「忖度」考

意味 / 忖度1忖度と斟酌2忖度3忖度の威力4忖度5忖度の古用例6忖度7忖度8忖度批判悪魔の証明忖度11忖度12
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「空気」 / 場の空気空気を読む1読む2読む力3読む4・・・
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国家戦略特区 / 国家戦略特区特区諸話国家戦略特別区域諮問会議諮問会議有識者議員経済財政諮問会議日本経済再生本部規制改革会議
 

雑学の世界・補考

■忖度史
平成28年
 9月21日 今治市 分科会(第1回) 内閣府庁舎、山本大臣(地方創生、規制改革)出席。
11月 9日 特区諮問会議が獣医学部新設方針を決定。
11月17日 山本幸三地方創生相が日本獣医師会を訪問。
11月18日 獣医学部新設のパブリックコメント募集開始。
12月22日 「新設は1校に限る」と山本氏、文科大臣、農水大臣が合意。
年末年始 「京都府・京都産業大と比較し、熟度が高い今治市に決めた」
       「(比較検討の)記録はとっていない」と山本氏説明。
平成29年
1月 4日 獣医学部特区の事業主体の公募開始。
1月12日 今治市 分科会(第2回) 永田町合同庁舎、加計学園関係者3名出席。
1月20日 唯一応募した加計学園が選ばれる。
2月 8日 木村真・豊中市議、情報公開請求した当該国有地の売却額を非公表とした国の決定に対し大阪地裁に提訴、直後に記者会見を開く。
2月 9日 朝日新聞が森友学園問題を報道。
3月13日 加計学園が今治市に獣医学部を新設する件について、参院予算委員会で福島みずほ議員の質問に、安倍首相が直接答弁に立つ。
3月23日 学校法人森友学園・籠池泰典理事長への証人喚問が、参院・衆院予算委員会で実施された。
3月31日 加計学園が今治市に96億円の補助金申請をし、交付が決定された。
(「加計学園からの申請日」「今治市役所の起案日と決裁日」「加計学園への通知日」は全て同日。)
5月17日 「獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項」と題された文書、朝日新聞が報じた。菅義偉官房長官「出所も明確になっていない怪文書みたいな文書だ」。
5月19日 加計学園問題「調査の結果、文書の存在は確認できず」 松野文科大臣。
5月22日 前川前事務次官の「出会い系バー通い」記事、読売、朝刊一面で報じた。
5月25日 加計学園獣医学部新設の件で、前川前事務次官が記者会見。
6月 2日 民進党「官邸の最高レベルが言っている」などと書かれた文書が文科省内で共有されていたことを示すメールの写しを入手したとして公開し、再調査を求めた。
6月 9日 松野文科大臣、一転して対象範囲を広げて追加の調査を行うことを表明。
6月15日 獣医学部新設に関して「14の文書 存在確認」松野文科大臣が報告。
(公表された新メール 「萩生田官房副長官から文言を修正するよう指示があったようだ」と記され、去年11月9日国家戦略特区諮問会議で獣医学部の新設が決定した最終的な文書は「現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」となった。)
6月20日 「萩生田副長官と局長面会時の文書」松野文科大臣、新たに報告。
6月23日 加計学園獣医学部新設の件で、前川前事務次官が二回目の記者会見。 
7月10日 衆参閉会中審査
7月20日 「加計ありき」面会記録を獣医師会が公開。
 
意味

「忖度」 1
森友学園の問題を機に、出回りはじめたひとつの言葉がある。「忖度」だ。
国有地売買において官僚の「忖度」があったのか、なかったのかーー。国会の与野党の議論で日々飛び交い、報道される。籠池泰典理事長も記者会見で連発し、外国人特派員たちを大いに混乱させた。
どんな由来があり、これまでどんな風に使われてきたのか。辞書編纂者で日本語学者の飯間浩明さん(三省堂国語辞典編集委員)に話を聞いた。
「『忖』はりっしんべんで分かるとおり、人の心を推測すること。 『度』は、『たく』と読む場合は『はかる』ことです。つまり『忖』『度』ともに『はかる』で、特に『忖』は『心を推測する』という意味があります」
「忖度」という言葉について、そう語る飯間さん。由来については、このように説明してくれた。
「これは伝統的なことばです。中国古代の『詩経』にも出てくるので、『昔から使われていることば』と表現するのが最も妥当です。日本にも10世紀から例がありますが、それ以前に中国から入って来たものでしょう」
従来は「母の心を忖度する」「彼の行動の意図を忖度してみた」などと、「単純に相手の心を推測する」場合にも普通に使われていたという。
「忖度という言葉は非常に難しい文章語」と表現する飯間さん。そのうえで、「意味は同じでも、どういう場合に使うか、つまり用法が変わってきている」と説明する。
「最近になって、『上役などの意向を推し量る』場合に使う用法が増えたように思います。おべっか、へつらいというか。上の者に気に入られようとして、その意向を推測する。ちょっと特別な時に使われるようになった」
そういった用法で「忖度」が使われるようになってきたのは、ここ十数年の話だという。
飯間さんが集めた資料によると、「上役などの心を推し量る」という用法で「忖度」がつかわれているのは以下の例。いずれも2000年代に入ってからだ。
「消費税の引き上げは避けられないが、いまは国民を刺激したくない。しかし、ほおかむりも無責任」。そんな首相の思いを忖度したような党税調。(「朝日新聞」社説、2006/12/15)
その籾井氏が政策に関わるニュースに注文をつければ、どうなるか。権力を監視するジャーナリズムの役割が十分に果たせるのかといった疑問も浮かぶ。会長の意向を忖度し、政府に批判的な報道がしにくくなるのではないかとの不信感も出てくるだろう。(「朝日新聞」社説、2014/5/8)
籠池氏は会見で、土地取引のスピードが上がったのは「忖度」があったからだ、としている。安倍昭恵夫人の秘書に問い合わせしたことをきっかけに、財務省の官僚が夫人の意向を「忖度」し動いた、という主張だ。
さらに、それは「悪いものではない」としつつ、学校建設が中断に至るまでの「逆の忖度が問題だった」などと語っている。
また、大阪府の松井一郎知事は今回の問題に関連し、「良い忖度と悪い忖度がある」と発言。
「政治家は国民の思いを忖度して政策をすすめていく」とし、安倍首相が森友学園の問題について、「悪い忖度ではなかったとはっきりいうべき」と述べた。
良い忖度、悪い忖度、逆の忖度……。ひとつの言葉に、さまざまな意図が込められるようになったとも見える。
「もともと忖度に良いも悪いもなかった。ただ人の心を推測するってことですから」と指摘する飯間さんは、こうも語った。
「役所や企業のシステムの中で、本来であれば良いものは良い、悪いものは悪いと判断しないといけない。しかし、『こんなことをすると社長が気を悪くするからやめておこう』など、論理性、合理性以外の要素が入ってしまう場合に『忖度が加わる』という使われ方をするのではないでしょうか」
そのような用法がここにきて拡大している要因を、飯間さんはどう見るのか。
「急にここ数年必要とされだした言葉なのでしょう。必要にならなければ、みんなが知っている普通の言葉を使えばいいわけですから」
「こういう森友学園のような事件のときに使える、適切な言葉がなかったのでしょう。難しい言葉だけれども、忖度を使うとちょうど良くなるということです」
この用法だけが注目されることには「違和感は持っていません」としつつ、こうも述べた。
「『上役の意向を忖度する』という使い方は、あくまで『忖度』の用法の一部にすぎません。ただ、マスコミで報道されることで知られるようになり、『勢力を拡大していきそうな用法』『みんなが使い始めそうな用法』だとは思います」
「一方で、『忖度』という言葉が汚れてしまった気もしますね。これから『もっと人の心を忖度しなさいよ』と言うと、悪いイメージになるかもしれない」
森友学園の問題を受け、次の辞書の改訂時には「忖度」の項目に、「例文を加えること」も検討しているそうだ。
「私たちの三省堂国語辞典の説明は、物足りないように感じました。『母の心を忖度する』という使い方以外に、例文を入れる必要はあるかもしれませんね」
どんな例文なのだろう。
「役人が政治家の考えを忖度する、かな。実例をよく見て決めるつもりです」
 
忖度と斟酌 2

 

「忖度(そんたく)」と「斟酌(しんしゃく)」、これらの言葉の意味には、どんな違いがあるのでしょうか?どちらも日常会話の中で使うことはまずありませんから、これらの言葉自体知らない方もいるかもしれません。
テレビなどのニュースではわかりやすい言葉が使われがちですので、まず見かけることはありませんが…新聞などの活字メディアでは見かける機会がありますので、どんな意味なのか興味を持った方もいるのではないでしょうか?
忖度・斟酌とは、それぞれどういった状況や場面で使うのでしょうか?
「忖度(そんたく)」の意味を辞書を調べてみると、「他人の心を推し量る事」と書いてあります。「推し量る」とは、ある事柄を元にして見当をつけたり推測をする事です。
つまり忖度とは「他人の心を他の事柄を基本にして推測する」という意味です。
これは、使われている漢字の語源を調べると非常に分かりやすいです。
まず「忖」は「はかる」という意味があります。忖という文字は、心と寸が二つ組み合わさって出来た漢字です。
「寸」には、「長さをはかる」という意味があるのです。
つまり忖は心をはかるという意味があり、人の気持ちを推測するという意味になります。
次に「度」ですが、この文字には「物差し、はかる」という意味合いがあります。なので、この二つの漢字が合わさった「忖度」という言葉は、なにか基準となるもので他人の心をはかるという意味になります。
もっと分かりやすく言えば「相手の心や本音を物差しではかる」と理解しておくと分かりやすいです。
例文を一つ挙げてみると…「これは、大統領の考えを忖度した内容の新聞記事である」といった使い方が出来ます。
一方「斟酌(しんしゃく)」の意味ですが、これも辞書で調べてみると、第1に、「相手の事情や心情をくみする事」また「くみ取って程よく取り計らったり、手加減する事」。第2に、「あれこれ照らし合わせて、適当に取捨選択する事」。第3に、「言動を控えめにしたり、差し控える事。遠慮する事。辞退。」となっています。
漢字の語源を調べてみると、「斟」は「分量を探って、計りながら汲む」事という意味から来ています。「酌」は、「酌で汲み上げる」という意味があり、これはお水やお酒の分量を量って汲み分ける事から来ています。
なので、この二つの漢字が合わさった「斟酌」という言葉は、「程よく物事を行う」という意味や、「相手の意を汲んであげて、物事を行う」という意味になります。
そこからさらに派生して、「言動を控えめにする」「遠慮する」という意味にもなっていきました。
これも例文を一つ挙げてみると、「我々には、相手の気持ちを斟酌している余裕など全然なかった」といった使い方が出来ます。
「忖度」と「斟酌」の違いは、何かというと…二つとも「相手の事を思いやる」という意味合いはありますが、単純に相手の心情を推し量っているのが「忖度」で、こちらのほうが推測という意味合いが大きくなります。そして相手の心情を推し量った上で、それを汲み取って何か処置をするのが「斟酌」になります。

忖度のわかりやすい説明 3  

 

「忖度」の政治的な使われ方
一般的には「忖度」というのは、「他人の気持ちをおしはかること。推察」という説明がなされています。つまり忖度というのは、「何某かの事物を元にして、他人の考えや気持ちを想像することです」と説明されています。
これが政治の世界での使われようは、他人(安倍昭恵夫人)の考えを想像して、その考えに沿う行動を起こし(土地の購入価格)、便宜を図ったことということになります。つまり、安倍晋三首相の昭恵夫人の考えに役人が媚びて、森友学園に便宜を図ったということになります。このことは昭恵夫人が役所に「土地の価格を安くしてあげて」と話した場合に、昭恵夫人に配慮して『忖度した』『忖度があった』【気をつかって】となるわけです。まさにグレーな部分です。
忖度が主客転倒
大阪の松井府知事の発言が本音でおもしろい。「忖度には、悪い忖度といい忖度がある」と持論を展開した松井大阪府知事。「政治家は国民の思いを忖度して政策をすすめていく」という正しい「忖度」の使い方ともとれる説明をされていました。
私も、「そうだよね!」と拳に力が入ってしまいました。そもそも政治家とは、国民の思いを「忖度」すべきなのです。「こんな制度を設ければ、助かる人がいるだろうな」と、大いに国民・市民サイドを忖度すべきなのです。一部の政治家も考え方に権力趣向で既得権を行使するような・・・。特定の誰かの思いだけを忖度するから問題となるわけです。政治家の皆さん、そしてそこに関わる行政の皆様の「忖度」についての本来の意味をご理解いただき、「忖度」の主客転倒となっている安倍昭恵夫人の行動・言動にご配慮を・・・。広く国民の思いを忖度して頂きたいと思います。
安倍昭恵夫人「桜を見る会」で大ハシャギ
安倍晋三首相の昭恵夫人に政府から自粛要請があったのか「沈黙」を守っている。公式行事には顔を出すものの、積極的だった講演やフェイスブックによる発信一切行われていません。森友学園問題で批判を浴びた背景がそこにあるのでしょう。
安倍昭恵夫人は15日午前、東京・新宿御苑で首相主催の「桜を見る会」に姿を見せました。若草色のスーツ姿で参加者との握手や写真撮影に応じ愚かな招待客から「頑張って」と声を掛けられ涙ぐむ場面など・・・。
人前に出る機会がめっきり減った安倍昭恵夫人ですが、講演やイベント参加は次々とキャンセルしている。むしろ遅すぎるという意見も関係者から出ていたという。
役人社会での「忖度」とは
前にも言いましたが、官僚文化の中での「忖度」は、単に辞書で示した「他人の心を推し量ること」とは違って「表向きには言えないことを察する」ことが大事で、違法なこと、やってはいけないこと、表では言えないことを裏で便宜をはかることです。官僚(役人)の出世意欲の根っこの部分です。ですから「良い忖度」などありません。
「忖度」の対象となるのは、自分の上司、または、自分の出世と「天下り」人生に影響力を持つ人です。ここには当然、政治家も含まれます。そしてこの「忖度」ができない官僚は、その組織でトラブルになります。
官僚たちは、天下りで少なくとも70歳くらいまでは役所の世話になり、「忖度」した見返りに人生を全うするのです。つまり、「忖度投資」とでもいいますかその人の老後の人生まで左右するのです。
よく、「忖度」したことで、責任を取らされてしっぽ切りされる人たちが出てきます。俗にいう、トカゲの尻尾切りという言葉に象徴されるもので、可哀想だといわれてますが、そんなことはありません。その後に大きな「報酬」が待っているのです。
真実を語らず、文書廃棄までして安倍政権を守った「忖度」、谷査恵子経済官僚には大きな報酬が約束されます。安倍昭恵夫人の元秘書、経産省の谷査恵子氏のように、すでにイタリア赴任(事実上の長期休暇ですね)が決まっています。長期にわたり、天下りで手厚い処遇を受けるでしょう。
そして、トカゲの尻尾切りにあった彼らは、役所の中では英雄扱いとなるというから意味がわかりません。官僚たちは、これらの損得を瞬時に計算しながら「忖度」行動をとるのが仕事です。
安倍昭恵夫人の元秘書の谷査恵子氏イタリア赴任
安倍政権の危険なものには蓋をすべく、イタリアの政府機関に異動するという谷査恵子氏(元経済省)。一躍「森友学園問題」のキーパーソンに浮上した谷査恵子氏の処遇で一目瞭然。財務省への“口利き”ファクスを「総理夫人付」という立場で籠池泰典前理事長サイドに送り、当初は「アフリカ左遷」などと噂もありましたが、実際は欧州への異例の“栄転”が決まった谷査恵子さん。
このことについては谷氏の父親も事実を認めている。「谷さんの異動先は、経済産業省が所管する独立行政法人『ジェトロ』のミラノ事務所か、ローマに事務所を開設したばかりの観光庁所管の『JNTO』でしょう。在イタリア日本大使館の可能性もあります」
普通ではあり得ない「異例の優遇」とは
谷査恵子氏の「忖度」で得た優遇がとても厚遇とされている内容を関係者が細かく説明してくれました。役職からいって、谷査恵子氏の現在の給与は年800万円程度。仮に異動先がジェトロだとしたら、給与は年640万円ほどになります。
給与だけを見た場合は減給のようですが、実際には別途、海外赴任手当が月50万円、住宅手当が月18万円程度加算されます。現地での生活費は手当だけで十分に賄えるので、給与は全て貯金に回ることに・・・。準キャリアの谷査恵子氏が海外に異動を命じられることは、通常ではあり得ません。これだけでも異例の優遇と言えます。
これだけの厚遇と受けるのは何故かといえば、お分かりのように如何に森友学園問題に大きくかかわっていたのかがわかる安倍昭恵夫人。この谷査恵子氏の「栄転」は、口利きの責任を一人でかぶった「ご褒美」ということになります。
忖度のまとめ
「忖度」というのが今年の流行語大賞に選ばれるのでは?
国民が安倍政権に求めるのは「忖度」という不公平な選択肢ではなく、ルールに基づくのがいいのでは?と思われます。それでも人間社会のことですからいつの世も「忖度」は消えることはないでしょう・・・。   
 
森友学園問題で注目を浴びた「忖度」という言葉の威力 4

 

大阪府豊中市の国有地払い下げをめぐる森友学園問題で「忖度(そんたく)」(人の心を推し測る)という言葉が注目を浴びています。籠池(かごいけ)泰典氏は3月23日、国会で証人喚問を受けた直後、日本外国特派員協会で記者会見を行いました。その際、籠池氏が発した「安倍首相の心を忖度した人たちがいた」の「忖度」の解釈をめぐり、通訳や弁護士が説明に追われるという場面がありました。
はじめ、「reading between the lines(行間を読む)」と訳されたのですが、具体的な口利きの有無を訪ねた記者の質問に、「surmise(推測する)」「conjecture(憶測)」などの語を使って補足したうえで、〈英語には「忖度」に直接あてはまる語がない〉と説明されたのです。
こうしたことから、「忖度」は日本特有の言葉と解釈されそうですが、漢語であって、和語(大和ことば)ではありません。紀元前の中国の古典に起源をもつことから、儒教社会に共通する心の所作ともいえそうです。
同じく、日本社会の機微を表す言葉に「空気を読む」があります。否定形は「KY(空気を読まない)」という略語で、すっかり定着しました。当初、「KY」は場の雰囲気を壊す行為としてネガティブに捉えられていました。しかし最近は、その後に浸透してきた「同調圧力」という言葉へのカウンターとして、ポジティブに捉える見方も広がっているようです。
それどころか、「空気を読む」ことのほうがネガティブであるとして、「空気」の危険性を説いた有名な論考があります。評論家・山本七平氏の『「空気」の研究』(1977年)です。山本氏は冒頭で、戦時中に大本営が下した戦艦大和の出撃命令を例に挙げ、「空気」というものの正体とその罪を明らかにしました。
大戦末期、会議に出席した日本軍の参謀は、制空権を奪われた沖縄に大和を出撃させるのは無謀な作戦と分かっていました。冷静に戦況を分析できていたのです。しかし、陸軍の総攻撃に呼応し簡単には引き下がれない、という会議の場の「空気」に流されて、非合理な命令を下したのでした。山本氏はつづけて「水を差す」という、「空気」への伝統的な対処法を紹介しながらも、〈「空気」とはまことに大きな絶対権をもった妖怪である。一種の「超能力」かもしれない〉などと述べています。
「忖度」は、より以上に厄介かもしれません。「空気」は会議や組織など一定の集団のなかで形成・共有されるものですが、「忖度」のベクトルは空間を超えて、離れた集団や直接かかわりのない人物にも向けられます。籠池氏の指摘が真実か否かはともかく、まさに「忖度」は「読む」行為に止まらず、「推し測る」行為なのです。
池上彰氏が「朝日新聞」の連載コラム「新聞ななめ読み」(3月31日)で、道徳教科書の検定において、教科書会社の「忖度」が働いたという旨の一文を書いています。文科省の指摘を受けた教科書会社が、小学校1年生の教材に登場する「パン屋」を「和菓子屋」に、「アスレチックの公園」を「和楽器店」に改めたという記事に対する論評です。文科省は具体的な書き換えを指示したのではなく、指導要領の「我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着をもつ」という点が欠けていると指摘しただけといいます。
池上氏は「滑稽というほかない」という「天声人語」の批判を紹介したうえで、〈教科書会社は文科省の顔色をうかがって忖度し、「和菓子屋」や「和楽器店」を持ち出す、という構図になっている〉と分析しています。さらに踏み込んで、文科省が〈教科書会社に忖度させて、内容をコントロールさせる〉という側面もあると見ています。これを物理的に立証するのは至難の業ですが、「忖度」のベクトルは「あちら側」が自分たちのほうに向くように仕掛けられているのだとしたら、ますます厄介です。
「空気」に話をもどすと、山本氏は「空気」による拘束力が増大したのは近代以降で、〈徳川時代と明治初期には、少なくとも指導者には「空気」に支配されることを「恥」とする一面があった〉と述べています。
「忖度」の歴史も、これに重なるのでしょうか。ただ「空気」と違って、「忖度」はこれまで日の目を見られてきませんでした。
森友学園問題ははからずも、日陰の存在だった「忖度」という言葉を表舞台に押し上げ、その双方向性の構図にも目を向けさせてくれました。「忖度しない、させない」という「SS」な社会が望ましいのか。「KY」と同じく、「忖度」の効用もそこそこ認めるべきなのか。政治家やお役人の胸のうちを忖度できる材料はありません。
ただ今後、政界絡みの怪しい事件、いかがわしい出来事がおこると、池上氏が持ち出したように、「忖度」という補助線がたびたび引かれることになるのは確かでしょう。政治家やお役人も、個々の陳情や相談ごとへの対応が過剰な「忖度」にあたらないか、自粛・自省することになるかもしれません。だとしたら、多くの「罪」が重なった森友学園問題にも、ちょっとした「功」を見出せそうです。 
 
「忖度」 5

 

今年に入って、初めて「忖度」という言葉を知りました。すっかり2017年のホットワードとなっているようですね。
さてこの「忖度」という言葉。意味を調べますと、三省堂『大辞林』には「他人の気持ちをおしはかること。推察。」と出てきました。「忖」という漢字もあまり見たことなかったので、こちらも調べますと、三省堂『漢辞海』では「思案する。おしはかる。」とあり、「忖度」という熟語で「他人の心を、思いやる。思いをいたす。」と書かれていました。
これだけ見ると、「忖度」自体はそれほど悪い意味の言葉ではありません。昨今、「忖度」という言葉が使われる時には、下の立場のものが、上の立場の考えや言わんとしていることを推し量って実行に移す、というというような使われ方をしていることが多く、なんとなく力ある側が弱い者に暗黙のプレッシャーをかけ、それに媚びへつらうような、そんな印象を受ける言葉として使われがちです。しかし、本来の意味である、人の心を思いやったり、気持ちをおしはかることは、そのような媚びへつらうような、どこか小賢しい振る舞いではなく、むしろ私たちが人と関わりながら生活をする上では、とても大切なことです。
例えば、恋愛関係にある者同士にも、相手の気持ちを推し量るということは、とても大切になります。好きな相手だからこそ、なかなか本音が言えない。でも、本当の気持ちをわかって欲しい、なんてことは、恋愛を経験した多くの方が思うことではないでしょうか。私にも経験がありますが、付き合っていた女性の言葉で表現される気持ちを聞いて、相手のことを考えて接していたつもりですが、実は言葉の裏にある本音までは推し量ることができずにいた、ということが多々あります。これは「私が相手がこう言っているのだから」と自分の都合で相手の気持ちをわかった気になり、「忖度」、つまり相手の気持ちを本当に知ることができなかった、ということです。
また少し前には「空気を読む」という言葉も流行りました。周囲の状況や、人の気持ちを考えて振る舞うことを「空気を読む」、それができないことを「空気が読めない」と表現しましたが、あれはまさに「忖度」のことでしょう。読者目線、ユーザー視点、そのようなものも、一種の「忖度」かもしれません。そう考えると、「忖度」というものは、政治家や官僚の関係性においてだけ見られるものではなくて、実は私たちの日常にもありふれたものであったことになります。
仏教においても、人を思いやること、というのは大切なこととされています。例えば、さとりをひらき仏と成った者に具わるとされる力に六神通というものがありますが、その中に「他心通」という力があります。他人の心、気持ちを、間違いなく知ることのできる力のことです。私たちにも、人の心を推し量れますが、私のように正しく知ることができないことも多々あります。しかし仏さまの「他心通」の力はそんな不確かなものではなく、間違いなく人の心を知ることができるものです。
また「慈悲」という仏さまの心もまた、人の持つ悲しみ・痛みというものを正しく見つめ、その悲しみ・痛みを我が事として感じ、なんとかせずにはおれないと、行動に移していこうという心です。ですからこれも、より大きな思いやりの心であるといえるでしょう。
このように、仏教でも人を思いやることは大切にされています。しかし、私たちの持つ思いやりの心とは、大きく異なる点があります。それは、仏さまの思いやりの心、つまり仏教の理想とする思いやりの心は、100%相手のためであるのに対して、私たちの思いやりの心は、100%相手のためではなく、どこかに自分のためという要素も少なからず含まれているという点です。
今話題となっている「忖度」も、まさに自分のために、人の考えを推し量ったものと言えるものでしょう。立場が上の者が言外の圧力をかけ、それに出世のため、自己保身のため、所属する組織のためと、いろんな利害・損得を考慮し、呼応していく。そこに潜む自分勝手さや狡さに、ダーティーなものが感じられ、今回大きな問題になったように思います。
しかしそのような「忖度」に限らず、人のことを思いやる中に、相手に嫌われたくないとか、自分が良く思われたいという気持ちがあったり、面倒なことにならないように、というような思いが混ざることは、きっと誰もが身に覚えがあるのではないでしょうか。人のためと言いながら、どこか自分のためでもある、というのが、私たちの思いやりの心です。自分を挟まず100%相手お思いやれる仏さまの思いやりの心に比べるならば、残念ながら私の思いやりも、本当の思いやりの心とは程遠いものだったのかもしれません。
「忖度」という言葉が騒がれる中、これを政治の世界の話だと他人事にしてしまわず、今一度自分自身のあり方を振り返り、本当に人を思いやることとはどういうことであったのか、仏さまの心から改めて学ばせていただきたいものですね。 
 
「忖度」の最も古い用例 6

 

『詩経』の「巧言」という詩に、「忖度」という言葉が載っている。
最近、「忖度」(そんたく)という言葉がにわかに流行するようになった。大阪の森友学園事件に関して、官吏が上位者の意思を推しはかって色々な物事を進めたのではないかという話が出ているためだ。
ところで、私の知るかぎり、「忖度」という言葉の最も古い用例が見られるのは『詩経』である。『詩経』は、中国で最も古い詩集で、周代に作られたとされる詩が収められている。この詩集に載っている「巧言」という詩に、「忖度」という言葉が用いられている。この詩は6章からなるが、その4章目に「忖度」が使われている。4章目を以下に引用する。
   奕奕寢廟、君子作之。
   秩秩大猷、聖人莫之。
   他人有心、予忖度之。
   躍躍毚兔、遇犬獲之。
〔書き下し文:奕奕えきえきたる寝廟しんべう、君子之これを作る。秩秩ちつちつたる大猷たいいう、聖人之これを莫はかる。他人心こころ有あり、予われ之これを忖度す。躍躍てきてきたる毚兔ざんと、犬に遇あひて之これを獲えらる。〕
〔現代語訳:大いなるみたまやは、君子が作った。秩序だった大道は、聖人が定めた。他の人に(よこしまな)心があれば、私はそれを推しはかる。すばしっこくとびまわるずるがしこいうさぎは、犬に出会って捕らえられる。〕
毛詩の小序には、「巧言、刺幽王也。大夫傷於讒、故作是詩也。」とある。すなわち、「巧言」という詩は、周の幽王(在位:紀元前781年–紀元前771年)をそしる詩であり、讒言に苦しめられた大夫が作ったものであるとされる。小序の記述が正しいかどうかは分からないが、幽王は暗君として有名なので、幽王をそしるという設定自体に違和感はない。
上記の詩は、他の古い文献でも引かれている。例えば、『孟子』の「梁恵王上」編には斉の宣王が『詩経』の「他人有心、予忖度之。」という言葉を引くシーンがある。
王說曰、「詩云、『他人有心、予忖度之』、夫子之謂也。夫我乃行之、反而求之、不得吾心。夫子言之、於我心有戚戚焉。此心之所以合於王者、何也。」 
 
「忖度」という言葉が汚れてしまった 7

 

森友学園問題で一躍注目を集めたのが、「忖度(そんたく)」という言葉だ。籠池氏は会見で、土地取引のスピードが上がったのは「忖度」があったからだと語っている。昭恵夫人の秘書に問い合わせたのをきっかけに、財務省の官僚たちが夫人の意向を「忖度」したという主張だ。また、松井一郎大阪府知事は日本維新の会の党大会で「忖度には、悪い忖度といい忖度がある」と発言した。
辞書編纂者で日本語学者の飯間浩明氏は「もともと忖度に良いも悪いもなかった。ただ人の心を推測するってことですから」と説明するが、一方、「『忖度』という言葉が汚れてしまった気もしますね。これから『もっと人の心を忖度しなさいよ』と言うと、悪いイメージになるかもしれない」とも述べている。今後、自身が編纂する三省堂国語辞典に「役人が政治家の考えを忖度する」という例文を付け加えることも検討するという。 
 
「忖度」 8

 

3月、学校法人「森友学園」への国有地売却問題で学園理事長が国会に証人喚問されるということがあった。
そのとき話題になったことばに「忖度」がある。
首相の口利きがあったのかという問いに対して、学園理事長は「口利きはなかった。忖度したのでしょう」といった使い方をしたのである。この場合の「忖度した」の主語は、売却に関わった関係省庁ということであろう。だが、「忖度」という語はそれ以前にも、「政権の意向をマスメディアが忖度する」といったような使われ方をしていた。このことば自体は決してマイナスイメージのことばではないのだが、何となくそうした使われ方をされることが多くなっていて、正直言って少し残念な気分になっている。
そもそもこの「忖度」だが、けっこう難読語だと思う。つい、「スンド」とか「ソンド」「フド」などと読んでしまいそうだ。意味は、他人の心の中や考えなどを推し量るということで、「忖」も「度」もはかるという意味である。推し量ることはあっても、それによって何か配慮をするというニュアンスのないことは、言うまでもないことである。
『日本国語大辞典』は、「忖度」の用例の一つとして、慶應義塾の創立者である福沢諭吉の『文明論之概略』の巻之二第四章にある文章を引用している。
「他人の心を忖度す可らざるは固より論を俟たず」
というものなのだが、前後を見ると今読んでも極めて示唆に富んだ内容のものなので、稚拙ではあるが現代語訳を添えておきたい。原文をお読みになりたいかたは、たとえば慶應義塾大学名誉教授の上田修一氏が、慶應義塾図書館所蔵の『文明論之概略』全六巻を底本として、インターネットで公開しているのでそちらをご覧いただきたい。
人の心の働きはたくさんの事柄から成り立っていて、朝は夕方と異なり、夜は昼と同じではない。今日は徳行のそなわった人でも明日は徳のない品性の卑しい人になり、今年敵だった者が来年には友達になるかもしれない。人の心の働きが時機に応じて変化することは、それが現れれば、ますます思いがけないこととなるのである。幻や魔物のようで、あれこれ考えをめぐらすことも、推し量ることもできない。他人の心の中を推察できないのはもとより言うまでもないことだが、夫婦親子間でもお互いにその心の働きを推し量ることはできない。単に夫婦親子だけでなく、自分の心をもってしても自分自身の心の変化を思い通りにすることはできない。いわゆる「今吾は古吾に非ず(=今の自分は昔のままの自分自身ではない)」というのがこれである。その実態はあたかも晴雨の天候を予測できないのと同じようなものである。
いかがであろうか。つたない訳文で恐縮なのだが、人の心をあれこれ推し量ることの困難さ、無意味さ、さらに言えばそうすることの愚かしさを語っていると思われる。私自身もそうだが、耳の痛い人も大勢いるのではないだろうか。
繰り返すが、「忖度」には、他人の心を推し量るという意味だけで、そうした上で何か配慮をするという意味はない。ところが、本来なかったそうした意味が付け加わっているような兆候が感じられる。辞書編集者としてはそれが気がかりなのである。
 
皆が忖度する社会での忖度批判 9

 

日本じゅうを大騒ぎさせた森友学園問題ですが、世論調査では「政府がじゅうぶんに説明しているとは思わない」との回答が8割を超えるものの、安倍政権の支持率はさほど下がらない、という結果になっています。
幼稚園児に教育勅語を暗唱させ、軍歌を歌わせる特異な教育理念を掲げる理事長が、小学校の設置認可と用地取得に便宜をはかってもらおうと政治家を通じて行政に強い政治的圧力をかけたことは間違いないでしょう。そのなかでもっとも効果的だったのは首相夫人が名誉校長に就任したことで、日本国籍を取得した韓国人の親に「韓国人と中国人は嫌いです。日本精神を継承すべきです」との手紙を送りつけた理事長夫人に、神道に傾倒する首相夫人が同志的なつながりを感じていたこともメールのやりとりから明らかです。
しかしこれだけでは、首相の責任を追及し内閣退陣を求めるのはちから不足です。大半のひとはこれを、“神道カルト”ともいうべき理事長夫婦とスピリチュアルにはまった首相夫人に、行政担当者(そして夫である首相)が振り回された事件だとみなしているのでしょう。
森友学園への国有地売却で注目を浴びたのは「忖度」です。私人であるはずの首相夫人に経産省から出向した秘書がおり、理事長からの要請を財務省に問い合わせ、FAXで回答していたことが証人喚問で暴露されましたが、回答そのものは便宜を約束したものではありませんでした。そこで、「形式的には断っているものの、役人はこの学園への首相夫妻の強い意向を感じ、破格の安値で国有地を取得できるよう取り計らったにちがいない」というのです。
これもありそうな話ですが、やっかいなのは、忖度そのものは違法でもなんでもないことです。そればかりか、忖度は「相手の気持ちをおもんばかること」で、これまで日本社会では美徳とされてきました。
「いちいち言葉に出さなければひとの気持ちを理解できない」のは、学校でも会社でも、日本のあらゆる組織でもっとも嫌われるタイプです。これが世代と関係ないことは、子どもたちのあいだで「KY(空気を読めない)」がいじめの対象になることからもわかります。
日本の組織の特徴は流動性がきわめて低いことです。いったん就職すると定年まで40年以上もひとつの組織に「監禁」されるのですから、若いときの悪い評判はずっとついてまわって出世を妨げます。閉鎖空間のムラ社会では、ひたすら失敗を避け、リスクをとらず、上司や同僚の気持ちを「忖度」するのが生き延びるための唯一の戦略になるのです。
日本の組織では忖度できない人間は真っ先に排除されるのですから、森友学園問題に対応した財務省や大阪府の行政担当者が「忖度の達人」なのは当たり前です。彼らを批判するマスメディアも、会社内の人間関係は忖度によって成り立っているはずです。安倍首相の責任を追及する野党の政治家にしても、支持者の要望を忖度できないようでは当選はおぼつかないでしょう。
そう考えれば、森友学園問題が失速気味な理由もわかります。みんなが忖度する社会で忖度を批判することは、自分の首を自分で締めるようなものなのです。
 
「悪魔の証明」 10

 

安倍晋三首相「渡していないのは証明しようがない。いわば悪魔の証明だ。籠池氏らが出してきたものが本物だったか、しっかり検証されるべきだ」
森友学園問題について野党からの追及を受け続けてきた安倍晋三首相だが、28日の参院決算委員会で民進党の斎藤嘉隆議員から籠池氏が証言した昭恵夫人からの寄付について否定する根拠をただされると、「民進党の辻元清美氏にも同じことが起こっている」と反論してみせた。
これは28日、産経新聞が報じた辻元氏に関する「3つの疑惑」について語ったもの。正直なところ、なぜここで辻元氏が引き合いに出されるのかがよくわからないのだが、ネットは民進党と辻元氏への批判で非常に盛り上がった。辻元氏の疑惑を報じた産経新聞政治部長の石橋文登氏も「蓮舫氏の『二重国籍』疑惑も含めて今後も政界の疑惑は徹底的に追及していきたい」(産経新聞)と意気上がる。
また、ここで安倍首相が切り札にしているのが「悪魔の証明」という言葉だ。自分が昭恵夫人の疑惑を否定する根拠を示すなら、辻元氏も自身の疑惑を否定する根拠を示してみなさいよ、ということなのだろう。安倍首相は「悪魔の証明」という言葉が好きなようで、3月1日の参院予算委員会で共産党の小池晃氏からの質問に対しても「悪魔の証明」と切り返している。
安倍首相は「悪魔の証明」で逃げ続けることができるのか、それとも新たな展開が待っているのか。まだまだこの問題からは目が離せない。 
悪魔の証明 2
中世ヨーロッパの法学者によるローマ法解釈において、所有権帰属の証明の困難性を比喩的に表現した言葉である。
ローマ法
ローマ法以来、いわゆる probatio diabolica すなわち悪魔の証明とは、「所有権の証明責任を負う当事者が、無限に連鎖する継承取得のいきさつを証明することの不能性および困難性によって必ずや敗訴する」という理屈を意味していた。
ローマ法での所有物返還訴権(rei vindicatio)は、以下の1から3へと次第に発展した。
1. legisactio sacramenti(神聖賭金訴訟)
2. 古典期のper sponsionem(=誓約による)訴訟
3. per formulampetitoriam(所有物返還請求に関する方式書)での訴訟
1 の神聖賭金訴訟では、両当事者がそれぞれ所有権者だ、との主張を行った。被告は原告の主張を否認するだけで済まず、自身が所有権を有することを証明しなければならなかった。この神聖賭金訴訟では、裁判官は、当事者のいずれが《より良い権利》を有しているかを相対的証明に基づいて判断したとされているという。
これに対して、2・3 の訴訟では、原告のみが自己の所有権を証明し、被告のほうは原則的にそれを否認すれば足りる、とされた。だが、この状況では、市民法上の所有権の取得のために必要な方式によって、問題となっている物(係争物)を取得したと証明したとするだけで十分と見なされたか、それとも、前の持ち主、前の前の持ち主…と遡ってそれを証明しなければならなかったか、という点については、大いに議論がある。現代では学者の多くは後者の、遡って証明する方式だったと推定する見解のほうを採用している。それでアルブレヒト・メンデルスゾーンは、以下のように述べた。
「原告は自己が係争物を市民法の規定する方法で取得したことを証明しなければならないのみならず、更に、彼の前の持ち主が所有権者であったことを証明しなければならない。つまり原告は a non domino(=無権利者)から取得した者ではないことを証明しなければならない。これは理論的に言えば、前の持主から前の持主へと、最初の占有者まで遡ることを必要とする。これだから、後にこの証明は「悪魔の証明」と呼ばれることになったのだ!」
このように、所有権の帰属を証明するためには、ある人の過去の時点における所有権の帰属と、その後に当該人から所有権を取得した原因を証明する必要がある。所有権取得原因について権利自白が成立する場合や、原始取得が成立する場合を除き、前の所有者から所有権が移転されたことを証明する必要がある。
もっとも、ローマ法では、rei vindicatio とは別の interdictum possessionis という占有訴権制度があり、事実上の支配そのものを保護することにより、悪魔の証明を免れることが可能だったとされる。
現在では権利外観理論や権利公示制度の発達により、ローマ法での悪魔の証明という事態は起きなくなっている。
フランク・ゲルマン法におけるゲヴェーレの推定力
フランク・ゲルマン法の不動産訴訟では、原告が占有を侵奪された場合にのみ提起され、被告が所有権の証明責任を負っていたが、被告(現在の占有者)が侵奪でないことを宣誓することで所有権が推定される場合、勝訴できた。また、原告(過去の占有者)が取得権限が被告よりも古い場合は、被告に優先し、これらの証明原則をゲヴェーレの推定力という。
イギリス法
イギリス法では被告が原告に「神の証明」(probatio divina)を要求することを「悪魔の証明」として表現することもあった。
法律上の権利推定における反証の困難
権利の存在を推定する規定、いわゆる「法律上の権利推定」の場合、権利の不存在を否定するためには、あらゆる原因による権利の発生原因たる事実が不存在であること、発生した権利が消滅した場合であっても、その後さらにあらゆる原因による権利の発生原因事実が発生していないことを証明しなければならないことになり、権利推定に対する反対の証明について 「悪魔の証明」という。
民事訴訟法における推定には事実上の推定と、法律上の推定があるが、このうち法律上の推定とは、ある事実の証明に関して、証明が容易な別個の事実の証明がなされたときに事実が証明されたと認めるべき場合のことである。そして権利の推定に関して、権利推定に対する反証が困難な様子を「悪魔の証明」とする。
不動産登記に関して、民法では占有の推定力よりも登記の推定力が優先されるが、この登記の推定力が法律上の推定である場合、推定を覆すには相手方は本証を要し、事実上の推定である場合は、事実の不存在を証明するという反証によって推定を覆すことができる。しかし、過去の権利状態を捨象した現在の権利状態のみが推定されるとされる場合に、相手方が推定を覆すためには、現在にいたるまでいかなる権利取得原因事実も存在しないことを立証せねばならなくなり、仮にある権利消滅原因事実を立証しても、権利喪失後ふたたび権利取得するいかなる原因事実の不存在を証明せねばならなくなり、推定を覆すことが不可能に近くなり、これをいわゆる「悪魔の証明」と呼ぶ。なお、日本の民法学では登記に対して、「悪魔の証明」のような要求をすることになる法律上の権利推定でなく、単に事実上の推定がはたらくにすぎないとする学説もあるが、この学説が適当か考慮を要するとする指摘もある。
物権法の分野でも立証の困難という意味で使われている。
消極的事実の証明
消極的事実の証明(ないことの証明、Evidence of absence)を、「悪魔の証明」とする使われ方もある。また、証明が困難でないことを「悪魔の証明」には当たらないと反論で使うこともある。なお、欧米でも同様の用法が存在する。
関連する諺
消極的事実の証明に関連する法律諺として、「否定する者には、立証責任はない」がある。
パウルスは「主張する者は証明を要し、否定する者は要しない」とした。
ディオクレティヌスとマクシミアヌスは「事実を否認する者には、立証義務はない」とした。
現在では、法律要件分類説が通説となっている。 
悪魔の証明 3 「やっていない」を証明する難しさ・・・
悪魔の証明とは?
悪魔の証明は、分野によって若干意味合いが異なりますが、一般に、法律の分野では訴訟において、「〜していないこと」、「〜が存在しないこと」のように、事実の不存在の立証が求められる場面を、悪魔の証明と呼ぶことがあります。
もちろん、法律上の定義がある正式な法律用語ではありません。
なぜ、悪魔の証明と呼ばれるかというと、「〜していないこと」、「〜が存在しないこと」の証明は、そもそも不可能に近いことが多いからです。
例として、「代々木公園にテング熱をもった蚊がいる」という事実は、代々木公園で1匹でもテング熱に罹患した蚊を捕獲すれば、立証に成功します。
しかし、「代々木公園にテング熱をもった蚊は1匹もいない」事実、あるいは「代々木公園にテング熱をもった蚊は駆除されて1匹も存在しない」事実を立証しようとすれば、(1)代々木公園にいる蚊を全て捕獲したこと、(2)捕獲した代々木公園の全ての蚊を検査したが1匹もテング熱をもっていなかったこと、を立証しなければなりません。
A「テング熱をもった蚊がいる」という存在する立証と、B「テング熱をもった蚊は1匹もいない」という事実不存在の立証では、難易度が天と地ほど異なります。
もちろん、現実の行政の判断であれば、いったんテング熱の蚊がいるとして代々木公園を閉鎖した後、代々木公園を再開する際には、「テング熱をもった蚊は1匹もいない」ということまで立証される必要はないので、ある程度捕獲調査して、テング熱の蚊が採取されなければ、公園を再公開することになるでしょう。
しかし、裁判では、厳密な立証が求められますので、時に悪魔の証明が問題となるケースがあります。
痴漢事件ではどうなるのか
本題に戻って、痴漢事件では、まず検察官が被害者証言などにより「痴漢した」という存在の事実を立証するルールになっており、被告人側が「痴漢していない」という事実不存在を立証する必要はありません。
基本的に全ての犯罪要件の立証責任が検察官にあるのは、痴漢事件に限らず刑事事件全般に共通します。
しかし、検察官が、被害者証言などにより、「痴漢した」という事実の証明に一先ず成功したといえる場合には、今度は、被告人側で、「痴漢した」という立証を崩すために、反対立証として、「痴漢していないこと」の立証を試みる必要に迫られます。
これは、あくまで第一義的に検察官が「痴漢した」という立証に成功した後に防御のために、反対立証をするもので、最初から、被告人側に「痴漢していない」ことの不存在の立証責任があるわけではありません。
仮に、最初から、被告人側で「痴漢していない」ことの立証が必要だとすると、まさに悪魔の証明に成功しない限り、有罪にされるという不当な結論となりますが、反対立証としての「痴漢していない」ことの立証方法としては、物理的な状況として痴漢行為をなし得ないことや被害者証言の矛盾・不合理性を追求することが可能です。
言い換えると、「痴漢していない」ことそのものを被告人側で立証することまでは必要でなく、「痴漢した」という検察官側の立証をぐらつかせる程度に崩せれば十分です。
したがって、痴漢事件において無罪を立証するのに、必ず「痴漢していない」という悪魔の証明が必要になるわけではありません。
他の犯罪ではどうなる?
他の犯罪でも、痴漢事件と同様、第一儀的には、検察官に「犯罪をした」という立証責任がありますから、被告人側で「犯罪をしていない」ことの不存在立証は不要です。
では、アリバイをなぜ主張するかというと、これも痴漢事件と同じく、例えば目撃者証言や犯行の凶器から被告人のDNAが検出されて、被告人の犯罪行為が立証された(立証されかかった)状況で、被告人の反対立証として、アリバイを主張することにより、検察側の立証を崩すためであり、ここでも被告人に最初から「犯罪をしていない」という悪魔の証明が要求されているわけではありません。
見方を変えると、被告人側で「犯罪をしていない」ことを直接立証することは悪魔の証明で不可能なので、代わりに、「同じ時間に別の場所にいた」という事実存在立証をするという発想です。
民事訴訟は少し違う
全ての立証責任が検察官にある刑事事件と異なり、民事訴訟では、当事者の双方に、それぞれ法律要件ごとに立証責任が割り振られています。
この立証責任の割り振りや事実の認定では、なるべく事実の不存在ではなく、事実が存在すると主張する利益がある方に立証責任が割り振られるようになっています。
悪魔の証明は、ディベートなどの反論テクニックとしても知られます。日常でも、「〜がないことを証明しろ」と主張された場合には、そもそも不存在の立証は悪魔の証明を求めるもので不可能であることを頭に入れておくとよいでしょう。
 
「忖度」という言葉 11

 

忖度ってそもそもどういう意味で、どんな使われ方をしてきたのか。「三省堂国語辞典」の編集委員で日本語学者の飯間浩明さんに話を聞いた。
森友学園の問題を機に、出回りはじめたひとつの言葉がある。「忖度」だ。
国有地売買において官僚の「忖度」があったのか、なかったのかーー。国会の与野党の議論で日々飛び交い、報道される。籠池泰典理事長も記者会見で連発し、外国人特派員たちを大いに混乱させた。
どんな由来があり、これまでどんな風に使われてきたのか。BuzzFeed Newsは、辞書編纂者で日本語学者の飯間浩明さん(三省堂国語辞典編集委員)に話を聞いた。
伝統的なことば、忖度
Twitterでもたびたびトレンド入りをするようになった、この聞きなれない「ソンタク」という言葉。意味を確認するためなのか、「goo辞書」の検索ランキングでは1位(3月29日)にランクインしている。
そもそも、忖度とはどういう意味か。三省堂国語辞典を引くとこうある。
(相手の気持ちを)おしはかること。推測。「意向をーする」
「『忖』はりっしんべんで分かるとおり、人の心を推測すること。 『度』は、『たく』と読む場合は『はかる』ことです。つまり『忖』『度』ともに『はかる』で、特に『忖』は『心を推測する』という意味があります」
「忖度」という言葉について、そう語る飯間さん。由来については、このように説明してくれた。
「これは伝統的なことばです。中国古代の『詩経』にも出てくるので、『昔から使われていることば』と表現するのが最も妥当です。日本にも10世紀から例がありますが、それ以前に中国から入って来たものでしょう」
従来は「母の心を忖度する」「彼の行動の意図を忖度してみた」などと、「単純に相手の心を推測する」場合にも普通に使われていたという。
変わり始めた使い方
「忖度という言葉は非常に難しい文章語」と表現する飯間さん。そのうえで、「意味は同じでも、どういう場合に使うか、つまり用法が変わってきている」と説明する。
「最近になって、『上役などの意向を推し量る』場合に使う用法が増えたように思います。おべっか、へつらいというか。上の者に気に入られようとして、その意向を推測する。ちょっと特別な時に使われるようになった」
そういった用法で「忖度」が使われるようになってきたのは、ここ十数年の話だという。
飯間さんが集めた資料によると、「上役などの心を推し量る」という用法で「忖度」がつかわれているのは以下の例。いずれも2000年代に入ってからだ。
「消費税の引き上げは避けられないが、いまは国民を刺激したくない。しかし、ほおかむりも無責任」。そんな首相の思いを忖度したような党税調。(「朝日新聞」社説、2006年12月15日)
その籾井氏が政策に関わるニュースに注文をつければ、どうなるか。権力を監視するジャーナリズムの役割が十分に果たせるのかといった疑問も浮かぶ。会長の意向を忖度し、政府に批判的な報道がしにくくなるのではないかとの不信感も出てくるだろう。(「朝日新聞」社説、2014年5月8日)
良い忖度と悪い忖度?
籠池氏は会見で、土地取引のスピードが上がったのは「忖度」があったからだ、としている。安倍昭恵夫人の秘書に問い合わせしたことをきっかけに、財務省の官僚が夫人の意向を「忖度」し動いた、という主張だ。
さらに、それは「悪いものではない」としつつ、学校建設が中断に至るまでの「逆の忖度が問題だった」などと語っている。
また、大阪府の松井一郎知事は今回の問題に関連し、「良い忖度と悪い忖度がある」と発言(THE PAGE 3/25)。
「政治家は国民の思いを忖度して政策をすすめていく」とし、安倍首相が森友学園の問題について、「悪い忖度ではなかったとはっきりいうべき」と述べた。
良い忖度、悪い忖度、逆の忖度……。ひとつの言葉に、さまざまな意図が込められるようになったとも見える。
「もともと忖度に良いも悪いもなかった。ただ人の心を推測するってことですから」と指摘する飯間さんは、こうも語った。
「役所や企業のシステムの中で、本来であれば良いものは良い、悪いものは悪いと判断しないといけない。しかし、『こんなことをすると社長が気を悪くするからやめておこう』など、論理性、合理性以外の要素が入ってしまう場合に『忖度が加わる』という使われ方をするのではないでしょうか」
必要とされだした言葉
そのような用法がここにきて拡大している要因を、飯間さんはどう見るのか。
「急にここ数年必要とされだした言葉なのでしょう。必要にならなければ、みんなが知っている普通の言葉を使えばいいわけですから」
「こういう森友学園のような事件のときに使える、適切な言葉がなかったのでしょう。難しい言葉だけれども、忖度を使うとちょうど良くなるということです」
この用法だけが注目されることには「違和感は持っていません」としつつ、こうも述べた。
「『上役の意向を忖度する』という使い方は、あくまで『忖度』の用法の一部にすぎません。ただ、マスコミで報道されることで知られるようになり、『勢力を拡大していきそうな用法』『みんなが使い始めそうな用法』だとは思います」
「一方で、『忖度』という言葉が汚れてしまった気もしますね。これから『もっと人の心を忖度しなさいよ』と言うと、悪いイメージになるかもしれない」
森友学園の問題を受け、次の辞書の改訂時には「忖度」の項目に、「例文を加えること」も検討しているそうだ。
「私たちの三省堂国語辞典の説明は、物足りないように感じました。『母の心を忖度する』という使い方以外に、例文を入れる必要はあるかもしれませんね」
どんな例文なのだろう。
「役人が政治家の考えを忖度する、かな。実例をよく見て決めるつもりです」  
 
忖度 12

 

故事成語『忖度』の意味
人の心を推し量ること。
本来はこのような意味になっています。今回の問題が話題になって衝撃だったのは、なぜかテレビのコメンテーターがこの「忖度」をマイナスイメージのある言葉として扱っていたことですね。
後述する由来を読んでいただければ分かりますが、「忖度」という言葉自体にそこまで強いマイナスイメージはありません。
ただ、「忖度政治」という熟語になると、「圧力」を思わせるようなマイナスイメージになることは避けられないです。結局、「忖度する内容」次第ということになりますね。
このあたりは、今回の森友学園問題の一つのテーマでした。本当にくだらないことですが。
故事成語『忖度』の由来
実は『忖度』という言葉は故事成語だったのですが、知っていました?
出典は中国最古の詩集である『詩経』からです。世界史を勉強したことがある方には、文化史でお馴染みですね。
   奕奕寢廟 君子作之
   秩秩大猷 聖人莫之
   他人有心 予忖度之
   躍躍毚兔 遇犬獲之
      奕奕(えきえき)たる寝廟(しんびょう)、君子之を作る。
      秩秩(ちつちつ)たる大猷(たいゆう)、聖人之を莫(はか)る。
      他人心有り、予(われ)之を忖度す。
      躍躍(てきてき)たる毚兔(ざんと)、犬に遇(あ)いて之を獲えらる。
   偉大なる寝殿は、君子が作った。
   秩序ある大道は、聖人が定めた。
   他人に(邪悪な)心が有れば、私はこれを推し量る。
   行動的でずるくすばしっこい兎は、犬に遭って捕らえられてしまう。
ちなみにこの『詩経』の句は、『孟子』の中でも引用されています。エピソードを引用してみましょう。
「有名な牽牛(けんぎゅう)の話に、『詩経』の句を引いていう。すなわち、孟子が斉の宣王にまみえて、仁術(仁を行う方法)を説いた。宣王が、御殿にいて、牛を牽いて通り過ぎる者に、どこに行くのかと問うた。すると鐘に釁(きん/いけにえの牛の血を塗り神聖なものとする儀式)するためだと答えたので、宣王はあわれがって羊に取りかえろと命じた。人民は、王は物惜しみをしたと言った。それを孟子は、王があわれだと思う心から変更を命じたのだと「忖度」し、王もそうだと喜ぶ。そこで孟子は、すかさずそのあわれむ心こそ仁術で、それを拡充して真の王道に進むべきを説いた。 (中略) 宣王は孟子に、『詩経』のこの句は、あなたのことをいったようなものだ、と感嘆した。」
(中略)の部分は主に詩経の句の引用です。こうして見てみると、仁術が分からない人民は宣王の「あわれむ心」を推し量れなかったのに対して、孟子は仁術を身につけていたため、王の意図を忖度できたというエピソードとも読めます。
これ、一見良さそうなエピソードですが…どこかで見たような話ではありませんか?
上のやろうとしていることなんて、結局下にはうまく伝わらないものなんでしょうね。多くは邪推だったり、野党の与党を引きずり下ろしてやろうという意志があるからこそ、問題が起きるのでしょうね。これも一種の忖度です。
夏目漱石文学に登場する「忖度」
夏目漱石文学は『こゝろ』に始まり、腐った女子たちにとって格好の餌となるという話をよく聞きます…(僕は女性の著名な教授から散々聞かされました)。
そんな漱石文学ですが、今回は『明暗』という漱石最後の作品(未完)から引用してみたいと思います。知っている方は、なぜ僕が前置きにこんな話をしたのか、もうお分かりですね?

「奥さんが来たろう」
小林はまたこう訊きいた。
「来たさ。来るのは当り前じゃないか」
「何か云ってたろう」
津田は「うん」と答えようか、「いいや」と答えようかと思って、少し躊躇した。彼は小林がどんな事をお延に話したか、それを知りたかった。それを彼の口からここで繰り返させさえすれば、自分の答は「うん」だろうが、「いいえ」だろうが、同じ事であった。しかしどっちが成功するかそこはとっさの際にきめる訳に行かなかった。ところがその態度が意外な意味になって小林に反響した。
「奥さんが怒って来たな。きっとそんな事だろうと、僕も思ってたよ」
容易に手がかりを得た津田は、すぐそれに縋りついた。
「君があんまり苛いじめるからさ」
「いや苛めやしないよ。ただ少し調戯(からか)い過ぎたんだ、可哀想かわいそうに。泣きゃしなかったかね」
津田は少し驚ろいた。
「泣かせるような事でも云ったのかい」
「なにどうせ僕の云う事だから出鱈目(でたらめ)さ。つまり奥さんは、岡本さん見たいな上流の家庭で育ったので、天下に僕のような愚劣な人間が存在している事をまだ知らないんだ。それでちょっとした事まで苦にするんだろうよ。あんな馬鹿に取り合うなと君が平生から教えておきさえすればそれでいいんだ」
「そう教えている事はいるよ」と津田も負けずにやり返した。小林はハハと笑った。
「まだ少し訓練が足りないんじゃないか」
津田は言葉を改めた。
「しかし君はいったいどんな事を云って、彼奴(あいつ)に調戯(からか)ったのかい」
「そりゃもうお延さんから聴いたろう」
「いいや聴かない」
二人は顔を見合せた。互いの胸を忖度しようとする試みが、同時にそこに現われた。

ちょっと長いですが、いい空気感でしょう? というわけで、今回は『忖度』でした。漱石先生の小説を例文にすると覚えられると思いますよ…なんて言わずとも、散々問題になっているので覚えている人の方が多そうですね!  
 
政治

 

森友学園・籠池理事長の証人喚問
学校法人「森友学園」を巡る一連の問題について、籠池泰典理事長への証人喚問が3月23日、参院予算委員会、衆院予算委員会で実施された。 
参院予算委・証人喚問
冒頭陳述
まずこのたび、国会で陳述の機会を与えてくださいましたことを深く感謝申し上げます。
私は真に日本国のためになる子供を育てたいという教育者としての思いから、今年の4月に瑞穂の国記念小学校を開校できるよう、これまで頑張って参りました。教育者としての私の思いにつきまして、安倍首相や昭恵夫人、大阪府議会の先生方を始め、多くの関係者の皆さんにご理解をいただきましたことは、今でも本当に感謝しております。その一方、多くの皆様のご期待を受けて舞い上がっていたところも私の中にございました。結果として手続き上の便宜から設計士の助言に従って工事請負契約書が3種類作成されたことや、幼児教育の現場において指導の行きすぎなど、諸々の不行き届きが生じてまいりました。それらの不行き届きにつきましては、自分の至らなさを認めますとともに反省すべき点について反省し、謝りたいと思います。今後は行政のご指導をいただきながら適切に改善を行ってまいります。
しかし現在この新しい小学校を開設する手続きについては、各方面から疑問が呈される中で、弁護士からの指示で申請を取り下げました。これまで応援してくれていたと思っていた方々が手のひらを返すように離れていくのを目の当たりにして、自分自身どうしてこうなってしまったんだろうという思いもあります。
本日はこの問題について私の承知しておりますことを率直に先生方にお話しいたします。
真に日本国を支える人材を育てる小学校をつくることは今でも私の夢であります。その名前については明治維新を担った多くの人材を輩出した松下村塾のことが念頭にありました。同じく長州出身で、以前から私の教育理念に共感して頂いている安倍首相に敬意を表したいと思いまして、当初は安倍晋三記念小学校とするつもりで昭恵夫人にもご相談申し上げ、同意を頂いたものと思っておりました。ところが後日、安倍夫人から「首相の名前を使うことを遠慮してほしい」という旨のお申し出がありましたので、小学校の名称は「瑞穂の国記念小学院」に変更いたしました。昭恵夫人にも私どもの教育にも深くご理解頂いていると思っております。昭恵夫人には3度にわたって幼稚園にお越し頂きましてご視察いただきました。昭恵夫人に瑞穂の国記念小学院の名誉校長に就任して頂いたのはH27/9/5にご講演をたまわったときのことです。そしてその9月5日、昭恵夫人は講演の控室として利用していただいた園長室で、私と対面していただいたとき、同行していたおつきの方に席を外すようおっしゃったのち、私とふたりきりの状態で「一人にさせてすみません。どうぞ安倍晋三からです」とおっしゃって、寄付金として封筒に入った100万円を下さいました。昭恵夫人は「全く覚えていない」とおっしゃっているようですが、私たちには大変名誉な話なので鮮明に覚えております。
また小学校の設立に関する大阪府への申請では、先にお亡くなりになられましたが、大阪府議長を務められた畠成章先生から頂戴したご恩も忘れません。畠先生には森友学園の幹事も務めていただくなどして、いろいろご指導頂いておりました。畠先生は松井知事のお父様とも親しいお付き合いがあり、松井知事が維新会派をつくるときにも陰ながら助力されたということで、大阪府の松井知事が府にお力添え頂けるよう、畠先生にお願いしてまいりました。そのおかげで、大阪府の当時の総務部長などにも説明させていただき、小学校設置の認可申請では特別な取り計らいを頂いたものだと感謝しております。ただその後、大阪府の中でどのようなやりとりがなされたのかはうかがい知ることはできません。松井大阪府知事関係者の方からお話しを聞いて、国会や府議会で真相究明していただきたいと思います。
次に土地の取引について申し上げます。小学校の建設用地であるあの豊中の国有地の存在については、不動産屋さんから平成25年に紹介を受けました。平成27年5月29日に定期借地契約を締結いたしました。その土地の買い上げの条件として、10年たったのをもっと長い期間へと変更できないかとの思いから、私たちの教育理念に賛同している昭恵夫人に助けを頂こうと考えまして、昭恵夫人の携帯に電話をいたしました。平成27年10月のことです。留守電でしたのでメッセージを残しました。すると、後日内閣総理大臣夫人付きの谷さえこさんという方からご連絡いただき、「なかなか難しい」とのお返事を頂きました。平成27年11月17日に総理夫人付き谷さえこさんから頂いたFAXでは「大変恐縮ながら現状では希望に添うことはできない。なお、本件は昭恵夫人にもう既に報告させていただいております」というお言葉を頂きましたが、お骨折りに感謝しておったところでございます。しかしながら私は財務省の中でこの間、どのようなことが起きていたのか詳しく存じ上げません。昭恵夫人、谷さん、財務省の関係者に詳しくその経緯を聞いて頂きたいと思います。
また、あの土地にヒ素や鉛などの有害物質があるということは契約上も明らかだったのですが、平成28年3月に入って工事が始まってから新たに生活ゴミが出てきました。その後、工事を施工していました中道組に北浜法律事務所の酒井康生弁護士を紹介して頂きまして、土地取引に関する一切の交渉をお願いしましたところ、最終的に土地価格は8億円余りも値引きされた1億3400万円になったとお聞きして、想定外の大幅な値下げに、その当時はちょっとびっくりいたしましたが売買契約を結びました。私は交渉の経緯については詳しく承知していないので、値引きの根拠などについては近畿財務局、当時の迫田理財局長、酒井弁護士にお聞き頂きたいと思います。
なお、先日私は大阪府への小学校設置認可申請を取り下げました。これは顧問弁護士だった酒井弁護士のご指示によるもので、私は断腸の思いで申請を取り下げました。しかし、その後、何ら事態は改善することなく、むしろこの問題で、私だけを悪者にするような、政府の要人や大阪府知事の対応を見て、何かおかしいと気付き始めました。財務省の佐川理財局長の命で部下の島田さんが「10日間隠れていて」と顧問弁護士の堺先生から申し上げましたことも、そのときは何でだろうと不思議に思っておりました。平成29年3月15日になって、もうこれ以上関わることはできないと突然、顧問弁護士辞任の申し出をいただきましたが、私には何があったのか理解できません。酒井先生が財務省近畿財務局や大阪府とどのような関係があったのか、是非国会でも聞いていただきたいと思います。
この問題が国会で議論されるようになってから、私の妻のところに昭恵夫人から「ご夫妻が今、大変なことは想像つきますが、主人にとっても大変なことに巻き込まれたということもご理解いただきたいと思います」とか「私が関わったということは、裏で何かあるのでは」と、疑われないというより口止めとも取れるメールが届きました。あんなに私たちの学校の開校を楽しみにしてくれていて「考え方に非常に共鳴いているのです」とか「森友学園の先生の教育に対する熱意がすばらしい」という話を聞いていると総理もおっしゃっていただいていたのに、どうしてなのか割り切れない思いです。私は純粋に自分の理想とする教育を実現するために小学校設立に夢中になって走り続けて参りました。その途中で多少も利用していってしまったことがあるかもしれません。でも私が昭恵夫人や畠先生にお願いした先で、どのような対応がなされたかというのは本当に分かりません。
国有地の大幅な値引きなど一連の経緯の真相を明らかにするためにも、私だけにトカゲのしっぽ切りで罪をかぶせようとするのではなく、まず私がこうして国会の場で正直にお話さえていただきますので、どうぞ是非その他の関係の方を国会に呼んで、事実関係をお聞きいただき真相究明を進めていただきますよう心からお願い申し上げます。以上でございます。 
参院予算委・証人喚問

 

山本一太(委員長・自民)
山本一太 / 「2人きりの状態で寄付金100万円の入った封筒を頂いた」と発言した。しかし官邸は否定している。事実か。どのような経緯で寄付が行われ、どこに振り込んだのか。
籠池 / H27/9/5に昭恵夫人が当園で講演会。その前のひとときの間、園長室でお話しをさせていただきました。その際、夫人から封筒をカバンの中からお出しし「一人にさせて申し訳ありません。どうぞ」と頂きました。その封筒を頂きまして「いいんでしょうか」と、少し上の方から拝見したところ金子が入っておりました。「いいんでしょうか」と訪ね「安倍晋三からです」とおっしゃって頂きました。すぐにその封筒を持って職員室に参りました。頂く前には秘書も家内も同席しておりました。お人払いをされましたので秘書の方が出ました。家内は他のことで退室しました。そこで頂きました。金子は職員室の副園長に渡しました。土曜日でしたので、中身を確認し、金庫に入れました。月曜日に近くの郵便局に行った。金庫に入れたところからは伝聞で私が直接していないので、あとは聞いていただければ。
山本 / 振り込み表の振り込み人欄は森友学園、名義は空欄。これは事実か。
籠池 / それは事実です。
山本 / 受け取った職員が郵便局に持参したのも事実か。
籠池 / それも事実です。
山本 / 職員が振り込み人欄に「安倍晋三」と書いて持参したのか。
籠池 / それも事実です。
山本 / 職員が学園の会計士に電話したら「安倍晋三ではまずい」と言ったのか。
籠池 / 郵便局で私どもの職員が書きましたときに、学園の副園長から会計士に聞いて、会計士から「まずい」と言われたので、郵便局に行った職員に伝達した。
山本 / 修正テープを使って書き直したのは事実か。
籠池 / 事実です。
山本 / 国有地売買で政治的な関与があったのか。
籠池 / 国有地取得について政治的な関与ということについて、あったのだろうと認識しております。様々な長短あろうと思いますが、その都度その都度の場所で政治的な関与があったのだろうと思っております。
西田昌司(自民)
西田昌司 / 安倍首相の奥さんから直接もらったとおっしゃった。奥さんと2人だけだったという。質問前に奥様から聞くと、「その日は2人のおつきがおられ、ずっとおられた。その席を外したことはない」という。事実と違うのでは?
籠池 / そのお話は違っていると思います。秘書の方は直前にお人払いをされました。
西田 / とにかく私は今の証言を聞いて、事実かどうかの証明ができない。安倍総理の名前で振り込むことができないのに振り込もうとした意図は何か。
籠池 / 意図というものはありません。私は安倍総理の大ファンですので、迷惑がかかることはできるだけしないようにと考えておった。安倍昭恵夫人から「安倍総理からです」とおっしゃった段階で「あまり他の方と同じように名前を出さない方がいいのでは」と認識した。
西田 / それも納得いかない。安倍晋三記念小学校としてやって、寄付金を集めている。安倍晋三の名前で寄付をたくさん集めようとしたのでは。
籠池 / それはありません。吉田松陰や新渡戸稲造の冠をするのは当然。安倍先生はその当時、一衆院議員でしたので、ご夫人を通じて再三やりとりして、その間のときに「安倍晋三小学校」でしていきたいという認識はしておりました。それはH27年ごろでしょうか、もとい、はっきりと覚えておりませんですが、安倍夫人から「ご遠慮頂きたい」とのことでしたので、それ以降使っておりません。
西田 / 安倍総理も夫人も断っておられた。あなたが寄付を集めた。この2/23にあなたと総理秘書官が電話しています。議事録を公開します。「安倍晋三小学校は1、2日しか使用しておりません」と言っているが、実際にいろんなところに出回っている。
籠池 / ほんの一瞬です。衆院議員の時期の一瞬。そのときだけです。お断りいただいた段階で焼却しております。
西田 / これ(「安倍晋三小学校」の寄付集め)が何年も使われていたと我々はつかんでいる。明日の委員会にでも出したい。いいですね。
籠池 / もう一度お願いできませんか。
西田 / 籠池さんとの会話を記録した文字起こしがある。これを公開したい。
籠池 / どんなものかをお示し頂かないと分からないです。
(中断)
西田 / 出していいのか。
籠池 / 別議員ですからおやめいただきたい。
西田 / 拒否される。夫人にあなたは小学校の開設について便宜を図るように頼んだというが、安倍総理には頼んだんですか?
籠池 / 安倍総理には直接一切お願いしたことはございません。昭恵夫人を通じていろいろご相談したことはあります。
西田 / 相談したと頼んだは違いますよ。何を相談したんですか。
籠池 / 相談したに頼んだも含まれます。
西田 / 何を頼んだんですか。
籠池 / 瑞穂の国記念小学院の副読本やカリキュラムについていろいろ。
西田 / 開設について相談したことではないと分かりました。参院予算委の現地視察のとき、野党議員だけを集めて自宅でお話ししています。なぜ野党議員だけを集めて話したのか。不公平感、不透明感を感じる。
籠池 / (補佐人と打ち合わせ後)お越しになったことについて、私の方から別に拒否することもありません。何か問題あるんでしょうか。
西田 / あなたが招いたのではないんですね。
籠池 / 私がお招きしたのではございません。
西田 / なぜあの方々が4人集まってできたんですか。
籠池 / それは私が知るところではございません。
西田 / その辺も不透明ですが(えーっと場内から)夫人とのメールを野党の皆さんに見せられましたか。
籠池 / 記憶にありません。私がしたことでございませんので。
西田 / 総理の奥様から許可を頂いてメールの文字起こしを全部持っております。ぜひここであなたの責任で、あなたの奥さんに公表の了解を頂きたい。
籠池 / (補佐人と打ち合わせ後)そのメールの内容は私はいいと思っております。
西田 / 明日の予算委でも私は出したいと思います。総理は「絶対渡していない」と言っているが、密室で渡したという。そのこと自体がまったく証拠にならない。寄付金集めが大変しんどかったと思う。寄付金集めのために著名人や皇室まで使っている。皇室に陛下が来られたように書いているけれども、そういう事実はないでしょう?
籠池 / そういう書きぶりをしたことはありません。安倍晋三記念小学院は本当に当初の当初ですので、逆に寄付金集めでしたら安倍晋三記念小学院という冠はいたしません。
西田 / あなたのHPに載ってるじゃないですか。
籠池 / そういう書きようにはなっていないと思います。私は天皇国日本という考えのもとで皇室を敬愛せないかんという気持ちは今も一緒。私自身がやったということはない。
西田 / 事実としてHPに出ています。問題の本質に行きます。報道を見ると論点がずれている。政治的関与で安い土地を売ったとか、総理や夫人との関係があったとかでなしに、もともと大阪で小学校を建てようとした計画そのものに無理があったんではないか。あなたが発注した藤原工業が仮差し押さえ、11億円が工事費未払い。なぜ未払いですか。
籠池 / そもそも認可適当を大阪府から頂き、国有地を定期借地で契約しました。そのあと藤原工業から契約しましたから、それからどんどん工事が進んでいった。認可適当は大きな担保でして、認可されなかったことはないと聞いております。それが大阪府の中でいつの間にか、認可させないという方向に進んでいった。その結果、3/10に取り下げた経緯につきましても、大阪府の担当官が前日に建物を視察したけどうまくいかなかった。取り下げた結果、銀行取引の約定もできず今に至る。
西田 / 11億円は銀行から借り入れでまかなうつもりだったのか。
籠池 / 当然、寄付金と銀行からの借り入れもあった。
西田 / ここが重要なんですよ。あなたの働きかけで規制緩和がなって道が開かれた。しかし新しい小学校には莫大なお金がかかる。そこが私学審でも焦点だった。どう説明されてきたんですが。
籠池 / (参考人と打ち合わせ後)大阪府が言っている通り。
西田 / 証言拒否をするので私が朗読します。当初から財源あるのかと危惧されてる。幼稚園でも借りているお金があると書いてある。今回建てることについて「負債を増やすことは考えておりません」と言っている。要するに寄付金だけでやるということでしょう?
籠池 / 審議内容の記録を拝見していないので中身が分かりません。
西田 / 核心はここなんです。現在も塚本幼稚園に負債が何億円ありましたか。
籠池 / 幼稚園の建物そして土地購入に3億円ぐらいだったと思います。
西田 / 総資産はどれくらいありますか。
籠池 / ちょっと今、はっきりとは覚えておりません。
西田 / 私学は30%基準があります。3億円借金あるということは10億円の資産があるということじゃないですか。
籠池 / そうですね。そのような感じです。
西田 / 小学校建てるのには、あなたは大阪府の審議会には7.5億だと。しかし藤原工業さんは15.5億だったと言っている。実際には15.5億だったんでしょう。
籠池 / (補佐人と打ち合わせ後)それは刑事訴追を受ける可能性がありますのでお答えいたしません。
西田 / 7.5億が正しいとしても、どうやって工面するつもりだったんですか。
籠池 / それは建物を建てていくうちに寄付金も集まって参りますし、時系列的に潤ってくると思います。しかも資産価値が当然ありますので、資産の価値を再評価することによって高まっていくこともあります。
西田 / 意味不明です。そもそも小学校を新設する場合、2/3しか借金できない。私学審の基準です。5億円分しか借金できない。今あなたが15.5億の藤原工業への支払いは4.5億しか払っていない。4.5億しか集まっていないということじゃないですか。
籠池 / 私立小学校は補助金がまったくありません。かなりの努力がいるわけです。内部留保と寄付で7.5億の枠であれば30%の敷居はきちっとできると思ったので可能だった。空調関係の補助金とか、はい、以上です。
西田 / 資金繰りを言っているんです。10億円総資産があるけど3億円借り入れがあった。持ってないから払えなかった。この騒動でどうなったかじゃない。初めからお金がないんじゃないですか。どれだけのお金があったんですか。
籠池 / そこにどのような口利きがあったのかですから、委員は的外れだと思います。(会場から笑い声)
西田 / どういう口利きをしたらお金が集まるんですか。
籠池 / 口利きがあったということから事件の発端だったと思います。どういう類いの口利きだったのかという話になってくると思います。民間の人間が行くだけではどうしようもない。ご紹介を頂いてでかけたということですね。何回も行かせていただいて、定期借地も高止まりで結果としてなっております。本来、口利きがありましたら低止まりになったんじゃないでしょうか。だから口利きはなかったんだろうと思っております。
西田 / 口利きはあったんですか、なかったんですか。
籠池 / お金を呈した口利きはなかったと思います。
西田 / 私学審の審議録を見て疑問に思ったのは、私は税理士だが、新たな事業をやるときは事業計画を見る。この計画、お金の手当ができないままに議論している。審議の委員が再三危ないと言っているのに、貴方が言ったか知らないけど、事務局側が「負債を減らすことは考えておりません」と言っている。だから条件付き認可適当となったんです。初めの計画がかなりむちゃくちゃだったんじゃないですか。
籠池 / 当初から価格が高騰していったということは当然あろうかと思います。でも今、県設を始めるときは上質のもの。
西田 / そもそも論聞いているんです。7.5億がなければできないじゃないですか。なんで11億が未払いになってるの。そもそも7.5億もなかったんじゃないですか?
籠池 / 違います。7.5億は集まってます。建設資金が高まってきておったことは否めない話だと思います。
西田 / もともと無理な計画で認可されたこと自体が問題。大阪府側でしっかり調査していただきたい。土地の取得はまったく後の話。要はポイントは、初めからならないものがなってしまった。はしご外されたと思ってるんじゃないですか?
籠池 / そうですね。九分九厘できあがっててはしご段を外されたと思ってます。大阪府、松井知事と思ってます。
福山哲郎(民進)
福山哲郎(民進) / 参考人を拒否してきた自民党に抗議します。先ほどの陳述で、党として速記が手元にあります。昭恵夫人とのやりとりも含め、偽証罪に問われること把握した上で、証言したということを確認させてください。
籠池 / その通りです。
福山 / 教育理念に賛同している昭恵夫人の携帯に電話しました。後日、谷さんなかなか難しいとごお返事をいただきましたと話されました。夫人付きの秘書でよろしいのか?
籠池 / その通りです。
福山 / H25年は講演の直後ですから、学園に行かれたことのある夫人付きの秘書でよろしいでしょうか?
籠池 / その通りです。
福山 / 経産省からタニサエコさんが出向している記録がある。FAXでやりとりをして、昭恵夫人に報告していますと先ほど、国有地の問題でお願いをしたということですか?
籠池 / そうでございます。
福山 / お願いは1回だけ、それとも複数回こういうやりとりをあったという認識ですか?
籠池 / 電話をしたのは私です。やりとりは国有地のやりとりは一回だけと記憶しています。
福山 / 電話のやりとりも証拠がありません。FAXでのやりとりも、口頭で言ったきり、何らか証明できるものはおありですか?
籠池 / いただいた FAXは残っております。
福山 / タニ夫人付きからのFAXが残っている?
籠池 / その通りです。
福山 / この場で内容で紹介してもらえないか? (補佐人と話)
籠池 / 内容は特約10年が付いていた。その時期に介護施設は50年の特約がつくと言われていたので、学校法人ではどうなのかと聞きました。「学校法人は無理だ」ということであります。
福山 / 昭恵夫人に連絡したタニさんからFAXで返事がきたということですね?
籠池 / その通りです。
福山 / もしこの時期に総理大臣夫人付きが、問い合わせをしていたとしたら、昭恵夫人は名誉校長ですか。先ほど10月とおっしゃっていましたが。
籠池 / はい。そうでございます。
福山 / 名誉校長で、総理大臣夫人付きの秘書が動いたということは、面を食らっています。忖度が働いても仕方ないのかなと思います。100万円の授受について、娘さんが、玉座の間という表現があるのだが、先ほどは園長室と言われたが、籠池氏の認識はどちらか?
籠池 / 園長室が正解です。
福山 / 娘さんのインタビューですと、安倍総理から、頑張ろうと言い合ったという下りがるが、幼稚園の職員もその認識がある?
籠池 / もちろんその通りです。
福山 / 10万円を講演料として渡したというのは?
籠池 / 先に用意していた。講演が終わった後に渡しました。お菓子の袋に感謝と入れて、お持ち帰りいただいた。
福山 / 昭恵夫人に直接渡したでしょうか?
籠池 / 記憶がはっきりとしていませんので、申し訳ありません。
福山 / 100万円も10万円も、安倍総理側は否定されています。なぜ今となって公にしたのか?
籠池 / 当初から安倍首相に敬愛を持っていました。2月10日に事件が勃発して、国の方向性も見ていたが、2月23日にテレビ中継で、安倍首相が籠池氏はしつこい人だと言っていました。重要なのは我々はこの学園を作り上げようとしている時に、途中、手のひらを返すように、潰すようになってきたので、私自身も、何が動いているのかという気持ちになって、解明しないと国民の皆様に申し訳ないと思いました。
福山 / メールのこと、口止めとも取れるメールが届いたと昭恵夫人から妻の方へということですが、いつぐらいに届いたのでしょうか?
籠池 / メールは存在している。2月18日以降、25日ぐらいまでの間だと思います。
福山 / かなり頻繁に妻と昭恵夫人はやりとりしているのでしょうか?
籠池 / 2月中は22回、3月は15、6回はさせてもらっていました。
福山 / 昭恵夫人との携帯電話でのやりとりも頻繁にしていた?
籠池 / 頻繁にあるということです。
福山 / 畠さんとの関係は?
籠池 / 淀川区選出の議員です。松井知事の父君と昵懇で、熱心に動いてもらいました。
福山 / 具体的なものはありますか?
籠池 / 教育に賛同してもらっていたので、大阪府の幹部、松井知事に働きかけをしていただいたと思っています。
福山 / 大阪府と近畿財務局の間のやりとりに、籠池氏はかなり関わったという認識はありますか?
籠池 / 私自身は働きかけをしたということはありません。
福山 / 東京の理財局長にあうと言ったことあったが、どういうことでしょうか?
籠池 / 定置借地権の決定で、1年ほどかかりました。近畿財務局の職人に財務省に直接行きますと言って、聞き出したということです。
福山 / 近畿財務局が直接関わっていないとすると、どなたがやられたんですか?
籠池 / 訂正します。対応は私がやっていました。
福山 / 直接やっていますか?
籠池 / 訂正は、プレッシャーをかけてたりはしていないと、間違えて質問を聞いてしまいました。
福山 / 何とかして欲しいとお願いしたことはありますか。
籠池 / 鴻池先生に、土地が見つかった時に、ご紹介を賜りたいとお願いしました。
福山 / こんにゃくはなんだったのでしょうか?
籠池 / 3万円が入った、大きな型紙の中に入った商品です。
福山 / なんのために?
籠池 / 入院見舞いも兼ねて、その時に土地の関係はこうなっていると報告はさせてもらいました。
福山 / 近畿財務局は、小学校の設置申請前に事前のやりとりをしたことはありますか?
籠池 / 対応はさせてもらいました。
福山 / 問題発覚後も近畿財務局とやりとりしているのでしょうか?その中で「10日間隠れてくれ」とあったのでしょうか?
籠池 / ありました。私もありましたし、当時の顧問弁護士もありました「10日間」は顧問弁護士がやりとりしました。
福山 / 財務省の島田さんから。
籠池 / そうです。
福山 / 稲田大臣と、顧問契約があったのか、法律相談をしたことはありましたか?
籠池 / 顧問契約を結んでもらいました。先生も出廷したと記憶していますが、今回の土地の件も稲田事務所に28年1月に相談したました。
福山 / 稲田大臣に直接相談したことはありますか?
籠池 / それはありません。
竹谷とし子(公明)
竹谷とし子 / 買い戻し契約について。原状復帰で戻せと、3/12付で近畿財務局から通知が出されています。
籠池 / 以前の顧問弁護士を通じて聞いておりますが、現物は見ておりません。
竹谷 / 予告の通知ですので3/31までに更地にして戻せと。
籠池 / なんでこんなになったのかなあと思っています。近畿財務局の方で、34条の約定を使って民間の土地で対応できればいいんではないかなあと思っております。
竹谷 / 買い戻しすることで国は大変得をすることになります。
籠池 / その通りです。
竹谷 / 寄付金について。お礼状を出すのが礼儀と思いますが、そうしましたか。
籠池 / そのようにさせて頂いております。
竹谷 / 100万円の寄付について、お礼状やメールでお礼しましたか。
籠池 / 「黙ってて」ということでしたのでお出ししておりません。
竹谷 / お礼の気持ちを何も示さなかったということですか。
籠池 / 白名にしてほしいというお気持ちだったのでお礼状はしておりません。
竹谷 / 予算委の現地視察で安倍首相100万円寄付のことを言い出したのはなぜですか。
籠池 / 国は更地にして戻せということだと理解しておりました。土地や建物を存続してもらうために、これは安倍首相からのお気持ちが入っているんだ、何とかしてくれと。
竹谷 / 安倍首相からの寄付金が入っていると言えば国は忖度すると思ったのか。
籠池 / 決してそういうことではない。何とか残したいという思いだった。
竹谷 / 封筒に入っていたのか。
籠池 / 入っていた。
竹谷 / 封筒は残ってるか。
籠池 / 残っていない。
竹谷 / 寄付はなかったのではないかと思えてならない。先ほどHPで「天皇陛下が訪問になられた」ということが載っている。それを「知らない」というのは事実か。
籠池 / 私は知りませんでした。恐縮です。
竹谷 / 昨日私が拝見した際も掲載されていました。事実ではないとおっしゃいました。理事長としての責任は感じますか。
籠池 / 事実に沿いませんので、記載されているのであれば申し訳ないと思っております。
竹谷 / 安倍総理の塚本幼稚園訪問はありましたか。
籠池 / ありません。
竹谷 / 雑誌でそう発言されたことはありましたか。
籠池 / ありません。
竹谷 / それではその雑誌が間違っているということですね。
籠池 / 間違っていると言うことです。
竹谷 / 安倍晋三小学校と寄付を募ったことはありますか。
籠池 / 一時期がありました。
竹谷 / 寄付用紙をつくりましたか。
籠池 / つくりました。
竹谷 / 安倍総理の許可を得ましたか。
籠池 / 当時は総理でなかったので得ていません。
竹谷 / ご本人の許可を得ないで寄付を募るのは詐欺ではないですか。
籠池 / (補佐人と打ち合わせ後)それは詐欺ではないと思います。
竹谷 / それによって寄付された方はいますか。
籠池 / 私の記憶ではそのお名前を関することでご寄付頂いた方は多くなかったと思います。いらっしゃらなかったと思います。
竹谷 / それは確かですか。
籠池 / (補佐人と打ち合わせ後)恐れ入ります、記憶が定かでないので。
竹谷 / あった場合、詐欺だと思いますか。
籠池 / (補佐人と打ち合わせ後)詐欺ではないと思いますが。
竹谷 / 森友学園の私学審の報告について、愛知県の海陽学園に推薦枠があるとしたことは事実ですか。
籠池 / 添付書類に書いた。
竹谷 / 許可は得ましたか。
籠池 / H27/6にJR東海の葛西(敬之・名誉会長)さんとお話ししたときに「そういう学校があるならぜひ入学させてあげたい」というリップサービスをそのまま記載してしまった。
竹谷 / リップサービスをそのまま記載するのは適法だと思いますか。
籠池 / 6年先のことなので、適法なのかは分かりません。
竹谷 / 3通の契約書について。学校建設費が大きくなると借入金が増えて私学審の認可が下りないから7.5億の契約書で出されたというのは事実ですか。
籠池 / (補佐人と打ち合わせ後)刑事訴追を受ける可能性がありますので答弁を控えます。
竹谷 / いちばん近いのは3通のうちどれか。
籠池 / (補佐人と打ち合わせ後)その辺も刑事訴追を受ける可能性がありますから控えます。
小池晃(共産)
小池晃(共産) / 安倍昭恵さんがなんども来られていることや、名誉校長になっていることを役所に伝えましたか?
籠池 / 伝えています。
小池 / 交渉で役に立った?
籠池 / 他の人の思いの取りようになってしまいます。
小池 / ゴミが見つかりました。鴻池事務所に近畿財務局から不当な提案を話しているが、どんな内容?
籠池 / 記憶にないです。
小池 / ゴミを処理すると。
籠池 / その記憶がありません。
小池 / 本省で、鴻池事務所が断ったと聞いています。政治家に仲介を依頼したのか?
籠池 / 鴻池戦にことの顛末だけは話しました。できたら本省を紹介して欲しいと伝えました。
小池 / 本省で撤去費用の話はしましたか。
籠池 / 談判をしました。
小池 / どういう談判?
籠池 / そういうものを民間に貸すのかと談判しました。
小池 / 財務省側は、地主の大阪航空局だと言った?
籠池 / 言いました。
小池 / 見積もりは大阪航空局?埋設物撤去費用が土地代から引くと、近畿財務局からあった?
籠池 / そういうものはありません。
小池 / 昭恵夫人は、名誉校長の依頼をすぐに受け入れたのか?
籠池 / 1秒ほど止まって、承諾してもらいました。
小池 / 昭恵夫人はご理解いただいた、後日遠慮させてもらうというのは、何日後なのか?
籠池 / 記憶がはっきりしないですが。だいたい、5ヶ月ぐらいじゃないでしょうか。
小池 / 昭恵さんと豊中の更地に行ったことは?
小池 / 27年9月5日の昭恵夫人の公演の2日前に安倍首相は理財局長にあっています。その時に財務省が動いているという話があったのか。
籠池 / 財務省が前向きに動いたのは、生活ゴミが出てきたからでは。
小池 / どういう動きで、前向きと思ったのか?
籠池 / 弁護士が入って、スピード感が早かったと思います。
小池 / 安倍首相は、平成24年の講演をキャンセルした時だけだと行っているが、このほかには?
籠池 / その一回だけです。
小池 / 大阪府の設置規制緩和で、政治家に依頼したことはありますか?
籠池 / ございます。
小池 / どなたですか?
籠池 / 東徹議員です。
小池 / そのほかに設置認可、土地の取得で、声をかけた人は?
籠池 / 既にやめていますが、国土副大臣の北川イッセイ先生。柳本卓治先生。
小池 / FAXの問題、今お持ちですか?
籠池 / 手元にはありません。
小池 / 委員会に提出していただきたい。いただけますか?
籠池 / 提出します。
浅田均(維新)
浅田均 / まずあなたは大阪府にだまされたと発言しましたが、大阪府の誰に何をだまされたと思ってるんですか。
籠池 / 設置認可適当で進んでいたものが、途中でひっくり返るのは、行政当局の指示があり、トップである方の何らかのサジェスチョンがないとこうならないのではないか。
浅田 / 口利きはない、はしごを外されたと。はしごを外したのは大阪府のトップだと。誰がこのはしごをかけたんですか。
籠池 / かけたのは私ですが。
浅田 / トップの名前ですが、松井一郎にお会いになったことはありますか。
籠池 / 知事には直接、一対一でお目にかかったことはありません。
浅田 / 私学認可取得にあたっていろいろ名前が出ています。相談したのか、協力を具体的に求められたのか。条件を聞くのは相談ですよね。相談が前に進むようによろしくお願いしますとなると事情が変わってくる。
籠池 / 規制緩和については積極的にお伝えしました。認可についても何とかよろしくお願いしますとお伝えしました。
浅田 / 依頼、陳情の類いと受け止めてよろしいですか。
籠池 / もちろんご依頼し陳情したつもりです。
浅田 / 冒頭発言で、はたなりあきさんという自民党議員だった方の名前を言ってます。大阪府に学校を設立したいと働きかけたのははたさんだったのですか。
籠池 / 事の起こりから相談させて頂いていたのでそういうことです。
浅田 / 認可申請書を提出したのはH26/10/31です。このあたりまでずっとお願いを続けておられたという理解でよろしいですか。
籠池 / ずっとご相談申し上げておりましたので、認可申請書は事務方である程度処理ができてから提出となりますので、その間もずっと相談申し上げておりました。
浅田 / 畠さんにだけずっとお願いした働いていたということでいいんですか。
籠池 / 相談とか、こんなんつくりますねんというのは、他の議員にも話していた。
浅田 / 畠成章さんのお名前を挙げたのは、この方に特にお世話になったからか。
籠池 / 2代にわたってお世話になっておりますので、私の思いを認識して動いて頂いたと今も思っております。
浅田 / 畠先生はH26/9/18に亡くなられています。お亡くなりになられた方がどうして動けるんですか。
籠池 / 申請までが重要。行政が受け取ってくれるかが重要。9月に亡くなるまでには、私の考えや悩みも聞いていただいた。
浅田 / お亡くなりになってからは誰が替わって対応したのか。
籠池 / 畠先生以外にはいらっしゃらなかった。
浅田 / 存在しない人は動けない。最後まで働いてくれたという発言には重大な問題がある。松井一郎の問題もある。私自身、松井一郎を証人喚問していただきたい(会場から「おー」)。
山本太郎(自由)
山本太郎(自由) / 現金100万円を昭恵夫人から受け取った時に、「一人にさせてごめんなさい」と言われたとおっしゃてますが、その言葉は報われると思います。受け取った時、どう思いましたか?
籠池 / 非常に嬉しい。これでものごとは、進んでいくなと思いました。
山本 / 昭恵夫人が応援してくれて、名誉校長にもなってくれた。学園の士気が固まった。保護者も含めて、社会的信用に繋がったと思いますか?
籠池 / その部分は大きかったと思います。
山本 / 神風が吹き、国有地が手に入ったという発言はどういうことでしょうか?
籠池 / 定置借地権以降はスピード感があったので、そのように発言しました。
山本 / 風が吹いたきっかけはなんだと思いますか?
籠池 / その時、場所やタイミングが、天から降ってきたと思いました。
山本 / 最高の教育、後少しで開校までこきつけたが、自ご身は負債はどれぐらいですか?
籠池 / 17、8(億円)ぐらいになる。天地の差です。
山本 / とんでもない額ですね。一斉にハシゴを外す。ハシゴを外され、怒りを感じた政治家は?3人ほどでも構わないですが。
籠池 / 大阪府知事です。
山本 / それ以外にはおりますか?
籠池 / 大阪府知事です。
山本 / 証人喚問にでたことをきっかけに、真相解明をしてもらいたいと思います。
松沢成文(無所属クラブ)
松沢成文 / 参院予算委理事会で学園を訪問したとき、鴻池議員以外に関与はあったのかときいたところ、理事長は「ない」と言明した。しかし今日3人の国会議員の名前をあげた。なぜあのときには「ない」と言ったのか。
籠池 / 国有地取得についてと、私学審の対応は違うと認識したので。
松沢 / 大阪府議は、学校認可の件でこうしてほしいというお願いをした人の名前を。
籠池 / ちょっと今の段階で控えさせていただきます。
松沢 / 国会議員を挙げて府会議員を挙げないのは不自然。大阪府知事の松井さんに便宜を図るようお願いした口利きをいらいしたことはありますか。
籠池 / しておりません。ご遺志をついでいただけるならそのままでいくだろうという認識でしたので、そのままでいいならそのままでいくだろうと。
(中断)
籠池 / (補佐人と打ち合わせ後)大阪府議会の先生方に直接小学校を前に進めて下さいとお話しはしておりません。
松沢 / 昭恵夫人に学校認可の件でぜひとも安倍総理経由で大阪府知事にお願いしてほしいとお願いしたことは。
籠池 / ありません。
松沢 / 鴻池議員には国有地払い下げのお願いに行った。そのとき鴻池議員に「ぜひとも麻生財務大臣に伝えてほしい」と依頼したことは。
籠池 / 麻生大臣の方にお伝え下さいませんかとお伝えしたことはあります。
松沢 / 麻生大臣は知っていたということですか。
籠池 / なかったと思います。私はお伝えしましたが、伝わってなかったと思います。
松沢 / ほかにも国会議員で相談した方がいるんじゃないでしょうか。
籠池 / 小学校の関係について、国有地の関係で直接お話しした方はおりません。 
衆院予算委・証人喚問

 

浜田靖一(委員長・自民)
葉梨康弘(自民)
葉梨康弘(自民) / 昭恵夫人に一回だけお願いをしたことがあると午前中の質疑で行った。H27年10月ごろ 、携帯に電話をし、留守電に入れた。返信はあったか。
籠池 / 返信はなかった。参院の答弁を訂正する。当学園の名誉校長になる前だった。
葉梨 / 昭恵夫人が名誉校長になったのはH27の9月か。
籠池 / 間違いない。
葉梨 / 昭恵夫人付きの人に手紙を書いたか。
籠池 / 昭恵夫人が名誉校長になられる前に手紙は書いたことがある。
葉梨 / これはその手紙か。
籠池 / 宛名書きは私の字ではない。家内が書いたもの。
葉梨 / H27年10月の消印がある。名誉校長になられた後。
籠池氏のお話は間違いとなる。次に、職員(昭恵夫人付きの谷サエコ氏)が役所(財務省)から聞いた話をFAXで回答したか。
籠池 / 間違いない。手元にある。これをご覧になっていただいたら良い。
葉梨 / 借地契約が50年にならないかという話。値下げや工事費の減額を相談したものか。
籠池 / その通り。議員が示した封筒を見せていただかないと。それは私の字ではない。
葉梨 / その相談を受けた職人が財務省に確認したところ、「ご希望に添うことができない」という回答があったか。
籠池 / それに違いない。
葉梨 / このFAX以外に受け取ったものはあるか。依頼事項に対するもので。
葉梨 / それは電話か。
籠池 / おっしゃる通り。
葉梨 / 午前中にもあったが、安倍晋三記念小学校のスタンプ入りの用紙を作成した時期はいつか。
籠池 / 趣旨書と一緒に添付した。振込票だけが一人歩きしない。趣旨書を作った時期。
葉梨 / いつつくったのか。
籠池 / 認可申請を受ける前。安倍先生が衆院議員であった時と記憶している。
葉梨 / 使用した時期は、安倍首相が誕生する前。どのぐらいつかった?
籠池 / 安倍昭恵先生の方から、ご主人の首相に小学校の名前を2度3度と聞いてもらい当初はOKだったが、あとで大きな公職になったのでご辞退したいとのことだった。ほんとに短い、5か月ぐらいの時間。趣旨書と振込用紙が一人歩きしたのは一瞬。
葉梨 / H24年12月の総選挙で勝利して、安倍総理が組閣した。それ以前か。
籠池 / おっしゃる通り。
葉梨 / H26年と記載された安倍晋三記念小学校の振込書があるが。
籠池 / その中には趣旨書が入っていたか。
葉梨 / 趣旨書なるものは、平沼先生の顔が入っているものか、入っていた。
籠池 / 衆院議員に在任中、総裁になられた後の時期に、まだ振込用紙がのこっておったということがあった。そのことがありましたものを、使っておったという時期が少しありました。
葉梨 / H24年以前ではなくH26年春頃の話。それも少しの間ということになるのか。
籠池 / 私の認識では短い期間だった。お断りになられる間に、少しの期間出回っていた時期があったのかもしれない。
葉梨 / 菅野さんによるとH27年に100万円の振込をしたと。紙テープで隠したものばかり見るが、安倍晋三小学校の刻印があった。平成26年ですよ。それについて記憶はあるか。
籠池 / 修正をかけた。そういうものはないと思うが。
葉梨 / 修正液の部分。100万円ということでネットに載ってる。こちらにも安倍晋三さんのスタンプが書かれている。出ている。この点について。
籠池 / それは、100万円がふりこまれた用紙か。
葉梨 / 振込の番号が同じ。そこのところに安倍晋三記念小学校と刻印されている。
籠池 / 2つ論点がある。その用紙によって、安倍首相にもらった100万円を入れたわけではない。H27年に使われていた振込票は、その日にちで振り込まれたのだろうが、その方の手元にいつ行ったかわかりかねない。
葉梨 / H26年〜27年まで、安倍晋三記念小学校と書かれた振込票が使用されていたのは明らか。どのくらいまいたのか。使ったのか。
籠池 / 記憶にございません。
葉梨 / いくらぐらい集めたのか。
籠池 / わかりかねない。
葉梨 / 少し、一瞬というのは籠池氏にとっては1年が一瞬。安倍首相が総理大臣になっても使い続けている。午前の証言と異なる。100万円を昭恵さんから受け取ったのは違いないか。
籠池 / 間違いない。
葉梨 / 水掛け論をしても仕方ない。内閣府から2人、夫人付で行っている。2人は夫人から離れていないと言っている。私たちでも確かめる。10万円の菓子箱を渡したのは間違いないか。
籠池 / たたみ掛けるようで失礼な話。秘書の方は人払いをされて、現場にはいなかった。(私と昭恵氏)二人の間での出来事だった。菓子箱云々は(昭恵氏は)講演会が終わった後に急いで帰る用事があったので、「感謝」と気持ちを添えて、封筒の中に金子を入れて菓子箱とともに渡した。
葉梨 / 失礼ってことはない。証言の食い違いは人の名誉に関わる話。それを失礼というのは逆に失礼。名誉のやり取り、口止めともとれるものがあったと言われた。どんな中身か。
籠池 / 手持ちにないので申し上げられない。メールを公表したらわかること。
葉梨 / メールをしっかり公表していきたい。私も内容なるもの見たが、籠池さんの奥さんからメールがたくさん来ていて、それにちょっと答えているというものではないか。
葉梨 / 9月4日に木原設計、中道組、近畿財務局・航空局の話し合いがあった。その経緯の書類を見たことがあるか。
籠池 / いつのことか?
葉梨 / H27年の9月4日です。
籠池 / どういうものか見てないので、理解できない。
葉梨 / 中道さん、木原設計、財務局・航空局担当者が森友の土地について話しあった。それについて見ていないんですね?
籠池 / いつの段階でですか?
葉梨 / H27年3月にゴミがでてきた。それまでには?
籠池 / 見ておりません。
葉梨 / 関係者に確認したい。土地のディスカウントの経緯について。安くしてもらってびっくりしたというのは間違いないか。
籠池 / 主観通り、間違いない。
葉梨 / 国の方も国有財産の管理の方法に問題あった。伊丹空港周辺の国有地は3つ。森友学園、豊中市の公園、給食センター。給食センターは昭和50年ぐらい、国が購入したんぼになっていた。そこに給食センターを作ろうとH27年に掘り返したら、アスベスト、コンクリ片が埋まっていた。田んぼから生えてくるはずがない。撤去費用は14億円かかる。隣の公園は14億2000万円で売り渡したが、20%弱の産廃があると調査があった。廃棄物の瑕疵担保責任ありだった。豊中市は2000万円ぐらいしか払っていない。籠池さんの土地、公園と隣接地。3.8mぐらいまでゴミがありそうだと。運ぶのに8億円かかりそうだと算定したと。3つの土地を考えた時、森友学園が得をしているかというとそうではない。建物を建てる時、何メートル掘ったか。
籠池 / 有害物質がでてきた時は3メートルすでに掘っていた。そのあと、杭打ちで9.8メートルまで掘ったと聞いている。
葉梨 / グラウンドは掘っていない?
籠池 / 掘っていない。
葉梨 / 業者がボーリングした時に生活ゴミがあると報告があるが、そのままにしたということか。
籠池 / 運動場なので再度掘る必要なし。そのまま置いておいた。
葉梨 / その上で運動をさせるというのは如何なものかという気もするが、3つの土地を比べると森友学園の土地が不当に安く払い下げられたというふうにはないと客観的に見られる。政治の関与があったというが、籠池氏が値引きをお願いしたということはあるか。
籠池 / 政治家ということについていえば念頭にはそんなにないが、安倍昭恵夫人も政治家的な、政治家の奥方なので政治家的ではなかったと。言葉のニュアンスは違うが。買取の値下げについて、純粋な政治家の方の対応はなかった。
葉梨 / 昭恵さんにはあったということですか?
籠池 / 谷秘書のことが出たので、財務省に多少の動きをかけていた。生活ゴミが出たあとに急転直下で動いたので、そういうことも考えられるかなと。
葉梨 / 後日(谷サエコ秘書からの)FAXが出れば明らかになるだろう。
葉梨 / 証人喚問に際して、国会議員から証言に関する示唆はあったか。
籠池 / 参考人として私は出させてもらってもいいですがと申し上げたことはある。
葉梨 / 籠池さん側からか、議員側からか。
籠池 / 阿吽の固有でということでしょうか。
葉梨 / 積極的ではなく、阿吽の呼吸、そういうことと解釈して良いか。
籠池 / おっしゃる通り。
葉梨 / 籠池さんが何らかの捜査対象になっていおるという話し合いはあったか。
籠池 / ございません。
葉梨 / 大阪府から監査を受ける。この点について危惧をしているという話し合いはあったか。
籠池 / はっきりとは覚えておりません。身の回りのことを考えるとそのようなことも近づいてきておりますがとは言った。
葉梨 / 反応はあったか。
籠池 / 特段ございません。
葉梨 / 忖度というか、何の反応もなかったということか。
籠池 / おっしゃる通りです。
葉梨 / しっかりと確認をして良いかなと思います。赤旗の取材で、表彰の時に稲田防衛相と会ったと書いてあったが、取材にはそのように応じたか。
籠池 / 取材については覚えていない。
葉梨 / 籠池さん自身が本当のことを答えているかどうか、今回の質疑で相当疑念が湧いたのではないか。
富田茂之(公明)
富田茂之(公明)  / 小学校教員の免許は持っていない。10月31日に設置認可申請をしていた。申請にあたって、大阪府では設置認可の審査基準がある。審査基準に当たって、調査はしたか。
籠池 / 拝読させていただいたつもり。
富田 / 設置基準の7項目め。資産など。校地・校舎その他の施設は自己所有であること、教育上支障がなく次の基準を満たす限り、借地を幼稚とすることができる。当該借地の上に校舎がないこと。この条件は知っているか。
籠池 / 知っている。
富田 / 校舎の幼稚は自己所有ではないといけない、当初は借地だった。このきじゅんにあわないかたちで 申請がされていて、審議会でも審査されていた。
籠池 / そのことは朝日新聞を読んで、そういうことだったのかというのが率直な気持ち。私学真に新sねいよは出さなかった。このような結果にはならなかった。松井知事が担当者を処分すると書かれていたが、処分するだけでいいのか。認可適当をいただいて、国有財産を取得し、建設業者を指名した。そんなことをしなくても良かったのでは。
富田 / 基準は知っていたと言ったが、わからなかったと。多くの議員から資金に問題があるのではと指摘があった。27年1月条件付き認可適当となった。撤回の可能性も指摘されていた。かなり厳しい状況で、認可適当にした。このあたりで政治家の介入があったのかと思われている。政治家に依頼をしたとか、働きかけをしたか。
籠池 / 3月になって審議会の内容を知った。どのような状況で認可条件付きになったのか知らなかった、政治家に対応をするということはなかった。
富田 / 契約書が3通あるとあった。午前中は「設計士の指導で」作成したといった。3/10、大阪府は藤原工業の本社で聞き取り調査をして確認したと報道。藤原社長が「学園側から私学助成の対象になる部分で金額を出して欲しいと7億の契約書を作った」。そういう話し合いを藤原さんとしたか。
籠池 / これは刑事訴追を受ける可能性があるので答弁を控えさせていただきます。
富田 / 裏付ける書類がある。それぞれ署名捺印している。もともとH27/12/21締結の新築工事契約書について、私学審議会の助成金を受けるため、15億5520万円の契約書に、「別途7億5600万円の契約書を作成する」とある。覚えはあるか。
籠池 / 刑事訴追を受ける可能性があるので答弁を控えさせていただきます。
富田 / 今月15日に仮差し押さえの決定、それはご存知か。
籠池 / 新聞で知った。
富田 / 15日に3億に支払期日が来てたのでは。
籠池 / 支払期日は竣工のとき。15日かどうかは確認できない。
富田 / 国土交通省の補助金について。この申請の手続きは誰がおこなったか。
籠池 / 京都の木原設計事務所です。
富田 / 実勢設計書は。
籠池 / 同じ業者がつくりました。
富田 / その中に23億の数字がある。この数字はどうやって決まったか。
籠池 / 刑事訴追の可能性があるのでお答えできない。
富田 / 補助率上限がある。上限を含めて23億8000万円にならないと補助金が受け取れないとはじき出したのでは。
籠池 / 木原設計にお聞きいただきたい。
富田 / 自分からは担当者に言っていない?
籠池 / 金額については申し上げていない。
富田 / 国交省は3月2日、補助金を今月30日に返還するように求めている。
籠池 / 努力する。
富田 / H28・3月、杭打ちの過程で新たな埋蔵物が見つかり、近畿財務局、航空局、工事関係者が現地検査をした。そこで「本省に行きたいが断られた」と、証言した。間違いないか。
籠池 / その通り。
富田 / 鴻池事務所とはどんなやり取りを?
籠池 / ゴミが出てきたので、大変なことになっておりました。財務省に掛け合いたいので相手先を教えていただきたいという内容。
富田 / どのようにして理財局とアポを取ったのか。
籠池 / 近畿財務局の担当者に談判した。
富田 / 連絡先を聞いて、ご自分でアポを取られた?
富田 / とりました。
富田 / 本省ではどんな話?
籠池 / 定期借地の契約の中身に日曜ゴミがあるとは書かれていなかった。契約違反で、賠償もんであるので、どのようにあうるか考えて欲しい。定期借地をしていた時なので、軽減するか他の措置が考えられないか。
富田 / 理財局どう回答した。
籠池 / 回答はなかった。陳情を聞いてもらっただけ。
富田 / 地元に戻って近畿財務局と交渉した?
籠池 / 代理人にまかせて近畿財務局と交渉してもらった。
富田 / 結果どうなった?
籠池 / 代理人が交渉した内容はわからない。物事については、結果としては1億3000万なにがしで土地購入をすると決まった。
富田 / 政治家の関与は?
籠池 / 国、行政の中でどのようなことがあったのかはわからない。究明して欲しいと申し上げた。
富田 / 民進・福山議員が「なぜいまになって公にしたのか」に対し、2月23日に総理が「しつこい」といった。国民に明らかにしたいということで間違いないか。
籠池 / 世論・マスコミは私が悪いように仕向けていた。そうじゃないのではと言う思いに至った。何かあるのであればきちっと究明しないと国民に申し訳ないと思った。
富田 / 3月10日、記者会見の中で「首相・夫人の口利きはしてもらってことない」などと言われた。2月以来そういうことがあって、総理が中継でしつこいといった。なぜこの会見の時に、100万円とか10万円とか事実を明らかにしなかったのか。
籠池 / 保守の考え方。天皇国日本という考え方できている。3月10日までの経緯を鳥瞰図的に見ていくと、どうもまずいのではと思った。支持していた保守の政党も、このままでいくと憲法改正でできないし、国民が騙されているのでは、騙されたのではないかと思った。
富田 / 質問を聞いて欲しい。3月10日に明らかにできたのに、16日に予算委員会が現地視察をしたときに100万円の話をした。その間に何があったのか。3月15日の仮差し押さえが決定した、森友学園の資産が仮差し押さえになった。自分だけが犠牲になったという思いから言われたのでは。
籠池 / 全く違う。昨日まで仮差し押さえはしらなかった。前日、大阪府の担当者と視察を受けて、抗すやの中を見てもらう。待っておったが、大阪府の担当者がススッと帰った。視察もなかった。変なこと、とんでもないことが起こっていると思った。次の日に認可新sねいを取り下げた。1日で、それまで一生懸命走ってきた。1日で結論を出さないといけなかった事情を考えていただきたい。
富田 / 義父。森友先生が保育園を設立されたが、寄付が集まらず借金をして措置費で埋めていた。寄付金を集めれば小学校はできるという源流があったのでは。
籠池 / 義父のことを言うのは国会議員としては失礼。
枝野幸男(民進)
枝野幸男(民進) / 谷サエコ秘書からFAXが来ていたという話。調べたが、経済産業省から内閣官房総務官室に出向。谷さんからのFAXを衆議院にも出してください。私もテレビ局が持っているものを確認した。財務省本省に問い合わせをしたという記述があるが間違いないか。
籠池 / 私も持っているが、「時間がかかり申し訳ありません。財務省本省に問い合わせ、国有財産審理室長から回答を得た。大変恐縮だが、国側の事情もあり、現状ではご希望に添えないが、引き続き見守ってまいりたい。本件は昭恵夫人にもすでに報告している」という内容。10年の定借の是非、50年定借への変更の可能性、土壌汚染や埋設物の撤去期間に関する資料の扱い、工事費の立て替え払いの予算化についても書いていただいている。「一般的には工事終了時に精算払いが基本であるが、森友学園と国交省航空局との調整にあたり、予算措置がつきしだい返金する旨の了解であったと承知している。平成27年度予算での措置ができなかった。平成28年度での予算措置を行う方向調整中」という内容いただいています。
枝野 / 今のFAXはH27年の11月?
籠池 / 11月15日です。
枝野 / いつの誰に対して籠池さんが問い合わせしたことへの答えなのか?
籠池 / 私が、安倍昭恵夫人に電話をして、海外出張中。すぐに地元秘書の谷さんに連絡をかけられて、急いでいるんでということで谷さんから連絡があったということです。
枝野 / 安倍昭恵さん→谷さんに振られて、回答があったということですか。
籠池 / おっしゃる通り。
枝野 / まさに安倍昭恵さんが、自分が頼まれたことについて、公務員にお願いをしている。安倍総理が従来発言していたことと違う。念のため、事実と違えば偽証罪に問われる。間違いないものか。
籠池 / 間違いありません。
枝野 / 谷さんを通じていつもやり取りしていたのか。
籠池 / 直接昭恵さんにご連絡もあったが、谷さんともご連絡していた。
枝野 / 土地の代金が8億円下がった話に行きたい。H28、昨年、3月ごろに深い所の大量のゴミが見つかったということで近畿財務局に報告している。籠池さんはどうやってその話を聞いたのか。
籠池 / 打ち合わせの定例会、工事業者から聞いた。
枝野 / 財務局には誰が?
籠池 / 既に工事業者と設計士が連絡していた。
枝野 / こんなものが出たから値下げしてくれという話になったのですね。
籠池 / 定期借地の状態。工事が遅れてしまうと思った。有害物質で1年開校が遅れていた。国に任せておくとまた1年かかる。定期借地料を安くしてもらおうかなと思ったが、我々で購入したほうがいいという考えに至った。
枝野 / 助言があった?
籠池 / 代理人、設計士、工事業者。
枝野 / サカイヤスオ弁護士か。
籠池 / そうです。
枝野 / いつから弁護士を?
籠池 / 3月の中旬、15〜16日ごろ。
枝野 / ゴミが見つかったのがきっかけ?
籠池 / それが一番。
枝野 / 土地の代金が8億円下がった話に行きたい。H28、昨年、3月ごろに深い所の大量のゴミが見つかったということで近畿財務局に報告している。籠池さんはどうやってその話を聞いたのか。
籠池 / 打ち合わせの定例会、工事業者から聞いた。
枝野 / 財務局には誰が?
籠池 / 既に工事業者と設計士が連絡していた。
枝野 / こんなものが出たから値下げしてくれという話になったのですね。
籠池 / 定期借地の状態。工事が遅れてしまうと思った。有害物質で1年開校が遅れていた。国に任せておくとまた1年かかる。定期借地料を安くしてもらおうかなと思ったが、我々で購入したほうがいいという考えに至った。
枝野 / 助言があった?
籠池 / 代理人、設計士、工事業者。
枝野 / 酒井康生弁護士か。
籠池 / そうです。
枝野 / いつから弁護士を?
籠池 / 3月の中旬、15〜16日ごろ。
枝野 / ゴミが見つかったのがきっかけ?
籠池 / それが一番。ゴミを掘り出したナカミチ組の紹介を受けた。11月で有害物質取っていたので、直接の関係はなかったが、我々の校舎の建築工事の入札にも参加していた。
枝野 / 値下げ交渉は酒井弁護士におまかせしていたという発言があった。本当にそうか。
籠池 / 建築が専門、私は素人なのでおまかせしていた。
枝野 / それまでは役所とのやり取りを自分でしていた?代理人のやり取りはこのときが初めてか?
籠池 / 学園の力だけでは難しくなり、優秀な方をと思った。
枝野 / 代理人がついていこう、交渉は?
籠池 / 財務局との話し合いには出席したこともあるが、その後は代理人が主導権を握っていた。
枝野 / どうして安くなったのか?弁護士から報告は?
籠池 / 地中に生活ゴミがあり、軟弱地盤もあったので、1億3000万になったと。国が決めることなので、私はそれで受けた。
枝野 / 下がった理由は、弁護士しか知らないということか。
籠池 / ゴミ、軟弱地盤という大雑把な意味合いはわかるが、具体的な数字はわかりかねる。
枝野 / 財務省は国有地の金額を非公表にしてほしいと森友側から話があったということがあったが。
籠池 / 電話で。よくわからないが、どちらでもいいなら非公表がいいかなあと。近畿財務局の担当者と、直接私に連絡があったので。一生懸命今までやってきました。2月に安倍首相がしつこい人だという発言があった。財務省が色々の資料を焼却したと聞いているが、そのあたりから変だなあ風向きが変わった。身を隠してほしいという話が弁護士からあったので、そのようにしていたところ、マスコミが出ても沈黙をしておりました。籠池の人間像も悪いやつだとレッテルが貼られる。大阪府も3月3、4日までは通しますよだったのが、難しいという方向になってきて、課長同席の視察の時に写真をかざしたとか、記者会見の中で出てくるという。公権力が私の学園、私に対して人権的な圧力をかけてきたと思った。これ以上やっていっているとトンデモナイことになるなと思った。弁護士から取り下げアドバイスいただいた。今から考えるとアドバイスはわれわれの立場にたってのアドバイスか公権力にそってのものか不明。
枝野 / 
籠池 / 私学審議会で答申が降りないということで。弁護士がやっていたので、ニュアンスつかみかねる。ご意見を聞いた。大阪府に対する賠償請求はしにくいし、土地も返すことになるし、建て潰してということになる。利益背反ではないかと思っている。
枝野 / 酒井弁護士はどういう理由でやめたのか。
籠池 / マスコミによく出るから、取材を受けすぎるからということであった。自分の書いている絵がかけないということだったと思う。
枝野 / 10日ぐらい隠れておけ、というのは言い分が食い違っている。佐川局長の下の島田さんから酒井弁護士を通じて、「隠れておけ」とあった。しかし境弁護士はそれはないと言っている。どちらなのか。弁護士は守秘義務がある、べらべらしゃべらないが。籠池さんから、外に向かって公表する承認はされたのか?
籠池 / 今は担当弁護士ではないので、聴いていただいたらいいのでは。
枝野 / 弁護士の守秘義務は思い。辞めた途端に別の事を言っている、どう思うのか?
枝野 / 国民が関心を持っている8億円の値引きは、酒井弁護士が知っている。酒井弁護士も参考人としてきちっと伺わないと。 委員長 / (理事会で協議します)
枝野 / 亡くなられたハタ府議にはどんなお願いを?
籠池 / 設置基準の時にはございません。大阪府議を降りて、在野の方になってから、私の思いをご相談申し上げた。平成24、3、そのぐらい、もっと前かな?はっきりとしません。
枝野 / 私学設置基準の緩和要望はH23。H24に緩和がされている。豊中市の土地は売りに出されたのはH25、その前か後か?
籠池 / 小学校作りたいとは話をしていた。具体的に動き出したのは豊中の土地が見つかって、定期借地をさせてもらった、その頃だったと思う。
枝野 / 何を期待し、お願いしたのか。
籠池 / 行政府の高級役人に対しての言葉がけ、同僚議員、大阪府の松井知事に対しての言葉がけ。
枝野 / 引退していたが、そんなに力があったのか。
籠池 / 維新の党ができたときの府議会議長。維新にとっての重要な方だった。
枝野 / どう動いてくれたのか?報告あったのか。
籠池 / 「こんなこと言うといたで」「素晴らしいことやから大いにやって」とか、精神的な力添えも。
枝野 / 大阪府の役人以外で「声をかけた」と言ってもらった記憶に残っていることは。
籠池 / 元自民の議員であった、維新の議員に声をかけたと聴いている。府議会議員。
枝野 / 東徹さん、維新の党の参院議員にはいつごろ、どういう話を。
籠池 / 元自民で維新の党に移って参院議員、私とは昵懇。規制緩和のときに話をした。
枝野 / 大阪府の設置基準ですね。土地の話は?
籠池 / そのへんはご相談しておりません。
枝野 / 100万円は、反対側の当事者に来てもらうしかないが、「人払いをして昭恵夫人と2人になった」という話、「席を外して」と言ったのは誰なのか。
籠池 / 昭恵夫人です。
枝野 / 「寄付のことは黙ってて」と昭恵夫人が言ったのか。
籠池 / 講演後、5分後か、お電話いただいてその旨を受けた。そういうことなんだろうなあと、内閣総理大臣のご主人からだと問題も多かろうなと推察した。
枝野 / 「講演料として渡そうとしたが、昭恵夫人が断って、それを寄付にした」と言っている評論家もいる。そういうことはないか。
籠池 / 事実は小説よりも奇なり。私の申し上げていることが正しい。
枝野 / 稲田大臣との関係。顧問契約は稲田さんの夫ということなのか?
籠池 / 私は詳しくないので、事務所と契約を結んでいたと認識。
枝野 / 夫婦2人揃ってか?
籠池 / 当初は稲田大臣と夫、もう一人の3人で対応してくれた。
枝野 / 弁護士事務所で、夫だけでなく稲田朋美弁護士ともお会いになっている?場所は法律事務所か。
籠池 / その通りです。
枝野 / 稲田さんの夫に、2016年1月に小学校の問題相談されたと、そんなことがあったのか。
籠池 / 近畿財務局の定期借地が終わり、土地改良費がなかなか帰ってこなかった。稲田夫の事務所で近畿財務局と会いました。
枝野 / その時は稲田夫だけか。
籠池 / そうです。
枝野 / 契約書が3つあるのはおかしなことだ。設計士の助言でということだが、誰か。
籠池 / 木原総合設計の設計士。マツモトさんだったと思いますが。
枝野 / なぜか?その時聴いていませんか。
籠池 / 刑事訴追おそれがあり、控えさせていただきます。
枝野 / 国会で出ていた法廷以外で、稲田大臣が代理人になった裁判はあったか。
籠池 / つかもと幼稚園の旧園舎の担保についての調停をしていただいた。
枝野 / 残念ながら、話が食い違っている。同じ条件で他の方にも伺ってやるのが我々の責任。
宮本岳志議員(共産)
宮本岳志(共産) / 時間が短いので、短く端的にお答え頂きたい。安倍昭恵さんが役所に名誉校長である旨を伝えたと、わが党の小池に午前中に答えましたが、相手方の表情は変化がありましたか?
籠池 / 普通でございました。
宮本 / (財務省の)国有財産審議室長という肩書きの方と会いましたか?
籠池 / はい、お会いました。
宮本 / 3月14日に値引きを申し出たということですが。
籠池 / 定期借地が年間2700万円でしたから、大量のゴミが出てきたわけで、これはかなり問題があるなと思いました。これは2700万円の半分くらいになるなと思っておりました。このまま定期借地をするのであれば、また一年間開校がずれると大変なことになると思うので、これは購入した方がいいと考えた次第です。
宮本 / このときから財務省が前向きだったと午前中にもおっしゃってました。これはどういう力が働いたと思いましたか?
籠池 / そのとき私は「神風が吹いたのかな」という風に思いました。何らかの見えない力が動いたのかなと思いました。
宮本 / 地中深くから出てきたと、売買の方向で動いたということは政治的な力かと。小学校の認可について聞きますが、鴻池氏などの参院議員の方の名前ばかりですが、衆院議員もいるのでは?
籠池 / そんなことはありません。
宮本 / 参院議員の北川イッセイさん、柳本卓治さんには何を伝えましたか?
籠池 / 当時の北川イッセイ国土副大臣には、「有害な土地があって私達が1億3000万円払って取り除きましたが、これは速くお金を返してください」と申し上げました。柳本先生につきましては、近畿財務局長に言葉がけをしてもらった。たしか財務局の対応の仕方が、非常に敏捷性がなかったので、速く物事を進めて欲しいと言いました。
宮本 / それぞれ財務局、航空局の職員の名前を覚えてますか?
籠池 / 近畿財務局がイケダさん、航空局のアンチさんです。
宮本 / それらの人と、会ったと?
籠池 / その部下の人のともどもに。
下地幹郎(維新)
下地幹郎(維新) / 松井知事と会ったことは。
籠池 / 私から直接はありません。
下地 / ハタ府議を通じてはどんな話を。
籠池 / 学校のこと話しとったでとか色々。
下地 / 大阪府の私学審議会では、何の働きかけも政治家からなかったと言っている。どう思うか。
籠池 / 今だから言えること。既に事務局である大阪府、松井一郎からの意向が私学審議会に圧力となってあったと私は認識している。
下地 / 圧力の具体的な内容は答えられるのか。
籠池 / 2月8日からのことがらで、国有地から私学審議会に話が移ってきた。行政の担当課が我々と話していることと、書類を出します「これでは審議会は通らないんじゃないか。土を出さないと」とか観測気球を上げていた。当然、現職の知事だから圧力になったのでは。
下地 / あなたが言っている取り消しの話ではなくて、条件付き認可の話。あったと言っているが、本当にあったのか?
籠池 / 政治的背景はあったと思う。
下地 / どういう認可が?具体的に。
籠池 / 当時の近畿財務局の土地を定期借地するという方向が進んでいた。その前に私学審議会の答申が出ないと、定期借地もできないと。近畿財務局から大阪府に問い合わせしたし、大阪府も財務局にしたと思う。色々なことが渦巻いて、大阪府の審議会に妥当という話になっていったんではなかろうかと思う。
下地 / あなたの話は全く意味不明だ。幼稚園をしている方でも小学校をできるということ。専門学校の話も。教育熱心な方に枠を広げた。3つの工事請負金額を出していたことがわかり、認可はできない。それを簡単に今のような発言をして、政治介入の具体的発言がないと、偽証になるし、政治的にも大きな発言。
籠池 / 本来、私学審議会は3月23、4日に開かれるもの。2月23日に開かれたのは臨時審議会。
下地 / 私はそういう話をしていない。
籠池 / 臨時審議会自身が本来あってはならないもの。なければスムーズに認可がいただけた。
下地 / 私学審議会がこういうふうな状況になって、4つの問題があって、精査してあなたに最終的な認可を与えるというのが大阪府の審議会の考え。それができない状況になっていることを、松井一郎は、はしごを外したのではない。外したのはあなた自身で、落ちたんですよ。安倍総理になっても、安倍晋三記念小学校という名前でお金を集めている。詐欺になりますよ。僅かな時間という答弁は偽証罪になりますよ。
籠池 / もう一度。
下地 / 5カ月とかいう僅かな期間、衆議院時代だけでなく総理になってからもその名前でお金を集めているんではないですか。修正した方がいいのではと言っている。
籠池 / 今のは質問でしょうか。
下地 / そうです。
籠池 / 安倍晋三記念小学院を起こそうと思っていた。認可申請はH25だったと思う。認可を出す前の段階で、安倍晋三からお断りいただいているので、その名前は使っておりません。
下地 / この事実がはっきりすれば、あなたの人生にとっていかに重いことになるかわかると思う。 
 
籠池理事長の証人喚問発言に「領収書もない。寄付はしていない」 3/23
 菅官房長官が否定
学校法人「森友学園」を巡る一連の問題について、籠池泰典理事長は3月23日の参院予算委員会の証人喚問で、安倍昭恵・首相夫人から「安倍首相から」と寄付金100万円を受け取った経緯を詳細に証言した。
菅義偉官房長官は23日午前の記者会見で、改めて微妙な言い回しで首相側からの寄付を否定し、昭恵氏や随行スタッフからの再調査も否定的な意向を示した。やりとりは以下の通り。
――籠池理事長が「昭恵夫人の寄付」に証人喚問で言及した
国会において証人喚問が続いておりますので、籠池理事長の発言一つ一つについて私がコメントすることは控えたいと思います。ただその上で、かねてより申し上げておりますように、総理は自分で寄付をしていない。昭恵夫人、事務所等、三者を通じて寄付をしていないということである。さらに昭恵夫人に確認を取ったところ、領収書等の記録もなく、昭恵夫人個人としても寄付は行っていないということであった。これはまったく変わっておりません。
――事実関係に食い違いも生じております。昭恵夫人が証人喚問の場で話す必要性は
国会で決めることだろうと思います。ただ、一般論で申し上げておりますけれども、法的に問題のない行為についての関係者の国会への招致は慎重であるべきだと、従来言っている通りであります。
――こうした国会の場で証言したということは、偽証と考えられるということでしょうか
まあ当然、昭恵夫人としては寄付を行っていないということであったという風に考えております。
――改めて昭恵夫人に調査や確認を行う考えは
そのつもりはありません。ないと言ってるわけですから。
――口止めとも取れるメールが届いたと。メールの公表については
籠池理事長の発言の一つ一つに私らがコメントは控えたいと思っておりますが、総理夫人と籠池夫人のメールについては、本日の証人喚問においても与党側から先方の了解を取った上で公表したい、このように申し出があったと承知しております。
――メールの中に口止めとも取れるものはあったのか
私が承知している限りではまったくない。このように思います。
――籠池氏と昭恵夫人の説明に食い違いが生じている。昭恵夫人と2人きりだったと主張しているが、西田議員は「随行スタッフも同席していた」と。随行者に確認は取ったのか
国会における証人喚問が続いている中で、一つ一つ政府からコメントすることは控えたいと思っています。
――100万円の寄付について随行者に退室の有無など確認したのか
当然、随行の方にも確認はしております。ただ今、国会で喚問中でありますので、これ以上のことは控えたいと思います。
 
忖度の語の一人歩き 3/29

 

事件を「官僚の忖度の物語」にする言説工作と陥穽
忖度という言葉が一人歩きして、森友学園の事件の認識を誤解に導いているように思えてならない。忖度という言葉の氾濫と馴れが、この事件の実像を歪め、われわれに真実ではない偽りの像を信じこませている。安倍晋三と親安倍のマスコミは、忖度という語を巧妙に操って問題を説明していて、そのことによって安倍晋三の関与や責任から世間の目を欺くことに成功している。忖度がキーワードになって事件の通念が形成されることで、疑獄の中心にいる安倍晋三の主体的契機が隠され、不正が曖昧にされ、何やら官僚たちが自然に動いて8億円の国有地値引きが実現したような構図にされている。この事件について忖度の言葉を使うのは危険だ。忖度の語の頻用と氾濫には注意を要する。まず、間違いのないように、忖度の語の定義を確認しよう。広辞苑には「他人の心中をおしはかること。推察」とある。果たして財務省の官僚は、安倍晋三の心中を推し量り、首相の安倍晋三が森友学園の開校を急いでいるに違いないから、その意に沿うよう行政を差配すべく、国有地の定期借地を認めたり、8億円の値引きによる売却を決定したのだろうか。この間の財務官僚の意思決定について、忖度による行為として理解するのが本当に正しいのだろうか。
この事件の真相の説明で、忖度という語が中心の柱に立ち、忖度があったという認識になってしまうと、安倍晋三と財務官僚とは意思が繋がらない別個の存在に切り離され、いわば共同正犯ではなくなってしまう。不正をはたらいた主体が官僚の側に移され、しかも、それが権力者の意向を慮(おもんばか)っての忠誠行為となり、ヒラメ官僚のサラリーマン行為の表象となる。犯罪性の要素が薄い性格のものへと後退してしまう。実際には、今回の官僚の行為は背任であり、ゴミの撤去費用なるものは悪質な偽計である。偽計によって国民の財産を不当に安く売り渡した犯罪だ。豊中市議の木村真と住民は、22日に背任容疑で近畿財務局を刑事告発したが、この告発状に書かれている事実認識こそが正しい。近畿財務局(財務省理財局)は背任を行っている。この背任の犯行過程を正確に追跡し、誰が何をしたか具体的に描画したとき、果たしてその関係と行為を忖度の語で言い表すのが適当だろうか。登場人物を絞り込めば、具体的には安倍晋三と迫田英典ということになる。迫田英典は、下僚として安倍晋三の意向を忖度して、安倍晋三から指示や介入を直接受けてないのに、よかれと思って安倍晋三のために動いたのだろうか。二人の間に阿吽の呼吸があり、以心伝心だったのだろうか。
そうではないはずだ。もう一度、2015年9月の首相動静に戻ってみよう。9月3日の午後2時17分から27分、官邸執務室で財務省の岡本薫明官房長、迫田英典理財局長と接見している。この時期は、安保法制が参院特別委で大詰めを迎え、情勢が緊迫して官邸周辺も慌ただしい環境だった。主計や主税の局長ではなく、閑職の理財局長がわざわざ多忙な官邸に呼ばれるのは珍しい。それと、首相動静を見てあらためて気づいたが、午後2時27分から午後3時までの約30分間が空白になっている。分刻みの日程表で接見を消化している安倍晋三が、この30分間、何をしていたのだろうか。おやつの休憩だろうか。推理するに、おそらく、この30分間は迫田英典と二人きりの密談をしていたのだ。その密談時間を、官邸の公式発表ではプライベートタイムと処理したのに違いない。つまり、午後2時17分から27分の間は、執務室で3人(安倍、岡本、迫田)が同席していたのである。要件は森友学園の国有地問題で、この場で翌9月4日の近畿理財局での会合の件も報告され、安倍晋三の指示や了承が出たのだろう。その行政上の意思決定とは別に、細部(りそなの21億円とか)について安倍晋三と迫田英典が密談をしているのである。官房長の岡本薫明に席を外させ、右翼で同郷の同士が詳細を詰めているのだ。
午後2時27分というのは、岡本薫明に席を外させた時刻であり、迫田英典と二人きりになった瞬間だろう。巧く首尾が運んだら国税庁長官にしてやるぞと、この場で昇格を約束してやったのかもしれない。いずれにせよ、9月3日に安倍晋三と迫田英典は面会しているのであり、首相と局長が官邸執務室の公務で面会しているということは、国務政策上の報告と指示が為されているということだ。その翌日、近畿財務局のビル9階会議室で、森友学園の工事を請け負った業者と、近畿財務局の統括管理官、大阪航空局調査係が会合を持っている。一連の動きが無関係であるはずがなく、報告と連絡が安倍晋三に上がっていないはずがない。最後に時価9億5600万円の土地が8億1900万円値引きされ、1億3400万円という破格の安値になったのも、架空のゴミ埋設費用の計上が誰の悪知恵かはともかく、安倍晋三に情報が入ってないわけがない。官僚の独断でこんな悪事はできないのであり、ここまで大胆な不正 - 背任罪、公用文書等毀棄罪 - を決行する忖度などできるはずがない。谷査恵子のFAX回答も同じで、官僚の公務として官邸(首席秘書官)の指示に従って動いているのであり、個人で勝手に何らかの忖度をして、ペットの犬のように昭恵に喜んでもらおうと先回りして、籠池泰典に便宜を図る口利きをしたわけではない。
26日に放送されたTBSの時事放談に出演した藤井裕久は、「忖度なんていい加減なことを財務省の官僚は絶対にしない」、「前例踏襲主義の官僚は忖度なんてしません」と言い、今回の事件を官僚の忖度で説明することは誤りだと指摘している。当を得た問題提起だろう。藤井裕久が言いたいのは、官僚は忖度する生きものではないということであり、忖度というような、その場の主観的な状況判断で意思決定はしないということである。官僚は指揮命令系統の中で動いていて、官僚の決定や裁量には必ず合法性の根拠がある。上の指示に従ってやりました、規則で決まっているからやりましたという、責任のエクスキューズが必ず担保されている。そうした合法性の裏づけのない行動はしない。今回の問題を「忖度の物語」にして世間に刷り込みをしているのは、他ならぬ安倍晋三自身であり、森友スキャンダルから安倍晋三を守ろうとする親安倍の論者たちである。今、世論はそのトラップに引っ掛かって、半ば騙されかけている状況にある。だが、それに手を貸しているのは、「忖度があったんじゃないですか」と国会で質問している野党議員であり、無自覚なまま「忖度があったに違いない」と言っている反安倍のマスコミに他ならない。忖度の語を氾濫させ、忖度の有無を焦点にすることは、安倍晋三を追及することでも何でもなく、逆に免責してやっているのと同じだ。安倍晋三と官邸の思うツボである。
迫田英典は忖度などしていない。空気を読んで安倍晋三のために奉仕したわけではない。この問題で忖度という語を無闇にキーワードにする態度をしてはいけないし、忖度という言葉に安易に引き摺られて真相を見失ってはいけない。忖度で不正が動いたのではない。政府の指揮命令系統の中で、関係者によって意図的に不正(犯罪)が行われている。
 
安倍首相「忖度ジョーク」余裕の表れ 4/26

 

「私が申し上げたことを忖度(そんたく)していただきたい」。森友学園疑惑で安倍晋三首相や妻昭恵氏への「忖度」の有無が焦点となる中、首相がこのキーワードをジョークに使った。いくら何だって、冗談が過ぎやしませんか。
首相のジョーク……「逃げ切れる」と判断か
問題のジョークは4月17日夜、東京・銀座にオープンした商業施設「GINZA SIX」の式典あいさつで飛び出した。売り場に並ぶ各地の名産品について、原稿を読み上げる安倍首相は「おやつには北海道が誇る『白い恋人』、仙台銘菓の『萩の月』が買える、食べられる」などと紹介した上で「(この)原稿には残念ながら山口県の物産等々が書いてありませんが、おそらく(店頭には)あるんだろうと思います。よく私が申し上げたことを忖度していただきたいと、こう思うわけであります」。
ここで安倍首相、にっこり笑顔。会場は笑いと拍手に包まれた。当然、野党は反発した。「問題が終わったと勘違いしている」と。
郷土愛はわかるにしても、「忖度」の有無が国会で問題にされている今、なぜあえて「忖度していただきたい」などという不用意で危ういジョークを口にできてしまうのか。もしや、やけっぱちで「笑い」を取りに行ったとか?
「それはない。むしろ、安倍首相の余裕の表れと見るべきでしょう」と解説するのは、政治ジャーナリストの鈴木哲夫さんだ。「森友学園問題について、ここまで来ればもう逃げ切れる、と踏んだから、ああいう冗談も許されると考えたのでしょう」
それには、二つの背景があるという。
一つは、森友学園問題が長期化し、国民の関心が薄れていること。「『関係していたとなれば、首相も国会議員も辞める』などという自分の軽率な答弁のせいで、一時期、相当に追い詰められていました」。確かに、3月の国会では野党の追及に「忖度はない」と気色ばむ場面が何度かあった。「だが、疑惑を追及し切れない野党の体たらくに加え、国民の批判も山を越し、あとは『時間切れによる沈静化』を待つばかり……そんな余裕が今回の冗談、いや、失言につながった」と指摘する。
もう一つ、鈴木さんが挙げるのは、外交シーンでの自信だ。
「長期政権となった今、安倍首相は外交でも自信をつけている。G7(主要7カ国)各国リーダーの中でも古参となり、毎月外遊するなど『今こそ私の出番』と考えている。そんな高揚感ゆえに、まだカタの付いていない森友問題ですら冗談にできたのでしょう」とも。
安倍首相がジョークに使った「忖度」という言葉、森友学園問題で一気に世の中に広まった感がある。今や「流行語大賞」の最有力候補かも。
元々の意味は「相手の心を推し量る」
でもそもそも、「忖度」ってどういう意味なのか。日本語学者で「三省堂国語辞典」編集委員の飯間浩明さんによると、「忖度」は元々は中国の詩経にも登場するぐらい古くからある表現だという。
「りっしんべんの『忖』は『推し量る』意味、『度』にも『はかる』という意味があり、『忖度』は相手の心を推し量る、という意味です」。つまり元々は、相手の心を思いやる、推察する、といった意味で、「上役や権力者の意を体して動く」という批判的な意味はなかったのだ。
気になって、毎日新聞の過去記事を調べてみた。
1990年代に「忖度」という言葉が多く使われたのは、脳死や臓器移植問題の記事の中でだった。「家族が患者本人の生前の意思を忖度し、臓器提供を承諾できるかどうか」といった具合で、つまり、本来通りの意味で使われている。
権力者におもねるニュアンスが初めて登場するのは、97年夏の政治部記者による記事。<若手(小沢チルドレン)が党首(小沢一郎・現自由党共同代表)の意向を忖度して……>とある。
そんな話を飯間さんにすると、自身の記録も調べてくれた。辞書編さんに携わる飯間さんは、普段から気になる言葉の用例を集めている。出典や日付を記録し、パソコンに保存する。これを辞書編さんの世界では「用例採集」と呼ぶのだそうだ。
「忖度」が「上役などの意向を推し量る」というニュアンスで使われているのを、飯間さんが初めて用例採集したのは2006年12月15日付の朝日新聞社説だ。
<「消費税の引き上げは避けられないが、いまは国民を刺激したくない。しかし、ほおかむりも無責任」。そんな首相の思いを忖度したような党税調>
その後、NHK会長職に籾井勝人氏が就任した14年以降、籾井前会長の意向を職員が「忖度」するのではないか……というような内容の報道記事をよく目にするようになったという。
飯間さんは言う。「言葉は使われる中で、人の手あかがつき、否定的な意味が強まるものもある。それは自然なことです」
「sontaku」と報じたFT紙
なるほど、それで思いついた言葉がある。
「粛々」だ。
2年前、菅義偉官房長官は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設作業を「粛々と進める」と繰り返し述べてきたことについて、今後は「粛々」を使わないようにする、と語った。これは当時、翁長雄志(おなが・たけし)県知事からその表現を「上から目線」と批判されたためだ。ところが手元の大辞林を確認すると<しずかなさま/おごそかなさま>といった意味しか載っていない。
飯間さんによると「『粛々』は元々、江戸時代の漢詩『鞭声粛々夜河(べんせいしゅくしゅくよるかわ)を渡る』に登場するように、物静かな、おごそかな様子を意味していました。ところが『何が起こっても、予定通り着実に行う様子』という意味で使われることが増えたため、三省堂国語辞典には新たな説明を既に加えています」。なるほど。
では、外国ではこの「忖度」、どう報じられたのか。森友学園の籠池泰典前理事長の国会での証人喚問に続いて3月23日、日本外国特派員協会(東京都千代田区)で開かれた記者会見でも、「忖度」という言葉に特派員たちは注目した。
籠池氏が国会で「大きな力が働いた」「神風が吹いた」などと表現した点について、「意味がわかりにくい」と外国人記者から質問が出た。籠池氏はこの時、「安倍首相または夫人の意思を忖度して動いたのではないかと思っています」と答えたのだ。
さて、英語でどう訳すか。
surmise(推測する)か?
read between the lines(行間を読む)か?
ぴたりとくる英単語がない。
英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は結局、「sontaku」という表記のまま、この言葉が森友学園問題だけでなく東芝の経営危機の背景も説明できるキーワードとして紹介。ウェブ上の記事で数えてみたら、記事1本に「sontaku」の文字が13回も登場していた。
飯間さんは言う。「実は、日本語に関してもそうなんです。上司や権力者に対して『おもねる』『へつらう』などの言葉はあっても、そういう姿勢で上司や権力者の意向を推し量る、という意味を示すピッタリの言葉は、日本語にもありませんでした。だから『忖度』がそういったニュアンスで使われたとも考えられます」
振り仮名なしで読めるようになったけれど……
言葉が変わる時、それは社会を映すということか。
もっとも、政治の世界では「権力におもねる」ニュアンスの「忖度」はそれほど特別な言葉ではなかったようだ。
前出の鈴木さんは「永田町では以前から『忖度』という言葉や考え方が普通に存在していたように思いますよ」と証言する。「日常的な言葉というよりは、むしろ隠語。本来は『相手の気持ちを推し量る』という日本的な美しい思いやりの意味でしょうが、親分子分の情がことさら大事にされる政界では、子分が汚れ役を買って出たり、親分が泣いて子分の首を切ったり、そういう場面でよく使われてきたのです」
今回は、永田町の隠語のニュアンスが社会にも広まった、とも言えるのだろう。
言葉は社会を映す鏡。権力者の意向をおもんぱかる空気が社会に広がっているから、「忖度」の新しい使われ方がジワジワと広がっているのかも。
<忖度を振り仮名なしで読めるよに>(藤岡・雨恋子)
これ、4月12日付の毎日新聞朝刊「万能川柳」に掲載された投稿作品だ。
「忖度」という漢字を読める人が増えるのは良いことだろうけれど、権力におもねる行為や、おもねらせる行為までが社会に広がっては、それこそ冗談にならない。
鈴木さんは今回の安倍首相のジョークをこう批判する。
「忖度、つまり相手の意向を推し量る行為は、権力関係や場面によっては大きな問題を生む。その典型例が今回の森友学園問題です。それなのに『忖度していただきたい』と、忖度を強いるような表現は、たとえ冗談だとしても度を越している。この本質は、安倍首相の言葉に対する警戒感のなさ、言葉の重みに対する無理解の表れです」 
 
「忖度の連鎖」が蔓延する安倍政権下の日本 4/26

 

日常生活ではあまり使われることがなかった言葉「忖度(そんたく)」が、森友学園問題が起きて以来、ちょっとした流行語となっている。経営コンサルタントの大前研一氏が、政治や行政の世界に「忖度」が蔓延し、連鎖していることが日本の文化とは本来、合っていないことを解説する。

森友学園問題の発覚以降、今年の流行語になった「忖度(そんたく)」。それは単に一学校法人の問題にとどまらず、「安倍一強」体制が長期化して政権の“暗黙の圧力”が強まる中で役人や議員たちの間に蔓延した弊害にほかならない。
一例は「教育勅語」を学校で教材として用いることの是非をめぐる議論だ。松野博一文部科学相は4月4日の記者会見で「どの教材を使ってどう教えるかは、憲法などに反しない限りは一義的には教員、学校長に権限があり、問題があれば所轄庁、所管庁が適切に指導すると考えている」と述べた。これでは結局、教育現場が政府の意向を忖度して判断することになる。
もともと安倍晋三首相は「教育勅語」について、官房長官時代の答弁で「大変すばらしい理念が書いてある」と評価しているのだから、周囲はその復活が首相の本意だと忖度するだろう。
新たに始まる「道徳の教科化」でも、安倍政権の意向を色濃く反映する状況になっている。たとえば、文科省の教科書検定で小学校1年の道徳の教科書では「パン屋」が「和菓子屋」に、「アスレチック公園」が「和楽器店」に差し替えられた。
これに対して全国のパン屋が猛反発するなど批判が相次ぎ、文科省側は「パン屋が悪いわけではない」「個別の記述の変更はあくまでも教科書会社の判断」と説明したと報じられている。
要は、文科省が学習指導要領の「我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着を持つ」という項目に照らして教科書全体が不適切と指摘し、教科書会社が不適切と思われる個所を自主的な判断で修正したわけだが、具体的な修正個所を明示されなければ、教科書会社はその意図を忖度するしかない。文科省は安倍政権の意向を忖度して検定意見を付け、教科書会社はそれを忖度して修正する──。いわば“忖度の連鎖”である。
小中学校の学習指導要領の改定をめぐるドタバタ劇も同様だ。当初、「聖徳太子」は中学校で「厩戸王(聖徳太子)」の表記に変更された。歴史学では「厩戸王」が一般的で「聖徳太子」は没後の称号だから、という理屈だが、それなら歴代天皇はすべて生前の正式な呼称にしなければならなくなる。
また「鎖国」は「江戸幕府の対外政策」に変更されたが、こちらは江戸時代も外国との交流を断絶したわけではなく長崎や対馬などで貿易を続けていたから、という理由だった。だが「対外政策」だけでは海外交流や渡航を制限されていた当時の事情が全く伝わらない。
結局、この二つの改定案は反対意見が多かったため元に戻されたが、今回の学習指導要領改定についても、その経緯や責任の所在などは不明である。そのため、ここでも役人の間で様々な「忖度」が働いたのではないかと疑わざるを得ない。
こうした忖度が蔓延するのは、前述した“暗黙の圧力”があるからだ。それは、思っていることを口に出さずに裏で根回しする、いわゆる「腹芸」を得意とする安倍政権の政治手法と無縁ではないだろう。  
 
「忖度」政権の息の根を止める山口記者暴行隠ぺい疑惑 5/30

 

私は毎朝午前4時ごろに起きてテレビの早朝ニュースを見るのだが、今朝の日本テレビを見て、腰を抜かさんばかりに驚いた。
田崎史郎と並んで、いまや安倍首相の御用ジャーナリストの双璧である、あの山口敬之の暴行疑惑の犠牲者の女性(詩織さん)が、きのう5月29日、都内で記者会見を開き、暴行容疑が不起訴になった事を不服として東京検察審査会に不服を申し立てたというのだ。
私が驚いたのは、犠牲者が記者会見を開いたという事実もさることながら、それを報じた日本テレビと、その報道ぶりだ。
事の経緯を詳細に報じ、山口氏と詩織さんのメールのやりとりまで映像で流し、そして、いったんは逮捕直前まで行ったのに、警察・検察の上層部の判断で握りつぶされたと言わんばかりの報道をした。
まさに安倍首相の意向を「忖度して」、黒を白にしたと言わんばかりの報道だった。
森友疑惑で表面化した忖度政治による行政のゆがみが、加計疑惑でさらに深まった。
そんな中で暴行事件まで安倍首相の圧力で歪められたとしたら、もう安倍 「忖度」政権は持たない。
全ての女性を敵に回す事になるからだ。
山口記者暴行事件隠ぺい疑惑に火がつけば、こんどこそ安倍暴政は終わる。
そして今朝の日本テレビが既に火をつけてしまった。
他のメディアがいくら忖度して流さない、書かない、としても、もう手遅れだ。
山口記者暴行事件疑惑は、加計疑惑さえ吹っ飛ばす一大スキャンダルになるだろう。
 
忖度で片づけるのか 森友・加計疑獄の“主犯”は安倍夫妻 6/3

 

戦い続けるしかないと腹をくくったのだろう。安倍首相の「腹心の友」、加計孝太郎氏が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)が愛媛・今治市で進めている獣医学部新設をめぐる疑惑が底ナシになってきた。
コトの経緯のすべてを知る前川喜平前文科次官は、文科省に獣医学部の設置認可を求めて“圧力”をかけていた人物を次々と暴露。次官当時、和泉洋人首相補佐官が〈総理は自分の口から言えないから、私が代わって言う〉と発言していたことや、加計学園理事で内閣官房参与だった木曽功氏が面会時に〈獣医学部を設置する件について、早く進めてほしいのでよろしく〉と迫っていたことを明らかにした。
木曽氏は前川氏の3年先輩の文科省OBで、昨年4月から加計系列の千葉科学大学長も務めている。つまり、ガチガチの利害関係者の身でありながら、OBという立場を利用して事務次官に接触し、先輩風を吹かせながら「よろしくね」と便宜を図るよう求めていたわけだ。露骨な口利きであって、ゼネコンに天下りした国交省OBが後輩に入札情報の漏洩を迫る姿と何ら変わらない。
木曽氏は「圧力をかけるようなことはしていない」と釈明しているが、面会後も、前川氏に2〜3回にわたって獣医学部の検討状況を確認し、〈文科省は国家戦略特区諮問会議が決定することに従えばよい〉とも言い放っていたという。これが圧力じゃなくて、一体何だと言うのか。しかも、木曽氏は朝日新聞の取材に対し、獣医学部新設をめぐる内閣府や文科省の動きについて「巨大な忖度の塊だと思う」と語ったというが、バカも休み休み言ってほしい。
「霞が関官僚は忖度などしません。勝手に判断して問題になれば自分のクビが飛ぶだけですからね。行動する際には、必ず明確な指示が出ているはずで、獣医学部の件も、首相サイドから何らかの命令があって動いていたのは間違いないと思います」(内閣府担当記者)
つまり、木曽氏の「巨大な忖度」発言の真意は、この「呪文」を唱えている限り、問題が大きくなっても安倍首相や官邸には責任が及ばないと思っているのだろう。この期に及んでもごまかし続けているわけだ。だが、加計問題は、親友を厚遇し、国政を私物化した疑獄で罷免された韓国の朴槿恵前大統領のケース以上に悪質なのだ。
獣医学部用地として37億円もの市有地をタダで手に入れ、最大96億円の施設整備費も県・市に負担してもらう――。私立学校が経営費用の一部を地方自治体の税金で肩代わりしてもらうのと同じ。私企業に対する巨額の「利益供与」である。
その加計学園の獣医学部新設にGOサインを出したのは、安倍首相が議長を務める国家戦略特区諮問会議だ。〈広域的に獣医師を養成する大学の存在しない地域に限り、獣医学部の設置を可能〉と条件を意図的に狭め、加計に決まるように巧みに“誘導”した。そのウラでは、新設に難色を示す文科省に対し、アベ様のポチと化した腐敗官僚・OBが〈総理のご意向〉という印籠をチラつかせ、陰に陽にプレッシャーをかけていたのである。
安倍首相の妻・昭恵氏が名誉校長に就いていた大阪市の学校法人「森友学園」に8億円も値引きした国有地の売買契約が結ばれていた問題の疑惑も根っこは同じ。これを総理夫妻による「国政の私物化」「行政のねじ曲げ」と言わずに何と言うのか。「忖度」なんて言葉で問題の本質をスリ替え、片付けていいわけがない。元外交官の天木直人氏はこう言う。
「森友、加計問題はそろって国家犯罪と言っていい。忖度の話ではなく、首相による国家権力の乱用なのです。昭恵氏、総理夫人付、前川氏、木曽氏など、すべての関係者を証人喚問するべきであり、今のままだと真相は闇のまま。野党はすべての国会審議を拒否して徹底解明するべきです」
「(次官の時に)なんで反対しなかったか、不思議でしょうがない」
1日に出演したニッポン放送の番組収録で、前川前次官をこうコキ下ろした安倍首相。総理大臣がメディアで個人を名指しして“口撃”するのは正気の沙汰とは思えないが、安倍首相の言う通り、仮に前川氏が現職時に反旗を翻していたら、それこそ人格攻撃どころじゃ済まなかっただろう。安倍政権の対韓外交を私的会合で批判し、更迭された森本康敬釜山総領事の人事がいい例だ。
公的な場で批判したのであればともかく、私的会合の発言ですら、政権批判すればクビが飛ぶ。今回の人事は「前川の乱」をこれ以上、霞が関官僚に拡大させない――という官邸の強い姿勢がうかがえる。「官僚はいつも監視している」という政権の“脅し”のメッセージなのだろうが、日本はいつの間に旧ソ連や旧東ドイツのようなスパイ国家になったのか。歯向かう官僚は国家権力を総動員して潰しにかかる一方、安倍首相のお友達は厚遇する。歴代政権の中で、これほど敵、味方を区別する政権はなかった。
安倍首相と近しい関係といわれる元TBSワシントン支局長の山口敬之氏に「レイプされた」と会見で訴えた詩織さんの「準強姦事件」も“本質”は同じ。事件を握り潰したと報じられたのは、菅官房長官の秘書官だった警視庁の中村格刑事部長(当時)。現在は共謀罪を担当することになる警察庁組織犯罪対策部長だ。犯罪を平気でもみ消す、と批判されている人権軽視の警察官僚が、犯罪を恣意的につくり出しかねないと懸念されている悪法の責任者に就いているなんて、これぞ悪夢だ。
20世紀初頭のドイツの社会学者マックス・ウェーバーは、安倍首相の大嫌いな中国を「家産制国家」と称していた。「家」は王朝、「産」は土地や人民を表し、当時の中国は歴代王朝(皇帝)という個人がすべてを支配していると指摘したのだが、政治の私物化が目に余る安倍首相の姿は「家産制国家」を目指しているとしか思えない。このままだと、政権が発表した内容以外はすべて「怪文書」扱いで、少しでも政権批判すれば官僚は更迭、市民は共謀罪で逮捕――なんて世の中が現実になるのだ。安倍首相のご機嫌うかがいに奔走する腐敗官僚が増え、「忖度」なんて言葉でごまかすデタラメ政治がさらに横行するだろう。
政治評論家の森田実氏がこう言う。
「森友、加計、準強姦事件の3つは、どれも安倍政権の問題に直結する重大犯罪です。忖度という言葉遊びで逃さないためにも、野党は一丸となって徹底追及するべき。国民も安倍夫妻による暴政を許してはならないと声を上げる必要があります」
諸悪の根源である“主犯”は目の前にいるのだ。
 
菅官房長官会見 6/8

 

菅長官と応酬・・・再調査は? 加計学園問題 6/8
8日、菅官房長官の記者会見で激しい応酬がありました。そのワケは、加計学園による獣医学部の新設計画をめぐって民進党などが公表した文書。文書の信ぴょう性が高まる中、果たして再調査は行われないのでしょうか。
「的確な回答を頂いていないのですが」(記者)
「今、私が申し上げたとおりです」(菅長官)
記者との激しいやり取りが展開されました。焦点となったのは、「官邸の最高レベルが言っている」などと記された文書。文部科学省の現役職員はJNNの取材に対し、文書が複数の職員にメールで送られ、共有されていたことを認めています。同様の証言は、ほかのメディアも報じています。
会見で、メディアが報じた職員の証言はうそだと思うか?と問われた菅長官は・・・
「全てうそだと、信用できないと思う?」(記者)
「私はうそだとは言っていません。文科省において検討した結果、出所や入手経緯が明らかにされていない文書については、その存否や内容などの確認の調査を行う必要がない」(菅長官)
加計学園の獣医学部新設をめぐって、民進党などが公表した文書。その信ぴょう性は日を追うごとに高まっています。
「受け取った文書に間違いありません」(前川喜平文科省前事務次官 先月25日)
「(メールと)同姓同名の職員は実際におります」(文科省の担当者 今月5日)
それでも菅長官は・・・
「情報源が匿名だと信ぴょう性がないと?」(記者)
「いや、(文書の)存否や内容など確認を・・・必要ないと判断した」(菅長官)
「判断した理由を教えてほしい」(記者)
「いや・・・」(菅長官)
再調査の必要はないと繰り返し述べました。与党内からは・・・
「なぜ怪文書みたいなのか、なぜ再調査しなくてもいいのか、ここは官房長官の口から、国民にわかるように説明することが望ましい」(公明党 漆原良夫中央幹事会会長)
8日はテロ等準備罪を新設する法案の審議も再開されました。野党4党は党首会談を開き、内閣不信任案の提出も視野に協力することで一致。
「加計学園に対する政府の姿勢を見ても不信任に値する」(民進党 蓮舫代表)
国会の会期末は10日後に迫っていますが、国民が納得しての閉会となるのでしょうか。  
菅官房長官を追及した東京新聞記者
5日の衆院決算行政監視委員会で、またも菅義偉官房長官が“前川攻撃”を繰り広げた。今度は「天下りを隠蔽していた責任者」「自らの進退は示さなかった」「世論が厳しい状況になってはじめて自ら辞めた」「今年3月末の定年まで、事務次官を続けたいと打診があり、私はそんなことは駄目だと(言った)」などと国会で一方的に述べ、暗に“役職にしがみついた卑しい人物”を印象付けたのだ。
これに対して前川氏は「次官を続けたいと申したことはありません」と完全否定したのはもちろん、辞職申し出が天下り問題が初めて報道されたのより2週間も早かったこと、3月は国会会期中であり次官が国会会期中の交代を想定することはそもそもあり得ないことなど、具体的な根拠と日付を示して、完膚なきまでに反論。スガ語で「ご指摘は当たりません」と締め括った。
まさしく、菅官房長官の謀略デマ情報を使った印象操作の手口が明らかになったかたちだが、しかし、毅然と反論した前川前次官の気骨ある対応と対照的に、だらしないのがマスコミだ。
とくに官邸記者クラブに属する新聞・テレビはこの官房長官にはまったく逆らえず、会見でも、例のスガ語で「批判には当たらない」「まったく問題ない」と返されると、そのまま沈黙。デタラメな言い分をただ垂れ流すということを繰り返している。
だが、昨日午前の定例記者会見で、1人の記者がその菅官房長官に屈することなく、徹底追及を試みた。その記者とは、東京新聞社会部で、権力の不正に対して鋭い調査報道に取り組み、『武器輸出と日本企業』(角川書店)の著者としても知られる望月衣塑子氏だ。
望月記者は、前川前次官に対する人格攻撃、国家戦略特区による加計学園獣医学部新設のプロセスの矛盾、、政権の説明不足、さらには山口敬之氏のレイプ事件捜査問題までを俎上にあげ、菅官房長官が木で鼻をくくったような返答をしても、まったく怯むことなく、手を変え品を変え質問を続けたのだ。
ところが、このやりとりを御用新聞の産経新聞が、山口氏のレイプ事件ツブシの部分だけを削除するかたちで報道。ネトウヨやネトサポたちが中心になって、望月記者を攻撃し始めた。望月記者の追及を「執拗な嫌がらせ質問」「失礼だ」などと罵り、途中、「菅官房長官自身が直接、バーに行って話を聞くつもりはないか」と質問したことをあげつらって、「この女記者、頭がおかしい」「マスゴミ女のキチガイ率は異常」「こんなバカの対応とか、菅さんが可哀想すぎるわ」「さすがは国賊・頭狂新聞の記者だわ」などとわめき立てているのだ。
しかし、望月記者の追及は記者として当然の行為だし、その質問におかしいところは何もない。異常でおかしいことを言っているのはいったいどっちなのか。改めて、菅官房長官と望月記者のやりとりを紹介しよう。
東京新聞・望月記者が菅に前川前次官、加計問題を徹底追及
望月記者がまず追及したのは、まさに冒頭で紹介した、前川前次官に完膚なきまでに反論された菅官房長官のインチキ答弁についてだった。
この会見で、菅官房長官はあいかわらず、前川氏からの反論について「報道で見たのみで、詳細は承知しておりません。いずれにしろ、辞任の経緯について私の承知する事実に基づいて発言した」などといつものパターンで返し、ほとんどの記者たちもいつものようにそれでスルーしようとしていた。
そんななか、望月記者は辞任の経緯について、前川氏の話と菅官房長官、杉田和博官房副長官の話が「かなり食い違っている」と指摘。「松野大臣含めてきちんと確認していただきたいと思うんですが」と問いただした。
菅官房長官は「私は自らの承知している事実に基づいて発言している。それ以上でもそれ以下でもない」と、同じ返答を繰り返すだけだったが、望月記者は、「その事実というのはあくまでも副長官のお話を聞いたなかでのご判断ということですか」と食い下がる。すると、菅官房長官は「副長官以外にもあります」と返したが、具体的にどういう根拠なのかを説明することはできなかった。
このあと読売新聞の記者が質問をして別の話題にそらしたが、望月記者は再度、質問。今度は、官邸の圧力を明らかにした文科省内の文書やメールを公開しようとしないことを問題にした。
「行政文書の管理扱いを決めている公文書管理法には、意思決定に至る過程を検証できるよう文書を作成しなければならないと記載がなされている」とし、「民進党が指摘している文書やメールの写しが本物であれば、公開が必要な行政文書になる可能性がありますが、現状でも、もう一度調査して公開するお考えはありませんか」と迫ったのだ。
「文科省は確認できないと言ってるから、それまで」とする菅官房長官の主張はあまりに杜撰であり、これは当然の質問だが、菅官房長官はやはり相変わらず「文科省で大臣の下で決定をしているから、それが当然」「確認の調査を行う必要はない、そういう判断をした」と繰り返すだけ。質問にあった公文書管理法の問題などまるで取り合わない。だが、望月記者も引き下がらない。
「入手経路がはっきりしないものはいずれも調べられないということですと、いまNHKさんも報道されましたし、民進党も出したような匿名での告発の内容や告発文書がうやむやなままに闇に葬られてしまうようにも見えてしまいます。20日と21日の共同通信の調査では国民の77%が文書の開示と政府の対応について納得していないというふうに意見をされております。このアンケート調査の結果も含めて、もう少し開かれた対応をしていただきたいと感じておりますが」
まさに国民が抱いている不信感を代弁したこの質問に、菅官房長官はそれでも「委員会でも文科大臣は丁寧に説明している」と回答になっていない回答を言い張っていたが、このあたりになると、明らかにウソを強弁するしかなくなっているというのが誰の目にもありありになっていた。
さらに、菅官房長官を動揺させたのは、望月記者の次の質問だった。
「審議会の人事に関しても官房長官等が政権を批判するような記事や投稿をされているものについては、それを見せながら人事を差し替えるように要望されることもあるというふうにお聞きしました」
「自分が出会い系バーに行く」話は先に菅長官がオフレコで話していた
審議会の人事にも官邸が介入している──。このことを追及されると、菅官房長官は食い気味に「100%ないです」「そんな簡単なものじゃない」と怒気を含んだ声で返した。
それでも望月記者は怯まない。つづいて質問したのは山口敬之氏の準強姦罪の問題。しかも「当時の刑事部長の中村(格)さんが電話をして執行を取りやめたという話が出ております。このことについて、菅官房長官は事前にお話等は訊いていますか」とぶち込んだのだ。
ここで菅官房長官はイライラを隠さなくなり、「まったく承知してない」とシャットアウト。しかし、そのあとも、望月記者は「京都産業大学ではなくなぜ加計学園だったのか」「閣議決定時に示された4条件をクリアしているようには思えない。なぜ4条件を無視したのか」と加計学園問題の焦点を質問し続けた。
正直、菅官房長官の会見で新聞記者がここまで徹底的に追及し、食い下がったケースはほとんど見たことがない。もちろん、菅は結局、「問題ない」「必要ない」という姿勢を崩さなかったし、なにか新事実が出てきたわけでもない。しかし、記者が執拗に食い下がった結果、菅が明らかにウソを強弁しているだけだというのがどんどん明らかになり、その模様が今日のワイドショーなどでも取り上げられた。そういう意味では、望月氏は権力のチェックをするという新聞記者としての責務を十分果たしたといえるし、その姿勢はよくやったと褒めるべきものだろう。
これは、もちろん、ネトウヨたちが「キチガイ」「頭おかしい」「失礼」などとヒステリーを起こしている「菅官房長官がバーに行くつもりはないか」という質問についても同様だ。
望月記者は、前川氏がバーに通っていたのは「いまの制度からはぐれている、教育が十分に受けられない女性たちの話」を聞きに行くのが目的だったと主張していること、実際にボランティアなども行っていることなどを紹介し、「こういう姿勢はある意味、行政のトップの方がやることで非常にすごく大きな影響を与えるんじゃないか」と指摘。そして、「たとえば菅官房長官がこういうバーに行って、バーに通う女の子たちからその背景事情、教育の実態を聞くといった対応を逆に考えることはないか」と質問したのだが、これのどこがおかしいのか。
ああいう木で鼻をくくったような回答しかしない取材相手に対して、いろんな角度から質問をし、時に挑発的なことを聞いてみるというのは、ジャーナリストの基本だろう。しかも、あの質問は、現場も見ないまま公安からの情報だけで謀略情報を流し、「買春目的」と決めつけて前川氏を攻撃する菅官房長官、教育格差の実態を一顧だにせず、新自由主義的な教育政策と自分のお仲間への利益誘導を図る安倍政権への批判の意味が込められたものだ。
しかも、「失礼」どころか、菅自身が先にオフレコ会見でこんな前川攻撃を口にしていたのだ。
「(前川発言が世間に受け入れられるのであれば)私も出会い系バーに『実地視察調査』に行っていいことになるね」(「週刊新潮」6月8日号より)
望月記者はおそらく、この発言を念頭に、オンレコの会見でも同じような発言を引き出そうとしたのだろう。
いずれにしても、おかしくて異常で失礼なのは、望月記者でなく、明らかに菅官房長官のほうなのだ。これだけの証拠が出揃って、文科部官僚のトップまでが認めている重大疑惑を「問題ない」の一言で済ませ、きちんと国民に説明しようとしない。こんな官房長官がかつていたか。
政権の報復と炎上に怯えて厳しい質問をしなくなった記者たち
いや、おかしいのは菅官房長官だけではない。その菅のデタラメ強弁に何も言い返さず、嘘の言い分をそのまま垂れ流しているマスコミも同じだ。実際、この会見でも、望月記者以外に加計問題に強く切り込んだのは、菅官房長官の“出会い系バー通い”攻撃に、「前川さんが(出会い系バーに)行っているかどうかということと加計学園の文書は全然関係がない」と反論したジャパンタイムズの吉田玲滋記者だけだった。他の記者たちは、望月記者の奮闘をそのまま黙って見ているだけで、援護射撃になるような質問ひとつしなかった。
おそらく、彼らは首相や官房長官などに厳しい質問をすることで、政権に睨まれたり、ネトウヨに攻撃をされることが怖くてしようがないのだろう。
実際、今村雅弘復興相から「自主避難は自己責任」発言を引き出したフリー記者・西中誠一郎氏にネトウヨたちが噛みついたことは記憶に新しいが、先日のG7サミットの安倍首相の記者会見でも、共同通信の記者が共謀罪や加計問題を踏まえて国会の会期延長について質問した際も「サミットで何聞いてるんだ、空気読め」「恥さらし」「サミットに加計関係ないだろ」と非難が集中した。
こうしたことが繰り返されて、記者たちはひたすら「空気を読む」ことばかりを覚え、権力の監視を放棄してしまうようになった。しかし、これが、民主主義国家におけるジャーナリズムの姿なのか。
たとえば、米国のメディアを見てみればいい。トランプ政権のホワイトハウス報道官であるショーン・スパイサー氏も菅官房長官と同様にまともに質問に答えず、批判的なメディアには強権的な姿勢を見せているが、それでも記者たちは食い下がって何度も質問を繰り返し、スパイサー氏が詭弁を振りかざした際には露骨にシラけた表情を向け、紙面や番組ではっきりと「嘘つき」「バカ」「大バカ」「最悪の返答」と批判を浴びせている。これこそが不誠実な政権担当者へのジャーナリズムの本来のあり方だろう。
繰り返すが、今回、望月記者が菅官房長官と対峙し、詰め寄ったことは「ジャーナリズム本来の当たり前の姿」を実践しただけだ。しかし、その「当たり前」を記者ができていないことが安倍政権を支え、現在の森友・加計学園問題をなかったことにしようとする政権に手を貸している。新聞やテレビの記者たちはそのことをもっと自覚すべきだろう。
6月8日 菅官房長官会見 午前
記者「あ、東京新聞の望月です。すいません、話題変わるんですけど。今日の週刊文春にも出ているんですが、まあ取材によりますと、前川前事務次官の告発の問題でですね、えー、読売新聞が出会い系バーを報じた前日に、現役の文科省の初等中等、えー、初等中等教育局長の藤原さん(藤原誠)から、えーと、お電話で、和泉さんから、秘書官の和泉さん(和泉洋人)が、会いたがっているお話があり、ま、そのことを、えっと、ちょっと考えたってください、という回答をしていた・・・ま、同じタイミングで読売新聞さんの取材も入った、と。で、翌日に、えー、出会い系バーの報道が出たというのがありました。ま、このことについて、和泉・・・えー、和泉補佐官は、え、文春の取材には否定をしているんですが、菅さんは、何かご存知でしょうか。」
菅官房長官「まあ、本人が否定しているんですから、その通りじゃないですか。」
記者「藤原さんからの・・・」
菅「名前言ってください。」
記者「すいません。東京新聞です。望月です。藤原さんからの働きかけは・・・、えー、藤原さんに、和泉さんがお願いをして、えー、会いたいという働きかけはしていないという。」
菅「私は承知してませんけれども、本人が否定しているんであれば、そうだと思います。」
記者「すいません、東京新聞、望月です。えーと、そもそもですね、この出会い系バー通いについての、杉田副長官が昨年の秋に注意をしているということですが。これ、前回*1、そのこと、えーっと調べさせたのかということについて、『承知はしていない』というご回答だったと思いますが。え、杉田さんは、こういう記者会見がないので、えっと、その時期になぜ前川さんの、そういう行動が把握できたのか。えー、これあの、官邸は基本的に、今の全省庁の事務次官の行動確認等を行っているのかどうか。またこれ、たまたまだと思うんですが、あの、同時期に、読売新聞社さんの社会部も取材しているということで。これ、何か、そこ、読売新聞さんの取材との関連性があるのか。えー、について、これ、承知してないということなんですけれども。えー、杉田、杉田副長官に確認して、えっと、実際なぜこの時期にそういうことを知りえたのかをお聞き願いたいのですけども。」
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*1「6月6日 菅官房長官会見」。恐らく以下のやり取りを指す。
記者「東京新聞、望月です。えーと、前川さんのバー通いについてですね、昨日も国会で、あるまじき行為だというような指摘でのお話、出ていたと思います。これ、あの、もともと杉田副長官から、前川を呼び出してそのことを注意したというお話だということですが。これ、杉田副長官は、通常ですね、こういう前川事務次官級の方たちの、身辺調査、行動確認をしているということなのでしょうか。」 / 菅「私は承知していません」
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菅「あの、まったく今言われていることは、あー、私は失礼な話だというふうに思います。報道、報道社に対してもですね。そこは、直接、そちらに取材されたらどうですか。私が答える立場でありません。」
記者「すいません。東京新聞、望月です。で、ちょっと話が、あっ。公文書管理についてですね、この文春さんにでているんですが。福田康夫元首相もですね、『今回、安倍、安倍政権の公文書の管理というのはなっていない』と。『森友の件も加計の件もそうだ、で、保存のために作った法律を廃棄のための根拠にしている』と。『官僚もどこを向いて仕事をしているのか、国民のことを、えー、ないがしろにしているんではないか』と、ゆうふうに出ておりますが、この公文書管理の取り扱いについての、ま、要は加計文書の告発が相次いでいるんですが、この、まあ、も、もし、今や前川さんだけでじゃなく複数の方からの告発が報道等でいっぱいでております。現状ですねこのことについて、もう一度真摯にお考えになって、文書の公開、第三者による調査というのは、お考えじゃないですか。」
菅「あのー、そこについてですね、我が国、法治国家ですから、その法律にもとづいて、えー、適切に対応している。こういう風に思います。」
記者「東京新聞です。望月です。すいません。えーと、昨日、民進党の質問等でも出てますが、匿名で出所がはっきりしないことについては、調べられないとご回答でておりますが、これ、公益通報者保護法のガイドライン*2を見てます、見てみてもですね、『匿名による通報人についても、可能な限り、実名による通報と同様の取り扱いを行うよう努める』と、出ております。ま、法治国家ということであれば、この保護法のガイドラインにそって、えー、この文書があるのかないのかを、やはり真摯に、あの政府のほうで調べるということをやっていただけないかと思うんですが、どうでしょう。」
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*2 「公益通報者保護法を踏まえた国の行政機関の通報対応に関するガイドライン(内部職員等からの通報)」より抜粋
8) 匿名による通報の取扱い / 各行政機関は、通報に関する秘密保持及び個人情報保護の徹底を図るとともに、通報対応の実効性を確保するため、匿名による通報についても、可能な限り、実名による通報と同様の取扱いを行うよう努める。この場合、各行政機関は、通報者と通報窓口担当者との間で、適切に情報の伝達を行い得る仕組みを整備するよう努める。
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菅「まずですね、あのー、民進党のほうから、文書の提示があって、それについて文部科学省の方で調査をした結果、文書は確認されていない、という報告があります。それと、その上で、えー、さまざまな指摘をふまえて文部科学省において検討した結果、出所や、入手経路が明らかにされない文書についてはその存否や内容などの確認の調査を行う必要ないと判断したと、こういうようにも承知をしておりますと。これ、二回目のやつですよね。で、現在もそうした状況には変わらないものと考えておりますが、いずれにしろ文部科学省において、これは、考えらるものだと、いうふうに思います。」
記者「はい、すいません。東京新聞、望月です。その、共有ホルダーになかったというご回答が、えー、政府から出て、その後に、共有ホルダーにあって、現在でも複数の文科省の職員が、これを持っているという匿名の告発が出てるんですね。それなので、それ以降ももう一歩踏み込んで、本当に共有ホルダーがあったかないかを、文科省や政府ではなくですね、第三者によって適切に調べていただきたいと思っているんですが、これはどうでしょう。」
菅「あの、そこはですね。あのー、文部科学省のほうでですね、えー、その、いろんなことがあった、後に、その指摘を踏まえて、えー、検討した結果ですね、えー、そ、その存否や内容などの確認の調査を行う必要はないと判断をしたと。そういう風に報告を受けています。」
記者「東京新聞、望月です。判断したのは文科省ということだという、お話をしておりますが、これ、松野文科大臣には、質問、集中してますが、基本的にですね、取材をしている限りでは、もう、文科省の判断というよりも、やはり、官邸の最高レベルである、安倍総理であり、官房長官の、菅さんの判断がなければ、ここに踏み切れないのではないかと。っていうので、私、文科省が、そう判断したというよりも、まあ安倍総理、菅さんたちが、このように判断しているということじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。」
菅「そこはありえません。それは、それぞれ、役所、において判断をすると。それにつきます。」
記者「えっともう一つ。加計学園に絡んで、前事務次官が1月5日に、松野大臣に、辞意を、天下りの関連で表明をしたと話しております。そこで松野大臣が、えー、に、杉田官房副長官に、そのことを伝える許可を頂いて、杉田副長官にその趣旨を伝えに行ったということです。えー、前回の質問では、杉田副長官が、その時に、えー、つまり、3月の定年までいさせてくれと言って、それ以外の複数の証言を得ていると、いうことを官房長官ご自身お話したと思うんですが。えーと、多分、松野大臣と杉田さん以外に関係者、いらっしゃらないと思うんですが、複数という方、公人であるならば、どなたがそのように言ったか、教えていただけませんか。」
菅「あの、複数であることは、あのー、勿論承知しております。」
記者「望月です。すいません、あの、ど・な・た・が、あの、杉田さん以外に。松野さんは、松野大臣はこのことについてはノーコメントと言っておりまして、えー、菅さんの、えー、お話も、えー、前川さんのお話もどちらについてもいえないという板ばさみなのかなと状況・・・」
菅「いやいや。」
記者「では、じゃ、松野大臣は、えっと、官房長官には、その辞意を表明したのではなく、三月までいさせてくれと、前川さんが言っていたという風にお伝えしているんですか。」
菅「あの、この件について、大臣と直接話してません。ただ、いずれにせよ、そうした人事については、あの、前裁きを、おー、事務の副長官、で、人事局・・・のところで行なっていますので、そういう中で、えー、私に報告があったということです。」
記者「すいません、望月です。そうすると、杉田さん以外にどなたが、そのような前川さんが辞意を伝えていたかの名前を出すことはできないということですか。」
菅「もちろん、私、承知してますけども。まずですね、あの、定年延長について、あの、1月上旬に、文部科学省の方から打診があったことは事実です。これ1月上旬です。さらに言えば、定年延長も話があった後に、前川氏本人から副長官に対して、『せめて3月まで次官を続けさせてほしい』という話はあったと。このことは昨日の国会で、聞かれたもんですから申し上げております。」
記者「東京新聞望月です。文科省の方から打診があったということですが、これはどなたからそのような打診が・・・」
菅「それは前川さんがよく知ってらっしゃると思います。」
記者「加計・・・関係。ちょっと。ま、関連。あのー。昨日、二、三日見ただけでも、FNNさん・・・間違ってたら申し訳ないんですけど。FNNさん、テレ朝さん、NHK、朝日、文春さん、それぞれですね、現役の文科省職員の、ま、証言を聞いてですね、文書あったという報道を今までしていると思うんですけど、長官、これらですねー、大手・・・1、2、3、4・・・4つ5つあると思うんですけども、全て嘘だと、信用できないという風にお考えでしょうか。」
菅「私は嘘だとは言っておりません。このことについてはですね、えー、様々なご指摘を受けて、文部科学省において検討した結果、出所や入手経緯が明らかにされていない文章についてはその存否や内容なども確認の調査をおこなう必要がない。そのように判断をしたということです。そして現在もその条件に変わりないものと考えておりますが、いずれにしろ文部科学省において考えられるものだという風に承知しております。」
記者「ジャパンタイムスです。あの、このやりとり、ずっとやっているんですけども、その、なぜそう考えるのかっていう理由が全然説明がないんですよね。で、所謂、証拠がないと、まあ、水掛け論になると思うんですけど、(聴取困難)ですと。そうすると物証の調査ということでコンピューターの調査しかないと思うんですけども、で、やらないよりはやったほうがいいと誰でもわかるんですけども、そこを拘わられるのは、どうにも不可解なんですが。その要するに、もうやりたくないとしか聞こえないんですけど。」
菅「あのー、その後のご指摘をふまえて、文部科学省において検討した結果ですよ、出所や入手経緯が明らかにされてない文書については、その存否や内容などの確認の調査を行う必要はない。このように文科省で判断した。で現在もそうした条件には変わりないという風に考えてます。いずれにしても、文科省が、あー、考えられるものであると、こういう風に承知しています。」
記者「同じことしかおっしゃっていないんですけども。それは、FNN、テレ朝さん、NHK、朝日、文春の報道が信用できないと。調査に値しないということだと思・・・」
菅「っていうのは、申し上げたとおりですよ。『存否や内容などの確認の調査を行う必要はない』という判断を下したということです。」
記者「(聴取困難)をおっしゃっていないんですよ。なぜ、そう判断されるのかって、理由付けがゼロなんですよ、おっしゃっているのは。存否は確認したとしかおっしゃってなくて、結論になぜそうなんですかと、やらないよりはやったほうがいいでしょうと。物証がないと水掛け論になるんでコンピューターの調査をされたらどうですかと。」
菅「いずれにせよ、文部科学省において、えー、そこは考えられるものと、承知しております。そういうことです。」
記者「えっと、今、関連です。先ほどから何回も聞いておりますけれど、これ、政府が作ったですね、公益・・・公益者、通報制度の保護の法の精神に、つまり匿名・・・などのものは、出所不明は扱えないというお話は、その精神に反するのではないかと。このことについて、的確なご回答を頂けていないと思うので、お答えいただけますか。」
菅「今、私が申し上げた通りです。」
記者「えー、それから・・・東京新聞です。えーと、先ほど、嘘だとは、文書について嘘だとは言っていないという・・・(菅「はい?」(尋ねるように))嘘だとは言っていないという、文書についてですね、今、加計ででている。という、発言・・・今、私、はじめて聞いたと思うんですが。これ、一番はじめに出たときに、えー、『怪文書』という風に厳しくご指摘されておりました。これ、あの、広辞苑でひきますと、『無責任で、中傷的、暴露的、出所不明な文書』と、まあ非常に強い、まあ、つまり、本物ではないというような言い方をされていたと思うんですが。現在、この文書について、嘘だとは思わないということですか。」
菅「ちょっと分けてください。私が嘘だと・・・嘘じゃないと言ったのは、この間、メール文書などの証言をされましたよね、あのー、告発というんですか。皆さん方、言ってますよね。で、それについて、文部科学省で検討した結果、出所・入手経緯が明らかにされてない文書については、その存否や内容などの確認の調査を行う必要はない、と判断をしたと、こういう風に私は申し上げています。で現在もそうした条件には変わりないと。」
記者「繰り返しですけども。まあ、文春の調査でも、この、現在、『前川の証人喚問を必要だ』に賛成が86、まあ、内閣の支持率が22%というところまで、これ、確か、日経のオンライン調査でも、このくらいの数値が出ております。つまりこの、調査の必要がないということ、あの、ジャパンタイムスさんのお話と同じですけれど。この政府の姿勢がですね、やはり、国民の理解を得られていないと。そこが、まあ、一番、最大のポイントだと思うんですが。これ、今、政府側の、その今、えっと、文科省側の回答がですね、つまり国民にとってまったく納得・理解ができないものになっている、と。このことについて、菅官房長官はどうお考えですか。」
菅「ですから、それは法律に基づいて、適切に対応すると。」
記者「すいません。東京新聞です。加計に戻ります。石破4条件*3について、充たされているとご回答・・・二日前の、えーっと、質問の際にいただいていますが、当の石破さん自身は、この4条件がが適切に充たされていないんじゃないのか、という回答を、各種報道に、取材にこたえております。ここ、意見の相違があるんですが、どう思われてますか。」
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*3 石破四要件
獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討 / 1 現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、2 ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、3 既存の大学・学部では対応が困難な場合には、4 近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。(「平成27年6月30日 日本再興戦略改訂2015 −未来への投資・生産性革命−」)
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菅「それはその、4条件を充たされるということ・・・それは国家戦略諮問会議で認めている。えー、当然、3大臣が、大臣の中で最終的に決定(検討?)しているわけですから、それに尽きるんだろうと思います。」
記者「東京新聞です。ということは、まあ、当時この4条件を設定された石破さんが充たされていないと言っても現在の大臣である山本大臣が充たされいていると。えっと、需要についても『神の見えざる手というのがある』と、ちょっと不可解なことをお話をしておりますが。その山本さんが充たされているという理解だからこそが、これが充たされていると。」
菅「いや、山本大臣の他に、文科大臣も農林水産大臣も、この3大臣でこの決定されたことですよ。」
記者「はい、すいません。東京新聞、望月です。また出会い系バーなんですけども。前回、この教育者としてあるまじき行為としてあるまじき文書、これ、ちょっと私、文書を読み上げているように見えたんですが、この文書は、菅官房ちゃん・・・官房長官の個人的なご見解ということでしたが、文書に、文書にしたためていらっしゃるんですか。」
菅「いや、私自身が、あのー、心から思っていることを申し上げたにすぎない。」
記者「えっと、文章・・・あっ、東京新聞です。文書を読み上げたように見えたんですが、何かその、文書にしたためられたのは、官房長官ご自身が、そういう・・・」
菅「私、あなたに、それを答える必要はないと思いますよ。」
記者「ジャパンタイムスです。ちょっと確認だけ。先ほど、FNNさん、あのー、テレ朝、NHK、朝日、文春さん、『嘘ではない』と、まあ、そうおっしゃったと思うんですけど。信憑性はない、っていう具合に考えてるんですか。それ、ですから、理由を教えていただけますか。」
菅「いや、ですから、あのー。調査を・・・先ほどの中で・・・(文書をさがしながら)文科省において、検討した結果、出所や入手経緯が明らかにされていない文章については、その存否や内容なども確認の調査をおこなう必要はないと判断をしたと。そういう風に承知してます。」
記者「あ、え、ジャパンタイムスです。要するに、大手の報道でも。こうやって複数揃っても、あのー、情報源が匿名なら、信用性がないと、こういうことで・・・」
菅「いや、それと、その存否や内容なども確認の調査を、あのー、おー、そういう必要・・・おー、ないと判断をしたと。まあ、そういうことです。」
記者「ですから、その、そういう判断をした理由を教えていただきたいんですけど。あのー、いろいろ、その判断は、調査は、コンピューター調査をやった後に出てきているわけですよね?しかも、係長なんかは聞き取り調査に入ってなかったんですよね、生方(生方寛昭)さんという方は。それを、なぜそれで、あのー、必要はないという政治的な判断をされたのか、よくわからないんですけども・・・」
菅「えー、まずですね。えー、まず最初、おー、文書ありましたですよね。民主党(民進党)のほうから8枚紙。これについて文部科学省で調査をした結果、文章は確認されない、という風に結果出ています。その上で、えー、その今言われた、 あー、文書ですけども。その後の、さまざまな指摘をふまえて文部科学省に、えー、検討した結果、現在も、出所等が不明な状況で・・・あるという中においてですね、存否や内容などの確認の調査を行う必要ないと判断したと、文部省(文科省)が判断をし、状況は変わりないと、こういうように考えていますが、いずれにせよ、文部科学省で考えられるものである、というふうに思います。」
記者「あの、もう1点だけ。記憶ですと、国会の審議では、民主党(民進党)の出してきたメールですね、共有したっていうメールの。まあ、係長が生方(生方寛昭)さんという方で、その方、ヒアリング入ってなかった、ということだと思うんですけど。そうすると、また状況が違ってきているんじゃないでしょうか。」
菅「いや、どなたに、あのー、調査したかは知りません。いずれにせよ、そういうこと、で、あります。」
記者「はい、東京新聞です。 (「同趣旨のご質問は、お控えください」)出所不明を繰り返えされていますけども、じゃ、現役の職員の方ですね。自分の身の危険を冒しても、えー、告発に出ていると思うんですが。しかも、複数です。で、これを、もし、じゃあ、どなたかが、実名での告発に踏み切った場合、適正な処理をしていただけますか。それから、その方の、えー、公益通報者保護制度の精神に基づいて、えー、きちんと保護された上で、その実名の方の意見というのを聞き入れてもらえるんでしょうか。」
菅「あの、仮定のことについて、えー、答えることは控えたいと思いますけども。いずれにしろ、文部科学省で、そこは判断をする。こういう風に思っております。」
記者「はい、東京新聞の望月・・・。えっとー、仮定とかではなくて、出所不明だから調べられないということを繰り返えされていますけども、じゃ、出所を明らかにして、『私が現役の職員であり、このメールはありました』と、いうことをどなたかがですね、勇気をもって告発を、実際、された場合に、それはその方のお話をもとに、きちんとした調査を行っていただけるかどうか、なんですが。」
菅「ですから、仮定のことに、答えることは控えたいと思いますが、そうしたことを、今、あー、申し上げておりますから、文部科学省において、そこは判断をするということ。そういうことに尽きるんじゃないでしょうか。」
「同趣旨のご質問はお控えいただけるようにお願いいたします。」
記者「すいません」
「同趣旨のご質問を繰り返し行うのは、やめて頂きたいと思いますので、お願いします。」
記者「きちんとした回答を頂けていると思わないので、繰り返し聞いています。すいません。つまり・・・すいません、東京新聞です。つまり、出所が明らかに、どなたかが、告発に至っても、今のご回答だと、政府として、それを真摯に汲んで、それを調べるかどうかは、えー、回答を保留というか、回答できないという、ご回答ですね。そういう理解で・・・(いいですね)」
菅「仮定の質問に、答える立場にはありません。いずれにしろ、その時点で、文部科学省が、おいて考えられる。こういう風に思います。」  
 
菅官房長官会見 6/9

 

