メディアの沈黙

ジャニー氏による性加害 
「メディアの沈黙」
珍しく 「メディア」という言葉 公の場に復帰 
口をつぐんだ メディアへの批判

今の 日本 「メディア」は絶滅危惧種
特に 政(まつりごと)に係り 「メディア」は大事な役割を担ってきました
とは言え  いつの間にか 
「忖度メディア」に成長しました

正面から 目に見える場面 風景 景色 
文字 記事にしています 
画像 放送しています
「忖度メディア」  村社会 スクープはご法度 
長いものには巻かれろ
    ・・・  気楽な稼業と来たもんだ

文春 新潮 期待しましょう

 


 
 
 
 

 

●忖度メディア史
ジャニー氏性加害拡大招いた「同族経営の隠蔽体質」と「メディアの沈黙」 2023/8
政治のうわさ話 2023/7
世襲政治 2023/6
首相長男外遊中「公用車で観光」 2023/1
過去最大の国家予算 2022/12
閣僚辞任ドミノ 2022/11
統一教会の解散命令 2022/10
財政健全化 麻生大臣 2022/10
安倍元首相殺害から国葬 海外メディア報道 2022/10
安倍元首相と統一教会 2022/9
第2次岸田改造内閣 2022/8
新型コロナ 第7波 第8波 2022/7
安倍元総理 国葬 2022/7
安倍元総理 暗殺される 2022/7
骨細の方針 2022/6
1ドル 130円 2022/4
岸田首相 施政方針演説 2022/1
特別国会 2021/11
「防衛費GDP比2%」は“平和ぼけタカ派”の空公約 2021/11
総選挙 2021/10
1億5000万円 ばら撒いた人 2021/6
原発汚染水の海洋放出 2021/4
政治に目を向けたくない 2021/3
監視メディア 死滅 2021/3
政治の話 2021/2
総理の息子 2021/2
後手ごての緊急事態宣言 2021/1
Go To トラブル 延長 2020/12
御用学者を大事にします 2020/10
菅新政権スタート 2020/9
安倍天皇 退位 2020/8
「国難」 とんずら総理 2020/7
どこにばら撒く 安倍総理懐の10兆円 2020/7
電通の「闇」 2020/7
「問題ない」 国会閉会 2020/6
ネコババ政治 2020/6
バラマキ青天井 コロナ補正予算 2020/5
犬の遠吠え 2020/5
「アベノマスク」の錯覚 2020/4
森友事件 自殺職員の「遺書」 2020/3
素晴らしい首相 2020/1
一事が万事 「桜を見る会」に見る忖度メディア 2020/1
メディアの伝える 「桜を見る会」 2019/12
公文書の消える国 2019/12
「忖度文化」の証明 2019/11
2887日 最長政権 メディアの風向き 2019/11
驕り傲慢 総理の花見 2019/11
「お詫び」一言で済む 任命責任 2019/10
スポンサー CMあっての民放です 2019/10
安倍総理応援演説 主張を聞こう 2019/7
野党は「恥を知りなさい」 2019/7
100年不安 2019/6
失言防止マニュアル 2019/5
専守防衛 観測気球 2019/4
レッドカードとイエローカード 2019/4
「利益誘導」の積み重ねが国家予算です 2019/4
忖度道路 2019/4
安倍総裁 四選を目指す 2019/3
悪夢の布団を敷いた自民党 3019/2
日露交渉 お金・時間の無駄遣い 2019/1
内閣府 よいしょ「いざなぎ超え」好景気 2018/12
「ややこしい質問受けます」 2018/12
安倍総理の夢 「奈落の底が見てみたい」 2018/11
お金バラマキ政権 2018/10
在庫一掃内閣 2018/10
政治不信 自浄能力を失った自民党 2018/8
安倍総理 「外遊」外交 2018/7
「文書改ざん 自由にやり放題です」 お墨付き 2018/6
疑念の増幅 愛媛県新文書 2018/5
放送制度改革 2018/5
記憶にございません 2018/4
トカゲの尻尾 頑張ってください 2018/4
加計疑惑 愛媛県職員は柳瀬さんに会う 2018/4
権力に逆らえば 抹殺 2018/4
忖度 トカゲ探し 2018/3
権力の座 座り心地快適 2018/3
アベノマジック 数字が踊る 2018/3
天上天下唯我独尊 2018/1
もりかけ 悪魔の証明 2017/12
お役人 忖度文化誕生の起源 2017/10
「国難」 詭弁録 2017/9
「勝」 解散の大義 2017/9
サプライズ 「仕事しない内閣」 2017/9
総理大臣 答弁書の読み間違い 2017/7
「こんな人たち」て誰 2017/7
全局「海老蔵」 忖度テレビの怪 2017/6
マスコミの踏み絵 「加計学園疑惑」 2017/5
忖度の「闇」 2017/3
「忖度」の証明 2017/3
役人の治める 「美しい国」 2017/3
テロ等組織犯罪準備罪 2017/2
忖度の神敬う 安倍晋三記念小学校 2017/2
「日露間に領土問題はない」 プーチン大統領 2016/12
馬鹿な女の子守歌 2016/12
驕る 民を忘れた自民党 2016/10
所信表明にスタンディングオベーション 2016/10
報道の濃淡 色合い 2016/9
国民置き去り お金バラマキ外交 2016/9
大橋巨泉の遺言 2016/7
シャンパンタワーで景気の好循環 2016/7
新聞も 明日に旧聞 古新聞 2016/6
日本の報道自由度 世界第72位 2016/4
退屈な委員会質疑 2016/3
餓鬼の要職 大盤振る舞い 2016/2
ニュースキャスターが消える 2016/2
報道指針 政治的公平性を欠かないこと 2016/2
男の甲斐性 2015/12
票欲しや財政再建遠くなりにけり 2015/10
600兆音頭 2015/9
新しい祝日 「憲法の命日」 2015/9
核兵器輸送の要石 総理大臣と国是 2015/8
報道規制の新三要件 2015/7
誰も理解できない安保法制 2015/7
NHKは判りやすい番組制作に励んでいます 2015/4
NHKは国営放送です 2015/2
三本目の矢はデフレ音頭 2014/12  
一本矢が足りない「アベノミクス解散」 2014/12
お金の中間貯蔵施設 2014/11
検閲 不都合な新聞広告 「●●」黒塗りします 2014/9
原発凍土壁 太陽エネルギーにチャレンジ 2014/8
「慰安婦」報道 朝日新聞の言い訳特集 2014/8
集団的自衛権 2014/6
集団的自衛権 二択三択 世論調査 2014/5
皆が口を閉ざす「日本の農業」 2014/4
安倍首相 自民党の誤認 日本の未来 2014/2
新聞社の「ヤル気」と「覚悟」 2014/1
「その他」の特定秘密 2013/11
原発事故の七不思議 2013/10
野党惨敗の証明 党首の交代劇 2013/7
わけあり選挙 参院選 2013/7
「天動説」を信じる原発科学者 2013/3
平成の大失敗 「アベノミックス」 2012/12
  第2次安倍内閣 2012/12/26 - 2014/9/3
「デフレ」は悪者ですか 2012/9
日本再生のチャンスはない 2012/7 
 
 
 
 

 

労働運動
60年安保闘争
戦後政治 吉田茂・岸信介・中曽根康弘
 
 
 
 
 

 

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安倍政権
「忖度」考
マスコミ自壊伝
 
 
 
 
 

 

●ジャニー氏による性加害 調査報告書の概要
当チームは、本日、株式会社ジャニーズ事務所(以下「ジャニーズ事務所」といいます。)に対し、ジャニー喜多川氏(以下「ジャニー氏」といいます。)の性加害問題に関する調査報告書を提出いたしました。調査報告書の概要は以下のとおりです。
1.本件調査の概要
調査期間:2023年5月26日から同年8月29日まで
調査方法:被害者及びジャニーズ事務所関係者等のヒアリング(41名)、関係資料の精査、専門窓口の設置等
2.事実関係
本件調査の結果、ジャニー氏は、古くは1950年代に性加害を行って以降、ジャニーズ事務所においては1970年代前半から2010年代半ばまでの間、多数のジャニーズJr.に対し、長期間にわたって広範に性加害を繰り返していた事実が認められた。
ジャニーズ事務所は、これまで、ジャニー氏の性加害に関する週刊文春の特集とそれに関する裁判、暴露本の出版、BBCからの取材要請等があったが、ジャニー氏の性加害の事実を調査するなどの適切な対応をしなかったことが認められた。
3.原因
(1) ジャニー氏の性嗜好異常
(2) メリー氏による放置と隠蔽
(3) ジャニーズ事務所の不作為
(4) 被害の潜在化を招いた関係性における権力構造
4.本事案の背景
(1) 同族経営の弊害
(2) ジャニーズJr.に対するずさんな管理体制
(3) ガバナンスの脆弱性
   1 取締役会の機能不全と取締役の監視・監督義務の懈怠
   2 内部監査部門の不存在
   3 基本的な社内規程の欠如
   4 内部通報制度の不十分さ
   5 ハラスメントに関する不十分な研修
(4) マスメディアの沈黙
(5) 業界の問題
5.再発防止策
(1) 本事案の本質
(2) ジャニーズ事務所がとるべき基本的対応
ジャニーズ事務所は、組織としてジャニー氏の性加害が事実であることを認め、被害者に真摯に謝罪し、すみやかに被害者と対話を開始してその救済に乗り出すべきである。
(3) 被害者の救済措置制度
ジャニーズ事務所は、被害者に対し、被害回復のための適正な補償をする「被害者救済措置制度」を直ちに構築すべきである。
(4) 人権方針の策定と実施
ジャニーズ事務所は、国際的に見て他の企業の模範ともなるべき人権方針を作成した上で、それを国内外に公表し、今後は、その人権方針を遵守し、二度と少年に対する性加害をはじめとする人権侵害を行わせないと明確に表明すべきである。
(5) 研修の充実
   1 人権尊重に関する研修
   2 性加害の問題に関する研修
   3 ハラスメントに関する研修
   4 タレント(ジャニーズJr.を含む)への研修
(6) ガバナンスの強化
   1 ジュリー氏の代表取締役社長辞任と同族経営の弊害の防止
ジャニーズ事務所が解体的出直しをするため、経営トップたる代表取締役社長を交代する必要があり、ジュリー氏は、代表取締役社長を辞任すべきと考える。これにより、ジャニーズ事務所におけるガバナンス不全の最大の原因の一つである同族経営の弊害も防止し得ることとなる。
   2 取締役会の活性化
取締役会が十分な監督機能を発揮できるように定期的に開催し、社内の問題点を適時に共有して適切な対応策を決定すべきである。
   3 社外取締役の活用
社外取締役に期待された役割を十分に果たすことのできる体制作りをすべきである。
   4 内部監査室の設置
内部統制システムの有効性を含め、業務の適正性と効率性を確保するために、他の部門から独立した内部監査部門を設置すべきである。
   5 基本的な社内規程の整備
   6 内部通報制度の活性化
内部通報制度を活性化させるために制度改正を行った上、内部通報の推奨を周知徹底すべきである。
   7 相談先の拡充とアドボケイトの配置
ジャニーズJr.が悩み事等を相談する相談者やアドボケイトを増やすべきである。
(7) CCO の設置
外部から人権に関する専門家を採用してCCO を設置し、「人権方針の策定と実施」や「研修の充実」の責任者とし、「内部監査室」や「内部通報制度」を統括させ、取締役会に意見を述べる権限を付与するべきである。
(8) メディアとのエンゲージメント(対話)
ジャニーズ事務所は、すみやかにメディアとのエンゲージメント(対話)を開始して、二度と同様の性加害の発生を許さないことを宣言し、そのために人権方針を定め、ガバナンス体制も整備して再出発するという強固な決意を明らかにし、今後はメディアとの相互監視、相互牽制により人権侵害の再発を防止していく姿勢を示すことが求められる。
(9) 再発防止策の実現度のモニタリング  
 
 
 
 
 

 

●ジャニー氏による性加害報道
 8/29

 

