昌一参院議員会長、世耕弘成参院幹事長も出席する方向だ。
首相は、各派閥の政治資金収支報告書へのパーティー収入の不記載の問題に加え、最大派閥の安倍派による組織的な裏金作りの疑惑などが相次いで浮上したことを受け、4日の党役員会で「国民に疑念が持たれるとすれば遺憾だ」と述べたが、具体的な指示を出さず、対応はそれぞれの派閥に任せたままだった。
安倍派の疑惑をめぐっては、東京地検特捜部が派の担当者や所属議員の秘書らから任意聴取を始めた。一方、同派の事務総長経験がある松野博一官房長官や高木毅国会対策委員長らは説明責任を果たすことに後ろ向きで、派閥任せの首相の姿勢に対しては批判が高まっている。
政権幹部によると首相はこうした状況を踏まえ、捜査に影響が出ない範囲での対応が必要として、派閥パーティーの自粛を要請することを決めたという。
●国債評価損10兆5000億円 「日銀は持続可能でない」 12/6
ハイパーインフレを警告し続ける経済評論家の藤巻健史さんとニッポン放送で対談した。
岸田文雄政権の所得税減税について、藤巻さんは「ますますインフレが加速する逆方向のことをしている」と批判。物価高を上回る賃上げについても、「政府が賃上げをお願いするのは社会主義国家でもないのに筋違いだ、そもそも日本は終身雇用制で、勤労者の賃金は上がりにくい体質がある。GDPがあがっていないのに国民全体の給料が上がるわけがない」と述べていた。全く同感だ。
日銀は2023年度の上半期決算で保有する国債の評価損が10兆5000億円になったと発表した。これは9月末時点の評価で、10月には大規模金融緩和策の一つである長短金利操作(YCC)を再修正し、長期金利の上限を1%めどとした。「1%になると24兆〜25兆円の評価損になると思う。日銀は、株式ETFの購入評価益が約24兆円あるが、それが相殺される。内部留保は12兆円しかない。株式ETFも日経平均が2万円を割り込めば評価損が生じる。金利が上昇しても、株価が下落しても、日銀は莫大(ばくだい)な評価損を抱え、債務超過になってしまう」と藤巻さんはいう。
全くもって持続可能な中央銀行と呼べない。時価会計ベースで日銀が債務超過になったらハイパーインフレの「Xデイ」はいつ起きてもおかしくないと藤巻さんは警告する。
国債を大量保有する地方銀行も含み損を抱えており、それが債務超過になれば、預金が戻らないかもと取りつけ騒ぎがおきかねない。中央銀行も同じで債務超過の日銀が発行する「円」を世界が信用するかどうかだ。日米金利差が縮まれば、円高に戻るという意見もあるが藤巻さんは、それは短期的視点すぎるという。「これからの為替を見る上では金利差ではなく、構造的な問題、お金の量が重要だ。米国はばらまき過ぎたお金を回収している。日本まだばらまきを続けている。天から降るお金(=円)と、回収されるお金(=ドル)のどっちが貴重か。円の価値は毀損(きそん)し、最終的に紙くず化する」と喝破した。
まさに、異次元の金融緩和の後に、異次元の副作用が襲ってきた。こうした中、ワタミは日経SDGs調査で今年も外食企業最高位を獲得した。取り組みが評価されたことはうれしいが、社員の意識が変わったことが大きい。国連は持続可能な社会を実現するためSDGsを目標に掲げた。目標によって各企業や一人一人が、現状を理解して意識を変え動きだしている。しかし財政危機の中、政府日銀にはゴール(出口戦略)がない。
減税やその場しのぎの政策で、すべての人に「よい顔」をしようという姿勢は持続可能ではない。最低限のセーフティーネットを張りつつも、多少の痛みを伴うことも本当の「持続可能な社会」には必要ではないか。 
●パー券ウラ金疑惑もオスプレイ墜落も「放置」する、日本政治の嫌な“空洞” 12/6
岸田政権のみならず、自民党がまるごと吹っ飛びかねない安倍派のパーティ券裏金疑惑。しかし政界の反応もメディアの追求も、どこか迫力と本気度に欠けるように思えてしまうのが現実です。この「違和感の源泉」はいったい何なのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉さんが、これまで日本の政治は「均衡」により保たれてきたものの、昨今はそれ自体が成立しなくなってきていると解説。その上で、先日起きたオスプレイの墜落事故やパーティ券裏金疑惑を例に挙げ、日本政治に「空洞」を感じざるを得ない理由を詳説しています。
何もかもが未解決のまま放置される感覚。日本政治における「空洞」
大昔から、日本の政治というのは均衡によって保たれて来ました。2つの政権担当可能な考え方があって、民意の選択によって交代しながら政権を担当するのではありません。そうではなくて、政治思想ということでは、極端に保守であったり極端に左派であったりする言論があり、その真ん中にあるべき実務的な実行可能な政策には思想的な根拠が希薄だが、左右両派の均衡によって、その真ん中に落とし所が来るというシステムです。
均衡というと、安定したイメージありますが、日本の場合はそうではなく非現実な2つの極端があって、その無謀な綱引きの結果、辛うじて真ん中でバランスしている、そんな危うい均衡であると思います。
安全保障がその際たるものでしょう。右派のホンネは自主防衛と核武装であり、現実問題としては全く成立しない考え方です。自主防衛というのは、安保条約で米国に守ってもらうのではなく、敗戦に伴う占領の延長である在日米軍を追い出し、正規軍を持ってそれが国家の防衛に当たるという考え方です。
考え方としては成立しなくもないですが、仮に敗戦に至った旧枢軸の名誉を重視するあまりに旧枢軸軍の復活のような建付けになってしまうと、国際的な孤立を招いて仮想敵国を利するだけです。要するに安全を保障する考え方ではありません。核武装に至っては、NPT体制を崩壊させるもので、戦後の世界秩序を破壊する行為になってしまいます。
反対に、左派の考え方も同様に非現実的です。あらゆる軍事的なものを悪と決めつけて、例えば国連や有志連合における平和維持活動にも背を向けるというのは、確かに「戦争は殺人であり、汝殺すなかれというタブーに抵触するので非倫理だ」という確信に支えられているのは分かります。ですが、個人の感想ではなく政治思想として組織化するとなると大きな問題を生みます。
まず、実力行使を伴う国連の平和維持活動など「手を血で汚す仕事」は他国に押し付けておいて、しかもその各国軍の活動を非倫理的だと白眼視するというのは、いくら大戦の膨大な犠牲と名誉の喪失を経験した国であるにしても、同盟国や国連に対して余りにも非礼だということがあります。言い換えれば、日本だけが「世界に冠たる非戦、非武装、平和の国」であり、他国は非倫理的だと見下すというのは、唯我独尊的な究極のナショナリズムだとも言えます。
また、どうして非武装なのかという理由の中には、日本は武装すると再び侵略などの加虐行為をしてしまうからという、軍や保守派への究極の不信があるわけです。これは分断を煽る行為として、かなり極端なものだと言えます。更に、冷戦期には、こうした非武装論というのが、結果的にはソ連陣営を利するものであって、何らかの調略を受けた結果という問題もありました。
●歳出改革、踏み込み不足 少子化財源の政府案―諮問会議 12/6
政府の「全世代型社会保障構築会議」(座長・清家篤日本赤十字社社長)は5日、岸田政権が掲げる「異次元の少子化対策」の財源確保に向けた社会保障改革の工程素案を示した。ただ、目新しい方策や数値目標に乏しく、踏み込み不足の感は否めない。低迷する内閣支持率を意識し、国民の痛みにつながるような大胆な財源論を避けたい意向もあるとみられる。
素案には、医療や介護など社会保障費の負担が現役世代に偏っている構図を是正するため、所得のある高齢者に負担を課す「応能負担」を推し進める施策が並んだ。患者の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」の見直しのほか、金融所得や資産を加味した保険料負担など、過去に政府で議論しながらしばらく手を付けていないものが大半を占める。
一方、歳出削減効果が大きいとされる高齢者の窓口負担引き上げは現時点で明記されていない。75歳以上の後期高齢者の医療費は全体の4割近く、1人当たりの医療費は現役世代の4倍以上に達する。財務省は後期高齢者の窓口負担を現行の原則1割から2割へ引き上げるよう厚生労働省に提案してきた。
経済界や学者の有志らでつくる「令和国民会議(令和臨調)」は先週、少子化対策の財源確保のため、社会保障費を3年後に最大年1.7兆円、10年後に同3.2兆円程度を削減できるとする提言を発表した。先送りしてきた抜本改革を今実行しなければ、全世代型社会保障の実現は「看板倒れ」に終わると警鐘を鳴らした。
●1.5℃の道筋へ、日本でも自然エネルギー3倍化 12/6
開催中のCOP28において、「2030年までに世界の自然エネルギー設備容量を3倍にし、エネルギー効率の改善率を2倍にする」という誓約に120か国以上が賛同した。日本も岸田総理が現地でのスピーチの中でこの目標への賛同を表明している。誓約への大きな賛同は、1.5℃目標の実現に自然エネルギー拡大とエネルギー効率化が決定的に重要だという世界の共通認識を示している。
これに対し、自然エネルギー拡大に関して、日本の政府関係者の反応として報道されているのは、「誓約は世界の目標であって日本の目標ではない」というものばかりである。この誓約への賛同が直ちに各国での3倍化をコミットしたものではないことは事実だ。しかし、日本の自然エネルギーの現状を直視すれば、誓約への賛同を機にいま強調すべきなのは、1.5℃目標の実現に向け、自然エネルギー導入を加速する抜本的な対策強化の必要性ではないか。
2035年60%削減へ自然エネルギー80%以上が必要
日本が議長を務めた5月のG7サミットでは、IPCCの第6次報告書が提起した2035年までのGHG60%削減の緊急性を受け止め、1.5℃目標の実現をめざし「2035年までに電力部門を完全にまたは大部分を脱炭素化する」という合意を再確認している。自然エネルギー財団は、4月の提言で日本において60%削減を実現するためには、2035年に電力の80%以上を自然エネルギー電源に変える必要があることを明らかにした1。そのために必要な設備容量は太陽光発電、風力発電など全ての自然エネルギー電源を合計して375GW以上であり、これは2021年度比で3倍を上回る。
すなわち、1.5℃目標の実現のため、自然エネルギー設備容量を3倍にすることは、2030年までではないとしても、2035年よりも前に日本でも一刻も早く実現が必要な目標なのである。
世界に遅れる日本の太陽光発電と風力発電拡大のテンポ
岸田総理はCOP28でのスピーチの中で「我々には、太陽光の導入量が世界第3位となる実績がある」と誇っている。2022年末で第3位であることは事実だが、2022年中の増加量は日本では6.5GWであったのに対し、1位の中国は106GWという桁違いの大きさである。2位の米国も18.6GWと日本の3倍近い。4位のインドも18.1GWであり日本に変わって早晩第3位になる可能性が高い。これに続く、ドイツ、スペイン、ブラジルも年間増加量は日本を上回っている2。
太陽光発電とともに世界の自然エネルギー拡大をけん引している風力発電については、2022年末の時点で、中国の365GW、米国144GW、ドイツ67GWのトップ3に続き、インド、英国、スペイン、ブラジル、フランスなどの国々が20GW以上を導入している。日本は5GWにも達していない3。
ポテンシャルは十分に存在する
自然エネルギー3倍化誓約が公表された後のテレビ番組で、伊藤信太郎環境大臣は「(日本では)必ずしも3倍にできる容量があるとは考えていない」と発言したと報じられている。しかし、環境省が公表しているポテンシャル調査では、導入ポテンシャルは4174GWに達している。現時点での事業性を考慮しても347〜1046GW4としており、これだけでも現在の導入量の3〜10倍である。ポテンシャルは十分に存在する。
アンモニア混焼も含め石炭火力への固執をやめるべき
いま、日本以外のG7各国など先進国がめざしているのは、2035年には全電源を脱炭素化することである。COP28で米国も石炭火力発電の廃絶をめざす脱石炭連盟(PPCA)への参加を表明した。岸田総理はスピーチの中で、「排出削減対策の講じられていない新規の国内石炭火力発電所の建設を終了していく」ことを表明した。しかし2011年の東日本大震災後、発表された多くの石炭火力新設プロジェクトは、全てが建設完了・建設中か、あるいは計画中止になっている。今の時点での新規石炭火力の建設終了方針に、何らかの実践的な意味を見出すことは難しい。今、問われているのは既存の石炭火力も含めたフェーズアウトであるのに、岸田総理のスピーチはこの点に何も触れていない。
岸田政権は石炭アンモニア混焼発電を推進している。IPCCの第6次報告書では「排出削減対策が講じられている」と認められるのは90%以上の削減を行う場合とされており5、石炭火力にアンモニアを20%、あるいは50%混焼しても、対策のされていない(unabated)石炭火力としてフェーズアウトの対象であることに変わりはない6。G7でPPCAに参加していないのは、日本だけになった。現在のエネルギー基本計画は2030年でも電力の 19%程度を石炭火力で供給するとしている。アンモニア混焼も含め早急に石炭火力への固執を改め、自然エネルギー電源の拡大を加速するべきである。
日本でもアジアでも自然エネルギー拡大に全力投球を
日本にも、そして岸田総理が推進するアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想の対象とする東南アジアにも、政府の主張とは異なり、豊富な自然エネルギーポテンシャルがある7。いま政府に求められるのは、国内においては、太陽光発電、風力発電をはじめ自然エネルギー電源の早期3倍化実現のため、必要な規制改革を行い支援策を強化することであり、送電網の増強を加速することである。東南アジアに対しては、石炭アンモニア混焼、CCS付き火力発電などの偽りの脱炭素技術の売り込みを中止し、自然エネルギー拡大への支援を強化することである。
これこそが岸田総理がCOPでのスピーチの最後に語った「共に脱炭素と経済成長を実現」する道だ。
●岸田首相の不人気「しゃーない」自民・麻生太郎副総裁がエール 12/6
東京都内で5日講演した自民党麻生派会長の麻生太郎副総裁は、内閣支持率の低迷が続く岸田文雄首相に対し、「覚悟を持って臨まなければいけない厳しい状況だが、真ん中でしっかり励ましていきたい」とエールを送った。
安倍政権から積み残した防衛力強化や原発政策などの課題に方向性を示した点を評価した上で、「それでも人気が上がらないのだから、しゃーないんですよ。そういうもんだと思っときゃええ」とも語った。
●成立から10年「特定秘密保護法」 今まで起きたこと、これから注意すること 12/6
安全保障などに関する政府の情報管理を強化し、国民の「知る権利」を侵す恐れも指摘される特定秘密保護法は6日、成立から10年を迎えた。2012年末に発足した第2次安倍政権が戦後の外交・安全保障政策を次々と転換させ、憲法9条を軸とした平和国家の姿を変質させていくきっかけとなった。「戦える国」に向けた動きは、岸田政権下でより内容を伴ったものとなっている。
特定秘密保護法「防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野で、国の安全保障に関連した政策や自衛隊の活動などに必要で秘匿性が高いと判断された情報を特定秘密に指定し、流出しないようにするための法律。2014年12月施行。公務員らが外部に漏らした場合、最高で懲役10年が科される。指定の有効期間は原則最大30年で、内閣の承認があれば延長できる。」
第2次安倍政権は13年12月4日、首相や一部の閣僚だけで重要な外交・安保政策を決められる「国家安全保障会議(日本版NSC)」を発足させた。その2日後には、米国と共有する防衛機密などの漏えいを防ぐことを目的とした特定秘密保護法が成立。政権の中枢に権限と機密情報を集中させた。
14年4月、武器輸出三原則を見直し、武器の輸出や他国との共同開発を事実上解禁する防衛装備移転三原則を閣議決定した。
同年7月には、歴代政権の憲法解釈を変更し、他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を閣議決定。集団的自衛権行使や米軍支援拡大などを可能とするための安全保障関連法は15年9月に成立した。
17年6月には、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を含んだ改正組織犯罪処罰法も成立した。運用によっては、政府に批判的な団体への圧力になるとの懸念もある。
岸田政権も安倍政権の路線を引き継ぐ。22年12月に閣議決定した安保関連3文書には「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有を明記。憲法9条に基づく「専守防衛」を形骸化させるとの指摘は根強い。現在は自民、公明両党で武器輸出ルールの緩和に向けた協議が続いている。
第2次安倍政権以降、日米の軍事的な一体化と情報管理の強化が進んだ。国民の権利侵害や憲法違反の懸念が拭えないまま、戦争ができる国づくりに向けて、政府の意思決定と政策遂行の密室性が高まっている。
「チェック機能が実質的に、ない」
成立してから10年となる特定秘密保護法に関し、NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、法律の運用状況を監視して、透明性を欠いた政府の対応を改めるよう訴えてきた。特定秘密の存在によって政府の政策実行に至るプロセスが見えにくい状態が続き、国会のチェック機能も果たされていないと問題点を指摘する。
――特定秘密保護法が成立してから、国民にとってどんな変化があったか。
「特定秘密で社会にどのような影響が出ているかということ自体、外から測りにくい。秘密の保護が強化されることは、非公開の情報収集機能など政府の活動強化が進んでいるということだが、政策の判断も含めてチェックできる機能が実質的にない状態のままだ」
――特定秘密をチェックするため、内閣府に「独立公文書管理監」が置かれ、衆参両院には情報監視審査会が設置されている。
「いずれも秘密指定の手続きが適切に行われているかなどを形式的にチェックするに過ぎず、特定秘密に指定された政策の内容に関する審査や監査はできない。非公開の政策判断が正しかったか検証するサイクルが本当に回っているかどうかすら分からないことが根本的な問題だ」
――特定秘密保護法は、安全保障関連法制定などとともに、安全保障政策を大きく転換させた。
「国家安全保障会議(NSC)が設置され、安保関連法で自衛隊の活動範囲を従来よりも広げ、敵基地攻撃能力の保有も決めた。そうした政策の核になる部分が特定秘密に指定される。さらに周辺の情報を非公開とすることで保護している。(特定秘密保護法の成立から)全ての政策はつながっている」
――政府は高い機密性を理由に情報公開に消極的だ。
「本当に出せない情報以外はなるべくオープンにしていかないと駄目だ。政府が非公開の範囲をいたずらに広げていくと、信頼を損なうことになる。ここ数年でも、公文書を隠蔽(いんぺい)のために改ざんしたり、不自然に廃棄したりと、政治問題化する場面で不審なことをしてきている。それが政府への根深い不信感になっており、改善する必要がある」
――制度をどう見直すべきか。
「秘密指定の解除は現在、行政機関が一元的に管理しているが、国民が秘密指定の解除と、指定を解除された情報公開の審査を請求できるような仕組みを設けた方がよい。独立公文書管理監や情報監視審査会のチェック機能の強化も大事な要素だ」
●低所得者への給付、18歳以下の子ども1人5万円を追加へ 政府検討 12/6
岸田政権が進める低所得世帯の給付金について、政府が18歳以下の子ども1人当たり5万円の追加給付を検討していることがわかった。財源には国会審議なしで使える予備費を充てる方針だ。与党との調整を経て年内に決め、早ければ年度内に給付を始める。
政府は経済対策で、住民税非課税世帯への1世帯当たり7万円を配ることを決めた。これに加え、子どもを持つ世帯への支援を手厚くするため、18歳以下の子ども1人あたり5万円を追加給付する。子どもが2人いる場合は計17万円となる。
政府は住民税が課税されていても所得税が非課税の世帯には、住民税非課税世帯と同水準を給付する方向で、子どもへの追加給付はこうした世帯も対象とする。
●岸田政権の覚悟「何が何でも賃上げ」「うまくいかなかったら退陣」 12/6
私が担当しているニッポン放送の番組「OK! Cozy up!」では、先週金曜(1日)から今週金曜(8日)まで、「臨時国会いよいよ大詰め! 連日・政党幹部が生出演!」と題し、各党幹部に直撃しています。
初日は自民党の平井卓也広報本部長、昨日(4日)は日本維新の会の馬場伸幸代表、今日(5日)は国民民主党の玉木雄一郎代表に出演いただきました。馬場、玉木両氏は、前原新党(教育無償化を実現する会)をめぐって渦中の人物。それぞれ印象深い話をしていますので、聞き逃した方はぜひ、radikoのタイムフリーなどでお聞きください。
さて、自民党の平井氏も記憶に残る発言をしていました。
「岸田文雄政権はリスクをとっている。所得税の減税もそうだが、それに先立って何が何でも賃上げをしなければならない。(中略)政策パッケージとしてはリスクが高いかもしれないけれど、もしかしたらデフレ脱却の第一歩を踏み出すことができる政策なのに、国民に『選挙目当てで減税』と取られているところがあって、岸田政権の覚悟が伝わっていない。うまくいかなかったら退陣するしかない。結果が出なかったら、そうなると思うし、われわれ(党側)もそうです」
賃上げができなければ「退陣の覚悟」というわけですから、首相以上に、この発言がリスクを取っているなぁと思いました。
確かに、賃上げで可処分所得が上昇して個人消費が回復すれば、デフレ脱却です。ただ、ひと言で賃上げといっても、企業数で99%超、雇用者数でも7割を占める中小企業に賃上げが及ばない限り、絵に描いた餅にすぎません。
そして、その中小企業経営者を取材すると、業種を問わず「人件費などのコストを元請けに転嫁できないから、賃上げしたくてもできない」と言います。
中小企業庁が先週発表した、「価格交渉促進月間(2023年9月)フォローアップ調査」では、価格転嫁について、《1コスト全体の転嫁率は、前回調査と比較して微減し、45・7%となったものの2「全く転嫁できなかった」または「コストが上昇したのに減額された」企業の割合は減少という結果となり、価格転嫁の裾野は広がりつつある》と報告されました。依然、転嫁率は5割に満たず、賃上げには力不足でしょう。
一方、公正取引委員会と内閣官房は11月29日、人件費の転嫁に向けた企業の行動指針を公表しました。
この中には、具体的な事例を挙げつつ「留意すべき点」として、発注者が受注者との協議に応じなかったり、スポット取引と偽ったり、特定フォーマットでのコスト算出以外の転嫁を認めなかったりすることを「独占禁止法上の優越的地位の濫用又は下請代金法上の買いたたきとして問題となるおそれがある」と明記しました。
きちんと転嫁を認めなければ公取が動く可能性を示唆したわけで、これは発注企業はビビります。ここは、政権の「本気」と見てもいいのかもしれません。
●岸田首相、自民幹部に派閥パーティー自粛を指示 強い危機感持ち対応 12/6
岸田文雄首相(自民党総裁)は6日午後、官邸で記者団の取材に応じ、信頼回復の取り組みを明らかにするまで政策集団のパーティーを自粛するよう党幹部に指示したことを明らかにした。年末年始の派閥行事についても自粛をすることを申し合わせたという。
自民党の派閥を巡っては政治資金パーティーの収入の一部が政治資金収支報告書に記載せずに裏金化されていた疑惑が報道されている。
首相は同日昼ごろ、政府与党連絡会議であいさつし、自民党の政策集団の活動が国民に疑念を持たれていることは「遺憾だ」とし、政治の信頼を回復するため「自民党としても強い危機感を持ってこの問題に一致結束して対応していく」と語った。
首相は、政治資金収支報告書について「訂正が必要な場合には適切に訂正を行うとともに、丁寧に説明をするよう幹事長を通じて指示を出している」と説明。党幹部と当面の対応を協議する考えを示していた。
公明代表、連立政権への影響に言及
首相のあいさつに続いて発言した公明党の山口那津男代表は「政治とカネを巡る報道が相次いでいるが、自民党として国民の信頼を回復できる対応をお願いしたい」と要請した。
山口代表は会議終了後、官邸で記者団の取材に応じ、自民党の茂木敏充幹事長も党として信頼回復に取り組む考えを表明したことを明らかにした。そのうえで「連立政権なので自民、公明が問題を起こすと影響し合うことがある」との考えも示した。
●自民党「政治とカネ」問題は岸田政権の致命傷になる 12/6
自民党の主要5派閥が「政治とカネ」問題で告発され、さらには「裏金疑惑」まで浮上して政界に激震が走っている。この騒動は、支持率が超低空飛行を続ける岸田政権の致命傷となるだろう。
動いた東京地検特捜部 財務省の意向も働いた?
内閣支持率が、複数の調査で危険水域とされる30%割れの数字を記録し、しかも不支持の比率が高い岸田文雄内閣にあって、新たなスキャンダルが表面化した。政治資金パーティーの収入を政治資金収支報告書に適切に記載していなかったとして、岸田派(宏池会)を含めた自民党の主要5派閥が告発されたのだ。
さらに、自民党の最大派閥である安倍派(清和政策研究会)では、ノルマを超えて政治資金パーティー券を販売した収入の一部を議員に環流させて、これが政治資金として収支報告書に記載されていない「裏金」となったのではないかという疑惑が持ち上がっている。この問題に、東京地検特捜部が捜査に乗り出したようだ。
この疑惑は二階派(志帥会)でも浮上し、安倍派と共に裏金となった金額は1億円を超えるのではないかと報じられている。
安倍派では、元会長の細田博之氏が故人となってしまったものの、資金の流れを知り、ノルマを超えてパーティー券を販売した分の資金の環流を差配していたと見込まれる派閥の事務総長の顔触れを見ると、影響の大きさがうかがえる。松野博一官房長官に西村康稔経済産業大臣、高木毅国会対策委員長など、俗に言われる「安倍派5人衆」の中でも現役の要職にある3人が就いていたため、彼らは言い逃れのしようがない状態にある。
12月5日夕方時点では「裏金疑惑」までは報じられていないものの、岸田首相自身も岸田派のトップであり、またポスト岸田に意欲を見せているとの世評の茂木敏充幹事長も茂木派(平成研究会)の派閥トップであるために、派閥単位の「政治とカネ」問題の責任を問われる立場にあり、当面身動きが取りにくい立場だ。
一連の報道が事実なら、いずれも政治資金規正法違反であり、同法は不記載や虚偽記載の罰則を「5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金」と定めている。政治家にとっては、致命傷になりかねない事案である。支持率の底が抜けて、岸田内閣が崩壊するのではないかとの観測にリアリティーが生じてきた。
東京地検特捜部が動いたのは、もちろん悪事を取り締まるのが仕事だからなのだが、筆者は、財務省の意向を受けて、岸田政権の幕引きに動き出したものだと考えている。財務省は増税を決めたい組織だが、岸田内閣がこれだけ弱体化すると、防衛費や少子化対策といった絶好の名目があっても、彼らが満足できる増税を実現するにはおぼつかないからだ。
それでは、これからどうなるのか。
「岸田退陣」はあるのか、あるとしたら次の首相は誰なのか。遠からず総選挙はあるのか。「一寸先は闇」という言葉があるごとく、政治の先を読むことは難しいが、筆者の仮説を提示してみたい。
政治的な黒幕は誰か? 思い当たる候補は2人いる
これだけ政治的に影響の大きな動きを取るに当たって、官僚組織のバックに有力な政治家がいないということは考えにくい。それは、誰だろうか。
候補が2人いる。一人は、麻生太郎自民党副総裁であり、もう一人は菅義偉前首相だろう。共に本人が首相再登板を目指すわけではないが、いわゆるキングメーカーの地位を目指す大物政治家だ。
財務省の判断が「岸田首相は使えない」だとして、これを取り除く一連の動きなのだとすると、財務・金融方面の親分的存在である麻生副総裁が岸田首相を見離したということではないか。
麻生派(志公会)には、自民党総裁・首相候補として国民の人気が高い河野太郎氏がいるが、同氏は岸田人事でデジタル大臣に押し込められ、マイナンバーカードの扱いを巡って大きく評判を落とした。麻生氏としては、直接次を狙わせないのだろうが、いつまでも岸田配下に置いておくわけにはいかないと考えるところだろう。
別の読み筋として考えられるのは、今回の主なターゲットが派閥の「政治とカネ」問題であることを思うと、無派閥の立場で岸田首相に対して批判も辞さない菅氏がいわゆる黒幕として有力だ。前回の総裁選では相当に悔しい思いをしているはずであり、このまま引き下がるとは思えない。
岸田首相の次は誰? 動けない「1回休み」の議員も多い
高市早苗経済安全保障担当大臣が、少人数とはいえ閣内にありながら勉強会を立ち上げた。そのことから、相互けん制構造で有力総裁・首相候補をがんじがらめにしてきた岸田人事のたがが緩み始めた。意味のある行動だった。今後それぞれの有力者が岸田氏と距離を少しずつ取ることによって、ひもの結び目が緩むように政治的自由度が増してくるのではないか。
ただし、今回の問題はことが政治資金規正法違反の疑惑なので、該当期間の派閥トップと事務総長の経験者は動けまい。それ以外の議員でも、個人的に大きなキックバックを手にして政治資金規正法上の手続きを踏まなかった議員は総裁・首相の候補たり得ないだろう。
金額や行動として、どの辺りが線引きの相場になるかを探りながら、各派閥で、あるいは無派閥で、「知名度があって、パーティークリーン」な人材のスクリーニングが始まるのではないだろうか。今回は1回休まざるを得ない派閥の領袖(りょうしゅう)や大物は、その次を目指すことになる。
例えば、菅氏が担ぐのは誰だろうか。個人的な支持事情が分からないので確たることは言えないが、衆目の見るところ、いずれも国民の人気が高いとされる、小泉進次郎氏か石破茂氏だろう。
他には、どこから誰が出てくるのだろうか?
この状況で解散総選挙はあるか むしろ「早くやるべき」である理由
筆者の読み筋は、進次郎氏を立てて自民党総裁にして彼を選挙の顔にし、早期に解散総選挙を行うというものだ。もろもろの利害関係を考えると、善悪は別として、これが最も「政治的な理に叶う」ように思われる。石破氏は、さすがに党内に敵が多すぎるのではないだろうか。しかし、菅氏としては持っておきたい駒の1人だろう。
まず、当たり前だが、自民党は下野したくない。そして、同党にとって幸いなのは、野党の支持率が上がらず、しかも選挙協力が進まないことだ。そのおかげで、不人気な岸田首相を人気者の進次郎氏に取り替えてイメージを一新した選挙を行えば、少なくとも自民党が下野するような大敗は喫しないだろう。
場合によっては「進次郎ブーム」が起こるかもしれない。「岸田を降ろして、進次郎で政治改革!」なら、有権者の感情的にはかなり満足だろう。野党は、信頼も期待もされていない。
スキャンダルが続いて自民党全体が不評な中で、「解散総選挙などできるか」という声が党内にもあろうが、これは違う。むしろ、自民党は早期の総選挙を必要としている。
何度も繰り返すが、問題は逃れようのない政治資金規正法違反なのだ。その疑惑が、あまりにも多くの有力議員に広がっている。政治的には「落とし所」が必要であり、事情は東京地検特捜部と財務省にとってもそうだろう。政治を止めるわけにはいかない。
そして、この国の政治には、少々の悪事なら一度選挙を済ませて当選すると「禊ぎ(みそぎ)が済んだ」と開き直ることができる、いくらか特殊な政治習慣がある。今回の「スネ傷議員」の多くが、特に有力議員にあっては、禊ぎを済ませて早くペナルティーボックスから出て活動したい向きが多いはずだ。
「進次郎政権」が誕生すれば 財務省は満足だろう
仮に、小泉進次郎政権ができたとすると、財務省的には満足だろう。
小泉氏の過去の発言をたどると、国民には残念なことかもしれないのだが、意外に親財務省的で、いわゆる「財政再建」に対して親和的だ。彼の父親の小泉純一郎氏も、強い大蔵省(当時)とは対立せずに、相対的に弱かった郵政省(同)にターゲットを絞った。けんかの勘がいい人だった、と記憶している。大蔵・財務省には逆らうなという原則は小泉家の家訓なのかもしれない。
進次郎氏は、妻が有名人であり、子宝にも恵まれている。少子化対策を名目とした増税の旗振り役には絶好の人材だ。財務省的には、「増税1回分」の利用価値があると見ているのではないか。従って、当初は政権を支えるだろうし、しばらくは案外うまくいくかもしれない。
なお、進次郎氏が最近積極的に発言しているが、解散の大義とやらが「ライドシェア解散」では、さすがにみすぼらしい。何か格好のつく名目は、考えておいてほしいものだ。
以上、政治の話なので、勝手な読み筋を書かせてもらった。当たっている話があるかもしれないし、全くないかもしれない。
しかし、米国の支配の下で、岸田政権によって舞台回しされている現在の政治状況は、代わり映えのしない登場人物も含めて全く退屈で、最低限の関心を持つにも苦労する。
現在の筆者個人は、岸田首相が退陣することを強く支持しているが、その先に誰を応援しているわけでも、自分が政治参加するわけでもないという、政治的無関心寸前の感心できない有権者の一人にすぎないことを付記しておく。  
●岸田政権「子ども3人以上で大学無償化」に寄せられる不公平感 12/6
岸田政権が「異次元の少子化対策」を加速させている。先ごろ「児童手当の第3子以降への加算」について、第1子が大学生に相当する年齢までは加算の対象にするように見直す案を示したが、12月7日には「3人以上の子どもがいる多子世帯について、2025年度から、子どもの大学授業料などを無償化する方針」を固めたことがわかった。
「12月末までに閣議決定する方針です。対象は子どもが3人以上いる世帯で、大学生、短期大学、高等専門学校などが含まれるようです。今回は所得制限なく無償化すると踏み込みました。入学金なども含む方向で調整しています」(政治担当記者)
現在も、年収380万円未満の世帯では、授業料の減免や、返済不要の給付型奨学金の支援制度などがあり、さらに2024年度からは、年収600万円までの多子世帯と私立校の理工農系学生に対象を広げるとしていた。
「こうした措置には歓迎の声もあがりますが、『なぜ、すべての子どもが対象ではないのか』という不公平感を訴える意見も多くあります。SNSには『子どもを産むのをためらってしまう』という書き込みが多くありました」(週刊誌記者)
たしかにSNSを見ると
《3人以上子供がいる場合は無償。2人子供がいる場合は何もなし。3人以上子供を産むのはなかなか大変だし、こうなると2人目を作ろうっていう人が減るのでは…》
《なんで3人?2人目産まないと3人はないんだよ?まず2人目産んでもらえるようにしなよ。なぜ?3人?2人だと損じゃん。1人でいいって思うよ。逆に》
《子ども3人いない家庭は多子世帯の大学授業料を税金で負担して、自分の子どもは奨学金借りて大学卒業させるんだろうか。 絶対に納得いかない》
などの意見が多かった。
また《例えば今年生まれた3人目が大学行く頃までこのやり方もつの? よし!大学まで安心だ!って3人以上産んで5年後くらいにやっぱこの制度やめますってなった時どう責任とってくれるの?この制度のあるうちに生まれた子は必ず無償化しますという確約無ければ不安すぎん?》といった、国の予算的な裏づけを不安視する書き込みもあった。
将来の増税不安や政務三役の相次ぐ不祥事、さらには派閥パーティでのキックバック裏金問題などで、支持率のさらなる低下が予想される岸田政権。金看板だった「異次元の少子化対策」で失地回復をしたかったのだろうが、その先行きすら不透明だ。
 12/7

 

●原発3倍宣言 有志国入りは認められぬ 12/7
2050年までに世界の原発の発電能力を3倍に増やす―との有志国による宣言に、日本を含む約20カ国が加わった。
アラブ首長国連邦で開催中の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)に合わせ、米国が主導してまとまった。ほかにフランスや韓国などが参加している。
気候変動対策を進める上で原発が「重要な役割を果たす」と明記している。発電時には温室効果ガスを排出しないため、対策に役立つとの考えに基づく。
だが原発は、ひとたび重大事故が起きれば取り返しの付かない環境破壊をもたらす。10万年も先まで厳重な管理が求められる放射性廃棄物を生み出し、多くの国が処分場の確保に困っている。
安全対策などに巨額の資金がかかり、再生可能エネルギーと比べてコスト面で劣るとも試算されている。資金や人材を原発に投入し続けていては、再エネの普及の遅れにもつながるだろう。
日本は福島第1原発事故を経験し、原発の問題点を最も理解しているはずだ。その日本が加わるべき内容の宣言ではない。有志国入りは認められない。
岸田文雄政権は今年の通常国会で、GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法を成立させた。脱炭素を前面に掲げ原発回帰を進める内容だ。岸田政権にすれば、今回の有志国入りはその延長にある。
法案の検討や審議は熟議とはかけ離れたものだった。ウクライナ戦争などの影響で燃料が高騰し、国民の間でエネルギー不安が高まった隙を突くかのように、一気に事を運んだ。
どんな方法で脱炭素を進めるべきか。原発と再エネについてコスト面などの検証を深め、合意を得る作業をやり直す必要がある。原発拡大を世界に宣言して既成事実を重ねるのは納得できない。
そもそも、発電能力を増やすと宣言したところで、住民合意などを考えると原発の新増設はハードルが高い。再稼働さえ難航している。急がれる温暖化の対応に寄与するとは思えない。
COP28ではほかに、再エネを2030年までに3倍に増やすとの有志国の誓約もまとまった。こちらには110カ国以上が参加した。日本も加わった。
原発3倍の宣言が約20カ国にとどまった背景には、原発に対する各国の姿勢の違いがあるとみられる。推進派で固まって視野の狭い政策を進めるべきではない。
●自民党への政治献金は本当に「社会貢献」で「問題ない」のか 12/7
経団連の十倉雅和会長は、自民党への政治献金について「企業がそれを負担するのは社会貢献だ」「何が問題なのか」と語った。社会貢献という言葉の使い方が根本的に間違っている上、そもそも企業団体献金を禁止する代わりに、毎年300億円以上の政党交付金が配られているはずでは。政策をカネで買うかのような財界・企業と政治献金の関係を見直すべき時が来ている。
「政策提言とか言っちゃいけないんですか?」
十倉会長の発言が出たのは4日の記者会見。企業による政治献金の目的を問われた際に「民主主義の維持にはコストがかかる。政党に企業の寄付(献金)をすることは一種の社会貢献だ」と言ってのけた。
企業献金には、政策的な減税額が大きい業界ほど自民党への献金額が多い傾向があるなど、「政策を金で買う」との批判が付きまとう。しかし、十倉氏は「政策提言とか言っちゃいけないんですか? 希望とか要望とかどこの国でもやってる」と批判を一蹴した。
政策誘導の危険をはらむ献金が「社会貢献」という考え方は、およそ一般の市民感覚からは違和感しかないが、経団連にはそうではないらしい。20年も前から主張しているからだ。
その考えが初めて示されたのが、奥田碩(ひろし)会長時代の2003年5月。「政党活動に要するコストの負担を社会貢献の柱の一つと位置付け、応分の支援を行うべき」との見解を出し、約10年前に廃止されていた企業献金を04年から再開する足掛かりとした。
献金廃止で「自民党から相手にされず、相当焦っていた」
なぜ社会貢献と言い出したのか。「政治献金」(岩波新書)を著した茨城大の古賀純一郎名誉教授(メディア論)は「当時、企業不祥事が頻発し、企業の社会的責任が問われていた。『政策をカネで買う』という評判を打ち消すために『社会貢献活動の一環』という意味合いを押し出した」と振り返り、こう続ける。
「本音としては早急に復活したかったのだろう。廃止直後は、自民党から全く相手にされず、経団連は相当焦っていた。自民党はカネでないとなかなか動かないから。別の経済団体幹部が当時、自民党の有力政治家から『カネを出してくれる方の言うことを聞く』と言われ、悔しがっていた」
以来、経団連は「社会貢献論」を繰り返す。09年の民主党政権の発足で一時中断した期間を経て、安倍政権下の14年に復活させた際も「企業の政治寄付は、社会貢献の一環」とした。その後も会員企業に献金を呼びかける文書には毎年「社会貢献」という主張が展開されている。
しかし、この主張はかねて批判されてきた。政治資金オンブズマンなどは04年1月、経団連が各政党の政策を評価して各社に献金を促す形で関与を再開した際に「対価を公然と要求する寄付は、『企業の社会的貢献』ではない」と指摘。「カネも口も出す」(当時の奥田会長)という姿勢に、「対価を求めないからこそ評価されてきた社会貢献の概念をはき違えたもので、その概念をおとしめる」と批判した。
経団連は長年、資金面で自民党を支えてきた。1950年代から、各社に献金額を割り当ててあっせん。自民党にはピーク時、年間約100億円もの金が集まった。これが金権政治の温床となり、国民の批判も受けて経団連は平岩外四会長時代の93年、あっせんを廃止した。企業・団体献金の廃止を前提に、国民負担による「政党交付金」が導入された。だが、前出のように2004年に献金は再開。廃止の約束は果たされないまま、今も交付金との「二重取り」が続いている。
政党交付金があるのに献金とパーティー券収入も
政党交付金は過去10年、年間約315億〜320億円交付され、うち自民党は約150億〜175億円を得てきた。これで企業・団体献金、パーティー券収入も受けているのだから、二重取りとの批判は当然だ。
もっとも企業献金の禁止を強硬に言い続けてきたのは政党交付金を受け取っていない共産党。5日には、企業・団体の寄付と政治資金パーティー券の購入を全面的に禁止する政治資金規正法改正案を参院に提出した。共産ほどではないが、立民、維新、れいわも、企業・団体献金を禁止する方針を打ち出している。
ただ、政治ジャーナリストの泉宏氏は「政界はいまだカネが全てにおいて潤滑油だ。今回は自民党の派閥のパーティー券に照準が当たったが、政治資金を巡る問題のごくごく一部に過ぎない」と指摘、自民党が二重取り批判など気にもとめていない実態を明かす。
11月下旬に公表された2022年分の政治資金収支報告書でも、企業・団体献金の総額は24億4970万円で、このうち自民が9割超の22億7309万円を政治資金団体「国民政治協会」などで集めた。
ようやく開いた「パンドラの箱」
「自民と財界はずっと表裏一体の関係。自民党の経理局長が大企業でつくる経団連を回るのが慣例。経理局長は1年で交代せず5年も6年も担う。長年培ったリストを手に必死に献金を集めていた」と泉氏。「ようやく検察のメスが入った。これまでは安倍・菅タッグの強権政治で抑え付けてきたが、岸田首相では抑えきれず、ある種のパンドラの箱が開けられた状態と言える」と話す。
一方、中央大の中北浩爾教授(政治学)は「実際、有権者への国会報告の送付など政治にはお金がかかる。政治資金を汚いと決め付ける議論は、民主主義を危うくする」と話す。自民党5派閥によるパーティー券問題は「これは完全なアウト。パーティー券のキックバック分の不記載は明確な法律違反で、何のための裏金か疑問でならない」とするも、「法律違反の部分と、企業・団体献金の是非などの議論は切り分けるべきだ」と語る。
とはいえ、やはり企業・団体献金に対する国民の目線は厳しい。駒沢大の山崎望教授(政治理論)は「企業献金はカネというツールを政治に持ち込み、自身の利益につなげる単なるビジネスの手法だ。大企業が政治をカネで買うことと同義で、大企業に有利な政策ばかり居並ぶことになりかねない」と指摘する。
このまま「市民の声」は反映されないのか
例えば、今夏のマイナンバーカード問題を巡る騒動もそうだ。岸田政権が来秋の保険証廃止を掲げていることに対し、経済同友会の新浪剛史代表幹事が廃止時期を「納期」とし、「納期を守るのは日本の大変重要な文化だ」と語り、波紋を広げた。同友会は献金廃止の立場だが、新浪氏率いるサントリーは自民に献金をしている。山崎氏は「多額の献金をしているために、政策を買って発注したという目線とも取れる」とし、「極論ではあるが、寄付や献金などの政治資金はこの際、全てなくすべきだ。本当に応援したい政党があれば政治資金ではなく、声を上げて正々堂々と選挙活動をすればいい」と続ける。
自民党と財界が一体化し、市民の声が反映されない構造は変わらないのか。
思想家で神戸女学院大の内田樹名誉教授は「対米自立という国家戦略を放棄した自民党は、今や対米従属による権力維持以外に目的を持たないただの利権集団になった」と指摘。一連の派閥のパーティー券の問題も「利権を求めて議員になった者にとっては当たり前の収益事業だ」と一蹴する。「長年続いた財界との癒着を断ち切るだけの自浄力が自民にない以上、制度の根本的改革には政権交代しかない。このまま米の属国でいるのか、再び対米自立をめざすのか、有権者も問われている」
デスクメモ
政治献金は一応、見返りを求めない建前だ。見返りありなら賄賂との線引きが問われる。そういうあやうい関係を、あたかもクリーンなように言い換えてもう20年。「何が問題か」と気色ばむ表情からは、言い換えではなく本気で「社会貢献」と信じる様子がうかがえ、かえって怖い。
●岸田文雄首相の周辺は財務官僚だらけ…「聞く力」から「増税メガネ」に変る 12/7
岸田内閣が増税路線を強めている。ジャーナリスト石橋文登さんは「岸田首相は親戚も内閣の主要メンバーも財務省出身者だらけだ。元財務官僚の従兄弟を自民党税調会長に起用しており、いまの増税路線は岸田さんの強い意志が働いている」という。
宏池会体質そのままの岸田首相
【石橋】吉田茂が有能な官僚を集めた「吉田学校」が宏池会の母体となっています。
【田村】とくに宏池会は財務省の出先機関同然です。その中枢にいるのが、宏池会の会長でもある首相の岸田文雄さんです。
【石橋】宏池会は官僚と親族を結婚させ、閨閥(けいばつ)をつくるのが特徴です。岸田さんはその典型例だと言えるでしょう。
明治神宮近くに「穏田マンション」といわれる白亜の洋館がありました。岸田さんの祖父で、衆議院議員も務めた実業家の岸田正記が昭和初期に旧伯爵家から買い取った洋館で、現在はマンションに建て替えられています。
ここが岸田さんの東京の実家であり、かつて他の住民は財務(大蔵)官僚ばかりだったそうです。岸田さんにはふたりの妹がいますが、ともに財務官僚と結婚しています。さらに、親戚には財務官僚がずらりといます。まさに閨閥です。
岸田内閣の主要メンバーも財務省出身者がやたらと多い。前厚生労働相の加藤勝信さん、前経済再生担当相の後藤茂之さん、元総務相の寺田稔さん、元経済安全保障担当相の小林鷹之さん……。最側近といわれる前官房副長官で幹事長代理の木原誠二さんも財務省出身です。
財務省は、岸田さんが首相になって心から喜んでいると思います。
元財務官僚の従兄弟が「重要ポスト」に
【田村】自民党参議院の宮澤洋一さんも、たしか岸田さんの親戚にあたるのではないですか。
【石橋】岸田さんの従兄弟です。岸田さんの叔母が元首相の宮澤喜一さんの弟に嫁いで、生まれたのが、宮澤洋一さんです。
彼は、東大法学部を卒業して財務(大蔵)官僚となり、衆院3期、参院3期を務めたベテランです。
宮澤喜一さんの甥でもあり、宏池会会長になってもおかしくないはずですが、まったくそんな声が上がらないのは人望がないからでしょうね。
【田村】それでも、自民党税制調査会(自民党税調、*1)長のポストには就いています。
*1 自民党税制調査会(自民党税調) 自民党における審議機関のひとつで、例えば、1971年度税制で道路特定財源のための自動車重量税を創設、1973年度税制で個人事業主に給与所得控除を実現したが、このころから税制において主導権を握るようになっている。
増税路線には岸田首相の意志が働いている
【石橋】宮澤洋一さんはバリバリの財政再建派・増税派として知られていますが、この人を自民党税制調査会長に起用したのは、岸田さんです。
自民党税調は、政務調査会の下部組織ですが、山中貞則さんがドンとして君臨したころは、首相さえ口出しできないほど絶大な力を持っていました。
いまはそこまでの力はありませんが、政調会長が高市早苗さんから萩生田光一さんに変わったときも、岸田さんは萩生田さんに「政務調査会の人事は自由にやってよいけど、宮澤さんだけは留任させてほしい」と頼んだそうです。つまり、いまの増税路線は岸田さんの強い意志が働いているということです。
【田村】税制改革については自民党の協力が不可欠ですから、そのいちばん大事なところに身内がいれば安心です。
防衛費拡大に、財務省は増税で対抗
【石橋】本書の第四章冒頭で述べましたが、岸田さんは2022年暮れ、毎年5兆円で推移してきた防衛費を2023年度から5年間で43兆円に増額する方針を打ち出しました。
ウクライナ戦争や、緊迫する東アジア情勢を考えれば、至極真っ当な判断ですが、財務省としては国債を増やすことだけは絶対に避けたい。
そこで「防衛力強化資金」を創設し、防衛費増額分の財源をこの資金から賄うことにし、2023年6月に、防衛費増額に伴う財源確保法(*2)を成立させました。
防衛力強化資金は、歳出改革や公有財産の売却などで賄うとしていますが、これで足りない部分は増税となります。防衛費増のために国債を発行させないための防波堤のような法律です。
経済成長を持続させれば、年数億円の税収増は十分可能なのに、次期衆院選を見据えながら、こんな法律を慌てて成立させる必要があったのか。
防衛費増に反対する人はごく少数です。立憲民主党や共産党が「歯止めなき軍拡反対」と訴えても、次期衆院選にさほど影響はない。
でも、「軍拡のための増税反対」というキャンペーンを張られると岸田政権は厳しい立場に追い込まれます。
財務官僚にはこういう政局的な感覚はゼロなんでしょうね。岸田さんも同じです。
*2 防衛費増額に伴う財源確保法 防衛力強化に向けて、税外収入を積み立てて複数年度にわたって防衛費に充てる「防衛力強化資金」の新設を柱としている。
財務官僚にとっては“利用しやすい首相“
【田村】財務省的には、増税でもって防衛費の拡大に歯止めをかけたつもりなのでしょう。
出費が増えることには本能的に抵抗するのが財務官僚です。岸田さんは財務省を「身内」と思っているかもしれませんが、そういう意識が財務官僚にはないのかもしれません。
ただの“利用しやすい首相”という気がします。
【石橋】「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針、*3)が6月16日に閣議決定されました。これを実質的につくっているのは、言うまでもなく財務省です。
この骨太の方針では、財源問題はこぞって先送りにされています。岸田さんが「会期末解散・7月衆院選」を検討していることがわかったからでしょう。
さすがの財務省も、明確に増税を示せば、自民党が衆院選で苦戦するということにようやく気付いたのではないか。
それならば、2022年末に防衛費増に伴う法人税増などを打ち出す必要はありません。財務省と宏池会は政局的なセンスがあまりに乏しいと思います。
*3 骨太の方針 「経済財政運営と改革の基本方針」のこと。内閣府に設置されている重要政策に関する会議のひとつである「経済財政諮問会議」で決議された政策の基本方針。小泉純一郎政権において、「聖域なき構造改革」を実施するために同会議に決議させた政策の基本骨格が始まり。
ねじ込まれた「プライマリー・バランス黒字化」
【田村】骨太の方針には、“姑息(こそく)な表現”が入れられています。
安倍さんは、アベノミクス最大の目標として掲げた「脱デフレ」を達成しきれなかったことを悔いていました。財務省が主張する「プライマリー・バランス(基礎的財政収支)の2025年度黒字化」に縛られていたからです。
プライマリー・バランスの黒字化を優先させられて、大胆な財政出動ができなかったのです。
安倍さんが「プライマリー・バランスの黒字化」という表現を嫌っていたのを財務省も気にしていたのか、「骨太の方針2023」では、この表現が消えています。
ただし、第5章の〈令和6年度予算編成に向けた考え方〉のなかに、〈令和6年度予算において、本方針、骨太方針2022及び骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する。〉という一文があります。
骨太方針2020と骨太方針2021には、プライマリー・バランスの黒字化が明記されています。
つまり、骨太方針2023には明確にプライマリー・バランス黒字化は記されていないけれど、2020と2021に基づくということは、「プライマリー・バランス黒字化が目標ですよ」と明記しているのと同じです。
安倍さんが嫌ったプライマリー・バランス黒字化という文言を消したように見せかけて、姑息な表現で盛り込んであるわけです。
小細工で「増税メガネ」を助けているつもり?
【石橋】プライマリー・バランスの黒字化、つまり、財務省が念仏のように唱えている「財政健全化」です。
財務省がそこにこだわり続けてきたことが、日本経済が低迷から抜け出せなかった大きな要因となっています。
あまり前面に出すのはマズいと、さすがに財務省も気付いたのかもしれません。そこにこだわると、岸田政権は確実に潰れます。すでに「増税メガネ」と言われていますしね。
そこで直接的な言葉は避けて、せこい書き方で誤魔化すところで財務省も妥協したのだと思います。
経済を低迷させているプライマリー・バランスの黒字化にこだわっていては、岸田さんは選挙に負けます。財務省としても、岸田さんをバックアップしているつもりかもしれません。
【田村】直接的な表現は引っ込めても、明記されている過去の骨太の方針に〈基づき〉なわけですから、依然としてプライマリー・バランスの黒字化が財務省の大方針であることに変わりはありません。
2024年度の予算編成で主計局が各省庁と折衝するときに、「プライマリー・バランスの黒字化を明記した過去の骨太方針に基づくことになっているので、予算は増やせません」と各省庁に言えるわけです。
プライマリー・バランスの黒字化を金科玉条にして、これまで通り財務省は予算要求をカットできます。大幅な財政出動とはならないので、経済の低迷も続くことになります。
予算編成で本音がバレてると、逆に不利
【石橋】骨太の方針でせこい書き方をしているのは、岸田さんが早い時期に解散・総選挙に出ると踏んでいるからではないでしょうか。
プライマリー・バランスの黒字化を引っ込めて政府が財政拡大に踏み切るという期待が出てくれば、選挙で岸田さんは有利になります。
しかし、ズルズルと選挙を先延ばしにして、予算編成で財務省の姿勢はまったく変わっていないことがわかってしまうと、景気が上向く期待感がしぼみますから、逆に不利になります。
【田村】岸田さんとしては、早く解散を決断しないと政権を終わらせることになりかねない。
プライマリー・バランスの黒字化目標を目立たないようにした財務省の小細工も、岸田さんを助けることはできなかったことになってしまうことになります。
それでも、安倍さんのような強力な積極財政派のリーダーが政権の座に就かない限り、安心ということなのでしょう。
岸田首相は麻生元首相の二の舞になるのか
【石橋】岸田さんは広島G7サミットを成功させたうえで国会会期末に衆議院を解散し、7月に衆院選挙を実施する考えだったようです。
にもかかわらず、マイナンバーカードのトラブルが相次いだうえ、LGBT理解増進法案(*4)を強行に成立させたことにより、支持率が急落し、解散を見送ってしまった。
首相が自ら解散風を吹かせて、自ら先送りすれば求心力を一気に失います。
古くは海部俊樹さんがそうでした。麻生太郎さんも就任直後に解散しようとしましたが、リーマンショックにより先送りし、結局、民主党に政権を奪われました。
岸田さんは2024年秋の自民党総裁選までに衆院選に勝利し、国民の信任を得なければ、総裁再選が危ぶまれます。7月衆院選を見送ったのは大失敗だったと思います。
*4 LGBT理解増進法案 自民党性的指向・性自認に関する特命委員会が法制化を進めた法案で、正式名称は「性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律」。LGBT(性的少数者)に関する基礎知識を広め、国民全体の理解を促すための法案。2023年6月23日に成立、同日に施行。
スキャンダルが出た木原氏も元財務官僚
【田村】岸田さんの首相秘書官を務めていた長男が、2022年末に官邸で悪ふざけをしていたのがバレたり、木原誠二官房副長官(当時)のスキャンダルが騒がれたりで、選挙を戦うには不利だと判断したのかもしれません。
しかし、株価も3万円を超えているし、景気は追い風です。そうしたなかで国民に信を問うための選挙をやらないのは愚かしいと思いました。
【石橋】下がり続ける内閣支持率を気にしていたのかもしれません。
私も複数の雑誌で〈総選挙をやれば自民党単独過半数割れはあり得る。〉と書きましたけど、そういう見方を気にしていたのかもしれません。
【田村】スキャンダルになった木原誠二さんも、財務省出身ですよね。スキャンダルが出たときに、すぐに切ればよかったはずなのだけれど……。
【石橋】切れないでしょうね。『週刊文春』が報じた愛人の問題は、その前に『週刊新潮』が報じています。両誌で愛人とされる人物は同じです。スキャンダルが繰り返し表に出ているにもかかわらず、岸田さんは何もできない。
【田村】岸田さんに知恵をつけているのは、木原さんだといわれています。
「異次元の少子化対策」も増税への布石
【石橋】彼が岸田さんに知恵をつけるから、話がややこしくなる。
彼は自民党内で嫌われていますから、自民党と官邸のパイプ役を果たせていない。だから政府と自民党の動きがチグハグになってしまうのです。
LGBT理解増進法案にしても、最終的に自公案に国民民主党と日本維新の会が乗ってくれると岸田さんは思い込んでいました。木原さんがそう伝えていたからです。
ところが国民民主党と日本維新の会が応じるはずはありません。
最終的に政調会長の萩生田光一さんが、日本維新の会代表の馬場伸幸さんに頭を下げ、自公が維新案を丸吞みする形で決着しましたが、これも政府と自民党のパイプ役である木原誠二さんのチョンボだと言っていい。
2023年の伊勢神宮参拝後に岸田さんが唐突にぶち上げた「異次元の少子化対策」も木原誠二さんの入れ知恵のようですが、これも増税への布石でしょう。
財務省は常に増税を政権課題にしたいみたいですね。
財務省が裏から内閣と自民党を操っている
【田村】岸田さんは9月13日の内閣改造で木原さんを官房副長官のポストから外しましたが、自民党は22日の党役員人事で幹事長代理兼政調会長特別補佐としました。岸田さんはやはり木原さんを頼りにしているのでしょう。木原さんは党長老の実力者、二階俊博さんの受けもよいですから。
ポスト岸田の候補と目される茂木敏充幹事長や萩生田光一政調会長の監視役もこなせる器用さもありそうです。
でも、問題は、財務省が気脈を通じている木原さんを介して、岸田内閣と与党を増税に導くことです。
政府の要職者のスキャンダルはまずい。しかし、党の黒子役なら世論の風当たりは弱くなりますから、財務省としても使い勝手がよくなるのです。
●「市民連合」衆院選に向け野党に要望 “共通政策で連携を” 12/7
次の衆議院選挙に向け、有識者や市民団体でつくる「市民連合」は、立憲民主党や共産党などに対し、憲法9条の改悪反対や原発に頼らないエネルギーへの転換などを共通政策として野党間で連携を進めるよう要望しました。
「市民連合」は7日、国会内で会合を開き、立憲民主党の岡田幹事長や、共産党の小池書記局長、れいわ新選組の櫛渕共同代表、それに社民党の服部幹事長らが参加しました。
そして、次の衆議院選挙に向けて▽憲法9条の改悪と専守防衛を逸脱する集団的自衛権の行使を認めないことや、原発にも化石燃料にも頼らないエネルギーへの転換、それに選択的夫婦別姓制度の整備を行うことなどを共通政策として、野党間で連携を進めるよう要望しました。
市民連合で運営委員を務める新潟国際情報大学の佐々木寛教授は、記者団に対し「岸田政権はいろいろな問題を抱え、国民の支持が離れている。衆議院選挙に向け共通の政策に基づいて選挙協力も含め市民と野党の共闘を進めていきたい」と述べました。
立憲民主党の岡田幹事長は「市民連合の政策について各党が賛意を示し、お互いに連携して政権交代を目指していくきっかけになった。共通の基盤を持てたので、野党の議席を増やすため、候補者がバッティングしている選挙区を減らす努力をしていきたい」と述べました。
共産 小池書記局長「共闘を再構築していくステップに」
共産党の小池書記局長は記者会見で「衆議院選挙に向けて野党間の共通の旗印が確認でき、市民と野党の共闘を再構築していく1つの大きなステップになった。選挙に向け政党間でこれからしっかり協議していく」と述べました。
●安倍元首相「国葬」の是非問う声が“再燃”のナゼ… 12/7
《やっぱり、国葬は間違っていたのではないか》《今からでも投じた国費を返却するよう求めたら》──。
SNS上で今、昨年9月27日に東京・千代田区の日本武道館で執り行われた故・安倍晋三元首相の国葬について、その是非を問う声が静かに広がりつつある。
きっかけは岸田政権誕生以降、安倍元首相自身や安倍派絡みの醜聞が続出しているからだ。
日本中が今後の展開について大きな関心を寄せている自民党の主要派閥パーティーをめぐる「キックバック」「裏金作り」問題では、最大派閥「安倍派」(清和政策研究会)で関与した所属議員は数十人にものぼり、そのうち複数の議員は還流分が5年間で計1000万円超に上る可能性があると報じられている。
また、公表された政治資金収支報告書から、安倍元首相の資金管理団体の代表を妻の昭恵氏(61)が引き継ぎ、そこに安倍氏の5つの関係政治団体から計2.1億円が寄付されていたことが判明。有識者などから、政治家ではない「私人」である昭恵氏が巨額の政治資金を引き継いだことに疑問の声が出ている。
東京五輪の招致活動をめぐっても「きな臭い話」が飛び出した。当時、自民党衆院議員で、安倍派に所属していた馳浩・石川県知事(62)が講演で、開催都市決定の投票権を持つIOC(国際オリンピック委員会)の委員に対し、内閣官房報償費(官房機密費)で1冊20万円のアルバムを作り、贈答品として渡していた、などと“暴露”した件だ。この時「必ず勝ち取れ」「金はいくらでも出す」「官房機密費もある」と発破をかけていたのが安倍元首相だった。
死後に性加害問題が大きく取り沙汰されたジャニー喜多川氏は、ギネスの賞など数多くの功績を取り消された
さらに岸田文雄首相(66)が自民党政調会長を務めていた2019年10月に党本部で米国のギングリッチ元下院議長と会合した際、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の友好団体「天宙平和連合(UPF)ジャパン」のトップである梶栗正義議長(年齢不詳)が同席していたと朝日新聞が報道。その後、岸田氏の面会は旧統一教会との関係が深かった安倍元首相の依頼によるものだったと報じられている。
「すべての道はローマに通ず」ではないが、あらゆる「疑惑の道」は安倍元首相に通じていると指摘されても不思議ではないのだ。
SNS上でもこんな声がある。
《死屍に鞭打つ、わけじゃないが。なんだかな。国葬って良かったのか》
《国葬費用は12億4000万円だったと報道されていたが、返してほしい》
《死後に性加害問題が大きく取り沙汰されたジャニー喜多川氏は、ギネスの賞など数多くの功績を取り消されたが》
岸田政権は安倍元首相「国葬」の理由として、「安倍政権が憲政史上最長の8年8カ月の長期政権だったこと」や、「内政と外交の面で功績を残したこと」などを挙げていたが、次々と表面化している疑惑を見る限り、決して「負の面」も小さくなかったのではないか。
「安倍派は廃部ですね」
落語家の立川志らく(60)は12月4日、TBS系「ひるおび」に出演した際、日大アメフト部の違法薬物事件を引き合いにこう発言していたが、「キックバック」「裏金作り」疑惑の展開次第では、安倍元首相国葬の是非をめぐる議論が再び活発化するかもしれない。
●岸田よ!元総理が直言「“パー券”裏金」「旧統一教会系“写真”」退陣は?! 12/7
野田元総理は「“パー券”収入裏金問題」の裏側を語るとともに、事務総長経験者にもかかわらず「政府の立場としてコメントは控えたい」などと「説明責任」を果たさない官房長官や大臣に辞任を要求。
旧統一教会の友好団体トップとの面会問題では、総理時代のキッシンジャー氏との会談を例に、「承知していない」との岸田総理に「疑問」を投げかけます。
そして、「退陣の時期」についても言及。岸田政権の“窮状”の中での、元総理の直言を是非ご覧ください。「『ルパン三世』には子どもがいるらしい」――。国会で世襲反対を迫った野田元総理の苦笑いから熱いトークが始まります。(聞き手:TBSテレビ政治担当解説委員 石塚博久)
閣僚の半分が世襲「ルパンだって三世まで」
――野田さんの最近のヒットはこちらです。
野田佳彦元総理(先月22日・衆院予算委): 世襲多すぎるんじゃないかと思いますよ。総理、三世ですよね。ジュニアに委ねると四世でしょう。ルパンだって三世までですよ。
――ルパンだって三世までと。確かに公邸の写真騒動を起こした翔太郎さんまでいけば四世になってしまうのですよね。
野田元総理: いや、ルパン四世もいるみたいですよ。峰不二子との間に子どもが生まれたってのはアニメファンから教えていただいて、そんなこと麻生太郎さんしか知らないだろうなと。ルパン小僧というのがいるそうです。
――この「ルパン」発言は初めてじゃないんですよね?
野田元総理: 初めてじゃないです、よく小ネタで使ってましたんで、なんでこんなに反響があったのか驚いてます。
――資料だと、2009年の7月に本会議場で使っています。実際世襲は多いですよね。
野田元総理: いや、間違いなく増えてますね。今は特に岸田内閣の閣僚の半分が世襲ですしね。
――地方の声を国会に届けるとか言っても、本会議場なんてみんな標準語喋ってます。地方の議員だって東京で育ってるような。
野田元総理: おっしゃる通りでね、例えば岸田総理自体が、麹町小学校、開成高校、早稲田大学でしょ。安倍元総理だってずっと成蹊の小学校から大学まででしょ。2人ともね、広島1区とか山口1区とか知らなかったのです、本当は。それで地方の切実な声が国会反映できるかというと、今も議員宿舎にはたくさんの子弟がいますし、その子たちがまた政治家になれば同じことだと思います。
――いるんですよね、議員宿舎から学校行く子が。
野田元総理: 中高一貫校に行ってる子はいっぱいいますからね。
パー券問題 「死人に口なし」 「党幹部の責任当然問われる」
――自民党派閥の裏金問題について。予算委員会では野田さんの指摘に、総理は幹事長としてしっかり説明を尽くすように指示したという答弁だったんですけど、その後、4日の段階では「状況を把握しながら党として対応を考えていく」と。6日になってパーティー自粛指示ということですが、この対応をどうご覧になりますか?
野田元総理: いや遅いですね、遅い。それぞれ今どうやって言い逃れしようかって必死になってきてると思いますけど、特に一番注目が集まっている安倍派、構造的に多くの人が裏金作りに関わっていたということで、でも全容を、システムをよくわかってるのは亡くなった安倍さんと細田さんだという言い方をしてるんですよ、応援団なんかも含めて。だからけしからんと思っててね、死人に口なしじゃないですか。
でもね、形式上であったとしても事務総長とかなどは責任ある立場でしょ。そういう人たちが今、岸田政権、党の幹部やあるいは閣僚として入ってるわけで、こういう人たちは当然責任問われてくると思いますよね。
足元の金の説明すらできない大臣は「その任にあらず」
――(派閥の資金を管理している)事務総長経験者が大臣として政権の中にもたくさん入っている。その大臣たちが、官房長官を含めて政府の立場として個々の政治団体に関する事柄については「コメントは差し控えたい」と繰り返しています。
野田元総理: それでもグリグリいったらね、答弁せざるを得なくなっていくと思いますよ。そんな切り分けはできないんで、やっぱり政治家として答えなきゃいけないことはいっぱいあるわけで、総理だって閣僚だって政治家として答えてきた経緯がいっぱいありますよ、今まで。今回はそれだけで逃げようとしたって無理だと思いますよね。
多分、予算委員会なんかでグリグリやったらそれはだんだん止まっちゃいますよ、今度今月8日に集中審議があるでしょ、やられるんじゃないですか、多分ね。
――お金のことの説明責任を果たせないで大臣の資格があるのか?
野田元総理: それは、兆単位のお金を動かす人たちが、自分の足元の金の説明もできないんじゃ任せられませんよ。「その任にあらず」になると思いますね。
――今後調べが進んでいくわけですが、全国から検事を呼び寄せるとか、既に派閥の秘書の秘書会長さんたちは呼ばれてて、一生懸命お互いに連絡取り合ってるとかいう話もありますけど。これでキックバックしていたら大臣を続けていけると思いますか?
野田元総理: いや、できないんじゃないですかね。やっぱりだって政治資金規正法違反ですから。それでできないでしょ。キックバックでもちゃんと記載をしていたのであれば別に問題ないんですよ。だけどそれを記載しないで、まさに隠して使っていたということになれば、それはやっぱり法律に違反することですからね。
「絶対権力は絶対腐敗する」国こそまさに「権不十年」
――自民党政治を見ると、長期政権の後に大きな事件が起きて、佐藤内閣の後にロッキード事件、それから中曽根内閣でリクルート事件、竹下・金丸支配の後で佐川急便事件、小渕・橋本時代の後で日歯連事件と長期政権の後に、こういうのが起きるんですよね。
野田元総理: そうですね、「権力は腐敗する。絶対権力は絶対腐敗する」。これはやっぱり名言だと思いますね。
――それで思い出すのは「権不十年(けんぷじゅうねん)」という言葉。細川護熙元総理も(熊本県知事を退任するときに)この言葉を使っていました。権力の「権」に、「不」であらずで「十年」と。それに絡めてどうご覧になりますか?
野田元総理: 例えば地方の首長は予算を握り、人事を握り、許認可を持ってる。そういう人が例えば10年以上ずっと権力の座に居続けると、いろんな腐敗が起こってくるよという戒めとして使われたと思います。
だからいわゆる多選禁止の精神だったんですね。同じように、国の政権も一つの政党がずっと与党であり続けると、構造的に腐敗の問題が起こるし、権力の私物化の問題が出てくるとかね、いろんな弊害がやっぱり出てくると思いますので、地方だけではなくて、国こそまさに「権不十年」ではないかと思います。
――10年というと、第2次安倍政権が立ち上がったのが2012年ですよね、10年経ってるわけですよ。
野田元総理: だからそういう意味では「権不十年」的な、ある種弊害がどっと出てきてると思います。逆に言うと政権交代にリアリティが出てこなければいけないので、これはやっぱり野党がもうちょっとね、そのリアリティを醸し出せるような器作りをしなければいけないんだと思う。
旧統一教会系団体トップとの同席報道「ちゃんと調べようという意識がない」
――4年ほど前に岸田総理がアメリカの元下院議長と面会した際、旧統一教会の友好団体トップとも面会していたと報じられています。岸田総理は最初の報道に「承知していない」と語り、写真が出てきても「私の認識は変わらない」と語っているということですけど、どうご覧になりますか?
野田元総理: 私、自民党入ったことないのでわからないですが、自民党本部である種、枢要なポストの人と会う時というのは多分記録とか残すんじゃないかなと。特に外国からの要人とお会いする時などは、そこは厳格にやって管理してるのではないかなと思うので、調べようと思ったら調べられたんじゃないかと。
だからあんまりちゃんと調べようという意識がないところに問題を感じますよね。本人がね、これまでの関わりを全自民党議員に調査するように言っていたわけじゃないですか。張本人がこの熱量の低さだと、お示しがつかないような気がしますけどね。
――さらに問題は、今まで岸田総理は「知る限り当該団体とは関係ない」と明言して、国会の予算委員会で「知る限り旧統一教会とは関係を持たずに政治活動を行ってきた」と強調しているわけです。その点から今回の写真、どうご覧になりますか?
野田元総理: 私もいろいろな人と写真を撮るので、数年前誰と撮ったかって言われるとそれは自信がないこともありますよ。ただ、今回ギングリッチ元下院議長と会った写真、僕だって例えば総理の時に、キッシンジャーさんと会った時にね、その周りに誰がいたか大体覚えてますよ、全部じゃなくても。
それと同じように、外交をずっと得意としてきた人が、外交関係で誰が立ち会ってたかぐらいはやっぱり本当は記憶してる気もするんですよ。これ何とも言えないところです。
●岸田総理 企業への「減税」で賃上げを促す方針が 「増税」論が急浮上 12/7
「増税」と「減税」が入り交じる来年度の税制改正。岸田総理は企業への「減税」で賃上げを促す方針でしたが、ここに来て「増税」論が急浮上。そのチグハグさが浮き彫りとなっています。
きょう、企業に賃上げを促す“減税策”を議論した自民党の税制調査会。しかし、終了後、トップが言及したのは「増税」論でした。
自民党 税制調査会 宮沢洋一会長「(減税策の)効果を大きくするためにも、法人税率の引き上げも中長期的には考えていかなければいけないという意見が出ている」
「減税策」を話し合う傍ら、「増税」意見が浮上しているというのです。
岸田総理(先月29日)「賃上げが最重要課題」
岸田総理が進めてきたのは、法人税を“減らす”施策です。一定程度の賃上げをした企業の法人税を減らす賃上げ税制は、去年拡充したばかり。さらに拡充し賃上げを促そうというさなかでした。やりたいのは「減税」なのか、「増税」なのか。
動き出した増税派。背景にあるのは、企業のお金の使い方への不満です。
記者「増税派が目を付けているのは企業が賃上げや設備投資には使わず会社に貯め込んできたお金、いわゆる内部留保です」
「内部留保」は、企業が貯め込んできた利益の合計のこと。企業の「内部留保」は11年連続過去最高を更新し、555兆円にまで膨らみましたが、人件費の伸びはわずかです。
これには財務省も…
財務省関係者「こんなにため込んでいる大企業をそんなに優遇する必要があるんですかね」
財務省関係者「法人税を下げても貯めてばかり。法人税を上げて投資した企業だけ優遇した方が良いでしょう」
一方の経済界。法人増税にはもちろん反対です。
経団連 十倉雅和会長「法人税改革は(企業の)取組みを後押しするものであるべき。わが国の法人実効税率は主要国の中で依然として高い」
賃上げを促し、「減税」色もアピールしたい岸田政権の思惑とは裏腹に浮上してきた「増税」論。与党の税制改正大綱は来週にもまとめられる見通しですが、増税・減税とチグハグさが目立っています。
●自民党「政治とカネ」問題は岸田政権の致命傷になる 12/7
自民党の主要5派閥が「政治とカネ」問題で告発され、さらには「裏金疑惑」まで浮上して政界に激震が走っている。この騒動は、支持率が超低空飛行を続ける岸田政権の致命傷となるだろう。
動いた東京地検特捜部 財務省の意向も働いた?
内閣支持率が、複数の調査で危険水域とされる30%割れの数字を記録し、しかも不支持の比率が高い岸田文雄内閣にあって、新たなスキャンダルが表面化した。政治資金パーティーの収入を政治資金収支報告書に適切に記載していなかったとして、岸田派(宏池会)を含めた自民党の主要5派閥が告発されたのだ。
さらに、自民党の最大派閥である安倍派(清和政策研究会)では、ノルマを超えて政治資金パーティー券を販売した収入の一部を議員に環流させて、これが政治資金として収支報告書に記載されていない「裏金」となったのではないかという疑惑が持ち上がっている。この問題に、東京地検特捜部が捜査に乗り出したようだ。
この疑惑は二階派(志帥会)でも浮上し、安倍派と共に裏金となった金額は1億円を超えるのではないかと報じられている。
安倍派では、元会長の細田博之氏が故人となってしまったものの、資金の流れを知り、ノルマを超えてパーティー券を販売した分の資金の環流を差配していたと見込まれる派閥の事務総長の顔触れを見ると、影響の大きさがうかがえる。松野博一官房長官に西村康稔経済産業大臣、高木毅国会対策委員長など、俗に言われる「安倍派5人衆」の中でも現役の要職にある3人が就いていたため、彼らは言い逃れのしようがない状態にある。
12月5日夕方時点では「裏金疑惑」までは報じられていないものの、岸田首相自身も岸田派のトップであり、またポスト岸田に意欲を見せているとの世評の茂木敏充幹事長も茂木派(平成研究会)の派閥トップであるために、派閥単位の「政治とカネ」問題の責任を問われる立場にあり、当面身動きが取りにくい立場だ。
一連の報道が事実なら、いずれも政治資金規正法違反であり、同法は不記載や虚偽記載の罰則を「5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金」と定めている。政治家にとっては、致命傷になりかねない事案である。支持率の底が抜けて、岸田内閣が崩壊するのではないかとの観測にリアリティーが生じてきた。
東京地検特捜部が動いたのは、もちろん悪事を取り締まるのが仕事だからなのだが、筆者は、財務省の意向を受けて、岸田政権の幕引きに動き出したものだと考えている。財務省は増税を決めたい組織だが、岸田内閣がこれだけ弱体化すると、防衛費や少子化対策といった絶好の名目があっても、彼らが満足できる増税を実現するにはおぼつかないからだ。
それでは、これからどうなるのか。
「岸田退陣」はあるのか、あるとしたら次の首相は誰なのか。遠からず総選挙はあるのか。「一寸先は闇」という言葉があるごとく、政治の先を読むことは難しいが、筆者の仮説を提示してみたい。
政治的な黒幕は誰か? 思い当たる候補は2人いる
これだけ政治的に影響の大きな動きを取るに当たって、官僚組織のバックに有力な政治家がいないということは考えにくい。それは、誰だろうか。
候補が2人いる。一人は、麻生太郎自民党副総裁であり、もう一人は菅義偉前首相だろう。共に本人が首相再登板を目指すわけではないが、いわゆるキングメーカーの地位を目指す大物政治家だ。
財務省の判断が「岸田首相は使えない」だとして、これを取り除く一連の動きなのだとすると、財務・金融方面の親分的存在である麻生副総裁が岸田首相を見離したということではないか。
麻生派(志公会)には、自民党総裁・首相候補として国民の人気が高い河野太郎氏がいるが、同氏は岸田人事でデジタル大臣に押し込められ、マイナンバーカードの扱いを巡って大きく評判を落とした。麻生氏としては、直接次を狙わせないのだろうが、いつまでも岸田配下に置いておくわけにはいかないと考えるところだろう。
別の読み筋として考えられるのは、今回の主なターゲットが派閥の「政治とカネ」問題であることを思うと、無派閥の立場で岸田首相に対して批判も辞さない菅氏がいわゆる黒幕として有力だ。前回の総裁選では相当に悔しい思いをしているはずであり、このまま引き下がるとは思えない。
岸田首相の次は誰? 動けない「1回休み」の議員も多い
高市早苗経済安全保障担当大臣が、少人数とはいえ閣内にありながら勉強会を立ち上げた。そのことから、相互けん制構造で有力総裁・首相候補をがんじがらめにしてきた岸田人事のたがが緩み始めた。意味のある行動だった。今後それぞれの有力者が岸田氏と距離を少しずつ取ることによって、ひもの結び目が緩むように政治的自由度が増してくるのではないか。
ただし、今回の問題はことが政治資金規正法違反の疑惑なので、該当期間の派閥トップと事務総長の経験者は動けまい。それ以外の議員でも、個人的に大きなキックバックを手にして政治資金規正法上の手続きを踏まなかった議員は総裁・首相の候補たり得ないだろう。
金額や行動として、どの辺りが線引きの相場になるかを探りながら、各派閥で、あるいは無派閥で、「知名度があって、パーティークリーン」な人材のスクリーニングが始まるのではないだろうか。今回は1回休まざるを得ない派閥の領袖(りょうしゅう)や大物は、その次を目指すことになる。
例えば、菅氏が担ぐのは誰だろうか。個人的な支持事情が分からないので確たることは言えないが、衆目の見るところ、いずれも国民の人気が高いとされる、小泉進次郎氏か石破茂氏だろう。
他には、どこから誰が出てくるのだろうか?
この状況で解散総選挙はあるか むしろ「早くやるべき」である理由
筆者の読み筋は、進次郎氏を立てて自民党総裁にして彼を選挙の顔にし、早期に解散総選挙を行うというものだ。もろもろの利害関係を考えると、善悪は別として、これが最も「政治的な理に叶う」ように思われる。石破氏は、さすがに党内に敵が多すぎるのではないだろうか。しかし、菅氏としては持っておきたい駒の1人だろう。
まず、当たり前だが、自民党は下野したくない。そして、同党にとって幸いなのは、野党の支持率が上がらず、しかも選挙協力が進まないことだ。そのおかげで、不人気な岸田首相を人気者の進次郎氏に取り替えてイメージを一新した選挙を行えば、少なくとも自民党が下野するような大敗は喫しないだろう。
場合によっては「進次郎ブーム」が起こるかもしれない。「岸田を降ろして、進次郎で政治改革!」なら、有権者の感情的にはかなり満足だろう。野党は、信頼も期待もされていない。
スキャンダルが続いて自民党全体が不評な中で、「解散総選挙などできるか」という声が党内にもあろうが、これは違う。むしろ、自民党は早期の総選挙を必要としている。
何度も繰り返すが、問題は逃れようのない政治資金規正法違反なのだ。その疑惑が、あまりにも多くの有力議員に広がっている。政治的には「落とし所」が必要であり、事情は東京地検特捜部と財務省にとってもそうだろう。政治を止めるわけにはいかない。
そして、この国の政治には、少々の悪事なら一度選挙を済ませて当選すると「禊ぎ(みそぎ)が済んだ」と開き直ることができる、いくらか特殊な政治習慣がある。今回の「スネ傷議員」の多くが、特に有力議員にあっては、禊ぎを済ませて早くペナルティーボックスから出て活動したい向きが多いはずだ。
「進次郎政権」が誕生すれば 財務省は満足だろう
仮に、小泉進次郎政権ができたとすると、財務省的には満足だろう。
小泉氏の過去の発言をたどると、国民には残念なことかもしれないのだが、意外に親財務省的で、いわゆる「財政再建」に対して親和的だ。彼の父親の小泉純一郎氏も、強い大蔵省(当時)とは対立せずに、相対的に弱かった郵政省(同)にターゲットを絞った。けんかの勘がいい人だった、と記憶している。大蔵・財務省には逆らうなという原則は小泉家の家訓なのかもしれない。
進次郎氏は、妻が有名人であり、子宝にも恵まれている。少子化対策を名目とした増税の旗振り役には絶好の人材だ。財務省的には、「増税1回分」の利用価値があると見ているのではないか。従って、当初は政権を支えるだろうし、しばらくは案外うまくいくかもしれない。
なお、進次郎氏が最近積極的に発言しているが、解散の大義とやらが「ライドシェア解散」では、さすがにみすぼらしい。何か格好のつく名目は、考えておいてほしいものだ。
以上、政治の話なので、勝手な読み筋を書かせてもらった。当たっている話があるかもしれないし、全くないかもしれない。
しかし、米国の支配の下で、岸田政権によって舞台回しされている現在の政治状況は、代わり映えのしない登場人物も含めて全く退屈で、最低限の関心を持つにも苦労する。
現在の筆者個人は、岸田首相が退陣することを強く支持しているが、その先に誰を応援しているわけでも、自分が政治参加するわけでもないという、政治的無関心寸前の感心できない有権者の一人にすぎないことを付記しておく。
●元財務官僚がみた 岸田政権 社会保険料「負担増」のからくり 12/7
元財務官僚で、明治大学公共政策大学院教授の田中秀明氏は毎日新聞政治プレミアに寄稿した。
「政府は逆進的な保険料をさらに引き上げようとしている。それは現役世代の負担を重くする」と指摘した。

岸田文雄首相は国会で、少子化対策の財源として社会経済の参加者全員が連帯して保険料を通じて公平に負担する、と言いながら、実質的な負担増はないと述べた。詭弁(きべん)と言わざるをえない。
所得税を減税すると言うが、国民の負担になっているのは保険料だ。政策に一貫性がない。
医療保険料で少子化対策?
今年初め、岸田首相は「異次元の少子化対策」を宣言したが、財源については先送りしていた。2024年度予算案の編成が本格化したことから、ようやく内容がわかってきた。
財務省の審議会に提出された資料(財政制度分科会23年11月11日)によると、少子化対策を賄うために、新たに「支援金制度」を設け、その財源として医療保険料を上乗せするなどして活用する。
ただし、医療保険料の引き上げは国民負担となるので、高齢化などで増える医療・介護費用などを削減し、保険料の引き上げ幅を抑制しつつ、「浮いた」部分を支援金制度に充当するとしている。
問題は、少子化対策は継続的に行う必要があるので、医療費の増加を今後も継続的に抑制できるかだ。
しかし、それはすでに難しくなっている。診療報酬の改定を巡り、対立が鮮明になっているからだ。
財務省はマイナス改定を提案しているが、日本医師会は、物価上昇や医療従事者の賃金引き上げに対応するため大幅増を要求している。医師会は自民党に強い影響力があるため、財務省の言うとおりにはならないだろう。
たとえ医療費を多少抑制することができても、少子化対策を実施するために必要な3兆円台半ば(26年度まで)をどこまで賄うことができるだろうか。
結局、少子化対策は借金に頼る可能性が高く、将来世代が負担することになる。医療費などを削減することができたとしても、医療機関の収入や患者の治療に影響を与えるので、これも「国民負担」となる。
いずれにせよ、「実質的な負担増はない」というのはありえない。
不公平な保険料負担
そもそも、少子化対策を医療保険料で賄う合理性は乏しい。医療保険料は「公平な」負担とはなっていないからだ。
被用者(雇われて働く人)が加入する健康保険組合の保険料率は、3〜13%(労使折半)で、組合平均では9.2%(21年度)だ。
大企業の組合ほど保険料率は低い。主に中小企業の従業員が加入する協会けんぽの保険料率は、都道府県により異なり、9.51〜10.65%(労使折半)となっている。
自営業者や非正規などが加入する国民健康保険の料率は、市町村によって異なる。
後期高齢者医療の保険料率も自治体により相違がある。そして、高齢者ほど医療費を使う一方、その保険料負担は、1人当たりでみれば現役世代の4分の1程度だ。
保険料の大きな問題は、所得に対する保険料負担の割合が、低所得者ほど高いという「逆進性」にある。
これは、健康保険組合や国民健康保険など全ての医療保険制度に共通する。負担のルールが職業や年齢により異なり、かつ逆進性が強い保険料のどこが「公平な」負担と言えるのだろうか。国民を欺くのも甚だしい。
年金・雇用保険料の流用も国民負担
少子化対策の財源としては、現在、年金保険料に0.36%に上乗せしている「子ども・子育て拠出金」(事業主負担)がある。
当面料率の引き上げは検討されていないようだが、その使途を拡大するとしている。これは「事業主拠出金」であり保険料ではないと政府は説明しているが、ここにもごまかしがある。
社会保障費用統計上は「保険料」に分類されているからだ。保険料は、賃金とともに労働コストであり、最終的には従業員の負担になる。本来は年金給付の充実に活用するべき保険料を流用することも「国民負担」となる。
パート労働者が一定の年収を超えると、社会保険料を負担することになるために働くことを控える「年収の壁」が議論されている。政府は、手取りが逆転しないように、新たに発生する保険料を肩代わりすることを決めた。肩代わりといっても、財源として雇用保険料を流用するのだ。
パート労働者にもいろいろな事情があるが、年収の壁で問題になっているのは、扶養から外れない範囲の年収であれば保険料の負担無しで基礎年金を受給できる第3号被保険者だ。
比喩的に言えば、相対的に恵まれた者を、所得が低い者も負担した雇用保険料で助ける仕組みだ。
政権が課題に挙げるリスキリング(学び直し)の財源としても、雇用保険料の流用が検討されている。
日本の失業手当の水準は国際的にも低いので、本来は、保険料は手当の引き上げに活用すべきだが、それを他の目的に流用すれば、それも「国民負担」となる。
雇用保険では、短時間労働者や自営業者などはカバーされていないため、少子化対策やリスキリングとして国民全員を対象とすることはできない。それとも雇用保険料を負担しない者にも給付を行うのか。
要するに、本来は税で賄うべきなのに保険料に依存するのは、政治家が増税から逃げているからだ。
社会保険料が負担になっている
国民の負担となっているのは、所得税ではなく、社会保険料だ。過去30年間で、所得税や法人税の負担は減る一方、保険料負担は対国内総生産(GDP)比で約2倍にもなっている。
政府は逆進的な保険料をさらに引き上げようとしている。それは現役世代の負担を重くする。
保険に加入できない非正規などのセーフティーネットはおろそかになり、経済に対してマイナスの影響を与える。
保険料の引上げや流用に対して、我々は断固反対すべきだ。
●岸田政権の支持率アップ策「企業団体献金禁止」「旧文通費」などルール改正 12/7
大阪府知事や大阪市長を務めた松井一郎氏(59)が7日、自身のX(旧ツイッター)を更新。岸田政権の支持率アップの方策を示した。
自民の派閥パーティー自粛に「やることなすこと、遅い」と党内から首相批判が起きているというニュースを引用し「自民党が決断すべきは会期延長してでも、今国会中に企業団体献金禁止、政治資金規正法改正、旧文通費のルール改正を実施する事やね」と提案した。さらに「維新が騒いでも無理、圧倒的過半数は自民党なんだから、これやれば、岸田政権支持率アップです」と続けた。
同投稿に対し「効果の薄い減税をするより、よっぽど信頼回復につながると思う」「いやもう何しても無理っしょ、インボイスの時から諦めてます」「アップはせんよw 下げ率が緩やかになるかなー…くらい」などと書き込まれていた。
●3人以上多子世帯、大学無償化へ 所得制限なし、政府調整 12/7
政府は7日、3人以上の子どもがいる多子世帯について、大学授業料などの支援を2025年度から拡充する方向で調整に入った。所得制限は設けない。「多子世帯への無償化措置を講じる」といった表現で「こども未来戦略」に盛り込む見通し。関係者が明らかにした。月内に閣議決定する。
現在の高等教育修学支援制度は20年度に始まった。世帯年収380万円未満が目安で、入学金・授業料の減免と、返済不要の給付型奨学金の支給をセットで実施している。
24年度からは対象を拡大し、子どもを3人以上扶養する多子世帯と私立校の理工農系学生に関して年収の目安を約600万円までに広げる。 
●泉房穂氏「岸田政権は国民の首を絞め続けている」 12/7
東京都立川市などの市長選で勝利した「非自民」候補を応援し、交流サイト(SNS)などで注目を集めている兵庫県明石市の泉房穂前市長が7日、国会内で開かれた立憲民主党議員らの会合で講演した。岸田政権について「国民の首を絞め続けている」と批判し、次期衆院選で「救民内閣」の発足を主張。「どっちが国民のために本気か、どっちが勝ったら自分の生活が助かるかという構図ができれば一瞬で勝てる」と訴えた。
「もう一つの選択肢ができれば、衆院選で雪崩現象は起きる」
泉氏は、安倍派をはじめとする派閥パーティー問題で自民党が世論の厳しい批判を受けていることを念頭に「自民党はぼろぼろだ。もう一つの(政権の受け皿の)選択肢ができれば、衆院選で雪崩現象は起きる」と指摘。自民党に対抗する枠組みに関しては「国民の味方チームを連合軍か1党かはともかくつくらないと、政権を取ることは難しい」と話した。
政党支持率の低迷が続く立民の現状については「議員が自分の当選や組織の維持に走ってしまっている。ここまで期待感が高まっていない状況では失うものはない。これまでの延長線の微修正ではなく、思い切ってやってほしい」と呼びかけた。
会合は、立民の若手・中堅議員らでつくるグループ「直諫(ちょっかん)の会」が開催。現職議員や公認候補内定者ら約30人が参加した。
●岸田政権の覚悟「何が何でも賃上げ」「うまくいかなかったら退陣」 12/7
私が担当しているニッポン放送の番組「OK! Cozy up!」では、先週金曜(1日)から今週金曜(8日)まで、「臨時国会いよいよ大詰め! 連日・政党幹部が生出演!」と題し、各党幹部に直撃しています。
初日は自民党の平井卓也広報本部長、昨日(4日)は日本維新の会の馬場伸幸代表、今日(5日)は国民民主党の玉木雄一郎代表に出演いただきました。馬場、玉木両氏は、前原新党(教育無償化を実現する会)をめぐって渦中の人物。それぞれ印象深い話をしていますので、聞き逃した方はぜひ、radikoのタイムフリーなどでお聞きください。
さて、自民党の平井氏も記憶に残る発言をしていました。
「岸田文雄政権はリスクをとっている。所得税の減税もそうだが、それに先立って何が何でも賃上げをしなければならない。(中略)政策パッケージとしてはリスクが高いかもしれないけれど、もしかしたらデフレ脱却の第一歩を踏み出すことができる政策なのに、国民に『選挙目当てで減税』と取られているところがあって、岸田政権の覚悟が伝わっていない。うまくいかなかったら退陣するしかない。結果が出なかったら、そうなると思うし、われわれ(党側)もそうです」
賃上げができなければ「退陣の覚悟」というわけですから、首相以上に、この発言がリスクを取っているなぁと思いました。
確かに、賃上げで可処分所得が上昇して個人消費が回復すれば、デフレ脱却です。ただ、ひと言で賃上げといっても、企業数で99%超、雇用者数でも7割を占める中小企業に賃上げが及ばない限り、絵に描いた餅にすぎません。
そして、その中小企業経営者を取材すると、業種を問わず「人件費などのコストを元請けに転嫁できないから、賃上げしたくてもできない」と言います。
中小企業庁が先週発表した、「価格交渉促進月間(2023年9月)フォローアップ調査」では、価格転嫁について、《1コスト全体の転嫁率は、前回調査と比較して微減し、45・7%となったものの2「全く転嫁できなかった」または「コストが上昇したのに減額された」企業の割合は減少という結果となり、価格転嫁の裾野は広がりつつある》と報告されました。依然、転嫁率は5割に満たず、賃上げには力不足でしょう。
一方、公正取引委員会と内閣官房は11月29日、人件費の転嫁に向けた企業の行動指針を公表しました。
この中には、具体的な事例を挙げつつ「留意すべき点」として、発注者が受注者との協議に応じなかったり、スポット取引と偽ったり、特定フォーマットでのコスト算出以外の転嫁を認めなかったりすることを「独占禁止法上の優越的地位の濫用又は下請代金法上の買いたたきとして問題となるおそれがある」と明記しました。
きちんと転嫁を認めなければ公取が動く可能性を示唆したわけで、これは発注企業はビビります。ここは、政権の「本気」と見てもいいのかもしれません。
 12/8

 

●デフレ脱却重点に編成 24年度予算方針を閣議決定 12/8
政府は8日、2024年度予算編成の基本方針を閣議決定した。物価高の影響緩和に取り組む一方、岸田政権が目指す持続的な賃上げや「デフレからの完全脱却」に向け、半導体や人工知能(AI)といった先端分野の国内投資促進と少子化対策に、重点的に予算を配分する。
政府は与党とも調整し、月内に24年度当初予算をまとめる。新型コロナウイルス禍と物価高への対応で膨らんだ歳出を、どの程度抑制できるかが焦点となる。
基本方針は、高水準の賃上げなどを踏まえ「デフレから脱却できる千載一遇のチャンスを迎えている」と強調。ただ賃金上昇は依然として物価高に追い付かず、個人消費は力強さを欠いているとも分析した。
●ガソリンが高いなら慣れればいいじゃない…”萩生田アントワネット” 12/8
自民、公明、国民民主3党の政調会長は、11月30日、ガソリン税の軽減のための「トリガー条項」の凍結解除について協議した。その結果、この問題を年内の自民、公明両党の税制調査会(税調)の議題としないことが確認され、やるかやらないかは、岸田政権のトップダウンに委ねられたことになる。
自民党の政調会長である萩生田光一氏は「(ガソリン価格の激変緩和措置の継続について)こういう制度をやっているのは日本ぐらいだ。脱炭素などを考えれば、ある程度金額的に国民に慣れていただくことも必要ではないか」とガソリン価格の抑制に後ろ向きな発言をした。この「ある程度金額的に国民に慣れていただくことも必要ではないか」という発言が、「ガソリンが高いなら慣れればいいじゃない」と”意訳”され、ネットニュースやXで拡散された。
元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏は「萩生田光一氏の真意は、国民の期待値調整にあったのではないか」というーー。
国民に「今の(高い)ガソリン価格に慣れればいい」と言い放った萩生田アントワネット
「ある程度金額的に国民に慣れていただくことも必要ではないか」という発言について、この意訳から、フランス革命の時代にマリー・アントワネットというフランス王妃が「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」という発言をしたとされるエピソードをもじって、「萩生田アントワネット」と揶揄されることもあった。マリー・アントワネットが実際にこの発言をしてはいなかったのだが、貴族階級の感覚の鈍さと民衆の苦しみに対する無理解を象徴する逸話として広く語られてきた。
実際のところ、マリー・アントワネットは、母に対して、<「出産も婚礼もいっぺんにお祝いするはずなのですが、祝典はごくささやかなものになる予定です。お金を節約するためです。でも、一番大切なことは、民びとにたいしてお手本を示すことです。パンの値段が上がってたいそう苦しんでいるからです。でもうれしいことにまた希望が湧いてきました。麦の育ち具合がとても順調だったものですから、収穫のあとはパンの値下がりが見込まれているのです」/この手紙からは、節約を心掛け、民衆の生活に気を配る人柄が滲み、「パンがなければ〜」の言葉とは正反対のマリーの姿が浮かび上がります。>(遠藤 雅司『「ケーキを食べればいいじゃない」はデマ? 実は節約家だったマリー・アントワネットの“夕食会メニュー”を再現』文春オンライン・2月7日)というから、マリー・アントワネットは、ずいぶんな風評被害を受けていることになる。
萩生田アントワネットの真意は国民の期待値調整ではないか
では、萩生田アントワネットと揶揄された、萩生田氏の真意はどこになるのだろう。
萩生田氏は、岸田政権の最近続く支持率の低迷について、こうコメントを出している。「(岸田首相の政策の発信の仕方について)予告編が長くて、中身がちょっとミスマッチ。国民は違和感があると思う」「(定額減税について)『還元』という言葉を使った後、ご本人はずっと黙っていた。出てきたものに対して、期待値が国民と合わないことがある」この発言を通して、萩生田氏が何を言いたいかというと、岸田首相は、「減税」「還元」という言葉を使って、有権者の期待を煽り続けていた期間がある。
これは、長崎4区で実施された衆議院議員の補欠選挙の際だ。見事に、長崎4区では自民党候補は勝利したわけだが、選挙投票日を経て、岸田政権から出された「減税」は、1人あたり所得税3万円と住民税1万円、あわせて4万円だった。ものすごい金額の減税なのかと思いきや、4万円という額に国民はがっかりしてしまったのだと萩生田氏は分析しているのだろう。
萩生田氏が副官房長だった時代の安倍晋三首相の「演出力」は見事
たしかに、萩生田氏が副官房長だった時代の安倍晋三首相の「演出力」は見事なものだった。軽減税率の創設をめぐって、真っ向から反対する野田毅税調会長(税制調査会長、当時)を官邸に呼びつけてはカンカンに怒らせて帰らせるようなことをわざわざメディアの前で見せつけていた。当時幹事長だった谷垣禎一氏も仲裁に入ったが実らず、谷垣氏も不快感をメディアに見せていた。最終的に、野田氏は税調会長を更迭するまでに至ったのだが、この騒動は、国民の目にどう映ったのだろうか。「党内にある強烈な反対を押し切って軽減税率を成立させたのは安倍首相だ」というイメージが強く残ったものだ。
しかし、今回の減税案については、誰も強い反対はなかった。現在の税調会長である宮沢洋一氏は、財政再建論者であり、野田氏と政策的立ち位置にありながら、表向き「歓迎」の意を表明した。その後、「減税期間は当然1年ということに、ならざるを得ない」「法人税率を上げることによって、(国内投資をする企業への)減税効果がさらに大きくなっていくなどと(訳のわからない)発言をしており、宮沢氏の増税志向は明らかだろう。
萩生田氏は防衛費防衛増税について「来年はやらない」と言っていて物価高に苦しむ国民に寄り添う姿勢も見せている
しかし、今回の減税案については、誰も強い反対はなかった。現在の税調会長である宮沢洋一氏は、財政再建論者であり、野田氏と政策的立ち位置にありながら、表向き「歓迎」の意を表明した。その後、「減税期間は当然1年ということに、ならざるを得ない」「法人税率を上げることによって、(国内投資をする企業への)減税効果がさらに大きくなっていくなどと(訳のわからない)発言をしており、宮沢氏の増税志向は明らかだろう。
であるならば、必死で努力したことを国民に見せろということであろう。宮沢氏を水面下で説得するのではなく、国民の前で怒らせるぐらいの議論はできたはずである。宮沢氏が怒らないような「減税」など、本物の減税ではないということになる。
今回の「しょぼい」とも言われた「定額減税」について、先述のとおり宮沢氏は「1年限り」としているが、萩生田氏は「1年限りと決定しているわけではない」と国民負担を減らす方向での主張を続けている。萩生田氏は防衛費の大幅増額に伴う大増税にも「これから減税策を考えるのに来年から防衛増税をやるのは国民にわかりづらい話だ。来年はやらない」とも述べていることから、この主張も同じく国民負担を減らす方向だ。
ポスト岸田の本命は萩生田光一だ
萩生田氏は、過去にも消費税10%の延期を示唆する発言を行なっていることもある。今回のガソリン価格の高騰を是とするような「萩生田アントワネット」発言に対して、私は、非常に違和感をもって受け止めた。
派閥(安倍派)の裏金問題でゴタゴタする中、混乱して失言してしまったのか。それとも、私が勝手な妄想で萩生田氏にいいイメージを持っていただけなのかはわからない。国民の一部には根強い反対論がある中、萩生田氏は経産相時代に、原発再稼働を強烈に推し進めていた。そんな骨太の政治家には、ポスト岸田を見据えて、早く原点回帰をしてもらいたい。
萩生田氏の試金石ともいえるのが、来年1月21日投開票の八王子市長選挙だ。八王子市は萩生田氏の地元であり、絶対に負けられない戦いでもある。岸田政権の圧倒的不支持の中、選挙戦を迎えつつあるという劣勢を跳ね除けられるのだろうか。現職の石森孝志市長が引退を表明し、元都民ファの都議と自公が推薦する元東京都職員が立候補を表明し、情勢は混沌としている。ここに勝利すれば、来秋に予定される「ポスト岸田」争いに、大きな勢いをもたらすのは間違いなさそうだ。
いったい何が起きているのだろうか
朝日新聞(11月27日)によると、岸田文雄政権の支持率は「ワーストずくめ」だという。朝日新聞社が11月18、19日に実施した全国世論調査(電話)をもとに、そう、論評されている。
同調査によれば、支持率はわずか25%、不支持率は65%と自民党が2012年12月に政権に復帰して以降の11年間のワースト記録を更新した。
支持率が低迷してた菅義偉政権に対して、後ろから弓を引き、「国民の声が届いていない」と連呼して菅氏を首相の座から引き摺り下ろした結果、自民党総裁、内閣総理大臣に就任した岸田首相である。いったい何が起きているのだろうか。
岸田首相のいう「聞く力」とは、まさしく自民党のつくりあげた「悪いビジネスモデル」を具現化したようなキャッチフレーズだ。
自民党は、合理的な判断をせずに、支援団体が騒げば手当をし、世論が反発すれば、それに補助金をバラマキすることで権力の座を維持してきたのだから。
●岸田首相が派閥を離れるのは「無派閥の人も大勢いるので」って… 12/8
岸田文雄首相は7日、自民党派閥パーティーで政治資金のキックバック(還流)があったとされる問題を巡り、自身が会長を務める岸田派を首相在任中、離脱する考えを表明した。政治資金規正法違反の疑惑が深まる中、これまでとどまってきた会長職を離れる判断には、追及を逃れる思惑ものぞく。真相究明の指導力を発揮せず、抜け道をふさぐ法改正などの方向性も示さないまま、パーティーの自粛など苦し紛れの対応ばかりを続けている。
自民歴代首相の慣例破り、就任後も派閥会長に固執
「総理・総裁の任にあるうちは派閥を離れるのが適切と考えた。私自身先頭に立って、党の、政治の信頼回復に向けて努力したい」。首相は7日夕、時折目線を落としながら、首相官邸で記者団にこう語った。
派閥を離れる理由は「党内には無派閥の人間も大勢いるので」とだけしか説明しなかった。関係者によると、後任は置かずに「岸田派」のまま存続させる。
自民党の歴代首相は、利益誘導を避けるためにも、派閥を離脱するのが慣例だったが、首相は2021年10月の首相就任以降も会長の立場に固執してきた。自らの権力基盤を維持するために、派閥の存在と役割に頼っていたからだ。
党内から「派閥政治を引きずっているというメッセージになって、国民の見る目は厳しくなる」(菅義偉前首相)と指摘されても、聞く耳を持たなかった。派閥のパーティー券問題が発覚後の11月21日の衆院予算委員会では、野党議員から会長職を退くよう求められたが「現職の首相で派閥の会長を続けた例は過去にいくつもある」と反論して譲らなかった。
古い自民党の派閥政治に戻った岸田首相、そのツケが
立憲民主党の幹部は、8日に衆参予算委の集中審議で、派閥会長に居座ってきた首相の問題を追及する予定だったと明かした上で「敵前逃亡で本当に見苦しい」とあきれる。
首相は派閥のパーティー券問題で、当座をしのぐ対応を続け、積極的に疑惑を解明しようとする姿勢に乏しい。5派閥の関係者が東京地検特捜部から聴取を受けたと報じられた際には「それぞれの政治団体(派閥)で責任をもって適切に対応するべきものだ」と人ごとのように述べていた。
安倍派などの還流疑惑が浮上しても「国民に疑念を持たれるとすれば遺憾だ」と繰り返し、各派に忘年会や新年会、パーティーの自粛を求めただけ。茂木敏充幹事長ですら「自粛が根本的な解決だとは思っていない」と認めざるを得ない場当たり的な対応だった。
中央大の中北浩爾教授(政治学)は「首相自身が派閥の会長という利害関係者だから対応が遅れていると見える。そもそも、最初から離脱しておくべきだった」と指摘。「派閥バランスで運営する古い自民党の政治手法に戻っていたのが岸田政権。今回の問題がその政権運営を直撃することになった」と語った。
●大物議員も「こりゃもうダメよ」…裏金疑惑!岸田文雄首相「命運尽きる」 12/8
「こいつな、う〜ん。こりゃもうダメよ」
東京・永田町にある自民党本部の1階、歴代総裁の写真が並ぶ「自民ギャラリー」の前で、安倍政権で要職を務めたある大物議員が一つの額(がく)を指差した。FRIDAY記者が目を移すと、そこに写っていたのは、自民党総裁の座を勝ち取り、右手を大きく上げて党員の拍手に応える’21年の岸田文雄首相(66)の姿だ。
「いまの岸田さんからは、就任当時の覇気がまったく感じられません。自民党に好意的な産経新聞でさえ、内閣支持率は20%台。″増税メガネ″の汚名を返上すべく、11月頭に閣議決定した所得税減税も『人気取りのため』と国民から総スカンを食らった。
タッグを組む公明党は党創設者である創価学会・池田大作名誉会長の死去により弱体化。起死回生の解散総選挙にも踏み切れない。そこにきて今度は最大派閥の清和会(安倍派)の巨額裏金疑惑が浮上。まさに踏んだり蹴ったりですよ」(自民党閣僚経験者)
12月1日、パーティー券の販売ノルマを超えて所属議員が売った収入について、安倍派が政治資金収支報告書に記載せず裏金として一部の議員に還流させていた疑惑が浮上。裏金の総額は’22年までの5年間で1億円以上に上るとされており、東京地検特捜部は政治資金規正法違反容疑での立件も視野に、捜査を加速させている。ジャーナリストの鈴木哲夫氏が話す。
「捜査の手は安倍派の歴代事務総長にまで伸びるようです。すでに派閥の事務方が事情聴取に対してカネの流れなどをいろいろ話しているようで、検察はその情報をもとにバッジ組の事務総長たちの事情聴取を検討していると聞きます。時期的に該当するのは下村博文氏(69)、西村康稔経済産業大臣(61)、松野博一官房長官(61)、高木毅国対委員長(67)の4人。
聴取は臨時国会が終了した12月14日以降になるのでは。4人全員が立件されることは考えにくいですが、ある検察OBは『やるなら安倍派の象徴的な人物。現職閣僚だとインパクトは大きいので可能性はある』と話しています」
政権の顔である松野氏が検挙されるとなれば、その影響は自民党全体に波及する。さらに、12月3日には安倍派と同じ手口のパーティー券収入不記載疑惑が志帥会(二階派)で浮上した。
「年明けの通常国会は1月22日頃から始まると言われていますから、それまでに党の重要ポストに就く議員が立件されるでしょう。宏池会(岸田派)にも約200万円と少額ながら裏金疑惑はあるわけで、党総裁として責任を追及されるのは間違いない。岸田さんは、官僚の振り付け通りに最低限の職務をこなし、そっと事態の行く末を見届けるしかない″窓際総理″です」(前出・閣僚経験者)
度重なる不祥事による政府の弱体化を、霞が関は好意的に受け止めているという。政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう話す。
「霞が関からすれば、言うことを素直に聞いてくれる岸田さんは大歓迎でしょう。財務省は増税を呑んでもらい、経産省は口が裂けても言い出せなかった『原発再稼働』発言を岸田さんから引き出せた。防衛省は防衛費を43兆円も増額してもらえた。官僚の思うがままです」
ある自民党議員秘書は、この現状に怒りを滲ませた。
「自民党は立川市長選、立川の都議補選、青梅市長選と直近の東京での地方選挙で『3連敗』を喫しました。来年には540以上の地方選挙があり、党員は『もう岸田じゃ勝てない』と不満タラタラです。そんな中、解散する力もなく、官僚の言いなりになるなんて情けない姿をさらし続けていいのか。総裁の首を挿(す)げ替えるしか道はないでしょう」
党内ではポスト岸田をめぐる動きがにわかに強まっている。
「二階(俊博・84)さんや菅(義偉・75)さんらは11月上旬、待望論のある石破(茂・66)さんを担ぐべく、あえて会食する姿をメディアに公開しました。石破さんを担ぐことを是としない主流派の麻生(太郎・83)さんは岸田派の上川陽子外務大臣(70)を推すと見られています。当の岸田さんは延命のため、ダメージの少ない解散のタイミングを探ってはいるのですが、抱えているトラブルが多すぎてそれどころではありません」(同前)
数多の危機をのらりくらりとかわし続けてきた岸田政権の命運が、ついに尽きようとしている。
●岸田政権下で高齢者イジメが加速…「医療と介護」自己負担増、年金減らす 12/8
政府の「全世代型社会保障構築会議」は5日、「異次元の少子化対策」の財源確保に向けた社会保障改革の工程素案を示した。
2028年度までに実施を検討するメニューが盛り込まれたが、具体性は乏しかった。
「内閣支持率の低迷を気にして、国民の痛みにつながる財源論は避けた」(霞が関関係者)とみられるが、負担増のターゲットが高齢者となることだけは確実。医療と介護の自己負担を増やし、1兆円超の“痛み”を押し付けるハラだ。
すでに財界が踏み込んだプランを掲げている。11月に経済同友会は社会保障改革への意見書を公表。その中で75歳以上の後期高齢者の医療費負担「2割」への引き上げを提示し、歳出抑制効果は4200億円に上るという。
現行は後期高齢者の約70%が1割負担。75歳以上の人口は約2000万人(今年9月15日時点)だから、1400万人が対象となり、単純計算で1人あたり年平均3万円の負担増となる。
さらに、同友会は介護利用者の負担を原則2割にすれば、6700億円の抑制効果になると試算。医療費負担増と合わせて、1兆円突破だ。厚労省によると、22年度の介護サービス利用者は650万人で、その多くは1割負担だ。負担倍増なら、年間数万円のアップは避けられない。
「医療と介護の1割負担は、所得が少ない高齢者でも安心して利用できるためです。そこにメスを入れるのは残酷です。物価が上がり、生活が苦しくても、高齢者はバイトすら困難。節約のため、受診を控える高齢者も出てくるはずです。生きる権利を奪うものです」(経済ジャーナリスト・井上学氏)
なけなしの年金は減らす
加えて岸田政権は、高齢者にとっての賃金である「年金」は減らす意向だ。増額幅を物価や賃金の伸びよりも抑制する「マクロ経済スライド」を2年連続で発動する方針。民間試算では来年度の支給額は0.4%目減りし、抑制は27年度まで続く見通しだ。
「岸田首相は賃金の上昇が物価上昇を上回る実質賃金のプラス化を目玉政策に掲げています。ところが、高齢者に関しては負担を増やし、年金を減らす。65歳以上は約3600万人もおり、総人口の約3割を占めるボリュームゾーン。この世代に痛みを押しつけていては、個人消費は盛り上がりません。それに、苦しそうな高齢者を見た若い世代も将来不安を抱き、支出を渋るでしょう。こんな政策を続けている限り、個人消費は低迷し、経済成長は望めません」(井上学氏)
高齢者イジメの岸田政権を延命させれば、命が持たない。
●岸田政権肝いり「児童手当拡充」は+6000円ぽっち…愚策に愚策重ね 12/8
えんぴつナメナメのセコイ制度設計に落ち着きそうだ。
岸田政権肝いりの「次元の異なる少子化対策」の目玉に位置づける児童手当の拡充。支給対象を現行の中学生以下から高校生まで拡大することを踏まえ、整理を検討していた「扶養控除」の見直し案が判明した。
所得税の控除額は現行1子につき年38万円から25万円に、住民税は33万円から12万円にそれぞれ引き下げる。控除を縮小しても全世帯で児童手当の増額分(原則年12万円)が上回るというのだが、差し引きのプラス効果は給与収入1160万円(課税所得695万円)未満の層だと7万2000円に過ぎない。
月額6000円とはショボすぎる。ないよりはマシとはいえ、すでに高校の実質無償化に伴い、2011年度から16〜18歳までの特定扶養控除の上乗せ分(25万円)が廃止された経緯もある。
「扶養控除の対象から外れる中学生以下とのバランスを取ったのでしょうが、中学生以下の控除がないのは、民主党政権の『子ども手当』創設で16歳未満の年少扶養控除(38万円)が廃止されたため。自民党は12年の衆院選でその復活を公約に掲げたのに、10年以上経っても実現する気はサラサラありません」(立正大法制研究所特別研究員・浦野広明氏=税法)
真の狙いは世代間対立
「控除より手当」が政府・与党の方針らしいが、子育て世帯の控除を縮小する一方で、老いた親や祖父母などの扶養世帯が対象となる老人扶養控除は温存したままだ。70歳以上の親族を「同居」で扶養すれば、控除額は所得税で58万円、住民税は45万円。高校生を扶養する世帯を大きく上回る。
これじゃあ、子育て世帯の高齢者への不満は募るばかりだ。世代間対立をあおり、高齢者向け社会保障を削りやすくするための「社会の分断」こそが、少子化対策の真の狙いではないのか。まさに異次元レベルの愚策である。
「岸田首相は『社会全体で子育て世帯を応援する』と説明していました。ならば少子化対策の財源は応能負担の原則に立ち、富裕層の課税強化とセットにすべき。手当拡充の財源を子育て世帯に負わせるのは、飢えたタコが自分の足を食べるのと同じです」(浦野広明氏)
愚策に愚策を重ねては、少子化は食い止められない。 
●岸田政権中枢もキックバックか 松野長官に1000万円 裏金疑惑 12/8
自民党の最大派閥・安倍派が、政治資金パーティーによる収入の一部を裏金化していたとみられる疑惑で、初めて実名が浮上した。
その人物は、政権の中枢を担う松野官房長官。野党からの厳しい追及に、どう答えたのだろうか。
岸田内閣の中枢に浮上した新たな疑惑。
松野博一官房長官が、派閥のパーティーをめぐり、所属する安倍派から直近5年間で1,000万円を超えるキックバックを受け、政治資金収支報告書に記載していなかった疑いがあることがわかった。
8日午前10時前、閣議後の会見で問われると...。
松野官房長官「この場は政府の立場として参加をしており、お答えを差し控えるべきであると認識していますが、私の所属する清和政策研究会においては、これから事実関係を精査するとコメントしていると承知しており、今後、事実確認のうえ、適切に対応するものと認識しています」
その後の衆議院予算委員会で、野党側から激しい追及を受けた。
立憲民主党・枝野前代表「あなたの政治資金の取り扱い、あなたが売ったパーティー券のことをちゃんと派閥に報告したんですか。あなた自身が答えられることだし、あなた自身じゃなきゃ答えられないことです」
安倍派 元事務総長・松野官房長官「繰り返しになりますけれども、派閥が現在、政治資金に関しまして刑事告発をされ、それに関連して捜査が行われているものと承知をしており、私の政治団体についても精査し、適切に対応してまいりたいと考えております」
立憲民主党の泉代表は、松野官房長官の辞任を要求。
立憲民主党・泉健太代表「自身で記者会見を開いてでも、事実でないなら事実でないと明確に言うべきですよね。一般常識では考えられないですね。開き直り、頬かむりっていうのは。辞任を要求します」
裏金疑惑発覚後の12月1日以降、説明を求められるたびに「回答を控える」という趣旨の発言を30回以上繰り返していた松野官房長官。
自身に浮上した疑惑については、「精査する」と繰り返した。
●岸田政権の少子化対策また的外れ… 12/8
また国民の批判を招いている──。「異次元の少子化対策」を掲げる岸田政権は、3人以上の子どもがいる多子世帯の大学授業料などを無償化する方針を固めたという。
所得制限は設けず、2025年度からスタートする。月内に閣議決定する予定だ。
しかし、ネット上では《不公平すぎる》と批判が殺到している。
《1人、2人しか子供がいない家庭との差がありすぎる》《みんな平等に納税しているのに、子どもの数で不平等になることが異次元の改革でしょうか》《3人とも無料って 2人いる方とあまりにも違いますよね。2人は全くなしで3人は全員無料ですよ。これは、あまりにも酷すぎるんじゃないですか?》《少子化対策でもあると思うけど、大学費用が無料だからって子供3人産もうって事にはならないよ》
岸田政権は、この政策を「少子化対策」の目玉にするつもりらしいが、子どもが3人以上いる多子世帯を支援しても、少子化対策にはならない可能性が高い。少子化が止まらないのは、結婚した夫婦の子どもが減っているためではなく、結婚しない若者が増えているためだとみられているからだ。
夫婦の平均出生数である「完結出生児数」は、減少はしているが、この数十年、ほぼ2人で推移している。72年(2.20)、82年(2.23)、92年(2.21)、2002年(2.23)、15年(1.94)となっている。結婚したカップルは、40年前と変わらず、ほぼ2人の子どもをもうけている。
格差を拡大させる恐れが
「岸田政権は、少子化の原因を突き詰めて考えているのでしょうか。少子化と結婚件数に相関関係があることは説明されています。もちろん、すでに子どもを持っている世帯への支援も必要ですが、少子化対策を考えるなら、まず、若い世代が安心して結婚し、子どもを持てる環境を整えることが先でしょう」(経済評論家・斎藤満氏)
子どもが3人以上いる世帯への支援は、格差を拡大させる恐れもある。「貧乏子だくさん」というケースもあるだろうが、3人の子どもを育てようと考えるのは、それなりに生活に余裕のある世帯も多いはずだからだ。「所得制限」を設けないとなると、富裕世帯に税金を費やすことになる。岸田首相にも3人の子どもがいる。
「所得の再配分は、本来、所得の多い者から、所得の少ない者に移転させるものです。なのに、所得制限も設けず、多子世帯を支援するプランは、所得再配分に逆行しかねません。経済的な理由で3人目の子どもを諦めた世帯は恩恵がなく、子どもが3人いる富裕世帯が税金の恩恵を享受するということになってしまいます」(斎藤満氏)
セレブ育ちの岸田首相は、庶民の暮らしを分かっていないのではないか。
●岸田政権 「3子以上で大学無償化」 が大荒れ! 12/8
岸田政権が少子化対策および人口減少対策として、3人以上の子どもを持つ多子世帯を対象に、所得制限を設けず、大学の授業料などを2025年度から無償化する方針を固めた。12月末までに閣議決定する方針だというが、ネット上は賛否が飛び交う大荒れ状態となっている。
この制度は、大学、短期大学、高等専門学校などが対象。第3子を産もうかと悩んでいる親に、「大学の授業料が無料になるなら」と前向きに考えてもらいたいというのが狙いだ。
ネット上では、「すごくいいと思う。これくらい大胆にやらないと、日本の少子化は歯止めが効かない」「先進国から転落しないためにも、子どもの学力向上につながるならいいと思う」と肯定的な声が上がる一方で、“目的はないけど、とりあえず入れる大学に通う”という人が増えることも予想されるため「ランクの低い大学が一番恩恵受けそう」との声や、「学費を値上げする大学が出てきそう」と懸念する声も見られる。
加えて、「これから産んだ第3子が、大学生になるまでこの制度が続くという保障がないと、まったく意味がない」と急な撤廃を不安視する声も多く、7日放送の『news zero』(日本テレビ系)では、有働由美子キャスターも「産んでからハシゴを外されるのはたまらない」「ずっと続けられるのかなど、政府にはしっかり伝えてほしい」と訴えていた。
学納金トップの東京女子医大は4600万円超!
国立大学の学費は年間50万円〜80万円程度だが、文部科学省の資料によれば、私立大学の文系学部だと授業料は4年間で平均約326万円。私立の医学部医学科ともなれば、6年間で数千万円にも上り、23年度の学納金全国トップである東京女子医科大学は4621万円4000円と超高額。
ただ、政府は“限度額を設ける可能性がある”としており、無償化といっても、条件付きの“基本無償化”となるかもしれない。
なお、2子を子育て中のブラックマヨネーズ・吉田敬は7日、この政策に対し、Xで「そういう事やなくて、もっと小さい子供を預けやすくするとかの方が大事やろ。だいたい大学なんか、絶対に行かなあかん所でもないやろ」と疑問視。
同日放送のラジオ番組『辛坊治郎ズーム そこまで言うか!』(ニッポン放送)では、キャスターの辛坊治郎氏が「大学出たってまともな日本語で文章書けないような子どもたちもいる」とした上で、「それも含めて公費で負担するというのは、もしかすると学生救済策じゃなくて、学生不足に悩んでいる、十分な教育が行われているとは思えない大学の一括救済策なんじゃないのか」と疑問を投げかけていた。
多くの国民の財布に直結する案だけに、大波乱を起こしている同政策。妙策か、それとも愚策か……。
●天下の愚策 「大学授業料無償化」 12/8
東京都の小池知事が、私立を含めた都内のすべての高校の授業料を実質無償化する方針を表明しました。来年の都知事選挙を意識したのか、わざわざ「国に先行する」というアグレッシブな表現を使っています。すると負けじと岸田政権も「所得制限なしで、3人以上の子どもがいる「多子世帯」を対象に、2025年度から3人の子どもの大学授業料などを無償化する方針を固めた」と小池発言の印象を薄めるような報道がありました。高校への進学率は今では98%と準義務教育のような位置づけですから、東京都や大阪府が表明した高校無償化は大賛成ですが、そもそも、この制度は国が行うべきですよね。東京都や大阪府に隣接する県でも行わないと、住居地が道一本外れただけで、神奈川県や埼玉県、奈良県に住んでいる所帯のお子さんがこの恩典を受けられません。
しかし、政府が慌てて追随した大学授業料の無償化ですが、3人以上の「多子所帯」のお子さん全員を対象に無償化することが、有効な少子化対策となるとは到底思えません。
現状、日本の大学はいったん入学してしまえば、勉強はそこそこでも卒業は容易ですし、無償化によって、九九やアルファベットも満足に言えない学生が集まるFランク大学は「東横キッズのたまり場」的役割として延命化することになります。大学には、国の高等教育機関として、莫大な助成金が支給されています。それゆえにその任を負えない大学は淘汰されるべきですよね。
安倍元首相の腹心の友であった加計孝太郎氏の加計学園が2004年に開学した千葉科学大学ですが、今年度は定員490人に対して入学者は僅か228人です。在学生も定員2281人に対して1528人と充足率は67%。同大学にある薬学部、危機管理学部、看護学部という三つの学部すべてが定員割れし、更には大学院も定員割れです。このため、経営が成り立たないとして、2025年4月から公立化するよう要望が上っていますが、今回の無償化で生き延びる可能性も出てきました。
更には、一言で授業料と言っても、国公立の文系と私立の医系では授業料の桁が違いますし、二人のお子さんを持つ所帯は有償で、三人のお子さんを持つ所帯はお子さん全員が無償というのでは、あまりにも公平性に欠けます。三人のお子さんでも、二人は大学に進学せず授業料の負担がかかっていない所帯でも三人目のお子さんが進学する場合は無償となります。しかし「シングルマザーでお子さん一人の所帯」では無償の恩恵を受けられません。この制度の目的は戦時中の「産めよ増やせよ」の餌的政策でしかありません。
しかもこの政策の原資は、社会保険料への上乗せによる徴収です。そもそも保険ですから使途以外に転用すること自体許されません。目的外使用は詐欺のようなものですし、最も不利益を被るのは、結婚したくとも経済的に厳しい非正規労働者です。これでは益々少子化が進んでしまいます。
大学授業料の軽減は、勤勉意欲のある学生に対する返済不用の給付型奨学金の制度の拡充がベストです。
●「賞味期限切れの人が総理に」“真紀子節”健在 11年ぶりに永田町の土踏む 12/8
自民党に裏金疑惑の激震が走る中、8日午後4時半ごろ、国会内で会見を行ったのは田中真紀子元外相(79)。“賞味期限切れ”の人が首相になっていると、“真紀子節”で今の政治家を厳しく批判した。
「“賞味期限切れ”の人が総理に」“真紀子節”健在
田中真紀子元外相「みなさまこんにちは。聞こえますか、このドラ声が。11年ぶりに永田町の土を踏みました。相変わらず空気がよどんでいるし、きな臭いし、暗い感じがするなと言うのが第一印象でした。 」
“真紀子節”で、今の政治家を厳しく批判した。
田中真紀子元外相「安倍さん以降、彼も含めてですけど、安倍さん同期だったから仲良しだったんですけど、客観的に見て、やっぱり、人としてすべて終わってしまったというか、賞味期限が切れたというか…そういう人たちが総理になり、閣僚になり、議員になっているんですよ」
“賞味期限切れ”の人が総理になっていると、“真紀子節”で痛烈に批判した。
田中角栄元総理を父に持つ真紀子氏。自民党所属時代は、派閥に入らず、“脱派閥”を訴えた小泉内閣では外務大臣に就任。その後、離党した。
8日の会見では、辞任ドミノが続いた岸田政権について、「特にこの間1カ月間に3人も副大臣らがクビになりました。消耗品じゃないですか、使い捨てですか国会議員は副大臣ですよ」と批判。
さらに、8日新たに“裏金疑惑”が発覚した、松野官房長官を念頭にこう話した。
「何ですか?この最近の中、なんか、『答弁を差し控えさせていただきます』って、『差し控える』ってやましいからでしょ。答えられないからでしょ。国民はそんなバカじゃないですよ。差し控えちゃいけないの!じゃあ国会議員になるのを差し控えた方がいい」と語気を強めた。
さらに「そういうすっとぼけた言葉の使い方しちゃだめ。即、議員やめてもらいます」と手ぶりを交えながら熱弁した。
松野長官の“刑事告発による捜査”という答弁は36回
自民党派閥の“裏金疑惑”に揺れる、岸田政権。
8日の国会では、新たに“裏金疑惑”が浮上した「安倍派」の事務総長経験者で、岸田政権の中枢の松野官房長官を野党が激しく追及した。
立憲民主党・蓮舫参院議員: 松野官房長官。清和(安倍派)会から1000万円を超える裏金・キックバック受け取りましたか?
松野官房長官: 派閥の政治資金の取り扱いについては刑事告発され、それに関連して捜査が行われている。
私の政治団体についても精査して適切に対応してまいりたい。
安倍派に所属する松野長官は、これまで派閥自体の疑惑に対し、30回以上も“政府の立場”を強調し、説明を拒否してきた。
しかし8日、松野長官自身が派閥のパーティーを巡り、5年で1000万円を超える裏金のキックバックを受け、報告書に記載していなかった疑惑が浮上。
立憲民主党・枝野前代表: あなたが売ったパーティー券のことをちゃんと派閥に報告したんですか!?
あなた自身じゃなきゃ答えられないことです!お答え下さい!
松野官房長官: 繰り返しになりますけれども、派閥が現在、政治資金に関して刑事告発され、関連して捜査が行われていると承知しており…」
立憲民主党・蓮舫議員: 裏で出入りはあったんですか?
松野官房長官: 繰り返しで恐縮でございますが、派閥の政治資金の取り扱いについては刑事告発され、それに関連して捜査が行われていると承知している」
8日、何度も口にしたのは、“政府の立場”ではなく、“刑事告発による捜査”という答弁。
番組が調べただけでも、午前と午後の記者会見と、国会での発言を合わせると36回。明確な答弁を避け続けた。
同じ答弁を繰り返す松野長官に対し、「衆議院のコピペや!」というヤジもあった。
松野長官は午後の審議で、自らの政治資金について「適正に処理した」との立場を初めて示したものの、野党側は、週明け以降も追及を強める構えだ。
●キックバック問題で終盤国会が大荒れ状態… 閉じても地獄、延長しても地獄 12/8
国会は8日、衆参両院で予算委員会が開かれ、岸田文雄内閣は政治資金パーティー券収入キックバック(還流)問題などを巡り野党からの追及を受けた。首相は「捜査に影響を与える」との理由で「ゼロ回答」(立憲民主党議員)答弁を繰り返して怒号を浴び、与党からも不満をぶつけられた。
会期末が13日に迫る中で終盤国会は大荒れ状態だ。「野党の出番を封じるため早く国会を閉じたい」(自民幹部)のが政権の本音。一方で「閉じれば東京地検特捜部の捜査が本格化する」(同)との観測もあり「閉じても地獄、延長しても地獄」(閣僚経験者)の状態に追い込まれている。
「『派閥』については危機感を持つよう指示した手前、在任中は外れることにしたものだ。決して逃げてはいない」。岸田首相は野党質問のトップバッターで立民の枝野幸男前代表からの「反省を口にするなら派閥会長を降りるだけでなく、岸田派を解散せよ」との追及に色をなし反論した。
官邸関係者によると「答弁では『政策集団』を使い、国民の印象が悪い『派閥』との表現は避ける」と申し合わせたが「総理がキレて審議冒頭から崩れた」という。質問者が使っていない「逃げ」という言葉を自ら発する事態に「もはや制御不能」となった。補正予算に賛成した日本維新の会の馬場伸幸代表からも「派閥会長辞任もパーティー開催自粛も国民には響いていない」と突っぱねられた。
●「派閥政治」逆風、岸田派離脱しても収まらず 岸田首相 「逃げではない」 12/8
岸田文雄首相(自民党総裁)は8日の衆院予算委員会集中審議で、派閥の「政治とカネ」批判の矢面に立った。安倍派(清和政策研究会)パーティー収入の一部のキックバック疑惑は松野博一官房長官にも浮上。首相は7日、岸田派(宏池会)を離脱したが、「派閥政治」への逆風は弱まらなかった。
「派閥会長から外れたことが姑息だとおっしゃったが…」
首相の顔色が変わったのは、立憲民主党の枝野幸男前代表からキックバック疑惑の追及を受けている最中だった。枝野氏は、首相の派閥離脱に関し「火の粉が飛んできそうになったからと姑息な、逃げ出すような」と皮肉った。
「捜査に影響を与える恐れがあり、私からの発言は控える」という答弁ラインを堅持していた首相もつい語気を強めた。
「(信頼回復の)先頭に立つ人間である以上、派閥から首相在任中は外れる。これがあるべき姿だ。決して逃げるということではない」
首相就任後も会長職にとどまるなど愛着を示してきた岸田派からの離脱は重い決断のつもりだっただけに、枝野氏の言葉は気に障ったようだ。
ただ、その決断は局面打開に結びつかず、公明党からも「問題が起きる前に抜けていれば、もっと評価が高かった」(石井啓一幹事長)と苦言を呈された。
枝野氏は予算委で、副大臣・政務官3氏の「辞任ドミノ」に触れ「派閥順送り人事だからこんなことが起きる。派閥会長を辞めるという軽い話ではない」と批判。日本維新の会の馬場伸幸代表も「首相が派閥を抜けても国民の胸には全然響いていない。派閥の解散や結成禁止くらいの意気込みがいる」と迫った。政権運営は厳しさを増した。
自民内の一部では秋の早い段階で、派閥パーティーが火種になるとの観測がささやかれていた。この展開を見越し、自民の森山裕総務会長や事務方幹部が早期の衆院解散を主張したが、首相は踏み切らなかった。今や衆院解散は当面困難だとの見方が強まり、首相の求心力は低下している。
ただ、批判は自民全体に広がっている。各派閥とも表立って動けない状況のため、ある自民幹部は「来年9月(の任期満了に伴う)党総裁選まで『岸田おろし』は起きない」と語る。
●少子化支援金1兆円明記へ こども未来戦略、財源の内訳判明 12/8
岸田政権が掲げる「次元の異なる少子化対策」を巡り、政府が想定している年3兆円台半ばの追加財源の内訳が分かった。公的医療保険料に上乗せして徴収する「支援金」で1兆円程度を賄うほか、既定予算の活用で1兆5千億円程度、社会保障の歳出削減で1兆円超を捻出する。月内に閣議決定する「こども未来戦略」に明記する方針。政府関係者が8日、明らかにした。
政府は少子化対策の財源について、(1)医療や介護など社会保障の歳出削減(2)企業が負担する「子ども・子育て拠出金」など既にある予算の最大限活用(3)支援金制度の創設―の3本柱で確保する方針を打ち出している。
 12/9

 

●医療界・財務省が真っ向対立 診療報酬改定へ議論ヤマ場 12/9
2024年度予算編成で焦点の診療報酬改定に向けた議論が今後、ヤマ場を迎える。物価高で賃上げ機運が高まっていることを理由に、医療界は診療報酬の引き上げを主張。これに、財務省が国民負担を抑制するため引き下げを求め、真っ向から対立している。攻防の行方は、岸田政権が掲げる社会保障分野の歳出改革の試金石となる。
診療報酬は、医師らの人件費に当たる「本体部分」と「薬価」で構成される。薬価に関しては、厚生労働省が1日公表した調査で医薬品の市場での取引価格が公定価格を平均6%下回り、今回の改定で引き下げられる見込み。一方、本体部分は医療界が「引き上げは譲れない」(日本医師会の松本吉郎会長)と徹底抗戦の構えを見せる。
これに対し、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は先月、コロナ補助金などで利益が増えた診療所の報酬単価を5.5%程度引き下げるよう提言した。これは本体部分のマイナス1%改定に相当し、財務省が実態調査からはじき出した。
厚労省は8日に決定した診療報酬改定の基本方針に「医療従事者の賃上げ」を目指すと明記した。与党内には厚労族議員を中心に、衆院解散をにらんで医療界寄りの意見が強く、賃上げの原資を別枠で確保する案も浮上。財務省はこの案に「後々の先例になると困る」と難色を示し、両省の折衝が続いている。
岸田文雄首相は8日の参院予算委員会で、診療報酬改定について「現場の方々の処遇改善につながるように仕組み面からも結果を出していくことが重要だ」と述べるにとどめた。報酬本体を引き上げれば医療費が膨らみ、国民の保険料負担が増える。社会保障改革を通じて少子化対策の財源を捻出することも決まっており、政権の重要課題「賃上げ」とどう両立させるか、首相は難しい判断を迫られる。
● 大物議員の“世襲再生産”が止まらない 岸信夫長男、麻生太郎長男、二階俊博長男・三男、岸田文雄長男…準備は着々 12/9
支持率の下落が止まらない岸田政権は、岸田文雄・首相をはじめ閣僚の約半数が世襲だ。議員の世襲の大きな問題のひとつが“政治資金の相続・贈与”だ。
岸信夫・元防衛相の議員辞職に伴う補欠選挙(山口2区)で当選した長男の信千世氏は、父から政党支部(自民党山口県第二選挙区支部)の代表も、資金管理団体「誠信会」の代表も受け継ぎ、2団体合わせて900万円ほどある昨年の残金も引き継いでいる。
政治資金は非課税扱いで、政治団体の代表者が議員から親族に交代しても、相続税や贈与税はかからない。このため政界では、実態は子供への相続や贈与でも、課税を免れているケースが少なくないと指摘されてきた。
信千世氏は“無税贈与”を受けたことになる。この問題について岸事務所は、「個人資産と政治団体の資産は区別されており、政治団体代表者の変更をもって『相続』と同様に考えるのは誤りと考える」と回答した。
次の総選挙では、「カネと議席」を守るために世襲議員の“再生産”が続いていく。世代交代が有力視されている大物議員が麻生太郎・副総裁(83)と二階俊博・元幹事長(84)だ。
政界の名門、麻生家の“生まれながらの後継者”が長男の将豊(まさひろ)氏。曾祖父は吉田茂・首相、母方の祖父が鈴木善幸・首相、そして父と3人の首相の血を引く政界4代目で、1歳の頃にはすでに地元で会報『将豊』が創刊され、創刊号には地元の祭りで法被姿の麻生氏に抱かれた将豊氏の写真が掲載されていたほどだ。
幼稚舎から大学までエスカレーターの慶応ボーイ、大学時代はロックバンドを組んでいた。
現在は家業の麻生商事社長で、日本青年会議所(JC)会頭を務めている。この9月29日には将豊氏がJC幹部とともに自民党本部で党青年局の若手議員と会合するなど、後継者としての“顔合わせ”も着々と進めている。後援会関係者が語る。
「地元の選挙活動はかなり前から将豊さんが仕切っています。JC会頭の任期は今年いっぱいなので、いつでも後を継ぐ準備は整っている」
一方の二階家は政策秘書の長男・俊樹氏と公設第一秘書の三男・伸康氏が後継者争いの真っ最中。後援会も割れている。後援会関係者が語る。
「俊樹氏は役人に高飛車な態度を取るから地元での評判が芳しくない。2016年に地元の御坊市長選に出馬した際には、現職大臣や自民党有力者が続々と応援入りしたにもかかわらず大差で落選した。それで人当たりが良い三男の伸康氏を後継者に推す声が強まった。
しかし、役所や地元の利害調整を仕切っているのは俊樹さんです。二階先生もそれができるのは俊樹さんだとわかっている。そこで、次の総選挙では二階派の鶴保庸介・参院議員が衆院和歌山1区に鞍替えするので、その後継の参院補選に伸康氏が出馬し、二階先生の跡目には長男の俊樹氏を立てる案がある」
息子2人を衆院選と参院選に出すというのだから、世襲の拡大再生産だ。
岸田ジュニアも着々と
それに続くのが岸田首相の長男、翔太郎氏だろう。公邸どんちゃん騒ぎで総理秘書官を辞任した後、現在は地元・広島で後継者修業をやり直している。
その翔太郎氏は11月19日、地元で営まれた母方の祖父・和田邦二郎氏の葬儀に参列した。参列した地元の後援者が語る。
「お通夜でも葬儀でも、翔太郎君は参列者に忙しく挨拶していました。地道に広島を歩き回っている。私は世襲には反対で、選挙では優秀な人間が選ばれればいいと考えている。だから、翔太郎君には地盤を継ぐという考えでなく、選挙で選ばれる代表に見合った人物になるための努力を怠らないようにしてほしい」
だが、現実は世襲をなくさない限り、ボンボン、お嬢さまの2世、3世議員が大量生産され、国民の痛みがわからない政治が続いていく。
●岸田首相は、中国・習近平の「一帯一路」構想を猛烈に意識している… 12/9
「歴史の転換点」
岸田文雄首相は12月5日午前、東京・大手町のフォーシーズンズホテル東京大手町で開催された国際会議「GZEROサミットジャパン2023」で講演した。
「Gゼロの世界」を提唱するのは名高い米政治学者であり、調査会社ユーラシア・グループを率いるイアン・ブレマー氏である。同氏のイニシアチブで「Gゼロサミット」が開かれるのは今回で7回目だ(そのうち2020、21年はオンライン)。
岸田首相は講演冒頭、次のように語りかけた。<世界は今、「歴史の転換点」に直面しています。ロシアによるウクライナ侵略の継続、イスラエル・パレスチナ情勢の緊迫化、米中による技術覇権をめぐる競争。インフレは、我が国を始め世界中の市民生活に困難を与えています。そうした中で、アメリカ大統領選はもちろん、アジア、欧州において重要な選挙が予定されており、2024年は、国際政治において、「今後10年の分かれ道(crossroad)」となるでしょう>。
首相スピーチは平易な文章にまとめられている。と同時に、重要なポイントをきちんと押さえている。すなわち、岸田氏は講演の後半で世界的な選挙イヤーである24年を控え、こう述べたのである。
<「FOIPのための新たなプラン」の具体化に向け、私は、本日、この場で、「グローバルサウス『未来産業』フラッグシップ・プロジェクト構想」の立ち上げを、表明いたします>。
「自由で開かれたインド太平洋」
この「FOIP」とは、「自由で開かれたインド太平洋(Free and Open Indo-Pacific)」の頭文字である。外務省が今年3月に作成した『「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」のための新たなプラン』(A4版62頁)を参照して説明する。
同資料で最も興味深いのは、「新たなプラン」として示された4つの柱のうちの「取組の柱(3):多層的な連結性」であり、その中でも「事例(29):ベンガル湾からインド北東部を繋ぐ産業バリューチェーンの構築」と、「事例(39):インド太平洋地域におけるグリーン海運回廊」である。
何が言いたいのか――。前者から説明したい。インドも「インド太平洋海洋イニシアチブ(IPOI)」を提唱するが、その連結性の柱のリード国は、実は日本である。日印両国にバングラデシュを加えた同地域の連結性インフラ(ソフト、ハード)の開発強化を推進する。そして後者は、日米豪印(Quad)4カ国の枠組みで合意をみたグリーン海運回廊の開設を目指すものだ。具体的にはゼロエミッション船(水素・アンモニア)の技術開発・普及と、港湾におけるサプライチェーンの脱炭素化のためのカーボンニュートラルポート(CNP)の造成である。
各々の地域の地図を見ると気づくが、まさにこうした多層的な連結性実現に向けた取組は、中国の広域経済圏構想「一帯一路」のいわば「日本版」と言えるのではないか。事実、岸田氏は講演の中で以下のように語っている。<意欲あふれる日本の企業が、米国をはじめとした同志国の企業とともに、グローバルサウスにて、最先端のビジネスモデルを生み出す。そして、世界中で課題解決に貢献し、信頼と存在感を勝ち取っていく。ひいては、国際経済秩序の安定化にも繋がっていく。官民が連携したフラッグシップとなるべきプロジェクトを、いくつも作り出してまいります>。
要するに、岸田氏は中国の習近平国家主席が推進する「一帯一路」構想を強く意識しているのだ。それは同氏講演の冒頭で、分断と協調が複雑に絡み合う時代に日本ができることは何でしょうかと、語りかけたことからも分かる。
岸田政権にとって2024年の外交・安全保障の主要課題はやはり対中政策ということである。因みに岸田氏は国際会議「Gゼロサミット」翌日の6日午後、イアン・ブレマー氏と首相官邸で約40分間会談している。
●岸田政権「高校生扶養控除」と「児童手当支給」相殺した恩恵は… 12/9
高校生のいる世帯への扶養控除額見直しについて、控除額が所得税の場合で現行の年38万円から25万円へ削減される見通しであることがわかった。来年から高校生にも児童手当の支給が開始されることに伴う税制面での調整というが、控除の引き下げによって家計の負担はどのように変わるのだろうか。
所得税は年38→25万円、住民税は年33→12万円へ控除額引き下げ
今回明らかになったのは、16歳〜18歳対象の扶養控除の引き下げ額だ。所得税は子ども1人あたり年38万円から25万円へ、住民税は年33万円から12万円へ引き下げられる。課税の対象となる所得から控除できる金額が減るため、高校生のいる世帯には増税となる。
これによる増税幅は、年収や子どもの人数などによって異なる。扶養控除以外の控除の適用状況によっても細かな税額は変わる可能性があるが、所得税20%、住民税10%の場合で概算すると、課税される所得が330万円〜695万円の場合の負担増額は5万円弱となる。これは片働きで高校生の子どもが1人いる会社員家庭の場合で、年収約750万円〜約1160万円のケースが該当する。
ちなみに、このうち住民税での所得に対する税率は10%と全国でほぼ一律のため、扶養控除額引き下げによる税負担増は所得にかかわらず+2.1万円だ。一方で所得税は累進課税のため、増税分は所得税率しだいで+約7千円〜+6万円弱と差が生じる。高所得層ほど負担増は大きい。ただ、所得税の最高税率45%であっても、所得税と住民税合計での増税分は8万円弱にとどまる。所得にかかわらず、児童手当の受給額を増税分が上回ることは避けられそうだ。
児童手当支給と相殺した恩恵は約4〜9万円
見直しの対象になった高校生世代には来年12月から児童手当支給が予定されているが、今回の扶養控除引き下げで受給額が相殺されると、実際にはどれくらいの恩恵が残るのだろうか。
予定されている児童手当の支給額年間12万円から、先ほど試算した増税額を差し引くと、課税所得330〜695万円(所得税率20%)の世帯では約7.3万円が手元に残る計算になる。
内閣府の資料によると、所得税の納税者のうち約96%は所得税率20%以下の人が占めている。今回の見直し対象となる高校生のいる世帯の親たちは40〜50代が中心とみられ、賃金構造から考えると就業者のなかでは比較的所得層が高めの可能性はあるが、それでも所得税率10〜20%の世帯が大半と考えていいだろう。平均的な所得層で高校生1人の会社員家庭であれば、増税分を差し引いても児童手当による恩恵は7〜9万円程度になるはずだ。
また、高所得世帯でも相殺額がゼロやマイナスになることはなく、最低でも約4万円の恩恵が残ることがわかる。
恩恵以上に大きい、子育て世帯の失望感
今回の見直し案は与党での議論後、年内にまとめられる税制改正大綱で決定し、2026年から適用される見通しだ。現時点ではまだ確定した内容ではないが、例年の税制改正大綱の流れから考えれば、おそらく現状でほぼ決着するだろう。
首相はすでに「廃止を前提として検討している事実はない」とも述べており、少なくとも児童手当の支給以上の増税はなさそうだ。ただ支給と増税を相殺した結果、年間で約4〜9万円という子育て支援策が、子育て中の世帯にとってどれほどのインパクトになるかには疑問が残る。
子育て支援策は目下、児童手当以外に住宅ローン減税や生命保険料控除での子育て世帯への税優遇、子ども3人以上世帯への大学授業料無償化なども同時検討されている。パッケージで支援するという方向性に異論はないが、とりわけ税に関して言えば、多方面からの優遇は当事者が自分にとって得なのかどうかを判断するのがかえって難しくなる可能性がある。年末調整や確定申告での書類準備や事務処理も煩雑になるはずだ。
またこれらの税制優遇が実現すれば、持ち家に住む人や生命保険に契約している人は対象になるものの、賃貸に住んでいる人や生命保険に加入していない人にはメリットがない。子育て世帯内の分断を招くような形で支援策が行われることにも、いささか首をかしげたくなる。
シンプルに、扶養控除を維持・拡充するわけにはいかないのかという声も聞く。子育て支援に対する国の歯切れの悪い姿勢は、子育て中の当事者たちにとっては、実質的な恩恵以上に心理的な失望感につながる懸念をぬぐいきれない。
●松野官房長官パー券辞任なら岸田政権は崩壊へ 蠢き出した石破元幹事長 12/9
目下、「岸田ばなれ」が着々と進んでいるといったところか。春には「岸田おろし」が始まりそうだ。有権者不在で「ポスト岸田」をめぐる争いに明け暮れる永田町の政治家たち。その内幕を明かす。
旧統一教会関係者との面会疑惑
岸田文雄の顔色が冴えない。
12月4日、岸田が'19年10月に自民党本部でニュート・ギングリッチ元米下院議長らと面談した際に、旧統一教会の友好団体「天宙平和連合(UPF)ジャパン」トップの梶栗正義氏も同席していたと朝日新聞が1面で報じた。
同日、寝グセが少し残る頭で記者のぶら下がり取材に応じた岸田は、「ギングリッチ氏と会ったが、大勢の同行者にどなたがいたかは承知していない」と繰り返すのみ。岸田本人はこれまで旧統一協会とは「知る限り関係はない」と述べている。
旧統一教会問題に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏が言う。
「UPFの梶栗氏の手法のひとつに、海外の要人に同行しながら、自分も近づいて政治家と親交を深めていくというやり方があります。'10年にも海外要人に同行する形で、故・安倍晋三元総理とも面談しています。梶栗氏は長年、有力議員の事務所を回っていますので、今回報じられた面談以前に岸田氏が梶栗氏と会っていても不思議ではありません。
もちろん、ただの同行者で、旧統一教会関係者と認識していなかった可能性もありますが、昨年の安倍元総理殺害事件以降、梶栗氏は大きく取り上げられているので、その存在を思い出さなかったことは疑問に思います」
パー券問題で支持率大暴落へ
さらに自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題が一大疑獄事件になりそうな様相を呈してきた。
最大派閥の清和政策研究会(安倍派)などで、ノルマを超えて売ったパーティー券収入がキックバックされ、議員の裏金になっていた疑いがもたれている。安倍派や二階派では直近5年間で1億円以上が議員側に渡ったとされる。
「すでに東京地検特捜部は、派閥の担当者や議員秘書から任意で事情聴取を行っています。なかでも、安倍派の会計責任者は元NTT社員で政治の素人。誰にいくらキックバックしたかのリストを当局に提出していて、有力議員の名前がズラリと並んでいるとされます。
12月13日に臨時国会が終わった後に、特捜は派閥の事務総長経験者やキックバックを受けた議員の事情聴取を予定しています。松野博一官房長官、西村康稔経産相、高木毅国対委員長らは事務総長を経験しており、彼らも呼ばれることになるでしょう」(全国紙社会部記者)
官邸、内閣、党執行部の要が特捜の事情聴取を受けるとすれば、これは異常事態である。
「彼らはおそらく『自分は直接キックバックに関与していない』『(11月10日に亡くなった)細田(博之)会長がすべて差配していた』などと言い逃れるでしょう。
しかし、特捜にもメンツがあります。悪質な議員と派閥の事務方を起訴に持ち込むのは間違いありません。そうなると、とくに毎日2回行われる記者会見で追及を受ける松野さんは官房長官を辞任するしかない。官房長官が交代するようなことになれば、来年1月に始まる通常国会の審議は野党の追及で止まってしまうし、岸田政権の支持率も10%台にまで落ち込む」(自民党関係者)
岸田の「妄想」シナリオ
自民党への信頼が失墜しかけている状況においても、岸田はしぶとい。いや、図太いというべきか。本人はむしろ、安倍派を政権から一掃できることを奇貨として、来年夏に解散総選挙に打って出るつもりだ。
岸田は11月22日夜、東麻布のうなぎ料理店『五代目 野田岩 別館』で地元広島の自民党県議連幹部らと会食した。その際に、「不退転の決意で頑張る。春から夏になれば、勝負どころがやってくる」と話したという。岸田派幹部がこの発言の意図を補足する。
「(2月頃から始まる)春闘で賃上げの方向性が明確になり、実際に賃上げの効果を実感できる6月に税金の『還元』を実施する。そうすれば家計の可処分所得が増えたと国民に実感してもらえる。そこが勝負どころということ。6月中下旬の会期末解散に向けて、政治日程を組んでいます」
もちろん、このシナリオは岸田の「妄想」にすぎない。30%を割り込み、今後も裏金問題の捜査次第で低下していく内閣支持率。岸田では選挙を戦えない―そう思っている自民党議員が大多数である以上、岸田が解散権を行使できるわけがない。年内すでに2度も解散を阻止されている。3度目の正直がうまくいくはずがない。
「来年度の予算成立までは岸田総理に頑張ってもらい、4月頃の訪米を花道に辞職してもらうというのが、既定路線です。岸田おろしの動きが出てくるのは、予算成立後の3月下旬以降でしょう」(自民党中堅議員)
そのときに向けて、石破茂元幹事長が動き始めた。11月22日の講演会では、来年の総裁選への出馬について、「ないと言ったらうそになる」「首相になってこの国をどうするかというビジョンを持つことは国会議員のたしなみだ」と発言。
さらに12月2日には、弁護士の橋下徹氏とインターネット番組で対談し、派閥の裏金問題に関して、「(法律に)違背することがあるのなら政治集団なんて解散すればいい」と派閥政治への苦言を呈してみせた。
●岸田首相、松野官房長官を更迭へ 裏金疑惑で引責 12/9
自民党安倍派(清和政策研究会)が政治資金パーティー券のノルマを超えた販売利益を議員側にキックバック(還流)した裏金疑惑で、岸田文雄首相は還流を受けていた疑いが浮上した松野博一官房長官を交代させる検討に入った。事実上の更迭。複数の政府関係者が9日、明らかにした。官房長官は内閣の要だけに、首相の政権運営にとって大きな打撃となる。
裏金疑惑をめぐっては、松野氏自身にノルマ超過分に応じて5年間で1千万円超の現金のキックバックを受け、関連団体の政治資金収支報告書に記載していなかった疑いが浮上した。
松野氏は安倍派に所属し、西村康稔経済産業相や自民の萩生田光一政調会長らとともに、安倍派の「5人衆」と呼ばれる有力者の一人。令和元年9月から約2年間、派閥事務総長を務めていた。3年10月の岸田政権発足とともに内閣の要である官房長官に起用された。
疑惑の発覚後は「政府の立場として個々の政治団体、個人の政治活動に関する事柄でのコメントは差し控えたい」「派閥の対応に関しては今の私の立場から申し上げることは控える」など、事実上の回答拒否を繰り返し、与野党から説明責任を果たしていないとの批判が上がっていた。
首相は今月8日の衆院予算委員会では「政府のスポークスマンとして役割を果たしてもらいたい」と述べ、更迭を否定していたが、与党内からは辞任不可避との見方が広がり、首相も更迭させる判断に傾いた。
自民党の高木毅国対委員長ら、同様の還流疑惑が浮上した議員もいるだけに、首相は党役員も含めた大規模な入れ替えを迫られる可能性がある。
岸田政権では9月の内閣改造後、女性問題が報じられた山田太郎元文部科学政務官、公職選挙法違反事件に関与したとされる柿沢未途元法務副大臣、度重なる税金滞納などが発覚した神田憲次元財務副大臣が次々と職を辞す「辞任ドミノ」が続いていた。加えて松野氏が派閥の裏金疑惑で辞任すれば政権の求心力が一層低下するのは確実だ。
●松野官房長官に “辞任は避けられない”の声 政治資金問題で 12/9
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、松野官房長官側が派閥からキックバックを受け、適切に報告していなかった疑いが持たれていることについて、与党内では辞任は避けられないのではないかという意見が出ています。
岸田総理大臣は政権運営への影響などを見極めながら、慎重に対応を検討する方針です。
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で8日、松野官房長官側が去年までの5年間で、みずからが所属する安倍派から1000万円を超えるキックバックを受け、政治資金収支報告書に収入として記載していない疑いがあることが明らかになりました。
松野官房長官は国会の質疑や記者会見で、「みずからの政治団体の政治資金は適正に対応してきた」と述べる一方、具体的な説明は避けており、与党内では辞任は避けられないのではないかという意見が出ています。
さらに、安倍派の高木国会対策委員長と世耕参議院幹事長側も松野氏と同様の疑いがあることも明らかになりました。
政府・与党内では、「内閣改造や党役員人事をしなければ政権がもたない」という声が出る一方、「捜査の展開や広がりが見通せず、判断が難しい」という意見も出ています。
岸田総理大臣は政権運営への影響や世論の動向などを見極めながら、慎重に対応を検討する方針です。
これに対し、立憲民主党の泉代表は「岸田総理大臣の任命責任は当然で、もはや内閣が正当性を持たない状況だ」と批判し、松野官房長官の辞任を求めました。
野党側は政治への信頼を揺るがす重大な問題だとして、岸田総理大臣とすべての閣僚が出席する11日の参議院本会議で事実関係などをただし、さらに追及を強めていくことにしています。  
●どこまで落ちる...COP28で「化石賞」2回、気候変動対策は世界58位に沈む 12/9
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で8日、恒例の「気候変動パフォーマンス指数(CCPI)」2024年版が発表された。COP28で2度にわたって不名誉な「今日の化石賞」に選ばれた日本は63カ国と欧州連合(EU)の中で前年の50位からさらにランクを8つ下げ、58位に沈んだ。
環境や気候変動問題のシンクタンク「ジャーマンウォッチ」と「ニュークライメート・インスティチュート」、国際環境団体のネットワーク「CANインターナショナル」が05年から19年連続で発表している。昨年のロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー安全保障への懸念が強まり、多くの国で気候変動政策が停滞している。
63カ国とEUで世界の温室効果ガス排出量の9割以上を占める。多くの国が再生可能エネルギーへの移行を加速させている。しかし世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて摂氏1.5度に抑えるパリ協定の目標に沿った行動をとった国は一つもなく、上位3位まで該当国なしだった。 今回もデンマークが最高位の4位で、エストニア、フィリピンがそれに続く。
2大排出国の中国は前回と同じ51位で、米国は前回より5つ順位を下げて57位。日本、台湾(61位)、韓国(64位)は、石炭を消費しながらも急ピッチで気候変動対策を進める中国より評価が低かった。COP28議長国のアラブ首長国連邦(UAE)、イラン、サウジアラビアが最下位の65位から67位までを占めた。
日本は良い目標が設定されていない
共同執筆者の一人、ニュークライメート・インスティチュートのニクラス・ヘーネ教授は「自然エネルギーがブームとなり、各国政府は継続的に自然エネルギー目標を更新している。一方で気候変動政策の策定は全般的に鈍化した。比較的野心的な気候政策を行っている国のデンマークでさえ昨年10月の総選挙以降、気候変動対策がほぼ停止している」と指摘する。
ジャーマンウォッチのヤン・ブルク氏は「各国は既存の対策や目標を土台に努力を積み重ねる必要がある。再エネ容量を3倍にし、エネルギー効率を倍増させ、30年まで化石燃料の石炭、石油、ガスの使用を大幅に削減する拘束力のある決定がなされればパリ協定に沿った道筋を開くことができる」と語る。
日本がランクを落としていることについて、ブルク氏は筆者の質問に「日本の評価が低いのはすべてのセクターで非常に低い目標を設定していることや、1人当たり排出量に大きく関係している。温室効果ガスや再エネ、エネルギー消費に関して良い目標が設定されていない。ただ、新しい再エネ発電の建設を始めているのは良いトレンドだ」と答えた。
世界の統計サイト「ワールドメーター」によると、日本の1人当たり二酸化炭素排出量は9.76トンで世界26位。ブルク氏は「日本が石炭や他のエネルギー源に対して自然エネルギーを増強する傾向を続けるならランキングが上昇するチャンスはある。しかし過去に比べてはるかに速いスピードでなければならない」と警鐘を鳴らす。
日本の「取り残され感」はCOP28でもはや決定的となった。
経済を犠牲にしてまで対策を進める気はない中国
中国を抜いて世界で最も人口の多い国になったインド(14億人)は7位にランクされた。評価が高い理由は1人当たりの排出量やエネルギー消費量が少ないことだ。自然エネルギーを積極的に拡大しているが、石炭への依存度は依然として高い。インドは再エネの割合を増やし、化石燃料への依存を減らす必要があるが、30年の再エネ目標は低すぎる。
インドは相対的な排出量目標を設定し、他国よりも自然エネルギーの開発を進めている。非常に低い水準にある排出量は増加しているとはいえ、奇跡的な高度成長を遂げた中国ほど高い軌跡をたどっていない。自然エネルギーの拡大により排出量を減らすことができなければインドは目標を達成できないという。
世界最大の石炭生産国である中国の1人当たり排出量はこの20年間で大幅に増加し、現在では世界の平均を上回っている。再エネを強力に成長させ、エネルギー効率を向上させるが、30年までにガス生産量を増やす予定だ。不動産バブル崩壊でバランスシート不況に陥る中、化石燃料を使って経済のアクセルを踏まざるを得ないのが現状だ。
中国に次いで世界第2の排出国、米国の専門家は気候変動に関連したインフレ抑制法が再エネへの大規模な投資につながったことを歓迎している。しかしあらゆる分野でより具体的な政策の実施が求められている。パリ協定から離脱したドナルド・トランプ前米大統領が来年の大統領選で返り咲いた場合、状況をさらに悪化させる恐れがある。
11位から20位に転落した英国
世界の排出量の8割を占めるG20で高い評価を受けたのはインド、ドイツ(14位)、EU(16位)だけ。最下位サウジアラビアの1人当たりの排出量は着実に増加している。その一方で悪名高きジャイル・ボルソナロ前大統領からルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領に交代したブラジルは15も順位を上げ、23位になった。
ルラ氏は前大統領の問題のあるいくつかの政策を撤回。植林計画や再エネの加速は肯定的に受け止められた。しかし化石燃料の生産を拡大しており、パリ協定目標を達成できない恐れがある。ブルク氏は「ブラジルの動向に期待は持てるが、G20全体として自然エネルギー拡大を大幅に加速し、化石燃料をできるだけ早く段階的に廃止しなければならない」という。
英国は11位から20位に転落。リシ・スナク首相はガソリン車、ディーゼル車の新車販売禁止を30年から5年間先送りするなど、気候変動対策を進めるいくつかの法案を撤回した。「英国で起きていることは私たちが必要としていることとは正反対だ。政府は新たな炭鉱を承認し、北海で何百もの新たな石油・ガス採掘許可を与えた」(ジャーマンウォッチ)
CANインターナショナルのシニアオフィサー、ジャネット・ミロンゴ氏は「化石燃料の最大生産国および輸出国が最悪のパフォーマンスを見せていることを改めて示している。すべての国家は公正、公平かつ迅速な方法で、100%再エネシステムへのスケールアップに向け、すべての努力と資金を集中させるべきだ」と指摘している。
●松野官房長官を更迭へ 岸田首相打撃、内閣改造論も浮上 12/9
岸田文雄首相は、自民党安倍派が政治資金パーティー収入の一部を裏金化していた問題で、1000万円超の還流を受けた疑いがある松野博一官房長官(61)を交代させる方針を固めた。事実上の更迭とみられる。政府・与党関係者が9日明らかにした。同派の世耕弘成参院幹事長や高木毅国対委員長ら党幹部にも疑惑が拡大。首相の任命責任が厳しく問われ、深刻な打撃となるのは必至だ。
首相は9日夜、首相公邸で麻生太郎党副総裁と会談。人事に関し、意見交換したとみられる。
政権内には松野氏以外も含め内閣改造・党役員人事を行う案が浮上している。首相は13日の臨時国会会期末や今月下旬の2024年度予算案の閣議決定もにらみながら人事のタイミングを探るとみられる。派閥実務を取り仕切る事務総長の高木氏について、党内で「辞任は避けられない」との見方が強まっている。
安倍派はパーティー券のノルマを超えて所属議員が売った収入を政治資金収支報告書に記載せず議員側に還流させた疑いがあり、東京地検特捜部が捜査している。9日新たに同派の塩谷立座長、萩生田光一政調会長、西村康稔経済産業相の還流疑惑が表面化した。
世耕氏は9日、京都府宇治市で記者団に「疑念を持たれることは政治不信につながる。国民に深くおわびしたい」と陳謝。進退については「職責を全うしていきたい」と述べ、参院幹事長の辞任は否定した。一方で「私の発言が捜査に影響を与えてはいけない」と詳細な説明は避けた。
問題発覚以降、松野氏は「政府の立場」を理由に説明に応じず、8日の衆参予算委員会でも、自身の政治団体について「適正に処理してきた」としながら、具体的な内容は「答えは控える」と繰り返した。立憲民主党の泉健太代表は静岡市内で記者団に「身を引く決断をすべきだ」と述べ、速やかな辞任を要求した。
●自民安倍派 派閥幹部6人含む大半の所属議員側にキックバックか 12/9
自民党の最大派閥、安倍派の政治資金パーティーをめぐる問題で、派閥の幹部6人を含む安倍派の大半の所属議員側がパーティー収入のキックバックを受けていたとみられることが関係者への取材で新たにわかりました。いずれの議員側も政治資金収支報告書に収入として記載していなかったとみられていますが、キックバックの金額は議員によって大きな差があり、東京地検特捜部が資金の流れなど、詳しい経緯を調べているものとみられます。
自民党の最大派閥、安倍派「清和政策研究会」の政治資金パーティーをめぐっては、安倍派幹部の松野博一・官房長官や高木毅・国会対策委員長、世耕弘成・参議院幹事長など10人以上の議員側が去年までの5年間で1000万円を超えるキックバックを受け、政治資金収支報告書に収入として記載していない疑いがあることがわかっています。
さらに、安倍派の座長を務める塩谷立・元文部科学大臣や萩生田光一・政務調査会長、西村康稔・経済産業大臣など、派閥の幹部6人を含む安倍派の大半の所属議員側がパーティー収入の一部について、キックバックを受けていたとみられることが関係者への取材で新たにわかりました。
関係者によりますと、議員側の政治団体はいずれも政治資金収支報告書に収入として記載していなかったとみられていますが、キックバックの金額は議員によって大きな差があるということです。
派閥の運営を取りしきる安倍派の事務総長は、松野官房長官が2019年9月からおととし10月まで、西村経済産業大臣がおととし10月から去年8月まで、去年8月から高木国会対策委員長が務めています。
東京地検特捜部はキックバックを受けていた安倍派の所属議員などからの任意の事情聴取について検討し、資金の流れなど、詳しい経緯を調べているものとみられます。
●「裏金も引き継いだのか」昭恵さん、安倍元首相の政治資金3.4億円 12/9
故・安倍晋三元首相の妻・昭恵さんが、巨額の政治資金を非課税で相続したことが問題になっている。
安倍元首相は政治団体「晋和会」と「自由民主党山口県第四選挙区支部」の代表だったが、死去した2022年7月8日に昭恵さんが両団体の代表を引き継いだ。その後、晋和会は第四支部や元首相のほかの政治団体から寄付を受け、総額は2億1471万円に上るという。
現行法では政治資金は非課税扱いで、政治団体の代表を親族が引き継いでも税金はかからない。つまり合法なのだが、それでも、昭恵さんは「私人」と閣議決定されたこともあり、政治資金を “私物化” しているのではないかとの批判が巻き起こっている。
「12月8日の予算委員会で、政治資金パーティー券問題に続き、野党は昭恵さんの非課税相続について追及しました。立憲の蓮舫氏は、寄付のほか晋和会のパーティー券収入や繰越金などを加えると約3億4000万円になると指摘し、それがすべて非課税であることを参考人の国税庁次長に確認しています。
蓮舫氏は岸田首相に対し、『この制度変えませんか?』と問いかけましたが、首相は『政治団体の関係者が判断すること』などとズレた答えしか返しませんでした。
さらに蓮舫氏は、政治家の世襲問題に踏み込み、二世議員の宮下一郎農林水産相や自見はなこ内閣府特命担当相にも “遺産” について問いただしました」
「X」(旧Twitter)では、昭恵さんに対する厳しい声が殺到している。
《政治家がこれで金を受け継ぐのもおかしいのに昭恵は私人だろ》
《芋づる式だな。自民党アウト》
《怒りしかない》
《安倍昭恵さんの政治資金の継承が無問題なら、もし自見大臣のお父さんが亡くなったら、政治団体の政治資金をお母さんが継承。次に、お母さんが自見大臣の政治団体に寄付した後に解散すれば、政治資金はまんま継承ということでしょうか。余ったり解散した場合は返還というのが政党交付金だそうですが…》
自民党・安倍派では、パーティー券の販売ノルマを超えて集めたカネを議員側にキックバックし、しかも政治資金収支報告書に記載していなかった “裏金問題” が騒動になっている。そのため、
《安倍昭恵は裏金も引き継いだのだろうか・・・》
《この手口に対する課税、も追加で。安部晋三のキックバックはどのぐらいの規模だったのだろう?そして、この迂回の手口でどのぐらい遺産が税金逃れて安倍昭恵に流れたのだろう?》
などのコメントも寄せられている。
立憲民主党は10月20日、政治資金規正法の一部を改正する法律案(政治資金世襲制限法案)を衆議院に提出。議員が引退や死去した際、政治団体の代表を配偶者または3親等以内の親族が引き継ぐこと、政治団体が親族の政治団体に寄付することを禁じる内容だ。
「世襲」を抑制する狙いがあるが、はたして法制化は実現するだろうか。
●菅前首相、岸田内閣惨状で「反撃の機会」も発言慎重 「ひでえよな」 12/9
岸田文雄内閣の混乱を巡り、菅義偉前首相(衆院神奈川2区)が発言に慎重だ。自民党で無派閥を貫き退陣を余儀なくされた過去を踏まえれば、主要派閥が関わったとされる政治資金パーティー券収入キックバック問題は「反撃の機会」(菅氏周辺)。しかし「ひでえよな」などと周囲に短く感想を漏らすにとどめている。背景には「少しでも動けば内閣どころか政権自体が倒れかねない惨状だから」(同)と温情とも危機感ともとれる現実があるようだ。
「派閥に居続けることが国民にどう見えるかを意識する必要がある。派閥政治を引きずっているというメッセージになる」。菅氏は今年1月発売の月刊誌「文芸春秋」のインタビューで首相就任後も派閥会長を続けた岸田首相に派閥政治との決別を促した。
首相はその後も菅氏と面会した際に派閥と距離を置くよう促されたが一顧だにしなかった。今回の問題を受け、ようやく派閥会長を辞し、当面の派閥パーティー開催を自粛する方針を表明したものの、8日の衆参予算委員会では「まるで的外れ」(立憲民主党の後藤祐一氏=衆院16区)などと野党から酷評された。与党内からも「閣僚や党役職者も派閥から外すぐらいしないと、とても国民から理解を得られない」(閣僚経験者)と批判が相次ぐ。
 12/10