菅官房長官、加計文書存在しても政権に影響「ない」 
安倍政権は9日、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる「総理のご意向」などの文書について、これまで拒否してきた再調査に一転、踏み切る方針を決めた。
安倍政権が再調査を決めたのは8日夜。それに先立つ菅官房長官の会見が「炎上」したのが大きな決め手になったとする見方もある。菅氏は調査の必要なしとの認識を示したが、30以上の関連質問を浴びせられた。菅氏が質疑で追い込まれるのは珍しく「文科省の自主判断」としていた官邸も再調査にかじを切った。菅氏は9日、文書について「信ぴょう性がよく分からない」とあらためて表明。再調査で文書の存在が明らかになった場合の政権への影響は「ないと思う」と述べた。一方、萩生田光一官房副長官は「資料が実在したとしてもその紙(の内容)自体が正しいかどうかは、その次の話」と、けん制した。
石破の乱「成算なき孤独の闘い」が向かう先 6/14
国会最終盤の「加計学園疑惑」をめぐる"場外乱闘"で安倍晋三首相率いる1強政権が揺れる中、自民党内では石破茂前地方創生相の「首相批判」が耳目を集めている。
きっかけは憲法記念日に首相が提起したいわゆる「安倍改憲」への石破氏のクレームだが、党内の「言論の自由がない」など首相の独裁的な政権運営への不満を代弁した形である。2018年9月の自民党総裁選をにらんだ動きともみえるだけに、首相サイドも神経をとがらせている。ただ、2018年9月総裁選での首相の3選はすでに既定路線化していることもあって、党内での改憲論議でも"石破包囲網"が形成されつつある。ポスト安倍をにらんだ「石破の乱」は「成算なき孤独の闘い」(自民幹部)との見方も広がる。
石破氏の異論を無視、党内は改憲の段取り
首相は憲法9条での自衛隊明文化などを提起し、東京五輪が開催される2020年の新憲法施行を目指す意向を表明した。これを踏まえ、党内意見を取りまとめる党憲法改正推進本部(保岡興治本部長)は6月6日に再スタートし、新たな党改憲案を年内に作成する方針で合意した。同本部には新メンバーとして高村正彦副総裁や下村博文幹事長代行ら首相を支える有力者が加わっている。
同日の幹部会合で保岡本部長は改憲項目について、不戦と戦力不保持をうたった第9条での自衛隊明文化や高等教育無償化に加え、緊急事態条項など4項目を論議する方針を示した。同調査会顧問の石破氏は「首相の改憲案はこれまでの党内論議を無視している。まず、現在の改憲草案を検証すべきだ」などと注文をつけたが追随者はなく、保岡本部長の方針が了承された。
首相が「来年中の国会発議」を狙っているとみられることから、同本部でも首相支持派が"石破包囲網"をつくり今後の論議での異論封じに動き出している。孤軍奮闘の石破氏はメディアなどでの存在アピールを続けるが、今のところ党内の反応は冷たい。
石破氏がクレームをつけたのは、自民党が野党時代にまとめた党改憲草案とは異なり、首相が戦力不保持の9条2項を残しながら自衛隊を明文化するとした点だ。石破氏は「与党になったら丸めますというのは誠実な態度ではない」「結局は矛盾の固定化につながり、真摯な立法姿勢とは思えない」などと手厳しく批判している。
その一方で、党内では「安倍改憲」実現への段取りも公然化している。最短ルートとして考えられているのは次のようなものだ。2017年末の新改憲草案の取りまとめを受け、2018年の通常国会における各党協議で自民、公明と維新の3党を中心に9条見直しも含めた改憲条文を絞り込み、会期末までに発議。2018年9月の総裁選での首相3選を受けて、2019年10月に予定されている消費税率10%への引き上げの再々先送りを決めた上で、2018年秋の臨時国会冒頭で解散・総選挙を断行し、改憲国民投票も同時実施するという案だ。
安倍首相の手法に「耐えられないほどイヤ」
これについて石破氏は朝日新聞のインタビューで「国民の歓心を買うようなテーマとセットで9条改正を問うなんて、耐えられないほどイヤだ」と非難した。"軍事オタク"ぶりから永田町では名前をもじって「ゲル長官」と呼ばれる石破氏だけに、自衛隊明文化を政局の駆け引き材料にすることへの不満を抑えられないわけだ。
石破氏は2018年9月の総裁選出馬を目指しており、公式の場では「自分たちが選んだ総裁だから、ああだこうだというのはフェアではない」と語るが、私的な会合などでは首相の政権運営への不満を隠さない。ただ、石破氏が率いる水月会(石破派)は現在19人で総裁選出馬に必要な推薦人(20人)には足りない。今後、首相サイドが党内を厳しく締め付ければ、推薦人確保に黄信号が灯りかねない党内状況でもある。
石破氏は過去2回、自民党総裁選に出馬している。最初は泡沫候補扱いだったが、自民党の政権奪還直前の2012年9月の総裁選では、地方票も含めた第1回投票で圧倒的な地方組織の支持により、2位の首相に58票もの差をつけて1位となった。だが過半数には足りず、国会議員による決選投票で首相に逆転され、19票差で大魚を逸した。
その結果、自民党の政権奪還後は党ナンバー2の幹事長として約2年間、党運営を仕切ったが、2014年9月の党・内閣改造人事で幹事長から外れ、新設された地方創生相に転じた。その後は2016年8月まで地方創生相を務め、その間、2015年9月の自民党総裁選では「閣僚は首相を支えるのが責務」として出馬を見送ったが、同時に石破派「水月会」を旗揚げし、ポスト安倍の1番手であることをアピールした。
首相と石破氏はもともと、「ケミストリーが合わない関係」(自民幹部)とされる。幹事長時代も首相との会食などは極めて少なく、「双方とも腹を割った話し合いは避けてきた」(首相周辺)というのが実態だ。首相が石破氏を幹事長に起用したのは「挙党体制」をアピールする狙いからだった。
首相にとって石破氏は「目の上のたんこぶの存在」(首相周辺)だったわけで、2014年夏の参院選での自民圧勝で1強体制を確立した時点から"石破外し"を画策したとみられている。参院選後、首相は新安保法制実現に向け石破氏に「安保法制担当相」への就任を求めたが、「石破氏が固辞することは織り込み済みだった」(同)とされる。
当時を振り返ると、首相は参院選後の7月下旬、石破氏との会談で安保法制相を打診したが、石破氏は固辞し、結論をお盆明けの8月下旬まで持ち越した。ところが8月上旬に石破氏を支持する「無派閥連絡会」が新潟県湯沢市で開いた夏季研修会の懇親会での石破氏の言動が首相との関係を悪化させた。
首相らを激怒させた「明智光秀も嫌いじゃない」
研修会後の懇親会はカラオケ大会となったが、石破氏が最初に歌ったのは1980年代のアイドル・柏原芳恵の「夏模様」だった。石破氏は学生時代、キャンディーズの熱烈な追っかけファンだったことは広く知られている。その石破氏がキャンディーズでなく柏原芳恵のあまり知られていない曲を歌ったのだ。"意味深"だったのはその歌詞のサビの部分。「『さよなら』 言葉はこれきりですか 『さよなら』 私はふられますか」――。
人事を絡めた首相の変心への恨み言にも聴こえ、伝え聞いた首相サイドは「嫌味が過ぎる」と反発した。
この話にはさらに続きがあった。7月下旬に約束した8月下旬のトップ会談が、首相の広島土砂災害の現地視察で延期された直後の8月25日夜、石破氏は民放ラジオ番組に出演した。そこで、石破氏は「幹事長続投」を強調したが、番組の最後に司会者から「尊敬する歴史上の人物は」と問われると「歴史上の人物で好きなのは(元外相の)小村寿太郎。明智光秀、石田三成も嫌いじゃない」と答えた。
明智光秀は周知の通り、戦国時代の1強だった織田信長に対して謀反を起こし、その「本能寺の変」で信長を非業の死に追い込み、一時的に天下をとった歴史的人物だ。「首相サイドは激怒し首相と石破氏の関係もさらに悪化した」(自民長老)とされる。その後、首相と石破氏は和解し、石破氏も地方創生相就任を受け入れたが、石破氏周辺は「座敷牢に閉じ込められた」と当時を振り返る。
昨年8月の内閣改造で無役となった石破氏は、地方創生相としての経験を基に4月に『日本列島創生論』という著書を出版した。尊敬する恩師の故田中角栄元首相に自らを重ねての総裁選に向けた「政策提言」ともみえる。その中でアベノミクスの限界も指摘し、「地方が国家の希望だ」と力説する。
政治家の本は自慢話が多いのが常だが、この石破氏の著書は装丁も内容も極めて地味だ。出版を機に5月22日に日本記者クラブで会見した石破氏は控室で色紙に「着々寸進 洋々万里」と揮毫した。「苦手なんだよね」と苦笑しながらぎこちない筆遣いで書いた文字は、首相ら世襲政治家の達者な揮毫とは対照的だった。
「もり」と「かけ」でも1強は揺るがないのか
ここにきて、ネット上で「首相の地元の蕎麦屋のメニューから『もり』と『かけ』が消えた」とのブラックジョークが拡散している。「加計学園」や「森友学園」の疑惑が安倍政権の足元を揺さぶっているのは事実だ。そうした中、首相が悲願とする「在任中の改憲実現」に「待った」をかける石破氏。自民党や霞が関を覆う「物言えば唇寒し」の状況を改めようと孤軍奮闘しているようにも見える。
ただ、終盤国会でのいわゆる「共謀罪」法案や加計学園疑惑に絡む「前川の乱」などへの首相らの対応次第では、「党内の雰囲気も変わる」(石破氏周辺)可能性は否定できない。いわゆる2世議員なのに武骨で不器用な鳥取育ちの慶応ボーイの石破氏。「ポスト安倍」の1番手として1強首相に挑む「還暦の総裁候補」の言動からは当分、目が離せない。
 
文科省と内閣府

 

■「文科省職員の言葉にウソはない」義家弘介氏が内閣府に不快感 6/16
 加計学園の"安倍首相の意向"めぐり内輪揉め? 
学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画をめぐり、文科省と内閣府の見解が食い違っている。
焦点になっているのは「官邸の最高レベルが言っている」などと、安倍晋三首相の意向だと内閣府が文科省に対して伝え、獣医学部の開設を急がせたということを記録した文書があったかどうか。
文科省は当初その存在を否定していたが、職員への聞き取りなどによって再調査をした結果、6月15日になって「文書はあった」と結論づけ陳謝した。
一方、内閣府の山本地方創生担当相は16日朝、文科省の再調査結果を受けた内閣府側の調査の結果を発表。「官邸の最高レベルが言っている」との発言を否定した。
この内閣府の調査結果に対して不快感をにじませたのが、文部科学省の義家弘介・副大臣だ。
義家副大臣の囲み取材の様子を報じた日テレNEWS24によると、「(内閣府の担当者から)そういうニュアンス(官邸の意向)の発言があったと受け止めていると、ヒアリングに答えているし、その言葉にウソはないと思います」
6月7日には「私が確認していないものは行政文書じゃない」と再調査を拒否していたが...
今でこそ内閣府に対して意見を表明した義家文科副大臣だが、当初は問題の文書の存在を否定し、再調査も拒否していた。
6月7日の衆院内閣委員会では、民進党の緒方林太郎氏が文書の存在について再調査を要求したことに対して「自分が見ていないものは行政文書じゃない」とする趣旨の発言をし、野党側から批判された。
この時の民進党の緒方林太郎氏と義家副大臣のやり取りは以下の通り。
加計学園の獣医学部新設をめぐる「総理のご意向」文書について
 ( 6/7・衆院内閣委員会 )
緒方林太郎氏 / 総務省に伺う。出所不明だから、入手経路が不明だからといって情報公開請求を受けないことはあるか。
総務省・堀江大臣官房審議官 / 情報公開法上の問題としてお答えする。請求者がどのような文書を請求するかを書いてまいります。それに基づいて、受け取った行政庁の方で、そのような文書があるかどうか回答する。
緒方 / 行政側がすべての情報を持っている。「あれがあるか」「これがあるか」と聞くことは当然。「出所不明だから」「入手経路が不明」では、物事が前に進まない。
義家弘介・文科副大臣 / これが違法だというなら調べる。政策決定のプロセスは様々なやり取りを行っている。違法性のないものに対して、さらに出所も不明なものに対して、我々は特例的に今回調査を行った。その中で、行政文書の中では存在を確認できなかった。
緒方 / 違法性があるかどうかは関係ない。何を言っているのか。「違法性があるものであれば調べるが、そうでなければ調べない」。それは行政の国民・国会に対する姿勢として、根本的に間違っている。
義家 / 意思形成過程のプロセスにおいては様々な議論がある。様々な議論がある中の一部をとって、これを全て調べて…ということは考えていない。
緒方 / 調べないということか。共有ファイル・共有フォルダの中に(文書が)なかったかは無関係。それだけでは、行政文書であるかないかの証明にはならない。個人のファイル・フォルダに入っているものでも、行政文書の定義に嵌るのであれば行政文書だ。
義家 / (文書の)8枚中3枚は私に関するメモ。いわゆる職員がもっぱら自己の職務遂行のために作成された備忘録や研究資料、職員の個人的検討段階にとどまる文書などは、一般的には行政文書には当たらない。
緒方 / 全く質問に答えていない。個人のファイル・フォルダにも行政文書が含まれる可能性はある。そこをしなければ、「文書がない」とは言えない。
義家 / 繰り返しになるが、8枚中3枚は私なんです。私が確認していない文書、副大臣が確認していない文書がどうして行政文書になるのか。私には理解できない。
緒方 / 「副大臣が確認するかどうか」というのが、行政文書であるかどうかの要件なのか。
山本幸三・内閣府特命担当相 / 行政文書の定義は公文書の管理等に関する法律に書かれておりまして、行政官の職員が職務上作成し、または取得した文書であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして当該行政機関が保有しているもの。
緒方 / (義家)副大臣はすごい答弁をした。「自分に関係するものだ。だけど自分は見ていない。こんなものは行政文書じゃない」と。こんな定義がまかり通るなら、役所の行政文書の管理は成り立たない。訂正したほうがいいと思うが。
義家 / 逆に聞きたいが、もし私が言った発言の一部が、私の確認しないまま行政文書になってしまうならば、仮に私が言っていないことを特定の役人が「これが義家副大臣からの感触です。指示です」と書いて、それが意思形成過程に仮に影響を与えることがあるのならば、そのほうが行政の歪みにつながる。
緒方 / それは行政の意思決定過程の問題であって、それが行政文書であるかどうかとは全く無関係だ。「自分が知らないから行政文書ではない」なんて、こんな傲慢な話はない。 
■獣医学部新設 文科相陳謝「14の文書 存在確認」 6/15

 

松野文部科学大臣は、15日午後、記者会見し、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる文書の追加調査の結果について、民進党などから提示された19の文書のうち、14の文書の存在が確認できたとして、「大変申し訳ない」と陳謝しました。また、「官邸の最高レベルが言っている」と記された文書について、担当の職員は、「こうした趣旨の発言はあったと思うが真意は分からない」と話していることを明らかにしました。
学校法人「加計学園」が国家戦略特区に指定された愛媛県今治市に計画している大学の獣医学部の新設をめぐり、「総理のご意向」や「官邸の最高レベルが言っている」などと記された文書について、文部科学省は先月、「確認できない」とする調査結果を発表しました。しかしその後、前川前事務次官が文書が存在すると証言したことなどを受けて、今月9日から調査範囲を拡大し、追加の調査を行っていました。
松野文部科学大臣は、15日午後1時半すぎから記者会見を開いて追加調査の結果を公表し、民進党などが存在を指摘していた19の文書のうち、同趣旨の記述がある3つの文書を含め、14の文書が文部科学省内の共有フォルダや職員の個人フォルダなどに存在していたことを明らかにしました。一方で、2つの文書は確認できず、残りの3つの文書については、法人の利益に関わるものであり、慎重な対応が必要なことから、現在のところ、存否を含めて明らかにできないとしています。
今回の追加調査は、前回の7人に、新たに19人の職員を加えた、合わせて26人を対象に、聞き取りなどを行ったということです。追加調査の結果について、松野大臣は、「前回の調査は合理的な調査であったと考えるものの、結果として、前回調査の対象以外の共有フォルダにおいて、文書の存在が確認されるなど、前回確認できなかった文書の存在が明らかになったことは大変申し訳なく、この結果を真摯(しんし)に受け止めている」と述べ、陳謝しました。
一方、松野大臣は、文書に記された「官邸の最高レベルが言っている」という事実があったのかどうかについて、「ヒアリングを行った結果、内閣府の職員から、この種の発言があったと文部科学省の職員は考えている。メモが作成された以上は、その場において、そういった発言があったのだろう。具体的な話があったわけではないので、真意についてはわからないという結果を得ている」と述べました。また、松野大臣は、前川・前事務次官が「行政がゆがめられた」などと指摘していることについて、「プロセスや行政の過程がねじ曲げられたとは考えていない」と、これまでの主張を改めて強調しました。
追加調査に至るこれまでの経緯
学校法人「加計学園」に対し、国家戦略特区を活用して、52年ぶりとなる獣医学部の新設が認められたことについて、先月以降、民進党などから、安倍総理大臣の意向が強く働いたのではないかという指摘が出されました。
獣医学部の新設をめぐり、民進党の議員は、先月17日の衆議院文部科学委員会で、文書を示し、「文部科学省が、内閣府から『総理の意向だ』と伝えられたなどとする文書を作成しているのではないか」と指摘しました。文書には、内閣府の担当者が文部科学省との打ち合わせで、平成30年4月に獣医学部を開学することが大前提だとしたうえで、最短のスケジュールを作成するよう求め、「これは官邸の最高レベルが言っている」などと記載されていました。
これに対し、松野文部科学大臣は、安倍総理大臣や官邸から指示を受けたことはないなどと答弁したほか、菅官房長官は記者会見で「怪文書のような文書だ」などと述べました。その後、松野大臣は、担当の高等教育局長や専門教育課長ら7人を対象に調査を行い、文書の存在は確認できなかったと発表しました。
調査した19の文書とは
今回、文部科学省が調査したのは文書やメールなど、合わせて19の資料でした。
文書1は、獣医学部新設に関わる内閣府からの伝達事項とされています。この文書は平成28年9月下旬に作成されたと見られ、「官邸の最高レベルが言っていること」などと書かれています。
文書2は、「義家副大臣のレク概要」というものです。これについてはヒアリングなどから要素だけ確認できたとしています。
「大臣ご指示事項」と題した文書3では、松野大臣が内閣府に開学の時期を1年遅らせるべきでないかということなどを確認するよう求めています。
文書4は、「義家副大臣のご感触」と題され、これもヒアリングなどから要素だけ確認できたとしています。
文書5は、「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」と書かれています。中では「総理のご意向」という文言が書かれています。
文書6は、10月4日の「義家副大臣レク概要」です。これについても要素だけ確認できたとしています。
文書7の「萩生田副長官ご発言概要」、さらに文書8の「北村直人元議員」と題されたものは、いずれも存在が確認できなかったとしています。
文書9は、「藤原内閣府審議官との打ち合わせ概要」と書かれたものです。日付は去年9月26日で、「官邸の最高レベルが言っていること」とか、「できない選択肢はなく、早くやらないと責任をとることになる」などと記されています。
文書10は、「今後のスケジュール」と書かれ、今治市に獣医学部が新設され、平成30年4月に開学するまでの予定が書かれています。
文書11は、去年11月9日に国家戦略特区の諮問会議が獣医学部の新設を発表する前に示された修正案です。これについては別途、その経緯を示すメールと手書きの修正が施された文書が提供されたとしています。
12から14までの3つの文書とメールについては、加計学園とのやり取りが含まれ、法人の利益を害するおそれがあるとして、存否を明らかにできないとしました。
15は、専門教育課の職員が去年9月27日送ったメールで、宛先となっている行政改革推進室や高等教育企画課の職員が受信したことを確認したとしています。
文書16は、去年11月9日の諮問会議の開催を示すもので、日時や時間、参加者などが記されています。
文書17は、文書16の諮問会議の中で松野大臣が発言したメモで、文部科学省として大学設置認可に関わる基準に基づき、適切に審査を行うと記されています。
文書18は、同じ会議の中で山本農林水産大臣が発言した内容をまとめたメモです。「近年、家畜やペットの数は減っているが、産業動物獣医師の確保が困難な地域があるので、農水省として課題解決につながる仕組みとなることを期待する」と述べたとされています。
そして、文書19は、「国家戦略特区に関わる想定問答」と書かれています。今治市において獣医学部を設置する特定事業者はどのように選定されるのかという質問があった場合は、「原則公募で選定することになっていて、内閣府において今後公募を実施する」と回答すると書かれていました。
前川前次官「文書存在」と証言
しかし、その後、文部科学省の前川前事務次官が記者会見し、「文書は確実に存在していた。あったものをなかったことにはできない」と証言しました。そのうえで、前川前次官は、加計学園が選ばれたいきさつについて、「公平、公正であるべき行政の在り方がゆがめられたと思っている」と述べました。
さらに、前川前次官は先月30日、報道機関に発表したコメントで、去年9月上旬、和泉洋人総理大臣補佐官と総理大臣官邸で面会し、獣医学部の開設に向けた手続きを急ぐよう要求され、「総理は自分の口からは言えないから、私が代わって言う」という趣旨の発言があったなどと指摘しました。
さらに、前川前次官は今月1日にも報道機関にコメントを発表し、去年8月下旬、加計学園の理事で、当時、内閣官房参与だった木曽功氏と面会した際、「獣医学部を設置する件について早く進めてほしいのでよろしく」という趣旨の話をされたと明らかにしました。
これに対し、萩生田官房副長官は記者会見で、和泉補佐官から「そのような記憶はない」などと報告を受けたと述べたほか、木曽氏はNHKの取材に対し、「獣医学部の話もしたかもしれないが、少なくとも圧力をかけた覚えはない」と反論しました。
民進党がメール公開 文科相 一転して追加調査へ
一方、民進党の調査チームは今月2日、「官邸の最高レベルが言っている」などと書かれた文書が文部科学省内で共有されていたことを示すメールの写しを入手したとして公開し、再調査を求めます。さらに、文部科学省の職員からも「文書の存在は確認できなかった」とする調査結果に疑問の声が上がりました。
こうした中、松野大臣は今月9日、一転して文書の存在などについて、調査の対象範囲を広げて追加の調査を行うことを表明しました。
野党側は、安倍総理大臣と加計学園の理事長を務める加計孝太郎氏が友人で親密な関係にあることから、特別な配慮があったのではないかと追及を続けてきました。これに対し、安倍総理大臣は参議院決算委員会で「親友であることと、私が政策に関与したことは全く別で、公平にしっかりと政策は進めている」と強調したほか、国家戦略特区諮問会議の民間議員らも記者会見し、加計学園の事業認定はルールに基づいて適正に行われたと強調しました。
今治市の職員が内閣府を訪れて協議
国家戦略特区において、獣医学部の新設が検討される前に今治市の職員が内閣府を訪れて協議していたことも明らかになっています。
今治市が公開した資料によりますと、平成27年4月2日に今治市の企画課長と課長補佐が国家戦略特区の事前相談のためとして、午後1時から2時の間に内閣府を訪ねたと書かれています。
さらに、4月30日にも午後2時半から午後4時半の間に今度は企画財政部長も加わって内閣府を訪ねたと記されています。
政府が日本再興戦略で獣医学部設置の検討を決めたのは平成27年6月30日なので、今治市の訪問はそれより前ということになります。
新たな文書も公表
15日はこれまで明らかにされていなかった新たな文書も公表されました。
「先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策など新たなニーズに対応する獣医学部の設置」という項目を説明した文書です。
獣医学部を新設する際の条件を記載した文書で文部科学省が作成した原文には「現在、獣医師系養成大学等のない地域において獣医学部の新設を可能とする」などと書かれていましたがこの原文に「広域的に」、「存在し」、「限り」という3つの文言が手書きで挿入されています。
去年11月9日国家戦略特区諮問会議で獣医学部の新設が決定した際の最終的な文書はこの修正が反映され「現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」となりました。
この結果当時、今治市と同様に獣医学部の新設に動いていた京都府は隣の大阪府立大学に獣医師系学部があるため、新設の条件を満たさなくなりました。
15日、文部科学省が公表したメールには、「萩生田官房副長官から文言を修正するよう指示があったようだ」と記されています。
これについて、萩生田官房副長官は「全く事実ではない。修正の指示をしたことはなく、文部科学省が公表したメールの内容は事実に反する」と否定しています。
自民 二階幹事長「政府は積極的に説明を」
自民党の二階幹事長は記者団に対し、「行政のプロセスがねじ曲げられたとは考えていないが、政府としても積極的に説明して、国民の理解を得るよう努力し、事態を正確に認識して、国民にわかりやすい政治を行っていくことが大事だ。あすの参議院予算委員会での集中審議でも、政府が調査結果をしっかりと説明することが必要だ」と述べました。
また、二階氏は記者団から東京都議会議員選挙への影響を問われたのに対し、「これは国会のことであり、都議会議員選挙は都議会のことだ。そのことを割り切って考えるぐらいのことは、都民にも、ちゃんと了解されていると思う」と述べました。
文科省職員「国民の信頼損ねた」
今回の調査結果について、現役の文部科学省の職員からは「特区選定の過程についても徹底して説明されるべきだ」という声が出ています。
公表された文書について、見たことがあるという職員は「調査の結果に不安があったが、ようやく認められて少し安どしている。しかし、国民の信頼は大きく損なったと感じている。今後は特区選定の過程について説明されるべきだ」と話しています。
また、別の職員は「前回の調査ですでに文書があったと何人かの職員は答えていたので、幹部は文書の存在を意図的に認めたくなかったと受け取られてもしかたがない。今後は獣医学部の選定が本当に公正公平だったのか検証がなされるべきだ」と話しています。
識者「もっと早く調査すべき」
15日、明らかにされた文部科学省の調査結果について東京のNPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、「今回問題になった文書は特区制度や獣医学部の新設の是非を国民が議論するうえでとても重要な文書で速やかに明らかにすべき公益性が高いものだ。政府は情報公開を行うことによって説明責任を果たして信用性を高めることができるのであり、もっと早く調査してこの問題に正面から向き合うべきだった」と述べ一連の対応を批判しました。
そのうえで「文書があるかないかの議論で長時間を費やしてしまったため国会で特区の選定が適切だったかどうかの中身の議論が十分にできなくなってしまった。文科省と内閣府の調査は今後、時間をかけてでも改めて外部からの独立した調査を行い、特区の選定過程が適切だったかどうか明らかにすべきだ。そうでないと特区というトップダウンの特例的な政策の是非を検証することができなくなる」と指摘しました。 
■松野文科相が加計文書「大臣ご指示事項」の記載内容を認める 6/16
 「聞き手が選んで残っているのでは」 

 

政府の国家戦略特区を活用した学校法人加計学園(岡山市)の獣医学部新設をめぐり、松野博一文部科学相は16日の閣議後会見で、文部科学省の再調査で存在が確認された文書のうち「大臣ご指示事項」について、「文書の通りかどうかは記憶が確認できない」と前置きした上で、「さまざまな事案に関してお話をした中で、聞き手があの事項を選んで残っているのではないか」と述べ、記載内容を大筋で認めた。
文書の中で、獣医学部の開学時期を平成30年4月とすることについて「教員確保や施設整備などの設置認可に必要な準備が整わないのではないか」と指摘したとされる部分は、「当時の問題意識として(大学設置・学校法人審議会で)審査をする内容と、特区の目標としての時期設定の関係を中心に問題意識を持っていた」とこれまで通りの説明を繰り返した。
文書は、松野氏が内閣府側に探りを入れるよう事務方に指示を出したとする内容。松野氏が開学時期は31年4月が望ましいとの認識を示したほか、「(新設に反対する日本獣医師会会長の長男、蔵内謙氏が立候補した)衆院福岡6区補選(昨年10月23日投開票)を終えた後に動くべきではないか」などと、政治情勢に言及したとされている。
また、再調査で新たに浮かんだ萩生田光一官房副長官のものとされる修正指示メールについては、「(再調査で)初めて知った。(そういった指示があったという報告は)受けていない」と述べた。
メールは、昨年11月9日の特区諮問会議で新設を認める文書の原案を事前調整する際、内閣府審議官の発言として、萩生田氏から修正する指示があったと記載。萩生田氏は15日の再調査結果公表後、「事実に反する」と記載内容を否定している。
松野博一文部科学大臣 定例記者会見 6/9
大臣 / 私からは本日3件です。1件目が、国家戦略特区における獣医学新設をめぐる文書の追加調査についてでございますが、前回の文部科学省の調査では、担当部局の共有ファイルの調査や関係者へのヒアリングを行うなどの調査を行い、その結果、5月19日に該当する文書の存在は確認できなかったとの調査結果を発表いたしました。しかしながら、その後も文部科学省として、追加調査等を行う必要があるとの国民の皆さま方の声が多く寄せられております。こうした状況を総合的に判断し、本日閣議後、私から安倍総理に対して、報道されている文書等について追加調査を行いたいとお伝えし、総理からは徹底した調査を速やかに実施するよう指示がありました。こうした総理の指示の下、国民の声に真摯に向き合い、改めて徹底した追加調査を行って参りたいと考えております。なお、追加調査の設計概要については、今後早急に検討の上、速やかに調査を行い、結果がまとまり次第発表したいと考えております。
2つ目が、日本原子力研究開発機構大洗研究開発センター燃料研究棟で発生した作業員の被ばくについてでございます・・・3つ目が、コミュニティ・スクールの導入状況についてです・・・
記者 / 加計学園の文書の追加調査の関係ですけれども、これまでも追加調査を求める声というのは、野党や国民の側からもあがっていたわけですが、その中でも、出所不明のものは調査をしないということでこれまできていたと思うのですが、今回判断を変更するにあたって、どのような状況変化があったというふうにお考えでしょうか。
大臣 / 先ほど申し上げたとおりでありますが、その後、文部科学省によせられる国民の皆さんの声を総合的に勘案した中で、追加調査の必要があると判断をしたところであります。
記者 / 調査の中身ですけれども、前回の調査では幹部が7人、7箇所、調べたのは共有フォルダーということでしたが、もっと職員の対象を広げるですとか、調べる文書の内容を広げるという方向でよろしいでしょうか。
大臣 / 前回の調査を広げて行うことが当然必要であると認識しておりますけれども、追加調査の設計概要につきましては、早急に検討して参ります。
記者 / 追加の調査とおっしゃいましたが、再調査ではないのですか。
大臣 / 前回の文書に関しても当然調査対象にしていく考えでございます。前回の調査の対象となった文書に関しても、これは調査対象にしていく考えでございます。
記者 / それは再調査と言っても良いと思いますが、前の調査が不十分だったというお考えはないですか。
大臣 / 当時においては、調査方法に関しては合理的なものであったと考えておりますが、追加で調査をしていくことに関しては、先ほど申し上げた理由によるものです。
記者 / これまでも中の職員の方でも文書を確認できなかったと最初なってから、あれはあった、もしくは見たことがあった、そう取材をとりました。私たちも放送で伝えました。そういったことについては、どういうふうに感じてらっしゃいますか。
大臣 / 今の御指摘の点に関しては、私の方で確認をしておりません。
記者 / 前回、5月19日に公表されて以降、20日間以上にわたって調査しないということで放置したままだったのですけれども、それについての認識としてはどういうことなのでしょうか。
大臣 / 認識と言いますと。
記者 / つまり、国民の不信を招いたという責任については、大臣としてどういうふうに考えていますか。
大臣 / 先ほど申し上げたとおりでありますけれども、前回調査の時点において、合理的な調査が行われたと考えておりました。その後、これも繰り返しになりますが、国民の皆さんから文部科学省に対して更に調査が必要であろうというような声が寄せられた中で、総合的に判断をしたということでございます。
記者 / そうした国民の声を招いたことについて、大臣としての謝罪の弁というのはありませんか。
大臣 / 国民の皆さんから、そういった調査が必要だという声があがったことに関しては、調査の設計等に関して、内容が御納得いただけなかったということがあるかと思います。その点も踏まえて、次の調査の設計についてはこれから至急行いますけれども、その中に取り入れながら設計概要を作って参りたいと考えております。
記者 / つまり、これまで国会でもこれだけ混乱を招いているという状態について、調査の結果が、調査の手法も含めて不十分だったいうことはお認めになるのですか。
大臣 / 国民の皆さんからそういった声が寄せられているということでございますので、それをしっかり認識をしていきたいと思いますが、いずれにしろ、評価に関して、これから調査を行って、その調査の結果をしっかりと精査をして考えていきたいと思います。
記者 / 一部職員の中でも、文書があるということを幹部に報告している方もいらっしゃるわけですけれども、仮にそういう事態があったとすれば、それは隠蔽にあたると思うのですが、その点についても再調査ではしっかりとさせるのでしょうか。
大臣 / 調査の内容に関しては、文書の存否がもちろん中心になってくわけでありますが、今後どういった調査が必要か、対象等も含めて早急に設計していきたいと考えております。
記者 / 合理的な調査を行ったものの、これまで確認できなかった理由というのは、どうしてなのでしょうか。
大臣 / すいません、質問の趣旨が。
記者 / これまでの調査を合理的な調査だったというふうにおっしゃっていましたけれども、その合理的な調査で確認ができなかったのは、なぜなのでしょうか。
大臣 / 質問の趣旨を理解していないかもしれませんが、現状までの設計による調査によって、確認ができなかったという事実でございます。
記者 / それを合理的な調査だと大臣は思ってらっしゃると思うのですけれども、それでも確認できなかったのは、調査がやっぱり不十分だったということなのですか。
大臣 / 今後、これから調査をして、その調査結果に基づいて、次の判断をするということでございますから、これから調査をする今の段階において、お話をする状況ではないと思います。今の段階においては確認をされていないということが前提でございますので、今後、調査を行って、その調査の結果によって判断していくということだと思います。
記者 / 職員からヒアリングした内容と、文科省が先日公表した結果に違いはないということでいいのでしょうか。
大臣 / 現状において、ヒアリングを行った内容と今まで発表してきたことというのは、同一の事実関係でございます。
記者 / 大臣は、これまで再調査をしないという意向に伴って、明らかな違法性が指摘されていない、また手続きの中に不適切な運営があった、公益性を損じる判断があったという具体的な指摘がないというふうにおっしゃっていました。今回、追加の調査を行うにあたっては、基本的に変わりはないでしょうか。
大臣 / 違法性が指摘されているという事実はございませんし、今回の国家戦略特区におけるプロセスに問題があったとも考えておりません。文科省の行政判断がゆがめられたということもないと考えておりますし、今までの様々な委員会の議論の中においても、具体的にこの国家戦略特区に関わるプロセスの中で、ここが問題であったとか、ここの判断が行政がゆがめられたのではないかという、具体的な指摘は頂いていないというふうに認識をしています。
記者 / 調査ですけれども、文科省内でやると思うのですが、透明性なり信頼性を確保するための、例えば第三者に委託するとか、コンピューターの調査のやり方を工夫するとか、透明性、信頼性は,第三者から見たら客観性というのも確保する必要があると思うのですが、その点については何か考えてらっしゃいますか。
大臣 / 次があるので最後にさせていただきたいと思いますが、まずお話をさせていただいたとおり、今回、何らかの違法性が指摘をされて調査をするということではございませんので、文科省内においてしっかりと調査をさせていただきたいと思いますし、調査の内容に関しては、今後早急に設計をしていきたいと考えております。
松野博一文部科学大臣 定例記者会見 6/13
大臣 / 私からは、冒頭は3件でございます。まずは、加計学園の獣医学部新設に関して、先週発表した調査の実施の概要についてでございますが、現在、文部科学省では、既に追加調査に着手をしているところであります。具体的には、これまで国会や報道等で指摘された点も踏まえながら、前回調査を行った、国家戦略特区における獣医学部の設置の担当である専門教育課の関係する共有ファイルや共有の電子フォルダだけでなく、設置認可や国家戦略特区の窓口となる大学設置室、私学行政課、行政改革推進室の関係3課室の共有ファイル等まで調査範囲を拡大するとともに、ヒアリングの対象についても、前回の調査では7人であったのに対して、今回は、提示されたメールの宛先となった、関係3課室の職員も対象とすることから増加し、ヒアリングも丁寧に実施することとしており、詳細な調査をしているところであります。速やかに調査を行い、結果がまとまり次第、報告をさせていただきたいと考えております。
二つ目は、日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査の結果についてでございます・・・三つ目でございますが、日本原子力研究開発機構大洗研究開発センター燃料研究棟で発生した作業員の被ばくについてです・・・
記者 / 国家戦略特区への獣医学部設置に関する文書の追加調査についてですが、調査する側の体制は、どういう形でやっているのかを教えてください。併せて、調査結果の公表時期について、いつ頃になりそうかという目途がありましたら教えてください。
大臣 / まず公表の時期でございますが、今、鋭意調査に取り組んでいるところでございますけれども、これはできるだけ早期にという声も頂いております。一方で、丁寧な調査をということもございますけれども、今の各文書の存否に関する調査、またヒアリング等が、終了次第速やかに公表していきたいと考えております。体制につきましては、チームの担当者が。
事務方 / 体制につきましては、義本総括審議官、中川サイバーセキュリティ・政策評価審議官、串田総務課長、他関係官となっております。
記者 / 今回、ヒアリング対象となる職員の数は、前回の7人と重複があるのかも含めて教えていただけますか。
大臣 / 前回の7人にも改めてヒアリングをいたします。加えて、先ほど申し上げたメールの送受信者でございますから、総数がおそらく20名前後という形になるんだろうというふうに思います。前回の7名以外にプラスでということです。
記者 / 報告の時期ですけれども、国会会期末も控えておりますが、今週中にも一旦例えば存否についての中間報告のような形で一旦出して、また詳細については、内容については、また改めて出すというような2段階方式ということは考えていらっしゃいますか。
大臣 / 現状、2段階方式をとるということについては考えておりませんが、今後の調査の進捗の状況と、当然の国会の状況等もあるかと思います。併せて検討した中で、現状においては検討しておりませんが、必要に応じてどういった形がありうるかに関しては考えていきたいと思います。
記者 / 共有フォルダなども調べるということでしたが、個人のフォルダについても調べていらっしゃるのでしょうか。
大臣 / 個人のフォルダに関しては、これは当然のことながら、個人のプライバシーの問題もございます。まず共有フォルダを調べた上で、対象者に関してヒアリングし、その個人のヒアリング対象のパソコンの中のものに関しては、まずは任意でこういったものに関しての確認ということで進めさせていただくという手順を考えております。
記者 / 今回、メールを受けた職員もということなのですが、彼らのメール自体を調べるのでしょうか。
大臣 / 彼らのメールというのは。
記者 / いわゆるメールの中身自体も調査対象に入っているのでしょうか。
大臣 / 彼らが送受信した全メールをということですか。
記者 / 含めてということです。
大臣 / すみません。どういったその辺りのところまでの設計について、今、担当者がいないので、私の方からまた追って報告をさせていただきたいと思います。
記者 / 先ほど任意でとおっしゃったのは、どういう形のことを想定されてらっしゃるのでしょうか。個人のパソコンについて。
大臣 / まず、今回の調査の第一に関しては、指定されている文書の存否が主たる調査目的でございますので、その文書に関してのヒアリングを行い、それに関して当該の職員のパソコンの中について対応するかどうかに関しては、まずは個人の任意でということで進めていきたいということでございます。
記者 / 回答に応じてということでしょうか。
大臣 / 御本人の回答に応じてということでございます。
記者 / 文科省で調査、その後に尽くした上で総理の意向といったような文書が確認できた場合、内閣府ではそのようなことは言っていない、確認できないということを繰り返していますけれど、文科省側として内閣府側にも書かれた内容について事実関係を確認するようなお考えはありませんか。
大臣 / 今、調査を進めているところでございますので、その調査結果がまとまった時点で、それから中身に関しては今回の対象ではございませんので、それについての議論は、まず調査結果を終えてからということになるかと思いますし、他省庁に関しては、それぞれの御判断があるのだろうと。
記者 / 政府全体の問題だという、国家戦略特区自体が内閣府の管轄だということを文科大臣が繰り返しおっしゃっていますし、政府全体の問題と考えますけれども、その点、文科省側として訴えていくということはなさらないのでしょうか。
大臣 / 今、訴えていくという。
記者 / 調査を両方でやるべきではないかということは。
大臣 / 先ほど申し上げた通り、それぞれ、御判断があるのだろうと思います。文科省は、しっかりと丁寧にやっていくということでございます。
松野博一文部科学大臣 定例記者会見 6/16
大臣 / 前回調査は、民進党等から提示をされた9つの文書の確認を求められ、速やかに結論を得る必要があったことから、その時点でおいて、合理的な調査であったと考えております。しかしながら、追加調査に対する国民の多くの声が寄せられ、今回、徹底的な調査を行い、民進党等から提示された19の文書のうち、14の文書については存在を確認し、2つの文書については存在が確認できなかったとの調査結果を得たところであります。また、今回の追加調査にあたっては、通常、行政文書であっても、政策の意思形成過程に係るものであって、行政機関間の率直な意見交換が不当に損なわれる等のおそれがあるもの、個人のメモや備忘録については文書の公開はしないこととしていますけれども、今回の追加調査が、国民の声を真摯に受け止めて徹底した調査を行うという特例的な調査であることから、文書の存否やその内容について、通例とは異なる対応を行うこととしたものであります。結果として、前回調査の対象以外の共有フォルダにおいて文書の存在が確認をされる等、前回確認できなかった文書の存在が明らかになったことは、大変申し訳なく、私としても、この結果を真摯に受け止めているところであります。
記者 / 14の文書のうち、大臣ご指示事項という文書があったのですが、それについて、御自身でお話になった記憶があるかとか、紙について、お伺いします。
大臣 / 今から相当前のものでございますので、自分が話した内容が、全てあそこにあったとおりであったかどうかというのは、正直、記憶が確認できませんけれども、おそらく、多くの様々な事案に関して、指示、お話をした中で、聞き手の方が選択をして、あの字句を選んで残っているということではないかと思います。
記者 / 昨日の再調査で、獣医学部新設に関する条件に関して、萩生田官房副長官から修正の指示があったとされるメールが出てきましたが、それについて、大臣は御存じでしたか。
大臣 / いや、あの調査で初めて知りました。
記者 / そういった指示があったという報告も受けてない。
大臣 / 受けていません。なお、先ほどの大臣指示の文書に関して、あの文書全体が先ほど申し上げましたとおり、一字一句あのとおりであったかどうかについては確認できませんが、これは繰り返し申し上げているとおり、当時の問題意識として、設置審で審査を私たちはしなければなりません。その内容と、国家戦略特区の目標としての時期設定というのは、どういった関係にあったのかということを中心に、当時、問題意識を持っていたということは記憶をしております。 
■加計問題・山本地方創生相が官僚に責任なすりつける 6/16
 「文科省の出向者が、陰で隠れてご注進」 

 

国会会期末直前の6月16日、参院予算委員会では学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐる問題の集中審議が開かれた。
この日の審議では、萩生田官房副長官が加計学園に有利になるような条件を指示したとする内閣府から文科省に送られたメールについて、山本幸三・地方創生相が「(送信したのは)文科省から出向してきた人で、陰で隠れて本省の方にご注進したようなメール」と、官僚を非難するような発言をし、議場が紛糾する場面があった。
「総理のご意向」文書、文科省と内閣府で見解食い違う
内閣府が「総理のご意向」「官邸の最高レベル」などとして、文科省に対し早期開学を促していたとされる文書をめぐり、文科省と内閣府の見解が食い違っていることを受けて、野党側は山本幸三地方創生相や、萩生田光一・官房副長官を追及した。
文科省は15日、加計学園をめぐる文書が存在するか再調査した結果の結果、「総理のご意向」などと記された文書など14の文書を確認したと公表。「内閣府からそのような発言があった」と文科省職員が認識していたことを明らかにした。
さらに文科省は、国家戦略特区での獣医学部新設の事業者選定の要件について、萩生田光一・官房副長官が内閣府に対し、実質的に加計学園しか応募できなくなる要件を指示したとされるメールも公表した。
メールは2016年11月1日、内閣府の地方創生推進事務局から文科省の行政改革推進室に送信されたものだとされる。文面には「添付PDFの文案(手書き部分)で(選定要件を)直すように指示がありました。指示は藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです」と記されている。このメールから8日後、安倍政権の「国家戦略特区諮問会議」は、52年ぶりの獣医学部新設を可能とする決定を下した。
「藤原審議官」とは、内閣府で規制改革を担当する藤原豊審議官を指すものだとされる。「総理のご意向」「官邸の最高レベル」と発言したとされる人物だ。また、萩生田官房副長官は、落選中に加計学園系列の大学で客員教授を務め、報酬を得ていた。また、現在も系列大の「名誉客員教授」の肩書を持っている。
これに対し、山本地方創生相は、16日午前の記者会見で内閣府の調査結果を公表。関連する文書は「8種類あった」と明らかにした一方、「内閣府から文科省に、個別の項目や個別のプロジェクトについて『官邸の最高レベルが言っている』とか『総理のご意向』などと伝えた認識はなく、また総理からもそうした指示などは一切なかった」と話した。
藤原審議官「『総理のご意向』『官邸の最高レベル』と伝えていない」
文科省と内閣府、それぞれの調査結果に差異が見られることから、16日の参院予算委員会では野党が批判を強めた。質問に立った民進党の福山哲郎氏は、予算委員会に呼ばれた藤原審議官に対し「『総理のご意向』『官邸の最高レベル』と発言した記憶はあるか」と問うた。
藤原審議官は「文書やメールの有無にかかわらず、文科省の管理職との面談において、獣医学部新設という個別項目について、『官邸の最高レベルが言っている』『総理の意向と聞いている』と伝えた認識はない。総理からもそうした指示は一切ない」と、文科省の調査結果と食い違う証言をした。
萩生田・官房副長官「獣医学部新設要件の指示していない」
また福山氏は、萩生田官房副長官が内閣府に対し、実質的に加計学園しか応募できなくなる要件を指示したとされるメールについても追及した。
文科省が公表したメール文書では、「藤原審議官曰く、萩生田副長官の指示」などと記されていたことから、福山氏は藤原審議官に「要件の文案に手書きで手を加えてくれと萩生田副長官からの指示として、文科省にお願いしたことはあるか」と質問。
これに対し藤原審議官は「山本大臣が、文科省意見で指摘された日本獣医師会等の理解を得やすくする観点から、対象地域をより限定するご判断をされた。『広域的に限る』と追記するよう指示を受け、私が手書きで文案に修正を加えた」と説明し、萩生田副長官からの指示ではなかったとした。
その上で、「こうした一連の情報は直属の部下にしか伝えていない。本件メールの作成者、送信者は直接の部下ではなく、一切伝えていない」と、自身の関連を否定した。
福山氏は萩生田副長官にも「副長官からの指示と書かれているが、指示を出したのか」と質問したが、萩生田副長官は「とりまとめ文案に私が修正の指示をしたことはまったくない。昨日文科省が公表したメールにはたいへん戸惑いを感じている」と自らの関与を否定。文科省の再調査結果に疑問を呈した。
山本地方創生相「陰で隠れてご注進したメール」 野党は猛反発
萩生田副長官が指示したとされるメールについては、山本地方創生相も答弁に立った。ところが、「(メールの作成者は)文科省から出向してきた人で、まあ不適切なことでありますが、陰で隠れて本省の方にご注進したようなメールだ」と、職員を非難する発言をした。これには野党側が反発し、「えー!?」という声が一斉に上がり、議場が紛糾した。
福山氏は「安倍政権は何か起きると、必ず役人のせいにして責任を押し付ける。森友のときの財務省も気の毒だったが、文科省も内閣府も気の毒だ」と強く批判した。 
■内閣府が発表「“官邸の最高レベル”文書確認できず」 6/16
内閣府は学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり改めて調査した結果、「官邸の最高レベルが言っている」などと記された文書は確認できなかった一方、獣医学部の新設に関わっていない職員が作成した、萩生田官房副長官の関与を指摘するメールなどを確認したことを明らかにしました。
内閣府は16日午後、記者会見を開き、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐって、関係する9人の職員を対象に行ったヒアリングと、関係部署の共有フォルダや9人の職員個人のフォルダを対象に改めて行った調査の結果を公表しました。
それによりますと、文部科学省の調査で確認された14の文書などのうち、「官邸の最高レベルが言っている」、「総理のご意向」などと記された文書は内閣府では確認できなかったとしています。
一方、萩生田官房副長官の関与を指摘するメールや、「獣医師系養成大学等のない地域において」としていた新設の条件を、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」と修正される過程で作成された文書など4種類が含まれていました。
このうち萩生田官房副長官の関与を指摘するメールについて、メールの作成者は、獣医学部の新設に関わっておらず、ヒアリングに対し、「あいまいな内容を事実関係を確認しないまま送信してしまった」と話しているとしています。
このほか、このメールに添付されるなどしていた4種類の文書も新たに確認できたとしています。この中には、国家戦略特区諮問会議の作業チームの委員が文部科学省に対し、獣医師の需給見通しなどを説明するよう求めた記録などが含まれていました。
文科省職員 内閣府調査に批判
文部科学省の現役の職員からは内閣府の調査結果に対して、「客観的な資料を基に説明責任を果たすべきだ」と批判する声も上がっています。
職員の1人は「内閣府の説明は非常にあいまいで、文部科学省の文書が間違っているような言い方だ。打ち合わせがあったかさえ確認できないというのは、あまりに不誠実だ」と話しています。
別の職員は「内閣府は、都合の悪い部分を隠しているようにしか思えない。真相解明にはほど遠い」と述べています。
また別の職員は「文部科学省がメモを踏まえて主張している以上、内閣府も客観的な資料を基に説明責任を果たすべきだ」と話しています。
省庁間協議は文書作成が必要
文部科学省は去年9月26日に内閣府の藤原審議官らとの間で行ったとする打ち合わせについて職員が概要をまとめたとする文書を作成していて、この中には内閣府側の発言とされる「官邸の最高レベルが言っている」という記述があります。一方、内閣府は調査結果でこうした発言を否定しましたが、この打ち合わせに関する記録は内閣府側にはないということです。16日の参議院予算委員会で山本地方創生担当大臣は「今回調査したところそういう文書は残っていません」と述べ、内閣府の藤原審議官も「記録等はございません」と述べました。
記録がないことについて内閣府は「関係省庁などとの打ち合わせが極めて多く多忙であることなどが要因だと受け止めている」と説明しています。
しかし、こうした複数の行政機関の間で行われる協議の記録について公文書管理法は、第4条で事案が軽微なものを除いて「申合せや他の行政機関などに示す基準の設定及びその経緯について文書を作成しなければならない」と定めています。また内閣府が作成したこの条文について解説している公文書管理法のガイドラインでは、「行政機関の間でなされた協議を外部から事後的に検証できるようにすることが必要であることから、文書の作成が必要である」と明記しています。 
■文部科学省と内閣府の調査結果に食い違い 6/16
加計学園の文書をめぐり、内閣府が公表した調査結果と15日文部科学省が公表した調査結果はその内容に食い違いが見られます。
「官邸の最高レベル…」の文章
その1つが「藤原内閣府審議官との打ち合わせ概要(獣医学部新設)」と書かれた文書についてです。文書によりますと、打ち合わせは平成28年9月26日に開かれました。内閣府側と文部科学省側からそれぞれ2人ずつの出席者の名前が書かれています。そこには、内閣府の幹部が「官邸の最高レベルが言っている」とか「できない選択肢はなく、早くやらないと責任をとることになる」と文部科学省の担当者に伝えたと記されています。
このやり取りについて文部科学省は職員から聞き取りをした結果として、「その真意はわからない」としたうえで、「官邸の最高レベルが言っているという発言は文書に記載されている以上、あったのだと思う」と発言があったことを認めました。
残されたメールなどから、去年9月26日の打ち合わせは「永田町合同庁舎7階特別会議室」で行われたことがわかっています。打ち合わせは、内閣府の藤原審議官が文部科学省の担当課に持ちかける形で開かれました。当時のメールには、「きょうかあすのどこでも面会できる。時間帯を教えてほしい」とか、「藤原審議官としてはできれば本日中に話をしたいと思っている」などと記されています。
内閣府の藤原審議官との打ち合わせに出席した文部科学省の専門教育課の課長はNHKの取材に対して、「音声データがあるわけではないが、メモに書かれている内容は正しいと思う。内閣府側の主な発言は藤原審議官がしていた。『官邸の最高レベルが言っている』という文言は定かでないが、極めて激しい口調で判断を迫られた記憶はある」と話していました。
これに対し内閣府は実際の出席者が記載された人たちと違うなど正確性に疑問があるとしています。さらに打ち合わせの時期についても具体的な日時は不明とし、「官邸の最高レベルが言っている」という発言はヒアリングの対象者すべてが「聞いた記憶がない」と否定しました。その一方、打ち合わせについて内閣府側のメモはないとしたうえで、省庁や自治体との打ち合わせが極めて多く多忙であることを理由に挙げています。
獣医学部の新設 条件記載の文書
また去年11月9日に国家戦略特区のもと、獣医学部の新設が決まった際につけられた条件を記載した文書についても見解が分かれています。文部科学省が作成した原文には「現在、獣医師系養成大学等のない地域において獣医学部の新設を可能とする」などと書かれていましたが、この原文に「広域的に」、「存在し」、「限り」という3つの文言が手書きで挿入されています。去年11月9日の最終的な文書にはこの修正が反映され「現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」となりました。この結果当時、今治市と同様に獣医学部の新設を計画していた京都府は隣の大阪府立大学に獣医系の学部があるため、条件を満たさなくなりました。
この修正の指示について文部科学省が公表した内閣府から送られてきたというメールには、「藤原審議官いわく、官邸の萩生田副長官からあったようです」と記されています。
これに対して内閣府はこのメールを作成した職員について、直接の担当者ではなく伝え聞いた内容であり、事実関係を確認しないままメールを発信したことを認めたと公表しました。さらに文書の修正は萩生田副長官からの指示でなく、内閣府の山本大臣が「広域的」などの文言を追加するよう藤原審議官に指示をして、修正を施したと説明しました。
萩生田官房副長官は総理大臣官邸で記者団に対し、みずからの関与を指摘するメールについて、「メールを作成した担当者は国家戦略特区の担当ではなく、たまたまほかの人に聞いたもので、藤原審議官からも直接聞いてない。伝聞の伝聞の伝聞をそのまま親元である文部科学省にメールしたということだ。事実関係は十分承知しないまま発信してしまったことを本人も認めている。私が指示をした事実は全くない」と述べました。
官房長官「違いあるのが自然」
菅官房長官は午後の記者会見で、文部科学省と内閣府の調査結果に違いがあることについて、「違いがあるのが自然ではないか。お互いに激しいやりとりをしているわけで、客観的ではなく、それぞれ主観的に考えていることではないかなと思う。両者で署名した文書でもない」と述べました。また菅官房長官は、記者団が違いを埋める調査を行う考えがあるか質問したのに対し、「それぞれの役所が調査したのだから、それは無いと思う。違う点はそれぞれがお互いに主張し合った部分だろうから」と述べました。さらに菅官房長官は内閣府での文書の保管のあり方について、「必要な書類は残してある。法的に必要とされるものは、国家公務員だから法律に基づいて行っていることは事実ではないか」と述べました。
専門家「記録なしでは説得力なし」
内閣府が公表した調査結果について、東京のNPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、「何にも記録がないのに『担当者がそう言っている』というだけでは説得力がない。そういう主張だとどっちを信じるかという主観的な話になってしまう。国会は政府に対する不信感が払拭されないまま終わってしまった」と話しています。
そして文部科学省と内閣府の調査に食い違いが出ていることについて「どちらも当事者で、その当事者が調査しても国民の納得を得られにくい。本来であれば独立した第三者的な調査が望ましい」と述べ第三者による調査を行う必要性を指摘しました。 
 
「ドリルの刃となって岩盤規制を打ち破っていく」 6/19

 

安倍晋三首相は19日、通常国会閉幕を受けて首相官邸で記者会見した。会見の詳報は次の通り。

「昨日、通常国会が閉会しました。4年前、政権奪還後の最初の通常国会において私は『建設的な議論を行い、結果を出していこう』。こう各党、各会派に呼びかけました。その原点はいまなお、変わることはありません。しかし、この国会では建設的議論という言葉からは大きくかけ離れた批判の応酬に終始してしまった。政策とは関係ない議論ばかりに多くの審議時間が割かれてしまいました。国民のみなさまに大変申し訳なく感じております。印象操作のような議論に対して、つい強い口調で反応してしまう。そうした私の姿勢が結果として政策論争以外の話を盛り上げてしまった。深く反省しております」
「また、国家戦略特区をめぐる省庁間のやりとりについて先週、文部科学省が徹底的な追加調査を行った結果、新しく見つかったものも含め文書を公開しました。これを受け、内閣府の調査も行い、関係する文書などを明らかにしました。しかし、最初に調査した段階では、それらの存在を確認できなかった。二転三転した形となり、長い時間がかかることとなりました。こうした対応が国民の皆様の政府への不信を招いたことは率直に認めなければなりません。『信なくば立たず』であります。何か指摘があればその都度、真摯(しんし)に説明責任を果たしていく。先週も調査結果の発表後に予算委員会の集中審議に出席いたしましたが、4年前の原点にもう一度立ち返り、建設的な議論を行い、結果を出していく。そうした政治が実現するよう政権与党としての責任を果たしてまいります。国民の皆様から信頼が得られるよう、冷静に一つ一つ丁寧に説明する努力を積み重ねていかなければならない。その決意をこの国会の閉会にあたって新たにしております」
「今月もイギリスで、フランスで、そしてイランでテロ事件が発生しました。テロの恐怖は世界に拡散しています。こうした時代に東京オリンピック、パラリンピックを3年後に控えるわが国にとって、テロ対策の強化は待ったなしであります。テロを未然に防止するため、国際組織犯罪防止条約を締結し、国際社会と連携を強めていく。今回、成立したテロ等準備罪処罰法はそのために必要なものであります。今後、通常国会での審議、さまざまなご指摘などをしっかりと踏まえながら、本法を適正に運用し、国民の生命と財産を守る。そのことに万全を期してまいります」
「天皇の退位等に関する皇室典範特例法が成立しました。国民のみなさまの理解のもと、衆参両院の議長、副議長をはじめ与野党の枠を超えたご協力をいただきましたことに改めてお礼を申し上げます。今国会では150日にわたった会期の間に政府が提出した、ほぼすべて60本以上の法律が成立しました。民法、刑法について、それぞれの分野で1世紀ぶりとなる歴史的な改正が行われました。衆議院の区割り法も成立し、一票の格差を是正するとともに、かねてからお約束していた衆議院定数の10削減が実現いたします。改正福島復興特措法のもと、原発事故により大きな被害を受けた福島の生業の復興をさらに加速してまいります。雇用保険法を改正し、4月から雇用保険料率の引き下げを行いました。中小・小規模事業者の皆さんの負担を軽減します。合わせて、本年の春闘では、高い水準の賃上げが4年連続で是正していますが、これと相まって働く皆さんのさらなる手取りアップを図ります」
「現在、有効求人倍率はバブル時代をも上回る極めて高い水準にあります。この春、高校や大学を卒業した皆さんの98%が無事就職を果たし、社会人人生をスタートさせました。これは調査開始以来、最も高い水準であります。雇用を増やし、所得を増やす。経済の好循環をさらに力強く回転させていくため、これからも安倍内閣は経済最優先で取り組んでまいります。その鍵は成長戦略の実行、構造改革の断行にかかっています。今国会では、全農改革や酪農改革など8本におよぶ農政改革関連法のすべてが成立しました。農業を魅力ある成長分野に変え、農家の所得アップを実現する。若者が夢や未来を託すことできる農政新時代を切り開いて参ります」
「岩盤のように硬い規制や制度に風穴をあける。国家戦略特区法の改正案も成立しました。これまでこの制度を活用して、長年認められてこなかった一般企業による農地取得や、学校教育に民間の知恵を取り入れる公設民営学校も解禁しました。千葉県の成田市では国際的な医療人材の育成を目指し、38年ぶりの医学部新設が実現しました。国会終盤では、国家戦略特区における獣医学部新設について、行政がゆがめられたかをどうかをめぐり、大きな議論となりました。獣医学部はこの50年以上、新設が全く認められてきませんでした。しかし今、鳥インフルエンザ、口蹄(こうてい)疫など、動物から動物、さらには動物から人にうつるかもしれない伝染病が大きな問題になっています。専門家の育成、公務員獣医師の確保は喫緊の課題であります。そうした時代のニーズに応える規制改革は、行政をゆがめるのではなく、ゆがんだ行政を正すものです。岩盤規制改革を全体としてスピード感をもって進めることは、まさに総理大臣としての私の意思であります。当然、その決定プロセスは適正でなければなりません。ですから、国家戦略特区は民間メンバーが入り、諮問会議や専門家を交えたワーキンググループにおいて議論を進め、決定されていきます。議事はすべて公開しています。むしろ、そうした透明で公平公正なプロセスこそが内向きの議論を排除し、既得権でがんじがらめとなった岩盤規制を打ち破る大きな力となる。これが国家戦略特区であります。半世紀ぶりの獣医学部新設についても、審議に携わった民間議員の皆さんは『プロセスに一点の曇りもない』と断言されています。まさに岩盤規制改革の突破口です。しかし、この特区制度について、この国会では民進党の皆さんから、制度自体を停止する法案が提出されました。改革を後退させようとする発想であり、誠に残念でなりません。岩盤規制の改革には抵抗勢力が必ず存在します。しかし私は絶対に屈しません。既得権と手を結ぶことも決してありません。今後とも総理大臣である私が先頭に立ち、ドリルの刃となってあらゆる岩盤規制を打ち破っていく、その決意であります」
「この国会では、長年実現してこなかった返還不要、給付型の奨学金制度を新しく創設する法律も成立しました。児童養護施設や里親の下で育った子どもたちなど、経済的に、特に厳しい学生を対象に既に運用を開始しています。子どもたちこそ、わが国の未来であります。この通常国会はまさに未来を開く国会となりました。どんなに貧しい家庭に育っても、希望すれば高校にも専修学校、大学にも進学できる。子供たちの誰もが夢に向かって頑張ることができる日本でなければなりません。そして、若者もお年寄りも女性も男性も、障害や難病のある方も、一度失敗を経験した人も、誰もが生きがいを感じ、その能力を思う存分発揮することができる1億総活躍の日本を作り上げていかなければなりません。その本丸は、あらゆる人にチャンスを作ることであります。家庭の経済事情にかかわらず、高等教育を全ての子供たちに真に開かれたものにしていく。リカレント教育を抜本的に拡充し、生涯にわたって学び直しと新しいチャレンジの機会を確保する。これらに応えるため、当然、大学のあり方も変わらなくてはなりません。人づくりこそ次なる時代を切り開く原動力であります。これまでの画一的な発想にとらわれない人づくり革命を断行し、日本が誰にでもチャンスがあふれる国に変えていく。そのエンジンとなる有識者会議をこの夏立ち上げます。いわば『みんなにチャンス! 構想会議』であります。そのための体制を来月中に整えます。憲法施行70年の節目である本年、次なる70年、その先の未来をしっかりと見据えながら、人づくり革命の実現に向けて、総合的かつ大胆な戦略を構想したいと考えています」
「2週間後にはドイツで20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)が開催されます。米国、EUのほか中国、ロシア、韓国など主要国の首脳が集まる。この機会を活用して積極的な首脳外交を展開したいと考えています。挑発をエスカレートさせる北朝鮮問題について、日米韓のがっちりとしたスクラムを確認したい。そして来るべき日中韓サミットの開催に向けて準備を本格化してまいります。課題山積ではありますが、内政に外交にさらに気を引き締めて全力投球して参りますので、国民の皆様方のご理解とご支援をお願い申し上げます。私からは以上であります」
−−通常国会は加計学園と森友学園をめぐる問題の論戦に注目が集まったが、説明責任は十分果たされたという認識か。テロ等準備罪を新設する改正組織犯罪処罰法の審議は「中間報告」という異例の手法を用いて成立させた。国民の不安払拭に向け、どう説明を果たしていく考えか
「今、ご指摘いただいた問題については、国会において、政府として説明を重ねてきたところでありますが、残念ながら必ずしも国民的な理解を得ることはできていない。率直にそのことは認めなければならないと考えています。テロ等準備罪処罰法は、テロ対策について国際的な連携を強化していく上において不可欠な法律だと考えておりますが、依然として国民のみなさまの中に不安や懸念を持たれる方がおられることは承知しております。しかし、改めてこの機会にもう一度私からはっきりと申し上げておきたいことは、一般の方が処罰の対象となることはない。そしてまた、一般の方が被疑者として捜査の対象となることはない、ということは改めてはっきりと国民のみなさまに申し上げておきたいと思います。これらの法律を実施していくにあたって、国会でのご議論などを踏まえて適正な運用に努めて参ります。適正に運用していく中において、今、私が申し上げたことについて、われわれの申し上げていることは間違いなかったと確信していただける、こう思っています。国民の命と財産を守るための法律であります。国民の命と財産を守るために万全を期していく考えであります」
「また、森友学園への国有地の売却についてはすでに会計検査院が検査に着手しており、政府としては全面的に協力して参ります。国家戦略特区における獣医学部の新設につきましては、文書の問題をめぐって対応が二転三転し、国民のみなさまの政府に対する不信を招いたことについては率直に反省しなければならないと考えています。今後、何か指摘があれば、政府としてはその都度、真摯に説明責任を果たして参ります。国会の開会、閉会にかかわらず、政府としては今後ともわかりやすく説明していく、その努力を積み重ねていく考えです。今国会の論戦の反省の上に立って国民の皆さまの信頼を得ることができるように、冷静に、そして分かりやすく、一つ一つ丁寧に説明していきたいと思います」
安倍首相は「反省」などしていない! 6/19
 嘘、スリカエ、責任転嫁、ごまかし…醜悪すぎる会見内容を徹底検証
安倍首相が本日18時から記者会見を行ったが、その中身は、本サイトが予想していた通り、嘘、インチキ、話のスリカエ、責任転嫁、ごまかしだらけの、最悪なシロモノだった。
それは冒頭からいきなり始まった。安倍首相は閉会した国会を総括するなかで、こんなことを言い出したのだ。
「建設的議論という言葉からはかけ離れた批判の応酬に終始してしまった。政策とは関係ない議論ばかりに多くの審議時間が割かれてしまった」
「印象操作のような議論に対して、つい強い口調で反応してしまう、そうした私の姿勢が結果として政策論争以外の話を盛り上げてしまった。深く反省している」
ニュース番組などでは「総理『深く反省』」などとテロップを打っていたが、一体この言葉のどこが反省しているというのか。
だいたい建設的議論を阻んだのは、共謀罪で二転三転するでたらめ答弁を続け、中間報告という禁じ手で強行採決をした安倍首相と自民党だろう。
「批判の応酬」になったのもそうだ。お前の妻が国有地の不正な売買にかかわったり「腹心の友」に便宜を図っていた事実があきらかになったのに、真相の追及に対して「妻は私人」だの「職員が勝手にやった」だの、説明責任をハナから放り出して見苦しい開き直りに終始したから、真相解明ができなかったのではないか。
挙げ句、この期に及んでも、そうした追及を「印象操作」だと片づけ、あたかも自分が被害者であるかのように振る舞うのだから開いた口がふさがらない。こういう行いを「印象操作」と呼ぶのだ。
「みんなにチャンス!構想会議」でお友だちにチャンスを狙う?
また、安倍首相は「先週も調査結果の発表後に予算委員会の集中審議に出席した」と得意気に胸を張り、「何か指摘があれば、その都度、真摯に説明責任を果たしていく」などと宣言していたが、冗談も休み休み言ってほしい。
「集中審議に出席した」と言っても、たったの3時間。しかも、側近中の側近である萩生田光一官房副長官が獣医学部新設に直接関与していた証拠まで明らかになったのに、それを一切認めようとせず、文科省から出向中の内閣府職員にすべての罪を着せ続けただけだった。
「真摯に説明責任を果たす」というのなら、昭恵夫人や前川喜平・前文部科学事務次官らの証人喚問にすぐに応じればよかったではないか。今からでも、こんな記者会見などではなく会期延長や閉会中審査に応じればいい。
だが、安倍首相はそういう説明責任への具体的な姿勢は口が裂けても口にしなかった。かわりに、連呼したのが、例の「岩盤規制」だった。加計学園だけに獣医学部新設させたことを「岩盤規制の改革」だと主張し、民進党を“抵抗勢力”呼ばわり。「既得権と手を結ぶことも決してない」「私は絶対に屈しません」「今後も総理の私が先頭に立ってドリルの刃となってあらゆる岩盤規制を打ち破っていく」と宣言したのだ。
しかし、これらがまったくの嘘だというのは、内閣府の文科省に対する圧力文書や京都産業大学外しの経緯でとっくに明らかになっている。その説明すらせずに、空疎なスローガンをいくら連発しても「これからも私物化していくんでヨロシク」という宣言にしか聞こえない。
しかも、安倍首相はいつものパターンで、自分の責任を棚上げしたあとは、「有効求人倍率はバブル期以上」「長年、実現してこなかった返還不要の給付型奨学金制度を創設する法律も成立」などと成果のアピールに勤しんだ。
しかし、有効求人倍率が高いのは人口減で求職者が減っているのと、非正規社員が増えているせい。個人消費も実質賃金も上がっておらず、これで景気回復を謳うのはまったくのフェイクだ。給付型奨学金もまた世界的に見れば当然の話で、安倍首相は会見で「どんなに貧しい家庭に育っても高校にも大学にも進学できるように」などと宣ったが、高校の授業料無償化制度を廃止した当人がよく言うよ、と突っ込まざるを得ない。
おまけに、安倍首相はこの夏から「みんなにチャンス!構想会議」というワケのわからない有識者会議を立ち上げるとし、相も変わらず「改革者」虚像を自ら振りまいたのだ。おそらく、かなりの数の国民が、「それって、また自分のお友だちにチャンスを与えるんだろ」と突っ込んだのではないか。
安倍首相を追及しなかったマスコミ 質問者はあらかじめ決まっていた?
しかも、きょうの会見でもうひとつ、怒りが湧き上がってきたのは、マスコミの姿勢だった。
実は、会見前は一縷の望みを抱いていた。先日の菅義偉官房長官の会見のように、今回ばかりは記者が質問で安倍首相のインチキを徹底追及してくれるのではないか、と。実際、加計学園問題のみならず、共謀罪法案を中間報告で押し通すという暴力的な国会運営など、いくらでも追及の材料はあった。
だが、質疑応答でも、森友・加計学園問題や共謀罪について安倍首相は淡々とあらかじめ用意されたであろう回答を読み上げるだけ。何度も食い下がるような質問はなく、東京都議選や自民党人事、内閣改造、日露関係といった「国民の疑問」とは遠くかけ離れたテーマばかり。しかも、安倍首相は共謀罪の質問に対し、「一般の方が処罰の対象となることはない」と、国会議論とは食い違う大嘘まで吐いたのに、それを追及する声はひとつも出なかった。
また、質問者も、幹事社である毎日新聞とTBS以外で、指名されたのはロイター、NHK、日本経済新聞、フジテレビのみ。菅官房長官を追い詰めた東京新聞社会部の望月衣塑子記者も会見場にいたようだが、どうやらあらかじめ質問者は決まっていたのだろう。
共謀罪法案をはじめロクに国会中継しないNHKはきょうの会見を生中継し、スタジオでは岩田明子記者が解説という名の擁護を垂れ流したが、それも全部シナリオ通り。都合の悪い質問をあらかじめ排除する安倍首相は、批判的な記者を締め出すトランプ大統領と同じだが、日本が絶望的なのは、記者側がそれを受け入れ“共謀”していることだ。
そういう意味では、今回の会見は何から何まで茶番だったといえるだろう。向けられた疑惑の目に向かい合わないばかりか、「建設的議論ができなかったのは印象操作をする野党のせい」などと真っ赤な嘘で他人のせいにしつづける安倍首相。それをきちんと追及することもできず、シナリオ通りにその言い分を垂れ流すマスコミ。
各社世論調査の支持率低下、さらにほとんどの調査で不支持の理由のトップが「首相が信頼できない」だったことをみてもわかるように、国民はこの間の安倍政治と安倍首相の不正に対してこれまでになく不信感を強めている。
しかし、こんなことを許していたら、いつのまにか、安倍政権はその狡猾な情報操作によって、支持率を復活させ、私物化と不正を繰り返すだろう。そうならないためにも、マスコミは今度こそ安倍官邸に尻尾をふる体質を断ち切って、国民の側に立った報道をすべきではないのか。 
 
文部科学相 “萩生田副長官と局長面会時の文書存在” 6/20

 

松野文部科学大臣は、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、萩生田官房副長官が文部科学省の局長と面会した際の発言をまとめたとされる文書が、省内で新たに見つかったことを明らかにしました。
学校法人「加計学園」の獣医学部の新設をめぐって、文部科学省は今月15日、追加調査の結果、「総理のご意向」などと記された14の文書の存在が確認できたことを明らかにしています。
こうした中、松野文部科学大臣は20日、閣議のあとの記者会見で、これらの文書とは別に、加計学園が獣医学部新設の事業者に選定される3か月前の去年10月に、萩生田官房副長官が文部科学省の局長と面会し、官邸や内閣府の考えを伝えた際の発言をまとめたとされる文書が省内で見つかったことを明らかにしました。
文書に記された内容について、松野大臣は、「10月21日に、高等教育局長が萩生田官房副長官に対し、国家戦略特区における獣医学部の新設問題の課題や調整状況について説明し、相談をしていた」と述べ、面会の事実を認めました。
そのうえで、松野大臣は、「確認された文書は、専門教育課の担当官が、高等教育局長から説明を受けて萩生田副長官の発言や高等教育局長が行った説明内容に、関係者から聴取した周辺情報等を補足して取りまとめた。高等教育局長の確認を受けておらず、萩生田副長官の発言ではないことも含まれているとの報告を受けている」と述べました。
さらに、松野大臣は、「萩生田副長官に確認したところ、総理が具体的な開学の時期を示したなどとする発言はしていないということだった。また、高等教育局長からも、副長官から指示があったということではないとの報告を受けている」と述べました。
新文書の内容は
文部科学省が20日、公表した新たな文書はNHKが独自に入手し、19日夜、その内容を報じました。
文書は、国家戦略特区で加計学園が獣医学部新設の事業者に選定される3か月前の去年10月21日、萩生田官房副長官が文部科学省の局長と面会し官邸や内閣府の考えを伝えた発言をまとめたとするものです。
NHKの取材でこの文書は省内の3つの部署のおよそ10人の職員にメールなどで共有され保管されていたことがわかっています。
文書には、萩生田官房副長官が「加計学園」の名前を挙げたうえで、内閣府、そして総理補佐官と相談した結果として、四国で獣医学部新設が認められるようにするため、ハイレベルな伝染病実験ができる研究施設や、既存の大学を上回る教授の数が必要とするなど、具体的な指示を出したと記されています。
そして、「官邸は絶対やると言っている」、「総理は平成30年4月開学とおしりを切っていた」などと文部科学省に具体的な時期を示して、新設を認めるよう求める発言をしたと記されています。
さらに、文書の後半には、「加計学園の事務局長を文部科学省の課長のところに行かせる」という発言があったと記されています。
新文書 全文
文部科学省が20日、公表した新たな文書の全文は以下のとおりです。
「10/21萩生田副長官ご発言概要」として以下の内容が書かれています。
○(11月にも国家戦略特区諮問会議で獣医学部新設を含む規制改革事項の決定がなされる可能性をお伝えし、)そう聞いている。
○内閣府や和泉総理補佐官と話した。(和泉補佐官が)農水省とも話し、以下3点で、畜産やペットの獣医師養成とは差別化できると判断した。
1.ライフサイエンスの観点で、ハイレベルな伝染病実験ができる研究施設を備えること。また、国際機関(国際獣疫事務局(OIE)?)が四国に設置することを評価している、と聞いたので、その評価していることを示すものを出してもらおうと思っている。
2.既存大学を上回る教授数(72名)とカリキュラムの中身を増やすこと。また、愛媛大学の応用生物化学と連携するとのこと。
3.四国は水産業が盛んであるので、魚病に特化した研究を行うとのこと。
○一方で、愛媛県は、ハイレベルな獣医師を養成されてもうれしくない、既存の獣医師も育成してほしい、と言っているので、2層構造にする。
○和泉補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている、何が問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。官邸は絶対やると言っている。
○総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた。工期は24ヶ月でやる。今年11月には方針を決めたいとのことだった。
○そうなると平成29年3月に設置申請をする必要がある。「ハイレベルな教授陣」とはどういう人がいるのか、普通の獣医師しか育成できませんでした、となると問題。特区でやるべきと納得されるような光るものでないと。できなかったではすまない。ただ、そこは自信ありそうだった。
○何が問題なのか、書き出して欲しい。その上で、渡邊加計学園事務局長を浅野課長のところにいかせる。
○農水省が獣医師会押さえないとね。
新文書 その意味は
萩生田官房副長官が文部科学省の局長と面会し、官邸や内閣府の考えを伝えた発言をまとめたとするこの文書。
面会した日付は去年10月21日と記されています。
事業者が加計学園に決まる3か月前で、国家戦略特区諮問会議が獣医学部新設を決定する11月9日の20日近く前でした。
しかし、文書には、この時点で「加計学園」の名前が記されていました。
そして、開学の時期を「平成30年4月」と区切り、文部科学省に早く新設を認めるよう求める内容となっています。
また、文書には、萩生田官房副長官が文部科学省に対して、今治市のある四国で獣医学部を新設する条件をクリアするための具体的なアドバイスをしたと記されていました。
さらに、文書の後半には、「加計学園の事務局長を文部科学省の課長のところに行かせる」という発言があったと記されています。
NHKの取材では、実際に、この6日後、加計学園の事務局長が文部科学省の担当職員と会っていたことが明らかになっています。
「説明には不自然な点が多い」
文部科学省が20日、存在を認めた新たな文書について現役の職員からは、「説明には不自然な点が多く、事実をしっかり解明すべきだ」という声があがっています。
職員の1人は、「萩生田官房副長官に面会した局長や文書を作成した職員はいずれも記憶があいまいで文書の内容は不正確だと説明しているというが、私たちは内容を忘れないため記録に残しており、事実と受け止めるのが当然だ。文部科学省は当時の経緯について事実を解明し、納得できる説明をするべきだ」と話しています。
また、別の職員は「省内では加計学園ありきで話が進んでいたことは、共通認識だったので、文書の内容に驚きはない。萩生田官房副長官の発言以外がメモに書かれているという説明は不自然で理解できず、再び国民からの批判を招きかねないものだ」と話しています。
官房長官「問題あれば説明責任果たす」
菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、「萩生田官房副長官からは『文書のような発言はなかった』と報告を受けている。今回の獣医学部の新設は、特区の指定、規制改革項目の追加、事業者の選定のいずれのプロセスも国家戦略特区法等の関係法令に基づいて適切に実施されており、圧力が働いたり、行政がゆがめられたことは一切ない」と述べました。
そのうえで、菅官房長官は、記者団から、政府内で意見の違いがあることを踏まえて第三者による調査が必要ではないかと指摘されたのに対し、「それぞれの調査は大臣が責任を持って行い、その結果を国会でも述べている。新たに説明すべき問題があればそのつど真摯(しんし)に説明責任を果たしていきたい」と述べました。
また菅官房長官は、記者団が、この問題で安倍総理大臣が改めて記者会見を行う必要性はないか質問したのに対し、「安倍総理大臣は全く関与していないと明快に申し上げているので、それはない」と述べました。
地方創生相「内閣府の問題ではない」
国家戦略特区を担当している山本地方創生担当大臣は、閣議のあとの記者会見で、「きのう新しい文書という報道がなされたことは承知しているが、資料は文部科学省から入手したという内容だったと聞いているので内閣府の問題ではないと考えている」と述べました。
そのうえで、山本大臣は、内閣府で再調査などを行う考えがあるか質問されたのに対し、「文書をよく見て、それから検討する」と述べました。
一方、山本大臣は、先の、文部科学省の追加調査で見つかった萩生田副長官の関与を指摘するメールをめぐり、先の国会で、「文部科学省から内閣府に出向してきた職員が陰に隠れて本省に注進していた」などと述べたことについて、「言いすぎだったと反省している。職員には電話で『ちょっと言いすぎたので申し訳なかった』ということは申し上げた」と述べました。
自民 二階氏「いろいろな場面で説明を」
自民党の二階幹事長は、記者会見で、「関係者が、まだ理解が深まっていないと判断すれば、重ねて、いろいろな場面で説明すればいい。われわれから『説明せよ』とか言うつもりはない」と述べました。
民進 大串氏「どちらかがうそ」
民進党の大串政務調査会長は記者会見で、「文部科学省の文書があったということと、萩生田官房副長官の『書かれているようなことはなかった』ということは、どちらかがうそをついているということだ。方法はただ1つで、しかるべき人々に国会の場に来てもらい、予算委員会の集中審議や文部科学委員会などを開いて、証人喚問も実施し、真実をはっきりさせるべきだ。これすら拒むのであれば、安倍総理大臣が『丁寧な説明をする』と言ったことは、うそだったということになる」と述べました。
共産 志位氏「極めて重大な疑惑」
共産党の志位委員長は日本外国特派員協会での記者会見で、「事業者が決まる3か月も前に、萩生田官房副長官が、『加計学園』と具体的な名前を出して指示を出していたのではないかという極めて重大な文書だ。萩生田氏は予算委員会で、『指示を出したことは一切ない』と答弁したが、深く関与していたのではないか、答弁は虚偽だったのではないか、極めて重大な疑惑が持ち上がってきた。野党4党で結束し、真相究明のために力を尽くしたい」と述べました。 
■加計学園 文科省新文書「萩生田副長官に聞いて」 文科相、あいまい説明 6/20 
「官邸は絶対やると言っている」−。学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設計画を巡り、官邸サイドが文部科学省に早期開設を迫っていたことをうかがわせる新たな文書が確認された。しかし、内容の真偽について松野博一文科相は二十日の会見で「内容については萩生田(はぎうだ)(光一)官房副長官に聞いてほしい」と歯切れの悪い説明にとどまった。
文科省は十九日夜に文書について報道されたことを受けて調査。獣医学部を担当する専門教育課の共有フォルダーの中に同一の文書があるのを確認。同課長補佐が作成し、関係する三部署の六〜七人でメールで共有していたという。
文書を作成した職員に聞き取りを行った結果として、「萩生田官房副長官との会合に出席した常盤豊高等教育局長から内容について説明を受けたものに本人が関係者から収集した周辺情報を加えて備忘録として作成した」と説明。常盤局長は「詳細な記憶がない」などと話しているという。
一方で、同省は萩生田氏にも電話で内容を確認したとして、「総理は『平成三十年四月開学』とおしりを切っていた」などの点について、「萩生田副長官は発言を否定している」と説明した。
松野氏は、記者から「事業者が決まっていない段階で加計学園を前提としていたのではないか」と問われると、「内容に関しては私が言及できることではない。ご本人(萩生田氏)から聞いてほしい」と回答した。 
■萩生田官房副長官 “不正確な文書が流出 強い憤り” 6/20 
萩生田官房副長官は、学校法人「加計学園」の獣医学部の新設をめぐり、みずからの関与をうかがわせる新たな文書が確認されたことを受けてコメントを発表し、文部科学省から不確かな情報を混在させた個人メモだという説明があったとしたうえで、不正確なものが外部に流出したことに強い憤りを感じるとしています。
学校法人「加計学園」の獣医学部の新設をめぐって、文部科学省は、追加調査で確認された文書とは別に、萩生田官房副長官から新設を容認するよう求められたなどととした内容が記載された新たな文書が省内で見つかったことを明らかにしました。
これを受けて、萩生田副長官は20日午後、コメントを発表し、文部科学省から「文書は一担当者が伝聞など不確かな情報を混在させて作った個人メモであり、直属の上司である高等教育局長のチェックを受けていないなど著しく正確性を欠いたものだ」とする説明と謝罪があったことを明らかにしました。
そのうえで、獣医学部の新設について、文部科学省などから報告を受け、気づいた点を指摘することはあったが、具体的な指示や調整を行ったことはないとしています。
また、「総理は平成30年4月開学とおしりを切っていた」などと発言したと記されていることについて、「安倍総理大臣からいかなる指示も受けたことはなく、具体的に開学時期の指示をしていない」と事実関係を否定しています。
さらに、「加計学園の渡邊事務局長を文部科学省に行かせる」という記述があることについて、「渡邊事務局長という方とやり取りしたことはないし、名前も存じ上げていない」として事実関係を否定しています。
そして、「このような不正確なものが作成され、意図的に外部に流されたことについて非常に理解に苦しむとともに強い憤りを感じている。全く心当たりのない発言を『私の発言』とする文書やメールが、文部科学省の職員により作成されている意図はわからないが、私の名前が難しい政策課題について省内の調整を進めるために使われているとすれば極めて遺憾だ」としています。
文部科学相「ご迷惑をおかけした」
松野文部科学大臣は、20日午後、記者団に対し、「文書のタイトルは『萩生田副長官の発言』となっているが、実際は、高等教育局長が萩生田官房副長官に相談・説明した発言と、副長官の発言、それに書いた本人が周辺情報としてもっているものの3つの内容が混在している形になっていた。タイトルからすると、メモの内容は正確性を著しく欠いていた。副長官はじめ省外の皆さんにご迷惑をおかけした」と述べ、謝罪しました。
官房長官「指摘はあたらない」
菅官房長官は午後の記者会見で、「今治市については平成19年秋から獣医学部設置に関する提案を出しており、話題として出るのはむしろ当然ではないか。一方で、加計学園の便宜を図るため、萩生田副長官が具体的な調整を行い、指示を出すことはないと副長官がコメントしているとおりであり、『加計学園ありき』という指摘はあたらない」と述べました。
一方、菅官房長官は、民進党などが衆議院予算委員会の閉会中審査を求めていることについて、「国会のことは国会で決めていただくということに尽きる」と述べました。
義家文部科学副大臣が謝罪
義家文部科学副大臣は20日夕方、総理大臣官邸を訪れて萩生田官房副長官と面会したあと記者団に対し、「萩生田副長官には文部科学行政のさまざまな相談に乗っていただいていたことは事実で、文部科学省の一部で、萩生田副長官の名前を出して事にあたるという傾向があったのではないかと肌で感じている。その辺について説明し、ご迷惑をおかけしたことをおわび申し上げた」と述べました。
また義家副大臣は、「10月21日には文部科学省の常磐・高等教育局長が議員会館で萩生田副長官と2人で話をした。そこに同席さえしていなくて、このような詳細なメモを作れるということはまずない。側聞情報も含め、備忘録として自分なりにまとめていたものの1つだと推測される」と説明しました。
一方、松野文部科学大臣も、萩生田副長官に電話で、「ご迷惑をお掛けして申し訳ない」と謝罪しました。
萩生田副長官の立場は
獣医学部新設をめぐっては、特区を所管する内閣府と、学部新設の許認可権を持つ文部科学省との間でせめぎ合う構図がありました。
萩生田氏は安倍総理大臣が議長を務める国家戦略特区諮問会議の議員ではありませんが、内閣府によりますと、官房副長官として、会議には慣例的に出席していたということです。
萩生田氏は20日発表したコメントの中で「文部科学省から報告を受け、気づいた点を指摘することはあったが、具体的な指示や調整を行ったことはない」と否定しています。
また、萩生田氏は加計学園が千葉県銚子市で運営する千葉科学大学で一時期、「客員教授」となり、報酬を受けていたとしています。現在は「名誉客員教授」ということで、報酬は受けてないということです。
野党から「学園の利害関係者が規制緩和の調整をしたことになるのではないか」と指摘されたのに対して、萩生田氏は「名誉客員教授は肩書だけの立場で、一度も学校に行っておらず、報酬も一切もらっていない」と説明しています。
専門家「加計学園 有利なら問題」
萩生田氏が内閣官房副長官の立場で、規制官庁の文部科学省の相談に乗っていたことについて、特区制度に詳しい立命館大学の高橋伸彰教授は「内閣官房副長官であっても、特定の人や法人の利益を誘導した形になっていなければ相談に乗ること自体は問題がない。今回の場合、萩生田氏が調整に動いた結果加計学園に有利な結果となったとすれば、立場を越えていたと見られてもしかたがない」と話しています。
また、萩生田氏が加計学園が運営する千葉科学大学で名誉客員教授になっていることについては、「理事長や経営者など学園を代表する立場ではなく、問題はないと思う。ただし、ほかの客員教授に比べて優遇されていないか、利害関係の有無は明らかにする必要がある」と指摘しています。
日経 「総理が期限」「官邸は絶対やる」官房副長官発言と新文書 6/20
学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設を巡る問題で、松野博一文部科学相は20日、萩生田光一官房副長官の発言概要とされる文書が新たに確認されたと発表した。萩生田氏が同省幹部と面会した際の発言とされ、「総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた」「官邸は絶対やると言っている」などと、早期の開学が安倍晋三首相の意向であることをほのめかす内容があった。
文書について菅義偉官房長官は記者会見で、「萩生田官房副長官から(文書の)発言はなかったと報告を受けている」と述べた。
文書は「10/21萩生田副長官ご発言概要」と題され、文科省に対し「何が問題なのか書き出してほしい。その上で、加計学園事務局長を(専門教育課の)課長のところにいかせる」などと、加計学園が獣医学部を開設することを前提としていることを示すような内容もあった。
松野文科相の説明によると、昨年10月21日に同省高等教育局長が萩生田氏に国家戦略特区を含む懸案事項について報告した。文書は局長からやりとりを聞いた同省担当職員が他の情報も加え、個人的なメモとして作成したという。
時事通信 「萩生田副長官の発言」文書 6/20
松野博一文部科学相は20日の閣議後記者会見で、安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設をめぐり、萩生田光一官房副長官の発言概要とされる文書が新たに文科省内で確認されたと発表した。
「総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた」など首相の意向を示すと読める記述がある。
表題は「10/21萩生田副長官のご発言概要」。文科省によると、昨年10月21日に常磐豊高等教育局長が萩生田氏と面会し説明した際のやりとりを、獣医学部設置を担当する専門教育課の課長補佐が局長の説明を基にまとめた。
「総理は」で始まる項目には、開学時期のほか、「工期は24ヶ月でやる。今年11月には方針を決めたいとのことだった」との記載もあった。
また、「和泉(洋人首相)補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいていると言われた」「官邸は絶対やると言っている」という記述があったほか、「加計学園事務局長を(専門教育)課長のところにいかせる」とも記されていた。
加計学園が国家戦略特区での獣医学部設置の事業者に認定されたのは、今年1月だった。
19日の一部報道を受け、文科相が調査を指示。同省によると、文書は専門教育課の共有フォルダ内で見つかり、同課から私学行政課と大学設置室の職員にメールで送信されたことも分かった。
関係者から聴取した周辺情報なども補足してまとめた個人のメモで、萩生田氏の発言でない内容も含まれているという。
文科省が萩生田氏に確認したところ、「詳細はよく覚えていないが、(既存の)獣医師養成との差別化の具体的内容や、(首相の言葉としての)具体的開学時期などの発言はしていない。加計学園関係者を文科省に紹介することもなかった」と返答があったという。 
■諸報道 
菅官房長官はクビ?安倍政権「亀裂」の深刻度 6/20
大手メディア各社が6月18日に発表した世論調査の結果は、官邸に激震を走らせたに違いない。朝日新聞によれば内閣支持率は41%で、前回調査よりも6ポイント下落した。共同通信の場合は44.9%で、下落幅はなんと10.5ポイントにものぼる。
とりわけショックだったのは、毎日新聞の調査結果だろう。内閣支持率は10ポイント下落の36%に対し、不支持率は9ポイント上昇の43%。支持と不支持が逆転した。高支持率をよりどころにしている安倍政権にとって、きわめて厳しい数字といえる。
「深く反省している」
「国民のみなさんから信頼を得られるよう、冷静にひとつひとつ丁寧に説明していく努力を積み重ねていかなればいけない。その決意を国会の閉会にあたって新たにしています」。6月19日に行われた総理記者会見で、安倍晋三首相は一言一言かみしめるようにこう述べた。
「印象操作のような議論に対して、つい強い口調で反論してしまう、そうした私の姿勢が結果として政策論争以外の話を盛り上げてしまった。深く反省している」。頭を垂れて見せたその姿勢は、世論調査の結果を見て追加されたものだろう。しかしながら国民が疑問と怒りを感じるその真髄について、果たして安倍首相は理解していたのか。
たとえばスピーチの中で安倍首相は、「国家戦略特区を巡る省庁間のやりとり」「国家戦略特区における獣医学部の新設」などと加計学園問題について言及した。しかし一度も「加計」と“お友達”の名前を口にすることはなかった。
そのような言い訳がましさ感が漂うスピーチを聞いていた時、ふと目にとまったのは演壇の脇に座る菅義偉内閣官房長官だった。
加計学園の獣医学部新設をめぐり、文部科学省の前川喜平前事務次官が再び記者会見を開き、文科省で作成された「萩生田官房副長官の発言概要」との文書について、「書かれている内容はほぼ間違いないと思う」と述べた。これに対し、萩生田副長官は23日夜、改めて指示を否定した。
萩生田副長官は前川氏が文書の内容は「ほぼ事実だ」と述べたことを受けて、「私の側から文科省に指示や働きかけをしたわけではないことが明らかになったのではないか」と述べた。
その上で「前次官の話は推測に基づくものが多く、コメントに値しないが、総理からいかなる指示を受けたこともなく、指示を伝えたこともない」と改めて強調した。
19日夜に放映されたNHKの「クローズアップ現代」である。同番組において、加計学園の獣医学部新設について萩生田光一官房副長官が文科省の局長に対して発言したメモ(10月21日付け)が暴露されたのだ。メモには以下のように書かれており、安倍首相の関与が伺える。
○ 和泉補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている、何が問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。官邸は絶対やると言っている。
○ 総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた。工期は24ヶ月でやる。今年11月には方針を決めたいとのことだった。
これについて萩生田副長官側は「総理からいかなる指示も受けたことはない」「文科省への指示をしていない」と関与を否定した。しかしながら番組では「文科省の現役職員」が匿名で出演し、「これは安倍総理の関係する総理マターである。十分な議論のないままに、結論まで行ってしまった」と証言。さらに文科省OBで加計学園理事の豊田三郎氏が文科省職員と会って獣医学部新設を強く推したことを示すメールの存在も明らかにされている。
「とかげのしっぽ切り」を行うのか?
今年2月に発覚した森友学園問題からずっと続いている安倍首相の「お友達問題」。問題がここまで大きくなったのは、初期対応がまずかったことが原因だ。その責任を一身に負うべきは、官邸を牛耳る菅長官ということになる。
「原点に立ち戻り、政権与党としての責任を果たしてまいります」。19日の会見で安倍首相はこう述べている。首相の演説の原稿には反省の言葉が並べられたが、それが嘘ではないのなら、国会で真相を明らかにし、国民への説明責任を尽くすべきだろう。内閣改造の際に責任者のクビを切る「とかげのしっぽ切り」で終わらせるようなことがあってはならない。 
官房長官 公文書管理の見直し進める考え 6/21
菅官房長官は午前の記者会見で、学校法人「加計学園」の獣医学部の新設をめぐり、萩生田官房副長官が文部科学省の局長と面会した時の発言をまとめたとする文書に関連し、作成した担当者は行政文書との認識はなかったとしたうえで、今後、公文書管理の見直しを進める考えを示しました。
学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、文部科学省は萩生田官房副長官が文部科学省の局長と面会した時の発言をまとめたとする新たな文書の存在を認める一方、文書を作成した担当者個人の備忘録だとして、行政文書ではないとしています。
これに関連して菅官房長官は午前の記者会見で「作成した本人の意識としては個人のメモで、行政文書のつもりはなかったと聞いている」と述べました。
一方で菅官房長官は「各省庁で公文書管理の質を高めるための不断の取り組みとして、行政文書の管理に関するガイドラインを今年度中に見直し、行政文書の歴史的重要性の判断に関わる基準を精緻化することや、職員の公文書管理に関する意識を高めるための研修の充実を考えていきたい」と述べ、行政文書の取り扱いを含め、公文書管理の見直しを進める考えを示しました。 
会見で食い下がった東京新聞記者 菅官房長官を動揺させた突破の質問力 6/21
委員会採決省略の強行採決、実在した「怪文書」……。「安倍一強」のもと、自民党はなぜここまで傲慢になってしまったのか。その源流を「政・官の関係」「派閥弱体化」「小選挙区制」の現場で考察し、いかにして現在の一強体制が作られていったかを明らかにする。AERA 2017年6月26日号では自民党を大特集。加計学園問題にからむ記者会見で、菅官房長官を動揺させ話題となった、東京新聞の望月衣塑子に話を聞いた。
なぜ、こんなに追及が甘いのだろう? テレビで菅義偉官房長官の記者会見を見て、もやもやとした歯がゆさを感じていました。私は加計学園問題の取材を進めるなかで、キーマンは菅官房長官ではないかと考え、発言を注視してきました。しかし、文書を「怪文書のたぐい」と切り捨て、「再調査は必要ない」と繰り返すばかり。記者も二の矢、三の矢の質問をしない。これでは政府は動くわけがないと危機感が募りました。
私は政治部でなく、社会部の記者です。社会部で警察や検察の幹部とやりとりをしてきたなかで、執拗に質問しないと、肝心なことを答えないことを、身に染みて知っています。答えをはぐらかし、時にはウソもつかれます。
官房長官会見での質問は1社あたり2、3問程度と低調な印象。番記者が官房長官を囲んで事実関係を確認する場もあり、記者は「後で聞けばいい」かもしれませんが、それでは国民に伝わりません。
会見で、私は「再調査をしない理由」を繰り返しただしました。菅官房長官もはぐらかすのですが、「総理、官房長官が(再調査不要と)判断したのでは」という問いには「あり得ません」と語気を強め、「現役の文科省職員の証言はウソだと思うか」との質問には、「ウソだとは言っていない」と即座に言い返すなど、明らかな変化もありました。会見が短くなったり、質問は1社1問までと制限が厳しくなったりと、官邸の嫌がらせを危惧する番記者がいたかもしれません。各社の主張の違いはあっても、権力監視の観点では記者側は一枚岩になるべきです。 
菅官房長官 文科省人事「淡々とやる」 6/22
菅義偉官房長官は22日の記者会見で、学校法人「加計学園」問題で関係が取りざたされる萩生田光一官房副長官について、内閣人事局長として文部科学省人事に関わることに問題はないとの認識を示した。「従来のルールに基づいて淡々とやる」と述べた。自身の関与にも同様の見解を表明した。
文科省で見つかった萩生田氏の発言記録とされる文書は、獣医学部新設に関して文科省側に指示した内容だが、同氏は発言を否定している。
内閣人事局長は府省庁幹部職員らの経歴を精査する担当。官房長官は担当閣僚と首相による協議に加わり、人事を決定する。 
萩生田光一官房副長官、関与を改めて否定 6/29
 「具体的な指示伝えていない」民進党に回答
学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画をめぐり、萩生田光一官房副長官は29日、民進党に「(文部科学省に)何らかの具体的な指示を伝えたことはない」と文書で回答した。民進党「加計学園疑惑調査チーム」が公開質問状を出し、計画をめぐる文科省とのやり取りなどを説明するよう求めていた。
萩生田氏は回答で「決定は関係省庁の合意と透明なプロセスの下に適切に行われている」と強調した。自身の関与を指摘する文書についても「文科省が『個人の備忘録的なメモ』『著しく正確性を欠く』と説明しているのに尽きる」と改めて否定した。
学園の加計孝太郎理事長との関係は「平成24年に国政に復帰して以降、お会いしたのは2回程度と記憶している。いずれも多数の方と一緒に同席した」と説明し、「特に個人的な交流はない」としている。 
 
豊田真由子議員に元秘書への暴言・暴行疑惑

 

「このハゲーーっ!」
6月22日発売の「週刊新潮」が、自民党の豊田真由子衆院議員(42)が「秘書に罵声を浴びせた上に暴行を加える、前代未聞の振る舞いをしていた」との記事を掲載した。
同誌は「安倍チルドレン『豊田真由子』代議士の“絶叫暴行”を秘書が告発」とのタイトルの記事で、元政策秘書だという男性の告発を掲載。記事では「殴る蹴るハンガーで叩くといった暴行は断続的に行われ、男性には『顔面打撲傷」『左上腕挫傷』等の診断書が出されている」としている。
「デイリー新潮」がYouTubeチャンネルで公開した音声データには、豊田氏とされる人物が「この、ハゲーーーーーっ!」「これ以上私の評判を下げるな!」などと大声で叫ぶ様子や、男性が「もうすいません、叩くのは…」と怯えるように謝る様子、「ボコッ」という打撲音など、生々しいやりとりが収められていた。豊田氏の事務所は週刊新潮の取材に対して「手をあげてしまった」と暴行を認めたが、「一部の録音内容については否定した」という。
疑惑が報じられると、豊田氏の公式Twitterには、「議員以前に人間として最低」「暴行は犯罪ですよ」「議員になれば人を殴っていいのですか?」「即刻辞職するべきです」などといった非難のコメントが殺到した。
豊田氏の疑惑は民放各局でも取り上げられ、テレビ朝日系「ワイド!スクランブル」では、番組コメンテーターの本村健太郎弁護士が「違法な暴言であることは間違いない。パワハラには当然なるし、犯罪の疑いも相当高い。診断書もあるので傷害罪で告訴できる」と指摘した。
公式サイトによるとは、豊田氏は私立桜蔭中・高を経て、1997年に東大法学部を卒業。その後、厚生省(現:厚生労働省)に入省した。ハーバード大学大学院への留学経験もある。自民党が政権を奪還した2012年衆院選で初当選し、現在は2期目。埼玉4区選出で、これまでに文部科学大臣政務官などを務めた。
同期には、金銭トラブルが報じられ離党した武藤貴也氏、不倫疑惑で議員辞職した宮崎謙介氏、「巫女さんのくせに」「がん患者は働かなくていい」などの度重なる失言で謝罪した大西英男氏、「おんぶ」姿で豪雨被災地を視察したことをめぐる失言で政務官辞任に追い込まれた務台俊介氏、女性問題で経産大臣政務官を辞任、離党した中川俊直氏などがいる。
不祥事が相次いだことから、自民党の当選2回の若手議員は「魔の2回生」と呼ばれる。 
豊田真由子議員の評判 「私も叩かれた」と政府関係者
秘書が100人変わった
秘書への暴言や暴行が報じられた豊田真由子議員(42)が、自民党に離党届を提出した。
22日発売の週刊新潮が報じた問題。5月、支持者へ送ったバースデーカードの宛先が間違っていたことが発覚し、そのおわび行脚の車中で録音されたという音声の存在がきっかけとなった。
豊田氏に責められていたのは、当時の秘書。車中で豊田氏に殴られ、その後、顔面打撲と診断され、6月18日付で秘書を辞めたという。
別の元秘書は、豊田議員の事務所についてこんな証言をした。
「出入りの激しい事務所というのは、わりと秘書の中では有名な話。『100人超えちゃったらしいよ』と聞いたことはあります。『秘書が100人変わった』って」
元秘書によると、5年間で、およそ100人の秘書が変わったという。実に1カ月に1人以上、秘書が変わっていることになる。
「秘書が100人近く辞めている」という証言に対し、豊田議員の事務所の関係者は「日曜など1〜2日は、運転のアルバイトを頼んでいるので、秘書の定義の仕方が非常に難しい」と弁明。豊田議員の性格については「どちらかというときつい人。我慢強くない。子どもの時から、頭が良かったんでしょうから」などと話した。
昔からパワハラだった
豊田氏は、東大法学部を卒業後、厚生労働省に入省。その後、アメリカのハーバード大学の大学院に留学するなど、エリート街道を突き進んできた。
豊田氏は、2012年に埼玉4区から初当選した、いわゆる「安倍チルドレン」。当選同期に、女性問題で経済産業政務官を辞任して自民を離党した中川俊直議員や妻の出産直前に不倫をして議員辞職した宮崎謙介議員などがいる、問題続きの「魔の2回生」議員でもある。
また、永田町では、「ピンクモンスター」という異名もあるという。
ウェブサイトやポスターなどもすべてピンクで、そのあだ名がついたという。
最近では、文部科学大臣政務官や、復興大臣政務官を担当していた。
カメラの前では政府職員に対して「いわれない非難を受けても、国のため、国民のために一生懸命力を尽くされているか、私はよくよく存じ上げているつもりであります」と丁寧に語る場面もあったが、政府関係者に話を聞くと、「昔からパワハラだった」「部下をあんな感じで追いつめていた」「厚労省の先輩にも議員になったら怒鳴っていたらしい」などという証言が出た。
さらに、別の政府関係者は「豊田先生が怒った時に、昔、たたかれたことがある。一言で言うと、怖い先輩。感情の起伏が激しい」と話す。

離党届の提出を受けて、自民党の下村幹事長代行は「相当、本人は精神的に混乱しているところもあり、心身症的なところもあるということで、きょう入院した」と説明し、「2回生から、そういう問題が出ているというのは、本当に残念だと思います」などと話した。
都議選告示日を23日に控え、痛手を負う形になった自民党。この問題が、どの程度影響していくのか注目される。 
豊田真由子
日本の政治家、元厚生官僚。衆議院議員(2期)、内閣府大臣政務官(東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当)、文部科学大臣政務官、復興大臣政務官。無所属。学位は修士(ハーバード大学・2002年)。元自由民主党女性局次長・青年局次長・国会対策委員会委員等。
金融庁総務企画局課長補佐、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官、厚生労働省老健局課長補佐などを歴任。
1974年、千葉県に生まれる。血液型A型。3人姉妹の次女。船橋市立法典東小学校、桜蔭中学校、桜蔭高等学校に進学。1993年に東京大学文科一類に入学。法学部第2類(公法コース)に進み、佐々木毅教授の政治学ゼミで指導を受けた。
1997年、東京大学法学部を卒業し厚生省へ入省。2000年に国費留学生として ハーバード大学大学院へ入学し、パブリック・ヘルスを学ぶ。2002年に理学の修士号を取得した。
中央省庁再編により設置された厚生労働省にて、社会・援護局や健康局などで勤務。2003年からは金融庁の総務企画局にて課長補佐。2007年には、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部に一等書記官として赴任した。在職中、ジュネーブで長男、その後パリで長女を出産。
2011年に帰国し、厚生労働省の老健局にて課長補佐に就任した。東日本大震災の発生により、避難先や仮設住宅等における高齢者福祉政策等を担当した。復興が一向に進まない現状から、民主党政権の国家運営の実情に対し強い疑問を抱き、政治の世界に転身する決意をする。
厚生労働省を退官後、自民党埼玉県連の公募に合格。2012年12月の第46回衆議院議員総選挙に埼玉4区から自由民主党公認で出馬し、初当選した。この時、豊田は足首を骨折していた。
自由民主党においては、厚生労働副部会長、厚生関係団体委員会・労働関係団体委員会・外国人労働者等特別委員会等にて副委員長、首都圏整備特別委員会の事務局次長、国家戦略本部の主査を務めた。派閥としては清和政策研究会に所属した。
2014年、第47回衆議院議員総選挙で他候補を大きく引き離して再選。2015年10月9日、第3次安倍第1次改造内閣の内閣府大臣政務官(東京オリンピック・パラリンピック担当)、文部科学大臣政務官、復興大臣政務官に就任。
2017年6月22日、週刊新潮により豊田が秘書に対して暴言を吐いたり暴行をしていた行為が報道され、豊田は即日自民党に対し離党届を提出した。
人物
国土交通省のキャリア官僚の夫と1男1女の4人家族である。座右の銘は「艱難汝を玉にす」、趣味は絵画鑑賞、ジョギング、料理。
子育てをしながら議員活動を行っており、また2014年の衆院選の際には、駅前でビラ配り中「働く母親の声を分かってくれるのは、豊田さんしかいません」と女性から声をかけられ、「子育てをしているから、苦労や悩みを理解して一緒に考えていける」とこたえている。また、豊田のFacebookでは、西田陽光がコーディネーターを務める子育てをする女性に向けたイベント「女性のためのリベラルアーツ」にゲストスピーカーとして出演したり、NPO法人全国小規模保育協議会主催の「小規模認可保育の未来を描く全国フォーラム」でママ議員パネリストとして参加したり、山口県萩市にて河村建夫元官房長官の後援会主催の「女性のための政治セミナー」でゲストとして講演するなどの活動が投稿されている。
厚生労働省時代には、海外赴任前にTOEICで900点以上が必要とされ、書店で40冊の問題集を購入し、仕事で徹夜続きの中、問題集を全て解いて満点に近い960点を取った。
ハーバード公衆衛生大学院時代の師であるマイケル・ライシュ教授は、同大学院の卒業生には、医療や途上国のフィールドでの活動を選ぶ者が多い中、豊田が政治家となった数少ない卒業生であると指摘した。本人も、日本では希少なパブリック・ヘルス分野での職歴を持つ国会議員として、「その経験を生かす必要がある」と語っている。また衆議院議員再選の際にも、政策を立案する官僚と、現場の思いをくみ取ることができる国会議員の両方の経験を生かしたいと述べている。
厚生労働省時代、甚大な被害を受けた東日本大震災の被災地において、避難先や仮設住宅等での高齢者福祉政策等を担当した経験から、議員となった後も、被災者の声を聞き、「決して忘れない」ことを伝えるためにも、被災地に通い続けることが大切だと考えている。
不祥事
園遊会で、ルールと宮内庁職員の制止を無視した問題 / 2014年4月17日の園遊会において、ルールを無視して招待者以外を同伴して入場したため、宮内庁が衆議院に対しルールの周知徹底を要請する事態に発展した。2014年春の園遊会には、衆議院議員である豊田と、その夫が招待されていた。ところが園遊会当日、豊田は母親を伴って、赤坂御苑の国会議員用の受付場所に出向いた。その際に、豊田は同伴者について「事前に夫から母親に変更する旨を連絡した」と説明したが、困惑した受付の担当者が「いつ、どこの誰に連絡したのか」と尋ねると、言葉を濁し具体的な説明はしなかった。宮内庁の職員が招待者以外は入場できないと説明したところ、豊田は「なぜ入れない!」「入れなさい」などと大声で恫喝した。さらに、宮内庁職員が手に持っていた配偶者用のネームプレートを奪い取ると、それを自ら母親の胸に付け、勝手に会場に侵入してしまった。宮内庁の職員はなおも食い下がり、母親は入場できないと再三にわたり説明し理解を求めたところ、今度は母親のことを「私の配偶者だ」などと主張し始め、無理やり突破してしまった。園遊会はおめでたい場であり、騒ぎを避けるべきだとの判断から、職員らは豊田の侵入を食い止めることができなかった。しかし、宮内庁においては「あってはならないこと」との声が強まり、衆議院に対しルールの周知徹底を要請する事態となった。さらに、宮内庁によれば、同伴者の変更についての事前連絡があったとの事実は確認されていないとしている。マスコミの取材に対し、豊田は「わたくしの誤解により、関係の皆様にご迷惑をおかけいたしました。以後、厳に気をつけます」と回答している(もっとも、ブログではこの件について一切触れていない)。
園遊会の招待者は、原則として本人と配偶者のみに限られており、園遊会の前身となった観桜会や観菊会以来の伝統とされている。特例で娘を招待する場合がある外交使節団や、身体が不自由な招待者を介助する付添者以外は、例外は認められていない。園遊会の案内状にも、招待者以外は会場に入れないと明記されている。宮内庁職員だった山下晋司によれば、過去にも招待者以外を同伴し入場させるよう談判を試みた者がいたが、いずれも全て断られていたという。親、祖父母、子であっても原則的に同伴はできず、代理も認められないことから、山下は「事前連絡で了解を得るなんて、そもそも認められるはずもなく、(誤解というのは)ウソではないのか」と指摘している。また、山下は、宮内庁職員が招待者の身柄を取り押さえるようなことはできないとしたうえで、「宮中行事に際してルールを守らない人がいるということ自体、そもそも想定していない」と述べるなど、対応の難しさを説明している。
秘書への不適切な行為・発言 / 週刊新潮は、移動中の自動車内にて秘書に対し豊田が暴行を加えた事を報じている。豊田の事務所は報道内容を認め、豊田は自民党に離党届を提出している。 
「豊田真由子様に向かって」や「あるんでちゅかあ!」の赤ちゃん言葉 6/29
 週刊新潮が新たな罵声、暴言報じる
元政策秘書の男性(55)への暴言と暴行が報じられ、自民党に離党届を提出している豊田真由子衆院議員(42)=埼玉4区、当選2回=の同秘書への新たな罵声や暴行の様子が29日発売の「週刊新潮」で報じられた。
同誌から音声データの提供を受けた民放の情報番組は、豊田氏が発したとみられる新たな罵声、暴言などを放送。7月2日投開票の東京都議選への自民党候補への影響も懸念される。
「『絶叫暴力』未公開データ40分中の最恐文言」との見出しの同誌の記事では、5月21日の様子が掲載されている。
「あたしが違うって言ったら違うんだよ!」などの怒声や、運転席の元秘書に足を出した際の様子を紹介。ほかにも豊田氏が「豊田真由子様に向かって」などとの罵声を浴びせたり、「あるんでちゅかあ!」との赤ちゃん言葉の後、「明日は何が起こるのかな〜〜〜〜ドキドキ〜」と、ミュージカル調で追い詰めたとしている。
先週、同誌が報じたのは前日の20日に録音された元秘書への豊田氏の暴言、暴行だった。
豊田氏は自民党で細田派に所属。同派会長の細田博之総務会長は27日の記者会見で、豊田氏の話として、「(秘書の運転する自動車が)高速道路をひとつ早く出て(豊田氏が)怒ったら逆に入った。『人の命を何だと思っているんだ』と、やりとりが始まっている」と説明した。
豊田真由子議員の一家はあれからどうなった?夫がすべてを語った 8/1
「このハゲー!」で有名になった「暴言議員」にも、家族がいる。耳を疑うような妻の「絶叫音声」を、連日の報道で聞かざるを得なかった夫の心中はいかに。前回はそのダイジェスト版をお届けしたが、今回はその全文を公開する。
本人は本当に反省しています
豊田真由子議員の夫・吉村圭氏(仮名)は、「内閣官房企画官」の肩書を持つ霞が関のキャリア官僚だ。騒動以降、豊田氏の家族はどう暮らしてきたのか。夫・吉村氏が重い口を開いた。
豊田氏の元政策秘書(55歳)が録音した「絶叫暴言」のインパクトは凄まじかった。暴行をも疑わせる音も多数収録されており、元秘書は埼玉県警に被害届を提出している。豊田氏はなぜあのような暴言を吐いたのか。やはり政治家として相当なプレッシャーがあったのか。
「あの(告発した)秘書さんかどうかは分かりませんけれど、秘書さんの信じられないようなミスとかもあったようです。本人もどうしたらいいんだろう、と悩んでいるような感じはありました。そういう意味では、ちょっとストレスを抱えているなというのは感じていました。でもこういうことになるとまでは思っていなかったんで……申し訳ないです。今は子供たちをケアすること、それだけが僕の役目だと思っています。学校でいじめられたりすることだけにはならないようにしたい。騒動以降、ここ3週間くらいは子供たちにテレビも見せないようにしています。学校ではちょっと言われることはあるみたいですけど。でも『ママは一生懸命、仕事一筋でやってきた』ということは子供たちもわかっています。正直、今は妻のことまでケアする余裕はありません」
妻は僕の100倍忙しい
豊田真由子氏は、東大合格者数で全国トップの女子校・桜蔭高校から東大法学部を経て、厚生省(当時)にキャリア官僚として入省した。
一方の吉村氏は7歳年上。愛媛県の名門公立高校から同じく東大に進み、建設省(当時)に入省した。
2人の知人はこう語る。
「2人ともキャリア官僚でしたが、お互いが官庁から留学のために派遣されていたハーバード大学大学院のキャンパスで出会ったと聞きました。先に吉村さんが帰国し、豊田さんの帰国から間もなく結婚。もう十数年になるはずです」
2人の子を出産後、豊田氏は'12年に厚労省を退職し、同年に自民党公募から公認候補として埼玉4区から衆院選に出馬し当選する。文部科学大臣政務官なども務めた2回生代議士だ。
吉村氏は国土交通省で住宅局などを中心に勤務し、途中ユネスコへの派遣も経て、現在は内閣府で地方創生関連の業務に従事する企画官である。仕事柄、出張で全国を飛び回ることも多い。
――お子さんの面倒は、実家でみているのですか。
「いや、私のほうでやっています。今日はどうしても(帰宅が)遅くなってしまったのですが、いつもは自分と、ベビーシッターさんもいますので」
――これまでも、そうした環境で家事や育児をされてきたのですか。
「妻は僕の100倍、いや数字では表せないですけど、それくらい忙しい。選挙区のことを常に考えていました。家にずっといないわけではないのですが、朝早く出て夜遅く帰ってくることも多い。でもその限られた時間のなかで、娘と息子に対して最大限の愛情を注いできました。それは子供にも十分伝わっています。子供たちは、お母さんはお国のために頑張っているんだと思っています」
――豊田さんは入院しているということですが、退院時期など、目途は立っているのですか。
「それはまだありませんね。精神的につらい状況になっていると思います。すべてに対してショックを受けているでしょうし……。本人は本当に反省しています。秘書の方、選挙区の方々、支援者の方、世間の方、子供たちに対して申し訳ないと思っています。すごく反省していると、本人も言いたくてしょうがないと思います。でも今は精神的にそんな状況ではありません。もうちょっと時間がかかると思います」
選挙区の埼玉・新座市の自民党支援者は怒りをにじませながら語る。
「本当に裏切られた気持ちですよ。事件があっても地元には何の説明もない。入院している場合じゃないでしょう」
豊田氏の地元との接点はもともと薄い。埼玉県に自宅をおいているものの、あくまで選挙対策。実際の住居は冒頭の都内のタワーマンションだ。埼玉の地元事務所の隣人はこう証言する。
「最近は近所の子供たちが事務所の前を『このハゲー!』と叫びながら通り過ぎていきます」
事務所のドアには「議員辞職を求めます」と落書きされたこともあった。
今後のことはわからない
豊田氏は千葉県船橋市生まれ。学習塾を経営する両親のもと、3人姉妹の次女として生まれた。
実家を訪ねると、肩くらいまで白髪を伸ばした豊田氏の父親は、
「今はそのときじゃないから。大きな流れがある。ご足労かけてすまんことだけども、もうしばらくは放っといてくれ」
と答えるのみだった。
吉村氏の証言に戻ろう。
――入院しているという豊田さんの様子を教えて下さい。
「私も常に連絡を取っているわけではないので、つぶさにはわかりません。子供たちとは会わせていません。あえてそうしています。仕事のこととか、これからのことは分かりませんが、今の彼女にとっては子供が大丈夫かということと、選挙区の支持していただいていた方たちになんとお詫びしていいだろうかという気持ちでいっぱいだと思います」
――豊田さんは、自分のお子さんに対しても、厳しく躾をすることはありましたか。
「いや、そんなことはないです。愛情あふれる母親です。常に抱きしめていましたから。それが限られた時間で彼女にできる最大限ですから」
吉村氏の声は終始落ち着いていたが、最後には苦渋に満ちた表情で深く頭を下げた。
「本当に、申し訳ありませんでした。失礼します……」
と語ると、マンションへと入っていった。
米国留学時、豊田氏の「純粋でまっすぐなところに惹かれた」という吉村氏にとっては、今も彼女は愛する妻なのだ。 
豊田真由子議員の「謝罪会見」は問題だらけだ 9/19
 「謝り方」でバレる!デキない人の6大欠点
「二流すぎる絶叫」
「このハゲェ〜〜〜!! お前は、私の心をたたいている!!」
秘書に対する暴言を報じた『週刊新潮』の記事と音声によって一躍有名になったのが、豊田真由子衆議院議員だ。
その豊田議員が9月18日、自身の選挙区である埼玉県新座市で記者会見を開いた。約90分に及んだこの記者会見に問題を感じた方も多いのではないだろうか。
謝罪会見というものは非常に難しいものだ。世の中には、謝罪した途端化けの皮が剝がれて二流の暗闇に転落する恥ずかしい人がいる。「二流の人の謝罪」は、何かと言い訳がましく、核心の部分はぼやかされ、活動の再開のための「便宜上のパフォーマンス」であることが、バレバレにバレてしまうものなのだ。
一方、一流の人は、その謝り方も潔い。そして謝った途端、その人格の高さに震撼し、畏敬の念すら持たれるものである。「学歴やIQの高さ」と「肝心なときに立派に謝れるかどうか」は関係ない。その人の人間的本質は、一発謝らせるとすぐにわかるものである。
それでは、謝った途端、二流がバレる人々の特徴とはいったいどのようなものだろうか。豊田議員の会見をもとに早速紹介していこう。
「二流の謝罪」の1つ目のポイントは、謝るまでのタイミングを完全に逸していることである。
一流の人ほど「すぐ」「ごまかさずに」謝る
【1】謝るまでに時間がかかる
謝罪で誠意を伝えるには、すぐに謝ることが大切だ。たとえば最近の出来事だが、パン屋でパンを購入したとき、店員の屈強なお兄さんが、せっかく手袋をはめていて衛生面への配慮が行き届いているかと思いきや、床にある5円玉を拾った手で私が買ったパンを触るという、けしからん事件が発生した。
「清潔第一」をモットーにしている私が「ひょっとして、それは汚いのではないですか」と抗議したところ、その店員さんに、むっとされてしまった。
しかしその数カ月後、ふたたび訪れると、「あの時はすみませんでした」と言われたのだが、せっかくの謝罪も3カ月遅れてされると、こちらはすっかり忘れているだけに、いやな思い出がよみがえるだけで終わるのだ。
一流の人は、問題が大きくなり、人間関係が破壊される前にしっかりと謝る。これに対し、二流の人は「いつになったら謝るのか」などとさんざん責められたのち、最後忘れた頃の3カ月後に突然謝るのだから、そんなタイミングで誠意が伝わるわけがないのである。
【2】核心のポイントはそらす
「二流の謝罪」の特徴は、問題になっている核心に関しては謝罪をしないということである。
今回の豊田議員の謝罪に関してだが、暴行を働いたかどうかに関しては、「捜査にかかわるから言えない」「顔が腫れ上がるほど殴ったことはない」などと、核心のポイントを徹底してぼやかしていた。
二流の謝罪者に限って、「部分否定で全体の印象を操作しよう」とするものだが、「顔が腫れるほど殴っていない」というのは、まったくもって、「殴ったかどうか」という核心のポイントへの回答にはなっていない。
「警察による事実関係の緻密な操作が必要」だから答えられないということだが、殴ったかどうかは別に、警察の捜査がなくても答えられるのではないだろうか。
「私は非力であり、格闘技スポーツを習っていたわけでもなくケンカしたこともない。大ケガさせたというのは違う」という発言が、「暴力を振るったのか」という問いへの答えをそらしていたことは、明らかではないか。
加えて、問題の核心に関しては「それは司法の場で争うこと」と回答を避けるのも、典型的な二流の謝罪方法といえるだろう。
さらに大きな問題。二流の謝罪者は、謝罪をしているように見えても、心から反省をしているわけではない。表面的には謝っているように見えるものの、どさくさにまぎれて、自分は悪くないとばかりに、自己アピールばかりが激しいものである。
そんな自己アピールが炸裂したのが、豊田議員の謝罪会見だった。
謝罪の場で「頑張っている私」をアピール
【3】どさくさに紛れて自己アピール
「『お前ほど頑張ってきた人はいないのに、5年間の頑張りが、あの10日間の本来の姿ではないあなたの振る舞いで誤解されているのが悔しい』といって涙する支援者もいた」
「『報道で言われていることは裏付けない』というのは、私が言っているわけではなく、多くの支援者の方が言ってくれている」という“支持者の声”。
しかし豊田議員の口以外からはこのような説が聞こえないとしたら、「それは『エア支持者』では?」との疑惑を免れないのではないか。
なお、よく見ると「頑張っていることのたとえ」で使われてきた内容がしょぼいのも、いささか気になる。
お祭りや式典に1日20回参加したこともあるようだが、「本来のコアな仕事ではない」ことに忙殺されている姿からは、議員活動時間の優先順位をつけられていないことも、バレてしまっている。
「永田町の格差社会の底辺で、厚労省プロジェクトアクションだったらいけたことを一般の社会に当てはめたのがだめだった」「あれほど少ない人数で、あれほど多くのことをしようとした自分が……」などと、謝っているように見えて、その実、「頑張っている私」の激しすぎる自己アピールに転落しているのも、「二流の謝罪」の大いなる特徴といえるだろう。
【4】「本来の自分ではない」と「一時性」を強調
二流の謝罪の4つ目の特徴は、「これが本来の姿ではない」「一時の外れ値」であることをアピールするものである。
「睡眠時間が2時間の激務で、10日間の間でトラブルが多くて苦情やおしかりが多く、自分がゼロから作ってきたものが壊されてきたショックでパニック状態になりました」
「自分であんな言葉を日常使うことはなくて、あの異常なテンションで異常な言葉での叱責というのは初めてだった」と、その「一時性」をアピールする、二流の謝罪者たち。
豊田氏によるとある支持者が話したという、「5年間一生懸命頑張ったが、あの10日間で台なしになってしまった」ことをことさら強調していたのも、「本来の自分ではない」アピールの典型例であろう。
また、「体調が悪くて薬をたくさん飲んでいたし、パニックで正常ではなかった。医師の方も冷静に分析していて、次からは余裕をもって薬をきちんと飲んで治療を続けて、としかられました」などと、信頼性不明の医者コメントを持ち出すのも、よくある二流の謝罪方法である。
しかし、世の中の犯罪の多くは「一時の気の迷い」で行われるものである。「通常の自分ではない一時の過ち」という言い訳が、免罪符を与えることは決してないのだ。
二流の謝罪者とは、反省を演じているように見えて、結局は自己弁護にあふれているものである。
豊田議員は記者会見では、「いいひと路線」で謝罪会見を開こうと努力していたのであろう。ところが、最後の記者からの質問に対して「一部を切り取って報道した!」などと怒気ばむシーンも見られた。
二流の人ほど「自己弁護」「かわいそうアピール」に走る
【5】「実は理由があったのだ」と自己弁護 
用意していた謝罪プレゼンは涙の迫真の演技だが、質疑応答になると「怒りの本音」が噴出することも、二流の謝罪者の特徴である。
元秘書が、「いろんな失敗を、わざとではありません、と話すので、それに対し、わざとでなければ許されるのか、その例示としてあなたの娘が巻き込まれて謝られたら許されるのか、という主旨で話したのだと、元秘書は理解している。お嬢さんを脅迫しているわけではない」と強調していたが、このシーンではかなり語気を荒らげており、最後の最後に「元秘書が悪いんだ」という本音が出た感じをぬぐえない終わり方であった。
【6】「かわいそうだけど、再チャレンジする自分」をアピール
二流に転落した謝罪の最後の特徴が、なんといっても「可哀そうな自分アピール」である。
「体重が減ってしまって」「生きていても仕方ないと思って」「脅迫状も受けているし、怖い思いをしている」などなど、かわいそうな自分を大アピールする人々。
「私はもともと自分に自信がなく、自己肯定感が低く、なんでもすごく頑張らないと自分はここにいてはいけない、自分をエリートだとも立派だとも思ったことはなく、まだまだまだまだと思って生きて仕事してきた」という発言からも、「自己肯定感が低く頑張っている私」を強調する狙いが透けて見える。
揚げ句の果てに、辞任を尋ねられても「辞めるほうが楽だよ、でも恥をかいて表に出るのも私の役割」などと、これまた「けなげに頑張る自分」のアピールに変えるのだから、私もあんぐり開いた口が、まったくふさがらない。
さらには追撃砲で、「一度失敗を犯したら、再チャレンジできない人生はおかしい」などと、これまた「世の中の失敗者に希望を与える存在」であるかのようなアピールをするところが、すごすぎるではないか。
「過去は変えられないけど、未来は変えられる。失敗や過ちをして今後失敗した人がもう一度頑張れるように、私も頑張る」という壮大なご決意に、大いなる違和感を覚えた人は少なくないだろう。
「それはそれでいいのだが、辞任してから再出発するのが筋ではないですか」と。
ここまで、豊田氏の謝罪会見について批判的に分析をしてきた。しかし、この会見がすべてダメかといえばそうではない。実は豊田氏の謝罪会見には、一部評価できる姿勢ないしパフォーマンスが見られた。
やたらと質問を打ち切ろうとする司会者に対して何度も「まだまだ受けます」という姿勢を見せたのは、最初から仕組まれた段取りではなかろうかという疑念を感じながらも、一定の立派な印象を与えた。
「不屈の意思の表れ」とみることも可能
また、これほどの失態をさらしつつも、選挙で負けるのがわかっているのに出馬するあたり、「今回負けて恥をかいて禊(みそぎ)を済ませ、将来の選挙に備える」という力強い不屈の意思の表れとも感じられる。
また、このような失態をさらした人は、その名誉を挽回するために意外と努力する可能性もある。
それにしても、「二流の謝罪」であったと断罪してきた私だが、「お前も豊田氏も同じ『炎上仲間』じゃん」というこの一点における共感で、私は豊田議員を熱烈に支持することをここに宣言する。
私に支持されても何の票にもつながらないので、有難迷惑な支持である気がするが、「これほどの恥をかいた人が、選挙で勝つ見込みも限りなく薄く見えるが、どのような社会貢献をして挽回するのか」を「下から目線」で、高みの見物をさせていただく次第である。 
豊田真由子議員の新たな音声データ、生放送中に突然お蔵入りになる 9/19
 「放送中に関係先と協議した結果、紹介できなくなった」
豊田真由子議員の新しい音声データを紹介するとしていた「直撃LIVEグッディ!」(フジテレビ系)が9月19日、生放送中に突然、音声の放送を取りやめた。番組中に関係者と協議した結果、紹介できなくなったという。
この日、番組では豊田議員の暴言が常態化していなかったかどうかを検証した。豊田氏は18日、地元の埼玉県新座市で記者会見し、週刊誌などで報じられた「このハゲー!」「違うだろー!」などの発言について、「あの異常なテンションで叱責をしたのは初めて」などと語っていた。番組には豊田氏の元秘書や元後援会長などが生出演し、会見の内容を振り返ろうという趣旨だった。
午後1時45分から始まった番組は、冒頭から、「現職の関係者からの音声データを入手した」などと新音声について紹介。「決して(週刊誌などで報じられた)あれが、初めてではないと証明する音声データ」と説明し、番組中に紹介するとアナウンスしていた。
しかし、開始から1時間が経った午後2時45分、進行を務めていた大村正樹キャスターが、「ここでお断りです」と突然発言。「豊田真由子議員のですね、新しい音声データを入手してご紹介する予定だったんですけれど、番組放送中に関係先と協議した結果、残念ながら音声の方ですね、ご紹介できなくなりました」と、新音声の放送中止を宣言。お蔵入りとなった。
さらに、大村キャスターは「関係者の方にもご迷惑をおかけしました。改めてお断りさせていただきます」などと、関係者に対しても謝罪した。
この突然の中止に、ネット上では「何かあったのでは?」「新音声あるっていうから待ってたのに」などの声が上がった。
 
前川再会見後の官邸

 

[参考]
加計学園問題 前次官喚問を自民拒否 文科相「再調査しない」 5/26
民進、共産、自由、社民の野党四党は二十六日午前、国会内で国対委員長会談を開き、安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部の新設計画を巡り、「総理の意向」などと記載のある記録文書の存在を認めた文部科学省の前川喜平前事務次官の証人喚問を求めることで一致。民進党の山井和則国対委員長が自民党の竹下亘国対委員長と会談して申し入れたが、竹下氏は拒否した。
会談で、竹下氏は前川氏が民間人であることに触れ「現職の時になぜ言わなかったのか」と指摘した。山井氏は会談後の記者会見で「民間人の籠池泰典氏を喚問したのは自民党。ご都合主義だ」と批判した。
四野党の国対委員長は衆院予算委員会での集中審議開催を求めることも決定。前川氏の証人喚問要求と合わせ竹下氏に申し入れた。竹下氏は回答を留保した。
民進党は参考人招致を求めていたが、前川氏の会見を受け喚問に切り替えた。
民進党の蓮舫代表は二十六日の参院議員総会で、前川氏の証言を踏まえて「当時の事務方トップの言葉は非常に重い。官邸の意向で行政がゆがめられたのかどうか、徹底的に明らかにしたい」と強調した。
一方、菅義偉(すがよしひで)官房長官は記者会見で、文書について「出所不明のもので信憑性(しんぴょうせい)も欠ける点は(前川氏の)会見があっても、変わりない」と語った。
文書の存否の再調査に関しては「前川氏は担当課から受けたと言っているが、調査では担当課の職員にも聴取を行った結果、該当文書の存在は確認できなかった」と指摘。「国家戦略特区は岩盤規制に風穴を開けるわけだから、内閣府は規制官庁と侃々諤々(かんかんがくがく)、大議論を行うのは当たり前。行政がゆがめられたことはまったくない」と強調した。
前川氏が認めた「出会い系バー」への出入りについては、杉田和博官房副長官が以前、前川氏に確認した上、注意したと明らかにした。菅氏はこれまで、前川氏の在職中には事実関係を把握していなかったと説明していた。
松野博一文部科学相は二十六日の閣議後の記者会見で、文科省の前川喜平前事務次官が加計学園の獣医学部新設計画を巡る記録文書の存在を認めたことについて「既に辞職した方なので、コメントは差し控える。文科行政がゆがめられたとの認識はない」と述べた。記者団から一連の文書について改めて調査する意向があるか問われた松野氏は「再調査をする考えはない」と断言した。 
 
菅官房長官、第三者調査に否定的な考え示す 6/23
菅官房長官は、文部科学省で見つかった萩生田官房副長官の名前が書かれた文書に関して第三者による調査を行うことについては否定的な考えを示しました。
Q.第三者の調査じゃないと国民には霧の中だと思うが
「萩生田副長官はそれは否定しているし、そして、まして大臣がこの文書には正確性を欠く文書であると説明していますよ。ですから書いた役所の方で説明されるべきじゃないですか」(菅義偉官房長官)
また、菅長官は「萩生田副長官が会見をした方がいいと思うが」という質問に対しては、「文科省が正確性を欠く文書だと説明し、萩生田副長官は内容を否定している。萩生田副長官が知らないところで文書が作られているわけだから、作った文科省に聞かれるべきではないか」と述べました。 
菅長官「会見必要ない」記者と激しく応酬も 6/23
菅官房長官は23日、加計学園の問題で、「萩生田副長官ご発言概要」と題した文部科学省の内部文書について、萩生田副長官が改めて記者会見などを開いて説明する必要はないとの考えを強調した。
記者団が再三、文書のより具体的な説明を求めたのに対して菅官房長官は、萩生田副長官はすでにコメントで文書の内容を否定していて、あとは文科省に聞いてほしいと繰り返した。
記者「概要に基づいて1個1個説明していただきたいと思うんですが」
菅官房長官「文部科学省において正確性を欠く文書だということを明確に言っているんじゃないですか。萩生田副長官については、文書の内容についても否定しております」
記者「萩生田さんに直接会見することがなぜできないのかという理由。萩生田さんが言ってることも信ぴょう性がない」
菅官房長官「萩生田副長官、知らないところで文書が作られているわけですから。作った文科省に聞かれるべきではないですか」
また菅官房長官は文書が大臣や副大臣には共有されていないことについて、「本当に必要な内容ならば大臣などにあげるべきだ。何のために作った文書なのか」と述べ、文書の信ぴょう性が低いとの認識を示した。また第三者による調査の必要性について菅長官は否定的な考えを示した。 
加計学園問題、安倍首相「プロセスに問題なし」 6/24
安倍総理は神戸市で講演し、加計学園の獣医学部新設をめぐる問題についてプロセスに問題はなかったと改めて強調しました。
「私の友人だから認めてくれなどという、わけの分からない意向がまかり通る余地など全くありません」(安倍首相)
また、安倍総理は「1校だけに限定して特区を認めた中途半端な妥協が、結果として国民的な疑念を招く一因となった」として、今後さらに獣医学部の新設を認めていく方針を示しましたが、一方で、野党4党が求めた臨時国会の召集については触れませんでした。
さらに憲法改正については、自民党の改正原案を年内に国会に提出したいという考えを明らかにしました。
「来たるべき臨時国会が終わる前に、衆参の憲法審査会に自民党の案を提出したい」(安倍首相)
安倍総理は「発議を怠ることは国会議員として責任放棄のそしりを免れない」と述べ、改めて憲法改正に強い意欲を示しました。 
菅官房長官「獣医学部新設1校は妥当な判断」 6/26
菅官房長官は、獣医学部の新設を「加計学園」1校に限定して特区を認めたことについて、「妥当な判断だった」と述べました。
「獣医学部新設においても、獣医師会など引き続き様々な抵抗が見られる中で、1校に限るという判断は、まさにドリルで風穴をあけるために、そこは妥当な判断だったと思う」(菅義偉 官房長官)
安倍総理大臣は講演のなかで、「1校だけに限定して特区を認めた中途半端な妥協が、結果として国民的な疑念を招く一因となった」として、今後さらに獣医学部の新設を認めていく方針を示しました。
これについて菅官房長官は、「様々な抵抗が見られる中で1校に限るという判断は、ドリルで風穴をあけるためには妥当な判断だった」と強調しました。また、菅長官は、「獣医学部の新設を今治市以外にも認めるとの声が強ければ、こうした声にも対応して全国展開するのは当然のことだ」と述べました。 
菅長官が前文科次官を批判 「指摘は臆測や推測に基づくもの」 6/26
菅官房長官は、前川前文部科学次官が先週、「加計学園」をめぐる問題で和泉総理補佐官をキーパーソンと指摘したことについて、「前川氏の指摘は個人の憶測や推測に基づくものだ」と述べ、批判しました。
「前川氏の指摘というのは、個人の憶測や推測に基づくものと本人も言っていますよね。政府としてはコメントは控えたいという風に思っています」(菅義偉 官房長官)
菅官房長官は、先週、前川前文部科学事務次官が記者会見で、「加計学園」の獣医学部新設をめぐる一連の問題に関して、和泉総理補佐官をキーパーソンだと指摘したことについて、「前川氏の指摘は個人の憶測や推測に基づくものだ」と述べ、批判しました。
また、菅長官は和泉補佐官についても、「マスコミからの質問に対応していると思う」と述べ、和泉補佐官の対応に問題はないとの認識を示しました。 
獣医学部新設、4条件堅持=菅官房長官 6/26
菅義偉官房長官は26日の記者会見で、安倍晋三首相が国家戦略特区による獣医学部新設を学校法人「加計学園」以外にも認める方針を示したことについて、「新設に当たっては、(獣医師の需要動向を考慮するなどの)4条件に照らし、整合的かどうか検討することになる」と述べた。
菅氏は「獣医科大学全体の応募倍率は15倍ある。引き続き手を挙げる学校があるのではないか」と指摘。「(加計学園が学部開設を計画する愛媛県)今治市以外にも新設を認めるべきだとの声が強ければ、全国展開するのは当然のことだ」とも語った。 
官房長官 憲法改正の国民的議論に期待 6/26
菅官房長官は午前の記者会見で、安倍総理大臣が24日の講演で、秋の臨時国会で、自民党としての憲法改正案を提出したいという考えを示したことに関連し、衆参両院の憲法審査会に各党が改正案を示し国民的な議論につながっていくことに期待を示しました。
安倍総理大臣は24日神戸市で講演し、憲法改正をめぐって、2020年の施行を目指し、秋の臨時国会で、自民党としての憲法改正案を衆参両院の憲法審査会に提出したいという考えを示しました。
これについて菅官房長官は午前の記者会見で「先般、安倍総理大臣は自民党総裁として国会における政党間の議論を活性化するため憲法改正の考え方を公にした。今回の講演での発言も、総裁としてのものと認識している」と述べました。
そのうえで菅官房長官は「党内でさまざまな議論がなされることは当然であり、今後党内で具体的な改正内容を議論し、取りまとめていく。憲法改正の議論は、憲法審査会の場に各党がそれぞれの案を持ち寄って議論すべきものであり、静かな環境で真剣に建設的な議論を行い、国民的な議論につなげていきたい」と述べました。 
「拙速な議論 回避を」 首相改憲発言で自民・船田氏 6/26
自民党の船田元・憲法改正推進本部長代行は二十六日、臨時国会で党改憲案を提出したいとした安倍晋三首相の発言を踏まえ、自身のホームページで、拙速に議論を進めるべきではないとの考えを示した。
船田氏は改憲発議に関して「とにかく国会の三分の二以上の獲得が最大の主眼で、国民投票は後からついてくるといった考えが蔓延(まんえん)している」と指摘した。
その上で「九条の改正であれ、教育の無償化であれ、とにかく改憲勢力が国会の三分の二を占めている時に、早く発議してしまおうという考えは、国民投票でしっぺ返しを食らうかもしれない。むしろその可能性が大きい」と主張した。
現在は、自民、公明、日本維新の会で衆参両院ともに三分の二を占めるが、船田氏は、野党第一党の民進党について「最低限反対しない、反対しても了解の上で採決するところまで持ってこないと、安心はできない」と記した。 
首相「特区全国展開」発言 「加計批判かわし」「獣医師の質落ちる」 6/27
国家戦略特区を活用した学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設問題で、安倍晋三首相は記者会見で約束した説明責任を果たさないまま、「(獣医学部特区の)全国展開を目指す」と打ち出した。唐突なこの発言に、専門家からは「批判をかわす狙いだ」「獣医師の質が落ちる」などの声が上がる。
安倍首相は二十四日に神戸市内での講演で、「一校に限定して特区を認めた中途半端な妥協が、結果として国民の疑念を招く一因となった」と「加計ありき」を否定。獣医学部特区を各地に広げる考えを示した。
加計学園問題では「総理の意向」などと記された文書などの存在が次々と明らかになり、文科省の前次官は「行政がゆがめられた」と指摘。しかし政府は事実関係の調査を拒み、報道各社の世論調査で内閣支持率は低下している。
こうした状況での「全国展開」発言を、新藤宗幸・千葉大名誉教授(行政学)は「加計学園に絞られたのが安倍首相本人や側近との関係にあるのではないか、という批判の矛先をそらそうとしたのだろう」と指摘。「都議選での自民党へのダメージを抑えたいというのも見え見えだ」と話す。
そもそも特区で地域を限定し、規制を突破しようとしたのは政府の判断だ。獣医師の需要見通しなどから学部新設を抑えてきた文部科学省のある職員は「一校に絞った経緯などについてあれだけ議論してきたのに、すべてひっくり返すような発言だ」と戸惑う。
獣医師の数は地域や職種で偏りはあるものの全国的には需要は満たしており、学部新設には異論がくすぶる。全国の獣医系大学でつくる協議会会長の稲葉睦・北海道大学教授は「もし全国展開すれば教員の確保も難しく、獣医師の質を落としかねない」と心配する。
加計学園と競合し「一校限定」とされて断念した京都産業大学の担当者は、取材に「首相の発言にはびっくりしたが、どういう経緯で語ったのか分からない…」と言葉少なだった。 
石破氏、首相発言に疑問 「学部新設拡大より獣医師の処遇改善を」 6/27
石破茂前地方創生担当相は二十六日、政府の国家戦略特区制度を活用した獣医学部新設計画を巡り、安倍晋三首相が「全国展開を目指したい」と表明したことに対し、「(家畜を診る)産業用獣医師などの処遇を改善する方が、公費の使い道としてはいいのではないか」と疑問を呈した。共同通信の取材に答えた。
首相は二十四日、神戸市での講演で、学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の新設に限らず「二校でも三校でも、意欲があるところにはどんどん新設を認める」と主張した。
石破氏は「なぜ突然表明されたのか。『加計だけ特別に配慮している』と言われたくないからだろう」と指摘した。企業の農地保有が認められた他の特区事例の全国展開には理解を示した上で「獣医師が増えると何が起きるのか。全国展開の質が異なる」と強調した。
獣医学部の新設には、既存の獣医師養成ではない構想が具体化など四条件を満たす必要があり、石破氏はこの規定を定めた際の担当相だった。
加計学園が四条件をクリアしているかどうかについて、石破氏は「私が分からないぐらいだ。(政府は)きちんと説明すべきだ」と話した。 
首相の改憲発言 自民・船田氏「国民投票でしっぺ返しも」 6/27
民進党の野田佳彦幹事長は二十六日の記者会見で、安倍晋三首相(自民党総裁)が秋に想定される臨時国会に自民党改憲案を提出すると発言したことに関し「加計学園」の獣医学部新設計画に触れ「憲法という大事な議論をするから、他の問題で邪魔をするなということではないか。全て『加計隠し』に見える」と批判した。
民進党など野党四党は、憲法五三条の規定に基づいて加計問題などを審議する臨時国会の召集を求めているが、政府は応じていない。野田氏は「安倍政権は憲法の話をするなら(九九条の)憲法尊重義務を果たしてもらいたい」と求めた。
共産党の志位和夫委員長は東京都内での街頭演説で、首相の改憲発言について「首相が期限まで区切って号令をかけるのは九九条に反するのではないか」と指摘した。
船田元・自民党憲法改正推進本部長代行も自身のホームページで、拙速に議論を進めるべきではないとの考えを示した。
船田氏は「(衆参両院で)改憲勢力が三分の二を占めているときに、早く発議してしまおうという考えは国民投票でしっぺ返しを食らう可能性が大きい」と強調。「改憲を目指す者は、国民投票の重要さと難しさを学ぶべきだ」と指摘した。
菅義偉(すがよしひで)官房長官は同日の記者会見で、首相発言に関し「憲法改正の議論は(国会の)憲法審査会の場で、各党がそれぞれの案を持ち寄って議論するものだ」として、各党に議論を促した。 
首相、初の応援演説で小池氏批判 古い議会問題視「間違い」 6/27
安倍晋三首相(自民党総裁)は二十六日、東京都議選(七月二日投開票)で初めて自民党候補の応援に入り、文京区内の集会で十七分間演説した。「加計学園」問題には直接言及しなかったが、この問題で野党から追及された国会での答弁を振り返り「印象操作のような質問に強い口調で返す。売り言葉に買い言葉。こういう姿勢が問題だった。反省しなければならない」と語った。 (木谷孝洋)
都民ファーストの会代表の小池百合子都知事は、都議会を牛耳ってきた自民党を意識し「古い議会を新しくするチャンス」と訴えている。首相はこれについて「新しい議会が良くて古い議会が悪いという考え方は間違っている。改革を前に進められる議会か、止める議会かを決める選挙だ」と反論した。
二〇二〇年東京五輪・パラリンピックには「言うべきことを言い、協力すべきことは協力していくのが自民党だ」と小池都政に是々非々で臨む姿勢を示した。 
 
下村元文科相 加計学園からの違法献金疑惑

 

下村博文元文科相 加計学園から200万円違法献金の疑い 6/28
〈9月27日 学校 加計学園 1,000,000〉
これは、小誌が入手した〈2013年博友会パーティー入金状況〉と題された文書である。博友会とは、当時、文部科学大臣だった下村博文衆院議員(63)の後援会であり、毎年、大規模な資金集めパーティーを開いている。加計(かけ)学園によるパーティー券購入は、翌年の〈2014年博友会パーティー入金状況〉にも記されている。
〈10月10日 学校 山中一郎 加計学園 1,000,000〉
そして、この献金は、博友会の政治資金収支報告書には記載されていない。獣医学部新設を巡り、安倍政権を揺るがす一大疑惑に発展した加計学園問題。違法の疑いのある金銭の流れが明るみに出るのは初めてのことである――。

下村博文元文科相(63)が、加計学園から200万円の違法な献金を受けた疑いがあることがわかった。「週刊文春」が入手した下村事務所の内部文書で判明した。
下村事務所が作成した<2013年博友会パーティー入金状況>によると、<9月27日 学校 加計学園 1,000,000>と記載されている。
博友会とは、当時、文部科学大臣だった下村氏の後援会であり、この年の10月、大規模な資金集めパーティーを開いていた。
また、翌年の<2014年博友会パーティー入金状況>には、10月10日付で<学校 山中一郎 加計学園 1,000,000>と記載されていた。山中氏は当時、加計学園の秘書室長を務めており、政界との窓口となっていた。
政治資金規正法では、20万円を超えるパーティー券購入を受けた場合、政治資金収支報告書に記載しなくてはならないと規定されているが、博友会の収支報告書には、加計学園からの寄付は記載されていなかった。
また、同様に<入金状況>に名前と金額が記載されているにもかかわらず、収支報告書で報告されていない寄付が2012〜2014年の3年間で約1000万円に上ることがわかった。このうち、複数の人物が<入金状況>にある金額を、パーティー券として購入していたことを「週刊文春」の取材に認めた。いずれのケースも政治資金規正法違反の疑いがある。
下村事務所の複数の関係者は、「週刊文春」の取材に対し、内部文書が本物と認めた。その一人は<入金状況>の作成過程を次のように語った。
「博友会には専用の口座があり、入金された金額を確認してリストに記載します」
下村氏は小誌の取材に「実際はもらっていない」とした上で、事務所を通じて「加計学園からチケットを購入いただいたことはありません。収支報告は適正に行っています」と回答した。加計学園は、小社の月刊「文藝春秋」の記事に抗議していることを理由に、事実確認に応じなかった。
さらに、小誌が入手した下村事務所の榮友里子文科大臣秘書官(当時)の「日報」には、加計学園が学部新設を巡り文科省が対応するよう下村氏に口利きを依頼したことなどが記載されていた。

自民党の下村博文幹事長代行は29日午前、党本部で記者会見を開く。自身を支援する政治団体「博友会」が学校法人「加計学園」(岡山市)から政治献金を受けたのに、政治資金収支報告書に記載がなかったとする週刊誌報道に関して説明するとみられる。
29日発売の週刊文春は、下村氏が文部科学相だった平成25、26年、加計学園が博友会のパーティー券計200万円分を購入したのに、博友会の収支報告書に記載がなかったとしている。
政治資金規正法によると、政治団体は20万円超のパーティー券を購入した場合、報告を義務付けられている。
下村氏を支援する任意団体に支払われた会費などの一部が、同氏が代表を務める政党支部に寄付されていた問題が27年に発覚。市民団体が政治資金規正法違反容疑で下村氏らを告発したが、東京地検特捜部は28年11月に不起訴処分とした。 

元文部科学相で自民党の下村博文幹事長代行を支援する政治団体「博友会」の内部文書に、学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)から200万円の政治献金を受けたとの記載がありながら、政治資金収支報告書には記載されていなかったとする記事が、29日発売の週刊文春(7月6日号)に掲載されることが28日、分かった。
記事では、事務所の入金リスト「博友会パーティー入金状況」に、加計学園が平成25年、26年に100万円ずつパーティー券を購入した記載があるにもかかわらず、「博友会」など下村氏のいずれの政治団体の収支報告書にも記載がなかったとしている。
記事は「3年分のリストから、こうした“闇献金”が疑われるケースを合計したところ、その額は約1千万円」と指摘。別の内部文書の「日報」には、下村氏が文科相だった当時、加計学園の秘書室長(当時)がたびたび陳情し、口利きを依頼した経過が記録されていたとしている。
下村氏の事務所は産経新聞の取材に「(記事を)読ませていただいてからコメントする」、加計学園も「記事を見ていないので、今の段階では回答できない」とした。  
下村氏が会見「週刊文春の報道は事実無根。告訴も検討」 6/29
6月29日発売の「週刊文春」で、違法献金疑惑が報じられた自民党所属の衆議院議員・下村博文氏が記者会見を行った。下村氏は、「週刊文春」の報道を「まったく事実無根」とし、投票日が迫った東京都議会選挙に向けた「選挙妨害」だと主張した。また、事務所の内部資料が流出していることについては、退職した元秘書が関係している可能性を示唆した。冒頭発言は下記の通り。

「加計学園から闇献金200万円」という記事は事実に反します
本日「週刊文春」7月6日号に「下村博文元文科相 加計学園から闇献金200万円」と題する記事が掲載されました。この週刊誌記事を見た多くのマスコミの皆さんから質問が事務所にありましたので、ここで説明をさせていただきたいと思います。
まず本件記事のタイトルに「加計学園から闇献金200万円」とあり、週刊誌が入手した私の事務所の内部文書によれば、「加計学園は2013年、2014年に各100万円を献金しているが収支報告書には未記載である。政治資金規制法違反の疑いがある」との記事があります。
しかし、学校法人加計学園から政治寄付も政治資金パーティ券の購入もしてもらったことはありません。事務所で確認したところ、2013年も、2014年も合計11の個人および企業が、いずれも1社20万以下でパーティー券を購入したものであり、加計学園が購入したものではないということであります。
したがって、「加計学園から闇献金200万円」という記事は事実に反します。
本件記事は、週刊誌に写真が掲載されている「博友会パーティー入金状況」と題するExcelファイルのリストに加計学園と記載されていることから、「加計学園がパーティー券を購入した」と指摘するものであります。
しかし、事務所の平成25年の日報で確認したところ、加計学園の秘書室長が事務所を来訪され、個人および企業であわせて11名から預かってきた合計100万円の現金を持参したので、その11名の領収書を作成し、渡したことが確認できました。
平成26年も同様に11名のパーティー券購入があったことを確認をしております。週刊誌は、誌面に日報の写真も掲載しているので、日報も入手しているようであります。そうであれば、入手した日報を確認すれば、「加計学園がパーティー券を購入したわけではない」ことは理解できるはずでありますが、誌面では何ら触れられておりません。
以上の通り、加計学園にパーティー券を購入して頂いた事実はなく、本件記事の「加計学園から闇献金200万円」という記事はまったく事実無根であります。
そのほかのパーティー券の指摘でありますが、取り急ぎ、大きな見出しで書かれている加計学園についての事実関係を説明いたしました。
この他にも本件記事には、教育関係からパーティー券の購入について指摘がありますが、本日、発売された記事でもあり、指摘されているパーティー券の購入について、これも今後、事実関係を確認してまいります。
ただ、このパーティー券を含め政治資金については、文科大臣の時に市民団体が刑事告発をした際に、捜査機関の求めに応じて、内部資料を提出しております。捜査の結果、不起訴となっておりますので間違いないものと思っておりますが、いずれも事務所でキチっと確認するように支持をいたします。
次の話題でありますが、本件記事の「獣医学部の地元国会議員との会食」という箇所では、時期は明示していませんが、私が加計学園理事長と2人だけの密談を赤坂の料理屋でしたと書かれています。
「月刊文藝春秋」7月号に、「加計が食い込んだ下村元文科相夫妻」と題する記事が掲載されましたが、その中で、「私と理事長が平成26年3月に赤坂の料理屋で重要な案件で会った」などと書かれていますが、このことを記事にしたのだと思います。しかし、そのような事実はまったくないので、先日文書で抗議をしております。
それで面談の記事を明示しない記事にしたのだと思います。なお、「月刊文藝春秋」では、この他にも元秘書の話を鵜呑みにしたと思われる事実誤認の記事が書かれております。
例えば、「私の妻に加計学園から月々何十万かの顧問料が支払われている」との記載がありますが、そのような事実はまったくありません。さらに私が官房副長官時の平成19年、「渡米の際に妻に同行し、ブッシュ大統領夫妻との公式食事会に出席するように強くリクエストした」とか「 妻が総理夫人と深酒をし、飛行機に乗り遅れた」などのエピソードと称する虚偽の事実を書いておりますが、いずれも事実ではありません。何故なら、そもそもこの渡米に妻は同行していないのであり、このようなエピソード自体ありえないことであるからであります。
次に平成26年10月17日に、塩崎先生、山本順三先生および理事長と赤坂の料理屋で会食しているとの指摘があります。事務所で確認したところ、私の大臣留任を機に「メシを食べよう」ということになり、私の知り合いを「誰でもいいから連れて行く」ということになり、塩崎先生と山本順三先生をお連れいたしました。
本件記事は、「だからなんだ」ということは書かれておりませんが、記事の前後を読むと、あたかも理事長や私から2人の先生方に構造改革特区に働きかけをしたのではないかと読者が誤解をするのではないかと思います。
この点、塩崎先生も山本順三先生も愛媛県の国会議員として、愛媛県と今治市が特区の申請をしていることは理解されている先生方であり、しかも私よりも古くから今治市新都市整備開発のことをよく知っている方々であり、私などから特区申請に関する話などする必要もありませんし、事実としてもありませんでした。
さらにこの記事では文科省への教育学部新設の申請に当たって、加計学園が文科省に質問したいことがあるので、面会したいが、日程を調整してもらえないので、事務所のほうに相談があったことについて、「口利き後に後援会入会」と指摘をしております。
しかし、何らかの行政手続きをするために行政の窓口を紹介することは国会議員の事務所としては当たり前の状況であります。何か法令上できないことを、法令をまげてやるということとは、まったく違うことであります。
また平成27年8月末に文科省が教育学部設置の認可をしたことについて、「私の口利きで学部の新設が認可された」とは直接は書いてはいませんが、当時文科大臣だった私の口利きではないかとの誤解を与えるような記述があります。
これについては、ご存知の通り現在、大学や学部の設置については、有識者で構成される「大学設置審」で行われているのであり、大臣の意向が入るという制度はありません。ですから、記事でも私が、「口利きをして学部新設を認可した」とは書けないので、そのような誤った印象を与えるような書き方をしたのではないかと思います。
また地方の博友会について、過去に週刊誌が政治資金規正法違反ではないかと報じたことを書いておりますが、この件については、ご存知の通り、捜査機関の捜査の結果、不起訴とされており、まったく問題ありません。
この記事では、不起訴となったことすら記事に書かず、この記事だけ読んだ読者は誤解をするのではないかと懸念をしております。さらに加計学園から祝電を出した件について指摘をしておりますが、文科大臣には様々な学校から祝電の依頼があり、祝電を出すこと自体、特段珍しいことではないということはご承知のことと思います。
以上の通り、本日週刊誌が報じた記事内容は、法律上、問題ないことばかりであることを説明いたしました。
では、なぜ本日急に皆様にお声がけをし、記者会見をすることにしたのか。それは皆さんご承知の通り、現在都議会議員選挙の終盤に入る、大事な時期であるからであります。
今日の記事の見出しでも「安倍側近で都議選の司令塔」と書いてあると。私も都連会長として、先頭に立って、選挙戦を前に戦っているわけでありますが、このようにまったく事実に反する記事が、この大事な時期に掲載されること自体、選挙妨害。その目的だと受け止めざるを得ません。
特にこの記事は、私の事務所の内部文書を文書ではなく、デジタルデータで入手した点に 大きな関心を持っています。
記事では、「Excelの入金リストのデータ作成者と報酬時期などを確認した」とあることから、週刊誌が入手したのは内部文書のデジタルデータであるようであります。そうすると事務所のパソコンに入っているデジタルデータを持ち出せるのは、事務所内部にいたものと考えざるを得ません。
本件記事の中には、事務所関係者と称するものが、いろいろと証言をしております。先日、「週刊文春」の記者が会館事務所に取材に来た際、事務所のスタッフとのやり取りの中で、内部情報を漏らしているのは、昨年、私の事務所を退職し、現在自民党以外から都議選に立候補した私の元秘書であることを認める発言がありました。
この元秘書については、いろいろなマスコミ報道で、「退職したのは事務所の金を使い込んだからではないか」という報道がありますが、その通りです。
元秘書は否定をしているようでありますが、本人が書いた上申書がありますので、元秘書の発言がウソであることは明白です。
この上申書に書かれておりますが、「もし元秘書が退職の経緯や理由について事実と違うことを言うなどして、事務所として対外的に説明をしなければならなくなった場合には、元秘書がサインした上申書を公開しても構わない」と了解をもらっておりますので、ご覧になりたい方は配布いたしますので、ご覧になって頂きたいと思います。(※資料を配る)
配布した「上申書の本人のサインが、自分のサインではないと主張している」という報道もありましたので、もう一枚、退職届にサインした筆記を見ていただければ、同じ筆記であることが明らかだということが、お分かりになると思います。
二枚目の退職届というのは、私設秘書から公設秘書になったときのもの。これは平成25年12月31日付けで私設秘書を退職して、その後公設秘書になったときのサインということで、一枚目のサインと同じサインだということは、一目瞭然であると思います。
ただ重要なのは、元秘書が退職した理由は、金の使い込みだけではなく、実は事務所のパソコンを、この元秘書が隠したことも退職の理由だったからです。退職する際、この元秘書からパソコンを隠し、業務を妨害した事実について上申書の中で謝罪させていますので、上申書を確認をして頂きたいと思います。
週刊誌に内部情報を提供したのが、誰であるのか。現在、特定できませんが、今後、週刊誌が入手したのが事務所のパソコンに入っていたデジタルデータであったとするなら、内部の犯行である可能性が強く、パソコンを一時隠し持っていたこの元秘書にも大きな疑惑を持たざるを得ません。
いずれにしても、週刊誌が入手した入金リストや日報がデジタルデータで漏洩したことが判明いたしましたので、警察か検察に偽計業務妨害などの刑事事件として告訴すべく現在弁護士に相談しているところであります。
また、「週刊文春」についても、都議会議員選挙の真っ最中に、このような記事を掲載すること自体が選挙妨害であり、また内容が名誉毀損にあたると考え、告訴の準備をしているところでございます。私のほうからは以上です。

下村氏は、記者からの質問を受けた後に、改めて時間を設け、現在が東京都議会選挙の投票日直前であること強調。選挙運動に集中したいとして、「もしまだ疑問の点があれば、選挙が終わった後に説明する。マスコミの皆さんにはご協力をお願いいたします」と 配慮を求めた。 
加計学園のパーティー券購入報道 自民下村氏“事実に反する” 6/29
自民党の下村幹事長代行は、みずからを支援する団体のパーティー券200万円分を学校法人「加計学園」が購入していたなどと週刊誌で報じられたことについて、加計学園から政治寄付もパーティー券の購入をしてもらったこともなく、事実に反すると反論しました。
自民党の下村幹事長代行は、29日発売の「週刊文春」で、文部科学大臣を務めていた当時の平成25年と26年に、みずからを支援する団体「博友会」のパーティー券、合わせて200万円分を学校法人「加計学園」に購入してもらったものの、団体の政治資金収支報告書には記載がないなどと報じられました。
これを受けて下村氏は、29日自民党本部で記者会見し、「加計学園の秘書室長が事務所に現金を持参したが、合わせて11の個人や企業が、いずれも収支報告書に記載義務のない20万円以下でパーティー券を購入したものであり、加計学園が購入したものではない。加計学園から政治寄付もパーティー券の購入をしてもらったこともない。記事は全く事実に反する」と述べました。
さらに下村氏は、「東京都議会議員選挙の終盤戦に入る大事な時期に、全く事実に反する記事が掲載されること自体、選挙妨害が目的だと受け止めざるをえない。週刊文春を告訴する準備をしている」と述べました。また、下村氏は、事務所の内部文書の漏えいが判明したとして、刑事告訴を検討していることも明らかにしました。
「週刊文春」の記事内容は
29日発売の「週刊文春」は、自民党の下村幹事長代行が文部科学大臣だった当時、学校法人「加計学園」から、下村氏を支援する政治団体の政治資金パーティーで合計で200万円分のパーティー券を購入してもらっていたのに、政治団体の政治資金収支報告書には記載されていないなどと報じています。
記事では下村氏を支援する政治団体「博友会」のパーティー券の入金記録を入手したとしていて、「加計学園」が平成25年と26年に100万円ずつ購入したと記されているとしています。また下村氏の事務所の「日報」も入手したとして、「加計学園」が文部科学大臣だった下村氏の事務所に対して、口利きを依頼していたことが記されているとしています。
パーティー券の報告義務
政治資金規正法では、1回の政治資金パーティーで同じ人や企業から20万円を超えてパーティー券を購入してもらった場合、支払った人の名前や金額などを政治資金収支報告書に記載し、都道府県の選挙管理委員会などに提出することを義務づけています。しかし購入額が20万円以下の場合には収支報告書に記載する義務はありません。
下村氏は29日の会見で「4年前、加計学園の秘書室長が合わせて11の個人や企業から預かってきた100万円を事務所に持参した。パーティー券は11の個人や企業が収支報告書に記載する義務がない20万円以下で購入したもので、それぞれに領収書を渡したことも確認できている。加計学園が購入したとする記事は全く事実に反する」としています。 
下村博文氏『加計学園から200万円の闇献金』報道を否定 6/29
 一方で「加計の秘書室長が...」
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)をめぐり、週刊文春オンラインが6月28日、自民党の下村博文幹事長代行を支援する政治団体「博友会」が同学園から「200万円の違法な献金を受けた疑いがある」と報じた。これを受けて下村氏が29日に記者会見し、「記事は事実無根」と疑惑を否定した。
週刊文春「加計学園から闇献金200万円」と報じる
週刊文春デジタルはは29日、「下村博文元文科相〈安倍最側近で都議選の司令塔〉『加計学園から闇献金200万円』内部文書入手」とのタイトルの記事で、下村事務所の内部資料とするデータを公表。
同誌は2013年と14年、加計学園が下村氏の後援会「博友会」の政治資金パーティー券を計200万円分を購入したが、政治資金収支報告書に記載しておらず、政治資金規正法違反の疑いがあると指摘している。
政治資金規正法では、政治団体は20万円超のパーティー券の購入があった際に報告を義務付けられているが、週刊文春デジタルは「政治資金収支報告書への記載がない」とし、違法の疑いがあると指摘している。
「博友会」をめぐっては2015年、各地の同団体が会員から集めた年会費の一部などを下村氏が代表を務める自民党の支部に寄付をしたのは政治資金規正法違反にあたるとして、市民団体「政治資金オンブズマン」メンバーらが下村氏らを刑事告発していたが、東京地検特捜部は2016年11月、下村氏らを不起訴とした。
下村氏は現在、自民党の幹事長代行と党都連会長を務めている。
下村氏「事実無根」と全面否定。一方でパーティー券については…
下村氏は29日午前、自民党本部で記者会見し、「加計学園から政治寄付もパーティー券を購入してもらったこともなく、『加計学園から闇献金200万円』という記事は事実無根」とし、疑惑を全面的に否定した。
その上で、週刊文春が報じた内部資料は元秘書が持ち出した可能性が高いとし、「現在、都議会議員選挙の終盤に入る大事な時期。事実に反する記事が大事な時期に掲載されること自体、選挙妨害目的だったと受けざるをえない」と不快感を示した。
一方で、不正献金の疑惑がもたれた200万円分のパーティー券については、「2013年と14年、加計学園の秘書室長が下村事務所を訪れ、計11の個人・企業から預かってきた各100万円ずつを持参した。1人・1社20万円以下で、それぞれ領収書を渡した」と明かした。
下村氏は「加計学園からパーティー券の購入をしてもらったものではない」「(秘書室長が)窓口になって、いろんな方々にお願いして、加計学園以外の11人の個人や企業からいただいたと(当時の)日報に書いてある」とした。
週刊文春は「加計学園以外にも報告書に不記載のケース」と指摘
週刊文春デジタルはパーティー券について、他にも「収支報告書に記載されていないケース」があると指摘している。
同誌によると、大手予備校の「東進ハイスクール」などを運営する「ナガセ」の永瀬昭幸社長が2012年9月25日、50万円分のパーティー券を購入しているが、博友会の政治資金収支報告書に記載されていないとしている。
○ 大手予備校の「東進ハイスクール」などを運営するナガセの永瀬昭幸社長。一二年のリストによれば、永瀬氏は九月二十五日に五十万円分を購入している。ナガセに確認すると、 「ご指摘いただいた通り事実でございます」
これについて下村氏は会見で、「他の教育機関が購入したとするパーティー券購入については、事実関係を確認する」すると述べた。
報道陣からは、「政治資金規正法では、とりまとめをしてパーティー券をあっせんすることは違法性に問われる可能性もある。『(パーティー券の購入が)複数人であったが、違法ではない』といは言えない。購入者の氏名を公開し、検証させてほしい」といった声があがった。
これについて下村氏は、「別々に領収書を切っているが、20万円以下(のパーティー券代金)については政治資金規正法では名前を出さなくていいということもあるが、プライバシーの問題もあるので確認については努力したい」と述べた。 
自民党の下村博文幹事長代行の献金疑惑 6/29
 情報漏洩元とされた元秘書、平慶翔氏が反論声明
自民党の下村博文幹事長代行が、学校法人「加計学園」からの献金に関する事務所の内部文書の漏洩(ろうえい)元の可能性を指摘した元秘書の平慶翔氏は29日、弁護士を通じて否定する声明を発表した。平氏は東京都議選で、地域政党「都民ファーストの会」から立候補している。要旨は以下の通り。
1、私が週刊文春側に下村事務所のデジタルデータを提供した事実はない
2、私名義の平成28年8月10日付の上申書は偽造文書だ。文書中の私の住所、氏名などは私の筆跡ではない
3、私が、下村事務所において上申書に記載されているような犯罪行為を行った事実はない
加計「学園関係の11名分」 下村氏、具体名の説明なし 6/29
自民党の下村博文・幹事長代行は29日、文部科学相だった2013年と14年、学校法人「加計学園」(岡山市)の当時の秘書室長から、下村氏を支援する政治団体「博友会」の政治資金パーティー券の費用として現金で計200万円を受け取ったと明らかにした。下村氏と加計学園はともに、現金は加計学園からではなく、秘書室長が「11名の個人や企業」から預かったものを持参したと説明した。
下村氏は、各購入者の支出額は「20万円以下だった」として政治資金収支報告書への記載義務はないとしたが、11名について具体名などの説明はなく、実態はわからないままだ。秘書室長が一度に現金で100万円ずつを持参し、事務所の日報には入金について「加計学園」と記載されていたといい、今後は「11名の個人と企業」について説得力のある説明ができるかが焦点になる。
同日発売の週刊文春は、博友会が加計学園から100万円ずつを入金されながら収支報告書に記載していなかったと報道した。これを受けて会見した下村氏は、事務所が受け取った現金は「加計学園からではない」と記事内容を否定し、11名から秘書室長が預かったものと説明。「(事務所の)日報に、窓口として加計学園と書いてあった」とした。
11名の詳細は「分からない」としながら、「加計学園の内部だけで11名ではないと聞いている」と述べた。「領収書を渡しているので、調べられるところは今後、しっかり調べる」とも話した。
一方、加計学園はこの会見後の同日夕、報道各社に「ご質問について」とする文書をファクスで送付。「(博友会に)当学園は献金をしたことはありませんし、パーティー券を購入したこともない」としたうえで、当時の秘書室長が下村氏の事務所に持参した現金は「当学園と関係のある個人や会社の合計11名のパーティー券代」と説明。秘書室長が現金を預かった経緯は「上京し、下村事務所に寄るついでがあったためと聞いている」とした。
また、それぞれの名前は「プライバシーなどがあるので回答は差し控えさせていただく」とした。
下村氏は現在、自民党の東京都連会長を務めている。都議選の投開票が7月2日に迫っており、会見では「事実に反する記事がこの大事な時期に掲載されること自体、選挙妨害目的と受け止めざるを得ない」と不快感を示した。 
加計学園ヤミ献金疑惑 6/29
加計学園と安倍政権の癒着について、また新たに大きな疑惑が噴き出した。きょう発売の「週刊文春」(文藝春秋)が、「下村博文元文科相〈安倍最側近で都議選の司令塔〉「加計学園から闇献金200万円」内部文書入手」と題したスクープ記事を掲載したのだ。
「週刊文春」は今回、「博友会パーティー入金状況」なるリストを入手。そこには、加計学園が下村氏の後援会「博友会」の政治資金パーティ券を2013年と2014年にそれぞれ100万円、計200万円分を購入していたことが示されていた。しかも、この加計学園によるパーティ券購入の事実は、政治資金収支報告書に記載がない。政治資金規正法では20万円を超えるパーティ券購入には支払った者の氏名や住所などを報告することが規定されており、同誌は政治資金規正法違反の疑いを指摘している。
同誌では内部リストの画像も公開しており、もはや言い逃れは難しいと思われたが、本日、下村前文科相は会見を開き「記事は事実無根」と否定。警察、検察への刑事告訴までちらつかせた。
だが、その説明はまったく説得力のないものだった。
「事務所で平成25年の日報を確認したところ、加計学園の秘書室長が事務所を来訪され、個人および企業あわせて11名から預かってきた合計100万円の現金を持参したので、その11名の領収書を作成し渡した。平成26年も同様」
「日報には、加計学園の事務長が加計学園以外の個人や企業にお願いしたと書かれてある」
「加計学園がパーティ券を購入したわけではない」
つまり、下村元文科相は、加計学園の秘書室長が窓口となり「加計学園以外の個人や企業から」現金を集め、取りまとめ役として持参しただけ、と主張したのだ。1回につき11人が100万円のパーティ券を購入すれば、それは報告義務のない20万円以下のパーティ券購入となるため、違反には当たらないというのだが、そんな都合のいい話があるのだろうか。しかも11名の具体的な個人名や企業名を公表するかについては「確認について努力したい」としか言わず、こんな方法がまかり通るならヤミ献金し放題になってしまう。
また、この下村元文科相の説明が事実だったとしても、違法性と加計学園の闇献金疑惑は何も払拭されない。
加計学園が代わりに献金を集めただけでも違法の「あっせん」行為だ
まず第一に、大前提として、この200万円分のパーティ券購入の時期は下村氏が文科相在任中のこと。下村事務所が作成した入金リストには、2013年に〈9月27日 学校 加計学園 1,000,000〉、2014年には〈10月10日 学校 山中一郎 加計学園 1,000,000〉としっかり記載されている。万が一、下村元文科相が主張するように加計学園が「あっせん者」だったとしても、教育行政のトップが特定の学校法人関係者と金銭のやりとりを行っていること自体が、口利きなどの癒着を疑われることは間違いない。事実上、賄賂事件とも言えるだろう。
さらに、政治資金規正法では、パーティ券代金を集金するなどの「あっせん者」がおり、あっせん額が20万円を超えた場合には、そのあっせん者の氏名や金額などの報告を義務づけている。1回で100万円分のパーティ券を購入しているのだから、その記載が政治資金収支報告書に記載がない今回のケースは、当然、違反にあたる可能性が高い。
いや、そもそも下村元文科相の言い分が不可解なのは、加計学園の秘書室長がわざわざ「加計学園以外の個人や企業」から金を集めてきた、という点だ。パーティ券購入代金を出した11人というのは、じつのところ加計学園の“隠れ蓑”なのではないか──そうした疑いは晴れない。
しかも、下村元文科相は疑惑隠しに安倍政権のいつもの手口も使い始めた。今日の会見でもさっそく、告発者へのデマ攻撃、印象操作を開始したのだ。
下村元文科相は闇献金疑惑を否定するなかで、「文藝春秋」7月号掲載の記事に、下村元文科相の妻・今日子氏が「加計サイドから月々何十万かの顧問料が支払われている」などと書かれていたことも事実ではないと否定し、「記事は元秘書の話を鵜呑みにしたと思われる」と、元秘書の存在について言及。今回の入金リストなどが流出したことも、「事務所のパソコンに入っているデジタルデータを持ち出せるのは事務所内部にいた者と考えざるを得ない」「取材にきた『週刊文春』の記者から、内部情報を漏らしているのは現在、自民党以外から都議選に立候補した元秘書だと認める発言があった」と話した。
しかし文春側は「取材した記者に、細かいやり取りを確認しましたが、下村氏の発言は事実無根です。取材源の秘匿は記者が守るべき義務であり、それについての確認には一切応じていません」と反論。元秘書の男性も「私が、週刊文春側に下村代議士事務所のデジタルデータを提供した事実はありません」と否定している。
平愛梨弟への“横領”攻撃は前川前次官と同じ、疑惑隠しの印象操作
この「元秘書」というのは、タレント・平愛梨の弟で、都民ファーストの会から都議選に立候補中の平慶翔氏のことだ。平氏は一部メディアで秘書時代に事務所費を横領したと報じられていたが、下村元文科相はきょうの会見でも「使い込みは事実」と断言。今回の報道は「元秘書による選挙妨害が目的」だと主張したのだ。
ようするに下村元文科相は、“横領を行うような信用ならない人物が、都議選の妨害をするために「週刊文春」に内部資料を持ち出してリークした”と言うのだ。
だが、平氏が事務所の金を横領したのか否かは、加計学園の問題とはまったく関係がない。前川喜平・前文部科学事務次官の「出会い系バー通い」や、萩生田光一官房副長官が関与していたことをメールに記述していた内閣府の職員を「文科省からのスパイ」扱いしたのと同じように、今回もそうやって「印象操作」で攪乱させようというつもりなのだろう。疑惑となんの関係もない“横領”疑惑をもち出して、どっちが選挙妨害か。
しかも、下村元文科相はこうやって元秘書を攻撃した結果、逆に「週刊文春」が報じた入金リストなどの内部情報が「本物」であると、はっきり認めたのである。
今回、「週刊文春」は入金リストと同時に下村事務所の日報も入手。その日報では、とくに2014年に加計学園の秘書室長の名が頻繁に登場し、たとえば同年4月21日には、秘書室長は下村氏の秘書に“文科省に何度連絡しても取り合ってもらえない。面会させてもらえないか”と担当部署への口利きを頼んでおり、秘書は〈事務方を通して、お願いをいたしました〉と対応したことを書き記している。また、同年10月17日には、加計孝太郎理事長と下村氏は会合を開いており、愛媛県を選挙区とする塩崎恭久厚労相や山本順三参院議員も同席していた。
すでに以前から、加計学園と下村今日子夫人の“深い関係”が報じられてきたが、下村氏も文科相時代、加計学園と密接な関係を築き上げていたことが、事務所から持ち出された「本物」であるこの日報からは見て取れる。
安倍首相、下村文科相と今治市職員が同日同時刻に官邸で…
そして、こうした事実が出てきたことで、なおさら気になってくるのは、今治市の職員が官邸を訪問した2015年4月2日の“奇妙な偶然”についてだ。
今治市が公開した出張記録によると、同日に今治市の企画課長と課長補佐2名は「獣医師養成系大学の設置に関する協議」のために内閣府などを訪問。その後、急遽「官邸訪問」が決まり、15時から16時30分まで官邸で打ち合わせを行ったことが記されている。
地方の市職員が官邸に招かれる。しかも当時、今治市は国家戦略特区に申請する前だ。あまりに異例の対応と言わざるを得ないが、じつは同日の首相動静欄を確認すると、安倍首相は15時35分から下村文科相と山中伸一文部科学事務次官と面談を行っているのである。今治市職員が官邸に訪問していた、まさに同じ時間なのだ。
官邸は訪問記録が保存されておらず「確認できない」と言い、今治市も職員が誰と会ったかは回答を避けているが、前述したように当時、加計学園サイドは下村文科相に直接、口利きを依頼するような関係だった。急遽、今治市職員の「官邸訪問」を実現させたのは誰なのか。そして、安倍首相と下村文科相は、この日、今治市職員と面談をしたのではないか──。その疑惑はより濃厚となったといえるだろう。
何より、今回の疑惑発覚でもっとも重要なのは、加計学園が下村元文科相に行ったのと同じように、政治資金収支報告書で報告もされていない、パーティ券を利用した多額の金が加計学園からほかの政治家にも流れている可能性が出てきた、ということだろう。「総理のご意向」だけではなく、異常な「加計ありき」には金も絡んでいるのか。いや、そもそも安倍首相と加計理事長の関係は、ほんとうにたんなる「腹心の友」というだけなのか。下村元文科相は無論のこと、加計学園の金の流れに対する追及がさらに必要だ。 
取りまとめ加計学園幹部の記載なし 規正法違反の可能性 6/30
政治資金規正法は、政治団体のパーティー券のあっせん額が二十万円を超える場合、あっせんした人物の名前や金額を政治資金収支報告書に記載しなければならないと規定する。しかし「博友会」の二〇一三、一四年分の収支報告書には記載がなかった。
神戸学院大学の上脇博之教授(憲法学)は「下村氏の説明通りなら、あっせんに当たるのではないか」と指摘する。
また加計学園は、パーティー券を購入した十一の個人・企業について、「当学園と関係のある個人や会社」とした上で、「そのお金を当学園が負担した事実はない」と説明するが、過去には個人名義の政治献金が実質的には企業献金だったと認定され、政治資金規正法違反(虚偽記載)が確定したケースがある。
西松建設の違法献金事件では、同社幹部らが複数の政治家関連の政治団体に寄付。その原資は同社が幹部に支給するボーナスに上乗せしていたとして、真の寄付者は同社とされた。
上脇教授は「個人が購入したのだというなら、下村氏は会計帳簿なども提示して証明すべきだ」と話す。 
加計関係者がパー券購入 下村氏側に200万円分 6/30
下村博文・自民党幹事長代行の事務所が二〇一三、一四年、学校法人「加計(かけ)学園」の当時の秘書室長が持参した計二百万円をパーティー券代として受け取った問題で、学園は二十九日、パーティー券を購入したとされる十一の個人・企業について「学園と関係のある個人や企業」と認めた。学園が代金を負担したことは否定した。学園と下村氏は「十一個人・企業分を秘書室長が取りまとめた」と説明した。
パーティー券のあっせん額が二十万円を超える場合、あっせん者などの報告義務がある。しかしパーティーを主催した下村氏関連の政治団体「博友会」の一三、一四年分の収支報告書には記載がなく、神戸学院大学の上脇博之教授(憲法学)は「秘書室長が取りまとめたなら、あっせん者に当たり、記載がないのは政治資金規正法違反の可能性がある」と指摘する。
一方、下村氏は一人・一社当たりの購入額について、規正法で記載が義務付けられた「二十万円」を超えていないとして、十一個人・企業の名前を記載していない点は「法律上、問題ない」と主張した。
下村氏は一二年十二月〜一五年十月まで文科相。当時、加計学園は系列の岡山理科大学(岡山市)で教育学部などの設置を検討。教育学部は一五年八月に設置の認可が下りた。
下村氏や加計学園によると、当時の秘書室長が一三年と一四年、十一の個人や企業からパーティー券購入のため預かった各百万円を下村事務所に持参。下村氏側が領収書を作成した。
十一の個人、企業に関し、下村氏は「秘書室長が、パーティーをやるなら協力しましょうと知り合いの方に声を掛けてもらった。加計孝太郎理事長は含まれていない」と説明。加計学園は「秘書室長が上京し、下村事務所に寄るついでがあった」とした上で、個人や企業の名前の公表は避けた。
加計氏との関係について、下村氏は「大臣になる前から存じ上げていたが、年に一、二回お会いすることがあるかどうか。私の政治家としての姿勢に共感していただいている方だと思う」と語った。
下村氏は二十九日、違法献金があったとの週刊文春の報道を受け、会見した。自民都連会長でもある下村氏は「都議選終盤に、事実に反する記事が掲載されること自体、選挙妨害目的と受け止めざるを得ない」と述べ、偽計業務妨害などの疑いで同誌の刑事告訴を検討する意向を示した。 
 
衆院・参院 閉会中審査 7/10

 