●性被害拡大招いた「同族経営の隠蔽体質」と「メディアの沈黙」 8/29
ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川前社長による広範な性加害を認めた外部専門家による「再発防止特別チーム」は29日に公表した調査報告書で、「徹底的な隠ぺいを図ってきた」同族経営の体質と「メディアの沈黙」が被害の拡大を招いたと厳しく批判した。
親が子を守るようにかばい続けた
報告書はジャニー氏より4歳年長の姉で、創業以来ジャニーズ事務所の最高権力者の立場にあったメリー氏がジャニー氏の性加害疑惑に対して「一貫して否認する態度を貫いていた」と指摘した。
その背景として1性加害行為を強く否認する弟ジャニー氏の言葉をひたすら信じようとし、性加害疑惑から目を背け、事実かどうかを確かめようともせず、親が子を守るようにかばい続けた2性加害の事実を認識していながら、放置し、創業者の不祥事が露見することで事業に影響が出ることを危惧して、事実を隠蔽し続けた──と、二つの可能性を挙げている。
メリー氏は、ジャニー氏の性嗜好異常と、それによる少年たちへの性加害が続いていることを知りながらも、その行為を否認し改めようとしないジャニー氏の行動を止めるのを断念したことで「結果として放置する形となり、外部に対してはジャニー氏を守り切るために徹底的な隠蔽を図ってきたものと考えられる」と分析。「メリー氏が何らの対策も取らずに放置と隠蔽に終始したことが、被害の拡大を招いた最大の要因だ」と指弾した。
我慢すればいい夢が見られる
報告書によると、1970 年代から、ジャニー氏による所属タレントへの性加害は、芸能界では周知の事実として広く知られていたという。1980 年代にジャニーズ Jr.に所属したある被害者の証言を紹介。
合宿所でジャニー氏から性加害を受けた後に事務所に電話した際、事務所スタッフに「ジャニーさんが布団に入ってきて色々触られたんですが、どうすればいいですか。」と聞いたところ、「デビューしたければ我慢するしかない」と言われたことを明らかにした。
さらに「(ジャニー氏は)しょうがない人だから、(レッスンに)来てほしい。」「我慢すればいい夢が見られる。みんな通っていく道だ。」などと言われたとしている。
報告書は、ジャニーズ事務所が「『見て見ぬふり』に終始し、何らの対応もしないどころか、むしろ辛抱させるしかないと考えていたふしがある。このような長年にわたるジャニーズ事務所としての不作為も被害の拡大を招いた大きな要因となった」と批判した。
ジャニー氏死去後も…
報告書は、ジャニーズ事務所をジャニー氏とメリー氏が経営を主導してきた「典型的な同族経営の会社」とした。人気アイドルタレントのプロデュースにより、ジャニー氏のカリスマ性がますます強くなり、誰も文句を言えないという、同族経営の負の「企業風土」がより強く醸成されていったと推察した。
その結果、暴露本や文藝春秋との訴訟によってジャニー氏の性加害が明かされながらも、ジャニーズ事務所の役職員は、ジャニー氏による性加害の事実を黙認・否定し、徹底した調査を行って再発防止を図るなどの適切な対応を行うこともしてこなかった、と批判した。
一方、ジャニー氏死去後はジュリー氏が代表取締役社長として一手に会社を経営。「性加害疑惑に対する対応をとるに当たって、支障となる事情はなくなった」にもかかわらず、ジュリー氏は、事実調査や原因究明、再発防止、被害者救済といった対応を取ることはなかったと指摘。 性加害の点についても、ジュリー氏がそれを認めない以上、「なかったこと」にするという意識が役職員の間で継続していたと考えられる、とした。
マスコミの沈黙で被害拡大か
報告書では、元ジャニーズJr.が被害申告の記者会見を行うまで多くのマスメディアが性加害問題を取り上げてこなかったことも批判している。事務所のアイドルタレントをテレビ番組等や雑誌に取り上げられなくなるのではないかといった危惧から、ジャニー氏の性加害を取り上げて報道するのを控えていた状況があったのではないか、とした。
「性加害についてマスメディアからの批判を受けることがないことから、ジャニーズ事務所は、調査することもなく、その隠蔽体質を強化していったと断ぜざるを得ない。性加害も継続されることになり、さらに多くの被害者を出すこととなったと考えられる」と言及した。
報告書では他にも、人権尊重意識が希薄で、ジャニーズJr.を採用する際に契約を締結することはなかったとずさんな管理体制を指摘。 取締役会の機能不全や内部監査部門の不在、内部通報制度の不十分さといったガバナンスの脆弱性や、性加害やセクシュアル・ハラスメントが発生しやすい土壌がある業界の問題も事案の背景にあるとした。
●ジャニーズ事務所、調査報告書公表 8/29
ジャニー喜多川氏の性加害問題をめぐり、ジャニーズ事務所が設置した「外部専門家による再発防止特別チーム」が29日、調査報告書を公表した。同報告書ではジャニー氏の性加害について「長期間にわたって広範に性加害を繰り返していた事実が認められた」とした。
同調査は今年5月26日から8月29日まで行われ、被害者及びジャニーズ事務所関係者など41人のヒアリングしたほか、関係資料を精査するなどした。
同チームの調査の結果、「ジャニー氏は、古くは1950年代に性加害を行って以降、ジャニーズ事務所においては1970年代前半から2010年代半ばまでの間、多数のジャニーズJr.に対し、長期間にわたって広範に性加害を繰り返していた事実が認められた」と指摘。またジャニーズ事務所に対し「これまで、ジャニー氏の性加害に関する週刊文春の特集とそれに関する裁判、暴露本の出版、BBCからの取材要請等があったが、ジャニー氏の性加害の事実を調査するなどの適切な対応をしなかったことが認められた」と記した。
再発防止策として「ジャニーズ事務所は、組織としてジャニー氏の性加害が事実であることを認め、被害者に真摯に謝罪し、すみやかに被害者と対話を開始してその救済に乗り出すべきである」とし、ガバナンスを強化するため代表取締役社長・藤島ジュリーK.氏の辞任などを訴えた。
同チームは検事総長経験者、精神科医、性暴力などの被害者支を実践している臨床心理の研究者から構成し、同事務所とは一切関わりを持たず第三者委員会としての機能を有している。ジャニー喜多川氏からの性被害を申告する人たちに寄り添い、同事務所の過去の対応上の問題点を調査・検証し、ガバナンス上の問題に関する再発防止策を提言、実行を求める役割を担っている。  
 8/30

 

●ジャニー氏性加害“誰も止められなかった”構造とは 8/30
ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長による性加害問題で、再発防止特別チームは29日、性加害はあったと認め「多くのマスメディアがこの問題を報道しなかった」と指摘しました。
マスメディアの沈黙…ジャニー氏の性加害“誰も止められなかった”構造とは
有働由美子キャスター「改めて、今回公表された調査報告書です。ジャニー前社長の『性加害はあった』として、その原因は、ジャニー氏の性嗜好(しこう)異常、姉のメリー氏による放置と隠ぺい、ジャニーズ事務所も『見て見ぬふり』に終始していた、などを挙げています。その背景には、同族経営で誰も止められなかった、そして“マスメディアの沈黙”、問題を正面から取り上げてこなかったということを指摘しています。小野さん、私たちメディアの大きな責任も問われています」
小野高弘・日本テレビ解説委員国際部デスク「はい。過去に週刊誌が報じてきたのに、多くのマスメディアは取り上げてこなかった。調査報告書には、次のように書かれています」
――ジャニー氏の性加害を取り上げて報道すると、ジャニーズ事務所のアイドルタレントを自社のテレビ番組等に出演させたり、雑誌に掲載したりできなくなるのではないかといった危惧から、ジャニー氏の性加害を取り上げて報道するのを控えていた状況があったのではないか。
――(上記のようなこともあって)ジャニーズ事務所は当該性加害の実態を調査することをはじめとして、自浄能力を発揮することもなく、その隠ぺい体質を強化していったと断ぜざるを得ない。
――その結果、ジャニー氏による性加害も継続されることになり、その被害が拡大し、さらに多くの被害者を出すことになったと考えられる。
“3月のBBC動画”報道しなかった日本テレビ 「性加害などの人権侵害あってはならない」とコメント
有働キャスター「具体的で、厳しい指摘です」
小野解説委員「重い指摘です。日本テレビはコメントで『ジャニー喜多川氏による性加害の事実について、〈マスメディアが正面から取り上げてこなかった〉などの指摘を重く受け止め、性加害などの人権侵害はあってはならないという姿勢で報道してまいります』としており、私自身も重く深く受け止めています。報告書の中でも指摘されていましたが、今年3月にイギリスのBBCがジャニー氏の性加害についてのドキュメンタリー動画を配信したのですが、その際にも私たち日本テレビでもこの動画についてニュースなどで取り上げることをしませんでした」
相互チェックで再発防止 ジャニーズ問題きっかけに 社会全体で人権を守る構造に
有働キャスター「調査チームは再発防止策も提言しましたね」
小野解説委員「はい。踏み込んだ提言でした。再発防止策として、事務所は事実を認めて謝罪をすること、被害者救済措置制度を構築すること、そして、ジュリー氏は代表取締役社長を辞任すべきである、また、メディアと対話して相互に監視・けん制する関係で人権侵害の再発を防止していく、といったことが挙げられています」
職場における性被害に詳しい日本女子大学の大沢真知子名誉教授は、今回の報告書を評価しています。
大沢真知子名誉教授「ジャニー氏個人を断罪して終わりでなく、それを見逃していた経営者に責任があり、さまざまな構造的な問題があったことを報告書は指摘している。ジャニーズの問題をきっかけに、 日本社会全体で人権を守れる社会・企業の構造について考えていかないといけない」
“外圧からしか変わらない日本”が浮き彫りに… どうやって抜本的な変化を?
有働キャスター「落合さん、この再発防止策では、利害関係のある企業がなれあうのではなく、互いにチェックする体制に、ということなんですが、どうすればいいと思われますか?」
落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)「これ、結構考えたんですけど日本のマスメディアに利害関係がない企業がほとんどないので、本当に難しい問題だと思います。メディア含めた日本社会は基本的に忖度で成り立っているので、利害関係のある企業がお互いにチェックするようになるのは、このままでは難しいかなと思います。改めて、日本社会は外圧からしか変わらないことが今回のことで浮き彫りになったと思います。たとえば、BBCが扱わなかったらいまの状態は起きなかったし、もし、日本のメディアが本気で変わろうとするならば、経営陣に外国出身者など日本の“なれあい文化”に絡め取られない人が入るとか、そういう抜本的な変化がないと難しいな、とは思います」

有働キャスター「私自身も、メディアに身を置く1人の人間として、こうして指摘を受ける前に、行動を起こさなかったことを恥ずかしいと思っています。海外の人権問題は徹底的に批判するのに、もっと近くにあった問題はちゃんと取材して知ろうとしませんでした。きょう『マスメディアの沈黙』と指摘されましたが、私も含めたメディア1人1人に突きつけられている問題です。なぜ沈黙してしまったのか、重く問われているという覚悟のもとに向き合っていきたいと思います」 
 9/7

 