 

●政治資金パーティーを巡る問題 安倍派から「収支報告書に記載しないで」と 12/10
自民党・安倍派の政治資金パーティーを巡る問題で、販売ノルマを超えた収入について、安倍派から議員側に「収支報告書に記載しないで欲しい」と指示があったことがわかりました。
関係者によりますと、安倍派の政治団体「清和政策研究会」では、パーティー券の販売ノルマを超えた収入が所属議員側にキックバックされ、収支報告書に記載されていない疑いがあります。
その後の取材で、議員側が販売ノルマを超えた収入について安倍派に問い合わせたところ、「収支報告書に記載しないで欲しい」と指示があったことがわかりました。
この問題を巡っては安倍派の幹部6人が記載のないキックバックを受けた疑いがあり、東京地検特捜部が資金の流れなどを調べているとみられます。
●自民・安倍派6幹部裏金疑惑 年内の内閣改造・党人事案も浮上 12/10
岸田文雄首相は9日、自民党の清和政策研究会(安倍派)が政治資金パーティーの収入の一部を裏金化していた疑惑を巡り、松野博一官房長官を交代させる方針を固めた。事実上の更迭となる。他に高木毅・党国対委員長ら安倍派幹部5人にも同様の疑惑があり、松野氏らを近く交代させる案や来年度予算編成後の12月下旬以降に内閣改造・党役員人事に踏み切る案が浮上している。
首相は9日夜、長崎出張から戻った後、公邸で麻生太郎副総裁と会談した。今後の対応について協議したとみられる。
安倍派では松野氏のほかに高木氏、西村康稔経済産業相、萩生田光一・党政調会長、世耕弘成・党参院幹事長、同派座長の塩谷立元文部科学相らにも同様の疑惑が浮上。松野氏に続いて、進退が問われる可能性がある。
松野氏は2019年9月〜21年10月の約2年間、派閥の実務を取り仕切る事務総長を務めた。直近5年間で派閥から1000万円を超えるキックバック(還流)を受け、政治資金収支報告書に記載していない疑いがある。
野党は8日の衆参予算委員会で首相を追及するとともに、松野氏の辞任を要求したが、首相は「政府のスポークスマンとしてしっかりと発信してもらう」と述べ、更迭を否定していた。
「内閣の要」となる官房長官の辞任は政権にとって大きな打撃だ。過去には第2次森内閣の中川秀直氏が00年10月、女性問題などを受けて辞任。第2次小泉内閣の福田康夫氏も国民年金保険料の未納問題などで04年5月に辞任している。
高木氏は安倍派の現事務総長。地元の福井県越前町で9日、記者団に「慎重に事実関係を確認し、適切に対応する」と述べた。自身の進退については「職責をまっとうする」とした。前事務総長の西村氏は8日の衆院予算委で還流の有無について「どこかの時点でしっかりと説明責任を果たしたい」と述べた。
また世耕氏は9日、京都府宇治市内で疑惑について「政治不信を起こすことにつながり国民の皆さんに深くおわび申し上げる」と陳謝。ただし、参院幹事長職については高木氏と同じく「職責をまっとうしていく」と述べ、辞任を否定した。
政治資金パーティーを巡る問題では、自民党最大派閥の安倍派のほか二階派でも裏金疑惑が浮上。岸田首相は6日、各派閥の政治資金パーティーの当面自粛や忘年会・新年会を控えることなどを指示したのに続き、「私自身が先頭に立って政治の信頼回復のために努力する」として、自身が所属する宏池会(岸田派)を7日付で離脱した。
●証人喚問は当然 自民・世耕氏、キックバック問題 12/10
自民党・安倍派の政治資金パーティをめぐる問題が「令和のリクルート事件」に発展しそうなほど広がりを見せている。
「パーティー券をノルマ以上売り上げた議員たちに、5年間で総額1億円超と見られるカネがキックバックされながら、政治資金報告書には無記載でした。
おもな受け取り手として疑惑の目が向けられているのが、『安倍派5人衆』と呼ばれる松野博一官房長官、西村康稔経済産業大臣、萩生田光一政務調査会長、高木毅国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長です。
これまで、各議員とも『捜査中のことなので』『政府の立場としてお答えすることは差し控える』など、のらりくらりと言い訳を続けています」(政治担当記者)
これまで、他の議員がスキャンダルを起こすと「しっかり説明責任を果たしてほしい」と言いながら、いざ自分のことになると反故にするらしい。
そうしたなか、世耕議員のかつてのツイートが発掘されて話題となっている。
2010年、東京地検特捜部が20億円を超える政治資金規正法違反で小沢一郎衆院議員の秘書経験者3人を政治資金規正法違反で逮捕・起訴、一方で小沢議員自身が不起訴処分になったことに対し、当時のツイッター(現在のX)に、こんな投稿をしているのだ。
《小沢幹事長不起訴?会計システムまで構築し、収支報告時には、貴重な限られた時間を犠牲にして、担当秘書にひとつひとつ質問しながらじっくりと確認した上で書類を提出していることが、空しくなってきます。》(2010年2月3日)
《証人喚問は当然。このような疑惑に関して自民党は過去ある程度証人喚問に応じてきましたよ。ゼロ回答はあり得ない。》(2010年2月17日)
「さらに前年の2009年12月には、氷代、モチ代と呼ばれる党本部から夏と冬に渡される一時金について《党から各議員の政党支部に振り込まれ、きちんと政治資金収支報告に載せるようにし、透明化しました》などとつぶやいていました。
しかし、今回の疑惑では歯切れが悪すぎます。安倍派から世耕議員へのキックバックは1000万円とも言われますが、12月9日、京都府内の講演では、『私の立場で発言すると捜査そのものに影響を与えかねないということで、今なかなかご説明できない。けじめがついて節目が出てくれば、私もしっかり説明したい』と語り、参院幹事長の役職については続投の意向を見せました」(事件担当記者)
その世耕議員、小泉政権が衆院選で大勝した2005年、本誌の企画で漫画家の弘兼憲史氏と対談している。テーマは「コミュニケーション」。世耕議員はNTT時代、広報部報道部門報道担当課長を務め、当時は自民党の広報戦略担当だった。
その対談では「世間がどのように(党や議員を)見ているかを知ることが大切」「コミュニケーション上手というのは、受け手(国民)の立場になれるかどうかだと思う」と述べ、さらに「内外に対して『潮目を正確に伝える』ことが大切」とも力説していた。
はたして世耕氏は、自らの疑惑を明確に説明し、『潮目を正確に伝える』ことができるのか――。
●パー券“キックバック裏金”疑惑で「5人衆」揃い踏み… 12/10
「5人衆」がそろい踏みでキックバックの裏金をつくっていたようだ。
自民党最大派閥の安倍派(清和政策研究会)が政治資金パーティー収入の一部を政治資金収支報告書に記載せず、所属議員にキックバックして裏金化していた疑いのある問題。9日付の朝日新聞は、1000万円超の裏金疑惑が浮上した松野博一官房長官(61)に加え、安倍派座長の塩谷立・元文部科学相(73)、高木毅・党国会対策委員長(67)、世耕弘成・党参院幹事長(61)、萩生田光一・党政調会長(60)、西村康稔経済産業相(61)もそれぞれ、直近5年間で1000万円超〜約100万円の裏金のキックバックを派閥から受け、収支報告書に記載していない疑いがある、と報じた。
疑惑が浮上した名前は、いずれも元安倍派会長の森喜朗元首相(86)が提案した「5人衆」と呼ばれ、派閥を統率する立場にあった議員たちだ。野球チームで言えば、監督、ヘッドコーチ、打撃・守備コーチ、2軍監督といった、チームの陣頭指揮を執るべき首脳陣がそろって“悪事”に手を染めていた疑いがあるということ。SNS上で《安倍派の終わりの始まり》との声が出ているのも当然だろう。
司直の手にゆだねる前に国会で証人喚問するべき
《5人衆がいなくなったら他の安倍派議員はどこに行くの?またキックバック派閥を探すのか》
《安倍派が最大派閥だったワケが分かった。カネでつながり、キックバックの裏金で私腹を肥やせるからだったんだね》
《メディアも「安倍派5人衆」などと盛んに持ち上げていたことを反省するべき》
官房長官や経済産業相だけでなく、政権与党の幹部が裏金まみれだったとすれば、司直の手にゆだねる前に国会で証人喚問するべきだろう。
ちなみに旧民主党政権で政治資金の問題が発覚した2010年2月、世耕氏は自身のSNSにこう投稿していた。
《証人喚問は当然。このような疑惑に関して自民党は過去ある程度証人喚問に応じてきましたよ。ゼロ回答はあり得ない》
まさにその通り。世耕氏ほか「ゼロ回答」はあり得ない。
●元安倍派・豊田真由子元衆院議員が明かす「政治資金パーティーと裏金」 12/10
問題が指摘されている自民党の派閥のパーティー券をめぐる裏金疑惑。そもそも『政治資金パーティー』とは何なのか?『裏金』とは何に使われるのか?元衆議院議員で自民党・安倍派に所属していた豊田真由子さんと、長年政治記者として永田町を取材したジャーナリストの武田一顕さんが、基本から解説。裏金の使い道について豊田さんは「私も言われました。地元の有力者に初めて挨拶に行った時に、応援してもらいたかったら、持って来いよって」と実体験を明かし、国会議員の金銭事情や、地方の有力者との力関係などについても赤裸々に語っています。
派閥パーティーは『濡れ手で粟』春先にはパーティー券売りで議員は多忙
――そもそも政治資金パーティーとは何でしょうか?
武田一顕さん「パーティーって言うが、何かおめでたいことがあって、お祝いしているわけじゃないんですよ。お金を集めるためにパーティーはあるんですよ。政治資金規正法にも『パーティー』と書いてありますから、それでやってるわけですね。その中で、派閥のパーティーは要は『濡れ手で粟』でね、パーティー券1枚ってほとんどのケースは2万円なんだけど、2万円でホテルに人に集まってもらう。出る食べ物はほとんど安いものしか出ない。から揚げとか焼き飯を出して、少なくて腹が膨れるようにしてるんだって、昔、清和会の世耕さんが言っちゃったの。安くて腹が膨れるものを出すんだと言ったけど、そういうのを出すわけです。しかもその食べ物でさえ、日本人はなんかあんまりこういうところに行ってガツガツと、ビュッフェスタイルだから(ガツガツ)行くと格好悪いというので、食べないから結構余ってるわけ。そうすると、ウーロン茶やビールを一杯飲んで2万円払ってるわけ。そしたらもう丸儲けでしょ。それをやるためのシステムがパーティーということです」
――パーティーは党や政治家個人が行うパーティーもあります。そのお金に関しては法律で決められています。政治資金収支報告書にちゃんと書いてくださいということで、お金などの寄付を受けた場合は年間5万円を超えると記載が必要です。パーティー券の購入では、1回20万円を超えると記載が必要になってくるという法律です。政治資金規正法で定められている「政治資金の収支の公開」は、収入・支出などを記載した収支報告書の提出を義務づけ、これを公開することで収支の状況を国民に明らかにするというものです。政治活動が国民の監視と批判のもとに行われるようにするというのが大原則になっています。今回、どうしてこんなに問題が指摘されているのということですが、政治家側は数か月前からノルマがあるって話ですよね?
武田さん「派閥のパーティーは大体4月か5月、春先の暖かい季節に開かれるんですけども、大体年が明けて、新年に議員はいろんな活動をするわけです。新年会に行ったりなんかして、それが終わって、今度春先ぐらいに議員事務所に行くと、秘書もいない議員本人もいないということで、どうしたの?と聞くと『みんなパーティー券を売りに行くので忙しい』と」
ノルマは「やるしかない」「みんなヒーヒー言っていた。不足分は自腹」
――国会議員の皆さんは政治の仕事をしっかりやってほしいんだけども、実はその陰で、こういったことをやらなければいけない状況になっている。豊田さんの場合は『若手のノルマは50枚から100枚』『ノルマはやるしかない』ということですが、これはどういうことですか?
豊田真由子さん「もうノルマって義務なので、派閥の所属メンバーである以上、やらない選択肢がない。重鎮の先生とかはノルマも大きいけどその分いろんな方が買ってくださるが、若手なんて世襲とか有力企業とかの一部とかじゃない限り、つてもないわけですよ。だからみんな『ヒーヒー』言ってましたし、足りない分は自腹で穴埋めするという。元議員とか議員とか何人も話を聞きましたけど、すごく格差があるのが1つの象徴です」
武田さん「もう1つは、なぜ一生懸命ノルマをやるかというと、ノルマ以上に売れば、キックバックがある。政治は人事とお金ですから、お金がそうやって戻ってくるのならノルマ以上に一生懸命売ろうっていう人が出てくる。あと、これから何回も議員・当選回数を重ねていくと、政務官とか副大臣とか大臣になる。そういうときに、派閥から推薦するわけですよね。総理大臣に『この人を大事にしてくれ』と言うときに、2人同じような人がいたとして、派閥の親分としてみれば、パーティー券を多く売った人の方が言いやすいわけですよ。そういう意味では人事に関わってくるから、みんな一生懸命になる」
「とにかく下っ端はノルマは義務なのでやるしかない」
豊田さん「閣僚とか重鎮クラスになったら、どれだけの集金力があるかが、派閥に対しての貢献度になると思います。しかし政務官・副大臣は単なる順送りだし、みんなノルマが同じなので、別に差はつかないわけです。私は2期しかやっていないので下っ端の話しかわかんないんですけど、下っ端においては別に人事とか全然関係なく、とにかく義務だからやんなきゃっていうだけですね」
――パーティー券をどれだけ売ったかが評価になっていること自体がおかしいような気もしますが?
武田さん「パーティー券を売るのと政策の能力は違うんだけど、どっちかって言った時に不満が出ないようにするためには、先にみんな大臣をやりたいわけだから、そのときにそれが一つの尺度として言えるというのはありますよね」
――派閥に入るメリットは何なのですか?
武田さん「派閥に入ると、大臣になるときに総理に推薦してもらってなりやすくなる。派閥がないと、人事のときに優遇されないというのはあります。今だって安倍派が一番大臣の数が多いということですよね」
「重鎮」とのパーティーでの利益率の差は大「富める者はますます富む」
――そして、個人のパーティーでは利益率に個人差が大きく出るということですね?
豊田さん「だからこれも本当に重鎮の人は規模も回数もむっちゃ大きくて、しかも人気者は、みんな料理が小さくても飲み物だけでも来るんですよ。だから利益率がめっちゃ高いわけです。でもペーペーは来ていただけるだけでもありがたいと思うから、私もそうでしたけど、きれいな会場においしいご飯をたくさん用意して、自分で試食もしました。だから利益率だってちょっとだけです。仕組みとして、富める者はますます富み、富まざるものはますます貧しくなるというのは本当にそうでした。日本だとお金持ちしか政治家になれないし、なり続けていけないっていう仕組みなんですよ。貧民は大変」
税金で払われる秘書の給与は3人分「頑張れば頑張るほど赤字に」
――元衆議院議員の佐藤ゆかりさんにお話を聞きました。佐藤さんは“問題提起したいのは、日本の民主主義の政治は税金だけでは賄われず、資金調達をしなきゃいけない部分があまりにも大きすぎる”と話します。また、アメリカは秘書の15人分ぐらいの給与は税金で賄うことができ、すると政策に集中ができると。日本は税金で給与が支払われる公設秘書はわずか3人。10人前後は必要であり、残り7人〜8人前後は自腹で支払わないといけなくなる、ということのようです。
豊田さん「一番お金がかかるのは人件費なんですね。アメリカの話で言うと、上院は議員1人あたり4億1000万円、人件費分の公費が出るんですよ。それぐらいお金がかかることに対してサポートがあるし、それは公費だけじゃなくて一般の方からの献金もあって。一方で日本は公設秘書が3人なので、小さい会社を経営してるみたいなものなんですね。事務所の運営、人件費以外にも家賃や広報ビラの作成、あと何百という会合に出ていて、その会費などもあります。2015年に大阪大学の濱本先生が行った調査では、全国会議員の平均で収入が4000万円、支出が4600万円。普通に真面目に、地元にお金配るとかしなくても普通にやっていて、それだけ赤字なんです。頑張れば頑張るほど赤字になる。入りよりも出が多いというのが普通なんですよ。だから、元々資金に余裕がある世襲の人や有力家系の人がどんどん有利になっていくし、その人たちはお金が足りないってことで窮しなくていいわけですよ。でも貧しい者たちは、どうしよう今月払えないかもってなるから、いろいろ心を悩ませなきゃいけなくなる」
「政党交付金ももらうが…旧文通費と合わせても足りない」
豊田さん「(政党)交付金ももらうんですけど、自民党の場合、1人年間1000万円。政党交付金と旧文通費などを合わせても3000万円ぐらい。足りないんですよ」
アメリカ出身のタレント・REINAさん「それがおかしいんじゃないですか。もらえるお金の中で整理をすることができないっていうのがちょっとおかしい」
豊田さん「その秘書の人の分のお金をアメリカみたいに公費で十二分みますとかだったらだいぶ変わると思いますけど」
武田さん「現実問題として日本で、政治家1人につき1億円面倒を見ますという法律は絶対に通らないです。通常国会で出したからって絶対に通らないから、今の額の中でやれるように、政党交付金は300億円以上あるわけですよ。本当はその中でできるようにしなきゃいけないんだけど、『サービス合戦』になっちゃって、地元でできるだけ秘書が多い方がいいとかそうなっていくと人件費が重なって、当選するためにはいくらでもお金がかかってしまうシステムになっちゃってるんですね」
問題とされている不記載のパターンは?
――政治資金パーティーをめぐる疑惑についてです。例えば、ノルマ100万円として、実際には150万円売った場合です。150万円が派閥に入り、そのうちノルマ分より多い50万円がキックバックされて議員に入るというパターン。派閥の方は50万円分が不記載で、そして議員の方も不記載に。これが問題だと言われています。パターン2は、150万円がまず議員に入って、ノルマ分の100万円を派閥にあげて、そして50万円は自分がキープするというもの。不記載なのが問題ということでしょうか?
武田さん「政治資金規正法は、お金をいくら集め、いくらお金を使ってもいいですよ、ただし全部透明にして、何に使ったか、どこからもらったか全部書きましょうというのが法律の趣旨なんですよね。しかし、不記載をやっちゃったら結局これが裏金、隠し金になっちゃう、だからそれはいけないですよねと。今それが派閥の中で安倍派とか二階派であったのではないかということで大問題になって検察が動いているという話。書きたくないようなことに使ってると思われても仕方ないから、このお金は一体何に使ってるの、裏金って何なんだって話になるわけでしょ」
裏金の考えられる使い道に『選挙の時の票の取りまとめ』
――先ほど示した例では、50万円が浮いているが、これが裏金なんじゃないかということでいうと、何にお金を使っているのか。考えられる主な使い道は2つで、1つは選挙の時の票の取りまとめ、もう1つは完全な私的流用ということなんですね?
武田さん「やはり議員は選挙に通らないといけない。サルは木から落ちてもサルだけど、選挙に落ちた政治家は人間でもない人間以下だって言われるぐらいですが、とにかく選挙に通らなきゃいけない。そうすると、選挙の時に票を一生懸命取りまとめてもらうために、昔は個々人にお金を1万円、2万円払っていたことがあるけど、今はさすがにそれはできないから、票を持っているような有力者にお金を渡す。そういうのは結局いけないお金だから表に出てこないわけですよ。表に出てこない、絶対にわからないようにやるから」
「応援してもらいたかったら持って来いよ」
豊田さん「私も言われました。地元の有力者の人に初めて挨拶行ったときに、
『応援してもらいたかったらさ…持って来いよ』って言われるんですよ。私はその世界に初めて入ったからびっくりするわけですよ。だけど、その方たちは数十年それでやってきているので、逆にそれが当たり前で。それはお断りしました」
――どういう立場の人なんですか?
豊田さん「詳しくは言えませんけど、地方議員さんや首長さんとか。党本部ってすごく偉いイメージがあると思うんですけど、違うんですよ。一番権力的にドロドロしているのは地元のおっちゃん達ですよ。それで何が言いたいかっていうと、国会議員って、偉いと思っているのは幻想で、偉い人はいっぱいいますけど、新人とか若手とか公募で選ばれた人は地元のヒエラルキーの中では最下層なんですよ。だから無茶苦茶いじめられるし、金持ってこいって言われるし、土下座しながら
何とか認めてもらいましょうってやってるから、もう一番立場が弱いんです。『金も持ってこないお前を応援するメリットが俺達に何があるんだ、馬鹿野郎』って言われて、私の場合、階段から突き落とされて骨折とかもしてるわけです。そこで屈服してお金払う方がたぶん平和なんです。お金を配るっていうのは誤解があって、こっちが『応援してくださいよ』ということでお金を渡してやっていると思うかもしれないですけど、多分ケースによっては脅されて持って来いよって言われて、持ってくることもあります」
――2つ目の「完全な私的流用」とはどういうことでしょうか?
武田さん「完全な私的流用というのは、例えば、一番ひどいのは家を買うときに使っちゃったとか。私なんかがたまに聞くのは、ホステスがいるクラブとかに行くお金、あるいはキャバクラ。交際費に使っている。それは書けばいいんです、本当は。でも収支報告書に書けないじゃないですか。昔は収支報告書に書いてあるお店をよく調べたら、SMクラブだったとかそういうのがあるわけです。そういうのはわかったときにみんなに批判されるからもう書けないと。でも、やっぱりどうしても議員の中だとそういうところに行きたい人が出てくるから、そういう人は裏金で行っているんじゃないですかとなるわけですね」
何も語らぬ歴代事務総長「1月の臨時国会までに特捜部で動き出るか」
――安倍派の要職の人たちは何もしゃべらないのですが、今後はどんなことが考えられますか?
武田さん「東京地検特捜部が動いていますから、どういうふうになるか。12月13日で臨時国会は終わります。国会の最中は国会議員は不逮捕特権で逮捕されないですね、基本的に。だから、終わった後、次は1月に通常国会が始まりますから、それまでに地検で動きが出るか。今一番言われているのは安倍派ですから、安倍派の中で逮捕者が出るか。安倍派は戦後政治の中で幹部が逮捕されたことがない派閥なんです。珍しい。だから今までずっと派閥が逮捕されていなかったところから幹部が逮捕されるとなれば、戦後政治始まって以来のことになるから、びっくり仰天となります」
●安倍派のパーティー券問題 自民党3議員も4000〜5000万円キックバック 12/10
自民党の派閥の政治資金パーティーの問題で、安倍派の議員3人が4000万円から5000万円あまりのキックバックを受けていた疑いがあることがわかりました。
安倍派の政治資金パーティーでは、収入の一部を議員側にキックバックし、収支を報告書に記載せず、裏金にしていた疑いが出ています。
関係者への取材で、過去5年間で大野泰正参院議員側が5000万円あまり、池田佳隆衆院議員側と谷川弥一衆院議員側がそれぞれ4000万円を超えるキックバックを受け、報告書に記載していないとみられることがわかりました。
安倍派では松野官房長官側などにも1000万円を超えるキックバックを受け取った疑いが出ています。
●野党結集の橋渡し役に 新党結成の前原誠司氏 12/10
国民民主党を離党し、新党「教育無償化を実現する会」を立ち上げる意向を表明した前原誠司衆院議員は、9日までに時事通信のインタビューに応じた。政権交代実現に向け、野党結集の橋渡し役を担っていく考えを示した。主なやりとりは以下の通り。
――新党結成に踏み切った理由は。
民主主義には選択肢が必要だ。いつ選挙があるか分からない中、野党の立ち位置で野党結集を進めたいと思い、仲間と共に決断した。
――国民民主の方針と決別するためか。
党代表選でも、政策本位で「非自民・非共産」の野党結集を訴えた。ただそれ以降、表面的にも水面下でも、「自公国」路線が明確になってきたと判断した。
――具体的には。
(元国民参院議員の)矢田稚子氏の首相補佐官就任、それ以降の自民と国民の幹部同士の連携、そして(ガソリン税を一時的に引き下げる)トリガー条項だ。
――トリガー条項の凍結解除を巡る自公国協議が引き金となったのか。
今は12月だが、予算編成や税制改正の中で議論されていない。本当にできるのか。トリガー条項も大事だが、実現できないかもしれないのに、なぜこんなに重心を移しているのかよく分からない。
やるという将来の約束を結び、去年同様に(来年度)本予算に賛成する可能性が高いとみている。本予算の賛否は与党と野党の分水嶺(れい)だ。立場を明確にする時期が来たと判断をした。
――野党結集で想定する政党は。
一定の範囲に入ってくるのは立憲民主党と日本維新の会だ。共産党、社民党、れいわ新選組は入らない。政策的により近いのは維新だ。ただ、具体的な協力についてはまだ両党とも話をしていない。
――政党交付金目当てではないかという批判もある。
そんな覚悟でやっていないし、交付金に期待もしていない。
――今の岸田政権をどう見るか。
死に体だ。岸田文雄首相は監督責任が問われているのに、のらりくらりと逃げているのは自民総裁として失格だ。自民は解党的出直しをしないといけない状況になる可能性もある。
――石破茂氏の動きに注目しているか。
注目している。長い付き合いだ。新党をつくって自民で唯一エールのメールをくれたのが石破氏だ。私がぶれていない、志を持ってやっていると思ってくれている。
――連合との関係をどう築くか。
連合や産業別労働組合(産別)からは「残念だ」という声もあるが、出入り禁止にはなっていない。ある産別のトップは私に「(維新との)橋渡し役を期待する」と言った。積極的に担いたい。
●内閣不信任で立民逡巡 裏金疑惑拡大も「突出」懸念 12/10
臨時国会の会期末を13日に控え、野党第1党の立憲民主党が岸田内閣に対する不信任決議案を提出するかどうか決めかねている。
自民党派閥の政治資金パーティー収入裏金化疑惑の広がりを受けて積極論が強まる一方、共産党を除く他の野党の同調をどこまで得られるか見えないためだ。11日の執行役員会で対応を協議する。
「もう内閣そのものに正統性がない」。立民の泉健太代表は9日、静岡市内で記者団に岸田政権は国民の信任を失っているとの認識を表明。ただ、衆院への不信任案提出は「何が最も岸田政権を変えるために必要なのか、最終的に決めたい」と答えるにとどめた。
立民は安倍派の疑惑を中心に国会で追及してきた。内閣支持率は低迷しており、ベテランは「不信任案を100回出しても足りない」と強調。閣僚経験者は「与党に踏み絵を踏ませるためにも出すべきだ」と訴える。
それでも泉執行部が逡巡(しゅんじゅん)するのは、野党側の足並みが乱れれば逆効果になりかねないと懸念するためだ。
共産党は不信任案が出れば賛成する方向。一方、政権への接近が目立つ国民民主党は反対に回るとみる向きが多い。次期衆院選の野党協力をにらめば、立共2党で突出する形は避けたいとの思惑が立民にある。安住淳国対委員長は「政治的に有効か見極めたい」と語る。
カギとなるのは野党第2党の日本維新の会だ。馬場伸幸代表は8日の会見で「立民はあれほど予算委員会で追及するなら、不信任案を堂々と出すべきだ」と指摘し、賛成する可能性に言及した。
ただ、維新はかねて不信任案提出を「会期末の茶番劇」とやゆしてきた。立民側には不信感が根強く、ある中堅は「世論と維新の動向を見定めて決めるのだろう」と執行部の胸中を推し量った。
●安倍元首相が遺した「統一教会」と「派閥裏金」が炸裂、岸田政権は窮地 12/10
安倍晋三元首相が遺した二つの問題〜統一教会と派閥裏金〜が岸田政権を直撃し、岸田文雄首相はますます窮地に立っている。
政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑は安倍派を中心に東京地検特捜部の捜査が近く本格化する。内閣の要で安倍派事務総長を歴任した松野博一官房長官にも疑惑が浮上し、政権は大揺れだ。
岸田首相は各派閥に対し、当面の政治資金パーティーと年末年始の派閥行事の自粛を指示するとともに、首相在任中は自らも派閥を離脱し派閥会長からも退く意向を表明した。
これまで菅義偉前首相らから露骨に批判されても派閥会長にとどまる姿勢を示していたが、派閥の裏金問題が勃発し、世論の批判をかわすには自らが派閥を離れるしかないと考えたのだろう。派閥会長を退くことで自らが派閥批判の矢面に立つことから逃れたいという打算もあるとみられる。
一方、岸田首相が旧統一教会と友好団体トップと面会していた問題は、他人に責任転嫁できない問題だ。
朝日新聞によると、岸田首相は自民党政調会長だった2019年、米国のギングリッチ元下院議長と自民党本部で面会。その際に旧統一教会の友好団体「UPFジャパン」のトップである梶栗議長らが同席していた。朝日新聞はこの面会時の写真を独自入手してスクープした。
さらにギングリッチ氏や旧統一教会側への取材を続報。1面会は旧統一教会の友好団体が手配した2当初は安倍首相と会う予定だったが、都合がつかず、代わりに岸田氏と面会したーーという経緯を報じた。安倍氏が岸田氏に対応するように求めたとみられる。
岸田首相は「同席者は承知していない」と釈明したが、本当だろうか。自民党本部に「よく知らない人」を招き入れることがあるのか、旧統一教会側が面会を手配しながら岸田氏が「承知していない」ことなどあるのか、安倍氏から何も聞いていなかったのかーーなど疑問は尽きない。
この問題は、1旧統一教会が日米の政治家の橋渡しをしていた2岸田氏は安倍氏に言われるままに面会に応じていた3岸田政権の対米追従外交に旧統一教会が影響していた可能性があるーーなど、政治的に検証しなければならないことが多々ある重大ニュースである。
さらに岸田首相の「同席者は承知していない」が嘘だとすれば、政治責任は免れない。今後の国会で大きな焦点となろう。
派閥裏金にしろ、旧統一教会の友好団体トップとの面会にしろ、安倍氏が遺した重大問題のツケがいまになって回ってきたともいえる。
だがこれは岸田首相にとって自業自得の面もある。
そもそも岸田氏が2012年に前任の古賀誠元幹事長から宏池会会長の後継者として指名されたのは、総裁に復帰した安倍氏と同期で親しかったからだ。さらに安倍政権で外相に起用されたことが首相候補への大きな前進になった。
そして2021年の総裁選に勝利したのも、麻生太郎氏の後ろ盾に加え、決選投票で安倍氏の支援を受けたことが決め手となった。安倍氏がいなければ岸田政権の誕生はなかったといっていい。
安倍政権の膿が今になって噴出し、岸田政権を窮地に追いやっているのは、因果応報ともいえる。
当面の政治資金パーティーを自粛することや、首相在任中は派閥から離脱することは、急場しのぎの対策にすぎず、信頼回復への根本策とはいえない。
岸田首相は来年2月に鈴木善幸首相を抜いて宏池会歴代首相の在任期間第2位に躍り出る。創始者の池田勇人首相に続く在任期間を手にいれることが、岸田首相の悲願であると言われている。あと2ヶ月あまり。それまで何としても首相の座に居座るための「時間稼ぎ」としての「パーティー自粛」や「派閥離脱」と考えれば、辻褄があう。
来年3月の予算成立と来春に予定されている国賓待遇の訪米を花道に退陣するシナリオがますます現実味を帯びてきたといえるだろう。
●岸田首相、松野・西村・萩生田・高木氏を交代へ−報道 12/10
岸田文雄首相は、自民党・安倍派の政治資金パーティーを巡る問題で、裏金を受け取った疑いが浮上した松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、萩生田光一党政調会長、高木毅党国会対策委員長を交代させる意向を固めた。複数の政権幹部が明らかにしたとして、朝日新聞が10日付朝刊で報じた。
報道によると、世耕弘成党参議院幹事長の交代も検討する。近く事実上の内閣改造・党役員人事に踏み切る見通しで、政権の要職から安倍派幹部が一掃される情勢となった。首相は当初、捜査当局の動きを踏まえて対応する考えだったが、世論の批判が高まっていることを受け、疑惑を抱えた松野氏ら安倍派幹部を早期に交代せざるを得ないと判断したという。松野氏交代の方針については読売新聞が9日に報じていた。
内閣のスポークスマンである松野官房長官、半導体関連政策でけん引役を務める西村経産相が交代となれば、支持率低迷にあえぐ岸田政権にとって追い打ちとなる。自民党最大派閥・安倍派の萩生田氏、高木氏・世耕氏は党でも要職にあり、政治資金パーティーを巡る問題は政府と自民党の屋台骨を揺るがしている。
9日の共同通信の報道によると、高木氏は福井県で記者団の取材に、辞任を否定した上で、「政治不信につながり、おわびしたい」と陳謝。萩生田氏は高松市の党大会に出席し、「捜査の結果が出たら丁寧に説明したい」と述べた。世耕氏は京都府宇治市で記者団に、「職責を全うしたい」と辞任を否定し、講演では「国民の政治不信をかき立て、本当に申し訳なく思う」と語った。
政権中枢による裏金問題に対して国民の怒りが高まっており、岸田内閣の支持率が一段と低下することは避けられない。内閣支持率は直近で主要各メディアが実施した世論調査で、2012年12月に自民党が政権復帰して以来の最低水準を更新している。
●安倍派閣僚・自民党幹部の“更迭”案が岸田政権内で浮上 12/10
自民党・安倍派の政治資金パーティーを巡る問題で疑惑がもたれている松野官房長官に加えて、安倍派に所属するその他の閣僚や自民党幹部についても更迭する案が岸田政権内で浮上していることがわかりました。
岸田総理大臣は、派閥からのキックバックを収支報告書に記載していなかった疑いがもたれている松野長官を更迭する方針です。
さらに、同様の疑惑がもたれている西村経済産業大臣や自民党の萩生田政調会長、高木国対委員長、世耕参議院幹事長についても、複数の政権関係者から交代させるべきとの声が上がっています。
総理周辺は「安倍派を一掃するのはやむを得ない」と話していて、12月中に人事に踏み切る見方が強まっています。 
 12/11

 

●松野官房長官「与えられた職責を果たしていく」 1000万円超キックバック 12/11
松野官房長官は11日の会見で、安倍派から政治資金パーティーの収入から1000万円を超えるキックバックを受けて、政治資金収支報告書に記載していない疑いが指摘されていることについて「派閥において事実確認がなされている最中で、派閥の政治資金の取り扱いについて刑事告発がなされ捜査されていると承知している、自身の政治団体についても精査し適切に対処していく」とこれまでの答弁を繰り返した。
その上で、官房長官の役職の進退については「与えられた職責を果たして参りたいと考えている」と述べた。
●政治資金 橋本聖子元五輪相側 1000万円超キックバック受けたか 12/11
自民党の最大派閥、安倍派の政治資金パーティーをめぐる問題で、1000万円を超えるキックバックを受けたとみられる10人以上の議員側の中に、閣僚経験がある橋本聖子元オリンピック・パラリンピック担当大臣が含まれていることが関係者への取材で新たにわかりました。
安倍派では派閥の幹部6人を含む大半の所属議員側がパーティー収入のキックバックを受け、政治資金収支報告書に収入として記載していなかったとみられ、東京地検特捜部が資金の流れなど、詳しい経緯を調べているものとみられます。
自民党の最大派閥、安倍派「清和政策研究会」の政治資金パーティーをめぐっては、松野官房長官、高木国会対策委員長、世耕参議院幹事長に加え、萩生田政務調査会長、西村経済産業大臣、座長を務める塩谷元文部科学大臣の派閥の幹部6人を含む安倍派の大半の所属議員側が、パーティー収入の一部についてキックバックを受け、議員側の政治団体が政治資金収支報告書に収入として記載していなかったとみられることが明らかになっています。
このうち、去年までの5年間に1000万円を超えるキックバックを受けた議員側は松野官房長官など10人以上にのぼるとみられていますが、この中に、閣僚経験がある橋本聖子・元オリンピック・パラリンピック担当大臣が含まれていることが関係者への取材で新たにわかりました。
安倍派のキックバックの金額は議員によって大きな差があるということですが、大野泰正参議院議員側は去年までの5年間におよそ5000万円、池田佳隆衆議院議員側と谷川弥一衆議院議員側はそれぞれ4000万円を超えるキックバックを受けていたとみられるということです。
東京地検特捜部は、キックバックを受けていた安倍派の所属議員などからの任意の事情聴取について検討し、資金の流れなど、詳しい経緯を調べているものとみられます。
橋本聖子元五輪相「非常に反省 心からおわび」
橋本聖子元オリンピック・パラリンピック担当大臣は11日、国会内で記者団に対し「非常に反省をしており、国民の皆さんに政治不信を招いてしまったことに対し、心からおわびを申し上げたい」と陳謝しました。
その上で「刑事告発を受けている案件でもあり、いま申し上げることはできない状況だ。調査をしっかりとした上で、しかるべきときに説明責任を果たしていきたい」と述べました。
大野泰正参議院議員「しかるべき時期に説明責任果たす」
大野泰正参議院議員は「みなさまに大変ご心配をおかけし申し訳ありません。大変恐縮ですが、刑事告発を受けている案件であり、慎重に事実を調査確認し、適切に対応して参ります。しかるべき時期が参りましたら、しっかりと説明責任を果たして参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します」とコメントしています。
池田佳隆衆議院議員「適切に対応してまいります」
池田佳隆衆議院議員は事務所を通じて、「刑事告発を受けている案件であり、事実関係を慎重に調査・確認し、適切に対応してまいります」とコメントしています。
谷川弥一衆議院議員 自身の進退「今は答えられない」
谷川弥一衆議院議員が10日夕方、長崎市で報道陣の取材に応じました。
谷川議員は持参したコメントを読み上げる形で「清和政策研究会のパーティー券の問題については刑事告発を受けている案件でもあり、事実関係を慎重に調査・確認をして、適切に対応してまいりたい。今後、事態が進展し、問題点や課題が明らかになってくれば、再発防止の取り組みなどを進めていく必要があると考えている」と述べました。
一方で、自身の進退についてなど報道陣からの質問に対しては「今は答えられない」との回答を繰り返しました。
●岸田文雄首相と旧統一教会の「面会写真」に潜む安倍晋三元首相の影 12/11
「(写真を撮った人物について)承知していないとの認識は変わらない」──朝日新聞がスクープした、岸田文雄首相と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の友好団体トップらとの面会の事実。
12月4日の第1報の翌日に“証拠”となる写真が報じられてもなお、岸田首相は冒頭のように発言した。永田町関係者が語る。
「岸田首相はこれまで教団とは『関係ない』としてきたが、教団関係者との写真があるとの噂は以前から囁かれていた」
岸田首相が自民党政調会長だった2019年10月4日、党本部でニュート・ギングリッチ元米下院議長と面会した際、同席していたのは「天宙平和連合(UPF)」日本支部トップの梶栗正義氏、UPFインターナショナル会長のマイケル・ジェンキンス氏だったとされる。
報道後、岸田首相は「ギングリッチ氏と面会はしたが同行者は知らない」と説明しているが、「あまりに無理がある」と指摘するのは、統一教会問題を追い続けるジャーナリストの鈴木エイト氏だ。
「UPFは教団創始者の故・文鮮明氏と妻で教団総裁の韓鶴子氏が創設した団体で、安倍晋三元首相が2021年にビデオメッセージを寄せたのもここ。ギングリッチ氏は肩書きこそ元議長ですが、UPFの集会に何度も出席しており、イベントでは『安倍元首相と自民党議員のほぼ半数が統一教会・UPFと協力し続けてきた』と発言するなど、教団とのつながりが強い」
梶栗氏はUPF日本支部トップであるだけでなくほかの関連団体の会長も兼務。父が教団の会長を務めていたことから教団の将来を担う2世エリートと目されてきた。
「写真撮影の翌々日には、ギングリッチ氏、ジェンキンス氏、梶栗氏の3人が名古屋で開催された教団関係者による大規模なイベントに出席、登壇しています。このイベントの前夜祭には、岸田首相に更迭された山際大志郎元大臣も出席していました」(エイト氏)
誰が面会写真をリークしたのか
なぜ今、面会の事実が報じられたのか。岸田政権が10月に行なった教団に対する「解散命令請求」への意趣返しとして、教団側がリークしたとの見方もあるが……。
「日本の教団からのリークではなく世界本部の関与が疑われています。ただ、日本の教団内部で解散命令請求を出した岸田首相への批判は強まっていて、街頭演説で非難の声を上げる現役信者も出てきている」(エイト氏)
岸田首相は「承知していない」を繰り返すが、朝日は関係者の「安倍首相の代わりに面会した」との証言を報じている。
「岸田氏は首相としては旧統一教会への対処にそれなりに取り組んできたとは思いますが、『自民党総裁』としての責任は全く果たしていません。それは一貫して『安倍元首相と教団の接点の検証』を避けているからです。本来、ギングリッチ氏らとの面会の事実は、自民党議員に課した昨年の『総点検』の時点で言うべきでした。言えなかったのは、安倍元首相と教会の関係に言及せざるを得ないからでしょう。
教団側は、関係のあった政治家に『リークする』とカードをちらつかせて首根っこを押さえたままにできる。選挙のたびに同じ問題が噴出すれば、いつまでも教団の影響に政治家が怯えることになります」(エイト氏)
自民党が教団との関係を清算する日は来るのか。
●田崎史郎氏「安倍派の崩壊につながる」自民党政治資金パー券裏金疑惑 12/11
政治ジャーナリストの田崎史郎氏が11日、TBS系「ひるおび」に出演。自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金裏金疑惑を巡り、「安倍派の崩壊につながっていく」と予測した。松野博一官房長官の更迭をはじめ、安倍派の幹部が軒並み矢面に立たされている。「安倍派をすべてやめさせて政権の外に出す。岸田さんがこんなに早くやるとは思わなかった。ここまで報道されてしまっている以上、総理の方針は固いんじゃないか」とした。
岸田内閣の屋台骨を揺るがしているこの問題。どこまで持ちこたえられるかは、「岸田さんが続いても来年9月の総裁選まで。やっても支持率は浮上しない」と言い切った。
現在開催中の臨時国会は13日まで。「国会が終わったら捜査が本格化する。一方で人事もある」も見越していた。
●国民民主の分裂騒ぎは、「維新消滅」の前触れ… 12/11
前原誠司衆院議員ら5人が国民民主党からの離党を発表した。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「国民民主の『空中分解』は今後も続く。それは過去の『保守系第三極』政党が歩んだ歴史が証明している」という――。
前原氏の離党を「予言」
11月21日に公開した「なぜ自民党候補の落選が相次ぐのか…岸田首相の失政だけではない、立憲民主党の存在感が増しつつある理由」について、文末の記述が「予言めいてみえる」とのご感想をいただいた。その記述をまず再掲したい。
「立憲共産党」という言葉からは、立憲の党内を動揺させて打撃を与える力は、もはや失われている。むしろ今後は、この言葉にしがみついて自民党や維新に色目を使い、かつての「保守系第三極」的な立ち位置を目指そうとする勢力が、逆に打撃を受けることになるのではないか。
「予言めいてみえた」ものとは、国民民主党の前原誠司代表代行が同月30日、同党を離党して新党「教育無償化を実現する会」を結党する方針を示したことを指している、ということだろう。前原氏離党の背景に、岸田政権との協力を模索する玉木雄一郎代表への不満があるのは間違いないし、今後は日本維新の会との連携もささやかれている。
筆者は今回の離党劇を事前に知っていたわけではないが、驚きは全くない。いずれこんな事態に発展することは、ずいぶん前から火を見るよりも明らかだったからだ。
保守系第三極政党の分裂は定番の流れ
国民民主党に限ったことではない。衆院の小選挙区制を中心とした現在の選挙制度において、政権与党と野党第1党以外の中小政党、特に保守系の「第三極」と呼ばれる政党は、常に「与党と野党第1党のどちらにくみするか」を陰に陽に問われ続ける。やがて所属議員の間に「与党寄り」「野党寄り」の対立が生まれ、最後には党分裂に至る、というのは、もはや定番の流れであり、別に驚くに値しない。
自由党、保守党、みんなの党……。これまでいくつもの「保守系第三極」政党が、同様の党内抗争を経て分裂し、消えていった。もしかしたら国民民主党も、この過程に入りつつあるのかもしれない。
非自民の前原氏、政策実現の玉木氏
筆者は昨年4月に公開した「やがて自民党に吸収されるだけ…国民民主党がまんまとハマった『提案型野党』という毒饅頭」という記事の中で、旧民主党系の議員には、世代によって政治に対する考え方に大きな違いがあることを指摘した。
前原氏は、30年前の細川政権誕生前夜から小選挙区制の導入の前後に国政入りした世代だ。大きな政変を若手議員として目の当たりにした経験から「自民党に選挙で勝って政権を奪い取る」意識が強い。「保守かリベラルか」といった違いに関係なく、彼らは総じて「非自民」志向である。ちなみに、立憲民主党の枝野幸男前代表や野田佳彦元首相も、このグループに入る。
一方の玉木氏は、民主党が政権を奪取した2009年に初当選した。自民党から政権を勝ち取る野党の長い戦いを経験せず、いきなり政権与党の一員となったのだ。
玉木氏のように、民主党政権発足前夜以降に政界入りした世代は、上の世代に比べ、政権を「戦って勝ち取る」感覚が薄い。野党的な批判的振る舞いを好まず「自民党政権と協調してでも政策の実現そのものを目指す」スタンスを取りがちだ。
なぜ代表戦後に「ノーサイド」とならなかったか
民主党に勢いがあった間は、こうした所属議員の肌合いの違いも、一定程度吸収できた。しかし、2012年に同党が下野して以降、こうした違いはむき出しのものとなった。17年の「希望の党騒動」によって民進党(民主党から名称変更)が分裂すると、立憲に議席数で水をあけられ「保守系第三極」的な立場となった国民民主党は、代表の玉木氏が立憲への対抗心もあって「与党寄り」姿勢をさらに強めていった。
「非自民」志向の前原氏が、玉木氏の方向性に耐えられない思いを抱いたのも無理はない。今年9月の党代表選では、2人はまさに政治路線をめぐって真っ向から戦った。
政治路線をめぐり、ここまで互いに相容れない明確な対立構図ができてしまっては、もはや「ノーサイド」はあり得ない。記者会見で前原氏は「『自公国』と言われ『連立入り』とも目されている。私の政治信念とは違う」などと述べ、暗に玉木氏の姿勢を批判した。離党は必然だった。
国民民主が野党内で求心力を取り戻すのはほぼ不可能
それにしても、前原氏の離党を経て、国民民主党は今後どうなるのだろうか。もしかしたら再度の分裂があるかもしれない、と筆者は危惧している。
少し歴史を振り返ってみたい。
もともと国民民主党は、2017年の「希望の党騒動」で粉々になった民進党の「正当な後継組織」という意識を強く持っていたと思う。失速した希望の党を離れた元民進党の衆院議員と、参院で存続していた民進党議員が合流する形で、2018年に結党した国民民主党。野党第1党の立憲民主党は、もともと民進党から「離党して出て行った存在」であり、いずれは国民民主党が主導して、立憲を「迎え入れる」形で民進党の再結集を図る。当然、その時の野党のリーダーは、玉木氏であるべきだと。
しかし、過去にもたびたび指摘してきたが「小選挙区制で野党第1党の立場にない」政党が、野党内で求心力を持ち続けるのは極めて難しい。
国民民主党は最初の結党の段階で、民進党と希望の党所属だった議員の約4割が参加せず、一部が立憲民主党に合流。翌19年の参院選でも立憲に水をあけられ、20年には事実上立憲への「合流」によって、現在の泉健太代表を含む多くの議員が党を去った。現在の国民民主党は、立憲への合流を拒んで残った議員で構成される政党であり、今さら同党が単独で野党内の求心力を取り戻すのは、ほぼ不可能な状態になっていた。
次に国民民主を離党する議員の特徴
この小さな政党の中で、1「非立憲」の立場から「準与党化」に走る玉木氏、2維新との連携によって「改革保守の野党第1党づくり」を夢見る前原氏、3立憲との一本化によって「組織内候補の確実な当選」を目指す連合と組織内議員――という、3つの思惑が入り乱れた。
ここまでは「与党寄りの玉木氏vs野党寄りの前原氏」という12の対立に焦点が当たっていたが、前原氏の離党によって、今度は1と3の対立が前面に出てきかねない。前原氏のくびきを逃れた玉木氏が「与党寄り」路線をさらに強める可能性がある一方、連合系は前原氏の離党で国民民主党の党勢がそがれたことに不安を感じているだろう。2025年の次期衆院選で比例代表の得票を大きく減らせば、組織内議員が議席を失う恐れがあるからだ。
連合はこれまで、共産党との関係の「近さ」を感じさせる立憲民主党より、国民民主党のほうに親しみを感じているフシがあった。しかし、両党の党勢の差が開くにつれ、不承不承かもしれないが、軸足をじわりと立憲に移しつつあるようにも見える。冒頭に引用した記事でも触れたが、連合の芳野友子会長は11月10日の記者会見で、立憲候補の演説に共産党関係者が応援に駆けつけることについて「現実問題として仕方ない」と述べた。
玉木氏と連合系の距離がさらに開く可能性がある。もし連合系が立憲寄りのスタンスを取り始めたら、玉木氏は耐えられるのだろうか。
すぐにさらなる党分裂の動きが起きるとは、さすがに筆者も考えてはいない。しかし、これまでの流れを見れば、国民民主党はもはや空中分解しかねない段階に足を踏み入れつつある、と思えてならない。国民民主党も結局は、過去の「保守系第三極」政党と、同じ運命を歩んでいると言えるのではないか。
「第2自民党」の維新と非自民の前原氏は組めるのか
さて、前原氏の離党は、ある意味この状況に抗うものなのだろう。野党の立場を踏み越えて「準与党化」する玉木氏にいら立った前原氏は、野党第2党の日本維新の会と連携して改革保守の野党の「塊」をつくり、野党内の主導権を取り戻そうとしているのかもしれない。立憲内の保守系勢力までも糾合して野党を再編し、新たな野党第1党をつくることができれば、まさに自身が6年前に仕掛けた「希望の党騒動」のやり直しである。
メディアの一部にもそれを期待する向きがあるようだ。本当に懲りないものだ。
実は筆者には、前原氏がなぜ維新に執着するのかが分からない。
確固たる「非自民」路線を掲げる前原氏が、党のトップが「第2自民党でいい」と公言する維新と組めるのか。維新は安倍、菅義偉政権に比べれば、岸田政権とは距離を置いているようだが、大阪万博問題が行き詰まり、国費の増額が必要になれば、政権と戦うのは難しくなるだろう。現に臨時国会で、維新は政府の2023年度補正予算案に賛成している。
また「身を切る改革」をうたい、新自由主義的な性格の強い維新の政策は「All for All」(みんながみんなのために)を掲げる前原氏の目指す社会像とは真逆だ。かつて民進党代表選で前原氏と戦い、後に立憲民主党を結党した枝野氏が提唱した「お互いさまに支え合う社会」の方が、よほど親和性が高いのではないか。
最後の保守系第三極政党はどう転ぶか
「政権交代可能な二大政党づくり」を目指す前原氏の思いは、同時代を生きた政治記者の一人として理解できないこともない。だが、そこに向けての政治行動が、どうみても自身の政治信条と合わないことを、前原氏はどう認識しているのだろうか。
さて、国民民主党が尻すぼみとなった今、維新は現状では最後の「保守系第三極」政党だ。メディアの世界では相変わらず「野党第1党へ!」と持ち上げられている維新だが、筆者はむしろ、維新が過去の「保守系第三極」と同じ道をたどるか否かの方が気にかかる。
10日投開票の東京都江東区長選では、維新が推した候補が立候補者5人のうち最下位に沈み、得票も供託金没収レベルだった。
自民党と立憲民主党という、国政で政権を争う2党が推す候補者がそろっている選挙では、第三極以降の政党は、どちらかと組まない限り、単独で勝つのは難しい。そのことを改めて示した選挙だったと思う。
果たして維新も「野党第1党化」という結果を出せないまま、いずれ国民民主党のように分裂の道を歩むことになるのだろうか。前原氏の離党は案外、それを占うカギになるのかもしれない。推移を見守りたい。
●内閣支持率22・5%、過去最低更新 裏金疑惑「首相に責任あり」87% 12/11
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が9、10両日に実施した合同世論調査で、岸田文雄内閣の支持率は前回調査(11月11、12両日実施)比で5・3ポイント減の22・5%だった。令和3年10月の第1次政権発足後最低を3カ月連続で更新した。不支持率も過去最高を更新し、71・9%(前回比3・1ポイント増)に上った。
自民党のパーティーを巡る裏金疑惑に関し、党と各派閥の対応は「大いに問題」「やや問題」との回答が計93・2%だった。この疑惑での岸田首相(自民党総裁)の責任に関しては「大いにある」「ややある」が計87・7%に対し、「あまりない」「全くない」は計11・2%で、「政治とカネ」を巡る問題に国民の厳しい視線が向けられている現状が浮き彫りになった。
また、裏金疑惑で1千万円超のキックバック(還流)を受けたとされる松野博一官房長官の説明は「納得できない」が87・4%で、「納得できる」の8・9%を大きく上回った。政治資金や役職を配分する役割を担う自民党の派閥については「大いに問題」「やや問題」との回答が計88・3%だった。
岸田首相にいつまで続けてほしいかの質問では「来年9月の党総裁任期まで」が最も多く46・3%。次いで「すぐに交代」が40・5%、「来年9月以降も続けてほしい」は9・3%だった。
次の首相にふさわしい人を尋ねたところ、石破茂元自民幹事長が18・2%でトップ。小泉進次郎元環境相は16・0%、河野太郎デジタル相は11・9%と続き、前回同様、「小石河連合」が上位を占めた。今回から選択肢に加えた上川陽子外相は4・3%だった。
1人当たり4万円の定額減税などを盛り込んだ経済対策の効果に関しては「あまり期待しない」「全く期待しない」が計74・7%、「大いに期待」「やや期待」が計24・4%となった。
調査では内閣支持率に関し、答えが不明確な場合は「どちらかと言えば」と再度、質問して回答を得た。
●岸田内閣「不支持」が初の70%超 支持率は“危険水域” 政治資金問題「対応に問題」9割超 12/11
FNNがこの週末に実施した世論調査で、岸田内閣を「支持しない」との答えが71.9%にのぼった。政権が発足して以来、「不支持」が7割を超えたのは初めて。
岸田内閣の支持率は5.3ポイント急落し、22.5%で、内閣の「危険水域」と言われる3割を2カ月連続で割り込んだ。
また「支持しない」は、71.9%だった。
自民党の派閥で政治資金パーティーの収入の一部が、収支報告書に記載されていない問題や、安倍派で議員に1,000万円を超えるキックバックがあった疑惑などについて、9割以上が自民党や派閥の対応に「問題がある」と答えた。
また松野官房長官が、安倍派から1,000万円以上のキックバックを受け、収支報告書に記載していない疑惑を指摘され、「精査する」と説明していることに、9割近くが「納得できない」と答えた。
政治資金の問題が明らかになる中、派閥について51.9%が「大いに問題がある」、36.4%が「やや問題がある」と答えた。
また、自民党総裁の岸田首相の責任については50.9%が「大いに責任がある」、36.8%が「やや責任がある」と答えた。
こうした中、岸田首相にいつまで首相を続けてほしいかとの質問に、「すぐに交代してほしい」が40.5%、「2024年9月の総裁任期まで」が46.3%、「2024年9月以降も」との答えは9.3%だった。
岸田首相が決定した、給付や減税を含む経済対策については、「期待しない」がおよそ75%にのぼった。
一方で、ガソリン価格の高騰が続く場合、税金の一部を引き下げる「トリガー条項」の発動の検討については、65.1%が「評価」した。
また、次の首相にふさわしい人については、石破元幹事長が18.2%、小泉進次郎元環境相が16%、河野デジタル相が11.9%、岸田首相は2.5%で7番目だった。
●「岸田首相が安倍派にケンカを売った 大きな敵を作ってしまった」裏金疑惑 12/11
元衆院議員で元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士が6日放送のフジテレビ系「めざまし8」に出演し、自民党安倍派の裏金疑惑がもたれた幹部の交代について、「(岸田首相は)国民に対して疑わしいことをしているヤツ、関連しているヤツを一掃する考え」と語った。
疑惑が取り沙汰されているのは、岸田政権を支えている主流派の面々。「いっさい排除となると、安倍派の反撃はすごいものがある。安倍派にケンカを売ったとなると総攻撃がすごくなる。岸田さんは支持率も下がって背水の陣。大きな動きとして象徴的なことをしないと、国民から見放される。勝負に出たにしては、大きな敵を作ってしまったと思われます」と分析していた。
●沈む船に誰も乗りたくない 内閣改造、党役員人事が暗礁乗り上げる可能性 12/11
自民党最大派閥の安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーをめぐる裏金問題が急展開を見せている。岸田文雄・首相は、安倍派に所属する政務三役(閣僚・副大臣・政務官)を全員交代させる方向で検討しているとも報じられており、12月13日の臨時国会閉会後に人事が進められる見通しだが、そう簡単に事は進まなそうだ。
岸田首相は自派閥の宏池会が党内第4派閥というポジションのため、所属議員99人の最大派閥である安倍派の人材を重用してきた。しかし、安倍派5人衆と呼ばれる松野博一・官房長官、西村康稔・経済産業相、萩生田光一・党政調会長、高木毅・党国会対策委員長、世耕弘成・党参院幹事長がいずれも派閥からのキックバックを受け取っていた疑惑が浮上しており、内閣・党役員の人事に着手せざるを得ない状況になっている。
とりわけ、内閣のスポークスマン役にあたる官房長官の後任人事では、官房長官経験者である茂木派の加藤勝信氏のほか、田村憲久・元厚労相(岸田派)、小泉進次郎・元環境相(無派閥)らの名前が挙がっている。
しかし、「イメージ刷新のための人事といっても、難航するのは必至ではないか」と話すのは、安倍派以外の派閥に所属する中堅議員だ。
「ただでさえ支持率が低空飛行状態にあって長くはもたないとみられていた岸田政権を裏金問題が直撃した格好だ。重要ポストをエサにしたところで、入閣して数か月で内閣が潰れてしまったら、なんの意味もない。どうせ沈む船に乗りたいと思う人間なんていないでしょう。周りには“入閣要請があっても断わる”と話している議員もいる」
「小泉進次郎官房長官」でもイメージは変わらない
衆議院議員の任期は折り返し地点を過ぎており、いつ解散総選挙があってもおかしくない時期に差し掛かるなか、「選挙に有利になる大臣ポストに就きたい」という発想になるのが“永田町の常識”のはずだが、今回ばかりはそれが当てはまらないという話だ。政治ジャーナリストが言う。
「もはや安倍派だけの問題では収拾がつかない。安倍派以外の派閥でも、政治資金収支報告書に記載こそしていたが、パーティー券を多く売った議員へのキックバックにあたるカネの流れがあり、十把一絡げでのイメージダウンは避けられない。小泉進次郎氏が官房長官の候補として取り沙汰されているが、そんな人事くらいでイメージが変わり、内閣支持率が反転上昇するような展開は考えられない。
安倍派からは閣僚4人、副大臣5人、政務官6人が政務三役として送り込まれている。党役員も含め、5人衆だけでなく安倍派を軒並み外すような人事をやれば同派からの反発は避けられないが、仮にそれを断行しようとしても、岸田政権のもとでポストを欲しがる議員は相当に限られるはず。次々と断わられて人事が行き詰まる展開さえ懸念されます」
臨時国会閉会後の岸田首相の政権運営が大きな壁にぶち当たることになるのは間違いなさそうだ。
●「1人で裏金9000万円」安倍派議員は誰だ…岸田政権「絶望の内閣改造へ」 12/11
自由民主党の最大派閥である「清和政策研究会」(安倍派)が裏金問題で大荒れだ。
安倍派に所属する議員のうち数十人がキックバックを受け、議員側にキックバックされた資金の総額は、去年までに数億円にものぼるとされているようだ。松野博一官房長官、高木毅国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長を巡っては それぞれ1000万円超のキックバックを受けるも不記載であった可能性をメディアが指摘している。一方で共同通信は最近の5年間で9000万円超のキックバックを受けた議員がいるとも報じている。
元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏は「年末に内閣改造がある可能性が浮上してきた」というーー。
内閣の要である「官房長官」が辞任することは非常に由々しき事態
支持率低迷が続いていた岸田文雄政権に、相次ぐ汚職事件で追い込まれた末の絶望の「内閣改造論」が浮上している。今、国会がある永田町で何が起きているのか。事実関係を順に追って見ていこう。
岸田文雄首相は、自由民主党の最大派閥である「清和政策研究会」(安倍派)が政治資金パーティーの収入を不正に扱い、裏金化していた疑惑に関連して、安倍派の幹部である松野博一官房長官を交代させる方針を決定した。この交代は事実上の解任となる。首相は後任の人事について調整を進めている。
内閣の要である「官房長官」が辞任することは非常に由々しき事態だ。過去には第2次森内閣時の2000年10月に、中川秀直氏が愛人報道で辞任した例がある。また、第2次小泉内閣では、福田康夫氏が2004年5月に国民年金保険料の未納問題により辞任した。今回、松野氏が辞任すると、2021年10月に発足した岸田内閣では、不祥事などによる閣僚の辞任は5人目となる。
安倍派「5人衆」の全滅
内閣の重要な役職である官房長官の交代は、政権運営に深刻な不安定さをもたらし、すでに支持率が低迷している岸田首相にとっては大きな影響を与えることが避けられない。
松野氏以外にも報道で名前が挙がっているのは、高木毅国対委員長や世耕弘成参院幹事長、塩谷立元文部科学相、萩生田光一政調会長、西村康稔経済産業相だ。塩谷氏は派閥の事実上トップの座長で、他の5氏は安倍派「5人衆」と称され、安倍晋三元首相の暗殺以後、空席となった会長職に代わって、集団指導体制を敷いてきた。
安倍派が開催する政治資金パーティーは年に1回行われる。この派閥に所属する議員には、当選回数や役職に応じてチケットの販売枚数の目標が設定されている。目標を超えた分の資金は、派閥から議員へ不正に返還される仕組みだった。
事実なら、組織的かつ悪質な裏金隠し
この過程で、安倍派は目標を超えた分の収入を派閥の収支報告書に記載せず、議員への返還も支出として記載しない方法で、組織的に裏金を作っていたとされる。裏金を受け取った議員も、自身の政治団体の収支報告書にこの収入を記載していなかった。
安倍派の会計担当職員は特捜部(東京地検特捜部)による事情聴取で、パーティーの収入の一部を議員に返還していたことを派閥の事務総長に報告していたと説明していることが明らかになった。安倍派の国会議員は、<「キックバックについては『派閥から政治資金収支報告書に書くなと言われた』と事務所の会計責任者が言っていた。修正しなければならないと思っている」「上層部から『(報告書に)書くな』と言われたら、そうするしかない。悪気があってやったわけではないというところを、どう捉えられるか。特捜部の判断を待つしかない」TBSNESDIG・12月9日>と供述しており、事実なら、組織的かつ悪質な裏金隠しだ。
とにかく悪質…捜査を本格化へ
また、一部議員はノルマ分だけを派閥に収め、超過分は派閥に報告せずに議員のパーティー券用口座に残す場合もあったとされる。一部議員への還流分はパーティー券の販売実績に応じた秘書への実質的な奨励金や、秘書の給与などにも使われていた。読売新聞(12月7日)によれば<安倍派では、10人以上の所属議員がキックバックなどにより裏金化していた疑いのあることが判明している。特捜部は政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)での立件を視野に捜査しており、同党議員数十人からの聴取を検討。臨時国会会期末の12月13日以降にも捜査を本格化させるとみられる>という。
裏金の総額は、2018年から2022年の5年間で億単位に上ると見られている。この期間に、塩谷氏は数百万円、高木氏と世耕氏はそれぞれ1千万円以上、萩生田氏は数百万円、西村氏は約100万円の裏金を受け取っていた疑いが新たに明らかになった。松野氏についても1千万円以上の裏金を収支報告書に記載していなかった疑いがすでに指摘されており、問題は安倍派の中枢幹部6人全員に及んでいる。
派閥の実務を管理する事務総長の役割は、松野氏が2019年から2021年、西村氏が2021年から2022年、高木氏が2022年から現在まで務めている。
安倍派の動きを察知して、謎の動きをしたのが、岸田首相
先の『報告書に書くな』と命じたのは、これら3人の可能性がある。特捜部(東京地方検察庁特別捜査部)は幹部6人の資金の流れを把握しており、さらなる実態解明を進めているところだ。
政治資金規正法では、政治団体の会計責任者に対して収支報告書を提出する義務が課されている。この報告書に記載がない場合、会計責任者は5年以下の懲役刑または100万円以下の罰金に処される可能性がある。さらに、もし共謀、つまり複数の人がこの不正行為に関わっていれば、会計責任者以外の関与者も罪に問われることがある。
こうした安倍派の動きを察知して、謎の動きをしたのが、岸田首相だ。自らが会長をつとめる岸田派(宏池会)を、総理大臣と自民党総裁の間は離脱する意向を固めたのだった。首相就任後も政治資金集めに余念のなかった岸田首相であるが、菅義偉前首相などから「派閥政治を引きずっているというメッセージになって、国民の見る目は厳しくなる」と批判があっても、「派閥を抜けなければならないルールはない」と頑なに言い張って派閥会長にしがみついてた。今回の追い込まれての派閥離脱に、国民はさらなる「残念な印象」を持ったことであろう。
なぜかとばっちり食らう高市早苗
では、今後、安倍派、そして岸田政権はどうなっていくのだろう。筆者は週末、自民党、永田町関係者と断続的に取材をした。そこで得られた話を述べる。まず、共通した認識は、安倍派の分裂含みの弱体化と脱派閥の流れが加速するとの観測だった。幹部全員がキックバックを受けていたことがわかったことは、関係者で衝撃が走っている。安倍派幹部による裏金化指示は、派閥解体の機運すら盛り上がりかねない。2000年の前までは、茂木派(平成研)が100人の議員を擁したが、日歯連事件などのスキャンダルを経て勢力が衰えた。安倍派は当面の間、自民党内での発言力を失うことになり、公認争いやポストの獲得で不戦敗が続くことになる。そんな派閥に所属しようというのは、よほど覚悟のある人物か、はたまた「親の代から清和研」というような2世、3世議員ということになろう。
大手新聞政治部記者は「松野官房長官の更迭を誤魔化すために、内閣改造を行うようだ。そこでは、同じく安倍派事務総長だった西村大臣の交代、そして、岸田政権に公然と反旗を翻すような勉強会を立ち上げた高市早苗氏の交代もとばっちりの部分もあるが、選択肢に入っている。高市氏の勉強会に参加する議員数は少ないので問題はないだろう」と指摘した。
安倍派議員たちの弁明には呆れるほかない
いずれにしろ、安倍派議員たちの弁明には呆れるほかない。巨額の裏金をつくった国会議員は、刑務所へ行くべきだ。また議員報酬を半額にして先進国平均に並にするか、「異次元の子育て政策」でお手本にするといっていた北欧スウェーデン、フィンランド並みの3分の1にすべきだ。
彼らは偉くもないし、知恵もない。政策的に何の効果もない、莫大な補助金ばら撒いてその分以上に後から増税するだけの集団に、日本人は特権を与えすぎだ。
ちなみに朝日新聞(11月27日)によると、岸田文雄政権の支持率は「ワーストずくめ」だという。朝日新聞社が11月18、19日に実施した全国世論調査(電話)をもとに、そう、論評されている。
同調査によれば、支持率はわずか25%、不支持率は65%と自民党が2012年12月に政権に復帰して以降の11年間のワースト記録を更新した。
支持率が低迷してた菅義偉政権に対して、後ろから弓を引き、「国民の声が届いていない」と連呼して菅氏を首相の座から引き摺り下ろした結果、自民党総裁、内閣総理大臣に就任した岸田首相である。いったい何が起きているのだろうか。
岸田首相のいう「聞く力」とは、まさしく自民党のつくりあげた「悪いビジネスモデル」を具現化したようなキャッチフレーズだ。
●岸田総理「辞職してもらう」“ウラ金疑惑”安倍派一掃か… 12/11
岸田政権を直撃している安倍派の裏金疑惑が、この週末大きく動きました。岸田文雄総理大臣は、“安倍派の一掃”に踏み切るとみられています。
更迭される安倍派の政務三役…計15人に
10日、自民党の茂木敏充幹事長らと相次いで面会した岸田総理。自民党関係者によると、松野博一官房長官ら閣僚に加え、政務三役についても安倍派全員を更迭する方針について説明したということです。
岸田総理(自民党関係者によると):「しっかり調査してもらうために、辞職してもらう」
現在、安倍派の閣僚は松野官房長官、西村康稔経済産業大臣のほか、鈴木淳司総務大臣、宮下一郎農林水産大臣の4人です。副大臣が5人、政務官が6人。更迭される安倍派の政務三役は合わせて15人に上ります。
“疑惑”は、安倍派の中で広がり続けています。
当選7回、元文科副大臣の谷川弥一衆院議員。これまでで最大規模の4000万円を超えるキックバックを受け、収支報告書に記載していなかった疑いが持たれています。
谷川衆院議員「読みあげますよ。清和政策研究会のパーティー券の問題について、刑事告発を受けている案件でもあり、慎重に調査、確認をして適切に対応してまいりたい」「(Q.今回の件でキックバックがあった?)今コメントしただけです。僕が今言えることは」「(Q.(パーティー券の)販売ノルマは)だから、今言った通りって言ってるでしょ。今言った通りって」
谷川衆院議員は、疑惑が生じている議員が一様に口にしている「慎重に調査」「適切に対応」というフレーズを読み上げました。
谷川衆院議員「(Q.会派の中で、そのようなことがあったと)まあいいです、その通り。何を言っても、その通り。頭悪いね、言ってるじゃないの。質問しても、これ以上きょうは言いませんって言ってるじゃない。分からない?」
この週末までに、名前が挙がった安倍派幹部は6人です。
西村経産大臣「改めて、私自身の政治資金報告書を、もう一度慎重に精査を続けています」
このうち松野官房長官ら3人には、1000万円を超えるキックバックを収支報告書に記載しなかった疑いが浮上しています。
岸田政権の“屋台骨”揺るがす事態に発展
5月に行われた安倍派の政治資金パーティーの様子です。
安倍派は安倍元総理が亡くなってから後任の会長は置かずに、執行部による集団指導体制をとっています。
安倍派 世耕弘成参院幹事長「安倍総理が亡くなってから、清和研、色んなことを言われました。でも、見てください。毎日のニュースで、清和研の主要メンバーを見ない日はないんじゃないでしょうか。松野官房長官、西村経済産業大臣、萩生田政調会長、高木国対委員長。まさに岸田政権の屋台骨を支えているのが、今、清和政策研究会のメンバーなんです。いかがでしょうか、皆さん」
世耕参院幹事長が名前を挙げた全員に加え、世耕氏本人にも“裏金疑惑”が浮上。岸田政権の屋台骨を揺るがす事態に発展しています。
8日、松野官房長官は“緊張の面持ち”で閣議に臨んでいました。テーブルの上には、“疑惑”について報じる新聞があります。
松野官房長官は、他の誰よりも早く立ち上がると一礼。岸田総理は厳しい表情です。
先月28日の閣議前と比べてみると、立ち上がるスピードも表情もまるで違っています。しかし、会見で“疑惑”について問われても、具体的に語ることはありませんでした。
松野官房長官「お尋ねについては、差し控えさせていただきたい」
田中真紀子氏「差し控えちゃいけないの」
「政治とカネ」の問題を巡り、この人が声を上げました。
田中真紀子元衆院議員(79)「みなさま、こんにちは。聞こえますか?このドラ声が」
脱派閥を訴えた小泉内閣で、外務大臣を務めた経験を持つ、田中真紀子氏です。
田中元衆院議員「11年ぶりに永田町の土を踏みました。相変わらず空気はよどんでるし、きな臭いし、暗い感じがするなというのが第一印象でした」
「適切に対応」などと決まり文句でやり過ごし、具体的な説明を避ける議員たちを、あの“真紀子節”で一刀両断しました。
田中元衆院議員「民主主義は言論ですから。言葉でもってどれだけ分かりやすく、命がけでしゃべるかなんですよ。しゃべらないで、何ですか。この最近の答弁を差し控えさせていただきます。控えるってやましいから答えられないってことでしょ。そう言えばいいじゃないですか。国民そんな馬鹿じゃないですよ。差し控えちゃいけないの。じゃあ、国会議員になるのを差し控えた方がいいですよ」
総理周辺「安倍派一掃やむを得ない」
キックバックは、派閥ぐるみで行われていた可能性があります。パーティー券の販売ノルマを超えた収入について、安倍派から議員側に「収支報告書に記載しないでほしい」と指示があったことが分かっています。
総理周辺「安倍派を一掃するのはやむを得ない」
政府高官によると、交代の時期については国会が閉会する13日以降、今週末にかけて行う予定で、後任人事の調整を急ぐ方針です。
●排除の論理 「裏金」 安倍派一掃で岸田政権は延命できるか 12/11
自民党派閥の政治資金パーティー疑惑で、岸田文雄首相が排除の論理≠検討している。「裏金」疑惑が報じられた最大派閥・安倍派(清和政策研究会)所属の閣僚・副大臣・政務官の「政務三役」を全員交代させる方向なのだ。内閣支持率が「危険水域」の30%以下に下落するなか、安倍派一掃で窮地を脱する狙いという。ただ、別の派閥でも政治資金収支報告書への不記載・過少記載は指摘されている。安倍晋三元首相の暗殺後、岸田首相は「旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との決別」をアピールしたが、最近になって自身が友好団体トップと面会していたことが発覚した。東京地検特捜部は、13日の国会閉会後にも議員らの一斉聴取に乗り出す方針。岸田政権の延命策に、永田町では危機感・絶望感が広がっている。
「決して逃げるということではない。党と一丸となり取り組む」「先頭に立って信頼回復に向けて努力したい」
岸田首相は、一連の派閥パーティー疑惑の報道を受け、自身が会長を務める岸田派からの離脱を表明した際(7日)、こう語った。
政権維持を模索してか、岸田首相は9日、麻生太郎副総裁と首相公邸で約2時間会談した。10日にも、茂木敏充幹事長、森山裕総務会長、萩生田光一政調会長らと個別会談し、対応策を協議したという。
焦点は安倍派の処遇だ。
最大派閥の安倍派は、閣僚・副大臣・政務官の「政務三役」や、党幹部に多数の人材を輩出している。「裏金」疑惑では、安倍派幹部が軒並み「裏金」のキックバック(還流)を受け、政治資金収支報告書に不記載・過少記載だったと指摘されている。
岸田首相は臨時国会閉会後の早期の閣僚・党役員人事へ、調整を本格化しているという。疑惑の裏付けを待たずに、「政務三役」から安倍派議員を全員交代させるというドラスチックな方向で検討に入った。
閣僚では、裏金を受け取った疑いが浮上した松野博一官房長官や西村康稔経産相に加え、鈴木淳司総務相、宮下一郎農水相が対象になる。党幹部では、現事務総長の高木毅国対委員長らを交代させる。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「国民からすれば、疑惑は『派閥の宿痾(しゅくあ)』にとどまらず、自民党政治、岸田政権への極度の不信につながっている。場当たり的な『内閣改造』では収まりがつかないほど深刻な状況だ」と語る。
ただ、特捜部の捜査の先行きは不透明だ。
安倍派以外の派閥でも、政治資金収支報告書への不記載・過少記載は告発されている。特捜部は「裏金」だけでなく、その使途についても狙いを定めているとされる。
政治評論家の有馬晴海氏は「特捜部がどこまで捜査の手を広げるか。誰が対象になるのか。現時点で全容は分からない。焦って人事交代をしても、新たに疑惑が浮上するたび人事が繰り返され、収拾がつかなくなる。岸田首相は1日も長く、総理を続けたい意向が強い。今の岸田政権は『泥船』にも映る。他の派閥の協力が得づらく、自ら率いた岸田派から人材を補塡(ほてん)≠ケざるを得ない状況に直面するかもしれない」と分析する。
岸田首相の姿勢にも、批判的な声が上がっている。
安倍氏の暗殺を受けて浮上した旧統一教会の問題では、岸田首相は「決別」を強調して、関係が発覚した「政務三役」などを退任させてきた。
ところが、朝日新聞が今月4日、岸田首相についても「自民党政調会長だった2019年、元米下院議長と面会した際、旧統一教会の友好団体のトップが同席していた」と報じたのだ。
岸田首相は「同席者は承知していない」と語っているが、それで国民は納得するのか。
排除の論理¢t功するか
今回の裏金疑惑をめぐっても、問題が深刻化すると、岸田派からの離脱≠表明した。岸田政権発足後、かたくなに派閥会長を続けてきただけに、唐突な方針転換が批判を集めた。
ある自民党議員は「内政に加えて、覇権主義を強める中国や、核・ミサイル開発を強行する北朝鮮など、外交も課題山積だ。この状況で政権が揺らげば、危機的状況を招きかねない」と懸念する。
岸田首相が傾く安倍派への排除の論理≠ヘ奏功するのか。自民党はどこに向かうのか。
前出の鈴木氏は「安倍派の打撃は深刻で、解体的出直しが必要かもしれない。各派閥がそれぞれ、派閥の意味や意義を見つめ直すべきだ。政策本位の原点に立ち返り、世代交代も急務となるだろう。徹底的な改革をしなければ、国民の信頼回復はできない。一方、問題を丸投げや、責任回避の印象は強まり、岸田政権への支持は、さらに落ち込んでいくだろう。自民党全体が危機感を持たねばならない」と厳しく指摘した。 
●岸田内閣「不支持」71.9%と過去最高 人事刷新で安倍派は一掃か 12/11
自民党の安倍派による政治資金パーティーをめぐる問題は広がりを見せています。
橋本聖子元オリンピック担当大臣などもキックバックを受け、収支報告書に記載していなかった疑いが浮上し、どんどん裏金疑惑が大きくなっています。
過去の4000万円超の政治資金規正法違反では「罰金100万円、公民権3年停止」
いま東京地検特捜部が捜査しているわけですが、気になるのは、こうした議員は今後どうなるのかという点です。過去の事例ではこのようになりました。
薗浦健太郎元衆議院議員は、2022年12月、複数のパーティー収入など4000万円を超える金額を収支報告書に記載せず、政治資金規正法違反の罪で略式起訴され、罰金100万円、公民権3年停止の略式命令を受けました。
公民権が停止というのは、議員資格を失い、期間中は選挙への立候補ができない状態になるということです。
今回のケースでも、これは基準の1つとなるのでしょうか?
関西テレビ 神崎博報道デスク「この4000万が1つの基準で、もしかしたら今回のパーティーの疑惑に関しても、逮捕されずに略式起訴で罰金の略式命令ということになるかもしれませんが、実際、いまは東京地検特捜部には応援検事を呼んで、東京地検がかなり本気度を見せています。疑惑の中には閣僚の人もいて注目度も違うので、もしかするとこの後捜査が動いて、逮捕そして起訴されるという可能性もあります」
もし今回の疑惑に対しても公民権が停止されると、自民党の疑惑の人たちが一斉にいなくなるという恐れがあります。
近く人事に踏み切る方針 後任は無派閥から?
岸田内閣で要職を務める疑惑議員たちの去就はどうなるのでしょうか。永田町で取材にあたっている東京駐在の鈴木記者に最新情報を伝えてもらいます。
鈴木祐輔記者「岸田総理は11日朝、時期や規模については明言を避けましたが、政権内では『年末まで先送りできる状況ではない』として、近く人事に踏み切る方針です。どんどん疑惑の議員が出てくる中で、国会は13日に閉会されます。閉会後の今週後半に、人事を行う案も浮上していますが、もっと早く人事する可能性もあり、非常に混とんとしています。安倍派の幹部 5 人の処遇が焦点となる中、安倍派議員をすべての役職から一掃する案も出ていますが、ある幹部は『後任人事が難しい』と頭を抱えているという状況です。安倍派の幹部に話を聞けたのですが、『恭順の意を示した方がいいよね。全員無役、中途半端に残るよりも。地検も相当調べているから、これでまた出たら取り返しがつかない。自民党存続のためにも安倍派は身を引いて、岸田政権を全力で支える。もう個人の問題だけではなくなっている』と話していました。また、『松野官房長官と高木国対委員長は腹決めてるだろうね』とし、後任について尋ねると『後任は無派閥しかないよね』と話していました」
安倍派というのは自民党の中でも最大の派閥なのですが、岸田内閣の政務三役には安倍派議員が15人いて、先ほどの話では安倍派議員を一掃する可能性もあるようでしたが、そうなると自民党にとっては大打撃となるでしょう。後任は無派閥議員から選ばれるということはあり得るのでしょうか?
関西テレビ 神崎博報道デスク「安倍派の議員が一掃されるということになると思いますが、その後に他の派閥から選んだとしても、その派閥も本当にクリーンなのかという疑惑もありますので、それであれば、派閥のパーティーを行っていない、無派閥の人を選べば安全なので、とりあえず要職に関しては、無派閥から誰かを入れて行くということになると思います」
岸田内閣の不支持率は71.9%で過去最高
裏金疑惑に揺れる自民党ですが、世論調査を見ますと、岸田内閣は非常に厳しい状況です。
FNNが先週末に実施した世論調査で、岸田内閣の支持率は22.5%で政権発足後、過去最低を3カ月連続で更新しています。不支持率も過去最高を更新し、71.9%に上っています。
さらに「どのくらい総理を続けてほしいか」質問すると、「すぐ交代」が40.5%、「次の総裁選(来年9月)まで」が46.3%となっています。
こうした状況の中、岸田内閣に対峙する野党はどう動こうとしているのでしょうか?
東京駐在 鈴木記者「立憲民主党は11日、午後4時頃に松野官房長官のみを対象にした不信任案を出しました。内閣の不信任案はどうなのかというと、立憲民主党は否定的で、安住国対委員長は『政局の状況と捜査の状況は違う。解散になったらうやむやになる』として慎重な姿勢です。これはどういうことかというと、内閣不信任案が出て、すぐそのまま否決すればいいのですが、岸田総理が“破れかぶれの自爆解散”などしようものなら、雰囲気が選挙モードに突入します。そうすると検察は、事情聴取とか家宅捜索とかそういう捜査が極めてしづらい状況になることがあります。こうした立憲民主党の慎重姿勢について、同じ野党の日本維新の会からは、『捜査の邪魔とか、そこまで気を使う必要はあるのか』と疑問の声も上がっています」
13日、国会会期末を迎えますが、その後、裏金疑惑はどう進展していくのか注目していく必要があります。
●ハイヒール・リンゴ 元安倍派の豊田真由子氏に痛烈なツッコミ 12/11
お笑いコンビ「ハイヒール」のリンゴ(62)が11日、関西テレビ制作の情報番組「旬感LIVEとれたてっ!」に出演し、自民党について言及した。
内閣支持率が3割を切った岸田政権についてリンゴは、「あれよあれよという間に(内閣支持率)の数字が下がっていく」と指摘。続けて「(岸田首相の対応が)何もかもが後手後手に回っているからこうなるんです。一回シャキッとリセットせなアカン事あるんちゃいます」「一番やったらアカン事ですよね。逐次投入みたいなやりかた」と断じた。
記者会見で自民党の裏金疑惑について聞かれた際の松野博一官房長官のVTRを見たリンゴは、「官房長官、しょっぱなから目が泳いでましたからね。『ぼくはやりましたけど、今は言えません』ってことでしょ」と推察した。
元厚労省官僚で議員時代は清和政策研究会(現安倍派)に所属したコメンテーターの豊田真由子氏は派閥の現状を聞かれると、「みんな大変な危機感というか…」と歯切れの悪い回答。それを聞いたリンゴは「今日、歯切れ悪いですね。もっとパンパンパーンって言うよね」とツッコんだ。
それを受けた豊田氏は「いつもは政治ネタの時に、いまだにみんなにいろんな事を聞くんですよ。今回は、みんな口をつぐんじゃって、返事が返って来ない」と吐露した。さらに「普段は『法案こんな感じだよ』とか、みんないろいろ教えてくれるんです。それを私がここで話すんですけど、(今回は)みんなシーンとしちゃって」と言い、返事が来ない理由について「派閥全体が刑事捜査を受けてるって事の深刻さ。自分がやってなくても、自分の仲間は売れないっていうか」と推察していた。
●石破氏、予算成立後の首相辞任論に言及「心中ひそかに」 12/11
自民党の石破茂元幹事長は11日のBSフジ番組で、同党安倍派の裏金疑惑に言及した。党総裁である岸田文雄首相の責任の取り方を巡り「予算が通ったら辞めるというのはありだ」と述べ、2024年度予算案成立後の辞任論に触れた。
「心中ひそかに思っていてもいい。責任は取るものというのをどこかで示すことが必要だ」と指摘した。
石破氏は安倍派所属議員の政務三役の全員交代案が調査結果に先行して浮上している現状に疑問を呈した。「(疑惑が)他の派閥からも出たらどうするか。自民党政権が終わる」とも強調した。
安倍派の幹部らは政治資金パーティー収入の一部の還流を受けながら政治資金収支報告書に記載しなかった疑いがある。
 12/12

 

●「罪人扱いか」自民安倍派が被害者ぶって批判殺到も… 12/12
自民党・安倍派が政治資金パーティーの収入を裏金化していた疑惑を受け、岸田文雄首相は、松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、鈴木淳司総務相、宮下一郎農林水産相の4閣僚を含め、安倍派15人を交代する調整に入った。12月14日を軸に、閣僚・党役員人事に踏み切るとみられる。
岸田首相の方針に対しては、安倍派内部でも不満が出ているようだ。朝日新聞は12月11日、《「安倍派というだけで罪人扱いか」 首相に批判噴出、疑惑ない議員も》と題する記事で、安倍派中堅議員のこんな言葉を報じている。
「とんでもない悪手だ。(資金の流れを知りうる派幹部の)事務総長経験者は責任ある立場だったから別にしても、何もしていないのに辞任させられては罪人になってしまう。
安倍派一掃を首相に勧めたのは他の派閥の領袖なんだろうが、その派閥は絶対に許さない。そして、助言を受け入れた首相も許さない。もう即刻、総理を辞めてもらいたい」
だが、この議員の発言には、SNSで批判が殺到した。
《裏金作って甘い汁を吸う議員を多数出しておきながら、何を被害者ぶっているの?》
《ついには被害者ぶってきた。どこまで醜いんだ》
《安倍派、首相にいじめられているかのような「被害者」アピール。人はなぜか、都合が悪くなると、途端に、「被害者」アピールを始める。「被害者」アピールをする前に、説明責任を果たすべきではなかろうか?》
12月11日、NHKが報じた岸田内閣の支持率は、11月より6ポイント下がって23%。不支持率は58%。支持率は2021年10月の岸田内閣発足以降、最低を更新した。
政党支持率は自民が激減し、29.5%。30%を下回るのは、2012年に自民党が政権復帰以降、初めてという。
危険水域といえる数字だが、それでも政権交代は起きないという説が、SNSでは蔓延している。
《今解散したってまた自民党が勝つよ。だって地方の小選挙区では相変わらず野党が割れてて投票率も低いから自民が当選するし野党は辛うじて複数人区と比例で議席確保するに留まるから。政権交代が起こるには”風”が不可欠》
《岸田内閣支持率低下と言うが解散総選挙ではやはり自民党が勝つ。立憲民主党の泉では勝負にならない。維新は万博で国民は玉木の自民寄りに国民は横を向く》
《解散総選挙しても自民が勝つよ。野党の選挙資金をショートさせる意味でもやってみたら?》
野党が弱い現状では、自民党以外の選択肢を見出せない多くの人たちが無党派となり、投票率が下落。結果として自民が有利になるとの指摘もある。
安倍派を排除するという “荒療治” に打って出る岸田首相。解散総選挙で信任を得られれば、たしかに政権の立て直しにはなるが――その覚悟を岸田首相は持つことができるだろうか。
●安倍派一掃 切って終わりではない 12/12
このまま政権を維持できるかどうか、岸田首相が瀬戸際に立たされている。裏金疑惑が底なしに広がる最大派閥安倍派の一掃だけでは、事は済まない。派閥政治の弊害の打破や政治資金の抜本的な透明化なくして、国民の信頼回復は難しいと知るべきだ。
首相が安倍派所属の閣僚、副大臣、政務官全員を交代させる意向を固めた。松野博一官房長官が1千万円の裏金を受け取っていた疑いが浮上し、更迭必至とみられていたが、その後、「5人衆」と言われる松野氏を含む同派幹部全員や、その他の所属議員に疑惑が拡大。もはや派閥全体を切り離さなければ収拾できないという判断だろう。
安倍派出身の閣僚は4人、副大臣は5人、政務官は6人。通常の組閣や内閣改造以外で、これほど多くが一斉に政府を去るのは異常事態である。任命した首相の責任は極めて重い。
それにしても、首相には、安倍派だけの問題だという確信があるのだろうか。政治資金パーティーをめぐり、政治資金収支報告書の不記載・虚偽記載の疑いで刑事告発されているのは、安倍派を含む5派閥である。ノルマ以上のパーティー券を売った所属議員へのキックバックは、他の派閥でも取りざたされている。
首相は各派閥にパーティー自粛を求めた際、「党全体」の問題だという認識を示した。ならば、すべての派閥に、資金の流れの実態を直ちに報告させ、それを踏まえて人事構想を練るのが筋ではないか。と同時に、これまでのような派閥均衡、当選回数による順送りを排した、本当の意味での「適材適所」が断行できなければ意味はない。
安倍派の裏金づくりは、幹部から若手にまで及んでおり、組織ぐるみで常態化していた疑いがある。00年以降、森喜朗、小泉純一郎、福田康夫、安倍晋三の4首相を出し、とりわけ第2次安倍政権は7年8カ月の長期に及び、「1強」と言われる権力をほしいままにした。その力へのおごりや緩みが背景にあるとみるほかない。
党内第4派閥で基盤のもろい首相は、政権発足当初から、人事面でも政策面でも、安倍派への配慮を欠かさずにきた。重要な政治判断をくだす際には、安倍氏に助言を仰ぎ、亡くなった後も、派閥の「数の力」をあてにした。
首相は政治指導者として何がやりたいのかわからないと、しばしば評される。「脱安倍」人事を契機に、過去のくびきを断ち切り、指導力を発揮できなければ、国民の心は離れるばかりだろう。
●もはや日本は最貧国…輸入大国なのに岸田総理の円安放置で物価は上昇 12/12
仕事柄、外国人と接する機会が少なくないが、みな一様に、日本の物価安への歓迎の弁を口にする。過去に訪日経験がある人は、以前の訪日時にくらべ、おのずと買い物の量も増えるようだ。しかし、日本に在住するわれわれ日本人は、物価高に日々あえいでいるのが現状である。これはなにを意味するのか。
岸田文雄総理は11月2日の所信表明演説をはじめ、事あるごとに「経済」「経済」と強調し、「この政権はなによりも物価高対策、そして経済対策を重視している」と訴え続けている。そして、まずはそうした対策を盛り込んだという13兆2000億円もの補正予算案が、11月29日の参院本会議で可決された。
そこには、住民税非課税世帯を対象に1世帯あたり7万円を給付するための1兆592億円や、電気やガス代の価格を抑制するための7948億円が盛り込まれている。いうまでもないが、補正予算の7割は国債でまかなわれる。すなわち、いまの物価高の影響を多少なりとも緩和するために、将来にツケを回して借金をするという話だ。
さらに来年6月、1人あたり4万円の定額減税が実施される予定だが、いみじくも鈴木俊一財務相が、財源とされている税収増の分は「すでに使われている」と答弁しており、減税のために借金するという本末転倒が行われる可能性が濃厚である。
いや、たとえ借金をしても、岸田総理がいうとおり、「来年の夏の段階で、賃上げと所得減税を合わせることで、国民所得の伸びが物価上昇を上回る状態」が、ほんとうに実現するならいい。しかし、現状では、その実現可能性はないに等しい。それは多額の借金をして莫大な金額を「物価高対策」に注ぎ込みながらも、物価高を引き 起こしている原因にはいっさいタッチせず、放置し続けているからにほかならない。
輸入大国ニッポンでは円安なら物価は高止まり
物価高の原因。それはひとえに円安である。日本はわれわれの身の回りのあらゆるものが輸入製品で賄われている輸入大国なのだから、円安になれば物価は上昇する。きわめて単純な話なのだ。
国産品に囲まれた生活をしている、という人もいるだろう。しかし、たとえば肉や卵の飼料は輸入、野菜の肥料は輸入、衣服は国産でも羊毛や綿糸は輸入。そして電気やガスは、もとになるエネルギーがほとんど輸入されている。日本で国産に頼った生活をすることなど、仮にどんなに自給自足の生活を心がけたところで、絶対的に不可能なのである。
具体的に見ていこう。日本の食料自給率はカロリーベースで38%にすぎない。これはG7諸国のなかで最低で、それも僅差ではない。G7の平均は102%で、日本は群を抜いて低いのだ。唯一、米だけは輸入依存率が3%にすぎないが、ほかは大豆93%、小麦87%、砂糖69%、果実57%、エビ92%、魚介類46%、肉類45%……。また、肉類などの飼料としてのトウモロコシは、国産が多少増えているようだが最近まで100%だった。
衣類の輸入依存率は97%で、素材となる綿花や羊毛は100%。住宅や家具に使われる木材は、木のぬくもりが日本の伝統のように語られるが、輸入依存率は70%に達する。鉄鉱石は100%である。また、原油やLNG、LPGなどのエネルギーの輸入依存率は88%におよぶ。なんらかの事業をするにも、一個人が生活するにも、エネルギーが根幹になる。それをほとんど輸入に頼っている以上、円安状態が続いているかぎり、物価高が緩和されることはありえない。
購買力平価という言葉がある。ある国の通貨での購買力が、ほかの国でも同等の水準になるように為替レートを定めた際の値のことだ。OECDの指標では、2021年時点での購買力平価は1ドル100.4円だった。すると、1ドルが150円前後で推移している現状では、日本人は多くのものを標準の1.5倍の価格で買わされているということになる。われわれの生活の過半が輸入に依存している以上、円高に誘導するほかに、物価を下げる方途はない。
ところが、岸田総理は為替についていっさい言及しない。物価高の抑制こそが岸田内閣の最重点課題だと認めながら、円安の問題についてはなぜか触れようとしない。この大本の原因を放置したまま、借金をして金をばら撒くという愚策に対し、野党も的を射た追及がまったくできない。将来にツケを回すだけの補正予算案に賛成した日本維新の会や国民民主党は論外だが、政権の隙を突く好機が到来したはずなのに、立憲民主党も共産党も、肝心の円安問題を避けているのは、謎だとしかいいようがない。
円安を放置するうちに最貧国の仲間入り? 
2023年3月期、過去最高益を上げた企業が続出し、株価も堅調に推移している。そうした報道を見て、日本経済の状況は悪くないと錯覚する人も多いと思うが、そこに落とし穴がある。最高益を更新する企業の多くは、いうまでもなく輸出企業である。あるいは、商社は三菱商事や三井物産をはじめ多くが過去最高益を上げたが、簡単にいえば、彼らの取引はドル建てなので利益が出るのである。
しかし、仮にこうした企業が利益を従業員にしっかりと還元したところで、われわれの生活の過半が輸入頼みである以上、輸入品の物価上昇に追いつかない。ましてや、輸入が多い企業にとっては逆風が吹き続けているのだから、異常な円安を放置しているかぎり、岸田総理がいう「国民所得の伸びが物価上昇を上回る状態」など、実現できるはずがない。
円安の原因をつくったのは、2012年12月に発足した第2次安倍晋三内閣が掲げたアベノミクスで、いわゆる「3本の矢」のうちの「金融政策」である。安倍元総理の肝いりで日銀総裁に就任した黒田東彦氏が、異次元の金融政策としてゼロ金利を打ち出すと、1ドルが80円程度だった円の価格は急降下し、輸出企業の利益は大幅に増加。株価も上がった。
それが一時的な策ならいいとしても、黒田氏は今年4月に退任するまで異次元緩和策を継続し、代わって就任した植田和男氏も、いまなおこの政策を改めない。こうしてこの11年余り、輸出企業を中心に多くの企業が濡れ手で粟の利益を得て、過去最高益を次々と更新している。それがどういう状態かといえば、なんら技術革新をせずとも、異次元緩和のおかげで円安が続くかぎり、黙っていれば利益が上がる、ということである。利益を享受している側にすれば、異常な円安の状況を変えたいと思うはずがない。
政府も日銀も、そして野党も、そのあたりに遠慮があって、日本人が貧しくなる根本的な原因を見て見ぬふりをしているのだろうか。そうだとしたら、あまりにも罪深い。いま「見て見ぬふり」といったが、円安がもたらしている負の効果に気づいていないとしたら、それはもっと問題である。
冒頭で、訪日する外国人が円安を歓迎している旨を述べた。しかし、それは、われわれが欧米に行くと、面食らうほどの物価高に出会うということである。私が今年、ヨーロッパに数度行った際の実感でいえば、飲食費も交通費も宿泊費も日本の1.5倍から2倍である。海外に行くと、あたかも最貧国から来たような錯覚に陥る。いや、もはや日本が最貧国だという印象は、錯覚といいきれないのかもしれない。
●安倍晋三元首相の政治資金をゴッソリ継承…これが許される「世襲優遇」 12/12
故安倍晋三元首相の妻・昭恵氏が、夫の政治団体「晋和会」を継承し、元首相の5政治団体から計約2億1000万円を集めていたことが分かった問題。政党交付金の国庫返納もなく、無税で政治資金を「相続」した格好となり、国会でも「封建時代の領主」(枝野幸男立民前代表)と批判を浴びた。親族間の政治資金継承は一度、自民も旧民主も禁止とする改革案を出したが実現せずに、今回の夫婦継承問題に至った。このままでいいのか。
「全部で3.4億円」でも「相続税の課税は生じない」
今月8日、岸田文雄首相が出席した参院予算委員会。安倍元首相が死去した昨年7月8日付で安倍氏の資金管理団体だった「晋和会」の代表が妻の昭恵氏に変更されて政治資金も引き継いだとして、蓮舫議員(立憲民主)が「全部で3.4億円。これ、非課税ですか」と問うた。
総務省の担当者が「相続税の課税は生じない」と答えると、蓮舫氏は「総理これね、変えませんか、この制度」と畳みかけた。
安倍元首相が代表を務めていた「自由民主党山口県第4選挙区支部」の代表も、同日付で昭恵氏に変更されたが、昭恵氏は森友学園問題などで閣議決定により「私人」と定義された経緯がある。
8日の衆院予算委で枝野幸男議員(同)は「なぜ亡くなった日に、私人であった配偶者が自民党の支部長になるんですか」と追及。これに対し岸田首相は「政治団体が代表を誰にするのか、資金をどうするのか、これは団体において判断する課題と考える」と述べて、問題視はしなかった。
枝野氏は「自民党の政治って古いと思っていたが、いやいや江戸時代、封建時代。領主さまが亡くなったら身内が引き継ぐ。自民党の支部ってそういうもんなんですか」と批判した。
継承した政治団体に、政党支部などから「寄付」
億単位の政治資金の「夫婦継承」は、どのように行われたのか。
総務省や山口県が公開した政治資金収支報告書によると、安倍元首相が亡くなった後の昨年7月〜今年1月、晋和会に五つの関連政治団体から総額計約2億1470万円が寄付の形で移され、このうち1億6434万円は5回にわたり、税金を原資とする政党交付金を受ける第4支部から受けていた。
このほか安倍元首相が生前に開いた政治資金パーティー収入や前年度からの繰越金を含め、蓮舫氏が「相続」とみなしたのが計約3億4200万円。晋和会は、安倍元首相の資金管理団体から通常の政治団体に衣替えし、第4支部は今年1月に解散。同支部の政党交付金使途等報告書によると、昨年も700万円の交付金を受けていたが、前年の倍以上にあたる2131万円の人件費などを支出し、全額を使い切っていた。
「政治資金の私物化と言える」
現行の政治資金規正法では政治資金は非課税扱いで、政治団体の代表者が議員から親族に交代しても相続税や贈与税はかからない。政治団体が別の政治団体に寄付の形で資金を移した場合も、税金はかからない。
元国税調査官でフリーライターの大村大次郎氏は「相続税法は金銭的な価値があれば、すべて相続税の対象と定める。お金をかけて政治家の『地盤』をつくってきた政治団体にも本来、相続税はかかるはず。法律上認められても社会的には認めがたく、倫理的に問題がある」と指摘する。
昭恵氏のような政治能力の未知数な親族が政治団体を引き継ぐことについて「悪弊だが、法律の抜け道として政界で繰り返されてきた」と述べ、こう続ける。「これは自分の財産を政治団体として管理しているだけ。公的な団体にふさわしい監査やチェックが働いておらず、政治資金の『私物化』と言える」
「脱税」批判に激しく反論していた晋三氏
そもそも「晋和会」の「相続」は2度目。晋三氏が父親の晋太郎元外相が亡くなった1991年に継承したのが1度目だ。第1次安倍政権時代末期の2007年には「週刊現代」が、晋太郎氏が晋和会などに個人献金した6億円以上の資金をそのまま晋三氏が引き継いだことを問題視。既に時効を迎えているとした上で、相続税が3億円に上るとし「脱税疑惑」と報じた。
第2次安倍政権時代の14年11月、参院予算委員会で社民党の吉田忠智党首(当時)がこの報道を取り上げると、晋三氏は「いまの質問は見逃すことはできない。重大な名誉毀損(きそん)だ。週刊誌の記事だけで私を誹謗(ひぼう)中傷するのは、議員として恥ずかしいことだ。これは全くの捏造(ねつぞう)だ」と激しく反論した。
継承規制の話はたびたび持ち上がっても実現せず
ただ、政治団体「相続」の制限を求める声は、かねてから浮上している。
政権交代を目指した09年、旧民主党は「世襲政治からの脱却」を掲げ、国会議員が死亡または引退した場合、配偶者や3親等以内の親族が政治団体を引き継ぐことを禁止▽その政治団体が親族らに寄付することも禁止、とする政治資金規正法改正案を国会提出した。だが成立しなかったばかりか、政権交代前後には、鳩山由紀夫首相(当時)の資金管理団体を巡る偽装献金問題の捜査で、実母からの巨額の資金提供が発覚し、沙汰やみになった。
一方、自民党も同時期に党改革実行本部が党内ルールとして世襲制限案を示し、その素案には資金管理団体や政党支部など国会議員がかかわる政治団体の継承の禁止を明記した。だが、最終的には「世襲を特別扱いしない」と抽象的な形の提言に終わった。
「本来は国庫に戻されるべき資金」
当時を知る政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「政権奪取後の民主党は公務員改革を優先し、政治家の身を正す改革は後回しにされた。自民党も世襲が問題視される一方で、(09年8月の総選挙で初当選する)小泉進次郎氏の人気が高く、及び腰だった」と話す。
「いま批判を集めているパーティーによる政治資金集めについては今後、法改正が行われるかもしれない」とする一方、こう強調する。「政治家は、政治団体を『抜け道』として利用して相続税や贈与税を免れてきた。一番の問題は、名義を変えるだけで、子どもに組織や資金を残せるというロンダリングの仕組みを政治家が残していることだ」
日本大の岩井奉信名誉教授(政治学)は「中選挙区制時代から続く後援会型の個人地盤が、小選挙区制になってもそのまま続いている。政治家の都合のいい制度になっているのは間違いない」と政治団体がブラックボックス化する現行制度を批判する。「今回は特に政党支部の資金が移されていることに違和感を覚える。本来は党本部に帰属し、国庫に戻されるべき資金で個人が相続できるものではない」
「世襲議員全体のあり方を見直すべき」
政治家が引退したり、死亡したりした際の資産の継承について、岩井氏は早急なルール作りを求める。
立憲民主党は、今の臨時国会に、旧民主党と同様の政治資金規正法改正案を提出。岡田克也幹事長は会見で「何億もの金が政治団体に残されて、そのまま親族に代表者が代わって選挙に出るということになると、これはあまりにも一般の立候補者と比べてバランスがおかしい。しっかり法律で禁じる必要がある」と理由を説明した。
岩井氏はこう語る。「世襲議員だから悪いというわけではないが、スタート時に資金面で有利となるのは確か。全くルールがない中では、新たな人材を生み出すという意味で政党自体の活力がなくなる。お金の問題だけではなく、世襲議員全体のあり方を見直すべき時期にきている」
デスクメモ
政治家が亡くなった後、その政治団体の残金はどう処理されるか。実は政治資金規正法には何も規定がない。当然予想される事態なのに、なぜ尻抜けを放置するのか。だが、岸田首相をはじめ世襲議員があふれる自民を見るに、その答えはすぐ浮かぶ。穴はわざとあけてあるのだろう。
●岸田内閣支持率22.5%でついに過去最低に 不支持も71.9%で過去最高更新 12/12
産経新聞とFNNが9、10両日に行った世論調査で、岸田内閣の支持率が前回(11月11、12日実施)比で5.3ポイント減の22.5%となり、2021年10月の政権発足後、最低を更新した。不支持率も前回比3.1ポイント増で過去最高の71.9%に上った。
不支持の理由は「実行力に期待できない」(32.5%)、「政策がよくない」(30.7%)と続いた。
裏金「対応に問題」は93%
自民党のパーティーを巡る裏金疑惑に関して、党と各派閥の対応は「大いに問題がある」「やや問題がある」の回答の合計が93.2%を占めた。
この疑惑に対する岸田首相の責任は「大いにある」「ややある」が計87.7%だった。
岸田首相にいつまで続けてほしいかの質問には「来年9月の総裁任期まで」が46.3%。次いで「すぐ交代」が40.5%だった。
政党支持率は自民党は27.3%で前回から1.7ポイント減。日本維新の会(1.3ポイント増の7.9%)、立憲民主党(1.3ポイント増の7.6%)、共産党(1.8ポイント増の3.8%)と続いた。
●岸田内閣支持率23% 発足以降最低に 自民政権復帰以降でも最低 12/12
NHKの世論調査によりますと、岸田内閣を「支持する」と答えた人は、11月の調査より6ポイント下がって23%と、おととし10月の内閣発足以降、最も低くなりました。一方、「支持しない」と答えた人は6ポイント上がって58%でした。
NHKは、12月8日から3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかける「RDD」という方法で世論調査を行いました。調査の対象となったのは2368人で、51%にあたる1212人から回答を得ました。
岸田内閣を「支持する」と答えた人は11月の調査より6ポイント下がって23%と、おととし10月の内閣発足以降最も低くなりました。
また、2012年12月に自民党が政権に復帰して以降で見ても、最も低くなりました。
一方、「支持しない」と答えた人は6ポイント上がって58%でした。
支持する理由では、「他の内閣より良さそうだから」が40%、「支持する政党の内閣だから」が28%、「人柄が信頼できるから」が15%などとなりました。
支持しない理由では「政策に期待が持てないから」が50%、「実行力がないから」が26%、「人柄が信頼できないから」が11%などとなりました。
自民党の派閥の政治資金をめぐる問題を受けて岸田総理大臣は、当面、各派閥の政治資金パーティーを自粛するよう指示したほか、みずからは岸田派を離脱しました。
この対応をどう思うか尋ねたところ、「適切だ」が22%、「遅すぎる」が66%でした。
政治資金をめぐるルールを厳しくすべきかどうか聞いたところ、「厳しくすべきだ」が81%、「今のままでよい」が9%でした。
住民税が非課税の世帯への給付や、ガソリン代などの負担軽減措置の延長などが盛り込まれた今年度の補正予算について、物価高対策の効果を期待するかどうか尋ねたところ、「大いに期待する」が5%、「ある程度期待する」が28%、「あまり期待しない」が38%、「まったく期待しない」が23%でした。
来年6月にも実施される、所得税などを1人あたり4万円減税する対象について、与党内では「富裕層を外す所得制限を設けるべきだ」という意見が出ています。
この賛否を聞いたところ、「賛成」が51%、「反対」が32%、「わからない、無回答」が17%でした。
岸田総理大臣は、来年の春闘に向けて、ことしを上回る水準の賃上げを経済界に要請しています。
こうした賃上げが実現すると思うかどうか尋ねたところ、「実現する」が18%、「実現しない」が69%でした。
●内閣支持率ついに20%台前半に 岸田政権「裏金」疑惑でさらに逆風 対応は「大いに問題」自民党は政権復帰以来最低に 12/12
岸田文雄内閣への逆風がさらに強まっている。産経新聞・FNN(フジニュースネットワーク)と、NHKがそれぞれ11日に公表した世論調査で、内閣支持率がいずれも20%台前半となり、発足以来、最低に落ち込んだ(別表)。NHKの調査では、自民党の支持率が2012年の政権復帰後最低となった。自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる問題が大きな打撃を与えた形だ。
11月の産経・FNN調査では経済政策への不満も目立ち、支持率が30%を割り込んだが、今回の調査では不支持率が70%超となった。
政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑が影を落とす。産経・FNN調査では、自民党と各派閥の対応は「大いに問題」「やや問題」とする回答が計93・2%に上った。
疑惑に関する岸田首相(党総裁)の責任に関しては「大いにある」「ややある」が計87・7%を占めた。
岸田首相にいつまで続けてほしいかの質問では「来年9月の総裁任期まで」が最多の46・3%だったが、「すぐに交代」も40・5%にのぼった。「来年9月以降も続けてほしい」は9・3%にとどまった。
下落傾向は岸田内閣だけに留まらない。岸田首相は、安倍派を切り捨てる構えだが、自民党の政党支持率は、産経・FNN調査で、27・3%(前回比1・7ポイント減)だった。NHK調査では29・5%(8・2ポイント減)で、12年の政権復帰後、初めて30%台を下回った。
有権者が自民党全体に厳しい視線を向けていることははっきりしている。
●岸田政権の瓦解はまさに「令和のリクルート事件」… 12/12
まさに「令和のリクルート事件」
岸田文雄政権の瓦解が止まらない。自民党安倍派の政治資金パーティを巡る一連の問題で、政権の要である松野博一官房長官らが辞任する可能性が高まっている。12月11日に発表された産経・FNN合同世論調査によれば、内閣支持率22.5%と、過去最低を更新した。
岸田首相の内心を察すれば、いま起こっていることは、岸田政権の問題ではなく、自民党安倍派の問題だという認識だろう。悪いのは安倍派なのに、なぜ自分が非難を受けねばならないのかと、憤懣(ふんまん)やるかたない思いなのかもしれない。
だが、普段、アジアを俯瞰的かつ歴史的に見ている私からすると、今回の一件は、そのような「単純な事案」ではない。日本が「平成の時代」から「令和の時代」に変わっていく際に起きる「生みの痛み」である。「平成の膿(うみ)の露出」と言ってもよい。
つまり「平成の日本」を牽引してきた自民党安倍派が、「令和の時代」になっても、「平成的なこと」をやり続けていることに対する懲罰と見るべきだ。
そのことは、メディアが今回の一件を、「令和のリクルート事件」と報じていることからも明らかだ。まさに言い得て妙である。
リクルート事件は、竹下登政権時代の1988(昭和63)年6月18日、『朝日新聞』が、東京南西郊の川崎駅の西口再開発に関連して、リクルート社から川崎市の助役にリクルート・コスモス株が譲渡されたと報じたことがきっかけで火がついた。リクルート・コスモス社は、1986(昭和61)年10月30日に上場を果たしており、譲渡者は濡れ手に粟の利益を手にすることができた。
リクルート事件は、ほどなく「政界ルート」へと火が燃え移った。中曽根康弘、竹下登、宮澤喜一、安倍晋太郎、渡辺美智雄……派閥の領袖クラスにも、リクルート・コスモス株が譲渡されていたことが発覚したのだ。そこから国会は、リクルート事件への追及一色となった。
事件が発覚して約半年後の12月9日に、宮沢蔵相が辞任した。政権運営に危機感を感じた竹下首相は、暮れの12月27日に内閣を改造。ところが、わずか3日後の12月30日、長谷川峻法務大臣も、リクルートから献金を受けていたことが発覚して、辞任に追い込まれた。
翌1989年1月7日に昭和天皇が崩御、元号が平成に変わった。だが政界の火の粉は収まらず、1月24日に原田憲経済企画庁長官が、リクルートに政治資金パーティ券の購入を依頼していたことが発覚して辞任した。
4月26日、竹下首相自身にも捜査の手が伸びるや、金庫番だった青木伊平秘書が自殺。5月22日には藤波孝生元官房長官が、受託収賄罪で在宅起訴され、同25日には中曽根前首相が証人喚問を受けた。同29日には、宮沢前蔵相秘書ら国会議員秘書4人が、政治資金規正法違反で略式起訴された。
こうして万事休すとなった竹下首相は、6月3日に内閣総辞職したのである。それによってようやく、リクルート事件は幕引きとなった。
「昭和の時代」から「平成の時代」へ
いまにして思えば、リクルート事件は、日本という国が「昭和の時代」から「平成の時代」に変遷していく際に起きた「痛み」「膿」と言えた。換言すれば、「平成の時代」になっても、政界が「昭和的なこと」を相変わらずやり続けていたことに対する懲罰である。
昭和というのは、日本にとって「上昇と外向きの時代」だった。それは、明治維新から連綿と続いてきたものだ。
昭和前期に、日本は軍事的に台頭した。台湾と朝鮮半島を植民地化したばかりか、中国や東南アジアに侵攻し、東京は軍事的な「アジアの首都」だった。アジア最大の軍事大国として、世界最大の軍事大国であるアメリカにも戦争を挑んだほどだ。
そうした「軍事大国の時代」は、1945(昭和20)年に敗戦したことで、幕を閉じた。だが昭和後期は、「奇跡の高度経済成長」を成し遂げ、「経済大国の時代」を迎えた。東京は経済的に「アジアの首都」となった。
特に1980年代後半の日本は、バブル景気に沸き、自動車・電気製品・半導体など、多くの分野で日本製品が世界を席巻した。金融面でも邦銀は世界中の富を吸収し、株価は右肩上がりが続いた。
そうした昭和後期の「経済大国の時代」を象徴した最後の首相が、中曽根康弘首相(首相在位:1982年11月〜1987年11月)だった。金満ニッポンを背景に、アメリカのドナルド・レーガン大統領と「ロン・ヤス関係」を結び、G7(主要先進国)のアジア唯一の代表として、「経済大国日本」を牽引した。
ところが前述のように、1989年に昭和は終焉を迎え、平成の時代に変わった。「上昇と外向きの時代」の中曽根政権を引き継いで、1987(昭和62)年11月に発足した竹下政権のスローガンは、「気配り調整」。主な実績は、全国の市町村に一律1億円を配布した「ふるさと創生」事業と、3%の消費税導入だ。
このように竹下政権とは、多分に「下降と内向きの時代」を象徴していた。実際、日本の株価は1989年の大納会の3万8915円を頂点として、下降していった。いわゆる「バブル崩壊」である。
ところが日本社会は、こうした「昭和→平成」という潮流の変化に、すぐには対応できなかった。重ねて言うが、そうした中で「社会のひずみ」として起こったのが、リクルート事件だったのである。
竹下政権崩壊の後は、自民党を浄化するということで、クリーンさが売り物だった宇野宗佑政権が発足。だが、愛人が『サンデー毎日』で新首相の「汚い性癖」を暴露し、わずか69日で崩壊した。
その後、「政治とカネ」の問題への解決策として、1994(平成6)年に公職選挙法を改正し、中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に移行した。同年には政党助成法も定めた。つまり、「平成の身の丈に合った政治」に改めたのである。
岸田政権はいわば「平成の残滓」だった
「平成の時代」は経済的にも、「下降と内向きの時代」だった。すなわち、「失われた15年」のデフレ時代だ。12行あった大手銀行は、3大メガバンク(三菱UFJ・三井住友・みずほ)に統合され、若者たちは「超氷河期」と呼ばれる就職困難期に直面した。
そのような「平成の時代」において、「最後の花火」のような時代が、2期目の安倍晋三政権(2012年12月〜2020年9月)だった。
3年3ヵ月に及んだ民主党政権から政権交代を果たした安倍首相は、「3本の矢」からなるアベノミクスを唱え、株価を上昇させた。そして6回の国政選挙に連戦連勝し、日本憲政史上最長となる2822日もの長期政権を維持した。
外交的には「地球儀を俯瞰する外交」を掲げ、「外向き志向」が鮮明だった。隣国の習近平政権にライバル心を燃やし、2期目の在任中に延べ176ヵ国・地域も訪問した。
その間、2019年5月1日に、元号が平成から令和に変わった。翌2020年(令和2)年に入ると、新型コロナウイルスが蔓延。安倍政権が得意とした「攻めの時代」から、苦手な「守りの時代」へと移行したことで、求心力を失っていき、9月に総辞職した。安倍政権は多分に、「平成的な政権」だったのだ。
「安倍政権を引き継ぐ」として、菅義偉官房長官が新政権を発足させた。だが、安倍政権と菅政権は、明らかに「断絶」していた。
それは、菅政権が「下降と内向きの時代」を志向していたことからも明らかだ。菅首相は政権発足時、自らの実績として「ふるさと納税」を強調した。竹下元首相の「ふるさと創生」とそっくりだ。
2021年夏、コロナ禍の中で東京オリンピック・パラリンピックを強行したところで、菅政権は力尽きてしまった。10月4日に総辞職した。
オリンピックを巡っても、翌2022年8月17日、元電通専務の高橋治之被告が受託収賄で逮捕され、大掛かりなオリンピック談合疑獄に発展した。この事件も、「令和の時代」になって「平成的なイベントの膿」を吐き出したとも言えた。
そんな菅政権の跡を継いだのが、岸田文雄政権だった。菅政権が総辞職した日に、新政権を発足させた。
世間では「安倍・菅政権」と呼び、岸田政権から「別物の政権」に移行したかのように言われている。だが私の見方は異なる。
安倍政権こそは、「平成という時代を背負った最後の政権」である。続く菅政権と岸田政権は、いわば「平成の残滓(ざんし)」であり、平成から令和へと日本が移行していく過渡期の政権である。
それは重ねて言うが、昭和から平成に日本が移行していく過渡期に、竹下政権があったようなものだ。だからこそ今回の事件を、「令和のリクルート事件」と呼ぶのである。
2024年から、本当の「令和の時代」が始まる
リクルート事件によって、「昭和の政治家」たちはことごとく散っていった。同様に、平成の世を彩った自民党最大派閥・安倍派の重鎮たちも、今回の事件によって後退を余儀なくされることだろう。
そうした兆候は、昨年7月8日に安倍元首相が凶弾に斃(たお)れた時から始まっていた。安倍元首相の死後、統一教会を巡る一連の事件が噴出したが、これもまた「平成時代の残滓」である。
この2年余りの岸田外交を振り返っても、平成を彩った安倍外交とは異なるものだった。
今年5月に広島G7(主要先進国)サミットを開いたことを除けば、特筆すべきレガシー(政治的遺産)はない。広島サミットにしても、たまたま7年ぶりに議長国の順番が日本に回って来たものだ。
しかも岸田首相は、外交の功労者だった林芳正前外相を、9月13日の内閣改造で、未練もなく切ってしまった。林前外相は、宏池会(岸田派)の後継者でもあるのに、なぜあのような仕打ちをしたのか理解に苦しむ。
昨年2月24日にロシアがウクライナに侵攻した時にも、岸田首相は世界で積極的な役割を果たしていない。今年3月21日、ようやくウクライナを訪問したが、あれは5月に広島G7サミットを主催するのに、議長である自分だけ訪問していないという負い目から行ったものだ。しかも、アメリカとイギリスにお膳立てしてもらった。
また、今年10月7日にハマスがイスラエルを攻撃して始まったイスラエル・ハマス紛争でも、G7議長の岸田首相はほとんど無力だった。10月22日には、日本を除くG7の6ヵ国で、イスラエルを支持する共同声明を発表してしまった。
上川陽子新外相が現地に入ったのは、事件から1ヵ月近くも経った11月3日のことだ。しかも同月6日、7日に東京でG7外相会合を開かねばならなくなったため、背中を押されるように駆けつけたのだ。
このように、岸田政権も菅政権と同様、「下降と内向きの政権」と言えた。
おそらく、来年2024(令和6)年から、本当の意味での「令和の時代」が始まるだろう。それは「平成の時代」よりも、さらにもう一段階、「下降と内向きの時代」になるに違いない。
21世紀の日本は「アジアの癒しの地」
すでに日本の少子高齢化は、歯止めが利かなくなってきている。総務省の最新の発表によれば、今年9月15日時点の高齢者人口は3623万人。全人口の実に29.1%にあたる。全人口の約3割が高齢者などという国は、日本以外に世界のどこにもない。
一方、厚生労働省は先月7日、今年上半期(1月〜6月)の出生者数が35万2240人だったと発表した。昨年比で見ても4.1%減だ。このペースでは、ついに年間の出生者数が70万人を割り込む可能性もある。
2016年に出生者数が100万人を割り込み、「統計を取り始めた1899年以来、初めて100万人を切った」と大騒ぎになった。それからわずか7年後、70万人割れのところまで来ているのである。
これが「令和の日本」の現実だ。国力の原点である人口(及び人口形態)が、このような状態なので、「平成の時代」と同様に発展していけるはずもない。ましてや「昭和の時代」とは比較にならない。今後の日本を牽引するのは、「令和の身の丈に合った政権」になるはずだ。
「令和の身の丈に合った政権」とは、いかなる政権か? おそらく今年、NHKの大河ドラマ『どうする家康』で、その原点が描かれてきたような、江戸時代に近い形になるのではないか。
江戸時代の人口は、3000万人前後で推移した。そして何度かの飢饉の時期を除けば、四方を海に囲まれた島国という恵まれた環境で、太平の世を満喫していた。
「令和の時代」が江戸時代と異なるのは、鎖国をしていない点だ。江戸時代の4倍の人口を養うには、他国との旺盛な貿易は不可欠であり、インバウンドの観光客効果もあった方がよいに決まっている。
政府観光局の発表によれば、今年10月の訪日外客数は、ようやくコロナ前の2019年10月を0.8%上回った。中国人だけが、2019年10月比で35.1%と振るわないが、他国・地域の訪日客でカバーしている格好だ。
そんな外国人観光客の多くが日本に求めているのは、世界最先端の電化製品でもなければ、世界最高峰のタワーやイベント会場でもない。そうではなくて、江戸時代からある「日本伝統の風物」である。おいしい水や空気、自然の景色、温泉、地産地消の食べ物といったものだ。
日本人が、とかく下に見がちな近隣のアジア諸国の観光客でさえ、「21世紀」ではなく「江戸時代」を求めて、日本を訪れるのだ。なぜなら彼らの祖国では、そうしたものは幾多の戦乱や混乱などによって、消滅してしまっているからだ。
21世紀の日本は、「アジアの癒しの地」なのである。いわば日本全体が、心地よい温泉地のようなイメージだ。
その意味で、令和の「下降と内向きの時代」も、悪い事ばかりではない。「身の丈」をわきまえれば、江戸時代のように、太平の世を十分に謳歌できるだろう。
「令和の身の丈に合った日本」に向かう過程
隣国の習近平政権が、「中華民族の偉大なる復興という中国の夢の実現」を目指すなら、勝手にすればよい。ただし、日本国の固有の領土である尖閣諸島を奪われるのは困る。そのために海上保安庁と自衛隊は、全力で防衛する必要がある。
台湾有事も困る。故・安倍元首相が口癖のように言っていたように、明らかに「台湾有事は日本有事」だからだ。
台湾には約2万人の邦人が、中国大陸には約10万人の邦人が生活している。与那国島や石垣島などの先島諸島にも約10万人が暮らす。ひとたび台湾有事が起きれば、直接的に計22万人の日本人の有事になる。
加えて、台湾から多数のボートピープルが日本に押し寄せるだろう。台湾海峡という日本のシーレーンも、中国に支配されることになる。中東から原油が入ってこなくなれば、日本は崩壊する。
もう一つの厄介な隣国、北朝鮮も、基本的には金正恩(キム・ジョンウン)政権が好きに「強盛国家建設」を目指せばよい。軍事偵察衛星を飛ばしたければ飛ばせばよい。原子力潜水艦でも極超音速ミサイルでも、勝手に開発すればよい。核開発だって、国連から10回も制裁を受けていながら止めないではないか。
ただし、それらの兵器を日本に向けて飛ばしてもらっては困る。だから日々、警戒を怠らない。
そのために日本は、「反撃能力」こそ確保していくが、基本的には「専守防衛」であるべきだ。そもそも明治期から昭和前期にかけてのような、アジアに侵攻していく「余力」など、「令和の時代」にはもう残っていない。
というわけで、たとえ岸田政権の支持率がさらに急落したとしても、その結果、崩壊したとしても、冷静に受け止めるべきだ。それは大きなアジアの歴史の潮流の中での「必然」であり、「令和の身の丈に合った日本」に向かう過程の出来事だからだ。
そうして来年2024(令和6)年、「令和の身の丈に合った新政権」が、日本に誕生することだろう。
●政治に風穴を開けた田中角栄・元首相の「人の心をつかむ言葉」 12/12
この国の政治が行き詰まり、政治家が国民の信を失った時、誰が言うでもなく田中角栄待望論が沸き上がってくる。「もし、角栄が生きていたらどうするだろうか」。今がそうだ。失われた30年の間に国力は衰え、少子高齢化は止まらない。高齢者は老後に不安を抱え、若者は将来に夢を持てない社会になった。それなのに政治は解決の処方せんを示すことができずにスキャンダルを繰り返している。岸田内閣の支持率は軒並み20%台まで落ち込んだ。
「角栄なら国民に新しい社会への夢を描いてみせるはずだ」──。
そんな期待を抱かせるのである。2023年12月16日は角栄没後30年にあたる。生前はロッキード事件で刑事被告人となり、金権政治家と批判されながら、死後もなお、政治家・角栄が国民に鮮烈な印象を残し続けているのはなぜか。田中内閣の総理秘書官を務め、『日本列島改造論』の執筆者の一人でもある小長啓一・元通産事務次官が語る。
「佐藤栄作長期政権に対し国民のある種の倦怠感が燻る中、田中さんは現状を打破して新しい風、新しい考え方をしようと日本列島改造論を掲げて登場した。総理になるかもしれない人が、こんな大胆なビジョンを打ち出したのは初めてだった。それが国民には新鮮に映り、喝采を得たのだろう」
時代の閉塞感を打ち破った政治家だった。
「列島改造論には前段階があった。田中さんは高等小学校卒業だったけれど、『学歴ではなく経験、知識が大切なんだよ』と言いながら、ルーティンの合間を縫って政策の勉強をコツコツと積み上げていった。当時、政治家の多くは『議員の仕事は国会での法案審議』と考え、法律を作ることは役人任せでしたが、田中さんは国民の声を拾い上げ、行政ベースには乗らない難しい課題でも自ら議員立法を成立させて解決していった。“役所ができない法律をオレがやる”というのだから、役所とは対立関係になることもある。それでも、田中さんは33本の議員立法を手がけた。この記録は破られていません。まさにフロンティアに挑戦する、民主政治家のモデルでした」(小長氏)
わかりやすい角栄の言葉には人の心をつかむ力があった。左派学生を前に自由主義経済をこうたとえた。
「子どもが10人おるから羊羹を均等に切る。そんな社会主義や共産主義みたいなバカなこと言わん。君、自由主義は別なんだよ。チョンチョンと切って、一番ちっちゃいヤツに、一番でっかい羊羹をやる。分配のやり方が違うんだ。大きなヤツには『少しくらいガマンしろ』と言えるけど、3〜4歳の子はおさまらんよ。そうでしょう。それが自由経済」
大蔵大臣時代には、新人官僚にこう訓示した。
「諸君らの上司にはバカがいるかもしれない。もしバカがいたら、バカなんだから諸君のアイデアを理解できないだろう。そんな時は迷わなくていい。遠慮なく大臣室に駆け込んでこい」
叩き上げの政治家・角栄は持ち前の政策力と実行力、人心掌握力で郵政大臣、大蔵大臣、通産大臣として難題を処理し、54歳で総理大臣へと駆け上がる。
「一気に使え」
「決断と実行」──それが首相就任時に掲げたスローガンだ。
外交的には日中国交回復を決断、エネルギー問題でも米国の石油メジャー依存からの脱却をめざして独自の資源外交を展開した。文字通り有言実行の政治家だった。
角栄に関する多くの著書がある政治評論家・小林吉弥氏が語る。
「二枚舌は使わず、やると言ったら必ず実行するのが角栄でした。『金というものはチマチマ使うより、ここぞという時、一気に使え。そのほうが何倍も効果が大きい』というのが持論で、財政出動する場合も、政権の人気取りでバラ撒くのではなく、国民の一番求めている政策を考え、財源まで手当てして決断する。たとえば岸田さんの4万円減税はどこを向いた政策かわからないし、チマチマ金を使っても効果が出ない。角栄であれば思いきってただちに1人10万円以上配るでしょうね」
あるいは、当時のように国民にこう説くかもしれない。
「目先の握り飯(所得税減税)もさることながら、柿の種(企業減税)を撒き、木(経済)が育てば、おいしい果実はおのずから食べられる」
角栄の政治には、確かに金が付きまとった。数々の政策、派閥作り、その全てに莫大な金を必要とした。金脈問題で総理の座を追われたのは必然だったのかもしれない。
「だが、その目的は最後まで政治のためだった。いま問題となっている安倍派の裏金のように、私利私欲のためではなかった。平成、令和の政界は角栄の負の側面だけが受け継がれ、肝心の理念は置き去りにされた」(ベテラン議員秘書)
時代の曲がり角に登場し、政治に風穴を開けた角栄がもし今の政界にいたら、少子高齢化、国民負担の増大、中東危機やウクライナ戦争による資源価格高騰などの課題にどう立ち向かい、どのように日本社会を元気にするのだろうか。  
 12/13

 