衆院 閉会中審査 
福島伸享衆院議員(民進)
福島伸享衆院議員(民進)「加計問題は文科省内部のものと思われるメモが流出し、それをマスコミが報道し、前川前事務次官の発言もあって、さまざまな新しい事実が出てきた。文科省は当初5月19日に該当する文書の存在は確認できなかったという調査結果を発表したけれど、追加調査を行う必要があるとの国民の声が多く寄せられたとして、松野博一文科相が安倍晋三総理に『追加調査を行いたい』と言い、総理から徹底した調査を実施するように指示があった。文科省は6月15日に追加調査の結果を発表した。これ、前川次官にしたら悔しいと思いますよ。文科省は誠実に情報開示をしたいと思うのに、さまざまな事情があって、5月19日では文書の確認はできなかった。失った文科省の信頼を思うと、必死の思いで情報を出した方々、そして教育行政を心配する人たちにとって、忸怩たる思いがあったと思う。文科省の2回目の調査結果では、多くの文書がマスコミの報道通り存在するといわれている。ただ、存在しないといわれているのは、10月7日の萩生田光一官房副長官の発言概要と、10月19日の北村直人・日本獣医師会顧問の元議員の文書だけ。萩生田副長官に関する文書がないと言っているのが不自然だ。それが『10/7 萩生田官房副長官ご発言概要』だ。この文書、前川次官、ごらんになったことがあるか」
前川氏「お尋ねの10月7日の日付入りの『萩生田官房副長官ご発言概要』と記した文書だが、これは私が事務次官在職中に担当課からの説明を受けた際に受け取り、目にした文書に間違いない」
福島氏「在職中に担当課から入手したとおっしゃっている。担当課のフォルダには必ずあるはずだ。事務次官にレクしたような資料を捨てることは、私も役人をやっているけれど、あり得ない。それを『ない』と言うのは、『ない』と言わされているとしか思えない。松野文科相、何か都合のいい情報だけを出して、誰かをおもんぱかって都合の悪い情報は出していないのではないかと思われる。萩生田副長官、まさか『ない』と言ってくれなんて圧力はかけていませんよね」
萩生田氏「私の方では、この文書については存在が分からず、文科省で調査した結果、存在が明らかにならなかったということで、私の方からこの文書を『伏せてくれ』とか、『なくしてくれ』とか指示をしたことは全くない」
福島氏「10月7日にこうした発言をした記憶はあるか」
萩生田氏「私はこのような項目について、つまびらかに発言した記憶はない。ただ、後で確認したところ、10月7日に確かに常盤(豊文科省高等教育)局長が私の事務所を訪ねて、やり取りした」
福島氏「常盤局長にお越しいただいている。ここに書いてあることを、常盤局長は具体的に聞かれているか。例えば『学校ありきでやっていると誤解を招くので無理をしない方がいい』とか、聞いた記憶はあるか」
常盤氏「10月7日だが、私が萩生田副長官をお訪ねし、当時、懸案だった給付型奨学金の制度設計の問題などを話したと思われるが、その中で獣医学部新設の検討状況についても話したと思う。具体的にどのようなやりとりであったかは記憶がない」
福島氏「大丈夫ですか。局長の職が務まりますか。『加計学園が誰も文句のいえないような、いい提案ができるかだ』と言われたんですよね? 文字に残っている。どうです? 記憶にないんですか?」
常盤氏「繰り返しになって申し訳ないけれど、そこでのやり取りについての具体的な記憶はない」
福島氏「国会名物の『記憶にございません』という言葉が出た。大事なことになると全部『記憶にない』になっちゃうんですよ。これ(発言概要)を見ると『初めから加計学園が決まってしまっているから、ヤラセと思われないように注意してやりましょうね』という相談をしている内容なんですよ。肝心なところは『覚えていません』。両方とも。異常としか思えない。前川参考人、萩生田副長官もかなり強く関わっていると思うけれど、前川参考人は和泉(洋人)総理補佐官が一番のキーパーソンだとおっしゃっていて、9月上旬に官邸執務室に呼ばれて、特区における獣医学部の課題については『文科省の対応を早くしてほしい。総理は自分の口から言えないから代わって言うんだ』というようなことを言われたと。記録にない。記憶にない。同じようなことを言っている。ただ、常盤局長は現職で、まだ萩生田内閣人事局長に人事をされる身にあるから言えないのかもしれない。10月7日の段階で加計で決まっているようなことを示唆しているんです、萩生田副長官は。どのようなやり取りがあって、前川さんとしては、官邸、総理がどう関わっていると認識していたのか」
前川氏「今治市における、国家戦略特区における獣医学部新設の件で、総理官邸がどのように関与していたと考えるかというご質問だと思う。担当は内閣府なので、内閣官房あるいは総理官邸が直接担当ではないわけだけれど、私が9月上旬、あるいは9月中、あるいは10月にも和泉補佐官のもとを訪ね、この件について話を頂戴したことはある。その件については福島議員がおっしゃった通りだ。さらに今、問題になっていた10月7日の日付入りの文書だが、これをごらんになると分かるように、文科省としては、萩生田副長官にいろいろとご相談したいというスタンスであり、特に獣医師の需給の見通しを立てる上では既存の分野、あるいは新しい分野を含めて、きちんと見通しを立てるためには、農水省や、必要に応じて厚労省の参画がぜひとも必要であると。これが当時の文科省の認識だった。関係省庁にちゃんと参画してもらいたいということをお願いしたい、そのための調整をしていただきたいというのが、文科省のスタンスだった。結局、なかなかうまくいかなかったわけで、その後に明らかになった10月21日の日付入りの文書があるけれど、それをごらんいただくと、結局、萩生田副長官も、実質的な農水省の参画が得られないまま30年4月開学のために早く手続きを進めるようにということになっている。私としては、内閣府がこの仕事を進めるに当たっては、その背景に官邸の動きがあったと思っている。その中でも私が直接指示を受けた和泉補佐官がさまざまな動きをしておられたということは、今申し上げた10月21日の文書を見ても明らかだろう」
福島氏「前川さんのおっしゃった10月21日の文書というのが、これだ。後から文科省が探したら出てきたというものだ。確かに文科省で保存されていた文書ということでいいか」
義本博司・文科省総括審議官「文科省が6月20日の日にこの文書の存在について確認し、発表したものだ」
福島氏「文科省の中で保存された文書だ。これを見ると、下の2つ目の丸があるけれども、渡邉加計学園事務局長を課長の所に行かせるという具体的な名前が出ている。文科省の調査によると、具体的な名前を後で担当の人が調べて出したということだが、少なくとも事務局長を獣医学部の所管の課長のところに行かせるという会話があったということでいいか」
常盤氏「学校法人が学部新設を検討している場合、設置認可の手続きに係る問い合わせや相談が行われることはよくある。加計学園からも問い合わせや相談があったことは考えられるが、具体の相談の状況は公にすることによって当該法人などの利益を害する恐れがあるため、お答えすることは差し控える。この文書との関連でお尋ねがあったが、渡邉事務局長という氏名および役職については、担当の方で補充したということだ。担当者によると、渡邉事務局長という方が相談に来られたことが10月21日以前も以後もあったと聞いている」
福島氏「その説明もおかしい。10月21日だ。そもそも獣医学部の新設ができるという決定を行った特区の諮問会議は11月9日で、これより後ですよ。これより前には設置なんてできない。だから設置認可の相談なんてあり得ない、加計学園と決まっていない限り。国家戦略特区の仕組みは特区に認定されても、そこで規制の特例措置を行える事業者はその後に決まるわけですね。公募で決まるわけですよね」
山本幸三地方創生担当相「おっしゃる通りだ。今回の場合は、いろいろ文科省と私どもが議論し、監督省庁の文科省で正当な理由があると証明できなかったわけだから。規制改革をやるということを決めて、制度改正を11月9日にやるということを決める。それを受けて、パブリックコメント(意見募集)とか、いろいろ手続きを経て最終的に区域を決めて、そこから最終的に公募で決まっていくということだ」
福島氏「公募は翌年の、今年の1月4日から始まるわけだが、公募までは予断がないという建前になっているが、10月21日、まだ獣医学部の新設が認められるか分からない段階で、萩生田副長官と常盤局長は、例えば、既存大学を上回る教授数とか、カリキュラムの内容を増やすとか、また愛媛大学の応用生物化学と連携するとか、かなり具体的なことを加計学園にアドバイスするような会話をしている。試験を受ける前に答えを国が教えている、受験者に。それと同じようなことをやっているから不公正じゃないかといわれる。しかもポイントとなる『総理は平成30年4月開学とお尻を切っていた』という表現がある。誰が言ったことか」
常盤氏「まず前段だけれど、学校法人の加計学園だが、構造改革特区の段階からすでにこういう動きがあったので、相談については、前提条件はあるけれども、学校法人加計学園としてこういうことを相談したいと、設置の相談をしたいということはあり得る。われわれもそれを受け止めることはある。それから事実関係ということだが、この21日の文書だが、面談の内容について私、個別のやりとりに明確な記憶があるわけではない。事実関係ということで申し上げると、私から副長官に対してご説明を申し上げたということなので、この場で副長官から何らかの指示を受けたという記憶はない」
福島氏「『総理は30年4月とお尻を切っていた』と言ったのは常盤局長ですね。総理がそう言っていることをなぜ常盤局長は知ったのか」
常盤氏「面談の内容について私、明確な、個々のやり取りについての記憶があるわけではない。私としては当時、総理が規制改革全般についてスピード感を持って実現すべきだという旨の発言をされていることとか、平成30年4月開学というスケジュールも文科省内でシミュレーションをしていたし、こういうことは認識していた。その上、当時、内閣府と私どもの担当者の間では相当厳しいやりとりが行われていたことも認識していた。そういう中での理解した情報と合わせて考えていることは事実関係としてはあるということだ」
福島氏「肝心なことは、また『記憶にございません』。そんなに萩生田内閣人事局長が怖いのか。何度も同じことが出てくる。医学部新設に係る内閣府の伝達事項、平成30年4月開学を大前提というのは。これは官邸の最高レベルが言っていること。官邸の最高レベルといったら普通は総理大臣ですよ。残念ながら今日、総理がいないから、この真偽を総理にただすことはできない。私が申し上げたいのは国家戦略特区が岩盤規制の突破だということを総理はおっしゃっている。私はそうじゃないと思っている。新たな参入規制をつくっていると思う。平成30年4月の開学って、もう来年の4月ですよ。それまでに教授を準備して新設をやるといったら、フライングしている人しかできない。それを進めたのが総理大臣ということが、いろんな資料から出てくるわけです。しかも萩生田副長官が和泉補佐官が知恵をつけて、加計学園に事前に模範答弁を教えている。他の人はこれで参入できますか。私はこにいる後藤さんと一緒に構造改革特区というのを小泉政権でつくった人間だ。真っ白からつくったのは、私と後藤さんともう一人、3人なんですよ。まさに規制改革の突破口としてやった。やりたい人が手を挙げていいのだったら、みんなそれは資格がある。ところが国家戦略特区は違う。まず政府が政令で指定したエリアでしかできない。これ参入規制じゃないですか。まさに参入障壁そのものだ。国家戦略特区という仕組みそのものがおかしい。岩盤規制の突破をやるなら、構造改革特区でやれば十分だ。獣医学部を設置したいと新潟が言おうと、京都が言おうが、加計学園にしか落ちないような仕組みが国家戦略特区だ。既得権益を新たにつくる仕組み、岩盤規制を新たにつくる仕組み。結局この獣医学部の国家戦略で何をやりたかったのか。何が国家戦略なのか」
山本氏「構造改革特区もそれなりの実績をあげてきたと思うが、最近では減少傾向だ。結局、岩盤規制突破がなかなかできない。国家戦略特区も地元がきちっと提案をしてきてやるわけで、国が勝手に決めるわけではない。本当に岩盤規制を突破するには、まず地域を限定したところでやるしかない。全部いっぺんにできればそれに越したことはない。なかなかそういうわけにはいかないので52年間もできていなかった。私どもは先端ライフサイエンス分野、あるいは水際対策、感染症対策をしっかりとやる。極めて国家戦略特区の趣旨に沿っているものと考えている」
福島氏「全く国家戦略特区らしいワクワクする話は何も聞かせてもらえなかった。やはり総理が出てきて説明しなければ全く疑惑は晴れない。われわれは憲法に基づいて臨時国会の開催を求めている。開催は政府に裁量がなく、開く義務が政府にある。ぜひ官房長官、速やかに臨時国会を開催し、予算委員会の集中審議を行って、総理自らこの問題についてきっちり説明することを求める」
菅義偉官房長官「与党とも相談して決めたい」 
緒方林太郎衆院議員(民進)
緒方林太郎衆院議員(民進)「安倍(晋三)総理の記者会見で(獣医学部新設の)全国展開の話が出てきた。聞いていて非常に違和感を覚えた。総理はこれまでずっと、自分が関与する余地はないといっていたが、突然、記者会見で全国展開すると。矛盾していると思うが」
山本幸三地方創生担当相「私も総理も国会で答弁しているように、国家戦略特区(の目的)は、今回のように岩盤規制を突破することである。しかし、これは1校に限ることではなくて、2校、3校もあり得るというように答弁している。国家戦略特区でやってみて、評価が大丈夫というものについては全国展開していく。これが原則だ」
緒方氏「安倍総理が関与する余地は全くないといってきたのに、記者会見でいきなり全国展開だと。まさに関与しているわけだが、矛盾しているのではないか」
山本氏「総理がいっているのは、原則論としての全国展開の話。それとは別で、個別にやることには関与しないといっているだけだ。全く問題ないと考えている」
緒方氏「どういうデータに基づいて全国展開するのか」
山本氏「国家戦略特区で規制を外したものについては毎年評価をしている。区域会議で評価をやり、最終的に特区諮問会議でやる。それがどのような効果があるのか検証した上で、問題ないようであれば全国展開にもっていくということだ」
緒方氏「全国展開する前の1校に限り認めるというときに『石破4条件』というものがある。この石破4条件は現時点では満たされていると思うか」
山本氏「そう思っているから11月9日の制度改正で獣医学部新設を認めたわけであります。本来的には規制改革で新たに認めるわけでありますから、その際にできないということであれば、監督省庁にそれを説明する必要があったわけでありますが、それができずに11月9日の決定にいたったわけであります。平成26年に閣議決定した国家戦略特区の基本方針は、規制を所管する省庁が改革困難と判断した場合にはその正当な理由を説明することを求めております。その説明がなされない場合には提案に基づく成果を進めていくべきだと考えております。これを今回に当てはめれば、文科省、農水省から明確な規制の根拠が示されなかったところであります。平成27年度内に期限を区切ったものでありますが、関係省庁である文科省が4項目に違反していると立証していない以上、問題ないと考えております」
緒方氏「昨年9月16日に行われたワーキンググループでも当時の座長が獣医師が新たな必要な分野における研究者の需要を計測すべきだと話している。石破4要件は満たされていないのではないか。9月16日以降、議論が平場で行われたことはないと思う。座長の思いはかなえられていない。なぜ強引に押し切ったのか」
山本氏「ワーキンググループの議論の中で、具体的な数がどうのと文科省から言われて、それに対して民間議員から、それは挙証責任の転換だと指摘された。そういうこというなら文科省においてもそのことを示すべきだと反論されている。つまり、受給の量とか数についてはっきり示すのは無理だ。4条件のどこに数とか量とか書いてますか? 書いてませんよ。具体的な需要に数とか量とかありませんよ。定性的な傾向があれば十分だと思います。それは市場メカニズムに沿っていくしかないんです」
緒方氏「需要というのは定性的だということか。では、どれだけの大学を作っていいかは決めうちでいいのか。文科省は、ずっと新たな需要は明らかになっていないし、既存の大学で対応できているといっている。それを何の説明もできていないんだからと押し切っている。これが内閣府の姿勢である。文科省はしっかりと説明をしている。それに対して反論できていないのは内閣府。獣医師の需要については農水省も説明している。それぞれ聴取した上で決めていくべきことではないか」
山本氏「全くそういうことではない。ワーキンググループの議事録を読めば分かる。審議をしっかりやっている。その中で文科省に対して、需給が満たされているなら証拠を示してほしいといった場合に示さないわけですよ。監督官庁は文科省なんですから、きちっとそれができていることを証明しなければ駄目。そこはワーキンググループで議論されている」
緒方氏「前川(喜平・前文部科学事務次官)さん、今の議論をどう思うか」
前川氏「獣医師を含む一定の分野について、非常に大きな議論なので、こういったことは政策としてしっかり議論すべきだと思いますし、その際に文科省においては中央教育審議会がしっかりと議論することが大事だと思っている。問題は規制を改革したということとは別に、その規制の改革の際にどのような条件を付して結果として何が起こったかということで、穴の開け方の方が問題であったと思います。規制改革を進めるにあたって、挙証責任はどこにあるかという議論については、あくまでも政府部内の話なので、議論の結果、どっちが勝ったか負けたかは国民には説明できない話だ。国民に対する説明責任は政府一体として負わなければいけないと思います」 
宮本岳志衆院議員(共産)
宮本岳志衆院議員(共産)「(前川喜平・前文部科学事務次官は)6月23日の会見で、獣医学部新設をめぐって『行政がゆがめられたという意識を持っており、これについてはやはり国民に知る権利があると思った。このまま事実が隠蔽されたままでは日本の民主主義は機能しなくなってしまうのではないか』という強い危機意識を述べられている。この問題で文科省の行政がゆがめられたと言ったのはどういう意味なのか。隠蔽されたとはどういう事実を指しているのか」
前川氏「国家戦略特別区域法に基づいて国家戦略特区における規制改革事項という形で獣医学部の新設を認めるという結論に至ったわけだが、この結論に至るまでのプロセスに問題があったと認識している。規制改革をするという問題と、規制改革によってどこに事業をさせるかという2つの問題があるが、私が特に問題だと思っているのが、どの主体に事業をさせるというこの決定に至る過程である。穴を空けるかどうかではなく、穴の開け方、その穴を通ってどの主体が規制緩和の恩恵を受けるのか。この決定のプロセスが非常に不公平であり不透明であると考えている。具体的に申し上げれば、11月9日の諮問会議の決定。その際に広域的に獣医学部が存在しない地域に限りという条件が付された。また特例を設ける共同告示のパブリックコメント(意見公募)が11月18日に行われているが、その際に平成30年度開設という条件が付されている。さらに1月4日に共同告示が制定された際には1校に限りという条件が入った。これらの条件が次々と付される中で、結局今治市における加計学園だけが残るということになった。私ども渦中にいた者からすれば、はじめから加計学園に決まっていた、加計学園に決まるようにプロセスされていたように見える。この共同告示に至るプロセスについては文科省というよりは内閣府、あるいは内閣官房の中でこのプロセスが進んできており、文科省からも見えない部分がある。また新しい事業者に獣医学部新設を認めるにあたっては、大前提として、国家戦略特別区域法が求めているとか、国際競争力の強化であるとか、国際経済拠点の形成といった目的に資するのかということ。これは検証されるべきことであったと思うが、その検証はほとんど行われていないと思う。また、平成27年6月に閣議決定された『日本再興戦略改訂2015』で提示された4つの条件に照らして、具体的な提案、つまり今治市が提案してきた内容がその4つの条件に合致しているのかということについて十分に議論されていない。むしろ文科省はワーキンググループにおいてこの4条件を満たしていないと主張していたわけだが、有効な反論がないまま決定してしまった。この点について非常に不公平であり国民の目から見えないところで決定が行われるという不明瞭さがあると思っている」
宮本氏「この間、明らかになった文書に10月7日の日付が入った『萩生田(光一)官房副長官ご発言概要』と題されたペーパーがある。前川氏は現職時代このペーパーを見たことを認めているが、いつ頃、誰から説明を受けたか」
前川氏「10月中に、文科省の事務次官の現職中に高等教育課の専門職員から説明を受けた際に受け取って目にした資料である」
宮本氏「萩生田副長官ご発言概要という10月7日の文書は一体どのような意味を持つ文書だったのか。当時の文科省はこの文書の内容をどのように理解していたのか」
前川氏「昨年9月に内閣府から強く国家戦略特区における獣医学部の新設について文科省としても検討を進め、同意するようにと。その際には平成30年4月開設が大前提であると。このような要請があり、文科省も検討が必要であるという状況だった。文科省としては日本再興戦略の4条件を満たしているかどうか、きちんと検証する必要がある。その際には獣医師の将来需給の見通しというのがどうしても必要であるし、そのために農水省、厚労省の実質的な参画が必要不可欠であると考えていた。しかし内閣府は、文科省だけでいいとの判断だったので、それでは困るということで、相談の上、萩生田官房副長官に一定の調整をしてもらえないかと考えてたと承知している。平成30年4月という期限も非常に性急ではないかと考えていた。その点も調整していただけるのではないかと期待を持って伺った。そのご相談の経過を示した資料であると思っている」
宮本氏「平成30年4月は早い、無理だと思うとの言葉も出ている。文科省だけでこの案件をこなすことは難しいということはよく分かる。農水省などの協力が必要、私の方で調整しようという言葉もある。これは文科省の再調査で存在が確認された『大臣ご指示事項』という内容の文書とぴったり一致した。当時、文科省は平成30年4月は早い、時間の余裕を待ってゆっくり検討すべしと考えたのは何故なのか」
前川氏「大学の学部を新設するとなると、やはり一定の期間が必要。設置認可の申請・審査・認可に至るプロセスについては1年間あればできるが、それ以前に文科省では担当者が申請予定者と十分に打ち合わせをする。その上でどのような資料が必要か、どのような条件を満たすことが必要だと予想されるか、そのような下相談をするのは常。それがなければ1年間の審査で学部を新設するのは難しい。獣医学部の場合には申請ができないことになっていることから、十分な事前相談ができないわけで、昨年の10月の時点から国家戦略特区で議論を始めるということで、これは平成30年4月の開学に間に合うように準備を進めることは大変難しいのではないかと、そういった感触は担当は持っていただろう」
宮本氏「農水省や厚労省を引き込みたいと、協力が必要と当時の文科省が考えたのはなぜか」
前川氏「獣医学部という学部の性格だが、獣医師国家試験と密接に結びついている。獣医師国家試験の受験資格というのは原則として獣医学部を卒業しているということで、獣医学部の規模をどうするのかは獣医師全体の規模をどうするのかということになる。獣医学部の規模を考えるにあたり、将来の獣医師の需要を念頭に置かざるを得ない。農水省がはっきり需給を示したのは、私の理解では平成19年だが、平成19年度に農水省が明らかにした方針によれば、将来的に獣医師が不足することはないという見通しがあったし、近年も農水省から将来獣医師の確保に困難が生じるという見解は示されていない。さらに今回の議論にあたっては、新たな分野の需要を考えよという議論になっていたわけで、従来型ではない獣医師の対応すべき分野があるとすれば、先端ライフサイエンスの分野や創薬、そういった分野で獣医師が活躍すべき余地があるのではないかと。そうであればそういった分野を担当する厚労省が責任を持って参画して一緒に議論する態勢をつくらないと、将来の需給見通しは作れないと考えていた」
宮本氏「6月24日に安倍(晋三)首相は神戸の講演で『中途半端な妥協が国民的な疑念を招いた。速やかに全国展開を目指したい。2校でも3校でも獣医学部の新設を認めていく』と語った。前川氏は首相のこの発言をどう思うか」
前川氏「獣医学部を今治のみならず、2校、3校と作ってよいのかという議論は確かに諮問会議、ワーキンググループでもあったと承知しているし、また山本(幸三)大臣の国会での答弁でもそのような意向があったことは承知をしている。獣医学部のような学部については先程申し上げた通り、一定の計画養成、入学定員の管理が必要だというのがこれまでの文科省の考えだった。それを全体として見直すのであれば、国家戦略特区ではなく、もっと根本的に遡って大学の設置認可のあり方から考えることが必要であろう。仮に国家戦略特区の仕組みの中で、その特区に作ることを認めていこうという考えであれば、まずは今治での成果をきちんと評価することが必要になってくる。今治での成果を評価することは、来年開設すると考えられる獣医学部、来年1年生を入れたら、卒業生が出るまで6年かかる。少なくとも6年見なければいけない。そこで卒業生が出て、その卒業生がどういう分野で活躍するのか、さらに研究者の養成ということであれば6年では足りず、さらに数年要することとなる。その研究者の養成のために大学院を作り、研究者養成をした上で、その研究者がどの分野で活躍するかということを評価しなければ2校目、3校目という議論はできないのではないか。少なくとも10年間くらいは必要ではないか。すぐに2校目、3校目を作るということは論理的に不可能だ」
宮本氏「10月7日、常磐(豊)高等教育局長から平成30年4月は早過ぎるから内閣府と調整してほしい、文科省だけではこの案件をこなすことは難しいので農水省の協力を取り付けてほしい、と頼まれて調整を約束したのではないか」
萩生田氏「ご指摘の文書については存在が確認できなかった文書だが、私の方でも確認し、夕刻に当時の常磐局長と会ったのは事実である。案件は大方は給付型奨学金の件だったが、確かに特区のことについても説明をされた記憶がある。まず大前提として、私が文科省に何か依頼をするとか、要請をするというのではなくて、文科省の求めに応じて私は会った。前川氏もそのことは認めている通りだろう。もう一つの大前提として、文科省がこの特区に対して反対であるという意思表示を受けたことはない。自分たちとしては、この必要性を一定理解しているが、獣医師の過不足について説明ができないので、農水省にもう少し前に出て説明してもらえないかということを、その日か翌日だったか分からないが、そういう話を受けたのは事実である。整理という言葉が何を意味しているかわからないが、官房副長官として各省庁からさまざまな報告を受けることはもちろんある。その上で、例えば獣医師の需給について文科省だけでなくて、農水省も参画して検討を進める必要があるのではないかという報告が文科省からあれば、農水省にその件について問い合わせをしたり、関係者の間でよく話し合いをするようにと伝えたりすることはある。加えてだが、厚労省もぜひ協力してくれといわれた記憶はない」
宮本氏「30年4月は早い、無理だと思うということは内閣府に言ったのか」
萩生田氏「開学の時期については、全く予備知識がなかった。私から具体的な日付など文科省に話をした記憶はない」
宮本氏「信じられない。30年4月開学というスケジュールが本当に性急なものであると。誰が考えてもできるとは思わない。まさに萩生田氏がそういう意識だったとは思わない。最初は一応話を聞き、問い合わせまでしたわけだから。ところが、わずか2週間で状況は一変する。NHKのスクープによって明らかになり、翌日文科省も存在を認めた萩生田副長官が常磐高等教育長に語ったとされる発言をまとめた『萩生田官房副長官ご発言概要』というペーパーがある。このペーパーの信憑性を疑う話も出ているわけだが、前川氏はどう考えるか」
前川氏「これは現職中に見たものではない。しかし、このペーパーを見る限り、文科省の責任ある職員が書き留めたと思われるし、その内容ついてはほぼ信憑性はある。ただし主語が誰なのかやや曖昧なところがあるので、その中には萩生田副長官本人の発言でないものも含まれていると思う」
宮本氏「この文書では、文科省を説得する立場に変わっている。10月7日から10月21日までのこの2週間で萩生田副長官は大きく変わったという印象を持っているか」
前川氏「変わったというか、明確になったというような印象だ」
宮本氏「この2週間で萩生田副長官が説得する側へ変わったと思うが、総理や官房長官から指示があったのではないか」
萩生田氏「そもそも文科省がこの件について反対していると意思表示を確認したことはない。よって説得をする必要はない。文科省の求めに応じて、その都度真摯に対応してきたつもりだ。21日の文書については文科省の求めに応じて高等教育局長と面談したときのやり取りだといわれているが、率直に申し上げてこの8つのパラグラフどれを見ても私が明確に発言したセンテンスがあるわけではない。文科省側も著しく正確性を欠く個人のメモ的なものだったということで、私にも説明があったので、私の方はそれで間違った文書なんだと納得している。前川氏の話にあるように、7日の文書のように、大事なものであれば次官にも見せればよいと思う。私は文書の中身について問われても詳しく分からない。加えてこの間に心変わりがあったと指摘されているが、私は総理から何の指示も受けていないし、一貫して文科省の相談に真摯に乗っているので、その点は変わりない」
宮本氏「常磐局長に確認したい。この文書の中で萩生田副長官が確かに話したのはどれか」
常磐氏「この10月21日の文書は、私が専門教育課の担当者に説明した内容を基に、担当者の備忘録的なメモという形でまとめられたものであると認識している。本来、部外への公表を予定したものではないので、官房副長官はもとより、私も事前にも事後にもチェックをしたものではない。文書については私からの説明の内容、官房副長官の質問や感想、それから面談では言及のなかった周辺情報などが含まれている。標題との関係で申すと、正確性に欠けていると大変残念だが申し上げざるを得ない。どの部分が萩生田副長官の話かということだが、私自身がこの面談の具体的なやり取りについて記憶しているわけではないが、その中で、副長官からのご質問というところがある。例えば、獣医学部を受け入れる地元自治体として一般的な獣医の養成を望むのではないかというような点について副長官からご質問をいただいたのではないかと思っている」
宮本氏「それでは分からない。萩生田副長官が語ったかどうかを明らかにしないといけない。とりわけ、30年4月は早過ぎるとか、あるいは農水省はすでに了承しているとか、一体どっちが語ったのか」
常磐氏「この文書の性格が私からの説明、副長官からの説明、あるいは感想というようなことを含んでいる。これは先程、前川氏も発言の主体が複数混在していると話している。質問されている2つめのパラグラフの農水省との関係は、この点は農水省の考えに関する記述である。この点については、当時私が認識していた事実関係で申し上げたい。国家戦略特区の会議で今治市の構想説明という機会があったが、その際、特に異論を述べなかったということがあるので、文科省としては農水省は異論がなく差別化できると考えていると認識しているので、これが私の説明なのか萩生田副長官なのか分からない。そういう点では事実関係を申し上げている。もう1点の質問部分については私の方から副長官に申し上げた。その場で副長官から何らかの指示を受けた記憶はない」
宮本氏「かくなる上は、前川さんと萩生田副長官、それに今日、不在の和泉(洋人)首相補佐官の証人喚問が必要であると考える。また総理出席の下での集中審議が必要であると申し上げて質問を終わる」 
平井卓也衆院議員(自民)
平井卓也衆院議員(自民)「(学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐる問題は)言った言わないとか、その手の話が多い。国民が知りたいのはこの政策は本当に正しかったのか、国民のためになるのかだ。その上で、前川(喜平・前文部科学事務次官)参考人の答弁が安定していて、理路整然と話している。なおさら思うのは、なぜ事務次官のときにもっと自分の職責を全うして仕事をされなかったのか。辞めてからいろいろ言われるのは違和感がある。前川さんほどの能力のある方なら、もっと違った仕事ができたと思うが」
前川氏「ご指摘の通り、私も在職中にもう少しできることがあったのではないかという反省はしている。大臣を補佐する立場だし、大臣に直接ご意見を申し上げる、直接内閣府とやり取りする、そういった行動の余地はあったのではないかと。そこの点は忸怩たる思いもあるし、反省もしている。しかし、最終的には政治的な判断で決まっていたと考えている。在職中にできることはそこまでだったと思っている。在職中に内部告発をする選択もあったかもしれないが、やはりそれはなかなか難しかったと思っている。ただ、辞めた後、そのまま黙っているのがいいかどうか。私も振り返って考えたが、やはりこれは国民が事実関係を知るべき問題であると。行政にゆがみがあったと私は認識しているわけだが、その点について国民が知らなければそのゆがみを是正することもできないといった考え方から発言をするようになった」
平井氏「事務次官ですよ。ちゃんと自分の意見を言う機会はいくらでもある。部下がたくさんいるわけだし、総理だって話を聞きますよ。内部告発なんて事務次官が考えること自体が信じられない。それが面従腹背という座右の銘と一致する方向なのかも分からないが、今の話を聞いていて不安になったのできかせていただく。『総理のご意向』というような文書、これは前川さんが流出元ではないかと報道されているが、まさかそんなことはないと思う。そのことについてイエスかノーかでお答えください」
前川氏「文書の提供者が誰であるかということについては、お答えを差し控えさせていただく」
平井氏「待ってくださいよ。私はあなたのためを思って言っている。もし前川さんが自分で出して、あったことをなかったことにはできないと会見して、今日の流れがあるなら、まさに茶番だ。『ない』とお答えできないんですか」
前川氏「さまざまな文書が世の中に出てきているが、その文書を誰がどういう経路で誰に提供したかは、さまざま臆測があると思う。けれども、私がそこで明確なお答えをすべきものではない」
平井氏「あなたじゃないですよね? と言っているだけなんですよ。それを否定しないままというのは、私の心の中にはずっとわだかまったままになる。それはそれとして質問を続けるが、今回の話、国民からみると非常に分かりづらい。私は四国の議員だ。香川県。最近、オリーブ牛とかオリーブハマチとか、健康長寿の産業化に力を入れている。四国はやっぱり獣医がほしいんですよ。新しい学部がほしい。そして構造改革特区のときに2007年から14年の8年間、今治市は事業者は加計学園ということで、やりたい、やりたいと言って、15回門前払い。門前払いしていたのが、告示というやつですよ。つくらせないと。加計学園の話は民主党時代から長い歴史があって、構造改革特区で挫折し、そして今回、再チャレンジして、やっと方向性が出てきたと理解している。『加計ありきではないか』『総理の知人が優遇されたのではないか』『行政がゆがめられたのではないか』ということで、プロセスに問題があったかどうかの中で、一番ヒアリングが足らないのはワーキンググループに対してだと思う。そこの中の話は、原(英史・国家戦略特区ワーキンググループ委員)参考人にぜひ経緯の説明を願いたい」
原氏「特区諮問会議とワーキンググループの民間委員は、岩盤規制改革の実現のために真摯に取り組んできた。利益誘導に加担したかのようなことを言われているのは残念でならない。ワーキンググループでは今治の国家戦略特区提案がなされる以前の平成26年から、当時は新潟の提案を前提として何度も議論してきた。加計ありきなどという指摘は全くの虚構であることは、公開されている議事録を見ていただければすぐに分かる。根本的な問題は、獣医学部の新設禁止という規制が正しいものだったのかどうかだ。一般の学部の場合、新設の申請があれば設置審査に入り、計画が適正かどうかを判断する。ところが獣医学部は、審査に入ることを一切認めないという規制がなされてきた。しかもこれは法律ではなくて告示でなされている。根拠は獣医師の需給調整といわれている。しかし、学部の新設禁止によって需給調整をしようとしていたとすれば、現実にはすでに破綻している。現場では産業動物獣医師の偏在、公務員獣医師が確保できない、製薬業界で獣医師が足りないといった問題がすでに顕在化している。ワーキンググループでは規制の合理的な根拠を繰り返し求めてきたが、十分な説明はなされなかった。本来は告示の規定そのものを廃止するのが筋である。しかし規制所管省がなかなか動こうとされない中で、特区限定で前進を図った。文科省とは何度も議論を重ね、最後は一緒に同じ方向を向いて政策決定した。従来のゆがみを正すための取り組みを進めたと認識している。」
平井氏「かつての民主党もそうだったと思うが、確認すべきことは、獣医学部の新設禁止という告示、岩盤規制の方向が正しかったのかということだ。文科省の責任者だった前川参考人にお聞きしたい」
前川氏「獣医学部に限らず医学部・歯学部・その他、量的規制の対象になっている分野がある。こういった特定分野について大学の新増設を認めないというのは、おっしゃる通り告示で決まっている。告示そのもののあり方を見直すことは政策論として十分必要だし、時代の流れに応じて見直しが必要な部分だ。ただ、18歳人口が減っていく中で、獣医師に関しては犬も猫も牛も豚も減っていくという中で、本当に増設が必要かどうかは、やはりしっかりとした議論が必要だった。しかし、問題は規制改革が必要かどうかという一般論ではなく、規制改革の結果、平成30年度に今治に加計学園が獣医学部をつくるという結論になっていると。それだけが結論になっていることが問題で、その結論に至る部分についての意思決定が極めて不公平であり、不透明であると。私はそこを問題視している」
平井氏「ちょっと話をすり替えたように思うのだが、まず獣医学部の新設禁止に関して、五十何年もずっと告示で門前払いをし続けていたわけだから、それは変えるべきものは変えなきゃいけないと思うのが普通だ。獣医学部の新設禁止は2002年の中教審の答申で、大学設置の審査は本来、質を評価すべきもので、告示による需給調整、このような規制は問題があるとし、さらなる検討課題とされていた。問題がある告示だと2002年の段階でもいわれているわけだから、ずっとほったらかしていたのはどのような理由があったのか」
前川氏「この質問は文科相、あるいは高等教育局長にお尋ねになった方がいいと思うが、私が理解する限りは、獣医学部に関して責任ある農水省から、将来獣医が不足する、要請の拡大が必要であるといった意思表示、要請がなかった。これが大きな理由だ」
平井氏「新設禁止にする需給調整はすでに破綻していると原参考人が言われた。本当に四国では産業動物の獣医が足りない。公務員の獣医も採用できないんですよ。規制を維持すれば需給はきっちりコントロールできるのか」
前川氏「私見を述べるだけだが、獣医学部の入学者がどういう地域から入っているか、またその卒業生がどういう地域に就職するかを見ていただくと分かるように、獣医学部への入学者は全国的に散らばっている。全国から入学し、卒業後は全国に散らばっていく。この地域に獣医師が不足しているからその地域に大学をつくるという単純な考え方ではできない。むしろ、その地域に大学卒業後就職する約束をどうやって取り付けるかが問題であり、そのためには奨学金制度などを活用する方がより有効な方法だ。直近でできた大学は北里大学の獣医学部。青森県だが、北里大学の卒業生は必ずしも青森県で公務員獣医師になっていない。愛媛県に(獣医学部を)つくったからといって、愛媛県あるいは四国で必ず公務員獣医師になってくれるという確証はない」
平井氏「なんで告示が53年間も変えられなかったのか。天下りの問題との関係なんですよ。既存の獣医学部のある大学には2008年度以降、中央省庁の管理職員が50人再就職している。2017年1月時点で文科省から36人の現役出向職員がいる。公表された文科省の天下りに係る最終報告で、違法行為があったと認定される1件は、文科省から獣医学部のある大学に再就職したものの、後任を出そうと調整し、結果的に天下りが成立しなかった案件だ。医学部・歯学部も含めれば、中央省庁の管理職員が計213人、文科省から現役出向者は149人に及ぶ。こうした大学を天下り先や現役出向の植民地にするために告示があるのではないかと思われないよう、きっちり説明責任を果たさなければならない」
常盤豊・文科省高等教育局長「獣医学部の新設抑制の告示については、獣医師の需給の動向を見据えた上で、私どもとして抑制してきている。50年間余りの抑制になっていますので、獣医師の行政を所管している農水省のご意向、あるいはデータなどを踏まえて検討すべきことだろう。もう一点、再就職の話があったが、私は担当ではないので申し訳ない」
平井氏「天下りの問題で引責辞任された前川参考人にお聞きする。天下りなどの確保のために新設を抑制していたのではないかという疑いを、どのように考えるか」
前川氏「文科省の職員の退職者が、大学、私立大学に再就職すると。法令に反しない限り、知識・経験を生かす意味で問題はない。私も現職中に違法な再就職斡旋に関与したということで処分されたし、深く反省しているが、法に触れない形でその知識・経験を生かすことは非難されるべきものではない。量的規制、抑制方針のある分野は医学部・歯学部・獣医学部に船舶職員とある。量的規制の根拠は、人材養成について一定の社会的な投資が必要であるということ、またその養成に時間がかかる、将来的な需給との関係を見なければ質的な低下も懸念されると。このような配慮から行われている。天下りとの関係とは、全く無関係である」
平井氏「告示はそもそも根拠が薄弱だっただろう。本来ならすぐに廃止すべきという議論もあった。一方で規制緩和に強く抵抗する人たちもいて、その中で大変苦労して規制改革を前進させたというのが今回の事案だと思う。この規制改革が正しかったかどうか改めて大臣にお聞きしたい」
松野博一文科相「まず先ほどの再就職に件については、文科省として猛省して二度とないような形をつくるべく省内で努力しているところだ。文科省の告示については、大学の設置は一定の基準を満たしたものであれば自由というのが原則、文科省の立場だ。獣医師・医師・歯科医師・船舶乗船員の4分野に関して、総合的な需要の観点から今まで規制・抑制がされてきた。これは文科省の告示だから最終権者は文科省になるが、総需要をそれぞれ所轄している省庁との連携によってなされてきたものだ。獣医師の場合は農水省になるが、従来、農水省の「獣医師が現状においてすぐ足らないということではない」という見解があり、告示として文科省が抑制してきた。今回の国家戦略特区の判断は、新たな獣医師に対する仕事のニーズが全体としての既存の獣医師事業に影響を与えるかどうかという点に関して議論があり、所轄省の農水省が獣医の育成であれば全体の需要に関して異議は唱えないということであったので、今回、設置申請の認可、設置申請について受け付けるという過程の議論があったということだ」
平井氏「前川参考人が『行政がゆがめられた』と言っている。11月9日の諮問会議決定。1月4日の告示。1月20日の区域会議決定。文科相が意思決定する機会は少なくとも3回あった。もし不当な政策判断と思ったら、どこかで『再考ください』という意思が表明されると思うが」
松野氏「今回の国家戦略特区に関わるプロセスで、獣医師の需要に関して所轄省である農水省からご判断いただいた上でなければ進めることができないというのが文科省の一貫した姿勢だった。オープンな場で議論があり、議事録も提出され、そこには内閣府を中心として文科省、農水省も参加し、また農獣医学に関する有識者も議論に加わっていただいた中で進められてきた。その過程は適切であったと考えている」
平井氏「最後に、今回、萩生田光一官房副長官が中心人物であるかのように扱われている。本当のところはどうなのよと。言った言わないの話なので、本人が心の底からちゃんと真実を述べれば周りの人は分かる。もう一度、答弁を」
萩生田氏「私は国家戦略特区について説明を受け、気づいた点をコメントすることはあっても、基本的に報告を受ける立場であり、具体的な指示や調整をする立場ではない。獣医学部の新設について、あたかも私が働きかけをしたかのような個人メモやメールが報道されたが、私が総理から指示を受けたり、文科省や内閣府に指示を出したりすることはない。文科省から説明を受ける中で、獣医師の過不足についての判断は農水省でやってほしいという話があったので、農水省に伝えたことはある。それ以外に能動的に関わったことはない。私があえて反省するとすれば、本来各省と等距離で仕事をしなければいけなかったが、自分も政務官を長くやった、あるいは党の中で文教政策に携わってきたということで、文科省の皆さんと旧知の仲であったために、官邸で取る日程以外に面談に応じることがあったことがまず一つある。それから、私が官邸との特別なパイプ役だという誤った甘えの認識を抱かせてしまった点では、私の振る舞も反省すべき点がある。多忙な中、不正確な個人メモやメールを作成した職員を責めるつもりはないが、私自身は文科省の相談には、かなりの時間を割いて真摯な対応をしてきたつもりだが、私自身はこの件について何ら能動的に関わりを持った事実はない」 
吉田宣弘衆院議員(公明)
吉田宣弘衆院議員(公明)「今治市での(学校法人「加計学園」の)獣医学部の新設を認めた理由と経緯は」
原英史・国家戦略特区ワーキンググループ委員「獣医学部については現状では認可の申請を一切門前払いするという制度になっている。これを改めて新設の認可申請を自由にできるようにするものである。国会で議決された法律では学部を新設するときは認可が必要と書いてある。一方、文科省の告示は一切認可しないと、ルールを大きく書き換えている。そういった意味で、あまたの岩盤規制の中でも、かなり異様なな規制ではないか。規制の根拠について、獣医の需給調整とされているわけだが、現実には破綻していると思っている。まして今後数十年を見据えて、元来の施策によって機能していくとは到底思えない。ワーキンググループでは、この問題を何度も議論してきた。新規参入を一切禁止する合理的な根拠を求めてきたが、十分な説明がなされなかった。このプロセスの中で文科省とも何度も議論を重ねてきた。立場は異なったが。お互いの立場をぶつけ合って、理解し合えるような議論をしてきたつもりだ。ワーキンググループでこの問題を扱った回数は平成26年8月以降、10回。その結果として平成28年11月の特区諮問会議決定、平成29年1月の共同告示、さらに区域会議での決定という形で文科大臣に決断いただき、最後は文科省と一緒になって同じ方向を向いて政策を決定したということである」
吉田氏「獣医師が偏在していることは仕方ない。足りないところに手当てをするのは問題ないと思う。偏在を解消するのは手当てをするか人を増やすしかない。偏在が現実にある以上、これは増やすという手段も大胆に考えなければいけないと思う。過去の委員会でもあったが、日本再興戦略に記載されている新4条件の充足について教えてほしい」
原氏「平成27年6月の決定は日本再興戦略、いわゆる成長戦略の一項目である。成長戦略の中では一般に何かをやらないという決定をすることはない。つまり、これは新設をしないようにするためではなく、新設を前に進めるための決定である。平成27年度内という期限を切って、検討の際のポイントを示したものと理解している。また、そもそも規制の根拠の合理性を示す立証責任、これは山本(幸三)大臣が何度も答弁されているように規制の担当省にある。4条件の延長にあると理解している。その前提で、いわゆる4条件については私は特区ワーキンググループの委員として関わってきた立場の認識を手短に申し上げたい。1点目、既存の獣医師ではない養成の具体化について、今治市の提案では新たな分野での人材の育成、また感染症の発生拡大などに危機管理学術支援拠点として機能させるといった具体的な構想が示されていた。2点目、ライフサイエンスなど獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要について、今治市の提案に加え、その後、京都府からもライフサイエンス研究や水際対策強化にかかる提案があり、より具体的な需要が明確になったと認識していた。また製薬業界から創薬の最先端分野で獣医師のニーズが拡大しているが需要が十分確保できていない声があることも認識していた。3点目、既存の学部では困難かについてだが、ライフサイエンス研究、水際対策強化など新たなニーズについては既存の大学だけでは抱えきれておらず、だからこそ新たな需要が生じていると認識していた。文科省に設置された専門家会議が平成23年にまとめた意見だが、既存の獣医学部の教育について非常に厳しい指摘がなされている。口蹄疫や鳥インフルエンザ、BSEの発生など獣医療が多様化、高度化する中で、新たな分野への対応が十分取れていない。また最低限、共通的に教育すべき内容を十分に教育できていない大学がある。獣医師として求められる実践的な力を育む教育に課題がある。大学ごとの分析として獣医師養成課程の規模の小さい大学に課題が多いといった指摘がなされたわけである。その後の改善もなされていると思うが、残念ながらこれまでの経緯として既存の大学学部が必ずしも最先端の課題に応えていなかったどころか、基礎的な要請にさえ応えていなかったこともあったと認識している。4点目、近年の獣医師の動向の考慮という点である。産業動物獣医師の確保に困っている地域が現実にあるということはこれまでも認識は共有されていたと思う。新たな分野でのニーズも含めて需給管理の観点からどうしても新設禁止を維持すべきだということであれば、その根拠となる見通しを示していただきたいと、平成26年以降、繰り返しお願いしてきたが、結果として示されなかった。以上から4条件は満たされていると考えていた。こうしたことを山本大臣、松野(博一)文科大臣、山本(有二)農水大臣で確認をされて、特区での規制改革を進めたものと認識している」
吉田氏「今般の加計学園の獣医学部新設については、行政がゆがめられたのではないかとの疑念が生じている。ゆがめられたということは手続きが適正に行われなかったということと表裏ではないか」
原氏「学園の理事長と総理がご友人ということは全く知らなかった。特区諮問会議の民間議員も同じだった。6月13日に共同で出した声明文の中で規制改革のプロセスに1点の曇りもない。また今回の規制改革は国家戦略特区のプロセスにのっとって検討し、実現された。言うまでもなくこの過程で総理から獣医学部の新設を特に推進しようというような要請は一切なかった。問題は獣医学部の新設禁止という規制を正しく変えたということをゆがめたことと捉えるのか、そもそもの規制がゆがんでいたと捉えるのかだと思う。ワーキンググループではそもそもの規制がゆがんでおり、これを改善する必要があると判断していた。判断に至る議論の過程については公開しており、中立性、公平性についても担保している」
吉田氏「前川(喜平・前文科省事務次官)さんに聞く。行政がゆがめられたと発言されたが、在職当時に同じ発言をされたのか。在職時に発言すべきだったのではないか。現役時代に言わずに、退職してから言ったのはなぜか」
前川氏「国家戦略特区の制度のもとで今治市に加計学園の獣医学部の設置を認めるという結論に至るまでの過程で、文科省としては非常に無理を強いられている。無理が通れば道理が引っ込むという世界に押し込まれている。文科省の職員はみんな思っていた。問題は規制改革によって誰が恩恵を受けるかと、そこに至るプロセスである。これは内閣府あるいは内閣官房で進められた手続きであるが、昨年11月9日の諮問会議の最終決定の案文の中に、文科省では既存の獣医学部ではできないような構想が具体化して、他の大学ではできないという状況を盛り込もうとしたがはねられた。また、われわれが関知しない広域的に獣医学部が存在しない地域に限り認める条件が付された。これは山本大臣も言っている。一都道府県を超える広い地域のことだということだが、この条件によって京都産業大学が排除された。これは明らかだ。さらに、その後に共同告示の案文の中に30年4月開学に限るという条件が入った。これにより、加計学園しか残らない。順次条件を付すことによって、結果的に今治市の加計学園しか残らない。これは何故なのか。ここが不透明である。文科省からではうかがい知れないところがある。なぜ30年4月なのか。ここがわからないままである。そういった意味では、非常に不合理な意思決定プロセスであった」
吉田氏「加戸守行前愛媛県知事は前川氏は文科省時代の部下であり、獣医師不足を解決できない文科省の態度を反省すべきだと、産経新聞の取材に応じている。教育再生実行会議において四国の獣医師の不足について3度について訴えている。獣医師が不足している現実があるのに増やさなかったのは文科省にも責任があると思う」 
大串博志政調会長(民進)
大串博志政調会長(民進)「まず前川喜平・前文部科学事務次官にお尋ねしたい。加計学園問題で『行政がゆがめられた』という話の中で『背景に官邸という存在があった』という発言をいただいた。どういったところからお感じになったのか」
前川氏「この問題は最終的に愛媛県今治市の加計学園だけが事業者になったという、その決定プロセスに問題があるということを申し上げている。(獣医学部新設の)4条件を満たしているかどうか。非常に不透明な政治的なプロセスの中で『平成30年4月開設』といった条件が付されていったというプロセス。また、京都産業大が提案していたにもかかわらず、今治市の提案との間できちんとした比較検討が行われた形跡がない。こういったところから、不公平であり不透明だという部分が多い。私の個人的な経験から申し上げて、昨年9月から10月にかけて和泉洋人首相補佐官から呼び出しを受けて、9月の上旬には和泉氏から特区における獣医学部新設についての文科省の対応を早く進めるようにという要請があり、その際に『総理は自分の口からは言えないから自分から言うのである』、こういうお話もあった。また、さらに10月にも呼び出しがあって『早く進めるように』という督促があったわけだけれども、文科省としては10月半ばの時点にあってもまだ態度を決めかねていたという事情があった。私としてはその際には『まだ検討中であります』と、そういった答弁をしたというふうに記憶しているけれども、このような官邸サイドからの働きかけが私にも直接あった。また8月の時点でございますけれども、(当時の)木曽功内閣官房参与からも働きかけがあったけども、木曽氏の場合は内閣官房からというよりは加計学園理事としての要望であったのではないかと思っている」
大串氏「和泉氏が非常に重要な役割を担っていたと、どういうところから感じているのか」
前川氏「直接的な理由は、私自身が和泉氏から強い要請を再三にわたり受けたということだ。さらにその他の事情としては、その後新たに見つかった(昨年)10月21日付の文書を拝見しても、和泉氏がさまざまな行動を取っておられるという事情がうかがい知れるわけだし、また官邸の中にあって特区制度を熟知しておられる方である。そういったことからいって、和泉氏がさまざまな計画の策定に関わっておられたのではないかと私は思っている次第だ。」
大串氏「和泉氏がどういうふうに発言したのか。場所はどこで、時間帯は何時ごろで、どういう経緯でそこに行かれたのか。ご記憶があればお聞かせいただければと思う」
前川氏「まず時系列で申し上げると、木曽氏が私のところを訪ねてこられたのは8月下旬だ。日中の普通の勤務時間内だったと記憶しているけれども、20〜30分、私の部屋におられて。木曽氏は、私の文科省における3年先輩に当たる方なので、さまざまな話をしていかれた中に『今治における獣医学部新設の手続きは文科省として早く進めてほしい』というご要望があった。木曽氏はそのときすでに加計学園の理事だったから、私はこれは加計学園の理事としての陳情であるというふうに受け止めた。ただし、先輩がおっしゃっているからといって、再就職先のために働きかけをしておられるということは分かったけども、だからといって文科省としての意思決定を曲げるわけにはいかないということは感じたので、私は担当課には木曽氏が来られてこういうことを言っていたとを伝え、その際に今治市における獣医学部新設の問題についての十分な説明も、木曽氏からのご要望があった後で担当課から詳しく聞いた記憶がある。和泉氏は9月上旬、『ちょっと来てくれ』ということで、官邸4階の執務室に呼ばれてうかがった。あらかじめ案件が何であるかは承知していなかったけれども、うかがってお話を聞いたところ、やはり国家戦略特区における獣医学部新設について『文科省の手続きを早く進めるように』と、こういうお話で、その際に『総理は自分の口からは言えないから私が代わって言うのだ』というご発言があった。私は、文科省としてもなかなか厄介な案件だという認識を持っているので、その時点では特段の返事をすることなく、うけたまわって帰ってきた」
大串氏「もし国会で証人喚問になったら、事実を同じく語っていただけるか」
前川氏「改めて委員会から証人喚問ということであればお受けするつもりだ」
大串氏「この問題は安倍晋三首相に直結する話だ。疑念を晴らすためには、和泉氏と木曽氏に国会の場に証人として来ていただき、真実を語ってもらうのが一番いいと思う。菅義偉官房長官のご見解を求めたい」
菅氏「和泉氏から聞き取りをしたところ、本件について総理からの指示を受けたことはないと言っている。獣医学部新設に関して文科省に対し指示はしていないと聞いている。(証人喚問は)国会のことだから国会でお決めいただければと思う」
大串氏「和泉氏と木曽氏を証人喚問の場に出していただけるか」
菅氏「何回となく質問があったが、国会のことは従来、全て国会で決めておられるわけだから、政府としてはそれに従う」
大串氏「『国会で決まれば従う』とおっしゃいましたね。安倍首相はこれを拒むスタンスは取られない、という理解でよろしいか」
菅氏「こんにちに至るまで、国会のことは国会で決めていただくと、ずっとそのスタンスで来ている」
大串氏「この件は安倍首相とお話しになられたか。首相はどういう考えでいらっしゃるか」
菅氏「総理は常日ごろから『国会のことについては国会に委ねる』と、ずっと言ってきている。政権発足以来、それが方針だ」
大串氏「この点、官房長官が答えられないのであれば、首相にこの場に来ていただいて語ってもらわざるを得ないと思う」
菅氏「まず、和泉氏は本件について『総理から指示を受けたことはない』と言っている。そしてまた、獣医学部の新設に関して『文科省に対して指示はしていない』と報告を受けている。国会のことについては国会で決めていただく。それに政府は従ってきた」
大串氏「どのような点で『加計学園ありきで物事が進んでいる』と思われたのか。それはいつごろからだったのか」
前川氏「獣医学部の新設を求めている大学として、当時文科省としてはっきり認識していたのはやはり加計学園でございまして、その他に関心を持っているところはあるとは考えていたけれども、明確に獣医学部をつくりたいという意思を伝えてきているところについては、私の認識では加計学園しかいないと考えていた。構造改革特区で要望してきたということが経緯があったし、愛媛県知事からもそういったお話が担当のほうに来ていたこともある。したがって、獣医学部の問題というのは、ほぼこれは加計学園の問題に絞られると、こういう認識は持っていた。また担当の局においても、また国家戦略特区を担当している内閣府におかれても、暗黙の共通理解として規制改革で設置を認めようとしているのは今治における加計学園の獣医学部だと。こういった暗黙の共通理解はあったというふうに考えている」
大串氏「文科省が発表されたこのスケジュール表がある。前川氏が記者会見などで『これは内閣府から作らされた』とおっしゃっている。そのへんの経緯に関してお聞かせいただけたらと思う」
前川氏「このあたりの経緯も、本来、文科省の立場でのお答えであれば大臣、あるいは局長からお答えするのがスジではないかと思うけども、私が現職のときの認識としては、まず9月下旬、担当課の者が私のところに、内閣府から伝達されたことについてこのペーパーを持って説明に来た。そのペーパーの中に『平成30年4月開学を大前提に逆算して最短のスケジュールを作成し共有いただきたい』、その後に『これは官邸の最高レベルが言っていること』という記載がある。私はこれは文科省の者が、内閣府、具体的には藤原豊審議官だと私は認識しているけども、内閣府から直接聞いたことを書き留めたものだと考えているし、この記載内容については間違いないと思っている。その結果として、文科省としては、本来文科省が国家戦略特区のスケジュールを作成するというのはおかしな話だけども、依頼された仕事をしたということだ。ただし、そのスケジュールの中には、文科省として盛り込まなければならないものを盛り込んでいて、農水省、厚労省も加わった上での方針を作って、その3大臣がきちんと出席する形で諮問会議を開くとか、また懸念事項としても、他の事業者が出てきた場合に事業者選定には時間がかかるのではないかとか、教員の確保や施設整備の準備が間に合わないのではないかとか、こういった懸念材料も文科省の立場で盛り込んだ。そういったスケジュールを作ったという経緯がある」
大串氏「萩生田光一官房副長官に聞く。10月7日の紙、10月21日の紙、ここも前川氏と萩生田氏のおっしゃることは違う。学園の加計孝太郎理事長が首相の腹心の友と知っていたかと問われて、萩生田氏は『最近さかんに報道されるようになってから知った』と言われた。虚偽答弁以外の何ものでもないと思うが、どうか」
萩生田氏「総理と加計氏が友人であることはもちろん承知しているが、『腹心の友』と表現されるほど古くからの親しい間柄であることとについては最近の一連の報道で承知した、と答えた」
大串氏「国民の皆さんの目からすると、言い逃れをした揚げ句の果て、違う事実を突きつけられて、また別の言い逃れをしようとしているというふうにしか聞こえないと思う。前川氏にお尋ねする。役所の中に『首相と加計さんは親しい』といった認識があったのではないか」
前川氏「総理と加計理事長とがご友人だということは、私は8月終わりごろに担当課から説明を受けた際に聞いた覚えがあるが、今ご指摘の(萩生田氏のブログの)写真は10月半ばごろに私は拝見した。これは、私は出席していなかったけれども、獣医師会の皆さま方が大臣のところに要請にみえた際にお持ちになったというふうに理解している。その行政行動の際にお持ちになった、いろいろとたくさん資料があったけども、その資料についてその事後に担当課から私が『このような資料で大臣への要請があった』という報告を受けた。どうしてこの写真をお持ちになったか、獣医師会の意図は分からないが、写真を見て、総理と加計氏の間柄が極めて親密であると理解した。私以外に文科省の中でどれほどの人間がこの写真を見たかは、私は承知していない」
大串氏「『加計さんと総理は親しい』とみんな知っているという状況にあったのか。それが文科省全体の、あるいは政府全体の政策決定過程に影響を与えかねないと思われたか」
前川氏「友人関係があるということは多くの職員が承知していたと思うけども、それをもって政策上の意思決定に影響を及ぼすべきものではないということはやはり考えていたと思う」
大串氏「私たちが求めている証人喚問、そして首相の国会招致、これをきちんとやれば、この問題は私は早い時間に解決できると思う。政府・与党の真摯な取り組みを求めて質疑を終わらせていただく」 
吉川元衆院議員(社民)
吉川元衆院議員(社民)「萩生田(光一)副長官に聞く。6月16日の参院予算委員会で10月21日萩生田副長官ご発言内容なる文書の存在について『私の方から具体的な調整を行うことはない』という答弁をされた。ところが先ほど審議を聞いていると、10月7日の概要で、整理するこの『整理』という言葉が何なのかということはいろいろあるけれどもと答弁されたが、農水省あるいは厚労省は聞いていないということだけども、そちらには話を持っていくというお話をされた。これはまさに連絡調整ではないか。予算委員会での答弁と食い違っているが」
萩生田氏「私が文科省に対してということでお答えしていると思うけれども、私から指示をしたことはない。そして私が受け身の立場で文科省から相談されていた内容は『獣医師の過不足についての説明は自分たちができないから、農水省のほうでぜひもう少し前に出てもらいたい』という相談があって、私がそれを『整理』という言葉を先ほど使ったけれども、農水省にお伝えした」
吉川氏「だとすれば『私の方が具体的な調整を行うことはない』ということはないわけですね」
萩生田氏「16日の答弁と違えているつもりはない。終始、文科省から私への相談事というのはこの一点だった。これは機会をみて農水省に『ぜひ文科省の話を聞いてあげてくれ』ということは私から申し上げた」
吉川氏「(菅義偉)官房長官に聞く。6月24日、安倍晋三総理が神戸市内で行った講演で、獣医学部の新設を1校に限定するという中途半端な妥協が疑心を招く一因になったとして、速やかに全国展開、地域に関係なく2校でも3校でもというような発言をされている。ある意味ではこれまで経過と政府の説明が根底からひっくり返るような話だし、同時に学部新設が総理の一存で勝手に決めることができるかのような驚愕の発言でもある。本来であれば総理にお聞きしなければいけないところだが、いらっしゃらないので官房長官にお聞きする。官房長官は6月27日の記者会見で総理の発言を肯定し『もともと規制の根拠がないわけですから』と述べている。何をもって獣医学部の新設に関する規制に根拠がないとしたのか」
山本幸三地方創生担当相「国会で総理や私が答弁しているように、国家戦略特区において岩盤規制改革を突破するわけだけれども、これは1校だけじゃなくて2校、3校も当然考えられるということを述べたものだ。全国展開については、これは特区でいろいろやってみて、それを評価した上で問題がなければ全国展開することも当然あり得るし、特区というのはそういうものだと考えている。それから、獣医学部の新設は獣医師会の根強い抵抗により52年間にわたり維持され続けた規制だ。官房長官は記者会見で『規制の根拠はない』と発言しているところだ」
菅氏「獣医学部の設置抑制については法律上の規定があるわけではなくて、学校の設置権限の運用上52年間、新設が認められてこなかった。そこで私は『規制の根拠がない』と申し上げた。それと同時に、総理の発言について全く問題ないと申し上げたのは、総理は国会の中で例えば3月13日、参院予算委員会で『国家戦略特区は岩盤規制改革の突破口である。今後特段の問題が生じなければ、さらなる規制改革として2校、3校を検討する』と答弁している。さらに6月5日、衆院決算委員会においては『全国展開を行いたい』という答弁もしているから、私は全く問題ないと申し上げた」
吉川氏「文科相、同じ認識か」
松野博一文科相「獣医学部の新設については、獣医師の需給の観点から昭和59年度以降、抑制してきたところだ」
吉川氏「地方創生基本方針2017との関係で聞く。6月9日の基本方針2017で、東京一極集中を是正するためということで、東京23区の大学は定員増を認めないことを原則としている。一方で、総理は『意欲あるところにはどんどん獣医学部の新設を認めていく』と述べ、官房長官は今の答弁で『規制に根拠はない』と。一方で、東京はダメだと。矛盾しているが」
菅氏「先月閣議決定した『まち・ひと・しごと創生基本方針2017』では、今後18歳人口が大幅に減少する中、東京の集中によって地方大学の経営悪化や、東京圏周辺では大学が撤退した地域の衰退というものが懸念される。そういう中で東京23区の大学の学部・学科の新増設について抑制することとして、東京23区の大学の定員増は原則認めない、このようにした。ただ、この場合も想定の範囲内で対応するのであれば、既存の学部などの改廃によって社会のニーズに応じた新たな学部・学校を新設することは認めることにしている。仮に23区において獣医学部を含め新たな学部・学科を新設する場合は、各大学において社会のニーズや学生の応募状況などを踏まえて、スクラップ・アンド・ビルドの中で対応できるところであって、総理や私の発言と矛盾することではない」
吉川氏「いやいや、一方で『東京では定員を増やすのはダメだよ』といいながら、一方で『全国でどこでも獣医師(獣医学部を)やりたいところがあればつくっていいですよ』と。全然違うじゃないですか、言っていることが。この2つの間は、完全に矛盾している。時間がないので最後に前川(喜平・前文科事務次官)参考人にお聞きする。参考人は『行政がゆがめられた』と再三にわたって述べられてきた。それが本当にゆがめられたのかをただすのは当委員会の役目だが、今日の政府の答弁を聞いて行政がゆがめられたという懸念は払拭されたとお考えか」
前川氏「ゆがめられたと私が感じているのは規制緩和の是非よりも、その結果として特定事業者がどう決まったかということだ。その点については、加計学園の獣医学部が本当に特区制度の目的にかなうものなのか。あるいは4条件を満たしているのか。またどういう経緯で広域的に存在しない地域に限りという条件、あるいは30年4月開設という条件が付されていったのか。また、京都府、京都産業大学との比較は十分に行われたのか。こういった点は分からないままになっていると思っている。私が知る限りの情報からは分からない部分がたくさんあるし、私が知る限りのことを申し上げたとしても、お分かりにならないだろうと思う。この点については内閣官房や内閣府、さらには加計学園や今治市の関係者からお話を聞いていただかないと分からないことが多い。そういう意味で、和泉(洋人)総理補佐官、あるいは加計孝太郎理事長、あるいは今治市の菅(良二)市長、そういった方々からお話を聞いていただく必要があるのではないか」 
参院 閉会中審査 

 

蓮舫参院議員(民進)
蓮舫参院議員(民進)「自衛隊の状況に応じて適切な指示を出す稲田(朋美)大臣、およそ70分間(※ママ)、防衛省にまさに特別警報が出ている最中、いなかった。これは適切だったという判断か」
菅義偉官房長官「私が報告を受けているところによると7月6日昼頃、防衛省政務三役が40分程度省内に不在だった。大臣含め複数の政務三役がすぐ近くに所在し、秘書官から随時連絡を取れる、そして速やかに省に戻れることができる体制になっていたと報告を受けている。いずれにしろ自衛隊においては稲田大臣の指示に基づいて、被災者の救助、情報収集、全力であたっており、その対応に問題はなかった」
蓮舫氏「ちょっと理解できない。まさに豪雨が、次から次へ被害が広がり、河川が決壊し、土砂災害が新たに起こる恐れがある中、一刻一秒の猶予もなく大臣の指示が適切に被害状況に応じて出されなければいけない中、大臣が70分(※ママ)、防衛省にいなかった。問題ないという認識だが、国民の命を守る指示より大臣が優先させた政務とは何か」
菅氏「私は承知していない」
蓮舫氏「その政務を承知しないで、防衛相が指示を出せるその場にいないのは適切との判断ですね」
菅氏「昼休みの間に防衛関係の会合に出席していたということは報告を受けているが、どこでということは承知していない。ただ大事なのは現場にそうした救命救助、復旧に向けて自衛隊そのものが対応できる体制であるかどうかだと思っている。大臣は電話で連絡を取れる状況で、15分程度で何かあれば帰ってこられるところだったと報告を受けている」
蓮舫氏「その政務はランチミーティングだったのでは」
菅氏「私は詳細については承知していない。ただ防衛関係の会合であるというふうに報告を受けている」
蓮舫氏「把握してください。7月7日に会見して、ちょうど昼時だったので食事が出ていた、その食事はせずに冒頭の説明を受けて戻ったということ。参加者にも大臣にも食事が出て、食事を取りながらのランチミーティング。その間に被害が拡大して、今朝段階で21人が亡くなられ、20人を超えて安否不明者がいる。現地の状況、国民の命を守るために一刻一秒を争う中、不在だったのは私は、この政務はキャンセルすべきだったと思うが、なぜそう指示をしないのか」
菅氏「防衛相として、前の夜についてもたしか10時過ぎだったと思うが、連絡を取って、しっかり自衛隊の出動に対しての要請は大臣がしっかり指示をしていたということは承知している。危機に対して大切なことは、事態をマネージすることが一番大事だと思う。どこにいるのかということではなくて、特に大臣そのものが15分程度で帰ってこられるところで常に連絡が取れる体制でいたということである」
蓮舫氏「(自民党の)中谷(元)前防衛相、石破(茂)元防衛相もおかしいといっている。その意見は間違っているのか」
菅氏「いろいろな方がいろいろなことをいっていることは承知しているが、ただ大臣として私は適切な判断を行っていたと考えている」
蓮舫氏「適切かどうかは国民の皆さんが判断すると思うが、稲田大臣は都議選の時、『防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてお願いしたい』。自民党の個別候補の当選をお願いするという、これは憲法、公職選挙法、自衛隊法にも違反していると思う。なぜ法律違反をしている人を罷免しないのか。総理と罷免するかどうか話したことはあるか」
菅氏「総理と話したことはない」
蓮舫氏「こうした発言、あるいは豪雨災害の途中で防衛省を不在にしてランチミーティングをしていたことについても適正だったという理解でよろしいですね」
菅氏「大臣として職務を遂行できる状態にあったと承知している」
蓮舫氏「国民に判断を委ねたい。加計疑惑について。まず冒頭、抗議を申し上げたい。国家戦略特区の事務方の中心人物となって当時のやり取りを詳細にまとめていた、時に記憶がよくなくなる方だが、藤原(豊)前審議官を参考人で求めていた。実際、衆院合同審査会では参考人としておこしいただいていたが参院にはおこしいただけなくなった。その理由が全く分からない。丁寧に説明するといった安倍総理の言葉は自民には降ろしていないのか」
菅氏「国会のことは国会に委ねている」
蓮舫氏「丁寧な説明という言葉の意味は私たちと違いがあるようだ。衆院のやり取りを見ていたが、前川(喜平・前文科事務次官)参考人の証言と政府答弁の食い違いが目立つ。なぜ話がかみ合わないと考えるか」
前川氏「なぜ食い違うか説明できないが、私は私が承知していることをそのまま述べているだけだ」
蓮舫氏「10月7日、萩生田副長官ご発言概要。これは加計学園を念頭に置いた発言を萩生田(光一)副長官がしているものがいくつも明記されている。この行政文書、あるいはメモ、これは本物か」
前川氏「10月7日の日付の入っている文書だが、これは私が事務次官在職当時、担当課から説明を受けた際、受け取った資料と同じものだ」
蓮舫氏「本物。この概要メモには、既存の大学がうちの大学でもできると言われると困難になる、あるいは加計学園が誰も文句が言えないような良い提案ができるかどうかだな、私の方で整理しよう、こういうふうに発言したというメモだが、発言していないか」
萩生田官房副長官「ご指摘のあった文書については文科省における追加調査でも確認ができなかった文書だ。しかし10月7日、常磐(豊・文科省)高等(教育)局長と夕刻会ったことが確認できた。その中で常盤局長からさまざまな説明を受けたが、この10月7日、メモに書いてあるような言葉をもって回答した記憶はない。午前中の衆院でも答えたが、獣医師の需給について農林水産省も参画して検討を進める必要があるというのをこの日かは認識していないが、会ったときに繰り返し説明を受けている」
蓮舫氏「当時の文科省の事務方のトップが実際に行政作業として確認したメモと証言。そこに名前と発言が書かれている方は記憶にないと。どちらが正しい」
松野博一文科相「事実関係としてはこの文書は追加調査でも確認できなかったということだが、個々書かれている内容に関して確認できなかったということなので、これも当人間の話ということではないかと思う」
蓮舫氏「1回目の調査で確認できなかったものが2回目の再調査で出てきた。今も確認できなかったといった。このメモはないのか、確認できないだけなのか」
松野氏「追加調査で対象の行政ファイルを拡大して調査したが、その中に存在はしていなかったということだ」
蓮舫氏「再追加調査をしたら出てくるのでは」
松野氏「追加調査において十分に信頼性のある調査が行われたと考えているし、あわせて対象者を広げてヒアリングも行っている。その結果として文書が存在しなかったということを認識している」
蓮舫氏「前川参考人が確実に見たというものをことごとく記憶にない、存在が確認できなかった。これはなぜなのか。そんなに文科省の管理はずさんなのか」
前川氏「探せば出てくる文書だと私は思っている」
蓮舫氏「丁寧に説明をするという姿勢に私たちは期待したいと思う。まだ探せるかもしれない。探せば出てくるかもしれない。再々調査を指示してはどうか」
菅氏「文科省については文科大臣の責任の下で調査をいただいている。文科大臣に委ねたいと思う」
蓮舫氏「二度手間、三度手間になるんですけどね。再々調査はやるか」
松野氏「前回の追加調査で十分に合理的な範囲における調査がなされたと考えている」
蓮舫氏「しないということと受け止めた。極めて疑惑解明に向けて前向きではないということが残念だ。むしろ隠したいこと何かあるのではと疑われてしまうので残念な答弁だ。人事情報について確認したい。菅長官は前川参考人が地位に恋々としがみついていた、こう発言した。しがみついていたのか」
菅氏「私はそう思って申し上げた」
蓮舫氏「3月末まで次官を続けたいと申し出たと菅長官は会見で明言している。そのような申し出は行ったのか」
前川氏「そのような事実はございません」
蓮舫氏「菅長官、言っていることが食い違っている」
菅氏「私は事実に基づいて発言をしている。それは国会でも以前説明したが、私が承知している事実だが、昨年の12月ごろに杉田(和博)副長官の求めに応じて説明にきた際、これは天下り問題が大きな問題になっているとき、その際にご自身は進退についての意向を示さなかったということだった。そして1月上旬に文科の事務方から前川氏の定年延長について官邸に話があったそうだ。定年延長は、事務次官は、通常定年の方は3月いっぱいまでだが、国会終了までやっていただくというのが通例。その1月上旬にそういう手続きについて文科省の事務方からあったということだ。杉田副長官はその都度、私に報告をしている。そして杉田副長官からは私に対して、前川氏は今回の責任を取って辞めるべきだし、定年延長は難しいと回答したと私、1月上旬に報告を受けている。その後、副長官が前川氏本人に、こうした問題に関する処分について、天下りの処分、それについてまずは事務方のトップが責任を取ることを前提に議論しなければいけないと、このように話したところ、前川氏からせめて定年期限の3月まで次官を続けさせてほしいという話があったという報告を1月に受けている。副長官からはそれは無理だろうと回答し、あわせて私にも報告があり、私は当然自ら辞めるべきだろうと、そのときに申し上げた。ですからあのような発言につながったということだ」
蓮舫氏「杉田副長官を通じて、前川参考人は3月末まで事務次官を続けさせてほしいといったと。その報告が官房長官に上がっている。誰が間違ったことをいっているのか」
前川氏「どこでどこが間違っているのか分からないが、今官房長官がおっしゃった経緯は全く事実に反する」
蓮舫氏「菅官房長官、本当のことをおっしゃっているか」
菅氏「私は前に国会で申し上げたときもそうだが、事前に杉田副長官にも確認した上で発言している。いずれにしろ私に1月の上旬の時点で、ことあるたびに副長官から報告があった。ですから私は恋々とという言葉を使った」
蓮舫氏「一応、平等に確認する。前川参考人、本当か」
前川氏「この件で杉田副長官には何度か足を運んでいる。12月の終わりごろ、杉田副長官から呼び出しを受けて、夜間うかがったことがある。このときは、文科省の再就職規制違反の問題について文科省から再就職等監視委員会に提出するメールをどうするかについてご下問があった。その際、文科省は他府省に関わるものも含めて提出するしかないと考えていたが、他府省に関わるものは出すなと杉田副長官から指示があった。このようにその当時、まだ調査が進行中、どういう資料を出すかどうかということについての相談があって、その際に私が責任をどうするかということを申し上げる段階ではなかった。私は1月4日の時点で心の中では引責辞任を決意していた。親しい文科省幹部にも伝えている。翌日の1月5日にはその旨大臣に申し出て、私の方から責任を取って辞めたいと申し上げたところ、まず内閣官房にいって杉田さんと相談してこいと。私は杉田さんのところにうかがって、自ら責任取って辞めたいとそういうことを申し上げた。その時点では文科省の中の処分をどうするかということは決まっていなかったが、私も甘んじて処分を受けるという決意をしていた。私自身から定年を延長してほしいとか、3月までせめて在任したいとか、そのようなことを申し上げたことは一切ない」
蓮舫氏「関係者が10人、100人いるというなら分かるが、たった3人しか登場人物がいない。なのに全く言っていることが真逆だ。委員長、お願いだが、杉田副長官、藤原審議官、和泉(洋人)首相補佐官の証人喚問求める」
赤池誠章・文教科学委員長「後刻、理事会で協議する」
蓮舫氏「人事の情報を漏らすのは菅長官、大臣規範に違反しているということは認識しているか」
菅氏「まず報道の中で前川事務次官ご自身が辞めた経緯について発言をしていた。こうした内容について私が承知している事実と異なっていたので、今申し上げた通り、記者会見などでお答えしたもので、大臣規範や守秘義務違反という指摘はあたらない」
蓮舫氏「一方で驚きの人事が発表された。森友(学園)関係の疑惑を隠して答弁しなかった佐川(宣寿)理財局長が、なんと国税庁長官になられると。なぜか」
菅氏「まず人物の評価については、その人の能力と業績を組織の中で総合的に勘案した上で、すべての人事はその評価に基づいてポストにふさわしい人材を適材適所で配置している。各府省の幹部人事はこうした考え方に基づいて、各大臣が人事案を策定し、総理および私が協議を経た上で、各大臣が任命することになっている。国税庁長官の人事も、このような考え方に基づいて任命権者の財務大臣が人事案を策定し、任命協議を経た上で任命されたもの。佐川氏に限って申し上げれば、国税庁の次長、大阪国税局長などの徴税分野での経験、さらに主税局審議官などの税制の企画立案の経験をはじめ国税の分野で豊富な行政経験を有しており、法令に従い国税の徴収を厳正に行う組織の長官として適任であると考えた」
蓮舫氏「安倍総理や安倍内閣にとって答えないことが結果として内閣を守っている姿勢、その論功行賞として栄転をされる。一方で自分たちを非難した人、個人攻撃をされているのが前川参考人だ。この政府の姿勢はものすごく心配している。国家公務員制度改革、幹部人事の一元管理は政治主導で内閣や総理大臣を補佐する力を強化するために取り入れたのに今や忖度する人だけが栄転する仕組みになっている。非常に心配している。総理は7月1日の秋葉原での都議選の応援の中で『こんな人たち負けるわけにはいかない』と国民を分断した。自分たちを支持する人は味方、非難する人は敵。国民に対しても国家公務員制度改革に対しても、こういう姿勢をあらためてもらわないととても国民を見ているとは思えないし、丁寧な姿勢だとは思えない。集中審議、われわれが憲法に基づいて要求している臨時国会の開催を強く求める」 
桜井充参院議員(民進)
桜井充参院議員(民進)「和泉洋人首相補佐官から『安倍晋三首相のご意向だ』と言われたことはあるか」
前川喜平前文部科学事務次官「私が和泉氏から直接うかがったのは、私が和泉氏に呼ばれて9月上旬に執務室にうかがった際のことですが、その際に『国家戦略特区における獣医学部の新設において文部科学省の対応を早くしてほしい』と。そういうご要望がございまして、その際に『総理は自分の口から言えないから、代わりに自分がいうのである』と、こういうお話がありました」
桜井氏「そのときに『ご意向』とはどういうことだと認識したか?」
前川氏「その時点では国家戦略特区における獣医学部の新設に向けたプロセスを早めるようにという話だと思いました。その後の内閣府からのさまざまな伝達事項をの説明を受けまして、獣医学部を平成30年4月に開設するようにという話だったと承知したと思います」
桜井氏「『30年4月の開学』はいつごろ認識したか」
前川氏「(昨年の)9月の終わりごろであります。これは私が担当であります専門教育課から説明を受けたのが9月の終わりごろ。その少し前に専門教育課は内閣府の藤原豊審議官から伝達事項をうけたまわってきた。その際に『30年4月を大前提に逆算してスケジュールを作るように』『それが官邸の最高レベルが言っていることだ』という言い方があったと聞いていますので、それを踏まえて私はそう認識したのだと思います」
桜井氏「普通は、特区というのは首相官邸は関係ない。なぜ官邸に呼び出しを受けたのか」
前川氏「そこは分かりません。官邸の関心事項であるということ以上は分かりません」
桜井氏「国家戦略特区の場合、あまり官邸が関与することはないと思う」
前川氏「少なくとも私自身の経験にかんがみて考えますと、国家戦略特区、構造改革特区も含めまして、官邸から何か言われたということは私自身はなかったと思います」
桜井氏「(民進党の加計学園疑惑調査チームが今年6月27日に)萩生田光一官房副長官に会いたくて官邸を訪れたが、門前払いをくらった。愛媛県今治市の職員は首相官邸に行かれている。どなたかがアポを了解しない限りは入れない」
萩生田氏「ご指摘は平成27年4月2日の今治市職員の訪問の件だと思いますが、おっしゃるようにきちんとしたアポがなければ中に入れない。大変恐縮ですが、平成27年4月2日は私は官房副長官ではなかったので、当時のことはわかりません」
桜井氏「菅義偉官房長官は記憶はあるか」
菅氏「官邸の記録でありますけども、総理大臣官邸への入邸については訪問予約届の通行証を貸与し、そして厳格に管理を行っています。この訪問予約届は訪問予定者の入邸後はその使用目的を終えることに加え、外部からの入廷者は1日300〜400人いる。それを全て保存すれば、個人情報を含んだ膨大な量の文書を管理することが生じることもあって、公文書管理法や関係法令などに基づき、遅滞なく破棄している取り扱いをしているということであります」
桜井氏「前川氏は『10/7萩生田副長官ご発言概要』の文書について、文科省のどなたからレクを受けたか」
前川氏「10月中に専門教育課から説明を受けたと記憶はしているが、課長だったか、課長補佐だったか、あるいは両方だったか、その辺ははっきりしません」
桜井氏「この方のパソコンを調べればこのメールは出てくるのでは」
前川氏「おそらく、当時、この文書が存在していたことは間違いないと思いますので、その後消去したかもしれませんけれども、復元はできるだろうと思います」
桜井氏「和泉氏の評価は」
菅氏「和泉氏は民主党政権の内閣の参与でもあったと思います。私自身も当時のことよく見ておりましたので、私ども政権を取ってから仕事をしていただこうという評価のもとで、こんにちがあると思っています」
桜井氏「信頼が厚いのか」
菅氏「私は信頼をいたしております」
桜井氏「そのぐらい優秀な方だ。改めて、前川氏にうかがいたい。『ご発言概要』の信憑性は」
前川氏「10月21日の日付入りの文書のことかと思いますが、これについては現職中に見たことはございません。文面を見る限り、担当者が備忘録とつくり、一部の担当者の間で共有したと思いますが、これを作った動機というのは、その時点での状況をきちんとしておこうと、そういうことだと思います。役所の中で作る文書としてはあり得ると思う。内容の信憑性は高いと思いますが、主語が誰であるかということについては曖昧な部分もあると思います」
桜井氏「メモも行政文書にあたるか」
前川氏「公文書管理法や情報公開法などの法律、法律の解釈であるが、少なくとも行政における意思決定のプロセスが分かる文章で、単なる一人のための個人的なものでない限りは公開してしかるべき文書ではないかと私は思います」 
田村智子参院議員(共産)
田村智子参院議員(共産)「前川(喜平・前文部科学事務次官)参考人にお聞きする。文科省で確認された複数の文書に、平成30年4月開学というスケジュールが記されている。また、今治市が平成30年4月開学と記載したスケジュール表を記載していたことが確認されている。平成30年4月を前提にした議論をしたことはないのか。それ以外の選択肢が示されていたのか」
前川氏「文書をそのまま読んでいただければお分かりになると思うが、内閣府から9月下旬に伝達された事項については、平成30年4月開学を大前提に逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたいと記されており、これは官邸の最高レベルが言っていることと。それに対して文科省の担当局も大臣と相談した上で、30年4月はなかなか難しいということで、改めて内閣府と調整を行ったが、内閣府の回答は、再短期で規制改革というプロセスを踏んでいるということで、これは総理のご意向だと聞いていると。こういうふうに言われているわけで、今治における獣医学部設置については、30年4月、これは大前提で動かせない、これは2度にわたって確認している。その際に官邸の最高レベル、あるいは総理のご意向だと聞いているとこう理由づけが内閣府からされている」
田村氏「文科省で確認された大臣ご指示事項という文書には『平成30年4月では必要な文書が整わないのではないか、平成31年4月開学を目指した方がいいのではないか」という松野(博一)大臣の発言と思われる記載がある」
松野氏「期日が示されていたということが前提ではありません。国家戦略特区の立てつけとして、その決定時において期限を書き込むというのが過去の事例でもあるということだった。それは大学の設置審を経ない状況の中で、国家戦略特区の期日目標を書き入れることはどうか、という趣旨で質問をしたと記憶をしている」
田村氏「あらかじめ設置時期が何らかの形で提示されたからでてくる疑問だと思うが」
松野氏「国家戦略特区の先例として、医師養成大学における先例がございました。その事例として、国家戦略特区の中に事前の設置期限を書き込んであると説明があったので、それをもって説明をしたという記憶がある」
田村氏「かなり苦しい答弁。内閣不一致を生まないための答弁なのかと思う。もう一点、改めて前川参考人に確認する。やはり内閣府と文科省の協議は今治市を前提にしたものだったということか」
前川氏「その通りであります」
田村氏「山本(幸三)大臣、前川参考人とあなたの答弁は食い違っている。平成30年4月というスケジュールを示したことはない、今治市ありきではない、こういう答弁でした。食い違っているじゃないですか」
山本氏「30年度が初めて出てくるのはパブリックコメントだったと思います。その共同告示に30年度開設と規定するわけですが、これはいち早く具体的な時期に実現させて、効果を検証することが重要であるということから、効果を検証できる開設時期を共同告示に規定して早期開設を制度的に担保しようとしたものです。ただ、それ以前についてはできるだけ早くということは当然に念頭においておりましたけど、30年4月ということで具体的に出していることはありませんし、他の選択肢を排除したということも考えておりません」
田村氏「文科省の文書には平成30年4月は出てくるが、他の期日は出てこない。出てくるスケジュールは平成30年4月だけ。もう一つ。今治市の構想が適切であることを示すのが必要だと文科省の意見として返された。内閣府はこれに対してメールを出しているが、当たり前の前提としたメールなんですよ。農水省と文科省で協議してほしい。ということは、今治市ありきで、文科省に提示していたのではないか」
山本氏「そういうことではありません。このやり取りをするときには、すでに4条件などをクリアして獣医学部を開設すると、そこを決めることが諮問会議であり、その勝負はすでについていたわけです。その時には、もう今治市が前提ではなく、その他の地域もあるという前提で考えていた」
田村氏「内閣府から文科省に返されたメールにはそんなことは書いていない。今治市の構想が適切であることを示す必要があるという意見に対し、文科省と農水省で協議してくれと返しているだけだ。もう矛盾に満ちている。獣医学新設が閣議決定である4条件に合致している根拠をもって説明されていないということを前川参考人は繰り返し指摘されている。前川参考人は、文科省としては農水省と厚労省の参加がなければ実質的な答えが出せないと言い続けてきたと述べられいるが、文科省の問題提起について、内閣府、官邸はどのように対応したのか」
前川氏「内閣府の姿勢は、内閣府が主体になって農水省と厚労省を引き込み、一緒に検討するという意思はないと思った。農水省、厚労省の参加が必要だというなら、文科省が責任をもって話をつけろ。こういう姿勢だったと記憶しております」
田村氏「内閣府としてやる気がないということですね。農水省は新たな需要があるという判断は一度もやっていない。また、創薬プロセス、先端ライフサイエンスというなら、厚労省の判断も必要だろう。内閣府と農水、文科、厚労の3省による協議を何でやらなかったのか」
山本氏「国家戦略特区の基本方針は閣議決定です。その中に、所管省庁が制度見直しが適当でないと判断する場合には、適正な正当な理由を適切に行わなければならないと書いてある。従って、その規制監督省庁が、この場合は文科省ですから、文科省が責任を持って、ちゃんと事情が足りてますよとか、4条件を満たしていませんよと、説明しなければ、正当な理由がないということになって、獣医学部を新設するということになるわけです。その基本方針を理解しないでいろいろなことを言われても困る」
田村氏「平成30年4月開学は昨年11月18日のパブリックコメントで初めて公になった。今年1月4日の事業者公募でも応募要件となった。獣医医学部新設に具体的な構想をもっていた京都産業大学も平成30年4月という条件を示されたから、もう無理だと諦めた。この条件で応募できたのはなぜか。方針決定の前に今治市でボーリング調査をやっていたのは加計学園だけだ。その意味を前川参考人はどう受け止めているか」
前川氏「平成30年4月開設という大前提であると、官邸も内閣府も共通のスタンスだったと思いますが、官邸の最高レベルが言っていることだとか、総理のご意向だと聞いていると、これ以上の説明は聞いていない」
田村氏「平成30年4月解説は国家戦略特区でも一切議論になっていない。なんで平成30年4月じゃなきゃだめだったのか」
山本氏「30年開設と記載したのは、いち早く具体的な事業を実施して、効果を検証することが重要だということで、早期開設を制度上担保するためだ。最速で事業が実現するスケジュールの平成30年度開設というものをパブリックコメントのときに示した。時期を示すというのは医学部のときにもやっている。ただ、獣医学部の設置という特例措置は、手続き全体からみれば入り口の措置。文科省の共同告示における平成30年4月という時期は、目指すべき時期との性格を持つものと考えている。内閣府としてはあくまで公正中立な意思決定をしたところだ」
田村氏「ますます疑惑が深まりました。加計学園の理事長、和泉首相補佐官、藤原前内閣審議官、そして前川参考人にもお越しいただき、証人喚問を早急に行うことを求めて質問を終わります」 
青山繁晴参院議員(参院)
青山繁晴参院議員(参院)「日本に獣医師の不足はないから、愛媛県今治市に加計学園が新たに獣医学部をつくることは行政をゆがめることであるという趣旨で発言していると思うが、(獣医師をめぐる)実態はご存じか」
前川喜平・前文科事務次官「違います。獣医学部の新設について一律に申請を受け付けないという告示があるが、告示に対して特例を設けるかどうか、あるいは告示の撤廃を考えるかどうか、獣医学部の入学定員について定員管理をするというポリシーを捨てるか捨てないか、これは政策論議をすべき問題で、それは国家戦略特区を舞台にして議論することもできるでしょうし、一般論として議論することもできる。この規制緩和をすべきかという問題と、結果として加計学園に獣医学部の新設を認めるかどうかは次元の違うことで、私がゆがめられたと思っている部分は、規制緩和の結果として加計学園だけに獣医学部の新設が認められるに至ったプロセスだ。その部分が問題であるし不公平な部分があるのではないか、不透明な部分があるのではないか。そこの解明が必要だ」
青山氏「前川参考人がおっしゃったことは予想した通りだ。加戸(守行・前愛媛県知事)参考人は自治体の最前線で獣医師不足に直面していた。どのような実態だったのか。また前川参考人の答弁をどのように聞いたか」
加戸氏「10年前に愛媛県知事として今治に獣医学部の誘致を、当時は構造改革特区の名の下に申請したことを思い返して、はなも引っ掛けてもらえなかった問題が、こんなに多くの関心を持ってもらっていることに不思議な感じをもっている。一番苦労したのが鳥インフルエンザ、口蹄疫の四国への上陸阻止、あるいはBSEの日本への波及の阻止。感染症対策として一番防御が可能な地域という意識もあったし、アメリカがこの問題に先端きって国策としてこれからはライフサイエンスと感染症対策をベースとした獣医学の教育の充実ということで大幅な獣医学部の入学者の増加。そして3つの獣医科大学の新設という話で懸命に取り組んでいる姿を横で見ながら、なんと日本は関心を持っていただけない国なんだと。私は少なくとも10年前に愛媛県民の今治地域の夢と希望と関心を託してチャレンジした。厚い岩盤規制ではね返されはね返され、やっと国家戦略特区という枠の中で実現を見るようになった今、本当にそれを喜んでいる。行政がゆがめられたという発言は、私にいわせると少なくとも獣医学部の問題で強烈な岩盤規制のために10年間、我慢させられてきた岩盤にドリルで国家戦略特区が穴を開けていただいたということで、ゆがめられた行政が正されたというのが正しい発言ではないのかなと思う」
青山氏「(獣医学部は)現在930人の定員だが、1200人まで水増し入学が行われている。これで需要が均衡しているともしも文科省が判断しているのであればこの点からもおかしいのではないか。文科省は現在、大学の定員超過の是正に取り組んでいるとも聞いた。もし獣医学部の水増しが正されれば年間270人、4分の1もの新しい獣医師が減ることになる。これは獣医師の教育が現状の学校では十分ではないという証拠でもあり、学校が足りないという証左ではないか」
前川氏「獣医師の需要がどのくらいあるのか、それに対してどのくらいの獣医学部の入学定員が望ましいのか、これは政策的に考え、定員管理を政策的に行っていくということが当面正しい方法だと思っていて、いっぺんにこれを撤廃することは望ましくないと思っている。ただ獣医師に関しても今後、養成を増やす必要があるのであれば、それは既存の大学の定員を増やすという方法もあるし、既存の大学には十分なスタッフがそろっている場合もあるし、十分な教官組織をさらに充実させることもあると思う。真っ新に新しく獣医学部をつくる方がよほど困難で、そこの教員をどこから連れてくるかということは非常に難しい問題であるはずだ。既存の大学から新しい学部に教員を連れてくるのであれば既存の大学の教員組織が弱体化する。そこをどうするかという問題があるので、単に養成数を増やすというのであれば、普通は既存の大学の定員を増やす方がよりコストがかからない方法。実際、医師についてはそういう方法をとって供給数を増やしている。そういった選択も含めて政策的に考えるべき問題だと考える」
青山氏「要は既存の体制の強化でやりたいと。それができるならいいが、それだったら今の水増しのような事態が起きるはずがない。加戸参考人はいかがか」
加戸氏「特区申請をしてから何回も門前払いを食らった。いろいろな方策で模索したが、一番強い反対は日本獣医師会だった。当時直接の接触はなかったが、ホームページでは専務理事が今治の獣医学部新設について、けちょんけちょんの論陣を張っていた。養成はちゃんとするから余分なことをするなというのが基本。当時から疑問に思ったのは、まず獣医師の養成が、箱根の関所から東で8割の入学定員があり、箱根の関所から西には2割の入学定員しかなくて、しかも私学は水増し入学をするので、実質的には養成された獣医師の数は箱根の関所から東は80数%、場合によっては90%近く。四国は空白区で、獣医師が確保できない。県知事としていろいろな対応をしても、例えば獣医師は無試験でもいいから、どうぞどうぞいっても来ていただけない。獣医師会の反対は何かといったら処遇しなからだと。愛媛県、あるいは四国だけは獣医師の給与体系を国会公務員の獣医師を上回る体系を作ることができるのか。それはじゃあ獣医師が充足されたら給料を下げるのかと。給料の問題、愛媛は給料が安いから行かないとか奨学金出さないから行かないんだよと。全部東京へ来たら、養成して返すからと。そういうことでいいのかなということが一つ。それから新しい学部はできないという。反対されながら見ていた。でも自分たちはどうであったのかと申し上げると大変恐縮だが大学教授の定員は10年と今日で変わらないままで。アメリカは必死でやっているのに、据え置いたままで新しいのはつくるなと。今回のケースにしてもはるかに多い獣医学の教官をつくって感染症対策なりライフサイエンスなり動物実験による創薬の研究なりと幅広い学問をやるスタッフをそろえようと思って、それをブレーキをかけるというのは理解できない。それならば自分たちでなぜ10年もの間にアメリカに遅れないようにスタッフをそろえないのか。今のままで置いておいて、今治にはつくるなつくるなというのはあまりにもひどいではないかというのが私の思いだった。知事の任期の終わりの方に民主党政権が誕生して、自民党ではできないので私たちがやるといって頑張ってくれた。対応不可の門前払いから実現に向けての検討とレベルアップした。よかったねと次の知事にバトンタッチした。ところが自民党政権に返り咲いても何も動いていない。何もしないでいて、ただ今治だけにブレーキをかける。それが既得権益の擁護団体なのかと悔しい思いを抱えながらきた。そして国家戦略特区で取り上げられ、私も昔取った杵柄で今治市の商工会議所の特別顧問という形で応援団の一員で参加している。先端サイエンスと感染症対策と封じ込めと日本人の生命がかかるこの問題を欧米に遅れないような獣医師を養成しなければならないことに手を加えないでおいて今治は駄目、今治は駄目、加計ありきというのは何でかなと思う。加計ありきではない。加計学園がたまたま、愛媛県会議員の今治選出の議員と加計学園の事務局長がお友達だったからこの話がつながってきて、飛びついた。これも駄目なんでしょうか。お友達だと全て駄目なのか」
青山氏「愛媛県今治市に新設することについては閣議決定や国家戦略特区をめぐる議事録、公に公開されているものを丹念に調べていけば経緯ははっきりしている。経緯について現職の時に詳細にご存じだったか」
前川氏「私が現職で仕事をしている中でも見えない部分がたくさんあった。どうして30年4月開学が大前提なのか。ここについては合理的な説明はどこにもない。結局は官邸の最高レベルがいっていること、総理のご意向であるというような説明しかなかったということがあって。内閣府の方で説明いただかなければならない部分だが、文科省からはあずかり知らない部分はたくさんあるので私が承知していないことは多々ある。しかし日本再興戦略改訂2015で、平成27年6月に閣議決定された4条件がある。これは閣議決定である以上、内閣の一員として守らなければならないもの。この閣議決定の中で4つの条件があるわけで、文科省としては4つの条件を満たす必要があるということをずっとこだわった。文科省としては4条件に照らして今治市から出てきた提案は条件を満たすものではないということを主張しているが、そこから先の議論になっていない。そこから後はとにかく決めると。4条件は満たしたと誰かが決めてしまったと。文科省としてワーキンググループで条件を満たしていないという主張をしていることは(議事録を)読めば分かる。これをもって挙証責任うんぬんといわれるのはおかしい。まず政府内での議論の中でどちらが先に必要性を述べるかというのは、挙証責任をまずどちらに負わせるかというのはあるかもしれないが、その結果として内閣府が勝った、文科省が負けた、だから国民に対して説明しろと。これでは国民に対しての説明にはならない。挙証責任があるかということと国民に対する説明責任は全く別。国民への説明責任は政府一体で負わなければいけない。議論に負けたから文科省が説明するんだと、こういう議論にはならないはずだ」
青山氏「本音のところで前川さんを信用したいが、今の話は非常に不可思議な話。挙証責任を持つということと国民に説明するということは別だという話をしたが、別だったら民主主義は終わり。何のためにこの審議をやっているのかも分からない。話をすり替えたのは前川さんの方であって。そういうことは何かの志を持って話しているのであればなるべく避けてもらいたい。加戸参考人にもうかがう」
加戸氏「文科省も時代の進展、国際的な潮流を考え、これでいいのかということは常に自問自答しなければいけない。私自身が今回の問題にタッチして、それがはね返され、年月が経過するたびに、当時、同時並行で、例えば薬学部、これは医薬分業があっていっぺんに入学定員が6000人近く増えた。大学の数も2倍近く増えた。でもそのことに関して需要がどうだ、供給がどうだ、挙証責任がどうだ、誰も問題にしていなかったと思う。今後何万人という薬剤師の過剰供与、それをどうするかが深刻な問題になっている。かたや獣医学部はびた一文駄目だと。少なくとも私の知る限り提案した時点から東京の私学の獣医学部は45人とか50人とかの教授陣容のままで、時代の進展に対応しないまま、今日に来ている。その中で今治で計画している獣医学部は72人の教授陣容でライフサイエンスもやります、感染症対策もやりますと、さまざま形での、既存の医学部の一分野でやられているかもしれないが、そういう意欲を持って取り組もうとしているのに、薬学部はどんどんつくってもいいけど獣医学部はびた一文駄目だと。こんなことはこの国際化の時代にあり得るんだろうかというのが私の思いだ。へ理屈はいい。私は霞が関で30数年、生活した。省庁間折衝がある。自分の思いを省を代表して激しい言葉も使い、場合によって虎の威を借るキツネのような発言もあり、でも事柄が決着した後は酒を酌み交わして、決まったことは次の施策に向かっていく。これが霞が関の文化だった。今回は霞が関の文化が感じられない。時代が変わったのか。少なくとも国民にとって時代の潮流の中で、どこが何を求めているのか、それに対応するにはどうすればいいのかを考えることであって、私は本質の議論がされないままにこんな形で獣医学部がおもちゃになっていることを甚だ残念に思う」
青山氏「獣医師養成の機関を含めて学校の許認可権はすべて文科省にある。だから学校は天下りの文科官僚を受け入れ、文科省は次官以下が学校への天下りを法を犯してでも進めたから、前川氏もこの(天下り)問題で辞任した。既存の学校だけを守ろうとする姿勢と天下り問題は密接につながっているのではないか。既得権益をありとあらゆるところが一体で守ろうとする日本の闇につながっているのでないか。妥当な規制緩和であってもやらないというのが今の文科省の姿なのではないか」
前川氏「国家戦略特区の今治市における獣医学部の設置の問題、この問題をめぐる議論と天下り、再就職規制違反にかかる問題、これを結びつけて議論するのはおかしいと思う。仮に結びつけるのであれば具体的内事例は木曽(功)理事の問題。木曽理事は内閣官房参与の身分を持ったまま加計学園の理事になっていて、2つの肩書を持った状態で私のところに来て、加計学園の獣医学部の新設に向けて働き掛けをされた。こういうOBによる現役に対する働き掛けは天下り問題の弊害の一つの端的な例だと思っている」
青山氏「結びつけなければいけないと思っている。文科省はこのほど文部科学白書を発表した。冒頭の3ページに異例の言葉が入っていて、組織的な天下りの問題について省を挙げて猛省する。国民に謝罪して3人の事務次官経験者は、前川さん、あなたを含めて、斡旋の構造作りや運用に関わっていた責任を極めて重く受け止め停職相当の評価としたと、そう書かれている。後輩の方々が苦しんで書かれた文章を、今の答弁は裏切っているのではないか。加戸参考人、どうぞ」
加戸氏「6月13日の国家戦略特区諮問会議の民間有識者の委員の方々が記者会見をして、私は人に知らされてインターネットのユーチューブで1時間半拝見して感激した。特に今回の規制緩和に関して心に一点の曇りもなくやったということで、これが今回の大きな事件の結論だったんだろうなと。これが国民に知ってもらうべき重要なことだと思った。たくさん今まで取材があったが、都合のいいことはカットされて、私の申し上げたいことを取り上げてくれたメディアは極めて少なかったことは残念だが、あのユーチューブがすべてを語り尽くしているのではないか」 
里見隆治参院議員(公明)
里見隆治参院議員(公明)「本日は前愛媛県知事の加戸守行氏に参考人としてご出席いただいています。獣医学部設置の要望実現に向けた参考人の思いを教えていただきたい」
加戸氏「獣医学部誘致に至ります間に、いくつかのことがございました。まず1つは、私が知事に着任しましたときに、今治市は新都市開発構想がありましたけれども、神棚に上がったままで動いていませんでした。私の最初の仕事として、今治市とタイアップして、新都市整備事業に取り組みまして。2つの地区がございまして、1つは商業産業地域、1つの地区は学園都市構想地域。今治に若者の街で学園都市ができないかということがありました。そして、これは地元大学の誘致などもございまして、話も進みかけましたが、話がポシャりまして、結局土地だけがあって、学園都市構想が宙に浮いた状態でありました。もう一つは私が知事に着任早々、鳥インフルエンザの問題、あるいはアメリカでの狂牛病の問題、(知事の)終わりの時期には口蹄疫の問題等々で、愛媛県で公務員獣医師、産業担当獣医師の数の少なさ、確保の困難さ、そして獣医大学部の偏在等々の状況。そしてアメリカの適切な対応などを見ながら、日本も遅れているなと思っていたときに、ちょうどたまたま加計学園が今治の新都市への進出という構想を持ってこられたので、渡りに船と、この獣医学部構想で取り組んでいただいて。単に獣医学部ということでなくて、アメリカに見習って、先端サイエンスなり、あるいは感染症対策なり全てが国際水準に負けないような新たな分野に取り組む獣医学部として、国際的にも恥ずかしくない拠点にもしたい。そして、国際的に通用する獣医師をということで、今申し上げましたとおり、新都市開発と若者の街、そして今治が国際的な獣医師の育成ということで飛躍できるのではないか。そして、愛媛の問題も含め、あらゆる一石二鳥、一石三鳥の思いでチャレンジをしようと決心をしたわけでありますけども。それが、堅い堅い岩盤規制に阻まれながらいろいろ勉強しつつ、あそこもだめか、これもだめかといいながら、しかし、日本の少なくとも私が見る限り、獣医学部は10年以前と今日まで変化しておりません。アメリカに、あるいはイギリス、ヨーロッパに10年遅れていると私は思います。10年の後れを取り戻す大切な時期だと、そんな思いできょう、参上させていただいたわけでありまして、そのことがらはそんな意味での地方再生、東京一極集中ではなくて、地方も頑張るんで地方も国際的拠点になり得るんだよと。そういうもののモデルケースとして、愛媛県の、今治の夢を託している事業であって、『加計ありき』と言いますけど、12年前から声をかけてくれたのは加計学園だけであります。私の方からも東京の有力な私学に声をかけました。来ていただけませんかと。けんもほろろでした。結局、愛媛県にとっては12年間加計ありきでまいりました。いまさら、1、2年の間で加計ありきではないのです。それは愛媛県の思いがこの加計学園の獣医学部に詰まっているからでもあります」
里見氏「最近の国会やマスコミにおける議論をどのようにごらんになっているか」
加戸氏「私は提案をした当事者としまして、次の知事にバトンタッチした段階では、民主党が積極的に取り組んでいただいて、これでうまくいくのかなと思っていた状態が、また自民党で、申し訳ありませんけど、元戻りした印象で非常に残念に思っていた。最近の議論などを拝見しておりますと、本質論の議論ではなくて、単に手続き論だけが先行している。そういう意味では愛媛県の思いとか、今治市の思いとか、日本の未来、あるいは感染症対策の国際潮流とかそういう大きな議論をしていただくのが国政の場ではないのかなということで、ある意味で寂しい思いをしながら、歯がみをしながら、でも、よくぞ決断をしていただいたという意味での国家戦略特区に感謝を申し上げながら、本当はみんなで耳守りながら育てていただく。これが本当のあるべき姿ではないのか。そういう議論がほしいなと思いながら拝聴してまりました」
里見氏「前川喜平前文部科学事務次官が『行政がゆがめられた』とおっしゃっている。事務方トップとして納得できなかったとうかがえるが、この点はいかがか」
前川氏「構造改革特区のスキームを使ってですね、愛媛県今治市が長年に渡って提案繰り返してこられた。その粘り強さと言いますか、その頑張りはある意味、敬服するわけでありますし、本当にお疲れさまでしたと(旧文部省OBである)加戸先輩にも申し上げたいのですが、しかし、それと政策としてどう判断することは別物であると考えていますし、ある意味、文部科学省としましては先輩に対してもですね、非情にですね、情け容赦ないといわれるかもしれませんが、きっぱりと断ってきたという経緯がありますので。これはやはり、政策としてこれまで獣医学部の定員を増やすという理由がないと判断してきたわけでありますし、その際には農水省などとも十分議論をしながら進めてきたとこういう経緯があるわけであります。今回、この国家戦略特区で認めるということの議論をする中で、やはり将来的な人材受給というものを踏まえて議論しなければならない。これは当然なことだと考えていましたし、やはり農水省、あるいは農水省が手に負えない新しい分野であれば厚労省も加わって、きちんと政府部内で政府部内で議論するというプロセスが必要だったと思います。さらに、加えて国家戦略特区で、獣医学部を認めるかどうかを検討するかにあたっては4つの条件が示されているわけでありますし、その中で既存の獣医師養成でない構想を具体化するというのが必要であり、またライフサイエンスなど、獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになって、それが既存の大学では対応が困難だと、そういう条件を付した上で政府全体の議論をしていたわけでありますから、その4条件を満たすかどうかはきちんと議論しなければならなかったわけでありまして、それが十分できていない。今治市からの提案もございました。昨年の6月に愛媛県の局長さんが来ていたわけですが、その提案がありましたが、文科省は『4条件を満たしていない』と申しおりますし。9月にも加戸先生が提案をされていますけども、これについても『4条件に照らして疑問がある』と、これが文科省のスタンスでございました」
里見氏「長年熱意をもって要望してきた地域を足げにするのではなく、一緒にやっていこうという政府の姿勢が重要だと感じる」
加戸氏「こと大学設置に関しましていろんな歴史等々もあるんでしょうけれども、私は自分で地方で現場を預かる立場にたって、この獣医師問題を考えたときに、あまりにも文科省の従来的考え方、硬直的だなと正直思いました。今、大切なことは国民がなにを求め、国は何を必要とし、どの分野でどんな人材が求められているかの時代であって、単なる一定の既得権益団体の主張だけに偏って、現状を守ろうとするその動き自体が不思議でありました。一方において告示の対象から外されていない薬剤師は5000人も6000人も増えていく。こんど、ちょっと作りすぎでないかといっても、需要がありますと、需要が出てきたわけでないでしょうと。単に告示の対象になっているかいないかでこれだけの差がつくのかなと。もし、国のことを考えるなら日本で獣医学部はこれでいいのかと。既存の大学も今度作ろうとしている大学を見習って、あと教官を20人増やしなさい、30人増やしなさいという指導があってしかるべきではないのかなと。私は、県を預かった立場から考えて、ちょっと国民的感覚と文科省は乖離(かいり)してきているのではないのかなと。それが今回の国家戦略特区、特に獣医師問題を通じて感じたところでございます」 
清水貴之参院議員(維新)
清水貴之参院議員(維新)「総理のご意向、もしくは官邸の最高レベルと記されていた文書について、再調査を文科省がやった。文書の存在が確認され、結局、その文書は国家戦略特区を担当していた課長補佐が上司や内閣府などに確認せずに作った個人メモだと結論づけられている。その課長補佐も細部までは覚えていないが、こうした趣旨の発言があったと思うということを言っているということだ。でも、発言があったのかなかったのか、もしくは文書を作った方がそういう受け止めをしたのか、この辺りがはっきりしない。色んな推測があったり、色んな議論があったり、色んな話が膨らんでいったりということが起きると思うが、松野博一文科大臣、この調査の結論を示していくべきだと思うが」
松野氏「追加調査をした結果で、具体的に民進党から提示された19の文書の内、14の文書について同内容の文書の存在が確認できるなどの調査結果が得られた。同時にヒアリングも対象を広げてやった。今回の文書を作成したのではないかと思われる者にもヒアリングをもちろんしているわけだが、状況が8カ月から10カ月程度前ということもあり、その期間中に同種の国家戦略特区に関する多くの文書等も作成をしているということで、必ずしも個々の文書に関して記憶が明確ではない。その担当者が、この種の文書を作るのは自分の仕事であるから、自分が作ったということであるかと思うし、書かれている内容に関しては、書かれている以上、同種の発言があったものと考えているというヒアリング結果だった。ただし、現状において記憶が明確ではないということもあり、その発言の真意がどういったものであったかについて、現状において振り返って確定できるものではないというのがヒアリングの結果だ」
清水氏「松野大臣から、同種の発言があったと思われるという発言があった。内閣府の方ではそういった発言をしたことはないという結論と受け止めているが、それで正しいか」
山本幸三地方創生担当相「内閣府が先月16日公表した調査では、文部科学省が先月15日公表した追加調査の対象となった、官邸の最高レベルや、総理のご意向と記載された文書について存否の確認を行い、いずれの存在も確認されなかった。また、報告書に記載した通り、今回の内閣府の調査においては、内閣府から文科省に個別の項目や個別のプロジェクトについて、官邸の最高レベルとか総理のご意向などと伝えた認識はなく、また、総理からもそうした指示等はなかったと報告されているところだ。ただし、総理は常々、国家戦略特区諮問会議において規制改革全般についてスピード感をもって実現すべきという旨の発言をされており、これを受けて、事務方が関係省庁の議論を行う際でも、こうした発言に言及させていただくことはあったとのことだ」
清水氏「今の話を内閣府としてははっきりと言った覚えはない。でも文科省としてはそれらしき発言があったというわけだから食い違っているわけだ。どちらかに嘘が混じっている可能性もある。でも、どちらも本当のことを言っているという前提でとらえると、今、山本大臣の方から総理が常々言っているということだから、それらしき強いプレッシャーというか、やりなさいよという思いが内閣府から文科省にあった。そういった総理のご意向とか官邸の最高レベルが言っているとはっきりした言葉がなかったとしても、それらしき強いプレッシャーが、それを受けた文科省側がそういった文書をある意味、自分の意思なのか、あるいは上にあげて話を進めていくためなのか、狙いは分からないが、そういう風にとらえたら、これはつながってくることだと思うが、前川参考人はどう受け止めるか」
前川喜平前文科事務次官「問題になっている文書というのは、文科省の追加調査でも存在は確認され、その内容が問題になっているわけだが、獣医学部新設にかかる内閣府からの伝達事項は、まず9月の下旬に私の担当課から説明を受けた際に受け取ったものは3つの段落からなっており、最初の段落は平成30年4月開学だということだ。2つ目の段落は、どうやって決めていくか、それは関係省庁が積み上げていって、人材受給についてもちゃんと見通しを立ててやっていくのか、それとも国家戦略特区諮問会議で決めてしまって上からトップダウンで下ろすのか、というこういう2つの問題があるよ、と。3つ目は(広島県・今治市国家戦略特別区域会議の下の)今治市分科会においてヒアリングを実施することも可能だということで、分科会で議論することで考えていると。そして最後は1校に限定するかどうかは政治的判断なんだと。その中でどこに官邸の最高レベルという言葉が出てくるかというと、平成30年4月開学を大前提にということろだ。この30年4月開学を大前提とする、これが官邸の最高レベルが言っていることだというお達しになっているわけだ。さらに、内閣府からの回答というものが、文部科学大臣の懸念事項を伝えた際にそれに対する回答だが、その文書についても存在は確認されているわけだ。最初の段落をみていただくと分かるように、設置の時期、これは30年4月がどうしても大前提なのか、31年4月ではどうして駄目なのかどうか。こうした懸念を伝えたところ、内閣府の藤原(豊)審議官が『その発言の内容は、設置の時期については最短距離で規制改革というプロセスを踏んでいる。これは総理のご意向だと聞いている』となっており、(読み)飛ばしたが『今治市の区域指定時より』と書いてある。つまり、今治市の獣医学部の設置であることは明らかだし、それについて設置の時期というのは先ほど申し上げた30年4月という時期のことだ。30年4月、これは総理のご意向だと聞いているとこうなっているわけで。これらの文章から読み取れることは、今治市における獣医学部の設置時期について30年4月、これが総理のご意向だ、という風にしか読めない。規制緩和一般について早くしろ、30年4月に間に合うように規制改革をしろ、そういう趣旨ではなくて、今治市における獣医学部の開設を30年4月にしろと、それが総理のご意向だという風にしか読めない。そういう風に私は認識している」
清水氏「総理のご意向という部分は、受け取った文科省の担当職員の受け止め方なのか、それともはっきりと指示が、文言が、官邸の方から、内閣府の方からあったのか、その辺りについてはどうか」
前川氏「この間、文科省と内閣府は頻繁にやりとりをしてるわけだから、30年4月という日付が何を指すのかということについて誤解が生じるはずはないと考えている」
清水氏「内閣府が話を進めるにあたって『背後に官邸の動きがあった』と感じられるという発言をされているが、これはどういった動きがあったのか、この辺りを具体的にしていただくと、もやもやが大分見えてくると思うのだが、この辺りについてははっきりできるものか」
前川氏「私が官邸と直接関与したケース、これは国家戦略特区における獣医学部の設置については、昨年9月の上旬に、官邸の和泉洋人首相補佐官から呼ばれて、和泉首相補佐官の執務室で面談をしたということがある。その際に国家戦略特区における獣医学部の開設について文部科学省の裁量を早くするようにと要請を受けた。その際に『これは総理が自分の口からは言えないから私が代わって言うんだ』と、こういうご発言があったと記憶している。その後もこの件については、和泉補佐官とのやりとりがあって、特に10月の半ば頃には、再度官邸に呼ばれ、早期の対応を促されたということがあった。しかし、その時点においても文部科学省としてははっきりとした方針が定まっていなかったということもあって、引き続き検討中と答えた記憶がある。このように官邸の和泉補佐官から直接的な働きかけが私の方にあったということもあった。また、和泉補佐官はその経歴来を見れば分かると思うが、そもそも特区制度について非常に詳しい方だし、各省との連絡も非常に密にされている方だ。どこの役所の誰に何を言えばどう動くかということを良くご存じの方だと思うし、霞が関中の要所をつかんでおられる。また、10月21日の日付入りの、その後出てきた文書を見ても、やはり農水省と、これは農水省の誰だということははっきり分からないわけだが、農水省と話をした、ということも和泉補佐官がやっている。和泉補佐官を中心として官邸の関与があったということは明らかに推測される」
清水氏「ただ、その発言に関しては和泉補佐官は『言った覚えはない』と答えをされていると聞いている。ここも意見が食い違っている」
前川氏「私はコメントはできない。私は和泉補佐官と面談をしたことはあるし、いま申し上げたことを和泉補佐官から伺ったというのは事実だ。それに対して和泉補佐官がどうするかは、私はコメントできないが、やはり獣医学部にかかる問題の所在は、なぜ加計学園だけに決まったのかということであって、その際、問題は閣議決定の4条件に照らして本当にそれが満たされていたのか、どういう経緯をたどって広域的に存在しない地域に限るとか、30年4月開設という条件が付されたたのか。そういったことの解明ができていない。また、京都産業大学の提案との比較検討がきちっと行われたのかどうか、そこも明らかでない。そういった点で不明瞭な所が多い。その点について明らかにするには、和泉補佐官からのお話を伺うとか、加計学園の理事長とか、あるいは今治市長から話を伺うとか、文部科学省側、あるいは私からの説明だけでは到底全体は分からないと思う」
清水氏「今回規制を緩和する中で、緩和自体はすべきであったと思うが、やはり選考過程がなかなか見えてこないところもあってこういう問題になっているんだと思う。私からは、山本大臣、もう一回選考し直すのがいいと思う。加計学園と京都産業大学を並べてもう一回審議を進めることによって国民の理解を分かりやすくすることにもなると思うが」
山本氏「全くその必要はないと思う。一点の曇りもなく、スケジュールでルールに基づいてやってきた。こういう規制緩和をするというのは、個人の意見が入ってくるわけではなく、役所と内閣府と、そして民間議員とが決めていく。私も官邸なんて気にしたことがない。そして粛々と手続きを進めてきた。その際にはっきりしたいのは、4条件がなってないと説明するのは文科省だ。それがきちっとできてない、国家戦略特区の基本方針で閣議決定されているわけだから、それができなくて獣医学校新設が決まったわけだ。全く問題ないと考えている」 
森裕子参院議員(希望)
森裕子参院議員(希望)「平成27年4月2日、今治市の担当者は首相官邸で誰と協議を行ったか」
萩生田光一官房副長官「平成27年4月2日に今治市の職員が官邸を訪問したかは、訪問者の記録が保存されていないため確認できなかった。先日も(森)先生からご質問を受けて、安倍晋三総理に直接聞くようにということだったのでお答えしているが、改めて総理に直接確認したところ、面会したとの記憶は全くないとのことだった。一般的に市の職員が安倍総理と面会することは考えにくいと思っていて、どなたとお会いしたかは確認できていない」
森氏「首相官邸ですね。平成27年4月2日です。パネルにも示しているが、今治市の行政文書、情報開示によって提供された行政文書、合計で7800枚以上ある。これが行政です。そのうちの一部です。きちんと書いてあるじゃないですか。平成27年4月2日、15時から16時30分まで、首相官邸、議題はそこに書いてあるとおり獣医学部の設置について。残念ながら相手方は黒塗りで開示されていない。今まではその答弁で良かったでしょう。首相官邸のことなので菅(義偉)官房長官にうかがう。いったい4月2日に一地方都市の課長、課長補佐が訪れるということはほとんどないわけですよ。何で分からないんですか。なぜ記録がないのか。なぜ誰も確認できないんですか。誰も覚えていないんですか」
山本幸三地方創生担当相「今治市に確認したところ、官邸には行ったが、今後の今治市の議論に支障が生じる恐れがあるため情報公開条例の趣旨にのっとり相手方についてはお答えできないとのことだった。一方、内閣官房に確認したところ、訪問者の記録が保存されていないため確認できなかった」
森氏「山本さんに聞いていませんよ。首相官邸の話。菅官房長官、分からないんですか。何で記録が廃棄されちゃうんですか。2年前のことですよ。平成27年4月2日、今治市の課長、課長補佐、官邸を訪れているんです。なぜ分からないのか。一体誰と会ったのか」
菅氏「外部からの入邸者数が一日に300人から400人いるということだ。これを全て保存すれば個人情報を含んだ膨大な量の文書を適切に管理する必要が生じることもあり、公文書管理法や関係規則に基づいて遅滞なく破棄する取り扱いになっている」
森氏「遅滞なく破棄する、そこが分からない。参院でも会館への訪問者、その記録、3年間とってある。なぜすぐ廃棄するのか。なぜ官邸に誰が訪れたのか、全く確認できないのか。全然おかしいですよ。その時間帯、首相動静を見ると平成27年4月2日、15時から16時30分の間、河村建夫衆院議員も訪問されているが、総理が会われているのは、この間、加計学園問題で裏金疑惑が報じられた元文科相の下村博文さんだ。ピンポイントじゃないのか。国家戦略特区で今治市が獣医学部の提案を行う前の話だ。2カ月も前の話。なぜ官邸に行く必要があるのか。一体誰と会ったのか。答えてください」
菅氏「それは今治市に聞かれたらいかがでしょうか。官邸では先ほど申し上げたが毎日300人から400人の方が訪れて、公文書管理法や関係規則などに基づいて遅滞なく破棄する取り扱いになっている、これは事実だ」
森氏「国民をばかにするのもいい加減にしてくださいよ。今治市は7800枚、加計学園問題に関しての行政文書を管理保管し、市民の情報開示請求にのっとって全部出した。なぜ官邸はこんなことも確認できないのか。なぜ誰も覚えていないのか。おかしいでしょ。内閣府も分からない、何も。何も文書がないんでしょ。どうかしてますよ。加計学園グループの名誉客員教授に萩生田副長官、就任しているが、何で兼職届を出さなかったのか」
萩生田氏「客員教授としての勤務なども実体がないことから、副長官就任時に事務方同士のやり取りを踏まえ兼職の届け出不要と判断していたが、昨今の報道などを踏まえ、誤解のないように念のため提出した。このような経緯から明らかなように、何ら兼職を隠したり手続きを怠ったものではなく、大臣規範を踏まえ適切に対処している」
森氏「全然明らかではない。だって大臣規範にはちゃんと書いてある。届けなくていいなんて規定、どこにも書いていない。勝手に解釈しないでください。とにかく萩生田副長官は利害関係者だ。そもそも動いてはいけない人だったと思うが、話を聞くと文科省が頼りにしていたようだ。平成30年4月開学、これが決定的になって、京都産業大、私何度もこの国家戦略特区に関連する議事録、何遍も呼んだ。どう考えても京都産業大のプレゼンの方が素晴らしい。昨年8月3日に内閣府が今治市と広島市にメールを送っている。スケジュール共有の依頼のメール。これを内閣府が送っているが同じ内容のメールを京都あるいは京都産業大に送ったか」
山本氏「当時の担当者に確認したところ、昨年8月ごろ担当者同士の情報共有のため特区すべての担当者に北九州市の例を参考として、今後各区域で取り上げられる可能性のあるすべての項目について前広にまとめるように依頼したとのこと。そのため京都府の属する関西圏にも同様の趣旨の依頼が行われている。このときの依頼は担当者レベルの意思疎通の強化が目的であり、獣医学部のスケジュール調整を目的とするものではない」
森氏「メールが送信された、そのメールそのものを確認したということでよろしいか」
山本氏「自治体へのメール送信について当時の担当者の記憶にはあるがメール自体は残っていない」
森氏「内閣府が出したメールですよ。なんで確認できないのか。1分でできる。8月3日のメールって分かっているんですよ。送られたメールは今治市の情報開示資料で出てきている。なぜ内閣府の方で確認できないのか。とにかく内閣府から独自に出てきた加計学園問題に関する文書は何もない。何も文書を提出せず、説明せず、そして文科省から出てきた文書について違うといっている。文科省が気の毒でならない。一生懸命、記録を作り、そして管理をする、必要な記録は提出する、これが行政ですよ。一つ一つ記録を作っていく。公文書管理法に定められている要件を満たすことももちろんだが、行政というのはどうやってものごとが決まっていくのか、稟議書を回す、決済を押す、私はこれが行政だと思うが、せっかく文科省がきちんと作っている文書なのに、違うとか、内閣府では確認できないとか、どう思うか」
前川氏「文科省はそういった仕事の仕方をきちっとしているということに尽きると思うが、他府省のことはコメントできない」
森氏「ほとんどの文書をつくった担当官を知っているが、非常に優秀で、非常にきちょうめんで、非常にまじめな官僚です。非常に優秀で文科省のこれからを担う官僚だといってもいいかもしれない。でもその担当者が当日につくった文書、10月21日、この当日につくった文書、これが何か信憑(しんぴょう)性が疑われている。あるいは10月7日の萩生田副長官のご発言概要、これが疑われている。これ、おかしいと思いませんか。文書を出した方がこれは違う、あれは違うといわれて、何も出さない方がいろいろいっている。文科省の職員がかわいそうですよ」
松野博一文科相「10月21日の文書に関しては存在を確認している。内容に関して、制作者にもヒアリングをしたが、制作者は直接聞き取りに参加したわけではない。あわせて高等(教育)局長らにもヒアリングをした結果、表題は萩生田副長官の発言ということになっているが、内容に関しては主語がそれぞれ異なるものが書いてあると。また制作者自身から副長官が知っている範囲ではないことも含めて、補充をして文書を作成しているというヒアリング結果があって、そのこともあわせて報告している」
森氏「内閣府、まったく文書を出さない。本当におかしいと思う。記録がない、そんな行政はありません。あらためて抗議する」 
松沢成文参院議員(無所属)
松沢成文参院議員(無所属)「加計学園グループの学校法人の敷地内に自民党の政党支部が存在すると報道されているが、この事実は把握しているか」
松野博一文部科学相「そうした報道があることは承知しているが、学校法人は広島県知事の所管であり、文部科学省として事実関係は承知していない」
松沢氏「この支部は自民党岡山県自治振興支部という名前で、支部長は加計学園の加計孝太郎理事長だ。収支報告書を調べたが、相当問題がある。支部の実態は、この学校を利用して政治活動にお金を費やしている。違反になると思わないか」
松野氏「政治活動、政治資金規正法に関する所管は総務省で、文部科学省の立場でその非に関して述べることは控えさせていただきたいと思うが、教育基本法に関してお話をさせていただくと、学校法人が政治活動を禁止されているということはない。学校そのものが政治活動をすることはもちろん禁止をされているわけだが、今、ご指摘の案件が、いったいどういう形で事務所が設置され、政治資金がどのような形で出されたかなどに関して事実関係を承知していない。さきほど答弁させていただいた通り、これは広島県が所管なので、広島県によって確認されることだと思うが、文部科学省から広島県に対して問い合わせをしたところ『現在調査をしている』という答えだった」
松沢氏「参考人の前川喜平前文部科学事務次官も教育機関の事務方のトップを務めた。学校内に政党の支部がある。そこが政治活動をしている可能性がかなり高い。それは教育行政をゆがめることにならないのか。教育基本法に違反することにならないのか。どういう見解をお持ちか」
前川氏「具体的な事例について事実関係を承知していないので、この事例についてコメントすることはできないが、一般論として、やはり学校の関係者、校長以下の教職員がそういった学校の立場で政治活動をするということは教育基本法に違反するおそれがあると考える」
松沢氏「これが事実だとすれば教育基本法違反だし、政治資金規正法にも触れる可能性がある。最終的には文科相が認可するかどうかを決める。法律違反をしているかどうかという事実はきわめて重要だ。今すぐ調査すべきだ」
松野氏「獣医学部の設置申請をしている加計学園とは別の学校法人なので、直接的にこれが影響を与えるかどうかは一概に言えない。別法人だということで、関係性が完全に切り離されている事例であれば影響はないと思う。文部科学省から入っている補助金は政治資金規正法の適用除外項目に入っている。所轄庁である広島県が聞き取りをしているということなので、それをもってまた判断していくということだ」 
 
獣医師会の面会記録

 

面会記録報道 7/20
“加計ありき”面会記録、獣医師会側が公開
加計学園の獣医学部新設問題で、学部新設が決まる2か月前、山本地方創生相が日本獣医師会の幹部と面会し、「愛媛県今治市」や「加計学園」と具体的に言及して新設する方針を伝えたとの記録が残っていることがわかった。
日本獣医師連盟が明らかにした面会記録によると、山本地方創生相は加計学園の学部新設が決まる2か月前の去年11月17日、都内の日本獣医師会を訪れ、蔵内会長や日本獣医師連盟の北村委員長ら幹部4人と面会している。
その際、山本地方創生相は、獣医学部新設の経緯について「今治市が土地で36億円、積立金から50億円、愛媛県が25億円を負担し、残りは加計学園の負担となった」「四国は、感染症に係る水際対策ができていなかったので、新設することになった」などと発言したと記載されている。
面会が行われたのは、国家戦略特区諮問会議が獣医学部の新設を決めた去年11月9日の後で、面会の翌日からは国民の意見を募るパブリックコメントが行われるタイミングだった。山本地方創生相はこれまで、学部新設の候補を加計学園に絞り込んだのは、年末年始ごろだと説明していた。
北村委員長は日本テレビの取材に、「大臣はそもそも加計ありきで話をしている印象を受けた。獣医師会を抵抗勢力や既得権益者として位置づける政府の説明に対し、真実を開示する必要があると判断した」と述べている。
山本幸三・地方創生相、公募2カ月前に「加計学園」伝えていた
学校法人・加計(かけ)学園が公募で国家戦略特区での獣医学部設置を認められる約2カ月前の昨年11月、山本幸三地方創生相が日本獣医師会を訪れて幹部と面会し、「愛媛県今治市」「加計学園」の具体名や自治体の負担額を挙げて獣医学部の新設方針を伝えたと記録する文書が同会にあることが分かった。山本氏は国会答弁で「加計ありき」の手続きを否定しており、記録にあるような発言をしていたとすれば、これまでの説明と矛盾する。
獣医師会が作成した面会記録で、「山本幸三内閣府特命担当大臣(地方創生、行政改革)との意見交換の概要(抜粋)」とある。日時は「平成28年(2016年)11月17日(木)9時22分〜10時08分」、面会場所は「日本獣医師会役員室」、政府側の出席者として山本氏と事務の秘書官、獣医師会側は蔵内勇夫会長、政治団体・日本獣医師連盟の北村直人委員長ら幹部4人の名前が書かれている。
冒頭の山本氏の発言として「獣医師が不足している地域に限って獣医学部を新設することになった」「財政的に大丈夫か、待ったをかけていたが、今治市が土地で36億円のほか積立金から50億円、愛媛県が25億円を負担し、残りは加計学園の負担となった」「四国は、感染症に係る水際対策ができていなかったので、新設することになった」などと記されている。これに対し蔵内会長は「大学を作ることに賛成できない」などと発言したとある。
公募2カ月前に「加計」伝達 山本創生相、獣医師会に
学校法人・加計(かけ)学園が公募で国家戦略特区での獣医学部設置を認められる約2カ月前の昨年11月、山本幸三地方創生相が日本獣医師会を訪れて幹部と面会し、「愛媛県今治市」「加計学園」の具体名や自治体の負担額を挙げて獣医学部の新設方針を伝えたと記録する文書が同会にあることが分かった。山本氏は国会答弁で「加計ありき」の手続きを否定しており、記録にあるような発言をしていたとすれば、これまでの説明と矛盾する。
獣医師会が作成した面会記録で、「山本幸三内閣府特命担当大臣(地方創生、行政改革)との意見交換の概要(抜粋)」とある。日時は「平成28年(2016年)11月17日(木)9時22分〜10時08分」、面会場所は「日本獣医師会役員室」、政府側の出席者として山本氏と事務の秘書官、獣医師会側は蔵内勇夫会長、政治団体・日本獣医師連盟の北村直人委員長ら幹部4人の名前が書かれている。
冒頭の山本氏の発言として「獣医師が不足している地域に限って獣医学部を新設することになった」「財政的に大丈夫か、待ったをかけていたが、今治市が土地で36億円のほか積立金から50億円、愛媛県が25億円を負担し、残りは加計学園の負担となった」「四国は、感染症に係る水際対策ができていなかったので、新設することになった」などと記されている。これに対し蔵内会長は「大学を作ることに賛成できない」などと発言したとある。
獣医師会関係者によると、出席した幹部の一人がその場でメモを取り、翌日にかけてパソコンで清書。獣医師会側の出席者全員で内容を確認したという。
面会の時期は、国家戦略特区諮問会議(議長・安倍晋三首相)が獣医学部の新設を決めた11月9日の後で、国民から意見を募るパブリックコメントを始める前日にあたる。
山本氏は、獣医学部の候補地を今治市に絞った時期は「年末年始」とし、今年1月に事業者を公募し、加計学園だけが応募するまでは、複数の大学に可能性があったと説明してきた。
学部新設の費用をめぐってはその後の今年3月、今治市が36億円余の土地を加計学園に無償譲渡し、総事業費の半分、96億円を愛媛県と今治市で負担することが決まった。
日本獣医師連盟は19日、全国の地方組織に対し、面会記録の要旨を開示した。同連盟関係者は「政府の説明があまりに不正確であり、会員から説明を求められる中で面会記録を配布した」と話している。
週刊文春、加計ありきの決定的根拠を公開 山本幸三大臣の獣医師会での発言
獣医学部の新設が加計学園ありきであった事の決定的な根拠が、今日週刊文春によって公開された。岩上安身氏と獣医師会顧問の北村直人氏の会談で既にほのめかされていたのだが、昨年に山本幸三大臣が獣医師会を訪れた際の議事録で「加計ありき」であることが示されているというのだ。

獣医学部の新設を巡る問題で、内閣府の山本幸三担当大臣が、政府が学校法人を決定する2カ月前に、加計学園に決めたと日本獣医師会に通告していた議事録を「週刊文春」が入手した。
これには、山本幸三大臣の発言として
「誠に申し訳ないが、獣医師が不足している地域に限って獣医学部を新設することになった。財政的に大丈夫か、待ったをかけたが、今治市が土地で三十六億円のほか積立金から五十億円、愛媛県が二十五億円を負担し、残りは加計学園の負担となった。先端ライフサイエンス研究に重点を置いて、創薬に役立てる。実験動物分野の獣医師は不足しているのでこれに重点を置く。四国は、感染症に係る水際対策が出来ていなかったので新設することになった。申し訳ない。」
なんと、事業主体の公募が開始される一月四日の遥か前、昨年十一月十八日の段階で、具体的に今治市や愛媛県の加計学園への財政支援を述べつつ、加計学園・今治市で決定したということを獣医師会との会議で述べている のである。政府は、事業主体は公募を開始するまで加計ありきで進めたという事実はないと主張し続けているが、この議事録によって全てが崩壊してしまった。この段階で既に加計学園ありきであるという認識を山本大臣自身が示していたのだ。しかも、具体的な財政支援に関する部分まで述べているのだから、もう言い逃れはできない。
しかも、「獣医師が不足している地域に限って獣医学部を認める事になった」とした上で加計学園に決定したという事を述べているため、公募条件に新たに加えられた「広域的に存在しない地域」という文言が、加計学園以外を排除するものではないとしてきた政府の説明も崩壊してしまう のである。 この条件は官邸側によって決められた条件である事はほぼ確実視されているが、やはり加計学園に絞り込むための条件であったという事である。
白々しくも、つい昨日山本大臣は「公募だから京産大もあるだろうし、我々が知らないところで準備していた学校が手を挙げることは当然ありうると思っていた」と述べていた。
山本氏は閣議後の会見で「公募だから京産大もあるだろうし、我々が知らないところで準備していた学校が手を挙げることは当然ありうると思っていた」と述べた。京産大は、京都府綾部市に獣医学部をつくる計画だったため、今治市を前提とした公募には応じなかった。公募には、もともと今治市に計画していた加計学園だけが応じた。京産大は今月14日、教員確保が難しくなったとして獣医学部開設を断念したと発表した。
なにが「公募だから京産大もあるだろうし、我々が知らないところで準備していた学校が手を挙げることは当然ありうると思っていた」だ。公募だから京産大もあるだろう?我々が知らないところで準備していた学校もあり得るだろう?自分自身が昨年十一月の段階で加計学園に決まったという認識を示していたのではないか。これはつい昨日の発言であるがあまりにも酷すぎる嘘であると言わざるを得ない。
なお、山本はこの事について文春から事実確認を受けると敗走したようである。
加計学園、山本大臣はともに、小誌の事実確認に応じなかった。
それはそうだろう。昨日の発言すら全部嘘であったという事が明確な根拠とともにバレてしまっては、無理矢理にでも事実確認から逃亡せざるを得ない。しかしながら、来週二十四日にはこの問題の集中審議が待ち構えている。この事が取り上げられるのは必定だろう。もう安倍政権は終わりだ。これで全てが崩壊してしまったのだ。
もう加計ありきである事、山本や政府の答弁が全て嘘で塗り固められたものであった事が明らかになった以上は安倍政権は終わりであると見たほうが良い。恐らく、長くても今年いっぱいで安倍内閣は終わると考えた方が良いだろう。  
山本地方創生相 釈明報道
山本地方創生相が加計問題めぐり猛反論 絞り込み要求は「獣医師会側」
加計学園の獣医学部新設問題で、去年11月に日本獣医師会の幹部に「愛媛県今治市」や「加計学園」と具体的に言及して新設する方針を伝えたとの記録が残っているとされた山本地方創生相は20日朝、強く反論。記者団に対して、獣医学部を新設するなら加計学園に絞ってほしいと求めたのは「獣医師会側だ」などと語った。
山本地方創生相「会合の概要というのが出ていますが、これは獣医師会側の思い込みと私の発言を混同したものでありまして、正確ではありません。また、私からは京都もあり得るという旨述べたところ、獣医師会側は進めるのであれば今治市のみであることを明記してほしいとの発言もございました」
また山本地方創生相は「四国で決まっているという発言はまったくしていないが、獣医師会側がそうだと思い込んでいろいろ発言していた」「私は大体黙って言い分をずっと聞いていた」などと述べた。
山本地方創生相 獣医師会文書に反論「思い込みと混同」
山本幸三地方創生担当相は20日午前、学校法人「加計学園」が愛媛県今治市に獣医学部を新設する事業者に選ばれる前に、「四国に新設することになった」と日本獣医師会役員に伝えたとする同会内部文書について、「獣医師会側の思い込みと私の発言を混同したもので正確ではない。私からは『京都もあり得る』と述べた」と反論した。内閣府で記者団に語った。
山本氏によると、昨年11月17日の面会で、「広域的に獣医学部が存在しない地域に限り新設を認めることになり、パブリックコメントを始めることになった。申し訳ないがご理解いただきたい」と発言したという。山本氏は「獣医師会側は『四国の今治』と決めつけた言いぶりで対応していた」と説明。内部文書について「思い込みで書かれた部分もある」と語った。
費用分担の説明で山本氏が「加計学園」と述べたとする内部文書の記述には、「事業実施主体という表現をしており、加計学園と特定したことは全くない」と否定した。また、京都での新設について山本氏が言及した際、役員から「それは困る。進めるなら今治市のみだと明記してほしい」と応じられたと明かした。このやり取りについて山本氏は「後ろで聞いていた秘書官もメモ書きのように書いており、確かだ」と説明した。
山本創生相「獣医師会の思い込み」 「公募前伝達」記録
学校法人・加計(かけ)学園が公募で国家戦略特区での獣医学部設置を認められる約2カ月前の昨年11月、山本幸三地方創生相が日本獣医師会の幹部に「愛媛県今治市」「加計学園」の具体名や自治体の負担額を挙げて獣医学部の新設方針を伝えたとする同会の面会記録について、山本氏は20日午前、「獣医師会側の思い込みと私の発言を混同したものであり、正確ではない」と述べた。
内閣府で記者団の取材に応じた。
山本氏は昨年11月17日の獣医師会幹部との面会について「私から『広域的に獣医学部が存在しない地域に限り新設を認めることとなり、パブリックコメントを始めることになった』と発言した。これに対して獣医師会側は、それは当然、四国の今治となったと決めつけた言いぶりで対応していた」と説明した。
今治市の財政状況への言及については「従来、北村顧問(政治団体・日本獣医師連盟の北村直人委員長)から調べるよう要請があり、今治市に聞いたところを概略説明した」とし、「あくまでも公募が大前提であるため、事業実施主体といった表現をしており、加計学園と特定して言ったことは全くない」と強調。「私からは京都もあり得るということも述べた」と繰り返した。
そのうえで獣医師会の面会記録については「全体の会合を一緒くたにまとめて作っている。獣医師会側の思い込みで書かれた部分もある。非常に正確じゃない。残念だ」と述べた。 
山本地方創生担当相「獣医師会側は四国の今治と決めつけた言いぶり」
山本幸三地方創生担当相は20日、学校法人「加計学園」(岡山市)による獣医学部新設計画をめぐり、事業者決定の約2カ月前の平成28年11月に日本獣医師会(東京都)の幹部に同学園の名前を挙げて「四国で新設することになった」と伝えたとする面会記録があったとする報道について、記録の内容を否定した。内閣府で記者団の質問に答えた。

山本氏「11月17日の獣医師会との会合ですけれども、私から『広域的に獣医学部が存在しない地域に限り新設を認めることになり、パブリックコメントを始めることになった。申し訳ないがご理解いただきたい』と発言いたしました。これに対して獣医師会側はそれは当然、四国の今治と決めつけた言いぶりで対応しておりました。私は獣医師会の言い分をずっと、前半は聞いていたところであります。したがって、記事で会合の概要というのが出ていますが、この獣医師会側の思い込みと、私の発言を混同したものでありまして、正確ではありません」
「また、私からは京都もあり得るという旨述べたところ、獣医師会側は『進めるのであれば今治市のみであることを明記してほしい』との発言もございました。なお、今治市の財政状況については従来、北村直人(日本獣医師会)顧問から調べるよう要請がありまして、今治市に聞いたところを概略説明いたしました。その際、あくまでも公募が大前提であるため、事業実施主体といった表現をしており、加計学園と特定して言ったことはまったくありません。京都の財政状況については話題にもなりませんでした」
−−獣医学部を四国に創るようになったという発言はしていないのか
山本氏「四国に決まったという発言は全くしていません。向こう側が当然そうだろうという風に思い込んで、いろいろ発言していましたが、私はじっと聞いていて、それで最後に京都産業大からも提案があるのでその可能性もありますよといったところ、そりゃ困るということで、進めるなら今治市だけと明記してほしいという発言が向こうからありました」
−−メモは意図的に作られたということか
山本氏「メモは全体の会合を一緒くたにまとめて作っているようで、そこは獣医師会側の思い込みで書かれた部分もあるということです」
−−獣医師会側は全員が思い込みをしていたということになる
山本氏「全員というか、最初から四国に(認可が)おりたという感じで対応していた。私のほうからは9日の審議会の広域的に存在しないところに限りということだけを申し上げて、パブリックコメントになりましたので、申し訳ないけどご理解くださいといって、あとは相手の言い分をきいていただけであります」
−−「四国に」ということを切り取られてメモが出たことについてはどう思うか
山本氏「その辺は非常に正確ではない、残念だと思います。というのは、京都もあり得るとはっきり私は言っておりまして、向こうからは『それは困る』というような話もありましたのでね」
−−今治に限ってほしいというのは、その場で先方から話があったのか
山本氏「それは前提でいろんなことを言ってました。良い大学ができないんじゃないかとか、いろんなことを言っていましたけれども。この席は獣医師会の言い分をじっくり聞くことだと思ってましたので、大体黙って、ずっと聞いていたということであります」
−−12月8日に1校に限ってほしいという要望が向こうから来たのでは
山本氏「これは11月17日ですから。それ以降、京都もあり得るということを、私も言ったこともありまして、それに危機感を覚えたのか、『1校に是非してくれ』というように、強くまた要請してきたということだと思います」
−−山本大臣から加計や今治ということは発言したのか
山本氏「加計というのは一切ありません。私はその点は十分注意していて、用意した文書でも事業実施主体という言い方で徹底しています。それを先方がそういう風に思い込んだということでしょう」
−−大臣側にメモはあるのか
山本氏「議事録というのはありませんが、京都にいったときに、『進めるならば今治に限ると明記してほしい』というようなことについては、後ろで聞いていた秘書官もメモ書きみたいに書いていたようでありますので、確かであります」
−−メモを出すことはあり得るのか
山本氏「メモっていうものではないからね。ちょっと走り書きみたいなことでしたから。それは確認した、私も覚えていましたけれどね」
−−そういうものがないと水掛け論になるのでは。言った、言わないの話になる
山本氏「何が? どこが? 京都もあり得るという話もしたんですから。四国ではないということもはっきりしていると思いますよ」
−−今回のことについて安倍晋三首相や菅義偉官房長官とは協議したのか
山本氏「そんな暇はありませんでした。私は昨日の夕方帰ってきたばかりですからね」 
山本幸三地方創生担当相会見
 加計問題の獣医師会側議事録「書いてあること、言っていない」
山本幸三地方創生担当相は21日の記者会見で、学校法人「加計学園」(岡山市)による獣医学部新設計画をめぐり、事業者決定の約2カ月前の平成28年11月に日本獣医師会(東京都)と面会した際に作成したとされるメモについて「廃棄した」と説明した。一方、獣医師会側の面会記録に関し「書いてあることが、いかにも私が言ったようにいわれているが、そうじゃない」と述べ、改めて特区の選定は「加計ありき」ではないと強調した。

−−京都産業大が先週の会見で、事前に土地の取得や教員集め、ボーリング調査などを行うことについて「当然リスクのある話だ」と話していた。そういう中で準備不足で断念したという説明だったが、京産大が負うことができなかったリスクを加計学園がなぜ負えたのか
「それは私が答えることじゃない。加計学園なり、今治市が考えることだ」
−−大臣は国会答弁で、今治市や加計学園の準備行為をオウン・リスク(自己責任)と言っていたが、事業者に選ばれなかった場合、その損害が市民や学園にいってしまう。首長経験者によると、通常そういうことがないように事前に指導するということだが、このような事前の指導を今回、内閣府はしなかったということか
「それはオウン・リスクでやってもらっていることで、私どもは関知していない」
−−オウン・リスクというと冷たい印象を受けるが、やはり今治市や加計学園に何らかの特区選定のお墨付きを与えていたから、京都府や京都産業大にできない準備ができたということか
「一切ない」
−−昨年11月17日の日本獣医師会とのやりとりで、議事録に「財政的に大丈夫か、待ったをかけていた」という発言が大臣の方からあったと記録されているが、この発言の意味は
「待ったをかけたというよりは、私は(獣医師会の)北村(直人)顧問から何度かにわたって『今治市の財政が破綻するんじゃないか』とかそういう話を聞いて『是非調査してもらいたい』という話があった。また、自民党の村上誠一郎さん(元行政改革担当相)もそういう発言をしたということがあり、これは大変重要な問題だと思い、一応しっかりと精査しなければ自分の責務を果たせないと思った。そして、今治市に対して『この事業をやる場合にはどれだけの財政負担がかかると認識しているのかということをぜひ教えてもらいたい。そのことによって財政がおかしくならないかについては知りたい』ということでお願いした」
「当初は『公募もまだ終わっていないような段階で、なかなかいえない』ということもあったが、『それでは困る』と。『そこは現時点で想定している前提で良いから、なんとか今の時点での想定の財政状況、財政負担を示してくれ』と言って、出してもらった。それが今回の、あの当時における今治市からの返答であり、それを獣医師会についても、北村さんもある意味で宿題というふうに感じていたので、お答えした」
−−待ったをかけたという意味は何ですか
「待ったをかけたということではなくて、『財政状況が大丈夫かということを確認できないと、こういう事業は前に進めることはできませんよ』というように今治市にお願いして、かなり『議会の関係などで不確定要素が多い』といわれたが、『それはそれでいい。現時点で考えている前提で出してもらいたい』とお願いした」
−−待ったをかけたというのは、大臣が今治市に言ったのではなくて、面談の中で「待ったをかけた」という発言をしている。文脈からみると、今治市などに財政状況が大丈夫かどうか確認できるまで待ったをかけていたように受け止められるのだが
「そうではなくて、私は11月9日の(国家戦略特区)諮問会議で(獣医学部新設の可否を)決めていきますので、その時までにはある程度、財政的に大丈夫かどうかということはチェックしなければいけないと考えて、そういう意味で『それまでにはちゃんと出してくださいよ』とお願いした」
−−昨日のぶら下がりのときの発言で「加計学園に特定したことはない」と弁解し、秘書官メモにあるから確かだという発言をされていたが、秘書官メモは廃棄済みなのに、なぜ確認できたのか
「それは秘書官のメモじゃなくて、秘書官のメモは会議のときに走り書きしていたが、これが当日、獣医師会から配布された資料があり、それを見ていると全く一緒だということが分かった。途中で秘書官も『メモをとっても意味がない。こっちの方に詳しく書いてある』と、全部をメモをとれないので途中で止めて、後でメモは『これと同じものだから、もういいや』ということで後で廃棄したと秘書官から聞いている」
「私が言ったのは、自分なりの、私だけのメモを作っていて、これに金額と事業実施主体ということで書いている。それに基づいて事業実施主体という言い方しか言っていないということだ」
−−野党側はメモがないことについて追及する考えを示しているが、手続きに問題ないという認識は変わらないか
「メモというのは獣医師会からいただいた資料そのものだから、これはその後、11月28日に正式に、獣医師会から私どもにお届けがあった。必要であれば、それは見ていただければ同じ内容が書いていて、私はずっとそれを聞いていただけだ。そこに『四国でうんぬん』ということが書いている。その辺が、相手側の思い込みじゃないかといっている。そこで書いてあることが、いかにも私が言ったようにいわれているが、そうじゃない。最初に私が言って、あとはもうほとんど北村さんがメモに沿って、ずっといろんなことを言ってきたのを聞いていただけだ。だから、メモというのが必要であれば、獣医師会からの要望書そのものですから、それを見ていただければと思う」
−−山本氏が用意された文書には、金額以外には何が書いてあるのか。そのメモは公表しないのか
「これは手持ちのメモで、今治市から聞いた金額も書いていて、それから事業実施主体ということだ。これは議会とか状況によって不確定要素はあるけど、事業実施主体は公募で決まる話だから、そういうことは現在決まっていないが、一応『現時点で考えられるとすれば、こういうことですよ』というような、条件をいろいろつけて書いたやつを用意していた。そこに事業実施主体と表現している。それを出すかどうかは、先方も出していない性格のものだから、どこにあるかどうか確認してみたいと思う」
−−事業を進める上で、京都府の財政については調べていないのか
「当初は、私は京都府がバックだから大丈夫だろうと思っていましたが、その後財政上の話を聞いたところ、資金計画などはめどが立っていないということだった」
−−それで調べていない?
「いやいや、聞いたところそういうものはないということだ」
−−昨日の時点でも12月8日に、獣医師会から1校にしてくれといってきたので、1校にしたと説明していた。朝日新聞が以前開示請求して出てきた文書によると、12月6日に念のため1校に限ることを検討するよう事務方に指示とある。なぜ12月8日の前から山本大臣から指示を出したのか
「1校にしてくれというのは12月8日には正式に文書で出てきたが、その前から私のところには獣医師会から言われている。それを踏まえて、内々で念のためにそういう場合にはどういう手続きがあるのかをちょっと検討しようと。これは内々の指示だ。最終的に決定したのは、18日にパブリックコメントが終わりまして、それを見て慎重な意見も強いということで、そこで最終決断をした」
−−内々にというのは11月17日の面会を指すのか
「そのあとから、北村さんからもいろいろ1校にしてくれという話もあった」
−−北村さんとは直接会ったのか。それとも電話か
「基本的にはショートメールで来る」
−−テレビ朝日の取材では11月17日の獣医師会との面会で、獣医師会側が出している文書の省略された部分で、山本大臣が「放っておくと京都なども続く」と発言したという記載があることが分かった。獣医師会側は特区を認めないと他にも次々できますよと受け取った。この発言をしたのか。その意図は何か。それと、獣医師会側は発言録を残している。改めて大臣側の発言録のようなものはないのか。秘書官が同席していたと思うが、調べたのか調べていないのかを正確に教えてほしい
「(質問の)後半のメモについては、秘書官が走り書きでしていたが、途中でいただいた文書でも一緒のことをいっている。途中から止めてその文書でメモとして出せるではないかと判断して終えた。その後、手書きのやつは同じだから廃棄した」
「それから、京都もあり得るという話は、そういう言い方はしていないと思うが、私がなぜそういう発言をしたかというと、獣医師会の文書を見てもらえば分かるが、獣医師会は最初から『四国・今治ありき』という形でずっと議論している。私はずっとその話を聞いていたが、それを終えたところで、私は『四国・今治ばかりといっておられますけど、京都だって追加であり得るんですよ』という話を、そういう状況を受けてした。そのことについては、蔵内(勇夫・獣医師会)会長も言及があったということは認められたと聞いている」 
 
記憶にございません

 

「記憶にございません」歴史 1
偽証罪に問われることもある国会の証人喚問は過去に、さまざまな“人間模様”が繰り広げられてきた。
「記憶にございません」。ロッキード事件で昭和51年に証人喚問された国際興業社主の小佐野賢治氏はこう連発。この言葉は当時の流行語にもなった。
KSD事件で喚問された元自民党参院議員会長の村上政邦氏(平成13年)や、耐震強度偽装事件でのマンション販売会社の小嶋進社長(18年)は「刑事訴追の恐れがありますので証言を拒否します」と繰り返した。
衆参両院によると、偽証罪などで証人が告発されたのは計24件。防衛装備品納入をめぐる汚職に絡み、19年に証人に立った元防衛事務次官の守屋武昌氏は防衛専門商社にゴルフで接待を受けていたとされたが、「毎回1万円を払った」と証言。だが、逮捕後の捜査で虚偽が明らかになり、両院は偽証罪で最高検察庁に告発し、有罪が確定した。
自らの言動がすべて報道で明らかになることから極度の緊張にさらされる証人も。米国航空機メーカーによる売り込み疑惑「ダグラス・グラマン事件」で昭和54年に喚問された日商岩井の副社長はペンを持つ手が激しく震え、宣誓書への署名がなかなかできなかった。
ロッキード事件
ロッキード事件とは、アメリカの航空機製造大手のロッキード社による、主に同社の旅客機の受注をめぐって1976年2月に明るみに出た世界的な大規模汚職事件。 衆院予算委で、小佐野賢治・国際興業社主が、ロッキード社幹部との関係について、「記憶にございません」「知りません」を連発し、「記憶にございません」が流行語となる。
ダグラス・グラマン事件
ダグラス・グラマン事件とは、1978年2月に明るみに出た日米間の航空機(戦闘機)購入に絡んだ汚職事件。 1979年5月、参院特別委で、松野頼三・元防衛庁長官が、日商岩井からの5億円受領を「金の性格は政治献金。いくらもらったのかも正確に覚えていない」と証言。 戦闘機売り込みの工作資金との疑惑を否定した。
東京佐川急便事件
東京佐川急便事件は、日本皇民党の「ほめ殺し事件」に端を発する汚職事件。 1992年10月、自由民主党経世会会長の金丸信が佐川急便側から5億円のヤミ献金を受領したとして衆議院議員辞職に追い込まれた。 1993年2月、衆院予算委で竹下登・元首相は、日本皇民党の「ほめ殺し」対策を話し合ったとされる会談について「渡辺(広康・東京佐川急便)元社長のワーディング(言葉遣い)は覚えていない」と証言。具体的なやりとりは明かさなかった。
日歯連闇献金事件
日歯連闇献金事件とは、2004年7月に発覚した旧橋本派の1億円ヤミ献金事件。橋本と青木幹雄・野中広務が日歯連会長理事(当時)と料亭で会食した際、1億円の小切手を受領したが、この献金について収支報告書に記載しなかったというもの。 2005年10月、東京地裁の公判で証人に立った橋本元首相は、連盟側からの1億円受領について、「記憶にございませんが、ほかの方々がそう言っているのであれば、そういう事実があったかもしれないと今考えます」と証言。 
政治家の「記憶にない」発言の歴史 2
築地市場の移転について問う東京都の石原慎太郎元知事からの回答は、「記憶にない」だった。小池百合子知事は静かに苛立った。
石原元知事から、築地市場の豊洲への移転をめぐる経緯などを聞いた質問状に対する回答が10月14日、小池知事のもとに届いた。小池知事は、この日の定例会見でこう発表した。「具体的な回答はなかった。細かいことは事務方がやっていた、自分は聞いていない、記憶にない、分からない、覚えていないという回答だった」「一度は先方から、私に会いたいと申し出があったわけで」とし、石原元知事から依頼があったが、石原元知事が撤回し、質問状を送ってのやりとりになったことを改めて説明。”期待はずれ”の回答だったといい、鋭く言い放った。「やはり都合の悪いことをいま、むしろ伝えてもらわないと明確な答えにならない。作家生活、都知事を続けてこられた功績を無になさらないようにしていただきたい」高齢も理由に挙げていることにも触れ、「質問状によって思い出されたこともあるかと思いますので、聞かなければならないことをまたご依頼することになるかと思う」とした。
「記憶にない」はいつから当たり前なのか
1.国内最古の政治家による「記憶にない」発言は、故・和田博雄元農林大臣?
帝国議会時代の1946年9月の衆議院の委員会で、和田元農林大臣は「どういう言葉で正確に表現しましたか、一寸私記憶にないのであります」と述べた。議事録によると、「事業は強力な政府の政治力によってやる」と演説で語ったことがあったといい、言葉の意味を問われて答えていた。言葉の表現は難しい。
2.「記憶にございません」を流行語にさせたのは、実業家の故・小佐野賢治氏。
「昭和最大の政商」と呼ばれた小佐野氏。1976年、ロッキード事件に関与したとして、衆議院予算委員会で証人喚問を受けた際、こう連発した。「いや、全く私は記憶ありません」「全くいまのところ記憶がありません」「私も古い話ですから記憶がございません」「記憶にございません」が、当時の流行語になってしまった。
3.法廷で裁判長に呆れられた元兵庫県議・野々村竜太郎氏。
政務活動費約900万円を私的に使ったとして、記者会見でも法廷でも、世間の話題をさらった野々村氏。今年1月、神戸地裁であった初公判。被告人質問で「記憶にない」「覚えていません」と90回以上語った。裁判長は、「思い出す時間を」と願った野々村氏に、「難しいことではない。記憶にあるかないかはすぐ答えられる」とツッコミをいれた。今年7月に懲役3年、執行猶予4年(求刑懲役3年)の判決が言い渡されている。
4.放射能についての発言を指摘された丸川珠代五輪担当相も、記憶をたどった。
丸川五輪担当相は、環境相時代の今年2月、衆議院の予算委員会で、松本市で講演した際に述べた発言について質問を浴びた。議事録によると、東京電力福島第一原発事故に関連して、追加被曝線量を年間1ミリシーベルトとする国の長期目標について、こう語ったそうだ。「『反放射能派』と言うと変ですが、どれだけ下げても心配だと言う人は世の中にいる。そういう人たちが騒いだ中で、何の科学的根拠もなく時の環境大臣が決めた」この発言について、尋ねられるとこう返した。「私の記憶によれば、私はこの言い回しはしていないという記憶なんです」その後、発言を認めて、撤回。「福島の皆様には誠に申し訳ない」と陳謝した。
5.記憶に新しいのは、やっぱり舛添要一元都知事。
漫画「クレヨンしんちゃん」や美術品を購入したり、家族と一緒に宿泊費したり…。政治資金の公私混同疑惑が取りざたされた舛添元都知事。今年6月の都議会総務委員会の集中審議で、正月に千葉県のホテルで家族と宿泊し、面談した出版会社社長との連絡手段を聞かれると、こう連発。「記憶が定かではございません」「全く記憶にございません」都政を混乱させたとして辞職。都政は、小池知事にバトンタッチされた。 
稲田防衛大臣「虚偽答弁」を擁護? 2017/3/17
 「記憶にございません」は本当にあるかもしれない
稲田朋美防衛大臣の発言が物議を醸し出している。国会も、マスコミも、世間も、稲田大臣をなにやら嘘つきの悪者のように連日扱っている。「記憶にない」というフレーズは、政治家が言動をごまかすための常套句のようにばかり映るが、はたしてそうと言い切れるのか。この観点から筆者の体験から稲田大臣を擁護してみたい。3月15日の参院予算委員会での発言。森友学園の訴訟への関与を否定した国会答弁、その後撤回したことに関し、
「私としては自らの記憶に基づいて答弁した。虚偽の答弁をしたとの認識はない」
と述べた。「記憶にない」は、最近よく耳にするフレーズだ。例えば、元東京都知事・石原慎太郎氏の3月3日の記者会見でも、豊洲市場問題で「盛り土が行われなかった経緯は記憶にない」と発言があった。
さかのぼれば「記憶にない」は、1976年、小佐野賢治氏がロッキード社幹部との関係について「記憶にございません」を連発した「ロッキード事件」が有名だ。この年「記憶にございません」は流行語にもなった。
そもそも「記憶にない」は、アメリカが本家のようだ。「I don’t have any recollection about that」という言い方は、アメリカでは議会の証人喚問のほか、偽証罪に問われる危険がある裁判でよく使われているという。
さて、この「記憶にない」だが、多くの人が「マズイことを隠しているだけだ、言い逃れだ」と思うだろう。さらに、
「記憶がなければ、過去にやったことでも『やっていない』と言ってもウソにはならないのか?」
「では記憶がないなら、何をやっても許されるのか」
などと批判が増幅しそうな危険なフレーズでもある。
しかし、「この記憶にない」は言い逃れのためだけのセリフとは言い切れない。なぜなら、実際、筆者は25年の放送作家生活の中で、「この記憶にない」を実体験として経験したことがあるからだ。
1993年、筆者が企画書を作って始まった『発明将軍ダウンタウン』(日本テレビ系列)という番組がある。素人発明家の様々な発明品を品評したり、「知恵姫」という生活の裏ワザを紹介したりと、様々な企画をお送りしたのを記憶している。
そして、この番組が1996年からリニューアルされ、番組名も『ひらめけ!発明大将軍』となり、研ナオコさん・今田耕司さん・東野幸治さんに、なったそうである。
・・・「なったそう」という憶測的な書き方をしたには理由がある。もちろん筆者も放送作家として参加していた当事者でるのだが、この記憶がまったくないのである。
実はこの頃、筆者は「クモ膜下出血」という、脳の血管が破裂する病気にかかり開頭手術をし、生死をさまよっている。わかりやすく言えば、頭を開けられて、脳をいじられているのだ。
その影響だと思うのだか、局所的な記憶がいくつか、本当になくなっているのである。収録現場にも常に行って、放送まで毎週作業をしていた事が、この番組に関してまったく思い出せないのだ。(他にも、忘れてしまっている担当番組があるかもしれないが、「記憶がない」ので忘れたことさえ忘れているはずだ)
この様に「記憶にない」という状況は、本当に起こることなのである。
筆者も稲田大臣の「記憶にない」は、「ウソだよ、誤魔化しだよ」と最初は憤りを感じた。しかし自身の体験をふと思い出して、一概に否定するのは短絡的かなと思いとどまった次第だ。
実際に石原慎太郎氏は2013年に脳梗塞を患っている。ちなみに稲田大臣の病歴では脳疾患は確認できないが・・・。
自分の思うこと・考えることを盲信して、それと相容れない発言・考え方をする人を、頭ごなしに否定するのは、これこそ紛争の始まりだと思う。今回の稲田大臣騒動を見て、夫婦関係、人間関係、そして国際関係まで、相手の意見を一度受け止めてみる、多様性の容認を試みてみるのは、大切なことではないだろうかと気付かされた。
それにしても稲田大臣の発言・伝え方は、あまり褒められたものではない。
森友学園の籠池氏と最後に会った時期についても、稲田氏は「ここ10年来はお会いしていない」と主張している。しかし、籠池氏の妻・諄子氏の、
「2年前にですね、園長会議が自民党であった時にですね、いましたよ。私はあの人嫌いだから話ししてないんですけど、園長は話ししてましたよ(中略)ほんまに、おにゃんこちゃんですよ」
という発言に対して、15日の参院予算委員会で「奥様らしいなぁと思いますが・・・」と答弁しているという。
野党から「よく知ってるんじゃないか」とヤジが飛び、稲田氏が「申し訳ありません」と謝るシーンもあった。 
文科省幹部「記憶にございません」連発  2017/7/10
 萩生田官房副長官の「ご発言」文書めぐり
学校法人「加計学園」が国家戦略特区で獣医学部の新設を認められた経緯などを審議するため、衆院では7月10日、前川喜平・前文科事務次官らを参考人として招致した閉会中審査がはじまった。今回の閉会中審査におけるポイントの1つは、加計学園の獣医学部新設をめぐり「官邸はどう関わっていたのか」という点だ。民進党の福島伸享氏(民進) は質疑の中で、萩生田光一・官房副長官が文科省に圧力を加えたとされる内容を記した文書について指摘し、文科省の担当者の見解を質した。
萩生田氏の発言文書「目にした文書に間違いない」 前川氏が証言
質疑の冒頭、福島氏は「九州豪雨の状況を見ても、なぜ安倍首相は帰国しないのか。疑惑の中心である安倍総理が委員会にも出席しないのはなぜなのか。この委員会に出たくないから訪問を続けているのではないか」と、安倍首相を批判した。
その上で福島氏は、文科省の内部文書をめぐる追加調査で、萩生田官房副長官に関する文書(「10/7萩生田副長官ご発言概要」)が見つからなかった点を指摘した。
この文書は、萩生田官房副長官が「加計学園が誰も文句が言えないような良い提案をできるかどうかだな」などと文科省側に伝えた内容を記録したとされる。文科省の再調査では「存在は確認できなかった」とされている。
この文書の存否について見解を問われた前川氏は、「在職中に担当課からの説明を受けたときに入手した、目にした文書に間違いない」と答えたした。
これに対し、萩生田副長官は「私の方から(文科省に、情報を)伏せてくれとか、なくしてくれという指示を出したことはない」と、文書の内容を否定した。
文科省の常盤豊・高等教育局長は「10月7日、私が萩生田副長官を訪ね、懸案の給付型奨学金の制度設計などについて話した」と、萩生田副長官との面会は認めた。
その一方、「獣医学部新設に関する状況などを話した。農水省も参画して(獣医の)需給について検討をすすめる必要があると話したことはありうる」と述べるも、「具体的なやり取りについて詳細な記憶はない」と詳細な言及を避けた。
福島氏は「『加計学園が誰も文句が言えないような良い提案をできるかどうかだな』と文字に残っている」「加計で決まっていると萩生田氏に言われたのでは」と、常磐局長を再び追求した。
これに対し常磐局長は、「具体的なやりとりの記憶はございません」と述べた。
民進・福島氏「そんなに萩生田氏が怖いのか」 文科省幹部を批判
このほかに福島氏は「10/21萩生田副長官ご発言概要」を紹介した。
この文書は「和泉(首相)補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている」「官邸は絶対やると言っている」といった内容が記されており、文部科学省の内部調査で存在が明らかとなった。
文書には、獣医学部新設の時期について安倍首相の指示があったことを伺わせる内容もあった。福島氏は「『総理は平成30年4月開学とおしりをきっていた』とある。なぜ常磐局長は知っているのか」と質した。
これについても常磐局長は「(萩生田氏との)面談内容について、個別のやり取りについて記憶はありません」と、詳細な説明を避けた。
「記憶にありません」と繰り返す常磐局長について、福島氏は「肝心なことは、また『記憶にございません』。そんなに萩生田内閣人事局長(官房副長官)が怖いんですか?」と批判した。
加計学園の獣医学部新設と官邸の関係性について、前川氏は「和泉(洋人首相)補佐官からお話を伺ったことはある」「内閣府がこの仕事を進める上で、官邸の動きがあったと思っている」と説明した。
加計学園問題をめぐる閉会中審査は、午後からは参院でも開催される。前川氏は引き続き参考人として出席する予定だ。

文部科学省が20日に公表した学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる新文書の概要は次の通り。
10/21萩生田副長官ご発言概要
(11月にも国家戦略特区諮問会議で獣医学部新設を含む規制改革事項の決定がなされる可能性をお伝えし)そう聞いている。
内閣府や和泉(洋人首相)補佐官と話した。(和泉補佐官が)農林水産省とも話し、畜産やペットの獣医師養成とは差別化できると判断した。
和泉補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている、何が問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。官邸は絶対やると言っている。
総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた。工期は24カ月でやる。今年11月には方針を決めたいとのことだった。
何が問題なのか、書き出してほしい。その上で、加計学園事務局長を(専門教育)課長のところに行かせる。
農水省が獣医師会押さえないとね。 
獣医師連盟幹部が主張修正 7/23
加計学園の獣医学部新設をめぐって、山本地方創生相と主張が対立している日本獣医師連盟の幹部が、これまでの主張を修正し、山本大臣は加計学園のほかにも『京都などが続く』と発言したとの認識を示した。
今月20日、獣医師連盟が明らかにした面会記録によると、山本大臣は加計学園の学部新設が決まる2か月前に獣医師会の幹部らと面会し、「加計学園」と具体的に言及して四国に獣医学部を新設する方針を伝えていたとされている。
一方、山本大臣は「私からは『京都もあり得る』と発言した」と反論したが、日本獣医師連盟の北村直人委員長は、「『京都』という言葉は議事録に記載がない」として、双方の主張が真っ向から対立していた。
これについて北村委員長は22日、日本テレビの取材に対し、これまでの主張を修正し、「議事録を改めて確認したところ、山本大臣は、『放っておくと京都などが続く』と発言している」と説明した。
しかし、北村委員長は、当時のやりとりから「大臣が当時から加計ありきであったとの認識は変わらない」と主張している。
北村委員長は、国会に求められれば、24日、25日の集中審議の参考人招致に応じる意向で、新たに面会内容の一部を公表し、山本大臣の主張に反論したいという。
ただ、国会は、北村委員長以外の獣医師会関係者を招致する可能性もあり、実現するかは不透明。 
加計疑惑 安倍首相の懐刀が国会に引っ張り出され 「記憶にございません」連発 7/24
「週刊朝日」(2017年8月4日号)は、これまで安倍政権がひた隠しにしてきた2015年4月2日、今治市の企画課長と課長補佐が官邸を訪れて面会した相手をスクープ。その人物が経産省出身の柳瀬唯夫首相秘書官(当時・現在は経済産業審議官)だったことを明らかにした。
7月24日午前の衆院での閉会中審査では、渦中の柳瀬氏が参考人として出席。民進党の今井雅人衆院議員が面会の有無を確認したが、柳瀬氏は「お会いした記憶はございません」と回答。納得しない今井氏が「会った可能性はあるんですね」などと繰り返し問い詰めた。
柳瀬氏は「記憶に本当にございません」、「(当時は)相当広範なところを担当し、相当多くの方とお会いしていた。その中で、具体的にこの方とお会いしたという記憶がないところでございます」「覚えてございませんので、会っていたとも会っていないともお答えしようがございません」と繰り返すばかり。
議員からの野次が鳴りやまず、一時、審議がストップするなど、紛糾する事態となった。
柳瀬氏が今治市の担当者と会ったとされる15年4月は、加計学園が国家戦略特区の申請をする2カ月も前のこと。本誌が得た証言では、柳瀬氏は「希望に沿えるような方向で進んでいます」という主旨の発言をし、今治市では「絶対に誘致できる」と、お祝いムードだったという。かなり早い時期から官邸主導で「加計ありき」のレールが敷かれていた疑いがより強まったのだ。経産省関係者がこう語る。
「地方自治体の課長クラスが官邸に入ること自体あり得ず、官僚の目から見れば、それだけで何らかの不正な介入を疑うシチュエーションです。柳瀬氏は次の事務次官の目が残っているが、首相の最側近である今井尚哉首相秘書官とそりが合わず、苦労していた。現職の嶋田隆事務次官の任期を延ばされたり、次も嶋田氏の同期でたらい回しをされると、柳瀬氏の年次は飛ばされる可能性があり、微妙な立ち位置。安倍首相や今井尚哉首相秘書官には絶対に逆らえないはずです」
一方、前川喜平前文科事務次官が加計問題の「司令塔」として名指ししてきた和泉洋人首相補佐官が、参考人としてついに出席。前川氏との“直接対決”が実現した。
前川氏が「16年9月9日に和泉洋人首相補佐官から『総理は自分の口からは言えないから、代わって私が言うんだ』というお話がありました」と証言したのに対し、和泉洋人首相補佐官は、「こんな極端な話をすれば記憶に残っております。そういった記憶がまったく残っておりません。したがって、言っておりません。言っておりません」と、激しい口調で反論。議論は平行線をたどった。
やはり、嘘の証言をした場合、偽証罪が問われる証人喚問で白黒つけるしかないだろう。 
『加計』閉会中審査に安倍首相が出席 7/24
『記憶』と『記録』がない!の連発に野党も手詰まり感?
国家戦略特区の加計学園獣医学部新設を巡る閉会中審査が行われた。
今回は安倍首相のほか、和泉総理補佐官らが出席
今回は安倍首相のほか、キーマンとされる和泉総理補佐官、前川前文科事務次官、藤原内閣府審議官(当時)らが出席した。しかし、もはや前川氏から新しい情報はなく、政府側の答弁も「記憶がない」「記録がない」のオンパレード。野党の手詰まり感が漂う一方、この問題を巡る今後のポイントは絞られてきた。
【1】和泉補佐官の証人喚問に与党が応じるか 「総理の口から言えない」発言は
【2】加計理事長の証人喚問に与党が応じるか「総理への働きかけ」は
【3】獣医師会の国会招致は?山本地方創生相「京都もありえる」発言は
【4】安倍昭恵夫人の証人喚問に与党が応じるか?
委員会の冒頭、安倍首相は、「李下に冠を正さずという言葉がある。疑念の目が向けられるのはもっともなことだ」としたうえで、「加計氏は学生時代からの友人。しかし彼が私に対して地位や立場を利用して何かを成し遂げようとしたことは一度もありません」と、加計氏のための働きかけや指示は全くなかったと明確に否定した。
また、加戸前愛媛県知事も答弁に立ち、「総理のあらぬ濡れ衣をはらす」として、今治にとっては白いネコでも黒いネコでも、獣医学部を作ってくれるのがいいネコだ」と述べ、加計学園の獣医学部新設は、総理の意向ではなくあくまで地元が求めたものだと強調した。
さらに、ワーキンググループ(以下WG)の八田座長も、「特定事業者優遇の意向は総理から示されたことは一切ない」として、「1点の曇りも決定プロセスにはない」と主張した。
「総理のご意向」文書においては、『登場人物』に質問が集中
さらに「総理のご意向」文書などについて議論がおよび、質問が『登場人物』に集中した。
萩生田官房副長官は、自らの『発言』について、あらためて「事実に反する」と否定し、「総理から指示を受けたり、文科省に指示したことはありません」と述べた。
また、藤原内閣府審議官(当時)も、「総理から個別の指示を受けたことは一切ない」と否定。自らが発言したとされる「総理のご意向」について、「9月9日の諮問会議で総理からスピーディーに検討すべき旨の発言があり、この発言を引用した可能性はあるが、私から『総理のご意向』としたことはない」と否定した。さらに、山本地方創生相、松野文科相も、総理からの指示の存在を否定した。
一方、前川氏は、総理から自分に直接指示があったことはないとしながらも、昨年9月9日に和泉総理補佐官から官邸に呼び出され、「文科省の対応を早く進めるように。総理が自分の口から言えないから私が言う」と指示されたとあらためて述べ、官邸サイドが加計学園の獣医学部新設について介入してきたとの認識を示した。
しかし、「総理が言えないから私が言う」発言を巡っては、和泉氏が「こうした極端な発言をすれば記憶にあるはずで、そういう記憶は残っていない。したがって言ってない」と明確に否定し、両者の発言は大きく食い違った。
安倍首相は、「プロセスは諮問会議やWGでは透明に行われ、議事録も公開されているが、省庁間の交渉は当事者しか知らないので、言った、言わないの議論になる」と述べ、情報の運用のプロセスを強化するとの考えを示した。
しかし、民進党大串議員から要請された前川氏と和泉氏の証人喚問については、「国会で決めて頂きたい」と明言を避けた。
大串氏の指摘によると、安倍首相と加計理事長は、2013年から14回ゴルフや会食で会っており、去年は7回、特に獣医学部新設を巡る議論が活発になった7月以降、6回と頻繁になっている。
大串氏からの「その間一度も加計理事長から獣医学部新設が話題に上らなかったか?」との質問に対して、安倍首相は「加計さんとは友人関係は政治家になる前から。彼はチャレンジ精神を持ち、時代のニーズに合わせて学部新設に挑戦したいと言ってきたわけですが、今治市といった話は一切なかった」と答えた。
一方安倍首相は、「加計理事長が特区を申請したのを知ったのはいつか?」との質問に対し、「正式決定した今年1月20日」と答え、大串氏は「全く知らないとは考えづらい」として、加計理事長の証人喚問を要請した(総理は「国会で決めてほしい」と明言避けている)。
野党は、加計学園が当初から「えこひいき」されていたと指摘
ほかにも野党からは、加計学園が当初から「えこひいき」されていたのではとの指摘が相次いだ。
2015年4月には今治市の職員が官邸を訪れ、関係者証言によると「柳瀬総理秘書官(当時)から『希望に添えるような方向で進んでいる』と言われた」とされている。
これについて民進党今井議員から質問された柳瀬総理秘書官(現経産省審議官)は、「お会いした記憶は全くございません」を繰り返し、民進党は官邸の入館記録提出を要求。しかし総理は記録がないと説明し、「官邸のセキュリティは大丈夫か」と揶揄された。
また、今井氏は安倍昭恵夫人が加計学園の幼稚園で名誉園長をしていたことにふれ、昭恵夫人が国会で説明するべきだと主張した。
安倍首相は、「国民から疑惑の目でみられるのはもっともだ」としながらも、国会招致については明言を避けた。
さらに、加計学園が文科省や内閣府からアドバイスをもらっていたとされるのにくらべ、京都府と京都産業大学は「昨年10月17日に申請して以降も内閣府から何の連絡もない」と会見で述べたことについて質問が飛ぶと、山本地方創生相は、「京都府知事など含め、京都府と適宜連絡を取り、話をしている」と否定した。
「加計学園への伝達事項」と題した文科省作成文書の存在が判明
玉木氏からは、「加計学園への伝達事項」と題する、文科省が作成した文書の存在が明らかにされた。
その中では、文科省から加計学園へ11月9日の諮問会議の前日に、「設置申請に向けて万全な準備を行っていただきたい」などとアドバイスしたやり取りが書かれ、玉木氏は加計学園への『優遇』ぶりに疑義を呈した。
しかし松野文科相は、文書の存在を認めたうえで、「大学新設の事前審査の相談は受け付けている。適切なものである」だと反論した。
また、パブコメに「加計学園以外間に合わないのでは」との声がたくさんきていたと共産党の宮本議員が追及したが、山本地方創生相は知っていたことを認めつつも、「加計ありきではない」と突っぱねた。
これに対して宮本氏は「選定の公平性に疑義あるのを無視して決めた。プロセスに一点の曇りもないとはいえない。真黒だ」と述べ、加計理事長の証人喚問を要求した。
明日は参議院で閉会中審査が行われるが、何らかの新事実が出てこなければ、きょうと同じ答弁の繰り返しとなり、野党側は戦略の修正を今後迫られることになる。
一方、本日時間を割かれなかった防衛省の日報問題については、稲田防衛相に対してより追及が厳しくなるだろう。 
5時間の審議、ひたすら低姿勢と「記憶にない」 7/25
 衆院予算委の閉会中審査で加計学園問題
昨日(2017年7月24日)行われた衆院予算委の閉会中審査は、加計学園の獣医学部新設に安倍首相がどこまで関わったかが問われたが、5時間の大半をかけた論戦でも、特別扱いはない、の一点張り。官邸スタッフは肝心のことは「記憶にない」。ひたすら低姿勢ではあったが、実質何も変わっていなかった。
委員会室が「エーッ」という疑念の声に包まれたのは、大串博志氏(民進)の「加計学園の申請をいつ知ったか」という質問に、安倍首相が「1月20日の決定時」と答えた時だった。これはどう考えても不自然だ。
加計学園の理事長、加計孝太郎氏とは学生時代からの友人。家族ぐるみの付き合いで、食事やゴルフをよくする。これが、2013年は1回、14年が3回、15年が3回だが、獣医学部新設が国家戦略特区の対象になるかどうかの佳境だった16年には、7回も会っているのだ。
首相は国家戦略特区諮問会議の議長だ。1月20日には、首相自ら獣医学部新設が「50年ぶりに認められた」と発表している。その時初めて、「お友達」が経営する大学が申請していたことを知ったというのだ。
「総理のご意向」「官邸の最高筋の指示」などの文書は16年の秋だ。「文科省の岩盤規制に穴を開けた」のはいいが、その穴から顔を出したのが「お友達」でも、なんとも思わない?
安倍首相は、低姿勢だった。「李下の冠」の話を持ち出し、「疑念を抱かれるのも当然。配慮が足らなかった」と、実に7回も繰り返した。しかし、性根は変わるはずもないということか。
安倍首相の「平身低頭作戦」
24日の審査を見た印象を、時事通信の田崎史郎氏は「平身低頭作戦」と書いて、「これまでのつっぱりがなかった」。政治アナリストの伊藤惇夫氏は「『丁寧に』従来の主張を繰り返し」と書いた。「謙虚にはなったが、内容はこれまでと変わってない。支持率低下の影響」と。
司会の小倉智昭「申請を知ったのが1月20日、にはどよめいた」
田崎氏「相当自信を持って答えていた。乗り切れる自信があるんだろうなと」
伊藤氏「加計さんてすごいと思う。安倍政権になってから、5回も申請が却下されているのに、一度も愚痴をこぼしてないのかなと。僕だったら言う」
この後に、前川喜平・前文科事務次官の証言で、木曽功・内閣官房参与(当時)からの「催促」や、和泉洋人・首相補佐官が「総理が言えないから、私が代わっていう」といった話が出たが、2人とも「記憶にない」と否定した。
小倉「あまりに記憶がないというと、隠してると思われる」
伊藤氏「首相はまた、知っていようがいまいが、便宜を図ることはない、とも言っている。また、6月に福島瑞穂氏の質問に、『申請すれば、諮問会議の議長は知りうる』と答えてもいる。それをあえて知らないというのか」
小倉「加計さんが安倍さんに迷惑をかけたくないのなら、出て来ればいい」「あまりに丁寧だと、逆に疑いを持たれるかもしれない?」
25日は参院予算委でも閉会中審査が行われた。参院野党は論客が揃っている。新たなことが出てくるかどうか。 
加計新学部 記録ない、記憶ない…20回 逃げの答弁連発 7/25
衆院閉会中審査 識者から「説得力ない」
「加計学園」の獣医学部新設計画を巡り、24日に衆院予算委員会で行われた閉会中審査。政府側の関係者たちは「記憶にない」「記録に残っていない」といったフレーズを連発した。識者からは「説得力がない」「水掛け論だ」と批判が上がっている。
「どういう文書があるんですか? (答えは)『ありません』、そればかりだ」。民進党の今井雅人氏は語気を強めた。毎日新聞が「記憶にない」「覚えていない」「記録がない」といった記憶や記録の不存在を説明する政府側答弁を数えたところ、確認できただけで計20回飛び交った。
首相秘書官だった柳瀬唯夫経済産業審議官は、国家戦略特区に指定される前に愛媛県今治市の課長らと面会したかを問われたところ「覚えていないのでこれ以上のことを申し上げようがない」と説明。同趣旨の発言を今井氏への答弁だけで少なくとも7回している。
昨年9月、文部科学省の前川喜平前事務次官に「総理は自分の口から言えないから私が言う」と述べたとされる和泉洋人首相補佐官も、初めて参考人として出席。この発言の有無を問われ「いろいろ報道されているので少し丁寧に説明させてもらう」と切り出したが、最後は記憶がないことを根拠に「言っておりません、言っておりません」とまくし立てるように答弁し、騒然となる一幕もあった。
一方でこの日、安倍晋三首相は「誠意を持って説明している」「反省している」「真摯(しんし)に受け止めたい」などと、低姿勢を強調する言葉を少なくとも計14回用いた。東京都議選の応援演説の際、一部の聴衆に「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と発言したことにも、「私の不徳の致すところだ」と陳謝した。
この問題で、日本獣医師会顧問の北村直人元自民党衆院議員は24日の閉会中審査に出席しなかった。毎日新聞の取材に出席の意向を示していたが、この日は「講演の日程をキャンセルできなかった」と説明した。
首相は丁寧に説明、それでも、疑念晴らすことはできず
政治評論家の森田実氏の話 首相は丁寧に説明した。それでも、「加計ありき」という疑念を晴らすことはできなかった。政府側の答弁は「記憶にない」「記録がない」という部分が目立ち、説得力がなかった。首相の答弁でも出たが、この問題の本質は「李下(りか)に冠を正さず」ということ。首相である以上は、親しい人との関係は特に気をつけないといけなかった。権力者が「えこひいきをしたのでは」という疑念が内閣支持率を低下させているのだろう。 
安倍首相、過去の国会答弁を訂正「お詫びしたい」 7/25
学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題をめぐり、安倍晋三首相は加計学園の計画を知った時期について、5月と6月に国会で答弁した内容に誤りがあったことを認め、「訂正してお詫びしたい」と述べた。知った時期は正しくは「1月20日」としている。
参院予算委の閉会中審査で7月25日、小池晃議員(共産)の質疑に対して答えた。
安倍首相は前日24日の衆院予算委で、加計学園の計画について「(今年)1月20日に初めて知った」と説明。これに対して小池氏は、過去の3つの国会答弁を例に挙げ、この発言と矛盾することを指摘した。
○ 衆院予算委員会(5月8日)、民進・宮崎岳志議員
・答弁:構造改革特区については、加計学園が候補として記載されているので、知りうる立場にあった
○ 参院予算委員会(5月9日)、自由・森ゆうこ議員
・質問:加計孝太郎氏が今治市で、国家戦略特区により獣医学部新設の希望を持っていることを知っていましたか
・答弁:この加計学園が当然特区に申請を今治市が出しますから、国家戦略特区に申請した段階で当局から説明を受けますから、その段階で当然総理大臣として知り得た
○ 決算委員会(6月5日)、民進・平山佐知子議員
・質問:大親友である加計さんがずっと獣医学部が作りたいという思いがあったことは当然ながらご存知でしたよね
・答弁:安倍政権になりましてから、国家戦略特区にその申請を今治市と共に出された段階で承知したわけであります
今治市は2015年6月に国家戦略特区で獣医学部新設を提案し、加計学園が今年1月10日、特区での獣医学部新設に応募した。小池氏は過去の答弁やこうした経緯を踏まえて、「つまり今年の1月20日どころか、2年前の6月に知っていたとことじゃないですか。明らかに虚偽答弁だ」と指摘した。
これに対して安倍首相は「加計学園と今治市と、構造改革特区と国家戦略特区の2つがあるので、多少そのところは混乱して答弁した」と誤りを認めた上で、「そこはお詫びして訂正したい」と述べた。
そして、改めて「(加計学園が)申請を今治市とともに決定する段階で、国家戦略特区会議の議長として、加計学園の計画について承知した。訂正させていただいきたい」と強調し、計画は1月20日まで知らなかったと繰り返した。 
 
マスコミ

 

「政権広報紙」 読売新聞
安倍首相主導の不当な働きかけが疑われる加計学園問題。例の「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っていること」などと記載された文科省の内部文書を巡り、昨日夕方、前事務次官の前川喜平氏が記者会見を開いた。
「これらの文書については、私が実際に在職中に共有していた文書でございますから、確実に存在していた。見つけるつもりがあれば、すぐ見つかると思う。複雑な調査方法を用いる必要はない」
「極めて薄弱な根拠のもとで規制緩和が行われた。また、そのことによって公正公平であるべき行政のあり方が歪められたと私は認識しています」
「証人喚問があれば参ります」
各マスコミは一斉に“前川証言”を報じ始めた。昨夜はほとんどのテレビ局がこの記者会見を大きく取り上げたし、今日の新聞朝刊も多くの社が1面トップ、もしくはそれに準ずる扱いで、〈文科前次官「総理のご意向文書は確実に存在」「証人喚問応じる」〉と打った。
こうなってみると、改めてそのみっともなさが浮き彫りになったのが、“伝説級の謀略記事”をやらかした読売新聞だろう。周知のように、読売新聞はこの前川氏の実名証言を止めようとした官邸のリークに丸乗りし、22日朝刊で〈前川前次官出会い系バー通い〉と打っていた。大手全国紙が刑事事件にもなっていない、現役でもない官僚のただの風俗通いを社会面でデカデカと記事にするなんていうのは前代未聞。報道関係者の間でも「いくら政権べったりといっても、こんな記事を出して読売は恥ずかしくないのか」と大きな話題になっていた。
しかも、この読売の官邸丸乗りは当初、本サイトだけが追及していたが、そのあと「週刊新潮」(新潮社)もこの事実を暴露した。こんな感じだ。
〈安倍官邸は警察当局などに前川前次官の醜聞情報を集めさせ、友好的なメディアを使って取材させ、彼に報復するとともに口封じに動いたという。事実、前川前次官を貶めようと、取材を進めるメディアがあった。
「あなたが来る2日前から、読売新聞の2人組がここに来ていた。(略)」〉
さらに昨日のテレビでも、『羽鳥慎一モーニングショー』『ワイド!スクランブル』(テレビ朝日)、『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)などが「週刊新潮」の記事を引用しつつ、読売の記事が「官邸の証言潰しのイメージ操作」であることを指摘した。地上波のテレビ番組で、全国紙の記事が官邸の謀略だと指摘されるのは、おそらくはじめてではないだろうか。
赤っ恥、読売は前川会見をどう報じたのか? ちりばめられた官邸擁護
官邸に“いい子いい子”をしてもらおうとしっぽをふりすぎて、満天下に恥をさらしてしまった読売新聞。いったいどのツラ下げてこの会見を報じるのか。今朝の同紙朝刊を読んでみたら、まったく反省なし。記事にはしていたものの、あいかわらず、官邸側に立っているのがミエミエだったのだ。
まず、一面の見出しからして〈総理の意向文書「存在」文科前次官加計学園巡り〉のあとに〈政府は否定〉と付け加える気の使いよう。3面では〈政府「法的な問題なし」〉としたうえ、〈文科省「忖度の余地なし」〉の見出しをつけ、官邸の圧力を否定にかかったのである。
もっとも、その根拠というのは、学部新設の認可審査は〈議事録も非公表で、不正が入り込む余地は少ない〉などと、なんの反論にもなってないもの。この間、前川前次官が証言した加計文書だけでなく、森友学園問題などでも、圧力を物語る証拠がどんどん出てきていることを無視しているのである。
さらに、社会面では、自分たちが報じたことを一行も触れず、会見の中身を使うかたちで、例の「出会い系バー」通いに言及した。
悪あがきとしか言いようがないが、こうした態度は読売だけではない。読売系のテレビ番組も“前川証言”には消極的で、露骨なまでに安倍政権の顔色をうかがう姿勢を示していた。
それは昨日から始まっていた。他局は「週刊文春」の前川氏独占インタビューを受け、一斉にこの問題を報道。インタビュー済みだったTBSもこの時点で前川氏のインタビュー映像を放送していた。
ところが、日本テレビは、午前の情報番組『ZIP!』『スッキリ!!』では加計学園の話題を一切無視、かろうじて『NNNストレイトニュース』が国会での民進党と松野一博文科相のやりとりをベタで触れたのみ。
午後になっても、やはりストレイトニュースのコーナーで『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)が国会質疑を受けてアリバイ的にやっただけで、夕方の『news every.』でようやく他局も中継した前川氏の会見の模様を報じるという体たらく。夜の『NEWS ZERO』も、テレビ朝日の『報道ステーション』やTBSの『NEWS23』よりも明らかに見劣りする内容で、政治部の富田徹記者が前川氏が会見を開いた理由について「安倍政権への怒りこそが大きな理由と見られます」と解説するなど“私怨”を強調すらした。
もはや、読売はグループをあげて“安倍政権の広報機関”と化していると断言してもいいだろう。いったいいつのまに、こんなことになってしまったのか。
会食を繰り返す渡邉恒雄主筆と安倍首相、蜜月はピークに達す
「自民党総裁としての(改憲の)考え方は、相当詳しく読売新聞に書いてありますから、是非それを熟読してもらってもいい」
2020年の新憲法施行を宣言した安倍首相が、今国会でこんなトンデモ発言をしたのは記憶に新しい。周知の通り、憲法記念日の5月3日、読売新聞はトップで安倍首相の単独インタビューを公開。まさに安倍首相の“代弁者”として振る舞った。
しかも、インタビューを収録した4月26日の2日前には、読売グループのドン・渡邉恒雄主筆が、安倍首相と都内の高級日本料理店で会食しており、そこで二人は改憲について詳細に相談したとみられている。つい最近も、今月15日に催された中曽根康弘元首相の白寿を祝う会合で顔を合わせ、肩を寄せあうように仲良く談話している姿を「フライデー」(講談社)が撮影。このように、第二次安倍政権発足以降、安倍首相と渡邉氏の相思相愛ぶりはすさまじい。実際、安倍首相と渡邉氏の会食回数は傑出している。数年前から渡邉氏が読売本社にマスコミ幹部を招いて“安倍首相を囲む会”を開催しだしたことは有名だが、さらに昨年11月16日には、渡邉氏が見守るなか、安倍首相が読売本社で講演まで行っているのだ。
こうした安倍首相の“ナベツネ詣で”は、重要な節目の前後にあり、重要法案などについてわざわざお伺いを立てていると言われる。事実、2013年には特定秘密保護法案を強行採決した12月6日前後にあたる同月2日と19日、14年には7月1日の集団的自衛権行使容認の閣議決定に向けて動いていた6月13日、15年は安保法案を国会に提出した4日後の5月18日、昨年ではロシア訪問の前日である9月1日などがこれにあたる。
そして今年の“2020年新憲法施行宣言”の読売単独インタビューと、国会での安倍首相の「読売新聞を読め」発言に続く、前川証言ツブシのための「出会い系バー通い」報道の謀略……。もはや、そのベッタリぶりは報道機関の体さえなしていないが、これは単に安倍首相と渡邉氏の蜜月ぶりだけが問題ではない。現在、読売新聞では四半世紀にわたりトップに君臨する渡邉氏を“忖度”するあまり、政治部は当然として社会部や世論調査までもが、安倍政権の後方支援一色となっているのだ。
池上彰も「これがはたしてきちんとした報道なのか」と苦言
たとえば昨年では、「今世紀最大級の金融スキャンダル」といわれたパナマ文書問題で、読売新聞は文書に登場する日本の企業名や著名人の名前を伏せて報じた。また、沖縄で起きた米軍属による女性殺害事件も他紙が詳細を報じているにもかかわらず、米軍関係者の関与については容疑者が逮捕されるまでは一行も触れていなかった。いずれも、政権にとってマイナスにならないようにとの配慮ではないかとみられている。
まだまだある。安保報道における読売の明白な「偏向」ぶりは、あの池上彰氏をして、「安保法制賛成の新聞は反対意見をほとんど取り上げない。そこが反対派の新聞と大きく違う点です。読売は反対の議論を載せません。そうなると、これがはたしてきちんとした報道なのかってことになる」(「週刊東洋経済」15年9月5日号/東洋経済新報社)と言わしめたほどだ。
事実、15年5〜9月の間の朝日、毎日、読売、産経においてデモ関連の記事に出てくるコメント数を比較すると、朝日214、毎日178に対して、なんと読売はたったの10。産経の11より少なかったという(一般社団法人日本報道検証機構調べ)。ちなみに、安保関連の細かいところでは、安倍首相が蓮舫議員に対し「まあいいじゃん、そんなこと」というヤジを飛ばしたことがあったが、読売新聞はこのヤジ問題を全国紙で唯一報じなかった。
さらには世論調査までもが、“安倍首相に捧げる”世論操作の様相を呈している。たとえば15年7月24〜26日実施の読売全国調査では、〈安全保障関連法案は、日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を強化するために、自衛隊の活動を拡大するものです。こうした法律の整備に、賛成ですか、反対ですか〉などと、安倍政権の主張をそのまま質問文に盛り込んだ誘導質問を展開。集団的自衛権閣議決定の14年には、〈集団的自衛権71%容認 本社世論調〉なる記事を出したが、これも調査で人々が心理的に選びがちな「中間的選択肢」をあえて置き、回答を誘導したとしか思えないものだった。
森友学園問題でも官邸擁護、“忖度新聞”は民主主義の敵だ
森友学園報道を露骨に避けていたことも忘れてはならない。実際、朝日新聞(東京版)が森友学園をめぐる国有地問題を初めて紙面で取り上げたのは今年の2月9日だったが、一方の読売(東京版)は同月18日で、実に1週間以上もの開きがある。しかも、この読売の記事のタイトルは「国有地売却に首相関与否定」というもので、これまた安倍政権側に立ち、文字数わずか200字弱のベタ記事だった。
また、初めて社説で森友問題を扱ったのは、朝日が2月22日、毎日が同月23日に対して、読売は同月28日とかなり遅い。傑作なのが3月の籠池泰典理事長(当時)証人喚問翌日の社説のタイトル。全国各紙を比較してみるとこんな感じだ。
   朝日「籠池氏の喚問 昭恵氏の招致が必要だ」
   毎日「籠池氏喚問 関係者の説明が必要だ」
   日経「真相解明にはさらなる国会招致がいる」
   産経「籠池氏喚問 国有地売却の疑問とけぬ」
   読売「籠池氏証人喚問 信憑性を慎重に見極めたい」
何をか言わんや、である。現在の読売が、いかにかつての“中道右派のエスタブリッシュメント”的な紙面づくりを放棄しているか、よくわかるというものだ。なぜ、こんなことになってしまったのか。数々のスクープを手がけた元読売新聞記者・加藤隆則氏は、スタジジブリが無料で配布している小冊子「熱風」2016年4月号でのジャーナリスト・青木理氏との対談で、最近の読売をこのように分析している。
「だんだん官僚的になって、事なかれ主義になっている。今の政権にくっついていればいいんだと。それ以外のことは冒険する必要はなく、余計なことはやめてくれと。これは事実だからいいますけど、読売のある中堅幹部は、部下に向かって『特ダネは書かなくていい』と平気で言ったんです。これはもう新聞社じゃない。みんなが知らない事実を見つけようという気持ちがなくなった新聞社はもう新聞社じゃないと僕は思います」
「この新聞社にいても書きたいことは書けなくなってしまった。そういう新聞社になってしまったということです。社内の人間は多くが息苦しさを感じている。(略)でも辞められない。生活もありますから。だからみんな泣く泣く、やむなく指示に従っている」
森友学園、加計学園問題でバズワードとなっている“忖度”が、読売新聞社内でも疫病のように流行っている。暗澹たる気持ちになるのは、安倍首相と独裁的トップのほうばかりを向き、政権擁護を垂れ流して、さらには謀略にまで加担してしまうこの新聞が、いまだ発行部数第1位であるという事実。民主主義にとって、極めて有害としか言いようがない。 
 
