第三次世界大戦
北京2022オリンピック競技大会さなか
ロシア プーチン
ウクライナを目指す
プーチンの夢
ソ連の再生 復活
社会主義 独裁国家
民主主義 国家間の団結の脆弱さ 露呈
しかし 自由も右から左 幅の広さ 民主主義の良いところか
1/2 ・・・ 1/22・1/23・1/24
・・・ 2/9 ・・・ 2/12・2/13・2/14・2/15・2/16・2/17・2/18・2/19・2/20・・・2/21・2/22・2/23・・・2/24 ロシア侵攻・・・2/25・2/26・2/27・2/28 ・・・ 3/1・3/2・3/3・3/4・3/5・3/6・3/7・3/8・3/9・3/10・・・3/11・3/12・3/13・3/14・3/15・3/16・3/17・3/18・3/19・3/20・・・3/21・3/22・3/23・3/24・3/25・3/26・3/27・3/28・3/29・3/30・3/31・ロシア帝国の自壊・・・ ・・・ プーチン大統領の「夢」 戦争終結の道 ウクライナ分断 孤立するロシア |
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●「第3次世界大戦の発火点はウクライナか、台湾か」 1/2
中国共産党政権が香港などでの苛烈な人権弾圧を正当化し、北京冬季五輪の開幕が迫るなかでも、台湾などへの軍事的威圧行動を止めようともしない。一方、ロシアによるウクライナ侵攻も懸念されている。こうした現状で、岸田文雄政権はどう対処すべきなのか。人気作家でジャーナリストの門田隆将氏が、「歴史に学ぶ」ことの必要性を鋭く説いた。 歴史とは、なんと示唆深く、教訓に満ちたものなのか。そんなことを思う日々が続いている。 新疆ウイグル自治区でのジェノサイド(民族大量虐殺)で国際社会の非難を浴びる中国。香港で自由と人権が踏み潰されるさまを目撃した西側諸国は連帯に必死だ。 私は一連の動きを見ながら、2008年8月8日、北京五輪開会式当日の出来事を思い出している。ロシアによるジョージア侵攻だ。五輪開会式に出席していたウラジーミル・プーチン首相(当時)は、一方でジョージア北部の南オセチアへの侵攻を命じていたのだ。 突如、攻め込まれたジョージアでは南オセチアとアブハジアが「分離独立」し、今もその状態は変わらない。 14年の時を経た22年2月4日、同じ北京で今度は冬季五輪が開催される。プーチン氏率いるロシアはウクライナ国境に軍を終結させ、虎視眈々と侵攻を狙っている。 一方、中国は台湾への軍事侵攻の意図も隠さず、「ひとつの中国」を掲げ、これまた戦端を開く口実を模索している。 04年3月、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)は悲願のNATO(北大西洋条約機構)入りを果たした。ソ連の侵攻を阻止し、平和を守ることを目的に1949年に成立したNATOは、欧州の平和の要(かなめ)だ。 米国の核をシェアし、どんな攻撃も「全体への攻撃」とみなして全体で反撃するというこの集団安保体制で、欧州は平和を守ってきた。ここに入ることができさえすれば、国民の命は守られるのだ。 だが、バルト三国と明暗を分けたのは、ウクライナとジョージアだった。 両国もNATO入りを望み、2008年、加盟審査のための行動計画への参加が認められるか否かの瀬戸際にあった。 だが、同年4月にルーマニアの首都ブカレストで開かれた「NATOサミット」にゲストとして招かれたプーチン氏は、両国のNATO入りに「平和を乱す行動」と反発し、アンゲラ・メルケル独首相とニコラ・サルコジ仏大統領が同調し、両国の参加は拒否された。 その4カ月後、ロシアは北京五輪開会式当日、ジョージアに侵攻した。約6年後の14年3月にはウクライナのクリミア半島を併合した。 時はめぐり、北京冬季五輪を控え、ウクライナは再び一触即発となり、中国は台湾への軍事侵攻の口実を探し、「第3次世界大戦の発火点はウクライナか、台湾か」という危機を迎えている。 岸田文雄政権はそんななか、対米、対中の「二股外交」を展開している。 五輪への政府代表を派遣しない「外交的ボイコット」にもなかなか踏み切れず、先の臨時国会の所信表明演説では、岸信夫防衛相から「台湾海峡の平和と安定」を中国に対して求める文言を加えるよう要請されたが、拒否したことも明らかになった。 「親中派」の宏池会(岸田派)ならば当然だろう。中国は天安門事件(1989年)での国際社会からの制裁打破に、宏池会の宮沢喜一政権を利用して天皇訪中(92年)を実現し、国際社会の包囲網を突破した。 当時の銭其琛(せんきしん)外相が、回顧録『外交十記』で天皇訪中を「西側の対中制裁を打破する上で積極的な役割を発揮し、その意義は両国関係の範囲を超えたものだった」と回想したのは、あまりに有名だ。 中国に舐(な)められ、利用され、思い通りに動かされる日本。私が歴史の示唆と教訓を思うのは、国際社会には、これを「生かす国」と「生かさない国」の2種類があるからだ。日本が後者であることが情けなく、恐ろしい。 |
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●米ロ外相が会談、緊迫するウクライナ情勢めぐり ロ提案に米が来週回答へ 1/22
ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相とアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は21日、緊迫するウクライナ情勢をめぐりスイス・ジュネーヴで会談した。両外相は、ウクライナでの紛争拡大防止を目的とした会談について、「率直」なものだったと語った。 ロシアはウクライナ東部の国境付近に推定10万人規模の部隊を集結させているが、ラヴロフ外相はウクライナ侵攻を意図したものではないと繰り返し否定した。 ブリンケン国務長官は、アメリカはいかなる侵攻にも厳しい対応をとる方針だと述べた。 ウクライナ東部では、約8年前に激しい戦闘が勃発して以降、親ロシア派の反政府勢力が同地域の大部分を占領している。ウクライナ軍と親ロシア派の戦闘ではこれまでに約1万4000人の命が失われ、約200万人が住む家を追われた。2020年に停戦合意が成立したものの、それ以降は相手が合意に違反したと互いに非難し合っている。 アメリカとその同盟各国は、ロシアがウクライナへ侵攻すれば新たな制裁を科すと警告している。 米政府は来週にも自らの立場を文書にまとめ、さらに協議する予定。 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、西側諸国に様々な要求を重ねてきた。ウクライナは決して北大西洋条約機構(NATO)に加盟すべきではなく、NATOは軍事演習を放棄し、東欧諸国への武器の提供を停止すべきだと訴えている。 プーチン氏は、NATOの拡大や国境付近でのNATOの軍事的プレゼンスが、ロシアの安全保障に対する直接的脅威になっていると主張している。 ●米ロ外相は何と ブリンケン国務長官は外相会談について、「率直で実質的な」ものだったとし、ラヴロフ外相も「率直」な会談で「合理的な対話をしていく」ことで合意したと述べた。「感情的な反応が収まるよう望んでいる」と、ラヴロフ氏は付け加えた。ブリンケン氏はラヴロフ氏に対し、ロシアがウクライナへ侵攻すればアメリカと同盟国が「一致団結し、迅速かつ厳しい」対応を取ることになると警告した。会談後には、アメリカには互恵の精神に基づき、ロシアをめぐる懸念に対処するため、あらゆる手段を追求する用意があると述べた。ブリンケン氏はまた、ロシアが部隊を増強し、南、東、北の3方向からウクライナを攻撃する能力を獲得したと指摘。ロシアにウクライナへの侵略行為を止めるよう求めた。アナリストたちは会談前、両政府がウクライナ国境付近での軍事演習の透明性拡大や、欧州でのミサイル配備規制復活などで、合意するかもしれないと予測していた。こうしたルールは、冷戦下の1987年にアメリカとソ連が結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約で定められていたもの。アメリカはロシアが条約に違反しているとして2019年にこの条約を失効させた。 ●アメリカの主張 ブリンケン国務長官は、ロシアがサイバー攻撃などの非軍事的方法で自国利益を増進するための「広範なプレイブック(戦略と戦術)」を用意していると、アメリカは経験上承知していると述べた。そして、アメリカが今後数週間、ウクライナに「安全保障支援」を提供し続けると確認した。アメリカは昨年、ウクライナに対戦車誘導ミサイルシステムのほか、小型の武器や弾薬を提供している。ブリンケン氏は、ラヴロフ氏との会談でイランの核能力をめぐる交渉も話題に上ったとして、イラン核問題への対応は、安全保障問題で米ロが協力できることを示す事例だと述べた。 ●ロシアの主張 一方、ラヴロフ氏はオープンで有益な会談だったとしつつ、NATOはロシアに対立する動きを重ねていると非難。さらに、ロシアは「ウクライナの人々を脅かしたことはなく」、ウクライナへの攻撃は計画していないという、従来の主張を繰り返した。また、ウクライナ政府が同国東部を占領する反政府勢力に対して「国家テロ」を行い、同地域の紛争停止を目的とした2015年のミンスク和平合意を「妨害」していると非難した。ラヴロフ氏は、アメリカが来週にも、ロシアの全提案に対して「書面で回答」すると述べた。しかしブリンケン氏は、アメリカは「来週、懸念とアイデアを書面でより詳細に」共有したいと述べるにとどめた。ロシアは会談の前日、今月から来月にかけて、ロシア近海のほか地中海や北海、オホーツク海、太平洋などで140隻以上の艦艇や60機以上の航空機を動員した軍事演習を実施すると発表した。軍事力を誇示するためとみられる。アメリカはこの日、ウクライナ侵攻に備えてロシアの諜報員がウクライナ政府の現・旧職員を雇い、侵攻から直ちにロシアに協力する臨時政府を現地に設けられるよう工作していたと発表。米財務省はこの陰謀に加担したとされるウクライナの現職国会議員2人と元政府関係者2人に制裁を科した。 ●欧州諸国の反応 ブリンケン氏は会談に先立ち、ウクライナへの支援を示すため首都キーウ(キエフ)を訪問。ドイツ・ベルリンで独・英・仏外相との会談を経て、ジュネーヴ入りした。欧州の一部の国は、東欧におけるNATOの軍事配備の強化に向けて動いている。スペインは地中海と黒海に展開するNATO海軍部隊に加わるため軍艦を派遣。デンマークもバルト海にフリゲート艦を派遣する方針を発表した。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ルーマニアへの部隊派遣を申し出ている。イギリスは17日、ウクライナに自己防衛のための短距離対戦車ミサイルを供給していると発表した。また、訓練を提供するためにイギリス軍の小チームをウクライナに派遣したとした。リズ・トラス英外相は21日、恐ろしい犠牲を出すことになる「大規模な戦略的ミスを犯す前に思いとどまり、ウクライナから手を引く」ようプーチン氏に求めた。 ●「小規模な侵攻」 ウクライナ情勢をめぐっては、アメリカのジョー・バイデン大統領が19日、ロシアの侵攻が「小規模」ならアメリカや同盟国の対応はより小さくなるかもしれないと示唆。一部の記者から、アメリカがロシアによるウクライナへの小規模な侵攻を認めるつもりなのかとの質問が出た。 これを受け、米政府関係者が慌てて政府の立場を明確にする事態となった。 バイデン氏自身も20日、ロシア軍によるいかなる侵入も「侵攻」とみなされると述べた。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は20日、「小規模な侵攻などない。愛する人を失う際に、小規模な犠牲や小さな悲しみなどないのと同じだ」と反発した。 |
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●英外務省が異例声明、ロシアがウクライナ政府トップに親ロシア派の投入画策 1/23
英外務省は22日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ政府トップに親ロシア派の人物を据えようと画策していると非難した。 同省は声明で、ロシアがウクライナ政府のトップにウクライナのイーヴェン・ムラエフ元議員を据えようと検討していると表明した。英政府がこうした形で、特定の人物を名指しするのは異例。ムラエフ氏は、かつてウクライナの親ロ政権下で最高会議議員だった。 リズ・トラス英外相は声明の中で、「本日発表された情報は、ウクライナ政府を転覆しようとするロシアの活動の規模に光を当てるもので、ロシア政府の考えの中身をうかがわせるものだ」だとした。 外相はその上で、「ロシアは緊張状態を緩和させ、侵略行為や偽情報展開の活動を止め、外交の道を追求しなければならない」、「イギリスやそのパートナー国が繰り返し伝えているように、ロシアのウクライナへの軍事侵攻は深刻な犠牲を伴う甚大な戦略的ミスになる」と述べた。 ロシアはウクライナ東部の国境付近に推定10万人規模の部隊を集結させているが、ウクライナ侵攻は意図していないと主張している。 イギリスの閣僚らはロシアがウクライナに侵攻すれば、深刻な結果を招くことになると警告している。 メディア・オーナーのムラエフ氏は、2019年の選挙で所属政党が得票率5%を確保できなかったため、ウクライナ議会での議席を失った。 英外務省は声明でムラエフ氏のほかに、ロシア情報機関との関係を維持しているとして、ウクライナの元政府要人4人の名前も挙げた。このうち数人は、侵攻作戦の策定に現在携わるロシア情報機関の関係者と過去に接触していたという。 英外務省が名指しした4人には、2014年に失脚した親ロシア派のヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領(当時)の下で首相を務めたミコラ・アザロフ氏も含まれる。 政権崩壊後にロシアへ逃れたアザロフ氏は亡命政権を樹立したが、これはロシアの支配下にある傀儡(かいらい)政権だと広く認識されている。 同氏は国際制裁の対象となっているほか、ウクライナ政府の要請により、横領や資金の不正流用などの容疑で国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)のレッド・ノーティス(容疑者の引き渡しを要請する通知)が出ていいる。 英外務省は今回、ウクライナ国家安全保障・国防会議の副議長だったウォロディミル・シヴコヴィッチ氏の名前も挙げている。シヴコヴィッチ氏は今週、ロシアの情報機関と連携していたとして、アメリカの制裁対象となった。 残りの2人は、ヤヌコヴィッチ政権下で副首相を務めたセルフィ・アルブゾフ氏とアンドリー・クリュイエフ氏という。 2014年にウクライナで親ロシア政権が崩壊すると、ロシアはウクライナ南部クリミア半島を併合し、ウクライナの領土を占領した。 ロシア軍がウクライナ国境に集結していることを受け、西側諸国やウクライナの情報機関は、2022年初頭にも、ロシアによる新たな侵略や侵攻が起こる可能性があると示唆している。 ロシアはウクライナへの攻撃は計画していないとしているものの、プーチン大統領は西側諸国に様々な要求を重ねてきた。ウクライナは決して北大西洋条約機構(NATO)に加盟すべきではなく、NATOは軍事演習を放棄し、東欧諸国への武器の提供を停止すべきだと訴えている。 アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官とロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は21日、ウクライナ情勢をめぐりスイス・ジュネーヴで会談した。両外相は、ウクライナでの紛争拡大防止を目的とした会談について、「率直」なものだったとした。それから数時間後の22日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)にアメリカから「軍事的支援」が届いた。「最前線で国を防衛する人々」への弾薬などの支援物資は、ジョー・バイデン米大統領が昨年12月に承認した2億ドル(約227億円)規模の安全保障支援パッケージの第一便。 これに先立ち、英下院の国防特別委員会のトバイアス・エルウッド委員長は、ウクライナへの侵略行為が差し迫っている恐れがあると警告。ウクライナを支援するため、イギリスはこれまで以上に対応する必要があると述べた。最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首も、「ロシアの武力侵略に断固として反対」するとし、「我々の価値と安全を守る」よう政府に求めた。イギリスは17日、ウクライナに自己防衛のための短距離対戦車ミサイルを供給していると発表した。また、訓練を提供するためにイギリス軍の小チームをウクライナに派遣したとした。イギリスやアメリカ、ロシアと国境を接する旧ソ連構成国を含むNATOの加盟30カ国は、1カ国に対する武力攻撃は全加盟国に対する攻撃だとし、互いに支援することで合意している。 |
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●米政府、在ウクライナ大使館員の家族に退避命令 1/24
アメリカ政府は23日、ウクライナの米大使館職員の家族に国外退避を命じた。ウクライナでは、ロシアによる軍事行動の可能性をめぐって緊張が高まっている。 米国務省は、在ウクライナ米大使館において職務上不可欠ではない職員の国外退避も許可した。また、ウクライナにいる米国民に、出国を検討するよう強く求めた。 同省は声明で、「ロシアがウクライナに対する重大な軍事行動を計画しているとの報告がある」と説明。現地の治安情勢は「予測不能で、短時間で悪化する可能性がある」とした。 ロシアは、ウクライナ侵攻を計画しているとの見方について、否定している。 ウクライナ東部の国境付近には、ロシアが推定10万人規模の部隊を集結させている。 北大西洋条約機構(NATO)のトップは、ヨーロッパで新たな紛争が発生する恐れがあると警告している。 ウクライナには22日、「前線守備隊」への武器など、約90トンの軍事支援物資がアメリカから届いた。 アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、「(ロシアの)プーチン大統領の計算に対応する一連の行動」を取っていると説明。ウクライナにおける軍事支援の増強も、その一環だとした。 ロシアは過去にもウクライナの領土を奪っている。2014年には、ウクライナが親ロシアの大統領を追放したことを受け、ロシアはウクライナ南部クリミア地方を併合した。 以来、ウクライナ軍はロシアと国境を接する東部ドンバス地方で、ロシアの支援を受けた反政府勢力と戦闘を続けている。ドンバス地方ではこれまでに約1万4000人が死亡したとみられている。 イギリス外務省は22日、ロシアのプーチン大統領がウクライナ政府トップに親ロシア派の人物を据えようと画策していると非難した。 英政府はロシア政府に対し、ウクライナに侵攻すればロシアは深刻な結果に直面することになると警告している。 |
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●仏大統領、プーチン氏が「ウクライナ情勢悪化させないと保証」 ロシア側否定 2/9
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は8日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領から、ロシア軍がウクライナ国境付近の危機を高めることはないとの保証を得たと明らかにした。一方でロシアは、マクロン氏が示唆した保証の内容は「正しくない」としている。 マクロン大統領はこの日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談。それに先立ち、前日に会談したプーチン氏から「悪化やエスカレートはないという確証を得た」と述べていた。 ロシアはウクライナ侵攻を計画していないとしているが、ウクライナとの国境付近に推定10万人規模の部隊を集結させている。 米当局は、ロシアが本格的な侵攻に必要な軍勢の70%を集結させたとみている。 ロシアによるウクライナ南部クリミア地域の併合から8年がたった今、ロシア、ウクライナ、西側諸国の緊張が高まっている。 ロシア政府は、ウクライナ政府が同国東部の平和を回復するための国際的取り決めであるミンスク合意を履行していないと非難している。ロシアの支援を受けた反政府勢力が支配するウクライナ東部での紛争では少なくとも1万4000人が死亡している。 ●プーチン氏に「具体的な手段」示すよう求める 7日にロシア・モスクワを訪問したマクロン氏は、プーチン氏と6時間近く会談。8日にはウクライナの首都キーウ(キエフ)に入った。 ウクライナのゼレンスキー大統領と会談後、両首脳は記者会見に臨んだ。マクロン氏は、ロシアとウクライナの間で「交渉を前進させる」チャンスが到来しており、緊張緩和にむけた「具体的な解決策」が見えてきたと述べた。 ゼレンスキー氏は、緊張緩和のための真剣な対策を講じるようプーチン氏に求めた。「私は全く言葉を信用していない。すべての政治家は具体的な手段を講じることで透明性を示せると信じている」と述べた。 ●ウクライナ大統領と気まずい場面も BBCのポール・アダムス外交担当特派員は、ゼレンスキー氏がプーチン氏を全く信用していないと指摘した。 アダムス特派員はまた、ゼレンスキー氏がマクロン氏の支持を歓迎し、2人がウクライナ、欧州、そして世界が直面する課題について「共通のビジョン」を持っていると述べたと報告した。ただ、会談では気まずい瞬間もあったと伝えた。マクロン氏は、ウクライナとNATOの関係の模範になり得るものとして、NATOと近いものの加盟国ではないフィンランドとの関係を挙げたとする報道を、否定しなければならなかったという。 プーチン氏がミンスク合意の履行を求めていることも、ゼレンスキー氏にとって課題だとアダムス特派員はみている。戦時下でペトロ・ポロシェンコ前大統領が署名したミンスク合意を現状のかたちで履行すれば、東部ドンバスを支配している親ロシア派勢力の権威を高めることになるのではないかと恐れているという。 7日の仏ロ会談では、プーチン大統領はマクロン氏の提案の一部が「合同で取り組む今後の措置の基礎になり得る」としつつ、内容に触れるのは「おそらくまだ時期尚早」だと述べた。 仏政府関係者はその後、マクロン氏とプーチン氏が、ウクライナ北部の国境付近で行われている軍事演習終了後に、ロシアがベラルーシから軍を撤退させることで合意したと記者団に語った。 これに対し、ロシア政府のドミトリー・ペスコフ報道官はいかなる取り決めもなされていないと否定。ただ、部隊はいずれロシアに戻る見込みだとした。 ●仏独ポーランド3首脳が会談 マクロン氏は8日、ドイツ・ベルリンへ移動し、ドイツのオラフ・ショルツ首相とポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領と3者会談を行った。 アメリカ・ワシントンでは7日、ジョー・バイデン大統領とショルツ独首相が会談。バイデン氏はロシアがウクライナに侵攻した場合はロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプライン「ノルド・ストリーム2」計画は「終わらせる」と述べた。 ショルツ氏がワシントンを訪問するのは首相就任後初めて。ウクライナ危機への対応に批判を受けているものの、パイプラインについてはバイデン氏よりあいまいな態度を示した。 ボリス・ジョンソン英首相は8日付の英紙タイムズに寄稿し、イギリスは「南東欧を守るために」英空軍の戦闘機と英海軍の軍艦の配備を検討していると述べた。 ロシアはウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を認めないことや、東欧でのNATOの軍事プレゼンスを縮小することなどを求めているが、西側諸国はこうした要求を拒否している。 キャロライン・デイヴィスBBCモスクワ特派員は、ロシアの主な関心は依然としてアメリカに向けられているようだと指摘。ロシアはNATO拡大に対する安全保障上の懸念に、西側諸国が応えていないと感じていると、再び強調しているとした。そして、双方とも譲歩する気配を見せない中、このことが外交議論の中心である限り交渉が難しくなるとした。 |
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●ウクライナ情勢 米がポーランドに3000人規模の部隊 追加派遣へ 2/12
ウクライナをめぐる軍事的な緊張の高まりを受けて、アメリカのバイデン政権は、ヨーロッパ東部の防衛態勢を強化するためとして、すでに部隊を派遣しているポーランドにさらに3000人規模の部隊を追加することを決めました。 アメリカのバイデン政権は、ヨーロッパ東部の防衛態勢を強化するため、ウクライナに隣接するポーランドとルーマニア、それにドイツに、アメリカ軍の部隊の派遣を進め、このうちポーランドには、主に陸軍の第82空てい師団から、およそ1700人の派遣が決まっています。 こうした中、アメリカ国防総省の高官は11日、バイデン政権がポーランドに3000人規模の部隊を追加で派遣することを決めたと明らかにしました。 派遣されるのは、アメリカ南部ノースカロライナ州のフォートブラッグ基地に駐留する空てい部隊で、数日以内に基地を出発し、現地で第1陣の部隊と合流する予定だということです。 アメリカからヨーロッパに派遣される部隊は合わせて5000人規模となり、国防総省の高官は「NATOの加盟国を安心させ、さまざまな緊急事態に対応する」と強調しました。 ウクライナ情勢をめぐってアメリカは、ホワイトハウスの高官が11日「ロシアによる軍事侵攻は、北京オリンピックの期間中を含め、いつ始まってもおかしくない」と述べるなど、警戒感を強めています。 |
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●米国務長官 ウクライナの事態沈静化 ロシア側に呼びかける 2/13
緊張が続くウクライナ情勢をめぐり、アメリカのブリンケン国務長官はロシアによる軍事行動のリスクは高いという認識を示す一方、「外交的な道は残されている」として、ロシア側に事態の沈静化を改めて呼びかけました。 アメリカのブリンケン国務長官は12日、訪問先のハワイで記者会見し、ウクライナ情勢について「ロシアによる軍事行動のリスクは高く、脅威は十分に差し迫っている。ロシアが軍事行動を正当化するため、挑発行為や事件を引き起こしたとしても誰も驚かない」と指摘しました。 そして、「ロシアがウクライナに侵攻する道を選んだ場合は迅速に対応する。それは厳しいものになるだろう」と述べて、欧米が結束して厳しい措置を取ると警告しました。 一方、ブリンケン長官は「この危機を解決するための外交的な道は残されている」とも述べ、ロシア側に事態の沈静化に向けて努力するよう改めて呼びかけました。 またブリンケン長官は、NATO=北大西洋条約機構をこれ以上拡大させないとするロシア側の要求に対し先月、アメリカが回答した書面について、ロシアのラブロフ外相が日本時間の12日夜の電話会談で「返答に取りかかっている」と述べたと明らかにし、ロシア側の出方を見極める考えを示しました。 緊張が続くウクライナ情勢をめぐり、各国はウクライナの首都キエフにある大使館の職員の退避を決めるなど、影響が広がっています。 このうち、オーストラリアのペイン外相は13日、キエフにある大使館の業務を停止し、職員に退避するよう指示したことを明らかにしました。 ロシアがウクライナとの国境付近に軍の部隊を増強し、情勢が悪化しているとの判断によるもので、退避した職員は当面、隣国ポーランドとの国境に近いウクライナ西部の都市リビウに設けた臨時の事務所へ移るということです。 これに先立って、アメリカが12日、ロシアによる軍事行動の脅威が高まっているとして、ほとんどの職員の国外退避を決めたほか、イギリスも先月24日に職員や家族の一部を国外に退避させる措置を取るなど、各国が対応を急いでいます。 一方、影響は空の便にも出始めていて、オランダの航空会社、KLMオランダ航空は12日、ウクライナとの間の航空便の運航を当面、取りやめると発表しました。 オランダ政府がウクライナへの渡航の中止を勧告したことなどを考慮した措置だとしています。 |
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●十数カ国の政府、ウクライナ退避を自国民に勧告 ロシアも大使館縮小 2/13
ロシアがウクライナ国境沿いに部隊を集結させる中、12日までに十数カ国の政府が、ウクライナから直ちに退避するよう自国民に勧告した。ロシアも同日、駐ウクライナに駐在する大使館員の数を縮小すると発表した。ジョー・バイデン米大統領は同日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話で会談し、ロシアがウクライナに侵攻すれば、ロシアは「素早く厳しい代償」を払うことになると警告した。 兵10万人以上の部隊をウクライナ国境沿いに配備したロシアが侵攻の意図はないと主張し続けているのに対し、米政府は侵攻がいつ始まってもおかしくない状態にあると警告している。ホワイトハウスが、ロシアの侵攻は空爆から始まるかもしれないと述べているのを、ロシアは「挑発的な憶測」だと反発している。 一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12日、侵攻があると警告すればパニックを引き起こしかねないと、慎重な対応を求めた。ゼレンスキー氏は記者団を前に、パニックこそ「私たちの敵にとって、何よりの親友だ」と述べた。 こうした中、アメリカのほかにこれまで、イギリス、日本、カナダ、オランダ、ラトヴィア、韓国、ドイツ、オーストラリア、イタリア、イスラエル、オランダなど複数の政府が、自国民に対し、直ちにウクライナを離れるよう勧告している。大使館員や家族をすでに出国させた国もある。 ウクライナの首都キーウ(キエフ)では、アメリカ大使館の業務に不可欠ではないスタッフは退避を命じられた。領事業務も13日から停止されるが、ポーランド国境に近い西部の都市リヴィウへ「少人数の領事担当」を移動させ、「緊急事態に対応」するという。米政府はさらに、ウクライナ兵を訓練していた米兵150人も「念のため」に退避させた。 |
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●ウクライナ情勢めぐり英外相が訪ロ、ジョンソン首相も相次ぎ首脳会談 2/14
英国のエリザベス・トラス外務・英連邦・開発相は2月9日から2日間、ロシアを訪問した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。10日に、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談した。会談後の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによれば、トラス氏がラブロフ氏に対し、ウクライナへのさらなる侵攻は重大な結果につながり、厳しい代償を払うことになると牽制、国境地帯からのロシア軍の撤退とNATO側が求める外交による解決を呼びかけたとしている。一方、ラブロフ氏は、トラス氏がロシア側の説明を聞き入れる姿勢になかったとして不満を示した(「タイムズ」2月11日)。 2月2日にはボリス・ジョンソン英国首相が、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話会談を行い、ウクライナへの敵対的行為に対して深い懸念を表明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。その後も、ドイツ、フランス、リトアニア、オランダの首脳と立て続けに会談。10日にはポーランド・ワルシャワを訪問し、マテウシュ・モラビエツキ首相、アンジェイ・ドゥダ大統領と相次いで会談した。ジョンソン首相は11日には米国、カナダ、イタリア、ポーランド、ルーマニア、フランス、ドイツの首脳や、欧州理事会(EU首脳会議)、欧州委員会、NATOの代表者らと会談外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。NATO加盟国に対し、ロシアが侵攻を決定した際に厳しい経済制裁パッケージを発動できるよう、準備を確実にしておく必要があるとした。 ベン・ウォーラス英国国防相も2月11日、ロシアでセルゲイ・ショイグ国防相らと会談外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。ウォーラス氏は、ショイグ氏から侵攻は行わないとの保証について説明を受けたとした。 また、ジョンソン首相は2月10日、ワルシャワ訪問に先立ち、ブリュッセルでNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長と会談外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、東欧への戦艦派遣や南東欧への戦闘機増強などNATOに対するコミットメント強化に向けた計画を述べた。さらに、英国の野党・労働党のキーア・スターマー党首も同日、同党のウクライナへの支援を示すため、ストルテンベルグ氏を訪問。同氏は、NATOに対して批判的なジェレミー・コービン前労働党党首の姿勢を誤りとし(「タイムズ」2月10日)、政府の対応について支持を示していた。 政府は2月10日、対ロ制裁の強化と対象拡大に向けた新法が発効したことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。これにより、英国政府がロシア政府に関連する団体、企業、その経営者などに対しても制裁を発動することが可能となった。 |