●「泥船」との声も…岸田首相“2段階人事”へ 4閣僚で月末党役員人事も難航 12/13
岸田首相は、12月14日、安倍派の4人の閣僚を交代させる一方、自民党の役員については12月末に入れ替える2段階の人事を行う方針。
国会記者会館から、フジテレビ・政治部の瀬島隆太郎記者が最新情報をお伝えする。
「安倍派の一掃」案は見送る岸田首相だが、岸田派をめぐる問題が新たに浮上したことに、党内の不満は増幅していて、後任人事は難航しているもよう。
岸田首相「(岸田派の)事務局において調査をし、そして当局に対して丁寧に説明する。報告を受けたならば、適切に説明をさせる」
岸田首相は、安倍派の閣僚全員を14日に交代させる一方、当選回数の少ない政務官6人については、辞任を自主判断とする。
党役員では、萩生田政調会長らは近く辞任を表明するが、交代は2024年度予算案を決定する22日以降となる方向。
後任人事では、無派閥や重要閣僚の経験者を充てる方向で、斎藤前法相、林前外相、加藤前厚労相、堀内前ワクチン相などが浮上している。
ただ、ある党幹部が「みんなが断っている」と話すほか、候補者の1人も「泥船だ」と述べていて、難航しているもよう。
悩める岸田首相だが、13日午前、党本部に入り、幹部らとの会談に臨んでいる。
13日夜に記者会見を開く予定で、人事の方針など、どのように説明するか注目される。
●崩壊寸前の岸田政権「大国外交」はもう身の丈に合わない… 12/13
自民党安倍派が政治資金パーティー収入の一部を裏金にしていた疑惑から、存亡の危機に直面する岸田政権。
松野官房長官らの更迭人事が行われるとの報道もある中、12月16日に東京で開催される東南アジア諸国連合(ASEAN)の特別首脳会議で、岸田氏は共同議長を務める。2024年半ばには中央アジア5カ国とも初の首脳会議を開く。いずれも中国・ロシアに対抗して「大国外交」を展開するのが狙いとみられる。
「外交の岸田」の本領を発揮して政権延命を図る材料にしたいところだが、実質GDP(国内総生産)総額でドイツに抜かれ世界4位に後退した日本には、もはや大国外交を展開する余力などない。
身の丈に合わなくなってきた「大国」の肩書き
「日キルギス、脱『中ロ依存』探る 大統領が初の来日」
11月20日付の日本経済新聞の記事タイトル。読んで思わず「ええっ」とうなってしまった。2024年半ば、岸田政権が中央アジア5カ国と初めての首脳会議を都内で開催するという内容だ。
米中ロが影響力拡大を目指して激しい綱引きを演じるこの地域で、日本が何か役割を演じる余地はあるのか、疑念が浮かんだからだ。
他にも首を傾げざるを得ないニュースがある。
岸田氏は12月1日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれた国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)に出席、翌2日に現地でエジプトのエルシーシ大統領と会談して、最大2億3000万ドル(約333億円、1ドル145円換算)の財政支援を検討すると表明した。
同日、ヨルダンのアブドラ国王とも会談し、2024年に1億ドル(約145億円、同)の財政支援を供与すべく準備を進めると伝えた。
イスラエル・パレスチナ戦争を受け、避難者対応などで経済・財政負担に苦しむエジプト、ヨルダン両国を支援するのはうなずけるとしても、それを即時実施するのではなく「検討する」に留めるあたり、日本にとって「大国」の肩書きが身の丈に合わなくなってきた実情を示している。
日本「大国外交」の実相
ここからは、中央アジア5カ国との首脳会議に焦点を絞り、身のほど知らずとも言える日本の「大国外交」の実相に触れたい。早くその迷妄から目覚めなければ、外交資源や予算の無駄遣いになるからだ。
中央アジアは旧ソ連構成国だったから、長いこと政治的主体として注目を集めることはなかった。
転機は1992年末のソ連崩壊とともに訪れる。地域の盟主的存在のカザフスタンをはじめ、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンが次々に独立した。
中国と旧ソ連との間では、1991年5月に「中ソ国境協定」が締結され、極東地方の大部分の国境が画定していたが、ソ連が崩壊したために、中国と中央アジア諸国との間で国境の再画定が必要になった。
国境問題に加え、イスラム過激派の流入問題や、西側資本も関与するカスピ海の石油・天然ガス資源の管理・運営問題もあり、中国とロシアは1996年にカザフスタン、キルギス、タジキスタンとの首脳会合「上海ファイブ」を設立。それを母体に2001年に現在の「上海協力機構(SCO)」が発足した。
2001年9月の米同時多発テロ事件を受け、当時のブッシュ(子)政権はアフガニスタンに侵攻。アメリカはウズベキスタンやタジキスタン、キルギスで空軍基地や空港の使用許可を得るなど、一帯は国際政治の主体として注目されるようになる。
「ユーラシア外交」を提唱した過去
中央アジア外交の表舞台に日本が初めて登場したのは1997年、当時の橋本首相が提唱した「ユーラシア外交」からだ。中央アジア諸国の関係緊密化やカスピ海の天然資源をにらんで、同地域におけるロシアと中国の影響力拡大にくさびを打ち込む狙いだった。
エリツィン政権のピークこそ北方四島返還を実現するチャンスとみていた当時の外務省ロシアンスクール(ロシア語専門者による省内グループ)と経済産業省が橋本首相を動かし、アメリカや中国をけん制するためロシアとの関係強化を進めようとした。
しかし、エリツィン大統領は2000年に引退。それに伴って、ユーラシア外交も頓挫した。
その後、中央アジアと日本との対話の枠組みができたのは2004年。当時の川口順子外相がカザフスタンを訪問して最初の外相会合を開き、現在までに計9回の会合が開かれてきた。そして今回、20周年の節目を迎える2024年、首脳会合に格上げされることが決まった。
転換期を迎える中ロと中央アジア諸国の関係
中央アジアがあらためて注目されるようになった理由の一つが、ロシアによるウクライナ侵攻だ。
ロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」に加盟する中央アジア諸国(カザフスタン、タジキスタン、キルギス)の間でロシアへの求心力が急速に低下し、中国や欧米諸国との関係を再構築することで安全保障を確保し、国際政治の主体としての存在を強化したい思惑が生まれた。
中国の習近平国家主席が10年前に広域経済圏構想「一帯一路」を発表したのはカザフスタンであり、中央アジア諸国はヨーロッパと中国を結ぶ「一帯」の経路上にある。脱ロシアを進める上で、中国の存在は大きい。
ただし、中央アジア諸国の対外貿易と対外債務に占める中国のシェアは国によってばらばらだ。
対外債務の国別内訳を見ると、タジキスタンとキルギスはいずれも中国のシェアが半分程度を占めるが、輸出入の国別内訳を見ると、ウズベキスタンやカザフスタンは欧米や中央アジア域内諸国のシェアが大きく、中国やロシアは合わせても3〜4割程度にとどまる。
アメリカ盲従の「ツケ」は重い
中央アジアのこうした状況の中で、日本はどんな役割を演じようというのか。
笹川平和財団研究員の齋藤竜太氏は、雇用をもたらす産業育成やそれを支えるための市場経済化、民主化へ向けたビジネス人材や行政官の育成など「社会経済分野の役割」を提言する(国際情報ネットワーク分析、2021年7月12日付)。
これらの提言は、アフリカや太平洋島しょ国への支援でも共通する、ある種の「謳い文句」。支援を受ける側は常に資金援助という「実利」を求める。「民主化」「市場経済化」は確かに聞こえはいい。
しかし、多種多様な部族社会で形成され、旧ソ連時代からの強い官僚システムと腐敗構造が生き残る中央アジア地域にとって、こうした提言は「魅力」だろうか。
主要7カ国(G7)議長国として5月の広島サミットを仕切った岸田氏は、日本の「国際社会をリードする大国」としての外交を自賛する。
しかし大国とは名ばかりで、2023年は実質GDP総額で世界4位に後退し、中進国への転落が鮮明になった1年だった。
「日米同盟基軸」をあらゆる言い訳にし、アメリカの世界戦略に盲従してきた戦後日本の外交は今、根本的な見直しを迫られている。
鹿児島県の屋久島沖で11月29日に発生した米空軍輸送機「V22オスプレイ」墜落事故をめぐる動きは、日本の盲従ぶりを示す分かりやすい例だ。
防衛省は当初米軍の発表通り、「墜落」ではなく「不時着水」と発表。その直後、米国防総省は機体不具合が原因と発表し、全機種の離発着を停止した。12月初旬には、オスプレイの生産ラインを2026年予定で閉鎖するとの報道も出てきた。
1機当たり約9000万ドル(約130億円)もするオスプレイを導入したのは、世界でも自衛隊だけだ。アメリカ盲従のツケがいかに高いかを教えている。
対中政策転換の準備を
アメリカ一極支配の終えんが鮮明になりつつある世界秩序の中で、アメリカのいわば「下請け」として中ロ対抗を狙った日本の「大国外交」は、外交能力や資金面から息切れし、身の丈に合わない「エセ大国外交」だと筆者は考える。
バイデン政権の足元からは、台湾有事を煽り対中軍事抑止ばかりを強調する戦略は逆効果で、むしろ「一つの中国政策」を保証することで安心を中国に供与すべきという提言が出始めている(Foreign Affairs、11月30日付)。
日本政府は菅政権以来、バイデン政権とともに日米安保を「対中同盟」に変え、台湾有事に向けた日米統合戦略を推進してきた。
しかし、外務省は先日死去したキッシンジャー元米国務長官の工作で実現した1970年代の米中和解が、日本の頭越しで行われたことを決して忘れていない。
キッシンジャー氏は中国の周恩来元首相に対し、「中国には普遍的な視点があるが、日本の視点は偏狭」と述べたことがある。
朝鮮半島情勢ととともに、日本の安保政策の中心をなす台湾政策で、アメリカが日本の頭越しに政策転換するのは、外務省にとって最悪中の最悪の「悪夢」だろう。
年明け1月には、台湾海峡情勢を左右する台湾総統選挙の結果が出る。米大統領選でトランプ氏が再選されれば、対中軍事抑止を世界戦略にしてきたバイデン政権の外交政策は終わる。
米中「頭越し」外交の再来に対応するためにも、日本政府は対中政策転換に向けた「プランB」の準備に早急に取りかかるべきだ。
「窒息死」寸前の岸田政権にそれを任せられるかは、心許ないけれど。
●今年も党首討論ゼロ やる気のなさが目に余る 12/13
与野党の党首同士が国の基本政策を論じ合うことが重要な時である。にもかかわらず、政治が応えられていない。深刻な事態だ。
党首討論が開かれないまま、臨時国会が終わる。2年連続で開催ゼロとなる。野党の一部からは、廃止論まで出始めた。
前回は2021年6月、当時の菅義偉首相と立憲民主党の枝野幸男代表らの間で開かれた時にさかのぼる。岸田文雄首相と立憲の泉健太代表の間では、一度も開かれていない。
00年に国会審議の活性化などを目指して正式に導入されて以来、開催は減少傾向にあった。ただ開催ゼロは、この2年を除けば、森友・加計学園問題に揺れた17年、コロナ禍が始まった20年だけだ。近年の低調ぶりは目に余る。
泉氏は今国会の代表質問で、首相に党首討論の開催や、1回45分間という時間の見直しを求めた。首相は「政策の違いを正々堂々と議論することは大変重要だ」と通り一遍の答弁をするだけだった。
立憲も議会運営にあたって、開催を熱心に求めてきたわけではない。首相への追及を避けたい自民党、質疑時間を長く確保できる予算委員会を優先する立憲の双方が、消極姿勢を続けた結果が、今日の状態を招いている。
日本維新の会の馬場伸幸代表は、衆院予算委の質疑で、党首討論を行う衆参両院の国家基本政策委員会を廃止すべきだと主張した。開かれなかったこの間の職員の人件費などが、衆院だけで約3億3700万円に上るとの試算を理由に挙げた。維新は国民民主党とともに廃止法案を国会に提出した。
国会の役割は、政府や議員の提出法案を審議することだけではない。「言論の府」として内外の課題について広く討議する責任がある。だが「1強多弱」「官邸主導」の政治が強化された第2次安倍晋三政権以降、国会の軽視や機能不全が著しい。岸田政権になっても全く解消される気配がない。
党首討論の場を生かせないほど政治家の器は小さくなってしまったのだろうか。ウクライナ戦争、イスラエルのガザ攻撃、「政治とカネ」など骨太な議論をすべきテーマは山積している。廃止するのではなく、せっかくの仕組みを活用する方法を考えるべきだ。  
●岸田首相、党の政治資金問題で14日に人事 信頼回復へ「火の玉」に 12/13
岸田文雄首相は13日、臨時国会の閉会に合わせて記者会見を開き、自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティー問題を巡り、信頼回復と国政の遅滞回避の観点から14日に人事を行うと表明した。人事の内容は調整中とした。「国民の信頼回復のため火の玉となって先頭に立つ」と述べ、再発防止へ向けた改革の実施も強調した。
「火の玉」という言葉を用いた意図について、「この状況に対する強い危機感を総理・総裁である私こそ最も強く感じている、そういった思いを込めた」と説明した。
一方、新たに任命する閣僚に問題が発覚した場合の自身の進退を問われると「仮定の質問に答えるのは適切でない」と回答。松野博一官房長官や西村康稔経産相など疑惑が報じられている安倍派所属の閣僚を交代させるかどうかの質問には「現在調整を続けており、あす明らかにする」と述べるにとどめた。
衆院の解散や来年9月の党総裁選に出馬する可能性については「いま先のことを考える余裕がない」とした。
自民党では、最大派閥の安倍派が政治資金パーティーの収入の一部を議員側に還流し、政治資金収支報告書に記載せずに裏金化していた疑惑が報じられている。
国内メディアは、首相が14日に安倍派所属の松野官房長官、西村経産相、鈴木淳司総務相、宮下一郎農水相の4閣僚を交代させると報じている。同派幹部の萩生田光一政調会長は辞意を固め、世耕弘成参院幹事長、高木毅国対委員長も辞任の見通しという。
日銀には政府の政策を念頭に適切な判断を期待
日銀の植田和男総裁の「チャレンジング」発言により、市場ではマイナス金利政策解除の観測が浮上している もっと見る 。デフレ脱却に向けた政府・日銀の連携を問われた首相は「構造的な賃上げを伴う経済成長、物価安定目標の持続的・安定的な実現を目指していくことで政府・日銀は一致している」と説明。
具体的な金融政策は「日銀に委ねなければならない」としつつ、引き続き政府の経済政策や取り組みを念頭に置いて適切な判断を期待したいと述べた。
岸田政権は海外の投資家や経営者に対し日本への投資を呼びかけてきたが、政治資金問題で政権基盤が不安定化し、政策の先行き不透明感が強まることを海外勢が嫌気するおそれもある。
岸田首相は「政策の基本である政治の安定、政治の信頼が問われる事態は大変残念なことであり、そうあってはならないと強く感じる」と強調。政策の推進と並行して政治への信頼回復を強い覚悟をもって続けていくと語った。
●閣僚人事 官房長官に岸田派の林芳正氏起用へ 松野氏の後任 12/13
岸田総理大臣は松野官房長官を交代させ、後任に自民党岸田派の林芳正・前外務大臣を起用する意向を固めました。
林氏は、62歳。自民党岸田派で派閥ナンバー2のポストの座長を務めています。
大蔵大臣などを務めた父・義郎氏の秘書官などを経て、参議院議員を5期務めたあと、おととしの衆議院選挙で山口3区に立候補して初当選しました。
これまでに防衛大臣や農林水産大臣、文部科学大臣などを歴任し、岸田政権でことし9月まで外務大臣を務めました。
岸田総理大臣としては、閣僚経験が豊富で政策に明るく、安定した答弁にも定評のある林氏を官房長官に起用することで、体制の立て直しを図る狙いがあるものとみられます。
●岸田内閣「不支持」70%超 総理のお膝元、広島の街の人は… 12/13
キキコミです。13日、国会が閉会し、自民党の政治資金パーティーをめぐる「裏金疑惑」の捜査が本格化すると見られていますが、マスコミ各社の世論調査でも岸田内閣の支持率は低下しているようです。街の声はいかがでしょうか?
久保田記者「支持率に揺れる岸田政権。総理のお膝元・広島の人はどのように感じている?」
【20代女性】
Q「支持しますか」と聞かれたら?
「支持しないと思います。税金高いですね。ちょうど(退職して)年金や国民保険の手続きをやっているんですけど、会社が今まで払ってくれていた分を自分で払うってなって、金額を間近に見てすごい高いと思いましたね」
Q天引きされてる時は気づかなかった?
「そうですね」
【40代男性】
「”増税〇〇〇″って言われてますけどね。しょうがないですかね。支持率が下がったのは。国民に対する税金の負担であったり、そういうところもあるんじゃないかな」
Q税金は気になる?
「やっぱり増えていくばっかりで、手取りが増えてこないというのもありますから」
【60代男性】
「不祥事が多いからじゃないですか。安倍派のだと思うが」
Qキックバック疑惑は気になる?
「その話題ばかりなので」
Qそのニュース、有権者としては?
「その党を応援したくなくなりますよね」
【30代男性】
「もっと「子育て世代に楽させてくれよ」って思いますね。
Q出産一時金が増えたのでは?
「増えてましたね。ありがとうございます。助かりました」
Q実感がありますか?
「最初の子と2人目を比べたらまだ(手厚くなった)」
【80代女性】
「もう少ししっかりとして先を見てやってもらいたい。色んないいこと(政策)出ますけど、それも大丈夫かな?と思ったり」
Q所得税減税や年金受給者には給付金も
「それは目先だけで、先はどうなんだろうって思います。頑張ってほしいですよ広島の人だからね。応援もしてましたしね。だからもうちょっとしっかりとやってほしいと思います」
<スタジオ>
FNNが今月9日と10日に行った世論調査では、岸田内閣の「不支持」が初めて70パーセントを超えています。支持率でいうと先月から5.3ポイント急落し内閣の危険水域といわれる3割を2か月連続で割り込んでいます。
●閣僚人事 総務大臣に麻生派の松本剛明氏起用へ 鈴木氏の後任 12/13
岸田総理大臣は鈴木総務大臣を交代させ、後任に自民党麻生派の松本剛明・前総務大臣を起用する意向を固めました。
松本氏は衆議院兵庫11区選出の当選8回で、64歳。麻生派に所属しています。
銀行員を経て、父親の松本十郎・元防衛庁長官の秘書を務めた後、2000年の衆議院選挙で当時の民主党から初当選しました。
民主党政権では外務大臣や衆議院議院運営委員長を務めましたが、民主党が野党に転じたあと、安全保障法制をめぐる考え方の違いを理由に離党して無所属となり、その後、自民党に入党しました。
そして、去年11月、辞任した寺田・元総務大臣の後任として総務大臣に起用され、ことし9月の内閣改造まで務めました。
岸田総理大臣としては、閣僚経験者で、麻生派に所属する松本氏を起用することで早急に体制の立て直しを図る狙いがあるものとみられます。
●自民 高木国対委員長 辞任の意向伝える 安倍派政治資金問題で 12/13
自民党安倍派の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、安倍派の事務総長を務める高木国会対策委員長は記者団に対し国会対策委員長を辞任する意向を茂木幹事長に伝えたことを明らかにしました。
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、高木国会対策委員長側はみずからが所属する安倍派からキックバックを受け、政治資金収支報告書に収入として記載していない疑いがあることがわかっています。
高木氏は臨時国会の閉会を受けて記者団の取材に応じ「政治資金パーティーの件で大変お騒がせをしている。臨時国会が終わり職を辞するべきだと判断した」と述べました。
その上で国会対策委員長を辞任する意向を茂木幹事長に伝えたことを明らかにしました。
高木氏は衆議院福井2区選出の当選8回で67歳。
2000年の衆議院選挙で初当選し、これまでに復興大臣や国土交通副大臣、衆議院の議院運営委員長などを務めました。
国会対策の経験が長く、おととし秋の岸田政権発足に伴い、党の国会対策委員長に就任しました。
安倍派では去年8月から事務総長を務めています。
 12/14

 

●新体制、今夕に発足=4閣僚交代、政権立て直し―岸田首相 12/14
自民党最大派閥・安倍派の政治資金パーティー収入の裏金化疑惑を受け、松野博一官房長官ら同派所属の閣僚4人は14日、岸田文雄首相に辞表を提出した。事実上の更迭。これを受け、首相は新たな官房長官に岸田派の林芳正前外相(62)を充てるなどの後任人事を正式に決定。今夕に皇居での認証式を経て、新体制を発足させる。
新閣僚には安定感のある閣僚経験者を起用。首相は新たな布陣で2024年度予算案の編成作業を進め、政権立て直しに全力を挙げる。
首相は14日昼に公明党の山口那津男代表と首相官邸で会談し、今後の政権運営について協議。林氏は認証式後に首相官邸で記者会見し、首相も人事の狙いなどを記者団に説明する見通しだ。
辞表を提出したのは松野氏のほか、西村康稔経済産業相、鈴木淳司総務相、宮下一郎農林水産相。首相は新たな経産相に無派閥の斎藤健前法相(64)、総務相に麻生派の松本剛明前総務相(64)、農水相に森山派の坂本哲志元地方創生担当相(73)を充てる意向だ。
松野氏は会見で「国民の政治に対する信頼が揺らいでいる。国政に遅滞を生じさせないよう『職を辞したい』と首相に申し上げた」と語った。西村、鈴木、宮下各氏は首相官邸を訪れ、それぞれ辞表を提出。西村氏は「政治不信につながっており、けじめをつける」と記者団に語った。
党役員では14日、安倍派に所属する萩生田光一政調会長が首相に、高木毅国対委員長が茂木敏充幹事長にそれぞれ辞表を提出した。首相は予算案が決まる22日にも受理する意向で、萩生田氏に対し「後任が決まるまで職務を続けてほしい」と伝えた。高木氏の後任には無派閥の浜田靖一前防衛相(68)の起用を検討している。
世耕弘成参院幹事長も関口昌一参院議員会長に辞表を提出した。自民参院執行部が後任の人選を進める。
●岸田首相 安倍派4閣僚の辞表提出で後任人事 林前外相ら起用へ 12/14
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、安倍派の4人の閣僚から辞表が提出されたのを受けて、岸田総理大臣は後任の人事を進めています。
官房長官には岸田派の林芳正 前外務大臣が、経済産業大臣には無派閥の齋藤健 前法務大臣が起用されます。
総理大臣官邸では、午後1時ごろから閣僚の後任が呼び込まれ、岸田総理大臣から、それぞれ正式に起用が伝えられました。
これに先立って、岸田総理大臣は公明党の山口代表と会談し、松野官房長官ら安倍派の閣僚4人の交代や後任人事のねらいなどを説明し、今後の政権運営をめぐって意見を交わしました。
閣僚の後任人事では
  ○官房長官に岸田派の林芳正 前外務大臣
  ○経済産業大臣に無派閥の齋藤健 前法務大臣
  ○総務大臣に麻生派の松本剛明 前総務大臣
  ○農林水産大臣に森山派の坂本哲志 元地方創生担当大臣が起用されます。
また、安倍派の副大臣5人と政務官1人も辞表を提出しました。
閣僚らは夕方に皇居で行われる認証式を経て、正式に就任します。
一方、自民党では、安倍派の三人が辞表を提出しました。
  ○萩生田政務調査会長
  ○高木国会対策委員長
  ○世耕参議院幹事長
岸田総理大臣は、来年度の予算編成が大詰めを迎えていることなどを踏まえ、党役員人事は22日以降に行う考えで、今後、人選が進められる見通しです。
後任人事受け 閣僚の派閥ごとの内訳は
今回の人事で、自民党最大派閥で4人いた安倍派の閣僚が1人もいなくなり、麻生派、岸田派、森山派、無派閥の閣僚がそれぞれ1人ずつ増えました。
その結果、岸田内閣の閣僚の自民党の派閥ごとの内訳は、
  ○麻生派が5人と最も多くなり、
  ○茂木派と岸田派がそれぞれ3人、
  ○二階派が2人、
  ○森山派が1人、
  ○谷垣グループが1人、
  ○無派閥が3人となりました。
公明党は1人のままです。
4人の閣僚が同時に辞任 極めて異例
新たな政権の発足や内閣改造以外で、同じ日に複数の閣僚が辞任したのは、2014年10月、第2次安倍改造内閣で、当時の小渕優子 経済産業大臣と松島みどり 法務大臣の2閣僚が辞任したケースがありますが、4人の閣僚が同時に辞任するのは極めて異例です。
また、新たな政権の発足や内閣改造以外で、官房長官が交代したのは、2004年に当時の福田康夫 官房長官が、みずからの年金未納問題で辞任した例や、2000年に当時の中川秀直 官房長官が、みずからの交友関係をめぐる問題で辞任したケースがありますが、こちらも異例です。
●岸田首相が「裏金疑惑」刷新人事とセットで絶対やるべき、起死回生の一手 12/14
政治資金パーティー裏金疑惑で大揺れの自民党。岸田政権の低い支持率は、この先どうなるのでしょうか。アベノミクスが重視した「あるもの」と決別すれば、岸田首相は起死回生を狙えるかもしれません。
自民党安倍派の裏金疑惑で人事刷新 支持率最悪の岸田首相が絶対やるべきこと
自民党安倍派の政治資金パーティー裏金疑惑を受けて、岸田首相は閣僚人事に踏み切るようです。松野官房長官、西村経済産業相に加えて、党の要職に就く萩生田政調会長や高木国対委員長、世耕参院幹事長にも疑惑が浮上。まさに、前代未聞の事態といえるでしょう。
また、内閣支持率に関するNHK世論調査(2023年11月)では、内閣支持29%、不支持52%と、支持率が20年10月の岸田内閣発足以降初めて30%を下回りました。これは、12年12月に自民党が政権に復帰して以降、最低の水準です。岸田首相がかつてない危機に陥っていることは間違いありません。
しかし、私はこの状況だからこそ、岸田首相が実行できる大きな政策転換があると考えます。それは、アベノミクスからの完全脱却です。ちょうど、日本銀行の植田総裁が異次元の金融緩和からの脱却を実行するであろうタイミングと重なっています。
さて、ここで、アベノミクスと株価について、ざっくりと振り返ってみましょう。安倍政権では大規模な金融緩和など「3本の矢」を掲げ、在任中に株価は3倍近くに跳ね上がりました。そして「株価と政権支持率の連動」が取り上げられるようになり、安倍氏は「常に日経平均株価を意識しながら政治をしている」とまでいわれていました。
翻って、23年の日経平均株価は5月半ばに3万円台を回復して以降、「バブル後の最高値」を何度も更新しました。そして11月20日、一時的に3万3853円に。実に、1990年3月から約33年8カ月ぶりの高値をつけたのです。
岸田政権も賃上げや脱デフレを掲げ、経済を最重要視しています。安倍政権時と同様に、株価と支持率の連動があるなら、23年の日経平均の動きからすれば支持率は高止まりしているはずです。が、実際はどうでしょうか? 見るも無残な状況ですよね…。
ここで考えてみたいのが、そもそも株価を「リアルタイムに反映される国民の政権への評価」とすることが、どれだけ妥当なのか? という点です。
まず、株価を景気の先行指標とすることについて考えてみましょう。例えば、重要な経済指標の1つに、米国の景気先行指数があります。これは、調査機関のコンファレンスボードが、普通株500種の株価に加えて、週平均労働時間、消費財受注、新規住宅着工件数など10項目の要因から総合的に算出した指数です。
このように、株価は確かに景気の指標の1つになるでしょう。しかし、米国の景気先行指数もそうであるように、それはあくまで10項目のうちの1つに過ぎません。にもかかわらず、どうして自民党は株価をそれほどまでに重視するようになったのでしょう。
株価は最安値、支持率は16.3%… 自民党にとって悪夢のような経験
自民党はなぜ、株価を「リアルタイムに反映される国民の政権への評価」とするようになったのか。そして、それは妥当なのか…? 筆者が思うに、きっかけは2009年の自民党“野党転落”が、日経平均と結び付けられて曲解されたからではないでしょうか。
日経平均がバブル崩壊後の最安値をつけたのは、麻生太郎氏が首相だった09年3月10日で、7054円98銭でした。同年7月の時事通信の世論調査では、麻生政権の内閣支持率は16.3%まで低迷。そして、この年の夏の衆院選で自民党は大敗し、野党に転落したのです。これは自民党にとって悪夢のような経験として刻まれ、「株価が下がると国民の支持を失い、政権も失う」といったセオリーができあがったのだと考えます。
自民党がこう考えるのも無理はありません。そもそもバブル発生は株価と密接に結び付いていたからです。日経平均が史上最高値3万8915円87銭を記録したのは、1989年12月29日のこと。国民はこのニュースを見聞きして一種のユーフォリア(過度な幸福感、陶酔感)に浸ったのでした。
当時の日本人は、世界的ベストセラー本『ジャパン・アズ・ナンバーワン』のタイトルを信じ、さらに日本は良くなるといった期待に胸を膨らませ、街中の株価ボードを見るたびにその思いを強くしていたものです。個人消費も活発で、「株価は景気の先行指標」という“刷り込み”は広く日本人に浸透していました。
しかし、バブル崩壊後は一転。日本人は、株価ボードを見るたびに自信を失うことに。企業は倒産し、消費は縮小。長いデフレ経済へ突入したのは周知の通りです。ただ、この時代においても、マスコミは「株価は景気の先行指標」と報じ続け、それを前提にアベノミクスは始まったのでした。
株価重視のアベノミクスと決別で 岸田首相の経済政策がようやく始まる
再び、ざっくりとアベノミクスを振り返ってみましょう。日銀の黒田総裁は、マイナス金利に加えて、日本株ETF(上場投資信託)を年間6兆円のペースで買い付けることを含む異次元の金融緩和で、日経平均株価の上昇を図ります。
また、安倍政権は法人税の減税に着手。法人税率が20%台前半まで10%近く引き下げられたことで、大企業(資本金10億円以上)の決算業績における当期純利益を大幅に増やす効果が生まれました。ファイナンス理論上、法人税率の引き下げは、株価を上昇させる要素として大きな影響を持っているのです。
こうして、第2次安倍政権期間中、日経平均は上昇トレンドに乗りました。GDP(国内総生産)成長率は実質で0.9%(四半期を年率換算)を達成し、「景気拡大は戦後最長」とも称され、一定の内閣支持率を維持しました。
なお、アベノミクスの「人々の期待に働きかける」政策の背景には、ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者ポール・クルーグマンの説があるでしょう。
クルーグマンの『日本のデフレからの脱却のための処方箋』(1998年)の内容を私なりに要約すると、「“未来”における金融緩和の継続を、“今”コミットしてしまうことで、人々がインフレを予測するようになり、“今”の支出の拡大を図る」という話でした。これはまさしく日銀が行ってきたことです。
しかし、現実には日本はデフレから脱却しませんでした。そして、株高と実体経済の向上が必ずしも伴わないことを、日本人は嫌というほど学びました。最近の株高も、海外マネーが割安な日本株に流れていることや、円安の影響が大きいでしょう。
そこで、大胆な提案をしたいと思います。首相官邸の執務室には株価ボードが置かれているそうですが、岸田首相は株価ボードを撤去すべきです。役に立たないどころか誤った意思決定を助長する指標を、経営学では「バニティメトリクス(虚栄の指標)」といいます。これまで述べてきた通り、「株価は景気の先行指標」と信じる国民が今、どれほどいるでしょうか? 高過ぎる株価は、もはやバニティメトリクスといっても過言ではないでしょう。
むしろ現在の物価上昇局面では、実質賃金が最も重要な指標のはずです。これは、岸田首相が総合経済対策のプレゼンテーションでも指摘していることですよね。ならば、実質賃金や労働市場に関する指標、あるいは消費の実態を反映した指標などを逐一把握する方が、はるかに重要ではないでしょうか。
物価高のみならず社会保障の負担も増えて、国民の生活実感は悪化しています。閣僚と自民党幹部人事の刷新に合わせて、株価ボードを首相執務室から外すことは、株価重視のアベノミクスと決別して岸田首相独自の経済政策がようやく始まると、国民への強烈なアピールになるはずです。
●ESGファンド、エネルギー大手の排出削減目標に不満 12/14
ドバイで開かれた国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で、石油・ガス関連企業大手が温室効果ガスの削減目標に合意したが、ESG(環境、社会、ガバナンス)ファンドの多くは、対象とする排出元の範囲が狭く、石油・ガス大手をポートフォリオに組み入れるには不十分な内容と見ていることが、関係者6人への取材で分かった。
石油・ガス関連企業大手50社は2030年までに温室効果ガスのメタン排出をゼロにし、さらに50年には自社のエネルギー使用と生産における温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す取り決めに合意した。
50社の排出削減目標は、自社の事業による排出である「スコープ1」と「スコープ2」を対象とし、サプライチェーン(供給網)や利用者の排出である「スコープ3」を含んでいない。エネルギー企業において、スコープ3の排出は85%を占める。
持続可能な事業に投資するESGファンドの投資家は、エネルギー大手の取り決めは時流に遅れており、十分ではないと見なしている。
資産運用大手キャンドリアムは、自社のESGファンドから主要な石油・ガス企業を除外する方針を継続すると表明。50社の取り決めについて、地球の気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑えるパリ協定の目標達成にとって望ましいシナリオに全く沿っていないとした。
首席ESGアナリストのアリックス・ジョンソン氏は「これまでと同量の石油・ガスを、より炭素効率の高い方法で生産しても低炭素世界への移行とは言えない。主要なエネルギー源を化石燃料から低炭素エネルギーへとシフトする必要がある」と述べた。
一歩前進だが不十分
ESGファンドは、従来型のエネルギー生産者にどのようにアプローチすべきか、長い間頭を悩ませてきた。一部には、こうした企業から投資を引き揚げても効果はなく、排出を減らす、つまりスコープ3に責任を持たせるよう説得した方がよいとの意見もある。
プリンシパル・アセット・マネジメントのグローバル投資責任者、カマル・バティア氏は、エネルギー転換戦略を持たない「化石燃料企業」は、純粋なESGファンド組み入れの環境上の定義を「100%満たしていない」と指摘する。
資産運用会社フェデレーテッド・ハーミーズのレオン・カムヒ氏は、先週ドバイで開かれた業界関係者の夕食会で、大手50社の取り組みは「大きな前進」だが、十分ではないと述べた。
英金融シンクタンク、カーボン・トラッカーの調べによると、石油・ガス大手25社のうちパリ協定に沿った排出目標を掲げているのはイタリアのエニ(ENI.MI)のみで、同社も上流部門への投資計画や報酬政策など他の指標はパリ協定に沿っていない。
経済情勢が変化
ウクライナ戦争で化石燃料価格が高騰する中、ESGファンドは石油・ガスセクターへの投資が増加。同時に世界の多くの地域で生活費高騰の危機が発生し、持続可能な投資から、最も簡単に得られる株主利益へと焦点が戻った。
米調査会社モーニングスターのデータによると、米国のサステナブルなオープンエンド型ファンドと上場投資信託(ETF)のうち石油・ガス株を保有するファンドの割合は9月に49%となり、3年前の43%から上昇。従来型ファンドではこの割合が同期間に45%から68%に上がった。
しかし、エネルギー価格が低迷するにつれてファンドは石油・ガスへの投資割合を縮小している。モーニングスターのデータによると、米サステナブルファンドの石油・ガス株への平均エクスポージャーは2022年末ごろには2%だったが、今年9月には1.86%に低下。従来型ファンドは9月が5.3%で、サステナブルファンドの方が低下ペースが速い。
欧州連合(EU)域内でサステナブルとして販売されているファンドの石油・ガスへの平均エクスポージャーは2022年末ごろに3.33%のピークを付け、今年9月に2.43%に下がった。
サステナブル志向の強い投資家が利害関係者として石油メジャーに影響を与えようとしてもほとんど成果を上げていないと、米国の富豪で環境保護活動家のトム・スタイヤー氏はドバイでロイターに語った。スタイヤー氏は、米エクソンモービル(XOM.N)がシェール大手パイオニア・ナチュラル・リソーシズを600億ドルで買収すると発表したことに触れ、「100年の歴史を持つ企業文化を変えることがいかに難しいかを認識することは非常に重要だ」と述べた。
再エネ移行は期待できず
一部のESG投資家は「石油・ガス企業が再生可能エネルギー企業に転換することはない」という現実を突きつけられて、エネルギー大手への投資の意義が弱まっていると、ジェフリーズの持続可能性・移行戦略ヘッド、アニケット・シャー氏は指摘する。
石油・ガス会社は株主への配当を優先し、設備投資を減らしている。国際エネルギー機関(IEA)の試算によると、2022年には、企業支出10ドル当たりの設備投資は5ドル弱と2008年の8.6ドルから減り、低炭素向け設備投資の割合は0.1ドルに過ぎなかった。
脱炭素を目指す国際的なアセットオーナーの枠組み「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス」(NZAOA)の議長で独アリアンツの取締役のギュンター・タリンガー氏は「エネルギー供給企業が『本気で供給源と供給方法の変革を目指している』と言うのなら、もっと信頼性を高める必要がある」と苦言を呈した。
●「安すぎる日本アパレル」値上げできない深刻な訳 12/14
コロナ禍、世界的なインフレ、ウクライナ戦争やパレスチナ問題、そして気候変動の急速な悪化……。地球規模で起こる事象を受け、アパレル業界はいま、グローバルで大きく変化している。
2000年代から世界を席巻した「大量生産・消費のファストファッション」は、地球環境に配慮する「サステナブルファッション」に移行しつつある。欧米を中心に規制やガイドラインが整備され、消費者の意識・行動も変わりはじめた。
結果、新品市場が伸び悩み、中古品市場やデジタルファッション市場に注目が集まっている。
グローバルでファッションの潮目が大きく変わる中、日本のアパレル企業は生き残ることができるのか?
話題の新刊『2040年アパレルの未来ー「成長なき世界」で創る、持続可能な循環型・再生型ビジネス』を上梓したコンサルタントの福田稔氏がアパレル/ライフスタイル領域の企業が今、何をすべきかを解き明かす連載1回め。「安すぎる日本アパレル」が値上げできない深刻な訳について解説する。
バブルの頃から下がり続ける「アパレルの価格」
昨今のインフレ影響により、アパレル業界でも値上げの話題を聞くことが増えました。
実際、原材料、エネルギーや物流費の高騰、円安の流れも重なった2022年は、アパレルに限らず身の回りのあらゆる消費財で値上げが行われたことは記憶に新しいでしょう。
一見、値上げ基調に見えるアパレル業界ですが、より長期のトレンドでみると「異なる実態」が見えてきます。
1991年を100とした際の主要な衣料品の価格推移を見てみると、驚くことに、主要な衣料品は約30年前から価格が下がり続けていることがわかります。
この要因は大きく2つあります。
   1 ファストファッションの浸透
第1に、ファストファッションの浸透やコストパフォーマンスに優れた低価格の衣料品が普及したことで、衣料品全体の平均価格を押し下げていることにあります。
とくに、ファストファッションをはじめとするグローバルSPAがシェアを伸ばした2015年頃までは、その影響が顕著です。
   2 「不要不急の衣料品」は価格転嫁がしにくかった
第2に、失われた30年と呼ばれる長引くデフレ経済下の中で、「不要不急の衣料品」は価格転嫁がしにくかったという背景があります。
電気は約45%、食料品は約23%値上がりしたが…
アメリカにおける2013年から2022年にかけての業界別の値上げ比較をみると、過去10年で、電気は約45%、食料品は約23%値上がりした一方で、アパレルは約4%しか値上げできていません。
背景としては、「不要不急の商材」であるがゆえに、企業が消費者の買い控えを恐れ、値上げをしにくいことがあります。
デフレとは程遠く、経済好調なアメリカでさえ、この状況なのです。
それでは、アパレルでの値上げはあきらめたほうが良いのでしょうか?
実はそうではありません。
アパレルで「値上げ」は行えるのか?
ここまで紹介した数値は、あくまで全体平均です。
市場での実態は、ブランド力のある企業は継続的に値上げできている一方、値上げができない中小プレーヤーがたくさんいるという構造になっています。
アパレル市場は非常に細分化された市場構造です。
グローバルでシェアトップのZARAを擁するインディテックスでもシェアは約2%しかなく、市場には有象無象のブランドがたくさんあります。
そのような中で、「値上げをできるブランド」と「そうではないブランド」の差が開き続けているのが実態です。
たとえば、アメリカのあるアフォーダブルラグジュアリーのブランドでは、コートなどの重衣料において、2013年の価格を100とすると2023年は170になるまで値上げしています。
また、高価格帯ではなく低価格帯の外資系マスアパレルでも、同じく重衣料で2013年の100に対し140と、40%の値上げに成功している企業もあります。
一方で、国内アパレル企業でここまで値上げできている企業は、ほとんどありません。大半が2013年対比でCPIの衣料品平均上昇幅と近似している20%程度の値上げか、それよりも低い値に留まっています。
この差はどこから来るのでしょうか?
大きな要因は、値決めのやり方が古く、プライシングに科学的・定量的な戦略アプローチを適用できていないことにあります。
日本では、業界に古くから残る慣習として、下代(原価)に一定の掛け率をかけて上代(売価)を決めるという考え方があります。
このような原価ベースの考え方をもとに、ブランドのMDが経験と勘に基づいて、なんとなく売れそうな価格を予想して値決めしているというブランドが数多くあります。
このような属人的な方法では、大胆な値上げや粗利の最大化はできません。
他方プライシングは、アカデミックからビジネスまでさまざまな研究と科学的・定量的なアプローチが試みられている領域です。
日本マクドナルドの「地域別価格戦略」に学べ
実際、2022年以降3度の値上げを実施し、2023年7月には地域別価格を導入し話題となった日本マクドナルドは、2023年12月期の連結営業利益が過去最高の400億円に達する見通しです。
価格を「都心店」「準都心店」「通常店」の3つに分ける地域別価格戦略が、業績面で大成功だったことをまさに物語っています。
マクドナルドの成功事例は、いまだに一物一価が当たり前の多くの国内アパレルに対して示唆に富んでいます(なお、アパレルでも値引き率を店舗により柔軟に変えることで、実質的に地域別・店舗別価格を導入し成功している企業はあります)。  
●米、岸田政権の行方注視 12/14
バイデン米政権は、混乱が続く岸田政権の行方を注視している。
バイデン大統領は11月、岸田文雄首相に来年春の訪米を招請。国賓待遇として準備を進めており、政府高官の一人は「これを機に日米協力を一段と深めたい。そのためには(日本側の)政権基盤の安定が非常に重要だ」と語った。
別の日米外交関係者は、岸田政権による韓国との関係修復の取り組みや、中国をにらんだアジア戦略の軸となる日米韓3カ国の連携強化を高く評価。その上で「岸田氏は来年の総裁選を乗り切れるのだろうか。米国も(来年11月に)大統領選があり、(結果次第で)世界の不確実性が高まるかもしれない」と話した。 
●関係構築へ岸田政権の安定性見極め 中国 12/14
中国の習近平政権は、対日関係の再構築に向け、岸田内閣の安定性を見極める考えだ。
日中関係は対立局面が続いたが、11月に米サンフランシスコで行われた日中首脳会談で「戦略的互恵関係」の推進を確認したばかり。官房長官に就任した林芳正氏は「知中派」として知られ、習政権には一定の期待があるとみられる。
中国メディアは、官房長官の事実上の更迭を「まれに見る事例」と報道。内閣支持率が20%を下回っていることも報じている。一方、日中友好議員連盟の会長経験者で、前外相でもある林氏の知名度は中国で高い。一部メディアは、林氏について「岸田派ナンバー2の人物で、後継の首相候補とも見なされている」と紹介した。
●岸田政権、副大臣の「女性ゼロ」解消 文科副大臣に阿部俊子氏 12/14
岸田文雄首相は自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティー裏金問題を巡り、同派の副大臣5人全員と政務官1人を交代させた。文部科学副大臣に阿部俊子元外務副大臣を充て、9月の第2次岸田再改造内閣発足以降の副大臣「女性ゼロ」を解消。6人全員を交代対象としていた政務官は、安倍派の反発を受け、5人が続投となった。
内閣府副大臣に古賀篤元厚生労働副大臣、外務副大臣には柘植芳文元総務副大臣を起用した。防衛兼内閣府副大臣には鬼木誠元防衛副大臣が就任。いずれも岸田政権下で副大臣を経験している。上月良祐元農林水産政務官が経済産業兼内閣府副大臣に収まった。
9月の内閣改造で就任した副大臣26人と政務官28人には女性がおらず、政権が掲げる女性活躍とかけ離れていると批判を受けた。政務官では10月下旬、辞任した文科政務官の後任に本田顕子参院議員が就いた。
●「火の玉」決意表明に波紋 今後の岸田政権どうなる? 12/14
今回の人事の舞台裏や余波について、最新情報を国会記者会館から、フジテレビ政治部・門脇功樹記者が中継でお伝えする。
13日夜の会見で、信頼回復に向け「火の玉」になると力説した岸田首相だが、この決意表明に思わぬ波紋が広がっている。
立憲民主党・安住国対委員長「私は最初“火の玉”を“火だるま”っていうふうに間違っちゃって聞いて、自分が火だるまになって、どうすんのかなと」
野党がこのように皮肉る一方、身内の自民党内からも「火だるまの間違いじゃないか」と冷ややかな声が出ている。
さらに、ある党幹部は「このままだと火の玉から、そのまま黒焦げになって政権が終わる」と述べている。
会見で再発防止への具体策がなかったことなどから、言葉が悪目立ちしてしまった形。
関係者によると当初、官房長官の人事をめぐって、無派閥の浜田前防衛相に打診したものの、浜田氏は「荷が重い」として断ったため、現在、国会対策委員長に再登板する方向で調整が進められている。
一方、林前外相の官房長官起用には、外交姿勢の違いから距離を置く麻生副総裁が反対したが、岸田首相が反対を振り切った。
その代わりに、麻生氏に近い松本剛明氏を総務相に起用したとみられるが、今後、党内のバランスが流動化する可能性も出ている。
●「宏池会」解散を迫った安積明子氏 パー券疑惑めぐり岸田首相会見 12/14
13日の臨時国会閉幕後に記者会見した岸田文雄首相は、自民党派閥の政治資金パーティー疑惑に関して「信頼回復」を口にした。だが、派閥に対する国民の不信感は強い。質疑応答では、ジャーナリストの安積明子氏が「宏池会も解散すべきだ」と指弾する一幕が注目された。安積氏が14日、夕刊フジの取材に改めて心境を明かした。
岸田氏は13日の会見で、政治資金問題をめぐり、「党全体として強い危機感を持って、一致結束した対応を図ってまいる」と述べた。
これを問題視したのが安積氏だった。質疑応答で、「総理が先日まで会長を務められた宏池会を解散されてはどうか」とした上で、「派閥という存在自体をやはり消してしまうということが必要だと思いますが」と追及した。
岸田首相は「政治の信頼回復、自民党の信頼回復に努めなければならない、これは御指摘のとおり」としつつも、「具体的な対応、行動を行うためにも、先ほど申し上げた事実の確認、そして説明のプロセスが求められると思っている」と述べるにとどめた。 質問の意図を聞いてみると、安積氏は「岸田政権の取り組みは国民に見えてこなかったが、今回も見えてこない。まずは自分の身をきれいにすべきだ。派閥は人材育成の目的があるというが、『裏金づくりのマシン』であり、首相や閣僚を生むための『ポスト利権の巣窟』でしかない。国民から離れた存在で、自民党の立党宣言にある『政治は国民のもの』とは反対の方向を向いている。仮に安倍派を解体するとしても、まずは自らの派閥を解体してから呼びかけないといけない」と語った。
岸田首相の会見について、安積氏は「『事実の確認』『説明のプロセス』といって回り道をしようとしている。今、自民党は1993年の宮沢喜一政権、2009年の麻生太郎政権に続く3回目の『終焉期』に入りつつあると思う。派閥解体ほどの覚悟を見せなければ、国民には届かない」と指摘した。
 12/15

 

●政治資金問題の衝撃 税制議論にも 12/15
政権を揺るがす自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題。時を同じく佳境を迎えた与党の税制改正議論にも影響を及ぼした。いったい何が起きたのか現場を追った。
防衛増税時期は見送り
「所得税減税などがあり長丁場の作業だったが、非常に成果のあるものになった。賃上げ税制など、今後の日本の成長に向けて種をまくことができた」
12月14日、自民党の税制調査会長、宮沢洋一は与党の税制改正大綱を決定し、こう強調した。
しかし、焦点の1つとなった防衛費の財源確保に向けた増税、いわゆる防衛増税は、ことしも具体的な開始時期を決めることを見送った。
税調議論スタート
さかのぼることおよそ1か月前の11月17日。
自民党は税制調査会=税調の総会を開き、来年度の税制改正に向けた論議をスタートさせた。
「大所高所から質の高い議論を行い、しっかりとした結論を導き出したい」
こう述べていた宮沢。その脳裏にあったのは、去年の防衛増税をめぐる議論だ。
去年、党を二分するほどの議論を経て、所得税など3つの税目の増税を決めた。
ただ、慎重論にも配慮し、開始時期は空欄としたまま、一連の議論を終えた。
ことし増税開始時期を決められなければ、2年連続、結論を先送りすることになる。
宮沢としては、何としても今回の議論で開始時期を決め、防衛費の財源確保に取り組む政権の本気度を示したいという思いがあった。
動く宮沢
税調の議論では、政治判断が必要な案件の扱いは、終盤に議論されるのが通例だ。
防衛増税についても12月中旬の最終盤まで検討されることが想定された。
そんな中、11月30日、宮沢が動いた。
税制調査会の役員会で、増税開始時期をことし決める考えを示したのだ。
防衛増税をめぐっては、総理大臣の岸田文雄が、すでに来年度・2024年度は実施しない方針を示していた。
一方、4年後の2027年度に1兆円余りを確保するという“おしり”も決まっている。
このため増税開始は、現実的には以下の2案のいずれかが選択肢となっていた。
   防衛増税開始は、以下の2案
   1再来年の2025年〜
   23年後の2026年〜
宮沢はこの2案を軸に検討する方針を役員らに示し、異論は出なかったという。
会合のあと宮沢は記者団に、こう強調した。
「関係者に対して見通しを示す意味でも、ことし決めるべきだと考えている」
岸田の意向
増税開始時期を決めたい宮沢。
実はこの動きは岸田と入念に意思疎通を図りながら進めたものだった。
ある政府関係者は、こう証言する。
「11月下旬に宮沢さんは総理とサシで会っている。そこで総理から『ことし開始時期を決めていい』と言われたようだ」(政府関係者)
岸田と宮沢はいとこどうしで、以心伝心の関係だと言われている。
宮沢は岸田の“お墨付き”も得て、増税開始時期の決定に向けた地ならしを進めた。
与党内に慎重論
一方の公明党。
ことし増税の開始時期を決めることには慎重な意見が大勢を占めていた。
来年の所得税減税の実施前に増税の開始時期を決めるのは一貫性を欠くと受け止められ、得策ではないというのが主な理由だ。
「減税と増税でベクトルが一貫しないと国民が戸惑うのではないか」
公明党税制調査会長の西田実仁は、記者団にこう述べて、増税時期を決めようとする自民党をけん制した。
さらに、自民党でも政務調査会長の萩生田光一は、増税時期を決めることに一貫して反対していた。
こうした意向は岸田にも伝えていたとされる。
自民党に激震
宮沢が“ことし決める”という考えを幹部に示した翌日、自民党に激震が走った。
安倍派が、パーティー券の収入を所属議員側に5年間で数億円キックバックし、派閥の政治資金収支報告書に記載していなかった疑いがあると報じられたのだ。
額の大きさから政権運営への影響を懸念する声が広がった。
「支持率が低迷する中、党の体力がどんどん奪われている」(党幹部)
「松野官房長官も疑いがあるらしい。次の官房長官を考えておいた方がいいかもしれない」(閣僚経験者)
方針転換
党内が浮き足立つ中、12月7日、自民党税調の“インナー”と呼ばれる幹部が急きょ集められた。
関係者によると、ここで、宮沢はこう口にしたという。
「総理はことし開始時期を決めることは避けたいと思っている。総理の意向なので、どうか理解を願いたい」
わずか2週間で方針が180度転換された格好だ。
なぜなのか。
政府関係者は、こう解説する。
「総理と宮沢さんが前日(6日)に話をして、総理が『ことしは決めないでほしい』と伝えた。宮沢さんはこの政治情勢では決められないと受け止めた」(政府関係者)
与党内で慎重論が急拡大
実際、与党内では増税の開始時期を決められるような状況ではないという意見が急拡大していた。
「増税を決めれば『国会議員は政治資金パーティーで稼いでいるのに国民には負担を強いるのか』と思われる」(自民党議員)
「政権が吹っ飛ぶような話が出ている中で決められないのはしかたがない」(公明党税調幹部)
岸田と宮沢は、こうした党内の雰囲気の中、増税時期を決めることを断念したものとみられている。
そして14日。大綱を決定した際の記者会見。
「増税というものはそれなりに政権の力が必要だが、残念ながら、昨今の政治状況はかなり自民党にとって厳しく、ことしは決定しないことになった」
宮沢が絞り出すように語った「昨今の政治状況」という言葉。
そこには“決めきれない政治”へのふがいなさが込められているように思えた。
決められない政治は打開できるのか
国家の根幹に大きく関わる税制の議論。今回はそこにまで自民党の派閥の政治資金をめぐる問題が影響を及ぼした。問題が連日報じられるのに伴って「決められる環境にない」という空気が広がっていったように感じた。岸田政権は求心力を失い、今後「決められない政治」が続くのか。それとも、この難局を乗り越え、重要な政策を決定する力を取り戻すのか。今がその分岐点なのかもしれない。
●安倍派を排除...裏金問題で考える「財務省の思惑」と「岸田政権の意思」 12/15
岸田政権が大揺れだ。筆者は、今回の政局は財務省発と考えている。
ちょっと穿った見方だが、岸田文雄首相は親戚縁者が財務省官僚も多いために、財務省にとって身内の存在だ。しかし、2023年11月に取りまとめた経済対策で、岸田首相は少し「自我」が芽生えてしまった。財務省関係者なら口に出してはいけない「減税」を言い出してしまった。
結果として、岸田首相の従兄弟で、元財務官僚の宮沢洋一自民党税調会長は、先の臨時国会では所得税減税を処理せずに、来年度予算回し、つまり所得税減税は来年通常国会で処理するとした。これは岸田首相の顔には泥を塗らないが、簡単にやらないぞという財務省の意思表示だ。
安倍派を排除できるのであれば、検察の動きを財務省も後押しするだろう
11月2日の経済対策の閣議決定では、過年度の税収増3.5兆円を還元するとしていたが、11月8日の衆院財政金融委員会で鈴木俊一財務相は、増加した税収増はすでに使われていると、岸田首相のハシゴを外した。
財務省のこうした「倒閣」まがいのスタンスを見て、検察も自民党議員の裏金問題を持ち出してきた。財務省(国税庁)と検察は、ともに国家権力を支える役所として交流が深い。特に、裏金問題は政治資金規正法違反となるが、それだけでは形式犯になりかねないので、税法違反(脱税)まで検察としては持っていきたい。そのところでは、財務省の協力が必要なので、検察は財務省とも水面下で協議しているはずだ。
財務省としては、岸田首相の「自我」を覚醒させ「減税」を吹き込んだ安倍派幹部をよく思っていない。「安倍晋三回顧録」では、財務省と故安倍晋三首相の暗闘が赤裸々に描かれている。その流れを汲む安倍派を排除できるのであれば、検察の動きを財務省も後押しするだろう。
政策より人事をやりたいという岸田首相の悲願かもしれない
岸田首相も、芽生えた「自我」を悔やんでおり、この際、検察や財務省の動きを利用し、安倍派一掃に出てきたとみていい。もともと、安倍首相の暗殺後、安倍派を一掃しようと、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)騒動を利用しようとしたフシもある。今度こそ、安倍派一掃で、自前の内閣を持ちたいというのは、政策より人事をやりたいという岸田首相の悲願かもしれない。
傍から見ると、政権支持率などから見て墜落寸前の岸田政権であるが、人事こそ命の岸田首相は好きな人事を自由にできるので充実感があるのだろう。
いずれにしても、今回の内閣人事で、財務省の思惑通りに、安倍派を一掃し、岸田政権は財務省に恭順の意を表したといってもいい。
しかし、この裏金問題は、どこの派閥にも他党にもある。一部新聞は、安倍派では「裏金」、岸田派では「不記載」と表記を変え印象操作しているが本質的には同じだ。
政治的には、自民党主流派から安倍派を一掃すれば、おそらく安倍派からの報復が次にあるだろう。安倍派は会長不在でまとまらないとも言われるが、仁義なき党内抗争になるかもしれない。政権支持率はさらに低下する可能性がある。
●岸田政権「新体制」で本格スタート 安倍派の4閣僚全員交代 12/15
自民党安倍派の裏金問題を受け、安倍派の4閣僚全員が交代となった岸田政権は、15日、新体制で本格的なスタートを切りました。
安倍派の閣僚はゼロとなり、迎えた新体制、初の閣議でしたが、岸田首相はこれまでの緊張した様子と比べると、人事を終えたこともあってか、穏やかな表情にみえました。
岸田首相は、ウラ金疑惑が持ち上がって以降、口を閉じ座っていることが多かったのですが、15日は部屋に入るなり、閣僚の席について、新しく就任した林官房長官に話しかけるなどリラックスした雰囲気でした。
林官房長官「政府としても、予算、税制など国民生活に直結をする重要課題の大詰めでございます。これに向けて緊張感を持って臨んでまいりたいと思っております」
林長官は、また、政治とカネの問題をめぐる対応について、「首相が信頼回復に向けて、自民党の体質を一新すべく先頭に立って取り組むと発言している。その方針で対応していく」と強調しました。
一方、立憲民主党の泉代表は、新体制を厳しく批判しています。
立憲民主党 泉代表「意味不明、支離滅裂。総理にはぜひどういう理屈で、こうした人事が成り立っているのかというのは、国民に明らかにしていただきたい。他の派閥でも同様のことがあった場合は、派閥ごと一掃をするのか、閣内からですね。ここはぜひ総理に早期の説明を求めたい」
立憲民主党は「自民党派閥裏金調査チーム」を設けて専門家からヒアリングを行うなど、引き続き追及していく姿勢を強めています。
●官邸記者団が追及しない「岸田首相の論理破綻」… 12/15
総理の座にしがみつく「支離滅裂」
自民党のパーティ券裏金問題で、岸田文雄首相は14日、安倍派の閣僚4人と副大臣5人を更迭した。だが、岸田派にもパーティ券収入の過少記載問題が浮上している。同じ疑惑で大臣を更迭しながら、自分は総理の座にしがみつくのであれば「支離滅裂」と言わざるをえない。
まず、一連の経過を確認しよう。
岸田首相の人事断行方針は、11日には報じられていた。この時点では、政務官を含めて、安倍派を政府の役職から一掃する方針と伝えられた。その後、NHKが12日、岸田派のパーティ券収入過少記載疑惑を報じた。
首相は13日、首相官邸で開いた記者会見で「(政治)改革は、これから確認される事実に基づいて明らかにしていく」と語った。一方で「国政に遅滞を来すことがないように」という理由を挙げて「速やかに人事を行う」と宣言し、翌14日に更迭人事を断行した、という展開である。
当初は6人の政務官も含めて更迭する方針と報じられたが、直前になって変わり、政務官は1人を除いて留任になった。
以上をどうみるか。
そもそも「疑惑の事実関係が明らかでない段階で、マスコミ報道だけに基づいて、閣僚を4人も更迭する」という決定自体が異例だ。マスコミが報じたら、本人が認めず、捜査当局が本格的に動き出していなくても、大臣のクビを切る、という前例を作ってしまった。
これには、東京地検特捜部も驚いたのではないか。「オレたちがこれから調べる、と言っているのに、総理は、もうクビを切ってしまったのか」と唖然としているかもしれない。それとも、特捜部は内々に官邸に捜査情報を伝えていたのだろうか。そうだとしたら、それはそれで大問題である。
政治の重大局面で重要なのは…
それはさておき、問題は岸田首相本人である。岸田派も疑惑が報じられたのだから、首相は自分自身も更迭しなければ、話の辻褄が合わない。つまり、内閣総辞職だ。私は「岸田首相は潔く、自ら総理を辞すべきだ」と思う。いわば、これは「自分が撒いたタネ」なのだ。
辞めた閣僚のうち、宮下一郎農相は明確に裏金受領を否定している。宮下氏は辞表提出後、記者団に「私の政治資金は法に則って、適正に処理されているが、総合的に判断した」と無念そうに語った。
もしも、同氏がシロだったとすれば、岸田首相はシロの閣僚も更迭しながら、自分自身に関わる疑惑は不問に付して、首相の職に居残っている形になる。派閥の資金であっても、つい最近まで、自分が領袖だったのだから、言い訳にはならない。
これでは「国民の信頼回復に向けて党の先頭に立って闘っていく」(首相発言)どころか「自分だけが必死に逃げ回っている」ようなものではないか。こういう展開になったのも「疑惑が明らかでないのに、大臣のクビを切る」という無茶な決定をしたからだ。
政治は重大局面を迎えたときほど「道理=物事の道筋」が重要になる。
筋道が通らない話は結局、破綻する。今回で言えば「疑惑が指摘された大臣は辞めてもらう」のであれば、同じロジックを自分にも適用しなければならない。そうしないなら、首相の対応はその場しのぎで、まったく道理がない話になる。岸田首相は、政治で一番大切な道理をわきまえていないのである。
岸田首相は、かねて「国家観も使命感もなく、やりたいのは人事だけ」と言われてきた。突然のスキャンダルに動揺するあまり、政治の道理も手順にも頭が回らず「人事を一新すれば、しのげる」と思い込んでしまった。その挙げ句、自分に火の粉を招いている。
まさに自爆としか言いようがないが、おそらく、いまでも首相は、そういう事態と認識していないのではないか。少しでも認識する力があれば、これほど、お粗末な話にはならない。助言する側近もいなかったのだろう。
首相の記者会見を聞いていて、もう1つ、呆れたのは、「首相の論理破綻」は明らかなのに、誰1人として、その点を追及した記者がいなかった点である。わずかに「人事の後で閣僚に疑惑が出た場合、どう責任をとるのか」という質問が出た程度だ。
政権が生き延びるのが難しい「3つの理由」
岸田首相は、うろたえた様子で「そうした懸念が生じないように、諸課題にどう対応していくのか、そのための体制はどうあるべきか、を真剣に追求していく」と答えた。まるで答えになっていなかったが、記者団から2の矢、3の矢の質問はなかった。こんな官邸記者団だから「権力のポチ」と言われるのだ。
岸田政権は、このまま生き延びられるだろうか。
私は、3つの理由で「難しい」とみる。
事件の展開は予断を許さず、政治資金規正法違反で済むのか、それとも脱税事件にまで発展するのか、も見通せない。だが、いまや問題は法律的な次元をはるかに超えてしまった。国民は「政治家だけが裏金で甘い汁を吸っている」実態に怒りをたぎらせている。
物価高で数十円単位で節約している普通の国民から見れば、百万、千万単位はもちろん、数十万円単位の裏金だって許せない。そこへ「信頼回復のために、火の玉となって自民党の先頭に立つ」などというシラジラしい首相の言葉が、火に油を注いでいる。この国民の怒りが、1番目の理由だ。
次に、指摘した首相の論理破綻がある。疑惑だけで大臣のクビを切った以上、更迭のロジックは必ず、ブーメランになって首相に戻ってくる。派閥のカネだったとしても、首相は今回の問題が起きるまで、派閥トップの座を降りなかった。自分だけが居残って「信頼回復」などできるわけがない。
安倍派閣僚の更迭によって、政権基盤も大きく揺らいでしまった。
安倍派の萩生田光一自民党政調会長は安倍派パージに先んじて、自ら辞任の意向を表明した。「こんな総理にクビを切られるくらいなら、こちらから三行半を突きつけてやる」という話だろう。怒り狂った安倍派が今後、「岸田降ろし」の急先鋒に回るのは確実だ。これが、3つ目の理由である。
「岸田憎し」で団結
一部には「安倍派は崩壊」などという観測も出ているが、私は、逆ではないか、と思う。絶対的なトップの不在が派閥の求心力を弱めているのはたしかだが、今回のパージで安倍派全体に「岸田憎し」の思いが強まって、かえって団結していく可能性が高い。自民党内権力闘争のロジックで言えば、「敵は岸田派」なのだ。
新しい官房長官に親中派で知られた林芳正元外相を充てたのも、求心力を高める効果がある。このままでは「岸田政権が親中路線に一段と傾斜し、日本の国がおかしくなる」という思いは、多くの自民党内保守派に共通している。
岸田首相は結局、政策は霞が関任せ、政局運営は道理知らず、人事もトンチンカンで、とても1国の総理が務まるような人物ではなかった。
世界はウクライナとイスラエルで戦争が続き、戦後最大の大激動を迎えている。このままでは、日本は危うい。内閣支持率の急落に加えて、この有様では、とても衆院解散などできない。岸田首相は内閣総辞職すべきである。
●官房長官に林芳正氏を任命、岸田内閣の支持率20%割れ 12/15
岸田文雄内閣の支持率が20%台を下回った。内閣支持率が10%台を記録するのは、2012年に自民党が民主党から政権を奪還して以来初めて。岸田氏は、違法な裏金疑惑を受ける松野博一前官房長官をはじめ、党内最大派閥の安倍派の4人の閣僚全員を非安倍派に交代させる人事を行ったが、効果は見られなかった。
14日に発表された時事通信の世論調査で、岸田内閣の支持率は17.1%を記録した。政権退陣危機と日本メディアが指摘した支持率20%を割り、岸田政権に対する世論はますます悪化している。
岸田氏は同日、自民党の岸田派の座長で韓日関係改善の議論に参加した林芳正前外相(写真)を退任3ヵ月で政権ナンバー2で政府のスポークスマンである官房長官に起用した。林氏は同日、「岸田首相から『厳しい状況の中だが支えてもらえないか』と伝えられた」とし、「青天の霹靂」としながらも「誠心誠意努力をしていきたい」と述べた。
2021年11月から今年9月まで外相を務めた林氏は、岸田氏の後任として自民党の穏健派を率いる人物として注目されてきた。岸田氏と同じ派閥で政治的影響力もあることから、党内で牽制するムードがあったため、党内の他の派閥はもとより岸田氏も当初、官房長官の第1候補に考えてはいなかった。
だが、他の有力候補らが官房長官のオファーを断ったため、結局、林氏に任せる「回転ドア人事」が行われた。読売新聞は、林氏の起用を苦肉の策と指摘し、「派閥協力がどの程度行われるか不透明だ」と指摘した。朝日新聞は、「人事の紆余曲折で首相の求心力がさらに低下する可能性がある」と分析した。
●裏金問題受け新任閣僚が本格始動 岸田政権、安倍派抜き体制 12/15
自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティー裏金問題を受けて起用された林芳正官房長官ら4閣僚が15日午前、就任後初めての閣議に出席した。最大派閥である安倍派の有力者が要職から抜けた岸田政権の新体制が始動。岸田文雄首相にとって、「政治とカネ」問題で失墜した信頼回復が課題となる。林氏は閣議後の記者会見で「予算編成など重要課題が大詰めだ。緊張感を持って臨む」と強調した。
この後、官邸で内閣官房職員に就任あいさつし「首相を支え、政策の総合調整や政府のスポークスマンとしての役割を果たし、国民の信頼回復に尽力したい」と語った。
●安倍派はずし どうなる岸田政権…「ライバル不在」政権維持も可能? 12/15
裏金疑惑で4閣僚が相次いで辞表を提出しました。松野博一官房長官は最後の会見でも、「回答を差し控える」と繰り返しました。東京地検特捜部は近く、自民党安倍派側への強制捜査に乗り出す方針です。
総務大臣 辞表提出後に一転
松野官房長官「(Q.進退は決めたか?)記者会見でお話しします」
14日朝、自民党安倍派の4人の閣僚が岸田文雄総理大臣に辞表を提出。事実上、更迭されました。
辞表を提出 安倍派 西村康稔経済産業大臣「国民の多くに疑念をもたれ、政治不信につながっている。けじめをつけなきゃいけない」
辞表を提出 安倍派 宮下一郎農水大臣「志半ばという思いはありますけれども。こうした状況を踏まえて、辞めるべきだと」
辞表を提出 安倍派 鈴木淳司総務大臣「私自身の問題ではなくて、とにかく清和(安倍派)としては、しっかりここは身を引いて、やっていかなきゃいけないなと思ってます」
派閥の信用回復を訴えた鈴木総務大臣。これまで「身の潔白」を主張していました。
鈴木総務大臣(1日)「(Q.超過分のキックバックを受けた?)私はありません」
キックバックはなかったと断言していた鈴木総務大臣ですが、辞表提出後、一転して認める、まさかの展開になりました。
鈴木総務大臣「ほんのわずか(キックバックが)あるようでありますが、ただ私としては、そういうふうな意識でもらったわけではないし。実際、手にもしていないので、そんなことはありましたね」
最後の会見も…松野氏「差し控える」
官房長官として最後の会見に臨んだ松野氏は、こわばった表情で、こう切り出しました。
辞表を提出 安倍派 松野官房長官「私自身の政治資金収支報告書についても様々な指摘がなされているなか、国政に遅滞を生じさせないよう本日、内閣官房長官の職を辞したいと岸田総理に申し上げ、辞表を提出いたしました」
この日も、裏金疑惑の質問が相次ぎましたが、「お答えは差し控えさせていただきたい」と、お決まりのフレーズを連発。政府のスポークスマンは、自らの疑惑には最後まで何も語らず、官邸を去りました。
後任には、岸田派の林芳正前外務大臣を起用し、政権の立て直しを図ります。
林新官房長官「まさに青天のへきれきであったわけでございますが。この持てる力を発揮して誠心誠意努力していきたい」
林官房長官を含む、4つの閣僚ポストには、いずれも安倍派以外の閣僚経験者を配置しました。
辞表を提出 安倍派 宮澤博行防衛副大臣「『しゃべるな』『しゃべるな』と、これですよ」
13日、裏金を巡る派閥の指示を暴露した、宮澤防衛副大臣ら、安倍派の5人の副大臣も全員が辞表を提出しました。
“安倍派はずし”の今回の人事。岸田総理は、「調整力・実行力・答弁力などを備えた、即戦力を選ばなければならない。こうした考えに基づいて人事を行った」と述べました。
“ライバル不在” 政権維持は不可能ではない
裏金問題で窮地に立つ岸田政権。政権運営の行方を、政治ジャーナリストの後藤謙次さんに聞きました。
後藤さん「今のところ2つの要素で、しばらく岸田さんは頑張るんじゃないかなと。1つは、政権の行方を左右するようなビッグイベントが当面ないと。もう1つは、岸田総理に『我こそは!』と取って代わるような、群像が見えてこない。この2つによって、持ち前の粘り腰を発揮するんじゃないかなと。それが日本にとっていいことなのか、政治にとって悪いことなのかどうかは別にして、岸田総理はそういう気持ちはゆるぎないんだと思う」
来年秋の自民党総裁選まで、政権の命運を左右するような大きなイベントがなく、よほど大きな失敗さえしなければ、有力なライバルもいないため、政権の維持は不可能ではない、という指摘です。
後藤さん「どの派閥も色んな問題を抱えているわけです。安倍派はご承知の通り。麻生派は河野太郎さんを抱えていながら、麻生さんがうんと言わない。茂木派は茂木氏が会長ですが、派内の支持が非常に低い。二階派はもとより、候補者そのものがいない。だから、岸田派だけがかろうじて岸田総理について、本人がやめると言わない限り、なかなか降ろせない」
●岸田政権と政治の危機 進退かけ信頼回復を果たせ 12/15
自民党の最大派閥で、安倍元首相の7年8カ月の長期政権を支えた安倍派をめぐる底なしの疑惑は、国民の政治への信頼を失墜させるものだ。
安倍派に依存した政権運営を続けてきた岸田首相のみならず、日本の政治全体にとっても、剣が峰といえる危機的状況である。
その場しのぎの人事で打開できる局面ではない。自らの保身や党内事情への配慮などは捨て、ただ政治の信頼回復をめざし、進退をかけて取り組むよう首相に求める。
まずウミを出し切れ
首相がきのう、派閥の政治資金パーティーを利用して、組織的に裏金づくりをしていた疑いのある安倍派に属する閣僚4人と副大臣5人を一斉に交代させる人事を行った。
「内閣の要」とされる松野博一官房長官をはじめ、総務相、経済産業相、農林水産相と、いずれも主要閣僚である。党の方でも、「政策調整の要」である萩生田光一政務調査会長、高木毅国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長が辞表を提出した。屋台骨をそっくり入れ替えるようなもので、この間の政権の正統性さえ疑われる事態だ。
この根本的な出直しにあたり、首相は会見を開かず、記者団に短時間、立ち話で説明しただけだった。臨時国会閉会を受けたおとといの会見では、「自民党の体質を一新すべく先頭に立って戦う」「火の玉となって取り組む」と言葉だけは勇ましかったが、覚悟のほどは伝わってこない。
宮沢博行防衛副大臣は辞任に先立ち、政治資金収支報告書への不記載は派閥の指示であり、この件については派閥から箝口令(かんこうれい)が敷かれていると明かした。「事実関係を精査中」などという言い訳は、通用しないということだ。
首相は党総裁として、安倍派のみならず、すべての派閥とその所属議員に対し、パーティーにからむ資金の流れを公にするよう指示すべきだ。東京地検特捜部の捜査の行方を見守るといった消極的な態度ではなく、自発的にウミを出し切るところから、出直すしかない。
派閥の弊害直視を
収支報告書への不記載・虚偽記載容疑で刑事告発されたのは、安倍派だけではない。所属議員が最も少ない森山派を除く5派閥に及び、首相が率いる岸田派も含まれる。今回の疑惑は、55年体制時代から連綿と続く自民党の派閥の旧態依然を印象づけた。
かつて、衆院の各選挙区の定数がおおむね3―5人で、自民党候補同士が争う中選挙区制を背景に、派閥が強い力を持った時代があった。90年代の政治改革で、同じ党から1人しか立候補できない小選挙区比例代表並立制が導入されると、公認権を握る党執行部の権限が強化され、派閥の存在感は大きく低下した。
それでも、派閥は今なお、人事や情報共有、新人の育成などで、党運営の根幹を支えている。それが、不透明な政治資金の温床となっているとすれば、物価高に苦しみ、防衛増税などの負担増を控える国民が、派閥の存在自体に疑念を抱くのは当然だ。
安倍派の裏金づくりは規模が大きく、組織的、継続的に行われていた疑いが濃厚とみられている。そもそも、誰がどんな経緯で始め、裏金は何に使われていたのかも、明らかにされる必要がある。
政治への不信が募れば、政策遂行の基盤も掘り崩される。「先頭に立つ」と宣言した以上、首相は疑惑の徹底解明に指導力を発揮しなければならない。
今こそガラス張りに
今回の派閥をめぐる疑惑を、その広がりから「令和のリクルート事件」と評する人もいる。88年に発覚したこの事件を契機に、国民の政治不信は頂点に達し、自民党は翌年、「政治改革大綱」を党議決定した。
選挙制度改革や「派閥解消」を含む党改革の断行とともに、政治資金をめぐっては、「ガラス張りの努力をして透明度をたかめ収支を公開し、公正さを確保する」として、国会議員の資産公開や寄付の公開基準の見直しなどの具体策を盛り込んだ。
その後、政治改革の一環として、税金を原資とする政党交付金制度が創設される一方、政治家個人向けの企業・団体献金は禁止され、政党と政党支部向けに制限された。しかし、パーティー券の購入という形で、企業・団体が派閥や政治家個人に資金提供する道は温存された。
パーティーは飲食など対価を伴うので、寄付とは別扱いとなっているが、経費を抑えれば「利益」は大きい。券を買いながら、実際には会場に来ない人もいる。寄付に近い実態があっても、名前や金額の公開義務は、寄付の5万円超に対し、20万円超とハードルが低く、「裏金の温床」といわれてきた。
規正法は、政治資金の流れを「国民の不断の監視と批判」の下に置くことで、公正な政治が行われるようにするものだ。今度こそ、抜け道を許さない「ガラス張り」を実現できるか。自民党の自浄能力が問われる。
●岸田政権の安定度 12/15
自民党派閥のパーティー券売上に関する疑惑で、東京地検は安倍派を中心に本格的な捜査に着手した模様だ。岸田文雄首相は、松野博一官房長官など4閣僚を実質的に更迭、萩生田光一自民党政調会長なども近く退任する見込みとなった。この件は岸田首相にとっても大きなダメージだが、今のところ政権の安定度が崩れたとは言えない。野党の支持率が上がっていないからだ。
疑惑の打撃は岸田首相に及ぶ
自民党派閥のパーティー券問題は、当初、20万円を超えて購入した政治団体があったにも関わらず、各派の政治資金収支報告書に記載されていないことが問題視された。事実なら政治資金規正法違反ではあるが、派閥に所属する複数の議員が同一団体へパーティー券を販売、名寄せができていなかったことが理由と見られ、政治資金収支報告書の訂正で終わっていたかもしれない。
しかしながら、11月29日、神戸学院大の上脇博之教授がこの件を刑事告発、東京地検が受理して特捜部による捜査に至り、重大な事案である可能性が台頭した。仮にノルマ超過分を派閥、議員ともに報告書に記載しなかった場合、もしくはノルマ超過分が議員の事務所に残り、議員側が報告書に記載していなかった場合・・・いずれも事実なら裏金と言われても止むを得ない。
特に自民党国会議員の99名が所属する最大派閥の安倍派への疑惑が深まったことで、岸田政権全体を揺さぶる事態に至った(図表2)。同派は岸田首相を支える主流派の中核であり、松野博一官房長官、西村康稔経産相など4閣僚、自民党では萩生田光一政調会長、高木毅国対委員長など重要ポストへ人材を送り出してきたからである。
岸田首相は、4閣僚を実質的に更迭、自民党幹部からも安倍派を外す意向のようだ。ただし、既に内閣支持率は各世論調査で軒並み20%台へ落ち込んでおり、さらなる打撃は避けられないだろう。
ポイントは野党の支持率
政治資金を巡る新たな疑惑の発覚により、岸田首相は追い込まれたように見える。しかしながら、依然、自民党主流派である安倍、麻生、茂木、岸田4派閥に谷垣グループは、同首相を支える構えを崩していない。理由は、他に一致して担げる総理・総裁候補がいないからではないか。
また、2009年8月30日に行われた総選挙で自民党が大敗して下野した際には、参議院選挙において民主党が圧勝した2007年7月の時点で、同党の支持率がNHKの世論調査で20.5%に達していた(図表3)。当時の自民党の支持率は31.8%でまだ10%ポイントの差はあったものの、そこから急速に両党の支持率は接近している。
一方、12月11日、NHKが発表した最新の世論調査では、岸田内閣の支持率が前月に比べ6%ポイント低下の23%、自民党の支持率は同8.2%ポイント低下の29.5%だった。もっとも、野党第一党の立憲民主党の支持率は7.4%に止まるため、自民党との間には20%ポイント以上の差が存在する。さらに、大手メディア5社の調査の平均でも、自民党は30.1%であり、立憲民主党の6.3%、日本維新の会の7.6%を大きく上回った状態だ。
今後、特捜部の捜査が進むに従って、新たな事実が明らかになれば、岸田内閣及び自民党への有権者の見方がさらに厳しくなる可能性は否定できない。しかしながら、政権交代が実現するには、自民党の分裂を前提としない限り、衆議院総選挙における野党の勝利が前提になる。小選挙区で多数の議席を得るには、何れかの政党への支持が急増して自民党と拮抗するか、もしくは広範な野党の選挙協力が必須だろう。現時点において、そうしたシナリオの実現性が高いとは思えない。
岸田首相は打たれ強く、政権基盤の安定は依然として保たれている。ただし、自民党内を二分するような大きな課題へ取り組むことは難しいだろう。
●“安倍派ゼロ内閣”で初閣議 岸田首相には笑顔も 12/15
自民党・安倍派の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑を受け、岸田首相が安倍派の4閣僚を交代させてから初めての閣議が、15日に開かれた。
実質的な内閣の小幅改造で“新たな船出”の側面もあるが、岸田首相は官邸に入る際、記者団に「おはようございます」と挨拶した後は口を真一文字に結び、執務室に向かった。
一方、午前10時からの閣議では、やや穏やかな表情で新たな席次を確認するなどして、時折、笑顔も見せた。
14日に就任した閣僚は、林芳正官房長官、松本剛明総務相、坂本哲志農水相、斎藤健経産相。
いずれも安倍派の松野博一氏、西村康稔氏、鈴木淳司氏、宮下一郎氏の4人が退き、岸田政権発足以降、初めて安倍派の閣僚がゼロとなった。
●閣僚・党幹部交代 安倍派排除で済む話か 国政の停滞あってはならぬ 12/15
岸田文雄首相は、自民党安倍派の政治資金パーティーの裏金問題を巡り、松野博一官房長官、西村康稔経済産業相ら同派所属の4閣僚すべてを交代させる人事を行った。
事実上の更迭だ。後任には安倍派以外の派閥や無派閥の議員を充てた。同派事務総長でもある高木毅自民党国対委員長や、萩生田光一政調会長、世耕弘成参院幹事長も交代させる。
高木、松野、西村、萩生田、世耕各氏は「5人衆」と呼ばれる安倍派の有力議員で、いずれもパーティー券の販売ノルマ超過分について、派閥からキックバック(還流)を受けた疑惑が持たれている。
国民への説明が急務だ
岸田政権では不祥事による政務三役の交代が続いてきた。だが、予算編成が大詰めを迎えたこの時期に、官房長官ら重要閣僚や党幹部を大幅に入れ替えるのは極めて異例だ。このような失態を招いたことに、首相や自民、派閥は猛省しなければならない。
安倍派を排除する人事が妥当だとしても、それで済む話とは到底いえない。党も派閥も議員も説明責任を果たしていないからだ。捜査中であることを理由に、事実関係を明らかにしないのは許されない。
首相は記者会見で「信頼回復のために、火の玉となって自民党の先頭に立ち取り組んでいく」と述べた。そうであるなら、派閥や議員に任せるのではなく、陣頭指揮を執って、期限を区切るなどして調査を指示すべきだ。国民の前に事実関係を明らかにしなければ、信頼の回復は得られない。
交代対象となった安倍派の宮沢博行防衛副大臣は派閥から還流分を受け取りながら、政治資金収支報告書に記載しなかったことを認め、「派閥から記載しなくてよいと指示があった」ことを明らかにした。派閥から箝(かん)口(こう)令が敷かれていたことも明かした。
安倍派座長の塩谷立元文部科学相や事務総長の高木氏は、派として議員に不記載を指示したのか、箝口令を敷いたのか、説明すべきだ。
政治資金問題を巡っては、岸田派にも超過分の収入を一部記載していなかった疑いが浮上している。二階派にも過少記載の指摘がある。
政治資金規正法は政治資金を「国民の浄財」と位置付け、「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにする」ことを目的にしている。
報告書に収支を記載せず、国民の監視から逃れようとしたのは、規正法の理念をないがしろにしている。国民への背信行為そのものだ。
再び不祥事を起こさないようにするために、政治改革の断行が必要だ。規正法の改正が求められる。
政治改革で再発防止を
「政治とカネ」の問題を巡っては、これまでも昭和63年に発覚したリクルート事件や、平成16年に明らかになった日本歯科医師連盟から旧橋本派に流れた1億円のヤミ献金事件などがあり、その都度、規正法は改正されてきた。
だが、今回の問題が規正法の不十分さを示している。見直しにあたっては、罰則の強化や収支報告書への記載の範囲などが焦点になろう。
臨時国会では、国会議員に月額100万円が支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の改革が再び見送られた。使途の公開などの見直しも行われなければならない。来年の次期通常国会では、必ず実現してもらいたい。
もう一つ重要なことがある。国政の停滞はあってはならないということだ。
令和6年度予算案を編成し、年度内に成立させなければならない。物価高対策を着実に進め、賃上げも軌道に乗せることが欠かせない。将来の労働力人口を確保し、持続可能な社会保障制度を構築するために少子化対策も待ったなしの課題だ。
ロシアによるウクライナ侵略は続き、中東情勢も緊迫した状態である。中国は台湾併(へい)吞(どん)をにらみ軍備を増強し、北朝鮮は核ミサイル開発に余念がない。
中国、ロシア、北朝鮮という専制国家に囲まれた日本にとっては、外交・安全保障政策のかじ取りが極めて重要だ。防衛力の抜本的強化を行っていかなければ、国家や国民を守ることができない。これらを肝に銘じ、政策遂行に万全を期さなければならない。  
●「岸田政権の退陣を求めます」国会前でデモ 「政治家は私利私欲」 12/15
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題や、防衛増税、国立大学法人法改正などに反対し、岸田政権の退陣を求めるデモが15日夜、東京・永田町の国会前であった。「#岸田政権の退陣を求めます」と書かれた横断幕が掲げられ、参加者は国会に向けて「政権を代えよう」などと声を上げた。
ジェンダー平等や気候危機などの社会課題解決を訴える30代の市民有志が中心のグループ「WE WANT OUR FUTURE」が主催。安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合が共催した。
登壇した気候アクティビストのeriさんは、裏金問題を「今まで自民党政権がやってきたことがわかりやすい形で表面化しただけ。国民はいないかのように無視されて、ないがしろにされてきた」と強調。東京電力福島第1原発を訪問したといい「いまだに何もコントロールされていない。もう、うそつきな政治にはうんざり。これで終わりにしましょう」と訴えた。
数カ月前に同じ場所で、消費税のインボイス(適格請求書)制度反対のスピーチをしたというラッパーのダースレイダーさんは「小規模な事業を長いこと続けてきた人たちが大変だと言っている、その気持ちを踏みにじりながら何千万円ものお金が次々と(政治家の)懐に入っていく」と話し、「そういう人が民主国家日本の代表として、大臣として、のさばっていることに耐えられるか。僕らは主権者なのかどうかを考えるタイミングだ」と呼びかけた。
デモには野党の国会議員も参加。立憲民主党の吉田晴美衆院議員=東京8区=は、先の臨時国会で成立した改正国立大学法人法について「審議時間は数時間。日本の大学をぶち壊してしまうような悪法だ」と批判。「根本には稼げる大学づくりがある。国民には『稼げ、稼げ』と尻をたたき、政治家は自分たちの私腹を肥やしている。こんなことが許されてはならない」と強調した。
X(旧ツイッター)で見て参加したという都内の男子大学生(24)は物価高で「自分たちは生活が苦しいし、不安定な中にあるのに、政治家は私利私欲にまみれている。国民が求めていることと全く違うことを政治がやっている」と憤っていた。
●派閥から指示「“政策活動費”記載する必要なし」虚偽記載罪を免れる言い訳 12/15
岸田政権は、“安倍派ゼロ”での再スタートです。
林新官房長官「国民の信頼回復これに尽力をしてまいりたい」
斎藤新経済産業大臣「大変、厳しい冷たい逆風の中で、大臣になったという高揚感みたいなものはありません」
新大臣への引継ぎも、粛々と行われました。
坂本新農林水産大臣「こういう状況でとは、予想だにしておりませんでしたが…」
引き継ぎからわずか3カ月で、異例の再登板となった大臣もいます。
松本新総務大臣「どうも」
辞任した鈴木前総務大臣は15日、5年間で60万円のキックバックがあり、政治資金収支報告書に記載していなかったと明らかにしました。
鈴木前総務大臣「清和研から還流、皆さん、キックバックといいますが、還流の事実はありました。2020年の割り当てが110万円。派閥への入金が140万円。差額30万円が還流。それから2019年の割り当てが…」
問われたのは、過去の発言との整合性です。これまで「ギリギリ、カツカツの状況でいつもやっていた。私は(キックバック)ありません」と述べていました。
鈴木前総務大臣「大きな裏金を作ってもらうのがキックバックで、普通の還流は、キックバックとは言わないという認識だった」
独自の見解を述べて、釈明しました。
派閥の関与をめぐっては、聴取を受けた秘書らは「政策活動費なので、記載する必要がないと派閥から指示された」と説明しているといいます。
政策活動費とは、一般的に、派閥ではなく、各政党から政治家個人に支出される政治資金のことです。政党は、支出した議員名や金額などを政治資金収支報告書に記載する義務がありますが、政治家側は、その使い道を報告する義務はありません。派閥からのキックバックを“政策活動費”という名目にして、隠ぺいしていた可能性があります。
政治資金に詳しい専門家に聞きました。
Q.政策活動費だから記載する必要がないという理屈は通るのか。
政治資金に詳しい東京大学・谷口将紀教授「端的に申し上げれば、通らない言い訳だと思います。政策活動費は、政党が、直接、その政治家に行うものに限り認められる寄付で、派閥を介して渡すなどということは、想定をされておりません。このような言い訳を考えること自体が、非常に悪質ですし、受け取った議員の側も、少し注意をすれば、これはだめだとわかるはずですから、虚偽記載罪を免れる言い訳にはならないと思います」
Q.政治資金の収支報告書を訂正するという対応が相次いでいますが、これは問題はないのでしょうか。
谷口将紀教授「故意性が認められるのであれば、訂正して済むという問題にはなりません。金額の多寡を問わず、あるいは実際に立件されるかどうかを問わず、これは虚偽記載罪になります」
 12/16

 

●「嫌いな女性政治家」ランキング…1位は? 12/16
今年も残すところあとわずか。政界では自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる“裏金疑惑”に揺れているが、女性議員による不祥事や失言も目立った一年だった。
7月下旬に自民党女性局が実施したフランス研修は、炎上した事例の1つでもある。松川るい参院議員(52)や今井絵理子参院議員(40)らは、研修中に記念撮影した写真をSNSに投稿。だが松川議員がエッフェル塔前でポーズを決める写真などに、“まるで観光旅行のよう”と批判が殺到していた。
年末の風物詩である「現代用語の基礎知識選 2023ユーキャン新語・流行語大賞」でも、「エッフェル姉さん」がノミネートされるなど“悪い意味”で人々の記憶に残っているようだ。
こうした不祥事をきっかけに、イメージダウンした政治家も少なくない。果たして、国民から最も支持されていない政治家は誰か? 本記事では女性政治家に焦点を当て、全国500人を対象に実施したアンケート調査の結果を紹介する。
まず第3位に選ばれたのは、43票を集めた自民党の生稲晃子参院議員(55)。
昨年7月の参院選で初当選し、おニャン子クラブの人気元メンバーという知名度から注目を浴びた。自民党女性局のメンバーにも名を連ねているが、《何ができるのかわからない》《知名度だけで 仕事出来ない してないからです》と評価は芳しくない。
生稲氏といえば、選挙活動中から波乱の連続だった。NHKが候補者向けに行ったアンケートを“ほぼ無回答”で提出したため、SNSで批判が続出。生稲氏はXで謝罪し、選対広報担当者も「事務局責任者の処理ミス」と釈明していた。
だがさほど理解は得られていないようで、《候補者アンケートで無回答の欄が多かったと報道で聞き、勉強不足を否めない》《質問内容をスタッフが考えていたから》との声が目立った。
また参院選当日も『池上彰の選挙ライブ』(テレビ東京系)で、“全テレビ局のインタビューを断っていた”と明かされたことも逆風に。番組内では「国会議員としての資質、勉強が圧倒的に足りないから」と理由も暴露され、国会議員としての資質が問われていた。
そうしたイメージを払拭しきれていないことから、《良く勉強してから政界にお入り下さいとツッコミたくなる》《候補者アンケートで無回答の欄が多かったと報道で聞き、勉強不足を否めない》と厳しい声が寄せられていた。
続いて第2位に選ばれたのは、57票を集めた自民党の杉田水脈衆院議員(56)。
’16年2月にSNSやブログで、国連の女性差別撤廃委員会に参加した感想を「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」と断じるなど、とにかく失言が絶えない。
’18年8月に刊行された月刊誌への寄稿では、性的少数者について「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」と表現していた。
数々の波紋を呼ぶ発言に、《偏見に満ちた言動》《差別発言が許せない》《差別的な発言が多い》《LGBTQの方々やアイヌ民族の方とかを批判する発言をされていた》との声が多数寄せられていた。
昨年12月の参院予算委員会では、当時の松本剛明総務相(64)から指示される形で謝罪、撤回した杉田氏。その後、「内閣の一員として迷惑をかけたくない」として政務官を辞した。
アイヌ民族や在日コリアンに対する不適切な投稿は、今年9月に札幌法務局が、翌10月には大阪法務局も人権侵犯と認定している。しかし杉田氏には“反省の色が見えない”と、再び物議を醸すことに。
今年11月に保守系論壇誌『月刊WiLL』のYouTubeチャンネルに出演し、あるアイヌ関係団体に対して「こんな団体に謝罪するぐらいなら政務官を辞めます」と政務官を辞した真意を語っていた。
こうした態度に、《差別発言など失言を繰り返し、反省している様子がない》《人権侵犯認定されているのに自分を正当化している》《いろいろな差別感情を持っていて、議員にふさわしくない。同じような失言を繰り返し、反省もしない》との声が上がっていた。
そして残念ならが第1位に選ばれてしまったのは、今井絵理子議員。生稲氏と杉田氏を大幅に上回る117票が投じられる結果となった。
そうした背景には、批判を集めた自民党女性局のフランス研修会をめぐる対応が尾を引いているようだ。騒動当時、今井氏はXで《「公金を使って無駄だ」という指摘もありますが、無駄な外遊ではありません》と猛反論。さらに《また追って活動報告します!!》と締めくくっていたが、いまだ“報告書”なるものは公表されていない。アンケート回答では、この件について苦言を呈する声が多数上がっていた。
《国民が求めていることに対応されていない》
《国民の生活が大変にも関わらず、観光気分でフランスでの研修に行ったから》
《フランス研修の時の対応も不快だったし、世間を煽るような発言が気に入らない》
そんな今井氏は、政治家としての活動以上にプライベートが世間を騒がせてきた。
’17年7月に橋本健元神戸市議との“手つなぎ不倫疑惑”が報じられ、’18年10月にブログで橋本氏と交際していることを“宣言”。いっぽうで不倫疑惑は、キッパリ否定していた。昨年5月には骨盤を骨折した今井氏の車いすを押す橋本氏の姿も目撃されており、交際は続いていると見られている。
しかしフランス研修をめぐっては、橋本氏の“擁護”も火に油を注いでいた。橋本氏はXで、《公金で行ってるわけでもないし、党の活動やし、自己負担もあるし、今井絵理子議員に批判が向かう理由がわからん》などと主張。様々なユーザーとも応酬を繰り広げ、《今の日本国民の反応いちいち気にしてたら政治なんてできないよ》などと投稿していた。
パートナーの言動も影響しているようで、今井氏には《世間を騒がしている》《悪い印象しか残してない》《私生活も乱れている》と指摘する声もあった。
タレント議員が上位を占めた結果になったが、国民に支持されるような活動を期待したい。
「一番嫌いな」女性政治家ランキング
1位:今井絵理子(自民党)117票
2位:杉田水脈(自民党)57票
3位:生稲晃子(自民党)43票
4位:蓮舫(立憲民主党)31票
5位:福島瑞穂(社民党)28票
6位:稲田朋美(自民党)22票
7位:辻元清美(立憲民主党)20票
8位:橋本聖子(自民党)17票
9位:片山さつき(自民党)16票
10位:高市早苗(自民党)15票
11位:松野明美(日本維新の会)14票
12位:三原じゅん子(自民党)11票
13位:野田聖子(自民党)11票
14位:小渕優子(自民党)10票
15位:吉良よし子(共産党)7票
16位:丸川珠代(自民党)6票
17位:松川るい(自民党)4票
18位:塩村あやか(立憲民主党)3票
19位:古屋範子(公明党)2票
20位:鰐淵洋子(公明党)2票
21位:石井苗子(日本維新の会)2票
22位:森まさ子(自民党)1票
23位:山谷えり子(自民党)
その他:61票
●「好きな女性政治家」ランキング! 圧倒的1位は? 12/16
自民党最大派閥・安倍派の政治資金パーティーをめぐる“裏金疑惑”で窮地に陥っている岸田政権。松野博一官房長官(61)ら閣僚4名が辞任したほか、時事通信の最新の世論調査では支持率17.1%と過去最低を更新した。
立憲民主党から提出された内閣不信任決議案は与党の反対多数で否決されたものの、東京地検特捜部の捜査は本格化すると見られている。解散や総辞職が取り沙汰されるなか、無派閥かつ無世襲である高市早苗衆院議員 (62)を“次期総裁に”と推す声も上がっている。
不祥事に揺れる政界のなかでも、国民から支持されている政治家は誰か。今回は女性政治家に焦点を当てて、全国500人を対象にアンケート調査を実施した。
まず第3位は、35票を集めた自民党の高市早苗衆院議員。
’21年の総裁選では敗れたものの、経済安全保障担当大臣や内閣府特命担当大臣を担うなど閣僚として岸田内閣を支えている。政治資金パーティー問題においては、無派閥の高市氏にとって“追い風になる”との呼び声も高い。
11月には、自民党内に国力を増強させる勉強会「『日本のチカラ』研究会」を発足させたことも話題に。世耕弘成参院幹事長(61)が「現職閣僚がこういう形で勉強会を立ち上げるのはいかがなものか」と苦言を呈するも、党内からの批判に高市氏が屈することはなかった。
直後にXで《岸田内閣で閣議決定した『国家安全保障戦略』に記された理念を掘り下げる事を目的とした議員連盟です。現職閣僚が担務外の政策を同僚議員と一緒に勉強する事の何が悪いのか、意味が分からん》、と真っ向から反論。記者会見でも、「私は現職閣僚としてたくさんの議員連盟に入っているし、ほかの閣僚も同様だと思う」と述べていた。
アンケート回答では、こうした頼もしい姿勢に好意的な声が寄せられていた。
《男性政治家の圧力にも負けずに頑張っている》 《保守で真っ当なことを感情的にならず表現する》 《日本の国益を考えている唯一の女性議員だと思うからです。政策通であり、どんな質問にも的確に答える。自民党に居て思うように政策を進められない中にあって頑張っていると思います》
続いて第2位は、36票を集めた社会民主党の党首・福島瑞穂参院議員 (67)。
昨年7月の参院選では、党の存続をかけた“崖っぷちの戦い”が注目を集めた。比例代表で出馬し、唯一の議席を守り切った福島氏。比例全体の得票率も2%を確保し、公職選挙法における国政政党の要件を満たすことも果たした。
福島氏は初代党首の土井たか子氏(享年85)を受け継ぎ、’03年から10年間にわたって党首に就任。’20年に再登板してからも、国民に寄り添い続けている。
11月1日には「生活再建のための社民党の緊急経済政策」として、“消費税3年間ゼロ”を提言。福島氏は記者会見で、「税金は生活の苦しい人のために使うべき」と主張。この他にもインボイス制度の中止や、大阪・関西万博や統合型リゾート施設(IR)建設の中止などを訴えていた。
自民党の政治資金問題についても、追及の手を緩めない。12月7日の法務委員会では、法務大臣らに向けて「受け取った事実があるか、教えてください」と質問。小泉龍司法務大臣(71)が「政府の立場としてお答えは差し控えさせていただきたい」と返答すると、すかさず「いや、答えてくださいよ」と求めていた。
アンケート回答では、こうした真っ直ぐな姿勢を評価する声が多かった。
《庶民の感覚を持っていると思う。真面目でクリーンなイメージ》 《一番クリーンな党のイメージだから》 《ずっとブレずに政治に向き合っている》 《土井さんの後継として頑張っていると思う》 《一人だけど とにかく頑張ってる姿 国民の代弁をしようと一生懸命な姿が 応援したくなる》
そして第1位に選ばれたのは、80票を集めた立憲民主党の蓮舫参院議員(56)。
’09年の民主党政権下の事業仕分けで、当時開発中だったスパコン「京」について「2位じゃだめなんでしょうか」と問い質したことを覚えている人も多いだろう。蓮舫氏は双子の母親として仕事と育児を両立させる姿も注目を集め、初選挙では子育て政策「ママフェスト」を掲げていた。現在も待機児童やこどもの貧困、ヤングケアラーなどの問題に取り組んでいる。
SNSでの発信も積極的で、常に他党の動きに目を光らせている印象だ。最近では大阪・関西万博の運営費について、吉村洋文知事(48)が“赤字でも大阪府・市は負担しない”と発言したことにXで言及。蓮舫氏は《見事な丸投げ。「身を切る改革」で対応すべきでしょ。国民の税金を当てにしないでください、維新さん》と、批判していた。
自民党の政治資金問題についても、12月8日の参院予算委員会で西村康稔経済産業相(61)に追求する姿が話題に。蓮舫氏が「大臣は5日の夜、森元清和会会長、世耕参議院自民党幹事長と都内高級ホテルの和食店で2時間半会食をされているんですが、何を話しました?」と問うと、西村氏は「よく覚えておりません」と返答。
すると蓮舫氏は「この3人で会っていたら、口裏合わせしてるんじゃないかと疑って見えてしまうんですよね」と切り込み、西村氏は「口裏合わせなど、一切行っておりません!」と声を荒げて反論。西村氏が取り乱したように見えた人もいたようで、《これは素晴らしいやりとりでしたね》《蓮舫さんの誘導尋問、すごく気持ちいい》との声がSNSで上がっていた。
蓮舫氏には民意を“代弁”するかのような猛追ぶりを、称える声が寄せられていた。
《きつそうだけどはっきりした言い方が力強い》 《会議も積極的に発言して、引かないところ》 《いつもハッキリ自分の言いたいことを言っていて、信念がありそう》 《事業仕分けの際、実力を見た。子育てをしながら仕事と両立しているところも尊敬する》
しかしながら今回のアンケートでは蓮舫氏が1位に輝いたものの、実際には「その他」を選択した人が179票にも上る結果となってしまった。
その中には「好きな女性政治家はいない」との回答が大多数を占めており、次のような理由が並んだ。
《嫌いな議員は多数いますが好きな議員はいない》 《現職のなかでは、好感がもてる女性政治家はいない》 《どんな仕事をしているか分かりにくい》
つまり、“消去法でしか選べない”というのが有権者の本音のようだ。根強い国民の政治不信を払拭し、実行力で支持される議員は出てくるだろうか。
●税制改正 負担に臨む姿勢が見えぬ 12/16
自民、公明両党が所得税・住民税の定額減税を含む令和6年度の与党税制改正大綱を決定した。物価高に負けない賃金上昇を後押しする賃上げ促進税制の拡充や、子育て世帯への手厚い税制支援などが特徴である。
ただ、防衛増税の実施時期など結論が先送りされたものも目立つ。そこから見えるのは、負担増に正面から向き合おうとしない岸田文雄政権の姿勢だ。政治資金パーティーの裏金問題を巡る自民党批判がその傾向に拍車をかけた。これでは政権の政策遂行能力に疑念が持たれても仕方あるまい。
定額減税や企業・家計への優遇税制の効果が問われるべきはもちろん、負担増が不可避ならば、政権が責任を持って取り組むよう改めて求めたい。
防衛増税を巡っては、定額減税と時期が重なることを避けるため、首相が6年度実施を封印していた。与党には7年度以降のいつから始めるかを今回の税制改正で決めるべきだという声もあったが、政権への逆風が強まる中で結論を先送りした。
防衛力強化には安定的な財源確保が必要だ。防衛増税の道筋も決められない政治状況を、軍事的圧力を強める中国などがどうみるか。岸田政権はこの点を厳しく認識すべきである。
結論を持ち越した項目は他にもある。児童手当の支給対象に高校生を含めることに伴う扶養控除の扱いについては縮小方針を示したが、その最終決定は7年度税制改正で行われる。
一方、定額減税は6年実施と明記されたが、賃金などの動向次第で柔軟に対応する方針を併記し、延長に含みを残した。減税の必要性は十分な国民理解を得られていない。実施するなら効果の検証を徹底すべきだ。
賃上げや戦略分野での投資促進、子育て世帯支援など、政権が重視する政策を税制で支える優遇措置も多く示された。方向性は妥当だが、これらも実効性の吟味が欠かせない。
大綱は、従来の法人税率引き下げが必ずしも前向きな企業経営につながっていないなどとして「法人税率の引き上げも視野に入れた検討が必要」と指摘した。一方で賃上げや投資に積極的な企業には、優遇税制を講じる。このメリハリで政策的な実効性を高めるとの問題提起は理解できる。税制の在り方についても不断の検討を求めたい。
●公明「大胆な政治改革」を主張 危機感背景、首相は慎重―政治資金問題 12/16
自民党派閥の政治資金パーティー問題を受け、公明党が来年1月召集の通常国会で政治資金規正法改正など政治改革を進めるよう主張し始めた。政府・与党に対する世論の信頼が急低下しているとの危機感からだが、岸田文雄首相(自民総裁)は慎重な姿勢を示している。
「通常国会は『政治改革国会』の色合いが強くなる。それまでに改革案をまとめたい」。公明の石井啓一幹事長は15日の記者会見で、自民を巻き込んで「政治改革をリードする」と強調した。
問題の背景として、政治資金収支報告書を巡る「透明性の低さ」を指摘する向きは多い。寄付は年間5万円超の献金者の報告が求められる一方、パーティーは1回20万円超の購入者の公開で済む。「5年以下の禁錮または100万円以下の罰金」という不記載・虚偽記載の罰則についても「軽すぎる」との声がある。
石井氏は12日、自民の茂木敏充幹事長と会談し、「大胆な政治改革が必要だ」と力説。15日の会見では「パーティー(収入)の公開(対象)金額引き下げや罰則強化など幅広く検討する必要がある」と規正法改正の具体論に踏み込んだ。
公明側は「自民と連立を組んでいる以上、どうしても一緒に見られてしまう」(関係者)と批判の飛び火を警戒。党幹部は「自民に厳しく改革を求める姿勢を見せていくしかない」と語った。
自民内からも同調する声が上がる。森山裕総務会長は14日の派閥会合で「法改正の必要があれば勇敢に取り組まなければいけない」と強調。これに先立つ党総務会では、石破茂元幹事長が「派閥解消」を掲げた1989年の政治改革大綱を思い出すよう呼び掛けた。
ただ、首相はあくまで慎重だ。13日の会見では、政治改革に向けて「火の玉となって取り組む」と訴えたものの、具体論を問われても「事実をまず確認する」などと述べるにとどまった。「思い切って対応しなければ局面転換できない」。公明ベテランはこう断じた。
首相は「党所属の議員と膝詰めの議論を集中的に進める」としており、来週前半にも議論に着手したい考えだ。
●現行保険証廃止の抜き打ち 12/16
臨時国会が閉会しました。10月20日に始まったこの国会では、物価上昇などで厳しさを増す暮らしを支えるための議論を深めるはずでしたが、国会終盤には自民党安倍派を中心に各派閥による政治資金パーティーの問題に議論が集中し、暮らしの課題が十分議論されたとは言えません。
東京新聞は14日社説「臨時国会が閉会 暮らしの課題置き去り」で「国会は国民生活に直結する社会保障や物価高対策などを議論する場であるはずだが、2023年度補正予算の成立後は暮らしの課題は置き去りにされ、国民の期待に十分に応えたとは言い難い」と指摘しました。
パーティー券の問題は「裏金づくり」が疑われ、政治資金収支報告書の訂正で済む話ではありません。徹底的に究明すべきは当然です。
だからといって、私たちの暮らしに関わる議論が軽視されていいわけはありません。
特に腹立たしいのは、マイナンバーカードを使ったマイナ保険証への移行を進めるため、岸田文雄首相が現行の健康保険証を来年秋に廃止すると表明したことです。
政府によるマイナンバーの総点検と個人情報のひも付けミスの修正などで、現行保険証廃止の前提としていた「国民の不安払拭のための措置」が完了したためとしていますが、不安が払拭されたとはとても言えない状況です。
本紙は14日社説で「現行保険証の廃止は撤回すべきだ」と訴えました。
本社には読者から「マイナカード取得を拒否する人も多いのに、岸田政権は強行しようとしている。とんでもない高圧的な権力行使だ」「マイナカード普及のために強引に保険証をくっつけた印象がある。国民に番号を付けるなんて嫌な気持ちになる」「急な進め方でついていけない。何か他の思惑があるのだろう。政権への不信感がある限り、前には進めない」などと厳しい声が相次いで届きます。
そもそも総点検内容が公表されたのは臨時国会閉会前日でした。国会での議論を封じるかのような日程設定です。しかも首相の独断、抜き打ちで決めてしまうなんて、現行の保険証廃止に不安を抱く国民に寄り添っているとはとても思えません。
首相の正体見たりという感がしますが、読者の皆さんはいかがでしょうか。
●支持率ガタ落ちで岸田政権が大ピンチ…そのウラで「前原新党の持つ意味」 12/16
波乱の船出
11月30日に国会内で記者会見した前原誠司国民民主党代表代行は、新党「教育無償化を実現する会」を結成する意向を明らかにした。
この前原氏の新党には、国民民主党からは斎藤アレックス、鈴木敦の両衆院議員、嘉田由紀子参院議員、そして立憲民主党を離党して無所属となっていた徳永久志衆院議員が合流し、前原氏を含めた5人の議員で新党が発足することも伝えられた。
こうした前原氏の行動の背景には、来年2月の京都市長選をめぐる京都府内の情勢が影響を及ぼしていると言われている。しかしそれだけが理由で党を割って、新党結成にまで至るとは考えにくい。またより大局的な視点に立っても、今後の日本政治に一石を投じるものという側面を指摘できる。
日本政治のダイナミズムとして、こうした新党結成の動きは政治を活性化させる作用もあることから、筆者は全く前原氏の行動を否定するどころか、むしろ、肯定的にとらえられる点もあると考えている。
前原氏の行動を読み解く際には、平成期にみんなの党を除籍された江田憲司を代表として発足した「結いの党」がリーディングケースとなる。つまり、前原新党は、令和の時代の中で、かつて「結いの党」が果たした役割を果たそうとしている可能性がある。自民党の政治資金問題でかき消されてしまった感は否めないものの、前原氏の行動が現代日本政治に持つ「重要な意味」を考えてみよう。
新党「教育無償化を実現する会」を結成した前原誠司氏[Photo by gettyimages]
「謀りごと」の正当性
前原新党の結党については、結党6日前の11月24日に『京都新聞』が「国民・前原代表代行、離党の意向 党が補正予算案賛成なら 新党設立も視野」という速報記事を出していた。ところが、この記事に対して、前原氏は「誤報」と断じSNSやメディアを通じて強く否定していた。
24日に前原氏は、「補正予算の賛否を理由に、重大な政治決断をすることはありません。本人に確認することもなく、この様な記事を書くとは。誤報です!」とSNSに投稿。しかし結局、前原氏は同日の本会議でこの補正予算に賛成し、最終的に補正予算の成立翌日に新党結成を発表したのであった。
この『京都新聞』の記事では、離党の理由について「玉木雄一郎代表が賛成する方針を示唆しているため」と記載しているが、前原氏自身もこれに反発したのだと12月1日にABEMAの番組「Abema Prime(アベプラ)」において語っている。
なるほど、前原氏の説明も納得できる部分はあるが、「補正予成立算後の離党」という客観的事実を見れば、『京都新聞』の報道は、全くの「誤報」とはいえないだろう。
さらに前原氏は自身の離党とこの新党結成を「謀りごと」と述べ、国民民主党の榛葉賀津也幹事長が主張する「前原氏が離党はしないと明言したこと」にも理由があったと正当化した。
しかし、この一件で、新党結成の発表の直前での「誤報」騒動や、「謀りごと」発言により、前原新党に対する受け止め方は複雑なものとなり、一部の国民から「うそつき」という批判を招くこととなってしまった。
駆け込みの「年末新党」に対する批判
前原新党に対する一部の批判的な視点は、まったくゆえなきものではない。その一つは「年末」に、駆け込みで新党を結成してしまったように見えるところだろう。
これには、現在の政党政治を縛っている「政党交付金」の存在が関係している。 国民の税金を原資とする2024年分の政党交付金の獲得するためには、1月1日までに政党要件を満たす必要があった。
政党助成法第2条による規定により、政党交付金の交付対象となる法人格を持つ政党は、「国会議員5人以上を有する政治団体」ないしは「国会議員を有し、かつ、前回の衆議院議員総選挙の小選挙区選挙若しくは比例代表選挙又は前回若しくは前々回の参議院議員通常選挙の選挙区選挙若しくは比例代表選挙で得票率が2%以上の政治団体」に限られている。
つまり年内に国会議員を「5人」集めなければ、翌年の政治活動に必要な政党交付金の受給条件を満たせなかったわけだ。
前述の「結いの党」はこの「年末駆け込み新党」の好例であった。2013年当時、みんなの党の内部では、与党自民党に接近する党首の渡辺喜美氏に対して、あくまで野党の糾合を目指した江田氏との路線対立が激化し、党が分裂することとなった。
自民党を含む与党と協力して政策を実現しようとする玉木雄一郎代表が渡辺氏に、「非自民非共産」の枠組みの政権交代にこだわる前原氏が江田氏に、かさなって見えるのは筆者だけではないだろう。
「みんなの党」結党前の江田憲司氏(左)と渡辺喜美氏[Photo by gettyimages]
こうしてみんなの党から分裂した江田氏を中心とする「結いの党」も、 政党交付金を獲得する政党要件の基準日の翌年1月1日に合わせて、2013年の年末に、「5人」以上の国会議員をもって結党することとなった。その結果、政党交付金を得たが、この手法は「カネ」目当ての「年末新党」として揶揄されることともなった。
この事例に倣って、前原氏も政党交付金を獲得するために「5人」の国会議員を集めて、年末に結党したということなのだろう。しかし「結いの党」と同じく、「カネ目当ての年末新党」という批判を受けることとなった。
「比例当選」という問題点
前原新党への批判は、そうした「カネ」にまつわるものだけではない。その人数の少なさを疑問視する声もある。確かに、数がものをいう政治の世界で、5人だけで果たしてどういった活動ができるのか、と指摘する声はあるだろう。さらにそうした人数の面だけではなく、結党メンバーである議員たちの属性についても批判が集まっている。
まず、この新党に参加する国会議員のうち、前原氏と嘉田氏以外の3名は、比例代表で復活当選した衆院議員である。つまり「国民民主党」という看板の力にも頼って比例代表で当選した鈴木氏(比例南関東ブロック)、斎藤氏(比例近畿ブロック)、「立憲民主党」の比例代表で当選した徳永氏(比例近畿ブロック)に対して、「有権者を裏切っている」という批判の声が上がっているのだ。
もちろん、個々の候補者が小選挙区でしっかりと自分の名前を書いてもらわなければ、惜敗率による復活当選はできなかっただろう。しかし投票用紙の「国民民主党」や「立憲民主党」と書いた有権者の思いは、はたして新党でも反映されるのだろうか。
振り返れば「結いの党」の結党においては、離党元の「みんなの党」から比例代表で当選した衆・参議院議員に対して、「みんなの党が」議席の返還を求める騒ぎとなった。結局は、「本人の意向を尊重する」という申し合わせが成立し、会派離脱が認められることとなったが、今回の前原新党の結党にあたっても、榛葉幹事長が、11月30日に「議員を辞職すべき」との考えを示している。
国民民主党の玉木雄一郎代表も、12月3日のフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」において、同様の意見を述べている。すなわち比例復活した議員は政党枠で通った議員でもあり、現在の党にいろいろな思いがあり離党するならば「辞職してやるべきだ」という論理である。
国民民主党の玉木雄一郎代表[Photo by gettyimages]
結局、前原氏ら4人は13日に国民民主党を除名処分となったが、比例選出議員には、党に議席を返すべきとして議員辞職を勧告した。これは今後の課題を残すこととなった。
比例で当選した議員の票の中には、政党への支持ゆえに投票した有権者の思いが込められている。その意味では「政党の議席」という側面も強い。比例で復活当選した議員が政党を離党する際には、政党の側に議席を戻すべきであるというのも、有権者の側からすると理解できる話であろう。
「教育無償化」のための政党なのか?
新党「教育無償化を実現する会」というのは、維新の会との政策的な整合性をアピールするものといわれている。まさにこの政党名が示すように、今後の「第二次政界再編」を模索するための過渡的な政党といってよいだろう。
そもそも、「政党名」には、その政党が理想とするべき世界像やイデオロギーが込められていることが多い。たとえばヨーロッパには環境問題を重視するドイツの「緑の党」のように、単一の争点を重視する「単一争点政党」も存在する。前原新党もその党名ゆえに、「教育問題だけを取り扱う単一争点政党である」というイメージを持たれてしまうのも当然だろう。
しかし、新党結成時の発表を見ると、実際には「地域主権改革」「政官財のしがらみ打破」「持続可能な経済」など、生活者、納税者、消費者、そして働く者の側に立つ「改革政党」として、ウイングの広い政党を目指していることも見て取れる。
そうした中で、単一争点政党として捉えられる危険性が高い党名を選んだのは、おそらく過渡的な政党であり遅かれ早かれこの政党名を捨てることになると予期しているだろうことは間違いがない。
現在、岸田内閣の支持率は発足以来最低を更新しており、さらに野党第一党の立憲民主党の支持率も伸び悩んでいる。今後、現在の政治、すなわち岸田政権や既存の野党に対する国民の不満をすくえるような政党になれるのか、あるいは他の政党と合従連衡して、「第二次政界再編」の台風の目になれるかが、前原新党に問われているといっても良いだろう。
ただ党名で「教育無償化」を強く提起したことが、そういった合従連衡につながる可能性はある。今年の春の統一地方選で「私立高校の無償化」や「大阪公立大学の授業料の無償化」を掲げて当選した大阪府の吉村洋文知事を共同代表とする維新との連携や、前原新党の結党発表の後に「東京都の高校授業料の実質無償化」を掲げた小池百合子都知事との連携も、視野に入ってくるといえる。
令和の「政界再編」の起爆剤
今回の前原新党のリーディングケースとなった「結いの党」は、上記のような多くの批判を招いた。しかし少人数から始まった「結いの党」も、その後の平成期の政治において、野党再編の起爆剤としての一定の役割を果たしたということができるだろう。
この「結いの党」は結党当初からの目論見通り、当時の日本維新の会と合併し、2014年9月に「維新の党」へと発展することとなった。しかしながら、合流相手であった日本維新の会も大変動を経験し、橋下徹を中心としたグループと石原慎太郎を中心としたグループに分裂することとなった。のちにこの維新の党は2016年3月に民主党と合流して民進党となり、野党第一党となっている。
こうした野党第一党を再編するまでに至る一連の平成期の政界再編の動きの出発点は、実はみんなの党から分裂した「結いの党」であったといってもよい。そうした視点からすれば、「結いの党」へのいくつかの批判は、野党再編を実現させたことで帳消しになるどころか、むしろ積極的に評価すべきだという意見にも頷ける。前原新党の今後の評価を決めるのは、まさにその点である。
前原氏が、他の政党とまったく異なった新しい政党を目指すというのであれば、それを明らかにするべきであるし、そうでなくてどこかの政党に吸収されるためのワンクッションのつもりであれば、年末の時期に新党を作った意図も「手土産代わりの政党助成金狙い」と否定的に捉えられる可能性もある。
この前原新党が、後の歴史から評価されるようになるためには、「結いの党」が行ったような、「令和期における野党再編」を起こす以外にはない。
いずれにしても、岸田内閣の支持率が発足以来の最低水準を更新し、さらに一強多弱の中で自民党に代わる勢力も存在しない現在の日本政治は、閉塞感に満ちた「危機的な状況」にある。
たとえ近視眼的には批判できる点があるとはいえ、現状を打破しようとする試みならば、全否定するべきではないのではないだろうか。今後、前原新党の成否に関しては国民の支持と、令和期の政界再編へのインパクトがカギとなる。
かつて、平成期においては、こうした政界再編の起爆剤が「結いの党」であった。前原新党が令和期の再編の起爆剤となるかはこれからだ。そうした政界再編にあたっては、2017年の「希望の党」騒動の時に、小池氏と共に中心にいた前原氏の経験がものをいうかもしれない。
岸田政権が「政治とカネ」の問題で大揺れの中、こうした新たな試みが、他の野党をも巻き込んで、現在の日本政治の閉塞感を打破できるのか。注目したい。
●絞られる次期首相の条件、「ポスト岸田」の一番手は初の女性首相か 12/16
・派閥の政治資金パーティーを巡る問題で、岸田首相は安倍派の4閣僚を交代させた。安倍派に属する主要な党役員も相次いで辞意を表明している。
・岸田政権がいつまで続くのか、先を見通すのは難しいが、足もとの混乱を乗り切れば、来年9月の総裁選まで延命する可能性も出てきた。
・「ポスト岸田」には、岸田派、麻生派、茂木派からなる主流派、二階派、森山派、菅グループや石破グループなどの非主流派、安倍派からなる反主流派がそれぞれ候補を出すことになる。その中でも可能性の高い一番手は誰か?
12月7日に寄稿した拙稿「メインシナリオは来春から夏の総辞職、危険水域に達した岸田政権の続投の道筋」では、来年に想定される3つの政治シナリオを提示した。だがその後、自民党の安倍派など主要派閥における政治資金パーティー収入を巡る問題が急速に深刻化している。
岸田首相は14日に安倍派に属する閣僚と副大臣を交代させた。また、安倍派に属する主要な党役員が相次いで辞意を表明している。政局は年末に大きく変動しており、来年の政治シナリオについて再考せざるを得ない状況だ。
従来、来年の春から夏に掛けての内閣総辞職をメインシナリオに考えていた。だが、政治資金問題により、岸田政権がいつまで続くか予想が難しくなっている。一方で、「ポスト岸田」に求められる条件はある程度絞られそうだ。
安倍派の排除
   閣僚交代、党役員辞任
11月14日に岸田首相は安倍派の4閣僚を交代させた。松野官房長官の後任には林前外相(岸田派)、西村経産相の後任には斎藤前法相(無派閥)、鈴木総務相の後任には松本前総務相(麻生派)、宮下農相の後任には坂本元地方創生相(森山派)を起用した。4名とも閣僚経験者で、うち3名は岸田内閣での経験者だ。
また、安倍派の萩生田政調会長や高木国対委員長、世耕参院幹事長が相次いで辞表を提出した。2024年度当初予算が閣議決定されると目される22日までは任にとどまり、その後交代する模様だ。
一時は、党役員や大臣のみならず、副大臣と政務官全ての安倍派メンバーを交代する案が取り沙汰された。結局、副大臣は交代となるも、政務官は留任で落ち着いた。
ただ、13日の国会で立憲民主党の泉代表が「この危機的状況の中で裏金議員の一掃よりも、安倍派一掃を画策しているよう」と指摘したように、安倍派の排除と受け止められても仕方のない展開となった。安倍派は岸田首相に対する不満を強めているだろう。
   安倍派の帰趨が重要に
今後の政局を見る上で、安倍派の帰趨が注目される。これまで安倍派は岸田政権を支える立場であったが、反主流派とでも呼ぶべき立ち位置に転じそうだ。ただ、反主流派として安倍派が自民党内で影響力を持つか否かは不透明だ。
安倍派が影響力を持つためには、会長などリーダーを据えてまとまる必要がある。今後の政治資金問題の展開次第となるが、いわゆる安倍派5人衆の中では、派閥の事務総長を経験していない衆院議員である萩生田氏が会長候補となる可能性がある。
会長などリーダーを据えることができない状況では、派閥が分裂する危機に直面するか、もしくは分裂せずともまとまらず、総裁選で草刈り場となるかもしれない。
9月の総裁選まで岸田首相は持ち堪える?
岸田政権の継続性
   予想が難しいが、意外と持ち堪える可能性
政治資金問題が深刻化する前までは、来年の春から夏に掛けての内閣総辞職をメインシナリオに考えていた。だが、現段階では、岸田政権がいつまで継続するか予想が難しくなっている。
政治資金問題の展開次第では、年内を含め、早期に総辞職へ至る可能性が出てきた。岸田首相は安倍派の主要メンバーを内閣及び党役員から排除したが、政治資金問題は収束していない。
岸田派を巡る問題も浮上している。仮に司直の手が岸田派に及ぶような展開となれば、直近まで派閥会長を務めていた岸田首相の責任が問われる可能性はある。司直による捜査等は国会の閉会中に進むとみられる。来年1月に通常国会が開会するまでの約1カ月間、予断を許さない状況だ。
一方で、岸田政権が来年9月の自民党総裁選まで持ち堪える可能性も十分にある。政治資金問題で岸田派など主流派におけるダメージが相対的に軽微であれば、内閣支持率が低迷、もしくは低下傾向を辿っても、政権は意外と安定するかもしれない。
12月7日の拙稿でも指摘したように、内閣支持率は危険水域に入っており、過去の例を見れば危険水域からの挽回も難しいと目されるが、危険水域にあるからただちに政権退陣に至るとは限らない。
国政選挙を間近に控えていれば、与党内で「○○おろし」のような足を引っ張る動きが生じて総辞職に至る可能性が高まるが、衆院議員任期満了及び参院議員通常選挙とも2025年で、まだ先の話だ。
政治資金問題に対する世論の関心が高まり、長らく安定していた政党支持率が遂に下がり始めた状況下では、自民党は派閥による権力闘争を当面控えるのではないか。
無論、上述の通り、安倍派がまとまれば、反主流派として影響力を持つことになる。だが、安倍派は現在まさに政治資金問題に直面している最中であり、当面「岸田おろし」のような政局を仕掛ける余裕はないだろう。
岸田政権の安定と安倍派の“反乱”
派閥としてまとまったとしても、影響力を持つのは来年秋の総裁公選であろう。仮に安倍派がまとまらなければ、岸田政権の安定につながりやすい。
以上まとめると、政治資金問題が深刻化する前までは、メインシナリオとして予算成立や国賓訪米を終えた来年春から夏に掛けて内閣総辞職に至ると予想していたが、その可能性は低くなっているように思われる。
年内を含め、早期に総辞職へ至る可能性があるが、そこを乗り切れば来年9月の自民党総裁選まで持ち堪える可能性が高まる。両極端のシナリオだが、どちらの可能性が高いかは、政治資金問題の展開次第であり、想定する確率の提示は難しい。
ポスト岸田候補の「一番手」
「ポスト岸田」の行方
   3つの陣営に分かれる
政治資金問題により、「ポスト岸田」の行方はどうなるであろうか。
安倍派が岸田政権を支える立場から、反主流派へ転じることで、自民党内の勢力は大まかに3つの陣営に分かれる見込みだ。主流派は、岸田派、麻生派、茂木派から構成され、谷垣グループも加わる。
非主流派は二階派、森山派から構成され、菅グループや石破グループも近いと考えられる。反主流派は党内第1派閥の安倍派だ。
脱派閥などが政治テーマに
早期の総辞職を免れることができれば、岸田政権は基本的に来年9月の自民党総裁選まで持ち堪える可能性が高そうだ。この場合、総裁選には3陣営からそれぞれ候補が出馬するのではないか。
主流派の候補は内閣支持率次第だ。仮に支持率が持ち直しているようであれば、岸田首相が続投を目指して出馬する可能性が高まるが、支持率が低迷、ないしは一段と低下するようであれば、別の後継候補が模索されよう。その場合は茂木幹事長や林官房長官、上川外相、鈴木財務相の名が上がりそうだ。
従来型の派閥の論理から言えば、茂木幹事長や林官房長官が有力視されるが、政治資金問題が浮上したことで、それを打開するための脱派閥やクリーン、新鮮なイメージを持つ候補が求められうる。初の女性首相の候補として、上川外相が選ばれる可能性がありそうだ。
非主流派の候補として、石破元幹事長や小泉元環境相、麻生派所属ながら河野デジタル相が取り沙汰されている。加えて、菅前首相が出馬する可能性もある。
反主流派の安倍派は、政治資金問題が直撃したこともあり、独自の候補を出しづらい。主流派の候補を推す可能性も低そうだ。非主流派を推すか否かは、候補次第となる。
例えば、菅前首相なら推しやすいが、長らく安倍元首相と対立してきた石破元幹事長などであれば推しづらい。消去法的ともなるが、政策的に親和性のある高市経済安保相を推す可能性が出てくる。
様々な組み合わせが考えられ、最終的に誰が出馬するかを現時点で予想するのは難しい。ただ、脱派閥やクリーン、新鮮なイメージを持つ候補が求められやすい中で、女性候補が複数出馬し、総理総裁に選出される可能性は政治資金問題発生前よりも高まっていよう。
政局が経済政策に与える影響
経済政策への影響は?
   金融政策、財政
政局が経済政策に当たる影響はどうか。2024年に任期満了を迎える日本銀行の政策委員はおらず、現行の体制が続く。4月にも日本銀行が物価目標達成と判断し、金融政策運営の正常化を図る可能性が高そうだ。政治情勢は金融政策に基本的に影響しないと予想する。
財政政策は首相次第だ。誰が政権を担うかで変わってこよう。2025年度にはプライマリーバランス黒字化の財政健全化目標の期限を迎える。2024年中に財政健全化目標期限を先延ばしするのか、目標自体をどうするのかを決断する必要があろう。
次の首相が主流派から選ばれれば、基本的に財政健全化路線が継続されよう。対して、高市氏の場合は、財政拡張路線へ転じる見通しだ。非主流派の場合は、各候補で政策スタンスの隔たりが大きく、不透明だ。
●「中継ぎ投手」松本総務相 3人が3カ月で閣内復帰 窮状の岸田政権 12/16
自民党の最大派閥・安倍派の裏金疑惑で、岸田文雄首相は事実上更迭した同派4閣僚の後任に、いずれも閣僚経験者を充てた。このうちの3人は、今年8月の内閣改造で閣外に去っており、わずか3カ月での再入閣。松本剛明総務相に至っては、政治資金問題で昨年11月に辞任した寺田稔元総務相の後任として後始末を任されたばかりの再登板で、さながら野球の「中継ぎ投手」。後任人事から、岸田政権の窮状が浮かび上がる。
3度目入閣も記念写真なし
更迭されたのは、松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、宮下一郎農林水産相、鈴木淳司総務相。松野、西村両氏は、安倍派の実力者「5人衆」の一人で、派閥の実務を取り仕切る事務総長経験者でもある。後任は順に、岸田派の林芳正、無派閥の斎藤健、森山派の坂本哲志、麻生派の松本の各氏。新人を充てなかったのは、後任に不祥事が発覚して辞任という事態になれば、政権の致命傷になりかねないとの判断からとみられる。
このうち、松本氏は旧民主党から無所属を経て自民党に移籍した衆院当選8回のベテラン。旧民主党の菅直人内閣で外相を務めており、今回で3回目の入閣となった。実は、外相就任も、外国人からの献金受領で前原誠司氏が引責辞任したことに伴うもの。3回連続での緊急登板だ。
衆院選後の新内閣発足時や、全員に辞表を提出させて閣僚を入れ替える内閣改造時には、首相と全閣僚らが首相公邸の階段で、記念写真を撮るのが恒例。閣僚経験者のほぼ全員が、議員会館の事務所に、入閣時の記念写真を飾ってある。
しかし、松本氏は3回とも緊急登板のため、この写真はなし。3回入閣しながら、首相と全閣僚による記念写真がないのは、自民党の歴史で前例がないとみられる。まさにギネスものだ。
自民党関係者によると、麻生太郎副総裁は2021年10月の衆院選後の第2次岸田内閣発足に際し、幹事長に異動する茂木敏充外相(当時)の後任に松本氏を推薦。しかし、首相は自身の派閥の林氏を起用した経緯がある。麻生氏の意見が通っていれば、松本氏は外相として、記念写真に納まっていた。
そもそも、辞任する閣僚の後任の人選に当たっては、辞める経緯や後任の条件、政権の現状などさまざまな観点から首相が判断する。3回連続で辞任閣僚の後釜に声が掛かった松本氏は、奇遇と言えよう。
林官房長官、苦渋の決断
定例記者会見で裏金疑惑の説明を拒否し続けた松野氏の後任は林氏。これまで、防衛相、経済財政担当相、農水相(2回)、文科相、外相を務めており、7回目の入閣となった。このうち、経済財政担当相、農水相(2回目)は、前任者の辞任を受けたもので、緊急登板は3回目だ。投手に例えれば、先発もリリーフもこなせる「エース」。
豊富な閣僚歴が示すように、さまざまな政策に詳しく、答弁も安定しており、「ポスト岸田」候補の1人。党内の予想に反して9月の改造で外相を退任し、無役となった。首相には、林氏に「派内をまとめ、派閥として政権を支える体制を強化させる」(周辺)狙いがあったとされる。
にもかかわらず、首相が林氏を「内閣の要」の官房長官に据えたことは、政権の窮状を表していると言えよう。党関係者によると、首相は9月まで防衛相を務めた無派閥の浜田靖一氏に官房長官を打診したが、固辞されたという。首相にとって林官房長官は、苦渋の決断だったに違いない。
西村氏の後任の斎藤氏はかつて、石破茂元幹事長が率いた旧石破派に所属したが、現在は無派閥。これまで、農水相、法相を務めており、衆院当選5回で3回目の入閣。経産官僚出身で、経産行政に精通しており、妥当な人選と言えよう。
森山派から農水相
農水相の坂本氏は、県議出身の衆院当選7回。菅義偉内閣で地方創生相を務めており、2回目の入閣となった。所属する森山派は、領袖(りょうしゅう)の森山裕総務会長ら8人の小派閥。森山氏は、菅前首相や二階俊博元幹事長と親しく、森山派は政権と距離を置く非主流派に位置付けられるが、首相は非主流派とのパイプ役として、森山氏を重用している。
首相は、森山派が他の5派閥と異なり、東京地検特捜部の捜査対象になっておらず、同派から閣僚を起用してこなかったことも考慮し、坂本氏を充てたようだ。同氏は農水族の一人で、森山氏自身も農水相を経験した農水族の最大実力者。農林水産行政は当面、党側では森山派が主導することになりそうだ。
一方、交代した副大臣は5人。文科は無派閥の阿部俊子、内閣府は岸田派の古賀篤、外務は無派閥の柘植芳文、経産は茂木派の上月良祐、防衛は森山派の鬼木誠の各氏に落ち着いた。副大臣の後任をめぐっても、官房長官人事と同様、打診を断った議員がいたようだ。岸田政権の先行きを危惧し「泥船に乗りたくない」との判断があったとみられる。
内閣支持率、退陣前夜の様相
時事通信社が8〜11日に実施した12月の世論調査によると、岸田内閣の支持率は17.1%(前月比4.2ポイント減)で、自民党が12年12月に政権に復帰して以降、最低を更新。初めて2割を切った。不支持率は58.2%(同4.9ポイント増)。自民党の支持率も18.3%(同0.8ポイント減)で、2カ月連続で2割を下回った。
内閣支持率に限れば、衆院選で敗北し野党に転落する直前の麻生内閣末期(16.3%)とほぼ同水準で、「退陣前夜」の様相と言える。また、当時の自民党支持率は15.1%。ただ、特捜部の捜査が進めば、自民党の支持率がさらに低下する可能性が高く、党の支持率も「退陣前夜」となるのは時間の問題と思える。
こうした状況を踏まえ、今後の政治日程を見ると、来年1月に通常国会が召集され、2、3月は衆参予算委員会で、24年度予算案が審議される。審議では首相が、自民党の裏金問題で野党の追及を受けるのは必至。首相が期待する、春闘での大幅賃上げが実現しても、裏金問題で帳消しとなり、政権浮揚につながりそうもない。党内では、リクルート事件で退陣に追い込まれた竹下内閣を引き合いに、予算成立後に岸田内閣が総辞職する「予算花道論」が真剣に語られ始めた。
もし、安倍派などの裏金疑惑が事実だった場合、国権の最高機関、立法府に身を置く人間が集団で、違法に資金集めをしていたことになる。しかも、政治資金は非課税だ。物価高で苦しい生活を強いられている国民の怒りは、頂点に達するだろう。
「国民の声が自民党に届いていない」「民主主義の危機」。首相が21年9月の総裁選で、菅政権を批判した言葉だ。世論調査の数字は、国民の声が「岸田政権退陣」に集約されつつあることを物語る。
首相は党内の全派閥に解散を求めるなど、抜本的な党改革案を打ち出さない限り、国民の信頼を取り戻すのは難しいだろう。それをせずに政権にとどまり続ければ、それこそ、菅政権の比ではない「民主主義の危機」。そう断じても過言ではない。
●「特捜部は岸田政権を“火だるま”にする覚悟」 12/16
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑を巡り、岸田首相は「国民の信頼回復のために火の玉となって自民党の先頭に立ち、取り組んでいく」と述べたが、元外交官で作家の佐藤優氏は「特捜部は、岸田政権が国会で火だるまになる事態をわざわざ狙った」と言う。
国会で火だるまになる事態を わざと狙ったタイミング
自民党の派閥パーティー券を巡る裏金の問題が、大きく広がっています。発端は、12月1日の朝日新聞の報道でした。明らかに東京地検特捜部によるリークですが、なぜあのタイミングだったのか。その理由を考えると、事件の裏の意味が見えてきます。
ちょうど岸田文雄首相は中東に外遊中で、アラブ首長国連邦(UAE)に滞在していました。報道に迅速に対応できないタイミングを、あえて狙った記事でした。しかも、臨時国会の会期末は12月13日でした。記事があと2週間ほど先だったら、岸田首相や閣僚は国会であれほど追及されずに済んだわけです。
岸田政権の対応が後手に回り、国会で火だるまになる事態を、わざわざ狙ったと考えるのが自然です。すなわち、特捜部とその動きを認めている最高検察庁が、岸田政権と全面対決しても構わない。むしろ徹底して戦うんだ、と腹をくくったことを意味します。
特捜部が「今」着手したのは 政権が弱っているから
派閥を巡る裏金とキックバックの問題は、かねてウワサされてきました。長く続いてきた慣習なのに特捜部が手を付けられずにきたのは、政治の力が強かったからです。ここで着手したのは、政権が弱くなったと検察が認識しているからです。
検察が捜査情報を漏洩(ろうえい)することは、国家公務員の守秘義務違反です。そうした違法行為でマスメディアを利用し、まず世論を動かし、自ら起こした風に乗って事件化するという手法が、果たして民主主義になじむのか。この事件の本質とは別に、改めて議論する必要があるでしょう。
岸田内閣の支持率低迷は、景気の低迷に大きな原因があります。よりによって、インボイス制度の導入で実質的な増税になり、物価高が家計を直撃して庶民が苦しんでいるときに、政治家たちが豪華ホテルのパーティーであぶく銭を得てきた事実が発覚すれば、メディアからも国民からも厳しい目が注がれるのは当然です。
資金集めパーティーは、野党にとっても重要な収入源です。しかしなぜ自民党に限って、派閥という無責任な主体が行う必要があるのか。この際、政治資金規正法を改正して、パーティーができる主体を明確化すべきです。派閥のパーティーが禁止されれば、大半の永田町の秘書たちや、各企業の総務担当者はほっとするでしょう。売りつける側も買わされる側も、大変な負担になっているからです。
政党助成金のほかに政治資金が必要なら、個々の政治家が自分で集めればいいのです。派閥から配られる必要はありません。
「5年で総額1億円」は複数の公務員を買収できる額ではない
自民党の主要5派閥に疑惑が浮上していますが、一番のターゲットは安倍派です。座長の塩谷立・元文部科学相と、いずれも辞表を提出した「5人衆」と呼ばれる松野博一官房長官、高木毅党国対委員長、世耕弘成党参院幹事長、萩生田光一党政調会長、西村康稔前経済産業相を合わせた幹部全員です。
安倍晋三元首相の死去後、後継者を決められずに安倍派の名を継承したばかりに、元首相の名前に傷をつける事態となりました。昨年7月に亡くなるまで領袖を務めていた安倍氏自身の関与も、いずれ俎上(そじょう)に載せられるでしょう。
安倍派の裏金の規模は、当初「過去5年で1億円」と報じられましたが、「5年で総額5億円の可能性」まで膨らんでいます。さて、この金額は大きいのか否か。5年で1億円だとすれば、安倍派は100人以上の国会議員を抱えていますから、頭割りの単純計算で1人に年間20万円です。5年で5億円だとしても年間100万円で、ひと月に9万円ほど。
安倍派の池田佳隆元文部科学副大臣が、派閥からの還流分約3200万円を政治資金収支報告書に記載していなかったことを認めましたが、一部の国会議員に偏っていたとしても、公務員や有権者を買収するなどの悪事に充てるには、到底足りません。やっていることは悪質ですが、取り沙汰されている金額から見れば、過去の疑獄には及ばないといえます。
いまのところ捻出した裏金の使途に関する情報は出ていませんが、捜査の進捗でさらに金額が膨らむとしても、複数の公務員を買収できる規模の月1000万円を超えるほどには達しないと思われます。
岸田首相のクビを取りたいなら 言質を取ればよかった
岸田首相は、14日に安倍派に所属する閣僚4人を交代させました。しかしこの先、残留させた他派閥の閣僚に同じ疑惑が浮上したら、そのたびに交代させるのでしょうか。現時点では主に安倍派、部分的に二階派の裏金が注目されていますが、報道(検察リーク)によれば、他の派閥も同じことをやっています。最後は“そして誰もいなくなった”になりかねません。
さらに岸田首相は、首相就任後もとどまり続けていた自派閥・岸田派(宏池会)の会長職を、慌てて辞任しました。歴代の首相が就任と同時に派閥から離脱した理由は、自派の議員が何か問題を起こした際に巻き込まれるのを避けるためです。権力基盤の弱い岸田首相は、自ら派閥を掌握していたかったのでしょうが、背負ったリスクが顕在化してしまいました。
野党やメディアが岸田首相のクビを取りたいなら、次のように尋ねて言質を取っておけばよかったのです。
「一般論として、首相が派閥の長を兼任している場合、自派で法律に抵触するような行為が行われた場合、監督責任が及びますか」
「監督責任が及ぶ」という答えを引き出しておけば、岸田派から逮捕者や在宅起訴者が出た場合に、トカゲのしっぽ切りで逃げることができなくなります。
非派閥議員で首相候補になるのは? 現実味があるのは菅前首相
現在の検察には、安倍政権時代の黒川弘務・東京高検検事長のような、首相官邸とコミュニケーションを取れる人物が見当たりません。したがって、捜査の落としどころが見えてきません。この先、五つの派閥すべてに捜査が及べば、自民党は底が抜けてしまいます。少なくとも現在の派閥トップは、選挙の洗礼を受けるまでは首相になれません。
しかし自民党でも派閥に属していない議員は、今回のパーティー券問題の外にいます。そのうちの誰かが、首相に押し立てられる可能性があります。とはいえ、派閥に属していない議員は仲間のいない政治家とほぼ同義ですから、混乱を収めることはなかなか難しい。
現実味があるのは、長らく派閥に属していないにもかかわらず強い影響力を持つ菅義偉前首相の返り咲きでしょう。ただし菅さんは賢いので火中の栗を拾うようなことはしないと思います。  
●政治資金問題で岸田政権の今後? 来年3月の予算成立までは超低空飛行 12/16
政治資金の問題を受けて、政府与党内ではどのような動きが出ているのか、官邸キャップの川西記者の中継です。
政府関係者によりますと、岸田総理は近く、自民党内で派閥のあり方や政治資金規正法の改正の必要性などを含めて議論を行うよう指示する見通しです。
来年1月の通常国会までに一定の方向性を出したい考えです。
ただ、この問題をめぐって岸田総理と自民党幹部との温度差も表面化しつつあります。
菅前総理は周囲に「自分であれば真っ先に自民党内に新しい組織を作って問題解決にあたる」というふうに話していますが、岸田総理も党内に新しい組織を立ち上げること自体は検討しています。
ただ、まだ疑惑の全容が見通せないことや、他の派閥の問題にも手を突っ込むことになってしまうため、党幹部にも慎重論が根強く、「総理が先頭に立ってやる、と言っているのだから総理が自分でやればいい」との冷ややかな声も出ています。
(Q.岸田総理はこのまま求心力を失って、総辞職ということになるのか?)
捜査状況次第ということを大前提として申し上げると、短期的には退陣につながらないのではないか、こうした見方が大勢です。先日の記者会見で、記者から「来年度の予算成立後に総辞職する考えはあるか」と聞かれた岸田総理が、「予算成立後に解散するのか、そうした先のことを考える余裕はない」と、総辞職ではなくて解散について答えるという場面がありました。
現時点で、自ら辞職することなど考えていないことを強く感じさせる場面でした。
では、いわゆる「岸田おろし」が起きるのかどうか、ですが、まず、最大派閥の安倍派内では自分が捜査対象となることや派閥崩壊への恐怖感でまったく余裕がないように映ります。また、ポスト岸田と呼ばれる人たちも「このタイミングで後を継いでも、政治資金問題の後始末で終わり、やりたい政策を思うように進められない」などの思惑から、表だった動きは見られません。
野党内からも「支持率の低い岸田総理のままのほうが与しやすい」という“本音”が聞こえてきていて、来年3月の予算成立までは岸田総理が超低空飛行のまま続投するとの見方が大勢です。
●田崎史郎氏 自民党の政治資金問題は「筋書きのないドラマ」 12/16
政治ジャーナリスト田崎史郎氏が16日、TBS系「情報7daysニュースキャスター」に生出演し、自民党派閥の政治資金問題の今後を占った。
安倍派(清和政策研究会)の所属議員の中に、政治資金パーティー券のノルマを巡り最近5年間で9000万円超のキックバック(還流)を受け、裏金にしたとされる議員が複数いることが判明。キックバックを受けていた疑いで松野博一前官房長官、西村康稔前経産相、鈴木淳司前総務相、宮下一郎前農水相が辞任した。
政治不信を加速させた、政治とカネの問題。田崎氏は「今回のことは今、序章が始まったという段階なんです。これからどうなっていくか分からない、筋書きのないドラマなんですね」と説明し、その理由を二つ挙げた。
一つは岸田政権の情報収集能力の低さだという。「こういう事件の時は、法務省が官邸と内々に打ち合わせをして、黒を白にすることはないですけど、“このへんでね”という(妥協案の提示の)話が、行われるものなんですよ。安倍政権ではあったんです」。しかし、「それを岸田官邸は一切やってない。法務省の情報も東京地検特捜部の情報が全然、取れてないから分からない」という。
もう一つは、安倍派内の統制のなさだと指摘した。番組では、記者から囲まれて追及された宮沢博行前防衛副大臣が、派閥内でかん口令が敷かれた事実を暴露した様子を放送した。田崎氏は「VTRで紹介があった防衛副大臣とか、勝手なことを言ってる。本当は指示を出したいんですけど、あのように“こういう指示がありました”とバラしちゃうわけですね、マスコミに。だからノンコントロールの状況なんです。筋書きのないドラマになっていく」と解説した。
また安倍派の今後についても「99人という人から、30、40人は抜けると思いますよ」と分析。来年とうわさされる衆院選、再来年の参院選への影響も言及。「新聞各社、テレビ局もそうですけど、候補者名を紹介する時に派閥名を入れるんです。“安倍派”と入れた瞬間、有権者は逃げますよね。安倍派を抜けて無派閥になる人が増えてくるんじゃないかと思います」と見通した。
●林芳正官房長官ってどんな人? 裏金問題「私自身、還流は受けていない」 12/16
自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題で官房長官を辞任した松野博一氏に代わり、林芳正氏が「内閣の要」に就任した。
岸田政権の足元が揺らぐ中、要職に就いた林氏とは一体どんな人なのだろうか?
林氏は山口県出身。東大法学部を卒業後、三井物産などを経て、米ハーバード大院を修了。1995年の参院選に初当選して政界入りし、2021年に衆院議員にくら替えした。
2012年には参院議員ながら自民党総裁選にも出馬した。
閣僚経験が豊富で、農政から外交・安全保障まで幅広い分野に明るく、政策通として知られる。答弁は手堅いが、発信力に欠けるとの評価もある。
ビートルズのファンで、2021年に英リバプールで開催された先進7カ国(G7)外相会合の夕食会ではジョン・レノンの代表曲「イマジン」をピアノで演奏して話題になった。
防衛相や農相、外相などを歴任し、宏池会(岸田派)の座長を務める。父は蔵相などを務めた故・林義郎氏。
「国民の声を真摯に受け止め、生かしていく」
林氏は12月14日、官房長官に就任後、初めての記者会見で「国民の声を真摯に受け止め、政府としての対応に生かしていくことが大変重要だ。国民の信頼なくして政治の安定はあり得ない」と強調した。
また、裏金問題に関しては「私自身、パーティー券収入の還流は受けていない。宏池会から私の政治団体に寄付はされており、政治資金規正法にのっとり対応がなされている」と述べた。
政治とカネの問題を巡り、国民から厳しい視線が注がれる中、岸田政権は果たしてこの難局を乗り切れるのだろうか。
 12/17

 