前川前次官会見で田崎が安倍官邸擁護
 「菅さんが言ってるから文書は嘘」「読売記事はスクープ」

 

「(加計学園問題の)“総理の意向”文書は確実に本物」
当時、文科省の官僚トップの地位にあった前川喜平前文科事務次官の会見で飛び出した決定的な証言。ワイドショーもさすがに黙殺はできなくなり、26日は各局とも会見の中身を大々的に報じた。そんななか、もはや笑うしかないくらいの露骨な安倍政権擁護を繰り広げていたのが、“田崎スシロー”こと田崎史郎時事通信特別解説委員である。
森友問題のときは手分けして官邸擁護を展開していた山口敬之がいなくなってしまったので、ひとりで大忙しだ。朝は『とくダネ!』(フジテレビ)、昼は『ひるおび!』(TBS)とハシゴして、前川前次官の人格攻撃とお得意のアクロバティック官邸擁護を開陳したのである。
まず『とくダネ!』。MCの小倉智昭もさすがに「前川さんは知的な感じでお話にも説得力というものがある」「前川さんの告白の時期に合わせて新聞社がこの件をドンと書いてきたっていう、やっぱり、なんかあれ?って、思う部分はあるんですよね」と感想をもらしたのだが、しかし、田崎はことごとく話をスリカエ、前川攻撃、官邸擁護に終始した。
会見映像を受けMCの小倉が「これを官邸はつっぱねることができるのか」と言うと、田崎は「新しい事実は何もない」と言い張り、こんな官邸の代弁を始めた。
「菅長官が信憑性がないって言われているのは、文書のなかで、菅官房長官や萩生田官房副長官の言葉が引用されているんですね。それが自分の言った覚えのない言葉であると。文部科学省が勝手になにかつくった文書なのではないか、という主張なんです」
どうしてなんの客観的証拠も示さないまま、菅義偉官房長官や萩生田光一官房副長官が「言ってない」というのは本当で、前川氏の証言がウソという前提になるのか。あげく、文科省が勝手につくった文書とは……。これにはさすがの小倉も「これだけ重要な問題で、文科省ってそんな勝手に文書つくるものなのかなあ?」と素朴な疑問を呈した。すると田崎は今度はこんな陰謀論を語り始めたのだった。
『ひるおび!』でも「官邸が言っているのは本当」と言い張るスシロー
「前川さんは、おそらく自分の主張をそのまま載っけてくれるメディアを選んだんじゃないかと思いますね。集中的に、新聞、テレビ、雑誌と選んでやってらっしゃるんで、だからある意味で見事なメディア戦術だと思うんです」
自分の主張をそのまま載っけてくれるメディアを選ぶって、それ、あんたのご主人様である安倍首相とあんたら安倍応援団の関係そのものだろうと思わずツッコんでしまったが、そもそも、前川氏がメディアを選んだというのはまったくの言いがかり、真っ赤な嘘だ。
前川氏は、会見どころか朝日新聞のインタビューよりも前に、安倍さまのNHKや、当のフジテレビのインタビューだって受けている。しかし、官邸の恫喝に負けてお蔵入りにしてしまったのは局のほうだ。ようするに前川氏が特定のメディアを選んだのではなく、前川証言を公にする勇気のあるメディアとなかったメディアがあっただけというのが実情である。だいたい前日すでにフルオープンの記者会見を開いて正々堂々と語ったあとに、特定のメディアを選んでいるなどよく言えたものだ。
相手方が世論をつかんでいると見ると、自分たちのことを棚に上げて、デマと陰謀論をわめきたてるその手口は安倍政権そのまま。まったく悪質としかいいようがない。
しかし、もっとヒドかったのが、『ひるおび!』だった。この番組でも、総理のご意向文書は、「行政文書ではない、ただの文科省内のメモ書き。官邸が「ない」っていうのは本当」「仮にメモがあったとしても、文科省が書いただけ」「菅さんたちは言った覚えがないから怪文書」などと強弁する田崎スシロー。しかし、これにはほかのコメンテーターが一斉に反論をした。元読売新聞大阪社会部記者の大谷昭宏は「前川さんはレク資料っておっしゃっていた。そこで部下が一番偉い人に嘘のレクチャーしたらえらいことになる。だから真実性がある」、毎日新聞の福本容子論説委員も「官僚の人たちってメモ魔なんですよ、なんでもメモする。私たちが取材するときもそれをあげてるわけですから、後からどうこうって話ではなく、そのまま起きたことを書いてる」と説得力のある主張を展開した。
するとMCの恵俊彰が「ICレコーダーは回さないんですか」と助け舟を出し、田崎も「隠し撮りしているときはありますね」と、まるでICレコーダーもないと証拠にはならないようなことを言い出したのである。籠池氏が財務省とのやりとりを録音していたときは盗人扱いしていたくせに、何を言っているのか。これには福本がすかさず「いちいち全部ICレコーダーで録音してたら膨大になる。それまた起こさなきゃいけないし、すぐ聞いたものを上司にもっていくっていう意味ではメモがいちばん」と現実的な反論をした。
また特区指定にいたる行政プロセスが歪められたという前川氏の主張についても、「前川さんはやりたくなかったんでしょ。規制緩和は官僚の人たちの抵抗によって進まなかった」などと前川氏が抵抗勢力だと攻撃し始め、「官僚主導から政治主導か。小泉政権以降、官邸が強い権限をもつようになっている。政治主導でやっていこうとすればこういうことになるんです」などと、官邸主導の規制緩和のためには仕方ないと正当化。
ここでも大谷が「官邸が権力を握った結果、官邸が私物化してたんじゃないかっていうのが問題。加計さんの問題も籠池さんの問題も。官僚から権限を取り上げて、本当に公正にやっていたのか、それが問題」、福本が「規制緩和をするのはいい。もっと正々堂々と。なんでこの学校が選ばれたのか、ほかにもライバルいたわけですから」と反論すると、また恵が「言ってること全然ちがうんで、後からまた見ていきます」などと助け舟を出して議論を終わらせた。
読売擁護までしていた田崎「一生懸命取材していた」
さらに田崎の前川攻撃はつづく。今度は菅の生き写しのように、なぜ現役のときに言わなかったのかと責め立て始めたのだ。
「事務次官が会いたいって言えば官邸の方は自動的にオーケーですよ。前川さんがそのとき問題だと思われるならば、総理なり官房長官に会って、これはどうなんですか?なぜこういうことをやるんですか?って問い詰めていなかったんですかね。なんでそれを辞めた後言われるんですかね」
「行政を推進する立場にいるわけですから、トップとして。そりゃ(在任中に)言わなきゃいけませんよ。なんで今になって言うんだろうと。その間に天下り問題で自分がクビになった。腹いせでやってるんじゃないかって見られちゃいますよ」
こいつはいったい何を中学生みたいな話のスリカエをしているのか。安倍政権の恐怖支配が敷かれているなかで、官僚がそんなことできるはずがないだろう。しかも、この点については、前川氏自身が非を認め「当事者として真っ当な行政に戻すことができなかった。事務次官として十分な仕事ができずお詫びしたい」と反省の弁を語っているのに……と唖然としていたら、これにもすぐさま、大谷と福本が反論した。
「今になってなんであの時言わないんだ!というのは問題のスリカエ。そのとき言えなかったのはいろいろな事情があったんでしょう、でもその話はその話。事実が何なのかが問題」と、田崎の卑劣な論点ずらしをただしたのだ。
しかしこれにも恵が助け舟を出して、田崎に反論の機会を与え、この話題も結局、田崎が「強い思いをもたれているならば、その場で、総理なり官房長官に会って聞けばいいことですから」と繰り返してシメられてしまったのだった。田崎のトンデモ解説もひどいが、常にそれを主軸に番組を進めるMCの恵も相当にタチが悪い。
さらに、驚いたのは読売の官邸謀略に乗っかった“出会い系バー”記事への評価だった。田崎はなんと「読売新聞が独自に取材したスクープ記事」と称賛したのだ。
これに対し、読売新聞出身である大谷が「私も読売の事件記者やってたからわかりますが、(東京本社、大阪本社、西部本社の)3社がすべて同じ位置、同じ大きさ、同じ見出しで記事をやるというのは、ひとつの合意形成がないとできない。今回の記事は、同じ場所に、同じ大きさで、同じ見出しがついているんですね。これは、新聞でいうところの“ワケあり”なんですね。どうして“ワケあり”が生まれるか、誰かの思惑があるから。そういう記事がどこから出てるのか。読売は否定するでしょうけど、我々からみれば、この扱いは明らかに“ワケあり”ですよ」と新聞の現場を知っているからこそのリアリティのある解説をした。
福本も「記事が出たタイミングは本当に不思議。前川さんが証言するのか注目されていた時期ですよね。記事は「教育行政のトップとして不適切な行動に対して批判があがりそうだ」って、勝手に批判があがるとこまでコミコミで丁寧に書いてる」と指摘、大谷は「これ事件記事じゃないんですよね。しかも前川さんは(杉田官房副長官から)1月に注意されたって言ってる。それがなんでいま「出会い系」という見出しで5月に載るんですか」とこのタイミングでの報道にも疑問を呈した。
ところが田崎は「読売新聞は読売新聞で一生懸命取材して書かれたわけで。自分で事実が確認できなければ出すはずがない、と同業者としては思いますね」と、強弁を始めたのだ。
「同業者として」って、ただの官邸の宣伝係が何を新聞記者気取りになっているのか、むしろ、同業者といえば毎日新聞記者の福本のほうだし、大谷なんて元読売新聞の先輩記者の目線で内情もふまえて、この記事は「ワケあり」だと言っているのに……と思ったが、よく考えたら、読売と田崎は“安倍御用”の同業者。もしかしたらそういう意味なのか。
メディアに広がる「安倍政権のいうことはすべて正しい」という世界
とにかく万事この調子で、傍目から見てどんなムチャクチャに見えても、とみかく田崎は徹底的に「文書に信憑性はない」「前川はおかしい」と言い張り続けたのだった。
きわめつきは、今後の展開についての解説だった。田崎に負けず劣らずの安倍応援団である八代英輝弁護士ですら「少なくとも証人喚問をしたほうが国民としては(いい)。これに政権側が抵抗を示すのが、余計変に見える」「やはり前川さんを証人喚問していただいて、実態というのを知りたい」とコメントしていた。
ところが、田崎は「(そういう流れには)ならないでしょ。政権側の考え方は黙殺」と、言い切ったのだった。ここまでくると、安倍応援団どころか、菅官房長官の生霊でも乗り移ったんじゃないかと思えてくるが、しかし、これは田崎一人の問題ではない。
26日の『とくダネ』では、「文書に信憑性はない」と強弁する田崎の言葉に、小倉はこう漏らしていた。
「これどちらの言い分が正しいのかっていうのは、私たちには100%はわからない。想像の世界なんですね。そうすると、安倍政権を支持するか支持しないかによって受け止め方って変わりますよ」
たしかに、当時の事務次官の実名証言という超ド級の証拠を前に、「文書はない」と言える根拠など「だって安倍政権がすべて正しいから」以外何もない。しかし、そのムチャクチャが通用する国になりはてているのだ。安倍政権の言うことはすべて正しい。たてつく者は報復されて当然————。
前川氏は「赤信号を青と言えと迫られた。「これは赤です、青ではありません」と言い続けるべきだった」と語ったが、これは官僚だけの話じゃない。安倍政権に屈して青だと言ってしまうのか、これは赤だと戦うのか、メディアの姿勢もいま、問われている。 
 
官邸の恫喝に屈したメディアと踏ん張ったメディア

 

元文科省事務次官である前川喜平氏のインタビューを、本日発売の「週刊文春」(文藝春秋)が掲載したことを受けて、今朝の朝日新聞朝刊も前川氏のインタビューを一面トップほか大々的に掲載。毎日新聞も社会面で大きく取り上げ、そのなかで「文書は本物」とする前川証言を紹介した。また、昨晩の『NEWS23』(TBS)は、前川氏のインタビューを今晩放送することを予告した。
本サイトは昨日、前川氏の自宅前にマスコミが殺到している一方で、官邸が上層部から官邸記者にいたるまで恫喝をかけまくっていることを伝えたが、その圧力をこれらのメディアは撥ね返したといえよう。
だが、今回の前川証言に対する安倍首相はじめ官邸の焦りと怒りは凄まじいものだ。安倍首相は昨晩、赤坂の日本料理店「古母里」でテレビ朝日の早河洋会長と篠塚浩報道局長と会食。報道局長まで呼びつけていることからも、報道に対する牽制があったことはあきらかだ。
剥き出しの圧力をかけられたテレ朝だが、しかし、今朝の『羽鳥慎一モーニングショー』では、「週刊文春」に掲載された前川証言と、「週刊新潮」の報道を取り上げた。
番組ではまず、前川氏の「出会い系バー通い」を紹介した上で、「週刊新潮」による「官邸は前川前次官の醜聞情報を集めさせ、友好的なメディアを使って取材させた」「“報復”するとともに口封じに動いた」という内容に踏み込んだ。司会の羽鳥が「これはどうなんですか?」と尋ねると、ゲスト出演したテレ朝の細川隆三・政治部デスクは歯切れ悪くこのように述べた。
「官邸にはいろんな人がいて、この問題にふれるととにかくカリカリしちゃって、興奮する方もいらっしゃるし、逆にこの問題は触ってはいかんと、触らないようにシカトしようとする人もいますし、とにかくこれは内閣の問題じゃなくて個人の問題、とんでもない人がやっているんですよとさらけ出すのがいいんじゃないかっていう人もいるんです」
「官邸による報復なのか?」という羽鳥の問いに対する答えにまったくなっていないが、いかに官邸が記者にプレッシャーをかけているのかが垣間見えるコメントではあるだろう。
だが、ここでレギュラーコメンテーターの玉川徹が、読売新聞の報道に言及。「現役の官僚でもない前の事務次官の、違法でもない話を一面にもってくるバリューが、加計学園にかかわらないんだとしたらどこにあるのか」「ものすごく疑問」と言い、こう畳みかけた。
「安倍総理は自分が語る代わりに『読売新聞を熟読してくれ』っていう関係ですしね。やっぱり権力に対して批判的な目を向けるっていうのがジャーナリズムだと私はずっと思っていままで仕事してきたんですけど、こういう一連の読売新聞のあり方って、政治部的な感覚から見て、細川さん、これどうなんですかね?」
ごくごく真っ当な指摘だが、これに細川政治部デスクは「いや、だから、(読売の今回の報道は)めずらしいですよね」と返すのが精一杯。だが、テレ朝は『モーニングショー』だけではなく、『ワイド!スクランブル』でも番組トップと第2部で報道し、前川氏の下半身スキャンダルについて“官邸のイメージ操作では”と言及。前川証言と下半身スキャンダルという“両論併記”の報道ながら、しかも総理直々に“圧力”がくわえられたなかで、官邸の読売を使った報復と、読売の姿勢に論及した点は、勇気あるものだったと言えるだろう。
また、朝の『とくダネ!』と昼の『バイキング』では前川証言を無視したフジテレビも、『直撃LIVE グッディ!』ではしっかり取り上げた。
しかも、菅義偉官房長官が会見で「(前川氏は)地位に恋々としがみついていた」などと人格攻撃したことに対し、ゲストの「尾木ママ」こと尾木直樹は「ぼくら教育関係者はみなさん信頼しているし、絶大な人気者。気さくで威張らないし、官僚的ではない。慕っている人も多いですね」と反論。元文科省官僚である寺脇研も「(菅官房長官の言葉とは)全然別の話を省内で聞いている。『みんな残って下さい』と下の者は思っていたけど、(前川氏は)『自分は最高責任者として全責任は自分にあるんだから辞めなくちゃいけない』と言っていた」「(前川氏が)辞めた日、省内には涙を流した者も相当数いたみたいですね」と、菅義偉官房の発言は官邸お得意の印象操作である見方を示した。
さらに、『グッディ!』でも、一連の文書の出所が前川氏だと官邸が睨み、出会い系バー通い報道をリークしたとする「週刊新潮」の記事にふれ、問題の出会い系バーを取材。だが、コメンテーターの編集者・軍地彩弓は「(前川氏は)脇が甘いと言われてもしょうがないけど、人格否定と今回のことを一緒にするのはやめてほしい。わたしたちが見てても、この話がくることによって撹乱されているように思っちゃうので、分けて話をしたい」と指摘。尾木も「(出会い系バー通いは)まずかった」としながらも、「このことで文書の問題をチャラにしてほしくない。分けて考えないと」と語った。MCの安藤優子も「前川さんの人間性と証言の信憑性を混同させようという動きがあるが、別の話」と番組冒頭から、何度も繰り返していた。
このように、官邸から恫喝を受けながら踏ん張ったメディアがある一方、露骨に避けた番組もある。たとえば、すでに前川氏にインタビューを行い、本日夜の『NEWS23』でその模様を流す予定のTBSは、朝の『あさチャン!』や昼前の『JNNニュース』で「怪文書じゃない」という前川氏の証言映像を大きく取り上げたが、『ビビット』ではほんのわずかでスタジオ受けもなく終了。『ひるおび!』でも11時台の新聞チェックのコーナーで扱っただけだった。
また、NHKと日本テレビも露骨だ。朝のニュース・情報番組では前述したTBSの『あさチャン』のほか、『グッド!モーニング』(テレ朝)『めざましテレビ』(フジテレビ)も朝日新聞を紹介するかたちで前川氏の証言を取り上げたが、NHK『おはよう日本』と日テレの『ZIP!』は一切ふれず。NHKは12時からのニュースで、国会で松野博一文科相が「すでに辞職した方の発言なので、コメントする立場にない」と答弁したことをさらっと伝えたのみで、日テレも『スッキリ!!』では無視、昼前の『NNNストレイトニュース』と『情報ライブ ミヤネ屋』のニュース枠で少しふれただけだ。
いや、露骨といえば、ご存じ“安倍政権応援団”である田崎史郎の解説だろう。昨晩の『ユアタイム』(フジ)に出演した田崎は、前川氏について「“ミスター文科省”と表現するけど官邸の見方はまったく違っていて、“最悪の次官だった”っていう認識なんですよ」と前川氏をバッシング。挙げ句、「文書を持ち出したとしたら、これ自体が国家公務員違法になるんじゃないかと言う方もいて。当面無視していくスタンスですね」と、またも官邸の方針を垂れ流した。この詭弁には、番組キャスターの市川紗椰も呆れ果てたように「え、無視って後ろ向きの態度を取られると、やっぱり何かあるんじゃないかなと思いますし、政府から調査するべきだと思うんですけどね」とコメント。田崎はやや狼狽えつつも、「文科省の役人が勝手につくったメモ」と断言したのだった。
官邸の恫喝に負けなかったメディアと、官邸の言いなりになったメディアが鮮明になった、今回の前川証言。しかし、きょうの報道だけで、加計学園問題は終わりではない。本日夕方16時より前川氏が記者会見を行い、証人喚問の要請があれば応じる意志を表明した。安倍政権の「行政文書じゃない」などというごまかしで済まされる話ではない。政権の下部組織と化したNHKと読売系以外のマスコミには、官邸の圧力に負けることなくさらなる追及を期待したい。 
 
「忖度」メディア

 

根拠なき籠池証言と「忖度」に色めくメディアは早く消えてほしい 
まさか21世紀の日本で大がかりな「魔女狩り」を目撃できるとは、というのがここ最近のマスメディアをみての率直な感想である。言わずと知れた「森友学園問題」についての、一部の新聞やテレビでの論調のことである。
様々な「問題」が喧伝されて何がいったい論点なのかさっぱりわからなくなっているが、簡単にいえば、学校法人森友学園に払い下げた国有地が周辺の取引価格の実勢よりも極端に低かったこと、それについて予定されていた小学校の「名誉校長」であった安倍昭恵首相夫人とまた安倍晋三首相が、その土地の値引き交渉に関与していたか否かである。
この話は二段階になっていて、1)国有地の売却価格が違法なほど低かったのか、あるいは違法ではないまでも過度に「裁量」が働いたような価格だったのか否か、2)首相夫人と首相は本当に関与したのか、そのときの「見返り」はなんだったのか、という問題であった。
1)についての論点はかなり整理されてきていて、簡単にいえば適法ではあるが、森友学園の事例については、財務省近畿財務局の判断に「政策のミス」の疑いが濃厚である。通常は入札により競争者を募り、公正な条件で販売価格を決めればいいはずが、財務省が主導して森友学園側との相対取引で性急に条件を決めてしまった。財務省側は言い分があるかもしれないが、これは現場サイドの致命的な判断ミスである。
もちろんその「言い分」の中には当該する国有地が置かれた歴史的・環境的な要因があるだろう。だが説明が複雑になるだけで、要は現場の判断ミスであると考えれば、いまのところそれでいい。財務省は今回の件で、その責任をやがてとらざるを得ないだろう。実際にはローカルでたかだか一学校法人との取引ミスにすぎないにせよ、問題が拡大しすぎてしまった。
2)については、現在までマスメディアや世論の大半に「疑惑」を抱かせたままである。だがあえて言えば、その「疑惑」には安倍政権への過度な批判が招いたバイアス(偏見)が作用しているように思える。籠池泰典理事長の証人喚問での発言によれば、首相と首相夫人が国有地の値下げ交渉に関与したという発言はなかった。また攻める側の野党やマスコミにもこの「関与」を裏付ける証拠はない。つまりこの国有地の価格引き下げ問題という最大の論点であり、そもそもの森友問題の出発点について事実上問題は“解決”しているはずである。
ではどこについて世論は「疑惑」を抱き続けているのだろうか。私見では主に二点である。ひとつは、首相夫人の森友学園への寄付金問題、もうひとつは、昭恵夫人付政府職員が財務省に国有地における小学校建設について問い合わせた件だ。
前者について籠池氏の国会証言と昭恵氏との間では事実認識が食い違っている。これはもはや国会で明らかになる問題ではない。籠池氏の発言が偽証や名誉棄損などの可能性があるならば、司法や捜査機関の出番である。筆者はその方がこの問題は早急にけりがつくと思っている。ただし念を推しておきたいのは、昭恵氏が学校法人に寄付したこと自体はなんの違法性もないということだ。なぜこれがいかにも「悪」のように受け取られているのか、そこにはマスメディアなどの報道の在り方、問題があるのではないか、という感想を抱いている。
政府職員の問い合わせについては、そもそも国有地の価格引き下げ交渉ではない。政府職員がさらに上長と相談して問い合わせを行ったとしても、違法でもなければ、道義的責任を問われるものでもない。実際に、籠池氏へ政府職員が送ったファックスの内容は問い合わせ以上の関わりを「謝絶」する内容を含んでいた。だが、野党もそして安倍政権に日頃から批判的なメディアも、これを土地取引への「関与」だとして批判し続けている。
問題は、土地取引に関して価格面などで籠池氏側に有利に働いたかどうかのはずだ。現行の法規についての問い合わせには、交渉手段になりえる要素はない。これが常識的な見解だと思うが、単なる問い合わせさえも政権交代を要求するほどのものに映る人たちがいるようだ。さらに、自制のタガが完全に外れたようなマスコミの報道姿勢がこの風潮に作用している面もある。
とどめは、財務省近畿財務局をはじめ、関係した省庁や職員などに、安倍首相や首相夫人を「忖度(そんたく)」して、便宜が図られたのではないか、という「疑惑」である。そしてこの官僚たちの「忖度」(相手の気持ちを慮ること)の責任を、安倍首相に要求していることだ。つまり官僚たちに「忖度させた罪」を首相は認めて、政治的責任をとれということである。
例えば、テレビ朝日の報道番組で、コメンテーターの後藤謙次氏が「安倍首相も忖度がないと言うなら、ないという物証を出すべきだと思うんです」と発言していた。忖度は人の心の中で生まれるものであって、それを他人である首相がどうやって物証で「忖度のあるなし」を証明するのだろうか。後藤氏だけではなく、類したことを発言している識者やメディアがかなりいて、それらの人たちはあたかも魔女裁判を現在の日本に復活させているかのようだ。悪質な報道姿勢であると断じていい。
仮に安倍政権への批判があるならば、堂々と政策論争で競えばいい。しかし実体的には、ほとんど根拠のない「疑惑」や魔女狩りめいた「忖度」の有無で、国会での貴重な時間を浪費している。まさに亡国の国会である。裏返せば、野党に安倍政権に代わる政策が打ち出せない無能力が、森友学園問題の膨張を生んだともいえる。世論は、森友学園問題の「疑惑」が解明されてないと思う反面、しっかりと野党の無策はみているようで、民進党など野党の多くはこの二か月近く支持率が低迷もしくは下落していることで明らかだ。
人間は合理的判断と不合理的判断の混交体といっていい。合理的判断が勝れば、現代の魔女狩りのような「忖度」という論点は時間の経過とともに消滅していき、具体的な問題がなんなのか、より鮮明になるはずである。他方で、人間には不合理な判断をする余地がとても多い。経済政策の評価についても、専門家ではない大衆の理解にはバイアスが作用しやすいことが知られている。そしてそのバイアスはメディアの力によって強化されていく。
例えば、昭和恐慌期には、当時の朝日新聞や毎日新聞など主要メディアは、デフレや不景気を極限まですすめれば、経済の「悪」が淘汰されてより高い成長が可能であると信じた(清算主義)。主要メディアの大半がそのような報道姿勢であり、政界含めた世論の大勢もこの清算主義の考え方であった。だが、この清算主義は経済学的には間違った経済思想である。実際にこの清算主義を採用した当時の日本経済は恐慌に陥り、失業、倒産、子女の身売りなどが激増した。社会情勢は不安定化し、解決の糸口はまったくなくなってしまった。
このようなバイアスがメディアによって増幅・伝播していく恐ろしさを、今回の森友学園問題でも体験していると筆者は思っている。少なくとも、司法や警察の手を借りなくても、「忖度させた罪」などという歪んだ意見がメディアから消えることを願いたい。まさに罪なきところに罪を見出す最悪の発言だからだ。
忖度ジャーナリズムの台頭と情報民主主義社会の衰退  
安倍政権下で、取材報道表現行為に何のためらいもなく公権力が制限を加えることが繰り返されている。しかし抗議や批判の声は拡がらない。報道が権力チェックというジャーナリズムの基本的姿勢を失っているからか。市民社会に情報民主主義への期待感がしぼんでしまったからなのか。
このところラジオ放送を聞く時間とBuzzFeedやハフィンポスト(HUFFPOST)のニュースを読む時間が増えている。テレビ報道への期待が弱くなり、ごくわずかの番組(例えばTBSの「報道特集」)を除き同時視聴がほとんどなくなった。
2017年1月18日、沖縄防衛局総務部報道室長が沖縄県政記者クラブ加盟各社に「キャンプ・シュワブ沖に設定された臨時制限区域内への許可なき立ち入りについて」と題する文書(A4、1枚)を送付した。普天間飛行場移設にともなう辺野古新基地建設に関して辺野古沖の臨時制限区域への立ち入りを規制するもので、文書には刑事特別法(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法)第二条(施設又は区域を侵す罪)(注1)を明記している。
刑事特別法は、日米安全保障条約で駐留が認められた米軍の基地を保護するため、1952年に制定された。
米軍施設への侵入や米軍兵器の損壊などを禁じている。「琉球新報」は1月20日の社説「報道立ち入り規制 表現の自由を侵す暴挙だ」を掲載した。この社説では「そもそも刑特法は米軍の軍事機密保護や訓練妨害の抑止を狙いとした法律である。建設現場の取材活動は軍事機能に直接関係しない。」と記し、さらに「危惧することは報道の監視が広大な海に行き届かなくなることである。・・・・・広大な制限区域の設定は市民の正当な権利である抗議行動やマスコミの取材活動を排除する狙いが明白だ。」と指摘している。
沖縄防衛局の文書は、この社説が指弾するように、「刑特法を振りかざす言論弾圧」である。
これは文書で報道機関に送付された。にもかかわらず、全国紙やテレビニュースの扱いはほとんどない。2月20日の毎日新聞朝刊オピニオン面のメディア関連記事で「辺野古工事 立ち入り禁止文書 『報道への脅かし』批判の声」で同文書を厳しく批判しているのが目につくくらいだ。
次のことが想起される。衆院選挙を控えた2014年11月20日、自民党の筆頭副幹事長荻生田光一と報道局長福井照が連名で「在京テレビ局各社 編成局長 報道局長」あてに「選挙時期における「報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」を自民党記者クラブに所属する各局の責任者を個別に呼び出して手渡した。個別に呼び出して手渡しと報じたのは同年同月28日の西日本新聞朝刊だけである。文書手渡しから8日後に全国紙などの新聞も報道したが、西日本が1面トップで報じ2面で解説等を伝えたのに比べれば扱いは小さかった。当事者のテレビは沈黙。NHKは新聞社からの問いかけに、そうした文書があったかどうかにも「ノーコメント」と対応した。報道機関としての自立はどこに行ったのかを疑わせた。民放局もニュース枠では伝えなかった。おそらく唯一同月末のテレビ朝日の「朝まで生テレビ」だけである。司会の田原総一朗氏が朝日新聞や毎日新聞の紙面を指示しながら伝えた。この総選挙の後、雪崩を打ったかのように特定秘密保護法、安全保障法制(戦争法と呼ばれた)、カジノ法、そして3月にも内閣案が閣議決定されようという「共謀罪法案」と支持率50%を超える政権のなすがままの立法動向が続いている。
2017年2月9日、いまの時期、特に意味のあるスクープがあった。朝日新聞による。それは大阪の学校法人「森友学園」の国有地格安払い下げの問題だ。森友学園の開講予定の小学校は安倍晋三記念と銘打たれ、一時、同首相の夫人が名誉校長として名前を出していた。しかし2月10日以降の予算委員会で野党が問題にするまで他のメデイアは追従しなかった。同月22日の東京新聞朝刊「本音のコラム」で文芸評論家の斎藤美奈子氏は「政権をゆるがすほどの大スキャンダルなのになぜ多くのメディアは徹底追及しないのだろう。」と疑問を呈している。またもやメディアへの期待が萎む展開である。2月17日「報道ステーション」「NEWS23」などが取り上げ始めたものの斎藤氏が指摘するようにトランプの差別言動そして金正男暗殺事件などに割くマンパワーやコスト、放送時間量、記事量とは比べものにならない。
2月20日TBSラジオ「荻上チキSession-22」(22:00-23:50)で同学園の籠池泰典理事長に生電話インタビュー、同理事長は慰安婦問題や原発報道にかかわる朝日バッシングを繰り返し、それでも格安払い下げへの不明確な足取りが浮かび上がってきた。荻上氏の聞き取り姿勢は、国会議員も市民も学ぶべきだろう。また東京新聞『こちら特報部』は2月18日、22日の紙面で大きく扱い、その後も第一面トップで関連記事を扱っている。しかしなぜか報道界全体の動きは鈍い。なお、国会予算委員会で連日追及が始まった2月20日あたりからテレビ朝日、TBSそして週末近くからは遅ればせながらNHKも報道を始めた。
こうした報道の自粛は昨年初めのSMAP解散報道を思い出させる。一部週刊誌を除きテレビなどの報道機関はジャニーズ事務所の前にカメラマンや記者は所属機関の意向からか礼節を重んじるかのように張り付かなかった。そうした報道姿勢が国有地の格安払い下げや同学園への許認可の問題にも切り込まないことにもつながる。森友学園が経営する幼稚園で、園児に教育勅語を暗唱させた。これは私学教育の自由だという主張があるかもしれない。しかし、同幼稚園の在園児の保護者に、「よこしまな在日韓国人・支那人」などとヘイトスピーチといえる文言が記された文書を配布していたことはどうなのか。報道機関個々による「軍国教育・差別教育」について徹底究明の必要はないのか。自民党などが朝鮮総連系の学校への補助金停止を主張したときのことが思い出される。
新聞テレビがメディアの砲列(かつてアメリカで言われたキャノン・オブ・ジャーナリズム)を組むことを止め、権力との対峙を怠るのであれば、ジャーナリストは「匿名」で個々が発信するしかなくなるのだろうか。BuzzFeedのニュースにはこの学園問題が連日詳細に報じられており、2月22日の「『マスコミが報じない』は本当?神道小学校をめぐる疑惑、各紙は報道状況を調べてみた」では、朝日、毎日、読売、産経、日経の全国紙の東京本社版と大阪本社版の紙面を対象に調査した結果を載せている。朝日、毎日が多く読売は22日までに2本だけであったとの結果である。
報道機関が砲列を敷き、様々な観点から、国有地のずさんな払い下げに至った経緯を追及すべきだ。安倍政権の側が発する見解を中心に伝えているようではいかがか。
そこに待ち受けるのは米国のトランプ政権が発するフェイクニュースに近似する報道だ。
この1月初めの東京MXテレビの「女子ニュース」では沖縄でのヘリパッド建設にかかわる反対運動への批判を超えた「暴言」や「デマ」が流された。「報道の自由」の名のもとにこのような番組が跋扈することになってしまう。新聞とテレビは同じ資本系列にある。新聞は免許事業である放送事業者と関係がある。このことを踏まえれば、新聞もまた地域や市民の支持を受けて存立するメデイアなのだ。このことを、当該報道機関に関係する人々も市民も再確認しなければならない。
(追記)
なお気にかかることを一つ。この2017年2月20日の「NEWS23」は民進党の国対ヒヤリングの場で文科省等からの聞き取りをしているところを伝えた。予算委員会で質問し、この場でヒヤリングに臨む議員の背後に「民進党国対ヒヤリング  〇〇学園への国有地売却問題」と書かれた紙が貼ってあった。ニュースでは、この「〇〇」の部分にボカシが入っていた。遠慮なのか、かつてニュース映像に「安倍氏の顔写真」無関係に映しだされ問題になったことへの配慮からか。その後も「23」はこの件を伝え続けているが、そこには当然ながら、「森友学園」や小学校の名称もテロップで明記されている。この20日のニュースに見られたボカシ処理は、質問を進行する民進党に対し礼を欠き、報道の在り方に触れる行為ではないのか。いずれにせよ、党の主催するヒヤリングでの掲示物への映像加工は問題である。こうした安易なボカシ処理にあふれたこの国のニュースは、市民の信頼を取り戻すにはあまりにも後退を続け、そこには支持率の高い政権の意向を『忖度』する姿勢が強化され、賢い視聴者市民を遠くに追いやってしまっているのではないか。   以上

(注1) 刑事特別法の正式名称は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法(昭和二十七年五月七日法律第百三十八号)」
(施設又は区域を侵す罪)
第二条  正当な理由がないのに、合衆国軍隊が使用する施設又は区域(協定第二条第一項の施設又は区域をいう。以下同じ。)であつて入ることを禁じた場所に入り、又は要求を受けてその場所から退去しない者は、一年以下の懲役又は二千円以下の罰金若しくは科料に処する。但し刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条がある場合には、同法による。
 
天声人語で忖度 4/1

 

流行りの「忖度」
とうとうSontakuとかオリジナル表現が海外に出回っていて、ファイナンシャルタイムスで以下のような表現がされているそうです。
「忖度は、与えられていない命令を先取りし、穏便に従うことを指す。この言葉は日本人に広く使われていないかもしれないが、政府、民間部門でいろいろな形で普及していることは、すべての人が本能的に知っている。忖度の概念は日本特有ではないものの、安倍晋三首相時代の日本を説明するうえで、これほど強力に響く言葉はそう多くない。」
書いてある通り日本人でも滅多に耳にすることの無い表現を連呼すれば、それは目立ちます、主に悪い意味で。「なんだ、それは?意味わからん」実際記事を書いた人も簡潔にこれを伝えることに苦労しています。
なるほど、恐らくそれでも多くの外国人は納得するどころか「与えられてもいない命令を先取りするってどういうこと?」「何故穏便に従うの?」と疑問を深める可能性が高いような気がします。
そもそも、彼らは直接的なコミュニケーションあっての思考や行動は日常的であっても、忖度に相当する思考や行動は良くて非日常、非常識。もっと言ってしまえば、文化的に隔絶されているでしょうから。
一方、天声人語ではもっと意味を意図的に偏らせている
さて、こちら本題です。
「忖も度も「はかる」の意味である。それが最近では、権力者の顔色をうかがい、よからぬ行為をすることを指すようになってしまったのか。」
天声人語ではもっと意味を絞って書いていました。記者や新聞社の思い、そういう意味だと印象付けたいという意図が前提にあって、世間一般でそう認識されているような表現を既決事項のように書いています。権力者は言わずもがな安倍首相や内閣府でしょうし、よからぬ行為をしたかどうかが不確定な状況でここまで書いてしまうのはミスリードを呼ぶ悪い表現だと思います。
気持ちは分かるのだけど、そこまで意味が偏っているかどうか個人的には疑問があります。まして、それを広く読者に浸透させようというのはちょっと度が過ぎます。
更に遡った原義に触れるのだけど歪曲している疑惑
「「他人(たにん)心(こころ)有(あ)らば 予(われ)之(これ)を忖度(そんたく)す」とは古代中国の詩集「詩経」の一節である。他の人に悪い心があれば私はこれを吟味するという意味だと、石川忠久著『新釈漢文大系』にある。もともとは悪いたくらみを見抜くことを指したのか。」
よく現代日本語でも用法や意味が本来のものからズレたり180度裏返ったりというのが話題にあがります。忖度もそういう流れに則って意味が変質した…という裏付けを書いていて「へえ、そうなんだ」と納得しかけたのですが、何か違和感があります。
「他人(たにん)心(こころ)有(あ)らば」が「他の人に悪い心があれば」と訳されているのですが、本当にここに悪いという意味合いがあるのでしょうか?気が付いてみるととても気になってきたので他にもあたってみました。
忖度余聞より引用 「平素耳にするが「さてその文字は・・」となるとあまり見なれない漢字「忖度」最近世間でよく使われているが、その源泉は中国の詩経。『漢字源』によれば「他人有心、予忖度之」(他人心有り、予(われ)これを忖度す)という文言に発する。平易にいえば「他人の気持ち・考えをそっと推しはかる」という意味で「誰さまであろうと差別なく、その人の想いをそっと酌んでやる」という善意の行為を指す。」
手元に漢字源が無く、その真偽を更に遡って調べられないので断言しがたいのだけれど、このどこに「悪い心が」相当の意味合いが入ってくるのでしょう?そっと推し量るになると看破する感じではなく、思い遣る、思い至る、深慮するの意味に近い気がするのです。
他にも挙げてみましょうか。
「すばやく行き来するわるがしこい大兎を良犬が獲(と)らえるように、と詩は続いている。現代日本の忖度からはずいぶん遠い光景である。」
これは以下の最後の行を指します。
詩経 / 小雅《巧言》
   奕奕寢廟、君子作之。
   秩秩大猷、聖人莫之。
   他人有心、予忖度之。
   躍躍毚兔、遇犬獲之。
高大な宮殿や宗廟は(昔の)君主たちが昔作ったものだ。
ちまちました大猷(はかりごと)など(昔の)聖人は否定したものだ。
他人にはみな心がある、我らはこれを忖度せねばならない。
どんな利口な兔(乱に生きる諸侯君主でしょう)も犬(聖人周王や心ある人々でしょう)に出会えば(結局は)つかまって(平らげられて)しまうのだ。
天声人語は忖度されるから悪(それもわるがしこい大兎とわざわざ付け加えられている)が懲らしめられるという意味合いとしていますが、どうも躍躍毚兔にその意味があるように見えません。
一瞬「おおっ!原義に触れていてやるじゃん天声人語」と思った気持ちが台無しです。
天声人語でのSontaku(忖度)のは流石にまず過ぎないか?
ざっくり粗く調べただけで結論づけるのは危険なのですが、自分は表題の通り「朝日新聞の天声人語でのSontaku(忖度)のは流石にまず過ぎないか?」と思いました。
ここで天声人語が行っているSontaku(忖度)は、
•「朝日新聞社や天声人語の記者」が
•「世間一般の人の80%が森友問題に十分な説明を受けていないというアンケート結果で想定される世論」におもねって、
•「こういうことを言って欲しいんでしょう」という後押しに動いた
というものです。
それこそ、ポピュリズムに迎合するのは確かにマスコミの機能の一つなのかもしれませんが、今の状況でここまで言い切るのはやっちゃった感があるのです。過ぎる言葉かもしれませんが、これこそ悪質な扇動を行っている感じがします。意識的か無意識的かを問わず、白黒つける前に社会に良識を見せるべき新聞社がこれを書いてはいけないと自分は思いました。
まあ、これもまた浅慮が過ぎる一個人の勝手なSontaku(忖度)ということでブーメランが刺さって即死するかもしれませんけれども…
 
忖度テレビの怪

 

記者会見予定
海老蔵の会見       6月23日 PM2時半
前川前文科次官の会見 6月23日 PM5時  (新聞の番組欄 3局が放送予定)

市川海老蔵の妻・麻央さん逝く
海老蔵の会見 PM2時半 各局それぞれのニュース番組で中継放送
ところが PM5時になると テレビ「全局」 海老蔵会見の再放送を始めた
同じ時間帯 前川前文科次官 日本記者クラブで会見のはず 

TBS (偶然見る PM5時ちょっと前か)
ニュースは  前川前文科次官の会見開始直前の中継画面
コメンテーターの岸井成格 解説を始めようと話し始めた 
その瞬間  「次のニュースに移ります」 割り込みアナウンス
画面 海老蔵会見の再放送に切り替わる

なぜテレビ「全局」で 海老蔵会見の再放送になったのでしょう
「前川前文科次官の会見」放送予定を 急きょ変更したのか
30分以上 海老蔵会見の再放送をしていた局もあった
勘ぐりたくもなります
官邸への忖度 官邸からの圧力

何処のニュース番組も PM5時半以降だったか
ちょこっと  「前川前文科次官の記者会見がありました」 中身の放送はなし
異常な放送推移 違和感を感じた
忖度テレビ テレビ報道は誰のものなのでしょう
TBS 6/23 17:38-
安倍政権を揺さぶる、いわゆる加計問題が大きく動いたのは、この人の発言からでした。文部科学省前事務次官の前川氏です。23日の会見で語ったこととは・・・。文科省の再調査結果の公表後、初めて会見を行った前川前事務次官。「文部科学省は一定の説明責任を果たしたと思いますし、私は文部科学省の出身者として、文部科学省が何とか追加調査を行うことにより隠蔽のそしりから免れたことはうれしく思っております。これらの事実関係につきましては、さまざまな理由をつけて官邸あるいは内閣府はその事実関係を認めようとしていないという状況にあるわけであります。そういった姿勢は私から見れば不誠実であると言わざるを得ない。『総理のご意向』という文言、こういった文言を含んだ文書がございますが、この内容につきましては、内閣府においては自分の口から発した言葉を自ら否定しているという状況ですから、あり得ない話ではないかと思っている。素直に読めば獣医学部の開設時期を平成30年4月にしてほしいと、この一点なんですね。それが加計学園のことであることは関係者の間では事実上公然の共通理解」(前川) 前川前事務次官はこのように述べ、内閣府や官邸の対応を批判しました。「必要があれば、第三者性の高い組織を設けて政策決定プロセスを検証するという方法も考えてしかるべきではないか。総理自ら先頭に立って説明責任を果たしていただきたい」(前川)
NHK 6/23 19:16-
学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、文部科学省の前川前事務次官が23日記者会見を開き、「内閣府や官邸は国民に説明責任を果たす必要がある。第三者による調査と検証を行うべきだ」と主張しました。この中で、文部科学省の前川喜平前事務次官は、次々と存在が明らかになった一連の文書について、「文部科学省は追加調査によって、一定の責任は果たしたが、内閣府と官邸は文書に書かれた内容を認めておらず、不誠実と言わざるをえない。内閣府と官邸は真相解明のため国民に説明責任を果たす必要がある。第三者による調査と検証を行うべきだ」と主張しました。また前川氏は、文部科学省は獣医学部新設を規制し既得権を守っていたのではないかという質問に対して「私自身、規制緩和そのものに反対しているわけでない。規制に対する穴の開け方に問題があった」と発言しました。さらに、萩生田官房副長官が文部科学省の局長と面会したときのやり取りを記したとされる新たな文書について、「在職中に見たことはないが、おそらく局長より下の担当者の間で共有するために作成されたのではないか。文書を作成したとされる課長補佐はよく知っているが、極めて優秀なので虚偽を書いたり、聞き間違いが入ったりした文書を作ることはありえない」と述べました。前川前次官の会見について現役職員の1人は「決定過程において行政がゆがめられたというのは職員も実感している。ただ規制緩和が決まる前に、本来、文部科学省として主張すべきことや、できることはあったはずで、反省する点は多い」と話していました。また別の職員は「文部科学省という組織で本当に公正・公平な仕事がやっていけるのか、疑問に感じているのが正直な気持ちだ。会見は自分が感じる問題点を代弁した内容だった」と話していました。
テレビ東京 6/23 23:00-
前川前事務次官が会見し、加計学園問題のキーパーソンは和泉総理補佐官だとの見方を示した。加計学園の獣医学部新設には第三者の検証が必要だと述べ、安倍総理が先頭に立って説明責任を果たすべきだと主張した。萩生田発言が記された新文書については「内容はほぼ事実だと思う」と語った。
テレビ朝日 報ステ 6/23 23:30-
加計学園をめぐる問題で、前川前文部科学事務次官が23日夕方、再び記者会見を行った。萩生田官房副長官の発言された文書について、前川氏は「現職中には見ていない」と話した。萩生田副長官は「総理から指示をされたこともなければ、私から文科省に指示をしたり、圧力をかけたりしたことはありません」と文書について否定している。前川氏は「発言者が誰なのか精査する必要がある」としながらも「書かれている内容はほぼ事実だと思う。この文書を作成したと思われる課長補佐はよく知っている人物で、あえて虚偽の内容を盛り込むことはあり得ない」と述べた。そのうえで「私は和泉総理補佐官が全体のシナリオを書いて、全体の統括している立場にいたのではないかと思っている」と語った。この発言について、和泉補佐官は23日夜、「安倍総理から具体的な指示を受けたことはない」と答えた。
日本テレビ NEWS24 6/24 00:43-
加計学園の獣医学部新設をめぐり、文部科学省の前川喜平前事務次官が再び記者会見を開き、文科省で作成された「萩生田官房副長官の発言概要」との文書について、「内容はほぼ事実だと思う」と述べた。今週、文科省が公表した「萩生田副長官ご発言概要」との新たな文書には、「総理は平成30年4月開学とおしりを切っていた」などと記されているが、萩生田副長官は発言を否定している。前川氏は23日、この文書について「内容はほぼ事実だと思う」と述べた。前川氏「この文書を作成したと思われる(文科省の)課長補佐はよく知っている人物で、極めて優秀でしっかりした人物。虚偽の内容を盛り込むことはありえませんし、聞き間違え、取り間違えもまず考えられない」 また、特区の決定のキーパーソンは誰かとの質問には「和泉総理補佐官」だと答え、「私に直接の働きかけがあり、全体のシナリオも書いていると思う」などと述べた。前川氏「(総理官邸や内閣府は)真相解明から逃げようとしている。総理自ら先頭に立って説明責任を果たしていただきたいというふうに思っている」 前川氏はさらに、「文科省の中にはこの件についての文書はまだ眠っているだろう」と話し、第三者機関が政策決定プロセスを検証することが必要だと訴えた。
テレビ朝日 ANN NEWS 6/24 5:50-
加計学園問題で前川前事務次官が会見で一番のキーパーソンは和泉総理補佐官だと話した。理由について和泉総理補佐官から「総理は自分の口から言えないから私が言う」などと直接言われたことや、萩生田官房副長官が和泉補佐官と話した内容を文科省に伝えたとする文書の存在することなどを挙げた。和泉補佐官が全体の統括をする立場にいたのでは、と話した。和泉補佐官は取材に対して、記録が残っておらず確認できないなどとしている。
フジテレビ 6/24 6:00-
加計学園の獣医学部新設問題をめぐり、文科省の前川前事務次官が千代田区の日本記者クラブで記者会見を開いた。前川前事務次官は「文部科学省は一定の説明責任を果たしつつあるといえるが、官邸、内閣府に国民に説明責任を果たしてもらう必要がある」と首相官邸や内閣府を批判し、具体的な説明を求めた。松野文科相、義家文科副大臣は文科省の萩生田官房副長官の発言に関する新たな文書の存在を公表し謝罪。前川氏は「在職中には見たことないが、中身は間違いないのではないか」とした。萩生田官房副長官は「安倍首相からの指示もないし、自分が指示をしたこともない」とした。前川氏はキーパーソンは和泉総理補佐官だとし、自分に働きかけがあったと暴露。前川氏は総理官邸と文部科学省はヘビとカエルのような関係で、まだまだ文書はあると主張。
TBS JNNニュース 6/24 6:15-
前川事務次官は精査する必要があるが、書かれている内容はほぼ事実だと思う。前川前次官はキーパーソンは和泉首相補佐官だと名指しした。萩生田官房副長官についてはあくまで想像としたうえで「何らかの関与があったのではないかと思う。」と話した。萩生田官房副長官は「加計学園の便宜を図るためにいかなる働きかけや指示を行った事もありません。」と述べた。
日本テレビ ウェークアップ 6/24 8:00-
文科省の元事務次官の前川喜平氏は、きのう、記者会見をした。書面の中身はほぼ間違いないという。萩生田官房副長官は関与を否定した。総理からいかなる指示を受けたこともないとコメント。  
テレビ朝日 スーパーJチャンネル 6/24 16:30-
安倍総理は加計学園の獣医学部新設をめぐる問題で「意向がまかり通る余地なし」と改めて強調。文科省の公表した”萩生田メモ”について前川前事務次官は、総理が開学の時期にまで言及したのは間違いはない、としているが萩生田官房副長官は「総理からいかなる指示も受けたことはない」と強く否定。この日安倍総理は年内にも憲法改正案を国会に提出する考えを示した。 
 
NHKに変化

 

NHK『クロ現』が加計問題で総理圧力の決定的証拠を報道! 6/20
 萩生田副長官が「総理は30年4月開学とおしりを切っている」
ついにNHKが加計学園問題で決定打となるスクープを報じた。昨夜、放送された『クローズアップ現代+』が、独占入手した文科省作成の“新たな内部文書”を公開。その内容は、萩生田光一官房副長官が文科省に対し、はっきりと「総理案件」であることを伝えている衝撃的なものだった。
先週、「安倍首相の側近中の側近」である萩生田官房副長官が、「広域的に」「限る」という事実上の「京都産業大学外し」を指示していたことが発覚したが、今回、NHKがスクープしたのは、その指示の1週間前ほどにあたる2016年10月21日、萩生田官房副長官が文科省の常盤豊高等教育局長に対して語った言葉を記録した「10/21萩生田副長官ご発言概要」という文書だ。
そこには、まさに「決定的」な文言が並んでいる。
「和泉補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている、何が問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。官邸は絶対やると言っている」
「総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた。工期は24ヶ月でやる。今年11月には方針を決めたいとのことだった」
「何が問題なのか、書き出して欲しい。その上で、渡邉加計学園事務局長を浅野課長のところにいかせる」
「農水省が獣医師会押さえないとね」
和泉洋人首相補佐官については、前川喜平・前文部科学事務次官が昨年9〜10月に「総理は言えないから私が代わって言う」として、獣医学部新設を早く認めるように複数回言われたことを証言してきた。今回の新文書は、そうした“圧力”をかけたにもかかわらず抵抗する文科省に対し、萩生田官房副長官が「官邸は絶対やる」「総理は2018年4月開学と決めている」とはっきり“総理案件”だと宣告し、その上で、加計学園事務局長を浅野課長のもとにまで行かせるとまで言っていたことを示すものだ。何より、開学時期を切ったのは、安倍首相その人だというのである。
指示はやはり岩盤規制改革ではなく“総理のご学友”の加計学園開学!
さらに、萩生田官房副長官は、和泉首相補佐官や内閣府と話し合った上、四国で獣医学部新設を行うためにはどうすればいいかを具体的に列挙。萩生田官房副長官が「広域的に」「限る」という新設条件を手書きで修正したとされるメールが送られたのは、この約10日後のことだ。
だいたい、安倍首相は一貫して「岩盤規制改革をスピード感をもって進めるように、つねに指示してきた」と言い、内閣府の藤原豊審議官も申し合わせたように「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っていること」という発言について「首相はつねづね規制改革全般について『スピード感をもって実現すべきだ』と発言している。関係省庁と議論する際に、こうした首相発言に言及することは十分にある」と説明してきた。ようするに、安倍官邸と内閣府は「国家戦略特区全体の話をしているのに、文科省が勝手に『総理のご意向』などと記載しただけ」と逃げてきたのだ。
だが、常識的に考えて、あからさまな虚偽のメモを官僚が作成するわけがない。今回、発覚した萩生田官房副長官の発言メモは、安倍首相自ら開学時期を設定していた。さらには「加計学園事務局長を文科省に行かせる」とまで言及し、実際、この6日後に両者は面談したという。やはり、獣医学部新設は「岩盤規制改革」などではなく「加計学園のための規制緩和」だったのだ。
それだけではない。NHKは今回、元文科省OBで加計学園の理事を務めていた豊田三郎氏が、2015年11月17日に文科省職員と会った際、このように語っていたことがメール文書として残されていたと報じた。
「安倍総理の留学時代のご学友である現理事長と安倍総理と食事をする仲になった」
「いざ総理が進めた時に、「お友達内閣ですね」と週刊誌などに書かれないように、中身がしっかりしたものにしないと総理に恥をかかせることになるから、ちゃんと学園として構想をしっかりしたものにするよう、私からは言っている」
「総理に恥をかかせてはいけないから中身をしっかりさせろと加計理事長に言っている」──。 この発言は、今治市が国家戦略特区に指定される約1カ月前のもの。つまり、獣医学部新設が「総理マター」として出発していることを示すものだ。しかも、このメールを保管していた文科省現職職員は、顔を隠した上でNHKの取材に応じ、「政治的に事が進められる可能性が高い案件という認識をもっていた職員は多いと思います」と証言。豊田氏は2016年9月6日、加計孝太郎理事長とともに松野博一文科相と面談していたことがわかっているが、こうやって加計学園と文科省を繋ごうとする役割を担っていたのだろう。
圧力をかいくぐって国会閉会後にようやく報道したNHK
しかし、ここまでの証拠をいまNHKが出してきたとは驚きだ。NHKは最初の内部文書をスクープできたのに、肝心の「総理の意向」部分を黒塗りにしてニュース内で消化するという“忖度”報道を行い、翌朝の朝日新聞にスクープを譲ってしまった。さらに、早い段階で前川氏の独占インタビューも収録していたにもかかわらずお蔵入りにしてしまった。取材にあたっていた現場の記者たちは、さぞかし忸怩たる思いを抱えていたことだろう。それが、国会閉会と安倍首相の記者会見を終えたタイミングでこの決定的証拠をようやく出すことができた、というわけだ。
だが、NHKが踏み込んだ新事実を出しても、官邸の姿勢は相変わらず。NHKの取材に萩生田官房副長官は「具体的に総理から開学時期について指示があったとは聞いていませんし、私の方からも文科省に対して指示をしていません」「「加計学園に力を貸すため」に、和泉補佐官や関係省庁と具体的な調整を行いとか、指示を出すことはあり得ません」と事実を否定。「心当たりのない内容が、私の発言・指示として文書・メールに記載されていることについて、非常に理解に苦しむとともに、強い憤りを感じております」とまで述べている。
つまり、萩生田官房副長官は先日の手書き修正指示と同様、「これは文科省の捏造だ!」という反論なのだ。
文科省の証言ラッシュの立役者となった前川氏は「あったものをなかったものにできない」と語ったが、安倍官邸は「あったものは嘘っぱちの改竄文書だ!」という陰謀論しか口にしない。もはや、この姿勢のどちらが信用たり得るか、そんなことは歴然としているだろう。
安倍首相は昨日の記者会見で、「何か指摘があれば、その都度、真摯に説明責任を果たしていく」と言い張った。では、それを実行していただこうではないか。この新証拠に対して「国民に丁寧に説明」するべく閉会中審査に応じなければ、それは「安倍首相はクロ」と決まったも同然だ。 
『クロ現』報道“総理の圧力文書“への安倍官邸の反撃が酷い 6/20
 「文科省の謀略」の陰謀論、萩生田に松野、義家が謝罪の茶番
「官邸は絶対やると言っている」「総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた」「渡邉加計学園事務局長を浅野課長のところにいかせる」──。既報の通り、昨晩のNHK『クローズアップ現代+』が新たな文書を報じたが、今朝、松野博一文科相もこの文書が省内で見つかったと認めた。
冒頭に挙げたように、この新文書は「とどめの一撃」と言うべき内容だ。なにせ、新文書に記された文言は安倍首相の側近中の側近である萩生田光一官房副長官の発言概要であり、安倍首相が2018年4月開学という条件を切っていたこと、官邸が「絶対やる」と言い渡していること、さらには具体的に「加計学園」の名を出していること、疑惑のすべてを裏付ける内容だからだ。
しかし、安倍政権はそれでも、このスクープを「文科省の陰謀によってつくられたデマ文書」として押し通すつもりらしい。
発言の当事者である萩生田官房副長官が本日、こうした発言の事実を全面否定したうえ、〈不確かな情報を混在させて作った個人メモ〉〈不正確なものが作成され、加えて、意図的に外部に流されたことについて非常に理解に苦しむとともに、強い憤りを感じております〉〈いったい誰が何のために作った文章なのか?〉〈私の名前が、難しい政策課題について、省内の調整を進めるために使われているとすれば、極めて遺憾〉などといった、文科省を攻撃する反論文を公開したのだ。
しかも、夕方になって、松野博一文科相、義家弘介文科副大臣が、萩生田副長官に謝罪したことを相次いで明らかにした。
松野文科相は萩生田副長官に電話で謝罪したことを明かし、「副長官はじめ、省外の皆さんにご迷惑をおかけした」「今回は職員が備忘録として作ったもので、タイトルとメモの内容が正確性の面においては著しく欠いていた」などと語った。
義家副大臣も官邸を訪れ萩生田副長官に謝罪。「一部で萩生田副長官の名前を出して、ことにあたる傾向があったのではないか。ご迷惑をおかけしたことをおわび申し上げた」と説明した。
子どもでも言わない陰謀論で反論、萩生田官房副長官の大嘘の数々
まったく茶番という他ない。そもそも、松野文科相は、今朝の段階では、文書の存在そのものだけでなく、文書に記された2015年10月21日に、文科省高等教育局の常盤豊局長が萩生田官房副長官に対し「国家戦略特区における獣医学部の新設問題の課題や調整状況について説明し、相談をしていた」ことも認めていたのだ。にもかかわらず、「専門教育課の担当官が萩生田副長官の発言や高等教育局長の説明内容に、関係者から聴取した周辺情報等を補足して取りまとめた」「高等教育局長からも、副長官から指示があったということではないとの報告を受けている」とし、作成した担当官の“まとめ文書”だと釈明したのだ。
そんなわけがないだろう。文書のタイトルは「10/21萩生田副長官ご発言概要」であり、文書自体も「内閣府や和泉総理補佐官と話した」「愛媛県は〜と言っている」「自信がありそうだった」「農水省が獣医師会押さえないとね」などと主語が省略された文体になっている。これはタイトルが示す通り「萩生田副長官の発言」が大前提になっているからであって、とても「周辺情報等を補足」している内容ではない。
また、萩生田官房副長官は先週に発覚した内閣府から文科省に送られたメールでも、「広域的に」「限り」という事実上の「京都産業大学外し」を指示した人物として明確に名指しされていた。
このときも、萩生田官房副長官は全面否定し、官邸および内閣府の山本幸三地方創生相も“文科省から出向したスパイの仕業”などと擁護していたが、萩生田官房副長官といえば、つい先日の国会で、加計学園の加計孝太郎理事長と安倍首相の友人関係を「今回の報道まで知らなかった」と言い張ったにもかかわらず、安倍首相の別荘で、安倍首相、加計理事長と3人で仲良くバーベキューを楽しんでいたことが発覚した大うそつきである。そんな人物の言い分をどうして信じられるというのか。
一方、文科省から出てきている文書は逆に、後になって次々とその信憑性が裏付けられている。たとえば、今治市が公開した資料でも、国家戦略特区に今治市が指定される前から官邸が今治市職員と面談を行ったり、内閣府と何度も打ち合わせ「2018年4月開学」を前提に話を進めてきた過程が明らかになっているが、これらの事実と、文科省から出てきた文書は内容的にまったく齟齬がなかった。
こうした経緯を見れば、萩生田官房副長官と文科省、どちらが嘘をついているかは、もはや明々白々なのである。
菅官房長官は「安倍総理がないと言ってるから、ない」といつものパターン
しかし、ここまでパズルのピースが揃いながら、木で鼻をくくったような対応を繰り出しているのは、ご存じ菅義偉官房長官だ。
今朝の記者会見でも菅官房長官は「萩生田官房副長官からは『文書のような発言はなかった』と報告を受けている」「圧力が働いたり、行政がゆがめられたことは一切ない」の一点張り。「第三者による調査が必要ではないか」という記者の質問にも、「それぞれの調査は大臣が責任をもって行い、その結果を国会でも述べている」と述べ、安倍首相の説明を求める声にも「安倍総理大臣はまったく関与していないと明快に申し上げているので、それはない」と突き放した。
いや、決定的な新たな文書が出てきたからこそ、第三者の調査を行うべきではないかと言っているのだが、なぜその回答がすでに終わった国会での説明に帰着するのか。さらに、安倍首相がいくら「関与していない」と言っても、「総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた」とする証拠が出てきたのだ。「総理がないと言っているから、ない」で済むのなら、総理大臣のあらゆる不正が見逃される国だと言っているに等しいではないか。
しかも、菅官房長官は「新たに説明すべき問題があればその都度、真摯に説明責任を果たしていきたい」と、昨日の安倍首相の記者会見と同じフレーズを繰り返してみせた。そこに「真摯」な態度などカケラもないが、これで安倍首相はじめ官邸が口にする「説明責任を果たす」という言葉に何の重みもないということがよくわかるというものだ。
だが、この子どもでも言わない陰謀で塗り固められた唖然とする萩生田官房副長官の反論や、安倍首相や菅官房長官の不誠実極まりない態度を、国民はしっかり見ている。他方、文科省にはまだ“隠し球”があるという説もある。追い詰められることで、安倍政権はとことん醜悪な本性をさらけ出せばいいだろう。 
“安倍さまのNHK”に変化?  6/23
 「クロ現」総理圧力新文書スクープを後押しした上田新会長
萩生田光一官房副長官の直接関与と安倍首相が開学時期を切っていたことが判明した、加計学園をめぐる文科省の新文書。安倍首相が「腹心の友」のために、官邸を動かし、行政をゆがめ、国家戦略特区を利用して便宜を図っていたことが実証されたも同然だが、今回、もうひとつの衝撃が走った。それは、この新文書をスクープしたのがNHKの『クローズアップ現代+』だったことだ。
NHKといえば、籾井勝人会長時代、リニューアル前の『クロ現』で国谷裕子キャスターが菅義偉官房長官を集団的自衛権の憲法解釈変更をめぐり質問攻めにしたことで官邸が激怒。2016年3月で国谷キャスターを降板に追い込んだほか、露骨に報道内容に介入した結果、NHKの報道は完全に萎縮し、「安倍チャンネル」などと揶揄されてきた。
それが、ここにきて加計学園問題の決定打となる文書を突きつけた──。もっともこの報道までには、大きな障害があったらしい。
「今回のスクープを取ってきたのは社会部の文科省担当記者で、数日前には取材を終え、いつでも報道できる体制が整っていた。ところが、政治部出身の小池英夫報道局長の横槍が入って、国会閉幕後、しかも安倍首相の記者会見後に放送をずらされたんです。安倍首相や政権幹部が新たな材料で追及されてしまうのを避けるという忖度です。新文書の第一報が『クロ現+』だったのも同様で、政治部が主導権を握るニュース枠で第一報をやるのを拒否されたためです」(NHK関係者)
それでも、『クロ現』のこの新文書報道は籾井氏が会長だった時代なら、絶対に考えられなかったスクープ報道だ。以前なら、そのままお蔵入りどころか、取材前につぶされていただろう。
これだけではない。最近、NHKでは他にも、安倍政権の不正を報じる社会部発のニュースが時折、流されるようになった。たとえば、同じ加計学園をめぐる問題では、6月2日に他メディアに先駆けて、文科省の現役職員の証言というかたちで、「官邸の最高レベル文書は今も職員のPCなどに保管されている」事実を報じた。
上田良一NHK新会長が「国家権力に追随するのは望ましい形ではない」
“安倍さまのNHK”のこうした変化の背景にあるのは、今年1月にNHK新会長に就任した上田良一氏が理事会で発した発言だったという。
「上田会長は、就任してしばらくたった後、公共放送であるNHKの権力を追随する姿勢に対して海外メディアから予想以上に厳しい批判や疑問の声があがっていることを知って、理事会で“ジャーナリズムの使命を果たす必要がある”“調査報道にも力を入れていかなければならない”といった趣旨の発言をしたようなんです」(NHK関係者)
上田会長は、経営委員のひとりとして登壇した昨年5月の「視聴者のみなさまと語る会in函館」でも、「放送、ジャーナリズムが国家権力に追随するような形というのは、必ずしも望ましい形ではありません」と発言。この発言は受信料についての話題であったとはいえ、「籾井前会長よりは公共放送局としての意識をもっている」という声も局内に広がっていた。そこに、この発言があり、籾井時代から、現場の報道に圧力をかけまくっていた小池報道局長ら忖度官僚の圧力が弱まったということらしい。
「この発言は我々現場にも伝わっていて、籾井時代に牙を抜かれ、ガタガタにされていた社会部が息を吹き返した。少しでも、調査報道をやろう、権力チェックをやろうという空気が出てきた」(社会部記者)
だが、上述したように、これはあくまで籾井時代と比べた場合であって、けっして自由に報道できるようになったわけではない。社会部はたしかに頑張っているが、安倍首相の代理人、岩田明子記者が牛耳る政治部は相変わらず安倍政権の広報機関という姿勢を崩さず、相変わらず社会部の報道に圧力をかけて、政権批判潰しを続けている。
たとえば、NHKの社会部は5月、朝日新聞がスクープした最初の文科省内部文書についてもその存在と告発の動きをいち早くキャッチ、朝日より前に報道する準備を進めていた。ところが、これも政治部と小池報道局長の圧力によって、『文科省の審議会が加計学園の獣医学部設置に課題があると報告をまとめた』というニュースのなかで少し触れるという扱いにされ、肝心の『官邸の最高レベル』などの文言は黒塗りにされてしまったのだ。
また、社会部は文科省前事務次官の前川喜平氏が記者会見する前に独占インタビューを収録済みだったが、これも同様にお蔵入りをしている。
それでも社会部の政権不正追及は政治部と報道局長に潰され続けている
実は、こうした政治部の社会部に対する圧力は、今回の『クロ現+』の放送内容からも如実に伝わってきた。
たとえば、新文書の内容を報告するVTRを受けてのスタジオでは、社会部の大河内直人記者とともに政治部官邸キャップの原聖樹記者が出演。そこで原記者は「(国家戦略特区の手続きに)間違いが起きるはずがない」「規制を緩和したくない文科省」など、手書きのフリップを持ち込んでまで官邸の方針をそのまま垂れ流すように解説を行った。対して大河内記者は、原記者の解説を「表の議論」とし、今回発覚した新文書を「内閣府と文科省の水面下の交渉が記録された文書のひとつ」「公平性・透明性が保たれたかどうかは、こうした省庁間の交渉も含めて検証する必要がある」と“反論”。両記者は横並びで座りながら、真っ向から対立したのだった。
さらに同番組では、国家戦略特区諮問会議の民間議員で今回の獣医学部新設にもかかわった八田達夫氏の「どこを選ぶなんてことを贔屓するなんてことはない」「各省庁に対してリーダーシップを発揮できる制度」などという言い分まで放送。特区制度に疑問を投げかけた立命館大学の高橋伸彰教授の発言と“両論併記”するという忖度も見せた。
また、今回のNHKの報道に官邸は激怒しており、今後、官邸の意を受けた政治部、「忖度の塊」と評される報道局長がこれまで以上に圧力を強めるのは必定だろう。上田会長も「籾井氏よりはマシなだけ」で、「とてもじゃないが官邸に楯突くような人物ではない」というのが大方の見立てであり、事態はまったく楽観できる状況にはない。
ただ、それでも現場ではその官邸と政治部の圧力に抗おうという動きが広がっている。
たとえば、今回の『クロ現+』放送を受けて、20日に萩生田副長官が「不確かな情報を混在させてつくった個人メモ」と反論すると、21日にNHKは「行政文書であることは法的に疑いがない」という専門家による見解をニュースにするなど、再反撃に出た。これは最近のNHKではありえなかった姿勢だ。
社会部を中心に出てきたこうした動きは、官邸─政治部の力によって押し潰されてしまうのか。それとも、公共放送としてあるべき姿を取り戻し、“安倍チャンネル”という汚名を払拭できるのか。正念場にあるNHKの状況を注意深く見守る必要がある。
NHKが国会中継しないのは、政治部と官邸の判断だった 6/28
先週行われた前川喜平・前文部科学事務次官の記者会見に対抗し、26日、国家戦略特区諮問会議の八田達夫座長や竹中平蔵氏、坂根正弘氏といった民間議員、同ワーキンググループの原英史委員らが記者会見を開催した。
案の定、彼らは「岩盤規制の改革がようやく実現した」「獣医学部新設は民主党政権の時代も含めて長年の懸案だった」(八田氏)、「文科省からは需給見通しが何も出てこなかった。(文科省は)政策論議に敗れている」「総理自身から特別の優遇をしろとかそんな要請はなかった。いや、そんなことを総理がおっしゃることはありえない」(竹中氏)と、まったく安倍官邸と同じ言い訳を重ねた。竹中氏にいたっては、現在起こっている疑惑の声を「歪められた議論だ」、前川氏に対しても「あなたたちが行政を歪めてきたんでしょう」と一蹴。さらに「(獣医学部を)相当多くつくってもいいよね、という印象をもっていた」と言い出し、安倍首相の「全国展開」宣言をフォローして見せたのだった。
まったくよく言うよ、である。本サイトの既報の通り、国家戦略特区諮問会議は神奈川県で家事支援外国人受入事業の実施を認めたが、この事業者に選ばれた企業は竹中氏が取締役会長の座に就いているパソナだ。さらに、同じように農業特区に選ばれた兵庫県養父市でも、竹中氏が社外取締役を務めるオリックスの子会社・オリックス農業が参入している。しかも、竹中氏は諮問会議で民間議員として、「この農業生産法人の問題こそが岩盤中の岩盤、ザ・岩盤」「これをどう突破できるかというのが本当にいろいろな意味での象徴になろうかと思います」と強くプッシュしていたことが議事要旨に残されている。
つまり、安倍首相が特区制度を利用してお友だちの学校を優遇したように、竹中氏は自分が関係する企業のために利益がもたらされるよう“自作自演”していたのだ。そのくせ、いけしゃあしゃあと「歪めているのは前川氏やメディア」などと非難するのだから、その厚かましさは安倍首相と同等だ。
このように、どこから見ても安倍官邸と口裏を合わせた茶番に過ぎず、国民の疑問に何も答えない退屈極まりない自己正当化会見だったわけだが、さすがにニュースバリューがないと判断したのか、昨晩〜今朝のニュース・情報番組で触れられることはなく、あの日本テレビやフジテレビさえスルー。しかし、そんななかにあって、あの局だけは違った。NHKだ。
NHKは前川前次官の会見は中継せず、竹中平蔵ら特区諮問会議民間議員の逆ギレ言い訳会見を生中継
NHKは26日夜の『ニュースウオッチ9』でさっそく会見の模様を伝え、昨日朝の『おはよう日本』でも報道。「あなたたちが行政を歪めてきたんでしょう」という竹中氏の発言を紹介する場面では、パソナ取締役会長ではなく「東洋大学 竹中平蔵教授」なる肩書きを出す始末で、竹中氏が批判に値する行為を特区で行ってきたことを覆い隠して紹介したのだ。
しかも、NHKの忖度ぶりはこれだけに留まらなかった。会見の模様を番組内で報じただけではなく、なんとネットで生中継まで行ったのだ。ちなみに、注目度が段違いだった先週の前川氏の記者会見で、NHKは中継など行っていない。
前川氏は記者会見で「国家権力とメディアの関係」に言及した際、「私に最初にインタビューを行ったのはNHKです。ですが、その映像はなぜか放送されないままになっています」と述べ、官邸への“忖度”が働いているのではないかと指摘したが、今回“反前川会見”を生中継するなど力を入れることで、まさにNHK自らが裏付けたのだ。
だが、一方でNHKは「一枚岩」ではないところも見せている。26日夜の『時論公論』では、「加計学園問題 丁寧な説明は」と題しNHKの西川龍一解説委員が加計疑惑を解説。民間議員の会見を取り上げながらも、「疑問を突きつけられた一方の当事者である内閣府や官邸が疑問を払拭するために当事者意識をもって対応していないのではないかというのが前川氏の考え」とし、萩生田光一官房副長官の関与が疑われる文書についても「(文科省職員が)誰からも言われなかったことを職員が文書に残すというのは考えにくい」と疑問視。安倍首相の「全国展開」発言に対しては、「いま国民の疑念を招いているのは半世紀ぶりに獣医学部の新設を認めるに足る議論が公平公正になされたのかということで、ほかでも獣医学部の新設を認めれば払拭されるということにはなりません」と一刀両断したのだ。
NHKが国会中継するかしないか決めているのは、政治部だった!
前川氏のインタビューをお蔵入りにする一方で、萩生田文書を『クローズアップ現代+』がスクープ。反前川会見に力を入れながらも、同日には安倍首相の対応を厳しく批判する──。このような“せめぎ合い”が起こっている背景にあるのは、既報の通り、安倍応援団と化した政治部と、それに反旗を翻す社会部というNHK内の抗争だ。
現に、『クロ現+』で萩生田文書をスクープした記者は文科省担当だったが、今回、安倍首相をはじめ関係大臣たちの対応を批判した西川龍一解説委員も旧文部省を担当した社会部出身者である。
しかし、対する政治部は、同じ報道局内でも強い権限を握っている。そのため前川氏インタビューも政治部によって放送が潰されたのだが、さらに政治部をめぐっては、とんでもない話が取り沙汰されている。
それは、今週発売の「サンデー毎日」(毎日新聞社)に掲載されている、東京大学名誉教授である醍醐聰氏の証言だ。醍醐名誉教授は参院予算委員会での共謀罪法案審議を中継しないのかとNHKの視聴者窓口に問い合わせたところ、責任者はこう答えたのだと言う。
「編成局と政治部が協議して判断する」
この返答について、醍醐名誉教授は「『番組制作部門と取材部門は互いに独立を保つ』と規定したNHKの放送ガイドラインに抵触する可能性があります」と指摘しているのだが、これは大問題だ。
いまやNHKの政治部は、岩田明子記者を筆頭に、安倍官邸と距離を保つこともなく広報部隊と化している。その政治部が編成に口を挟んでいるという事実は、放送の決定権を官邸が握っていると言っても過言ではない。しかもこれは、放送法に規定された番組編集の「政治的公平」を超えて、国会中継という公共放送局の根幹にかかわる問題だ。
NHKはこの国会中継の問題についてきちんと説明する必要があるが、それでなくてもNHK政治部の安倍官邸への隷従ぶりは、いわば総理による公共放送の私物化を許している状態にほかならない。この暴走に歯止めをかけるためにも社会部の奮闘には今後も大いに期待したいが、同時に政治部には恥を知れと言っておきたい。 
 
国家戦略特区の闇 2017/6

 

「岩盤規制を壊す」とは新利権を“アベ友”に与えること
加計学園問題でにわかにクローズアップされた「国家戦略特区」。“アベ友”だから便宜が図られ、獣医学部新設が認められたのではないかという“国家の私物化”疑惑が渦巻いているが、そうした怪しい案件は加計だけじゃない。
そもそも、第2次安倍政権で新たに創設された「国家戦略特区」(13年6月閣議決定)は、アベノミクスの第3の矢である「成長戦略」の柱として打ち出されたもの。「地域を限定した大胆な規制緩和や税制面の優遇で民間投資を引き出し、“世界で一番ビジネスがしやすい環境”を創出する」と、仰々しく謳っている。
ところが、先月22日、国家戦略特区諮問会議で10区域、23項目の進捗状況についての評価が発表されたが、“世界で一番”に当てはまるような経済波及効果があったのは、東京圏の「都市再生プロジェクト」4兆1000億円ぐらいである。
「経済成長を目的として外資を呼び込むということだったのに、外資は1社も入っていないし、実際にやっている事業は地域限定のチマチマしたものばかり。ドラスチックな新産業や地域開発もない。東京圏の都市再生プロジェクトがうまくいっているのは、特区だからというより、2020年に向けての東京五輪効果があるからでしょう」(「国家戦略特区の正体」の著者で立教大教授の郭洋春氏)
こうした寂しい結果になるのは、「国家戦略特区」の本当の目的は安倍首相の取り巻きが私的なビジネスチャンスを得ることであり、そのために「特区制度」を利用しているだけだからなのではないか。
「特区制度」が始まったのは小泉政権の「構造改革特区」からだが、もともとは地域がアイデアを出して国に提案し、国が認定するボトムアップの制度だった。ところが、「国家戦略特区」でトップダウン方式になり、似て非なる制度にガラリと変わった。「首相のリーダーシップで岩盤規制を打ち壊す」と言えば聞こえはいいが、その実態は、既得権益を壊す一方で新たに別の人に権益を与えるようなものなのだ。
実際、全閣僚が参加した構造改革特区とは違って、国家戦略特区の諮問会議メンバーは、首相以下、閣僚は4人だけ。そこに民間議員が5人加わるが、そんな少人数で、法の網がかからない“特別扱い”を決めてしまっている。
小泉時代から規制改革の旗振り役だった竹中平蔵氏(東洋大教授)が入っていることもミソで、現に竹中氏にも私物化疑惑が浮上している。
当然、国会でも「利益誘導」が問題視され、先月16日、衆院の地方創生に関する特別委員会で可決された国家戦略特区法の改正案に次のような付帯決議がつけられた。
〈民間議員等が私的な利益の実現を図って議論を誘導し、又は利益相反行為に当たる発言を行うことを防止するため、民間企業の役員等を務め又は大量の株式を保有する議員が、会議に付議される事項について直接の利害関係を有するときは、審議及び議決に参加させないことができるものとする〉
これにはさすがに、自公の与党議員も賛成していた。
国際医療福祉大学 医学部新設も“1校だけ”の特別扱い
「成田市ほど時間はかけられない。これは官邸の最高レベルが言っていること」――。加計学園の獣医学部新設を巡る文科省文書に登場する成田市。安倍官邸が国家戦略特区の“前例”として倣った国際医療福祉大(国福大)の医学部新設のことである。
今年4月、国福大医学部の開設記念式典が成田市で開催された。山本幸三規制改革担当相、森田健作千葉県知事らが来賓として出席し、安倍首相もビデオメッセージを寄せた。この医学部開設では、成田市が京成電鉄から20億円で土地を購入し、国福大に無償で貸与。校舎の建設費用も160億円の半分を千葉県と成田市で拠出している。
「以前、栃木で医学部新設計画を進めていましたが、自治医大や独協医大があり断念しました。看護や保健の学部はありますが、自前で医学部を持つことは長年の悲願でした」(国福大の広報部) 医学部新設は1979年の琉球大学以来のこと(東日本大震災の復興目的で特例的に認められた東北医科薬科大を除く)。90年以降、国の方針で医学部新設は不可能だった。
国福大の悲願を可能にしたのが、理事長の政治力と国家戦略特区だ。
「国福大の高木邦格理事長は政官界、マスコミに幅広い人脈を持ち、『政商』の異名を持つ。もともと福岡で高木病院を経営していたが、1990年ごろに自民党の実力者だった渡辺美智雄氏(元副総理)に接近し、渡辺氏の地元の栃木県に国際医療大(保健学部)を開設。その後は山王病院、JT系の病院買収など拡大してきた。森喜朗元首相、自民党の高村副総裁、菅官房長官など安倍政権にも近い」(政界関係者)
医学部を新設できない理由は医師の需要見通しが飽和状態だからだ。つまり“普通”の医学部では認められない。そこで「特区」が使われた。国家戦略特区の一環として「世界最高水準の国際医療拠点」を前面に打ち出した新設方針を、15年7月31日に内閣府などが決定。ただし「方針」にはこうある。
<養成された医師が当初の目的に反し、一般の臨床医として勤務するようであれば、長期間にわたり社会保障制度に影響を及ぼす可能性がある。医学部を新設するとしても、1校とする>
医師過剰を懸念しながらも、“1校だけの特別扱い”を明言。果たして、公募に手を挙げたのは国福大1校だけだった。
「本学医学部は、政府が決めた厳しい条件をすべてクリアし、ルールに則した手続きを粛々と進めた結果として、開設に至りました」(広報部)というが、“国福大ありき”のデキレースだったとみられても仕方がない。
大学側は「授業も英語で行い、留学生も140人中20人も受け入れている」(広報部)と“国際性”を強調する。しかし一方で、開学直前の3月、千葉県と協定を結び、「卒業生の千葉県医療機関への就業促進」などを取り決めた。これでは、“普通の医学部”になりかねない。まさに「加計」と同じ構図だ。
「ミスター特区」竹中平蔵氏が諮問会議議員の利益相反
加計学園問題をきっかけに、国家戦略特区の実態が明らかになってきた。「岩盤規制の打破」を名目に、仲間内や特定企業に利益を分配してきた疑惑である。それを、わずか4人の閣僚と、5人の民間議員がトップダウンで決めてしまうのだ。実に問題の多い制度なのだが、“ミスター特区”ともいえる存在が、東洋大教授の竹中平蔵氏である。
「小泉政権の構造改革特区の時代から、常に特区制度に寄り添い、レントシーカー(利権屋)として暗躍してきた。安倍首相に特区制度を提言した張本人ともいわれ、もちろん国家戦略特区の諮問会議にも名を連ねています」(自民党関係者)
昨年7月、神奈川県の特区で「家事支援外国人受入事業」が規制緩和された。その事業者に認定されたのが、大手人材派遣会社のパソナだ。竹中氏はパソナグループの会長を務めている。諮問会議のメンバーが、自分の会社に有利になるような規制改革をし、実際に受注しているわけだ。
「国家戦略特区の正体」の著者で立教大教授の郭洋春氏が言う。
「神奈川県の家事支援外国人受け入れは、これまでにダスキンやポピンズ、ニチイ学館など6社が認定されていますが、パソナは最初から決まっていて、受け入れ予定人数も多い。李下に冠を正さずということからすると、お手盛り感は否めず、利益相反に見えます。竹中氏は強硬な新自由主義者で、『完全自由競争が最も経済を発展させる』が口癖ですが、実際にやっていることは、コネや肩書を利用した非・自由競争によるビジネスです」
竹中氏は一体、どういう立場で諮問会議に参加しているのか。学者なのか、企業の代表者なのか。内閣府に質問状を送ったが、期限までに回答はなかった。 
農業特区に指定された兵庫県養父市でも、竹中氏が社外取締役を務めるオリックスの子会社「オリックス農業」が参入している。この企業による農地所有は加計学園と同様、内閣府が「官邸の意向」をチラつかせて、かなり強引に進めたようで、農水省は不満をため込んでいるという。
今国会で成立の国家戦略特区改正案は、多分に竹中氏の“特区ビジネス”を意識したものだ。民進党議員が「竹中外しの声は与党からも上がった」と明かす。
改正案の付則には「民間議員が私的な利益の実現を図って議論を誘導し、または利益相反行為に当たる発言を行うことを防止」「民間企業の役員等を務めまたは大量の株式を保有する議員が、会議に付議される事項について直接の利害関係を有するときは、議決に参加させない」と明記された。特区ビジネスで私腹を肥やしてきた政商への退場勧告といえる。
現行法でOKなのに…過疎地でライドシェア緩和のデタラメ
「岩盤規制の打破」を口上に始まった国家戦略特区。タクシーの業界団体が「白タク行為の合法化につながる」と猛反発するのをヨソに、2016年5月にいわゆる「ライドシェア」(相乗り)が規制緩和された。「過疎地等での自家用自動車の活用拡大」との名目で、公共交通機関の空白地域で観光客の足を増やそうというのだが、その趣旨自体がトンチンカン。推進論者たちの主張は矛盾だらけなのだ。
ライドシェア緩和が一気に進んだのは、特区諮問会議民間議員の竹中平蔵氏(東洋大教授)や特区ワーキンググループ座長の八田達夫氏(アジア成長研究所所長)ら5人が実現を求める連名文書をまとめてからだ。15年9月に諮問会議に提案すると、翌月には議長を務める安倍首相が検討を指示。わずか半年で特区法がスピード成立した(施行は16年9月)。
「推進派は訪日旅行者をはじめとする観光客の利便性アップを引き合いに出しますが、彼らが行きたがるのは人が多く、にぎわっているスポット。過疎地域を目指す旅行者はレアケースと言っていいでしょう。つまり、推進派の本丸は多くの利用が見込まれる都市部でのライドシェア展開で、過疎地サービスは入り口にすぎないのです」(「国家戦略特区の正体」の著者・立教大教授の郭洋春氏)
そもそも、特区で緩和しなくても、過疎地でのライドシェアは現行法で運用可能だ。15年4月の道路運送法施行規則の改正で、著しく交通が不便な自治体は市区町村長が認めれば、観光客であっても有料で自家用車に乗せることができる。
これを活用しているのが京都府北部の京丹後市。配車アプリ世界最大手の米ウーバーと組み、16年5月にNPO法人を通じた「ささえ合い交通」をスタートさせた。もともと特区に申請したが、諮問会議はナシのつぶてだったようだ。
「15年9月に(特区を担当する)内閣府地方創生推進事務局に説明資料を提出し、正式に手を挙げましたが、その後どうなったのか……。住民からの要望が強く、待ったなしの状況だったので、現行法での実現にシフトしました」(京丹後市企画政策課)
首をひねるのが、内閣府の対応だ。「いわゆるライドシェアの規制緩和に申請している自治体はありません」(事務局)と言うのである。
一方で、竹中氏らと一緒になってライドシェアを旗振りするのが、楽天の三木谷浩史会長が代表理事の「新経済連盟」。特区提案直前の15年7月と施行直後の16年9月に新経連事務局が特区ワーキンググループのヒアリングに応じている。16年12月には「ライドシェア実現に向けて」という政策提言を経産相、国交相、規制改革相など、所管5大臣宛てに提出した。東京五輪開催を控え、〈日本を「遅れた国」にしないために〉と訴えている。
「三木谷氏はライドシェア導入に非常に熱心です。楽天が海外の配車アプリ企業に投資しているのと無関係とは思えない。諮問会議が動きだす前の15年3月に米リフトに3億ドルを出資。スペインのキャビファイ、ドバイのカリームにも出資しています」(前出の郭洋春氏)
ライドシェア事業への出資状況や国内展開について楽天に質問したが、「出資については非開示情報に該当するので回答できません。国内展開に関しては、現時点で公式に発表しているものはございません」(広報部)という。加計学園と同様に、我田引水のにおいがプンプンする。
特区委員が会合で自グループ戦略を売り込むメチャクチャ
「保険外併用療養推進については、活用実績が少ないというご報告をいただいております」
「保険外併用療養の特例については、その前提条件の見直しが今後必要であると思います」
先月16日、中央合同庁舎8号館講堂。「国家戦略特別区域会議の合同会議」で、阿曽沼元博・国家戦略特区ワーキンググループ(WG)委員がこう声を張り上げた。
厚労省は保険診療と保険外診療の併用について、一部の例外規定(評価・選定療養)を除いて原則として禁止している。保険外負担が一般化することで、患者負担が不当に拡大する可能性や、安全性や有効性が確認されていない医療が保険診療と併せて実施される恐れがある――というのが理由だが、阿曽沼委員は、特区による保険外併用療養拡大の必要性を強く訴えたのだった。
保険外併用療養の拡大によって難病治療の選択肢を増やすべき――。この主張を真正面から完全否定する人はいないだろう。ただし、その発言者が特区事業の「利害関係者」に該当する可能性があるとすれば、受け取り方は変わってくる。
「医療法人社団滉志会・瀬田クリニックグループ代表 順天堂大学客員教授」。阿曽沼委員が持つもうひとつの顔だ。瀬田クリニックと順天堂大は昨年12月19日の国家戦略特区諮問会議で、高度医療提供事業として19床の新規病床整備が認められた。その瀬田クリニックがさらに特区に提案を続けている要望のひとつが〈保険外併用拡大〉だ。
つまり、議事録通りに解釈すれば、会議で“行司役”を担うべきWG委員が、同時に自らの要望を売り込んで相撲を取っているとしかみえない。くしくもこの日(先月16日)、衆院地方創生特別委で採択された国家戦略特区法改正案の付帯決議では、国家戦略特区諮問会議の中立性を確保する観点から「民間議員が私的な利益の実現を図って議論を誘導し、利益相反行為に当たる発言を行うことを防止する」との提言が盛り込まれた。付帯決議の趣旨に鑑みれば、阿曽沼委員の発言は利益相反行為に当たるのではないか、と受け取られても仕方ないだろう。
しかも、阿曽沼委員が特区会合で保険外併用拡大を唱えていることに対しては、医療界からも疑問の声が出ている。
「医師が専門的見地から医療について発言するのは理解できる。しかし、阿曽沼氏は医師ではありません。富士通の営業マン時代に東大付属病院の医療情報システムを担当し、顧客だった東大教授が国際医療福祉大(国福大)の副学長に就いたのがきっかけで同大の教授に転身した。いわば専門医療の分野は畑違いであり、02年に内閣府の生活産業創出研究会委員となり、その後、規制改革会議委員を務めたことで国家戦略特区にも食い込んできたのです」(医療業界関係者)
阿曽沼委員は黒岩神奈川県知事と近しく、黒岩人脈を通じて菅官房長官や和泉洋人首相補佐官と面識もあるというから、疑念はさらに深まる。
「医学部新設が認められた国福大が成田市と一緒に特区申請したように、プレーヤー自身が特区申請するから疑念を持たれる。(WG委員という)行司が相撲を取るから、おかしなことになるのです」(医療ガバナンス研究所の上昌広理事長)
阿曽沼委員の言動は利益誘導ではないのか。瀬田クリニックに質問状を送ると、「ご質問の趣旨は承りましたが、阿曽沼としては特にお答えすることはないと申しております」と書面で回答。木で鼻をくくったような回答は加計学園と同じではないか。
自民党議員の一族が経営する病院が事業者に選ばれていた
広島の整形外科からスタートし、ここ20年ほどで全国に急拡大している医療法人「葵会」。傘下の「AOI国際病院」は、神奈川県川崎市にある。羽田空港から多摩川を渡り、川崎市に入ったあたりに位置し、このごろはやりの医療ツーリズムには、ちょうど良い立地なのかもしれない。
2014年、この「AOI国際病院」が、国家戦略特区の事業者に認定された。
「以前は国が運営する社会保険病院だったのですが、2012年に葵会が、厚労省の年金・健康保険福祉施設整理機構から60億円で払い受けた。慢性的な赤字の病院で一般病床利用率は50%を切っていたのですが、葵会が人員を補充し、心臓カテーテル、がん治療、人工透析、回復期リハビリなど、診療の幅を広げて黒字化に取り組んだ。そして2014年12月、循環器領域での最先端医療やがん免疫細胞治療、医療ツーリズムなどを実施する、東京圏の国家戦略特区の事業者として病床規制の緩和を認定されています」(医療ジャーナリスト)
理事長の新谷幸義氏は、業界では剛腕経営者として知られる人物だという。確かに経営手腕は素晴らしいかもしれないが、葵会の特区認定には、見過ごせないエピソードが付きまとう。加計学園の加計孝太郎理事長がそうだったように、新谷ファミリーも安倍首相と親しいのだ。
最もわかりやすいのは、今年4月23日に帝国ホテルで盛大に執り行われた次男、正義氏の結婚式だ。この披露宴に、安倍晋三首相自らが出席している。
実は正義氏は、永田町でさえあまり知られていないが自民党の国会議員である。2012年12月の総選挙で北関東ブロックから自民党の比例単独で出馬し初当選、2014年12月には一族の出身地である広島に居を移し中国ブロックでの比例単独で再選した。帝京大学医学部を卒業した後、東大経済学部にも入学し、卒業している。
「国会会期中なのに、忙しい安倍首相が披露宴に最初から出席し、花嫁の見送りまでずっといたので他の来賓もびっくりしていました。挨拶の中で『正義さんの待遇について何か忖度のようなことはありません』などと冗談まで飛ばしていました。ただ、正義さん本人は無菌状態で育ったような人。安倍さんとのお付き合いはお父さまですよ。安倍さんが若い頃からずっと応援していたのだそうです。お父さまは、有名人が病気で困ったときに助けたりして人脈も広い方なんです」(新谷理事長の知人)
つまり、自民党議員の一族が経営する医療法人が、特区の事業者に選ばれているのだ。しかも、新谷正義議員は、特区認定を受けた葵会の理事を現在も務めている。
新谷議員が特区の認定に関わったことはあるのか、どのようないきさつがあったのか、なかったのか、議員事務所に問い合わせたが「公開されている情報がすべてです」と、そっけない答えが返ってきた。
 

 

 
テレビ局の「忖度」の裏に安倍政権の圧力 2016/7/6

 

今回の参院選に際して、自民党は弁護士を引き連れて放送局に乗り込み、公職選挙法違反の政党CMを流せと圧力をかけた。安倍政権において、こうしたメディア圧力はもはや日常茶飯事になっている。そして、テレビ局は完全に飼いならされ、圧力をかけられる前に自ら政権の意向を忖度し、過剰な自主規制を行っている。
ところが、これまで本サイトが何度も具体的に報じてきたように、テレビメディアにかかわる当事者たちからは、なかなか具体的な話が出てこない。安倍政権に追い詰められてキャスター辞任に追い込まれたテレビ朝日『報道ステーション』の古舘伊知郎氏にしても、TBS『NEWS23』の岸井成格氏にしても、最後まで「政治的な圧力はなかった」「特定の圧力を感じたことはない」という姿勢を崩さなかった。結局、これからもテレビの世界で生きていくことを考えると、本当のことは言えない、ということなのだろう。
しかし、そんななか、いまも現役で数々のテレビ番組に出演中の有名ジャーナリストが、この圧力問題についてかなり踏み込んだ証言をした。
そのジャーナリストとは池上彰氏。池上氏は緊急復刊された「朝日ジャー ナル」(朝日新聞出版)における元共同通信社編集主幹の原寿雄氏との対談で、テレビ局の自主規制、さらに政権からの圧力の詳細を具体的に語っているのだ。
池上氏はまず、「『報道の自由度』と言いますが、国が報道の自由を制限しているか、それとも報道機関の側が勝手に自主規制したり、忖度したりして、自ら自由を狭めているのか。日本では後者が多いような気がします」と指摘した上で、古巣のNHKの体たらくを嘆く。
「高市早苗総務相が、政治的公平性を欠く放送を繰り返した放送局に電波停止を命じる可能性に言及した際、ジャーナリストらが抗議会見を開きましたが、NHKは取材にも行かなかった。情けないですね」
しかし一方で、池上氏は、この「忖度」はメディアが勝手にやっているわけではなく、それを生み出したものがあることをはっきり指摘している。
「最近までは権力を持つ側は『メディアに圧力をかけてはいけない』というのが共通認識でした。(略)ところが、安倍政権になってからは、自民党はおもなニュース番組をすべて録画して、細かい部分まで毎日のように抗議し、訂正を求め、注文をつけてくる。すると、テレビ局は『面倒くさい』となる。対応が大変で、次第に『文句を言われない表現にしようか』となってしまうのです」
つまり、安倍政権による大量の抗議が、テレビ局を萎縮させ、局内に「忖度」の空気を蔓延させているというのだ。
また、池上氏はネット右翼による放送局への抗議電話、いわゆる「電凸」についても、このように語っている。
「さらに深刻なのは『電凸』です。『電話で突撃する』という意味のインターネット用語ですが、一般の読者や視聴者が、気に食わない報道があると、スポンサー企業に一斉に抗議電話をかける。『不買運動をする』なんて言われるとビックリするんですね。昨年6月に自民党の議員が、マスコミを懲らしめるためにスポンサーに圧力をかけることを提案して、問題になりました。それも実際にはすでに行われているんです」「現代的に言うと『反知性主義』という言葉に言い換えることができるのではないでしょうか。冷静に議論をするのではなく、『マスゴミ』『反日』と罵倒して、数の力で封殺する。その状況でも冷静に立ち止まって議論することが、メディアの役割ですよね」
池上氏は4月27日放送の『荻上チキ・Session-22』(TBSラジオ)に出演した際にも、こんな自身の体験談を明かしていた。
「私も『(週刊)こどもニュース』をやっているころにですね、まあ、それこそ大きな政治の問題をやるわけですよね。すると、いろんな人から抗議の電話がかかってくるわけです。その応対に1時間から2時間、ずっと相手をしているわけですね。すると、面倒くさくなりますよね。次からやめておこう……ああ、こうやっていろんなテレビ局はこういう微妙な話を取り上げなくなっているんだ、って感じましたね」
ネトウヨの「電凸」に放送局が屈するとは、それこそ涙が出るほど情けない話だが、しかし、この「電凸」にしても、自民党、とくに安倍氏周辺が下野した時代に、自民党ネットサポーターズクラブ(J-NSC)というかたちでネトウヨを組織し、その下地をつくってきたものだ。
そして、第二次安倍政権が成立すると、自民党や安倍政権にちょっとでも批判的な報道をしたら、J-NSC会員や安倍シンパのネトウヨたちが大挙してネットや「電凸」で抗議を展開するという体制ができあがってしまった。
池上氏も「朝日ジャーナル」の対談で、この大量の抗議の流れに安倍政権の影響があることを示唆している。
「第1次安倍政権(06〜07年)の時に、メディアへの抗議が増えたんです。ところが、安倍さんが辞めた後にパタリとなくなりました。福田政権、麻生政権、民主党政権の時は抗議が大量にくるようなことはなかった。それが第2次安倍政権(12年〜)になって復活しました」
さらに、注目すべきなのは、池上氏自身が直接的な圧力を体験したことも証言していることだ。
「私が特定秘密保護法についてテレビで批判的な解説をした時も、すぐに役所から『ご説明を』と資料を持ってやってきた。こういうことが日常的にあるわけです」
ようするに、安倍政権はこうした抗議を繰り返すことで、メディアを揺さぶって、その自立性を奪い取り、いちいち命じなくとも勝手に「自主規制」「忖度」してくれる状況をつくりだしてしまったのだ。
そう考えると、私たちはいま、このメディア報道の問題で安易に「忖度」という言葉を使うべきではないのかもしれない。「忖度」というマジックワードによってメディア側の“自己批判”に終始してしまえば、その根元はどこから来ているのか、という問題の本質を見失ってしまうからだ。
メディア人がまずやるべきことは、圧力の存在をまず認めること。そのうえで、圧力とどう闘うか、圧力をどうかわすかを考えるべきなのだ。
「忖度の『そ』の字もないような番組をつくってみたいと思いました」
これは、今年6月、優れた放送番組に贈られるギャラクシー賞の授賞式で、テレビ部門の優秀賞に選ばれたNNNドキュメント『南京事件 兵士たちの遺言』(日本テレビ)のディレクター・清水潔氏が語った言葉だ。
実は、この『南京事件 兵士たちの遺言』は、放送日の新聞ラテ欄では『しゃべってから死ぬ 封印された陣中日記』というフェイクのタイトルがつけられており、そこに「南京」の文字はなかった。つまり清水氏は、南京事件を扱うにあたり、政権や上層部から余計な「圧力」がかかるのを避けるために、こうした策を講じたと考えられるのだ。このしたたかな姿勢こそ、テレビ局の現場で求められているものに他ならならないだろう。
池上氏はこの2、3年、新聞紙面や雑誌で舌鋒鋭く安倍政権を批判してきた。今回の「朝日ジャーナル」でも、安倍自民党の惹句である「日本を、取り戻す。」について、こうチクリと刺している。
「(安倍首相が)取り戻したい『日本』とは何なのか。いま、米国では『メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン(米国を再び偉大な国に)』と言うトランプ氏が大統領候補になりそうですが、安倍さんは『メイク・ジャパン・グレイト・アゲイン』と言っているようなもの。中身はいろんな意味で受け取れるわけです」
できれば、この鋭いツッコミをテレビでも見せてほしい。池上氏はこの参院選投票日でも選挙特番のキャスターをつとめる予定だが、安倍首相と対峙したときは、ぜひこれ以上の辛辣なセリフをぶつけてほしいものだ。
 
森友学園

 

森友学園と安倍昭恵氏
学校法人「森友学園」(籠池泰典・理事長)が4月に開校予定の小学校「瑞穂の国記念小学院」(大阪府豊中市)の公式サイトから、名誉校長として紹介されていた安倍晋三首相の妻・昭恵氏の顔写真と挨拶文が2月23日までに削除された。同学園をめぐっては、小学校用地として購入した大阪府豊中市の国有地の価格が、近隣国有地の約1割程度(1億3400万円)だったと公表され、土地取得の経緯について疑問の声がでている。
昭恵氏「優れた道徳教育」「日本人としての誇りを持つ子どもを育てる」
これまで「瑞穂の国記念小学院」の公式サイト内の「ごあいさつ」のページでは、昭恵氏を「名誉校長 安倍昭恵先生」「安倍晋三 内閣総理大臣夫人」として顔写真とともに紹介していた。ところが23日午後、昭恵氏の写真と挨拶文が削除されていた。
削除された挨拶文 「籠池先生の教育に対する熱き想いに感銘を受け、このたび名誉校長に就任させていただきました。瑞穂の國記念小學院は、優れた道徳教育を基として、日本人としての誇りを持つ、芯の通った子どもを育てます。 そこで備わった「やる気」や「達成感」、「プライド」や「勇気」が、子ども達の未来で大きく花開き、其々が日本のリーダーとして国際社会で活躍してくれることを期待しております。」
「安倍晋三記念小学校」めぐり首相の答弁にズレ?
森友学園をめぐっては、「安倍晋三記念小学校」の名で学校建設の寄付金を募っていたことでも物議を醸している。17日の衆院予算委員会では、民進党の福島伸享議員が安倍首相に対し、森友学園が自身の名前で寄付金を集めていたことを知っていたかと質問した。安倍首相は「いま話を伺って、初めて知った」と答えた上で、以下のように述べた。
「(2007年の内閣総辞職後に)私の考え方に非常に共鳴している方から、小学校を作りたいので『安倍晋三小学校にしたい』という話がございましたが、お断りをしています。私はまだ現役の国会議員だし、総理大臣を辞めたけれど、復帰することを諦めたわけではないので。現役の政治家である以上、私の名前を冠にするのはふさわしくないし、私が死んだ後であればまた別だけれども、何か冠をしたいのであれば、私の郷土の先輩である、例えば吉田松陰先生の名前をつけられたらどうかという話をしました。繰り返して申し上げますが、私も妻も一切認可にも国有地の払い下げにも関係ないわけであります」
ところが、2015年9月に森友学園が運営する塚本幼稚園(大阪市淀川区)で講演した昭恵氏は、「(学園理事長の籠池氏から)安倍晋三記念小学校にしたいと当初は言っていただいていた」と述べた上で、「主人が、総理大臣というのはいつもいつもいいわけではなくて、時には、批判にさらされる時もある。もし名前をつけていただけるのであれば、総理大臣を辞めてからにしていただきたい」などと発言していたと、2月21日にテレビ東京のニュース番組「ゆうがたサテライト」が報じた。
また昭恵氏は講演の中で、「こちらの教育方針は大変、主人も素晴らしいと思っている。(卒園後)公立小学校の教育を受けると、せっかく芯ができたものが揺らいでしまう」と、公立学校の教育内容に否定的な発言をしていた。
塚本幼稚園は、戦前の「教育勅語」を暗唱させるなどの教育で知られる。同園をめぐっては、「よこしまな考え方を持った在日韓国人・支那人」といった内容の文書を保護者に配布していたことが判明し、大阪府私学課が民族差別の疑いがあるとして調査に乗り出している。
「国有地を200万円で売却している」と指摘する声も
森友学園が国有地を購入した経緯は、国会でも疑問視する声が出ている。
2016年4月、国土交通省大阪航空局は、国有地の土壌汚染除去費として森友学園に1億3176万円を支給。その一方で財務省近畿財務局は2016年6月、この国有地を鑑定価格の9億5600万円から「ごみ撤去費」として見積もった約8億などを差し引き、1億3400万円で森友学園に売却。朝日新聞デジタルによると、近隣国有地の10分の1の価格だという。
民進党の玉木雄一郎議員は20日の衆院予算委員会で、「近隣地は約14億円で売っているのに、国有地を200万円で売却している。異常だ」と指摘した。 
 
報道 1 2月中旬
危うし安倍スキャンダル? 2017/2/14
国有地払下げ事件が発覚
ネットにすごい情報が飛び交っている。日刊ゲンダイで確認したのだが、朝日新聞やロイター通信までが報道している。「危うし安倍スキャンダル」を連想しても不思議ではない。国有地払下げ事件の発覚である。国有地払下げを特別配慮したとなると、これは権力の乱用しか考えられない。教育勅語を園児に暗唱させている学校法人だと、日本会議とも連なる。本日の議会とメディアの力量が問われる春一番になるのか。 
朝日・ロイター・日刊ゲンダイが報道
日刊ゲンダイの後追い記事がネットで大炎上中である。久々の一大スキャンダルの発覚と、国民誰しもが感じるだろう。朝日が2月9日付で、大きく報道しているという。ロイター通信は、朝日の前か後ろか、筆者にはわからないが、追及次第では政権の命運を左右する、世紀の政治スキャンダルに発展しかねない。報道によると、この国有地払下げ事件は、実に荒っぽく大胆である。小選挙区制下の3分の2議席は、腐敗を招き寄せる。拙著「小選挙区制は腐敗を生む」(エール出版)で指摘した通りである。官邸かその周辺からの意向を、国有地を管理する財務当局も抵抗は出来ない。
10分の1の格安価格
相場の10分の1の値段という。1平方15万円相当の国有地8870平方、約13億円相当を、大阪府の森友学園という学校法人が、わずか1億3400万円で手に入れたという重大な疑惑である。荒っぽくも、大胆不可解な国有地の分捕り・払下げ事件であろうか。いかなる釈明も通用しそうもない。背後関係を徹底して洗うことで、真相を暴くことは容易であろう。
安倍夫人が名誉校長
繰り返される安倍外遊に、ぴったりと寄り添う夫人が、学園の名誉校長ということから、国有地の格安払下げ疑惑を、一段と深めさせている。政治的圧力を裏付けている。安倍夫人が動いたものか、彼女の意向を首相秘書官が代行したものか、首相自身の間接的口利きに周辺が動いたものか。そうでもない限り、10分の1の格安値段での国有地の払下げは考えられない。あるいは森友学園は、安倍後援会メンバーなのかどうか。政治献金の有無はどうか。闇献金組なのかどうか。疑問は膨らむばかりである。
総長は日本会議幹部
この学園の総長は、安倍内閣を背後で操作する日本会議の幹部ということも、国有地払下げ事件の疑惑を深めさせているようだ。安倍夫人の名誉校長と学園総長が日本会議幹部と、あまりにも政治的な役者がそろい過ぎている。この顔ぶれで払下げを要求されると、国有地管理当局も腰が引けるのかもしれないが、さりとて10分の1という格安での払下げは無理だ。上からの、さらなる大きな力がないと不可能であろう。内部告発の行方も注目される。
教育勅語を暗唱させる右翼教育機関
園児に教育勅語を暗唱させている!これも驚きである。教育勅語は、国家神道と帝国憲法と肩を並べる、戦後否定された戦前の「神がかりのカルト・狂信的な天皇制国家主義」を構成する3大原理の一つである。
ロイター通信は「学園のカリキュラムは、戦前の日本を想起させる」と適切な表現で報じた。安倍・日本会議お手本の学園ゆえの、格別の国有地払下げの可能性も高い。徹底した、さらなる取材と議会の追及が不可欠であろう。
園児が「教育勅語」唱える、大阪の幼稚園で戦前教育 [ロイター]
大阪にある塚本幼稚園は一見すると、普通の幼稚園に見える。だが同園のカリキュラムは戦前の日本を思い起こさせる。安倍昭恵首相夫人も訪問した塚本幼稚園幼児教育学園は、日本の伝統や文化に重点を置いたカリキュラムのなかで、3−5歳の幼児に、愛国心を育むことを目的としている。制服を着た園児たちは毎朝、日本国旗の前で国歌を歌い、1890年に発布された「教育勅語」を復唱する。教育勅語は第2次世界大戦後、米軍を含む連合国軍総司令部(GHQ)によって廃止された。多くの人が、日本の軍国主義をあおる一助となった、服従と道徳心の源であると教育勅語を捉えていた。
日本政府は1947年、戦後の平和憲法の自由主義的で民主主義的な価値を強化すべく、教育基本法を施行した。
塚本幼稚園は15年前から教育勅語を導入。ただし、園職員はナショナリズムを刺激する意図はないとしている。「よく言われるナショナリズムと、私たちが教育のなかで進めようとしている、愛国主義や日本主義をもっと高らかに世界各国に広めていこうとすることは、全く違う」と、籠池泰典園長は話す。
籠池氏は、安倍政権と関係が近いナショナリストの民間団体「日本会議」の大阪支部長でもある。
塚本幼稚園で園児たちが習うのは、和楽器や武道、将棋などだ。軍事基地へ「遠足」にも行く。籠池園長は、子どもたちが他国の脅威に対する自国防衛に備えるため、他の教育施設でも自分たちのカリキュラムを導入することを期待していると語る。
日本に危機が及ぼうとするなら戦わねばならず、そのためには戦争放棄を規定する憲法第9条の改正が早急に必要だと、同園長は主張する。
憲法改正は与党・自民党の主要政策課題の1つだ。安倍政権はすでに集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈を変更している。塚本幼稚園の案内パンフレットによると、来年には小学校も開校予定で、安倍首相夫人が名誉校長に就任するという。専門家からは、安倍首相夫人がこうした学校の運営に携わることに驚きを感じるとともに、国際社会における日本の地位の変化を示すものとの声も聞かれた。
テンプル大学日本校のマイケル・チュチェック非常勤教授は、夫人が首相の代理として見られることがしばしばあると指摘。第1次安倍内閣では、学習指導要領に愛国心教育を盛り込むため、教育基本法が改正されている。
「日本の防衛を日本自身に担わせることで、駐留米軍を削減もしくは撤退させたいというトランプ次期米大統領の思惑と、日本を強い国にしたいという安倍首相の思惑が一致したと多くの人は考えているようだ」とチュチェック非常勤教授は語る。
地元市議の執拗な追及で表面化
報道だと、この事件・疑惑は、地元の市議の執拗な正義の追及がベースになっている。あんちょこな、ためにする疑惑事件報道ではない。右翼の腐敗と関連しているようでもある。新聞も野党も、5年目についに大魚を目の前にして、どう処理するのか。朝日・日刊ゲンダイの国内メディアのほか、外国通信社も同時取材して、官邸の圧力を跳ね返す布陣も、注目の的である。
大魚は、まだ新鮮さを残して、生きている。時効にかかっていない。大阪府警や大阪地検も注目しているだろう、巨大政治スキャンダルである。訪米で、大損外交を演じてきた首相夫妻の心臓を破裂させるのであろうか。読売・産経の報道ぶりが、どんなものか。とくと見聞しなければならない。ジャーナリストの責任である。 
墓穴を掘った神道改憲軍拡首相 2017/2/18
ネットで大炎上している大阪の国有地払下げ重大事件について、2月17日の衆院予算委員会で野党・民進党議員の追及がさく裂、これに改憲軍拡首相が慌てふためいて興奮、キレる事態が起きた。
問題過ぎる神道小学校の民族差別文書問題を、大阪府が行政指導をする事態を、籾井が辞めたNHKでさえも報じた。どうやら改憲軍拡首相の開き直り答弁が、墓穴を掘ってしまった春一番と受け止めた国民は、多いはずだ。
「事実なら首相・国会議員を辞める」と公約
信じがたい破格の値段で、民族差別をする神道小学校に、国民の資産を預かっている財務省が、広大な国有地を払い下げた重大事件は、間違いなく政治がらみである。違うと考える国民はいないだろう。
麻生財務大臣の口利きも想像される。安倍と麻生の二人三脚内閣という格別の事情もあるが、自民党内の空気は、久しく病んでしまっている。内心、ほくそ笑んでいる実力者と入閣待望組の永田町である。新たな追及材料が噴き出るだろう。それに大阪には、首相追及のプロが控えている。新たな材料がを、神社神道の日本会議が封じ込められるか?「わたしや妻、事務所は一切関わっていない。関わっていれば、首相も国会議員も辞める」と議会で答弁した。内外に公約してしまったのだ。
人間という動物は、痛いところをつつかれると、動揺して、その分、精神が混乱して、言ってはならない言葉を口にしてしまう。それを改憲軍拡首相が演じた、2月17日の春一番ということになろう。この首相答弁を、どう報じた新聞テレビが報じたか?それが、日本の言論の現状を証明することになる。賢明な国民は、このことで新聞購読を止めたり、進んで講読することになるだろう。
自ら深い仲を認めた心臓(晋三)
報道によると、既に安倍内閣1期目の場面で、問題の神道小学校という奇妙な学校を運営する日本会議幹部と深い関係が出来ていたことを認めた。察するに、右翼教育に熱心な安倍ファンということになる。「安倍晋三小学校」と命名したいと申し出たという、この右翼人士との深い仲は、尋常ではないだろう。自ら疑惑を認めたようなものである。安倍答弁によって、今度は国民が興奮している。国民は改憲軍拡に反対している。これはトランプと会談を終えた後も変わっていない。創られた内閣支持率に翻弄される国民ではない現在である。それは先の東京都の区長選挙で証明されている。無党派が動けば、自公は弾き飛ばされる今である。特定秘密保護法・戦争法と次は共謀罪である。相次ぐ憲法違反に日本弁護士や憲法学者の怒りは、ただ事ではない。
何ら関与否定の証拠を示せず
心臓は、問題の日本会議幹部との深い仲を認めた。ことほど関係は深く、否定することが出来なかった。もう疑惑はこれで十分である。そして肝心要の疑惑事件と無関係である、との清廉潔白の証拠は、何一つ示すことが出来なかった。右翼スキャンダルは、既に指摘したように、手口が大胆不敵である。露骨なのだ。権力の乱用に無神経である。議会とメディアが健全であれば、即座に事件の真相にたどり着ける。いまは、その入り口に到達した場面である。
追及材料を提供した首相と財務省
一般の組織や人間が、新しく学校を新設するとなると、途方もない時間がかかる。役所の壁は厚い。与党政治屋を裏工作の要員として駆使しても、それでも簡単ではない。それなのに、この安倍ファンであるはずの、日本会議メンバーの神道小学校設立と、広大な国有地の、タダみたいな値段での国有地払下げについて「一切関わっていない」といわれて、ハイそうですか、とは国民が奴隷人間でない限り困難だろう。この政治スキャンダルは、安倍夫妻が関係していることも発覚している。国会追及の最後の場面では、参考人招致や国会証人喚問が待ち受ける。これを3分の2の権力乱用で押し切れるか。財務省は、不動産鑑定士や大阪航空局の積算という新たな事実を、国会答弁で明らかにして、追及材料を野党に提供してくれた。血税をはたいている大事な国会開会中である。不正腐敗を許してはならない。野党の奮起を望む。
創価学会と朝日新聞に注目
7月都議選に総力を傾注している宗教政党が、共謀罪や天皇退位問題のように、安倍擁護に徹することが出来るのか。対して、野党の総力結集で、日本会議の裏は容易に取れるという事案でもある。「朝日に勝った」とトランプに吹聴したという日本国首相である。国民は、その朝日にも期待をかけている。朝日は本当に死んでしまったのかどうか、そのことも国民は注視している。墓穴を掘った心臓の高鳴りが、列島に響いているようだ。 
 
報道 2 2月下旬

 

逃げる安倍・深まる疑惑 2017/2/25
神道小学校への国有地払下げは大胆すぎる犯罪
2月24日の衆院予算委員会などでの一連の安倍答弁、財務省理財局長答弁で判明したことは、嘘と隠蔽で逃げ切りを図ろうとする心臓の醜態ぶりをさらしている。神道小学校への国有地払下げは、権力の乱用の下で具体化した重大な犯罪である。疑惑は深まるばかりである。野党が結束して追及すれば、心臓の逃げ切り策は失敗するだろう。それにしても大胆すぎる腐敗政権を裏付けて余りある。
理財局長が政治的圧力を事実上、認める答弁
8億円もの国有地値引きするための積算を、国交省大阪航空局にさせるという手口は「異例」だと財務省の佐川理財局長が答弁した。この「異例」答弁から、腐敗政権が、神道小学校への不当な国有地払下げに対して、政権が総がかりで対応したことが判明した。政府上げての、巨額過ぎる国有地値引き払下げ作戦の存在を浮かび上がらせている。そこにおいて、財務省・国交省まで動かした大がかりな「権力の乱用」を浮き彫りにしている。このことが、明白に浮かび上がってきた。
安倍夫人が名誉校長辞任
人間は愚かである。特に権力者はこの罠にかかる。事件が露見して、次々と問題を指摘されて、初めてことの重大性に気付く? あわてて安倍夫人は、教育勅語を教える「瑞穂の国」という時代がかった小学校の名誉校長を辞める、と首相の口から答弁させた。夫唱婦随なのか、疑惑をこれまた容認したことになる。口八丁の夫人が、珍しく沈黙していることも、事件の深さを裏付けているだろう。夫妻そろっての支援に、官邸はおろか財務省も国交省も付き合わされた、という政治圧力の構図が見えてきた。
森友学園に責任を押し付ける策略
首相夫妻そろって絶賛していた森友学園に対して、心臓は突如、戦略を変更した。「安倍晋三小学校」の名前を勝手に使って「けしからん」と怒りだしたのだ。これも滑稽千万で、外野の観客席を沸かせてしまった。誰が知恵をつけたものか、上手の手から水が漏れてしまったことに気付かないのか?不勉強な野党を、これでごまかせると勘違いしたものか。傍らで、渋い表情を見せる麻生財務大臣も、事態の深刻さに心臓が止まりそうである。それとも?
全生庵に逃げる
知らなかったが、金曜日は「プレミアムフライデー」というのだそうだ。「仕事止め」のお触れを出す日本政府である。変われば変わった日本であろうか。当人は、そそくさと座禅を組むことで知られる「全生庵」に逃げた。これも珍しい。神社信仰の神風に効果が出ないので、仏教の禅に救いを求めたものか。ともかく安倍家の重大な危機を内外に印象付けてしまった。ちなみに、仏教の本意は、人間の生と死を追及した思想・哲学であろう。現生利益など存在しない。正しくは仏学である。儒学もまた、君子の仁愛を説いて、その結果としての民衆の信頼を基としている統治論である。権力乱用は、人と人・人と自然の在り方を追及した儒学において、到底許されない行為である。民衆は新たな賢者、民衆をいつくしむ君子を選択する権利を手にできる。民主政治の下では、これを議会と言論が担っている。
野党がまともなら逃げ切り不可能
改めて言及するまでもない。野党が結束して議会の主導権を握ることで、この政権を退陣に追い込めるだろう。解散に追い込むのであるが、その前に本事件を天下に知らしめる責任がある。ひるまず徹底して追及しなければならない。ネットブログは炎上していて止まない。
森友学園、安倍昭恵夫人の名誉校長就任「承諾得ていた」 217/2/27
 安倍首相は「フェアじゃない」
2月27日の衆院予算委員会は、大阪の学校法人「森友学園」(籠池泰典理事長)の国有地の取得経緯や安倍昭恵・首相夫人の名誉校長就任問題について、安倍晋三首相がこの日も釈明に追われた。
また、森友学園が運営する「塚本幼稚園」(大阪市淀川区)の運動会で、安倍首相を称賛したり、中国や韓国を非難したりする内容の選手宣誓を園児にさせていたことが、大西健介氏(民進党)によって紹介され、安倍首相は「適切ではない」と述べた。
やりとりの概要は、以下の通り。
テレビ東京が公開した映像によると、安倍昭恵氏は2015年9月、森友学園が運営する「塚本幼稚園」で、籠池園長とともに保護者の前に現れ、「教育講演会」と書かれた壇上に上がった。
『安倍昭恵氏』
籠池園長、副園長の熱い思いを聞いて、この瑞穂の国記念小学院で、何か私もお役に立てればいいなあと
『安倍昭恵氏』
こちらの教育方針は大変、主人も素晴らしいと思っていて
『安倍昭恵氏』
先生からは「安倍晋三記念小学校」という名前にしたいと当初は言っていただいてたんですけども、主人が「総理大臣というのは、いつもいつもいいわけではなく、時には批判にさらされることもある」「もし名前をつけていただけるのであれば、総理大臣を辞めてからにしていただきたい」ということで
2017年2月23日の衆院予算委員会で、安倍首相はこう答弁していた。
『安倍晋三首相』
妻は、講演の前の待合室で名誉校長になってくださいと言われたが断っていた。しかし、突然その場で籠池さんからそのように紹介され、拍手をされた。
『安倍晋三首相』
その場で「お引き受けできない」と言うことはできなかったわけであります。
『安倍晋三首相』
その後、これはお引き受けできないとお話ししたが「父兄の前でああおっしゃったのだから引き受けてもらわないと困りますよ」ということで引き受けた。その後、先方から何ら説明もなかった。 
 
報道 3 3月上旬

 

やっぱり思想的に共鳴! 2017/3/2
 森友学園・籠池理事長の娘が安倍首相のブレーン団体のシンポジウムで講演の予定
安倍夫妻の関与が疑われている学校法人森友学園の国有地格安払い下げ問題。安倍首相はいまごろになってまるで森友学園や理事長の籠池泰典氏が「何の関係もない学校、一面識もない団体」であるかのように弁明しているが、これはとんでもない大ウソだ。実際、ここにきて、森友学園や籠池理事長が、安倍首相の極右ネットワークの一角を形成していることを証明する事実が発覚した。
いま、ネット上に「シンポジウムin芦屋 これからの歴史教育を話し合おう」と題された一枚のチラシの画像が出回っている。これは、「日本の歴史文化研究会」なる団体の主催のもと、今月3月19日に兵庫県芦屋市で催される「第50回記念講座」の告知だ。そこで「パネリスト」として記載されている人物のひとりに、聞きなれた苗字が見当たる。籠池町浪(ちなみ)氏。肩書きは「瑞穂の国記念小學院準備室長」。そう、彼女は籠池理事長の娘で、塚本幼稚園の教頭も務めている人物である。
この期に及んで、人前で教育論を語ろうという厚顔無恥ぶりもすごいが、ポイントは、このシンポの共催団体だ。そこには「日本教育再生兵庫」とある。これは、日本教育再生機構の地域組織だ。日本教育再生機構といえば、新しい歴史教科書をつくる会から分派した団体。子どもたちに愛国心を押し付ける道徳教育の充実を掲げ、歴史改竄主義の育鵬社歴史教科書の採択運動を展開するなど“極右教育”を推進している。理事長は、あの八木秀次麗澤大教授だ。
八木氏といえば、ご存知、安倍首相の“極右教育政策”におけるブレーン中のブレーン。安倍政権のもとで首相の諮問機関「教育再生実行会議」の委員を務め、昨年、官邸が生前退位の有識者会議ヒアリングメンバーにもねじ込んだ日本会議系の学者である。実際、安倍首相自身、2012年に日本教育再生機構が主催した大阪での集会に出席しているのだが、実はこのとき松井一郎大阪府知事も参加しており、安倍首相と維新の蜜月を支えるのに一役買っているとも言われている。
その安倍首相の息がかかった集会で、何が行われるのかは明白だ。シンポのお題目は「これからの歴史教育を話し合おう」だが、これはつまり、南京事件や慰安婦などの歴史を否定する運動の一環であり、そこで森友学園に見られるような極右洗脳教育が宣伝されるのは火を見るより明らかだ。
事実、森友学園は、塚本幼稚園の運動会で園児に「日本を悪者として扱っている中国、韓国が心あらため、歴史教科書で嘘を教えないようお願いいたします」と言わせているし、町浪氏自身、「別冊正論」(産経新聞社)27号のインタビューでこのように語っていた。「左の人は(教育)勅語を先の大戦に結び付けて軍国主義を思わせようとします。でも、教育とは結局は勅語の十二徳目に行き着きます。(略)日本では日教組など左翼勢力が教育勅語や国旗を敵視、否定するのは、日本人のまとまりを阻害し、日本を弱体化させることが真の狙いなのではないでしょうか」
まいどのことながら、この種のネトウヨ並みの妄想も大概にしてほしいが、ようするに、籠池氏の娘が安倍首相の息のかかった極右教育団体に関与している事実は、森友学園が安倍首相の極右人脈と完全に一体化していることの証左だろう。
しかも、この集会には籠池氏の娘のほかにもう一人、見逃せない人物が参加を予定している。兵庫7区選出の自民党・山田賢司衆議院議員だ。山田議員は2012年の衆院選で安倍チルドレンとして初当選。14年8月に行われた自民党のヘイトスピーチ対策等に関する検討PT初会合では、こんなトンデモ&ヘイト発言で注目を浴びた。
「国連に“チンコロ”しているのはどんな団体か。ネットで調べると、ほとんどが朝鮮総連など朝鮮系の団体だ」「右翼車両よりもむしろ左翼のほうがうるさい。取り締まりや、排除をすべきではないか」
安倍首相のブレーンが実質的に仕切る集会に、籠池理事長の娘と安倍チルドレンが仲良く参加……。やはり、今回の国有地問題は、安倍首相が印象づけたいように「私たちはたまたま名前を利用されただけの被害者」という話ではありえないのである。
森友学園問題で、安倍首相は尻尾切りと口封じに必死だが、騙されてはならない。安倍首相を個人崇拝し、ヘイトと軍国教育をぶちまける幼稚園の問題は、安倍首相の極右思想が実を結び、この国がグロテスクなファシズムに覆われていることの象徴的な“事件”である。安倍首相の極右教育ネットワークも含め、今後もこの問題を徹底追及していく必要がある。 
森友学園ネタ 「どの新聞がどう報じないか」を読む密かな愉しみ 2017/3/3
それにしても『安倍晋三記念小学校』という字面は何度読んでも強烈だ。
『三波伸介の凸凹大学校』以来のインパクトである。
懐かしのバラエティー番組は置いといて、「森友学園」ネタが盛り上がっている。2週間前にはこんな書かれ方だった。
《少し前まで政治家や中央官庁が名前を連ねるニュースならば「こんなおいしいものはない」とばかり各紙社会部が飛びついてスクープ合戦を繰り広げたものだ。大阪ではニュースになっているようだが、東京では伸び悩みだ。》(「日刊スポーツ」「政界地獄耳」2月18日)
この社会面コラムタイトルは「首相の疑惑追及なぜ伸び悩む」。
野次馬的な新聞の読み方を推奨したい私としては「なぜ報じないのか!」と怒るのもいいけど、「どこが報じないのか?」とニヤニヤして読み比べることもオススメしたい。
「とりあえず取り上げました」感がすごい読売新聞
例をあげよう。安倍政権を支持している(と思える)「産経新聞」「読売新聞」の報じ方がとにかく面白いのだ。
森友学園ネタの初出は2月9日の「朝日新聞」。「学校法人に大阪の国有地売却 価格非公表、近隣の1割か」。
「読売新聞」が報じたのはその9日後。
2月18日に「国有地売却で首相『関係していたら辞める』」と初めて報じ(東京版)、その次は6日後。「国有地 8億円安く売却 評価額より 大阪の学校法人に」(2月24日)。
国会で議論になったので「とりあえず取り上げました」感がすごい。
産経新聞は2月18日に「国有地売却 差額に波紋」と社会面(東京版)で初出し。そのあと森友学園絡みで目立って面白かった記事が、「民進、公聴会サボる」(2月23日)。
《民進党の辻元清美、玉木雄一郎両衆院議員が21日に開かれた衆院予算委員会の中央公聴会を“無断欠席”していたことが22日、分かった。(略)大阪府豊中市の国有地が学校法人「森友学園」に売却された問題の「追及チーム」メンバーとして現地を視察していた。》
そ、そこ!?
こういう切り口での「森友学園」の登場の仕方だった。読み比べの醍醐味である。
首相の「意向」と「威光」、そして「忖度」
私は前々回のこのコラムで「安倍首相の"朝日に勝った"発言」を取りあげた。最近の朝日は元気がないのでは? とも書いた。今回の森友学園ネタは"朝日の逆襲"にも思える。新聞好きとしてはウオッチしたい展開だ。
安倍政権を支持する新聞と批判的な新聞。私はどちらがあってもいいと思う。どちらも読むと違いが浮き彫りになって便利だからだ。たとえば「今、政権側にとって何が厄介なのか」は、むしろ親政権側の新聞を読んだ方がわかる。他と比較してあまり報じられていないものに注目すればよいのである。それが現在は森友学園ネタなのだ。
さて、この森友学園問題。最大の興味は「首相の関与があったのか、なかったのか」。
首相は先月17日の衆院予算委員会で「妻が名誉校長になっているのは承知している。私や妻が(売却に)関係していたとなれば、首相も国会議員も辞める」と述べた。
ここで、読み方が同じ2つの漢字をあげたい。「意向」と「威光」。
首相が関与していればもちろん「意向」。これは無いと首相は否定している。
では、誰かが首相の「威光」を利用したことは無かったのか?これが私にとっての興味である。
さらに言えば、ここ数年「忖度(そんたく)」というキーワードがよく出てくる。
2014年11月、安倍首相がTBSの『NEWS23』に出て「街の声」が偏っているとイラッとするや、数日後に自民党から在京のテレビ局に(この後おこなわれる)衆議院選挙は「中立公平に報道すべき」という要望書がおくられた。
これは首相の「意向」かもしれないし、周囲の「忖度」かもしれない。そのあとテレビ局がビビったことを考えると「威光」はあったと思える。
(※現在のテレビの選挙報道姿勢については「真の争点に焦点を合わせ、主張の違いを浮き彫りにする挑戦的な番組が目立たず、残念」という見解が出た。「選挙報道の公平性、量で判断せず BPOが初見解」「日本経済新聞」2月7日)
果たして今回、同じ構図(意向、威光、忖度)が森友学園に対してあったのか、なかったのか。冒頭で紹介した記事のように「こんなおいしいものはない」と新聞が活気づかなければウソだ。
最後に言うと、「安倍晋三記念小学校」で気になるのは教育勅語でも国粋主義でもなく、国語の授業で「云々」を「でんでん」と読ませるのか? という点です。
とても気になります。 
安倍首相「妻のことだからムキになっているかも」 野党の追及に猛反論 2017/3/7
大阪の学校法人「森友学園」(籠池泰典理事長)の国有地取得の経緯や新設される小学校の名誉校長に安倍昭恵・首相夫人が就任していたことをめぐり、民進党など野党は3月6日、参院予算委員会の集中審議で安倍晋三首相や財務省・国交省などを追及した。
この日質問に立った民進党の福山哲郎議員は、森友学園が新設を予定している小学校校舎について、これまでに国が5640万円の補助金を交付していることを指摘。建築物の木造化を図る国交省のプロジェクトで支援対象となっていた。
福山氏は「この建物は、認可が下りなければ解体して原状回復」になる場合もあると、この支出を問題視。
また、平成29年度年の予算案に国有地の売買代金が計上されていないと指摘。「国の収入で入るべきものが予算書に何も記載がない。歳入欠陥になるのでは」と、見積もった国交省を追及した。
これに対し、国土交通省の佐藤航空局長は以下のように回答した。
「空港整備勘定の歳入は、テロや感染症などが発生した場合には空港使用料収入が大きく減少し、歳入欠陥となるリスクがある。土地売却収入等の自己財源については、従来より収入を堅く見積もることにしている」
「本件土地については、収入を堅く見積もる観点を踏まえ、売却代金は10年分割払いとされているが、契約上は前払いが可能であり、平成28年度中に全額が支払われる可能性があることから平成29年度予算には記載されていない」
加えて、石井国交大臣も「予算案を作ったときは森友学園の問題は全く浮上していない」「従来からのやり方に応じて、歳入は堅く見積もる原則に基づいてやっている。年度途中で実際に収入が入った場合は、決算で反映させる。従来から同じやり方をやっている」と答弁した。
これに対し、福山氏は「堅く見積もって歳入に入れないというのは、誰が判断するのか。予算書は、役人のそれぞれの部局で恣意的に決めて歳入の数字が固まるのか」「もともとの契約書で合意されているものを抜いておいて、3月には入るかもしれないと。予算書が信用できない」「歳入欠陥だ。こんな馬鹿げた行政手続きがありますか」と厳しく追及。
政府・自民党が参考人招致に応じないことについても、「全く解明する気がない」と強く批判した。
福山氏「近畿財務局、財務省が忖度するでしょう」
 安倍首相「昭恵の名前は印籠じゃない」
また福山氏は、「本当はご家族のことを言いたいタイプではないのですが…」と述べた上で、「昭恵夫人に恥かかせたのか、安倍首相に恥をかかせたのか、近畿財務局だって、財務省だって、忖度(そんたく)するでしょう」と、昭恵氏が新設予定の小学校の名誉校長に就いていたことで、国有地の売買などに影響を与えたのではないかと問うた。
これに対し、安倍首相は「名誉校長に安倍昭恵という名前があれば、印籠みたいに恐れ入りましたと、なるはずがないんですよ」と反論。山本一太・予算委員長が「簡潔に答弁を」と諭される場面もあった。その後、安倍首相は「私と妻がまるでかかわっているかのごとく、まるで大きな不正、犯罪があったかのごとく言うのは大きな間違いだ」と、色をなして強く述べた。
これに対し、福山氏は「私は『昭恵夫人は被害者かもしれない』と申し上げたんです。犯罪者扱いなんかしていない。それこそ印象操作だと私は思いますよ。何をそんなムキになっているんですか?」と返した。
その後の質疑でも共産党の辰巳孝太郎議員から「なにムキになっているんですか」と問われた安倍首相は、「若干、妻のことだからムキになっているかもしれないが、私や妻が許認可に関わったかのごとく印象を与えるのはどうかと思う。それを前提に質問するのは遺憾だ」と、野党の質問姿勢を批判した。
自民党、森友学園の籠池理事長の参考人招致を拒否
自民党の松山政司・参院国対委員長は7日、民進党の榛葉賀津也・参院国対委員長と国会内で会談。野党が求めている籠池泰典理事長らの参考人招致を拒否した。共同通信などが報じた。
松山氏は「違法性はなく、現時点で参考人招致は必要がない」と主張。これに対し、榛葉氏は「納得できない」として、引き続き招致を迫る構えだと時事ドットコムは伝えている。
野党は籠池氏のほか、国有地払い下げの交渉時に財務省の理財局長だった迫田英典・国税庁長官、近畿財務局長だった武内良樹・財務省国際局長らの招致も要求している。
与党、籠池氏招致応ぜず=公明「しっかり説明を」−国有地売却 3/8
自民、公明両党は8日の幹事長・国対委員長会談で、学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地の格安売却問題について協議し、同学園の籠池泰典理事長の参考人招致に応じない方針を確認した。ただ、公明党は国民の疑念を払拭(ふっしょく)するため説明を尽くすよう政府に求めた。
籠池氏の招致について、自民党の竹下亘国対委員長は記者団に「話がおもしろいから招致するというものではない。現実には難しい」と指摘。公明党の大口善徳国対委員長も同調し、「参院で協議している状況を見守る」と語った。
会談では、公明党の井上義久幹事長が国会での政府答弁に触れ、「国民の疑問に十分答えていないのではないか」と不満を表明。「引き続き政府としてしっかり説明していくことが大事だ」と注文を付けた。
一方、民進党の笠浩史国対委員長代理は記者会見で「国会には立法府として率先して事実関係を明らかにしていく責任がある」と述べ、籠池氏や関係者の招致に応じるよう与党に迫った。共産党の穀田恵二国対委員長も会見で「誰もが納得していない」と足並みをそろえた。  
森友理事長招致、拒む自民 幹部「何しゃべり出すか…」 3/8
学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題で、学園の籠池(かごいけ)泰典理事長らの参考人招致が国会審議の焦点になっている。民進、共産など野党4党は7日、改めて籠池氏ら6人の招致を要求したが、自民党は拒んだ。野党の強気の背景には、安倍晋三首相自らが認めた政府の説明の不透明さと、世間の関心の高さがある。
「こういう事例がある」。7日午後、国会内。民進の山井和則国会対策委員長は自民の竹下亘国対委員長との会談で、過去に衆院予算委員会が招致した参考人の一覧表を示した。
「違法性のない事案にかかる(参考人の)審査は慎重にやるべきだ」(菅義偉官房長官)との理由で、政府・与党が籠池氏や当時の財務省理財局長らの招致に応じないため、違法性が招致の条件になっていないことを示そうとした。
会談に先立って共産、自由、社民の野党3党の国対委員長にも一覧表を示した。法令違反が確定していない人たちを招致した例があることを確認していた。
対する竹下氏の回答は「難しいが断るわけではない」。継続協議になり、山井氏は週内にもう一度、国対委員長会談を開くよう要請した。記者団には「(学園側に)様々な法令違反の疑いも出てきている。ここで(招致を)受けなかったら総理と自民党が何かやましいことがあるということになる」と語った。
これに対し、公明党の山口那津男代表は記者会見で、「いま話題になっている人物が(参考人に)ふさわしいのか。一貫性や合理性があるのか疑わしい部分もある」。自民幹部は「理事長が何をしゃべり出すかわからない。呼ばない選択肢が正解だ」と述べた。
テレビのワイドショーが連日問題を取り上げ、JNNの世論調査では7割超が参考人招致を行うべきだと考えていることが判明。自民ベテラン議員は「招致に応じなければ支持率に影響する」と心配する。 
籠池氏の参考人招致要求=森友学園、「本人呼ぶべき」−松井維新代表 3/8
大阪府豊中市の国有地が学校法人「森友学園」(大阪市)に格安で払い下げられた問題で、日本維新の会の松井一郎代表(大阪府知事)は8日、「本人に聞くのが一番だと思うので、参考人招致を決めてもらいたい」と述べ、同学園の籠池泰典理事長を国会に招致すべきだとの考えを示した。府庁内で記者団に対し、「国に対する補助金詐欺の疑いもあるわけだから、これはやはり呼ぶべきだ」と語った。
民進、共産、自由、社民の野党4党は籠池氏の招致を求めているが、自民、公明両党は応じない方針を確認している。
松井知事は籠池氏の招致に関し、「弁護士立ち会いの下、各党代表が聞き取り調査をしたらいい。本人から聞かないと分からない」と強調した。また、野党の一部から府の私学課職員の国会招致を求める声が出ていることについて「僕を呼べばいい。全部、議事録を持って行く」と述べ、要請があれば招致に応じる考えを示した。 
森友学園問題「参考人招致すべきだ」7割 3/9
大阪府豊中市の国有地が、大阪市の学校法人「森友学園」に対して評価額より大幅に低い価格で売却された問題に関して、今回の調査(4〜7日)にご協力いただいた電子版の読者の70.8%は「関係者を国会に参考人招致」して真相解明をすべきだと答えました。
また、学園が4月に開校を予定している小学校の認可判断については「現段階で不認可と判断した方がいい」との回答が65.7%を占めました。
同時にお聞きした内閣支持率は36.1%となり、今回の不支持率(63.9%)と前回調査の支持率(63.7%)とが逆になった格好です。
本調査は毎週、違うテーマを扱い、回答者の数や属性が毎回異なります。また、日本経済新聞社とテレビ東京とが毎月1回、乱数番号(RDD方式)による電話で実施している定期的な世論調査とは手法が違うため、支持率の単純な比較はできません。
2月の世論調査で60%だった内閣支持率が3月調査でどのように変化するかは定かではありませんが、電子版の読者対象の本調査で、安倍内閣を支持すると答えた方から「今はまだ支持するが、政府・与党が積極的に疑惑解明の動きを見せなければ政権を見限ることもあり得るのでしっかり対応してもらいたい」(37歳、男性)との意見が寄せられていることを考えると、森友学園問題が現政権の支持層にも波紋を広げていることは確かだといえましょう。

国が森友学園に国有地を評価額より約8億円安い価格で売却した問題の真相解明にあたり、「関係者を国会に参考人招致すべきだ」と答えた読者は、経緯の不透明さに疑問を抱いています。
「8億円値引きをしたのにその根拠が文書化されていないのはありえないことだ」(63歳、男性)
「関係書類を破棄されてしまったので参考人を呼んで、国民の前に明確にする必要があるのは当たり前のことです。怒っているのは安倍首相ではなくて国民です。勘違いしないでいただきたい」(33歳、女性)
「政府や自民党による調査では真相解明までこぎつけられるか疑問。籠池理事長をはじめとした関係者の参考人招致だけでなく、ゴミ撤去にかかる費用の細かい内訳も開示すべきだ」(61歳、男性)
国会に招致してほしい具体的な人選については「(森友学園の)籠池理事長だけでなく、当時、財務省理財局長を務めていた迫田英典国税庁長官を呼ぶべきだ」(58歳、女性)との提案も。
さらに「,参考人招致ではなく、偽証罪が問われる証人喚問を!」(44歳、男性)との厳しい声とともに、10代の読者からは「与党がなぜ参考人招致に反対するのかわからない」(15歳、男性)と率直な疑問も寄せられました。
次に多かった回答は「会計検査院の審査で十分だ」で20.9%でした。会計検査院は、参議院予算委員会の要請を受け、学園に国有地が売却されたいきさつなどを調べることを決めています。
こうした経緯を受け、読者は「会計検査院の調査を待ってよいと思う。その結果に疑義があれば国会で追及すればよい」(34歳、男性)とのスタンスです。
さらに、北朝鮮が在日米軍を標的に想定した弾道ミサイル訓練を実施するなど、課題が山積していることから、「野党はこの問題にかかり過ぎているのではないか。政権批判のためだけに、ことさら問題を広げようとしているように感じる。北朝鮮への対処など議論すべき重大な課題は、ほかにある」(38歳、男性)、「国政にはもっと大切なことが山積している。こんな問題は後回しにせよ」(81歳、男性)といった意見もありました。
「政府や自民党内で調査すべきだ」(6.1%)を選んだ読者は「自民党の自浄作用があるのかどうかという意味で、自民党内でもきっちり調査すべきであると思う」(61歳、男性)と自民党に期待を寄せています。また、「司法にゆだねるべきと思う」(69歳、男性)との考えが「その他・わからない」(2.2%)を選んだ読者の中に目立ちました。
ちなみに、JNNが今回と類似した質問を4、5両日の世論調査で聞いています。全国18歳以上の男女1200人を対象にしたRDD方式での調査結果は、76%が国会で学園の理事長らの「参考人招致を行うべき」だと答えました。

森友学園は4月に小学校「瑞穂の国記念小学院」を開校する予定ですが、開校にあたっては、大阪府の私立学校審議会が認可などを検討した上で、大阪府の教育長が最終的に判断する必要があります。
大阪府の対応について、「現段階で不認可と判断した方がいい」と回答した読者の中には、学園が建設中の小学校の校舎建築費を巡り、国と大阪府に金額が異なる工事請負契約書を提出していたことが明らかになるなど、次から次に問題が発覚していることを受けて「小学校だけでなく、森友学園自体が問題なので許可は通さないほうがいい」(56歳、女性)との声が少なくありません。
さらに、「ゴミが埋め戻されているような危険な場所で子どもが過ごすことも問題」(62歳、男性)との指摘や、「松井知事が認可のために積極的に動いていたはずだ」(57歳、男性)などとして、大阪府の松井一郎知事の責任を追及する声もありました。
次に多かった「認可判断を先送りにした方がいい」(26.0%)を選んだ読者は主に、学園の問題の真相解明がまだ途上にあることから「本件が学園の財政基盤に与える影響を見極めるべきだ」(34歳、男性)、「このような状況で拙速な判断は避けるべきだ。認可であれ不認可であれ公正な判断を行えるように尽くすのが筋」(53歳、女性)との立場を取っています。
さらに、「現在の私学の許認可制度に欠陥があるのでは」(76歳、男性)との指摘があったことも付記します。
一方、「現段階で認可と判断した方がいい」(6.0%)と考える読者は「法的に問題がないのならば認可してよいのではないか」(66歳、男性)、「入学を控えている児童への影響を考えるといまさら認可を取り消すと影響が大きいと思う」(38歳、男性)との心境でした。

今回の調査(4〜7日)にご協力いただいた読者の皆さんによる安倍内閣の支持率は36.1%でした。前回調査(63.7%)よりも27.6ポイントの大幅ダウンとなった背景には、やはり森友学園問題が影響しているとみられます。
安倍内閣を支持する読者からは「民進党にはとても任せられない」(80歳、男性)といった野党批判もありましたが、「全体として支持しているが、今件に対しての対応はダメ! 公務員が随伴する夫人の活動についての『公人・私人』の説明も矛盾だらけ。なってない」(68歳、男性)など、森友学園問題を巡る安倍晋三首相の国会での答弁に厳しいコメントが寄せられました。
さらに、安倍首相の昭恵夫人に対しても「首相夫人の行動は、良い場合も悪い場合も、その影響力の大きさを意識し、より慎重でなくてはいけない。いささかがっかりした」(67歳、男性)との声も。
一方、安倍内閣を支持しない読者からは「代わる政党がないので自民党内で他の人に代わってほしい」(63歳、男性)との要望があったほか、次のような意見も寄せられました。
「政府・自民党の自浄作用が機能することを示すべきだ。さもなければ、支持率大幅ダウンは避けられない」(60歳、男性)
「こんな学校の広告塔になってしまったことに反省するどころか、逆に身内のことになると冷静さを失ってぶち切れる対応には、リーダーとして強い不安を感じる」(58歳、女性) 
 
報道 4 3月中旬

 

国会招致拒否の自民に国民唖然 もう逃げ切りは通じない 2017/3/10
揉みくちゃにされながら、9日、報道陣150人を相手にぶら下がりに応じた「森友学園」の籠池泰典理事長。あれが教育者か――と呆れ返った国民も多いはずだ。
「教育勅語のどこが悪い」「報道は無礼千万」「立派な人材をつくる教育は、もう少し温かい目でみるべきだ」と、質問には答えず、言いたいことを一方的にまくし立てた。なぜか、朝日新聞を目の敵にしていた。その揚げ句、まるで自分は被害者だとばかりに、今回の疑惑発覚について「これは4年ほど前から仕組まれてきたことだ」と、理解不能のことを口走る始末である。いったい誰が4年もかけて仕組むというのか。国有地を8億円も安く入手したのも、幼児に教育勅語を暗唱させているのも、自分がやったことではないか。安倍首相を応援するネトウヨは、朝日新聞を敵視し、妄想と謀略史観に取りつかれた連中が多いが、ほとんど籠池理事長も同じ発想である。
籠池理事長は日本最大の右翼組織「日本会議」の主要メンバーだが、しょせん「日本会議」も、このレベルということか。
それにしても、この男は、デタラメのオンパレードだ。ウソにウソを重ねている。
問題の国有地に建設している小学校の「建築費」まで、役所に虚偽申請していた。〈国交省には23億8400万円〉〈関西エアポートには15億5000万円〉〈大阪府には7億5600万円〉と申請。補助金や助成金がもらえる「国交省」と「関西エアポート」には少しでもカネを多く手にしようと高く、逆に財務内容を問われる「大阪府」には低く申請していたのだから、デタラメにも程がある。
さらに、経歴まで偽っていた。
本当は「関西大商学部卒、奈良県庁入庁」なのに、「関西大法学部卒、旧自治省入省、奈良県庁出向」と大阪府に届け出ていた。こうなると、もう教育者ウンヌン以前の問題である。

どうして、こんな男に国有地が8億円もディスカウントされて払い下げられたのか、本当に政治家の関与はなかったのか。国民の疑問はまったく解消されていない。
真相を解明するには、籠池本人を国会に呼び、話を聞くしかない。日経電子版の調査でも、70%が「国会に参考人招致すべきだ」と答えている。これだけ疑惑が噴出しているのだから当然である。
ところが、安倍政権は「民間人の招致は慎重であるべきだ」などと拒否しているのだから、どうしようもない。国民の財産である「国有地」が8億円も不当に安く売り払われたのである。国会が事実を解明するのは当たり前ではないか。「民間人だから」という屁理屈は通用しない。
それでも安倍自民党が籠池理事長をかばい、参考人招致を拒否しているのは、同じ穴のムジナだからだ。安倍首相は一度は籠池理事長のことを「私の考え方に共鳴している方」と同志だと認めている。もともと、政権の支持基盤である「日本会議」を通じて、安倍首相と籠池理事長は、理想の国家観を共有する仲間同士である。
「安倍政権が国会招致を拒否しているのは、籠池理事長を国会に呼んだらなにを口にするか分からないと恐れているからでしょう。と同時に、安倍首相も多くの自民党議員も、籠池理事長の教育方針を悪いと考えていないのだと思う。その象徴が、教育勅語に対するスタンスです。多くの国民は、籠池理事長が園児に教育勅語を暗唱させることに強い違和感を覚えている。教育勅語の本質は、いざとなったら天皇のために死ね、だからです。国家総動員体制を正当化するために利用され、戦争につながった。子どもに道徳を教えるのなら他のテキストを使えばいい。ところが、稲田防衛相は『日本が道義的国家を目指すその精神は取り戻すべきだ』と国会答弁で教育勅語を称賛している。自民党全体が籠池理事長の教育方針にシンパシーを感じている裏返しでしょう」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
いまや自民党議員約240人が「日本会議」の国会議員懇談会に名を連ね、閣僚の大半がメンバーである。これでは「日本会議」の幹部である籠池理事長の国会招致に動くはずがない。
国民は逃げ切りを許さない
どんなに野党が「国会招致」を要求しようが、安倍自民党は籠池理事長の招致を拒否するつもりだ。
これまで、小渕優子や甘利明など大臣のスキャンダルが浮上しても支持率が下落しなかった安倍首相は、森友問題も、参考人招致を拒否しつづけていれば、いずれ世間は忘れると計算しているらしい。
しかし、逃げ切れると思ったら大間違いだ。この疑惑は、小渕や甘利が辞任した「政治とカネ」の疑惑とは、次元が違う話だからだ。
安倍政権が右翼組織「日本会議」と深くつながっていることや、稲田朋美を筆頭に「教育勅語」を礼賛する自民党議員が多いことがバクロされ、国民の政権を見る目は確実に変わりつつある。最新の日経電子版の世論調査は、「内閣を支持する」36%、「支持しない」63%と逆転している。
「幼児が運動会の選手宣誓で『安倍首相ガンバレ』『安保法案、国会通過よかったです』と籠池理事長に言わされている映像を見て、心ある国民は、こんな時代錯誤の教育をしている学校法人があるのかと衝撃を受けたはずです。しかも、安倍首相の昭恵夫人が新設小学校の名誉校長に就き、なぜか国有地が8億円も値引きされて払い下げられている。そのうえ、官僚は『資料は破棄した』の一点張り。どんな国民だって『これはおかしい』『なにか裏にある』と分かりますよ。国会で多数を握っている安倍首相は、これまで同様、強行突破すればいいと考えているようですが、国民は真相が解明されるまで、疑惑を忘れることはありませんよ」(金子勝氏=前出)
これまで安倍官邸の顔色をうかがってばかりいた民放各社が「森友学園」問題を一斉に報じているのは、視聴率が取れるからだ。それだけ国民の関心が強いということである。今度ばかりは、安倍自民党の逃げ切りシナリオは通用しない。
籠池理事長を呼べば安倍政権は崩壊へ
こうなったら、野党は絶対に腰砕けになったらダメだ。ここで安倍政権を倒せなかったら、民進党が政権を奪取することは永遠にない。そう思うべきだ。
政治評論家の本澤二郎氏が言う。
「鑑定価格9億5600万円の国有地が、わずか1億3400万円という不当な安値で払い下げられていた最大の疑惑は、極右思想を共有する仲間内で国有地が私物化されていたのではないか、ということでしょう。安倍首相が『腹心の友』と呼ぶ極めて親しい加計孝太郎氏が理事長をつとめる『加計学園』が新設する大学にも広大な市有地が無償で譲渡されている。大手メディアには、こうした視点がありませんが、鋭い国民は『なにかおかしい』『仲間うちでおいしい思いをしているのではないか』と疑いはじめている。野党が国民の支持を得るのは、いましかない。国民の立場に立って、安倍政治のカラクリを徹底的に追及すべきです」
籠池理事長を国会に呼び、洗いざらい話させれば、安倍政権はガタガタになるに違いない。それほど、この疑惑の闇は深い。安倍1強体制は崩壊に向かいつつある。 
「口利きない」「再チャレンジする」 森友・籠池氏会見 3/10
学校法人「森友学園」の籠池泰典理事長が10日夕、大阪市淀川区で会見した。大阪府豊中市で4月に開校することを目指していた小学校の設置認可申請を取り下げたことについて「苦渋の決断。もう少し温かい目で見てほしかった」と話す一方、「(小学校設置を)人生の総決算としてやってきた。また再びチャレンジする」と語った。敷地内のごみや産廃土が適切に処理されていなかった疑いについては「山積みの状態をまず運び出さないといけないということで、かなりの労力、知恵を入れてやってきたが、マスコミの報道によってなかなか処理先が見つからなかった。本当に残念。予想外の展開だった」。国有地売却をめぐる政治家の関与については「口利きはしてもらっていないし、(安倍晋三)首相や(妻の)昭恵さんから何もやってもらったことはありません」と否定した。国会で参考人招致が要求されている点については「応じる気持ちはありません」と語った。報道陣から大阪府に理事長退任の意向を伝えたことについて問われると、「悪いことはしていないが、学校を建設しますといって建設できなかった責めはとらせていただきたい」と説明。後任に自身の娘をあてるとした上で、「(自身も)なんらかの形でかかわらないと。教育の方向性や歴史と伝統教育について理念の継承をしないといけない」と話した。 
森友学園「役人が自分の判断でするわけがない」 3/10
その人脈には維新や大物政治家の姿も
豊中市の国有地を実質200万円で買った森友学園。首相夫人の安倍昭恵氏は名誉校長を辞任、国会では口利き疑惑の追及が続く。その人脈は「維新の会」にも広がっていた。
森友学園をめぐり、次々と浮かぶ疑惑。関係を否定する政治家たちに対し、YouTubeで反論した籠池泰典理事長。様々なルートが浮かび上がる中でも、注目されるのが大阪で圧倒的な存在感を持つ「日本維新の会」だ。
役人が自分の判断でするわけがない
「大阪ではすべてを維新が牛耳っています。あれほど大きな土地取引をするのなら、どこかに絡んでいてもおかしくはない」
取材にそう語るのは、土地取引疑惑にいち早く着目し、金額の公開を求める訴訟を起こした豊中市の木村真市議(無所属)だ。
木村市議がこの問題に気がついたのは2016年5月ごろ。この土地はもともと、豊中市が公園用地として購入を希望していた。しかし国との金額交渉が頓挫し、やむなく購入する土地を半分にすることになった。
そこを視察した際、買うことのできなかった残り半分の部分に、「おそろしく復古主義的な小学校」(木村市議)ができることを知ったのだという。
学校をつくろうとしていたのは森友学園だった。日本最大の保守団体「日本会議」と近く、「塚本幼稚園」も運営している。
「工事現場に貼ってあったポスターには、安倍昭恵氏が名誉校長になると書かれていたんです。これは何かあるな、と思って情報公開請求をしたら、こんな真っ黒な資料が出てきたんです」
これが「国有財産売買契約書」。黒塗りになっているのは、金額だけではない。今回、疑惑の中心になっている「ゴミ処理のための8億円引き」を示す契約部分が、すべて真っ黒になっていた。内容はのちに明らかになった。こちらが全文だ。
「政治家が関わっているなと感じました。今になって取引をめぐる様々な仕組みが明らかになっていますが、このようなギリギリ合法の土地取引のスキームを、役人以外が考えられるはずはありません。しかし、役人が自分の判断でそんなことをするはずもありませんよね」
森友学園は資金繰りに苦労していた。土地購入に関しても当初は借り入れ契約を結んでいたことが、取材でわかっている。
だからこそ、木村市議は維新の会と森友学園の関係性を注視している。
「大阪は維新が圧倒的に強く、自民が共産党と手を組むこともある。国政からみたら『ねじれ』のある土地です」
実際、府議会(88議席)では大阪維新の会が42議席を持ち、ほかを圧倒。公明党(15議席)と連立し、過半数を維持している。一方の自民党・無所属の議員団は25人。一野党にすぎない。
学園と維新の関係性
実際、森友学園と維新の人脈の接点は、いくつか見つかっている。
3月3日には、学園の籠池氏が維新府議に「私立小学校認可」を求めて働きかけをしていたことも明らかになったばかりだ。
また、籠池氏が園長をつとめる幼稚園で配布した保護者への手紙には、こんなことが記されていた。
「橋下前大阪市長とは平成26年に両陛下が京都から鶴見区においでになったときに、現大阪府知事松井一郎氏とともに奉迎させていただきました」
松井知事は籠池氏のことを「知らなかった」と話しているが、この書き方を見ると、面識があるようにもとれる。
また、かつて維新の会に所属していた上西小百合衆議院議員も、Twitterで森友学園と維新の会に関係性があったとして、こうつぶやいている。
大物政治家の姿も
維新と関わりの深い、自民党政治家の名も浮かぶ。
小学校のサイトの「あいさつ」には、平沼赳夫衆議院議員の姿が。文章からは、両者の距離の近さがみて取れる。
「籠池先生頑張れ。小学校の教育、これは本当に大切です。幼児教育で大変な実績を挙げられた塚本幼稚園の籠池先生が、此度小学校を建設されることになり、日本にとってこれ程の朗報はありません。大成功を衷心よりお祈り申し上げます。」
平沼氏はいまでこそ自民党に所属しているが、森友学園の小学校建設が始まろうとしていた頃は、日本維新の会の代表代行を務めていた。
その時期の2013年9月21日には、塚本幼稚園で講演会も開いている。PTA発行の「お母さん新聞」を見ると、大きく取り上げられていることがわかる。
募る疑念、否定する2人
そもそも、学校を認可する立場にいるのは大阪府だ。その知事は、橋下徹氏や松井一郎氏である。
2011年9月(橋下知事時代)には、籠池氏がこの基準について府に直接、見直しを要望。府は12年4月(松井知事時代)に基準を緩和している。
これまで、この基準で小学校の設置申請をしたのは、森友学園だけだ。さらに、たった1ヶ月で、「継続審議」から「認可適当」へと、判断が変わった。
大阪府の私学審議会が認可の議論を始めたのは14年12月18日のこと。一部報道によると、委員から経営状況などを不安視する声が相次ぎ、継続審議となった。
しかし、2015年1月27日に臨時の審議会が開かれ、ここでは条件付きで「認可適当」との答申がでている。このときの認可者は松井知事だ。
認可から2週間後、国有財産近畿地方審議会(15年2月10日)が定期借地契約を了承。議事録を見ると、この了承は大阪府の「設置認可適当」を元にした判断だったことがわかる。
疑念は募る。だが、橋下氏や松井氏はそういった憶測を否定する情報の発信を続けている。
松井府知事は「不認可」に言及
「日本維新の会」は3月6日、自民・公明が反対している籠池氏の国会参考人招致に賛成することを明らかにした。
一方の松井府知事は、学校を不認可する可能性に言及している。
提出書類をめぐり、さまざまな問題点が浮かび上がっていることについて、「教育者なので、性善説に立って書類に虚偽はないという形で受け付けていた」(3月6日)。
さらに3月9日には、「全て理事長サイドからの指示で虚偽の契約書が作られたと思う」とまで述べている。
当の籠池氏はどう捉えているのか。YouTubeに公開された(現在は閲覧不可)動画では、購入の経緯はクリーンであることを強調しつつ、「認可妥当の答申をいただいたので工事が始まっている。これは重たい事実なんです」と憤っている。
「この答申がなければ建築がはじまらなかった。いまは建築ができあがって生徒が入ろうとしているのに、認可をなしにしようとなるのがおかしいのです」
「認可をいただかないと大変なことになる。私どもも大阪府に賠償請求せないかんようになる。子どもさんも路頭に迷う」
愛国保守の小学校に連なる人脈
改憲を目指す勢力という意味では維新は安倍政権とも近い。安倍首相は橋下徹氏と面会を繰り返し、菅義偉官房長官も松井一郎府知事(日本維新の会代表)と近い。
そして、小学校の名誉校長は首相夫人の昭恵氏だった。前出の木村市議は愛国保守の重層的な人脈が、疑惑の土地取引に影響を与えたのではないかと見ている。
「安倍昭恵夫人が名誉校長であることが、役人にとって無言の忖度になった可能性もあります。補助金を小学校に投入することで、利権が生まれる仕組みを誰かが見出したのでは、と私は思っています」 
森友学園. 口利き依頼、売却経緯……疑惑山積 追及は続く 3/11
数々の問題が指摘されている大阪市の学校法人「森友学園」。大阪府豊中市で新設を目指していた小学校の認可申請は、10日に取り下げられたが、学園を巡ってはまだ多くの疑惑が残されている。小学校用地となった国有地の売却は、不可解な減額の経緯が謎のままだ。不動産鑑定士は土地価格を9億5600万円と査定したが、「地下からごみが見つかった」とする学園の報告を受け、国はごみ撤去・処分費約8億円を差し引いた1億3400万円で学園に売却。ごみ処理にかかる費用を国が直接算定する異例の対応だった上、国はごみの撤去を確認せず、ごみが出た場所も把握していない。国会では野党の追及が続いており、会計検査院も検査に乗り出した。真相解明のため、学園の籠池泰典理事長の参考人招致を求める声も上がっているが、与党の反対で実現していない。一連の問題で、籠池理事長が自民党参院議員の鴻池祥肇(よしただ)・元防災担当相や大阪府議ら複数の政治家と接触していたことが判明している。国有地売却や小学校設置認可について、政治家の不正な関与がなかったか、解明も必要だ。籠池理事長は2014年に鴻池氏と面会した際、商品券を渡そうとしたことは認めたが、「あいさつの意味だった」と一連の問題とは無関係を主張する。また、小学校用地の造成を巡り、工事に関わった土木業者が「建設現場から掘り出したごみの一部を敷地内に埋めた」と証言している。地上に掘り起こした廃棄物は適正処分の義務があり、埋め戻すと不法投棄に問われる可能性がある。学園側は「仮置き」と主張し撤去する方針だが、搬出開始日は決まっていない。このほか、籠池理事長が代表の社会福祉法人が運営する「高等森友学園保育園」(大阪市淀川区)が15〜16年度、市から運営補助金約1000万円を不正受給していた疑いもある。園長は専従であることが受給要件だが、園長を務める籠池理事長の妻は、別の幼稚園で副園長として勤務している。この保育園では園児に虐待をしていた疑いもあるといい、市は調査を始めた。 
急転直下の申請取り下げ、保護者も衝撃「説明ない」 3/11
大阪市の学校法人「森友学園」が大阪府豊中市の元国有地で4月に開校を目指していた小学校の設置認可をめぐる問題で、学園側は10日、一転して大阪府への認可申請を取り下げ、籠池(かごいけ)泰典理事長が退任の意向を表明した。だが同じ日の午前、学園が運営する塚本幼稚園(大阪市淀川区)で開かれたPTAの会合では、籠池氏は今後の動向を不安視する数人の保護者を前に「まだ、あきらめない」と、自らの夢である小学校開設を改めて誓っていた。急転直下の方針転換のウラで何があったのか。学園側は今後、残されたさまざまな課題にどう対応するのか。校舎が建つ元国有地取得の経緯、学校認可をめぐる大阪府への虚偽報告、金額の異なる3種類の工事契約書…。次々と浮かぶ疑惑について、保護者らも報道ベースでしか知らない。子供を学園の小学校に入学させると決めていた人もいた。「一体、どうなんでしょうか」。籠池氏に真相をただしたが、要領を得なかったという。理事長退任や認可取り下げの話は一切出なかった。だが、このときのやり取りで取り下げを決意した、と籠池氏は後の記者会見で明かしている。進学先を公立学校に変更してもらうにしても、手続きのリミットがあるからだ。午前11時50分、学園の代理人弁護士が大阪府私学課に電話を入れた。「午後2時に会いたい」。面会時に小学校設置認可申請の取り下げが伝えられた。午前中の会合に出席していた保護者の男性にとっては、思ってもみない急展開だった。「やめるなら、直接言ってほしかった。僕らも説明を待っていた」と不満をにじませた。申請の取り下げは仕方がない。ただ、もし不正があったなら、まずはそれを認めるべきだ。「それと切り離して、教育内容は良いことをしているとはならないだろう」。会見を聞いても釈然としなかったという。府によると、学園の小学校に入学を予定していた子供は最終的に20〜25人になっていた。松井一郎知事は「地元小学校での受け入れがスムーズに行われるよう、府教育庁に早急に調整してもらいたい」とするコメントを発表した。開校予定地だった大阪府豊中市の元国有地は、買い戻し特約に基づいて、国が返還を求める方針だ。木材を多用した校舎は完成直前だったが、そうなると解体して更地にしなければならない。学園側は小学校建設工事の代金に加えて、新たに解体費用という債務を負うことになる。もともと財務状況が不安視されていただけに、経営への影響は大きいとみられる。国土交通省からも校舎建設に支給された補助金約5600万円の返還を迫られることになりそうだ。補助金をめぐっては、申請時に正規の工事代金である15億5520万円を大きく超える「23億8464万円」の契約書が出されていたことが明らかになっており、補助金適正化法に抵触する可能性もある。一方、小学校の認可申請をめぐって、学園が府に提出した契約書では工事代金が「7億5600万円」とされていた。府私学課は10日の会見で「虚偽の疑いが極めて強いとみている」との見解を示したが、「認可の虚偽申請について罰則規定は特にない。刑事告発は考えていない」とした。今後、認可の可否は判断しないが、数々の疑惑について事実確認を続ける。 
森友疑惑の元凶は復権をかけた安倍ポチ財務官僚の忖度? 2017/3/13
奇々怪々の森友学園問題の元凶は何なのか。小学校予定地を視察した小沢一郎・自由党代表はこう語った。
「地中のゴミの含有率など不可解な算定で、お役所仕事とは思えない前例のないスピードで進んでいる。政治家の関与などの背景があったはずだ」
背景と言えば籠池氏と安倍首相夫妻、稲田防衛相夫妻などとの“交友”が思い浮かぶが、それだけではない。実は、国有地払い下げの手続きが進められた2014〜16年ごろは、消費増税をめぐる政争で財務省がかつてないほど“惨敗”していた時期だ。ジャーナリストの山田厚史氏はこう分析する。
「安倍官邸に対して恩を売って巻き返しを図りたいという意思が働いた可能性は十分に考えられる」
“消費増税”による財政再建が宿願の財務省は、経産省主導の安倍政権下で苦杯をなめ続けてきた。安倍首相は14年11月、消費税率の8%から10%への引き上げを1年半延期すると表明した。16年6月にも「新しい判断」と称して増税をさらに2年半再延期。このときは麻生太郎財務相や稲田朋美政調会長(当時)らが「衆院を解散して信を問うべき」と主張して首相と対立した。
こうした攻防の水面下では、財務官僚が政治家に必死の“レク攻勢”をかけていたという。財務省関係者がこう語る。
「安倍首相が外遊に出かけるとき、麻生財務相と財務官僚が飛行機に乗り込んでまでレクをしていた。稲田氏の元へも官僚が頻繁に通って説得し、結果として彼女は増税派に傾いたと言われています」
劣勢の財務官僚が省を挙げて政権に取り入ろうとしていたときに、森友学園の案件が近畿財務局に持ち込まれていたのだ。官僚の“忖度”が最大限発揮されたことは想像に難くない。
「15年7月から16年6月まで財務事務次官だった田中一穂氏は第1次安倍政権で経産省出身の今井尚哉氏と共に首相秘書官を務めた人物。今、菅義偉官房長官と共に官邸を牛耳る今井氏に対抗するため、安倍首相の意向を忖度しまくる。“御用聞き”にならざるを得なかった。また、当時の理財局長だった迫田英典氏は安倍首相と同じ山口県出身で、国税庁長官に出世しました」(前出の財務省関係者)
小沢氏とともに森友学園を視察した森ゆうこ参院議員(自由党)がこう語る。
「最後は官僚が“トカゲのしっぽ切り”で責任を押し付けられるかもしれない。視察のとき、近畿財務局の担当者らに『最後は死人が出ますよ』と話したら、本気で怖がっていました。公的な記録が破棄されても官僚は必ず“メモ”を残している。真相が闇に葬られる前に早く表に出してほしい」
森友学園 籠池理事長を取材した作家「役人の手心で問題が」 2017/3/14
13日、インターネット上で森友学園の籠池理事長のインタビューを公開したノンフィクション作家が市民団体の集会に参加し、今回の問題について、「国や大阪府の役人が手心を加えていなければ問題は起きていなかった」と指摘しました。
このなかで、ノンフィクション作家の菅野完氏は、森友学園が運営する幼稚園で一部の保護者から「トイレを我慢するよう指導を受けている」といった苦情が寄せられたことについて、「実際に保護者を取材すると、子どもたちが日常的に虐待を受けていたことは明白だ」と指摘しました。
さらに、今回の問題については、「国や大阪府の役人が手心を加えていなければ問題は起きていなかったと思う」とみずからの考えを述べたうえで、「役人が法にのっとったプロセスを無視し、小学校の認可を無理に行おうとしたとしか考えられない。世論を敏感に察して対応を変える姿勢は、まさに全自動忖度(そんたく)機だ」と、国や大阪府の対応を批判しました。
森友事件の「忖度」が示す日本の変わらぬ「國體」 2017/3/14
森友学園の事件は国会で審議するような問題ではないが、稲田防衛相にも延焼して社会部ネタとしてはおもしろくなってきた。本丸の安倍首相は「もし関わっていたら私は政治家として責任を取る」と明言しているので、常識的には(少なくとも意図的には)彼は関与していなかったと思われる。
だが9億5000万円で取得した土地の「ゴミ処理代」が8億2000万円というのは、いかにも不自然だ。国有地を売却したのは財務省の理財局だが、これについて橋下徹氏が「財務省の忖度ではないか」という古風な表現をしていたのがおもしろい。『大辞林』によれば、忖度(そんたく)とは「他人の気持ちをおしはかること」で、その「他人」はかなり目上の人だ。この場合はもちろん首相である。
森友学園の籠池理事長は国有地を安く払い下げてもらうために理財局に直接かけあったようだが、そのとき「名誉校長」である安倍昭恵氏の名前を利用したことは想像に難くない。実際には首相との関係はなくても、理財局の担当者が首相の意図を「忖度」した可能性はある。財務省にしてみれば国家予算100兆円の中ではゴミのような案件で、うるさい右翼を黙らせる「口止め料」としては安いものだ。
この話を聞いて連想したのは、丸山眞男が引用した大正12年末の摂政宮狙撃事件のとき、関係者が責任を取ったエピソードである。
「内閣は辞職し、警視総監から道すじの警固に当った警官にいたる一連の「責任者」(とうていその凶行を防止し得る位置にいなかった)の系列が懲戒免官となっただけではない。犯人の父はただちに衆議院議員の職を辞し、門前に竹矢来を張って一歩も戸外に出ず、郷里の全村はあげて正月の祝を廃して「喪」に入り、卒業した小学校の校長並びに彼のクラスを担当した訓導も、こうした不逞の輩をかつて教育した責を負って職を辞したのである(『日本の思想』)。」
ここで問われたのは、狙撃した犯人の刑事責任でもなければ、テロを防げなかった警備担当者の責任でもない。彼らを辞職に追い込んだのは、摂政(昭和天皇)や国民の怒りをおしはかる自発的な「忖度」の連鎖だった。
丸山はこの事件について「『國體』という名で呼ばれた非宗教的宗教がどのように魔術的な力をふるったかという痛切な感覚は、純粋な戦後の世代にはもはやない」と書いたが、こうした「忖度」は現代の日本にもある。「國體」を示す記号が、天皇から首相に変わっただけだ。このような「無限抱擁」に実定法で歯止めをかけることはきわめて困難だ。それを動かしているのは法を超える「空気」だからである。 
森友学園問題の真相は財務省による「忖度」ではないか 2017/3/14
学校法人「森友学園」(大阪市)が大阪府豊中市の国有地を評価額より大幅に安く取得した問題で、森友学園が小学校の設置認可を求めた申請を取り下げた。学園理事長の籠池泰典氏は、理事長を退任する意向を示したが、国有地売却を巡る「政治家の関与」は否定した。
14億円相当の国有地が実質200万円で売却された不可解な経緯に、政治家の関与があるのではないかと、野党は厳しく追及してきた。森友学園の要望が次々と実現した背景に、政治家の口利きがないというのはあり得ないとする見方が広がる一方で、それを示す確たる証拠は未だに出てきていない。安倍晋三首相は「私と家内、事務所も一切関わっていないと申し上げた。もし関わっていたら私は政治家として責任を取る」と明言している。
本稿は、安倍首相など閣僚級の政治家の関与はなかったのだろうと考える。むしろ「安倍首相に近い」とされる保守系の団体からの強い要求を、財務省が首相の意向を「忖度」して認めていったように思われる。しかし、安倍首相を支持しているとされる保守系の団体が、日本社会で不思議な影響力を持っているとするならば、それは「政治家の口利き」のような単純な話よりも、はるかに根が深く、嫌な問題になってくるのではないだろうか。
地方レベルの「政治家と保守系団体」の日常の付き合いとは
森友学園と政治家が、実際にどこまで接触していたのかを推測してみるところから始めてみたい。一般的に考えて、日常レベルで様々な接触があったと考えるのが自然だ。日本の地方政治の日常を見れば、運動会など学校行事等に地方政治家や国会議員が、選挙対策として顔を出すのはよく知られていることだ。特に、自民党や維新の会のような「保守」であれば、一応思想的にも近い。塚本幼稚園に顔を出し、「教育方針が素晴らしい」などリップサービスを交えた来賓祝辞もしていた政治家がいたことは、容易に想像できることである。
筆者は、大学のキャンパスが大阪にあるので、大阪の地方自治体・議会と若干なりとも交流がある。そこで、「維新の会」についての話を聞くことがある。ご存じの通り維新の会は、「既得権打破」「二重行政打破」を強く主張したきた。一方、「日本会議」のような、いわゆる「新しい保守」系の団体は、最近までいわば「マイナー」な組織に過ぎなかった。そういう意味で、同じくマイナーな存在同士であった、維新の会の地方議員と接近するのは容易に想像できる話だろう。
維新の会は地方レベルではいろいろなバックグラウンドを持つ議員がいる。自民党から維新に移ったコテコテの「土建屋政治家」の古株議員もいれば、若手には、流行りの言葉でいえば「オルタナ右翼」のようなレベルの議員も少なくないようだ。彼らと「新しい保守」系の団体とは、思想的な親和性もあり、互いに警戒することはほとんどなく、むしろ惹かれ合うように接近していったように思われる。
今回の件で、橋下徹元大阪市長や松井一郎大阪府知事など、維新の会のトップレベルと森友学園の深い関係が噂されている。しかし、それは松井知事の「面識がある程度」という説明を、素直に受け取っていいのではないだろうか。むしろ、それ以前の現場レベルでの、日常の付き合いがかなり密接にあったと考えるほうがいい。
地方政治家、鴻池氏、近畿財務局は動かず財務省理財局で土地取得は決められた
しかし、そんな日常的な付き合いが割と気楽に続いているうちに、森友学園側が「小学校を設置したい」と、いろいろな政治家に言い出すようになった。最初は地方議員に陳情を繰り返し、話がなかなか進まないと鴻池祥肇元防災担当相のような国会議員に陳情をしていったということだ。「学校の認可・設置に関する政治家への陳情」というだけならば、どこの地方でもよくあることで、「政治家が相談に乗る」「役所の担当者を紹介する」程度のことなら、別に珍しい話ではないだろう。ただし、今回はそれとは別次元の、土地取得に関するあまりに不可解な話がある。これについては、よくある話と片付けるわけにはいかないものである。
今回の件に関しては、鴻池事務所に対する籠池理事長の「陳情報告書」の記録が出てきている。そこには、鴻池元防災相の元秘書・黒川治兵庫県議会議員(自民党)や、中川隆弘大阪府議会議員(維新の会)らの名前が出てくる。彼らは、再三再四に渡って、籠池理事長から「鴻池事務所につないでほしい」と依頼を受けていた。そして、「相談に乗ってあげてよ」という形で、鴻池事務所につないだという。ここまでは、まだ通常の陳情の範囲内だ。
しかし、2016年3月に森友学園が、杭打ち工事を行う過程で新たな地下埋蔵物が発見されたことをきっかけに、資金不足のために土地を賃貸することから、突然購入に方針転換してからは、陳情攻勢のしつこさが尋常ではなくなった。報告書には、「うちはコンサル業ではありませんので」「うちは不動産屋と違いますので。当事者同士で交渉を!」「どこが教育者やねん!」「大阪府の担当者は、土地以外の(生徒募集)を一番懸念されているようですが」などと、籠池理事長のあまりにしつこい陳情に、鴻池事務所が呆れかえっていた様子が記されていた。
そして、籠池理事長は、要求に応じない近畿財務局を飛び越えて、財務省理財局を訪れて直談判に及んだ。その際、理事長は鴻池事務所にアポ取りを依頼したが、断られていた。しかしノーアポで理財局に乗り込み、ゴミ処理代を8億1900万円とする内諾を得て、評価額9億5600万円の国有地を、1億3400万円で購入したのである。
要するに、籠池理事長は地方・国の様々な政治家に接触し、近畿理財局にも掛け合ったが、国有地を安く購入することはできず、財務省理財局訪問のアポ取りさえ断られていた。理事長が理財局に直談判して、初めて森友学園の要求が通ったのである。つまり、地方議員も鴻池元防災相も、ルールに従って事務的に対応していた近畿理財局を動かすことはできなかったのだし、そもそも動かす気がなかったように思われる。全ては財務省理財局で決められたのであり、そこに政治家の関与、それも鴻池元防災相を超える「大物」が関与したかに焦点が絞られることになる。
安倍首相があえて保守系学校法人の土地取得に関与するとは考えられない
要するに、突き詰めると「安倍首相夫妻が森友学園の土地取得に関与していたか」が焦点となるわけだ。しかし、筆者は「現時点では」安倍首相夫妻の直接的関与はなかったと考えている。安倍首相は、第一次政権(2006年9月〜2007年9月)をわずか「365日」の短命政権に終わるという失敗を経験している。その一因は、「年金未納問題」や度重なる閣僚の「スキャンダル」などで支持率が低下し、求心力を失ったからだ。筆者は、スキャンダルが頻発したに背景には、「教育基本法改正」など、首相が保守的な信念を貫こうとして、左翼勢力を本気で怒らせたからだと考えている。
安倍首相は、2012年12月に政権復帰するにあたって、この第一次政権期の失敗から様々な教訓を得ていた(本連載2015.3.5付)。それは、政敵に隙を与えないために、「守り」を固めるということだ。例えば、首相は、自身の保守的な思想信条を表明するのに、非常に慎重である。もちろん、「特定秘密保護法」(2013.12.6付)、「安保法制」(2015.9.19付)など、「やりたい政策」を実現してきた。それでも、「アベノミクス」による経済重視を打ち出して、愚直に政策実現を目指した第一次政権期と比べれば、相当に慎重に振る舞ってきたのだ(2014.12.18付)。
そんな慎重な安倍首相が、保守系の学校法人の土地取得に関与するなど、危ない橋を渡るはずがないと思うのだ。本人ではなくても、スタッフが関与したというかもしれないが、本人以上にスタッフが慎重なはずで、ありえないことだ。もし本当に関与しているならば、即刻「内閣総辞職」に値する愚行であろう。
従って、森友学園が「安倍晋三記念小学校」という名称を使って寄付集めをしたことに抗議したことや、「何度も何度も断ったのに、しつこかった」という首相の国会での説明は、嘘を言っていると決めつけることはできないと思う。日頃の首相の慎重な行動から理解できる範囲のものだ。
一方、安倍昭恵夫人が、森友学園の小学校の名誉校長に就任し、講演会でその教育方針を賛美したことは、軽率であったと言わざるを得ない。しかし、擁護するわけではないが、端的に言えば、夫人が世間知らずで「天然ボケ」のお嬢様だったというだけの話だ。これも一般論になるが、政治家やその関係者に講演や取材の依頼は日々いろいろ来るものである。事務所は、相手の思想信条などあまり考慮せずに引き受けることはある。逆に、依頼を断るのは案外に難しいものである。
そして、講演になれば、目の前に座っている人たちに、ある種の「リップサービス」をすることはよくあることだ。例えば、首相・閣僚レベルでも、有名な森喜朗氏の首相在任時の講演での発言「日本は神の国」や、麻生太郎財務相が「ナチスの手口をまねたらどうかね?(会場から笑いが起こった)」と口が滑ったりしたような話である(2013.8.30付)。
それは、森氏や麻生氏が時代錯誤なとんでもない思想信条の持ち主だというより、その言葉だけ取り上げず、講演の前後の文脈も併せて聴けば、目の前の人を単純に笑わせただけだとわかる。安倍夫人の発言も、そういう類の話で、「今後気を付けてください」という厳重注意で済む話だ。それが直ちに、首相夫妻の土地取得やその他の便宜への関与の証拠というわけではない。「アッキード事件」というのは、明らかに限度を超えているだろう。
保守派は影響力があるという「空気」を断ち切らなくてはならない
そうすると、誰が関与して森友学園の国有地取得が実現したのかだが、基本的には政治家は誰も「口利き」はしていないのではないだろうか。財務省理財局が、籠池理事長の直談判を自らの判断で受け入れてしまったのだ。要は、籠池理事長が安倍首相と「近い関係にある」と思い、安倍首相の意向を「忖度」して、理財局の判断だけで話を通してしまったのではないだろうか。
これも一般論から入りたいと思うが、日本社会では、「うるさい人」がやってきたら、いちいち理屈で抵抗しないで、できるだけ触らない、関わらないということで話を通してしまうということがよくある。まして、権力を持つ人がバックにいるとなれば、なおさらである。
籠池理事長が財務省理財局に直接乗り込んできて、「安倍首相がバックにいる」とか、あることないことを言って圧力をかけたことは容易に想像できる。理財局からすれば、本当に首相がバックにいるのかどうかはわからない。しかし、杓子定規に断った後で、本当に首相が出てきたら面倒な話になってしまう。
麻生財務相が国会で「適切に処理した」と再三答弁しているように、国有地の売却自体は、財務省理財局の権限でできるもので、違法ではないのだろう。だから首相などに確認することもなく、通したということだろうか。それならば、至って「日本的な話」だということになる。
しかし、もう一歩踏み込んで考えると、話はもっと深刻なものになるかもしれない。安倍政権が長期政権化していき、次第に首相が特定秘密保護法、集団的自衛権から共謀罪、そして憲法改正へと「やりたい政策」を着実に進めていくようになると、それを支持する「日本会議」など保守派が、なんとなく政界に影響力を持っているような「空気」が流れているように思える(2016.11.8付)。
前述のように、政治家は地方でも中央でも、日常の活動において、日本会議の関連など保守的な団体に「いい顔」を見せて、その思想信条を素晴らしいなどと「リップサービス」を繰り返すようになっている。その空気は、中央の官僚組織の中心である財務省までもが、強く感じるようになっているのではないだろうか。そして、安倍首相に何も頼まれているわけではないのに、きっと首相が望むことだと「忖度」してやったことだとすれば、物事は単なる「政治家の関与」よりも、より根深く、面倒なものになるのではないだろうか。
さらに言えば、籠池理事長と財務省が接触した時期は、安倍首相と財務省が「軽減税率」を巡って激しい攻防戦を繰り広げた後であった(2015.12.22付)。そして、首相がノーベル経済学賞の受賞者を官邸に招き、「消費増税延期のお墨付き」を得ようとした時期でもある(2016.4.12付)。財務省と首相の関係が悪化していた時期だったといえる。財務省が首相のご機嫌を取り、関係改善のために行ったことが、「首相を支持する保守的な団体の国有地取得に便宜を図ること」だったとすれば、大問題であろう。
おそらく、この問題は籠池理事長の辞任と、小学校の認可申請取り下げで、幕引きを図る方向に向かうのだろう。安倍首相など「政治家の関与」も、確たる証拠は出てこないだろう。しかし、野党は追及の手を緩めるべきではない。前回論じたように、この機会に、自民党と保守派の不適切な関係を絶たせるべきである(2017.2.28付)。単なる政治家のスキャンダルという以上のより深刻な問題が、日本社会の地方の現場レベルから、中央政界・官界にまで静かに広がりつつあることを、見逃すわけにはいかないのではないだろうか。
森友問題を最初に追及 木村真市議が語った「疑惑の端緒」 3/16
大阪市の学校法人「森友学園」をめぐる国有地の激安払い下げ問題。今や安倍政権の屋台骨を大きく揺さぶっているが、この疑惑に最初に気付いたのが、豊中市議の木村真氏だ。2月8日、情報公開請求した当該国有地の売却額を非公表とした国の決定に対し大阪地裁に提訴。直後に記者会見を開き、新聞記事に取り上げられたのが「森友問題」が火を噴くきっかけとなった。疑惑に気付く端緒は何だったのか。
調査のきっかけは工事現場の児童募集ポスター
――大阪地裁に提訴してから、わずか1カ月。今や「森友問題」は連日、新聞・テレビで大きく報道されています。
正直言って、最初はここまで問題が大きくなるとは思っていませんでした。ちょっと、びっくりしていますね。
――森友学園に目を付けた動機は何だったのですか。
昨年の4〜5月だったと思いますが、学校の工事現場の柵に児童募集のポスターが張ってあり、そこに靖国神社の鳥居らしき写真と一緒に教育勅語が載っていました。その時、ちょっと待てと。こりゃあ極右の学校じゃないかと。そんな小学校が豊中にできるのは我慢できない。早速、事務所で学校のHPを見たら、大阪市の塚本幼稚園が小学校をつくるというのが分かりました。この幼稚園は地元では右翼系幼稚園として知られていたから、これは何としても学校設置を潰さないといけない。そう思って調べ始めたのがきっかけです。
――何が分かりましたか。
まず、土地の登記を調べました。ひょっとしたら土地取得について、何かうさんくさいことをやっているかもしれないと思ったからです。昨年5月に登記簿を取得したら所有者は国交省でした。そこで(国有地売買窓口の)近畿財務局に電話して詳細を尋ねると「定借権(定期借地権)付きで貸しています」と。この時点で何かおかしいと思いました。
――国有地貸与の何が不自然に感じたのでしょうか。
あの国有地はもともと、豊中市が国から無償で貸与を受け、公園を整備することを希望していました。都市計画道路を造り、具体的な図面まであった。ところが、国は土地はタダでは貸せないといい、07〜08年ごろになると、10年までに買ってほしい、それができないなら売却すると市に最後通牒を突き付けてきました。当時の市の財政状況は阪神大震災の影響などもあって非常に厳しく、とてもじゃないが25億円も30億円も負担できません。そこで、仕方なく(道路を挟んで)東側の部分だけを買ったのです。あれほど国は市に対して強硬に買い取りを求めていたにもかかわらず、なぜか森友には貸しているという。改めておかしいと。
――それで近畿財務局に情報公開請求した。
「国有財産有償貸付合意書」の写しを請求すると、金額と一部の条件が全て黒塗りでした。しばらくして、森友が土地を買ったという話を聞いて、今度は売買契約書を請求すると、やはり金額の類いは一切黒く塗り潰されていました。過去の国有地売買の例を調べると、森友のように随意契約の案件はすべて公開されている。それなのに森友だけは非公開。これは完全におかしい。何かうさんくさいことをやっているに違いないと確信しました。
――同時並行で大阪府私立学校審議会(私学審)の審議過程も調べた。
森友案件は14年12月に継続審議になり、15年1月の臨時会で認可適当となりましたが、過去の私学審の開催状況を調べると、09年からの8年間で臨時会は森友の1回だけ。これは極めて異例の扱いで、他方、国有財産近畿地方審議会の議事録を読むと、森友案件については異論が噴出したものの、最終的には私学審でOKが出るのだから、OKにしましょうか、みたいな内容だった。この流れはどう考えても不自然だと思いました。
――それでいよいよ提訴に踏み切った。
その前に昨年10月末ごろから、今回の疑惑について3万枚のビラを作って市内を中心に配りました。籠池(泰典)理事長宅の郵便ポストには特別サービスで3枚ぐらい入れたと思います。ただ、豊中市だけで17万世帯もあるため、これではラチが明かない。じゃあ、マスコミに情報提供しようと。当初はなかなか報道されませんでしたが、売買金額の非公表の件で国を提訴して会見を開けば、どこかのメディアが取り上げてくれるかもしれないと考えました。結果、もくろみ通りといったら失礼な言い方ですが、大きく報道された。そういう流れです。
忖度のレベルを超えた政治家の関与があったと推測
――昨春に児童募集のポスターが目に留まっていなければ、数々の疑惑が見逃され、小学校も開校していた。そう考えるとゾッとしますね。
本当にそうですね。正直言って、こんな右翼学校ができるのはたまらん、と思って調べ始めたわけですが、別の学校法人だったら調べていなかったかもしれません。ひょっとして、今回の森友のような類いの話は全国にたくさんあるのではないか。
――森友問題で政治家は関与したとみていますか。
財務官僚が独断でやるはずもなく、何らかの政治家の関与があったと思います。安倍政権のかなり中枢に近い部分が直接的に関与していたのではないかと強く疑っています。
――安倍首相本人の関与についてはどうですか。
さすがに安倍首相自らが森友の契約を値引きしろ――などと具体的な指示を出したとは思いません。ただ、大いにあり得る話だと思うのは、例えば安倍首相が財務官僚に対し「籠池さんの教育に対する情熱は素晴らしい。今度、小学校をつくるから期待している」などと言う一方で、森友が財務省に「土地を安くしてくれ」と陳情してくる。そこで、板挟みになった財務官僚がアクロバットのような技をひねり出したのではないか。つまり、忖度のレベルをはるかに超えた、ほぼ圧力に近いものがあったのではないかと推測しています。
――森友が学校設置の認可申請を取り下げましたが、どうみていますか。
おそらく、籠池理事長は「おまえ、刑事訴追されるぞ」とか言われたのでしょうが、森友が学校設置の認可申請を取り下げても疑問点は何一つ解決していません。ワイドショーでは、塚本幼稚園のえげつない話の暴露合戦みたいな報道が目立ち、もともと何の話だったのかよく分からなくなっていますが、この問題は2つ。国有地の不可解な売却と、なぜ学校設置が認可されたのか――です。土地の賃貸借や売買をめぐっても、鑑定評価書が何通も出てくる。要するに国側は森友の条件に合うまで何度も鑑定をやり直している。国が何ら根拠なく契約するわけにはいかないからでしょうが、森友に言われるがまま値下げしまくっているわけです。一方、学校設置認可をめぐっては、議事録を読めば不認可が当然なのに強引に決まっている。そろって相当、ムチャクチャなことをやっている。幕引きどころか、ますます疑問は大きくなっているのです。大阪府では自民党よりも政権に近いのが維新であり、安倍首相と橋下前知事、菅官房長官と松井現知事のラインは強固なパイプといわれている。今回の問題にこうしたラインが関与していたのではないかと強く疑っています。いずれにしても、この問題は限りなく黒に近い灰色ではなく、完全に黒だと思うので、今後も刑事告発など使える手段を何でも使いながら、真相を解明したい。
――森友問題を通じて明らかになったことは他にありますか。
この国の政権、政治というのが異常な状態にあるということを再認識しました。安倍首相は当初、森友学園のことを非常に教育熱心で素晴らしい、と発言していました。よくよく考えると、籠池理事長が言っている内容は安倍首相が普段言っていることとほぼ同じ。つまり、思想的には一緒です。無意味に中国を敵視したり、太平洋戦争を侵略戦争と認めなかったり。従軍慰安婦問題についてもしかりです。国際的には全く通用しない言い逃れを繰り返している。森友問題が大きく注目されたことで、国民も森友学園を礼賛するような政治家が総理大臣に就いていていいのかということを真剣に考えないといけないでしょう。