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●ウクライナ情勢「急速に悪化の可能性」 日本政府が退避呼びかけ 2/14
松野博一官房長官は14日午前の記者会見で、ウクライナ情勢について、「事態が急速に悪化する可能性が高まっている」と述べた。国境周辺でのロシア軍の増強配備について「重大な懸念を持って注視しており、高い警戒感を有している」と語り、ロシアによるウクライナ侵攻の可能性が高まっているとの見方を示した。 政府は同日、首相官邸で国家安全保障会議(NSC)の4大臣会合を開き、岸田文雄首相が林芳正外相や岸信夫防衛相らと対応を協議。出席した松野氏によると、首相は邦人保護や外交上の取り組みについて「遺漏なく対応するように」と指示した。 外務省は11日付でウクライナ全土の危険情報を最も高い「レベル4(退避勧告)」に引き上げ、首相官邸の危機管理センター内には情報連絡室が設置された。13日には在ウクライナ日本大使館から現地の邦人に退避を強く勧告するメールを出し、「民間航空機の運航が停止される可能性も否定できない」とし、「直ちに退避して下さい」と呼びかけた。大使館も14日以降、一部を除いて職員を国外退避させ、機能を縮小すると公表した。 松野氏によると11日までに確認されている在留邦人は約150人。松野氏は「近日中にも、すべての航空便の運航が停止される可能性がある」とし、「政府として在留邦人の安全確保に最大限取り組んでいく」と述べた。 |
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●G7、対ロ経済制裁の用意 ウクライナ情勢で共同声明 2/14
先進7カ国(G7)財務相は14日、共同声明を発表し、ロシアがウクライナに侵攻した場合には「ロシア経済に甚大かつ即時の結果をもたらす経済・金融制裁を共同で科す用意がある」と表明した。 ウクライナ情勢が緊迫化する中、G7が協調して対ロ圧力を強めた格好だ。 G7はこれまで外相の声明では制裁を示唆してきたが、経済・金融制裁を担う財務相が言及したのはこれが初となる。G7財務相は、2014年にロシアがウクライナ南部クリミア半島を併合した後にも声明を出した。 声明では「われわれの喫緊の優先課題は緊張緩和に向けた努力を支援することだ」としながらも、ロシアが侵攻すれば「迅速、協調的かつ強力な対応に直面する」と改めて強調した。同時にウクライナに対する支援の決意も示した。 鈴木俊一財務相は同日、財務省で記者団に「引き続きG7として状況を注意深く監視する」と語った。 |
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●ウクライナ情勢で「ロシアを黙認」か 中国は反発 2/14
ウクライナ情勢を巡って軍事的圧力を強めるロシアを中国が黙認しているとの批判に対し、中国外務省は「好戦的な発言はやめるべきだ」と反発しました。 中国外務省は14日の会見で、ウクライナからの退避について問われ、「中国大使館は正常に運営されている」と述べました。 さらに、「滞在する中国国民と緊密に連絡している」とし、退避勧告などの考えがないことを明らかにしました。 一方、ウクライナ周辺に大規模な兵力を配備するロシアに対し、中国が沈黙しているとの批判には「緊張をエスカレートさせる好戦的な発言はやめるべきだ」と反発しました。 中国メディアではアメリカが危機をあおっているとの論調が主流で、外務省も「情勢を刺激すべきでない」と述べて、名指しは避けつつアメリカを牽制(けんせい)しました。 |
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●政府 ウクライナ情勢 日本人に退避呼びかけ 侵攻時の制裁検討 2/15
ウクライナ情勢をめぐり、政府は、事態が急速に悪化する可能性が高まっているとして、現地に滞在する日本人に直接、国外への退避を呼びかけるなど、安全確保に全力をあげることにしています。一方で、仮にロシアが侵攻した場合の制裁措置について、アメリカなどと連携して、具体的な検討を急ぐ方針です。 緊張が続くウクライナ情勢をめぐって、政府は、14日NSC=国家安全保障会議の閣僚会合を開き、岸田総理大臣が、現地に滞在する日本人の保護などに万全を期すよう指示しました。 外務省によりますと、ウクライナには、14日時点でおよそ150人の日本人が滞在しているということです。 政府は、今後、商用便の運航がすべて停止されるおそれもあることから、大使館員らが、個別に電話して直接、国外への退避を呼びかけるなど安全確保に全力をあげることにしています。 また、現地では、各国の大使館機能を縮小する動きが広がっていることから、政府は、首都キエフにある日本大使館のほとんどの職員を退避させるとともに、西部のリビウに連絡事務所を設け機能を維持することにしています。 一方、岸田総理大臣は、14日の自民党の役員会で、仮にロシアが軍事侵攻した場合の制裁措置について、アメリカなどと調整していることを明らかにしました。 G7・主要7か国の財務相は、14日夜、共同で声明を発表し、「ロシア経済に甚大かつ即時の結果をもたらす経済・金融制裁を共同で科す用意がある」と表明し、ロシア側に警告しました。 政府は、関係国と連携して、制裁措置の具体的な検討を急ぐ一方で、緊張緩和に向けた外交努力も粘り強く続けていく方針です。 |
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●ウクライナ情勢 米 “ロシアは対話望むなら緊張緩和へ行動を” 2/15
ウクライナ情勢をめぐり、ロシアのラブロフ外相はプーチン大統領に対し、欧米側と対話を継続すべきだとする考えを伝え、対話を重視する姿勢を強調しました。これについて、アメリカ国務省の報道官は「具体的な緊張緩和の兆しが見えない」として、ロシア側が対話を望むのであれば、緊張緩和に向け、行動で示すよう求めました。 ウクライナ情勢をめぐって緊張が続く中、ロシアのラブロフ外相は14日、プーチン大統領に、欧米側と安全保障の問題で合意できる可能性があるのかどうか問われ「可能性は残されていると思う。いつまでも続けるべきではないが、現時点では協議を継続し、活発化させることを提案したい」と述べ、対話を継続すべきだとする考えを伝えました。 これについて、アメリカ国務省のプライス報道官は記者会見で「もしラブロフ外相の発言に続いて、具体的かつ明確な緊張緩和の兆しがあれば歓迎するが、その兆しはまだ見えない」と述べ、ロシア側が対話を望むのであれば、緊張緩和に向け行動で示すよう求めました。 また、ホワイトハウスのジャンピエール副報道官は会見で「ウクライナの国境周辺には連日、ロシア軍が新たに到着しているのが確認されている。軍事侵攻はいつ始まってもおかしくない」と述べるとともに、ロシアが欧米側との対話による解決と軍事侵攻のどちらを選んでも、アメリカとしては対応する用意があると強調しました。 ●米国防長官 欧州訪問へ 各国と協議 アメリカ国防総省は、オースティン国防長官が15日からヨーロッパを訪問し、緊張が続くウクライナ情勢をめぐって各国の国防相らと協議すると発表しました。 オースティン長官が訪れるのはNATO=北大西洋条約機構の本部があるベルギーと、ウクライナに隣接するポーランド、それにバルト3国の1つ、リトアニアです。 ベルギーではNATO加盟国の国防相らと、ウクライナ周辺に展開するロシア軍の状況について協議するということです。 また、ウクライナ情勢を受けてアメリカ軍の部隊を追加で派遣しているポーランドでは、ドゥダ大統領らと会談するほか、現地に駐留する部隊を視察するとしています。 さらにリトアニアではナウセーダ大統領のほか、エストニアとラトビアを加えたバルト3国の国防相とも合同で会談するということで、一連の訪問を通じてNATO加盟国に対するアメリカの防衛義務を改めて明確に打ち出すねらいがあります。 ●岸田首相「高い警戒感持って状況を注視」 岸田総理大臣は総理大臣官邸で開かれた政府与党連絡会議で、ウクライナ情勢について「重大な懸念を持って情勢を注視しており、引き続き高い警戒感を持って状況を注視しつつ、G7各国と緊密に連携のうえ状況の変化に応じて適切に対応していく」と述べました。 ●松野官房長官「在留邦人の安全確保に最大限取り組む」 松野官房長官は閣議のあとの記者会見で「ウクライナ国境周辺地域では、ロシア軍の増強などにより緊張が高まっており、予断を許さない状況が続いている。関係国による外交努力の動きがある一方で、事態が急速に悪化する可能性が高まっており、政府としてこうした動きを重大な懸念を持って注視し、高い警戒感を有している」と述べました。そのうえで「14日時点で確認されている在留邦人はおよそ130人だ。引き続き、政府として現地の情勢も踏まえながら、在留邦人の安全確保に最大限取り組んでいく」と述べました。 ●林外相「侵攻なら制裁含め検討」 林外務大臣は、記者会見で「日本政府は大前提として外交交渉による解決を強く求めている。仮にロシアによる侵攻が発生した場合、わが国として制裁を科すことも含めて、実際に起こった状況に応じ、G7をはじめとする国際社会と連携して適切に対応していく」と述べました。また、ウクライナに滞在する日本人の安全確保について「政府として、現地の情勢も踏まえながら在留邦人の安全確保に最大限取り組んでいきたい。ウクライナ西部のリビウ市に臨時の連絡事務所を開設し、一定の邦人保護の業務に対応している」と述べました。 ●岸防衛相“この時期の異例な軍事演習で能力誇示か” 岸防衛大臣は閣議のあとの記者会見で、今月1日以降、日本海とオホーツク海の南部で活動するロシア海軍艦艇24隻を確認したとしたうえで「世界的な軍事演習の一環として活動を行ったものと考えており、この時期の大規模な軍事演習は異例だ」と述べました。そのうえで「昨今のウクライナ周辺における動きと呼応する形で、ロシア軍が東西で活動しうる能力を誇示するため、オホーツク海や太平洋でも活動を活発化させていると考えられる。防衛省としては、ウクライナ情勢を含むロシア軍の活動について重大な懸念を持って注視しており、情報収集・警戒監視を継続していく」と述べました。また、岸大臣は「防衛省・自衛隊としても、外務省をはじめ関係省庁と緊密に連携をとりつつ、情勢の推移に応じて適切に対応していきたい。平素から自衛隊は在外邦人などの輸送の派遣命令が出た場合に、速やかに部隊を派遣できるよう待機の態勢をとっている」と述べました。 |
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●ウクライナ情勢、米がロシア脅威論で緊張演出 中国外務省 2/16
中国外務省は16日、ウクライナ情勢について、米国が軍事的脅威を演出し緊張を作り出していると批判した。 ロシアは15日、軍をウクライナ国境付近に集結させていた軍を一部撤収させると表明したが、バイデン大統領はウクライナ周辺に配置されたロシア軍部隊は15万人規模に拡大しており、ロシアのウクライナ侵攻の可能性は依然あると指摘した。 中国外務省の汪文斌報道官は16日の定例会見で、「一部西側諸国の継続的なデマ発信は混乱と不確実性を生み、世界に試練や不安、分断をもたらす」と指摘。 「関係者はデマの拡散をやめ、平和や相互信頼、協力に寄与する行動をするよう希望する」と述べた。 その上で「中ロの首脳は、非同盟、非対立、第三国を標的にしないという原則の下、長期的な善隣関係、互恵協力関係の発展に常に取り組んでいる」と述べた。 |
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●ウクライナ情勢 ロシア国防省 演習終えた部隊 撤収開始と発表 2/16
ロシア国防省は15日、ウクライナ東部との国境近くに展開していたロシア軍の部隊が演習を終えて撤収を始めると発表しました。ただ、撤収を始める部隊の規模などは明らかにしておらず、ウクライナ情勢が緊張緩和に向かうのかは依然、不透明です。 ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は15日「演習任務を終えた部隊はきょう、それぞれの軍が所属する基地に向けて移動を開始する」と述べ、ウクライナ東部との国境近くに展開していた西部と南部の軍管区の部隊が演習を終えて撤収を始めると発表しました。 また国防省は、8年前に一方的に併合したウクライナ南部のクリミアでの演習を終えた部隊も撤収を始めたとして戦車などを列車に積み込む様子を公開しました。 一方、ウクライナ北部と国境を接するベラルーシで今月10日から行われている合同軍事演習について「今月19日には実弾演習が行われる」と述べ、その様子をメディアに公開するとしたほか、「ロシアの領土に隣接する、作戦上、重要な海域で海軍の演習も行われている」として黒海などでの演習が続いていることを強調しました。 ロシアのショイグ国防相は14日、プーチン大統領に対して、各地で行われている軍事演習について「完了するものもあれば、続いているものもある」と述べ、演習は事前の計画に基づいて進められていると報告していました。 今回の発表はこれを受けたものと見られますが、撤収を始める部隊の規模などは明らかにしておらず、ウクライナ情勢が緊張緩和に向かうのかは依然、不透明です。 |
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●ロシア「外交交渉を行う意思と準備」ウクライナ情勢めぐり 2/17
緊張が続くウクライナ情勢をめぐり、ロシア大統領府は、共通点を交渉の過程で探っていくとして、アメリカと安全保障をめぐる交渉を本格的に始めたい意向を示しました。プーチン政権は、近く、安全保障について対応を示すとしていて、当面は、その内容が焦点です。 ウクライナ情勢を巡りロシアのラブロフ外相は、16日、ロシアが重視するNATO=北大西洋条約機構の不拡大をめぐる問題では妥協しないと強調しました。 その一方、ロシアが求めてきた、NATOによる中・短距離ミサイルの配備の制限などに関して「欧米側は、これらの問題について真剣な対話を行う用意があることを表明した。前向きな一歩と見なす」と一定の評価を行いました。 また、ロシア大統領府のペスコフ報道官は、16日「プーチン大統領は、外交交渉を行う意思と準備があることを強調している。共通点は、交渉の過程で探っていかなければならない」と述べ、アメリカと安全保障をめぐる交渉を本格的に始めたい意向を示しました。 一方、ロシア国防省は、15日、ウクライナとの国境近くに展開していた軍の一部の部隊が演習を終えて撤収を始めると発表しています。 アメリカなどは、ロシアとの交渉を具体的に進めるためにはロシアが軍の部隊をまず撤収させるべきだとしています。 プーチン政権は、安全保障をめぐり、近く、対応を示すとしていて、当面は、ロシア側が準備ができているとする10ページに及ぶ草案の内容と、これをもとにして交渉が始まるのかが焦点です。 ●ロシア外務省報道官「米英のメディアが偽情報」 アメリカがロシアによる侵攻の可能性はまだ十分ありえるなどとしていることについてロシア外務省のザハロワ報道官は、16日自身のSNSで「偽情報を流すアメリカやイギリスのメディアには、ロシアによる「侵攻」の次の計画がいつかぜひ教えてほしい。私はその日に休暇をとりたい」と痛烈に皮肉りました。 ●G7 緊急の外相会合へ G7=主要7か国の議長国ドイツは、緊張が続くウクライナ情勢を受けて、今月19日に緊急の外相会合を開催すると発表しました。外相会合は、今月18日から20日にかけてドイツ南部で開かれる「ミュンヘン安全保障会議」にあわせて行われ、各国の緊密な連携を確認するとしています。 ●イギリス外相がウクライナなど訪問へ イギリスのトラス外相は、ウクライナやポーランド、それにドイツを今週、訪問すると発表しました。一連の訪問で、ウクライナのクレバ外相やポーランドのラウ外相と会談し、ウクライナへの支援を改めて表明し、ロシアによる侵攻に反対する立場を一致して打ち出したいとしています。また、G7=主要7か国の緊急の外相会合や国際会議が開かれるドイツのミュンヘンを19日に訪れるということです。トラス外相は、「ロシアに対しては、外交の道を選ぶよう促したい。しかし、侵攻の道を続けるのであれば、ロシアにとって経済的なコストを伴う大きな結果をもたらし、国際社会からものけ者にされるだろう」などという考えをウクライナで予定している演説で表明することにしています。 ●ウクライナ「国民統合の日」で屈しない姿勢 ウクライナの国境周辺でロシア軍が大規模な部隊を展開させ緊張が続く中、ウクライナ政府は16日を「国民統合の日」に制定し、人々が団結してロシアからの圧力に屈しない姿勢を示しました。このうち首都キエフでは市内に多くの国旗が掲げられたほか、広場や沿道に市民が集まって国歌を歌うなどし、国の独立と主権を守ろうと訴えていました。集会に参加した男性は「団結こそ私たちの強さだ。ウクライナは必ず勝利する」と力を込めていました。また、別の男性は、ロシア軍の一部が撤収したと伝えられていることについて「実際に撤収していればいずれ明らかになるはずだが、状況ははっきりしない」と話し懐疑的な見方を示していました。 ●モスクワ市民「挑発しているのはアメリカ」 一方、プーチン政権の動向が注目される中、ロシアの首都モスクワでは市民の間からさまざまな声が聞かれました。このうち女性の1人は「挑発しているのはアメリカのほうだ。いつも、あらゆる挑発行為を組織的に行ってきた」と話し、アメリカこそが、軍事的な緊張を高めているとして批判していました。一方、高齢の男性は、プーチン大統領がアメリカなどと協議を続ける姿勢を示したことについて「平和的な交渉に向けた動きが始まったことは良いことだ」と話し、外交によって事態が打開することに期待を寄せていました。またウクライナ人の友人が多くいるという女性は「人々が冷静に考え、軍事行動を起こさないことを願う。戦争はあってはならないことだ」と話していました。 |
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●習近平の「台湾侵攻」で、これから日本に起こる「尖閣侵略」のシナリオ 2/17
ロシアによるウクライナ侵攻のどさくさに紛れて、中国が台湾侵攻に動く可能性がいま高まっていることは、前編記事『習近平が大暴走…ロシア「ウクライナ侵攻」のスキに狙う「台湾侵略」の危ない可能性』でお伝えしたとおりだ。 そのXデーとなるのが、北京オリンピック閉幕後だと専門家は指摘する。実際に'14年のソチ五輪後に、ロシアはクリミア半島の併合に踏み切った過去を習近平は周辺に研究させているというのだ。 ●愛国に陶酔する中国人 '14年2月、ソチ五輪終了後にウクライナ領だったクリミア自治共和国で親ロシア政権が成立。ロシア系住民の保護を目的にプーチン大統領はロシア軍を投入し、一気にクリミアを併合した。 このロシアによる一連のクリミア併合を仔細に研究しているのが、中国の習近平国家主席である。 『台湾有事』などの著書があるジャーナリストの清水克彦氏が言う。 「習氏は共産党や人民解放軍の幹部を集め、どういう経緯をたどって、ソチ五輪後にロシアがクリミアを併合したのか、そのプロセスを詳細に研究しろという指令を出しているようです。そのプロセスを台湾統一に重ねているのだと思います」 習近平国家主席にとって、台湾統一は避けられない「歴史的任務」である。中国は共産党による一党独裁政権を維持するためにも、対外拡張主義を続けなければならないと指摘するのは、元外務省国際法局長で同志社大学特別客員教授の兼原信克氏だ。 「中国のような大国で、共産党が一党独裁政権を維持することは非常に困難です。そのため、子供たちに愛国主義を植えつける思想教育を行ってきました。 中国はついに世界第2位の経済大国となり、青年の多くは国威発揚に陶酔している。この愛国心が最終的に行き着く場所が、台湾なのです。 台湾は一貫して、米国の勢力下にあり、その傍らには日本が同盟国として立っている。国民を興奮させるドラマの最終章に現れる敵として、申し分がないのでしょう」 '97年に香港は英国から中国に返還された。この際、中国政府は50年間、香港に中国本土とは異なる行政制度を認め、「高度な自治」を認める「一国二制度」を約束した。 しかし、'19年に「逃亡犯条例」改正に反対するデモを警察当局が鎮圧し、'20年に「香港国家安全維持法」を施行。民主派の運動家たちを次々と逮捕し、「一国二制度」や「高度な自治」はわずか二十数年で消滅し、香港は中国に飲み込まれた。 ●米国は勝てない 次のターゲットが台湾だ。ロシアがウクライナを狙うこのタイミングを大きなチャンスと捉えていてもおかしくない。高確率で動いてくるだろう。 実際、習近平国家主席は近年、激烈な勢いで軍備を拡張している。すでに戦闘機を1000機以上、爆撃機を200機以上保持し、2隻の空母が就航している。今年中には3隻目の空母が進水する予定だ。 対する米国のインド太平洋軍は戦闘機200機足らず、爆撃機十数機、空母は1隻にすぎない。 米軍が他地域から戦力を回すとしても、中国とロシアの2方面で戦争になった場合、カバーできるとは言い難い。 「中国が台湾統一に踏み切ったら、当然、米軍は行動を起こします。台湾沖で米中が衝突し、全面戦争になれば、第三次世界大戦に近い形になるおそれもあります。 それを避けるために、まずは中国が自国領と主張する日本の尖閣諸島を狙う可能性がある。尖閣諸島は無人島なので、台湾侵攻ほど大きな問題にならないと思っているからです。 その場合、中国が北朝鮮を焚き付けて、日米に対してミサイルを発射させるかもしれない。そうすると、西太平洋・インド洋を管轄とする第7艦隊も北朝鮮と尖閣諸島の2方面に展開しなくてはなりません。 '16年に米国の軍事シンクタンク、ランド研究所が発表したシミュレーションでは、尖閣諸島はわずか5日間で中国に占領されるという分析もありました。米軍が戦闘に本腰を入れる前に尖閣諸島が占領されてしまうという流れが一番恐ろしい」(ジャーナリストの清水克彦氏) 中国は先に尖閣諸島を奪取した後、台湾侵攻に向かうというシナリオもあれば、台湾と尖閣諸島を同時に狙うという戦略も考えられる。清水氏が続ける。 「そうなれば、米軍が中国の台湾統一を抑え込めない可能性がある。米国も今のままでは台湾沖で人民解放軍に勝てないと考えているのか、最近は米国から台湾に対して戦力強化を促す声が上がっています。実際、台湾側も軍事力強化のために、日本円で1兆円の特別予算を計上しました」 ●日本の備えは何もない 台湾沖で日米中が軍事衝突を起こしたら、どちらが勝者になるのか。現実は極めて厳しい。そこまで中国の軍事力は巨大化しているのだ。だからこそ、中国が台湾に手が出せないようにするためには、圧力をかけ続けるしかない。 元空将で日本安全保障戦略研究所上席研究員の小野田治氏がこう話す。 「昨年9月頃から台湾の防空識別圏の西端に、多彩かつ多数の中国軍機が姿を見せています。 これまでは台湾に対する威嚇と見られていましたが、データを分析すると、戦闘機だけでなく、爆撃機やその護衛機、空中給油機も含まれていることがわかりました。つまり、威嚇だけでなく、年間を通した訓練計画が存在することが窺えます。 多数機同士の戦闘を想定した実践的な訓練も行われているようです。ベテランが新人を養成する目的も兼ねていると見られ、訓練自体が複雑化し、充実しているのです」 中国がXデーに備えて着々と準備を進める一方、齢79のバイデン米大統領は中国に対して曖昧な態度に終始している。台湾防衛を約束するものの、実際に中国が台湾統一に動いたときにどのような軍事介入を行うのかは明確にしていない。 世界の覇権を狙う中国は、バイデン大統領が曖昧な態度を取っているいまが好機と、領土を拡大させるきっかけを窺っているのである。ところが、日本政府も少なくとも秋の共産党大会まで中国は台湾に侵攻しないと高を括って、安閑としているように見える。 「中国は遅くとも5年以内に台湾や尖閣諸島に侵攻してくるでしょう。今すぐ行動しないと間に合いません。 中国の台湾侵攻とロシアのウクライナ侵攻がたとえ同時ではなく、数ヵ月のタイムラグがあったとしても、世界に深刻な問題をもたらします。米国には2方面で戦う準備がありませんし、日本や台湾にも中国と戦う備えがありません。 日本と米国と台湾で、中国の攻撃を無力化する作戦を練り、共同訓練をしなければなりません。統合司令本部のようなものを作り、協調的な軍事行動を取ることも重要です」(元米海軍副次官でヨークタウン研究所創設者のセス・クロプシー氏) 元外務省国際法局長で同志社大学特別客員教授の兼原信克氏もこう口を揃える。「日本は地震に対しての備えは世界最高ですが、台湾有事については何の備えもできていません。何が起こっているのかも把握できないうちに、尖閣諸島を占領されてしまうのではないか」 北京五輪での日本選手の活躍を応援するのもいい。しかし、中国とのメダル争いが、いつ「実戦」に発展するかもわからないということを肝に銘じておくべきだろう。 |
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●習近平が大暴走…ロシア「ウクライナ侵攻」のスキに「台湾侵略」の可能性 2/17
ウクライナ危機に世界の注目が集まっているが、軍事のプロが警戒を強めているのが台湾情勢だ。中国がいずれ台湾統一に動くのは間違いないと専門家は口を揃える。最悪の場合「第三次世界大戦」とも呼びうる事態が起こるかもしれない、そのタイミングが近づいている。 ロシア軍がウクライナ侵攻に向けて最終段階に入った。たしかに恐ろしい事態だが、日本人にとっては遠い異国の話。そんなふうに捉えている人も多いかもしれない。 だが、ロシアによるウクライナ侵攻のどさくさに紛れて、中国がいよいよ「動く」可能性がいま高まっている。それは日本にとって、紛れもなく脅威となるだろう。 元米海軍副次官でヨークタウン研究所創設者のセス・クロプシー氏がこう警告する。 「ロシアはウクライナに対する大規模な侵攻に必要な準備のほぼすべてを終え、危機は目前に迫っています。その裏で実は、米国の政府当局者たちは中国による台湾侵攻にも焦点を当て始めました。 ウクライナと台湾、この二つの地域はユーラシア大陸における大規模な覇権争いとして互いに連結しており、それぞれを切り離して見るべきではありません。 ロシアにとってウクライナを獲得することは悲願であり、中国共産党にとって台湾を奪取することが国家目的です。そして、米国はユーラシア大陸の東端と西端、二つの地域で戦争に関わる備えができていません。 その隙に乗じる形で、ロシアのウクライナ侵攻と同時に、中国が台湾を攻撃する可能性を排除できないのです」 ロシアはウクライナとの国境に10万人もの兵力を集めるばかりか、ウクライナの南に位置する黒海に軍艦を増派し、北方のベラルーシでは2月10日から大規模な軍事演習を行っている。 『現代ロシアの軍事戦略』などの著書があり、ロシアの安全保障に詳しい小泉悠氏が解説する。 「プーチン大統領は表向き、ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟するとロシアが軍事的に脅かされると主張していますが、ロシアがウクライナにこだわる理由はそれだけではありません。むしろ、旧ソ連圏で2番目に多い人口を誇るウクライナを自国の経済圏に組み込みたいというのが本音でしょう。 もう一つの理由として挙げられるのが、ウクライナ人は同じスラブ民族であり、ロシア人から見れば、同じ民族が分断されているという国民の思いです。 '24年に大統領選挙を控えたプーチン大統領にとって、ウクライナを西欧諸国から引き剥がして自陣営に引き入れることは、権勢を盤石にするために必要なのです」 しかし、よりによって「平和の祭典」である北京五輪の裏側で軍事侵攻があり得るのか。「閉会した直後が危ない」と、小泉氏は警鐘を鳴らす。 「ウクライナ周辺には極東や中央部から動員してきた部隊を含めて、十数万人の兵力が集結しています。同盟国のベラルーシにも、3万人くらい展開させていると見られます。しかも2月に入り、部隊が駐屯地を出て、国境のすぐそばまで展開し始めました。普通に考えれば、これは攻撃準備態勢です。 拳銃にたとえると、撃鉄を起こして引き金に手をかけている状態になっており、いつ指を引くかわからない。兵士も疲れるので、このレベルの緊張度はそれほど長く続けられません。 2月20日に北京五輪が終わります。そして、ベラルーシでの大規模演習が終わるのも2月20日です。そのときにプーチン大統領は振り上げたこぶしを収めるのか、そのまま侵攻に踏み切るのか。 プーチン大統領の腹一つにかかっています。普通に考えれば侵攻しないと思うのですが、みんながそう考えていた'14年のソチ五輪後に、ロシアはクリミア半島の併合に踏み切った過去があります」 世界の覇権を手中に収めるため、虎視眈々とその時期を狙ってきた習近平。「中国が台湾統一に踏み切ったら、米軍は行動を起こす。台湾沖で米中が衝突し、全面戦争になれば、第三次世界大戦に近い形になるおそれもある」と専門家は指摘する。その詳細を後編記事『習近平の「台湾侵攻」で、これから日本に起こる「尖閣侵略」のヤバすぎるシナリオ』で明かそう。 |
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●ウクライナ侵攻、プーチン氏は「決定済み」とバイデン大統領が確信