●ジャニーズ事務所会見、藤島社長が辞任 ジャニー喜多川氏の性加害認める 9/7
日本ポップ界のスターを数多く生み出した故ジャニー喜多川氏が、創業したジャニーズ事務所の所属タレントに性加害を繰り返していたとされる問題で、同事務所が7日、記者会見を開いた。藤島ジュリー景子社長が辞任を発表し、喜多川氏による性加害を初めて認めて謝罪した。
この問題をめぐっては8月29日、事務所側が設置した外部の専門家による「再発防止特別チーム」が調査報告書を発表。喜多川氏が60年にわたるキャリアの中で「長期間」性加害を行っていたことが認められると指摘し、藤島氏の社長辞任や被害者への救済措置などを提言していた。
喜多川氏の姪(めい)にあたる藤島氏は記者会見で、「事務所としても、個人としても、性加害はあったと認識している。被害者の皆さんに心からおわび申し上げる」と述べた。
一方で、被害者の救済措置に取り組むため、今後も当面は代表取締役にとどまるとした。事務所の全株式も引き続き保持する考えを示した。
後任の社長には、同事務所の所属タレント、東山紀之氏(56)が就任する。東山氏も会見で喜多川氏の性加害を謝罪。経営に専念するために年内でタレント活動を引退すると述べた。
東山氏はジャニーズ事務所の初期にスカウトされたタレントの一人。喜多川氏による性加害については、「うわさとしては聞いていたが、私自身は被害を受けたことはない。受けている現場に立ち会ったことはなく、先輩たちからも後輩たちからも相談を受けることはなく、うわさには聞いていたが、自分から行動を起こすことはなかった。今後は反省を込めて対応していきたい」とした。さらに、「信頼を取り戻すのは大変なことだが、人生をかけて取り組んでいく」と述べた。
喜多川氏の名前を冠した社名の変更については、それを求める声があることは認識しているとしたが、すぐに変えることはないと、東山氏は述べた。
記者会見で、藤島氏らは事務所の構造改革についも触れた。同事務所が今後、変化を実施していくと広く見られているが、その変化がどのようなものか、所属タレントがどのように管理され、保護されるのかは分からない状態となっている。
長年にわたり華やかな名声の代名詞だったジャニーズ事務所の、ブランドとしての将来についても、多大な疑問が複数指摘されている。
当事者の会の反応
一部の日本メディアは、この会見の中継を見る「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の様子を伝えた。複数の被害者が、険しい表情を浮かべてジャニーズ事務所の会見映像を見ていた。
藤島氏の会見後、当事者の会は別の会場で記者会見を開いた。代表を務める平本淳也氏は、藤島氏が登壇したことを評価。「ほとんど下を見ずに、自身の言葉で発言していた救済のメッセージは、私たちにストレートに伝わった」と述べた。
会員の大島幸広氏は、「事務所側から認めてもらって心からの謝罪をしてもらいたいと言ってきたが、今日の会見では認めて心からの謝罪をしてもらったと思う。傷が消えるわけではないが、100のうち10くらいは楽になったと思う」と語った。
中村一也氏は、被害者であることは恥じることではないと語った。
「当初、自分は泣き寝入り状態だったが、行動すれば、見えなかった景色が見える。下を向いて歩くよりは、前を向いて勇気ある行動をしてほしいと思う」
ワインスティーン事件と同等の規模と影響
喜多川氏の問題は、その規模と業界への影響において、レイプや性的暴行で有罪判決を受けたハリウッドの元大物映画プロデューサー、ハーヴィー・ワインスティーン受刑者のスキャンダルに匹敵する。
喜多川氏は、日本のエンターテインメント業界で最も影響力のある一人だった。多くの少年がスターを目指して事務所に入った。
BBCが今年3月に放送したドキュメンタリー「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」は、喜多川氏の性的要求に応えなければデビューできないと恐れる被害者たちの心境を伝えた。ドキュメンタリーでは「合宿所」と呼ばれた喜多川氏の複数の自宅で、デビュー前のジャニーズ Jr.たちが、多くの場合ほかの少年がいるなかで、性的暴行を受ける様子や、性的搾取がパターン化して横行した様子が、繰り返し語られる。
生前から喜多川氏による性的搾取の疑惑がうわさされ、1999年には週刊文春による連続報道もあったが、事務所は改善策を取らず、逆に名誉毀損で週刊文春を訴えた。この民事裁判の第二審で東京高裁は2003年、文春の報道について、「セクハラ行為」に関する記事はその重要な部分において真実であることの証明があったと認めた(2004年に最高裁で確定)。しかし、喜多川氏の行動が、刑事事件として立件されることはなかった。
日本の大半の主要メディアは、事務所と文春の裁判についてもほとんど伝えず、一連の疑惑にも長年触れてこなかった。このため、日本のマスコミ全体が隠ぺいに加担したとの批判も出ている。
喜多川氏は2019年に87歳で死去するまで、少年のスカウトとレッスンを続けた。その葬儀は国家的な行事で、当時の安倍晋三首相からも弔電が届いた。
今年3月にBBCが喜多川氏の性加害について報道すると、それをきっかけに、カウアン・オカモト氏をはじめ複数の男性が虐待を受けたと名乗り出た。続いて、ジャニーズ所属タレントを応援する複数のファンが、第三者による全面的な検証・調査などを求める署名に1万6125筆を集め、事務所に提出したと発表した。
こうしたなかでジャニーズ事務所は5月、謝罪動画と関連の文書を自社サイトに掲載した。
座長の林眞琴前検事総長、精神科医の飛鳥井望医師、臨床心理士の齋藤梓博士からなる再発防止特別チームは、藤島氏以外にも、被害を訴えた23人を含む計41人に聞き取りを行った。
その結果、「古くは1950年代に性加害を行って以降、ジャニーズ事務所においては、1970年代前半から2010年代半ばまでの間、多数のジャニーズ Jr.に対し(中略)性加害を長期間にわたり繰り返していた」ことが認められたという。
8月末に発表された報告書では、同族経営が「ジャニーズ事務所におけるガバナンス不全の最大の原因の一つ」だと指摘。藤島氏の社長辞任を提言した。
藤島氏は当初、こうした第三者調査にも反対していた。5月の謝罪動画では被害者に謝罪したものの、性加害の事実を認めるには至らず、被害も認識していなかったと述べていた。
しかし報告書では、取締役に就任したころには疑惑を認識していたと認められるとし、「性加害の事実について積極的な調査をするなどの対応はとらなかった」とした。
国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会も8月上旬、喜多川氏が数百人の少年を虐待していたとの調査報告を発表。日本のエンターテインメント界には性的捕食者が処罰されることなく行動できる労働環境があると指摘した。
●「小学2年から100回の被害」「恐怖しかなかった」被害者の告白 9/7
9月7日、ジャニーズ事務所が記者会見を行い、新社長に就任する東山紀之(56)、社長を退任する藤島ジュリー景子氏(57)が出席した。
東山新社長は会見でこう語り、ジャニーズ事務所の新たなスタートへの意気込みを語った。
「まずは喜多川氏の性加害を認め、ここで謝罪させていただきます。被害に遭われた方々、長きにわたり心身共につらい思いをさせたことを本当に申し訳なく思います。今後はこの事実に真摯に向き合うため、私は年内をもって、表舞台から引退します。今後は人生をかけてこの問題に取り組んでいく覚悟です」
だが、親族であるジュリー氏が経営陣として残ることで、ジャニー喜多川氏の性加害問題は今後もくすぶり続けることになる。
今や国際問題になりつつあるジャニー氏の性加害問題。これまで「週刊文春」に証言したのは1970年代以降の被害者だった。だが、新たにジャニー氏がジャニーズ事務所を創業する前、1950年代に被害にあった人物も名乗り出ている。
その人物とは、国民栄誉賞を受けた作曲家の服部良一氏を父に持つ、俳優の服部吉次氏(78)だ。アメリカで良一氏の知遇を得ていたジャニー氏は、19歳頃から服部家に出入りしていた。
「彼は大体、土日に遊びに来る。遅いから泊まっていこうかなという話になり、母親が気楽に『よっちゃん(吉次氏)のところがいいんじゃない?』と。彼も『よっちゃん、一緒に寝ようよ、肩揉んであげるよ』って」(吉次氏)
吉次氏は当時小学2年生。2階の寝室で並んで寝ていると、ジャニー氏の手が伸びてきた。
「肩のマッサージから始まって、そこから手足をずっと揉んで、それで非常にスムーズにパンツの中に手が入ってきた。おちんちんを触られますから、こっちはまあ、びっくりしましたね。そこから発展して、彼が自分の口を使って、いわゆるオーラルセックスを始めた。後ろ(肛門)にもチャレンジしてきましたね。でも後ろは痛みを感じて、無理やり入ってこようとするから、どうしても拒否するかたちになった。その後に自分を慰めるような行為をしていた気配を感じました。それが最初の日です」
暗がりに車を停めてズボンを下ろし……
翌朝、吉次氏は姉に、性器を触られたことを話したが、「そんな気持ち悪い話しないでよ!」と怒られ、両親たちには伝えなかった。その後、被害は2年半近くにおよび、実に100回程度の被害があったという。
吉次氏の友人である松ア基泰氏(79)も被害者だ。
ジャニーズ少年野球団で練習していた小学2年から1年半にわたって30回以上の被害にあったと証言する。ジャニー氏は松ア氏らを映画などに連れて行くと、必ず松ア氏を自宅に送った。暗がりに車を停めると、松ア氏のズボンを下ろし、口腔性交に及んだという。
「『帰りたい』と言ったんですけど、『もうちょっとだから』と。恐怖しかなかった。嫌だけど抵抗のしようがない。とうとう国連が乗りこんでくるという話だが、当然だと思う。ぜひきれいに洗い流してもらいたいというのが現在の率直な感想です」(松ア氏)
70年以上前から行なわれ、史上類を見ない性犯罪の様相を呈すジャニー氏の性加害。東山社長体制で果たして解決への道筋をつけることができるのか。世界中の注目が集まっている。
●デーブ・スペクター氏「BBC報道で動き出した。反省しないといけない」 9/7
故ジャニー喜多川氏による性加害問題について、7日、フジテレビの「イット!」に出演したテレビプロデューサーのデーブ・スペクター氏は、「日本国内での懸命な取材や報道があったにも関わらず、BBCが報じたとことで動き出したというのは反省しなければならない」と述べた。
ジャニー氏による性加害問題を受け、ジャニーズ事務所は7日午後2時から午後6時過ぎまで4時間以上にわたり、初めて会見を行った。会見には、藤島ジュリー景子前社長、所属タレントで新たに社長に就任した東山紀之氏、井ノ原快彦氏、事務所顧問である木目田裕弁護士が出席した。
この会見についてデーブ・スペクター氏は、「言わなければならないことをちゃんと言っている。言いづらいことも結構言っているという印象だった」としたうえで、「これから(週刊誌などにより)ファクトチェックがなされると思うし、当事者の会の反論もあると思う。すべてをこのまま鵜呑みにしてはいけない」と述べた。
そして、「(性加害問題については)日本国内での懸命な取材や報道があったにも関わらず、外圧で始まった。3月にBBCが報じたとことで動き出したというのは反省しなければならない」と指摘した。
「イット!」には青山学院大学の原晋監督も出演。「東山新社長、井ノ原さんが真摯に受け答えされている」と会見の印象について語った。また、東山新社長については「実力のある俳優さんだから独立して、あるいはどこかの事務所に移籍して芸能活動できるはず。にもかかわらず、ジャニーズ事務所を立て直すために社長としてこれから頑張っていこうと。ジュニア期から40年余りお世話になっている、過ちを認めて、そこに対する恩返しを頑張っていこうという姿勢が感じられた」と述べた。
●ジャニー氏、ギネスもホームページから削除「記録の掲載は適さない」 9/7
「ギネスワールドレコーズ」は6日、故ジャニー喜多川氏の性加害の調査報告書を受け、「記録の掲載は適さないと判断し、公式ホームページから記録を削除した」と発表した。記録の抹消については、該当者が有罪となった際に精査するとしている。
ジャニー氏は2011年に、「最も多くのナンバーワン・シングルをプロデュースした人物」として認定されていた。
●ジャニーズ事務所が午後に会見 性加害の認定は? 9/7
ジャニーズ事務所創業者の故・ジャニー喜多川氏の性加害を巡る問題で、事務所は7日午後2時から東京都内で会見を開く。出席者は明らかにされていないが、事務所の人間が会見で報道陣との質疑応答に臨むこと自体、きわめて異例だ。すでに事務所が設置した「再発防止特別チーム」がジャニー氏の性加害の事実を認定し、同族経営の弊害があったとして社長退任などを提言している。これを受け、事務所サイドは何を語るのか。注目が集まる。
性加害問題を巡っては、5月14日に事務所が藤島ジュリー景子社長の動画と書面を公開。ジャニー氏が亡くなっていることも踏まえ「被害の確認は困難」「知らなかった」などとして事実認定を避けている。
一方で、特別チームがとりまとめた調査報告書では、事務所内で1970年代初頭から2010年代にかけて長く広い範囲での性加害があったと認定した。事務所にも事実を認めて被害者に真摯(しんし)な謝罪と対話の開始を求めており、事務所が加害の事実を受け入れるかが、最初のポイントになる。
その上で、被害救済にどう取り組むのか。特別チームの提言では、外部専門家で構成する「被害者救済委員会」が、被害者の申告を検討して、補償の要否や金額などを判断し、適切な補償を行う仕組みを設けるよう示した。提言を踏まえ、事務所はどこまで具体性のあるものを提示できるか。スケジュールも含めて重要になるだろう。
報告書では、ジャニー氏の性嗜好(しこう)異常(パラフィリア)の存在と、事務所の最高権力者だった姉のメリー喜多川氏による問題の放置と隠蔽(いんぺい)、さらには事務所の「見て見ぬふり」という不作為が重なって、被害が拡大したと指摘した。藤島氏についても、取締役に就任した頃から、性加害の疑惑を認識し、社長就任後も性加害の事実を調査しなかった点が厳しく批判された。こうした批判にどう向き合うのか。
そもそも現社長の藤島氏が会見に出席し、自らの言葉で語るかどうか、事務所は明らかにしていない。藤島氏は性加害問題で5月14日に公式サイトで約1分の動画を公開したが、公の場では説明していない。面識のあるテレビ関係者は「彼女は人前で話すタイプではなく、会見(の受け答え)は厳しい」と話しており、その動向にも注目が集まる。
また、特別チームは藤島氏の社長辞任と、同族経営の弊害の防止を求めている。藤島氏の去就それ自体はもちろん重要だが、辞任だけをもって、「責任を取った」と受け取るのは難しい。
仮に辞任した場合でも、注目すべきは、藤島氏が100%保有している事務所の株式を手放すかどうかだ。藤島氏が取締役として会社に残るとの報道もあり、そうなれば、オーナーとして影響力を残す可能性もある。株式を手放す場合にも、譲渡先がポイントだ。
今回、藤島氏が辞任し、次期社長に所属タレントで最年長の東山紀之氏の就任が有力視されている。東山氏は少年隊のメンバーとして一時代を築いたトップタレントだが、経営者としての手腕は未知数だ。さらに、ジャニー氏やメリー氏と長く芸能生活をともにしており、ことあるごとに恩義も口にしてきた。事実上の同族経営にならないか、問われることになる。 
 9/8

 

●江川さん、玉川さん「BBC報道きっかけ」に反論「恥じるべきはそうじゃなくて」 9/8
ジャーナリストの江川紹子さんが8日、自身のX(旧ツイッター)を更新。ジャニーズ事務所の創業者であるジャニー喜多川元社長の性加害問題について、この日放送のテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」でコメンテーターの玉川徹さんが「BBC報道がきっかけ」などと発言したことに反論した。
玉川さんはジャニー氏の一連の問題について、メディアの責任を認めつつ、「これはやれないなとか、触れてはいけない空気みたいなものがあったんじゃないか」と指摘。「やりにくい雰囲気があった結果として、このような犯罪がずっと続いてしまったということはあろうかと思います」とコメントし、「恥ずかしいのはBBCの報道をきっかけに始まったこと。テレビは恥じなければいけない」と自省した。
これに対して江川さんは「恥じるべきは、そうじゃなくて、ずっと前に文春が報じ、それについての裁判所の判決が出ても報じなかったことでは?」と記述。BBC報道ではなく、過去の判決を黙殺したことを恥ずべきだと反論した。
●東山氏にも性加害疑惑、ジャニーズ事務所新社長に就任も批判や疑問の声 9/8
創業者の故ジャニー喜多川氏の性加害問題で揺れるジャニーズ事務所で、新社長になることが発表された東山紀之氏についても、少年への性加害疑惑が取りざたされている。
ジャニーズ事務所は7日、喜多川氏が所属タレントに性加害を繰り返していた疑惑にからんで記者会見を開き、藤島ジュリー景子社長が辞任を発表した。
東山氏も藤島氏と共に喜多川氏の性加害を謝罪し、経営に専念するために年内でタレント活動を引退すると述べた。
しかし会見では、東山氏による性加害行為の疑惑についても質問が相次いだ。
記者らは、元ジャニーズ Jr.による暴露本の内容について、繰り返し東山氏に質問した。本の内容は、同氏が少年たちの股間を足で刺激した、自分の性器を見せつけた、「僕のソーセージを食え」と発言したなどというもの。それについて東山氏は、「僕が性加害をしたのかということですか?」と聞き返した上で、「僕はしたことはないです」と返答。「事実ではないと思っています」、「ちょっとわかりかねます」とも述べた。
しかしその後、別の記者から「自身のセクハラ、パワハラに関連して」真実を語るよう促されると、「覚えてないことの方が、多くてですね、もしかしたらしてる可能性もあるし、もしかしたらしてないかもしれないし、ただやっぱりもちろん若気の至りがあったり、その時の自分の幼稚さであったりとか、そういうものもあったとは思うんですね。ただ記憶をたどっても、ちょっと覚えていないことも本当に多くて。僕もそうだと思うんですけど多分、いろんなことやってるんだと思います」、「記憶を呼び起こすのが難しい作業でもあったので、実際したかもしれないし、してないかもしれないというのが本当の気持ち」だとも述べた。
一方、喜多川氏による性加害については、「うわさとしては聞いていたが、私自身は被害を受けたことはない。受けている現場に立ち会ったことはなく、先輩たちからも後輩たちからも相談を受けることはなく、うわさには聞いていたが、自分から行動を起こすことはなかった。今後は反省を込めて対応していきたい」とした。
東山氏は同事務所の所属タレントで、東山氏はジャニーズ事務所の初期にスカウトされたタレントの一人。インターネット上では、東山氏と同事務所との数十年の関係から、社長就任を批判する声や、どのように事務所を変えていくのか、どうやってタレントを守るのかといった疑問の声があがっている。
東山氏は自身の社長就任について、「僕に資格があるかどうかは、これからみなさんに判断していただければ良いと思う」、「信頼を取り戻すのは大変なことだが、人生をかけて取り組んでいく」と述べた。
8日には、被害を明らかにしているカウアン・オカモト氏が記者会見を開いた。「一番誰がつらいかといえば、自分の母親だ」と述べ、涙を見せた。
「母がどういう思いでこの出来事を聞いて、日々生きているか。母に言えなかったことはいっぱいあるし、そういう思いにはもうさせたくない」と、オカモト氏は話した。
東山氏の社長就任については、「誰も社長はやりたくないはず(中略)リスペクトしたい」と述べた。
一方で、喜多川氏は自分にエンターテインメントを教えてくれたと発言。「僕自身はジャニーズ事務所という場についての感謝と、エンターテイメントの夢を見させてくれたジャニー氏を恨みきれない思いは、世間にグルーミングと言われても、今でもある」とも述べた。
メディアへの大きな影響力
喜多川氏は、日本のエンターテインメント業界で最も影響力のある一人だった。ジャニーズ事務所は何十年もの間、Jポップの代名詞であり、多くの少年がスターを目指して事務所に入った。
しかし現在、この事務所は性加害者の名前を冠している。
7日の記者会見で東山氏は、社名をすぐに変えることはないと述べている。
喜多川氏をめぐっては、2019年に87歳で死去する前から性的搾取の疑惑がうわさされていたが、刑事事件として立件されることはなかった。その葬儀は国家的な行事で、当時の安倍晋三首相からも弔電が届いた。
週刊文春による連続報道や暴露本での指摘はあったものの、疑惑は公然の秘密とされ、日本の大半の主要メディアも長年触れてこなかった。
しかし、今年3月にBBCが喜多川氏の性加害について報道すると、それをきっかけにオカモト氏を含む複数の男性が虐待を受けたと名乗り出た。
こうした動きが、外部の専門家からなる「再発防止特別チーム」による独立調査につながった。また、ジャニーズ事務所は5月、謝罪動画と関連の文書を自社サイトに掲載した。
8月に発表された調査報告書は、喜多川氏が60年にわたるキャリアの中で「長期間」性加害を行っていたことが認められると指摘。藤島氏の社長辞任や被害者への救済措置などを提言していた。
藤島氏は7日の記者会見で初めて、喜多川氏による性加害を認め、謝罪した。疑惑についても暴露本や雑誌記事があることは認識していたが、喜多川氏の権力はとても強く、「親族であっても物を申せなかったということが、弊社の歪なところだった」と述べている。
日本の芸能界に詳しいジャーナリストの松谷創一郎氏は、ジャニーズ事務所は日本の多くのメディアに多大な影響力を持っていると指摘する。
松谷氏は5月、朝日新聞に対し、テレビ局や雑誌の収入減がジャニーズ事務所のアイドルに視聴率を過度に依存する状況につながっていると話した。
たとえば同事務所は2019年、退所したタレントを出演させないようテレビ局に圧力をかけていたとして、公正取引委員会に注意されたことがある。
松谷氏は、問題の根本を解決しない限り、他のタレント事務所でも同じようなことが起こりうると付け加えた。
●英BBC「創業者の性的虐待ようやく認めた」…欧米・中国メディアも報道 9/8
ジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害を認めた同事務所の7日の記者会見を、海外の主要メディアも大きく報道した。
ジャニー喜多川氏による性加害問題についてのドキュメンタリー番組を3月に放送した英BBCは、「日本最大の音楽タレント事務所の社長が、創業者の性的虐待をようやく認めて辞任した」と報じた。
BBCは「彼の虐待に関するうわさは何年も前から知られていたが、具体的な措置は取られなかった」と指摘し、BBCの番組によって「日本中で議論が巻き起こり、全容解明を求める声が高まった」と強調した。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は「預かった少年を創業者が食い物にしていたことを日本のタレント事務所が認めた」と報じた。米CNN(同)は「ジャニー氏の権力が大きく、要求に従わなければキャリアを失う恐れがあった」とする元事務所所属の歌手の発言を紹介した。
中国メディアも、共産党機関紙傘下の環球時報が「性的スキャンダルが衝撃を引き起こした」と会見内容を速報するなどした。 
 9/9