きむら・まこと 1964年、大阪府生まれ。大阪外国語大学2部ロシア語科卒。会社員、自営業などを経て、「誰でも、一人でも入れるユニオン」北大阪合同労働組合執行委員に。07年4月の豊中市議選に無所属で立候補し、初当選。現在3期目。
森友学園問題発端となった報道 3/23
理事長である籠池氏の国会証人喚問が行われ、ますます注目度が増している「森友学園問題」。メディアで取り上げられ始めて、もう1か月以上経つような気もするのですが、そもそもこの騒動の発端となった最初の報道とは一体何だったんでしょうか?きっかけやその始まりはいつからだったのか調べてみました!
森友学園問題発端となった最初の報道は?
「森友学園の過激?ともとられる教育内容」や「安倍首相からの寄付金疑惑」など連日あらゆる内容が問題に取り上げられていますが、そもそもの発端は「国有地の払い下げ問題」だったような…。話が大きくなり過ぎて、それすら忘れそうになっていました。しかしなぜこんなに注目を浴びる事になったのか、その発端を詳しく知らないという人も意外と多いのではないでしょうか。
森友学園問題の発端は「朝日新聞」の報道
森友学園問題の発端となったのはズバリ2017年2月9日の朝日新聞の報道です。
それによると、
○ 2010年に近畿財務局が「森友学園の隣にある同じ位の広さの国有地(9492u)」を「約14億2300万円」で豊中市に売却
○ 2013年6〜9月に近畿財務局が今度は「森友学園建設予定地となった国有地(8770u)」の売却先を公募で探す
○ 2016年6月に森友学園がその土地購入決定
○ しかし実はこの時点では、森友学園の購入額は不明であった(国有地の売却は原則公表されるはずなのに、なぜか資料は黒塗りで非公表)
○ 森友学園に何か違反があった場合、国が「1億3400万円」で買い戻す特約が付いていた
○ 通常は「この特約の金額=売却額」なので、森友学園はこの土地を「約1億3400万」で購入と推測、籠池理事長も認める
というような事が書かれており、この報道を見た人は、「なぜ森友学園は10分の1の金額で土地を購入出来たのか?」「8億円引きってどういう事?」って思うような内容でした。
それからこの「森友学園問題」はどんどん大きくなってっちゃったんですよね…。国有地の払い下げの件だけではなく、「安倍昭恵夫人が名誉校長に就任予定」とか、「子供たちに教育勅語まで言わせている」とか、ネタになる事がいっぱいで、とにかく連日報道されています。
しかしこの朝日新聞の報道が出た2月9日の時点では、学校法人森友学園が経営する「瑞穂の國記念小學院」の開校準備は着々と進んでいたはずです。
そのまま何も問題がなければ4月には何事もなかったように開校されていたんでしょうね…。
まさか籠池理事長もこんな事になるとは夢にも思わなかったんだろうな…。
きっかけは「豊中市議会・木村真議員」
発端となった報道をしたのは朝日新聞ですが、実はその前にこの件を調査していた「豊中市議会・木村真議員」が情報開示を求めて訴訟を行っていたのがきっかけになり、朝日新聞も報道する流れになったようですね。
木村議員は以前からこの土地に関心があったようですが、気が付くと「森友学園の運営する瑞穂の國記念小學院」の建設予定地になっており、色々この学校に調べていくうちに「おかしいのでは?」と思うようになったみたいです。
まあ市議会議員をやっていれば、自分たちの住んでいる町にどんな小学校が出来るのか、気になるのは自然な流れかもしれません。
森友学園問題の始まりはいつから?
では、更にさかのぼって森友学園問題自体の始まりはいつだったのでしょうか?
瑞穂の國記念小學院を開校する流れを調べてみると、
○ 2013年夏に公募に応募し、土地取得のために動き出す
○ 2014年10月に小学校設立の申請書を大阪府に提出
○ 2015年1月大阪府より認可が下りる
○ 2015年9月に森友学園が運営する塚本幼稚園で安倍昭恵夫人が講演(名誉校長に就任?→のちに辞任)
○ 2015年12月に校舎建設工事着工
○ 2017年3月認可申請取り下げ
という感じに進んでいたようです。今から4年前位から籠池理事長は小学校の建設を具体的に計画し始めていたのでしょうか…。
素人には分かりませんが、学校経営ってそんなに儲かるんですかね?今どきの学校ってモンスターペアレンツとかも凄そうですし、とにかく何だか面倒くさそう…って思っちゃうんですけど。
まあ瑞穂の國記念小學院は塚本幼稚園の受け皿みたいな感じで作ろうとしたのかな?とも思います。籠池理事長は決してお金のためではないとか言っていたような気も…。それにすごく教育方針がしっかりしている幼稚園みたいですしね。
という訳で事の発端はかなり前から始まっていたという事です。余談ですがちなみに2013年夏と言えば、2020年東京オリンピック開催が決定した頃ですね。「お・も・て・な・し!」とか言っている間に裏でこんな事が起きているとは…。
森友学園問題の終わりは?
3月23日に籠池氏の証人喚問が行われましたが、結局驚くような証拠が出てきた訳ではありませんでした。
結局安倍首相からの寄付金についてももっとちゃんとした証拠がなければ、水掛け論のような気もしますし、どうにもならないのではないでしょうか。
籠池理事長は補助金の不正受給?のために、色々虚偽の申請などもしていたようですから、何かの罪に問われる可能性はあるかもしれませんが、それ以外の口利き疑惑の件はよっぽど何か新たな証拠でも出てこない限り、これ以上進展はないのかな…。籠池さんが1人だけ悪者になるのも何だか可哀想な気もしますけど。
このまま進展がなくなっていけば、徐々にメディアにも取り扱われなくなり、収束って流れになるのではないでしょうか。 
 
証人喚問後の記者会見

 

森友学園・籠池理事長が証人喚問後に記者会見 1
学校法人「森友学園」に国有地が鑑定価格よりも大幅に安い金額で払い下げられた問題で、同学園の籠池泰典氏は23日夜、国会の証人喚問に続いて日本外国特派員協会で会見した。
登壇者の紹介
司会 / 皆さんこんばんは。記者会見にお越しいただきまして誠にありがとうございます。本日、長い間、国会で答弁をなさった、籠池理事長は疲れてらっしゃるのではないかと思いますので、わざわざここに足を運んでいただきまして、誠にありがとうございます。
本日、国会で証人喚問として出頭し、安倍昭恵総理大臣夫人から100万円が入っている封筒を直に受け取ったというふうに証言をいたしました。それは2015年9月に塚本幼稚園に訪れた際のことだと証言しました。
本日、菅官房長官はこの事実を否定し、安倍首相、そして昭恵夫人、第三者を通じてもなんらかの、金の受理はありませんでしたとはっきり言いました。記者会見の始まりに、冒頭に、3つの書類を提出する予定だったんですけれども、実は1つに絞りたいと思います。その1つはFAXになりまして、昭恵夫人の秘書から籠池理事長宛てのものです。1つの資料においては個人情報が入っておりましたので、それをぜひ回収したいと思います。もし受け取ってしまった場合はそれを無視していただきたいと思います。破棄していただきたいと思います。
それでは早速、籠池さんにマイクを渡したいと思いますけれども、冒頭に10分間ぐらいのスピーチをお願いしたいと思います。お願いします。
陳述の内容について
籠池 / 皆さんこんばんは。今日、私は国会のほうで衆参両院の聴聞会に出てまいりました。たくさんの与党、野党の先生方から質問を受けさせていただいて、できるだけ誠実にお答え申し上げたつもりでありますが、私自身のまだ記憶の不確かさもありまして、自分でもあそこはどうやったかなというふうな、思っている部分も多少あります。
この事柄というのが2月の8日に勃発しまして、それからもうすでにひと月半ぐらいたっております。大阪の片田舎の豊中という土地の一小学校の事柄で、全国でひと月半も全国中のテレビ、マスコミが追い掛けてくる事件というふうになってしまいました。このことは今、日本人の大多数が持っておりますところの閉塞感、何か圧迫した窮屈なような状態があるのですが、私が今からお話ししようとする事柄についてはその窮屈であるという根源がここにあるのではないかなというふうに思っております。日本語で言うと、訳が分からんことが起こっているなということであります。
ではそのことについて国会のほうでまず、陳述をいたしました内容のことを読ませていただきながら、また考えていきたいと思います。では。
まずこのたび、国会で陳述の機会を与えてくださいましたことを深く感謝申し上げます。私は真に日本国のためになるため、日本国のためになる子供を育てたいという教育者としての思いから、今年の4月に瑞穂の國記念小學院を開校できるよう、これまで頑張ってまいりました。教育者としての私の思いにつきまして、安倍首相や昭恵夫人、大阪府議会の先生方をはじめ、多くの関係者の皆さんにご理解をいただきましたことは、今でも本当に感謝しております。
その一方で多くの皆さまのご期待を受けて舞い上がっていたところも私の中にございました。結果として手続き上の便宜から設計士の助言に従って、工事請負契約書が3種類作成されたこと、幼児教育の現場において指導の行き過ぎなど、もろもろの不行き届きを生じてしまいました。それらの不行き届きについては、自分の至らなさを認めますとともに反省すべき点については反省し、謝りたいと思います。今後は行政のご指導をいただきながら適切に改善を行ってまいります。
しかし現在、この新しい小学校を開設する手続きについて、各方面から疑問が呈される中で、弁護士からの指示で申請を取り下げました。これまで応援してくれていたと思っていた方々が手のひらを返すように離れていくのを目の当たりにして、自分自身どうしてこうなってしまったんだろうという思いもあります。
本日はこの問題について私の承知しておりますことを率直に先生方にお話しいたします。真に日本国を支える人材を育てる小学校をつくることは今でも私の夢であります。その名前については、明治維新を担った多くの人材を輩出した松下村塾のことが念頭にありました。同じく長州、山口県出身で、以前から私の教育理念に共感していただいている安倍首相に敬意を表したいと思いまして、当初は安倍晋三記念小学校とするつもりでありました。昭恵夫人にもご相談申し上げてご理解をいただいたものと思っておりましたが、後日、昭恵夫人から、首相のお名前を使うことを遠慮してほしいというお申し出がありましたので、小学校の名前は瑞穂の國記念小學院へと変更いたしました。
昭恵夫人にも私どもの教育理念を深く理解していただいていると思っております。昭恵夫人には3回にわたって幼稚園にお越しいただきました。ご視察をいただきました。瑞穂の國記念小學院の名誉校長に就任していただいたのは、平成27年9月5日にご講演を賜ったときのことです。そしてその9月5日、昭恵夫人は講演の控室として利用していただいた園長室で私と対面していただきました。同行していたお付きの方に席を外すようにおっしゃったのち、私と二人きりの状態で、1人にさせてすいません、どうぞ、安倍晋三からです、というふうにおっしゃって、寄付金として封筒に入った100万円をくださいました。昭恵夫人はまったく覚えていないとおっしゃっているようですが、私たちには大変名誉な話なので鮮明に覚えておりました。
また、小学校の設立に関する大阪府への申請では、先にお亡くなりになられましたが、大阪府議会議長を務めておられた畠成章先生から頂戴したご恩も忘れられません。畠先生には森友学園の幹事も務めていただくなどして、いろいろとご指導いただいておりました。畠先生は松井知事、松井大阪府知事のお父さまとも親しい付き合いがあり、松井知事が維新会派をつくるときにも陰ながら助力されていたということで、大阪府の松井知事や府にお力添えをいただけるようお願いしておりました。そのおかげで大阪府の当時の総務部長などにも説明させていただきまして、小学校設置の認可申請では特別な取り計らいもいただいたものだと感謝しております。
その後、大阪府の中でどのようなやり取りがなされたのかはうかがい知ることはできません。松井大阪府知事や関係者の方々からお話を聞いて、国会や府議会で真相を究明していただきたいと存じます。
土地取引について
次に土地取引について申し上げます。小学校の建設用地である豊中の国有地の存在については不動産屋さんから平成25年に紹介を受けました。これは素晴らしい場所だと思い、小学校のために土地を確保したいと思いました。その土地は国有地ということで、平成27年5月29日に定期借地契約を締結しました。その土地の買い上げの条件として10年だったものを、もっと長い期間へと変更できないかとの思いから、私たちの教育理念に賛同している昭恵夫人に助けていただこうと考えまして、昭恵夫人の携帯に電話をいたしました。平成27年の10月のことで留守電でしたのでメッセージを残しました。
後日、内閣総理大臣夫人付の谷査恵子さんという方からご連絡をいただき、なかなか難しいとのご返事をいただきました。平成27年11月17日に総理夫人付の谷査恵子さんからいただいたFAXでは、大変恐縮ながら現状ではご希望に添うことはできない。なお、本件は昭恵夫人にも、すでに報告させていただいておりますというお言葉をいただきましたが、お骨折りに感謝しておったところでございます。
しかしながら私は財務省の中で、この間にどのようなことが起こっていたのか詳しくは存じません。昭恵夫人、谷さん、財務省の関係者に詳しくその経緯を聞いていただきたいと思います。あの土地にヒ素や鉛などの有害物質があるということは契約上も明らかだったのですが、平成28年の3月に入って工事が始まってから新たに生活ごみが出てまいりました。ヒ素や鉛などの有害物質は、もうすでに取り除きまして、そののちに生活ごみが出てまいったということです。
その後、工事を施工していた業者に弁護士を紹介していただきまして、以降の土地取引に関する一切の交渉をお願いしました。最終的に土地価格は8億円余りも値引きもされた1億3400万円になったとお聞きして、想定外の大幅の値下げに、その当時はちょっとびっくりしました。売買契約を結びました。私は交渉の詳細について、詳しくは承知していないのですが、値引きの根拠などについては近畿財務局、当時の迫田理財局長、酒井弁護士にお聞きいただきたいと思います。
先日、私は大阪府への小学校設置認可申請を取り下げました。これは顧問弁護士だった酒井先生にご指示によるもので、私は断腸の思いで申請を取り下げました。しかし、その後、なんら事態は改善することなく、むしろこの問題で私だけを悪者にするような政府の要人や大阪府知事の対応を見て、何かおかしいと気付き始めました。財務省の佐川理財局長の部下の嶋田さんが10日間、隠れていてと顧問弁護士の先生から申し伝えられたことも、そのときはなんだろうと不思議に思っておりました。
平成29年3月15日になって、もうこれ以上、関わることができないと突然、顧問弁護士の辞任の申し出をいただきましたが、私には何があったのか理解できていません。酒井先生が財務省近畿財務局や大阪府とどのような関係があったのか、ぜひ国会でも聞いていただきたいと思っております。
この問題で国会で議論されるようになってから、私の妻のところに昭恵夫人からメールをいただいております。私の妻と私が今、大変なことには想像が付きますが、主人、いわゆる安倍総理にとっても大変なことに巻き込まれたということもご理解いただきたいと思いますとか、私が関わった、いわゆる安倍昭恵夫人が関わったということは裏で何かがあるのではと疑われないようにという口止めとも取れるメールが届きました。
あんなに私たちの学校の開校を楽しみにしてくれていて、考え方に非常に共鳴しているですとか、森友学園の先生の教育に対する熱意は素晴らしいという話を聞いていると総理もおっしゃっていただいていたのに、どうしてなのか割り切れない思いです。熱心に協力していただいておったと私は思っておったんですけれども、途中で態度が変わったということだと思っております。
私は純粋に自分の理想とする教育を実現するために小学校設立に夢中になって走り続けてきました。その途中で多少、無理をしてしまったこともあるかもしれません。でも私が昭恵夫人や畠先生にお願いした先で、どのような対応がなされたというのは本当に分かりません。国有地の大幅な値下げ、値引きなど、一連の経緯の真相を明らかにするためにも、私だけをトカゲの尻尾切りで罪をかぶせようとするのではなくて、まず私がこうして国会の場で正直にお話をさせていただきました。どうぞ、ぜひそのほかの関係者の方々を国会に呼んで事実関係をお聞きいただき、真相究明を進めてくださいますよう心からお願い申し上げます。
ということを国会で陳述させていただきまして、やはりきちっとした真相を究明していただくということが一番重要だと思っております。小学校がもう設置認可というかオッケー、開校していいですよという状態から、今はもう開校はできないということで非常に落胆、失望しております。訳の分からない空気、訳の分からない力が何か動いていて、その力によって物事が進み、そしてまたなくなっていってしまっているんじゃないかなというふうに思います。それは何なのか、それを究明していただきたいと思っています。若い人たちが引きこもりにならないように、はい、以上であります。
訂正。それと、先ほど国会のほうでお話ししました中で安倍晋三記念小学院と書いておりました配布資料、振込用紙。これは平成26年に配布を止めております。で、私は事務方のしたことは、全ては把握しておりません。当初配布した、大量に配布したものがあって、それが出回っていたら、それは私には分かりません。それはタイムラグがあるということです。それとこれは? これは? これ。
山口 / 配布している資料のほうをちょっとご説明させていただきたいんですけど、お手元のほうに皆さま、FAXのコピーがありますでしょうか。この資料については携帯番号の書いてるほうが1枚目で、それで2枚目のほう、それでホチキス留めされていました。で、これは上記されてる日付のほうに、内閣総理大臣夫人ですね、安倍昭恵さん付の谷査恵子と。この人は経産省の、キャリアかはどうか分かりませんけど、経産省の職員みたいですけども、が、として出向してたこの人から送られてきたFAXの内容と、こういうことになります。で、なんか先生、言いたいことあります? この資料について強調しておきたいこと。〓***チョウノホウ 005722〓。一応ファクスはこういうものだって説明を。
籠池 / ああ、そうですよね。このことで大きく物事が進み始めたんだろうなとは私は思っております。その重要なポイントになるFAXだと思います。そういうことですね。  
証人喚問後に記者会見 2
学校法人「森友学園」の籠池泰典理事長の記者会見が3月23日午後6時すぎから、東京・有楽町の日本外国特派員協会で開かれた。
籠池理事長はこの日に開かれた参院・衆院の証人喚問に出席。取得した国有地に開校を予定していた小学校をめぐり、「安倍昭恵夫人から、『安倍晋三からです』と100万円を受け取った」「財務省の佐川理財局長の命として、部下の島田さんが『10日間身を隠せ』と言われたと顧問弁護士から伝えられた」などと述べた。また、大阪府の松井知事について「はしごを外されたと思ってます」などと発言。自民党の鴻池祥肇参院議員についても「ぜひとも麻生財務大臣に伝えてほしい」と、鴻池氏に口利きを依頼したことなどを証言した。

司会 / 籠池氏は、2015年9月に安倍昭恵氏が塚本幼稚園を訪れた際に、百万円入りの封筒を渡されたと証言しました。菅官房長官はこの事実を否定しました。
籠池氏の冒頭あいさつ
皆さん、こんばんは。衆参両院の聴聞会に出てきました。与野党の政治家さんから質問を受けてなるべく誠実に答えました。私自身の不確かさから、あそこはどうだったかな?という部分が多少あります。この事柄が2月8日に勃発して、それから一月半くらいたっています。大阪の片田舎の豊中の小学校の事柄が、全国のマスコミが追いかける事件になってしまった。このことは、今の日本人の大多数が思っておりますところの閉塞感、窮屈さがあるんですが、私が今からお話しようとすることは、窮屈さんの根源がここにあるのではと思っています。日本語でいうと「わけのわからんことが起こっている」ということです。では国会での陳述を述べて行きます。(以下、国会での冒頭陳述を読み上げる)
「わけの分からない力が動いていて、物事が進み、なくなっていっていると思う。それを究明してほしい。若い人が引きこもりにならないように。以上であります」
籠池氏から国会での発言「安倍晋三記念小学院と記載された振込用紙」について、発言を訂正
「安倍晋三記念小学院と書かれた振込用紙はH26年で使用を止めている。事務方のしていることを全部知っているわけではない。当初、大量に配布したものが出回っていたら、私はわかりません」
配布した安倍昭恵夫人側からのFAXについての説明
代理人「こちらは経済産業省から出向していた谷氏から送られてきたFAXになります」
籠池氏「このことで、大きく物事が進み始めたんだろうと私は思っております。その重要なポイントになるFAXだと思います」

司会 / 質疑応答の時間に入ります。19時までの予定でしたが、30分ほど延長します。
Q / あなたの言うことが事実であれば、安倍首相と首相夫人は嘘をついてるはずだが、安倍首相は辞任した方がいいと思いますか? また国有地売買に関して国会質問で答えた「神風が吹いた」という発言について教えてください。
A / まず2点目ですが、すごく瞬間風速が速い神風が吹きました。そのあとで、同じくらいのスピード感で逆風が吹いております。よい方向の風になるのか悪い方向になるのか私には分かりません。
それと第1点目の方ですが、これが私の言った通りであればそうなるんですが、嘘はいけないと思います。でも、本来は安倍首相は私は好きなんです。立派に職責を務めていただきたいという思いはあります。しかし、風がどこに吹くのかは分かりません。神のみぞ知るということです。
Q / やめなくていい?
A / 大変その質問は胸が痛い。ご自身が判断することだと思います。
Q「安倍首相からお金を受け取った」という証言を安倍氏らは否定している。真実は?
A / 私の方は、私一人ではない。100万円いただいたということは、職員にもすぐに伝えている。嘘を言うわけではない。
Q / 日本という国は不思議。福島第一原発でも東電の社員は起訴されていない。格安で国有地などを受け取ったら、イタリアでは訴追される。
A / 私が告発されるということは考えていない。すごく安い金額で国有地を購入したということだが、あの土地の土の下にはまだ生活ゴミがある。それを取っていかないといけない。きれいな土があって、その土を入れ替えて、まだここらへんに悪い土があるのを自分のお金で取って入れ替えないといけないという作業がある。決して、7〜8億円安くしてもらったという感覚は私にはない。ゴミを取り除く費用が同じぐらいかかる。全てを取り除いていないので、得をしたように思われているだけだと思います。しかも値段を決めたのは私ではなく、国側。
Q / 塚本幼稚園の教育方針について聞きたい。「日本を悪者として扱う中国や韓国が心を改め、嘘をつかないようにお願いします」と園児の選手宣誓がありました。このような選手宣誓は正しかったのでしょうか。園児にどのような教育をしていたのか教えてください。
A / 運動会で(園児が)申し上げたことは、尖閣諸島に中国船が入ったことを示しています。韓国が竹島を実効支配している問題や、慰安婦像の問題も触れていますが、日本人が歴史上そんなに悪いことをしてきたのかということを示しています。日本人は性善説で動いてますので「全く悪い」ということは考えられないとお思います。しかも、次の日本を担っていく子供たちには本当の歴史を教えていかなくてはいけない。日本の歴史教科書は本当の歴史を教えていない。従いまして、小さい子供たちの時代にきちっと正しい歴史観を教えてさしあげないと思って、あのような運動会の選手宣誓になった次第です。「三つ子の魂、百まで」と言う言葉がありますから、幼児期にそういうことを教えていく必要があると思っています。
Q / 中国・韓国について具体的にどんなことを教えたのですか?
A / 中華人民共和国の公船が尖閣諸島に入ってきたことは、泥棒が人の家に入ってきたのと同じことであります、ということです。領土の問題は本当に重要でして、言わなければそのまま占領されてしまいます。日本人は優しい民族だから「みんな仲良くしよう」でいいのですが、正しいことを認識していかないと大人になったときに判断基準が揺るぐと思います。中国の方が思っていることの逆を日本人が思っている、それは当たり前。中国は尖閣を自国の領土だと思っているけど、それは事実ではない。中国を統治するための致し方ない方法です。
Q / 天皇陛下が引退表明された。この時期に教育勅語を持ち出して騒ぐのは、不敬罪にあたるのでは?また安倍首相夫妻に迷惑、保守主義にとって良くないのではないか。
A / 教育勅語と天皇陛下は関係がないと思っています。教育勅語は明治天皇がお作りあそばされたものだが、今では子どもなど多くの国民に対する道徳律となっている。古いマスコミがおっしゃるような、軍国主義に結びつけるものではない。保守主義について。私は保守主義です。ただ、保守主義は全て清濁併せ呑んでの保守主義ではない。いいものはいい、いけないことはいけない。安倍首相には期待するところは日本国民としてあるが、その政府の中でどういうことが起こっていたのか、見極めていかないと日本国民が困ることになると思っています。
Q / 今、籠池さんがおっしゃってる部分はよく分からない部分があります。百万円をもらった以外の発言は「神風が吹いた」などの部分は分からないのですが、安倍首相夫人の口利きはあったんでしょうか?
A / 安倍首相または安倍首相夫人の意志を忖度して動いたのではないかと思っています。逆に逆風が動き始めたということは、安倍首相の心を逆に忖度した人がいたということだと思います。安倍首相の耳に悪い情報を入れた人がいたということです。
Q / もうちょっとはっきり答えて欲しい。安倍首相は直接に口利きしたのでしょうか?
A / 安倍首相は口利きしてないでしょ。忖度したということです。私にとって逆風が吹いたということは、安倍首相の周辺に逆の忖度をするようにした人がいるということでしょうね。
Q / 直接安倍首相からではないが、周辺の方々とは?
A / 財務省の官僚の方々ではないですか。
Q / 籠池氏が安倍首相や昭恵夫人の関与を発言したらすぐに証人喚問が実現した。「偽証罪」という脅しも何度かあった。どう思うか?何のための証人喚問だったと思ったか?
A / 私は私人ですので、私人を証人喚問することは異常事態だと思う。参考人招致ではないから「嘘を付くな、嘘をちょっとでもついたら偽証罪だ」という脅しが常にあったという認識。証人喚問は偽証罪が伴うので、刑事罰が伴うのでお話できません、ということがある。それをTVとかで流すことにより「あいつは何か隠している悪いヤツだ」という印象操作をかなりできたんではないかと思っている。総理を侮辱したというだけで私人を国会で証人喚問するって一体、どんな国でしょうか。陰口も言えなくなる。
Q / 天皇陛下が来訪したと塚本幼稚園のホームページに掲載された件について、「私は知りませんでした」と発言していますが、どなたの意図で掲載されてます。
A / 天皇陛下のお写真とかは、塚本幼稚園の子たちと写真を撮っております。花束贈呈もさせていただきました。当園におこしになったとは言ったことはありません。ただ、雑誌の書き取りの中で間違って書かれていると知ったことはあります。そのことについては、この会見の後で、ホームページを直すようにしております。私の耳に入った分については、間違った部分を直させていただきたいと思います。
Q / どなたが載せたんですか?
A / 私どもの職員か、ホームページを掲載したときの業者だと思います。すぐに特定させていただきます。皇室を尊ぶ学風を持っている我々の学園を、マスコミの方がたたき壊そうとしている。天皇陛下が譲位して上皇になることは大変うるわしいことでありまして……。国有地の問題が出てから、ここぞとばかりに我々の学園への誹謗中傷とか、カメラとかビデオとかマスコミの方々による逼迫した命を狙われているような恐ろしさを感じていました。英国だと王室を尊ぶのですが、日本で皇室を尊重すると軍国主義と間違われますが、全く関係ない。皇室を尊ぶのは日本の歴史を学ぶ上で大切なこと。皇室を尊ぶ我々を「とんでもない奴」と呼ぶのは辞めていただきたい。ヘイトスピーチで「虐待をしている」などと言われましたが、そのようなことは全くありません。大阪という土地は雑多な土地ですから、その中で教育をしていくことはすごく重要なこと。いろんな文化が混ざり合うのは大事なこと。その中で日本の心を学んでいってほしいと思うけどは当たり前じゃないでしょうか。しかも、気に入らないというか、我々の学校の運営方針と合わないのであれば、初めから入ってこないんじゃないんですか?方針が合わなくて入って来てるのであれば、何か問題を起こそうとして入ってきたのではないかと思うのですが、違うでしょうか?
Q / 教育方針について。愛国主義が世界各国で悪い形で台頭している。橋下元知事の秘書の口利きはあったのか?
A / 奥下さん(橋下氏の秘書)のお力添えはなかった。知ってますけど。今回は私達の学校をひっくり返したのは維新のトップだと思っている。モンテッソーリなども素晴らしいと思うが今の日本で愛国心教育は必要だと思う、行き過ぎた愛国心ではなく、普通に愛国心を持つ教育は必要。
記者団からの質問は打ちきりと司会者。最後に、籠池氏が国会質問への回答を訂正。
A / 国会の中でお話した、安倍晋三記念小学院についてのご質問があったんですが、私の記憶違いだと思いまして、ここで訂正させていただきます。「寄付用紙が安倍晋三記念小学校と書かれているのがいつからいつまでか?」という質問があったんですが、国会には参考用紙を持って入れないので自分の頭の中で記憶していたので間違えました。そのような寄付用紙は、2014年の3月に印刷されましたが、「安倍晋三記念小学院という名称を使ってはダメ」ということで、すぐにそれを止めました。ただ、短期間で止めたんですが、送っておりました先が次に送っていったので、きちっと止めることはできなかったということです。学園の方ではすぐに止めたということなので、ご承知ください。
司会 / もう終わりにしますが……。あ、本当に最後に一人だけ。どうぞ。
Q / 昭恵夫人にお願いしたら通ると思ったのか?昭恵さんを通じて安倍首相に働きかけができると思った?それとも昭恵夫人は特別な権力があるのか?
A / 昭恵夫人によって物事が動くとは私も考えておりませんでした。安倍昭恵夫人は教育を理解していただいて名誉校長になったものと理解しております。ただ、このFAXの時は、やはり安倍昭恵夫人のお名前によって物事が動いたんだろうという風に推察されます。このことがあったことによって、次の土地の取得の関係も何となくそういう方向に動いたんだろうと思う。我々は忖度が悪いと言っているわけではない。私にとっては逆の忖度が動いていったということが問題。というのは重要なことなんですが、学校が出来上がってきていますと、もう完成しました。入ってくる生徒も決まりました、ここでどうして、はしごを叩き潰すんでしょうか?ただ、国有地は元の財務省の所有に戻る、ということは財務官僚が忖度して我々に土地が入りました、逆風が始まった時、それは何なんでしょう。安倍首相に近い、維新の会あたりが動くことによって今度はその、元に戻してしまえというような力が動いたんではないかと私は思っております。
( 予定を1時間以上オーバーして、会見が終了した。)  
国会での証人喚問後、日本外国特派員協会で記者会見 3
「日本語で言うと『訳が分からんことが起こっているなあ』ということです」。国会での証人喚問を終えた23日夜、日本外国特派員協会(東京都)で、大阪市の学校法人「森友学園」理事長、籠池(かごいけ)泰典氏(辞意表明)は、時折笑みを見せるなど、余裕の表情で記者会見に臨んだ。出席者からの厳しい質問に対しても“籠池節”でかわしつつ、「(小学校計画を)ひっくり返したのは維新のトップだ」と松井一郎大阪府知事への怒りは収まらない様子だった。
会見は用意された200席が埋まるなど、国内外の大勢の記者が訪れ、注目の高さを示した。予定よりも約20分遅れで登場した籠池氏は、証人喚問の時よりもやや柔らかい表情で考えを述べた。同協会では15日に会見を予定していたが、籠池氏が直前にキャンセルした経緯がある。
籠池氏は冒頭、今回の騒動について「今、日本人の大多数が感じている閉塞(へいそく)感の根源が、ここにあるのではないかと思う」と独自の見解を披露。「訳の分からない空気、訳の分からない力が、何か動いていて、その力によって物事が進み、(学校計画が)なくなっていってしまうんじゃないかなあ、と思う」と話し、小学校の設置認可申請を取り下げたことへの悔しさをにじませた。
会見では、安倍晋三首相の昭恵夫人をサポートする官邸職員が籠池氏側に送ったとされるファクスが配布された。安倍首相の関与については「安倍首相は口利きはしてないでしょう。そんたくをしたんでしょう」と説明。その際、通訳者が、「そんたく」の英訳に手間取る場面もあった。籠池氏は、ファクスの存在を挙げながら「安倍昭恵さんという名前で物事が動いたんだろう、と推察される」とも述べ、首相夫人へのそんたくが事態に影響を与えたとの見方を繰り返した。
また、籠池氏が証人喚問で、用地取得の手続きがとんとん拍子で進む様子を「神風が吹いた」と表現したことにも質問が寄せられた。籠池氏は「非常に瞬間風速で速い神風が吹いた。ところがその後で、同じくらいのスピードのある逆風が吹いている」とほほ笑んで見せた。安倍首相は辞めるべきか、との問いに対しては「私はウソはいけない、と思っている」とし、胸をさすりながら「非常に心が痛い、胸が痛い。これはご自身で決定することだと思います」と含みを持たせた。
証人喚問で籠池氏は「刑事罰に関わる」との理由で証言を拒むシーンが目立った。自身が証人喚問で国会に呼ばれたことについて「私人を証人喚問することは異常事態だ。ちょっとでもウソをついたら、偽証罪で留置場に入れるぞ、という脅かしが常にあったと認識している」と語った。「総理を侮辱した、ということだけで、私人を国会で喚問するということは、どこの国にあるのか」と不満をぶちまけた。  
 
証人喚問以降の報道

 

籠池氏 首相夫人から「100万円寄付」国会証言、首相側は否定 3/23
大阪市の学校法人「森友学園」の籠池泰典理事長は23日、参院予算委員会での証人喚問で、安倍昭恵首相夫人から100万円の寄付を受け取ったと発言した。菅義偉官房長官は記者会見で「寄付は行っていない」と認識していると述べた。
籠池氏は参院予算委の証人喚問で、2015年9月に自身の経営する幼稚園の園長室で昭恵夫人から「どうぞ安倍晋三からです、という風におっしゃって寄付金として封筒に入った100万円をくださいました」と話した。このとき園長室には2人だけで、このあと中身を確認して金庫にいったん保管したという。
大阪府豊中市の国有地取引をめぐっては、昭恵夫人に翌10月に定期借地契約の期間延長などで「助けをいただこう」と携帯の留守電にメッセージを残したが、その後、夫人付きの政府職員から現状では希望に沿うことはできないとファクスで返答があったという。
土地取引については弁護士に交渉を依頼したが、「最終的に土地価格8億円余りも値引きされた1億3400万円になったと聞き、想定外の大幅な値下げにその当時はちょっとびっくりした」と語った。
「すでに説明した通り」と安倍首相
菅官房長官は23日午前の記者会見で、安倍晋三首相の「自分で寄付をしていない。昭恵夫人、事務所、第三者を通じても寄付していない」との反論を紹介。昭恵夫人についても「支出等の記録もなく、昭恵夫人個人としても寄付は行っていない」と述べた。
安倍首相は23日夕、官邸で記者団から証人喚問の受け止めを問われ、「私がすでに説明した通りでございます。官房長官からも説明したと思います」と語った。
籠池氏は昭恵夫人に講演料10万円を渡したことも証言した。安倍首相は2月27日の衆院予算委員会で、昭恵夫人は森友学園から報酬も講演料も全く受け取っていないと聞いている、と語っている。
国有地取得
午後の衆院予算委員会では、籠池氏が昭恵夫人付き職員から受け取ったファクスについて質問が出た。
枝野幸男氏(民進)が昭恵夫人に要請したことが職員に話が回り、「回答があったという認識ということか」とただしたのに対し、籠池氏は「おっしゃる通りだ」と語った。
政府側は菅官房長官の午後の記者会見で、この職員が籠池氏に送付したファクスのコピーを配布。菅氏は職員が財務省に問い合わせを行い、結果を夫人に報告していたことも明らかにした。ただ、籠池氏からの要請は昭恵夫人にではなく、職員に対してだったと説明。夫人は職員の取った対応の「中身に関与していない」と語った。
籠池氏は証人喚問後、都内の日本外国特派員協会で記者会見し、夫人付き職員からのファクスに関して「このことで物事が大きく進み始めた。重要なポイントになるファクスだ」と語った。
政治的な関与
参院予算委の証人喚問では、山本一太委員長が大阪府豊中市の小学校認可申請、国有地の買い受け、校舎建設に至る経緯で政治的関与はあったのかと質問。籠池氏は「その都度、その都度の場所で政治的な関与があったのではないか」との認識を示した。
稲田朋美防衛相との関係について籠池氏は、夫の龍示氏と顧問弁護士の契約をしていたことを明らかにした上で、「今回の土地の事柄についても16年1月に相談に行った」と説明。稲田氏本人とは「直接相談したことはない」と述べた。
国会で国有地売却が取り上げられるようになった後、昭恵夫人から「口止めとも取れるメールが届いた」とも証言。これに対し、菅官房長官は「私が承知している限りでは全くない」と語った。
森友学園をめぐっては、大阪府豊中市の国有地売却問題、安倍首相夫妻や稲田朋美防衛相との関係などについて野党が政府側を連日追及している。読売新聞が18、19両日に実施した世論調査で安倍内閣の支持率は56%で、2月調査の66%から10ポイント低下した。  
籠池理事長の証人喚問 なぜ「偽証罪」に問えないのか?  3/24
大きな注目が集まった森友学園・籠池泰典理事長の証人喚問。そこで何度も登場したのが「偽証罪」というキーワードだった。籠池証人の発言を問いただす際、議員から繰り返し「偽証罪もありうる」といった言葉が投げかけられていた。だが、時事通信によると、検察幹部は籠池証人を「現時点で偽証罪に問うのは難しい」とみている。どうしてなのか?
まず、ルールを確認する。
証人喚問のルールを定めた「議院証言法」には、「この法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3月以上10年以下の懲役に処する」(第6条)と書かれている。
これがいわゆる「偽証罪」だ。
このルールを見る限り、籠池氏の証言内容が事実でなければ、偽証罪に問えるように思える。
だが、刑事弁護を数多く手がけてきた児玉晃一弁護士は「単に証言内容が事実に反するというだけでは、偽証罪にはならない」と話す。
「裁判例を調べてみましたが、偽証罪に問えるのは『あえて、自分の記憶に反する内容を証言した場合』というのが、圧倒的多数の見解でした」
つまり、偽証罪に問えるのは、「記憶の上ではAなのに、あえてBとウソをついた場合」ということだ。
23日午後、衆議院では、籠池証人が「大阪府や、松井一郎知事らの意向が私学審議会への圧力になったと推察している」と自らの考えを述べた。それに対して、議員は「偽証の疑いがある」「はっきり言わないと偽証になる」などと繰り返し述べていた。
児玉弁護士は指摘する。
「この籠池証人の発言を偽証だというためには、籠池証人が、松井知事の意向が私学審議会への圧力になったと本心では思っていないのに、あえてウソをついたと証明する必要があります」
もし、それを証明できるとすれば、どういう証拠なのか?
「たとえば、籠池証人がつい先日に、正反対の発言をしていたという記録。もしくは、証言内容と矛盾する記録で、忘れるはずがないようなもの。そういったものが見つかれば、偽証の有力な証拠の一つになると思います」
「しかし、いまのところそうした証拠は表に出てきていません。それだと偽証罪に問うのは難しい。検察官も、いまある証拠では立証できないと判断しているのでしょう」
証人喚問での「偽証」告発、これまで24件だけ
偽証罪を立証するためのハードルは高いため、そもそも告発に至るケースが少ない。衆参両院によると、国会の証人喚問で偽証罪の告発を受けたケースは衆議院で20件、参議院で4件だけだという。
児玉弁護士は次のように指摘していた。
「法律家の立場からは、そうした証拠もないのに『偽証だ』というのは、根拠がない的外れな発言に思えました。仮に、裁判で弁護士があんな風に『偽証だ』と脅しながら尋問をすれば、品位を害するとして、懲戒請求をされてもおかしくないように思えます」  
森友学園・籠池理事長の証言と昭恵夫人の反論 3/24
『高嶋ひでたけのあさラジ!』コメンテーター石破茂(自由民主党衆議院議員・元防衛大臣)
籠池理事長の証人喚問 100万円を1対1の中で受け取ったと証言
森友学園の国有地取得をめぐる問題で、安倍総理大臣の昭恵夫人を担当する政府職員が学園理事長の籠池泰典氏の問い合わせに応じ、結果を夫人に報告していたことがわかりました。一方昭恵夫人は、籠池理事長の国会での証言を受け、昨夜自身のフェイスブックで100万円の寄付金や講演料受け渡しについて否定しました。
高嶋 / 長時間の証人喚問でありましたけど、今日の朝刊各種はやはり昭恵夫人にフォーカスをされています。昨日の動きも含めまして、まずニッポン放送報道部森田耕次解説委員です。
森田 / 森友学園の籠池理事長は昨日の証人喚問で、安倍総理の昭恵夫人から100万円の寄付金を受け取った際のやりとりについてかなり細かく説明をしました。

籠池 / わたくしの園長室で夫人の方から封筒をカバンの中からお出しになりまして、わたくしに「どうぞ」ということでいただきました。金子(きんす)が入っておりました。「これはいいのでしょうか?」とお伝えしましたところ「安倍晋三からです」とおっしゃっていただきました。わたくしとご婦人と、そして秘書の方がいらっしゃいましたが、秘書の方は直前にお人払いをされましたので2人で。
森田 / また籠池理事長は証人喚問の中で、国有地の定期借地契約に関する問い合わせに対し、昭恵夫人を担当する政府職員が財務省に聞いてくれた結果を回答するファックスを受け取ったということを明らかにしました。昨日の民進党の枝野幸男前幹事長と籠池理事長とのやりとりです。

枝野 / 財務省本省に問い合わせをしたと、間違いないでしょうか?
籠池 / ここにファックスを持っていますが「財務省、時間がかかってしまい申し訳ございませんが、財務省本省に問い合わせ国有財産審理室長から回答を得ました」と。「大変恐縮ながら国側の事情もあり、現状ではご希望に沿うことはできないようでございますが、引き続き当方としても見守ってまいりたいと思いますので、なにかございましたらご教授ください」。
枝野 / このファックスは安倍昭恵さんに対してお願いをしたこと、それが谷査恵子さんに振られて、谷さんから回答があった。こういうご認識ということですね?
籠池 / おっしゃる通りです。
明恵夫人はフェイスブックで反論
森田 / 籠池理事長が示したファックスの中では工事費の建て替え払いの予算化ということについて、予算措置のつき次第、返金する旨の了解であったと承知しているという文言があります。平成27年度での予算措置ができなかったため、平成28年度での予算措置を行う方向で調整中とも書かれております。籠池理事長は「明恵夫人を政治家的と位置付けたうえで、昭恵夫人担当の谷査恵子さんに財務省に多少動きをかけていただいた。生活ごみが出た後、急転直下物事が動いたという考えがあろうと思う」というように籠池理事長は述べております。昭恵夫人は昨夜自身のフェイスブックでこの国有地問題について「籠池理事長から具体的な要望は聞いていない」と反論しています。また政府職員から籠池理事長の問い合わせに回答するという報告は受けたと認めていますが、内容には関わっていないとしております。また100万円の寄付や講演料10万円を渡したという籠池理事長の証言も「ありません」と否定しております。また菅義偉官房長官と安倍総理も昨日次のように述べております。

菅 / 1対1という状況ではなかったというような報告は受けております。2人はずっといたと言っていますから。そこは完全に違っているというふうに思います。夫人付からファックスにて「籠池氏の要望にはそういうことはできない」とお答えのファックスはされております。明解に断っていたということでしょうか。そういう意味で忖度以前のゼロ回だったと思います。
安倍 / 今日の官房長官からも説明をさしていただいたと思います。
民進党 昭恵夫人の証人喚問を要求
森田 / これに対し民進党の蓮舫代表は昨日の記者会見で昭恵夫人の証人喚問を要求しました。

蓮舫 / 籠池証人の話は一方的すぎますので、やはり双方向で確認をさせていただく意味でも昭恵夫人に、国会に同じ条件で、フェアに、証人喚問でお越しいただいて話していただきたいと政府に要求をしていきます。

森田 / 安倍総理が2月の国会答弁で「私や妻、事務所が関わっていれば総理も国会議員も辞める」と明言していますので、野党は追及を強める構えです。今日は参議院予算委員会で国有地売却交渉時に財務省理財局長だった迫田英典国税庁長官、近畿財務局長だった武内良樹財務省国際局長を参考人として呼ぶ方向になっております。
問題は国有地に対して行政が適切に執行されたのかどうか
高嶋 / ここから先が大変難しいところで、石破茂さんが非常に困ったようなお顔をされていて『俺は貝になる』という感じですが。今の心機を率直におっしゃるとどんな気持ちですか?
石破 / 国民が、行政が、適切に執行されたのかな? と思っているわけですよ。例えば財政法という法律があって、国有地を売ったり貸したりする場合には適正な対価を得なければならない。要するにみんなの共有財産なわけですから。売ったり貸したりするときは適正な対価をもらわなければいけませんよと法律で決めているわけです。では「8億円値引きましたよ」というのは適正な対価だったのか? 行われたことはきちんと法律にのっとってやられたのか? ということ。それが行政の信頼なのでね。スキャンダル的に誰だ誰だということも、もちろん必要なことだと思うけども。そこで国交省航空局が8億円! と言いますが、初めてのことだった。税務相から航空局にそういう依頼がなされたと。だから『違法だ』とは言えない。だけど異例ではあったよね。国民の利益はきちんと守られたか、あるいは瑕疵担保責任、売ったほうが、売ったものに傷がある場合にその責任を負うというのが瑕疵担保責任だけど、今回は負いませんと言っているわけ。消費者を保護するという観点から、その判断は正しかったのかなとか。感情的にならないできちんと国民の利益が守られたかどうかということは一方追及するべきだと思います。
高嶋 / そこが本質だと思いますね。マスコミは軽薄だと言われるかもしれませんが、今日の新聞の一面もほとんどが昭恵夫人にフォーカスを向けてしまっているわけですよ。
与党は国民からの信頼回復をどうするか
高嶋 / 籠池さんという人は都合の悪い3種類の工事を請ける契約をしたとか、刑事訴訟を受ける可能性があるので、と答えないとか、安倍晋三記念小学校でうまいこと寄付を募って総理になってからもやっていたらしいとか。怪しいところは山ほどありますが、世間が一番関心を持ってしまったのは100万円について。籠池さんは「事実は小説より奇なり」で、偽証罪で嘘をついたら訴追を受けますよと言われても、間違いないと言い切っている。ここにみんな本当なの? とみんなが思ってしまった。石破さんは言い難いと思いますけど、どんなふうにとらえていますか?
石破 / 証人喚問という非常に重いプロセスを踏んでいて、偽証罪で罪に問われるわけです。私も昨日予算委員会で実際その場にいて聞いていましたが、それだけの覚悟は持って言っていることでしょう。
高嶋 / 籠池さんがですよね。
石破 / 我々政府与党としてはそうじゃないと。国民が「ああそうだったのか」と、「政府が言っていることは正しい」と思ってもらえるための努力はしていかないといけない。
高嶋 / 具体的には?
石破 / これから先いろんな議論がなされるでしょう。例えば自民党と公明党の幹部の会合で、政府与党の責任だよねということは確認しているわけですよね。どうすれば国民の方々が「ああそうだったのか」と思ってもらえるのか。そういうようなやり方は、これから考えると思います。そういう信頼がきちんと回復されるということは私たちがやっていかないといけないところだと思います。具体的にどうこうという立場にはありませんけどね。
安倍総理「何かあったら責任は取る」の責務をどう果たすか
高嶋 / 昨日の質問者はそれぞれの政党、それぞれの立場でよって立つところが違いましてね、明らかにみんな色ついて質問しているなという感じがありました。一つだけ思ったのは安倍総理が過去に言い切っちゃっていますからね。「妻は私人である」と。籠池さんの問題については「一切関わりがない」、「何かあったら責任を取りますよ」と拍子で言ってしまったのかわかりませんが。官房長官もちょっと物が言いにくいなというように見えましたが、その辺はどうなると思いますか?
石破 / 我々が選んだ総裁で、国会が選んだ総理ですから。与党としてはそういう責任は持っているわけですよ。総理がそう言い切るからには、そういうのがあると。私たちは安倍さんに対する国民の信頼を、安倍さんを総裁に選んだものとして、きちんと確立をしていくところが、我々に与えられた責務です。
高嶋 / その責務というのはちゃんと果たせるのかどうか。そういうところが焦点になるのでしょうか。  
森友学園問題、籠池理事長の証言に納得? 3/25
学園理事長の退任を表明している森友学園の籠池泰典(本名・康博)理事長の証人喚問が23日、衆参両院の予算委員会で行われました。
今回の喚問は、2012年にAIJ投資顧問による年金消失事件で当時の社長らに実施して以来、約5年ぶりです。
虚偽を述べれば偽証罪に問われ、3カ月以上10年以下の懲役が科される証人喚問の場で、籠池氏は小学校建設予定の大阪府豊中市の国有地を評価額より約8億円のディスカウントで購入できた経緯について「政治的な関与はあったのだろう」と指摘しました。
さらに「安倍晋三首相には直接お願いしたことはない。昭恵夫人を通じていろいろなことを相談した」と説明。昭恵夫人からは100万円の寄付を受け取ったとも明言しました。
仮に寄付が事実であった場合でも、安倍首相の選挙区(山口4区)ではない大阪での寄付行為のため、公職選挙法には違反しません。しかし、籠池氏の一連の証言は、昭恵氏が学園と密接に関係していたことを示す内容だったといえます。
これに対し、かねて学園側との接触を明確に否定している安倍首相は証人喚問翌日の24日の参院予算委員会でも「私も妻も事務所も全く関与していない。そのことは明確に申しあげておきたい」と改めて関与を否定。
籠池氏が23日の喚問で発言した内容については「事実と反することが述べられたのは誠に遺憾だ」と批判しました。
さらに、昭恵夫人も自身のフェイスブックに「私は、籠池さんに100万円の寄付金をお渡ししたことも、講演料を頂いたこともありません」などと否定コメントをつづっています。
政府・与党は今回、籠池氏に対する証人喚問を行うことで、森友学園問題の早期収拾を図りたい考えでしたが、皆さんは、籠池氏の証言で疑惑が払拭され、納得することができたでしょうか。
籠池氏の証言が、国や大阪府、そして、安倍首相や昭恵夫人の説明と百八十度異なっていたことを受け、民進、共産、自由、社民の野党4党は24日、「幕引きでなく幕が開けた」(民進党の蓮舫代表)として、昭恵氏の証人喚問を実施するよう、与党に求めることで一致。民進党は自民党に対し、昭恵氏や大阪府の松井一郎知事ら8人の証人喚問を求めましたが、自民党は拒否しました。
野党は「(国有地売却などで昭恵夫人が)口利きしたのではないかという疑惑が出てきている」(民進党の山井和則国会対策委員長)と主張しているのに対し、政府・与党は「国会で首相が丁寧に説明している」(菅義偉官房長官)、「(昭恵氏の証人喚問は)必要は全くない」(自民党の二階俊博幹事長)、「(昭恵氏を)証人として聞く必要はない」(公明党の井上義久幹事長)との立場です。  
籠池氏証人喚問 左上に目線がいく証言の意味 3/25
学校法人「森友学園」の籠池泰典理事長の証人喚問が参院・衆院予算委員会で行われた。堂々と腹の据わった受け答えに、いったい何が真実なのか、ますます混迷するばかり。そこで証人喚問での様子から、籠池氏のこの時の心理を分析してみよう。
この日の籠池氏は、黒っぽいスーツに光沢のあるモスグリーンと黒のネクタイ姿。10日の記者会見で締めていた「俺は強い、お前らなんかに食われないぞ」というアピールともとれる恐竜模様(!)のネクタイではなく、さすがに落ち着いた服装だ。
部屋に入ってきた籠池氏は、唇が見えなくなるほど口を真一文字にきつく結んでいた。非常に強いストレスを感じていたのだろう。席に座ると唇を指で触って気持ちを落ち着かせたが、すぐに口をすぼめ、口先をふくらませた。これは籠池氏がよく見せる仕草だ。質問への不満や言われたことへの不同意、相手の思惑への反感を表している。
この仕草は、自民党議員が質問に立った時に多く見られた。安倍昭恵氏から、100万円を寄付されたと公言した籠池氏。それが嘘かどうかはわからないが、自民党議員たちは、籠池氏が偽証していると決めてかかり、その嘘をどうにか暴こうと躍起になっていたからだ。だが、これでは見えるものも見えなくなる。
参院の証人喚問冒頭、山本一太委員長から100万円を渡された時の状況について聞かれ、籠池氏は言葉につかえ、何度も言い直し、言いよどんだ。封筒の中身を「その金子は」と言おうとして、生唾を飲み込み、目をつぶって頷くと、ようやく言葉を続けた。用意した書面を読み上げるのではなく、自分の言葉で述べる段になり緊張が増したのだろう。籠池氏が一番言葉につかえ、言いよどんだのはこの時だった。最初の質問に対する最初の答えだからこそ、様々な感情や思惑は表れやすい。
言いよどみや言い直し、言葉の間が多くなるのは嘘の手掛かりとも言われる。100万円の寄付については、顧問弁護士と何度も想定問答してきたはずだ。嘘が見破られるかもという不安が高いと、いくら準備練習してきたとはいえ、うまく話せなくなることが考えられる。
嘘を見破られることで利害が生じるため、見破られたくないと思ったのか、嘘をついていると疑われていることに不安や不満を持っていたのか? 真実を信じないことと、嘘を信じてしまうことは正反対であるが、この区別は簡単なようで難しい。
手の挙げ下げの仕方では、籠池氏がそれをどれだけはっきり、自らの事実として覚えていたかがよくわかった。記憶に自信があると、すっと手を挙げ、さっと下ろした。総理秘書との会話について問われた際は、記憶が定かでなかったのか、手を挙げたまま立ち上った。昭恵氏に10万円の講演料をどう渡したかについては、ゆっくり手を挙げ「事実がわからない」と答えた。  
大阪地検・財務局職員捜査へ…森友用地値引き、告発受理 4/5
学校法人「森友学園」(大阪市)が国有地を格安で取得した問題で、大阪地検特捜部は5日、近畿財務局の職員が不当に安く売却したとする背任容疑の告発状を受理した。特捜部は捜査を進め、立件の可否を判断するとみられる。
大阪府豊中市議らが3月22日に告発していた。学園は2015年5月、大阪府豊中市の国有地(8770平方メートル)に小学校を建設する計画で、10年間の賃貸契約を結んだ。しかし昨年3月、地中から大量のごみが見つかったと国に報告。国土交通省大阪航空局はごみ撤去費を約8億円と見積もった。学園が土地の買い取りを希望し、近畿財務局は昨年6月、土地鑑定価格9億5600万円から撤去費などを差し引いた1億3400万円で売却した。 
「首相夫人の名前出れば、気配り当たり前」元理財局幹部 5/9
「報道にコメントは控えるが、誰が相手方に関係しようが、きちんと法令に基づいて対応している」。9日の衆院財務金融委員会。財務省の佐川宣寿(のぶひさ)理財局長は、朝日新聞の9日付朝刊の報道について確認を求める共産党議員に答えた。
籠池氏は8日夜の朝日新聞の取材に対し、2014年に小学校建設予定地で昭恵氏と撮った写真を近畿財務局に示したと説明。担当職員から「局長にも見せないといけないからコピーしていいか」と求められ、写真を渡したという。異例の土地取引が「それ(写真をめぐる職員とのやりとり)から本当に具体的な話になった」とも語った。
政府はこれまで、昭恵氏付の政府職員が籠池氏側の依頼で財務省に照会をしていた事実が明るみに出ても「夫人の関与は、名誉校長をされている等々、一切知らなかった」(3月24日、武内良樹・元近畿財務局長)と説明。首相も「財務局長が案件そのものを知らなかったと答えており、忖度(そんたく)の働く余地は全くなかった」(同月27日)と述べているが、食い違いが浮き彫りになってきている。
元理財局幹部は「首相夫人の名前が出ればすぐに本省に事案を引き上げ、ルールのぎりぎりまで気配りするのが当たり前だ。今までの答弁に無理があった」とみる。  
森友問題、安倍首相はケリを付けるべきだ 5/9
共同通信84.7%、毎日新聞71%、朝日新聞75%、読売新聞82%。時事通信68.3%、日本経済新聞74%。これらの数字はいずれも森友学園問題について、「説明していると思わない」「納得していない」「不十分だ」などと答えた世論調査(すべて4月に実施)の数字である。
「多くの国民は納得していない。私はその理由は政府にあると思う。籠池(泰典)前理事長は証人喚問に応じ、多くの国民がその説明に納得した。大阪府もちゃんと報告書をまとめ、財務省から言われて認可したことを書いている。説明が全然ないのは政府だけだ」
連休明けの5月8日に首相出席の下で開かれた衆議院予算委員会の集中審議で、民進党の福島伸享衆院議員が森友学園問題について追及した。
昭恵夫人は「関係」していたのか
また森友学園問題か?と感じる読者も少なくないだろう。しかし、国有地を特例措置で有利な条件で払い下げた問題についての疑惑は解消されていない。冒頭で示した数字が、国民のいらだちを示している。
これまでのところ、事実が明らかにされるほど、特例措置に対する安倍昭恵夫人の関与が明らかになりつつある。
8日の委員会で財務省の佐川宣寿理財局長は、昨年3月に記録された籠池夫妻と「タムラ」と称する人物のやり取りの音声データを、田村嘉啓国有財産審理室長との打ち合わせのものと認めた。
田村氏は売却ではなく貸し付けとすることが特例だったと述べている。なぜ特例が認められたのか。その「原点」といえそうなものが、2013年8月26日付けで籠池氏が近畿財務局長宛に出した「未利用国有地等の取得等要望について」と題された書面だ。
この書面は、ほとんど黒く塗られており、読むことができない。籠池氏の住所や電話番号、国有地の所在地などを除いて、ほとんど秘匿されていたのだ。籠池氏のほか、森友学園の籠池町浪現理事長と学校法人森友学園の開示同意書をとっているにもかかわらず、財務省が開示しないのは、なぜなのか。
その理由は、設立趣意書の左側にある黒塗りの部分に「安倍晋三記念小學院」という学校名が書いてあるから、というのが福島議員の見立て。籠池氏から「安倍晋三記念小學院と書いた記憶がある」と聞いたからだ。このあまりに強烈なインパクトのある学校名が影響し、さまざまな忖度(そんたく)がなされて特例措置が行われたのではないか、ということだ。
「どう見てもこの黒塗りから始まり、特例が認められているとしか思えない。籠池氏によれば、近畿財務局には総理の携帯の番号や昭恵夫人と撮影した写真を見せて交渉を行った。これは総理が言うように、利用された可能性もある。しかし進捗状況は、昭恵夫人に適宜連絡している。昭恵夫人も『主人に伝えます』とか『何かありますか』と籠池氏に言ってきた。それを聞いて籠池氏は『うれしかった』と言っている」
昭恵夫人が「関係」している疑いは濃厚といえるだろう。
求められる安倍首相の「決断」
安倍首相は、こうした追及に対して冷静に応じてみせている。
「籠池氏の証言に基づく一方的な発言だ。私は小学校に名前を使用することを断ったが、結局は1年数カ月も使われていた。にもかかわらず、非難されるのはどうかと思う」
確かに安倍首相の言い分は理解できる。籠池氏に利用されたという面はあるのだろう。しかし、民進党が攻撃の拠り所としているのは2月17日の衆議院予算委員会における安倍首相の発言だ。「私や妻が(私立小学校の認可や国有地払い下げに)関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」という発言である。ポイントは、妻が関係していた場合にも辞める、と発言していること。昭恵夫人の関与が濃厚であることから、この部分を執拗に突いているわけだ。福島議員は質問の最後に、昭恵夫人の証人喚問を求めた。疑惑追及はまだまだ続く。
「すでに私は何時間、何十時間も話した。97兆円の予算を横に置いておいて何時間、この森友問題にばかり質問される」
安倍首相のこの発言に首肯する読者も多いかもしれない。民進党による森友学園問題への”執着”は、民進党の支持率低下にもつながっている可能性はある。しかし、97兆円の本年度予算は、すでに3月に成立済み。野党が森友学園問題を徹底追及せずに腰砕けになってしまえば、閣僚の"緩み"が目立ち始めた安倍政権は、ますます緩くなりかねない。
安倍首相もやり過ごすのではなく、自らケリを付けるべきだ。昭恵夫人の証人喚問を行って関係を断固として否定するのか、あるいは不本意ながらも関係していたことを認めた上で2月17日の発言を撤回するのか。「決断」をするのが筋だろう。 
佐川新国税庁長官に世論の怒り 苦情殺到で税務署員困惑? 7/8
「もう税金払わないよっ」――。5日付で国税庁長官に就いた佐川宣寿前財務省理財局長(59)に対し、国税庁や全国の税務署に苦情の声が殺到しているという。
森友問題をめぐる国会答弁で野党側の追及をノラリクラリはぐらかし、事実確認や記録の提出を一切拒否してきた佐川新長官。「適正・公平」を何よりも求められる課税庁のトップとしてふさわしくない――と世論批判が爆発しているのだ。
現場のマジメな税務署員はタマッタもんじゃないだろう。いったいどのくらいの苦情が寄せられているのか国税庁に聞くと、担当者はこう答えた。
「日々、納税者の方々からさまざまなご意見をいただく中で、長官就任に関するご意見があることは承知しております」(広報)
う〜ん。持って回った言い方だが、やはり困惑しているようだ。渦中の佐川新長官は今のところ、メディアの取材に一切応じていないが、いつまでも黙ってはいられない。長官就任会見があるからだ。
「国税庁長官は就任会見を行うのが恒例です。挨拶はだいたい決まっていて、『適正課税』や『納税者の信頼を得たい』などと言うのですが、佐川新長官が果たして何を言うのかが注目です。当然、記者からは今回の人事をどう考えているのかや、『納税者の信頼は得られると思うか』といった厳しい質問が出るのは間違いない。例のごとくノラリクラリ逃げたら国民の怒りはさらに炎上です」(財務省担当記者)
新長官会見の予定日時は今のところ決まっていないというが、これも異例の事態だろう。
一般国民には大ヒンシュクを買っている佐川新長官だが、風俗店やヤミ金業者のウケはいい。「だって税務調査されても知らぬ存ぜぬを貫けばいいんだろ。トップが国会で身をもって教えてくれたじゃないか」ニンマリ顔で話す歌舞伎町の風俗店経営者は、税務署員に記録の不備を指摘された場合の“逃げ口上”を自信タップリにこう明かした。「短期間で自動的に消去されて復元できないシステムなんです」
あらためてメチャクチャな人事である。 
 
森友学園捜索に至った経緯

 

■2月
安倍首相は関与を否定 2/17
安倍首相は2月17日の衆院予算委員会で、大阪府豊中市内の国有地が学校法人「森友学園」に小学校の建設予定地として売却されたことに関連し、「妻が名誉校長になっているのは承知している。私や妻が(売却に)関係していたとなれば、首相も国会議員も辞める」と述べた。
問題の経緯…国有地8億円値引きが波紋 2/24
焦点となっているのは、国土交通省大阪航空局が伊丹(大阪)空港の騒音対策として管理していた8770平方メートルの土地。2015年5月、学校法人「森友学園」が10年以内の買い取りを条件に借地契約を結んだが、着工後、地下約4メートルからコンクリート片や廃材などが見つかった。
森友学園は、国が撤去すると作業が長期化するとして、16年6月に土地を購入。近畿財務局が依頼した不動産鑑定士の査定では9億5600万円の評価額だったが、大阪航空局はごみの撤去費を8億1900万円と見積もり、これらを差し引いた1億3400万円が売却額となった。同財務局は「学園の事業に影響を及ぼす可能性がある」として売却額を不開示としていたが、地元市議が今月8日に開示を求めて大阪地裁に提訴。2日後、同財務局は「学園の同意が得られた」として、売却額を明らかにした。  
■3月
寄付には「責任の取りようがない」 3/1
大阪府豊中市の国有地が学校法人「森友学園」に鑑定評価額を大幅に下回る金額で売却されていた問題で、安倍首相は2月28日の参院予算委員会で自身の関与を改めて否定した。同学園が現地で開校予定の小学校建設のため、「安倍晋三記念小学校」名で寄付を募ったことに関しては、「名前をつけるのを断った以上、責任の取りようがない」などと反論した。
「首相夫人」は公人?私人? 3/4
政府は3日の国会審議で、安倍昭恵・首相夫人が2015年9月に学校法人「森友学園」が運営する幼稚園で講演した際、昭恵氏のサポート役の政府職員1人が同行していたことを明らかにした。野上浩太郎官房副長官はこの日の参院予算委員会で、「講演は夫人の私的活動だが、職員の同行は種々の連絡調整などサポートを行うためだった」と述べ、旅費は昭恵氏が支払ったと説明した。
菅官房長官は3日の記者会見で、首相夫人は一般的な呼称で、国家公務員の発令を伴っていないことから、昭恵氏は「私人」であると強調した。首相外遊の同行などについては「首相の活動にご協力をいただいている」と語った。
安倍首相、説明不足を認める 3/7
安倍首相は6日の参院予算委員会の集中審議で、埋設ごみの撤去費用の積算根拠などについて、政府の説明不足を認め、今後の改善を約束した。首相は「売却は法令などに基づき適切に処理されたが、すとんとふに落ちる説明がなされていなかったのは事実だ」と述べた。
撤去費用の根拠に関して、国土交通省の佐藤善信航空局長は、約1万9500トンと推計したごみの処分量に、掘削・運搬・処分など処理工程ごとの作業単価を掛け合わせて算出したと説明した。作業単価は「複数事業者の価格を比較し設定した」などとし、8億円との設定は「一般的な方法で算出され合理的」と強調した。
野党、昭恵夫人に矛先 3/10
政府は昭恵氏を「私人」と位置付けているが、民進党の蓮舫代表は9日の記者会見で「公人だと思う」と反論した。9日の参院内閣委員会では、昭恵氏が2014年と15年に同学園の幼稚園で講演した際の政府職員の随行について、同党の神本美恵子氏が「(夫人の)私的行為に公務として政府職員が付いていくことには疑問が残る」と指摘した。
昭恵氏は名誉校長就任の経緯などを直接説明しておらず、野党には説明責任を問う声も出ている。昭恵氏は8日、東京都内で行われたイベントで「首相夫人という立場だからこそ、私に会ってうれしいと言う方がたくさんいる。それだけ責任があるのかな」と語っている。
小学校は不認可 籠池氏を証人喚問へ 3/11
学校法人「森友学園」(大阪市)が大阪府豊中市に建設中の小学校「瑞穂の国記念小学院」を巡る問題で、同学園は10日、小学校の設置認可申請を取り下げた。府は取り下げを受理し、学園が目指していた4月の開校はなくなった。籠池(かごいけ)泰典理事長は記者会見で、退任する意向を明らかにした。
府によると、学園の代理人弁護士が同日、取り下げの文書を府に提出。「認可の見通しが薄くなった。運営する幼稚園への影響を考慮し、早期解決を図りたい」と話したという。
小学校の設置を巡っては、雇用予定の教員名簿に、無断で男性教員の名前を載せるなど、認可に関わる書類に事実と異なる点が相次いで見つかっていた。
稲田防衛相の揺れる答弁 3/15
稲田防衛相は14日の衆院本会議で、学校法人「森友学園」(大阪市)が起こした民事訴訟の口頭弁論に原告側代理人として出廷したことを明らかにし、学園の裁判に関わったことはないとするこれまでの国会答弁を訂正し、謝罪した。野党側は「虚偽答弁だ」として稲田氏の辞任を求めているが、稲田氏は「今後も誠心誠意、職務に当たっていきたい」と述べ、辞任しない考えを示した。
稲田氏は13日の参院予算委員会で、「学園の事件を受任したことも、裁判を行ったことも、法律相談を受けたこともない」と述べていたが、14日の衆院本会議や、その後の参院予算委の答弁では弁護士である夫の法律事務所が2004年10月から09年8月頃まで学園側と顧問契約を結んでいたことを明らかにした。
さらに、04年12月9日の裁判所記録を確認したところ、自身の出廷が確認されたという。稲田氏は「契約は夫個人が締結したが、私は(事務所の)社員なので全く関係がないということではない」とした上で、04年は夫の代理として出廷したと説明。13日の答弁について、「記憶が間違っていたので訂正しておわびする」と述べた。
証人喚問 3/23
籠池泰典理事長への証人喚問が3月23日、参院・衆院予算委員会で実施された。 
昭恵氏が証言に反論 3/23
昭恵氏は23日夜、自身のフェイスブック(FB)に籠池氏の証言を否定するコメントを掲載した。
本日の国会における籠池さんの証言に関して、私からコメントさせていただきます。
1 寄付金と講演料について
私は、籠池さんに100万円の寄付金をお渡ししたことも、講演料を頂いたこともありません。この点について、籠池夫人と今年2月から何度もメールのやりとりをさせていただきましたが、寄付金があったですとか、講演料を受け取ったというご指摘はありませんでした。私からも、その旨の記憶がないことをはっきりとお伝えしております。
本日、籠池さんは、平成27年9月5日に塚本幼稚園を訪問した際、私が、秘書に「席を外すように言った」とおっしゃいました。しかしながら、私は、講演などの際に、秘書に席を外してほしいというようなことは言いませんし、そのようなことは行いません。この日も、そのようなことを行っていない旨、秘書2名にも確認しました。
また、「講演の控室として利用していた園長室」とのお話がありましたが、その控室は「玉座の間」であったと思います。内装がとても特徴的でしたので、控室としてこの部屋を利用させていただいたことは、秘書も記憶しており、事実と異なります。
2 携帯への電話について
次に、籠池さんから、定期借地契約について何らか、私の「携帯へ電話」をいただき、「留守電だったのでメッセージを残した」とのお話がありました。籠池さんから何度か短いメッセージをいただいた記憶はありますが、土地の契約に関して、10年かどうかといった具体的な内容については、まったくお聞きしていません。
籠池さん側から、秘書に対して書面でお問い合わせいただいた件については、それについて回答する旨、当該秘書から報告をもらったことは覚えています。その時、籠池さん側に対し、要望に「沿うことはできない」と、お断りの回答をする内容であったと記憶しています。その内容について、私は関与しておりません。
以上、コメントさせて頂きます。平成29年3月23日   安倍 昭恵 
籠池氏「神のみぞ知る」…首相側との食い違い 3/24
衆参両院の予算委員会は23日、学園理事長退任を表明した籠池泰典氏を証人喚問した。籠池氏は国有地の借地契約に関し、安倍昭恵・首相夫人に相談し、昭恵氏側が財務省に問い合わせた結果をファクスで受け取ったと述べた。また、籠池氏は昭恵氏から100万円の寄付を受けたと改めて主張した。
証人喚問を終えた籠池泰典氏は、日本外国特派員協会(東京都千代田区)で記者会見を行い、「国有地の値下げの経緯を明らかにするため、私だけ『トカゲのしっぽ切り』をするのではなく、他の関係者を呼んで真相究明を進めてほしい」と要望した。
昭恵氏「謝礼頂いた記憶ない」…発覚後にメール 3/24
昭恵夫人と籠池氏の妻が問題発覚後に交わしたメールの全容が23日、明らかになった。籠池氏の妻が2月25日、学園の幼稚園にある昭恵氏の写真を外すよう、自民党から迫られた――とのメールを送信したのに対し、昭恵氏は「私が関わったということは、裏で何かがあるのではと疑われないように、細心の注意を払わなくてはならないということだったのでしょう」と返信した。
首相が答弁「私も妻も事務所も関与していない」 3/24
安倍首相は24日午前の参院予算委員会で、学校法人「森友学園」(大阪市)の問題をめぐり、首相自身と昭恵夫人が国有地の売却や小学校の設置認可に関与していないことを改めて説明した。売却交渉当時の財務省幹部2人が参考人として出席し、政治的な関与や配慮はなかったことを明言した。
松井知事「首相は忖度あったと認めるべきだ」 3/25
日本維新の会の松井代表(大阪府知事)は25日の党常任役員会で、「安倍首相は(財務省などの)忖度があったという事実を認めるべきだ」と指摘した。松井氏は「森友学園の件は早期に終結させ、国会で日本の課題を解決する建設的な議論を進めてほしい」とした上で、「国民が一番わからない点に首相は答えていない。忖度は社会通念上あり、それをないと強弁するからメディアも取り上げる。忖度はあるが、違法な忖度はないとはっきり言うべきだ」と主張した。
籠池氏の偽証罪告発、与党が視野に…野党は慎重 3/26
与党は、証人喚問された学園の籠池氏の証言について、真偽の検証を進めている。虚偽と判断した場合は偽証罪での告発も視野に入れる。国会の告発には重い責任が伴うため、全会一致で決めるのが通例だが、野党は籠池氏の証言をもとに政権への追及を強めており、実現のハードルは高い。
自民党が問題視しているのは、籠池氏が「安倍晋三記念小学校」の名称で寄付金を集めていた期間だ。籠池氏は、安倍首相が2012年12月に政権に返り咲く前の「衆院議員の時期の一瞬」と証言したが、自民党は15年頃まで首相の名を利用したとみている。首相は24日の参院予算委員会で、「私の名前を使ったのは『ほんの一瞬』と証言していたが、調べてみると2年以上は使っていた。大変遺憾だ」と述べた。
大阪府が森友学園運営の幼稚園に立ち入り調査 3/31
学校法人「森友学園」が運営する塚本幼稚園(大阪市淀川区)が補助金支給の要件を満たしているかを確かめるため、大阪府は31日、同幼稚園の立ち入り調査を行った。
大阪市も同日午後、関連団体の保育園の調査を始めた。調査では、学園理事長の退任を表明した籠池かごいけ泰典氏から事情を聞いた。
府は、専従の教職員1人当たり約180万円を幼稚園に補助しており、2015年度は塚本幼稚園に約4000万円を支給。しかし、副園長を務める籠池氏の妻は、関連の社会福祉法人が運営する「高等森友学園保育園」(同区)の園長も兼ねている。専従ではない可能性があることから、府は勤務実態を調べた。  
■4月
昭恵氏の名前出し、財務省側と交渉 4/28
籠池前理事長は28日午前、国会内で開かれた民進党の会合に出席し、2016年3月に財務省の幹部と面会した際、学園との借地契約が「特例」と言われていたことを明らかにした。安倍昭恵・首相夫人とも頻繁に連絡を取り合っていたとし、昭恵氏の名前を出して同省側と交渉したとも説明した。
籠池氏が国会内でこの問題について語るのは、国会の証人喚問に出席した3月23日以来で、会合は公開で行われた。籠池氏は妻の諄子じゅんこ氏とともに16年3月15日に財務省を訪問した際、田村嘉啓・理財局国有財産審理室長らとの会話を隠し録音しており、民進党議員からの聞き取りは、書き起こした音声記録のペーパーをもとに進められた。  
■5月
「特例」発言は財務省室長 5/9
財務省の佐川宣寿理財局長は8日の衆院予算委員会で、籠池泰典・前理事長が公表していた音声記録は同省担当者との面会時のやり取りだったと認めた。
面会は2016年3月15日に籠池氏と妻が同省を訪れた際、田村嘉啓・国有財産審理室長との間で行われた。籠池氏は4月28日の民進党の聞き取りに音声記録を公表し、この中で田村氏は学園側と協議していた国有地の定期借地契約を「特例」と表現していた。
佐川氏はこの日の質疑で、「本人に聞くと、『当日のやり取りを記録したものと思われる』とのことだった」と語った。これに対し、民進党の福島伸享氏は「なぜ特例が認められたのか。多くの人が不思議に思う」と訴えた。財務省の姿勢については、「今までのような情報開示のあり方では(売却の経緯が)分からない。議論すればするほど謎が深まる」と批判した。
森友保育園に保育士不足で異例の事業停止命令へ 5/11
学校法人「森友学園」系列の「高等森友学園保育園」(大阪市淀川区)の保育士数が大阪市の規定を下回っている問題で、吉村洋文市長は11日、児童福祉法に基づく事業停止命令を7月1日付で同園側に出し、休園させる考えを明らかにした。
厚生労働省によると、保育士不足による事業停止命令は極めて異例。同園側に弁明の機会を設けたうえで、有識者による審議会の意見を聞き、最終決定する。
吉村市長は、事業停止命令を出しても改善されなければ、保育園の認可取り消しに踏み切る可能性にも言及。市は11日夜に保護者説明会を開いて休園の見通しを伝え、特例で優先的な入園を認める転園先を紹介した。
同園は森友学園の籠池泰典・前理事長が代表の社会福祉法人が運営。0〜5歳の計42人が在籍し、市の規定で6人以上の常勤保育士が必要だが、相次ぐ退職で、現在は非常勤の保育士3人だけになっている。  
■6月
大阪地検、補助金詐取容疑で森友学園を捜索 6/19-20
特捜部は押収した資料を分析するとともに、籠池氏らから事情を聞き、刑事責任追及に向けて詰めの捜査を行う。
籠池氏は、塚本幼稚園で専従教員数などに応じて支給される補助金計約6200万円を不正受給したとして府から詐欺容疑で告訴され、特捜部が受理している。
また、森友学園は昨年6月、国の鑑定評価額を大幅に下回る1億3400万円で大阪府豊中市の国有地を購入し、小学校建設を進めていたが、施工業者との間で工事費を水増しした契約書を作成。これを国に提出して補助金約5600万円を不正に受給したとして、籠池氏は補助金適正化法違反容疑でも告発されている。
学校法人「森友学園」(大阪市)が国や大阪府の補助金を不正受給したとされる事件で、大阪地検特捜部による学園側への捜索は、開始から約11時間後の20日午前6時過ぎまで続いた。特捜部は今後、籠池泰典・前理事長(64)らから事情を聞く方針。
森友学園の事務所がある「塚本幼稚園」では、約11時間に及ぶ捜索が終わってから約1時間後の20日午前7時頃、職員らが出勤。報道陣の質問に「何も聞かされていない」「答えられない」などと硬い表情を見せ、足早に園内へ入った。
一方、籠池氏は同8時45分頃、未明に捜索が終わった大阪府豊中市の自宅から妻・諄子じゅんこ氏とともにタクシーで外出。同9時半頃には自宅前で籠池氏の長男が報道陣に対し、「国策捜査だ」と大阪地検特捜部の捜査を批判した。
森友学園問題…大阪地検が森友学園を捜索 6/20
学校法人「森友学園」(大阪市淀川区)が大阪府や国の補助金を不正受給したとされる問題で、大阪地検特捜部は19日夜、詐欺と補助金適正化法違反の容疑で、学園の事務所がある「塚本幼稚園」や、籠池かごいけ泰典・前理事長(64)の自宅や塚本幼稚園などを捜索しました。特捜部は今後籠池氏から事情を聞く方針で、問題は大きな局面を迎えています。一連の問題や籠池氏の証人喚問、国会での議論をまとめました。
森友学園・ついに強制捜査 前理事長妻「いじめないで」 6/20
小学校用地として大阪府豊中市の国有地を格安で取得した問題の発覚から約4カ月。大阪地検特捜部は19日、大阪市の学校法人「森友学園」への強制捜査に着手した。安倍晋三首相の妻昭恵氏が小学校の名誉校長に名を連ねたことから、国有地取得でも有利に事が進んだのではないかと、国会論戦の焦点になった学園。補助金の不正受給疑惑は刑事事件に発展したが、国有地売却問題に関する捜査は進むのか。関係者は事態を注視している。
大阪地検特捜部の係官が森友学園の拠点、塚本幼稚園(大阪市淀川区)に到着したのは午後7時前。係官がインターホンを押したが応答がない。係官は携帯電話で誰かと話し始めた。「開けてください」。しばらくして園内から籠池泰典前理事長の長女で学園の現理事長、町浪(ちなみ)氏が姿を見せた。
険しい表情で無言のまま入り口を開ける町浪氏。園児が帰宅して静まり返った園内に、家宅捜索のため、折りたたんだ段ボール箱を持った係官ら十数人が入っていった。
豊中市の籠池氏の自宅に地検係官が家宅捜索に入ったのは午後9時前。籠池氏も在宅しているようだ。そのさなか、籠池氏の妻が2階の窓から顔を出し、声を張り上げた。「安倍首相、お父さんをいじめないで。詐欺なんかしていません」。長男は「どうして捜索に入るのか」と憤り、門前に詰めかけた報道陣を自宅に招き入れようとする一幕もあった。
学園系列の「高等森友学園保育園」にも、午後7時過ぎに地検係官3人が到着したが、園関係者とみられる男性が玄関の鍵を開けるまで、2時間ほど待機を余儀なくされた。関係先の捜索は日付が変わっても続いた。
信頼していた幼稚園や保育園が家宅捜索を受ける異例の展開に、保護者は憤りを募らせる。塚本幼稚園の前PTA会長、図越寛さん(36)は「娘の診断書を悪用され、補助金の詐取に利用された。教育機関として失格」と切り捨て、幼稚園を休園すべきだと促した。
以前、子供を園に通わせていた40代の女性も「籠池ファミリーはもう二度と教育現場に関わるべきではない」と手厳しい。さらに「問題を放置してきた大阪府も責任を感じてほしい」と指摘した。
その大阪府。松井一郎知事は19日夜、大阪市内で記者団に「不正受給の原因を突き止めてもらいたい。不正受給ができない仕組みを考えないといけない」と述べた。
多くの人が不信を抱くのは国有地売却の問題だ。国有財産を管理する財務省の近畿財務局はなぜ、学園に有利に事を進めたのか。国有地を不当に安く売却したとして、近畿財務局職員を背任容疑で告発した豊中市の木村真市議は「問題は国有地の値引きと不適切な小学校認可の経緯だ。違法行為があれば捜査するのは当然だが、籠池氏をスケープゴートにするだけではなく、大阪地検は背任容疑で捜査を継続し、疑惑を解明してほしい」と訴えた。
森友学園と加計学園は何が問題か 6/26
森友学園と加計学園の問題が大きく取り上げられてきました。ワイドショー的なおもしろさもあって、籠池さんのキャラクターや文科省のメモがあったかなかったか、など物事の本質から離れた議論になったのは残念です。
森友学園のケースは、国有財産を払い下げる際の9割引きの積算根拠が正しいのかどうかが問題の焦点です。これが正しければ、問題はありません。間違っていたならば、政治的な圧力の有無を含めその原因が問われるべきです。しかし、政府は、「その資料は内規に従い捨てた。」との説明です。会計検査が終わっていない段階で、資料を捨ててもよいなどという内規は、それ自体違法です。私たちが保存期間内に領収書を捨てていたら、税務署は許してくれません。
加計学園のケースは、獣医学部の国家戦略特区の要件として作られたいわゆる「石破4原則」が守られたかどうかが検証されるべきです。
(石破4原則)
1. 現在の提案主体による既存獣医師養成でない構想が具体化し、
2. ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき具体的需要が明らかになり、かつ、
3. 既存の大学・学部では対応困難な場合には、
4. 近年の獣医師需要動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。
つまり、ライフサイエンス分野や創薬の分野での獣医師の需要予測が行われ、どうしても不足を補う必要を内閣府は証明しなければなりません。国会審議で明らかになったのは、ライフサイエンス分野に関しては、担当省庁がなく需要予測はしていないこと、獣医師の医薬品メーカーへの就職について最近の数字はありますが、時系列のデータが存在しないため比較できないことです。
まさに、行政がゆがめられ、石破4原則を無視した決定が行われています。前川喜平前文科事務次官が指摘しているのもその点です。そこで、なぜそうなったのか調べなければなりません。
しかし、政府からは、官邸からの圧力がかかっていることを示す文科省のメモなどは、最初は「無い」、次は「怪文書」、そして、「あったけれども真偽は不明」などの不可解な説明が繰り返されるばかりです。安倍内閣には、メンツにこだわらず、真実がどうであったか、国民に納得のいく説明をしていただくことを望みます。
森友学園・保育園を6カ月間停止 大阪市、保育士不足で 6/27
森友学園系列の高等森友学園保育園(大阪市淀川区)の保育士が不足している問題で、大阪市の吉村洋文市長は27日、保育園に対し、7月1日から6カ月間の事業停止命令を出した。保育士不足による停止命令は異例。
市は停止命令の期間を終えた今年12月末に状況が変わらなければ、認可取り消しも検討する。吉村市長は「保育士の確保という最も重要な部分が改善されず残念だ」と述べた。
保育園は、学園前理事長の籠池泰典氏が代表を務める社会福祉法人が運営している。保育士不足は今年4月に発覚。市が再三改善を求めたが、市の基準で必要とされる常勤換算で6人の保育士を確保できなかった。26日には専門家でつくる市の審議会分科会が保育士不足を理由に「児童福祉に著しく有害」とする意見書をまとめていた。園には現在36人が通っているが、ほとんどの園児の転園が決まっている。
森友系列園に事業停止命令 半年後にも認可取り消し 大阪市長が表明 6/27
学校法人森友学園系列の社会福祉法人肇國舎(ちょうこくしゃ)(大阪市淀川区)が運営する認可保育園「高等森友学園」(同区)で保育士が不足している問題で、吉村洋文市長は27日、市の審議会からの答申を受け、7月1日付で6カ月間の事業停止命令を出すことを明らかにした。6カ月後までに改善の見込みがないと判断した場合、認可を取り消す方針だ。
市の配置基準では常勤換算6人分の職員が必要で、うち4人は常勤保育士をそろえなければならない。しかし同園が確保できた常勤保育士は1人にとどまっていた。このため審議会は、26日の会合で市が提案した6カ月間の事業停止命令を「妥当」と結論づけた。
答申を受けた吉村市長は27日、報道陣に「異例の措置として(4月初めから)市の保育士を派遣し、改善勧告や改善命令といった指導をしたが、3カ月間何もなかった」と理由を述べ、「役所としても認可や監査の体制を厳しくしていく」と強調した。
また、肇國舎と森友学園は平成23〜28年度に市から運営委託費や補助金計約3800万円を不正に受け取った疑いがあり、吉村市長は月内に刑事告訴するかどうか判断する。
森友学園強制捜査は疑惑隠しの国策捜査だ!  6/21
 国有地払い下げを捜査対象から外して安倍夫妻を守った検察の忖度
19日夜、大阪地検特捜部が学校法人森友学園の強制捜査に乗り出したことで、マスコミの間では、これで森友問題の真相究明に一歩近づく、新事実が出てくるかもしれない、という期待の声も上がっている。しかし、残念ながらそういう結果にはなりそうにない。今回の捜査はどうも、官邸も織り込み済みの出来レースらしいのだ。
それは、強制捜査のタイミングを見ても明らかだ。大阪地検特捜部が籠池泰典前理事長の自宅や塚本幼稚園などを捜索したのは、19日午後7時頃。これは、通常国会閉幕を受けた安倍首相による記者会見が始まってわずか1時間後だ。どう見ても、官邸を忖度、配慮したとしか思えないだろう。
いや、タイミングよりもっと怪しいのは、その捜索の容疑だ。今回の捜索は、小学校建設費をめぐる補助金適正化法違反容疑と、大阪府が告訴していた幼稚園従業員などをめぐる補助金不正受給の詐欺容疑で行われた。そう。そこには「国有地払い下げ」にかんする容疑がすっぽり抜けおちているのだ。
財務省近畿財務局が不動産鑑定評価額9億5600万円の国有地をわずか1億3400万円で森友学園に売却し、しかも、条件面でもさまざまな優遇をしていたというこの国有地払い下げ疑惑は森友疑惑の核心部分だ。国民の財産をただ同然で売却した財務省近畿財務局の責任を厳しく問う必要があるのはもちろん、さまざまな政治家、さらには安倍首相や昭恵夫人の関与も指摘されている。ところが、大阪地検はそれを完全にスルーしてしまったのである。
大阪地検幹部は「今回の捜索は刑事告訴を受けて、粛々と進めただけ」などと言い張っているようだが、刑事告発なら、国有地払い下げ問題に対しても行われている。今年3月、豊中市議の木村真氏ら市民230人が、背任容疑で財務省近畿財務局職員を告発し、検察もこれを受理していた。
もちろん、財務省近畿財務局は9億5600万円の土地を約8億円も不当に値引きし、国民の財産に損害を与えているのだから、十分「背任罪」の対象となるし、これまでのパターンを考えると、森友学園への強制捜査でこの背任容疑もいっしょに調べるというのが普通のやり方だった。それが一切そういう動きを見せなかったのである。
近畿財務局の捜索をつぶし、国有地払い下げ捜査を止めた地検上層部
いや、正確に言うと、大阪地検は一時、近畿財務局を強制捜査しようとしていた。
「関西ではいまも国有地問題の真相究明を求める声が強く、大阪地検特捜部の現場もそれに押されて、今回の強制捜査で、この背任容疑も加えて近畿財務局もいっしょにガサ入れしようという動きが出てきていた。直前まで準備をしていたようなんですが、地検の上層部が首を縦に振らなかったようです」(大阪地検担当記者)
つまり、国有地払い下げ捜査は、途中でつぶされていたということらしいのだ。しかも、今後も検察がこの問題を本格捜査する可能性は極めて薄いという。
「実際は今回の容疑と別に、単独で背任を捜査することも可能なんですが、大阪地検特捜部は、2009年の村木厚子(厚生労働省局長)さんの冤罪逮捕・証拠改ざん事件を引き起こして以降、信用は地に落ちたままですからね。他省庁の不正を単独で捜査する力はまったくない。そういう意味では、今回の森友強制捜査とセットでやるのが最後のチャンスだったんですよ。それがなくなったということは、もう無理だと思いますね」(前出・大阪地検担当記者)
地検上層部が近畿財務局へのガサ入れを止め、国有地払い下げ問題に触れさせないようにしたのは、もちろん、安倍首相や昭恵夫人が捜査対象になる可能性があるからだ。
「法務省から大阪地検には相当なプレッシャーがあったようです。地検幹部が毎日のように本省から連絡が入ってくる、とぼやいていましたから」(検察関係者)
いずれにしても、この間の動きをみるかぎり、検察は真相究明どころか、むしろ組織をあげて、安倍首相、昭恵夫人の疑惑に蓋をしようとしているとしか思えない。
しかし、それはある意味、当然ともいえるだろう。というのも、今回の強制捜査は、最初から官邸の息のかかった「国策捜査」としてスタートしたとの見方が根強いからだ。
官邸と法務省、大阪府松井知事の間で、籠池逮捕をめぐる裏取引が?
森友問題で次から次へと疑惑が噴出していた時期、永田町では、法務省と官邸をめぐるある密約の情報がかけめぐっていた。
「法務事務次官の黒川弘務氏と菅義偉官房長官の間で、法務省の悲願だった共謀罪の成立とバーターで、籠池理事長の口封じ逮捕の密約が交わされたという情報が駆けめぐったんです。共謀罪とのバーター説については眉唾なところもありますが、黒川氏は甘利明元経済再生担当相の賄賂事件の捜査をつぶした“官邸の代理人”と言われている法務官僚。官邸の意向を受けて、森友捜査をコントロールしようとしていたのは間違いありません」(全国紙政治部記者)
さらにもうひとつ噂されていたのが、今回、森友学園の強制捜査という結果を生み出した大阪府と官邸の動きだ。安倍官邸と松井一郎大阪府知事の間で、「刑事告訴は大阪府が引き受ける」という裏取引があったと言われているのだ。
「3月頃、松井一郎大阪府知事が『小学校設置は近畿財務局の要請。国は相当親切』『安倍首相は忖度を認めよ』などと批判、橋下徹氏もテレビ番組で『国から相当の圧力を受けたらしい』と口にするなど、責任を押し付けていた。これに官邸が激怒したという情報も流れ、両者の間は相当にぎくしゃくしていた。ところが、4月に入って、両者が手打ち。安倍首相が関与する国有地問題に触らせないために、大阪府が籠池理事長の刑事告訴を引き受けて、大阪府の補助金詐欺事件として処理させる、という約束が交わされたんじゃないかと言われています」(在阪の社会部記者)
実際、松井知事は4月に入って、突如、森友学園への刑事告訴の検討を表明するのだが、それ以降、国や安倍首相を批判する言動を一切封印している。一方、政府は4月11日に2025年万博の大阪誘致を閣議了解している。また、この前後、維新側は悲願であるカジノ構想での協力などを取り付け、官邸は共謀罪法案での維新の協力を確かなものとすることで手打ちにしたとの見方が広がっていた。
そして、今回、共謀罪が成立して、国会も終わり、もっとも影響の少ない時期、噴出する加計学園疑惑からも話題をそらすことのできる絶妙のタイミングで、官邸や昭恵夫人に触らなくても済む大阪府の補助金詐欺に限定して、森友学園への強制捜査が行われた。
強制捜査当日、籠池夫人は、「安倍さん、これ以上いじめないで」と叫んだというが、夫人ならずともほとんどの報道関係者は、この捜査は官邸がコントロールした「国策捜査」だと感じたはずだ。
賭けてもいい。このままいくと、ほどなく籠池前理事長だけが逮捕され、森友学園事件は“詐欺師的な学校経営者が引き起こした補助金詐欺事件”として片付けられてしまうだろう。
この流れに唯一抗える方法があるとすれば、マスコミが諦めずに、徹底的に取材調査をして、新たな事実を暴いていくことだけだ。加計学園問題とともに、いまこそ、マスコミの真価が問われている。 
 
加計学園

 

加計学園開校史
2012
12/  再起不能と見えた安倍は返り咲き、第2次安倍政権 発足。安倍の〈腹心の友〉加計孝太郎にチャンスが到来する。再び、安倍の内閣総理大臣秘書官となって経済産業省から戻ってきた今井尚哉が、今治市、加計の獣医学部設置のスキームを練り上げ、下村文科大臣から内閣府、農水省に指示が回される。(北村直人) 
2013
5/5 安倍総理の山梨県鳴沢村の別荘に、本田悦朗内閣官房参与、萩生田光一衆院議員 入り。萩生田氏は別荘に宿泊。
5/6 安倍総理 午前7時7分、昭恵夫人、自民党萩生田光一衆院議員とともに山梨県鳴沢村の別荘発。同11分、同県富士河口湖町のゴルフ場「富士桜カントリー倶楽部」着。本田悦朗内閣官房参与、自民党の萩生田氏、昭恵夫人らとゴルフ。この時、加計孝太郎も一緒だった。(萩生田は2009年衆院選に落選し、千葉科学大学 危機管理学部 客員教授就任(現在も継続) 2012年衆院選当選 3年ぶりに国政復帰。安倍総裁の下で自由民主党副幹事長、総裁特別補佐に任命される。)
5/9 「国家戦略特区ワーキンググループ」が発足。
5/10 萩生田ブログ「GW最終日(*5/6)は青空のもと安倍総理とゴルフをご一緒させていただきました。」
6/  特区創設が閣議決定。
12/  国家戦略特別区域法が成立。
「国家戦略特区」とは、小泉の「構造改革特区」をモデルチェンジし、専門家による議論の場である諮問会議のメンバーを議長である総理大臣が、選定することができるので、安倍に権限が集中する 。
国家戦略特別区域法(平成二十五年法律第百七号)
(議員) 第三十三条 議員は、次に掲げる者をもって充てる。
一 内閣官房長官
二 国家戦略特別区域担当大臣
三 前二号に掲げる者のほか、国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者
四 経済社会の構造改革の推進による産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成に関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者
2 議長は、必要があると認めるときは、第三十一条及び前項の規定にかかわらず、同項第一号から第三号までに掲げる議員である国務大臣以外の国務大臣を、議案を限って、議員として、臨時に会議に参加させることができる。
3 第一項第四号に掲げる議員の数は、同項各号に掲げる議員の総数の十分の五未満であってはならない。 
2014
3/13 加計学園理事長の加計孝太郎、息子の加計役と、加計学園の事務長と名乗る豊田三郎の3人が、獣医師学会の北村直人氏の元に挨拶に訪れる。ちなみに豊田三郎は、文科省OB、2016年5月には理事に加わっている。加計ら3人は、その足で、下村文科大臣に面会。ちなみに、下村文科大臣は、加計との面会は、〈公務〉ではなく〈政務〉として行なった。つまり、〈公務〉では、部局の秘書官が大臣室に入り記録として文書に残すが、〈政務〉では、部局の秘書官の秘書は入らず、個人事務所の秘書がサポートするのみなので、文書は残らない。今井秘書官のスキーム、根回し通りに物事が進行。
5/30 内閣人事局が設置される。各省の幹部人事は、内閣総理大臣を中心とする内閣が一括して握り、官僚の生殺与奪権は安倍の手中に入る。
6/17 東京・芝公園フランス料理店クレッセントにて、安倍、変え孝太郎、三井住友銀行副頭取高橋精一郎ら夕食。
12/18 東京・銀座の中国料理店「飛雁閣」にて安倍、加計孝太郎、高橋精一郎三井住友銀行副頭取と夕食。 
2015
4/2 今治市職員が首相官邸を訪問した。国家戦略特区の提案者が官邸に行く必要はなく、通常あり得ないこと。今治市は、4/1の予定を翌日4/2に急遽変更するよう指示され、飛行機をキャンセルし、チケットを取り直し、特区提案者の今治市職員が首相官邸に行き、安倍総理と、下村文科相と、加計と仲の良い山中伸一 文科省前事務次官と 会談した。(キャンセル料の支出負担行為 決定書の変更の記録が残っている)
同じこの日、特区提案者・今治市の企画課長、課長補佐は、内閣府を訪れ、藤原審議官に会っている。
4/7 教育再生実行会議の当日の進行を説明するため、下村文科相と山中事務次官で首相官邸に行った。4/7 総理が開催する29回教育再生実行会議が開催された。
6/4 加計学園、今治市、国家戦略特区に獣医学部新設を提案。
6/30 「日本再興戦略 2015」が閣議決定され、獣医学部新設の検討が盛り込まれる。ただし、獣医学部新設を懸念する石破茂地方創生担当相は、新設の禁じ手となる《新設のための4条件》を提出。(石破は北村と同期の友人)
8/6 内閣府は、今治市で大学用地現地視察をした。藤原審議官も行った。
8/17 山梨県富士河口湖町のゴルフ場「富士桜カントリー倶楽部」にて、安倍、加計孝太郎、高橋精一郎三井住友銀行副頭取、本田悦朗内閣官房参与 ゴルフ。安倍は8/15-20まで山梨県鳴沢村の別荘で夏休み。夏休みに会った人物は、上記他、大沼瑞穂自民党参院議員、大沼保昭明治大特任教授、笹川陽平日本財団会長(同村に別荘をもつ)茂木敏充自民党選対委員長、日枝フジテレビ会長、加藤勝信官房副長官、岸信夫自民党衆院議員、萩生田光一同党総裁特別補佐、西村康稔内閣府副大臣。
12/15 今治市が、国家戦略特区に決定。同時に、広島市も特区指定されたが、加計の為に行ったというイメージを薄めるため《しまなみ海道》を作った。
12/24 クリスマスイブ、昭恵氏のFacebookに、安倍と加計らがシャンパンで乾杯する写真がアップされた(左から、加計孝太郎、三井住友銀行副頭取・高橋精一郎、安倍晋三、鉄鋼ビルディング専務・増岡聡一郎)。 
2016
3/18 東京・赤坂の日本料理店「佐藤」にて、安倍、高橋精一郎三井住友銀行副頭取、加計孝太郎 理事長と会食。
3/24 京都府 京都産業大学が国家戦略特区に獣医学部新設を提案。
7/21−22 安倍は、山梨県鳴沢村の別荘で過ごし、21日、富士河口湖町の焼き肉店「鉄庵」で安倍、渋谷耕一リッキービジネスソリューション社長、加計孝太郎は夕食を共にし、22日、山梨県山中湖村「富士ゴルフコース」でゴルフ。
8/3 第3次安倍内閣 (第2次改造)発足。山本幸三が国務大臣 内閣府特命担当大臣(地方創生担当)に就任。
8/5 石破茂国務大臣・地方創生・国家戦略特別区域担当を退任。(前川喜平「石破氏から山本氏に地方創生担当大臣が変わったことから話が動き出した」週刊文春 2017/5/25)
8/10−11 10日、富士河口湖町の居酒屋「漁」にて、安倍、加計孝太郎、今井尚哉秘書官ら夕食。11日、安倍、加計孝太郎、高橋精一郎三井住友銀行副頭取らとゴルフ。
8/23 加計孝太郎は、山本有二農水大臣に大臣就任祝いとして面談し、獣医学部設置の陳情を行なった。
秋頃 前川事務次官は、杉田和博官房副長官から呼び出され、出会い系バーに出入りしている件で注意をうけた。
9/  地方創生事務局藤原豊審議官は、木曽功(内閣官房参与)と面談。[利害関係者=加計学園の理事 千葉科学大の学長であった木曽参与に、内閣府の事務方(藤原審議官)が特区のこと、今治獣医学部設置の最新の情報を説明し漏らした可能性がある]
9/6 加計孝太郎は、豊田三郎元理事とともに大臣就任の挨拶に松野博一文科大臣を訪れた。(森ゆうこの質疑に、松野は「陳情は受けていない」と国会で答弁)
9/7 8月に内閣府特命担当大臣(地方創生・規制改革)に任命された山本幸三の元へ加計孝太郎氏が挨拶に行き陳情を行った。(森ゆうこ議員「利害関係者の加計理事長と合っていたのは、おかしい」)
9/26 午前中内閣府行政改革推進室から、「藤原審議官が直接会いたい」との内容のメールが、文科省 高等教育局 専門教育課 浅野敦行課長に送られ、午後18:30から約30分、藤原審議官と浅野課長と補佐が面談した。藤原審議官が文科省の課長、補佐に話した内容は文書化された。(のちに文書は流出する)「平成30年開校を大前提で進めてほしい」「これは官邸の最高レベルが言っていること」などの内容。(前川喜平文科省前事務次官は、記者会見(2017/5/25)で、9/9〜10/31までの間に計6回、専門教育課の課長や課長補佐らと、事務次官室で獣医学部の新設について打ち合わせをし、その際に報告レクの資料として部下が提出した文書(計8枚)のうちの一枚。)(さらに、この文書は、メールにより文科省職員10名が共有していたことが発覚した。)
9/27 安倍首相動向によると、午前中、官邸に、萩生田官房副長官、松野博一文部科学相、前川喜平文部科学事務次官が入り、話をしている。
9/28 内閣府官舎で「今治市分科会」の初会合が内閣府で開かれ、加戸守行前愛媛県知事も民間事業者(今治商工会議所特別顧問)代表として出席し、設置構想を述べた。獣医師学会「国家戦略特区会議やその下の分科会にも一切呼ばれず、直接意見を述べる機会がなかった」
9/28 前川事務次官は、専門教育課の課長や課長補佐らと、事務次官室で獣医学部の新設について打ち合わせをした。その際「獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項」との文書を示された。(前川事務次官記者会見 5/25 より)
10/2 東京・宇田川町の焼き肉店「ゆうじ」にて、安倍、昭恵夫人、加計孝太郎、高橋精一郎三井住友銀行副頭取、増岡聡一郎鉄鋼ビルディング専務らで夕食。
10/24 山本幸三内閣府特命担当大臣が安倍と面談。
10/28 内閣府は、今治市の担当者と会って、スケジュール、論点、イメージを11/9(諮問会議獣医学部設置の規制制度を改正)を前にして共有して打ち合わせた。(森ゆうこ議員/今治市行政文書から発覚) 内閣府が文科省など各省に提示した。その後 協議があって11/9に提示する最終案に至った。(国会・森ゆうこ議員/内閣府の案文を提示することと、最終案に至る経緯の説明を要求も未提示)
10/  文科省に《大臣ご確認事項に対する内閣府の回答》という文書が回った。内閣府回答=内閣府 藤原審議官によるもの。最短距離での規制改革は「総理のご意向」などと書かれ、文科省に大学設置審査を前面に立って早くやるように、という内容。(2017年5月 8枚の文書流出 )
11/1-11/末 加計学園が市有地のボーリング調査を行なった。
11/9 国家戦略特区諮問会議 において、獣医学部設置の規制制度を改正することが決定。「広域的に獣医学部が存在しない地域に限り新設を認める」 京都府京産大が、獣医学部新設を断念。八田達夫(動物実験に対する国際的規定に反する発言をした) 「獣医学部の新設は、創薬プロセス等の先端ライフサイエンス研究では、実験動物として 今まで大体ネズミが使われてきたのですけれども、本当は猿とか豚とかのほうが実際は有効なのです。これを扱うのはやはり獣医学部でなければできない。そういう必要性が非常に高まっています。そういう研究のために獣医学部が必要だと。」
11/28 加計学園が建築確認の事前協議を行なった。(ボーリング調査の件も含め、段取りが良すぎる。事前に今治獣医学部設置が決まる見通しを加計や市に知らせていたのか?)
11/28 日本獣医師会は、獣医学部規制改革に対し、今治市が提案する加計の獣医系大学の構想は、石破の定義した新設のための4条件に該当しないとする抗議文を提出しました。
12/24 東京・丸の内の鉄鋼ビルディング、南館内のエグゼクティブラウンジ、安倍晋三、高橋精一郎三井住友銀行副頭取、加計孝太郎学校法人加計学園理事長、昭恵夫人、クリスマスディナーを囲む。 
2017
1/4〜11(8日間) 内閣府・文科省、国家戦略特区今治市の獣医学部設置申請を告示し、加計学園のみが申請。
1/20 国家戦略特区諮問会議で、加計学園の獣医学部新設が認定された。
3/3 今治市の3月定例議会が3日開会し、市郊外に加計学園(岡山市)が岡山理科大獣医学部を開設するため、市有地を学園に無償譲渡する議案が賛成多数で可決された。校舎の建設費などを市が学園へ計96億円(8年分)支援する議案は全会一致で可決された。市によると、市ふれあいの丘の「新都市第2地区」にある獣医学部の建設用地約17ヘクタールを加計学園に無償譲渡する。用地は市が市土地開発公社などから約36億7500万円で買い戻した。市と学園が結んだ基本協定では、獣医学部が開設されないなどの不測の事態が起きれば土地所有権が市に戻ることが盛り込まれた。96億円の建設費補助については、「市の補助上限は64億円。残りは県の補助を得る」と説明している。この日、委員会で議案が話し合われ、議員から「生活に苦しむ市民の理解が得られていない」など、無償譲渡に対する反対意見が出た。菅良二市長は「貸与なら、自然災害で補修が必要になれば市が負担しなくてはならない。覚悟を決めて譲渡した」と述べた。
3/31 大学設置認可申請書の締切日にあたる3月31日、加計学園が今治市に対し、96億円の補助金申請をし、菅良二・同市長は即日に交付を決定。  
 
今治市 分科会

 

今治市 分科会(第1回)  
1.日時 平成28年9月21日(水)10:27〜11:25
2.場所 内閣府庁舎3階特別会議室
3.出席者
<国>
山本幸三 / 内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革)
佐々木基 / 内閣府地方創生推進事務局長

<自治体>
菅良二 / 今治市長
<民間事業者>
加戸守行 / 今治商工会議所特別顧問
<民間有識者>
八田達夫 / アジア成長研究所所長 / 大阪大学社会経済研究所招聘教授
<オブザーバー>
浅野敦行 / 文部科学省高等教育局専門教育課長
林政彦 / 農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課調査官
山下一行 / 愛媛県地域振興局長
渡部浩忠 / 越智今治農業協同組合代表理事専務
西原孝太郎 / 公益社団法人今治青年会議所理事長
<事務局>
藤原豊 / 内閣府地方創生推進事務局審議官
4.議事
(1)「今治市 分科会」運営規則(案)について
(2)認定申請を行う特定事業について
(3)追加の規制改革事項について
(4)その他
5.配布資料
資料1 「今治市 分科会」の設置について
資料2 「今治市 分科会」運営規則(案)
資料3 今治市提出資料
資料4 加戸特別顧問提出資料
参考資料1 今治市分科会 出席者名簿
参考資料2 今治市関連資料
○藤原審議官 / それでは、定刻より少し前ですが、皆様お集まりでございますので、ただいまより広島県・今治市区域会議のもとにございます、第1回「今治市 分科会」を開催させていただきます。山本担当大臣はおくれての御出席になります。出席者につきましては、お手元の参考資料の名簿がございます。こちらで、御紹介にかえさせていただきたいと思います。本日は民間有識者といたしまして、特区諮問会議の有識者でいらっしゃいます八田議員、オブザーバーといたしまして、文科省、農水省の担当の方々、愛媛県、さらに、今治市経済界より越智今治農業協同組合、今治青年会議所のお二人にも御出席いただいております。後ほどまた御紹介をさせていただきます。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。まず初めに「『今治市 分科会』の設置について」、資料1をごらんいただければと思います。今治市の分科会につきましては、本年3月に開催いたしました第1回の広島県・今治市国家戦略特別区域会議におきまして、設置が決定されたところでございます。設置の趣旨でございます。広島県と一体的に特区としては指定されていますが、今治市の固有のさまざまな問題、具体的事業がございますので、必要に応じて制度改革、実行をスピーディーに進めることが重要ということで、この分科会を設置させていただくものです。本日の議事内容にもありますけれども、区域方針に記載した規制改革事項について、議論を順次行っていくということでございます。構成員につきましては、これは区域会議と同様ですが、国、自治体、民間事業者の3者ということで構成されております。本日もそうですが、議題によってそれ以外のオブザーバーの方々にも御参画をいただくことにしております。それでは、議事に入らせていただきます。まず初めに、内閣府佐々木地方創生推進事務局長より御挨拶をさせていただきます。事務局長、よろしくお願いします。
○佐々木事務局長 / ただいま御紹介をいただきました、内閣府の地方創生推進事務局の佐々木でございます。本日は、皆様御多忙の中、また、早朝からお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。この第1回の今治市分科会を開催する運びとなりまして、開催に向けまして御協力いただきました自治体、民間事業者の皆様に、改めて感謝申し上げたいと思います。この今治市分科会につきましては、先ほど御紹介がありましたように、観光、教育、創業などの多くの分野におけるイノベーションの創出を目指しまして、区域方針に記載いたしました規制改革事項のうち、今治市固有の具体的事業につきまして、それに必要な制度改革事項を含め、今治市単独で機動的に検討を行っていくこととしているところでございます。本日は、今後認定申請を行います特定事業のほか、今治市さんからの新たな規制改革事項についての要望を議題とさせていただいております。御参加いただいております、国家戦略特区諮問会議の有識者議員の八田議員、民間事業者の皆様及び関係省庁の皆様にも忌憚のない御意見をいただきまして、本日の第1回の分科会を皮切りに、回を重ねるごとに議論が深掘りされまして、早期に区域会議につなげられるよう事務局として務めてまいりたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。
○藤原審議官 / 佐々木局長、ありがとうございました。それでは、まず議題(1)の「『今治市 分科会』運営規則(案)について」ということで、御審議をいただきます。お手元の資料2にございますが、運営規則におきましては、会議の公表など、これは特区の諮問会議あるいは特区の区域会議に準じた形で運営規則を定めさせていただいております。特段の御意見がなければ、こちらで進めさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○藤原審議官 / ありがとうございました。それでは、本運営規則を原案のとおり決定させていただきます。続きまして、議題(2)に入らせていただきます。「認定申請を行う特定事業について」ということで、御議論をいただきたいと思います。まず、資料3に基づきまして、今治市より資料の提出がございますので、菅市長より御説明をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
○菅市長 / おはようございます。今治市長の菅良二であります。本日は大変お忙しい皆様方、そして、花も嵐も踏み越えて、こうして今治市分科会を開催していただきました。心からお礼を申し上げます。ありがとうございます。早速ですが、資料3の1ページをお願いいたします。今治市では、瀬戸内しまなみ海道におけるインバウンド需要を見越して、観光産業等の新たな産業の進展と雇用の創出に取り組んでいるところでございます。資料に書かれております、うずの鼻コミュニケーションズ株式会社でございますが、しまなみサイクリングの魅力を世界に伝えようと活躍している設立3年目のスタートアップ企業でございます。こうしたスタートアップ企業の人材確保、ニーズに応えていくため、国家公務員の退職手当の特例を活用して、プロジェクトマネジメント力や戦略立案能力を有する国家公務員の確保を支援しようと考えております。また、広島県が既に設置しておりますスタートアップ人材マッチング支援センターを本市も活用して、いまばり創業応援ネットワークや広島県及び愛媛県のプロフェッショナル人材戦略拠点と連携しながら、首都圏まで含めた人材へのアプローチを図ってまいりたいと考えております。さらに、本市では、しまなみ海道で結ばれた広島県尾道市との地域連携型しまなみDMOの構築を目指しており、このDMOのプレーヤー企業となるベンチャーの人材を支援するとともに、NPO法人の設立手続の迅速化のメニューを活用してNPO法人の設立を盛んにすることで、ソーシャルビジネスの担い手としてDMOへの参画も期待しているところでございます。以上でございます。よろしくお願いします。
○藤原審議官 / ありがとうございました。ただいま、菅市長から国家公務員の退職手当の特例、これは福岡市などで既に認められているメニューでございます。それほど多くの自治体からの申請はまだない事業でございますが、大胆な御提案がございました。また(2)、これはNPO法人の設立手続の迅速化ですが、通常2カ月以上かかる計画の縦覧期間、これを2週間に短縮するという特例のメニューでございますが、こちらも幾つかの自治体で活用されております。今治市としましても、今回御活用されたいということでございます。御議論をいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。八田先生、何かコメントはございませんか。
○八田議員 / 今治市さんの特色は、大胆な提案をなさるというところにあると前から思っていましたが、今回の国家公務員の退職手当の特例もその一つです。これだけ見ると特殊な改革のように見えるかもしれないけれども、実はこれは、日本全体が進めなければならない人材の流動化の第一歩として、まず公務員と民間の間の流動化から始めようというものです。これをやってくださる意義というのは、今治だけにとどまらず全国に対してあるのではないかと思います。
○藤原審議官 / 皆さん特にございませんでしょうか。特に御意見がございませんようでしたら、こちらの2つの項目の活用につきまして、次回の区域会議で区域計画案として正式に盛り込むよう、事務的にも作業を進めてまいりたいと思っております。よろしくお願いいたします。山本大臣が御到着されました。続きまして、議題(3)の「追加の規制改革事項について」の審議をさせていただきます。御審議の参考にさせていただくために、参考資料2ですが、こちらは昨年の6月に閣議決定しております昨年の再興戦略でございます。獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討ということでございます。2ページですが、これは昨年12月に今治市を指定させていただいたときのコンセプトでございます。1枚めくっていただきますと、1月に内閣総理大臣決定しております今治市のいわゆる区域方針でございます。このあたりも御参考にしていただければと思います。それでは、まず、資料3に基づきまして、菅今治市長より御説明をよろしくお願いいたします。
○菅市長 / それでは、「追加の規制改革事項について」として、獣医師系の国際教育拠点の整備についての提案をいたしております。詳細につきましては、後ほど民間代表であります今治商工会議所の加戸特別顧問より御発言をいただきますが、獣医学教育空白地域である四国に大学獣医学部の新設を目指すものでございます。これまでの獣医学教育は犬、猫といった伴侶動物の医療と、牛、豚、鶏などの家畜衛生管理が中心となっておりますが、世界の動向は人獣共通感染症、食の安全、バイオテロ等への危機管理対応の強化が極めて重要な課題となっております。医薬品産業で世界を牽引しているアメリカにおいては、危機管理に対応できる獣医師の育成を目指して、新たに3校の獣医大学の新設が認められたところでございます。感染症の封じ込めには国際協力が必須であり、我が国においても、国際的に信頼され世界を牽引する獣医師を養成するための国際教育拠点の整備が必要であると考えております。そのためには、医療、創薬、医療機器などのライフサイエンス研究において、医学と獣医学との共同研究や連携教育を行っていくことが重要であると考え、構想の段階ではございますが、地域の教育、研究をリードしている愛媛大学との学術連携について、大橋学長を初め、医学部長や研究センターの先生方とは既に面談しており、四国の特性に通じた迅速な危機管理の知の拠点を目指してまいりたいと考えております。また、家畜の感染症制圧の初動体制は地方自治体が果たしておりますが、国際的な流れとして、ゾーニング対応が求められております。我が国では、北海道、本州、四国、九州が1次封じ込めゾーンとなり、四国ゾーンとしての機敏な初動対応と蔓延防止措置が必要でございます。本市は四国の中でも瀬戸内海の中心に位置し、気候が温暖で災害も少なく、世界有数の多島美と緑豊かな山間地域が織りなす美しい自然に恵まれ、古くから農業、畜水産業が盛んな地域であります。獣医学部が本市に新設された暁には、四国のみならず、瀬戸内しまなみ海道でつながる広島県を初め、瀬戸内海沿岸地域への危機管理対応も可能になるものと考えております。行政の支援としましては、JR今治駅の北西1.8キロメートルに所在する今治新都市に高等教育施設用地を構えるとともに、市内事業者に獣医学部卒業生の雇用を促進するための人件費相当額の奨励金の交付や、大学と地域との交流事業に対する助成、また、ライフサイエンス企業の立地を呼びかけるなど、地元定着を誘導することで地域活性化を図ってまいりたいと考えております。最後になりますが、獣医師養成系大学は定員規制により、北里大学獣医学科の新設以来、これまで50年にわたり新設されておりません。この厚く固い岩盤規制を突破するため、加戸前知事、中村知事、そして、私どもも再三にわたり、関係省庁へ要望を続けてまいりました。今回、こうして分科会におきまして関係者の皆様が一堂に会していただくことにより、獣医学部新設の早期実現につながるものと期待しております。私どもといたしましても、その実現に向けて全力を尽くす所存でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○藤原審議官 / 菅市長、ありがとうございました。続きまして、資料4に基づきまして、民間事業者代表といたしまして、今治商工会議所加戸特別顧問より御説明をお願いいたします。
○加戸特別顧問 / 加戸でございます。資料4に基づきまして、説明をさせていただきます。近年、社会経済のグローバル化の進展に伴いまして、国境を越える人や物資の交流がますます盛んになってまいりました中で、エボラ出血熱やMERSなどの人獣共通感染症が国際的に常在化、蔓延化しつつありまして、特に食料に関する国際貿易を通じた感染の危険性が大きくなってきております。そこで、私が目指すべきと考えております新設の獣医大学・学部の基本コンセプトについて説明させていただきます。2の「趣旨」のところ、1が、先端ライフサイエンス研究を行う国際教育拠点を確立することであります。近年「トランスレーショナル・メディシン」として、創薬プロセスにおいて、基礎研究と臨床研究の間に実験動物を用いた研究が重視されております。動物のみを対象にするのではなく、ヒトをゴールにした医学、薬学との連携研究の強化によりまして、加齢性疾患等に対する創薬研究や人獣共通感染症に対処できる獣医師の養成が必要であると考えております。また、「世界獣医大学ランキング・トップ50」によりますと、アジアではわずかに41位にソウル大学が入っているだけで、日本の獣医系大学はランク外の状況にあります。このことを踏まえ、新設の獣医大学・学部づくりをしていかなればならないと考えております。2でありますが、家畜・食料等を通じた感染症に関する「危機管理人材」、言うなれば水際対策のための人材の育成拠点を確立することであります。私は愛媛県の知事の時代に一番困りましたのが、鳥インフルエンザ、BSE、口蹄疫等々の四国への上陸阻止をする上で、スタッフが足りない、専門家が少ない、四国に研究機関がないといったことでありまして、何とか総動員をしながら、特に九州地区からの口蹄疫の持ち込みというものを防止したわけでありました。私どもの願いとしては、四国にも獣医学あるいは諸般の問題に対応できる研究機関、教育機関、そして、獣医師養成が必要と感じておりました。家畜の越境国際感染症は、全国に蔓延する前に、世界動物保健機関が勧告しております北海道、本州、四国、九州という、言うなれば1次封じ込めゾーン体制の確立が必要であります。特にこの問題は、アメリカでは連邦政府が奨学金を貸与したり、また、獣医大学を新設し、獣医師養成、教育に強く力点を置いて取り組んでおります。日本も遅れをとらないように、獣医行政官などの国家公務員や、特に獣医系大学の無い四国地域の地方公務員を育成して、国際連携の拠点が今治にできればと願っております。この2つの基本コンセプトによって、アジア地域全体の更なる国際貿易の拡大につながり、大きな経済効果をもたらすものと考えております。次に、3でありますが、「既存の大学・学部との関係」についてであります。既存の獣医師大学・学部では、コアカリキュラムが主でありまして、人獣共通感染症や越境国際感染症、あるいは食の安全などの新たな分野への対応は、専門教員の不足ということもありまして、十分な取り組みがなされているとは言えない状況にあります。今回構想しております新設の獣医大学・学部では、新たな分野に応えるアドバンス教育を実施するため、必要な教員数を確保することが必要であると考えております。次に、2ページの4をごらんいただきたいと思います。近年の獣医師に関する需給バランスを試算いたしましたところ、仮に獣医師の勤務年数を35年といたしますれば、現状を維持していくために必要な1年当たりの獣医師養成数は1,117人となりますが、現在入学定員数は930人でありまして、獣医師に対する需給は逼迫しております。現状を維持することが限界であり、特に人獣共通感染症や越境国際感染症などの新たな分野に関する人材の不足が見込まれると分析いたしております。なお、分布状況も、現在獣医師養成の定員の約8割が箱根の関所より東でありまして、箱根の関所を越えた西側にはわずか2割という猛烈な地域アンバランスがあるということも考慮していただければと考えてもおります。最後に、今治市あるいは愛媛県におきましては、経済界を挙げて獣医学部新設の実現を強く期待しております。以上であります。
○藤原審議官 加戸特別顧問、ありがとうございました。冒頭御紹介させていただきましたけれども、本日は今治市の関係団体の皆様にもおいでいただいております。まず、越智今治農業協同組合、渡部代表理事専務より御発言をお願いいたします。
○渡部代表理事専務 / 今治市にございます、越智今治農業協同組合の渡部でございます。よろしくお願いいたします。私どもJAは、国内最大級の農畜産物直売所、さいさいきて屋を運営しており、食と農を基軸としたさまざまな事業や協同活動に積極的な取り組みを行っています。今治市には頑張って活躍している農業者がたくさんいます。畜産を例にしますと、3年前には有限会社菊間仙高牧場が、集団経営の部門で日本農業賞の大賞を受賞しています。これは若い人たちによる地域とのつながりを持った先進的な養豚経営の取り組みが、全国的に認められたものです。また、同社の豚肉は仙高ポークのブランドとして地域に親しまれ、愛媛県総合畜産共進会の肉豚部門において、農林水産大臣賞を7度受賞しています。愛媛あかね和牛というブランドの黒毛和牛は、県が開発し、現在販路拡大を目指しているところですが、今治市には県内でも屈指の肥育農家、県を代表する期待の若手畜産農家がいます。TPPの影響や農業者の高齢化、食糧の安定供給など、多くの課題がある中、今治市において、特に若い世代の畜産農家が活躍し育ってきています。日本の食を支えていくのは彼ら若い世代ではありますが、国際的に人や動物の移動が盛んになる中、家畜の越境国際感染症が最大の脅威となっています。四国には獣医系大学がないため、食の安全確保、危機管理に対応できる獣医師が不足しています。特区に指定された今治市に獣医系大学ができることで、今治市の畜産振興が図られ、ひいては日本の食糧の安定供給と海外販路拡大に必ずつながるものと考えております。今治市に獣医学部の新設は絶対に必要です。よろしくお願いいたします。以上でございます。
○藤原審議官 / ありがとうございました。続きまして、今治青年会議所、西原理事長よりお願いいたします。
○西原理事長 / 公益社団法人今治市青年会議所、今年度理事長を務めております西原と申します。本日は発言の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。私は本業は印刷業を営みながら、地域に根差した地域の活性化事業、これを今年度は青年会議所の理事長としていろいろと展開をさせていただいておる中で、今治市はサイクリングですとか、村上海賊が日本遺産に認定される、そういった話題性がふんだんにあります。その一方で、若者中心に毎年1,000人近い人口減少が続いている、そういった若年人口の減少により、町の活力の低下が懸念されているというように感じております。まちづくりは人づくりであり、その人づくりを支える部分で、この大学創立の実現というものは、本当に我々としても願っているところでございます。地方創生が推進されている中、各種規制緩和に取り組むことで、観光、教育、創業など、多くの分野におけるイノベーションの創出が図られ、全国的にも魅力あふれる今治のブランド力にさらに磨きをかけることができると思っております。中でも、岩盤規制の打破となる獣医学部の新設は、四国の獣医師不足の解消だけでなく、国際的なライフサイエンスの拠点を目指すものであり、今治だけでなく我が国全体の成長につながると確信しております。大学立地に伴う建設投資、雇用、消費等の経済効果はもとより、大学を核にまちづくりの担い手となる若い世代を呼び込み、そのことによって、若者が力強く発信するような文化を育むことができると感じております。このことを契機にして、ふるさと今治が、若い世代の発想力や行動力で真に豊かで活力ある地域となるよう願っております。本年、今治青年会議所は創立50周年を迎え、新たな価値創造をしていく中で、この公益社団法人今治青年会議所の使命といたしましては、郷土愛を胸に高い志と使命感を持った我々青年経済人が、率先して行政、今回の待望久しい大学、そして、地域のさまざまな団体とともに連携を図り、オール今治体制で未来に輝く今治づくりに積極果敢に挑戦したいと思っております。今治新都市への獣医学部の新設が実現するよう、特段の御配慮をお願い申し上げて、私のメッセージとさせていただきます。どうもありがとうございます。
○藤原審議官 / ありがとうございました。本日は同じくオブザーバーといたしまして、国家戦略特区諮問会議有識者議員でいらっしゃいます、八田先生にもおいでいただいています。八田先生から、コメントをお願いいたします。
○八田議員 / 今、青年会議所及び農業組合が、これが地元にとっても有益な事業であるということをお話くださいました。一方、ご提案のもともとの趣旨は、加戸特別顧問が御説明になりました。そのときに用いられた資料4のお話というのは、実に説得的だったと思います。物事を提案するときにはこうしなければいけないというモデルのようなものでした。まず、現在ではライフサイエンス研究において、獣医学部というものが人間の医学に関しても非常に役に立つという新しい状況になった。しかし、それにもかかわらず日本の獣医学部は国際水準に到達していないので、その研究水準を高める必要がある。もう一つは、地元の感染症に関する危機管理の人材を育てる必要もある。西日本ではこの人材の要請が極端に不足しているのだから、西日本でこういうことをやらなければいけない。これは非の打ちどころのない御説明だったと思います。私はこれはぜひ推進していくべきだと思っております。
○藤原審議官 / ありがとうございました。きょうは愛媛県からも地域振興局長の山下様がおいででございますが、一言よろしいでしょうか。
○山下局長 / 愛媛県の地域振興局長をしておる山下でございます。今、御議論のございました追加の規制改革事業に関しまして、一言申し述べたいと思います。愛媛県といたしましては、獣医師養成系大学の新設につきまして、今治市と共同で、平成19年から構造改革特区の提案を行い、機会があるごとに知事からも文部科学省さんに対し、要望を重ねてきたところでございます。今回の要望が実現しますと、獣医師の安定確保はもとより、本県が進めております畜水産物のブランド化による畜産・水産振興や、家畜伝染病に対する危機管理体制の構築にも大きく寄与するとともに、高校生の地元進学に加え、県内外からの人の流れが生み出され、地域の活性化や人口減少の抑制にもつながるものと期待しておりまして、他の規制改革メニューも活用しながら、本県ならではの地方創生が実現するよう、県としても今治市の取り組みを支援してまいりたいと考えております。よろしくお願いします。
○藤原審議官 / ありがとうございました。本日は、関係省庁の文科省、農水省からも御出席をいただいております。一言ずつコメントを頂戴できればと思います。まず、文科省からお願いいたします。
○浅野課長 / 文部科学省の専門教育課長の浅野でございます。文部科学省としましては、日本再興戦略改訂2015、先ほど藤原審議官から参考資料2に基づいて御説明いただいた要件について、きちんと満たされるということを確認することが重要だと考えております。今後とも、農水省や厚労省とも連携をしていきたいと思っております。
○藤原審議官 / ありがとうございました。それでは、農水省よりお願いします。
○林調査官 / 農水省の林でございます。農水省としましては、獣医学部の新設は、皆さん御承知のとおりでございますけれども、学校教育法に基づく文科省の告示により規制されているという中で、引き続き獣医師の需給に関する情報等を収集・整理して、必要に応じて文科省等に提供させていただきながら対応してまいりたいと考えております。今後ともよろしくお願い申し上げます。
○藤原審議官 / ありがとうございました。本日は都合により御欠席でございますが、お話にもあったように厚生労働省とも非常に密接に関係している分野だと思いますので、よく連携を図っていきたいと思っております。一通り皆様より御意見を頂戴したわけでございますが、御質問、御意見、特にございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、忌憚のない御意見をいただき、ありがとうございました。この議題(3)追加の規制改革事項につきましては、さらに論点あるいは検討課題を詰めまして、関係省庁とともに次回分科会までに、さらに検討を進めてまいりたいと思います。以上で議事は全て終了いたしました。最後に、山本担当大臣より御発言をいただきますが、ここでプレスを入室させますので、少々お待ちください。
(プレス入室)
○藤原審議官 / それでは、山本大臣、よろしくお願いします。
○山本大臣 / 本日、第1回今治市分科会が、民間事業者、有識者の先生、オブザーバーを含む多くの参加者のもとで開催され、活発な議論を行うことができました。大変有意義な会となったと思います。今治市より御提案された国家公務員の退職手当の特例、NPO法人の設立要件の迅速化の活用については、早速次回の区域会議において実現を図りたいと思います。その他の特例についてもぜひ御検討いただき、積極的に活用していただきたいと思います。また、追加の規制改革事項として提案いただいた獣医師養成系大学・学部の新設については、昨年6月30日に閣議決定された日本再興戦略改訂2015において既存の大学・学部では対応が困難な場合などの要件を前提に検討を行うこととされているところであります。本日、加戸特別顧問よりこれらの要件に対して御発言をいただいたことは、今後の議論を円滑に進める上で大いに参考になったものと思います。獣医学部の新設は、ライフサイエンス分野など獣医師が新たに対応すべき分野がある中、50年の長きにわたりなされておりません。本日、今治市より地元のJAやJCの方々も御出席され、力強いメッセージをいただいたところであります。この獣医学部の新設は地方創生にとっても重要なプロジェクトだろうと改めて認識した次第であります。今月9日に開催された特区諮問会議において、諮問会議有識者議員の先生方から提出された資料においても、残された岩盤規制の中、重点6分野の中のセンターピン・プロジェクトとされているところでもございます。
この分科会において議論を重ねて、早期の規制改革の実現にぜひともつなげていきたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いします。
○藤原審議官 / 山本大臣、ありがとうございました。それでは、プレスの方々、退室をお願いいたします。
(プレス退室)
○藤原審議官 / では、ちょうど時間になりましたので、第1回「今治市 分科会」を終了させていただきます。次回の日程につきましては、事務局より後日御連絡を申し上げたいと思います。本日はどうもありがとうございました。 
今治市 分科会(第2回)  

 

1 日時 平成29年1月12日(木)8:54〜9:40
2 場所 永田町合同庁舎 第1共用会議室
3 出席
<国>
佐々木基 / 内閣府地方創生推進事務局長
<自治体>
菅良二 / 今治市長
<民間事業者>
加戸守行 / 今治商工会議所特別顧問
<民間有識者>
阿曽沼元博 / 医療法人社団滉志会瀬田クリニックグループ代表
原英史 / 株式会社政策工房代表取締役社長
八代尚宏 / 昭和女子大学グローバルビジネス学部特命教授
植田富貴子 / 日本獣医生命科学大学獣医学部教授
猪熊壽 / 帯広畜産大学畜産学部教授
<オブザーバー>
常盤豊 / 文部科学省高等教育局長
今城健晴 / 農林水産省消費・安全局長
山下一行 / 愛媛県地域振興局長
<構成員候補>
柳澤康信 / 学校法人加計学園岡山理科大学長
吉川泰弘 / 学校法人加計学園新学部設置準備室長
渡邉良人 / 学校法人加計学園常務理事・法人本部事務局長

<事務局>
藤原豊 / 内閣府地方創生推進事務局審議官
(議事次第)
1 開会
2 議事
(1)認定申請を行う特定事業について
(2)その他
3 閉会
○藤原審議官 / それでは、ちょっと時間は早いのでございますけれども、皆様お集まりでいらっしゃいますので、ただいまより、区域会議のもとにございます「今治市分科会」の第2回目の会合を開催させていただきます。出席者につきましては、参考資料1という資料に一覧になってございます。御紹介にかえさせていただければと思います。それでは、議事に入らせていただきます。初めに、私ども地方創生推進事務局の佐々木事務局長より御挨拶をさせていただきます。よろしくお願いします。
○佐々木事務局長 / 皆様、おはようございます。早朝からお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。本日、第2回の今治市分科会ということでございまして、開催に向けましてこれまで御協力いただきました、自治体、民間事業者の皆様に心より感謝申し上げます。本日は、認定申請を行います事業の一つとして、道の駅設置者の民間拡大がございます。こちらは、今治市が特区指定される際に御提案いただいたものでございまして、昨日、11日に規制改革メニューとなりましたので、認定されれば初めての活用ということになります。また、先週の4日でございますが、獣医学部の新設を可能とする告示が改正されました。こちらも今治市さんからかねてより御提案されているものでございまして、早速、構成員を公募いたしましたので、本日はその結果について御審議いただくことになります。御参加いただいております、国家戦略特区ワーキンググループの阿曽沼委員、原委員、八代委員、民間事業者の皆様、及び関係省庁の皆様にも忌憚のない御意見をいただきまして、次回の区域会議につなげていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○藤原審議官 / ありがとうございました。それでは、議題(1)の「認定申請を行う特定事業について」、御審議をいただきたいと思います。まず、資料1に基づきまして、菅今治市長より御説明をお願いいたします。
○菅市長 / 今治市長の菅良二です。本日は、今治市分科会を開催していただき、心から御礼申し上げます。ありがとうございます。早速ですが、資料1の1ページをお願いいたします。道の駅設置者民間拡大事業についてでございます。本市では、「サイクリストの聖地」、しまなみ海道におけるインバウンド需要を見越して、観光産業の進展に取り組んでいるところでございます。当事業は、しまなみ海道沿線の道の駅の運営を行おうとする民間事業者と今治市との協定の締結を前提に、道の駅の設置主体を民間事業者に拡大しようとするもので、国内初の取り組みであります。民間事業者には、「サイクリストの聖地」化に寄与する大規模投資、また、修学旅行生や外国人観光客をターゲットにした営業展開、さらには昨年日本遺産の認定をいただきました村上海賊関係施設の充実など、より良質なサービスの提供と一層の地域活性化を期待するものでございます。続きまして、資料の2ページをお願いいたします。獣医師の養成に係る大学設置事業についてでございます。内閣府と文部科学省におかれましては、これまで50年にわたり認められていなかった厚くかたい岩盤規制の突破につながる特例措置を告示制定いただき、厚く感謝申し上げます。かねてより獣医学教育空白地域である四国に獣医学部の新設を訴えてまいりましたが、いよいよ実現に近づいたものと感じております。本市に獣医学部が開設した暁には、愛媛大学はもとより、本市は四国の中でも瀬戸内海の中心に位置し、2時間圏内には、広島大学、岡山大学、岡山理科大学等が立地しており、四国のみならず学術連携を進めるとともに、瀬戸内海沿岸地域への感染症対策など、危機管理の学術支援拠点が形成されるものと考えております。また、市内には業務用たれの製造が国内一の食品製造会社があり、健康食品、機能性補助食品などの分野において獣医師の知見による強化が期待されるとともに、愛媛県の試験研究機関、愛媛県繊維産業技術センターと獣医学の連携により、今治タオルの繊維技術を活用した産業資材分野の展開、さらなる海外展開の拡大も期待しております。あわせてライフサイエンス企業の立地を呼びかけるなど、卒業生の地元定着を誘導することで、一層の地域活性化を図ってまいりたいと考えております。最後になりますが、平成30年4月の開設に向けて全力を尽くす所存でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。
○藤原審議官 / 菅市長、ありがとうございました。続きまして、今治商工会議所の加戸特別顧問、補足の説明等がございましたら、よろしくお願いいたします。
○加戸特別顧問 / 今治市の経済界を代表して出席させていただいておりますけれども、長らく教育行政に携わってきた者の一人として、所感を申し述べたいと思います。18歳人口が減少する時代におきまして、大学経営が一層厳しさを増します中で、これらの大学には現在の教育に力点を置くのではなく、教育の特色や個性に鑑みまして、我々は常に存在価値を発揮することが重要でございます。私が目指すべきと考えております新設獣医学部の基本コンセプトといたしまして、1つ目に、世界に冠たる先端ライフサイエンス研究を行う国際教育拠点を確立すること。2つ目に、家畜・食料等を通じた感染症に関する危機管理、水際対策人材の育成拠点を確立することを掲げております。今回、応募のありました学校法人の事業概要を拝見いたしますと、私の基本コンセプトが存分に盛り込まれておりまして、獣医師が取り組むべき新たな分野へ果敢に挑戦しようという意欲が強くうかがわれます。獣医学部の新設の実現によりまして、アジア地域全体のさらなる国際貿易の拡大につながり、愛媛今治を拠点に、大きな経済効果をもたらすものと、地元経済界を挙げて強く期待し、応援してまいります。以上でございます。
○藤原審議官 / 加戸特別顧問、ありがとうございました。申しおくれましたが、参考資料2の2ページ、3ページに、前回昨年9月21日の1回目の分科会において、特別顧問から提出いただきました資料を本日も添付させていただいております。それでは、事務局から御説明させていただきます。資料が飛んで恐縮ですが、まず、参考資料3にございます道の駅の設置者民間拡大という項目について、昨日11日に関係の要綱を制定させていただきました。早速、その規制改革メニューを今回初めて活用することになるわけでございます。道の駅は、御承知のとおり、市が設置主体になっているわけでございますけれども、民間事業者もなれるように特に特区ではしていこうということで、国交省と協議が調いまして、昨日、こういった要綱の発出になったわけでございます。基本的には、協定を市と民間事業者で締結いただきまして、道の駅の設置者を民間事業者とするということなのですが、新設した場合のみならず、今も登録済みの施設、今ある既存の施設も民間に開放できるような形にしております。ただ、要件がございまして、1つは建てかえや移設を伴うという、かなり大幅なリニューアルを伴う場合。ただ、そういう場合でなくても、同一市の中で、例えば、道の駅を一括して、今、今治市は3カ所ぐらいを一括してとお聞きしていますが、そういった場合にも対応できる形にしております。2つ目の項目でございます。獣医学部の新設について、若干議論の経緯を御説明しますが、資料2を御覧になっていただければと思います。2つ目の○が獣医学部の関係でございます。これは昨年11月9日の特区諮問会議におきまして、こういった先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策など、新たなニーズに対応する獣医学部の設置というもので取りまとめさせていただきました。諮問会議は総理が議長でございますけれども、文科大臣、農水大臣にもおいでいただきまして、その場でこの文章がまとまったわけでございます。これに基づきまして、資料3でございますが、11月18日から12月17日まで1カ月間、この獣医学部の新設を実現するための告示案の概要につきまして、広くこれの意見募集をさせていただいたところでございます。資料3の別紙にございますが、この結果、976件という多数の御意見を頂戴しまして、主な賛成意見、反対意見、あるいは中立的な意見に対する考え方をまとめさせていただきまして、既に1月4日の段階で、ホームページにお示しさせていただいているところでございます。こういったパブリックコメントを受けまして、3府省で慎重に協議をさせていただいて、最終的には文科省と私どもの共同の告示になりますけれども、先週の4日、資料4の告示を制定させていただきまして、特区法に基づきます新たな規制改革のメニューとさせていただいた次第です。また、1月4日、同日付で特区法第7条第2項に基づきまして、資料5にございます公募要項によりまして、特定事業を実施すると見込まれる者、いわゆる構成員の公募の手続を開始させていただきました。その後、期限となります昨日までに、1件、学校法人加計学園からの応募がございまして、その応募内容が資料6になってございます。本日は、構成員の候補ということで、かねてからの提案者でもあります加計学園に御出席いただいております。本資料の御説明を、早速、お願いできればと思っております。加計学園様、よろしくお願いいたします。
○柳澤学長 / 加計学園岡山理科大学長の柳澤でございます。本日は、今治市分科会に出席させていただきまして、ありがとうございます。岡山理科大学は、昭和39年に1学部2学科で岡山市内に開設しました。平成26年に50周年を迎え、現在、5学部、学生数約6,000人を擁する大学として着実に発展し、これまで卒業生を約4万6,000人輩出しております。今回、獣医師養成に関して空白地帯である四国の今治市に、本学の新たな学部として平成30年4月に新しいタイプの獣医学部を設置したいと考えております。この獣医学部では、先ほどありましたように、人獣共通感染症を初め、家畜・食料等を通じた感染症の発生が国際的に拡大する中、創薬プロセスにおける多様な実験動物を用いた先端ライフサイエンス研究の推進や、地域での感染症に係る水際対策など、獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的需要に対応することのできる獣医師の養成を目指します。なお、教員組織、事務組織、及び施設設備については、仮に特区で認められれば、3月申請に向けて準備を進めてまいりたいと考えております。計画の内容については、私どもが提出した資料6に基づいて、その要点を吉川から説明させていただきます。
○吉川室長 / 吉川でございます。概要ということで、詳しくは資料6に書かれていますけれども、今回、獣医学部で大きく目指す点は、先ほど言われたように、戦略特区のミッションであるライフサイエンス、創薬等の基盤を支えるライフサイエンスの研究者は、ニーズが高いにもかかわらず、なかなか獣医分野から育てられないということもあって、そこを充実させることと、今、学長から言われましたように、国際的に見ても、感染症、人獣共通感染症、その生産物である食料の安定供給、安全性ということが、近年、新しい獣医の分野として国際的にも国内的にもその責務を果たすことが要求され、その人材の育成を求められています。パワーポイントの後ろのほう、12ページを見ていただきたいと思います。私自身も文科省の獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議の座長をやったり、ワーキンググループの委員長をやったり、いろいろな格好で獣医教育の改善に取り組んできたのですけれども、今回つくる学部の大きな特徴としては、全国均一に必要とされている獣医師の学生の質保証という形で、コア・カリキュラムを新しく51科目19実習をつくって実施してもらっているのですけれども、その際、4年くらいで終了させた上で、5年、6年、各大学の特徴を出せるようなアドバンスト教育を組んでくれということを要求して、この5年間動いてきているわけですけれども、資料で見るように、比較してみると、なかなかコア・カリキュラムを全うするところがいっぱいいっぱいというか、結構大変で、なかなか独自のアドバンストを組み立てることができていません。新しい学部としては、12ページにあるように、コア・カリキュラムの上に、5年、6年の2年間、アドバンストの選択科目を3つの分野にわたってつくることを考えたカリキュラムを予定しております。1つがライフサイエンスの科目、2番目が国際獣医事科目、3番目が臨床獣医科目という形で、ライフサイエンス科目については、コアカリで学んだ上に、そこの13ページにありますように、例えば「トランスレーショナル・リサーチ」とか、あるいは「国際ライフサイエンス産業政策論」といった、今まで獣医学教育で取り組まれてこなかったような科目を導入して、その道の専門家を教員として招聘して、残りの2年間、その分野に行く獣医についてスキルアップする。同じように、14ページにありますように、国際獣医事分野では、行政経験、海外の国際機関で働いた経験、あるいは海外のいろいろなJICAを含めて途上国の経験を持ったような先生方を集めて、そこにある「国際獣医事概論」、「国際動物関連法規」、「動物危機管理学」、「セキュリティー学」、「レギュラトリー科学」という新しい分野の教育を2年間の選択で10科目ぐらい計画しております。臨床についても、感染症コントロールの医獣連携は言われているのですけれども、近年の伴侶動物の高齢化を考えて、人の疾病も動物の疾病も非常に共通することが多いということで、基礎研究はトランスレーショナル研究ですけれども、こちらは「トランスレーショナル・メディシン」という形で、医学部、薬学部と連携して、新しい老人病を含めたいろいろな疾病、慢性疾患の治療薬あるいは診断系を協力して開発していこうという目的で科目を組んでいるところが新しいところです。大体分野としては、1対1対1くらいの比率で学生を育てて、特に社会ニーズで足りないと言われている公衆衛生分野あるいはライフサイエンス分野の卒業生を送り込んで、できれば長期的に問題になっている職域偏在を解消していきたいというのが、概要、特徴と、一言で言えばそういうことになるかと思います。
○柳澤学長 / 以上です。
○藤原審議官 / ありがとうございました。それでは、民間有識者ほかの方から御意見を頂戴いたしたいと思います。今、提案者でもございます加計学園からもお話がございましたけれども、これに対する質問も含めてお願いできればと思います。まずは、特区ワーキンググループの委員の方々からお話を頂戴できればと思います。阿曽沼先生からよろしいでしょうか。
○阿曽沼委員 / 質問というよりも、私の意見についてお話し申し上げたいと思います。12ページで、吉川先生に御説明いただきましたライフサイエンス科目、国際獣医事科目、臨床獣医科目等は非常に重要なテーマということで、これらをアドバンスト科目として重点を置かれるとのことですが、大変すばらしい試みだと思います。特に私は再生医療の分野に関わっておりますが、日本では、再生医療分野を世界に冠たるものとして、その活性化を後押しするということで、新たな法律体系ができて2年になります。本邦の再生医療分野の臨床研究の促進のためには、特に前臨床、非臨床試験の重要性が大きく叫ばれております。特に中大型の実験動物の開発や、管理育成は非常に重要な要素となります。その為の人材は現在明らかに不足しておりますので、6年後ではありますけれども、これに寄与できる有能な人材の輩出をぜひお願いしたいと思います。また、国際獣医事では、感染症に関する国際協調とか国際的な公衆衛生のハーモナイゼーションが非常に重要であると認識しております。この分野でも日本がアジアにおいてトップリーダーになっていくことが求められていると思います。これらの教育機会をふやすことによって、国内外の皆さんの関心を集めていくことも重要なのではないかと思います。3に関してでは、ペットのお話もございましたけれども、ペットの高齢化に伴って疾病構造が明らかに変化しておりますし、人間と同様の生活習慣病とか慢性疾患が拡大して、治療選択ですとか診断技術に関しても選択の幅が非常に広くなってきていると思っております。この点では医学部との連携、共通カリキュラム化みたいなものも非常に重要になっていると思いますので、特にこのアドバンスト科目の充実を図られることに関しては、非常に期待しているところでございます。以上、意見を申し述べさせていただきました。
○藤原審議官 / ありがとうございました。八代委員、お願いします。
○八代委員 / 今、阿曽沼委員がおっしゃったのと同じですけれども、こういう感染症とか、あるいは実験動物の必要性は急速に高まっているわけで、既存の医学部では対応できない分野について、この新しい獣医学部がまさに世界をリードするような研究をされることは非常に意義があるものだと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
○藤原審議官 / ありがとうございました。原委員は、よろしいですか。
○原委員 / はい。
○藤原審議官 / それでは、日本獣医生命科学大学の植田教授、お願いできますでしょうか。
○植田教授 / 私も今のアドバンスト教育の充実は、すごく目立っていいと思うのですけれども、1点だけ教えていただきたいのですが、5年、6年でこのアドバンスト科目をやることになりますと、1年から4年まででコア・カリキュラムを全部終わらせてしまってということになるわけですね。そうしますと、国家試験の問題なのですけれども、コア・カリキュラムの部分がかなり出されてくると思うのですが、それについては学生さんにどのように対応するのかということは決められているのでしょうか。
○吉川室長 / 実際にカリキュラムとして組んでいるのは、実はこれクオーター制で組んでいます。1年を4分割して、1年の一番最初のカリキュラムのときからキャリア教育の導入という形で獣医師の職域の全分野について学生たちに紹介して、その後、できれば実際に働いている場を見せて体験させてスタートするところから始めて、4分割で全てを組みました。4年の最後、第4学期で終えて、5年の頭のところでCBTとOSCEをやって、その後、6週間、ローテーションで全分野を、大学の病院から含めて牧場とか、いろいろなところを回って終えるという形でカリキュラムを組んで間に合うということです。それを可能とするために70人という専門教官を集める予定です。専門の少ないところで幾つかかけ持ちで教えているとなかなか効率がうまくいかないところがあるのですけれども、70人総動員で組んでみれば、4年の4学期で一応全て終わるという形です。その後、アドバンストを足していくけれども、例えば、国際獣医に行く学生が基礎のライフサイエンスの講義を選択でとれないわけではありません。各自スキルアップをしていくと思うし、十分それで国家試験には通る学生を集めたいと思っています。
○植田教授 / ありがとうございます。
○藤原審議官 / 続きまして、帯広畜産大学、猪熊教授、お願いいたします。
○猪熊教授 / 帯広畜産大学の猪熊と申します。私は、臨床獣医学教育ということで、コアカリの作成だとか、あるいは産業動物の参加型臨床実習とか、そういった実践をしている立場から聞かせていただいて、日ごろのコアカリをこなす参加型臨床実習の施策でひいひい言っているものですから、吉川先生がおっしゃったような充実したアドバンスト科目はとても魅力的です。すばらしいと思います。ただ、それをいかにしていくかというところが今後の課題だと思います。もう一つ、今日の御説明にはなかったけれども、この資料を拝見したところで、現在の獣医師に関する問題の一つで、獣医師の偏在の問題、ライフサイエンス、あるいは公共獣医師といったところに人が行かないというところ、そういったところに対しても幾つかの特徴的な提案があったと理解しました。一つ、教育体系なのですけれども、例えば、1年生のときから獣医師のいろいろな職域について教える、体験させるという取り組みがありましたけれども、これはとても特徴的で魅力的だと思います。大体高校生とかは獣医師というと動物のお医者さんしか頭にないのです。そういう人たちをいかにして産業動物だとか公衆衛生だとかそういったものに導いていくかというところが一番大事なところで、これは低学年のときから、できたら高校生のうちからやったらいいと思うぐらいなのですけれども、そういった入り口の段階から体験できるプログラムは非常にいいと思います。具体的なところがまだ書かれていなかったようなので、これはどのようにしてどういうところを体験させるのかとか、必須科目ということになると、160人という学生さんをどうやっていろいろなところに体験させるのかというのは、気になるところはございます。私は参加型臨床実習でひいひい言っているものですから、参加型臨床実習というところはとても気になったのですけれども、5年生以降の参加型臨床実習は体験型の実習ではないのですね。必ず診療に携わっていかなければいけないということで、大人数でできないということでとても手間のかかるものです。時間もかかります。160人を10人ずつ班に分けても16班になりますし、そういう方たちを、今回は資料には愛媛農済、馬の牧場などと書いてありますけれども、具体的にどういうところに参加型臨床実習をさせるのかというのはとても気になります。特に農済です。私ども帯広畜産大学は、牛が40万頭いて、獣医師が200人いるところにいても、地元の農済さんに参加型臨床実習をお願いできなかった経緯がありますので、この辺を具体的に、現場の先生方と獣医師といかに協力関係をつくるか、今後、その辺の具体的なところを考えないといけないのだろうと思います。愛媛県だけではなくて、オール四国とか、中・四国だとか、そういった観点が必要なのかなという気がします。今、獣医学で問題になっているのは、感染症というお話が今までも出てきましたけれども、実際の獣医学教育で、豚、鶏は実習ができなくて困っているのです。その辺をいかにしていくのか。実際、地元の農家さんあるいは農業団体の方、そういった方の協力も必ずないといけないと思います。もう一つ、地域偏在ということで入り口出口の問題で気になったことがあるので、一気にコメントさせていただきますけれども、地域への貢献、ローカルとグローバルという2つの観点があって、ローカルのほうは獣医の大学がない四国に対して貢献するということで、地域入学枠とか、考えることがあると思うのですけれども、具体的にどういう対策をとるのかということ、入学・授業料を下げるだとか、いろいろなことがあるのだと思うのですけれども、その辺が明確ではなかったということ。さらには出口対策として、例えば、年間30人とかを地域枠でとった場合に、その出口として、果たして四国だけで30人がはけるのかというところは気になるところもございますし、ライフサイエンス、公務員獣医師、産業動物獣医師、そういったところの出口も気になります。ローカルと同時にグローバルというお話もあったのですけれども、その中で、グローバルは非常に魅力的なキーワードではあるのですけれども、出口はどういうところを考えられるのかというところです。就職先、そういったところも気になるという気がいたしました。以上、コメントです。
○藤原審議官 / 何点か御関心のところがございますけれども、お答えできる範囲でお願いできますでしょうか。
○吉川室長 / 指摘をありがとうございました。我々もカリキュラムをつくっていく中で、猪熊先生のおっしゃった点は、組みながらなかなか難しいということを感じながらやっています。同時に、仮に認定されれば、農済を含めて、市、県、あるいは四国だけではなくて瀬戸内海を挟んで広島、岡山、そっちとも交渉をしていかなければならないのですけれども、できれば、農済みたいなものは県と包括協定みたいな形で大きくかけておいて、その上で少しずつこういう人材育成の必要性とそれへの協力を要請していくことを考えております。1年生の導入教育に関しては、個別で行くのではなくて、グループに分けて大体7カ所か8カ所くらいを一応予定しているのですけれども、そこに行って学んできたことをそれぞれグループで発表して、予定としては夏休みを使う形になると思います。自分たちの見てきたことをパワーポイントなり何なりで発表して、ディスカッションをしながら情報共有をしていくということを、一応シラバスとしては考えております。参加型実習については、これは難問で、来られる臨床の先生と何度も書き上げながら、大体規模としては10人から十数人の形で、出口としては12人から14人くらいのグループに分けて6週間をずっとローテーションで回していく形でプログラムを組んでいって、認定されれば、その後交渉していく形になるけれども、今まで獣医学部がなかったので、農済の先生たちも今のところはどちらかというと好意的ですけれども、実際のカリキュラムが明らかになってシラバスの内容が出てきたときに、かなり詰めていかないとならないとは思っております。出口に関しては、今の3万9,000人の活動獣医師の分布先と新卒の学生の供給先を見ると、現状を維持するだけでも、公衆衛生分野については140人くらいを必要としています。実際に新規で行く人が80人弱ということなので、多分長期にわたってそこには供給していかないと、このままの形ではそこの分野は大変なことになる。今も、大変なことになりつつあると思います。創薬、製薬企業についても、大体年間40人くらいの補充をしていかないと、今の創薬系で働いている獣医のポストを維持できないのですけれども、実際には、卒業生の正確な分類が出てこないので、どの程度が行っているかわからないのですけれども、少なくともAMEDを含めて創薬のトップからは、動物の扱える獣医が欲しいといわれています。先ほど阿曽沼先生から前臨床の問題が出ましたけれども、安全性試験の非臨床、前臨床と同時に、最初の薬効のところでも必要です。多くはモデルの動物とか細胞で調べて開発に入っていくので、ヒトの第2相のところでかなりの製薬の候補がドロップアウトしてしまうので、ワンメディシンという考えを出したのはむしろ自然発症の動物、ヒトと同じところを最初に検索しようではないかという考えなので、恐らくそういうところのスキルを上げた獣医は、多分そのまま創薬の安全性ではなくてディベロップメントに行けるのではないかと考えています。いずれにせよ、ニーズというよりも現状を是正しながら維持するためにはそのくらいの生徒を育てて送り込まないといけないというのが私の考えで、このまま放っておくと、本当にそこの部分は獣医がいなくなってしまうという問題を意識して、このアドバンストを組んだということです。
○猪熊教授 / ありがとうございます。
○藤原審議官 / とりあえずはよろしいでしょうか。続きまして、本日は関係各省にも御出席いただいております。まず、文部科学省常盤局長、よろしくお願いいたします。
○常盤局長 / 今、いろいろな意見交換がございましたので、文部科学省の立場から申しますと、大学の設置認可を担当している立場でございますので、今日のこのプロセスを通じて、構成員として選定された場合には、今後、その構想に沿った形で設置認可申請をしていただくことが必要になりますので、法令にのっとって適切に準備を進めていただく必要があると考えておりますので、その点はぜひお含みおきいただきたいと思っております。
○藤原審議官 / ありがとうございます。続きまして、農林水産省今城局長、お願いいたします。
○今城局長 / 実際の獣医師の現場での状況と、今回の学部の新設という問題、ストレートに関係しないのですけれども、先ほど来出ている地域での偏在というお話が実際の行政として私どもの抱えている悩みというところもございますので、そういうことに役立つ形というもので対応していただければという希望でございます。直接は関係しませんけれども、以上でございます。
○藤原審議官 / ありがとうございました。続きまして、県にもおいでいただいておりますが、愛媛県の地域振興局長、山下局長、お願いいたします。
○山下局長 / 県の担当局長でございます。今回の今治市の獣医師養成系大学の設置につきましては、本県は今治市と共同で平成19年から構造改革特区の提案を行いまして、機会があるごとに文部科学大臣さんとかに要望させていただいたところが経緯でございます。今回、国家戦略特区制度を活用した獣医学部の新設が実現いたしましたら、獣医師の安定確保はもとより、本県が進めております畜水産物のブランド化による畜産・水産振興や家畜伝染病に対する危機管理体制の構築にも大きく寄与すると考えておりまして、また、高校生の地元進学、県内外からの新たな人の流れが生み出されるということで、地域活力の創出や人口減少の抑制等にもつながると大いに期待しておるところでございます。今回の獣医学部新設となりましては、本県といたしましては、あらゆる力を集めまして、いろいろな面からの後押しという形で取り組みを進めてまいりたいと考えております。
○藤原審議官 / ありがとうございました。一通り皆様の御意見を頂戴したわけでございますけれども、市長、加戸顧問を含め、有識者の方々、何かございますでしょうか。
○八代委員 / 追加ですが、先ほど文科省から今後構想に沿った形で審査していくというお話があったわけですが、何分今回の提案は極めて特色があって、かつ、公共性の非常に高い大学であるという点で、ぜひ積極的な審査をお願いしたいと考えております。よろしくお願いいたします。
○藤原審議官 / 何かほかにございますか。道の駅の件も含めて、御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、御意見がないようでございますので、ただいま各方面からいただきました御意見を踏まえまして、本日の分科会の結論といたしまして、獣医学部の新設につきましては、学校法人加計学園を構成員として認めて、特定事業の実施主体として区域計画案に位置づけるとともに、また道の駅設置者の民間拡大を含めて、この2つの事業につきまして、次回の区域会議において区域計画案の審議を行うことにいたしたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○藤原審議官 / ありがとうございました。それでは、特にこの獣医学部の新設につきましては、特区法8条3項に基づきまして、本日付で事業を実施しようとする者として加計学園を公表させていただくとともに、同条第4項にございます追加の申し出の受け付けも開始させていただきたいと思います。仮に追加の申し出が別の事業者からございました場合には、本日の関係府省、文科省、農水省とともに、早急に対応を検討させていただきたいと思います。また、この後、本日の会議の結果につきましてブリーフィングをさせていただきます。御了解いただければと思っております。少し時間は早いのでございますが、特に御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、第2回「今治市分科会」を終了させていただきます。早朝から、本日はどうもありがとうございました。  
 
加計学園疑惑

 

岡山県に本拠を置く加計学園グループ。複数の大学、幼稚園、保育園、小中高、専門学校など様々な教育事業を配下に収める一大教育グループで、現理事長の加計孝太郎氏は、安倍首相の30年来の親友だ。
首相は加計氏のことを「どんな時も心の奥でつながっている友人、腹心の友だ」と、昭恵夫人は加計学園が運営する認可外保育施設の「名誉園長」を務めていた。
親友が経営する大学を、政府が国家戦略特区に定めて規制緩和。本来、認可されるはずのない新学部の設置を認め、約37億円の市有地がこの大学に無償譲渡されることになった。
経緯
加計学園はもともと、10年前から今治市に岡山理科大獣医学部キャンパスの新設を申請していたのだが、文科省は獣医師の質の確保を理由に獣医師養成学部・学科の入学定員を制限しており、今治市による獣医学部誘致のための構造改革特区申請を15回もはねつけてきた。ところが、第二次安倍政権が発足すると一転、首相は2015年12月、今治市を全国10番目の国家戦略特区にすると決め、16年11月には獣医学部の新設に向けた制度見直しを表明するなど、開校に向けた制度設計を急激に進めた。
今年1月4日、国が今治市と広島県の国家戦略特区で獣医師養成学部の新設を認める特例措置を告示、公募を開始した。募集期間は僅か1週間。案の定、応募したのは加計学園だけ。首相を議長とする国家戦略特区諮問会議は、1月20日、同学園を事業者として認可し、今治市はこれを受け、市有地約17万m2(約37億円)を加計学園に無償譲渡することを決定した。
周辺
首相の側近的役割を務めた官僚の加計学園天下り。
行政による隠蔽疑惑。[「(文部科学省)国家戦略特区等提案検討要請回答」、その内容及び省庁の回答などすべて「非公表」とされている。]
感想
直接的な金銭授受はなくとも、経緯の本質は「収賄」「あっせん収賄」と同じ。
官邸は「事実ではない」と根拠も示さず切り抜けようとしている。政権が事実認定する、「政権が言うことが事実であり、正しい」というやり方は、大昔の独裁政治の論法では。
前川発言の背景
2014年発足の内閣人事局が、霞が関の幹部人事権の全てを握るようになり、全省庁が完全屈服の状態になった。  
加計学園「獣医特区」は妥当? 農水省、需要減指摘 6/4
学校法人「加計学園」が国家戦略特区で新設を計画する獣医学部を巡り、実は獣医師を所管する農林水産省が、特区の協議で獣医療の需要が低下する可能性を繰り返し指摘していた。実際、ペット数が急減しているとの統計もある。獣医学部特区の認定で獣医師の需給予測は十分に検討されたのか。
ペットは減少傾向? 高齢犬合計数の推移
農水省によると、獣医師資格保有者は全国約3万9000人で、内訳は(1)犬猫などのペット獣医約1万5200人(2)牛などの産業動物獣医約4300人(3)食肉検査などを行う公務員獣医約9500人。残りは製薬企業勤務や研究職など(2014年12月時点)。
獣医業界の複数の関係者は「産業動物獣医や公務員獣医は多くの地域で不足しているが、ペット獣医は余り気味」と証言。全体として数は足りているとみる。一方、国が示した獣医師需給予測は農水省の07年推計のみで、獣医師の需給がトータルでどうかの結論は明確にしていない。国家戦略特区での獣医学部新設方針を固めたワーキンググループ(WG)の議事要旨によると、農水省は14年8月に獣医師需給見通しのデータを求められたが、新たな推計は出さなかった。だが15年1月のWGでは一転、上昇傾向にあった犬猫の数が08年をピークに減少に転じたとする社団法人「ペットフード協会」の調査結果を強調し、家畜や畜産農家戸数も減ると主張。16年9月にも慎重姿勢をにじませた。
同省畜水産安全管理課は取材に「犬猫の数の把握は困難で新たな推計はしなかった。近年、ペットは急激に減少しているとみられ、獣医師の需要が増すとは考えていない」としている。
ある獣医系大学の教授は加計学園の計画について困惑をあらわにした。「定員160人というのは、天文学的な数字ですよ」
加計新学部 過大な規模 定員、全獣医系の2割
獣医師需要が低下するという農林水産省の主張を踏まえず、愛媛県今治市の国家戦略特区で浮上した新設獣医学部。その規模が獣医業界に衝撃を与えた。
獣医系学部・学科は現在全国に16あり、定員は最多でも120人、定員の合計は930人だ。加計(かけ)学園が来年春の開学を目指す岡山理科大獣医学部は定員160人で、既存の国公立大4〜5校分に相当。総定員を一気に2割近く増やす。
それ以上に問題視されているのは、70人という教員数だ。定員160人を「天文学的」と表現した獣医系大学の教授は言う。「教員は今も足りない。まともな人材を集められるのか」
日本獣医師会によると、16の獣医系学部・学科の専任教員数は合計でも約700人。文部科学省の認証機関「大学基準協会」が獣医系で定める専任教員数の基準「68〜77人以上が望ましい」を満たしているところは一つもなく、どこも教員確保に苦労している。大学認可の権限を持つ文科省が新設や定員増を長年認めてこなかった背景には、この教員不足もある。52年ぶりの獣医学部新設を目指す岡山理科大は、全国の専任教員の1割に当たる人数をそろえようとしている。

加計学園が教員スカウトに奔走している−−。そんなうわさが、獣医業界を昨年から駆け巡っていた。同学園が特区事業者に決まったのは今年1月。見切り発車のような動きに「やはり加計ありきだったのか」と疑念が広がった。
獣医系の大学関係者によると、西日本のある国立大の准教授は昨年冬、同学園に「教授で迎えたい」と誘われた。提示された給与は1年目1200万円、2年目以降800万円。獣医系の教授の年収は700万〜800万円ほど。「教授」の肩書も含め好条件だった。しかし、学生の教育に専念することを求められ、准教授は研究を続けたいとして断ったという。
同学園の教員について、新設の可否を審査する文科省大学設置・学校法人審議会の委員から「定年退職した65歳以上の教授と、大学を卒業したばかりの若手が多い」と年齢の偏りを指摘する声があるという。開学する来年春に定年を迎える教員に声をかけている、との獣医関係者の証言もある。審議会の元委員は取材に言った。「そんな大学は本来なら認可されない。『総理の意向』ということで、ウルトラCで通すのか」

将来のペット獣医過剰を暗示するショッキングな推計がある。犬の血統書を発行するジャパンケネルクラブ(JKC)の調査などを基に獣医コンサルタント西川芳彦氏が試算したところ、10〜15歳の高齢犬の数が今年をピークに右肩下がりとなり、10年後に6割を切るという。西川氏は「病気になりやすい高齢犬が減れば獣医はどんどん余っていく」と指摘する。
特区認定に向けた加計学園の資料によると、新設学部は「先端ライフサイエンス研究」を強調するが、ペット獣医も養成する。西川氏は「学生が卒業するころにはペット獣医で食べていけなくなる。学部新設は最悪のタイミングだ」と話す。
北海道大人獣共通感染症リサーチセンター統括の喜田宏教授も「獣医師の数が足りている現状では、むしろ既存の獣医学部の統合再編で教育の中身を充実させるべきだ。新設は本当に必要なのか」と疑問を呈している。
全国の獣医系学部・学科の定員数
【国立大】北海道40 / 帯広畜産40 / 岩手30 / 東京30 / 東京農工35 / 岐阜30 / 鳥取35 / 山口30 / 宮崎30 / 鹿児島 30
【公立大】大阪府立40
【私立大】酪農学園120 / 北里120 / 日本120 / 日本獣医  / 生命科学80 /  麻布120 
[ 合計 930 ]
【岡山理科】(予定)160 < 岡山理科大は加計学園が運営  
今治市長、加計学園に言われるまま96億円の交付決め即日通知 6/17
加計学園が今治市に96億円の補助金申請をし、菅良二市長は言われるままに96億円の交付を決定した。それを加計学園に即日通知していた ― 言い逃れできない公文書が見つかった。
「加計学園からの申請日」「今治市役所の起案日と決裁日」「加計学園への通知日」はいずれも今年3月31日となっている。
大学設置認可申請書の締め切り日が3月31日であることから、急いだものと見られる。
安倍首相が国家戦略特区諮問会議で唱えていたという「スピード感を持って」に合わせたのだろうか? ありえないような早さだ。
納税者である今治市民が目をむくのが96億円という金額だ。「今治市が出すのは最大で64億円」。菅市長は議会で何度もダメを押されているのである。
お金はまだ振り込まれていないが、もし振り込まれていたら、菅市長は背任の罪で刑事訴追される可能性もある。
金額が大きいため振り込み先を間違えないようにと、加計学園は通帳(三菱東京UFJ銀行・岡山支店)の表紙までコピーして添付する念の入れようだ。
今治市の「96億円の交付決定」は加計学園の「設置認可申請書」に添えられて、文科省に渡っているはずだ。
建設費用の出どころが分からなければ、大学設置認可が下りない。このため加計学園が「96億円出せ」と要請したものとみられる。
内閣府も手を貸した。内閣府はそれまでにも「特区申請の手続きを急ぐように。さもなくば特区認定を取り消す」と今治市を脅迫してきた。
議会の承認もない、いわば空手形をつかまされた文科省こそ気の毒である。 
今治市がたった一日で即決した96億の補助金
安倍晋三首相は通常国会閉幕に伴い、19日夕に官邸で記者会見した。
首相の「腹心の友人」が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、「総理のご意向」などと記された文部科学省の内部文書が存在することが同省調査で明らかになったが、首相は「2転3転し、国民の不信を招いた」「印象操作のような議論に対して、つい強い口調で反応してしまう。そうした私の姿勢が、結果として政策論争以外の話を盛り上げてしまった。深く反省している」と謝罪。だが、これまで通りの主張を繰り返し、特に中身はなかった。
そんななか、加計学園が愛媛県今治市に獣医学部を新設する計画を巡って新たな疑惑が地元で浮上している。
大学設置認可申請書の締切日にあたる今年3月31日、加計学園が今治市に対し、96億円の補助金申請をし、菅良二・同市長はなんと即日に交付を決定。
加計学園に対し、通知していたことを示す、公文書を筆者は入手した。
地元では「96億円は市の歳出の12%に相当するのにずさん過ぎる。あまりに露骨だ」と非難の声が上がっている。
獣医学部の建設予定地約16.8ヘクタール(評価額36億7500万円)は、今治市から加計学園へ無償譲渡されることが決まっているが、さらに県と市から補助金として大学校舎、施設整備費など192億円の半額、96億円を出すことが決定。
筆者が入手した<今治市大学立地事業費補助金交付決定通知書>という文書によると、加計学園の加計晃太郎理事長名義で<申請書>が出されたのは、3月31日。そして今治市が<交付決定通知書>を出したのも3月31日。申請にかかる書類が起案されたのも、3月31日だ。
安倍首相の「総理のご意向」文書が出されたのは2016年10月17日。
その直後、加計学園は獣医学部建設にあたり同月31日にボーリング調査の申請書を今治市に提出した。
その時も即日に許可が下りていた。
これほど大きな事業、巨額な金額を支出するのに、たった1日ですべてが完結している。通常の「お役所仕事」では考えられない手際の良さだ。
一方、加計学園が申請した補助金。その<要綱>には補助金事業は<原則として競争入札>とされている。獣医学部の建設工事現場に張り出されていた設計者のSID創研は加計学園のグループ企業。建築を請け負ったアイサワ工業は、自民党・岡山1区の逢沢一郎衆院議員の従兄が経営している会社だ。
また地元住民たちが建設費が高いとして加計学園に対し、たびたび大学の建築、設計に関する図面などの書類を公開するように求めているが、オープンになっていない。
「本当にきちんと入札が行われたのか、疑問」(前出の市民団体)
「県や市は当初、補助金は64億円が上限としていた。それがフタを開けてみれば、合併特例債など別財源で約30億円も上乗せしている。加計学園が千葉県銚子市に千葉科学大学を数年前、設立した際も、銚子市は約80億円を投じたあげく、財政破綻寸前まで追い詰められました。今治も二の舞いになるのではないか」(市議会関係者)
加計疑惑はまだまだ燻りそうだ。 
官邸語録
「怪文書のたぐい」 (菅義偉官房長官)
「文書の存在が確認できない」 (松野博一文科相)
「そもそも獣医学部新設については自民党政権では認めなかったのに民主党政権で認める方向になった。安倍政権はそれを引き継いで今回の動きとなった」 (首相)
前川氏の証人喚問「明確に必要ない」 (竹下亘国対委員長)
「会議録を処分したからわからない」「調べたが確認できない」 (政府与党)
「和泉氏から『そのような発言をしたことはなく首相から指示を受けたこともない』と聞いている」 (萩生田官房副長官)
「(文科省からは)該当する文書の存在は確認できなかったと聞いている」
「(文書は)出所不明で信憑性も欠けている」
「文書に書かれたような事実はない」
「法律に基づいて行っていることで、ゆがめられたということはまったくない」
「作成日時だとか作成部局だとか、そんなものが明確になってない」
「何を根拠に。まったく怪文書みたいな文書。出所も明確になっていない」
「この国家戦略特区の会議、その議論を得て策定しているわけです。それについてはみなさんご存じの通りオープンにされるわけで、お友だち人脈だとか、そういう批判はまったくあたらない」
不自然な経緯「批判はまったくあたらない」常套句でシャットアウト
「出所不明で信憑性も定かでない」「文書の存在は確認できなかった」「そういう事実はない」「指摘はあたらない」を連発
「1回調査したが文書の存在は確認できなかったと大臣も言っているから、それ以上でもそれ以下のことでもない」
「文部省として大臣のもとで調査をしたと。その結果、確認できなかったから、ないということ。それに尽きるんじゃないですか?」
前川文書「文科省が行った調査で存在が確認できなかった」
安倍首相の関与「指示は一切なかった」

「地位に恋々としがみつき、世論の批判にさらされて、最終的に辞任を承知した」
出会い系バー通い「さすがに強い違和感を覚えた。多くの方もそうだったのでは」「常識的に言って教育行政の最高の責任者がそうした店に出入りして小遣いを渡すようなことは、到底考えられない」
「文科省を辞めた経緯について、記事には『自分に責任があるので自ら考えて辞任を申し出た』とあったが、私の認識とはまったく異なる」「前川氏は当初は責任者として自ら辞める意向をまったく示さず、地位に恋々としがみついていた。その後、天下り問題に対する世論の極めて厳しい批判に晒されて、最終的に辞任した人物」
「当初は責任者として自ら辞める意向を全く示さず、その後に世論からの極めて厳しい批判などにさらされて、最終的に辞任された方だ」
「天下りの調査に対し問題を隠蔽した文科省の事務方の責任者で、本人も再就職のあっせんに直接関与していた」
「自身が責任者の時に、そういう事実があったら堂々と言うべきではなかったか」

「前川前次官が出会い系バー通い」5/22 読売新聞朝刊1面
「恋々とする」 (意義素/その類語)
未練や心残りがあるさま / 未練がある ・ 未練がましい ・ 未練たらたらの ・ 諦めの悪い ・ 後ろ髪を引かれる ・ 思いを断ち切れない ・ 思いが断てない ・ 思い切れない ・ 諦め切れない ・ 諦めがつかない ・ 忘れられない ・ 気持ちがふっきれない ・ 踏ん切りがつかない ・ 思いを残す ・ うじうじする ・ 思い切りが悪い ・ 恋々とする ・ 割り切れない ・ 未練が残る ・ 未練を残す
潔くないさま / 男らしくない ・ 女々しい ・ 往生際が悪い ・ ウジウジしている ・ 恋々とする ・ 悪あがきする ・ 未練がましい ・ 引き際が良くない ・ 執着する
異性に恋の感情を抱くこと / 恋する ・ 好く ・ 思慕する ・ 慕う ・ 恋慕の情を抱く ・ 慕情を抱く ・ 恋い慕う ・ 思いを寄せる ・ 恋情を抱く ・ 想う ・ 好意を寄せる ・ 愛する ・ 恋々とする ・ 惹かれる ・ 慕う ・ 思慕の念を抱く ・ フォーリンラブ ・ 焦がれる ・ 想い焦がれる ・ 思い焦がれる ・ 恋い焦がれる ・ 惚れる ・ 恋慕する  
 
加計学園問題の原点 / 安倍首相の3月13日参院予算委での答弁

 