2/18 バイデン米大統領は18日、ロシアのプーチン大統領がすでにウクライナ侵攻を決定し、首都キエフを含め同国を近日中に攻撃する計画であることを確信していると述べた。バイデン氏はこの見方は米当局の「著しい」情報収集能力に裏付けされていると述べたが、詳細には触れなかった。ロシア大統領府はこれまで、ウクライナ侵攻計画を繰り返し否定している。ロシアはウクライナ国境付近に最大19万人を集結させたと、米当局は見積もっている。この数には軍の部隊やウクライナ国内の親ロシア分離主義勢力も含み、第二次大戦以降で最も大がかりな軍の動員だと米当局は指摘した。 ロシアは今週、ウクライナ侵攻の計画をあらためて否定した。ただ、インタファクス通信によると、ウクライナ東部ドンバス地方の分離主義勢力は衝突激化を理由に、女性や子供、高齢者らはロシアに避難させる方針を示した。 一方で、外交努力も活発化。バイデン米大統領は18日、ロシア軍の動きについて西側首脳と話し合うほか、オースティン米国防長官とロシアのショイグ国防相は同日に電話会談を行った。ブリンケン米国務長官はロシアのラブロフ外相と、来週後半に欧州で会談する。主要7カ国(G7)首脳は24日、ドイツのショルツ首相主催でバーチャル会合を開く。ウクライナ情勢を巡る主な動きは以下の通り。 ●バイデン米大統領:ロシアは近日中に攻撃する計画だと確信する バイデン大統領はホワイトハウスで報道陣に対し、ロシアが「ウクライナの首都キエフを標的にすると考えている」と述べたが、この発言の裏付けとなっている情報については詳しく説明しなかった。また、ウクライナが東部で新たに挑発を行ったとするロシアと同地域の親ロシア派武装勢力の主張については、説得力がないとの見解を示した。バイデン氏は「こうした主張に証拠は全くない」と述べ、ロシアが侵攻の口実をつくるために「偽旗」作戦を実施しようとしているとの主張を繰り返した。 ●ウクライナへのサイバー攻撃、ロシアに責任と米国が主張 ウクライナの銀行や政府のウェブサイトに対する今週の大規模なサイバー攻撃は、ロシアに責任があると米国は考えていると、ニューバーガー国家安全保障担当副補佐官(サイバー・先端技術担当)がホワイトハウスで記者団に語った。ロシア側はこの「DDoS(分散型サービス妨害)攻撃」とは何の関係もないと述べている。 ●プーチン大統領:米国の安全保障提案、交渉に反対しない ロシアのプーチン大統領は記者会見で、安全保障の問題について米国と交渉する用意があるが包括的なアプローチが必要だと述べた。米国はロシア側の主要な懸念事項を今も無視しているとし、ベラルーシでの軍事演習は防衛目的で、誰をも脅かすものではないと主張。ロシアへの経済制裁はいずれにせよ導入されるだろうとも語った。 ●ドンバス地方の分離派、女性や子供をロシアに避難へ−インタファクス インタファクス通信によれば、ウクライナ東部のドンバス地方を実効支配する親ロシア派の「ドネツク人民共和国」指導者は、接触線で衝突が激化しているため、子供や女性、高齢者をロシア側に避難させると述べた。避難先としてはロシアのロストフ州政府が受け入れに同意しているという。 ●ロシア、第二次大戦後で最大の軍動員−米当局 ロシアはウクライナ国境付近に16万9000人から19万人を集結させたと、欧州安保協力機構(OSCE)の米国代表がウィーンで開かれた会合で明らかにした。この数にはドンバス地方の親ロシア分離主義勢力やロシアが2014年に併合したクリミアの部隊も含まれ、1月30日時点の10万人から増加したという。 ●G7首脳がバーチャル形式で24日協議へ G7はウクライナの東部国境を巡る情勢などについて協議するとショルツ首相の報道官は説明した。6月にバイエルン州で予定されているサミット(首脳会議)の準備も兼ねるという。ドイツは現在G7の議長国。ショルツ首相は来週の会合後に会見を開く。 ●プーチン大統領、19日に軍事演習を視察へ ロシア国防省によれば、プーチン大統領は19日、弾道および巡航ミサイルの試射を含む戦略核部隊の演習を視察する。ロシア大統領府のペスコフ報道官は、軍事演習は定期的なもので、緊張を悪化させることはないと説明。現在モスクワを訪れているベラルーシのルカシェンコ大統領も同行する可能性があることを明らかにした。 ●アジア含む国際社会の秩序に影響 岸田文雄首相は18日午後の衆院予算委員会で、ウクライナ問題は「欧州にとどまらずアジアを含む国際社会の秩序に関わる」との認識を示した。ロシアがクリミアを併合した2014年当時と比べて国際情勢は「ずいぶんと変化をしている、異なっている」と指摘。仮にロシアがウクライナに侵攻した場合の経済制裁などの対応について問われると、「状況の変化に応じてG7をはじめとする国際社会との連携を大切にしながら、対応を考えていかなければならない」と述べた。 ●米大統領が欧州首脳と電話会談へ ホワイトハウス当局者は、バイデン大統領が18日午後に欧州各国首脳と電話会談し、ウクライナ国境周辺でのロシア軍の兵力増強や抑止・外交の継続的取り組みを議論する予定であることを明らかにした。 ●米ロ外相会談、来週開催 米国務省のプライス報道官は17日、ブリンケン国務長官とラブロフ外相による米ロ外相会談を開く案に対し、ロシア側が来週後半の開催を提案し、米国がそれを受け入れたことを明らかにした。 ●日本は外交努力を継続 松野博一官房長官は18日午前の会見で、ウクライナ情勢については「さまざまな外交努力が続けられているものの、引き続き予断を許さない状況」と説明。日本としては緊張緩和に向けた粘り強い外交努力を続け、「G7をはじめとする国際社会と連携し、実際の状況に応じて適切に対応していく」と述べた。 |
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●ウクライナ情勢 来週後半に米露外相が会談も予断許さない状況 2/18
緊張が続くウクライナ情勢をめぐり、アメリカとロシアの外相会談が来週後半にも行われる見通しとなりました。ただ、NATO=北大西洋条約機構の拡大について双方の立場は大きく隔たっている上、ウクライナ東部では政府軍と親ロシア派の戦闘が相次ぎ、外交による解決への糸口が見いだせるかは、予断を許さない状況です。 アメリカのブリンケン国務長官は17日、国連の安全保障理事会で開かれた会合に出席し、ロシア側から安全保障問題をめぐる文書を受け取り、内容を分析していると述べたうえで、ロシアのラブロフ外相に来週、ヨーロッパでの会談を提案したことを明らかにしました。 アメリカ国務省によりますと、ロシア側は来週後半の開催で同意したということで、先月21日以来、およそ1か月ぶりにブリンケン長官とラブロフ外相の対面での会談が行われる見通しとなりました。 ただ、NATO=北大西洋条約機構について、▽ロシアがさらなる拡大を放棄するよう求めているのに対して、▽アメリカは、NATOの拡大をめぐる問題には応じられない姿勢を示し、双方の立場は依然として、大きく隔たっています。 また、ウクライナ東部では、政府軍と親ロシア派の武装勢力による戦闘が相次ぎ、外交による解決への糸口が見いだせるかは、予断を許さない状況です。 ●ウクライナ東部 爆発や銃撃など停戦違反が600件近く発生 ウクライナ東部で、政府軍と親ロシア派の武装勢力の停戦の監視にあたっているOSCE=ヨーロッパ安全保障協力機構は、今月15日夜から16日夜にかけて、爆発や銃撃といった停戦違反が600件近く、あったとしています。 このうち東部のドネツク周辺では128回の爆発を含む189件の停戦違反が確認され、前日(14〜15日)の24件から7倍以上に急増しました。 また、ルガンスク周辺でも188回の爆発を含む402件の停戦違反が確認され、こちらも前日の129件と比べて3倍以上に増えています。 ●プーチン大統領 親ロシア派への攻撃「ジェノサイド」と表現 ウクライナ東部では、2014年、ロシアを後ろ盾とする武装勢力が東部の一部地域を占拠し、これを認めないウクライナ軍との間で激しい衝突に発展し、散発的な戦闘が続いています。 東部の状況についてロシアのプーチン大統領は、今月15日、ウクライナ軍が、停戦合意に違反して親ロシア派の武装勢力に対する攻撃を激化させていると主張し、民族などの集団に破壊する意図をもって危害を加える「ジェノサイド」という表現まで用いて現状に危機感を示しました。 ロシアの議会下院は、15日、この地域を独立国家として承認することを検討するよう、プーチン大統領に求める決議案を可決し、ボロジン議長は「東部に住むわれわれの同胞は支援を必要としている」と述べました。 一方、アメリカのブリンケン国務長官は17日、国連安全保障理事会で演説し「ロシアは、攻撃の口実を作ろうと計画している。それは、ロシアがウクライナの責任だとするための暴力事件であったり、ウクライナ政府へのとんでもない言いがかりだったりするかもしれない」と述べ、プーチン大統領の発言も念頭にロシア側は侵攻の口実にしようと、虚偽の情報を拡散しようとしていると警鐘を鳴らしました。 ●米 バイデン政権 ロシア側の虚偽情報に警戒 アメリカのバイデン政権は、ロシアが虚偽の情報を拡散し、ウクライナへの侵攻の口実にするのではないかと警戒を強めています。 特に、警戒しているのが、ウクライナ軍と親ロシア派の武装勢力との散発的な戦闘が続く東部に住むロシア系住民が、ウクライナ軍から攻撃を受けたという、情報のねつ造です。 8年前(2014年)、ロシアが一方的にウクライナ南部のクリミアを併合した時には、2月、ウクライナでロシア寄りのヤヌコービッチ政権が大規模なデモで崩壊したあと、ロシアが国営メディアなどを通じて「現地のロシア系住民が脅威にさらされている」という情報を拡散させました。 そしてロシアは、クリミアにひそかに軍を送り込み、3月、一方的に併合しました。 バイデン政権は、ロシアによる虚偽の情報の拡散は、2014年にも前例があるとして、情報機関などの情報も含めて積極的に公開し、ロシアの手の内を明かすことで、侵攻を食い止めようとしています。 ●ロシア「19日にミサイル発射演習実施」 ロシア国防省は今月19日、プーチン大統領の指揮のもとで計画に沿ってミサイルの発射演習を実施すると、18日、発表しました。 演習は、戦略的抑止力のためとされ、核戦力を運用する航空宇宙軍や戦略ミサイル部隊、それに海軍の黒海艦隊や、北極圏に司令部を置く北方艦隊などが参加します。 そして、プーチン大統領の指揮により弾道ミサイルや巡航ミサイルが発射されるということです。 ロシア大統領府のペスコフ報道官は18日「演習は透明性があり、懸念を抱かせるものではない」と強調しましたが、ウクライナ情勢をめぐって緊張が続く中、軍事的な圧力をかけるねらいもあるものとみられます。 |
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●NY株、今年最大の下げ 622ドル安、ウクライナ情勢警戒 2/18
17日のニューヨーク株式相場は、ウクライナ情勢への警戒感からリスク回避の動きが強まる中、大幅続落した。 優良株で構成するダウ工業株30種平均は前日終値比622.24ドル安の3万4312.03ドルで終了。下げ幅は今年最大となった。一方、安全資産とされる金や円、米国債には買いが膨らんだ。 バイデン米大統領はこの日、ロシアによるウクライナ侵攻が「数日以内」にも起こり得ると指摘。ブリンケン米国務長官は国連安保理で演説し、ロシアのウクライナ侵攻は「差し迫った脅威だ」と強調した。 |
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●バイデン大統領「プーチン大統領が侵攻を決断したと確信」 ウクライナ情勢 2/19
ウクライナ情勢の緊張がさらに高まっています。アメリカのバイデン大統領は会見を開き、「ロシアのプーチン大統領がウクライナに侵攻することを決断したと確信している」と述べました。 アメリカ バイデン大統領「現時点では、彼が決断したと確信している。そう信じる根拠がある」 記者「プーチン大統領がウクライナ侵攻を決断したと確信していると言いましたか」 アメリカ バイデン大統領「そうです」 ウクライナ情勢に関する臨時会見を開いたバイデン大統領はこのように述べたほか、「侵攻は近日中にありえる」「首都のキエフも標的としている」などと改めて危機が迫っていることを強調しました。 ただ、「侵攻が行われるまでは外交の可能性はある」として、引き続き、ロシア側に緊張の緩和に向けて働きかける姿勢を示しています。 バイデン大統領は会見の中で、来週24日にアメリカのブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相との会談が設定されたことを明らかにしたうえで、「それまでに軍事行動があれば、外交の道を完全に閉ざしたことを意味する」と述べ、ロシア側に自制を求めました。 アメリカ ブリンケン国務長官「この24〜48時間で説明したことを含め、全ての出来事は挑発行為をでっちあげ、それへの対応としてウクライナに攻撃を仕掛けるシナリオの一部だと深く懸念している」 ブリンケン国務長官は軍の一部を撤収しているとするロシアの主張に対し、「ウクライナの国境に向かう追加の部隊を確認している」と改めて強調しました。 ロイター通信によりますと、OSCE=ヨーロッパ安全保障協力機構のアメリカ大使は、ウクライナ国境付近のロシア軍の部隊が現時点で最大19万人に達しているとの見方を示しているということです。 |
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●ロシア軍がミサイル発射演習 ウクライナ情勢緊迫の中 2/19
ロシア軍は19日、プーチン大統領の指揮下で大陸間弾道ミサイル(ICBM)と極超音速巡航ミサイルの発射演習を行った。ロシア軍部隊の国境付近への集結でウクライナ情勢が緊迫する中でのミサイル演習で、緊張が一段と高まりそうだ。 ロシアは15日、ウクライナ国境付近の一部部隊の撤収開始を発表したが、米欧は撤収を疑問視している。一方、政府軍と親ロシア派武装勢力が対立するウクライナ東部では砲撃が続き、親ロ派は政府軍が侵攻を計画していると主張。親ロ派住民がロシアに避難している。 ロシア国防省は、19日のミサイル発射演習は「以前から計画されていた」と強調。核戦力部隊を含む「戦略的抑止力」の演習と説明した。 インタファクス通信によると、プーチン氏は大統領府の作戦司令室から指揮。ベラルーシのルカシェンコ大統領訪ロに合わせての実施で、ロシア軍はベラルーシで合同軍事演習中でもあり、軍事協力を誇示して米欧をけん制している。 ウクライナ東部では同国軍が19日、親ロ派の砲撃によって兵士1人が死亡したと明らかにした。政府と親ロ派は、相手側が停戦合意を破って攻撃を続けていると非難。親ロ派は同日、住民の「総動員」を発表し「武器を持つことができる全ての男性に、家族を守るため立ち上がることを呼び掛ける」と表明した。 |
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●ウクライナ政府と東部の親ロシア派が非難の応酬 2/19
緊張が続くウクライナの東部で、政府軍と、一部を事実上支配する親ロシア派との戦闘が再燃する中、親ロシア派が政府軍による攻撃を理由に住民を隣国のロシアに避難させると発表したのに対し、ウクライナ政府が攻撃を真っ向から否定して非難の応酬となっています。 ウクライナ東部では、政府軍と、一部の地域を事実上支配する親ロシア派の武装勢力による戦闘が再燃し、停戦監視にあたっているOSCE=ヨーロッパ安全保障協力機構は、今月15日夜から16日夜にかけて、停戦合意に違反して爆発や銃撃が600件近くあったとしています。 こうした中、武装勢力の指導者プシリン氏は18日、「ウクライナ政府は戦闘態勢に入り、力ずくでこの地域を奪還する準備を整えている」と主張し、国境を接するロシア南部のロストフ州に住民を避難させると明らかにしました。 これに対して、ウクライナ国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は、「真っ赤なうそだ」と否定したうえで、ロシアが意図的に流した情報だと主張し、非難の応酬になっています。 ウクライナ東部の状況についてロシアのプーチン大統領は18日、記者会見で「情勢は緊迫している」として、ウクライナ政府に停戦合意の履行を迫りました。 また、「ウクライナでは、人権が大規模かつ組織的に侵害され、ロシア語を話す人々への差別が法制化されている」と述べ、ウクライナ政府を批判しました。 この地域をめぐってアメリカのバイデン政権は、ロシア系住民がウクライナ軍から攻撃を受けたという虚偽の情報が拡散し、ロシアがウクライナへの軍事侵攻の口実にするのではないかと警戒を強めています。 ●ロシア国営メディア 「住民が避難」伝える ロシア国営メディアは、ウクライナ東部ドネツク州の親ロシア派が事実上支配している地域で住民たちがバスに乗るなどして次々に避難を始めているとする様子を伝えています。 バスには、厚手の上着を着た女性や子ども、高齢者などが大勢乗っていて、中には、不安そうな表情を浮かべている人もいます。 ロシアへの避難について明らかにした親ロシア派によりますと、ドネツク州だけでおよそ70万人を避難させる計画だとしています。 一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官は18日、プーチン大統領が避難してきた人々に対して、寝泊まりできる場所や食事の提供を行い、医療支援なども整えるよう当局に指示したほか、支援金として1人当たり1万ルーブル、日本円にしておよそ1万5000円を支給すると決めたことを明らかにしました。 |
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●ウクライナ情勢は緊張続く 揺さぶりを強めるロシア 2/19
ウクライナ情勢をめぐり、ロシアが揺さぶりを強めている。ロシア軍が19日、核攻撃を想定した弾道ミサイルの発射訓練を行う。演習には、戦略核を扱う部隊などが参加して、弾道ミサイルなど、戦略核兵器の発射訓練を行うとしている。プーチン大統領は、国防省の作戦司令室から指揮をとる。 ウクライナ東部では、親ロシア派武装組織がウクライナ軍から砲撃を受けたと発表。身の安全を確保するため、住民を一時ロシアの領内に避難させると発表した。 ウクライナは、これを口実にロシアが軍事侵攻するおそれがあると懸念している。 ウクライナ西部の街・リビウの高校では、ロシア軍による攻撃でけが人が出た場合に備え、高校生たちへ応急手当の訓練が連日行われている。多くの学生にとって、このような訓練に参加するのは初めてのこと。真剣な表情でけがの処置の仕方を学んでいる。参加した生徒「きょうの訓練はとても大切だと思う。人を助ける方法を学べるから」緊張の高まりは、高校生たちの生活にも大きな影響を及ぼしている。 |
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●ウクライナ危機、プーチン大統領が得た「5つのお土産」とは? 2/20
ウクライナをめぐる情勢が風雲急を告げている。 ロシアが隣国ウクライナの国境周辺に大規模な軍隊を集結させており、「ウクライナへの軍事侵攻が近い」と欧米各国が警戒しているからだ。アメリカのバイデン大統領は2月18日、「ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻を決断したと確信している」と主張。一方、ロシア外務省は17日に公表したアメリカなどへの文書で、ウクライナへの軍事侵攻を否定している。 しかし、ウクライナ東部ドネツク州で親ロシア派が実効支配する「ドネツク人民共和国」は18日、70万人の住民を対象にロシアに避難させる計画を立てた。徴兵のための総動員令を発令したと報じられるなど、戦争に向けた準備とみられる状況も進んでいる。 この情勢をどう読み解けばいいのか。『ハイブリッド戦争 ロシアの新しい国家戦略』などの著書があり、ロシア政治に詳しい慶應義塾大学・廣瀬陽子教授に話を聞いた。 ●ロシアがウクライナ全土を併合することは「全くメリットがない」と指摘 廣瀬教授は、これまでロシアの軍事侵攻は「まず、ないだろう」という立場だったという。プーチン大統領の狙いは「いつでも軍事侵攻をできるぞ」というポーズを見せることこそが目的であり、実際に軍事侵攻するつもりはないだろうと考えていたという。 しかし、ウクライナ軍と分離独立派が、それぞれ攻撃を受けたという主張をしており、ウクライナ東部住民の避難も進められている中で、ロシアが「自国民保護」を掲げて侵攻をする可能性が否めなくなってきていると指摘した。 ただし、たとえ軍事侵攻があったとしても、ロシアがウクライナの全土もしくは一部を併合することは「全くメリットがない」と懐疑的だ。 「ウクライナ領からロシア領に移って良かった」と住民に思わせないと反乱が起きる危険があるため、社会保障や生活環境を現在よりも良くしないといけない。それには相当な資金が必要になるからだという。 クリミア併合の際も、ウクライナ本土に依存していたガスや水道などインフラを整備するのに莫大な予算を使ったロシアに、ウクライナ全土を併合するのは難しいと指摘する。 ●プーチン大統領がこれまでに得た「5つのお土産」とは? 廣瀬教授は、プーチン大統領がこのまま軍を撤退させたとしても「すでに5つのお土産を得ている」と分析した。 その分析を要約すると以下のようになる。 01.ロシアに世界的な注目が集まり、米中対立ばかりが目立っていた国際政治に割って入った 02.アメリカとヨーロッパ諸国の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)にウクライナが将来的に入ることについてロシアは強硬に反対するも無視されてきたが、ついにNATO諸国を交渉のテーブルに着かせることができた 03.ウクライナがNATOに加入すれば、ロシアにとっては軍事侵攻をしかねないほど深刻な問題だとアピールできた 04.「旧ソ連地域にNATOが入ってくることは許さない」というロシアの勢力圏をアピールできた 05.武力侵攻の恐怖でウクライナ政治を混乱させ、親欧米派の失脚に向けて足がかりができた このように現時点でプーチン大統領は充分なメリットを享受しているのだという。ただし、それでも「自国民保護」を掲げて侵攻をする可能性は否定できず、今後どう情勢が動くのか断言するのは難しいと指摘している。 より詳しい内容を知りたい方に向けて、以下に廣瀬教授との一問一答を掲載する。 ●廣瀬教授との一問一答 ――ロシアが今回、ウクライナに軍事侵攻する可能性はどれくらいあると思いますか? 私は基本的には軍事侵攻は「まず、ないだろう」という立場です。アメリカのメディアが報じていた軍事侵攻の「Xデー」は2月16日でしたが、その日の侵攻は起こりませんでした。ただ、ここにきて、ちょっと不穏な動きが出ているのも事実です。ウクライナ東部の緊張が高まっています。ウクライナ軍と分離独立派が、それぞれ攻撃を受けたという主張をし、ウクライナ東部住民の避難も進められています。そうなると、ロシアが「自国民保護」を掲げて侵攻をする可能性が否めなくなってきてしまいます。 ―― 軍事侵攻が「まず、ないだろう」と思っていた理由は? ロシアに全くメリットがないからです。クリミア併合の記憶が強いために「ロシアはどこの領土でも併合したいはず」と思っている方もいるかもしれません。でも、クリミア併合も相当苦しい状況で実行したというのが実情です。他国の土地、この場合ウクライナの土地を併合する場合、当地に住む住民にとって「ウクライナ領からロシア領に移って良かった」という状況を作らないといけません。年金と教育などの社会保障をはじめとした生活環境など全部、ウクライナより良くしなきゃいけない。それには相当な資金が必要になります。クリミアの場合は併合後に、インフラの再構築も必要になりました。ウクライナ本土に依存していた水道やガスなどのインフラも、ロシアが用意しなくてはいけなくなった。経済制裁を受けながら独力でロシアが整備しました。プーチン政権は極東開発に力を入れてきましたが、クリミア併合後は極東向けだった予算などもクリミアに振り向けて何とかギリギリ持っている感じです。その状態で、ウクライナ一国を現在のロシアが抱えられるわけがない。だって、ウクライナ時代より良い生活状態を提供できないと、反乱なども起こるでしょうからね。 ―― なるほど。併合するのであれば「ロシア領になってよかった」とウクライナの人々に思わせないといけないということですね。ただ、ウクライナ東部には親ロシア派が実効支配している地域があります。このドネツクとルガンスクだけでも、ロシアが侵攻して併合する可能性はどうでしょうか? 攻撃の可能性は否定できなくなってきましたが、併合の可能性は低いと思います。 併合による、ロシアのメリットはあまりないと思います。あそこをウクライナに残すからこそ意義があるんです。ロシアはずっとウクライナによる「ミンスク合意」の履行を主張していますが、ミンスク合意の中で特にロシアが重視しているのは、ウクライナ東部に相当高いレベルの自治を与えることです。「相当高いレベルの自治」に含まれるのが、外交権です。ドネツクとルガンスクは外交権を持つようになると、ウクライナ政府が「NATOに入りたい」って言い続けても、ドネツクとルガンスクが「NATOに入りたくない」と言えば不可能になる。それなのに、もしロシアが併合してしまえば、ウクライナは逆にNATOに入りやすくなるんです。 ―― そうなると、「ロシアがウクライナを併合しようとしている」というのは、飽くまでもアメリカやNATO側から見たシナリオであるということになりますね。 そうです。特にアメリカが危機を喧伝していますね。確かに最初の頃、ウクライナのゼレンスキー大統領本人が「ロシアの脅威がある」と世界に訴えましたが、アメリカ、イギリスなどが脅威の度合いをかなり強調して発信しました。たとえば、アメリカ側は、「2月16日に侵攻がある」など具体的な主張もしていました。軍事侵攻が「日付が決まって予言されることは初の現象」とも報じられていますが、たしかに相当珍しいことが起きています。ロシア側から見ると「アメリカのフェイクニュース」となりますが、欧米側としては「あえて危機を煽ることでロシアを自制させる効果を狙っている」ということがあるようです。でもそこで割を食うのは、ウクライナです。ゼレンスキー大統領自身も「ロシアの脅威がある」とは言っていたものの、そんなに話が大きくなるとは思わなかった。「ウクライナ危機」を各国が警戒して、欧米の大使館がどんどん退避してしまった。当然外国資本も離れます。その結果、ウクライナ経済は大ダメージを被り、インフレも進行しています。 ―― ウクライナは大国同士の思惑に狭間になって、困った状況に追いやられているということですか? そうです。そんな情勢だからウクライナの駐英大使からも中立に関する発言が出て、後に火消しに回るといったことも起きています。そして、フランスのマクロン大統領も、ウクライナの中立について語り、後で撤回しているとも報じられました。 ――NATOとロシアの間の中立ということでしょうか? つまり冷戦期で言うところの「フィンランド化」ですよね。NATOには入れないけど、ロシアの脅威もかなり軽減できると。プーチン大統領にとっては、一番好ましい方向性です。 ―― つまり、現状はプーチン大統領にとって良い具合に進んでいるということでしょうか? 私は、色々な意味でプーチン大統領の思惑通りになっていると思います。プーチン大統領は「何も得てないじゃないか」と指摘する人もいますが、私は現時点で少なくとも5つのお土産をプーチン大統領はゲットしていると思っています。いつ軍を撤退させても損したように感じないはずです。 ―― プーチン大統領が得た5つのお土産とは何でしょう? お土産の1つは、今回の「武力侵攻をする雰囲気を醸し出していること」との理由とも重なってきますが、これまで世界がロシアへの注目度を落としていたことが背景にあります。これは大国でありたいロシアにとっては、非常にマイナスでした。バイデン政権になって「アメリカの敵は中国」という方向になり、「米中による二極世界」になっていきます。ロシアはそこに介在しないわけですよ。それは、ロシアにとって不満ですよね。もちろんロシアだって、アメリカから攻撃されたいわけじゃない。でも、経済制裁が解けてないのに、世界の大国から相手にされてないという状況への苛立ちがあったと思うんです。でも、今回のような行動を起こせば世界が注目する。実際、北京オリンピックの最中なのに、オリンピックよりもロシアの方に注目が行くような状況になっています。米中二極になりそうだった世界にロシアが入り込んで、少なくとも三極になったのが、ここ数カ月の動きです。このように「ロシアが世界から注目を集める」というのが、1番目のお土産ですね。 ―― つまり世界的にロシアが注目を浴びることが「お土産」ということですね。米中の世界観が「米中露」とロシアが割って入って形になったと? 「ロシアが第三次世界大戦を起こすかもしれない」といった形で注目をされたのは、プーチン大統領にとってはとても喜ばしいでしょうね。「ロシアは核保有国の一つ。戦争が起きれば勝者はいない」と発言したのもそうした効果を狙ったものでしょう。 ―― 次に2番目の「お土産」とは何でしょうか? 2021年12月にロシアがアメリカとNATOに対して提案をしました。「ロシアのレッドラインを守れ」という提案で、NATO拡大をやめるようにという内容ですが、これまでのところ全く聞き入れられていません。ですが、ロシアがこれまで「話し合いましょう」と提案しても無視されてきた課題について、今回の軍隊集結によって、欧米各国が話し合いのテーブルに乗るようになった。これは「交渉可能な状況」が生まれたということで、ロシア国内ですごくポジティブに受け止められています。これまで無視してきた相手を、交渉のテーブルに着かせることができたことは、大きいですね。また、米国のトランプ大統領は交渉ができない相手であったけれど、バイデンは交渉ができる相手であると言う認識があったことも、この背景にはあると思います。 ―― 3番目の「お土産」は何でしょうか? 「ウクライナがNATOに入るかどうか」というのが今回、争点になっているかのように見えますが、おそらくそれは「見せ球」です。ロシアにとってウクライナがNATOに入るかどうかは、喫緊の話ではありません。NATO加盟にはさまざまな条件があるので、ウクライナが「近い将来にNATO加盟することはないだろう」とバイデン大統領も言っています。だから今すぐロシアにとって解決しなきゃいけない問題ではないんです。 ―― では、なぜロシアは「ウクライナのNATO入り断念」を要求しているのでしょう? ウクライナがNATOに入ることはロシアにとってそれぐらい深刻なことだと世界にアピールするためです。NATO加盟にはさまざまなプロセスが必要ですが、NATO加盟国たちも「ウクライナを入れるとロシアを敵に回すことになる」という印象を間違いなく強くしました。それが3つ目のお土産になりますね。 ――なるほど。今回の緊張状態を生み出すことで、NATO加盟国の萎縮効果を生み出すことに成功したということですね。 そうですね。やっぱりNATOは、「ヨーロッパで加盟を望む国は全部入れる」ということが、設立時のモットーになっているので、本来は「どの国を入れない」とは言えないわけですよ。それができないのは、ロシアも分かっているけど、外堀を埋める状況を作れた。そこはロシアのもくろみ通りだったと思います。 ―― 4番目のお土産は? やはりロシアは勢力圏をアピールできたってことですよね。レッドラインを示すときに、「ウクライナを含む旧ソ連地域にNATOが入ってくることは許さん」と言うことで、「ここからここまでがロシアの勢力圏」という認識があると世界にアピールできました。旧ソ連圏はロシアの勢力下にあるべきで、他の国はそこに軍事的な同盟を結んだりできないという考えを世界に知らしめただけでも、大きな効果です。 ―― 最後の5番目は何でしょうか? ウクライナ政治を混乱させられたっていうのはすごく大きいですね。イギリスのトラス外相が「親露的な政権を作るためにロシアがウクライナに工作員を送り込んでいる」と1月に発表しました。ロシアは旧ソ連各国に以前から工作員を送り込んでいて、クリミア併合の際にも活動していますから「今さら」という感じがしました。イギリスも、ロシアに国際的な敵視が集中し、抑止効果が生まれるように、あえてこの時期に言ったのだと思います。とはいえ、ロシアがウクライナに親露的な政権を樹立させたいのは事実です。親欧米派であるゼレンスキー大統領が倒れると、ロシアにとっては都合がいいわけですが、ウクライナの政治はかなり混乱していると言って良い状況です。ゼレンスキー大統領は「ロシアが武力侵攻する」可能性を否定しようとしましたが、効果はなく、ウクライナ国民の間にも不安感が広がってしまいました。ウクライナはロシアと欧米の間で中立に立つべきだという中立論者も出てきていて、ウクライナの国内政治にも揺らぎが出ています。このままゼレンスキー大統領が自滅して、ウクライナ国民が自ら親露的な大統領が選んだら、プーチン大統領にとっては大成功ですよね。まだ状況は不透明ですが、彼にとっては好ましい方向に進んでいるように見えます。 |
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●欧米メディア取材中“砲撃” ウクライナ情勢緊迫 2/20
緊迫するウクライナ情勢をめぐり、欧米各国はロシアに対し、軍事侵攻した場合の経済制裁について警告するとともに、外交による解決を強く呼びかけている。 19日、緊急外相会合を開いたG7(主要7カ国)は、共同声明を発表し、ウクライナ周辺でのロシアによる軍の増強は、「世界の安全保障と国際秩序への挑戦だ」と強く非難した。 そして、ロシアがウクライナへ軍事侵攻した場合、「幅広い経済・金融制裁を含む経済への前例のない代償を払わせる」と警告するとともに、外交的な解決を求めた。 こうした中、フランスのマクロン大統領とロシアのプーチン大統領が、日本時間の20日夜、電話で会談する。 両首脳が直接話し合うのは、モスクワで行った会談を含め、2月に入って4回目になる。 また、アメリカでは20日、バイデン大統領がNSC(国家安全保障会議)を開き、ウクライナ情勢について協議する。 一方、ウクライナ東部を実効支配する親ロシア派武装勢力は、「総動員令」を出して予備役を召集。 欧米メディアがウクライナ軍側を取材中にも、砲撃とみられる爆発音があった。 ウクライナ軍は、「19日朝までの24時間に、親ロシア派から136回の攻撃があった」としている。 |