●裏金疑惑で揺れる政権に“真紀子節”が炸裂!  12/17
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑で閣僚が辞任する事態に発展している。こうした中、田中真紀子元外務相が現在の国会議員に物申した。12月8日に開かれた会見の詳報をお伝えする。
11年ぶりの永田に…「相変わらず澱んでいる」
11年ぶりに永田町の土を踏みました。なんか空気が相変わらず澱んでいるし、きな臭いし、暗い感じがするなというのが第一印象でした。
こんな立派な議員会館ができて、関係者が呆れた顔をしておられるけど、議員に相応しくないほど立派な議員会館ができているなという印象を持ちました。
安倍内閣ができた頃から、これはちょっと日本が危ない方向に行くかもしれないし、国際情勢も大変厳しくなってくると見通しもついていたので、政治改革を具体的にやらないといけないんじゃないかなとずっと思っていました。
「政治に国民が飢えている」
過去10年間くらいの政治を見ていて、与党とか野党とか政党の話じゃないんですね。日本の政治、国民の政治のための意識、投票率の低さ、世界がこれだけ複雑に動いていて、そんな中で日本は立ちすくんでいるというか、はぐらかしばかり言っているんですよね。
これは大変なことになると思い「日本列島改造論」という51年前の本を復刻致しました。
どういうことかというと、政治にみんなが飢えているということです。国民が。投票率が低いというより、政治に期待できない。それは困るんですよ。
政治ほど素晴らしい職業はない
私は本当に政治というものは、すごいものだと思って育ってきている。今もそう思っています。
政治は一番チャレンジングでやりがいのある仕事だと思っています。現実を夢に非常に近づけられるのは政治。夢を実現することもできる。これが政治でしょ。こんな素晴らしい職業はないと私は信じています。
であるのにも関わらず、どこの議員がどうだとか、何党がどうとかそういうことを言う気はないんですけど、とにかく意識がみんな下がってきて、友達も内閣の対談とか、プロの方にお会いする時も、みんな「政治はダメだ期待できない。なぜかと言うと、国会議員は面白くない。へなちょこばっかりだ」と平気で言うわけですよ。
本来、国会議員というのは尊敬されて、みんなから憧れられるような存在でなければいけない。政治家を志す人たちが、色んなルールも変わってきていますけど、やっぱり夢がないんでしょうね。天下国家に対する境地がないというか。そういう人たちが平気で議員になっているということで私はおかしいと思っています。
安倍さん以降、彼も含めて、安倍さんは同期だから仲良しだったんですけど、客観的に見て、やっぱりもう人として全て終わってしまったというか、賞味期限が切れたと言いますか。そういう人たちが総理になり、閣僚になり、議員になっている。
活力が充実していて、やる気満々、どんな批判があってもいい、自分の夢を実現したいというような人たちがポストについていないということなんです。
世襲で政治資金まで引き継いじゃだめ
議員定数を減らすということも色々言われていますし、それから議員の勤続。通年国会にしたほうがいいとか、一年中やるとか色々あると思います。
それから、ペーパーテストをやればいいとか、世襲議員を辞めさせればいいとか。世襲が政治資金まで引き継いでやるからいけないんです。
うちは息子が出なかったからよかったんですけど。希望していませんから、能力もないし。
みんな親も子どもも有権者も「出ろ、出ろ」と言う。うちの息子のところにも各党の党首が来て、仕事をやっていても仕事にならなかったと言いますね。「僕は出たかったら北海道でもどこでも出るよ」と。
みんな息子を出したいんでしょ。一生懸命、外遊に連れて行ったりして色々とやっているんじゃないですか、買い物させたりしてね。
それだったら一回休むとか、親が北海道だったら、沖縄から出るとか、東京から出るとかね。そうやってやったらどうですか。政治資金なんか引き継がれちゃダメ。
世襲でも良い議員はいます。世襲じゃないからみんな良いとは言いません。要するに、最初に言ったように本人の能力・やる気。
民主主義は言論 どれだけ分かりやすく命がけで喋るか
そして一点だけ、どうしても私がやりたいと思っていることがあります。それは選挙の度に、地方も都知事選挙も区議会議員も全部“立会演説会”をすること。
うちの父が「あれでお父さんは鍛えられた」としょっちゅう言っていました。私、子どもの頃から聞いています。
候補者が全部出るんです。2週間選挙期間があると、その地域の公園かなんかに候補者が全部並ぶんです。3日に一回。そうすると有権者が集まって「これがそうなのか」と見て質問するんです。
「財政再建するには、どこからどうしますか」と。それから「COP28では環境問題こう言っていたけど、環境問題と経済成長、企業はどうやってやるんですか」と。「戦費をこれだけ使っているのに、環境問題とバランス考えたら環境問題をやるほうが安上がりで済むかもしれないのに、どう思いますか」とかね。あるいは「同性婚、結婚どう思いますか」色々聞くんですよ。
それに候補者は答えなきゃいけません。「わからない〜」とか言っている人はダメですよ。
そういう有権者が見極めるチャンスが立会演説会で、絶対にやるべき。父が一番言っていたのは「とにかくしつこいやつがいて、ヤジってヤジって仕方ないから『あんた、ヤジってばかりいないで私の言うこと聞きなさい』と言うと、相手がバンバン政策を聞いてくる。そして、むきになって答えたんだよ。そしたら、相手が最後に『よし分かった。角さん頑張れ!』と言って去っていったので『いや〜、やったな』と思った」と言っていました。
それで候補者も鍛えられる。民主主義は言論ですから、言葉でもってどれだけわかりやすく、命がけでしゃべるかなんですよ。
「答弁を差し控えるなら、国会議員になるのを差し控えた方がいい」
しゃべらないでなんですか。最近のなんか…変なこと「答弁を差し控えさせていただきます」。
差し控えるのは、やましいから答えられないということでしょ。そう言えばいいじゃないですか。国民はそんな馬鹿じゃないですよ。差し控えちゃいけないの。
じゃあ、国会議員になるのを差し控えたほうがいいですよ。いくらでも候補者がいるんだから、なりたい人が。
そういうすっとぼけた言葉の使い方をしちゃダメ。一度でも言ったら即、議員辞めてもらいますから。おかしいですよ。
国民が鍛えて立派な第2政党を
―このタイミングで会見を開いたことについて
父の没後30年、12月19日が命日ですけども、それとは関係ありません。
私、ずっと友達と話していても、報道を見ていても、本当に主権者たる国民がみんな選挙したくないと。それから一番多いのが、自民党がいま起こっている問題にしても何でもけしからんと。
お金の問題にしろ何にしろ、天下りも何も役人じゃなくて子どもたちのなんでしたっけ、息子が世襲で出るとかね。
「自民党は大っ嫌いだ、絶対投票しない!」と言うのに「しかし、野党がだらしない体たらくだから、やっぱり自民党に入れる」これがダメなんです。
私は何党の応援なんかしていませんよ。やっぱり野党を支えているのは国民なんです。それが自分のためなんです。主権者がね、野党にもっとやってもらったらいい。
主人も私も野党の囲みをやりました。学歴は皆さんよりか頭はいいんですけど、経験がないんですよ。企業でいったら平社員か課長くらい。
しかし、自民党は戦後ずっと担ってきていますから70数年。自民党は色んなノウハウがある。外交においても、役人との使い方・お金の使い方、そのほか役所との付き合い方。色んなノウハウがあって、社長や専務並みなんですよ。
だから基本的なところでもって、ひっくり返っちゃう野党が。そうすると「やっぱり野党がダメ、自民党ね」と。
国民が考え方をやめて、マインド選択を変えて、野党にやらせる。潰れてもまたやって、もっと教える、鍛えて立派な第2政党を作りませんか、ということなんです。
政権交代しちゃえば、チェックアンドバランスが効くんですよ。
有権者から「結局、最後は自民党」と聞くと、私ガッカリします。周りの友達もみんな言いますよ。結局、野党がだらしない。育てないからですよ。野党を育てましょうよ、しっかりしてもらいましょうよ。それが我々の為になるんですから。風通しを良くしたいと思います。
ですから、きょうのこの会も、たまたま一番問題が起こっている時に、バッチリぶつかってしまいましたけれども、これを打ち上げ花火にする気はありません。
これをちゃんとまとめて、皆さんの意見・我々の意見をまとめて各政党に出します。厳しい話をちゃんと質問状で出します。空砲にしませんこの会。
せっかく皆さんもいらしてるんですから。我々本気なんですから。良くしたいですよ。「良い政治だ、やっぱ日本はすごいな」と思われるようにしましょうよ。
それには皆有権者が頑張らなければダメなんですから、必ずまとめて公表致します。
●ロシア外務次官“平和条約交渉など 日本と対話の見通しない” 12/17
ロシア外務省のルデンコ外務次官はウクライナ侵攻を受けて日本側がロシアに制裁を科していることに反発し、「本格的な2国間の対話は不可能だ」と述べ、日本との北方領土問題を含む平和条約交渉などを続けることは難しいとの認識を改めて示しました。
インターファクス通信は16日、ロシア外務省で日本などアジア太平洋地域を担当するルデンコ外務次官とのインタビューを報じました。
このなかでルデンコ次官は、ウクライナ侵攻以降、日本が科している制裁について、「岸田政権がロシアを敵視する政策を放棄しないかぎり、本格的な2国間の対話は不可能だ。われわれも最も厳しい対抗措置をとり続ける」と反発しました。
その上で、「友好と協力に関する条約締結について、日本と対話を続ける見通しはない」と述べ、日本との北方領土問題を含む平和条約交渉などを続けることは難しいとの認識を改めて示しました。
ロシアは去年、日本との平和条約交渉を中断すると一方的に表明していて、両国関係は冷え込んだ状態が続いています。
一方、ルデンコ次官は両国の実務的なやりとりまでなくなっているわけでないとした上で、空席となっているロシアの駐日大使が近く着任するとの見通しを示しました。
●次の首相になってほしい議員ランキング!?【自民党以外編】 12/17
時事通信が実施した12月の世論調査で、支持率17.1%を記録した岸田内閣。’12年の自民党政権復帰後に行われた同社の調査では過去最低の結果となった。
裏金問題の発生により、政権に対し国民の不信感が高まる中、岸田文雄首相(66)は12月13日の会見で「国民の信頼回復に向け、火の玉となって取り組んでいく」と発言。しかし、SNSなどでは”内閣総辞職”を求める声も多く上がっており、岸田首相への不満は依然根強い。
岸田首相の任期は来年9月末で終了するが、世論は誰を次の首相とすべきだと思っているのだろうか。自民党議員に限定して実施した調査「次の首相になってほしい議員ランキング 自民党編」では、得票数が多かった順に石破茂衆院議員、小泉進次郎元環境相、河野太郎デジタル相という結果に。
しかし、同時に“自民党にはいない”という声も多く上がっていた。そこで、今回は自民党以外の議員を対象に、「次の首相になってほしい議員」を聞いた。20代以上の500人を対象に、クロス・マーケティングのQiQUMOを利用して調査。選択肢は各党の党首のほか、それ以外の議員を記述することも可とした。
まず3位に選ばれたのは、国民民主党の玉木雄一郎代表(54)。財務省の官僚から政治家に転身し、’09年の衆議院選挙で民主党公認として立候補し初当選を果たした。’18年に国民民主党の共同代表に就任している。
9月に行われた、国民民主党の代表選挙では「対決より解決」の政治を進めると主張しており、政策実現のためには与党との協調も辞さない考えを示している。実際に、今年度の補正予算に賛成する代わりに、岸田首相に対しガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」発動を求めた。ただし、12月13日に提出された内閣不信任案に賛成したことで、2024年度与党税制改正大綱からは削除されてしまっている。
個人の理念としては、《生きることに不安のない国家の実現》《現実的な平和主義の構築》《情報公開と「正直な政治」の徹底》を掲げる玉木代表。昨今の政策でいうと、トリガー条項発動のほか、高校生の扶養控除縮小には反対、物価・賃金上昇による所得増よりも税収増の方が大きいことから、基礎控除引上げ等による所得税減税などを主張している。
寄せられたコメントでは、批判一辺倒でなく現実的であるという点や、トリガー条項の発動に前向きである点などが評価されていた。
《現実的でかつ国民のことを考えてくれているから。人柄も良い》
《トリガー条項の発動で1番動いてたから》
《一番バランス感覚が有りそうだから》
《大蔵官僚出身でも財務省にこびらない姿勢》
第2位に選ばれたのは、れいわ新選組の山本太郎代表(49)。もともとタレント・俳優として活躍していた山本代表は、’13年の参議院選に無所属で立候補し初当選。’19年の参院選を前に「れいわ新選組」を設立した。
下半期、岸田政権の政策に批判が高まる中では、山本代表の答弁にも注目が集まった。11月には岸田首相に“増税メガネ”と呼ばれることについて質問を投げかけ批判を浴びたが、その先の答弁が非常にわかりやすく問題点を指摘しているとしてSNS上で賞賛されたのだ。答弁内では、消費税廃止、一律給付、社会保険料の減免などを訴えている。このような姿勢が功を奏してか、12月のNHKの世論調査では、この1年で最も高い支持率1.7%を記録した。
今期の国会については、臨時国会が終了した日に行った会見で「結局、今国会も与党が腐っているのはもちろんですけども、野党も腐っていたな、と。国民殺しの国会だった、というのが一言でいえることです」と指摘している。“国民目線”の政治を期待する人々からの支持が集まった。
《何かをしてくれそうだから。国民に還元して、減税して下さるような気がする》
《岸田首相の増税政策を止めさせるのはこの人が適任ではないかと》
《既存の政党政治や保守と革新の二分論に捉われることなく、真摯に国民の幸せを考えて政策を実行してくれそう》
《支持政党はないんだけど、いちばん国民の目線で語っているのは山本太郎かなと》
第1位に選ばれたのは、’21年から立憲民主党の代表を務める泉健太代表(49)。立命館大学に在学中は、弁論部に所属し「学生弁論討論交流会」の会長も務めた。’03年の衆院選で初当選し、’09年からの民主党政権では、内閣府大臣政務官を務めている。
10月に岸田首相が所信表明で「『経済、経済、経済』。私は何よりも経済に重点を置いていく」と連呼したことについて、泉代表は代表質問の際に「国民が望むのはインフレ手当の『給付、給付、給付』ではないか。これを実行すべきだ」と発言。そのほかに「ガソリン減税、ガソリン減税、ガソリン減税」、「賃上げ、賃上げ、賃上げ」とも述べており、物価高対策としては給付とトリガー条項発動によるガソリン税減税などを訴えている。
また、裏金問題を発端とする岸田内閣に対する不信任決議案の趣旨弁明では、「一刻も早く内閣総辞職すべき」と強く迫った。さらに「立憲民主党は公正かつオープンな新たな政権をつくる。国民生活に寄り添った政策を推進する新政権を構成する」と政権を取った場合の党としての方針を語っている。
私生活ではスーパーに週2,3回は訪れるという泉氏。SNSに一度食べた豆苗を再栽培して食べる様子をアップするなど、”庶民感覚”を売りにしている。今話題の”カネ”の問題とは無縁そうに見えるところも好印象なようだ。
《自民党と比べてまともなことを言っているから。今までとは違った政策で期待が持てそうだから》
《自民党でない方が良い》
《政策がはっきりしていて、政治家として重要な能力である弁舌力に優れていると思うから》
《真面目な方。そして金権政治をしないと思うからです》
《現首相よりはましだと思うから》
果たして今後、自民党以外が政権を獲得することはあるのか――。
次の首相になってほしい議員ランキング1位〜10位(自民党以外編)
【1位】立憲民主党 泉健太(67票)
《政策がはっきりしていて、政治家として重要な能力である弁舌力に優れていると思うから》《真面目な方。そして金権政治をしないと思うからです》《汚い政治を一掃していきたいと言っているので》《実行力がありそうだから》
【2位】れいわ新選組 山本太郎(58票)
《何かをしてくれそうだから。国民に還元して、減税して下さるような気がする》《消費税等々、国民の負担を減少させると思う》《岸田首相の増税政策を止めさせるのはこの人が適任ではないかと》《支持政党はないんだけど、いちばん国民の目線で語っているのは山本太郎かなと》
【3位】国民民主党 玉木雄一郎(55票)
《現実的でかつ国民のことを考えてくれているから。人柄も良い》《意見がまとも》《現実的な政策に進んでくれそう》《一番バランス感覚が有りそうだから》
【4位】日本維新の会 馬場伸幸(45票)
《維新は比較的若い層が厚いから》《政権を担うにはどの野党も力がないと思うが、ほかの野党よりましかと思うから。議員としてはよくわからない》《維新が好き》《誠実な姿勢から、国民を裏切らない政治をしてくれそうだと思ったから》
【5位】みんなでつくる党 大津綾香(33票)
《みんなで作るという党なので国民のために働いてくれそう》《女だから》《女性に頑張って欲しい》
【6位】公明党 山口那津男(27票)
《物事を国民目線で見てるような気がするから》《人望が厚く、政策提案力が高いから》《スキャンダルが一切無いから。考えがしっかりしているから。》
【7位】教育無償化を実現する会 前原誠司(23票)
《非自民、非立憲で、現実的な政策を実行してくれそうだから》《教育を無償化してくれたらありがたいから応援したい》《誠実そうで、教育費に関して活動が期待できそうだから。》
【8位】日本共産党 志位和夫(18票)
《国民の事を考えてくれそうだから》《クリーンな政治が期待できる。税金の無駄使いをしない、国民の声を聞いてくれる。ぶれない。信念があるから》
【9位】社会民主党 福島瑞穂(12票)
《公平そう》《清廉潔白な感じがするので》
【10位】参政党 神谷宗幣(7票)
《実行力、情報をしっかり開示してくれる》《少しはまともな事をしてくれそう》
●永田町で期待「菅義偉総理復活」巨額ウラ金事件で最終局面…国難突破だ 12/17
岸田政権の支持率低下が止まらない。時事通信が12月8〜11日に実施した世論調査によると、岸田内閣の支持率は11月から4.2ポイントも下落し、17.1%となった。不支持率は4.9ポイント増の58.2%に上り、自民党政権としては2009年の麻生太郎内閣以来となる「支持率1割台」に突入した、そんな中で爆発した自民党の裏金問題。「退陣待ったなし」とささやかれるようになった。それでは、誰が次の総理になるのか。作家で元プレジデント編集長の小倉健一氏が解説するーー
「安倍派はやってなかったんだ…と唖然とした」(自民党本部職員)
永田町関係者にとって、現実とは思えない事態に発展している。自由民主党の最大派閥である「清和政策研究会」(安倍派)が政治資金パーティーの収入を不正に扱い、裏金化していた疑惑が、派閥全員、そして幹部は特に金額が大きい、に及ぶというような事態に発展している。他派閥では、きちんと処理をしていることもあり、「安倍派はやってなかったんだ…と唖然とした」(自民党本部職員)という驚きの声も聞こえてくる。
それにしても安倍派幹部たちの対応もひどいものがある。今、メディアや国会で報じられているのが、松野博一官房長官で、一切の具体的な説明をしないまま、官房長官職を更迭される情勢となっている。松野氏は、派閥の実務を管理する事務総長を2019年から2021年の間、務めている。安倍派の国会議員は、<「キックバックについては『派閥から政治資金収支報告書に書くなと言われた』と事務所の会計責任者が言っていた。修正しなければならないと思っている」「上層部から『(報告書に)書くな』と言われたら、そうするしかない。悪気があってやったわけではないというところを、どう捉えられるか。特捜部の判断を待つしかない」TBSNESDIG・12月9日>と供述しており、これが事実なら、松野氏は組織的な裏金づくりを指示している可能性がある。松野氏自身も、1千万円以上の裏金を収支報告書に記載していなかった疑いがある。
もう一人、訳のわからないことを、しかも自信満々に述べ続けている人がいる
もう一人、訳のわからないことを、しかも自信満々に述べ続けている人物がいる。世耕弘成参議院幹事長だ。世耕氏は「過去も現在も会計処理に携わったことはまったくない。私としては、事実関係の情報に基づいてお答えすることは一切できない」「(自分がキックバックを受けたかについては)刑事告発を受けたという報道がある以上は、慎重に事実関係を調査、確認をして適切に対応させたい」と自身のキックバックが発覚するまでは、あたかもないのかともとれる発言をしていた。その点について「参院を束ねる立場にありながら、すべてに細かい性格を持つ世耕氏が会計に口出しをしていなかったとは言い切れるのがすごい」(前出の自民党職員)という指摘があった。
この発言から数日も経たないうちに、世耕氏には1千万円以上の裏金があることが報じられた。すると、世耕氏は「いつまでも説明しないと言っているわけではありません。しっかりとけじめがついて、節目が出てくれば私もしっかり説明したい。説明責任をいつかは果たしたいと思っています」(NEWSDIG・12月9日)と、裏金があったことを否定せず、さらには、「いつかは説明したい」などと愚にもつかない発言をする。いつか、ではない。今、説明しろという他ない。どうせ批判の矛先は、官房長官に向かっているから自分はその場だけ凌げばいいと高をくくっているのだろう。まったく国民を愚弄した振る舞いだ。参院幹事長の座にもとどまるのだという。政府の役職でない以上、国会で説明させられることもないということだ。その論理でいくと、政調会長である萩生田光一氏も、留任できそうな気配がある。世耕氏は、京都府宇治市内で開かれた党会合の冒頭で「おわびしなければならない。国民の政治不信をかき立てたことを申し訳なく思う」「刑事告発をされている中で、私の立場で発言すると捜査に影響を与えかねない」などとも述べている。
まとまったお金を用意できるのは世耕氏のすごい強み
世耕氏が何も説明してくれないので、こちらが持っている疑問についても述べさせてもらう。世耕氏は、先ほど例示したように、言葉が巧み、マスコミへのPRがうまい。経歴も米国ボストン大学コミュニケーション学部大学院に留学したり、NTTの広報部報道担当課長をやっていたりしている。騙されないようにしないといけないということだが、それ以上に気になるのは、裏金づくりの動機である。
世耕氏は、祖父が創立した「近畿大学」の理事長を現在務めていて、自民党参院議員からも「いざというときに、まとまったお金を用意できるのは世耕氏のすごい強み」として、お金には困っていないと周囲からは信じられてきた。しかし、今回の裏金問題では、安倍派内でも「1000万円」という突出した金額を報じられている。この自民党参議院議員たちが羨ましがっていた「裕福な世耕」というイメージは、裏金が原資だった可能性がある。衆院に転出し首相を狙うという今後のキャリアが大きく揺るがしかねない事態を世耕氏はどう乗り越えるのか。自民党のゲッペルスと揶揄されるぐらい卓越したイメージコントロールの手腕が、いま、皮肉にも試されている。
派閥政治の権化のような岸田政権が、これを機に派閥政治を脱することなど
さて、今回の裏金事件は、安倍派の問題であるが、姑息な岸田首相は、以前から菅義偉前首相などから「派閥政治を引きずっているというメッセージになって、国民の見る目は厳しくなる」と批判があった岸田派の会長の座をそっと降りることにした。菅前首相はそもそも無派閥だったし、安倍晋三元首相は自身の出身派閥の清和研の会長に、自分ではなく細田博之氏に譲ったのだ。「派閥を抜けなければならないルールはない」と頑なに言い張ってきた岸田首相は、追い詰められての派閥離脱となった。
そうはいっても、派閥政治をやめる気はさらさらないと思われる。就任から、各派閥の長たちと定期的に、念入りに会合を続け、ポストも各派閥の言うままにあてがってきた岸田首相である。派閥政治の権化のような岸田政権が、これを機に派閥政治を脱することなどできないだろう。
リーダーシップを発揮して、安倍派がやっているような裏金づくりをするような自民党議員たちを厳しく処分し、党役職の剥奪、党員停止処分などを断行すれば、支持率も上がるだろうが、派閥を大事にする岸田首相にそんなことはできないだろう。裏金問題で自民党議員たちに甘いところを見せるのなら、国民の激しい不興を買うことになる。来年秋の総裁選まで持ち堪えられるのかという点はあるにせよ、いよいよ退陣(内閣総辞職)は濃厚な気配だ。
安倍元首相だって、1回目の首相就任は散々
いずれにしろ、これだけ大規模で組織的な派閥による裏金づくりが発覚した以上、派閥政治を引きずった人物が、ポスト岸田になることは、国民の視線からして相当に厳しいことになる。となれば、無派閥で、実績もある実力者・菅義偉前首相の出番ということになる。生来の口下手から、首相在任中は、メディアから袋叩きにあったものの、実際に、官房長官、首相任期中に、断行した数々の改革は、多くの国民が、いまになって大きく評価しているところである。
安倍元首相だって、1回目の首相就任は散々だった。官房長官や幹事長に発信力の高い人物を置いて、まずは、次の選挙まで、次の内閣が生まれるまでの暫定的な政権として発足し、様子をみればよい。
すくなくとも、やることなすこと有権者の不評を買い、いまでは、無償化(実態は、全額税負担のこと)を連発して、お金をまくしか政策がでなくなってしまった岸田首相よりは1000倍良いだろう。
●“ポスト岸田”の石破茂氏、国民人気の高さに「おめでたくない」と発言 12/17
“ポスト岸田”の一人として挙げられている自民党元幹事長・石破茂氏がABEMA的ニュースショーの独占インタビューに応じた。
相次ぐ疑惑で支持率低下が止まらない岸田政権。無派閥で国民からの人気も高く“ポスト岸田”の一人にも挙げられる石破氏だが、党内での人気はいまひとつと言われている。実際、石破氏の意見に党内では冷ややかな声もあるという。
政治ジャーナリスト・青山和弘氏の「自民党内では『石破氏は自由にものを言い過ぎじゃないか?』という批判の声もあるがそれについてどう思うか」という問いに石破氏は「昔の自民党はもっとかんかんがくがくの議論があった覚えがある。怒鳴り合い、灰皿が飛んで危ないから片づけよう…という。(今は)そういうのが全然ない。黙っていたほうが得だと。それは組織として健全なのか」と見方を示した。
さらに青山氏は「今、世論調査では石破さんへの期待が大きい。これは重く感じているのか」と質問。これに対し石破氏は、「知名度はそれなりにある。与党にいながら政権の中心にいないからいろいろな発言をしやすい。それが組み合わされば支持はある程度出る。起こるべきことが、起こるべくして起こっている。『俺は国民の支持が高いんだ』とかそれほどおめでたくはないつもり」と答えた。
今回のインタビューを通して青山氏は、石破氏は総理になる覚悟があると感じたと話す。「(石破氏は)『私はいつも自分が総理だったらどうするんだろうと考えてやっている』と。やはり本人の中ではやる気もある、いざという時はという思いはあると思う。ただ、あまり表に出すといろいろと言われると思うので」と推察した。
●支持率ついに10%台の岸田政権。解散総選挙のタイミングはいつ… 12/17
時事通信が発表した12月の世論調査によると岸田文雄内閣の支持率は17.1%。11月よりさらに4.2ポイント下がり、右肩下がりが止まらない。物価上昇に苦しむ人が多い中、適切な対策を講じる動きを見せず、自民党の「清和政策研究会」(安倍派)の政治資金パーティーを巡る裏金問題を受け、支持率の下落はしばらくは止まらないだろう。
悪夢の岸田政権、解散までの秒読み
もはや“悪夢の岸田政権”ともいえる状況であり、解散総選挙を望む国民は少なくない。自民党としても支持率アップの見込みがないならば、解散というカードを切る可能性は決して低くない。とはいえ、近々解散することは現実的なのだろうか。『「NHKから国民を守る党」とは何だったのか?』(新評論)の著者で、選挙ウォッチャーとして日々選挙の動向を追っている、ちだい氏に話を聞いた。
自民党支持者から見限られた岸田政権
支持率低下が止まらない理由の大前提として「支持率が下がるということは、それまで支持をした人が支持をしなくなったときに起きます。それまで支持をしていた人というのは自民党支持者です。なぜこのような現象が起きているのかというと、自分のことを保守と思っている人や“ネトウヨ”と呼ばれている人が岸田政権を批判するようになったことが挙げられます」と、ちだい氏は分析する。
「例えば、共産党を熱心に応援している人たちは、最初から岸田政権には否定的です。とりわけSNSでは自民党支持者と交流を持つことはありません。共産党支持者がいくら『岸田政権ってダメだよね』と発信しても自民党支持者に届くことはない。
裏を返せば、自民党支持者が『岸田政権ってダメだよね』と言うと自民党支持者に届きます。今まさにそういった動きが見られており、いわゆる“保守界隈”といわれていた自民党支持者たちがこぞって岸田政権を批判するようになったことが、支持率低下につながっているのです」
続けて、「これまで自民党支持者として有名だった小説家の百田尚樹さんは、今では日本保守党を立ち上げて岸田政権を批判しています。自民党支持者が背を向けていることは明らかです」と語った。
岸田政権のいいところは?
自民党支持者から見ても岸田首相の政権運営は目に余るものが多かったのだろう。なぜここまで支持されない政権になってしまったのか。
「“増税メガネ”と揶揄されている通り、物価高で苦しんでいる国民が多いにもかかわらず、さまざまな増税策を推進しようとしていることが大きいです。中でも、反対意見が多かったインボイス制度を強行したことはまずかった。
インボイス制度が施行されたことにより、ただでさえもお金がない弱小零細企業から税金を取り、さらにはレシートごとに登録番号を入力したり、契約業者や個人事業主にインボイスに登録しているかどうかを確認したりなど、煩雑すぎる事務手続きが必要になりました。メリットがほとんどなく、国民を苦しめる制度といえます」
増税推進だけではなく、「大阪万博の強行や防衛費増税など、国民が望んでいない政策は枚挙にいとまがありません。岸田政権を嫌いになる国民は増え続けるでしょう」と、ちだい氏は重ねていう。ちなみに、岸田政権で評価できる点を聞くと「批判ばかりしたくはないのですが、それでも全く見つからないんですよね」と困り顔を見せた。
解散のタイミングはもう間もなく
パー券問題が今現在大きな注目を集めており、このままではますます不支持率は高まりそうである。このように国民の信頼が落ちつつある現状ではあるが、解散総選挙を実施して何とか政権を繋ぎとめようとするかもしれない。解散する可能性について聞くと、「『この時期に100%解散する』とは言えませんが」と答えつつ、「2024年1月の国会が始まるのと同時に冒頭解散するかもしれないです」と予想する。
「2024年の通常国会では、野党から確実に公職選挙法違反疑惑を追及されます。自民党としても、これ以上追及されたくなく、追及されればされるほど支持率の低下は免れない。岸田政権としても自民党としても延命するために、今回の騒動を有耶無耶にできる最高のタイミングは1月しかありません。冒頭解散する可能性が高いです」
維新の支持率は頭打ち
仮に1月に解散した場合、議席はどのような変動を見せるのか。ちだい氏は「恐らく立憲民主党が最も票を伸ばします。ただそれは立憲民主党が素晴らしいからではなく『立憲民主党ぐらいしか投票先がないから』という心理が大きい。実際、小選挙区では自民党以外の選択肢が立憲民主党ぐらいしかありません」と消去法として立憲民主党が議席を伸ばすと推測する。
ここ数年、勢いを見せている日本維新の会の躍進も想定されそうではあるが、「大阪万博のスキャンダルが相次いでおり、支持率は頭打ちで後は落ちるだけ。維新としても今さら開催を止めることは難しく、激しいバッシングをいくら受けても突っ走るしかありません。また、開催できたとしてもかなりショボい規模になることが予想されるため、そこでまたバッシングを受けるでしょう。場合によっては“ネタ”として消費され、維新のイメージはかなり悪くなりますね」と解説する。
維新の先行きがいかに暗いかが見えてきたが、すでにその予兆は現れているという。
「12月10日に行われた江東区長選では、日本維新の会から出馬した小暮裕之さんは5人中最下位。江東区の選挙区は東京15区です。維新としては容姿端麗で大手お菓子メーカーに勤務していた経歴を持つ金澤ゆいさんを総選挙に出馬させたい、と考えています。
その選挙区でボロ負けしたため、維新はかなりのショックを受けたことでしょう。また、10月に開催された宮城県議選では、維新はかなり力を入れていた選挙だったにもかかわらず、59議席中2議席しか取れませんでした。確実に求心力は落ちていってます」
争点はやはり物価高対策
解散総選挙が1月に実施されたとして、明暗を分けるポイントはどこになるのか。
「争点となるのは物価高対策になるでしょう。消費税減税をはじめとした国民の負担を軽減させる政策を打ち出せるかどうかが鍵になります。また、私が立憲民主党の選挙コンサルを担うのであれば、『もう自民党ではダメ!』『政権交代しかない!』というメッセージを前面に押し出して選挙に臨むようにアドバイスします。
今現在、『立憲民主党は頼りない』という印象を持っている人が多い背景として、こういったメッセージが届いていないことが大きいです。むしろ強気なメッセージを前面に出さなければ、そこそこ議席が伸びただけで政権交代には至りません」
政権交代のためのウルトラCの存在
政権交代という言葉が出たが、ちだい氏は立憲民主党が政権交代をするための“ウルトラC”があると口にする。
「もし立憲民主党から前・明石市長の泉房穂さんが立候補すれば、一気に政権交代に近い状態まで行く可能性はあります。泉房穂さんはメディアやSNSの使い方が非常に上手く、世間的なイメージは現在最強です。
また、泉さんが出馬するとすれば明石市がある兵庫9区、この選挙区には西村康稔元経済産業大臣がいます。現在架空パーティー報道の影響で西村さんの支持は揺らいでおり、泉さんが出馬すればほぼ確実に当選できます。立憲民主党としても絶対に取りたい選挙区であり、泉さんが立候補してくれるかどうかは選挙戦を大きく左右します」
とはいえ、出馬したとしても立憲民主党から出ない可能性は低くなく、「泉さんは、自身で政党を立ち上げて出馬したいのでは、と感じています」と予想した。泉房穂氏の動向次第では選挙結果は大きく左右されるかもしれない。
解散総選挙が実施されるタイミングはもちろん、解散総選挙が実施されたとき、立憲民主党をはじめとした野党が岸田政権、ひいては自民党の低迷が続いているこのチャンスをものにできるのか見ものである。
●岸田内閣支持率、裏金疑惑で政権発足後最低を記録−日経、毎日調査 12/17
岸田文雄内閣の支持率が、新聞2社の世論調査で2021年10月の政権発足後の最低を記録した。岸田首相は自民党「安倍派」が政治資金パーティーの収入の一部を裏金にした疑惑を受けて批判が高まる中、同派閥出身の松野博一前官房長官ら4閣僚を交代させたが、世論の逆風はさらに強まっている。
日本経済新聞が15、16の両日行った世論調査では、内閣支持率が11月の前回調査比で4ポイント減の26%となった。自民党政権での支持率が20%台に落ち込むのは09年7月の麻生太郎内閣以来。不支持率は68%で、12年の政権奪還後、最も高い。政治資金問題について首相に「責任があると思う」と答えたのは67%。自民党の政党支持率も30%と、前回調査から4ポイント下落し、無党派層の32%を下回った。
毎日新聞の調査では、支持率が16%にまで落ち込んだ。20%台を下回るのは菅直人政権下に行われた11年8月(15%)以来で、前月比で5ポイント減。不支持率は前月の調査比で5ポイント増の79%となり、同紙が世論調査で内閣支持率を初めて質問した1947年7月以来、最も高いという。調査は16ー17日に実施された。
支持率はマイナンバーカードを巡るトラブルをきっかけに下落傾向に転じ、9月の内閣改造や11月の定額減税を柱とした経済対策の策定後も低迷。最大派閥の裏金疑惑がさらに追い打ちを掛けた。東京地検特捜部が近く強制捜査に乗り出すとも報じられており、政権浮揚の見通しが立たない事態に陥っている。
岸田首相は14日、松野氏の後任に岸田派の林芳正前外相、西村康稔経済産業相の後任に無派閥の斎藤健前法相を起用する人事に踏み切った。このほか、総務相に麻生派の松本剛明前総務相、農相に森山派の坂本哲志元地方創生担当相と安倍派以外の閣僚経験者をそれぞれ充てた。党幹部では萩生田光一政調会長のほか、高木毅国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長も辞意を示している。
●岸田内閣「支持率16%、不支持率79%」世論調査結果に驚きとあきれ  12/17
毎日新聞は17日、世論調査による岸田内閣の支持率が16%だったと報じた。不支持率は79%と、内閣支持率の調査を始めた1947年7月以来最も高かったといい、X上には怒りやあきれる声が挙がった。
毎日新聞によると、支持率は21%だった11月の前回調査より5ポイント減、同じく74%だった不支持率は5ポイント増となった。時事通信が14日に発表した岸田内閣の支持率は17・1%、不支持率が58.2%だった。
政権は物価高騰に苦しむ国民が納得できるような施策を打ち出せず、岸田文雄首相は「増税めがね」とやゆされる次第。そこに自民党派閥の「裏金」問題が直撃し、支持低迷に拍車をかけたかっこうだ。
毎日新聞の調査は、各社に比べて現政権に辛めとなる傾向で知られるが、それでも多くの有権者には衝撃的な数字と受け止められたようだ。
兵庫県明石市長で弁護士の泉房穂さんは、自身のX(旧ツイッター)に、過去最高の不支持率を伝えるネットニュースを引用した上で「それでも平然と総理を続けられる日本って、どうなんだろう…」と投稿した。
Xには「1947年以来とは……つまりロッキード事件やリクルート事件でもここまでは行かなかったということ」「厚顔無恥、ずうずうしいにも程がある。退陣待ったなし」「最高記録の達成。もう思い残すことはないはず。晩節を汚すことなかれ」と早期退陣を求める書き込みがあふれた。
「国民の望んでないことばかりやるから当然の結果」「これだけ不祥事か続いてまだ支持率か2桁なのか信じられない」「内閣支持率0%でも続けんじゃないの」などとあきれる書き込みも目立った。
●林官房長官 “危機感を持ち信頼回復に向け対応” NHK日曜討論 12/17
先週、就任した林官房長官はNHKの日曜討論で、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題について、国民に疑念を持たれる事態を招いていることは大変遺憾だとしたうえで、危機感を持って政治の信頼回復に向けた対応にあたっていく考えを示しました。
この中で林官房長官は一連の政治資金をめぐる問題について、「国民から疑念を持たれるような事態を招いていることを大変、遺憾に思う。岸田総理大臣も『自民党の体質を一新すべく先頭に立って取り組んでいく』と述べている。私も国民の信頼回復のために危機感を持って対応していかなければならない」と述べました。
また、安倍派の議員に対する任意の事情聴取が始まったことをめぐり、「捜査に協力するのは当然だと思っているが、政府としてもしっかり説明できることをやっていく」と述べました。
一方、岸田総理大臣と同様に、自身が岸田派を離脱する可能性について、「私自身のことも含め、派閥がどういう位置づけになるかは、事実関係などの解明が進むのを見守りながら、適切に判断していきたい」と述べました。
さらに、岸田総理大臣が「先のことを考えている余裕はない」と言及したことをめぐり、「衆議院解散や来年予定される自民党総裁選挙を断念したということか」と問われ、「足元のことをしっかりやっていくということだと思う。何か断念したということではないと受け止めている」と述べました。
このほか、今回も含め、政治とカネをめぐる問題で閣僚が辞任したあとに自身が起用されるケースがあったことについて、「私は誕生日が1月19日なので『119番』と言われることがあり、守りの局面の登板も何度かあった。総理をしっかり支え、少しでも国民の理解が進んでいくよう全力を尽くしていく」と述べました。
●立民 泉代表 “岸田政権に正当性なし 衆議院解散・総選挙を” 12/17
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、立憲民主党の泉代表は岸田政権に正当性はないとして、衆議院の解散・総選挙を求めていく考えを示しました。
立憲民主党の泉代表は熊本市で記者団に対し、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、安倍派の議員に対する任意の事情聴取が始まったことについて、「国民はより早い捜査を望んでいる。対象となっている議員は捜査に全面的に協力し、良心があるなら早く真実を話すべきだ」と述べました。
その上で、「自民党政権にはびこっていた金権や裏金政治を浄化しなければならず、岸田内閣は退陣すべきだ。政権そのものに正当性がなく、われわれは救国内閣をつくる意思を持っている。衆議院の解散・総選挙で国民に信を問うべきだ」と述べました。
一方、来年の通常国会の対応について、「政治とカネの問題がテーマになるので、政治資金規正法の改正案を提出したい。野党各党は裏金を根絶する思いでは一致しているので協力を深めていきたい」と述べました。
●パーティー収入を“中抜き”…パー券収入を専用口座ではなく議員側口座へ 12/17
自民党・安倍派の政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑で、一部の所属議員がパーティー券の代金を、派閥の口座ではなく議員側の口座に振り込ませ、パーティー収入を中抜きしていた疑いがあることがわかった。
安倍派では、政治資金パーティーで、販売ノルマを超えて集めた分の収入を収支報告書に記載せず、所属議員にキックバックした疑いがあり、東京地検特捜部が16日から議員本人に事情聴取を始めている。
関係者によると、安倍派ではパーティー券専用の口座があり、支援者は派閥の口座に直接代金を振り込むのが慣例となっている。
しかし一部の議員は、口座に代金を入金させ、販売ノルマを超えた分を派閥に報告せず、中抜きしていた疑いがあることがわかった。
中抜き分は、ノルマを達成できなかった時の穴埋めなどに使っていたとみられている。
特捜部は、中抜きに使っていた議員側の口座についても調べ、不透明な資金の流れの実態解明を進めている。
●石破氏「以後気をつけるではすまない」 国会で政治資金規正法改正の議論を 12/17
自民党の石破茂元幹事長は17日、フジテレビの「日曜報道 THE PRIME」に出演し、自民党の安倍派の政治資金パーティー問題を受けて、来年の国会で、政治資金規正法の改正を含めて政治改革を議論すべきだとの考えを示した。
石破氏は番組で、「政治資金規正法を含めて、法体系の見直しをやっていかないと、『以後気をつけます』ではすまない」とした上で、「来年の国会は、政治改革を一つのテーマにして、法改正をどうしていくのかということに取り組んでいかないといけない」と述べた。
一方、同席した立憲民主党の長妻昭政調会長は、「法律の議論は必要だが、今回は明白な法律違反だ。(法改正と)同時並行でもいいが、自民党は、まず法律違反の全容解明をしてほしい」と主張。今後の政治改革の論点について、政治家の資金管理を一つの銀行口座に限定し現金のやりとりを禁止することや、企業・団体献金の禁止を挙げた。
また、石破氏は、安倍派の議員が捜査が行われていることを理由に説明を避けていることについて、「捜査に影響があるからというのは最近の常套句だが、別に検察から喋るなと言われているわけではないだろう」と指摘。「検察によって明らかになる前に、議員として、党として、こうだったというのが自浄作用だ」と苦言を呈した。
さらに、岸田首相が安倍派の4人の閣僚と5人の副大臣を交代させたことについて、「他の派閥で(疑惑が)出てきたら、安倍派だから(交代)という理屈がどこまでもつのか」と疑問を呈した。 
 12/18

 

●レームダック化が止まらない岸田首相 日銀が仕掛ける「ステルス引き締め」 12/18
政権交代もありえる低水準
岸田文雄首相は、12月14日に安倍派の4閣僚を交代させ、官房長官に林芳正氏を充てるなどの人事を行ったが、これで政権の求心力を保つことができるのか。
岸田政権への支持率は依然として低く沈んでいる。
時事通信が閣僚交代前の8-11日に実施した12月の世論調査によると、内閣支持率は前月比4.2ポイント減の17.1%。これは2012年12月の自民党政権復帰後の調査で最低の初めて1割台、民主党政権が誕生する直前に調査した2009年9月の麻生内閣での13.4%以来の低水準だ。今、野党が強ければ政権交代もあり得る低支持率だ。
同時期の9-10日に行われた産経・FNN合同世論調査でも、内閣支持率は22.5%と前月比5.3ポイント減だった。
4閣僚交代後、日本経済新聞社とテレビ東京は15、16日に世論調査を行ったが、内閣支持率は前月比4ポイント減の26%。
なお毎日新聞は16、17日に世論調査を行い、内閣支持率は前月比5%ポイント減の16%だった。
「財務省発」と言えるワケ
官房長官に就任した林氏は1961年1月19日生まれ。官僚からの受けが抜群によく、1月19日生まれのため「政界の119番」といわれ、これまで、不祥事などで辞任した閣僚の後任を務め政権のピンチを救ってきた。「消火力」は抜群ともいわれているが、今回ばかりはその神通力も通用しないようだ。
筆者は、11月13日の本コラム〈「岸田首相、打つ手なし…! 財務省の「ハシゴ外し」で支持率回復どころか「党内分裂」へ〉などで明らかにしているとおり、今回の政局の発端は財務省だと考えている。
岸田首相は親戚縁者に財務省官僚が多いこともあり、財務省にとって「身内」とも言える存在だ。しかし、先月取りまとめた経済対策で、岸田首相は少し「自我」が芽生えてしまった。
財務省関係者なら口に出してはいけない「減税」を言い出してしまった。結果として、岸田首相の従兄弟で、元財務官僚の宮沢洋一自民党税調会長は、先の臨時国会では所得税減税を処理せずに、来年度予算回し、つまり所得税減税は来年通常国会で処理することになったわけだ。
11月2日の経済対策の閣議決定では、過年度の税収増3.5兆円を還元するとしていたが、11月8日の衆院財政金融委員会で鈴木俊一財務相は増加した税収増はすでに使われていると、岸田首相のハシゴを外した形となった。
財務省のこうした「倒閣」まがいのスタンスを見て、検察も自民党議員の裏金問題を持ち出してきた。財務省(国税庁)と検察は、ともに国家権力を支える役所として交流が深い。
特に、裏金問題は政治資金規正法違反となるが、それだけでは形式犯になりかねないので、税法違反(脱税)まで検察としては持っていきたい。現実には税法違反に持っていけなくても、その武器を使い、政治資金規正法違反で政治家を落としたいという目論見なのだろう。
仁義なき党内抗争に発展する
税法においては、財務省の協力が絶対に必要なので、検察は財務省とも水面下で協議しているはずだ。実際、検察と財務省傘下で幹部を財務省キャリアが占める国税庁とは具体的案件でしばしば水面下の協議が行われる、財務省も検察もそれぞれ国家権力を支える役所として協調関係になっている。
財務省としては、岸田首相の「自我」を覚醒させ「減税」を吹き込んだ安倍派幹部をよく思っていない。『安倍晋三回顧録で』は、財務省と安倍元首相の暗闘が赤裸々に描かれている。その流れを汲む安倍派を排除できるのであれば、検察の動きを財務省も後押しするだろう。
岸田首相も、芽生えた「自我」を反省するとともに、この際、検察や財務省の動きを利用し、安倍派一掃に動いてきた。
もともと、安倍元首相の暗殺後、安倍派を一掃しようと、統一教会騒動を利用しようとしたフシもある。今度こそ、安倍派一掃で、自前の内閣を持ちたいというのは、政策より人事をやりたいという岸田首相の悲願だ。
いずれにしても、今回の内閣人事で、財務省の思惑通りに、安倍派を一掃し、岸田政権は財務省に恭順の意を表したといってもいい。
しかし、この裏金問題は、どこの派閥にも他党にもある。一部新聞は、安倍派では「裏金」、岸田派では「不記載」と表記を変え印象操作しているが本質的には同じだ。
ただ、安倍派は会長不在でまとまらないとも言われ続けてきたが、ここまでパージされると派閥も黙っているわけにはいかず、何らかの捲土重来を図ってくるだろう。そうした場合、仁義なき党内抗争になるかもしれない。
日銀も岸田政権のレームダック化を歓迎
財務省がハシゴ外しをした段階で岸田政権はすでにレームダック化している。安倍派外しで財務省に媚びても時すでに遅しで、まさに泥舟だ。
今回の岸田政権のレームダック化を歓迎するのは財務省だけではない。日銀も歓迎だ。
日銀の植田和男総裁は7日の参院財政金融委員会で、金融政策運営は「年末から来年にかけて一段とチャレンジング(挑戦的)な状況になると思っている」と述べた。マイナス金利や長短金利操作の出口を意識した発言と受け止める市場関係者もいるが、この発言の意味と金融政策にどのように反映するのか。
本来であれば、金融政策の変更は日銀が採用しているインフレ目標政策から導かれるべきである。インフレ率が目標の2%プラスマイナス1程度ならインフレ目標の許容範囲なので政策変更の必要はない。
さらに多少需要超過の経済状況が必要である。そのために、金融政策の鉄則として「ビハインド・ザ・カーブ」がある。これはインフレ(物価上昇)など経済変動に対して意図的に利上げのタイミングを遅らせることだ。
それをインフレ率でいえば、2%プラス1%の3%ではなく、4%くらいまで許容範囲でないだろうか。実際、欧米でもその程度まで金融引き締めという政策変更はしなかった。
もちろん少し先のインフレ率を予想しながら許容範囲であるかどうかを見極めつつ政策の現状維持か変更かを決定する。したがってマイナス金利解除という政策変更のためには、近い将来において、インフレ率が許容範囲の4%を超える状況が見通せないといけない。
要注意のスケジュール
しかし、客観的にいってそうした経済環境でない。にもかかわらず、植田総裁から冒頭のような発言がどうしてでるのだろうか。
そこで参考になるのが、植田総裁の金融政策観だ。日銀審議委員だった原田泰氏は、著書『デフレと闘う─日銀審議委員、苦悩と試行錯誤の5年間』で、日銀がイールドカーブ・コントロールを導入した2016年9月、次のように書いている。
《9月30日に開催された第3回カナダ銀行・日本銀行共催ワークショップの終了後のパーティで、東大の植田和男教授は、通常の歓迎スピーチの機会に、わざわざメモを用意して、「長期金利の0%の金利のペッグ(マイナス金利政策とイールドカーブ・コントロール)がハイパーインフレを引き起こす。金融機関経営が厳しくなり、金融仲介機能を壊して経済を悪化させる」と述べた。》
植田総裁の見立てと異なり、イールドカーブ・コントロールはハイパーインフレを引き起こさなかった。しかし、金融機関経営を考慮しすぎて好んでいないのは明らかだ。金融政策観は、雇用重視と金融機関重視があるが、植田総裁は後者だ。
イールドカーブ・コントロールは、短期のマイナス金利と長期10年ゼロ金利から成る。長期10年ゼロ金利は既に形骸化した。残るは短期のマイナス金利だけなのだが、その解除は近いと市場関係者が読むのは当然のことだだ。
しかし、急ぎすぎれば金融機関のためになるが日本経済のためにはならない。今後の政策決定会合スケジュールをみると、年内は12月18日、19日、来年は1月22日、23日を予定している。このあたりは要注意だ。
日銀の「ステルス引き締め」が起こるか
日銀は伝統的に国会開催中や予算編成が佳境になっている時期は予算の積算前提の変更につながる金融政策変更を避ける傾向があるが、今や岸田政権がボロボロなので、今は絶好のチャンスだ。
デフレ完全脱却のチャンスとでも官邸に説明すれば、官邸は何も言わないだろう。
短期のマイナス金利の変更は、超テクニカルなので、ステルスでやることもできる。今の日銀当座預金について、三層に分かれるが、一層の金利は0.1%、二層目はゼロ金利、三層目がマイナス0.1%。そこで、三層の分け方を微妙に変更すれば形式的にはマイナス金利は維持だが、実質的に金融引き締めというように「ステルス引き締め」が可能だ。
しかも、今メディアや世論は政治資金問題に染まっている。来年の通常国会開催までに、誰が検察に事情聴取され誰が立件されるかというのが延々と報じられることになるだろうから、金融政策への関心は若干薄れている。
財政政策でも金融政策でも、逆アベノミクスになるような政策がでてくるかしれない。
●林官房長官起用、中国を喜ばせた「二股外交」に米激怒 12/18
自民党派閥のパーティー券疑惑を受け、東京地検特捜部は18日にも、政治資金規正法違反(不記載・虚偽記載)の疑いで、最大派閥・安倍派(清和政策研究会)の関係先を捜索するもようだ。一方、特捜部が、自民党5派閥について同容疑の刑事告発を受けながら、捜査対象が安倍派と二階派(志帥会)という非主流派になっていることも疑問視されている。来年1月の台湾総統選を前に中国の軍事的圧力や世論工作が指摘され、日本を取り巻く安全保障環境が悪化するなか、世論調査の一部支持率が「退陣水域」といえる10%台に下落した岸田文雄内閣は危機に対応できるのか。林芳正官房長官の起用で懸念される「米中二股外交」とは。ジャーナリストの加賀孝英氏が最新情報に迫った。
「特捜部は、異例の50人体制で安倍派議員への一斉聴取に入った。裏金は5年間で5億円以上、1000万円以上の還流を受けた議員は約20人とみられる。特捜部は来年1月下旬の通常国会召集までに決着を付ける予定だ。『逮捕、議員辞職(公民権停止)リスト』も作成されている」
検察情報に強い関係者はこう語った。
岸田首相は14日、「安倍派5人衆」と呼ばれた松野博一官房長官と西村康稔経産相を事実上更迭し、萩生田光一政調会長と高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長に辞表を出させた。
外事警察関係者は「安倍派は崩壊状態だ。主流派の岸田派(宏池会)と茂木派(平成研究会)、麻生派(志公会)に捜査は及んでいないが、岸田内閣の支持率は時事通信や毎日新聞で10%台に突入した。官邸はレームダック(死に体)状態だ。自民党政治、最大の危機だ。この危機に乗じて、中国とロシア、北朝鮮が暴走している。中露の爆撃機が日本海で共同威嚇飛行を行い、北朝鮮は17日、日本海に向けて弾道ミサイルを発射した。日本国内に潜伏する3カ国工作員に『秘密指令が出された』という情報もある。厳重警戒が必要だ」と語った。
さらに問題がある。岸田首相が「政界屈指の親中派」である林前外相を官房長官に抜擢(ばってき)した人事だ。「米国が激怒している」という情報がある。一体、どういうことか。
以下、日米情報当局から入手した情報だ。
「米サンフランシスコで11月16日、岸田首相と習近平国家主席の日中首脳会談が行われた。これは日本側が強く要請(懇願)したものだ。内閣支持率の下落を止めるため、『中国による日本産水産物の禁輸』や『中国による日本人拘束』などで、中国に強い姿勢を示すパフォーマンスが必要だった。中国側は、首脳会談の開催条件として『見返りの密約』を求めていた。林氏の官房長官起用は、中国の要求に応えた可能性がある」
「岸田首相は9月の内閣改造で、林外相を事実上更迭した。米国が『親中派』の林氏を警戒し、圧力をかけたからだ。今回の人事は、米国にケンカを売るようなものだ。官邸側は『数人に打診したが断られて、仕方なかった』とリークした。だが、米国は『裏金疑惑を利用して、意図を持って林氏を起用した』とみている。これは『米中二股外交』だ。日本は股裂き状態になる」
加えて、台湾危機がある。
台湾総統選は来年1月13日に投開票される。各社世論調査で、親米派の蔡英文総統の後継者、与党「民主進歩党(民進党)」候補の頼清徳(らい・せいとく)副総統が支持率で一歩リードしている。だが、最大野党「中国国民党」の侯友宜(こう・ゆうぎ)新北市長が猛追している。中国は「頼氏の当選阻止」に必死だ。
「台湾有事で動かない」誤ったメッセージに
続く日米情報当局の情報は、こうだ。
「中国は、台湾に対して『頼氏当選は宣戦布告だ。開戦する』と恫喝(どうかつ)し、工作員の妨害工作が激化している。12月初旬、北京で秘密会議が行われ、台湾急襲攻撃が検討されたという情報もある。台湾軍は厳戒態勢にある。台湾有事は日本有事だ。だが、岸田官邸がレームダック状態であること、官房長官が林氏であること。これは中国に『台湾有事で、日本は動かない』という誤ったメッセージを送っているに等しい」
岸田首相は、東アジアの危機的状況が分かっているのか。
ある自民党関係者は「裏金疑惑は党全体の問題だ。ところが、岸田首相は派閥を離脱したことで、『自分には直接関係ない』『特捜部も総裁派閥には手を出さない』と軽く考えているのか。岸田首相は、最強官庁・財務省と連携し、麻生派と茂木派とガッチリ手を組んでいれば、低支持率でも政権運営は続けられると、本気で思っている」と語った。
何たることだ。このままでは日本は潰れてしまう。
●裏金疑惑 宮沢博行議員 爆弾発言の背景に菅義偉氏の存在? 12/18
自民党・安倍派の政治資金パーティーをめぐるキックバック・裏金疑惑。安倍派の宮沢博行議員は、収支報告書への不記載は「派閥からの指示」だったと語り、裏金疑惑の発覚後に「かん口令」が敷かれたことも暴露しました。これについて政治ジャーナリストの武田一顕さんは12月14日の放送では「安倍派5人衆への不満を代弁して爆弾発言したという側面があるそうだ」と裏事情を明かしました。そして12月15日の放送でさらに、宮沢議員が活動する「日本を明るくする会」も背景の一つにあると解説。「日本を明るくする会」の名誉総裁は菅義偉さんだといい「菅さんは岸田政権に批判的だから、宮沢さんは菅さんに相談して、今なら言っちゃえとアドバイスを受けて、爆弾発言につながったようだ」と話しました。(2023年12月15日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)
――連日報道されている「派閥」。そもそも議員は、派閥にどうやって入るのですか?
(政治ジャーナリスト武田一顕氏)派閥は、簡単に言えば自分たちのボスを自民党の総裁にして、総理大臣にしたい人たちの集まりです。最後は多数決なので、できるだけグループを広げたいわけです。そのために、初当選の前とか、初当選の直後ぐらいに今ある派閥が「唾をつけていく」わけです。うちの派閥に入らないか、と大学のサークルや運動部の勧誘と一緒で、入るといいことあるよ、など言って。
(武田氏)派閥ごとに少しずつ政治理念が違っていて、例えば安倍派はやや右寄り『タカ派』と言われますよね。岸田総理がいる「宏池会」は、リベラルと言われています。入る人は自分の理念と照らし合わせて、肌に合うかどうかを決めていきます。 
関西の安倍派議員の面々は…
(武田氏)派閥ごとに少しずつ政治理念が違っていて、例えば安倍派はやや右寄り『タカ派』と言われますよね。岸田総理がいる「宏池会」は、リベラルと言われています。入る人は自分の理念と照らし合わせて、肌に合うかどうかを決めていきます。
――安倍派に所属する関西の国会議員、事務所に取材しました。兵庫・加田裕之参議院議員の事務所は文書で、「刑事告発をされているので、慎重に事実関係を確認し、適切に対応してまいります。」というコメントが出ました。
――また、奈良・佐藤啓参議院議員の事務所で応対した方は、「すいませんが、私はそこまでお答えはできない」という返答で、関西で直接取材に答える人はいませんでした。一方で、堀井学前副大臣は、キックバックは5年間で1200万円あった、受け取り方法は、現金手渡しだったと話していて、認める人も出ています。
書かないから「他のところに使ってるんでしょ」と
(武田氏)政治資金規正法は、「お金はいくら集めてもいいです、使ってもいいです、ただし範囲内で必ず収入も支出も書いてください。」というもの、個人や企業がやっているのと同じことをやってください、っていうのが政治資金規正法なのに、それをやっていないというのが、キックバック問題の根深いところです。
堀井さんが言うように、本当に人件費などに使ってるんなら書けばいいじゃない、ということだから、「他のところに使ってるんでしょ」ってみんなが思うわけです。
(武田氏)例えば票の取りまとめ。地元の議員などに、票の取りまとめをお願いするときに現金渡しちゃってんじゃないか、っていうのがよくあるパターン。誰か票をまとめる人にまとめて渡すわけです。ポストに1万円とか2万円入れる、なんてのはできませんから、地元で票を持ってる有力者に現金を渡す。この数年、議員とか元議員が逮捕されるってのはそこですよね。
見た目が”明るい”面々「日本を明るくする会」名誉総裁は…
――宮沢博行前防衛副大臣の発言にも注目が集まっています。
(武田氏)いち早く暴露した。宮沢さんは政治家として、愚かな人じゃないでしょうから、次の選挙のことも当然考えているわけです。「今言った方がいい」という判断をしたのと、もう一つ宮沢さんに注目してほしいのは、今回のキーワードが「日本を明るくする会」という議員グループなんです。ヘアスタイルに注目してほしいんだけど、髪の薄い人たちが集まる議員グループなんです。
2012年12月、「安倍チルドレン」の同期生がみんなで集まって、見た目明るいメンバーで作ったと。その名誉総裁になっているのが、菅義偉(前総理大臣)さんなんです。もちろん政策で明るくしようというのと、かけているわけですけど、宮沢前副大臣というのは、安倍派でありながら、実は「日本を明るくする会」というサークルみたいなものでは、菅さんと近い存在。で、菅さんは今の岸田政権に対しては、非常に批判的なんです。
(武田氏)どうも私が取材で聞いたところによると、宮沢さんは事前に菅さんと相談して、今だったら言っちゃえ、と。あんたの政治的な立場にとっても良いことだ、っていうので、アドバイスを受けて、宮沢さんの爆弾発言に繋がったと。
安倍派が分裂って言われるんですけれど、私きょうも電話で何人か取材しましたけど、分裂という人は「ほとんどいない」んです。そうじゃなくて、1人ずつポロポロ抜けていっちゃうんです。それが少なければある程度塊で残るんだけど、本当にボロボロボロボロ抜けてっちゃえば、溶けていく状況になっちゃうから、そこに危機感を持っているっていうのが、今の安倍派の状況です。
――自白、暴露が得だと、そんなふうに考える人もいるかもしれないですね。
(武田氏)この先、検察の家宅捜索がやるかどうか、やるならいつか、それから議員の事情聴取、もしかしたらもうやっているかも知れない。これはホテルに呼ぶんです、ホテルの部屋なんかで話を聞くんです。最初に暴露して、こういう理由だ、派閥の指示だ、私は悪くない、などとできるだけ早く逃げきりたいってことですよね。特に若手の議員から、反乱というのか、暴露合戦が始まってくる可能性もあります。
――国民としては、本当に政治が良くなってほしいという気持ちを忘れずに捜査の行方に注目したいです。お金の問題をどうするのか、考えなければいけません。
●政権支持率は10%台! 政界で飛び交う「岸田後」のシナリオとは? 12/18
最大派閥・安倍派の裏金疑獄で大揺れの自民党。時事通信が12月8〜11日に実施した世論調査では、岸田政権の支持率は17.1%まで下落。賃上げと減税で再浮上というもくろみは霧消し、政界ではすでに「岸田後」の話が飛び交っている。
ここからの1ヵ月が検察にとっての勝負
「全国で特捜部のある地検は東京、名古屋、大阪だけですが、東京地検特捜部が手がける今回の捜査では、名古屋と大阪の直告班(告発案件を扱う部署)所属の検事まで全員招集された。異例の大捜査態勢を敷く検察は本気です」(全国紙司法担当記者)
言うまでもなく、そのメインターゲットは自民党の最大派閥、安倍派(清和政策研究会)だ。検察はこれまでの調べで、安倍派の政治資金パーティ収入の一部が記録されず所属議員にキックバックされた「裏金」の総額が直近5年間で5億円を上回るとの確証をつかんでおり、派閥の歴代事務総長を務めた大物を含む現職国会議員の逮捕を視野に入れているとされる。
「現在の告発容疑は政治資金規正法違反(不記載、虚偽記入)ですが、裏金を政治家が個人的に流用していれば所得申告していなかったということで脱税、選挙時にバラまいたとなれば公職選挙法で禁じられている買収罪での立件もありえる。
裏金づくりは派閥ぐるみだった疑いが濃厚なだけに、摘発される議員が多数に上れば、そのダメージは安倍派だけにとどまらず岸田政権を直撃する。ヘタすれば内閣総辞職です」(司法担当記者)
そこで岸田文雄首相は、内閣から安倍派を事実上「一掃」することを決め、松野博一官房長官や西村康稔経済産業相ら閣僚4人に加え、副大臣5人も交代。さらに、党幹部の高木毅国対委員長、萩生田光一政調会長、世耕弘成参院幹事長も辞表を提出した。
しかし、政治評論家の有馬晴海氏はこう指摘する。
「交代の理由は『国政を遅滞させないため』というのが岸田首相の言い分ですが、これでは安倍派にすべてを押しつけて首相自らへの批判を回避し、政権を延命しようしていると世間から見られても仕方ありません」
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏も言う。
「岸田さんは総裁として党全体を見る立場でもある。すでに報じられているとおり、政治とカネの問題は他派閥にもあるわけで、本来なら今回の裏金疑惑をきっかけに、政治資金規正法の抜本的改正やパーティ全面禁止などの方向性を打ち出すべきでしょう。安倍派だけを一掃して済むような話ではありません」
首相にとって当面の難所は、来年1月20日前後に通常国会が開かれるまでの約1ヵ月間だと鈴木氏は指摘する。
「国会会期中は議員に不逮捕特権があり、検察は動きにくい。年度予算が仕上がる3月末まではなおさらです。だからこそ、検察はこの1ヵ月で成果を出そうと勢い込んでいる。
もし今後、さらに重要閣僚などから逮捕者が出るようなことになれば、『岸田では持たない』という声が党内から吹き荒れ、いつ内閣総辞職に追い込まれてもおかしくない。それほどの正念場です」
次に危ないのは4月。その首謀者は......
この最初のヤマを乗り越えた場合、岸田首相はなんとか支持率の下げ止め、そして反転を目指すことになる。自民党中堅議員の秘書が言う。
「まずは子育て支援や賃上げなど、国民受けのいい予算や政策を仕上げ、4月には国賓として訪米し連邦議会での演説などで外交の岸田≠アピール。さらには6月の所得税減税でポイントを稼ぎ、政権を維持する――これが岸田首相の描くシナリオです」
ところが、予算成立直後の3月末〜4月初旬、身内からの退陣要求≠ェ起きる可能性があるという。
「党内では今、麻生太郎副総裁が『4月の国賓訪米を花道に総辞職を促す』という観測が絶えません。麻生さんには早めに岸田さんを降ろしたい理由があるからです」(同議員秘書)
先に自民党内の勢力構図を確認しておこう。岸田政権の中心は、首相自身の岸田派(宏池会・47人→今回の件を受け首相が離脱して46人)、麻生派(志公会・55人)、茂木敏充幹事長率いる茂木派(平成研究会・54人)の「主流3派」。
ただしこれだけでは党内全議員の4割程度で、最大派閥の安倍派(99人)を取り込むことで多数派となっている。逆に、冷遇されているのが二階俊博元幹事長率いる二階派(志帥会・40人)だ。
では、今すでに政権中枢にいる麻生派のドンが、なぜ「岸田降ろし」に動くのか?
「岸田さんのままではこの逆風に耐えきれないと麻生さんが判断した場合、当然考えるのは引き続き主流3派での党支配を維持することです。そこで本命視されているのが、茂木幹事長を総裁選で担ぐこと。しかし問題は、茂木さんは実力者なのですが、地方の党員には人気がないのです」(同議員秘書)
もし岸田首相が自民党総裁任期の途中で内閣総辞職すれば、来年9月の予定を前倒しして臨時の自民党総裁選が開かれ、新しい総理・総裁が決まる。そして最大のポイントは、前倒し総裁選の場合、準備に時間がかかる党員投票が行なわれず、ほぼ国会議員票だけで勝負が決まる特別ルール≠ノなることなのだという。
「9月まで待って党員投票のあるフルスペックの総裁選≠やると、例えば地方で人気のある石破茂元幹事長や小泉進次郎元環境大臣などに党員票が流れて負けるリスクもある。茂木さんを担ぐ以上、麻生さんにとっては前倒し総裁選がベターな選択肢になるわけです」(同議員秘書)
また、麻生氏が動く可能性のあるタイミングは予算成立直後だけではない。前出の有馬氏が言う。
「来年4月28日に、細田博之前衆議院議長の死去に伴う島根1区補選が予定されていますが、今回の裏金疑惑で議員が辞職すれば、その補選も同日になります。仮に数人の議員が辞職に追い込まれ、大型補選となったこの日に自民党が負け越すようなことになれば、党内は大荒れです。
直近の党内調査によれば、衆院選挙区選出の自民党議員のうち、50人以上が野党候補との支持率差10%以内です。選挙に弱いこの50人を中心に、『岸田さんでは戦えない』と退陣を求める大合唱が起きるのは確実。岸田さんは内閣総辞職に追い込まれ、前倒しの臨時総裁選となるはずです」
このケースでも、やはり麻生氏は主流3派をまとめて茂木幹事長を担ぐ公算が大だ。
あの実力者が人気者を担いで復活?
では、対抗馬は誰なのか? 前出の鈴木氏が解説する。
「現在の自民党において、麻生さんと対抗できる唯一のキングメーカーが同じく総裁経験者の菅義偉前首相です。しかも、菅さんは無派閥で、今回の裏金疑惑と最も距離を取れている上、多くの無派閥議員をまとめている。新たに疑惑の対象となるリスクがない無派閥議員たちは、今後の人事で重職に登用されることが多くなるはずです。
岸田さんが総辞職となれば、菅さんは非主流派の二階派と組んで、無派閥の石破氏、小泉氏あたりを担いで総裁選に打って出る可能性がある。また、右派層に人気の高い無派閥の高市早苗経済安全保障担当大臣も勉強会を発足させ、十数人の議員を集めていますから、次期総理候補の有資格者といえるでしょう」
ちなみに現在、自民党の無派閥議員は70人超。その規模は安倍派に次ぐ隠れ第2勢力≠セ。「裏金と無縁」「クリーン」というイメージを打ち出して集結すれば、今やその力は侮れない。
ただし、勝利のためにはひとつ条件がある。
「ポイントは安倍派の動向です。岸田首相に切り捨てられたことで安倍派が主流3派とたもとを分かち、現在の『非主流派』と共に多数派を形成すれば、議員数は200を超える。そうなると主流3派はとてもかないません」(鈴木氏)
そして、もうひとつ別のシナリオがある。総裁選が前倒しになるにしろ、来年9月にフルスペックで行なわれるにしろ、その時点であまりにも自民党への逆風が強く、また党内での主導権争いが混迷し、「もう闘っている場合ではない」と判断されたケースだ。
「麻生さんと菅さんが『今は挙党一致しかない』と手を組んだとき、いったい誰が担がれるのか。その本命として急浮上するかもしれないのが、上川陽子外務大臣です。
上川さんはハーバード大学ケネディスクール出身で能力は折り紙付き。岸田派ですが派閥のイメージはなく、お金にもクリーン、キャリアも十分。しかも初の女性総理となれば、国民人気が回復する要素はあると考える可能性はあるでしょう」(鈴木氏)
もちろん、さらにそのほかのシナリオとして、どこかのタイミングで窮地に陥った岸田首相がイチかバチか解散≠ノ打って出ることもありえなくはない。
ただ、今のところ政界では「もはや岸田さんに再選はない」「解散を打っても総選挙で勝てる材料がない」という評判が支配的だ。つまり、岸田政権は最長でも来年9月までということだ。
臨時国会最終日の会見で「火の玉となって先頭に立つ」と言った岸田首相だが、実際にはいつ火だるまになってもおかしくない難局が続く。
●訪日のチン首相、岸田首相と会談 両国関係を一層強化へ 12/18
日ASEAN特別首脳会議に参加するため日本を訪問しているファム・ミン・チン首相と岸田文雄内閣総理大臣は、16日午後4時10分から約20分間にわたり首脳会談を行った。また、会談に先立ち、政府開発援助(ODA)案件3件の文書の交換が行われた。
会談には、日本側から齋藤健経済産業大臣、村井英樹内閣官房副長官ほかが、ベトナム側からは、ダオ・ゴック・ズン労働傷病兵社会相、グエン・チー・ズン計画投資相、ダオ・ホン・ラン保健相、グエン・バン・タン交通運輸相、ダン・クオック・カイン資源環境相が同席した。
会談後、両首脳は両国の経済分野における協力の重要な取り組みをまとめたファクトシートを発出した。
冒頭で岸田首相は、包括的戦略的パートナーシップの下、両国の関係を更に発展させていきたいとした上で、世界が歴史の転換点にある中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、人間の尊厳が守られる世界を確保すべく、ベトナムを含むASEANとの協力強化を重視しており、今回の特別首脳会議が、これまで築いてきた日本とASEANの信頼を次世代につなぎ、関係を更に強化していく機会となることを願うと述べた。
これに対してチン首相は、今回の訪日における歓迎に感謝の意を表明するとともに、両国関係が包括的戦略的パートナーシップの下、幅広い分野で発展していることは喜ばしく、この50周年を機に、両国関係を一層強化していきたいと述べた。
二国間関係について、経済分野に関し、岸田首相は、今回、ホーチミン市都市鉄道(メトロ)1号線を含む3件のODA案件の署名ができたことは喜ばしいとし、今回の首脳会談で、両国が協力を進めていくべき主要な経済プロジェクトをファクトシートにおいて特定できたことは有意義であり、両国でスピード感をもって、これらの案件を進めていきたいとした。
これに対してチン首相は、両国間で緊密に連携して様々な経済プロジェクトを進めたいと述べ、ベトナムにとって日本は最大のODA供与国であり、ベトナムの社会経済発展のためにODAを活用していきたいとした。
さらに両首脳は、両国間の経済関係の強化のための様々な方策について意見交換を行った。
岸田首相はまた、カーボンニュートラルの実現に向け、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)首脳会合を契機に、ベトナムと共に脱炭素に向けた取り組みを加速させていきたいと述べた。チン首相は、ベトナムはこの分野においても、日本を含む国際社会と連携していきたいと述べた。
安全保障分野に関し、両首脳は防衛交流を更に拡大するほか、防衛装備品移転に向けて協力を推進することで一致した。
人的交流について、岸田首相は、ベトナム人材は日本の社会経済発展などに必要不可欠な存在となっているとし、今回、特定技能の試験をベトナムで実施することになり喜ばしいと言及した。一方、チン首相は、在留ベトナム人が日本で更に活躍できるよう、日本政府の更なる協力について期待を寄せた。
岸田首相とチン首相は、地域・国際情勢についても率直な意見を交わした。両首脳は、核・ミサイル問題や拉致問題を含む北朝鮮への対応などの東アジア情勢、南シナ海情勢、ミャンマー情勢、ロシアによるウクライナ侵略への対応、イスラエル・パレスチナ情勢など、地域・国際情勢への対応において一層緊密に連携していくことで一致した。  
●“二重帳簿”で資金管理? 総理『政治資金規正法』改正に言及 12/18
岸田総理は、先週、閣僚の安倍派一掃に踏み切りましたが、世間の受け止めは厳しいものでした。
報道ステーションが16日、17日に行った世論調査。安倍派に所属する大臣などの交代で問題が解決するかとの問いに『解決する』と答えた人は4%、『解決しない』は91%でした。自民党の派閥を解体すべきかとの問いには『そう思う』が61%、『思わない』が23%でした。
内閣支持率は21.3%で、政権発足後、最低を更新しました。報道各社の最新の調査では、危険水域と言われる20%台を割り込み、10%台に突入した調査もあります。
岸田総理:「深刻に危機感を感じなければならない課題であると思います」
一方、東京地検特捜部の捜査ですが、任意の聴取を受けた現役秘書は、こう話します。
任意聴取を受けた現役秘書「土日は、ほとんど食事がのどを通らなかった。今週も3回目の聴取に呼ばれている」
自民党関係者によりますと、週末、高額の不記載が疑われる複数の議員本人にも聴取が行われたといいます。
約4000万円の裏金疑惑が浮上している谷川弥一衆院議員側は、特捜部に対し、こう説明しているといいます。
谷川弥一衆院議員側(関係者への取材から)「キックバックを受けた金は、使わずに保管していた」
さらに、浮かび上がってきたのが“二重帳簿”の存在です。関係者によりますと、安倍派では、パーティー券収入の総額を記載した帳簿と、そこからキックバック分を差し引いた帳簿とがあり、2つの帳簿で資金を管理していた疑いがあるとみられています。
そんななか、「派閥の解消も含めて考えるべき」と声を上げた議員がいます。
自民党・牧原秀樹衆議院議員(無派閥)「果たして、自民党はどうあるべきなのか。“派閥”というものは本当に必要なのか」
無派閥ながら経済産業副大臣などを務めた牧原議員。
自民党・牧原秀樹衆議院議員(無派閥)「派閥がお金を集めて、若手議員などの支援に充てるという仕組み、派閥が人事を決める仕組み自体が、こうした事態に至らせてしまっているのでは。派閥の在り方そのものを、自民党はゼロベースで考えていくことが不可欠」
報道ステーションの12月の世論調査で『次の総理大臣』トップとなった石破茂元幹事長は17日、こう話しました。
自民党・石破茂元幹事長(無派閥)「『政治資金規正法を改正せよ』とか『派閥を解消せよ』とか総理が言うわけにもいかない。『火の玉となってやるぞ』と総裁が言ったんだから、それを受けて、自民党として、どうするかが問われている」
政治とカネの問題が発覚するたび、改正を重ねてきた『政治資金規正法』。ただ、政治資金パーティーでは、20万円以下の購入者を記載する必要がなく、“抜け道”と指摘されてきました。
法改正について、岸田総理は、こう述べました。
岸田総理「党としても、国民の信頼回復のための新たな枠組みを立ち上げるなど、果断に対応を行っていくことは重要。政治資金の法律について(改正の)選択肢も決して否定するものではない」
この週末に行った世論調査の結果から、何が見えてくるのでしょうか。
支持する政党については、自民党が37.1%。岸田政権発足以来、最低の数字になっていて、前回の調査から1.3ポイント減っています。
   支持する政党は?
   自民党…37.1%(前回に比べ−1.3)
   立憲民主党…9.9%(前回に比べ+1.6)
   日本維新の会…6.1%(前回に比べ−0.2)
   公明党…2.3%(前回に比べ−1.6)
   共産党…4.6%(前回に比べ+1.3)
   国民民主党…2.1%(前回に比べ+0.6)
   支持する政党はない…29.5%(前回に比べ−0.2)
ただ、自民党を支持する人たちの意見を細かく見ていきますと、政治資金パーティーをめぐる問題が発覚する前と後では、変化がうかがええます。
自民党を支持すると答えた人のなかで、岸田内閣を支持すると答えた人は、10月は47.1%、11月は47.6%、12月は42.6%となっています。一方、支持しないと答えた人は、10月は33.5%、11月は30.9%、12月は38.3%です。支持する人は、11月末から5ポイント減り、逆に支持しない人は7.4ポイント増えました。
大越キャスター「自民党支持層の中で、岸田内閣を支持する人たちが明らかに減っています。岸田総理が、先頭に立って、党の改革に向けて具体的な手を打たないままだと、自民党支持層から見放されることになりかねませんし、自民党自体への支持率もずるずると下がっていく可能性があります。岸田政権は、発足以来の最大のピンチと言ってよさそうです。」
 12/19

 

●共産・小池晃氏 岸田内閣の支持率急落なのに…野党も苦戦 12/19
日本共産党の小池晃書記局長は18日に国会内で開いた会見で、岸田内閣の支持率が下落しても野党が政権交代の受け皿≠ノなれていない現状について言及した。
自民党「清和政策研究会」(安倍派)の政治資金パーティー券問題をめぐる裏金疑惑で、岸田内閣の支持率はマスコミ各社の調査で前回の調査よりも下落している。
「毎日新聞は16%の支持率、不支持が79%で戦後最高の数字です。読売が25%、朝日23%、日経テレ東26%、共同通信が22%などなど、ほかにもあるかもしれませんが、2割台前半にほぼそろってきています。岸田政治全体に対する批判の声が、今回の政治とカネ≠フ問題で一気に(政治)不信になっているのだと思います」と小池氏は分析した。
一方で、立憲民主党を始めとした野党各党の支持率も伸びていない状況が続いている。「自民党に代わる政権の受け皿になりきれていない」との見方がある中、こうなった現状の要因と対策についてどう考えているのか。
「国民がいまの自民党政治に愛想をつかしつつあるという中で、それに代わる選択肢を野党が示しきれていないということなんだと思います。国民の民意の受け皿になり得ていない。野党の中で議論して、いまの自民党政権に代わる、ここまで(岸田政権の支持率が)落ちているわけですから、これを解決するには政権交代と、ウミを出すには政権交代ということしかないんですが、それに応えるような野党としたビジョン、政権の在り方も含めてそれを示すような議論を(野党内で)本格的にやっていかなくてはいけないと思います」と小池氏は語った。
●マイナス金利解除へ高まる関心 氷見野副総裁の発言 12/19
日本銀行(植田和男総裁)は12月18〜19日に政策決定会合を開催する。
この間、東京為替・債券市場関係者の関心を集めているのはマイナス金利(NIR)の解除に踏み切る可能性である。結論を先に言えば、解除は遅くても来年4月会合で、常識的には1月会合であろう。
一時期、12月会合でのNIR解除説が流布されていたのは事実だ。
後付け講釈といわれそうだが、そもそも12月は自民、公明両党の税制調査会が2024(令和6)年度税制大綱案をまとめるなど、財政政策論争が白熱する時期で、政治配慮が求められる。
一方で、安倍晋三元首相とは異なり、岸田文雄首相は金融政策を以て何か事を達成したいと考えていない。
換言すれば、岸田政権は、すでに日銀がNIRを解除しても構わないと判断しているということである。
直近の日銀幹部発言が話題となった。まず、氷見野良三副総裁(元金融庁長官)は12月6日、大分県金融経済懇談会後の記者会見で、金融緩和政策の「出口戦略」について具体的な順序に言及せずに「スケジュールを決めるより何が起こっているのか虚心坦懐(たんかい)に見ていく」と述べた。
そして、植田総裁は翌日の参院財政金融委員会で、「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と述べた。この「年末」が、改めて12月NIR解除の臆測を呼んだ。
「チャレンジング(挑戦的)」というワーディングは総裁就任会見で、「ディフィカルト(難しい)」というニュアンスで使われたのであり、立憲民主党1回生議員が質問の中で、その「チャレンジング」を引用したため植田氏は自然と口にしたのである。要は、意図的な政策シグナルではなかった。
重視すべきは、むしろ氷見野氏発言だ。その趣旨は要約すると以下の通り。日本がデフレから脱却することは最終的にプラスになり、金利上昇に伴う痛みは、移行期を適切にリスク管理することが前提となるが、プラス分で吸収できる―というのである。
平たく言えば、NIR解除に向けて、金融機関を含む市場関係者すべてが、これまでの異次元金融緩和時代にさぼった出口戦略に向けた人材育成から、専門知識を取り戻すための準備期間を与えるということ。中立金利と思われる水準に向けて少々早めのタイミングで徐々に正常化にかじを切るのだ。
そんな折、自民党安倍派のパーティー券収入裏金疑惑が発覚。金融緩和路線継続に固執する同派が金融政策に介入する力は、もはやない。となると、1月のNIR解除だ。
●与党税制改正大綱 看過できぬ負担先送り 12/19
自民、公明両党は個人向けに所得税・住民税の定額減税、企業向けに賃上げ税制の拡充などを柱とする2024年度の与党税制改正大綱を決定した。防衛力強化のための増税などについては開始時期を示さなかった。減税を強調する一方、負担の議論を先送りする国民を欺くようなやり方は看過できない。
減税は解散総選挙をにらんだ岸田文雄首相の肝いり政策だったとされる。もっとも有権者から「選挙目当ての減税」と見透かされ、支持率低迷が止まらなかったのは報道各社の世論調査を見ての通りだ。
定額減税は物価高対策が目的。岸田首相は「税収増を国民に還元する」と説明していた。ところが鈴木俊一財務相によれば、税収増は既に国債の償還などに充てられ「使用済み」だった。やみくもに減税に突っ走る首相の姿勢は理解に苦しむ。
減税の対象外となるのは年収2千万円超の富裕層。減税の恩恵がない非課税世帯などに対しては給付が行われる。2千万円という対象の線引きの引き下げなどについても議論すべきだ。
当初1年とされた減税期間ははっきり決めず、賃金や物価の情勢に応じて追加措置を講じるとした。減税は始めるより、終わらせる方がエネルギーを要する。年限を定めないなら、期間を決定する判断基準を数値で示す必要があるのではないか。
物価高を上回る賃金上昇を後押しする賃上げ税制の拡充で、中小企業については法人税から賃金増加額の最大45%(現行40%)を減税できるようにする。ただ赤字企業が多く、どれだけ賃上げが促進されるのかは見通せない。
子育て世帯に対しては、少子化対策に力を入れる岸田政権の方針に沿い支援を拡充する方向。住宅ローンやリフォーム、生命保険料控除が優遇される。
その一方、高校生年代(16〜18歳)の子どもがいる世帯の扶養控除は児童手当の拡充を受けて縮小方針が盛り込まれた。せっかく児童手当の支給対象が拡大となっても年収が多いほど恩恵が小さくなる見込み。ただし実施時期は25年度大綱の議論で決めるとした。
防衛力強化の増税はたばこ、法人、所得の3税が対象。たばこ税については加熱式を引き上げる方向が定まったが、法人、所得などと合わせ開始時期は結局、明記されなかった。
自民党の政治資金パーティー裏金問題に揺れる中、防衛増税、扶養控除縮小など不人気な負担増は先送りにするしかなかったとも映る。ただ国民がそれに気付かないはずはない。
時の政権が人気を最優先するなら負担は次々先送りされる。税制改正大綱を決めた与党の無責任さは、若い世代の結婚や子育てへの意欲をそぐ要因になりかねない。既に巨額となっている国の借金をさらに膨らませ、将来世代に背負わせるのでは、この国の未来が危うくなる。
●驚きの林官房長官人事、岸田政権の「だらだら」ぶり 12/19
自民党派閥のパーティー券疑惑は岸田文雄政権に痛撃を与えた。松野博一官房長官や西村康稔経産相ら安倍派の閣僚が内閣から一掃された。
最新の世論調査では、内閣支持率が20%を切るという結果も出ている。だが、岸田政権自体に与える影響は限定的だ。実際に党内では、「岸田降ろし」的な様子はない。自民党が危機感を持っている雰囲気も感じない。国民の眼は厳しいのに、政権自体はだらだら続いている感じだ。
安倍派の代わりに登用した閣僚の面々はまさにその「だらだら」ぶりを典型的に示している。特に林芳正官房長官の人事だ。まさか内閣の顔ともいうべき官房長官で登場するとは思わなかった。他になり手がいなかったという説や、また「ポスト岸田」に意欲がある林氏を閣内に封じ込めるという思惑などが指摘されている。だが、いまのこのタイミングで林官房長官はないな、と私は思う。
岸田首相には、常に「増税・負担増」を打ち出すのではないかというレッテルが貼られている。実際には、防衛増税は税収増によってどんどん先送りになっている。むしろ所得減税など久しぶりに大型減税が景気対策として実施される予定だ。実際にやったことと、評価が食い違っている面は確かにある。
だが、国民の多くはやがて大規模増税に転じるのではないか、と警戒している。またいわゆる「ステルス型増税」も多い。典型的にはインボイス(適格請求書)の導入や扶養控除の縮小である。扶養控除の縮小は「異次元の少子化対策」である児童手当の拡充とセットだ。支援を増やす一方で、支援を減らす。典型的な財務省の「均衡予算」の発想だ。子育て支援はより積極的に、長期国債の発行で手当てすべきだろう。
林官房長官の話に戻る。10年余り前に、自民党の政調会長代理だった林氏とラジオ番組で共演した。その時、林氏は「景気回復を待ってると増税できなくなっちゃう」という趣旨の発言をした。
景気回復すると税収が伸びるので、増税することが困難になるということだと受け取った。増税しないで済めばそれに越したことはない、という国民目線を理解できないのだろう。いまも林官房長官は、党内での緊縮財政派の代表メンバーとして知られる。おそらく当時と考えは同じだ。
「中国寄り」との批判も多い。官房長官は内閣のイメージ戦略を引き受けている。その意味でも「緊縮派」「中国寄り」というイメージは、岸田政権にはさらにマイナスだろう。だが、消費税の減税に消極的な立憲民主党をはじめ、野党に支持が集まらないなか、いまの与党体制は、このままだらだら締まりなく、当分は続くのだろう。これは日本にとって好ましい政治状況ではない。
●公園の母親は「ムリムリムリ! 1人でも大変」 岸田政権の少子化対策 12/19
政府の「こども未来戦略会議」(議長・岸田文雄首相)は11日、「異次元の少子化対策」の全容をまとめた「こども未来戦略」案を発表した。その中で、3人以上の子どもを育てる家庭に対し、大学を無償化する施策が打ち出された。ただ、3人いれば、条件を付けずに無料というわけではない。また、子どもが2人以下だと蚊帳の外。果たして、どれだけ効果的な策なのだろうか。
1人が卒業すれば3人とも「対象外」に
戦略案によると、2025年度から、扶養する子どもが3人以上いる世帯について、大学など高等教育機関の授業料や入学金を無償化する。所得制限はない。医学部など6年制の学部や短大、高専、専門学校も対象となる。
「無償化」と言っても、青天井ではない。国公立大は年間の授業料約54万円と入学金約28万円、私立大はそれぞれ約70万円と約26万円を免除の上限とする。私立大の授業料は学校ごとに違いが大きいため、国公立大の標準額を基に、一定程度の加算をしている。
ややこしいのが、3人以上の「扶養」という条件だ。例えば、3人きょうだいの第1子が大学を卒業し、就職して扶養を外れると、第2、第3子は対象でなくなる。また、留年や出席率が悪い場合も支援が打ち切られる可能性がある。
予算規模、財源とも「確定していない」
なぜ、無償化の対象を「3人以上」にしたのか。文部科学省の担当者は「国立社会保障・人口問題研究所の調査で、『子どもを3人以上持ちたいが、家計の問題で、大学など高等教育の負担が重い』と回答した人が多かった」と説明する。
同研究所の21年の調査では「夫婦にとって理想的な子どもの数」の平均で2.25人だったが、「(実際に)何人の子どもを持つつもりか」との質問に対しては、平均2.01人だった。この調査を基に「高等教育の費用がかかるため、子どもの数を抑えてしまう」という論理立てをしている。
この無償化の予算規模や財源はどうなるのか。文科省の担当者は「現在、細かい金額については予算、財源とも確定していない」と歯切れが悪かった。
子どもを産んで実感「日本は生きにくい国」
理想の数の子どもを持てるようにするという建前の施策。政府の狙いを子育て世代はどう受け止めるのか。この世代が多く集まる東京都江東区の木場公園で、18日に話を聞いた。
「ムリムリムリムリ! 1人でも心身とも大変。物価は上がるし、給付金があっても結局、税金などで取られていく。2人目がほしくても厳しいのに、3人なんてとんでもない」。こう言って激怒するのは、3歳の女児を育てる葛飾区の主婦(27)。政府は子育て世代の状況を全く理解していないとこき下ろし、「子どもを産んでから、日本は生きにくい国だと感じるようになった」と嘆いた。
一緒に3歳の男児を遊ばせていた文京区の主婦(34)も「最近も1週間に使った食費を見てびっくりした。物価高はすごく苦しい。1人でもいっぱいいっぱい。そもそも、年齢的に3人はあきらめている。そこまで計算して産めるものではない」と言い、こちらもおかんむりの様子だ。
20年後のことなんて、あてにできない
遊んでいる3歳の女児を見守っていた近くに住む主婦(38)も「3人以上の世帯が無償化というのは不平等な感じがする。2人の家庭はどうなるのか。大学に進学する人を増やし、経営の苦しい大学を助けるという裏の目的もあるのでは、という印象も受ける」と厳しい評価を下す。
自身の年齢を理由に「どのみち関係ない」と話したのは、7カ月の赤ちゃんをベビーカーに乗せていた育休中の女性(39)。「20年後のことなんてあてにできない。政策も変わっている可能性もある」と冷静な見方をしつつ「若い人の中に、ポジティブに受け止めている人がいればいいが…」と語った。
取材したのは平日の昼間。公園には幼い子ども連れが多く、近い将来には関係ないせいか、大学無償化策はおしなべて不評だった。
所得制限がなくなることは評価するが…
なお、大学進学支援という観点でみると、既に年収380万円未満の世帯を対象に授業料を減免したり、給付型奨学金を支給したりする制度がある。政府は24年度から、子どもが3人以上で、年収600万円までの世帯に制度の対象を広げる。今回の無償化策はいわば、この制度をさらに拡大する形になる。
「所得制限がなくなり、減免される額が大幅に増える点については評価できる」と話すのは、日本若者協議会の室橋祐貴代表理事。ただ、対象となるのが「扶養する子が3人以上いる世帯」と限定されることに注文を付ける。「親からすると、第1子が社会人になったからといって、下の子も含めた負担が消えるわけではない」
3人以上の子がいる世帯は2.3%どまり
室橋氏は4人きょうだいの末っ子。もし大学生時代に制度があっても、年が離れた第1、第2子は卒業済みで自身は対象にならない。自身の経験からも「下の子ほど金銭に余裕がなく、選択肢が狭められる」との危惧は消えない。
無償化の対象となり得る世帯は現在、どれだけあるのか。厚生労働省の2022年の国民生活基礎調査では、3人以上の子どもがいる世帯は、全体の2.3%と効果は限定的だ。
政府は「異次元の少子化対策」を強調するが、大学無償化は「子どもを持ちたい」という動機づけになるのか。
これでは既に子どものいる人向けの支援
「少子化対策としてはほとんど意味がない」と切って捨てるのは学習院大の鈴木亘教授(社会保障論)だ。「少子化対策は、これから子どもを産む人たちの行動や意識を変えなければいけない」とし、政府の支援は主に、既に子どもがいる人向けで、これから産もうという世代には効果が薄いと指摘する。「政策として十数年後まで維持できているのかも疑問だ。本来必要なのは、結婚を希望する独身の人を結婚できるようにするための政策だ」
日本はそもそも、大学進学が家庭の経済状況に左右される現状がある。高等教育段階における私費割合は67%と、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均31%を大きく上回る。
同志社大の吉田徹教授(比較政治学)は「高等教育を含めて、経済的余裕がない世帯には支援があるべきだというのが諸外国の考え。一方で日本では、教育や医療など必要な社会サービスは、各世帯が自費負担で購入するものという意識がこびり付いており、そこに税金を使って無償化するというのに抵抗がある」と意識の違いを説明する。
生きやすい環境を整えるという観点がなければ
戦略案は、子ども1人当たりの関係予算を、対国内総生産(GDP)比で、OECD加盟国トップのスウェーデン(15.4%)を超す16%を目指すとする。吉田氏は「欧州でも多額の予算を付けても高齢化が進んでいる。生活の見通しがあるのか、安定が見込めるのかという、人が子孫を残す前提条件を根本的に改善する必要がある」と訴える。
多子世帯への支援が十分な議論もなく、急に拡大することに、前出の室橋氏は「政府の計画性のなさが国民の不信につながっている」と話す。「政府が子どもを持つ世帯への支援ばかり手厚くしたり、子どもを産むように誘導するのではなく、生きやすい環境を整えるという人権保障の観点がなければいけない。そうでなければ、いつまでも国の方針に左右される」
デスクメモ
今回の無償化策でまず感じたのは「なんだ。うちには無関係か」。多子世帯の教育費負担は間違いなく重いが、子どもが1人、2人でも楽ではない。根本的に教育費をもっと軽く、と願う親は多い。悪い策とはいわないが、異次元の効果は期待できない。さらに議論を深めてほしい。
●岸田政権に大打撃 野党側は「強制捜査内閣」と批判  12/19
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、新たな局面を迎えた。
東京地検特捜部は19日、最大派閥・安倍派と二階派のそれぞれの事務所の強制捜査に乗り出した。
特捜部による強制捜査を受けた安倍派・二階派など、自民党の反応を国会記者会館からフジテレビ政治部・木村祐太記者が中継でお伝えする。
自民党・最大派閥の安倍派に加え、現職の閣僚2人がいる二階派にも捜索が入り、政界に激震が走っている。
二階派・小泉法相「(Q: 大臣辞任されるお考えはないですか?)これからね、記者会見で問われるから」、「(Q: 一言だけお願いします)これから記者会見がありますから」
二階派・自見地方創生相「(Q: ご自身キックバック受けたことは?)ございません」、「(Q: 安倍派の大臣は辞めたが、二階派の大臣、自見大臣は辞めるお考えは?)お答えする立場にはありません」
自民・茂木幹事長「このような事態に至っていること、大変遺憾に思う。捜査の推移もしっかりと見守りつつ、必要な対策をとってまいりたい」
そして19日午前、安倍派が「多大なるご迷惑とご心配をおかけし、政治の信頼を損ねることとなり心よりおわび申し上げます」とのコメントを発表した。
安倍派 事務総長・高木国対委員長「しっかりと誠実に、捜査には協力したいと考えている」
また、二階派会長の二階元幹事長もコメントを発表し、「真摯(しんし)に協力し、事案の解決に向け努力していく」としている。
一方、野党側は「強制捜査内閣だ」と批判を強めている。
立憲民主党・泉代表「異常事態ですね。政策集団といっても実態は裏金作りの温床になっていたということで言えば、総裁の責任は重大だと思う。強制捜査内閣だ」
岸田首相は、捜索が入る前に開かれた自民党の役員会で、政治改革の新組織の設置に触れたが、議員の1人は「覚悟を感じなかった」と話していて、信頼回復につながるかは不透明な状況。
このあと、岸田首相は、麻生副総裁と茂木幹事長と会談し、対応を協議する予定。
●岸田政権立て直し、糸口つかめず 支持率最低、裏金対応も後手 12/19
岸田文雄首相は18日、自民党派閥の裏金疑惑が直撃した政権の立て直しに努めた。北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の発射に踏み切ったことを受け、危機管理対応に万全を尽くす姿勢をアピールした。ただ、報道各社の世論調査では内閣支持率が相次ぎ最低を更新し、肝心の疑惑対応で指導力を発揮できていない。政権浮揚への糸口はつかめないままだ。
首相は18日、内閣支持率の低迷について「国民から厳しい声をいただいていることは謙虚に受け止めなければならない。信頼回復に全力で取り組まなければならない」と神妙な面持ちで語った。首相官邸で記者団の質問に答えた。
北朝鮮が同日午前に弾道ミサイルを発射すると、首相は東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳らとの会合であえて言及。「国連安全保障理事会決議違反のみならず地域の平和と安定を脅かすもので、強く非難する」と訴えた。
外交日程などの合間を縫うように、首相官邸では急きょ国家安全保障会議(NSC)も約10分間開催。地方出張中の木原稔防衛相の帰京を待たず、対応の早さを優先させた。
一方、裏金疑惑では後手の印象を与えている。自民の茂木敏充幹事長が18日、政治資金規正法の改正を含めて再発防止策を検討する考えを表明したものの、首相は記者団に「選択肢を否定するものではない」と述べるにとどまった。信頼回復へ「火の玉」になると宣言した13日の記者会見でも具体策には触れていなかった。
内閣支持率は2割前後と「危険水域」に落ち込み、来年度予算成立後の退陣論もささやかれる。首相周辺は、来年の春闘での賃上げや、所得税減税をてこにしたデフレ脱却を実現させ、支持率回復を図って秋の党総裁選での再選を目指す戦略を描く。逆に言えば、政権浮揚の手掛かりは乏しいのが実情だ。
政治資金規正法の改正について、自民内には慎重論が根強い。党ベテランは「『裏金』の聞こえは悪いが、そんなに悪質なのか」と開き直った。閣僚経験者は「内閣支持率は1桁台まで落ちるのではないか」と政権の先行きを案じた。
●日本製鉄 USスチール買収で「日本の成長力を取り戻す」 12/19
アメリカの製鉄大手・USスチールを約2兆円で買収することを発表していた日本製鉄は19日、会見を開いた。
橋本英二社長は、「グローバルネットワークを通じて世界をリードしていくことで、日本の成長力を取り戻す」と述べた。
また、鉄の市場としてアメリカが「先進国では最も大きな市場であり、これからさらに成長が見込める市場」と説明した。
日本製鉄は来年4月以降の買収を目指すとしていて、実現すれば日本製鉄として過去最大級の買収になる。
●大阪万博にかかる国費は1647億円 直接インフラ8390億円 12/19
自見万博相は19日の記者会見で、2025年に開催される大阪・関西万博の費用の全体像を公表した。万博にかかる国の費用の総額は、誘致費用を含め計1647億円と試算された。
内訳は会場整備費の国負担分が最大で783億円、日本館の建設費用が最大360億円、途上国の出展支援が240億円、会場内の警備費が199億円、全国的な機運醸成に38億円などで計1620億円。万博誘致や登録申請にも27億円かかるとされ、これを加えた合計が1647億円となった。
このうちの会場整備費については、木製の大屋根「リング」の建設費などがかさんだことで当初の想定から1・9倍の最大2350億円に膨らみ、大阪府・市と関西経済界と国が3分の1ずつ負担する決まりに従い、国も最大783億円を負担することになった。
これらの国費とは別に万博関連で国や自治体、民間がインフラ整備に投じる費用は約9兆7千億円に上るとし、うち会場へのアクセス道路など万博に直接関わるインフラ費用は計8390億円になる見通しだ。
自見大臣は会見で万博費用について「今後も適切なタイミングでアップデートして、透明性もって示したい。万博終了後には、改めて精査して示したい」と述べた。
●二階会長「心よりお詫び。当局に真摯に協力」特捜部の家宅捜索にコメント 12/19
自民党の二階派(志帥会)の会長を務める二階俊博元幹事長は19日、政治資金パーティーをめぐり二階派の事務所が東京地検特捜部の強制捜査を受けたことに関し「政策集団の件ではご支援いただいている皆さまをはじめ、多くの関係者の方にご心配とご迷惑をおかけしておりますことを心よりお詫び申し上げます。当局からの要請には事務局、会員ともに真摯に協力し、事案の解決に向けて努力して参ります」とのコメントを発表した。
●派閥捜索に茂木氏「大変遺憾」 特捜部が安倍派と二階派の強制捜査 12/19
東京地検特捜部が19日、政治資金パーティーをめぐる疑惑に関し、自民党安倍派と二階派の事務所を家宅捜索したことについて、自民党の茂木幹事長は会見で「このような事態に至っていることは大変遺憾に思っている。厳粛に受け止め、今後の捜査の推移もしっかりと見守りつつ必要な対策をとっていく」と述べた。
対策の内容については、「こうやったら政治の透明性が確保できる、こういう事態が二度と起こらないようになる対策はしっかり立てていきたいと」と語り、パーティー券の売り上げを銀行振り込みにするなどの策を例示した。
これに先立って行われた党役員会で岸田首相は「政策集団の政治資金の問題については当局の捜査が行われており影響や予断を与えることは、控えなければならない」とした上で「捜査の進展とともに、全容、原因、課題等が明らかになってくるものと認識している。これらを見ながら、しかるべきタイミングで党としても国民の信頼回復のための新たな枠組みを立ち上げるなど必要な対応を果断に講じていきたい」と述べた。 
● 政府 SDGs達成への指針 4年ぶり改定 環境分野の投資に民間活用 12/19
国連が定める持続可能な開発目標=SDGsをめぐり、政府は、目標達成に向けた指針を4年ぶりに改定しました。環境分野の投資に民間の力を活用し、アジア地域の脱炭素化を主導していくなどとしています。
2030年までに世界から貧困や格差をなくすことなど、国連が定めたSDGsの達成に向けて、政府は総理大臣官邸で推進本部の会合を開き、目標達成に向けた指針を4年ぶりに改定しました。
この中では、気候変動や感染症などの深刻化に加え、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエル・パレスチナ情勢の緊迫化など、国際環境が危機にさらされているとして、▽環境保護やデジタル分野への投資に民間の力を活用するとともに、▽アジア地域の脱炭素化を主導することなどを通じて国際社会に貢献していくとしています。
また、▽2030年までの目標達成が困難になっているとして、途上国の開発支援に向けて、ODA=政府開発援助を効果的に実施するとしています。
会合で岸田総理大臣は「新しい実施指針のもとで引き続き、国内外のステークホルダーとの連携を強化していく」と述べました。
●「ポスター貼るの断るしかない」 安倍派・二階派に“捜査のメス” 12/19
東京都内の住宅街の一角に貼られていたのは、自民党議員のポスターです。
この議員は、疑惑が浮上している派閥の所属ではありませんが、住民からは「断るかも」などとの声が上がりました。
派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑の影響は、安倍派や二階派以外の自民党議員にも出ています。
●政治資金パーティー問題で強制捜査…岸田政権や自民党への影響は? 12/19
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、東京地検特捜部は19日、安倍派と二階派の事務所に強制捜査に入りました。岸田政権や自民党への影響について、国会記者会館から前野全範記者の報告です。
自民党内は特捜部の捜査の着地点が見えず、戦々恐々としています。多くの自民党の幹部が先を読むことができず、困惑している状態です。
今後ですが、捜査の展開次第では安倍派議員が次々と議員辞職に追い込まれることも予想され、自民党幹部からは既に「来年4月の補欠選挙は10以上に膨れ上がるかも」といった声が上がっています。
――Q.議員辞職ということは多くの国会議員が刑事責任を問われる展開になる?
いえ、国会議員本人の立件はハードルが高いと指摘されています。ただ、議員本人が法的責任を免れたとしても、派閥から多額の裏金を受け取り、国民に隠していたという政治的な責任は重く、それなりの数の議員が辞職に追い込まれるのではとの見方が出ています。
また、複数の自民党関係者は、仮に裏金の額が少ないなどの理由で不起訴処分になったとしても、検察審査会への申し立てで「起訴すべき」と判断される可能性が高いと分析しています。政治的なダメージがどこまで広がるか未知数の状態です。
――Q.政治改革の議論も始まると思いますが、事件の舞台となった派閥を解消することはできないのでしょうか?
自民党は再発防止に向け、新たな組織を立ち上げ、来年の通常国会に向けて政治資金規正法の改正も含め、パーティー券の販売を現金ではなく記録が残る銀行振り込みとすることなどを検討します。一方で派閥の解消については慎重論が根強く、党内の意見集約は難しい状態です。
今度こそ実効性のある政治改革を打ち出せるのか、岸田首相の本気度が問われています。
これまで安倍派の人たちは判を押したように同じような弁明を繰り返してきましたけど、特捜部本気の捜査のメスが議員たち本人の責任、罪に問うまで及ぶのか注目です。
 12/20

 

●東京地検、安倍派を家宅捜索...与党最大派閥「政治資金」捜査 12/20
19日午前10時、黒いスーツを着た10人ほどが東京千代田区の建物に入った。彼らは自民党安倍派の事務室に対する家宅捜索に出た東京地検特捜部の検事と捜査官だ。同じ時間、近くにある自民党二階派の事務室でも検察の強制調査が始まった。
所属議員数99人で自民党の最大派閥の安倍派は政治資金パーティーの参加券を販売する過程で収入の一部を帳簿に少なく記載して裏金化したという容疑を受けている。ノルマ以上のパーティー券を売りさばいた議員に超過分をキックバックしてこれを派閥の政治資金収支報告書や個別議員の会計に反映していなかったという。こうした形で安倍派議員が裏金化した資金は2018〜2022年の5年間で総額5億円規模と推定される。
党内5番目の40人規模の派閥の二階派もやはり派閥政治資金収支報告書に収入を少なく記載したという容疑を受けている。安倍派のようにパーティー券の超過分の販売代金を報告書に収入として記載せず議員に渡していたが、その金額は5年間で1億円以上だ。ただ安倍派がこの資金を派閥の帳簿や議員収入項目に記載しなかったのに対し、二階派は派閥の支出と議員の収入として記載するなど記録を残していた。
朝日新聞は、これまで派閥の会計責任者などを呼んで調査してきた東京地検特捜部が実態糾明に向け派閥事務所に対しても強制捜査が必要と判断したとみられると伝えた。検察は安倍派と二階派の会計担当者と議員の立件まで念頭に捜査を進めている。
安倍派はこの日の家宅捜索直前に、「多大なるご迷惑とご心配をおかけし、政治の信頼を損ねることとなり、心よりおわび申し上げる。重大に受け止め、捜査には最大限協力しいく」というコメントを出した。二階派を率いる二階俊博元幹事長も「心よりおわび申し上げる。捜査当局からの要請には真摯に協力し、事案の解決に向けて努力していく」と話した。
岸田文雄首相は家宅捜索前に開かれた自民党幹部会議で「党として強い危機感を持って国民の信頼回復に向け努力しなくてはならない」と強調した。前日の記者会見でも政治資金規定法改正などを選択肢に置いて政治改革を推進していくと明らかにした。
野党は今回の事態に対し連日鋭く自民党と首相に対する攻撃を継続している。最大野党である立憲民主党の泉健太代表はこの日、「裏金作りの温床になっていた。自民党は未だに説明責任を果たしておらず、岸田首相の責任は重大だ」と批判した。
国民民主党の玉木雄一郎代表も「政治への信頼を根底から揺るがす事態」とし、野党が主導し裏金問題が再び発生しないように制度改正に出なければならないと強調した。
岸田内閣と自民党に対する有権者の反応は冷たい。19日に発表された朝日新聞の世論調査で岸田内閣の支持率は23%と内閣発足後の最低を記録した。自民党支持率も23%で2012年12月に自民党が政権と取り戻してから最も低かった。これに先立ち発表された毎日新聞の世論調査では岸田内閣支持率が16.0%、時事通信の世論調査では17.1%となり初めて10%台まで下がった。
●自民城、炎上落城 12/20
“安倍組”崩壊近し
沈没船から逃げ出すネズミ……という感じがしてもおかしくない状況だが、このネズミたちは、自民船は沈まないと思い込んで(信じ込んで)いるようだ。自民船はヨレヨレながらも漂い続けるかもしれないが、しかしメインマスト(アベノマスト)には大きなひびが入って折れかけている。もう船としての機能は失われた。
“安倍組”は完全に統制が効かなくなっている。なにしろ、親分が死んで小頭たちが自分のことで精一杯、子分どもの面倒を見ている余裕がないのだから、統制なんかいきわたるわけもない。そうなるともうメチャクチャ。これだけバレちゃえば、もう“みかじめ料”も入ってこないだろうしねえ。
さっさとゲロしてしまって検察のお赦しを願おうというつもりか、どうせ副大臣はクビなんだからとケツをまくったのか、こんな方もいらっしゃる。そしてそれが連鎖し始めたというのだ。朝日新聞(12月15日付)。
・・・ 宮沢氏の「告白」大きな波紋
「安倍派、崩壊していく音が聞こえる」
「派閥から収支報告書に記載しなくてもよいと指示があった」
「派閥の方から『しゃべるな』と」
安倍派の宮沢博行前防衛副大臣の13日の「告白」は大きな波紋を広げた。同派若手は「安倍派が崩壊していく音が聞こえる。宮沢さんみたい人がちらほら出てボロボロになる」と語った。
「予言」通り、14日に内閣副大臣を辞任した堀井学衆院議員も5年間で1千万円を超える裏金を作り、秘書が事務所経費として使っていた可能性を朝日新聞の取材に明らかにした。「副大臣職を降り、一議員として説明責任が課せられているので、話した」と語った。・・・
なんだか笑っちゃうしかないな。
この宮沢氏、防衛副大臣だった11月29日には米軍のオスプレイ墜落事故に関し「最後の最後までパイロットが頑張っていらっしゃったので、不時着水」とわけの分からない説明をなさった方だ。それが今度はペラペラと派閥の内情暴露。おかげで、安倍派のデタラメ運営ぶりが明らかになったのだから拾い物だったけどね。
続いたのが堀井学さん。「一議員としての説明責任」だと言う。この言い訳も不思議だ。副大臣という要職にあったら、もっと責任が重いはずなんだけどな。
話はまるで変わるけれど、この人、スピードスケート選手だった頃は、頭をきれいに剃り上げていたはずだったよね。今回突然、ふさふさ髪での登場、驚いた。
でもさ、スポーツ界で栄光を極めた人が、この人といい橋本聖子さんといい、古狸の政治家どもにうまく使われているみたいで、なんだかみじめな感じがする。そういえば、橋本さんもキックバックの裏金をずいぶんたくさん手に入れていたとか。
「正々堂々のスポーツマンシップ」なんてものは、スポーツをやめた途端に失くなっちゃうのかねえ、悲しいもんだ。
多士済々の“安倍組”
“安倍組”の中でもすっごく面白かったのは谷川弥一衆院議員。
記者にキックバック資金について問われると、やおらペーパーを取り出して読み始め、更に問われると「頭悪いね、だから言ってるでしょ、言った通りだよ」と逆ギレ。まことに見事な対応というしかない。
頭悪いのはどっちですか、とはあまりに図星だから、さすがに記者も問い直すことはできなかったようだが、なんともひどい対応。ぼくは「さすが安倍組員だ!」と拍手喝采をしてしまったよ。
なにしろこの谷川議員、国会質疑で質問に立ったのはいいけれど、聞くことはまるで無内容。で、時間を持て余したものだから、なんと「般若心経」を唱え始めたという剛の者。さらにこの人、政治活動費に「花代(芸者遊びの料金)」を計上したことがバレ、それを問われたら「長崎の芸術文化だから」と開き直ったという過去まで暴露されてしまった。いったい何のために国会議員になったのやら。
長崎3区の有権者のみなさん、凄まじい方を選んでくれましたね。ちょっと恥ずかしくはないですか?
いやいや、でもこんなのは漫談みたいなもんで笑っていれば済むけれど、西村康稔前経産相は、小賢しいだけにやることも狡猾だ。
なんと、架空パーティで荒稼ぎときたもんだ。これは「週刊文春」が報じたもので、なんともエグイ荒稼ぎ。企業等に2万円のパーティ券をたくさん売りつけ、実際には10人ほどの経産省職員を集めてホテルの小さな部屋で会合を開催。つまり、政治資金パーティを開催したふりをして売りつけたパー券代をフトコロに入れちゃった、というもの。それで、数百万円の利益(!)が出たというのだから、ほとんど詐欺商法。
でも「そうじゃない、実態はある」と言いたかったのか、12月19日に政治資金パーティを開催しようとした。だって、すでにパー券は売ってしまっているのだから「架空じゃない本物のパーティを開いたよ」という証拠を作らなきゃホントに詐欺になっちまう。で、19日にホテルで開催しようと思ったのだが、前日に「モーニングショー」で田崎史郎氏にばらされちゃったものだから、マスメディアの取材殺到を恐れてか、急遽中止ということにしたらしい。なんともみっともない。「あの方は金集めに熱心な方だから」というスシロー氏のコメントには笑ったけどね。
まあ普通の政治資金集めパーティでも、2万円のパーティ券で実費は会場費込みで5千円ぐらいに節約して、あとの1万5千円分はぼろ儲け、というのが実態なのだから同じようなものだ。その上、20枚買わされた企業から1、2名しか実際に会場参加しないケースもあるというから、そりゃあ儲かるよ。
それにしたって、やってもいないパーティをでっちあげる新手法には、さすがに驚く。お利口な頭脳をそんなことに使っていたのか、西村さん。
辞任した鈴木淳司前総務相もなかなか。
この人、国会でキックバック資金の有無を問われ「それはない」と断言していた。ところが、実際は60万円ほどのキックバックを受けていたことが判明。それを問われると「まあ、キックバックというのは政治の世界では文化みたいなものというか……」と発言しちゃった。いよっ、文化大臣! とパチパチ拍手。
芸者遊び代を「長崎の芸術文化だから」と言い訳した谷川議員もすごいけれど、鈴木さんの「文化的裏金作り」もそれに勝るとも劣らない。ぼくと同じ鈴木姓だけに、よけいに腹が立つのです。
岸田首相、起死回生策?
こんな連中ばかりなのだから、岸田内閣の支持率もまたすごいことになってきた。岸田さんもかわいそうと言えば言えるけれど、まあ、身から出た錆か。だってやることがメチャクチャだものね。直近(12月中旬)調査の数字を見てみる。
岸田内閣支持 不支持
朝日新聞 23% 66%
毎日新聞 16% 79%
読売新聞 25% 63%
日経新聞 23.3% 65.4%
産経新聞 22.5% 71.9%
共同通信 22.3% 65.4%
時事通信 17.1 58.2%
NHK       23% 58%
ANN       21.3% 60.4%
ね、もう末期症状を通り越して瀕死状態ですよね。頼みの綱(?)の読売や産経の調査でもこんな有様。しかも深刻なのは、自民党の支持率も激減していること。ほとんどが20%台にまで落ち込んでいる。
「青木の法則」というのをご存じでしょう。内閣支持率+自民党支持率が50%を割り込んだらその政権はもたない、というもの。かつて「参院自民党のドン」と呼ばれた青木幹雄氏が唱えた説だが、これらの調査ではほぼ50%を割り込んでいる。とくに毎日新聞などでは、合計が33%ともはや昏睡状態。
19日、検察はついに“安倍組”と“二階組”の家宅捜査に入った。この2派の悪質性が高いとの判断だというが、なに、他の組だって同じような?
こうなりゃ、岸田内閣の起死回生策を考えてあげよう、という親切なぼく。
   政治資金規正法の抜本改革
   マイナ保険証の取り下げ
   インボイス制度中止
   大阪万博中止
   防衛費(軍事費)43兆円増の凍結
   企業減税の見直しと富裕層増税
   消費税減税
   GX(原発復活)取りやめ
   核燃サイクル見直しと再処理工場工事撤退
   辺野古新基地工事の中止
   日米地位協定の見直し
   防衛装備品移転(兵器輸出)中止
   子育て、教育投資の拡充
   最低賃金即時1500円に
   派遣労働者を正規社員に
   介護福祉関連従事者の最低2万円の賃上げ
この半分、いや3分の1でも着手するだけで、けっこう持ち直すかもよ、岸田さん。
こんな中「さあ、政権交代だ!」と、野党が気勢を上げて天下取りに撃って出てもよさそうなものだが、どうもなあ。どなたかがツイート(X)していたが「次期首相が泉健太氏、というのがイメージできない」。ふむ、ぼくもそうだ。
おーい、誰か出てこーい。
●サービス価格上昇に注目した植田総裁、4月政策修正に3つのリスク 12/20
日銀の植田和男総裁は19日の会見で、マイナス金利解除の時期や具体的な要件について言質を与えず、市場の警戒感は大幅に後退した。だが、植田総裁は物価目標達成への確度は少しずつ高まっているとも指摘。注目材料の一つとしてサービス価格の上昇を挙げた。来年の春闘で大幅な賃上げが実現できれば、物価高で伸び悩む動きも見える消費などにも好影響が出るとした。マイナス金利解除への条件が整いつつあることもにじませた。
筆者は来年1月解除の可能性は低下したものの、4月解除の可能性は相応にあるとみている。ただ、米利下げの時期や裏金問題で揺れる政局が大幅に混乱した場合は、4月以降に先送りされる波乱要因も残されていると指摘したい。
低下した1月政策修正の可能性
マイナス金利の早期解除の可能性が後退したとみて、20日の東京市場は株高・円安・債券高で反応した。確かに植田総裁は「物価と賃金の好循環については、なお見極めていく必要がある」「(好循環の確度は)総合判断にならざるを得ない」と述べて、慎重に見極める姿勢を示すとともに、いつごろに何を見て判断するかについて明確な言及を避けた。
さらに来年1月会合でのマイナス金利解除の可能性については「1月会合までの新しい情報次第にならざるを得ないが、新しいデータはそんなに多くない」とも述べた。1月会合での解除の可能性を全く否定しているわけではないものの、筆者は可能性が大幅に低下したと感じた。
着実に上昇するサービス価格
だが、植田総裁は「目標達成への確度は少しずつ高まっている」と述べつつ、マイナス金利解除への条件が次第に整いつつある現象にも言及した。
その一つがサービス価格の上昇。植田総裁は「第2の力は、サービス価格が緩やかに上昇していること等から判断して、少しずつ上昇が継続しているとみている」と指摘した。第2の力とは、物価を押し上げる要因のうち、賃金と物価の好循環を示す部分を指し、日銀が注視している動きだ。
10月全国消費者物価指数(CPI)をみると、サービス価格の実勢に近い「持ち家の帰属家賃を除くサービス」は前年比3.1%まで上昇。一般サービスも同2.9%の上昇だった。1年前は1%付近かそれ以下の水準だったことを考えると、サービス価格の上昇は持続性が出てきた可能性がある。
また、植田総裁は労働需給の引き締まりや企業収益の拡大にも触れたが、12月日銀短観における雇用人員判断の大幅な不足や高水準になっている売上高経常利益率の来年度計画をみても把握できる状況となっている。
さらに実質賃金がマイナスのままでマイナス金利解除の可能性があるのかとの質問に対し、植田総裁は「先行き賃金上昇が続き、インフレ率が低下を続けて実質賃金が好転する見通しが立つのであれば、足元の状況は必ずしもマイナス金利解除の障害にならない」と答えた。
他方、植田総裁は「先行きの不確実性が高く、来年の賃上げを固められない先も多い。価格設定行動でも、中小企業などから販売価格転嫁は容易でないとの声もある」と指摘した。
こうした発言を総合して判断すると、3月中旬に出る大手製造業の一斉回答の結果などを待って、4月25、26日の金融政策決定会合でマイナス金利解除を決める可能性があると予想する。
米利下げと円高
ただ、このシナリオには三つのリスクがある。一つは米利下げの可能性だ。植田総裁は、米利下げが予想される際は「米国の供給サイドが改善する中で、物価上昇率が低下し続け、所得と支出の好循環でソフトランディング期待もある。それ自体は日本にプラスの影響ある」「各国独自の情勢を踏まえ、日銀としても適切な政策運営をしていく」と述べ、日銀の金融政策の制約要因にはならないとの見解を示した。
だが、市場が日米金利差の縮小を円高要因としてみているため、米利下げが始まると、その動きを先取りするように円高方向へのシフトが急速に進む可能性がある。そこに日銀のマイナス金利政策解除が加わると、さらに円高が進むとの懸念も生じやすい。
もし、3月に米利下げが開始されると、4月の日銀会合前に円高が進む可能性も捨てきれず、日銀が政策変更を先送りする要因の一つにはなり得ると考える。
外需の暗雲と10―12月期GDP
二つ目は、日本の輸出企業の動向に陰りが見え、来年2月に公表予定の2023年10─12月期の国内総生産(GDP)が前期比マイナスになるリスクだ。20日公表の11月貿易収支では、輸出が前年比マイナス0.2%と小幅に落ち込んだが、数量ベースでは同マイナス5.6%と落ち込みが目立った。特に欧州連合(EU)向けは同マイナス11.8%、中国向けが同マイナス7.5%と振るわなかった。
このまま輸出不振が継続した場合、10─12月期GDPがマイナスになる可能性もあり、直近のGDPの落ち込みは、日銀の判断に大きな影響を与える可能性がある。
政局大混乱の波紋
三つ目は政局の大混乱だ。東京地検特捜部が自民党の清和政策研究会(安倍派)と志帥会(二階派)の事務所に強制捜査に入り、裏金問題が大疑獄事件に発展しかねない情勢となっており、内閣支持率が急低下している岸田文雄首相の前途にも暗雲が垂れ込めている。
仮に来年3月末の2024年度予算案の成立を契機に、自民党内で「人心一新」の声が高まった場合、岸田首相の進退が極まる可能性もゼロとは言い切れない。そうした政局の大混乱時には、日銀が事態を静観するということが予想され、マイナス金利解除の決断は先送りされることもあり得ると筆者は考える。
来年の上半期は、日米金融政策の動向と日本の政局の行方が複雑に絡み合いながら、大きなうねりを生じさせる「大転換」の局面を迎える可能性がありそうだ。
●「1人で裏金9000万円」の安倍派議員は誰だ…支持率16%の大暴落! 12/20
自民党の最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)をめぐる裏金疑惑で、同派所属の松野博一官房長官ら閣僚と副大臣が辞任に追い込まれた。今後は東京地検特捜部による捜査の行方に注目が集まるが、気になるのは渦中にある政治家たちが説明責任を果たしていない点だ。また、共同通信は最近の5年間で9000万円超のキックバックを受けた議員がいるとも報じている。一体誰なのだろか。
そんな中で、毎日新聞が12月16、17の両日に実施した全国世論調査では、岸田内閣の支持率は11月18、19日実施の前回調査(21%)より5ポイント減の16%で、内閣発足以来最低を2カ月連続で更新した。経済アナリストの佐藤健太氏は「民主主義において『言葉』は最も重要。都合の悪い時に政治家が『貝』になるのでは国民の政治不信が高まるばかりだ」と指摘する。
安倍派5人衆の1人、松野官房長官は「貝」のように回答を避け続けた
「政治資金について様々な指摘がなされ、その結果として国民の政治に対する信頼が揺らいでおり、また私自身の政治資金収支報告書についても様々な指摘がなされている中、国政に遅滞を生じさせないよう本日、官房長官の職を辞したいと首相に申し上げ、辞表を提出した」。岸田文雄内閣のスポークスパーソンとして2年超も官房長官を務めてきた松野氏は12月14日、官房長官として臨んだ最後の会見でも安倍派や自身の裏金疑惑に関する質問への明確な回答を拒んだ。
松野氏は安倍晋三元首相の死去後、安倍派で中心的役割を担う「5人衆」の1人で、2019〜2021年には実務を仕切る事務総長を経験した人物だ。しかし、裏金疑惑が報道されてからは「ご指摘の事案に対する答えは差し控える」などと繰り返し、「貝」のように回答を避け続けてきた。政府の立場を離れた後も捜査中であることを理由に説明責任を果たそうとする姿勢は見えない。
松野氏の後任として2021年10月〜2022年8月まで安倍派事務総長に就いた西村康稔前経済産業相も「私自身の政治資金については今一度、政治資金収支報告書、通帳管理書類、帳簿など精査・確認作業を進めている。捜査が行われているので、これ以上申し上げられないが、できるだけ早いタイミングで捜査の進捗を見ながら説明責任を果たしたい」と述べるにとどめている。
特捜部の捜査が進む中「茶話会」を開催
裏側疑惑を持たれた議員側は「派閥の指示だった」「秘書を信頼していたのでわからない」などと説明していると報じられているが、派閥の会計責任者や秘書だけで5年で数億円にも上る国会議員のカネを差配できるのかは疑問だ。派閥の実務を担う事務総長をはじめ、幹部議員が何も知らずに行われていたとすれば、それこそ問題だろう。ネット上には「ざけんな、トカゲの尻尾切りか」「はいはい、いつものパターンね」といった声が渦巻く。
経産相を辞任した西村氏に関しては、「週刊文春」(12月21日号)が別の疑惑を報道。西村氏の資金管理団体が開催した「茶話会」に経済産業省職員が「サクラ」として参加していたと報じ、“架空パーティー”であるとの経産省関係者のコメントも掲載している。
この報道について、西村氏は会見で「法令に則り開催してきている。大臣規範があるため大規模なものは控え、自粛するよう努めている。ご指摘の会についても実際に講師を招いて開催している」と説明。その上で「私自身の話を聞きたい、説明を聞きたいという声も寄せられているため、改めて欠席された方々への追加の懇談会のようなものを開く予定で案内をしている。経産省の職員の方々については、業務に関連する有識者の講演ということで勉強会として私から参加の案内をしており、それぞれの判断で自主的に参加された」と答えている。
だが、仮に西村氏の説明通りとしても、大臣から言われて職員が参加を断ることは容易ではないだろう。文春報道にある通り、会費2万円を払う政治資金パーティーに購入者が参加せず、経産省職員が大半だったとすれば不可解でしかない。そもそも特捜部の捜査が進む中、12月8日に「茶話会」なるものを開催していること自体に驚く。
政治家は「世界一のスポーツ選手」の会見を見習ってほしい
退任会見で「追加の懇談会」開催をした西村氏だが、定例記者会見や国会答弁の機会がなくなる「イチ議員」となれば、他の安倍派議員と同様に「貝」に閉じこもる可能性があるだろう。数々の要職を重ねてきた最大派閥の「将来の首相候補」がこのまま説明責任を果たせなければ、その道が遠のくのは間違いない。
12月15日(日本時間)にドジャースの入団会見に臨んだ大谷選手は、約300人もの報道陣を前に、交渉内容や年俸の大半を後払いにした理由などについてメモやプロンプターを見ることなく、堂々と自分の言葉で説明した。
期待が集まる選手としては答えにくいはずの肘の手術に関する質問にも丁寧に答え、ドジャース入団を決めた理由を「僕自身の優先順位は契約形態からわかるように一番上のところではあるので。
岸田派の不記載問題もまだ残っている。首相は率先して説明責任を果たすべき
野球選手として、あとどれくらいできるかというのは正直誰もわからない。勝つことっていうのが僕にとって今一番大事なこと」などと正面から説明している。今や「世界一のスポーツ選手」である人物の会見は、国民を代表する政治家にこそ見習ってもらいたいところだ。
岸田首相は、安倍派の閣僚や副大臣らを事実上更迭した人事について「調整力、実行力、さらには答弁力などを備えた即戦力を選ばなければならない。こうした考えに基づいて人事を行った」と説明した。だが、首相が最近まで会長を務めていた派閥「宏池政策研究会」(岸田派)も政治資金パーティー券収入の一部を政治資金収支報告書に記載していなかった問題が浮上。不記載額は3年間で数千万円にも上ると報道されている。
安倍派の幹部を軒並み排除する「安倍派切り」を断行したからといって、岸田派の不記載問題が不問にされるわけではないのは当然だ。「説明力」をあげるならば、まずは会長を務めてきた首相が率先して説明責任を果たすべきだろう。「派閥からの指示で記載しなかった」と暴露し、3年間で140万円のキックバック(還流)があったと証言した安倍派の宮沢博行前防衛副大臣が“英雄視”されているのも謎でしかない。
もはや政治家に憧れる若者はいなくなった
LINEリサーチが2022年3月に高校生を対象に実施した調査によると、「もし政治家になれるとしたらなってみたいと思うか」との質問には、79%の高校生が「思わない」と回答している。数々の議員特権に加え、民間であれば処罰対象になるような問題であっても修正するだけで許されるならば、政治不信は一層高まるはずだ。
2023年の「ユーキャン新語・流行語大賞」には、3月のWBCで3大会ぶりの優勝を果たした侍ジャパンの大谷選手が決勝戦前にナインを鼓舞した「憧れるのをやめましょう」がノミネートされた。残念ながら、もはや政治家は「憧れ」の存在ではなく、裏金疑惑がある議員たちには軽蔑の視線すら送られている。
国家のリーダーとして国民に適正な納税を呼びかける立場の首相(自民党総裁)には、「政治とカネ」問題の再発防止策を講じるとともに、裏金疑惑がある政治家すべてに説明責任を果たすよう命じる責務がある。
正確な所得を把握するためのマイナンバーやインボイスが導入され、国民は1円単位での管理・提出が求められている。そうした中で法律をつくる側の国会議員が法を逸脱していたにもかかわらず、政治資金収支報告書を訂正すれば何ら問題ないと判断されるのであれば、もう国民はやっていられない気持ちになるのではないか。
岸田首相は政治資金規正法の改正も含め、今後の対応を検討していく考えを見せている。自民党の茂木敏充幹事長も「法改正を含め、透明性が確保できるような素地を早急に検討しなければいけない」と語り、パーティー券代の銀行振込などによる透明化を念頭に入れる。政治資金規正法が「ザル法」であるのは間違いないが、現在の法律であっても逸脱せずに収入と支出を適正に記載すれば透明性はあるはずだ。それをしないことが問題なのであって、法改正すれば必ず解決できるものでもない。論点がずらされることがないよう国民は今後の対応を注視する必要があるだろう。
マスコミ各社が毎週のように世論調査を展開するようになった今、岸田政権とは距離を置く閣僚経験者の1人はこうつぶやいた。
「すでに退陣カウントダウンが始まっていることを岸田首相は知るべきだ」
岸田氏は辞任に追い込まれるのか、それとも一か八かの衆院解散に打って出るのか。今年の漢字一文字を「克」とあらわした首相が窮地をしのぐ手は極めて限られている。
●なぜか起きない岸田首相おろし 与野党様子見≠フ思惑... 12/20
自民党派閥の政治資金パーティーを巡って裏金づくりが行われていた疑惑で19日、東京地検特捜部は安倍派と二階派の事務所を政治資金規正法違反(不記載・虚偽記載)の容疑で家宅捜索した。岸田文雄首相は「党としても強い危機感を持って国民の信頼回復に努めなければならない」と意気込むも内閣支持率は超低空飛行。岸田おろしとなっていいはずだが与野党ともに不気味な静けさを保っている。
安倍派と二階派の事務所は永田町の自民党本部から近く、両事務所の入るビル同士の距離は徒歩1分ほど。家宅捜索が行われたということで、その狭い一角に報道陣が殺到した。自民党の茂木敏充幹事長は「大変遺憾だ。厳粛に受け止め、捜査の推移を見守りつつ必要な対策を取る」と発言。安倍派と二階派もおわびのコメントを発表した。
安倍派に“ウラ帳簿”が存在したとか、裏金は議員の囲い込みに使われたなど疑惑を巡る報道が相次いでいる。安倍派の会計責任者は不記載を認める説明をしているともいわれているが、国会議員までメスが入るかは不透明だ。
国民生活が苦しいなか政治家が裏金づくりをしていたということで国民は怒り心頭。内閣支持率は軒並み20%前後と過去最低を記録している。ところが、岸田内閣を倒そうという動きは聞こえてこない。
永田町関係者は「ポスト岸田になり得る茂木氏は安倍派のスキャンダルに内心はほくそ笑んでいるのかもしれないが、今は様子を見ているのだろう。一方で国民人気の高い石破茂氏は党内の人気がないし、河野太郎氏は紙の健康保険証をなくすことが国民に不評。小泉進次郎氏はまだ早い。自民党の中からの突き上げはしばらくなさそう」と解説した。
それでは野党はどうか。野党第1党の立憲民主党は自民党の裏金問題について識者や省庁からのヒアリングを開始。来年の通常国会に向け、準備をしている。
立民議員は「実は立憲は今調子がいい。地元に帰っても有権者の反応が変わってきました。『あなたはいいけど、立憲はちょっと』だったのが、『あなたも立憲もいいね』になってきた。党内のまとまりもいい」と手応えを感じているという。
「参政党とか日本保守党とか右寄りに新党ができて、保守が分裂しているんですよ。一方で立憲より左は共産党しかない。リベラル保守が今はガラ空き。そこを狙う。問題は候補者がそろうかどうかと、変に頑張って失点しないこと。着実にやるときです」(同)
もっと倒閣の声を上げてもよさそうだが…。「正直、日本のためには岸田内閣が替わった方がいいが、選挙を考えれば岸田首相で解散してほしいという面もあります。選挙直前に顔が変わることが一番最悪ですね。もっとも自民党の中に次がいないんでしょうが」(同)と本音もポロリ。
誰もが様子見している間に岸田氏は起死回生の策を打てるのか。
●パー券問題で4閣僚退任も岸田首相は上機嫌で饒舌、内閣支持率10%台に 12/20
先週も目まぐるしくニュースが入れ替わる日々でした。私が早朝、担当している番組(『OK! Cozy up!』)のために出社すると、デスクに速報原稿が置いてあるのですが、それによって放送で扱うラインアップを変更することもしばしば。毎日、ドキドキしていました。
中心は、自民党派閥のパーティー券をめぐる政治資金問題でした。13日(水曜)に臨時国会が閉幕し、岸田文雄首相が記者会見を行いました。ここで、翌日に人事を行うことが発表され、前後して報道各社が人事を速報しました。安倍派の4閣僚が退任し、官房長官に林芳正氏、総務相に松本剛明氏など、閣僚経験者中心の手堅い布陣だと報じられました。
一方、14日(木曜)発表の時事通信の世論調査では、内閣支持率は17・1%、自民党支持率18・3%と落ち込みました。調査は8日(金曜)から11日(月曜)に行われたので、4閣僚が事実上更迭される前の数字です。足元はさらに下がっている可能性があります。
その政治資金問題では、安倍派をはじめ各派閥で政治資金収支報告書への「不記載」や「過少記載」が問題になり、東京地検特捜部が捜査しています。今後、家宅捜索や任意での事情聴取、さらに逮捕となって尾を引けば、支持率や政権運営にも長期的に暗い影を落としそうです。
●一般会計110兆円超=総額12年ぶり減―国債費は過去最大・24年度予算案 12/20
政府が2024年度予算案の一般会計総額について、過去最大だった23年度(114兆3812億円)を下回る方向で調整していることが19日、分かった。前年度比で減少するのは12年度以来12年ぶり。国会の議決がなくても政府の判断で支出できる予備費を圧縮する。一方、借金に当たる国債の償還や利払いに充てる国債費は過去最大となる見通しで、総額では2年連続で110兆円を超える。
岸田政権は新型コロナウイルス禍で膨らんだ歳出構造を「平時」に戻す方針を掲げているが、借金の利払い費が重くのしかかり、厳しい財政運営が続きそうだ。
予算案の編成作業は大詰めの段階に入り、鈴木俊一財務相は22日の閣議決定に向け、19日から2日間の日程で計14人の関係閣僚らとの個別折衝を始めた。これに先立ち、鈴木氏は19日の閣議後記者会見で「経済成長と財政健全化が可能となるような予算に仕上げていきたい」と語った。
●遠のく財政健全化 法人税引き上げに企業は反発 12/20
今後の岸田文雄首相の政権運営を左右しそうな2024年度税制改正大綱の議論。首相が表明した計4万円の所得税と住民税の定額減税措置に関し「国民の皆さんに伝わっていない。従って、これが今度は心に響かない」(鈴木俊一財務相)と政権支持率が低迷する理由を解説≠オたものの、財政規律が遠のく現状への危機感は乏しい。唯一、目を引くのが自民党税制調査会で浮上した法人税率の引き上げ論だが、決着までには曲折が予想される。
12月1日の会見で、鈴木氏は「大企業を中心に内部留保が増加している」と指摘。賃上げや投資を促すという観点で「法人税改革は意図した成果を上げてこなかったとの指摘は承知している」とした上で「内部留保を過度に保有するのではなく、賃上げや人への投資、設備投資などの形で活用することが重要だ」と述べ、自民税調の議論へ期待をにじませた。
ただ、政権支持率が過去最低を更新し、求心力が急落している上、自民派閥の政治資金パーティーを巡り、党最大派閥の安倍派で裏金疑惑が浮上。政治とカネの問題が直撃した今の首相や官邸には増税批判に耐え得る体力はない。加えて経済界からの反発も根強い。少なくとも、24年税制改正大綱や24年度予算案を取りまとめる12月中は政治とカネの問題で逆風¢アきになるのは必至で、法人税引き上げ論は自民税調の宮沢洋一会長の「暴走」(与党幹部)で終わるかもしれない。
首相は児童手当拡充だけでなく、低所得世帯の子供1人当たり5万円の追加給付など「次元の異なる少子化対策」に躍起だが、財務省内では「何をやっても支持率は上向かない」(主計局)と怨嗟の声が出ている。ある幹部は、放漫財政に歯止めもかからない状況に「財務省の力は落ちた」と話す。
●“政治にカネがかかる”は嘘! 泉房穂 12/20
終わりの始まりや。安倍派の巨額裏金疑惑で岸田政権はボロボロ。内閣総辞職も語られるようになってきた。この際、安倍派は政府から一掃するしかない。
そして、この問題は安倍派や自民党だけに留まらない。野党も含めた私利私欲政治が根底から問われている。
まず、「政治にはカネがかかる」という嘘に、政治家も有権者もマスコミも毒されている。その嘘が、日本政治の文化になっている。その文化を改めるしかない。本来なら、政治家が法整備して、自らルールを作ることが必要。
実際、リクルート事件後の1994年、当時の細川内閣が政治改革の名の下に政党交付金制度を作った。その前提となったのが、企業・団体献金の廃止やけど、完全には廃止していないし、抜け穴が多い。政治家自らが襟を正すこともない。
現在、東京地検特捜部が疑惑を捜査しているが、政治に忖度せずに正義をどこまで貫けるかも不安。安倍派が支配していた20年ほど、検察は人事に介入されて忖度せざるを得んかった。安倍さんが亡くなり、これまで悔しい思いをしてきた検察が一矢報いることができるか。
政治家の自浄作用は期待できないし、検察も腰砕けになるかもしれん。となると、最後は国民の力。金権政治家を選挙で落とすしかない。私利私欲政治から大転換するために何が必要か。
まず、政治献金の廃止。税金から政党交付金が315億円も出るんやから、それで十分賄えるはず。経団連の十倉雅和会長は毎年、自民党に24億円献金していることを「何が問題か」と開き直っていたが、違法でなくとも、見返りを求めているに決まってるんやから、まさに利権政治そのもの。即刻、廃止すべきや。
何度も言うけど、政治にカネはかからん。私のその主張に対して、野党系の国会議員までもが「地方に事務所を構えたり、人を雇ったりするとカネはかかる」と反論する。でも実際、私はカネをかけずに政治をやってきた。政治活動をするのに、地元に多くの事務所を構える必要なんかない。秘書も大量に雇わなくていい。それらは選挙対策にすぎない。
政治とカネの問題は、じつは身近なところに転がっている。実際、私の子供時代にも、周囲でカネ絡みの話は飛び交っていた。生まれ育った明石の漁師町では、大人たちが集まって、「地元の議員に10万円渡した」などと話していた。そのカネで市営住宅に入れてもらったとか、就職を世話してもらったとか。「このカネじゃ少ないと言われて、もう1回持って行った」とも聞いた。
子供心に、「なんで貧乏な漁師が、たくさんカネをもらってる政治家にカネを持って行かなあかんねん。政治家ちゅうのは困ってる人を助ける仕事ちゃうんか」と思ったのが、私のひとつの原点です。  
後に市長になったときも、何度となく“口利き”を頼まれそうになった。「孫が明石市役所を受験するからよろしく」と、封筒にカネを入れて受験番号を書いて渡そうとするんですわ。「絶対、そんなもん受け取らん」と言って、きっぱりと断わりました。それでも、私だけやなく実家にもやってきたりしたから、「息子とは連絡が取れん」と言えと伝えたわ。そういう文化は、いまだに残っている。
昔、ある大物政治家から、「おむすびの中に、梅干しの代わりにラップに包んだ1万円札を入れて配ったりもした」という話を聞いたことがある。かつては、有権者に直接現金を渡すような選挙が珍しくなかった。今も、飲み食いさせるくらいは裏でやっていたりする。
私が2003年に国会議員に当選した直後、面識のない地元の有力者が事務所にやってきて、いきなり封筒を差し出してきたことがある。中を見たら200万円入っていた。腹が立って「舐めとんのか!」と、怒鳴って突き返した。要するに、金を受け取らせて言いなりにさせるつもりやったんやろうな。当選したての野党のペーペー議員にもカネを持ってくるんやから、与党の議員なんか、もっともらっとるやろね。
カネを出すほうは当然、口利きの効果があるからやっている。なんの効果もなかったら、誰もカネなんか出さん。企業がパーティー券を買うのもそう。私は市長時代、カネ集めのパーティーではなく、純粋な「市政報告会」をしていたが、あるとき、100万円を現金で渡そうとしてきた人物がいた。「趣旨が違います」と言ってお断わりしたが、ひどく驚かれた。
後日、その人物から直接、「公共工事の入札価格を教えろ」と言われ、そんなこと直接聞くかとびっくりして、「教えたら捕まりますよ」と言い返したら、「きれい事ばっかり言いやがって」と逆ギレされた。もちろん聞く耳は持たずに追い返した。
政治家は油断すると、こういう場面にしょっちゅう出くわす。安倍派はもう感覚が麻痺して、「みんなやっとるやないか」と、裏金を懐ろに入れてきた。みんなで渡れば怖くないんでしょうな。
この前、ホリエモンこと堀江貴文さんが、「泉房穂に1千億円を出せば政権交代できる」と発言しましたが、その100分の1も必要ない。
仮に衆院議員の全289選挙区に候補者を立てるとして、ナンボかかるかと。じつは選挙期間中については、公費がかなり出るので、ほとんどカネはかからない。選挙期間前の活動についても、ボランティアの協力を得れば、人件費はさほどかからない。チラシの郵送などはする必要はなく、SNSでの発信で十分だ。カネがなくても全国に候補者を立てられるし、そうすれば政権交代も可能。
●菅義偉一派の不気味な動きに岸田首相警戒…宮澤博行議員は“ハゲ議連” 12/20
裏金疑惑の炸裂で、岸田内閣の支持率がついに10%台に下落。政権末期の様相を呈する中で不気味な存在感を示しているのが、岸田首相の“政敵”である菅義偉前首相(75)だ。
安倍派の裏金疑惑を巡り、キックバック分を不記載とすることについて「派閥から指示があった」と暴露した宮澤博行前防衛副大臣の背後に、菅氏の存在があった可能性が指摘されている。
宮澤氏は頭髪の薄い議員たちでつくる「日本を明るくする会」という議員連盟(通称・ハゲ議連)に所属。幹事長を務める宮澤氏は、ハゲ議連名誉総裁の菅氏とは近い関係にある。ジャーナリストの武田一顕氏は15日放送のMBSの情報番組に出演。こう指摘していた。
「宮澤さんは事前に菅さんと相談して、(菅氏から)今だったら言っちゃえ、と(言われた)。あんたの政治的な立場にとっても良いことだ、っていうので(菅氏から)アドバイスを受けて、宮澤さんの爆弾発言につながった」
さらに、岸田氏が安倍派の閣僚と副大臣を一掃した際の後任人事を巡っても、菅氏の影がチラつく。岸田氏は、無派閥で菅氏と近い阿達雅志参院議員に外務副大臣を打診。ところが「体力が持たない」との理由で固辞された。菅氏を支援する無派閥グループの所属議員が言う。
「われわれは政務三役就任の打診を受けた場合、まず菅さんに相談を持ちかける。阿達さんは相談した上で、岸田総理の打診を断ったのでしょう」
朝日新聞(15日付)は阿達氏の固辞について、菅氏が「へへへ。人事を受けても良かったのにな」と皮肉たっぷりに周囲に語ったと伝えた。
●安倍派キックバック議員の一覧表や二重帳簿も提出? 12/20
とうとう派閥の事務所に東京地検特捜部のメスが入った。12月19日、特捜部は自民党の清和政策研究会(安倍派)と志帥会(二階派)の事務所をそれぞれ家宅捜索した。派閥のパーティー券販売でノルマを超えた分について、派閥から議員にキックバックし、そのカネを政治資金収支報告書に記載しなかった政治資金規正法違反の容疑だ。長期政権を敷いた安倍晋三元首相とそれを支えた二階俊博元幹事長という超大物を“直撃”したのだ。着々と進む捜査だが、国会議員の逮捕や起訴はあるのか、幹部議員の立件は……。国民が注目している。
家宅捜索が入った直後、安倍派の衆院議員が悲鳴を上げるようにこう話した。
「パソコンや帳簿など、段ボール箱で10箱くらいはもっていかれたようだ。事前に強制捜査に入るタイミングは報道されていたのでそこまで慌てることはないが、これだけニュースになると頭が痛い。ただ捜査妨害はしていない。どこかの誰かのようにハードディスクをドリルで破壊するようなことは絶対にない」
特捜部は強制捜査に乗り出す一方で、この日も安倍派の国会議員らから事情を聴いている。
「国会に近い3つのホテルも使いながら、議員が目につかないように調べているようだ」と特捜部出身の弁護士や前出の安倍派の衆院議員はそう話す。
二重帳簿やランキング表も
一方、安倍派側は、検事総長も有力視されていた元敏腕検事の弁護士を中心に、ヤメ検弁護士たちが対応している。彼らは、2019年7月の参院選で2900万円を100人の広島県議や地方議員、有権者に配った罪に問われ有罪判決が確定した河井克行、案里夫妻の弁護もチームで対応した。自民党からの信頼も厚いとみられる。
安倍派は捜査段階で、会計責任者らがパーティーやキックバックについても詳細な資料を特捜部に任意提出している模様だ。
「キックバックした議員の一覧表、金額上位のランキング表、政治資金収支報告書に記載するための会計書類と、実際の売り上げを記した二重帳簿のようなものもあった。ランキングにはいつも報道されている3人の名前があった」と自民党幹部が打ち明ける。
なかでも注目されるのは、キックバックの金額がベスト3とも言われている大野泰正参院議員、谷川弥一衆院議員、そして池田佳隆衆院議員の3人だ。
池田氏はすでに5年間で4千万円以上のキックバックを受け、政治資金収支報告書に記載していない疑いがある。12月に入り、事件化が濃厚になると、3200万円分を政治資金収支報告書に訂正する届けを出している。
「池田氏と政治の話はほとんどした記憶がない。年中、自分と派閥のパーティーのことばかり考えているようだった」と話すのは、池田氏の地盤である愛知3区の支援者Aさん。スマートフォンを取り出し、<次回の派閥のパーティー、前回同様の数でOKでしょうか>と池田氏から送られてきたメールを見せてくれた。
決めぜりふは「安倍首相とツーショットが撮れるかも」
池田氏は家業の化学薬品会社を引き継ぎ、日本青年会議所(JC)でも熱心に活動し、2006年には会頭を務めた。その後、池田氏は自民党の公認を得る。そして愛知3区から出馬し、12年に初当選。安倍晋三元首相の長期政権時代に誕生し、不祥事などが相次いだ“魔の4回生”とも呼ばれる「世代」だ。
Aさんがこう話す。
「池田氏から問題になっている派閥のパーティー券を何度も買いました。お決まりが『安倍首相とツーショットが撮れるかも』でした。実際は安倍元首相との写真なんて無理ですよ。池田氏の政治資金収支報告書を見たことはないが、私が支払ったパーティー券代が書かれていないのなら嫌な感じです」
Aさんによると、池田氏はAさんに対して、派閥のパーティー券を売ってくれたらキックバックするとの提案をしたことがあるという。
「『20枚売ってくれたら5枚分はキックバックします』と言ってきたことがあります。パーティー券を山のように持って歩く姿に“パー券大魔王”と呼ぶ人もいました。パーティー券を売るときに『パー券を売れば派閥の評価も高まり出世できる。当選回数が自分より少ない議員もすり寄ってきて、大臣の椅子も近くなる』と話していたことが印象に残っています。議員バッジをつけているんだから政治をしっかりやれよと言ってもパーティー券の方が大事って感じでしたよ」とAさんはいう。
また、愛知3区の自民党の地方議員の一人は匿名を条件に、「池田氏から『パー券を売ってくれ。キックバックを渡すから』と依頼を受けたことはありました。他の地方議員にも同じような話を持ち掛けていた」と打ち明けた。
“萩生田氏イチの子分”
池田氏は、キックバックの事件が報じられると雲隠れした。
記者も議員会館の事務所を訪ねたが、まったく応答はなかった。電話をしても通じず、Aさんから池田氏の携帯電話を記者の前で呼び出してもらったが、それもダメだった。
なぜ池田氏が“パー券大魔王”と呼ばれるほど、大量のパーティー券をさばけたのか。
政調会長を近く辞任する、安倍派「5人衆」の萩生田光一氏の存在を指摘する声が少なくない。
「池田氏は萩生田氏のイチの子分というほど親しくしていた。池田氏は萩生田氏に紹介を受けた企業や個人にもパー券を売っていた。その分は池田氏が一度、派閥からキックバックをもらい、萩生田氏に渡していたという話を何人もの派閥のメンバーが指摘している。特捜部の捜査が進み、池田氏の全容が解明されてくると萩生田氏もどうなのか」と安倍派の衆院議員。
そうなると、池田氏のキックバック分も「二重帳簿」となりかねない。今後の捜査について、元東京地検の落合洋司弁護士は、「派閥が二重帳簿をつけていたとなれば、パソコンや携帯電話を押収する。それが強制捜査です。河井夫妻の事件で、私は、カネをもらった側、広島の地方議員に選任されて弁護をしましたが、あの時も押収したパソコンや携帯電話が重要な証拠になった。河井夫妻がカネを配った一覧表などがパソコンから出てきて、携帯電話の位置情報などでより補強されて立件となりました。今回も、特捜部は二重帳簿やキックバック不記載の経緯、指示、承諾などをパソコン、携帯電話などからさらに詰めていこうとしているのではないでしょうか」との見方を示す。
「特捜部の調べを受けた際に携帯電話の情報を任意提出した」と取材に話す安倍派の議員秘書もいた。
カネの流れ、帰属をどこまで特捜部が立証できるか
特捜部は、安倍元首相の「桜を見る会」では強制捜査をせずに秘書らだけを略式起訴としたのは記憶に新しい。だが、今回は状況が大きく違う。
落合弁護士は、「特捜部は派閥の事務総長クラスの幹部をやるか、無理ならキックバックの金額が大きい上位3人とか5人を立件するか、今後はどちらかに絞ってくるはず。金額が大きい池田氏はターゲットになるはずです。ただ、キックバックのカネがどの政治団体で処理されるはずだったのかがポイントです。カネの流れ、帰属をどこまで特捜部が立証できるかでしょう。安倍元首相の『桜を見る会』は大騒ぎされたが強制捜査をせず、検察は最初から小さく収めるつもりだったはずです。今回、ガサに踏み切ったというのは、議員バッジを取るくらいの覚悟だとみられます。安倍派の事務総長クラスが立件となれば略式起訴では済まず、裁判になる可能性が大きいです。ここまで大きくなって、『桜を見る会』のように秘書だけの立件では世論がおさまらないでしょう」と話している。
●秘書ぼう然「派閥の拠点に捜査が及ぶなんて」… 12/20
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件で、東京地検特捜部が「清和政策研究会」(安倍派)や「志帥会」(二階派)の強制捜査に踏み切った19日、永田町には動揺が広がり、所属議員の地元からは憤りの声が相次いだ。
19日午前に始まった安倍派事務所(東京都千代田区平河町)の捜索は、約5時間に及んだ。午後3時前、押収した資料を積んだとみられる特捜部の車両1台が、事務所の入るビルを出発。午後7時過ぎには、同派会計責任者の男性が報道陣の問いかけに無言のまま、事務所を後にした。
最大派閥の安倍派では、パーティー収入のうちノルマ超過分を議員側にキックバック(還流)し、派閥側の政治資金収支報告書の収入と支出、議員側の収入のいずれにも記載せず、5年間で5億円規模が裏金化された疑いがある。
派閥の拠点に捜査のメスが入るという異例の事態に、所属議員の関係者は一様にショックを受けていた。国会近くで捜索のニュースを見たという同派所属議員の男性秘書は「派閥メンバーにとって還流は『当たり前』で、議員も受けていた」と明かし、「派閥の拠点に捜査が及ぶことになるなんて思いもしなかった」とぼう然としていた。
疑惑から事件へと局面が変わり、国会周辺や、裏金化の疑惑が持たれている同派所属議員の地元では、厳しい声が上がった。同派事務所前を通りかかった東京都板橋区の会社員女性(31)は、「コロナ禍や物価高騰で国民が苦しい生活を送る中、裏金で私腹を肥やしていたのであれば許せない。検察には全容を解明してもらいたい」と訴えた。
疑惑発覚後に官房長官を辞任した松野博一衆院議員(61)の地元・千葉県市原市の男性(76)は「裏でやりたい放題やってるようにしか思えない」と憤った。松野氏に対しては、「きちんと潔く自分の言葉で説明すべきだ。悪いとわかってやっていたなら、謝罪では済まない」と語気を強めた。
4000万円超の還流を受けた疑惑が浮上している池田佳隆衆院議員(57)の地元・名古屋市。自営業の男性(55)は「寄らば大樹の陰のように、お金がほしくて清和政策研究会に集まったのかと思えて残念だ」と話し、岸田首相にも「自民党をどう変えていくのか、示してほしい」と注文をつけた。
●首相、信頼回復へ「新たな枠組み立ち上げる」…時期など言及なし 12/20
自民党安倍、二階両派が東京地検特捜部の捜索を受け、政府・与党には衝撃が広がった。低支持率にあえぐ岸田首相(党総裁)の政権運営が一段と厳しくなるのは必至だ。信頼回復に向け、派閥の改革や政治資金規正法の改正を求める声が強まっており、首相の指導力が問われている。
秘書ぼう然「派閥の拠点に捜査が及ぶなんて」…地元は憤り「裏でやりたい放題としか思えない」
首相は19日午後、首相官邸で記者団の問いかけに多くは語らず、険しい表情で国民の信頼回復を目指す考えを示した。林官房長官は記者会見で、「政治に対する不信など国民の声を 真摯 に受け止める」と語った。
自民の茂木幹事長は記者会見で、「このような事態に至ったことは大変遺憾で、厳粛に受け止めている」と強調。公明党の山口代表は記者会見で、「国民の信任が乏しくなることによって、政権の危機に直面している」と危機感をあらわにした。
首相は14日、派閥パーティー収入の裏金化疑惑を受け、松野博一・前官房長官ら安倍派の4閣僚を交代させた。しかし、内閣支持率は最低水準が続いており、捜査の進展によっては逆風がさらに強まる恐れもある。
首相はこの日の党役員会で、「党としても国民の信頼回復のための新たな枠組みを立ち上げる」と述べ、政治資金問題で党改革を進める方針を改めて表明した。もっとも、時期などの具体的な言及はなく、自民内からは「対応が悠長過ぎる」(閣僚経験者)との不満が出ている。
二階派を離脱 小泉法相検討
野党は、検事総長に指揮権を持つ小泉法相と、自見万博相の二階派閣僚について、首相が続投を明言したことに批判を強めている。
小泉氏は記者会見では、「検察当局は厳正公平を旨とし、法と証拠に基づいて対処する」と指摘し、捜査の中立性が損なわれることはないと訴えた。ただ、二階派に対する特捜部の捜査は当面続くとみられることから、派閥を離脱する方向で検討に入った。
公明の山口氏は小泉、自見両氏の続投に関し、「首相が人事権者として、国民の理解を得られるような対応を取ることを望みたい」と述べるにとどめた。
●政府の「大学無償化」は学歴バブルの下支え、現役世代の虐待だ 12/20
また岸田政権の「違和感」のある政策
岸田政権が国民の声を無視して次々と繰り出す政策は、どれも「違和感」だらけなのだが、日本経済新聞 12月7日「子3人以上世帯、所得制限なしで大学無償に 政府方針」と報道された。
もちろん、国民の「教育を受ける権利」は極めて重要だ。
憲法第26条でも「1.すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、 ひとしく教育を受ける権利を有する。 2.すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。 義務教育は、これを無償とする」と規定されている。
「義務教育」が無償であるのは当然である。だが、「非義務(自由)教育」を「受ける権利」は当然守られなければならないが、(「非義務教育」を)無償化する根拠が見当たらない。
もちろん、「非義務教育」を受ける側からすれば、「本来自己負担」であるべき費用を、国民の血税で賄ってもらえるのだからこんな「ラッキー」なことはない。その本来支払うべきであった費用を、旅行、飲食などの遊興に使うこともできるわけだ。大学ライフも父兄の生活もより楽しいものになるであろう。
だが、血税を支払う側にすれば、「無償化の費用」が新たにのしかかるだけである。無償化の恩恵を受ける側は諸手をあげて賛成するだろうが、「血税を支払う納税者」を納得させるだけの「理由」を岸田政権は示すことができるであろうか。大いに疑問である。
例えば、アゴラ 12月7日「『大学無償化』はFラン大学を延命する社会的浪費」や同12月7日「大学は教授の生活を学生が支える集金装置(アーカイブ記事)」を参照いただきたい。
国民が、等しく最低限の義務教育を受けて一定以上の教育水準が保たれていることが日本の発展に大きく寄与したことは明らかだ。例えば極端な話、字が読めない国民が多数存在すれば、文書による行政手続きや契約などの商行為が滞る。
だが、国民の血税を使って(政府の借金の場合も、最終的に支払うのは(将来の)国民である)大学を無償化することが「日本の発展」に役立つのであろうか? とてもそうは思えない。
それでなくても、2021年12月5日公開「日本は外国に借金していないからデフォルトしないというのは本当か?」などで述べたように、日本(政府)は1300兆円近い「借金」があり火の車である。
「大学無償化」は特定の人々に利益を与えるだけの行為であるように思える。
学歴バブルが崩壊する中で
それどころか、そのように「血税で大学生を増やす」行為が、5月1日公開「学歴バブルはいつ崩壊する!? ホワイトカラー無用の時代がやってくるぞ」で述べた、「学歴バブル」を加速するのではないだろうか。
費用の問題だけではなく、大学に行かず(その間)働けば身に付けることができたはずの「ビジネスマン(社会人)」としての知識を失うことにもなる。
もちろん「研究者」として生きていくのなら別だが、卒業後就職して企業で働くことを考えれば、大学教育と「企業での実地教育」のどちらが(仕事にとって)より有効かは明確ではないと思う。
確かに現在企業の出世の階段を上るのに「大卒者」の方が有利であるようだが、それはあくまで「学歴差別」であって、大学教育に(ビジネスマン養成のための)価値があるというわけではないといえよう。
大学無償化と「学生ローン徳政令」
7月14日公開「注目2024年米大統領選、バイデン民主党のごり押し政策に保守派の反旗が続々」2ページ目「噴出するごり押し政策への反発」において、バイデン政権の「学生ローン徳政令」について述べた。
岸田政権はもしかしたら、このバイデン政権の「学生ローン徳政令」を参考にしたのかもしれない。しかし米最高裁による、バイデン政権による学生ローン返済の一部免除措置を認めない判断が6月30日に下されている。
そもそも、「多額の借金」をしてまで大学(大学院)教育を受けるのは、「将来『本人にとって』(経済的)メリットがある」との判断による。つまり、株式や土地に投資をするのと同じように、「将来得ることができるはずの資金によって、投資資金を回収し、なおかつ多くの利益を得る」ことを目論むわけである。
だが、米国でも「学歴バブル」が進行し、1929年公開の映画「大学は出たけれど」のように「多額の費用をかけて大学を卒業したにもかかわらず(良い)仕事が見つからない」状況だ。少なくとも学生ローンの返済を楽々とこなせるほどの(実入りの良い)仕事ではないから「学生ローン問題」が浮上するといえる。
つまり、「学生ローン徳政令」は、「個人的な投資の失敗」であるにもかかわらず、そのローンの返済を国民の血税で尻ぬぐいする行為である。
そして、岸田政権の大学無償化は、冒頭「『大学無償化』はFラン大学を延命する社会的浪費」で述べられているように、少子化で学生が集まりにくくなっている「不人気大学」の救済措置とも考えられる。
岸田首相が唱える「少子化対策」とは、少子化によって国が衰退することを防ぐのではなく、「不人気大学への『少子化の影響』」を防ぐということなのだろうか。もし、そのようなことに国民の血税が使われるのであれば、言語道断である。
現役世代を虐待し産業を荒廃させる少子化対策
大学無償化だけではない。岸田政権が大騒ぎしている「少子化対策」は完全に間違った方向を向いている。
6月13日、政府は児童手当の拡充など子育て世帯の支援策を盛り込んだ「こども未来戦略方針」を閣議決定した。必要となる追加財源は、下記記事によれば年間3兆5000億円に上る。しかし、岸田首相は国民に実質的な追加負担を求めないと主張し、社会保障費の歳出削減などで財源を捻出する方針である。
だが、結局のところ東京新聞 6月13日「3.5兆円の財源は社会保障の歳出改革・・・少子化対策を閣議決定 『タコが自分の足食うようなもの』の声」である(参照:NHK 12月9日「少子化対策の財源確保“新たに3兆6000億円 確保で調整”政府」)。
そもそも、現役世代の負担が極端に高まっている「社会保険料」が、(少なくとも経済面で)子育て世代を痛撃している。
その現役世代の負担をさらに増やすことになりかねない社会保険料などからの捻出を想定した財源で、3兆6000億円もバラまいて「少子化対策」を行うのは、まったく合理性にかける。歳出削減分などを充てるとのことだが、これまでも遅々として進まなかった「歳出削減」が簡単にできるとは思えない。
このような馬鹿げた行為に対して、私が考えうる理由は、
1.バラマキを行えば、それに付随する大量の「利権」が生まれる
2.社会保障料や税金を減らしても新たな「利権」が生まれないどころか、「既得権益」が侵されるである。
さらに言えば、社会保険の財政がすでに「火の車」である。
NHK 12月6日「"社保倒産"が増加する懸念 政府一体で問題回避を」と報じられる。企業が倒産してしまえば、元も子もなくなるのだが、そのようなことに配慮しているとは思えない。実際、(かつて社会問題化した)「NHK並みの苛烈な取りたて」が横行しているとの話も、経営者の知人からしばしば聞く。
財政が「火の車」であるため、目先の資金確保に必死で、将来的な「保険財政健全化」への展望が描けていないように思える。
バラマキで少子化は止められない
その他にも日本経済新聞 12月8日「住宅ローン減税、子育て世帯の借り入れ上限を維持へ」などの「少子化対策」が行われているが、そもそもこのような「経済的支援」によって少子化を止めることができるのかという疑問がある。
「貧乏人の子沢山」という言葉がある。また、貧しい国の出生率が高く、経済が発展し先進国になると少子化に悩まされるということは、歴史的に明らかだといえよう。
このことは、少子化の原因がむしろ「経済的に豊かになった」ことにある事実を如実に示す。
つまり、「子育て支援」という大義名分でバラマキを行うことが、少子化対策として役に立たないどころか、むしろ少子化を加速している可能性さえあるということだ。
この一種のパラドックスに関して、興味深い実験がある。Okkinahashi氏 2022年5月14日「Universe 25 Experiments」だ。
この実験は、「人類滅亡を意味する実験:ユニバース25?」など多数のネットメディアで取り上げられているので、詳しくはそれらを参照いただきたい。しかし、誤解を恐れずに単純にまとめると、(少なくともネズミの実験では)「(楽園のような)豊かで快適な環境が与えられると個体数が減少(少子化)し、最後には滅亡」するということだ。
ただ今のところ、この大掛かりな実験の追試が行われた様子が無いので、ぜひ実現して検証してほしいものである。
やるべきことは別にある
つまり、「経済的バラマキ」を行うことが、少子化対策に役立つという科学的根拠は皆無なのである。むしろ、(ネズミの実験では)その逆を指し示している。
少子化問題は、「子育てに費用がかかるから援助する」などという単純なアプローチではなく、もっと人間の「生物的本能」や「文化的基盤」に切り込まなければ解決できない課題ではないだろうか。
だが、それでも少子化は我々にとって差し迫った問題である。
もしどうしても、少子化対策を行うのであれば、例えば不妊治療をしている人々を手厚くサポートすべきではないだろうか。不妊治療は時間も費用もかかる大変なものだが、それを行う人々は「子供を産んで育てる」ことを切望している。まず、そのような人々を支援すべきである。
あるいは「家族制度」にまで踏み込むべきだろう。フランスでは「事実婚」が広く認められており、JIJI.com 2013年12月2日「仏ファーストレディーは事実婚パートナー 写真特集」のようなケースもある。「結婚制度」も見直すくらいの覚悟が必要だということだ。
また、「養子縁組」も一つの手段である。国内の養子縁組は、国民を増やすことにはならないとの考えもあるが、海外の子供たちの養子縁組は確実に少子化対策になる。
移民問題というのは、多くの場合「違った文化で育った人々との共生」が難しいことから生じるが、赤ん坊あるいは小さいこどものころから日本で育ち教育を受ければ、そのような問題は起こりにくい。
いずれにせよ「金をばら撒く少子化対策」など、百害あって一利なしといえよう。
社会システムの「構造改革」無しに、いくら資金を投入しても無駄金であり、(そのムダ金の資金調達のために)現役世代を疲弊させるだけだ。
●岸田首相が時折涙ぐんだように…みせた小さな異変=@政権は断末魔か 12/20
臨時国会が閉会した13日に首相会見が開かれたが、会見場に現れた岸田文雄首相に小さな異変を感じた。カメラの前では常に冷静さを保つ岸田首相が、時折涙ぐんだように見えたからだ。
岸田首相は普段から決して滑舌が良い方ではない。一つ一つの言葉を頭の中で確認しながら話すタイプだ。それでも、この日の言いよどみは、ひどかった。
政権の中枢から安倍派(清和政策研究会)を外すことは、既定路線だった。
閣僚では、官房長官、経産相、総務相と農水相の4ポストを交代させた。中でも最も重要なのは官房長官で、「無派閥からの登用が必須」と言われていた。無派閥の官房長官なら、派閥のパーティー券問題とは無関係といえるからだ。
ところが、なり手がいなかったとされる。岸田首相の意中だった浜田靖一元防衛相には、あっさりと断られた。
防衛相を2度務めた浜田氏は、岸田首相と同じ1993年初当選組だ。しかし、官邸での経験が少なく、「慣れないことはしたくない」との理由で断ったという。
●「政治資金パーティ問題」の解決を岸田総理に期待するのは“酷”なのか? 12/20
自民党安倍派をめぐる裏金疑惑で4人の閣僚が辞任。その後“安倍派ゼロ内閣”が始動するも内閣支持率は過去最低を更新している。
問題を受けて4人の閣僚交代となったが、新たな顔ぶれについてJX通信社代表取締役の米重克洋氏は「代わりに入った方々はいわゆる“ピンチヒッター的な方”ばかり。政治資金も含めスキャンダル、あるいは“ツッコミどころ”をなくそうという手堅い人事だ。世論に何かしらプラスに訴えかけるのではなく、とりあえず失点を防ぐことに集中せざるを得ない実情がにじみ出ている」と分析した。
最新のANNの世論調査では、岸田内閣の支持率は政権発足以降で最低、さらに自民党の政党支持率も下がっている。
この点について米重氏は「今まで自民党の支持率は比較的安定していたが、直近の1〜2カ月でガクッと落ちている。国民は自民党自体に対して疑心暗鬼になっているのだ。一方で自民党支持層の中にも岸田総理では厳しいのではないか、と考える人も増えており、『もう何カ月ももたないのでは』と予測する人も出ている状況だ」と説明した。
さらに、「安倍派の交代で問題は解決するか?」という問いに91%の国民は「解決しない」と回答。岸田政権は現状を打開できるのか?
米重氏は「パーティ・政治資金規正法といった構造的な問題を整理して有権者が納得するような政治改革を打ち出す必要があるが、これには覚悟と政治的な体力が必要だ。覚悟はわからないが、支持率も低いため政治的な体力はあまりないだろう。この難題を岸田総理に期待するのは酷かもしれない」との見解を示した。
今後の動きについて米重氏は「別の方を総理大臣として選んだとしても、支持率がそれについてこない。結果、選挙で負けるということが起こり得る。今後、4月にはいわゆる衆参補欠選挙があるが、自民党が大敗するなどのリスクにも直面する可能性がある」と述べた。
●「次の総選挙、岸田総理では難しい」 小泉元首相ら会食、二階氏欠席 12/20
小泉純一郎元首相と自民党の山崎拓・元副総裁、武部勤・元幹事長、亀井静香・元政調会長が19日夜、東京・銀座の日本料理店で会食した。二階派を率いる二階俊博・元幹事長も出席する予定だったが、政治資金パーティーをめぐる問題で同派事務所が東京地検特捜部の家宅捜索を受けたため、急きょ欠席したという。
山崎氏は会食後に記者団の取材に応じ、岸田政権の今後について「(内閣支持率が)回復しなければ、次の総選挙を岸田総理のもとで戦うことは難しい」と4氏の認識は一致したと説明。「ポスト岸田」として石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相、上川陽子外相の名前が挙がったとした。
小泉元首相が「『50歳になるまでは(党総裁選に)立ってはならない』と(進次郎氏に)申しつけてある」というエピソードを語ったことも明らかにした。
●「裏金問題」安倍派の解体、岸田政権の崩壊 自民党政治が存亡の危機 12/20
派閥の巨額の裏金作りが明らかになり、岸田文雄政権は崩壊寸前に追い詰められている。裏金問題で、自民党政治が終焉を迎えようとしている。
岸田文雄首相は14日、安倍派出身の閣僚4人、松野博一官房長官、西村康稔経産相、鈴木淳司総務相、宮下一郎農林水産相を更迭、それぞれの後任に林芳正、斎藤健、松本剛明、坂本哲志各氏を任命した。安倍派の副大臣5人と政務官1人も交代。萩生田光一政調会長、高木毅国対委員長も年内には更迭される。安倍派内には「人身御供だ」という不満が募っているが、当面は岸田首相の判断に従わざるを得ない状況だ。派閥の会長も決まらないまま、幹部間の綱引きが続いていたが、裏金問題の急展開で、今後は分裂・解体に向かう可能性が大きくなった。
首相退陣「あり得る」
「安倍派切り」で難局をしのごうという岸田首相だが、これまで安倍派に依存していた姿勢を一転したことには、安倍派以外からも批判が出ている。12月14日に発表された時事通信の世論調査(8〜11日実施)によると、岸田内閣の支持率は前月から4.2ポイント低下して17.1%。ついに、2割を割り込んだ。この状態で自民党内の不協和音を抱えたまま、年明けの通常国会を乗り切れるとは思えない。「ポスト岸田」をうかがう石破茂元幹事長は、来春に24年度予算を成立させた直後の首相退陣も「あり得る」と語っている。
安倍派の解体、岸田政権の崩壊にとどまらない。自民党政治が存亡の危機にある。
この10年、安倍晋三氏が中心に進めた政治は、民主党政権を厳しく非難し、アベノミクスによる金融緩和で大企業の業績を回復させた。大企業が多額のパーティー券を購入してきたのは、その「返礼」とも見える。また、安倍氏は集団的自衛権の容認を柱とする安全保障法制を、野党や憲法学者が反対する中で、強引に成立させた。それらの実行部隊となったのが最大派閥の安倍派だった。
その安倍派勢力の拡大と維持に、派閥パーティーの裏金が使われていたことは明らかだ。そうした体質をどう改めるのか。岸田首相は13日の記者会見で「自民党の体質を一新すべく、先頭に立って戦っていく」と述べた。岸田首相が決意を貫き、自民党の改革が進むのか、それとも言葉だけに終わって、改革が実現せず、自民党政治が終焉の道を歩むのか。結論が出る時期は遠くない。
●捜査中も…パー券問題、黙っているだけでは国民の政治不信が深まるばかり 12/20
自民党派閥のパーティー券問題が、連日報道を賑わせている。既に、東京地検が告発を受けて捜査中であり、国会閉会後、関係者の事情聴取など捜査が本格化しているといわれている。
下落傾向にあった内閣支持率は、パーティー券問題に関する報道が拍車を掛けている。このまま政治不信が拡大すれば、岸田文雄政権の維持すら困難になりかねない事態である。
もちろん、捜査中の案件であるから、今は任意の事情聴取であったとしても、捜査を攪乱(かくらん)したり、証拠を隠滅したりするような言動がうかつになされれば、強制捜査に至る可能性も排除できない。案件に対する言及も政治家には慎重さが求められる。
しかし、口をつぐみ、捜査を傍観しているだけでは、ますます、国民の不信感が深まるばかりである。
報道によれば、安倍派が派閥ぐるみで組織的にパーティー券収入のノルマを超えた分を派閥の議員たちに「キックバック」し、いずれの収入も支出も政治資金規正法に定められた「収支報告」をしないまま長い間継続していたのではないかと指摘されている。
●パー券裏金疑惑で揺れる自民党… 岸田政権のキーマンは麻生氏だ 12/20
政治資金パーティー券の裏金疑惑で大揺れの岸田政権を政治ジャーナリストの青山和弘氏が解説した。
終わりの見えないパーティー券問題に揺れる自民党だが、特に最大派閥の安倍派は5年間で約5億円ともみられる議員へのキックバックが裏金化されていた疑いがあり、東京地検特捜部は所属議員の一部を任意で聴取を始めるなど、成り行きが注目されている。
現在の「自民党内の力学」について青山氏は、「いま三頭政治といって、岸田さんはこの(麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長との)3人で岸田政権というのは基本動いている状況。ただ茂木さんが今回この問題が起きて『岸田さんが倒れれば次は自分じゃないか』ということで、やはりこの問題解決に対する動きが鈍い」と、岸田総理と茂木氏の関係は完全に冷え切っていると説明。「そのなかで岸田さんが頼りにしているのが麻生(太郎)さん。麻生さんに全部相談しているような状況になっており、麻生さんもかなり岸田さんにいろいろな指示をしている」と、岸田総理の麻生氏に対する「依存関係」が非常に強まっているのだと語った。
安倍派については「安倍派を一掃して、安倍派の人たちが完全に岸田さんに対する信頼関係を失っている。『ふざけるな』みたいになっているので、非常に岸田さんの政権基盤は厳しい状況」と説明。
また、非主流派については「菅(義偉)さんが今回の問題を表ではあまり言っていないが、かなり批判的な発言をしてきている。岸田さんと菅さんの間は冷え切っている。森山(裕)さんという人だけ、いま総務会長ということで岸田さんは信頼を置いているが、非主流派、小泉(進次郎)さんそして石破(茂)さんにつながる人たち、このあたりがどう今後“反岸田“の動きを出してくるのかどうか。ここが大きなポイントになってくる」と語った。
元衆議院議員の宮崎謙介氏は、麻生氏がキーマンになるとして「最終的に麻生さん以外に頼る人がいないというのは間違いない」とコメント。
青山氏は、麻生氏が「岸田さん、もうそろそろお疲れさん。ここで引いたほうがいい」という立場になれば、岸田政権は崩壊するとして「麻生さんの存在が大きくなってきている。見限ったら終わり」と解説した。
●「日銀の金融政策」の行方が大きな焦点に 2024年の「日本経済」見通し 12/20
景気は現状足踏みしているが、下振れ懸念は少なく、物価はコストプッシュ圧力が緩和しつつある
2023年7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率-2.9%(改訂値)と、4四半期ぶりのマイナス成長となりました。物価高による個人消費の弱含みや、在庫調整、海外景気の減速などが重しとなり、景気は足踏み状態にあると思われます。ただ、12月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、幅広い業種で景況感が改善し、堅調な設備投資計画も確認されていることから、景気の下振れ懸念は少ないと考えます。
一方、物価に目を向けると、10月の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年同月比+2.9%となり、伸び率は4ヵ月ぶりに拡大しました。ただ、これは電気・ガス料金の補助縮小が主因であり、11月の東京都区部のコアCPIでは、前年同月比の伸び率が+2.3%と、16ヵ月ぶりの低水準まで鈍化していることから、輸入物価の上昇を起点とするコストプッシュ型の物価上昇圧力は、緩和しつつあると判断されます。
来年の景気は経済活動再開や賃金上昇などで回復基調に戻り、インフレは鈍化傾向継続とみる
先行きの景気については、経済活動の再開、物価上昇圧力の緩和、賃金の上昇(弊社は2024年の平均賃金上昇率を4.0%と予想)などにより、回復基調に戻るとみています。実質GDP成長率は前期比年率で2023年10-12月期が+1.1%、2024年1-3月期が+1.1%、4-6月期が+1.6%、7-9月期が+1.7%、10-12月期が+0.6%、2025年1-3月期が+0.7%で(図表1)、2023年度は前年度比+1.6%、2024年度は同+1.1%を見込んでいます。
   [図表1]日本の実質GDP成長率の予想
国内の物価は、前述の通り、コストプッシュ圧力が緩和すると考えており、伸び率は基調的に鈍化するとの見方を維持しています。コアCPIの前年同期比伸び率は、2023年10-12月期が+2.5%、2024年1-3月期が+2.4%、4-6月期が+2.4%、7-9月期が+2.2%、10-12月期が+1.8%、2025年1-3月期が+1.7%で(図表2)、2023年度は前年度比+2.7%、2024年度は同+2.0%を予想しています。
   [図表2]日本の消費者物価指数上昇率の予想
日銀は来年4月にYCC撤廃とマイナス金利解除を決定、その後はゼロ金利政策を長期間継続へ
2024年は日銀の金融政策の行方が大きな焦点になると思われます。弊社は、日銀が3月中旬に迎える春季生活闘争(春闘)の集中回答日における賃上げ傾向の継続を確認した後、4月25日、26日の金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃とマイナス金利の解除を決定するとみています。また、その後は当面、ゼロ金利政策が続く可能性が高いと考えています。
以上が弊社の基本的な見通しですが、下方修正につながるリスクとして、1国内の物価高が長期化し、かつ、賃金が期待されたほど伸びず、家計の節約志向が一段と強まること、2国内の政局が不安定化すること、3ウクライナ情勢、中東情勢、東アジア情勢など、国際情勢の緊張が高まることなどが挙げられます。ただ、弊社では、これらの生起確率は20%程度を想定しています。 
●驚きの林官房長官人事、岸田政権の「だらだら」ぶり 12/20
自民党派閥のパーティー券疑惑は岸田文雄政権に痛撃を与えた。松野博一官房長官や西村康稔経産相ら安倍派の閣僚が内閣から一掃された。
最新の世論調査では、内閣支持率が20%を切るという結果も出ている。だが、岸田政権自体に与える影響は限定的だ。実際に党内では、「岸田降ろし」的な様子はない。自民党が危機感を持っている雰囲気も感じない。国民の眼は厳しいのに、政権自体はだらだら続いている感じだ。
安倍派の代わりに登用した閣僚の面々はまさにその「だらだら」ぶりを典型的に示している。特に林芳正官房長官の人事だ。まさか内閣の顔ともいうべき官房長官で登場するとは思わなかった。他になり手がいなかったという説や、また「ポスト岸田」に意欲がある林氏を閣内に封じ込めるという思惑などが指摘されている。だが、いまのこのタイミングで林官房長官はないな、と私は思う。
岸田首相には、常に「増税・負担増」を打ち出すのではないかというレッテルが貼られている。実際には、防衛増税は税収増によってどんどん先送りになっている。むしろ所得減税など久しぶりに大型減税が景気対策として実施される予定だ。実際にやったことと、評価が食い違っている面は確かにある。
だが、国民の多くはやがて大規模増税に転じるのではないか、と警戒している。またいわゆる「ステルス型増税」も多い。典型的にはインボイス(適格請求書)の導入や扶養控除の縮小である。扶養控除の縮小は「異次元の少子化対策」である児童手当の拡充とセットだ。支援を増やす一方で、支援を減らす。典型的な財務省の「均衡予算」の発想だ。子育て支援はより積極的に、長期国債の発行で手当てすべきだろう。
林官房長官の話に戻る。10年余り前に、自民党の政調会長代理だった林氏とラジオ番組で共演した。その時、林氏は「景気回復を待ってると増税できなくなっちゃう」という趣旨の発言をした。
景気回復すると税収が伸びるので、増税することが困難になるということだと受け取った。増税しないで済めばそれに越したことはない、という国民目線を理解できないのだろう。いまも林官房長官は、党内での緊縮財政派の代表メンバーとして知られる。おそらく当時と考えは同じだ。
「中国寄り」との批判も多い。官房長官は内閣のイメージ戦略を引き受けている。その意味でも「緊縮派」「中国寄り」というイメージは、岸田政権にはさらにマイナスだろう。だが、消費税の減税に消極的な立憲民主党をはじめ、野党に支持が集まらないなか、いまの与党体制は、このままだらだら締まりなく、当分は続くのだろう。これは日本にとって好ましい政治状況ではない。
●傷口広げた岸田首相の責任 自民党派閥パー券疑惑 幹部からの警鐘放置 12/20
自民党派閥のパーティー券疑惑で、東京地検特捜部が、自民党安倍派(清和政策研究会)議員に対する任意の事情聴取に着手した。19日にも強制捜査に入る方針とも伝えられる。清和研は創始者である福田赳夫元首相が「政清人和」の願いをこめて名づけた政策集団だったはずだが、非主流から主流派閥に転じて以降、強引な派閥運営を続け、今回の裏金疑惑につながったといえる。この際、徹底的に膿を出して全容を明らかにし、出直しを図るべきだ。
岸田文雄首相は先週、安倍派の有力者「5人衆」を、政権と自民党の要職から一掃したが、その過程ではこの問題の実態把握を無視した人事が行われようとしていた。個々の議員が派閥からパーティー券収入のキックバック(還流)を受けたかどうかの事実関係を把握せずに、同派所属の政務三役15人を外そうとしたのだ。実態の精査よりも政治的なアピールを優先させたようにも映りかねない。
実は、官邸幹部らが今年10月ごろから、岸田首相に「対処しなければ大変なことになる」と警鐘を鳴らし続けていたという。だが、岸田首相は調査に乗り出すなどの動きを見せなかった。放置したことで傷口が広がった面もある。
神戸学院大学の上脇博之教授が自民党5派閥を刑事告発し、報道各社が11月から報じ始めてから、大慌てして自らも派閥を離脱し「安倍派斬り」で事態を打開しようとした。
岸田首相としては「最大派閥を一掃すればインパクトがある」と思ったのかもしれないが、非主流派だけを切り捨てても、国民の求めるクリーンな政治実現にはつながらない。
現に、自民党側から「政務官がキックバックを受けていたのかどうか個々に調べたのか。調べないで人事を行うとしたら暴挙だ」と官邸側に指摘があった。その後、政務官の一部にキックバックの事実がなかったことが確認され、政務官6人中5人が留任した。
岸田首相には「疑惑の本質」に迫ろうとする動きがみられない。「自民党5派閥への刑事告発の中身」「なぜ、キックバックが行われたのか」「安倍派以外の派閥はどうだったのか」「どうすれば自民党の膿を出せるのか」について徹底調査して、改革に踏み出すべきだ。
岸田政権はこの結果、「泥船」状態となった。内閣支持率は10%台に下落した。後任閣僚を決めるのに難航し、打診はしたものの断られたケースがあったと伝えられている。
今回の疑惑を通じて大きな傷を負った安倍派「5人衆」では、萩生田光一政調会長の存在感が注目された。岸田官邸の機先を制するように、「人事は首相の専権事項だが、出処進退は自分で決めたい」と、辞任の意思を明らかにした。
疑惑でズタズタとなった自民党だが、目を引く若手議員の動きもあった。
党内の中堅・若手の有志議員が14日、憲法改正の早期実現を目指す議員連盟を設立して国会内で初会合を開いた。衆院4期、参院2期以下の議員を対象に参加を呼びかけ、約60人が入会したという。中堅・若手議員には「政治とカネのあるべき姿」についても忌憚なき意見を発信してほしい。
岸田首相は原点に立ち返り、例えば総裁直属の機関を作るなどして抜本的な改革に乗り出すべきではないか。「国民の信頼回復へ、火の玉となって自民党の先頭に立ち、取り組んでいく」と述べた具体策を迅速に国民に示すべきだ。そして若手の動きに応え、結党以来の自民党の党是である「現行憲法の自主的改正」に向かって、身を捨てて取り組むべきだろう。
●「油断や慢心があった」自民党元幹部職員が指摘 パーティー券問題 12/20
自民党の派閥の政治資金パーティーを巡る問題は岸田政権を揺るがしています。自民党を知り尽くす元幹部職員が取材に答え、自民党に「油断や慢心があった」と厳しく指摘しました。
安倍派・二階派、2つの派閥事務所に行われた“強制捜査”から一夜。二階派の小泉法相は20日、二階派を退会したと明らかにしました。
自民党・二階派 小泉法相「国民の目からみたときに誤解生じないようにしようと、そういう考え方で派閥を退会することに致しました」
検察に対する指揮権を持つ法相を、捜査を受ける二階派の小泉氏が務めるのは不適切との声が上がっていました。
同じ二階派に所属している自見地方創生担当相は…
記者「派閥を退会するお考えはありますでしょうか?」
自民党・二階派 自見地方創生相「…」
記者「続投の意思は変わりませんか?」
自民党・二階派 自見地方創生相「…」
一方、安倍派を巡っては、会計責任者が特捜部の任意の事情聴取に対し、所属議員にパーティー券収入のノルマ超過分をキックバックしていたことについて、「収支報告書に記載しないといけないことはわかっていた」などと、不記載を認める供述をしていることが関係者への取材でわかりました。
会計責任者が違法性を認識しながら、長年にわたり組織的に不記載を続けていた可能性もあるとみられています。
政界を揺るがす“政治と金”の問題。
永田町を知り尽くす、自民党の元事務局長、久米晃氏が取材に答えました。久米氏は40年近く自民党で選挙対策を担い、“選挙の神様”と呼ばれる人物です。
今回の政治資金パーティー問題については…
久米晃氏「やはり限度を超えています。おごりだったり、油断だったり、慢心だったり、野党がだらしないとか、いろいろな理由があると思います。自民党は結構苦戦しても政権交代が起こるわけがないよなという、一つの油断、慢心じゃないですか」
さらに、岸田政権の解散戦略を巡っては…
久米晃氏「岸田総理に対する信用・信頼を失っているから、何を言っても『何言っちゃっているの?』って話になるわけじゃないですか。まず、諸課題が一体何なのかということをもう一度総ざらいして、まず、結論を出せるものから早めに出して、信用・信頼を回復して、それで初めて本当の政策的なことに対して、この人の言っていることだったら間違いないよなと、そういう気を持ってもらわなければ選挙なんか打てません」
――このままの状態で行けば、岸田首相の総裁再選は?
久米晃氏「ありませんね」
――厳しいですね
久米晃氏「常識ですよ」
政権発足以来、最低水準の内閣支持率が続く岸田政権。岸田首相は、今後、政治資金規正法の改正も含め検討する考えですが、国民の信頼は取り戻せるのでしょうか。
●高校無償化、東京都の「独走」で何が起きる? 小池都知事の思惑 12/20
東京都が高校教育の実質無償化に乗り出した。国政においても教育無償化が再び注目を集めており、解散総選挙や場合によっては政界再編も取り沙汰されるなか、教育政策が政局の引き金となる可能性も出てきた。
小池百合子都知事は2023年12月5日、都議会の所信表明において、私立高校も含む全ての高校の授業料を実質無償化する方針を明らかにした。これまで都の授業料助成には所得制限が存在していたがこれを撤廃する。加えて給食費の支援も行うとしており、都政として教育支援を強化する流れを鮮明にした。
小池氏はもともと教育無償化を強く主張していたことや、24年夏に知事選が控えていることもあり、所得制限の撤廃はある程度予想されていたものの、このタイミングでの表明にはもう1つの狙いがあったと考えられる。それは国政に対する自身の影響力の維持である。
所信表明において小池氏は、教育支援は本来、政府主導で行うべきと発言しており、国政への注文がセットになっていた。ほぼ同じタイミングで岸田政権が多子世帯の大学無償化を含む「こども未来戦略」を打ち出し、国民民主党の前原誠司氏が「教育無償化を実現する会」という新党結成を表明するなど中央政界でも無償化をめぐって動きが活発になっている。
岸田政権は末期症状を呈しており、最大派閥である安倍派幹部が一斉に捜査対象となるなど、政権崩壊や場合によっては政界再編の可能性すら取り沙汰される状況だ。こうした時期にあえて国政に対する注文という形で小池氏が無償化を掲げたということは、今後、国政でもこの問題がカギを握る可能性について示唆するものと言えるだろう。
東京都への人口集中を加速させる?
これまで教育無償化は何度も議論されながら、内容が二転三転してきたという経緯がある。子育て世帯や教育に熱心な世帯を中心に大きな支持を集める材料となり得る一方、全ての人が同じ条件で学校に通えることについて異議を唱える人も存在している。
加えて無償化政策は財政負担が大きく、政府主導で一気に無償化を進められない事情があり、そうであるが故に、政局の材料になっていた面があることは否定できない。
今回も選挙に関係した動きであることは間違いなく、本格的に日本全体が無償化に舵を切るきっかけとなるのかは何とも言えない。
単なる選挙目当ての掛け声で終わった場合、東京都のように財政的に余裕のある自治体だけが率先して無償化を進める流れとなり、近隣自治体との格差が広がる可能性が出てくる。実際、埼玉県民や千葉県民の中からは都内に転居したいという声も聞こえてきており、東京都への人口集中を加速させるかもしれない。
教育格差に関しては、東京都港区が区立中学の海外修学旅行について、1人当たり40万円の支援を行ったことが全国的にも大きな話題となった。豊かな地域に住む人が良い教育を安価に受けることができ、格差是正の役割が期待される公教育も、高所得地域のほうが充実しているという流れになると、公教育の在り方そのものが問われかねない。
小池氏による無償化方針の表明は、単なる都民に対する支援策にとどまらず、中央政界の動向や日本の人口動態、教育の機会均等など、より広範囲なテーマを含んだものと言えるだろう。
 12/21