今国会で、加計学園が今治市に獣医学部を新設する件についての最初の質問は3月13日の参院予算委員会での福島みずほ議員のものと思われ、安倍首相が直接答弁に立っていますが、現在まで、議事録が公開されていません。そこで該当部分を文字起こしして、分析しました。以下、パートごとに区切って文字起こしした後、筆者の考えを記します。
質問1
福島 / 次にですね、加計学園についてお聞きを致します。えー、加計学園理事長加計孝太郎さんが今治市で岡山理科大学獣医学部を作りたいと思っているのを知っていましたか。
安倍 / お答えする前にですね、えー、私や家内(※1)がバックにいれば、役所が何でも言うことを聞くんだったらですね、福島先生ね、長門市とね、私の地元、予算全部通ってますよ。<笑い声あり>誰が考えたってね、私の地元でしょ、そこから要望する予算が全部通ってますか。通ってませんよ。様々な要望をしているけど、全部通ってませんよ。通ってるのもあれば、通ってないのもありますよ。そんな簡単なものではない、そういうのをいわば、い、印象操作というんですよ。そんな、そんなですね、いわば、安倍政権のみならず、政府、あるいは行政の判断を侮辱するような判断は、あ、侮辱するような言辞はですね、止めて頂きたいと思いますよ。(※2)しっかりとですね、皆さん真面目に業務にですね、えーこの、精励している訳でありまして、それがですね、それがあー、まるで私の名前がついていれば全部ですね、物事が進んでいくがごとくのですね、えー、この、えー、誹謗中傷は止めて頂きたい、とこう思う次第でございます。えー、それと、今ですね、加計学園について、えー、その、おー、いわば、えー、私が、この、おー、えー、獣医学部をですね、獣医学部を、おー、えー、最終的に、えー、知っていましたか、というのは、最終的にですね、これは、あー、今治とこれは広島でしたっけ、の、特区がですね、えー、え、決定された中によって、えー、この加計学園が、この、おー、獣医学部をですね、開設をするということが決定したことは、もちろん私は承知しております。政府の決定でございますから。(※3)
質問2
福島 / 全く答えてないじゃないですか。加計学園の理事長と、理事長が、ここで獣医学部を作りたいと思っているかどうかを、あなたが知っていたかどうか、総理が知っていたかどうかを聞いた訳です。2016年、7回、ゴルフや食事をしています。その前、2014年6月から2016年12月まで2年半の中で13回食事などをしています。永年の友人じゃないですか。極めて永年の友人です。だからお聞きをしてるんです。政策が歪められてるんじゃないかっていう質問です。えー、平成28年、2016年11月9日、獣医学部の新設を国家戦略特区が決めます。そこで、このため、かねてより準備を進め具体的提案を行ってきた自治体を中心に、具体的プロジェクトとして、実際の獣医学部の立ち上げを急ぐ必要があり、そのための規制改革、すなわち関係告示の改正を直ちに行うべきであるという、えー、国家戦略特区の決定です。で、この具体的提案を行ってきた自治体っていうのは今治市ってことでよろしいですか。
安倍 / これ、担当大臣を呼んで頂けますか。あの−、山本さんがですね、担当大臣なんですよ。で、山本さんを呼んで頂かなければ、私、それ、お答えのしようがありませんよ。詳しく、私、存じ上げませんから。これ、所管外ですから私、お答えできませんよ。
質問3
福島 / はい、でも加計学園の理事長と非常に懇意にしていて、11月9日の日に今治市なんですよ。そしてですね、てか獣医学科を決める、そして構造改革特区に、ずっと、愛媛県と今治市は獣医学部の選定、やってくれってことを言っています。だから2010年、日本の獣医学会は、これに反対の声明を出しています。それはこういう中身です。日本獣医師会。2010年8月5日付け声明。えー、特区提案による大学獣医学部の新設について批判をしています。高度専門職、えー、高度専門職、ぎょ、養成の責を担う獣医学教育課程が、特区に名を借りた地域興しや特定の一法人による大学ビジネス拡大の手段と化すことが無いように、事があってはならない、ていうふうに言ってるんですね。そして、ここの中身は、もう今治市、えー、加計学園、というふうに名前がもうすでに出続けているんですよ。総理、何故急転直下、国家戦略特区によって、獣医学部新設、そして、この大臣告示を規制緩和する、まさにそこで発言をされているからこそ、聞いてるんです。特区の理事長じゃないか・・議長じゃないですか。はい。
安倍 / <原稿を答弁席に放り出す>福島さんね・・、特定の人物の名前を出して、あるいは、学校の名前を出している以上ですね、何か、政治によって歪められた確証がなければですね、その人物に対して極めて、私は、失礼ですよ。そしてこの学校でですね、学校で学んでいる子どもたちも傷つけることになるんですよ。まるで私が友人であるからですね、何か、えー、この、特区あるいは様々な手続についてですね、何か政治的な力を加えたかのごとく、の今、質問の仕方ですよね。それあなた責任取れるんですか。これ全く関係なかったら。(※4)まず申し上げましょう。今、恐らく週刊誌を元に言ってるかもしれませんからね、えー、言ってますけれども、例えばですね、これが、今治市が、ただで提供されたていうことについて、これおかしいだろう、という週刊誌でありますが、二十年の間にですね、二五例あるんですよ。二十年の間に二五例あってですね、で、これは、ただでいわば土地が譲渡された例ですね。で、土地がただでですね、いわば、貸与された例、これは以外にもっとあるんですよ。つまり、なかなかですね、遊休地があって、地方自治体が困っているときはですね、一番良いのはですね、学校法人がくることなんですよ。これは若い人たちも来ますし、研究者も来るし、街が形成されるんですよね。でもね、なかなかこれね、そう簡単に来ませんよ。で、ただで提供すると言ったって、中々来ないんですから。今、子どもの数が減ってますから、ただで提供すると言っても中々ずっと・・、学校法人は来ないのは事実であります。で、さらにですね、これ今治市が、今治市がですね、決めたことでしょ。これ、市ですから。国有地ですらない訳でありますから。私が影響、影響のしようがないじゃありませんか。それとですね、いまそこまでですね、あなたがですね、疑惑があるかのごとく、私人に対して、えー、質問をしている訳であります。名前を出してるじゃありませんか。名前を出している。しかも学園の名前も出してますよね。これ、生徒の募集等々にもですね、大きな影響を与えますよ。これ、あなた、責任取れるんですか。・・私はそれを問いたい。もうね、いまNHKで放送されて、ぜ、全国放送で、されてるんですよ、これ私、おどろ、驚くべきこと、であります。<原稿目を落とす>で、申し上げますとですね、今治市はですね、今治市はですね、獣医学部設置のみならず、これ、しまなみ海道のサイクリングブームを後押しする構造改革人材の積極的受入や、活力ある地域作りのための道の駅の民間参入など、大胆な規制緩和を提案し、特区ワーキンググループなどの有識者委員より極めて高い評価を得た訳であります。ま、最終的にはですね、平成27年12月に特区担当大臣から特区諮問会議に諮り、指定を決定した訳でございます。この指定決定する、いわば大臣が、委員会に諮問をした訳でありまして、そこで、しっかりと議論をしてるんですよ。その際、有識者より、しまなみ海道で、え、繋がる広島と連携して指定することにより、一層の効果が期待できるとの意見があり、これを踏まえて、広島県と今治市を一体の特区としました。具体的には、国際的なサイクリング大会が開催されるなど、外国人観光客の多いしまなみ海道における観光サービスの担い手として、外国人の受入を促進するための、特例措置の活用などが共同で、え、計画されている訳であります。で、そして、それに合わして、えー、獣医学部新設の、えー、措置でありますが、獣医学部の新設については、獣医師養成学部各科の定員の制限、えー、文部科学省の告示があり、今治市は平成19年以降、15回にわたりですね、15回にわたり愛媛県と共同で、構造改革特区を活用した、え、獣医学部設置を提案きたが、実現には至らなかった訳であります。<原稿から目を上げる>もちろんそれはあなたが今紹介されたような様々な反対があるからであります。であるからこそ、業界団体の反対があるからこそ、だから特区でやるんですよ。だいたい、特区はそういう事になってるんですから。<原稿に目を落とす>そこで、安倍政権の下では、鳥インフルエンザ、エボラ出血熱など、動物由来の感染症の国際的拡大に対する危機意識が高まったことから、日本再興戦略改定2015においてですね、獣医学部設置を検討することとなった訳でありまして、その中で、えー、昨年11月の特区諮問会議において、鳥インフルエンザなどの人獣共通感染症が家畜等を通じて国際的に拡大していく中で、地域での水際対策の強化や、新薬の開発などの、先端ライフサイエンスの研究など、獣医師が新たに取り組むべき分野・・の具体的需要が高まっていることから、これに対応する特例措置として、獣医学部の設置を、国家戦略特区のメニューとして、追加することとした訳であります。ちなみに、四国には獣医学部がない訳でありまして、四国全体からのニーズがあったのも事実であります。その際、全体の獣医師の需要も踏まえ、また、永年実現できなかった岩盤規制の改革に対して、慎重な議論もあったことからですね、平成27年に新設が認められた医学部と同様、一校に限る。これは、あー、成田で新設された医学部でありますが、これも一校に限るということになっている訳でありまして、一校に限る制度改正となった訳でございまして、<原稿から顔を上げる>これ、今申し上げたことは、一々、週刊誌の指摘に反論している訳でありますが、恐らく、そ、それを元に、元に、元に、質問をされてるんだろうと思いますよ。(※5)<原稿に顔を落とす>ただし、国家戦略特区はですね、規制改革の突破口であり、今後、特段の問題が生じなければ、更なる規制改革として、2校目、3校目を認めていくこともですね、え、検討に値すると考えている訳でございます。
質問4
福島 / 政府の政策が合理的になされているかどうかを正すのが国会です。政府の審査をするのが国会議員の仕事で、野党じゃないですか。その質問に対して、何で総理はそう恫喝するんですか。総理は、総理はですね、10月2日と、12月24日、まさにその2017年、あ、2016年その11月9日に国家戦略特区で一つだけ獣医学科を規制する、規制緩和する、まさにここで、ということを、総理自身が議長で決めたときの前後にですね、10月2日、12月24日、え、この方と食事をしています。え、こういう話を、えーしたんですか。
安倍 / これね、私、そもそもね、そもそもですよ。何かですね、これ、不正があったんですか。だから私が言ったんですよ。何か確証を掴んでるんですか、ということですよ。週刊誌の記事以外に。何か確証もつかずにですね、この国会の場において、何か問題があったかのごとく、私と彼が会食、彼は私の友人ですよ。ですから会食もします。ゴルフもします。でも、彼から私、頼まれたことはありませんよ。この問題について。ですから働きかけてはいません。これははっきりと申し上げておきます。働きかけていると言うんであれば、何か、確証を示してくださいよ。で、私はね、私はもし、働きかけて決めてるんであれば、これは私責任取りますよ。当たり前じゃないですか。(※6)で、国家戦略特区の諮問委員会はですね、そんな、すいません森さん、五月蠅すぎますよ後ろで。これ、委員でもないんですから・・、委員でもないんですから、い、い、傍聴、<委員長に>ちょっと、あの、注意してください。<委員長:あの、静粛に願います。総理、ご答弁続けてください。静粛に願います。>はい。で、そこでですね、そこで、いわば、そこでですね、それを出すってんであればですね、これ、大きな被害が被るんですから、マスコミが殺到して、で、学生たちにもマスコミ殺到しますよ。こういう事をするというんであれば、よっぽどの確信がない限り、ただ、安倍政権のイメージを落とそう、安倍晋三を貶めようということで、答弁するのは止めた方がいいですよ。実名を挙げて答弁するのは。(※7)
質問5
福島 / これが余りに急スピードで展開しているので、そのことについて、思っているのです。2016年の11月9日に、国家戦略特区でこれを決めます。そして、そして1月4日に告示があります。ここで文科省、文科省の大臣告示を変えて、えー、獣医科を今まで作らなないとしていたのを、規制緩和をするわけです。そして1月、1月4日から11日、わずか一週間の間、公募をやります。ここに手を挙げるのは、そこの加計学園以外にはありません。もの凄く速いじゃないですか。1月、なんと11月に国家戦略特区で規制緩和を決めて、告示を変えるのが1月4日ですよ。で、告示を変えた直後、1月4日から11日の間、わずか一週間の間しか、この今治の獣医学部をやる人がいますか、という公募はここでやるですよ。そんなの手を挙げられる所って、もう本当に、元々準備をしている所以外にないじゃないですか。そして、2017年1月20日、国家戦略特区諮問会議で、総理はこう仰っています。「1年前に国家戦略特区に規定した今治市で画期的な事業が実現します。獣医学部が来年にも52年ぶりに新設され、医師を育成します。」。もの凄く速いですよね。そもそも、決めて、告示をやって、それから、わずか同じ日ですよ、1月4日、まだお正月のときですね。それから一週間、11日までしか公募しないんですよ。だとしたら、手を挙げられるところは、もともと予測できるじゃないですか。何故この質問をしているか、国家戦略特区の議長がえ−、総理であり、11月9日、そして1月20日、その間、もの凄く急スピードなんですよ。これはやはり、この今治市で獣医学部をやって、この学園ってことを、総理がやっぱり、予測してたんじゃないですか。
安倍 / もうね、えー・・この質問自体ですね、先ほど申し上げましたように、固有名詞出したんですから、そうした人たちを傷つけるってことを考えて質問されなければダメですよ。まず、十五年間ですね、特区は申請され続けてきたんですよ。その間、そうであればですね、他の大学だって、じゃあ取り組もうと思えば、取り組めたわけですよ。しかし、諦め続けずにやってきたところがあったのは事実。それ、加計学園であったわけでありますが、そこでですね、<原稿に目を落とす>民間、民間事業者の選定はですね、国家戦略特区法の、これ国家戦略特区法の原則に従いですね、公募手続が取られ、学校法人加計学園より応募があったわけであります。で、公募期間は8日間としたが、この期間は、<原稿から顔を上げる>他の事業と同程度であります。これだけ速かったわけではないんですよ。だいたいですね、まず、特区ってのは、そんな長い、この戦略特区でありますから、その前にこれは、だいたいやるということはだいたい決まっていて、多くの人たちが知っているんですよ。関係者はみんな知っているんです。知ってる中においてですね、もうこれは、そういう方向で進んでいるということは、多くの人たちが知って、知っているんです。その中で8日間、で、ほかと比べてですね、特別短ければ別ですよ。これだいたい他と同じですから。<原稿に目を落とす>で、その後ですね、え、6日間の追加申し出の手続を行いましたが、他の事業者から応募はなかった訳でありまして、応募の内容については分科会や、区域会議、諮問会議において、新設に必要な要件を十分に満たしていることを適切に確認をしております。なお、獣医学部の新設に関心を持つ事業者や自治体に対しては、特区で取り上げられるに至る前段階から、内閣府が随時、提案や相談を受け付ける体制を整えています。<原稿から目を上げる>急に8日間でやったんではない。もうちょっと勉強してから質問してくださいよ。(※8)しかしながらですね、しかしながらこの数年間で、しかしながらですね、しかしながら、や、これはあなたがですね、こういう問題で、疑惑があるかのごとくですね、疑惑のあるかのごとく、固有名詞や学園の名前を出せば、これは多くの人たちが傷つく訳であります。最初に申し上げましたように、これ、学校や何かにね、また、生徒や親の所にマスコミが殺到したらどうするんですか。責任とるんですかそれは。(※9)<原稿に目を落とす>で、しかしながらですね、この数年間、熟度の高い具体的提案は、平成19年から出されているこの今治市の事業のみだったと、こう承知をしているわけでございます。
結語
福島 / この、獣医学部に関して、もう需要がきっちりあってですね、新たに獣医学部を作る必要は無いというのが、文科省、農水省、そして獣医学会が、あ、獣医師会が言っていたことなんですよ。それを今治市で、え、そしてまた新たに獣医学部を作ると。で、これはやはり何故質問しているかと言えば、国家戦略特区の議長が総理であり、そしてその決定をしているからです。私は逆にですね、友達やいろんな近しい人が関与している可能性があるんだったら、むしろそれは、ま、注意深くやる。慎重にやる、あるいはやらない、そういう配慮も実は必要だと思いますよ。だって正に、正に、永年の友人。だって、総理が国家戦略特区で規制緩和をしたことで、総理の永年の友人はこれで利益を受けるわけじゃないですか。利益をこれで受けるんですよ。だから、そのことが大きいというふうに思います。えー、森友学園のことについても、今後も追及をします。
安倍 / <委員長:総理、短くお願いいたします。短くお願いいたします。>あのね、今、疑惑を掛けたまま終えられますから、ひと言付け加えたいと思いますけどもね、一校、そりゃ反対しますよ。医学部だって、成田の医学部だって、反対しましたよ。医師会は。当然なんですよ、それはね。それ、それを同じ理由であの、それを同じ理由で反対しましたからね、で、そこで、一校のみということを、が、で、一校のみというのが決まったのが成田における医科医大学でありましたね、医大でありますよ。で、同じ事がこっちでも起こっているわけで、そこで私が知っているんであればね、それを止めるべきだ、<指を指しながら>そこで私は、裁量、裁量行使していいんですか。裁量行使して良い訳ないじゃないですか。ということをはっきり申し上げて、えー、答弁を終えさせて頂きたいと思います。
講評
質問1
福島議員の質問の趣旨は「加計学園理事長の加計孝太郎氏が今治市に岡山理科大学獣医学部を作りたいと思っているのを知っていましたか。」ですが、安倍首相は、聞かれていないことを散々言い散らした上、「最終的には」知っていたと述べるだけで、いつ知ったのか、あるいは最初から知っていたのではないか、という疑惑に何も答えてません。
(※1)安倍首相は、国会で答弁する際、昭恵氏のことを「妻」と呼びますが、焦っているように見えるときは「家内」という傾向があるように思います。これは普段どう呼んでいるかの問題で、安倍首相は普段、周囲には「家内」と言っているところ、国会では、政治的な適正さを意識して「妻」と言い換えている可能性があります。
(※2)福島議員は安倍首相が知っていたか否かの事実を聞いているだけなのに、印象操作、政府の判断を侮辱など、全く関係ないことを答えています。
(※3)自分が最終的に知っていた、という単純な事実を認めるのに、えー、おー、この、そのなどかなり言い淀んでいます。その事実を認めるのがそんなにまずいことなのでしょうか。
質問2
安倍首相は国家戦略特区諮問会議の議長で、今治市における獣医学部設置に関する規制緩和の議論に関与してきた立場です。獣医学部の規制緩和について具体的提案を行ってきた自治体を確認されただけで、それを「所管外」と逃げて答えないのは、誠実な国会答弁ではないと思われます。なお、その後、安倍首相は今治市について何度も言及しており、山本規制改革大臣の名前を出して逃げるのは、この点からも、ためにする言辞と思われます。
質問3
福島議員の質問の趣旨は、獣医師会が反対する中で、国家戦略特区諮問会議の議長である安倍首相がそこで発言をしているのに、答弁を回避するのはおかしい、というものだと思われます。これに対して、安倍首相は全く答えていません。「確証」がなければ国会で質問知るのが失礼だ、というような、議員の質問権を否定するような答弁に終始しています。福島議員が一切言及していない週刊誌報道について、聞かれてもいないのに一々反論するのも、国会答弁の範疇を逸脱していると思われます。後半は、官僚が用意した原稿を読み上げて答弁していますが、しまなみ海道の観光振興と鳥インフルエンザ・ライフサイエンス研究は直接関係ないはずで、まさに官僚答弁と言えるでしょう。
(※4)「確証」がないのに野党が国会で質問をすれば加計学園に失礼で、学生を傷つけるので、責任取れるのか、という趣旨のようですが、質問に対する答えになっていません。
(※5)福島議員は週刊誌のことを何も言っていないのに、※4の部分以降、安倍首相が長々と原稿を読み上げて週刊誌報道に対する反論をするのは国会の審議時間の浪費でしょう。
質問4
福島議員の質問の趣旨は、2016年11月9日に国家戦略特区諮問会議(安倍晋三議長)で、今治市での獣医学部設置に関する規制緩和が決定された前後の10月2日、12月24日に安倍首相が加計孝太郎氏と会食しているなかで、獣医学部設置に関する会話をしたのではないか、ということですが、安倍首相は質問に直接答えず、「この問題について頼まれていない」と限定して答弁しています。これは、会食の時に獣医学部設置計画の話自体はあったと認めているのでしょうか・・・。
(※6)福島議員が、安倍首相に責任があるとも何とも言わず、事実を確認しようとしているのに、それには答えず、自分が働きかけて決めているのであれば責任を取る、と勝手に前のめりな発言をしています。これによって、今日に至るまで、あるはずの関与を認められず、国会が振り回されています。
(※7)安倍首相は、※4に続き、再度、加計学園や学生にマスコミが殺到して大きな被害を受ける、などと言いますが、大問題になっている今日に至るまで、少なくとも学生や父母に取材が殺到した例は無いように思われ、加計孝太郎氏が公式に何かを述べたことも無いように思われます。なお、安倍首相は「答弁」と「質問」を取り違えており、焦っているのでしょうか。
質問5
福島議員は2016年11月9日に国家戦略特区諮問会議(安倍晋三議長)で、今治市での獣医学部の規制緩和が決まった後、2017年(今年)の1月20日の同会議で加計学園が事業者となる獣医学部設置が決定されるまでが急スピードであることから、安倍首相は、加計学園が事業者となる獣医学部の新設を事前に知っていたのではないか、と改めて質問していますが、安倍首相は、官僚が作った原稿に目を落として、国家戦略特区法における手続の進捗状況を述べるだけで、自身が事前に知っていたか否か、という肝心の質問に答えてません。
(※8)質問者の質問に答えてないのに、質問者に対して「もうちょっと勉強してから質問してくださいよ。」は、それこそ、質問者に対する侮辱と思われます。
(※9)これも※4、※7と同様のことを繰り返しています。
結語
国会質問では、質問した側が最後に自らのまとめをして質問時間を締めくくることはよくあるのですが、安倍首相は答弁を求められていないのに、これに答弁に立っています。聞かれたことに答えないのに、言いたいことは言うのも、やはり、行政府の長として、非常に行儀が悪いと考えます。
今日から見た意義
まずは、国会審議から2ヶ月半も経つのに、議事録がホームページに掲載されていないこと自体、非常に不当でしょう。安倍政権がこの国会質問について、何かを隠したがっていると疑念を持たれても仕方ないのではないでしょうか。
そして、3月13日の段階では、安倍首相は、確証もなしに国会質問をすべきでない、などと述べていました。しかし、その後、この件について「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」等と書かれた文部科学省の内部文書が流出しました。それが本物であり、また、2016年9月から11月にかけてその旨の報告があったことや、安倍政権の首相補佐官の和泉洋人氏や、内閣官房参で、同時に加計学園理事でもあった与木曽功氏から繰り返し働きかけがあった旨、前川喜平・前文部科学次官(1月18日に天下り問題で引責辞任)が何度も証言しています。前川氏は和泉氏が「総理は自分の口からは言えないから私が代わりに言う」と言ったとまで証言しています。自民党の元国会議員である佐藤静雄氏はツイッターで「前川前次官は私が党の文教部会長をやっていた時に多少の付き合いがあった方だが正直で真面目な人だ。出所の分からないペーパーをでっち上げるような人ではない。」と発言しました(5月29日)。自民党の元国会議員である北村直人氏も文科省の内部文書について「ほぼ正確なものだ」と証言しています(5月25日 FNN「北村氏「首相の意向」内容認める」)そして、先週末には文科省のパソコンにも文書が保管されている事実が判明しました。
ところが、これだけ証拠が揃った今日、松野文部科学大臣は、今度は「入手経路が明らかにされておらず、改めて調査を行うことは考えていない」と答弁したようです。具体的な証拠があるのに、入手経路を明らかでなければ答えない、というのは、違法・不当な業務執行を内部者が曝露する、公益通報や、ジャーナリズムを全否定するものであり、また、国民の疑問に対して全く答えになっていないでしょう。安倍首相が「確証」に基づいて追及しろ、と散々言ったところ、これだけの証拠が出てきた以上、事態の核心を知る和泉洋人首相補佐官、木曽功内閣官房参与(加計学園理事)、前川喜平前文科事務次官、加計孝太郎(加計学園理事長)の証人喚問が必要な段階に至っていると思われます。
そして、安倍首相自身、自ら「腹心の友」と呼ぶ友人が代表者を務める学校法人、すなわち利害関係者に対して利益誘導する政治を自らの名で行っており、最低でも深刻な利益相反を引き起こしているはずです。利益相反は、実際に不正が行われたか否かとは関係がありません。「李下に冠を正さず」の言葉の通り、客観的に政治家が利害関係者の利益になる政治を行うこと自体が大きな問題なのです。本来、安倍首相も、国会での証人喚問を免れない立場と思われます。
行政は、国民に対して、適法・適正な業務執行をしている旨説明する責任がどこまでもあります。行政府の長である安倍首相以下、質問に答えず、言いたいことだけ言い続けるモラルハザードの状態を、もういい加減、止めて頂きたいと思います。 
 
前川喜平

 

(1955 - ) 日本の文部官僚。文部科学省大臣官房総括審議官、文部科学省官房長、文部科学省初等中等教育局局長、文部科学省文部科学審議官(文教担当)、文部科学省事務次官などを歴任し、退官後は特定非営利活動法人キッズドアに参加を申し込み、一般のボランティアの一人として活動に取り組んでいる。
2013年7月 - 初等中等教育局長
2014年7月 - 文部科学審議官
2016年6月 - 文部科学事務次官
2017年1月20日 - 文部科学次官退任
2017年3月 - 就職先あっせんの口利きが発覚して停職相当の懲戒処分が下る。
「総理のご意向」文書
2017年(平成29年)5月25日に記者会見を行い、加計学園獣医学部新設の件で、内閣府から文科省に「総理のご意向」などと伝えられたと記された文書が「本物」であると主張している。この中で「自分が昨年秋に、担当の専門教育課から説明を受けた際、示された」と証言した上で、獣医学部の新設については、加計学園を前提に検討が進んだとして、「行政がゆがめられた」と語った。また、5月25日には記者会見を開き、「総理の意向だ」などと記された一連の文書を「確実に存在していた。あったものをなかったことにできない」と述べたうえで、「極めて薄弱な根拠で規制緩和が行われた。公平、公正であるべき行政の在り方がゆがめられた」と述べている。文部科学省の調査では文書の存在は確認できていない。
松野博一文部科学大臣は「文科行政がゆがめられているという認識はない。適正な手続きで国家戦略特区が進められている」と主張し、高市早苗総務大臣は「ゆがめられる恐れがあるなら、官僚のトップとして意見の食い違う他省と話し合うべきだ。理解できない発言だ」と述べ、山本幸三地方創生担当大臣は「天下り問題を問われて辞めた方だ。文科省の信頼失墜の責任もあるのではないか」と発言、山本有二農林水産大臣は「熱心に聞いていただいたかと(疑問に)思う。もっと真剣にやっていただきたかった」と批判するなど、閣僚からの非難が相次いでいる。
民進党、共産党、自由党、社民党は、この文書の存在等を「国会最大の争点」と位置づけ、証人喚問を要求している。その理由について、産経新聞は、あわよくば組織犯罪処罰法改正案の参院審議日程を遅らせたいなどの思惑に基づく政府批判であると報じている。与党は応じる気配はなく、自民党の二階俊博は「国会運営は大きく左右されない。いちいち動揺していない。ご心配なく」と述べている。
見解
産経新聞は、「文書が存在したとして、首相およびその周辺から具体的指示があったかの証明とはならず、法律上の容疑が生じるわけでもない。推進の指示があったとしても規制改革は政権の重要政策であり、不自然とはいえない。忖度の有無が焦点となれば、これはもう水掛け論である。前川氏は会見で「公平、公正であるべき行政のあり方がゆがめられた」と述べたが、事実なら自身の在職中に対処すべきであり、あまりに情けないではないか。」と批判している。
公明党代表の山口那津男は、「本当に法を曲げることがあったのか。よく分からない文書が出てきて誰がいつ責任を持って作ったか、よく分からない。印象づけのようなことばかりが取り沙汰されている」「辞めた方がそもそもおっしゃるのは、いかがなものか」と述べている。
和田政宗参議院議員は、「M氏は各メディアに文書を持ち込み、記事として書いて欲しいと依頼していました。しかし、朝日新聞以外は記事にしませんでした。それはM氏以外に裏付けが取れず、M氏自身が作成して持ち込んだ可能性が否定できなかったからです」と述べ、安倍政権に対する「逆恨み」が背景にあると主張している。夕刊フジの取材で、同文書が複数の新聞社、テレビ局、週刊誌などに持ち込まれたことが判明している。
月刊 Hanada 編集長の花田紀凱は、文書について公式のものではないとし、「官邸からの“圧力”を裏付けるものでもない。」と述べている。 
爆弾証言 5/25
安倍晋三首相の40年来の“腹心の友”である加計孝太郎氏が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)が愛媛県今治市の国家戦略特区に獣医学部を新設する問題で新展開があった。
内閣府が文部科学省に「総理のご意向」などと伝えた文書の存在を認めていた前川喜平・前文部科学事務次官が25日、都内で記者会見し、自民党が拒否している証人喚問に応じる意向を示した。
さらに「文科省の立場で私が受け取った文書に間違いない」と改めて証言し、安倍政権の弁明と真っ向から食い違う爆弾証言をしたのだ。
文書について松野博一文部科学相が「存在は確認できなかった」と発表したことについて、前川氏は「答弁は大変残念。大臣や関係者を含め、そう言わされるふうに追い込まれてしまったのではないか」とも話した。当時、大学認可の権限を持つ文科省の事務方トップだった前事務次官の会見は自民党に衝撃を与えた。
加計学園と安倍首相の問題を特報したのは「週刊朝日」(3月17日号)。「第2の森友学園疑惑」として、今治市内に新設される岡山理科大獣医学部の用地として土地を無償で譲渡するとした市の2016年度補正予算案の内容や、「国家戦略特区」事業として異例のスピードで新設が認められた経緯、加計学園の加計氏について安倍首相が「どんな時も心の奥でつながっている友人」(2014年5月)と評するなど親密ぶりを報じた。
その後、朝日新聞が5月17日、文科省の内部文書とみられるA4判8枚の資料の存在を報道し、事態は急展開した。
内閣府の担当者が計画の早期実現について「官邸の最高レベルが言っていること」「これは総理のご意向だと聞いている」などと発言したことが克明に記録されていたのだ。
文書について文科省は「存在は確認できなかった」と発表したが、前川氏は朝日新聞の5月25日付朝刊で、「文書は本物です」とその存在を認めた。さらに会見では、獣医学部の新設については加計学園を前提に検討が進んだことに「行政がゆがめられた」と語った。
森友学園の「忖度(そんたく)」問題に続き、安倍首相の“お友だち”人脈から次々に出てくる疑惑に安倍首相の苛立ちも伝わってくる。ある自民党幹部はこう話す。
「森友学園、加計学園の疑惑が長引き、安倍さんは周辺に『鬱陶しい気分だ』と漏らしている。サミットから戻ってから対応を協議する予定だったが、事態が早く動き出した」
自民党内の受け止めも二分されている。別の幹部はこういう。
「加計学園しか取れない新設の条件なんだから、40年にわたる悪友関係の安倍首相と加計氏のあうんの呼吸で便宜を図ったのは明白。明らかに政治的な動きがあったはずだ」
政府の圧力に屈しなかった前川氏は、世界的な産業用冷凍冷蔵機器メーカー『前川製作所』の御曹司で、妹は中曽根弘文元外相に嫁いでいるという。
「官邸のコントロールが利かない人物」(前出の幹部)
一方で、別の幹部は強気にこういう。
「背景には文科省の権力闘争があり、天下り問題で処分を受けた前川の官邸への恨みが生々しいこともあり、文書が本物だとして、どれも間接的な表現にとどまり、結局は忖度話になる。野党がいくら騒いでも、うやむやに終わるだろう」
読売新聞は朝日新聞が加計文書の存在を報じた5日後の22日、前川氏が文科省に在職中、援助交際の交渉の場になっている東京都新宿区歌舞伎町の出会い系バーに、頻繁に出入りしていたと報じた。それについて前川氏は会見でこう疑問を呈した。
「行ったことはある」と認めたうえで、「テレビの番組でこういったバーで働く女性について紹介していて、実態を聞いてみようと(行った)。ここで働いている女性たちは、親が離婚してるひとが多いとわかり意味があった。読売新聞がなぜ報じたのか」。 
 
前川前文科次官の会見録

 

加計学園獣医学部新設問題についての前川前文科次官による会見 5/25
[弁護士] ここに来て皆様にお話をする経緯、その気持ちを最初にお話させていただきたいと思います。
[前川前事務次官] 文部科学省の前事務次官の前川喜平でございます。今日はお集まりいただきましてありがとうございます。座ってお話させていただきます。
国家戦略特区における今治市の獣医学部の新設について、私は文部科学省側の事務方トップとしてその経緯に関わっていたということですが、その間における行政の在り方について、私は当事者の立場の中で非常に疑問を感じながら仕事をしていたということを申し上げざるを得ません。
今般、国会においてその間の経緯を示す文書が議論され、野党からその存在について政府に対し問い質すということが行われ、また文部科学省においてその8枚の文書について本物であるかどうか、真正であるかどうか、存在するかどうかについて文部科学省の中で調査が行われたと聞いておりますが、その結果、これらの文書については確認できなかったという結論になったというふうに聞いております。
これにつきまして私は残念な思いを抱いたわけでありまして、これらの文書について私が実際に在職中に共有していた文書でございますから、これは確実に存在していたわけであります。そのことについて、まず申し上げたいということ。
もちろん、今回のこの文書を巡っては、こういう発言を私がすることによって文部科学省の中でも混乱が生じるだろうと思っております。文部科学省としては調査をしたけれども確認できなかったと言っているわけですから、私が出てきていやそれはありますよと言うことによって、文部科学省としても困った事態になるということだろうと思っておりまして、私の後輩たち、あるいは私がお世話になった大臣や副大臣といった三役の方々にこの件で御迷惑をおかけすることになるかもしれません。その点については、私は大変申し訳ないとは思いますが、しかし、あったものをなかったことにはできないということで、申し上げたいと思っております。
そしてもう一つ、私はこの今治市における国家戦略特区の獣医学部新設の経緯について、その当事者であったわけでありまして、その当事者として少なくとも昨年から今年の1月21日、私が辞職するまでの間、当事者として業務に携わっていたわけですから、その間、十分真っ当な行政に方針を戻すということができなかった、結局押し切られてしまったということにつきまして、私自身が負わなければならない責任は大きいと思っております。これは私が事務方のトップとして、また大臣を支える事務次官として、十分仕事ができなかったということでありますので、その点については私の口からもこの場を借りて、文部科学省に対してもお詫びを申し上げたいと思う次第でございます。
こういった思いから、この文書の真正性、信憑性ということ、それからこの国家戦略特区において今治市の提案が認められ、規制改革が行われ、獣医学部の新設が行われるという運びになったこの経緯について、私が思うところを述べたいというふうに思ったわけでございます。以上です。
[弁護士] 今のがですね、ここでいろいろとこの前に天下り問題があったりした中で辞職されて、それでその後に何でここに出てきたのかということに対する説明です。次に、例えば今朝私も買いましたけれども、「週刊文春」であるとか朝日新聞であるとか、そういったところで記事で引用されている文書が怪文書のようないい加減なものなのか、それとも文科省で職務遂行の中で作成されたものなのかということについて、御本人から説明をさせてもらいたいと思います。
[前川前事務次官] 国会において提示され、それに基づいて野党からの要求に基づいて文部科学省において調査をした対象となっている文書が8種類あったと承知しております。
この8種類の文書につきましては、これは私が昨年の9月から10月にかけて今治市の国家戦略特区の関係の課題につきまして、今治市の国家戦略特区において、文部科学省の高等教育局専門教育課から事務次官の立場で、事務次官室において報告・相談を受けた際に、私が担当課である専門教育課から受け取った文書に間違いありません。
ですから、これは真正なるものである、文部科学省の中の専門教育課で作成され、幹部の間で共有された文書であると、これは間違いないということでございます。したがって、文部科学省においても、改めて調査をすれば存在が明らかになるはずのものであるというふうに考えております。
幾つかの資料があるわけでございますが、文春の中でも紹介されておりますけれども、「平成30年4月開学を大前提に逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。これは官邸の最高レベルが言っていること」というペーパーがございますが、このペーパーは私のスケジュールによると、9月28日に私が専門教育課から説明を受けた際に受け取ったものと同じものであるということですね。内閣府から文部科学省に強く要請がきた、最初の一番強い要請がきた話でございまして、この要請が文部科学大臣までとにかく上げて、文部科学大臣が対応を求められたと、そういうきっかけになった文書といえます。
それで、この文書に対して文部科学省として非常に苦慮していたわけでございますけれども、それに含めて大臣からも懸念点が示されたわけですね。なぜ30年4月開学でなければならないのかといった点や、やはりこれは与党の中にもいろいろな意見があるから与党の中での議論が必要ではないかと、こういった大臣からの指示もあった、と。この指示を受けて、内閣府でまた確認をするという作業を担当課はしていたわけです。その間、文部科学省としても農水省とか厚生労働省など、関係する省庁にコミットメントしてほしいということは幾度も繰り返し言っていたと、そういう状況がございます。
「週刊文春」の中でも、大臣指示以降の後、10月4日の日付がついている義家副大臣レク概要というのがありますけれども、義家副大臣はその当時、その時点で農林水産省にコミットメントを求め、またそのために内閣官房の萩生田副長官にお願いをして、文部科学省だけではなくて、獣医師の養成、また新しい分野のライフサイエンス等の分野に責任を持つ農林水産省、厚生労働省の参加を求めると、こういう作業をしてくださっていたわけですね。
さらに、「大臣御確認事項に対する内閣府の回答」という文書がございます。この文書は私の定例会の日程からいきますと、10月17日に専門教育課から私が説明を受けた際に受け取った資料でございます。
この内閣府からの回答というのは、いわば内閣府からの最後通告に近いもので、与党での議論は要らないということが書いてございますし、30年4月開学というのは決まったことだと、そこに「総理のご意向」という言葉も出てくるわけですけれども、30年4月ではなくて31年以降になるのであれば、それは文部科学省の設置認可の手続きが遅れるということでそうなるのは構わないが、そうでないかぎり、30年4月開学が決まったことで大前提であるとこういったことも言われている。
また、農林水産省であれ厚生労働省であれ参加を求めることはできないと、会議に呼ぶことはできるけれども内閣府としてこの二省の実質的な参画を求めることはしないと、そういったことが申し出されたその時の資料でございます。
いずれも真正なものである、本物であるということは、私はここで申し上げることができるわけでございます。
[弁護士] 今の説明が、巷に出回っている書面が謂われのないものではなくて、確かに文科省の中で作成されて当時の前川氏に受け渡されたものであるという発言です。
[前川前事務次官] これらの文書は、私が担当課から説明を受けた時点、つまり昨年の9月から10月にかけて作成され、私が受け取ったということは間違いありません。
それが現在もあるかどうかは、これはもう私は現在の状況を確認していないので分かりませんが、少なくとも作成したもの、共有したものは、そこに今でもあります。あるいは、パソコンのサーバーの中にあるのかもしれません。そこは、私は何とも申し上げられないが、少なくとも私が在職中に作成され、共有された文書であることは間違いないということでございます。
[弁護士] 次に、この一連の問題について当時、内部の事務方の責任者であった前川氏が知っていることであるとか、あるいは問題だと考えていることについて話してもらいたいと思います。
[前川前事務次官] この広島県今治市の国家戦略特区において、その今治市における新しい獣医学部の新設に向けて、新たな追加規制改革を行うかどうかということについては、これはまず、一昨年の2015年から既に検討課題にはなっていたわけでございます。
ただ検討するにあたっては、閣議決定で「日本再興戦略」改訂第201号というものがございます。この2015年6月に閣議決定されたこの日本再興戦略の中で、新たな獣医学部の新設を認めるかどうか検討するにあたっては、4つの条件があると閣議決定で示したわけでございます。
それは、現在の提案主体による既存の獣医師養成ではない構想が具体化するということが1つ。
それから、2つ目はライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになること。
さらに、それらの需要について既存の大学の学部では対応が困難であるということ、これが3つ目ですね。
さらに4つ目として、近年の獣医師の需給の動向を考慮しつつ、全国的な見地から検討すると。そういう4つの条件の下で検討するということが、閣議決定で決まっていたわけでございます。
ですから、この獣医師養成の大学新設をもし追加規制改革で認めるということであれば、この4つの条件に合致しているということが説明されなければならないわけでありますけれども、私はこの4つの条件に合致しているということが実質的な根拠をもって説明されているとは思えません。
また、文部科学省としては、大学の設置認可の権限を法律上持っておりますが、きちんと国民に説明できるかたちで権限を行使しなければならないわけであります。また、一旦設置認可がされた大学については、国民から預かっている税金から私学助成を行わなければならないということになります。したがって、大学の設置認可は、やはりきちんと根拠があるかたちで慎重に行われなければならないわけであります。
特に医師獣医師職員など特定の分野については、文部科学省の告示である認可基準について将来の人材需要が見込めないということで、原則的に禁止というか、新設をしないという考え方に立っております。獣医学部についても、その中で獣医学部の新設は行わないという基準が既にあるわけでございまして、それは獣医学部の将来需要が見込まれないという前提があるからでございます。
獣医学部の将来需要というのは、どこが責任を持って見通しを立てるのかといえば、それは農林水産省であります。農林水産省は獣医師国家試験も所管しておりますし、獣医師という業そのものを所管しているわけでございますから、獣医師の将来の需要ということについては、農林水産省がどんな分野でどういう獣医師が必要であるかということについて、きちんとした見通しを立ててくれなければいけない。
あるいは、獣医学部で養成する人材で新たな分野、日本再興戦略でいわれているライフサイエンスで新たな分野があるというのであれば、その分野における新たな分野の需要というのが、きちんと責任ある省庁で明らかにされなければいけない。たとえば、新薬の開発ということについて、獣医学部で養成すべき人材であるというのであれば、それは厚生労働省で人材需要について見通しを立ててくれなければいけない。
文部科学省としては、そういう責任ある省庁が将来の人材需要をはっきりと見通してくれないかぎりは、現在、告示で一律新設しないといっている分野において、新たな学部を新設するということに踏み切ることはできないわけであります。
したがって、私ども文部科学省としては、農林水産省や厚生労働省の実質的な参加がなければ、この問題について結論は出せないと言い続けてきたわけですね。
ところが、結局、農林水産省も厚生労働省も将来の人材需要についての見通しは示してくれませんでした。そのままで特区での規制改革が行われてしまったということでありまして、獣医学部の新設について、これまでの特例を認めるべきだという結論は出てしまったわけでございます。
ですから、私どもとして、これは文部科学省としては、負いかねる責任を負わされたというふうに思っておりましたし、現在でも私はそう思っておりますが、改めて申し上げれば元々検討にあたって4つの条件があったと、その条件に合致しているかどうかを判断すべき責任がある内閣府がそこの判断を十分に根拠のあるかたちでしていないと私は思っております。
また、将来の獣医学部で養成すべき人材について、その人材需要の見通しを明確に示すべき農林水産省あるいは厚生労働省が、その人材需要についての見通しを示していない、と。
したがって、責任のあるそれらの主務省庁がそれぞれの役割を果たしていない中で、文部科学省においてその設置認可の審査をするというところまで来てしまっているということでございます。
これは非常に行政の在り方として問題があると。極めて薄弱な根拠の下で規制緩和が行われたと。また、そのことによって、公正公平であるべき行政の在り方がゆがめられたと、私は認識しているわけでございます。
ただ、経緯がそういうことであっても、今の状況は文部科学省がこの3月に加計学園から獣医学部新設の申請を受け取り、それを大学設置・学校法人審議会の審議に付託して、そこで審議会が審査を行っているという段階でございます。
少なくとも文部科学省においては、きちんと基準に則って公平公正な審査をして、確かにこの獣医学部はきちんと審査した結果だと結論を出してほしいというふうに願っているわけでございまして、これ以上行政の在り方をゆがめることはないようにしてほしいと、そのように願っているわけでございます。
私がその過程で責任ある立場にいたというのは事実です。ですから、この私の努力不足があったということは認めざるを得ないと思っておりますので、その点は最初に述べたとおりであります。
しかし、少なくとも文部科学省がこの先は、大学の設置認可という文部科学省の専権事項の部分で仕事をしなければならないので、その部分においてはきちんとした審査をしてほしいと思っているわけです。 
前川前次官インタビュー「私にとっては怪文書ではない」 5/25
文部科学省前次官・前川氏がNEWS23の単独インタビューに応じました。前川氏は、カメラの前でかばんを開け、加計学園の獣医学部新設をめぐり浮上した「総理のご意向」文書と同じだという書類を取り出して、詳細な説明を始めました。
前川喜平文部科学省前事務次官。今年1月まで事務方のトップを務めていた、いわば全てを知る人物です。
「今問題になっている8枚の資料です」
前川氏が我々に提示したのは箇条書きにされた8枚の文書。
「これは総理のご意向だと聞いている」
「これは官邸の最高レベルが言っていること」
「全く怪文書みたいな文書じゃないでしょうか。出所も明確になっていない」(菅義偉官房長官 17日)
菅官房長官が「怪文書」と言ったあの文書です。
「私が現職中に関係課からの説明の際に受け取って、私が保管していた資料。私にとってこれは怪文書ではない。私が自分で現職のときに手にしたものだから。あるものを『ない』と言ったり、知ってることを『知らない』と言ったり、これ以上やるべきでない」(文部科学省 前川喜平前事務次官、以下、前川)
「文書は存在する」、これまでの政府の説明と異なる当事者の証言です。
愛媛県今治市の国家戦略特区。加計学園が経営する岡山理科大学の獣医学部の建設が急ピッチで進んでいます。開学は来年春の予定。このまま進めば、実に52年ぶりに新しい獣医学部が誕生することになります。
理事長の加計孝太郎氏は、総理が「腹心の友」と慕う人物です。昭恵夫人も加計学園が運営する認可外保育園の名誉園長を務めるなど、家族ぐるみで付き合いがあります。
「(安倍総理と加計氏は)極めて長年の友人です。だからお聞きしているんです。政策が歪められているんじゃないかという質問です」(社民党 福島みずほ議員)
「そもそもですよ、何かですね、これ不正があったんですか。もし働きかけて決めてるのであれば、それは責任取りますよ。当たり前じゃないですか」(安倍晋三総理大臣)
野党側は、安倍総理の意向によって加計学園に特別な便宜が図られたのではないかと追及しているのです。そんな中浮上した8枚の文書。国家戦略特区を担当する内閣府は、「総理のご意向」などという言葉で獣医学部の早期開学を迫り、学部の認可を担当する文科省は「手続きは踏むべき」などと懸念を示しているように読み取れます。
関係する大臣たちは、こぞって文書の信憑性に疑問を呈しました。
「該当する文書の存在は確認できなかったことが判明しました」(松野博一文科大臣 19日)
「『官邸の最高レベルが言っている』とか『総理のご意向だ』ということは一切ない」(山本幸三規制改革担当大臣 19日)
しかし、前川氏は我々のカメラの前でその存在をはっきりと認める証言をしたのです。
「8つの資料について、これは私が現職のときに受け取って私が保管していたものと同一である、これははっきり申し上げられる。(報告者は)課長の場合もあれば、企画官・補佐の場合もあると思う。複数2人以上で来た場合もあると思う。専門教育課から報告を受けて、そのときに受け取った資料」
Q.退官時に“この資料はとっておかなくては”と個人的にとっていた?
「これについて私は責任を感じてたので。説明責任があるんじゃないのかという気持ちはあった」(前川)
文書には日付も作成者も明記されていません。前川氏は、自身の手帳と照らし合わせたとした上で、文書を受け取った具体的な日付を挙げました。
「これは、私は10月4日に専門教育課の説明を受けたときにはもらっていたはずです。『大臣ご確認事項に対する内閣府の回答』、この2枚のペーパーは、私は10月17日に説明を受けた際にもらっている。全部レク資料なんです。部下が上司に説明するために使う資料」(前川)
通常、作成者本人が「レク」と呼ばれる説明に立ち会うため、名前も書く必要がないといいます。
「上司というのは大体めんどくさがり屋でたくさんの文字は読まない。だから大きな字、ポイントが大きい」(前川)
確かに今回の文書の字の大きさを見ると、文部科学省の一般的な文書と比べて大きいことがわかります。また、フォント(字体)にも違いが・・・
「明朝体ではなくてゴシックにする方が読みやすいという通念がある。ポイントごとに丸をつける。上司への説明のときにだけ使う資料なので、わざわざ何月何日という必要はない」(前川)
「“総理のご意向”文書は本物」と言う前川氏。安倍総理は25日・・・
「自由、民主主義、人権、法の支配、普遍的価値で結ばれたG7の強い結束を示していく、そういうサミットにしていきたい」(安倍晋三総理大臣)
前川氏の証言に触れることなく、イタリアで行われるサミットへ向かいました。これまで“怪文書”としてきた菅官房長官は、改めて文書の内容を否定しました。
「文書について文科省が行った調査結果では存在は確認できなかった。内閣府は、文書に書かれているような『官邸の最高レベルが言った』とか『総理のご意向』とか言った事実はない、総理からもそうした指示は一切なかったと」(菅義偉官房長官)
文科省は、文書をめぐり、幹部ら7人を対象にヒアリングを行い、省内の共有ファイルなどを調査したとしています。その結果、文書は確認できなかったとの結論を出したのです。
Q.文書は文科省内で作られていないと結論づけたが、仮に覆った場合、どう責任をとるのか?
「新たな事実が出てくれば、必要があれば調べていって状況を判断していく」
Q.辞任する考えは?
「考えておりません」(松野博一文科大臣 19日)
Q.文書が役所のどこかに残っている可能性は?
「(文書を)作った人は今もいるわけですよ、文部科学省に。本当のところ、わざわざ調査するまでもない。現役の後輩たちが気の毒でね。『ここにあります』なんて言っちゃダメだよという話。『私持ってます、ここにあります』とか言っちゃダメという話」(前川)
前川氏が文書に関わったと指摘した文科省の現役職員は、25日朝、私たちの取材に対し「何も言えないです」と緊張した面持ちで答え、足早に立ち去りました。
Q.前川氏に取材し「文書は存在する」と証言を得た。存在を認めるか?
「私、インタビューを見ていないので、どういう発言したか、今、承知していない。それに関してコメントできない」(松野博一文科大臣)
松野文科大臣には野党からも追及が相次ぎました。
「前次官の告白の内容は、普通に見れば動かしようのない事実だ」(民進党 斎藤嘉隆参院議員)
「既に辞職された方の発言。文科省としてコメントする立場にない」(松野博一文科大臣)
「確認できなかったということは、あるともないとも言っていない。確認できなかったということで、ないという結論ではないですね?」(民進党 斎藤嘉隆参院議員)
「調査により、担当局内の行政文書として存在していない。存在がない」(松野博一文科大臣)
「行政文書としては存在しない」と述べ、改めて調査をする考えは示しませんでした。野党側は前川氏の証人喚問を求めています。
「(調査された職員に)記憶がないはずない。『記憶ない』と答えたことにさせられているんだな。彼らにとっても本意ではない、非常に不本意な振る舞いをさせられている。大臣も含め、ものすごく気の毒だなと」(前川)
文書の中にある「総理の意向」という言葉。これについても前川氏は証言しました。
Q.「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」、誰の言葉?
「内閣府の藤原審議官だと認識しています。専門教育課の者があのペーパーで説明に来たときに『内閣府の藤原審議官からこのように言われた』と私に説明した。『総理のご意向だと聞いている』、審議官は聞いている、だけど、それを言った人は誰かわからないし、その人は本当に総理からそういうふうに聞かされたのかもわからない」(前川)
しかし、内閣府で国家戦略特区を担当している藤原豊審議官は、「『総理の意向』などと言ったことはない」としています。
「『官邸の最高レベルが言っている』『総理のご意向だと聞いている』とお伝えしたことはございませんし、総理からもそうした指示等は一切ございません」(藤原豊審議官)
食い違う両者の証言。
「私は私の部下を信頼していますから。部下が聞いてきたことを文字にして持って来た、確かに聞いたことだろうと私は信じている。我々は内閣府からそう聞かされた。『聞かせた覚えはない』というなら聞き間違いだったのかと」(前川)
では、「総理の意向」などの言葉を文科省側はどう受け止めたというのでしょうか。
「政治的な配慮が必要だという言い方に聞こえる。役人である我々ではなく、政治家である大臣・副大臣がどう判断するかの問題」(前川)
判断するのは大臣や副大臣としながらも・・・
Q.「総理の意向」などを聞かされた側(官僚側)に配慮・遠慮が働いた?
「それなりの意識はしただろうと思う。何もなかったとは言えない」(前川)
これまで、獣医学部の新設は50年以上認められてきませんでした。「獣医師の数は足りている」との認識からです。
「説明がつかないと思う。どうして今治で160人規模の獣医学部をつくらなきゃいけないのか。一体、どういう分野・人材をどの程度の規模養成するために必要なのか」(前川)
今治市などは2007年から15回にわたって新設を申請しましたが、認められませんでした。しかし、2015年になって風向きが変わります。安倍総理が議長を務める国家戦略特区に提案すると、実現に向けて急速に事態が動き出したのです。
「腹心の友である理事長から獣医学部創設についてこれまで何らかの相談を受けていたか」(民進党 斎藤嘉隆参院議員)
「加計学園から私に相談があったことや圧力が働いたということは一切ない」(安倍晋三総理大臣)
文科省は内閣府に対して獣医学部を新設する必要性を具体的に説明するよう求めたといいますが、要求はほとんど受け入れられなかったといいます。
「我々としての懸念は何度も何度も投げかけてはいたけど、内閣府はいいんだやれというスタンスだった。私から見ると、内閣府の仕事のしかたというのは乱暴なんじゃないかと意識せざるを得ない。どうして乱暴なことをしたのか、私には説明できない」(前川)
結局、内閣府に押し切られたと話す前川氏。自戒を込めてこう訴えます。
「獣医学部の設置については、文部科学省がここまでやったけど、力及ばず、こういう形になってしまっている。行政の筋がおかしいと説明する責任ある。あるものを『ない』と言ったり、知ってることを『知らない』と言ったり、これ以上やるべきでない。私ができなかったことをやってくれと後輩に言っているわけだから、何で自分でできなかったことをやれと言ってるんだという批判はあると思う」(前川)
前川氏は今年1月、事務次官を引責辞任しています。文科省が法律で禁止されている天下りを組織的にあっせんし、さらにその事実を隠蔽していたことが理由です。その後、文科省を去った前川氏。今回、文書が実在すると告白した背景には、どんな意図があるのでしょうか。
Q.自分が天下りできなかった個人的恨みで言っていることは?
「そんなことは毛頭ありません。再就職規制違反の問題は、そのとき、事務方の最高ポストに私がいたわけだから、責任はある。責任あるし、悪かったと国民の皆さんに謝らないといけない」(前川)
責任を感じて次官を辞任したという前川氏。菅官房長官は前川氏を批判しました。
「当初は責任者として自ら辞める意向を全く示さず、地位にしがみついておりましたけれども、天下り問題に対する世論からの極めて厳しい批判等にさらされて最終的に辞任をされた方である、このように承知しております」(菅義偉官房長官)
前川氏は25日夕方、記者会見を開き、当時、「計画は加計学園ありきで動いていた」と証言しました。
「関係者の間の暗黙の共通理解としてあったのは確かだと思います。内閣府においても文部科学省においても、この国家戦略特区で議論している対象は今治市で設置しようとしている加計学園の獣医学部であると、そういう共通認識のもとで仕事をしていたと認識しております」(前川)
菅官房長官が「事務次官の地位にしがみついていた」と述べたことについては、こう否定しました。
「辞職を承認していただきたいというお願いを私から大臣に申し上げた。地位に恋々としたとか、あるいはジタバタしたということは、私は無かったと思っている」(前川)
一方、前川氏が出会い系バーに通っていたと読売新聞が報じたことについては、「女性の貧困の実態を実際に会って話を聞いた。極めて個人的な行動で、どうして読売新聞が報じたのかわからない」などと述べました。
今回、「NEWS23」の単独インタビューに応じた前川前事務次官。文書の存在を証言するに至った思いをこう話しました。
「政府の中でどのように意思決定が行われているのかを国民が知ることは、民主主義の基本の基本だと思います」
Q.この文書が公になったことで国民に何を知ってほしい?
「文部科学省が心ならずも十分な裏づけの無い仕事をせざるを得なくなっているということ。決して内閣の転覆を考えているわけではない」(前川) 
「100%真実」前川・前事務次官が加計学園問題を語る 5/29
( TBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ!」に5月29日、文部科学省の前川喜平・前事務次官が生出演しました。)
荒川 / 菅官房長官が文科省で確認してはみたものの、文書の存在は否定しているというところなんですが、これはどう思われますか?
前川 / 私は実際、現職の時に確実に手にとって見たこともある文書ですから、存在しているんです。ただ、文部科学省としてはなかなか「ありました。見つかりました」と言えない立場なんじゃないかと思うので、苦しいところだと思うんです。だから「ありません」とは言っていないと思うんですよ。「探しましたが、確認できませんでした」と言っているんですね。文部科学省としてはそこがギリギリの対応なのかなという風に私は想像しているんですけどね。
荒川 / 武田一顯記者。その確認云々、どう見ます?
武田 / 「確認できない」もしくは「あったけどない」という可能性もあるわけですよね、政府にしてみると。捨てちゃったりするものなんですかね?役所って膨大な文書を取っておくじゃないですか。森友学園の話もそうなんですけど。普通、取っておきますよね?
前川 / そうですね。この国家戦略特区での獣医学部新設に関わる文書はもっとたくさんあるはずなんです。で、今回出てきている文書の多くは、二次的な文書。保管用、保存用の文書の中からエッセンスを取り出して、ポイントを再構成した文書。だから日付も入っていない。これは基本的には、部下が作って上司に説明するために、その場限りで使うというものなので。まあそんなに保存・保管を厳密にしているわけではないと思うんですが、まあまだ1年もたっていないわけですから。普通はどこかにありますよね。
青木 / 文書の存在・不存在っていうのはもちろん大切な問題ではあるんですけども、事務方のトップである前川さんが証言をされるようになったわけですから。そもそも、「総理のご意向」なり、「最高レベルの意志だ」っていうものが、もう前川さんが役所のトップとして感じていたことは間違いないわけですよね?
前川 / そうですね。少なくとも、言葉では聞いていましたからね。まあ私が担当の専門教育課から説明を受けた際にも、内閣府の責任ある方が語った言葉としてですけども、「官邸の最高レベルの言っていることだ」とかですね、「総理のご意向だと聞いている」というような言葉があったわけで。それを私どもの文部科学省の職員…まあ課長レベルの職員が聞いてきて、それをメモにして。それを文部科学省の幹部の中で情報として共有したわけですから。私はこれは、実際に内閣府の然るべき地位の方が語ったことであるということ自体は100%真実だと思っています。
青木 / 今日、安倍首相がG7から戻ってきて、国会で「これは岩盤規制を打ち破るためなんだ。抵抗勢力を打ち破るためだったんだ」ということを強調されているんですけも。たしかに、街の声とかいろんなメディアを見ていると、「これは岩盤規制を破るためだったんだ。抵抗勢力がむしろ悪いんじゃないか?」っていうようなことをおっしゃる方もいるんですけども。獣医学部をずーっと作らないって言ってきたっていうことは、これは抵抗勢力なんですか?あるいは岩盤規制の1つだという風に言われても仕方ない面があるんですか?
前川 / いや、私は「岩盤規制」という言葉は当たらないと思います。まあ、岩盤規制という言葉自体がもう規制そのものを全部「悪だ」と言っているような言葉だと思うんですけどね。もともとは、20年ほど前はもっと冷静に規制というものを考えていたと思うんですよね。経済的規制と社会的規制はしっかりと分けて、市場における自由な経済活動に任せる方がベターだと思われるものについては規制緩和を考えていこう。しかし、規制を外すことによってより不都合が生じる、あるいは国の財源を無尽蔵に使うということにならないようにすることを考えれば、残すべき規制と見直すべき規制っていうのはあるんだという区別はずっとつけてきたはずなんですけど。で、この獣医学部に関してはですね、やはり今後の人材需要を見通した上で考えなければいけない。無制限に作っていくという話ではないと思います。だから、この規制を見直すということ自体は悪くないと思いますが、見直すにあたってはきちんとした根拠がある形で見直さなければならないんで。本当に将来的に人材需要があることがはっきりするのであれば、50年経ってからでも間口を広げるのはあり得ると思うんですけど。
荒川 / 我々一般的にイメージを持っているのは、今回のこの加計学園っていうのは、総理との親しい友達という関係。これが優先されたトップダウンであるというのが、「ああ、そういう図式か」と。現場ではどういうような印象だったんですか?
前川 / 今治市で加計学園が新しい獣医学部を作りたいという意向を持っているということ自体はずっと前から我々は知っているわけです。報道されているように、構造改革特区の制度の中で何度も何度も「認めてほしい」というご要望はあったわけですけども。それは、政府として――文部科学省だけの一存ではないですけども――内閣府も農林水産省も文部科学省も含めて、政府として「それはお断りします」という形で、構造改革特区での実現はできていなかったわけで。ですからやはり、今治市が国家戦略特区になったという時に、じゃあ今度はここで国家戦略特区としてまた加計学園の獣医学部の新設ということを調整しようというお考えなんだろうなという風には思いましたから。やはり「国家戦略特区における獣医学部」と言われた時には、「加計学園」という言葉が明示的に出てこなくても、加計学園のことだろうなということは関係者…つまり内閣府も文部科学省も農水省も、暗黙の共通理解としてあったわけですよね。
青木 / つまり「首相のお友達の案件である。これはちょっと注意して扱わないと、あるいは関係の意向を忖度しないとマズいぞ」という考えみたいなものが役所の中にはあったと?
前川 / なかなかそこはイコールでつなげられないですけどもね。そう思った人もいたかもしれません。
青木 / たとえばね、毎日新聞が報じているんですけども。なかなか文科省が言うことを聞かないものだから、前川さんご自身が去年の秋ごろに官邸に呼ばれて、首相補佐官に「改革をもっと急ぐように高等教育局に言ってくれ」というようなことを言われたという報道もああるんですけども。あったんですか?
前川 / 今日の時点ではお答えを差し控えさせていただきます。すいません、急に官僚になって申し訳ないんですけども。
武田 / 官房長官の記者会見。怪文書だとか、前川さんへの個人攻撃という風に世の中で言われる。どうしてあんな官房長官がこんなムキになって……まあ怒っているのか、動揺しているのかわかりませんけども。ああなっちゃうんですかね?
前川 / それはちょっと私にはコメントできないんですけど。ただ、私が記者会見などでお話し申し上げたことというのは、あくまでも内閣府と文部科学省の関係においての問題なんですよね。まあ、内閣府からいろいろと求められたわけなんですけども。文部科学省としてはやはり、きちんとしたステップを踏まなければ意思決定できないという、まあ愚直というか真面目というか、そういう考え方だったわけで。中でも、50年以上新設を認めてこなかった獣医学部の新設を認めるのであれば、それは「新たな需要がある」ことを世の中に示さなければいけないし。獣医学部って6年間かかりますから、学生を1人養成していくのに結構お金がかかるわけです。そこに私学助成もつぎ込むことになりますから、それだけのことをするのであれば、それだけの理由がなければいけない。で、その「人材需要についてのきちんとした見通しが示されていない」というところにもうひとつ、大きな問題がある。それからもう1つ言えば、そもそも国家戦略特区として獣医学部の新設を考えようという時に、閣議決定で決めた条件があるわけで。それは、「日本再興戦略」改定2015という閣議決定文書ですね。2016年の6月30日だったと思います。そこで、こういう条件をクリアしたものは認めるということを考えましょうと。その中にはたとえば、これまでにない分野、新しい分野での具体的な人材需要があって、それをこれまでの既存の大学・学部では対応できないんだという場合に、特区で新しい獣医学部を作るということも検討に値するかもしれないけども、その場合も全体としての獣医師の需給を見た上で判断すべきだと。まあいろんな、その4つの条件があるわけですよ。その4つの条件を満たしていないんじゃないか? 満たしているかどうかは、内閣府がちゃんと責任を持って判断をしてくれなければ困るんだけど、そこができていないんじゃないですか?という。これ、文部科学省が最終的に責任を負うことじゃないけども、内閣府は本当にそこは大丈夫なんですか?ということはずーっと言い続けていたわけで。
荒川 / はい。
前川 / そこの条件が満たされていないんじゃないかという懸念を我々は持ったまま、結局は特区で穴を開ける。特区で特例を認めるという結論を、文部科学省としてはその結論を押し付けられたという気持ちなんですよね。
武田 / 今年1月に事務次官をやめて、今は何をしているのですか?
前川 / 今まで教育行政をやってわけですが、教育現場の仕事はほとんどしてこなかったわけです。本当の現場の仕事をしたいと思って、自主夜間中学のボランティアで、特に学校教育を十分に受けられなかった高齢者などに漢字を教えたり。高校生の土曜学習の支援として、因数分解だとか、英語のbe動詞の使い方とかを。
青木 / (特定非営利活動法人の)キッズドアってやつですか?いまネットで話題になっていますが、なんで前事務次官とか言わずにこっそり(キッドドアに)応募してやっているんですか?
前川 / ただのおじさんですから。やめる前にどんなポストでいたのかは関係ないですからね。
青木 / (政府などが)前川さんを批判するときに言うのが、「(文書の内容を)現役のときに言えばよかったじゃないか」という意見に関しては?
前川 / 本当に忸怩たる思い。努力不足だったといわざるを得ないと思ってます。おかしいと思っていたのに、大きな声で(おかしいと)言ったのではなく、文科省のなかで小さな声で言っていたと。私自身が内閣府と対峙したかというと、やっていないわけです。担当の専門教育家に「なんとか頑張って」としか言っていただけで。批判は甘んじて受けざるを得ないと思ってるんです。
片桐 / 表立って言えないという雰囲気だったんですか?
前川 / はっきり言えば、「私がどう動こうと、結論は変わらないだろう」と先回りして考えてしまった。だからといって、何もしなかった言い訳はできないですけどね。
青木 / 退任したときの職員の方に文科省全員に「多様性を大切にしよう」とか「弱い人たちに手を差し伸べるのが行政官の第一の使命じゃないか」というメールを送ったと朝日新聞の報道で見たのですが、今の政府はこの逆の動きだと思うのですか、どう感じますか?
前川 / 今の政権のもとでも…というと語弊があるかもしれませんが、教育のいろんな方向の議論はあって。国民を一色に染めてしまおうという議論は、確かに強いのは強いです。恐ろしいことだと思っています。一方で、昨年12月に議員立法で、「教育機会確保法」という法律ができて、学校ではないフリースクールで学ぶという方法も認めていこうとか、義務教育を受けられないまま大人になってしまったり、義務教育を受けないまま外国から日本に来た人のための多様な学びの場を作っていこうという。それが夜間中学なんですけど。まったく、全体主義的な方向に進んでいるというわけではない。しかし私は、現役時代から危惧していたんです。
青木 / 文科省は以前、「教育勅語を教材で使うのは適当ではない」と言っていたが、教育勅語に対する文科省の立場は変わりましたか?
前川 / 変わりました。政治の力で少しずつ変わってきたのは認めざるを得ない。だから、ここで見直す必要があると思います。暗唱して(教育勅語の精神を)身につけることはいいことだ、という考えは非常に危険だと思っています。
荒川 / リスナーの方からメールが来ています。40代のドライバーから。「仮に大臣や議員の意向を省庁が断ったりスルーをした場合は、どうなるのですか?」
前川 / 役人というのは、しもべ。政と官の関係はそういうものなんですよ。議員は選挙で選ばれてますから、国民の代表。役人は(国民)全体の奉仕者ではあるが、試験で選ばれているだけであって国民の代表ではない。従って、(議員に)従うのが普通。しかし、役人はひとつの専門性を持っている。政策に関しては役人のほうが分かる。政治家に全部従ってしまうとよくないときがある。そういうときは面従腹背しかないです。
荒川 / 内閣人事局という人事権を握って、国家戦略特区というナタまで持たれてしまうと、従わざるを得ないんじゃないですか?
前川 / 面従腹背にも限度があってですね、これ以上、腹背ができないというリミットがあるんですよね。
青木 / 官僚社会が全体の奉仕者ではなく、政権の奉仕者・官邸の奉仕者みたいになっている風潮は強まっている?
前川 / 政権中枢に逆らえない雰囲気が強まってきた印象は持ってますね。
青木 / もう1つ。出会い系バーに通っていたと言われて。在職中に警察庁出身の杉田官房副長官に言われたと。どういう印象を受けました?
前川 / まったく私的な行動ですから。どうしてご存知なのか、とにかく不思議に思いました。
武田 / 政府が何らかの形で行動確認をしていた可能性があるってこと?
前川 / その辺は、私は全くわかりません。とにかくご指摘を受けた時には驚いたと…。どうしてご存じなのかと。
青木 / 恫喝とか思わなかった?
前川 / 恫喝とは思いません。ご親切に「君、気をつけたまえ」という。
青木 / 一部新聞に報じられたときは恫喝だと思いましたか?
前川 / あれもびっくりはしましたけど、恫喝とか威嚇とか脅迫とか、見ようと思えば見えると思いますけど、私は鈍感なほうで、そういう風には受け取らなかった。ただ、なんであの記事が出たのかはびっくりしました。 
前川前事務次官 国民が納得できる説明を 6/15
学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる文書の追加調査の結果が公表されたことを受けて、文部科学省の前川喜平前事務次官はコメントを出しました。
この中で前川氏は「文書が『あった』と確認されたのは当然のことですが、この間、文科省のなかで多くの人が苦しい思いをしていることには、大変心を痛めています」としています。
さらに「今後は内閣府と国家戦略特区諮問会議において、加計学園の獣医学部新設を認める過程の中で、具体的にどのような検討・検証を行ったのか、行わなかったのかを国民の前に明らかにし、さまざまな疑問点について説明責任を果たしてほしい」としています。そのうえで、内閣府に対して、加計学園を特定事業者とすることを初めから決めていたのではないか、関係団体や専門家などからの意見聴取は十分に行ったのかなど、6つの疑問点を挙げ、国民が納得できる説明をするよう求めています。
文部科学省の前川喜平前事務次官のコメントの全文は以下のとおりです。

もともとあった文書が「あった」と確認されたのは当然のことですが、この間、文部科学省の中で多くの人が苦しい思いをしていることには、大変心を痛めています。松野大臣は苦しいお立場の中で、職員のことを思いつつ、精いっぱいの誠実な調査を実施されたと受け止めております。
これらの文書に記載された「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」といった内閣府の発言は、今治市における獣医学部の開設の時期を平成30年4月とすることを指すものであることは文書の記載から明らかです。
私自身も、平成28年9月末から10月半ばにかけて、内閣府との打合せに出席した文科省の担当者から、内閣府の藤原審議官から明示的に、今治市に獣医学部を新設し平成30年4月に開設することについて「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」という発言があったと報告を受けております。
彼らは、内閣府の性急な方針に大変困惑していました。
これら一連のやりとりが加計学園の獣医学部を指していることは、今回存在が確認された文書の記載からも明らかです。
このような強引な進め方により、規制改革の是非の判断に必要な検討が行われなかったことが問題だと思います。
私は、必要な規制改革はどんどん進めるべきだと思いますが、公費の投入を伴う場合や、特に国家戦略特区は特定の主体に特別の措置を講じる制度ですので、このような場合には、特に透明性を確保しつつ十分な検討・検証を行った上で、確たる根拠を持って、公正・公平に手続きを進めるべきだと思います。
今後は、内閣府及び国家戦略特区諮問会議において、国家戦略特区で加計学園の獣医学部新設を認める過程の中で、具体的にどのような検討・検証を行ったのか、又は行わなかったのかを、国民の前に明らかにし、様々な疑問点について説明責任を果たしていただきたいと思います。
国家戦略特区制度の主務官庁は内閣府です。
責任を文科省に押しつけるなど言語道断です。
具体的に内閣府に説明してもらいたい疑問点は、次のような点です。
1.加計学園が設置する獣医学部は、国家戦略特区制度が目的とする国際競争力の強化や国際経済拠点の形成に資するものなのか。
2.加計学園が設置する獣医学部は、『「日本再興戦略」改訂2015』で閣議決定された4条件を満たすものなのか、特に、獣医師が新たに対応すべき分野の人材養成の必要性やその規模は明らかにされたのか、その人材養成は既存の大学では対応困難であり加計学園の獣医学部を新設することが解決策として適切なのか、そして加計学園を卒業した人材が本当に新たな分野に向かうのか。
3.内閣府は、人材需要に責任のある農水省と厚労省を、人材需要の検討に実質的に参画させたのか、特にライフサイエンス等の新たな分野における獣医師の需給についてきちんと検証したのか、検証したのであれば、どの省庁がどのような根拠を示して説明したのか。
4.諮問会議は本当に十分な情報に基づいて実質的な議論をしたのか、また、関係者、関係団体、関係業界、学者、専門家などからの意見聴取は十分行ったのか。
5.内閣府は今治市と密接に連絡を取りあい、最終的に加計学園を特定事業者とすることを、初めから決めていたのではないか、また、今治市の提案と京都府・京産大の提案との比較検討は十分行われたのか。
6.11月9日の諮問会議決定に「広域的に」「限り」の文言が入ったこと(本日、文科省から公表された資料には、萩生田官房副長官の指示とされている)、11月18日の共同告示のパブコメで「平成30年4月開設」が条件とされたこと、1月4日の共同告示で「1校に限り」とされたことを、どう説明するのかこれらの疑問点について、内閣府は真摯(しんし)に調査し、その結果を国民が納得できるようしっかりと説明する必要があると思います。   前川喜平 
 
前川への批判

 

加計学園問題・前川前事務次官はなぜ安倍政権に「歯向かった」のか 5/25
 事務方トップの反乱が意味するもの  
犯人捜し
永田町に激震が走った。
文部科学省の事務方トップだった前川喜平前事務次官が、『週刊文春』(17年6月1日号)の取材に応じて、安倍晋三首相の意を受けた内閣府官僚らの圧力に負けて、首相の「腹心の友」である加計孝太郎氏が理事長を務める加計学園の獣医学部新設を許し、しかもその過程を綴った内部文書が「本物」であると認めたのだ。
問題となったのは、5月17日、『朝日新聞』が「新学部『総理の意向』」と、大見出しを掲げ、1面トップで報じた獣医学部新設に絡む記録文書。昨年9〜10月に文科省と内閣府のやりとりなどをまとめたA4版で8枚の文書である。
朝日は、これをもとに記事を作成、民進党は国会でこの問題を取り上げたのだが、菅義偉官房長官は、「名前も日時も記載されていない怪文書のようなもの」と、切り捨てた。
すると朝日は、翌18日、日時と氏名が記載された文書を、そのまま掲載。そこには、「平成30年4月の開学を大前提にして欲しい」と、内閣府の官僚が文科省の窓口に伝えたうえで、「官邸の最高レベルが言っていること」と、プレッシャーをかけている様子が記されていた。
前川氏は、この文書の存在も認めたうえで、「総理のご意向かどうかは確認のしようはありませんが、ここまで強い言葉はこれまで見たことがなかった」と、語っている。
プレッシャーをかけたのは内閣府の藤原豊審議官。「経産省からの出向者で、とにかく官邸の意向を大切にする人。国家戦略特区有識者議員で、特区選定の実力者である竹中平蔵・東洋大教授に可愛がられている」(内閣府関係者)という。
前川氏は、一連の文書が文科省のものであることは認めたものの、流出させたのが誰であるかに言及したわけではない。だが、菅官房長官はオフ懇の場で、「(流出させたのは)元最高責任者」と語っており、文科省内部でも「総理の威を借りて獣医学部新設をゴリ押しする内閣府と、特区という例外規定を突破口に、新設を図る官邸のやり方に批判的なOBが流したもの」と、目されていた。
では、そのOBは誰か。その際、本人かどうかはともかく、官邸に対してケンカを売るだけの度胸を持ち、事実、近年、官邸とぶつかることが多かった前川氏とそのチームではないか、というのは菅氏だけでなく霞ヶ関の了解事項だった。
前川喜平とは何者か――。
私は、審議官時代に自ら就職先あっせんの口利きしていたことが発覚して、今年1月に退任した前川氏の「華麗なる経歴と人柄」について、本サイトで配信したことがある。
祖父は前川製作所の創業者で妹は中曽根弘文元文相に嫁いでおり、本人も与謝野馨氏が文相時代に秘書官を務めており、経歴は事務次官コースを辿るに相応しかった。
一方で、小泉純一郎政権の「三位一体改革」に噛み付き、自らの名をもじった「奇兵隊、前へ!」と題するブログで政府方針に歯向かうなど型破り。そんな主張を通すところが、今回、「犯人説」が流れたゆえんだろう。また官邸とは、今回の加計学園騒動の前に新国立競技場建設をめぐって、ギクシャクしていた経緯もある。
明らかなる圧力
周知のように、新国立競技場は予算オーバーで白紙撤回されるなど、失態続きだった。原因のひとつに、文科省と建設を仕切る日本スポーツ振興センターの実力不足がある。両者とも、こんな大型工事を仕掛けた経験がなく、あげく、14年に最初の大型発注である解体工事でつまずき、呆れ果てた官邸が、事実上の仕切りを国交省営繕部に委ね、杉田和博・内閣官房副長官の指揮の下、国交省OBの和泉洋人・首相補佐官が担当した。
菅氏からすれば、文科省は新国立競技場で“ミソ”をつけ、官房長官に委ねられた国家公務員の幹部人事でも、勝手に暴走した許しがたい存在だった。天下りあっせん問題は、3月末までに最終報告書がまとめられ、前川氏を含む43名の幹部が処分されたが、それも当然で、本来なら今も謹慎中であるべき役所である。
だが、今回、安倍政権に歯向かった。
その反乱を予期したような記事が、5月22日、『読売新聞』に掲載され、波紋を広げていた。「前川喜平・前次官(62)が、在職中、売春や援助交際の交渉の場になっている東京都新宿区歌舞伎町の出会い系バーに、頻繁に出入りしていたことが関係者への取材でわかった」という記事である。
確かに、出会い系バーは、高級官僚が通っていい場所ではない。しかし、前川氏は、既に、退任しており、1民間人だ。しかも売春の証拠を示したわけでもない記事を、このタイミングで報じるのは、「官邸の意を受けたもの」と、受け取られても仕方がない。安倍首相が国会で改憲の意味を問われて、「読売新聞を熟読して欲しい」といった読売が、今回も官邸の側に立った。
記事は、「これ以上、資料を出せば、ただじゃおかない」という官邸のサインだったのか、あるいは週刊文春のインタビューに応じたことを察知した官邸が、「前川証言」の信頼性を薄めようとリークしたのか。
いずれにせよ、「朝日VS読売」という対立構図が浮き彫りになり、同時に「内閣府VS文科省」という構図があることもハッキリした。それを生じせしめているのは、安倍1強の圧倒的な力であり、「安倍の意」を忖度して右往左往する政治家、官僚、マスコミの異様な姿が明らかになった。
だが、そこにもほころびが生じ始めた。文科省事務方トップの反乱は、「安倍1強」の終わりの始まり。森友学園に続いて加計学園でも発覚した「安倍周辺の横車」を徹底解明、「私がやらせたという証拠があるなら議員辞職します」と、ぶち切れた安倍首相に責任を取ってもらうしかない。 
前川・前事務次官の記者会見は、官僚目線で見れば「大失敗」だった 5/29
 致命的なミスがそこかしこに…
あの会見の「問題点」とは?
先週「加計学園問題の本質は何か? このままでは政府の勝ちで終わるだろう 既得権維持派が何を言っても…」と題して、加計学園の問題についての解説を書いた。
この問題の背景には、獣医学部新設を巡り、規制緩和(新規参入)と規制維持(新規参入阻止)の争いがあると指摘した。その一環として、政府を追及している民進党・玉木雄一郎議員が、新規参入阻止側の日本獣医師政治連盟から献金を受けており、その意見をもとに国会で質問していることを示唆した。
そうしたら、先週25日(木)、前川喜平・前文部科学事務次官が25日に記者会見を開き、「総理のご意向」などとする、文科省の(ものと言われる)文書を「本物だ」と発言した。
これに対して、民進党は大喜びし、文書を「スクープ」した朝日新聞をはじめとする一部のマスコミも、大変に盛り上がってさかんにこれを報道している。
しかし、筆者の目から見れば前川氏の会見は、元官僚とは思えないほどのアラが目立つものだった。そして、何よりこの会見によって、加計学園問題の本質は、やはり新規参入推進の内閣府と、新規参入阻止の文科省の争いであることがより明確になったといえる。
筆者の現時点の考えは、先週指摘した「森友学園問題と同じように、安倍政権へたいした影響を与えない可能性が高いだろう」というものとまったく変わっていない。まさに、加計学園問題は「第二の森友学園問題」であり、森友学園問題のように壮大な「空振り」で終わるだろう。
森友学園問題では、野党とマスコミは、近畿財務局の「大チョンボ」が原因であったことが明らかにもかかわらず、総理の「関与」があったという前提で物事をみていたので、「空振り」になったのだ。
今回の加計学園問題でも、実はその構図は似ている。文科省が内閣府との交渉議論に負けただけなのに、野党とマスコミは、そこに総理の「意向」があるはずと思い込んでいるのだ。森友学園問題で空振りをした野党とマスコミは、まったく学習効果がないのだとあきれてしまった。
これは、文科省の責任だ
この検証は、幸運なことに前川・前次官の会見からほとんど行うことができる。発言の詳細な内容は、マスコミ各紙で報じられている。そのポイントは、
1 あの文書が本物だった
2 文科行政が歪められた
という2点につきる(なお、前川氏が出会い系バーに出入りしていたという話もあり、一般的にはこちらで盛り上がっているようだが、残念ながら筆者はその方面の土地勘がないのでコメントできない)。
1については、仮に文科省の官僚があの文書を書いたとしても、オリジナル、つまり一次情報ではなく二次情報であるので、資料としては二流品、三流品である。内閣府側の発言と齟齬があるなら、文科官僚の書いたとされる文書がデタラメ、という可能性もある。
文書は文科省と内閣府の両者が確認・一致しないと意味がない。ランクの低い官僚にはあの文書をチェックすることができないのをいいことに、直接的に聞いたわけでもない「総理の意向」という言葉を使って物事を推し進めようとするのは、官僚の世界ではよくある手法だ。
それに官僚が、交渉の相手となる他省庁の官僚の要求について、文書で大げさに強調することは、かなり一般的に見られるのだ。
いずれにしても、文書が文科省のものであっても、「総理の意向」という発言があったのかどうか、その証明にはなにも役立たない代物であり、その意味では出所不明の「怪文書」と大差ない、価値のない文書なのである。
今後、内閣府担当者が、交渉の場で「総理の意向」と発言していた録音テープでも出てこない限り、この文書は役にたたないだろう。
それでもなぜメディアはこれを大袈裟に報道するのか。筆者には、役所文書というと、ありがたい情報として扱う、日本のマスコミの体質にも問題があると思う。
続いて2についてだが、前川氏は致命的な発言をしている。
前川氏は会見で、2015年の閣議決定において、獣医学部設置に関する将来の需給見通しなどの4条件が示されているが、加計学園の獣医学部新設が、それらの4条件に合致していることが説明されていないと記者会見で述べている。
しかし、この4条件をチェックするのは、文科省の責任である。大学の設置認可権限を持つのは、言うまでもなく文科省である。文科省以外の省庁が何かやってくれるのを待っても無駄だ。
もし、そのような他力本願体質なのであれば、文科省は許認可行政なんかやめたほうがいい。そのほうが大学関係者は喜ぶだろう。
文科省の負けは見えていた
もともと大学については設置の自由があり、その上で許認可を欠けて設置の自由に制限をかけるので、その説明責任は許認可を持つ官庁にある。獣医学部は、これまで52年間も新設が認められなかった「岩盤規制」である。そこで、戦略特区法や閣議決定で、こういうときには認めるという枠をはめている。
具体的には、歯止めをかけたいのならば、文科省が「需要見通しをつくったが、これでは新設学部は不可能」と証明すればいいだけだ。前川氏の会見を聞いていると、需要見通しは農水省が作ってくれなかったとか泣き言ばかりで、許認可官庁としての責任をみじんも感じられなかった。
前川氏は、行政が歪められたらというが、単に文科省の意見を納得がいくように説明できなかっただけだ。くだらない愚痴は退任後にいうべきでなく、現役時の時に、仕事の中でいうべきだ。
実は、前川氏が言及した閣議決定での4条件において、「需要見通しが立たない」ことを上げた段階で、文科省の負けはみえていた。
一般論としては、需要見通しは(それがきちんと作られたものであるならば)、それを論破するのはなかなか困難である。需要見通しは、複数の方程式体系からなる数理モデルであって、文系事務官僚の手に負える代物ではない。
実のところ筆者は、需要見通しを見破る役人として霞ヶ関では名前が通っていた。道路公団の民営化の際、国交省が作成した資料のなかで、道路5ヵ年計画の基礎資料になっていた道路需要見通しについて過大に行っていると指摘したこともある。
官邸から依頼されて、5000本程度の数式モデルからなっている道路需要推計モデルについて、2週間程度ですべて検証し、数本の式の推計に誤りがあったので、再推計したところ、道路需要が数%過大になっていたわけだ。その結果当時の国交省道路局長はこの誤りについて謝罪した。
ただし、需要見通しではこのような客観的な誤りを見つけられなければ、受け入れざるを得ない。そもそも「数式上のバトル」なので、文系官僚には手がでない分野だ。
国交省などには、こうした数量モデルに強い技官が多数いるために、自前で需要推計モデルを持っており、自前で需要見通しを作れる体制になっている。しかし、文科省ではその体制ができていない。
前川氏はそれについて「農水省が需要見通しを作ってくれなかった」という泣き言を記者会見で述べており、ここのところが官僚出身の筆者としては強い違和感を覚えたのだった。
ここから先は、筆者の邪推である。
結局マスコミは分かっていない
役人がなにかに抵抗するためには、強力なバックが必要である。今回でいえば、獣医師の供給増を嫌う獣医師会である。しかし、52年も新設学部を認めてこなかったために、各所にひずみが出てきたのだろう。獣医でも一部の分野では不足傾向にあると言われている。
そこで、獣医師会では、1校の参入ならば認めるという方針に転じたという。ダメージコントロールの立場からも、この行動は納得できる。そこで、農水省もわざわざ文科省のために需要見通しをする気が起こらなかった。需要見通しを作るためには、多くの技官のパワーが必要であるが、そこまでやる必要がなくなったからだ。
そうなると、先が読めていなかった文科省は焦った。特に、前川氏は当初徹底抗戦を命じていたと思われるが、「1校の参入を認める」となったために退却のきっかけを失ったのだろう。
そのとき、文科省が負けを認めるためのいい口実になったのが、「総理の意向」というワードだったのかもしれない。そんなもの(=総理の意向)が現実になかったとしても、前川氏の敗走には、絶好の「言い訳」になりうる。
こうした話は、新規参入の問題はしばしばおこるものだ。ある政策について抵抗すると思われた団体が、いきなり態度を改め引け腰になるというような話は、同時並行的に特区で進められていた30年ぶりの医学部新設においてもあったのだ。
筆者には、新規参入事例として両者は似ていると思うが、加計学園の理事長が総理の友人という表面的事実に目を奪われた野党やマスコミには、本質が見えないのだろう。
さらに、文科省はこの問題で恥をかいている。最後まで「これは絶対に認可できない」と抵抗していればいざ知らず、結果として文科省は新設認可を進めてしまった。これではもう言い訳はできない。
この加計学園問題は、マスコミの能力をチェックできる、いいリトマス紙になる。ダメなマスコミは、安倍首相と理事長のお友達関係など、ネットで溢れているネタに言及するばかりだ。後は勝手な推論で「忖度」、「安倍一強」を連呼する印象操作しかできない。また、一方の当事者にすぎない文科省の文書(怪文書)をスクープと勘違いし、前川氏の会見で表明された4条件のデタラメさを指摘できない。
ダメなマスコミは森友学園問題で「忖度」を連呼し、大外れの赤っ恥となった。森友学園問題では首相への「忖度」は大空振りで、財務省の地方部局である近畿財務局の「大チョンボ」だったからだ。
ダメなマスコミは、今回の加計学園問題は、新規参入阻止が出来なかった文科省の悪あがきという本質を見抜けず、「総理の意向」とまた読み間違うだろう。
最後に、前川氏についてかなり厳しい意見を指摘したが、これは同氏と筆者の役人経験の差だろう。
前川氏は天下り斡旋を当然のように行い、新規参入阻止、つまり既得権を擁護し新規参入者への不当差別を行いながら、内閣府が文科省行政に横やりを入れてきたという。まさに、「既得権擁護」をするだけの役人人生だったのだ。 
「面従腹背という前川前次官は官僚のクズ」と岸博幸教授が批判 6/14
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐり、内閣府が文部科学省に「総理のご意向」などと早期開学を促したとされる文書の有無が焦点となっている。
松野博一・文部科学相は6月9日、追加の調査をすると発表したが、この問題について「文書は間違いない」「行政がゆがめられた」と証言して、一躍メディアの注目を浴びるようになったのが前文科事務次官の前川喜平氏だ。「座右の銘」が「面従腹背」と語る前川氏に対して、同じく元官僚で慶大大学院教授の岸博幸氏が「官僚のクズ」と厳しい言葉で批判した。
前川氏は、1日放送のテレビ朝日系『報道ステーション』のインタビューで座右の銘について聞かれ、次のように語った。
「私ね、座右の銘が「面従腹背」なんですよ。あの、これは普通は悪い意味で使われるんだけど、役人の心得としてある程度の面従腹背はどうしても必要だし、この面従腹背の技術というか資質はやっぱり持つ必要があるので、ですから表向き、政権中枢に言われた通り、「見つかりませんでした」という結論に持っていくけれども、しかし、巷では次々にみつかっているという状態ということを考えたかもしれない。そういう面従腹背しきれなかったかというと、しきれたかもしれません。いま私、面従する必要がなくなったんでね。だからいま、「面背腹背」なんですよね。けしからんと思われる方もたくさんいると思うんです、「今になって」と。38年宮仕えして、初めて自由を獲得したんですよ。「表現の自由」をですね、本当に100パーセント享受できる喜びというのはね、これは大変なものですよ。多くの公務員はものすごく息苦しい中で、暮らしているわけですよね。もともと政治活動についてものすごく制限されていますし、物言えば脣寒しなんてどころじゃない。「辞めた人だから気楽でいいね」と言われるんですが、その通りなんです。」
ちなみに「面従腹背」とは、「表面では服従するように見せかけて、内心では反抗すること」という意味だ。
こういった発言をしている前川氏について、岸教授は13日付の産経新聞で「『総理のご意向』があるから逆らえなかったというのは間違っている」として、次のように非難した。
「安倍内閣が人事権を握っているから逆らえないともいわれるが、本当に日本のために必要だと思うなら、クビを恐れずにやればいい。(中略)人事権を握られたぐらいで何もできないなんて、その程度の志しかない人間が偉そうにモノを言うなと思う。前川氏の座右の銘は「面従腹背」だそうだが、論外だ。そんなことを正々堂々という官僚なんて官僚のクズだと思う。一時期とはいえトップを務めた人間がそんなことを言えば、文科省がそういう組織に見える。文科省の後輩たちに迷惑をかけると思わないのか。」
小泉純一郎内閣の竹中平蔵・元経済財政担当相に秘書官として仕えた岸教授は、通商産業省(現・経済産業省)出身だ。
この産経新聞の記事は「『総理のご意向』と記載された文書の有無が議論を過熱させている一方、問題の本質であるはずの国家戦略特区制度に関する議論は置き去りにされている」と強調している。

「加計学園問題は改革つぶし」「前川は官僚のクズ」 6/12
学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐり、民進党など野党やメディアの安倍晋三政権批判が続いている。「総理のご意向」と記載された文書の有無が議論を過熱させている一方、問題の本質であるはずの国家戦略特区制度に関する議論は置き去りにされている。小泉純一郎内閣の竹中平蔵元経済財政担当相に秘書官として仕えた元官僚で、改革の現場に精通した岸博幸慶大大学院教授の意見を聞いた。
文部科学省の前川喜平前事務次官が「総理のご意向」で「行政がゆがめられた」と証言した。だが、特区を活用した加計学園の獣医学部新設に問題があるのであれば、国家戦略特区諮問会議やワーキンググループで異議を唱えればいい話だった。でも現実には止められなかったのは、文科省には説得材料がなかったからだ。こんなことで行政がゆがめられたというならば、政治主導は全て行政をゆがめることになる。
安倍首相の「ご意向」は岩盤規制の突破だった。仮に「総理のご意向」が働いたとしても、間違った行政は修正するのが当然だ。首相が規制改革の意向を表明しても実現できていない改革なんて、腐るほどある。だから、「総理のご意向」があるから逆らえなかったというのは間違っている。
安倍内閣が人事権を握っているから逆らえないともいわれるが、本当に日本のために必要だと思うなら、クビを恐れずにやればいい。自慢する気はないが、竹中氏の秘書官として不良債権処理をやっていたときは、竹中氏が失敗したら私も辞めるつもりでいた。人事権を握られたぐらいで何もできないなんて、その程度の志しかない人間が偉そうにモノを言うなと思う。
前川氏の座右の銘は「面従腹背」だそうだが、論外だ。そんなことを正々堂々という官僚なんて官僚のクズだと思う。一時期とはいえトップを務めた人間がそんなことを言えば、文科省がそういう組織に見える。文科省の後輩たちに迷惑をかけると思わないのか。
政治に対する行政の忖度も問題になっているが、忖度のない国なんてない。米国でも国際機関でも、忖度どころかコネまでまかり通っている。大事なのは、第1に違法性があることはしちゃいけない。第2に理屈が通らないことはやっちゃいけないということ。これは民間企業でも同じだ。
加計学園の獣医学部新設が認められた裏で、首相が政治献金をいっぱいもらっていたとなると駄目だが、そんな事実はない。理屈も通っている。四国に獣医学部はなかったし、平成21年の時点で四国4県の知事が連名で四国に獣医学部がほしいと言っている。新設には十分に合理性がある。
メディアは前川氏の発言を一生懸命報道するが、官僚主導の行政に戻った方がよいのだろうか。民主党政権が誕生した頃は、「官僚主導はいけないから政治主導にしなければならない」とみんな言っていたはずだ。獣医学部新設を問題視するメディアは、宗旨変えしたのだろうか。
民進党は国家戦略特区制度の停止法案を参院に提出した。民進党は結局、政治主導で改革するのは嫌で、官僚主導で改革がない行政が好きなのではないか。
行政の現実を考えると、規制改革が進むかどうかは担当の役人が能力、気概、根性をどれだけ持っているかで変わる。獣医学部の特区に関しては、内閣府に藤原豊審議官という規制改革の鬼みたいな人間がいた。
規制改革を頑張ると、他の役所から恨みを買う。だから藤原氏は、メディア上で「首相の意向を使って圧力をかけた」と個人攻撃みたいなことを言われている。改革したい人間がびびってしまいかねない。
安倍内閣の国家戦略特区制度は、改革としてはそこまでインパクトのある改革ではない。規制緩和は全国一律がよく、私は安倍政権の規制改革は評価していない。アベノミクス、成長戦略、働き方改革と言っても潜在成長率は4年半で下がっている。唯一の改革の成果が国家戦略特区だった。
改革しない安倍政権がちょっと改革を進めたら、野党とメディアが寄ってたかってつぶしにかかる。これでは改革を進められない。今回の加計学園で分かった事実は、日本経済の将来は暗いということだ。
加計学園をめぐる安倍政権の対応に全く問題がなかったわけではない。「総理のご意向」に関する文書について、菅義偉官房長官は「怪文書だ」と言い切ってしまった。本来はそこまで盛り上がる案件ではないのに、文書の存在をめぐる押し問答でワイドショーの時間が使われている。
政府が軌道修正して、文書の存在を追加調査すると発表したのはよかった。客観的事実を全部出せば、政府が負けるはずがない。
前川氏の次官時代の「出会い系バー」通いも、ワイドショーや週刊誌で報道が盛り上がる一因になった。官僚は頭がいいから屁理屈は作れる。出会い系バー通いを暴露されて前川氏が考えたのが、「女性の貧困の実地調査」という屁理屈だったのだろう。だが、所詮は屁理屈に過ぎず、リアリティーは感じられない。

岸博幸 / 昭和37年、東京都生まれ。54歳。一橋大経済学部卒、コロンビア大大学院で経営学修士取得。61年に通商産業省(現・経済産業省)入省後、経済財政担当相、金融担当相などの政務秘書官を歴任。慶大大学院メディアデザイン研究科教授。 
 
報道

 

加計学園の新学部「総理のご意向」 文科省に記録文書 5/17
安倍晋三首相の知人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)が国家戦略特区に獣医学部を新設する計画について、文部科学省が、特区を担当する内閣府から「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向だと聞いている」などと言われたとする記録を文書にしていたことがわかった。
野党は「首相の友人が利益を受けている」などと国会で追及しているが、首相は「加計学園から私に相談があったことや圧力がはたらいたということは一切ない」などと答弁し、関与を強く否定している。
朝日新聞が入手した一連の文書には、「10/4」といった具体的な日付や、文科省や首相官邸の幹部の実名、「加計学園」という具体名が記されたものもある。加計学園による獣医学部計画の経緯を知る文科省関係者は取材に対し、いずれも昨年9〜10月に文科省が作ったことを認めた。また、文書の内容は同省の一部の幹部らで共有されているという。 
加計学園新学部文書「書かれた内容 ほぼ事実」 5/19
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)が、系列大学の獣医学部を国家戦略特区に新設する計画を巡る記録文書が存在した問題で、文書の一部に実名で登場する北村直人・元自民党衆院議員が十八日、本紙の取材に応じ、「文書の自分に関する部分はほぼ事実。昨年十月に文部科学省に伝えた内容だ」と証言した。
文書は、文科省が特区を担当する内閣府から「総理の意向だ」などと伝えられたことを示し、安倍首相の意向が同省の政策判断に影響を与えた可能性が出ている。民進党が入手し、菅義偉(すがよしひで)官房長官や文科省は文書を認めていないが、北村氏の証言により信ぴょう性が高まった。
文書はA4判で八枚あり、北村氏は十月十九日付の一枚に登場。日本獣医師会顧問でもある北村氏が、学部新設を巡って三人の政治家の意見を聞き、文科省に伝えた内容をまとめた体裁をとっている。
中身は(1)石破茂・元地方創生担当相から「党のプロセスを省くのはおかしい」と言われた(2)国家戦略特区を所管する山本幸三・地方創生担当相から「(新設のための)お金を心配している」と言われた(3)麻生太郎財務相から秘書を通じ「(やらない方向で)決着したと思っていた」と言われた−とされている。
北村氏は取材に「私の知る限りの情報を文科省に提供したものに、ほぼ間違いない。それを文科省がメモ書きしたものだろう」と話した。
加計学園が系列大学の獣医学部を新設する計画の国家戦略特区の導入に消極的だった文部科学省が昨年秋を境に、一転して容認していたことが分かった。「総理のご意向」などとして、文科省が作成したとみられる複数文書は、その内容から、秋ごろに作成したとみられる。
加計学園の系列大学の誘致を目指す愛媛県今治市は、二〇一四年まで十五回にわたり、獣医学部の新設を構造改革特区で申請した。しかし、文科省は「特区になじまない」などとして否定的な態度を崩さず、実現しなかった。
今治市が一五年六月に国家戦略特区への申請に切り替えてからも文科省は反対し、内閣府のヒアリングで反論を繰り返した。昨年九月十六日のヒアリングでも、「『既存の大学では対応が困難』という特区の条件を満たしていない」と主張し、新設に慎重姿勢を示した。
獣医学部新設を巡り文科省が作成したとみられる複数の文書は、一部に十月の日付の記載があるほか、昨年十月二十三日投開票の衆院福岡6区補選に触れていることなどから、昨秋ごろの記録とみられる。一部には、内閣府からの伝達事項として「官邸の最高レベルが言っている。文科省メインで動かないといけないシチュエーションにすでになっている」などと記載され、獣医学部新設を巡り、内閣府が文科省に早期対応を迫っていたことがうかがえる。
加計学園は一八年度開設を目標にしており、昨秋までに制度改正しないと間に合わない可能性が高かった。内閣府は昨年十月下旬に制度改正の原案を作成し、同月二十八日に内閣府から文科省に文案を示した。国会答弁によると、獣医学部の新設に反対していた文科省は十一月二日、制度改正に了承する旨を内閣府に回答。その一週間後、獣医学部新設を認める制度改正が決定した。 
「加計学園文書 確認できず」 文科相、調査打ち切る考え 5/20
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)が系列大学の獣医学部を国家戦略特区に新設する計画を巡る記録文書について、松野博一文部科学相は十九日、「省内調査の結果、文書の存在は確認できなかった」と発表した。担当職員個人がパソコンなどに保存する文書は調べていないが、「調査は尽くした」として打ち切る考えを示した。
松野氏によると、聞き取り対象は大学を所管する高等教育局長や専門教育課長など七人。文書を作成したり、他の職員と共有したりしていないか確認したほか、職員が共有する電子文書のフォルダーも調べた。
調査を担当した義本博司総括審議官は、獣医学部の新設が「総理のご意向だ」などと記されている点について、「職員に記憶がない」と否定。また、文書に実名で登場する北村直人・元自民党衆院議員が、本紙の取材に文書の記載内容を「ほぼ事実だ」と認めたが、義本氏は「職員が作成したものではないと確認した」と述べた。
個人のパソコンのファイルを調べないことについては、「確認する必要がない。共有した行政文書だったかどうかを主眼にした調査だ」と説明した。 
緩い調査 文科省幕引き 加計学園「総理の意向」文書 5/20
「官邸の最高レベルが言っている」「総理の意向」。安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設計画を巡り、文部科学省が内閣府とのやりとりを記録したとされる文書。発覚から2日後の19日、文科省は存在が確認できないとして早々の幕引きを図った。政府側は内容を否定するが、一部文書に登場する関係者は「ほぼ事実」とも証言しており、真相ははっきりしない。
加計学園は国家戦略特区制度に基づき、愛媛県今治市に岡山理科大の獣医学部新設を計画している。記録文書は複数あり、特区制度を担当する内閣府側の説明とされる中に「総理」「最高レベル」など記載があった。
内閣府の藤原豊審議官は、十八日の衆院農林水産委員会で「出元も分からず信ぴょう性も定かでなく、内閣府として答える立場にない」とした上で「内閣府として総理の意向とか言ったことはない」と内容を否定した。
「萩生田副長官ご発言概要」と題した文書には「文科省だけでこの案件をこなすのは難しい」「私の方で整理しよう」などの記載があるが、萩生田光一官房副長官は「詳しいやりとりをした記憶はない」と説明した。
別の文書で「萩生田副長官にも話をした」と記された義家弘介文科副大臣も「私自身、この文書を了解していない」と発言している。
菅義偉官房長官は重ねて否定。十七日の記者会見では「誰が書いたか分からない。こんな意味不明のものについて、いちいち政府が答えることはない」とにべもなかった。
一方、自分が登場する文書の内容を「九十九パーセントその通り」と認めたのが、元衆院議員の北村直人・日本獣医師会顧問だ。一連の文書には「十月十九日(水) 北村直人元議員(石破元大臣同期)」とのタイトルのものがあり、北村氏が山本幸三地方創生担当相や石破茂元防衛相と会って話をしたと記載されていた。
北村氏は十八日、取材に「文科省の専門教育課に『こういう情報がありますよ』というのを常に情報提供していた。それを受けた人がつくったメモだと思う」と話している。
松野博一文科相は十九日、省内調査から「文書の存在は確認できなかった」と断定したが、調査対象は担当部局で共有するフォルダーなどに限られている。文科省は「担当者個人のパソコンのファイルは確認していない」としており、個人的な文書として作成された可能性もある。
松野博一文科相は二十日午前、記録文書の調査について「今の時点では、しっかり結論を出したと認識している」と述べた。福井県庁で記者団の取材に答えた。
松野文科相は行政文書に関する紙媒体と電子データを照合して調べたが「(文書が)存在しなかった」と説明した。 
加計学園問題まとめ 「要注意発言」で振り返る  5/20
 蠢く「官邸の最高レベル」と権力の構図
内閣府「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向だと聞いている」朝日新聞 5/17
今週、もっともインパクトのあった言葉はこれ。学校法人加計(かけ)学園が獣医学部を新設する計画について、文部科学省が内閣府からこのようなことを言われたとする記録を文書として残していたと5月17日の朝日新聞が報じた。
「獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項」と題された文書には「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい」「これは官邸の最高レベルが言っていること」と早期の開学を促す記述があった。「(文科)大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」と題する文書には「設置の時期については(中略)『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている」と書かれていた(毎日新聞 5月17日)。また、文科省が内閣府から「『できない』という選択肢はない」と言われていたことも記載されていたという(朝日新聞 5月18日)。かなり強い言い回しだ。
安倍首相の「腹心の友」、昭恵夫人との接点
加計学園の一体何が問題になっているのか? 日本中を騒がせている森友学園問題との共通点は何か?『週刊文春』4月27日号が詳しく報じている。
加計学園が経営する岡山理科大学の獣医学部は、安倍政権が2015年に国家戦略特区として指定した愛媛県今治市に開設される予定。時期は2018年4月。37億円相当の市有地が無償譲渡され、事業費192億円の半額、96億円を県と市が負担する。また、過去50年以上認められていなかった獣医学部の新設が、官邸主導で進められた経緯も問題視されている。
加計学園は、安倍晋三首相の長年の友人で「腹心の友」と呼ぶ加計孝太郎氏が理事長を務める学園。2人の出会いは安倍首相が米国に留学していた時代にまで遡る。それ以降、ゴルフや会食などの付き合いが続いており、別荘もすぐ近く。かつて安倍首相は関係者に「加計さんは俺のビッグスポンサーなんだよ。学校経営者では一番の資産家だ」と語っていたという。
安倍昭恵首相夫人も加計孝太郎氏とは関係が深い。2人はたびたびワシントンやロサンゼルスを訪問して現地の学校法人などを視察している。昭恵夫人が力を注ぐミャンマー支援も加計氏が現地まで同行してサポートした。
昭恵夫人は加計学園が神戸市で運営する認可外保育施設「御影インターナショナルこども園」の名誉園長を務めており、15年9月には政府職員2人を連れて施設のイベントに参加している(朝日新聞 5月17日)。同園のことを森友学園の籠池泰典氏と妻の諄子氏に「すごく良い教育をしている学校があるから見学に行ってみてはどうですか」と紹介したこともあった。
あまりにも関係が深い安倍首相夫妻と加計学園。その関係の深さは、もはや森友学園の比ではないだろう。
「不思議ですよね。なぜ大臣が代わることでこんなに進むのか」
加計学園から獣医学部を新設したいという申し出を受けた今治市と愛媛県は07年から8年間で15回も認可を申請したが、日本獣医師会の抵抗もあって申請は却下され続けてきた。ところが第二次安倍政権が発足した12年12月以降、明らかに対応が変わる。
14年には官邸が主導する国家戦略特区の会合で獣医学部の新設が具体的な議論になり、15年6月4日に今治市と愛媛県は国家戦略特区制度を利用して獣医学部の新設を提案、6月末には「獣医学教育特区」の設置が閣議決定された。翌年12月には新設を「一校限り」で認めることが決定、同様の提案を行った京都府と京都産業大学の申請は却下された。
16年8月まで国家戦略特区担当大臣だった石破茂氏は、「不思議ですよね。なぜ大臣が代わることでこんなに進むのか。(中略)世間で言われるように、総理の大親友であれば認められ、そうじゃなければ認められないというのであれば、行政の公平性という観点からおかしい」と疑問を呈している。
これまで野党から「首相の友人が利益を受けている」と追及されてきた安倍首相は、今年3月の参院予算委員会で「私はもし、働きかけて決めているんであれば、やっぱりそれは私、責任取りますよ、当たり前じゃないですか」と関与を強く否定してきた(FNNニュース 5月19日)。しかし、今回、報じられた書類の内容が事実であれば、内閣府が大学設置権限を持つ文部科学省に対して「官邸の最高レベルが言っていること」「総理のご意向だと聞いている」と圧力をかけたことになる。
問題の文書に官邸側はどう反応したか?
菅義偉官房長官 「出所も明確になっていない怪文書みたいな文書だ」テレ朝news 5/17
朝日新聞の報道を受けて同日に記者会見を開いた菅義偉官房長官は、文書の内容を否定して「怪文書みたい」と切り捨てた。
「どういう文書か。作成日時だとか、作成部局だとか明確になってないんじゃないか。通常、役所の文書はそういう文書じゃないと思う」などと述べ(朝日新聞 5月18日)、「こんな意味不明のものについて、いちいち政府が答えることはない」とも回答している(信毎web 5月17日)。
松野博一文科相は「特区に関する対応に向けた文書は作成された可能性はあると思う」と述べ(信毎web 5月18日)、すでに担当部局の職員に対して文書を作成したことがあるかなどの聞き取り調査を始めたことを明らかにした(NHK NEWS WEB 5月19日)。
文書には複数の首相官邸幹部やある省の副大臣の名前が記され、具体的な日付があるものもあれば、ないものもある。文書の中に実名が登場する北村直人日本獣医師会顧問(元自民党衆院議員)は「文書に書かれていることは事実だ」と語った。文書には「(北村氏が)政治パーティーで山本(幸三)国家戦略特区担当大臣と会って話をした」などと書かれているが、これも事実だという(朝日新聞 5月18日)。
「第二の『永田メール事件』になりはしないだろうか?」
自民党の和田政宗参院議員は自らのブログで「仮に文科省内の人物が作ったとしてもメモ程度のもので、記憶違いもあるし、付け加えたり改ざんがいくらでも出来る」として、「第二の『永田メール事件』になりはしないだろうか?」と警告している(5月17日)。
新藤宗幸千葉大名誉教授(行政学)は「(役所では)今回のように内部で情報を共有するためのメモ的な文書は頻繁に作られ、情報公開法の対象でもある。他の省庁とのやり取りを記録に残すのは役人の普通の行動だ」と指摘。国の「行政文書の管理に関するガイドライン」では、個人的な資料や下書き段階のメモであっても「国政上の重要な事項に係る意思決定が記録されている場合、行政文書として適切に保存すべき」と定められている(朝日新聞 5月18日)。
重要人物の萩生田官房副長官と義家文科副大臣の発言は?
萩生田光一官房副長官 「本件について、ここまで詳しいやりとりをしたという記憶は私はございません」FNNニュース 5/19
問題の文書の中に登場する重要人物が、学部設置の認可を判断する文部科学省の義家弘介副大臣と、萩生田光一官房副長官だ。
5月18日、日刊ゲンダイが計8枚に及ぶ文書を全文公開している。文書によると、松野博一文科相からの「ご指示事項」には「教員確保や施設設備等の設置認可に必要な準備が整わない」として懸念が示され、「31年4月開学を目指した対応をすべき」と記されている。松野文科相は早期開学に否定的だったのだ。
「義家副大臣レク概要」と題された文書には、「平成30年4月開学で早くやれ、と言われても、手続きはちゃんと踏まないといけない」「やれと言うならやるが、閣内不一致(麻生財務大臣反対)をどうにかしてくれないと文科省が悪者になってしまう」と記されている。義家副大臣も松野文科相と同じく、早期開学には否定的だった。
「腹心の友」という首相発言が生まれたイベント
ただし、義家氏と萩生田氏はここから事態を動かしていく。「10/4義家副大臣レク概要」と題された文書には、義家氏の言葉として「私が萩生田副長官のところに『ちゃんと調整してくれ』と言いに行く。アポ取りして正式に行こう。シナリオを書いてくれ」という一文が記されている。また、「10/7萩生田副長官ご発言概要」と題された文書には「平成30年4月は早い。無理だと思う。要するに、加計学園が誰も文句が言えないような良い提案をできるかどうかだな。構想をブラッシュアップしないといけない」と萩生田氏が語ったという一文が記されている。
当初は誰しも否定的だった早期開学だったが、実現に向けて徐々に動き出していく様子が文書から窺える。そして、昨年11月に国家戦略特区の諮問会議で獣医学部の新設が52年ぶりに認められ、今年1月に加計学園によって今治市に新設される方針が正式に決定したという流れだ。
18日、衆議院・農林水産委員会で野党からの追及を受けた義家氏、萩生田氏は文書の信ぴょう性が疑わしいと口を揃え、内容についても否定した。
なお、加計学園が04年に開校した千葉科学大学の客員教授には、当時落選中だった萩生田氏や第一次安倍政権で首相秘書官を務めた井上義行氏らが名を連ねていた。この大学の開設にあたっても、今回の獣医学部と同様、銚子市から市有地を無償貸与された上、約78億円もの助成金を提供されている。先の「腹心の友」という言葉は、この大学の開学10周年式典の式辞で安倍首相が述べたものだ。
麻生副総理発言に見る「権力の構図」
麻生太郎副総理兼財務大臣 「だから認可しなきゃよかった。俺は反対だったんだ」 『週刊文春』 4/27
こちらは少し前の発言。文書の中には「閣内不一致(麻生財務大臣反対)」と記されていたが、国会で加計学園問題が追及されるようになってから、麻生副総理がこのように発言していたと『週刊文春』にて報じられている。安倍首相は麻生氏の発言に対して「あの人は分かっていないよ」と不満を露わにしていたという。
麻生副総理が獣医学部新設に反対しているのは、獣医師の定員の問題がかかわっている。日本獣医師会が50年以上にわたって獣医学部新設に反対してきたのは、国内の獣医師は不足していないという見解に基づくものだ。そして、麻生氏は日本獣医師会とかかわりが深い。2013年に開催された日本獣医師会の蔵内勇夫会長就任記念祝賀会では、麻生氏が発起人を務めている。
東洋経済オンラインでジャーナリストの安積明子氏は、加計学園問題の背後には「麻生vs.菅」の構図が見え隠れしていると指摘している。文書の中で松野文科相と萩生田副長官は、2016年10月23日の衆議院福岡6区補欠選挙の後で加計学園問題を処理するべきだと主張していた。このときは、鳩山邦夫衆議院議員の次男・二郎氏をかつて邦夫氏と交流があった菅義偉官房長官が応援し、麻生氏は対立候補の蔵内謙氏を応援していた。麻生氏は選対本部長に就任するほどの力の入れぶりだったが、蔵内謙氏の父が、県議を8期務めた蔵内勇夫県連会長である。先にも触れたとおり、蔵内氏は日本獣医師会の会長でもあるのだ。
加計学園の獣医学部を新設したい安倍首相と菅官房長官、それに反対する麻生副総理と日本獣医師会という構図は確実だろう。文書の流出もそのあたりの文脈から発生しているのかもしれない。折しも麻生副総理は7月にも党内第2の規模となる新派閥を結成すると発表したばかり(産経新聞 5月15日)。「ポスト安倍」を見据えて影響力を拡大したい考えを持つ麻生氏が加計問題の鍵を握っている――? 
官邸幹部が加計問題実名告発ツブシの謀略を認めた 5/24
 文科省前次官の風俗通い報じた読売記事を「マスコミと当人への警告」と
読売新聞が22日の朝刊で突如、報じた文部科学省の前川喜平・前事務次官の“出会い系バー通い”記事。刑事事件にもなっていない官僚の下半身ネタを、大手新聞がなんの物証も提示せずに報じるのは前代未聞だが、当サイトはこの読売記事が官邸による加計学園問題の実名告発ツブシの謀略だったと22日に断じた。
前川氏はいま、大きな問題になっている加計学園問題に関する文科省の「総理のご意向」文書について、マスコミのインタビューに応じ、「本物だ」と証言する準備を進めていた。
「文科省がこの文書を作成した昨年9月〜10月は、前川さんは事務次官在任中で、文書の内容はもちろん、内閣府からの圧力や会議についても把握していた。前川さんは天下りあっせん問題で辞職に追い込まれたことで、官邸に恨みを持っていたこともあり、実名で文書が文科省で作成されたもので、内容も事実であると証言する決意をしたようです。前川さんはすでにNHKとフジテレビのインタビューに応じ、『NEWS23』(TBS)と『報道ステーション』(テレビ朝日)にも出演する予定でした」
当時の最高幹部がこの文書を事実だと認めれば、安倍首相や菅官房長官の言い分は完全にくつがえり、安倍政権は決定的に追い詰められることになる。
そこで、官邸は「週刊文春」「週刊新潮」の2誌にこの“出会い系バー通い”をリーク。さらに、御用新聞、政権広報紙化をエスカレートさせている読売新聞に、前代未聞の実話雑誌のような記事を書かせたのである。
断っておくが、これはけっして陰謀論などではない。マスコミはこうした裏側を一切報道していないが、実は、一昨日夜から昨日夜にかけての官邸記者クラブのオフレコ取材では、この読売記事についての話題が出ていた。そのなかで、読売に情報を流したといわれている安倍首相側近の官邸幹部は、「官邸が流したのか」という記者の質問にこう言い放ったという。
「読売の記事にはふたつの警告の意味がある。ひとつは、こんな人物の言い分に乗っかったら恥をかくぞというマスコミへの警告、もうひとつは、これ以上、しゃべったらもっとひどい目にあうぞ、という当人への警告だ」
ようするに、悪びれもせずに謀略を認め、マスコミに対してさらなる恫喝をかけたというのだ。官邸はここまで増長しているのかと唖然とするが、しかし、マスコミは、この謀略にいとも簡単に屈して、前川氏の実名証言を報じる動きをぴたりと止めてしまった。すでにインタビューをすませているNHKもフジテレビも放映はしないことに決めたという。
政権に逆らうものはすべて謀略を仕掛けられ、口封じされてしまう——この国はいつのまにかロシア並みの謀略恐怖支配国家になってしまったらしい。
ただ、救いはある。「週刊新潮」「週刊文春」が官邸のリークに乗っかって前川氏の“出会い系バー通い”を取材していたことは前述したが、そのどちらかの週刊誌が、逆に前川氏の言い分を全面的に掲載し、この間の官邸の謀略の動きを暴く可能性がでてきたらしいのだ。
「前川前次官の下半身スキャンダル自体は書いているようですが、返す刀で官邸の謀略の動きも指摘するみたいですね。読売の記事があまりに露骨でしたから、さすがに、そのまま官邸に乗っかるわけにはいかないと判断したんでしょう。海千山千の週刊誌は政権広報紙の読売のようにはコントロールできない」(週刊誌関係者)
この週刊誌の報道を受けて、テレビや新聞はどう動くのか。「総理のご意向」文書の信憑性を裏付ける文科省前事務次官の証言と、それを潰そうとした官邸の卑劣な謀略が国民に広く知られることを祈りたい。 
菅官房長官、加計文書の前川・元文科次官に大激怒 5/25
5月25日午前の記者会見で菅官房長官が言葉を強めて感情を出す場面がありました。菅官房長官は前川喜平・前次官が公開した加計学園の文書について「内閣府が言った事実はないと報告を受けている」と述べ、事実関係を全面否定しています。
その上で、前川氏の公開手法を「そういう(手続きの公平性に問題があったなどの)事実があったら、自身が責任者の時に堂々と言うべきではなかったか」と批判し、大手メディアに文書を流したと反発。
更には前川氏の辞任に関しても、「私の認識とまったく異なっている。前川氏は天下り問題についての再就職等監視委員会の調査に対して問題を隠蔽(いんぺい)した事務方の責任者で、かつて本人もOB再就職のあっせんに直接関与していた。にもかかわらず、当初は責任者として自ら辞める意向をまったく示さず、地位に恋々としがみついていた。その後、天下り問題に対する世論からの極めて厳しい批判にさらされて、最終的に辞任したと承知している」というような発言をしています。
菅官房長官は前川氏が天下り問題を隠蔽した事務方の責任者だと断定しており、とても強い口調で批判していました。 
■前川前文科次官の会見 5/25 
文部科学省前次官が会見「文書なかったことにできない」  5/25
学校法人「加計学園」が愛媛県今治市に設置する計画の獣医学部をめぐり文部科学省の前川前事務次官が記者会見を開き、「総理の意向だ」などと記された一連の文書について、「確実に存在していた。あったものをなかったことにできない」と述べたうえで、「極めて薄弱な根拠で規制緩和が行われた。公平、公正であるべき行政の在り方がゆがめられた」と訴えました。
国家戦略特区により、学校法人「加計学園」が愛媛県今治市に来年4月に設置する計画の獣医学部をめぐり、先週、国会でその選考の途中に内閣府が文部科学省に対して「総理の意向だ」などと発言したとする複数の文書の存在が指摘されました。文部科学省は調査した結果、「該当する文書は確認できなかった」と説明しています。
これについて、当時の文部科学省の事務次官だった前川喜平氏が記者会見を開きました。この中で、前川前次官は一連の文書について「私が在職中に専門教育課で作成されて受け取り、共有していた文書であり、確実に存在していたものだ」と述べて、文部科学省で作成された文書だと主張しました。そして、「私が発言をすることで文部科学省に混乱が生じることは大変申し訳ないが、あったものをなかったことにはできない」と述べました。
そのうえで、「官邸、内閣官房、内閣府という政権中枢からの要請に逆らえない状況があると思う。実際にあった文書をなかったことにする、黒を白にしろと言われるようなことがずっと続いていて、職員は本当に気の毒だ」と話しました。
また、特区制度のもと、今治市と加計学園が選考されたいきさつについては、「結局押し切られ、事務次官だった私自身が負わねばならない責任は大きい」と発言したうえで、「極めて薄弱な根拠で規制緩和が行われた。公平、公正であるべき行政の在り方がゆがめられたと思っている」と述べました。
さらに、「証人喚問があれば参ります」と述べ、国会でも一連の経緯について証言する意向を示しました。
会見は、弁護士が同席して1時間以上続き、前川前次官は、時折、汗を拭いながら、質問に答えていました。前川前次官は、文部科学省の天下り問題の責任をとり、ことし1月、辞任しています。
官房長官 怪文書の認識変わりない
菅官房長官は、午後の記者会見で、学校法人「加計学園」が運営する大学の獣医学部の新設をめぐり、民進党が指摘している「総理の意向だ」などと書かれた文書の存在について、記者団が、「以前の会見で『怪文書のような文書だ』と言っていたが、前川氏の証言を聞いても認識は変わらないか」と質問したのに対し、「出どころが不明で信ぴょう性も定かではない文書だ。全く変わりはない」と述べました。また、菅官房長官は、文部科学省による再調査の必要性について、「文部科学省で1回調査し、『文書の存在は確認できなかった』と松野大臣が言っているので、それ以上でもそれ以下でもない」と述べました。さらに、菅官房長官は、記者団が、「政府としては、文書の存在は無かったということか」と質問したのに対し、「そういうことではないか」と述べました。
松野文科相「会見の様子知らない」
松野文部科学大臣は、25日夕方、総理大臣官邸で記者団に対し、「前川前事務次官の記者会見の様子を、会議に出ていて全く存知あげておらず、自分が把握していない内容について無責任に発言することはできない」と述べました。
自民 小此木国対委員長代理「国会招致 必要性感じない」
自民党の小此木国会対策委員長代理は、NHKの取材に対し、「文書については政府も国会で『確認できない』と答えており、不確定要素のある文書から話が始まっている。野党側から正式な要求が来ているわけではないが、現段階で前川前次官の国会招致の必要性は感じていない」と述べました。
公明 大口国対委員長「何らかの意図感じる」
公明党の大口国会対策委員長は記者団に対し、「事務次官だった時は何ら発言していないのに、辞めてから、なぜ今、こうした発言をするのか分からず、何らかの意図が感じられる。問いただすべきは、文部科学大臣や文部科学省の責任ある現職の方々であり、説明を求めれば責任を持って答えると思う。前川前次官は、文部科学省を辞めていて、文部科学省を代表する方ではないので、前川氏を呼んで何かを解明するということは違う」と述べました。
民進の調査チームに文科省「文書は確認できず」
文部科学省の前川前事務次官の記者会見を受けて、民進党は、調査チームの会合を開き、文部科学省に、文書の存在などの事実関係を改めてただしました。これに対し、文部科学省の担当者は、「前川氏の発言は確認していない。すでに調査したが、文書は確認できなかった。われわれとしては調査したので、それに尽きる」と述べました。調査チームは今後、前川氏から直接、事実関係について話を聞きたい考えで、会合への出席を求めていくことにしています。
民進 山井国対委員長「政府の隠蔽明らかに」
民進党の山井国会対策委員長は記者団に対し、「当時の文部科学省の事務方のトップが、文書を本物と認め、『行政がゆがめられた』と発言したことは、極めて重大だ。政府が一体となって真実を隠蔽していることが明確になり、言語道断だ。前川前次官は、『証人喚問に応じる』と言ったので、与党は、拒む理由は無く、早急に前川氏の証人喚問を実施すべきだ。また、安倍総理大臣の今までの発言が正しかったのかも問われるので、早急に予算委員会の集中審議を開くべきだ。安倍総理大臣が、身の潔白を証明したいのであれば、正々堂々と、国会の場で説明してほしい」と述べました。
共産 穀田国対委員長「文書の信ぴょう性高まった」
共産党の穀田国会対策委員長は、記者会見で、「『総理のご意向』と記された文書の信ぴょう性が、いよいよ高まってきた。真相究明が国会の責務であり、前川前事務次官は『証人喚問には応じる』と述べているので、国会として証人喚問を行うべきだ。森友学園の疑惑の際には、自民党が、わざわざ証人喚問を要求したのだから、今回も当然、応じるべきだ。また、『総理のご意向』という問題が取り沙汰されているわけで、安倍総理大臣に対して真相究明を求めるため、予算委員会の集中審議も当然必要だ」と述べました。
維新 遠藤国対委員長「証人喚問か参考人招致必要」
日本維新の会の遠藤国会対策委員長は、記者会見で「記者会見の内容を見ると、はぐらかしている部分もあるので、明確にするために、与野党ともに合意形成が図れれば、証人喚問なり参考人招致も必要ではないか。一方で、きょうの段階では、完全に一方通行の話なので、本当に真実がどこにあるか確認したうえでないと、何でもかんでも証人喚問すればいいというものでもない。文部科学省自体の自浄作用も、この機会に働かせてもらう必要がある」と述べました。
問題となった文書とは
会見で指摘された文書は獣医学部の選考が続いていた去年9月から10月にかけて、文部科学省と内閣府の担当者などとのやり取りを記したとされる複数の記録です。
「内閣府の回答〜総理のご意向」
このうち、「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」と書かれた文書は、今治市に獣医学部を設置する時期について、「最短距離で規制改革を前提としたプロセスを踏んでいる状況で、これは総理のご意向だと聞いている」と書かれています。
「内閣府からの伝達事項」
別の文書では、内閣府側が、平成30年4月にこの学部を開学するのを前提に文部科学省側に最短のスケジュールを作成するよう求めたと記されています。さらに、内閣府側が「これは官邸の最高レベルが言っていること。山本大臣も『きちんとやりたい』と言っている」などと述べたと書かれています。
「内閣幹部メモ」
さらに、内閣官房の幹部からの指示をまとめたとする10月7日の日付のメモには、「四国には獣医学部がないので、その点では必要性に説明がつく」という発言のほか、「加計(かけ)学園が誰も文句が言えないようなよい提案をできるかどうかだ」という発言が記されていました。
「9/26メモ」
去年9月下旬の日付が書かれた文書には、内閣府と文部科学省との打ち合わせとされる内容が記されていて、このなかで内閣府の幹部は「平成30年4月にこの学部を開学するのを大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい」と文部科学省側に要請しています。これに対し、文部科学省側が、「今治市の構想を実現するのは簡単ではない」と答えると、内閣府側は「できない選択肢はない。やることを早くやらないと責任をとることになる」と述べたと記されています。
「11/8のメール」
メールの画面を印刷したと見られる文書には、文部科学省の担当者が加計学園について省内の関係する部署に一斉にメールを送信したとされる内容が書かれています。この中では、獣医学部の設置場所が決まる前に、担当課の職員が大臣や局長から、「加計学園に対して、文科省としては現時点の構想では不十分だと考えている旨、早急に厳しく伝えるべき」と、特定の学校法人の申請内容について指示を受けたと記されています。
これらの文書やメールについて、松野文部科学大臣はいずれも「調査の結果、確認できなかった」としています。
官邸VS前川前次官 「加計文書告発」で全面戦争突入 5/26
 内偵でバレた!出会い系バー通い常連「捜査当局すべて把握」
文部科学省の前川喜平前事務次官(62)が、25日発売の「朝日新聞」や「週刊文春」のインタビューに応じた。安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)が、国家戦略特区に獣医学部を新設する計画をめぐる「文書」について、「本物」「行政がゆがめられた」と語った。菅義偉官房長官はこれを完全否定し、激怒した。今後、官邸と前川氏側は全面戦争に突入しそうだ。こうしたなか、東京・歌舞伎町での「管理売春」(売春防止法違反容疑)を内偵していた捜査当局が、前川氏らによる「出会い系バー」(連れ出しバー)での動向を確認していたことが分かった。
「内閣府と文科省に確認したが、『文書に書かれた事実はない』『総理からも指示はない』との説明だ。私について書かれた部分もあったが、説明を受けた覚えはない。国家戦略特区は、規制の岩盤にドリルで風穴を開ける制度だ。行政がゆがめられたことはない」
菅氏は25日午前の記者会見で、前川氏の発言を否定した。「(前川氏は)地位に連綿としがみついた」と言い放つなど、怒り心頭に発しているようだ。
前川氏は、朝日新聞が同日報じたインタビューで、内閣府と文科省のやりとりを記録したとされる「文書」について、「(担当職員から)自分が説明を受けた際に示された」といい、本物と認めた。文書には「官邸の最高レベルが言っている」「総理の意向だ」と記されていた。
これまで、菅氏は「怪文書みたいな文書」と発言。松野博一文科相も「該当文書の存在は確認できなかった」と調査結果を発表していた。
つまり、前川氏は、安倍政権の天敵である朝日新聞とタッグを組んでケンカを仕掛けたわけだ。
告白理由について、前川氏は「あるもの(文書)が、ないことにされてはならないと思った」といい、獣医学部新設について「むだな大学をつくったとの批判が文科省に回ってくると心配した」「『総理のご意向』『最高レベル』という言葉は誰だって気にする」などと語っている。
安倍首相はこれまで、「働きかけて決めているなら、私、責任を取りますよ」などと、国会で反論している。
今後、(1)文書の真偽(2)本物ならば文書を流出させた犯人(3)官邸や内閣府による圧力の有無(4)獣医学部新設の違法性の有無(5)獣医学部が過去50年間新設されなかった岩盤規制の実態(6)政治団体「日本獣医師連盟」から野党議員への献金問題−などが追及されそうだ。
一方で、前川氏の告白には、「教育行政のトップ」として見逃せない部分がある。読売新聞が22日報じた歌舞伎町の「出会い系バー」に出入りしていたことについて、次のように語っている。
「その店に行っていたのは事実ですが、もちろん法に触れることは一切していません」(週刊文春)
「不適切な行為はしていない」(朝日新聞)
前出の読売新聞には、店に出入りする女性の「(前川氏は)しょっちゅう来ていた時期もあった。値段の交渉をしていた女の子もいるし、私も誘われたこともある」という証言や、《同席した女性と交渉し、連れ立って店外に出たこともあった》との記述がある。
夕刊フジも同店を取材した。
同店関係者は「前川氏は数年前から店に来ていた。多いときで週に1回」「午後9時台にスーツ姿で来ることが多かった。(気に入った)女性とは店を出ていくことはあった」と語った。
こうした形態の店は、客同士のやりとりに店は関わらないとされるが、売春や援助交際の温床になっているとの指摘もある。教育行政に携わるものとして、とても国民の理解は得られない。
ところで、前川氏の「出会い系バー」通いが、どうして発覚したのか。
捜査事情に詳しい関係者は「捜査当局は、歌舞伎町での管理売春について内偵していた」といい、続けた。
「歌舞伎町の同形態の店などを監視していたところ、前川氏をはじめ、複数の文科省幹部(OBを含む)が頻繁に出入りしていることをつかんだ。当然、捜査当局はすべてを把握している。朝日や文春での告白内容にも関心があるだろう」
前川氏は、文科省の「天下り」問題で今年1月に引責辞任した。加えて、「出会い系バー」への出入りをめぐって官邸幹部に厳重注意を受けている。今回の告白も「安倍政権への逆恨み」との指摘があるが、前川氏は「逆恨みする理由がない」と朝日新聞に語っている。
この件をどう見るか。
「文書」問題を調査している無所属の和田政宗参院議員は「マスコミ各社に『文書』を持ち込んだのが前川氏であることは周知の事実だ。だが、朝日新聞などは、そのことを示さず、前川氏に第三者的なコメントをさせている。ジャーナリズムとして信用できない。前川氏も『文書』は自らが持ち込んだものであることを明らかにしたうえで、対外的な発信を行うべきだ」と語った。 
加計学園問題 前川前次官が会見で暴露した「疑惑の核心」  5/26
「黒を白にしろと言われる」――。加計学園をめぐる問題で、すべてを知る立場にあった文科省の前川喜平前次官が、政権中枢からの“圧力”を暴露した。およそ1時間にわたる記者会見で語られたのは、「総理のご意向」によって「公平公正であるべき行政が歪められた」ことへの怒りと反省だった。
安倍首相の「腹心の友」が理事長を務める加計学園の獣医学部新設が「総理の意向」で進められたことを示す文科省の内部文書を官邸は怪文書扱い。
この文書について「本物だ」と断言する前川氏がメディアの取材に応じると、安倍官邸はスキャンダル情報を読売新聞にリークして、潰しにかかったとも報じられている。
さらには、菅官房長官は会見で「地位に恋々としがみつき、最終的にお辞めになった方」と前川氏をおとしめる人格攻撃まで。官邸がここまでエゲツないことをしなければ、前川氏も大々的に記者会見まで開いて洗いざらいブチまけることはなかったのではないか。
「後輩たちや、お世話になった大臣、副大臣にこの件でご迷惑をおかけすることになる。その点では大変に申し訳ないと思うが、あったことをなかったことにすることはできない」
冷静な口調ではあったが、腹をくくった覚悟が伝わってきた。会見で前川氏が強調したのは、「行政が歪められた」という点だ。それは公僕の矜持として、どうしても看過できなかった。すべてを明らかにすれば、国民の理解を得られると確信して、会見を開いたのだろう。
前川氏によれば、国家戦略特区の制度を使って、加計学園の悲願だった獣医学部の新設が認められたプロセスには重大な疑義があるという。本来のルールをねじ曲げて、加計学園に特別な便宜が図られたとしか見えないのだ。
国家戦略特区で獣医学部の新設を認めるにあたり、2015年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略改訂2015」では4つの条件が示されていた。
1 既存の獣医師養成ではない構想が具体化すること
2 ライフサイエンスなど獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになること
3 それらの需要について、既存の大学学部では対応が困難であること
4 近年の獣医師の需給の動向を考慮しつつ全国的な見地から検討すること
要するに、既存の獣医学部では対応できないニーズに応える獣医師を養成する場合にかぎり、新設を認めるということだ。ところが、加計学園の獣医学部は「需要の根拠が薄弱で、既存の大学でできないのか検証されていない。条件すべてに合致していない」(前川氏)という。
政府が決めた4つの条件をまったく満たしていないのに、昨年8月に国家戦略特区を担当する大臣が石破茂氏から山本幸三氏に交代した途端、一気に獣医学部の新設が動き始めた。問題の「総理のご意向」文書が作成されたのも、昨年9月から10月だ。
「石破氏は4条件を厳しくチェックしようとしてたし、獣医師会に近い麻生大臣も獣医学部の新設に反対していた。それを覆し、自分たちが閣議決定したルールさえ無視して進めることができるのは、安倍首相の強い意向だとしか思えません。4条件から逸脱していること自体が、友人のために特別な便宜を図った証拠と言える。加計学園は特区事業者に認定される前の昨年10月に、新設予定地のボーリング調査も行っています。すべて『加計学園ありき』で動いていたのです」(ジャーナリストの横田一氏)
ここまで状況証拠がそろい、国民の間にも「行政が歪められた」ことへの疑念が広がっている。前川氏自身も「応じる」と言っている以上、証人喚問ですべてを明らかにするしかない。
「出会い系バー」に出入り 厳重注意認める  5/26
菅義偉官房長官は26日の記者会見で、文部科学省の前川喜平前事務次官が「出会い系バー」に出入りしたことを巡り、杉田和博官房副長官が在職中の前川氏に厳重注意していたことを認めた。前川氏は25日の会見で当時注意を受けたと説明していた。その後に杉田氏から菅氏に対し「確認したところ(出入りが)事実だったので、厳しく注意した」と報告があったという。
菅氏は「教育行政の最高責任者がそういう店に出入りして、(女性に)小遣いを渡すようなことは到底考えられない」と前日に続いて前川氏を強く批判。「貧困問題の実態調査だった」という前川氏の説明にも「強い違和感を覚えた」と突き放した。官邸幹部は「注意された時の説明と違う」と話した。官邸側は前川氏個人の資質を問うことで、前川氏の証言の信ぴょう性を低下させる狙いもあるとみられる。 
加計学園問題の新展開「前川前次官発言」はここに注目 5/27
前川喜平 前文部科学事務次官
「『総理のご意向』などと記された一連の文書は、私の手元にあるものとまったく同じ。間違いなく本物です」 『週刊文春』6月1日号
学校法人「加計(かけ)学園」をめぐる問題が新展開を迎えた。加計学園が愛媛県今治市に獣医学部を新設する計画について、安倍晋三首相の「腹心の友」加計学園理事長、加計孝太郎氏に便宜が図られたのではないかという疑惑が巻き起こっている。獣医学部新設にあたり、37億円の市有地が無償譲渡され、総事業費の半分の96億円を愛媛県と今治市が負担する。さらに開学すれば助成金など多額の公金が加計学園に流れることになる。
関与を強く否定した安倍首相は「働きかけがあれば、責任を取る」と明言していたが、内閣府から文部科学省に対して「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向だと聞いている」と圧力をかけるような言葉が記録されている文書の存在が発覚した(朝日新聞 5月17日)。
これに対して即座に記者会見を開いた菅義偉官房長官は「怪文書みたいなものじゃないか」と全面否定。文科省も調査を実施したが、5月19日に「行政文書としても、個人の文書としても、今回の調査を通して確認が取れなかった」という結論を発表した。ただし、調査はわずか半日しか行われず、しかもヒアリングと共有フォルダ・ファイルのみにとどまったため、「調査は不十分」という批判の声も上がっていた(BuzzFeed NEWS 5月24日)。
「前次官独占告白」の衝撃
しかし、今年1月まで文部科学事務次官、つまり大学認可の権限を持つ文科省の事務方トップだった前川喜平氏が『週刊文春』6月1日号の独占取材に応えて、件の文書を「間違いなく本物」と証言したのだ。
さらに前川氏は5月25日に記者会見を開き、文書に関して「私が在職中に作成され共有された文書で間違いない。文科省の幹部に共有された文書で、自分も受け取った。ちゃんと捜索をすれば出てくるはずだ。あったものはなかったことにできない」と述べている(AbemaTIMES 5月25日)。
なお、件の文書以外にも、記録文書や新たな証言が続々と示されている。
5月22日、共産党の小池晃書記局長は新資料を公開した。「政府関係者から入手した」(小池氏)という資料には、「今後のスケジュール」と題されて昨年10月から来年4月の開学予定に至る政府内の大まかな段取りが掲載されていた(時事通信 5月22日)。
また、5月24日には民進党の桜井充参院議員によって昨年11月に文科省内でやり取りされたとされるメールのコピーが公開されている。国家戦略特区諮問会議は2016年11月9日に、52年ぶりに獣医学部の新設を認める方針を決定しているが、その前日の8日に文科省内で取り交わされたメールでは「現時点の構想では不十分だと考えている」などと書かれており、文科省が獣医学部の新設に直前まで反対していたことが窺える(TBS NEWS 5月24日)。
同じく24日、当事者の一人である愛媛県の中村時広知事は記者会見で、内閣府から助言を受けていたことについて発言。「構造改革特区と国家戦略特区の窓口が一体化するので、そこに申請をしたらどうかと言われ、助言と受け止めた」(中村氏)。助言通りに申請したところ、国家戦略特区として認められたという。なお、23日に内閣府の藤原豊審議官は参院農林水産委員会で「そういった事実はない」と否定している(共同通信 5月25日)。
今後も新たな証拠は出てくるだろう。「加計学園ありき」の疑念は深まる一方だ。
前川喜平 前文部科学事務次官
「『赤信号を青信号にしろ』と迫られた時に『これは赤です。青に見えません』と言い続けるべきだった」 『週刊文春』6月1日号
今治市と加計学園はこれまで15回にわたって獣医学部設置の申請を行い、すべて却下されてきた。しかし、2016年8月、地方創生相に山本幸三氏が就任してから一転して、内閣府は獣医学部新設に前のめりになっていく。山本氏は「首相のイエスマンのような存在」。先日、「学芸員はがん。一掃しないと」という問題発言で注目を集めた人物だ。『週刊文春』ではこのときの経緯について、前川氏の証言をもとに詳細に明らかにされている。
2018年4月開学については、松野博一文科相をはじめ文科省側から「必要な準備が整わないのではないか」と懸念が示されていたが、強気の内閣府は引き下がらなかった。理由は「総理のご意向だと聞いている」。これに対して前川氏は「ここまで強い言葉はこれまで見たことがなかった。プレッシャーを感じなかったと言えばそれは嘘になります」と述べている(『週刊文春』6月1日号)。
内閣府は時間のかかる手続きを省き、一気呵成に進めよと文科省に迫り続けた。「赤信号を青信号にしろ」と迫られたのだ。記者会見で前川氏は、「極めて薄弱な基準で特区が制定された。公平公正な審査がなされなかった。文科省として負いかねる責任を押し付けられた。最終的には内閣府に押し切られた」と述べている(AbemaTIMES 5月25日)。結局、加計学園側の希望通り、異例のスピード認可となった。
「証人喚問に出てもいい」
ならば、前川氏を国会に招致して、これまでのことを明らかにしてもらったほうがいいのではないだろうか。前川氏本人は記者会見で「証人喚問に出てもいい」と明言している。
民進党が参考人招致を要求したが、与党は拒否。その後、共産党の小池晃書記局長が証人喚問を要求した(時事通信 5月25日)。5月26日にも民進党の山井和則国対委員長から前川氏の証人喚問が要求されたが、自民党の竹下亘国対委員長は前川氏が民間人であることから「現職の時になぜ言わなかったのか」「受け入れられない」とあらためて拒否した。山井氏は「民間人の(森友学園の)籠池泰典氏を喚問したのは自民党だ。ご都合主義としか言えない」と批判している(時事通信 5月26日)。たしかに「(前川氏が)民間人だから」という理由は筋が通らない。
そういえば、籠池氏の証人喚問が決定した際、竹下氏は「総理に対する侮辱だ。(籠池氏に直接)たださなきゃいけない」(朝日新聞 3月16日)と激怒していた。ということは、前川氏が安倍首相を侮辱すれば証人喚問は実現する……?
前川氏は今年1月に文科省を辞任した際、全職員にメールを送っている。その中で、「特に、弱い立場、つらい境遇にある人たちに手を差し伸べることは、行政官の第一の使命だと思います」「気は優しくて力持ち、そんな文部科学省をつくっていってください」と記していた(朝日新聞 1月20日)。一体、文科省は誰を見て仕事をしているのか? そのことが強く問われる数日間になりそうだ。
共謀罪法案通過への、強烈な批判発言
ジョセフ・ケナタッチ 国連特別報告者、マルタ大教授
「日本政府のこのような振る舞いと、深刻な欠陥のある法律を性急に成立させようとしていることは、断じて正当化できません」 BuzzFeed NEWS 5月23日
加計学園問題で霞んでしまった感のある「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案、いわゆる「共謀罪」法案。5月23日午後、自民、公明、日本維新の会の賛成多数で衆議院本会議を通過した。
この法案をめぐる日本政府の対応を、国連特別報告者であるジョセフ・ケナタッチ氏(マルタ大教授)が批判、5月18日付で書簡を安倍首相宛に送付した。国連特別報告者とは、国連人権理事会から任命され、特定の国やテーマ別に人権侵害の状況を調査したり、監視したりする専門家のこと。
書簡でケナタッチ氏は、同法案がプライバシーや表現の自由を制限するおそれがあると指摘。法案にある「計画」と「準備行為」の定義があいまいであることと、対象となる277の犯罪にはテロや組織犯罪と無関係なものがあることから、法律が恣意的に適用される危険性が高いと懸念を示した。
菅官房長官はケナタッチ氏の書簡に強い不快感を表明し、記者会見では外務省を通じて「抗議を行った」と語気を強めて繰り返した。しかし、日本側の抗議を見たケナタッチ氏は「中身のないただの怒り」と批判。内容は本質的な反論になっておらず「プライバシーや他の欠陥など、私が多々挙げた懸念に一つも言及がなかった」と指摘した(中日新聞 5月23日)。
政府側は以前からこの法案について、2020年の東京オリンピックに向けて国連越境組織犯罪防止条約を批准するために必要だと説明してきたが、ケナタッチ氏は「このことは、プライバシーの権利に対する十分な保護もないこの法案を成立することを何ら正当化するものではありません」と一刀両断。さらに「私は、安倍晋三首相に向けて書いた書簡における、すべての単語、ピリオド、コンマに至るまで維持し続けます」と強い調子で再反論を行った(産経新聞 5月23日)。菅官房長官は再度不快感を表明しており、両者の会話はまったく噛み合っていない。
それにしても最近の安倍政権は、次から次へと問題が起こり、ナチュラルな目くらましになっている感がある。加計学園問題とともに、「共謀罪」法案にも注視が必要だ。
「共謀罪」「がん発言」 笑えない失言のレジェンドたち 
金田勝年法相 「誠意を持って話せば伝わるもんだね」 『週刊新潮』6月1日号
こちらは「共謀罪」法案が衆院を通過した後の金田法相の一言。伝わってないっての! 
大西英男自民党衆院議員 「(がん患者は)働かなくていい」NHK NEWS WEB 5月22日

加計学園問題があり、森友学園問題も終わっておらず、「共謀罪」法案では国連特別報告者も巻き込んで紛糾しているというのに、この期に及んで呑気に失言を放つ与党議員がいた。それが大西英男衆院議員だ。
大西氏は今月15日に開かれた自民党の厚生労働部会で、受動喫煙対策の議論が行われた際、三原じゅん子参院議員が職場でたばこの煙に苦しむがん患者の立場を訴えたのに対し、「働かなくていいのではないか」とヤジを飛ばした。激怒した三原氏は自らのブログで大西氏の名を伏せたまま発言を公開。結局、大西氏は22日、「患者の気持ちを深く傷つけた。おわびする」と謝罪した。大西氏は自民党たばこ議連に所属している。
大西氏は2016年3月に、所属する派閥の会合で、選挙の応援で神社を訪れたことを紹介した際に「『巫女(みこ)さんのくせに何だ』と思った」などと発言し、謝罪。また、2015年6月には党の勉強会で「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのがいちばんだ」と発言し、党から厳重注意を受けている(NHK NEWS WEB 5月22日)。まさに「失言のデパート」だ。
大西氏は今回の失言の責任を取り、都連副会長を辞任。事実上の更迭である。自民党では、過去2回の衆院選で当選した2回生に不祥事が相次いでいる。大西氏も「魔の2回生」の一人。自民党幹部は「大西氏は同期の中で年長者のためリーダー的存在だ。問題児ぶりでも筆頭格だ」と頭を抱えたという(産経新聞 5月23日)。うまいことを言っている場合ではない。弱い立場、つらい立場の人たちのことを一ミリも考えずに切り捨てる政治理念が発言に現れてしまっているのだろう。このままで日本は大丈夫?   
和泉洋人内閣総理大臣補佐官が文科省に圧力!
そんな官僚の中でもエリート中のエリートの和泉洋人内閣総理大臣補佐官がどうして文科省に圧力をかけていたのだろうか。毎日新聞のスクープ(5/27)を紹介する。
加計学園 首相補佐官が前次官に要請 新設手続き「早く」 
○獣医学部計画で16年秋に働きかけられたと省内に伝える
「安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人加計学園(岡山市)が国家戦略特区で獣医学部を新設する計画について、文部科学省の前川喜平前事務次官が在職中の昨年秋、首相補佐官に呼ばれて開学の手続きを急ぐよう働きかけられたと省内に伝えていたことが関係者の話で分かった。開学を巡っては内閣府が文科省に「総理のご意向」と伝えたことを記録したとされる文書の存在が明らかになっているが、同時期に、首相周辺からも同省に迅速な対応を求めていた可能性が浮上した。」
毎日新聞の取材によると、ミスター文科省として文科省全体から熱い信頼を得ていた前川前事務次官を呼びつけた。
そして、特区での獣医学部の新設について協議をした。
文科省は農林水産省の獣医は足りているという報告を受けて新設の獣医の創設に対して慎重な姿勢を崩していなかった。文科省は2003年3月に「獣医学部の新設は認めない」との告示を出しており、石破四条件などもあり新設は難しいとしていた。
しかし和泉洋人首相補佐官が圧力をかけてきたのだ。
和泉氏は告示改正の手続きに向けて「(大学を所管する)高等教育局に早くしてもらいたい」と要求したという。前川氏は「(文科)大臣が判断されること」と明言を避けたとされる。こうした経緯は前川氏から文科省の複数の幹部に伝えられた。 
学部新設「早く進めて」 加計学園理事の内閣官房参与も 6/1
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設計画を巡り、前川喜平・文部科学省前事務次官は一日、在職中の昨年八月に、学園理事で当時内閣官房参与も務めていた木曽功氏の訪問を受け、学部新設を「早く進めてほしい」と要請されたと明らかにした。
前川氏は一日、経緯を説明する文書を弁護士を通じて報道各社に送った。文書によると、昨年八月下旬、木曽氏が事務次官室を訪れ、二人だけで面会した。国家戦略特区で獣医学部を設置する件について、木曽氏は「早く進めてほしいのでよろしく」「文科省は国家戦略特区諮問会議が決定することに従えばよい」という趣旨の話をした。
この際、木曽氏は加計学園の名前は出さなかったという。しかし前川氏は「木曽氏は加計学園理事で、(学園系列の)千葉科学大学学長であることを承知していたので、この話は加計学園のことだと受け止めた」としている。前川氏は木曽氏の話を聞き置くにとどめ、面会内容を担当の専門教育課に伝えた。
前川氏はその後、昨年九〜十月にも二、三回、木曽氏から電話を受け、文科省の検討状況を尋ねられ、「引き続き検討中である」と回答したという。
木曽氏は文科省OBで、昨年九月末まで、国連教育科学文化機関(ユネスコ)関連の業務を担当する内閣官房参与だった。昨年四月からは、加計学園の理事と千葉科学大学長を務めている。
文部科学省の前川喜平・前事務次官が獣医学部新設計画で要請を受けたとする元内閣官房参与の木曽功氏は一日、「現時点で詳しくは話せないが、文科省に圧力をかけるようなことはしていない」とコメントした。
前川氏の書面全文
木曽功加計学園理事と私の面会の経緯は次の通りです。
昨年8月下旬、私は、当時内閣官房参与であった木曽功氏の訪問を受け、事務次官室で2人だけで面会しました。
この場において、木曽参与から国家戦略特区で獣医学部を設置する件について、早く進めてほしいのでよろしくとの趣旨の話がありました。私は同氏が加計学園理事であり、かつ千葉科学大学学長であることは承知していたので、この話は加計学園のことだと受け止めました。
その際、文科省は国家戦略特区諮問会議が決定することに従えばよいとの趣旨の発言もありました。
私はこれを聞き置くにとどめ、面会の内容を担当の専門教育課に伝えました。
その後、同氏からは9月から10月にかけて、2、3回電話で獣医学部に関する文科省の検討状況について問い合わせがありましたが、私からは引き続き検討中である旨を答えました。
以上のことは間違いのない事実です。 前川喜平 
「加計学園疑惑」をめぐる闇試合は異様すぎる 6/1
"1強"の安倍晋三首相を巻き込んだ「加計学園疑惑」が終盤国会での与野党攻防の最大の火種となっている。前半国会で安倍政権を揺るがせた「森友学園疑惑」と同様に、真偽不明の怪情報が飛び交う永田町特有の"闇試合"だが、今回の展開には異様さが際立つ。
「旗振り」と「批判」が入り乱れるメディアの報道ぶりが混乱を増幅させ、著名コメンテーターのスキャンダルまで絡めた情報戦はあざとさばかりが目立つ。通常国会会期末まで半月余り。多くの国民が不安視する「共謀罪」の国会審議が大詰めを迎える中、国民不在の与野党泥仕合の行き着く先が国民の政治不信拡大では余りにも救いがない。
事の発端は学校法人加計学園が運営する岡山理科大学の獣医学部を愛媛県今治市に作ることが今年1月、認められたことだ。来年4月の開学が予定され、実現すれば52年ぶりの獣医学部の新設となる。安倍政権が積極的に進める「大胆な規制緩和」を具体化する国家戦略特区の活用で、首相らは「岩盤に穴をあけた」と胸を張る。ただ、事業案が提起された昨年夏からわずか半年という「これまで例のないスピード」(文科省幹部)で学部新設が認められたことに加え、同学園理事長が首相の「腹心の友」だったことが「森友とそっくりの構図」(民進党)との疑惑を生み、野党の政権追及材料となっている。
菅官房長官と前川前文科省事務次官の舌戦
この疑惑は1月の通常国会召集時から関係者の間で話題となり、森友問題の表面化と合わせて一部メディアが報じたが、「二番煎じの印象が拭えない」(自民国対)こともあり、熾火のようにくすぶり続けていたのが実態だ。この状況を一変させたのが5月17日の朝日新聞朝刊1面トップの「"総理の意向”を示した内部文書の存在」という特ダネ記事と、その1週間後の前川喜平前文科省事務次官の「文書はあった。なかったことにはできない」という"内部告発"会見だった。
前川氏は、政府が加計学園による獣医学部新設問題を協議していた時点での事務方の最高責任者。メディアは「衝撃の告白」と大々的に報じたが、政府は「怪文書のたぐい」(菅義偉官房長官)「文書の存在が確認できない」(松野博一文科相)などと否定した。特に、安倍政権の要とされる菅官房長官が、冷静沈着さをかなぐり捨てたような口調で「前川氏に対する個人攻撃を繰り返した」(民進党幹部)ことが「官邸の焦りと危機意識の表れ」(同)と受け止められ、対抗するようにメディアで「暴露」を続ける前川氏とのバトルが「政界を揺るがす大騒動」(自民長老)につながった。
朝日新聞が特ダネとして報じた時点で官邸周辺では「前川前次官のリークでは」との噂が流され、それと符合するように前川氏が複数メディアとの「独占インタビュー」に応じたが、その最中の22日の読売新聞朝刊1面に「前川前次官が出会い系バー通い」との記事が掲載されたことで事態が複雑化した。週刊誌も文春と新潮が競い合うように「前川問題」を特集記事として掲載して「メディアも参戦した一大スキャンダル」(公明幹部)の様相を呈し、民放各局のワイドショーも連日取り上げて、視聴率を稼ぐ状況となった。
そうした中、政治外交問題で著名なコメンテーターの"女性スキャンダル"が発覚した。前川氏関連の報道と同時進行の形で週刊新潮が掲載したのが「"安倍官邸御用達"ジャーナリスト・山口敬之氏の『準強姦疑惑』」というおどろおどろしい特集記事だ。同氏は元TBSワシントン支局長(元同社政治部長)で、年明け以降は首相と親しいジャーナリストとして各情報番組のコメンテーターとして引っ張りだことなり、「首相官邸寄りの解説コメント」(自民幹部)で注目を浴びていた。山口氏のスキャンダルについては結果的に「不起訴」処分だったこともあり、新潮の記事が出た時点では他メディアが後追いせず、「永田町や霞が関での噂話」(民放政治部記者)にとどまっていた。
「山口氏スキャンダル」もみ消し疑惑も浮上
しかし、29日夕刻に被害者とされる女性が弁護士を伴って司法記者クラブで会見し、素顔とファーストネーム(姓は明かさず)をマスコミに公開する形で、検察の不起訴処分を不服として検察審査会に審査を申し立てたことを明らかにしたことで、新聞やテレビ各局が一斉に取り上げる事態となった。一見すると「よくあるスキャンダル暴露にみえる」(司法関係者)が、海外で活動するフリーの写真家でジャーナリストと名乗る女性の「(山口氏が)逮捕寸前に『上からの指示で逮捕を見送った』と捜査員から知らされた」という発言が衝撃的だったからだ。
新潮の記事などによると、山口氏の逮捕を見送った時点での警視庁刑事部長は2015年まで菅官房長官の秘書官を務めたエリート警察官僚。さらにマスコミを驚かせたのが山口氏が相談メールを送った相手が内閣情報官ではないかという点で、新潮編集部に誤送信されてきたとする山口氏のメールのコピーも掲載されていたことだ。これが事実となれば「首相と親しいジャーナリストだから不起訴処分にしたのでは」と疑惑にもつながる。
さらに、前川氏のスキャンダル暴露と合わせれば「官邸と対立する人物は攻撃するが、官邸寄りの人物は守るという印象も拭えない」(民進党幹部)ことにもなる。この暴露記事が出る直前にテレビ画面から姿を消した山口氏は、自身のフェースブック(FB)で「法に触れることは一切していないし、起訴も逮捕もされていない」などとコメントしたが、これに安倍昭恵夫人が「いいね」したことが判明すると、「なんという無神経」などの書き込みが殺到してさらに騒ぎを大きくした。
5月17日に朝日新聞の「総理の意向」特ダネが報じられた際、他大手紙の一面トップはすべて「眞子様ご婚約」だった。ただ、永田町では「NHKも朝日と同じ情報を得ていたが、官邸筋から眞子様の婚約情報が伝えられ、午後7時のトップニュースで報じて各紙が後追いした」という怪情報も流れている。「まさに虚々実々の情報戦」(民進党幹部)だが、自民党の古参議員は「総裁選などで政局が緊迫すると怪情報が駆け巡るが、今回のような下ネタを絡めた情報合戦は初めて」とあきれ顔だ。
「加計学園疑惑」について連日のように未確認情報が飛び交う中、参議院では29日から「共謀罪」の審議が始まった。民進党などは参院法務委で疑惑追及を続けているが、首相は「そもそも獣医学部新設については自民党政権では認めなかったのに民主党政権で認める方向になった。安倍政権はそれを引き継いで今回の動きとなった」などといつもの民進党攻撃で追及をかわす構えだ。
民進、共産両党は「前川氏の証人喚問と衆参予算委での集中審議」を求めているが、自民党は証人喚問を「明確に必要ない」(竹下亘国対委員長)と拒否する一方、集中審議には柔軟に対応する姿勢を示す。これは「共謀罪の早期成立を狙って、参院法務委での審議促進を集中審議受け入れの条件とする高等戦術」(民進党国対)と見られており、野党も難しい判断を迫られている。
高安関口上の「正々堂々」が皮肉に聞こえる
これまでの国会攻防を見る限り「森友も加計も疑惑の核心の解明は二の次で、場外乱闘ばかりが続いてきた」(共産党幹部)のは間違いない。ネット上では「首相の地元の蕎麦屋のメニューから『もり』と『かけ』が消えた」などというブラックジョークが出回り、たくさんの「いいね」を集めているという。その一方で永田町では「野党が抵抗すれば会期末解散で都議選とのダブル選も」という噂も飛び交う。ここにきて朝日新聞が「なぜ安倍内閣の支持率は落ちないのか」という特集を組んだが、国民の求めているのは「公正で透明な真面目な政治」だろう。
5月31日に新大関昇進が決まった大相撲の高安関は伝達式の口上で「大関の名に恥じぬよう、正々堂々精進します」と決意表明した。真っ向勝負の突き押しで横綱を目指す新大関の口上は現在の政治への皮肉にも聞こえる。「共謀罪」や「森友・加計疑惑」では政府与党は「会議録を処分したからわからない」「調べたが確認できない」などの"逃げ答弁"に終始し、野党の追及も「報道によれば」と自らの調査能力欠如を露呈する場面ばかりだ。終盤国会の攻防はこれからが本番だが、永田町では「うやむやで終わり、国民の政治不信を拡大させるだけの結末になるのでは」(首相経験者)との自嘲めいた声も広がる。 
「加計文書を省内で共有」 文科省の複数職員が証言 6/7
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設計画に関し、「総理の意向」などと記載された文書の存在を六日、文部科学省の複数の現役職員が認めた。共同通信の取材に「省内で共有していた」などと証言した。前川喜平前事務次官も取材に存在を明言したが、政府や文科省は「調査で存在を確認できなかった」との姿勢を崩さず、再調査も拒否している。
現役職員が証言したことで、野党側は攻勢を強めるとみられる。
学園は政府の国家戦略特区制度を活用した学部新設を計画。文書は民進党などが五月に入手したもので、昨年十一月に特区の諮問会議で安倍首相が獣医学部新設方針を表明する前に、特区担当の内閣府とのやりとりを文科省が記録したものとされる。学園の選定が前提ともうかがえる内容が含まれ、内閣府側の発言として「官邸の最高レベルが言っている」「総理の意向だ」と記されていた。
取材に対し、文科省職員の一人は「文書は獣医学部担当の高等教育局専門教育課が、上司への説明用に作成した」と説明。「幹部を含む一部の関係者で共有していた」と話した。
別の職員も「学部新設に関して、省内の打ち合わせに参加した職員らの間で共有されていた文書だ」とした上で「総理の意向といった文言が記されているのを見て、文科省にとって面倒な案件だという認識があった」と述べた。
松野博一文科相は五月十九日、「文書の存在は確認できなかった」と発表。担当職員への聞き取りや、資料を共有する電子フォルダなどの調査で結論付けたとする一方、職員個人のパソコンは調べていないとした。 
加計学園問題 開学時期を公表前に共有か 今治市など日程表を内閣府へ送付 6/9
政府の国家戦略特区を活用した獣医学部新設計画を巡り、学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)が新設を予定する愛媛県今治市などが、「二〇一八年四月開学」の方針が公表される約三カ月前の昨年八月、この時期を記したスケジュール表を作り、内閣府に送っていたことが分かった。開学時期の認識を共有していたとみられる。文書を入手した自由党の森裕子参院議員が明らかにした。
内閣府は昨年十一月に獣医学部新設のパブリックコメント(意見公募)を実施し、初めて開学予定時期を公表したと説明。「事前に今治市や加計学園に伝えていない」としていたが、今回の文書によって内閣府が今治市と開学時期を調整していた可能性が浮上した。
今治市は八日、取材に「スケジュールは市が想定する案として作成し、内閣府の担当者に送付した」と回答。広島県も「今治市と共同で作成し、内閣府に送った」と説明している。
文書は昨年八月三日に内閣府職員が特区指定された広島県と今治市の担当者に送ったメールの写しと、両自治体が作った翌四日付のスケジュール表で、市への情報公開請求で開示された。
内閣府職員はメールで「スケジュールの共有を図り、進捗(しんちょく)を確認できる体制をつくる」と要請。両自治体が作った表には「獣医学部の新設 ※H30・4月開学の場合」とあり、今年三月の予定として「大学設置認可申請(H30・4月開学予定)」と記載されていた。この時期以外は具体的に示していない。
内閣府の藤原豊審議官は、八日の参院内閣委員会で「昨年八月時点で今治市が具体的に一八年四月開学の意向を有していたことは承知していない」と答弁した。
森氏は「もともとスケジュールを共有しており、加計学園ありきだった」と批判している。 
「加計学園」認定前今治市と再三協議 獣医学部新設で特区担当 6/10
学校法人「加計(かけ)学園」が愛媛県今治市に獣医学部を新設する計画を巡り、内閣府が、今年一月の特区認定の一年半以上前から今治市と再三にわたり協議を重ねていたことが、市の内部文書から分かった。特区を担当する内閣府は今治市と協議を重ねる一方、文部科学省側に早期開設を迫っていた。文科省はそのやりとりを記録したとされる文書の再調査を始めるが、内閣府は追加調査しない方針。
今治市の内部文書は特区担当職員の出張に関する書類で、今治市民が市に情報公開請求し、開示された。
一連の文書からは、獣医学部設置に関し、市の特区担当職員らが二〇一五年四月〜昨年十一月にかけて計十二回、内閣府と協議していたことが確認できた。
国家戦略特区に申請前の一五年四月は、市職員が内閣府の担当者と会った後、首相官邸も訪問。市は官邸の対応者を明らかにしないが「獣医学部設置について訪問した」と認めた。市が同年六月に特区申請した三日前には「特区提案の事前相談」として内閣府を訪問。内閣府側が大学用地の視察に訪れた記録もあった。
特区認定の方針が決まった昨年十一月九日の諮問会議の直前にも、二度にわたって内閣府と協議。協議内容は黒塗りだが「今後のスケジュール」や「獣医学部の概要」といった表題から、市と内閣府で情報を共有していたことがうかがえる。
一方、昨年三月に獣医学部構想を提案した京都府は「数回協議はあった」と話すが、諮問会議直前の協議や現地視察、官邸での協議はなかったという。内閣府は昨年十月、京都府の構想をヒアリングしたものの、翌月の諮問会議で新たに「広域的に獣医学部のない地域に限る」との設置条件を追加。隣接する大阪府に獣医学部のある京都府は応募を断念した。今治市は一連の内閣府との協議について「幅広く情報収集、相談するため打ち合わせなどを行った。詳細な内容は答えられない」と説明。内閣府からは九日夜までに回答がなかった。 
加計学園問題 消えない疑問 6/12
学校法人「加計学園」の獣医学部設置をめぐる一連の文書について文部科学省は追加の調査を始めました。国会の会期末が迫る中、国民の疑問の声に押された形の再調査で、納得できる結果を示すことができるのでしょうか。
問題の文書は、学校法人「加計学園」が国家戦略特区に指定された愛媛県今治市に計画している獣医学部の設置をめぐって、「官邸の最高レベルが言っている」などと記されたものです。文部科学省が「文書の存在は確認できなかった」とする調査結果を発表したのは、先月19日でした。
これを受けて菅官房長官は、「怪文書のような文書」と述べるなど、存在を認めませんでした。
これに対し、先月25日、文部科学省の前川前事務次官が記者会見を開き、一連の文書は確実に存在していたとしたうえで、「あったものをなかったことにはできない」と述べました。
国会で、連日のように、「加計学園」の問題をめぐる追及が続く中、NHKの取材に文部科学省の複数の現役職員が一連の文書が今も個人パソコンで保存されていると証言しました。先月の調査直後に複数の職員が「文書は存在している」と審議官以上の幹部に報告していたことも明らかになっていました。
再調査はしないと繰り返してきた松野文部科学大臣でしたが、先週金曜日、文書の存在を確認する追加の調査を行うことを明らかにしました。「追加の調査を行う必要があると国民から多くの声が寄せられている」という理由です。疑問が消えないという国民の声に押された形です。
安倍総理大臣は、「徹底した調査を速やかに実施するよう指示した」と述べましたが、今月6日の閣議では、文書に記述されている内閣府の担当者が「官邸の最高レベルが言っている」などと発言したとされる去年9月26日の文部科学省と内閣府との打ち合わせは確認できないとする答弁書を決定しています。ちぐはぐな対応と感じる国民も少なくないでしょう。
文部科学省が3週間前に行った調査は、内閣府との交渉に関わった専門教育課の職員や高等教育局長などあわせて7人への聞き取りと、専門教育課にあるパソコンの共有フォルダを調べただけでした。個人が業務用に使っているパソコンデータや消去された形跡がないかといった基本的な調査すら行われていませんでした。
紙で保存していた時代ならまだしも、文書を電子的に管理する時代に共有フォルダ一か所を調べただけで確認できなかったというのは、あまりにも乱暴で、故意の不作為と言われても仕方がありません。遅きに失した感は否めませんが、再調査は当然のことです。本来なら内部調査にとどめず、中立的、第三者的な調査が必要ではないかという指摘もあります。追加の調査をする以上、国民の疑念が残るようなことは許されないと思います。
2つ目のポイント、前川前事務次官証言の重みです。
再調査を後押しした国民の声は、前川氏の記者会見に端を発したものです。文書は確実に存在していたという前川氏の主張に対して、政府は、文書の存在自体が確認されないと繰り返し、文書の内容の信頼性にも疑問を呈していました。菅官房長官は、前川氏の会見のあとも「出どころが不明で信ぴょう性も定かではない文書だ」と述べて存在を認めない姿勢を示しました。さらに菅官房長官は、「前川氏は、文部科学省の天下り問題で、当初は責任者としてみずから辞める意向をまったく示さず、地位にしがみついていた」とか、いわゆる『出会い系バー』に出入りしていたことなどを上げ、「強い違和感を覚えた。教育行政の最高の責任者として到底考えられない」と前川氏個人を批判していました。
こうした批判には、個人の人格を攻撃するような発言はおかしいといった声もあがりました。「印象操作」ではないかとの意見も聞かれます。
会見で、国会で「証人喚問があれば参ります」とまで言った前川氏に対し、「文書は確認できない」と繰り返すだけでは、見つかると不都合でもあるのかと思われても仕方ないでしょう。
今月のNHKの世論調査では、加計学園をめぐる政府の説明に納得できると答えた人が24%だったのに対し、納得できない人は65%に上りました。
また、この問題をめぐって民進党や共産党などが求めている前川氏らの国会での証人喚問について、必要だという人が52%に上っています。政府与党側の判断に世論が疑問を呈した形です。
すっかり一連の文書の存在に焦点が集まっているこの問題ですが、3つ目のポイント、問題の本質は、国家戦略特区によって「加計学園」が今治市に設置する計画の獣医学部が選考されたいきさつに中立性や公平性、透明性が担保されていたかどうかにあります。
4年前にできた国家戦略特区制度は従来の特区とは違い、総理大臣のトップダウンで指定した地域において、大胆な規制緩和を進めるのが特徴です。「岩盤規制」をスピード感をもって突破するための仕組みそのものは、あってしかるべきでしょう。
ただ、特区制度のもと、今治市と加計学園が選考されたいきさつについて、前川氏は、「極めて薄弱な根拠で規制緩和が行われた。公平、公正であるべき行政のあり方がゆがめられたと思っている」と述べました。
前川氏があげた理由の一つが、獣医学部の新設を認める前提として閣議決定された4つの条件に合致している根拠が示されていないということです。
4つの条件とは▽既存の獣医師養成ではない構想が具体化していること▽生命科学などの獣医師が新たに対応すべき分野での具体的な需要が明らかなこと▽既存の大学・学部では対応が困難なこと▽近年の獣医師の需要の動向も考慮することの4つです。
全国に16ある大学の獣医学系の入学定員はあわせて930人。加計学園の獣医学部は160人ですから1校だけでこれまでの定員の6分の1です。新設によって獣医師が過剰になるおそれはないのか気になるところです。ところが獣医師がどの程度不足しているのか、どのような分野の獣医師が今後多く求められるものなのか、獣医行政を担当する農林水産省からも薬事行政を担当する厚生労働省からも説明がないまま、手続きが進んでいったといいます。実際農林水産省は、家畜やペットの数が減少を続けていることなどから、獣医師の数は不足していないという見解を今でも変えていません。
教育行政の専門家で、文部科学省の事務方のトップを務めた人物がこうした問題提起をしている以上、半世紀ぶりに獣医学部の新設を認めるという政策が国民が納得できるものであるかどうか行政府の責任で検証することは当然のことでしょう。ましてや加計学園は、安倍総理が「腹心の友」と呼ぶ人物が理事長を務めています。国民がなるほどそれなら恣意的な指定ではなく、透明性を確保しながら客観的な評価に基づいて検討された結果なのだと思えるような説明を果たす必要があります。
以上見てきたように、文部科学省の追加の調査の進展にかかわらず、国が検証を進められる問題があります。そしてその先に主務官庁である内閣府の関係者の中にどこかで政権中枢の意向を忖度することがあったのか、なかったのかという疑問についても明らかにすることも必要です。野党側が求める前川氏の証人喚問について、政府与党は、「政治の本質になんの関係もない」などとして拒んだままです。事実関係を曖昧なままにすることは国政全体への不信を招くことにもなります。国民に対し、説得力ある説明を求めたいと思います。 
「加計学園ありき」野党批判 特区方針決定前日 今治市に資料供与 6/14
昨年十一月に政府の国家戦略特区諮問会議が獣医学部新設計画の方針を決めた前日、特区担当の内閣府が学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の新設予定地・愛媛県今治市に対し、会議で配る資料を渡していたことが十三日、分かった。内閣府の佐々木基(もとい)・地方創生推進事務局長が参院内閣委員会で「不適切だった。反省しなければいけない」と陳謝した。野党は会議のメンバーではない今治市に便宜を図り、学園を前提に計画を進めた疑いが強まったとして追及した。 
特区諮問会議は昨年十一月九日、首相官邸で開かれ、新設に向けた制度改正を決定し「広域的に存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする」との方針が示された。
今治市が開示した市職員の出張記録によると、市職員は前日の八日、新設計画の打ち合わせをするため上京。東京・永田町の庁舎で午後二時四十五分〜三時十分に内閣府職員と協議した。
出張記録の協議内容は黒塗りになっていたが、会議当日の議事次第なども添付されていた。この協議の際に内閣府担当者が資料を渡したという。
共産党の田村智子氏は「資料を渡すぐらいなので『事前に協議していない』なんて、あり得ない」と批判。民進党の桜井充氏も「内閣府主導で加計学園ありきで、ずっと動いてきている」と指摘した。
これに対し山本幸三地方創生担当相は「加計学園ありきではない」などと強調した。 
「加計学園」文書 再調査きょうにも公表 文科省、聞き取り終了 6/15
政府の国家戦略特区制度を活用した学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設計画を巡り、「総理の意向」などと書かれた記録文書について、文部科学省が職員に存否を確認する聞き取りをほぼ終えたことが十四日、関係者への取材で分かった。同省は十五日にも聞き取りの内容などを踏まえた再調査結果を公表する方針。
松野博一文科相は十三日、「調査が終了次第、速やかに結果を公表する」と言及。早期対応をアピールしたい考えとみられるが、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を巡る与野党の攻防が激化する中での公表は批判を招きそうだ。
政府側はこれまで、特区担当の内閣府とのやりとりを記録したとされる文書の信ぴょう性を否定。文科省は五月十九日、高等教育局長らへの聞き取りで「存在を確認できなかった」と公表した。しかし、文科省の前川喜平前事務次官や現役職員が取材に「文書は存在した」と証言。松野氏は今月九日、「調査の必要があるとの国民の声が多く寄せられた」と再調査の実施を表明した。
再調査では、前回の職員七人に加え、文書を共有したとみられるメールに名前があった二十人前後に聞き取り。担当の専門教育課のほか、設置認可や特区の窓口などに関係する大学設置室、私学行政課、行政改革推進室の部署の共有フォルダーを調べていた。
聞き取り対象の職員の個人パソコンも調査するが、松野氏は「プライバシーの問題もあり、まずは任意で確認を進めたい」と述べていた。 
「加計文書」複数存在 「官邸の最高レベル」記載確認 6/15
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設計画を巡り、「総理の意向」などと書かれた記録文書について、文部科学省が複数省内に存在していたとの再調査結果をまとめたことが十五日、関係者への取材で分かった。松野博一文科相は午後、再調査結果を公表する。これを受け、山本幸三地方創生担当相は特区を担当する内閣府としても、再調査を検討していることを記者団に明らかにした。
最初のずさんな調査で文書の存在を確認できなかったとした文科省の姿勢が、あらためて問われそうだ。
一方で文科省は、政府の国家戦略特区制度を活用した学部新設計画の手続き自体に問題はない、との姿勢は崩さない見通し。再調査では「官邸の最高レベルが言っていること」と記載された文書も省内に保存されていたことが判明。作成したとみられる職員は再調査に「こうした趣旨の発言はあったと思うが、真意は分からない」と答えたという。
文書は特区担当の内閣府とのやりとりを記録したものとされる。文科省は五月十九日、高等教育局長らへの聞き取りで「存在を確認できなかった」と公表したが、文科省の前川喜平前事務次官や現役職員が取材に「文書は存在した」と証言。松野氏が今月九日、再調査の実施を表明した。
再調査では、前回の職員七人に加え、文書を共有したとみられるメールに名前があった二十人前後に聞き取り。担当の専門教育課のほか、設置認可や特区の窓口などに関係する大学設置室、私学行政課、行政改革推進室の部署の共有フォルダーを調べていた。 
文書の真偽はぐらかす 「加計」再調査結果発表 文科相が釈明 6/16
政府が「怪文書」と切り捨てたはずの文書は存在していた−。文部科学省は十五日、学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設計画を巡り、「総理のご意向」などと記された文書が省内に存在していたことを認めた。一度は「確認できなかった」としたものの、調査が不十分との世論の強い批判を受けて追い込まれた再調査で状況は一転。松野博一文科相は、当初の調査について「その時点において合理的な調査だった」と釈明する一方、「行政プロセスがねじまげられたとは考えていない」と強弁した。
「(首相官邸などの意向があった、とする内閣府側の)発言はあったんだろうということはヒアリングで出ているが、真意は分からない」。松野氏は同日の会見で、「総理のご意向」や「官邸の最高レベルが言っている」と記された文書の存在を認める一方、肝心の中身の真偽についてははぐらかすような答えを展開した。
内容を確認するのかを問われても「個人の備忘録にあたるものもあり、対象者にこういった内容の発言であったかを確認して進めるものではない」「中に書かれている事実は、各大臣等が(国会の)委員会で答弁している」とかみ合わない回答に終始。真相解明に積極的な姿勢は見られなかった。
手元の資料に目を落としながら答える場面が目についた松野氏。記者から矢継ぎ早の質問を遮るように、「次の公務がある」として会見は約二十分で打ち切られた。
その後、質疑に対応した義本博司総括審議官にも、報道陣から前回の調査のずさんさを突く質問が相次いだ。
今回の再調査では「官邸の最高レベル」などの文言が書かれた文書を専門教育課長補佐が作成していたことが判明した。しかし、前回の調査ではこの課長補佐も「見た記憶がない」と答えていたとしていた。「組織的な隠蔽(いんぺい)ではないか」との問いに、義本氏は「限られた時間だったので、丁寧にやれば記憶を呼び覚ますことがあったかもしれない」と苦しい釈明に終始。わずか半日で結論を出した、五月十九日の前回調査の正当性を主張した。 
「加計文書」一転「存在」 「総理意向」など14点 文科省再調査 6/16
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設計画で、内閣府が文部科学省に早期新設を働き掛けたとされる文書など計十九点の存否を再調査していた文科省は十五日、「総理のご意向」と書かれた文書など計十四点の存在を確認したと発表した。ただ、安倍首相の意向が実際にあったのかどうかなど文書内容そのものの真偽については確認を避け、真相究明に及び腰の姿勢は変わらなかった。
調査結果を受けて山本幸三地方創生担当相は同日、特区を担当する内閣府も再調査し、十六日に結果を公表する考えを示した。
当初の調査は、担当の専門教育課などの計七人から話を聞くなどして「存在を確認できなかった」と結論づけた。今回は対象を四部署など計二十六人に広げ、個人パソコンのフォルダーを調べるなどした結果、確認につながった。調査のずさんさについて松野博一文科相は会見で「大変申し訳ない」と謝罪。一方で学部新設計画の手続き自体に問題はないとの考えを示した。
再調査対象は、獣医学部設置を巡り「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」などと書かれた文書など十九点。存在した十四点のうち八点は、前回調査したフォルダーとは別のフォルダーに、内容が同一か同趣旨の文書があるのが確認された。「総理のご意向」との文言が入った文書を作成した課長補佐は「こうした趣旨の発言があったのだと思う。ただし真意はわからない」と話しているという。
存在が確認できなかったのは、萩生田光一官房副長官の発言内容などを記したとされる二点。残る三点は内容が加計学園側の利益に関わるとして、存否を含めて明らかにしなかった。 
加計問題「広域的に学部ない地域」 獣医師会は要請を否定 6/23
学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設を巡る問題で、日本獣医師会は二十二日、国家戦略特区での新設が事実上、同学園に絞り込まれた「広域的に獣医学部のない地域に限り新設を認める」との条件について、「国に要請したことは全くない」と否定した。この条件を加えた理由について「獣医師会の意見に配慮した」という内閣府の説明を覆す証言が出たことで、行政手続きの妥当性を強調する政府側の根拠が揺らいでいる。
昨年十一月の国家戦略特区の諮問会議で、獣医学部新設の方針が決定。会議の直前に「広域的に」という条件が水面下の交渉で加えられた。加計学園と競合していた京都産業大学は、隣接する大阪府に獣医学部があることから申請を断念した。
獣医師会の北村直人顧問は、二十二日の総会後の会見で「『広域的に』との文言が入ったことは青天のへきれき。『加計ありき』でこの文言ができたと感じた」との見解を示した。
北村氏によると、昨年九〜十月、山本幸三地方創生相ら三大臣と面会。その席で、双方から地理的条件に関する話は出なかったと証言。諮問会議までに内閣府、文部科学省、農林水産省の事務方とは意見交換をしたこともないという。
今月十五日の文科省の調査結果で、萩生田(はぎうだ)光一官房副長官の指示で「広域的に」の条件が加わったとされるメールが発覚。萩生田氏やメールを文科省に送信した内閣府は、官邸の関与を否定している。北村氏は「加計ありきの決め方は、官邸主導と言われても仕方ない」と疑問を投げ掛けた。 
■前川前文科次官の再会見 6/23 
前川前次官が田崎史郎、山口敬之、読売、NHKら安倍応援団を批判 6/23
「総理自ら先頭に立って、説明責任を果たしていただきたい」──本日、日本記者クラブ主催の記者会見に出席した前文科省事務次官の前川喜平氏は、毅然と安倍首相の姿勢を問いただした。
きょうの記者会見の開催については、萩生田光一官房副長官の関与を示す新たな文書の発覚を受けてのものではないか、あるいは東京都議選の告示日であることから何か関連があるのではないかと見られていたが、記者会見をオファーしていた記者クラブ側と前川氏の都合を調整した結果だといい、前川氏は「私には政治的意図はございません」と強調。
だが、前川氏は前事務次官として、官邸および内閣府の態度に対して「責任を果たしていない」「真相を明らかにすることから逃げようとしている」と厳しい評価を下し、安倍首相による「規制改革派と岩盤規制に固執する抵抗勢力」という主張を、「勧善懲悪のような構図」「問題の本質を見誤る考え方」と喝破。「『岩盤規制』対『規制緩和』という構図は、為にする議論のすり替え」と言い、プロセスの不透明さと加計学園しか該当しないような規制が加えられていったという「穴の開け方」をあらためて問題にすると、第三者機関による選定プロセスの検証・調査を求めた。
さらに前川氏は、新たに発覚した萩生田官房副長官の発言がまとめられた新文書についても言及。萩生田官房副長官は、作成者である専門教育課課長補佐の「不確かな情報を混在させて作った個人メモ」と処理しているが、前川氏は「(課長補佐は)極めて優秀ですし、しっかりした人物」「虚偽の内容を盛り込んだり聞き間違いが入ったりした文書をつくることはあり得ない」「内容はほぼ事実だと思う」と証言。対して、萩生田官房副長官など官邸の対応を「情報発信者の信頼を失わせることで情報の信頼を失わせる意図」と見破り、「萩生田官房副長官の何らかの関与があった可能性は高いと思っています」と述べたのだ。
ただし、前川氏は「全体のシナリオを描いていた」人物として、萩生田官房副長官とは違う名を挙げた。和泉洋人首相補佐官だ。
「私の目から見ますと、和泉総理補佐官がいちばんのキーパーソンではないかと」
「10月21日付けの萩生田副長官のご発言の内容を見ても、萩生田さんは和泉さんと話をした結果として、それを文科省に伝えている。やはり情報発信源になっているのは和泉さんではないか。和泉補佐官がいちばん全体のシナリオを描いて、全体の統括もしている、そういう立場にいらっしゃったのではないかと思っています」
前川氏は以前より、昨年9月上旬に和泉首相補佐官に呼び出され、「総理は自分の口から言えないから私が代わって言う」として特区における獣医学部新設を早く進めるようにと迫られていたことを証言している。そのことからも、「いちばん総理のご意志に近いところ」にいたのは和泉首相補佐官ではないかと前川氏は見るのだ。
また、森友問題と加計問題について前川氏は「よく似ている」とし、この森友・加計のように地方と国、国のなかでも複数の省庁にまたがる問題では「全体を調整する機能がどこかに必要」「どこかに司令塔がなければできないと思う。その司令塔の役割を果たしている人がいる」と論及。会見では具体的な名前を挙げていなかったが、「週刊朝日」(朝日新聞出版)6月23日号のインタビューではその“司令塔”について、こう語っていた。
「役所のどこを押せばどう動くかということを熟知した人間がいなければなりませんし、そういう才能を持った人なんて、そう多くはいません。官邸の中でも、私には今井尚哉首相秘書官(叔父は安倍首相と近い今井敬経団連名誉会長)、和泉首相補佐官くらいしか思い当たりません」
今井秘書官といえば、本サイトでもたびたび報じてきたが、安倍首相の行動日程やスピーチ原稿をすべて仕切り、永田町では“影の総理大臣”とまでいわれるほど安倍首相に対する影響力が強いとされる人物。加計、森友問題のプロセスでもなにかしら役割を担ったのだろうか、解明が必要だ。
このように、本日の会見では新証拠が飛び出したわけではないものの、理路整然と問題の焦点を明らかにした前川氏。しかし、会見でもっとも注目すべきは、いたって冷静に事実関係や見解を述べた前川氏が、スピーチの最後にはっきりと強い口調で「もうひとつの問題」に踏み込んだことだろう。
「この(獣医学部をめぐる)一件を通じて、まったく別の問題として認識を新たにしたのは、国家権力とメディアとの関係です」
「ひとつは、私に対する個人攻撃だと思われる記事が5月22日の読売新聞に掲載されました。私としては不愉快な話でしたが、その背後に何があったのかはメディアの関係者のなかできっちり検証されるべき問題だと思っています。私は個人的には、官邸の関与があったと考えております」
官邸の関与で読売の醜聞記事はつくられた──。たしかに、前川氏はこれまでも記事が出る2日前から読売の記者よりコメントがほしいと求められ、その一方で、記事が出る前日には文科省幹部を通じて「和泉補佐官が話をしたいといったら応じるか」というアプローチがあったことを明かしている。前川氏はこの和泉首相補佐官の動きを「私の想像ですが『嫌な報道をされたくなかったら抑えてやる』ということかと思いました」と語ったが、もはや官邸が読売を使って前川氏に揺さぶりをかけたことは疑いようがないだろう。
だが、前川氏はメディアへの指摘をつづけた。次はNHKの不可解な報道についてだ。
「私に最初にインタビューを行ったのはNHKです。ですが、その映像はなぜか放送されないままになっています。いまだに報じられておりません。真相を表す内部文書のなかでも非常に決定的な『官邸の最高レベルが言っていること』という文言が入った9月26日という日付けつきの文書がございますけども、これは朝日新聞が報じる前の夜にNHKは報じていました。しかし、核心の部分は黒塗りにされていました。これはなぜなんだろうと」
本日、本サイトで伝えたように、これらのあからさまな“加計学園問題封じ”は、安倍首相に忖度する報道局長と、安倍首相にもっとも近い記者と呼ばれる岩田明子が幅を利かせる政治部によって断行されたものだ。権力にすり寄るためにインタビューがお蔵入りとなる、前川氏はその当事者としてNHKの姿勢を問うたのだ。
さらに前川氏は、「報道番組を観ておりますと、コメンテーターのなかには、いかなる状況証拠や文書が出てきたとしても、官邸の擁護しかしないという方がいらっしゃいます」と発言。「そういう方のお名前は差し控える」と述べたが、誰がどう考えてもこれは田崎史郎のことだろう。そして、「森友学園のときもそういうことが繰り返し行われていた」とし、田崎と並ぶ御用ジャーナリストである山口敬之の問題にまで言及したのだ。
「森友学園の問題で官邸を擁護するコメントを出しつづけた方のなかには、ご本人の性犯罪が警察によってもみ消されたのではないかという疑惑を受けていらっしゃる方もいるわけでございます」
官邸に刃向かって問題を告発しようとした前川氏にはメディアを使って恫喝まがいの行為を働き、片や安倍首相という最高権力者と一体化したジャーナリストには、起こした犯罪さえもみ消してあげる。──本サイトはこうした安倍政権のやり方こそが民主主義を破壊行為であり、メディアも同罪だと指摘しつづけてきたが、前川氏も同じようにこれを問題視したのだ。
「(読売新聞の報道への官邸の関与について)もしこういうことが私以外の人にも起きているとするならば、これは大変なことだというふうに思います。監視社会化とか警察国家化と言われるようなことが進行していく危険性があるのではないか。あるいは“第4の権力”とまで呼ばれているメディアまで権力に私物化されてということになると、これはもう日本の民主主義は死んでしまうと。その入口に我々は立っているのではないかという危機意識を私自身ももったんですね。そのことがこの問題の大きなインパクトだというふうに思っています」
民主主義の死。前川氏はもっとも強い言葉でそう表現し、「国家権力とメディアの関係を国民の視点から問い直すという必要性、またそのメディアの方々のなかで自浄作用が働くことを私は強く期待したい」と述べたのだ。
しかし、前川氏から発せられたこの大きな指摘に、当のメディアの一部は相変わらず向かい合おうとしなかった。実際、一般質疑で最初にマイクを握った産経新聞の記者は「文書を流出させたのは前川氏か」と質問。取材源の秘匿というジャーナリストの倫理をもち合わせているならこんな質問を行うわけがなく、前川氏も「情報流出源にはコメントしない」と返答した。無論、読売新聞からの質問は出なかった。
前川氏はきょうの会見のなかで、「重要な人物で、一切発言しておられない人」として加計学園理事長の加計孝太郎氏の名前を挙げ、メディアに向けて「加計孝太郎さんを早くつかまえてほしい」と氏への取材を呼びかけた。問題の最重要人物がメディアから追いかけられていないという異常事態、それこそがメディアの弱腰を裏付けているだろう。
果たして前川氏からの警鐘を、どこまでメディアは真摯に受け止められるか。加計学園問題の真相究明に、いま、メディアの力が試されているのである。 
前文科次官「文書は事実」「萩生田氏関与の可能性」 6/23
政府の国家戦略特区制度を活用した学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画を巡り、文部科学省の前川喜平前事務次官は23日、東京都内の日本記者クラブで記者会見した。安倍晋三首相の意向を伝える萩生田光一官房副長官の発言とされた文書の内容は「ほぼ事実だと思う」と主張。あくまで想像とした上で、萩生田氏の関与について「示唆か提案か、あった可能性は高いと思う」との見方を示し、首相に「先頭に立って説明責任を果たしてほしい」と求めた。
萩生田氏は首相官邸で記者団に「首相からいかなる指示を受けたこともなく、誰かに指示を伝えたこともない」と述べ、自身の関与を否定した。 
 
 
お友達優遇 安倍官邸に住む加計学園人脈  6/16

 