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●ウクライナ情勢の先に岸田内閣が見据える“大国の思惑” 2/20
●「とにかくロシアだ!ロシアとやらないとダメだ」日ロ会談の舞台裏 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の警戒が強まっている。 2月16日にはロシアがウクライナ国境付近から軍隊を一部撤収させると発表したと思えば、アメリカは「ロシア軍が7000人の部隊を増強した」と発表するなど緊迫した“情報戦”が続いている。バイデン大統領は「(侵攻の恐れは)非常に高い。私の感覚では今後、数日中におこると思う」と話した。 ある官邸幹部はいう。「アメリカの危機感は大きい。これは尋常ではなく大きい危機感だ」 岸田総理は15日にウクライナのゼレンスキー大統領、EUのフォンデアライエン委員長、そして16日にはイギリスのジョンソン首相と相次いで電話会談を行い、外交努力によりこの緊張緩和につなげていくことなどを確認した。 しかし、岸田総理はかねてから「とにかくロシアだ、ロシアと会談しないと意味がない」と強く主張。ようやく17日、プーチン大統領との会談にこぎつけた。 日本時間午後9時32分、電話会談がスタートした。日本側出席者は、岸田総理、林外務大臣、松野官房長官、木原・磯崎両副長官、秋葉国家安全保障局長など“ほぼ総出”だった。会談は24分間。お互い淡々と自分たちの主張をぶつけあった。 ●「言いたいことが言えた・・」総理は安堵 「力による現状変更ではなく外交交渉により関係国が受け入れられる解決方法を追求すべきだ」 岸田総理がこう口火を切ると、プーチン大統領は「外交努力で解決したい」と応じた。そしてウクライナがNATOに加盟しないことへの保証などロシア側の立場を主張した。プーチン氏が想像以上に友好的に対応したことに、岸田総理は驚いた。 「言いたいことが言えたな」会談終了後、岸田総理は安堵の表情を浮かべた。総理側近は「本当にロシアがウクライナに侵攻してしまう前にこの電話会談を実現しておきたかった。本当に良かった」と明かした。 19日にはG7外相会談、そして24日にはG7のオンライン首脳会談も控えている。岸田総理としては欧州各国がすでにプーチン大統領とバイ(二国間)会談をやっている手前、同じ土俵にのっておく必要があった。 ●最大ミッションは邦人保護 “アフガニスタンを教訓に” 「邦人保護には遺漏なく対応するように」 岸田総理は14日、国家安全保障会議(NSC)を開催し、関係閣僚にこのように指示した。会議では情報収集や邦人保護、そしてロシアが侵攻した場合の制裁などについて話し合われた。会議では「20日までが一番の山だろう」などと意見が交わされたという。 政府にとって目下、最大の任務は現地にいる邦人の保護だ。 去年8月、アフガニスタンの首都カブールがタリバンによって占領された際には、自衛隊機の派遣が遅れ、批判が出た。このときは自衛隊機で救出できた邦人は1名だけ。この教訓から、今回政府内では邦人保護に一段と神経を尖らせる。 外務省によると17日時点でおよそ120人の邦人が現地に残っている。これまで外務省は危機情報をウクライナ全土にレベル4(退避勧告)に引き上げ、民間機が運行している間に国外退避を呼びかけている。日本企業はほぼ撤収が終わったと言うことだが、配偶者がウクライナ人で生活基盤が現地にあるなどの理由で、外務省は特例的に家族のビザを発給するなど対応しているが、国外に出る日本人は頭打ちになっている。しかもウクライナ政府は「国内がパニックになる」などという理由から、欧米や日本などに対し、“自国民を待避させるな”と呼びかけているという。 仮に今後ロシアによる侵攻があった場合、どう残った邦人を待避させるのか。 防衛省内では自衛隊機の派遣も検討しているが、ロシアが侵攻し空港を占拠した場合、ウクライナへの派遣はより困難になる。現実的には隣国ポーランドに派遣し、陸路で待避した邦人を輸送することを想定しているようだ。 岸田総理は17日の記者会見で「近隣国においてチャーター機の手配を行うなど邦人保護に全力で取り組む」と述べた。 ●クリミア併合で日本は“腰砕け”の制裁・・「あの時の最善の判断だった」 今後焦点となるのは、ロシアがウクライナに侵攻した場合の制裁だ。政府関係者によると、ロシアの侵攻の“度合い”によって複数案が検討されているという。“度合い”とはすなわち、東部戦線での衝突か、首都キエフを占領するか、ウクライナ全土にわたる戦争状態か・・などを想定している。 制裁案は、ロシア人要人の資産凍結や大手銀行との取引禁止、先端技術の輸出規制などがテーブルに上がる。 とくに注目されているのは、2014年のロシアによるクリミア併合の際の制裁より厳しいものになるのかどうか。今回は当時より厳しい制裁を求める声が与野党双方から上がる。 当時は、北方領土交渉が動いていた時期でもあり、日本はロシアに配慮する形で限定的な制裁になった。欧米がロシアの資産凍結などの経済制裁をとる一方で、日本はビザ発給手続きの緩和にむけた交渉の停止など、ロシアに実害のないものだった。その後、アメリカなどに押され追加制裁に踏み切ることになった。 立憲民主党の江田憲司氏は1月26日の予算委員会で当時の制裁を「やわで腰砕けの制裁だった」と皮肉った。クリミア併合時にこれらの制裁を決めた当時の外務大臣は岸田総理本人だ。 「あの時の背景は自分が一番よく分かっている。あのときも日本の国益にとって最善の判断をしたんだ」と総理は周囲に語っている。 岸田総理が外相時代、その前任の外相だった立憲民主党の玄葉光一郎氏は2月18日の予算委員会でこう迫った。 「2014年の制裁は形ばかりの制裁で終わっている。メッセージが明確じゃないとロシア側からしたときに、また同じようにしてくれるんじゃないか。こんなふうに伝わってしまったらロシアの軍事進攻に対する抑止効果も全くない」 岸田総理は制裁内容について明言しないものの、「我が国を取り巻く安全保障環境はあの当時と比べて一段と厳しさを増している。なによりも、米中の競争の激しさ、これは2014年当時とは比較にならないほど激しいものがある。G7をはじめとする同盟国・同志国との関係、国際社会との連携、これはより強く意識しながら、適切な対応を考える」と反論した。 岸田総理がG7と足並みを揃えることを「強く意識している」のには大きな理由がある。 ●「これはアジアへの前例になるぞ」政府内に漂うただならぬ危機感 17日、岸田総理は宏池会(岸田派)の例会で所属議員の前でこう語気を強めた。 「主戦場はヨーロッパと言いながらも、力による現状変更を許すということになると、アジアにも影響が及ぶことを十分考えておかなければならない」 念頭にあるのは中国だ。 外交・防衛に詳しい自民党議員は、仮にロシアの今回の行動を欧米、日本が許せば、中国による尖閣や台湾有事を誘発する恐れがあるとして、政府にこう警鐘を鳴らした。 「日本がロシアに配慮して曖昧な態度を取れば、尖閣や台湾有事があったときにG7になんて説明するんだ?そのとき助けてくれない。今回の日米の動きを中国はしっかり見ている」 防衛省関係者も同様に「今回ロシアを看過すれば、将来中国の台湾への侵攻のハードルを下げることになる」と話す。 政府内ではこの問題は将来の日本の安全保障に直結する話だと危機感を強めている。 岸田総理は「アジアの前例になるから深刻に受け止めないといけない」と釘を刺す。 ロシアによるウクライナ侵攻を世界が止められるのか、なお予断を許さない。 |
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●ウクライナ大統領が演説「平和を望んでいる」 2/20
緊張が高まるウクライナ情勢をめぐって、ウクライナのゼレンスキー大統領は19日、ドイツで行われたミュンヘン安全保障会議で演説し「ウクライナを本当に助けるためには、侵攻される可能性がある日を話す必要はありません。ウクライナは平和を望んでいる」と述べました。 またゼレンスキー大統領は「ロシアの大統領が何を望んでいるのかわからないので、会うことを提案する」と述べ、ロシアのプーチン大統領と直接、対話する用意がある意向を示しました。 そのうえで「ヨーロッパと世界の安全保障のシステムはもはや機能していない。修正を検討するには遅く、新しいシステムを構築すべきだ」と述べて、安全保障をめぐる問題の解決に向けて各国に働きかけを求めました。 ゼレンスキー大統領は、ドイツのショルツ首相やイギリスのジョンソン首相、それに、アメリカのハリス副大統領と相次いで会談し、ウクライナ情勢の緊張緩和に向けて外交を通じた解決を目指すことを確認したということです。 |
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●ウクライナ侵攻「いつでも可能」 米大統領、NSC開催へ 2/20
米ホワイトハウスは19日、声明を発表し、「ロシアはいつでもウクライナ攻撃を開始することが可能だ」との見方を改めて示した。バイデン大統領は20日に国家安全保障会議(NSC)の会合を開催し、ウクライナ情勢について協議する。 声明によると、バイデン氏は19日午後、ウクライナ情勢をめぐってハリス副大統領がドイツ南部ミュンヘンでウクライナのゼレンスキー大統領や北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長、欧州諸国首脳と行った一連の会談について、最新の報告を受けた。 バイデン氏は18日の記者会見で、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻を「決断したと確信している」と発言した。これについて米紙ワシントン・ポスト(電子版)が関係者の話として報じたところでは、米情報機関は、全面攻撃を始めるよう命令が発せられたとの情報をつかんでいたという。 |
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●中国 王毅外相 ウクライナ情勢めぐり 対話を呼びかけ 2/20
中国の王毅外相は、ミュンヘン安全保障会議にオンラインで出席しました。 王毅外相はウクライナ情勢をめぐって「ウクライナを大国の対立の最前線にしてはならない」と述べ、関係国に対し対話による解決を呼びかけました。 また、王外相はNATO=北大西洋条約機構について「冷戦時代の産物だ」と指摘したうえで、「NATOの拡大は、ヨーロッパの平和と安定を維持し、長期的な安定を実現させることにつながるだろうか」と述べ、ロシア側の安全保障上の懸念が尊重されるべきだという考えも示しました。 |
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●ロシアが弾道ミサイル発射演習 ウクライナ情勢緊迫 2/20
ウクライナ情勢が緊迫する中、ロシアは、核弾頭を搭載できる弾道ミサイルの発射演習を行った。発射演習は19日、ロシア各地で同時に行われ、ICBM(大陸間弾道ミサイル)や、極超音速弾道ミサイルなど、核弾頭が搭載できるものも含まれた。 プーチン大統領が、大統領府から演習を見守る様子も公開され、欧米との交渉を優位に進めようという意図もあるとみられる。 一方、ウクライナ東部を実効支配している、親ロシア派の武装勢力は、ウクライナ軍から攻撃を受けたと主張し、住民たちをロシアに避難させ始めている。 ドネツクの住民「いったい何が起こっているのか...。この状況のため、家を離れなくてはならなくなった」 ウクライナ軍は、親ロシア派への攻撃を否定している。 ゼレンスキー大統領は、19日にフランスのマクロン大統領と電話で会談し、「挑発に報復するつもりはない」と、外交による解決への意欲をあらためて伝え、支援を求めた。 |
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●「情報操作」激化と警告 ウクライナ情勢でEU外相 2/20
欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)は19日、ウクライナ情勢をめぐって声明を出し、「情報操作の激化」が進行していると警告した。「偽装された事案」が「軍事行動をエスカレートさせる口実として使われる恐れがある」と強い懸念を示した。 ロシアの国営メディアは、ウクライナ東部のドネツク州やルガンスク州の親ロシア派支配地域に対する攻撃をウクライナ政府が計画しているなどと報じているが、ボレル氏は「根拠がない」と一蹴。一方で、親ロ派とウクライナ軍の間で停戦合意違反が急増しているとする欧州安保協力機構(OSCE)の指摘に懸念を表明した。 |
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●ウクライナ首都から職員退避 情勢切迫で「安全優先」―NATO 2/20
北大西洋条約機構(NATO)当局者は20日、ウクライナで勤務するNATO職員を、首都キエフから西部リビウとNATO本部のあるベルギー・ブリュッセルに退避させたと明らかにした。情勢が切迫しロシア軍によるウクライナ侵攻の恐れが一段と高まっていることを踏まえた措置とみられる。 当局者は「職員の安全が最優先だ」と説明した。退避した職員の数など詳細には触れなかったが、「ウクライナ国内のNATO事務所は引き続き業務可能だ」としている。 一方、NATOのストルテンベルグ事務総長は19日、ドイツ公共放送ARDに「あらゆる兆候が、ロシアがウクライナへの本格的な攻撃を計画していることを指し示している」と指摘。「ロシアはまだ、後退して方向を転換し政治的対話を行うことができる」とも述べ、侵攻を思いとどまるよう訴えた。 |
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●ロシア・ウクライナ情勢、計算を誤ったプーチン大統領 2/21
それでもプーチン大統領は勝利を宣言しようとするだろう。 ほんの一瞬、明るいニュースが出たように思えた。 2月14日、ロシアの国営テレビに映し出されたウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ侵攻が目前に迫っているという西側の警告にもかかわらず外交努力を続けるべきだという外務大臣の進言に、一言「よし」と答えたのだ。 その翌日、ロシア国防省がウクライナとの国境付近に派遣していた約18万人の部隊を一部撤収させると発表した。当初から派遣の理由に挙げていた軍事演習が終了したというのがその理由だった。 各国の政府当局と市場は小さな安堵のため息をついた。 悲しいかな、オシント(公開されている情報源からデータを集めて分析する諜報活動)はすぐに、若干数の部隊が動いているものの、それよりずっと多くの部隊が戦闘に備えていることを明らかにした。 西側諸国の安全保障当局者の多くはプーチン氏の意表を突く率直さで、同氏が嘘をついていると非難し、侵攻が迫っているとの警告を繰り返した。 たとえ部隊が撤収しようと、この危機はまだ終わらない。 そして何が起ころうと、戦争になろうとなるまいと、プーチン氏はすでに、ウクライナ侵攻を画策したことによって自国ロシアに害を与えた。 ●戦術的な得点は稼いだかもしれないが・・・ この見立てには、西側の識者などから異論が多数出てくるだろう。 例えば、プーチン氏は一度も発砲せずに世界の注目を一身に浴びることができたとか、ロシアが重要な国であることを改めて証明したなどと指摘する。 さらに、プーチン氏はウクライナを不安定にし、同国の将来は自分の手中にあることを全員に印象づけた。 この先、戦争を回避することによって北大西洋条約機構(NATO)から譲歩を引き出せるかもしれない。 また国内においては自らの政治的手腕を強調し、経済面での困窮やアレクセイ・ナワリヌイ氏をはじめとする野党勢力の弾圧から国民の目をそらすことができた(ちなみに、ナワリヌイ氏は2月半ば、再び法廷に引っ張り出された)――といった具合だ。 しかし、こうした得点は戦術的なものにすぎない。たとえプーチン氏がこれらを手に入れたとしても、長期的かつ戦略的に見るなら、プーチン氏は勢力を失った。 一つには、世界中の人々の目がプーチン氏に注がれてはいるものの、敵を刺激することになった。 かつてプーチン氏を「人殺し」と形容し、自分が大統領になるのを阻止しようとした同氏を嫌っているに相違ないジョー・バイデン大統領が先頭に立つ西側陣営は、ロシアがクリミアを併合した2014年当時よりも厳しい制裁を科すことでまとまっている。 2019年にフランスの大統領から「脳死状態」だと切り捨てられたNATOは、ロシアと国境を接する側面を守ることに新たな意義を見い出した。 NATOと距離を置くことを常に好んでいたスウェーデンとフィンランドが加盟する可能性すら浮上している。 新しい天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」を浅はかにも支持してきたドイツは、ロシア産のガスはドイツが対処しなければならないお荷物であり、侵攻が起きればこのプロジェクトが頓挫するとの見方を受け入れた。 もしプーチン氏が、脅せば西側はひるむだろうと考えていたのであれば、自分の誤りを正されたことになる。 ●ロシアが失ったもの 確かにウクライナは苦しんでいる。だが今回の危機は、自分たちの運命は西側とともにあるというウクライナ国民の間に広まった感覚を裏付けることにもなっている。 確かにプーチン氏は、NATOに加盟するつもりはないとの言質をウクライナから取った。だが、加盟する可能性はずっとごくわずかだったのだから、大した価値はない。 それよりも重要なのは、ここ数年無視されてきたウクライナが西側から外交・軍事の面でかつてない支援を受けていることだ。 危機時に築かれたこうした絆は、ロシア軍が撤退したからといって、突然切れたりしない。これもまたプーチン氏の狙いとは正反対の展開だ。 また、プーチン氏がミサイルや軍事演習を含めた欧州の安全保障問題を議論の俎上に載せたという指摘も正しい。だが、そのような議論は全員の利益になる。 紛争の危険を減らしてくれるからだ。ウィン・ウィンの交渉がプーチン氏の勝利としてカウントされるのであれば、もっとやればよい。 プーチン氏が被った損失のうち最も興味深いのは、ロシア国内でのそれだ。 ロシアは要塞経済の構築を試みてきた。外貨準備を積み増し、米ドルで抱える外貨準備の割合を引き下げた。 国内企業の外資依存度を低下させる一方、半導体からアプリケーション、そしてネットワークそのものまで網羅する独自の「技術スタック」構築に力を入れてきた。 さらには、今でも外貨獲得の主要な手段である炭化水素の新たな買い手を見つけることを期待して中国に接近してきた。 こうした取り組みは、西側諸国から科される制裁の潜在的なダメージを減じてはいるものの、完全に取り除いてはいない。 ロシアからの輸出のうち、欧州連合(EU)向けは今でも27%を占めている。中国のシェアはその半分ほどだ。 ロシアから中国に向かう天然ガスパイプライン「シベリアの力」は、2025年に完成しても、欧州に現在送られている量の5分の1しか運べない。 深刻な紛争が生じれば、国際決済ネットワーク「SWIFT」を通じた制裁やロシアの大手銀行への制裁が発動され、金融システム全体が世界から切り離される。 中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)に対する輸入規制のようなものも、ロシアのハイテク企業には大きな困難をもたらすだろう。 ●中国にさらに接近するリスク プーチン氏はこの相互依存と共存できるし、逆に中国にいっそう接近することもできる。 しかしそれをやってしまうと、ロシアを外交上の仲間でありコモディティーを安価に提供してくれる発展の遅れた国だと見なしている、冷徹な政治体制の子分になってしまう。 これは、プーチン氏が首にはめられて喘ぐくびきとなる。 この独裁国家同士の連携は、ロシア国内に心理的な負担ももたらすだろう。 プーチン氏がシロビキ――ウクライナで西側との結びつきや民主主義が強まると、自分たちがロシアを支配・略奪する力が脅かされると考えている安全保障当局の幹部たちのこと――に依存していることが露呈する。 ロシア国家を支えるもう一つの柱である自由主義の資本家やテクノクラートにとっては、自分たちが敗れたしるしがまた増えることになる。 トップクラスの優秀な人材がますます国を離れ、そのほかの人々はただあきらめる。経済の低迷と憤懣は反対運動につながり、そうなればさらに乱暴な対応がなされるだろう。 では、これらをすべて承知のうえでプーチン氏がウクライナ侵攻に踏み切ったらどうなるだろうか。 今回の危機で最も恐ろしい展開はこれかもしれない。ロシア側も西側も相手の裏をかこうとしているからだ。 2月15日にはロシア連邦議会下院が、ウクライナ東部のドンバス地方における2つの自称「共和国」を承認するようプーチン大統領に促した(この2つの勢力は、現状は支配していないウクライナ領内の広い地域を自分たちのものだと主張している)。 プーチン氏がいつでも好きな時に引ける引き金が1つ増えた格好だ。 ●自棄になって侵攻する可能性 戦争になればウクライナが荒廃するだけでなく、戦争の脅威をはるかに上回るダメージがロシアにもたらされる。 西側はさらに刺激を受け、ロシア産天然ガスに背を向ける決意を固める。ウクライナは長く尾を引く問題になり、ロシアはお金と人をどんどん失っていく。 そしてプーチン氏は社会からのけ者にされる。 ロシア自体も、短期的には制裁によって、そしてその後はさらに強化された経済自立政策と弾圧によって荒廃することになろう。 プーチン氏は自分で自分を窮地に追い込んだ。追い詰められて攻撃に出る恐れもある。今回は野心を封じて撤退したとしても、後で攻撃に出るだけかもしれない。 そのような破滅的な選択を抑止できる可能性が最も高い対策は、プーチン氏が繰り出す脅威に西側陣営が毅然とした態度を取ることだ。 |
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●バイデン氏とプーチン氏、会談に原則合意 軍事侵攻なら取りやめ 2/21
緊迫するウクライナ情勢をめぐり、バイデン米大統領とロシアのプーチン大統領が直接協議することで原則的に合意した。フランスのマクロン大統領が20日に仲介し、双方が受け入れたと仏大統領府が明らかにした。米政府も同日、ロシアが軍事侵攻しないことを条件に会談を受け入れると発表した。 マクロン氏は20日、プーチン氏と2回、バイデン氏と1回、それぞれ電話会談した。この際、双方に米ロ首脳会談の開催と、さらに関係国を交えた拡大会合の開催を提案。両首脳が原則として受け入れたという。 米国のブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相が24日に会談し、首脳会談に向けて詰めの協議をする。ロシアがウクライナに軍事侵攻した場合は取りやめになるという。 米政府は合意について発表したうえで、会談は「ロシアが侵攻しないこと」が前提になると重ねて強調した。「(バイデン)大統領は、侵攻が始まる瞬間まで外交を追求する」としつつも、「ロシアが戦争を選べば、迅速かつ厳しい代償を負わせる用意がある。そして現在、ロシアは今すぐにもウクライナに全面攻撃をする準備を続けているようだ」と指摘。会談前にロシアが侵攻することへの強い警戒をにじませた。 バイデン氏とプーチン氏が協議するのは12日の電話会談以来。 プーチン氏は20日のマクロン氏との1度目の電話会談の際、情勢が悪化するウクライナ東部について、ウクライナ政府に責任があると批判する一方、外交解決を優先することでは一致していた。 |
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●米ロ首脳会談に双方が原則合意“ウクライナ侵攻ないこと条件” 2/21
フランス大統領府によりますと、緊張が高まっているウクライナ情勢をめぐり、マクロン大統領はアメリカのバイデン大統領とロシアのプーチン大統領の首脳会談を提案し、双方がこれに原則として合意しました。アメリカのホワイトハウスは、ロシアによる侵攻がないことが会談の条件だとしていて、外交的な解決を目指し、ぎりぎりの駆け引きが続いています。 フランスのマクロン大統領は20日、ウクライナ情勢をめぐり、アメリカのバイデン大統領とロシアのプーチン大統領とそれぞれ電話で会談しました。 フランス大統領府によりますと、マクロン大統領は、両首脳に米ロ首脳会談を提案し、双方がこれに原則として合意しました。 アメリカのホワイトハウスも20日、バイデン大統領が首脳会談の開催を原則として受け入れたと明らかにしたうえで、時期や形式については今週後半にヨーロッパで予定されているブリンケン国務長官とラブロフ外相の外相会談で話し合われるとしました。 ただ、ホワイトハウスは「現状、ロシアはウクライナへの大規模な侵攻を近く始めるための準備を続けているようだ」とし、首脳会談も外相会談も、ロシアによる軍事侵攻がないことが開催の条件だとしていて、外交による解決を目指し、ぎりぎりの駆け引きが続いています。 ウクライナ情勢をめぐり、バイデン大統領とプーチン大統領は去年12月からこれまでに、3回にわたってオンラインや電話で会談しましたが、双方の主張は平行線をたどっています。 アメリカのオースティン国防長官は、20日に放送されたABCテレビとのインタビューの中で、ウクライナの国境周辺に集結するロシア軍について「首都キエフを制圧するためにかなりの戦力が速やかに移動できる」と指摘しました。そのうえで「大量の戦車や装甲車、大砲などが確認されている。こうした兵器が使用されれば、市民を含む多くの人たちが被害を受け、住まいを失い、避難民となるなど悲劇を作り出す」と述べ、危機感を示しました。 ウクライナの隣国ベラルーシで軍事演習を行っていたロシア軍が、終了予定の20日以降も現地にとどまる見通しとなった中、アメリカのバイデン大統領は20日、NSC=国家安全保障会議を開きました。ホワイトハウスが提供した映像では、バイデン大統領がブリンケン国務長官やオースティン国防長官、それにCIA=中央情報局のバーンズ長官などと話し合っている様子が確認できます。この中でバイデン大統領はロシア軍の最新の状況について報告を受け、対応を協議したということです。一方、アメリカの複数のメディアは20日、ロシアが軍の部隊に対し、ウクライナへの侵攻を命令したという情報をアメリカの情報機関が得ていると伝えました。バイデン大統領は先週、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の可能性について「プーチン大統領は決断したと確信している」と述べましたが、アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは当局者の話として、こうした情報が大統領の発言につながったと伝えています。 |
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●仏マクロン大統領とプーチン大統領が電話会談、ウクライナ情勢の外交解決 2/21
フランスのマクロン大統領は20日、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、ウクライナ情勢の外交解決を図る必要性で一致、緊張が高まるウクライナ東部の停戦を確保するため、ロシアとウクライナ、欧州安保協力機構(OSCE)の3者連絡グループ会合を近く開くことで合意した。両国大統領府が発表した。 一方、ブリンケン米国務長官は20日、米CNNテレビの番組で、合同演習終了予定だった20日以降もロシア軍が隣国ベラルーシにとどまるとして危機感をあらわにした。「侵攻の瀬戸際にある」と述べ、戦争回避に向けバイデン大統領がプーチン氏と対話する用意があると強調。バイデン氏は20日、国家安全保障会議(NSC)を開き、ウクライナ情勢を協議した。 3者連絡グループ会合は、ウクライナ東部ドンバス地域の紛争解決を目指し設けられた外交枠組み。ドンバスの一部を実効支配する武装勢力の後ろ盾であるロシアと、ウクライナがOSCEの仲介で直接協議する。フランス大統領府高官は21日の開催に言及した。 仏ロ首脳は会談でドンバスの情勢悪化に異なる見方を提示。プーチン氏がウクライナ側の挑発が原因だと指摘したのに対し、マクロン氏は親ロ派側の責任だと主張した。プーチン氏は北大西洋条約機構(NATO)諸国のウクライナへの兵器供与も批判。欧米はNATO不拡大確約などのロシア側提案に真剣に向き合うべきだと訴えた。 両氏は緊張激化を避け、衝突リスクを減らす行動を取ることを確認。外交を活発化させるため、仏ロ外相は21日に電話で会談、近日中の対面会談も模索する。 マクロン氏は20日、ウクライナのゼレンスキー大統領とも電話会談。ゼレンスキー氏は会談後にツイッターで3者連絡グループ会合開催とドンバスでの停戦の即時回復を支持すると表明した。続いてマクロン氏は米英独各国首脳に電話で協議結果を伝えた。 |
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●OSCE、臨時会合開催へ ウクライナ情勢協議 2/21
欧州や米ロ、ウクライナが加盟する欧州安保協力機構(OSCE)の議長国ポーランドは20日、緊迫するウクライナ情勢をめぐり、OSCE常設理事会(大使級)の臨時会合を21日に開催すると発表した。ポーランドのOSCE大使がツイッターで明らかにした。 大使によると、ウクライナが「急速に悪化している安全保障状況」を受けて会合開催を要請した。OSCEからは、ロシア、ウクライナとの協議枠組み「3者連絡グループ」に参加するキンヌネン特別代表と、ウクライナ東部で停戦監視に当たっている特別監視団のトップも会合に参加するという。 |
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●ウクライナ情勢解決、ミンスク合意が「唯一の方法」=中国外相 2/21
中国の王毅外相は19日、ウクライナ東部の停戦と和平への道筋を示した「ミンスク合意」が同国の情勢を解決するための「唯一の方法」だとし、ウクライナを大国間の競争の前線にしてはならないと述べた。 ビデオリンクで安全保障会議に出席した王氏は、全当事者が腰を据えて深い議論を行い、ミンスク合意を履行するためのロードマップとタイムテーブルを作成すべきと表明。また、各国の主権、独立、領土保全は尊重・保護されるべきだと述べた。 また、ウクライナ情勢を取り上げた中で、たとえ超大国であっても国際規範を自らの意思で置き換えてはならないとも指摘。特定の大国が冷戦思考を復活させ、ブロック間の対立をあおっているとした上で、どの国も歴史の歯車を戻すことに執着し、対立する同盟を構築するという過去の過ちを繰り返すべきではない、と語った。 |
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●ウクライナ情勢 意外な「落としどころ」と「日本経済への影響」 2/21