 

●「最低」「何様」元ジャニーズJr.に繰り返される誹謗中傷 9/9
9月7日、ジャニーズ事務所が会見を開き、ジャニー喜多川氏による性加害を認めました。口火を切った元Jr.は今も誹謗中傷に苦しんでいます。当事者たちの受け止めを取材しました。
ジャニーズ事務所 会見で「性加害はあった」
村瀬健介記者「ジャニーズ事務所の記者会見が始まります。たくさんのカメラが集まっています。性加害の事実を認めるのか、被害者の補償をどのようにするのか、事務所側の説明が注目されます」
9月7日、ジャニーズ事務所が記者会見を行った。
藤島ジュリー景子前社長「ジャニー喜多川に“性加害はあった”と認識しております」
冒頭、藤島ジュリー景子氏は、ジャニー喜多川氏の性加害を認め、謝罪した。9月5日をもって社長を辞任。新社長には東山紀之氏が就任した。
村瀬記者「半世紀以上の長期にわたって、数百人の少年に対して性加害が行われていたという史上空前の加害行為になると思うんですけれども」
東山紀之新社長「喜多川氏と藤島氏の絶対的な存在がいましたし、僕らはそれを正しいと信じておりました。今となっては大変恥じておりますが、被害の拡大を生んだのではないかと考えております」
創業者に由来する社名「ジャニーズ」はそのまま。被害者への補償については、100%株主であるジュリー氏が事務所にとどまり、速やかに進めていくとした。
ジャニー氏の性加害については…
東山新社長「やってることは鬼畜の所業だと思ってます」
“最も多くのNo.1シングルをプロデュースした人物”として、ギネスにも認定されたジャニー氏。一連の性加害問題を受け、記録は公式サイトから削除された。
ジャニーズタレントを広告に起用していた企業も、今後は見送るなどの方針を明らかにした。
会見ではジャニー氏の性加害に対する認識についても問われた。
村瀬記者「東山さんは、性加害が行われていたことについて認識されていたのか。どのような行動を取られたのか」
東山新社長「恥ずかしながら何もできず、何の行動もしておりませんでした。ただ“噂としては”もちろん聞いておりました」
会見を見ていたジャニーズ性加害問題当事者の会のメンバーたちは…
ジャニーズ性加害問題当事者の会 平本淳也代表「残念だね、ここだけね」
ジャニーズ性加害問題当事者の会 石丸志門副代表「東山紀之氏の発言は、真実性に欠けると思います。本当のことを語っているのかというところは、これから追及していきたいと思います」
70年前の被害者は「さらに追及して暴いていく」
9月2日、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の平本淳也代表は、服部吉次さん(78)のもとを訪ねた。作曲家、服部良一さんの次男である吉次さんは、8歳の時、ジャニー氏から性被害を受けたという。
服部吉次さん「僕の布団に入ってきて、パンツの中にも手が入ってきて」
2人が会うのは、この日が初めて。当事者の会の活動を見て、吉次さんのほうからオファーしたという。
服部さん「見離しちゃいけないなというか、放っておいてはいけないなと思って。発言しないと後で後悔することになるぞと思って」
長年、ジャニー氏からの性被害に苦しんできた2人。これまで抱えてきた思いを語り合った。
服部さん「僕が体験したことを翌朝になって、一番最初に姉に話したんです。冗談で通じると思ってたの。『やめなさい、そんな話』『汚い』って」
平本代表「自分が言うことの勇気とは何かっていったら、どう思われるかがすごく怖い」
今後は協力メンバーとして、当事者の会を支えていくという服部さん。事務所の会見についても厳しく言及した。
服部さん「全体的な印象として、大変綿密に彼ら(事務所)が作戦を練って、ほぼその通りに進行できたということだと思います。とにかく彼らの犯罪を、さらに追及して暴いていくことだと思います」
ジャニー氏からの性被害 口火を切った元Jr.は
最初に声をあげた人物は、その後、苦しんでいた。中学3年生でジャニーズJr.になり、ジャニー喜多川氏から、20回ほど性被害を受けたと明かしたカウアン・オカモトさん。SNSでは、こんなダイレクト・メッセージが
カウアン・オカモトさんに届いたダイレクト・メッセージ
「最低」「何様」「早く死んでくれ!ゴミゴミ粗大ゴミさようなら!」 
元ジャニーズJr. カウアン・オカモトさん「あまり開かないようにしているのですが」 
ジャニーズ事務所や所属タレントが、苦しい立場に追い込まれたことへの怒りの声が浴びせられている。当時、オカモトさんは、ジャニー氏への感謝の気持ちもあると語っていた。
今、苦しんでいるのは、誹謗中傷だけではない。
カウアン・オカモトさん「誹謗中傷もそうですけど、一番辛かったのは『じゃあジャニーズを潰せ』という言葉だったり、『じゃあ、お前は誰の味方なんだよ』という言葉。僕自身は、誰かを傷つけたいとか、憎しみをもってやってなかったので、ジャニーズでアイドルとして一流を目指して全力でやっていたので、それを全部否定したくないんですよね。引くも、行くも、地獄みたいな」
オカモトさんは、過呼吸などパニック障害による発作にも襲われた。自ら命を絶つことも頭をよぎったという。
カウアン・オカモトさん「すごくネガティブになり、存在否定をしているんですね、自分の。だから、もう生きたくないというか。逃げられないですね。ずっと頭がぐるぐる回っちゃうというか。危険な状態ですよね」
それでも今、オカモトさんは日本と、両親の出身地ブラジルで、シンガーソングライターとして活動している。自ら書いた歌詞には、今の心境と重なる部分も多いという。
カウアン・オカモトさん「『差別を止めて進化をはかろう』という部分が、憎しみあったり戦争するんじゃなくて、自分の中に許しをもって」 
最近、誹謗中傷は減り応援が増えてきたという。苦しんできたことは確かでも、後悔はないと言い切る。
カウアン・オカモトさん「後悔はないです。後悔よりもやっぱり常に希望をもって、未来に向かって歩いていけるというのを僕は信じているので、だから今も後悔していないし、この経験したからこそ人に希望を与えたいなって思っています」 
●日本の公然の秘密……ジャニー喜多川氏の性的加害 9/9
日本有数の芸能事務所を作り上げたジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川氏が、所属タレントに性的虐待を繰り返していたとされる問題で、喜多川氏のめいにあたる藤島ジュリー景子社長は7日、喜多川氏による性加害を初めて認め、社長を辞任したことを明らかにした。
日本国内に衝撃が走ったのか? いや、走らなかった。
それよりむしろ、「みんな知ってたけど、誰も何もしなかった。それがついにおおっぴらになった」という感覚の方が強い。
喜多川氏にはもう何十年も、性的加害の疑惑がつきまとっていた。発言しようとする者は阻止された。芸能界で絶大な権力をもつ巨大な存在と、その帝国が繰り出してくるだろう訴訟の予感が、声を上げようとする人の前に立ちはだかっていたのだ。
加害疑惑の一部はすでに、事務所が週刊文春の報道を訴えた民事裁判で真実と認められていた。しかし、喜多川氏が刑事訴追されることはなかった。
喜多川氏は、性的に虐待する対象を常に追い求める「プレデター(捕食者)」だった。同時に彼は、スターを生み出すスターメーカーで、Jポップ界の数々のビッグスターにとっては恩師、恩人だった。権力と成功と、何百人もの少年の夢を、彼はずっと握っていたのだ。
日本で芸能界を目指す10代の少年にとっては、これがスターになるための「暗黙の代償」だったという書き方をした記事もある。
BBCが今年3月に放送したドキュメンタリー「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」で発言した被害者の1人は、「これを我慢しないと売れないから」と周りに言われたと話す。
喜多川氏は自分が育てたタレントたちに恐れられ、あがめられていた。
藤島氏らによる7日の記者会見を受けて、ほとんどの新聞は新社長となった東山紀之氏の写真を一面に掲載した。
「"父"ジャニー氏の性加害」という見出しを掲げた新聞もあった。東山氏はかねて喜多川氏を恩人として語り、「父のよう」に慕ってきたと述べていた。
BBCドキュメンタリーの3月放送後、現在は歌手として活動する元ジャニーズ Jr.のカウアン・オカモト氏が4月、自分も15歳の時に虐待被害にあっていたと公表した。そしてカウアン氏は事務所の謝罪会見翌日の8日、自ら記者会見。その中で、「僕自身はジャニーズ事務所という場についての感謝と、エンターテイメントの夢を見させてくれたジャニー氏を恨みきれない思いは、世間にグルーミングと言われても今でもある」と話した。
ジャニー喜多川氏に対する性加害疑惑は何十年も前からあり、日本のマスコミのほとんどは何十年にもわたりその疑惑を調べなかった。例外が、1999年に報道キャンペーンを展開した週刊文春だった。
TBSの昼の情報番組ではジャーナリストが、芸能事務所の社内文化を点検するだけでなく、事実上の疑惑隠蔽(いんぺい)につながったマスコミの慣習についても検証する必要があると指摘。なぜメディアがこれに触れてこなかったのか、自問自答しなくてはならないとも話した。
しかし、答えは簡単じゃないかと言えるかもしれない。権力だ。ハーヴィー・ワインスティーン受刑者がハリウッドで権勢を誇っていた当時のこと、強姦罪で有罪となる前のことを思えばいい。
喜多川氏の権力は、事務所の所属タレントだけではなく、そのタレントを積極的に使いたがる放送局、そして番組のスポンサーとなる広告主にも及んだ。マスコミと芸能が密接に絡み合う空間において、決定権を握っていたのは喜多川氏だった。
なぜこの事態がこれほど長いこと、しかもこれほど幅広く続いていたのか。それを理解するには、日本の恥と沈黙の文化も要素となる。
日本では、性的暴力を受けたと女性が発言すれば、その女性が激しい非難と攻撃にさらされることがある。
そこにさらに複雑な要素を何層も重ねていくと、このジャニーズ問題になる。スターになりたくて一生懸命な少年たちが、同性の年長者に気に入られようとする。その同性の年長者がそれを利用して、少年たちに性的加害を繰り返したのだ。
この一連の出来事が日本の芸能界にどう影響するのか、見通しは不透明だ。この国の少年アイドル文化の基礎を築き上げたとされるジャニーズ事務所において、あまりにたくさんの変化が必要とされている。
しかし、「新しいページ」をめくろうとする事務所の第一歩は、今のところあまり芳しいものではない。新社長の東山氏自身が、性加害疑惑を取りざたされている。
記者会見で自分に対する疑惑について東山氏は再三、質問されたが、それに対する答えは、「記憶を呼び起こすのが難しい作業でもあったので、実際したかもしれないし、してないかもしれないというのが本当の気持ち」という内容だった。
そして、藤島氏は社長の立場は退いたものの、代表取締役ではあり続ける。株式も100%保有し続ける。被害者の補償と救済に自らあたるためだという。
そして、ひとつ大事なことは変わらないまま続く。ジャニーズ事務所という名称だ。これには被害者の多くが驚き、落胆した。自分たちが経験したことに照らせば、その加害者の名前を事務所が冠し続けることは自分たちへの侮辱だというのが、多くの被害者の思いだ。
ジャニーズ事務所。英語名は「Johnny and Associates(ジャニーと仲間たち)」。この名前はかつて、日本の芸能界やJポップ・カルチャーそのものを意味するものだったかもしれない。それが今や、日本最大の性的虐待スキャンダルを引き起こした加害者の名前を冠する、汚名にまみれたブランドとなってしまった。 
 9/10