“前川の乱”に続き、新たな証拠が続出しても、官邸は完全に黙殺を貫く構えだ。しかし、安倍晋三首相の人脈と加計学園との関係を取材すると、ただならぬ「親密ぶり」が見えてきた。時の権力者にがっちりと食い込んで拡大を続ける加計学園の「学校経営術」とは……。
「奇麗に辞任する形を取るために菅(義偉官房長官)さんが一生懸命やったのに、今さら何なんだ! 官僚を40年近くやっても、政治を何にもわかっちゃいない」
安倍首相は加計問題をめぐり告発を続ける前川喜平前文部科学事務次官に対し、周辺にこんな不満をぶちまけているという。次々と噴出する疑惑について政府筋がこう語る。
「ここまで続くと政権へのダメージの蓄積が心配。加計(孝太郎)さんが首相シンパのパトロン的存在なのは事実でしょうが、安倍首相が直接指示した証拠はなく、あくまでも周囲が忖度した話のはず。野党は批判し続けるだろうが、官邸は『前川氏が勝手に言っていること』と同じフレーズを続けて無視する構え。内部では必殺“黙殺作戦”と呼んでいるようですよ」
だが、事態はもはや黙殺できないレベルに達した。6月2日には、政府が「確認できない」としてきた文科省の内部文書が省内の複数の担当者にメールのCCで共有されていたことを示す資料が発覚。同日の民進党の調査チームの会合では、文書の送信先に名前があったF企画官らが呼ばれた。民進党の玉木雄一郎議員らに、パソコンに今もメールが残っているかを確認するよう要求されると、F企画官は会議室から出ていったが、そのまま戻ってこず。会場にいたK総務課長は、「(F企画官とは)連絡がとれない。松野博一文科相とも連絡がとれないので、確認できない」と言いだす始末だった。
また、前川氏の証言では昨秋に和泉洋人首相補佐官に呼ばれ、「総理は言えないから私が言う」と、獣医学部の新設への早期対応を求められたという。
和泉氏を知る国土交通省OBはこう語る。
「彼は国交省出身の技術系。財務省も一目置くほど優秀で、事務系の官僚たちからはよく嫉妬されるみたい。安倍さんというより菅さんの懐刀。菅さんが横浜市議だった時代に知り合い、早くから信頼を得ていた。発言に影響力があるのも、背後に菅さんがいることを霞が関では理解しています」
和泉氏の発言の背後には安倍官邸の意向があるというのは、官僚の共通認識だったようだ。
加計学園と“安倍人脈”の奇妙なまでの近さを見ると、やはりただ事とは思えない。
最たるものが、加計学園理事で系列の千葉科学大の学長である木曽功氏だ。前川氏の証言では、木曽氏は内閣官房参与だった昨年8月、文科省の後輩でもある前川氏と面会し「獣医学部の件でよろしく」と伝えてきたというのだ。内閣官房参与は首相のブレーン。背後に首相の“威光”を感じたとしても不思議ではない。
それだけではない。千葉科学大では首相の“お友達”たちが、次々とポストにありついている。
首相の側近中の側近である萩生田光一・官房副長官は、落選中(2009〜12年)に千葉科学大の客員教授を務め、月約10万円の報酬を得ていたことを国会で認めた。現在は無給だが、名誉客員教授の肩書を持っているという。
また、ノンキャリアの官僚出身ながら第1次安倍内閣で首相秘書官に抜擢された井上義行参院議員も、07年の安倍首相の辞任後、同大の客員教授を経験。井上氏の事務所によれば、「危機管理学部で授業を持っていたが、09年の衆院選に出馬する際に辞職した」とのこと。
安倍首相の地元・山口県下関市の元市長で「子飼い」として知られる江島潔参院議員も、市長退任後の10年から加計系列の倉敷芸術科学大で客員教授を務めた。13年には補選で参院に初当選。江島氏の事務所は「客員教授は15年10月に国交政務官に就任した際に辞職しました」と説明する。
要するに、3氏はいずれも“浪人中”に加計学園のお世話になっていたわけだ。
そもそも安倍首相自身が、衆院に初当選した1993年ごろから数年間、広島加計学園の監事として1年間に14万円の報酬を得ていたことを国会で認めた。つまり、安倍首相は加計氏と40年来の親友であるばかりでなく、浅からぬ「借り」があるのだ。
奇妙な偶然なのか、16年7月19日に最高裁判事に就任した弁護士の木沢克之氏は、13年から加計学園の監事を務めていた人物だ。加計氏と同じ立教大学の同窓生で、立教卒の最高裁判事は史上初。
加計氏らはこの2日後、安倍首相と会食、翌日には山梨県でゴルフを楽しんでいる。その人脈は司法界にも及んでいることになる。
時の政権にここまで食い込んだ加計理事長とは、いったい何者なのだろうか。
加計学園グループは加計氏の父親の加計勉氏が創始者。64年に開学した岡山理科大(岡山市)を中心に拡大を続けてきた。孝太郎氏の実姉である美也子氏が運営する順正学園系列も合わせると、現在は大学、高校、小中学校、専門学校など全国で30校以上を運営する、西日本では有数の規模を誇る私学グループだ。
加計孝太郎理事長は01年に先代の跡を継いだ。安倍首相とは20代の米国留学中に知り合って以来の「ゴルフ友達」として、約40年間、家族ぐるみの親交を続けてきた。昭恵夫人は自身のフェイスブックに<男たちの悪巧み>と題した安倍首相、加計氏らの飲み会写真を載せている。千葉科学大関係者が言う。
「お酒好きで陽気な性格で、ビールのジョッキにウイスキーのショットグラスを落として飲む“バクダン”という飲み方がお気に入り。年に2回ある職員や地元関係者との親睦会では、周囲にも“バクダン”をすすめて、楽しそうでした」
加計氏の思い入れが特に強いのは、理事長として04年に自ら設立した千葉科学大だという。開学時には薬学部のほか、日本で初めて危機管理学部を設置。
「歴史のある岡山理科大は教授会組織の力が強く、好き勝手はできない。理事長からすれば新設の千葉科学大は自分の思いを実現できる場なんでしょう。ただ、どんどん学科やコースを新設するので現場は大変。『どうして定員が集まらないんだ』とテレビ会議で怒られるけど、こちらからすると理事長の思いつきに翻弄されている感覚もある」(前出の関係者) 
木曽功
[1952- ] 日本の文部官僚。学位はMaster of Business Administration(イェール大学・1979年)。千葉科学大学学長、学校法人加計学園理事。文部省初等中等教育局職業教育課課長、文部省高等教育局医学教育課課長、広島県教育委員会教育長、文部科学省大臣官房国際課課長、文化庁文化財部部長、独立行政法人日本学術振興会理事、文部科学省国際統括官、国際連合教育科学文化機関政府代表部特命全権大使、東日本旅客鉄道株式会社顧問、内閣官房参与などを歴任した。
文化庁文化財部の部長や文部科学省の国際統括官などの要職を歴任し、2010年より国際連合教育科学文化機関政府代表部に特命全権大使として赴任した。2016年より千葉科学大学で学長を務めるとともに、大学の設置者である加計学園においても理事を兼務する。第2次安倍内閣においては、内閣官房参与を務めた。
1952年広島県尾道市出身、1959年同福山市に移る。 1970年(昭和45年)広島大学附属福山中学校・高等学校を卒業後、1971年(昭和46年)東京大学入学、1975年(昭和50年)東京大学法学部卒。 翌年文部省に入省する。
加計問題 内閣参与も特区推進を前川氏に要請 6/8
加計学園の獣医学部新設問題で、内閣官房参与(当時)の木曽功氏が、前川喜平文部科学省事務次官(当時)に対し、国家戦略特区制度で、獣医学部新設を進めるよう働きかけていたことが、「週刊文春」の取材でわかった。
前川氏によれば、昨年8月下旬、木曽氏は次官室を訪ね、次のように要請したという。
「国家戦略特区制度で、今治に獣医学部を新設する話、早く進めてほしい。文科省は(国家戦略特区)諮問会議が決定したことに従えばいいから」
当時は、内閣改造で特区を担当する地方創生相が石破茂氏から山本幸三氏に代わった直後で、止まっていた獣医学部新設が大きく動き始めていた時期だった。
木曽氏は、元文科省の官僚で、前川氏の3期先輩にあたり、14年4月から内閣官房参与に任命されていた。一方、16年4月からは加計学園理事兼千葉科学大学学長にも就任しており、加計学園の利害関係者でもあった。
木曽氏は「前川さんと会い、様々な話をしたのは事実です。獣医学部の件も話したと思いますが、加計学園理事としてで、内閣官房参与として会ったわけではありません」と回答した。
この問題では、前川氏は木曽氏の要請の翌月上旬に、和泉洋人首相補佐官から「総理が自分の口から言えないから、私が言うんだ」と特区推進を要求されたと証言している。
官邸関係者による文科省への新たな要請が明らかになったことで、首相官邸からの圧力の有無が、さらに論議を呼びそうだ。 
萩生田光一
[1963- ] 日本の政治家。自由民主党所属の衆議院議員(4期)、内閣官房副長官(第3次安倍第1次改造内閣、第3次安倍第2次改造内閣、政務担当・衆議院)兼内閣人事局長(2代目)、千葉科学大学客員教授。自由民主党総裁特別補佐。文部科学大臣政務官(福田康夫改造内閣・麻生内閣)、自由民主党青年局長(第41代)、東京都議会議員(1期)、八王子市議会議員(3期)等を務めた。
東京都八王子市生まれ。早稲田実業学校高等部、明治大学商学部卒業。大学在学中から黒須隆一八王子市議会議員(当時)の秘書を務めていた。 元日本青年会議所(八王子JC)所属。
1991年、八王子市議会議員選挙に出馬し、初当選。市議を3期10年務めた後、2001年に東京都議会議員に当選し、1期務める。2003年、第43回衆議院議員総選挙に東京24区から自由民主党公認で出馬し、民主党前職の阿久津幸彦を破り当選(阿久津も比例復活)。2005年、第44回衆議院議員総選挙で再選。2006年10月、自由民主党青年局長に起用された。2007年8月より自由民主党副幹事長。
2008年、福田康夫改造内閣で文部科学大臣政務官に任命され、麻生内閣まで務める。2009年の第45回衆議院議員総選挙では、東京24区で民主党元職の阿久津に敗れ、重複立候補していた比例東京ブロックでも復活できずに落選したが、国政復帰を目指す意向を表明。落選後は千葉科学大学危機管理学部で客員教授を務め、13年7月1日付の朝日新聞の中で「浪人中でも『客員教授』なら、心理的な落ち着きを感じる。当時の落選組のトレンドだった。給与は月10万円。浪人中の足しになった。助かった」と語っている。
2012年の第46回衆議院議員総選挙では、東京24区で民主党前職の阿久津を下し、3年ぶりに国政に復帰した。選挙後、安倍晋三総裁の下で自由民主党副幹事長及び総裁特別補佐に起用される。2014年の第47回衆議院議員総選挙では、東京24区で再び阿久津を下し、4選。2015年6月25日、安倍晋三首相を支持する自由民主党所属議員を中心に設立された文化芸術懇話会に参画した。
2015年10月7日、第3次安倍第1次改造内閣で内閣官房副長官に任命された。

文部科学省が公表した新たな文書で、発言を記されたとされる萩生田光一氏(53)は、安倍晋三首相の最側近で、3人いる官房副長官の一人。東京都八王子市議、都議をへて2003年に東京24区(八王子市)から自民党公認で衆院議員に初当選し、現在4期目。国政転出を勧めたのは北朝鮮による日本人拉致問題を通じて交流を深めていた首相だ。08年に文科政務官に就任したころから、文教族としての歩みが本格化。09年の衆院選で落選し、浪人中に学校法人「加計学園」が設置する千葉科学大学(千葉県銚子市)の客員教授となった。危機管理学を教えていたという。官邸幹部も「大胆」と評する言葉遣いがしばしば物議を醸してきた。ロシアのプーチン大統領やトランプ米大統領と向き合う安倍首相を「お坊ちゃま育ちのわりには、不良と付き合うのがものすごく上手だ」と論評。野党の国会対応を「田舎のプロレス」「ある意味、茶番」とも表現。野党の批判を浴び、いずれも発言を撤回して謝罪した。 
江島潔
[1957- ] 日本の政治家。自由民主党所属の参議院議員(2期)。国土交通大臣政務官(第3次安倍第1次改造内閣)、山口県下関市長(4期)などを歴任。参議院議員、大蔵政務次官を務めた江島淳は父。祖父の江島鉄雄は下関市議会議員を務めた。
山口県下関市生まれ。東京都立戸山高等学校、東京大学工学部を卒業後、東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。
千代田化工建設技師、東亜大学講師、水産大学校非常勤講師を経て、1991年の下関市長選挙に無所属で、1993年の第40回衆議院議員総選挙に旧山口1区から日本新党公認で出馬したが、いずれも落選。1995年、下関市長選挙に再び無所属で出馬し、現職の亀田博市長を破り初当選した(亀田は2003年に下関市議に転出)。この時の下関市長選では安倍晋三ら自由民主党及び反自民の「市民連合」の双方から支援を受けたが、当選後は親自民の立場を鮮明にした。また選挙戦で掲げた「国民健康保険料の値下げ」「沖合人工島埋め立て計画の見直し」等の公約を反故にする。1999年の下関市長選では、前任の亀田博に加え古賀敬章(前衆院議員。江島が落選した第40回衆議院議員総選挙において旧山口1区で当選)が出馬したが、江島が再選された。2003年、下関市長に3選。
2005年、新設合併に伴う下関市長選に立候補。山口県議会議員を辞職して出馬した中尾友昭の猛追を受けるが、2515票の僅差で中尾を破り、4選。
2009年2月、下関市議会において5選不出馬の意向を表明し、同年3月26日をもって退任。市長退任後は倉敷芸術科学大学生命科学部客員教授を務めた。
2012年12月、参議院山口県選挙区補欠選挙に自由民主党公認で出馬する意向を表明。2013年4月28日に投開票が行われ、無所属で出馬した元法務大臣の平岡秀夫らを破り、初当選した。得票数は287,604票(得票率63.4%)。
2015年10月、第3次安倍第1次改造内閣にて国土交通大臣政務官に就任。
2016年7月、第24回参議院議員通常選挙に出馬し再選。同年8月、自民党内閣第1部会長に就任。
江島市長の人物像 2005/2
下関の江島市政は3期10年になる。市長をやってきた江島潔氏について、市民がふり返って、市長になる人物としての人人の想像をはるかにこえた新型の人類があらわれたのだという実感をかみしめている。選挙を手伝った下関の「海千山千」が、若い子だからと世話してやったつもりでいたら、さんざんにしめあげられ、キューキューいわされてしまった。恩義とか人情とか人の痛みに心を寄せるとか、そういうものは時代遅れであり、人をだまそうと、それはだました側はテクニックが上手だったわけで、だまされたものは自己責任だ、という調子の考え方こそアメリカ流の最先端なのだというわけである。江島市長のもとで、下関は経済的に疲弊し、政治は停滞したが、精神状況もおおいに荒廃した。この新しいタイプの人物像について、市民の論議を深めることは、下関の精神的活性化をはかるうえで必要である。
本領を現した初当選時
江島氏の本領をあらわしたのが、初当選のいきさつであった。91年の落選した初出馬のときは当時流行の日本新党であった。95年の初当選のときは、「沖合人工島を見直す」「国保料を県下最低にする」などと公約して市民党を標榜したり、新進党の推薦を得たりして、反自民の票を集めた。
ところが市長選終盤になると、反自民の支持者にたいしては「事務所出入り禁止」にして、当選するなり自民党・安倍事務所と林事務所だけにあいさつに行った。記者会見では「若気のいたりでした」「人工島は国の事業だった」などと公約はほごにした。もともとが自民党清和会で故安倍晋太郎幹事長・奥田秘書の使い走りから出発した江島氏であったのだ。安倍派であることをかくして反自民票をかき集めたわけである。
市民との約束とか信頼関係とか、政治信条とかは「ウソも方便」の舌先三寸の問題であり、票をいかに多くとるかが正義なのである。反自民の票と自民の票を両方からとれば当選するだろうが、そんなことは普通のものは考えない。これは日本社会の常識では詐欺ということになるが、江島氏が悪いことをしたという形跡はない。むしろ「ボクのテクニックの勝利」「だまされたものは自己責任」という調子であった。これは当時の自民党推薦の亀田氏を切り捨てて、反自民勢力に支えられた方をとりこんで恥じない安倍事務所の政治的な節操のなさに支えられたものであった。
陰湿な業者の排除 経済制裁で抹殺
初当選で協力して裏切られた人人が当然にも江島批判になって、1999年の選挙で対抗馬だった古賀敬章氏、亀田博氏の応援をすると、今度は建設業者からタオル納入の業者にいたるまで、おぞましい業者排除がはじまった。新水族館や新唐戸市場など大型公共事業でも、下請や孫請にいたるまで業者一覧の提出が求められて、市長部局でつくられた「戦犯リスト」をもとに、排除業者が赤ペンで書きかえられるという徹底ぶりだった。排除された中小業者のなかには、行きづまって自殺者まで出た。
古賀氏が経営していた日東建設は、入札の指名回数が年間ゼロ回となり、四九回だった前年と比べて実質「指名停止」となった。日東建設は昨年七月に倒産に追いこまれた。江島、安倍氏に対抗する民主党の古賀氏は、経済制裁で抹殺された形となった。
自分の初当選の協力者を、自分が裏切っておいて、「ボクに逆らった」と、入札排除でしめ殺す、この陰湿なやり口は、近年の残虐な少年犯罪と重ねて業者を青ざめさせるものとなった。恩義とか仁義とか、無縁の考えである。
そして、3期目になると、小泉首相の地元の横須賀市につぐ電子入札導入である。下関市の公共事業では、1件の入札に七十数社が殺到するたたきあいとなり、平均落札率は70%台まで落ちこんだ。しわ寄せは建設労働者に回され、社保、失業保険、雇用保険もとられて、失業、半失業状態に追いこまれた。土木作業員でも1日働けば1万数千円は出ていたが、数年間で8000〜5000円まで下がった。月収が12万〜13万では妻子もまともに養えず、若い家族の離散が広がった。2期目の「選別された業者排除」から、「制限なき地元業者排除」になった。
このような状態は建設労働者だけではなく、タクシーやトラック運転手、派遣社員をはじめ、市内全体の労働者の地位をいちじるしく低めている。中小の商工業者は倒産、家族離散があいついでいる。旧市内の自殺者は2002年が63人で、1994年には年間38人まで自殺者数はへっていたが、8年間で66%も増加した。生命保険を資金繰りにするためみずから命を絶つ経営者、「リストラ」合理化で解雇されたサラリーマン、借金苦からのがれるため死を選んだ商店主など、働きざかりの中高年が大きい割合を占める。
指名競争入札は1900年ごろ明治政府がとり入れたもので、敗戦後の復興をへて100年間国の政策としてつづけられてきた。ところが日米構造協議で米国から、グローバル・スタンダードにそぐわないとやり玉に上げられた。安倍晋三氏の出身企業の神戸製鋼や三菱などの大企業、ゼネコンが仕事をぶんどり、現場は下請にさせてピンハネばかりする関係となった。規制緩和というが、実態は地元業者は無制限自由競争のダンピングだが、大企業は官制談合の自由というインチキにほかならなかった。
江島市長にとってはアメリカの要求こそが正義であり、自分の利権と出世こそが正義であり、そのためには市民が食えなくなることが手柄という関係である。郷土愛などというのは時代遅れもはなはだしいわけである。
下関の歴史をバカにするのも暴露された。東行庵の高杉史料の萩への持ち出し問題では、10万人もの署名を集めてそのふりをしたが、実際には加担する側に回った。小・中学校の教育予算は、県下でもっともみすぼらしく、トイレットペーパー代から用紙代まで、親から徴収、トイレが壊れたり、外壁が落ちかけたりはざらで、下関の子どもは粗末にあつかわれている。恥ずかしいのは下関市立大学で、国からの大学への交付税は利権事業にとりこんで、大学への市からの予算はなく、学生から徴収する学費だけで運営しているありさま。図書館はまことに貧相なまま。非文化、非教育は度外れたものである。
海外旅行は人一倍熱心
江島市長の突出した行動は、海外出張である。昨年問題になったら、今年度は意地になって八回もやった。2期目からこの6年間で、公費による海外出張は40回にのぼった。外務大臣も顔負けするほど熱心に海外視察に行くが、なにを勉強してきたのか、市民にも市議会でも説明したことはない。海外旅行でなにをしているか、市役所内では、「夜遊びはわれわれがついていけないほど」と語られている。
海外旅行と国内出張をあわせると、年間で3日に1日は役所を空けているから、決済書類も市長室にたまり公務が滞る。職員のやる気をなくし、沈滞をつくり出している。
「12月末から予算査定がはじまるが、職員がレクチャーをしているときに、ほとんど寝ていて聞いていない。それならばと説明をやめて席を立った職員がいたが、人事で左遷されてしまった」「自分の興味関心が第一で市民のためとか市の発展を考えることがない」と語られている。利用できる人、金づるになる人などをかぎわける力は、天性に近いものを持っているとも評価されている。
市民をあ然とさせた離婚訴訟問題
市民とくに女性の大話題となっているのが江島潔氏の離婚訴訟問題である。江島氏は昨年5月末に山口家庭裁判所下関支部に提出した訴状で、「99年夏ごろから別居しており、ふたたび婚姻生活を送る意志は毛頭ない」とし、大学生から中学生までの子ども4人の親権は、1人当り月額10万円で妻がひきとることを要求した。離婚原因として、妻が香辛料を使った料理をつくらないこと、休日のアウトドアやスポーツに同調しない、政治家になることをこころよく思っていない、など相違点をあげていた。
言い分はそうだが、下関の若い者は結婚できず妻子も養えないなかで、江島市長の方は「一夫多妻制」をやって矛盾をきたしたのだ、というのが世論の評価である。驚いた世論に慌てて、第1回口頭弁論から約1カ月半で、妻の反論を待たずに訴訟はとり下げた。さらに市民をあ然とさせたのは、「離婚訴訟などしていません」「ウソをいわれて困っています」と、堂堂といって回れる神経であった。
さらにいまの選挙で夫人を連れて回っているが、養育費も出さずにしめあげて、票とりの「出来高払い」の契約をして連れ回しているのだろうとの評価が人人を納得させている。
アメリカが古里の経歴 安倍・林氏と共通
以上のように、人人の想像をこえたタイプの人物であった。どうしてそういう人物があらわれたのか。ある年寄りは「生い立ちにあるんです」と語る。
生まれ育ちも下関とは無縁だが、江島家は下関の大きな地主で、曾祖父は陸軍司令部の司令長、父親の淳氏は江田島の兵学校出身の軍人エリートコースで戦後は国鉄官僚から参議院議員になった。
江島潔氏の小・中学生の時代は、父親が国鉄の領事として赴任したサンフランシスコだった。「日本の大学卒業後にアメリカに留学するといった遅れたやつとは違って、アメリカの小・中学校に行って、後進国の東大を出たのだ」「われこそはアメリカ市民なのだ」といった調子である。
大地主の金持ち一家で、国鉄官僚から代議士の息子で、アメリカが古里という経歴がその人物をつくったわけである。アメリカに心を置いて、下関を植民地にするためにきたというのがあたっていると思われる。
下関支配者としてだれもが認めるのは、安倍晋三氏と林芳正氏である。かれらが江島市長の登場と前後して代議士になった。林氏は東大を出たあとハーバード大に留学し、安倍氏もアメリカのよく知られていない大学に行った。ちょうど、レーガンと中曽根の80年代で、「新自由主義、規制緩和、市場原理、自由競争」といって、はなばなしく叫びはじめていたときであった。
江島市長の10年は、これら安倍、林の「代議士の息子3人組」の連携で成り立ってきた。「3代目で店はつぶれる」ということわざがあるが、下関いわんや日本をつぶしてもらっては、たまったものではない。  
下関は政治家のものではなくて市民のものである。市民がいなければ、代議士も市長もおらず、いかなる大小のピンハネ連中もピンハネのしようがない。「市民が食えるようにするのが市長の務めである」「市民に耳を貸す意志のないものが市長をすることはできない」というのは、民主主義国家の常識である。
働くものが下関を支える主人公であり、働くものが食えないのは異常である。そして働く市民は、人をだましたり、詐欺で市長のイスをかすめとったり、人の痛みにたいして冷酷で、自分の遊びや金もうけだけに熱心というようなことはべっ視している。江島氏の側は時代の先端などではなくて、とんでもない時代遅れであることが証明されざるをえない。
加計学園と江島潔 2017/3
愛媛県今治市に獣医学部を開設しようとしている岡山理科大学に対して、同市が約36億7500万円の広大な土地を無償譲渡しようとしている問題が、第2の森友学園問題としてにわかに注目を集めている。大学建設にかかる総事業費192億円のうち96億円を市や県が補助金で負担するというもので、私学設置に対して支払われる公費の額としては森友学園の比ではない。問題は、この岡山理科大学を運営する学校法人加計学園(岡山市)の二代目理事長が安倍晋三の40年来の旧友で、首相が大学卒業後に米国留学した際に知り合って以後、別荘に招いたりゴルフ友達として親交を深めてきた仲なのだと一部メディアが報道していることだ。また、同学園が運営する認可外保育施設・御影インターナショナルこども園の名誉園長として、ここでも首相夫人・安倍昭恵が名前を連ねていた。
加計学園は岡山理科大学のほかに、千葉科学大学、倉敷芸術科学大学をはじめ、いくつかの専門学校、付属中学校や高校を運営しているようだ。そのずらっと並ぶホームページの組織図を眺めていて、ふと目にとまったのが「倉敷芸術科学大学」の名前だった。8年前に下関市長を退いた江島潔が、その後、なぜか岡山のあまり耳にしたことがないような「芸術」を冠にした大学の客員教授として拾われていた記憶があったからだ。当時のノートをめくってみると、案の定、その話を教えてくれた人物の名前と共に「倉敷芸術科学大学」とあった。安倍人脈で世話されていたのかどうか、真相は本人たちが一番自覚していることだろう。今回の報道に触れて、そこに偶然とは思えないつながりを感じたのだった。
8年前、市長選挙のギリギリまで出馬にこだわり、出処進退を明言しなかったのが江島潔だった。有権者からの評判は散散だったが、それでも勝てるという本人の読みがあったのだろう。しかし願い叶わず、最後はその後の国政選挙への影響を心配した代議士が本人に直接引導を渡したのだと、当時安倍派の面面は真顔で引退劇の舞台裏を囁いていた。それで安倍代理市政の番頭役が得た次なる宿り木が、加計学園の運営する倉敷芸術科学大学の客員教授だったのかもしれない。 
山本幸三
[(1948- ] 大蔵官僚。自由民主党所属の衆議院議員(7期)、内閣府特命担当大臣(地方創生・規制改革)。経済産業副大臣(第1次安倍内閣)、衆議院法務委員長・消費者問題に関する特別委員長・地方創生に関する特別委員長等を歴任した。義父は大蔵大臣や厚生大臣を歴任した元衆議院議員の村山達雄。叔父は参議院議員、門司市長を務めた柳田桃太郎。
福岡県門司市(現北九州市門司区)生まれ。福岡県立京都高等学校卒業後、東京大学理科一類に入学。しかし、3年次の専門課程に進学する際は理系から文系に転じ、東京大学経済学部卒業。東大卒業後、大蔵省に入省した。大蔵省在職中の1973年、コーネル大学経営大学院に留学し、MBAを取得した。帰国後、岩国税務署長、アメリカ合衆国ハーバード大学国際問題研究所客員研究員等を経て、1987年6月から宮澤喜一大蔵大臣の秘書官を務めた。1991年4月より九州国際大学講師。
1990年、第39回衆議院議員総選挙に旧福岡4区(定数4)から自由民主党公認で出馬したが、次点(得票数5位)で落選した。1993年の第40回衆議院議員総選挙には結党したばかりの新生党公認で再び旧福岡4区から出馬し、同区トップ当選。1994年、新進党結党に参加し、1996年の第41回衆議院議員総選挙には小選挙区比例代表並立制導入に伴い福岡11区から出馬。社会民主党の中西績介、自民党の武田良太らを破り、再選(中西は比例復活)。1997年末の解党を待たず、新進党を離党した。
2000年の第42回衆議院議員総選挙には保守系無所属で福岡11区から出馬し、再び社民党の中西、自民党の武田を破り3選(中西は再度比例復活)。その後、自民党に復党する。2003年の第43回衆議院議員総選挙では、過去2度の選挙を非自民で戦った山本が自民党公認、逆に自民党公認で戦った武田が無所属で福岡11区から出馬し、約16,000票差で山本が敗れた。2005年の第44回衆議院議員総選挙では、2004年8月に自民党に復党していた武田が郵政民営化法案に反対したため自民党の公認を得られず、福岡11区から無所属で出馬。山本が自民党の公認を得て出馬したが、無所属の武田は連立与党である公明党からの強力な支援を受けており、福岡11区では落選。重複立候補していた比例九州ブロックで復活し、2年ぶりに国政復帰。2006年9月、安倍内閣で経済産業副大臣に任命された。
2009年の第45回衆議院議員総選挙では山本、武田が共に福岡11区からの立候補に意欲を示したため、選挙区の調整が難航し、7月18日に福岡11区で武田を擁立し、山本は比例九州ブロックに回る方針が決定。山本の支持者はこの決定に不満を募らせ、山本自身も次回以降の選挙に向け、小選挙区での出馬を模索する意向を示した。総選挙では全国的に与党に対する猛烈な逆風が吹き荒れたものの、武田は福岡11区、山本は比例九州ブロックでそれぞれ当選。
2012年の第46回衆議院議員総選挙では、福岡11区では前回に引き続いて武田が公認され、山本は前回選挙で落選した西川京子の選挙区である福岡10区で公認を受ける。これに対し、西川は無所属での出馬を強行する構えだったが、公示日の直前に福岡10区での出馬を撤回し、比例九州ブロックに鞍替えした。福岡10区から出馬した山本は、民主党前職の城井崇を破り、6選。2014年の第47回衆議院議員総選挙でも、福岡10区で7選。
2016年8月、第3次安倍第2次改造内閣で内閣府特命担当大臣(地方創生・規制改革)に任命され、初入閣した。 
論議を呼んだ発言
2012/3/5 衆議院予算委員会において、自見庄三郎金融担当大臣(当時)に対し、証券取引等監視委員会による強制捜査の手法を批判する趣旨の質疑を行った。その前年9月、山本が代表取締役を務める「ブルー・エコノミー・ホールディングス」に5千万円の資金を提供していた金融業者、及び日興コーディアル証券の元執行役員がインサイダー容疑で証券取引等監視委員会の強制捜査を受け、その3ヶ月後に逮捕されており、山本の国会質問に対して「私的な利害関係者のために国会の場で質問した」「証券取引等監視委員会への圧力ではないか」等の指摘が週刊文春による報道でなされたが、山本自身は圧力をかける意図については否定した。
2017/4/16 滋賀県大津市のホテルで開かれた滋賀県主催の地方創生セミナーで、博物館で働く専門職員である学芸員が観光振興に理解がないと指摘し、「一番がんなのは学芸員。普通の観光マインドが全くない。この連中を一掃しないと。」と語り、世界遺産の二条城(京都市)について「過去、全く英語の案内表記がなかった」「(昨年まで)国宝、重要文化財では水も火も使えなかった。法律では禁止されていないのに、学芸員の判断で一切だめだった」、さらに、ロンドン・オリンピックの際に大英博物館が建物の内壁を取り払う大改装を行い、「抵抗した学芸員を全員クビにして大成功した」と語った。二条城は以前より英語案内やパンフレットがあり、重要文化財エリアにおいて水を使った生け花を行った事もあった。また、大英博物館はロンドンオリンピック時の根本的改装や学芸員の解雇について否定した。翌17日に謝罪のうえ発言撤回を表明した。
2017/6/15 獣医学部の新設 条件記載の文書 / 去年11月9日に国家戦略特区のもと、獣医学部の新設が決まった際につけられた条件を記載した文書についても見解が分かれています。文部科学省が作成した原文には「現在、獣医師系養成大学等のない地域において獣医学部の新設を可能とする」などと書かれていましたが、この原文に「広域的に」「存在し」「限り」という3つの文言が手書きで挿入されています。去年11月9日の最終的な文書にはこの修正が反映され「現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」となりました。この結果当時、今治市と同様に獣医学部の新設を計画していた京都府は隣の大阪府立大学に獣医系の学部があるため、条件を満たさなくなりました。この修正の指示について文部科学省が公表した内閣府から送られてきたというメールには、「藤原審議官いわく、官邸の萩生田副長官からあったようです」と記されています。これに対して内閣府はこのメールを作成した職員について、直接の担当者ではなく伝え聞いた内容であり、事実関係を確認しないままメールを発信したことを認めたと公表しました。さらに文書の修正は萩生田副長官からの指示でなく、内閣府の山本大臣が「広域的」などの文言を追加するよう藤原審議官に指示をして、修正を施したと説明しました。萩生田官房副長官は総理大臣官邸で記者団に対し、みずからの関与を指摘するメールについて、「メールを作成した担当者は国家戦略特区の担当ではなく、たまたまほかの人に聞いたもので、藤原審議官からも直接聞いてない。伝聞の伝聞の伝聞をそのまま親元である文部科学省にメールしたということだ。事実関係は十分承知しないまま発信してしまったことを本人も認めている。私が指示をした事実は全くない」と述べました。
和泉洋人
[いずみひろと、1953- ] 日本の建設官僚。学位は博士(工学)(東京大学・2001年)。内閣総理大臣補佐官(国土強靱化及び復興等の社会資本整備、地方創生、健康・医療に関する成長戦略並びに科学技術イノベーション政策担当)。内閣官房都市再生本部事務局次長、国土交通省大臣官房審議官(住宅局担当)、国土交通省住宅局局長、内閣官房地域活性化統合事務局局長、内閣官房参与(国家戦略担当)、内閣総理大臣補佐官(国土強靭化及び復興等の社会資本整備並びに地域活性化担当)、内閣総理大臣補佐官(国土強靭化及び復興等の社会資本整備、地域活性化並びに健康・医療に関する成長戦略担当)、内閣総理大臣補佐官(国土強靱化及び復興等の社会資本整備、地方創生並びに健康・医療に関する成長戦略担当)などを歴任した。
神奈川県横浜市出身の建設官僚である。東京大学工学部を卒業し、建設省に入省した。高崎市役所へ出向を経て、建設省にて住宅局住宅生産課の課長などを務めた。中央省庁再編後は国土交通省に所属し、住宅局住宅総合整備課の課長を経て、内閣官房に出向し都市再生本部事務局の次長を務めた。国土交通省に戻ると、大臣官房の審議官を経て住宅局の局長に就任した。その後、再び内閣官房に出向して地域活性化統合事務局の局長を務め、それを最後に国土交通省を退官した。
安倍政権発足後は内閣官房参与(国家戦略担当)を経て、内閣総理大臣補佐官(国土強靭化及び復興等の社会資本整備並びに地域活性化担当)となるなど、閣内の要職を歴任した。その後、内閣総理大臣補佐官(国土強靭化及び復興等の社会資本整備、地域活性化並びに健康・医療に関する成長戦略担当)を経て、内閣総理大臣補佐官(国土強靱化及び復興等の社会資本整備、地方創生並びに健康・医療に関する成長戦略担当)となった。
 
前川前次官の再会見 (6/23)

 

前川前次官の再会見 1 
学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、文部科学省の前川前事務次官が23日記者会見を開き、「内閣府や官邸は国民に説明責任を果たす必要がある。第三者による調査と検証を行うべきだ」と主張しました。
この中で、文部科学省の前川喜平前事務次官は、次々と存在が明らかになった一連の文書について、「文部科学省は追加調査によって、一定の責任は果たしたが、内閣府と官邸は文書に書かれた内容を認めておらず、不誠実と言わざるをえない。内閣府と官邸は真相解明のため国民に説明責任を果たす必要がある。第三者による調査と検証を行うべきだ」と主張しました。
また前川氏は、文部科学省は獣医学部新設を規制し既得権を守っていたのではないかという質問に対して「私自身、規制緩和そのものに反対しているわけでない。規制に対する穴の開け方に問題があった」と発言しました。
さらに、萩生田官房副長官が文部科学省の局長と面会したときのやり取りを記したとされる新たな文書について、「在職中に見たことはないが、おそらく局長より下の担当者の間で共有するために作成されたのではないか。文書を作成したとされる課長補佐はよく知っているが、極めて優秀なので虚偽を書いたり、聞き間違いが入ったりした文書を作ることはありえない」と述べました。
前川前次官の会見について現役職員の1人は「決定過程において行政がゆがめられたというのは職員も実感している。ただ規制緩和が決まる前に、本来、文部科学省として主張すべきことや、できることはあったはずで、反省する点は多い」と話していました。
また別の職員は「文部科学省という組織で本当に公正・公平な仕事がやっていけるのか、疑問に感じているのが正直な気持ちだ。会見は自分が感じる問題点を代弁した内容だった」と話していました。 
前川前次官の再会見 2
学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡り、内閣府が文科省に対して早期に開学を促したとされる問題。
文科省が20日萩生田官房副長官の関与を疑わせる文書の存在を明らかにした直後の会見で、前川氏が何を語るのか注目された。
「10/21萩生田副長官ご発言概要」と題された文書について前川氏は、「私は現職中には見ていない」としたうえで、「(文書を作成したとされる)課長補佐は知っているが、しっかりした優秀な人物で、虚偽や聞き間違えはまずありえない」と述べ、「発言者が誰かは精査するべきだが、書かれているのは事実ではないか」との認識を示した。
萩生田氏の関わりについては、「文科省から見ると頼りになる文教族の先生」だったが、「内閣府との調整役を期待したが、その機能を果たしてくれなかった」と述べた。
そのうえで、設置認可のキーパーソンは和泉補佐官だと述べ、「9月に官邸の執務室に呼ばれ、文科の対応を早くしてほしいと。総理が自分の口から言えないからとの言葉もあった。全体のシナリオを書いて統括している立場にあったと思っている」と強調した。
さらに前川氏は、今後さらなる文書が出てくる可能性について、「文科省内にまだ文書はあるはず。これから出てくる可能性もある」と述べた一方、「内閣府との関係、総理官邸との関係のものであり、その姿勢は不誠実と言わざるを得ない。真相の解明から逃げようとしている」と官邸と内閣府を批判し、第三者委員会の設置を求めた。
また、文科省が規制改革を拒む抵抗勢力と言われていることについて前川氏は、「私は規制改革そのものに反対していない。今回の問題は規制緩和を進めるにあたって、規制に穴をあけたことそのものでなく、規制の穴の開け方に問題がある」として、「新設認可のプロセスに不明瞭、不公正なものがあるのではないか」と主張した。
具体的な疑問点として前川氏は、「第一にまず加計ありきで、最後の段階でさまざまな条件、たとえば「広域的に」、「30年度開学に限る」、最後には「1校に限る」と加計しか該当できないものにし、規制緩和に規制を載せることによって、最終的に1つの主体だけとなった根拠が不透明」だと指摘した。
さらに前川氏は、「国家戦略特区諮問会議とWGがちゃんとした検討を行ったのか。戦略特区の目的は「国際競争力強化、国際経済拠点形成」だが、これに資するものか検証はされたのか?京都産業大学の提案との比較・検討は十分行われていたのか?疑問が残る」と強調し、「需要見通しは農水省の参画が不可欠だが、実質的に参画はなかったと言わざるを得ないし、厚労省の参画も得て検討するべきだったが、終始一貫関与していない」として加計学園獣医学部新設が認可されたプロセスにあらためて疑義を呈した。 
■前川喜平・前文科事務次官が再会見 
日時  2017年6月23日(金)16:45〜18:15
場所  日本記者クラブ(東京都千代田区)
主催  日本記者クラブ
前川さん登壇。隣は毎日新聞の倉重さん。会見の経緯について説明。加計学園が選ばれる際、首相の親しい友人が選ばれた。行政が歪められた。第2に真相解明の場がない。国会で呼ばれない。ならば、と。幹事社・毎日新聞の倉重篤郎氏「ここは証人喚問の場ではないが、真実を語ってもらいたい」 
前川喜平・前文科事務次官が「内閣府、官邸は、真相解明に不誠実」と批判! 「第三者性の高い検証が必要」と訴え
「前川でございます。前回の記者会見、1ヶ月前。国家戦略特区における獣医学部の問題、報道もありました。私には政治的意図はありません。
都議選というタイミング、何も関係ありません。文科省の天下り問題、新国立競技場問題、親族の経営する企業、その他、何も関係ありません。新獣医学部が新設された経緯で行政が歪められた問題への問題意識だけです。
文科省、追加調査を行うことで、隠蔽のそしりを免れたことはよかった。松野文科大臣も、苦しいお立場の中で精一杯、誠実な姿勢をとられたのではないかと思っている。その点については、敬意を表したい。文書、私が見たものも、見ていないものもある。いずれも職員が書いたもの。こうした文書が出てくること、職員を評価。
一方、内閣府、官邸は、真相解明に不誠実。官邸の最高レベル、総理のご意向、という言葉を、自分の発した言葉を否定している。これは素直に読めば、平成30年に今治に加計学園の新獣医学部を新設する、ということに他ならない。第三者性の高い検証が必要だ。
新国立競技場の建設経費が膨らんだことを検証する第三者委員会を作り、私は事務局長をつとめていた。こうしたアドホックな方法もある。総理は丁寧に説明していくと言った。そうしてもらいたい。岩盤規制に穴を開けるものと、岩盤規制に固執する抵抗勢力というのは、勧善懲悪の構図。
こうした勧善懲悪による見方はおかしい。私は特区には反対なのではない。不要な規制は検討した上で撤廃する必要がある。学習指導要領によらないフリースクールなど、特区を作り認め、広げていった実績もある。今回の場合は穴の開け方に問題がある。 
「加計学園ありきだったのではないか」――はじめから加計学園に獣医学部を新設させる結論があった可能性を前川氏が指摘
プロセスが不透明だった。まずは、加計学園ありきだったのではないか、という問題。最後の段階で、様々な条件が付け加えられた。広域的に獣医学部のない地域に限るなどといった言葉が付け加えられ、ライバルの京都産業大学を排除。これは規制解除といいつつ、ひとつの主体だけが選ばれるよう、新たな規制を加えたに等しい。
これは、特別な主体にのみ特権を与えるものです。国家戦略特区は、国際競争力の強化、国際経済拠点となることが必要だが、その条件を満たされているか? 四条件は満たされているか? 既存の大学でできないことをやろうとしているか? 比較検討は?
農水省の参画は不可欠ですが、実質的に参画は? ない。ライフサイエンスについてならば、厚労省の参画は? ない。非常に疑問が残る。諮問会議の五人の民間委員、八田委員は一点の曇りもないと発言したが、曇りがないのでなく、曇りが見えなかった、見なかった、見せられなかったのではないか。
京都産業大学を排除する意図はなかった、と諮問会議の民間委員の八田さんはおっしゃった。とすると、内閣官房の意図と食い違っていたのではなかったか。もう1つの平成30年度4月開校という条件も、京都産業大学を排除する効果がある。そこを認識していない。
まず1校なら、加計学園でいいのではないか、という発言もあったが、そこを突破口に二校目、三校目と続くのか、その保証はない。政策決定プロセスは検証する必要がある。 
前川氏が権力とメディアの癒着に言及!「今の国家権力とメディアの関係に、不安を覚えている」「メディアの自浄作用が生じることを強く期待したい」と危機感を表明
もう1つ、認識を新たにしたのは、国家権力とメディアの関係。
1つは5月22日の私を攻撃する読売の記事。その背景はメディア関係者で検証されるべきだと思うが、個人的には『官邸の関与』があったと思う。
もう1つ、一番最初に取材に来たNHK、私へのインタビューをいまだに出していない。また、どんな文書が出ようが官邸寄りのコメントしかしないコメンテーターもいる。そうしたコメンテーターの中には、ご本人の性犯罪が警察にもみ消された疑惑はある方もいる(元TBSワシントン支局長で準強姦事件を犯しながら、逮捕を免れた山口敬之氏のこと)。
私は、今の国家権力とメディアの関係に、不安を覚えている。国家権力と『第4の権力』とまで言われるメディアの関係が問われる必要がある。メディアの自浄作用が生じることを強く期待したい」 
「全体の絵を描いたキーパーソンは和泉洋人総理補佐官」と前川氏が指摘! 和泉総理補佐官から前川氏へ直接の働きかけがあったことを言明
倉重氏の質問。「あなたがいなければ、あったことがなかったことにされていたが」
前川氏「『イフ』の問題には答えにくい。誰かが告発したかもしれない。しかし、何も起こらず、平穏に学校開設に向けて推移した可能性が高い」
倉重氏「文書の問題。官邸の最高レベル、という言葉、どう考えたか?」
前川氏「わかりません。総理、官房長官、それから側近の人、その辺りではないかと思います」
倉重「NHKの『クロ現』の新文書について」
前川氏「文書を読むと、萩生田(光一)官房副長官なのか、和泉(洋人)補佐官なのか、常盤氏(常盤豊高等教育局長)の発言なのか、主語がやや曖昧。しかし中身は事実であろう。文書を書いた課長補佐、よく知っている。虚偽の文書を作る人物ではない。
『文科省が怖気付いている』という言葉だが、これは萩生田氏が和泉氏の言葉を引用したものだが、農水省は当時、コミットしてなかったし、必要な文書は出さない。しかし文科省は、最後は大学の設置認可にかかわる。逃げられない。我々は自らの責任を自覚して慎重にならざるをえなくなっていた」
※「和泉補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている、何が問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。官邸は絶対やると言っている」などと記載された文科省の新文書。
倉重氏「文言を付け加えた件について、藤原(豊)審議官が、自分がやり、指示したのは山本大臣(山本幸三地方創生担当相)だと言った。しかし新文書が出てくると、萩生田副長官、農水省関与が色濃い」
前川氏「この件について直接関与していないのでわからない。しかしいい加減な文書は作らない。他のペーパーと合わせ読むと、平仄があう。萩生田副長官の関与はあったと思われる。今後も文科省から出てくると思うが、内閣府の調査が必要」
倉重氏「総理周辺のキーパーソンは?」
前川氏「和泉補佐官がキーパーソン。私に直接、働きかけが。総理に代わって、と言っている。また、萩生田副長官の発言も、和泉補佐官の発言を引いている。全体の絵を描いていたのは和泉補佐官」
倉重「萩生田副長官は?」
前川氏「文科省にとっては頼りになる人だった。調整をお願いしていた。農水省、厚労省が関与してもらわないと困るので、調整をお願いした。10月7日のペーパーでは、萩生田副長官は自分が調整するとおっしゃっている。ところが10月22日になると話が変わってくる。とにかく早くやる。和泉補佐官が決めた線でやる」 
読売新聞の「出会い系バー」報道は権力と関係があった!? 「官邸は私がバーへ出入りして活動していたことをもともと知っていた」「文科省の後輩の某幹部から『和泉さんが話をしたいと言ったら応じるつもりはあるか』と打診があった」
倉重氏「成田市の医学部との比較を」
前川氏「特区で医学部の新設を認める前例だった。時間をかけて検討している。決定的な違いは、厚労省が国際的な医療人材の育成という需要はあると立場を明確にした。正統性の説明ができた。ところが今治の新獣医学部の場合には、成田のような三省での合意をできていない」
倉重氏「あなたは『行政を歪めた』と言ったが、安倍総理は『歪んだ行政を自分が正したのだ』と言った。どちらが正しいのか」
前川氏「次元が違う話なのではないか」
倉重氏「安倍総理は、友人への利益誘導があったのではないか」
前川氏「私の立場からは言わないほうがいい」
倉重氏「読売の報道、なぜ権力との関係がある?と」
前川氏「まず、官邸は私がバーへ出入りして活動していたことをもともと知っていた。その後、読売の記者が取材に。その取材申し入れのタイミングで、文科省の後輩の某幹部から『和泉さんが話をしたいと言ったら応じるつもりはあるか』と打診があった。私自身の中では、この二つのアプローチが連動しているんだろうと意識はした。私は記事を出されてもいいと思った。それを出さないようにお願いする気はなかった。問題は、私だけでなく、こうしたことが誰の身にも起きているとしたら大変だと。第四の権力であるマスコミが政治権力と結ぶ。これは大変危険なこと」 
森友学園問題についても言及!前川氏「(加計学園問題と)よく似ている。誰かが絵を描いていないとできない」
倉重氏「森友学園については?」
前川氏「よく似ている。誰かが絵を描いていないとできない。違いは、加計学園問題では情報が出てきた。しかし、森友学園では出なかった」
倉重氏「大学設置審議会では?」
前川氏「国家戦略特区の諮問会議で確認してもらう必要がある」 
質疑 
「文科省はもっとできることはなかったのか?」とのNHKの質問に対して前川氏「やれることはあったかもしれないが、やっても同じだったかもしれない」
産経新聞記者「前川さんが報道機関に文書を流したんですか? 天下り問題は?」
前川氏「情報の流出元、コメントしません。2問目、私は今回の再就職規制違反の発端になった吉田局長の早稲田大学への再就職の経緯は、事務次官として人事課から報告を受けるまでは承知していなかった。またその他の案件についても、違法な事例があるということは、その時点では承知していなかった。再就職等監視委員会からの指摘を受けるまで知らなかった。知っていたのに是正しなかったとの指摘は当たらないと思います」
共同通信記者「和泉補佐官は言ってない、記憶にないと言っている。何か証拠はないか?」
前川氏「今にして思えば録音しておけばよかったが、録音はない。水掛け論になることは覚悟している」
NHK記者「文科省は加担していたのではなかったか? もっとできることはなかったのか?」
前川氏「やれることはあったかもしれないが、やっても同じだったかもしれない。文科省は加担していたと言われれば、そうかもしれない。敗戦処理的な動きをしていた」 
「『嫌な報道をされたくなければ、言うことを聞けば、抑えてやる』と、こういうことを言われるのではなかろうかなと思った」――読売新聞の取材申し込みと和泉総理補佐官の2つのアプローチの連動性を意識した前川氏
朝日新聞記者「挙証責任議論について」
前川氏「政府の中でどっちが挙証責任があるのか、議論するのは不毛だ。裁判のように、そうした論の立て方はおかしいのではないか。しかし国家戦略特区のワーキンググループはそうした議論の立ち方をした。文科省は、獣医師の需要を考える。獣医師の資格を持っているのは農水省。その農水省はいいから、文科省がどうするのかという乱暴な議論が国家戦略特区の諮問会議で立てられた」
フリー・小林氏「教育の問題。ご家庭で、特にお父上からどういう教えが今、前川さんの胸の中にあるのか」
前川氏「少年時代から、仏教には非常に関心を持っていた。大学時代は、仏教青年会というものに入っていた。仏教といっても、特定の宗派ではなく、仏教一般。特に原始仏教とか、根本仏教とか言われるもの、またそこから派生してきている大乗仏教の中でも、禅仏教ですね。そういったものに対しては非常に関心を持っている。仏教の学習を通じて培った世界観とか人生観というものは、非常に大きいと思っている。それは父から受け継いだものが大きいと思っている」
フジテレビ・中村記者「出てきた文書の中には随所に、萩生田副長官の名前が出てくるが、今まで出てきた文書以外で、萩生田副長官の存在を意識させるような出来事はありませんでしたか」
前川氏「私自身はほとんど、萩生田副長官との関係では、意識したことはない」
デモクラシータイムス・山田記者「読売新聞の取材との関係で、5月21日のシーンを詳しくうかがいたい。この時に、再度コメントを求められたわけですね。そしてこの日に、和泉さんから『話をしたいんだけれども、応じるつもりはあるか』という連絡があったのか、それとも直接会ったのか、どなたかを通してきたのか。この連動性というのを意識されたのか」
前川氏「読売新聞が取材をしたいという申し込みは、記事が出る前々日の土曜日、5月20日からありました。5月21日の日にも、より詳しい質問などが送られてきていたんですけれども、これは私は対応しなかったのだが。一方で5月21日の日曜日、文部科学省の私の後輩にあたる某幹部から『和泉さんが話をしたいと言ったら応じるつもりはありますか』というような言い方で打診があった。私は『ちょっと考えさせてくれ』とだけ返事をして、そのままにした。私自身の中では、この2つのアプローチは連動しているんだろうと意識はした。想像ですけれども、『嫌な報道をされたくなければ、言うことを聞けば、抑えてやる』と、こういうことを言われるのではなかろうかなと思った」
父親との影響と仏教の話、萩生田の存在よりも和泉補佐官の存在が際立っていた、といった質疑の後、読売の記事が出る前に、後輩から和泉補佐官に会う気がありますか、という話があった件、についての質問が。さらに義家文科副大臣の守秘義務違反の話。 
東京新聞・望月衣塑子記者からの質問に前川氏「重要な人物で一切発言していない人としては、加計孝太郎氏」――「(加計孝太郎氏を)早くつかまえていただきたい」とメディアへ要求!
TBS記者「前川さんは現役職員の勇気を評価したいとおっしゃった一方で、義家文科副大臣は、文書の存在を証言した現役職員に関して、国家公務法違反にあたる可能性があると指摘している」
前川氏「国家公務員の守秘義務違反の理解が違うのではないか?」
元NHK内藤記者「今、世の中は右へ右へと傾いているのではないか?」
前川氏「内藤さんと同じような気持ちを持っております。一国中心主義が世界的に広がっている。世界に敵を作っていく動きがある。1930年代に近い状況が生じる危険性があると思っている」
TBSラジオ武田一顯記者「何かまだネタはあるか?」
前川氏「よく記憶を呼び戻せば、あと1つ、2つはあるかもしれないが、だいたい話した」
記者「敗戦処理は、1強の政治状態があったのか?」
前川氏「これは政界官界の問題ではなく、文科大臣を含めて、文科省としての問題。松野大臣は苦しいお立場。福岡六区の選挙結果や、萩生田氏の態度が変わったことは影響していると思う」
産経新聞記者「既得権益を守ろうとしていたのは文科省ではないか?」
前川氏「それは単純な見方です。特定の主体を排除し、特定の主体を優遇する。そのプロセスが問題である。岩盤規制対規制緩和という構図は、議論のすり替えです」
ビデオニュース・ドットコム・神保哲生記者「他にも歪められていることがあるのか」
前川氏「古今東西、いつの世もどこの国にも権力のもとで、不正が行われてきただろうと思う。それをいかに少なくするのか。デモクラシーはそのための知恵。権力の分立はそのための知恵の一つ。天下りの第三者機関の監視もその一つ」
東京新聞・望月記者「加計問題は、利益供与があれば贈収賄にもなる疑獄事件。メディアは何をすればいいのか」
前川氏「頑張ってください、としか言いようがない。重要な人物で一切発言していない人としては、加計孝太郎氏です。早くつかまえていただきたい」。 
文科省から新たに文書が出る可能性が!? 前川氏「文部科学省の中には、まだまだこの一件に関して、文書はあるはず」「パソコンの中に眠っているものがあるんだろうと思われる」
フジテレビ・竹内記者「前川さんは、内閣府、官邸はもちろんだけれども、文科省も100%の説明責任を果たせていないという風におっしゃっていましたが、100%ではないとおっしゃる理由を、一連の流れの中で、どこで感じているのか、教えてください」
前川氏「文部科学省の中には、まだまだこの一件に関して、文書はあるはずです。既に表に出ている情報から推察される、推測される情報もたくさんありますから、そういったものはまだ、おそらく、パソコンの中に眠っているものがあるんだろうと思われるんですね。それはまだ、出てきていない。これから出てくる可能性もありますけれども。これらの文書に対して、最初に私が申し上げたのは、松野大臣はじめ文部科学省の幹部の皆さんが、精一杯の誠意は示していると思っているんです。非常に苦しい立場だと思うんです。萩生田副長官のご発言に関する10月21日の日付入りのペーパーについてもですね、文部科学大臣、あるいは副大臣が『反省している』とか『謝罪する』とかという言葉を口にしておられる、と。『正確性に欠く』文書だという理由で。そこはそう言わざるを得ない事情があるんだ、という風に考えてあげたいなと思っていまして、なんだかんだ申し上げてもやはり、総理官邸と文科省は蛇と蛙のような関係。蛇に睨まれた蛙は、言いたいことは言えないんですよね」
フジテレビ・記者「野党の国会開会の要求について」
前川氏「閉会中審査、国会開くべきかは私がコメントすべきことではないと思います。ただし、呼ばれれば国会で証言します」
記者「いつから歪んでいたか」
前川氏「最後のツケは文科省に押し付けられる。しかし、その途中は内閣府がリードする。途中、おかしい、おかしいと思いつつも押し切られてしまった。内閣府の長は大臣といってもその上は総理。検証する組織は内閣府内部に作る必要がある」
テレビ朝日・セガワ記者「10月21日につくられた課長補佐の文書に関して、『内容に不正確なものがある』、あるいは11月1日に文科省から出向されていた職員の方から、何か陰に隠れてご注進のメールというように大臣から指摘されていたりというようなことがあり、トカゲのしっぽ切りではないか、という指摘もあるようなんですけれども、この点に関しては」
前川氏「情報を発信した人物の信頼性を落とすことで、情報の信頼性を落とす意図がある」 
「個人の尊厳、国民主権」――前川氏が「自分の信念、信条、良心は持っていなければいけない」「おかしいと思ったことはおかしいと言わなければならない」と後輩職員へメッセージ
会見の最後に、書いた言葉。「個人の尊厳、国民主権」。
「私は38年間、国家公務員をして、今は私人になっている。仕事で感じたのは『国家公務員は自分を捨てて仕事をしているのではないか』『滅私奉公ではないか』ということ。それはいけない。国家公務員でも尊厳を持った一人の人間ということを忘れず、自分の信念、信条、良心は持っていなければいけない。これが個人の尊厳を訴えた理由。後輩の文科省職員に伝えたい。 『国民主権』もそう。国家公務員として全体の奉仕者である一方で主権者の一人でもある。おかしいと思ったことはおかしいと言わなければならない。内部告発で首を切られても仕方ないとは思わない。そこは粘り強く、しなやかに、強くやっていく必要がある。一個人であること、一国民であることを忘れず仕事をしてほしい」
倉重氏「今後はどう過ごす?」
前川氏「これから考える。天下りはしないと思います。ボランティアは楽しい。いろいろしていきたい」 
 
衆院・参院閉会中審査(7/10) 報道

 

前川前次官「行政ゆがめた」 地方創生相「一点の曇りなし」
国家戦略特区での獣医学部新設をめぐって、参議院の閉会中審査が開かれ、参考人として出席した文部科学省の前川・前事務次官は、新設の決定に総理大臣官邸の関与があったのは明らかで、行政のプロセスがゆがめられたと改めて主張しました。これに対し、山本地方創生担当大臣は、プロセスには一点の曇りもなく、ルールに基づいており、総理大臣官邸の意向が入る余地はないと反論しました。
前川前次官「官邸の関与明らか」
国家戦略特区での獣医学部新設をめぐって、参議院では衆議院に続いて、閉会中審査となる文教科学委員会と内閣委員会の連合審査会が開かれました。
この中で、参考人として出席した文部科学省の前川・前事務次官は、獣医学部新設の経緯について「和泉総理大臣補佐官から直接の働きかけがあり、和泉補佐官を中心として、総理大臣官邸の関与があることは明らかに推測される。また、京都産業大学の提案との比較、検討がきちんと行われたのかどうかも明らかでなく、不明朗なところが多い」と指摘しました。そのうえで、前川氏は「私が『ゆがめられた』と思う部分は、規制緩和の結果として、『加計学園』だけに獣医学部の新設が認められたプロセスであり、不公平・不透明な部分があるのではないか」と述べました。
山本地方創生相「官邸など入る余地ない」
これに対し、山本地方創生担当大臣は、「一点の曇りもなく、ルールに基づいてやってきた。規制緩和は、個人の意見が入ってくるような話ではなく、私ども内閣府と規制監督省庁とがギリギリやり合って、民間議員と意見交換しながら決めていくわけで、個別の案件について、官邸などが入る余地はない。私も全く官邸を気にしたことはない」と述べました。
そのうえで、山本大臣は、「『4条件がなっていない』などと言うが、『なっていない』と証明するのは文部科学省だ。それができなくて獣医学部の新設が決まったわけであり、全く問題ないと考えている」と述べました。
前愛媛県知事「ゆがめられた行政がただされた」
また、参考人として出席した、前の愛媛県知事の加戸守行氏は、「10年前に、愛媛県民と今治地域の夢と希望を託してチャレンジしたが、厚い岩盤規制で跳ね返され、やっと国家戦略特区の枠で認められ、本当に喜んでいる。岩盤規制にドリルで穴をあけてもらい、ゆがめられた行政がただされたというのが正しい」と述べました。
さらに、加戸氏は、「今治選出の県議会議員と加計学園の事務局長が『お友達』だったからこの話がつながった。『加計学園ありき』と言われるが、声をかけてくれたのは加計学園だけで、愛媛県は、12年間『加計ありき』で来た」と述べました。
文書の信ぴょう性も議論
一方、質疑では、獣医学部の新設をめぐる一連の文書などの信ぴょう性についても議論となりました。このうち、文部科学省が調査で確認できなかったとしている、萩生田官房副長官の関与を示す文書について、前川氏は、「事務次官在職当時、担当課から説明を受けた際に受け取った資料と同じものだ。探せば出てくる文書だ」と述べました。
これに対し、萩生田副長官は、「メモに書いてあるような言葉で回答した記憶はない」と述べ、松野文部科学大臣は、「十分に信頼性のある調査が行われた結果、文書が存在しなかったと認識している」と説明しました。
また、萩生田副長官が獣医学部新設の条件の修正を指示したと指摘するメールについて、前川氏が「私は在職時に見ていないが、書かれている内容からすると、極めて信憑性は高いと思っている」と述べたのに対し、萩生田副長官は、「そのような指示をした事実はない」と否定しました。
前川前次官「答弁不十分で疑問も残る」
審議を終えたあと、前川前事務次官は国会内で記者団に対し、「政府内で何があったのか、ちゃんと調べようという動きになっていることは歓迎すべきだと思うが、政府側の答弁は不十分であり、特に内閣府や内閣官房の答弁は十分な答えになってない」と述べました。
そして前川氏は、「なぜ加計学園に決まったか、加計学園に最終的に決まるように条件を付していったところもあり、そこに『官邸の最高レベルが言っている』とか、『総理のご意向』がどのように関係してくるのかも国民の一般の疑問として残っている」と指摘しました。また前川氏は、「内閣府や内閣官房に対しても徹底した調査をするよう指示することや、第三者的な組織を設けて調査させることは、総理であればできる。総理が率先して事実解明することを期待している」と述べました。
一方、前川氏は、「私が知っている限りのことは申し上げたが、『証人喚問で改めて国会で説明せよ』ということであれば、受ける用意はある」と述べました。
萩生田官房副長官「指示出していない」
萩生田官房副長官は、総理大臣官邸で記者団に対し、「私は国家戦略特区について、基本的に報告を受ける立場であり、具体的な指示や調整を行うことはなく、きょうもそのことは確認をした。獣医学部の新設の件も同様であり、私が安倍総理大臣から指示を受けたり、文部科学省に対して指示を出したりしたことはない」と述べました。
そのうえで、萩生田官房副長官は、「本日のやり取りを通じて、獣医学部の新設の件に対する私の関わり方が、特定の個人、法人のために何か働きかけ、指示をするようなものでは全くなく、むしろ文部科学省の相談に乗っていた受け身の立場にすぎないということが、一定程度ご理解いただけたのではないか」と述べました。
菅官房長官「臆測や推測に基づく発言多かった」
菅官房長官は、午後の記者会見で、「政府としては丁寧に説明をさせて頂いているが、前川参考人との間で意見の違いが大きく見られたと思っている。前川氏の発言全体でも、本人が直接見たことのない文書について臆測や推測に基づく発言が多くあったと思っている」と述べました。
そのうえで、菅官房長官は「すでに天下り問題で責任を取って辞められた方であり、人事に関して言えば私自身が会見したことと違う部分があった。私からすれば、辞められた経緯について、あのような誤った説明をしたことは理解に苦しむ。私自身は事実に基づいて話をさせていただいた」と述べました。
さらに、菅官房長官は、前川氏が、文部科学省の天下り問題をめぐり、「『他府省に関わるものは出すな』と杉田官房副長官から指示があった」と述べたことに対し、「指示をした事実は一切ない。現に、監視委員会にはすべてのメールが提出されているし、その後、政府として全省的な天下り問題の調査を実施している。こういうことからも明らかだ」と述べました。
また、菅官房長官は、記者団が、政府として説明責任を十分に果たしたと考えているかと質問したのに対し、「きょうの質問なども繰り返しのことが多かったのではないか。そのような感じがした」と述べました。
獣医師会「政府側の答弁 あいまいで説明不十分」
閉会中審査を受けて、日本獣医師会の北村直人顧問は「政府側の答弁は終始あいまいで何も明らかにされず、全く納得できるものではない。政府側は加計学園がいわゆる「4条件」をクリアしているというが、政府側の答弁ではその説明は不十分だと感じた。むしろ、なぜ、獣医学部の規制緩和が必要だったのか、最初から加計学園ありきだったという疑いが深まったのではないか、改めて政府側は国会で説明するべきではないか」と指摘しています。
文科省職員「真相解明ほど遠く」
閉会中審査について、文部科学省の現役職員のひとりは「新しい事実はなく、前川氏と政府側の主張がそれぞれ食い違ったままで、真相解明にはほど遠いと感じた。なぜ平成30年4月の開学を目指したのかなど、より丁寧な説明が必要ではないか。これでは国民が納得しないと思う」と話しています。
また、別の職員は「新設のための4条件に合致しているかどうかは、文科省に責任があると言われたが、内閣府側もその責任を十分に果たしていなかったのではないか。前川氏が話していたように、やはり規制緩和や加計学園に決まるまでのプロセスには疑問を感じる」と話しています。 
官房長官発言の「地位に恋々」は事実に反する 前川前次官
文部科学省の前川前事務次官は、参議院の閉会中審査でみずからが天下り問題を受けて辞任した経緯をめぐり、先に菅官房長官が「地位に恋々としがみついた」などと述べたことについて、「全く事実に反する」と主張しました。これに対し、菅官房長官は「杉田官房副長官からの報告を受けて事実に基づき発言している」と反論しました。
この中で文部科学省の前川前事務次官は、みずからが天下り問題を受けて辞任した経緯をめぐり、先に菅官房長官が、「地位に恋々としがみついた」などと述べたことについて、「ことし1月4日時点で引責辞任を決意し、翌日には松野文部科学大臣に『責任を取って辞めたい』と伝えた。私から『定年延長してほしい』とか、『3月までは在任したい』とか言ったことは一切ない。全く事実に反する」と述べました。
これに対し、菅官房長官は「私は事実に基づいて発言している。杉田官房副長官が前川氏に対し、『まずは事務方トップが責任を取ることを前提に議論すべき』と話したところ、前川氏から、『せめて定年期限の3月まで事務次官を続けさせてほしい』との話があったという報告を1月時点で受けている。だから、『恋々と』という言葉を使った」と説明しました。 
菅官房長官 「前川前次官の続投要望 官房副長官が認めず」
菅官房長官は午前の記者会見で、文部科学省の前川・前事務次官が天下り問題を受けてことし1月に辞任した経緯について、杉田官房副長官が、事務次官を続けたいとした前川氏の要望を認めなかった結果だという認識を示しました。
文部科学省の天下り問題を受けて前川・前事務次官が、ことし1月に辞任した経緯をめぐって、菅官房長官は「恋々と地位にしがみついていた」などと批判する一方、前川氏は、そうした事実は無く、1月6日に松野文部科学大臣に辞意を伝えたとしています。
これに関連して、菅官房長官は午前の記者会見で、天下り問題を受けて文部科学省が作成した処分対象者の当初の案には前川氏が入っていなかったため、杉田官房副長官が1月6日に、前川氏を呼び、みずからの処分も行うよう求めたことを明らかにしました。
そのうえで、菅官房長官は「前川氏は、『できたら3月いっぱいまで務めさせてほしい』と言ったが、杉田副長官が『だめだ』と申し渡したという報告を当時受けている。前川氏が松野大臣に辞意を伝えたのは、そのあとだと思う」と述べました。
一方、菅官房長官は、記者団が、国家戦略特区での獣医学部新設が決まる前のおととし4月に、愛媛県今治市の職員が総理大臣官邸を訪れていたのではないかと質問したのに対し、「1日に300人から400人が来られ、身元の確認などが終わったあとは記録を破棄するので、訪問していたかどうかはわからない」と述べました。 
前川前次官が国会で証言「穴あけ方に不公正あった」
学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐる真相解明に向けて、衆院文部科学、内閣両委員会による閉会中審査が10日、開かれ、参考人として文科省の前川喜平・前事務次官が出席した。
前川氏は、「内閣府が仕事を進めるに当たり、官邸の動きはあったと思う」と述べ、加計学園への国家戦略特区活用決定に当たり、官邸の関与があったと指摘。「結論までのプロセスに問題があると思う。どの主体が規制改革の恩恵を受けるのかという過程で、(岩盤規制に)穴をあけるかどうかではなく、穴のあけ方に不公正、不透明な部分があったと思う」とも述べ、加計学園に決まった経過に疑問を示した。
「初めから加計に決まるように、進めてきたように見える」とも述べ、今回の流れが「加計ありき」だったとの認識を、あらためて証言した。
一方、安倍晋三首相の側近、萩生田光一官房副長官の関与があったとされる問題で、同氏の発言を記したとされる「10/7萩生田副長官ご発言概要」とする内部文書について、前川氏は「私が担当課から説明を受けた際に、受け取った文書に間違いない」と、明言した。
これに対し、萩生田氏は、実際に昨年10月7日に、自身の事務所で文科省の幹部と面会したことは認めたが、「私から指示したことはない」「発言した記憶はない」と、前川氏の主張に反論した。 
加計問題で閉会中審査、前川前次官「背景に官邸の動きが・・・」
「加計学園」の獣医学部新設を巡り、10日、国会で閉会中審査が行われました。この問題で、今まで政府の言い分と真っ向対立してきた文部科学省の前川前事務次官は、国会の場で何を語ったのでしょうか。「内閣府が、この仕事を進めるにあたりましては、その背景に官邸の動きがあったというふうに思っております」(前川喜平 前文科事務次官)
参考人として出席した文部科学省の前川前事務次官。加計学園の獣医学部新設に関して、「加計ありき」だったと政府を公然と批判しました。
「初めから加計学園に決まっていた。加計学園に決まるように、プロセスを進めてきたというふうに見える。非常に不公平であり、また国民の目からよく見えないところで決定が行われている。不明朗さがあるというふうに思っています」(前川喜平 前文科事務次官)
前川氏の批判の矛先は、安倍総理の発言にも向けられました。
「2校でも3校でも、意欲あるところにはどんどん獣医学部の新設を認めていく」 (安倍首相〔先月24日〕)
「まずは、この今治での成果をきちんと評価することが必要になってくるわけでありますけど、少なくとも10年内外は必要ではないかと。今すぐ2校目、3校目を作ることは論理的にできないことではないかと思っている」(前川喜平 前文科事務次官)
また、野党側も獣医学部を新たに設置する判断が妥当かどうか、政府を追及しました。
「なぜ、その(獣医師の)需要が明らかでないにもかかわらず、強引に押し切っているんですか」(民進党 緒方林太郎 衆院議員)
「需給の量とか数について、はっきり示すことなんて無理です」 (山本幸三 地方創生相)
「具体的需要だよ」
「具体的な需要という、その数とか量とかありません。そういう需要という定性的な傾向があれば、十分だというふうに思います」(山本幸三 地方創生相)
守勢に回った政府ですが、自民党議員が質問に立つと、前川氏の追及が始まりました。
「(文科次官を)辞めてからいろいろ言われるのは、どうしても違和感あるんですよね」(自民党 平井卓也 衆院議員)
「在職中に内部告発をするという選択もあったかもしれませんけれども、私としてはやはり、それはなかなか難しかったと思っております」(前川喜平 前文科事務次官)
「“総理のご意向”というようないろんな文書。これは前川さんが流出元ではないかというふうにいろんな所で報道されていますが、まさかそんなことはないと思いますので、まずそのことについてイエスかノーでお答えください」(自民党 平井卓也 衆院議員)
さらに、「総理のご意向」などと書かれた文書を一部メディアに流出させたのは、前川氏ではないかと追及します。
「文書の提供者が誰であるかということにつきましては、私はお答えを差し控えさせていただきます」(前川喜平 前文科事務次官)
「ちょっと待ってくださいよ、私はあなたのためを思って言っているんですよ」(自民党 平井卓也 衆院議員)
度重なる自民党の追及に対して前川氏は回答を避けました。
午後からは、舞台を参議院に移して審議が行われました。民進党の蓮舫代表がターゲットにしたのは、菅官房長官です。
「菅長官は前川参考人が“地位に恋々としがみついていた”と発言していますが、(前川氏は)しがみついておられたのでしょうか?」(民進党 蓮舫 代表)
「私はそう思って申し上げました」(菅義偉 官房長官)
菅氏は、文部科学省の天下り問題が発覚した際、前川氏が引責辞任する考えを示さなかったと改めて主張。一方、前川氏は、菅氏の発言を完全否定しました。
「そのような事実はございません」 (前川喜平 前文科事務次官)
「菅長官、言っていることが食い違っています」(民進党 蓮舫 代表)
「私は事実に基づいて発言しています。前川氏から“せめて定年期限の3月まで次官を続けさせてほしい”という話があったという報告を1月の時点で受けています」(菅義偉 官房長官)
官房長官と前事務次官、どちらの言っていることが正しいのでしょうか。
「いま官房長官がおっしゃった経緯は、全く事実に反します」 (前川喜平 前文科事務次官)
「官房長官、本当のことをおっしゃっていますか」(民進党 蓮舫 代表)
「事前に杉田副長官にも確認したうえで発言をしております」(菅義偉 官房長官)
「私自身から“定年を延長してほしい”とか、“3月まではせめて在任したい”とか、そのようなことを申し上げたことは一切ございません」(前川喜平 前文科事務次官)
真っ向からぶつかりあう2人の主張。蓮舫代表は、和泉総理補佐官など政府関係者の証人喚問を求めると共に、改めて安倍総理も出席する予算委員会の集中審議を求めました。
 
 

 

 
国際医療福祉大学

 

国際医療福祉大学
医療福祉専門職の養成とその地位向上をめざし、「日本初の医療福祉を専門とする総合大学」として、1995年(平成7年)に設立された。本部のある栃木県を始め、東京都、静岡県に合計4つの病院がある。2020年には千葉県成田市に600床規模の国際的な附属病院の開設が予定されている。
卒業生(国家試験合格者)は社会福祉協議会や医療機関、社会福祉施設などの社会福祉・医療分野や、行政や企業等の分野に就職している。
福岡県にもキャンパスがあるが、これはもともと今の大川市にあった眼科の医院が元になって総合病院(医療法人社団高邦会)となり、同法人が大学設置の母体となったことによる。このため、この大学と福岡にある高木学園(この大学同様、高邦会が母体)、複数の医療・社会福祉法人などとともに「国際医療福祉大学・高邦会グループ」を構成する。
千葉県成田市は「医科系大学及び成田国際空港を核とした医療産業集積構想」を策定しており、国家戦略特区構想による医療学園都市構想を提案している。この構想の一部として、医学部の設置を検討している(学内に「国際医療福祉大学医学部設置準備委員会」を設立している)。これは近年の医師不足を背景に、日本の私立大学の医学部で最も低い授業料をめざしたものである。成田キャンパスは成田看護学部・成田保健医療学部の2学部で京成本線公津の杜駅前に2016年4月開校、さらに2017年4月には医学部が新設された。
国際医療福祉大学、医学部一期生140人迎え、入学式 4/2
国際医療福祉大学はこの4月に医学部を新設、4月2日、千葉県成田市で入学式・開設記念式典を行い、140人の第一期生を迎えた。
同大理事長の高木邦格氏は、挨拶の中で、「チーム医療の船長として、多職種への尊敬、思いやり、患者に対する慈しみを忘れない医師になってもらいたい」と新入生に期待を込めると同時に、国家戦略特区の中で医学部新設を申請する際、「憲法上、教育の自由があるにもかかわらず、なぜ40年も医学部新設が認められなかったのか」と問題提起し、「日本の医学や医療の進歩を視野に入れた時に、新規参入と競争が必要である」と訴えたエピソードを紹介した。
式では、安倍晋三首相がビデオメッセージを寄せたほか、横倉義武・日本医師会会長、高久史麿・日本医学会会長らが来賓祝辞を述べた。
新入生を代表して、上田諒氏は、「古い伝統やしがらみにとらわれたり、変化を恐れることなく、日本の医学部の歴史において、新しい礎となるべく、決意を新たにしている。国際的な幅広い教養と慈しみ、人間性を兼ね備えた医師を目指す」と挨拶。モンゴル医科大学からの留学生、タルガト・ティレウベク氏は留学生代表として挨拶、日本の医療の話を聞いたことが留学の契機だったとし、「こんなに早く実現すると思わなかった。母国モンゴルの医療を向上させる医師を目指したい」と、日本語で抱負を語った。
入学式には、安倍首相がビデオメッセージで、「この新しい試みが、全国の大学それぞれに、自分の大学は何を目指していくのか、という意識を芽生えさせ、医療界、教育界に新しい流れを作っていくものと期待している」との言葉を寄せた。山本幸三・内閣府特命大臣(地方創生、規制改革)、森田健作・千葉県知事、グエン・ティ・キム・ティエン・ベトナム保健大臣、武見敬三・衆議院議員、横倉氏、高久氏、小泉一成・成田市長が順に来賓祝辞を述べた。
横倉氏は「生命あるものへの慈愛と他者への思いやりの精神、つまり高度な医療倫理を備えた医師を目指してもらいたい」との言葉を贈った。高久氏は「医学会会長ではなく、古くからの高木理事長の友人としての挨拶」と断った上で、自身が自治医科大学の開校に携わったエピソードを紹介、「一期生として、国際医療福祉大学の新しい医学部の歴史を作るという気概を持って取り組んでもらいたい」とエールを送った。
同大医学部の定員は、計140人。一般入試枠100人(志願者数2769人、競争倍率27.7倍)、大学入試センター試験利用入試枠20人(同624人、31.2倍)、留学生枠20人。留学生の母国は、ベトナム、モンゴル、ミャンマー、インドネシア、カンボジア、米国、韓国など、多岐にわたる。
医学部の新設は、東北医科薬科大学に続き、2年連続(『東北医科薬科大学、一期生100人が入学』を参照)。成田市は政府の国家戦略特区に指定され、医学部新設が可能になり、2016年8月に文部科学省から正式に設置認可が下りた。
2020年には「国際医療福祉大学成田病院」予定
国際医療福祉大学の本部は、栃木県大田原市にあるが、医学部は成田キャンパスに新設。同キャンパスには、2016年に看護学部(看護学科)、保健医療学部(理学療法学科、作業療法学科、言語聴覚学科、医学検査学科)を新設済み。
同大学長は、東京大学名誉教授の大友邦氏。医学部長には、2016年9月まで東大教授を務めていた、北村聖氏が就任した。
「世界水準の医学教育」を目指し、25人の専任教員による医学教育統括センターを設置、世界標準は72週とされるクリニカルクラークシップ(診療参加型臨床実習)を90週実施したり、6年次には4週間以上の海外臨床実習に取り入れる。5000uを超える「医学教育シミュレーションセンター」も新設、施設設備の充実も図った。2020年には、同大5つ目の関連病院となる「国際医療福祉大学成田病院」を新設予定。
学費は、国内の私立大学医学部で最も安い6年で1850万円を設定。医学部特待奨学生制度も設け、選抜された成績上位者は、6年間で最大1140万円の給付を受けられる。
4月2日には、医学部棟の内覧会も実施された。 
国家戦略特区における医学部新設について  (平成28年8月31日)
 成田市 企画政策部 / 国家戦略特区推進課
医学部設置に関する市の支援
 ■用地
 校舎
  ○ 場所:公津の杜四丁目2番1〜5
  ○ 用地取得費:22億7,600万円
  ○ 用地取得後、無償貸与
 附属病院
  ○ 場所:畑ヶ田地先
  ○ 用地取得費:約4億円(概算)
  ○ 造成費等:約6億円(概算)
  ○ 用地取得後、市有地とともに無償貸与
 ■補助金
 校舎
  ○ 校舎設置費の2分の1の補助を予定
   (ただし、上限は千葉県と合わせて80億円)
  ○ 千葉県との協議の結果、千葉県からは最大35億円の補助を予定
  ○ 成田市からは45億円の補助を予定
     80億円−35億円(県の補助分)=45億円(成田市の補助)
 附属病院
  ○ 附属病院設置費に対する補助金を支出する予定はなし
  ○ 附属病院設置に関して、資金の拠出を検討中
医学部設置に係る効果
医学部新設は附属病院の設置と併せて、医師不足の解消や医療体制の充実に加え、人口増加、雇用拡大につながる。
医療関連産業が集まることも期待でき、これからのまちづくりにさまざまな効果をもたらすと考えている。
 ■人口増加の効果
 ● 教職員(4,282人)+学生(756人)+雇用(3,194人)=8,232人の人口増加が期待される
 ○ 教職員:医学部職員数1,109人+病院職員数933人=(A:2,042人)
    (A:2,042人)×市内居住率90%×成田市平均世帯人員2.33人=4,282人
    ※東海大学公表値などにより算出
 ○ 学 生:1学年 定員140人(仮)×6年×市内居住率90%=756人
 ○ 雇用数:産業連関表より1年間の消費活動によって見込まれる雇用数=(A:1,523人)
    (A:1,523人)×市内居住率90%×成田市平均世帯人員2.33人=3,194人
 ■経済波及効果
 ● 建設に伴う経済波及効果は、最大で857億円が見込まれる
 ○ 医学部建設時:建設費130億円、設備費30億円と仮定
 ○ 附属病院建設時:建設費420億円、設備費80億円と仮定
 ● 消費に伴う経済波及効果は、最大で211億円/年が見込まれる(6学年修業時)
 ※千葉県内の最大需要としての試算となるため、市外流出分も含む
 ■その他の効果
 ● 地域医療の充実に伴う人口流入が期待される
 ● 医療関連産業の集積が期待される
 
「第3の忖度」国際医療福祉大学疑惑

 

森友疑惑、加計疑惑で炎上中の安倍首相に追い打ちをかける「ポスト加計疑惑」が本格浮上しそうだ。これは一部事情通の間では以前から「公然の秘密」だった。
いまや流行語の“忖度”されたのはどちらも一緒と見られるが、「森友疑惑」が直の関わりは安倍晋三首相の妻(昭恵夫人)という“私人”だったのに対し、「加計疑惑」は安倍首相当人が理事長と40年来の親友。
しかも、ここに来て、菅義偉官房長官が「怪文書」だとかわしていた「総理の意向」と記された文書が、文科省前次官・前川喜平氏の告白により官邸から文科省に出された“内部文書”だったことが判明。まさに炎上しそうな「加計疑惑」――。
そんななか、さらに出て来そうな「ポスト加計疑惑」がある。
ズバリいえば、それは今年4月、「国際医療福祉大学」(高木邦格理事長)の医学部が千葉県成田市に開設された件だ。
一部事情通の間では以前から「公然の秘密」だったが、こちらも加計同様、官邸(総理)の意向がもろに反映できる「国家戦略特区」として認可されたものだからだ。
「加計学園」(岡山市)の場合、52年ぶりに獣医学部新設が認められた。来年4月開校予定で、そのために特区に選ばれた愛媛県今治市はキャンパス用に36億円相当の土地を無償譲渡。さらに建設費の約半分、約96億円も市が補助金を出す。
これに対し、国際医療福祉大学の医学部新設は38年ぶりに認められた(正確には震災復興を名目に同じく特例で認めた「東北薬科大」16年4月開設を除き)。成田市は23億円相当の土地を無償貸与。また建設費用の約半分の約80億円も市・千葉県で補助金を出し負担した。
しかも国際医療福祉大の場合、医学部キャンパスの東隣にまず16年4月に同大の看護学部などを誘致し開設させた。この土地の約20億円、校舎建設の30億円も負担している。さらに、東京五輪開催の20年に市内に付属病院を開設する計画で、すでに市はその土地に10億円出すことを決めてもいる。
この成田市の大盤振る舞いも尋常ではないが、そもそも、厚労省が医学部を新設すると医者が余ると予測し、そのため日本医師会も大反対していた医学部新設をなぜ認めたのか?
成田を特区に選んだのは、成田空港があることから、「国際化」を名目として。そのため、新設された医学部の定員140名の内20名は留学生を受け入れるとした。しかし、国際化だからと何もキャンパスを同じ成田にする必然性はないし、本気で国際化を謳うなら留学生が定員の14%というのは低過ぎでは。
国際医療福祉大学グループが短期間にここまで大きくなれたのは、政治力に負うところが大きいとの見方は関係者の間では常識だ。 ・・・ 
 
天下り官僚が暗躍か 私立医大・特区認可にデキレース疑惑 3/19

 

大学の医学部の認可を巡り、官庁の不可解な動きが浮かび上がった。17日の参院予算委で俎上に載ったのは、全国に4つの病院を展開する私立「国際医療福祉大学」(栃木・大田原市)が新たに来年4月に開校する千葉・成田市の医学部だ。
事の発端は、内閣府と文科省、厚労省が2015年7月31日に示した「国家戦略特別区域における医学部新設に関する方針」だった。国家戦略特区に世界最高水準の国際医療拠点をつくることが目的で、同年11月12日に事業主の公募が行われた。
ところが、公募に手を挙げたのは福祉大1校だけ。そのうえ、福祉大の幹部役員に文科省や厚労省のOBがゴロゴロ“天下って”いたのだ。17日の予算委でこの問題を追及した民主党の桜井充参院議員が入手した資料を見ると、元文部省事務次官や元厚生省保健医療局長、元厚生省健康政策局長など、官僚OB6人が大学の副理事長や学長などを務めていたことが分かる。
文科省担当者は予算委で、「大学に再就職した中央省庁の勤務経験を有する者は、文科省からの2名と厚労省から2名、財務省から1名と警察庁から1名」と認めていた。福祉大の認可について、“見えざる手”が動いていたのかと疑いたくもなってくる。
桜井議員はこう言う。
「公募までのプロセスが、福祉大ありきの流れになっているように見える。元文部省事務次官など、官僚OBが認可に際し、裏で暗躍していたとの話もある。これが事実なら、トンデモナイことです。国家権力を使って公募をデキレースにしたのなら、許されることではありません」
関係省庁は説明責任を果たすべきだ。 
 
「国際医療福祉大学」疑惑 6/7

 

森友学園、加計学園の両疑惑で炎上中の安倍政権に追い打ちをかけそうなのが、新たな忖度疑惑。実は、一部の情報通の間では去年から騒がれていたようです。
全国に4つの病院を展開する私立「国際医療福祉大学」(栃木・大田原市 高木邦格理事長)が今年4月に千葉・成田市に医学部を開校。
この大学に医学部が新設されるのは38年ぶり。
しかも、大学に対し、成田市は23億円相当の土地を無償で貸与。建設費用約80億円も成田市と千葉県の補助金で負担するという大盤振る舞い。
こちらの学園も加計学園と同じく、官邸の意向が反映できる「国家戦略特区」として認可されましたが、その過程は非常に不透明なものでした。
「事の発端は、内閣府と文科省、厚労省が2015年7月31日に示した「国家戦略特別区域における医学部新設に関する方針」だった。国家戦略特区に世界最高水準の国際医療拠点をつくることが目的で、同年11月12日に事業主の公募が行われた。ところが、公募に手を挙げたのは福祉大1校だけ。そのうえ、福祉大の幹部役員に文科省や厚労省のOBがゴロゴロ“天下って”いたのだ。」
2016年3月17日の予算委で桜井充参院議員(民主党)が追及した際には、文科省担当者は以下のように述べています。
「大学に再就職した中央省庁の勤務経験を有する者は、文科省からの2名と厚労省から2名、財務省から1名と警察庁から1名」
これに対し、桜井議員は以下のようにコメント。
「公募までのプロセスが、福祉大ありきの流れになっているように見える。元文部省事務次官など、官僚OBが認可に際し、裏で暗躍していたとの話もある。これが事実なら、トンデモナイことです。国家権力を使って公募をデキレースにしたのなら、許されることではありません」
疑惑のポイント
厚労省は医学部を新設した場合、医者が余ると予測していた。日本医師会も新設に反対。それなのに、なぜ認めたのか?
「国際化」を名目として成田は特区に選ばれた。しかし、新設された医学部定員140名に対し、受け入れ留学生が20人というのは「国際化」を謳うには少なくはないか? 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 
「空気」

 

場の空気
日本において、場の空気とは、その場の様子や社会的雰囲気を表す言葉。とくにコミュニケーションの場において、対人関係や社会集団の状況における情緒的関係や力関係、利害関係など言語では明示的に表現されていない(もしくは表現が忌避されている)関係性の諸要素のことなどを示す日本語の慣用句である。近年の日本社会においては、いわゆる「KY」と称する俗語が流行語となって以来、様々な意味を込めて用いられるようになっている。
「場の」はつけず、ただ「空気」と表現されることもある。
現在では、集団や個々人の心情・気分、あるいは集団の置かれている状況を指すことが多いが、人によって指し示す範囲は若干異なる。社会心理学では「場の空気」が起こす集団心理の危険性に着目することが多く、ビジネス等では逆にコミュニケーション能力として肯定的に解釈することが多い。
「空気」をある種の時代の気分や流行、文化や考え方の比喩として使用する例は古くからあり、夏目漱石は『三四郎』予告で「田舎の高等学校を卒業して東京の大学に這入つた三四郎が新しい空気に触れる」と記している。
社会心理学の観点からとらえた書籍としての初出は山本七平の著『「空気」の研究』(1977年)と考えられている。山本は教育行政や戦争指導などの事例を挙げ、空気を読むことが時に集団の意思決定をゆがめ誤らせることを指摘し「水を差す」ことの重要性を提示した。
場の空気を読む、すなわち場の空気を意識することは暗黙知であり、心理学ではこのような能力を「社会的知能(ソーシャル・インテリジェンス)」と呼んでいるとしている。そのような能力は「EQ」(情動指数、心の知能指数)という呼び方でも知られ、習得可能なもの(=技能)として捉え、社会技能と呼んでいる。つまり、対人心理学においては、対人関係の巧拙を生得的なもの(=性格)としては捉えない。
また場の空気を読むことがすなわち協調であると考える者も多く、ある側面において日本特有の事象であるとする説もある。(下記参照)
2007年には、「空気を読めない」を略してKYという言葉が一部のマスメディアで取り上げられる様になり、同年の新語・流行語大賞候補にもなった。
相手の表情から気持ちを読むこと
「場の空気を読む」ということは、「顔色を伺う」ことと同義といってもよい。集団や社会への親和性という面から見れば、周囲の人の反応を意識することであり、他人の表情や言動から、自分の行動への評価を見つけ出すことである。
場の空気を読むことに長ける人は集団への親和性が高くなり、逆に場の空気を読めない人は集団内の人々からの評価が低くなる傾向が見られる。これは日本に限ったことではなく、他の国々でも同様の傾向があると思われる。
内藤誼人は自著『「場の空気」を読む技術』において、顔の表情を読むこと、なかでも相手の眼を見ることが重要だとしている。相手の言っていることと相手の表情とが一致しなかったら、表情のほうが相手の真情として優先させるということである。例えば相手が「怒っていないよ」と言っている時に怒っている表情をしていたら、相手は怒っていると捉えることである。「場の空気」が読めない人は、相手の顔や眼元の表情を見ないで、うつむきがちに話したり、顔ではないところや、手元の資料を見ながら話す傾向がある。それにより耳から入ってくる言葉にばかり注意が向き、相手の真意・心情を理解し損ねているとされる。
しかしながら、「空気」を読んで理解したはずの相手の真意・心情は、本当にその相手の真情であるとは限らず、当人の勝手な先入観や思い込みであることも多い。
「場の空気」を読んだうえでどのように振舞うか
「場の空気を読む」ことと、それを踏まえて「どのように振舞うか」ということは、また別の要素である。無数の主体的な選択肢が、各人の価値観・道徳観・哲学・人生観などと呼ばれるものに応じて、その瞬間瞬間に存在している。
一般的に「場の空気を読む」とは、相手の表情に好ましいと感じている反応が出たら、行動を積極的に行い、否定的な反応が出た場合は、自分が直前に取ったような行動は抑制する、つまり「場の空気」を読んで発言や行動を左右するということである。
また逆に、主体的な振る舞いも存在する。例えば、「場の空気」が"陰鬱"と読んだら、自らその場を明るいものにする、「場の空気」が"いじめ"あるいは"犯罪的"と読んで適切・適法な行動を取る、などの選択肢も存在する。
しかしながら、一般的にはこのような振舞いは、「場をしらけさせる」「空気を読んでいない」とされることが非常に多い。
「場の空気」を読む能力の習得
この能力は、これに関する訓練や実地体験の積み重ねによって伸ばすことができる。通常、このような訓練は主に成長過程において極めて自然な形式で行われているので、社会環境の影響を受けやすい。 また成人してから、マナー教育などを通して形式知として理知的にこれを理解しようとする場合もある。
「場の空気」を読む危険性
アーヴィング・ジャニスは、ピッグス湾事件、ベトナム戦争のトンキン湾事件による拡大政策、ウォーターゲート事件などの事例から、アメリカ合衆国大統領とその側近がいかに優秀であっても、集団になると馬鹿げた意思決定をしてしまう現象(集団浅慮)を分析している。
固定的な組織が似通った構成員により作られ、公平なリーダーシップがない状況で、外部から強い圧力を受ける場合、全会一致の幻想を抱き、他人の勧告や他の情報を意図的に無視し、集団のコンセンサスを逸脱する議論に圧力をかける「全会一致への圧力」が生じるとする。
この結果、閉鎖的な仲の良い集団が、和を尊重しすぎるあまり、重大な意思決定に際して、不合理なリスキーシフトを起こす。リスキーシフトとは集団で討議したのち、意思決定がより危険性の高いものにシフトする心理法則・心理現象を指す。
冷泉彰彦による空気の分類・分析と問題改善の提案
冷泉彰彦は3人以上の場における空気と、二人だけの会話における空気を区別して考察している(冷泉は、著書において表現を簡略化するために、3人以上の場合の空気を「場の空気」、二人だけの場合を「関係の空気」と呼び分けているが冷泉以外は基本的にそのような表現を用いていないのでこの名称自体は日本語としては受け入れられていないと考えられるのでここではその用語は控える)。そしておおまかに言えば3人以上の空気に問題が生まれがちで、2人だけの場合の空気は必要なもので肯定されるべきものとといった仮説のもとで書いている。
冷泉は二人の場合の「空気」とは、二人の間、聞き手と話し手の間で共有されている情報のすべてだとする。事前にラーメンについて語っていた二人が、実際にラーメン屋でラーメンを食べた後で「うーむ」とだけ言った場合の例などを分析して、あえて全てを言葉で表現しないで省略することで、もともと二人のあいだに情報を共有しているというメッセージが送れるのだから、共感性や親近感が高まるコミュニケーションとなる、と述べる。また、恋人同士の他愛のない言葉のやりとりの例も挙げ、二人にだけは何を語っているのか明白な状況であえて具体的な話題そのものを口にしないことで互いに親密の度合いを楽しんでいるとし、肯定する。 日本人には言葉の表現スタイルを相手に合わせようとする習性があるとする。日本人は幼児相手には幼児風に話してしまうし、外国人と話す時は無意識のうちに外国人風の不完全な日本語を話したりするし、業界人と話す時は普段使わないような業界用語を使ってしまう、相手が省略語を使うとそれに合わせる省略語を使って省略語を世に氾濫させたりする、とする。それもこれも二人の間で空気を維持したい、親密さを維持したいということなのだとする。この場合の空気は一対一の関係性そのもので、重要な要素であるとし、肯定する。
ただし、関係が維持できているうちはいいのだが、複雑化した現代、人間同士の関係が破綻することは起きるのであって、そのような時には錯綜する利害関係の調整しなければならないが、空気重視、親密さ重視の日本語(日本人の表現スタイル)が事態に追いついていない、日本語の表現スタイル・日本人のコミュニケーションスタイルは「複雑さ」とうまくやってゆく機能が不足していると冷泉は指摘する。
冷泉は山本の『空気の研究』で使った「抗空気罪」などの表現に言及した上で、山本の死後も日本の状況は変わっていないと述べ、企業や学校での例を挙げる。3人以上のコミュニケーションでの空気は様々な問題を生んでいると指摘する。日本人は、省略表現、指示代名詞、略語、ニックネームなどの一種の暗号を頻繁に用いることで、互いに共通のデコード情報を共有していること、共通の理解があることを確認しあっており、目先の親密さ維持だけを重視するあまり、親密さの表現のスタイルが乱れるだけでもそれに感情的に反応して、「抗空気罪」を適用して断罪するのだ、そこに問題がある、とする。というのは、一対一の場合ならば、「暗号」が復元できないでも、「"例の件"って何だっけ?」と気軽に聞き返せるのに、3人以上の場では空気を乱したとして顰蹙を買い「抗空気罪」が適用されるため尋ねることもできず、情報の伝達が滞り、聞き手には疎外感が残り、話し手には"分からないやつがいる不快感"が生まれてしまう、とする。一対一の時には有益な話法であっても、それが3人以上の会話、公的な場に持ち込まれると、権力を暴走させてしまうことになり合理的な判断や利害調整を妨害し始める、と指摘する。
そうした問題点を解決するために、日本人はもっと聞き手のことを配慮して、省略表現やニックネームなどの「暗号」の使用を控えて、例外的なメンバーのことも意識しつつ多少冗長であってもいいからものごとをきっちりと言葉で説明するようにすべきだと冷泉は提案する。また他にも、慣れ合いを感じさせる語尾を安易に用いず、自分が目上であろうが目下であろうが「です、ます」などの表現を標準表現として積極的に用いるべきことなど、いくつかの提案をしている。
精神医療との兼ね合い
精神医療分野では、社会性に影響のある幾つかの症状も存在する。これらに関係する者は、場の空気に馴染まない傾向も否定出来ない。
しかし、これらでは「際立った個性」が「場の空気を乱している」と評される傾向も否定できず、これも前出の「場の空気」という考え方に対する否定論に繋がっている。勿論、周囲の人に迷惑を掛ける個性では困るが、「とりたてて迷惑ではない」程度の個性に関しては寛容になることも重要と言える。
精神疾患のうつ病では、過度に干渉すると悪化する危険性も指摘されている。場の空気を盾に無闇に干渉することは、医学上の禁忌である。
発達障害と「場の空気」 / 社会技能は訓練による習得を前提とした概念であるものの、広汎性発達障害を持つ人物の場合、社会技能の習得が生理的に不可能であったり、困難を伴うことがある。即ち、場の空気を読むことが出来ない。これは性格や家庭教育の問題ではなく、脳の先天的な機能(心の理論)の欠陥によるものである。これらの発達障害による問題行動は、成長に伴って減少する傾向があるが、定型発達者と全く同じ振る舞いが出来るほど改善するケースは、極めて稀である。原則として、本人が場の空気を読めないことを「自覚」して受け入れ、周囲に対して心を開くとともに、理解や支援を求め、周囲も可能な限りそれを受け入れることが、最も有効である。
パーソナリティ障害と「場の空気」 / 長期に渡って周囲と円滑なコミュニケーションが営めず、当人がその状態を苦痛と感じる場合、精神医学ではパーソナリティ障害と診断する。但し、パーソナリティ障害だから場の空気が読めないのではなく、場の空気が読めないことを本人が苦痛と感じる場合にパーソナリティ障害と診断されるという点に留意する必要がある。また、パーソナリティ障害は「広義」の精神疾患であり、一般的な精神疾患のように責任能力の有無に関わる判断材料にはなりえない。
インターネット上での「場の空気」
日本のインターネット上で一部の(特に若年者の)コミュニケーションにおいては、発言内容をベースにやりとりするというよりも、むしろ互いに発言同士を連鎖させていくことが重視されており、これを社会学者の北田暁大はつながりの社会性と呼んでいる(ネガティヴに作用するとブログの炎上などを引き起こすことになる)。
批評家・社会学者の濱野智史は、日本において一部のネットサービス(2ちゃんねる・ニコニコ動画・mixiなど)の多くはこのような場の空気を読む文化に基づいているとしており、他の先進国とは違って、内容ベースの熟議を行う電子公共圏の構築(討議プロセスを含む電子民主主義の実現)が困難になるなどの弊害が指摘されている。他方で、インターネット上でも場の空気を読むことが求められているのは日本の現実世界での暗黙のルールをオンライン上にも無意識に持ち込んでしまっているからに過ぎず、現代社会の「人間関係の流動化」が今後も加速していけば(すなわち空気が読めないほどに流動性が上昇すれば)、インターネット上での場の空気にひきずられたサイバーカスケード的な現象はおさまっていくのではないかという見方もある。
批判
物事の判断が場の空気に支配される事象は、古今東西を問わずしばしば見られ、先にも述べたようにさまざまな弊害を引き起こし得る。
山本七平は、例として旧日本軍の対米開戦、戦艦大和の沖縄出撃、日中国交回復、イタイイタイ病事件、自動車公害に関する世論等を挙げ、細かいデータおよび明確な根拠があるにもかかわらず、明確な根拠の全くない判断が「空気」によって最終的に決定されたと指摘している。この事象をもって、山本は「それ(空気)は非常に強固でほぼ絶対的な支配力をもつ『判断の基準』であり、それに抵抗する者を異端として、『抗空気罪』で社会的に葬るほどの力をもつ超能力である」と述べた。
白田秀彰は、学校社会において空気の支配が蔓延していると指摘した。子供たちは場の空気に怯え、設定されるキャラクターに戦々恐々としている。学生が新しい「場」に入ったときに、この「場」が強制してくるキャラクターを受け入れ、それを演じうることが「場の空気が読める」ということであり、場が設定したキャラクターを演じつづけられる限りは、彼はそれなりに人気を得たり、居場所を得ることができる。しかし、彼がこうしたキャラクターを演じるのを放棄した場合は、いじめの標的になるか、逃避行動としての不登校を選ぶことが多い。最近では、日本の高校で電子メールをめぐる空気の支配が蔓延しており、絵文字がない、極端な短文、返信が少しでも遅いなどといったことがあると「キレてる」「空気が読めない」と思われるのだという。そのため、「そのような風潮になじめない人にとっては大学で初めて個人的自由が得られる」と指摘された。
劇作家の鴻上尚史は、著書「“世間”と“空気”」(講談社現代新書)において、「日本人が、世間を喪失したのが大体バブル期だ。世間を喪失した現代人は、相手や周囲の顔色を見ながら言動の適否を判断せざるを得ない。空気しか知らない世代が、社会人になるのが心配だ」と述べている。具体例として、子役のオーディションで、1980年代前半までは、「君のクラスはどんなクラス?」と聞くことができたという。子供にとっての世間とは、クラスのことであった。しかし、1980年代後半以降、「君のグループはどんなグループ?」と聞かざるを得なくなり、21世紀に入ってから、その傾向が強まっているとする。KYという語が、既に流行語ではなく、世相を反映した語だというのである。
色川大吉は、「ある昭和史―自分史の試み」で場の空気を「天皇を頂点に一君万民、自分達を超越する絶対者を常に求め、仲間内さえ良かれという社会体制に起因するものであり、日本特有のもの」とした。
集団思考の問題については欧米でも複数の報告や研究事例があるが、個人主義が未発達の日本においてはある程度、特徴的な社会心理現象であるといえよう。
 
空気を読む

 

空気を読む力をつける
前回は相手のしぐさの読み取り方として、「視線」「姿勢」「動作」に注目して、本音を読み取る方法を紹介しました。言葉よりも非言語情報である“しぐさ”にこそ本音が表われやすく、そのサインを読み取ることで相手のことをもっと理解しやすくなります!
これまで相手の気持ちを知ることとして、
[1] 話題の理解力をつける
[2] 表情を読み取る力をつける
方法を紹介してきました。
「気持ちを読み取る方法」の最後、今回は [3] 場の空気を読む力をつける方法を紹介していきたいと思います。
空気が読めないとは
「KY」という言葉が出てきて、「空気が読めない」という意味が広く知れ渡りました。場の空気が読めないことはネガティブなこととして捉えられ、人間関係において問題となります。
例えば、空気が読めないことで仲間から外されたり、距離を置かれるといったことがあります。それは、子供の友達同士の間だけでなく、大人の様々な人間関係でも起こっていることです。
しかし、“空気を読む”といっても、そう単純なことではありません。空気を読むためには、例えば、相手の顔色をうかがって行動をしたり、相手に失礼のないよう振舞ったり、言いたいことを抑えたり…と相手の様々な行動や発言に気を配っていかなければなりません。
つまり、空気を読むためには相手のわかりにくい情報を読み取って、その場に合うよう正確に行動していかなければいけないということになります。
空気が読めないのには3つの原因
では、空気が読めない原因にはどのようなことがあるでしょうか? 空気を読むためには複雑な要因が絡んでいることが考えられますが、大きく分けると3つに原因を探ることができます。
1つは「一方的な会話」です。空気が読めていないと、会話が一方的になってしまいます。矢継ぎ早に話をしてしまったり、相手の発言を待つことができないということが起きてしまいます。
2つ目は「話しかける間」です。話しかけるタイミングと言ってもいいでしょう。例えば、仕事で忙しい状況なのに頼みごとをしてしまうなどのことです。
3つ目は「心理的な距離」です。特に親しい間柄ではないのに、馴れ馴れしい会話をしてきたり、距離を縮めてこられると引いてしまいますよね。こうした相手との関係性が読めていないことも、空気が読めないとされてしまいます。
「間」をつかもう
これらの原因に対処していくためにはどのようなことに気をつけていかなければならないのでしょうか?それは、「間」をつかむということです。上の3つの原因すべてに共通することが「間」をつかむことであり、空気を読むためのカギとなることです。
具体的には会話の中での沈黙の間や、話しかけのタイミングの間、関係性の間などです。どれも適度な間を取っていくことが、空気を読むための秘訣につながっていきます。
これまで「気持ちを知る」トレーニングを紹介してきました。話題の理解力をつけたり、非言語コミュニケーション能力を鍛えたりといった方法を紹介しました。やはり、コミュニケーションには「相手を知る」ということが大事になってきますので、これまでのコラムも読み返してみて、気持ちを読み取る力をつけていきましょう!
ポイント
○ 空気が読めないことは人間関係に直結する
○ 空気を読めないのには3つの原因がある!
 
空気を読まないことと、空気が読めないことの差

 

もはや死語となってしまいましたが一時期、KYという言葉がよく使われていました。
あれだけ頻繁に聞いたということは、それだけ空気が読めない人というのはたくさんいたことになりますが、今やKYという言葉が使われなくなったと同時に空気が読めないというのもだんだん指摘されなくなったようにも感じます。
空気が読めない人というのは往々にしてそれに気づいていない人であり、気付いていて空気を読まない人と本当に空気が読めない人の間には絶望的な差があるものです。
正直、空気を読むか読まないかというのは個人の自由です。
私は結構どんな状況でも自分の意見を通したい人間なので空気を読んだうえで踏みにじることもあります。
しかし、読めないとなると話は別です。
本当に空気が読めない場合、絶対に空気を読むべき場でも空気を読むことができず「あいつなんなんだよ…」とあらぬ悪評をうけることになりかねません。
その場その場で読むべき空気が変わるので本当に難しいことですがそもそもこの「空気を読む」というのはどういうことを言うのでしょうか?
空気を読むってどういうこと?
空気を読むというのはその場の空気、つまり暗黙の部分を理解しその意に沿った言動をとること。
というような解釈です。
空気を読むために必要なことはその場で求められていることを見抜くことであり、それを正しく実行してはじめて「空気が読めている」という状態になります。
空気を読むたった3つのコツ
本気で空気が読めない人はきっと今まで何度も空気が読めないと指摘されてきたと思います。
しかし、同じコミュニティだけに属しているとだんだん指摘は減ってくるものです。
そうすると「空気が読めるようになった」と勘違いする人も出てくるのですがそれはただ言われなくなっただけであり根本的に解決していないという場合も多々あるのです。
「自分って空気読めてないかも」と感じている人はぜひ、以下のコツを参考にしてみて下さい。
○ 1 観察と洞察を行う
時に自分の意見を飲み込んだり、他人に合わせたりしないといけないことがわずらしいから、あえて空気を読まないというのは間違いではないと思います。
しかし空気を読むのも、あえて空気を読まないのも、どちらにしても空気に気付いてはいるのです。
この気付いているか否かということが重要であり、空気に気づくためには他人をよく観察し洞察することが必要不可欠です。
これだけでは見抜けない暗黙の了解というのも存在しますが、多くの場合はこの観察と洞察をもって乗り切ることができます。
○ 2 思ったことを反射で口にしない
「思ったことをすぐ口にする人」というのは、空気が読めない発言をしてしまうことが多々あります。
よくも悪くも正直ということなので、あまり責めるべきではないですが、なんでもかんでも思ったことを口に出すというのはどうしても子供っぽくとらえられがちです。
中には、一般的には正しいことを言っていても「空気が読めていない」と言われることがあるのが「空気」の難しいところですが、自分の価値観や一般論だけで反射的に言葉を発していると、「見えない空気」を華麗にスルーしてしまい、場違いな発言をしてしまうことがありますので気をつけましょう。
○ 3 言葉の行間を読む
人は思いのすべてを言葉で表すとは限りません。
自分の場合はそうするのに相手が行間に意味を持たせると途端に読み取れなくなる人がいます。
これは本当に難しいことです。
特に初対面の相手ともなると、この行間が読めず四苦八苦することが多々あります。
しかしこれにもちょっとしたコツがあり、それを知っているだけでも少し行間を読むことが出来るようになります。
そのコツというのは言葉と言葉以外の部分に矛盾がないか探すということです。
人の心理というのは思いのほか身体やボディランゲージに現れます。
とてもわかりやすい例でいうとハニカミながらの「キライ!」という言葉や伏目がちな「大丈夫」など相手の強がりや見栄見抜いてほしいと思っているその意図を酌むことが行間を読むということです。
多くの場合相手はなにかしらのヒントを与えてくれています。
そのヒントに気づけるかどうかがこの行間を読むことが出来るか否かに繋がるのです。
“空気を読む”が一番大切ではない
ここまで空気を読むということの大切さやそのコツを紹介してきましたが私は空気を読むことを推奨しているわけではありません。
空気を読むためには少なからず自分の意見を抑えたり、我慢することが必要となり、それになれてしまうと自分の意見というのが言えなくなったりわからなくなってしまうものです。
協調性というのは特にこの日本の社会の中では重要視されています。
しかし、協調性の中に独創的なアイデアというのは生まれないものだと思います。
事実、その場の誰かが発する空気に呑まれた会議というのはこの世で一番無駄な時間に感じるものです。
空気を読むのも大事ですが、場面によっては空気を読まないことが正しいことだってたくさんあるのです。
まとめ
空気を読む、読まないのどちらが正解かというのは、状況によって左右されますが、どちらも選択できるのは、空気が読める人だけです。
となれば、空気を読むことは現代社会でも必要なスキルであり、「読む」「読まない」にかかわらず、「読める力」は身につけておいた方が良いということになりますね。 
 
「空気を読む力」 ビジネスマン

 

「空気が読めない行動は困る」「行間を読み取って」、こういった言葉をよく耳にしませんか。一体何をすればよいのかと悩んでしまうような抽象的な言葉でもあります。今回は東証1部上場企業の部長経験もある50代のビジネスマンに、空気を読む力の必要性や若手に対する思いなどを聞きました。
若手が空気を読めないのは仕方ない!?
――ビジネスマン、特に若手に空気を読む力は必要でしょうか。
「必要ないですね。若手は無理に空気を読まなくたっていい」
――断言ですね。でも空気を読めない行動をする部下や指示通りのことしかしない部下は困りませんか?
「まず、空気を読むというのは顔色を伺ったり媚びたりすることではありません。仕事を円滑に進めたり足りない点を補うために、見えないものを形にする、あるいは最適なタイミングを見極めることだと私は思っています。でも、これって情報量の裏返しなんですよ。やる気のあるなしは別として、若いうちは情報の絶対量が足りないですから、読めないことがあるのは当然なんです」
――情報量というのは?
「知識や経験、人間関係などの掛け合わせです。だから人によって濃さが違います。無理に読もうとすると、単なる想像というか妄想になってしまいます」
――経験の数だけでなく情報量の差を埋めようと努力する人と、そうでない人でも差がつきそうですね。上司の立場からすれば辛抱強さも求められてくると思いますが。
「初めは失敗しても構わないと思っています。失敗も本人にとっては情報の蓄積になりますから。それから、紅白戦、オープン戦、公式戦とステップを踏ませるようにします。一戦一戦で結果を積み重ねることで、レギュラーに定着し、やがてエースと呼ばれるようになってほしい。だから私は、若手のうちは要領が悪く感じられても確認しながら、時にしくじりながら経験を積んで、情報量を増やすことに努めるほうが重要だと思います。もちろん、初めてのことでも下調べできることはすべきです。たとえば、初めてお会いするお客様なら会社概要やお客様の経歴などをわかる範囲で調べるとか。まあ、これとて赤っ恥をかいてその必要性を学ぶこともあるわけですが…」
空気を読めない発言を繰り返す人の心理
――では、会議や取引の現場における発言で「空気を読め」と怒られるケースはどうでしょう。「今それ言う?」「そこまで言っちゃう?」とびっくりするような発言に驚くことはありませんか。
「それも結局は情報量だと思うんですよ。たとえば、人前で絶対意見を変えられない人が相手だったとしても、それはその人となりを知らなければわからないですし。教えてもらってないことや知りえなかったことで失敗してもどうしようもないでしょう?」
――でも、いわゆる空気を読めない発言を繰り返す人もいるわけで…。
「そういう人って『俺は知ってるぜ、わかってるぜ』といったひけらかす気持ちや、『ねじ伏せてやる』というような気持ちが見え隠れしていませんか? これは若手に限らずベテランにもありがちです。自分を押し出すことに夢中で空気というより『場』そのものを大切にできていないんですね」
できるビジネスマンは空気を読んでいるのか
――空気が読めない=気が利かないと考えて悩んでいる若手がいるかもしれません。
「ちょっと気の利く同僚を見て焦る気持ちはわかります。彼らはよく周囲を見ていて、それが情報量の差になっているんでしょうね。良い点は見習うといいと思います。でも、10年20年先を考えたとき周囲に気を遣いすぎるタイプの空気の読み方ばかりしているのは好ましくありません。周りに合わせることしかできずに自分の意見がない人になる危険性があります。できるビジネスマンをめざすなら、しつこいようですが若手が今できることは情報量を増やすことです。業務に関する知識だけでなく、話し方、あいさつ、プレゼンの方法も磨く。接待や飲み会にはコミュニケーションのヒントが転がっているかもしれません。いろんな場面を学びにしてほしい。情報が蓄積されてくると一つのゴールを目指すのにも様々なパターンが想像できるようになります。明示されていない情報や背景も含めて吟味して、そこから最善の方法を選ぶ。それが空気や行間を読むことの本質だと思います」
――できるビジネスマンになるには、やはり空気が読めるほうがいいんでしょうか。
「ビジネスマンに求められる空気を読む力というのは、その場の雰囲気に迎合する力ではなく、課題を解決するために見えないものを可視化したり最適なタイミングを見極める力です。私が見てきた限り、仕事ができるビジネスマンが空気を読むのは、ビジネス上自分にも相手にも最善だと判断したプランをできるだけ障害なく実行しようとするときです。そのために彼らはとても勉強しています。もし空気を読むのなら、その力はぜひお客様の課題を解決するために使ってほしいですね」
 
場の空気を読む

 

相手の立場になって物事を考えることができる人
相性とは、相手の立場にたって物事を考えることができるかどうかで良し悪しが決まります。
会社の中に存在するすべての人には、その立場に応じた重圧やそれぞれの思いがあります。
例えば代表取締役社長。誰からも注意されず、指示も受けずに、やりたいことを好きに行って、多くの報酬をもらえる。しかしながら、それはあくまであなたの立場から見た社長です。
実際の社長は、経営の舵取りで24時間365日身の細る思いをしているものです。また、本気で心を許せる同僚もおらず、日頃から孤独を感じています。
同じことは、他の役員にも部長、課長にもいえます。
それぞれの立場にはそれぞれの思いがあります。
常に相手の立場にたって物事を考えた言動を心がえけましょう。
部長が毎晩クラブで接待をしているからといって、それを楽しんでいるとは限りません。
A「毎晩、美人の女の子と経費でお酒を飲めるなんて最高ですね!」
B「毎晩、遅くまで大変ですね。心配です。お体に気を付けてくださいね。」
もし、部長が会社の取引改善の為に、身を削る思いで毎晩の接待に挑んでいたのならば、A or B どちらが空気を読んだ発言と言えるでしょうか。
明らかに前者は部長からしてみればKYな発言と言えるでしょう。
「聞く」8割「話す」2割
あなたは、人と話すときに「聞く」「話す」の割合についてどのように意識していますか?おそらく、特に何も意識していない人がほとんどでしょう。
一般論ですが、場の空気を壊しやすいトップは大阪人だと言われています。これは、大阪人が単純にKYというわけではなく、何事にも口を挟まずにはいられない大阪人気質によるものだと思います。しかしながら、漫才ならともかく、現実世界においては周囲の空気を凍らせてしまいかねないので注意が必要です。
そもそも空気とは、その場に集まっている人の思いでつくられます。
例えば、A,B,C,D,Eの5名とあなたの合計6名が一緒に食事をしていたとしましょう。A,B,C,Dはそろそろお開きにしたいと感じており、Eはまだまだ飲み足りないと思っているとします。
その場においては、あなたが「そろそろお開きにしましょうか?」と発言すると空気を読んだことになり、「まだまだ飲もうよ!」と発言するとKYになってしまいます。
これは、会話においても同じです。
あなたがAさんと二人で話しているとして、あなたが話しすぎることによりAさんが自分が話したいことを話せなければ、AさんにとってあなたはKYな人となってしまいます。
では、人と話す際には「聞く」「話す」をどのような割合で考えればよいのでしょうか? 相手が話したい話が全部できなければ、あなたはKYになってしまいますので、ここは平等に5:5でしょうか。
もちろん、絶対的な答えはありませんが、一般的には、
相手が目上の人の場合は「聞く」8割「話す」2割
相手が同等の人の場合は「聞く」6割「話す」4割
が良いとされています。
口止めをされなくても秘密を守れる人
一般的に、KY = 口が軽い と言われています。
これは、KYの人が本当に口が軽いのではなく、相手が秘密なのを当たり前と思って話しているのに空気が読めずにうっかりほかの誰かに言ってしまう傾向が強いということだと思います。
そもそも、人間関係において、口が軽いと思わる事は信用問題に関わる極めてネガティブなことです。
秘密の内容だからと言って、必ず相手が「絶対に秘密だよ」と言ってくれるかは正直わかりません。
相手からすれば、あなたの話す内容は基本的に秘密と思って言っているかもしれませんし、あなただからこそ、深いところまで話してくれているのかもしれません。
また、人との秘密を漏らすことは、その秘密を話した第3者からもあなたがKYだと思われる一つの要因になります。なぜならば、あなたが話した途端にその第3者は、その話が秘密だということに気づき、それを秘密と思わずに平気で話してくるあなたを「信用できない人」もしくは「KY」と判断するからです。
相手が、深刻そうな話をしてきた際などは時に、いつも以上にアンテナを張り巡らせ、相手がオフレコにしてほしいのか否かの空気感をしっかりと感じましょう。
自慢話をしない人
「先日、家族旅行に行ってきました。まあ、今回は国内で近場の沖縄ですが…」「先日、家族旅行に行ってきました。念願の沖縄に行けました。」
会社の会議前などのピリピリした空気を和らげるために、プライベートな話題は有効ですが、決して自慢話にならない様にしなければなりません。
上記の例では、明らかに前者のほうが自慢気に聞こえるはずです。
あなたが日頃から頻繁に海外旅行に行っていることを知っている親友などであればともなく、あなたのことをあまり知らない会社の上司の前などではなおさらです。
その上司は、子育てなどで海外旅行はおろか、国内旅行ですら行けてないかもしれません。
せっかくあなたが、会議前のピリピリ感を和らげようと空気を読んでした話で、場の空気を完全に凍りつかせてしまっては本末転倒です。
徹底的にイエスマンになれる人
会社という組織においては、イエスマンが絶対的に出世をします。あなたの会社の幹部を想像してみてください。専務は社長にイエスマンでしょうし、部長は専務にイエスマンだと思います。
また、会議など複数の社員が集まる場においては、おそらくその場においての最高権力者に対して全員がイエスマンになることでしょう。
仮にも、あなたがその最高権力者の意見に物申したりした場合には、会議全体の空気が凍りつき、あなたのあだ名はその瞬間からKYになることでしょう。
ここまで書くと、イエスマンばかりの会社組織は悪いと捉えられてしまいがちですが、実はそうではありません。
そもそも、会社というのは社長の血と汗と涙の結晶です。社長は、常に孤独の中24時間365日身を削る思いで会社のことを考えて生活をしています。会社というシェルターに守られて勤務中以外は好きなことを自由に心置きなくできるサラリーマンとは比べ物になりません。
その社長の決定に不満があるのであれば、あなたは会社を辞めるべきですし、今後、その会社に残ってもあなたも会社も両方が不幸になります。
あなたがもし、会社で今後の働いていきたいのであれば、ノーマンでなく絶対にイエスマンになるべきです。イエスマンこそが会社を強くし、イエスマンだけが会社を救えます。
相手の話の最中に別のことを考えないこと
別の記事でも述べましたが、KYの人は会話中、相手が話している最中に全く違うことを考える癖があります。
相手が、アメリカ経済の話をしているのに、自分の頭の中では話がどんどん独り歩きし、アメリカ経済→日本経済→ガソリン価格→あれ?先週ガソリンいれたっけ?のように全く違うことを考えてしまうのです…
おそらく空気を読めると言われている人には、想像もつかないでしょうが、KYな人には本当によく起こる決して珍しい状態ではありません。
当然、場の話題とは違うことを頭の中で考えているので、突然意見を求められたら、場の空気とはかけ離れたKY発言をしてしまいます。
もしあなたがこの様な症状に心当たりがあるのであれば、会話の最中に相手の発言に対して、細やかな相槌を意識するとよいでしょう。それも、「はい」「いいえ」「へ〜」などのYes/No相槌ではなく、「へ〜。そうだったんですね。私は○○だと思ってました。」などと内容のある相槌を心掛けてください。
必要以上に謙遜しない人
日本人には昔から「謙虚こそが最大の美学」のようなところがあります。よって、謙遜居士、謙虚人間がおそらく海外に比べて多く存在ます。
しかしながら、この謙虚さ。必要以上にでてしまうと場の空気を壊してしまうことが多々あります。
例えば、あなたとあなたの部下数名が社長に食事に誘われたとしましょう。そこで社長が、せっかくだからドンペリを注文してくれ。とあなたに頼んできました。
あなたは、決まり文句のように「いえいえ。私たちにそんな高価なお酒は勿体ないです。」と答えます。
社長は「せっかくだから、私が皆に日頃の感謝を込めてご馳走したいんだよ。」
さて、あなたはこの後どのように切り返しますか?
実はここが、謙虚とKYの分かれ道なのです。
もしあなたが、また社長に対して断りの返事をしたのであれば、あなたはKYと言えるでしょう。しかも、それは社長から見たKYだけではなく、あなたの部下から見てもKYとなります。
日本の古き良きマナーに「頂きものは3度断るべし」なんてものがありますが、今の時代にはミスマッチです。そもそも、3往復も「どうぞ」「いえいえ」のやり取りをしていること自体が生産性がないですし、相手にも余計な労力をかけてしまいます。
なお、これは物に対してだけ言えることではありません。
例えばあなたに対して「君は本当に頭が良いね。」と上司が言ってきたとしましょう。謙虚人間の場合「いや、私なんて。滅相もございません」と答えがちですが、せっかく上司があなたのことを褒めてくれているのだから、ここは素直に「ありがとうございます。これからも精一杯頑張ります」と答えましょう。
仮に、上司が「いやいや冗談だよ。本気にしたかい?」なんて言ってきたのであれば、「ですよね〜」と無邪気に笑って切り返せばよいのです。
必要以上の謙虚や謙遜はKYにつながるということをしっかりと覚えておきましょう。
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
外人の評価

 

忖度って何?と頭抱える外国人記者
「忖度(そんたく)」という言葉が、話題です。外国人への記者会見で籠池理事長が「口利きはなかったが、忖度はあったと思う」と発言したことから、「What is sontack?」となってしまった、というもの。
日本人でもあまり使わない言葉ですから、日本語のできる外国人もわからなかったのでしょうが、それでも日本人なら意味を説明されれば、肌感覚で言葉の持つ意味を理解できると思います。しかしこれが日本人独特の文化と生活を知らない外国人にはこの言葉の意味を理解するのは、確かに難しいかもしれません。通訳も相当困ったみたいです。
「慮る」「気を遣う」「空気を読む」など、「忖度」に近い言葉は日本にはいろいろありますが、「忖度」とは何か、ストレートに言えば「(言われなくても)意向を察して行動する」という意味でしょうが、そういう意味ですよといった時点で「忖度」の意味を失うような気がして、何しろ難しいところです。
ところがこれが日本社会では非常に重視されており、こういうことに長けている人は、日本の組織では重宝され、特に政治家なんかにはまず間違いなく求められる資質だと思います。
デーブ・スペクターはやはり日本通で「“忖度”は、便利なようでずるい日本語。“よろしくお願いします”って、色んな意味を含み過ぎて英訳できない。その悪い部分が前面に出た」と言っていましたが、「よくわかっていらっしゃる」と言いたくなるコメントです。
これがNYタイムズの記事には「忖度」を、日本政府側の「不法な財政的な行為」とアメリカ人がスッと分かる表現に変えられ、分かったようで分からない事件になってしまいました。
どこまでを「口利き」といい、どこから「忖度」なのか、証拠も残らず、法で裁けず、このたびのようなことはこれからも繰り返されるでしょう。
「忖度」は、ある意味、“世界にない日本の美徳”として称賛されるケースもあると思いますし、このたびのように“世界にない日本の悪徳”として非難することもありましょう。結局、「忖度」する人、される人の志、目的、そこに大義があるか、という根本問題になってくるかと思います。 
 
日本人が「黙って忖度」ばかりする根本原因 6/13

 

まだ気が早いが、年末に発表される今年の流行語大賞の最有力候補といえば、ずばり、「忖度(そんたく)」ではないだろうか。明言化されていない意思をくみ取る、というまさに日本人特有の「空気を読む」コミュニケーション文化を象徴するような一語だ。
この蔓延する「忖度」コミュニケーションこそが、日本人を世界一の「コミュ貧」国民たらしめる一因なのではないか。そして、日本を覆いつくす不幸感、不安感、絶望感はこの「コミュ貧」にひも付いているのではないか。今回はグローバル視点から見た日本人のコミュニケーションの「異質性」について掘り下げてみたい。
相手に「伝わっている」と信じ切っている
「以心伝心」「言わぬが花」「沈黙は金なり」「あうんの呼吸」「つうと言えばかあ」「男は黙ってサッポロビール」……。日本には、明確な言葉を交わすことなくとも相手とわかり合える、という「信仰」が昔から根強い。筆者が「日本人のコミュニケーションスキルを上げるお手伝いをしたい」と1人で仕事を始めたとき、昭和の高度成長時代にまじめ一徹で働き上げた父にこう言われた。「『巧言令色鮮し仁』という言葉を知っているか」。ぺらぺらと話す口のうまいやつは信頼できない、重要なのは黙って仕事をすること――。そういう価値観がまだまだ根強いということを理解しておきなさい、というアドバイスだった。
新聞記者時代、PRコンサルタント時代を通じて、企業経営者のコミュニケーションを間近で観察し、その価値観がしみ付いた人がどれだけ多いのかということに驚かされてきた。言語も意味も不明瞭、それでも、相手には「伝わっている」と信じ切っている。「コミュニケーションの最大の問題点は、それが達成されたという幻想」という文学者バーナード・ショーの言葉どおりで、何か言葉を発しさえすれば、いや、発しないまでも自分の存在感だけで、コミュニケーションは成立しているという錯覚にとらわれている。
国際的によく知られているのは、日本人は「きわめてハイコンテクスト」のコミュニケーションスタイルである、ということだ。コンテクストとは文脈という意味だが、話し手と聞き手との間の文化的背景・文脈の共通性が高いのがハイコンテクストの文化、低いのがローコンテクストの文化ということになる。
この概念は1976年にアメリカの人類学者エドワード・ホールによって提唱された。島国であり、人種・文化的な多様性があまりない日本の場合、話し手と聞き手との間に共通項が多く、言葉を尽くさずとも何となくわかりあえる、暗黙知がある、という考え方だ。
一方、ローコンテクストの文化では、共通項が少ないので、きっちりと言語化し、クリアでシンプルでわかりやすいメッセージを伝え、あいまいさを排除しなければならない。ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化は表1のようにまったく対極のスタイルだが、その中でも人種のるつぼであるアメリカが最も、ローコンテクストな国であり、日本は反対に最もハイコンテクストな国と位置づけられている。
コミュニケーションスタイルの違い
ハイコンテクスト文化 / ローコンテクスト文化
日本、中国、エジプト、サウジアラビア、フランス、イタリア、スペイン / アメリカ、イギリス、カナダ、ドイツ、デンマーク、ノルウェー
暗黙知 / 形式知(言語化して説明可能な知識)
言葉以外にも状況や文脈によっても情報を伝達 / 伝達される情報は言葉の中ですべて提示される
あいまいな言語 / 正確性が必要とされる言語
一般的な共通認識に基づく / 言葉に基づく
感情的に意思決定される / 論理的に意思決定される
沈黙は不快ではない / 沈黙はコミュニケーションの中断として不快
協力的なビジネススタイル / 競争的なビジネススタイル
関係性重視 / タスク重視
チーム志向 / 個人志向
少数で緊密で長期志向の関係 / 多数で縛りが弱く短期志向の関係
関係性重視の意思決定 / 論理性、規則重視の意思決定
変化より伝統 / 伝統より変化
身体や経験で技術継承する / 明示できる知識として継承する
控えめなリアクション / わかりやすいリアクション
グループの内と外との境が明確 / オープンで柔軟なグループ形成
異なる文化、人種、背景を持つ人同士がわかりあうたった1つの手段はコミュニケーションである。だから、アメリカでは徹底して、言語化し、メッセージ化し、口頭で伝える教育が行われる。アメリカと日本とのコミュニケーションスタイルの違いは宣教師と禅僧のようなものだ。アメリカの宣教師は声に抑揚をつけ、大げさなジェスチャーで感情をこめて演じる、まさにパフォーマー。聖書という言語化されたクリアなメッセージを伝えていく一方で、禅僧は感情を極力抑え、内省的な問答によって、悟りを開く。
こうした「行間を読む」スタイルの日本のコミュニケーションは海外の人にとってはなじみにくい。たとえば、「難しい」という言葉。アメリカ人の知人は「これはdifficult(困難だ)の意味なのか、impossible(できない)の意味なのかわからない」という。同じ言葉がさまざまな意味を持っているだけではなく、日本語は特に同音異義語が多く、文脈の中で判断しなければならないケースも往々にしてある。
「同質性」を前提とした日本型のコミュニケーション
日本のコミュニケーションの特殊性はまだまだある。フランスのビジネススクールINSEADのエリン・メイヤー教授の著書『The Culture Map』(日本語版は『異文化理解力』)によれば、日本は「評価のスタイル」「説得の方法」「決断志向」「見解の相違の解決法」などにおいて、特異な傾向を示している。
「評価のスタイル」では、部下などへのネガティブなフィードバックについて、ロシアやイスラエル、オランダなどのように、直接的、単刀直入に伝える国に対し、日本は最も、柔らかく、やんわりと伝える国、とされている。「説得の方法」においては、上司と部下の理想の距離が近く、組織がフラットである「平等主義的」なデンマーク、オランダ、スウェーデンといった国々に対し、日本はその対極の「階層主義」の最たる国とされている。上司と部下の理想の距離は遠く、肩書が重要、組織は多層的で固定的、序列に沿ってコミュニケーションが行われる。
また、「決断志向」についてはナイジェリアや中国、インドなどが、「トップダウン志向」で決断は個人(主に上司)がするのに対し、日本は最も「合意志向」が強く、決断は全員の合意のうえ、グループでなされる、と位置づけられている。さらに、「見解の相違」をめぐっては、イスラエルやフランス、ドイツなどの見解の相違や議論はチームや組織にとってポジティブなものと考える「対立型」の国と比べ、「見解の相違や議論はネガティブで、表だって対立するのは問題」と考える「対立回避型」の最たる国が日本である、と結論づけられている。
こうしたスタイルはアジアの国々と共通するところも多いが、極端にどちらかに振れているというのは日本の特徴的なところだ。つまり、極度に「非言語志向」で、「ネガティブフィードバックを避け」、「階層主義的」で、「合意志向」で、「対立回避型」のコミュニケ―ションスタイルであるということらしい。こうしたスタイルは「一億総中流」の島国の秩序を保つために生み出され、機能してきた、「同質性」を前提とした日本型のコミュニケーションといえるのだろうが、グローバル化、都市への一極集中、過疎化、高齢化、格差の拡大とともに国民の価値観が多様化する中で、効能を失いつつあるように思える。
つまり、言葉にしなくても通じてきたがために、言語化し、はっきりとしたメッセージで伝える力が弱く、上司が部下を「しかる力」もなく、両者に距離感があり、合意を重んじるがために迅速性に欠け、「見解の相違」が発生したときの正しい対処の仕方もわからない、といったようなことである。
コミュ力は「生きる力」そのもの
通算7年ほど海外で暮らした筆者だが、さまざまな先進国と比べても、日本は本当に「いい国」である。治安がよく、クリーンで、自然は豊か。食事はおいしく、教育は比較的安価でしっかりしている。医療は充実しており、アメリカなどと比べれば信じられないほどの低料金だ。人々は礼儀正しく、親切で正直。ドラッグや銃などといった問題も圧倒的に少ない。しかし、この国の人々の幸福度は極めて低く、孤独で、多くの働き手は仕事に愛着もやりがいも覚えていない。そして、絶望的に未来を悲観している。労働環境や貧困、長引く経済停滞などさまざまな外因はあるが、大きな要因の1つとして見逃してはならないのが、「コミュニティ」と「コミュニケーション」の問題であると考えている。
過疎化などにより、地域社会が崩壊していく中、人々がよりどころにできるコミュニティを見つけにくくなっている。海外では宗教やNGO、NPO活動などに居場所を求める人も多いが、日本では、「家庭」や「職場」以外の「サードプレース」はあまり見当たらない。人は人とのかかわりの中で生きていく社会的動物、ソーシャルアニマルである。そのかかわり合いのゆりかごとなるコミュニティの欠落は孤独感、喪失感につながっている。
そして、長年の「非言語」文化により、使わない筋肉がこそげるように落ち、退化してしまった日本人の「コミュニケーション力」。コミュニケーションとは人と人とを結び付ける強力な糸であり、身体に命を巡らせる血液のようなもの、つまりコミュ力はまさに「生きる力」そのものである。「忖度」の名のもとに、血を通わせる努力を怠ってきたわけだが、伝家の宝刀のごとく、従来のやり方を堅守しなければならないものではないし、良い部分は残しながらも進化させていくべきものであろう。 
 
「空気を読む人」は海外で評価されない

 

インターネットでは、面識のない個人や、違う場の空気をもつコミュニティが人やグループの行動・言動に緩やかに、時に匿名で一方的に干渉できるので、職場や学校などといったリアルの世界と比べ「批判」が醸成されやすいのは我々の経験がよく知るところです。「インターネットはその匿名性ゆえに無責任な批判が跋扈する、なのでけしからん」といった議論はfacebookの実名制が普及した今でもよく目にしますが、その背後にはそもそも批判そのものが「けしからん」から、ないしは少なくとも原則するべきものではない(それゆえするなら何らかの責任を伴う)から、という前提が垣間見えます。もし批判が一般に歓迎されるべきものなのであれば、批判が集まりやすいインターネットはその意味で社会にとって有益だ、ということになりそうです。
少し前に、僧侶の松山大耕さんがTEDで日本人の宗教観を説いて話題になりました。曰く、日本人の宗教観は"believe in something"ではなく"respect for others"という寛容の精神に基づいており、同じ人が盆に仏を尊べばクリスマスを祝い、新年には神社に初詣する。この寛容さ故に、日本では過去に大きな宗教対立もなく、現在でも多様な宗教が社会に溶け込み、争うことなく同居している。これは誇るべきことで、今世界中から日本の宗教界が注目されている。というような話でした。
クリスマスもハロウィンも盆も正月も祝う日本人の宗教観は、過去には「節操がない」「信念がない」と否定的にとらえられることも多かったため、松山さんの説教はまさに目から鱗だった方も多いのではないかと思いますし、そのことが大きな反響につながりました。それ自体には私も共感するところがあるのですが、そんな社会の共感が「欧米もアラブ諸国ももっと"respect for others"で仲良く暮らせばいいのに」という論調に繋がることを危惧していました。詳細は後で述べますが、そこには大きな誤解があると考えるからです。しかしその後、実際にソーシャルメディアでそのような趣旨のコメントを多数見ましたし、宗教対立がニュースで取りざたされるたび、松山さんの説教は繰り返しSNSでシェアされるようになりました。
その文脈で宗教・文化対立に疑問を呈する人は、宗教対立を信念と信念の対立とみて、日本の宗教観と欧米・アラブの宗教観の対立を「他者に対する尊敬」と「信念を貫くこと」の対立とみています。信念を貫くことも立派だけど、他者に対する尊敬も同じくらい大事に思うことはできませんか?という投げかけです。整理すると以下の通りです。
<日本の宗教観>
他者に対する尊敬 を最も重視
<欧米の宗教観>
信念を持つこと・敬虔さ を最も重視
しかし、この日本における寛容さと対立する西洋の価値観は、実は信念を持つことや敬虔さではなく、ヘーゲル的な弁証法(Hegelian dialectic)に基づく歴史観なのです。丸山眞男の「日本の思想」に、著者が外国の学者から日本の知性の歴史(intellectual history)をまとめた書籍はないか、と問われ困惑するくだりがありますが、ここでいうintellectual historyを西洋ではフリードリッヒ・ヘーゲルがまとめて体系化し、後世の学者たちに引き継ぎました。統治の仕組み(constitution)や人権の考え方はじめ、科学や文化など社会を規定する知性・概念の発展はすべて「弁証法的に」行われてきた、とするものです。欧米社会の人は、もちろんそんなことは知りもしなければ意識もしませんが、日々この弁証法のなかで生きていると傍観者として彼らを見ると強く感じます。
このヘーゲルの弁証法、名前は難しそうですがとてもシンプルな考え方です。テーゼ(考え方)Aがあり、それと対立するテーゼBが出てくる。AとBの対立はやがて止揚(アウフヘーベン)され、その対立と止揚から新しい考え方Cが生まれる。ヘーゲルによれば、西洋の知的進化は常にこのように弁証法的な発展を遂げてきた、ということになります。ここで重要なのは批判の持つ意味です。反対意見に対する批判を自分の立場からだけ見れば、それはあるいは信念にも非寛容にも(ポジティブにもネガティヴにも)とらえられますが、一歩俯瞰した第三者的な立場から見れば、弁証法的史観ではそれは新しい考えを導き人類を進歩させる正義(原則いいこと)になります。いうなれば、現在先進国で暮らす我々が享受している社会システムや科学技術はみな、例えば我々が切り傷を負っても破傷風で命をおとさずに生きていられること自体、批判によってもたらされた社会の弁証法的発展の賜物だというわけです。
異なる宗教・文化が対立しているとき、そこには双方に、対立構造や批判しあう事に対する深い無意識のrespectがあるかもしれません。彼らが信念を主張する理性より高次の無意識において、対立構造が生み出す人類の進歩を志向しているのだとしたら、それは「自分と同様相手をrespectしましょうよ」と安易にたしなめられるべきではありません。整理すると、以下のようなことです。
<日本の価値観>
・他者に対する尊敬 を重視
<欧米の価値観>
・信念を持つこと・敬虔さ を重視

この対立を重視

・他者に対する尊敬 を重視
・◯◯を重視
・◯◯を重視
実際に欧米の文化では批判を大事にします。ビジネスのミーティングにおいても、彼らは意見の対立を歓迎し、賛意も批判も同等に飛び交う活発な意見交換を「建設的」と表現します。パブではビール片手に政治やスポーツを議論し、繋争があれば原告と被告に分かれ裁判で決着します。与党に野党、上院と下院、内閣と議会という議会制民主主義における二項対立の構造にも弁証法の影響が色濃いです。「空気を読む」というニュアンスが欧米人に伝わりにくいのは、ひとえにこの空気を読むという行為が、明確な対立構造が「ない」ことを前提としているためです。
なぜ、いわゆる「空気を読む」人を評価しないのか?と欧米人に聞くと、おそらく多くの人はなぜだろう、としばらく考え、「それは自分の意見を持っていないことを意味するからだ」というようなことを答えるでしょう。しかし、それと対立する、と日本人が考える「他人をrespectする」という美徳は当然欧米人にとっても重要な美徳です。他人をrespectしない人が敬遠されるのに、洋の東西が問われる由もありません。実際に、自分の意見ばかり主張し、他人への配慮を欠く人は世界中どこでも嫌われますし、会議の後には陰口を叩かれます。欧米人自身は、多くの場合そのことに無意識ながら、彼らが空気を読む人を評価しないのは、本質的には実はそれが弁証法的な批判精神を欠くからなのです。なぜって弁証法的な史観に立てば、批判と対立なしには人類の発展はストップしてしまうのですから。そういったものの見方がいい、といいたいわけでも、批判をよしとしない日本の文化を否定するものでもありませんが、グローバルな現場でビジネスをする際や国際ニュースを読み込む際などに、そういう考え方もあるのだ、と理解しておくことはとても有益です。
 
なぜ「空気読め」が日本人のコミュニケーションをダメにするのか

 

「空気読めない人」に対する海外の反応
KYという言葉がユーキャンの流行語大賞に選ばれてから5年。当時のように頻繁には使われなくなったものの、今だ日本社会における「空気読め論」は根強い。「空気を読む」に関しては、KYという言葉が誕生した頃から賛否両論が絶えないが、「空気を読む」という言葉自体が存在しない海外で生活していると、日本の「空気読め論」もあながち悪いことではないと思う。
集団主義社会のアジアとは違い、個人主義社会の欧米で暮らしていると、私たち日本人の常識では考えられないような、ビックリするほど空気が読めない人にたまに出会う。
これからみんなで楽しく飲もう!という時に苦労話を始めて盛り下げる人、カップルが真剣に別れ話をしている最中に割り込んで入って「DVD貸して」という人、大勢が集まるパーティーでいきなり怒りだし険悪なムードにする人…。
「おいおい、ちょっとは空気を読めよ!」と突っ込みたくなる場面は日本にいた頃よりもよくあるし、こんな時日本人同士なら場の空気を読んでくれるんじゃないか?と思ったりもする。空気を読むという行為が「自分の主張や都合を後回しにして他人の心情を思いやる」というのなら、それは人間的にも賞賛すべき行動だし、いちいち言われなくても『察する力』があるのが私たち日本人の良い点だとも思う。
しかし、「空気読め」という言葉自体は受け入れがたい。「空気読め」という批判が日本人のコミュニケーションをダメにすると思うからだ。
そもそも「空気読め」という言葉がない欧米社会では、上の例に挙げた「場の空気を読めない人」にどのように接するのだろうか。「空気が読めないこと」を批難する場合、何と言って注意するのだろうか。
欧米では「空気読めよ」という便利で曖昧な言葉がないため、例えば大勢が集まるパーティーでいきなり怒りだし険悪なムードにする人に対しては、「その話は後でしよう」と切り返したり、「何でそのことで今怒り出すんだ!」と逆ギレしたり、「今日はせっかくみんな集まったから楽しく過ごしたいんだ」と言って自分の気持ちを伝えたりする。
つまり、「空気読めよ」という批判はどれも他のフレーズに言い換えることができるわけだ。「空気読め」と言って個人を批判すれば、自分の考えや意向、思っていることを明確に言葉にする必要がないので、話者のコミュニケーションの怠慢とも言えなくはない。自分を含めた“周りの意向”を非常に曖昧な「空気」という言葉で表現し、空気にそぐわない個人へ責任転嫁しているだけの話である。「空気読めよ」と言ってしまえば、少数派である個人を批難することで話が終わってしまい、そこから先のコミュニケーションが生まれない。だいたい「空気読めよ」と注意すると「自分は多数派でお前は少数派なんだ」というニュアンスがあるが、自分が多数派であるという考え自体が思い込みだったりもする。
日本語という言語は、主語、動詞、目的語がはっきりしてないと会話にならない英語やフランス語と比べて、非常に曖昧な言語だ。しかし、曖昧な日本語を使うからこそ、私たち日本人はコミュニケーションに気をつけなければならないと思う。先ほど、いちいち言われなくても『察する力』があるのが日本人の良い点と述べたが、いつでも相手が『察してくれる』と期待するのは間違っていると思う。「察してくれる」というのは付加価値的なものであるべきで、基本的に人間同士がわかりあうには自分の考えをきちんと言葉にしなければならないと思うからだ。言わなくてもわかってくれるだろうと推し量るのは話者の怠慢であり、わかってくれなかったときに「空気読めよ」と批難するのは「私は全部人任せだ」と言っているのようなものだ。
第2に、「空気読め」という批判が日本人のコミュニケーションをダメにする理由として、日本人各個人の「異」への寛容さが失われるという危惧が挙げられる。
「空気読め論」反対派は「個性が失われる」と言うが、個性がどうのこうのという議論は抜きにしても、「空気読め」という言葉にはどうしても少数派排除のニュアンスが含まれてしまうのではないか。
ウィキペディアによると「場の空気」の定義は集団や個々人の心情・気分、あるいは集団の置かれている状況を表す言葉である。つまり、「空気読め」は空気(多数派)を読めない・わからない個人(少数派)を批判する言葉であり、人とは違った考えや行動をとる人を無条件かつ短絡的にダメなものだと決めつける言葉であると言える。少数派である「異」を排除するという発想自体は、子どもがやっているいじめと何ら変わりない。
それに、みんなが一様に同じような考え方や行動をとる国、社会というのはいかがなものかとも思う。みんなが右を向けば右を向き、左を向き始めたら左を向く。そんな人ばかりでは発想の転換もないし、ひいては成長もない。どこに行っても同じような人に出会い、同じような会話をする、そんな社会はおもしろくもなんともない。それに、天才と言われるニュートンやアインシュタインなどの科学者や発明家はみなある意味で、「空気読めない人」だったのではないだろうか。
相手を思いやる人間力は日本以外のどこに行っても重要。しかし、「空気を読まない」人こそがこれまでの世界を作り上げてきたのではないだろうか。
「空気読めよ」と批判している人こそ、本来なら批判されるべきだということにそろそろ気が付くべきだ。
 

 

 
国家戦略特区

 

国家戦略特別区域
日本経済再生本部からの提案を受け、第2次安倍内閣が成長戦略の柱の一つとして掲げ、国家戦略特別区域法2条で地域振興と国際競争力向上を目的に規定された経済特区である。国家戦略特区と略される。
地域を絞って、そのエリア内に限り従来の規制を大幅に緩め、外国企業を誘致する計画である。また、この区域は「解雇ルール」、「労働時間法制」、「有期雇用制度」の3点の見直しを対象としている。
国家戦略特別区域の方針を決める産業競争力会議。この委員となった竹中平蔵の説明に拠れば、内容は以下の通り。
「この国家戦略特区(=国家戦略特別区域)は、今までの特区と異なり総理が主導の特区であり、これまでの地方から国にお願いして国が上の立場から許可するというものとは大きく異なり、例えば、東京ヘッドクウォーター特区や北海道の輸出農業を特区にしてといった形で、特区を、国を代表して特区担当大臣、地方を代表して知事や市長、民間を代表して企業の社長という国、地方、企業の3者統合本部でミニ独立政府の様に決められる主体性を持った新しい特区です。この特区を活用して岩盤規制に切り込みたいと思っている。」
アメリカ通商代表部(USTR)のウェンディ・カトラー次席代表代行も、アベノミクスの3本目の矢である「成長戦略」に謳われている規制緩和や透明性の確保などについて、「TPP交渉のうち1つの焦点となっている非関税分野で、アメリカが目指すゴールと方向性が完全に一致している」、「(TPP交渉の非関税分野の議論は)ほとんどすべて安倍首相の3本目の矢の構造改革プログラムに入っている」と語り、歓迎している。
経緯
2013年(平成25年)10月21日、午前の衆院予算委員会で、雇用分野を所管する厚生労働相など、関係分野の大臣を、国家戦略特区ごとに設ける統合推進本部から、外す考えを表明。この件に関して安倍晋三総理は、「意見を述べる機会を与えることとするが、大切なのは意思決定。意思決定には加えない方向で検討している」と語った。
特区の今後の方針について、竹中平蔵は、「(2014年)1月24日に召集される通常国会で国家戦略特区法をさらに磨き上げる」、「臨時国会で措置した特例措置は、あくまで暫定的な初期メニュー」、「さらに(規制改革の)項目を追加していかなければならない」、「更なる措置に向けて、早急な調整を進めるべき」というコラムを掲載しており、対象範囲を広げていく予定。
問題点
これは、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の前倒しと既成事実化ではないかという声もあり、特に医療費の負担増が懸念されている。また、税収が増えるとされているが、試算は行われていない。経済ジャーナリストの東谷暁は、「(国家)戦略特区は間違いなくTPPの受け皿」、「安倍政権の成長戦略は、『アメリカがTPPやそれと並行して行われている二国間交渉で要求していること』をほとんど全て満たしています」、「規制緩和に反対する人たちを「お白州」に引っ張り出してみんなで批判し、規制緩和を進める」と、この特区の問題点を指摘した。
問題は成立経緯に関しても指摘されている。2013年(平成25年)11月、山本太郎・参議院議員が国会答弁で、憲法95条が特定の自治体に適用される法律に住民投票を要求しているところ、戦略特区のように政令で自治体を特定する場合にも同条の精神に照らして住民に制度的な手続を保障すべきで、行政裁量で行われる意見聴取で足りるということではないという旨を主張している。
また、国家戦略特区のワーキンググループで行われた有識者ヒアリングには、「平時であれば、絶対に法制審をスキップすることはできない。なぜできたかといえば火事場だったからである。つまり、今も火事場だという認識を作る必要がある。だから、平常のルーチンはスキップさせてもらいますと、これはとても重要だと思う。」という議事録が残されている。  
■解説
国家戦略特区とは
安倍政権は、日本の経済が停滞しているのは、根強い反対による「岩盤規制」にあるとし、その打開なくして経済の活性化はなし、ということを強調しました。そのための戦略として掲げたのが「アベノミクス3本の矢」の柱とされている3本目の矢、「民間投資を喚起させるために、特定の地域に限りさまざまな規制の緩和や免除をおこなう」という政策です。その特定区域に指定された地区のことを「国家戦略特区」といいます。大胆な規制緩和をすすめていくことで、国際的な競争力の向上をめざしたり、また、新たな産業を生みだし、活発化させようというねらいです。国家戦略特区において適用除外を計画されている内容は、まちづくり、医療などの項目に分けられ、下記のようなものがあります。
1)外国人医師の日本国内で診察業務の解禁(医療)
2)病床数を現在の基準以上に増やすことを認める(医療)
3)公立学校の運営を民間へ開放する(教育)
4)農業に対する企業の参入を活発化するために、信用保証制度の適用を認める(農業)
5)農業地域内に農家レストランを設置することを認める(農業)
6)旅館業法を除外して、賃貸住宅を宿泊施設として利用可能にする(都市再生・まちづくり)
7)都心の居住推進のため、マンション建設などの容積率、建築基準法などを見直す(都市再生・まちづくり)
国家戦略特区に指定された区域とは
日本経済の成長に大きな影響を与えるような事業を国が決定するという基準のもとに、6区域の国家戦略特区が選出されました。【都市の国際化】【農業の規制改革】【雇用の規制緩和】【観光ビジネスの推進による地域の活発化】など、それぞれの区域に目標とされるテーマが設定され、今後一層の推進がはかられることになります。
○ 東京圏)国際ビジネスにおけるイノベーション拠点
「世界で一番ビジネスのしやすい環境整備」を掲げ、国際的な競争力の向上のためにグローバルな企業や人材の受け入れを促進し、国際的なビジネスを支えるための生活環境の整備を進める。
○ 関西圏)医療分野におけるイノベーション拠点の形成
すでに進めてきた国際的なイノベーション拠点形成のより一層の推進をはかることで、医薬品や医療機器などの研究開発を活性化し、関西圏での産業の国際的競争力を強化する。
○ 新潟市)大規模農業の改革拠点
広大な土地を生かした農業の大規模化や企業の農業参入の促進、生産者が加工や販売することも可能にする第6次産業の推進をはかる。
○ 養父市[やぶ])中山間地農業の改革拠点
耕作放棄地の再生や農産物のブランド化への取り組み、農業を魅力ある産業に変えることで、雇用の創出や所得の向上、人口減少の抑制をめざす。
○ 福岡市)創業のための雇用改革拠点
人口増加や都市アクセス面での利便性を生かし、新しい事業を始めるのに最適な「スタートアップ都市」として、さまざまな人・企業の挑戦を応援することで雇用創出、地域活性化をめざす。
○ 沖縄県)国際的観光ビジネス拠点
ダイビングなどを通して世界水準の観光リゾート地をめざすほか、外国人観光客が旅行しやすい環境を整備する。また、沖縄科学技術大学院大学を中心に国際的イノベーション拠点を形成し、新たなビジネスの創出により観光客数の増大を図る 。
国家戦略特区と既存の特区の違い
ある特定の地域に限り、そのエリア内での従来の規制を緩和したり排除することにより、地域活性を促進しようというのが「特区」です。国家戦略特区の導入以前より、特区の設定は存在していました。小泉政権の際に始まった「構造改革特区」、民主党政権により設定された「総合特区」があり、どちらも現在も継続しているものです。国家戦略特区との違いはどのような部分にあるのでしょう。
○ 構造改革特区
今すぐに全国的に実施に移すことが難しい規制改革を、ある地域を特定して行い、その成果によっては全国的に展開することを想定したもの。「どぶろく特区」などが例にあげられます。
特区では227件、そこから全国に波及したものを含めると、計700件以上の規制緩和の実績がありますが、日本経済を継続的に盛り上げる改革にはなつながりにくい認識となっています。
○ 総合特区
地域の産業を育成し、地域力の向上を目的とした「地域活性化総合特区」(41地域)と、国際的な競争力をもつ産業を育てる目的の「国際戦略総合特区」(7地域)の2種類があります。はじめて「国際的競争力」に着眼したもので、規制の措置に加えて、予算や税制にも支援の措置が考慮されています。
○ 国家戦略特区
既存の特区と比較し、第一に「都市の国際的競争力の向上」に重点がおかれ、2020年には「世界銀行ビジネス環境ランキング」において現在の15位から3位への躍進という目標をかかげています。ちなみに、「世界銀行ビジネス環境ランキング」は、毎年世界の約190カ国のビジネス活動における規制や制度的環境を比較評価し、各国のビジネスのしやすさをランキング化していて、「ビジネス環境の現状2015」では、日本は29位でした。前年は27位だったのでややランクが下がっています。
また、これまでの「特区」と「国家戦略特区」の大きな違いは、「構造改革特区」、「総合特区」のいずれも、対象は「地方自治体」だったのに対し、「区域」が対象となっていることです。そして、規制緩和や排除の申請は各地方自治体から国に行われていたものが、国家戦略特区では、区域より出た提案を国が主導して方針を決めるという点です。首相が議長となる諮問会議が設置されていることにも、国主導である色合いが示されています。そこから特区会議を通じてさまざまな面での活性化を推進し、国際的競争力のある都市づくりをしていく方針となっています。さらに、提案の内容が既存の特区の枠の中で可能なものは誘導するなど、既存の特区とうまく連携をとることをめざしています。
まとめ
今回、国家戦略特区に指定された各地区には、成長戦略の重点項目でもある都市としての国際化や機能強化、農業や雇用面での規制改革という目標が掲げられています。既存の特区と連携、融合することで、大きな経済効果を生み出し、全国に広げることを目的としている政策です。  
■背景 
岩盤規制
日本において、省庁(役所)や業界団体などが改革にそろって強く反対し、緩和や撤廃が容易にできない規制のことをいいます。これは、医療・農業・教育・雇用などの分野に多く見られるもので、新たな参入や規制緩和を嫌う既得権益層が、規制官庁や族議員と組んだ「三位一体のスクラム」がその正体と言われます。
一般に既得権益に守られた「岩盤規制」の見直しは、成長戦略の柱となるものですが、日本では1980年代以降、経済成長の観点から多様な分野で規制緩和が行われてきた中で、この岩盤規制だけは既得権益を持つ一部の関係者の強い反対にあって、問題解決が長年後回しにされてきました(歴代政権は、支持団体に配慮して、選挙の度に問題を先送りしてきた)。
なお、岩盤規制を突き崩す手段として、地域限定で規制緩和を行う「戦略特区」の活用などがありますが、その成功のカギは「いかに中身を骨抜きにされない」かであり、時の政権の不退転の覚悟が必要となります。
「岩盤規制」に踏み込む改訂成長戦略  2014/8
2014年6月24日に閣議決定された改訂成長戦略は、これまで手が着かなかった農業や医療などの「岩盤規制」にドリルを入れた。その意義は大きいが、中長期の潜在成長率向上にはつながっても、短期的な景気浮揚の効果は薄いことを理解する必要がある。
農業・医療改革に着手
政府は、2014年6月24日、「日本再興戦略」改訂2014、経済財政運営と改革の基本方針(いわゆる「骨太方針」)、規制改革実施計画の三つを閣議決定した。第二次安倍晋三内閣の経済政策「アベノミクス」の「第三の矢」とされ、1年前に策定された成長戦略がアップデイトされたわけである。
改訂成長戦略は、日本経済がこの1年間で大きく確実な変化を遂げたという認識を示した上で、その変化を一過性のものに終わらせないためには、日本経済の生産性を向上させ、「稼ぐ力(=収益力)」を強化することが不可欠だとする。また、2013年の成長戦略では残された課題とされた、1女性の活躍の場の拡大や海外の人材の受け入れの拡大を含めた雇用環境の改革、2農業の生産性拡大、3医療・介護などの健康関連分野の成長市場化、の3点についても、具体的な施策が講じられることになったと、その意義を強調する。
これら雇用、農業、医療の各分野は、長年にわたって制度改革の必要性が叫ばれながら大きな変化がみられず、「岩盤規制」とも呼び慣わされてきた。今回の成長戦略と規制改革実施計画には、その岩盤にドリルで穴を開けるとも言うべき内容が含まれる。
その一つは、農業分野における農業委員会・農業生産法人・農業協同組合(農協)の一体的改革である。すなわち、農業委員の選出方法を選挙や議会推薦から市町村長による選任に改め、事務局機能を強化する。また、農地を所有できる法人である農業生産法人への農業関係者以外の者の出資を2分の1まで認める。農協については中央会の機能を弱め、単位農協の活性化を進めるとともに信用事業や共済事業では窓口機能に特化させる。
もう一つは、医療分野における保険外併用療養制度(いわゆる混合診療)の拡大である。すなわち、患者からの申し出を起点として、国内未承認医薬品等の使用や国内承認済みの医薬品等の適応外使用などを迅速に保険外併用療養として実施できるよう「患者申出療養(仮称)」を創設する。
これらの制度改革については、いずれも2015年の通常国会に関連法案の提出を目指すものとされている。
雇用改革は踏み込み不足
一方、雇用規制については、残念ながら、農業や医療の分野におけるほどの画期的な進展はみられなかったと言わざるを得ない。
例えば、不当解雇が無効とされた場合、現行の制度では労働者を原職に復帰させるしかないため、金銭解決の途が開かれるべきだとの指摘がなされてきた。この点については、各国の制度について調査・研究を進めるといった内容しか盛り込まれなかった。
また、労働時間法制をめぐって、一斉始業・一斉休憩という工場労働を前提としたような現行制度を改め、労働時間の長さと賃金のリンクを切り離す制度を導入すべきだとの指摘がなされてきた。この点については、年収1,000万円以上といった年収要件を満たす労働者に限定した制度とするという内容にとどまった。
この労働時間の長さと賃金のリンクを切り離す制度は、一部では「残業代ゼロ」といったレッテルを貼られ批判の対象となった。しかし、それは大きな誤解である。
例えば、現行制度では、育児のために時短勤務を選択した労働者は直ちに減収となる。仮に、帰宅後、子供を寝かしつけて夜10時以降に仕事をしようとしても、会社は深夜勤務として割増賃金を支払わねばならず、在宅勤務の管理も複雑であることから認めない。こうしたケースに新たな制度を適用すれば、時短出勤や深夜の在宅業務を機動的に行って、適切な成果さえ上げればフルタイム勤務と同水準の収入を維持できるだろう。このように本来幅広い層に適した新制度が、年収の高い労働者にしか適用されないのは残念なことである。
中長期の効果が期待される
改訂成長戦略が、岩盤規制の見直しを打ち出したことには大きな意義がある。「既得権」に阻まれて進まないとみられてきた制度改革が動き出すのである。今後の実行段階で改革が骨抜きになるといった見方をする向きもあるようだが、少なくとも規制改革実施計画で細部が閣議決定された事項については、内容が大きく後退するようなことは考えにくい。
もっとも、成長戦略の実現は、あくまで中長期的な潜在成長率の押し上げにつながるものだという点に留意する必要がある。政府は、「成長の果実をできるだけ早く国民の暮らしに反映していく」と意気込むが、構造的な制度の改革が目先の景気浮揚やそれを見越した株価上昇といった現象につながると考えるのは、正しい見方とは言えないだろう。
また、各省庁における法案作成過程での審議会等への附議や国会審議といった民主的プロセスを丁寧に踏んでいく必要がある以上、盛り込まれた制度改革の実現は、どんなに早くても2016年度以降になるという点も押さえておく必要があろう。従来考えられなかったような制度改革が始動することは画期的だが、経済成長への即効性は期待できないという冷静な見極めが大事である。
岩盤規制の改革は道半ばだ 2015/3/22
政府が国家戦略特区の第2弾となる「地方創生特区」として、秋田県仙北市、仙台市、愛知県の3カ所を指定した。これで東京圏、関西圏などを加えた計9カ所の特区が生まれる。規制改革をさらに加速すべきだ。
国家戦略特区は、医療、雇用、農業などの分野で、既得権益に守られた「岩盤規制」を地域限定で緩和するしくみだ。
仙北市は、医療ツーリズムの一環として、外国人医師が日本人患者向けに診療所でも働けるようにする。無人飛行機(ドローン)の実証実験もする。
仙台市では、起業の受け皿となるNPO法人の設立手続きを簡単にできるようになる。愛知県は、自動車の自動走行の実証実験などをしやすくする。
政府が東北の2カ所を特区に選んだのは、東日本大震災からの復興を後押しするねらいもあったとみられる。特に仙台市は東北全体の活性化をけん引してほしい。
昨年の衆院解散のあおりで国家戦略特区法改正案は廃案になった。都市公園内での保育所設置を解禁するといった新たな改革の内容も加え、政府は今国会に法案を再提出する。
だが、その背後では、むしろ突き崩せなかった岩盤規制の存在が鮮明になった。その象徴が、農業への株式会社の参入だ。
農水省が農協改革に忙殺された面はあるにせよ、昨年1月に安倍晋三首相が今後2年で岩盤規制をすべて打破するとした約束との整合性を問われかねない事態だ。
地域限定の美容師を創設したり外国人美容師を解禁したりする案は見送られた。タクシー規制の緩和も断念に追い込まれた。
安倍政権の成長戦略にとって、規制改革は一丁目一番地ではなかったか。規制改革は民間の技術革新や競争を促し、潜在成長率を高める王道だ。
岩盤規制の改革は道半ばだ。首相は業界や族議員の抵抗にひるむことなく、強い決意で改革の先頭に立ち続けてほしい。  
 
国家戦略特区・諸話

 

加計学園問題、国家戦略特区が悪いのではない 6/6
悪者になる国家戦略特区
先日、加計学園問題が原因で特区での改革にブレーキが踏まれる懸念を示しました。
悪い予感は的中するもので、民進党は「国家戦略特区廃止法案」提出へ。加計学園の獣医師学部新設の妥当性が、国家戦略特区制度自体の妥当性に話がすり替わってしまいました。
そこで、おそらく国家戦略特区制度を日本で一番活用してきた立場から、巷で言われている「疑惑」について、改めて説明の補助線を引いてみたいと思います。
内閣府が急かすことは悪いことか
今回、加計学園の案件において、内閣府が「平成30年4月開学を前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。官邸の最高レベルが言っていること」と文科省のお尻を叩いたことが問題視されています。
「官邸の最高レベルが言っている」と内閣府が言うこと自体は、国家戦略特区が総理をトップとする仕組みなので、全く問題がないことは、先日の記事でお伝えしました。
一方で、内閣府が急かすことはけしからん、ということですが、僕が出した国家戦略特区のケースでも、内閣府は「次の会議までにちゃんと納得のいく答えを出してきてください」と、厚労省等のお尻を一生懸命叩いていました。
例えば、保育士試験の2回化の要望の時は、「保育士試験は、試験会場に大学を借りていて、それが夏休みだから安く借りられているけど、2回にすると安く借りられないから無理」という、「なんじゃそれ」という理由で厚労省は抵抗してきました。
それが論破されると、今度は「試験を2回にしても、試験を受ける人の総数は変わらず、2回に分割されるだけなので意味がない」という謎理論で抵抗してきました。(結果としては試験の機会が増えたことで、総数も増えた)
このように、規制を壊される側の省庁は、特区での規制緩和は嫌で、あまり理屈にもなっていない理屈を次々に繰り出しのらくら抵抗してくるので、内閣府側としては期限を区切って、議論を行っていくしかないのです。
嫌われる国家戦略特区
「元文科事務次官の方が、国家戦略特区での決定に異を唱えていてスゴい」ということになっていますが、これも報道と現実の温度感の差が大きいように思います。エピソードをお話ししましょう。某省のある管理職の方とこういうやりとりをしました。
官僚「駒崎さん。特区とかじゃなくて、普通に提案してくださいよ。僕たちも聞く耳持ってないわけじゃないんですから。」
駒崎「でも、審議会でも提案しましたし、こうやって直接ご提案も差し上げています。にも関わらず、進捗が見えないので、国家戦略特区で出すしか道が無いのです」
官僚「特区出したら、それこそ全力で抵抗しますよ」
駒崎「なぜそんなに特区が嫌いなんです?」
官僚「あいつら、霞ヶ関中の嫌われ者ですよ。何も分かってないのに、人の領域に土足で踏み込んできて・・・」
この官僚の方はとても優秀な方で、いつもはそんなに激しい言葉遣いをする方でもなかったので、逆に印象に残りました。
官僚の世界には、省庁間で厳密にナワバリに線が引かれていて、それを犯すことはタブーです。しかし、国家戦略特区は、そのタブーを犯し、省庁の縄張りにヨソ者が入っていて、「これおかしくない?」「意味あるの、これ?」とツッコミを入れていくわけです。
国家戦略特区およびその担当者が、改革される側の省庁から嫌われるのも、よく分かります。けれども、では嫌われることは悪いことでしょうか?
いえ、省庁に嫌われてでも、やらなきゃいけないことは当然あるのです。保育士試験は2回にしたことで、2回目試験合格者は保育士資格取得者の10%まで伸びました。
僕も特区担当者も厚労省から嫌われていますが、保育士不足の今、やった方が社会にとって良かったのは明白だったと思います。
決め打ちは悪いのか?
「加計学園ありきじゃないか」という批判もあります。これも、僕にはよく分かりません。世の中にはリスクを取って新しい事業をしよう、という事業者は多くはありません。
例えば、僕たちが提案し、実現した要望に「往診16キロ制限の廃止」というものがあります。
これは、医療機関が患者の家に行って診療する「往診」という行為が、なぜか16キロに制限されていた、というものです。
なぜフローレンスが、この規制に頭を悩ませていたかというと、フローレンスは熱を出した子どもの家に保育士を派遣する「病児保育」を行っているのですが、安全のために医療機関と連携して、子どもの家に往診に来てもらっています。
そうすることで、リスクの高い病児保育に、医療の手が入り、安全性が高まり、子どもたちの命が守れていくし、親にとっても安心だよね、となるわけです。
けれど、その往診がなぜか16キロに制限されていて、フローレンスの病児保育のカバーエリアである首都圏全体に往診に行けない壁にぶち当たっていました。
厚労省医政局に「なぜ16キロに制限しているんですか?」と聞いても、「この規制自体つくられたのが昔すぎて、理由が判然としません」ということで、根拠がよく分かりませんでした。
ということで、特区に提案し、厚労省の大きな抵抗は受けましたが、内閣府の特区担当者がきっちり厚労省を急かして議論の場を設定し、最終的には16キロ規制が撤廃されたのでした。
ここで注目したいのが、16キロ規制で困っている訪問型病児保育の事業者は、フローレンスしかいなかった、ということです。しかし、6000世帯の会員を持つ、全国最大の病児保育団体の病児保育の質が大きく上がることには、一定の公益性があると判断されたのです。また、未来においてもフローレンス同様に往診の仕組みを使って、病児保育や障害児保育の安全性を高めていくことが可能になりました。最初はリスクをとっている一つの事業者のためだけかもしれませんが、そこで明らかになった制度的矛盾を正すことは、後の後続事業者達にとってもメリットのあることではないでしょうか。
もちろん、加計学園の場合は、京都の学校が手を上げていたのに、後から選考基準が示されて一つに絞られて、それは不当では無いか、ということなので、我々のケースと違うかもしれません。ただ、「特定事業者のためだけではないか」という批判自体の妥当性については、フローレンスのケース(やその他多くのケース)でも、「リスクを取って規制を突破しようという事業者はそもそもそんなにいない」ということを頭の隅に置いた上で、考えてもらいたいな、と思います。
友達だったら、出しちゃダメなのか
加計学園の理事長が安倍総理の親友だから、キナ臭いという批判もあります。
しかし、これも提案する側としては困ったものです。
例えば僕は安倍総理の友人では全くなく、むしろ安倍政権の保育政策を批判してきた人間なので、特に問題なく特区制度を使って改革を提起することができます。
ところが、例えばこれで小泉進次郎議員が総理になったらどうなるか。僕は小泉進次郎議員と何度も会食や会議を共にしたことがあり、対談した経験もあり、会えば親しく話す間柄です。
総理と人間関係があると特区提案ができなくなるとしたら、小泉進次郎議員が総理になったら、僕は特区提案ができなくなります。僕と言う人間は特に変わらないし、僕の提案内容も変わらないのに、総理大臣が違えば特区提案の資格を失う、というのは全くフェアではありません。
おかげで国家戦略特区は、止まっている
この騒動のおかげで、特区は止まっています。これまで普通に開かれていた会議も開かれません。事務局が忙殺されているんでしょう。
今僕は、2つの提案を出しています。
重度の障害児である、医療的ケア児が特別支援学校に通う際に、現在は親が四六時中一緒にいなくてはいけません。当然親は仕事も辞めざるを得ません。それはすごく大きな負担です。でも、訪問看護師がいるんだから、彼女達が学校に訪問してあげれば、親は学校についていかなくて済むのです。
だが、それは現行制度ではできません。訪問看護師は、なぜか「居宅(家)」にしか訪問できない、となっているから。法律を作った当時、医療的ケア児のことを想定していなかったのです。
この壁を壊せれば、全国1万7000人の医ケア児家庭が救えます。
また2つ目は、保育園と障害児の通所施設の壁です。現在、保育園では障害児の受け入れが十分進んでいません。障害児を受け入れる際には、保育士を加配しなくてはいけないのですが、その補助金が足りないからです。
一方で、障害児の通所施設(児童発達支援事業)という制度があります。ここに障害児は通えるのですが、長い時間の預かりはしていません。
もし、保育園の中に障害児の通所施設(児童発達支援事業)がつくれれば、障害児の補助が受けられるようになり、保育園は障害児を受け入れられます。そうすると、健常児と障害児が毎日当たり前に触れ合うことができます。インクルーシブな保育環境が実現できるのです。
今は細かいルールでそれができなくなってしまっているのですが、特区でその細かいルールを取っ払えれば、健常児と障害児が共に通う新しい保育園の形を生み出すことができます。
こうした、障害児家庭の生活にとって非常に重要な改革が、特区が止まっていることで、止まっています。
それで良いのでしょうか。加計学園問題のせいで、本当だったら助けられる多くの子ども達を、制度と制度の狭間に置き去りにし続けることに結果としてなっているのですが、それで良いのでしょうか?
安倍政権は特区の仕組みについてしっかりと説明すべき
以上国家戦略特区を擁護してきた僕ですが、腑に落ちないのは安倍政権の姿勢です。
国家戦略特区が安倍総理をトップとした改革のツールであること。だから、「官邸の最高レベルが言って」いても何ら不思議はないこと。改革を渋る文科省を急かしても問題ないし、特定事業者ありきで話が進んでいたとしても、そもそも規制に挑む事業者は少ないので、そこも問題ありません。
こうしたことを、しっかり安倍総理の口から説明すれば良いのではないでしょうか。
にも関わらず、文書をないと言ったり、文科省の元事務次官の、出会い系バー通いという、全く本件とは関係なく、また問題ない行為を読売新聞に報道させたり、と言った「不透明さ」やなんとなくの「横暴さ」が、国家戦略特区を不当なシステムとして印象付けてしまっています。
正面から、「我々は何も悪いことはしていない。法律にも触れていない。文書も出します。官邸の最高レベル?何が悪い。だって責任者は私ですから。獣医師新設の妥当性?犬猫のペット医は収入も良くて足りてるけれど、公衆衛生と産業用動物の獣医師は不足しているんです。特に地方でね。獣医学部がない空白地帯で、長年リスクかけてやってきた事業者がいて、その妥当性はこうで・・・」と説明すれば良いのです。
そこに突っ込みどころがあれば、不透明なところがあれば、野党が突っ込んでいけば良いわけです。
まとめ:みんな冷静になって
民進党には細野豪志議員や荒井聡議員、岸本周平議員、井坂信彦議員など、尊敬すべき議員が多数いらっしゃいます。よって民進党全体が愚かだとは思いません。
ただ、安倍政権を追い込むためだけに、国家戦略特区自体を悪者にしたら、民進党が政権を取った時に、蔦のように絡まる馬鹿らしい規制を取り払う道具が失われ、社会変革という鳥を羽ばたかせることはできなくなります。
安倍政権憎しでシステムを破壊するのも良くないし、一方で文書を隠したり、情報を出さず国民に説明を行わない政権側も良くありません。
報道機関も元次官の無関係なプライベートを無意味に暴いたりしないで、きちんと事実を積み上げていくべきです。
どうかみなさん冷静になって、議論を軌道修正していって頂けたら嬉しいです。 
「岩盤規制に穴を開けた」の嘘 6/9
世論に押され、ようやく安倍政権が文書の再調査を公表した。だが、松野博一文科相は会見で「総理から徹底した調査をと指示があった」などと、あたかも安倍首相が真相究明に前向きであるかのように語った。
それこそが“印象操作”だろう。再調査を実施するとはいえ、もはや流出した文書が「本物」「存在したもの」であり、官邸の和泉洋人首相補佐官や木曽功内閣官房参与が前川喜平・前文科省事務次官に圧力をかけていたことも明々白々の事実だ。今後、調査で文書の存在を認めても、対する内閣府に「『総理のご意向』『官邸の最高レベル』なんて言っていない」と否定させるのは目に見えている。
だいたい安倍首相は、国会でもいけしゃあしゃあと「加計学園の問題の本質は岩盤規制にどう穴を開けていくかだ」などと宣っているではないか。
本サイトでは、安倍首相の「岩盤規制をドリルで穴を開ける」という主張の裏側で、いかに国家戦略特区が私物化の温床になっているかをお伝えした。今回は、本丸である獣医学部新設の問題点をあらためておさらいしよう。
最近は、安倍応援団だけでなく、“規制緩和”という枕が付いていればなんでもかんでも礼賛する頭の弱いネオリベ派の学者連中までが、加計学園の認可に慎重だった前川氏や文科省のことを「岩盤規制派」などとわめきたてている。
しかし、内部文書や前川氏らの証言だけではなく、どれだけ安倍首相が議長を務める国家戦略特区諮問会議の決定が理不尽かつ不当なものだったのかを指し示す証拠は、いくらでもあるのだ。
まず、国会でもすでに指摘されている通り、獣医師の数は「足りている」。それは獣医学会が主張しているだけではなく、獣医師を所轄する農林水産省がそう述べている。
「新しいニーズ」に対応するのに特区で「既存の大学」を排除する理不尽
たとえば、2015年1月9日に行われた国家戦略特区ワーキンググループによるヒアリングの議事要旨を読むと、農水省の消費・安全局畜水産安全管理課長(当時)である藁田純氏が、犬猫の飼育頭数や家畜の飼養頭数を「低下傾向」、飼養戸数も「飼養頭数以上に大きく減少」と説明。その上で「こういう状況を踏まえると、現時点において獣医師の確保が困難になるということは、なかなか想定しにくいのかなと考えております」「今後、需要の点で増加するということが、我々農水省サイドからすると、残念ながら難しい状況かなという感じがします」とはっきり述べている。
また、農水省は農業共済新聞(2016年6月3週号)の取材でも「全国的には産業動物臨床獣医師が不足している状況にはない」と回答。一方、20・30代の獣医師のうち約半数が女性であり、結婚や育児によって再就職をためらう者が多い現状を踏まえ、農水省は産業動物獣医師の確保のための就業支援事業を講じている。学生を一から育てて獣医師を確保する以前に、活用できる人材があるのだ。
しかし、安倍首相は獣医学部新設の理由として、「先端ライフサイエンス分野」や「鳥インフルエンザなどの感染症対策」の研究も挙げ、「獣医師が新たに取り組むべき分野の需要が高まっている」と主張する。だが、これらの研究はすでに獣医師を養成する既存の大学で進められているものだ。
そのひとつである大阪府立大学の獣医学科を取り上げた『報道ステーション』(テレビ朝日)によると、同大は20年にわたって創薬やライフサイエンスに重点を置いてきたといい、山手丈至副学長も「本学のバイオ関係、ライフサイエンス関係の研究、あるいは学生養成というのは、世界に負けることのない教育研究をやっている」と胸を張る。しかし、現在の定員は40人であり、同大は7年前から文科省に対して20人の増員を求めてきたが、定員抑制の壁が立ちはだかり叶えられていない。
「新たなニーズ」に対応することは既存の大学でも十分に可能であり、さらに充実を図ることはできるのに、なぜ、わざわざ「既存の大学・学部」を排除し、新規参入にこだわったのか。まったく理不尽としか言いようがないのだ。
だいたい、新たな独自的な研究拠点を求めて新規参入を認めたとしても、「先端ライフサイエンス分野」や「鳥インフルエンザなどの感染症対策」という意味では、加計学園とともに獣医学部新設に手を挙げていた京都産業大学のほうが教学プランにおいて圧倒的に充実していたのは誰の目にもあきらかだ。
たとえば、京産大は、ライフサイエンス分野では「既存の獣医学教育機関でほとんど実施されていない産官学共同事業の取り組み」や、ノーベル賞受賞者の山中伸弥教授率いる京都大学iPS細胞研究所との連携を打ち出していたし、感染症研究においても2006年から鳥インフルエンザ研究の第一人者であり世界的権威である大槻公一教授をセンター長に迎えた研究センターを設置するなど、すでに下地は整っていた。科学誌「ネイチャー」へ掲載された論文数も京産大は私大のなかでもトップであり、高水準かつ「新たなニーズ」に応える研究が十分に期待できる。
一方、その京産大を押しのけて獣医学部新設が決まった加計学園傘下の岡山理科大学は、最初に提出した書類も京産大が20枚に対しペラ2枚というやる気のなさで、挙げ句、「MERS」(中東呼吸器症候群)を「MARS」(火星)と記載するといったいい加減さだった。これでは疑問を感じないほうがおかしいだろう。
「広域的に獣医学部のない地域に限る」という一文のデタラメ
そして、なにより「岩盤規制として開けた穴」の不条理な点は、昨年11月9日の国家戦略特区諮問会議で決定された「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限る」という条件だ。これによって、近県の大阪府立大に獣医学部が存在する京産大は振り落とされることとなり、結果として加計学園に軍配があがった。
この決定を正当化するのに、安倍首相を筆頭に「四国には獣医学部がない」と強調するが、じつは2020年度の「獣医師の確保目標」では、京都府が32人に対し、愛媛県は0人。現実には、加計学園が獣医学部を新設する愛媛県よりも、京産大がある京都府のほうが獣医師は足りていないのだ。この不足分にしても、大阪府立大が要望しているように、既存の大学定員を増やすことや、前述した女性が復職しやすい環境づくりなどの努力を行うことのほうが、わざわざ学部を新設するより先に取り組むべきだろう。
また、「四国に感染症対策を行う機関と人材が必要」という意見もあるが、日本獣医師連盟委員長の北村直人・元自民党衆院議員は、こう否定している。
「獣医学系大学のある宮崎で口蹄疫が流行した際も、国や県、他県の獣医師らが対応したのであって、一大学だけでどうなるものでもない。また、今治には獣医師を採用する公的機関や企業がなく、卒業生が地元に貢献できる環境にもありません」(「サンデー毎日」6月18日号/毎日新聞社)
つまり、四国に獣医学部を新設すべき理由は、何一つもないのだ。
しかも、既報の通り、当初は内閣府も新設条件の原案では「広域的」「限る」という文言を入れていなかった。この原案は、2015年に閣議決定された「日本再興戦略」で示された獣医学部新設の4条件を踏襲しておらず、当時、文科省がそれを指摘していたことがわかっているが、内閣府は4条件を含めるどころか、土壇場で「広域的」「限る」という言葉を足したのだ。それはもはや「京産大外しのため=加計学園ありき」としか説明できない行動だ。
「総理のご意向」という一言がすべての謎を解く
どうだろう。獣医学部の新設を認めてこなかった定員抑制は、安倍首相が言う「岩盤規制」などではなく、需要が見通せないなかでとられるべき当然の措置だった。さらに獣医学部を新設せずとも新しいニーズに対応することはできるのに、なぜか官邸は内閣府とともにゴリ押しし、真っ当な提案を行った京産大をわざわざ外しにかかったのだ。
納得しろと言うほうが無理のある、この不可解な流れ。そして、ここで前川氏の証言が重く響く。「総理のご意向」のもとに──この一文こそが、決定の理不尽さのすべての謎を解くからだ。ようするに、「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っていること」という力が働いたから、こんなアクロバティックかつ道理に合わない規制緩和が実現されてしまったのだ。
再度言おう。「加計学園問題の本質」は、「岩盤規制に穴を開けること」などではまったくない。「岩盤規制でもない当たり前の規制を、安倍首相が勝手にドリルでこじ開けた」ことだ。そして、こんな無茶が自分の「お友だち」のために行われたのだとしたら、それを世間は「政治の私物化」「利権政治」「ネポティズム(縁故主義)」と呼ぶのであり、国民はしっかり落とし前をつけさせなければならない。 
国家戦略特区 岩盤規制突破にトップダウン式導入 6/12
「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐり、注目を集めている国家戦略特区。どんな経緯と目的で導入されたのか。
「規制改革こそ成長戦略の一丁目一番地。成長のために必要ならば、どのような岩盤にも立ち向かっていく覚悟だ」
平成25年6月、安倍晋三首相は、経済政策「アベノミクス」の第3の矢となる成長戦略を発表し、政治主導で規制改革を実行する強い意欲を示した。同月、閣議決定された「日本再興戦略」には、地域限定で規制緩和を行う国家戦略特区の導入が盛り込まれた。
これまで、小泉純一郎元首相が導入した「構造改革特区」や旧民主党政権下の「総合特区」が存在したが、いずれも地方が特区計画を作成して国に提案する「ボトムアップ型」だった。特に農業、医療、雇用などの分野は、新規参入を拒む「岩盤規制」が根強く残り、競争力のある産業が育ちにくい環境にあった。
こうした反省を踏まえ、国家戦略特区は、規制緩和の対象地域を選定する段階から国が主体的に関わる「トップダウン型」を採用し、スピード感を持って岩盤規制を突破する仕組みに変わった。
陣頭指揮を執るのは山本幸三地方創生担当相。有識者で構成される「国家戦略特区ワーキンググループ」が各方面へのヒアリングなどを通じ、制度設計や対象地域を絞り込み、最終的に安倍首相が議長を務める「国家戦略特区諮問会議」が社会的効果や自治体の実行力を踏まえて特区を認定する。内閣府の地方創生推進事務局によると、国家戦略特区の導入以来、医療、福祉、雇用、農業などの分野で56項目の規制改革が実現し、10の特区で計242の事業が認定されている。
加計学園による獣医学部新設も242事業のうちの一つだ。愛媛県と今治市は獣医師の慢性的不足を解消するため、19年度から計15回にわたり構造改革特区を活用した提案を行ってきたが実現に至らなかった。
しかし、28年1月に今治市と広島県が国家戦略特区に指定されると、同年11月、広域的に獣医師養成大学が設置されていない空白地域に限り獣医学部新設が可能に。今年1月に獣医学部の事業者を公募した結果、加計学園が認定され、来年4月開学に向け準備が進められている。獣医学部の新設は昭和41年以来52年ぶりで、四国では初めてとなる。 
「岩盤規制を壊す」とは新利権を“アベ友”に与えること 6/13
加計学園問題でにわかにクローズアップされた「国家戦略特区」。“アベ友”だから便宜が図られ、獣医学部新設が認められたのではないかという“国家の私物化”疑惑が渦巻いているが、そうした怪しい案件は加計だけじゃない。
そもそも、第2次安倍政権で新たに創設された「国家戦略特区」(13年6月閣議決定)は、アベノミクスの第3の矢である「成長戦略」の柱として打ち出されたもの。「地域を限定した大胆な規制緩和や税制面の優遇で民間投資を引き出し、“世界で一番ビジネスがしやすい環境”を創出する」と、仰々しく謳っている。
ところが、先月22日、国家戦略特区諮問会議で10区域、23項目の進捗状況についての評価が発表されたが、“世界で一番”に当てはまるような経済波及効果があったのは、東京圏の「都市再生プロジェクト」4兆1000億円ぐらいである。
「経済成長を目的として外資を呼び込むということだったのに、外資は1社も入っていないし、実際にやっている事業は地域限定のチマチマしたものばかり。ドラスチックな新産業や地域開発もない。東京圏の都市再生プロジェクトがうまくいっているのは、特区だからというより、2020年に向けての東京五輪効果があるからでしょう」(「国家戦略特区の正体」の著者で立教大教授の郭洋春氏)
こうした寂しい結果になるのは、「国家戦略特区」の本当の目的は安倍首相の取り巻きが私的なビジネスチャンスを得ることであり、そのために「特区制度」を利用しているだけだからなのではないか。
「特区制度」が始まったのは小泉政権の「構造改革特区」からだが、もともとは地域がアイデアを出して国に提案し、国が認定するボトムアップの制度だった。ところが、「国家戦略特区」でトップダウン方式になり、似て非なる制度にガラリと変わった。「首相のリーダーシップで岩盤規制を打ち壊す」と言えば聞こえはいいが、その実態は、既得権益を壊す一方で新たに別の人に権益を与えるようなものなのだ。
実際、全閣僚が参加した構造改革特区とは違って、国家戦略特区の諮問会議メンバーは、首相以下、閣僚は4人だけ。そこに民間議員が5人加わるが、そんな少人数で、法の網がかからない“特別扱い”を決めてしまっている。
小泉時代から規制改革の旗振り役だった竹中平蔵氏(東洋大教授)が入っていることもミソで、現に竹中氏にも私物化疑惑が浮上している。
当然、国会でも「利益誘導」が問題視され、先月16日、衆院の地方創生に関する特別委員会で可決された国家戦略特区法の改正案に次のような付帯決議がつけられた。
〈民間議員等が私的な利益の実現を図って議論を誘導し、又は利益相反行為に当たる発言を行うことを防止するため、民間企業の役員等を務め又は大量の株式を保有する議員が、会議に付議される事項について直接の利害関係を有するときは、審議及び議決に参加させないことができるものとする〉
これにはさすがに、自公の与党議員も賛成していた。