●なぜ五輪閉幕のタイミングで ロシアによるウクライナ侵攻が懸念されているが、それをよく理解するためには、ロシア、米国、欧州のこれまでの経緯がわかっているほうがいい。 ウクライナを巡る問題は、第2次世界大戦後のNATO(北大西洋条約機構)とそれに対抗するワルシャワ条約機構の時代に遡る。 1949年のNATO発足時の加盟国は、ベルギー、カナダ、デンマーク、フランス、アイスランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、イギリス、アメリカの12ヵ国だった。その後、ギリシャ、トルコ、西ドイツ、スペインが加入し、1982年までに17ヵ国となった。1991年にワルシャワ条約機構が解体し、ソビエト連邦の崩壊すると、ワルシャワ条約機構に加盟していた東ドイツは西ドイツに編入され、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、ポーランド、チェコ、スロバキアはNATOに加盟した。旧ソ連のバルト三国、その他の国もNATOに加盟し、現在30ヵ国になっている。 NATOは勢力を着々と拡大してきた。旧ソ連のウクライナとジョージアもNATO加盟を希望してきたが、これが、プーチン大統領にとって厄介な目の上のたんこぶになった。ウクライナとジョージアのNATO加盟を阻止しようとし、両国に対しロシアは軍事的な圧力を高めてきた。ロシアとしては旧ソ連邦のウクライナ、グルジアのNATO加盟は避けることが絶対ラインだ。2008年の夏季北京五輪時にはロシアによるグルジア侵攻もあった。2014年の冬期ソチ五輪後には、ロシアによるクリミア併合もあった。五輪とロシアには深い因縁があるかのようだ。 ●ロシアの選択肢 ロシアはアメリカに対し、NATOが東側に拡大しないように求めたが、1月26日、米ブリンケン国務長官は文書回答でこの要求を拒否したという。ウクライナにNATO加盟の意思がある以上、米国はこれを拒めないからやむを得ないだろう。ウクライナは、ソ連崩壊後に核兵器や通常兵器を廃棄したものの、ロシア側から圧力を受け続けている。ロシアとしてはウクライナが独立し、ロシアに敵対するNATOに加盟することはあってはならないと考えている。一方、かつて、ウクライナに対し核兵器使用も考えていたロシアに対するウクライナの不信感もかなりのものだ。 さて、日本はどう対応すべきか。NATOには加盟国の他に、パートナーシップ国としてスウェーデン、アイルランドなど20ヵ国がある。その中には、ウクライナ、ジョージアも、そしてロシアも含まれる。そのほかに、グローバル・パートナー国として日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドなど9ヶ国がある。日本はその中でNATOとの協力関係にあるのだ。 ロシアのウクライナ侵攻は止められるのか、止められなかった場合、国際社会にどのような影響をもたらすのか。 ロシアは、上に見たようにウクライナのNATO加盟を阻止することを目標としている。一方、ウクライナはNATO加盟したい。そこで、ロシアが軍事的な圧力をかけているわけだ。 こうした長期的な観点から離れて、短期的な動きを見てみよう。ウクライナは表向きNATO加盟の意向を示している。ウクライナのゼレンスキー大統領は2月14日、キエフでドイツのショルツ首相と会談し、ゼレンスキー氏はウクライナのNATO加盟について、「私たちは選んだ道に沿って動くべきだと信じる」とした。 ウクライナの意思が強くNATOもそれを支援するのであれば、ロシアとしては、引き続き武力で威嚇し続けるか、ウクライナを分断し一部をロシアに引き込むしか手がなくなる。 ●エネルギー政策の急所を突かれる 後者の手法、つまりウクライナの一部をロシアに引き込む鍵として、2015年の「ミンスク合意」がある。これは、ロシア、ウクライナ、ウクライナ東部2州が交わしたもので、ウクライナ東部紛争に関する停戦合意だ。これは、戦闘の停止に加え、ウクライナ東部の親露派支配地域に「特別な地位」(自治権)を与えるなど、ロシア側に有利な内容だ。19年に就任したウクライナのゼレンスキー大統領は、自国に不利な戦局の中で結ばれた合意の修正を求めたが、ロシアは拒否し、今に至っている。 このミンスク合意については、その内容の理解について温度差があるものの、独仏露ウクライナの間で、協議が継続されている。仏独は、露ウクライナでミンスク合意を守るとしている。ということは、ミンスク合意を守るという方向で、どこかに外交的な解決の道がありえる。なかなか厳しく狭い道であるが、露ウクライナの間でミンスク合意がまとまれば、一時停戦、その後ウクライナ東部2州は自治権を認められ、いずれロシアへ併合となるかもしれない。ウクライナにはやや不満だがロシアはまずまずだ。 このあたりが落とし所になるのかどうか、現段階では不透明だ。ただし、現在ウクライナ東部での新ロシア勢力とウクライナの間で武力的な小競り合いが行われている。これがエスカレートするのか、一時的な停戦ムードにあるのかがカギを握る。後者であれば、「ミンスク合意」がスタート台になるだろう。 もしこうした落とし所がなく、前者の場合になり、ロシアによるウクライナ侵攻が止められなかったら、西側諸国はロシアに対し、ドル、ユーロ、円決済停止の強力な金融制裁を課すだろう。さすがに、これはロシアにとって大打撃だろう。エネルギー・農産物価格は急騰するのではないか。 そこで、各国のエネルギー政策が、その後の展開には重要になってくる。 バイデン米政権は日本政府に対し、ウクライナ情勢が緊迫化し、ロシアが欧州向け天然ガスの供給を絞ることに備えて、日本が輸入するLNG(液化天然ガス)の一部を欧州向けに融通できないか要請してきたと報じられている。 ドイツをはじめ、ロシアのガスに頼っている欧州。シェールガスやシェールオイルの開発に消極的な米国。そして原発再稼働が進まない日本・・・・・・各国のエネルギー政策の問題点を突かれることになっていないか。 エネルギー政策は、多種多様なエネルギー源をミックスし、安定的な供給をできるだけ安いコストで行うことを目標としている。その際、安全保障の観点から、一定の国内供給を確保するのがいい。ただし、国内供給は安定的な供給になるが、国内資源がないことやコストの面で不利になることもあるので、多くの国では海外供給にも頼らざるを得ない。エネルギー自給率を2018年のOECD35ヵ国でみると、アメリカ97.7%(5位)、イギリス70.4%(11位)、フランス55.1%(16位)、ドイツ37.4%(22位)、日本11.8%(34位)となっている。 ●米のシェール増産が鍵だ このエネルギー政策は、この10年くらいで大きな外部環境の変化に晒されている。2011年の東日本大震災で、福島第一原発が大事故を起こしたので、ドイツでは脱原発の動きになり、日本でも原発再稼働が簡単にできなくなっている。その上、脱炭素化の流れも、各国のエネルギー政策の長期的な動向に影響を与えている。各国において、脱石炭火力の動きになるとともに、短期的には天然ガス火力へのシフト、さらに中期的には再生エネルギーへのシフトが起こっている。エネルギー自給率の低いドイツではロシアからの天然ガスへの依存が大きい。 そうした背景があって、上述した日本の輸入するLNGの欧州向け融通という話につながった。 こうした状況への解決策は、かねてから筆者の主張は、アメリカによるシェールの増産である。ロシアが欧州向けた天然ガス供給を止めるのは、供給そのものを止めるという脅しだが、それによりエネルギー価格が上昇する。それがロシア経済には好都合だからだ。アメリカによるシェールの増産は、世界的なエネルギー不足を補うとともに、エネルギー価格の低下につながる。これはロシア経済には大きな打撃になるともに、エネルギー自給率の低い国にとっては援軍だ。はたして環境派のバイデン政権が踏み切れるか。 なお、日本は、エネルギー自給率を高め、世界の動向が国内への影響を少なくするために、原発再稼働を進めていく必要がある。 欧州で、原発がクリーンエネルギーに位置づけられたのも、ロシアの欧州への圧力とは無縁ではない。フランスなどは原発新増設の動きもあるし、他の欧州国でも同様だ。 こうした国際情勢の動きを読めずに、歴代5人の日本の首相がEUに原発をクリーンエネリギーにしたことを抗議する書簡を出したことは、国際政治音痴、国内お花畑論を世界に向かってさらけ出したもので、日本人として本当に恥ずかしい。 |
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●緊迫度合いは?なぜ争っている? ウクライナ情勢 2/20
ロシア軍の派兵による東欧ウクライナ情勢が緊迫している。ロシア軍の侵攻が始まるとの情報が流れた16日は過ぎたが、アメリカなど西側諸国は警戒を続ける。この状況に至ったきっかけは、そしてロシア側の思惑は何なのか。そもそも、ウクライナとはどんな国なのか。ウクライナ研究の第一人者である岡部芳彦神戸学院大教授に聞いた。 ●「ボルシチ」もワッツアップも −日本人が持つウクライナのイメージは、極めて限定的なように思います。旧ソ連の崩壊によって独立し、原発事故があったチェルノブイリがある国。出身者で浮かぶのは、欧州で活躍した元サッカー選手のシェフチェンコ、若い世代ならユーチューバーのサワヤン兄弟ぐらいでしょうか。 「特徴を簡単に説明しますと、国土は日本の約1・6倍で、欧州ではロシアなどに次ぐ面積です。東側でロシアと接し、南側は黒海に面しています。人口は4000万人超。主産業は農業ですが、ITも伸びており、通信アプリ『WhatsApp(ワッツアップ)』の開発者はウクライナ出身です」「ウクライナの文化は、ほとんどが東側に広がるロシアを経由して日本に伝わってきました。ですから、日本人がロシア発祥だと思っているもの、例えば料理の『ボルシチ』なんかは、実はウクライナの料理なんです。コサックダンスもそう。ウクライナの伝統舞踊で、国歌にも『われらコサックの子孫』という歌詞があります」 −ウクライナは、かつては旧ソ連領でしたが、ソ連崩壊によって1991年に独立したんですよね。 「はい。政治基盤が脆弱(ぜいじゃく)な中央アジアの各国のように、独立後も親ロシア路線を選ぶ国もありましたが、ウクライナは違いました。かといって、反ロシアというわけでもなく、経済的な結び付きも依然として強かったのです。この状況が、2014年に一変します」 ●ロシアの脅しが利かない −2014年といえば、ウクライナで政変があった年ですね。親ロシア色を強める政権に対する大規模な反対デモがあり、親欧米の暫定政権が発足しています。 「この政変を受けて、ロシアはウクライナ領土のうち、ロシア系の住民が多く住む南部のクリミア半島に攻め入ると、一方的に自国の領土であると宣言しました。この『クリミア占領(併合)』と、同時期のウクライナ東部紛争によって両国の亀裂は決定的なものとなります」「経済圏の軸足はロシアから欧米など西側諸国に移すようになりますが、大きかったのがエネルギーです。2014年までは、ロシアから供給される天然ガスに頼っていましたが、完全にゼロとはいかないまでも、依存度をかなり下げました」「EU(欧州連合)に加盟する各国は、ロシアからの天然ガスに頼っています。そういった国には通用する『供給を止めるぞ』というロシア側の脅しが、ウクライナには利かなくなったのです」 ●大人気テレビマンだった大統領 −2014年の「クリミア占領」による決裂後、今回の事態に至るまで、国際問題に発展するような情勢の悪化はなかったんですか。 「この間も、ウクライナ東部で小規模な武力衝突は起きていましたが、アメリカなどを巻き込むまでには至っていません。その要因の一つに、大統領の交代があります」「2019年に就任した現任のゼレンスキー氏は、政治の刷新を掲げて支持を集めました。そんな経緯もあり、国会議員の不逮捕特権をなくすなど内政に重点を置いたため、ロシアとの関係もそこまで悪化しなかったのです」 −ゼレンスキー氏は、国民に向けて「パニックに陥る理由はない」と述べるなど、努めて冷静に振る舞っているように見えます。どんな人物なのですか。 「政治経験も軍人経験も一切ありません。芸能プロダクションの代表で、ウクライナで大人気のテレビ番組の制作に関わり、自分も出演していました。日本の番組に例えるならば、時代劇の『水戸黄門』を制作し、さらに主役を務めながら、バラエティーの『めちゃイケ』にも登場するような感じでしょうか。政治風刺やロシアとの関係を揶揄する番組も多く手掛けていました」「大統領選への立候補も、自分のテレビ番組で表明したぐらいです。実際に大統領になった時のウクライナ国内の衝撃は、トランプ氏が大統領に就いたアメリカ以上のものがあったと思います。ただ、就任後はフレンドリーな性格と、内政改革の手腕などによって一定の評価を得ています」 ●鮮明になった対ロ路線 −そんなゼレンスキー氏が大統領で、なぜロシアとの関係が急速に悪化したのでしょうか。 「就任から2年ほどがたち、安定期に入ったと考えたのか、2021年の初頭からロシアに対して強硬的な姿勢を打ち出すようになりました。具体的には、『占領されたクリミアを取り戻す』と国内外にアピールしたのです。EUやNATO(北大西洋条約機構)への加盟に向けて、より積極的に動くようにもなりました」「ロシアからすれば、西側諸国の勢力範囲が、自国と国境を接するウクライナまで広がるのを許すわけにはいきません。ただ、天然ガスの供給停止というカードは通用しない。そこで、国境地帯への軍隊の集結という武力で圧力をかけてきたのでしょう」 −ここまでの話を聞くと、あくまでウクライナとロシアの2国間の関係のように思えます。なぜ、アメリカなど西側諸国も加わる国際問題に発展したのですか。 「ロシアが、ウクライナによるNATOへの加盟意向を派兵の理由に挙げたからです。ウクライナは、どちらかと言えばEU加盟の方が優先度が高いのですが、ロシアからすれば、他国の経済的な連携に口を挟むわけにはいかない。一方で、自国の安全保障にも関わってくる軍事的な結び付きのNATOを持ち出せば、盟主であるアメリカを引っ張り出してこられると考えたのではないでしょうか」 −実際の動向を見ると、結果的にアメリカなど西側諸国もウクライナ問題に関わるようになりました。 「それこそが、ロシアの狙いだったのだと考えます。EUにしてもNATOにしても、紛争国の加盟を認めないという暗黙のルールがあります。国際的な関心が高まれば、ウクライナは『ロシアとの紛争国』として世界に発信し、加盟を阻むことができる。そもそものきっかけはロシアにあるわけで、完全なマッチポンプですが」 ●米ロの情報戦 −では、ロシアとしては、本気でウクライナに侵攻しようとは考えていないということですか。 「戦争は、人間が起こすものです。ロシア側の主張も、プロパガンダ(政治宣伝)が目立つばかりで、本心が読み取れません。各国の専門家の分析も割れていますが、ここ数日の動きを見ると、危機は高まっているように感じます」「東部ウクライナで、ロシア軍の支援を受ける親ロシア派の武装勢力が砲撃を繰り返しているのです。これは、ウクライナ軍への挑発だけでなく、情勢を悪化させて、ロシアの関与をさらに引き出す意味合いもあるのでしょう」「ウクライナは2014年以降、軍備を増強しており、陸軍兵力でいえば、欧州ではロシア、フランスに次ぐ規模があります。もし本格的な戦闘になれば、ロシア側も、展開しているとされる十数万人の部隊ではとても足りず、さらに相当な被害を受けることになることは分かっているはずですが」 −実際には動きがありませんでしたが、2月16日にロシアがウクライナに侵攻するとの情報が流れました。 「何らかの根拠はあったのでしょうか、あくまでアメリカの見立てに基づく情報です。侵攻するとされた16日、ロシアの広報官は、何の動きもないことを強調し、『(アメリカが)また日付を指定したら、私はその日に休みをとる』と話しました。真偽はともかく、部隊の一部撤収も発表しており、『アメリカが勝手に言っているだけ』という印象を国際的に植え付けようとしているのかもしれません。何もしないことでアメリカの信頼を落とせるのならば、ロシアにとっては好都合ですから」「今回、一連のウクライナ情勢で、アメリカ側は積極的に情報を出して、ロシアをけん制しているように感じます。その背景にも、2014年のクリミア占領などがあると見ていいでしょう。当時も、アメリカはかなりの情報を持っていたと思われますが、出さないという判断をして、結果的に国際的な問題に発展せず、ロシアの侵攻を許した。その教訓があってのことだと思います」 −ウクライナの一般市民も、緊張感は高まっているのでしょうか。 「それが、私が聞く限りでは、表向き、それほど高まっていないようなのです。というのも、先ほども触れた通り、これまでも東部の国境地帯で小規模な衝突が起きているため、その延長のように捉えているのでしょうか。情勢悪化が顕著になった1月下旬から2月初旬の国内の主要ニュースも、国家反逆などの疑いをかけられている前大統領の裁判でした」 ●日本にできることは −情勢の安定に向けて、日本にできることはありますか。 「G7の主要7カ国のうち、日本だけがEUにもNATOにも加盟していない。立場だけを見れば、ウクライナとロシアを取り持つことができる唯一の存在と言えるでしょう。ロシアの近隣国であるからこそ、積極的に働き掛けてほしいと思います」「ウクライナの人たちはみな陽気で、街並みも非常に明るく美しい。そんな国が、破壊されるような危機にひんしているというのは非常に悲しいですね」 |
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●「金」が最高値に 1グラム=7040円台 ウクライナ情勢緊迫化で 2/21
ウクライナ情勢の緊迫化を受けて、比較的安全な資産とされる「金」の価格が上昇しています。21日の「金」の先物価格は、一時、1グラム=7040円台をつけ、取り引き時間中の最高値を更新しました。 大阪取引所で行われている21日の「金」の先物取引は、取り引き開始直後から買い注文が膨らみ、取り引きの中心となる「ことし12月もの」の価格が、一時、1グラム当たり7040円台をつけました。 これは、おととし8月の取り引き時間中につけた7032円を超え、およそ1年半ぶりに最高値を更新しました。 「金」は比較的安全な資産とされ、欧米などの金融引き締めの動きに応じて株や国債の価格が値下がり傾向にある中、投資家の間で需要が高まり、ことしに入ってから価格が上昇傾向にあります。 さらに、ウクライナ情勢をめぐってロシアによる軍事侵攻への懸念が高まる中で、有事に買われやすいとされる「金」が一段と値上がりした形です。 市場関係者は「ウクライナ情勢の緊迫化で原油や穀物などの価格が上昇し、インフレへの懸念が強まる中、資産の価値が目減りしにくいとの見方もあり、『金』が買われている。引き続きウクライナ情勢に値動きが左右されるのではないか」と話しています。 |
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●株価 値下がり ウクライナ情勢への懸念から売り注文広がる 2/21
週明けの21日の東京株式市場は、ウクライナ情勢への懸念から多くの銘柄に売り注文が出て、株価は値下がりしています。 日経平均株価、21日午前の終値は、先週末の終値より196円6銭、安い、2万6926円1銭、東証株価指数=トピックスは、12.73、下がって、1911.58、午前の出来高は5億2590万株でした。 市場関係者は「ウクライナ情勢の緊迫化から、取り引き開始直後はリスクを避けようと売り注文が広がり、日経平均株価は一時、500円以上、値下がりした。しかし、アメリカのバイデン大統領とロシアのプーチン大統領の双方が、首脳会談を開くことで原則、合意したと報じられると、緊張がいくぶん和らぐことへの期待感から、値下がりした銘柄を買い戻す動きも出て、下げ幅は縮小した」と話しています。 |
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●ウクライナ情勢受け 24日G7オンライン首脳会議 岸田首相参加へ 2/21
緊張が続くウクライナ情勢を受けて、今週24日にG7=主要7か国の首脳会議がオンライン形式で開かれ、岸田総理大臣が参加することになりました。 松野官房長官は、21日午前の記者会見で、今月24日に、ドイツの主催で、G7=主要7か国の首脳会議がオンライン形式で開かれ、岸田総理大臣が参加すると発表しました。 そのうえで「ウクライナ情勢を含む外交政策などについて議論が行われる予定だ。日本として、自由、民主主義、法の支配といった普遍的価値を共有するG7が結束し、国際社会を主導することが極めて重要と考えており、積極的に議論に貢献していく」と述べました。 また松野官房長官は、現在のウクライナ情勢について「さまざまな外交努力が続けられているものの、アメリカのバイデン大統領が『数日中の侵攻を信じる理由がある』と述べ、ウクライナ東部地域では緊張が増すなど、緊迫が高まっていると認識している」と述べました。 そして「わが国としては、さまざまなレベルで緊張緩和に向けた粘り強い外交努力を続けていく考えであり、G7をはじめとする国際社会と連携し、実際の状況に応じて、適切に対応していきたい」と述べました。 |
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●首相、24日のG7首脳協議に出席 ウクライナ情勢を議論 2/21
松野博一官房長官は21日の記者会見で、24日にテレビ会議形式で開かれる主要7カ国(G7)の首脳協議に岸田文雄首相が出席すると発表した。緊迫するウクライナ情勢を含む外交課題について話し合う。 松野氏は「日本としても民主主義、法の支配といった普遍的価値を共有するG7が結束し国際社会を主導するのが極めて重要だ」と述べた。邦人保護に向け、近隣国でチャーター機の手配を既に済ませたと明かした。 ウクライナにいる日本人およそ120人(19日時点)について「退避を希望する邦人が速やかに安全な場所に移動できるのが今、何よりも重要だ」と語った。 |
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●ウクライナ情勢、アジアはじめ国際秩序に関わる=岸田首相 2/21
岸田文雄首相は21日午前の衆院予算委員会で、ウクライナ情勢が台湾海峡にも影響を及ぼす可能性を問われ、ウクライナ問題は「欧州に限らずアジアなど国際社会の秩序に関わる問題」と指摘した。青柳仁士委員(維新)への答弁。 青柳氏は、ジョンソン英首相がウクライナを支援しなければ台湾も脅威にさらされると発言しており、岸田首相に同様な認識かと質問した。 首相は「ウクライナ情勢は国際社会全体の秩序にかかわる問題で、重大な懸念をもって注視している」とし、「世界各国が緊張緩和に向けて努力を行い関係国に働きかけをつづけており、日本としても緊張緩和にむけた努力が必要、との認識に基づきプーチン大統領と電話会談した」などと発言した。 |
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●外相「有意義な機会」 ウクライナ情勢めぐるG7外相会合 2/21
林芳正外相は21日の衆院予算委員会で、ウクライナ情勢の緊迫を受けドイツ・ミュンヘンで開催された先進7カ国(G7)外相会合について「基本的価値を共有するG7外相間で率直な意見交換を行い、改めて連携を確認する有意義な機会となった」と評価した。自民党の越智隆雄氏への答弁。 林氏は「G7としてウクライナ周辺におけるロシアの軍備の増強について重大な懸念を共有し、ロシアに対して自ら発表した軍の撤収を実際に行うことも含めて緊張緩和に取り組むよう求めることで一致した」と説明。「私から『力による一方的な現状変更を認めない。国際社会の根本的な原則に関わる問題であり、欧州の安全保障の問題にとどまるものではない』と指摘した」と述べた。 |
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●ウクライナ情勢と“恐怖の均衡” 外交交渉の裏に漂う“核兵器の影” 2/21
ウクライナを巡って、ロシアと米国を中心とするNATO諸国の間の緊張が続いている。外交交渉と並行して、ウクライナを囲むようにロシア軍が展開し、米軍もNATO諸国に増派された。こうした中、2月7日、フランスのマクロン大統領はモスクワに飛び、プーチン露大統領との会談に臨んだ。 ●プーチン大統領「ロシアの核保有」を強調 会談後の記者会見で、プーチン露大統領は「ウクライナがNATOに加盟し、軍事的手段でクリミアを取り戻すことを決定した場合、欧州諸国は自動的にロシアとの軍事紛争に巻き込まれることをご存知ですか?」と問いかけた。 つまり、ウクライナ情勢はロシアと欧州諸国の戦争に直結しうることを仄めかしたのである。 その上で「ロシアは世界をリードする核保有国の1つであり、数々の点でこれらの国の多く(他の核保有国)よりも優れていることも理解している」として、プーチン大統領は、ロシアが世界有数の強力な核兵器保有国であることをマクロン仏大統領の前で強調した。フランスもまた、核弾頭の数量ではロシアより少ないものの、戦略核・戦術核兵器の保有国であるのにである。 そして、プーチン大統領は「しかし、勝者はいないだろう」と核戦争の危険性に敢えて触れた。 大量の核兵器を抱えた米ソ、米露は、1955 年以来“恐怖の均衡”状態にある。こうした状態で、もし核戦争が起こり拡大すれば勝者はいない、とプーチン大統領は言いたかったのかもしれない。 だが、プーチン大統領はそれに続けて「あなたはあなた自身があなたの意志に反して、この対立に引き込まれることに気付くだろう」とも述べ、NATO諸国が核戦争に巻き込まれる可能性に事実上触れ、警告した形になった。 では、ロシア軍は具体的にはどう動いたのか。 ●ロシアの最近の戦略核兵器部隊の演習 ロシア国防省は2022年1月24日に、ウクライナの東、ヴォルガ河沿岸のエンゲルス空軍基地所属の複数のTu-95MSベアH大型爆撃機の訓練映像を公開した。 Tu-95MS爆撃機は250キロトン級核弾頭を内蔵し、最大射程4500km級のKh-102巡航ミサイルを運用できることで知られる。 また、2月2日には、Yars大陸間弾道ミサイル部隊の訓練映像も公開し、ウクライナというより、ウクライナを支援する米国やNATO諸国を牽制したようにも見えた。 ●ロシアの核砲弾発射可能な自走砲は展開したのか? では、プーチン大統領が言う、NATO欧州諸国を「巻き込む可能性」のある核戦争に投入されうる兵器とは何だろうか。 この点について、陸軍や地上兵器の情報サイト、Army Recognition(2月10日付)は「2月8日、ロシア軍は、ウクライナとの境界からわずか17kmの町である(ロシア南部ベルゴロド市)ベセラロパンの近くに203mm 2S7マルカ自走砲を配備した」と報じた。 2S7Mマルカ自走砲は、1975年から旧ソ連地上軍への引き渡しが始まった2S7ピオン自走砲を改修したものだ。 口径203mm、砲身長約11.4m、重量7.8トンという巨大な2A44砲を剥き出しで搭載した自走砲で、2018年には、2S7ピオン自走砲の改修が始まり、ギアボックス、配電機構、電源ユニット、観測装置と誘導システム、インターホン機器と通信機材が交換された他、 CBRN(化学/生物/放射性物質/核からの)保護システムが更新され、2S7M(または、2S7SM)マルカ自走砲に改修された。 改修された2S7Mマルカ自走砲は、オルラン10無人機で確認した標的の位置を入力し、高性能爆薬を内蔵した重量110kgの砲弾を37.5km先に飛ばすことが出来る。 オルラン10無人機は、カタパルトを使いゴム紐で打ち出す軽量構造の無人機だ。 また、補助ロケットを取り付け、射程を延伸した重量103kgの砲弾なら、47.5km先にまで飛ばせるが、1分間に発射出来る弾数は3発に限定される。 だが、2S7Mマルカ自走砲が注目を集めるのは、3BV2核砲弾を発射出来ること。この核砲弾を18〜37km先に発射出来るとされている。 真偽は確認出来ないが、注目される映像がツイッター上に流れていた。 1月22日に投稿されたという映像は、投稿者の説明によると、シベリア西部の都市、チュメニで撮影された貨物列車であり、その平台貨車には8輛の2S7Mマルカ自走砲が載って西に向かっていたという。 ロシアは、2S7及び2S7M自走砲について、現役・予備役を含めて約150輛保有していると見られている。 これらのうち、何輛が核砲弾を発射可能なのかは不詳であり、そもそも3BV2 核砲弾が2S7Mマルカ自走砲とともに展開しているのかどうかも不詳だが、2S7Mマルカ自走砲のウクライナ周辺への展開は、前述のマクロン仏大統領に対するプーチン露大統領の言葉と合わせて考えるなら、ウクライナやNATO諸国にとって無視できない事だろう。 これに対して、米国は、何らかの対応をしたのだろうか。 ●米軍の核兵器運用可能部隊の動き 2月5日、バルト三国の一つ、リトアニアのアマリ空軍基地に米空軍のF-15Eストライクイーグル戦闘攻撃機が展開していることが映像で確認された。 リトアニアからモスクワまでは約570km。これに対し、ストライクイーグル戦闘攻撃機の戦闘行動半径(出発基地から往復し、目的地で作戦を行える距離)は1270kmとされ、物理的には、リトアニアからモスクワまで往復可能ということになる。 ストライクイーグルは、爆弾やミサイルを11トンも搭載出来るが、B61核爆弾も運用できる。(赤いのはB61核爆弾の模擬弾。) 2月14日、英国のフェアフォード空軍基地を離陸した米空軍のB-52H爆撃機2機が、大西洋を南下し、地中海に入って、その内の1機はイスラエル空軍のF-15A戦闘機と共同訓練を行ったという。 イスラエル空軍が公開したこの訓練の画像からは、主翼の下に吊り下げたミサイルの姿はなく、機体の爆弾倉のドアが閉じられているので、どんなミサイルや爆弾が内蔵されているのかも分からない。 しかし、この画像を見た航空軍事評論家の石川潤一氏は「米空軍にB-52H爆撃機は76機ありますが、米露の新START(新戦略兵器削減条約)で核兵器運搬手段としてデプロイメントしている機体は36機に制限されています。この核兵器が運用できるB-52H爆撃機には、衛星や航空からの査察ではっきり識別できる外形上の特徴があります」と指摘した。 また、画像に写っていたB-52 H爆撃機については、「垂直尾翼にMTと書かれているのでマイノット基地所属機ですね。この基地には核攻撃用のB-52も配備されています。しかも、後部胴体側面の涙滴形アンテナフェアリングにブレードアンテナが付いているので、新START(新戦略兵器削減)条約での制限の外にある、つまり核運搬手段として使われているB-52Hと推定できます。このアンテナはARR-85 VLF/LF(超長波/長波)無線機用で、電波の通りにくい戦略司令部など地下シェルターとの通信に使います」としている。 つまり、いざという場合に核弾頭を搭載する巡航ミサイルの「発射指示」を受信するアンテナがついているB-52H大型爆撃機であるということだ。 B-52H爆撃機が近年運用している核弾頭搭載対地攻撃用巡航ミサイルは、最大射程2400kmのAGM-86Bミサイルであり、B-52Hの器内には12発搭載可能だ。 イスラエルの北の地中海上空からロシア軍が展開するベラルーシの首都ミンスクまでは、直線距離で2030km余り。 実際に搭載されていたかどうかは不明だが、このB-52H爆撃機の飛行経路と画像公開は、ロシア側にとっても意識せざるを得なかったかもしれない。 ●米・露、そして、英国の外交は? 2月15日、バイデン米大統領はホワイトハウスで演説し「私たちはロシアとの直接の対決を求めていませんが、ロシアがウクライナの米国人を標的にすれば、私たちは、必ず力強く対応する」と述べた。 バイデン大統領は、この演説で“力強い対応”の具体的内容について明らかにしていない。 息が詰まるような外交交渉が続く中、2月17日、ロシア外務省は、在モスクワ米国大使に文書でロシア側の考えを通知した。 その中で、ロシア側は「NATOのさらなる拡大の拒否」を中心に「NATOのさらなる東方拡大を放棄することを法的に明記する内容・形態について、同盟国からの具体的な提案を期待する」として、「ウクライナへの武器供給を停止すること、欧米のアドバイザーや教官をすべてウクライナから撤退させること、NATO諸国がウクライナ軍との合同演習を拒否すること、これまでキエフに供給した外国製武器をすべてウクライナ領外に撤退させること」を要求している。 さもなくば「ロシアは、軍事的・技術的な性質を持つ措置の実施を含め、対応せざるを得なくなる」と記述したのである。「軍事的・技術的措置」が具体的にどのような措置なのかは、この文書には記述されていない。 ロシアはこのように、米国、そして、NATOを交渉相手としてきた。 ●ウクライナの後ろ盾はNATOではなく英国? この文書が米国側に渡された日、ウクライナのクレバ外相はポーランドに向かい、そこで、トラス英外相、ラウ・ポーランド外相と「我々3カ国は、ウクライナの安定を守り、東欧での民主主義を強化」「英国とポーランドは、進行中のロシアの侵略に直面しているウクライナに支援を提供し続け」、「3カ国協力覚え書きを作成する」ことなどを骨子とする共同声明を発出した。 この3カ国の組み合わせはウクライナも入っているので、ロシアが様々な要求をしてきたNATOではない、ということだろうか。そして、この組み合わせには、ロシアが交渉相手として重視してきた米国も入っていない。 この覚書では、協力分野としてサイバーセキュリティやエネルギーセキュリティーなどがあげられているのが眼を引くが、軍事分野まで協力が広がるかどうか気になるところだ。 この覚書に関連して、ウクライナ外務省が発表した地図をみると、この3カ国が結びつくと、中欧に大きな壁ができ、その後ろ盾に英国がいるという構図になりそうだ。 ちなみに、ウクライナやポーランドは非核兵器保有国だが、英国は戦略核兵器保有国で、最大射程1万1112km以上のトライデントUD5戦略核ミサイルを16発搭載出来るヴァンガード級戦略ミサイル原潜を4隻運用している。 この3カ国協定を意識したのかどうかは不明だが、2月19日、ロシアは、ヤルス大陸間弾道ミサイルやMiG-31K攻撃機に搭載するキンジャール極超音速ミサイル、イスカンデル複合ミサイル・システムから巡航ミサイル等を次々に発射する映像を公開した。 しかし、ミュンヘン安全保障会議でウクライナのゼレンスキー大統領は「欧州と全世界の安全保障はほとんど壊れている。代わりに、新しいシステムを構築する時が来た」と演説した。 ウクライナは、NATOとは別の3カ国の枠組みを志向し、自信を深めているのだろうか。 |