 

●森喜朗氏は身を隠し、麻生太郎氏は弔辞で「もうすぐ行きます」…「自民党葬」 12/21
12月20日の午前11時から、東京・中央区の築地本願寺で、自民党と保利家の合同葬がおこなわれた。11月4日に死去した元文部大臣・保利耕輔氏(享年89)の葬儀だ。
「1979年に死去した父の地盤を継いで政治家になった保利氏は、岸田文雄首相の父である岸田文武氏や麻生太郎氏が当選同期です。
海部俊樹内閣に文部大臣で初入閣したほか、小渕恵三内閣、森喜朗内閣では自治大臣に任命されています。
また、自民党政調会長なども歴任し、2014年の解散総選挙で政界を引退するまで、自民党の重鎮の一人でした」(政治部記者)
それらの功績を称えて、自民党としても保利氏の「党葬」を決めたのだが、まさか党を揺るがす大問題のさなかに開催されることになるとは――。
「連日報道されている政治資金パーティーの裏金問題ですが、最初に大きく報じられたのは11月初旬でした。その時点では、自民党としては『そこまで大きな問題にならない』と思っていたのかもしれません。
しかし、合同葬の前日となる19日には、東京地検特捜部が安倍派と二階派の事務所を強制捜査しました。
そのためか、この日に参列した大物議員たちは、単に葬儀というだけでなく、暗いムードだったように感じました」(前出・政治部記者)
岸田首相を始め、300人以上が参列した合同葬だったが、他の参列者に先だって会場に現れた大物がいた。
焦点の「安倍派」で6代目会長を務めた森喜朗元首相だ。
高級車から降りた森氏はすぐに車椅子に腰掛ける。お付きの人物に車椅子を押されながら合同葬の会場に入ると、一人だけ焼香を済ませ帰宅していったのだ。
「かなり脚が悪いようでしたから『迷惑がかからないように』と先に済ませたのかもしれませんが…。
車椅子を使っている様子をほかの議員に見られたくないのか、隠れるように焼香を済ませたようにも感じました」(取材したカメラマン)
福田康夫元首相、河野洋平元自民党総裁、大島理森元衆議院議長らすでに政界引退した面々も続々と姿を見せていた。
「合同葬で弔辞を読んだのは、保利氏と当選同期でもある麻生氏でした。
甘党だった保利氏との思い出を振り返り、『私ももうすぐそちらに行きます。保利先生の故郷(地盤の佐賀県)の銘菓である松露饅頭を持っていきますよ』と語る場面があり、驚きました。
次の選挙では政界引退すると噂されてきた麻生氏ですが『老い先短い』と考えているなら、本当に次は出馬しないつもりかもしれません」(前出・政治部記者)
時期が時期だけに、さまざまな思惑が交差する葬儀となった。
●緊急アンケートで選ばれた「次の首相」 断トツ1位の自民党議員とは? 12/21
裏金問題を受け、岸田政権の支持率がいよいよ危険水域に入っている。各社の世論調査では10%台のメディアもあった。国民の批判は根強く、岸田政権の退陣を求める声も日々強まっている状況だ。そこでAERA dot.ではインターネットによる緊急アンケート「次の首相は誰が良いか」を実施した。結果を見た専門家は「国民が政治に何を望んでいるかがうかがえる」と話した。どんなことを望んでいるのだろう。
アンケートは12月13〜15日。記事やSNS、メルマガなどを通じて回答を呼びかけた。設問は2問で、「次の首相には誰が相応しいと思うか」、「その政治家を選んだ理由」をそれぞれ記述式で尋ねた。回答数は719件(男性505件、女性189件、その他・無回答25件)だった。では早速アンケート結果を見ていこう。
ランキングの上位を見ると、1位は自民党の石破茂衆院議員で208件。2位は97件でれいわ新選組代表の山本太郎参院議員、3位には63件で自民党の高市早苗衆院議員、4位には28件で同・河野太郎衆院議員、5位には25件で同・小泉進次郎衆院議員が続いた。
専門家はこの結果をどう見るか。
政治ジャーナリストの角谷浩一さんは「国民がいまの政治に何を望んでいるのかがうかがえる結果だ」と見る。
「その政治家を選んだ理由」を見てみると、その政治家にどのようなことを期待をしているがあるのかが見てくる。石破氏を選んだ回答者からは、〈清廉潔白な印象、反骨心があり応援したくなる〉〈しがらみが無さそう〉〈常に正論を述べる姿勢が好ましい〉〈思慮深く、自分の哲学、信念を持っている〉といった回答が目立った。
小泉議員を選んだ理由でも、〈クリーンなイメージがあり、ストレートな言動が出来そう。派閥のシガラミに左右されない気がする。悪い体質を打破してくれそうな人材〉〈当たり前の行動では改革は不可能だからカンフル剤的な父親譲りの行動を期待〉
河野議員を選んだ理由でも、〈実行力がありそう。今までの自民党政治家にはいないタイプ〉〈お金とかに対してクリーンなイメージ〉〈古い政治屋とは一線を画す若い政治家であり、かつ新しい視点を持っているように思える〉といった声が上がっていた。
高市早苗議員には、〈的確な判断力のある女性だから〉〈派閥に冷遇されていたから、思いっきりやれる可能性がある〉〈国家観がある、日本を立て直すにはこの人しかいない〉
上川陽子議員を選んだ回答では、〈時代を変えるのは常に女性〉〈女性の目線でいい政治してくれるという期待〉〈そろそろ日本でも女性が首相に就任し、世の中の雰囲気を変えて欲しい〉〈バランスが良い。教養がある。このあたりで女性が首相になるべき〉といった声が集まっていた。
山本太郎、泉房穂に集まる期待
野党・無所属系の議員にはどういった期待が集まっていたのかも見ていこう。2位に入った山本氏の回答者では、
〈庶民の苦しみを街中質問で聞き回っているから〉〈しがらみがなく、市民目線にたった仕組みに変えてくれそう〉〈何のしがらみも無く国民目線の素晴らしい国会質問をしている〉などの回答があった。
次いで多かったのは、17件で9位に入った前明石市長の泉房穂氏だ。枝野幸男、小沢一郎など立憲民主党の重鎮を押さえて上位に入った。明石市で少子化対策に力を入れ、出生率を改善させた実績がある。泉氏を選んだ理由を見てみると、〈真っ当な考えを持って即行動できる人がこの人しかいない〉〈政治家としての哲学をしっかり持っているうえ、国民目線の政策立案と実行に実績がある〉〈国民を犠牲にしない〉〈国家行政に手腕を振るわれることを期待〉といった回答があった。
角谷さんはこう話す。「自民党でも野党・無所属系でも、おカネにクリーンで、今までの政治を変えてくれそうな、期待感を抱かせてくれる政治家が選ばれている印象です。『政治をこういう状況に変えていかないといけない』という国民の危機意識が表れているように見えます。『安全運転より突破力』がいまの政治には求められているように感じます」
安倍派5人衆の名前は挙がらず
こうした変化は、今回のアンケートでまったく挙がらなかった政治家を見ても表れている。
自民党で影響力を持ち、「安倍派5人衆」と呼ばれる、松野博一衆院議員、西村康稔衆院議員、萩生田光一衆院議員、高木毅衆院議員、世耕弘成参院議員には、1件も回答が寄せられなかった。
また、ポスト岸田としてたびたび名前が挙がってきた茂木敏充幹事長や鈴木俊一財務相、さらには加藤勝信衆院議員、田村憲久衆院議員といった有力議員らの名前もなかった。
「派内の総裁候補といわれる安倍5人衆の誰もがこのランキングに出てこないというのは象徴的なこと。これまでの自民党の政治力学が働いていれば、5人衆の誰かの名前があがってきたはずです。『今までの自民党の力学に従ってはダメだ』という国民の意識が感じられます。こうなってくると、これまで派閥の論理で動いていた自民党総裁選も変わってくる可能性があります。今回のようなアンケートで上位に名前があがっても、派閥の論理で総裁になる可能性が低いことが多かったですが、今回は石破氏らにチャンスが出てくる可能性があります」(角谷さん)
高市氏が上位にランクされていたことについて、角谷さんはこう付け加えた。
「高市氏については女性の視点であることや、現状を変えてくれるという期待感のほかに、『安倍元首相の後継者は安倍派5人衆からではなく、高市氏』という意識もうかがえます。安倍元首相の後継者として突出した印象があります」
野党では、れいわ新選組の山本代表が2位に入っていたが、その他の野党党首への期待はどうか。
最大野党の立憲民主党の泉健太衆院議員は12件と、同じく立憲の枝野氏(16件)、小沢氏(14件)、さらには日本共産党の志位和夫委員長(13件)の後塵を拝している。
また、自民党と距離を縮めている国民民主党の玉木雄一郎党首は、7件と存在感を示せていない。日本維新の会の馬場伸幸代表という回答はなかった。今回のアンケートでは、政治家の中から選んでもらうという条件だったが、元代表の橋下徹氏という答えが6件、日本維新の会共同代表の吉村洋文大阪府知事も2件入っていた。日本共産党のホープとされる田村智子参院議員は8件を集めた。
角谷さんは、「立憲の泉代表も国民の玉木代表も国民から首相の器があるとは見られていないことがうかがえます。日本維新の会は勢いがあると言われていますが、『身を切る改革』を訴えて世論の関心を買っているものの、国を任せたいと思える議員がいないというのが現状なのでしょう。反対に枝野氏、小沢氏、志位氏、田村氏らは、これまでの実績や言動を踏まえて、政治を変えてくれるんじゃないかという期待が表れているのだと思います」との見方を示す。
自民党は変わることができるのか。国民の期待するものがどこまで実現されるのか。日本の政治が岐路に立っていると言えそうだ。
●日本の政治が根底から覆る公算、世界に波及も 12/21
日本を大きく揺るがした戦後最大の政治スキャンダルは、田中角栄元首相が受託収賄罪などで有罪判決を受けたロッキード事件だ。事件に憤りを感じたポルノ俳優が政界の大物フィクサーの自宅に小型機で突っ込む事件もあった。
ロッキード事件の発覚から半世紀が過ぎようとする今、長期政権を維持している自民党を裏金疑惑が直撃している。今回の疑惑を単なる政治資金の記載漏れという問題として片付けてはならない。
裏金に関与し、将来の首相候補と目される多数の議員を巻き込んだこの疑惑は、米国の最も重要な同盟国である日本の政治システム全体を根底から覆す可能性がある。
「奇妙な日本」という語り口で日本を報じることの多い世界のメディアは、このスキャンダルにまだあまり関心を示していない。しかし、日本政治の専門家で安倍晋三元首相の伝記作家であるトバイアス・ハリス氏は最近、これは「一世代に1度の政治危機」であり、広範囲に影響が及ぶ公算が大きいと指摘した。
何人もの有力議員が政治資金パーティーの収支報告を正しく行わなかったという疑いで、検察はすでに自民党の2つの有力派閥の事務所を捜索。刑事告訴や逮捕もありそうだ。
遅かれ早かれ、この事件で岸田文雄首相は終わりを迎えるだろう。岸田氏の不人気は前代未聞と言っていい。毎日新聞の世論調査では、内閣不支持率が80%近くに達し、1947年の調査開始以来最悪の結果となった。
岸田氏の不正疑惑への直接的な関与は、今のところほとんど伝えられていないが、岸田派も関係しているのではないかという報道もある。いずれにせよ、国民の非難は岸田氏に向かっている。急きょ実施した内閣改造で安倍派議員を切り捨てたが、支持率回復にはほとんど寄与しなかった。
リスク
有力なライバルが不在で、潜在的な挑戦者も政権支持率がこれほど低いと表に出ようとするのをためらうだろう。そのため、岸田氏はまだ当面は持ちこたえるかもしれない。
国政選挙の予定は2025年までなく、国会議員が議席を失うリスクはまだ差し迫っていないと思われる。しかしその間に、岸田政権の人気は低迷し、最近打ち出された一時的な定額減税のような、あからさまな選挙対策への道が開かれる。
党内最大派閥の安倍派を内閣から外すことは、リスクを伴う。一つは英国の保守党が欧州連合(EU)離脱後にEU残留を支持していた議員を排除したように、スキャンダルを免れた議員が最重要ポストに最適な人材であるとは限らないことだ。
もう一つは失うものがほとんどない派閥が跋扈(ばっこ)し、岸田氏であれ誰であれ、権力を不安定化させる可能性があることだ。自民党という大所帯の大半から支持を取り付けなればならないのが党首脳だ。良い政策を作るのは難しくなるだろう。
次のリーダーを輩出すると意気込んでいたであろう安倍派が傍流となったことで、岸田氏が政権を投げ出した場合、あるいは来年9月に予定されている総裁選で、党内の支持固めも難しくなる。
今こそ、2001年の小泉純一郎氏のようなリーダーが登場する時ではないかとの見方もある。そうなれば、河野太郎デジタル相のような改革派や、菅義偉前首相を後ろ盾をとする小泉元首相の次男、小泉進次郎元環境相のような人物が推されるかもしれない。
小泉政権時代は、その大胆な改革と戦後最長の好景気の一つとして懐かしく記憶されている。あるいは、小泉政権後に首相交代が相次いだような時代に日本が逆戻りする恐れもある。
政治の安定は国際舞台で日本の存在感や外国要人との個人的関係を深めるのに効果的だ。特に、日本の政界で2000年代後半に見られた絶え間ない混乱の中で、米国は日本と付き合うのが難しいと感じ、このことは間違いなく日本に不利益をもたらした。
岸田氏が首相を退けば、防衛や半導体投資といった重要な政策は後任が引き継ぐことになるだろう。ただ、岸田氏の実績を過小評価してはならない。
安倍氏も首相当時、防衛予算の倍増を目指していたが実現できなかった。防衛費の増額分をどう捻出するかは考えていないとしても、岸田氏は防衛予算を重要政策に据えたのだ。逆に、党の結束に腐心した岸田氏は首相就任前にうたっていたリベラルな経済政策を後退させざるを得なかった。
ポピュリズム
スキャンダルは金融政策にまで影響を及ぼす可能性がある。日本銀行の植田和男総裁は19日の記者会見で、その影響について触れなかったが、アナリストらはすでに金融緩和を支持する安倍派の存在感が小さくなれば、日銀がマイナス金利を終了しやすくなるだろうと推測している。
岸田氏、もしくは次期首相は、これ以上の混乱を避けようとするだろう。新藤義孝経済再生担当相は19日の金融政策決定会合に出席したが、この異例の行動が発したかったメッセージはこれだったのかもしれない。
さらには、連立与党の枠組みや自民党そのものさえ脅威にさらされる可能性がある。派閥を完全に排除しようという声も高まるだろう。自民党と公明党の長年のパートナーシップはしばらく荒波にもまれてきたが、これで終わりを告げることになるかもしれない。
ハリス氏が書いているように第2次安倍政権が発足した「2012年以来、日本の政治を特徴づけてきた予測可能な安定は、たぶん終わった」のだ。
日本はこれまでの10年間、多くの国をむしばんだポピュリズムの流れをおおむね免れてきた。しかし、もし自民党が議席を減らし始めれば、主流ではない政党と友好関係を結ぶことを余儀なくされるかもしれない。
他国でも起こったように、この裏金疑惑が制度そのものに対する国民の幻滅を悪化させ、より好ましくないものに波及する危険性もある。自民党の後を継ぎ主流になり得る強い野党が存在しないことが、この懸念をさらに悪化させている。
いずれにせよ、われわれは日本の政治を想定外のやり方で根本から再定義する可能性のある岐路に立っている。今回は注目する価値がある。
●今すぐやめてほしい「タレント議員」 圧倒的1位の大御所は? 12/21
参院懲罰委員会は、2月21日、NHK党のガーシー議員を本会議で陳謝させる懲罰案を全会一致で可決した。22日の本会議で採決、正式決定される見通し。ガーシー議員は、2022年7月の参院選で当選したものの、一度も国会に出席していない。
有名人の私生活を暴露するYouTuberとして知名度を上げ、国会議員にまでなったガーシー氏。YouTubeという新しいメディアを介してはいるものの、知名度を利用して国会議員になったという点では、これまでのいわゆる “タレント議員” と変わりはない。
そこで本誌は、「今すぐやめてほしいタレント議員」アンケートを、全国の20代以上の男女500人に実施。対象としたのは、元タレントやキャスター、スポーツ選手で現職の国会議員18人だ。
なお、ガーシー議員については票が集まりすぎることが明白なため、対象から除外した。まずはトップ5から。
【5位】須藤元気(元格闘家)/参院議員(無所属)50票
2019年の参院選に立憲民主党公認で立候補し、初当選。しかし2020年、都知事選で山本太郎氏を支持したことや、消費税減税を訴えたことから離党した。コロナワクチンについて「打てば打つほど感染する」と発言したことが話題になった。マスクも不要という立場を続けている。選ばれた理由は以下のとおり。
「誤った医療情報を発信し続けている」(30代女性・学生)
「新型コロナ関連で、科学的な根拠のないツイートを繰り返している」(30代女性・会社員)
【4位】生稲晃子(元おニャン子クラブ)/参院議員(自民)55票
2022年7月の参院選で初当選。11月17日、参院厚労委員会で質疑デビューし、コロナ対策を訴えた。
「旧統一教会との関係性が明らかにされていない」(40代女性・パート)
「担ぎ上げられただけのように見える。政治理念が見えない」(60代女性・主婦)
【3位】今井絵理子(元SPEED)/参院議員(自民)59票
2016年の参院選で初当選。現在は2期め。2017年に神戸市議(当時)との手つなぎ不倫疑惑を報じられている。
「スキャンダル的な話題ばかりで、政治家としての仕事が見えてこない」(30代男性・会社員)
「中学生のころSPEEDが好きで、なかでも今井絵理子のファンだった。それだけにあの不倫騒動はショックだった」(30代男性・会社員)
「初当選のとき沖縄について『これから勉強します』と答えたことは忘れません。自民党もいい加減にしてほしい」(60代女性・主婦)
【2位】山本太郎(元タレント)/参院議員(れいわ新選組)75票
2011年の東日本大震災の直後から反原発運動を開始し、2013年の参院選で初当選。「ベクレてる」発言などで福島への風評被害をもたらしたとの批判も多い。2015年には国会で喪服姿の葬式パフォーマンスをするなど、物議を醸すことが多い。
「話し方が変な宗教のような感じ。その内容も、勉強しておらず、先のことが見えていない。威圧感と声のデカさだけの人」(30代男性・公務員)
「目立つパフォーマンスばかりで、国民の役に立つ仕事は何一つしていない」(50代女性・無職)
「言動が下品きわまりない。特に福島県への数々の侮辱は許しがたく、さっさと政治の舞台から消えてほしい」(20代男性・医師)
【1位】中条きよし(元歌手)/参院議員(維新)106票
歌手としては『うそ』がミリオンセラーとなり、ドラマ『必殺仕事人』(テレビ朝日系)でも人気に。2022年の参院選で初当選したが、2022年11月、国会で新曲やディナーショーを宣伝するという、まさかの行為に批判が集中。また年金も数十年間未納で、「年金なんていらない」と主張した。
「国会で自分の歌の宣伝をするなど、言語道断」(40代男性・会社員)
「ディナーショーの宣伝を国会でしたり、年金未納の問題もある。国会議員としての資質を欠くのは明らか」(50代男性・自営業)
「歌手としての活動に未練があるのでは? ならばすぐに辞めるべきです」(20代女性・学生)

6位には5位と僅差の47票で、元タレントの蓮舫・参院議員(立憲)がランクインしている。
「文句ばっかり言ってる。事業仕分けの『2位じゃダメなんですか』はひどかった」(50代女性・パート)
「他人には厳しいくせに、自らの二重国籍の説明責任を果たさない」(50代男性・会社員)
7位以下は、次のとおり。
【7位】丸川珠代(元アナウンサー)参院・自民/35票
【8位】三原じゅん子(元歌手)参院・自民/25票
【9位】橋本聖子(元五輪選手)参院・自民/18票
【10位】塩村あやか(元タレント)参院・立憲/9票
【10位】松野明美(元陸上選手)参院・維新/9票
【12位】青島健太(元プロ野球選手)参院・維新/3票
【13位】石井浩郎(元プロ野球選手)参院・自民/2票
【13位】朝日健太郎(元ビーチバレー選手)参院・自民/2票
【13位】青木愛(元タレント)参院・立憲/2票
【13位】杉尾秀哉(元キャスター)参院・立憲/2票
【17位】山本左近(元F1ドライバー)衆院・自民/1票
【18位】石井苗子(元キャスター)参院・維新/0票
10票以下の議員も多いが、これはこれで、存在が認知されていない可能性もありそうだ。
●「店じまい内閣」で関心は“ポスト岸田”一色 大穴は高市早苗 12/21
裏金問題が“ダメ押し”となった。各社の世論調査で支持率は軒並み過去最低を更新。SNSでは「店じまい内閣」ともいわれ始めた岸田政権ーー。すでに国民の関心は「ポスト岸田」に移っている。
元朝日新聞政治部デスクで政治ジャーナリストの鮫島浩氏は、岸田文雄首相の後継争いは“キングメーカー”麻生太郎副総理の胸先三寸だという。
「もともと岸田首相の後ろ盾だった麻生副総理は、彼を見限りました。岸田首相では解散・総選挙はできず、秋の総裁選にも勝ち抜けません。一方で、麻生ー茂木ー岸田の主流三派が権力を握る体制は維持したい。
有力候補が少ないなかで、麻生氏がポスト岸田に担ぎ上げるのは、茂木敏充幹事長しかいませんよ。麻生氏にとって茂木氏が『ポスト岸田』の本命です」
茂木首相実現のためには、ある条件がある。岸田首相が2024年の春に辞任することだ。
「もしもこのまま、岸田首相が秋まで居座ると、自民党員の投票をカウントする正規の総裁選を開かなくてはいけません。しかし、党員から支持されていない茂木氏は不利になるでしょう。そこで、岸田首相が来春辞任し、臨時の総裁選がおこなわれれば、党員投票のない国会議員だけの投票になるので、人気のない茂木氏でも派閥の多数派を取れば勝てるのです」(鮫島氏、以下同)
来春の辞任は、岸田首相にとっても都合がいい。
「春に予算を成立させ、国賓待遇での訪米を花道にして辞めれば、それなりに格好はつくでしょう。“外交の岸田”を自認してきましたからね。実際、岸田首相は“かっこつけたがり”なんですよ。広島サミットをはじめ、メディアにパシャパシャと撮られるイベントが大好き。しかも、官房長官人事にあたり、浜田靖一氏に断られたことがかなり堪えているようです。求心力がガタ落ちしたことが、明らかになってしまいました。どこかで辞めなきゃいけないことは、本人もわかっているんです」
さて、“茂木総理”誕生が本命だとして、このシナリオには波乱要因もある。高市早苗という“大穴”の存在だ。
「高市氏は生粋の非世襲です。無派閥ですが、無派閥で安倍晋三元首相に担がれて安倍後継者の立場に立った。安倍支持層の右派言論人には熱狂的支持を集めていて、石破、小泉、河野に続く人気があります。
弱点は、党内基盤がまったくないことです。思想的に安倍氏と近いとはいえ、安倍氏が無派閥の高市氏を担いだことで、安倍派の後継を狙う五人衆は高市を毛嫌いし、遠ざけてきました。いわば嫉妬ですね」
11月上旬には、「『日本のチカラ』研究会」という名前の勉強会を立ち上げて、第一回の勉強会では13人出席して、そのうち安倍派は3人にとどまった。
「高木毅氏、松野博一氏、西村康稔氏、萩生田光一氏、世耕弘成氏という安倍派5人衆の“脅し”があったからです。心情的には高市氏を応援したい若手も、五人衆の顔色を見て、高市氏に近付けない状況があったわけです。そこに今回の事件が起きて、5人衆が全員、失脚しました。“重石”が取れたことで、安倍派の議員が堂々と高市に近付けるという状況ができたんです。
さらに安倍派の次の有力なリーダー候補は福田達夫氏です。祖父・福田赳夫、父・福田康夫という総理を2代続けて出した名門の家柄。安倍派は元々、岸信介、安倍晋太郎に連なる安倍系と福田赳夫に連なる福田系がありました。ここのところ、ずっと安倍系が強かったのですが、今回の事件で、安倍系はほぼ全滅しました。もう一度、福田系の下に再建しようという動きが出てきています。
でも、安倍チルドレンの右派は、ハト派の福田系を嫌っています。福田達夫氏がリーダーになると、右寄りの安倍派議員は、高市氏の元にさらに集まるとも考えられます」
さらに、高市氏は自民党外の応援団も得た。
「作家の百田尚樹氏が立ち上げた日本保守党が安倍晋三氏の遺志を継ぐ者として高市氏と連携する可能性があります。日本保守党は、Xのフォロワー数でも、政党別で一番になったし、馬鹿にはできません。いっぱしのグループになる可能性がある。いずれにせよ、高市氏が台風の目になるのは間違いなさそうです」
そもそも、総理が誰であれ闇金まみれの自民党に政権を握ってほしくないという国民の声のほうが多そうだが……。
●「貧乏人は結婚できず、子供は産まなくていい。他でカバーします」少子化対策 12/21
子どもが3人以上いる世帯の大学授業料を所得制限なしで2025年度から無償化。岸田政権が12月11日の「こども未来戦略会議」で従来より踏み込んだ少子化対策案を提示し議論を呼んでいる。ひとり親家庭を対象にした貧困対策メニューもあるが、そもそも子供を持てない層への対策があるわけではなく、はたしてこれで人口減少にブレーキをかけられるのか。「人口減少の根本原因は若者の貧困」と喝破し、その解決はもはや資本主義を変えるしかないと主張する『「人口ゼロ」の資本論 持続不可能になった資本主義』が、9月の刊行以来売れ続けている。著者の大西広氏に改めて話を聞いた。
同時進行する貧困化と人口減少
   人口減少の根本原因は何だとお考えでしょうか? 
「人口減」とは、要するに資本主義が「人口再生産のコスト」を払わなくなっている、ということですが、それは端的に言って若者の貧困を放置している、ということですね。
実際、1995年頃から非正規労働者が急速に広まり、その結果、実質賃金も16%減少しています。25年で16%の減少ですから、年率に直せば0.6%程度と目に見えないものになりますが、25年も続くと16%にまで大きくなる。とすると、これは生活スタイル自体の変化を伴わなければならなくなり、非婚化、子無し化へと進んでしまっています。
大きな歴史の変化の中からすれば、一夫一婦制でないと成立しない「農家」や「小売商」のような生産形態が極限まで縮小し、現在の労働では男女が別々の職場で働くこととなったこと、それによって「結婚」自体が生産様式的に必然でなくなったというのも大きいのですが、合計特殊出生率が人口置換水準である2.07まで戻る社会を想定するには、どうしてもこの「貧困による非婚化、子無し化」を阻止しなければならなくなっているとの認識が必要だと思うのです。
   少子化対策で見過ごされていることは何でしょうか? 
欧州の政策と比べて圧倒的に規模が小さいことも問題ですが、やはり本当の原因である若者の貧困の問題が無視されていることだと思います。
たとえば、結婚できた女性が生涯に産む子供の数(完結出生児数)で言っても、1970年代の2.2から現在の1.9までほとんど変わっておらず、また、大卒女子に限って言えば、この間、ジェンダー差別の解消努力や子育て支援などで出生率の上昇がみられるのですが、それでも国全体としての出生率は昨年、1.26まで下がっています。これはどういうことかというと、要するに結婚できない層、子供を持てない層が増えているということなんですね。つまり、この問題を放置して、人口減は解決しないということです。
実際、今年12月に開かれた「こども未来戦略会議」に提出された岸田政権の少子化対策案も6月の記者会見での内容とほとんど変わっておらず、そこで対策の対象とされています「すべての子ども・子育て世帯」にはそもそも結婚できない若者は入っていません。少子化の根本原因がまったく理解されていないことになります。
たとえば、どうでしょうか。子どもが3人以上いる世帯の大学授業料を所得制限なしで2025年度から無償化としていますが、これって要するに結婚できて、かつまた3人以上を産める世帯、それも全員大学まで出せる世帯への支援ですね。そういう支援自体に間違いはなくとも、どう見ても岸田政権が見ている社会階層は「中間層」ないしその上層です。「貧乏人は結婚できず、子供は産まなくともよい。他でカバーします」という戦略です。
ですが、この戦略、よくよく考えてみますと、貧困のない社会をつくろうとしない限り、今中間層が産む子供たちの何分の一かが将来の貧困層とならざるを得ません。現在の貧困層の子孫はそもそも将来にはいないわけですから、今子供を産む家庭の子孫に貧乏になってもらわないと困る、といった戦略であることになります。大きな意味では、これも「新自由主義的」な社会像ということになると思います。
詐欺と暴力」によって得た資産を正当化できるか?
   労働力を移民に依存することの問題点は何でしょうか? 
「人口を維持する」ということは「それだけのコストを払う」ということなのですが、それを多くの場合、資本主義はせず、農村からの人口移動や移民に頼ってきました。欧米の場合は特に移民ですね。
ですが、そうした安易な方法は、国内の低賃金労働者の労働条件をさらに引き下げますので、今ここで問題としている「貧困層の問題」を一層深刻化させます。そして、それがさらなる人口減を招くという最悪の循環に陥ることとなります。
ただ、問題はそれにとどまりません。今、日本のドルベースの賃金がどんどん下がっているのですが、そうなると途上国から外国人労働者が来なくなります。もっと言いますと、途上国の成長は途上国の所得水準を引き上げて、日本が外国人労働者を確保する上での障害となっています。が、これは日本が途上国の成長を不利益とする、そういう利害関係に立とうとしているということで、大きな問題をはらんでいます。「帝国主義」とはこういうことなのかもしれません。
   資本主義と新自由主義が現代日本にもたらした最大の問題は何でしょうか? 
やはり格差の拡大、貧困の拡大だと思います。私自身は、新自由主義が推進した政府の規制緩和やムダの排除はマルクスの思想とそう矛盾するものではないと思っているのですが 、格差拡大を正当化する彼らの理屈は少なくとも現代資本主義としては百害あって一利なしと思います。
実際、彼らの論理を突き進めていきますと、たとえば全米総資産の半分以上を3人が保有し、全世界の総資産の半分以上を8人が保有するという事態まで正当化してしまいます。彼らのそこまでの所得は、彼らの高い生産性によって正当に得られたものだと本当に言えるのでしょうか。資本主義では「違法」とされないものの、マルクス的に言えば「詐欺と暴力」によって得たものと言えるのではないでしょうか。
もしそうならば、彼らの資産をいっそ権力的に没収して、全米と世界にばら撒けば、3人を除く全米人口の、あるいは8人を除く全世界人口の各人の資産額は一気に倍になります。その3人や8人には申し訳ないですが、そうしたらいいのではないかと思ってしまいます。
企業は社員を思想統制している?
   資本主義を変革することに、なぜ大きな困難があるのでしょうか? 
最近強く感じるのは、企業の中での一種の「思想統制」のようなものです。実は、私は近所にある電機の大企業の早朝のビラまき行動に数か月に一度のペースで参加しているのですが、ビラを受け取ってくれる人、くれない人の分布がはっきりして大変興味深いのです。たとえば、大勢の人がずらずらと通り過ぎていくとき、前の人がビラを受け取らなければ自分も受け取ってはならない、といった自制のようなものを強く感じます。
よく中国には政治的自由がないと言われます。それはそうだと思うのですが、日本では政府がいきなり思想統制はしないけれど、企業がそれぞれの社内で強力にやっているのではないか。そのような印象を受けます。
ただ、私の本職は経済学で、そのまた数理経済学なもので、やはり人々が変革を志向するかどうかを決める諸変数は何か、というようなことが問題となりますが、そのひとつのポイントは「社会運動」のコストをどう引き下げるかですね。たとえば、2020年5月、東京高等検察庁の黒川弘務検事長の定年延長問題に対し、500万ツイートの「Twitterデモ」がそれを阻止する力となりました。また、「投票行動」でもし世の中を変えられるなら、それもまた「運動コストの引き下げ」となります。
しかし、この「人口ゼロ」問題を考えてみて考え直したことは、やはりこのまま行くと大変なことになる、との認識だと改めて思うようになりました。特に、この人口問題はある特定の人々の問題ではなく、社会の隅々への影響が大きいのです。私の小著『「人口ゼロ」の資本論』に敏感に反応していただいたメディアに財界誌や経済誌があるということにそれが表れていると思います。「貧困の放置が問題」と言っているのですが、その結果不利益を被るのは社会全体、という主張となっているからです。
   『資本論』を読み直すことの意義は何でしょうか? 
私は『資本論』は直接的な意味での「革命の書」ではないと思うのです。ただ、「資本主義の本質」を暴露した。その「資本主義の本質」とは非常に深く重い内容で、要するに自由平等の等価交換の社会でも労働が搾取されているということ、その意味で奴隷制や農奴制の社会と少しも変わっていないという本質の暴露です。現代風に言うと格差の原因、貧困の原因を理論的に解明した、ということです。
いずれにしましても、今回、私が問題として取り上げました人口減は搾取による格差と貧困が原因です。この問題を契機に再度、「資本主義の本質」を『資本論』で学び直していただければと思います。
●玉城知事「最後の切り札」空振り 代執行敗訴で苦境鮮明 12/21
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、政府が県知事の権限を行使する「代執行」訴訟で勝利した。
「民意」をてこに基地負担の在り方を問い続けた玉城デニー知事をよそに、岸田政権は事務的な対応を徹底。「最後の切り札」を封じられた玉城知事の苦境は鮮明となった。
2019年2月に行われた辺野古移設の是非を問う県民投票は、移設反対が7割を占めた。玉城知事はこれをよりどころに対話の要求と設計変更の不承認で対抗してきたが、戦略は崩れた。
第1回口頭弁論を控えた10月中旬、玉城知事は政治の師と仰ぐ立憲民主党の小沢一郎衆院議員と面会。国が代執行に至った場合、「出直し知事選をする」と述べ、改めて民意を問う意向を伝えた。だが小沢氏は、必ずしも勝算が見込めるわけではないとして反対した。
頼りの「民意」には陰りが見える。名護市長選や衆院選などでは、玉城知事を支援する「オール沖縄」候補の敗北が目立ち始めた。今年、移設断念を求めて集めた国への請願署名計22万筆余りのうち、県内分は約3万筆弱にとどまった。関係者は「思った形とは全く違った」と誤算を認めた。玉城知事は県外各地でも移設問題を訴えたが、会場にはもともと移設に反対する人が多く、関係者からは「内輪向けになってしまった」と悔しがる声が聞かれた。
大浦湾工事、契約済み
苦しい玉城知事とは対照的に政府は、県が21年11月に不承認を決めてから、粛々と代執行への手続きを踏んだ。水面下で調整に動く気配もなく、政府関係者は、安倍政権では菅義偉官房長官を中心に県側と接触を重ねたことを引き合いに「岸田政権は沖縄政策を動かす人物がいない」と指摘。防衛省関係者は「結果として既成事実化が進んだ」と語った。
沖縄防衛局は今月、辺野古崎北側の大浦湾で新たな護岸工事など4件の契約を既に締結。玉城知事が福岡高裁那覇支部の承認命令に応じない場合も、代執行を経て速やかに軟弱地盤の改良や護岸整備に入る方針だ。今後12年かかると試算される難工事を前に、政府内にも「どこかで政治家が向き合わないといけない」との声があるが、機運は乏しい。
玉城知事は、来年6月予定の県議選で再び移設反対の民意を示したい考え。だが、知事派の県議からは「(知事)与党過半数は厳しい」との見方も出る。結果次第で一層苦しい局面を迎えそうだ。
●岸田首相 あす党人事 野党 小泉法相の更迭求め攻勢強化へ 12/21
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐり岸田総理大臣は、辞表を提出している、自民党の政務調査会長と国会対策委員長の後任人事を22日に行って体制の立て直しを図りたい考えです。
一方、野党側は、二階派を離脱した小泉法務大臣の更迭などを求めてさらに攻勢を強めていく方針です。
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐり、安倍派と二階派の事務所が捜索を受けた事件に関連して、安倍派幹部の、萩生田政務調査会長と高木国会対策委員長はいずれも辞表を提出しています。
岸田総理大臣は、萩生田氏の後任に渡海・元文部科学大臣、高木氏の後任に浜田前防衛大臣を起用する方針で、22日に人事を行うことにしています。
岸田総理大臣としては安倍派の4人の閣僚らを交代させたのに続き、党の要職にいずれも無派閥のベテラン議員を起用して体制の立て直しを図り、来年の通常国会に臨みたい考えです。
一方、小泉法務大臣は二階派の事務所が捜索を受けたことから今後の捜査で誤解を招きたくないとして20日に派閥を離脱しました。
岸田総理大臣は「検察当局を所管する立場から小泉大臣本人の判断で、離脱されたものと承知している。引き続き職責を果たしてもらいたい」と述べました。
これに対し野党各党は国会対策委員長らが会談し、小泉大臣が職を続けるのはふさわしくないとして、更迭を求めていくことで一致しました。
立憲民主党の安住国会対策委員長は「小泉大臣を置いたまま通常国会を果たしてスタートできるかというと、野党各党はネガティブな反応でそう簡単ではない」と政府・自民党をけん制しました。
また野党側は、歴代の安倍派の事務総長に対し、衆議院政治倫理審査会で説明するよう要求していくほか、衆議院総務委員会など関係する委員会で閉会中審査を開催するよう求めていくことも確認していて、さらに岸田政権への攻勢を強めていく方針です。
立民 泉代表「自民党に政治改革訴える資格ない」
立憲民主党の泉代表は記者会見で「自民党に政治改革や政治資金規正法の改正を訴える資格はない。新たな政務調査会長がどのような案を持ってくるのか注視したいし、派閥の影響を色濃く受けた政策しか出してこないことも考えられる。新たな国会対策委員長が野党が求める閉会中審査を開いて政治改革に本気で取り組むのかが分かれ目になる」と述べました。
また、小泉法務大臣が二階派を離脱したことについて「検察を所掌する法務大臣が、裏金が指摘される派閥の中で長く、飯を食ってきたというのはいかがなものか。離脱すればよいということではなく、岸田総理大臣には当然、更迭を求める」と述べました。
公明 山口代表「新体制でも連携し職責果たしたい」
公明党の山口代表は党の中央幹事会で、20日夜、岸田総理大臣から自民党の人事について電話で連絡を受けたとしたうえで「政治資金をめぐる捜査のさなかだが、政府・与党としての機能を一刻たりとも停止することはできず、国民に対する責任を自覚し、新たな体制になっても自民・公明両党でしっかり連携して職責を果たしたい」と述べました。
自民 渡海氏 “政治の仕組み根本的に議論を”
岸田総理大臣は、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐり、安倍派と二階派の事務所が捜索を受けた事件に関連して、安倍派の萩生田政務調査会長の後任に、無派閥の渡海元文部科学大臣を起用するなどの人事を22日に行います。
渡海氏は21日、教育関係の提言のため訪れた総理大臣官邸で、記者団の取材に応じ、20日午後に岸田総理大臣から電話で政務調査会長のポストを打診されたと明らかにしたうえで、「大変重く高揚感はない。今は党が難しい状態なので『私でよければ』とお答えした」と述べました。
そして、今回の問題について、「非常に深刻で、自民党全体の問題だ。政治の仕組みをどうするか、もう一度、根本的に議論しなければならない」と述べ、党の立て直しに向けて政治改革の議論を行う必要があるという考えを示しました。
一方、派閥の存在の是非については、「派閥の弊害はなくさなければならないが、派閥があること自体はいいのではないか。いろいろな人が集まって勉強し、リーダーを押し上げ、結果として、総理大臣にして日本をよくすることには一切問題がないと思う」と述べました。
●終わり見えてきた岸田政権、支持率10%台に突入 関心はポスト岸田候補 12/21
先週、時事通信の世論調査(12月8〜12日実施)で内閣支持率が17・1%となり、ついにメディア各社のトップを切って10%台に突入した。今週の毎日新聞(16、17日実施)でも17%と10%台が出た。これは政権末期の数字だ。
毎日新聞の調査では、自民党の政党支持率が7ポイントも下落して17%。これに対し、立憲民主党は5ポイント上昇して14%と肉薄した。日本維新の会の13%を合わせると野党第1党と第2党で27%になり、自民党を上回る。
ただ、毎日新聞は調査方法が他社と違い、野党の数字が高く出る傾向がある。同時期に調査した朝日新聞や読売新聞では野党の支持率は上がっていないし、朝日新聞の調査では、自民党に対抗する勢力として今の野党に「期待できない」が78%にも上った。
岸田文雄政権、あるいは自民党に対して国民は怒っているが、だからといって野党に政権を渡そうとはまだ思っていないようだ。衆院を解散すると、与党で過半数は取れるかもしれないが、議席は大幅に減るだろう。これでは解散はできない。
読売新聞の調査で、「首相にどのくらい続けてほしいか」と聞いたところ「すぐに交代」が36%、「自民党総裁の任期が切れる来年9月まで」が52%で、つまり「次の総裁選にはもう出るな」ということだ。
岸田首相はあと10カ月、粛々と「やらねばならぬこと」をこなすことになる。防衛増税や、少子化対策のための社会保険料の値上げ、さらに政治資金の規制強化は、いずれも世論を横目で見ながらになるので、なかなか進まないのではないか。
今後の関心は「ポスト岸田」に移るが、選択肢は3つある。
最初は、麻生派(志公会)と茂木派(平成研究会)、岸田派(宏池会)の主流3派が、当初の方針通り茂木敏充幹事長を担ぐ、もしくは上川陽子外相に差し替える、または林芳正官房長官もあり、という「禅譲」型。
次は、先週も書いた菅義偉前首相ら非主流派が、「小石河連合(=小泉進次郎元環境相、石破茂元幹事長、河野太郎デジタル相の3人)」の一人を担ぐという「岸田降ろし」型。
最後は、安倍晋三元首相が「保守のスター」と呼んだ高市早苗経済安保相が、岸田政権のリベラルな政策に反発する党内の保守派を味方につける「保守の反乱」型。
先日の高市氏の勉強会結成や、最近の石破氏の「岸田降ろし」的な発言に対し、党内からは批判の声の方が多いが、もはやそんなことを言っている場合ではない。
遅くとも10カ月後には、日本は「新しい首相」を決めなければならないのだから、ここで名前が出た政治家の皆さんはこれから先、ぜひ自分の「国家再建のビジョン」を語ってほしいのだ。そして、その中から自力で抜け出した人が「次の首相」だ。 
●岸田政権で強まる麻生氏への依存 人事で存在感も不安の声 12/21
自民党の派閥パーティー収入不記載事件で窮地にある岸田文雄首相(党総裁)が、麻生太郎党副総裁への依存を強めている。首相を支持してきた最大派閥の安倍派(清和政策研究会)が政権中枢から離れるなどして首相の求心力が落ち、人事などで麻生氏への配慮が目立っているのだ。党内には傾注ぶりを心配する声もある。
「もう誰も頼れる人がいない。副総裁としか話ができない」。党重鎮は首相の心境をこう推察した。
麻生氏は安倍派の松野博一前官房長官らが更迭不可避の情勢となっていた9日、首相公邸を訪れ、首相と約2時間に渡り意見交換した。安倍派の4閣僚らが14日に辞任した後も、18日に約40分間、20日に約30分間、それぞれ首相官邸で首相と会談している。
麻生氏は官房長官人事について、浜田靖一前防衛相を念頭に無派閥議員の登用を進言した。首相も側近を通じて浜田氏に打診したが固辞され、浜田氏は国対委員長に落ち着いた。
党人事では、早くから安倍派の西村明宏国対委員長代理を、国会対策に精通する御法川信英元財務副大臣に交代させる案が持ち上がり、浜田氏も御法川氏起用を希望した。政権にとって、来年の通常国会での予算や減税に向けた税制改正関連法の早期成立は反転攻勢に不可欠であり、御法川氏の経験が必要だと考えたためだ。
しかし、御法川氏は昨年2月、麻生派(志公会)を退会し、麻生氏との間にしこりがあるため、調整が難航。西村氏と御法川氏が国対幹部として共存する「折衷案」(国対幹部)が採用されることになった。
9月の内閣改造では、首相は安倍派の萩生田光一政調会長に信頼を置き、最初の相談相手に選んだ。しかし、萩生田氏は裏金疑惑が直撃し、政調会長辞任を表明した。首相や麻生氏と政権中枢を担っている茂木敏充幹事長は「ポスト岸田」に意欲を示しており、首相と距離が生まれている。
安倍派が抜けたことでバランスが崩れ、首相は「親戚の叔父さんのような存在」(首相周辺)ともいわれる麻生氏に一層、頼らざるを得なくなっている。麻生氏も「政権を真ん中で支える」と繰り返している。
ただ、ベテラン議員は「党が危ないときに、好き嫌いで人事を決めるのは国民にもよく映らない」と麻生氏の影響力が強まりすぎることを懸念する。党重鎮はこうこぼした。
「人間は孤独になれば、誰かを頼りたくなる。悲しいさがだよな」(末崎慎太郎)
●支持率ダダ下がりの岸田内閣 「自分が死んでることに気づいてない」 12/21
元読売テレビアナウンサーでフリーキャスターの辛坊治郎氏(67)が21日、関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」に出演。自民党の裏金問題をきっかけに内閣支持率が低下しているにも関わらず、自民党内で岸田おろし≠ェ起きない理由を分析した。
安倍派から閣僚に起用されていた松野博一官房長官、西村康稔経産大臣、鈴木淳司総務大臣、宮下一郎農水大臣が一斉に辞表を提出し、事実上の更迭となっていたことに、辛坊氏は「心情的には安倍派は切りたかったんだろうな」と岸田首相の気持ちを推し量った。
「本音で言うとね、思想的には安倍派って、どっちかっていうと自民党の右派、保守派で岸田さんっていうと比較的リベラルなんですね」と説明。「最初、政権維持のために自民党右派のためにいろいろやったんだけど、最大派閥の安倍派に常に配慮せざるを得ない。心理的には相当嫌だったんだろうな」と推察した。
不祥事を起こした人間を懲戒免職にする事と辞表を取って辞めさせるのは世間体が違う。「クビ切ったって形を作れなかった岸田さんがいかに弱いっちゅうか…」と評した。
火の玉人事の岸田政権をゾンビ内閣≠ニやゆした。「ここまで支持率が下がってくると、普通は辞めるとか辞めさせるって動きが出る」としながらも、自民党内では今何かすると裏金問題を背負わされるため、岸田おろしが起きないと語った。
「ゾンビ内閣は強いですよ。だって一度死んでるから死なないもん。本人は、自分が死んでることに気づいてないです」とし、自民党内も面倒事が続く限りは岸田おろし≠ヘ起こさないと予言した。
●立憲民主・泉代表「次期衆院選で政権交代は十分可能」 12/21
立憲民主党の泉健太代表は21日、神奈川新聞社の単独インタビューに応じ、自民党派閥の政治資金パーティー裏金疑惑について、岸田政権は正当性を失ったとして「次期衆院選で政権交代の可能性は十分ある」と語り、早期の衆院解散、総選挙を求めた。
裏金疑惑の広がりに「スポーツ界に例えるとドーピングで選挙を勝ち上がってきたのと同じ。そういう国会議員は一掃されるべきだ」と指弾。自民に対し「長年にわたって裏金をつくり続けてきたという意味では“裏金政権”。政権に正当性はない」と強調した。
 12/22

 

●忖度から解放されて嬉し泣き?岸田が「安倍派バッサリ会見」で涙を見せた 12/22
13日に行われた記者会見で、国民の政治不信払拭に「火の玉」となって取り組むとの決意を語った岸田首相。その目には光るものがありましたが、なぜ首相はあの場で涙を見せたのでしょうか。元全国紙社会部記者の新恭さんが、首相の涙がするところを考察。さらに事ここに及んでも政権をあきらめない我慢強さと鈍感力を「岸田首相の真骨頂」と皮肉っています。
自らの決断に酔ったのか。岸田首相が安倍派切りの会見で涙を見せた訳
「国民の信頼回復のために火の玉となって自民党の先頭に立ち、取り組んでまいります」
12月13日、臨時国会が閉会した後の記者会見。テレビ映像は、派閥パーティーをめぐる裏金問題について語る岸田首相の目に、涙が光っているのをとらえていた。
公式の場で、これほど岸田首相が感情を素直に吐露したのは初めてではないだろうか。補正予算が成立し国会が閉幕してほっとしたからではあるまい。「火の玉」となって先頭に立つというのは、どういうことなのか。
ハンパな減税策が国民にそっぽを向かれ、内閣支持率は出るたびに最低を更新、おまけに自民党の政治資金パーティーに組織的裏金作りの疑いがかけられ、党内は特捜検察の足音におびえきっている。
この悪循環を断ち切り、支持率を反転させるため、岸田首相は戦時中のスローガンを思い起こさせる「火の玉」なる呪文を唱え、「生贄」となるものを用意した。
「これから年末に向けて、国民の生活や国の基本政策に関わる重要な決定がめじろ押しで、遅滞を来すことがないよう全力を挙げなければなりません。こういった考え方の下、国会終了を待って、明日、速やかに人事を行うことが適切であると判断いたしました」
翌14日に発表されたのは、東京地検特捜部が全国からベテラン検事をかき集めて強制捜査をしようとしている最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)を内閣から追放する人事だった。安倍派所属の4閣僚、副大臣5人、政務官1人を一斉に交代させた。やがて、安倍派所属の党役員も党本部から消える。
来年1月の通常国会をひかえ、捜査による政権内の混乱を避ける体制にしておきたいということが第一の目的なのだろうが、別の意図も透けて見える。安倍派に全ての責任をなすりつけて、重要ポストから一掃する。それにより、安倍派の弱体化が加速するのは間違いない。
これまで岸田首相の権力基盤は、岸田派、麻生派、茂木派に加えて、最大派閥である安倍派の支持により、しっかりと固められていた。安倍派の“5人衆”といわれる松野官房長官、西村経産相、萩生田政調会長、高木国対委員長、世耕参院幹事長を政権中枢に配置したのは、そのための布陣だった。
この“5人衆”を政権から外すことは、安倍派との決別に等しい。最大派閥のまとまった支援を失い、来年秋の総裁選で再選されることは難しくなるかもしれない。それも覚悟のうえで断行したのが今回の人事だ。
国民の間ですっかり評判の悪くなった岸田首相だが、今のところ党内から表立って「岸田降ろし」の動きは出ていない。衆議院の任期は2025年10月30日まである。衆議院を解散しない限り、総選挙はまだ先になるからだ。「岸田降ろし」を封じるためにも、岸田首相が衆院解散に動くことはないだろう。
しかし、総裁選が近づくにつれ、“選挙の顔”が岸田首相のままでいいのかということになる。来年の春か、遅くとも夏までに、岸田首相は進退を迫られるに違いない。
総理への意欲満々の「あの人」に決定的に欠けているもの
13日の会見で岸田首相が浮かべた涙は、思うようにコトが運ばず、退陣も視野に入れなければならなくなった自らの境遇への悲嘆という説明ができるだろう。だが、首相の側近からは「総理は感極まっていた」とか「高揚感があった」という声も漏れ伝わってきている。これはどういうことなのか。安倍派の意向を忖度し続けてきた日々を思い、ひとまずそこから解放される喜びをおぼえたのかもしれない。自らの決断に酔った涙といえるかもしれない。
さて、先週号でも指摘したように、政局のカギを握っているのは麻生副総裁である。麻生氏は、来年の通常国会で当初予算が成立し、岸田首相が国賓待遇での訪米を実現した後、岸田首相が辞任し、新総裁の選出にいたる道筋を描いているだろう。
これまで麻生氏は岸田氏と会食するたびに、「大宏池会構想」なる派閥合流話を持ち出してきた。もともと麻生氏は宏池会の出身だが、河野洋平氏のグループに転じ、やがて同グループを継承して今の「志公会」を率いている。麻生氏が安倍派に対抗する勢力として、志公会と宏池会を統合した「大宏池会」の実現を構想してきたのは確かだ。
茂木氏が会長をつとめる平成研と宏池会は、吉田茂の流れをくむ保守本流として、岸信介系の清和会と抗争を繰り返した歴史を持つ。田中角栄・大平正芳が協力関係にあった時代に、福田赳夫と覇権を争ったのが「角福戦争」「大福戦争」であり、自民党派閥抗争史のなかで最も激烈な戦いだった。
おそらく、岸田・麻生・茂木の三者の間では、「大宏池会」と「平成研」を中心とした政権を今後も継続させるということで、合意しているのではないだろうか。だとすると、茂木氏がポスト岸田に名乗りを上げるのが順当な流れということになる。
現に、茂木幹事長の言動に、最近、変化の兆しがある。11月27日の記者会見で、低迷が続く内閣支持率についてこう述べた。「国民の現状への不満、将来への不安が政治に向かっている。重く受け止めなければいけない」。政治の現状への不満とは、岸田首相への不満と同義である。これまでにない手厳しい意見だ。
12月18日には自民党議員のパーティーで裏金問題に触れ、「政治資金規正法の改正も含めて、透明性がしっかりと確保できるような措置を早急に検討していかなければいけない」語った。政治改革を唱え始めた岸田首相よりもさらに踏み込み、法改正にまで言及した。
自分こそが党の危機を乗り越えるリーダーだといわんばかりだ。要するに、総理への意欲が満々なのである。
だが、茂木氏には総理らしい風格が乏しい。茂木氏の“人となり”にメディアが言及するとき、必ずといっていいほど、出てくるのは「頭脳明晰」「切れ者」という言葉である。そしてまた、そのあとには間違いなく「怒りっぽい」「人望はない」が付いてくる。宰相としては致命的ともいえる評価だ。もし、茂木氏が総裁選に出馬し、世間に人気の高い石破茂氏を菅義偉前首相が担ぎあげた場合、どうなるか。ただ「選挙に有利」というだけで、石破氏を支持する動きが党内に広がらないとも限らない。
そのような事態を懸念して、麻生氏は岸田首相が乗りやすい別のアイデアを思いついたようだ。上川陽子外相を次期総裁候補に押し上げるという策だ。上川氏は有能なうえに、宏池会所属である。「初の女性総理」というキャッチフレーズも使える。そんな算段のようだが、知名度が低いし、急にどこからか湧いて出た感があって、どうにもピンとこない。
国民の声には耳を傾けないという岸田首相の一貫した姿勢
むろん、客観情勢にかかわらず、岸田首相はまだ政権をあきらめてはいないだろう。ひょっとしたら、安倍派の一掃で憑き物が落ちたように政権が浮揚するとでも思っているのではないか。最後まであきらめない我慢強さと、苦境でも楽観を失わない鈍感力が、この人の真骨頂だ。
安倍派と二階派に対する東京地検特捜部の強制捜査が19日からはじまった。二階派は派閥の収支報告書に記載しなかった裏金が直近5年間で1億円を超えるとみられ、特捜部の本気度は安倍派にも劣らないようだ。それでも、岸田首相はいったん、二階派に所属する自見万博担当大臣と小泉法務大臣を続投させることに決めた。検察に対し指揮権を発動できる法務大臣が、捜査対象となっている二階派の所属であるという大問題を無視しようとしたのだ。批判が強まったため、小泉法相が二階派を退会したが、形だけ取り繕っても、本質は変わらない。
岸田首相としてはこのうえ二階元幹事長まで敵にまわしたくなかったのだろう。あるいは、この状況下で、捜査対象となった派閥をいちいち政権から排除していたら、今後、内閣を構成できないおそれがあると考えたのかもしれない。岸田派にもパーティー券収入の不記載の問題が浮上している。
政治資金パーティーを抜け道にしてせっせと裏金をつくり続けてきた自民党の金権体質に対する国民の怒りは、かつてないほど高まっている。にもかかわらず、党のトップである岸田首相からは「火の玉」と言うほどの気概はまったく伝わってこない。
自民党の大物や財務省に左右されることはあっても、国民の声に耳を傾けることはない。それが、政権発足以来、岸田首相の一貫した姿勢のようである。
●「自由で開かれたインド太平洋」岸田首相の使用頻度なぜ減った? 12/22
元内閣官房参与の谷口智彦氏が産経新聞への寄稿で、安倍晋三元首相が掲げた「自由で開かれたインド太平洋」という言葉が、岸田文雄政権で使われなくなっていると指摘した。
谷口氏のコラムが出ると、「今でも『自由で開かれたインド太平洋』は使われている」という反論が出てきた。官邸ウェブサイトにおける岸田首相の発言をみても、9月19日の国連演説や、12月16日のジャパンタイムズへの寄稿などでは、確かに「自由で開かれたインド太平洋」が使われている。
しかし、岸田政権になってから、「自由で開かれた国際秩序」という言葉が、「自由で開かれたインド太平洋」の上位概念のような感じで頻繁に使われるようになっている。これは、官邸での岸田首相発言を調べると分かる。
安倍政権で、外交のスピーチライターを務めた谷口氏は、さすがに言葉に敏感だ。ただ、岸田首相らが「自由で開かれたインド太平洋」を全く言わなくなったというわけではなく、使う頻度が少なくなったというのが正確だろう。
「インド太平洋」という用語で、インドに着目し、中国包囲網のイメージを出したのは安倍元首相だ。この言葉は日本発の概念だが、米国などで盛んに使われている。これは国際政治の場では初めてではないか。米太平洋軍は、2018年5月に「米インド太平洋軍」と名称変更された。
●「岸田政権」「財務省」「特捜部」…それぞれの思惑とは? 12/22
3者が手を結んだ「安倍派潰し」
自民党派閥の政治資金パーティ問題で、東京地検特捜部が19日、政治資金規制法違反の疑いで安倍派と二階派の事務所を家宅捜索した。この背景に、何があるのか。私には、財務省と特捜部、それに岸田文雄政権の3者が手を結んだ「安倍派潰し」のように見える。
今回の裏金スキャンダルに先立って、財務省は岸田政権の足元を脅かす工作を重ねていた。最初は、宮沢洋一自民党税政調会長が11月7日、日本経済新聞のインタビューに答えて「所得税減税は税収増の還元ではない」と語った発言だ。
すると、鈴木俊一財務相が翌8日、衆院の財務金融委員会で「過去の税収増は当初予算や補正予算の編成を通じて、政策的経費や国債償還などにすでに充てられている」と語り「減税すれば、その分、国債発行が必要になる」と強調した。
ところが、岸田首相はこれより前の11月2日、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を閣議決定し、そのなかで「税収増を納税者である国民に分かりやすく『税』の形で直接還元することとし、令和6年度税制改正として本年末に成案を得て、3兆円台半ばの規模で所得税・個人住民税の定額減税を実施する」と書き込んでいた。
閣議決定の記述はもちろん、宮沢氏の発言や鈴木大臣の答弁を振り付けたのも、いずれも財務省である。財務省が自分で書いておきながら、後になって、ちゃぶ台返しのような真似をしたのは「岸田首相にダメージを与える狙いがあった」ように見える。
ほぼ同じタイミングで、週刊文春が11月8日、神田憲次財務副大臣の税金滞納問題を報じた。同氏は結局、財務副大臣を辞任したが、税金の滞納は、本人が税務署以外には知り得ない話だ。
「異例の人事」の裏側
この段階に至って、私は財務省の意図を確信し、11月24日公開コラムで、財務省と自民党5大派閥の政治資金不適切処理問題をメディアにリークした東京地検特捜部がタッグを組んで「彼らは事実上、倒閣に動いている」と書いた。財務省は本来、増税を目指すはずの政権が、真逆の減税に動いたことが許せなかったのだ。 24日付の「夕刊フジ」連載コラムでも、財務省と特捜部の意図を強調して「この先も大スキャンダルが火を噴く可能性がある」と指摘した。いま、まさにその通りの展開になっている。
今回の裏金スキャンダルの背後では、最初から財務省が暗躍していた。特捜部は当初、派閥の政治資金不適切処理という比較的、軽微な問題を捜査していると見られたが、そこから議員個人へのキックバックが発覚し、一挙に大スキャンダルに発展した。
財務省と特捜部が倒閣を狙ったとすれば、岸田首相は「彼らと対決している」と思われるかもしれない。ところが、そう単純ではない。岸田首相は「安倍派潰し」という点で、彼らと思惑が一致しているからだ。それが如実に示されたのが、安倍派閣僚らを一掃した12月14日の人事だった。
先週公開のコラムで、私はメディア報道に基づいて、閣僚を4人も更迭する人事の異例さを指摘し「特捜部は内々に官邸に捜査情報を伝えていたのだろうか」と書いた。その後、特捜部が安倍派と二階派の事務所を家宅捜索するに及んで、私はますます、その疑念を強めている。そうでないと、辻褄が合わないからだ。
岸田首相が「特捜部は安倍派を狙っている」という確信がないまま、最大の政治的脅威である安倍派パージの人事に踏み切って、後で「特捜部の狙いは別のところにあった」などという話になったら、大失態だ。下手をすれば、人事をやり直さなければならなくなるどころか、首相の判断ミスが厳しく問われてしまう。それこそ、政権に大打撃だ。 首相とすれば、特捜部はどの派閥に手を突っ込むつもりなのか、喉から手が出るほど捜査情報を欲しかったに違いない。
捜査情報を入手するハードルは低かった
首相はその気になれば、法相を通じて検察情報を入手できる。あるいは、自分が直接、検察に接触することもあり得る。「政治が個別事件の捜査に介入するのはタブー」とされているが、実は、水面下で検察が首相に接触したと疑われる例がある。
野田佳彦政権当時、法相だった小川敏夫元参院議員は、小沢一郎氏の裁判に関連した特捜部の虚偽捜査報告書事件を振り返った著書「指揮権発動〜検察の正義は失われた」(朝日新聞出版)の中で、指揮権発動を決意して、野田総理と面談する前日に突如、法相を解任された経緯を暴露している。
検察の不祥事を指摘されて、法相に指揮権を発動されてしまったら、法務検察の権威は完全に失墜してしまう。小川氏だけではない。死刑廃止論に傾いていた前任者の平岡秀夫元法相も、死刑制度存続論に立つ法務官僚と対立し、なぜか解任されていた。
いずれの大臣解任も、小川氏は「法務官僚が舞台裏で首相官邸にねじ込んだのではないか」という趣旨の疑念を記している。法務検察当局はいざとなれば、自分たちの都合に合わせて、首相に接触し、動かせるのだ。ということは、逆も当然、ありうる。
検察庁法14条で、法相は個々の事件について検事総長を指揮することができる、と定めている。首相は法相の任命権を持ち、一般的に指揮できるので、首相は、その気になれば、法相と検事総長を通じて、特捜部の情報に迫れることになる。
今回のケースでは、首相が捜査方針に介入する必要はなく、単に「どこを狙っているのか」という捜査情報を得ればいいだけだ。感触を得るだけでも十分なので、指揮権発動のような大問題になる可能性は比較的、小さい。つまり、首相が情報を入手するハードルは低かった。
岸田首相が捜査情報を入手したうえで、人事をしていたなら、それ自体が大スキャンダルだ。政治的思惑で捜査情報を利用した形になってしまう。情報源が秘匿された形であっても、そんな話がメディアにリークされたら、政権は1発で倒れてしまう。
逆に、すべてが闇に埋もれている限り、政権は現在の苦境を生きながらえたとしても、もはや自分の思い通りには動けない。いまや、岸田首相は財務省と特捜部に首元を抑えられたも同然なのだ。首相は特捜部に借りを作って、自分の弱点を握られた、と言ってもいい。
以上は、私の邪推である。政権はいま、財務省と特捜部の恐ろしさを脳裏に刻んでいるに違いない。
報道の裏側に潜む真実
メディアについても、一言、付け加えたい。
こういうスキャンダルになると、メディアはどうしても特捜部や財務省のリーク情報に振り回され、彼らの言う通り、記事や番組を垂れ流す形になる。だが、本来はメディア自身が事件をどう捉え、何が問題なのか、を追及していくのが重要な役割であるはずだ。
現状は残念ながら、官邸や財務省、特捜部のオフレコ懇談情報を基に、どこも戦時中の「大本営発表」を思わせるような報道に終始している。それどころか最近は、いわゆる「専門家」の見解さえも、そのまま受け入れているようだ。
一例を挙げれば、あるテレビ番組で「元検事」の弁護士は、カネの扱いについて「これはあくまで政治資金規正法の不記載であり、裏金という報道はおかしい」という趣旨の話を力説していた。その場にメディアの人間も複数いたが、反論はないままだった。
かなり早い段階から「裏金」と指摘している法律家もいる。私は法律の専門家ではないが、世間の常識では、収入と支出が表に出ていないカネは「裏金」であり、脱税の疑いが濃くなる。今回はまさに、そういうケースではないか。
政治家がそんな裏金を手にして、たとえば、愛人への小遣いや株式投資などに支出していたら、それでも政治資金の不記載で済むのか。どう考えても、おかしいだろう。
いくら「元検事」とはいえ、事件の詳細が分からず、捜査に携わっているわけでもない人間が、いまの局面で裏金の可能性を排除するのは、理解しにくい。こういう場面で反論しないから「メディアは権力のポチ」などと言われてしまうのだ。
事件は、まだ進行中だ。メディア報道の裏側に潜む真実に目を凝らしていきたい。
●裏金疑惑に揺れる岸田政権、渡海・浜田の無派閥2氏で自民立て直し 12/22
自民党は22日の総務会で、派閥政治資金パーティー収入の裏金化疑惑を受けて辞意を示していた安倍派の萩生田光一政調会長、高木毅国会対策委員長の後任に、いずれも無派閥の渡海紀三朗元文部科学相、浜田靖一前防衛相をそれぞれ起用する人事を了承した。森山裕総務会長が記者会見で公表した。
渡海氏は21日、首相官邸で記者団に対し、政調会長就任の打診を受けて受諾したことを認めた。国民の間で政治不信が高まったリクルート事件当時のように「非常に信頼が落ちているということに危機感を持っている」と述べた。TBSによると、何らかの組織体を立ち上げて党内で議論を始めることも必要との見解も示したという。
裏金疑惑で政治不信が高まる中、来年1月召集の通常国会で野党側は「政治とカネ」を巡る問題を追及する構えだ。岸田文雄首相はベテランで派閥に属していない渡海、浜田両氏の起用で党の立て直しを図る。内閣支持率は低迷し、最大派閥の安倍派が要職から外れる中、政治改革などの課題で党内を取りまとめることができるか手腕が問われる。
政策立案の責任者である政調会長には、安倍晋三元首相の退陣後も安倍派の下村博文元文部科学相、高市早苗経済安全保障担当相、萩生田氏と安倍氏に近かった議員が担っていた。渡海氏は2018年の総裁選で3選を目指した安倍氏に対抗して出馬した石破茂元幹事長の推薦人に名前を連ねていた。20年も石破氏、21年は浜田氏と共に野田聖子氏の推薦人だった。
安倍派は自民党議員の約4分の1に当たる99人が所属している。岸田政権では14日に松野博一前官房長官ら同派所属の4閣僚が辞任。その後、世耕弘成前参院幹事長も辞任しており、萩生田、高木両氏の交代で閣僚と党の要職から同派が外れる。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは、安倍派が中心的ポストから外れたことで、経済財政運営などで「政策の自由度が高まる面がある」と指摘。ただ、安倍派が一連の人事をどう受け止めたかによっては「むしろ安定を損ねる可能性もある」と述べた。
岸田内閣の支持率は14日の閣僚交代後に行われた報道各社の世論調査で10−20%台に落ち込み、大半で自民党が政権に復帰した12年12月以降の最低を更新するなど危機的な状況にある。
クレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストは、内閣支持率の低迷が続けば、来秋の総裁選前に岸田首相が退陣する可能性も否定できないと述べた。ただ、次の春闘で賃上げ効果が得られればデフレ脱却を成果とすることで、総裁選を戦う選択肢もあるとみている。
●岸田政権の一員として職責果たすことに専念=首相への意欲で林氏 12/22
林芳正官房長官は22日の閣議後会見で、かねて将来の首相就任に意欲を示していることに関連し、現在は「岸田政権の一員として、首相を支えてしっかりと職責を果たすことに専念していく考えだ」と述べた。
記者会見を毎日行う官房長官は露出が増えることになるが、首相への意欲についてどう考えているかとの質問に答えた。林氏は14日の就任から1週間あまりが経過したことに触れ、「先送りできない課題に一つ一つ結果を出すという政権の取り組みに遅滞が生じることのないよう、緊張感をもって取り組んできた」と語った。
●"深海魚"岸田首相の圧壊深度 12/22
――ついに岸田首相の支持率は10%台に到達。不支持率も70%を越えました。さらに安倍派パーティーの裏金キックバックで、ついに政権がやばくなってきました。このままだと岸田首相は大きな足跡を歴史に残せないのでは?
佐藤 すでに残していますよ。まず、ウクライナ戦争でゼレンスキー政権に殺傷能力のある兵器を供給していません。たぶんこの戦争が終わるとき、これは大きな意味を持ちます。日本からウクライナとロシアの仲介国になることができるようになります。
そしてガザ紛争においても、イスラエル支持の立場を初めて日本は鮮明にしました。ハマスの人質の家族にも上川陽子外務大臣が会っています。1970年代のオイルショック後、これだけイスラエルに軸足を置いた日本の政権はありません。だから、外交では功績を残しているのです。
さらに、中国とは戦略的互恵関係を再確認しました。福島原発の処理水問題があっても、それはそれとして利益が共通する分野では戦略的互恵関係を構築するとしたのです。こういった形で、あの中国との関係改善にも舵を切りました。つまり、日中の掴み合いの喧嘩が終わり、出口を探すプロセスに入ったのです。だから、良くやっていると言えます。
――しかし、その素晴らしさがなぜ国民に伝わせないのでしょうか? あのインボイス制度の評判が悪いからですか?
佐藤 インボイスは絶対に必要ですよ。税金というのは皆、平等に負担しないといけません。しかし、今までは売り上げ1000万円までの個人や法人は免除されていました。
1000万円の売り上げとはすごい金額ですよ。日本人の正社員の平均年収は460万円ですからね。あまり経費がかからない職種を含め、売上1000万円までの法人や個人が、今まで消費税を払ってこなかったというほうがおかしいです。だから、インボイス制度でちゃんと追跡できるようにして、皆から税金、消費税を平等に取ることは民主主義の原則に照らして正しいです。
消費税はそもそも預かっているようなものなので、一部の人たちはなんやかんや言っても今までそれをガメていたということです。ガメていたカネがなくなったことに文句を言っても、それは権利ではありません。今までの制度の上に乗っかって得られていた利得です。
そこを税金として払う形にしたら「今の売り上げから一割を払うことになったら、自分の仕事は続けられない」と言いますが、それは申し訳ないですけど、廃業するしかないと思います。資本主義とはそういうものですよね?
――はい。
佐藤 税は公平に徴収しないといけません。だから、岸田政権がインボイス導入で非難される筋合いはないと、私は思うんですよね。
――確かに正論です。ただ、支持率は底無しで落ちて行く......。
佐藤 私がよく分からない点がひとつあります。
――どこですか?
佐藤 岸田政権は所得税・住民税の減税を表明しましたが、税収が増えたから減税するという理屈が、私にはよく分かりません。本来ならば税収が増えたら財政の再建(特に国債を減らすこと)、あるいは教育支援に使えばいいはずです。増税したのになぜ減税するんでしょうか? 筋が通っていません。
――ですよね。
佐藤 その辺りのところで、岸田政権が支持率のあまりの低さに世論に阿(おもね)ることが、逆効果になっていると思いますね。
世間に媚びず、「今まで税を取っていなかったところから公平に取ります。税の公平性を担保したわけです」と説明した上で、「物価高で皆苦しいのは分かります。だから本当に必要な所に給付しましょう」と言えばいいはずなんです。
――それなら、誰からも文句は出ないと思います。
佐藤 だけど、「少しでも自分の可処分所得は税に払いたくない」「給付金はできるだけ多く欲しい」「財源のことは知らない」と多くの人が言っています。それは、成熟した国家の国民の発想ではないですよね。
――たしかに小賢しい盗人の発想のようです。そう説明しても支持率は上がりませんか?
佐藤 それはないでしょうね。これは相対的な問題です。簡単に言えば、岸田首相ら自民党が野党に下野して、泉政権や玉木政権、馬場政権、さらには志位政権になって欲しいか?という選択です。
そういう状態になると大混乱が起きます。国民は岸田政権による低位安定か、政権交代による大混乱かというメニューを突き付けられて、思考を停止しているように思います。
●「政治とカネ」の問題が国を滅ぼす 中国正史「姦臣伝」から学ぶ 12/22
国民の政治不信に拍車がかかっている。12月中旬に新聞各紙などが実施した世論調査によると、岸田政権の支持率は概ね20%台と発足後最低水準のまま。自民党支持率もほぼ20%台後半まで低下している。支持率が低い最も大きな要因とされるのが、自民党最大派閥・安倍派を中心に取り沙汰される政治資金の“裏金化”疑惑だ。「政治とカネ」の問題はこれまで何度も時の首相や政権を窮地に追い込み、国会ではその度に「適正化」や「透明化」が叫ばれているが、一向に果たされる気配がない。
多数決が原則の国会では数が力であり、その源は「カネ」である──そのように蔓延する悪しき風潮を「金権政治」と呼んで久しい。だが、近年も現職国会議員が収賄などの罪で逮捕されるなど、令和となった現在も脱しきれていないのは事実だ。ここまで積み重なった「政治不信」は、岸田首相の退陣や選挙による政権交代だけでは拭えない恐れすらある。歴史作家の島崎晋氏が、金権政治がやがて「亡国」につながっていく歴史を紐解く。

「パー券キックバック」「裏金疑惑」など、あらわでお粗末な金権政治の実態が、ほぼ毎日のように大きく報じられている。「この国の政治家はいったいどうなってしまったのか」と心配になるが、おかしいのは政治家だけではない。
政治家に諫言すべき立場の経団連会長・十倉雅和氏まで、自民党への政治献金を社会貢献と位置づけ、「何が問題なのか」と開き直る始末。そもそも十倉氏は「消費増税せよ」「岸田政権の支持率が上がらないのが不思議」などと、国民感情を逆撫でする発言を重ねてきた人物でもある。政界と財界のトップに国民の声を「聴く力」どころか、聴く気さえない時代が到来してしまったのか。
いわゆる金権政治とは、政治家や役人による賄賂の取得に限らず、政治家などの肩書を金儲けの手段として用いる風潮をも指すと考えてよいだろう。政治家以外が自らの「カネの力」を政治権力にすり替えることも当てはまるかもしれない。そうした金権政治の蔓延は、人心の離反と荒廃につながり、政治への不信が積もり積もれば、行き着く先は亡国である。
古今東西、「金権政治」による腐敗が国を滅ぼした例は枚挙にいとまがない。なかでも「貪官汚吏(たんかんおり)」という常套句まである中国の歴史は不正の規模が尋常でなかった。
「貪官汚吏」とは、本来は貪欲な高級官僚と汚職を働く下級官吏(役人)を指すが、そこから転じて、腐敗した官僚組織全体を指す言葉となった。現在の日本では政治家と役人は別物だが、中国史における政治家と言えば、出世して、皇帝の前に出られるようになった役人を言う。
中国正史「姦臣伝」の教訓
北宋(960〜1127)以降、皇帝への権力集中が強化されたことから、政務に熱心でない皇帝の治世では、それを良いことに、専制や極端な金儲けに走る重臣が少なからず現われた。中国の正史(国家から正当と認められた歴史書)には「姦臣伝」という項目があり、現在のわれわれでも、容易にその具体例を見つけることができる。ここでは北宋の蔡京(1047〜1126)を取り上げてみたい。
蔡京は北宋7代目の哲宗(在位1085〜1100)と8代目の徽宗(在位1100〜1125)に宰相として仕えた人物。『三国志演義』『西遊記』『金瓶梅』と並ぶ中国四大奇書の一つ『水滸伝』では、「四姦」という四大悪役の一人として描かれている。
物語中の悪事の大半は虚構だが、蔡京とその一味が贅沢きわまる生活を送っていたことは事実だった。最大の財源は賄賂だが、それ以外にも給与の不正受給や塩の専売商人に手形の二重購入を強制したり、貨幣の悪鋳により生じた差額の利鞘を懐に入れるなど、彼らの欲は金銭の匂いのするあらゆる場所に及んだ。
蔡京とその一味は散財も激しく、その影響で都の開封に好景気がもたらされるが、それは束の間に終わる。彼らの一連の不正は、中長期的には国家財政の首を絞める行為になった。国家財政はガタガタ、民心も朝廷から離れた状況では国防体制にほころびが生じるのも無理はない。ツングース系の女真(ジュシェン)族からなる金軍に城下まで迫られると、屈辱的な和議に応じるしかなかった。
徽宗が責任を取る形で子の欽宗(在位1125〜1127)に譲位すると、蔡京とその一味にも終わりがきた。官位剥奪とそれぞれ別地方への追放蟄居が命じられたのである。追って処刑人が派遣され、蔡京の子息や兄弟および一味の者は一人残らず、指定の地に到着するより前に斬首された。
肝心の蔡京は配流先を次々と変更され、最終的には南シナ海に浮かぶ海南島へ行くよう命じられるが、80歳の老人に囚人としての長旅は拷問に近く、たどり着く前に絶命した。
金権政治の共犯は
欽宗は蔡京一派の粛清を手始めに、国防体制の再構築を図る腹積もりだったようだが、時すでに遅く、蔡京の死から2年後、都の開封が金軍によって陥落。徽宗・欽宗以下、宮廷の人間3000人が北方に拉致されたことで、960年に始まる北宋時代は終わりを告げた。
因果応報とは、まさしくこのような例を言うのだろう。それならば、日本で現在進行中の問題はどのような結末を迎えるだろうか。
今年10月31日、世界最大規模の世論調査会社イプソスが世界31か国2万2816人を対象に実施した「職業信頼調査2023」の結果を公表した。それによれば、最も信頼を得られていない職業は、世界でも日本でも「政治家」だった。日本の場合、ワースト2に「政府の閣僚」がきている。
このような調査結果を見ても、国民の声に背を向けてきた政治家には何も響かないのだろう。しかしわれわれは、金権政治の確信犯が再選されれば、その政治家に投票した有権者も共犯になることを肝に銘じなければならない。それが民主主義国家のルールである。 
●姦臣 12/22
姦臣(かんしん)、奸臣は、臣下の一類型。君主に取り入り、害をなす者を指す。君側の奸。
韓非子における姦臣
『韓非子』第十四・姦劫弑臣において詳説されている。
まず、姦臣とは君主の心に合わせた言動を行うことで信を得るとする。常に自分の意を得た君主が姦臣を信ずるのようになるのは道理であり、その信に乗じて毀誉を君主に吹き込むことで臣下の人事を握り、君主の耳に入る情報をコントロールすることで、君主を自由に操り、国を機能不全にすると説く。
管子における姦臣
君主と臣下をそれぞれ7つに類型化して論じた『管子』第五十二・七主七臣において言及されている。
姦臣は、讒言によって君主を脅し、無実の者を敵に仕立てあげて、それを罰させるように誘導する。これによって、君主に対する臣下の信頼を失わせるとする。
戦国策における姦臣
君主に道を誤らせる、あるいは単に論者にとって都合の悪い意見を言う臣下を攻撃するレッテルとしても使用されている。
『戦国策』・第二十二巻・魏一・襄王で蘇秦が秦に対抗すべく合従策を説く場面で使われている。ここでは、秦に味方せよと説く臣は姦臣であり、忠臣ではないと断じている。
正史における姦臣
多くの正史、たとえば『新唐書』、『遼史』、『宋史』、『元史』、『明史』などで姦臣に関する章が設けられている。
その意義について『高麗史』では、世には常に姦臣がおり、君主が優秀であればそれを抑えられるが、そうでなければ危機が起きる。高麗では仁宗以後姦臣が相次いで出て国を滅ぼした。よって後世の戒めとして姦臣伝を作ると記している。
   遼史の姦臣
列伝の40巻と41巻(通巻では110巻と111巻)を「姦臣上」「姦臣下」にあてている。
序文では「『春秋』は褒貶と善悪を並べて書き、勧懲を示している。故に遷は(史記に)佞幸、酷吏の伝を、欧陽脩は(新唐書に)姦臣の録をおいているが、これは君主の鑑とするためであり、臣下の知とするためである。この天地聖賢の心は、国家の安危の機であり、治乱の原である。遼の耶律乙辛(中国語版)より出現した姦臣十人の敗国はみな戒めとするに足るものなので、この『伝』で列する」とし、次の11人を掲載している。
・姦臣上:耶律乙辛、張孝傑、耶律燕哥、蕭十三(中国語版)
・姦臣下:蕭余里也、耶律合魯(中国語版)、蕭得裏特、蕭訛都斡(中国語版)、蕭達魯古(中国語版)、耶律塔不也、蕭図古辞
日本の史書における姦臣
もともと紀伝体の史書が少なく、『大日本史』でも姦臣伝は設けられていない。わずかに『野史』が276巻を『姦臣傳』として石田三成を扱っている。
●岸田政権を揺るがす最大の危機 自民党“パー券裏金問題” 12/22
自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題で19日、東京地検特捜部が安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)の派閥事務所を政治資金規制法違反の疑いで家宅捜索。政治と金をめぐる問題は岸田政権を揺るがす最大の危機となっている。今後、問題追及、政権交代へ向け野党連携はあるのか、また政治資金規正法の改正はあるのか、次期衆院選で野党第一党を目指す日本維新の会・藤田文武幹事長に話を聞きました。
パー券めぐる”裏金問題”「自民党の悪習というべき根付いた文化」
――(自民派閥の)政治資金パーティーを巡る裏金事件、この事件について、どう見ていますか。
日本維新の会 藤田文武幹事長: 今回の件については、現行法が規制しているものからかなり外れてしまっていて、違法にかなり近い。今後これが明らかになっていくと思いますが、そういう行為が個人で行われていたのではなくて、いわゆる組織的に、そして長年に渡って意図的にされていたと。相当悪質性の高い事案だというふうに思います。自民党の悪習ともいうべき、根付いた文化みたいな形になって、みんな知っていたのです。はっきり知っている人もいれば、何となく知っている人もいると。それをなんか、みんなやっているから「これ当たり前かな」というふうなことをそういう感覚で受け入れてしまっているのが、自民党の「ぶち壊してしまうべき体質」だと思います。今後我々がやっぱり立法府の一員として考えないといけないのは、そもそも政治資金のあり方というところに移行してくると思うのです。やっぱり政治家ですから、税金を使う、または皆さんからのご寄付とか、国民の皆さんのお金を使わせていただく手前、しっかりと透明性を担保すること、そういうことをどう法整備して、もう一度再構築していくかということは、次の国会のやはり話題の一つの中心となると思います。
「仕組みは『脱税の犯罪スキーム』と同じ」
――運用の問題、支出側と収入側といろんな問題があって、まずはこの支出。個々の議員たちにどう配るかという話ではあると思いますが、ここが全く見えないわけですよ。「こんなにブラックボックスなの?」と思ってますけれども。
藤田文武幹事長: まだ政治の世界では私はあまり体験していないんですけど、現金をどんと配るという文化が多すぎると思うのです。うち(日本維新の会)は、僕が幹事長でお金をお渡ししてるんです。活動費を皆さんに決められたルールで政党交付金の中からいろんな支部に分配してるんですけど、全部振り込みですね。まずそういう、渡した・渡されたの記録が残る形でやるというのは自分たちを守る意味でも非常に重要ですね。それはそういうふうにしていった方がいいとまず思います。今回の件は、パーティー券を売れていないことにして、派閥の方に報告をして、それをまず自分の懐に入れること、それから派閥が売り上げを過小報告して売り上がってないようにして、その差額を裏金にしていたという2段階で、個人の方と組織の方と両方ですけれども、これはルールを厳しくしたり、例えば厳罰化をしたりとか、またはそういう記録の帳簿を、例えば、チェック機能を働かせるみたいなことはできるのですが、これはいわゆる脱税の犯罪スキームと同じなんですよ。例えば脱税っていうのは経費を多く出して、税金を少なくするか、売り上げを少なく見せるかの2つがほとんどですから。よくあるじゃないですか、現金商売のところで、今日は5万円売り上げたけど、2万円を売り上げたことにするというのと同じなんですよ。だから脱税スキームなんですね。だからこれについては犯罪行為ですから、基本的にそれは徹底的に抑止するっていうことと同時に、そういうことが発覚した場合はもう徹底的に糾弾して潰してしまうということは必要だと思います。そういった意味で、厳罰化というものについては検討すべきだろうというふうには思います。
パー券収入に「“外部監査”が入る仕組みを」
――20万円以下のパーティー券購入については、支払者の指名を記載しなくて良いというようなことが不正の温床になるわけですよね。そういうものに対して規制を厳しくするというアイデアもあるそうですね?
藤田文武幹事長: 今ですね、ちょうど維新の会の中でも、私と音喜多政調会長が中心となって、政治資金規正法をどのように改定したらもう少しちゃんと規律が守られるように抑制できるようになるのかと、そして透明性が担保できるかという議論はもう既に始めてます。その中で例えば厳罰化ですとか、全部ちゃんと公開しようっていうことから一部公開、または僕らがこれ重要だなと思ってるのは「第三者がちゃんとチェックできるフィルター」がかかってないこと。だからやりたい放題なんですね。例えばパーティー券もおっしゃられたように、(購入代金)20万円以下は報告の義務もないという形で、私なんかはそれは全部帳簿につけて提出すると。ただ、それを全部、全世界に公開するかどうかは、また「一定のライン」を引けばいいと。公開っていうのも、結構別の議論があってですね。例えば個人だったら名前が出るラインになると、個人の住所とか名前とか載るんです。最近は、そういったところに週刊誌の人が一般人の家にピンポンって行ってですね、根掘り葉掘り聞くと。別に悪いことしてなくても嫌ですよね。そういうようなことも引き起こしてるので、このプライバシーの時代に個人名と住所っていうのが載ること、またそのラインをどうするかっていうことは、僕は冷静に検討すべきだとは思います。ただ自分たちの個人または組織が、売り上げを、そのパーティー券の収入をすごくざっくりとした形でしか報告しなくていいという仕組みは、確かに不正の温床にはなり得ると思いますので、しっかりとした記録を持って、いわゆる民間企業に置き換えるなら『外部監査』みたいなものがね、ちゃんと入る仕組みを作るべきなんじゃないかなというふうに思います。
――”外部監査”っていうのは、国会の中に作る?それとも政党の中に作る?
藤田文武幹事長: 例えば企業だったら収支があって、それに対して外部監査が入って、何かあったら税務署がチェックで入ってくるという仕組みですよね。例えばパーティーだったら選挙管理委員会に提出するんですよ。 収支報告を、例えば選挙管理委員会に報告するときにパーティー券の売り上げも。今って合計額しか書かなくていいんですね。20万円を超えた人だけお名前を書くんですけど、それ以外も報告をすると、全部。それを例えば国でいう会計検査院みたいな機関がちゃんとチェックをして、適正化をチェックをするというフィルターを例えば通すとか、そこでおかしかったら突き返されるという「一定の抑止力」は正当に運営されることが全ての制度において多分大事なので、例えば外部監査的なね、第三者がチェックをして、それの是非をちゃんと指摘ができる。今指摘できるものがないので、それは必要なんだろうなと思います。
立憲は「うまくできなかった」維新は「まだ早い」で支持率上がらない
――こういう状況の中で各党の支持率もどんどん落ちまして、これで解散総選挙はできないだろうとあるんですけど、私が問題にするのは自民党がこの体たらくでありながら、なんで野党の支持が上がらないのかっていう話なんですよ。これは何でなんですかね?
藤田文武幹事長: これは本当に真摯に受け止めないといけないことだと思います。私もよく記者会見で聞かれるんですよ、このことは。「自民党の支持率が下がってることをどう思いますか?」と。それは「こういうことだ」と申し上げますが、一方で自分からやっぱり自省を込めて言うのは、これ(各党の支持率)を見ていただいたらわかるように、維新と立憲を足しても自民党にかなわないわけです、足元にも及ばないわけです。だから、今おそらく国民の皆さんがすごくモヤモヤしてるのはですね、自民党が本当に古い体質でお金を配っているような、裏金を作っているような体質で良くないにもかかわらず、おそらく立憲民主党、つまりその前身である民主党は自民党に代わり得ないし、代わったとしたら「全然うまくできなかったよね」と。そして維新はどうかというと「維新はまだ早い」よねと。「まだまだ若くて、もう少し信頼感が足りないよね」と。「まだまだ大阪だけだよね」という。そういう「1回やらせてみて全然駄目だった人と、それからまだちょっと早いんじゃないの、だから結局消極的に自民党」というふうになってしまっているっていうのが、僕は本にも書いたんですけれども、やっぱり政治構造の問題で自民党1強体制、自公政権がもう安定しすぎていることの弊害だなというふうに思うんですね。だから「まずは野党第一党になる」または「その次には政権の過半数を目指す」ということについて、その数字、選挙だけじゃなくて『実力』をつけようと。大阪ではそれをやってきたんですよ。やっぱり自民党を割り、自民党を減らし、そしてしっかりと政策的な対立軸を作って、そして選挙でガチンコ勝負して。今や人材は大阪では維新の会にいます。
野党共闘は「当然した方がいい」「ただしそれは政権の枠組みとは違う」
――トータルで全国で見るんだったらやっぱり合従連衡。自民党に対するもう一つの塊を作るのは、もうずっとやってた。失敗もしてますけれども、今回、この自民党の体たらくで(野党)一緒になって戦おうっていう気運が出てきましたよね。この辺はどうなのでしょうか?
藤田文武幹事長: 私は例えば政治改革、そして政治を刷新するんだというアジェンダにおいては、例えば立憲民主党さんや、それこそ公明党さんも最近すごく言っていますけれども、方向性のエネルギーについては、協力できるところは当然した方がいいと思います。ただし、それは政権の枠組みとは全然違うと思います。というのは、立憲民主党さんは、他党のことなのであんまり言ってもしょうがないですが、党内でもかなり、例えば重要な議題、安全保障エネルギーについてもまとめられていない状況で、私達とはかなり違います。そういった政党が一緒に政権を夢見るなんてことは、私はすごく失礼なことだと思うんです。だから私は、次の選挙は自民党の体たらくや自民党のこの非常に良くない状況について糾弾すべきだとは思いますよ。思いますが、野党でそれを倒すためだけに手を取り合って一つの選挙をやるということは、私は少し考えられないなと思うので、自分たちがとにかく1人でも多くの候補者を擁立して、選択肢をお示しすると。それで自民党をひっくり返すという、そういう正面突破の方がですね、なんか組み合わせの議論ばっかりやっていることに国民の皆さんは一方で飽きているし、げんなりしているということを打破したいなとは思うんです。
●宏池会政権の悪夢天皇ご訪中≠フ教訓 岸田政権の今後 12/22
歴史は繰り返す―。今の自民党派閥による政治資金パーティー収入の「裏金騒ぎ」を見ていると、つくづくそう思う。「政治とカネ」の問題で閣僚級が辞任、国民の政治不信増大という悪循環を何度繰り返せば気が済むのか。
13日の記者会見で岸田文雄首相が放った「自民党の体質」という言葉が問題の根深さをよく表している。「体質」なら、改善は容易ではなかろう。
さらに辛辣(しんらつ)な表現をする人もいる。作家の百田尚樹さんと筆者が立ち上げた団体「日本保守党」の共同代表である河村たかし名古屋市長いわく、「日本人に日本語が不可欠なように、自民党議員にとって裏金は、不可欠なコミュニケーションの道具」なのだそうだ。捜査関係者から、「自民党議員の罪の意識の薄さ」を嘆く声が漏れるのも、むべなるかな、といったところか。
繰り返してほしくない歴史は、裏金のほかにもある。
外務省が20日に公開した外交文書には、自民党、とりわけ現政権と同じ「宏池会」の政権下での史実が詳細に書かれてある。1992年、宮沢喜一政権下で行われた「天皇ご訪中」の経緯だ。
1989年、中国共産党政府による天安門事件での民衆殺戮(さつりく)に対し、西側諸国が行っていた経済制裁を覆そうと、当時の江沢民国家主席が宮沢首相に天皇のご訪中を要請した。その実現は、欧米諸国の制裁解除に大きく貢献したとされる。
公表された外交文書の内容の中で最も衝撃的なことは、当時の外務省がご訪中実現にいかに前のめりだったか、である。私たち国民が選んだ政治家ら、首相経験者である重鎮らまでもが、外務官僚に操られて使われる。加えて、外務省は国内メディア相手にも世論工作をしていた。その様子が手に取るように分かる。
もう一つ、印象的なことは、宮沢首相の優柔不断さだ。学業優秀なエリートだった宮沢氏はしかし、「日本国をどうしたいのか」という定見やビジョンを描く力の弱い人だったことが分かる。
一方、当時、陛下ご訪中に敢然と異を唱え、決まった後も、訪中時の動線などの修正を外務省に迫った識者の努力に敬意を表したい。陛下とわが国の尊厳を守るため動いた方々があってこそ、日本は今も存在しているといえる。ぜひとも、その歩みにならいたいものだ。
ハト派と言われた宮沢首相が、自衛隊のPKO(国連平和維持活動)派遣に道を開いたことなどは政治の妙と言えるかもしれない。これは、同じ宏池会の岸田首相が、非核三原則や専守防衛に強いこだわりを持ちながら、それに反するかのような「敵基地反撃力」へ道を開いたことと似る。
岸田首相が、「親中派」である林芳正氏を官房長官に起用したことは、かつて宮沢首相が、当時の「政界きっての親中派」だった加藤紘一氏を官房長官に起用したことのデジャブのようだ。宮沢氏が行った韓国への「謝罪外交」は、今日の岸田政権による韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権への全面許容外交とカブるところがある。
外交文書にある史実の後、宮沢氏は退陣し、「自民党長期政権」「55年体制」は一旦終わる。この直後に政界デビューしたのが、後に憲政史上最長の首相となる故安倍晋三氏という流れになる。
現在、岸田首相の下で「国民の政治不信」「自民党不信」は、史上何度めかのピークを迎えようとしている。宏池会の先輩首相にならって、「自民党一強時代」を終わらすのなら、歴史の繰り返しも悪くないかもしれない。
●泉立民代表、公明は連立離脱を 山口氏「むじな」発言受け 12/22
立憲民主党の泉健太代表は22日、青森県弘前市で街頭演説し、公明党に連立政権から離脱するよう呼び掛けた。同党の山口那津男代表が「(自民党と)同じ穴のむじなと見られたくない」と発言したことを取り上げ、「答えはシンプルだ。同じ穴のむじなと見られたくないならば、ちゃんと政権から離れていただきたい」と求めた。
泉氏は「裏金の疑惑がかかっている岸田政権に大臣を送り込んでいるのが今の公明党だ。連立を離脱してけじめを付けるべきだ」とたたみかけた。「もし公明党が本当にきれいな政治をつくりたいのなら、われわれと一緒に新しい政権をつくった方が公明党の結党理念にぴったり合うのではないか」と訴えた。
 12/23

 

●政治資金巡る“キックバック” 安倍派が廃止決定後に撤回 12/23
自民党の派閥の政治資金を巡る事件で、安倍派がキックバックを廃止する方針を一度決めたものの撤回していたことが分かりました。
安倍派と二階派では、パーティー券の販売ノルマを超えた収入が所属議員側にキックバックされ、収支報告書に記載されていない疑いがあります。
その後の関係者への取材で、安倍派が去年、キックバックを廃止する方針を一度決めたものの、議員側から反発があり、その後、撤回していたことが分かりました。
当時、実務を取り仕切る事務総長だった西村康稔前経産大臣や、安倍派の幹部らがキックバックの問題を認識していた可能性があります。
東京地検特捜部は、複数の幹部らに任意聴取を要請しています。
●米、パトリオット提供歓迎 日本の決定「安保に貢献」 12/23
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は22日の声明で、日本政府が日本で生産する地対空誘導弾パトリオットの米国への提供を決定したことを歓迎した。「決定は日本の安全保障やインド太平洋地域の平和と安定に貢献し、抑止力・対処力の維持につながる」と述べた。
サリバン氏は日本政府の決定が「米軍と自衛隊の緊密な連携を確かなものにする」とし、バイデン大統領も岸田政権の指導力に謝意を示していると説明。インド太平洋地域などの平和と繁栄を保つため、引き続き安保面での日米協力を続けていく方針を示した。
●膨れ上がる防衛費、「負担なし」の少子化対策…財源は大丈夫? 12/23
政府が22日に閣議決定した2024年度一般会計当初予算案の支出が事実上拡大したのは、防衛費が突出して伸びたためだ。政府は防衛予算を今後も増やす計画だが、規模ありきで決めた結果、いまだ財源のメドはたっていない。岸田文雄首相の看板政策を巡っては、少子化対策の財源でも「追加負担なし」とするが、社会保障の歳出改革を見通せない状況だ。
17兆円のうち、確実なのは3兆3000億円
24年度予算案は、防衛費を27年度までの5年間で17兆円増やし、総額43兆円とする計画の2年目だ。24年度までに3兆9000億円ほどを費やし、残り3年でさらに10兆円超を増やす予定だ。
ただ、防衛財源で確実なのは、税外収入を積み立てる防衛力強化資金の残り3兆3000億円のみだ。一般会計の決算剰余金からは毎年7000億円見込むが、予備費の縮小や来年6月の定額減税の実施で、どれだけ余るかは不透明だ。予算を効率化する歳出改革も、物価上昇を受けすでに行っており、今後も実現できる保証はない。
残りの財源は増税だが、政治資金パーティーの裏金問題の影響で「かなり厳しい風が吹いている」(自民党幹部)と開始時期の決定を先送り。43兆円の規模ありきの防衛費増を決めたことで、政府は苦肉の収入探しを続けざるを得ない。
野村総研の木内登英氏は「財源議論を後回しにしたことが今の混乱につながっている」と指摘。「財源の確保が難しいなら規模縮小も選択肢とするべきだ」と話す。
診療報酬本体は引き上げ…歳出改革はできるのか
「実質的な追加負担は生じない」。少子化対策の財源で国民から医療保険と併せて集める支援金について、首相はこう強調していた。支援金を取る代わりに、社会保障の歳出改革で保険料率を抑えることを想定していたため。だが、首相は先月から「追加負担なし」に民間企業の賃上げ効果を含めるようになり、他人頼みが強まる。
肝心の歳出改革も切り込み不足が否めない。財務省は今秋、全国の医療法人の経営状況を調査し、診療所にたまった利益が2年間で2割増えたと確認。財務相の諮問機関である財政制度等審議会はこの調査結果から、人件費などの診療報酬本体を引き下げるよう建議したが、予算案では逆の結果となった。
ある政府関係者は「現役世代の負担を減らして少子化対策の財源を捻出するよりも、政治力の強い医師会の賃上げを岸田首相が優先した」と語る。
今年の金利上昇を受け、政府は利払い費を含めた借金返済の費用は今後、増えるとみる。利払い費が増え続ければ、防衛費や少子化対策だけでなく、暮らしに直結するほかの政策に必要な財源も圧迫しかねない。
家計の負担は軽くなるかも…国の借金は増える
22日に閣議決定された当初予算案で、2024年6月に定額減税が実施されることで、政府は所得税の税収を2兆3000億円減ると見込む。住民税の減税や非課税世帯などへの支援も含めると減税と給付による財政への影響額は計5兆4000億円となる。家計負担の軽減になる可能性がある一方で、国の借金増加になっており、経済の専門家は「財政再建に課題を残した」と指摘する。
過去2年間で所得税と住民税の税収が増えたことを受け、岸田文雄首相は「3兆円半ばの定額減税を行う」と宣言。打ち出した政策の規模は合計で、教育と科学技術の予算を足し合わせた規模に匹敵する。
1人当たり4万円の定額減税は所得税で3万円分、住民税では1万円に相当する。政府は所得税の税収減を見込むほか、住民税減税によって失う地方自治体の収入の補塡(ほてん)として予算案で9000億円を計上した。
影響は今回の予算案だけでなく、2023年度補正予算と予備費にも及ぶ。住民税が課税されていない低所得世帯を対象にした1世帯当たり7万円の給付に、補正予算から支出。22日の閣議で1兆1000億円を出すことが決まった予備費は、低所得世帯の子育て向け追加支援などに充てる。
計5兆円を超える財政措置の一方で、国の借金に当たる「国債」の返済費は今回の予算案で、過去最高の27兆90億円に上る。財務省幹部は「今回の税収減がなければ、国と地方の借金の返済にもっと充てることができた」と漏らす。
第一生命経済研究所の熊野英生氏は、定額減税が岸田政権の維持に使われたと多くの国民が見ており、支持が広がっていないと指摘。「物価高が今後も続く予測がある中で、減税は対症療法だ。財政再建に与える影響は大きく、将来に不安を残した」と話す。
●世界のカモ&ト国が岸田首相「国賓招待」の裏 7.5兆円のウクライナ支援 12/23
このままでは、日本はますます「世界のカモ」となりかねない。来春、岸田文雄首相を国賓招待し、議会演説も用意するという話が米国側から出て調整が進められている。
岸田演説を、進んで聴きたいという米議員はいない。にもかかわらず、なぜ「岸田特別厚遇」なのか。狙いは明らかだろう。
12月中旬現在、米国のウクライナ支援予算750億ドル(約10兆円)は底を尽きかけており、ジョー・バイデン政権は500億ドル(7・5兆円)の追加予算を通すよう議会に働き掛けている。
しかし、1ウクライナ問題は本来、欧州NATO(北大西洋条約機構)諸国の守備範囲であり、バイデン氏が尻をたたくべきは欧州同盟国であって米議会ではない2バイデン政権の甘い対応で不法越境者が激増し、「崩壊状態」にある南部国境の管理強化にこそ予算を当てるべき―などと主張する共和党強硬派が強く反対し、予算成立の目途は立たない。そこで、「岸田首相を持ち上げて日本に出させよう」というわけである。
ちなみに、日本の昨年度の税収(国税分)は総額約71兆円。7・5兆円といえば、その9分の1に当たる。到底、応じてよい話ではない。
日本としては、「ウクライナは欧州NATO諸国の守備範囲」論と同じ意味で、「台湾は日米同盟の守備範囲」との立場を打ち出し、ウクライナ支援は一歩引かせてもらうが、その代わり「台湾有事」を見据えた抑止力強化で日本は中心的役割を果たす、といった腹の決め方が必要だろう。
無論、言葉だけでなく、南西諸島の防備強化、日米台合同軍事演習などの形で行動を取らねばならない。
中東政策も、従来の「八方美人」外交を脱するべきである。
「パレスチナ支援金」も、一般住民の生活向上ではなく、腐敗したパレスチナ暫定統治機構幹部の懐に入ったり、テロ活動支援に流用されている部分が大きい。
独自核抑止力が必要
米議会では、そうした報告が多数出されており、日本政府に調査能力がないのであれば、同盟国の情報を活用して、対処の仕方を変えるべきである。
岸田首相の「核廃絶独り相撲外交」も、首相国連演説のたびに屋上屋を架す「賢人会議」設置や「研究資金」拠出など、何の展望もないまま、貴重な税金を浪費し続けている。
北朝鮮、中国、ロシアという「危険な核保有国」に囲まれた日本にとって、今必要なのは、むしろ独自核抑止力の整備だろう。
●日本は教育への政府支出が先進国最低レベル... 12/23
日本大学アメフト部の薬物問題が長引いている。私がこのニュースで引っかかったのは、ほぼ必ず言及される「国からの補助金が日大に交付されない」という話である。あれほどのマンモス私立大学でも補助金を受けていることに、私は驚いた。だが調べてみると、日本のほぼ全ての教育機関には自治体や国の補助があり、それは私立も同様だ。
小中学校は義務教育であるから自治体の予算で賄われている、というのは想像がつく。国立大学もその名前から国からの支出で賄われている、というのも同様に分かる。だが私立の中・高等学校も収入の3割前後は公的補助金。そして私立大学については1割程度が国からの補助金で成り立っている。日本大学に補助金が3年間交付されないことになった、というのはこの話である。
諸外国と比べてみよう。イギリスを除くヨーロッパの多くの国は、学校への公的支出が大きく、生徒や親には授業料の負担がない。私立学校を選んでも、補助は多い。その代わり、高校も大学も学業には非常に厳しく、成績が悪ければ留年や退学をせざるを得ないことにもなる。
日本は37カ国中36位
アメリカではよく知られるとおり、学費が高い。少数の例外を除いて、国が教育機関に運営のための支出をしないからだ。しかし逆に考えれば、教育機関は国や州政府の顔色をうかがうことなく自由な運営と教育を実施できる。では教育への公的支出割合が低いかと言えばそうでもなく、連邦政府は膨大な奨学金を拠出していて、それを受ける学生は連邦政府が定めた条件を満たした大学に在籍する必要がある。そのため大学には徹底した情報公開が求められている。
教育の自由と質の確保、これがアメリカが多くの起業家を生み出してきた源泉なのかもしれない。イランは日本と似て、国立学校はほぼ無償で私立はお金がかかる。だがいずれも学業には非常に厳しいし、大学生は遊んでいられない。
日本は公立校にも私立校にも公的資金を投入しているのだから、さぞかし国の教育への支出割合は大きいのだろうと私は思った。しかし現在の日本のその割合は、OECD加盟国の中で37カ国中36位なのだそうだ。
全私学連合の調査によれば、大学生1人当たりの公的教育支出が高い国は、1人当たりのGDPも生産性も平均年収も高い。しかし、日本はいずれも低い順位に甘んじている。
教育費の公的負担率(大学生)も、OECD平均66%のところ日本は32.6%。政府支出に占める公的教育費割合(大学生)はOECD平均2.8%のところ日本1.6%というありさまで、日本は国としては全然教育にお金を使っていない、ということになる。これでは経済や影響力の停滞も致し方ない。
岸田政権は2024年秋から「出世払い」型の奨学金制度をスタートさせるし、先日も多子世帯の大学無償化を打ち出した。何かと批判を集める岸田政権だが、待ったなしの少子化対策を考えるとある程度は有益な策だと思う。日本での子育ては塾や習い事にもとてもお金がかかるから、学費が無償化されればもっと子どもを持ちたいと考える人も増えるだろう。
だが同時に、高等教育や研究機関へのさらなる支出も考えてほしいところだ。限りある財源なのだから、学ぶ意欲のある若者をより厚く支援し、未来を見据えた研究に助成し、これからもノーベル賞を受賞できる日本であってほしい。
国民も教育への資金投入をもっと容認すべきだと思う。公平性をゆがめない範囲で、私立学校への支援も増やすべきだろう。それは長い目で見れば、日本を再び繁栄させ、皆の利益になるのだから。
●「賃上げ重視」もかすむ指導力 岸田首相、国会審議は紛糾も 12/23
岸田文雄首相は2024年度予算案で、賃上げや少子化対策、厳しい安全保障環境を踏まえた防衛力強化に重点を置いた。
政策面での訴えを通じ政権立て直しを図りたい考えだが、自民党派閥の政治資金規正法違反事件が政権を直撃する中、首相の指導力はかすみ気味。来年1月召集の通常国会での予算審議は、紛糾が予想される。
「先送りできない課題に挑戦し、変化の流れをつかみ取る」。首相は22日の政府与党政策懇談会でこう強調。「物価に負けない賃上げ実現に向け、予算面での対応を最大限図る」と語った。
予算編成が大詰めを迎えた15日、首相は24年度の診療報酬改定について鈴木俊一財務相、武見敬三厚生労働相と協議。全体としてマイナスとする一方、医師や看護師らの人件費に当たる「本体」部分はプラスで決着させた。首相周辺は「賃上げに沿う内容で良かった」と胸を張った。
税制改正では、積極的に賃上げに取り組む企業の税負担を軽減する「賃上げ税制」を大幅拡充。所得・住民税減税と並ぶ目玉に据えた。年頭に打ち出した「異次元の少子化対策」では、児童手当の拡充などを盛り込み、「防衛力の抜本的強化」に向け、ミサイル防衛や反撃能力の整備に重点配分した。
ただ、12月に入って閣僚や党幹部の交代を迫られた首相が、予算編成で指導力を発揮したとは言いがたい。コロナ禍で膨らんだ歳出構造を「平時」に戻す方針を掲げたが、一般会計の総額は112兆円台と膨張傾向に歯止めをかけられず、防衛財源確保のための増税開始時期の決定も先送りした。公明党の山口那津男代表は22日、「政府のやるべき仕事には停滞があってはならない」と語った。
通常国会では、「政治とカネ」や政治改革が論戦の的になる。安倍派、二階派に対する東京地検特捜部の捜査の行方次第で、召集時には一層の苦境に陥る可能性もある。首相は「速やかな成立を図りたい」と述べたが、自民関係者は「2〜3月の審議では集中砲火を浴びる。乗り越えられるかが政権のヤマ場だ」と指摘した。
●「岸田政権どうでもいい」安倍派一掃、異形の政権に更迭閣僚が怒り 12/23
自民党は22日の総務会で、安倍派幹部の萩生田光一政調会長、高木毅国会対策委員長を交代させる人事を了承した。政権中枢から安倍派議員が一掃された形で、自民党史上でも異例の「最大派閥なき政権」が始動した。
安倍派による組織的裏金作りの疑惑を受け、岸田文雄首相が今月上旬に同派幹部の「5人衆」を政権中枢から一掃する方針を固めて2週間弱。萩生田氏が党の政策決定の責任者として携わった来年度予算案が同日、閣議決定され、ようやく5人全員の交代となった。
萩生田氏は総務会で「任期途中の辞任を申し訳なく思う」と謝罪。新たな政調会長に渡海紀三朗元文部科学相、国対委員長に浜田靖一前防衛相が就くことも了承された。いずれも無派閥だ。
党内基盤が盤石ではない首相はこれまで第2、第3派閥の麻生、茂木両派との関係を重視しつつ、安倍派幹部を要職に起用。党所属国会議員の4分の1を上回る99人を抱える最大派閥と良好な関係を保つことで政権を安定させ、低支持率であっても来秋の総裁選再選につなげる構えだった。
しかし、裏金疑惑が安倍派を直撃し、松野博一前官房長官ら同派幹部を一掃せざるを得なくなった。首相は「政治改革」を旗頭に立て直しを図る考えだが、最大派閥の支えがなくなるとともに、安倍派自体の行く末が不透明であるため、首相周辺は「混乱は起こりうる」と漏らす。
機能不全の安倍派
組織的な裏金作りの疑惑を受け、自民党安倍派が政権中枢から一掃された。要職の座にあった幹部は軒並み裏金疑惑を抱え、同派の行く末は見えない。一方、最大派閥と距離を置かざるを得なくなった岸田文雄首相は難しい政権運営を強いられることになる。
連日、裏金問題がメディアで報じられる中、安倍派の閣僚経験者は「派閥から何の連絡もない」といら立ちを募らせる。松野博一前官房長官、西村康稔前経済産業相、萩生田光一前政調会長、高木毅前国会対策委員長、世耕弘成前参院幹事長の幹部「5人衆」には巨額の裏金作りの疑惑が向けられるほか、派閥事務所には家宅捜索が入り、安倍派は機能不全の状態だ。
額の多寡はあれ、所属議員の大半は派閥からの寄付を政治資金収支報告書に記載せず、裏金化した疑惑を抱える。同派参院議員は「みんな少なからず当事者。互いへの連絡ははばかられる」と語る。
疑惑浮上後も99人の大所帯を保つが、「現在の規模を維持するのは困難」との見方がもっぱら。党全体への逆風が強まり、他派閥の議員は「(松野氏ら)安倍派の事務総長経験者は離党させるべきだ。それぐらいでないと身内に甘い党と思われる」とささやき合う。
安倍派が組織の体をなさなくなったとはいえ、「数は力」が幅をきかす自民党で、最大派閥が閣僚や党幹部にゼロという異形の政権となった。
その中で首相の最大の痛手は萩生田氏を失ったことだ。安倍晋三元首相の死去後も重用し続けた5人衆のうち、とりわけ首相は萩生田氏を頼った。昨年8月の人事で萩生田氏を政調会長に起用。今年9月の内閣改造では官房長官への登用も模索したほどだ。防衛費増額のための増税などの重要判断で首相は萩生田氏と「落としどころ」を調整。党内外の保守層からリベラルとみられている首相への不満を抑える役割を担ったのも萩生田氏だった。
同じように強制捜査された二階派は閣僚にとどまるなか、安倍派は一掃されたことで更迭された閣僚の1人は「もう岸田政権がつぶれようが、倒れようがどうでもいい」と恨み節をつぶやく。党幹部は「安倍派が何を言っても『どの口が言うんだ』って話になる」と楽観するが、捜査が一段落すれば安倍派のなかの一定数が「岸田憎し」でまとまる可能性は否定できない。
首相を支える麻生派の参院議員はいう。「安倍派が壊れ、萩生田氏がいなくなった。首相はきつい」(森岡航平)
●日本政治を揺るがす裏金疑惑 岸田政権はどうなるのか 12/23
日本の政治が数十年に一度といわれる危機を迎えている。裏金疑惑に揺れる政府は、イメージの回復に躍起となっている。
どうにか政権を延命させようと岸田文雄首相が奮闘するなか、この2週間で、長期与党・自民党の閣僚4人が辞任した。
内閣支持率は、過去10年超で最低の17%にまで落ち込んでいる。
国民の怒りはソーシャルメディアで沸騰している。
今の事態が、日本の統治の改革につながる転換点となることを期待する声もある。しかし、問題の焦点は自民党だという声もある。1955年から、ほぼ一貫して日本を支配してきた自民党なのだと。
自民党は以前から、同じようなスキャンダルを引き起こしてきた。アジアの民主主義をリードする日本の有権者が幻滅して、冷ややかなのは、それも理由の一部だとアナリストらは話す。
どんなスキャンダルなのか
日本のメディアは数カ月前から、自民党の議員らが派閥の政治資金集めのパーティー収入の一部を懐に入れているとの疑惑について報じてきた。
疑惑報道の大部分は、昨年暗殺された安倍晋三元首相が率いていた有力派閥、安倍派に関するものだ。
安倍派は議員99人が所属する、最大派閥だ。最近まで内閣の最重要ポストをいくつか押さえていた。
その所属議員らが少なくとも計5億円を裏金にしてきたとの、疑いが持ち上がっている。一部メディアは、総額は10億円近くに達すると報じている。
検察は今週、安倍派と、別の有力派閥の二階派の事務所を家宅捜索した。さらに、自民党の6派閥のうち岸田首相の岸田派を含む5派閥について、パーティー収入の過少申告の疑いなどで捜査しているとされる。
日本では、政治家がイベントを主催し、チケットの売り上げで政治資金を集めるのは一般的だ。だが今回、多くの自民党議員らは、派閥パーティーのチケット収入の「キックバック」を受けながら、政治資金収支報告書に記載せず、懐に入れたり裏金にしたりした疑いがもたれている。
裏金が政治ネットワークの維持や増強に使われることは、日本の政治ではよく見られることだと、静岡県立大学の竹下誠二郎教授(経営情報学)は話す。
「日本で国会議員の地位を保とうとすれば、仲間を大切にすることが求められる。県や市町村で支えてくれる人たちや地方政治家たちだ」
「私の考えだが、そうした人々に賄賂を贈るには現金が必要だ。正式な方法での寄付は禁止されていて、もうできないからだ」
政治資金をめぐる不正疑惑への国民の怒りが高まるなか、松野博一官房長官ら岸田内閣の4閣僚が辞任した。
松野氏は岸田首相の右腕として政府全体で政策を調整し、政府の「顔」の役割も果たしていた。辞任の数日前には野党が松野官房長官の不信任決議案を提出したが、岸田氏は松野氏を擁護した。
しかし、辞任を求める圧力は強まった。岸田氏は松野氏と、安倍派の他の3閣僚(西村康稔経済産業相、鈴木淳司総務相、宮下一郎農相)および宮澤博行防衛副大臣ら5副大臣を交代させざるを得なくなった。
首相はどうなのか
岸田首相は、捜査対象の2大派閥に関わっていない。ただ、岸田派でも実際の収入より少ない金額が政治資金収支報告書に記載されていた疑いがあると報じられている。
岸田氏自身はこれまでのところ、不正への関与は取りざたされていない。今月7日には自分が率いる岸田派(宏池会)の会長を退くと表明した。
さらに岸田氏は、政治の浄化を約束。政治資金規正法改正の可能性も示しながら、「火の玉」となって信頼回復に取り組むと決意を述べた。
しかし、岸田氏が国民の信頼を失っていることは、下がり続ける世論調査の支持率に表れていると、アナリストらはみている。
岸田氏は2021年10月、当時の安倍首相に代わる自民党党首に選出された。対立する各派閥から、仕事を任せられる人物だとみなされた。
だが、首相就任後は数々のスキャンダルに見舞われてきた。自民党と旧統一教会とのつながりが批判され、自らの息子が首相官邸をパーティーに利用していたことが問題視されるなどした。
数十年ぶりのインフレ高進に各家庭が直面するなか、有権者らの間には、生活費上昇の危機に対する不満や不安が広がっている。
岸田氏にとって救いは、自民党の党首選が来年9月までないことだろう。河野太郎デジタル相や石破茂氏のような潜在的なライバルは、国民に人気があるが、党内の支持を欠いている。
総選挙も、衆院の解散がなければ2025年までない。そのうえ、野党はあまりに弱く、分裂し、あるいは単に「無能」とみられていると、前出の竹下教授は言う。
竹下教授によると、国民の多くはまだ、2009〜2012年の民主党政権時代の影響から抜け出せていない。この間、福島原子力発電所はメルトダウンを起こし、多くの人が日本経済が壊滅的な打撃を受けた時期だと考えている。
民主党は官僚組織との連携に苦慮していたとも、アナリストらはみている。
冷めていく有権者
現実的に政権を取って代わる党がないことが、自民党の不正スキャンダルが明るみになるたび、有権者らが冷めた気持ちになっていく理由の一つとなっている。
「自民党の汚職や不正を目の当たりにして、人々は非常にネガティブな気持ちになる。だが、投票してもしなくても大して変わらないと考えている」と竹下教授は言う。
「日本の国民の間で投票率や政治への関心が最低レベルまで落ちているのは、そのためだ」
そうした考えから、今回の事態が自民党支配を終わらせたり、日本の政治を大きく再定義したりすることは望めないと、竹下教授のようなアナリストたちはみている。
代わりに注目しているのが、これが自民党政治にどう影響するかだ。有力者が排除されることで、減税から外交問題、さらには首相の主要政策である防衛強化に至るまで、政府の方針が変わる可能性がある。
竹下教授は、政治資金に関して規制が強化され、より厳しい報告制度が導入される可能性が高いと話す。
しかし、そうした変化は必ずしも大きな改革につながるとは限らないし、自民党の基盤を崩すことになるとも限らない。
「今回のは岸田氏が(自民党の)コンセンサスを得て大改革をするほどのスキャンダルではない」と竹下教授は言う。
「この政治資金の集め方で利益を得ている人が、日本には大勢いる。国の現状とはそういうものだと、承知している人たちだ。そして、まさに現状の打破こそ、日本人が嫌うものだ」
●日本、アメリカにパトリオット・ミサイル輸出へ 「防衛装備移転三原則」を改定 12/23
日本政府は22日、「防衛装備移転三原則」を改定し、地対空迎撃ミサイル「パトリオット」をアメリカへに輸出する方針を決定した。長年の平和主義政策からの転換となる。
米ホワイトハウスはこの動きを歓迎している。アメリカは日本のこの決定によって、自国の備蓄ミサイルをウクライナに送れるようになる。
西側諸国では、ロシアの侵攻を受けているウクライナへの弾薬供給が不足している。
パトリオット・ミサイルは、アメリカがウクライナに供給している中でも最先端の兵器の一つ。
日本はこれまで、ライセンスを持つ企業のある国から受注した「ライセンス生産品」の部品のみ、ライセンス元の国に送ることを認めていた。しかし新ルールでは、完成品も送ることができる。
政府が三原則の改定を発表した直後、外務省は自衛隊が保有するパトリオット・ミサイルの米軍への移転を発表した。声明で、同ミサイルを「米国に移転し、米軍の在庫を補完することは、米国との安全保障・防衛協力の強化に資するとともに、我が国の安全保障及びインド太平洋地域の平和と安定に寄与するものであることを日米間で確認しており、我が国の安全保障の観点から積極的な意義を有する」と説明している。
また、インド太平洋地域以外に展開する米軍を含むアメリカ政府以外へ、さらに提供されないこと、目的外の使用や第三国への移転については、日本の事前同意を得ることを「米国政府に義務付ける」ことなどが、発表に盛り込まれている。
日本は引き続き、戦争当事者への武器輸出を禁止している。
ただし、今回の改正によって、アメリカは日本製のパトリオット・ミサイルで自国の備蓄を補充できるようになる。そうすれば、アメリカ政府は自国製の同型ミサイルをウクライナに送れるようになる。
日本では、アメリカ防衛大手ロッキード・マーティンとRTXのライセンスの下、三菱重工がパトリオット・ミサイルを製造している。
アメリカはかねて、日本に武器輸出のルール見直しを求めていたとされる。ルール変更は2014年以来となる。
米連邦議会は12月初め、ウクライナへの600億ドル相当の軍事支援を含む大型支出法案を否決。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はアメリカを訪問し、議会幹部らとも協議を重ねたが、交渉は実らなかった。
ウクライナは、国際社会の援助が減少しているため、すでに軍事作戦の縮小を余儀なくされていると警告している。ウクライナは数カ月前から、アメリカに防空支援の強化を求めている。
パトリオット・ミサイルに加えて、英紙フィナンシャル・タイムズは21日、日本が現在、英防衛大手BAEシステムズからライセンスを受けて製造している155ミリ砲弾について、イギリスへの輸出を検討していると、消息筋の話として伝えた。
どの部品をどの国に輸出するかは、日本の国家安全保障会議(NSC)がケースバイケースで決定することになる見通し。
今回のルール変更は、日本が長年の平和主義的な姿勢と自ら葛藤する中で行われた。
第2次世界大戦後、日本は自衛を除いて戦争を禁止する憲法を採択した。憲法は軍隊を公式に認めず、自衛能力に限定している。
当初制定された「武器輸出三原則」は武器輸出を全面禁止していたが、2014年の安倍政権下で50年ぶりに緩和され、「防衛装備移転三原則」となった。この動きに、中国は疑念を抱いた。
日本はさらに昨年、中国と北朝鮮の脅威を理由に、2027年までに防衛費を国内総生産(GDP)の2%に倍増させると発表している。
日本が懸念を抱いているのは中国の軍拡の動きだ。もし台湾で紛争が起きれば、日本は米中戦争に巻き込まれるだけでなく、アメリカの同盟国として標的にされる可能性がある。日本には米軍基地があり、アメリカ国外では最大の兵力が集中している。
日本にとって北朝鮮もまた常時、国の存亡がかかる危険要素であり続ける。北朝鮮の今年のミサイル発射回数は過去最多で、そのうちの数発は、日本上空を通過した。それだけに、北朝鮮の核開発への野心に対して、危機感は高まっている。 
●なぜか余裕の岸田首相「“瀕死状態”も降ろしの動きなし」… 12/23
自民党安倍派の派閥パーティー券収入による裏金作り事件は、松野博一前官房長官、高木毅前国対委員長、萩生田光一前政調会長、世耕弘成前参院幹事長が東京地検特捜部から任意の事情聴取を要請されたという事態になった。社会部記者が言う。
「役所の御用納めは28日ですが、押収した資料のブツ読みなど仕事が山積みのため、特捜部は年末年始の休みを返上して、1月10日ころまでは、ぶっ通しで働き続けるようです。来年の通常国会召集が1月22日ころとみられていますから、その2週間くらい前までには、誰をどう立件するかを決めておきたいという計算のようです」
この裏金問題は、当然のごとく岸田文雄政権と自民党に大打撃を与えた。直近の毎日新聞の世論調査(12/16,17)では、内閣支持率が16%、自民党支持率が17%という惨憺たる数字がメディアを賑わせた。
「おそらく年が明けてから、安倍派の会計責任者は逮捕される可能性が高く、複数の安倍派国会議員が起訴されることになる。そうなれば、内閣支持率、自民党支持率ともにさらに下がることが予想されます」(自民党担当記者)
まさに“瀕死”の状態である岸田政権だが、岸田政権が倒れない最大の理由は「岸田降ろしが始まっていないこと」(政治部デスク)だという。デスクが続ける。
「支持率低落にもかかわらず、首相は相も変わらず会食続き。『岸田さんはなかなかしぶとい』という声が党内からは聞こえてきます。実際、岸田は周囲が考えるより頑固です。周囲には『来年は前半までに憲法改正に向けた条文案づくりを必ずやる』と話していましたが、ここにきて派閥の問題や政治資金規正法の改正などに取り組まざるを得なくなってきました。石にかじりついてでも来年6月の通常国会が終わるまで辞めないのではないかと見ています。
ここまでいろいろあっても岸田首相が余裕綽々なのは、党内で『ポスト岸田』だったり『岸田降ろし』という動きが伝わってこないからです。今は裏金問題の最中で、議員は自分たちのことで精一杯。そんな余裕はありませんからね。少なくとも、安倍派からは次の総裁候補を出すことはほぼ無理な状況です」
ポスト岸田に挙がる面々も、余裕がないことには変わりない。「ポスト岸田」として名前が挙がることが多い茂木敏充幹事長も例外ではない。
「茂木は『岸田首相の間は総裁選に出ない』と言い、一見おとなしくしていますが、密かに岸田首相が“野垂れ死ぬ”のを待っているのでしょう。首相が総裁選出馬を断念後正当な後継候補として出てこようという作戦でしょうが、党内では岸田よりも評判が悪く、これもなかなかうまくいかないと思います」
菅義偉前首相や「小石河連合」の動きはどうか。これについても前出・政治部デスクは「岸田降ろしに動き出す気配はない」とみている。
「菅、河野太郎、小泉進次郎の3人が次期首相候補としても注目されますが、彼らが党内で何かを起こそうと動き出している気配はありません。特に菅は、具体的な倒閣運動に出ている様子も見えません。背景には、菅が昨年軽い脳梗塞を起こした後、体調が万全でないことがあると思います。河野は次の総裁選に『出る』とはいっていますが、今は進次郎を巻き込んで若い連中と飯を食うような動きはみえませんし、マイナンバー問題に掛かり切りで、なかなか環境が上向かない現状があります」(同)
では、「次期総理候補ランキング」で1位の常連である石破茂元防衛相についてはどうか。自民党のベテラン秘書がこう話す。
「現在、政界の最高権力者とみられており、“キングメーカー”とも呼ばれる麻生太郎自民党副総裁は石破を徹底的に嫌っているといいます。麻生は自身の総理時代に石破から退陣を迫られたことを今でも根に持っていますからね。自分の目の黒いうちは石破を絶対に首相にさせないと考えている。地方党員の人気は高い石破ですが、岸田首相の『安倍派更迭人事』に異を唱えるなどの言動から、自民党の国会議員からは『あんたは政治評論家か』と陰口を叩かれている。自分から行動に出るとは思いませんね」
世論は冷たくも余裕の岸田首相……。国民の関心は離れていくばかりだ。
●首相、麻生氏依存強まる 安倍派不在、人事で配慮 12/23
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件を受け、岸田文雄首相の麻生太郎副総裁に対する依存が顕著になっている。最大派閥・安倍派の閣僚や党幹部の交代人事の前に2人きりで会談する場面が目立ち、麻生派の閣僚数は閣内で単独首位になった。首相は低支持率にあえぐ中、党内第2派閥を率いる麻生氏に配慮しながらの政権運営となりそうだ。
14日の閣僚交代に先立つ9、10両日、首相は党幹部と相次ぎ個別に会談した。麻生氏とは9日夜、公邸で2時間以上にわたり意見交換。茂木敏充幹事長らと会ったのは10日で、麻生氏との間で人事構想をほぼ固めた上で他の幹部に意向を伝えたとみられている。
麻生氏とは、安倍派の萩生田光一前政調会長らの辞任を22日に控えた18日と20日にも官邸で個別に会った。人事を含む善後策を議論したもようだ。
閣僚人事では、就任を断る事態が続出。総務相には9月まで務めていた麻生派の松本剛明氏が再登板した。「当初の構想に松本氏は入っていなかった」(関係者)といい、麻生氏の首相を支える姿勢が反映された形だ。
●安倍派高木氏 去年の段階ではキックバック継続伝達 派内で方針変更か 12/23
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐり、安倍派などの事務所が家宅捜索を受けた事件で、安倍派の高木毅前国対委員長が、去年の段階ではキックバックを続ける方針を議員に伝えていたことが分かりました。
安倍派の政治資金パーティーでは、パーティー券収入の一部が派閥側から議員側にキックバックされ裏金になった疑いがあり、東京地検特捜部は、政治資金規正法違反の疑いで事務所を家宅捜索しています。
その後の安倍派関係者への取材で、派閥幹部の高木前国対委員長が去年の段階では、キックバックを続ける方針を一部の議員に伝えていたことがわかりました。しかし、今年のパーティー前には一転してキックバックの中止を伝えたということです。
幹部らが資金管理に関する問題を認識し、派閥の方針を変更した可能性があります。
特捜部は、すでに松野前官房長官や高木氏など安倍派の事務総長経験者を含む幹部らへの事情聴取を要請しています。
近く聴取をするもようで、キックバックの方針が変わったいきさつについても、幹部としての認識を詳しく調べるものとみられます。
 12/24

 