民間議員・竹中平蔵氏に“退場勧告” 戦略特区に利益誘導批判 6/1
「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設計画で、実現までに中心的な役割を果たした「国家戦略特区諮問会議」。特区の認定に「総理のご意向」があったとされることから野党は追及を強めている。
実は、会議を巡って、特定企業の利益になるように議論が誘導されているのではないかとの疑惑が、以前からあった。
「昨年7月、神奈川県の特区で規制緩和された家事支援外国人受入事業について、大手人材派遣会社のパソナが事業者として認定された。諮問会議の民間議員の一人である竹中平蔵氏(東洋大教授)はパソナグループの会長。審査する側が仕事を受注したわけだから、審議の公平性が保てない」(野党議員)
これだけではない。農業分野で特区に指定された兵庫県養父(やぶ)市では、竹中氏が社外取締役を務めるオリックスの子会社「オリックス農業」が参入した。自民党議員からも「学者の肩書を使って特区でビジネスをしている」と批判の声がある。
農林水産委員会などに所属する宮崎岳志衆院議員(民進党)は、竹中氏が主張する農業分野での外国人労働者の受け入れが、人材派遣業界の利益につながりかねないと指摘する。
「民間議員はインサイダー情報に接することができるのに、資産公開の義務はなく、業界との利害関係が不透明だ」
批判が相次いだことで、国会も異例の対応を迫られる事態となった。
5月16日に衆院地方創生特別委員会で採択された国家戦略特区法改正案の付帯決議では、会議の中立性を保つために「民間議員等が私的な利益の実現を図って議論を誘導し、又は利益相反行為に当たる発言を行うことを防止する」と明記。さらに、特定企業の役員や大株主が審議の主導権を握ることを防ぐため「直接の利害関係を有するときは、審議及び議決に参加させないことができる」とした。
採択の背景について前出の野党議員は「竹中氏を外すため。与党側からもウラで依頼があった」と明かす。与野党議員による事実上の“退場勧告”だ。
小泉政権に続き、竹中氏は安倍政権でも影響力を持つようになった。ジャーナリストの佐々木実氏は言う。
「会議では一部の政治家と民間議員だけで政策を決めることができる。省庁が反対しても、思い通りに規制緩和が進められる。行政や国会のチェックが利きにくく、『加計学園問題』の背景にもなった。竹中氏はいまの特区の制度を安倍政権に提案し、自ら民間議員にもなっている」
竹中氏にはパソナグループを通じて見解を求めたが、回答は得られなかった。 
NHK『クロ現』が加計問題で総理圧力の決定的証拠を報道 6/20
 萩生田副長官が「総理は30年4月開学とおしりを切っている」
ついにNHKが加計学園問題で決定打となるスクープを報じた。昨夜、放送された『クローズアップ現代+』が、独占入手した文科省作成の“新たな内部文書”を公開。その内容は、萩生田光一官房副長官が文科省に対し、はっきりと「総理案件」であることを伝えている衝撃的なものだった。
先週、「安倍首相の側近中の側近」である萩生田官房副長官が、「広域的に」「限る」という事実上の「京都産業大学外し」を指示していたことが発覚したが、今回、NHKがスクープしたのは、その指示の1週間前ほどにあたる2016年10月21日、萩生田官房副長官が文科省の常盤豊高等教育局長に対して語った言葉を記録した「10/21萩生田副長官ご発言概要」という文書だ。
そこには、まさに「決定的」な文言が並んでいる。
「和泉補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている、何が問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。官邸は絶対やると言っている」
「総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた。工期は24ヶ月でやる。今年11月には方針を決めたいとのことだった」
「何が問題なのか、書き出して欲しい。その上で、渡邉加計学園事務局長を浅野課長のところにいかせる」
「農水省が獣医師会押さえないとね」
和泉洋人首相補佐官については、前川喜平・前文部科学事務次官が昨年9〜10月に「総理は言えないから私が代わって言う」として、獣医学部新設を早く認めるように複数回言われたことを証言してきた。今回の新文書は、そうした“圧力”をかけたにもかかわらず抵抗する文科省に対し、萩生田官房副長官が「官邸は絶対やる」「総理は2018年4月開学と決めている」とはっきり“総理案件”だと宣告し、その上で、加計学園事務局長を浅野課長のもとにまで行かせるとまで言っていたことを示すものだ。何より、開学時期を切ったのは、安倍首相その人だというのである。
指示はやはり岩盤規制改革ではなく“総理のご学友”の加計学園開学!
さらに、萩生田官房副長官は、和泉首相補佐官や内閣府と話し合った上、四国で獣医学部新設を行うためにはどうすればいいかを具体的に列挙。萩生田官房副長官が「広域的に」「限る」という新設条件を手書きで修正したとされるメールが送られたのは、この約10日後のことだ。
だいたい、安倍首相は一貫して「岩盤規制改革をスピード感をもって進めるように、つねに指示してきた」と言い、内閣府の藤原豊審議官も申し合わせたように「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っていること」という発言について「首相はつねづね規制改革全般について『スピード感をもって実現すべきだ』と発言している。関係省庁と議論する際に、こうした首相発言に言及することは十分にある」と説明してきた。ようするに、安倍官邸と内閣府は「国家戦略特区全体の話をしているのに、文科省が勝手に『総理のご意向』などと記載しただけ」と逃げてきたのだ。
だが、常識的に考えて、あからさまな虚偽のメモを官僚が作成するわけがない。今回、発覚した萩生田官房副長官の発言メモは、安倍首相自ら開学時期を設定していた。さらには「加計学園事務局長を文科省に行かせる」とまで言及し、実際、この6日後に両者は面談したという。やはり、獣医学部新設は「岩盤規制改革」などではなく「加計学園のための規制緩和」だったのだ。
それだけではない。NHKは今回、元文科省OBで加計学園の理事を務めていた豊田三郎氏が、2015年11月17日に文科省職員と会った際、このように語っていたことがメール文書として残されていたと報じた。
「安倍総理の留学時代のご学友である現理事長と安倍総理と食事をする仲になった」
「いざ総理が進めた時に、「お友達内閣ですね」と週刊誌などに書かれないように、中身がしっかりしたものにしないと総理に恥をかかせることになるから、ちゃんと学園として構想をしっかりしたものにするよう、私からは言っている」
「総理に恥をかかせてはいけないから中身をしっかりさせろと加計理事長に言っている」──。 この発言は、今治市が国家戦略特区に指定される約1カ月前のもの。つまり、獣医学部新設が「総理マター」として出発していることを示すものだ。しかも、このメールを保管していた文科省現職職員は、顔を隠した上でNHKの取材に応じ、「政治的に事が進められる可能性が高い案件という認識をもっていた職員は多いと思います」と証言。豊田氏は2016年9月6日、加計孝太郎理事長とともに松野博一文科相と面談していたことがわかっているが、こうやって加計学園と文科省を繋ごうとする役割を担っていたのだろう。
圧力をかいくぐって国会閉会後にようやく報道したNHK
しかし、ここまでの証拠をいまNHKが出してきたとは驚きだ。NHKは最初の内部文書をスクープできたのに、肝心の「総理の意向」部分を黒塗りにしてニュース内で消化するという“忖度”報道を行い、翌朝の朝日新聞にスクープを譲ってしまった。さらに、早い段階で前川氏の独占インタビューも収録していたにもかかわらずお蔵入りにしてしまった。取材にあたっていた現場の記者たちは、さぞかし忸怩たる思いを抱えていたことだろう。それが、国会閉会と安倍首相の記者会見を終えたタイミングでこの決定的証拠をようやく出すことができた、というわけだ。
だが、NHKが踏み込んだ新事実を出しても、官邸の姿勢は相変わらず。NHKの取材に萩生田官房副長官は「具体的に総理から開学時期について指示があったとは聞いていませんし、私の方からも文科省に対して指示をしていません」「「加計学園に力を貸すため」に、和泉補佐官や関係省庁と具体的な調整を行いとか、指示を出すことはあり得ません」と事実を否定。「心当たりのない内容が、私の発言・指示として文書・メールに記載されていることについて、非常に理解に苦しむとともに、強い憤りを感じております」とまで述べている。
つまり、萩生田官房副長官は先日の手書き修正指示と同様、「これは文科省の捏造だ!」という反論なのだ。
文科省の証言ラッシュの立役者となった前川氏は「あったものをなかったものにできない」と語ったが、安倍官邸は「あったものは嘘っぱちの改竄文書だ!」という陰謀論しか口にしない。もはや、この姿勢のどちらが信用たり得るか、そんなことは歴然としているだろう。
安倍首相は昨日の記者会見で、「何か指摘があれば、その都度、真摯に説明責任を果たしていく」と言い張った。では、それを実行していただこうではないか。この新証拠に対して「国民に丁寧に説明」するべく閉会中審査に応じなければ、それは「安倍首相はクロ」と決まったも同然だ。 
 
国家戦略特別区域諮問会議

 

議長   安倍晋三 内閣総理大臣
議員   麻生太郎 財務大臣兼副総理
議員   山本幸三 内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革)
議員   菅義偉  内閣官房長官
議員   石原伸晃 内閣府特命担当大臣(経済財政政策)兼経済再生担当大臣
有識者議員 
秋池玲子 ボストンコンサルティンググループ / シニア・パートナー&マネージング・ディレクター
坂根正弘 株式会社小松製作所相談役
坂村健  東京大学大学院情報学環教授
竹中平蔵 東洋大学教授 / 慶應義塾大学名誉教授
八田達夫 アジア成長研究所所長 / 大阪大学社会経済研究所招聘教授 
国家戦略特別区域諮問会議 設置根拠
 国家戦略特別区域法(平成二十五年法律第百七号)《抜粋》
第五章 国家戦略特別区域諮問会議
 (設置)
第二十九条 内閣府に、国家戦略特別区域諮問会議(以下「会議」という。)を置く。
 (所掌事務)
第三十条 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 国家戦略特別区域の指定に関し、第二条第五項に規定する事項を処理すること。
二 国家戦略特別区域基本方針に関し、第五条第三項(同条第六項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理すること。
三 区域方針に関し、第六条第三項(同条第六項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理すること。
四 区域計画の認定に関し、第八条第八項(第九条第二項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理すること。
五 第三十七条第二項に規定する雇用指針に関し、同項に規定する事項を処理すること。
六 前各号に掲げるもののほか、内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、国家戦略特別区域における産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成の推進に関する重要事項について調査審議すること。
七 第一号から前号までに規定する事項に関し、調査審議し、必要があると認めるときは、内閣総理大臣及び関係各大臣に対し、意見を述べること。
 (組織)
第三十一条 会議は、議長及び議員十人以内をもって組織する。
 (議長)
第三十二条 議長は、内閣総理大臣をもって充てる。
2  議長は、会務を総理する。
3  議長に事故があるときは、あらかじめその指名する議員が、その職務を代理する。
 (議員)
第三十三条 議員は、次に掲げる者をもって充てる。
一 内閣官房長官
二 国家戦略特別区域担当大臣
三 前二号に掲げる者のほか、国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者
四 経済社会の構造改革の推進による産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成に関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者
2  議長は、必要があると認めるときは、第三十一条及び前項の規定にかかわらず、同項第一号から第三号までに掲げる議員である国務大臣以外の国務大臣を、議案を限って、議員として、臨時に会議に参加させることができる。
3  第一項第四号に掲げる議員の数は、同項各号に掲げる議員の総数の十分の五未満であってはならない。
4  第一項第四号に掲げる議員は、非常勤とする。
 (議員の任期)
第三十四条 前条第一項第四号に掲げる議員の任期は、二年とする。ただし、補欠の議員の任期は、前任者の残任期間とする。
2  前項の議員は、再任されることができる。
 (資料提出の要求等)
第三十五条 会議は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる。
2  会議は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
 (政令への委任)
第三十六条 この章に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。 
国家戦略特区、選定議員に竹中平蔵教授ら 雇用規制の緩和は進むか 2014/1
竹中平蔵氏が労働規制の緩和について「岩盤規制を崩していく」と述べた――。
政府は、地域を限って大胆な規制緩和などを行う「国家戦略特区」について、具体的な特区の対象地域を決める「国家戦略特区諮問会議」の民間議員に、慶応大学の竹中平蔵教授ら5名を選出した。12月20日の菅義偉官房長官の記者会見で発表した。MSN産経ニュースが報じた。
「竹中氏は政府の産業競争力会議の民間議員を務め、規制緩和推進を強く主張している。戦略特区の作業部会の座長を務めた八田達夫大阪大招聘教授、坂根正弘コマツ相談役、坂村健東大大学院教授、秋池玲子ボストンコンサルティンググループ・パートナー&マネージングディレクターも起用する。」
竹中平蔵氏が規制緩和を進める理由
竹中氏は、小泉内閣でも構造改革を唱え、特区を推進してきた。しかし、第2次安倍内閣になった今、過去の特区がうまく機能していないと竹中氏は指摘。これまでの特区制度に足りない部分を補い、さらなる規制緩和を進めたいとしている。
「自治体側から話を聞くと、やはり今の特区では使い勝手がよくなくて困っている。東京都のヘッドクオーター特区というものがあり、法人税も減免されるような措置はあるが、ヘッドクオーターとしての会社が来てくれない。それは、例えば外国人が来てもその子供を英語で教育する小学校がないなど、仕組みがあっても現実がワークしない状況となっているため。大阪もイノベーションの特区を持っているが、同じようなことに悩んでいる。」
国家戦略特区で規制が緩和される分野は
安倍首相は「世界で一番ビジネスをしやすい環境をつくる」という目標を掲げ、国家戦略特区を設立することを決めた。7日には、国家戦略特別区域法が成立。雇用や教育、農業、医療などの分野で、規制緩和を進める。安倍首相は19日、都内で講演し、来年3月を目途に国家戦略特区具体的な地域を指定すると話した。
特区の案としては、民間企業による公立学校の運営(公設民営学校の設置)や、医学部の新設などが出ている。
「解雇特区」と反対された労働規制の緩和
一方、これまで大きな反対の声が上がっていたのが、雇用に関する規制緩和だ。これはもともと、特区内の基準を満たした事業所について、解雇の要件・手続きを契約条項で明確化したり、休日や深夜労働の労働条件の緩和するというものだった。
報道などで「解雇特区」との指摘を受けたこともあり、批判が殺到。議論をしない状況が続き、成長戦略の柱となる「国家戦略特区」の規制緩和概要には「労働時間法制」と「解雇ルール緩和」を含めることが見送られている。
竹中氏は「解雇の自由化」ではなく、「雇用条件の明確化」であると指摘し、能力の低い経営者が社長に居座れないような制度作りをしたいと反論。理解を求めていた。
「竹中: 「解雇の自由化」なんて誰も言っていないですよ。さっきの新自由主義と同じですよ、誰も言っていないのに、さも言ったかのような幻想をでっち上げて、それでけしからんけしからんと言うんですよ。それでもう1つけしからんのは、それで政治がビビってしまったんですよ。
私たちは「解雇のルールを法文で明確に定めよう」と言ったんです。いまは判例なんですよ。しかも古い判例で、たとえば大きな企業は、「もしもここでリストラをしたら訴えられるかもしれない」という訴訟リスクを感じるんですよ。
田原: それで、訴えられたら負けるんですよ、判例では。
竹中: 負けるかどうかはやってみなければわからないんですが、そもそも訴訟リスクを感じるから、そんなのはイヤだからできないわけですね。ところが一方ではこの判例は曖昧だから、「うちなんかは訴訟なんかされるわけがない」と思っている弱小の企業なんかは、平気でクビを切るわけですよ。訴訟リスクを感じない企業は、平気でクビを切っているんです。むしろそういう場合は、労働者の権利は守られていないんです。
だからそれを明確にしようと言っただけなんです。それを「解雇の自由化をしようとしている」と言って、それでもう、会議全体でそういう議論をするのは避けようということになったんです。」
竹中氏はウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューに答え、今後の労働分野の規制緩和について次のように話している。
「戦略特区法では、労働規制について過去の判例にのっとったガイドラインを設置することになったが、エコノミストらはもっと明確に、できれば法律で担保するよう求めている。竹中氏も同様の見方を示すとともに、「雇用のルールについて、条件付きでできるようになったので半歩くらい前進した。重要なのは特区の枠組みをフルに使って岩盤規制を崩していくこと。いろんな分野でいろんな人に可能性与えてイノベーションにチャレンジしてもらわないといけない。幅広い分野で、ニーズがある部分に緩和をしていく」と語った。」
なお、規制改革会議は12月5日、世界でトップレベルの働き方を実現するためとして、労働時間規制の見直しに関する意見をまとめており、そのなかで、労働時間法制の適用除外制度の基本的な枠組みについて、議論を避けるのではなく、議論を進めるべきと提言している。 
「安倍政権はグローバル企業の奴隷か」 2014/8
安倍政権の成長戦略に盛り込まれた法人税減税、「残業代ゼロ」制度、農業改革、混合診療拡大、水道などの公共サービスの民営化加速──などは、いずれもグローバル企業の利益拡大に結び付くものばかりだ。雇用、健康、安全など生命に深く関わる分野で国民を保護してきた法律を破壊して、新たな市場を形成し、グローバル企業の利益を拡大しようとしている。こうした新自由主義政策の旗を振っているのが、産業競争力会議、国家戦略特区諮問会議、規制改革会議などだ。こうした会議には、グローバル企業の代弁者やそれに連なる財界人たちが多数送り込まれている。産業競争力会議には、秋山咲恵(サキコーポレーション)、岡素之(住友商事)、榊原定征(東レ)、坂根正弘(コマツ)、竹中平蔵(パソナグループ)、新浪剛史(ローソン)、長谷川閑史(武田薬品工業)、三木谷浩史(楽天)が民間議員として名を連ねている。
国家戦略特区諮問会議には、秋池玲子(ボストンコンサルティンググループ)、坂根正弘(小松製作所)、竹中平蔵が民間議員として参加。同会議は、「日本破壊」の尖兵とも批判される、モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社チーフエコノミストのロバート・アラン・フェルドマン氏からもヒアリングしている。
そして、規制改革会議委員には、岡素之、浦野光人(ニチレイ)、金丸恭文(フューチャーアーキテクト)、佐久間総一郎(新日鐵住金)、佐々木かをり(イー・ウーマン)、滝久雄(ぐるなび)が委員として、滝口進(日本メディカルビジネス)、松山幸弘(キヤノングローバル戦略研究所)、小林三喜雄(花王)、圓尾雅則(SMBC日興証券)、北村歩(六星)、田中進(サラダボウル)、松本武(ファーム・アライアンス・マネジメント)、渡邉美衡(カゴメ)が専門委員として名を連ねる。
自社の利益拡大のために、国民を無視して法律を変えようというこの流れに対して、政治家たちは抵抗できないでいる。与野党問わず、新自由主義に毒された国会議員が増殖しているからだ。
ここで注目したいのが、外資系企業出身議員の動きである。
もちろん、彼らがすべて新自由主義路線の推進役を演じているわけではないが、大半の議員が安倍政権の「第三の矢」推進に呼応した政策を掲げている。
外資出身の衆議院議員では、モルガンスタンレー証券出身の小田原潔議員(自民)が「世界で一番企業が活動しやすい国へ」と、仏ソシエテジェネラル信託銀行出身の山田賢司議員(自民)が「世界を相手に稼げる日本を取り戻す」と、さらにボストンコンサルティンググループ・エルメスジャポン出身の山田美樹議員(自民)が「グローバル競争に不利な日本」の克服を訴えている。まさに、「第三の矢」礼賛だ。
日本金融財政研究所所長の菊池英博氏は、マッキンゼー社出身で、現在経済産業相を務める茂木敏充氏(自民)もまた、筋金入りの新自由主義者だと見る。
一方、ゴールドマンサックス証券出身の岡本三成議員(公明)は「TPP参加を見据え、世界に勝てる農業を実現するため、農地制度の緩和や技術革新を積極的に推進します」と、バンクオブアメリカ出身の大熊利昭議員(みんな)は、郵政の完全民営化、電力の完全自由化などを主張している。
外資出身の参議院議員にも、外資の利益に沿った動きが目につく。外資系証券会社を渡り歩いてきた佐藤ゆかり議員(自民)は、郵政解散を受けた2005年の総選挙で、郵政民営化法案造反組の野田聖子氏の「刺客」として出馬した人物。
モルガン・スタンレー証券出身の大久保勉議員(民主)は、フェルドマン氏の元同僚でもあり、日本の金融機関から外資系金融機関に転じた人物が集まる勉強会を開催し、ビジネスに関連する情報を提供していたという。菊池英博氏は次のように指摘する。
「驚いたことに、大久保氏は2007年10月に郵政公社が民営化されるときに、公社が保有している物件のうち、売りに出す物件のリストを持ち歩き、勉強会の参加者に配布していた」
みんなの党は、新自由主義路線を鮮明にしているが、特に外資系企業出身者の主張ははっきりしている。JPモルガン証券出身の中西健治議員(みんな)が、「企業の活力を引き出すために……医療、介護、保育、さらに農業ほか様々な分野での規制緩和を政府がリーダーシップを強力に発揮して速やかに実行するべき」と主張し、アンダーセンコンサルティング出身の山田太郎議員(みんな)が「経済成長の足を引っ張る制度や法律の改廃」を掲げる。
菊池氏は中西議員は郵政民営化に執心していると指摘する。中西議員は3月4日の参院予算委員会で日本郵政前社長の坂篤郎氏が顧問として残っていることを問題視し、坂氏は菅義偉官房長官によって事実上解任された。
政治家と外資系企業の橋渡しも、こうした外資出身議員によって進められていると推測される。
一方、日本の大企業はアメリカ系グローバル企業と利害を共有するようになっている。TPP推進の旗を振るのも、グローバル企業、日米の大企業である。この日米財界一体化の構造は、新自由主義イデオロギーの共有と同時に、資本関係によってより強固なものとなってきた。
年次改革要望書が出されるようになった1994年、対日投資会議が設置され、1996年4月には対日M&Aを歓迎する声明が発表されたのである。本誌8月号で佐々木実氏が指摘したように、2001年にはアメリカの有力シンクタンク外交問題評議会が提言を出し、「アメリカ企業が、日本における企業活動を通じて、構造的な変革を進めるトリガーとなる」と唱えた。
2007年には三角合併が解禁され、シティグループによる日興コーディアルグループの買収など、日本企業の買収が進んだ。
日本企業の外国人持株比率は、1990年代前半には10%に満たなかったが、それから20年を経た今年3月末には約30%にまで拡大しているのである。外国人が株式の過半数を保有している「日本企業」も拡大している。
安倍政権は、「日本の『稼ぐ力』を取り戻す」などと言っているが、日本の大企業の稼ぎは、国民に還元されることなく、外国人株主を潤すことにしかならない。もはや、安倍政権はわが国の国民資産を略奪しようとするグローバル企業の奴隷と化したと言わねばならない。 
国家戦略特区に関する記者ブリーフィング  2017/6
1 日時 平成29年6月13日(火)19:30〜20:52
2 場所 中央合同庁舎8号館1階 S101・S103会見室
3 出席議員 国家戦略特別区域諮問会議有識者議員
 坂根正弘 株式会社小松製作所相談役
 竹中平蔵 東洋大学教授 / 慶應義塾大学名誉教授
 八田達夫 アジア成長研究所所長 / 大阪大学名誉教授
 進行    国家戦略特区ワーキンググループ委員
 原英史   株式会社政策工房代表取締役社長  
○原委員 よろしいでしょうか。時間ですので始めさせていただきたいと思います。国家戦略特区に関する記者ブリーフィングを始めさせていただきます。国家戦略特区のワーキンググループの委員をやっております、原でございます。今日は国家戦略特区諮問会議の民間議員のうち、坂根議員、竹中議員、八田議員に参加いただいています。坂村議員、秋池議員は、今日は御都合がつかないということで、来られていません。今日は獣医学部の新設に関して、認識をしている経過について改めてお話をさせていただくということでやらせていただきたいと思います。最初に、まず八田議員からお願いいたします。
○八田議員 八田でございます。私は諮問会議の民間議員も務めておりますが、同時にワーキンググループの座長もしておりますので、各省庁との交渉過程をつぶさに見てまいりました。その過程を皆様にきちんとお話しすることが必要だと思い、諮問会議のメンバーにお声がけして、こういうミーティングを開かせていただきました。私ども民間議員の連名でつくった文書の御説明をする前に、その前提として一つはっきりさせたいことがあります。大学の学部を新設する際には、まず質を審査することが必要です。その質を審査するのが文科省の大学設置・学校法人審議会、これは設置審と言われているものです。経済学部とか法学部をもし皆さんがつくりたいとお考えになったらば、設置審にかけて、教育・研究の質と会計的なことを審査してもらう必要があります。この審査をパスすれば、設立できるのです。ところが、文科省は、法律によってではなくて告示によって、獣医学部に関しては新設が需給関係を崩す場合には、設置審にかけてはいけないという仕組みにしています。しかも文科省は、需給関係を崩すかどうかという審査もなかなかしない。結局、長いことできなかった。そういう背景がございますので、文科省が、結果的には既存の事業者を守るための参入制限を獣医学部と医学部に対しては特例的にやっているわけです。このことをまずどう見るかということが根本的な問題であります。私ども特区関係者は、これはけしからんことだと思っているというのが大前提です。
それでは、国家戦略特区獣医学部の新設についてお話し申し上げます。
まず第1は、岩盤規制の改革がようやく実現しました。獣医学部は新設提案の内容の適否以前に、およそ新設は一切認めないということにされており、52年間新設がなかった。一方、獣医師の偏在、公務員獣医師の不足、人畜共通感染対策、先端ライフサイエンスの対応などの課題は認識されており、獣医学部新設は民主党政権の時代も含めて長年の懸案でした。口蹄疫や鳥インフルエンザの問題ができて、自治体はきちんとした獣医師さんを持っていなければいけないし、近くに獣医師の研究機関があるということが必要となりました。そういう需要が非常に高まってきたということは、民主党時代でも認識されていました。
獣医学部新設が実現できずに来たのは、他分野の多くの岩盤規制と同様、既得権者が新規参入者を阻んできたためです。既得権者が守り続けてきた分野では、結局、競争力が失われます。この分野でようやく岩盤規制改革が実現したことは評価すべきであります。
第2は、規制改革のプロセスに一点の曇りもないということです。今回の規制改革は、国家戦略特区のプロセスに則って検討し、実現されました。言うまでもなく、この過程で総理からは、獣医学部の新設を特に推薦してほしいというような要請は一切ありませんでした。
この検討の経過ですが、特区のワーキンググループで平成26年7月に新潟の区域会議で獣医学部の新設の提案があったのです。それ以降、かなり頻繁にワーキンググループを開いて、この議論をしました。そして新潟での新設を何とかブレークスルーにして、長年できなかった獣医学部を新設しようという努力をいたしました。したがって、これは「加計ありき」で検討されたなどということは全くございません。
それから、元来こんな参入制限することがおかしいわけですが、しかし、百歩譲って参入制限するとしたら、その根拠となる需給条件を満たしているのかどうかということを説明する義務は文科省にあるわけです。現在参入制限をする根拠を散々このワーキンググループのシリーズで聞いたのですが、文科省は十分な根拠を示せませんでした。この段階で我々は、獣医学部の新設を夏の成長戦略に入れるべきだと考えていました。
すなわち、平成27年6月8日の特区ワーキンググループの議事録から明らかなように、特区ワーキンググループから文部科学省には規制の根拠となる需要の見通し、新たなニーズへの対応の検討などを繰り返し求めたが、結局示されなかったという事実がございます。
この結果、平成27年6月の改訂日本再興戦略(閣議決定)で、まずは検討すべき事項としていわゆる4条件を示した上ではありますが、獣医学部の新設ということが平成27年度内という期限を切って決まったわけです。
私は新潟に関してもっと急ごうということをワーキンググループで発言して、「これはすぐできるでしょう」と、渋っている文科省を急がせています。それは記録で御覧になったらわかると思います。あまりのんびりしないで、できるだけ早く決めていこうというのは私ども全員の総意でした。
それでもなお反対勢力の抵抗が強く、閣議決定の検討期間も過ぎてしまった中、実現に向けて妥協点を探り、平成28年11月の特区諮問会議決定で「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」という限定が付されました。この11月の会議には農水大臣、文科大臣、それから、我が規制改革担当の大臣が皆さん御出席で、これについて意見を述べられ、農水大臣などはこの新しい重点分野があることを考え、この条件というのは必要であるということをはっきりと申されております。
私どものここでの認識は、例えば北陸には1県もないのです。北陸、山陰には全く獣医学部がないのです。鳥取はまだないです。北陸にはないから新潟なんか当然ですし、それから、京都の提案というのは京都府の非常に北部の綾部市が中心でしたから、これも山陰に近いようなところで、私どもの認識としては、全部今まで提案しているものはここの中に入っているというふうに考えていました。しかし、既存のところの近くにできると、既存の獣医学部の人たちはお客さんが取られるから嫌だと考えるということはあり得るかもしれないから、こういう条件を3大臣が飲まれたのはやむを得ないかなと考えております。
さて、その後、獣医師会が1校限定を強く求めてきました。これは12月末だったと思いますが、そのため平成29年1月の内閣府、文部科学省告示では、最終的に1校限定とされることになりました。これは突破口を開く観点から私どもは受け入れ、今治市の区域計画改訂プロセスを進めたわけであります。
第3に、今治市が先行したことは妥当です。まず特区諮問会議民間議員及び特区ワーキンググループは、一貫して1校などと限ることなく、広く門戸を開くべきだという立場でした。これはそれぞれのワーキンググループの会議の議事録を御覧になるとわかりますが、どれもやるべきだと私ども委員は言っております。私どもが思いますのは、今後もさらなる新設に向かって改革を続行するべきだと考えています。
一方、まず1校ということに獣医師会が要請して絞ってきたということならば、長年にわたって構造改革特区の提案を続けてきたこと、これは福田内閣以来、15回提案して全部はねのけられてきた。それから、四国全域で獣医学部が存在せず、感染症の水際対策など、切実なニーズがあることを踏まえて、第一号として今治市が妥当であるということに全く異論はございませんでした。
第4に、プロセスがゆがめられた事実はありません。
以上のとおり、政策判断と決定プロセスは全て正当であり、これが何らかの意向でゆがめられた事実というのはございません。なお、国家戦略特区のプロセスでは、特区諮問会議において要所要所で検討状況を報告し、諮問会議で総理の指示を受けつつ、改革を進めます。このため関係省庁との折衝の際には、このような「総理の指示」に言及することは当たり前です。関係省庁は、省庁の利害ということがあるから、なかなか改革に賛成しないのです。しかし既に総理は諮問会議でこういう方針を示されているのですから、その範囲内でやってくださいよ、検討してくださいよということはしょっちゅうであります。
例えばシルバー人材の開放のことだとか、森林資源のことだとか、鳥獣被害に関する規制緩和など、どこでも、諮問会議における総理の指示でそういう方向性が決まっているのだから、具体案を検討してくださいということをしょっちゅう言っています。
もし反論があるならば諮問会議に大臣がいらしていただいて反対すれば、議事録公開の場所で反論できる。そういう仕組みであります。問題は、ちゃんとそういう論理で反対する肝があるのか。そうするだけの覚悟がちゃんとあるのかということをこちらは言うわけです。したがって、内閣府と文科省の間で非公式に打ち合わせをした際に、同様に総理の指示に言及していたとしても、また閣議決定の検討期間を過ぎた中で早期実現を目指して激しいやりとりをしたとしても、それは何ら不思議なことではないと思います。
それとは別に、総理が特定事業者を優先する意向を示した、あるいは内閣府がそのように文科省に伝えたという根拠は全くありません。私どもの議事録を見ていただければ分かるように、どこの学校もがんがんやりましょうと言っているわけで、そんなことを指示されるはずがない。
第5に、岩盤規制改革を続行すべきです。特区諮問会議民間議員としては、今回の一連の経過によって、今後の岩盤規制改革が阻まれることを強く危惧いたします。岩盤規制改革は更に進めなければなりません。そのためにも事実に基づく正しい議論を進めていただきたいと思います。
○原委員 ありがとうございます。では、次に坂根議員からお願いいたしますが、今日はお声が出づらいとのことで、紙で発言メモも配らせていただいているかと思います。 では、お願いいたします。
○八田議員 坂根議員は熱があるところを押して来られています。
○坂根議員 普段私は声で勝負しているのですけれども、今日は声が出なくてすみません。ただ、どうしてもこれだけは直接お伝えしたいと思いまして、1枚ものの紙を皆さんの机の上に配っております。これを御覧いただきながら少し補足してしゃべりたいと思います。まずは既得権者の論理。前川前事務次官の発言も同様のものと理解しております。新設の必要性は、担当省庁の将来需給見通しをベースにすべきの一点にあるのだと思っております。これが過去40年、50年にわたって医学部、獣医学部の新設を拒否してきた根拠になっているわけです。ですから、そういった人たちの根拠というのは医師の数の過不足、この一点にあるのではないかと思っています。
この需給関係について、私は反論するデータを持っておりません。ただ、40年、50年にわたって需給バランスがうまくとれてきたとはとても信じがたい。実は私は今、「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」の座長を務めておりまして、そちらの議論で出たことですが、実は30年前、バブルの直前ですが、大学の数は500程度だったのが今は777です。30年間で5割以上増えてしまった。こうして大学の数自体が増え過ぎていることが今問題になっているわけですが、一方でこの医学部と獣医学部ですが、それよりもはるか前から1校も追加が認められなかったということは、明らかに異常だと思っております。
ただ、私は問題意識をもっと大きな視点に持っておりまして、欧米では医学部、獣医学部、薬学部にまたがる分野はもちろんですけれども、工学、理学、情報工学との連携で医学分野は先に走っているわけです。一方、日本は産学の間でこの連携が極めて弱くて、医療機器、創薬、そして動物由来の感染症などで欧米に大きく遅れをとってきました。
具体的に言いますと、欧米では医学部、獣医学部出身者が医療機器メーカーや製薬会社へ就職するというのは珍しくないのですが、この国では極めて珍しいことだと言われています。医療の技術というのは、かつてはお医者さんの技術レベルの比重が高かったと思うのですけれども、今や本当に医療機器と創薬、新薬、そして動物研究にかかっています。総合力です。ですから私は審議の過程でも述べておりますが、今治についてもそうです。従来タイプの獣医学部をもしつくろうとされているなら、その考えには私は反対です。52年ぶりに獣医学部をつくるのなら、本当に今言ったような国際競争力を目指すようなものにしていただきたいという条件をつけました。
審議の過程で調べてみたら、加計学園というのは岡山理科大学と千葉科学大学がグループの中にあって、動物関係の学科を既に持っておられます。ただ、そうは言っても私は本当にいい先生をどうやって集めるのか心配がありましたので、そこについての要望はしておきましたが、いずれにしてもさっき八田さんからの説明にもありましたように、私は申請されている3校とも認めてもまだ不足ぐらいだと思っておりましたから、とにかく動物に関わることを、従来タイプの獣医学部にないかたちでやるとおっしゃったので賛成してまいりました。
最後になりますが、私は、今話したことが本質問題だと思っております。したがって、今回の騒ぎはどうしてこんなことになってしまったのかと本当に不思議なのですが、もしここで既得権者の論理がまた守られたとなったとしたら、この国の国益にとってこれほど大きな損はありません。したがって、メディアの皆さんに私から今日直接お願いしようと思ったのは、ぜひそういう最悪の事態にならないよう、本質問題のところだけは御理解いただきたいと思います。私からは以上です。
○原委員 御体調がすぐれないということで、すみませんが、坂根議員への御質問がございましたら先にお願いできますでしょうか。挙手いただいて、社名、お名前をおっしゃっていただいてお願いできればと思います。
○坂根議員 よろしいですか。それでは、すみません、少し体調を崩しているので失礼します。
○原委員 どうもありがとうございました。次に、竹中議員からお願いいたします。
○竹中議員 ありがとうございます。
もう八田議員、坂根議員が、私が申し上げたいことをほとんど言ってくださっているので、簡潔に申し上げますけれども、今回の国家戦略特区での獣医学部新設という一つの政策の判断と決定について、ぜひ3つの観点から評価されるべきだと思います。
まず第1は、大きな政策判断です。獣医学部を52年ぶりにつくるという政策判断は正しいのか、間違っていたのか。これはもう今、坂根議員が非常にパッションを持って語ってくださいましたけれども、これはどう考えても、私はこの話を海外の友人などにすると、52年間獣医学部がつくられていないと言うと、皆さん、うそだろうと必ず言います。そんなことがあり得るのかということをおっしゃいます。特に今、まさにライフサイエンスの新しい展開があって、そして、SARSや鳥インフルエンザのような人間と動物の間の領域の問題が生じていて、そして、これは大臣御自身も答弁しておられたと思いますけれども、獣医学部を出た人が、今、どんどん製薬会社とか医療機器メーカーに就職しているわけです。つまり、そういう新しい展開の中で、今までと同じように犬と猫、牛と馬の治療だけをするような需給の議論をしてきた。それに対して、実は文科省に対して、それは違うでしょうと、もっとライフサイエンスとか新しい動向についての需給見通しをちゃんと出したらどうですかということをワーキンググループで八田先生などが何度も何度も議論したのに、何も出てこなかった。
これはもう実は霞が関の常識からいうと、政策論議に敗れているわけですね。それに基づいて、では新しい獣医学部をつくりましょうということになるわけで、私はやはりこの政策判断はどう考えても間違っていないと思います。一番最初に議論されるべきは、獣医学部を新設するという政策判断が正しいかどうなのかという問題である、これが第1のポイントだと思います。
第2のポイントは、では52年ぶりにつくるというときに、一体何校つくったらいいのでしょうかという判断だと思います。そのときに私たちは、先ほどもお二人の議員がおっしゃったように、これは相当多くつくってもいいよねという印象を当然のことながら持っておりました。そこに、必ずこういう規制改革のときには、いわゆるそれに反対する、抵抗する人々が出てくるわけですけれども、それに対して獣医師会が非常に強く政治的な圧力で迫ってきた。
そこで、とにかく特区で最初のアリの一穴を開けたいという思いで1校にせざるを得なかった。そうではなくて、その1校に絞ったという判断が間違っているというのであるならば、それは私たちも本当はもっとつくりたかったということは申し上げたいと思いますが、こういうふうに圧力をかけたのは、こういうふうに決めたのは、私たち政府の側が決めたのではなくて、獣医師会の非常に強い圧迫、反発があったからだということ。だから、1校でよかったかどうかというのは、そういう点も含めて判断をしなければいけないと思います。
3番目は、では1校にするならばどこなのかということで、その決定のプロセスがどうだったのか。私たちは4条件に照らして、これは四国に獣医学部が一カ所もないということと、これまでの準備の状況から、今治が適切だというふうに、これは全員一致で判断したわけでありますし、なおかつ重要なのは、この政策判断の中で総理自身から特に特別の優遇をしろとか、そういう要請はなかった。いや、そんなことを総理がおっしゃるということは、政策に関わってきた人間の常識としてあり得ないと思います。それが今、議論として残念ながら非常にゆがめられて、国会での一部の議論や、メディアでの一部の議論で、ゆがめられて議論をしている。
結果的に、こういうことが続くと、本当にリスクを負って改革、抵抗勢力と闘って、規制を改革していこうという人たちが、どんどんそのインセンティブを失っていく。そういう状況になることを大変懸念しておられます。まさに坂根議員がおっしゃったように、それは最悪の事態であると。そういう思いで今、見ているわけでございますので、政策判断は正しいか。何校に絞るのが正しかったのか。最終的に今治に指定したということに、そのプロセスの問題があったのか。そういう点で評価をしていただければ、冒頭に八田議員がおっしゃったように、これは一点の曇りもないプロセスであったと理解をしておりますので、その点、何とぞ御理解をいただきたいと思います。以上です。  
質問
○原委員 では、御質問がありましたら、お願いします。あちらの奥の方から。
○記者 事実関係で3点ございます。1点ずつのほうがよろしいでしょうか。まず1点目は、2枚目の3です。平成27年6月30日でしたか、このときの4条件についてですが、石破4条件というような名前もついているらしいですけれども、この4条件は、誰がどのように提案して、文案をつくって、どうやってこの閣議決定に乗ってきたのでしょうか。
○八田議員 これは基本的にはやはり各省協議なのですね。その準備として、文科省は文科省で協議し、農水省は農水省で協議し、私どもも内閣府内部で相談を受けました。でも、根本的にはその条件をつけるのに私はあまりうれしくないほうで、こういう条件はなるべくつけてほしくありませんでした。しかし、獣医学部の新設を盛り込むことが大切だから、折衝の中で来たもので、こういう条件付きならば盛り込めるだろうということで納得したというわけです。
○記者 石破さんの御意向があったということではないのですか。
○八田議員 私には、そこまで最終的な大臣間の折衝のことはよくわかりません。だけれども、再三申しておりますように、私どもとしては、こんな条件はつけるべきではないというのが元来の立場です。政治的にやむを得ないのなら、それはやむを得ず、しようがないかなということです。
○原委員 よろしいですか。ワーキンググループの議論なので、1点だけ補足をさせていただきますと、平成27年6月8日の特区のワーキンググループ、これは公開の議事録でウエブでも出ていますので、議事録を御覧いただきますと、ここでこの文案の議論をしています。この議論の経過も、簡単に申し上げると、文部科学省さんから示された考えをベースにして文案の調整をしたと。なので、文科省さんからたしか文案が示されていたと思いますが、それをベースに検討し、最終的な文案の調整のところは、最後は関係省庁間で、内閣府と文部科学省との間で調整し、最終的にはこれは閣議決定ですから、当然、大臣が決定をして、決めたということであります。
○記者 ありがとうございます。2点目は、4のところで次なのですけれども、平成28年11月の特区諮問会議決定で「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」との限定を付したのは、これは誰がどのように起案して、どのように話し合いがされて、ここで限定が付されたのでしょうか。
○八田議員 これは基本的には3大臣の中で決められたわけです。最後、諮問会議に出されたこの案を最初に提示されたのは、山本大臣だったと理解しています。山本大臣はその前にワーキンググループのサジェスチョンを聞いてくださいました。
○記者 補足はよろしいですか。
○原委員 はい。
○記者 ごめんなさい、最後です。いただいたものの3ページ目、4、中ポツの2つ目の一番下のほうで、「したがって、内閣府と文部科学省で非公式に打ち合わせをした際に」から「何ら不思議なことではない」という4行がございますけれども、これは事実としてここに書かれているのでしょうか。それとも、これは、もしこういうことがあってもという趣旨で書かれているのでしょうか。
○原委員 今、非公式の打ち合わせでどんな発言があったのかということについては、証拠を私たちは持ち合わせておりませんので、それについては言及できませんけれども、その前後になされている特区のワーキンググループの議事録、これも全て公開されていますので、御覧いただければ、そこに枕言葉のようにこの総理指示と、総理の指示があるので早く議論してほしいということをいろいろな人たちが言っています。これは今、いろいろと出てこられている藤原審議官も言われていますし、ほかの人が言っているケースもあると思います。そういった形で総理の指示というのはしばしば言及されていますので、非公式な協議の中でこういったことが言及されていても、何ら不思議ではないということを申し上げているということだと理解しています。
○記者 ありがとうございました。
○八田議員 ちょっと補足しますと、一般的に我々の特区で決めることは、やはりスピードが肝心だと思っているのです。何でも延び延びにしていたら、申請した全ての人にとって非常にコストがかかりますから、急ぐということは肝心です。そのために、諮問会議でいつまでにというふうに決めて、総理の指示がここにあるからちゃんとこれまでにやってくれなければ困るということを言って急がせる、その場合が非常に多いです。
○原委員 よろしいですか。では、そちらの2番目の方。
○記者 先ほどの八田座長のお話でありましたけれども、ワーキンググループのサジェスチョンというお話なのですが、これは具体的にどういう内容で、どういう経過をたどって、このサジェスチョンというのは大臣に伝えられたのでしょうか。
○八田議員 医学部のときの経過を考えると、獣医師会も、何らかの限定を要求してくるかもしれない。おそらくほかの大臣、ほかの省庁も納得できるような範囲でそういう要求をかわせる条件はないだろうかということを探りました。それで、私が申し上げたのは、既存の獣医学部は、近くに獣医学部ができるのは需給関係からすごく嫌がるでしょうから、「近くにない」ということが一つの考え方になるのではないでしょうかということを申し上げたということです。
○原委員 若干補足を申し上げてよろしいですか。この特区のワーキンググループの委員から示唆をした際に、私も御相談にあずかっておりましたが、そのときに申し上げましたのは、一つには、獣医師の地域的な偏在の問題というのは長く認識をされていて、これは過去の政権の時代からそういった認識はあったわけです。また、最近の特区ワーキンググループの議論、これも議事録を見ていただければ出てきますけれども、文部科学省の方も、地域的な偏在の問題についてどう対応していくのかというのは検討課題であるということは認めていらっしゃったということであります。それが一つ。もう一つは、感染症対策、水際対策を考えたときに、周辺に一つも獣医学部がないというのは大きな問題になるという切実な御提案も私たちは受けておりました。そういったことを考えたときに、まさに今、八田座長が言われたように、近くに獣医学部のない地域では、やはりニーズがとりわけ高いのでしょうと。一方で、これは反対されている方々と合意形成をしていく中で、そういった地域に限定をするということであれば、これは合意がなされやすいのではないかということで、この広域的に存在しない地域に限りという限定を示唆したということであります。
○記者 もう一度八田座長にお願いしたいのですけれども、先ほど獣医師会の反発が念頭にあったということですが、これはやはり政治的な判断が必要だということで皆さん方から考えられて、大臣に提案をされたということでしょうか。
○八田議員 例えば養父市で株式会社が農地を保有できるようにしたのです。元来、特区で決めたことは、あるところで決まったら、特区全部どこでも適用できるはずのものなのです。ところが農地の場合には養父に限るということが政治的な交渉の結果、決まってしまった。我々としてはどうしようもないのです。ではそれを蹴るかというと、それよりはやはり穴を開けるべきではないかと。それから、医学部です。医学部も成田になったのですが、私が思うには、結局は質さえきちんとしていれば、特区の中ではどこでつくってもいいと思うのですが、成田に限定するということになってしまったのです。似たような状況が予想されましたので、それならばそのように極端な限定がされないような妥協策を提案しようと、そういうことが動機でした。
○原委員 どうぞ。
○記者 もう一つ関連でお願いします。今、限定されることでというような話がありましたけれども、限定されると、結果的に既得権益の方々が1学園増えてしまうだけになるのではないかというような指摘もあると思うのですが、皆さん方としては、2003年の告示のそもそもの撤廃、このほうを今後、検討していく考えというのはあるのでしょうか。
○八田議員 当然だと思います。おっしゃるとおりだと思います。医学部や獣医学部の新設を認めない告示そのものを撤廃すべきだと思います。この議論が出てきたのはうれしい。それが事の根幹なのですから、この告示そのものが問題なのです。ただ、規制改革推進会議と違って、うちは特区だから、とにかく穴を開けるというところでやりますけれども、しかし、特区だけでもどこでもやれるようになれば大したことです。
○原委員 1点だけ補足をさせていただきますと、これも特区のワーキンググループの議事録を御覧いただけると出ていまして、まさにその議論をやっています。この資料の2ページの2のところで書いてあるように、合理的な根拠を示されていないので、告示で新設を規制することについての根拠を示せないのであれば、告示の廃止をすべきではないかということを明示的に議論しています。ただ、その議論が前進しないのであれば、特区に限定をして、条件を付して、何とか前進をさせていこうということで、この3以降の議論をやってきたという経過であります。では、次をお願いします。
○記者 「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」という条件が加わった点について、ちょっと補足で八田議員にお伺いしたいのですけれども、平成27年6月5日の今治へのヒアリングでは、かなり八田さんは否定的な意見で、今治につくっても仕方がないのではないかと、実際に奨学金を出したり、愛媛県庁がちゃんとした待遇でそういった公務員を雇えばいいのではないかというような意見を述べていらっしゃいます。11月9日の諮問会議で、有識者議員の方が規制改革事項についてのペーパーを出していらっしゃいますが、そこにも特に、広域的な空白地域限定を考慮したほうがいいのではという文言は全く入っていません。この時点で、新潟市に関しては言えば、ほとんど、一回提案した後、全く具体的な議論は進んでいなくて、この時点では京都産業大学と加計学園だけだったと思うのですけれども、この2校認めてはもたないというふうに判断されたのは、何らかの政治的判断があったのでしょうか。なぜそう判断したのか、事務局である内閣府からはどのような説明を受けたのかを教えていただけますでしょうか。
○八田議員 まず、1校に限定したのは私どもではありません。これはあくまで獣医師会のほうです。私どもは終始一貫、限定しないことを主張し続けてきました。今、私が今治の最初のヒアリングでかなり厳しいコメントをしているではないかとおっしゃった。これはある意味で加計学園ありきではないことの証拠です。実は私どものワーキングに来る自治体は、とにかく岩盤規制を突破してもらいたいわけですね。そうすると、そこで説明をきちんとできるように宿題を与えるということはしょっちゅうです。厳しいコメントをして、こういうことを恐らく文科省から聞かれるようになるから、そういうことはちゃんと大丈夫ですねという意味で、非常に厳しく言う。その後で、今治市の場合は、後に今治市分科会で加戸さんという商工会議所の特別顧問が非常に周到な説明をされました。私どもの疑問に対しても答えた説明をされましたので、それで宿題に答えてくれたなと私は思っています。
○原委員 よろしいですか。
○記者 1校に限るという文言が入ったのは、国会での説明では、獣医師会での要請を受けてというふうに総理も説明しています。ただ、この時点で広域的に獣医師養成大学の存在しない地域に限りという文言を入れるということは、京都産業大学をはじいてしまうことにつながると思うのですが、そういう認識はあったのでしょうか。
○八田議員 それは先ほど申し上げましたように、ありませんでした。そこら辺は多少化かし合いの面はあるかもしれないけれども、ちゃんと決まれば、これも全部解釈できるように、ちゃんと用意していました。要するに、向こうは何らかの形で限定してほしいわけです。だから、一応限定しました。先ほど原委員がおっしゃったように、感染病対策のようなこともあるし、私が先ほど申し上げたように近隣と競争にならないということもある。しかし、3地域とも全部きちんと広域的に大丈夫だということを考えていました。まず、新潟は大丈夫でしょう。京都もよく御覧になれば、あそこで提案しているのは京都の非常に北部のところです。綾部市です。そして、すぐそばに競争相手なんてないですから。そういうことです。
○原委員 確認ですけれども、1校に限定したのは、この資料で言うと5番の段階で1校に限定したのであって、「広域的に」の段階では1校に限定するなどという議論は全くしていないということであったと思います。
○記者 今までの国会での審議では、藤原審議官が総理の意向などとは言ったことがないであったり、あるいは文科省側もそういう正式なやりとりであればきちんと文書がこういうようにあると発表すればよかったものを、ないと最初に言ってみたり、藤原さんも原さんの御説明と違って、総理の指示とか意向ということを言ったことがないと国会では説明しているわけですね。そういう説明に対して、今日のこのような説明であれば、国民とか私たちメディアも納得する部分もあるかと思うのですが、そういう実際に携わった人たちが隠すような傾向であることについては、逆に議論の中にいた皆さんからはどう写っていらっしゃるのかなと思いました。
○八田議員 まず、私は、国会の流れたものを全部フォローしているわけではありませんが、総理がここにしろという形で指示されたことは一切ないと確信を持って言えます。恐らく藤原審議官もそういう気持ちで言っているのではないかと思います。それが第1点です。もう一つは、私の言う範囲を超えているかもしれないけれども、要するに、違法に出てきた文書かもしれない。元来役人が出してはいけない文書に正当性を与えるというようなことをしたくないと政府が考えたとしたら、それは私はわかる気がします。だから、もし正々堂々と秘密でも何でもないものが出てきたら、それは調べればいいと思いますけれどもね。これは全くの私の個人的な感想です。
○竹中議員 私も藤原審議官の答弁、全部フォローしているわけではありませんけれども、恐らく質問に対して意図を感じて、それで答弁をするものだと思うのです。つまり、それは、総理が加計学園とか今治に対して特別の指示を与えたのかということに対しては、総理の意向とか、そういうことは一切ないと、その答弁を繰り返し繰り返し審議官はしておられたのだと思います。これは私もいろいろな経験がありますけれども、こういう問題に対しては、非常にスペシフィックなことに対する総理の指示なのか、一般的な岩盤規制を突破しろという総理の指示なのか、そこは私たちも使い分けるのだと思うのです。岩盤規制を突破しろというのは総理の指示であって、岩盤規制の典型は何かというと、獣医学部の新設だというのは、これは誰でもわかっている話なので、その意味では、実はいろいろなワーキンググループもそうですけれども、私たちはほとんど枕言葉のように、岩盤規制の典型は獣医学部で、だから、岩盤規制を突破するのは総理の意向だからと、そのような、いわゆるスペシフィックな指示というのではなくて、ゼネラルな指示としてそういう言葉を使います。そういうニュアンスの差をぜひ御理解をいただきたいと思います。
○原委員 あまり加えることはございませんけれども、私も国会での答弁は幾つか見ましたが、藤原審議官が答弁をしているのは、プロセスをゆがめるような意味での総理の特定の意向が示されたことはないし、そういった意向があったと文部科学省に伝えたこともないということを答弁しているのだと思います。ゼネラルな一般的な意味での総理の指示を受けて、この特区のプロセス全体が進んでいるということは自明でありますので、それは当然否定していないと思います。
○記者 先ほどのサジェスチョンの議論の中で出てきたことなのですけれども、有識者議員の皆さんから大臣に対するサジェスチョンの中で、広域的な限定についてサジェスチョンをされた。その際に、広域的という条件以外に何か示唆をされた条件というものはあったのでしょうか。
○八田議員 そんなに何もかも詳しくお話ししたわけではありません。とにかく、過去の養父の例、医学部の例から見ると、いろいろ限定してということを言うから、それはあまり厳しく限定される前に、こちらからある程度言って広く解釈できるようにする。ただし、今、提案されているものは受け入れるようにするということにしてはどうでしょうかということでした。
○記者 もう一点、示していただいた資料の3ページ目の4項目ですけれども、最後のほうに、総理が特定事業者を優先する意向を示した、あるいは、内閣府がそのように文科省に伝えたという根拠はないと書いていただいていますが、この「根拠はない」ということはどういったことを意味されているのか、改めて御説明いただけますでしょうか。
○八田議員 文字どおり、私どもは一切知りません。こういうことを伝えたという事実を私どもは一切知らないと。
○記者 そういった事実を耳にされたことはないということですね。わかりました。
○八田議員 実際、そんなリスクを負ってやらないと思いますよ。
○記者 2点お願いします。1点目は、開学時期が平成30年4月というのが、たしか11月のパブリックコメントで初めて入ったと思うのですけれども、それはどういう形で決まったのかというのは、諮問会議とかワーキンググループの議事要旨ではうかがえなかったものですから、そのあたり、どう決まったのかというところをまずお伺いさせていただけますでしょうか。
○原委員 これはワーキンググループの委員とも協議をしながら決めていますけれども、私たちはこういった議論をするときに、できるだけ早く改革が実現するようにするというのは当然であります。先ほど八田座長も言われたように、過去の議論の中でも、平成27年の段階での議論だったと思いますが、もっと早い段階で開学できるようなスケジュールで改革を進めるべきだという議論をやっていました。その前提で考えたときに、昨年の11月、12月のタイミングですので、平成30年4月というのは、最速なのか、少なくともそれぐらいはできるのではないかということで示したスケジュールだと考えています。
○八田議員 平成27年2月3日のワーキングで、私が「新潟に関しては今すぐ決めてしまいましょう」と発言しています。文科省のほうが、最短でも平成28年の4月開学は難しいですねと言ったのですが、私は、「それでは、平成29年ですね」と言っているのです。ですから、本当に全てに関して私どもは急ごうと。これで時間を無駄にするのはばかばかしいというのは特区における全ての改革項目に関しての共通のことですから、これも全くその一環です。
○記者 もう一点なのですけれども、先ほど1校限定とか、先ほどの開学30年のことでもいいのですが、結構京都からすると重要な要素、つまり自分たちが提案できるかどうかの重要な要素だったと思うのですが、その2点の議論について、先ほど中では考えられていたというお話ですけれども、表のワーキンググループとか諮問会議ではその議論がされていないのです。そういうことからすると、政策プロセスの妥当性とかとおっしゃいますけれども、なかなか透明性という意味で、なぜ、どこで、どうやって決まったのかというのが外から見えにくいので、そのあたり、そのプロセスが問題ないとおっしゃいましたが、そこの透明性という意味で問題なかったということは疑問なのですけれども、そのあたりの見解をお教えいただけますか。
○原委員 特区諮問会議での議論、それから、区域会議での議論も、これは全て議事録を公開していますので、通常の政策決定プロセスに比べて極めて透明性の高い議論で決定してきていると思います。ただ、その平成30年の4月にすべきだと、そこの局面だけに限って言えば、その議論の議事録が出ていないということを言われているのかもしれないですけれども、それはもうほかの規制改革項目についても全てできるだけ早く実現をしていきましょうということを常に議論している中でやっているわけです。それで、公募をする中で平成30年4月という日時を示したということについて、何ら私たちは違和感がない。
○記者 では、1校に関してということも結構重要な要素だと思うのですけれども、それは結局一度もなくて、突然1月4日に告示が出て、そこに明記されていて、それについても何ら表の公開された資料からはうかがえないのですけれども。
○八田議員 最終的には政治決断ですよ。私どもは相談を受けましたけれども、これは飲まなければしょうがないということで受けましたが、これは山本大臣が決断されたのですよ。これは飲まなかったら恐らくできなかったのではないかと思いますがね。
○原委員 獣医師会さんが1校に限定すべきであるという御要望をされたこと自体は、これはもう資料もありますので御覧になることができると思いますけれども、もしその獣医師会の方々が、役所やいろいろな国会議員の方々も回られたと思いますが、そういった議事録を全て公開するということを獣医師会の方がされるのであれば、ぜひしていただけるとよろしいのではないでしょうか。そうすると明らかになると思います。
○八田議員 だから、文科省も獣医師会や何かといろいろ交渉していると思うのですけれども、そちらの資料も全部出してくれればいいと思います。政治的な折衝には非常に不透明な部分があるのです。我々はできるだけ透明にしているのですけれども、残るところで不透明なところがある。それをこれから日本のシステムとして、政治のプロセスをどこまで透明にしていくかというのは、これは一つの大きな課題であると思います。
○記者 4条件についてお伺いしたいのですが、加計学園の計画というのは4条件を満たしていると思われますか。
○八田議員 当然思いますし、それは3大臣が満たしていると納得されたわけですね。
○記者 その根拠は議員の皆さん、どのようにお考えなのかと。つまり、国会審議を見ていても明確なエビデンス的なものは示されない中で、実際満たされているのかどうかというのはまだ疑問符がついたままだと思うのです。
○八田議員 まず、条件というのは元来つけるべきではないのですが、閣議決定でついたわけですね。それに対して3大臣が納得されたわけですね。私どもはもともと全部やりたいわけですから。
○記者 そういう議論ではなくて、その4つについてどういう形で満たしているのかという御認識をお聞きしているのです。
○八田議員 それは当然全部満たしているわけで、向こうが満たしていないのならば満たしていないと言うべきです。私どもはもともと全部やりたいわけですから。
○記者 つまり、先生方はどのように満たしているのか具体的に御存じないということですか。
○八田議員 基本的に説明責任は、そういう規制をつくっている農水省や文科省の側にあると思います。そちらがオーケーと言ったら、それでオーケーだと思います。
○記者 どのようにそれが満たされたかというのは御存じなのでしょうか。
○八田議員 もちろん知っていますけれども、これにはいろいろな判断がありますね。それが当該の大臣がオーケーであると言っているのに、我々がそれはだめですと言うわけはないではないですか。しかも、我々は全部通したい側なのですから。
○原委員 4条件に関しては、これは内閣府と文部科学省と農水省と、3つの省でそれぞれ検討したということだと思いますけれども、内閣府での検討過程に当たっては、このワーキンググループでも一緒になって検討しています。既存の獣医師養成でない構想であること、具体的に新たなニーズについての需要があること、既存の大学・学部では対応が困難といったようなことについては、これは今治の提案だけではなく、京都、新潟の提案についても、いずれもそういった構想、必要性が示されていたということだと思っています。4条件というのは、これは特定の地域の構想が満たすといったことというよりは、この4つの留意点が検討されたときに、具体的にこの規制改革を進めていきましょうという規制改革を進めることについての留意点でありますので、それが当然満たされたということで、私たちはこの11月に一歩進めたということであります。
○竹中議員 まず、ワーキンググループで具体的な提案を精査してもらっています。私はワーキンググループのメンバーではありませんが、これは本当にワーキンググループの人は大変で、八田先生や原さんがそれを精査してくれて、4条件については具体的なことまでは覚えていませんけれども、先方からいろいろな説明が出てきていますので、それが説得的であるということでワーキンググループが判断して、その報告を受けて、諮問会議で我々もそれでやりましょうということになっているわけです。若干勘違いをしていただきたくないのは、具体的に大学を設置するかどうかのクオリティーのチェックは、これは設置審でなされるわけですね。設置審で詳細についての議論はなされますでしょうから、私たちはその前提としての、このプロジェクトがその設置審で議論していただくに値するかどうかを判断する。そこは諮問会議ではやっておりますけれども、それについては設置審で今日も多分文科副大臣が答弁していると思いますが、設置審でしっかりとなされるということだと思います。これは当然のことながら、厳密にものすごく細かい経営判断を特区諮問会議でできるわけではありませんから、その方向として示されたものがそれに則っているかどうかをチェックして、それに関しては、今治だけではなくてほかのものについても満たしているところはあったし、その意味で八田さんがおっしゃったように、本当はたくさん認めたかった。そういう内容でぜひ御理解をいただきたいと思います。
○記者 需給動向に関してはなかなか明示されなかったという経緯があって、それに関連すると、国会審議の中でも4条件をしっかり満たしているのかというので明確な答弁が出ていないのですが、その現状についてはどのように考えますか。
○原委員 ワーキンググループでの議論を先に御紹介いたしますと、これも公開されている議事録で御覧いただければ全部出ているのですが、需給の見通し、示してくださいということを私たちは文部科学省に対して再三求めているのです。これは平成26年以降、何回も何回も求めていて、およそ新設を一切認めないという規制をするだけの合理性のある需要の見通しというものがあるのですかということは繰り返し聞いていますが、これは合理的なお答えは出てこなかったということです。それから、新しいニーズが出てきている中で、本当に新しいニーズ、ライフサイエンスの分野であったり、水際対策であったり、そういった新しいニーズに対応するために、現状の獣医学部で応え切れているのでしょうかということについても繰り返し伺っています。これもワーキンググループの議事録に載っていますが、そういった分野に、今、獣医学部を卒業された方がどれぐらい行っていらっしゃるのですかということも聞いているのですが、それに対してはお答えがなかったのです。そういった中で、需要の動向を考えても、新たな需要があって獣医学部を新設されたいという自治体、昨日今日言われたわけではなくて長年にわたってそう言われているわけです。その中で、需要は十分にあるのではないかという判断をしているわけです。
○記者 自治体からの要望をもって、需要があるという判断をされているということですか。
○原委員 需要の判断については、先ほども申し上げましたけれども、新しいライフサイエンスであったり、水際対策であったり、こういった新しいニーズが出ていることは間違いないわけです。それから、地域で偏在をしていて、地域によっては足りていないところがあるということも、これも農水大臣も認めていらっしゃるし、民主党政権の前の政権のときですけれども、過去の文部科学省の副大臣も認めていらっしゃることであって、そういった中で、当然獣医師の需要があるということは共通の認識になっていたのだと思っています。
○記者 それは、何がどれくらいあるかという詳しい具体的なデータまではないのですか。
○原委員 これも規制改革の一般論で、規制をすることについての根拠は担当する役所が示していただかないといけないのです。こちらが何か全てデータをそろえないと規制改革が進まないなどということをやったら、およそ全ての規制改革が一歩も進みません。
○竹中議員 一般論として言うと、どちらに立証責任があるのかということだと思うのです。立証責任は、本来私たちの社会は原則自由なはずで、それを獣医学に関しては文科省が規制をしていた。規制をするのだから特別の理由があるのでしょうと。特別の利用として、実は需給の問題があるのだったら新しい問題を考慮していないのではないですかとか、その説明責任はあなたたちにあるのではないですかという交渉をワーキンググループは文科省としていたということだと思います。これはもう立証責任がどちらにあるかという問題だと思います。
○原委員 まだ質問をされていない方、されていなかったですね。あちらの奥の方と、その後、一番後ろの方に行ってまたこちらです。
○記者 3点ほどございます。先ほどから情報公開という点で御指摘をいただいているのですけれども、実際、今治市と京都府に絡むワーキンググループの議事録、これは皆さん、議事録とおっしゃっていましたが、議事要旨というものになるかと思うのですが、議事要旨と配付資料について、速やかに開示あるいは公表されてはいないという事実があるかと思います。これの理由をまずはお聞かせください。
○八田議員 開示については、いろいろな場合に、特に申請者の要望に従って、すぐには開示しないということはあります。いずれは必ず開示しますけれどもね。今治市のときには申請者の要望で開示していなかったのです。あとは次に出てきたところも、公平性を保つために、この件が全部終わるまでは開示しない。そういうことにしました。
○記者 関連してなのですけれども、今治市が公表を希望されなかった理由はどういう理由なのですか。
○八田議員 私が今、記憶するところで、いろいろな事業者は、新規の事業者が提案をしているときには、なるべくそのアイデアがとられるのを嫌がる場合もあるし、この場合などはざっくばらんに私が考えを批判しているわけです。そのかわりにちゃんとそれによって宿題を考えてきてくださいと。そういう種類のものだからという側面があります。
○原委員 決定プロセスの段階で開示をしないというのは、この件に限らず多くの場合に一般的になされています。
○記者 今回、いろいろ誤解を世間に生じさせているための釈明といいますか、いろいろこういうプロセスを、この会見の場がある意味持っているのかと思うのですけれども、内閣府側に対して、これまで皆さんも職員の方と接してこられていることが多かったかと思うのですが、要は、今治市の方と会ったか、会わないか。そういったことも、国会の答弁を見ても確認できないというような、こういう言い方をされていることについて、どのようにお感じになっていますか。
○八田議員 話がえらく細かいところにいっているけれども、全体の見通しから言ったら、既得権を守りたい人たちが文科省の後ろにいて、とんでもない規制を今までやってきたわけです。それを突き破ることが必要で、そのプロセスにおいて、できるだけ透明な形で、全ての申請したところに対してできるようにしようというのが、私どもの一貫した態度だったということは明らかだと思うのです。それに対して既得権者たちが制限していこうというのが、もともとの4条件だってそうですね。やはりこれまでそういう制限で利益を得ていた人たちが、あるいは文科省がそういうことを望んでいたわけで、そこの構図をまずは見ていただきたい。今までの規制を突き破るという我々の動きに対して、何らかのいろいろと細かいところで問題があったのではないかというようなことを言うことは、結局は利権を持っている人たちを利することになると思うのです。方向性としては、先ほどの方もおっしゃったように、全部認めていく方向に行こうではないかと。全部がきついのなら、少なくとも特区ではどこでもいいというような形で認めていこうではないかというような方向の議論をぜひしていただきたい。細かいところで揚げ足をとるのは、結局、最後は日本の利権集団を利させるだけのことになってしまうから、それだけはよしたいと思います。
○記者 最後になりますが、最終的に獣医学会の方、抵抗する勢力とされるところを呼んで話を聞くような機会は持たれなかったのですか。
○八田議員 抵抗勢力の意を正式な場で反映するのは、結局は農水省なり文科省です。別に利権を欲しい人たちに、競争相手が出てくるのは嫌ですと言わせても意味がないわけで、ちゃんとそれなりの理屈、それなりの根拠があるのですというのを農水省なり文科省がちゃんと聞いてきてこちらに持ってくるというのが筋だと思いますから、我々は役所と交渉しています。
○記者 そういう意味で、最終的に1校のみというところは飲んだということになるのですね。
○八田議員 飲んだというよりは、何もないよりはいいでしょうという話です。突破口として、少なくとも養父の農地の話や成田の医学部のように、とにかくどこかでつくらなければいけないわけです。正直言って悔しかったのですが、しようがないでしょう。どこかでまずは一発やって、後で次から次にそれを広げていこうということです。
だけれども、こういうことがあったから、これを機会に2発、3発すぐにつくっていこうという方向で我々は動くべきだと思うし、メディアの方もぜひそういうことを御支援いただきたいと思います。
○記者 ありがとうございました。
○原委員 奥の方が先にいらっしゃったと思います。
○記者 需要ということなのですけれども、平成27年6月のワーキンググループの議事要旨の中で、文科省だけではなくて農水省の藁田課長もこの4条件に関して、基本的に需要は足りていると。これから足りなくなるということは考えにくいということを繰り返しおっしゃっていたと思うのですが、これについては、どのように判断されたのでしょうか。
○原委員 前後の議事録も御覧いただければいいと思いますけれども、既存のペットの数とか家畜の数が減っていますということだけではなくて、先ほどから繰り返し申し上げていますが、新しいライフサイエンスであったり新しい感染症が出てきて、それに対しての水際対策のための公務員獣医師の必要性で、そこは人が足りていないという問題があるという中で、そこの需要をどう考えるのですかという議論を私たちはずっとしているのです。そこは先ほど来申し上げているとおりです。
○記者 それについての、既存の体制の中で対応できていますという趣旨の答弁を農水省がされているかと思うのですが、そこはどうなのでしょうか。
○原委員 そこも議事要旨で御覧いただければと思いますけれども、対応していますと言われるのですが、では、具体的にどれだけの人数が獣医学部を卒業した人でそういった新しい分野に就かれて、実際にニーズを満たしていると言えるのですかということに対してはお答えがなく、現実に、一方で足りていないと言われている方々、御指摘はたくさんある。それは決して一部の方が言われているということではなくて、責任のある立場である農水省や文部科学省の幹部の方々もこれまで長年にわたって認められてきたことであるということだと思っています。
よろしいですか。では、そちらから。
○記者 2点あります。1点目が今の需要の関連ですけれども、新たなニーズと言われるライフサイエンスや水際対策は創薬や公衆衛生の分野ですが、基本的には厚生労働省が担当だと思うのですが、ワーキングのヒアリングに厚生労働省の担当者が呼ばれたことはないと思います。この点、厚労省の担当者を呼ばないことは、議論として不完全ではないのでしょうか。
○原委員 私たちは、御担当ということでは文部科学省と農林水産省に必要なときには出てきていただいていますけれども、必要があれば厚生労働省と相談はしてきていただいたものではないかと思っています。
○記者 そのニーズを示すのは、本来でしたら厚労省が担当ということではそうだと思うのですが、なぜ呼ばれなかったのでしょうか。
○原委員 そうではなくて、私たちは、基本的にニーズを示すべきは文部科学省であるという理解でずっと一貫して議論しています。
○記者 文部科学省は、その2つのニーズに関しては、小動物獣医師と産業動物獣医師については農水省、その他のライフサイエンスは厚労省という説明をしていますが、そこも文科省が説明しなければいけないということでしょうか。
○竹中議員 獣医学部についてはそうです。
○原委員 繰り返しですけれども、獣医学部についての規制を設けられているのは文部科学省ですから、規制を設けられている理由を示すのは文部科学省である。一義的にはそういう前提でずっと議論しているのです。農水省もぜひ呼んでほしいというお話もあったので、農水省もお呼びをしたということだと記憶しています。
○記者 2点目なのですけれども、先ほど八田さんが議事要旨の公表について、京都については公平性を保つために開示をしませんでしたと発言されました。私たちの取材では、京都府も京都産業大もこのワーキングのヒアリングの最初に、今回のヒアリングの内容は速やかに公表しますがよろしいですかという確認をしていると聞かれて、大丈夫と答えたと聞いています。その場合、公平性を保つために開示しませんという方針が最初から決まっているのでしたら、そのように速やかに公表しますがいいですかと確認をしなくてもいいのではないでしょうか。
○八田議員 速やかに公表しますとは聞いていないと思います。公表しますと聞いています。これは一斉に公表するつもりですからね。場合によっては、全く公表しないものもあるのです。本当にセンシティブな業界のことだとかいうようなことがあるときには、公開しない場合もあるのです。この場合、速やかにとは言っていないと思います。
○記者 今回の例に関して言えば、かなりセンシティブな内容、例えば特許にかかわるようなものが含まれているかというと、そうではないと思います。では、片方が嫌だと言ったから公表しなくて、もう一方も公平性を保つために公表しないという例はほかにもあるのでしょうか。
○八田議員 無数にいろいろなことがあるから私もよくわかりませんが、この場合、一応全部決まるのは目前ですから、決まったら全部公表する。そういうことを考えていました。
○原委員 時間が切れております。あと1問でお願いいたします。
○記者 情報公開の今の観点で関連の質問なのですけれども。私たちは3月10日に京都府を取材しまして、ヒアリングで提出した参考資料があるのですという話がありました、内閣府のホームページをチェックするとどうもアップされていないので、3月13日に内閣府へ京都の資料が何でアップされていないのかということを質問したら、ただいま可及的速やかに用意していますというような回答がありました。その後、16日に今度は京都府から連絡がありまして、ホームページにアップされましたとわざわざ御丁寧に教えてもらえたのですけれども、詳しく話を聞くと3月13日の週になってから、内閣府のほうから、ホームページにアップするから内容を確認してくれという問い合わせの電話があったと説明しておりました。こういう経緯を考えると、可及的速やかにアップしたと内閣府でも話しているのですけれども、これは我々の取材があったからオープンにしたのではないかととれてしまうのですが、いかがでしょうか。
○原委員 私もその経過は聞いていたと思いますが、取材があったからとかそんな話では全くなかったと思いますし、たまたまタイミングが合ったのではありませんでしょうか。
○八田議員 これをずっと非公開にするということはないです。必ず公開するわけですからね。どういう手違いがあったのかはちょっと聞いてみますけれどもね。
○記者 たまたまそのタイミングだったということでよろしいでしょうか。
○原委員 はい。
○八田議員 とにかくくれぐれも既得権側には立たないように、これは獣医学のことだけではないのです。現在の騒ぎでは、全官庁がこれはほっとしていると思います。これでいろいろ規制改革をやらされるプレッシャーがなくなると。これは「総理が言っているから改革しろ」という圧力が無くなるならというので、大喜びで追従していると思うのです。それだけは阻止しなければいけないから、先ほどの方がおっしゃったように、これを機会に、京都も含めてとにかく全部やるようにしようということをぜひメディアの方は訴えていただきたいと思います。
○記者 最後に、具体的なアクションは、今、何か考えていらっしゃるのでしょうか。2発目、3発目に向けた具体的なアクションです。
○八田議員 やりたいですね。政治家の方たちの考えはわかりません。しかし、特区はすごくよくできた仕組みで、担当大臣が反対されても、諮問会議の議員は総理の前でこれをやるべきだということが言える制度なのです。ワーキンググループは大臣の下についていますから、ワーキングのまとめは大臣が出されますけれども、諮問会議の議員自体は独立です。そういうことを考えると、政治的に難しい状況があっても、少なくとも政治的に独立な諮問会議の有識者議員がイニシアティブをとってぜひともやりたいです。応援をいただきたいと思います。
○竹中議員 一言だけ、最後に申し上げておきたいのですけれども、こういう批判も耳にしたことがあります。小泉内閣のときの構造改革特区は、民から、地方からの要請に基づくのだけれども、今回は総理主導の上からの改革であると。決して制度はそのようにはなっておりません。これも年に何回か決めて、民間からの提案を受け入れて、民間の要望に基づいてそれを実行する。しかし、それを実行するに当たっては、極めて速い速度でしっかりとやっていこうと。そのために区域会議をつくっていて、区域会議での議事録をぜひいろいろ詳細に御覧いただきたいと思いますが、これは国を代表とした特区担当大臣と地方の首長と、必要に応じて民間の事業者。この三者が自由にほとんどのいろいろなことを決められる。それがうまくいかないときのために総理主導の諮問会議をつくって、それを実行していく。そのような仕組みになっている。これはもう御承知のことだと思いますけれども、そういう仕組みがある。もう一つは、今日は八田先生と原さんが非常に詳細に議論をしてくださいましたけれども、この仕組みの最大の特徴の一つは、ワーキンググループを持っているということです。いろいろな会議があります。私も未来投資会議とかに参加していますし、別途規制改革会議とかもありますけれども、こういうことに対して民間の人が今、かかわっていますが、ほとんどパートタイムですから、会議のときだけ来る。それに対して、ワーキンググループをこの特区に関してはつくっているので、常時役所と対峙しながら押し問答をする。八田先生が非常に熱っぽく話されましたけれども、ほとんどの省庁は、規制改革は言葉が出た瞬間から反対します。それを説得して粘り強く議論して押し問答して押し返して、それでようやく52年ぶりの岩盤に穴が開いている。このワーキンググループのシステムが非常に強力に作用したから岩盤が突破された。それに対して、既得権益を持っている人たちは、非常に危機感を持って、だから最後に国家戦略特区の廃止のようなことを言い出している。まさに正体見たりという感じが私はしております。
この制度を活用して、ワーキンググループの人にはさらに頑張ってもらって、国家戦略特区を続けていかないと、次なる改革はできませんし、ですから、冒頭申し上げたように、この規制改革をするという政策判断が正しいかどうかということからぜひ出発をしていただいて、しっかりとした国民に対する情報の伝達をお願い申し上げたいと思っております。
○原委員 時間が大分過ぎてしまいましたので、これで終わらせていただきます。
ありがとうございました。 
 
国家戦略特別区域諮問会議・有識者議員

 

■秋池玲子
 ボストン コンサルティング グループ シニア・パートナー&マネージング・ディレクター
固定観念に縛られず、一つ目の成功事例を作る仕事をしたい
日本のメーカー、外資系コンサルタント、産業再生機構と実にさまざまな組織で働いてきた経歴をお持ちの秋池玲子さん。その根底にあるのは、経営の側から、ものづくりや事業を助けたいという思いでした。学生時代の思い出や日本的組織運営の課題などをお聞きしました。
先生や仲間との議論から自分の働き方をみつけた
―― 学生時代の思い出をお聞かせください。
理工学部の応用化学科だったのですが、2、3年生の頃は、毎週レポートの提出があり、早朝の締め切りに遅れないように仕上げることに心を砕いていました。一分でも遅れると受付の窓が閉まって提出することができず、何回か提出できないと単位を落としてしまうので、クラスでも協力しあって、結束力が高まっていたと思います。
専攻は応用微生物化学でした。当時は、バイオテクノロジーが一般的にも注目されるようになった時期で、省エネルギー、食料問題、公害問題などの社会課題を解決する新技術と評価されていました。私もバイオテクノロジーで社会の役に立とう!と高い理想を掲げて勉強していたのですが、周囲に優れた学生がたくさんいて驚いたものです。
研究室での日々はとても充実していました。研究室の教授は、生涯御恩を感じ続けている恩師です。議論を楽しむ雰囲気があり、先輩たちが卒業後も研究室を訪れ、研究者や技術者として働く上での努力や、一方で課せられる制約や利益を生み出すことの難しさなどを話してくださいました。そのことが刺激になり、企業が研究開発の成果や技術力を十二分に発揮できるよう、経営の側からお手伝いしたいと考えるようになりました。
自分の中に軸を持つことの大切さ
――これまでいくつかの外資系企業でキャリアを積んでこられました。外資系企業を志望する学生も増えていますが、日本企業との違いは何だとお考えですか。
外資系企業といってもひとくくりにはできませんが、あえて違いを言うとすれば、外資系企業の多くは、昇進の条件となる職能や人材の要件が明確で、そこに至るための研修制度や道のりがはっきり示されているということはあるかもしれません。20年前に比べれば大きく変わったものの、そこまではっきりとは示さない日系企業と比べるとそれぞれ良い面も悪い面もあります。明文化すれば目標が見えやすくなるというメリットはありますが、すべてを予見して明文化することができないのに、明文化されていないことが意識されにくくなる矛盾も生じます。どちらがより優れているということではなく、方法論の違いだと思います。お互いに良い面を取り入れていければよいのですが、前提条件が違うところに方法論だけ持ってきてもうまくいきません。全体の仕組みの中で適合させていくことが重要です。国の政策も同じですね。海外の施策をそのまま前提の違う日本に持ってきてもうまくいかないことが多々あります。
学生さんのご両親の世代は、外資系というと欧米の企業を思い浮かべるかもしれませんが、新興国の企業も今後大きく成長していきます。また、日系企業に就職しても、安定を求めるだけではなく、そこで旧来の組織が持つ課題を変えることに挑戦するという働き方もあります。枠組みや固定観念に縛られずに、自分なりの働き方をみつけてみてはいかがでしょうか。
――グローバル化の波を乗り切っていくには、どのような人材が求められると思いますか。
さまざまな価値観にさらされるわけですから、自分の頭で考え、行動できる人が必要とされると思います。学生時代のように比較的時間に余裕があるときに、旅行や読書などを通じて、他の人生や考え方に触れ、自分だったらどう考えるかという思想の中核になるものを作っておくとよいと思います。学生時代に自分の思想を確立するに至らなかったとしても、将来必ず役に立つでしょう。
失敗を恐れ過ぎないことが大きな改革をし遂げる
――産業再生機構でのご経験から、日本的組織運営の課題は何だとお考えですか。
東日本大震災の際、世界中から評価された日本人の秩序や譲り合いの精神は、日本の強みだと思います。一方でこれは、強いリーダーが出にくいということにもつながります。日本の組織は現場が強く、実は欧米などより自由です。現場の判断で動いてうまくいっていることも多い。でも、自分の裁量の範囲を超えた意思決定は現場ではできませんので、そこはリーダーの能力が問われます。
大きな改革を成し遂げるためには、失敗を恐れ過ぎないことが重要だと思います。今までと同じことを続けていると縮小均衡に陥るリスクが以前よりも大きくなっています。リーダーだけではなく、企業はその組織を進化させることを目指して、社員も挑戦できる場でなければなりません。そのためには、例えば、リーダーが現状の延長線では成し得ないような課題を与え、思い切ったアイデアを出させる雰囲気を作ることも有効です。
自分で立てた問いに答えを見つけ出す力を
――早稲田大学に期待することをお聞かせください。
教育は学生にとって一生の財産です。大学は、教育の場であると同時に、先生や仲間との出会いの場でもあります。大学にはすばらしい先生がたくさんいらっしゃいます。学生には、この先生に出会ったから人生が変わったと思える先生を見つけていただきたいです。また、大学側には、物事の考え方を教えていただくことを期待します。人間は自分で立てた問いに、自分で答えをみつけることでしか成長しないと思っています。社会人になると、答えがない問いに自分なりの答えを見つけていかなくてはなりません。それに耐えられる強靭な思考力を育てる場であってほしいと期待しています。
――今後、どんなことに取り組んでいきたいとお考えですか。
ジャンルを問わず、成功事例を作ることです。産業再生機構で働いていたときに、市場が縮小し、経営難に苦しむバス業界で、再建の最初の成功事例を作りました。その後、多数の同業他社が同様の手法で再建に取り組んでいます。前例ができれば後に続く組織や人材は出てくるものです。そのような前例になる仕事にやりがいを感じています。

秋池 玲子(あきいけ・れいこ)さん/ボストン コンサルティング グループ パートナー&マネージング・ディレクター
1964年生まれ。1990年、本学大学院理工学研究科修士課程修了後、キリンビールに入社。1996年、マサチューセッツ工科大学経営学大学院修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2003年産業再生機構に入社。九州産業交通取締役、関東自動車取締役、カネボウ化粧品社外取締役を兼任。2006年11月、ボストン コンサルティング グループ入社。金融審議委員など、政府系委員を歴任。 
■坂根正弘 株式会社小松製作所相談役
[ 1941- ] 日本の実業家。小松製作所相談役特別顧問。広島県広島市生まれ、島根県浜田市育ち。
広島市生まれ、1945年原爆投下の2ヵ月前に島根県浜田市に疎開しその後は同市で育つ。島根県立浜田高校を経て1963年、大阪市立大学工学部卒業。ブルドーザーの設計技術者として小松製作所入社。1989年取締役、1990年小松ドレッサーカンパニー(現コマツアメリカ)社長、1994年常務取締役 1997年専務取締役、1999年代表取締役副社長を経て2001年、同社代表取締役社長兼CEO就任、2007年同社代表取締役会長就任、2010年同社取締役会長就任、2013年同社取締役相談役就任。2013年同社相談役特別顧問。2009年度から義務付けられた役員報酬開示制度では、報酬額1億2000万円であることが公表された。
コマツ創立以来初の赤字800億円計上という厳しい時期の就任であったが、構造改革の断行により2003年3月期には約330億円の営業黒字というV字回復を達成。欧米はもちろん、中国、東南アジア、インド、アフリカなどの新興国にグローバル展開を進め、2007年度は1700億円の経常利益を記録、2009年3月期には売上高2兆円、世界第2位の建設機械メーカーに導く。日本経済新聞の企業評価ランキング「PRISM(多角的企業評価システム)」で、2001年231位だったコマツを2007年、2008年連続1位とした。2008年デミング賞本賞受賞。2009年には米ハーバードビジネスレビュー誌の「在任中に実績をあげた実行力のある最高経営責任者(CEO)」のトップ100に、日本人トップの17位に選出された。
日本経済団体連合会(経団連)評議員会副議長、環境安全委員会委員長、日本ロシア経済委員会副委員長、公益財団法人日印協会理事・副会長。日中経済協会副会長などの要職を務め、経団連サブサハラ(サハラ以南)地域委員会委員長として対人地雷除去活動なども行っている。2010年5月、経団連副会長就任。2013年、産業競争力会議議員。2014年7月、 経済産業省総合資源エネルギー調査会会長。
2014年11月、旭日大綬章。 
21世紀は“その他”の国の時代 コマツ会長坂根正弘 2009
231位から1位へ
私が社長に就任した2001年度、コマツは会社創立以来初めて、巨額の赤字を計上しました。いわば、危機の真っ只中で、バトンを受け取りました。
日本経済新聞は毎年1回、「PRISM」という様々な角度から企業を評価したランキングを発表しています。コマツのランキングは、2001年には231位でした。それが社長を辞める07年に1位になり、翌年08年も連続して1位になりました。経営構造改革を断行、継続し続けてきた成果が評価されたと思いますが、常にトップクラスに入れる会社を目指したいと思います。
私の好きな言葉は「知行合一」。知識と行動は合わさって一つになるという意味の、陽明学の言葉です。いくら机上で知識だけ仕込んでも、身につかない。何か行動する時に初めて身につくんだ、というのが私の考えです。
コマツの構造改革も、まずは行動から入りました。ある時点まで到達したときに、自分が何をやってきたのかをきっちり整理してみる。「ああ、こういうことだ。じゃあもっとステップアップするために、こういう考え方をしてみようか」というふうに、行動を後から理論付け、体系化することで、さらにステップアップすることができます。会社経営や仕事というのは、そういうことだと思います。
本題に入る前に、コマツでのキャリアを簡単にご紹介します。
私がコマツに入社した1963年は、日本が外資から「門戸を開け」と迫られた年です。それまでは外資に対してガードが固かったんですが、「外資を受け入れろ」という大合唱のなかで、日本政府は自動車産業と電機産業は、何としても守ろうとした。しかし建設機械の分野では、キャタピラー社という、当時のコマツの十何倍もの規模の米国の会社があり、受け入れることが決まった。キャタピラーと組みたい会社は手を挙げろということで、実はコマツも手を挙げたんです。ところがキャタピラーが選んだのは、三菱重工業で、キャタピラー三菱(現キャタピラージャパン)という会社が同年11月に設立されました。
その真っ只中に私がコマツに入社したわけですが、ブルドーザーの設計からスタートして、8年ほど設計部門を経験した後、品質管理課に異動してクレーム担当になりました。次に、全社を挙げて品質改善を目指す活動を本社の社長室で4年ほどやりました。その後、商品企画課長、米国と日本のサービス部長、新事業推進室、米国内初の工場をつくったときの工場建設室長などを歴任しました。社内でも私ほど広範囲な仕事を経験した人は、ほかにいないと思います。そして2001年に社長に就任しました。
今日は、まずはコマツの概要をお話しした後、建設機械ビジネスから見た世界経済の動きについてお話しします。それから、構造改革の経験、企業価値とブランドマネジメントに対する考え方をご紹介し、最後にコマツと日本が抱える共通の課題に触れたいと思います。
世界第2位の建設機械メーカー
コマツは創立以来、88年が経ちました。創業者は竹内明太郎という明治維新の土佐藩士・竹内綱の長男で、吉田茂元首相の実兄にあたります。この人が石川県の銅鉱山事業を買い、その銅鉱山用機械をヨーロッパから買い、それらの機械を修理する工場を始めたのが、コマツの前身です。
今では世界第2位の建設機械メーカーとなり、2009年3月期の連結決算は売上高2兆217億円。営業利益は1,519億円。全世界に4万人の社員がいて、その半分が外国人です。売上に占める建設機械の割合が9割弱。建設機械の地域別売上構成は、日本が17.8%で、アジア・オセアニア17.7%、北米14.2%など、世界中でバランス良くビジネスを展開しているという会社といえるでしょう。
建設機械のモデル数は170位になるが、ここでは世界最大級のもののみ紹介します。超大型の鉱山用機械では、油圧ショベルをドイツ、ダンプトラックを米国、ブルドーザーとホイルローダーを日本でつくっています。ダンプトラックは300tで、タイヤの直径は人間の身長の倍以上あります。日本では170tが最大ですが、世界の主流はこの300tのダンプトラックです。ちなみに私が入社して最初に設計担当したのは、ブルドーザーです。
建設機械以外のビジネスとしては、プレス、フォークリフト、自動車メーカ向け工作機械、半導体製造装置などで、自動車のボディをつくるプレス機械は、世界でトップを争うレベルで、ステッパ用光源のエキシマレーザは世界で2社、そして日本で唯一のメーカーです。
コマツはCSR活動にも力を入れており、社会貢献活動は主に会長が担当して行っています。桜の苗木の植樹については、私が会社に入ったときにもう行っていました。これまで全世界に230万本以上の苗木を配りました。女子柔道部には、アテネ、北京オリンピックで金メダルを獲得した、谷本歩実選手が所属しています。それから対人地雷除去活動に積極的に取り組んでいます。カンボジアでは、地雷除去、道路整備、農場開設、学校設立等の活動を推進しています。
21世紀は「その他の国々」の時代
建設・鉱山機械が地域別でどのように売られてきたかという側面から、世界経済の動きを概説します。
建設・鉱山機械の地域別の需要構成比
世界を、日本、北米、欧州、その他で区分し、需要推移をみてみると、その他に区分される国は約160カ国ありますが、1980年代後半から2000年にかけては、それらの国を合わせても20%程度しかなかった。1982年には40%近くあったが、これは1973、74年のオイルショック以降、原油の高い時期があり、その他に属する国々の多くが資源国ですから、資源が高く売れると、自国のインフラづくりができるという因果関係があり、現在も、ここが最も大事なビジネス領域となっている。
逆にその他世界の需要が低迷していた80、90年代がどういう時代であったかみてみると、日・米・欧という世界の15%しか人口を占めない国々が、残りの85%の国の人々の資源を安く供給を受けることによって、経済を拡大してきた時代だったといえます。しかしながら結局、日・米・欧はお互いを経済圏として発展し続けるための投資をする機会が少なくなり、無理やりバブルをつくってしまった。それが、日本のバブル、米国のITバブル、住宅バブルを引き起こし、今回は金融バブルとなりそれが膨らんでしまった。
ここで、米国の住宅バブルの話にも触れておきます。米国のGDP成長率と住宅着工件数の相関グラフを見ると、その双方が同じような動きをしています。近年では、2005年をピークに住宅着工は急落しました。建設機械もこれと同じように下がっています。「米国経済は去年あたりからおかしくなった」とよく言われますが、米国の建設機械需要はもう06年から悪くなっています。
今回のような急落は過去になかったのかというと、1960年以来3回あります。しかも私はそのうちの2回、81年と91年に米国にいましたから、この急落の酷いときを経験しています。だから、急落そのものには驚いていません。問題は、GDP成長率と住宅着工件数が、2000年から2005年の間で極端に両者間の差が大きくなったことです。これがバブルだと思う。ざっと試算してみると300万戸になるので、住宅だけのバブルは約100兆円程度のはずですが、世界の株式市場は約半年で3000兆円が弾けとんだ試算になるので、今回のバブルの真の原因は住宅バブルではなく、明らかに金融のバブルです。
世界が抱える人口増加と都市化の問題
何事も将来の予測は難しいが、予測しやすいものとして、人口の増加があります。日本は人口が減ると言っているが、世界の人口は増えている。1900年には、世界の人口は16億人しかいなかったんですね。これが今や66億人。2050年には、92億人になると予測されていて、しかも人口が増える地域は、インドとアフリカで、特にアフリカについては世界にとって将来の大きな課題です。
もう一つが都市化の進展。都市化とは、世界標準で「5万人以上の都市」に住む人口の比率をいいます(日本では、1平方キロメートル当たりに住んでいる人が4,000人以上のところを都市と呼ぶ、となっている)。シンガポールは100%です。イギリスは90%で、米国は81%、ドイツは76%、日本は何と66%、中国は40%で、これを70%にもっていきたいと言っている。今後、世界の人口が増えて都市化率を上げるということは、電気・水道・ガスという必要最小限のインフラが整備され、できるだけ効率よく届けられるようにし、道路も効率良くなるというのが世界の常識です。電気が必要になると、石炭や電線のための銅、建物をつくるための粗鋼生産が増え、鉱物資源は長いレンジで見ると需給関係はタイトになることは間違いない。したがって、国も企業も、資源・エネルギー、食料・水、地球環境、医療の課題を前向きに捉えて対処することが大事でしょう。
弱みを改革せよ
2001年に私が社長になったとき、コマツの歴史上、初めて赤字に陥りますが、そのときキーワードを四つ掲げました。これも最初からキーワードを出したわけではありません。やりながら、あるところで考えてみた結果できたものです。
1.経営の見える化
2.成長とコストの分離
3.強みを磨き弱みを改革
4.大手術は1回で済ます
赤字に落ち込んだのは、我々にモノづくり競争力がなくなったからではない。それが当時の私の認識でした。製造コストで負けたわけではない。要するに、製造コストで負けてないのに他のコストで負けているなら、徹底して削除しようというのが当時の決心です。私が社長になったときに300社あった子会社を、2年間で110社減らしました。
「経営の見える化」を実行するにあたって、社員に対し、ベンチマーク企業の粗利率と一般管理・販間費比率を比較し、グラフにして示しました。キャタピラーと粗利率が同じで一般管理・販間費率がコマツの方がいつも6%高くて、コマツの方がいつも6%営業利益率が悪い。経営の見える化の良い例だが、やることは決まってくる、固定費を下げるしかない。
だから、固定費さえ下げたら利益が出てくるんだということを出発点にしました。では固定費を下げるためにどうするか。先程も述べた関連会社を統廃合して減らしました。製品も日本でしか売ってないものはもうやめました。早期退職という大手術も1回だけやりました。
一般管理・販間費率が、その後、私もここまで改善するとは、正直思わなかったんですが、キャタピラーと並びました。2001年から03年に、固定費を500億円下げたので、固定費の売上に対する比率は、当然のことながら一気に下がったわけです。24%が19%まで下がって、社内では、「これで行けるぞ」という雰囲気になっていきました。ここが構造改革の出発点となったということです。その後市場の拡大による売上増もあって15%レベルまで下がりました。
ダントツの強みを磨け
日本、コマツの強みはやはりモノ作りです。ここを徹底的に磨かなければならない。とにかく精進して、「ダントツ商品」をつくれと言いました。色々なことを社長が言い始めたら、みんな受け身になります。だから、「環境・安全・ITをキーワードにして、これだけは絶対に競合相手には負けるな」とだけ指示しました。
日本の問題を議論するときによく、「トヨタやコマツのような輸出企業ばかりに頼ってるからダメなんだ」という評論家が沢山いますが、実は、これが日本の強さなんですよ。この強さを維持したうえで、弱みを磨くというのなら分かりますが、強さの話を脇に置いて弱みの議論ばかりすると、国も会社も絶対に強くならないです。強さは何なのかということが、弱み以上に大事だということを申し上げたい。
コマツだけではなく、日本企業共通の強みの一つは、やはり何といっても「連携」ですね。社内外で連携を取ることを厭わない。連携を取ることで、技術が複合化すればするほど秀でたものが出来ます。ロボットが、まさしくそうです。ロボットというのは、機械技術、電気技術、油圧技術、制御技術が、組み合わさって動くわけですけれども、そうやって畑の違う人たちが連携を取り合うモノ作りは、日本はもの凄く強い。実は、建設機械もまさしく複合技術で、この分野で日本は強いです。それからサプライヤーとの連携。1円でも安いところから買うなんていう会社がありましたけれど、これでは日本の強さはまったく発揮できないと思います。
世界の動きが手に取るように分かるGPS機能
「ダントツ商品」は環境・安全・ITをキーワードにし、他社に絶対に負けない商品づくりを目指しています。コマツの建設機械はGPSを搭載し、世界中でどこにあるのか分かります。これが世界で約13万5000台が動いていています。例えばある車体番号の油圧ショベルを探すと、画面上でどこにあるかが出てきます。またエンジンが動いているか止まっているかもチェックできます。エンジンが動いていた時間のうち、何時間実際に作業していたかも分かります。さらに、エンジンの油圧や油温は正常だったかまで把握できるんです。盗難に遭ったケースでは、輸送中であっても、今どこの道をトレーラーに載って移動中かというところまで把握できます。
今では、世界中の機械が、前月比で平均稼働時間が増えたのか減ったのかが手元で分かります。
2004年4月に中国が、思い切った金融引き締めをやったことがありました。このときに、中国で販売した機械が次から次へと稼動がストップし、これは大変だというので、中国の工場の生産ラインを直ちに止めました。競合メーカーはGPSが付いていませんでしたから、稼働状況の把握が遅れ、その結果、在庫が増え、半年後には、当社と大きな差が開きました。
今回の金融危機では、去年の10月から機械は止まっていません。稼働時間が10%か20%落ちるだけで、みんな動いています。だからお金が止まっただけで、仕事が止まっている状況じゃないんですね。申し上げたいのは、このIT技術で、市場の動きまで手に取るようにわかるということです。
もちろんサービスにも活かされています。1日10時間エンジンが回っているが、実際に仕事をしたのは6時間だとすると、お客様に、仕事のないときはエンジンを止めるような使い方がいい、というようなリコメンドができます。
もっと進化したものが無人ダンプトラックで、これはチリとオーストラリアで動いています。300tトラックに運転手が乗らず、無人で動いています。なぜ無人ダンプが必要かというと、海抜3000〜4000mのところに鉱山があるため、運転手を雇うと、その家族も一緒に来ますので、住居、病院、学校、等が必要になり、コストが重荷になります。また、鉱山では、1日中、走行することもあり、延々と単純作業ですから、転落事故を起こすリスクもあります。
ハイブリッドは中国でこそ売れる
今のようにCO2、環境問題がこれだけ厳しくなるとは、当時は思わなかったんですが、本当に環境だけで商売になるというような感じになってきています。当社は世界で初めて、ハイブリッドの建設機械を出しました。燃費が平均して25%ぐらい良くなります。日本で30台売り出して本格的に取り組んでいるんですけれども、これを私は中国でやろうと思います。日本より、むしろ中国の方が、ビジネスチャンスが大きいと踏んでいます。
よく中国はハイエンドではなくてローエンドだから、安い商品を出さないとダメだということが言われますが、商品によっては、そうでないものもあります。中国の人も、儲かるものが欲しいんですよ。このハイブリッドがいい例です。
20tクラスの油圧ショベルにかかるコストは、日本では圧倒的にオペレーターの人件費が大きいですが、中国では、稼働時間が日本の3倍近いので、燃料費の占める割合が高く、コストダウンを考える上で、燃料代に対する感覚というのは、我々が考える以上に意識が高い。私は、中国のほうが、ハイブリッド車を欲しがるのではないかと思っています。
グローバル企業が大切にすべきこと
日本企業の中で、よく「グローバル企業を目指そう」と目標を掲げると、無国籍企業を目指す会社があります。グローバル企業といえども、絶対に母国をベースとすべきで、コマツも日本に本社を置いて、日本人の社長が経営しています。
無国籍のグローバル企業だったら勝つわけがないです。米国には米国の良さを持ったグローバル企業があり、それが勝ち残っていて、彼らと同じ土俵で同じ論理で戦ったらやはり負けます。日本らしい強みを維持したグローバル企業でなくてはならない。
毎年夏に役員によるフリーディスカッションを実施していますが、2004年頃、日本にベースを置くグローバル企業が長期的にどういうテーマで取り組むべきかを議論した結果、四つのテーマになった。まず一つは、トップが現場から遊離しないことです。
二つ目は方針展開。トップダウンは絶対に大事であるが、ミドルの力が削がれたらダメです。ミドルから「社長、そうおっしゃいますけれども、こうではないですか」という話が返ってくる。その上で納得したものをミドルが下に伝える。そのようなミドルアップ、ミドルダウンがない会社はダメ。
三つ目は連携プレーです。そして、四つ目は人材育成です。この四つのテーマを未来永劫、コマツにいる限りは磨いていこうというのが結論である。これら四つは、日本共通のテーマではないかと思います。
「コマツでないと困る」度合いを高める
「企業価値」というのは、会社によって様々な定義がありますが、「社会とすべてのステークホルダーからの信頼度の総和」と定義しました。その後、「信頼度」をもう少し分かりやすくして、「コマツでないと困る度合いを高めること」としています。「社会とすべてのステークホルダー」を具体的にいうと、1お客様、2株主、3金融機関、4社員、5協力企業、6販売代理店等です。
社員や協力企業、販売店は、コマツと一体なので、コマツでないと困ります。株主は、コマツの業績が悪ければ、一時的に株で損するかもしれませんが、いつでも他に乗り換えられます。しかし株主は企業価値の大事な評価者です。コマツでは、社長がこのステークホルダーすべてに対して、徹底して自分自身で接っするように心がけている。
多分、他の会社がやっていないようなことがいくつかあります。決算を発表した翌日に、本社で1時間ほどかけて、色々な資料を使いながら、社員に、会社の状況や課題を説明します。社長在任中の6年間やり続けました。この社員ミーティングの模様をビデオ録画して、英語版もつくって全世界に向けてWeb配信しています。国内の工場には直接出向き、協力企業・代理店との会合も年2回行っています。株主懇談会も年2回、毎回場所を変え、全国各地の株主に対し、社長が出向いて話をしています。
ブランドマネジメントに関しては、化粧品などBtoCビジネスではブランドがすぐイメージできますが、我々のようなBtoB商品は難しく、「ブランドマネジメントとは何か、どうあるべきか」と色々と悩み、試行錯誤しました。結果、これも、「コマツでないと困る度合いを高めること」だという結論に行き着きました。先程お話ししたチリの無人ダンプトラックは、銅鉱山で稼動しているが、このユーザーは、コマツがなくてはならない存在になっている。お客様との関係において、最終的には、そこまで行かないと強いブランドとはいえないというのが、コマツの定義です。コマツでは、世界のお客様を7段階に分けています。レベル1はコマツを「付き合うに値しない」と捉えられているケース。例えば「かつて使っていて、酷い目に遭った。もう出入り禁止だ」というのが一番下です。一番上は、チリの銅鉱山のようなケースですね。もうコマツから離れられない。世界中のお客様を、レベル付けして、できるだけ上のランクに持っていこうという活動を展開しています。そのためにはお客様と本当のパートナーの関係を築くことです。
人材育成こそが要
今後の課題のまず第1が、人材育成です。コマツも従来から人材育成に力を入れてきたのですが、どちらかといえば日本人中心だったので、グローバルでの人材育成はまだこれからです。海外留学制度というのを始めたのが1970年で、毎年7〜10人を海外に送り込み、言葉を覚え、人のネットワークも作れということで出しています。
一方、マネジメント能力がわかるのは、人を使ったことのある部長や課長クラスです。そこで、30代半ばの課長クラスと40代初めの部長クラスを選抜主義で教育をしようといって、1996年より、ビジネスリーダー研修を始め、今これの海外展開を実施しています。
また、コマツの強みとして、役員の中に海外駐在経験者が多い事も挙げられます。それから生産技術者の多くも海外駐在経験を持っている。人事部門の多くが駐在経験を持っていることも特長です。これは、海外の会社の人事部長はローカルな人だが、それにアシスタントとして日本人の人事担当者をつけていたからです。我々の人事管理とローカルの考え方がぜんぜん違うので、その調整を行うという役割を担っていました。
将来コマツグループで成長してほしいと思うキーパーソンを先にリストアップし、そのリストアップしたキーパーソンをバリューチェーン改革72のプロジェクトテーマに振り当てて、全世界の販売店まで含めて、研究、開発、生産、販売、サービスまでの全工程に関する課題研究をさせている。TQM、コマツウェイ、ブランドマネジメントの手法も使いながら教育を展開しています。
日本はアジアと共に栄えよ
成長を目指す上での課題は、アジアとの共存共栄である。アジアとの共存共栄なくして日本の成長はない。500兆円まで来たこの国がさらに成長するためには、海外とのつながりの視点なくしては考えられないと思う。
お見せした日本地図は逆に書いてあるが、韓国、中国にとって沖縄、台湾のロケーションがいかに大事かがわかる。この二つがなかったら太平洋側はオープンになる。したがってこの位置がいかに大事かということは、この地図を見るとわかるが、この地図で私が言いたいことは安全保障上の問題ではなく、日本海側がアジア向けの流通ルート上、いかに大事かということです。
コマツはもともと石川県でスタートした会社ですが、今や石川県比率は30%しかない。結局、石川県では、神戸港、東京港、横浜港に運ぶのに不便だから、神戸に近い大阪に工場を造り、東京に近い栃木、茨城に工場を造ってきました。2年前、将来金沢港から釜山港につないでくれとの思いで、金沢港に工場を造りました。そして今回、小松工場という発祥の地の工場をここに移転集約すると発表しました。これは私にとってはシナリオ通りで、金沢港に大型船が着くようになれば出せると考えた。去年の11月、実際にに金沢港に大型船が着くようになりました。
日本海側が発展することは言うは易しで大変だと思うが、可能性は充分ある。だから、こういうことを探りながら地方の活性化を目指していかないと、道州制とか地方分権など、うまくいかないと思う。まずは地方が知恵を出すことが大事である。
現場で工事費として使ったお金と、たくさんある旧道路公団や事務所の人件費など固定費で使っているお金がいくらなのかが分からない。私が総理大臣なら、その資料を作って見せろと迫ります。予算を絞るのなら工事費を絞る前に、この固定費を絞るべきだからです。そこを分けてないから、予算を絞ると工事費を絞ります。道路にかかわっている人は自分の職を失うようなことはしないから、固定費は減らない。それがいま日本で起こっている道路問題です。すべて現場に予算カットのしわ寄せがいっている。そして、日本の強さは何なのかを見極め、その強みを磨く。それから大手術をやるなら、とにかく1回で済ませること。こういうキーワードを、日本の国としても、考えてほしいと思います。
本日のまとめです。
1.国も企業も改革の基本は、成長とコストを区分して推進すること
2.コストは固定費と変動費に分けて、変動費に手をつけるぐらいなら、思い切って固定費を減らすべき
3.日本の成長はグローバル、特にアジアと共に、健全に栄える
中国と健全に栄えるということはとても重要です。中国が本当に健全に栄えるためには、日本の力が必要です。だからアジアと共に健全に栄えるという視点にしか、日本の成長はない。アジアから観光客に来てもらう。例えば私が育った島根県の出雲大社は、縁結びの神様です。日本ですら縁結びの神社だと知らない若い人がいっぱいいるから、まず、そこを改善したうえで、中国や韓国に縁結びの神様だと宣伝したら観光客を呼び込めるチャンスがあると思います。農業だってまだまだチャンスはあります。中国でもお金持ちになった人は、子供に食べさせるものは、絶対に安全なものを買いたいと思っている人がいっぱいいます。日本の食料は安全だというイメージが定着しているわけですから、このブランドを生かさない手はない。是非こういう視点で、成長を目指してほしいと思います。
言葉で部下を引っ張ることができるか
堀:坂根さん、本日は素晴らしいお話、有難うございます。明快なお話とグローバルな発想で、切り口が鋭いと感じました。ここには、リーダーになりたいという志を持った方々が集まっていますが、坂根さんの職歴のなかで、どのポイントでどういう能力が高まったのか。特に自分を大きく成長させたという経験があったら、教えてください。
坂根:入社当初私はブルドーザーの設計を担当しましたが、当時のブルドーザーの品質は今ほど良くなくて、しょっちゅうお客様から呼び出されて、クレームの対応をする。私は会社に入った頃から、人前で話をするのが好きだったので、お客様を何とか説得しようと努めました。お客様を説得するのは、結構コツが要るんです。あるお客様が、昼過ぎに電話してきたことがありました。私は大阪工場にいて、そのお客様は九州にいましたので、翌日行くのが普通ですが、当日、夜8時に訪ねたところ、お客様から声をかけていただき、一緒に食事をして帰ったことがあります。勿論、問題は、うまく解決しました。お客様の信頼は、こういったバッドニュースからでも得ることができることが分かり、とても大事だと感じました。
当時、各部門の業務内容を社長が診断する「社長診断」の際に、設計全体がどんな活動をしているかを示す資料作りを担当しました。設計全体を常に見ながら、プランを立て、実行して、それを反省して、再発対策をするという、PDCAサイクルを回す活動を、会社に入った2、3年目ぐらいから延々とやったため、思考パターンが身に付き、それが基本になっています。
大きな転換点は、全社の品質改善活動です。私は本社の社長室へと異動して、品質改善活動を説明する役員会に出る機会があったが、会議は、想像していたものとは異なり、「自分が思ったことを主張したり、それを実現することが、できる会社だな」と実感したのが、30歳の頃です。そのときに自信が湧いてきましたね。
堀:おそらくポジションごとに、異なるハードルがあるかと思います。また、30代で手応えを掴みながらも、いろんな試練があったでしょうが、そのなかでどのように自分自身を成長させたのか、お伺いしたいのですが。
坂根:社内では人材育成の前に、人材発掘があると思うんですね。従業員が連結で4万人もいるわけですから、「この人にこういう教育をしたら将来伸びてくれそうだ」と、見込むわけです。人は単純化していえば、2種類の人がいると思います。上に上がるほど大きい仕事をする人と、上に上がるほど力を発揮できない人の2種類です。
例えば、課長時代には凄くうまくやっていたけれど、部長にした途端にうまくいかないケースは、多々あります。課長時代には部下と一緒に酒を飲んだり、部下の家族事情をよく把握しています。そういうところが分からないと、課長は務まらないですよね。ところが、部長となると自分の直属の部下は課長しかいないから、課長に的確な指示を与えて引っ張っていかなければならない。
堀:上がれば上がるほど成長する人と、上がれば上がるほどダメになる人は、何が違うんですか。あるいはどうすれば、上がれば上がるほど、そこで能力を発揮できるようになるんですか。
坂根:結局、上に上がるほど、部下の範囲が広がっていくわけですよね。そうすると、何かメッセージで引っ張っていかなければならない。上に上がるほど、言葉で引っ張っていく必要が出てきます。ところがその言葉も、色々なことを言おうとすると、1カ月前に言ったことと、今言っていることが違ってくる。すると「あの人は発言する度に、言っていることが違う」となりますよね。それでは、人は引っ張れません。
だから私は社長在任中の6年間、同じことを言い続けました。それでも、次第にレベルアップして、内容が進化してきた。違うことも言いたいが、大事なことはこれだと思ったら、それを言い続ける。しかも、それで結果を出す。そうして初めて、部下たちは、「あの人の下で付いていけば大丈夫なんだ」と思ってくれる。そういう関係をつくり出すことで、リーダーシップを発揮でき、信頼関係が維持できるのだと思います。
米国、欧州は厳しい経済情勢続く
堀:有難うございます。先程のご講演のなかで、GPS搭載の建設機械の稼働率を把握しているということで、今回の世界金融危機があっても、稼働率は10%か20%しか下がってないとおっしゃっていましたが、今の景気をどのように見ていらっしゃいますか。
坂根:参考までに建設機械から見た状況をお話しします。日、米、欧とも、落ち続けています。まだまだ落ち続けます。中国、インド、インドネシアが戻ってきています。稼働率でいうと、特に中国は、10月から1月まで前年比50%ダウンで急落しましたが、2月から4月が、前年比15%ダウンぐらいまで戻りました。6月は10%以上アップしています。だから、中国は間違いなく戻ってきていますね。
中国が戻ってきたというのは大きくて、米国がいくら元気でも、中近東やアフリカはそんなに元気にならない。中国が成長するから、中近東やロシア、オーストラリア、アフリカなどが元気になるわけです。ただ、それで先進国を引っ張っていけるかというとこれは難しい。米国は消費国ですから、可処分所得が増えて資産価格が増えてこないと、消費は戻らないでしょう。失業率はまだまだ高くなっていくと思うんです。住宅価格は2001年を100とすると、06年に200までいったのが、今は約130まで落ちたレベルで、01年のレベルまで落ちてない。だから、来年の中頃に向かってまだまだ価格は落ちていくと思うので、米国経済は悲観的に見ています。
オバマ大統領は“YesWeCan!”と言いましたが、予算が確実に実行されるのは、予算の新年度である10月以降です。だから、この年末から、米国が少しずつ戻ってくると期待しています。多分米国が良くなると、日本は半年遅れぐらいで良くなります。最後に経済が悪くなったヨーロッパが一番厳しいですね。ヨーロッパはこれから2年ぐらい、本当に苦しい時代が続くと思います。
全国一律の成長戦略では日本は浮上しない
堀:日本の政治や中央官庁についても言及されていましたけれども、政治を良くするために民間の立場から何ができるのか、財界のトップの坂根さんから伺いたいと思います。
坂根:今の日本の国全体の行政を一言でいうと、中央集権ですよね。米国は地方分権が確立したなかで中央がありますが、日本は圧倒的な中央集権です。その中央集権のなかで、二大政党を目指そうとしているわけですよね。すると中央で議論することが、もの凄く多い。そして中央で議論すれば、必ず一律主義になります。先程私は成長とコストを分けて、いかにみんなが知恵を出す仕組みをつくり上げるかが、企業の勝負のポイントだという風に言いました。それを当てはめると、中央官庁は、たしかに成長するための様々な知恵を出しているかもしれませんが、それは全国一律主義の成長戦略です。また、コストよりも、予算の消化を意識しがちだと思います。
それでは地方はどうか。地方は金と権限がないから、文句ばかり言うだけ。背に腹は替えられないので、予算は確保には努力します。だけど、成長を目指す余力がないため、地方自治体の長(知事)は、やむを得ず、とにかく文句を言うしかない。だから、私は中央官庁と地方が、成長とコストをはっきりと分けて、それぞれに知恵を出させるような仕組みをつくるべきだと思います。地方分権とか道州制がだいぶ前から叫ばれていますが、待ったなしでやってもらいたい。そのためにはまずは先程の石川県の例のように各地方が知恵出しの競争をすべきです。
私は今年の3月21日、首相官邸で開かれた経済危機克服のための有識者会議に呼ばれました。そこで私が何を言ったか。5兆円を都道府県単位に分けて、中央からは一切紐付きにしないお金として、1県あたり1000億円を渡す。この1000億円を各都道府県が、「アジア・環境・安全・農業」をキーワードに使えるようにする。ただし、自分の県で考えず、周辺の県にも相談する。コストは固定費と現場コストを分けたうえで、極力固定費を削減しなさいという指示だけ与える。
各都道府県に1000億円をどう使うかコンペをして、例えば石川県はこういうことをやりたいと公表する。隣の富山県はこういうふうに使うと公表する。全都道府県に情報開示させて、どの県が一番真面目に考えているかを自ずとわかるようにすれば、自分の県でお粗末なばら撒きをしていたなら、県民が批判しますよね。そういうことをこのチャンスにやったらどうですかという提案をしました。
仮に民主党が政権を獲ったとしたって、こんな中央集権の国で、二大政党なんか成り立たないじゃないですか。しかも、みんな小選挙区を気にするんですよ。ちょっと支持率が落ちたら、気にすることは自分の選挙ばかり。こういう中で、二大政党なんて長続きしない。中央集権なら圧倒的に、まあ中国ほどとは言いませんが、強い政権が必要。そうでなければ、地方主権を早く実現させるしかない。そのためには、紐付きじゃない金を各都道府県に与えて、それぞれ公選で選ばれたトップの知事に競争させる。お粗末なアイデアしか出さない知事は、地元の有権者から批判を浴びる。そういう仕組みをつくるべきだと、私は思っています。
堀:仕事をしながら学んでいる将来のリーダーに向けて、最後に一言いただければと思います。
坂根:国や地方と同じで、トップがしっかりと方向を示して、どれだけ多くの人に知恵出しをする環境をつくれるか、その勝負じゃないでしょうか。前向きに何かをやろうという人からしか知恵は出てきません。今日集まってこられた方々というのは、「自分を成長させよう」とか、あるいは自分が関わっている仕事もしくは会社を「何とかしよう」という思いで来られている人だと思います。それぞれの立場で社内を動かす力はあると思いますし、もしそうでなくても、自分がそのポジションに就いたときのために、力を蓄えてほしいと思います。
ここぞという時に誠意を尽くせ
会場:構造改革のキーワードで、大手術は1回だけとおっしゃいましたが、なぜ1回だけにしなければならないのか。
坂根:人間の体でも、大手術をして助かるものなら、1回ですべてをやらないと、身体が持たないじゃないですか。それと同じことを言っているんです。そのためには、大手術をしたら会社は再生できるんだという、確信が持てなければならないですよね。日本で収益が上げられずに苦しんでいる多くの会社は、本当はそこを詰めていけば、確信が持てるはずなんですよ。ところが、手術が細切れになるんですね。なぜそうなるのか。担当役員に任せ切りにしているからです。担当役員に任せても、大胆なリストラが出来るわけがない。それこそ社長が責任を持って判断して、指示するしかないんです。
会場:坂根さんには人間力を感じるのですが、人間力を高めるために、どのようなことを心掛けているのか、教えていただければと思います。
坂根:課長ぐらいのときは、自分が部下にどう見られているか、だいたい想像がついたんですけれども、部長やその上になって、ましてや社長になると、部下がどう見ているのか、本当に分からない。これが一番不安です。本音を聞いたことがありません。だから、自分の人間力っていうのは実際のところよく分からないです。
ただ、私は色紙に何かを書く機会があると、前は「知行合一」という言葉を書いていましたが、今は「誠」という字にしています。「誠」というのは、言うを成すじゃないですか。言ったことを実行する有言実行で、人から信頼を得られるわけですよね。悪い話は悪い話で正直に告白して、「ああ、あの人には隠していることがない」と思っていただけると、信頼関係が築ける。私も結構いい加減な男ですけれども、ここぞという時には、誠意を尽くします。
会場:現在の厳しい経済環境のなかで、坂根会長はコマツ社内で、どういった製品開発をしていくべきだとお考えでしょうか。
坂根:新商品というのは、例えばある商品をモデルチェンジする場合、モデルチェンジの企画書をつくってまず評価する。それでOKとなったら試作車をつくる。その後、性能試験をして、また評価する。さらに耐久試験をして、また評価して、量産に入ります。
評価をするときに、よくプロダウト・アウトはダメで、マーケット・インを重視するよう指導されますよね。しかし、マーケット・インといっても、試作車をお客様に見せるわけにはいかないから、営業を代弁者にするじゃないですか。すると営業は何て言うか。たいてい「競合メーカーにここが負けてる、あそこが負けてる」という話ばかりする。そうして出来上がった商品がどんな商品になるかというと、競合メーカーより少しずついい商品になり、たいていコストが少し高い。だから私は社長になってから、「先に営業部門と合意して、負けていいところを決めろ。その代わり、環境・安全・ITでは絶対に負けるな」と言っていました。先ほどご紹介したGPSを搭載した商品を「KOMTRAX」と呼ぶんですけれども、これは「ダントツ商品」です。かつてのように、ハードウェアだけで勝負する時代は終わりましたよね。それではあっという間に追随されるわけですから、GPSを搭載した機械稼働管理システムで、サービスの領域に入っています。ハード+ソフト、これがいよいよIT技術で実現できるようになってきています。
会場:トップダウンは必須で、ミドルアップとミドルダウンも不可欠だというお話がありましたが、ミドルが自由闊達に動き回るためのポイントをお聞かせください。
坂根:ミドルというのは課長クラスと思っていただければいいです。トップダウンが強烈であれば、どうしてもミドルは受け身になります。指示待ちになるので、社長としてここは一番気を使うところです。「ダントツ商品を作る」、「環境・安全・ITをキーワードにする」という基本方針があります。まず営業と犠牲にしていいところを先に決めて、コスト改善を10%して、その10%の余力を使ってダントツ化するように指示します。ここまでは言っていい。しかしこれより詳細を言ってしまうと、多分ミドルは指示待ちになると思います。このあんばいは、なかなか難しいところです。
会場:コマツは世界中に子会社を持っていますが、各国の人たちからさまざまな意見が出されるかと思いますが、そういう人たちに対してどういったリーダーシップを発揮されているんでしょうか。
坂根:海外のほうのトップの教育が5、6年前から始まっています。それは、先程お話ししました社内ビジネススクールよりも、かなり上のレベルのもので、海外のトップを集めて教育をしています。
過去に遡ると、15年ぐらい前まで海外の会社のトップは、ほとんどコマツの役員が現地に行って、社長を務めていました。その後、ローカルの人材がトップに就くように変わりましたが、例えば米国などではなかなか人材がいないので、外部からスカウトしていきなりトップに据えました。しかし、ほとんど成功しませんでした。その失敗を踏まえて、部長クラス、本部長クラスで外部から入れて、様子を見てから社長に就いてもらうようにしました。外部からのスカウト人材がうまくいかないのは、価値感の共有ができていないことにあると考え、これがコマツウェイの作成、そして普及につながっています。
もう一つの特色は、米国のCOO(最高執行責任者)は日本人、CEO(最高経営責任者)は米国人というコンビで経営しています。中国は、社長はコマツに勤めて20年の中国人です。ヨーロッパのトップも長いです。そして、コマツの考え方をよく理解しています。10年20年の計画で進めていかないと、トップマネジメントのローカライズはできません。 
■坂村健  東京大学大学院情報学環教授
坂村健 1
[ 1951- ] 日本のコンピュータ科学者、コンピュータ・アーキテクト。工学博士(慶應義塾大学、1979年)、東京大学名誉教授、東洋大学教授。専攻での研究内容はダイナミックアーキテクチャだが、自ら提唱したTRONプロジェクトにてリーダー、またアーキテクトとして多種多様な仕様を策定している。東京都出身。
相磯研究室ではコンピュータ・アーキテクチャ、特にダイナミック・アーキテクチャ(LISPマシンに代表される高水準言語マシンなど、ハードウェアに限らない広い視野を持ったコンピュータ・アーキテクチャと言える。また当時、超LSI(VLSI)・超々LSI(ULSI)と呼ばれた集積度の向上及び Mead & Conway revolution(en:Mead & Conway revolution)も意識していた節がある)を専攻、その後コンピュータ科学的にはそういった方面の延長とも言える第五世代コンピュータプロジェクトの立ち上がり期(1980年代初頭)に関与しかけたが、それとは袂を分かつ恰好で、一般消費者の世界でブームとなったりしていたマイクロコンピュータに注目、特に(現代で言うところの)マイクロコントローラによる組込みシステムにより身の回りのあらゆるものがインテリジェントになるであろうというヴィジョンを持つようになり、1982年、依頼を得た「未来のオフィス」という30分のスライドショーにまとめ日本電子工業振興協会に提出した。
その後1983年頃にどのような経緯があったかは不明であるが、1984年6月に、前述のヴィジョンのためのコンピュータ・アーキテクチャなどを実現する目的を持ち、TRONプロジェクトを開始、TRONの名は「The Realtime Operating system Nucleus」の頭字語から。「Todaini itatokini tukutta Realtime Operating system Nucleus」とも、また、映画『TRON』を見た後の命名ではある、とも書いている。
TRONプロジェクト
TRONプロジェクトは、当初、次のような仕様の策定とプロトタイピングなどを行った。まず必須なものとして、特に用途として組込みOSを重視したリアルタイムOSのITRON(industryのI)、次いでビジネス向け、またユーザインタフェースとしてのBTRON(businessのB)である。さらに、構想としてはそういった大規模システム全体を対象としたOSというものも考えられる、ということでそれにMTRON(macroのM)という名前を付けた。
続いて、電電公社によるディジタル交換機システムの開発と合流した形となった、センターマシン用のCTRON(Cはcenterとcommunication)、メーカとの協力も進んだことから、ソフトウェアの基盤であるハードウェアも、としてTRONCHIPが企図された。
リアルタイム組み込みOSであるITRONは、日立製作所のHI68Kなどの実装が作られ、また、より組み込み向けに縮小されたμITRON規格が作られた。BTRONでは、コンピュータに伴ってキーボードが日本に広く普及する機会と睨み、人間工学の視点に立ったトロンキーボードを考案するが、既にタイプライタ等で一般化していたデファクトスタンダードはゆるがなかった(TRONのものに似たキーボードには、日本電気が文豪に搭載するなどしたM式キーボードや、富士通がOASYS用に試作したものなどがある)。また、オブジェクト指向のユーザインタフェースや、実身/仮身モデルというデータモデルを実現した。日本語処理にとどまらぬ国際化と地域化のために、面切り替えコードを持つTRONコードによって、あらゆる符号化文字集合を、文字をユニフィケーションすることなく収録することとしたが、Unicodeにデファクトスタンダードを譲る。CTRONは電話交換機のために設計実装され、電話局にて実用に供せられた。MTRONでは、現在の協調分散型アーキテクチャーを想定していた。TRONCHIPは、試作・生産されたが、広く市販・採用されることはなく終わった。TRONCHIPの採用例には、きく7号や、電話交換機がある。また、日立のSuperHの開発者はTRONCHIPの反省がSuperHを産んだと話しており、三菱のM32Rのコンテキスト処理の命令名などにTRONCHIPの影響が見られる。
プロプライエタリな実装の利用はフリーではなく、商標としてTRONを使用する場合にはTRON協会の許可が必要だが、公開されている仕様に基づいた実装の作成は自由であり、現在もソースフォージで開発が行われているHOS(μITRON)などもある。 
坂村健 2
日本が世界に誇るコンピュータ・セールスマン。東京大学教授である。彼の愛用する規格はなぜだか弱小傍流となり衰退することが多いためついたあだ名は不運規格人。先祖には郭図がいる。あまり目立ちはしないが有能なTRONなるOSを考案したことで知られる。
生誕〜慶應義塾大学
1951年、ごく普通の家庭に生をうける。この期間の彼の資料はほとんど残っていないが、当時より国産、日本発にこだわる性格であることは友人らが口をそろえて語っている。事の起こりは国産の食品しか口をつけようとはしなかった事件より始まった。そのために家計が逼迫することもあったが、後に両親も彼の考えに賛同し一家を挙げて国産にこだわるようになった。最終的には石油や鉄などの重要資源も国産志向となり、彼のためにコングロマリットを創始した両親の武勇伝はまた別の話である。ただ、国産であればなんでも良い、と思ってしまうのが彼の悪いところでもあり、大学時代に購入したビデオデッキはVHSでもベータマックスでもないVX規格という超マイナー家庭用ビデオ機であった。このころより不運規格人の片鱗をうかがわせている。
TRONを発表
慶応義塾をでたあと東京大学の助手となる。大学院生のこのころよりコンピュータへの興味を深めていったが、助手となってからさらにのめりこむようになった。このとき彼が持っていた愛機は沖電気のIf-800である。しかし当時のコンピュータというものは性能の制限もあり、使いにくくて仕方なかった代物であった。おまけに高価で大量導入も一苦労な時代である。そこで彼は一発奮起し、これがコンピュータの未来像だ!という論文を作成。吉野家通のコンピュータSEの間で評判となる。挿絵があまりに綺麗だった事もあり、これがお役人の目にもとまり具体的な国家プロジェクトにまで発展することになる。
さて、プロジェクト名もTRONときまり具体的な方針は以下の3つが決められた。
○ 学校に大量導入させて「TRONじゃなきゃだめだよママ!」という少年少女を大量育成し、将来的に全世代普及を目指す。
○ CPUとかハードウェアも国産で。
○ ビジネス用、工業用・・・etc、いろんなサブプロジェクトを作って、TRONにあらずんばコンピュータに非ず、となることを目指す。
かなり野心的な方針であったが、それだけに理想に萌える若人が多数集って日々議論を重ねた。・・・のだが、いまひとつコンピュータ会社のノリが良くない。当時国産の統一規格としてはMSX(1983年発表)があり、みいそに至っては「そんなんいらへんねん、ずっと98(1982年発売)でええねん」と豪語していたのである。しかし1984年のTRON発表時には朝日新聞が礼賛記事を書いて盛り上げ、坂村の名と共に大いにその存在を世間一般に知らしめることとなったのである。
TRON発表後
発表した時点ではただの紙レベルのプロジェクトに過ぎなかったが、周りの期待は朝日新聞のおかげもあってものすごいものになっていた。朝日新聞でこれだけ盛り上がるなら、と考えた坂村はNHKにも協力を依頼した。NHKは一億ほどの金をかけ壮大な特集番組を組んでこれに応えた。これは図にあたり坂村は積極的にTRONアピールにいそしむことになる。行った講演は数知れず、1年に1冊は本を上梓し、TVや雑誌のメディアの露出も多くなった。こうなってくるとTRON評議会はほったらかしの状況となり、紙レベルのプロジェクトはいつまでたっても神ではなく紙のままとなっていた。
神プロジェクトのはずなのに一向に紙プロジェクトのままな状態に業を煮やした坂村は、政府にもっとアピールするように進言したのだが、これが裏目に出てしまった。非公式にではあるが、ディズニーの抗議がはいったのである。
TRONの挫折
ディズニーは1982年にTRONという未来のコンピュータ像を示した映画を上映していたのだ。「TRONはディズニーの著作権物だから勝手に開発するんじゃない、消せ。」ということである。アメリカ政府をもびびらせるディズニーが相手では坂村も万事休す。これに便乗したマイクロソフトや孫正義らによって正式にTRON普及計画は潰えたのであった。(正確にはBTRONとよばれるものだけだというが)
だが、坂村もここで引き下がるわけには行かなかった。とりあえずTRON普及がだめになったのはアメリカの介入があったからという事にした(これによって名実共に神(紙)プロジェクトとなった)。そして工業用としてTRON存続を図ったのである(ITRONと呼ぶ)。こちらはあまり世間一般の注目を浴びなかったせいか、邪魔も入らず地道に勢力拡大していったがLinuxという新たなライバルの出現で苦戦するようになった。もちろん坂村はLinuxをお気に召さない。フィンランド人が創始したもので国産ではないからである。
それに加え、坂村はITRONからT-Engineというプロジェクトを派生させたが、おなじくITRONから分化したTOPPERSというプロジェクトと対立しており、ITRON戦国戦争の呈を示しつつある。なぜに対立しているかというと、 TOPPERSがオープンソースである点が気に食わないと坂村は述べている。オープンソースという文化が国産ではなく世界中の誰もが参加できることが原因とも、単に不運規格人としての悪夢が降りかかりつつある予兆が原因とも言われているが、今の段階ではわからない。
ユビキタスを推進
TRONを推進していく中で、坂村はユビキタスの精神に目覚めることになる。簡単に言うとどこでもコンピュータであり、いつでもどこでも望めばコンピュータが操作・動作できる位置にあるということである。とりあえず22世紀のどこでもドアの完成を待っているのが現状である。・・・のであるが、それでは誰も積極的に推進してくれないので、とりあえずありとあらゆるものにコンピュータを内蔵させる計画を立てている。そのためにユビキタス教を創始、順調に同志を増やしているようである。「人間の思考を解き放つ社会をつくろうではないか」とは坂村の弁である。  
坂村健の目 最先端の「さらに先」へ 2017/6
つい先日「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」が閣議決定された。今後の行政に、どうICT(情報通信技術)を生かすかの計画だ。現在のまとめとしてはよくできた計画だと思う。
ただ、問題は、最近のこの分野の進歩が驚くほど加速していることだ。進歩が他の業界の7倍速だとして、人間の7倍の速さで年をとる犬に見立てて「ドッグイヤー」と言われていたが、いつしか18倍の「マウスイヤー」に−−。さらに研究開発自体に人工知能が利用され始め、比較する生き物すらない状況になりつつある。つまり、今回の基本計画がいくら良くても、「世界最先端IT国家」というなら、「さらに先」のビジョンを「いま」持つ必要がある。
一例を挙げると、行政の電子化だ。基本計画には「ペーパーレス化を目指す」と書かれている。以前からずっと挙げられていた課題で、技術的な道具立てはそろっても制度が遅れていた。だから、基本計画は大きな推進力になるだろう。
しかし日本の問題は、そういう時に「変更」ではなく「追加」になることだ。「電子も可」でなく「紙は不可」としないと、システムは複雑化するだけだ。
例えば「印章」。世界でも特異な印章文化を日本では古代から確立してきた。今もいろいろな制度が印章を前提にしている。しかしこれが非効率ということで、りそな銀行は2年後をめどに、電子カードを使った印章廃止を宣言している。
知られていないが、実はマイナンバーカードにも行政電子化のカギとなる電子印章機能がある。これが普及しないのも、紙との「二重行政」を許しているからだ。「紙不可」になれば、あっという間に普及するだろう。不可までいかなくても、手数料や利用時間で差をつけるのは決して不公平ではない。選択は自由でありながら、より高いコスト負荷を公共に与える人が、そのコストを負担するのは当然だろう。
印章と並び、行政のペーパーレス化を阻むのが「印紙」。日本的には、制度改正でクレジット支払い可能にして−−とか「追加」で乗り切ることをいろいろ考える。しかし「さらに先」のビジョンなら、社会から貨幣を無くす「完全キャッシュレス化」だ。SFだと言われそうだが、インドは最近「完全キャッシュレス計画」を開始した。「印紙の電子化」を考えるより、その方がICT的には正解だ。この分野の経験則として、過去のしがらみをバッサリ切った方が、システムは簡素になり、開発も低予算になり、効率もよくセキュリティーも強固にできる。
日本の問題は技術ではない。「追加」に覚悟はいらないが、「変更」には自由や個人の権利と公共の利益との調整など難しい議論が必要となる。インドに追い越されれば「世界最先端IT国家」は見果てぬ夢。そうならない覚悟が日本にはあるのだろうか。 
■竹中平蔵 東洋大学教授 / 慶應義塾大学名誉教授
[ 1951- ] 日本の経済学者、政治家、実業家。東洋大学教授、慶應義塾大学名誉教授、東京財団理事長、参議院議員(1期)、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、総務大臣(第6代)、郵政民営化担当大臣等を歴任。専門は経済政策。2016年4月から2017年3月まで東洋大学国際地域学部国際地域学科教授、2017年4月から東洋大学国際学部グローバル・イノベーション学科教授 兼 グローバル・イノベーション学研究センター長、関西大学会計専門職大学院客員教授。パソナグループ取締役会長、オリックス社外取締役、SBIホールディングス社外取締役、森ビルアカデミーヒルズ理事長、日本経済研究センター研究顧問、外為どっとコム総合研究所主席研究理事、特定非営利活動法人万年野党アドバイザリーボードメンバー、一般社団法人外国人雇用協議会顧問、一般財団法人教育支援ローバル基金(BEYOND Tomorrow)アドバイザー、新生ホームサービス株式会社特別顧問、内閣日本経済再生本部産業競争力会議(民間)議員、内閣府国家戦略特別区域諮問会議(有識者)議員、RIZAPグループ経営諮問委員会委員等を務める。
経歴
和歌山県和歌山市小松原通にある商店街の小さな履物小売商の次男として、1951年(昭和26年)に生まれる。実家は近所では比較的裕福な家庭で、実兄の竹中宣雄は、後にミサワホーム社長となる人物であった。
和歌山市立吹上小学校、和歌山市立西和中学校、和歌山県立桐蔭高等学校に進む。1973年(昭和48年)に一橋大学経済学部を卒業。大学では国際経済学の山澤逸平ゼミに所属。また、大学のマンドリンクラブで指揮者を務めながら、プロの奏者から打楽器を習ったり、編曲を行い、音楽家を目指したが断念。仁坂吉伸和歌山県知事とは高校の同級生である。
博士取得まで
日本開発銀行設備投資研究所で初代所長を務めていた下村治にあこがれ、大学を卒業し同行に入行。1977年(昭和52年)、同所勤務、1981年(昭和56年)、ハーバード大学、ペンシルベニア大学客員研究員。ハーバード大学留学中は設備投資に関する合理的期待の実証研究を行った。1982年(昭和57年)、大蔵省財政金融研究室(後、独立機関「―財政金融研究所」となる)に出向し、次席主任研究官となる。当初2年の予定だったが、行動力がありローレンス・サマーズやジェフリー・サックスの知り合いだった竹中を気に入った長富祐一郎次長(のちに大蔵省関税局長)の希望で、5年間研究官を務めた。長富からは研究所への移籍をすすめられたが、これを断っている。ちなみにこの時の部下の一人が高橋洋一であった。
研究所在籍中の1984年(昭和59年)には留学中の研究成果をまとめた『開発研究と設備投資の経済学』(東洋経済新報社 1984年7月)と題す著作でサントリー学芸賞を受賞(ただし佐々木実『竹中平蔵 仮面の野望(前編)』(月刊現代2005年12月号)では当時の設備投資銀行の同僚の鈴木和志(現在明治大教授)や日本開発銀行での同僚高橋伸彰(現在立命館大教授)の実証分析の結果を無断で使用していた事実が指摘されている)。当時の同研究所には、次長の長富祐一郎や筆頭主任研究官の吉田和男がおり、同僚として植田和男、高橋洋一がいた。
大阪大学経済学部教授を務めていた本間正明の誘いで、1987年、大阪大学経済学部助教授に就任。以降研究者としての道を歩む。しかし、母校の一橋大学に前述した論文『開発研究と設備投資の経済学』を提出し経済学博士の取得を試みたものの、「あまりに初歩的すぎる」などとの意見が出て教授会での審査に不合格となる。この教授会の決定について、竹中の指導教官だった山澤逸平は、一橋大の失態であると後年述べている。1994年、大阪大学にて博士(経済学)を取得(論文名『日本経済の国際化と企業投資』)。
博士取得後
1989年(平成元年)、日本開発銀行を退職、ハーバード大学教授を務めていたジェフリー・サックスの誘いでハーバード大学客員准教授及び国際経済研究所客員フェローに就任。1990年(平成2年)に慶應義塾大学総合政策学部教授を務めていた加藤寛に誘われ、慶應義塾大学総合政策学部助教授に就任。1993年(平成5年)にアメリカ合衆国に移住。この年に出版された小沢一郎の日本改造計画の執筆に参加。コロンビア大学ビジネススクールにある「日本経営研究センター」(所長はパトリック・ヒュー教授)の客員研究員になる。1994年(平成6年)に大阪大学より博士号を取得。1996年(平成8年)に帰国、同年、慶應義塾大学教授に就任。
日本船舶振興会(現日本財団)の交付金で設立された基本財産397億円のシンクタンク「国際研究奨学財団(1999年から東京財団に改組)」の理事に1997年(平成9年)に就任、1998年(平成10年)に同常務理事、1999年(平成11年)に東京財団理事長。1998年(平成10年)に同財団内に設けられた「インテレクチュアル・キャビネット政策会議」では、(影の)総理に香西泰(後に政府税制調査会会長)、官房長官に島田晴雄(慶應大教授)と竹中、財政担当大臣に本間正明(大阪大教授、後に政府税制調査会会長)と吉田和男(京都大教授)、金融担当大臣に池尾和人(慶應大教授)と岩田一政(東京大教授、後に日本銀行副総裁)らが名を連ねた。これは実質竹中による政策会議で、自民党議員との交流会も頻繁に開かれ、竹中の紹介で小泉純一郎と会ったメンバーも多くいた 。
また日本興業銀行経営アドバイザーや、フジタ未来経営研究所(日本マクドナルドのシンクタンク)理事長、アサヒビール社外取締役等も務めた。
小渕政権
1998年(平成10年)7月、小渕内閣の経済戦略会議(議長:樋口廣太郎)の委員に就任。議長代理の中谷巌を中心とした学者グループの一員として、戦略会議の理論的支柱を形成した。この経験が、のちに竹中が経済財政諮問会議を切り回す土台となったとする説もある。
会議の結論としては、日本の短期経済政策には金融健全化と大胆な財政出動を伴う追加的景気政策が必要とし、内閣総理大臣小渕恵三に対し「10兆円を大きく上回る規模の追加的財政出動」などを提言した。その後、「日本経済再生への戦略」と題した答申を発表した 。
森政権
森内閣発足により設置されたIT戦略会議にて委員を務める。森内閣が推進するe-Japan構想に対しさまざまな提言を行った。
小泉政権
2001年(平成13年)の第1次小泉内閣と、2002年(平成14年)の第1次小泉内閣第1次改造内閣で経済財政政策担当大臣。金融担当大臣も兼任する。2003年(平成15年)、第1次小泉内閣第2次改造内閣においても留任、内閣府特命担当大臣として金融・経済財政政策を担当。2004年(平成16年)7月、第20回参議院議員通常選挙に自民党比例代表で立候補し70万票を獲得しトップ当選(史上唯一人の現職民間人閣僚たる新人参院候補)。同年9月、第2次小泉改造内閣において、参議院議員として内閣府特命担当大臣(経済財政政策)・郵政民営化担当に就任。小泉内閣の経済閣僚として、日本経済の「聖域なき構造改革」の断行を標榜する。日本振興銀行に異例の速さで銀行業免許付与。2005年(平成17年)9月、第3次小泉内閣においても役職はそのまま留任。同年10月、第3次小泉改造内閣においては総務大臣兼郵政民営化担当大臣に就任。NHKの完全民営化にも乗り出したが、首相の小泉純一郎が民営化に否定的な見解を示した為、頓挫する。2006年(平成18年)9月15日、任期を4年近く残し政界引退を表明。同年9月28日、参議院本会議で辞職許可(これに伴い神取忍が比例繰上当選)。同年11月1日、自民党党紀委員会において9月29日に提出していた離党届が了承された。さらに同日、慶應義塾大学に復帰することが明らかにされた。 国務大臣の在任期間1980日(2001年4月26日 - 2006年9月26日)は戦後の連続最長在任記録である。
小泉政権後
小泉政権後は、慶應義塾大学総合政策学部の教授のほか、同大学グローバルセキュリティ研究所所長、日本経済研究センター特別顧問、同センター研究顧問、森ビルのアカデミーヒルズ理事長、関西大学会計専門職大学院の客員教授を務めている。河野太郎、山本一太、世耕弘成らが結成した勉強会「プロジェクト日本復活」では顧問に就任している。また、人材派遣業のパソナにて特別顧問を務めたのち、同社の親会社であるパソナグループの特別顧問を経て取締役会長に就任した。
顧問団
2008年には韓国政府のアドバイザーとして顧問団に迎えられ、李明博という人物の颯爽と物事に対応する姿勢や前向きな政策論など、李明博が持つ並外れた強さに大いに感銘を受けたと語っている 。
公募委員
2012年9月、日本維新の会が、2012年衆院選の候補者を、選定するための「公募委員会」委員長に起用された。
安倍政権
第2次安倍内閣では、2013年1月8日、日本経済再生本部の「産業競争力会議」メンバーに内定。現在は、民間議員という立場にある。2014年1月からは、内閣府に置かれた、国家戦略特区の特区諮問会議メンバーとしても、活動をしている。2014年1月6日、田原総一朗、宮内義彦ら共に、NPO法人の万年野党を設立。5月31日、国家戦略特区のシンポジウムを東京・六本木で開催した 。
2015年には、オリックス社外取締役及び新生ホームサービス株式会社特別顧問に就任した。2016年、慶應義塾大学を定年退職し、東洋大学国際地域学部教授及び同大学グローバル・イノベーション学研究センター長、SBIホールディングス社外取締役、RIZAPグループ経営諮問委員会委員に就任。
政治家として
金融再生プログラム
金融再生プログラムは通称「竹中プラン」と呼ばれ、不良債権処理を推進すると就任時に演説した小泉総理の命を受け、経済財政政策担当大臣に着任、その後の内閣改造では金融担当大臣を兼務した。竹中の手により不良債権処理プログラムが作成され、銀行の資産査定についてDCF法を採用し厳格化すること、繰延税金資産の計上を適正化すること、自己資本比率の劣る銀行は公的資金を注入することなどの方針が定められた 。
資産査定を厳格化した結果、りそな銀行の自己資本比率は基準を下回り、足利銀行は債務超過であることが判明した。これらの銀行は預金保険機構により公的資金注入を受け、また粉飾会計を行っていた経営陣は後に刑事告発され有罪判決を受けた。
研究開発費の一律費用処理
会計基準の見直しにより、繰延資産の「試験研究費」を廃止し、研究開発費の一律費用処理を求めた。これについて、田淵隆明はSAPジャパンのコラムや衆議院の消費税の公聴会などで、我が国の製造業の弱体化と人材の流出の元凶であるとして早期の是正を求めている。研究開発投資は設備投資よりリスクが高いとみるのが一般的である。しかし、研究開発投資と同様、設備投資も失敗に終わることは珍しくなく、そうした場合は未償却部分を減損損失として処理し、最悪の場合には埋没費用として処分のための新たな費用を計上する。これらのことを鑑みれば、設備投資に準じて扱うべき研究開発投資が多々存在することもまた事実である。
ところが、日本では単年度ベースでの一律費用処理を求めることとなったため、製造業の弱体化と人材の流出の元凶となっているというのが田淵の主張の主旨である。田淵によれば、G7では日本を除く英・仏・独・伊はもちろんのこと、米・加でも償却資産として資産計上することが可能となっている。実務的には、多くの研究開発案件を抱える大企業は研究開発費用を経年で平準化させ得るが、対外的に収益性を重視せざるを得ない中小企業(近々の株式公開を目指していたり銀行融資に対する旺盛な資金需要を有する伸び盛りの企業等)では、研究開発費の一律費用処理はむしろ悩みの種となる。このためこの問題は現在でも論議を呼び起こしている。
郵政民営化
郵政解散後の第3次小泉内閣にて郵政民営化担当大臣に登用され、法案作成に携わった。これは郵貯・簡保の資金を外資に売り渡すためであったと批判されている。 三ヶ月間の政府与党協議では特に徹底して罵詈雑言を浴びせられ、 総務大臣の麻生太郎とは激しく対立し麻生からは「あんたは霞ヶ関に嫌われている。あんたが言うから、皆反対に回る」、また官邸閣議では参加者から「いつか仕返ししてやる」と吐き捨てられた 。
当初、野党民主党は欠席戦術を敷いていたが、郵政解散後は審議に参加するようになった。(#郵政民営化広報チラシ問題・#「アメリカ追従」批判)。
税制
戦後日本の極端な累進課税制は“悪しき結果平等”の価値観を普及させたとして、資本・労働など生産要素に対する課税を大幅に低下させ、かつ税率をフラット化する「フロンティア型の税制」を推奨しており、各労働の潜在能力を積極的に発揮させる意味で、所得税の最高税率を引き下げることが緊急の課題であるとしている。 サラリーマンのうち30%は所得税を一銭も払っておらず、勤労意欲を失うような税制にすべきではない、価値を産みだしている人を罰するつもりでないのなら、税にあまり差を付けない方がいいとしている。また、将来的には、収入に関係なく一律に課税する人頭税へ切り替えることを視野に入れた議論を行うことも必要だとしている 。
格差問題
「改革で格差が広がったということはない」と発言している。OECDの統計では、構造改革期に格差が縮小したことが示されている。
今日の格差批判は「金持ちはけしからん」という社会主義的格差感であり、「金持ちを貧乏人にしたところで、貧乏人が金持ちになるわけではない」というマーガレット・サッチャーの言葉を引用して、高い所得を得ている人がいること自体は解決すべき問題ではなく、努力しても貧しい人たちに社会的救済が必要であると述べた。ゆえに格差論ではなく、貧困論を政策の対象にすべきとしている。また、「格差ではなく、貧困の議論をすべきです。貧困が一定程度広がったら政策で対応しないといけませんが、社会的に解決しないといけない大問題としての貧困はこの国にはないと思います」と述べた。ただし、政府として貧困調査をきちんとすべきであると発言している 。
労働政策については、今日本に一番求められているのは積極的労働市場政策だとし、「団塊の世代の中間管理職が失業すると仕事はない理由は簡単で、役に立たないからです」としている。
非正規雇用については、正社員と非正社員の区別自体が妥当でない、オランダのように全員を正社員にするべきであると述べた。そのとき正社員個人の所得は低下するが、日本では正社員のほとんどは必要以上の所得を得ていることを指摘した。また、「問題は、今の正規雇用に関して、経営側に厳しすぎる解雇制約があることだ」と主張し、「解雇規制を緩和する、新たな法律を制定することが必要だ」と述べている。「安倍晋三内閣で同一労働同一賃金の法制化を行おうとしたが(労働ビッグバン)、既得権益を失う労働組合や、保険や年金の負担増を嫌う財界の反対で頓挫した」と述べ、経済的不平等の改善には改革が急務であると主張している 。
「格差が拡大する、それほど激しい競争は日本社会にはない」とし、「ほとんどが制度的な格差ですよ」と述べている。
「アメリカ追従」批判
郵政民営化など、竹中が進めた経済政策について、「アメリカのいいなりの経済政策を行っている」(対米従属)という批判に対し、竹中は「民間でできることは民間でやることが国民や国全体のためになるという思いでやっている」(官から民へ)、「アメリカのためにやるなどと考えたこともない」などと答弁した。また、「規制緩和で既得権を失う人たちが、私のことを憎いと思って、そういう感情的なレッテルを無理矢理貼っている。これは抵抗勢力の常套手段です」とも発言している。ノーベル賞経済学者ジョセフ・E・スティグリッツから寄せられた批判では、ワシントン・コンセンサスの実現によって「格差社会」が世界中に広がっているとされ、その中で竹中の経済政策も槍玉に挙げられた。
郵政民営化は小泉就任前の持論であっただが、野党は米国政府からの「年次改革要望書」などで示されるアメリカの要望に基づいたものではないかと批判し、これに竹中は「だれがどうこう言ったからということではなくて、国民の経済厚生を高めるために改革を行うという点に基づいて私は改革を進めている」、「郵政の問題について外国の方から直接要望を受けたことは一度もない」「報告書の内容をこれまで読んだことはなかった」と言明した。民主党の櫻井充は、米国通商代表ロバート・ゼーリックから竹中へ宛てた再任祝いの手紙を公表し、それに絡めて民営化された郵政会社がアメリカに買収される可能性を指摘し「拙速にこういう民営化など必要ない」と主張したが、竹中が個人私信であるレターのコピーを何故持っているのかと切り返したところこれは撤回された 。
また「新自由主義者」と呼ばれる事に対し、「郵政事業の民営化はオランダでもドイツでもイタリアでも実行されたが、だから新自由主義だなどと評された例はない。私のどこが新自由主義者なのか」「新自由主義だからウンヌンではなく、各論を論議すべき」と発言している 。
発言
「賃金も下がらなければならない。」
2001年、当時経済財政担当大臣であった竹中は『竹中平蔵の「日本が生きる」経済学』(106頁)において、次のように述べている。「物価が下がることはよいことであるが、本来ならそれに応じて賃金も下がらなければならない。ところが、現実は賃金は下げられない。売り上げが下がっても賃金は下げられないため、企業収益に対する労働分配率が上がってしまった」
また、竹中は「グローバリゼーション・技術革新によって、相対的にモノが安くなること(相対価格の下落)はよいことである。ただし、物価全体(一般物価)が下がり続けるという状況は避けなければならない」と述べている 。
「ETFは絶対儲かる」発言
2003年(平成15年)2月7日、閣僚懇談会において、各閣僚に上場投資信託(ETF)を積極的に購入するよう要請した同日の記者会見において、記者からETFを買いますかと問われた際、絶対もうかると思うから買うという趣旨の発言をした。
この竹中の発言は、金融市場を監督する内閣府特命担当大臣(金融担当)であるにもかかわらず特定の金融商品の有利性を喧伝している、ETFは元本が保証されない金融商品であるのに「絶対儲かると思うので買う」と発言するのは問題があるなどと批判された。
第156回国会では野党を中心に批判が強まり、仮に証券外務員が顧客に対してこのような発言をすれば違法行為になる、金融のトップがお墨付きを与えたと受け取られるような発言が悪用される恐れがある、などと批判がなされた。まず衆議院財務金融委員会では、五十嵐文彦から「証券会社の営業マンが、絶対もうかるから買いなさいと言ったら、これは言ってはいけないこと」と指摘がなされたうえで、証券会社の従業員が自ら発言せずとも竹中の発言を援用して金融商品を販売した場合、問題になるのではないかと質された。同様に、衆議院本会議において、山花郁夫から「金融担当大臣としてこうした発言をすれば、どこかで悪用されることは十分にあり得る」と批判され「仮に、証券会社の営業マンが、ホームページに掲げられていた旨を告げ、あるいは、そのホームページのコピーを示してETFの勧誘を行った、こういうケースの場合、証券取引法四十二条その他関係法律に違反する」と指摘された。
竹中は当初、「絶対もうかるから買いなさいというような趣旨で言ったのではなく、(記者に)買いますかというふうに聞かれて、投資家として絶対もうかると思っており、買うと言ったのだから訂正云々という問題ではない」としていた。同年2月14日の国会審議にて「誤解されかねない部分があったという面においては、必ずしも適切ではなかった」と自身の発言に問題があったことを認めた。また、証券会社が竹中の発言を引用した場合の是非についても、竹中は「証券会社の外務員等が顧客にETF購入を勧誘する際、私の発言を引用し、悪用して、ETFの価格について断定的判断を提供して勧誘していると認められるような場合には、証券取引法に違反する」と認め、誤解を招く可能性があったとして謝罪した。
一連の騒動について、内閣官房長官福田康夫は、「公の場での発言としては多少問題があった」との見解を示した。同日、竹中は金融庁のウェブサイトから該当発言を削除した 。
なお、ETFの価格はこの発言から竹中が政界を引退する2006年までに概ね2倍以上に値上がりした。
「民営化された日本郵政はアメリカに出資せよ」発言
BS朝日・朝日ニュースター放送の番組『竹中平蔵・上田晋也のニッポンの作り方』にて「民営化した日本郵政はアメリカに出資せよ」との見解を語った。米国のバブル経済が崩壊し、サブプライムローンに端を発した問題が顕在化し始めていたさなかの2008年4月の番組にて提案している。
竹中は一連の問題を「サブプライムローンそのものが悪いわけではない、リスク管理が甘く慎重に審査して貸しつけていなかった、一義的には金融機関が経営に失敗したということ、銀行としては証券化してリスク分散したはずが、結果的にリスクが社会中に広がってリスク拡散になってしまった。それが今回のサブプライム問題の本質。」「一番の責任者をグリーンスパン前FRB議長が行ったことに問題があったという穿った見方も強いが、誰かに責任を着せるのではなく前向きに対処を考えていかなければいけない。問題は誰にも予想できなかったこと。」
と一連の問題を評した上で「民営化した郵政はアメリカに出資せよ」との見解を語った。
「そこで今回ニッポンの作り方として『民営化された日本郵政はアメリカに出資せよ』と申し上げたい。ある国が政治的な意図をもってアメリカの金融機関を乗っ取ってしまったら、アメリカ経済が影響を受けるのではという懸念も出てきている。日本郵政は民営化したので、今はSWFではない。だからアメリカから見ると安心して受け入れられる民間の資金。アメリカに対しても貢献できるし、アメリカの金融機関に出資することで新たなビジネスへの基礎もできる。」として郵政マネーをアメリカへ出資すべきとの見解を語った。
「too big to fail」発言
ニューズウィーク2002年10月16日号で「四大銀行であっても、“too big to fail”(潰すには大き過ぎ)の考えはとらない」と発言し、日経平均株価を暴落させた。マスコミも「金融システムの安定に責任を持つ金融相の発言としては、軽率極まりない。片岡直温蔵相の失言が引き金になった昭和二年の金融恐慌を想起させる(読売新聞社説)」と批判し、国会で追及された。「誤解を招いたとしたら不徳の致すところだ」と陳謝しつつ、「そんな発言はしていない」と弁解。
その後、メガバンクを含む金融機関の再編が進み、竹中が政界を引退する2006年までに金融システムは安定化した。
日本経済は余命3年
書籍『日本経済 余命3年』の中で竹中は「日本経済は余命3年」との見解を示した。著書は池田信夫、土居丈朗、鈴木亘との共著で、2010年11月にPHP研究所により出版された。この中で「2012年-2013年までが最後のチャンスとし、政府の債務残高は今後2、3年で約1100兆円に達する見込みで、このまま家計の純資産1100兆円を上回る国債発行がなされると、国内貯蓄で政府債務を吸収できなくなり、債券安・株安・円安のトリプル安になり日本は財政破綻へ向かうであろう」との見解を語っている。
またこのまま2015年からは広義団塊の世代が年金受給年齢に入り、社会保障費が増大することも踏まえると、2012年-2013年までがこうした状況を見直す最後のチャンスであり、それを超えて今の状況が続くと何が起こるかわからない。国債に関して「最悪のシナリオとして、国債の暴落とそれに伴う金利上昇により、株価が下がり、日本経済のファンダメンタルズ全体に対する信頼の揺らぎから、通貨が売られ円安となり、債券安・株安・円安のいわゆるトリプル安となり日本は破綻するという可能性があり、これを防ぐためには、市場の期待値を保つことが重要である。」との見解を語っている。
不良債権は1.5倍に増え、失業率も急騰するけれども、その後に成長できる
2012年7月8日の投資家向けセミナー(当時は2007年7月の半値に日経平均株価が低迷していた)において、次のように発言。「(雇用調整給付金を止めれば)不良債権は1.5倍に増え、失業率も急騰するけれども、その後に成長できる。」
若者には貧しくなる自由がある。そのときに頑張って成功した人の足を引っ張るな
東洋経済でのインタビューで次のように述べた。「(若い人に1つだけ言いたいのは)みなさんには貧しくなる自由がある」「何もしたくないなら、何もしなくて大いに結構。その代わりに貧しくなるので、貧しさをエンジョイしたらいい。ただ1つだけ、そのときに頑張って成功した人の足を引っ張るな。」
将来の大きな痛みを回避するため、いま(増税という)若干の痛みを我慢する
2014年9月17日、岐阜信用金庫の取引先若手経営者が主催した講演会 の中で、消費税増税の経済への打撃は若干あるとの認識を示しつつも次のように語った。「将来の大きな痛みを回避するため、いま若干の痛みを我慢する。影響を打ち消すような改革を実行し、経済を筋肉質にすべき」
正社員をなくせばいい
2015年1月1日テレビ朝日の‪朝まで生テレビ!‬に出演した際に「正社員をなくせばいい」と発言したことが話題になっている。 非正規社員であっても正社員と同じ賃金や待遇を得られる「同一労働・同一賃金」の制度が必要だと主張している。
トラブル
木村剛との関係
金融担当大臣時代に、自ら木村剛を選び金融庁顧問にした。その為、木村と深い連携関係にあり、互いを擁護する発言を続けていた。小泉・竹中・木村剛ラインと言われた。
竹中が2004年(平成16年)の第20回参議院議員通常選挙に立候補した際は新橋で応援演説を行った。
木村が理事長を務める『フィナンシャルクラブ』の最高顧問を竹中が務めていた。
木村が立ち上げた日本振興銀行を推したのも竹中。
高杉良の経済小説には、竹中・木村と竹中の側近であった岸博幸の3人が、日本の経済政策を誤った方向に導く人物として仮名でたびたび登場している。
住民税脱税疑惑
1993年から1996年の4年間にわたって住民票を米国に移動させることにより日本の住民税を免れていた(フリーライド)のは脱税ではないかとの疑惑を写真週刊誌『フライデー』が2002年に報じた。この疑惑は国会で追及され、竹中はその期間に関しては米国に住居を所有し、一年のうち日本で活動する4月から7月までを除いて米国で家族とともに生活していたこと、主な所得は慶應義塾大学の助教授としての給与から得ていたことなどを明らかにした。また、米国での所得は原則として得ていないものの、同国の地方税(住民税)は支払っていると主張したが、納税証明の提出については拒否した 。
2003年、竹中は疑惑を報じた『フライデー』を発行する講談社に対し、名誉毀損を理由に損害賠償等請求訴訟を東京地方裁判所に起こした。裁判は2004年9月に「登録移転は脱税目的ではない」として講談社に200万円の賠償を命じる判決が出され、竹中が勝訴する。これに対し、講談社は直ちに東京高等裁判所に控訴するが、高裁は「脱税の事実が証明されていない」として地裁判決を支持したうえで、賠償額を120万円に減額して控訴を棄却した。講談社はさらに最高裁判所に上告するが、2006年2月23日、最高裁は上告を退け講談社側の敗訴が確定した 。
これらの判決によって、疑惑報道が十分な裏付けのないものであったことが認められたが、主に構造改革路線に反対する立場の格好の標的となり、様々な批判が浴びせられている 。
郵政民営化広報チラシ問題
内閣府政府広報室が頒布した郵政民営化を広報する新聞折り込み広告について、野党は以下の点を追求した。
竹中の政策秘書の『知り合いの人物が経営する会社』に発注したこと
その契約が随意契約であること
竹中もしくは秘書官が『圧力』をかけたのではないかということ
また、契約も配布先も決まっていない段階で仕事が進められていたことや、登記簿を調べないで契約していたことなどが明らかにされた。また、広報の作成並びに契約等々の経緯についての政府参考人の答弁や説明において意図的な資料の改ざんがあったのではという指摘をうけたことに対し、政府広報室を管轄する内閣官房長官の細田博之が遺憾の意を示した。竹中も大臣として謝罪を求められたが、個別の契約行為は自分の所管外だと答弁している。竹中は会社社長と名刺交換したことはあるが、食事をしたこともなく特別な関係はないとしている。また、「随意契約の場合、契約書の締結が必要」との会計法の定めを発注担当者が順守していないため同法違反だという指摘に対しても、内閣府政府広報室の業務については所管外であり「答弁する資格がない」と回答している。また、契約についての想定問答集やIQ(知能指数)の低い層にターゲットを絞った広報戦略を示した同社の資料についても承知していないと述べた 。
ミサワホーム売却問題
ミサワホームが産業再生機構を経てトヨタ自動車に売却される過程で、竹中らによる「公権濫用」があったとミサワホーム元会長が告訴(訴追には至らず)。
2004年(平成16年)12月28日、ミサワホームが経営不振から産業再生機構の管理下におかれ、翌年3月31日、トヨタ自動車がミサワホームのスポンサーになることが決定した。このミサワホーム売却を巡り、ミサワホーム創業者の三澤千代治側が竹中を警視庁に刑事告発した。
2002年(平成14年)5月、兄・宣雄(当時ミサワホーム東京社長)が「弟の平蔵と話しているのだが、(産業)再生機構を活用したらどうか」と三澤(当時ミサワホーム会長)に提案した。三澤はその提案を拒否したが、その後ミサワホームの経営状況は悪化の一途を辿り、不良債権化の懸念が強まった。2003年(平成15年)10月、竹中宣雄が「弟から電話があった。トヨタの奥田会長と会ってほしい」と三澤に再度要請した。くわえて、会談の前日には平蔵自らが三澤に日時の確認を行っていた。
これらの行為に対し、三澤は「国務大臣としての職務を逸脱した一企業への圧力であり、職権濫用にあたる」と主張し、刑法193条に基づき「公務員職権濫用罪」容疑で警視庁に刑事告発した。竹中側は「適正な職務執行であり、職権濫用ではない」と反論しており、三澤の主張を否定している。国会審議でも竹中の言動について取り上げられたが、竹中自身は指摘された事実はないとして、三澤側の主張に反論している。結局、訴追には至っていない。
マクドナルド未公開株問題
日本マクドナルドの株式を未公開当時から1500株保有。2001年7月の店頭公開で巨万の富を手にした。「濡れ手に粟だ」と批判されている。佐高信は揶揄を込めて「マック竹中」と呼んだ 。
共同研究の無断販売
2005年(平成17年)、『月刊現代』は竹中の処女作『開発研究と設備投資の経済学』(東洋経済新報社 1984年7月)の内容は「設備投資研究所」時代の同僚・鈴木和志(現在明治大教授)や日本開発銀行での同僚高橋伸彰(現在立命館大教授)との共同研究の成果であり、その同僚は自分単独の名前で発表したいとの竹中からの申し出を断っていたのに、勝手に竹中の単独の著書として出版されたことにショックを受けたことなどを報じた 。
業務停止命令の金融会社の広告塔
2013年10月、金融商品取引法違反で業務停止命令を受けたアブラハム・プライベートバンクの関連メディアのゆかしメディアにたびたび出演し、日銀副総裁に就任する前の岩田規久男とともに広告塔として活躍していた。なお、岩田は自身については「謝礼などは一切受け取っていない」「インタビュー以外の関係はない」と説明している 。
サクセス・コーチの広告塔
成功哲学とコーチングの要素も持つ自己啓発セミナー「サクセス・コーチ」の第一人者、アンソニー・ロビンズの2014年4月の初来日セミナーの際、主催したラーニングエッジ株式会社のオファーでセミナー講師陣のひとりとして講演を行った 。
パソナ取締役会長としての利益相反問題
竹中は小泉政権時代に国公立大学・大学院の教職にあるものの兼業規定を廃止することを主張。現在では政策研究大学院大学(規制改革会議の大田弘子が一例)や一橋大学などが兼業規定を事実上撤廃もしくは緩和している。したがって、政府の民間議員や有識者委員になる学者が、民業の要職に就任しているというケースが生じる。
このような背景から、政府の政策決定における利益相反を深刻化させてしまう問題が指摘されている。竹中はテレビ愛知の討論番組「激論!コロシアム 〜これでいいのか?ニッポン〜」の中で、三橋貴明の批判に対して成功した者の足を引っ張っているだけとして「根拠のない言いがかりだ。失礼だ! 無礼だ!」と反論したが、利益相反が起きることについては認めた 。
2016年7月には、神奈川県の特区で緩和された家事支援外国人受入事業にパソナが認定され、審査する側が仕事を受注していて公平性が保てないと批判された。同じく竹中が社外取締役を務めるオリックスの「オリックス農業」が、農業特区に指定された兵庫県養父市に参入していたため、同社とともに自民党議員からも批判にさらされた。なお『週刊朝日』は、これらのレントシーキングについて竹中とパソナに見解を求めたが、回答を寄越さなかった。加計学園問題については、竹中は他の民間議員らとともに「一点の曇りもない」と釈明している。
ASKAとパソナ子会社の女性社員が逮捕されたことで知られるようになったパソナの迎賓館「仁風林」で、女性芸能人やパソナ子会社のコンパニオンたちが政界・財界の男たちを接待していた疑惑について竹中は、「いろいろな企業の方を集めてセミナーをしています。はっきり言って真面目なパーティですよ。」とコメントしている 。
大宅壮一ノンフィクション賞受賞ジャーナリストの佐々木実は、「利害関係のある人物が雇用規制の緩和に関与するのは、政治が生む利益を追い求める『レントシーカー(利権あさり)』だ。」それが、竹中氏の正体だと言っている 。
不祥事
国民年金保険料の未納
2004年(平成16年)4月28日、国民年金の保険料を支払っていなかったことが発覚した。一般市民により国民年金法違反容疑で大阪地方検察庁堺支部に告発されている。 
■八田達夫 アジア成長研究所所長 / 大阪大学社会経済研究所招聘教授 
[ 1943- ] 日本の経済学者。東京都生まれ。福岡県育ち。Ph.D.(ジョンズ・ホプキンス大学、1973年)。専門は応用ミクロ経済学、公共経済学、都市経済学、法と経済学など。アジア成長研究所所長、経済同友会政策分析センター所長、前政策研究大学院大学学長、経済産業研究所ファカルティフェロー、大阪大学名誉教授、電力取引監視等委員会委員長。
1961年 - 福岡県立小倉高等学校卒業
1966年 - 国際基督教大学教養学部社会科学科卒業
1971年 - ジョンズ・ホプキンス大学大学院経済学研究科経済学専攻博士課程修了
1972年 - オハイオ州立大学経済学部助教授
1973年 - 埼玉大学教養学部講師
1975年 - 埼玉大学教養学部助教授
1978年 - ジョンズ・ホプキンス大学経済学部助教授
1980年 - ジョンズ・ホプキンス大学経済学部准教授(1981年、コロンビア大学経済学部客員準教授)
1985年 - ジョンズホプキンス大学経済学部教授
1986年 - 大阪大学社会経済研究所教授(1990年、ハーバード大学経済学部客員研究員、1991年、コロンビア大学経済学部客員教授)
1997年 - 大阪大学社会経済研究所所長(1999年3月まで)
1999年 - 東京大学空間情報科学研究センター教授
2004年 - 国際基督教大学教養学部国際関係学科教授
2007年 - 政策研究大学院大学学長、国際基督教大学教養学部客員教授
2011年 - 大阪大学招聘教授、学習院大学客員研究員・特別客員教授
2013年 - 経済同友会政策分析センター所長、アジア成長研究所所長
2015年 - 電力取引監視等委員会委員長(2016年、電力・ガス取引監視等委員会に改組)
学外における役職
日本経済学会会長
法と経済学会会長
国際財政学会理事
日本財政学会理事
政府関係委員等
内閣府総合規制改革会議委員
内閣府規制改革・民間開放推進会議委員
内閣府規制改革会議議長代理
内閣府国家戦略特別区域諮問会議有識者議員
内閣府国家戦略特別区域ワーキンググループ座長

日本の電力自由化議論を先導し、発送電分離と電力リアルタイム市場創設の必要性を訴えている。
規制緩和について「日本経済の問題は権益集団がいたるところに存在し、さまざま産業に参入障壁を設けていることである」と述べている。
原子力発電所政策について「原発はそれ自体、使用済み燃料処分の社会的コストや事故発生の危険性など大きな外部不経済を発生させる。それら全ての外部不経済が発生させる費用に課税(原発公害に対するピグー税)し、電源の利用者にその外部費用を負担させた上で、発電事業者に電源の一つとして原子力を選択するか否か決めさせればよい。原発を稼働させるには、フィルタードベントの欠如等の明らかな欠陥を全てなくすことは大前提である」「事業者が原発事業の採否に関する判断を、政府による救済補助への期待無しに出来るように、政府は使用済み核燃料の処分費用と具体的処分プロセスの提示をすべきである」と指摘している。 
 
経済財政諮問会議

 

日本の内閣府に設置されている「重要政策に関する会議」の一つである。設置根拠は内閣府設置法第18条。内閣総理大臣の諮問を受けて、経済財政政策に関する重要事項について調査審議する。橋本行革による2001年1月の中央省庁再編によって設置された。
1 性 格
経済財政政策に関する重要事項について、有識者等の優れた識見や知識を活用しつつ、内閣総理大臣のリーダーシップを十全に発揮することを目的として、内閣府に設置された合議制機関。
2 構成員
(1) 人数を、議長(内閣総理大臣)及び10名の議員、計11名以内に限定。
(2) 内閣官房長官、経済財政政策担当大臣以外の議員は法定せず。
(3) 民間有識者の人数を、議員数の4割以上確保することを法定。
(4) 上記「議員」の他に、議案を限って、他の国務大臣を、「臨時議員」として、会議に参加させることができる。
3 所掌事務
(1) 内閣総理大臣の諮問に応じて、経済全般の運営の基本方針、財政運営の基本、予算編成の基本方針その他の経済財政政策に関する重要事項についての調査審議
(2) 内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じて、国土形成計画法に規定する全国計画その他の経済財政政策に関連する重要事項について、経済全般の見地から政策の一貫性・整合性を確保するための調査審議
(3) 上記(1)(2)について、内閣総理大臣等に意見を述べること
4 事務局機能
(1) 内閣府の内部部局のうち、経済財政政策に関する総合調整を担当する政策統括官部門が、事務局機能を担う。
(2) 同部門には、行政組織の内外から人材を登用する。
(3) 経済財政諮問会議が有効に機能するため、内閣府と内閣官房の連携を図る。
( 2016年8月3日〜) 
総理大臣(議長)     安倍晋三
官房長官         菅義偉
経済財政(担当大臣)  石原伸晃
総務大臣         高市早苗
財務大臣         麻生太郎
経産大臣         世耕弘成
日本銀行総裁(日銀総裁) 黒田東彦
民間有識者 (民間議員)
財界    榊原定征(東レ株式会社 取締役会長)
       新浪剛史 (サントリーホールディングス株式会社 代表取締役社長)
学者    高橋進 (日本総合研究所理事長)
       伊藤元重(東京大学大学院経済学研究科教授)
平成29年
第1回 平成29年1月25日
平成29年1月25日、安倍総理は、総理大臣官邸で平成29年第1回経済財政諮問会議を開催しました。会議では、「中長期の経済財政の展望と再生」、「米国等の国際経済」及び「経済財政諮問会議の今後の検討課題」について議論が行われました。総理は、本日の議論を踏まえ、次のように述べました。
「第一に、中長期の経済財政の展望と再生について議論いたしました。経済再生と財政再建、社会保障改革の3つを同時に実現しながら、一億総活躍の未来を切り拓いていかなければなりません。まずは来年度予算や税制改正法を早期に成立させる必要があります。このうち、税制については、働き方改革を進めるため、配偶者控除の見直しや企業の賃上げを促す所得拡大促進税制の見直しを行うこととしております。企業におかれても、配偶者手当の見直しや、少なくとも昨年並みの水準の賃上げなど、前向きな取組を是非お願いしたいと思います。第二に、諮問会議の今後の検討課題について議論いたしました。民間議員からは、世界経済のリスクに万全に対応し、自由貿易体制の維持と強化に貢献するとともに、強靭な国内経済を構築することが重要との意見がありました。また、今後取り組むべき重点課題として、格差を固定化させないための人材への投資、活力ある中間層の形成、社会保障改革の推進等が挙げられました。石原大臣には、本日の議論を踏まえ、今年前半の諮問会議のアジェンダの取りまとめをお願いいたします。」 
第2回 平成29年2月15日
会議では、米国等の国際経済についての議論が行われた後、金融政策、物価等に関する集中審議が行われました。総理は、本日の議論を踏まえ、次のように述べました。
「第一に、米国を始めとした国際経済について、議論を行いました。日本と米国は、世界のGDPの30パーセントを占め、力強い世界経済の維持、金融の安定性の確保、雇用機会の増大という利益を共有しています。先日の米国訪問において、日米がウィン・ウィンの経済関係を一層深めるために、麻生副総理とペンス副大統領の下で、新たな経済対話の枠組みを立ち上げることになりました。建設的な議論をしていきたいと思います。第二に、金融政策、物価等に関する集中審議を行いました。日本経済のデフレ脱却に向けて、政府と日本銀行とが一体となって、三本の矢をうち続けていかなければなりません。今年の春季労使交渉においても前向きな成果が出ることを期待したいと思います。民間議員からは、所得の伸びと比べて消費の回復テンポが伸び悩んでいるといった指摘もありました。新たな個人消費を喚起しようという取組として、今月24日から毎月、プレミアムフライデーが実施されます。政府においても、できる限り多くの職員が楽しめるよう工夫したいと思います。」 
第3回 平成29年3月14日
会議では、「米国等の国際経済について」の議論が行われました。総理は、本日の議論を踏まえ、次のように述べました。
「本日は、私も数度お目にかかっている、そして私たちの三本の矢の政策について御助言もいただいているノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ・コロンビア大学教授をお迎えいたしまして、世界経済の情勢や政策課題についてのお話を伺いました。教授からは、先進国は生産性の伸びの鈍化や格差の拡大といった共通の課題を抱えている、そして成長の果実を人々が共有することが大切であり、所得の公平化、教育・健康・介護サービス部門の強化、イノベーションの促進などに取り組むべきであるというメッセージをいただきました。こうした教授の御意見は、今、我々がアベノミクスの第二ステージとして進めている政策の考え方と相通ずるものがあると感じます。安倍政権では、第四次産業革命を背景とした研究開発投資の促進、そして年率3%引き上げて1000円を目指す最低賃金、非正規の処遇改善のための同一労働同一賃金の導入などの働き方改革、そして介護や保育の環境整備、そしていくら貧しい家庭に生まれたとしても、また貧しくても高等教育を受けることができる制度、政策を進めていかなければならない、改めてこのように認識いたしました。そして、これを更に加速しなければならないとの思いを強くしたところでございます。最後になりますが、今回海を渡ってお越しいただき、大変貴重な御助言をいただきましたスティグリッツ教授に心から感謝を申し上げまして、御挨拶とさせていただきたいと思います。」 
第4回 平成29年3月30日
会議では、骨太方針2017の策定に向けて議論が行われました。総理は、本日の会議を踏まえ次のように述べました。
「本日、骨太方針2017に向けて議論を開始いたしました。民間議員からは、超スマート社会(Society5.0)の実現、イノベーションの創出を通じて日本経済の潜在成長率を引き上げていくため、骨太方針を貫く基本的考え方を人材への投資を通じた経済社会の生産性の引上げに置き、その大方針の下、包括的に政策を推進すべきとの提言をいただきました。安倍内閣は、一億総活躍、働き方改革と進めてきましたが、成長戦略の中心に人材への投資による生産性向上を据える方向で、しっかりと議論を深めていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。」 
第5回 平成29年4月12日
会議では、消費の活性化及び社会保障改革について議論が行われました。総理は、本日の会議を踏まえ次のように述べました。
「第一に、消費の活性化について議論しました。消費動向の変化には、若年層の所得の不安定化や消費の構造変化などの影響も考えられ、民間議員からは可処分所得を継続的に拡大するとともに、潜在需要を顕在化すべきといった意見がありました。このため、経済界には引き続き処遇の改善をお願いするとともに、最低賃金の引上げや、同一労働同一賃金の実現のための法案の提出などの働き方改革を進めることで、消費の活性化につなげていきたいと思います。第二に、社会保障改革について議論しました。民間議員からは一人当たりの医療費が高い地域は介護費も高くなる傾向にあり、健康増進や予防の推進とともに、医療と介護を一体的に改革していくべきという意見がありました。これに対して、塩崎大臣から、データの活用やインセンティブ改革を通じて保険者機能や都道府県のガバナンスを抜本的に強化するとの発言がありました。2025年には団塊の世代が全て75歳以上となり、医療・介護ニーズも大きく変わっていくことが見込まれます。あと残り8年となりますが、それぞれの地域で、どの患者も適切な医療や介護を適切な場所で受けられるようにしていく必要があります。その第一段階として、この3月までに、全都道府県において地域ごとの将来の病床数を盛り込んだ地域医療構想の策定が完了し、目指す将来像は明らかになりました。今後は実行段階であり、構想の具体化に向けた工程と手段を決定していく必要があります。その際、データを最大限活用する、中長期的に持続可能で効率的なものとする、アジア諸国の模範にもなるようにする、といった視点で取組を進めることが重要であります。民間議員の意見も踏まえ、塩崎大臣を中心に、自治体の先進事例の横展開や、病床のスムーズな転換方策等、実効的な施策をスピード感をもって検討・実施していただきたいと思います。」 
第6回 平成29年4月25日
会議では、人材投資と文教分野及び地方創生と社会資本整備の在り方について議論が行われました。総理は、本日の議論を踏まえ次のように述べました。
「本日は、第一に、人材投資と文教分野の在り方について議論しました。人材への投資や教育の質の向上は、労働生産性を上げ、成長と分配の好循環を加速させる上で重要であります。民間議員からも大学改革を中心に御意見を頂きました。関係大臣におかれては、民間議員の意見も踏まえ、議論を深めていただきたいと思います。第二に、地方創生と社会資本整備の在り方について議論を行いました。民間議員からは、PPP・PFIの推進や土地利用の再生を通じて、地域の生産性が上がる社会資本整備を実現していくことが大切であるとの意見がありました。PPP・PFIについては、石原大臣が中心となって実行していただくとともに、土地利用の再生については、官房長官及び関係大臣が連携し、速やかに成果を上げていただくようお願いいたします。」 
第7回 平成29年5月11日
会議では、金融政策、物価等に関する集中審議及び地方行財政改革に関する議論が行われました。総理は、本日の議論を踏まえ次のように述べました。
「本日は、第一に、金融政策、物価等に関する集中審議を行いました。デフレから脱却し、持続的に経済を力強く成長させていくためには物価の上昇に後れを取らないような賃上げが必要です。本年の春季労使交渉では、多くの企業で4年連続のベアを実施するなど過去3年の賃上げの流れが続いています。このような流れが中小企業にも広がり、幅広い賃金上昇が実現することを期待したいと思います。第二に、地方行財政改革について議論を行いました。民間議員からは、地方行財政サービスの地域差や非効率の原因を徹底的に分析し、自治体が説明責任を果たすよう促すべき、先進事例の横展開の取組や地方公営企業の経営を強化すべきという意見がありました。民間議員の意見も踏まえ、高市大臣が中心となって、地方における各種基金や地方単独事業の実態をしっかりと分析してもらいたいと思います。そして、地方公営企業の改革を始めとする地方行財政改革を加速していただきたいと思います。」 
第8回 平成29年5月23日
会議では、社会保障改革、「未来への投資を実現する経済対策」の執行状況及び骨太方針について議論が行われました。総理は、本日の議論を踏まえ、次のように述べました。
「本日は、第一に社会保障改革について議論しました。薬価制度の抜本改革に向けて、民間議員から、革新的な新薬を育てながらそうでない薬の価格は抑制していくための仕組みの在り方など、様々な提案がありました。塩崎大臣におかれては、本日の議論も踏まえ、創薬イノベーションの促進を図りつつ、国民負担の軽減と医療の質の向上の両立に向けて、年内に結論を得られるよう引き続き議論を深めていただきたいと思います。第二に経済対策の執行状況を確認しました。オリンピックなども控えて建設需要が高まる中で、官・民の建設工事を共に円滑に進めていくためには、担い手確保の取組や生産性向上の取組への積極的な対応が必要だという議論がありました。石原大臣におかれては、引き続き経済対策の実施状況のフォローをお願いします。石井大臣におかれては、本日の議論を踏まえ、対応をしっかりと図っていただきたいと思います。第三に骨太方針の骨子案を議論しました。来月に骨太方針を取りまとめられるよう、本日の議論を踏まえ、具体化の作業を加速していただきたいと思います。」 
第9回 平成29年6月2日
会議では、子育て安心プランについての報告及び骨太方針に向けた議論が行われました。総理は、本日の議論を踏まえ、次のように述べました。
「本日は骨太方針の素案について議論を行いました。今年の骨太方針では、人口減少、少子高齢化の克服と一億総活躍社会の実現に向けて、成長と分配の好循環を加速させるためには、働き方改革や成長戦略の実行に加えて、人材への投資を通じた経済社会の生産性の向上こそが鍵となることを示したいと思います。改革に当たっては、基礎的財政収支を2020年度までに黒字化し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指します。このため経済再生なくして財政健全化なしとの方針の下、デフレ脱却と経済再生、歳出改革、歳入改革という3つの改革を確実に進めていかなければなりません。石原大臣にはこれまでの議論を踏まえて、与党とも議論を進め、スピード感をもって骨太方針として取りまとめるよう御尽力いただきたいと思います。」 
第10回 未来投資会議との合同会議 平成29年6月9日
会議では、「経済財政運営と改革の基本方針2017」(案)及び「未来投資戦略2017」(案)について議論が行われました。総理は、本日の議論を踏まえ、次のように述べました。
「本日、こうして骨太方針2017と未来投資戦略2017を取りまとめていただき、心から感謝申し上げます。4年半のアベノミクスの取組により、GDPは過去最高の水準となりました。国民生活に密接な関係を持つ雇用は大きく改善し、賃上げの流れも続いています。この勢いを更に加速させ、成長と分配の好循環を拡大していくため、働き方改革の実行に加えて人材への投資を通じた生産性の向上を図る。また、イノベーションをあらゆる産業や日常生活に取り入れ社会課題を解決するSociety 5.0の実現を図る。そのために必要な取組をどんどん具体化してまいります。この後、骨太方針と未来投資戦略を閣議で決定いたします。石原大臣におかれては、関係大臣と協力してこの骨太方針と未来投資戦略を直ちに実行に移していただくようにお願いいたします。議員各位には、多大な御尽力をいただきましたことに改めて感謝申し上げますとともに、一億総活躍社会の実現に向けて、引き続き御協力を賜りますようによろしくお願い申し上げます。」 
第11回 平成29年7月14日
会議では、平成30年度予算の全体像について議論が行われました。総理は、本日の議論を踏まえ、次のように述べました。
「本日は平成30年度予算の在り方について議論しました。民間議員からは歳出・歳入改革の推進、予算編成のポイントについて多くの御意見をいただきました。次回は、概算要求基準などについて議論したいと思います。本日の提言・意見を踏まえ平成30年度概算要求基準については、第一に、予算の重点化を進めるため、人づくり革命の実現に向けた人材投資や地域経済・中小企業・サービス業等の生産性向上に資する施策などについて要望枠を設けること。第二に、骨太方針で検討を進めるとされた幼児教育・保育の早期無償化や待機児童の解消、高等教育を含めた人材投資の抜本強化のための改革の在り方といった事項については、財源とあわせ、別途予算編成過程で検討できる枠組みとすることを基本方針として財務省には概算要求基準案を準備いただきたいと思います。一億総活躍社会の日本をつくるため、人づくり革命の実現に向けて歳出改革を含めて、しっかりとした予算編成を行ってまいります。」 
 
日本経済再生本部

 

日本の内閣に設置された組織。2012年12月26日の閣議によって決定された。
1.我が国経済の再生に向けて、経済財政諮問会議との連携の下、円高・デフレから脱却し強い経済を取り戻すため、政府一体となって、必要な経済対策を講じるとともに成長戦略を実現することを目的として、内閣に、これらの企画及び立案並びに総合調整を担う司令塔となる日本経済再生本部(以下「本部」という。)を設置する。
2.本部の構成員は、次のとおりとする。ただし、本部長は、必要があると認めるときは、関係者の出席を求めることができる。
 本部長 内閣総理大臣
 本部長代理 副総理
 副本部長 経済再生担当大臣兼内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、内閣官房長官
 本部員 他の全ての国務大臣
3.本部の庶務は、内閣府の助けを得て、内閣官房において処理する。
4.前各項に定めるもののほか、本部の運営に関する事項その他必要な事項は、本部長が定める。
 
規制改革会議

 

内閣府設置法に基づく内閣府本府組織令38条にて設置され、同令39条により、「経済に関する基本的かつ重要な政策に関する施策を推進する観点から、内閣総理大臣の諮問に応じ、経済社会の構造改革を進める上で必要な規制の在り方の改革(国及び地方公共団体の事務及び事業を民間に開放することによる規制の在り方の改革を含む)に関する基本的事項を総合的に調査審議すること」をつかさどる機関(審議会)である。
2010年3月末での任期満了に伴い、行政刷新会議の下に設置された規制・制度改革に関する分科会を受け皿とする形で、規制改革推進本部は廃止され、規制改革会議は終結したが、2013年1月18日、第2次安倍内閣は当会議の復活を閣議決定し、同月23日に内閣府内に設置された(議長:岡素之)。2016年、地方創生を進めていくために規制改革推進会議へ移行された。
規制改革会議委員 (2013年1月23日-2016年7月31日)
議長    岡素之  住友商事相談役
議長代理 大田弘子 政策研究大学院大学教授、元経済財政政策担当大臣
 安念潤司 渡部晃法律事務所弁護士
 浦野光人 株式会社ニチレイ代表取締役会長
 大崎貞和 株式会社野村総合研究所主席研究員
 翁百合   株式会社日本総合研究所理事
 金丸恭文 フューチャーアーキテクト株式会社代表取締役会長兼社長
        総合研究開発機構代表理事
 佐久間総一郎 新日鐵住金株式会社常務取締役
 佐々木かをり 株式会社イー・ウーマン代表取締役社長
 滝久雄  株式会社ぐるなび代表取締役会長
 鶴光太郎 慶応義塾大学大学院商学研究科教授
 長谷川幸洋 東京新聞・中日新聞論説副主幹
 林いづみ 永代総合法律事務所弁護士
 松村敏弘 東京大学社会科学研究所教授
 森下竜一 アンジェスMG株式会社取締役
規制改革推進会議
内閣府設置法37条2項に基づき内閣府本府組織令(31条、32条、規制改革推進会議令)にて設置され、同令32条により、「経済に関する基本的かつ重要な政策に関する施策を推進する観点から、内閣総理大臣の諮問に応じ、経済社会の構造改革を進める上で必要な規制の在り方の改革(情報通信技術の活用その他による手続の簡素化による規制の在り方の改革を含む。)に関する基本的事項を総合的に調査審議すること」を目的とした内閣府の諮問会議(審議会等)である。2016年7月末日に設置期限が終了した規制改革会議の後継組織として、9月2日に第3次安倍第2次改造内閣により設立が閣議決定された。
2016年9月12日に「規制改革推進会議」の初会合が開催され、9月20日に「行政手続部会」の初会合が開催されている。
2016年11月11日に、規制改革推進会議の農業部会が、全国農業協同組合連合会(全農)に対し、「農薬などの資材を農家に売る事業からの撤退」や「農産品の委託販売の廃止」を1年以内に実行するという独自案を提言したが、自民党農林族議員らの反発があり、期限を設けず全農による自主改革とする案が政府・自民党より提出された。28日に開催された第6回規制改革推進会議において、全農の組織刷新に関する政府・自民党の農業改革案が了承されている。自民農林部会長の小泉進次郎は「全農の体制こそ農家の経営の自由を奪う存在だ」という見解を表明し、首相の安倍晋三も「全農改革は農業の構造改革の試金石だ」と改革を後押しする発言をしているが、11日の規制改革推進会議農業部会による当初の提言は、「全農や農林族の反発を自ら招くような急進的な改革」を従前から主張してきた小泉でさえ「高すぎるボール」と発言するなど、厳しい内容であった。 
規制改革推進会議委員
(委員は、下記の通り、前身組織の規制改革会議からの再任者6名を含む、14名である。)
議長    大田弘子 政策研究大学院大学教授 再任
議長代理 金丸恭文 フューチャー会長兼社長 再任
 安念潤司 中央大学大学院教授 再任
 飯田泰之 明治大学准教授
 江田麻季子 インテル日本法人社長
 古森重隆 富士フイルムホールディングス会長兼最高経営責任者(CEO)
 高橋滋  一橋大学大学院教授
 野坂美穂 中央大学大学院教授
 長谷川幸洋 東京新聞論説副主幹 再任
 林いづみ 弁護士 再任
 原英史  政策工房社長
 森下竜一 大阪大学大学院教授 再任
 八代尚宏 昭和女子大学特命教授
 吉田晴乃 BTジャパン社長
 

 

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