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●プーチン大統領は国民にいかに「ウクライナ侵攻」の理由を説明したのか 2/21
●ウラジーミル・プーチン大統領 ビデオメッセージ 2022/2/21 ロシアの市民の皆様、友人の皆様。 私の話は、ウクライナでの出来事についてです。そしてこれがなぜ我々ロシアにとって重要なのかについて、お話しします。もちろん私のメッセージは、ウクライナにいる我々の同胞にもお話するものです。 この問題は非常に深刻であり、深く議論される必要があります。 ドンバスの状況は、危機的で、深刻な段階に達しています。本日、私があなたがたに直接お話しするのは、現状を説明するだけでなく、決定される事項や今後のステップの可能性をお伝えするためです。 ウクライナは我々にとって、ただの隣国ではないことを改めて強調したい。私たち自身の歴史、文化、精神的空間の、譲渡できない不可分の (inalienable) 一部なのです。これらは、我々の同士であり、我々のもっとも大切な人々なのです。同僚や友人、かつて一緒に兵役に就いた人たちだけでなく、親戚や血縁、家族の絆で結ばれた人たちなのです。 太古の昔から、歴史的にロシアの地であった場所の南西部に住む人々は、自らをロシア人と呼び、正教会のキリスト教徒と呼んできました。17世紀にこの地の一部がロシア国家に復帰する以前も、その後もそうでした。 一般的に言って、このような事実は、我々誰もが知っていると思われます。これらは常識です。それでも、今日何が起こっているかを理解し、ロシアの行動の背後にある動機と我々が達成しようとする目的を説明するためには、この問題の歴史について、少なくともいくつかの言葉は述べておく必要があります。 そこでまず、現代のウクライナはすべてロシア、より正確にはボルシェビキ、共産主義ロシアによってつくられたものであるという事実から説明します。このプロセスは実質的に、1917年の革命の直後に始まり、レーニンと仲間は、歴史的にロシアの土地であるものを分離し、切断するという、ロシアにとって極めて過酷な方法でそれを行いました。そこに住む何百万人もの人々に、彼らがどう思うか尋ねた人はいませんでした。 その後、大祖国戦争(第二次世界大戦)の前と後の両方で、スターリンは、ソ連に編入されたが、以前はポーランド、ルーマニア、ハンガリーに属していたいくつかの土地をウクライナに編入しました。 その過程で、スターリンはポーランドに補償として、伝統的にドイツの土地だった一部を与え、1954年にフルシチョフはクリミアを、何らかの理由でロシアから取り、ウクライナに与えました。 事実上、こうして現代ウクライナの領土が形成されたのです。 1917年の10月革命とそれに続く内戦の後、ボルシェビキは新しい国家の創設にとりかかったことを思い出していただきたい。この点については、彼らの間でかなり深刻な意見の不一致がありました。 1922年、スターリンはロシア共産党(ボルシェビキ)書記長と、民族問題人民委員会の会長を兼任していました。彼は、自治の原則に基づいて国を建設することを提案しました。つまり、統一国家に参加する際に、将来の行政・領土の実体となる各共和国に、広範な権限を与えるというということです。 レーニンはこの計画を批判し、当時彼が「無党派・独立派 (independents)」と呼んでいた民族主義者(ナショナリスト)に譲歩することを提案しました。 レーニンの考えは、本質的にはひとつの連邦国の取り決め、最大では分離に至る、自分の国のことは自分で決めるという国家の権利 (the right of nations to self-determination) についてのスローガンを結局意味しますが、それらはソビエト独立国の基盤に置かれました。 それは、1922年のソビエト連邦成立宣言で確認され、のちに、レーニンの死後、1924年の「ソビエト憲法」に刻まれました。 このことは、直ちに多くの質問を投げかけます。最初の質問は本当に主要なものです。なぜ民族主義者(ナショナリスト)をなだめる必要があったのか。旧帝国の周辺部で絶え間なく高まっていく民族主義者の野心を満たす必要があったのか。新しく、しばしば恣意的に形成された行政単位、ソ連の共和国諸国 (the union republics) に、彼らとは何の関係もない広大な領土を移譲する (transferring) ことに何の意味があったのでしょうか。 繰り返しになりますが、これらの領土は、歴史的にロシアであったところの人々とともに移譲されました。 しかも、これらの行政単位は、事実上、国民国家 (national state) の独立した存在の地位と形態を与えられていました。このことは別の質問を提起します。なぜ、これほどまでに、最も熱狂的な民族主義者の夢を超えた贈り物をする必要があったのでしょうか。そして何より、共和国たちに、無条件で統一国家から離脱する権利を与える必要があったのでしょうか。 一見すると、これはまったく理解できないように見えます。狂気の沙汰 (crazy) にさえ見えます。しかし一見しただけです。説明があるのです。 革命後、ボルシェビキの主な最終目標は、あらゆる犠牲を払って、絶対にあらゆる犠牲を払って、権力を維持することでした。彼らはこの目的のためにすべてを行いました。屈辱的なブレスト・リトフスク条約を受け入れました。帝国ドイツと同盟国の軍事および経済状況は劇的であり、第一次世界大戦の結果は必然的なものでしたが。そして国内の民族主義者のどんな要求や希望も満足させたのでした。 ロシアとその国民の歴史的運命に関して言えば、レーニンの国の開発の原則は単なる間違いではありませんでした。ことわざにあるように、間違いよりもひどいものだったのです。 これは1991年にソビエト連邦が崩壊した後に明らかになりました。 もちろん、過去の出来事を変えることはできませんが、少なくとも、我々は何の疑念も政治的な工作もなく、公然と正直にそれらを認めなければなりません。個人的に付け加えられるのは、どのような政治的要因も、その時々にいかに印象的に、または有益に見えるかもしれなくても、独立国の基本原理として使用できる、または使用できるかもしれないものは、一つもないのです。 私は誰にも責任を負わせようとはしていません。当時、内戦の前や後のこの国の状況は極めて複雑でした危機的な状況だったのです。私が言いたいのは、まさにこのような状況であったということだけです。それは歴史的な事実です。 実際、私がすでに言ったように、ソビエト・ウクライナはボルシェビキの政策の結果であり、正しくは「ウラジーミル・レーニンのウクライナ」と呼ぶことができます。 彼はその創作者および建築家 (creator and architect) でした。 これは、記録保管所の文書によって、完全かつ包括的に裏付けられています。実際にウクライナに押し込まれたドンバスに関するレーニンの厳しい指示を含んでいます。 そして今日「恩を感じる子孫 (grateful progeny) 」はウクライナのレーニンの記念碑を倒しました。彼らはそれを脱共産化と呼んでいます。 あなた方は非共産化を望むのですか。よろしいでしょう、これは我々にあっています。しかし、なぜ途中で停止するのですか。我々は、本当の非共産化がウクライナにとって何を意味するかを示す用意があります。 歴史に戻るなら、1922年に旧ロシア帝国のあとにかわってソビエト連邦が設立されたことを繰り返したいと思います。しかし、実践によってすぐに示されたのは、このような広大で複雑な領土を、連邦に相当する一定の形をもたない原則 ( amorphous principles) で維持することは不可能だったということです。それらは、現実からも歴史的な伝統からもかけ離れていました。 赤色テロとスターリンの独裁への急速な転落 (slide) 、共産主義イデオロギーの支配、そして共産党の権力独占、国有化、そして計画経済の独占、これらすべてが、正式に宣言されたものの、効果のない政府の原則を単なる宣言に変えてしまったことは、論理的なことです。 実際には、ソ連の共和国たちには主権の権利はなく、まったくありませんでした。 実質的な結果は、緊密に中央集権化された、絶対的な単一国をつくり上げることでした。 実際、スターリンが完全に実施したのは、レーニンではなく、彼自身の統治の原則でした。しかし、彼は基礎文書や憲法に関連する修正を加えず、ソビエト連邦の基礎となるレーニンの原則を正式に改訂していませんでした。見たところ、その必要はないようでした。なぜなら、全体主義体制の条件下では、すべてがうまく機能しているように見え、外見上は素晴らしく、魅力的で、超民主的でさえあるように見えたからです。 しかし、我々の国の基本的かつ正式に合法的な基盤が、醜悪な (odious) ユートピア的幻想からすぐに浄化されなかったのは、非常に残念なことです。それは革命に触発されたものであり、普通の国にとっては絶対的に破壊的なものです。以前に我々の国でよくあったことですが、誰も将来のことを考えませんでした。 共産党の指導者たちは、彼らがしっかりとした統治システムをつくり上げ、彼らの政策が民族問題を永久に解決したと確信していたようです。しかし、歪曲、誤解、世論の改ざんには高い代償を払います。民族主義者(ナショナリスト)の野心のウイルスは、まだ我々とともにあります。ナショナリズムの病気に対する国家の免疫を破壊するために、初期の段階に置かれた地雷は、カチカチ音をたてていました。 私がすでに言ったように、地雷はソビエト連邦からの離脱の権利でした。 1980年代半ば、社会経済的な問題の増大と、計画経済の明らかな危機が、民族問題を悪化させました。これは本質的にソビエト人民の期待や満たされていない夢に基づくものではなく、主に地元のエリートの高まる欲求に基づくものでした。 しかし、共産党指導部は、状況を分析し、適切な対策を講じ、まず経済において、また政治体制と政府を十分に考慮し、バランスのとれた方法で徐々に変革する代わりに、自分の国のことは自分で決める権利 (national self-determination) というレーニンの原則の復活について公然と二枚舌を振るうだけだったのです。 さらに、共産党内の権力闘争の過程で、反対側の各派それぞれが、支持基盤を拡大するために、民族主義的な感情をよく考えないで扇動し、操作し、彼らを操作し、潜在的な支持者に、彼らが望むものは何でも約束をしたのです。 民主主義や市場経済や計画経済に基づく明るい未来について、表面的で大衆的(ポピュリスト的)なレトリックを背景に、しかし人々の真の窮乏化と広範囲にわたる欠乏の中で、権力者の誰一人、この国にとって、避けられない悲劇的な結末について考えていなかったのです。 次に、彼らはソ連邦発足時に殴打された路線に全面的に乗り出し、党内のランクの中で育まれた民族主義的エリートの野心に迎合したのである。 しかしそうすることで、彼らはソ連共産党がもはや権力と国そのものを保持するための手段、国家テロやスターリン的独裁の手段をもはや持っていないことを、神様ありがとうございます、そして悪名高い党の指導的役割が、彼らの目の前で朝靄のように跡形もなく消えつつあることを忘れてしまったのである。 そして、1989年9月のソ連共産党中央委員会の本会議では、真に致命的な文書、いわゆる現代の状況における党の、いわゆる民族政策、ソ連共産党プラットフォームが承認されました。 それには次の複数の条項が含まれていました。「ソ連の各共和国は、社会主義の主権国としての地位にふさわしいすべての権利を有するものとする」。 次のポイントは「ソ連の各共和国の最高権力代表機関は、彼らの領土において、ソ連政府の決議と指令の運用に異議を唱え、停止することができる」である。 そして最後に「ソビエト連邦の各共和国は、すべての居住者に適用される自身の市民権を有するものとする」。 これらの公式や決定が何につながるかは、明らかだったのではないでしょうか。 今は、国の法律や憲法に関連する問題に取り掛かったり、市民権の概念を定義したりする時間や場所ではありません。しかし、不思議に思うかもしれません。ただでさえ複雑な状況で、なぜ国を動揺させる必要があったのでしょうか。事実は変わりません。 ソ連が崩壊する2年前には、その運命は実は決まっていました。今、急進派や民族主義者たちが、主にウクライナの人々を含むが、独立を果たしたと自分たちの手柄にしています。ご覧のとおり、これは絶対に間違っている。 我々の統一国家の崩壊は、ボルシェビキの指導者とソ連共産党の指導の側の、歴史的で戦略的過ち、国家建設と経済および民族政策において、異なる時期に犯された過ちによってもたらされたものである。ソ連として知られる歴史的なロシアの崩壊は、彼らの良心にのしかかっています。 これらすべての不正、嘘、そしてロシアからの完全な略奪にもかかわらず、ソ連の崩壊後に形作られた新しい地政学的現実を受け入れ、新しい独立国群を認めたのは我々の人民でした。 ロシアはこれらの国々を承認しただけでなく、自国が非常に悲惨な状況に直面していたにもかかわらず、CIS(独立国家共同体)のパートナーたちを支援しました。この中には、独立を宣言した瞬間から何度も財政支援を求めてきたウクライナの仲間も含まれていました。我々の国は、ウクライナの尊厳と主権を尊重しながら、この支援を提供しました。 専門家の評価によれば、経済・貿易上の希望にそってロシアがウクライナに提供した補助金付き融資、エネルギー価格を単純に計算すると、1991年から2013年までの期間に、ウクライナの予算が受けた利益は、全体で2500億ドル(約28兆7500億円)に上ることが確認されました。 しかし、それだけではありませんでした。 1991年の終わりまでに、ソ連は他の国と国際基金に約1000億ドル(約11兆5000億円)を借りていました。 当初、すべての旧ソビエト共和国は、連帯の精神で、各共和国の経済的可能性に比例して、これらのローンを一緒に返済するという考えがありました。 しかし、ロシアはすべてのソ連の債務を返済することを約束し、2017年にこのプロセスを完了することで、約束を果たしました。 それと引き換えに、新たに独立した国々は、ソビエトの対外資産の一部をロシアに渡さなければなりませんでした。ウクライナとは、1994年12月その旨の合意が成立しました。しかし、キエフはこれらの合意の批准に失敗し、後に、ダイヤモンド宝庫や金準備高、同様に旧ソ連の財産や海外資産の分配を要求しますが、合意の履行は拒否するばかりでした。 それにもかかわらず、これらすべての困難にもかかわらず、ロシアは常にオープンで誠実な方法で、既に述べたように、ウクライナの利益を尊重しながら、協力しました。 それにもかかわらず、これらすべての困難にもかかわらず、ロシアは常にオープンで誠実な方法で、既に述べたように、ウクライナの利益を尊重しながら、協力しました。 我々(ロシアとウクライナ)は様々な分野で結び付きを発展させました。こうして2011年には、二国間の貿易額は500億ドル(約5兆7500億円)を超えました。パンデミックが発生する前の2019年には、ウクライナのEU加盟国すべてを合わせた貿易額は、この指標を下回っていたことを伝えておきます。 同時に、ウクライナ当局は、自分たちはいかなる義務からも解放されながらも、あらゆる権利と特権を享受するやり方で、ロシアと取引することを常に好んでいたことは記しておくべきことです。 キエフの当局者たちは、パートナーシップを、時には極めて厚かましい (brash) やり方で行動する、寄生的な態度に置き換えました。エネルギー通過に関する継続的な恐喝と、文字通りガスを盗んだという事実を思い出すだけで十分です。 キエフは、ロシアとの対話を、西側諸国との関係における交渉の数取り札にしようとし、ロシアとの関係が緊密になると西側諸国を脅迫しました。それは、そうしなければロシアがウクライナでより大きな影響力を持つことになると主張して、優遇措置を確保しようするためだったことも、付け加えておきます。 同時に、私は強調したいことですが、ウクライナ当局者たちは、我々を結びつけているすべてのものを否定した上に彼らの国を建設し、ウクライナに住む何百万人もの人々、すべての世代の人々の精神と歴史的記憶を歪めようとすることから始めたのです。 ウクライナ社会が、極右ナショナリズムの台頭に直面し、それが攻撃的なロシア恐怖症(ロシア嫌い)とネオナチズムに急速に発展したのは、驚くことではありません。 その結果、北コーカサスのテロ集団に、ウクライナの民族主義者(ナショナリスト)やネオナチが参加し、ロシアに対する領土主張がますます声高になっています。 この一翼を担ったのが外部勢力であり、彼らはNGOや特殊部隊の縦横無尽のネットワークを使って、ウクライナで顧客を育て、彼らの代表を権威の座に就かせたのです。 ウクライナには、実際には、真の国家としての安定した伝統がなかったことには留意する必要があります。 そのため1991年には、歴史やウクライナの現実とは何の関係もない、外国のモデルを無思慮に (mindlessly) に模倣することを選択しました。 政治政府機関は、急速に成長している一派と、彼らの利己的な利益に合わせるように何度も調整されましたが、それはウクライナの人々の利益とは何の関係もありませんでした。 本質的に、オリガルヒのウクライナの当局者たちが行った、いわゆる親西側の文明的選択は、人々の幸福のためにより良い条件をつくり出すことを目的としたものでも、目的としているものでもなく、オリガルヒがウクライナ人から盗んだ数十億ドルを維持するためのものであり、ロシアの地政学的なライバルを敬虔に受け入れながら、西側の銀行の口座に保有しているのです。 一部の産業・金融グループと、その傘下にある政党や政治家は、当初から民族主義者や急進派を頼りにしていました。また、ロシアとの良好な関係や文化・言語の多様性を支持すると主張し、南東部の地域の何百万人もの人々を含め、自分たちの宣言した願望を心から支持する市民の力を借りて政権を獲得した人々もいる。 しかし、切望していた地位を得た後、この人たちはすぐに有権者を裏切り、選挙公約を反故にし、代わりに急進派(過激な派)によって促された政策に誘導し、時にはかつての同盟者であるバイリンガル主義やロシアとの協力を支持する公共団体を迫害さえするようになったのです。 これらの人々は、有権者のほとんどが、当局を信頼する、穏健な見解を持つ法を守る市民であり、急進派(過激な派)とは異なり、攻撃的に行動したり、違法な手段を用いることはないという事実を利用したのです。 一方、急進派(過激な派)は、行動をますます恥知らずにし、年々要求を強めていきました。彼らは、弱い当局に彼らの意志を押し付けるのは簡単だとわかりました。弱い当局は、ナショナリズムと腐敗(汚職)のウイルスにも感染し、人々の真の文化的、経済的、社会的利益、およびウクライナの真の主権を、さまざまな民族的思惑や形式的な民族的属性 (formal ethnic attributes) に、巧みにすり替えているのです。 ウクライナでは、安定した独立国家の状態が確立されたことはなく、選挙やその他の政治手続きは、さまざまな寡頭制の一派の間で、権力と財産を再分配するための隠れ蓑、スクリーンとして機能しているだけです。 腐敗は、ロシアを含む多くの国にとって、確かに課題であり問題であるが、ウクライナでは通常の範囲を超えています。それは文字通り、ウクライナの国家体制、システム全体、そして権力のすべての部門に浸透し、腐食しているのです。 過激な民族主義者(ナショナリスト)たちは、正当化された国民の不満を利用して、マイダン抗議デモに乗じましたが、2014年のクーデターへとエスカレートしていきました。 彼らは外国からの直接的な援助を受けました。報告によれば、アメリカ大使館はキエフの独立広場にある、いわゆる抗議キャンプを支援するために、1日100万ドルを提供したといいます。 さらに、野党指導者の銀行口座に直接、数千万ドルという巨額のお金が、ずうずうしくも振り込まれました。 しかし、実際に被害を受けた人々、キエフや他の都市の通りや広場で引き起こされた衝突で亡くなった人々の家族は、最終的にいくら手にしたのだろうか。聞かないほうがいいでしょう。 権力を掌握した民族主義者たちは、迫害を解き放ちました。これは、彼らの反憲法の行動を反対した人々に対する、真のテロ・キャンペーンです。 政治家、ジャーナリスト、公的な活動家は嫌がらせを受け、公的に屈辱を与えられました。 暴力の波がウクライナの都市を襲い、注目されながら罰せられなかった一連の殺人事件が発生しました。平和的な抗議者たちが残酷に殺害され、労働組合の家で生きたまま焼かれたオデッサでの恐ろしい悲劇の記憶に、身震いする人もいます。その残虐行為を犯した犯罪者は、決して罰せられたことがなく、誰も彼らを探してさえいません。しかし、我々は彼らの名前を知っており、彼らを罰し、見つけ、裁判にかけるためにあらゆることをするつもりです。 その残虐行為を行った犯罪者は決して処罰されることなく、誰も彼らを探してさえいない。しかし、私たちは彼らの名前を知っており、彼らを罰し、見つけ、裁判にかけるためにあらゆることをするつもりです。 マイダンはウクライナを、民主主義と進歩に近づけることはありませんでした。クーデターを成し遂げて、民族主義者と彼らを支持した政治勢力は、結局ウクライナを行き詰まりに追いやり、内戦の奈落の底に突き落としたのです。8年経って、国は分裂しています。ウクライナは深刻な社会経済危機と闘っています。 国際機関によると、2019年には、600万人近くのウクライナ人、強調しますが、15%が、労働力ではなく国の全人口の約15パーセントが、仕事を見つけるために外国に行かなければならなくなりました。彼らのほとんどは変則的な仕事をしています。 次のような事実も明らかになっています。2020年以降、パンデミックの最中に、6万人以上の医師やその他医療従事者が国を去りました。 2014年以降、水道料金は3分の1近く、エネルギー料金は数倍になり、家庭用のガス料金は数十倍に急騰しました。多くの人々は、単に公共料金を支払うお金がないだけなのです。文字通り、生き残るのに必死なのです。 何が起きたのでしょうか。なぜ、これらすべてのことが起こっているのでしょうか。答えは明らかです。 ソ連時代だけではなく、ロシア帝国時代から受け継いだ遺産を使い果たし、使い込んだのです。彼らは、何万、何十万という仕事を失いました。その仕事で、人々は確実な収入を得て、税収を生み出すことができていたのです。ロシアとの緊密な協力関係のおかげです。 機械製造、機器工学、電子機器、造船、航空機製造などの部門は弱体化してゆき、完全に破壊されました。しかし、かつてはウクライナだけでなく、ソ連全体がこれらの企業を誇りをもっていた時代がありました。 2021年、ニコラエフの黒海造船所が廃業しました。その最初のドックは、エカテリーナ大帝(2世)にさかのぼります。有名なメーカーであるアントノフは、2016年以降、民間航空機を1機も製造しておらず、ミサイルと宇宙機器を専門とする工場であるユジマッシュは、ほぼ倒産状態です。クレメンチュグ製鉄所も、似たような状況です。このように悲しいリストが延々と続きます。 ガス輸送システムは、ソビエト連邦によって全面的に建設されたものであり、現在では使用するのが大きなリスクとなり、環境へのコストが高くなるほど劣化しています。 この状況は疑問を投げかけます。貧困、機会の欠如、そして産業と技術の可能性の喪失、これは、天国のように今よりずっと素晴らしい場所だと約束して、何百万もの人々をだますために彼らが長年使用してきた、親西側の文明的な選択というものなのでしょうか。 そして、ウクライナ経済はボロボロになり、国民からは徹底的に略奪する結果となったのです。そしてウクライナ自身は、外部からのコントロール下に置かれました。このコントロールは、西側資本からだけではなく、ウクライナに存在する外国人アドバイザー、NGO、その他の機関のネットワーク全体を通じて、俗に言うように、現地でも指示されています。 彼らは、中央政府から自治体に至るまで、すべての重要な任命や解任、あらゆる部門の権力のあらゆるレベル、同様に、ナフトガス、ウクレネルゴ(送電)、ウクライナ鉄道、ウクロボロンプロム(防衛産業)、ウクルポシュタ(郵便)、ウクライナ海港局などの国有企業や法人にも直接関わりがあるのです。 ウクライナには独立した司法機関はありません。キエフ当局は、西側の要請に応じて、最高司法機関である司法評議会と、裁判官高等資格委員会のメンバーを選任する優先権を、国際機関に委ねたのです。 さらに、米国は、国家汚職防止庁、国家汚職防止局、汚職防止専門検察庁、汚職防止高等裁判所を直接支配しています。これらはすべて、汚職に対する取り組みを活性化させるという、崇高な口実のもとに行われています。よいでしょう、しかし、その結果はどこにありますか。汚職はかつてないほど盛んになっています。 ウクライナの人々は、自分たちの国がこのように運営されていることを認識しているのでしょうか。自分たちの国が、政治的・経済的な保護国どころか、傀儡政権による植民地に落ちていることに気づいているのでしょうか。 国は民営化されました。その結果、「愛国者の力」と称する政府は、もはや国家の立場で行動することはなく、一貫してウクライナの主権を失う方向に押し進めています。 ロシア語や文化を抹殺し、同化を進める政策が続いています。ウクライナ最高議会(Verkhovna Rada)は、差別的な法案を次から次へと生み出し、いわゆる先住民に関する法律もすでに施行されています。自らをロシア人と認識して、そのアイデンティティ、言語、文化を維持したいと願う人々は、ウクライナでは歓迎されないという合図を受け取るのです。 ウクライナ語を国語とする教育のもとで、学校や公共の場、たとえ普通のお店でもロシア語は居場所がないのです。公務員試験と、その序列の浄化に関する法律は、望ましくない公務員に対処する方法をうみだしました。 ますます多くの法律が、ウクライナの軍隊と法執行機関に対して、言論の自由と反対意見の表明を抑圧し、反対派を攻撃することを認めています。 世界は、他の国々、外国の自然人および法人に対して、非合法な一方的な制裁を加えるという嘆かわしい行為を知っています。 ウクライナは、自国の人々、企業、テレビ局、その他のメディア、さらには国会議員に対しても制裁措置を講じることで、西側の師匠たちをしのいでいます。 キエフはモスクワ総主教のウクライナ正教会の破壊を準備し続けています。これは感情的な判断ではありません。具体的な決定や資料によって証拠をみつけることができます。 ウクライナ当局は、皮肉なことに、分裂の悲劇を、国の政策の手段に変えました。現在の当局は、信者の権利を侵害する法律を廃止するよう求めるウクライナの人々の呼びかけに応えようとしません。 さらに、モスクワ総主教のウクライナ正教会の聖職者と数百万人の教区民に対する新たな法案が、最高議会に登録されました。 (訳注:キリスト教は、大きく分けて3つある。カトリックはローマ教皇を頂点とするピラミッド型、プロテスタントはそういうものを排除、その両方と異なり、東方正教会は、それぞれに独立した対等な総主教がいる。古い総主教はコンスタティノープル、アレクサンドリア、エルサレム、アンティオキア等、後代の総主教はブルガリア、グルジア、セルビア、ルーマニア、そしてモスクワ。ウクライナはモスクワ総主教に属していたが、古くからの歴史を主張して独立しようとしているのである)。 クリミアについて一言言いたい。クリミア半島の人々は、ロシアの一部になることを自由に選択しました。キエフの当局は、明確に表明された人々の選択に、異議を唱えることはできません。 だからこそキエフ当局は、攻撃的な行動を選択したのです。イスラム過激派の組織を含む、極端な派閥の細胞の活性化、重要なインフラに対するテロ攻撃を組織化するための破壊者の派遣、およびロシア市民の拉致。 我々は、これらの攻撃的な行動が、西側の安全保障機関の支援を受けて実行されているという事実の証拠を持っています。 2021年3月、ウクライナで新たな軍事戦略が採択されました。この文書は、ほぼ全面的にロシアとの対決に専念していて、我が国との紛争に外国を巻き込むことを目標に掲げています。 この戦略では、ドンバスとロシアのクリミアで、テロリストの地下運動と言えるような組織を規定しています。 これはまた、潜在的な戦争の輪郭を定義しています。それは、キエフの戦略家たちによれば「ウクライナに有利な条件で、国際社会の助けを得て」、さらに、よく聞いてください、「ロシア連邦との地政学的な対決において、外国の軍事支援を得て」終わらせるべきだというのです。実際これは、我が国ロシアに対する敵対行為の準備以外のなにものでもありません。 我々が知っているように、今日既にウクライナは自分たち独自の核兵器をつくるつもりであると宣言しています。これは単なる大言壮語ではありません。ウクライナには、ソビエト時代につくられた核技術と、航空機を含むこれらの兵器の軌道手段、および、ソビエトが設計した射程100kmを超える戦術精密ミサイル「トーチカU」を保有しています。 しかし、彼らはもっと多くのことができます。 それは時間の問題でしかありません。彼らはソビエト時代からこのための土台を整えてきました。 言い換えれば、戦術核兵器の取得は、ウクライナにとって簡単なのです。特にキエフが外国の技術支援を受けている場合、ここでは名前を言いませんが、そのような研究を行っている他の国々よりも、はるかに簡単です。我々はそれを排除することはできません。 もしウクライナが大量破壊兵器を手に入れたら、世界とヨーロッパの状況は激変するでしょう。特に我々ロシアにとっては。 我々は、この本当の危険に反応することしかできません。特に、繰り返しますが、ウクライナの西側の後援者たちは、ウクライナがこれらの武器を入手して、我が国に対する新たな脅威を生み出すのを助けることができるのです。 キエフ政権が、いかに執拗に武器を装備しているかがわかります。 2014年以降、この目的のために、武器や装備の供給、専門家の訓練など、米国だけで数十億ドルを費やしてきました。 ここ数カ月、全世界の視線のもと、派手なやり方で、西側の武器がウクライナに着実に流れてきています。外国人のアドバイザーがウクライナの軍隊や特殊部隊の活動を監督しており、我々はそのことをよく承知しています。 近年、NATO諸国の軍事派遣団は、演習の名目でウクライナの領土にほぼ常駐しています。ウクライナ軍の統制システムは、すでにNATOに統合されています。 これは、NATO本部がウクライナ軍に、個別の部隊や分隊にまで、直接命令を出すことができることを意味します。 ・・・ 4 |
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●ウクライナ東部にロシア軍派遣へ プーチン氏指示、「平和維持」名目 2/22
ロシアのプーチン大統領は22日、ウクライナ東部の親ロシア派組織が名乗る「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認し、これらの地域の平和維持のために軍の部隊を派遣するようロシア国防省に指示した。ウクライナ南部クリミア半島に続いてロシア軍が駐留することで、ウクライナ政府や欧米への圧力を強めることになる。 両組織のトップは21日、プーチン氏に独立の承認を求めると同時に、軍事支援を念頭にした友好協力条約の検討も要請した。 プーチン氏は同日、国家安全保障会議を招集し、親ロ地域の独立承認を議論。その後、国民向けのテレビ演説で、ウクライナ政府が停戦合意を履行せず、親ロ地域の住民への攻撃が続いているとして、独立を承認する考えを示していた。 親ロシア派は18日、「ウクライナ軍からの総攻撃が迫っている」として、住民をバスでロシアに避難させ始めていた。 |
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●ウクライナ東部に軍派遣指示 プーチン氏、親ロ派独立を承認 2/22
ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部の親ロシア派の独立を承認する大統領令に署名した。親ロ派「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の幹部が同日承認を要請していた。大統領令ではロシア軍の派遣も指示。親ロ派と署名した条約によると、ロシアは親ロ派支配地域に軍事基地を建設する権利を持つ。ウクライナ情勢は重大な局面を迎えた。 プーチン政権は、2014年から続く紛争をウクライナ人同士の「内戦」と位置付け、その解決に向けた15年のミンスク合意の履行をウクライナ側に迫っていた。独立承認によって合意の前提が崩れ、情勢が流動化する恐れが強まった。米欧は一斉に非難した。 親ロ派はロシアに軍事介入を要請。プーチン氏はこれに応じ、平和維持部隊を展開することを決めた。これまで秘密裏に軍事介入する一方で、ロシアはさらなる「軍事技術的な措置」を示唆していた。 プーチン氏は21日の国民向け演説で「(親ロ派の)独立と主権を直ちに承認するという長く待ち望まれてきた決定を下す必要があると考える」と表明。「ウクライナの領土一体性を守るためにあらゆることを行ってきた」と述べ、ミンスク合意の履行のために「粘り強く格闘してきたが、すべては無駄となった」とし、合意を履行しなかったウクライナ政府に責任があるとの立場を強調した。 署名式はモスクワの大統領府で、親ロ派幹部も参加して行われた。ロシアと親ロ派は「友好協力・相互援助条約」にも署名した。 |
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●ウクライナ親露派地域を国家承認へ…プーチン氏が独仏へ通告 2/22
ロシア通信などによると、ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部の親露派武装集団が実効支配しているドネツク、ルガンスク両州の一部地域を近く「国家承認」する方針を固めたと、独仏首脳にそれぞれ通告した。 ロシアが国家として承認すれば、ウクライナの分断が固定化し、露軍部隊は親露派支配地域に公然と展開する見通しで、ウクライナや米欧の反発は必至だ。ロシアが軍事侵攻するとの懸念が強まっているウクライナ情勢を巡る緊張が一段と高まることになる。 独仏は2014年にウクライナ東部で勃発した政府軍と親露派武装集団との紛争の和平協議の枠組みに参加している。独立承認の意向を事前に伝えることで、ウクライナに対し、紛争解決に向けた「ミンスク合意」の完全履行に向けて、直ちに行動を起こすよう迫る狙いもあるとみられる。 ロシアは14年3月にウクライナ南部クリミアをロシアに併合したが、その後、ウクライナからの独立を一方的に宣言した親露派支配地域については、併合や国家承認を避けてきた。 ロシアによる親露派武装集団への軍事支援は公然の事実とされてきたが、ロシアは紛争の「当事者」ではないとの立場を貫いている。 |
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●ロシア、ウクライナ東部の親ロ派「共和国」の独立承認 2/22
ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部のドンバス地域にあるドネツク、ルガンスク2州で親ロシア派武装勢力が実効支配する一部地域を「独立国家」として一方的に承認する大統領令に署名した。プーチン氏は同大統領令で、両地域の平和維持を名目としてロシア軍の派遣を命じた。軍部隊はただちに進攻する見通しで、米国や欧州は強く反発している。ウクライナ情勢は重大な局面を迎えた。 バイデン米政権は同日、ロシアによる親ロ派地域の独立承認を「ウクライナの主権と領土保全への明白な攻撃だ」と強く非難。対抗措置として、親ロ派地域での米国人の新たな投資、貿易、融資を禁じるとともに、同地域で活動しようとするいかなる人物にも制裁を科す権限を持つ大統領令に署名した。 プーチン氏は21日、親ロ派の「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」の両トップをモスクワのクレムリンに招き、「友好相互援助条約」に調印した。 ドネツク、ルガンスク2州ではウクライナに親欧米政権が誕生した2014年、ロシアが主導する親ロ派武装勢力が蜂起し一部地域で「人民共和国」を自称。プーチン政権は両地域に自治権などの「特別な地位」を与えることを盛り込んだ停戦合意「ミンスク合意」の履行を迫っていた。 プーチン氏は同日のテレビ演説で、ウクライナのゼレンスキー政権がミンスク合意を履行せず、2地域に対して攻撃を激化させているとして、ウクライナ側に責任があると主張した。北大西洋条約機構(NATO)の東方不拡大を確約するロシアの要求を、米欧が無視したとも批判した。 バイデン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領と電話で協議し、ウクライナの主権と領土一体性を確認。フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相とも電話で協議した。 |
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●ウクライナ親ロシア派地域 “国家として承認” プーチン大統領 2/22
ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナの東部2州のうち、親ロシア派が事実上支配している地域について、独立国家として一方的に承認する大統領令に署名しました。ロシアがこの地域への影響力を一段と高めることに、欧米の批判がさらに強まるとみられます。 ロシアのプーチン大統領は21日、クレムリンで緊急の安全保障会議を開きました。 この中でプーチン大統領は、ウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州の親ロシア派が事実上支配している地域について、ウクライナ政府側が停戦合意を守らずに攻撃を続け、治安情勢が悪化していると主張し、強く非難しました。 また「ウクライナが、NATO=北大西洋条約機構に加盟すれば、ロシアに対する脅威が何倍にもなるだろう」と強調しました。 そして、ウクライナ東部2州の親ロシア派が事実上支配している地域について、それぞれ独立国家として承認することを検討するよう要請を受けたとしました。 プーチン大統領は閣僚など政権の主要幹部に意見を求めたうえで、その後、国民に向けてテレビ演説しました。 この中で「ウクライナ政府は、東部の問題を軍事的に解決しようとしている。長い間待ち望まれていた、独立と主権をすみやかに承認することを決断する必要がある」と述べ、独立国家として一方的に承認する大統領令に署名しました。 この後、プーチン大統領は、国防省に対して、この地域でロシア軍が平和維持にあたるよう指示しました。 欧米のメディアは、これによってロシアが今後、ウクライナから2州を守るためだとして、軍の部隊を駐留させることを正当化する可能性があると伝えています。 また、ロシア大統領府によりますと、プーチン大統領は21日、フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相と電話で会談し、親ロシア派が事実上支配している地域について、独立国家として一方的に承認する大統領令に署名する意向を伝えたということです。 これに対して、両首脳からは失望が示されたとしています。 一方で、両首脳からは対話を続ける用意があるという意向が示されたとしています。 これについて、ドイツ政府の報道官は21日、声明を発表し、ショルツ首相はロシアの対応を非難したうえで「ウクライナ東部の紛争を平和的に解決するために結ばれた停戦合意と著しく矛盾する一歩となるだろう」とプーチン大統領に直接伝えたとしています。 プーチン政権が、ウクライナ東部の親ロシア派が事実上支配している地域を一方的に国家承認し、ロシアがこの地域への影響力を一段と高めることに、欧米の批判がさらに強まるとみられます。 ●親ロシア派の武装勢力「独立国家として承認を」 ウクライナ東部の一部の地域を事実上支配し、2014年に一方的に独立を宣言した親ロシア派の武装勢力の指導者が21日、声明を出し、ウクライナ政府軍がアメリカなどからの軍事支援を得ながら、停戦合意に反して、東部の紛争を武力で解決しようとしていると主張しました。 そして、ウクライナ軍の攻撃から地域の住民を守るためだとして、プーチン大統領に、この地域を独立国家として承認したうえで、軍事面での協力協定を締結するよう求めました。 ●ロシア軍「ウクライナ軍の工作員5人を殺害」 ロシア軍は21日「ウクライナ東部との国境地帯で、ウクライナ軍の工作員5人を殺害した」と一方的に発表しました。 この中で「21日の朝、連邦保安庁の国境警備局が破壊工作員のグループを見つけた。応援要請を受けて現場で戦闘になり、その際、軍用車両2台が国境を越えてロシア領に侵入したことから、車両を砲撃し、破壊した」と主張しています。 一方、これについてウクライナのクレバ外相は「ロシアの偽情報に断固、反論する。東部を攻撃もしていなければ国境を越えて工作員や車両を送り込んだこともない。そのような計画もない」とツイッターに投稿し、ロシア側を非難しました。 ●エールフランス パリとキエフ間 22日の便の運航取りやめ フランスの航空会社エールフランスは21日、パリとウクライナの首都キエフを往復する22日の便の運航を取りやめると発表しました。 ウクライナの現地の状況から予防的措置として判断したとしていて、週2往復のうち今月27日日曜日の便と、それ以降については、今後の状況をみて判断するとしています。 キエフとの間を結ぶ国際便の運航については、ドイツのルフトハンザ航空も21日から1週間、取りやめることを発表しています。 ●戦闘が続くウクライナ東部とは ウクライナ東部は、2014年からロシアの後ろ盾を受けた親ロシア派の武装勢力が一部を占拠し、ウクライナ政府軍との間で散発的に戦闘が続き、ロシアとウクライナの対立の要因の1つとなっています。 親ロシア派の武装勢力が占拠しているのは、東部のドネツク州とルガンスク州の一部で、いずれもロシアと国境を接しています。 歴史的にも経済的にもロシアとつながりが深く、ロシア語を母国語とする住民が多い地域です。 ソビエト時代に開発された炭鉱や鉄鉱石の鉱山があり、豊富な資源を背景にした鉄鋼業が盛んで、ウクライナ有数の工業地帯となっていました。 しかし2014年、ロシアがウクライナ南部のクリミアを一方的に併合すると、直後の4月、親ロシア派の武装勢力が、州政府庁舎や治安機関の建物に押し寄せ、次々に占拠。 その後、ウクライナからの独立を一方的に表明しました。 ウクライナ政府は、これに対して軍を派遣して、強制排除に乗り出しましたが、各地で武装勢力と激しく衝突し、死者が多数出る事態に発展しました。 混乱が続いていた2014年7月には、オランダ発のマレーシア航空の旅客機がドネツク州の上空で撃墜され、乗客乗員298人が死亡する事件が起き、オランダなどの合同捜査チームは親ロシア派の支配地域から発射されたと発表しましたが、親ロシア派は否定しています。 一方、政府軍と親ロシア派の武装勢力との間の紛争を解決しようと、2014年9月、それに2015年2月にはフランスとドイツの仲介で「ミンスク合意」という停戦合意が結ばれましたが、その後も散発的な戦闘が続きました。 OHCHR=国連人権高等弁務官事務所によりますと、これまでに双方で1万4000人以上が死亡したということです。 8年にわたる紛争の影響で、生活に不可欠な水道や暖房施設などインフラが破壊される甚大な被害が出ていて、これまでに150万人の人々がこの地域からの避難を余儀なくされています。 親ロシア派の武装勢力について、ウクライナや欧米は、ロシアが軍事的な支援を行い後ろ盾となっていると指摘しています。 ロシアのプーチン政権は、紛争への関与を否定する一方、2019年からこの地域の住民に対するロシアのパスポートの発給手続きを簡素化し、これまでに70万人以上がロシア国籍を取得したとされ、ロシアへの依存度を高めています。 また、ロシアの議会下院は今月15日、親ロシア派の支配地域を、独立国家として承認することを検討するよう、プーチン大統領に求める決議を可決しました。 プーチン大統領は15日、民族などの集団に破壊する意図をもって危害を加える「ジェノサイド」という表現まで用いて、ウクライナ軍が停戦合意に違反して、親ロシア派の武装勢力への攻撃を激化させていると主張しています。 こうした動きに呼応するかのように、親ロシア派は政府軍による攻撃を理由に住民を隣国のロシアに避難させると発表し、ロシア政府もロシアに避難してきた住民に1万ルーブル、日本円にしておよそ1万5000円を支給するなど支援しています。 これに対して、ウクライナ政府は攻撃を否定するなど非難の応酬となっています。 また、アメリカのバイデン政権は「ロシアが侵攻を正当化するため偽りの口実を作る可能性がある」として虚偽の情報を拡散しようとしていると、警鐘を鳴らしています。 ●ウクライナと国境を接する地域では ウクライナ西部と国境を接するポーランド南東部のメディカの検問所では、人や車の往来は、ふだんと比べて大きな変化はありません。 ただ、中には、ウクライナから避難してきたという人もいて、不安やロシアへの反発を訴える声が聞かれました。 このうち、首都キエフから20日に避難してきたという、34歳の男性は「怖くて国を離れることにした。キエフではみな怖がっている。私たちは平和を求めている。持ちたいのは銃ではなく幸せな家庭だ」と話していました。 一方、仕事でポーランドに来たという43歳の男性は「もし戦争が起きたら、幼い子どもがいるのですぐに家に戻る。そして祖国のために戦う。ウクライナは私たちの土地で、ほかの誰のものにもならない」と話していました。 また、同じく仕事で来たという47歳の男性は「すべての人が平和を求めている」と話していました。 ウクライナ情勢を受けて、ポーランドにはアメリカがおよそ4700人の部隊の派遣を決めています。 ウクライナとの国境から西に150キロほど離れたミエレツにある民間の飛行場には、到着したアメリカ軍の部隊が展開していました。 現地では、軍用車両やテントが立ち並び、パトロールする兵士の姿も確認され、アメリカがヨーロッパ東部の防衛態勢の強化を図っている様子がうかがえます。 ●米 “承認”地域での貿易や金融取引など禁止へ アメリカのサキ報道官は21日声明を発表し「ロシア側からのこうした動きは予想していたことで、即座に対抗措置をとる用意がある」としました。 具体的には、プーチン大統領が独立国家として一方的に承認したウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州の一部において、アメリカ人などによる新たな投資や貿易、それに金融取引を禁じる大統領令を近く出すとしています。 また、この大統領令はウクライナのこうした地域で活動しようとする、いかなる人物に対しても制裁を科す権限があるということです。 一方で、声明ではこうした対抗措置は、ロシアがウクライナに侵攻した場合に欧米が科すとしている厳しい制裁とは、別のものだとしています。 バイデン大統領は21日、ウクライナのゼレンスキー大統領と30分余りにわたって電話で会談したほか、安全保障を担当する高官らからホワイトハウスでウクライナ情勢についての報告を受けていました。 ●ロシア外相 “米国務長官との会談は今週24日に” ロシアのラブロフ外相は21日、クレムリンで行われた緊急の安全保障会議の場で、アメリカのブリンケン国務長官との会談は今週24日にスイスのジュネーブで行われると明らかにしました。 外相会談では、アメリカのバイデン大統領とロシアのプーチン大統領の首脳会談の時期や形式について話し合われる見通しです。 ただ、アメリカのホワイトハウスは、首脳会談も外相会談も、ロシアによる軍事侵攻がないことが、開催の条件だとしています。 |
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●ウクライナ東部 ロシアが一方的に国家の独立承認 なぜ…? 2/22
ロシアのプーチン大統領はウクライナ東部の親ロシア派が事実上支配している地域の独立を一方的に承認したうえで「平和維持」を名目にロシア軍の現地への派遣を指示しました。 なぜロシアは一方的な独立承認に踏み切ったのか? ウクライナ東部とはどのような地域なのか? 今後の展開はどうなるのか? ●ウクライナ東部とは… ウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州の一部はいずれもロシアと国境を接し、親ロシア派の武装勢力が占拠しています。歴史的にも経済的にもロシアとつながりが深く、ロシア語を母国語とする住民が多い地域です。ソビエト時代に開発された炭鉱や鉄鉱石の鉱山があり豊富な資源を背景にした鉄鋼業が盛んで、ウクライナ有数の工業地帯となっていました。2014年からロシアの後ろ盾を受けた親ロシア派の武装勢力と、ウクライナ政府軍との間で散発的に戦闘が続き、ロシアとウクライナの対立の要因の1つとなっています。 ●州政府庁舎の建物など次々に占拠 2014年、ロシアがウクライナ南部のクリミアを一方的に併合すると直後の4月、親ロシア派の武装勢力が州政府庁舎や治安機関の建物に押し寄せ次々に占拠。その後、ウクライナからの独立を一方的に表明しました。 ●これまでに1万4000人以上が死亡 ウクライナ政府はこれに対して軍を派遣して強制排除に乗り出しましたが、各地で武装勢力と激しく衝突し死者が多数出る事態に発展しました。政府軍と親ロシア派の武装勢力との間の紛争を解決しようと2014年9月、それに2015年2月にはフランスとドイツの仲介で「ミンスク合意」という停戦合意が結ばれましたが、その後も散発的な戦闘が続きました。OHCHR=国連人権高等弁務官事務所によりますと、これまでに双方で1万4000人以上が死亡したということです。8年にわたる紛争の影響で生活に不可欠な水道や暖房施設などインフラが破壊される甚大な被害が出ていて、これまでに150万人の人々がこの地域からの避難を余儀なくされています。 ●一方的な国家承認 ロシアのねらいとは… ロシアによる一方的な独立国家の承認で事態は一層緊迫化していますが、ロシアはなぜ承認に踏み切ったのか、また軍事侵攻の可能性や今後の展開はどうなるのでしょうか。 ●1. なぜ国家の承認に踏み切った? 国家として一方的に承認したというのは、ロシアがウクライナ東部の一部地域を管理下に置くことを意味します。プーチン大統領はかねてよりウクライナをみずからの勢力圏ととらえてきました。そして今回、一方的に承認する必要性に迫られたとも見えます。ロシアはウクライナのNATO=北大西洋条約機構への加盟だけは「越えてはならない一線だ」としてNATOを拡大しないよう求めてきましたが、欧米はこれに応じず逆にウクライナに兵器の供与など軍事的な支援を強めてきました。親ロシア派は「ウクライナ政府軍が力ずくで奪還してくる」とあおり、国家の承認と軍事支援の要請を受けたプーチン大統領がこれに応える形をとりました。しかし一方的な国家の承認は、これまでウクライナ政府側に迫ってきた停戦合意をロシアがみずからほごにすることにつながります。欧米からの制裁強化も覚悟のうえでプーチン大統領は2014年のクリミアに続いて今度はウクライナ東部を確実に影響下に置く道を選んだことになります。 ●2. 「平和維持」部隊派遣へ 侵攻の可能性は? 「軍事侵攻」はない、というのがロシアの立場ですが、プーチン大統領は国防省に対して「平和維持」を名目にロシア軍を現地に派遣することを指示しました。ロシアによる軍の駐留につながる可能性があります。ロシアはウクライナの国境周辺に依然として大規模な軍を展開しています。ウクライナの北部と国境を接するベラルーシでは合同軍事演習の終了予定だった20日をすぎても軍を駐留させ、圧力を維持しています。まずはロシア軍がいつ、どれほどの規模で展開するのかが焦点です。もし展開すれば、それがさらに恒久的な駐留につながるのか見極めていく必要があります。そして日本をはじめ欧米各国がどこまで結束してウクライナの主権と領土の一体性を守れるのかが問われることになります。 ●3. プーチン大統領 強硬姿勢に変化は? プーチン大統領が強硬でなかったことは、これまでもありません。欧米側の制裁も含めた反応もみながら、引き続きNATOにウクライナを加盟させないことなど要求を突きつけ続けるとみられます。ウクライナ東部の一部地域に部隊の前進を決めたことで、軍事侵攻がありうると脅しをかけ続けて安全保障をめぐる交渉を有利に進めたい意向があると思われます。 ●4. 衝突回避に必要なことは? ロシアが交渉をしたいのはアメリカで、双方があらゆるレベルで対話を維持させることが何よりも大事です。アメリカとしても米ロの外相会談など対話、チャンネルは継続させてロシア側の真意を見極めて大規模な侵攻を抑止したい考えとみられます。ただロシア側が最も重視するNATOの不拡大の問題では、アメリカは一歩も引かない構えです。またロシア軍が東部の一部地域に派遣されることでウクライナ軍との衝突が起きないかも懸念されます。ウクライナ情勢はロシアが一方的に国家承認したこと、部隊の派遣を決めたことでさらに情勢が複雑に動いています。 ●5. アメリカはどう出る? バイデン政権高官は今後の対応について慎重な説明に終始しています。この高官は「ロシア軍は過去にもウクライナに駐留しており、派兵は新しい動きとは言えない」とも述べて、強力な制裁は科さない可能性を示唆しました。現時点で「軍事侵攻」と明確に位置づけないのは、ここで「強力な制裁」を科してしまえばロシア軍による大規模な侵攻を抑止するためのカードを早々に失いかねないことがあります。さらにこの段階での強力な制裁はロシアにエネルギー依存しているヨーロッパ各国の支持を得にくいという考えもあるとみられます。 ●6. アメリカにロシアの行動を抑える秘策はあるか? 何とか外交によって事態の打開をはかりたいというのが本音で、24日に予定されているロシアとの外相会談を開く可能性は残しています。一方で「弱腰」と映る対応をとることもできません。このため政権高官は「このあと数時間、ないし数日のロシアの行動を注意深く観察し相応の対応をとる」と述べて、ロシア軍の動き次第では強力な制裁を科す可能性があることをにおわせ、けん制しました。欧米各国、そして日本などと緊密に連携し結束した対応をとれるかが今後の成否の鍵を握ることになりそうです。 |
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●ウクライナ大統領「国境変わらず」 ロシアを非難 2/22
ロシアがウクライナ東部の一部地域の独立を一方的に承認したことを受け、ウクライナのゼレンスキー大統領は22日に「国際的に認められた国境は変わらない」と述べ、ロシアに譲歩しない構えを示した。外交的な解決に向けて、国際社会の支援を訴えた。ロイター通信などが伝えた。 ゼレンスキー氏は国民向けの演説で、ロシアがウクライナ東部紛争の解決に向けた努力を「台無しにした」と非難した。親ロシア派占領地域の独立承認は和平を目指して2015年にまとめた「ミンスク合意」に反すると訴えた。和平を協議するウクライナ、ロシア、ドイツ、フランスによる首脳会議の開催も呼びかけた。 ゼレンスキー氏は21日に国家安全保障・国防会議を緊急招集し、東部の住民保護などについて議論した。 |
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●憤るウクライナ市民 親ロ派地域では歓喜の花火 2/22
ロシアのプーチン大統領が親ロシア派武装勢力が実効支配するウクライナ東部の独立を承認したことに、ウクライナの市民は21日、憤りの声を上げた。一方、親ロ派地域「ドネツク人民共和国」の中心都市ドネツクでは花火が上がり、住民がロシア国旗を振って喜ぶ様子をロシア国営メディアなどが伝えた。 ウクライナ首都キエフの無職ナタリヤさん(48)は「ロシアがわが国の一部の独立を認めることはできない。ウクライナがロシアのシベリアを独立国家として認めるようなものだ」と訴えた。 キエフ近郊のウェブデザイナー、セルギーさん(43)は「ウクライナ政府の統治が及ばない状況」は変わらないが「ロシアの挑発で軍事衝突が頻発・激化する可能性も高く、非常に嫌な気分だ」と語った。 親ロ派はウクライナ政府軍の攻撃が近いと主張、住民をロシアへ大規模避難させてきた。タス通信によると、避難場所でテレビの前に集まり、プーチン氏の演説に聞き入った住民らは「やっと平和が来る。何よりも大切なのは安全」と喜んだ。 ロシアが強制編入したウクライナ南部クリミア選出の与党下院議員は「歴史的な出来事。ロシアは平和な市民を『ジェノサイド(民族大量虐殺)』から守れる」と歓迎した。 |
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●東部独立承認で制裁発動 プーチン氏を強く非難―米大統領 2/22
バイデン米大統領は21日、ロシアのプーチン大統領によるウクライナ東部の親ロシア派の独立承認を受け、親ロ派支配地域への制裁を発動した。ホワイトハウスが発表した。また、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談し、プーチン氏の決定を強く非難。ウクライナの主権と領土の一体性を擁護する方針を確認した。 バイデン氏はまた、フランスのマクロン大統領やドイツのショルツ首相と電話会談し、プーチン氏の行動を非難。今後の対応についても協議し、連携を確認した。 ホワイトハウスによると、バイデン氏は東部のドネツク州やルガンスク州の親ロ派支配地域での米国人の新規投資や貿易、金融取引などを禁じる大統領令に署名した。また、米政府高官は21日に記者団に対し、追加制裁措置を22日に公表すると明らかにした。 |
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●ウクライナ情勢で緊急会合 米英仏などが要請―国連安保理 2/22
ロシアによるウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立承認を受け、国連安保理は21日夜(日本時間22日午前)、ウクライナ情勢をめぐる緊急の公開会合を開いた。安保理外交筋によると、ウクライナが開催を要請し、米英仏など8カ国が支持した。 トーマスグリーンフィールド米国連大使は21日、声明を出し、「ロシアによる『独立国家』承認は、ウクライナの主権と領土保全へのいわれのない侵害だ」と非難。「ロシアの行為は、一国が他国の国境を一方的に変更することはできないという原則を第2次大戦以来掲げてきた国際秩序を脅かすものだ」として、「安保理は国連加盟国であるウクライナの主権と領土の一体性を尊重するよう、ロシアに要求しなければならない」と訴えた。 |
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●「ロシアの挑発に屈せず」 安保理でウクライナ大使 2/22
ウクライナのキスリツァ国連大使は21日、ロシアによるウクライナ東部の親ロ派支配地域の独立承認を受けて開かれた国連安全保障理事会の緊急会合で「外交的解決を目指し、挑発には屈しない」と強調した。 キスリツァ氏は独立承認について「ウクライナの主権と領土の一体性に対する侵害」であり、全ての責任はロシア側にあると指摘。「国連の全加盟国が攻撃を受けている」として、安保理理事国に対しロシアへの圧力を強めるよう求めた。 一方、中国の張軍国連大使は「全ての当事者は自制し、緊張を高める行動を避けなければいけない」と述べ、外交努力を強化するよう呼び掛けた。 |
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●ウクライナ危機で国連安保理が緊急会合 2/22
ロシアによるウクライナ東部一部地域の独立承認を受け、国連安全保障理事会は21日夜(日本時間22日午前)、緊急の公開会合を開いた。ウクライナが要請し、米国などが開催を支持した。 米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は「プーチン(ロシア)大統領は国連以前の時代、帝国が世界を支配した時代へ時間をさかのぼるのを欲している」と厳しく非難。会合に先立って発表した声明では、「安保理はロシアがウクライナの主権と領土を尊重するよう要求しなければならない」と強調した。ウクライナ東部の和平プロセス「ミンスク合意」への全面的な違反とも指摘した。 会合では、英国やフランス、アイルランドなどからもロシアによる独立承認に懸念と批判が相次いだ。グテレス事務総長は報道官を通じ「ロシアの決定はウクライナの領土保全と主権の侵害になり、国連憲章の原則に矛盾する」との談話を出した。 |
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●国連安保理緊急会合 ロシアへの非難相次ぐ 2/22
ロシアが一方的にウクライナ東部の親ロシア派武装勢力を独立国と認めたことを受け、21日、国連安保理が緊急会合を開いた。 多くの理事国からロシアの決定を国連憲章違反だと非難し、ウクライナの領土保全を求める声が相次いだ。 アメリカは「プーチン大統領は国際システムを試し、われわれの決意を試し、われわれをどこまで追い込めるか試している。力によって国連を茶番劇にできることを証明しようとしている」と非難。 ロシアは「現地ではこれまでも独立を望む声が多くあった。難民はウクライナ側でなくロシアに逃げてきている」と述べ、あくまで苦しんでいる人たちを助けたものだとの主張に終始した。 中国の演説は短く、外交的解決を求めるにとどまった。 緊急会合後、アメリカとウクライナの国連大使があらためてロシアを非難したが、安保理としては一致した行動はとれていない。 |
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●「プーチンは、ロシア帝国が支配した時代に戻ることを望んでいる」 2/22
アメリカの国連大使は2022年2月21日、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は世界をロシア帝国が君臨していた時代に戻したいと考えていると述べた。 アメリカのリンダ・トーマス・グリーンフィールド(Linda Thomas-Greenfield)国連大使は、ウクライナにおけるロシアの行動を議論するために招集された国連安全保障理事会で上記のような発言をした。プーチン大統領は、ロシアがウクライナの2つの親ロシア地域を独立国家として承認し、軍隊をその地域に派遣すると発表しており、西側諸国からの非難が殺到している。 会議では、トーマス・グリーンフィールド大使が、ロシアの行動はウクライナの主権に対する攻撃であり、国際法の違反であると述べた。 「彼はこれらの地域にロシア軍を配置することを発表した。彼はそれを平和維持軍と呼んでいる。これはナンセンスだ。我々は彼らが本当は何なのか知っている」と述べ、この動きは「明らかにロシアがウクライナへのさらなる侵略の口実を作ろうとしている根拠」であると付け加えた。 トーマス・グリーンフィールド大使は、プーチンがロシアはソビエト連邦以前のロシア帝国時代の領土に対して正当な権利を持っていると述べたことを指摘した。 |
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●米、まず親ロシア地域に制裁 独立承認に対抗 2/22
ウクライナ東部で親ロシア派武装勢力が実効支配する一部地域についてロシアが独立を承認すると決めたことを受け、バイデン米政権は21日、経済制裁を発動すると発表した。独立承認した地域との新規投資や貿易に米国人が関与することを禁じる。米国とロシアの対立が一段と強まる。 バイデン大統領は21日、ウクライナのゼレンスキー大統領と35分間にわたり電話し、ロシアによる独立承認を強く非難した。バイデン氏はフランスのマクロン大統領やドイツのショルツ首相とも3者で電話してロシアへの対応策を擦り合わせた。 米政府高官は記者団に対し、バイデン氏が米国人を対象として、独立承認した地域との新規投資や貿易、金融取引への関与を禁じる大統領令に署名したと明らかにした。22日に追加の対抗措置も発表すると説明した。独立承認は武力を背景に国境を変更する試みで米国にとって受け入れがたい。 ホワイトハウスは声明で「今回の措置はロシアがウクライナに再侵攻した場合に同盟国やパートナー国とともに準備している迅速かつ厳しい経済措置とは別のものであると明確にしたい」と強調した。再侵攻すればロシアの大手銀行への制裁や輸出規制といった強力な制裁を科す構えとみられる。 ロシアは独立を承認した地域に平和維持を目的としてロシア軍を派遣すると発表した。米政府高官は同地域への軍派遣は強力な制裁を科すべき「新たな侵攻」に相当しないのかと問われ「ロシアは(同地域に)過去8年間にわたり軍を置いてきた」と主張。新しい侵攻とはみなさない考えを示唆した。 政府高官はロシアがウクライナへ再侵攻しないことを条件に「理にかない、危機の解決に有益な影響があれば我々は首脳間の対話にオープンだ」と語った。「ロシア軍はウクライナ国境へ引き続き近づいている」と指摘し、再侵攻に重ねて強い懸念を示した。 サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はロシアによる承認発表に先立ち、米NBCテレビのインタビューでロシアがウクライナ侵攻の準備を進めていると重ねて懸念を表明した。「どんな規模や範囲の軍事作戦であってもそれは激しいものになり、ウクライナ人やロシア人、市民、軍人が犠牲になる」と語った。 |