●“裏金取りやめ”反発受け撤回 自民安倍派幹部が決めるも... 12/24
自民党・安倍派の政治資金パーティー収入をめぐる事件で、派閥幹部が2022年、キックバックを取りやめる方針を決めたものの、所属議員側からの反発を受けて、撤回していたことがわかった。
この事件は、安倍派での政治資金パーティーで、ノルマを超えて集めた分の収入を収支報告書に記載せず、議員にキックバックした疑いがあり、東京地検特捜部が安倍派の事務所などに家宅捜索に踏み切ったもの。
その後の関係者への取材で、2022年、派閥幹部がキックバックを取りやめる方針を決め、所属議員側にも伝えたが、急な方針変更だとして議員側から反発があり、撤回していたことがわかった。
特捜部は、事務総長経験者からも方針撤回の経緯について、確認するものとみられている。
●自民・安倍派還流、廃止決定後に撤回 22年、幹部が仕組み把握か― 12/24
自民党の最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)が政治資金パーティー収入の一部を裏金化していたとされる事件で、同派事務総長ら幹部が2022年のパーティー開催前、議員側へのキックバック(還流)の廃止を決定していたことが24日、関係者への取材で分かった。その後、決定は撤回され、前年までと同様に還流があったという。
東京地検特捜部は、同派幹部らが裏金化の仕組みを把握した上で是正を図ろうとした可能性もあるとみて捜査。幹部から任意で事情聴取し、認識などを確認するとみられる。
●杉村大蔵氏「自民党若手議員で暴れる人が誰もいない」 裏金問題 12/24
元自民党衆院議員で政治評論家の杉村太蔵氏(44)が24日、TBSテレビ系「サンデージャポン」に準レギュラーとして出演した。
自民党の派閥で政治資金パーティー券の販売超過分を議員側にキックバックしていたことが表面化した。関連していたと思われる閣僚や幹部が役職を次々に辞任する中、政治資金収支報告書への不記載や、組織ぐるみの“裏金疑惑”などへの東京地検特捜部の徹底追及が報道されている。
連日自民党の役員や閣僚級の議員の裏金にまつわる疑念が報道されることについて杉村氏は「(自民党に)政治責任はありますでしょ。これだけ政治不信をまねいて、で、不記載で、僕ね、何が危機的な状況かというと」と一気にしゃべって「自民党のね、若手の国会議員がね『さっそく辞めろ』と、『あんたらがこの政治不信をまねいているんだ』と暴れる人が誰もいないでしょ?」と声を張り上げた。
さらに弁熱は冷めずに「これ本来だったら、昔の自民党だったら、両院議員総会を開いて、執行部を突き上げていたんじゃないかな、と」と苦々しい表情で「今の政治責任を問う、そういう空気がないというのが不満です」とおとなしい議員ばかりの自民党にクギを刺した。
●政治にカネがかかるのはなぜ 地元活動でかさむ費用 12/24
自民党安倍派と二階派が政治資金パーティーによる収入の一部を裏金化していた疑いで、東京地検特捜部が強制捜査に乗り出した。そもそも、どうして政治にはカネがかかるのだろうか。
――国会議員の収入は。
衆参両院議員1人当たりの歳費は、今年の場合、ボーナスに当たる期末手当を含めて年間約2200万円。加えて調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)が毎月100万円支給されている。
――派閥パーティーの収入は何に使われるの。
派閥は夏と冬に「氷代」「餅代」として、所属議員に資金を配っており、それらに充てているようだ。選挙の際には資金援助もしている。
――今回の事件で、裏金が問題になっている。
派閥のパーティー券収入を巡り、議員がノルマを超えて売った分について派閥から還流を受けていたが、政治資金収支報告書に記載していなかった疑いがある。安倍派には約4000万〜5000万円のキックバックを受けていた疑いのある議員もいる。使途を含め、誰も説明責任を果たしていない。
――歳費や旧文通費では足りないのか。
やりくりが厳しいと感じている議員は少なくない。国会議員は特別職の国家公務員である公設秘書3人を置くことができるが、多くの議員が私設秘書を雇用している。公設秘書だけでは支援者回りなどの人手が足りないことが理由だ。選挙区が広い議員は地元事務所を複数設けている場合もあり、経費がかさむ。議員個人でもパーティーを開いて資金を集めているケースも多い。
――カネのかからない仕組みにできないのか。
もっともな指摘だ。議員からは「他の候補が地元活動にカネを使い続ける中、自分だけやめるわけにはいかない」(岸田派中堅)、「収入確保の手段が限られれば、議員は世襲か金持ちだけになってしまう」(自民党幹部)といった本音が漏れる。政界全体で「政治とカネ」の在り方を検討する必要がある。
●政治資金パーティーを巡る問題 安倍派では3パターンで“キックバック”か 12/24
自民党の派閥の政治資金を巡る事件で、安倍派ではパーティー券の収入が3つのパターンでキックバックされていたとみられることがわかりました。
関係者によりますと、安倍派と二階派ではパーティー券の販売ノルマを超えた収入が議員側にキックバックされ、収支報告書に記載されていない疑いがあります。その後の取材で安倍派では、パーティ券の収入が派閥の口座に直接振り込まれる場合と、議員側の口座に振り込まれる場合に分かれることが分かりました。
議員側の口座からはノルマ分のみを派閥に納める場合と、全額を納めたうえでノルマを超えた分がキックバックされる場合があり、あわせて3つのパターンがあったとみられます。
東京地検特捜部は派閥の幹部らからも任意で事情聴取をし、実態解明を進めるとみられます。
●自民派閥の政治資金パーティー利益率、最大9割… 12/24
自民党の派閥を巡る政治資金規正法違反事件で、疑惑の舞台となっているのが政治資金パーティーだ。各派閥の重要な資金源となっていて、収入から開催経費を差し引いた利益の割合を示す「利益率」が最大で9割と軒並み高い。欠席を前提に大量のパーティー券が販売されるケースもあり、専門家からは、透明性の確保を求める声が上がっている。
陳情通すための「貸し」
今年5月16日夜、東京都内のホテルで開かれた自民党最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)のパーティー。冒頭、同派会長代理(当時)の塩谷立・元文部科学相が「大枚をはたいてくれたのに、何もおもてなしがない」と述べると、集まった支援者から失笑が漏れた。
この日のパーティーには、約3000人が集まり、塩谷氏は「心から感謝申し上げる次第です」と述べた。
1回の開催で多額の金が動く政治資金パーティー。大阪府の建設会社の社長は「効率よく金を集めることしか考えていない」と批判する。
社長は、安倍派の国会議員秘書から頼まれ、1枚2万円のパーティー券を購入し、東京都内のホテルで2020年9月に開かれたパーティーに出席した。だが、会場は大勢の出席者ですし詰め状態。料理は焼きめしなど質素なものばかりだったという。社長は「付き合いで行っただけ。政策を語り合う場というよりは、金集めの場」と言う。
「ノルマを達成して国会議員に『貸し』を作れば、地元からの陳情や要望を通しやすくなる」。そう明かすのは、「 志帥 会」(二階派)に所属する国会議員の地元で活動する市議だ。市議たちにもパーティー券の販売ノルマが課され、1人20枚を売りさばいているという。「パーティーは政治家の集金手段で、別に悪いわけではない」と話した。
最大の収入源
同法では、派閥や政治家個人への企業・団体献金が禁止されており、パーティーは派閥にとって最大の収入源になっている。
自民党の6派閥はパーティーを毎年開催しており、22年までの5年間の総収入に占める割合は、それぞれ6〜8割に上る。食事代や手土産代などの経費を抑えることで、利益をより多く確保でき、各派閥の利益率は、7〜9割に達する。
事件では、安倍派や二階派がパーティー券販売のノルマ超過分を所属議員側にキックバック(還流)し、収入などを政治資金収支報告書に記載していなかった疑いが出ている。昨年までの5年間で、安倍派では5億円規模、二階派で1億円超に上るとみられ、不記載分の収入を加えると、両派の利益率はさらに上がる。
安倍派では、会場の収容人数を超えてパーティー券が販売されている。18〜22年の収支報告書によると、都内の同じホテル会場でパーティーを年1回開催し、1回当たり約3200人〜約7000人に販売した。だが、ホテルによると、この会場の収容人数は2000人余りだという。
安倍派所属の議員秘書は「地方ではパーティー券の代金だけを払って、実際には行かない企業が多い。遠方からだと交通費や宿泊代もかかるからだ」と明かす。
政治資金パーティー / 政治団体が対価を徴収して開催する催し物で、収益を政治活動に充てることができる。パーティー1回で20万円を超えるパーティー券を購入した個人や企業名などは政治資金収支報告書に記載することが義務付けられている。
立食やめて弁当
国会議員らが開く大規模な政治資金パーティーは、コロナ禍を経て、利益率が上がっている。
読売新聞は、総務省が所管する政治団体のうち、自民党派閥も含む国会議員らと関連が深い政治団体が開いたパーティーの収支を分析した。1000万円以上の収入を見込んだ22年のパーティーは225件あり、利益率は平均87%だった。コロナ禍前の19年は計240件の83%で、4ポイント上がった。
ある国会議員の秘書は、「飲食を制限するパーティーがコロナ禍で主流になり、制限が解除されてもそれを引き継いだ事務所が多い。立食をやめて弁当を渡すだけにすると、費用を抑えることができる」と話す。
事実上の献金
藤村直史・神戸大教授(議会政治)の話 「国民の感覚では、利益率が8〜9割以上となると、催し物の対価性があるとは言えないだろう。会場に行かない人が多い前提で、多くのパーティー券が売られており、政治資金パーティーは形骸化して、事実上、法律で禁止された派閥への企業・団体からの献金となっている。政治資金の収支を電子化し、外部からもチェックできるようにするなど透明性を高める必要がある」
●「政治資金規正法」はザルか…「政策活動費」として“キックバック”? 12/24
広がる自民党の裏金疑惑。東京地検特捜部は、政治資金規正法違反の疑いで安倍派と二階派の強制捜査に踏み切りましたが、この法律には抜け穴があり、「ザルだ」という指摘もあります。
何を“規正”できていないのか。手作り解説でお伝えします。
“ヤミ献金”5億の処分が罰金20万
これまで「政治とカネ」の疑惑が浮上するたびに改正されてきた「政治資金規正法」ですが、きっかけの1つが1992年の東京佐川急便事件です。
自民党副総裁(当時)の金丸信氏に東京佐川急便の社長からの、5億円の“ヤミ献金”が明らかとなり、検察は取り調べも行わず、罰金刑20万円で事件を収束させました。
世間の不満は噴出し、検察庁の看板には、黄色いペンキが投げつけられました。
大規模改正で「企業団体献金禁止」、新たに「政党交付金制度」も
そして“政治改革”を求める声が高まり、1994年に規正法は大きく改正されます。
まず、企業・団体から“議員個人”への寄付が禁止。有罪が確定した際には、議員の資格を失うことに。
そして寄付に代わり政治活動を支えるため「政党交付金制度」が始まります。
国民一人あたり250円を負担し、議員数などに応じて各政党に交付金が配られます。
この制度で少しでも変わるかと思われましたが…
まだまだ“ザル”? 使途・入手先不明のカネ
いまも“抜け穴”が多く「ザル」だという指摘も。
ザルから抜け落ちるモノの一つは、企業や団体から「議員個人への寄付」が禁止される一方、「政党や政党支部への寄付」は可能となっていること。
このカネを政党は各議員に渡すことができます。自民党ではこれを「政策活動費」と呼んでいます。
政党側は、誰に幾ら支払ったかなどを公開する必要があり、自民党は去年2022年、茂木幹事長ら幹部15人にあわせておよそ14億円を支払いました。
ところが、議員側は使い道を報告する義務がありません。
ザルから抜け落ちるもう一つは、政治資金パーティー。
パーティー券の購入は企業や団体など誰でも可能です。
寄付の場合は年間5万円を超えると名前が公開されますが、パーティー券は20万円を超えなければ、“匿名”で購入できるのです。
いま問題となっている自民党の派閥パーティーですが、パーティ券を各議員がいくら売りさばいたのかも自己申告で、過少申告があっても、派閥から議員へのキックバックがあっても、外からチェックするのは困難です。
専門家「抜本的な見直しが必要」
こうした中、規正法改正の動きも出ています。
立憲民主党は「企業や団体のパーティー券購入禁止」や「すべての収支報告書をひも付け、オンラインで閲覧できる」ことなどを柱とした改正案を提出。
政治資金に詳しい日本大学の岩井奉信名誉教授は「法改正でザルの目が細かくなるたびに、政治家は新たな抜け穴を利用する。抜本的な見直しが必要だ」と話していますが、
果たして“ザル”の目をふさぐことはできるのでしょうか?
●参院選の年はパーティー収入「全額」キックバック…改選議員ノルマ免除 12/24
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る政治資金規正法違反事件で、「清和政策研究会」(安倍派)が参院選の年に開いたパーティーについて、改選を迎えた参院議員の販売ノルマを免除し、販売分を全額キックバック(還流)していたことが関係者の話でわかった。こうした運用は、少なくとも2019年の参院選まで続けられていたという。東京地検特捜部も経緯を把握し、裏金化した資金を選挙費用に充てる狙いだった疑いもあるとみている。
同派では、所属議員側が販売したパーティー券のノルマ超過分を議員側に現金で還流し、派閥側の収支や議員側の収入として政治資金収支報告書に記載していなかったとされる。
関係者によると、このうち参院議員については、改選の年はノルマを課さない運用が続けられてきた。同派のパーティーは災害発生や疫病といった場合を除いて例年春に開催され、改選議員側は自身が販売したパーティー券の代金を全額還流されて夏の参院選に臨んでいた。衆院議員は解散があり選挙時期が不規則なため、ノルマ免除の措置はなかったという。
同派の所属議員99人のうち参院議員は40人で、大野泰正氏(64)側が5000万円超、前参院幹事長の世耕弘成(61)、元五輪相の橋本聖子(59)両氏側も1000万円超を収支報告書に記載しなかった疑いが浮上している。3氏はいずれも19年に改選されていた。
同派の収支報告書によると、参院選のあった16年のパーティー収入は前年比約1800万円減、19年は同約5500万円減で、改選議員側への全額還流が原因だったとみられる。改選時も含めて5年間で数百万円の還流を受けたという参院議員の事務所関係者は取材に「選挙費用や翌年のパーティーのノルマに備えてプールしていた」と証言した。
●日銀の慎重な対応 「賃金と物価の好循環」とはどういうことか? 12/24
日銀は、12月19日までに開いた金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策を維持することを決めた。
肩透かしを食らった市場
12月7日の国会で、植田和男総裁は、「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言したため、今回は大きな政策変更があるのではないかと期待されていた。しかし、「チャレンジング」というのは金融政策の修正を意図した発言ではなく、仕事の姿勢として「一段と気を引き締めて」というつもりという意味だったと述べた。
市場は肩透かしを食らった形で、円高になるどころか、円安へと動いてしまっている。
日銀は、10月30、31日の両日、金融政策決定会合を開き、大規模な金融緩和政策を維持した上で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)について、長期金利の上限を柔軟にして、1%を上限ではなく「目途」にすると見直した。つまり、1%を一定程度超えることを容認した。金融緩和政策の微修正であり、今回はそれ以上の修正がなされるものと予想されていたのである。
なぜ円安が進むのか
円安の大きな原因は、内外の金利差である。私たちが預金をするときは、当然のことであるが、金利の高い金融機関を選ぶ。
日本の長期金利は1%程度であるが、アメリカは5%である。円で日本の銀行に預金するよりも、ドルでアメリカの銀行に預金するほうが5倍の利息がつく。それだけにドルを求める人が増え、円を選択する人は減る。そこで、ドルの需要が高まるためにドルの価値は上がる。逆に、円の価値は下がる。単純化して説明すると、これが円安なのである。
円安・ドル高は、金利差のみで生じるものではない。通貨の価値が上がるというのは、その国の力が上がるということである。円安になるというのは、日本が弱くなっているということである。つまり、日本の生産性の低下である。
かつて円高が進んだとき、自動車のような輸出産業は大きな打撃を受け、円高批判が強まった。もちろん急激な円高は弊害をもたらすが、日本の国力が増していることの反映であることも忘れてはならない。
インフレターゲット
日本ではデフレが続いている。最近の物価高、インフレはウクライナ戦争や円安という要因によるもので、経済の体質が変化したから起こっているのではない。一時は急上昇した物価も、最近は落ち着いてきている。
デフレを脱却するというのは、物価上昇率が2%程度になることであり、日銀はこの数字をインフレターゲット(物価目標)にしているのである。10月の日銀の予測によれば、物価上昇率の見通しは、2024年度が2.8%、2025年度が1.7%という。
大規模金融緩和策を修正するには、これから経済動向を見極め、「賃上げと物価の好循環」を確かなものにする必要があると日銀は言う。
日本のGDPの6割は個人消費である。つまり、経済が活性化し、物価も少し上昇するには、個人消費が増える必要がある。
賃金は上がるのか?
消費が低迷しているのは、家計の節約志向や将来不安に伴う過剰貯蓄も原因であるが、最大の理由は可処分所得の伸び悩みである。つまり、給料が増えていないということである。
そこで、人々は給料が上がれば、消費を増やす。需要と供給の関係で、需要が増えれば物価は上がり、それは企業収益を増加させる。儲かった企業は、従業員の賃金を増やす。そこで、従業員はまた消費を増やす。これが「賃金・物価の好循環」である。
企業については、設備投資が進んでいないことが問題である。成長率が下がっているため、進んで設備投資を行うという意欲が殺がれているのである。借金してまで設備投資を行うという企業が激減している。これでは経済は拡大しない。
「賃上げと物価の好循環」が確立するというのが理想的なシナリオであるが、大企業はともかく、中小企業がすぐに賃上げに踏み切れるかどうかは疑問である。植田総裁が慎重な対応をしているのはそのためである。
金融政策の修正には、もう少し時間がかかりそうである。
●「減税」打ち出した「24年度の税制改正大綱」決定、曖昧部分が多すぎ… 12/24
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」。12月20日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「“減税”を前面に押し出した、来年度の税制改正大綱」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
来年度の税制改正大綱が決定
自民、公明両党は12月14日(木)、来年度の税制改正大綱を決定しました。所得税などの定額減税、賃上げ税制の拡充など「デフレ脱却」のための減税メニューが並んでいます。
吉田:塚越さん、まずは「税制改正大綱」とは何なのか、改めて教えてください。
塚越:翌年度以降の増税や減税といった「税制」についての内容や、検討事項をまとめた文書になります。例年、秋から自民公明の両党がそれぞれの税制調査会で議論して、最終的に12月に与党としてまとめるのが恒例となっています。この文書をもとに税制改正法案を政府が作成し、来年1月の通常国会に提出することになっています。
“減税”を前面に打ち出した内容だが…
吉田:その税制改正大綱、来年度は“減税”が前面に打ち出されているのですか?
塚越:そうですね。とにかくたくさんあるので、代表的なものを簡潔にまとめます。先に全体の印象を述べれば「減税」を押し出しつつ、重要な部分は曖昧だなというのが私の印象です。
まず、以前から報道されていた、1人あたり4万円の定額減税(所得税など)については、「年収2,000万円を超える人は外す」という所得制限がつきました。とはいえ、2,000万以上の人は全体の1%程度で、あくまで不公平感を取り除くものになっています。
また、減税は来年の実施だけでなく、再来年以降も柔軟に対応、つまり場合によっては実施するといった内容になっているものの、柔軟というよりも曖昧な表現だなというところがあります。
次に、児童手当を高校生まで拡充することで、高校生などを扶養している場合の扶養控除を縮小する案が出たのですが、大筋で目処はついたものの、正式決定は来年に持ち越されました。正式決定前に、もう一度議論が再燃する可能性もあります。正式決定にならなかった理由は、自民党と公明党で意見が割れたことも一因ですが、これも曖昧だと思います。
一方、賃上げを実施した企業の法人税を減税する「賃上げ税制」は、読売新聞の表現では「アメとムチ」を使い分けるとのことです。大企業の場合、これまで税制優遇となった賃上げ率3%以上〜4%未満の企業の控除率は下げて、新たに賃上げ率5%以上、7%以上を新設。賃上げするほど控除率を上げることになりました。多くの大企業ではすでに4%以上の賃上げがおこなわれているので、「さらに賃上げをしなさい」ということだと思います。
一方、中小企業でも、赤字であっても5年以内であれば黒字になるまで減税の優遇措置を繰り越せる制度を導入することになっています。同じく半導体や電気自動車(EV)といった成長分野には「戦略分野国内生産促進税制」を新設しました。「EV 1台あたり40万円」など、生産量に応じて減税することになりました。
ユージ:購入した側が減税対象ではなくて、作る側が減税対象ということでしょうか?
塚越:そうです。製造側が安くなります。逆に、設備投資がおこなわれなければ税制優遇はなくなるので、積極的に開発にお金をかけるということです。要するに、アメとムチなのかなと。
「防衛増税」「トリガー条項の凍結解除」については見送り
ユージ:“減税”を前面に押し出す一方で、「防衛増税の開始時期」や「トリガー条項の凍結解除」に関する記載は今回、見送られましたか?
塚越:去年の今頃に発表された税制改正大綱では、防衛増税の開始時期は示しませんでした。今回も先送りなんです。財務省出身の宮沢洋一税制調査会会長は、今年中に開始時期を決定したがりましたが、結局、岸田文雄首相が見送りを決定しました。
増税には政権の体力が必要ですが、現在の自民党の政治状況では厳しい、といった発言をされています。もともとの支持率が低いところに、裏金問題がダメ押しになったという感じです。
私は防衛増税には反対ですが、結局「先送り」が多すぎて、“決定しないままの持ち越しだらけ”というのは、どうなのかなと思います。
ガソリン税の上乗せ部分を停止する「トリガー条項」ですが、こちらは国民から望む声も多かったです。自民、公明、国民民主で引き続き協議するとされましたが、こちらも決定はせず見送りになっています。
ユージ:これもずっと言われていますよね。
塚越:こちらについてはいろいろと言われていたのですが、国民民主党が内閣不信任決議案に賛成したことが問題視されたということです。そもそも国民民主に関係なく、やるならやるべきだと思います。
ユージ:来年度の税制改正大綱、塚越さんは、どうご覧になりましたか?
塚越:先ほども話したように、曖昧なことが多いです。岸田首相はそもそも何をやりたいのか分からないと言われていたのですが、ますますそういうところで分からない点が多いという印象ですね。
●麻生さん「信教の自由」で首相に助言を 12/24
2023年の宗教界で特筆すべき出来事は岸田政権が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に解散命令を請求したことだろう。宗教法人法上の解散命令の要件となっている「法令違反」は本来、刑罰法違反に限られ、民法上の不法行為は含まれないが、岸田首相は世論の圧力に屈して、その法解釈を修正し、強引に統一教会の解散命令を請求した経緯がある。
ところで、「日本のローマ・カトリック教会も解散命令の請求を受ける要件を満たしている」という声が聞こえるのだ。
日本のカトリック教会を含め、世界のローマ・カトリック教会は聖職者の未成年者への性的虐待が多発し、教会への信頼が急落、特に、欧米教会では教会脱会者が増えている。そして聖職者の性犯罪は刑法犯罪だ。その件数も1件、2件ではなく、数千、数万件だ。
平信者の高額献金を理由に憲法で保障された「信教の自由」を無視して旧統一教会の解散命令を請求したが、岸田政権は日本のカトリック教会に対しても解散命令を請求できるのだ。なぜなら、聖職者の未成年者への性的虐待は信者の献金問題と比較するまでもなく重犯罪に属し、刑法の対象に該当するからだ。
もちろん、欧米教会で聖職者の未成年者への性的虐待が多発しているとしても、日本のカトリック教会で聖職者の性犯罪が発生していないならば、日本教会の解散命令といった事態は考えられない。しかし、残念ながら、日本のカトリック教会でも欧米教会と同様に聖職者の性犯罪は起きているのだ。
最近では、河北新報が12月20日、「宮城県内のカトリック教会の男性司祭から性的暴行を受けたとして、仙台市青葉区の看護師の女性(70)がカトリック仙台司教区などに計5100万円の損害賠償を求めた訴訟は20日、仙台地裁で和解した。和解条項によると、司教区側は女性に謝罪し、解決金330万円を支払う」と伝えている。
同紙によると、「女性は1977年、気仙沼カトリック教会の男性司祭から性的暴行を受け、2016年に教会側の窓口に被害を申告。司教区側の第三者委員会が同10月にまとめた報告書は『(性的被害が)存在した可能性が高い』と結論付けたが、司祭の責任は問わなかった。司教区側の代理人弁護士は取材に『被害があった可能性が高いと判断した第三者委の調査結果を受け止め、謝罪する』と述べた」というのだ。
また、フランシスコ教皇の訪日(2019年11月)前、月刊誌文藝春秋でルポ・ライターの広野真嗣氏は「“バチカンの悪夢”が日本でもあった!カトリック神父<小児性的虐待>を実名告発する」という記事を掲載している。児童養護施設「東京サレジオ学園」でトマス・マンハルド神父から繰り返し性的虐待を受けた被害者が語った内容は非常に生々しい(「法王訪日前に聖職者の性犯罪公表を」2018年12月28日参考)。
上記の2例は、約45万人の信者しかいない日本のカトリック教会だが、聖職者による未成年者への性的虐待が過去、発生していたこと、その性犯罪がこれまで教会側によって隠蔽されてきたことを明らかにしている。
日本のカトリック教会司教協議会は2019年、フランシスコ教皇の強い要請を受けて、日本における「聖職者による性虐待の実態調査」を実施し、その結果を翌年3月に公表した。それによると、「2020年2月末日の時点で、全16教区ならびに全40の男子修道会・宣教会、55の女子修道会・宣教会から回答を得た。その結果、聖職者より性虐待を受けたとされる訴えは、16件報告された」という。ちなみに、加害者側の聖職者の所属について、教区司祭(日本人)が7件、修道会・宣教会司祭(外国籍7件・日本人1件)が8件、1件が不明(外国籍)という。
ただし、同調査報告は「性犯罪は、暗数の多い犯罪でもある。とくに教会という密接なかかわりをもつ共同体の中での性犯罪は、被害者が声を上げることがより難しい。公的機関での公表件数然り、今回の調査においての該当件数も、言葉にできた勇気ある被害者の数であり、氷山の一角にすぎない。今もなお声を上げられない人がいる可能性は大きく、性虐待・性暴力全体の被害者の実数は把握しきれない」と述べて、被害件数の実数は16件よりはるかに多いことを示唆している。調査期間を広げれば、被害件数は少なくとも3桁台になると推測されているほどだ。
聖職者による未成年者への性的虐待が多発する背景について、欧米ではカトリック教会の機関的欠陥(例・独身制の義務)を指摘する宗教学者もいる。いずれにしても、岸田首相にとって日本のカトリック教会に解散命令の請求を出す要件は十分満ちているのだ。
岸田首相が「旧統一教会とカトリック教会を同一視することはできない」と説明するならば、「法の下に全ては平等」という基本原則を無視することになる。ましてや、憲法でも明記された「信教の自由」の原則からみても、岸田首相の対旧統一教会政策は正当性に欠けているといわざるを得ないのだ。
幸運なことは、岸田首相の周囲には麻生太郎副総理がいる。彼はカトリック教会の信者だ。岸田首相は麻生氏に「カトリック教会の解散」の是非について相談できる。麻生氏は日ごろ、「礼拝に参加するより、ホテルのカウンターに座ってグラスを傾けるほうが好きだ」と、ダメ信者ブリを披露してきたが、岸田首相の暴走に対し、「信教の自由」の重要性について助言できる立場だ。
岸田首相がカトリック教会に解散命令の請求を出さなければ、旧統一教会に解散命令の請求を出したのは、法的な根拠はなく、反旧統一教会のメディアと世論の圧力に強いられた結果だと首相自身が認めることになる。岸田首相は論理的には既に破綻している。
●次の首相になってほしくない政治家ランキング…1位は? 12/24
内閣支持率の下落に歯止めがかからない岸田政権。12月の世論調査では、ほぼすべての調査で11月の調査よりも支持率が低下している。
退陣を求める声も多いなか、話題となるのが“次の首相”だ。本誌は、自民党・自民党以外それぞれで次の首相になってほしい政治家を調査。石破茂衆院議員、小泉進次郎元環境相、河野太郎デジタル相、立憲民主党の泉健太代表、れいわ新選組の山本太郎代表、国民民主党の玉木雄一郎代表などの名前が挙がった。他社の「首相になってほしい人」に関する調査でも、特に自民党の次期総裁については同様のメンバーが並んでいる。
しかし同時に、これらの結果に対し「この人だけは首相にしないでほしい」という声も多く上がっているのが実情だ。そこで、今回は「首相になってほしくない」と感じる人について調査を行った。20代以上の500人を対象に、クロス・マーケティングのQiQUMOを利用している。
3位に選ばれたのは、「なってほしいランキング 自民党編」で2位に選ばれた小泉進次郎元環境相(42)。
なってほしいランキングでは、その理由として“若さ”が推されており、高齢化する議会の雰囲気を変えてほしいという期待がかけられているようだった。しかし、今回のアンケートでは《パフォーマンスが多くて実体がともなっていない》《人気だけで中身がない》とその”実力不足”を指摘する声が相次いだ。
自民党農林部会長時代には農協改革に切り込み’18年の種子法廃止を行ったほか、環境相時代には、石炭火力政策の見直しや、2050年カーボンニュートラルの目標設定などを行っている小泉元環境相。しかし、おそらく最も認知されているのは、国民の反感を買ったレジ袋の有料化だろう。
また、《小泉構文をよく目にするので国のことを任せるとなると不安要素が多いから》《言っていることがトンチンカン》など、中身のない発言への不満も多いようだ。
第2位に選ばれたのは、石破茂衆院議員(66)。「なってほしいランキング 自民党編」では1位に選ばれるなど、根強い人気を誇る石破氏。「地方こそが新しい時代を創り、歴史を変える」をビジョンとし、防衛大臣、農林水産大臣などを歴任した実績もある。
一見人気があるように見える石破氏だが、“自民党内”での評判に不安があるという声が寄せられている。
《仲間に冷たい人には、なってほしくないです》
《人望がない》
《リーダー的な人物に思えない》
《ネチネチしてる物言いがイヤなことと、そもそも向いてない、と思うからです》
実際、石破氏はこれまで総裁選に4回出馬しているが、そのたびに国会議員票を集められず敗れてきた。石破氏自身でも、その不人気ぶりについて《石破は面倒見が悪いという悪口も聞きますが、金とポストを配れば面倒見がいいというのもナンセンスですよね》と’20年の婦人公論のインタビューで語っている。
また、石破氏が自民党内の不祥事や政策に対して、歯に衣着せず自身の意見を発信してきたことにも賛否が分かれている。パーティー券問題についても、テレビ番組で「お金の流れを明確にすることが政党の義務ではないか」と発言。自民党に従属しないスタンスは、“誠実”として人気を獲得する一方で、“裏切者”とも見られてしまうようだ。
そして第1位に選ばれてしまったのが、れいわ新選組の山本太郎代表(49)。「なってほしいランキング 自民党以外編」では2位に選ばれている。現在の政治を変えてくれそうという期待や、物価高騰に対して、消費税廃止や減税を訴える姿勢が“庶民の味方”として支持されているようだ。
山本代表は、消費税の廃止や減税であれば、物価高にあえぐすべての人々が恩恵を得られ、実施までの期間も短くて済むと主張。不足する財源については、大企業の法人税の負担を増やしたり、現在分離して課税されている金融所得の税率を高めること、国債発行を行って穴埋めするとしている。
しかし、この説明に納得できない人も多いようだ。今回のアンケートではこのような方針に対して、次のような厳しい指摘が相次いだ。
《理想論ばかり語っているように聞こえるから》
《消費税廃止を唱えているだけで、具体策がない》
《言っている事が非現実的なことばかり》
《話している内容が感情的で一般人の質問のよう》
総じてみると、実績があり、人望があり、政策の実現性について納得感を与えられる人物が求められているようだ。実際問題として、国民一人一人が“この人”と首相を決めることはできない。納得できない人を首相にしないためには、国政に関心を向け、選挙に足を運ぶことが大切だ。
●防衛装備増強=外交交渉力増強の考えは間違い 12/24
24年度予算案が22日、閣議決定された。一般会計総額112兆円。突出しているのが防衛費の伸び。前年度当初予算比で約1兆1000億円増の約7兆9000億円。8兆円にとどく勢いで過去最高額になった。
岸田総理はロシアによるウクライナ侵略開始以来「アジアにおいても同じことが起こりうる可能性」をうたい、同時に中国の海洋進出、南西諸島の不安定、北朝鮮の核開発や弾道ミサイル発射実験、軍事偵察衛星打上げなど、すべてを材料に防衛装備拡充の必要をアピールし、今年度から5年間に43兆円を注ぎ込むことを決定した。
岸田総理にとっての防衛装備の限界は「核」に到達しなければよいのかと思わせる「歯止めなき軍拡の流れ」に。今月21日の経済財政諮問会議に示された「新経済・財政再生計画改革工程表2023」では「防衛生産・技術基盤の維持・強化」項目に「防衛事業を魅力化する」と謳った。
防衛産業にとって「防衛市場を、利益を産む市場」にすることで事実上の軍事産業への新規参入や既存企業の研究開発活発化につなげることを意味しているようにも受け取れる表現。「防衛生産・技術基盤の維持・強化」という改革工程は今回新設された項目でもある。
「防衛生産基盤の維持・強化」の取組みとしての記述では「防衛産業を取り巻く各種リスクへの効果的対応、防衛装備移転の推進、サプライチェーン調査の実施品目数や事業承継等に繋がった件数の割合といったKPI設定。装備品等の早期装備化の実現、民生分野で育成されにくい技術といった基礎研究の発掘・育成、「10億円以上の研究開発事業に対する早期装備化の実現に向けた取組みを実施する研究開発事業の割合」といったKPI設定。
政府は大学などへの共同研究の民間企業からの受け入れ額を2018年度比で「25年度までに7割アップ」を目指している。防衛装備庁は軍事技術への応用可能な基礎研究を行う大学に助成しているが、今年度23大学から応募があり、5件が採択された。来年度はさらに増えそうだ。
加えて、先の国会で成立させた「国立大学法人法改正」で東大、京大、阪大など事業規模の大きい国立大学を「特定国立大学」に指定し、学長と民間企業人材登用を含む3人以上の委員からなる「運営方針会議」の設置を義務付け、大学の中期目標や予算・決算など大学運営の主要方針を決定させることにした。防衛産業にかかわる主要企業が大学研究に資金提供することを条件に運営委員メンバーになれば「軍事研究」に足を踏み込むことになる可能性や運営方針会議の委員任命に文部科学大臣の承認が必要などから国立大学への政治介入の危険が高まることが予想される。
安倍内閣で憲法9条(戦争の放棄規定)が事実上、解釈改憲され、集団的自衛権行使を一部容認以来、「敵基地攻撃能力の保有」まで一挙に突き進んできた。しかも敵基地能力の範囲は「相手国のミサイル基地に限定されるものでなく、指揮統制機能を含む」とした。
具体的には「スタンド・オフ防衛能力や宇宙コンステレーション・無人機などによる探知・追尾を含むISR能力、宇宙、サイバー、電磁波領域における相手方の一連の指揮統制機能の発揮を妨げる能力と関連するものを包含する」。自民党が10数年前に目指した内容そのものが岸田政権で形になった格好。
安倍政権下でもできなかったことを岸田政権はウクライナで起こったことがアジアでも起こるかもしれないと吹聴し続けたことで、いとも簡単に「敵基地攻撃能力の保有」を現憲法下で正当化した。「非核3原則」以外は規制枠がなくなったような感さえ受ける。
一連の背景には岸田総理に「防衛力強化イコール外交交渉能力の強化」との思考が見える。しかし、これこそ「平和憲法」の外交交渉に副わない。「平和外交」「均衡外交」により戦争に巻き込まれることなく、先人らは平和の道を試行錯誤の努力の中で刻んできた。
日本は「防衛力」という武力・実力部隊を背景に外交を優位にするような術はとるべきではない。考えることも抑制すべき。それこそが国際社会から日本の評価、価値を高めることにつながるだろう。
●「終焉か状況打開か」岸田首相に必要な"覚悟" 12/24
10月の所得税減税の発表が潮目となり、岸田文雄内閣の支持率が急落したところに、12月になって安倍派を中心とした派閥の裏金問題が表面化し、内閣支持率は世論調査によっては20%を切り、不支持率は70%を超えつつある。政権としては危険水域に入っていることは間違いない。
数字だけ見れば、岸田内閣退陣へのカウントダウンともなりそうだが、この問題は幾重にも広がっており、内閣の交代となるのはまだ先だろう。というのは、岸田首相の失策、自民党の構造的な資金疑惑、自公政権のゆるみという3つの要因が絡み合っているからだ。
絡み合う3つの要因
第1には、昨年の安倍元首相の死去を受けて、岸田首相は突然国葬実施を決定したが、旧統一教会と安倍元首相との関係が疑われるにつれて、国葬に反対する世論の声が高まり、以後内閣支持率は20〜30%台と低い水準にとどまるようになった。
事態は、2023年5月のG7広島サミットでも8月の内閣改造でも好転しなかった。「増税メガネ」とSNSで揶揄された首相は、10月にこらえきれずに所得税減税を発表したことで、さらなる支持率の低下を招いた。この間解散をことあるごとに口にした岸田首相は、結局解散権を行使できなかった。こうした首相の政治姿勢に対しては、根本的なところで国民の間に不信感が渦巻いている。
第2には、安倍派を中心とする政治資金問題が、高負担と物価高による生活苦にあえぐ国民の強い反発を招いている。自民党とりわけ安倍派の構造的な金権体質が改めて浮き彫りになり、政治改革への着手が不可避となっている。特に各種世論調査では、自民党の支持率が下がり始めた。今や与野党全体で政治資金問題に取り組むことが、何にもまして必要となっているのである。
第3には、同じ与党の枠組みの中でも、公明党との関係が対立含みであることだ。解散が取り沙汰されていた2023年5月、東京都で公明党との選挙協力が一度は解消された。新設選挙区に公明党が候補擁立を希望したのに対して、自民党側が候補擁立に固執したからである。その後両党は改めて選挙協力をすることで合意したが、信頼関係の回復に至ったとは言いがたい。岸田首相自らは公明党に近いリベラルな政策志向はあるものの、敵基地攻撃能力を認めた防衛関係3文書の改訂などでは公明党側の懸念に応えていない。
そして11月に池田大作創価学会名誉会長が死去し、公明党の集票力の低下が危惧されるようになった。選挙協力の効果は薄れながらも、連立解消までは至らないという両党の関係は、政権の支持基盤を次第に弱めつつある。
自公政権そのものが弱体化
このように、岸田首相への信頼感の失墜もさることながら、現在の自民党さらには自公政権そのものが弱体化している中で、首相の交代という看板の付け替えだけでは、内閣支持率の回復は望めない。2024年9月の自民党総裁選挙の前に「岸田おろし」を仕掛けるメリットは党内にはないのである。
とはいえ、そもそもの問題は岸田政権の性格にある。2021年9月の総裁選挙で勝利して成立した岸田政権は、安倍元首相と安倍派の支援が最大の政治資源であった。岸田首相は、党内第4派閥であるがゆえに最大派閥の支持は不可欠である上に、7年8カ月の長期政権を担った安倍元首相のアドバイスと支援を頼りにしつつ、政策を推進した。
そして岸田首相は、かつての安倍首相のように官邸主導を果たそうとした。新しい資本主義、デジタル田園都市国家構想など、政策革新の旗を掲げた。だが、それらが十全な政策として実を結ばないまま、政権は、新型コロナやウクライナ戦争への対応から花粉症対策・悪質ホスト対策に至るまで、そのときどきの課題への対症療法に終始した。
特に安全保障面では、防衛関係3文書の変更やウクライナ戦争への対応などは、安保重視の安倍政権の延長線上にある。つまり、岸田政権は、独自の政策の果実を提示できないまま、安倍政権の政策スタイルを踏襲して今に至っている。安倍元首相と安倍派への配慮が、政権の政策革新を阻んでいたのである。
苦境を乗り越える覚悟はあるか
だが、安倍首相が死去し、安倍派が解体へと向かいつつある現在、岸田政権にとっては、その発足時に掲げたような政策革新を果たしうる条件が整いつつある。そこで必要なのは、岸田首相自身の特定の政策に対する強い信念である。
筆者自身、官邸で首相に直接、新型コロナ対策の政府司令塔の案について説明をしたことがある。首相は重要なところでうなずくなど、説明内容を十二分に咀嚼していたが、政治手腕を駆使してこれを実現する熱意の片鱗はうかがえなかった。これまでの2年間は、そのときどきで重要と見定めたものについて、とりあえずの処理はしていたものの、政治リーダーとして内心深く刻んだ信念とともに特定の政策に思いを入れこみ、それを持続的に展開するものではなかった。
現在の苦境を乗り越えるには、首相の気迫がすべてであろう。かつて橋本龍太郎首相は、「火だるま」になっても行政改革をやり遂げると発言し、その言葉通り、諸々の反対を受け止めつつも、自身が議長となって省庁再編の原案を作り上げた。岸田首相は「火の玉」になっても政治資金問題に取り組むと発言したが、あの橋本首相に匹敵する覚悟があるかどうかが問われている。
いま自公政権にとり必要なことは、与党間の協調関係を回復した上で、政治改革に取り組んで世論の期待に応えることである。だがこれは、自民党内で深い亀裂と対立を生むであろう。
ロッキード事件に直面した三木武夫内閣は、「三木おろし」に直面し、結局は総辞職を余儀なくされた。リクルート事件で首相自ら疑惑の渦中にあった竹下登内閣は、政治改革委員会を設置し、その最終決定である政治改革大綱を受け取ったあと総辞職した。
以後、選挙制度改革を進めるかどうかで自民党内に深い亀裂が生まれる中、東京佐川急便事件が竹下派の政治資金疑惑となるに及んで、小沢グループが離党するなど党が分裂して、宮澤喜一内閣は崩壊し、自民党は野党に転落した。
残された時間はそう長くはない
過去の例を見れば、自民党の中枢に関わる政治資金疑惑に直面した政権が、そのまま長期政権となることはまずない。岸田政権は、その終焉を覚悟しながら、政治改革に不退転の決意で取り組むという姿勢をとれるかどうかが問われている。
殊に不手際やさらなる不祥事が続き、内閣支持率1桁台にまで降下して総辞職も避けられなくなる事態もありうるとすると、政治改革のための検討会議を設置し、信頼に足る委員を任命するといった措置を早急にとらないと、何もしないままの退陣という不名誉な結末で終わることになりかねない。この問題で最初の引き金を引くまでに残された時間はそう長くはないのである。年明け通常国会で岸田首相がどう振る舞うかに注目したい。
●グローバルインフレと超円安への対応を誤っている日銀と岸田政権 12/24
コロナ禍をきっかけに世界をインフレの波が襲った。コロナ前には「低成長・ゼロインフレ・ゼロ金利」の長期停滞が指摘されていた日本も、急激な超円安・高インフレに直面した。世界と日本の経済はどう変わったのか。BNPパリバ証券のチーフエコノミスト・河野龍太郎氏に聞いた。
「インフレは一時的」は専門家の間違い
──コロナ禍後に起きた急激なインフレに対して、中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)、ECB(欧州中央銀行)はともに金融政策の転換が遅れて、急激な利上げを余儀なくされました。『グローバルインフレーションの深層』では、このことについて、「専門家ほど間違う」と書かれています。
河野龍太郎氏(以下、河野):大きくインフレの状況が変わったことが過去3回あります。1960年代末に始まった「大インフレ時代(グレートインフレーション)」、1980年代半ばからインフレが収束していった「大いなる安定(グレートモデレーション)」、そして今回のパンデミックをきっかけに始まった「グローバルインフレーション」です。
LSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミスト)のリカルド・ライス教授は論文で、この3回とも、専門家ほど物価見通しを見誤ったと指摘しています。2021年に高いインフレ率が観測され始めたとき、パウエルFRB議長もラガルドECB総裁も、「インフレは一時的」と繰り返していました。民間エコノミストの多くもそうでした。
一方で、専門家とは逆に、アンケート調査では早い段階から、高インフレが続くと見る家計の割合が増えていったのです。これは日本でも同様で日銀の「生活意識に関するアンケート調査」では、2021年の後半から、物価の上昇を懸念する人の割合が増えていました。
ライス教授によれば、中央銀行がインフレ加速を無視してしまった理由は2つあります。
1つは「パンデミック中の2020年に下落した価格が正常な水準にキャッチアップするための調整過程」と見てしまったこと、2つめにコロナ禍前の2014〜19年にインフレ率が2%を下回っていたことを憂慮していたため、2%を超えるインフレはむしろ歓迎すべき、という主張のあったことでした。
また、専門家の多くが労働供給の減少、サプライチェーン問題、ウクライナ戦争などに起因する供給制約ばかりをインフレの原因と考えたことも、「一時的」と見誤った一因です。
この点については、私自身は今回のインフレは先進各国の政府がコロナ禍対策として行った大盤振る舞い、すなわち大規模な財政拡張と金融引締めの遅れが引き起こした需要拡大の影響がより大きいと考えていましたが、ライス教授も同様に需要ショックが主因という指摘をしています。
急激な円安を進めた異次元緩和に対する日銀のコミット
──日本でも超円安とインフレに対し、家計の怨嗟の声が高まっています。それでも、日本銀行の植田和男総裁はYCC(イールド・カーブコントロール)の小幅な政策修正は行ったものの、いまだに金融緩和姿勢を続けるとしています。
河野:経済・社会構造が異なる欧米各国で中央銀行が同じ間違いをしたことはシステマティク・エラーだと考えられるので、日本銀行にも当てはまってしまうのではないかと懸念して、今回の本を書き始めました。案の定、今年4月に新総裁に就任した日本銀行の植田さんも、インフレは一時的だと繰り返し、「粘り強く金融緩和を続ける」としました。
日銀はYCC(イールドカーブコントロール)やマイナス金利政策の解除までは早くやると思います。気になるのは、パウエル議長もラガルド総裁もコロナ前の低インフレを問題視し、政策レビューを行って、緩和の長期化を正当化するようなフレームワークを作った途端に、グローバルインフレが来て機能しなくなったことです。
植田総裁も就任早々、過去四半世紀続いた低インフレ時代における低金利政策についての多角的レビューを始めた。過去を振り返れば、そこから「超低金利の継続が必要なのだ」という結論を導き出すのではないでしょうか。過去を振り返ることも大事ですが、今すぐにやるべきは、欧米のこの間の物価コントロールの失敗をレビューし、学ぶことであるはずです。
──日本のインフレの起点は輸入インフレで、超円安がそれに拍車をかけました。
河野:歴史的に日米の金利差がこれほど為替に効いたことはないんです。短期的には、欧米が急激に利上げをしたことだけではなく、日銀が「異次元緩和を続けます」と強くコミットしていることが超円安を増幅した。それがインフレを招いて、個人消費を足踏みさせています。
今年の政府・日銀の大きな誤算は、コロナが収束してペントアップ需要によって消費が大きく回復すると思っていたら、4〜6月期から消費は前期比マイナスになっていることです。超円安とインフレによって企業の売り上げは増え、政府の税収も増えましたが、単に家計からの所得移転が起きているだけです。
2022年の春から物価は2%を超えていたのだから、その頃から異次元緩和の修正を始めるべきでした。そうすれば物価や為替は安定し、消費の回復も図られたと思います。
2%にこだわり国民の経済厚生を損なっている日銀
──もうとっくにデフレではないのに、政府・日銀は「デフレ脱却」と呪文のように繰り返し、植田総裁は「待つことのリスクは大きくない」としています。これは心配です。
河野:このままでは実質金利が下がって、円安インフレがもっと進んでしまいます。「待つことのリスク」と言えば、米国では政策転換が遅れて、急激な利上げとなった結果、2023年3月に内容の良くない地銀が3つ破綻しました。
日本は過去四半世紀もゼロ金利が続いてきましたから、米国のように後から急激な利上げを余儀なくされると、経済・金融システムにそうとう大きなストレスがかかります。
公的債務がGDP(国内総生産)比で260%だということを考えれば、政府債務の持続可能性も疑われて、金融市場が大きく混乱するリスクもあります。そうした心配から利上げができなければ、実質金利の低下で急激な円安が起こります。
ところが、植田総裁はグリーンスパン元FRB議長の「リスクマネジメント・アプローチ」を紹介した上で、「拙速な政策転換を行うことで、ようやく見えてきた2%(物価目標)達成の芽を摘んでしまう」と心配しています。これは誤用だと思います。
リスクマネジメント・アプローチの要諦は、可能性が低くてもダメージが大きいリスクをあらかじめ回避するということですから、欧米の経験に学ぶならば、むしろ早めの政策修正をして漸進的な利上げをすべきというのが正しい解釈です。
なまじ安定的な2%インフレのチャンスが出てきてしまったので、日銀は数字を追いかけることにこだわり、逆に経済・物価の安定を損なってしまっている。日銀という組織として目の前の千載一遇のチャンスを逃がさないようにとばかり思っている。組織としての損失関数と一国の損失関数を見誤っている感じがします。
グリーンスパン氏は物価安定を「経済主体の意志決定に際し、将来の一般物価水準の変動をもはや考慮する必要がない状態」と定義しました。平たく言えば、人々が日々の生活の中で、物価変動を心配しなくて良い状態、ということです。日本でその水準が2%なのでしょうか。2021年後半以降の経験を見れば、そうではなかったのだと思います。
製造業の海外移転で日本国内の生産性は低下した
──本書では内外の金利差以外に、為替をめぐる2019〜2021年の構造的な変化も示されています。さらに、実質実効円レート(物価の変動を除いた実質為替レートを貿易金額で加重平均したもの、円の実質価値を示す)の変動を長期で均すと、1995年までは実質円高が続きましたが、それ以降は、実質円安方向に転換していることを指摘し、その理由を解説しています。
河野:要は、実質実効レートのトレンドは製造業の生産性の相対的な違いにより規定されるということなのです。日本国内の生産性が1990年代半ば以降、相対的に停滞しているから実質ベースで見て円安になっている。それを大企業の経営者の方々に言うと「いや、ちゃんと私たちの企業は儲かっています」という。
では、どこで日本の大企業は儲けているか。まさに、90年代の終わり以降、海外に生産拠点を移転してきたわけで、つまり、海外における経済活動のパフォーマンスは良いけれども、国境の内側において必ずしも良いわけではないということです。
国内ではむしろ、人的資本の蓄積が遅れ、生産現場を国内に置かなくなったのでイノベーションもあまり起きなくなってきた。結局、海外でも旧いビジネスモデルを展開しているだけの企業が増えてしまった。
2000年代の初めにこうした状況に対して、政府・日銀は「国内の生産年齢人口が減っていくので、海外に出ていくのは仕方ない」とし、「経常収支の黒字が貿易収支から第一次所得収支に移り変わっていき、稼ぎ方が変わっただけ」としてポジティブに評価していた。海外の儲けを国内に持ってくればいいという発想です。
ですが、私は海外で儲けても国内の有形資産投資や無形資産投資、人的投資につながっていないので良いことではない、そもそもずっと賃上げにはつながってこなかったと指摘してきました。
グローバルに見ても人々の関心は中国や新興国に向けられ、日本への関心は低下が続いたので、なかなかこの流れをひっくり返すことはできなかったということでしょう。
現在は米中対立をきっかけに、中国などからASEAN、日本、米国などへのニアショアリング(需要に近いところへの生産回帰)の動きが起こっているので、それはいいことかなと思います。前著『成長の臨界』でも、オフショアリングがもたらした問題をかなり指摘しており、経済産業省の認識などはだいぶ変わってきています。
ナンセンスな「物価高を起点に好循環が起きる」というロジック
──日本の問題は生産性の低さ、潜在成長率の低さということですね。物価や為替はその結果なのに、政府・日銀は物価が上がれば問題は解決するかのように、「デフレ脱却」と言い続けています。安倍政権・黒田総裁時代から変わりません。
河野:「景気が良くないこと」「成長率が低いこと」を「デフレ」と読み変えてしまっているとしか思えない。今の政策は、「デフレが低い成長の原因である」とし、「インフレにして好循環を取り戻す」と言っている。
そもそも、物価高を起点に「好循環」が起こるというロジックがナンセンスです。潜在成長率が高まるとか、実質賃金が増えるとかいうのは実物経済の話です。
むしろ私が心配しているのは、これまでは「低成長・ゼロインフレ」だったわけですが、ここから先は「低成長・高インフレ」のスタグフレーションになるのではないかということです。
構造的な人手不足によって供給の天井が低くなり、潜在成長率がゼロ近傍に押し下げられている中で、金融緩和や財政拡張で需要をふかし続けると、低成長のままなのに、高めのインフレになってくる。スタグフレーションのリスクが高まっていますし、現状もすでに緩やかなスタグフレーションと言えるのではないか。
──供給不足により短期的な需給ギャップはプラスに転換しており、長期的な潜在成長率は低下しているのではないかということですね。
河野:2010年代はまだ高齢者の労働力が増えており、女性の労働参加も伸びていた。でも、2019年には労働供給の拡大が限界に近づき、労働需給はものすごく逼迫していた。
その後のコロナ禍で需要が落ちていた間は問題になりませんでしたが、2023年に経済が再開して需要が回復したら労働需給の逼迫が顕在化した。そこへ、円安インフレがぶつかったことで、輸入インフレがホームメイドインフレへ転化している。
需給ギャップはプラスなのに追加の財政支出という愚策
河野:政府や日銀は工場の稼働率が戻っていないとか、旅館の稼働率が戻っていないことを問題視していますが、それは需要が足りないからではなくて、人手が足りないからなんです。
先ほど消費が戻っていないのが政府・日銀の大きな誤算だと指摘しましたが、これから明らかになってくる2つめの誤算は、供給制約により設備投資が増えていかないことです。
企業は価格転嫁も進み、好調な業績を続けていて、かつ人手不足なので、自動化などの設備投資をものすごくやらないといけないと思っている。日銀短観で見ても、高い設備投資計画を打ち出してきています。
ところが、実際の設備投資は4〜6月期、7〜9月期と減少しています。機械受注統計でも同様です。人がいないので、資本財が作れないし、工場も建設できない。この点が理解されていないと思います。
──理解不足は間違った政策につながりますね。
河野:そんな間違いの1つが、利上げでインフレを止めるべきなのに、供給余力があると勘違いして金融緩和を続けてしまうことであり、2つめが物価高の痛みを吸収するためとして、大規模な追加財政を繰り返していることです。
もちろん、低所得の人は痛みを被っているわけで救済は必要ですが、財政拡張によって需給ギャップをさらにタイト化させれば、ますますインフレになり、ますます生活は苦しくなります。
岸田政権の恒久的な財政拡張がもたらす財政インフレ
──追加財政の問題が出ましたが、財政インフレのリスクも気になるところです。米国でも国債の格下げが話題になりました。2022年には英国のトラス政権がばらまき財政を打ち出して、国債価格の暴落(金利急上昇)に見舞われました。
河野:冒頭にもお話ししたように、今回のグローバルインフレを引き起こす要因として何がいちばん大きかったかと言えば、大規模な財政政策です。
米国ではFRBの急激な利上げにもかかわらず、なかなか景気が悪化せず、インフレが収まらなかった。それは、政府から家計や企業への大きな資金の移転が行われたため、民間のバランスシートが健全だったからです。
通常、インフレは中央銀行の政策で抑制できます。しかし、財政インフレで財政への信認の低下がインフレの原因だった場合は、中央銀行の政策だけではインフレ率は下げられません。財政インフレであれば、先進各国の今のポリシーミックスはたいへんに危険だということになります。
つまり、利上げは金融システムや景気には悪影響をもたらす可能性がありますが、物価高の家計への影響を相殺するという目的でガソリン補助金のような財政拡張を行っていると、なかなかインフレは収束しない。この点、実は心配されるのは米国よりも欧州と日本です。
米国はバイデン大統領がもっとばらまき政策を実行したいと思っても、分裂政府(ねじれ政府)なので、共和党の反対でできません。拡張財政も緊縮財政も反対に遭います。
ところが、欧州では政治的な分断が広がる中で、極右とか極左の勢力が強くなるのを抑えるために、かなり財政拡張をやっており、インフレが続くリスクがあります。
問題は日本です。岸田政権は財政拡張を行っています。前著『成長の臨界』では安倍政権の財政規律の緩みをかなり批判しましたが、岸田政権の財政スタンスはもっとひどい。安倍政権は拡張財政を繰り返したとはいえ、恒久的な財源が固まらない以上、恒久的な歳出拡大はしなかった。
ところが、岸田政権は恒久的な財源を十分に確保する前に、子育て支援や防衛費増大などの恒久的な財政支出を決めてしまっている。財政規律という点から問題であるだけでなく、需給ギャップがタイト化している中で、金融緩和のみならず大規模な追加財政も続けると、財政インフレを本気で心配しなければならなくなります。
円が国際通貨ではなくなる日
──最後に、日本がアルゼンチンの二の舞になるという怖い話が出てきます。改革できないまま、ゼロ成長が続き、かつ財政健全化の姿勢も見えないとなると、あり得ないことではないと思いました。
河野:日本のゼロ成長が続いて他国が成長を続ければ、日本は埋没してしまいます。また、首都直下型地震とか、津波などの大規模な災害が20〜30年のうちにやってくると政府も言っているわけですし、米中対立から台湾有事などの地政学的リスクも高まっています。
何もショックがなければ、日本は埋没するだけかもしれませんが、そうしたショックが複数重なると、財政の持続可能性が損なわれるので、もう先進国の一員とは見なされなくなってしまう。
──「名目成長率>長期金利」という状態がいつまでも続くと思ってはいけない、円が国際通貨とは見なされなくなるというお話ですが、急激な円安が進展する中でそのリスクが垣間見えた気がしました。
河野:前著でもそのリスクを書いたのですが、その後、目の前で急激な円安が早回しのように起きました。日銀が国債をすべて購入することで、円金利の急騰は封じ込められると主張する政治家がいますが、それは円の暴落を招いてしまう。そのことが、この間の急激な円安で明らかになりました。
2023年は、オリビエ・ブランシャールの著書『21世紀の財政政策』の翻訳が出て、財政政策が使えるんじゃないかと主張する人が日本でも増えています。ただ、潜在成長率がゼロ近傍まで低下した日本では、実質長期金利との差がほとんどないので、公的債務が収束するといっても、GDP比で400%とか600%で、発散とほとんど変わりません。
米国では使える政策であっても、日本の経済構造で単純に使えるわけではない、ということを指摘しておきたかった。かつて、ポール・クルーグマンが「期待に働きかける政策」を唱えたら、日本でもこれに依拠する人々が増えて、日銀の異次元緩和につながったからです。
●なぜ安倍派と二階派だけが裏金捜査の標的に?米シンクタンクの警告 12/24
なぜ安倍派と二階派だけがターゲットなのか?
パーティー券販売のキックバックによる裏金作りの問題の裏にある、アメリカの意図と動きについて読み解きたい。
12月19日、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、東京地検特捜部は、政治資金規正法違反の疑いで強制捜査に乗り出し、東京千代田区にある安倍派「清和政策研究会」と二階派「志帥会」の事務所を捜索した。
昨年までの5年間で安倍派はおよそ5億円、二階派は1億円を超えるパーティー収入を政治資金収支報告書に記載していなかった疑いがあり、特捜部は派閥の幹部や議員の認識など詳しい経緯について実態解明を進めるものとみられる。
安倍派と二階派の2つの派閥側は、所属議員がパーティー券の販売ノルマを超えて集めた分の収入を議員側にキックバックし、その分を派閥の政治資金収支報告書にパーティーの収入として記載していなかったなどとして政治資金規正法違反の疑いがあるということだ。
こうした動きがほぼ毎日主要メディアで報道されているが、違和感を感じないだろうか?
政治資金パーティー券の販売を通したキックバックによる裏金作りはかなり以前より行われている自民党の慣行であり、岸田派も含めすべての自民党の派閥が行っていることは、比較的以前から知られていたことだ。
それなのに、なぜ安倍派と二階派だけが強制捜査のターゲットになったのだろうか?そこには、なんらかの政治的な背景があるのではないだろうか?
アメリカに警戒されていた二派
もちろん100%証明できているわけではないものの、安倍派と二階派の2派だけが強制捜査の対象になった背景には、米国覇権の世界秩序の維持を目的にした外交政策集団、「外交問題評議会(CFR)」の影響力の強いバイデン政権の意向があったとする観測が強くなりつつある。アメリカの関与でもない限り、裏金作りが常態化した自民党で、なぜ安倍派と二階派だけが強制捜査のターゲットになったのか説明がつかないのだ。アメリカの意向が本当にあったかどうかは証明できないとしても、そのような仮説は十分に成り立つと思う。
昨年の7月8日の銃撃で安倍元首相が殺害されてから、すでに1年半が経過している。その間、内外の情勢は激しく動いているので、安倍殺害の記憶は次第に遠くなりつつある。だが、安倍元首相のレガシーは安倍派に残り、それが「CFR」の影響下にあるバイデン政権を依然として警戒させているという状況は確実に存在するように思う。
日本の憲政史上最も長期間続いた安倍政権は、外交政策では、右派のナショナリズムと現実的なプラグマティズムの2つの側面を合わせ持った政権だった。
中国と韓国の度重なる抗議、さらにアメリカからの自重を求める声を無視していまだにA級戦犯を祭る靖国に参拝を繰り返し、自主憲法の制定を強く主張するナショナリストとしての側面もあれば、お互い協調し脅威とならない関係の構築で中国と合意して日中関係を改善に導き、また米オバマ大統領の自制要求を無視してもロシアのプーチン大統領と幾度も会談し、日ロ関係を強化するという現実的なプラグマティストの側面も持っていた。
ロシアのウクライナ侵攻が始まってからは、ロシアを非難しつつも、NATOの東方拡大がロシアの侵攻の引き金となったとし、ロシアにも一定の理解を示す論理を展開した。
一言で言うと、ナショナリストとプラグマティストの両面を使い分けながら、日本の国益を追求する独自な外交を展開したのが、安倍政権だったのかもしれない。このナショナリストとプラグマティストという2つの側面の混在は、安倍亡き後の安倍派にもそのレガシーは引き継がれていると見るべきだろう。
しかし、このような安倍政権はかなり以前から、「CFR」の影響力の強い米政権から警戒されていた。トランプは「CFR」の影響を排除した政権だったので安倍と安倍派への警戒感は一時的に弱まったものの、外交政策は実質的に「CFR」の影響下にあるオバマとバイデンの民主党政権では、警戒感が強かった。
2014年の「CSIS」のレポート
アメリカの政権に影響力のあるシンクタンクが、同盟国である日本の政権をネガティブに描写するレポートを公開することはめったにないことである。ほとんどレポートは、日米同盟関係の強化の方向性を示すもので、日本の政権に対するあからさまな疑念や批判はない。
しかし、安倍政権の場合は例外であった。第二次安倍政権成立の約2年後の2014年10月、「CSIS(国際戦略問題研究所)」は衝撃的な内容のレポートを公開した。このメルマガでは発表された当時に記事にしたが、ぃま安倍派の強制捜査が続く中、このレポートの中身を再度見ておくべきだろう。
「CSIS(国際戦略問題研究所)」は、リチャード・アーミテージやジョセフ・ナイなどの軍産複合体系のジャパンハンドラーが結集しているシンクタンクだ。そこは2014年10月に、「安倍の危険なナショナリズム」というレポートを出した。
この文書は珍しく強い言葉で、安倍政権の姿勢を批判している。
「バランスの破壊者」安倍
まずこの文書では、戦後日本には次の3つの政治機軸が存在していたとし、それらの間で成り立つ日本特有のバランスがあったことを明らかにしている。
   1. リベラルないしは左派
太平洋戦争は日本国民が軍部および戦前の支配層にだまされた結果引き起こされたとして、戦前の体制と歴史を批判。戦前の体制を完全に脱却し、平和で豊かな日本の構築を模索する。
   2. 保守ないしは右派
敗戦によって日本国と日本国民の一体感は失われてしまった。この一体感を回復するためには、神聖な日本国の概念を取り戻す必要がある。それには誇りが持てる歴史の解釈が必要だ。
   3. 中間派
左派と右派のイデオロギー論争からは距離を置く。政策実現のために現実主義的な路線を採用。
   日本政治のバランス
戦後の日本政治は、「リベラル」を基調としながらも、10年に一度くらいの割合で右派の巻き返しがあった。しかしながら、右派の挑戦が行き過ぎると国内の強い反対に合い、内閣支持率が低迷。右派の政権は退陣した。他方、右派の政権では日米同盟が強化されてきたとしている。
当初アメリカは、安倍政権もこのメカニズムで調整され、日本は過度なナショナリズムに走ることはないと見ていた。いずれ安倍政権の支持率は落ち、穏健でリベラルな政権に交代するはずだとしていた。
しかしながら、いまの日本ではこのバランスのメカニズムが機能しなくなっているようで、そのため安倍の過度なナショナリズムには歯止めが効かなくなる可能性があると警告ししている。
安倍政権に外交政策の転換を迫る
そして最後に、安倍政権に外交政策を転換するよう比較的に強い調子で迫り、文書を終えている。結論の重要な部分を訳出した。
「残念ながら現在の東アジアの情勢では、安倍のナショナリズムはアメリカにとって大きな問題である。
もし安倍のナショナリズムが東シナ海において不必要に中国を挑発したりするならば、信頼できる同盟国というワシントンの日本に対する見方を損なう恐れがある。
もし安倍の「従軍慰安婦」やその他の問題に対する姿勢が東京とソウルとの協調を損なうのであれば、この地域の軍事的な不確実性に対処するアメリカの能力を弱め、同盟の強化に向けたアメリカの外交努力を損ねることになりかねない。
特に基本的な人権という本質的な問題に対して、「日本はまったく理解していない」という見方を世界に広げることになる。
過去20年間、西側における日本のイメージは継続して改善してきたが、いま日本が海外に発信している内容は、これまでアジア諸国内の歴史認識の論争であったものを、大西洋を挟んだ問題(アメリカとの問題)に拡大する恐れがある。
ワシントンと東京は共通の歴史認識を持つ必要はないし、過去の過ちを日本が一方的に謝罪し、補償するようにアメリカは日本に要求することは間違っている。
だが東京は、これらの政治問題の重要性をよく認識し、可能な分野で歴史問題の緊張を和らげる努力をすることは重要だ。(中略)これは特に日韓関係で重要である。もし日韓両国が前向きであれば、大きな前進が期待できる。日本が発揮する柔軟性は、日本の保守層がナショナルプライドを放棄することにはならない」
以上である。
この文書は、外交問題分析の報告書という体裁だが、ジャパンハンドラーの牙城の「CSIS」から出るということは、日本政府に向けた明確なメッセージである。そうした文書の、「いま日本が海外に発信している内容は、これまでアジア諸国内の歴史認識の論争であったものを、大西洋を挟んだ問題(アメリカとの問題)に拡大する恐れがある」という表現は、安倍政権はすでに一線を越えており、ナショナリスティックな姿勢を改めないと、アメリカとの同盟関係を損なうことになるとの強い警告である。要するに、アメリカから脅されたのだ。
二階と二階派への警戒
これは、2014年当時の安倍政権のナショナリスティックな姿勢を批判したレポートだ。その後、安倍政権はオバマ政権の要請に従い集団自衛権を容認する「安保法案」を可決などしてアメリカとの同盟関係の強化を図ったが、それでも最終的に安倍政権はアメリカの国益に反する行動をするのではないかという疑心暗鬼は、強く残ったようだ。この疑心暗鬼は、2017年に「CFR」を完全に排除し、一国主義のトランプ政権になるまで続いた。
しかし2020年7月、トランプ政権の末期になると安倍政権への疑心暗鬼は復活した。7月30日、また「CSIS」は「日本における中国の影響:どこにでもあるが特定のエリアはない」という題名のレポートを発表した。これは安倍政権下における中国の影響力を調査したレポートだ。
このレポートは、安倍政権を特に批判したものではない。レポートは日本における中国の影響力を調査したものだ。中国はアメリカやヨーロッパをはじめあらゆる国々に経済的、政治的、そして文化的な影響力を強化する政策を実施しており、その多くはかなり成功している。たとえば、中国政府が世界各地に開設した中国の文化センター「孔子学院」は、特にヨーロッパ諸国で中国の文化的な影響力の拡大に貢献している。
この「CSIS」のレポートは、中国のこうした文化的影響も含め、日本における中国の影響力を文化的、政治的、経済的な側面から調査して、分析したものだ。
強くはない中国の影響力
このレポートは、日本における中国の影響力が限定的であることを示している。他の諸国と同様、日本にも「日中友好協会」や「孔子学院」のような中国文化を広める施設はある。しかしながら、日本人の持つ中国に対する伝統的な警戒感と違和感が背景となり、中国の文化的な影響力を拡大させる戦略は成功していないとしている。むしろ「Kポップ」や「韓流ドラマ」などを活用した、韓国の文化的な影響力のほうが大きいという。
これは文化だけではなく、政治や経済も同様で、中国による影響力の拡大策は限定的であるとしている。そうしたなか安倍政権は、一部親中派のいる外務省をうまくコントロールし、中国の影響力が政治に及ばないようにしているとして、安倍政権の対応を評価している面もある。
レポートの批判
このように、このレポートそのものは安倍政権に対して批判的ではないものの、日本の政界における中国の影響については強い懸念を表明している。中国の影響下にある政治家や高官が、安倍政権の内部にいるという批判だ。レポートには次のようにある。
「秋元司議員は自民党内部の親中派、二階派に所属している。この派閥は、別名「二階・今井派」とも呼ばれている。内閣総理大臣補佐官で元経産省官僚の今井尚哉は、中国、ならびにそのインフラ建設の計画にはソフトなアプローチを採るべきだと安倍首相を説得した。また、元和歌山県知事で和歌山の動物園に5匹のパンダを持ってきた二階幹事長は、2019年4月には特命使節として中国に派遣され、習近平主席と会見した。そして、アメリカの(反対)意見にもかかわらず、日本が中国の「一帯一路」に協力すべだと主張した。二階は習近平主席の訪日も提唱した」
これは安倍政権そのもの対する批判ではないものの、安倍政権の内部には親中派が存在し、中国寄りの政策を実施しにているとする懸念を表明したものだ。このレポートが出たのは2020年7月30日である。8月に入ると、それにタイミングを合わせたかのように、安倍首相辞任の可能性を探る記事や情報が急に増えた。このタイミングを見ると、安倍首相の辞任は、このレポートで表明された安倍政権への懸念に対応したものである可能性もある。
なぜいまのこの時期に安倍派と二階派を排除したい?
このように、これまでアメリカは安倍政権に対する疑心暗鬼を表明してきた。
1つは安倍のナショナリスティックな姿勢と自主独立的な外交路線、そして次は、安倍政権や自民党に存在する親中派の存在である。親中派の筆頭として名指しされていたのが、当時の二階幹事長、二階派に属する秋本司衆議院議員、そして当時の今井総理大臣補佐官であった。
現在の政治資金パーティー券販売のキックバックによる裏金作りで、安倍派と二階派だけがターゲットになっている理由は、「CFR」の影響下にあるバイデン政権の強い意向があるように思える。要するにバイデン政権は、安倍のレガシーを引き継ぐ安倍派と、親中派の疑いのある二階派への強い疑心暗鬼を払拭できていないのだ。
では、なぜいまのこの時期に安倍派と二階派の排除をアメリカは進めようとしているのだろうか?
アメリカが恐れる中国のテクノロジー覇権
それは、前回の記事で紹介した最先端テクノロジーで中国が実質的に覇権を握る可能性が非常に高くなっていることだ。44の最先端テクノロジーの分野で、中国は37分野で首位となった。アメリカが首位なのは、半導体関連の7分野だけである。
これを調査した「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」の危機感は強い。中国のテクノロジー覇権を調査したレポート、「ASPIのクリティカルテクノロジートラッカー、未来のパワーをめぐるグローバルな競争」の冒頭には次のようにある。
何が問題なのか?
西側民主主義国家は、科学研究のブレークスルー競争やグローバル人材の確保など、グローバルな技術競争に敗れつつある。これらは、まだ存在しないものも含め、世界で最も重要な技術の開発と管理を支える重要な要素である。
私たちの調査によると、中国は、重要かつ新興のテクノロジー分野の大半において、インパクトの大きい研究において時に圧倒的なリードを確立することで、自らを世界をリードする科学技術大国として位置づける基盤を構築していることが明らかになった。中国の世界的なリードは、ASPIが現在追跡している44技術のうち37技術に及んでおり、防衛、宇宙、ロボット工学、エネルギー、環境、バイオテクノロジー、人工知能(AI)、先端材料、主要な量子技術分野にわたる重要な技術分野をカバーしている。 クリティカル・テクノロジートラッカーは、以下のことを示している、
いくつかの技術については、世界のトップ10に入る研究機関のすべてが中国に拠点を置いており、2位の国(多くは米国)と比較して、インパクトのある研究論文を合計で9倍も多く生み出している。特筆すべきは、中国科学院がクリティカル・テクノロジートラッカーに含まれる44の技術の多くで上位(多くの場合1位か2位)にランクされていることである。影響力の高い論文の5分の1は、ファイブ・アイズ諸国の大学院で学んだ研究者が執筆している。
中国のリードは、習近平とその前任者たちが繰り返し説明したように、意図的な設計と長期的な政策計画の産物である。
中国が得意とする重要な分野は、防衛・宇宙関連技術である。核搭載可能な極超音速ミサイルにおける中国の躍進は、2021年8月に米情報機関を驚かせたと報じられている。
(中略)
我々のデータ分析によると、過去5年間で、中国は極超音速を含む先進航空機エンジンに関する世界のインパクトのある研究論文の48.49%を生み出し、このテーマ分野における世界トップ10の研究機関のうち7つを擁しているからだ。
米国は、クリティカル・テクノロジーで調査された44の技術の大半で第2位である。
米国は現在、ハイパフォーマンス・コンピューティング、量子コンピューティング、ワクチンなどの分野でリードしている。私たちのデータセットによると、中国と米国をリードする2カ国とそれ以外の国との間には大きな隔たりがある。このデータから、インドと英国を筆頭とする小さな第2層の国々が存在することがわかる。多くの技術分野でこのグループに定期的に登場する他の国々は、韓国、ドイツ、オーストラリア、イタリア、そしてあまり登場しない日本などである。
このプロジェクトは、より意外な発見も含めて、重要技術のエコシステムに対する理解のギャップをさらに浮き彫りにしている。1カ国か2カ国が新産業や新興産業を支配するような未来(最近5G技術で起きたようなこと)に直面しないよう、また各国が信頼できる安全な重要技術のサプライチェーンに継続的にアクセスできるよう、このギャップを埋める努力をすることが重要である。
中国が全体的に研究をリードし、さまざまな戦略的分野に専門知識を集中させていることは、民主主義国家にとって短期的にも長期的にも重要な意味を持つ。長期的に見れば、中国が研究をリードしているということは、ほぼすべての分野において、現在の技術開発だけでなく、まだ存在しない将来の技術においても卓越した地位を確立していることを意味する。
このままでは、技術開発と管理だけでなく、世界の権力と影響力が権威主義的な国家に移行し、新興技術、重要技術、軍事技術の開発、テスト、応用がオープンで透明性がなく、独立した市民社会やメディアによって精査されないことになりかねない。
引用が長くなったが、中国のテクノロジーの優位性に対する危機感は大変に強い。おそらくアメリカの危機感はもっと強いはずだ。
アメリカによる同盟国への圧力はさらに強まる
こうした危機感の強さから見ると、来年からアメリカは、あらゆる同盟国に圧力をかけながら、中国のテクノロジーの発展を押さえ込むために、軍事力も含め、なりふりかまわない中国封じ込め策を発動するはずだ。そうした状況では、アメリカが台湾有事を仕掛ける可能性だってある。
安倍派と二階派の排除は、その前兆なのかもしれない。強硬な中国封じ込めで日本がアメリカと足並みを完全に揃えるような状況に追い込むために、外交の独自路線のレガシーを引き継ぐ安倍派と、親中派の疑いがある二階派の排除を進める必要があったのだ。
このように見ると、2024年の東アジアは相当に荒れるだろう。要注意だ! 
●裏金問題で自見大臣が派閥退会届、二階俊博会長が激怒! 12/24
《いやはや、山口組以上ではないか》《派閥という名のヤクザ組織》――。こんな声がネット上では飛び交っている。自民党の派閥の政治資金パーティーを巡る政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部から事務所が家宅捜索を受けた「二階派」(志師会)のことだ。
同派所属の自見英子地方創生相(47)は22日、国会内で記者会見し、「政策集団・志帥会(二階派)を退会することにした。退会届を提出した」と発表。
「国民の真摯な声にしっかりと耳を傾け総合的に考えた」「二階会長にもお話ができている」と語っていたのだが、その後、同派の武田良太・事務総長(55)は「自見大臣の派閥退会届は受理しておりません。派閥幹部への相談もありません」とのコメントを発表した。
これを受け、同日付の朝日新聞デジタルは、【「大臣になりたい時はワンワンと…」二階氏激怒、自見氏の退会拒否】との見出しでこう報じたのだ。
「二階俊博会長(84)は周囲に自見氏への怒りをぶちまけ、派閥側は退会を認めなかった」
SNSでは「遊郭からの足抜けを望む自見さん」の声も
二階派といえば、論戦した野党出身の議員であっても、快く受け入れる派閥として知られていたが、「来る者は拒まず」であっても「去る者は追わず」ではなかったらしい。
派閥パーティーを巡っては、「販売ノルマがきつい」などの声が出ていたという報道もあり、SNS上では《シノギうまくいかない。上納金を払えない、と嘆くヤクザのようだ》と驚きの声が出ていたが、さらに二階派に対しては《親子の盃を交わした以上、簡単には辞められないということか》などと“鉄の掟”に震えがっている声が出ている。
《もしかして自見大臣は二階組長や武田若頭にエンコ詰め(小指を差し出す)を迫られるのでは…冗談だが》
《二階さんとしては、大臣ポストを与えてシノギの場を作ってやったのに、裏切るんかと。杯を返すんかと。分裂した山口組のよう》
《遊郭からの足抜けを望む自見さんと、そうはさせまいと激怒する置屋主人の二階さん?(笑)》
SNS上では、政治の世界の「裏側」に驚愕する投稿が少なくない。
●膨張予算、財源で迷走 「平時」回帰は道半ば 24年度 12/24
2024年度予算案は社会保障費、国債費といった歳出分野が過去最大を更新し、一般会計総額は過去2番目の規模に膨らんだ。内閣支持率の低迷で国民の負担が増えるのかどうかを巡る議論が迷走し、岸田政権は財源の想定の甘さを露呈。急ごしらえの定額減税に「政治とカネ」を巡る問題も加わり、コロナ禍で膨張した予算を「平時」に戻す取り組みは道半ばだ。
財源探し奔走
24年度予算と合わせて閣議決定された「こども未来戦略」。首相肝煎りの少子化対策の道筋がようやく示されたが、財源の一つの「こども・子育て支援金」(仮称)は医療保険料に上乗せして徴収することになった。「実質的な追加負担は生じさせない」と説明してきた岸田首相。しかし、最終的に子育て世代の負担も増える結果となった。
「増税以外の財源はないか」。衆院解散・総選挙をにらむ自民党幹部は今夏、増税を封印するよう財務省や内閣府に持ち掛けた。税よりも国民が負担を感じにくい医療保険を狙い撃ちした形だが、同支援金の設定にも「実質負担が生じない範囲」と枠がはめられた。負担を生じさせないという首相の発言につじつまを合わせようとする思惑が見え隠れするものの、徴収額が目標に達しなければ、「国債(借金)に頼らざるを得ない」として財務省幹部は頭を抱えた。
「負担とは言わない」
医療や介護に使う社会保障費の削減で、少子化対策の安定財源を捻出するという首相のもくろみは外れた。24年度の予算編成の焦点だった「診療報酬」の改定は、薬の公定価格である「薬価」部分の引き下げにより、全体では0.12%のマイナス改定で決着した。しかし、医師や看護師らの人件費に当たる「本体」部分は引き上げ。財源と見込んだ国費の抑制効果は400億円程度にとどまった。
「保険料は増えるけど、負担とは言わない」。診療報酬本体を引き上げれば医療費が膨らみ、国民の保険料負担が増える。だが、財務・厚生労働両省は20日、首相が重視する賃上げ実現による保険料上昇分は「負担」に算定せず、むしろ軽減効果が生まれるという独自の解釈を発表。予算編成の最終局面まで、国民負担を巡る首相の発言に振り回された。
転換期の財政
岸田政権は、今回の予算編成で新型コロナウイルス対策で膨らんだ歳出の「平時回帰」を目標に掲げた。24年度は金利上昇で国債利払いが大きく膨張。借金漬けの日本の財政は大きな転換点を迎えており、財政健全化の道筋を示すことが求められている。
しかし、首相が支持率回復を狙って打ち出した定額減税に加え、政治資金の裏金化疑惑は、防衛力強化のための増税時期を含む負担増の議論を混乱させた。政治への国民感情が厳しさを増す中、歯止めのかからない社会保障費の見直しといった負担を求める議論を進めるのは、ハードルが一段と上がりそうだ。
 12/25

 

●東京地検、安倍派幹部の松野・高木・世耕・塩谷氏を任意聴取−報道 12/25
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部は安倍派幹部の松野博一前官房長官、高木毅前党国会対策委員長、世耕弘成前党参院幹事長と塩谷立元文部科学相から任意で事情聴取をしたと読売新聞が25日付朝刊で報じた。
ブルームバーグニュースの電話での問い合わせに対し、東京地検の広報担当はコメントを控えた。松野、高木、世耕、塩谷氏の各事務所にも問い合わせたが、いずれも回答は得られなかった。
読売新聞によると、政治資金規正法上、収支報告書の作成・提出義務がある同派の会計責任者は還流分の不記載を認めており、特捜部は同法違反容疑での立件を検討しているという。派閥幹部への聴取では、会計責任者への指示や報告・了承の有無を確認する一方、所属議員側として還流分を記載しなかった経緯や認識を聞いたとみられるとしている。
岸田文雄首相は同日午後の日本経済団体連合会審議員会で、自民党派閥の政治資金問題に関し、「国民から疑念を持たれている事態を招いていることは大変遺憾なことであり、心からおわびを申し上げる」と述べた。その上で、「国民の信頼あっての政治の安定であり、政治の安定あっての政策の推進だと改めて肝に銘じて対応してまいりたい」と語った。
安倍派は歴代最長の在任期間を記録した安倍晋三元首相をはじめ、2000年以降に4人の首相を輩出した最大派閥。松野氏は21年10月の岸田内閣発足以来、約2年間にわたり内閣の要である官房長官を務めた。首相は松野氏、高木氏、世耕氏を含む同派で「5人衆」と呼ばれた幹部を要職に起用していたが、疑惑を受けて全員が交代した。松野氏らへの事情聴取は任意だが、政権にとってはイメージダウンとなる。
岸田内閣の支持率は複数のメディアが行った直近の世論調査で、政権発足後の最低を相次ぎ記録した。いずれの調査でも支持率は10−20%台に落ち込み、大半で12年12月の自民党政権復帰後の最低を更新している。
●裏金と長期政権の驕り 12/25
2023年も残すところ1週間。読者の皆さんにとってはどんな1年でしたか。
思い起こせば、前半はまだ新型コロナウイルスとともにある日常でした。感染法上の位置付けが結核など2類相当から、季節性インフルエンザと同じ5類に移行したのは5月。下火にはなりましたが、代わりにインフルエンザなどの感染症がはやっています。
政界に目を移すと、岸田文雄首相を取り巻く環境は年が押し詰まるにつれて厳しくなっています。内閣支持率下落の最大の要因は、自民党各派閥による政治資金パーティーを巡る問題です。
還流による裏金づくりが指摘された安倍派は4閣僚や党役員が辞任、派閥事務所が家宅捜索されました=写真。
東京新聞は19、20両日、政治資金の透明化を求める社説を掲載し、政党から議員個人に渡され、使途公表が不要な「政策活動費」も「ほかの政治資金同様、使途公開を義務付け、透明化すべきである」と主張しました。
本社には読者から、この問題に対する怒りの声が相次いで届いています。
中でも注目したいのは「政治家の『裏金化』は選挙の投票率の低さが影響しているのではないか。国民一人一人の意識も重要な問題点だ」という指摘です。
安倍派ではパーティー券を悪用した裏金づくりが以前から続いていたようですが、その背景には安倍晋三首相の長期政権による驕(おご)りがあったのではないかと考えます。
権力の座にあり続ければ法律から多少外れることをしても見逃してもらえる、もしくは、もみ消せばいい、と。
そうした状況を許したのは私たち有権者自身にほかなりません。政治に緊張感がなければ、権力が節度を失い、暴走するのは当然です。
来年こそは有権者一人一人が政治に関心を持ち、自らの意思を投票で表現する。投票率が上がれば政治に緊張感が生まれ、不正が起きにくくなると考えます。
●“死に体内閣”で賃上げできるの?支持率2割…国民生活に及ぼす悪影響 12/25
10〜20%台と、低迷する支持率にもかかわらず、続投する意向の岸田文雄首相(66)。気がかりなのは、岸田政権が続くことによる、私たちの生活に対する影響だ。政治評論家の有馬晴海さんはこう懸念する。
「これまでも岸田首相は〈国民に負担をお願いする〉と言って防衛増税や少子化対策をぶちあげるも、支持率には逆効果。“増税メガネ”と揶揄されると“減税”を強調しますが、政権の延命が目的と国民に見透かされています。
財源は社会保険料の引き上げや復興税などから回すと言っているので、実質的な“増税”でもあり、おそらく今後も、これらと同様の“見せかけ減税”が行われ、財源が見あたらず、国民の負担増は避けようがありません」
“見せかけ減税”だけではなく、“かさ上げ給付”もあるという。
「児童手当を高校生まで月1万円支給拡大するという案が進んでいます。しかし、その代わりに扶養控除は所得税が38万円から25万円に、住民税が33万円から12万円に縮小することが議論されています。どのケースもプラスになる制度ということですが、額面どおり月1万円所得が増えるわけではないので実質“増税”です。“異次元の少子化対策”と言うなら、本来は控除を減らすべきではないでしょう」(有馬さん)
一方で、こんなおかしな子育て支援も検討されているという。
「扶養控除が減らされる代わりに、子育て世代の子どもがいる世帯には、生命保険の控除の上限引き上げや住宅ローン減税などが検討されています。ですが、高い保険にも入れない、家も建てられないような世帯にはメリットはありません。子育て支援というより保険会社や不動産会社に向けた企業優遇策にしか思えません」(有馬さん)
企業にはありがたい施策は行われる一方、実行が決定したり、検討されたりしている増税や負担増はたくさんある。庶民に冷たい政治は続きそうだ。
“死に体”政権下で十分な賃上げは実現するのか?
“死に体”の岸田政権が続くことで別の懸念もあるという。庶民が急激な物価高に苦しむなか、岸田首相は「デフレからの完全脱却」を旗印に、物価高を放置してきた。物価の上昇に、やがて賃金が追い付くからというのが根拠だ。経済誌の記者はこう語る。
「岸田首相は民間企業に賃上げを呼びかけてきました。しかし、支持率が低迷し、政権が長くは続かないとみられているなかで、どれだけの企業が岸田首相の呼びかけに真摯に応えようとするでしょうか。
一度上げた賃金は簡単には下げられません。インフレ路線が次期政権でも続くとは限らないなかで、賃上げをリスクと捉える企業が増えてもおかしくはない。思ったような賃上げが実現しない可能性もあります」
求心力を失った岸田政権が続くことで、十分な賃上げが実現しなかった場合、ただ家計の負担ばかりが爆増することになるのだ。
“任命責任”という言葉はどこへやら。他派閥のことだからと、“逆ギレ”のように政権に居座る岸田首相。永田町ではすでに時期総理に向けた派閥間の綱引きが始まっているというが……。
「首相を変えても国民の負担増の方向は変わらないだろう」と警告するのは、社会保障と政治の関係に詳しい鹿児島大学教授の伊藤周平さんだ。
「岸田首相に代わる新しい顔で総選挙をして勝ちたい、というのが自民党の本音。でも、自民一強が続く限り、庶民の負担増路線は変わりません。有権者は、その点をしっかり見極めていく必要があります」
利権とカネにまみれた政治を改革しないかぎり、私たちの暮らしがよくなることはないのだ。
●岸田首相「強制捜査の夜の宴会はしご」で強まる「国策捜査」の疑念〜 12/25
朝日新聞は検察リークに基づく「自称・特ダネ」よりも「なぜ麻生・茂木・岸田の主流3派は強制捜査しないのか」を追及すべきだ。
東京地検特捜部が自民党の安倍派と二階派の裏金事件で強制捜査に入った12月19日の夜、岸田文雄首相が宴会をはしごしたことが波紋を呼んでいる。
まずは母校・開成高校の国会議員や官僚が都心のホテルに集まる会合に出席し、それから広島県選出の国会議員や県議らが集まる中華料理店での宴会に転戦したのだ。
岸田首相は各派閥に政治資金パーティーの開催や年末・年始の派閥行事の自粛を求めている。にもかかわらず自らは宴会をはしごしたことに、自民党内に「どういうつもりか」と反発が広がっている。
そればかりではない。
裏金事件で大学教授から刑事告発されたのは、安倍派や二階派だけではない。現主流派の麻生派、二階派、岸田派も刑事告発された。さらに岸田派は特捜部の捜査対象になっているとも報道されている。
岸田派にも強制捜査が及ぶ恐れがあるのなら、宴会をはしごしている余裕などないはずだ。すでに検察当局との間で「岸田派は強制捜査しない」という裏取引が成立しているのではないかーーそんな疑念が広がるのは当然だ。
そもそも今回の事件は、最大派閥・安倍派と非主流派の二階派を狙い撃ちし、麻生・茂木・岸田の主流3派を後押しする「国策捜査」との見方がある。
岸田首相が裏金事件を機に、安倍派の松野博一官房長官、西村康稔経産相ら閣僚4人と、萩生田光一政調会長、世耕弘成参院幹事長、高木毅国対委員長の党幹部3人を一斉更迭して安倍派崩壊を後押ししたことから、「国策捜査」の色合いは濃くなった。
さらに岸田首相の余裕ぶりが主流派と検察当局の裏取引への疑念をいっそうかき立てたのである。
安倍晋三元首相が他界した後、安倍派を集団指導体制を主導してきた5人衆(萩生田、西村、世耕、松野、高木5氏)が全員更迭されて失脚したことで、最大派閥・安倍派は分裂含みに陥り、来年の自民党総裁選で草刈り場となる可能性が高まっている。
第二派閥・麻生派、第三派閥。茂木派、第四派閥、岸田派の主流3派が派閥力学では圧倒的に優勢になったといっていい。
内閣支持率の続落で岸田首相には解散総選挙を断行する力はなく、来年秋に予定される自民党総裁選で再選を果たすのは難しそうだ。そこで麻生氏は来年春の予算成立後に岸田首相を退陣させ、緊急の総裁選に茂木敏充幹事長を担いで勝利し、主流3派体制を維持する構想を描いている。
主流3派だけでは過半数に届かず、最大派閥の安倍派を引き込むことが大きな課題だった。これまでも5人衆を要職に起用して政権を安定させてきたが、総裁選対策としても引き続き5人衆を取り込む必要があった。
ところが、裏金事件で5人衆が失脚し、安倍派が壊滅状況に陥ったことで、配慮する必要はなくなった。主流3派の優勢がはっきりしたといえるだろう。
特捜部の捜査が主流3派を後押ししたのは間違いない。
この国策捜査に加担しているのは、朝日新聞などマスコミ各社だ。
朝日新聞は安倍派の裏金事件の検察捜査をめぐって「スクープ」を連発している。もちろんすべて検察当局のリークに基づく報道だ。
リベラル言論界には朝日新聞の一連の報道を拍手喝采する向きがあるが、朝日新聞記者として長年の検察報道を内側から見てきた私としては「また検察権力と一体化した事件報道か」という思いが強くある。
検察報道の本来の役割は、検察捜査の行方をリークに基づいていち早く報じることではなく、検察捜査が公正に行われているかどうかをチェックすることにある。その意味で今回の裏金捜査では「安倍派や二階派への強制捜査」を追いかけるばかりではなく、「刑事告発されている麻生派、茂木派、岸田派はなぜ強制捜査しないのか」という視点で追及しなければならないはずだ。
検察当局は安倍政権時代、森友学園事件や加計学園事件、桜を見る会問題など、安倍官邸の権力私物化スキャンダルの捜査に後ろ向きだった。
私は当時、朝日新聞記者だったが、社会部の検察担当記者たちに「検察の不作為」を追及する決意をまったく感じなかった。彼らは「検察から情報をいち早くもらって、他社を出し抜く」ことにだけ関心があり、検察捜査が公正に行われているかどうかを追及する気概がそもそも欠けているのだ。
今回の裏金事件をめぐる朝日新聞の「スクープ」の背景には、検察当局の読売新聞への当て付けがあると言われている。読売新聞は河井克行元法相の選挙買収事件の検察捜査で「供述誘導」の不正があったことをスクープしたが、検察当局はこれに立腹し、朝日新聞に裏金捜査の情報をリークすることで読売新聞を「敗北」させ、「検察に不都合な記事を書くとこうなるぞ」と見せしめることに狙いがあったというわけだ。
検察当局のメディアコントロールを忠実に受け入れ、検察にとって最も優等生的な立場で接しているのが、朝日新聞なのである。読売がスクープした特捜部の「供述誘導」問題も、朝日新聞は検察当局を厳しく追及しなかった。今回の裏金事件の「スクープ」はそのご褒美だ。
このような「スクープ」は国策捜査に加担するものであって、ジャーナリズムと呼ぶに値しない。
政権内部の権力争いから安倍派や二階派の膿が噴き出すのは、政治の浄化を進めるものとして「歓迎」できる。安倍派や二階派を徹底批判するのは当然のことである。
しかし、検察当局を担当する社会部の司法記者たちがいま、最も追及すべきは「検察はなぜ主流3派を強制捜査しないのか」である。安倍派と二階派を狙い撃ちした国策捜査に加担する朝日新聞報道を礼賛するリベラル言論界の風潮には違和感を覚えるほかない。
検察は「正義の味方」でも「国民の味方」でもない。「時の権力者の味方」だ。司法記者がまず第一に自覚すべきことである。そして今の「時の権力者」は、キングメーカーの麻生氏なのだ。
●動機は米国への国賓招待!? 少なくとも2024年4月まで政権にしがみつく 12/25
「国民の信頼回復のために“火の玉”となって自民党の先頭に立ち、取り組んでまいります。国民のみなさまのご理解をお願い申し上げます」
12月13日の会見で、国民にそう呼びかけた岸田文雄首相(66)。だが、14日に時事通信が発表した世論調査によると、なんと内閣支持率は17.1%、不支持率は58.2%だった。これには岸田首相も年貢の納め時かと思いきや、本人は続投する意欲満々だという。
「『俺は悪くない。悪いのは安倍派だ』と岸田首相は思っているはずで、辞任する気はさらさらありません。そもそも岸田首相は、一日でも長く首相の座に居座ることへの執着が強いとみられています」
そう明かすのは、政治評論家の有馬晴海さんだ。
政界に激震を走らせた自民党「安倍派(清和政策研究会)」を中心とした裏金問題。裏金を受け取った疑いのある“安倍派5人衆(松野博一前官房長官、西村康稔前経済産業大臣、萩生田光一前党政調会長、木毅前党国会対策委員長、世耕弘成前党参院幹事長)”を事実上の更迭に。
しかし、二階派でも同様の裏金問題が発覚。また「岸田派(宏池政策研究会)」でも、3年間で2千万円超のパーティー券収入の不記載が報じられるなど、政治と金の問題はまだ広がりそうな気配だ。
まさに“火だるま”状態の岸田政権はいつまで続くのか――。
「年末年始によほど多くの逮捕者が出るなどすれば別ですが、本人が辞める気にならなければ無理に引きずり下ろすことはできません。では、本人がいつ決意するのかというと、早ければ2024年4月。
先日亡くなった自民党の細田博之前衆議院議長の補欠選挙に加え、今回の件で安倍派から失職者が出た場合、その補欠選挙も併せて行われます。ここで自民党が大敗すれば、引責辞任せざるをえないでしょう」(有馬さん)
もし、この補欠選挙を乗り切った場合、「来年秋の自民党総裁選挙まで岸田政権が続く」と有馬さんはみている。政治ジャーナリストの鮫島浩さんは、岸田首相が政権にしがみつく動機をこう説明する。
「岸田さんは、少なくとも来年2月までは首相の座に居座るつもりです。というのも、自身の派閥である宏池会では、これまで5人の総理を輩出していますが、来年2月まで続けられたら在任期間が歴代2位になるんです。だから『それまでは絶対に辞めたくない』と側近にも漏らしているようです」
これに加え、「外遊大好きの岸田さんには、もうひとつ辞められない理由がある」と続ける。
「11月に訪米した際、バイデン大統領から国賓待遇での招待を受けており、来春にも訪米する予定です。3月に予算を成立させたあと、この訪米をなんとしても果たしたいと考えているのです」
そうなると、辞任時期はやはり2024年4月以降になるという。さらに、政治アナリストの伊藤惇夫さんもこう予想する。
「今回新たに就任した閣僚たちが実はスキャンダルを抱えていたり、岸田首相周辺から問題が浮上したりすれば、年明けの早い段階での辞任はあるかもしれません。そうでなければ、3月の予算成立後か、最長で来秋の自民党総裁選までの可能性があります」
専門家3人の見解は、岸田政権がもうしばらくは続くことで一致した。
●裏金疑惑と自民党 腐敗体質と決別する時だ 12/25
自民党の最大派閥・安倍派が長年にわたり、政治資金規正法に違反し、組織的に裏金づくりをしていた疑惑が、岸田文雄政権を直撃している。国民が物価高騰に苦しむ中、政治不信は極まっている。派閥の解消を含めた抜本的な政治改革が急務だ。
東京地検特捜部は、安倍派と二階派の事務所を捜索し、松野博一前官房長官らに任意の事情聴取を要請した。
岸田首相は、国民の信頼回復に向けて「自民党の体質を一新すべく」「火の玉となって」「先頭に立って取り組んでいく」と語るなど、言葉だけは前向きだ。
だが、実際には、疑惑の渦中にある安倍派の閣僚や党幹部らを交代させる「安倍派切り」をしただけだ。捜査の進捗(しんちょく)を見極める姿勢に終始し、具体策を何も示そうとしていない。
ザル法の見直しが急務
捜査を待つのではなく、党が率先して自浄作用を発揮すべきだ。まずは実態の全容解明である。期限を区切って党内に調査を指示し、結果を公表し、関係者に責任を取らせ、再発防止策を講じる。こうしたサイクルを一刻も早く起動させなければならない。
政治資金規正法は、政治活動が「国民の不断の監視と批判」のもとに行われることを目的としている。「政治とカネ」を巡る不祥事が起きるたび、改正が重ねられてきた。それでも「抜け道」は多く、「ザル法」と指摘されている。
今回の事件を受けて、政治資金の「出」と「入」を全面的に開示して透明化を徹底し、罰則を強化する改正が必要だ。ただ、規正法の改正だけでは、政治倫理の底が抜けてしまったような現状を打破することはできない。
リクルート事件の反省から、1989年に自民党がまとめた政治改革大綱には、党が生まれ変わるためのヒントがいくつも書かれている。パーティーの自粛と収支の明確化、政党法の検討、選挙制度改革、国会審議の活性化、派閥の弊害除去と解消への決意などだ。大綱を踏まえて、平成の政治改革が行われ、小選挙区制や政党交付金制度が導入された。
このうち政党交付金は、企業・団体献金を禁止する代替措置として、国民1人あたり250円、年間約320億円の税金を投じて、政党に助成する制度だ。
利権誘導につながりかねない企業・団体献金を禁止し、個人献金中心の政治にしようという考え方があった。政治家個人向けの企業・団体献金は禁止されたが、政党や政党支部向けのものは事実上、約束をほごにする形で、温存されている。
そのうえ政党から政治家個人への寄付は認められているため、禁止の実効性もあがっていない。まさに「抜け道」だ。
政治家は、政党交付金に加えて、政党・支部経由で受け取る企業・団体献金を「二重取り」し、さらにパーティー券収入も得ていることになる。改革の原点に立ち返り、企業・団体献金の全面的な禁止を検討すべきだ。
弊害大きい派閥解消を
鈴木淳司前総務相は、パーティー券収入の還流を安倍派から受けながら、政治資金収支報告書に記載しなかったことを認め「この世界で(還流は)文化という認識があった」と語った。腐敗体質を断ち切らなければならない。
政治資金の「入」を規制しても、「出」を抑制しなければ、新たな抜け道探しが始まりかねない。「カネのかからない政治」をどう実現していくかの議論が重要だ。
「政治とカネ」は自民党だけでなく、公明党や野党にもかかわる問題である。政治家による議員立法でお手盛りの改正を重ねてきた歴史を繰り返すべきではない。有識者を入れた第三者機関をつくり、徹底的に議論すべきだ。
派閥自体のあり方も考え直す必要がある。昨今の派閥は、政策集団としての機能は影を潜め、内閣改造などで、派閥順送り人事をするための組織になっている。弊害は大きく、解消すべきだ。
政治家の「世襲」に何らかの制限をかけ、有為な人材がもっと政治分野に参画できるようにすることも求められる。
信頼なくして政治は成り立たない。このままでは国民感覚との乖離(かいり)は広がるばかりであり、政治にとって危機的な状況である。首相が指導力を発揮し、「政治とカネ」の問題に徹底的にメスを入れなければならない。
●野田元総理「世襲が諸悪の根源」、待望論に「ひと肌もふた肌も脱ぐ」 12/25
パーティー券を使った裏金作りのシステムがいわば慣習化した疑いのある安倍派。そのカリスマ的領袖だった亡き安倍元総理。そして政権運営の危機に立たされる岸田総理。二人の総理は奇しくも1993年初当選の同期だ。そしてもう一人同期にして総理経験者がいる。
現在、立憲民主党最高顧問の野田佳彦氏だ。野田氏は政治改革を掲げ政界に飛び込み、終始一貫して不透明な政治と金の関係を否定してきた。そんな野田氏が今思うこととは…。
「94年に政治改革法を作ったんだけど抜け穴があった」
朝6時半に千葉県船橋市の北習志野駅を番組スタッフが訪れると、駅前で手製のビラを行き交う人一人一人に手渡す元総理大臣の姿が。野田佳彦氏は地元でのいわゆる辻立ちを27歳から現在まで38年間続けている。月〜金で早朝から2、3時間。毎朝4時起きだ。酒豪で知られる野田氏は酒も毎晩飲むというが「毎朝辛いです、行きたくないなと思いながら38年やってます」と笑う。
辻立ちを始めた20代の頃から「お金のかかる選挙は完璧に打破する」と言い切っていた。
そして、リクルート事件、ゼネコン汚職事件経て政治不信が極まっていた1993年、細川護熙氏の日本新党の結党に参加。自らも初当選を果たした。野田氏は当時を振り返る…
立憲民主党最高顧問 野田佳彦元総理「30年前…。私、政治家になって一番高揚した瞬間だった。選挙の最大の争点は政治改革だった。当選できて、(改革の)議論の場に参加できて、細川(総理)さんと河野(野党・自民党総裁)さんが万年筆交換して改革の合意形成に至って…、もの凄い達成感があった。(中略)でも94年に政治改革法作ったんだけど抜け穴があった。そのほころびが今出てきた…。だからもう一回、令和の政治改革やらなきゃいけないと思ってます」
94年に成立した『政治改革関連法』では政治資金規正法が改正され、政治家個人への企業・団体献金を5年後に禁止することを決めた。だが細川政権は5年ももたなかった。政権を取り戻した自民党は“政治家個人への政党・政党支部からの寄付は認める”という条文を加えてしまった。つまり政治家個人への企業・団体献金は禁じられたが、企業・団体から政党・政党支部への献金は規制されず、その政党・政党支部から個人への寄付は許される。政党支部はその選挙区の議員が代表者だ。結局、企業・団体のお金が政治家個人に渡ることと何ら違いはない。これが“抜け穴”となって裏金作りの地盤を築いたのだった。
「世襲。僕は諸悪の根源だと思ってる」
野田氏は改めて政治改革を断行すべきと訴える。その柱は2つ。企業・団体献金の全面禁止と政治資金の世襲への制限だ。
野田佳彦元総理「本来は政党助成金を導入する流れの中で企業・団体献金をなくして行くというのは方向性として確認されていたのに、抜け穴ができてしまった。企業・団体献金の形を変えたものがパーティーじゃないですか。例えば20枚売ったって1人来てくれればいい、金さえもらえりゃ…。実態は献金。そういう抜け穴をふさいでいかないと…。30年たって改めて分かった。抜け穴作ったのがいけなかった…」
さらに政治資金の世襲に関連した問題として亡くなった安倍氏が関連した政治団体の資金が、昭恵夫人が代表に就いた政治団体に無課税で寄付されたことにも野田氏は憤る。
野田佳彦元総理「昭恵夫人は私人だと閣議決定された人。それが政党支部のトップになるってことは総支部長になるってこと…。ということは次の公認候補になる可能性がある。自民党の党則でもあり得ないこと。かなり権力の私物化が進んでる。蓮舫さんがよく調べていて、二世三世はお金がどう受け継がれてるか…。みんな非課税ですよ。個別の名前言いませんけどほとんどお父さんのお金、相続してますよ。地盤看板カバンのない新人が、知名度で勝てない上にお金の面でもハンデ追ってるっていうのは良くないと思う。どんどん世襲が増えてる。裏金といううまみがあって、相続は非課税。うまみがあるから世襲が増える」
地元で生まれ育ち、地元の県議からたたき上げた野田氏は世襲の最大の問題点として同期の二人を例に挙げて語った。
野田佳彦元総理「岸田さん三世ですけど、小、中、高、大学と全部東京。麹町の小学校中学校、開成から早稲田大学…。安倍さんも三世、ずーっと成蹊でしょう。山口に学友がいるわけじゃない。岸田さんも広島に学友はいない。みんな東京…。今そういう子がいっぱい。議員宿舎行くと中高一貫教育行ってる子が…。選挙区は地方…。いずれそういう子たちが地方の代表になる。それで地方の声なんて反映するわけない。僕は世襲は諸悪の根源だと思ってる」
「政権交代こそ最大の政治改革」
“金のかからない政治”“金のかからない選挙”を唱え続けている野田佳彦氏に自らの政治活動における収支報告書を見せてもらった。
去年1年間で収入が2160万円。支出が2328万円。月額平均で内訳をみると収入は個人献金63万円、政党交付金88万円、大きいものはこの2つ。パーティーは開かないのでパーティー収入などはない。月額180万円が平均的収入だ。
支出は人件費90万円、外注費5万円、通信費4万円、家賃22万円、消耗費等27万円、印刷代22万円、その他12万円など月平均194万円ほどで、赤字だ。その補填は去年の繰越金で賄ったという。
野田氏の秘書は公設3人に加え私設2人の計5人。総理経験者としては極端に少ない。
それも含め全般的に小さな数字が並ぶ野田氏の収支。これに対し…
パトリック・ハーランさん「収入も支出も倍くらいあってもびっくりはしない(くらい少ない)。でもこれって野党だからってことはないですか…。与党に金が集まるのは政界の常識。そこで2つ聞きたいんですけど、個人や法人がもっと献金したいって言ってきた場合は断るんですか…。もうひとつは総理大臣時代の数字はどうでしたか…」
野田佳彦元総理「総理大臣だった時もほとんど変わってないと思います。でも企業で献金の申し出はありました。どことは言わないですが、与党が大好きって団体があるんですねぇ。与党じゃなくなったら手のひら返すように消えてっちゃった。(総理の時は)そういうのも政党支部の方に受け入れました。“ああこういう付き合いもあるんだ”って受け入れましたけど、たちまち消えたんで、そういう団体とはもう二度と付き合わない。(―――結局、与党にいると来る者は拒まない?)そういうもんですね。(政権が長引くとお金が寄ってきちゃう)だから政権交代こそ最大の政治改革になるんですよ」
自民党が弱っている今、政権交代を担える勢力は生まれるのだろうか?野田佳彦氏にもう一度スポットが当たる時が来るかもしれない。もし野田氏待望論が湧きあがったらどうするのか。本人は、明言を避けながらも、自民党一強に対抗するには“多弱”の野党が結集するしかないという。
野田佳彦元総理「ひと肌もふた肌も脱ぎますよ。じゃないと死んでも死に切れませんから…、もう1回政権交代にリアリティが出てくるようにしなければやってる意味がないです」
●令和6年政治展望 地方から示される危機感 12/25
報道各社の世論調査で岸田文雄内閣の支持率は過去最低水準に落ち込む。政権、そして自民党の展望を特集した。
政治ジャーナリストの田ア史郎氏は、本紙の阿比留瑠比論説委員兼政治部編集委員との対談で岸田氏に一定の評価を示しながらも、演出力不足といった政権の課題を指摘。政権浮揚には「ご本人の覚醒が必要」と語る。阿比留氏は改憲手続きを進めることで「(来秋の総裁選で)再選の目も高まる」と応じた。
苦戦続きだった東北6県の地方選挙を総括した宮城県議会議員の松本由男氏、仙台市議会議員の菊地崇良氏、福島県議会議員の渡辺康平氏による鼎談(ていだん)では「(自民党の)野党転落もあり得る」との厳しい認識が示された。自民党事務局長などを歴任した選挙・政治アドバイザーの久米晃氏は、危機に際して組織を立て直す「復元力」が鈍っているとし、若手を含め「もう少し危機意識を持って、何とかしなきゃいけないと声を上げるべきだ」と注文する。
三重中京大学名誉教授の浜谷英博氏は、緊急事態条項と自衛隊に関する規定を新設する必要性を訴え、議論を盛り上げるためにも国会の憲法審査会が速やかに改正原案を作成するよう求めた。
拉致被害者家族会代表の横田拓也氏は被害者親族の相次ぐ死去に触れ、北朝鮮に「時間がないことをしっかり認識して、決断すべき」と求めた。
●112兆円予算案 金融正常化で財政規律促したい 12/25
日銀による金融政策の正常化が、政府に財政規律の順守を促すと期待したい。超低金利から「金利のある世界」に戻れば、国債費の増額が財政をさらに圧迫する。日銀が金融緩和で実施してきた国債購入も減り、政府は安易に国債を発行しにくい環境になろう。財政健全化が遠のいた2024年度政府予算案を最後に、岸田文雄政権は財政規律にも配慮した経済財政運営を推進してもらいたい。
24年度政府予算案の一般会計総額は2年連続で110兆円を超える112兆円台で、歳出の3割を新規国債の発行で賄う厳しい財政事情が続く。日銀の政策修正に伴う長期金利の上昇を見据え、国債費の想定利回りを1・9%(23年度は1・1%)と17年ぶりに引き上げたほか、高齢化で歳出増が続く社会保障費の歳出削減が進まず、防衛費も財源の増税時期が未定だ。
国債費、社保費、防衛費が過去最大となったことが一般会計総額を押し上げた。総額は23年度当初予算をわずかに下回るものの、コロナ禍対策で計上してきた予備費削減などの一時的な要因を除けば、23年度を上回る総額であることに留意したい。
このうち社保費は「診療・介護・障害福祉」報酬の同時改定で賃上げを優先し、全体では歳出増となった。賃上げは政権の政策と整合的で評価できるものの、歳出削減による少子化対策の財源確保に課題を残した。
防衛費は増税による財源が定まらないまま過去最大の歳出を計上。27年度までの5年間で総額43兆円の巨費を投じる計画だが、減税を先行する岸田政権は増税時期を決められずにいる。少子化対策と防衛費の「二つの財源」を早期に確保し、予算編成を平時に戻してもらいたい。
政府経済見通しによると、24年度は所得増加率が物価上昇率を上回る。実質賃金のプラス転換とデフレ脱却が視界に入れば日銀は金融政策の正常化を検討する。政治資金問題でアベノミクスを推進する安倍派の勢力が低下すれば、日銀は政策修正しやすいとのエコノミストの指摘もある。24年度が財政健全化への起点となるか注視したい。
●殺傷武器の輸出解禁 “密室スピード決定”の裏 12/25
昨年の安全保障3文書改定に続き、岸田政権は今年も年末のドサクサに紛れて、安保政策の重大な転換を国会での議論なく、密室で決めてしまった。
政府は22日、武器輸出のルールを定めた「防衛装備移転三原則」と運用指針を改定し、殺傷能力のある武器の輸出を解禁した。改定の柱は外国企業の許可を得て製造する「ライセンス生産品」の輸出で、改定当日に、地対空ミサイル「パトリオット」を米国に輸出することもスピード決定した。
急いだのは、米国からの要請に応えるためだ。ロシアと戦うウクライナに米国はパトリオットなどの防空ミサイルを提供しているが、これが不足。そのうえ、米国ではウクライナ支援の追加予算が議会で承認されず、財源枯渇も近い。
そこで、日本製のパトリオットを輸入して不足分を補えば、米国製をウクライナに提供する余裕が生まれる、というわけだ。
「国を売るようなもの」と識者バッサリ
驚くのは、22日の日本政府の決定について、事前に米紙が“既定路線”のように報じていたことだ。
19日のワシントン・ポスト(電子版)は、〈ウクライナの防空体制が不足、米国は日本に目を向ける〉というタイトルの記事を配信。
米当局者が「(日本の)協議が進行中のため匿名を条件に語った」として、「武器輸出ルールの変更は、バイデン政権の重要な要求を満たすもの」「バイデン大統領は、8月のキャンプデービッドでの歴史的な日米韓首脳会談で、そして先月のサンフランシスコでの経済サミット(APEC)でも、再びこの問題を岸田首相に提起した」と明かしたという。
つまり、バイデンに2度にわたってせっつかれた岸田首相が、忠犬ぶりを発揮したということだ。
「防衛政策には日本の自主性が問われるのに、日本を守るためではなく、バイデンを助けるために力を尽くす。それこそ国を売るようなものです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
岸田首相は「インド太平洋地域の平和と安定を実現する」と殺傷武器の輸出解禁の意義を強調したが、むしろ逆で、日本の武器が間接的に紛争地で使われる道を開くものであり、平和国家の変質を決定づけるものだ。
サリバン米大統領補佐官が22日、日本のパトリオット輸出について歓迎する声明を出していた。支持率1割首相のアタマにあるのは、米国に恩を売れば政権を下支えしてもらえるという魂胆だけなのか。
●岸田政権「次なる庶民殺し増税」は?病院窓口負担1割増だけじゃない! 12/25
2023年の年の瀬、政界に激震が走った。
「自民党の清和政策研究会(安倍派)が開いた政治資金パーティをめぐる裏金疑惑について、東京地検特捜部は、政治資金規正法違反の容疑で、捜査を進めています」(政界関係者)
疑惑を受けて、岸田文雄首相は、すぐさま安倍派に所属する松野博一官房長官ら4閣僚を交代。後任の官房長官には、岸田派の林芳正前外相が就任した。
だが、国民は冷ややかな見方をしている。
「毎日新聞が12月16、17日に行った世論調査では、岸田内閣の支持率は前月比5%減の16%、不支持率は同5%増の74%に達しました。減税や子育て支援政策をアピールする岸田政権ですが、国民にそっぽを向かれています」(前同)
その不信感は、どこから来るのか。政治ジャーナリストの安積明子氏は、こう言う。
「岸田首相は、支持率アップを狙って、来年6月から、納税者とその扶養家族を対象に、所得税と住民税から定額減税(4万円)を決めました。しかし、岸田首相は総裁選の頃から財政再建を主張していましたし、防衛費を対GDP比で2%まで増やす分は、誰かが負担しなければなりません。結局、増税を先送りしているだけだと、国民は見透かしているんです」
では、今後、どんな“庶民殺し”の負担増が予定されているのだろうか。
「12月7日に開かれた厚労省の専門部会で、高齢者が介護サービスを利用したときの自己負担を増やすことが検討されました。現在は原則1割ですが、近い将来、2割負担となる対象が拡大する見通しです」(全国紙厚労省担当記者)
12月5日に開かれた政府の経済財政諮問会議では、年3兆円に上る少子化対策の財源確保のため、医療費にも踏み込んでいる。
「28年度までに、75歳以上の後期高齢者の病院窓口での負担額が、現在の原則1割から2〜3割に引き上げられる予定です」(前同)
●実は岸田首相にとってチャンスかも 12/25
ほんの数か月前まで、いや数週間前まで、自民党内における安倍派(清和政策研究会)は「別格」(自民ベテラン秘書)であった。100人近くの議員を擁する超最大派閥であったことに加え、この10年もの間、幹部議員たちが相次いで要職に就き、歴代の政権そのものを動かした。永田町に限らず、政治の世界では「権力が権力を生み出す」(党三役経験者)ため、飛ぶ鳥を落とす勢いは群を抜いた。
しかし、おごれる者は久しからずとは言い得て妙で、政治資金パーティー券を巡る裏金問題が表出すると、派内に大激震が走り、所属議員の顔から笑みが消え失せた。検察の捜査に多くの事務所は戦々恐々とし、派閥からの脱会をもくろむ者もいる。「みんな口をそろえて捜査の行方を見守ると言っているが、栄耀栄華を誇ったあの安倍派が崩れていっている」(自民中堅議員)ことは確かだろう。
この1年、岸田文雄政権は低迷を続けてきたが、この裏金問題によってまさに「弱り目にたたり目」の形容そのままに、内閣支持率は共同通信社の世論調査(12月16、17日)で22.3%まで落ち込み、過去最低を更新するに至った。そのため、「政権末期」「総辞職間近」といった見出しを用いるマスコミもある。支持率が30%を下回ると「危険水域」と見なされるため、こうした見方はあながち間違いではない。
当の岸田首相は臨時国会閉会に際しての記者会見で、「国民の信頼回復のために火の玉になって取り組む」と明言した。SNS上では「火の玉どころか、もはや火だるまではないか」といった痛烈な指摘が多く見られたが、永田町でも「もともとひょうひょうとした人だからかもしれないが、(今回の会見でも)気持ちがこもっておらず、危機感がまったく伝わってこない」(閣僚経験者)との批判がある。
だが、永田町と国民との間には温度差がある。国民やマスコミの間では「岸田首相はもう持たない」「早く代わってほしい」と思われても、永田町では不思議と「岸田降ろし」の動きはまだ見られない。麻生、茂木、岸田の主流三派が健在で、岸田首相にとって「目の上のたんこぶ」(自民若手議員)だった安倍派や二階派が壊滅的な打撃を被っていることが背景にある。
さらに、「岸田の代わりは誰なのか」との問いに、明確な答えがないこともある。政党を見ても、今の野党が政権を担えると思っている国民はほとんどいない。自民党内でも、岸田首相に取って代われる適任者は見当たらない。石破茂元幹事長の名前を挙げる者もいるが、「いつもは後から鉄砲を撃つが、今回はがぜん張り切り、珍しく正面から鉄砲を撃ってきている」と皮肉られるほど、依然として永田町での評判は芳しくない。
しばしば岸田首相は、何を目指しているのか分からないと言われ、それが支持率低下の一因とされてきた。「新しい資本主義」といっても、いまだにその中身は不明瞭である。しかし、リーダーとしてははなはだ本末転倒ながら、「何を成し遂げたいか分からない人に、天がついに『政治改革』というテーマを与えたのではないか」(前出・閣僚経験者)と見ることができる。
岸田首相が裏金問題をチャンスととらえ、抜本的な政治改革を掲げて小泉純一郎首相(当時)ばりの「反対する者はみな抵抗勢力」「自民党をぶっ潰す」と叫べば、わずかながらも支持率に回復の兆しが見られるかもしれない。少なくとも、抜本的な政治改革を掲げてその実現にまい進すれば、それは堂々たる“錦の御旗”となり、岸田首相は引きずりおろされにくくなる。
だが、時間的な猶予はないし、小手先の改革では火に油を注ぐことになる。「通常国会が始まる来年1月下旬までに思い切った改革案を示せるかどうか」(自民国対関係者)が一つの目安である。「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」のことわざを具現化できるかどうかは、ほかならぬ岸田首相次第である。覚悟を決められなければ、来年9月の総裁再選はおろか、通常国会中の退陣が現実味を帯びるかもしれない。
●“増税メガネ”政権の支持率がついに消費税率を下回る⁉  12/25
順風満帆だった政権の「潮目」はいつ変わったのか。“お公家集団”岸田派からは「6月に解散しておけば…」と恨み節も。
2023年は岸田政権にとっては「どん底」に転落した1年となってしまった。岸田文雄首相が行う政策はことごとく民意とずれが生じ、「増税メガネ」というあだ名までついて、支持率は10%台にまで低迷。さらに、自民党の派閥で繰り広げられた裏金問題が追い打ちをかけ、来年の政権運営はまったく見通せない状況だ。
「お公家集団」岸田派は政局に鈍感で解散の好機逃す
「6月の国会会期末で解散するべきだった。後悔先に立たずだ」
自民党関係者はうなだれながら、そうつぶやいた。岸田首相が今年、最も輝いていた瞬間は、間違いなく5月に行われたG7広島サミットだろう。サミットではG7各国首脳が原爆資料館を訪れただけでなく、ウクライナのゼレンスキー大統領の来日というサプライズもあり、世間でも岸田政権に対する好印象が広がっていた。NHK世論調査でも5月の内閣支持率は46%まで上昇、不支持率の31%を大きく引き離していた。
もともと岸田首相は外務大臣を5年弱務め、外交に対しては強い思い入れがある。ロシアによるウクライナ侵攻によって世界情勢が混沌とするなか、広島をお膝元にする首相として「核なき世界」をG7各国に提唱し、ロシアや中国の力による現状変更を許さない「法の支配」を打ち出して一体感を演出。さらに、外務次官経験者の秋葉剛男国家安全保障局長と秘密裏に調整してゼレンスキー大統領の来日を実現した。
広島サミットが成功した背景には、国際情勢の変化も大きかった。ウクライナ侵攻を受けてG7は結束することが求められており、アメリカのバイデン大統領は大統領選で核軍縮を公約に盛り込むなど、「核なき世界」に対する理解が厚い。さらに、韓国では親日的な尹錫悦政権が2022年に誕生し、日韓関係は急速に改善していった。つまり、“得意”の外交分野で追い風を受けるなかで、岸田政権は支持率を伸ばしていたのだ。
通常国会が会期末を迎える6月には、岸田政権が広島サミットの波に乗り、そのまま解散に打って出るのではないかという観測が飛び交った。実際、当時の永田町では故・安倍晋三元首相の一周忌である7月8日に解散総選挙を近づけて、弔い合戦のような形で衆院選を行うという日程案までもが出回っていた。しかし、最終的に岸田首相は「今国会での衆院解散は考えていない」と表明し、解散見送ることとなった。全国紙政治部記者は当時をこう振り返る。
「政局に敏感な安倍派からは『今、解散しないでいつするんだ』という声が挙がっていたが、岸田派では『じっくり政策をやって内政でも成果を出してからでも解散は遅くない』という楽観的な雰囲気が漂っていた。岸田首相も『焦って解散を打つ必要はない』と解散見送りを判断したのだろう」
岸田派が系譜を継いでいる宏池会は「お公家集団」とも呼ばれ、政局に対しては鈍感という評判が昔からついて回るが、ここでも解散の絶好機を逃してしまったと言えるだろう。その後、岸田政権の支持率は転落の一途をたどることとなる。
「増税メガネ」「パー券問題」で支持率は低下の一途
岸田政権のイメージ悪化に大きな影響を与えたのは、やはり「増税メガネ」というあだ名だろう。異次元の少子化対策の財源として、社会保険料から国民1人あたり月500円の負担増が検討され、10月からはインボイス制度も始まった。官邸周辺によると、岸田首相は「俺は増税なんてやっていない」と周囲にぼやいたというが、今後は税率を上げずとも国民負担が増える「ステルス増税」が待っている。
そもそも、岸田首相は2022年末に防衛費の大幅な増額に伴い、法人税、復興所得税、たばこ税を増税する方針を決定。一方で、増税を開始する時期は未だに決めておらず、この先送りが岸田首相に「いつか増税する」というイメージを定着させたといえる。12月12日に発表された今年の漢字が「税」となったことも記憶に新しい。
そんな岸田首相が名誉挽回を期して11月2日の記者会見で発表したのが、所得税や住民税の国民1人あたり4万円の減税。だが、これによって増税イメージを払拭する狙いは大きく外れてしまった。減税をするには税制改正をする必要があることから、国民が恩恵を受けられるタイミングが来年6月となり、現在の物価高に対応するための対策にまったくなっていなかったのだ。
同時に、低所得者世帯に対しては1世帯10万円の給付金を年内から配り始めると決定したため、ネット上では「働いたら負け」というスラングとともに批判が高まり、経済的には国民にとってプラスとなる政策であるにもかかわらず、支持率は下落を続けた。11月のNHK世論調査では支持率は3割を切り、29%となっている。
そして、最後に追い打ちをかけたのが、自民党の派閥で行われていた裏金問題だ。特に安倍派では、各議員が政治資金パーティー券を、ノルマを超えて販売した分を、収支報告書などに記載せず、キックバックして裏金化していたことが判明。事態を重く見た首相は国会閉会直後に、内閣から安倍派の大臣や副大臣を全員外す人事を断行した。
支持率1ケタ台も時間の問題?
しかし、その後の検察の捜査では安倍派だけでなく、二階派も派閥内で裏金作りをしていたことがわかり、12月19日には東京地検特捜部が両事務所への家宅捜索に入った。それなのに安倍派だけが外されて、二階派の大臣が続投していることについては疑問の声があがり、安倍派からも「整合性がとれない」と反発の声が出ている。検察行政を司る小泉龍司法務大臣は二階派への捜索を受けて、12月20日に派閥を離脱したが「辞めるのは派閥ではなく、大臣のほうではないか」(永田町関係者)との批判も根強い。
また、岸田首相自身が率いてきた岸田派においても、2000万円を超えるパーティー券の売り上げが不記載になっていたと報道されている。岸田首相は12月7日に「信頼回復に向け努力しなければならない」と派閥から離脱することを表明したが、「責任逃れのために逃げているだけとしか思えない」(同)と辛辣な評価が多い。
NHKの12月世論調査では、岸田政権は支持率をさらに下げて23%と過去最低を更新した。同じく12月に実施された報道各社の世論調査では、時事通信が17.1%、毎日新聞が16%と2割を切っているものもある。支持率10%台は政権交代直前の2009年の麻生政権と同水準で、いつ内閣が倒れてもおかしくない数字だ。
永田町関係者は「岸田政権は増税と言われたら減税政策を打ち、安倍派が捜査を受けるとなったら大臣を全員外す。批判や不祥事に対する小手先だけのリアクションに追われて、ビジョンがまったくない。かつて岸田首相が唱えていた『新しい資本主義』という言葉も聞かなくなった。こんな、対応に追われてばかりの政権は支持率が下がって当然だ」と手厳しい。また、自民党関係者は「このままじゃそのうち支持率は1ケタになってしまう。消費税以下の支持率はシャレにならない」(自民党関係者)と自虐的に吐き捨てた。
“増税メガネ内閣”の行きつく先が消費税以下の支持率となったらなんとも皮肉な話。そして、最後に待ち受けているのは、政権運営が立ち行かなくなった先の「退陣」というリアクションとなるのか。そんな未来が様相を帯びる2024年となりそうだ。 
●高市氏 総裁選の意欲問われ「身を屈して、分を守り、天の時を待つの心境」 12/25
自民党の高市早苗経済安全保障相が25日、MBSテレビ「よんチャンTV」に出演。同党の政治資金パーティーをめぐる裏金問題について語った。
自身はかつて清和会に所属したが、現在は無派閥。清和会時代は「私自身の政治資金パーティーは年に1回。清和会のパーティーも残念ながら似たような時期だったので、売り切れない状態。余分に売るどころか、できれば割り当て枚数を減らしてください、と交渉してました」と、キックバックには無縁だったという。当時、他の議員がキックバックを受け取っていたということも「聞いた事はない」とした。
東京地検特捜部は25日までに、松野博一前官房長官と高木毅前国対委員長の歴代事務総長や、世耕弘成前参院幹事長、塩谷立元文部科学相の安倍派幹部計4人を任意で事情聴取。安倍派崩壊寸前との声も上がり、岸田政権の危機も広がる。 
同番組に22日に出演した元自民党政調会長の亀井静香氏は、岸田首相で戦えない場合の次のリーダーについて、「俺の予測は当たる」と自信を見せた上で、「自民党は女性の党首でないと選挙できないな。上川(陽子)か高市(早苗)かどっちかがなるよ」と持論を展開していた。
総裁選への意欲を問われた高市氏は、「今の時点ではもう“身を屈して、分を守り、天の時を待つ”の心境ですかね」と、三国志に登場する劉備玄徳の言葉を引用した。
この後には「蛟龍の縁に潜むは上らんがためなり」と続く。水の中で身を屈して自身の本分を尽くしじっと待つ蛟龍。そうして潜むのは天に昇るためである、という意。虎視眈々とトップの座を狙い、今は静かに準備をしているという心の内が読み取れるが、「私は今、猛烈に勉強したいし、岸田内閣の一員ですから岸田内閣で1個でも実績残したいですし、そのために働いてます」と言うにとどめた。
●首相訪米、3月上旬で調整 国賓待遇、15年安倍氏以来 12/25
日米両政府が岸田文雄首相の国賓待遇による米国訪問について、2024年3月上旬の日程で調整を進めていることが分かった。複数の日米関係者が25日、明らかにした。日本の国会審議や政治情勢、米国の大統領選や議会の日程などを見極めながら最終判断する。国賓待遇での首相訪米が実現すれば、オバマ政権下だった15年の安倍晋三氏以来。
首相はバイデン大統領と会談し、日米同盟を一層深化させる意向を伝え、経済安全保障、宇宙・サイバーなどの分野で揺るぎない結束を示したい考え。数日間滞在し、米議会などでの演説や、首都ワシントン以外への訪問も検討するとみられる。
自民党安倍派の政治資金パーティーを巡る事件で岸田政権が厳しい立場にさらされる中、首相周辺には国賓待遇の訪米を適切なタイミングで実現させ、内閣支持の回復につなげたいとの期待もある。
岸田首相の国賓待遇訪米は、23年11月の日米首脳会談でバイデン氏が伝えたとされる。24年11月の米大統領選が近づけばバイデン氏の日程確保が難しく、両政府は早い時期で調整をしている。
●24年春闘で「今年を上回る賃上げ」 岸田首相、経済界に要請 12/25
岸田文雄首相は25日、経団連の会合に出席し、2024年の春闘に向け「今年を上回る賃上げの実現に向け、引き続きご協力をお願いしたい」と述べ、さらなる賃上げを経済界に改めて要請した。
経団連が今年の活動内容を報告する審議員会に来賓として出席した岸田首相は「政権発足以来の2年間で賃上げ、投資、株価などが30年ぶりの水準になった」と強調。「経済の潮目は明らかに変わってきている。デフレからの完全脱却に向け、千載一遇のチャンスが巡ってきている」と語った。
また、「国民の皆さんに賃金が上がり、所得が増える実感を持ってもらう必要がある」として、約30年ぶりの高水準となった23年春闘を上回る水準の賃上げを重ねて呼びかけた。加えて「定額減税によって、デフレ完全脱却の移行期にある可処分所得を下支えしていく」と述べ、来年6月から実施される定額減税の意義を強調した。
経団連の十倉雅和会長は24年春闘での賃上げについて「今年以上の熱量と決意で取り組んでいく」と改めて表明した。
同じ会合で講演した日銀の植田和男総裁は、約25年間変動がなかった日本の賃金・物価に変化が起きているとした上で、「今度こそ低インフレ環境を脱し、賃金と物価の好循環が実現することを期待している」と述べた。今後の金融政策については「(時期は)決め打ちできない」としたものの、経済の好循環が強まり、日銀が掲げる2%の「物価安定目標」実現の確度が十分高まれば、「金融政策の変更を検討していくことになる」と説明。24年春闘で「はっきりした賃上げが続くかが重要なポイントになる」と述べた。
 12/26

 