 

●「サンモニ」青木理氏、ジャニーズ問題→忖度・萎縮→キャスター降板に変換 9/10
ジャーナリストの青木理氏が10日、TBS系「サンデー・モーニング」に出演し、ジャニーズ事務所に対する忖度(そんたく)に触れ、報道の姿勢についてコメントした。
ジャニーズ事務所の創業者・故ジャニー喜多川氏による性加害問題を巡り、前社長の藤島ジュリー景子氏、新社長となった俳優・東山紀之、ジャニーズアイランド社長のタレント・井ノ原快彦らが7日に記者会見を開いた。
青木氏は井ノ原の「得体の知れない、触れてはいけない空気があった」という発言を引き合いに出し、「得体の知れない、触れてはいけない空気みたいなものに、われわれメディアも完全に飲まれてたんじゃないですか」と苦言を呈した。芸能だけの話ではないとし「かつての1強政権下で、いろんなキャスターの方が辞めたと。そういうのも、そういう忖度とか萎縮とかみたいなものと無縁ではなかったんじゃないでしょうか、っていう問題もあると思う」と語った。
「芸能だけじゃなくて政治に対しても、あるいはありとあらゆる権力とか権威に対して、われわれ、きちんとファイティングポーズとってますかっていうところが問われる」と報道姿勢に注文をつけた。なお、さまざまなキャスター降板については、政権が介入した可能性は取りざたされているが、はっきりとした因果関係は伝えられていない。
●性加害の認識に立てず 鈍感だった新聞 ジャニーズ依存深めたテレビ 9/10
「性加害認める」「被害者の救済は」――。ジャニーズ事務所が、故ジャニー喜多川氏による性加害を認めて謝罪した7日の会見を、テレビ局はそんなテロップと共に時間を割いて伝えた。
調査会社のニホンモニターの調べでは、この日地上波では36番組が報道し、時間にして計18時間4分13秒に上った。新聞も翌朝1面で大きく扱った。
だが、マスメディアがこの問題を積極的に報じたのは極めて最近の話だ。事務所が設置した再発防止特別チームが先月29日に公表した報告書には「マスメディアの沈黙」という項目があり、こんな記載がある。
「テレビ局をはじめとするマスメディア側としても、事務所が日本でトップのエンターテインメント企業であり、性加害を報道すると、自社の番組に出演させたり、雑誌に掲載したりできなくなるとの危惧から、性加害を報道するのを控えていたと考えられる」 ・・・
●ジャニーズ問題の報道「力が弱まってきたから叩く」スタンスは「間違い」 9/10
脚本家の三谷幸喜氏が9日、「情報7daysニュースキャスター」に出演し、ジャニーズ事務所の創業者・故ジャニー喜多川氏による性加害問題の報道について警鐘を鳴らした。
性加害問題について、7日に俳優・東山紀之、ジャニーズアイランド社長のタレント・井ノ原快彦、前社長の藤島ジュリー景子氏らが記者会見を開いた。ジュリー氏は引責辞任し、東山が新社長に就任することが発表された。
三谷氏は当事者であるジャニー氏がすでに死去していることに触れ「先の展開が難しい」と事件の追求ができないことを指摘。さらにジャニーズ事務所の対応については「新体制に期待するしかない」と傍観者にならざるを得ないとした。
「忖度という形で黙認してきた社会というかぼくらの態度であって、これが、『ジャニーズ事務所が力が弱まってきたから忖度しなくていいんだ。だからこうやって叩いてるんだ』。だとしたら、それは間違いだと思う」と“ここぞとばかり”に畳みかけるスタンスには否定的。「今後、同じようなことが起きた時、力のない人が涙するようなことが起こった時に、ぼくらは忖度せずに向かい合うことができるか。向かい合わなければ今回の経験が何の意味もないことになっちゃう」と過ちを繰り返さないことが大切だと説いた。 
 
 
 
 

 

●ジャニーズ性加害「私たちはなぜ伝えてこなかったのか」 NHK「クロ現」報道 9/12
2023年9月11日放送の「クローズアップ現代」(NHK)は、桑子真帆アナウンサーの「ジャニーズ事務所の性加害問題。私たちメディアはなぜ伝えてこなかったのか、検証します」との言葉を皮切りに、テレビ業界がジャニーズの性加害問題に向き合ってこなかった裏側に迫った。
元民放プロデューサー「ジャニーズ関連のものは全てアンタッチャブルに」
約2年間の在籍中に200回以上の被害を受けたという元ジャニーズJr.の大島幸広さんの「メディアが放送してくれれば(性加害を)止められた部分も絶対あるだろうし、同罪と言っていいくらいじゃないか」「でも過去は変えられないので、今から本当に同じことを繰り返さないでほしい」という言葉を紹介し、桑子アナは「被害者に事態を動かす役割を担わせてしまった。この事実を重く受け止め、責任を痛感しています」と神妙な面持ちで語った。
1988年以降、ジャニー喜多川氏による性加害の告発本の出版が相次いだことや、2003年に高等裁判所で性加害を認定、04年に最高裁判所で高裁判決が確定したことなどを年表で振り返り、桑子アナは「これまで私たちメディアがこの問題を報じるタイミングがなかったとは言えません」と自省した。
番組では、04年前後にNHKや民放で報道や芸能の責任ある立場にいた53人に、ジャニーズ事務所の性加害を報じてこなかったことについて調査を行い、40人から回答を得たという。
1990〜2000年代にニュースや情報番組に携わったという元民放プロデューサーの吉野嘉高氏は、「ジャニーズは触れないということですよ。触ると大ごとになる可能性があるから、やり過ごした方がいいと最初に言われたし、CMに出ているタレントさんも多いですから。営業とかスポンサーさんとか、ジャニーズ関連のものは全てアンタッチャブルにしていくと。そこから先は自動的にジャニーズネタが来たらこれは扱えないと瞬時に判断するようになっていく。そこにもう疑問も持たない。条件反射」と、当時の業界の空気を明かした。
最高裁の判決が出た04年、吉野氏は情報番組の解説者だったという。
「(性加害について番組で触れることが)できなかったわけではないんですよ。これは逃げた方がいいなと、打算でしょうね。例えばジャニー喜多川さんが逮捕された。あるいは逮捕令状が出されたという段階であれば、テレビは確実に報道していたと思います。でも警察からそういう捜査を受けたという情報は僕は得ていないので、自分の役割を越えているのかなと思っていた。報道しなかった結果今のような事態に至っているので、責任ということで言えばその一端はある。ペン(報道)かパン(利益)かの選択において、結果的にはパンの方を選択してしまったのかもしれないと思っています」と振り返った。
●ジャニーズ広告“見送り報道”が相次ぎ…「どこか他人事」櫻井翔の“心の揺れ” 9/12
9月7日(木)、「すべての質問者の質問に答える」という姿勢でジャニーズ事務所が行った記者会見は4時間以上に及んだ。
この日の夜、NHKとテレビ朝日、フジテレビのニュース番組は、ジャニーズ事務所と、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の記者会見の映像を中心に放送していた。
夜ニュースで増えた「広告見送り」報道
日本テレビ「news zero」とフジテレビ「FNN Live News α」ではスポンサー企業の動向を同時に伝えた。損害保険大手の東京海上日動火災保険がCMでのジャニーズ事務所の所属タレントとの契約を更新せず、契約解除を検討していると報道。さらに日本航空はジャニーズ事務所の所属タレントの広告への起用を今年3月から見送っているが、事務所が性加害を認めたことを受けて、適切な対応が取られることを確認するまでの間、当面見送ると明らかにした。
この夜、多くのニュース番組では、ジャニーズ事務所と「取り引き関係」にあった放送局の今後の姿勢を示す声明を読み上げた。「性加害は絶対に許さない」などの強い言葉とともに、「メディアの沈黙」を指摘されたことを反省して今後は積極的に役割を果たすという決意を示した。スポンサー企業によるタレント起用の見直しについてのニュースを報じたのもこうした流れの延長線上にある。
櫻井翔の独占的なインタビュー
各局の夜ニュースの中で、櫻井翔のインタビューを取り上げた日テレ「news zero」が大きな関心を集めた。ニュース番組のキャスターを務めながら、これまで性加害問題については自分の言葉で率直に語っていない櫻井翔が何を語るのか、一般の視聴者のみならず、メディア全体からも注目の的だった。
「news zero」では、メインキャスターである有働由美子アナウンサーが同番組のキャスターを務める櫻井翔にインタビューした映像を放送した。他局にはない、独占的なインタビューだったといえる。
ただインタビューそのものは、表面的な内容に終始した。櫻井翔が事務所の記者会見について感想を述べるものの、有働アナからはインタビューの相手に人間的な意味で迫ろうという気迫や熱意は感じられず、むしろ「遠慮」している印象が強かった。
他人事で、解説者のようなコメント
櫻井翔自身が「性加害」という問題についてどう考えるのか、質問を重ねることはなく、“模範回答”を述べさせているように筆者には見えた。櫻井もこの問題を自分ごととして言葉にするというよりは、どこか他人事の印象で、解説者のようなコメントをしていた。
「有働アナ 長年タレントとして所属している東山さんが新社長になる。前社長である藤島ジュリー景子氏が代表取締役として残り、再発防止特別チームが提言した「解体的出直し」になっていないのでは?
櫻井 会見を見た中での受け止めとしては、登壇されたみなさんの言葉から、ジャニー元社長との精神的な決別というか今までの価値観を完全に否定して全く違う組織になっていくんだというような、それも重ねてですけども強い決意を感じました。
加えてジュリー前社長が代表取締役に残るという点ですけれども、やはり何よりも今、向き合わなければならないのは被害者の方々への誠実な向き合いだと思っています。その中で今声を上げられている方々だけではなくて、これから声を上げる方々も出てくる可能性も含まれる中で、しっかりと誠実に真っ直ぐに向き合っていくという覚悟の表れなのかと僕自身は捉えています。」
櫻井の“心の揺れ”が垣間見えた
櫻井の言葉からは、「解説している」という感じが抜けない。自分が関わっているのだという切迫感が感じられなかった。だが、櫻井の“心の揺れ”が一瞬、垣間見えたのは次の質問だった。
「有働アナ 櫻井さん自身は、性加害の実態というのは、あると知らなかったんですか?
櫻井 (長時間、考え込んだあとに)実態というところに関しては……把握しきれていないというのが正直なところ。ただ、お二方(東山紀之氏、井ノ原快彦氏)とも口にしていましたけれども、噂という点では耳にしたことはありました。」
記者会見で東山新社長らが繰り返した「噂」という言葉。櫻井も踏襲したが、言葉を発する前の櫻井の目が泳いだような光景が印象的だった。
一方この夜、生放送で「質問力」を発揮したのは「news zero」のライバル番組であるTBS「news23」の小川彩佳キャスターだった。
東山新社長の「人権意識」に注目
TBSの夜ニュース「news23」にはジャニー喜多川氏の性加害を35年前から告発してきた「ジャニーズ性加害問題当事者の会」代表の平本淳也さんがスタジオに生出演した。
ニュースのリード文は、以下のような厳しい文章だった。
「性加害問題をめぐって、きょうジャニーズ事務所が4時間にも及ぶ会見を開きました。新社長に就任した東山紀之さんは一連の問題を『人類史上最も愚かな事件』と糾弾。一方で出席した記者から、東山さん自身の性加害疑惑についても相次いで質問が投げかけられました」
「news23」も日本テレビ「news every.」と同様に英BBCのモビーン・アザー記者にインタビューした内容を放送している。
「藤島ジュリー氏と東山氏は子どもの頃からお互いをよく知っている。家族経営をやめると言っていたのに、なぜ長い間所属している東山氏にすべての権力を手渡せるのか」
「news23」は東山紀之新社長の「人権意識」について焦点を当てていた。
東山新社長が会見の終盤で「自分が本当に人権ということに関して取り組んできたのかといったら、かなりおろそかになっていました。人の権利ということをきちっと考える機会になって、それを率先してうちの事務所がやっていくことが重要だと思います」と語った映像を放送。東山氏や、新たに生まれ変わるはずのジャニーズ事務所の人権意識はどうなっているのか。番組側のそんな問題意識がうかがえた。
被害者が東山新社長に求めること
ゲストの平本淳也さんは35年前からこの問題を訴えてきた人物だ。BBCのドキュメンタリー「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」にもインタビューで登場していた。
新社長になる東山紀之氏がジャニー喜多川氏による性加害について、「噂は聞いていたが恥ずかしながら何もできず何の行動もしていなかった」と述べた点について、平本さんはどう感じたのか。小川キャスターはその点を聞いた。
「平本さん ジュリーさんが以前、ビデオでまったく同じことをおっしゃっていた。「知らなかったでは済まされない。でも謝ります」と。それにならったのかな……と。当事者として、被害者として(の立場でいうと)、「知らなかったはないよね」ということはもちろん言いたい。(中略)そこは本当に不可思議に思うところですね。
小川キャスター 平本さんは東山さんと同世代。同じ年生まれでいらっしゃって、合宿所でも時間を共にされていたんですよね。
平本さん 何度も何年も……。はい。一緒に過ごしておりますし、ステージもテレビも映画もそうですし、かなりの時間を共有しております。(中略)年齢が近いし、近かったという一つの仲間意識(もあります)。彼が今回、会見の中で「かつての仲間」と言ってくれたのは、少し感慨深かったなと思います。
   