●「志帥会」設立の亀井静香氏語る“政治とカネ” 二階氏は「すご腕の“山賊”」 12/26
派閥の政治資金パーティーを巡る“裏金”疑惑で揺れる自民党。この週末も、新たな情報が続々と出てきた。
安倍元総理やめる方針も…“キックバック”廃止撤回
岸田文雄総理大臣「(Q.党改革をどういう形でいつから始めるか?)事態が明らかになる。こういった状況を踏まえながら、党としての議論を進めていきたいと考えています」
複数の自民党関係者によると、安倍派では去年、安倍晋三元総理大臣が当時、事務総長だった西村康稔前経産大臣と、キックバックについてやめる方針を決めていたことが明らかとなった。
しかし、すでにパーティー券の販売を終えているなどの理由から、一部の議員側から反発があり、その後“キックバック”の廃止は撤回されたという。
事実なら、安倍派の事務総長や幹部らがキックバックの問題を認識していた可能性がある。
さらに、東京地検特捜部が21日までに安倍派の松野博一前官房長官、高木毅前国対委員長、世耕弘成前参院幹事長、塩谷立座長から任意で事情を聴いていたことが分かった。
自見大臣が退会届も…“離脱続出”二会派は受理せず
22日、自民党の派閥による政治資金問題を受け、自見はなこ万博担当大臣は、所属する二階派に退会届を提出した。
自見大臣「志帥会を退会することといたしました。今回の判断にあたりましては、幹部の先生方にしかるべくご相談をし、退会したい旨を丁寧にお伝えしたところであります」
しかし、この会見の直後、二階派の武田良太事務総長は、自見大臣の発言を真っ向から否定した。
武田事務総長「退会届は受理していない。派閥への相談も受けていない」
退会届は受理されず、宙に浮いた状態になっているとみられる。
二階派の志帥会では、桜田義孝元オリンピック・パラリンピック担当大臣や小泉龍司法務大臣が派閥から離脱するなど、退会者が続出している。
二階氏の人物像は? 「志帥会」元会長の亀井氏に聞く
番組では、志帥会を立ち上げた一人で、会長を務めた経歴を持つ亀井静香氏に話を聞いた。
亀井氏「(Q.二階さんが今トップとして『志帥会』が続いているが?)こちらが作った砦(とりで)。砦に来て、一晩泊めてやったんだよ。それが一夜にしてね、居候のくせに乗っ取っちゃったんだ。それが二階だよ。だから、彼はすご腕だよ。すご腕の山賊なんだよ。そういう男でないと政治はできない」
“政治とカネ”の関係…「派閥の親分の役割」は?
さらに、“政治とカネ”の関係についてはこう話す。
亀井氏「政治には金がかかるんだよ。何をやるにしたってかかるでしょう。いろんな行事をやるにしたって金がかかる。それは派閥に属している議員も同じ。その場合に、派閥の親分がそいつの金の面倒を見ると。そういうことをやってきた。ちゃんとした、ひもの付かない金を頂いて、それを派閥の連中に渡してやってたんだよ。それが派閥の親分の役割だよ」
「(Q.そのお金を集めるためにはパーティーで集めるというような形?)パーティーというのは結局、派閥にお金を出す儀式だな。(企業などは)この派閥、この政治家にいい政治をやってもらいたい。その手助けをしたい。そう思って、パーティー券買うんでしょう。パーティー券を買えば、いい利権がもらえると思っている人が、中にはいるかもしれないけども、ほとんどの人はそうじゃない」
そして、派閥の資金管理についてはこう話した。
亀井氏「それぞれ事務総長もいれば、担当がそれぞれいるから。役割分担をしているわけだ。役割分担しているやつが、それぞれのことをやっている。俺も派閥持ってたけど、全部自分が采配しているわけじゃないよ」
政治家の立件に及ぶ可能性も指摘されるなか、安倍派・二階派への捜査は、どこまで進むのか。
●安倍派幹部 萩生田氏からも任意聴取 政治資金 東京地検特捜部 12/26
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、東京地検特捜部が、安倍派幹部の萩生田光一前政務調査会長からも任意で事情を聴いたことが関係者への取材で分かりました。特捜部は、派閥の幹部としての認識や、キックバックを受けた議員側としての認識について、確認したものとみられます。
最大派閥の安倍派「清和政策研究会」や二階派「志帥会」では、所属議員がパーティー券の販売ノルマを超えて集めた分の収入を議員側にキックバックし、その分を派閥の政治資金収支報告書にパーティーの収入として記載しない運用が組織的に行われた疑いがあり、東京地検特捜部は、政治資金規正法違反の疑いで安倍派と二階派の事務所を捜索するなど、捜査を進めています。
安倍派では、派閥の幹部6人を含む大半の所属議員側に、パーティー収入の一部がキックバックされていましたが、特捜部が、安倍派幹部の萩生田光一 前政務調査会長からも任意で事情を聴いたことが関係者への取材で分かりました。
安倍派では、松野博一 前官房長官、高木毅 前国会対策委員長、世耕弘成 前参議院幹事長、塩谷立 元文部科学大臣の幹部4人が、特捜部の任意の事情聴取を受けていたことがすでに明らかになっています。
特捜部は、派閥の幹部としての認識や、キックバックを受けた議員側としての認識について、確認したものとみられます。
林官房長官「捜査に関わる事柄であり 差し控える」
林官房長官は閣議のあとの記者会見で「捜査機関の活動内容に関わる事柄であり、政府として答えることは差し控えたい」と述べました。
その上で「現在、それぞれの政策集団の活動や自民党の政治活動に、政治資金の観点から厳しい目が向けられ、国民から疑念を持たれるような事態を招いていることは極めて遺憾だ」と述べました。
立民 安住国対委員長「首相が説明責任を果たすべき」
自民党が派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、年明けに新たな組織を立ち上げることについて、立憲民主党の安住国会対策委員長は「何をしたいのか分からない」と批判した上で、岸田総理大臣が問題の実態などに関して説明責任を果たすべきだという考えを示しました。
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、岸田総理大臣は25日、党執行部のメンバーと会談し、年明けに再発防止や信頼回復に向けた改革などを検討するため、新たな組織を立ち上げる考えを示しました。
これについて、立憲民主党の安住国会対策委員長は、記者団に対し「岸田総理大臣は『新しい資本主義』や『異次元の少子化対策』など大号令を発するが、その後、中身が全くないことが多い。どんな組織にするのか、何をしたいのか分からず、打ち上げ花火で終わるのではないか」と批判しました。
その上で「自民党総裁として国民に対し、いま起きている問題の開示はできるのではないか。捜査任せで何をしたいのかきちんと言わないことの方が問題で、これでは実態の解明はできず、追及せざるをえない」と述べました。
●金子恵美氏、二階派入り前に「別の派閥から300万」でスタジオ騒然 12/26
元衆議院議員の金子恵美氏が26日、TBS系「ゴゴスマ〜GOGO!Smile!〜」で、当選直後、とある派閥から「1人でも増やしたいからと、300万円出されました」と生々しい体験を告白。横で聞いていた鈴木紗理奈が悲鳴を上げた。
この日は自民党のキックバック問題を特集。自見はなこ万博担当大臣が二階派を離脱したことが、派閥内で問題となっていることなどを取りあげた。
議員時代は二階派だった金子氏は、「数の論理から言うと、私は、二階派じゃない派閥からお金を提示されて、来てくれと言われました」と突然告白。これに石井亮次アナは「ちょ、ちょ、ちょ、ややこしい話に。二階派にいらっしゃったわけでしょ?」と確認した。
金子氏は「二階派に入るかどうかの段階のところで、当選したらどこに入るかといわれるわけですね。他の派閥から1人でも増やしたいから300万円出されました」と具体的な金額も明かした。
これには鈴木紗理奈が絶句。石井アナは「目の前に300万円、うちにおいでよ!その派閥の名は!」と直球質問をするも、金子氏は「言えない!」と拒否した。
だが「それは私は返しましたし、地方議員だったから、こんなことをやってるんだ、おかしいと、今の時代に」と受け取らなかったと説明。紗理奈は「(記載されていないお金は)そういうことに使われてたってこと?」と聞くと、金子氏は「(派閥の人数を)増やさないといけないから。返しましたが、違う派閥にいったんですけど、その派閥の領袖からは嫌な目でみられましたけど」と振り返った。
これに紗理奈は「私、夢見てる?政策集団でしょ?派閥って。夢見すぎですか?そういうこと(政策)で議論してほしい。人数とかだれを取り込むとか、ホンマにやめてほしい。マジで任侠映画を見ているよう。私、古いですか?」と金子氏から知らされた現実に激怒していた。
●甘利明・前幹事長が安倍派一掃人事で暗躍か…復権のブラックジョーク 12/26
自民党の派閥パーティー裏金事件で東京地検特捜部の捜査を受けている安倍派が一掃されたが、新たな人事で意外な人物が注目を集めている。
22日に来年度予算案が閣議決定されたのに合わせ、萩生田前政調会長と高木前国対委員長が辞任。後任として、ともに無派閥の渡海紀三朗政調会長、浜田靖一国対委員長という人事が総務会で了承された。既定路線だった浜田氏はともかく、事前にまったく名前が挙がっていなかった渡海氏が要職に就いたことには驚きの声が上がっている。
「党内では、政調会長代行の田村憲久さんが昇格するとみられていた。派閥政治に厳しい目が向けられているタイミングなので、無派閥議員の中から選んだのでしょうが、それにしても、長く要職と縁遠かった渡海さんが党4役に抜擢されたことは予想外でした」(自民党中堅議員)
渡海氏自身も驚いたそうで、岸田首相から電話で打診された当初は「ちょっと待ってください」と保留したという。
1986年初当選の渡海氏は当選10回を重ねるベテランだが、2007年に福田康夫内閣で文科相を務めたのが最初で最後の入閣で、党内でも地味な存在だ。18年と20年の総裁選では初当選同期の石破元幹事長の推薦人に名を連ねた。
そんな渡海氏を政調会長に抜擢したのは、甘利前幹事長のプッシュがあったからだという。渡海氏は、甘利氏が11年に結成した派閥横断型グループ「さいこう日本」のメンバーなのだ。
利権を一手に…「甘利さんの実権はすごい」
甘利氏の暗躍は、安倍派一掃で交代した4閣僚の人選にも透けて見える。後任に選ばれた斎藤健経産相と坂本哲志農相も、別名「甘利グループ」の「さいこう日本」メンバーだ。すっかり表舞台から姿を消したように見える甘利氏が、裏では復権を遂げつつあるのか。
「党内での甘利さんの実権はすごいですよ。党税調幹部や、経済安全保障推進本部長などを務めて大企業への影響力を手中にしている。衆院議長に就任した額賀さんの後を受けて、10年ぶりに交代した自動車議連の新会長になって新たな利権ポストも得た。総理が安倍派排除で麻生副総裁への依存を強めている以上、麻生派に所属する甘利さんの影響力は増す一方でしょう」(麻生派関係者)
だが、甘利氏といえば裏金疑惑だ。大臣室で現ナマを受け取って特命担当相を辞任し、睡眠障害を理由に国会から逃げていた過去を国民は忘れていない。
21年の岸田政権発足で幹事長に抜擢されたが、「政治とカネ」問題が再燃し、直後の総選挙では自民党の現職幹事長として初めて小選挙区で敗北。そういう輩が裏金事件を機に復権なんて、悪い冗談としか思えない。
●元財務省・佐川氏をかばい続ける絶望的な司法 12/26
「上級国民」なら故意の犯罪も許されるのか 、また日本の司法に絶望する人が増えそうだ。
「森友学園」への国有地売却に関連し、安倍晋三元首相の夫人・昭恵氏の名前などが書かれた決裁文書が財務省の官僚によって改ざんされた。国有地の管理を所管する財務省理財局の当時の局長だった佐川宣寿氏が、その立場を利用して改ざんを指示した疑いが濃厚だ。この指示を受けて、現場でその実行を強制された近畿財務局職員の赤木俊夫さんは、それが原因で2018年3月に自殺に追い込まれた。この事件は、当時、多くの国民に衝撃を与えた。
何しろ、財務省という最強の役所の局長(改ざん発覚時はさらに出世して国税庁長官)という高い地位にある者が、時の首相を守るために、よりによって、国有地売却の決裁文書という非常に重要な公文書を「故意」に改ざんするよう部下に指示し、それが組織ぐるみで実行されたというのだから、普通の人が驚くのは当たり前だ。しかも、その結果、改ざんに涙ながらに反対した赤木氏を死に追いやるという重大な結果をもたらした。これほどまでの悪質な犯罪行為に対して、国民が強い憤りを感じたのは極めて自然なことだ。安倍内閣の支持率は急落し、政権は危機を迎えたと報じられた。
だが、国民の驚きと憤りとは裏腹に、佐川氏らへのペナルティは非常に軽いもので終わった。明らかな公文書改ざんだから、佐川氏を含めこれに深く関わった財務省関係者は、公文書改ざんの罪で罰せられると思ったが、結局誰一人起訴されないまま闇の中に葬られてしまった。
また、これほどの犯罪行為を故意に行った場合、人事院の懲戒のルールでは懲戒免職になるはずだが、財務省は佐川氏に普通に辞職を認めた後、「停職3カ月相当」という「なんちゃって処分」で終わらせた。懲戒免職であれば、退職金はゼロになるが、この軽い処分のおかげで、退職金はわずか513万円減額されただけで、4500万円近くの大金が佐川氏に支払われた。
こんなことで終わりにして良いのか。国民の誰もがそう思ったが、赤木氏の妻・雅子さんの思いは、その何万倍も強かったのではないか。
赤木氏が死に追いやられたのは、どう考えても佐川氏始め財務官僚らの責任だが、それがどういう経緯で行われたのかという事実関係は全くわからないままだ。財務省の説明では、赤木氏は、反対はしたものの、結局改ざんの中心的役割を果たし、それを苦にして精神を病み、それが原因で自殺したというようなストーリーになっている。まるで、赤木氏が精神的に弱い人間だったのが悪かったかのような説明だ。
しかし、普通に考えれば、鉄の規律を誇る財務省に対して、赤木氏がたった一人で上司に直訴して間違いを正そうとした行為は、非常に勇気を必要とする賞賛すべきことだった。
赤木氏は「強い人間」で、公務員の鑑と呼ぶべき人物である。
その赤木氏がどのような経緯で改ざんを強制されたのかは依然として闇の中というのでは、赤木氏があまりにもかわいそうだ。「真相の解明は、本来は国の責任だが、それが果たされないなら、私がやるしかない」。そういう気持ちで雅子さんは、止むに止まれず、国と佐川氏の双方を相手取って損害賠償責任を問う訴訟を起こした。
その後、この訴訟において、佐川氏の尋問が行われる段階になると、国は突然争う姿勢を翻し、全面的に負けを認めて事件の真相究明に入らないまま敗訴(1億700万円の支払い)という道を選んだ。卑怯なやり方ではないか。
そこで残ったのが本件佐川氏への損害賠償請求訴訟である。
だが、佐川氏への損害賠償請求には、国への請求とは違って高いハードルがある。
それは、公務員が職務上他人に損害を与えた場合は、その賠償責任は国または公共団体が負うこととされており(国家賠償法第1条第1項)、公務員個人は故意・重過失の場合に国または公共団体から求償されることはあっても(同法同条第2項)、直接被害者に対して責任を負うことはない(最高裁の判例)というルールがあるからだ。
このルールを何も考えず単純に当てはめると、国が1億円余りの求償権を行使して佐川氏に支払いを求めることはあり得ても、雅子さんの佐川氏への直接の請求は認められないということになってしまう。
果たして、1審の大阪地裁の判決は、雅子さん敗訴だった。しかも、真相を闇に葬りたいという国の意向を汲んで、その審理の過程で佐川氏への尋問などは全く行わないまま判決を出した。
もちろん、雅子さんは控訴した。ここで諦めては夫の俊夫さんに申し訳ないという気持ちがその背中を押したのだろう。
その判決が維持されれば、佐川氏は、公文書改ざんという罪を犯して一人の善良かつ優秀な公務員を死に追いやっておきながら、公務員法上はほんのかすり傷程度の処分で退職金もほとんど満額受け取り、刑法上もお咎めなし、民事責任も問われないということになる。しかも、国は、1億円余の損害を受けているのに、佐川氏にこれを一円たりとも求償請求していない。その負担を国民に押し付けているのだ。
そして、佐川氏は、これまで一度も公の場で、公文書改ざんを主導し赤木さんを死に追いやったことについて謝罪もせず、説明もしていない。
こんなことが許されて良いはずがない。
だが、今回の控訴審では、大阪高裁が1審の判決をそのまま維持し、雅子さん側の敗訴となった。なんと残酷な判決だろう。
私は、今月19日にあった判決の翌日の午後、雅子さんに電話した。雅子さんの声はいつもながら明るい。それは、周囲を心配させないようにという気遣いとともに、自分を鼓舞しなければ生きていけないという雅子さんの差し迫った心情から出たものだ。
酷い判決でしたねと問いかけると、
「本当に酷いです」と答えながらも、
「それでも、私、生きていかなくちゃいけないんです。まだ諦めるわけにいかないですから」と健気に語ってくれた。
さらに、雅子さんはこう付け加えた。
「今回、裁判長が、佐川氏に謝罪や説明の法的責任はないと言いながら、『一人の人間として誠意を尽くした説明や謝罪があってしかるべきだ』と言ってくれたことを、一つの救いとして、年末年始を乗り越えていきたい」
裁判所が、佐川氏がとんでもなく酷い人間だという宣告をしてくれたと雅子さんは受け取ったのだ。雅子さんの思いと同じなんだと思いたい、とも言った。
雅子さんは、この判決で大きなショックを受けたが、すぐに、それでも頑張ろうと思い直した。判決後、関係者と食事をして慰められ、また励まされている間は、自分を奮い立たせることができたという。
だが、一人で家に帰り、トイレに入った途端、張り詰めた気持ちが解け、悲しさと悔しさで涙が溢れて止まらなくなったと、その時を思い返しながら涙声で教えてくれた。私もその光景を思い浮かべて、言葉に詰まった。
今回の判決は、違法行為をした公務員個人には、直接の損害賠償請求はできなくても、「懲戒処分や刑事処分などで」制裁が加えられるはずだと述べたが、それが全く実現していないことへの言及はなかった。
また、国から佐川氏への求償権の行使もなされていない。
つまり、本来法律が想定した公務員への制裁は空振りになっているのだ。
ここでよく考えてみよう。
仮に、会社に雇われた運転手が職務中に事故を起こして人を死なせてしまった場合、その遺族は、会社に対して損害賠償を請求することもできるが、運転手個人にも同様の請求ができる。それは運転手に故意や重大な過失がなくても認められる。
ところが、今回の判決をそのまま放置すれば、完全な故意によって犯罪行為を指示し、公文書改ざんをさせた上に、それによって一人の人間を死に追いやった公務員は、なんのお咎めもなしで、謝罪すらしなくても良いということになる。
「公務員」だから、罪を犯しても特別に法律によって守られているのだ。
繰り返して言おう。
「一般市民は、悪意なく単なる過失で損害を与えたら、被害者側に直接損害賠償責任を負うのに対して、公務員だけは、悪意を持って罪を犯しても損害賠償しなくて良い」というのが裁判所の考えなのだ。
どう考えてもおかしいだろう。法律もそんなことを想定したとは到底思えない。故意に損害を与え、特に悪質な場合で、しかも十分な懲戒処分も刑事処分もまた国による求償権の行使もなされない場合に限っては、例外的に、被害者が公務員個人に直接損害賠償を求めることを認めるべきではないのか。
高裁の判決は、公務員個人への損害賠償を認めれば、公務員が萎縮してしまうと言ったが、判決により、犯罪行為を行うことについて公務員が萎縮することになるのなら、むしろ望ましいことだ。
裁判長は、この判決が「公務員は、罪を犯しても法律で守られているので心配ないですよ」というメッセージを出して犯罪を助長していることを全く理解していない。極めて愚かな判断だ。
法律や最高裁の判例を形式的に当てはめると結論が著しく不公正なものになる場合には、そのような結論に至らない解釈論を考えるのが「国民に寄り添う」裁判官である。
今回の裁判長は残念ながら、そこまでの知恵と勇気を持っていなかった。
雅子さんが最初に訴訟を提起してから来年3月で丸4年になる。その間、裁判ではがっかりすることが続いたが、
「もし、その結果を4年前に予測できたとしても、私は裁判を起こしたと思う」と雅子さんは話してくれた。
なぜなら、「自分には夫のためにできることはそれしかないし、自分が生きていく上でも、真実を知ることがどうしても必要なことだから」というのだ。
そして、こうも付け加えた。
「自民党以外の人が財務大臣になったら、全てを調査し直して、本当のことを明らかにしてもらえるのではないかと考えることもあります」と。
私は、その言葉を聞いて、そのとおりだと思った。裏金疑惑で絶体絶命のピンチにある自民党政権が倒れて政権交代が起きれば、雅子さんの夢が叶うかもしれない。
私は、心の底からそうなることを祈っている。
●元徴用工訴訟、日本企業の賠償確定で暗雲…日韓関係「再悪化」懸念 12/26
日韓関係が 好転した2023年
2023年は日韓関係が一気に好転した1年であった。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と岸田文雄首相が、日韓関係の改善に向けて示した意欲と行動は並々ならぬものがあった。両首脳の決意は24年においても変わらないだろう。しかし、両国の国内政局は不安要素にあふれており、両首脳の思惑通りにいかない可能性は否定できない。
これまで日韓関係は紆余(うよ)曲折を経てきた。
小渕・金大中時代のように良い時もあったが、韓国大統領が盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏に代わった後、日韓関係は悪化することになった。それは大統領としての盧武鉉氏の姿勢と同時に、日韓両国内において、日韓関係を良好に保つ基盤がなかったことにも原因がある。
岸田・尹錫悦時代は、日韓関係悪化の原因を除去する稀有(けう)の機会である。24年は、日韓関係を安定軌道に乗せられるか否かを左右する重要な節目となるだろう。
過去の経験を踏まえ、日韓関係と国内政局との関係を分析し、今後の日韓関係の展望を占ってみたい。
日韓関係を左右する 波乱含みの両国の政局
24年の日韓それぞれの国内政局は、予測がつかない。
日本では、岸田政権が満を持して決めた所得税減税が不評なため、「国会解散で信を問うことで政権基盤を強化する」という機会は失われた。内閣改造をしたが、副大臣などが不適切な行動で辞任に追い込まれるなど、人気が下降線をたどっていた時に、さらに自民党内の安倍派と二階派を中心とした派閥の政治とカネの問題が浮上し、各種世論調査の支持率は軒並み20%台に低迷している。
このため、マスコミなどでは、リクルート疑惑で辞任に追い込まれた頃の竹下登首相を引き合いに出し、岸田政権の交代論が論じられるようになった。24年は補欠選挙を除けば大きな国政選挙がない珍しい年なので、竹下退陣の時の状況と単純比較はできないだろうが、仮に岸田政権が交代となれば、新しい首相が日韓関係に対しどのようなスタンスを取るかによって、尹錫悦政権の日本への対応にも変化が出るかもしれない。
韓国では、24年4月に国会議員の改選がある。この総選挙は大統領選挙ではないため、政権交代に結び付くものではないが、韓国国内の政治動向を左右する重要な政治イベントであり、その勝敗は尹錫悦政権が国内の改革ができるか否かの分かれ目になる。
韓国国会の議席数は300であるが、最大野党「共に民主党(以下、民主党)」の167議席に対し、与党「国民の力」は112議席と、野党が圧倒的な優位を維持している。
現政権は左翼政権の弊害を除去しようと政治改革を目指しており、また、文在寅(ムン・ジェイン)政権当時の不正を暴こうとしている。だが、国会における野党の勢力との駆け引きで、改革は思うようには進展しておらず、前政権の不正追及も慎重に行わざるを得ない状況にある。
民主党は、議席数をバックに政府与党との対決姿勢を強めており、選挙が近付けばこうした傾向は一層顕著になるだろう。
尹錫悦政権としては、総選挙に勝利することで、政治改革と不正追及に拍車をかけたいところである。逆に、総選挙で敗北すれば、政治改革は一層困難になりかねず、左翼系が国内政治で盛り返すことになろう。そうなれば次の大統領選挙に向けて、尹錫悦政権は一層困難なかじ取りを迫られるだろう。
総選挙の現時点での見通しは、世論調査の結果を見る限り現政権側にとって芳しくない。12月11〜15日のリアルメーターによる調査では、大統領支持率は前回(12月4〜8日に実施)と比べ、1.1ポイント下落の36.3%である。「国民の力」の支持率も36.7%と、民主党の44.7%に大きく差をつけられている。
今後、尹錫悦政権の支持率回復にとって重要となるのが経済の動向である。特に選挙のカギとなる若者が世代間の格差に抱く不満を、どこまで解消できるかが重要であろう。
文在寅政権の対北朝鮮政策に対する不信感も若者の間では強いため、選挙が左翼系に有利になるかは不透明だが、いずれにせよ、尹錫悦政権にとって厳しい選挙になることは間違いないだろう。
尹錫悦政権が日韓関係の改善を進めるためには世論を味方につける必要があるが、選挙に敗北すれば、日韓関係について、より慎重に取り組まざるを得なくなるだろう。
尹錫悦大統領の対日姿勢に 影響を及ぼす日本の対応
日本では、韓国の政権末期になると大統領の対日姿勢が強硬になるとの見方をする人が多い。過去においては確かに、政権発足当初は日韓関係を進めようとする人が多かった。前述の左派政権の代表格である盧武鉉大統領も、例外ではない。
しかし、盧武鉉大統領が反日に転化したのは、日本で言われるように政権末期になったからではなく、小泉純一郎首相(当時)が靖国神社に参拝したため、盧武鉉大統領が小泉首相に失望し、同首相とは日韓関係の改善を図ることができないと考えたからである。
反日姿勢が顕著であった文在寅大統領の後で、日韓関係のイニシアチブを発揮したのは尹錫悦大統領である。
日韓の懸案であった元徴用工を巡る日本企業の資産を現金化する動きを封じ、韓国国内で寄付を募って元徴用工とその遺族に賠償する解決案を策定した。尹錫悦大統領はこうして日韓関係の障害を取り除いたうえで訪日し、各種政府間協議を復活させて日韓関係強化の足掛かりを築いた。また、経済関係でも日韓交流・強化の道筋をつけた。
こうした韓国側の努力に応えたのが岸田首相である。尹錫悦大統領の訪日から約2カ月後に訪韓し、尹錫悦大統領のイニシアチブに応えた。また、広島で開かれたG7首脳会議に出席した尹錫悦大統領と共に広島の韓国人原爆犠牲者の碑を訪問し、哀悼の意を示した。こうした行動は韓国人の心も打ったはずである。
尹錫悦大統領と岸田首相が日韓関係改善に取り組む姿勢は相互の信頼に基づいており、二人が首脳でいる間は大きく崩れることはないだろう。しかし、日本の国内政局により、仮に首相交代となれば、相互の信頼関係を初めから作り直していかなければならない。
政権交代となれば、最初の出会いが肝心である。そこで歩調が合わなければ、日韓関係は後退することになりかねない。日韓関係からみれば、岸田政権が継続することが最善である。
韓国総選挙で与党が敗北すれば 市民社会の改革は遠のく
韓国で歴史問題をめぐり反日活動が活発な要因は、「民主社会のための弁護士会(民弁)」などの左翼系弁護士団体が、元慰安婦や元徴用工を探し出して政府を追及し、損害賠償訴訟に持ち込むなど、日韓の政治問題として取り上げたのが発端である。
その後「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連、艇対協から改称)」などの市民団体が先導役となり、北朝鮮ともつながりのある全国民主労働組合総連盟(民主労総)なども加わって反日活動を行ってきた。
市民団体や労働組合は、日韓両国政府間で問題を解決しようと取り組んでも常に妨害してきた。こうした団体が「反日」をビジネスとしていると批判されるゆえんである。
元徴用工問題についても、韓国政府の解決案などに逆らっているのが弁護士や市民団体グループである。
21日に大法院(最高裁)は日本企業に賠償を命じる判決を確定させた。日本政府は直ちに遺憾の意を表明、日本企業もこれに従うことはないだろう。韓国政府は政府傘下の財団が賠償金相当額を支払う「第三者弁済方式」で手続きを進めているが、一部原告は、受け取りに応じなかったため、韓国政府は賠償金を裁判所に供託することで事実上解決しようとした。しかし、地裁が供託を認めず、韓国政府は訴訟で争う構えである。だが、尹錫悦大統領の任期満了となる27年までに、判決が確定するかは不透明だ。
もし、尹錫悦政権後に日本企業の資産を売却する事態になれば、日韓関係は再び悪化する可能性がある。
こうした市民団体や労組は文在寅政権によって支援され、その活動は一層過激になった。文在寅政権は市民団体に対する補助金などを毎年4000億ウオン(約440億円)程度増やし、現在では年間5兆ウォン(約5500億円)規模に達するといわれる。市民団体や労組はこの金を使って反日活動に参加する人への日当を支払ったり、さまざまな活動費に充てたりしているという。
韓国の歴代政権は、元慰安婦や元徴用工問題に対する世論の反応を気にして、こうした団体の反日活動を抑え込むことはなかった。それが文在寅政権の後押しで一層過激化していった。
日韓の安定基盤作りに必要な 労組と市民団体の改革
日韓関係の安定した基盤を作るためには、北朝鮮と組んでまで反日を扇動する組織を無力化する、もしくは、影響力をそぐための改革が不可欠である。特に労組と市民団体による反政府・反日活動には韓国政府も手を焼いており、それに逆らえない状況が長年続いてきた。
尹錫悦政権は、労組や市民団体の活動に初めて本格的に切り込んだ政権である。労組や市民団体への補助金の使途を精査し、不正を摘発することで、こうした団体の不法活動を取り締まろうとしている。しかし、それに待ったをかけているのが、国会で多数を握る民主党である。
尹錫悦大統領は、政治改革の柱として、まず労組の改革に取り組む姿勢を強調し「労組は労組らしく、事業主は事業主らしくきちんとした市場経済システムを作ること」を重要課題としている。市民団体を取り締まることは、世論の批判を浴びかねることにもなりかねない。だが、市民生活に悪影響を及ぼす労組の活動が対象であれば、世論の抵抗は少ないと判断してのことだろう。
中央日報は「巨大強硬労組の改革なしに未来はない」と題する社説を掲載し、労組の違法行為を糾弾している。政府は、労組の違法なストを取り締まることは経済活動を健全化するため不可欠と主張している。
これに反発しているのが、野党の民主党と正義党であり、国会において労組のスト可能範囲を拡大し、ストで損害が生じた企業の損害賠償訴訟を以前より厳格に制限する法案成立を強行した。これに対し、企業と財界は反対し、大統領も拒否権の行使で対抗。与野党の対立が深まっている。
また、過激労組の民主労総は、韓国社会の中で北朝鮮の主張を代弁している。22年8月13日、韓国民主労総、北朝鮮の朝鮮職業総連盟(職盟)が共同で開催した「8.15全国労働者大会(南北労働者決議大会)」では、米軍撤収や米韓同盟解体などを主張。連帯書と共同決議文を作成、朗読し、従北主義論議を提起した。
企業家や事業主に対して強硬に不当な要求を繰り返すとともに、韓国社会において北朝鮮の主張を代弁する民主労総の資金源を抑え込むことは、その活動を縮小させ、より健全な労使環境をもたらすであろう。民主労総は、北朝鮮や市民団体とも連携して反日活動を行ってきた。そのため、民主労総の取り締まりは、反日活動を弱めることにもつながる。
市民団体と労組への取り締まりを 強化することで反日運動を沈静化
市民団体を取り締まることは一方で、「歴史問題に背を向ける政権」との姿勢を印象付け、世論の反発を受ける懸念がある。そのため、より慎重に取り組まざるを得ない。その糸口となるのが、前述した補助金などの不正使用である。尹錫悦政権は、文在寅政権下で市民団体に支給された年間約5兆ウォンの補助金の多くが不透明なため、不適切に支給されていると判断している。
正義連の尹美香前代表は、団体への補助金や寄付金を私的に流用したことで執行猶予付きではあるが、懲役1年6カ月の判決を受けている。
正義連や民主労総など全国610余りの市民団体の連帯である韓日歴史正義平和行動は2月、ソウルの中心部にある外交部庁舎前で記者会見を開き、「政府は屈辱的な対日外交を直ちに中断せよ」と主張した。このグループの人々は、元慰安婦問題と元徴用工問題の解決に反対する行動を繰り広げてきた。
しかし、日本文化に憧れたり、日本旅行を楽しんだりする韓国の若者世代を中心に、こうした反日活動に背を向ける人々が増えている。
文在寅政権は極端な反日ムードを高め、日本製品不買運動を広げ、訪日自粛ムードを引き起こしたが、その反動が今起きているのだろう。
現在、反日デモなどに参加しているのは、一般市民ではなく、労働組合や市民団体の関係者がほとんどである。したがって、その資金源を抑え込み、活動を制約すれば、反日活動は沈静化していくだろう。
この機会を尹錫悦大統領が活用し、反日活動をする団体を無力化すれば、日韓関係改善の基盤はできるだろう。そして岸田政権がそれを後押しすることができれば、日韓関係は新しい局面を迎えるのではないか。
ただ、尹錫悦政権が次の総選挙で敗北すれば、政治改革は後退し、日韓関係改善の基盤構築は遠のくであろう。2024年は日韓両国の国内政治の節目のみならず、日韓関係にも節目の年となりそうである。
●国会の「党首討論」消えた…岸田首相は未経験、廃止法案も飛び出した 12/26
首相と野党党首が一対一で論戦を交わす「党首討論」が13日に閉会した臨時国会でも実施されず、岸田文雄首相(自民党総裁)が2021年10月に就任してから一度も開かれていない状態が続いている。日本維新の会などは、開催を求めても行われないので不要だとして、廃止法案を提出。識者は「有権者が政治家の丁々発止の論戦を見る機会が奪われている」として、定期的に開催できるように国会改革を進める必要性を訴えている。
岸田首相は「申し上げることは控える」と消極姿勢
「国民の前で各党が政策、考え方の違いを明らかにする機会は重要だ」。首相は臨時国会会期中の12月8日、衆院予算委員会で党首討論の意義を問われ、こう答弁した。一方、今後の開催に関しては「行政府の長として開催をどうするか申し上げることは控えなければならない」と歯切れが悪く、与党のトップとして積極的な姿勢はうかがえなかった。
党首討論は、英国議会で首相と野党党首らが討論する「クエスチョン・タイム(QT)」にならい、00年に始まった。正式には、衆参両院の国家基本政策委員会が開く「合同審査会」と呼ばれる。首相ら閣僚が与野党の議員の質問に答える予算委と異なり、首相が野党党首に「逆質問」できるのが特徴だ。
二大政党制を念頭に、与野党トップ同士の論戦を通じて、どちらが政権にふさわしいかを示す役割が期待された。
「解散」「大連立」…ドラマがあった
12年11月の党首討論では、当時の野田佳彦首相が野党だった自民党の安倍晋三総裁に対し、衆院定数削減を条件に「衆院を解散してもいい」と突如表明。その日のうちに解散日程が決まり、政治史に残る場面となった。08年4月には、当時の福田康夫首相が民主党の小沢一郎代表との大連立協議の内幕を暴露したこともある。
開催回数は設置された00年に最多の8回を記録したが、その後は次第に減り、17年に初めてゼロに。21年6月、当時の菅義偉首相と立憲民主党の枝野幸男代表らが、コロナ禍への対応や東京五輪・パラリンピックの開催の是非などを議論したのを最後に開かれていない。歴代の首相で党首討論の経験がないのは岸田首相だけとなっている。
少数野党には厳しい条件も
停滞の一因は野党にもある。与野党の申し合わせで党首討論の時間は45分と決まっているため、野党第一党が与党の追及に「時間が取れる」(立民の岡田克也幹事長)予算委の開催を優先させているからだ。首相が予算委に出席する週は審査会を開かないという別の申し合わせもあり、結果として党首討論の開催は遠のいていった。
野党党首の持ち時間は、原則として委員会に所属する議員数に比例して配分されるという申し合わせも、少数野党を中心に開催の機運をしぼませている。21年の前回は野党第一党の立民が30分、残りの15分を維新、国民民主、共産の各党が5分ずつ分け合う形となっている。実質的な討論は難しく、共産の志位和夫委員長は当時、「あまりにも厳しい条件だ」とぼやいた。
開かれないまま2年半、人件費3億円がムダになった?
こうした事情を踏まえ、維新は臨時国会で国民、衆院会派「有志の会」とともに、衆参の国家基本政策委の廃止法案を衆院に提出した。維新の遠藤敬国対委員長は記者会見で、委員会運営に携わる国会職員(他の委員会との兼任含む)の人件費が、衆院ではこの2年半で計3億3700万円かかったとの独自の試算を紹介。「無駄な税金を使う委員会は必要ない」と切り捨てた。
国家基本政策委員会の合同審査会 / 国会の党首討論の舞台。衆参両院の委員長や与野党の幹事でつくる合同幹事会の申し合わせにより、与党党首である首相と、衆参のいずれかで所属議員が10人以上いる野党会派の党首が参加できる。「内閣と各党の基本政策」や「時々の重要テーマ」に関して論戦を展開する。与野党の申し合わせで国会の会期中は「週1回45分間、水曜日午後3時から開く」ことになっているが、首相が本会議や予算委、重要法案を審査する委員会に出席する週や、閉会中は開かれない。
本紙が衆院事務局に確認したところ、維新の試算対象となった職員13人のうち12人は他の委員会運営も兼ねていた。人件費の全てが無駄になったと言えるかどうかは評価が分かれそうだが、衆参とも委員長には専用の執務室や公用車も用意されており、「委員長というポストを維持するために委員会を置いている」(遠藤氏)と皮肉られる要因にもなっている。
廃止法案は「継続審議」とされたため、存廃を巡る議論は来年の通常国会以降に持ち越された。
早稲田大の高安健将(けんすけ)教授(比較政治学)は「予算委は政府が提出した法案などの良しあしを審議することが中心で、時代ごとの政治課題を提示し、与党に代わる政権の『選択肢』を見定める機会としては党首討論の方にこそ意義がある」と強調。「野党が多党化し、審査会が当初想定した状況とは違っているが、予算委のある週でも党首討論を開けるようにするなど、まずは開催につながるようなルールを検討すべきだ」と語る。
●大学無償化で「あと2人産もう」となるわけがない… 12/26
岸田政権の子育て支援策はなぜハズしまくっているのか。
政府は子ども3人以上の多子世帯を大学無償化の対象とする方針を発表した。少子化対策として効果があるのか。近著『残酷すぎる 幸せとお金の経済学』が話題の拓殖大学教授の佐藤一磨さんは「日本では子どもがいない夫婦や、子どもが1人の夫婦が持続的に増えている。これらの夫婦が大学等無償化の恩恵を受けるには、これから子どもを2人または3人以上産まなければならず、ハードルはかなり高いと言わざるを得ない。出生率向上の効果はあまり期待できないだろう」という――。
都と国で評価が二分された
12月に入り、都と国の新たな子育て支援策が発表され、注目を集めています。
12月5日に東京都が新たに発表した子育て支援策は、東京都に住む高校生の学費無償化策です。都は年収910万円未満の世帯を対象に学費無償化をこれまで実施していましたが、来年度からはこれを撤廃し、所得制限無しで高校の学費を無償化する方針を発表しました。
これに対して政府は、12月11日に大学無償化策を発表しました。具体的にはこども未来戦略方針の実行案として、3人以上の子どもがいる多子世帯の大学等の高等教育機関の授業料や入学金を無償化する方針だと発表したのです。
これら2つの子育て支援策に対して、人々の反応は分かれています。
テレビのニュース等を見ると、都の高校学費無償化に対して、教育面では必ずしも良い効果は期待できないものの、子育て世帯を金銭的に支援する策としては良いのではないかと好意的な評価があがっています。これに対して、政府の多子世帯の大学無償化に関しては、その内容や対象に対して不満の声があがっていると言えるでしょう。
このように都と政府の子育て支援策について評価が分かれるのはなぜなのでしょうか。今回はこの背景について考察していきたいと思います。
シンプルでわかりやすい都の子育て支援策
今回の都の高校無償化の最大の特徴は、その内容がシンプルでわかりやすく、「子育て負担が減る」と実感が得られやすい点にあります。
もともと小池都知事は就任第1期目の2017年度から、年収760万円未満の世帯を対象に、私立高校の授業料を実質無償化していました。2020年度からは、年収の基準を910万円未満に引き上げ、来年の2024年度からは、この年収の基準を廃止するというわけです。
今回無償化の対象となるのは、都に住むすべての高校生であり、私立と都立の両方が支援対象となっています。
高校生の子どもを持つ世帯にとって、金銭的な負担がなくなり、大変ありがたい政策となるでしょう。特に都内の場合、私立中高一貫校に通っている子どもも多いため、この政策のインパクトは大きく、「助かる」と実感するご家庭も多いのではないでしょうか。
都の高校無償化に対して好意的な意見が多くなるのは納得できます。
対象者が限定的なうえに複雑な国の子育て支援策
これに対して政府の大学無償化には批判的な意見が多くなっています。この背景には無償化の対象者が限定的であり、関連する制度も複雑であるという点が影響していると考えられます。
まず大学無償化の対象となるのは、子どもが3人以上いる世帯です。この時点で「えっ! うちは対象外だ」とショックを受けた方もいたかと思いますが、そもそも子どもが3人以上いる世帯の割合は日本で減っています。
厚生労働省の『国民生活基礎調査』を見ると、子どもが3人以上いる世帯の割合は1990年以降徐々に低下し、2022年では子どもがいる世帯全体の12.7%です。この間、子どもが2人いる世帯も低下し、かわりに子どもが1人の世帯の割合が増えています。
   【図表1】子どもがいる世帯の子ども数の構成比の推移
このように大学無償化は、恩恵を受ける対象が減少している層に向けて実施される構造となっているのです。全世帯の中で子育て世帯は2割ほどにすぎず、子育て世帯への政策が進まないことは以前にも述べたとおりですが、3人以上の子どもがいる世帯となるとたった3%程度です。
また、今回の無償化策では、一番年上の子どもが扶養を外れ、扶養されている子どもの数が2名となった場合、無償化の対象外となってしまいます。つまり、子どもが仮に3人いたとしても、そのすべての子どもの学費が持続的に無償化されるわけではなく、期間限定で無償化となるわけです。
手当を拡充しながら扶養控除を引き下げる愚策
さらに、岸田首相の進める「こども未来戦略」では、高校生までの児童手当の拡充と、高校生がいる世帯の所得税と住民税の扶養控除の引き下げも同時に検討されています。児童手当の拡充は世帯にとって金銭的にはプラスですが、所得税と住民税の扶養控除の引き下げは金銭的にはマイナスです。これでは子育て世帯を経済的に支援したいのか、それとも逆なのかメッセージが不明瞭となってしまいます。この状況下で新たに多子世帯の大学無償化が登場したわけであり、制度として複雑さを増したといえるでしょう。
以上の点から、政府の多子世帯の大学無償化は対象が限定的であると同時に、関連する制度が複雑であるため、不満を持つ人が多くなっていると考えられます。「もっとシンプルに、子育て負担が減る政策を実行してほしい」と多くの人が思っているのではないでしょうか。
厳しい財政事情から奇妙な大学無償化策が生まれた
この政府の多子世帯の大学無償化ですが、よく考えると2つの疑問が出てきます。
まず1つ目の疑問は、「そもそもなんで多子世帯に限定して無償化を行うのか」という点です。おそらく、多くの人々がこんな奇妙な形の政策ではなく、「第1子目からの大学無償化」を求めていると考えられますが、それが実現しないのはなぜなのでしょうか。
この答えは、政府が直面している厳しい財政事情です。
日本の財政事情は非常に厳しく、国の歳出のうち、税収で5割程度、国債で4割強をまかなっています。借金の比率が高く、新たな政策を実施する際に慎重にならざるを得ません。
また、日本の高齢化は新たな局面に差し掛かっており、来年の2024年には65歳以上の高齢者人口比率が3割を超え、再来年の2025年には団塊の世代の全員が75歳以上の後期高齢者となります。これによって医療・介護の社会保障費のさらなる膨張が見込まれており、日本の財政を悪化させることが危惧されています。
このような状況下で「第1子目からの大学無償化」といった巨額の財源が必要となる思い切った子育て支援策を実施するのは難しいのです。
何とかひねり出した労作ではあるが本気度が見えない
おそらく、今回の政策は厳しい財政状況下でもより踏み込んだ子育て支援策を実施したいとの思いから、なんとか考え出された労作なのではないかと考えられます。限られた財源を振り分けるのであれば、最も子育ての金銭的負担が大きい層を対象とせざるを得ません。この結果、多子世帯がターゲットとして出てきます。
多子世帯の大学無償化を持続的に行いたかったものの、増税しないという政府の方針のもとではそれも難しく、何とか予算規模を削るために、3人以上子どもがいても扶養されている子どもの数が2名となった場合、無償化の対象外とせざるをえなかった可能性が考えられます。
このように今回の大学無償化は、政策担当者の苦労が垣間見られる内容です。しかし、残念ながら多くの人々にとってわかりにくく、不満をもたれる結果となってしまったのではないでしょうか。
大学無償化策は少子化対策とはならない
2つ目の疑問点は、政府の大学無償化が少子化対策として有効なのかという点です。
残念ながら、この答えは「効果は小さい」と言えるでしょう。
というのも、現在の少子化の原因は、結婚している夫婦の子ども数の低下だけでなく、結婚する男女の減少や、子どもを産む年齢層の女性数の減少が大きな影響を及ぼしていると指摘されているからです。
日本総合研究所の藤波匠上席研究員の分析によれば、2020年時点では確かに結婚している夫婦の子ども数の低下も少子化の原因となっていますが、それよりも子どもを産む年齢層の女性数の減少が少子化の一番の原因だと指摘しています(*1)。また、1995年から2005年まで結婚する男女の低下が主な少子化の原因であり、この点に対する対策がスッポリ抜けている状況です。これでは出生率の向上は望めないでしょう。
あと2人、3人産むのはハードルが高すぎる
また、そもそも日本では子どもがいない夫婦や、子どもが1人の夫婦が持続的に増えてきています。国立社会保障・人口問題研究所の『出生動向基本調査』によれば、結婚持続期間15〜19年の夫婦のうち、子どもがいない夫婦と子どもが1人の夫婦は、1977年では14.0%でしたが、2021年では27.4%になっています(図表2)。
これらの夫婦が大学等無償化の恩恵を受けるには子どもを2人または3人以上産まなければならず、ハードルはかなり高いと言わざるを得ません。これでは出生率向上の効果はあまり期待できないでしょう。
  【図表2】結婚持続期間15〜19年の夫婦のうち、子ども0人または1人の割合
所得制限なしの大学無償化策へ政府の本気度が問われる
これまで見てきたとおり、都の高校無償化策は、制度内容がシンプルでわかりやすく、「子育て負担が減る」と実感が得られやすいものでした。これに対して、政府の大学無償化策は、対象者が限定的で関連する制度も複雑であるため、批判が集まるものになったと考えられます。
ただし、制度として所得制限なしの大学無償化策が始まったことは事実です。今後この制度が拡充され、第2子、第1子も無償化の対象になれば、少子化への効果もかなり期待できるでしょう。
この政策を推し進める場合、問題となるのは財源です。巨額の財源が必要となるため、年金や医療といった社会保障給付の制度改革は避けて通れないでしょう。また、これまで行われてきた政策の停止・廃止による歳出削減も必須です。
少子化による人口減少は、我が国が直面する未曽有の危機です。今、この危機に対する政府の本気度が試されていると言えます。
●田中眞紀子が不人気「岸田政権」を一刀両断 12/26
去る12月8日、東京・永田町の参院議員会館で行われた「今こそ政治改革‒政治とカネ‒」と題した集会に田中眞紀子元衆院議員(79)が登場。自民党・岸田内閣をバッサリ一刀両断にした。久々に聞かれた威勢のいい啖呵に、復帰を望む声も飛び出して‥‥。
「このダミ声、11年ぶりに永田町の土を踏みました。相変わらず空気がきな臭いし、暗い感じがするなというのが第一印象」
「賞味期限切れの人が総理になり、閣僚になり議員になっている」
「歳費は129万4000円。月々ですよ。文通費、私の頃は20万円、今は100万円。調査研究費、何の調査やっているんですか? 国会議員って歳費や文通費の他にもお金いっぱいもらっているんです」
自民党安倍派議員らによる政治資金パーティー収入の裏金化疑惑が明るみに出て、閣僚らの辞任ドミノが続き、岸田退陣論がささやかれる中での眞紀子氏の会見。その真意について、政治評論家の小林吉弥氏はこう解説する。
「結局、眞紀子氏は、今の自民党・岸田政権に物足りなさを感じているということです。眞紀子氏の父親でもある角栄氏は『日本列島改造論』という大綱を示し、強いリーダーシップを持って、外交でも何でも、とにかく国民目線に立ち、日本国民のために政治を遂行してきた。それに対して最近の政治を見ていると、岸田総理をはじめ、大半の政治家たちは自分たちの私利私欲、党利党略、そういう目先の利益ばかりに目がくらんで、国民に目を向けた政治が行われていない。そのことへの不満を爆発させたのでしょう」
昨年7月に起きた安倍晋三元総理銃撃事件以降、自民党と旧統一教会との親密すぎる関係が次々と発覚するも、国民に対していまだに十分な説明が行われていない。岸田内閣の支持率は急落を続け、最新の世論調査ではついに17.1%と最低の支持率を更新。まさに、土俵際まで追い込まれている岸田内閣を痛烈に批判し、改めてその存在感を知らしめた独演会≠セった。水面下では、政権交代を目論む野党との共闘もささやかれているという。
「12年の衆院選落選後、国会議員は引退したが、人をひきつける話術はず抜けている。今回の眞紀氏の会見は、テレビニュスでも報道され、さらにーチューブにおいて会見画のノーカット版がアッされると、わずか3日で40万回以上、再生されまし。眞紀子氏の抜群の注目と影響力は、『打倒自民る野党にとっては、選挙戦戦力となる。立憲民主党で冷や飯を食わされている枝野幸男衆院議員と眞紀子氏は、93年当選の同期でもあり、互いに認め合う仲でした。今後の政局次第では、野党が担ぎ出す可能性もあります」(永田町関係者)
当の眞紀子氏だが、8日の会見時に自身の政界復帰について質問が及ぶと、「別に売名でやろうとか、新党を作って頑張ろうということは思っていない」ときっぱり否定している。
岸田総理をはじめとした現在の閣僚たちを「賞味期限切れ」とバッサリ切り捨てた眞紀子氏本人も、来年1月には傘寿を迎える。それでも、政界復帰を期待してしまうのだが‥‥。
●「岸田政権」ジリ貧でも、なぜ株高は続くのか? 12/26
自民党派閥による政治資金パーティーをめぐる「裏金」疑獄は、岸田政権を“死に体”へと追いやっている。しかし、そんな大騒動に一切の関心を示していないのが、国内外の機関投資家やマーケット関係者という。その理由を聞くと、「岸田不況」どころの話ではない、急速に存在感を失いつつある日本の寒々しい現状が浮き彫りになった。
東京地検特捜部が斬り込んだ裏金問題で、永田町は混乱の極みにある。しかし機関投資家やマーケット関係者の間で「どうなる岸田政権?」といった話題が出ることは皆無という。「インフィニティ」チーフエコノミストの田代秀敏氏が言う。
「現在、機関投資家やマーケット関係者が注視しているのは岸田政権の動向などではなく、日銀の金利政策の行方を示唆する植田和男総裁の発言です。岸田政権が何をしようと、株価などに影響を与えるインパクトは望めず、“何も期待していないから、何の関心もない”というのが彼らの本音です」
別の証券会社関係者もこう話す。
「日経平均株価は今年5月以降、上昇基調を維持し、11月には1990年3月以来となる3万3853円の値をつけました。一方の岸田首相についていえば、株の値動きと反比例するようにマーケット関係者の関心の対象から外れていきました。そもそも就任時に『新しい資本主義』などと意味不明な概念を唱え出したところから“この総理に経済センスはない”と皆が感じ、その後の主だった経済政策も支持率目当ての内向きなものばかり。岸田政権になって以降、政治が市場に直接的な影響を及ぼす機会はめっきり減りました」
政治と経済が“リンク”した時代
過去と比較した際、岸田政権の「投資業界からの総スカン」ぶりは際立っているという。
「12年11月14日、民主党の野田佳彦首相(当時)と故・安倍晋三氏が党首討論を行い、野田氏はその場で『16日に解散をします』と衆院解散を宣言した。すると16日に〈BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)〉という造語の生みの親であるゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長のジム・オニール氏が『We want Abe(安倍政権を待望する)』と題する投資家向けニュース・レターを発表しました」(田代氏)
その中でオニール氏は「アベが“無理やりにでも3%のインフレ・ターゲットを達成させる”という。これこそ、多くの人々が1990年代から“日本が取るべき政策だ”とアドバイスしてきたものだ」と述べ、投資家に「円売り」と「日本株買い」を推奨。結果、政策が実施される前に「アベノミクス相場」が動き始めたのは有名な話だ。
「ただし、日本の政治と経済(相場や株式市場)が“両輪”のように噛み合いリンクしていたのは、この安倍政権初期の頃までです。年々、市場関係者の間から“政治に期待”する声は減り、いまでは経済に新しい活力を吹き込むような、政治主導のイノベーションが起きる可能性など誰も信じていません」(田代氏)
日本株の「コモディティ化」
政治と経済の乖離が進むにつれ、日本の国力も低下——。それを端的に指摘したのが、11月1日にドイツ銀行が投資家向けに発表したリポートだ。内容は「日本円のファンダメンタルズ(基礎的要因)は非常に弱い」と指摘した上で、その利回りや対外収支は、過去10年で90%以上下落(対ドル換算)した「(信認の低い)トルコ・リラやアルゼンチン・ペソと同じ部類」と評価したのだ。
田代氏が続ける。
「世界における日本のプレゼンテーションが低下するのは安倍政権の後期から始まりますが、ここ数年はそのスピードが加速しています。たとえば日本のGDPをアメリカのGDPと比較した際、ドル建てベースの単純計算で95年は(対米GDP比)72.6%でしたが、22年には同16.6%にまで低下。経済的インパクトを喪失した日本に国外の機関投資家が興味を失っていることは、米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルを見ればよく分かります。同紙の記事検索で“Fumio Kishida”と入れてもヒットする記事は皆無で、代わって最近、日本関連で大きく取り上げられたのは手塚治虫の『鉄腕アトム』や竹宮惠子氏の『地球(テラ)へ』といった日本の〈漫画遺産〉です」
「日本の政治」より、グローバルにファンを獲得する「漫画遺産」のほうが“ニュースバリューがある”と同紙が判断したと見られている。また最近の好調な株価の裏側についても、田代氏はこう話す。
「今世紀に入ってから投資の世界では『日本株のコモディティ化』が語られてきました。原油や小麦といったコモディティは“誰がつくったか?”は問題とされず、『安ければ買って、高くなったら売る』投資対象に過ぎない。同様に日本株も発行した会社が吟味されることはなく、すでに“安ければ買い、高くなったら売る”投資対象になっているとの意味です。日経平均株価が上昇基調にあるのはその通りですが、まわりの投資家を見ると、日本株を長期保有するのでなく、“安値買い・高値売り”の投資スタイルが主流になっている。現状、ドル換算した株価が歴史的な円安で大きく値下がりしているので外国機関投資家が日本株を買い、日銀の日本株の大量購入と相まって、日経平均株価が押し上げられているという構図です」(田代氏)
永田町が右往左往している間にも、日本の経済力は日々削がれている。
●歴代内閣「退陣目前の支持率」 岸田政権の末期状態…嫌われっぷり 12/26
岸田内閣の内閣支持率が危機的な状況に陥っている。各種、新聞やテレビの世論調査では、政権支持率は軒並み20%ほどに。特に低く出た毎日新聞の世論調査では、なんと支持率16%、不支持率は79%だった。政治部記者はこう語る。
「支持率低下について記者に問われたとき、どの首相も『支持率に一喜一憂しない』と答えるのがお約束になっています。しかし、支持率の高低は政権の求心力に直結しますから、やはり気にしているのが現実。もちろん岸田首相も例外ではありません」
過去に低支持率に苦しんだ結果、政権を追われた首相はたくさん。そこで、過去の内閣の退陣直前の最終的な支持率を調べてみた。
対象は2000年以降の内閣で(首相の死去によって交代した小渕内閣は除く)、世論調査はNHKのものと、支持率が比較的高く出る傾向にある読売新聞と、低く出る傾向にある毎日新聞で調べた。
すると、すでに岸田首相の不人気っぷりは、“退陣”レベルに達していることがわかった。支持率ひと桁を記録した“レジェンド”森首相(当時、以下同)にはまだまだ及ばないが、安倍首相や菅義偉首相をこえて、麻生首相や野田首相の末期に近い水準に。
「とはいえ、退陣にはきっかけが必要。就任以来、低支持率に苦しめられた森首相は国会での予算成立を花道に退陣、野田首相は1年近く支持率20〜30%台をさ迷った挙句、衆議院選挙に惨敗。自民党との政権交代とともに、退陣しました」(同前・政治部記者)
永田町では、岸田首相の退陣のタイミングとして、2024年度予算が成立する来年3月や、自民党総裁選が行われる来年秋がささやかれているが……。
   2000年以降の内閣の退陣直前の支持率と不支持率
森喜朗(〜2001年4月26日)
NHK:支持率7%(9%)、不支持率:81%(82%)
読売新聞:支持率8.6%(19.2%)、不支持率:82.4%(70.4%)
毎日新聞:支持率9%(14%)、不支持率:75%(62%)
小泉純一郎(〜2006年9月26日)
NHK:支持率51%(46%)、不支持率:39%(41%)
読売新聞:支持率53.0%(51.1%)、不支持率:36.5%(39.2%)
毎日新聞:支持率45%(44%)、不支持率:37%(40%)
安倍晋三(〜2007年9月26日)
NHK:支持率34%(29%)、不支持率:55%(58%)
読売新聞:支持率29.0%(27.2%)、不支持率:60.7%(63.7%)
毎日新聞:支持率33%(22%)、不支持率:52%(65%)
福田康夫(〜2008年9月24日)
NHK:支持率20%(33%)、不支持率:72%(58%)
読売新聞:支持率28.3%(26.6%)、不支持率:59.7%(61.3%)
毎日新聞:支持率25%(22%)、不支持率:52%(54%)
麻生太郎(〜2009年9月16日)
NHK:支持率15%(23%)、不支持率:74%(64%)
読売新聞:支持率22.2%(24.7%)、不支持率:69.1%(64.3%)
毎日新聞:支持率20%(17%)、不支持率:60%(67%)
鳩山由紀夫(〜2010年6月8日)
NHK:支持率21%(32%)、不支持率:68%(56%)
読売新聞:支持率19%(24%)、不支持率:75%(67%)
毎日新聞:支持率20%(23%)、不支持率:67%(62%)
菅直人(〜2011年9月2日)
NHK:支持率18%(16%)、不支持率:65%(68%)
読売新聞:支持率18%(24%)、不支持率:72%(63%)
毎日新聞:支持率19%(24%)、不支持率:56%(57%)
野田佳彦(〜2012年12月26日)
NHK:支持率20%(23%)、不支持率:64%(59%)
読売新聞:支持率20%(19%)、不支持率:70%(68%)
毎日新聞:支持率23%(25%)、不支持率:54%(53%)
安倍晋三(〜2020年9月16日)
NHK:支持率34%(36%)、不支持率:47%(45%)
読売新聞:支持率52%(37%)、不支持率:38%(54%)
毎日新聞:支持率34%(32%)、不支持率:59%(60%)
菅義偉(〜2021年10月4日)
NHK:支持率30%(29%)、不支持率:50%(52%)
読売新聞:支持率31%(35%)、不支持率:57%(54%)
毎日新聞:支持率37%(26%)、不支持率:55%(66%)
岸田文雄(2023年12月24日時点の最新の支持率)
NHK:支持率23%(29%)、不支持率:58%(52%)
読売新聞:支持率25%(24%)、不支持率:63%(62%)
毎日新聞:支持率16%(21%)、不支持率:79%(74%)
●「一斉聴取」もスピード欠く岸田首相 政治改革へ対応焦点 12/26
自民党派閥の政治資金規正法違反事件に絡み、安倍派の主要幹部が東京地検特捜部から相次ぎ事情聴取を受け、政権には衝撃が広がっている。
疑惑の全容が見通せない中、岸田文雄首相の対応はスピード感を欠いたままだ。党内からは「政治改革」へ早急に具体策を講じるべきだとの声が上がる。
「党の信頼回復のために全力で取り組まなければならない」。首相は25日、政治改革の方向性などに関する党幹部との協議後、記者団にこう述べた。ただ協議では、年明けにも党内に「信頼回復のための組織」を立ち上げる方針を確認するにとどまった。
この日までに事情聴取されたことが判明したのは松野博一前官房長官、高木毅前国対委員長、世耕弘成前参院幹事長と派閥座長の塩谷立元文部科学相。同派の裏金疑惑発覚後も首相は最近まで松野氏らを岸田政権の中枢に置き続けた。
聴取について、自民党内では「既定方針だ」(ベテラン)との受け止めがある一方、ある中堅議員は「実際に踏み切るとは」と驚きを隠さない。安倍派幹部で裏金の還流を受け取っていたとされる西村康稔前経済産業相、萩生田光一前政調会長への聴取についても、「いずれ行われる」(政府関係者)と見る向きがある。
地検の対応を見極めるため、政府内では来年1月の通常国会召集のタイミングをできるだけ遅らせなければならないとの考え方が出ている。別の自民中堅は「ポイントは起訴される派閥幹部の有無と、その人数だ」と指摘。実際に幹部が立件されることがあれば「1月以降も政権への衝撃が続く」と予想する。
これに対し、首相が指導力を発揮する気配は薄いままだ。焦点の規正法見直しや派閥の在り方について、政府高官は「通常国会までに一定の結論を得ることは難しい」と語る。
「政治とカネ」を巡る政治不信の高まりに、党内からは懸念も上がる。菅義偉前首相は25日、神戸市内で記者団に対し、「大きな不信を生んでおり、党全体で取り組まなければならない」と強調。「当然、政治改革や党改革を考えなければならない」と言い切った。
●自民裏金事件を海外メディアも報道…岸田政権が世界に恥さらす国賓訪米 12/26
政権を揺るがす裏金事件が、ついに海外に“飛び火”してしまった。
英BBC電子版が23日、自民党の裏金事件について報道し、日本のSNSで話題になっている。
BBCは〈日本政治を揺るがす裏金疑惑 岸田政権はどうなるのか〉との見出しを掲げ、自民党議員が派閥のパーティー収入を裏金化していたスキームを詳細に報道。裏金事件のみならず、〈自らの息子が首相官邸をパーティーに利用していたことが問題視されるなどした〉と、岸田首相にまつわるスキャンダルにまで触れている。
事件の影響については〈減税から外交問題、さらには首相の主要政策である防衛強化に至るまで、政府の方針が変わる可能性がある〉と評価している。
これに、日本のX(旧ツイッター)では〈海外にもついに情報が流れ出した〉〈日本の議員が取り上げられ世界の恥となってる〉〈世界の信用失墜するニッポンの恥さらし〉といった声が続出している状況だ。
今後、海外メディアの報道が続けば、岸田自民は全世界に恥部をさらすことになりかねない。国際的な信用を失う恐れすらある。となると、「外交の岸田」も形無しだ。特に、岸田首相が最も頼りにしているアメリカのバイデン大統領にソデにされる可能性がある。
訪米後の“花道”論も立ち消えか
「総理は11月に訪米し、サンフランシスコで開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に出席。日米首脳会談でバイデン大統領から公式訪問の招待を受けました。時期は来春で、国賓待遇となる予定です。危険水域に落ち込む内閣支持率を反転させたい総理は、この国賓訪米を政権浮揚の材料にしたいと考えている。一方、自民党内では、訪米と米議会での演説を“花道”にした退陣シナリオも囁かれている。しかし、裏金事件にまみれる総理に、バイデン大統領が会おうとするか、微妙な状況になっているのです」(官邸事情通)
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)が言う。
「来秋に大統領選を控えたバイデン大統領が岸田首相を国賓として招く狙いは、アメリカにとって有利な条件を日本から引き出し、選挙で実績としてアピールすることでしょう。政治力を失い、いつ代わるか分からない日本の総理大臣と突っ込んだ話ができるのか。バイデン大統領は積極的に会いたいとは思わないでしょう」
“フミオ、もう来なくていいよ”と言われたら、岸田首相は立ち往生必至だ。 
●岸田政権最大の危機「若手議員が”乱”を起こす。来年は混乱の1年に」 12/26
2024年、そして政治とカネに揺れる岸田政権の行方を占います。総理大臣官邸で取材を続ける胡子記者に聞いていきます。
【胡子記者・首相官邸前】 
官邸前からお伝えします。私はサミット前から、岸田総理の取材を続けているが、当初は解散について含みを持たせる言いぶりをするなど余裕も感じられたが、今は解散について「先のことを考える余裕はない」などと、言葉からも余裕がなくなってきていることが伺われます。そんな中、「政治とカネ」を巡る対応について、TSSのインタビューに対し、岸田総理は、覚悟をもって取り組むと強調しました。
【岸田文雄 首相】
「しかるべきタイミングで信頼回復のための新しい仕掛けを含む取り組みを進めていく。政治の信頼、政治の安定のために私自身、自民党の総裁として先頭に立って取り組まなければならない、強い覚悟を持って臨みたいと思います」
そして、25日、「年明けにも党の信頼回復のための新しい組織を立ち上げる」方針を明らかにしました。
ことしの内閣支持率を振り返ると最も高かったのは広島サミット直前の4月。それ以降下がり続けていて、最新の支持率は22・5%と過去最低まで落ち込みました。
”危険水域”とも言われる支持率20%台が2カ月続いている状況に、長年、永田町を取材してきたジャーナリストの鈴木哲夫氏は、厳しい見方を示しています。
【ジャーナリスト・鈴木哲夫氏】
「岸田政権ができて最も危ない時期。外交というものは支持率が上がっても一時的なものですぐに下がる。岸田首相は、この(裏金)問題だけ解決すればいいのではなく、これまでずっと低迷してきた政策・経済対策も全部セットで跳ね返していかないといけない」
来年の政界を占ってもらいました。
【ジャーナリスト・鈴木哲夫氏】
「乱。やっぱり若手(議員)がまさに”乱”を起こす、自民党を変えるんだと。とにかく来年の政治はかなり乱れる、混乱の1年になると思う。それだけに岸田首相がピンチをチャンスに変える決断ができるか。できないとかなり厳しい」
【胡子記者・首相官邸前】
来年の主な政治日程をみていきます。来月から通常国会が始まり、9月には自民党総裁の任期を迎えます。
4月には補欠選挙が予定されていて、今後の捜査次第ではあるが、仮に多数の安倍派議員が辞職に追い込まれた場合には、自民党内で混乱が生じ、厳しい対応を迫られることになります。
総理周辺は、捜査が進まないと対応できないと頭を悩ませていますが、今後、岸田総理は捜査の進展を見極めながら、世論が納得する政治改革の具体策を打ち出せるのか、正念場を迎えています。
モーリーさん岸田政権の来年に関してはどう見ていますか?
【国際ジャーナリスト モーリー・ロバートソンさん】
「今のところ暗雲が漂っている。昭和から続いている自民党への国民のあきらめや無関心、受け身っぷり、つまり弱々しい国民にゆるく分配することで、なんとなく政権を維持し続けるという、なあなあさに(自民党は)胡坐をかいている。ここを引き締める動きが自民党の若手から起きるのか、これには疑いを向けている。ただ、逆に言うと国民が覚醒して、有権者の側で、選ぶのは我々有権者で、この体たらくも自分たちが選んだ結果、投票に行かなかった結果なんだと自覚をすれば、いろいろ動きは期待できると思う」
岸田政権にとって前途多難な1年がまもなく始まろうとしています。
●林官房長官 “今は政権支えることに専念 将来的に首相目指す” 12/26
12月に新たに就任した林官房長官は、報道各社のインタビューで、今は岸田政権を支えることに専念する一方、将来的には総理大臣を目指すことに意欲を示しました。
林官房長官は、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて交代した安倍派の松野 前官房長官の後任として12月に就任し、26日に報道各社のインタビューに応じました。
この中で林官房長官は、2012年に自民党総裁選挙に立候補した経験があることを踏まえ、2024年秋に予定される総裁選挙も含め、将来、総理大臣を目指す考えはあるか問われ「現在は政権の一員としてまさに岸田総理大臣を支え、しっかりと職責を果たすことに専念していきたい。これ以外のことは頭にない」と述べました。
一方で「一度、総裁選挙に立候補しているので、そうした志は持ち続けていきたい」と述べ、将来的には総理大臣を目指すことに意欲を示しました。
また、低迷する岸田内閣の支持率をどう回復していくか問われ「政策の真意が国民に十分伝わっていないなどという指摘を真摯(しんし)に受け止め、政府の対応に生かしていくことが重要で、丁寧な対話を大切にしていきたい」と述べました。
●米タイム誌が早くも「ポスト岸田」を予想、その候補とは? 12/26
自民党の裏金問題は、海外でも「日本の与党、この数十年で最大の政治資金スキャンダル」などと報じられている。
英紙「ガーディアン」は、疑惑の政治資金パーティーについて日本の政治をよく知らない読者のために次のように説明している。
「日本の政党は資金集めのために支持者が参加するイベントを日常的に開催し、その利益を選挙活動に回している。そうしたイベントの開催自体は合法である。安倍派のメンバーは、パーティー券の販売ノルマを超えた分を自らの懐に入れていたと報じられているが、それも犯罪ではない。だがその金額を公式に記録しなかったならば、政治資金規正法違反となる」
「岸田にとって最悪のタイミング」
同紙はさらに、今回の裏金疑惑は「岸田文雄首相にとって最悪のタイミング」で表面化したと指摘し、岸田政権の支持率が過去最低を記録したことも伝えている。
岸田は会見で「国民の信頼回復のために火の玉となって自民党の先頭に立ち、取り組んでいく」と述べ、政治改革を誓った。
だが神奈川大学のコオリ・ウォレス准教授(政治学・国際関係論)は同紙にこう語っている。
「現段階で岸田ができるのは、自分の支持率がこれ以上下がらないように祈ることぐらいです。もし支持率を上げたいと思うなら、(問題の)閣僚を交代させるといった上っ面だけの変化以上のことが必要でしょう」
同紙は、このスキャンダルを受けて2024年9月の自民党総裁選で岸田は厳しい立場に追い込まれるだろうと指摘。続けて、「もし彼がそれまで生き残ることができればの話だが」と、やや辛らつに記事を結んでいる。
米誌が予想した「次期首相」は?
そして早くも「ポスト岸田」を予想したのは米誌「タイム」だ。
「岸田が退陣を選択した場合、安倍派の議員は後任候補から外れる可能性が高い。旧統一教会とのつながりで、有権者に悪いイメージを植え付けた議員もいるからだ」と同誌は書く。・・・
●「こども未来戦略」決定 少子化に歯止めかかるか 12/26
政府は、次元の異なる少子化対策の実現を目指して、「こども未来戦略」を決定しました。日本の少子化に歯止めがかかるのか。また、厳しい財政状況の中、財源をどのように確保していくのか。対策の評価や課題について、政治面から成澤委員が、財政面から岸委員が考えます。
岸) まず、日本の少子化の状況から見ていきます。
去年、生まれた子どもの数は過去最少の77万人あまり。1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標も1.26と最も低くなりました。少子化に伴い、人口減少も進んでいます。なかでも、急速に出生数が下がった2000年以降に生まれた人たちが30代を迎える2030年までに対策をとらないと、その後、経済や社会システムの維持ができなくなるおそれもあります。そこで、岸田政権は、2030年までが少子化トレンドを反転できる「ラストチャンス」として、「こども未来戦略」を決定しました。
成澤さん、対策は数年をかけて行われますね。
成澤) 政府は、今後3年間を集中取組期間としています。
具体的には、児童手当が拡充されます。2024年10月分から、支給対象が中学生までから18歳までに広がります。所得制限を撤廃し、0歳から3歳未満は1人あたり月額1万5000円、3歳から18歳の年度末までは1万円を支給します。3人以上の子どもを扶養する世帯では、第3子以降は3万円に増額します。
ただ、児童手当の拡充に伴い、16歳から18歳までの扶養控除は縮小する案をもとに議論が行われていて、2024年に結論を得ることになっています。児童手当の拡充と扶養控除の縮小を組み合わせても、すべての所得層で手取りが増える設計にするということですが、与党内では「アクセルとブレーキを同時に踏むようなもので、異次元の対策にならない」と懸念する声が出ています。
大学の授業料を減免する支援も強化されます。2025年度からは、3人以上の子どもを扶養する「多子世帯」を対象に所得制限を撤廃し、大学の授業料は、全国平均などを目安に、国公立で54万円、私立で70万円を上限に補助します。大学の入学金も上限付きで補助することにしていて、「多子世帯」では“実質的に”無償化されるとしています。
政府が「多子世帯」への経済的な支援を手厚くする背景には、子育てや教育にお金がかかりすぎるので、理想の人数の子どもを持てないと考える人たちが多いことがあります。少子化トレンドを反転させるためには、「子ども3人以上を」という指摘が出ていますが、夫婦の理想や予定の子どもの数は2人あまりという調査結果もあります。さらなる対策が必要になる可能性もあると思います。
「こども未来戦略」では、経済的な面だけでなく、子どもや子育て世帯を切れ目なく支援することを掲げています。親が就労していなくても子どもを保育所などに預けられる「こども誰でも通園制度」は、2024年度に一部の自治体で試験的に導入し、2026年度には全国すべての自治体での実施を目指しています。
子育てにあたっては、夫婦で仕事と家事・育児にあたる「共働き・共育て」の推進も重要です。育児休業の取得を促すため、両親が共に14日以上取得した場合、手取りの収入を、今の休業前の8割相当から10割相当になるよう給付率を引き上げる方針です。給付率は28日間を上限に引き上げます。2025年度からの開始を目指しています。
岸さん、こうした給付やサービスを実現するには、かなりの規模の予算が必要になりそうですね。
岸) これだけのメニューだけあって、政府は、2026年度までに年間3兆6000億円程度まで予算を増やす予定です。経済的な支援の強化などで1兆7000億円程度、子ども・子育て世帯への支援拡充で1兆3000億円程度、共働きや共育てを推進するために6000億円程度、増やすとしています。
一方、課題は財源です。政府は、2026年度より先の2028年度までに安定的な確保をすると説明しています。すでにある子ども・子育てに関連する予算などを最大限活用することで1兆5000億円程度、医療や介護などの歳出改革で1兆1000億円程度、さらに、企業や国民から広く集める「支援金制度」を創設して1兆円程度、それぞれ、ねん出するとしています。ただ、対策が始まってから安定的な財源が確保できるとする2028年度まで期間があることから、つなぎとして、国債を発行せざるをえません。
「支援金制度」のあり方も気になるところです。政府は、2026年度から公的医療保険を通じて集め始め、2028年度には全体で1兆円の規模とする見通しです。その時の負担額は、医療保険の加入者1人あたり月に数百円程度になるとみられています。これについて、政府は、支援金を集めても、歳出改革を進めるとともに、賃上げによって、「国民に実質的な追加負担は生じないようにする」と説明しています。ただ、社会保障費が拡大する中で、歳出改革を進めて医療や介護などの給付を抑えていかなければ、ゆくゆくは負担が生じる可能性も否定できません。政府は、歳出改革への取り組みと実質的な追加負担の意味について、丁寧な説明が欠かせないと思います。
成澤さん、岸田政権はどう対応するのでしょうか。
成澤) 岸田総理大臣も、これまでの国会答弁で、「賃上げと歳出改革で国民に実質的な追加負担は生じさせない」と述べていますが、具体的で明確な道筋を示した説明とは言えないのではないでしょうか。また、今は、自民党の派閥の政治資金をめぐる問題で、政権の“体力”が奪われています。野党側から「裏金疑惑」と指摘され、国民の不信を招く中、年末の予算編成や税制改正の検討にあたっては、「国民の負担増につながる議論ができる環境になかった」という指摘も出ています。政府は、社会全体で子どもや子育て世代を応援するという機運を高め、社会の意識改革を図りたいとしています。そのためには、政治のリーダーシップが重要で、政治への信頼回復は不可欠です。岸田政権が政策の“一丁目一番地”に掲げる持続的な賃上げとともに、少子化に歯止めをかけるという結果を出せなければ、国民の信頼がいっそう揺らぐ可能性も否定できません。
岸) 今回、少子化対策の財源が議論され、介護サービスの利用料で2割負担の人を増やす案も検討されましたが、実施は見送られました。財源が限られる中で、誰がどの程度の負担を負っていくのか、議論を尽くす必要があると思います。さらに、政府には、少子化の背景にあるとみられる若者たちの将来不安の解消や働き方の見直しなど、日本社会が抱える課題にも正面から取り組むことを求めたいと思います。
●「お詫びする相手が経団連?」岸田首相、経団連会合で「心からお詫び」 12/26
12月25日、岸田文雄首相は、経団連の審議員会に来賓として出席。あいさつで、自民党派閥の政治資金問題に触れ、「国民から疑念を持たれている事態を招いていることはたいへん遺憾なことで、心からお詫びを申し上げる」と陳謝した。
その上で、「国民の信頼あっての政治の安定であり、政治の安定あっての政策の推進だと、改めて肝に銘じて対応していきたい」と語った。
同日、立憲民主党の蓮舫参院議員は自身のX(旧Twitter)にこう書きこんだ。
《岸田総理、話す場所が違います。経団連の審議員会で話すのではなく、私たちが要請している予算委員会閉中審査、政治倫理審査会を開き総理はじめ、辞めてしまった官房長官らの参考人招致に応じて説明してください。》
経団連は2014年、安倍政権のときに、政治との連携を強めていく必要があるとして5年ぶりに政治献金の呼びかけを再開。以後、10年連続で与党の政策を「高く評価」し、会員企業・団体に対して、事実上、自民党への献金を呼びかけてきた。
「2022年分の政治資金収支報告書を見ると、企業・団体献金の総額は約24億5000万円で、うち9割超の約22億7000万円を、自民党の政治資金団体『国民政治協会』などが集めています。
一方、政党交付金は年間約315億円交付され、自民党はそのうちの約150億円を毎年得てきた。
政党交付金は、企業や業界との癒着を防ぐため、非自民の細川連立政権が1994年に成立させたもの。しかし、その後も政党や政党支部には引き続き献金ができるうえ、政治資金パーティーを通じて、企業・団体からの献金は続いてきた。政党交付金と企業・団体献金の『二重取り』が続いていることが、自民党安倍派の『裏金疑惑』の背景にあるのです」(政治担当記者)
12月4日、経団連の十倉雅和会長は会見で、自民党安倍派による政治資金パーティーでの裏金づくりの疑惑について「政治団体の責任者が処理についてしっかりと(事実関係の調査を)やるべきだ」と述べた。
一方、企業による政治献金の目的について問われ、「民主主義を維持していくにはコストがかかる。企業がそれを負担するのは社会貢献の1つだ」と説明。「政策提言とか言っちゃいけないんですか? 希望とか要望とかどこの国でもやってる。何が問題なのか」と述べ、政党交付金と企業による政治献金の「二重取り」との批判を一蹴した。
自民党安倍派の裏金疑惑の渦中に、岸田首相が、経団連の会合で「陳謝」したことに、SNSでは批判的な声が殺到している。
《経団連に「お詫び」だとさ 献金貰えなくなっちゃうからね》
《心からお詫びが国民じゃなくて“経団連”って…バレてごめんなさいってことかな?》
《お詫びする相手が経団連!?何も期待してないから辞職してくれ》
岸田首相、経団連ともに、政党助成金と企業献金の「二重取り」を解消する気は、さらさらないようだ。だが、それで「裏金疑惑」による政治不信を払拭することはできるのだろうか。
 12/27

 

●「パーティーは儲けるためではなく寄付行為」自民党元幹事長・石原伸晃氏 12/27
元自民党の幹事長で派閥のトップだった石原伸晃氏に、政治資金を巡る一連の問題を徹底質問!さらに、「裏金問題」・「支持率低下」の岸田政権に、自身の経験も踏まえて緊急提言!岸田首相に鉄板焼き店での会食で直接伝えた話とは?
“戦友”岸田首相に提言「“永田町用語”では国民に伝わらない」
石原伸晃氏は、1990年に初当選し自民党に入党。2001年小泉内閣で行政改革担当大臣として初入閣しました。その後、政調会長や幹事長を務め、2012年には山崎派を引き継いだ石原派の会長として派閥を率いました。2021年の衆議院選で落選し、派閥会長辞任し、石原派は森山派となりました。岸田総理とは戦友で同い年だということです。2008年、石原氏が総裁選に出馬した際には岸田総理が推薦人に名2021年の総裁選では岸田総理を支持しました。
今回の裏金問題について石原氏は、岸田総理との会食で「まずは国民への謝罪が必要だと思う」と伝えたといいます。
Q.“政府として”謝罪が必要だと考えているのですか?
石原氏「政府というよりも自民党の総裁としてです。自民党の1派閥の幹部が政治資金規正法上の法律違反と思われる事態を引き起してしまったわけですから、自民党のナンバーワンとして、『申しわけない』と言われるのがいいと、私は思いました。総理も言っているのですが、“永田町用語”で『大変遺憾でございます』と言っても国民の皆さんには『何が遺憾なのかいな』という感じなのではないでしょうか」
「ノルマはなかった」当時の石原派、 「ほかの派閥の台所事情というのは分からない」
岸田政権の支持率は、最低水準が続いています。石原氏は「安倍派の問題の総決算をやらされてる感じがして気の毒でかわいそう」だと話しています。そして「アメリカのバイデン大統領やフランスのマクロン大統領も(30%〜34%)低い水準。岸田総理は芯の強い人だから今後しっかりやってほしい」と語っています。
2022年の4月ごろ、キックバックをやめる方針を安倍派幹部らで決定し、その後“撤回”されていたということが分かりました。東京地検特捜部は、キックバックを止める方針を決めた経緯、撤回しキックバックを続けた経緯など派閥幹部から詳しく調査しているとみられます。
Q.こういう話を聞くと、安倍派の中でキックバックについて話し合って、情報を共有して撤回したというふうにみえるのですが?
石原氏「私は断定的なことは言えませんが、国民の多くがそう思っていることに間違いないと思います。派閥から一定の寄付をもらったと政治資金として収支報告書に記載すれば何の問題もないわけですから、何に使ったかということを捜査が終わった段階で、嫌疑をかけられた人たちが自身の言葉で話していただければ真相が明らかになると思います」
Q.石原派の時代にこの手の問題はなかったですか?
石原氏「ノルマがなかったです。山崎会長の時代もなかったですし、私は山崎会長の時幹部ですから、自分で自分の能力に見合った派閥の運営費を山崎会長のところにお届けしています。それは私の政治資金管理団体から山崎会長の政治資金管理団体へしっかりと収支報告に則って行っています。今度の問題は、なぜ収支報告をしなかったのか、その資金がどこに行ってしまったかが一番の問題だと思います」
Q.石原派の時代は、こういった裏金を工面しなければいけないほど困っていなかったということですか?
石原氏「閣僚を経験した人は自分で自分の政治資金を集められますが、私自身もそうですが、当選1〜2回の人たちは自分だけでは集められないのというのは事実です。政治資金管理団体から政治金管理団体へ寄付をする形で資金を頂きたいと若手から言われたので、限られた金額ですがそういうふうに処理しました」
Q.ほかの派閥の事情というのは、同じ自民党内に居ても分からないものなんですか?
石原氏「ほかの派閥の台所事情というのは分かりません。派閥の会長で集まることはありましたが、『お宅の派閥の懐具合はどんな塩梅ですか?』というような会話は1度も記憶にありません」
Q.安倍派が最大派閥ですが、最大派閥に入ると当選しやすいとか上に上がりやすいとか思うのですが、その点はどうなのですか?
石原氏「政策集団とは、志を同じくする肌合いの合う人が集まって、時の会長を総理総裁に押し上げていこうというのが派閥だと思いますので。そういうことはあるんだと思います」
「パーティという名前だが、寄付行為。遊んでいるわけではない」
Q.派閥のお金の流れというのは、会計責任者に任せていて派閥トップは分からないのか?実は知っているのか?昔からの慣例で“阿吽の呼吸”で言わなくても分かっていたのか?どうなんですか?
石原氏「他派閥のことは詳しく分からないので私の想像ですが、会計責任者からは『パーティー券が何枚売れました。収入はいくらです』ということは派閥の事務総長に報告が行っていると思います」
Q.ということは、キックバックのことも知っているということですね?
石原氏「仮に100万円のノルマがあるとして、120万円A議員の政治資金団体から派閥の政治資金団体に入りました。20万円ノルマを超えているので20万円部分はA議員の方に戻しましょうという取り決めがあったから、こういう話になっていると推測します」
裏金の使い道として、石原氏は「議員の個人的な趣味や飲食などに充てられている可能性は低いと思う」「選挙費用などに当たる可能性が考えられるが、報告書に書けば問題になっていないので不思議だ」と話しています。
Q.パーティーで集めた「政治資金」は何に使うのですか?
石原氏「パーティーで集めた資金は、政治活動にも使えますし、選挙活動にも使います。選挙期間は法定選挙費用というのが決まっていますので、それ以上の支出はありません。しかし、選挙が始まるまでは、公職選挙法の外ですのでビラをたくさんまくとか、ダイレクトメールを出すだとかしますし、小選挙区と言っても名ばかりで東京23区より広い選挙区もたくさんありますので、秘書の経費や車やガソリン代、また出版物を後援会員に送ったりすると当然費用がかかります。そういうことにあてるのなら政治資金収支報告書に記載すれば何の問題もありません。今回、何で記載しないのかが分からないので、何に使ったんだろうと不思議に思います」
Q.パーティーは儲かるのですか?
石原氏「パーティーは儲けるためにやっているのではなくて、『ドネーション(寄付行為)』ですので、『寄付をして、日本の民主主義を守ろう。この議員を応援して行こう』という人に対して資金を提供するという、パーティー券というカタチを使った“寄付”です」
Q.利益率が8割〜9割で食べる物もほとんどないと聞いたりもしますが、それは「パーティー」なんでしょうか?
石原氏「パーティーという名前を使っていますが、寄付行為です。パーティーして遊んでいるわけでは決してないんです。だから利益率が高ければ高いほど、寄付をした側から言うと有効に使ってもらえると考えられると思います」
石原氏提言『政治不信はパーティーの話や安倍派の話だ』みたいに矮小化したら信頼は回復できない」
Q.記載が必要のないお金があるので使い方を疑われてしまうのですが、政治活動費を全部オープンにはできないのでしょうか?
石原氏「政治資金規正法にのっとって公開すべきものは公開していますし、文書交通費もいくら使ったかっていうものを計上していると思うんです。家のローンの返済をしている人がいたとしたら、それは所得税法の問題になりますから、私はそんな事をしている人はいないと思います。自分で、その集まったお金で、どんちゃんどんちゃん大騒ぎしている人もいないと思います。現に私はそんな人の話を聞いたことないですよ」
Q.今回の裏金の問題は、何に使ったか言わないのは、何か悪いことに使ったから言えないのでは?
石原氏「パーティー収入の不記載の問題は、なぜこういうことが起こって、一体何に使ったのか?これを今、その当事者に話せといっても、捜査の最中ですからそれは無理だと思うんです。この捜査は、通常国会の前には終わりますから、そのときに、当事者がこれだけの大金をその派閥の方から政治資金としてこちらにもらったなら、なんでそのお金は記載しなかったのかっていう理由と何に使ったのかってことを明らかにしないといけないと思います」
Q.自民党が必ずすると思いますか?
石原氏「絶対にやらなければいけないと思います」
石原氏は派閥に対して「派閥とは志を共にしてトップを支えるための集団だが、現在はトップの名前にぶら下がっているだけになってしまっている」と警告しています。また、自民党に対して「若手議員や党内からの追及の声がもっと大きくないといけない」と語っています。
Q. 東京地検特捜部に捜査を任せるのではなく、自民党内の自浄作用を今こそ発揮しないと政治不信になると思うんですが?
石原氏「政治改革の問題は約30年に一度、大きい事件が発生します。古くはリクルート事件、その前は田中金券批判です。リクルート事件の概要が明らかになったのは、私がちょうど初当選の時期で『政治改革、政治改革』で1年生の間ずっと費やしましたけども、事件の概要が明らかになった後、これに対して必ずその若手から声が上がって、『どこに問題があるんだ。こうしよう、ああしよう。選挙制度の問題がある。じゃあ中選挙やめて小選挙区にしよう』となったのですが、今度は、そういう声が上がりにくいのも、この小選挙区で1選挙区1人しか出ないこの選挙制度に私は問題があると思います。やはりこれだけ長い間小選挙区でやって来たんだから、もう1度そこまで含めてパーティー券の問題だけに矮小化しないで、日本の政治の信頼を回復するためにはどういう体制でどういう人間で派閥はどうあるべきなのか。そういうことですねやっぱりもう1度議論をするそういうときに来てるんだと思います」
Q.国民にデジタル化を求めるのだったら、国会議員のお金の出入りもデジタル化したらいいのではないですか?
石原氏「アメリカのやっているように、デジタルで寄付できるような仕組みを作るのがいいのか?それは幅広く意見をきいて法律として整備するならする、しないならしない。そういうことを1つ1つ丁寧に国民に示していくことが、今望まれているのだと思います。しかし、それをただ一つだけするのではなくて、なぜこういう問題が30年に1回起こるのかということを、真剣に若い人たちが中心になってやるべきだと思います。現に私も経験として、当選1回の時に重鎮の後藤田正晴議員・伊東正義議員の2人が政治改革本部のトップ・セカンドでいて、1人当たり30分以上話をきいてくるわけです。そういう事をやるチャンスに変えていかなければ、『政治不信はパーティーの話や安倍派の話だ』みたいに矮小化したら信頼は回復できないと思います。信頼回復できないということはこの国にとって大きな危機ですから、やはり今こそ声を上げないといけないと思います。総理はそれも考えていると思います」
●政治への「熱」失った安倍派 来年「ポスト岸田」の動き本格化 12/27
岸田文雄内閣の支持率は下落し続け、ついに10%台にまで追い詰められた。政局の危険水域ともいわれる状況にもかかわらず、自民党内では表立った「岸田降ろし」の動きが起きていない。政治の「熱」がなくなっているのではないか。
派閥パーティー券疑惑で揺れる自民党の最大派閥、安倍派(清和政策研究会)は、熱を失った象徴的な存在といえる。安倍晋三元首相が昨年7月、凶弾に倒れた後、その遺志を継ぐ後継の会長を1年経っても決められず、他方で分裂するエネルギーもなかった。自民党に対抗する野党も、岸田政権を追い込む迫力に欠けていた。
2024年は、1月の台湾総統選、11月の米大統領選など、世界情勢を揺るがしかねない政治イベントが続く。「日本をどう導くのか」を明確に語らない岸田首相、その後を担おうとする気概に満ちた政治家が見えないなか、「日本は世界で生き残れるのか」と心配でならない。
「政治とカネ」をめぐる不祥事で、国民の政治に対する不信は再び、燃え上がっている。岸田首相は13日に、「火の玉となって自民党の先頭に立ち、取り組んでいく」と述べた改革の具体策を示さなければならないが、今のところその具体像は見えない。来年1月の年頭記者会見が、岸田首相の本気度を国民が注視する機会になるのではないか。
来年1月に開会する通常国会では、衆参の予算委員会などで「政治とカネ」の問題が徹底追及されるだろう。今回の自民党派閥のパー券疑惑の解明だけでなく、そもそも「政治活動に欠かせないカネはどのような内容で、いくらかかるのか」といった基本的なところから議論を掘り起こし、徹底した透明化をはかるための精緻な議論を行うべきだ。
通常国会では疑惑追及に加え、予算審議も重要となる。政府は22日、「次元の異なる少子化対策」を具体化した「こども未来戦略」を閣議決定した。柱の1つは、子供3人以上の多子世帯の大学無償化だが、所得制限が設けられていない。子供2人以下でも収入が十分でない世帯はあり、こうした家庭との不公平感が生じかねないとの指摘もある。少子化対策の財源も含めて、弱者にしわ寄せがいかないように目配りが必要だ。
来年の予算成立後に、いよいよ自民党内で「ポスト岸田」に向けた動きが本格化する可能性もある。現時点では、パー券疑惑で積極的発言を続ける石破茂元幹事長や、秋の内閣改造で外相に抜擢(ばってき)された上川陽子氏らの名前が挙がる。だが、次期総裁選の時期や方法によって展開も異なる見通しで、いずれも決め手を欠く。
むしろ注目すべきは、政局を動かす「キーマン」の動向ではないか。
岸田政権ではこれまで、麻生太郎副総裁が「表で政治を動かす」キーマンとされてきたが、もう一人、森山裕総務会長の存在感も関心を集めている。
森山氏は、目立ったパフォーマンスをするタイプではない。国会運営の要である党国対委員長を歴代最長期間務めるなど調整能力が高く、野党とも強い信頼関係を築いている。05年の郵政国会で造反して自民党を離党したが、復党後には重要ポストを歴任して、派閥の領袖(りょうしゅう)になる「政治力」も持っている。
困ったときに多くの政治家から頼られる求心力のある森山氏は、自民党内で「隠れた大人物」といえる存在である。「ポスト岸田」に向けた熱が不足するなか、森山氏のようなキーマンの動きも「政局の鍵」を握るのではないか。
●岸田内閣崩壊の好機に野党共闘を拒否する連合・芳野友子会長 12/27
ジリジリと下がり続ける岸田文雄首相(66)の内閣支持率は10%台(時事通信が実施した世論調査)に突入。いよいよ岸田政権に黄色信号が灯っているが、ある人物のひと言が波紋を呼んでいる。
連合の芳野友子会長(58)が、12月21日の記者会見で「共産と一緒に立民が何か行動を起こすことに対して懸念を示している」と述べ、立憲民主党に対し、野党統一候補擁立を目指す「市民連合」が仲介する共産党との会合には、今後参加しないように求めた。
「48の産業別組織と約700万人の組合員をたばねる中央組織『日本労働組合総連合会』(連合)の8代目会長に芳野さんがなったのは2021年10月6日。就任会見で、2021年10月30日に投票日を控えた衆議院選挙での立憲民主党と共産党との共闘を露骨に批判。衆院選では自民党が圧勝し、自民党の選対委員長に『連合会長が共産党(との共闘)はダメよと、そんな話をしていたこともあって勝たせていただいた』と言われる始末。その後も、芳野会長は共産党への嫌悪を隠すことはありません。彼女の野党共闘を拒否することでもっとも喜んでいるのは、政権をひっくり返されることを恐れる岸田首相はじめ自民党でしょう」
労働運動アナリストの早川行雄さんが解説する。
「1989年に旧社会党系の日本労働組合総評議会(総評)と、民社党の全日本労働総同盟(同盟)など統一してできた連合は、結成以来『反自民・非共産』を組織原則して掲げています。共産党とは戦後の労働運動の歴史のなかで対立してきたこともあり、相いれない部分が残っていることは確か。しかし、その前提として反自民があり、連合が目指すのは政権交代でした。ところが、芳野会長は与党とは是々非々でやると明言。これでは政権交代という目標を棚上げして、『反共産・非自民』へと変更したと思われてもしかたありません」
なぜ、芳野会長の共産党をそこまで毛嫌いするのだろうか?
「芳野会長は、高校卒業後、ミシン大手『JUKI』に就職。1年後に組合活動に参加しました。そこで共産党系の組合に対する批判的な指導をずっと受けていたことが、反共産の根幹だと思います。すぐに労働組合の専従になり先輩たちから指導を受けたのでしょう。その先輩たちというのが富士政治大学で“反共教育”を受けてきた人たち。労働活動を通じて芳野会長の“共産党アレルギー”が生まれ、徐々に膨らんでいったのです」
富士政治大学校は、西村栄一元民社党委員長によって1969年に設立された富士社会教育センター内に、労働組合向けの研修機関として設置。合宿研修では職場で共産党の活動家と渡り合うための論争技術の習得や精神の鍛練に重きが置かれたという。
「芳野会長は、富士政治大学には行っていないと言っていますが、毎日新聞(2021年12月26日)のインタビューで〈組合役員になると共産党系の組合と闘った過去を学んだり、相手から議論を仕掛けられたらどう切り返すかというシミュレーションをしたりした〉と答えています。また富士社会教育センターから講師を招いて指導を受けたことがあることを話しており、富士政治大学校の影響を強く受けていたと考えられます。ちなみに、富士政治大学校を運営する富士社会教育センターの理事には『日本会議』の田久保忠衛氏会長(杏林大学名誉教授)、『新しい歴史教科書をつくる会』の高池勝彦会長が名を連ねていて、かなり労働右派の集まりになっているという声も聞こえます」
一方で、芳野会長は「反自民」という連合の組織原則から踏み外しているような自民党への接近ぶりが目立つ。2022年2月には、小渕優子組織運動本部長との会食を皮切りに、麻生太郎副総裁と酌み交わすなど自民党との間合いをつめてきた芳野会長。2023年10月5日には、都内で開かれた連合の定期大会に、岸田首相が自民党政権下の首相として16年ぶりに出席するなど政権与党との蜜月ぶりが波紋を呼んでいる。
「2022年4月に自民党の『人生100年時代戦略本部』で講演したことで、連合内では『軽率過ぎる』『自民党に都合良く使われている』という意見も出ましたが、芳野会長は意に介することはありませんでした。2023年3月に政府、労組、経済界の代表による『政労使会議』を行った際も『トップが話し合うことは重要だ』と話していますが、政権にすり寄っていく労働右派と観られても仕方がありません」
芳野会長をここまで自民党に寄り添うのには、若いころの成功体験があるのかもしれない。
1988年にJUKIの中央執行委員として、会社では結婚や妊娠・出産退職が当たり前だったが、育児・介護休職制度を導入しようと運動を始めたときの経験をこのように語っている。
〈ただ男性組合役員からは“女性の幸せは良き妻、良き母になること”と言われてしまって。1年目は要求項目に入りませんでした。(中略)次の年に要求項目にいれてもらったんです。すると経営者から即OKが出ました。組合の壁より、会社の壁のほうが低かった(笑)。〉(週刊朝日 2022年3月25日号)
「芳野会長は『自民党を支援するつもりはない』と会見で語っていますが、連合関係者のなかには“誰が信じるか”という声も少なくありません。協調していけばうまくいくという錯覚に陥っているかもしれませんが、このまま芳野会長の暴走を許してしまうと連合がバラバラになってしまう、と思っている関係者も多くいます」
2023年10月には、再任され、2期目に入った芳野会長。彼女の一挙手一投足がこれからも気になる。
●「岸田政権はタカなのか、ハトなのか、あるいは“ヌエ”なのか」 12/27
政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。
日銀の植田和男総裁の「チャレンジング」という発言があったように経済面では、異次元緩和からの脱却、つまりアベノミクスからの脱却が始まりつつあるようです。一方で政治の面でも、安倍派(清和政策研究会)が事実上解体しかねない局面を迎えています。安倍なき安倍政治を引き継いだ岸田文雄首相が、その権力基盤の柱の一つである安倍派の排除に動こうとしていますが、それはブーメランとなって岸田政権を直撃しかねません。
ここで注目したいのは、権力過程の変化が、政策過程の変化へと繋がるのかどうかです。つまり、基本的政策や国の進むべき路線という点で安倍政治のレガシーに変化が訪れるのか。具体的に言えば、防衛費の大幅な増強による軍事大国化や専守防衛の放棄といった、戦後日本の安保政策や平和外交の基本原則を否定するような安倍政治のレガシーは変わるのか。派閥抗争を劇場型政治ドラマとして観るだけでなく、政策過程の変化が起きるのかどうか、その点に目を凝らすべきです。
自民党の派閥抗争は、権力過程における党内闘争にとどまらず、国の方針、その進むべき路線をめぐる闘争だったはずです。よく「ダーティーなハト」か「クリーンなタカ」かということが話題になりました。つまり、一方では権力過程ではカネの力にあかせて国会議員の頭カズを増やし、政策過程では比較的、戦後の専守防衛や防衛費のGDP比1%枠、全方位的な平和外交を進めようとする旧田中派や旧経世会のような派閥があります。他方では、利権やカネには相対的に距離を置きつつ、政策過程では「戦後レジーム」に挑戦するようなスタンスのタカ派の派閥があります。安倍派がその代表のように見られてきましたが、長年にわたる裏金疑惑で安倍派は「ダーティーなタカ」であることが明らかになりました。
岸田政権は、一体、タカなのか、ハトなのか。あるいは「ヌエ(鵺)」なのか。権力過程と政策過程の両面から今回の疑惑の帰趨を見定めていく必要がありそうです。自民党内に権力闘争だけでなく、それをキッカケに路線闘争が起きることになるのか、その点を見失わないようにすべきです。
●SNSが加速させた「岸田離れ」 12/27
岸田内閣の支持率低迷が止まらない。読売新聞社の世論調査では、11月と12月に連続して、2012年12月の自民党の政権復帰以降初の2割台を記録し、政権基盤が揺らいでいる。支持率の落ち込みの背後に何があるのか。利用するメディアに注目して世論調査の結果を分析すると、X(旧ツイッター)などのSNSをよく利用する人々の間で先行した「岸田離れ」が、全体の支持率低下を招く要因になった可能性が浮かび上がる。
利用メディア1位が「SNS」層の内閣支持14%
ふだん、政治の動きに関する情報を得るときに利用しているメディアは何か――。読売新聞と早稲田大学が毎年共同で行っている郵送方式の全国世論調査では、8項目から選ぶ形で、多く利用する順に5位まで尋ねている。
21〜23年の調査で「ツイッターなどのソーシャルメディア」を1位に挙げた人は全体の1割に満たないものの、5位以内に挙げた人は3〜4割程度いた。インターネットが個人レベルで利用されるきっかけになった1995年の「ウィンドウズ95」の発売以降、SNSが当たり前の時代を生きてきた18〜39歳に限ると、5位以内に挙げた人の割合は23年調査で78%。21年64%→22年70%へと拡大しており、政治情報の入り口であり、考える土台ともなるメディアの中で、SNSの存在感は年々大きくなっている。
岸田内閣が発足して衆院選で自民党が勝利した直後の21年11〜12月調査では、「ツイッターなどのソーシャルメディア」を1位に挙げた「SNS1位層」(人数は全体の5%)の内閣支持率は57%、5位以内に挙げた「SNS1〜5位層」(全体の33%)でも58%にのぼり、全体の58%と同水準だった。それぞれが2〜3割を占める主流派の「新聞」「NHKテレビ」「民放テレビ」が1位の層と同様、岸田政権の支持率は当初は堅調だった。
しかし、参院選で自民党が大勝した直後の22年7〜8月調査で状況は一変する。全体の内閣支持率が61%に上昇したのに対し、SNS1位層(全体の6%)では、57%あった支持率は37%まで急落した。他のメディアを1位に挙げた人の62%とは対照的な結果になった。ただ、SNS1〜5位層(全体の38%)の支持率は56%で、前年からほぼ横ばいを保っていた。
その後、マイナンバーカードに関するトラブルや首相の長男をめぐる問題が発覚した後の23年7〜8月の調査では、全体の内閣支持率もSNS1位層の後を追うように37%まで下落する。SNS1位層(全体の8%)の支持率は14%まで低下し、他のメディアを1位に挙げた人の支持率の3分の1ほどにとどまった。SNS1〜5位層(全体の37%)でも支持率は27%へと落ち込んだ。5位以内にSNSを挙げなかった人の支持率が42%だったことを踏まえると、SNSを多く利用する層が全体の内閣支持率を5ポイント押し下げた計算になる。
ファンを作れない岸田首相
SNSは岸田政権の支持率低迷にどう影響したのだろうか。
武蔵野大の山崎 新 講師(早稲田大 招聘 研究員、政治心理学)は「偏った情報をもつ少数の熱心なユーザーが意見をぶつけ合うネット空間では、政治家にとっても、熱烈なファンがいるかどうかが重要になる。SNS利用層にファンもアンチも多かった安倍元首相とは対照的に、政策のターゲットを明確に打ち出せなかった岸田首相はファンを作れないまま、アンチだけが増えたのではないか」と分析する。
その背景として、山崎さんは、自分の考えに合った情報を選びとり、偏った考えが増幅されるといったSNSの特性が影響した可能性を指摘している。
SNS利用層の「岸田離れ」がみられた22年調査の期間中は、7月に安倍元首相が銃撃されて死亡し、国葬実施の是非や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への対応を巡り、SNSでも論争が巻き起こっていた。論争の中心は安倍元首相のファンとアンチだった可能性がある。
安倍元首相とは対照的なSNS好感度
この論争の最中、亡くなった安倍元首相に対する好感度を温度で示す感情温度(0〜100度)は好転する一方、岸田首相は伸び悩んだ。21年調査で全体の平均が41.0度だった安倍元首相は22年調査では57.1度へと改善。もともと好感度が高かったSNS1位層は、21年52.1度→22年62.3度とさらに上昇した。
一方の岸田首相は、全体平均こそ、21年51.8度→22年52.8度とわずかに好転したものの、SNS1位層の好感度は21年51.8度→22年40.9度と急激に悪化した。安倍元首相の好転には、亡くなったことへの同情があるとしても、両氏の対照的な好感度の変化の背景には、SNSの影響が透けて見える。
SNS利用層の岸田首相に対する好感度の低さは、別の調査でも確認できる。スマートニュースメディア研究所と世論調査の専門家らでつくる研究会が、今年3月に郵送方式で実施した「メディア価値観全国調査」によると、小泉元首相以降9人の首相に対する好感度を10点満点で尋ねた結果、岸田首相は9人中6位の平均4.2点だった。
分析を担当した東京大の前田幸男教授(世論研究)によると、新聞やテレビといった伝統的マスメディアを主に利用する層では好感度が4.5点と比較的高い一方、SNS中心層は3.6点と低く、安倍元首相や菅前首相とは逆の傾向を示した。
「増税メガネ」の背景
岸田首相がSNSをにぎわしたといえば、「増税メガネ」のトレンド入りが記憶に新しい。防衛力強化や少子化対策の財源確保のため増税が検討され始めたことに、SNS利用層は強く反応した。
23年調査で、「社会保障などの行政サービスが多少手薄になっても、国民の税金負担は小さい方がよい」という意見について、SNS1位層の「どちらかといえば」を含めた賛成は72%に上った。全体の賛成57%を大きく上回っており、SNS利用層の「税負担への拒否感」がとりわけ強いことがわかる。
岸田首相の「増税イメージ」は安倍、菅両政権が積み残した難題に道筋を付けようとしていることの反動でもある。ただし、短文で刺激的な内容の投稿が注目を集めやすいSNSの世界では、具体的な政策論争より、「増税メガネ」という単語ばかりが拡散し、「岸田首相=増税」というイメージを強調する結果となった。
SNS利用層の心をつかんでいる政党は?
では、SNS利用層の心をつかんでいるのは、どの政党なのか。23年調査で「次の衆院選後に政権を担ってほしい政党」を複数回答で尋ねた結果、全体では自民党51%、日本維新の会34%、立憲民主党19%などの順だったのに対し、SNS1位層では自民27%、維新22%、立民、れいわ新選組が各18%、国民民主党14%、参政党10%の順だった。SNS1位層では他の層に比べ、自民、維新への期待度が低い一方、れいわ、国民民主、参政の各党に対する評価が高いことがわかる。
利用メディア1位が「ユーチューブなどの動画サイト」の人にも似た傾向がみられたが、1位が「ヤフーニュースなどのニュースサイト」の人にはこの傾向はみられない。れいわ、国民民主、参政の各党は、SNSや動画サイトの利用層を中心に熱心なファンをつくることで、現実の党勢を上回る存在感を示すことに成功している可能性がある。
SNS上の意見が社会の多数派とは限らない
23年調査で、岸田内閣のこれまでの仕事ぶりへの評価を0(最も悪い)〜10(最も良い)の11段階で尋ねた結果、SNS1位層では、最低評価の「0点」を選んだ人が最多の27%、「3点」18%、「5点」16%がこれに続いた。全体の平均は4.1点、多くのメディアの利用層では「5点」の回答が最多だったのとは対照的な結果になった。
「岸田首相にどのくらい首相を続けてほしいと思うか」という質問に対しては、全体が「自民党総裁の任期が切れる24年9月まで」が最多の53%で、「すぐに交代してほしい」は29%。これに対し、SNS1位層では「すぐに交代してほしい」が61%に達した。
山崎さんは、「SNSは匿名で政治的な内容でも自由に発言しやすい反面、自分の『正しさ』に基づき、極端な意見に偏りがちになる」と指摘。「SNSで岸田首相はもはや『坊主憎けりゃ 袈裟 まで憎い』状況で、何をやってもたたかれ、擁護してくれるファンもいない。投稿せずに議論を見ているだけのユーザーにとっても、『岸田内閣を支持する』とは言いづらい雰囲気になっている」と考察する。
SNSで醸成された政権や政党の評価が、社会全体にどれほどの影響を与えるかは定かでない。山崎さんは「SNSでは、強い動機をもった少数の人が大量に投稿する。SNS上で影響力があるからといって、それが社会の多数派の意見とは限らないことに気をつける必要がある。特にネットに不慣れな中高年ほど注意が必要だ」と指摘。その上で「政治家や政党には、わかりやすい情報発信を心がけてSNSでもファンを増やすことが求められるが、政党の評価の土台となるのはあくまで着実な政策上の成果だ」と話す。
この年末には、自民党派閥の政治資金パーティーを巡る政治資金規正法違反事件が浮上し、岸田内閣は危機的な状況に陥っている。SNS上の評価が芳しくない岸田首相だが、その評価が社会全体に浸透して固定化する前に、逆転の一手を打てるのか。残された時間は少ない。 
●「安倍派叩き」の行方 ポスト岸田は「緊縮財政の権化」か 12/27
「財務省は増税で予算編成などの権限拡大を狙っている」とラジオ番組で話すと、決まってX(旧ツイッター)などで財務省陰謀論だ≠ニいう反応がある。つまり財務省を不当に犯人扱いしていると言いたいらしい。だが政府予算の編成を担っている省庁が、緊縮財政のスタンスなのは、古今東西よくあることだ。
おそらくこの種の批判をする人たちは、政治家の方が官僚よりも「巨悪」だと思い込みたいのだろう。その政治家の「巨悪」といえば、最近の自民党の政治資金パーティー券問題だ。噂の範囲では、検察は国会議員の脱税を視野に入れているという。だが現段階では、政治資金規正法違反の問題でしかない。収支報告書に「裏金」だとか「キックバック(還流)」だとかいわれる金額が不記載だった疑いである。
特に「安倍派」と「二階派」がマスコミの攻撃の対象である。反安倍≠フ識者たちやマスコミ関係者は「安倍派」と表記することで、安倍晋三元首相を死してなお批判し、成果をおとしめることで一致団結しているようだ。だが不記載は、事実上「細田派」だったときに起きた問題だといわれている。
現在の安倍派はアベノミクスを推進する母体だった。今回、閣僚や党の要職を追放された幹部の多くは、減税など積極的な財政政策を主張し、岸田文雄政権にも大きな政治的影響を及ぼした。その意味では、今後の岸田政権の経済政策がより財務省的な増税路線に転換する可能性が大きくなる。例えば「異次元の少子化対策」を理由にした増税への方針転換や、先送りされている防衛増税の時期が早まることも考えられる。
パーティー券問題は財務省の差し金だったとする説があるが、確たる証拠はない。ただ財務省はいままでも時の政権を使い捨てしてきた歴史がある。消費税増税さえできればその政権はお役御免なのだ。最近では民主党の野田佳彦政権のケースがある。
今回のパーティー券問題もいまのところ、「安倍派叩き」という形で、財務省や緊縮派にとって好都合な展開になっている。岸田政権の力は弱まったが、野党にも支持が集まらないので、自民党の中で次の首相を決めればいいだけだ。「ポスト岸田」には、岸田首相以上の緊縮派が並ぶ。世論調査のポスト岸田は、単に人気順なので参考にならない。石破茂、小泉進次郎、河野太郎の各氏がこの順番でよく並ぶので「五十音順」かもしれない。
現実的に要注意なのは、麻生派の鈴木俊一財務相である。最近、岸田首相は、麻生太郎自民党副総裁に依存を強めているという報道もある。もし鈴木氏がポスト岸田になると、単なる「緊縮財政の権化」のような政権が誕生しかねない。
●池田議員の事務所捜索、自民幹部「今後も続々と行われる可能性」 12/27
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部が安倍派の池田佳隆衆院議員の国会議員会館事務所を捜索したことを受け、自民内では今後の捜査の拡大に危機感が広がった。
渡海政調会長は27日、自民議員の事務所が強制捜査の対象となったことについて、記者団に「深刻に考えなければいけない。国民の不信解消に全力で努力する」と険しい表情で語った。
自民の国会議員や秘書らは、松野博一・前官房長官や高木毅・前国会対策委員長ら「5人衆」と呼ばれる安倍派幹部以外の事務所が捜索を受けたことで、戦々恐々としている。
池田氏は、派閥からの還流資金を1000万円以上裏金化していた疑いが持たれており、同様の議員は派内に10人以上に上るとされる。自民幹部は「今後も続々と強制捜査が行われる可能性がある。実際にそうなれば党の信頼失墜は底なしになってしまう」と懸念を示した。
野党は追及を一層強める姿勢を鮮明にした。
立憲民主党の泉代表は27日、国会内で記者団に「議員会館の事務所に捜査が入るのは異常事態だ。裏金文化の中で基盤を作った(自民党)政権は正当性がない」と強調した。
日本維新の会の藤田幹事長は取材に「自民党の信頼は地に落ちている。派閥政治を一掃し、徹底した政治刷新を進めるべきだ」と述べた。共産党の小池書記局長は記者団に「岸田首相は(自民)所属議員が捜索されたことについて、直ちに説明すべきだ」と批判した。
 12/28

 

●野党共闘に水差す芳野連合会長に立憲などから批判の声 12/28
自民党が派閥パーティー裏金問題で大揺れのなか、野党にとっては政権奪取、あるいは党勢拡大へのまたとない機会であるが、その支持勢力からの水を差しかねない発言が問題となっている。
共産党に警戒感をもつ連合会長
派閥パーティー券裏金問題で東京地検特捜部の捜査が本格化し、岸田政権・自民党ともに支持率が低下するなか、次期衆議院選挙が来年春頃には行われるとみられる。
与野党ともに臨戦態勢であり、推薦議員を有する職能団体や労働組合なども選挙戦に向けての取り組みが始まっている。
このタイミングで野党関係者に波紋を呼んでいるのが、21日に「連合」(日本労働組合総連合会)の芳野友子会長が記者会見で、立憲民主党に対し、「市民連合」(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)が仲介する共産党との会合に今後参加しないよう求めたことである。
芳野会長の発言は「共産と一緒に立民が何か行動を起こすことに対して懸念を示している」というもの。
連合は、1989年に旧社会党系の総評(日本労働組合総評議会)と、民社党系の同盟(全日本労働総同盟)などが合流して発足した。公務労働と民間の48の産業別労働組合から構成され、全国47都道府県に支部組織がある。
反共の旧同盟系労組
日本の労働運動は、共産党支持と反共産党の二大潮流があるが、共産党系は全労連というナショナルセンターをもつ。連合は、反共主義で労使協調路線を歩んできた。
とくに旧同盟(民社)系は、防衛産業や電力会社などの労働組合を主力とする。「国防は最大の福祉」との理念が謳われ、憲法改正に賛成し、複数の労組役員経験者が保守系団体「日本会議」に参加するなど、現在の労働運動のなかでも右寄り路線である。旧同盟系のUAゼンセンや電力総連は、国民民主党(以下、国民)を支持している。
組合員の研修機関である富士社会教育センターの元理事長で、ゼンセン同盟(現・UAゼンセン)の元会長・宇佐美忠信氏は日本会議の役員も務めていたが、日頃から「足は職場に、胸には祖国を、眼は世界へ」と語っていたという。
芳野会長は高校卒業後、工業用ミシン製造大手のJUKI(株)に就職し、組合活動に参加しているが、その組合は「JAM」(ものづくり産業労働組合)で旧同盟系だ。中央本部も旧同盟系関係団体が入居する友愛会館にある。2019年までは国民民主党を支持していたが、20年から立憲民主党へ支持を移行した。
芳野会長が労働運動を学んだ流れが、反共主義の強い旧同盟系であることを考えても、宇佐美氏ら組合運動の先輩たちから「共産党は労働戦線の分裂につながる存在」と教わってきたのは間違いないだろう。
立憲議員から反発の声
「市民連合」は共産党系ではないが、共産党関係者や旧社会党系など左派の連合体の運動だ。芳野会長からしたら、左派色の強い団体と協力するなどもってのほかということだろうが、小選挙区制のなかで地域に基盤を持つ自民党に対抗していくには、野党がばらばらでは困難である。
芳野会長の発言に、立憲の複数の元職・現職議員からSNS上で反発の声が挙がった。九州を地盤とするものを紹介したい。鹿児島が地盤の川内博史元議員はX(旧・Twitter)に次のように投稿した。
「この発言は中央執行委員会の議を経て発言されているのだろうか?会合にも出るなとは穏当ではない」と芳野会長発言を批判。「裏金問題を踏まえ、現状のでたらめな政治を変えるために、野党がどうあるべきなのか、連合としても改めてしっかり議論をすべきなのではないか?」と問題提起した。
原口一博議員(佐賀1区)は上記の川内氏のツイートをシェアし、「労働組合が政党に対してここまで細かく踏み込んだことを言ったことがあるだろうか?」と疑問を呈した。そのうえで 、「山岸連合会長の時代からもう1つの政権政党を築き、労働者の権利が保障された、明るく温かく、活力溢れる社会をつくりたいと努力してきた」と投稿した。さらに、YouTubeなどで配信している動画においても、「野党分断に乗せられてはいけない」と呼び掛けた。
福岡での選挙協力に暗雲
福岡の立憲所属の議員や労組からは、表立って芳野会長の批判は出されていないが、それには理由がある。
立憲と国民の福岡県連は11月23日、連合福岡の仲介で次の衆議院選挙における県内11選挙区のうちの7選挙区について、候補者をすみ分けるという内容の合意書を締結している。そのため、芳野会長発言への是非の表明は、ようやくまとまった選挙区調整に悪影響をおよぼしかねないのだ。
事実、12月23日に玉木雄一郎国民党代表は、福岡市内において、立憲と共産党との協力関係について、「立憲共産党のような状況になっているのは、我々も連合も心配している」と語った。保守寄りの玉木氏は、芳野会長の発言を持ち上げることで、共産党を含めた選挙協力に釘を刺したといえる。そして、福岡における選挙協力は、あくまで「限定的なもの」との立場を崩していない。
立憲と国民は、福岡県議会において「民主県政県議団」として会派を同じくする。服部誠太郎知事を支える「県政与党」の一員だが、元県議で、現在も立憲県連顧問の吉村敏男氏の影響力を背景にした自民党県議団との距離感の近さに、立憲の県選出国会議員や地方議員から危惧する声も聞こえてくる。
かねてより芳野会長について、自民党への接近を警戒する声が立憲の議員や労組関係者にある。小渕優子組織運動本部長や麻生太郎副総裁と会食を行うなどして、連合内からも疑念の声が挙がった。10月5日には、連合の定期大会に岸田首相が自民党政権下の首相として16年ぶりに出席した。
自民党としては連合を取り込み、共産党などの左派と分断することで野党共闘を崩し、連立を組む公明党以外の切り札を持つ思惑がある。
連合加盟労組のなかにも「政府与党とのパイプは重要」と理解を示す声があるが、足並みの乱れは来る衆院選で野党に不利に働きかねない。今回の芳野連合会長の発言が、どのように作用していくか注目したい。
●92年外務省文書が公開、親中暴走の「大罪」 陛下のご訪中を後押し報道 2/28
日中関係をめぐり、31年を経て公開された「外交文書」で、国益を無視したような外務省の暴走≠ェ、現在にも禍根を残していることが明らかになった。1992年10月の天皇、皇后両陛下(現上皇ご夫妻)のご訪中実現へ外務省は水面下で前のめりな工作を行い、「天安門事件」で孤立した中国の国際社会への復帰≠ヨの足掛かりとなった。だが、期待された民主化は実現せず、覇権主義を強めて軍事力を巨大化し、沖縄県・尖閣諸島周辺海域への侵入など「反日暴挙」を繰り返している。当時の宮沢喜一政権と同じ宏池会出身の岸田文雄政権は、対中融和姿勢が招いた負の歴史を繰り返すのか。
「意図的に天皇訪中をぶち壊そうとしているとしか考えられない」「プレス・キャンペーンを続けるつもりなら、助けることはできない」
機密指定の解除を受け、20日に公開された92年の外交文書(計17冊、6518ページ)には、ご訪中に前のめりな外務省側がメディアに激しく迫るこんな一幕も記されている。
89年6月、中国政権が軍を動員し、民主化運動を武力弾圧する天安門事件が発生した。G7(先進7カ国)は翌月、人権弾圧を非難し、西側諸国は経済制裁を断行した。
窮地の中国に手を差し伸べたのは日本だ。90年7月、当時の海部俊樹首相が対中円借款の凍結解除を表明した。91年8月には西側諸国の首脳として事件後初めて、海部氏が訪中する。92年4月には、江沢民総書記が来日した。
昨年、機密解除された外交文書で、訪中した海部氏に中国側が陛下のご訪中を強く働きかけていたことが判明している。今回公開された外交文書では、日本側の奔走ぶりが見て取れる。
外務省幹部は首相経験者らを訪ねるなど、マスコミがご訪中を後押しする報道を行うよう働きかけ≠求めていた。編集幹部に面会し、「実現の方向で風を起こして貰(もら)えまいかと要請」もしていた。
攻撃的≠ネ働きかけもあったようだ。
共同通信社社長との面会では、外務省幹部が同社北京支局の記事を「天皇訪中をぶち壊そうとしているとしか考えられない」と糾弾。「プレス・キャンペーンを続けるつもりなら、中国側は支局閉鎖とか、特派員の国外退去とかの措置に出ると思う。その際、大使館としては助けることはできない」と脅している。
ご訪中は「天皇陛下の政治利用」だと反対論も根強かった。92年2月には中国が沖縄県・尖閣諸島を自国領土と明記する「領海法」を制定、自民党保守派などが反発を強めた。
外務省幹部は産経新聞社にも説得に訪れたが、編集幹部は「天安門事件で中国は国際的に孤立した。訪中されれば中国にとっては大きな救いの手となる。陛下のご訪問を契機に日本からさらに多くの経済協力を引き出そうとしている」などと反論していた。
一連の経緯をどう見るか。
国際政治に詳しい福井県立大学の島田洋一名誉教授は「ご訪中をめぐる外務省の暴走≠ヘ長年指摘されており、文書と合致する。国益を度外視して彼らが考える外交的成果を追求する姿勢は一貫しており、想像通りだ。報道に対する圧力は『言論の自由』の侵害にほかならない。政界工作も含め中国共産党の別動隊≠サのものだ」と指弾する。
80年代の中国民主化運動に深く関わった評論家、石平氏も怒りを爆発させる。
「民主化に関わった1人として激しい怒りと悲しみを禁じ得ない。国民の税金で養われる外交官が報道に圧力をかけ、政治家を必死に工作した。中国共産党幹部も及ばないほど中国の国益に血道を上げたのは理解不能だ。日本政府は、民衆を虐殺した中国共産党政権に免罪符≠与えた。外務省は、歴史に刻まれる『大罪』の片棒を担いだ」
宮沢政権下で、両陛下ご訪中は実現する。天皇陛下が江氏と談笑される姿は世界に報じられ、各国の対中制裁解除につながったともされる。
前出の島田氏は「対中融和で『経済発展による民主化』への期待もあったが、不正解≠セったことは明らかだ。宮沢氏と同じ宏池会出身の岸田首相はこの教訓を胸に刻むべきだ。中国は『力』『行動』を最重視する現実主義に徹している。国益に基づく決然とした姿勢が必要だ。安倍晋三政権は『自由で開かれたインド太平洋』の大戦略を示し、同盟国の米国をはじめインド、オーストラリアと『QUAD(クアッド)』の枠組みを作った。普遍的価値観で一致する自由主義国と連携し、中国と対峙(たいじ)せねばならない」と強調した。
●立民・岡田克也幹事長「次期衆院選こそ勝負」 政権交代目標を前倒し 12/28
立憲民主党の岡田克也幹事長は28日、党の仕事納めでのあいさつで、次々回衆院選で政権交代を果たすとの従来の目標を「捨てている」とした上で「次の選挙こそ勝負だ」と表明した。自民党派閥パーティー収入不記載事件を念頭に「今こそしっかりと前に出て政権を目指す。それが来年だ」と強調した。
泉健太代表も「来年は総選挙の可能性も十分にある。重要な一年となる」と指摘した。
●東電と原発 再稼働を急がせるな 12/28
原子力規制委員会が、東京電力柏崎刈羽原発への事実上の運転禁止命令を解除した。「自律的な改善が見込める状態」と判断したためという。だが、東電の「安全文化」には疑いがあるうえ、規制委も解除はあくまで出発点と説明している。再稼働を急がせる理由にしてはならない。
規制委は昨日、テロ対策での相次ぐ不備を受けて柏崎刈羽に出していた核燃料の移動禁止命令を解いた。東電が原発を動かす適格性も「ないとする理由はない」とした。
東電に安全最優先が本当に根付いたといえるのか。最近も不祥事が繰り返されている実態を見れば、規制委の判断には疑問が残る。加えて、命令解除は最低ラインの対策を認めたにすぎず、再稼働が「ゼロリスク」であることを意味していない。
規制委の山中伸介委員長も今回の決定で東電に「お墨付きを与えたわけではない」と繰り返しており、継続的改善に緩みがないか、厳しくチェックを続けるべきだ。
手続き面では、今後は地元同意が焦点になる。自治体には安全性を確認する手段が限られ、地域経済には原発に依存する側面もある。その中で、安全を最優先した判断を下して合意を得るには、住民の声に耳を傾けた丁寧な検討と議論の過程が必要だ。
一方で、岸田政権は既設原発の最大限活用にかじを切り、林芳正官房長官は早くも「再稼働に向けて必要性や意義を丁寧に説明したい」と発言している。国策で原発を推進した揚げ句、世界最悪レベルの事故を招いた以上、原発の再稼働について国が責任を負うのは当然だ。
だが、この間の政策転換は、山積する難題を解決する道筋も示さず、国民的熟議も欠いたまま短期間に強行された。そうした「前のめり」の姿勢で、地元に同意への圧力をかけることは許されない。ましてや東電の収支改善のために日程のレールを引くようなことは認められない。
政府がなすべきは、地元の不安に真摯に向き合うことだ。避難に使う想定の国道では、昨年の豪雪で38時間の立ち往生もあった。原発事故との複合災害に十分対応できるのか。ミサイル攻撃のリスクなども説明が求められる。
柏崎刈羽の電力は、地元では消費されず、大半が首都圏に送られる。福島第一原発と同様の構図だ。原発のリスクの受忍を地元住民にだけ背負わせたまま、「国策」の重圧下で判断を強いる理不尽を繰り返してはならない。国民全体の判断が問われていることを再確認すべきだ。
●「戦う」気概失い「眠り続けた日本」と微かな希望 拉致被害者は帰国せず 12/28
新型コロナが5類に移行した今年、街に、観光地に、賑わいが戻った。久しく目にすることのなかった外国人観光客も、今や津々浦々にあふれている。
だからといって、「めでたし、めでたし」とはならなかった。外国人旅行者は戻っても拉致被害者は今年も誰一人帰国していない。
昨年末、本欄に私は「必要な時に戦うことを忘れたら、国は滅びる。日本はいつまで眠り続けるのか。亡国の前に『戦』うことの必要性に気付くことを願うばかりだ」と記した。しかし、今年も日本は眠り続けた。
国内的には、4月15日、和歌山市の雑賀崎漁港での岸田文雄首相への鉄パイプ製爆弾による襲撃、国外では、10月7日、イスラム原理主義組織ハマスによるイスラエル攻撃で始まった軍事衝突など、眠りから覚めるきっかけがいくつもあったにも関わらず、だ。
6月には、LGBT理解増進法が異様なスピードで制定された。二度の修正によって、公衆浴場などでの「女性スペース」が守られるなど、当初危惧されていた点が改善されたのはよかったものの、岸田政権は内容の十分な吟味もないまま、なぜ成立を急がせたのか。
また、ラーム・エマニュエル駐日米国大使がデモの先頭に立つなど、露骨な内政干渉をしたことも看過してはなるまい。
そもそも、戦後の日本が戦う気概を失ったのは、GHQ(連合国軍総司令部)による、WGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム=日本人に戦争についての罪悪感を植え付ける洗脳工作)がきっかけであった。対米従属の最たる象徴が憲法であろう。
憲法改正については相変わらず政府の腰が重い。また、改正するからには9条2項を残したままの「自衛隊明記」ではなく、自衛隊による拉致被害者救出が可能になるような改正、「明記」であるべきだと私は思っている。不当に連れ去られた国民は「国家の意志」として戦ってでも助ける。それができて初めて真の意味での自立国と言える。
今年の数少ない嬉しい出来事は、各地に「祭」が復活したことであった。神輿を担ぎ、喜びを爆発させる氏子たちの姿に共同体の持つエネルギーを実感。こうした強い絆で結ばれた共同体の一員が拉致されたら、仲間たちは決して被害者を見捨てはしまい。
「共同体」としての意識を日本国全体に広げ、建国の理念である「八紘為宇(いう)」すなわち、「天の下の一つの家のような社会を築く」令和6(2024)年にしたいと切に願う。
●「政策活動費」公明に見直し論 自民慎重、政治改革の焦点に 12/28
自民党派閥の政治資金規正法違反事件を受け、使途を明らかにする必要のない「政策活動費」の見直し論が公明党内で浮上した。「政治とカネ」の問題に世論の厳しい視線が向けられているためだ。ただ、自民は見直しに慎重で、年明けに本格化する政治改革論議の焦点となりそうだ。
公明党は27日、政治改革本部(本部長・石井啓一幹事長)の役員会を国会内で開催。関係者によると、出席者からは「政策活動費の透明性を高めるべきだ」との声が上がった。
11月公表の政治資金収支報告書によると、自民は2022年、「政策活動費」として約14億2000万円を麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長ら党幹部15人に支出。ただ、具体的な使途は明らかになっていない。
政策活動費が注目を集めているのは、安倍派からパーティー収入の還流を受けた疑いのある池田佳隆衆院議員側が「政策活動費と認識して(報告書に)記載しなかった」と主張したためだ。実際には還流分と政策活動費は無関係とされるが、有識者は「政策活動費が裏金づくりへの抵抗感を議員から奪っている」と指摘する。
公明党は「クリーンな政治」を掲げ、来年1月召集の通常国会を「政治改革国会」と位置付ける。同党は政策活動費を支出しておらず、改革の目玉に政策活動費見直しを据えるべきだとの意見が出ている。
共産党も政策活動費の支出はなく、小池晃書記局長は27日の集会で、政策活動費の廃止を主張。党所属議員個人に寄付する慣行のある他の野党からも「政策活動費の透明性を高めないといけない」(立憲民主党の長妻昭政調会長)との声が上がっている。
これに対し、自民党は政策活動費について「党に代わって党勢拡大や政策立案、調査研究を行うため、党役職者の職責に応じて支出されている。適正に処理されている」(茂木幹事長)として、見直しには慎重だ。通常国会では、与野党の論戦が激しさを増しそうだ。
●朝日が歪める政治資金「不記載」問題 12/28
自民党派閥、とりわけ安倍晋三氏が会長を務めた清和会による政治資金規正法違反疑惑で岸田政権が大揺れだ。支持率はどの社の調査でも最低水準となり、来年の総裁任期満了を待たずに退陣か、との見方が強まる。
今回の事態は政治資金を巡る清和会の脇の甘さ、検察のリークに踊らされるメディアと、その報道に振り回される岸田文雄首相の信念のなさを鮮やかに切り出して見せた。
お金を巡る対応はその国、社会、人々の価値観や成熟度をもろに反映する。12月15日、「言論テレビ」は元東京高検検事の井康行氏、作家の門田隆将氏、政治ジャーナリストの石橋文登氏、『月刊Hanada』編集長の花田紀凱氏をゲストに「政治とカネ」について論じた。
番組冒頭、私が「安倍派の裏金疑惑はどこまで広がるか」と発言すると、井氏が遮った。
「その表現は不正確だと思います。金の流れ自体は違法でも何でもない。金の流れを記載しなかったというところが問題になっているわけです。裏金というのはマスコミが作り上げた言葉であって、事態を正確に表しているとは思いません」
すかさず門田氏が踏みこんだ。
「メディアが裏金という言葉を使うのは安倍派、清和会に対してだけで、他の派閥、岸田派が出たら不記載になる。意図的ですね」
たしかに「朝日新聞」は12月12日、1面トップで「安倍派裏金5億円か」と見出しを打ち、2日後の紙面では「岸田派不記載2000万円超か」と打った。門田氏ならずとも、「安倍派の裏金疑惑」を煽り立てようとの意図を感ずるのは当然だ。
振り返れば12月1日に朝日は「安倍派裏金1億円超か」と1面トップで伝えた。翌2日には「二階派も不記載1億円超か」と報じた。8日には「松野官房長官に1000万円超」、翌9日には「安倍派6幹部裏金か」と報じ、12日には先述の「安倍派裏金5億円か」、14日に「岸田派不記載2000万円超か」という記事が続いている。
朝日の特ダネはどう見ても検察のリークだと思える。安倍派潰しで朝日と検察は共同歩調をとっているのか。検察は朝日に書かせ、世論を形成し起訴までには「安倍派が悪い」という流れを決定づける意図か。
資金管理の杜撰さ
検察の思惑について問うと、井氏が反論した。「検察官は証拠という神に仕える司祭」だと強調し、証拠が全てであり、思惑などないと強く言う。
井氏はロッキード事件で田中角栄首相を追い詰めた伝説の検事、吉永祐介氏の言葉を紹介した。「検察ファッショだと酷く叩かれた帝人事件の轍を踏んではならない。証拠のない捜査を強行してはならない」と吉永氏は常に戒めた、その教えに検察は今も従っているという。
それでも、一連の情報リークは、検察による安倍派狙い撃ちを疑わせる。と同時に、客観的に見れば、安倍派の資金管理の杜撰さには検察の集中捜査を受けても仕方がない面がある。政治資金収支報告書には、各政治団体における全ての収支金額を記載することが義務付けられている。しかし清和会は長年、政治資金パーティーで集めた資金総額も、各議員がノルマ以上のパーティー券を売って、議員側が返してもらっていたその額も記載していなかった。ノルマ以上に売った人には、よく頑張ったと言ってその分を活動費として渡すのは何もおかしなことではない。にも拘わらず記載しなかった。
派閥も議員事務所側も記載義務を怠っていた一方で、清和会の会計責任者だけはノルマ以上の売り上げと、各政治家に戻した分の両方をきちんとリストにしていた。加えて各政治家の資金担当者を派閥事務所に呼び出し、戻したカネの受領書に署名させていた。東京地検の調べを受けたとき、なぜか安倍派の会計責任者はこうした資料一式を提出したという。驚くほど明確な証拠を入手したからには特捜部が捜査するのも当然だ。石橋氏が語った。
「政治資金規正法は一言で言えばザル法です。政治家が自分の名前で、組織活動費或いは政策活動費の名目で3000万円を党から下ろすとします。その後は一切、領収証不要なのです。小沢一郎氏が自由党の党首で、幹事長が藤井裕久氏だったとき、藤井氏は党から15億円という大金を組織活動費の名目で引き出した。そのカネは一時小沢邸に積み上げられていたなどと報じられたりしました。当時の自民党は徹底的に追及したのですが、藤井氏は覚えていないとか言って逃げ切った。藤井氏も小沢氏も罪には問われていません。彼らはよくも悪くも政治資金規正法を勉強していたのです」
国民の抱く不公平感
石橋氏の指摘どおり、政治資金規正法はザル法だ。ということは法律の内容さえしっかり理解して処理すれば、資金は自由に使えるということだ。こうしたことを知れば知る程、国民の抱く不公平感は強くなる。当然だ。
国民はマイナンバー、インボイスなどによって、所得の実に細かいところまで明らかにされ監視されている。物価も高い。それでも我慢しているのに政治家だけはこんなゆるいルールで好き放題かということになる。その上、そんなゆるいルールさえ守れずにどうするのかという怒りも湧き上がる。
ただ清和会の中でこの問題にいち早く気づいたのが安倍晋三総理だった。安倍氏は2021年11月11日に会長として清和会に戻った。派閥を長く離れていた安倍氏が派閥の資金に関する状況を聞いたのは22年になってからだ。石橋氏が語る。
「総理は政治資金について記載していない額があると知って激怒したといいます。22年2月、こんな馬鹿なことをしてはダメだと会計責任者を叱責、早速改めるよう指示した。その後、派閥の事務総長、西村康稔氏に政治資金の取り扱いを適法に行うよう指示を出したが、安倍さんは夏の選挙の応援演説の最中、7月8日に凶弾に斃れ、西村氏は翌月、事務総長を辞して高木毅氏と交代したのです」
政治資金不記載問題は安倍氏が引き起こした問題ではない。また清和会だけの問題でもない。にも拘わらず、岸田首相は朝日の報道に振り回されて安倍派切りに走った。そんな表面的な対処ではなく、政治資金をどのように扱うのか、対策を国民に示すことが必要だろう。政治資金の使途にはインテリジェンスに関するものなど含めて公開できないものも少なくない。かといって全て秘密でよいはずもない。井氏は一定の枠をはめて国会の秘密会で報告させ、参加者には守秘義務を課すなどの手があると語る。
検察の捜査の行方はまだ分からないが、政治資金を国益のために使える国になれるか、そこを基点にして揺るがない姿勢を岸田氏が見せられるか。それが最も重要な点だ。
●武器輸出の緩和 12/28
岸田政権は防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」とその運用指針を改定し、輸出の規制を緩和した。
外国企業が開発し、そのライセンス(許可)に基づいて日本企業が製造する武器は、殺傷能力のある完成品もライセンス元の国への輸出を解禁。第1弾として地対空誘導弾パトリオットの米国への提供を決定した。
戦後、憲法で「平和主義」を掲げた日本は武器輸出を自制してきた。2014年に第2次安倍政権が防衛装備移転三原則を決め、その根幹を転換したが、今回の改定はさらに規制を大幅に緩和するものだ。輸出した武器が紛争を助長する恐れはないのか。懸念が強まる。
改定では、ライセンス国から第三国への移転に関しては「戦闘が行われている国」は認めないとしている。ただ、米国はウクライナにパトリオットを供与しており、米国の在庫を日本製で補えば、事実上、ウクライナへの間接供与となる。ウクライナ支援が必要だとしても、「抜け道」のような形で殺傷能力のある武器を輸出する手法には疑問を抱かざるを得ない。
岸田政権は昨年12月に改定した国家安全保障戦略で防衛装備移転三原則の見直しを表明。国家安保戦略は国会の議論を経ずに決定されたが、今回も同様に自民、公明の与党と政府の非公開協議で改定を決めた。
「平和国家」は日本の基礎となる理念だ。1976年に当時の宮沢喜一外相(後の首相)は国会で「わが国は武器の輸出をしてカネを稼ぐほど落ちぶれていない。もう少し高い理想を持った国であり続けるべきだ」と答弁している。その理念を曲げるような決定を非公開協議だけで行うべきではない。国会でしっかりと議論すべきだ。
改定された防衛装備移転三原則は「インド太平洋地域の平和と安定のため、力による一方的な現状変更を抑止」を目的に、同志国の抑止力を高めることが日本の安全保障にも有効だとしている。海洋進出を続ける中国を念頭に置いたものだろう。
輸出に当たっては、相手国に適正な管理を求め、厳格に審査するなどの条件を付けている。だが、相手国の対応をどこまで検証できるのか。第三国へ移転されれば、さらに検証は困難になる。
一方、英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機など国際共同開発の武器を日本から第三国に輸出することに関しては、今回の改定では見送られた。ただ、次期戦闘機の第三国輸出に関しては、来年2月末までに結論を出すとしている。殺傷兵器そのものである戦闘機の輸出に踏み切るのか。慎重な議論を求めたい。
●島サミット、来夏開催へ調整 岸田氏は新興国重視、中国けん制も 12/28
政府は、18の太平洋島しょ国・地域と共同開催する首脳会議「太平洋・島サミット」を2024年夏に東京で開く調整をしている。中国が影響力を強める同地域の安全保障上の重要性は高まっており、日本の関与強化をどこまで示せるかが焦点となる。政府は来春までに上川陽子外相をフィジーに派遣して外相級の会合を開き、島サミットにつなげたい考えだ。
島サミットは日本と太平洋島しょ国の関係強化を目的に1997年から3年ごとに日本国内で開いており、今回で10回目となる。2021年は新型コロナウイルス禍の影響を受け、テレビ会議形式で開催したため、対面開催は6年ぶりとなる。
政府関係者によると、既に島しょ国側に夏季の日程案を複数打診しており、開催場所は島しょ国側が希望する東京となる見通しだ。サミットに先立ち、18の国・地域でつくる「太平洋諸島フォーラム(PIF)」の事務局があるフィジーで外相らによる中間会合も開く方針だ。
島サミットでは、海面上昇など島しょ国が影響を受けやすい気候変動問題や、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出について協議するほか、デジタル化の推進や海洋安全保障強化などの日本の支援策も議題になるとみられる。21年は菅義偉首相(当時)が新型コロナワクチン計300万回分の供与を表明した。
岸田文雄政権は、「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国への関与強化を推進しており、島サミットの重要度は増している。力による現状変更をいとわない中国やロシアと、日米欧などの西側諸国の対立が深まり、国際社会の分断が進む中、グローバルサウスの態度が国際秩序の行方を左右しかねないためだ。
岸田首相は23年12月、東南アジア諸国連合(ASEAN)との特別首脳会議を東京で開催。海洋安全保障やインフラ投資などの協力強化を打ち出した。24年はウズベキスタンやカザフスタンなど中央アジア5カ国との初の首脳会談開催も決まっている。
太平洋島しょ国では近年、貿易や金融をはじめとする経済や、安全保障などさまざまな分野で中国が影響力を強めており、米中対立の「前線」の一つとなっている。中国が22年4月、南太平洋のソロモン諸島と安保協定を締結すると、米国は同年9月、PIFとの第1回首脳会議をワシントンで開催。23年5月にはソロモン諸島に近いパプアニューギニアと防衛協定を結んだ。さらに米国は同年9月の第2回首脳会議に合わせて、クック諸島とニウエの国家承認を発表し、外交関係樹立に踏み切った。
日本も、米豪印や太平洋地域に領土を持つ英仏などと連携し、同地域への関与を強めている。23年9月には、仏特別自治体ニューカレドニアで、陸上自衛隊と仏陸軍が実弾射撃を含む共同訓練を実施。各国を対象に、海洋状況把握などの能力構築支援にも力を入れており、中国をけん制する狙いがある。
●習近平主席が日中首脳会談で見せた傲慢≠ヤり 岸田首相を相手せず 12/28
11月に米カリフォルニア州で行われた日中首脳会談をめぐり、中国側の傲慢な姿勢が明らかになった。共同通信によると、岸田文雄首相は中国で拘束された邦人の早期解放や、沖縄県・尖閣諸島周辺の排他的経済水域(EEZ)に中国が無断設置した大型の海上ブイ撤去などを求めたが、習近平国家主席はまともに相手にしなかったという。
共同通信は27日夜、「独自ダネ」「11月首脳会談、詳細判明」として伝えた。
習氏はまず、邦人拘束について、「中国の法に従って処理する」と主張した。海上ブイについても、「東シナ海をめぐる両国の見解の違いをコントロールすべきだ」と一般論に終始したという。
岸田首相は、北朝鮮の核・ミサイル開発や、日本人拉致問題の解決についても協力を要請したが、習氏は「北朝鮮情勢が悪化した原因は米国」と持論を展開し、米朝間の対話がないことに不満を漏らした。
日中首脳会談は11月16日、米国で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて行われた。日中両政府は習氏の会談での反応や、やりとりの詳細を明示していなかった。共同通信は、複数の日中関係筋の話として伝えた。
中国は、国際原子力機関(IAEA)が「国際基準に合致する」と評価している東京電力福島第1原発の処理水を「核汚染水」と主張し、日本産水産物を禁輸している。首脳会談では、処理水に関する専門家協議や、閣僚級の「日中ハイレベル経済対話」の開催で合意したが、見通しは立っていない。
日中両国は会談後、緊密な意思疎通を重ねる方針で一致し、日本側は「戦略的互恵関係の包括的な推進を再確認した」と発表した。
ただ、日本政府関係者は「中国側は国内の政権批判に神経をとがらせている。『反日カード』は内政の不満をそらし、日本を牽制(けんせい)する有効な手段だ」と分析している。岸田政権は「反日」暴挙を放置するのか。
●買収事件で逮捕の柿沢未途議員。元野党系、岸田政権で法務副大臣に起用 12/28
岸田内閣で法務副大臣を務めた柿沢未途衆院議員が12月28日、公職選挙法違反容疑(買収)で逮捕された。2000年代初頭に政界デビューし、野党系議員として存在感を発揮していたが、自民入りした矢先、「政治とカネ」の問題に直面した。
岸田内閣で副大臣に起用されたのも束の間、公職選挙法違反(買収)容疑をかけられ、逮捕にいたった柿沢未途衆院議員とは、どんな人物なのか。
衆議院ホームページのプロフィールによると、出生地はベルギーのブリュッセルとなっている。麻布中学・高校から東京大学法学部に進んだという。父親は羽田孜内閣で外務大臣を務めた柿沢弘治氏。東京の下町・江東区を地盤としているが、政界の名家で育ったことが見てとれる。
NHK記者から政界へ。飲酒運転で挫折
自身の政界デビューは2001年に行われた東京都議選だった。NHK記者から父親の秘書を経て無所属で立候補し、初当選を果たしたのだ。
最初は1人会派で活動していたが、03年に都議会民主党入りした。05年に再選を果たすと、当時の民主党都連で政調会長に起用された。
キャリアを順調に歩み始めた柿沢議員だが、08年に自らの不始末がきっかけで最初の挫折を経験する。首都高速で自家用車を運転中に単独で衝突事故を起こし、呼気から基準値を超えるアルコールが検出されたことが判明。その責任をとって都議を辞職したのだ。
「みんなの党」で復帰。政界の荒波へ
救いの手を差し伸べたのは、渡辺喜美・元行革相がつくった「みんなの党」だった。民主党が大勝した2009年の衆院選で、「みんな」の公認候補として立候補。当選した民主党候補や次点の自民党候補に遠く及ばなかったが、比例区で復活当選し、都議から衆院議員にジャンプアップする形で復帰を果たした。
その後、政権交代を実現した民主党の混乱と、自公の政権奪還、野党の分裂と弱小化の荒波にもまれながら、しぶとく国会に生き残った。
「みんなの党」では野党再編を目指して渡辺代表と対立し、13年に離党。14年には「維新の党」の結党に参加したが、ここでも路線対立をめぐる内紛の当事者となった。
さらに、民進党から「小池新党」と呼ばれた希望の党などを経て、21年の衆院選は無所属で立候補。7人が争った選挙区でトップ当選し、自民の追加公認を得て初めて自民入りした。
ライバルも「政治とカネ」で失脚
この選挙戦で柿沢議員が生き残った背景には、選挙区のライバルだった秋元司氏(元自民党衆院議員)が、統合型リゾート施設をめぐる贈収賄事件で逮捕されたことがあった。自民の空白区となったタイミングを生かして自民に接近し、選挙前に党推薦を得ていたのだ。
岸田内閣では副大臣に起用された。だが、柿沢議員と長年争ってきた自民党都連との関係修復は簡単ではなかった。今回、自身の容疑の舞台となった江東区長選の背景には自民党勢力の分裂があった。
21世紀になった年に政界にデビューし、主に野党議員として衆院選で当選5回を重ねた。その議員の逮捕は、政界の浄化と正常化の道のりが険しいことを象徴的に表している。
●岸田総理はプライドだけ高くて、何もできない…「2023年の永田町の実態」 12/28
東京地検特捜部の裏金捜査が大詰めを迎え、岸田政権は大混乱に陥っている。永田町の表も裏も知り尽くすベテランジャーナリストたちはこの状況をどう見ているのか―柿崎明二(元内閣総理大臣補佐官)、青山和弘(元日本テレビ記者)、鮫島浩(元朝日新聞社記者)が'24年の政局を大予測する。​
検察が官邸へ送ったメッセージ
鮫島 「直前まで国会周辺で取材なので、鼎談の会場は永田町で」とお願いしたのは私です。でもこんなところに呼び出されるなんて―安倍派事務所の隣のビルですよ。来るときに、大量の報道陣とすれ違いました。
青山 裏は、二階派事務所が入る砂防会館別館。まさに我々は、疑惑の中心地にいるわけです。
それにしても岸田政権の裏金問題への対応はひどい。官邸が検察の動きをまるで掴めていなかった。危機感が薄く、政治資金収支報告書を書き直せば済むと思っていた。あまりに能天気です。
岸田文雄総理が事の深刻さに気付いたのは、「さすがにこのまま本格捜査に入ったら政治が機能停止する」と考えた検察がメッセージを送ってからです。それが「安倍派五人衆を要職から外したほうがいい。取り調べに協力すれば'24年の通常国会までには捜査を終わらせる」というもの。それを受けて突然、「安倍派一掃」を言い出したんです。
柿崎 かつての自民党ではここまでの対応にはなっていなかったのでは。安倍政権であれば、首相と菅義偉官房長官が連携して先手を打っていたでしょう。あくまで政権維持の観点からの話ですが。
鮫島 今回、検察が安倍派を標的にしているのは、その反動とも言えます。当時の官邸は、自分たちの息のかかった黒川弘務氏を検事総長に据えるために、黒川氏の定年延長を無理やり閣議決定した。人事に手を突っ込まれたことを、検察は恨んでいた。だから安倍派や菅グループの復権を阻むためにはなんでもやるんです。
河井克行や菅原一秀ら菅さんに近い議員を捜査して立件したのもその流れでしょう。
青山 検察内の黒川一派が一掃されたので、官邸と検察のパイプがなくなり、交通整理をする人がいなくなったんですね。
裏金問題が発覚するきっかけとなったのは、しんぶん赤旗の報道と上脇博之教授の告発でしたが、検察がただの過少記載だと思って調べたら、それ以上の問題が出てきた。
柿崎 20年前に清和会、経世会の政治資金問題をキャンペーン報道した経験からすると話は単純で、安倍、二階両派の処理が雑です。大々的にパーティをやっている安倍派が、収入が少ないなんて変でしょう。こんな分かりやすいことを捜査しないと、検察がおかしいと言われてしまいます。
今、政治家が自分の首を絞めています。政治資金規正法の主旨は、他者が「制限する」ではなく、自ら「正す」。厳密に制限すると、取り締まる検察、警察が、国民に選ばれた国会議員を恣意的に立件できてしまう。それは危険だから、議員は率先してカネの流れを明らかにすることになっている。それを、政治家はわかっていないのでは?
鮫島 しかも裏金は、子供の教育費や銀座で遊ぶカネに使っていたという。国民は物価高に苦しんでいるというのに……。モラルが崩壊しています。昔は派閥の親分が、派閥を大きくするために裏金を使っていましたが、今はそういうことでもない。
ドン・森喜朗の号令も虚しく…安倍派は「溶解」する
柿崎 「派閥を解体しろ」という意見も出ていますが、本来の派閥はすでに存在していないに等しい。そもそも派閥は、総理候補を担いで、総裁選を戦うための集団です。ところが前回の総裁選では、多くの派閥で、推す候補がバラバラでした。これでは「派閥もどき」です。
安倍派が典型的で、安倍さんが亡くなってからトップを決められていない。かといって分裂の兆しもない。かつてなら安倍派は格好の草刈り場ですが、他の派閥も切り崩そうとしない。権力闘争すら起きないわけです。
昔はカネは派閥にとって権力闘争の手段だったのに、今は目的になっている。派閥の実態が失われ、カネのやり取りだけがむき出しになった。それで裏金問題が出てきた。
今後、安倍派はどうなっていくと思いますか?
青山 「溶解」していくとみています。トップの5人衆が力を失ってしまうので、分裂すらできない。櫛の歯が欠けるように議員が去っていく。組織的に不正を行っていたということで「清和政策研究会」という名前がなくなる可能性もあります。安倍派のドンである森喜朗さんは今でも「萩生田光一を中心にまとまれ」と言っているようですが。
鮫島 清和会がなくなってしまうのはある意味、寂しいなあ(笑)。安倍派がバラバラになって一番得をするのは、高市早苗さんでしょう。清和会にはそもそも安倍系と福田系の二系統があって、清和会の残党は福田達夫元総務会長のもとに集まる可能性が高い。でも福田さんは安倍晋三さんと違ってハト派。だから安倍さんに近かった右派の議員たちが高市派結成に動くかもしれません。
柿崎 高市さんは勉強会を立ち上げて、「ポスト岸田」を打ち出しましたが、倒閣に動くわけではなく、積極的に「岸田総理を支える」という政治家もいない。自民党全体に「生体反応」がなくなってしまった。どこがターニングポイントだったとお二人は考えますか?
青山 振り返ると'22年は国葬と旧統一教会の問題が政権を直撃した上に、年末には閣僚辞任ドミノがあり、岸田政権にとって厳しい年の瀬でした。
ところが'23年に入ると、ガーシーこと東谷義和議員の除名処分や、高市大臣の総務省文書問題の話で持ち切りになり、岸田さんに焦点が当たらなかった。それから日韓関係の改善や新型コロナウイルスの5類移行、広島サミットもあって内閣支持率が上昇しました。
鮫島 まさか上がるとは思いませんでしたね。通常国会に入ると普通下がりますから。
僕は開成高校だからープライドだけ高い岸田総理
青山 岸田さんは、'23年のどこかで解散を打つというのが基本戦略だったと思います。好条件が揃ったので、私は通常国会会期末の「6月解散」があると思っていました。ところが、岸田さんはギリギリで見送ってしまった。あそこが最高の山場で、そこから坂道を転がり落ちるようにここまで来た、という印象です。
鮫島 私は、もともと岸田さんは解散する気がなかったと思っています。総理大臣には2タイプいて、選挙が好きな人と人事が好きな人。岸田さんは後者で、「首相になってやりたいこと」を問われて「人事」と答えたほど。
でも人事は人の恨みを買います。党内での求心力が下がるので、よほどのことがないかぎりやらないほうがいい。
青山 それを聞くと安倍さんは逆のタイプでしたね。国政選挙で6回勝って力をつけていった。人事についても、菅官房長官、二階俊博幹事長、麻生太郎財務大臣の中核は動かさなかった。
柿崎 安倍さんが選挙で連勝して強くなったと言われていますが、それは50%そこそこの投票率に支えられていた。政権選択の衆院選で自民党の絶対得票率は25%で、実態は少数支配です。
とはいえ、安倍さんには、日本をこういう国にしたいという思いがありました。私は支持しませんでしたが、やりたいことがはっきりしていた。岸田さんは何をしたいのかわからず、判断もしにくかった。
鮫島 特にやりたいことはないんです。それなのにプライドだけ高い。
私の朝日新聞の先輩が、岸田さんに「早稲田大学の後輩です」と挨拶した。すると、岸田さんが「僕は開成高校だから」と答えたそうです。宏池会(岸田派)は、東大と財務官僚出身の議員が集まるエリート集団。だから岸田さんはコンプレックスの塊で、世間の評価より、宏池会内での評価に重きを置いていた。
岸田さんは総理大臣就任当初から、宏池会出身の歴代総理の在任日数をソラで言えたそうです。先輩たちの在任日数を抜けば、派閥の中で威張っていられる。だから派閥会長の座からもなかなか退かなかった。
在任日数を意識しているので、下手に選挙は打てない。派閥均衡の内閣人事で極力リスクを回避して、'24年の総裁選に備えていたというのが私の見立てです。
青山 私は若干、見方が違います。岸田さんは菅前総理を反面教師にしていて、「あのようなみっともない辞め方は嫌だ」という思いが強かった。だから解散もやれるならやりたかったはずです。でも麻生副総裁の反対や息子の翔太郎秘書官の問題などが浮上し、決断できなかった。
解散風を吹かせるだけ吹かせて、自身の延命のために政局を弄ぶ。それで国民からも「岸田さんは権力の亡者なんだ」と見限られてしまった。
麻生副総裁はすでに岸田総理を見限った
柿崎 タイミングを見計らって解散すれば必ず自民党が勝ったとは限らないと考えています。6月に解散を打ったところで、260議席も取れなかったと思っています。そうであれば、「打っていなければよかった」という話になっている。
そもそも解散権が総理の専権事項であるかのように振る舞い、マスコミも容認しているのが間違っています。憲法にも、自己都合で解散していいとは書いていない。自民党政権が既成事実化し、安倍総理が連発したことで、「安倍一強」が到来した。誰も歯向かわなくなり、党内で権力闘争がなくなってしまった。
鮫島 まさにおっしゃる通りです。長年、清和会が権力を牛耳ってきたため、宏池会が官邸に入れたのは30年ぶりのこと。普通は、将来の総理候補は官房副長官などの要職を経て、権力の動かし方を学んでいきます。でも岸田さんはやったことがない。だから作法を知らなかったんです。
解散風を吹かせたので、議員たちは夏休みも返上で地元を駆けずり回り、マスコミは予測を打ちまくった。それなのに土壇場でやらないと言って、多くの人に恥をかかせた。一線を越えてしまったんです。罪深いですよ。
青山 いま問題なのは、その岸田さん本人が辞める気が一切ないということです。総理周辺は未だに、春闘で給与が上がり、所得税減税が始まれば支持率は上がると言っている。非常に楽観的です。
柿崎 なのに、「岸田おろし」の動きも見えない。安倍一強時代に権力闘争をやってこなかったから、若手や中堅もやり方がわからないみたいです。
マスコミが、非主流派が「岸田おろし」に動いているかのように書いていますが、少数派の非主流派だけでどうやっておろすのですか。主流派が裏切らなくては、おろせないが、そのような動きも見えない。
鮫島 私は、麻生さんはすでに岸田さんを見限ったと思っています。岸田さんは所得税減税を突然ブチ上げて、財務省を怒らせてしまった。財務省の後ろ盾である麻生さんも、言うことを聞かない岸田さんからは距離を置くようになった。麻生さんは次の政権は、茂木敏充さんに託したいと思っているはずです。だから'24年春の予算成立を花道に、岸田さんには退陣してもらう。岸田さん本人が続けたくても、予算を人質にとられて脅されるから辞めざるをえない。
茂木さんも次は自分だと思っているから、すこぶる機嫌がいいらしい。
再び「小池旋風」が吹き荒れる
青山 でも次の総裁は、自民党が生まれ変わったというメッセージを出さなければいけない。茂木さんは難しいと思います。その意味では、女性初の総理となる上川陽子さんは有力です。派手さはないけど安定感もあるし、みんなが乗りやすい。
柿崎 上川さんは有資格者です。ただ、次の総裁は無派閥というのが条件になると思います。上川さんが岸田派のまま、他の派閥が推したらまるでマンガです。やりかねない気もしますが。
今、まともに動けているのは石破茂さんくらい。自民党にとって次の総裁は選挙に勝てる人でないといけない。休日に投票所まで足を運ばせる人という意味では、石破さんとか小泉進次郎さんとか、「次の首相」調査で数字を持っている人になる。
鮫島 私も上川さんは初当選から知っていますが、総理の器ではない。死刑のハンコを押したので、肝が据わっていると言われますが、ただ法務省の指示に従っただけ。本当は線が細いんです。だから流れで言えば、石破さんはよかったのですが、最近しゃべりすぎですね。
青山 総理の辞任に言及するなど、発言が突出しています。当初、石破さんしかいないと言っていた人も、これではやっぱり乗れないと嘆いている。
柿崎 そういわれますが、他の人は発言さえもない。本当は若手や中堅が改革案を投げかけるべきです。政治活動のあり方にかかわる問題なので、「後ろから鉄砲」と言われることを厭わず、党の指示や組織に縛られずに動くべきです。党の新陳代謝になります。そこに石破さんが乗っかれば大きな動きになる。
岸田さんは捜査の結論を待っている。それでは検察が政治を形づくることになりかねません。政治家にとって状況は対応するものではなく、自ら作るもの。その基本すら失われつつあります。
青山 河野太郎さんは麻生さんに認められないと出にくいし、小泉さんはこんな混乱期には頼りない。風を吹かせられる人というところで、最近一部で小池百合子さんの名前があがりはじめました。江東区長選で萩生田さんとも協力関係を築いた。
鮫島 本人も狙っていますよね。都知事の任期も'24年の7月までですし。
青山 いま窮地の安倍派と二階派が担ぐ可能性があります。
泉房穂と橋下徹の存在感
柿崎 小池さんは権力闘争部門の天才だから、出てくる可能性は今回に限らず常にあります。でも性格からして、傷がついた安倍派や二階派は「排除」するのでは(笑)。自民党復党、あるいは連立、さまざまな道があります。
それにしても、野党も「政権自滅頼み」状態ですね。能動的に対立軸が作り出せていない。
鮫島 今の野党は、自民党の補完勢力でしかない。維新は菅さんのもので、国民民主は麻生さん、公明党は二階さんという具合です。自公が過半数割れしても、連立政権で維持される。
青山 維新は大阪・関西万博を人質にとられていることが大きい。今回、悪名高い経済対策を盛り込んだ補正予算に賛成しましたが、'24年の本予算にも、万博の予算が含まれます。首根っこを押さえられているから、自公維の連立も十分ある。
罪深いのは立憲民主でしょう。党の内部ですら糾合できていない。
鮫島 今は裏金問題で与党が大エラーしているのだから、そのテーマで野党がまとまればいい。「政治とカネ」にしぼって対立軸を作る。
青山 その時の野党連合のトップに相応しいのは誰か。私は野田佳彦さんがいいと思います。一度、総理をやっているので安心感があるし、中道保守の支持も見込める。
鮫島 野田さんは信念である消費税増税さえ封印すれば説得力が出ます。
「永田町対国民」の構図を作るなら、現職にこだわる必要はないと思います。元明石市長の泉房穂さんと橋下徹さんが組んで国政に進出するとか。
青山 維新と立憲の協力は不可欠ですが、その2人というのは奇抜ですね。
鮫島 勝負をするときには、「あっと驚く薩長同盟」が必要なんです。そこに野田さんが入ってもいい。
「悪魔とでも手を結ぶ覚悟」がない野党
柿崎 対立軸は政策やテーマだけでは足りません。極端に言うと「政治とカネ」という旗すらいらない。重要なのは選挙協力。野党は自公に学ぶべきです。共通政策は後から生まれた。野党は、政策一致に囚われてしまっている。政策一致を先行させていたら、まとまれない。
政権が自滅しているんだから、選挙協力するだけである程度、勝てます。政策は、協力する過程で練り上げればいい。マックス・ウェーバーではないですが、「悪魔とでも手を結ぶ覚悟」で政権を取りに行かない野党は無責任です。
青山 ただそういう戦略を練ったり、舞台回しをする人が見当たらない。「政治の貧困、ここに極まれり」ですね。
柿崎 権力闘争をやらないなら、政治なんてAIにまかせればいいという話になってしまう。
自民党の派閥政治が問題になっていますが、代表がずっと変わらない党よりマシです。総理候補を担いで、ルールの範囲内で権力闘争をする、国民のためにその権力を使う。武力以外の方法で死に物狂いで戦うことが、現代の民主主義です。
鮫島 私は会社を辞めてフリーになってから仕事が楽しくてたまらないんですよ。自分の意見が堂々と言えますからね。
国会議員だって選挙で選ばれた一国一城の主なんだから、忖度せずに自分の意見を主張して戦ってほしいですね。
●古市憲寿氏「トカゲのしっぽ切りで終わるな」「結局岸田政権もダメ」裏金疑惑 12/28
社会学者の古市憲寿氏が28日に放送されたフジテレビ系「めざまし8」(月〜金曜午前8時)に出演。自民党安倍派の池田佳隆衆院議員が政治資金パーティーの裏金疑惑で事務所などの強制捜査を受けた件で、「トカゲのしっぽ切りで終わってほしくない」と私見を述べた。
今の政治家の行動について「政治家の仕事が次の選挙に受かるための行動になっている。何をやったか分からない人が国会議員でいる意味あるの? 置いておく必要があるのですか? というところから考えるべき時代」とあり方に疑問を呈した。
そのうえで、「政治にお金がかかるのなら人数を減らして議員の給料を上げましょうとか、抜本的なことを変えないで今の仕組みのままで、グレーゾーンで一部議員を摘発して、グレーゾーンを残したままで国会が続いていく状況をいつまで続けるんですかということ。岸田さんも仮にもあとがないなら、こういうところを抜本的に改革しますと言ってもらわないと、結局ズルズル国会もダメになって、岸田政権もダメになって、日本の政治不信も強まるだけです」と核心を突いていた。
●世間の関心は「岸田首相の退陣」 息子スクープの「その後」 12/28
今となっては、ここから岸田政権の綻びが広がり始めたのかもしれない。
’22年12月30日、岸田文雄首相(66)の親族らによる忘年会が総理大臣公邸で開かれた。あろうことか、長男で当時首相秘書官だった翔太郎氏(32)らは、公邸内の階段で寝そべるなど大ハシャギの宴会を繰り広げていた。そのことが『週刊文春』で’23年5月下旬に報じられたが、実は、宴会には岸田首相も参加しており、集合写真に納まっていた姿を本誌は入手。’23年6月6日に配信した記事をもとに詳細を振り返る(記事中の年齢・肩書きは掲載時のものです)。
’22年12月30日、首相公邸(千代田区)で開かれた「大忘年会」には18人の親族が勢揃いした。その中心で笑みを浮かべるのはスウェットにダウンベスト、裸足という寝間着姿の岸田文雄首相(65)だった――。
長男で首相秘書官の翔太郎氏(32)ら首相の親族が、公邸内の階段で寝そべるなど大ハシャギの宴会を繰り広げたことが『週刊文春』で報じられるや、世間は大ブーイング。だが首相は翔太郎氏に「厳重に注意した」と述べるにとどめた。野党はおろか、国内外のメディアから「身内に甘い」と叩かれても、首相は動かない。それどころか、’23年5月26日の参院予算委員会で「私も私的な居住スペースにおける食事の場に顔出しをし、あいさつもした」と、息子をかばう素振りさえ見せた。
その「違和感」の正体が、この集合写真である。「あいさつ」どころか、裕子夫人(58)や翔太郎氏らとともに、首相本人もご満悦の表情で「記念写真」に納まっていたのである。
「この日は首相の実弟で実業家の武雄氏(62)ら、岸田家4人きょうだいとその配偶者や子供が集合しての忘年会でした。外部者はシャットアウト、まさに『身内』の会だったのでしょう」(首相の知人)
’23年5月29日、首相は’23年6月1日付で翔太郎氏を交代させることを急遽表明。件(くだん)の忘年会問題が報じられた後に行われた世論調査(日経・テレ東)では、内閣支持率が前回調査より5ポイント下落した。
「菅義偉(よしひで)前首相(74)ら老獪な政敵が多い中で、心を打ち明けられる味方が首相にはいない。翔太郎氏の問題が度々取り沙汰されてもお咎めナシだったのはそのためです。今回も追及を先延ばしにしていればウヤムヤにできると考えたものの、支持率に影響が出てしまった。岸田首相が拘泥しているのは、政策ではなく支持率。’23年7月選挙も目論む中で、愛息であっても『不安要素』は取り除きたいとの結論に至った」(全国紙政治部デスク)
首相公邸の維持費は年間約1億6000万円の公費で賄われているとされる。ジャーナリストの鈴木哲夫氏は言う。
「公邸は有事の際、すぐ首相官邸に駆けつけられる距離にあり、閣議や総理会見も行われる。『ただの家』ではなく、日本の危機管理の中枢です。身内の忘年会をやるような場所では断じてない。あまつさえ、支持率に影響が出ると気づいてから翔太郎氏のクビを切るのは、遅きに失しています。翔太郎氏の自覚だけでなく、首相の危機管理能力の問題でもあります」
公邸での忘年会について、岸田事務所に質したところ、次のような回答だった。
「ご質問の件につきましては、すでに国会やぶら下がり取材などで説明しているとおりです」
息子のクビを切って終わり、では国民は納得しない。自身の責任が問われる。
今や世間の関心は「岸田首相の退陣」と「そのタイミング」のみ
岸田首相は’23年5月29日、記者団の質問に応じ、
「けじめをつけるため交代させた」
と語ったが、’23年6月2日の会見では、自身の責任について、
「公邸の中には私的なスペースと迎賓機能を持つ公的なスペースがあり、私的なスペースで親族と同席したものだ。公的なスペースで不適切な行為はないと思う」
と述べ、問題はないとした。しかし、今、政界を揺るがしている“大事件”に関しては、そういう呑気なことは言ってられないようだ。
岸田政権を支える“権力の中枢”ともいえる自民党最大派閥『清和政策研究会』通称“安倍派”の幹部を含めた大半の議員が次々と裏金としてキックバックを受けていた疑惑で、政権が大きく揺らいでいる。
’23年12月8日〜11日に『時事通信』が実施した世論調査では、岸田内閣の支持率は17.1%で2割を下回った。これは、政権を維持できる数字ではない。岸田首相は’23年12月13日の会見で、
「政治の信頼回復に向け自民党の体質を一新すべく先頭に立って戦う」
と力説してみせたが、岸田派(宏池政策研究会)でも、直近5年間で数千万円のパーティー収入が派閥の政治資金収支報告書に記載されていない疑いが出ている。今後、東京地検特捜部の捜査が進めば、岸田首相本人に対する任意の事情聴取が行われる可能性も捨てきれない。
「もはや岸田政権は死に体と言っても過言ではないでしょう。与野党だけでなく、世間の関心は今や、岸田首相はいつ退陣するのか。では、その後に誰が首相を務めるのか。いずれにしても、今の自民党政権を立て直すのは至難の業です」(全国紙政治記者)
’24年の日本の政治に現状、期待できるものは何もない。
●残念だが岸田内閣は簡単には瓦解しない、森喜朗・三木武夫の事例 12/28
自民党安倍派(清和政策研究会)をはじめとする派閥の政治資金「裏金」問題で、永田町は大混乱に陥っている。東京地検特捜部の動きは加速しており、2024年以降も、この騒動はしばらく続くだろう。一見すると、リクルート事件以来といわれる大型事案なだけに、岸田文雄内閣は近い将来政権運営に行き詰まり、新たな内閣が発足するように思える。
だが残念ながら(?)、現在の永田町をみる限り、岸田政権は継続する公算が大きい。国民の負担増に焦点を絞った政策だけを打ち出している悪夢の日本政治を誰も止めることができないのか――。
森内閣の支持率に比べれば岸田内閣はまだ余裕
特捜部の捜査進展に伴い、内閣支持率は今後もさらに低下していくのは間違いないだろう。留意すべきは、世論が支持しなくても、政権は崩壊しないという厳しい現実だ。
例えばNHKの世論調査で見ると、森喜朗内閣は2000年6月に内閣支持率17%を記録したが、その後約10カ月間も政権は継続した(最終的に内閣支持率7%を記録!)。この間、有名な「加藤の乱」が起こるなど紆余曲折があったが、当時の執行部は鎮圧に成功している。
同じNHKの世論調査によると、岸田内閣の支持率はまだ23%(12月)もあるので余裕がある。民主主義国家とはいえ、一度築かれた政権はそう簡単には壊れない。内閣不信任決議可決があり得ないうえ、補欠選挙以外の大型国政選挙もしばらくない。岸田首相自らが辞意を決意しない限り、政権は少なくとも来年9月の自民党総裁選まで持ちこたえる。
岸田おろし、未だ吹かず
それにしても、摩訶不思議な光景が広がっている。現在の自民党所属国会議員の中で公然と「岸田辞めろコール」を唱えている人は誰もいない。メディアに引っ張りだこの石破茂元幹事長ですら「党内の結束」を提唱している。かつての自民党ならば「総裁選前倒し」を求める党内政局が勃発してもおかしくなかった。
「岸田おろし」の風が吹かないのには、いくつか理由がある。最大派閥で反主流派的立ち位置にあった安倍派が総崩れ状態にあり、反主流の巣窟のような二階派も捜査対象になっているのでいまいち冴えがない。岸田首相を攻撃する勢力が弱っているのだ。
現時点で無傷とはいえないまでも、「裏金」問題で大きなダメージを受けていないのは茂木派、麻生派の二大主流派閥である。必然的に党内政局は凪となってしまう。
注目されている無派閥議員も、思ったほど勢いがない。斎藤健経済産業相、渡海紀三朗政調会長、浜田靖一国対委員長ら無派閥の動向は気になるところだが、「反岸田」の狼煙を上げる人はいない。無派閥勢力の最大のボス・菅義偉前首相も静観している。石破氏はメディアで解説とウンチクを披露するばかりだ。
これではあと数カ月、政局は動かないとみたほうがいい。
ポスト岸田のダークホースは?
永田町の玄人筋では、以下のような見方がある。
1 通常国会の予算審議で政権が立ち往生
2 東京地検特捜部の容赦ない捜査で次々に国会議員が辞職
3 4月の補欠選挙を前に岸田首相が退陣を表明
4 総裁選前倒し
というものだ。
可能性としては、いずれも十分あり得る。
しかし、残念ながら上記のような展開にはならないとみられる。総裁選の前倒しとは、岸田首相が辞任を表明することに他ならないからだ。辞意の決意、辞任の表明に至るシナリオとして「国会の予算審議を乗り越えられず、岸田首相もついに観念するだろう」という前提がある。鈍感力抜群の岸田首相は観念しない。目の上のたんこぶである安倍派が衰退していくのを内心笑いながら見ているのが岸田首相だ。この際、安倍派なんてなくなってしまえ、と思っているかもしれない。
官邸中枢の情報を総合すると、岸田首相は最近すこぶる機嫌がよく、体調も良いという。岸田首相は、12月に入っても外食を自粛せず、マイペースだ。嬉々としてライバル派閥が自滅していくのを眺めているだろう。この岸田首相の心理は、ロッキード事件時の三木武夫首相に重なる(本稿の最後で触れる)。
もちろん、4月に予定されている衆院島根1区の補欠選挙等で厳しい結果が出れば、党内の「岸田おろし」がそろりと始まるはずだ。低空飛行の岸田内閣を尻目に、9月の自民党総裁選を控え、いよいよお家芸の政局に突入するかもしれない。そうなると、無派閥勢力がうごめき出し、石破氏や小泉進次郎元環境相らの総裁選出馬が取りざたされるようになる。
安倍派が乗りやすい候補、乗りにくい候補
党内力学的にはどうか。無派閥議員は75人ほどいるが、彼らが派閥のような結束力を示すことはないだろう。仮に旧石破派や菅氏の無派閥グループなどが結集しても、党所属国会議員の約8割を占める六大派閥(安倍派、麻生派、茂木派、岸田派、二階派、森山派)が、石破氏を神輿に担ぐかどうかは不透明だ。
「ポスト岸田」として名前が挙がっている河野太郎デジタル相、茂木敏充幹事長、林芳正官房長官、上川陽子外相、高市早苗経済安保相の5人はどうか。いずれも、総理総裁の可能性があるといえる。
仮に最大派閥の安倍派がまとまっていなくても、勢力として一定程度の規模(最大勢力)を保っていれば、安倍派が応援した候補が有利な展開となる。総裁選はオーソドックスに考えると、河野、茂木、林の3氏を軸に争われるとみられるが、いずれも安倍派は推しにくい。
そこで浮上してくるのが、安倍派が乗りやすく、党内に敵が少ない加藤勝信前厚生労働相である。派閥こそ茂木派ではあるが、安倍晋三元首相との縁やつながり等を踏まえると、安倍派が応援しやすい候補だ。茂木氏の総裁選出馬の有無にもよるが、加藤氏にワンチャンスがあるかもしれない。
岸田政権と三木政権の類似性
東京地検特捜部が動くと、メディアの報道はもちろん、世論全体が熱を帯びてくる。少々古い事例になるが、先に触れたように、三木武夫内閣時代のロッキード事件をめぐる政界の動き、雰囲気を紹介したい。
現代と比べると「中選挙区時代の派閥全盛期」という大きな違いがある上、戦後最大級のインパクトをもたらしたロッキード事件との比較はなじまない。ただし、時の首相が、首相経験者の逮捕という前代未聞の事態を前に、どのような動きを示したのかは、今回の安倍派をはじめとする裏金事件の参考に多少なりともなり得る(以下、一部敬称略)。
1976年2月、ロッキード事件が発覚した。前首相・田中角栄は同年7月、外為法違反容疑で逮捕される。政局はこの間、最大派閥の田中派を中心に混迷状態に入り、首相の三木武夫は「ロッキード事件の真相究明」を掲げて大いにハッスルした。
これに対して自民党内からは、反主流派を中心に、三木が自らの権力維持のためにロッキード事件を利用しているとの反発が起こり、三木政権の閣僚である副総理の福田赳夫、蔵相の大平正芳も田中と組んで「三木おろし」に執念を燃やすようになる。
だが、三木は第一次、第二次と続く「三木おろし」をしのいだ。反主流派が決起すればするほど、三木は世論に訴えかけ、驚異的な粘り腰で政権を維持した。同年11月の任期満了の衆院選で、自民党は大敗を喫し、三木はようやく退陣した。
安倍派の恨みを買った岸田首相
興味深いことがいくつもある。
たとえば、田中が逮捕された当日の夜、三木や三木派幹部は赤坂の料理屋で平然と会食している。
岸田首相も似たようなもので、安倍派と二階派の事務所に家宅捜索が入った12月19日夜、開成高同窓の国会議員や地元広島県議との会食に出席している。今も昔もそうは変わっていない。敵に捜査の手が入ってもどこ吹く風なのだ。
三木のハッスルぶりは相当なものだったようで、「検察を利用して政敵を封じ込めた」と田中派から恨みを買っている。今回、岸田首相は安倍派に捜査の手が入ることを露骨に歓迎はしていないものの、安倍派の閣僚だけを辞めさせて、二階派は温存するという恣意的な対応を取った。当然ながら、安倍派から恨みを買っている。やりすぎだ、と。三木に相通ずるところがある。
まったく別次元になるが、ロッキード事件の際には令和の日本にはあり得ない奔放発言があった。三木内閣の名物法相・稲葉修(中曽根派。三木政権では中曽根康弘は幹事長で主流派)は、田中の逮捕前の1976年6月、毎日新聞のインタビューでこう言い放っている。
「これまで逮捕した連中は相撲にたとえれば、十両か前頭十三、四枚目ぐらい。これからどんどん好取組がみられますよ」
「捜査は奥の奥まで神棚の中までやるよ。まあ、期待していてください」
東京地検特捜部は、安倍派の有力者への任意の事情聴取を開始した。特捜部の大物狙いを相撲にたとえて「好取組」と表現した好角家の稲葉には思わず笑うしかないが、岸田首相も案外、同じような気持ちではないか。捜査はどんどんやってほしい。やればやるほど、岸田政権は持ちこたえる――。
岸田政権は三木政権のように、数カ月は十分持つだろう。 
●露外務次官が岸田政権批判 武藤大使に伝達 12/28
ロシア外務省は28日、ルデンコ外務次官が日本の武藤顕駐ロ大使と会談したと発表した。ルデンコ氏は「岸田政権が続ける破壊的な行動」が日ロ関係をさらに後退させ、アジア太平洋地域の緊張を高めていると指摘したという。具体的な内容には触れていない。
同外務省のザハロワ情報局長は27日、岸田政権が米国企業のライセンスに基づいて日本で生産する地対空誘導弾パトリオットの対米提供を決めたことが世界と地域の安全保障に悪影響を与えると批判した。
同省は今月18日にも、陸上自衛隊が米、オーストラリア両軍と北海道で行った共同指揮所演習が「挑発的」だと在ロシア日本大使館に抗議している。
●「最悪の年末だ」「内閣つぶれる」 現役国会議員逮捕の異常事態 12/28
年の瀬の28日、東京・千代田区にある参院議員宿舎に現れたのは、東京地検特捜部の係官。
28日午前9時過ぎ、東京地検特捜部が、自民党・安倍派の大野泰正参院議員が住む議員宿舎などの強制捜査に乗り出した。
自民党の派閥パーティーをめぐる裏金疑惑が浮上している大野議員。その額は、現在判明している中では最多の総額5,000万円にのぼるとみられる。
大野議員の地元、岐阜・羽島市の事務所には、東京地検特捜部の捜査が迫る中、多くの報道陣が待ち構えていた。
午前10時半、事務所では、新年に向けて業者が門松を2つ設置する姿も見られた。
この1時間半ほど前の午前9時。特捜部は、大野議員が住む東京・麹町の議員宿舎を強制捜査。
さらに1時間後、議員会館にもスーツ姿の係官6人が捜査に入った。
大野議員は、2022年までの5年間で、安倍派の中で現段階で最多の総額5,000万円を超える“キックバック”を受け、収支報告書に記載していなかった疑いが浮上している。
“安倍派”大野議員「精査しています。全部精査している」
強制捜査が入った大野議員は、今どこにいるのか。
午後3時半、地元の事務所で秘書が取材に応じた。
大野議員の地元秘書「(大野議員から連絡は?)ありません。(大野議員本人と連絡は取れている?)取れていません。(帰ってくる予定は?)そういうことも聞いておりません」
議員側への強制捜査は、27日の池田佳隆議員に続き、大野議員が2人目。
裏金疑惑に揺れる岸田政権。28日、さらなる激震が走った。
午前10時過ぎ、現役の国会議員で、前の法務副大臣の柿沢未途容疑者(52)と秘書の4人が逮捕された。
柿沢容疑者は2023年4月の江東区長選挙で、秘書に指示して区議らに現金を配り、買収するなどをした疑いが持たれている。
午後0時半ごろ、柿沢容疑者らを乗せたとみられる車が東京拘置所に入った。
前法務副大臣の逮捕という事態に、午後5時半ごろ、岸田首相は「大変遺憾なことであり、私自身の任命責任、これを重く受け止めている」と述べた。
異例の事態に、自民党内からは「最悪の年末だ。政治改革の具体策を年内に示してほしかった。地元で説明がつかない」、「このままでは内閣がつぶれる」などの声が。
年の瀬に行われた現役議員の逮捕と強制捜査。
今後の展開について、ある検察幹部は「ことしの特捜部には年末もお正月もない」と話していて、29日以降、年明け三が日にも何らかの動きがある可能性もある。
 12/29

 

●特捜“次の標的”に森喜朗元首相…「裏帳簿」 安倍派5人衆がひれ伏したドン 12/29
アノ人にも捜査の手が及ぶのか。
東京地検特捜部の捜査が拡大の一途をたどる自民党派閥パーティーの裏金事件。最大派閥・安倍派の幹部が次々と任意聴取を受ける中、永田町の関心は「次の標的」に向かっている。ズバリ安倍派のドン、森元首相のことである。
パー券収入をキックバックする裏金スキームは、森元首相が派閥会長だった2000年代初頭から常態化。安倍派内でも「森さんから全て始まった」と言われるゆえんだ。
「特捜部も立件にあたり、事件の背景捜査として安倍派の裏金づくりが、いつ頃から始まったのかを確定する必要がある。当時の事情を知る森氏が、任意聴取の対象となる可能性は十分にあり得ます」(元東京地検検事の落合洋司弁護士)
検察と森元首相には“遺恨”がある。昨年発覚した東京五輪汚職事件に関連して、特捜部は組織委員会会長だった森元首相に複数回、任意聴取を重ねたが、立件には至らなかった。
「東京地検次席検事として五輪汚職事件の陣頭指揮にあたったのは現在、裏金捜査を事実上、取り仕切る最高検の森本宏刑事部長です。今も続く五輪汚職の公判では、検察側が読み上げる調書などに森氏の名前がしょっちゅう出てくる。『捕り逃した』との忸怩たる思いがにじみ出ているかのようです」(司法関係者)
「裏帳簿」はすでに特捜部に押収か
森元首相は12年の政界引退後も5年間で約2億5000万円を集めるほどの資金力にモノを言わせ、派内に君臨。安倍元首相の横死後は派閥運営に喜々としてくちばしを入れ、安倍派5人衆が岸田政権の要職を占めていたのも「オレ様のおかげ」と言わんばかりに吹聴。5人衆は全員、頻繁な「森詣で」を欠かさず、ひれ伏してきた。
聴取した安倍派議員に対し、検察は派閥のオーナー然として振る舞う森元首相について、根掘り葉掘り聞き出そうとしている。森元首相に「キックバックの一部を上納していなかったか」と聞いているとの情報もある。また、安倍派が「二重帳簿」で裏金を管理・運用してきたことも判明。議員側へのキックバック額を反映させた「裏帳簿」は、すでに特捜部に押収されたとみられる。
「横領の疑念を持たれないよう、安倍派の会計責任者はキッチリ裏金の流れを管理していたはず。仮に森氏の名前やカネの動きが裏帳簿に残っていれば、間違いなく事情を聴くことになるでしょう」(落合洋司氏)
何のために裏金づくりを始めたのか。森元首相は検察よりも先に、国民に事情を説明すべきだ。
●岸田首相、沈思黙考の年越し=公邸に滞在 12/29
岸田文雄首相は29日、年末年始の休暇に入った。
家族と外食に出掛ける計画はあるが、大半は首相公邸で静かに過ごす予定だ。自民党派閥の政治資金規正法違反事件の捜査が進み、逆風が強まる中、政権運営に考えを巡らせる年越しとなりそうだ。 
●政治資金パーティー問題で安倍派幹部が一斉退場、勢いづく石破元幹事長 12/29
自民党最大派閥の安倍派幹部が、政治資金パーティーのキックバック問題で一斉に退場した。案の定というべきか、これまで雌伏していた「反アベノミクス派」が勢いづいてきた。
典型例が石破茂元幹事長だ。石破さんは2012年9月の自民党総裁選で故安倍晋三首相に敗れた。筆者はこの運命の総裁選より半年くらい前に、周囲の勧めで石破さんと議論した。「最優先すべきは、脱デフレに向けた政策ですよ」と説いたのだが、石破さんは「有権者は物価が下がるデフレを歓迎している。物価を上げると言えば反発される」と受け付けない。「物価の下落以上の幅で賃金が下がるのが日本のデフレで、財政、金融両面で需要を喚起すべき」と申し上げても、石破さんは最後まで首をタテに振らなかった。
同年12月に第2次安倍政権が発足、機動的財政出動と異次元金融緩和を主柱とするアベノミクスが始まった。脱デフレに関心を寄せなかったいきさつからしても、石破さんはアベノミクスに背を向ける姿勢をとり続けたのも無理はない。ただし、政権与党内で政策やビジョンが分かれ、切磋琢磨(せっさたくま)することは大いに結構だ。要は、日本経済が再生し、国民がより豊かにできる政策を打てるかどうかである。
そこで、石破さんのホームページ掲載の「石破ビジョン」を見ると、「地方こそが新しい時代を創り、歴史を変える」とある。そのための経済政策については「内需主導型経済への転換」を掲げ、地域分散型の高付加価値生産、地方への移住促進、賃金の適正化、低所得者や子育て世代への支援など重点に置くという。いずれも文句なし、100%同意できる目標である。だが、どう実現するのか、鍵になるのは財政と金融政策である。資本主義社会ではカネの裏付けがない「内需」はしょせん、空念仏である。
すると、25日付の日経新聞朝刊の記事が目に留まった。石破さんはラジオNIKKEIの番組で「マイナス金利」をやめて「本来の資本主義に戻す」と語ったという。安倍派の後退で日銀がマイナス金利を解除しやすくなった政治的背景を踏まえているのだろう。
財政のほうはどうか。記事によると、石破さんは竹下登政権が消費税を導入した際、ご自身も消費税の必要性を訴えて当選したとし、「国民を信じてきちんと語るということだ」。これでは財務省の思うつぼにはまりかねない。
グラフは税収(印紙を含む)、消費税収と家計消費が消費税増税前の1996年度に比べてどう増えてきたかを示す。一貫して増えているのは消費税収であり、税収全体を支えている。
ところが家計消費はマイナスが続き、アベノミクス開始後は上向いたものの2021年度までは消費税収を下回った。家計は必要な消費を我慢してまで消費税を負担してきたわけである。消費税こそは30年デフレを招き、国民を困窮化してきたのだ。
●政府・与党 2日連続の安倍派議員の強制捜査で政権運営に危機感 12/29
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、安倍派の議員側が2日続けて検察の強制捜査を受けました。政府・与党は政権運営へのさらなる打撃は避けられないとして危機感を強めています。
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、検察は27日に、安倍派に所属する池田佳隆衆議院議員の関係先を捜索したのに続いて、28日は大野泰正参議院議員の事務所などを捜索しました。
岸田総理大臣は「強い危機感をもって政治の信頼回復に努めなければならない」と述べ、渡海政務調査会長も「年末年始に地元で国民の厳しい声を受け止めて、党の新しい組織での改革に向けた議論に反映させてほしい」と述べました。
一方で、安倍派の中堅、若手の間には「幹部も任意の聴取を受けるなど、派閥として対応を検討できる状況ではない」などとして、派閥の先行きを不安視する声が広がっています。
また、28日は、2023年4月に行われた東京の江東区長選挙の選挙運動の報酬として区議会議員らに現金を提供するなどしたとして、自民党を離党した柿沢前法務副大臣と秘書4人が公職選挙法違反の買収などの疑いで逮捕されました。
公明党の山口代表は「現職議員の逮捕は極めて遺憾だ。派閥の政治資金パーティーをめぐる事件の捜査も進んでおり、国民の信頼を取り戻す真摯(しんし)な努力が必要だ」と指摘するなど、政府・与党は政権運営へのさらなる打撃は避けられないとして危機感を強めています。
これに対し、野党側は批判を強めていて、立憲民主党の泉代表は「より政局が混とんとしてきた。2日続けて自民党の議員側に捜索が入るのは異常事態だ」と述べました。
また、共産党の小池書記局長は柿沢議員の逮捕について「買収という最もあってはならない嫌疑で、非常に重大だ」と述べ、議員辞職を求めました。
●2024年は「大混乱」の年に…徹底すべき3大対策! 12/29
2024年は「混乱」の年になるでしょう。岸田政権は今の支持率を見る限りそう長くは持たないと予測できますし、政府頼りではいろいろ不安定。そんな今こそ、個人で徹底すべき3大対策があるのです。
2024年は「混乱」の年 今こそ始めるべきは3つ
未来予測専門の評論家として2024年がどのような年になるのか?を先に一言で予測すれば「混乱」の年になるでしょう。岸田政権は今の支持率を見る限りそう長くは持たないと予測されます。検討中の事柄が多い政権ですが、いろいろな検討が無になる可能性も危惧されます。
とはいえ、賃上げは次の政権にも引き継がれるはずで、結果としてインフレ基調が続くことは確実です。安倍派の裏金問題が長引けば、中国が何かを仕掛けてくる可能性が高まります。日本国内の混乱は長く続くでしょう。
世界でも3年目に入るウクライナ侵攻と、イスラエルのガザ侵攻、さらには米国の大統領選挙と足元の米中対立など、混乱の種は無数に存在しています。何が起きてもおかしくはなく、何かが起きれば安定した生活は脅かされるわけで、安穏とできない一年を覚悟しなければならないというのが予測の結論です。
さて、その前提で2024年に私たち個人がやっておくべきことを3つ挙げたいと思います。「以前からやってるよ」という方も多いかもしれませんが、このような混乱の時代ですから、それを徹底的に始めてみるという意味で記事にまとめてみます。
その3つとは、
(1)生活防衛
(2)資産形成
(3)脱炭素
の3項目です。順にお話ししたいと思います。
(1)生活防衛は「抜本的」に
私は年末は自分へのご褒美を込めて海外で過ごすことにしています。この原稿は滞在先のホテルで書いているのですが、この年末の滞在はそれほど優雅ではありません。物価が高いのです。
10月に香港、この年末は米国で過ごしてみた感想は、どちらの国や地域も物価は日本の倍という感覚です。とはいえ旅の間は価格よりも体験重視ですから、極力気にせず現地滞在を楽しんでいます。それはそれで経済評論家の矜持なのでよいのですが、仮にこれが日常になったら生活が成り立たないなというのも実感です。もはや日本人にとって「日本の稼ぎで海外移住」は難しいのかもしれません。
一歩思考を進めて、仮に日本の物価がそこまで進んでしまったらどうなるでしょうか。
直近の消費者物価指数は前年比で2.8%の上昇と、相変わらず穏やかなインフレが進行しています。ちょうど1年前の11月が前年比で3.8%のインフレでしたから2年間で6.7%の物価高になった計算です。さらに生活必需品の値上がりが総合指数より大きかった様子で、それで家計では指数以上に物価高を実感していたというのがこれまでの経緯です。
国内要因としては2024年には「賃上げ」が加わります。
そもそも企業物価指数はこれまでも消費者物価指数よりも大きかったのですが、そこを企業努力で値上げを我慢してきた企業が多かったのです。そこに賃上げが加わるので、2024年はこれまで我慢できていた企業の価格据え置き努力にはもう期待できません。
さらに、海外要因が加わります。具体的には商品相場の上昇と円安が物価高のリスク要因です。これについては過去2年と比較して「元に戻る」可能性もあるのですが、頭に入れておかなければならないのは冒頭のキーワードである「混乱」です。
ひとつだけ大きなリスク要因を名指しておきますと、世界がイスラエル情勢に注目しているのはオイルショックにつながる危険性が常に存在するからです。そして、もしイランなどが戦争に参加することでオイルショックが起きてしまえば、日本の物価がこれまでの倍に感じられるほどのインフレが起きることを覚悟する必要があります。
少なくとも過去、二度のオイルショックを経験してきた私のような世代から見れば、デフレしか経験してこなかった20代・30代とは世の中の振れ幅のリスクが違って見えています。
物価が倍になるというところまではいかないとしても、物価が今の1.2〜1.3倍になったときに生活が成立するかどうかについては2024年の初めに少し真面目に考えてみたほうがいいかもしれません。
シミュレーションの仕方としては物価高の逆数で考えて、「手取りが今よりも2割減ったら生活が成立するだろうか?」などと実際に計算してみることをお勧めします。当然ですが、そうなったら「何かをやめないと生活が防衛できない」という事実に気づくことになると思います。
家計のぜい肉というものは常に存在するものです。これはファイナンシャルプランナーに相談すればより明確になることだと思います。生活が苦しくなってから慌てるのではなく、今のうちに生活防衛の計画をきちんと立てておく。それを一年の初めに行ってみるのは、2024年に関しては重要かもしれません。
(2)資産形成は「長期的」に
2023年の私の記事では資産形成絡みの記事もよく読まれました。直近ですと新NISAの記事に注目が集まった様子です。日本の場合、多くの家庭が十分な老後の蓄えができていないという問題を抱えています。これまでも、そしてこれからも銀行の預金金利では十分な資産形成は望めません。リスクを取った投資を始めなければ老後は厳しいことになるかもしれません。
一方で「株はギャンブルのようだ」と感じる方も多いでしょう。順調そうに見える会社の株を買ったら、その後勢いが止まって株価が大きく下がってしまうような経済現象は頻繁に起きます。どの株を買ったらいいか迷う人も多いのです。
新NISAの記事でも書きましたが、資産形成を狙って株式投資をする場合の基本は3つです。
「なるべく多くの株に分散投資する」
「日本以外の株にも分散する」
「投資を長期継続する」
この3つを心がけることで株への投資リスクは大きく下がります。その条件に合致するのが今、人気の国際型インデックス投資信託に積み立て投資をすることです。
ちなみに「日本以外の株にも分散する」理由は、日本経済が堅調なら給料や年金で生活が成立するけれども、日本経済がうまくいかない場合は海外投資がその穴埋めになるという考え方です。
失われた30年はトータルで考えれば日本株に投資するよりも米国株に投資したほうが財産は形成しやすかったし、それで給料が上がらなかった分を補填できたわけで、その考え方は今後も念頭に置いたほうがいいというのはひとつの投資戦略です。
いずれにしても、今や老後の生活は年金だけではどうにもならない時代です。2024年の初めに「本格的な資産形成のための計画を立てる」ということをきちんと考えてみてはどうでしょうか?
(3)脱炭素は「意図的」に
(1)と(2)の計画は比較的読者の皆さんには実感の湧くテーマだったかと思います。
一方で私はせっかく2024年の混乱に備えて本格的に生活を変えていこうと考えるのであれば、これからお話しする三つ目の脱炭素の話をしっかりと考えることが個人にとっても重要ではないかと思います。
多くの読者の皆さんにとっては脱炭素というのは国のテーマであって、自分自身のテーマとしては距離が遠いと感じているのではないでしょうか。ただし手段としての脱炭素は遠いテーマだとしても、その目的である「気候変動の抑止」は皆さんに実感のあるテーマなのではないでしょうか。
なにしろこのところ毎年夏になると、酷暑で日中に外出することで命の危険を感じることがあるぐらいです。異常気象による豪雨災害も増加していて、いつそれに巻き込まれるのか、誰にとっても温暖化リスクが大きくなりつつあります。
そのような異常気象の進行を遅くするのが脱炭素ですから、それについて早期に本格的に取り組むことを考えてみるというのは年初のよいテーマかもしれません。
たとえば太陽光発電の投資対効果はこの20年でかなりよくなってきています。もし自宅が一戸建てであれば、今年は屋根の上に太陽光パネルを設置することを考えてみるのはいい考えかもしれません。そうすれば高騰する電気代を抑えて、逆に売電することで副収入を増やすことにつながるかもしれません。その上で脱炭素にも大いに貢献することができます。
脱炭素関連の補助金が出る可能性は高い
さて、この「年初に脱炭素の計画を立ててみる」ということですが、実はそれをお勧めする重要な理由が補助金です。脱炭素のための投資についてはさまざまな補助金制度があるのですが、その補助金が年度の途中で使い切られてしまうケースが増えています。
たとえばEVの購入に対して補助金がたくさん出ることが知られていますが、EVがそれほど売れない日本でも、ここ2年ぐらいEV補助金は年度終盤で終わりになるケースが続いています。それでも補正予算で打ち切り後も補助金が新たに継続する場合もあるのですが、今後、みんながEVを買う時代になればそれもいずれ打ち切られるでしょう。
私は今年、EVを購入してそれをしばらく使っているうちに、自宅に200Vの電源を設置したほうがいいと考えるようになり、それで電気工事を行いました。10月に工事を注文したのですが、実は9月までなら補助金でその工事は自分のお金を使わないでもできたのでした。それが9月末で打ち切りになったことを後から知って残念な思いをしたものです。
2024年は多くの補助金は新年度に入って予算が決まる5〜6月頃から始まるはずです。いずれどの家庭も脱炭素投資をしなければならないことになるはずですから、意図的に今のうちに自分の家の脱炭素投資を前倒しで計画して、できれば補助金が出る可能性が高いうちにそれを済ませてしまうことは、生活防衛にも後々の資産形成にもつながるのではないでしょうか?
「一年の計は元旦にあり」
と言います。2024年のいつか途中で大混乱が始まってから慌てるのではなく、このタイミングで実行することを決めておくことは、2024年は特に重要だと私は思います。
●「初夢2023」を振り返る 「『ポスト岸田』はこの人!」おらず、野党がバラバラ 12/29
1月4日発行の本紙に「今年を占う『初夢2023』」という記事を書いた。筆者の初夢は正夢になったのか(予想は当たったのか)、反省会をしてみたい。
まず野球のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の予想は「決勝は日米対決、9回裏2死で米国の攻撃。日本1点リードで投手大谷」というところまで当てたので、ほぼ「正解」と言っていいだろう。違いは初夢では「左翼への大飛球で入ればサヨナラ、捕れば日本の優勝」だったが、実際には大谷がすごいスイーパー(スライダーの曲がるやつ)を決めて三振ゲームセットだった。
さすがに、ここまで大谷が活躍するとは予想できなかった。北米のプロスポーツ史上最高という10年7億ドル(約1015億円=契約合意時)という契約額も当然だ。その後も、日本の小学校にグローブ6万個のプレゼントとか、背番号17を譲ってもらった選手の奥さんにポルシェを贈ったりとか、オフも話題満載でこの人が「パーソン・オブ・ザ・イヤー」だろう。来年も楽しみだ。
さて、米国政治だが「ケビン・マッカーシー下院議長の訪台」「ジョー・バイデン大統領の不出馬」という予想は見事に外れた。マッカーシー氏は訪台どころか解任されてしまった。バイデン氏は出馬表明したものの苦戦が伝えられており、ドナルド・トランプ前大統領の再登場もささやかれている。
米国が、ロシアのウクライナ侵略に続き、ガザ危機でもリーダーシップを発揮できていないのは、このような政治の「弱さ」が最大の原因だ。
国内政治は、「岸田文雄首相が広島のG7サミットを成功させたものの、増税でつまずき、総選挙で過半数割れ、日本維新の会、国民民主党のどちらかから首相が出ることになる」という予想だった。
だが、岸田氏は増税だけでなく、LGBT法の強引な成立や、政務3役の不祥事、最後は自民党派閥のパーティー収入不記載による裏金づくりで内閣支持率が急落し、解散までたどり着けなかった。負け惜しみだが、無理に解散していたら正夢になっていたかもしれない。
国民にとってストレスフルなのは、これだけ岸田政権が不人気なのに、「『ポスト岸田』はこの人!」という人がおらず、野党がバラバラで政権交代の可能性もまずない、ということだ。日本の政治も弱い。
実は、日米だけでなく欧州などでも与党の支持率が下がったり、極右政権が誕生するなど政治の「弱さ」が目立つ。世界中で有権者は政治家に対して怒っているのだ。そして、ウクライナやガザでの戦闘が終わる兆しはない。
コロナがようやく収束し、経済も回復しつつある。だが、2024年も世界中で争いが続き、弱い政治がそれを止められない、という状況は変わらないのではないだろうか。今年も1年間、ご愛読ありがとうございました。皆さま良いお年を。
●24年は自民党一強が終焉か 致命的だった岸田首相の「解散なし」判断 12/29
年末にあたり、今年の政局を振り返りつつ、来年の展望をしてみたい。
今年は、岸田文雄首相が解散に踏み切るかどうかで揺れた一年だった。
筆者は、岸田首相が「反撃能力保有を含む防衛力の抜本的強化」「異次元の少子化対策」「原子力の活用やマイナンバーカードの普及」などの政策を本格的に進めるのであれば、解散して「国民の信」を問うのは不可避だろうと予想していた。信を得ずして、このような賛否の分かれる問題を成し遂げることはできないと考えたからだ。しかし、岸田首相は解散しなかった。
この判断は岸田政権にとって致命的だった。岸田首相は「解散できない首相」の烙印(らくいん)が押され、支持率も急落した。さらに、12月に入り、自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる事件が表面化し、事態はさらに悪化した。
来年の政局はどう動くか。
岸田政権の3月退陣を予想する説も語られているが、筆者は可能性は低いと見る。まず、来年度の予算審議を控え「岸田降ろし」を正面切って言いにくい状況がある。
また、安倍派や二階派は、派閥事務所の強制捜査などが行われ、派の存亡が問われる事態となっている。とても「岸田降ろし」をしている余裕はない。他の派閥も同様だ。今、急いで岸田首相を引きずり降ろしても、この局面を収拾できる見通しはない。
一方、もし岸田首相が会期途中で政権を投げ出すなら、総裁選なしに首相指名選挙に臨まなくてはならなくなる。
一本化ができなければ自民党分裂≠フ可能性もありうる。そんな事態が現実に起これば、自民党は二度と立ち直れないかもしれない。結局、いろいろあっても通常国会の会期末までは、岸田首相を支えるしか方法がないのではないか。
来年11月になれば衆院議員の任期は残り1年を切る。つまり、そう遠くない時期に解散・総選挙が行われるということだ。しかし、誰が総裁になっても、自民党が「選挙に勝てる」状況に回復させることは難しいのではないか。
自民党の一部には、森喜朗内閣から小泉純一郎内閣への交代劇のような展開を期待する声もあるが、おそらくうまくはいかないだろう。そもそも小泉元首相に匹敵する「役者」は現在の自民党にはいない。
要するに、第二次安倍晋三内閣以来続いてきた自民党の「一強体制」が終わるということだ。これを「混迷の時代の到来」と見るか、「新時代の幕開け」と見るかは、人それぞれだろう。
はたして、国民は自民党の立ち直りを期待するのか。それとも野党に期待をかけるのか。来年は、今後の日本政治、ひいてはわが国の将来を決める大切な年になるかもしれない。 
●自民党議員の逮捕・起訴は直近5年で8人…期待できぬ自浄作用 12/29
12月28日、東京地検特捜部は東京・江東区長選挙を巡り区議らに現金を配ったとして、公職選挙法違反容疑で衆議院議員の柿沢未途前法務副大臣を逮捕した。
派閥の政治資金パーティーを舞台にした多額のキックバック問題でも「現役議員の逮捕者が出るのではないか」と自民党内が揺れるなかでの逮捕。永田町には衝撃が走ったが、遡れば直近5年で「政治とカネ」の問題で逮捕・起訴された自民党所属の国会議員は柿沢容疑者も含め8名にものぼっている。
「2019年にIR汚職で秋元司元内閣府副大臣、2020年には河井克行元法務大臣と河井案里元参院議員、2021年に鶏卵業者から賄賂を受け取ったとして吉川貴盛元農林水産大臣、同年に公職選挙法違反の寄付容疑で菅原一秀元経済産業大臣、2022年にパーティー収入の過少申告で薗浦健太郎元外務副大臣、2023年に洋上風力発電会社からの収賄容疑で秋本真利元外務政務官らが逮捕、起訴されました。岸田政権になってから、柿沢衆院議員で2人めの逮捕者です。これはかつてない異常事態です」(事件担当記者)
橋下徹元大阪市長は自身のX(旧ツイッター)で《パー券“裏金”より額がでかい政策活動費 報告書への記載必要なし 選挙年の自民党は17億円超。→裏金の本丸は政策活動費。永田町の国会議員たちは政治規正法違反、公職選挙法違反、脱税犯の集まりと化している。立法者なのに法律知らず。恐ろしい。まず研修からやれ。》と書き込んでいる。
この現状について、政治担当記者はこう語る。
「こうまで逮捕者が出ると、もはや自民党の自浄作用は期待できません。12月28日、岸田首相は記者団に『強い危機感を持って政治の信頼回復に努めなければと感じている』と言いましたが、果たして国民はこの言葉を信用してくれるのか。岸田首相が打ち出した政治改革に向けた『新組織』もトップに菅義偉前首相の名前も出ていますが、具体像はまったく見えません。2024年1月の通常国会までにキックバック問題で逮捕者が出るようなことになれば、岸田政権はもちろん自民党は瓦解します」
自民党議員たちは、国民がレッドカードを突きつけていることに気がついているのだろうか。
●韓国軍、竹島の防衛訓練実施=非公開で今月中旬 12/29
韓国軍などが今月中旬、島根県・竹島(韓国名・独島)の防衛訓練を非公開で実施していたことが明らかになった。韓国メディアが29日に報じた。
日本外務省の鯰博行アジア大洋州局長は在日韓国大使館の金壯※(※火ヘンに玄)次席公使に、在韓国日本大使館の熊谷直樹総括公使は韓国外務省の徐旻廷アジア太平洋局長に、それぞれ「極めて遺憾だ」と抗議した。
年2回行われる定例の訓練で、尹錫悦政権では4回目。聯合ニュースによると、今回は海軍と海洋警察が参加し、前回と同様、上陸は行われなかった。韓国国防省は「われわれの領土、国民、財産を保護する任務を遂行するために(訓練を)実施している」と説明した。
 12/30

 

●日本初の「女性総理になってほしい」政治家ランキング! 1位は? 12/30
発足から2年経つも、ここ3カ月の内閣支持率が最低を更新し続けている岸田政権。不支持が加速した背景には、経済対策のグダグダぶりをはじめ、国民が物価高で苦境にあえぐなか自民党派閥の政治資金パーティーによる“裏金疑惑”が大きく影響している。
NHKが12月に行った世論調査によると、支持しない理由に「実行力がないから」「人柄が信頼できないから」と岸田首相の政治手腕を疑問視する声も多い。
こうした声を受けてか、12月22日放送の『よんチャンTV』(MBSテレビ)内で元自民党政調会長の亀井静香氏は、次回以降の選挙について「自民党は女性の党首でないと選挙できないな。上川(陽子)か高市(早苗)かどっちかがなるよ」と発言するなど、日本初の女性総理の機運も高まっている。
果たして、同性から最も「初の女性総理になってほしい」と支持を集めている政治家は誰なのだろうか。そこで本誌は、20歳以上の女性500人を対象に「総理になってほしい女性政治家」のアンケート調査を実施。クロス・マーケティングの「QiQUMO」を利用した。その結果を、ランキング形式で発表する。
まず、3位に選ばれたのは、自民党の高市早苗(62)衆院議員。
高市氏は、テレビ朝日のキャスターを務めたのち、’93年の衆院選で初当選。’06年の第一次安倍内閣で内閣府特命担当大臣として初入閣し、その後の第二次安倍内閣では女性初の総務大臣に就任。’21年には自民党総裁選に出馬したものの落選し、現在の岸田内閣では、内閣府特命担当大臣と経済安全保障担当大臣を兼任している。
目標とする政治家として、マーガレット・サッチャーの名を挙げている高市氏。“鉄の女”を踏襲しているようで、直近では、自身が発足した経済勉強会に党内から批判があがったことに対し、Xで《現職閣僚が担務外の政策を同僚議員と一緒に勉強する事の何が悪いのか、意味が分からん》と真っ向から反論。このような毅然とした態度に、好感をもつ女性は多いようだ。
「はっきりとした変わらぬ主張や精神に共感している、唯一無二の保守の女性政治家だと思うから」
「自分の意見を言えてまわりを引っ張っていける力を持っていそうな人だから」
「とても賢くしっかりとした政治家としてのスタンスを持っている」
「政治の知識が有り、ブレがない所」
また、安倍内閣のもとで長くキャリアを積んだ経験から「安倍元首相の後継者」としての呼び声も高く、「高市さんは、女性とか関係なしに、安倍総理の思想を受け継ぎ、日本を大事に、リードしてくれると思っているので、ぜひなってほしい」と、期待を寄せる声もあった。
続いて、2位に選ばれたのは田中眞紀子氏(79)。
「日本列島改造論」を唱え、高度経済成長を支えた父・田中角栄さんの背中を追って、’93年に衆院選挙に初当選し政界入り。翌年いきなり村山富市内閣で初入閣を果たし、’01年の小泉内閣では女性初の外務大臣を務めた。
しかし、’02年に秘書給与流用疑惑の責任をとる形で議員辞職し、’03年には自民党を離党。09年には夫ともに民主党に移り、野田内閣では文科相を務めるも、過激な言動などから地元の支持を失い12年の衆院選挙で大敗。’14年の衆議院議員総選挙への立候補を見送って以来、表舞台からは姿を消し、政界からは事実上引退している。
そんな田中氏だが、今年12月8日に突如永田町で記者会見を行い「皆様聞こえますかこのドラ声が。11年ぶりに永田町の土を踏みました。相変わらず空気がきなくさい」と“眞紀子節”を見せた。政治資金問題が騒がれるなか“帰還”したこともあって、以前のような発言力を期待する声が多く寄せられていた。
「古株の政治家にも物怖じしたり忖度しなそう」
「相手が誰であろうと、言いたいことはバシッと言ってくれそうだから」
「田中眞紀子は歯にきせぬハッキリ物事を言うので今の平和ボケしてる政治家に喝を入れて欲しい」
また、浮世離れした感覚を持つ政治家が多いことから、田中氏が政界から一旦引退していることをあげて「統率力がありそうだから。経験もあり、現在は議員の座を退いていることから、一般庶民の生活も生身で観察出来ていそう」と庶民感覚を期待する声もあった。
そんな田中氏を抑え、1位に選ばれたのは都民ファーストの会の小池百合子氏(71)。
アラビア語通訳者からニュースキャスターに転身し、’92年の参院選で当選。小泉内閣で環境大臣などを務めたのち、’06年に発足した第一次安倍内閣では女性初の防衛大臣に就任。また、’08年には女性として初めて自民党総裁選にも出馬し、’16年には女性初の東京都知事に就任し、’20年に再選を果たした。
ほかの女性政治家と比較して“女性初”の実績が多い小池氏だけに、その手腕を期待する声が多かった。
「都知事になってる人だから、総理大臣にもなる力があると思うから」
「都知事としても経験があり以前は衆議院議員もしていた政治家経験が他の人よりも長く いろいろな政策を打ち出していることに期待がもてる」
「リーダーシップがあるし、都政である程度の成果も上げていると思う」
また、コロナ禍での小池氏の対応を評価する声も多い。東京オリンピック・パラリンピックの開催や外出の自粛要請など世論が大きく分かれるような問題に数多く直面していたが、「コロナ対策で頑張った」「コロナ禍の大変な時もよく働いていたから」などと、おおむね肯定的に捉えられているよう。首相になってその経験を生かしてほしいという声が多く寄せられていた。
「東京都知事の実績を活かして 頑張ってもらいたいから」
「大都市の東京都を上手にまとめ、新しいアイデアやリーダーシップがあると感じています。しがらみに引きずられる事の無い決断力や行動力に期待を持ちます」
「コロナ禍で都民のために奮闘していた姿が印象に残ったので」
岸田首相は解散時期について明言はしていないが、年明け近くに行われるという見方もある。果たして、このなかから”女性初”の総理大臣が誕生するのか――。
●岸田内閣2023年 12/30
●上半期〜跳ねた卯年…広島G7まで支持率上昇 6月解散見送りで暗転
岸田内閣の2023年をFNN世論調査で振り返る本企画。前編は上半期をお届けする。
支持率グラフは1つの山を描いた2023年
2023年、岸田政権は、発足から10月で3年目に突入した。世論調査で岸田政権の2023年は支持率のグラフを見ると、1つの山の形を描く形となった。
30%台の支持率で始まった内閣支持率は、5月の広島G7サミットに向けて、右肩上がりが続き、50%台を回復。岸田首相は順調な政権運営を進めた。
ところが、6月以降、潮目が変わる。きっかけは、マイナンバーカードでの紐付け記録ミスの発覚だった。政府の個人情報管理の信頼が揺らぐ事態で、支持率の逆ドライブが始まる。
9月、副大臣・政務官に「女性起用ゼロ」という内閣改造で、支持率は下落。10月から11月にかけて、経済対策を決定するも、「増税めがね」の言葉に象徴される厳しい評価にさらされ、内閣支持率は政権運営の“危険水域”ともいわれる20%台に落ち込んだ。
さらに年末には、自民党の派閥の政治資金疑惑が、追い打ちをかける形で、過去最低を更新した支持率は22.5%にまで落ち込んだ。
「卯年は増える」年始会見で「異次元の子育て支援」を表明 支持8割超 
2023年(卯年)1月4日の年頭会見。
岸田首相は、「『卯(うさぎ)』は『茂(しげる)』を意味し、繁殖する、増えることを示すと言われている」と切り出した。その言葉通り年明け以降、内政・外交で掲げた政策で支持率が「増える」展開が続いた。
年頭会見で新たに「異次元の少子化対策」を打ち出し「子ども関連予算を倍増させる」と掲げた。この姿勢に1月の世論調査では、82.5 %が「賛成」と圧倒的に支持。3月にとりまとめた「次元の異なる少子化対策」には、児童手当の規模拡大、育児サービスの拡大、男女とも育児休業の取得の促進などの方針が盛り込まれた。この「次元の異なる少子化対策」の具体化について4月の世論調査では「評価する」が54.1%と過半数が支持した。
1月世論調査「異次元の少子化対策のために子ども関連予算を倍増」
賛成 82.5% / 反対 13.2%
4月世論調査「次元の異なる少子化対策への評価」
評価する  54.1% / 評価しない 38.4%
物価高対策 3月に低所得者世帯に3万円給付…52%が「評価」
2023年は1年を通して、消費者物価指数がプラスとなり、物価高騰が続いた。岸田政権は3月、低所得世帯を対象に3万円の給付を決定、くわえて住民税非課税世帯の子ども1人当たり5万円の支給も決定した。
11月に決定した非課税世帯への7万円給付の物価高対策を含む経済対策は、世論調査で7割が「評価しない」と答えているが、3月当時、物価高対策の3万円の給付金についての世論調査では「評価する」が52.4%と過半数を超えていた。3月に物価高が進む中で、低所得者を対象とした給付金は3月当時、内閣支持率にプラスに働いたとの調査結果がでた。
春闘に向け、賃上げ要請に動く岸田首相を71%が「評価」
さらに、労働団体「連合」によると、30年ぶりの高水準となった、平均賃上げ率3.58%の結果をもたらした春闘に先立ち、岸田首相が政府として経済界に賃上げを働きかけた姿勢は、3月の調査では、7割以上が「評価する」と回答。こちらも内閣支持率の上昇に貢献した。
3月世論調査「低所得者世帯への3万円給付、子ども1人あたり5万円支給への評価」
評価する  52.4% / 評価しない 44.0%
3月世論調査「岸田首相が経済界に賃上げ実施を要請していることへの評価」
評価する  71.4% / 評価しない 23.9%
地元広島でのG7サミット開催 70%が「評価」支持率50%超に押し上げた岸田外交
2023年の岸田政権のハイライトは、5月19日〜21日まで岸田首相の地元・広島で開催したG7サミットだった。
岸田内閣の支持率は50.4%に上昇、議長としての岸田首相について「評価する」声は70.3%に上った。また、ウクライナのゼレンスキー大統領が広島にサプライズで招待・訪問しサミット首脳と会談したことについて「ウクライナの状況改善に効果があった」との意見は60%に上った。
2023年5月世論調査「岸田内閣支持率」
支持する   50.4% / 支持しない  44.5%
5月世論調査「G7広島サミット議長としての岸田文雄首相」
大いに評価する   15.1% / ある程度評価する  55.2% / あまり評価しない  15.2% / まったく評価しない 7.2%
5月世論調査「ゼレンスキー大統領の来日による、ウクライナの状況改善への効果」
大いに効果があった   12.3% / ある程度効果があった  47.7% / あまり効果がなかった  26.3% / まったく効果がなかった  7.1%
こうした上昇トレンドの中、岸田首相が水面下で模索したのが、衆議院の解散だった。
6月の通常国会会期末、永田町は、与野党の間で、岸田首相が解散に踏み切るだろうという見立ての中で攻防が続いた。衆議院の任期4年の折り返しにも満たない時期にもかかわらず、記者会見では連日岸田首相に対し、解散の判断を問う質問が相次いだ。6月13日の「いつが適切なのか諸般の情勢を総合判断する」との首相答弁については「解散に含みを示した」との解釈が飛び交った。
しかし、2日後の15日夕方、岸田首相は「今国会での解散は考えていない」と発言し、2023年前半のハイライトは、岸田首相自らが火消しをする形で幕を閉じた――。
●下半期〜年金データでミス発覚…支持率は右肩下がり “危険水域”20%台定着
下半期の支持率は下落の一途…契機はマイナカード問題
順調な政権運営を進めてきた、岸田政権だったが、6月に、マイナカードの運用で、他人の年金記録が閲覧できる問題が発生していることが判明。2023年を振り返ると、岸田政権のつまづきのきっかけとなる問題となった。
国会では、マイナンバーカードを2024年秋に原則廃止する法案が成立したものの「賛成」42.1%、「反対」52.0%と岸田政権の政策に久々に、反対意見が半数を超える意見となった。
さらに、先々のマイナカードをめぐる政府の利用拡大方針に対しては「大いに不安」「ある程度不安」を合わせると不安を感じる答えが73.7%。「あまり不安を感じない」「まったく不安を感じない」はあわせて24.8%にとどまった。
   図:6月世論調査「健康保険証を2024年秋に原則廃止する方針について」
6月世論調査「健康保険証を2024年秋に原則廃止する方針について」
賛成  42.% / 反対  52.0%
   図:6月世論調査「政府が進めるマイナンバーカードの利用拡大について」
6月世論調査「政府が進めるマイナンバーカードの利用拡大について」
大いに不安を感じる   31.5% / ある程度不安を感じる  42.2% / あまり不安を感じない  19.2% / まったく不安を感じない  5.6%
マイナンバーカードを巡る年金記録問題に対する不安は、その後も広がりを見せた。健康保険証の廃止について、政府が「2024年秋に原則廃止」とする法律を成立させたことに対し、「予定通り24年秋に廃止すべき」とのは7月、8月の調査とも2割台に、一方で「廃止時期の延期」や「廃止の方針撤回すべき」を求める声は、約75%に上った。
また同時にマイナンバーカードを巡る相次ぐトラブルに対し、政府が「総点検を行い対応する」と対応を示したことに対して「問題が解決する」との答えは18.4%、「解決しない」は78.3%と政権の対応に厳しい意見が続く中、政権支持率は、5月の5割台から41%にまで急落した。
【健康保険証をマイナカードと一体化して、2024年秋に原則廃止】                                
              7月調査   8月調査
2024年秋に廃止すべき   20.9%    23.4% 
廃止時期を延期すべき    36.2%    34.6%
廃止方針を撤回すべき    40.7%    40.0%
【政府が進めるマイナンバー情報の総点検で問題は解決するか】
            7月調査    8月調査
解決する        18.4%    11.2%
解決しない       78.3%    83.5%
【岸田政権の支持率(5月〜8月)】
        5月   6月   7月   8月
支持する   50.4% 46.1% 41.3% 41.5%
支持しない  44.5% 49.2% 54.4% 53.5%
9月:内閣改造での「女性ゼロ」となった副大臣・政務官人事
年末にかけて、岸田政権は3段パンチで政権体力を失っていく。一撃目は9月の内閣改造だった、岸田首相にとっては“誤算”ともいえる結果となった。
9月の内閣改造は、自民党人事のタイミングに合わせて行われる定期人事の一環で、政権浮揚につながるケースが大半だ。岸田首相が、女性閣僚を過去最多に並ぶ5人起用したことについては「評価する」が65.1%、「評価しない」が28.3%と大きな支持を得た。ところが内閣改造自体への評価は、真逆の評価となり「評価する」は33.3%、「評価しない」49.8%となった。
これについては、閣僚人事に続いて行った、副大臣・政務官について54人全員が男性、「女性ゼロ」という人事が指摘された。大臣人事で「女性最多」を演出した直後に副大臣・政務官で「女性ゼロ」となったことで、女性の活躍の本気度に、疑念を持たれた結果だった。
   図:9月世論調査「内閣改造の評価」
9月世論調査 「内閣改造の評価」
評価する   33.3% / 評価しない  49.8%
   図:9月世論調査 「内閣改造で女性閣僚が過去最多に並ぶ5人起用されたこと」
9月世論調査 「内閣改造で女性閣僚が過去最多に並ぶ5人起用されたこと」
評価する   65.1% / 評価しない  28.3%
10月・11月:「増税めがね」と不評の経済対策
内閣改造の機会を政権浮揚につなげられなかった岸田首相は、続いて、物価高対策と持続的な賃上げを掲げる経済対策に着手するものの、方針を示した後の10月・11月・12月の調査でも経済対策に対しては、「期待する」34.9%→「評価する」27.2%→「期待する」24.4% 「期待しない」62.2%→「評価しない」66.6%→「期待しない」74.7%と、一貫して“肝いりの経済対策”への期待はしぼんでいくトレンドが続いた。
岸田首相は節目の度に、低所得者の7万円の給付を行った後、賃上げを経済界に働きかけ、政府としては4万円の定額減税を行い、2024年夏頃には、可処分所得の伸びが物価上昇を上回る環境を目指すと説明したが、その政策目標は有権者には届かない状況となった。
11月の世論調査では、経済対策を「評価しない」理由を聞いたところ、「今後増税が予定されているから」39.9%、「政権の人気取りだから」20.6%と、この当時、SNSなどで「増税めがね」と岸田首相を揶揄する言葉が広がったように、岸田首相が防衛費増額のための増税を行うと言った懸念が根深く、政策評価の足を引っ張った。
【10月〜12月世論調査 経済対策への「期待」「評価」】                  
                  10月   11月   12月
「期待する」・「評価する」    34.9%  27.2%  24.4%
「期待しない」・「評価しない」  62.2%  66.6%  74.7%
   図:11月世論調査「経済対策を評価しない理由」
11月世論調査「経済対策を評価しない理由」
今後、増税が予定されているから   39.9% / 政権の人気取りだから        20.6% / 経済対策より財政再建を優先すべき  17.3% / 物価高対策として金額不足      11.5%
スピード感が遅い           6.7%
12月:「政権中枢にダメージ」の安倍派の裏金疑惑
2023年末に政権に追い打ちとなった“3段目のパンチ“が、自民党安倍派での派閥パーティー収入を巡る裏金疑惑だ。当時の松野官房長官、西村経産大臣については、派閥から“裏金“を受け取っていた疑惑が指摘され、安倍派に所属する岸田内閣の4閣僚が事実上の更迭という形で交代となった。
また、自民党役員でも、萩生田政調会長、高木国対委員長、世耕参院幹事長が同様に”裏金“受領の疑惑を指摘され、役職の辞任届の提出、人事で交代に追い込まれることになった。
一連の「政治とカネ」に関わる12月の世論調査は、いずれも岸田内閣・自民党・派閥に対して厳しい意見となった。
   図:12月世論調査「自民党の派閥での“”裏金疑惑“に対する自民党・派閥の対応について」
12月世論調査 「自民党の派閥での“”裏金疑惑“に対する自民党・派閥の対応について」
大いに問題がある 72.6% / ややも大がある  20.6% / あまり問題は無い 4.8% / 全く問題は無い  1.0%
   図:12月世論調査「政治資金の問題が発覚した自民党派閥について」
12月世論調査 「政治資金の問題が発覚した自民党派閥について」
大いに問題がある 51.9% / やや問題がある  36.4% / あまり問題は無い  8.1% / 全く問題は無い   2.3%
   図:12月世論調査 「自民党総裁の岸田総理の責任について」
12月世論調査 「自民党総裁の岸田総理の責任について」
大いに責任がある 50.9% / やや責任がある  36.8% / あまり責任はない  9.1% / 全く責任はない   2.1%
こうした3段パンチに伴い、岸田内閣の2023年終盤の内閣支持率は、政権の“危険水域”と言われる3割を連続して割り込み、過去最低を更新し続ける結果となった。
12月の段階で、松野前官房長官、高木前国対委員長、世耕前参院幹事長、萩生田前政調会長と、安倍派の「5人衆」への任意の聴取が行われた。今後の捜査の進捗とともに、岸田政権・自民党への刑事責任がどういう形で下されるのか2024年は逆風の年明けとなることは必至の情勢だ。
2024年は「辰年」だ、「昇る歳」といわれるものの、暗雲の中、岸田政権が、2023年上半期のような上昇機運をつかむことは視界不良だ。岸田首相は、予算も成立した経済対策で所得が、物価高を乗り越えていく辰年を目指してゆくのであろう。ただし、岸田政権にとっては、世論の支持、自民党内での求心力を失った中、政権の継続できるかどうか瀬戸際からのスタートの2024年となっている。
●「沖縄を馬鹿にするなよ」繰り返された国と沖縄県の法廷闘争、民意置き去り 12/30
12月20日、国が沖縄県に変わり手続きを執行して辺野古の埋め立てを進めようという「代執行」裁判の判決がありました。繰り返された国と県の法廷闘争。そこに見えるのは、民意が置き去りにされてきた苦悩の歴史です。
辺野古埋め立て 「国の代執行」認める判決
辺野古新基地建設をめぐって、大きな節目となる代執行訴訟の判決。
その日、沖縄を包んだ、降りしきる雨と冷たい風の中で、県民は待っていた。
判決は、国の主張を全面的に認め、その受け入れを命じる、沖縄県にとって厳しいものだった。
「沖縄を馬鹿にするなよ!」
名護市辺野古は、オスプレイも離着陸する世界一危険とされる普天間基地の移設先だが、2019年に行われた埋め立ての賛否を問う県民投票で、反対が投票総数の7割を超えた。
賛成 19.0% / 反対 71.7%
計画では、およそ152ヘクタール埋め立てられ、V字滑走路は1800メートルに及ぶ。
その先端部分である大浦湾で、マヨネーズ状と言われる軟弱地盤が見つかり、国は、県に地盤の改良に必要な設計変更を申請。それを沖縄県が承認せず裁判となったが、最高裁で県の敗訴が確定した。
それでもなお承認しない県に代わって、国が承認を執行しようと玉城知事を提訴したのが今回の代執行訴訟だ。
国と沖縄県、双方の主張は真っ向から対立してきた。10月末に行われた口頭弁論の開廷前。
玉城デニー沖縄県知事「住民の意思に沿って行政を行い、その行政権限を国は奪ってはならない。そう書いてあるのが憲法の地方自治の本旨なんです。それを話し合いもせず、言うことを聞かないから『お前は退いてろ』と言わんばかりに権限を取り上げて、我々の未来を埋め立てようとしている」
支持者「デニー知事頑張れ!」
そう背中を押されて、知事が入廷した。
代執行訴訟の口頭弁論は、国側から始まった。
国側の主張「設計変更申請を沖縄県が承認しないのは違法である」「代執行以外の方法によって是正を図ることが困難であることは明らかである」「承認しない状態を放置すれば、我が国の安全保障と普天間飛行場の固定化の回避という重要課題に関わるから、著しく公益を害する」
一方、被告である玉城知事が弁論で強調したのは、対話と民意だった。
玉城知事陳述「対話によって解決を図る方法を放棄して、代執行に至ろうとすることは到底認められません」「今日に至るまで、国は米軍基地の抜本的な被害軽減のための外交交渉を行わず、県外移設の選択肢を政治的な理由から排除してきました。基地のもたらす深刻な被害に日常的にさらされながら、このような国の姿勢を見てきたからこそ、沖縄県民は辺野古新基地建設に反対しているのであって、何が沖縄県民の公益かの判断は、国が押し付けるものではなく、沖縄県民が示す民意こそが公益とされなければなりません」
裁判は、県側の弁論の後、あっけなく閉廷。即日結審した。
行政官として最高裁判決に従うべきか、辺野古反対の民意を背負った政治家としてあるべきか。玉城知事は、そのはざまで苦悩したという。
沖縄大学名誉教授の仲地博さんは、その苦悩と沖縄の主張の意味をこう話す。
仲地名誉教授「法治国家であれば最高裁の判断に従うべきだというが、法治国家はもちろん大事です。しかし憲法はもう一つの価値を保障している。わざわざ一章を設けて地方自治の保障を規定した。地方自治を実践する地としての沖縄が、現代の日本における沖縄の価値なんだろうと思います」
歴代沖縄県知事 抗いの歴史
沖縄が地方自治のありようを最初に問うたのは、28年前に遡る。
1995年、当時の大田昌秀沖縄県知事は民有地をアメリカ軍用地として強制使用するための手続きである代理署名を拒否し、村山総理に訴えられた。
地方自治体は国の下請け機関とされ、国から委任された事務を拒否するのは不可能といわれた時代に風穴を開けたと評された。それは、地方分権の動きを牽引することになったという。
仲地名誉教授「(大田元知事は)人権、平等、地方自治実現の意識を大変強く持っておられた。沖縄は自己決定権ができない歴史を持ってるものですから、自治の主張というのも知事の中に強い信念としてあったということです」
そして、大田氏は、最高裁でこう意見陳述した。
大田知事陳述(1996年7月)「安保条約が日本にとって重要だというのであれば、その責任と負担は全国民が引き受けるべきではないかと思っています。そうでなければ、それは差別ではないか、法の下の平等に反するではないかと県民の多くは主張しているのです。地方自治の本旨に照らして、沖縄の未来の可能性を切り拓くご判断をしてくださいますよう」
大田知事陳述後会見(1996年7月)「差別的処遇を受けているというような方策をとっていただきたくないということ、基地問題の解決のありようは、日本国全体の将来の問題に結びつくんじゃないかと」
だが、最高裁は、その訴えを退けた。その後、大田氏は、民有地使用の手続きに応じることになる。抗議する反戦地主らにこう釈明した。
大田知事(1996年9月13日)「ここは一歩下がって、政府と協力しながら、いまの産業の問題とか雇用の問題とか。総合的にやることによってしか基地問題の整理縮小はできないというのが、6年やって来て、そういう判断、認識を持たざるを得なくなってきている」
そう判断するに至った理由のひとつが、当時の橋本龍太郎総理の言葉にあった。
橋本龍太郎総理(1996年9月10日)「今日まで沖縄県民が耐えて来られた苦しみと負担の大きさを思う時、私たちの努力が十分なものであったかについて、謙虚に省みるとともに、沖縄の痛みを国民全体で分かち合うことがいかに大切であるかを痛感しております」
政府は、基地の整理縮小推進などの努力に加え、沖縄政策協議会という対話の場の設置や、沖縄振興のための調整費50億円を提示したのだ。
大田県政で知事公室長などを務めた高山朝光さんは、大田氏の判断の背景をこう振り返る。
元沖縄県知事公室長 高山朝光さん「大田知事が期待した本気度なんですよ。橋本総理は本気になってきた。(代理署名を)拒否されながら、全省庁を挙げて沖縄のために何ができるか、というのを各省庁に取り組ませた」
水面下であった政府側とのやりとりを明かす。
元沖縄県知事公室長 高山朝光さん「裏でね、知事の思いをもう少し和らげる方法として、振興策なり、そういうことで何かないかと打診を受けた。しかし、知事の思いはそんなもんじゃありませんと。取引じゃありません。沖縄の問題を政府として実際に正面からこれに取り組むかどうかという、その姿勢が問われているんですと」
その後、対話を重ねたのが、当時の国と県の関係だった。
それを振り返る大田氏の言葉が残っている。
大田元知事(2016年6月取材)「今考えますとね、日本政府に橋本総理や梶山官房長官のようにですね、沖縄問題について理解のある方々がいればね、少しは良くなるんですが、全くそれがないですね、残念ながら」
そう語ったのは、大田氏が亡くなる一年前のこと。そのころ、同じように国と法廷闘争に入っていたのが翁長雄志前知事である。
前任の仲井眞知事による辺野古埋め立て承認(2013年12月)を、翁長知事が取り消した(2015年10月)ことで、国は代執行によって承認の状態に戻そうと提訴した。
翁長知事(2015年11月)「沖縄県民にとっては、銃剣とブルドーザーによる強制接収を思い起こさせるものであります。埋め立ての承認および取り消しの審査権限は沖縄県知事にあります。政府から私が適法に行った承認取り消しを違法と決めつけられるいわれはありません」
大田氏以来の国に提訴された知事の陳述は、19年の時を超え同じ訴えだった。
翁長知事陳述(2015年12月)「日本には、本当に地方自治や民主主義は存在するのでしょうか。沖縄県のみに負担を強いる今の日米安保体制は正常と言えるのでしょうか。国民の皆様全てに問いかけたいと思います」
その後も国との裁判が繰り返される中、翁長氏は、2018年、病に倒れた。
妻・樹子さんは、知事に当選した夜の翁長氏の言葉を、今も忘れないでいる。
翁長知事の妻・樹子さん「国は言うことを聞いてくれない。たぶん裁判所も僕たちの味方にはなってくれない。じゃあ、どうするか。闘う姿をみんなにみてもらうしかないわけ。必死になって抗う姿を県民と全国民と全世界に見てもらうしかない。政府に押しつぶされる姿をみんなに見てもらう、これしかないなと」
沖縄の対話要請とこの国の政治
それでも、後を継いだ玉城知事は、再三にわたり対話を求めてきた。
玉城知事 河野外相に対話要請(2019年6月)「問題解決のために沖縄県との真摯な対話の場を作っていただきますよう」
玉城知事 岸防衛相に対話要請(2020年10月)「問題解決に向け県との対話に応じていただきたいと考えています」
玉城知事 西銘沖縄担当相に対話要請(2021年10月)「岸田総理の所信表明においても丁寧な説明、対話による信頼を地元のみなさんと築くとおっしゃっている。格段のお力添えを」
玉城知事 岡田沖縄担当相に対話要請(2022年9月)「問題解決に向けた沖縄県との対話に応じていただくとともに」
しかし、問題解決に向けた対話は実現しなかった。
松野博一官房長官(2023年10月)「政府と沖縄県との対話については現時点で具体的な予定はないものの、基地の負担の軽減を図るため全力で取り組んでいく考えであります」
同じ時間に、沖縄県庁では…
玉城知事「政府が誠意をもって県と対話による協議で解決を図ろうとしたのは橋本政権のころだと思う。翁長知事、および私の現在においては、政府のそういう姿勢、つまり問題を解決しようという姿勢での対話協議を行っているということはない」
翁長氏も、沖縄に対する政権の姿勢をかつてと比較し嘆いていた。
翁長知事の妻・樹子さん「あの方(橋本元総理)たちは、本当に古い沖縄を、戦前・戦中・戦後の沖縄をよく知って下さっていて、結局やることは今の政府と変わらない。けど、その苦しみを知ろうとして下さる姿勢があったから我慢ができたって、翁長は言ってたの。今の方たちはそれが一切ない。日本全国、それで助かるんだから沖縄にあって当たり前だろうと。あんなふうに一緒に苦しんでくださって、申し訳ないと本当に思って下さっているのがひしひしと感じられるから、同じことをするのでも我慢できたんだよって言ってたの」
辺野古埋め立て 民意と公益
「国による代執行を許さない」「沖縄を再び戦場にさせない」。辺野古問題のみならず、南西諸島の軍備増強に危機感を抱く沖縄では、県民集会が相次いでいる。
大浦湾のすぐそばに暮らす渡具知武清さん。声を上げ続ける意義をこう話す。
渡具知武清さん「まだまだ足りないっていうのが元にあるんだけど、力不足もあるし、一人じゃどうしようもできないから一緒に頑張ろうねと団結もできるし」
渡具知さんは、2004年から毎週土曜日にキャンドルを灯して、辺野古の基地のゲート前に家族で立ってきた。きれいな海を守りたい、その一心で始めた小さな抵抗だった。
当初2300億円とされた総工費予算は、現在9300億円。すでにその半分近くが使われ、さらに費用が膨らむ可能性が指摘されていることに、妻・智佳子さんは憤る。
渡具知智佳子さん「もっと他にいい方法があるんじゃないのっていうのに耳も貸さないで、ここが唯一って言って、どんどんみんなの税金をつっこんでいくっていうのは、日本の政治って何かなと思います」
そして、今後、代執行が他の地域でも起きる可能性を危惧する。
渡具知武清さん「何も手出しするなということですからね。沖縄はこれがまず初めてだから、問題ができるとこういうことで全部決着をつけるというか。何のための民主主義か」
許田正儀さん「沖縄だから代執行っていう言葉自体が出てくるのかなって思ってね」
辺野古に暮らす許田正儀さんは、かつて移設を容認していた。だが、いま、少数を切り捨てる民主主義に疑問を抱いている。
許田正儀さん「(沖縄は)日本の国民の中でわずか1%ですよ。100万人余りの県と1億2千万の日本国民にね、わずか1%の民主主義では覆せない。だけど、意思っていうのは尊重してもいいじゃないかと思います」
スーパーを経営し、自らを保守的な立場だと言う許田さん。
アメリカ兵らとも交流を持ち、ベトナム戦争時からキャンプシュワブの恩恵を受けてきたと話す。気持ちは揺れ続けたが、いま、長い混迷と政府の姿勢によって、心が定まった思いでいる。
許田正儀さん「代替施設が出来て、騒音に悩まされて環境的に住めない地域になってしまうとね、みんなで頑張ればなんとかなれたのかなって、そういうことをふと考えますよ。自分のことはもうどうでもいい。孫たちのことを考えるとね、どんな環境の辺野古になってるんだろうと思いますよ」
渡具知さん一家は、いまも毎週末、キャンドルを灯して基地の前に立つ。
活動を始めた時、長女の和紀さんは2歳だった。
長女・和紀さん「ブーイングされたこともあるんですけど、沖縄の未来を守ることに何の間違いがあるんですかっていうのは自分にも言い聞かせてるし、大浦湾に住んでる絶滅危惧種も含めて2000種類以上の生物たちの命を守ることもちゃんと含めて、それが“命どぅ宝”(命こそ宝)じゃないかなって」
繰り返された国と県の法廷闘争に思う。
長女・和紀さん「根本的なところから、ちゃんと話し合っていくべきじゃないかっていう。私たち人間はそこを忘れているんじゃないか」
そして、12月20日、判決の日―。
判決は、国の主張を全面的に認め、沖縄県に対し、25日までに国の設計変更申請を承認するよう命じた。
判決「被告の承認しないという意思は、明確かつ強固というほかなく、代執行以外の措置で是正をはかることは困難である。被告主張の『対話』は、その方法に当たるとはいえない」「最高裁判決で法令違反との判断を受けた後も、これを放置していることは、それ自体社会公共の利益を害するものといわざるを得ない」
沖縄の民意については…
判決「歴史的経緯等を踏まえれば、沖縄県民の心情は十分に理解できるところではあるが、法律論としては公益を当然に考慮しうるものとはいい難い」
判決は民意を公益と認めなかった。
年明けにも、この海を埋め立てる工事が始まる。今後、最高裁で県が逆転勝訴しない限り、工事は止まらない。
●19年ぶりの女性外務大臣 就任から怒濤の3か月を経た“上川流外交” 12/30
第二次岸田再改造内閣での女性積極起用の目玉人事となった、上川陽子外務大臣。就任早々、世界を舞台に日本外交を展開している。田中真紀子氏、川口順子氏以来19年ぶりの女性外務大臣、「上川流外交」とは。その“理想”と“限界”を探る。
19年ぶりの女性外務大臣 怒濤の幕開け〜就任5日でニューヨークへ
2023年9月に発足した第二次岸田再改造内閣で、外務大臣に起用された上川陽子氏。2023年は日本が「G7議長国イヤー」だったことや、直後に国連総会を控えていたため「林大臣続投」との見方が外務省内では広がっていた。
しかし、サプライズ人事として、改造の目玉となる女性閣僚としての“抜擢起用”となった。岸田首相は理由を「国際人脈が豊富で、閣僚としても経験豊富」と説明した。
「林前大臣をはじめとして、先人たちが築いてきた日本外交の成果をしっかり引き継ぎたい」(上川外相)と、就任わずか5日後に、国連総会のためニューヨークを訪問。5日間で16人の首脳や外相らと相次いで会談を行ったが、ある外務省幹部は「そつなくこなし、とても歓迎されて良い雰囲気だった」と評価した。
「とにかく無我夢中で働こうと駆け抜けている」(上川外相)との言葉通り、臨時国会もあった中で、就任から3か月で12の国と地域を訪問している。
中東訪問にかけた思い
就任2か月となる11月上旬。上川大臣はイスラエル、パレスチナ自治区(ヨルダン川西岸地区)、ヨルダンを訪問。イスラム組織「ハマス」とイスラエル軍の衝突以降、日本の閣僚として初めての現地訪問となった。
ヨルダンでは、人道危機が続くパレスチナのガザ地区出身で、家に戻れなくなっている子供たちと面会。また、イスラエルでは「ハマス」に拘束された人質の家族を訪問した。ある外務省関係者は「母のような温かさで握手や抱擁を交わしていた姿が印象的だった」と語った。
出発前、「罪のない人々が被害に遭っていることに、大変心を痛めている。外交努力を粘り強く続けたい」と悲痛な面持ちで語った上川大臣。ある外務省関係者は「訪問は、上川大臣の強い希望で実現した」と説明。別の関係者は「現場の声を聞いてニーズをしっかりと的確に把握したいという、大臣の思いが体現された外交だった」と評価した。
上川流外交のこだわりとは〜ライフワークでもある“WPS”
「上川流外交」について、上川氏自身は「女性ならではの視点を、外交政策に生かしたい」と周辺に語っているという。
その代表的な取り組みが、就任後からアピールするWPS(Women Peace&Security)=女性・平和・安全保障だ。紛争などで被害者になりやすい女性の視点を、紛争の予防や和平に視点を盛り込むことが重要とする考え方だ。
上川大臣も「伝統的に社会・経済分野の課題だった女性の問題を、安全保障分野に結びつけた点で非常に重要だ」と強調。外務省内に大臣直轄のタスクフォースを設置し、さらなる推進を図る考えだ。
国民に支持される外交を
「上川流外交」のもう1つのキーワードは「発信」。就任直後から、「国民の声にしっかり耳を傾け、理解してもらいながら、支持される外交を展開したい」と強調した上川大臣。記者会見では就任以降、情報発信を積極的にすべく、質疑応答の前に自ら発言を行い「発信」に力をいれている。
もう1つ、発信のために力を入れるのは「ソフトパワー」の活用。「日本文化や『おもてなし』をできるだけ理解してもらえるよう工夫したい」と話す上川大臣。実際、国連総会でのフランス外相との会談の際には、出身地・静岡県のお茶を一緒に楽しみプレゼントするなど「上川流おもてなし」を披露。
また、ベトナムやタイなどの東南アジア4か国を訪れた際は「書店に立ち寄り、それぞれの文化や歴史などについての書籍を購入した」という上川氏。発信強化に向けた「ソフトパワー」活用を、上川流外交の“彩”に加えようと腐心している。
上川外交への期待…一方で「限界」指摘する声も
精力的に外交に奔走する上川大臣だが、厳しい声も出ている。ある外務省幹部は「今の外交は『官邸主導』の面が強く、上川大臣が存在感を示すのはなかなか難しい」と指摘。また、上川大臣に対して「発信に力をいれるのがわかるが、そのため新たな仕事が増えて大変だ」(外務省中堅)といった声も出ている。
座右の銘は「鵬程万里」(ほうていばんり)。「鳳凰は一呼吸、万里を飛んでいく」、道のりがはるか遠いことを表す言葉だ。「高い理想を掲げて遠くを見つめるまなざしを忘れずに」と話す上川大臣。しかし、政権としての“体力”が落ちつつある岸田内閣の中で、どこまで自身が理想とする「外交」を追求できるか、難しい年になりそうだ。
●この異常事態は誰のせい? 30年間上昇していない「日本人の給料」 12/30
何かと出費がかさむ年末年始。この機会に「お金」、そして政府が経営者に促すものの一向に上がらない「給料」についてじっくり考えませんか。日本人の給料の現実と、上げ方をわかりやすく解説した本が話題です。その名もズバリ「給料の上げ方」(デービッド・アトキンソン著、東洋経済新報社)。
著者は2017年から日本政府観光局特別顧問、2020年から政府の成長戦略会議委員などを歴任した伝説のアナリスト。給料の本質を明らかにし、給料を引き上げるために動き出せる戦略と戦術を紹介しています。
「30年上がらない賃金」
本書は冒頭から「日本人の給料」の現実について、以下のように解説しています。
日本人の給料は、この30年間ほとんど上がっていません。一方、同じ時期に、税金と社会保障費の負担が増えたたため、手取り収入は大きく下がりました。第二次安倍政権以降、岸田総理も含めて、歴代総理大臣は企業の経営者に「賃上げ」を訴えてきました。しかし、残念ながらその効果は微々たるものにとどまっています。一方、他の先進国では給料がコンスタントに上昇し続けています。
なぜ、日本と海外の国々ではこんなに違ってしまったのでしょうか。答えは「海外では個人が給料を上げる主役になっているから」、この一言に尽きます。
先進国では7割以上の労働者が、自分の給料を上げてもらうよう、毎年経営者と交渉しています。一方、日本人労働者を対象としたある調査では、7割以上の人が「賃上げを求めたことはない」と回答しています。逆に言うと、自ら賃上げを求めたことのある人は日本では3割にも満たないのです。
「異常事態が30年続いている」
経営者への賃上げ交渉の必要性はよくわかる一方、日本人的にはなかなか難しいようにも感じます。しかし、このことについても著者は明確に指摘します。
いつのころに生まれたのかはっきりとはわかりませんが、日本にはお金にガツガツしたり、口に出すことを「はしたない」ととらえる風潮があります。そのため、「自分の給料を上げてくれ」と交渉するのが苦手だったり、慣れていないのも理解しています。また、日本人特有の奥ゆかしさも、給料交渉をためらわせる要素になっているのかもしれません。しかし、給料交渉をすることは、どこの先進国でもごく普通に行われているグローバルスタンダードな行為です。「恥ずかしいこと」でも「遠慮するべきもの」でもありません。このことは、これからの日本で生きていくうえできわめて重要なことですので、ぜひ肝に銘じておいてほしいと思います。
「会社との関係」を捉え直せば給料は上がる
「賃金アップを経営者に求める」となると、労働組合が中心の交渉やストライキを思い浮かべますが、本書ではこういった日本の企業における従来型の交渉術ではなく、労働者個々が、平和裏に、経営者に給料に関する希望を伝え、賃金アップを目指すためのメソッドが数多く紹介されています。その主な内容は以下のようなものです。
・給料が上がらないのは「日本人の能力」のせいではない
・毎年4.2%の賃上げを実現する
・見限るべき社長、ついていくべき社長
・「よいものをより安く」では給料は上がらない
・あなたは「評価される側」から「評価する側」になる
言い換えれば、労働者個々が、自らをマネジメントし、ある種の「自営業」「事業主」的な考えを持って「会社と契約する」ことが、給料を上げていくための方法である、といったもの。前述の著者の解説にもある通り、これから先の日本では確かにこういった働き方は、避けて通れないもののようにも思いました。
「給料が上がらないのは、働く人の努力や能力のせいではない」
なかなか興味深い内容ですが、著者の優しい筆致によって、わかりやすく「交渉のメソッド」が解説されているのも本書の良い点です。最後に担当編集者に聞きました。
「2020年に、著者のアトキンソンさんに東洋経済オンラインで『日本人の「給料安すぎ問題」はこの理論で解ける』という記事を書いていただきました。この記事は200万近いPVを獲得、翌週のテレビ番組にアトキンソンさんが呼ばれるなど、大きな話題となりました。多くの人に『日本人の給料は安い』という認識を抱かせるきっかけとなり、この問題についての書籍も何冊か刊行されました。
本書は、記事で問題提起した『モノプソニー(少数の買い手が多数の供給者に対して独占的な支配力を持つこと)によって給料が抑えられている』状況を、どうすれば打破できるのか、その道筋を書いてほしいと思い、刊行が決まりました。給料が上がらないのは、当たり前のことでもありませんし、働く人の努力や能力のせいでもありません。雇う側と雇われる側、その関係性を見直すだけで、給料が上がっていく流れをつくることができます」
本書で紹介されている全てをすぐに実行できなくとも、「対価の交渉意識を持つ」「働く上でのマインドセット」のヒントにつながる解説がたくさんあります。ぜひ読んでみてください。
●余りにも品がなさすぎた日本のメディア記者 12/30
今年の漢字の1位は「税」、2位が「暑」、3位が「戦」、4位が「虎」だそうですが、どうもしっくりこないですね。「膿」のほうがいいのではないという気もします。個人的には大谷サンの活躍ぶり、5月のコロナ五類への移行、藤井竜王の八冠達成、訪日外国人の回帰など比較的明るい話題も多かったと思います。ちなみに読売新聞恒例の国内10大ニュースは明るいニュースが5つもあり、例年にない良い年だったのです。そうだったかな、と思う方はやっぱりメディアに毒されたもしれません。
こんな株価を誰が予想した?
23年の日経平均上昇率28%!一方アメリカはダウが13%、S&Pが24%、ナスダックは22年の反動が大きく44%の爆上げでした。日経平均は6月に高値をつけてから6か月間高原状態の狭いレンジでの値動きになったのに対してアメリカは3月と10月に調整をいれたもののいわゆる右肩上がりのチャートになっている違いがあります。アメリカの利上げの頭打ち感が視野に入り始めたのが夏ごろであることを考えれば利上げ最中にもアメリカの株は果敢に買われていたということになります。
日本の株価がなぜ6か月間も足踏みをしていることを問う評論はあまりありませんでしたが、正直イケイケドンドンではなかったのは事実です。年末のこの時期になり、グロース市場に反発の兆しが見えてきており、プライム市場を諦めたマネーが動き始めた気配を感じ取っています。ということはプライム市場の高値追い警戒感で海外勢も国内勢も様子見に徹したともいえ、日本経済の回復力を問うことになりそうです。
とはいえ、日経平均28%上昇は素晴らしいではないですか?多分、個人投資家はそんなに上がったかなぁ、という思いが強いでしょう。どう見ても指数相場だったと思いますが、メディア的には「景気が悪い」とは書けないでしょう。「バフェット様は日本株の救世主」と崇めるも「もっと自力で実力勝負せよ」「日本人には銘柄発掘が出来なかったのか」、はたまた「資金力の差を見せつけられた」になるのでしょうか。そんなこと言っているといつまでたってもアメリカのフォロワーになってしまいますよ。
こんな政治を誰が予想した?
就任以来「長くなるぞ」と言い続けた岸田政権。このブログではそれを言うたびに否定の嵐。支持率は株価の逆で右肩下がり。だけど結局23年末でもFumioは健在。そして自民党がどれだけ荒れ狂おうが元副大臣の逮捕者が出ようが何故だか出ない「辞めろコール」。安倍さんの時とは真逆のこの国民感情とメディアの反応は何なのか、といえば案外、キッシーに「頼りないけど一生懸命やっているしな」という奇妙な同情を抱いているのではないかという気がします。
2年ぐらい前から私一人で言い続けた自民党二分論。このブログでそれを言うたびにこれまた否定の嵐。私のような外から見る目線に対して国内の些細な裏情報に木を見て森を見ず的な感もあり、ご意見の全体像がピンボケした感もあり、情報の氾濫を感じました。とっくに劣化しているのに「まだ使える」というのと同じです。私が二分論を唱えたのは野党がだらしないことと自民党内の埋もれた才能を引き出すこと、さらには派閥で個性を没化させ、聞き、考え、交渉するという政治家本来の仕事が派閥の力関係に置き換えられたことで日本の政治が十分に成長できなかった点であります。
二分化させるのかは政治家が決めるのではなく、国民がそのような声を上げればよいのです。「派閥ハンターイ」「パーティーハンターイ」と。国民と政治家の距離感を縮めるチャンスでもあるのです。その点では河野太郎氏は国民との対話をずっと続けている代表的政治家の一人です。嫌いな方が多い一方、人気もあるのは政治家に必要なコミュニケーションを取れる数少ない方なのです。その点では岸田さんも聞く力という点で似ています。茂木さんは自分の頭を信じているので国民の声なんて一つも聞かないでしょう。あの上から目線スタイルが昭和の政治家の典型なのです。果たして自民党は核分裂するのか、来年がキーになりそうです。
こんな謝罪を誰が予想した?
フラッシュがたかれ、困惑した顔つき、慣れない場でうまく自己表現できなかった藤島ジュリー景子氏の姿には「こんな人生に誰がした!」と亡き叔父を恨んでいる気持ちが見え隠れしました。叔父の事実を知っていたかどうかより世の中のトーンの大反転ぶりに青天の霹靂だったのでしょう。同様に日大理事長の林真理子氏のふくれっ面も印象的。真理子流官能小説とは真逆のリアルな裁かれドラマに「これで小説一本書けるわ」と皮算用しているのかもしれません。
それでも今年の謝罪会見NO1は誰が何と言っても兼重宏行ビッグモーター創業者のすっとぼけ会見。これも藤島氏同様、場慣れしていないこともあり、舞い上がった感はあります。とすれば時として百数十人もの記者が詰めかけ、フラッシュがたかれ、テレビカメラが廻るプレッシャーこそが壇上者を追い詰め、自白を迫る民間取り調べ機関、いや公開処刑に近いのかもしれません。言葉を操るはずの記者たちの言葉遣いや態度も非礼で尊大、何様だと思っているのか、私の方がむかついてきます。
日本のメディア記者はいくら職業とはいえ、余りにも品がなさすぎると思います。いわゆる現代版「さらし首」の実行者であり、中国文化大革命時の紅衛兵と大して変わらないレベルです。記者が会見で自己主張する必要はなく、事実関係のQ&Aに集中し、またどんな記者会見であれ壇上者には一定のリスペクトをすべきでしょう。東京新聞の望月衣塑子氏は記者の本質を逸脱し、まるで自分が発信者であるがごとく人気取りと売名をし、東京新聞もそれに加勢するという業界の道徳観のすさまじい攪乱を今年も続けた点は至極残念でした。
後記
書き終わってから気が付いたのですが、国際情勢に全然触れませんでした。なぜか日本と世界の密接感がなかった気もします。うわべの外交もあるし、混とんとする世界でリーダーシップを出せなかった気がします。日本が埋没するほど世界の声はデカいのです。しかし、「戦争が平気で行われる時代を誰が想像した」と思わず言いたくなるほど地に足がついていない国際社会でもあったと思います。誰一人安定感と指導力を発揮したリーダーがいなかった、これが2023年の国際社会の現実でもありますG77のリーダー達はなぁなぁになり下がり、個人的には全員失格です。
●「歴史をご破算に願いまして」の逆回転が世界で多発 12/30
資金疑惑が集中する安倍派の再評価
21世紀に入り、特にこの10〜20年、世界的に多次元の分野で歴史の歯車の逆回転が加速しています。世界も日本も、外交、政治、経済、社会もそうです。大きな問題から身近な暮らしの問題まで、われわれは「歴史をご破算に願いまして」の時代にほんろうされている。これが今年1年の総括です。
既存の枠組みが無残に崩壊し続けています。まずメディアが連日、報道している自民党安倍派の醜悪な政治資金規正法違反事件です。東京地検特捜部の捜査対象を安倍派に絞っています。
「安倍晋三回顧録」(中央公論新社)が出版されたのは23年2月です。「未公開インタビューの全記録」と本のカバーに書かれ、聞き手が「日本憲政史上最長の政権を徹底分析する。記憶が生々しいうちにより真実に近づくことを考えた」と前書きに記したこの本はベストセラーとなりました。
それから1年も経たないのに、「憲政史上、最悪の安倍派の政治資金疑惑」が明るみになり、検察は異例の規模の捜査態勢を敷いています。回顧録にはなかった安倍政治の裏側はなんだったのか。少しも真実に迫っていない。今、安倍礼賛論者、肯定論者は顔色を失っているに違いない。
首相官邸の中枢に司法関係のトップを据えたため、検察は人事権を握られ、長い沈黙の時代が続きました。安倍氏が故人になるや、安倍派と緊密関係にあった旧統一教会問題の摘発に続き、政治資金疑惑が浮上、検察はうっぷんを晴らすかのようです。歴史の逆転です。
「憲政史上最長の首相」という尊称を授けられた安倍氏の再評価を始めるべきでしょう。巨額の政治資金を派閥の議員にキックバックし、選挙戦を有利に戦い、最大派閥を構成・維持し、政策遂行の主導権をとる。カネで最大派閥、長期政権を買ったことになる。安倍政治の裏の顔です。
アベノミクスの評価も逆転期を迎えています。首相官邸主導で黒田東彦氏を日銀総裁に据え、異次元金融緩和と拡張的財政政策を10年続けました。その狙いは日銀による財政ファイナンスと円安誘導だったというのが定説になってきました。その結果、財政金融状態は主要国で最悪です。
デフレ脱却のために「異次元緩和で物価2%上昇」は大誤算で、物価が3、4%に上がったのは、海外資源高と円安による。国内発の物価上昇ではなく、海外からの輸入インフレでした。貨幣数量説は破綻しました。
さらに円安でドル建てのGDPは急落し、1人当たりでみると、G7ではイタリアに抜かれ最下位、OECD38か国中では21位で韓国並みです。「デフレ脱却の大実験」で日本経済の歯車は逆回転してしまった。
「安倍晋三回想録」は、アベノミクスで日本経済の国際的地位の落下を黙殺した書籍です。新総裁に座った植田氏は異次元緩和の出口になかなかたどり着けない。異次元緩和は3年程度で早く打ち切るべきでした。
国債発行残高(1100兆円)の50%以上を日銀が保有しています。来年度予算の国債利払い費は9.5兆円で、防衛費の7.9兆円を超えました。国家防衛増額の前に「国内財政を守れ」の声が大きくなるでしょう。
東大法学部卒の政治家の評価がガタ落ちです。区長選を巡る買収で、柿澤未途衆院議員(自民を離党)が200万円程度の買収容疑で逮捕されました。東大法学部卒、元NHK記者でした。法学部で学んだ意味がありません。区長選、200万円で国会議員のポストを棒に振る。二重に愚かです。
岸田政権では、1年前、葉梨康弘法相が「法相は票とお金に縁がない」の暴言で更迭されました。東大法卒の警察官僚でした。寺田稔総務相は政治資金問題ではやり更迭されました。東大法卒、財務官僚出身です。
東大のホームページは法学部について「幅広い視野を持ち、法学的思考、政治的識見の基礎を身に着けた人材を送り出すための教育、研究の場」と書いています。東大総長には、卒業式の式辞で「政治家になっても、逮捕されるようなことだけはしないでくれ」」と語りかけてほしい。最高の学歴である東大法卒が日本を悪くするとは、歴史の逆回転です。
世界に目を向ければ、まず「戦争の世紀」に逆戻りしています。イスラエルとガサの報復合戦には目を背けたくなります。冷戦が終わって(1991年)「歴史の終り」という本が有名になりました。
歴史は終わるどころか、今も昔も変わっていない。イスラエル王国が成立したのは紀元前11世紀ころとされ、エルサレムを首都としました。以来、イスラエルはバビロニア、アレクサンドロス大王、シリア、ローマ帝国、ペルシャに占領されるなど、少なくとも3000年間、戦争と報復の歴史だったのでしょう。高まっている国際的な非難など歴史の一コマにすぎない。
米大統領選挙では、トランプ氏が再選される可能性があるそうです。そうなれば歴史は4年前に逆戻りする。民主主義の象徴である米連邦議会への襲撃を扇動したとされているし、納税義務も軽視している。最大の民主主義国がこんな問題を抱え込むとは、トランプ以前は誰も想像していなかった。
世界が大混乱期に入った背景としては、ポピュリズムの台頭、国際協調の弱体化、米中の覇権争い、デジタル情報戦争、経済的格差拡大、貧困や紛争がもたらす難民の増大、人口動態の変化(少子高齢化)、経済成長の停滞、地球温暖化問題など、多くの重層的な要因があるでしょう。
21世紀は地球環境の悪化、安全保障関係の悪化、民主主義の後退による政治環境の悪化など、多くの苦難が待ち受けているに違いありません。これまでの「歴史の進歩」がご破算になり、これまでの枠組みに対する逆回転の歯車の勢いがますことになるでしょう。個別の問題ばかりに目を奪われず、大局的な視野をもつことが必要です。
●回顧2023 政治への信頼が揺らいだ 危機に立ち向かう姿勢見たい 12/30
政治家の、国家と国民を守る姿勢が不鮮明になれば、急坂を転げ落ちるように信を失う。それを思い知らされた1年ではなかったか。
日本が先進7カ国(G7)の議長国を務めた今年、滑り出しは順調だった。ロシアによるウクライナ侵略が続く中、岸田文雄首相は3月にウクライナの首都キーウを電撃訪問した。
領土内で戦闘が続いている外国を、日本の首相が訪ねるのは戦後初めてだ。岸田首相がゼレンスキー大統領と会談し、揺るぎない連帯と支援を表明した意義は大きい。
「広島」は成果あったが
折しも中国の習近平国家主席がロシアを訪問し、侵略の張本人であるプーチン大統領と首脳会談を行っていた。自由と民主主義を守る日本と、専制主義的な中露との違いが浮き彫りになった。
5月に開催されたG7広島サミットも、議長国としての役割を果たした。G7の結束を内外に示し、空路来日して参加したゼレンスキー大統領とともに、力による現状変更に強く反対した。中国の核戦力増強も牽制(けんせい)した。
こうした力強い外交姿勢を、国民も支持したようだ。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が実施した合同世論調査で、5月の内閣支持率は50・4%に上る。
他の世論調査でも、同月の内閣支持率は不支持率を5〜10ポイント前後上回っていた。
この頃は内政面も比較的安定していた。中でも好影響をもたらしたのは、5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げたことである。
令和2年の春以降、3年以上にわたり不自由を強いられてきた国民生活は、「5類」引き下げ後に活況を取り戻していく。外国人観光客が増えるなど経済活動もコロナ禍以前の水準に近づいた。
一方、国民の不安を増大させたのは、6月に成立したLGBTなど性的少数者への理解増進法だ。差別の定義があいまいで欠陥も多く、女性の安全と安心が損なわれかねない法案に、自民党支持層からも懸念の声が上がった。
しかし岸田首相と自民は法案成立に突き進んだ。
いかなる差別もあってはならないが、日本の現実とそぐわない急進的な思想に流され、社会を混乱させてはならない。国民の疑問は今も強く、岸田内閣には、不安払拭に向けた取り組みを強く求めたい。
同じ頃、政務担当秘書官だった岸田首相の長男らの不適切な言動が批判されたこともあり、内閣支持率は下落に転じた。それとともに、国民の人気取りに傾くような姿勢がうかがえるようになった。
裏金問題が追い打ちに
11月に閣議決定した「デフレ完全脱却のための総合経済対策」も、その一つだろう。所得税と住民税の定額減税などを柱とし、物価高を克服するとしたが、国民にほとんど支持されなかった。
一方で、防衛力の抜本的強化のための増税時期など課題の多くを先送りした。これでは、その場しのぎの政権運営と批判されても仕方ない。
自民党の派閥による政治資金パーティーの裏金問題などもあり、報道各社の世論調査で12月の内閣支持率は20%前後に転落した。平成24年に自民党が政権に復帰して以来、最低の水準である。
岸田内閣は昨年12月、防衛力の強化策を盛り込んだ安全保障関連3文書を決定した。原子力発電の活用も表明し、今年2月にはエネルギー安定供給と脱炭素の両立を目指す「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」を決めた。
これらの問題意識を持ち続け、必要な政策を推進していれば、国民の見る目も違っていただろう。
ロシアによるウクライナ侵略に加え、今年は中東のパレスチナ自治区ガザでイスラム原理主義組織ハマスとイスラエル軍の戦いが勃発した。アジアでも中国が東・南シナ海などで軍事活動を活発化させているほか、北朝鮮が弾道ミサイル発射を繰り返した。台湾有事の懸念も依然強い。
日本が直面する危機に、真正面から立ち向かう政治の姿をみたい。
●殺傷兵器を売る国 矜持までも捨てるのか 12/30
戦後日本の平和主義が音を立てて崩れていく。
岸田文雄政権が「防衛装備移転三原則」を改定した。
食い止められてきた殺傷兵器の輸出を解禁する内容で、日本の兵器が他国の紛争を助長し、人命を奪う恐れは格段に増す。
科学者を引き入れて先端兵器を開発し、軍需産業が売りさばく「軍産学複合体」の構図が克明に浮かび上がる。
多額の税金が注がれる。他の政策経費がしわ寄せを受け、暮らしが一層圧迫されかねない。
官民が息を合わせ
2014年2月、経団連の防衛生産委員会が提言をまとめ、自民党国防部会に提出した。
輸出先進国と競争していくためだとし、国産防衛装備品の輸出を広く認め、政府に専門部局を設けるよう要請した。
禁輸政策である「武器輸出三原則」の見直しを控えていた当時の安倍晋三政権に、経済界が足並みをそろえた格好だ。
ほどなく安倍政権は武器輸出を「装備移転」とごまかし、輸出解禁へとかじを切る。防衛装備庁も新設し、要請に応えた。
それでも、かろうじて殺傷兵器の規制は残された。岸田政権は今回、ここに踏み込んでいる。
他国企業の許可を得て日本企業が造る「ライセンス品」は、これまで米国企業が開発元の部品のみ輸出を認めてきた。
これを、完成品を含め、どの開発元の国にも輸出できると改めている。地対空誘導弾パトリオットやF15戦闘機、榴弾(りゅうだん)砲、迫撃砲などが該当する。
非戦闘目的の装備品も救難、輸送、警戒、監視、掃海―の業務にかなえば、殺傷兵器を搭載していても容認するとした。
公明党が慎重姿勢に転じ、英国やイタリアと共同開発する次期戦闘機の輸出の可否は先送りされている。が、全面解禁の流れが途絶えたわけではない。
誰のための輸出か
海外に武器を売り込む準備は着々と進められている。
今年の通常国会で防衛産業の生産基盤強化法が成立。企業の製造工程の効率化や供給網多様化を税金で賄い、輸出用に仕様や性能を変更する費用も国の基金から交付する。それでも事業継続が困難なら国有化するという。
防衛装備庁は15年の発足と同時に、テーマを決めて大学、研究機関、企業に助成し、基礎研究の奨励に乗り出した。国は24年度に新設する技術研究所で、この成果を兵器開発につなぐ。別途、5千億円の基金を積み立ててもいる。
民主的な価値観を共有する“同志国”の軍隊に、装備品を直接供与する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」も始まった。東南アジアを主要な輸出先と捉え、現地軍の日本産兵器への依存度を高めたい狙いが透ける。
一連の政策の理由に、防衛省は衰退する防衛産業の再生を掲げてきた。確かに納入先は自衛隊に絞られていて、生産コストは割高で利益率は低かった。が、米欧の軍需産業とは異なり、日本の重工業や電機メーカーは防衛受注に経営を依存してはいない。
5年間の防衛費総額を43兆円に増大させたことで、企業の受注高は飛躍的に伸びている。前述した研究費助成の受け皿にもなっている。衰退が一転、成長産業の活況を呈しつつある。
手厚い法人減税策と相まって、自民党への企業献金が増えたのは偶然なのか。増税してまで防衛費を膨らませつつある中、誰を向いて政策を決めているのか。
政界を揺るがしている裏金疑惑を含め、政治資金の底に横たわる真の闇と言っていい。
「国益」を追う先に
輸出を慎む―。ベトナム戦争を経た1976年、三木武夫首相が見解を示して以来、曲がりなりにも40年ほど続いた禁輸政策を安倍首相が破り、岸田首相がその穴を広げている。
交戦権否定や専守防衛をないがしろにした集団的自衛権、敵基地攻撃能力に次ぐ戦後政策の大転換を、説明も議論もないまま閣議だけで決している。
武器輸出は利益のために「新たな戦争」を求める。紛争に加担するだけでない。戦後復興の経験を踏まえ、東南アジアや中東、太平洋島嶼(とうしょ)国でインフラ整備を通じて信頼を培ってきた日本の変質を世界に知らしめる。
その先にあるのは戦前・戦中の教訓から離れ、目先の利益を追うさもしい日本の姿だ。
政府は「安保環境は厳しさを増している」と繰り返す。世界情勢が混沌(こんとん)とするいま、自嘲すべきは平和主義ではない。これを貫けない現状こそ省み、その責任を引き受けていく安保構想を発していかなくてはならないだろう。
人口減少・超高齢社会に突入し国力の衰退は否めない。難局を乗り越えるための試行錯誤は長期にわたるに違いない。政界も財界も学界も、活路を切り開く先を見誤ってはならない。
●「少子化対策」の裏側は? 「扶養控除」や「財源」めぐり…税と予算の闘い 12/30
岸田政権の看板政策「異次元の少子化対策」。政策の中身や財源をめぐり子育て世帯から様々な批判が巻き起こる中、2023年末の決着までの過程を追った。
少子化対策 「2つの不満」が噴出
少子化対策の強化に向けて、2028年度までに新たに確保するとした財源は3兆6000億円。対策の柱は所得制限を完全撤廃し、給付の対象も高校生世代にまで広げるとする「児童手当」などだ。2023年6月、「異次元の少子化対策」を掲げる政府に期待が高まる中、具体案が出てくるたびに国民の一部から不満が噴出した。
1つ目の不満は「扶養控除」だ。政府が示した案では、まず16歳から18歳までの高校生などに月1万円の児童手当を新たに支給する。これに伴って、現在16歳から18歳の親などに適用されている扶養控除(所得税38万円と住民税33万円)の取り扱いが焦点となったのだ。
児童手当を支給しながら、中学生以下に対しては適用されていない「扶養控除」を高校生世代にだけ維持すれば「二重取り」「不公平」になるのではないか。2023年5月下旬頃から、そんな議論が始まった。扶養控除の見直しによっては、実質負担増になる世帯が出かねないことに対し、子育て世帯からは不安と批判の声が上がった。
2つ目の不満は「財源」についてだ。政府は少子化対策集中期間の2024年度から予算を増額し、3年目には、およそ3兆円を追加することを検討していた。その財源は、歳出改革などで2兆円以上を捻出し、残りの1兆円弱は病気やケガのための医療保険を軸に社会保険料の仕組みで集める方針だった。
しかし、この「社会保険料の上乗せ」に対して批判が出たことから、岸田首相は「国民に実質的な追加負担を求めることなく、少子化対策を進めてまいります」と釈明した。政府は財源について、社会保険料は上乗せせずに、医療費などの「歳出改革」で賄う方針を示し、詳細な財源の決定は年末の予算編成に見送られた。
大まかな数字も出さなかった理由について、政府関係者は「社会保険料の値上げという案が炎上したからだろう」と解説した。
「扶養控除」はどうなった? 税をめぐる「自公」の闘い
1つ目の不満、「扶養控除」はどう解決したのか。11月上旬、来年度の税について話し合う自民党・公明党の税制調査会が始まろうとしていた。新たな対策で、負担が増える世帯が出ることをどう考えるかが焦点だ。児童手当を12万円以上もらっても、所得税や住民税の扶養控除がなくなると、家庭によっては負担が増えてしまう。子育て世帯の警戒感は引き続き高いままだった。
政府関係者は「総理も扶養控除の廃止はKY(空気読めない)というニュアンス」「廃止絶対ないとは言えない。だけど、さすがにこれだけ言われて、って感じですよね。」と打ち明け、扶養控除を完全に廃止することはないだろうという姿勢を見せた。
一方、扶養控除を完全に廃止しなくても、一部を減らすことは検討され続けていた。一度批判されている対応策だけに、政府関係者らも慎重になっていた。「扶養控除縮小」などの報道が出るたびに、口をつぐむようになり、「いろんな選択肢がある中で、縮小というメッセージだけが出ると、反発が出る」と、いらだちを見せることもあった。
自民党と公明党の税制調査会では、最終局面まで扶養控除の取り扱いが争点となった。自民党は、扶養控除による減税幅が大きい人は「富裕層」だとし、扶養控除をそのまま残すと、所得の高い人を優遇することになるとして、現行のまま残すことには反対した。
一方で、公明党は「少子化対策」の機運に水をさすとして、扶養控除の維持を主張。公明党の西田税調会長は報道陣に対して「扶養控除廃止とか、縮小ということについて、すべきでないという意見が複数あった」と述べ、自民党との意見の違いを連日、大々的に発信してみせた。
最終的に公明党は、扶養控除の見直しの際に、ほかの制度に不測の影響が出ないように、1年かけて事務的に対応することを条件に納得した。自民公明両党は、16歳から18歳の親などへの所得税の扶養控除を38万円から25万円に、住民税の扶養控除を33万円から12万円に引き下げる方針で一致。公明党の要求に対応できるよう、正式な決定は1年遅らせることでも合意した。関係者は、全ての子育て世帯で現状より支援が増える設計にしたことで「一定の理解は得られた」と安堵(あんど)する。
「少子化財源」どうなった? 予算をめぐる「闇の中」の闘い
2つ目の不満、財源はどう解決したのか? 国民の負担を増やさないよう歳出改革で捻出するとしていた少子化対策予算。与党の税制調査会の議論が結末を迎える頃、少子化財源として期待されている医療の歳出改革のカギを握る「診療報酬改定」の交渉は佳境を迎えていた。診療報酬は医療の対価として医療機関に支払うものだ。
自民党関係者は、この交渉について「医師会と厚労省、財務省と官邸とが“闇の中”でやり合う闘いだ」と話す。表には、ほとんど交渉の内容が出てこないまま、時間が過ぎた。厚労省関係者は、交渉が山場を迎える12月、「医師会側が負けそうだ」と話し、財務省関係者は「医師会に負けると思う」と話すなど、お互いに疑心暗鬼になっていた。
財務省は「コロナ禍で病院には、病床の確保で5兆円をまいているので、ほとんどの病院は黒字」としていた。また、診療所の利益率が他の全産業と比較して高いと調査のデータを示しながら発信し、診療報酬はマイナスにして国民の保険料を減らすべきだと主張していた。一方、医師会などは、医療従事者の「賃上げ」のために診療報酬のプラス改定を主張し、真っ向から対立していた。
決着は唐突だった。12月15日、金曜日午後、武見厚労相と鈴木財務相が岸田首相と面会し、診療報酬のうち、医師の報酬などにあたる「本体」部分を0.88%引き上げることが決まった。14日夜まで財務省、厚労省関係者ともに「距離が開きすぎている」と話していたことが、うそのような、あっさりとした決着だ。「首相裁定」だった。政府関係者は「ここまで距離があると総理しかいない」と決着の舞台裏を明かした。
財務省が主張していた診療所などへの報酬はマイナスになったものの、看護職員などの賃上げに0.61%、その他、薬局の勤務薬剤師などの賃上げに0.28%と、賃上げによる加算が大部分を占め、薬価・介護の改定と合わせると国民が支払う保険料も増えることになった。
岸田首相は、少子化対策の財源は医療と介護分野での歳出改革で賄い、国民の保険料負担を増やさず1兆円を捻出するとしていたが、医療従事者の賃上げのため保険料の負担増は避けられなかった。政府関係者は「正直、政府は少子化財源を確保すると言ってたのに、保険料が増えてしまい、説明が違うじゃんとは言われるだろう」「もともと、医療従事者の賃上げもする中、医療費を削って少子化財源に回すのは無理なスキームだった」と肩を落とした。
また、政権が政治資金問題で揺れる中であることにも触れ、「自分の政権が壊れるかもしれない時に、細かいことは考えられないということも影響したのではないか」と分析した。
「異次元の少子化対策」効果は出るか?
税も予算も「少子化対策」に焦点があたった2024年度予算。関係者は子育て世帯の意見を聞き、反映しようと、もがいていたと感じる。しかし、これで子どもは増えるのだろうか? 子どもがいる世帯への支援は強化された一方で、医療や介護分野の歳出改革で当初想定していたような予算の確保は、万全にはできなかったと言える。
自民党関係者や政府関係者は、当初から「婚姻率の低下が少子化の原因」などと疑問を呈していた。分かりやすい政策にお金をばらまくだけではなく、知恵を絞った少子化対策ができないものか。意思決定プロセスを振り返り、少子化の解決に向けて次のステップが必要ではないだろうか。
●国民を愚弄し過ぎ、安倍派「最大派閥」の驕りが生んだ裏金作り 12/30
年末になって、日本の政界に激震が走っている。自民党のパーティー券問題で国会議員にも強制捜査が始まった。
進む検察の捜査
派閥が開いた政治資金集めのパーティーで、派閥所属議員は役職や当選年次に従ってパーティー券販売のノルマを課されるが、ノルマ超過分は議員にキックバックされることになっていた。安倍派や二階派で顕著だという。安倍派の場合、それを政治資金収支報告書に記載していなかったという政治資金規正法違反が問題になっている。
安倍派の5人衆と言われる松野博一官房長官、西村康稔経産相、萩生田光一政調会長、高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長が役職を辞任するなど、安倍派は政府の要職から去った。
検察は、国会閉会中に捜査を進めるが、そのため通常国会の開催は1月下旬と、通常よりも遅れそうである。
12月26日、東京地検特捜部は、池田佳隆衆院議員の関係先を捜査した。これに続いて、翌日には大野泰正参院議員の関係先も捜査した。国会議員の強制捜査まで行うのは異例である。
今後、捜査がどのように展開するのかは不明であるが、岸田政権にとって大きな打撃となるのは間違いない。内閣支持率も下がり続けており、10%台という数字も出てきた。閣僚や党役員を交代させたが、その効果も限定的である。
このパーティー券問題に加えて、12月27日、東京地検特捜部は、柿沢前法務副大臣と秘書4人を、江東区長選を巡る買収など公選法違反で逮捕した。柿沢は、すでに自民党を離党しているが、自民党政権の信頼性をさらに揺るがすことになりかねない。
長期政権の腐敗
岸田内閣の支持率が再上昇する気配はない。解散総選挙に打って出るゆとりなどなく、来年の自民党総裁選への出馬はありえないであろう。それ以前に、来年度予算案が国会で成立した後の4月に退陣する事態もありうる。さらに言えば、その前に退陣を明言して、それと引き換えに予算案を通すという究極の選択となる可能性も皆無ではない。
安倍派では何年間も違反行為が行われていたというが、それが発覚もしなかったのはなぜなのか。政治資金収支報告書は公開である。
「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対に腐敗する」とアクトン卿は喝破したが、やはり安倍長期政権とその亜流が10年以上続いたことが今回の不祥事の背景である。
権力が首相官邸に集中し、検察も含め、官僚も安倍首相の意向を忖度するなど、日本の政治が大きく歪められたと言わざるをえない。
与野党間での政権交代はなくても、自民党内で疑似政権交代が行われ、不祥事はあっても、それが自民党を再活性化させてきた。たとえば、1974年に田中角栄政権が金権政治で潰れると、「クリーン」な三木内閣を発足させることで自民党は生き延びてきた。
中選挙区制下での派閥の競争、「切磋琢磨」が自民党の活力となってきたのである。ところが、小選挙区制になって、選挙での派閥間の戦いがなくなったのに、派閥だけは残ってきた。公認権が主流派に握られれば、異議申し立てもできない。切磋琢磨どころか、主流派にゴマをする議員ばかりとなり、安倍官邸のような権力の集中が生じてしまった。しかも、それが長期化すると、検察までもが取り込まれるような不健全な行政が生まれてしまう。
今回のパーティー券問題は、まさに安倍政権の負の遺産である。
野党は何をしている
ここまで自民党、とりわけ主流派として長期政権を謳歌してきた安倍派の問題点が浮き彫りになっても、国民の間から政権交代への期待の声が全く上がらないのは、野党が非力だからである。
私は2007年8月から2009年9月まで、安倍、福田、麻生の3内閣で厚生労働大臣を務めた。私が閣僚になる直前の2007年夏の参議院選挙で、自民党は大敗して過半数を失い、参議院の第一党は民主党となった。その結果、「ねじれ国会」となった。
衆議院で法案が成立しても、参議院で否決されるということの繰り返しとなり、閣僚として苦労した。両院協議会、つまり与野党の話し合いで法案が修正されるケースは稀であり、付帯決議を付けて乗り切るとか、衆議院の3分の2以上の特別多数で再可決させるなど、政権運営に苦労したものである。
そして、2009年夏の総選挙で自民党は大惨敗し、民主党に政権が移った。政権交代である。民主党は、「政権交代」の4文字を唱えるだけで勝てる状態だった。選挙期間中、仲間の衆議院議員候補の選挙区を全国くまなく回ったが、絶対に敗北するという確信のみが残った。
民主党は、「非自民、非共産」を看板にして、大同団結して自民党に対峙した。選挙前に332議席を誇った自公系は140議席に激減し、民主党系は127議席が322議席と大飛躍を遂げたのである。小選挙区制という仕組みもそれを可能にした要因であるが、自民党に代わる政権政党として民主党に国民が期待したのである。
支持率10%台の政権を倒す迫力もない野党
2009年の総選挙で閣僚として経験した身で言うと、民主党が一つの政党にまとまっていたことが自民党の敗北を招いたのである。さらに言えば、「非自民」のみならず、「非共産」もプラスに作用した。共産党は批判勢力としては活用できるが、政権を任せるに値する政党と見なしている国民はほとんどいない。ソ連邦の崩壊のみならず、近年の習近平共産党政権の下で自由や基本的人権が奪われている状況を目の当たりにしている日本人は、共産党という名称の改変すらできない日本共産党に信を置くことはできないと考えている。
今の与党の状況を見ると、立憲民主党と国民民主党が分裂しており、日本維新の会は野党か与党かわからない「ゆ党」である。自民党が公明党との連立を解消したら、その代替として政権入りすると考えられている。その他の弱小政党は問題にすらならない。共産党との協力は野党の分裂をさらに煽るばかりである。
せめて立憲民主党と国民民主党は再統一することはできないのか。国民民主党は、前原誠司が離党して新党を作るなど、逆に分裂の方向を強めている。労働組合の連合も政党をまとめるだけの力を持っていない。
このような状況は自民党を利するだけである。支持率が10%台というのは、内閣が崩壊するような危機的状況である。しかし、小党分立し、非力な野党に岸田内閣は高笑いしている。政権交代など起こりようがないからである。
野党を大きな政党にまとめ上げる政治家はいないものか。小沢一郎もかつての豪腕ではなくなっている。
マスコミの体たらく
安倍長期政権の下では、マスコミもまた堕落した。安倍首相の子飼いとも言える記者たちが権力に守られてきた。
パーティー券問題など、どのメディアの記者も気づいていなかったのであろうか。メディアもまた、安倍政権の意向を忖度してきたと言っても過言ではない。
テレビと新聞が系列でつながっているのも日本の異常な特徴である。その異常さは、ジャニーズ性加害問題でも、東京五輪汚職でも露呈した。
ジャニーズ問題では、テレビ局が有名タレントの出演拒否を恐れて、不祥事に目をつぶった。では、新聞はなぜ沈黙していたのか。日本のマスコミの特色は、テレビ局と新聞が系列ごとに合体していることであり、新聞がテレビ局に拘束されずに記事を書くことは不可能である。
マスコミは五輪のスポンサーになるのを避けるのが世界の常識である。自由な報道が阻害されるからである。ところが、東京五輪は、読売新聞、朝日新聞、日経新聞、毎日新聞、産経新聞、北海道新聞がスポンサーになった。贈収賄など、五輪の不祥事が明らかになったのは、五輪終了後である。それは、検察が動いたからであり、マスコミの力ではない。
政治の現場で、権力の監視というメディアの役割が十分に果たせていないのではないか。
生物兵器製造に転用できる装置を無許可で輸出したとして起訴され、その後取り消された件で会社社長らが国と東京都に損害賠償を求めた。この訴訟の判決で、東京地裁は捜査を違法と判断し、国と東京都に賠償を命じた。この違法捜査について、マスコミが調査したり、反論したりしたという記憶がない。調査報道もすっかり減ってしまっている。記者の質も低下しマスコミの取材資金も減少しているようである。炎上を狙い、発売部数や視聴率を上げようとする週刊誌やワイドショーなどの劣悪記事が横行する。
マスコミの劣化もまた日本の衰退を招いている。
●岸田政権は「来年度の予算通すまで持つのかどうか」… 12/30
2023年の岸田内閣は、原材料費高騰に伴う物価高などが国民生活を直撃し、報道各社の内閣支持率は10%台後半まで下落した。発足当初は60%を超えていたが、今年は支持率アップの材料がなく低迷を続けている。12月に入ると、東京地検特捜部が自民党安倍派の政治資金問題の捜査に着手。政権発足以来の危機を迎えている。ジャーナリストの田崎史郎氏は、来年は岸田文雄氏に代わる新しい首相が誕生する可能性が高いと指摘した。
年末になっても東京地検特捜部による安倍派など主要派閥への捜査は終結する気配はない。連日のように党幹部や議員らへの任意聴取が続いており、立件の可否や刑事処分は内閣支持率にも大きな影響を与えることは間違いない。捜査は年を越すことになりそうだが、先行きは流動的で不透明なままだ。田崎氏は来年、岸田政権の最初の正念場についてこう分析する。
「特捜部の捜査は急ピッチに進んでおり、1月20日前後には捜査の行方も見えてくるのではないか。通常国会は同26日の召集で調整していますが、野党からの厳しい追及は2か月ほど、やむことはありません。捜査の対象となっている党内最大派閥の安倍派も政治的な動きは難しい。3月に来年度の予算を通すまで、果たして岸田政権が持つのかどうか。ここが一つの焦点です」
ネットスラングでは「増税メガネ」などとやゆされ、マイナスイメージが広がっている岸田氏。現段階では、続投への意欲は高く、減税と賃上げに最もこだわっているとされる。田崎氏の分析も同じだ。
「この2つを何とか実現したいと考えています。今、辞めるなどとは全く考えていません」
支持率が低空飛行のまま、春を乗り越えたとしても、安心材料は少ない。岸田氏を支えた安倍派が空中分解の危機を迎え、衆院議員の任期が残り2年を切る中で、今後も茂木、麻生両派が岸田氏を支えるかは不透明な状況だ。
特に、茂木敏充幹事長は9月に予定される総裁選への出馬に意欲を示しているとされ、早々と名乗りを上げる可能性もある。田崎氏は茂木氏以外の総裁候補について、石破茂元幹事長(無派閥)、河野太郎デジタル相(麻生派)のほか、岸田派からは、林芳正官房長官、上川陽子外相を候補に挙げた。
「残念ながら、茂木さん、石破さんは党内での人気があまりないので、どこまで支持を集められるかが課題です。捜査の対象となった安倍派の西村康稔前経済産業相、世耕弘成前参院幹事長は総裁選レースから脱落しました。残る岸田派の林さんか上川さん、河野太郎さんの争いになるでしょう。上川さんなら、女性初首相という歴史的な日を迎えるかもしれません」
岸田政権は3年目を迎えられるのか。それとも新しい首相が誕生するのか。
「パーセンテージで表すことは難しいのでやめておきましょう。内閣が変わる可能性は高いと申し上げたいと思います」
●2023年いちばんイラッとした岸田政権の政策ランキング 12/30
岸田内閣の支持率低下が著しい。
2023年12月8〜11日の時事通信の世論調査では内閣支持率が17.1%、毎日新聞においては12月16日、17日の調査で16%と、ついに10%台にまで内閣支持率が落ち込んでしまったのだ。
「マイナンバーカードの利用時に不具合が続出し、『紙の健康保険証を廃止する』とした政府方針が国民の不安を煽ったことで、2023年6月ごろから各社の世論調査で、岸田政権の内閣支持率は下降が始まりました。
9月に内閣改造で巻き返しを図ったものの不発、その後は『一人4万円の定額減税』や『低所得者への7万円給付』などの“アメ”をぶら下げましたが、『焼け石に水』の状態でした」(全国紙政治部記者)
そして年末にかけて、いわゆる政治資金パーティーをめぐる裏金問題という、政策以外のスキャンダルが追い打ちをかけ「内閣支持率は危険水域」(前出・全国紙政治部記者)に陥っているのだ。
就任直後から「聞く力」があると評価されてきた岸田首相だったが、内閣として打ち出してきた政策は、本当に国民の声を聞いてのものだったのだろうか?
本誌は、2023年に岸田政権が掲げた政策の中から主なものを7つ挙げ、「いちばんイラッとした岸田政権の政策」を選んでその理由を記してもらうアンケートを、全国の20代以上の男女を対象に緊急実施した。
【1】低所得者世帯への7万円給付
岸田首相は、物価高騰などへの対策として、住民税非課税世帯への7万円給付を年内に行うとしていた。しかし年末年始に支給が間に合う自治体は全国の2割弱という状況だ。
住民税非課税世帯とは、生活保護法による生活扶助を受けている人や、障害者、未成年者、ひとり親などで、前年の世帯全員の合計所得金額が135万円以下の人などが該当する。
この給付に対して、アンケートでは「イラッとした」政策の第2位となる81票を集めた。
コメントは以下のとおり。
《納税者を無視しているように思う》(46歳男性)
《低所得者ばかり支援されている。私はギリギリ低所得ではないのでいつも対象外》(44歳女性)
《不公平》(35歳男性)
一部の人のみを7万円給付の対象としていることが、給付を受けられない人からすれば、不公平に感じられるのかもしれない。
【2】防衛費増額
2位とは1票差で「イラッとした」政策の第3位となった防衛費増額。
政府は、2023年度から5年間の防衛力整備の水準を、現行の計画の1.6倍にあたる43兆円程度として進めている。
その初年度である2023年度は、前年度から1兆4千192億円の増額となった。
前年度からの増額は例年500億円程度だったことを考えると、かなり跳ね上がったことになる。
「イラッとした」というアンケートの回答を見てみよう。
《国民の生活のほうがよっぽど大変なのに、そちらに金を増やしてる場合か》(61歳男性)
《防衛費増額より物価高などに充てるべき》(52歳男性)
《他に使うべきとこがある》(52歳女性)
予算の枠を増やすのは「防衛費ではない」という声は根強いようだ。
一方で防衛費の増額に「イラッとする」という声は、違う角度からも……。
《アメリカにおんぶにだっこ状態は良くない。防衛費にももっと自主性がほしい》(75歳女性)
《アメリカの機嫌取りで国民を見ていない》(60歳男性)
1960年に現在の日米同盟が締結されて以降、防衛費に関して、常にアメリカの意向が強く反映されているという見方は多い。
対米政策において岸田首相の「聞く力」が存分に発揮されてしまっている可能性も十分にある。
【3】紙の健康保険証の廃止
岸田政権の支持率を大きく下落させた「紙の健康保険証の廃止」は、「イラッとした」政策アンケートでも91票を獲得し、第1位となった。
12月22日に政府は現行の「紙の健康保険証」の廃止時期を盛り込んだ政令を閣議決定。
これにより2024年12月2日に現行の健康保険証は廃止となり、この日以後、基本的にはマイナンバーカードを保険証として使用することになる。
しかしながらマイナンバーカードを保険証として使用した人の医療データに、別人のものが間違って紐づけられてしまうなどのミスが相次いで発覚したのは記憶に新しいところ。
その人にどんな病気があって、どんな薬を処方されているかといった個人情報が、マイナンバーカードと一体化した保険証によって流出してしまうのではないか、などの不安を、多くの人が抱く結果となった。
今回のアンケートで、紙の健康保険証の廃止に「イラッとした」と答えた人の理由は以下のとおり。
《なんでペーパーレスでないとダメなのか》(79歳男性)
《様々な理由でマイナンバーカードを作れない人もいると思うので、紙の保険証は残したほうがいいと思います。マイナンバーカードに保険証を紐付けするのは情報漏洩が心配です》(64歳女性)
《マイナンバーカードの強制加入に違和感がある。個人情報をコントロールされているようで、情報漏洩も含め不安に感じる》(55歳男性)
紙の保険証を持ち続けたい人や、マイナカードとの紐付けに抵抗のある人が、少なくないことがわかった。
これに対して政府は、2024年12月の廃止後も、最大1年間は紙の保険証が使用可能だとし、マイナ保険証がない人には、資格確認書を発行する予定だとしている。
一方、医療機関側で業務に支障が出ているという声もあった。
《医療機関に勤めているが、余計な仕事が増えたうえに、マイナンバーカードだと目視で番号を確認したりできない》(39歳女性)
医療現場ではすでに、本来の仕事ではない作業が増えたりしているなかで、2024年12月、本当に紙の保険証は廃止されてしまうのだろうか。
【4】少子化支援金1兆円の徴収
年3.6兆円もの少子化対策を盛り込んだ「こども未来戦略」が2023年12月22日に閣議決定。
児童手当の拡充や、多子世帯の大学などの授業料無償化といった施策の、財源のひとつが創設される支援金であり、医療保険料と併せて約1兆円規模が、新たに徴収されると予想されている。
ただ現段階で政府は、国民に実質的な負担が生じないようにするとしており、先が見えない状況でもある。
今回の「イラッとした」政策アンケートでは4位。その回答理由を見てみよう。
《逆に少子化を推進するような政策を打ち出している》(50歳女性)
《本当の少子化解消の道筋にならない手法だから》(54歳男性)
《少子化対策の重要性は理解できますが、その予算確保に向けては規定予算の見直しなど、安易に国民の負担増を招くことのないようにすべき》(72歳男性)
《一般国民は、今も節約しながら何とか生活している。それでもまた、医療保険の保険料から徴収されるとはどういうことか》(63歳女性)
《子どもがいない世帯には得がない》(47歳女性)
近年の少子化を巡る問題で、子どもの出生数とともに際立ってきているのが、婚姻数の激減であるといわれている。
子どもがいる世帯への支援のために、子どもがいない、あるいはこれから子どもを持とうとしている人に負担を強いるのは、少子化対策に逆行する策であり、政府の少子化施策の矛先が違うと考えている人も多いことが、今回のアンケート回答から見て取れる。
【5】一人4万円の定額減税
岸田首相が宣言した「一人4万円の定額減税」。
2024年6月に始めることが発表されたが、アンケート実施段階では半年も先のことであり、実感に乏しいようだ。
内閣支持率の上昇にもほとんど効果がみられなかったようである。
今回の「イラッとした」政策では5位となったアンケートの回答理由を見てみよう。
《何の足しにもならない。やった感を出すためだけにやるのだろう》(62歳女性)
《ただのバラマキ給付金だから》(39歳男性)
《増税前のバラマキ》(70歳男性)
《たかが4万円の減税ぐらいでは何も変わらない》(58歳女性)
定額減税をエサとして「増税」があるという意識を持つ人が多いのかもしれない。
なかには多くの人が思わずウンウンと頷いてしまうような回答も。
《全く国民を理解できていない》(35歳男性)
【6】賃上げ政策
2023年の春闘では、記録的な物価高が根底にあるためか、賃上げに踏み切る会社が多かったという。
経団連の集計によれば3.99%の賃上げ率で、31年ぶりの水準だというが、果たしてその実感が国民にあるかというと……。「イラッとした政策」6位のアンケート回答を見てみよう。
《結局給料は上がらないから》(41歳女性)
《実際に賃上げされていないから。その割に全体的には賃上げが進んでいて、増税の話が浮かんでいるから》(38歳男性)
2023年は「賃上げ」に喜ぶどころか「値上げ」に苦しむ日々の連続だったという声が多かった。
【7】電気・ガス代補助金
2022年1月から始まったガソリン代への補助に加え、2023年1月からは電気・ガス料金の補助を政府は開始。
一般家庭の場合、電気代が1kwhあたり7円、ガス代が1uあたり30円の補助金額で、当初2023年10月までの予定だったが、物価高が続いていることにより、11月以降も延長された。だが補助金額は半分に減額されている。
今回の「イラッした」政策アンケートでは一番回答数が少なかったが、それぞれの回答理由を見てみよう。
《地域によって暑すぎる(寒すぎる)時期のいちばん電気代やガス代が高い時期に減額するなら納得できるが、何でもない時期(秋や春)に減額されてもなぁと思った》(47歳女性)
《補助金出すくらいなら単純に(値段を)下げれば良いと思う》(21歳女性)
やはり、庶民が何に苦しんでいるのか、理解されていないという声が多い。
最後に、アンケートに提示した7つの政策以外への回答も紹介しておこう。
《国民からお金を取るな、政治家の給料を減額しろ》(54歳女性)
《自分たちの給料はすぐ上げるのに国民の所得税減税は来年ってどうかと思う。反対に減らしてもいいぐらいだと思う。いろいろ特権もあり給料もらいすぎ。それでも足りないというのは何も考えず人の金だからザルみたいに使っているからでは? もうちょっとカチッとできる人がいないのかな》(65歳女性)
これらはどちらも岸田首相の政策というより、政治家、国会議員全体に対する苦言。
岸田首相が眼鏡越しに何かを訴えても、われわれは「聞く力」ならぬ「聞く気力」も出ないといった感に陥っているのかもしれない。
だが、無関心がいちばん怖いところ。放っておくと、その間にどんな法律が閣議決定されるかわからない。
期待できずとも、2024年も政治家と政策に注視を続けなければならない。
【2023年「いちばんイラッとした岸田政権の政策」ランキング順位】
1位:紙の健康保険証の廃止…91票
2位:低所得者世帯への7万円給付…81票
3位:防衛費増額…80票
4位:少子化支援金1兆円の徴収…71票
5位:一人4万円の定額減税…66票
6位:賃上げ政策…60票
7位:電気・ガス代補助金…10票
【調査概要】
実施期間:2023年12月19日
調査対象:20歳以上の男女500人
調査方法:WEBでのアンケート 
●森永卓郎氏 岸田政権は「異次元の少子化対策」を抜本的に見直すべき 12/30
経済アナリスト・森永卓郎氏が“2024年を占う1冊”として挙げるのが『「人口ゼロ」の資本論 持続不可能になった資本主義』だ。岸田政権が少子化支援策を次々と打ち出す中、どうすれば本当に少子化を止めることができるのか──。森永氏が同書を読み解き、考察する。
最近は、増税批判ですっかりぼやけてしまったが、岸田政権が打ち出した最大の政策は、3兆円台半ばの巨大予算を投ずる「異次元の少子化対策」だ。しかし、この政策が功を奏して、少子化が止まるだろうとみている専門家はほとんどいない。異次元対策の中身が、児童手当受給の所得制限撤廃や期間延長、出産費用の保険適用など、子育て支援に集中しているからだ。
それでは、どうしたら少子化を止めることができるのか。その答えが、本書には明確に描かれている。それは、大部分の家庭が、子供を産み、育てることが可能になる所得の確保だ。
著者は江戸時代の人口動向を分析し、人口停滞期は、社会の下層の人たちの所得が減少し、格差が拡大することで、出生率が下がり、人口が伸びなかった事実を発見する。そのことは、現代の統計とも符合する。
いまでも、結婚さえできれば、平均1.9人の子供が生まれている。つまり、いまの少子化は、非婚化の進展がもたらしたものだ。現実に、年収と結婚率はきれいな逆相関がみられ、年収150万円から199万円の20歳代後半男性の結婚率は、6人に1人に過ぎない。年収が低いと結婚してもらえない現実があるのだ。
著者のもう一つの発見は、マルクスが「資本論」のなかで、資本主義の行きつく先に人口減を見据えていたことだ。資本は、自己増殖することだけを考えるから、労働者には生きていくためのギリギリの賃金しか支払わない。結婚して、子を育てる分まで支払うはずがないのだ。
もちろん、岸田総理は、所得環境を改善しようと「賃上げ」の旗を振り続けているが、いまのところ企業は面従腹背だ。だからこそ、岸田総理には是非本書を読んでいただいて、異次元少子化対策を抜本的に見直して欲しい。そうしないと、少子化がずるずると進行し、日本経済は、延々と縮小を続けていくことになるだろう。
 12/31

 

●日本政治この1年 自民党の旧弊が噴出した 12/31
自民党政治の旧弊と「1強支配」のほころびがあらわになった1年だった。岸田文雄首相は「令和の政治改革」に毅然として取り組まなければならない。
火急の問題は自民派閥の政治資金パーティーを巡る疑惑である。最大派閥・安倍派がパーティー券収入の一部を議員に還流させて組織的に裏金を作っていた可能性がある。
東京地検特捜部が政治資金規正法違反の容疑で派閥や所属議員の事務所を捜索した。直前まで政権中枢を担っていた松野博一前官房長官らから任意で事情を聴いた。
政治資金の透明化を図るのが規正法の趣旨である。裏金作りがシステム化されていたのなら、根の深い構造的な問題だ。政権から安倍派を排除したからといって済む話ではない。
派閥の裏金疑惑が直撃
だが、首相の動きは鈍く、危機感は感じられない。年明けに政治改革を議論する党の組織を立ち上げると表明しただけで、具体的に何をやろうとするのか見えてこない。うみを出し切る覚悟が求められている。
派閥均衡に配慮した当選回数順送りの人事の弊害も露呈した。
首相が「適材適所」とうたった9月の内閣改造では、副大臣、政務官に女性が起用されなかった。公職選挙法違反の疑いが持たれた副法相、過去の税金滞納が発覚した副財務相ら3人の政務三役が相次いで辞任に追い込まれた。
内閣支持率は自民が政権復帰した2012年以降で最低を記録し、党の支持率も下げ止まらない。第2次安倍晋三政権から続いてきた「自民1強」の状況が大きく揺らいでいる。
21年秋に就任した岸田首相は「聞く力」「丁寧で寛容な政治」をアピールし、変化を印象付けた。官邸主導によるトップダウンの手法が目立った安倍政治からの転換に映ったが、旧来型の派閥政治に逆戻りしたのが実態だ。
第4派閥を率いて党内基盤が弱い首相は、最大派閥に配慮して安倍派「5人衆」の松野氏や萩生田光一前政調会長らを重用し続けた。安倍氏が銃撃事件で死去した後も保守層の離反を招かぬよう、防衛費の大幅増額など安倍路線を踏襲してきた。
政権維持にきゅうきゅうとして「聞く力」は党内に向けられ、施策も国民感覚とのずれが目立つ。
年頭の記者会見で「異次元」とアピールした少子化対策は、児童手当の拡充など年3・6兆円規模に増やす方針を決めた。しかし、支持率が低迷する中、負担を伴う財源問題は踏み込み不足だ。防衛費増額に伴う増税の開始時期の決定も2年続けて先送りした。
そのような中で所得税などの減税を唐突に打ち出したため、「選挙目当て」「増税隠し」との批判を浴びた。ちぐはぐな政権運営が続く中で裏金疑惑が噴き出し、迷走に拍車が掛かっている。
活発な党内議論失われ
にもかかわらず、刷新を求める声が党内から上がらない。
安倍長期政権以降、各派閥はポストの恩恵を受ける総主流派となった。活発な議論が影を潜めた結果、次世代を担う実力者が育っていない。
閣僚や党幹部には世襲が目立つ。過去最多の5人が起用された女性閣僚も、3人は世襲だ。多様な人材育成を怠ったつけだろう。
自民1強が続いたため党内に緩みが広がり、政治の危機に際して機敏に対処できていない。
野党も存在意義を問われている。分裂を繰り返してバラバラだったことも、自民1強を許した一因だ。政権交代の現実味が薄れ、政治から緊張感が失われた。自民政治の旧弊が噴出する今こそ、一致して政権と対峙(たいじ)し、新たな選択肢を示さなければならない。
地方では新陳代謝を求める動きが出ている。
4月の統一地方選では道府県議や市議の女性比率が過去最高となった。今秋以降の地方選でも自民系候補が苦戦しているのは、既存勢力に対する有権者の不信と不満の表れだろう。
1988年に発覚したリクルート社を巡る金権汚職事件を受け、自民は翌年に政治改革大綱をまとめた。政治資金の透明化や派閥解消を目指すことが記されたが、今や空文化している。
「政治とカネ」に関わる不透明な体質を抜本的に改め、国民の暮らしを守る政治を実践しなければ、失われた信頼は取り戻せない。
●汚職事件に「私に徳が足りないのが悪い」と心を痛めた…昭和天皇の逸話 12/31
「絶対的権力は絶対に腐敗する」を体現する自民党
よく知られる「権力は腐敗しやすく、絶対的権力は絶対的に腐敗する」という格言を残したのは、19世紀イギリスの歴史家であるアクトン卿だ。彼が言ったように、あまりにも長く権勢を振るいすぎたのであろうか――。
憲政史上最長の在職日数を誇った故安倍晋三元首相などの出身派閥として、長く我が世の春を謳歌した自由民主党最大派閥・清和政策研究会(安倍派)の話だ。この派閥が政治資金パーティー収入の過少申告による組織的な「裏金作り」をしていたのではないかという疑惑が今、自民党そのものを揺るがしている。
政治ジャーナリストの田ア史郎氏曰く、「規模としては、リクルート事件級の広がりを持つ事件になるのではないかと、政界でも思われています」。実際、政権運営の要である内閣官房長官が約19年ぶりという異例の更迭となるなど、非常に重大な政局と化している。
皇位継承問題もしばらくは棚上げ
自民党といえばここ最近、皇室の存続を「喫緊の重要課題」と位置付ける岸田文雄首相のもとで、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題への対処などを理由に停滞していた「安定的な皇位継承」の確保のための党内議論を再開させる機運が高まりつつあった。
11月17日には党総裁の直属機関として新設された「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」の初会合が開かれ、会長に就任した麻生太郎副総裁が「事柄の性質も考えて、限られたメンバーで静謐な環境の中で、議論を深めていきたい」と述べたばかりだ。麻生氏としては、国会での議論も静かにやるのが望ましいと考えていることであろう。
そんな中、またしても「静謐な環境」での議論が望み薄になってきたのである。自民党はどの派閥も「裏金」疑惑への対応に追われ、また野党は与党攻撃に邁進し、国会はしばらく皇室の議論どころではなくなるだろう。そのような観点からも筆者はこの新たな政界の不祥事に対し、憤りを覚えずにはいられない。
昭和天皇の侍従の「一生忘れられない」回想録
筆者には、いわゆる「政治とカネ」を巡る問題が取り沙汰されるたびに思い浮かべるものがある。昭和天皇の侍従だった木下道雄氏による回想録『宮中見聞録:忘れぬために』(新小説社、昭和43年)だ。
木下氏はこの回想録の「天皇とその御責任」という一節の中に、「昭和の初めの頃」に自身が体験した昭和天皇との「一生忘れることのできない」とあるやり取りについて記している。
刊行当時はきっと大勢の人が一読したに違いないが、半世紀以上の歳月が流れて、昭和も遠くなった今となっては読んだことがある人も少なくなってきているだろうから、この機会に紹介したい。
ある秋の夕暮れのことだ。内閣書記官が慌ただしく馳せつけてきて、侍従である木下氏に「一刻を争う至急の上奏書が入っているから、速やかに御裁可を得るように特に配慮していただきたい」と言って、上奏箱を手渡してきたという。
箱の中に入っていたのは「司法(現在の法務)大臣の起訴理由書」だった、と木下氏は語る。相応の身分がある者ながら汚職事件に関わっていたから司法大臣を起訴したい、というわけである(※大日本帝国憲法下では、高位の叙勲者を刑事事件で起訴するには天皇の裁可が必要だった)。
内閣書記官が大臣起訴の書類を持ってきて…
木下氏は「個人の名誉に関することであるから」として、この司法大臣が誰なのか、いつの出来事なのかを明らかにしていない。しかし、本当に隠すつもりなどあったのだろうか、断片的な情報からでも問題の人物を特定することは非常に容易い。
彼が昭和天皇の侍従だったのは、代始めから昭和5(1928)年4月までだ。この数年間で該当する人物は、昭和4(1929)年の秋に「五私鉄疑獄事件」で起訴された小川平吉元法相――宮澤喜一元首相の母方の祖父にあたり、大正末期の加藤高明政権に参画して「治安維持法」を成立させた――しかいないのである。
ここで『昭和天皇実録』を確認すると、昭和4年9月26日に浜口雄幸首相が小川氏の処分について奏上している。
「午後二時十分、内閣総理大臣浜口雄幸に謁を賜い、昨日死去の故枢密顧問官男爵平山成信へ旭日桐花大綬章を加授する件につき内奏を受けられる。また併せて、この日午前に御裁可の前鉄道大臣小川平吉の犯罪処分の件(北海道鉄道ほか私鉄五社をめぐる収賄容疑で起訴)につき奏上を受けられる」
今回の記事の主題である木下氏の体験談は、おそらくこの頃の出来事だろう。『昭和天皇実録』によれば裁可は夕方ではなく午前に行われたということだが、後述のように彼はこのエピソードを再三にわたって堂々と喧伝しているから、仮に何らかの記憶違いがあるとしても全くの作り話をしているわけではないと信じよう。
昭和天皇は「私が悪い」と繰り返された
さて、木下氏から上奏書と起訴理由書を差し出された昭和天皇であるが、「汚職といえば、陛下の最も忌み嫌われる問題であるから、陛下はすぐ裁可の印をお捺しになるだろう」――そんな木下氏の予想は大きく外れた。「非常にご当惑の御態度をお示しになった」後、起訴理由書を繰り返しご覧になるばかりで、なかなか捺印しようとなさらなかったそうだ。
しばらく後、ようやく捺印された書類を木下氏がいただいて、待っている内閣書記官に一刻も早くそれを渡そうと思って退出しようとしたその時、昭和天皇は彼をお呼び止めになった。何か別の御用がおありなのだろうかと思った木下氏に対して、昭和天皇はただ一言、沈痛なお声でこうおっしゃったという。
「わたしが悪いのだよ」
また、昭和天皇はその直後にお部屋の縁側にお出になって、悪いのは自分なのだという内容のお言葉を木下氏相手に繰り返されたらしい。
「どうすれば政治家の堕落が防げるのか」とお嘆きに
「非常によく晴れた秋の日暮、夕陽がお庭の松に照りそっていたが、天を仰いで、おっしゃるには、わたしが悪いのだよ、どうすれば政治家の堕落が防げるであろうか、結局わたしの徳が足りないから、こんなことになるのだ。どうすればよいと思うか、とお尋ねになる」――木下道雄『宮中見聞録:忘れぬために』。
木下氏のこの回想から、昭和天皇が捺印をお躊躇いになったのは、自らの「不徳」のせいで政治家を汚職に走らせてしまったとお思いになったがゆえのことだと拝察できる。
最初の一言を聞いた時点で「われわれの仲間の犯したあやまちが、かほどまでに、陛下のお胸を痛めるのか」と申し訳ない気持ちになっていた木下氏は、もはや「あふれる涙を抑えて、ただ無言でお室を退出」するほかなかったという。
木下氏は後年に至るまで「秋の非常によく晴れた夕暮、空を仰ぐと」しばしばこの出来事を思い出したそうだ。よほど印象深い光景だったのであろう、彼は同様の文章を『忘れ得ぬこと』、『天皇七拾年:天皇陛下皇后陛下御訪欧記念』などにも掲載している。
「世の乱れは君主の徳が足らないから」という考えの源泉
世の中が乱れるのは君主に「徳」が足りていないせいだという考え方は、説明するまでもなく古代中国で生まれたものだ。
中国史上における帝王たちは『論語』に「政を為すに徳を以てす」とあるように、その徳を以て人民を教化すべき存在だと考えられた。民が利己的に行動する社会は、聖天子がいた理想の古代から堕落した「小康」の世(『礼記』)とみなされたが、理論上この責任は帝王に帰せられよう。
彼らはまた、「天人相関説」の思想――政治が良くなければ災異という形で天に警告されるという考え方――に基づき、自然災害や疫病などに際して「罪己詔」という自らの過ちを反省する詔書を出した。そしてこの思想が日本に伝来して以来、多くの天皇が災異について自らの不徳のせいだと表明してきた。
「今茲に天下の大疫にて、万民多く死亡におよぶ。朕、民の父母として、徳は覆すこと能わず。甚だ自ら痛む」――『後奈良天皇宸翰(しんかん)般若心経』より。
昭和天皇は最後の「東アジア的帝王」だった
先に示した昭和天皇のエピソードは、このような伝統的な徳治思想の流れを汲むものだといえよう。その意味においては、そこまで独自性がある逸話でもないわけである。
しかし、昔ながらの女官制度の改革に意欲的でいらっしゃったり、新宮殿の建設に際しては「天子南面」の伝統にこだわらない姿勢をお示しになったりした開明的な君主であられた昭和天皇が、一方ではこんな旧時代的な考え方がごく自然に出てくるような人物でもあられたということは注目に値する。
先述の木下氏は、マッカーサー連合国最高司令官との会見時の昭和天皇のお振る舞いについて重光葵元外相の手記から知った後、元侍従としての体感からも「皇祖皇宗に対し更に上天に対し、絶対の責任を自覚せらるるおん方」だと考えざるを得ない――とも述べている。
現代では聞き慣れない言葉かもしれないが、前者の「皇祖皇宗」は皇室の始祖と歴代天皇のことだ。そして後者の「上天」とはこの場合、中国思想における天地万物を支配する最高神「天帝」のことに他ならない。
韓国皇帝、清国皇帝(一応「満州国皇帝」も併記しておこう)、ベトナム皇帝などが歴史の中に消えていった20世紀中に、日本の天皇は東アジア文化圏で唯一の君主となったが、木下氏の言葉を信じるならば、昭和天皇は単にこの地域において唯一残った君主というだけではなく、名実ともに最後まで残った東アジア的帝王であられたわけだ。
花園天皇の著作『誡太子書』への言及
さて、ここまで昭和天皇について述べたうえで気になるのが、昭和天皇の孫にあたられる今上陛下が、昨今の「政治とカネ」を巡る騒ぎを目の当たりにされてどうお感じになっているのかということである。
昭和天皇は「東宮御学問所」という特別な教育機関でお学びになったが、戦後生まれの今上陛下は際立って特別な帝王教育をお受けになったわけではない。それでも、漢籍を典拠に「徳仁」とご命名されたことの影響もおありなのだろうか、しばしば徳について触れられている。その代表例が花園天皇の著作『誡太子書(かいたいしのしょ)』へのご言及だ。
「『誡太子書』においては、まず徳を積むことの大切さを説かれ、そのためには道義や礼儀も含めた意味での学問をしなければならないと説いておられます。このような歴代の天皇の思いに、深く心を動かされました。私は、過去に天皇の書き残された宸翰などから得られる教えを、天皇としての責務を果たしていく上での道標の一つとして大切にしたいと考えています」――令和4(2022年)年2月21日、お誕生日に際せられて。
いわゆる「保守政治家」こそ襟を正すべき
これは文脈上、過去の天皇のように国民に寄り添いたいというお気持ちを表現なさったにすぎないけれども、もしかしたら陛下も昭和天皇をはじめとする歴代天皇と同様のお考えを実は持っていらっしゃるのかもしれない。
いや、否定する材料は特にないのだから、皇室の長い歴史と伝統の継承者という立場上そうお考えになっているとみなしておこう。そのほうがいわゆる「保守政治家」たちを戒めるためにはよいであろうから。
今は亡き安倍元首相がそうであったように、安倍派には皇位継承について強いこだわりを持つ者が多い。筆者は彼らと同じく男系男子による皇位継承を尊重する立場から「旧宮家」の皇籍復帰を支持しているが、今はただただ「皇室を大事に思う心があるのならば、まずは天皇陛下を悩まし奉ることのないように襟を正せ」と思うばかりである。
●「消滅可能性都市」1000超に拡大も 政府に増田元総務相が苦言 12/31
元総務相の増田寛也・日本郵政社長は、人口減少問題に警鐘を鳴らした「増田リポート」の発表から10年となるのを受け、毎日新聞のインタビューに応じた。この間の政府の地方創生の取り組みは「十分な効果を上げなかった」と指摘。将来的に「消滅」の恐れがある自治体数は、10年前の試算(896自治体)より増え、1000超に拡大している可能性があるとの厳しい見方を示した。
増田氏が座長を務めた政策提言機関「日本創成会議」の分科会は2014年、若年女性(20〜39歳)の人口が10年から40年までの30年間で半分以下に減る自治体を「消滅可能性都市」として、896の市区町村名を公表。この年代の女性による出産が大半であることに着目した独自推計で、「増田リポート」は当時の安倍晋三政権が地方創生に取り組むきっかけにもなった。
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が12月22日に公表した地域別将来推計人口では、50年の総人口は東京都を除くすべての道府県で20年を下回り、市区町村の約2割は20年比で人口が5割以上減るとの結果だった。増田氏は「2割もの自治体で30年間で人口が半分未満になるというのは、大変恐ろしいことだ」と指摘。社人研の最新の推計を基に、消滅可能性都市を試算し直し、新たな提言を出す考えを示した。
政府の「異次元の少子化対策」の財源については、岸田文雄首相が「実質的な負担を生じさせない」と主張していることに対し「『将来の子どもたちのために負担をお願いする』と真正面から言ったほうが(国民に)伝わったのではないか」と提起。外国人政策についても「真正面から移民政策について議論すべきだ」と語った。
●「少子化問題の解決につながらない」 小池百合子都知事の政策に疑問 12/31
半年後に迫る東京都知事選。3期目への出馬に意欲を見せているとされるのが小池百合子知事(71)だ。前回選挙で歴代2位の約366万票を獲得して当選したが、そもそもこの間、彼女はいったい何を成し遂げたのか。
「酷」と「翔」――。定例会見で「今年の漢字」を問われた小池知事は二つの漢字を示した。夏の酷暑に加えて世界各地で紛争が絶えなかったと嘆く一方、これからは明るくいこうと、あの大谷翔平の名を挙げ「羽ばたくくらいポジティブにいきたい」と語ったのだ。
そう一年を振り返った彼女は、「翔」という漢字にふさわしい活躍をしたとの自負があるのだろう。今年4月の豊島区と、今月の江東区の区長選では、ともに自らが推す女性候補が当選。5日の都議会では、来年度から私立を含む都内全ての高校授業料の無償化に取り組むと発表。SNSでは“東京に引っ越したい”などと拍手喝采の声があふれた。
「少子化の本質的な解決にはつながらない」
「空前のバラまきだと疑問視する声もあります」と話すのは都政担当記者。
「世帯年収の制限を撤廃すれば教育費に余裕のある富裕層にとっては貯蓄が増える分、低所得者や子を持たない都民との格差が拡大する懸念が生じています」
都庁OBで小池知事の部下だった澤章氏に聞くと、「岸田政権の少子化政策の向こうを張って、選挙前に注目を浴びたい小池さんの意図が見え見えです。今年から約1200億円もの税金を投入して、18歳までの子供を持つ都民に月5千円を配っていますが、少子化問題の本質的な解決につながる政策ではありません」
「都民のために仕事をする気概を感じない」
かつての選挙では「7つのゼロ」を公約に掲げ、コロナ対策も国に丸投げで「密です」などと言葉遊びに終始していたとして、澤氏はこうも指摘する。
「私が役人だった頃から、小池さんは時代のトレンドを公約に取り入れ、世間から自分が良く見られるにはどうしたらいいかばかり気にしていた。都民のために仕事をしようという気概を感じたことはなかったですね」
都を通じ小池氏に聞くと、「『7つのゼロ』については高い目標をより良い都民生活の実現につなげるため掲げたもので、例えば待機児童の数は大幅に減少するなど政策が着実に進展していると考えている」
そういえば、花粉症や満員電車ゼロなんて公約は、どうなりましたっけ?
●安倍派が特に悪質。パー券「裏金」で国会議員の立件は本当にあるのか? 12/31
12月27日、政治資金パーティーの「裏金」疑惑で、東京地検特捜部は、池田佳隆衆議院議員の事務所などを家宅捜索。初めて政治家本人への強制捜査を決行しました。特捜部は、困難との見方もある「証拠」を掴むことができるのでしょうか。今回のメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』で、ジャーナリストの有田芳生さんは、政治資金収支報告書不記載の共謀と公選法違反で立件された例をあげ、今回も立件は可能と指摘。加えて、スキャンダルと低支持率が結果に直結しない日本の選挙で、有権者が問われることになると2024年を展望しています。
裏金疑惑 国会議員の立件はあるのか
12月19日に安倍派(千代田区平河町2-7-1 塩崎ビル)と二階派(千代田区平河町2-7-4 砂防会館別館3階)の事務所に東京地検特捜部の強制捜査が入った。いまわかっている裏金は安倍派が約5億円、二階派は1億円ほどだ。
収入を派閥の政治資金収支報告書に記載せず、議員も自身の報告書に記載していないから、安倍派がとくに悪質だ。押収した文書からどこまで解明が進むのか。12月21日には、つい1週間前まで官房長官だった松野博一議員が、さらに安倍派の事務総長を松野議員と同じように経験した高木毅議員、さらに安倍派「5人衆」のひとり世耕弘成参議院前幹事長にも任意の事情聴取を要請したことがわかった。
検事経験者などは、会計責任者と議員の共謀を証明するハードルは高いとコメントしている。政治資金報告書にパーティー収入を約4000万円過小記載したため、略式起訴され、罰金100万円、公民権停止3年となり、議員を辞職した薗浦健太郎議員(千葉5区)の場合は、秘書とのメールや音声が残っていたため、逃げることができなかった。
では今回の裏金疑惑はどうか。メールや音声が残っているかどうかは今後の捜査にかかっている。しかし任意の事情聴取を受けた会計関係者などが実態を語っているために、新たな事実が浮かび上がっている。
『朝日新聞』は12月21日に「参院選の年 全額還流か」「安倍派裏金 改選議員対象に」と書いた。これまで年1回のパーティーでノルマが課せられ、それを上回った売り上げは議員に裏金として還流されたことがわかっていた。
しかし参議院議員の改選議員には、売り上げすべてが裏金として渡されたというのだ。こうしたやり方は安倍派では慣例化されていたという。パーティー券は1枚が2万円だから100枚売れば200万円。売れば売るだけ裏金として選挙資金にできたのだ。安倍派から金額と現金が議員事務所に渡された。派閥の会計責任者は議員本人に電話で確認したともいう。それが政治資金収支報告書に記載されていないのだから「不記載」で、議員と秘書は共犯となる。
猪瀬直樹東京都知事が「徳洲会」グループから5000万円の現金を受け取っていたことが2014年に発覚した。議会で5000万円分の紙幣に見立てた紙袋をカバンに入れることを求められたがファスナーが閉まらず知事があぶら汗を流すシーンが生々しかった。じつはこのとき新しい同じカバンだったので入らなかったようだ。
しかし闇献金の裏金疑惑だ。結局、猪瀬知事は公選法違反で辞任に追い込まれた。罰金は50万円だったが公民権停止5年。こんどの裏金疑惑も、議員が知っていて選挙資金を政治資金収支報告書に不記載だったならば、公選法違反に問われる。議員も立件される可能性が高いのだ。ただし裏金は収支報告書に記載されていない。どの政治団体に記載されていないのかをいかにして証明できるのか。
パーティー券の売り上げは銀行を通しているから、派閥の口座に集約されている。その流れを丁寧に追っていけば、どこかで消えているのだから、あとは会計責任者などの供述を重ねていくのだろう。私は安倍派幹部が派閥パーティのチケット購入を支援者に求める文書を持っている。その振り込み先は、議員の地元にある銀行だ。そこにいったん振り込ませて、そこから派閥事務所に振り込む。そこで「中抜き」が行われていた可能性があるという。東京地検特捜部は、こうした金の流れについても調べている。
23年夏に頓挫し、冬にも解散ができなかった岸田政権。このメルマガでも指摘したように、裏金問題が大きくならないうちに選挙に打って出ることも決断できなかった岸田総理は再選の可能性がきわめて低くなった。
24年3月末にも国会で予算を通過させ、そこで岸田退陣の計画が進みつつある。9月の総裁選を前倒しする。そこに石破茂議員と上川陽子外相を立候補させるというのだ。自民党の地方議員に支持されている石破議員に対して初めての女性総理をうたう上川議員の対決だ。どちらが選ばれてもそこで解散に打って出る。
いくら岸田政権の支持率が低くても、選挙はまた別次元だ。政治不信が高まれば、投票に行かず、投票率が下がることが常態化している。森喜朗政権が支持率16%のときに総選挙を行ったとき、前回の239議席に対して233議席を獲得した。有権者全体と投票者にはズレがあるのだ。
1988年から99年のリクルート事件で竹下登政権は退陣したが、あれから35年。細川政権と民主党政権と「非自民政権」はできたが、いまや再び自民党政権でスキャンダルが発覚した。疑惑の政治家が司法取引をしたとの情報が流れ、とくに安倍派議員のなかでは疑心暗鬼が広がっている。東京地検特捜部の捜査は年を跨いで続いていく。1月後半にはじまる通常国会までに大きな方向性は明らかになるだろう。国家権力である検察に「ガンバレ」ではなく、問われているのは有権者なのだ。
●「安倍一強の終わり」が加速させる「日本保守層全体の地盤沈下」 12/31
安倍派を徹底的に追い込んで、政治資金パーティーの腐敗土壌を一掃する―。東京地検特捜部の狙いが、12月19日に行われた安倍派と二階派の家宅捜索で判明した。
「主」が安倍派で「従」が二階派。岸田文雄政権が安倍派4閣僚のクビを切ったのに二階派2閣僚を続投させたのは、逮捕・起訴が安倍派に限ったものであることを法務省筋から摑んでいるためだろう。史上最長政権を築き、99名を擁する最大派閥となった安倍派は、解体の危機にある。
'22年7月、凶弾に倒れた安倍氏不在の影響は、保守層全体に及ぶ。改憲勢力の主体を担った「草の根保守」の日本会議はかつての勢いを失い、主力母体の神社本庁は、田中恆清総長の長期政権に鷹司尚武統理が反発し、「総長VS.統理」の対立構図が続いている。それが神道政治連盟の揺らぎとなり、集金・集票システムに陰りが見られる。自民党議員の大半が所属する神道政治連盟国会議員懇談会の会長を長く務めたのも安倍氏だった。
言論界も同様だ。『Hanada』『WiLL』といった保守系論壇誌は主柱を失い、常連執筆者の百田尚樹氏は有本香氏とともに、自民党主導でLGBT理解増進法が成立したことに反発して日本保守党を設立。「安倍一強」の反動はかくも激しく日本を揺さぶっている。
●岸田政権と沖縄 解決遠のける強権政治 12/31
「丁寧な説明」「対話による信頼構築」。岸田文雄首相のその言葉が実に空疎に感じられた1年だった。
名護市辺野古の新基地建設を巡り、国は「代執行」に踏み切った。地方自治法上これ以上ない強権で、米軍に供用する基地建設を断行する。そのこと自体が、県との対話を放棄したに等しい。
玉城デニー知事は「沖縄の苦難の歴史に一層の苦難を加える」と代執行を批判した。
復帰前は米軍が銃剣とブルドーザーで土地を奪い、現在は司法判断を免罪符にして国が埋め立てを強行する。沖縄の人々の権利や生活・自然環境を軽んじるような姿勢が通底している。
台湾有事を念頭にした政府の南西防衛強化策にも「丁寧さ」は見当たらない。
石垣島の陸上自衛隊駐屯地が開設し、先島諸島での陸自配備が完成したところに長射程のミサイル配備計画が浮上している。
岸田政権に強い影響力を持つ自民党の麻生太郎副総裁からは、いわゆる有事に際し「戦う覚悟」という発言まで飛び出した。南西諸島の急速な軍備増強は、島々を再び本土の盾とするのではないかという懸念を生み出している。
米軍との合同訓練の増加や大規模化など日米の軍事一体化も目に見えて進む。
事あるごとに「基地負担軽減に全力で取り組む」と繰り返す首相の言葉とは裏腹に、米軍嘉手納基地への無人偵察機「MQ9」の配備や、防錆(ぼうせい)整備格納庫の移設をはじめ負担は増える一方だ。
首相の耳に県民の声は届いているのか。

政府は2024年度沖縄関係予算案を23年度当初比1億円減の総額2678億円で閣議決定した。沖縄振興一括交付金は10年ぶりに増加に転じたものの、物価高を勘案すれば減額傾向に変わりはない。
それどころか自見英子沖縄担当相は空港・港湾の軍民両用化について「沖縄振興の趣旨に反することにはならない」との見解を示した。
関係自治体と合意できれば年度末に予算配分を判断するとするが、地域振興を切望する離島の足元を見るような施策だ。
振興策は安倍晋三政権下で新基地建設に反対する県を揺さぶる道具となった。
復帰50年の節目に「強い沖縄経済」の実現を打ち出した岸田政権では、そのゆがみを正すことが求められていた。しかし本来の目的からさらに離れ、地元への十分な説明もなく軍備増強を急ぐための「アメ」へと変質しつつある。

負担やリスクに触れず、国民的議論を避けて施策を押し進める手法は、安倍政権以降の「自民1強」で顕著になった。
傲慢(ごうまん)な態度は、多くの議員の関与が疑われている政治資金パーティーに絡む裏金づくり疑惑にもつながっているのではないか。政治資金規制法を軽視したとしか思えない問題が次々と露呈している。
沖縄に対しても岸田政権の強権的な態度が、互いの溝をさらに深め問題解決の道を遠のかせている。 
 
  
 
 

 



2023/11