小川キャスター 東山新社長に求めることは?
平本さん (略)まだスタートラインにも立っていないので、私たちが求める「要請」というものがありまして、被害者と加害者が共に携わりながら救済の方法、手段を一緒に考えていきませんかというものを我々から要請している。それが現状において、相手方に伝わっているのかどうか。まだお返事はいただけていない。(「当事者の会」の要請の図を見て)つまりはジャニーズ事務所側、加害者側に一方的に決めないでもらいたいという意思の表れです。
小川キャスターから「メディアの責任」について質問された時、平本さんはメディア側の人々の心情を慮るようなコメントをした。
「平本さん 自分も、もし被害者でなければ、おそらくそういう噂を「聞いたことがある」と思っていた程度かもしれない。(僕が)アナログの時代から著書や告発ビデオテープを出したりしても、「世の中」には届かなかった。それはメディアが取り上げるにはふさわしくないと判断したのだろうと、そういうことなのかなと、自分ではそう思っているんです。」
当時の自分の力不足を自省するような言い方をした平本さん。小川キャスターは「とんでもない」とねぎらいながら、次の言葉でインタビューを締めくくった。
小川キャスターが振り返った“ジャニー喜多川氏の訃報”
「小川キャスター 私自身も振り返った時に、たとえば喜多川氏の訃報を伝えた際に、海外メディアからは性加害疑惑も合わせて報道されていたにもかかわらず、私自身も番組で功罪の「功」の部分でしかコメントができていなかったというところがありました。
そうした一つひとつの積み重ねが生んでしまった側面もあるのではないかという風に痛感していますし、そうしたところから変わっていかなければならないなと今回の会見を受けて改めて感じています。」
小川キャスターは「自分語り」でインタビューを締めくくってコーナーを終わらせた。小川キャスターも平本さんも、「もっと何か自分にはできたのではないか?」という思いで一致していた。報道する側が被害を受けた人物との間で「対話」と「共感」を成立させた場面だったと思う。
平本さんの「思い」を受け止め、気持ちの通じ合いが生まれ、共感する空気がスタジオ内に満ちる。これを短時間の生放送の中でやり遂げた。日頃からこの問題を考えていればこその言葉の力だったと思う。そういう意味では小川キャスターの報道者としての対応力の高さが発揮されたと感じた。
前述のようにスポンサー企業はジャニーズ事務所との「取り引き」や「付き合い方」を厳しく見直し始め、現在はテレビ各局で、ジャニーズ事務所の所属タレントの広告への起用見送りについての報道が相次いでいる。肝心のテレビ局はジャニーズ事務所の今後の対応を注視した上で、場合によっては厳しい態度を示すことができるのだろうか。
●ジャニーズ事務所を叩く資格などない性加害問題の「主犯格」 9/18
2000年代初頭には裁判所がジャニー喜多川氏の性加害を認定したにもかかわらず、その後もジャニーズ事務所をおもねるような姿勢を見せ続けてきた大手メディア。そんな彼らがここに来て突然同事務所批判を展開し始めるという手のひら返しに、各所から批判の声が上がっています。今回のメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 〜日常風景から語る政治・経済・社会・文化論〜』では京都大学大学院教授の藤井聡さんが、ジャニーズ事務所と同じく性加害を隠蔽してきた大手メディアもジャニー喜多川と並ぶ「主犯格」であると断罪。さらにマスコミが腐敗してしまった日本にもはや自浄作用は存在しないとの認識を記しています。
マスメディアこそが「主犯」。裁かれぬ大手新聞社とテレビ局
ジャニー喜多川による児童・青少年に対する性虐待問題は、BBCで大きく取り上げられて以来、ようやく日本のTV・新聞も取り扱うようになりました。
そして、真の意味で「中立」な調査委員会が調査を行ったところ、その児童虐待・青少年虐待は半世紀にわたって繰り返され、その被害者も数百人、数千人規模という空前絶後の規模であることが明らかとなりました。
しかも重要なのは、そうした性虐待の事実を、ジャニーズ事務所は組織として認識し、その上でその事実を意図的に隠蔽し続けていたことも明らかとなりました。
今、新聞TVの各報道機関は、以上の「調査期間が発表した事実」を報道する形で、ジャニー喜多川性虐待問題を報道しています。例えば、コチラ。
   【ジャニーズ】34年前“怒りの”告白ビデオ入手「騙すのはよくねえっつんだよ!」
    複数の当時Jr.も証言【報道特集】
しかしこの問題を隠蔽したのは、ジャニーズ事務所だけではありません。
今、この問題を報道している大手のTV新聞も、ジャニーズ事務所と全く同じく、この超大規模性虐待問題を隠蔽し続けたのです。
したがって、この事件の主犯はジャニー喜多川であったとしても、ジャニーズ事務所と大手TV新聞社もまた、共犯という形で大きな罪を負っているのです。
したがって今、TV新聞は、自分自身が本事件について共犯行為を働きながら、その反省を行うこともなく、全くもって「ほっかむり」しながら、第三者の立場でいけしゃぁしゃぁと、この性虐待事件を報道しているのです。
この「マスメディアによる重大情報隠蔽」という組織的行為がなければ、ジャニー喜多川の性虐待の被害は、ここまで拡大していなかったことは確実です。したがって、本件についての「マスメディアによる重大情報隠蔽」は、極めて深刻な被害をもたらしたわけであって、したがって本来ならば、新聞TV各社は近代的法制度によって裁かれなければなりません。
しかし、残念ながら近代社会というものは、法的な責任単位が「個人」であって「組織」ではないため、新聞TV各社という「組織」を罰する法制度は存在していないのです…。
それはちょうど、オウム真理教や統一教会、ビッグモーターが「組織」として十分裁かれていないのと全く同じ構図があるのです。
いわば、新聞TV各社は、「マスメディアによる重大情報隠蔽」という巨大な罪を犯したにも関わらず、法律の網の目をかいくぐっていけしゃぁしゃぁとビジネスを継続し続けているわけです。
つまり、「ジャニー喜多川問題についてのマスメディアによる重大情報隠蔽事件」の「主犯」はまさにその新聞TV各社であるにも関わらず、その罪は、一切法的に裁かれないのです。
本当に腹立たしい話しです。
自らが持つ特権を駆使し社会的制裁からも逃れる大手メディア
しかも、「法律の網の目かいくぐった犯罪」に対してできるのは、「社会的制裁」しかないのですが、その主たる執行者は、新聞TVのマスメディアです。
だから、社会的制裁において新聞TVには、我々の中で唯一最大の特権を持っているのですが、新聞TVは、その自らが持っている特権を十全に駆使する事を通して、自らの犯罪行為に対する社会的制裁からも逃れているわけです。
重ね重ね、本当に腹立たしく思います。
一般に、公的権力者がその権力を公的目的でなく私的に流用する行為を「腐敗」と言います。
そんな「腐敗」としては、政治家や官僚による権力私物化が一般には有名ですが、別に権力者は政治家・官僚だけではありません。
新聞TVも立派な「権力者」なのですから、彼らだって「腐敗」するリスクは常に存在しているわけです。
そして、今回のジャニー喜多川性虐待事件についての半世紀にわたる「新聞TV各社による報道事実隠蔽事件」は、日本の新聞TV各社が巨大な腐敗によって侵食されているという事実を明らかに示しているのです(そして、この新聞TVによる「犯罪行為」はいま、ワクチン問題において巨大なスケールで進行しています。ついてはこの件については明日、取り上げようと思います)。
そして、その腐敗は、BBCや国連という外国組織によって初めて白日の下に晒される事になったのです。
本来マスメディアは社会の自浄作用のために存在するものですが、そのマスメディアそのものが腐敗してしまった日本には、もはや自浄作用が存在してはいないのです…。
誠に残念な状況です。
こんな状況だから、自主独立することはもちろんのこと、デフレ脱却にせよ、コロナ対策にせよインフレ対策にせよ、あらゆることが日本には何もまともにできないのです。
それもこれも、日本が腐敗しているからです。
絶望的な気分にならざるを得ませんが、絶望の中の唯一の希望は、その絶望的状況を過不足無く的確に認識するところからしか生まれ得ないのです。
●ジャニーズとの関係を断つ動き、日本企業に広がる 9/20
性加害問題に揺れる日本最大のタレント事務所、ジャニーズ事務所との関係を、日本の有名企業が断とうとしている。
日産自動車、アサヒグループホールディングス(HD)、サントリーHDなどは、ジャニーズ事務所との契約を更新しないとしている。
過去にジャニーズ事務所のトップスターと契約していたトヨタ自動車は、今後は同事務所の所属タレントと契約する予定はないとBBCに話した。
企業のみならず農林水産省も、ジャニーズ事務所のタレントの起用を見合わせると発表した。
ジャニーズ事務所をめぐっては、創業者で日本の芸能界で絶大な影響力をもっていた故ジャニーー喜多川氏が60年間にわたって何百人もの少年や若い男性を虐待していたとする、独立調査の報告書が先月、公表された。
BBCは3月、喜多川氏に関するドキュメンタリーを放送。4月には事務所出身のオカモト・カウアン氏が記者会見し、性被害を主張。次第に国民的な議論となり、複数の事務所出身者が相次いで虐待の経験を語るようになった。
これを受けて、ジャニーズ事務所に対する世論の圧力が増加。今月上旬にはついに、藤島ジュリー景子社長が辞任した。藤島氏は喜多川氏のめいで、2019年に喜多川氏が死去して以来、社長を務めていた。
藤島氏は辞任を発表した際、喜多川氏による性加害があったと初めて公に認めた。
その翌日、飲料大手のアサヒグループHDは、ジャニーズ事務所のスターを起用したテレビとネットの広告を取りやめると発表した。
アサヒグループHDの勝木敦志社長は、「人権を損なってまで必要な売り上げは1円たりともありません」と朝日新聞に話した。
他の有名企業もこれに続いた。
日産自動車は、「当社の人権尊重に関する基本方針に反する行為がジャニーズ事務所であったため、今後の発表まで、同事務所を起用しての新たな販売促進活動は控える」とBBCに英語で説明した。
飲料大手のサントリーHDとキリンHDも、ジャニーズ事務所に対して被害者救済と再発防止の具体策を示すよう求めたと、BBCに述べた。
新社長にも批判の矛先
ジャニーズ事務所に対する批判の矛先は、新社長の東山紀之氏にも向けられている。同氏をめぐっては、少年らに対する性加害疑惑が浮上している。
また、報告書で性加害が認定された喜多川氏の名前を社名に残すことを問題視する声も出ている。
喜多川氏に関しては以前から、犯罪行為があったとの報道が一部であった。しかし、社会的に高い評価を受けたまま世を去った。
生前、「チャート1位を獲得した歌手を最も多くプロデュースした人物」、「最も多くのナンバーワン・シングルをプロデュースした人物」、「最も多くのコンサートをプロデュースした人物」の世界記録を保持した。
しかし調査報告書の公表を受け、ギネスワールドレコーズは喜多川氏の業績を公式サイトから削除したと発表した。
国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会は日本で調査を実施。ダミロラ・オラウィ議長は先月、「明確なスケジュールによる透明で正当な調査」を行うよう政府に求めた。同時に、日本の主要メディアについて、何十年間も性加害疑惑について沈黙してきたと非難した。 
世論に大きな変化
男性タレントだけを扱うジャニーズ事務所は、最近まで芸能界で圧倒的な力をもっていた。テレビ局は同事務所のタレントに出てもらえなくなることを恐れていたと、業界に詳しい人々は話す。
しかし、ここ数カ月で世論は劇的に変わった。
テレビ局に対しては、ジャニーズのスターを番組から降ろすよう求める圧力が強まっている。多くの企業は、そうした番組のスポンサーとなることについて検討を続けている。
ジャニーズ事務所に所属していたアーティストの中には、他の事務所に移籍した人もいる。
●TBS社長「報道機関の役割果たせず」 ジャニーズ性加害問題に 9/20
TBSの佐々木卓(たかし)社長は20日の定例記者会見で、ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川元社長(2019年死去)による性加害問題に関し、同事務所の東山紀之社長に対し十分な補償や人権侵害状況の改善を求める要望書を提出したと明らかにした。
被害者補償など求める要望書提出
ジャニーズ事務所が今月7日に開いた記者会見について、佐々木社長は「被害者の救済や補償、再発防止策がどれだけ出されるのかを注視していたが、具体性に欠けていて不十分と思った」と述べた。そのため自局のコンプライアンス担当役員らが13日、同事務所を訪れ、被害者への補償など具体策の提起を求める要望書を提出。東山社長ら幹部が対応したという。要望書では1被害者への救済補償や人権侵害の防止策に関する具体的な施策、措置を速やかに決定し、公表する2それらを速やかに実施する3施策や措置の進捗(しんちょく)状況について定期的にTBSに報告する4ジャニーズ事務所の人権に関する行動指針を速やかに策定し、対外的に宣言、公表するなどの項目があった。
また、TBSの番組に出演しているジャニーズ事務所所属タレントの起用について、佐々木社長は「現在契約しているタレントの出演は変わらない」と強調。その理由を、日本政府が策定した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」に基づくとして、「ガイドラインでは、取引先に人権侵害があった場合、契約を解除するのは最後の手段としている。今は、取引先との関係を維持しながら影響力を行使し、改善を求める段階だ」と話した。
一方、自局における過去の性加害問題についての報道を「人権意識の乏しさや芸能界のニュースへの向き合い方を思い返すと、本当に恥ずかしいと思っている。多くの被害者がいる中で、報道機関として役割を果たせなかった」と反省を述べた。
●「嵐・相葉雅紀を新CMに起用」報道、紀藤正樹弁護士あきれる 「炎上利用」 9/22
弁護士の紀藤正樹さんが22日までに自身のX(旧ツイッター)を更新。ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長による性加害問題を巡り、嵐の相葉雅紀が新CMに起用されるとの報道について、「炎上利用なんでしょうか」と疑問を呈した。
紀藤さんは「『タレントに罪なし』相葉雅紀の新CMがスタート 企業の”見直しドミノ”に一石」と題した記事を添付した上で持論を展開。「タレント本人に責任がないとしても他の多くの企業がジャニーズ性加害問題に心を痛め、ジャ事務所の抜本的な被害者救済策の実現を望んでいる時に、この時期CM起用する感覚が理解できない」と厳しく指摘。その上で「性加害を容認しかねないということに無理解ですし、炎上利用なんでしょうか」とあきれた。
フォロワーらからは「何のCMかは知らないが商品イメージは低下する」「タレント側も辞退する勇気が欲しい」など同調する声が並んだ。一方で、「相葉さんの人柄とかもあるんじゃないんですかね」「相葉くんは相葉くんなのでノー問題」などジャニーズを一括りにすることに反対する意見も書き込まれた。
●ジャニーズ問題で痛感、利益度外視の使命 「報道は『特別』」 9/22
僕の若い頃には、報道はずいぶんいばっていて、それがとても嫌でした。「オレたちはニュースを作っているんだから、特別なんだ」という感じで、バラエティーとかを見下しているオーラ丸出しで、「報道は視聴率なんか関係ない」と堂々と言い放つ。報道局員は肩で風を切って歩いている感じで、他の部署からずいぶん嫌われていたと思います。
ニュースは「カネ食い虫」で、その割に視聴率も当時は悪かったので、僕たちくらいの世代のテレビ報道マンは「なんとかしないと」と頑張りました。せっせと「面白い特集や演出」を考えて、「数字の取れる番組」にしようと工夫した。
結果、ずいぶんニュース番組は面白くなったと思います。他の部署にも嫌われないように、番宣とかイベントの告知とかも快くニュースの中で放送して、報道だけが局内で浮かないようになってきた。
でも、今回のジャニーズ問題なんかを見ていると、「果たして僕たちがやってきたことは正しかったんだろうか」と疑問に思います。僕たちがなんだか悪い方向にテレビニュースを向かわせてしまった気がします。
「報道も視聴率をとる。お金を稼ぐ。他の部署の協力をして宣伝もガンガンする」という方向になったことで、報道は「特別さ」を悪い意味でなくしてしまったのかもしれない、という反省の念が強いです。
誤解しないでください。報道が他の番組や部署を見下すのは絶対に間違っています。僕は、ニュースもバラエティーもワイドショーもドラマも番組に貴賎はないし、どの番組も同じように存在する価値がある、と思っています。
でも、報道はどこか他の部署とは違う「特別な存在」でいなければならなかったのではないか。
バラエティーを担当するテレ朝の同期に、「報道なんだから、視聴率なんか気にしないで、いいものを作ってよ」と言われたことがあります。確かに報道は、たとえそれが会社の利益にならなくても、やらなければならないことがあると思います。
たとえ「局の超お得意さま」であっても、悪いことをしていたらニュースにしてきちんと伝える。場合によっては、自分の会社の犯罪であっても、ちゃんと報道する。短期的に視聴率につながらなくても、大切なニュースは放送する。自局の番組やイベントは、ニュースでは宣伝しない。
報道は、テレビ局内でいばる必要はない。でも、やっぱりどこか孤高で特別な存在でなければならなかったのではないか、と僕はいま後悔しているのです。
●「全員うすうす気づいてましたよね…」燃えに燃えているジャニーズ性加害問題 9/22
我が子が無事誕生日を迎えたので、例年の通り銀座の不二家にケーキを買いに行ったんです。そしたら、女性ばかり長蛇の列なんですよ。
なんか男が味わうことのない新たなスイーツでも出たのかなと思ったら、いま話題のジャニーズSnow Manのクリアファイルをお客さんに配っていたんですね……。しかも、前の列で100円ぐらいのLOOKチョコレートらしきものを買った中年女性が、いそいそと列の最後尾に並ぶという。女性しか並んでいない列に私のようなおっさんがぽつんと佇みながら、何とも言えない気分になりました。
で、そのジャニーズ事務所なんですが、これまた燃えに燃えています。大変なことです。
ほぼ平常運転のまま、ここまできてしまったジャニーズ事務所
創設者のジャニー喜多川さんが、長年に渡る小児性愛と一方的な性暴力を伴う性加害を繰り広げた結果、亡くなられた後に弾けて大変なことになるという話ですから、そりゃスポンサーやメディアを巻き込んだ騒動にもなります。
それまでも、北公次さんによる告発本があり、さらに99年には文春がジャニーズ事務所との訴訟の果てに、ジャニー喜多川さんの事務所所属少年に対する性加害報道については最高裁判所より真実との判決を勝ち取っています。にもかかわらずジャニーズ事務所はほぼ平常運転のまま、こんにちまで来てしまいました。ジャニー喜多川さんが亡くなられてイギリスBBCによって犯罪的な少年性被害に関する報道が行われて以降、勇気ある告発者たちの赤裸々な体験の告白によってようやく事件解決の道筋が見え始めた、というのが実情です。
また、本件ではジャニー喜多川さんが亡くなって以降この問題が騒動になり、その後、外部専門家によるジャニーズ事務所に本件に関する調査報告書が出ているのですが、そこでかなりストレートにジャニーズ事務所に性加害を隠蔽する体質があったと判断されています。この時点で、一連の性加害を繰り返してきたジャニーズ事務所については反社会的勢力、あるいはそれに準ずる組織と思われても仕方がない事態に追い込まれます。
何より、ここで指摘されるのはジャニーズ事務所のジャニー喜多川さんによる性加害は、その当時、被害者であったかもしれない未成年の男性タレントが、組織防衛のためか加害者に回ってしまう構造があります。当時性犯罪の被害者と同じ立場にあった面々が、表に出て、積極的にジャニーズ事務所の存続を願い、そのような被害実態があったことを証言するどころか隠蔽に回っている時点で反社会的なんですよ。
ソフトランディングできる最終バスに乗れず手遅れに
結局、BBCがジャニーズ事務所の性被害問題を報じ、カウアン・オカモトさんら性被害の実態を公表したタイミングで、すぐにジャニーズ事務所が抜本的な対策をしていれば、あるいはソフトランディングできたかもしれません。逆に言えば、その時期が円満に解決できるフラグであり、最終バスだったと思います。もはや、ジャニーズ事務所は反社会的勢力に準ずる存在として排除の対象となり、性被害を受けた所属タレントさんたちに補償をするバッドカンパニーと、実質的に事務所の機能を存続させ営業するグッドカンパニーとに分け、ジャニーズの看板を下ろして別資本を入れ、人事を刷新しない限り浮上することはおそらくなくなりました。
これもう、水俣病訴訟で重大な賠償金を払うことになった旧チッソや、膨大な負債を穴埋めするために負債をバッドカンパニーである国鉄清算事業団(日本国有鉄道清算事業団)と同じ手段でどうにかするしかなくなって、存続する事業会社は名前を変えて資本も入れ替えるわけですよ。バッドエンドまっしぐらですが、これだけ騒ぎになった以上、もはや解決させないわけにもいきません。
ジャニーズ事務所の問題は、業界の仕組みそのものにあります。当たり前のことですが、芸能界を志してジャニーズ事務所に入所したすべての男の子たちがデビューでき、売れるとは限りません。入所した男の子たちの大半は華々しい芸能界での活躍を夢見ながらも、売れるのは一握りであって、スターとなる望みを絶たれ、失意のまま普通の人生を送るケースがほとんどです。
「ユー、今夜は『合宿所』に泊まっていきなよ」
しかしながら、その練習の過程においてジャニー喜多川さんの目に留まり、認められようと必死に頑張る中で「ユー、今夜は『合宿所』に泊まっていきなよ」と言われて性加害の具にされてしまいます。まだ子どもだから世の中そんなものかと納得させられる状況そのものが、ジャニーズ事務所でスターになれるという補償のない代償としては重すぎる問題じゃないのかと思うわけですよ。
“ある種の共犯関係”にあった人々
さらに、ジャニーズ事務所と各テレビ局、広告代理店などでの癒着問題は、いわゆるビジネス人権上の問題として、人権デューデリジェンスという一般的には耳慣れない単語まで飛び出すようになりました。これは、前述のように北公次さんの告発本や、文春との裁判で少年への性加害が認定されてなお、それと知っていながらジャニーズタレントに人気があるからと言って性犯罪に目を瞑り、結果的にジャニーズ事務所のタレントの売り出しに貢献してきたことは、ある種の共犯、幇助であるとも言えます。
おそらく、これらの片棒を担いだメディアの問題は、ジャニーズ事務所の解体が決まってから総括の対象となっていくことでしょう。
さらに、そのような事務所の実態があることは社会的にある程度知られていながら、そのような事務所に愛する我が子を入所させ、性加害の現場となった「合宿所」に寝泊りさせジャニー喜多川さんやその関係者らの性欲の具にされた件もあります。これは実質的に人身売買にも近しい問題にもなり得ます。というか、我が子たちが望まない性加害の対象となったという犯罪性を、未成年である子どもたちはともかく親たちは本当に知らなかったのでしょうか。
この辺がなぜいままで沈黙してきたか、ジャニーズ問題の深い病理があるように感じます。仮に、私が自らの子どもを問題あると分かってそういうところに「頑張ってこい」と背中を押すかと言われれば、それは無い。でも、親が我が子をスターにしたいとか、ジャニーズや芸能界にもともと憧れていたとか、経済的に困窮しているので子どもを芸事の世界に入れてでもカネが欲しいとか、いろんな感情や欲望が渦巻いていたのだとしたら、これもまた、ある種の人身売買に積極的に加担したことになるのではないか、とすら思います。
「推し」そのものが抱えている“ある種の問題”
その結果、冒頭のようにケーキ屋さんでSnow Manのクリアファイル配布キャンペーンでジャニーズ事務所のタレントが起用されると、Snow Manの女性ファンが各所から集まってきて、黙々とグッズをもらうために行列を作り、そして私が巻き込まれるという悲しい状況があります。これは明らかに男性、それも未成年の性が商品となり、消費されている構造に他なりません。
言わば、現実はかくも凄惨な性犯罪の老舗も同然であるのに、虚構の世界では煌びやかに着飾り、女性たちを魅了するダンスや話術に磨きをかけた、躍動する若者たちの青春だったとするならば、そのような推しの世界もこのまま存続していて良いのでしょうか。
夢を見させられたファンもその世界の存続を願う時点で共犯、というのは気が引ける表現ですが、一連の事態が明らかになり大騒ぎになりながらも、それでも健気にジャニーズ事務所の若いタレントたちを応援する女性の「推し」そのものが病理であり問題なのだとも言えます。悪く言うと「推しは尊い」とか一心不乱に応援することがファンの在り方で、その動機や対象の良し悪しが問われないというのは、見方を変えれば事業者側からすれば都合の悪い話を見ないでカネを積んでくれる単なるカモの話です。絶対に成就することのないアイドルとの交際を夢見る女性の心を掴む悪の運営ノウハウそのものであって、見返りのない推しに金を使わせるアプローチは疑似恋愛のホスト界隈とさほど変わらない悪質さを秘めていると言えます。
本人の趣好に過ぎないのだから、推しは無害とするのは微妙なところです。もちろん、単にファン心理として誰かやチームやグループが好きだから自分のためにグッズを買ったりライブチケットを生活が破綻しない程度に求めるのは「お好きにどうぞ」の範疇だろうと思います。ギャンブルも酒もアイドルも、適量であれば本人の好みの問題にすぎません。しかし、人生をかけて追いかけ、何の見返りもないのにファンクラブでの活動で他のファンの統制まで買って出る行為には危険がともないます。そういうのめり込むファン心理に付け込んで搾り取る行為自体がマルチ商法や宗教での過剰な自己犠牲や寄付行為で生活が破綻する人たちを生む構造とあまり変わらないのです。
性の商品化を進めた果ての……
推しの問題は、コンテンツビジネス全体の一種のダークパターンの問題でもあり、ソーシャルゲームで過剰に課金をして破産するのもパチンコに熱中して車中に置き去りにした我が子が熱中症になってしまうのも、特定の脳内物質を出すために一定の行動にハマらせるビジネスの悪しき側面そのものと言えます。ジャニーズ事務所に関して言えば、ホストクラブとさして変わらない性の商品化という点では、見返りのない推しにカネを使って満足させられるダークパターンを使って性の商品化を進めた果ての、ファン心理の操縦なのでしょう。
グラビアアイドルやプールでの水着撮影会、あるいは駅前や店頭に置かれた萌え絵は性の消費だと騒いでいた界隈が異様に静かなのも驚きです。ジャニーズ事務所の商法こそ、性の商品化そのものじゃないですか。
一方的な性加害に対して法律を変えろというのは結構ですが、温泉地で萌え絵パネルを配っただけの温泉むすめや、献血での宇崎ちゃんは遊びたいのコラボを「公共の場所で性的表現はけしからん」と騒いでいた方々が、文字通り性的表現や性の商品化そのものであるジャニーズ事務所の企業タイアップを平然と黙認し今回特に騒いでいないのは理解に苦しみます。
普段は連帯だ協調だレインボーだと言っていた人たちはどこに消えてしまったの。性として消費されるのが男性なら構わないということなのでしょうか。
また、ジャニーズ事務所が性犯罪の巣窟であったから反社会的勢力であり取引停止を進めていくのだとスポンサー筋がイキリ立って、自社のブランドや商品・サービスからジャニーズタレントの起用を停止するという話も同時に出てきました。そうですか。
でも、人権デューデリジェンスの観点から言うならば、性加害そのものをジャニー喜多川個人の問題だと押し付けて終えられる時期はとっくに過ぎ、最終バスは逃しました。こうなると、ジャニーズ事務所の事態改善に関しては「駄目だと思うから取引を止めました」というだけでは駄目で、継続的に取引先や起用メディアが関与して監視を続けないと、被害救済や再発の防止にならない虞はあるのですよ。したがって、ジャニーズ事務所が健全宣言を出してもそれをそのままには受け取らず、そこで出た行動改善指針の通りにちゃんと改善されているのか、また過去の被害者にも適切な補償が行われているのかを見届けないといけません。
さらに、“当事者の会”も立ち上がっていますが、いくら野党が法律を変えたところで、一般的にはすでに時効を迎えている過去の性被害に関しては遡及して刑法上の責任は当然問えません。常識的な性加害に対する賠償額というのは繰り返し行われた悪質なものであってもせいぜい一人あたり数百万円が相場なのであって、被害を申し出た元ジャニーズタレントやその関係者が求める弁済額には到底届かない所があります。その間に、ジャニーズ事務所の相続問題を解決した喜多川一族が、補償するためのバッドカンパニーを破産させて逃げることだってやろうと思えば可能であることを考えれば、これはもう戦後の芸能界が抱えた汚点そのものだった、とも言えます。
見つめる必要があることは?
性加害も枕・闇営業も暴力団とのかかわりも、世の中の仕組みであり、必要悪だからという謎の理屈で許容されてきた背景は、やはり人間の欲望の中心である、カネとセックスとにダイレクトに関係しているからに尽きます。テレビ局も広告代理店もスポンサー企業も、うすうすそのような事情があることは承知したうえで、なお、リスクよりもメリットが大きいと判断して大金を払いイメージキャラクターに起用し続けてきていることが根幹の問題だと言えます。中には、ジャニーズ事務所から性的な饗応を受けた経営幹部がテレビ局の中に少なくなく、本当の意味で共犯の人も複数いるのかもしれません。
一連の問題が、みんなでジャニーズ事務所だけを袋叩きにして終わりとならず、もうちょっと事実関係を広く見据えて「うすうす全員気づいてましたよね」という類の案件も一緒に整理して業界全体を健全化する、あるいは、少なくとも「問題だ」となったらきちんと声を挙げられるようにする社会にしていったほうがいいと思うんですよ。綺麗事ではなく、今回の問題こそ、ちゃんと着地させないとうっかりケーキも安心して買えない社会になってしまうと感じますのでね。
●「許されない記事が出ました」ジャニーズ所属時のセクハラ報道を強く否定 9/23
滝沢秀明氏が23日、自身のX(旧Twitter)を更新。一部週刊誌の報道を否定した。
滝沢秀明氏、週刊誌報道に憤り
滝沢氏を巡っては、ジャニーズ事務所所属時のことについて、タレントにキスを強要していたことなどセクハラ被害の証言が一部週刊誌に掲載されていた。これについて滝沢氏は「会社と自分の名誉を守る為に書きます」と切り出し「許されない記事が出ました」と該当記事への憤りを記した。
これまでは表現の自由や報道の自由を尊重した視点から記事について反論することはなかったというが、「今回の記事はあまりにも時間軸のねじれや真実では無い内容があった為、断固として否定させて頂きます」と記事内容を強く否定。続けて滝沢氏は「今後、事実と異なる内容の掲載はやめて頂きたいです」と呼びかけた。
SNSを通じてこのことを記した経緯について「これがアーティストに関する事柄であれば徹底的に反論、対応いたしますが、僕個人の事なのでSNSで思いを綴らせて頂くまでとします」と社長としての立場で説明。「不快に感じた皆さん、申し訳ございません。こうした事実と異なる内容の掲載は暴力と同じだと思います」と改めて考えを伝えていた。
ジャニーズ性加害問題
ジャニーズ事務所は7日の会見でジャニー喜多川氏による性加害を初めて認め謝罪し、藤島ジュリー景子現社長の引責辞任、東山紀之の新社長就任を発表。今回の滝沢氏にまつわる報道は「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の代表を務める平本淳也氏が聞いた証言とされていた。
●尾木ママ「やはり圧力や忖度が働いていたんだなぁ」ジャニーズ報道の変化 9/23
教育評論家の「尾木ママ」こと尾木直樹さんが23日、自身のブログを更新。ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長の性加害問題を巡る報道について、テレビ番組の前向きな変化を指摘した上で「やはり圧力や忖度が働いていたんだなぁと思います」などと振り返った。
尾木さんは「情報番組のコメンテーターが元気で伸び伸びしてきた」のタイトルで新規投稿した。その中で「今週の情報バラエティ番組を見ていると」として「コメンテーターのみなさんが元気出して伸びやかに発言されています」「ジャニーズの問題にも毅然とした姿勢です」「『人権』とか『性虐待』あるいは『性犯罪』という厳しい表現も飛び交っています」「民主主義も語られています」と変化を挙げ、良化傾向を歓迎した。
その上で「やはりテレビ局だけでなく、番組MCやコメンテーターにまで、圧力や忖度が働いていたんだなぁと思います」と以前を振り返って指摘。「ようやく自由闊達な発言や議論ができるようになってきたのでしょうか? テレビの復権はうれしいですね」と評価した。
●滝沢秀明氏「強制キス」報道を否定も “父親代わり”ジャニー氏への説明責任 9/24
元ジャニーズ事務所副社長、滝沢秀明氏が9月22日にX(旧Twitter)を更新。『女性セブン』と、そのWEBサイト『NEWSポストセブン』の報道を名指しで否定した。
同誌では《「滝沢秀明がキスを強要」ジャニーズ性加害問題当事者の会代表の「新たな告発」》とのタイトルで、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」代表の平本淳也氏の証言を掲載している。
発端は、平本氏の過去のブログに、元ジャニーズJr.から「滝沢くんに舐められたことがあります」との情報が寄せられたこと。これについて、平本氏は「ぼくが直接被害を受けたわけではないので真偽はわかりませんが」と前置きしたうえで、「そういうメッセージが送られてきたのは実です。滝沢はキスが好きなんですよ。強制的にキスをさせるって」などとコメントしている。
この報道について、滝沢氏は「許されない記事が出ました」と憤慨。「今までは報道に関して、表現の自由や報道の自由を尊重し、反論する事は無かったです。しかし今回の記事はあまりにも時間軸のねじれや真実では無い内容があった為、断固として否定させて頂きます」と反論した。
当の平本氏も、当事者の会のホームページで《弊会の平本淳也(私)が受けた取材(インタビュー)が本人の意図とは全く異なる印象で掲載された週刊誌による報道について、本意ではないことにおいて強く反論させて頂きます。同時に滝沢秀明氏におかれては大変なご迷惑とご心配をおかけしたこと、そしてファンの皆様にも不快な思いをさせてしまったことを深くお詫び申し上げます》とコメントしている。
滝沢氏のファンからは《話してくれてありがとう》《ずっとついてきます》とエールも送られているが……。
「いっぽうで、9月7日のジャニーズ事務所による会見以降、かつて同社の副社長だった滝沢氏にも、性加害問題について説明を求める声は、かねてからあがっています。
滝沢さんは、ジャニーズJr.時代からジャニー氏の寵愛を受けていました。入所してからわずか1、2年でジャニーズJr.のリーダーに任命されたのは、滝沢さんの実力ももちろんありますが、ジャニー氏に目をかけられていたことも要因のひとつでしょう。滝沢さんは、ジャニー氏に見出されて『人生が180度変わった』と、感謝の言葉を口にしていました。
2019年にジャニー氏が亡くなったときも、滝沢さんが遺影を胸に掲げて、霊柩車の助手席に座っていました。幼少期に父親が家を出て行ってしまった滝沢さんにとって、ジャニー氏は父親のような側面もあったのでしょう。いわばジャニー氏の“息子”であった滝沢さんは、性加害について知っていても不思議ではありません。滝沢さんに説明責任が求められるのも当然でしょう」(芸能記者)
“親”の遺した問題について、滝沢氏の胸中はいかに――。
●ジャニーズ性加害問題の本質はテレビ局の堕落 9/24
2019年に死去したジャニーズ事務所の創業者で元社長のジャニー喜多川氏による性加害問題は、企業がジャニーズタレントのCM起用をとりやめるなど、いまだ収束する気配が見えません。
建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、「問題の本質はテレビ局の文化的堕落にあるのではないか」と指摘します。若山氏が独自の視点で語ります。
「司法の言葉」の衝撃
ジャニーズ事務所の問題を巡って、「外部専門家による再発防止特別チーム」が公表した調査報告書の内容は、そうとうに踏み込んだものであった。このような、特に当事者側が設置した検証組織の結論は、忖度を含んだ玉虫色に落ち着きがちだが、今回、前検事総長の林真琴弁護士を中心とした3委員のハッキリした言明には、ある種の覚悟が感じられた。
うすうす気づいていたことが具体的な言葉になる衝撃である。性的な(それも正常ではない)事件を赤裸々に語る「司法の言葉」の衝撃である。劇場からいきなり法廷につれていかれたような緊張を覚えた。
中でも意味深く思われたのは「マスメディアの沈黙」の責任に触れたことだ。むしろ問題の本質はそこにあるのではないか。このところ日本のテレビ(特に地上波)は、アイドルとお笑いタレントが出ずっぱりであった。
その後、ジャニーズ事務所は新体制を発表して謝罪会見を開いたが、批判がおさまるどころか、スポンサーを降りる企業が続出している。本来利益を追求する私企業が社会性を重視し、本来公共の電波を使って社会の木鐸をもって任ずべき報道機関が「視聴率=広告収入」を追求することにかたよった番組編成を行なっているのだ。
ここでジャニー喜多川という人物の所業はさておき、芸能とメディアの関係を、文化論的に考えなおしてみたい。
蔑みのまなざしと憧れのまなざし
これまでも人気芸能人のバックにいる人物はたびたび話題になった。美空ひばりのバックには有名な任侠団体の3代目が、ピンク・レディーのバックには大物総会屋がいたという。最近話題になった猿之助事件には、歌舞伎界の淵源たる「能」の祖ともいうべき世阿弥とそのパトロンの足利義満との同性愛的な関係を思わざるをえなかった。
芸能は興行でもある。華々しい表舞台の裏で、非日常的な世界をとりしきる力が必要だ。疑似恋愛的な部分を含めて人を惹きつける若い芸能者の魅力を売買する仕事は一種の裏稼業であった。つまり、テレビ局が、報道者としての魂を、あるいは文化創造者としての魂を失えば、その瞬間に、裏稼業的な興行者へと堕するのだ。
かつて芸能者は「河原者」と呼ばれた。サーカスや小屋掛けの見世物など、芸能者は大衆の好奇のまなざしに身を晒すものであり、社会的にも蔑視される存在であった。しかしその「蔑み」の視線の先にある人を惹きつける力は「憧れ」の視線に転ずる。古来、芸能は神に捧げる神事でもあり、この世界において「聖と賎」は表裏一体なのだ。
古代中世の権力者は、芸能者を自分の館に呼び入れて愛玩する。白拍子(しらびょうし)や同朋衆(どうぼうしゅう)といったもので、いわゆる「座敷芸」となって、「芸者」というホステス(本来、サロンを主催する女性の意味)のような職種を生み、今日のクラブやスナックの文化にまでつながっている。
近世、「舞台と客席」が制度化され(それまでは出す方の気分によっていた金銭が、受ける方の設定する入場料に変化する)、河原や大道で見下げられた芸能者は、客席から見上げられる存在となり、蔑みのまなざしは薄れ、憧れのまなざしが強くなる。日本なら近松門左衛門、ヨーロッパならシェイクスピアの出現ぐらいからであろうか。市民社会の成立とともに芸能者は人々の視線を集める星(スター)になっていくのだ。
アイドルと人気資本主義
近代、映画という「舞台の複製」が出現する。芸能者の魅力が大量生産の対象となって銀幕のスターとなり、裏稼業的な興行者は映画産業となる。ハリウッドには全米の若い女性がおしかけ、そこで力をもつ人々はその性的な魅力と莫大な利益をむさぼった。
戦後、娯楽の対象が映画からテレビに移れば、芸能者にも変化が起きる。老若男女が集うお茶の間では、突出した魅力をもつスターより、誰からも可愛がられる人気者としてのアイドルが主役となる。特に、家社会的な同調性を重視する日本では、歌や踊りや演技といった本来の芸よりも、アイドル(偶像)であることが重宝される。
「グループ・サウンズ」とは、ビートルズ以後、人気となった男性アイドルの歌手グループを意味し、「スター誕生」とは、アイドルの卵を釣り上げる装置としての番組であった。そしてジャニーズの時代がやってくる。憧れのまなざしがテレビを中心とするメディアによって増幅される。企業は、製品の魅力をアイドルの魅力に重ねようとする。
戦後日本の経済躍進を支えたのは、家電、自動車、カメラ、時計など、ものづくりであり、その性能の高さであった。しかし情報化社会となって「製品の性能」より「商品のイメージ(人気)」が重視される。製品資本主義から人気資本主義へと、資本主義の質が変わったのだ。
マンガやアニメやゲームのキャラクターも、ミッキーマウスやスヌーピーやキティちゃんも、近年雨後の筍のごとく出現したゆるキャラも、羽生結弦や大谷翔平のようなスポーツ選手も、アイドルとして、人気資本主義の巨大なマーケットに組み込まれる。
「気概」が感じられないテレビ番組
かつてテレビの世界にも、戦後日本に登場した新しい文化を担おうとする意欲ある人々がいた。青島幸男、永六輔、大橋巨泉、テレビマンユニオンのメンバーなど。歌手も、俳優も、タレントも、プロデューサーも、ディレクターも、作曲家も、作詞家も、振付師も、映画や舞台に対抗して新しい文化をつくろうとする気概があった。しかしバブル時代以降であろうか、テレビ文化創成期の人々が去るとともに、ただ軽薄な視聴率稼ぎの路線が敷かれ、番組から文化的な創造力が薄らいでいく。
また民放の報道番組のメインキャスターには、元NHKのアナウンサーや、意識の高い新聞記者や雑誌編集者など、それなりの知識と見識のあるジャーナリストが起用された。しかしある時期から、ただ早口で喋るだけのタレントが起用され、報道から真摯な批判性が薄らいでいく。
そして今は、どのチャンネルをまわしてもアイドルとお笑い芸人ばかりで、東京のジャニーズ事務所と、大阪のこれも一時問題になった某お笑いプロダクションが大きな力をもつにいたる。
テレビ番組に、報道者としての、あるいは文化創造者としての気概が感じられなくなったのだ。放送法で定められた番組審議会も形骸化し、逆に権力が介入することもあり、自浄能力を失ったような気がする。テレビの、特に地上波の番組は社会の隅々にまで暗黙のコンセンサスを染み込ませるものだ。「静かなる洗脳」といってもいい。公共の電波を使う放送事業者としての矜持を失った安易な姿勢が、日本社会全体に広がったのではないか。幕末明治以来、日本の若者は、良くも悪くも常に思想的批判的行動のエネルギーをもっていたが、今はすっかり影をひそめている。
そう考えれば、ジャニーズ事件の本質は、スターとしてのアイドルを夢見る若者の夢を(たとえそれが幻影であっても)実現する組織として存在する芸能プロダクションよりも、むしろ、本来社会の木鐸をもって任ずべきテレビ局の文化的堕落にあるのではないか。「視聴者(国民)がそういう番組を欲しているからだ」という主張もあるに違いない。しかしオピニオンを導くという点において、教育や活字メディアをしのぐほどの影響力をもつにいたった今日、その言い訳は通用しないだろう。
今後、林弁護士を中心として、テレビ放送という社会的存在の本来のあり方を追求する特別チームを設置したらどうか。もちろん、政治権力が介入することによってファシズムの道具となることは避けなくてはならない。必要なのは上からの道徳や制御よりむしろ自発的「気概」である。この国の復活は、そのあたり(精神的根底)から始まらなくてはならないように思える。  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 



2023/9