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●ウクライナ情勢 “親ロシア派地域 独立承認されれば制裁” EU 2/22
ロシアのプーチン大統領が、ウクライナの東部2州のうち、親ロシア派が事実上支配している地域の独立を一方的に承認する大統領令に署名したのに先立って、EU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表は、実際に承認されればロシアに対する制裁の発動に向けた手続きに入る考えを示しました。 EUは21日、ベルギーのブリュッセルで外相会議を開き、ウクライナ情勢について協議しました。 会議のあとの記者会見でボレル上級代表は、ウクライナの東部2州のうち、親ロシア派が事実上支配している地域について、プーチン大統領が独立を承認しないよう望むと述べました。 そのうえで「もし承認した場合は結束して対応する用意がある。承認がなされれば、私は制裁案を加盟国に示し、外相たちが制裁を決めるだろう」と述べ、プーチン大統領が独立を承認すれば、ロシアに対する制裁の発動に向けた手続きに入る考えを明らかにしました。 EUはこれまで、ロシアがウクライナに対して軍事侵攻すれば制裁を科すとしてきましたが、ボレル上級代表は、親ロシア派が事実上支配している地域の独立の承認が制裁の対象になると明言することで、プーチン大統領をけん制した形です。 EU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領とフォンデアライエン委員長は声明を発表し「ロシアの大統領の決定を最も強いことばで非難する」と述べました。そして、ロシアのとった行動は国際法に違反するとしたうえで「EUは、この違法な行為に加担した者たちに制裁で対応する。ウクライナの独立と主権、領土の一体性に、改めて確固たる支持を表明する」と強調しました。 |
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●ウクライナ東部独立承認「紛争解決の努力をむしばむ」NATOが非難 2/22
ロシアのプーチン大統領によるウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立承認を受けて、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は21日、「ウクライナの主権と領土保全を侵害し、紛争解決への努力をむしばむものだ」と非難する声明を発表。「ロシアは再びウクライナ侵攻の口実をつくり出そうとしている」とし、「NATO同盟国はロシアに対して最も強い表現で、外交の道を選択し、ウクライナからの軍撤退を要求する」と強調した。 欧州連合(EU)のミシェル大統領とフォンデアライエン欧州委員長は共同声明で「制裁で対抗する」と宣言。制裁内容や対象者への言及は避けたが、EUは金融やエネルギー分野の制裁を検討している。 ポーランドのモラウィエツキ首相はツイッターに「即座の制裁が必要。それがプーチンが理解する唯一の言葉だ」と投稿し、制裁案を協議する緊急のEU首脳会議開催を求めた。 東部での紛争の和平プロセスを定めたミンスク合意を仲介したフランスとドイツには失望が広がった。仏大統領府はプーチン氏の演説を「パラノイア(妄想)に満ちている」と非難。ベーアボック独外相は声明で「ドイツはウクライナと国際社会が認めるその国境線を強く支持する」と述べた。 ジョンソン英首相も21日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談し、ロシアの主権侵害行為を「ミンスク合意を骨抜きにした」と強く非難。「国連安全保障理事会に問題提起する」とした上で、ロシア側に対して「英国として既に制裁を準備しており、22日に発動する」と述べた。ウクライナ政府の要請に応じた防衛面での支援も約束した。 |
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●米中外相が電話会談 王氏、インド太平洋戦略批判 2/22
中国の王毅国務委員兼外相は22日、ブリンケン米国務長官と電話会談し、米国は新たなインド太平洋戦略によって中国を封じ込めようとしているなどと批判した。中国外務省が発表した。米中外相の電話会談は1月下旬以来。 王氏は、米国が公然と中国を「アジア太平洋地域の主要な挑戦相手」とみなし、台湾問題を米国の地域戦略に取り込もうとしているとした上で、米国は「中国封じ込め」という誤ったメッセージを送っていると指摘した。 ブリンケン氏は、米国として中国の体制変革を求めておらず、中国と衝突する考えはないとの立場を説明したという。 |
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●もしもロシアとウクライナが戦争に突入したら?世界経済の混乱 2/22
●液化天然ガス(LNG)や原油など資源の供給も絡む複雑さ ウクライナ問題が緊迫している。ウクライナは、米英独仏など北大西洋条約機構(NATO)に加盟する国と、ロシアを中心とする独立国家共同体(CIS)に挟まれている。また、中央アジアでの影響力強化を目指す中国も、ウクライナに対して重要な関心を寄せている。そこに、液化天然ガス(LNG)や原油など資源の供給も絡み、ウクライナ情勢は非常に複雑だ。これからも神経質な展開が続くだろう。 世界の地政学の要衝であるウクライナは、現在、NATO加盟を目指している。ロシアはそれを脅威と考え、国境地帯に軍を集結させ、いつでもウクライナ国内に侵攻できる体制を敷いている。万が一の展開として、戦闘状態に発展する恐れはゼロではない。その一方で、「戦争は起きないだろう」と先行きを楽観、あるいは高をくくっている投資家は多いようだ。 過去、戦争の勃発によって世界の金融市場は暴落した。株式、通貨、債券の価値は吹き飛んだ。仮にウクライナで戦争が勃発すれば、世界の経済と金融市場には大きなマイナスの影響が及ぶことは避けられない。ウクライナ問題の緊迫化が、世界経済と金融市場に与える負の影響は過小評価できない。 ●天然ガスのパイプライン「ノルド・ストリーム」を巡る駆け引き 世界地図を見ると、ウクライナが世界の地政学の要衝であることがよくわかる。ウクライナは東側をロシアに、西側を欧州連合(EU)加盟国に挟まれている。 ドイツなどのEU主要加盟国は、NATOを通して米国と安全保障面で同盟関係にある。ウクライナのNATO加盟が実現すれば、ロシアは米国など自由主義圏の勢力と直接、対峙(たいじ)しなければならない。ロシアは国境地帯での警備などを強化せざるを得なくなるだろう。偶発的な衝突のリスクも高まる。そうした展開を避けるために、プーチン大統領はウクライナへの圧力を強めた。ウクライナは大国にとって、「緩衝地帯」の役割を担ってきた。 ロシアにとって、ウクライナへの影響力を維持することは対EU政策上、重要な意味を持つ。EUは天然ガスの約4割をロシアに依存する。 欧州各国からすると、脱炭素を加速するために、ロシアからの天然ガス輸入の重要性が高まっている。昨年、欧州各国は風力など再エネ由来の電力供給が不安定になった。目下、EUは中東や米国からの天然ガス輸入を増やしているが、長期的に考えるとロシアからの安定した天然ガス供給が重要だ。 脱原発に取り組むドイツは、二つのパイプラインによってロシアから天然ガスを輸入する。その一つはウクライナを経由する。もう一つはウクライナを迂回(うかい)する「ノルド・ストリーム」(バルト海底を経由してロシアとドイツをつなぐパイプライン)だ。パイプラインを用いるということは、ロシアにはガスを液化する十分な技術力がないと考えられる。ロシアにとってウクライナへの影響力維持は、資源を掘り起こして輸出し経済成長を実現するために欠かせない。 米国のバイデン大統領は、ロシアがウクライナに侵攻すれば、「ノルド・ストリーム2は終焉する」と警告した。仮にノルド・ストリーム2が停止すれば、天然ガスや原油価格は上昇するだろう。欧米各国はロシアへの経済・金融制裁も準備し始めている。ウクライナ問題によって、世界経済はかなり困った状況に陥る恐れが高まっている。 ●株価や通貨、債権は暴落する一方 エネルギーや鉱山資源、穀物の価格は上昇 ウクライナ問題が「戦争」へ発展した場合、世界経済はどうなるのか。結論から言えば、金融市場に壊滅的なダメージを与えることになる。歴史的に、大規模な戦争が起きると株価は暴落した。 1939年〜41年までの各年、ニューヨークダウ工業株30種平均株価は2.92%、12.72%、15.38%下落した。また、53年に旧ソ連のスターリンが死去した際、ソ連の体制転換が進み、東欧など社会主義国の情勢が不安定化するとの懸念が急増して世界の株価が暴落した(スターリン・ショック)。 今後のシナリオの一つとして、ロシアがウクライナに侵攻すれば、世界の株価は「暴力的に」売られる恐れがある。投資家は価格変動リスクの高い株式を売らなければならなくなり、状況によっては、新興国株式の中で主要な投資対象となってきた企業の価値が大きく下落するだろう。 リスク回避の動きが急増することによって、世界の通貨市場も混乱する。ロシア・ルーヴルやウクライナのフリヴニャの価値は暴落するだろう。地理的に近いハンガリーなど東欧の通貨や、ユーロにも売り圧力が飛び火する可能性がある。 債券市場では、債務残高が増加してきた新興国の政府や企業の債券の価格が下落する。状況によっては、急速な資金流出に直面して経済全体での資金繰りがつかなくなり、国際金融支援を要請する国が出るかもしれない。 また、エネルギーや鉱山資源に加え、小麦など穀物の価格も上昇するだろう。それによって世界的な物価上昇圧力は一段と高まり、各国で企業の業績が悪化する。 EUが難民問題に直面する可能性もある。戦争によって平和や法による秩序は崩れる。経済と社会の運営を支えてきた価値観は崩壊し、混乱が世界に波及する。そのインパクトは計り知れない。 ●ロシアが「ネオン」の輸出を制限すれば 半導体不足に拍車がかかる! しかし、一部の主要投資家は、戦争が起きることはないと高をくくっているようだ。その裏返しに、リスク回避の動きによって株価が下落したロシアのエネルギー大手ガスプロムや、大手銀行のズベルバンクなどの株を、「バーゲン・ハント」する(価格が大きく下げたときに買う)投資家がいる。 ドル建てのウクライナ国債に、投資妙味があると考える投資家もいる。2月に実施した国債入札でウクライナ政府は目標額を調達できなかった。地政学リスクの高まりを背景に、ウクライナ財政がひっ迫する恐れは高い。しかし、関連資産の価格推移を見る限り、ウクライナ問題のリスクは世界の金融資産価格に十分に織り込まれていないと考えられる。 戦争が起きないと断言することはできない。プーチン大統領は仏マクロン大統領に対して、「ロシアが核保有国である」と警告を発した。それが警告のまま終わればよいが…、戦争が回避されたとしても米欧がロシアに制裁を発動し、ロシアが報復措置を繰り出す展開は十分に考えられる。それは、世界の供給制約を深刻化させるだろう。 その一つとして、半導体製造に用いられる「希ガス」の一つである、「ネオン」の供給減少が懸念される。ネオンは、半導体製造工程内の、リソグラフィー(基板に光などで回路パターンを転写する工程)で使用される。半導体回路の微細化によって、ネオン消費量が増えている。旧ソ連時代の設備を用いて、ロシアとウクライナでその多くが生産されている。ロシアが報復措置として希ガスの輸出を制限すれば、半導体不足に拍車がかかるだろう。 また、エネルギー分野では、スイスの資源大手グレンコアが、ロシアの石油企業ルスネフチ株を売却する方針と報じられた。このように、ウクライナ問題は世界経済の不安定性を一段と高める要因である。万が一戦争に突入すれば、世界の金融市場と経済に大きなマイナス影響が及ぶことを、冷静に考えなければならない。 |
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●ウクライナ情勢 外務省が新たに安全情報 滞在の日本人は退避を 2/22
ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ東部2州のうち、親ロシア派が事実上支配している地域の独立を一方的に承認する大統領令に署名したことを受けて、外務省は22日朝、新たに海外安全情報を出しました。 これらの地域では、先週末から親ロシア派の武装勢力側からの攻撃回数が急増していて、今回のロシア側の一方的な決定によりさらに戦闘が激しくなり、戦闘地域が拡大する可能性を排除できないとしています。 そして、滞在する日本人に、直ちに安全な方法で退避するよう重ねて呼びかけています。外務省によりますと、ウクライナに滞在する日本人は、先週末の段階でおよそ120人いるということです。 |
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●外相「主権侵害で国際法違反」 ロシアを批判 2/22
林芳正外相は22日午前の閣議後記者会見で、ロシアのプーチン大統領がウクライナ東部の親ロシア派地域の独立を承認する大統領令に署名したことを非難した。「ウクライナの主権と領土の一体性を侵害し、国際法に違反するものだ。決して認められるものではない」と述べた。 ロシアへの対応に関し「事態の展開を深刻な懸念を持って注視する。制裁を含む厳しい対応の調整をしている」と説明した。主要7カ国(G7)と連携する方針を示した。 松野博一官房長官は記者会見で「現時点までに邦人の生命、身体に被害が及んでいるとの情報には接していない」と語った。ウクライナにいる在留邦人の保護に向けてあらゆる準備を進めていると強調した。 |
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●ロシア、なぜここまで強硬? ウクライナ情勢 2/22
ロシアのプーチン大統領は21日、親ロシア派武装勢力が実効支配するウクライナ東部の一部地域について独立を承認したうえで、「平和維持」を目的にロシア軍を派遣するように国防省に指示した。米欧各国はロシアがウクライナに侵攻すれば経済制裁を科す方針を示すなかで、プーチン氏は行動に出た。なぜロシアは強硬姿勢でウクライナにこだわるのか。3つのポイントをまとめた。 ●(1)ロシアとウクライナの歴史的な経緯とは 「ロシア人とウクライナ人の歴史的な同一性について」。プーチン大統領は2021年7月にこう題した論文を発表し、「1つの民族」だと主張した。ウクライナをロシアの勢力圏に取り戻すことが自らの使命だと考えているようだ。 ロシアとウクライナ、ベラルーシは同じ東スラブ民族で、統一国家の始まりは9世紀から12世紀ごろまで栄えたキエフ・ルーシにある。中心地は現在のウクライナの首都キエフだった。その後も現ウクライナ領には独自の国が長く形成されず、ロシア帝国やポーランドなどの支配下に置かれた。 ウクライナはほぼ20世紀を通して旧ソ連の一部であり、本格的な国家として歩み始めたのは1991年のソ連崩壊後だ。欧州連合(EU)とロシアに挟まれた影響力争いの舞台となり、政権も親欧米と親ロシアとが交互に発足した。2014年に民主化を求める親欧米派による政変で親ロ派政権が倒れると、ロシアはクリミア半島を一方的に併合し、ロシア系住民の多い東部にも侵攻した。 ●(2)「大国復活」を目指すプーチン氏の野望とは ウクライナは4000万を超す人口と広大な国土を持つ旧ソ連第2の大国だ。ウクライナなしでロシアは帝国にはなれない――。ブレジンスキー元米大統領補佐官はこう述べたことがある。「大国の復活」の野望を抱くプーチン氏にとって、ウクライナを自らの勢力圏にとどめることは絶対条件だ。 ロシアは13世紀から15世紀にモンゴルに支配され、19世紀初めにナポレオン率いるフランスにモスクワを占領された。第2次世界大戦でもナチスドイツに国土深く攻め込まれた。こうした経緯もありロシアは伝統的に安保意識が強いとされ、プーチン政権は安保を重視する治安機関や軍関係者ら保守強硬派の影響力が強い。ロシアと欧州の真ん中に位置するウクライナが欧米陣営に加わるのを容認することは国民感情の面からも極めて難しい。 ●(3)なぜNATOの東方拡大をここまで警戒するのか ウクライナを巡る米欧とロシアの対立は、ソ連崩壊後、新たな欧州安保体制構築の試みが挫折したことも意味する。プーチン氏は昨年12月、東欧諸国を加盟させないというNATOの約束が過去に破られてきたとして「ひどくだまされた」と恨みを口にした。2000年代初めまでは米ロは融和に向かうかに見えたが、プーチン政権は米欧への反発を強めていった。 一方、ウクライナはNATO加盟を国家目標に掲げ、ロシアとの対立を深めた。ロシアは米欧の部隊や攻撃兵器がロシアの西部国境近くに展開され、自国の安全保障が決定的に損なわれると懸念する。東部紛争を巡って軍事圧力を強めてウクライナの後ろ盾である米国を交渉に引き出し、ウクライナのNATO非加盟を確約させようとした。 |
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●米国務長官 露外相との会談「意味がない」露側に中止を伝える 2/23
緊張が高まるウクライナ情勢をめぐり、アメリカのブリンケン国務長官は、今月24日にスイスで開催が予定されていたロシアのラブロフ外相との会談を行うことはできないと表明しました。 ウクライナ情勢をめぐり、アメリカのブリンケン国務長官は22日、ワシントンでウクライナのクレバ外相と会談したあと、そろって記者会見を行いました。 この中でブリンケン長官は、ロシアがウクライナ東部2州のうち親ロシア派が事実上支配していた地域の独立を一方的に承認し、軍を送る準備を整えていることについて「すでに侵攻が始まっている」と強く非難しました。 そのうえで、今月24日にスイスで開催が予定されていたロシアのラブロフ外相との会談について「現時点では行っても意味がない」と述べ、会談を行うことはできないとロシア側に伝えたことを明らかにしました。 米ロ両国の間では、外相会談に続いてバイデン大統領とプーチン大統領の首脳会談の開催に向けて調整が行われる予定でした。 一方でブリンケン長官は「もしロシアが緊張緩和と外交による解決に真剣に取り組んでいると国際社会が確信できる明白な措置をとる用意があるならば、引き続き外交に取り組んでいく」と述べ、外交による解決の余地は残されているとしたうえで「ウクライナへの全面攻撃という最悪のシナリオを避けるため、できることはすべて行う」と強調しました。 |
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●ウクライナ情勢、小麦や希少金属に波及も ロシア依存で 2/23
緊迫するウクライナ情勢をめぐり、小麦やパラジウムといったロシアに生産を依存する物資の調達に影響が出る懸念が高まっている。ロシアがウクライナ東部の一部の独立を承認したことを受け、米国や欧州は相次ぎ制裁を発動した。ロシアが報復として輸出を制限すれば価格高騰やサプライチェーンの混乱につながりかねない。 ロシアは世界最大の小麦の輸出国で、特にエジプトやトルコなどへの輸出量が多い。ウクライナも小麦やトウモロコシの主要な輸出国だ。各国の貿易データを分析する経済複雑性観測所によると、ロシアとウクライナの小麦の輸出量は合計で2019年に世界全体の4分の1以上を占めていた。 米調査会社S&Pグローバル・プラッツで穀物市場を分析するピーター・マイヤー氏は米CNNに対し、ウクライナ情勢が市場に及ぼす影響について「ボラティリティーがあるのは間違いない」と指摘した。 パラジウムなど希少金属の調達が難しくなる懸念もある。パラジウムは自動車の排ガス浄化や携帯電話などに使われており、産出量の4割をロシアが占めている。ウクライナ情勢への懸念から1月には価格が2週間で2割超も上がった。ロシアがパラジウムの輸出を制限すれば自動車のサプライチェーンなどに影響が出かねない。 エネルギー価格には、すでに影響が出ている。ロシアへの経済制裁で需給がひっ迫する懸念が高まり、22日には原油価格が一時1バレル99ドル台まで上昇した。今後影響が食料や希少金属などほかの分野にも広がれば品不足や世界的なインフレがさらに加速する可能性がある。 |
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●ロシアの全面攻撃警戒 ウクライナ情勢「深刻化」―NATO総長 2/23
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は22日、ウクライナ国境周辺のロシア軍の動向をめぐり、「あらゆる兆候が、ロシアがウクライナへの全面攻撃を引き続き計画していることを示している」と述べ、本格的侵攻への警戒感をあらわにした。 NATOとウクライナとの緊急会合後の記者会見で発言した。ストルテンベルグ氏は「ますます多くの軍隊が戦闘隊形を取っている」と指摘。ウクライナ東部の親ロ派支配地域については「さらなるロシア軍が入っているのを現在、確認している。全体的な状況をより深刻化させている」と説明した。 |
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●ウクライナ情勢の影響 / 識者はこうみる 2/23
ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部の親ロシア派2地域の独立を承認する大統領令に署名した。これを受け、ロシア連邦議会上院は22日、プーチン氏が要請した国外へのロシア軍派遣を全会一致で承認。プーチン氏はウクライナ東部の停戦と和平への道筋を示した「ミンスク合意」はもはや存在せず、履行すべきことは何も残っていないと述べた。こうした情勢に対する市場関係者の見方は以下の通り。 ●FRBの引き締め路線見直しも=JPモルガン ロシア・ウクライナ危機は依然として不透明であり、短期的には市場のボラティリティーが高まる可能性があるが、各国の中銀がインフレ期待を再び低水準に抑制しようと積極的に試みる中で、金融政策の引き締めが依然として株式市場の主要なリスクだろう。特に景気循環が悪化し続けた場合、過度な政策引き締めは明らかな政策ミスにつながる可能性がある。同時に、ロシア・ウクライナ危機によって米連邦準備理事会(FRB)は引き締め路線の見直しを迫られ、タカ派姿勢を弱めるかもしれない。 ●戦争はなおテールリスク=UBSグローバル 昨日の出来事が今後の展開にどのように影響するのか最終的な判断を下すのは時期尚早だと考えているが、戦争やロシア産エネルギーの長期輸出停止など深刻なリスクケースは現時点ではまだテールリスクという見解に変わりはない。エネルギー価格はウクライナ情勢が激化した場合に上昇する可能性が高く、コモディティーやエネルギー関連株への資金配分はポートフォリオのリスクヘッジに役立つだろう。 ●全面紛争の回避可能、パニック不要=SYZバンク 緊張が高まった状態は継続するものの、全面的な紛争は回避できるというのがわれわれの中核的なシナリオだ。現在もこうした見方を変えていない。現時点でパニックを起こす理由はない。西側諸国の報道は警戒感を呼び起こさせるものだが、今回の危機の「恐怖」は近いうちにピークを付け、その後は緊張緩和に向かう公算が大きいと考えている。とは言え、全面紛争という最悪のシナリオが現実化する恐れは否定できない。このため現時点でロシア資産の買い入れは控えている。ただ、現在の情勢は、われわれのポートフォリオのポジションを変えるものではない。 |
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●ロシア、現状維持か全面侵攻か ウクライナ情勢の今後 2/23
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は21日、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立を承認し、同地域への派兵を命じた。これを受け、識者の間では、ロシアが同地域を越えた侵攻を準備しているかどうかをめぐり、見解が割れている。 プーチン氏は熱のこもった演説で、ウクライナの独立国家としての権限に疑念を呈し、同国政府の正統性をあざけり、さらには同国は核兵器の保有を目指していると非難。今後起こり得る流血の事態の「全責任」はウクライナ政府が負うことになると強く警告した。以下に、ロシアがウクライナで検討している可能性のある筋書きをまとめた。 ●全面侵攻 ボリス・ジョンソン英首相は、プーチン氏の演説について「全面的な攻撃の口実を作っている」と指摘。北大西洋条約機構(NATO)のイエンス・ストルテンベルグ事務総長も、ロシアがウクライナに対する全面的な攻撃を今も計画していることが「あらゆる面から示されている」と述べた。ロシアはここ数週間で、ウクライナ国境付近に約15万人の部隊を集結させている。プーチン氏がここまで大規模な動きに出たのは、単に親ロ派支配地域を承認することが目的だったわけではないと分析する識者もいる。米シンクタンク、海軍分析センター(CNA)のロシア研究部門トップで、これまでにもロシアの大規模な侵攻を予想してきたマイケル・コフマン氏は、今回の動きについて「政権交代を強いることを目的としたロシアの大規模な軍事作戦の第一歩だ」との見方を示した。 ●現状維持 ロシアは、ウクライナの首都キエフへの侵攻は政治的にも軍事的にもリスクが高すぎると考えるかもしれない。ただ、より限定的ながらも流血を伴う侵攻を選ぶ可能性もある。ウクライナ東部で独立を宣言した親ロ派武装勢力「ドネツク人民共和国(DNR)」と「ルガンスク人民共和国(LNR)」は、ドネツク、ルガンスク両州の全体は支配していないが、領有を主張している。ロシアは武力によって両地域からウクライナ政府を排除しようとする可能性があり、プーチン氏がDNRとLNRの領土をどの範囲まで認めているかがカギとなる。また、南方の港湾都市マリウポリに進軍し、2014年に併合したウクライナ南部クリミア半島への陸路の確保を試みる可能性もある。同半島とロシア本土は現在、橋でしかつながっていない。英ロンドン大学キングスカレッジでロシア政治を研究するサム・グリーン教授は「プーチン氏は情勢の深刻化を回避するため、現行の支配線にとどまり、現状を固定するつもりだ」と予測。「ただし、圧力をかけ続けるため、さらなる進軍の余地も残しておくだろう」と分析した。 |
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●ウクライナ情勢を受けたエネルギー市場安定化への我が国の対応 2/23
2月21日、ロシアが「ドネツク人民共和国」及び「ルハンスク人民共和国」の「独立」を承認する大統領令に署名するとともに、ロシア軍に軍事基地等の建設・使用の権利を与える「友好協力相互支援協定」に署名しました。また、22日、ロシアは、両「共和国」との条約の批准、自国領域外での軍隊の使用に関する連邦院決定など、一連の措置を進めました。 これらは、明らかにウクライナの主権及び領土の一体性を侵害し、国際法に違反する行為であり、決して認められるものではなく、改めて強く非難します。日本政府として、ロシアに対し、外交プロセスによる事態の打開に向けた努力に立ち戻るよう強く求めます。 緊迫化するウクライナ情勢を受けた欧州の厳しいガス供給の事情を踏まえ、我が国は、これまでも基本的価値観を共有する同盟国・同志国との連帯を示す観点から、日本企業が取り扱うLNGのうち余剰分を欧州に振り向けてきました。 今次事態を受けて、原油価格が一層の上昇局面にあります。原油市場の安定化は、世界及び我が国経済の安定化にとって極めて重要です。政府としては、原油市場の安定化のために産油国に対して働きかけるとともに、国際エネルギー機関(IEA)をはじめとする関係国際機関や主要な消費国とも協調して対応します。なお、現時点では、世界の原油供給はウクライナ情勢の緊迫化によっても断絶しておらず、対ロシア経済制裁はエネルギー需給を阻害するものではありません。 我が国は、現在国家備蓄、民間備蓄を合わせ、約240日分の石油備蓄を保有しており、LNGについても、電力企業、ガス企業が2〜3週間の在庫を保有するなど、充分な備蓄を有しており、今回の事態により、国内のエネルギーの安定供給に直ちに大きな支障を来す懸念はないと判断しております。我が国としては、国際的なエネルギー市場安定に向けて、関係国や国際機関とも連携しながら引き続き最大限取り組んでいきます。 |
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●ウクライナ情勢を踏まえた制裁措置等について 2/23
昨22日、ロシアはウクライナの一部であるいわゆる2つの共和国との条約の批准、自国領域外での軍隊の使用に関する連邦院決定など、一連の措置を進めました。これらは明らかにウクライナの主権、そして領土の一体性を侵害し、国際法に違反する行為であり、改めて強く非難いたします。ロシアに対し外交プロセスによる事態の打開に向けた努力に立ち戻るよう強く求めます。先ほど、政府関係部局の幹部から事態の推移や各国の対応に関し報告を受けました。事態は緊迫度を増しており、引き続き重大な懸念を持って注視してまいります また、この問題に国際社会と連携して対処する観点から、我が国として次の制裁措置を採ることといたしました。1つ目は、いわゆる2つの共和国の関係者の査証発給停止及び資産凍結、2つ目はいわゆる2つの共和国との輸出入の禁止措置の導入、3つ目として、ロシア政府による新たなソブリン債の我が国における発行・流通の禁止などであります。今後、これらの措置の詳細を決定し、必要な手続を速やかに進めるよう指示を出したところです。また、今後、事態が悪化する場合には、G7を始めとする国際社会と連携して、更なる措置を速やかに進めるよう取り組んでまいります。そして、ウクライナ在留邦人の安全の確保のためにも全力を尽くしてまいります。避難措置など邦人保護業務を行うため、西部のリヴィウに臨時の連絡事務所を設け、また、隣国において退避のためのチャーター機を手配済みであります。引き続き出来得る限りの手段を講じ、邦人保護に取り組んでまいります。そして、エネルギーの安定供給についても申し上げます。まず、原油市場の安定に向けて、国際的に連携して取り組んでまいります。現在、原油については、国、民間合わせて約240日分の備蓄があり、LNG(液化天然ガス)についても、電力会社、ガス会社において、2、3週間分の在庫を有しています。このため、今回の事態が、エネルギーの安定供給に直ちに大きな支障を来すことはないと認識しております。また、原油価格高騰に対する備えにもしっかり取り組んでまいります。今後、更に原油価格が上昇し続けたとしても、国民生活や企業活動への影響を最小限に抑えることができるように、何が実効的で有効な措置かという観点から、あらゆる選択肢を排除することなく、政府全体でしっかりと検討し、対応してまいります。ウクライナをめぐる事態は緊迫度を増しています。政府としましても、事態の改善に向けて、国際社会と連携して取り組んでいく覚悟であります。 ●経済制裁の時期について まず、我が国の基本的な考え方、制裁の骨格については、今、明らかにしたとおりであります。これをより詳細に詰めていくということであります。手続等が必要になる部分もあるかと思いますので、これは手続が終わり次第発効するということになるんだと思います。ちょっと、詳細は事務的に確認していただければと思います。 ●仮にロシアの軍事的侵攻が認められた場合などの措置について 今後の推移については、予断は許されない、いろいろな可能性があるんだと承知しています。ですから、今後、事態が悪化する場合には、G7を始めとする国際社会と連携して、更なる措置についても速やかに考えていかなければならないと認識しています。いずれにせよ、これ具体的に事態がどう推移するか、これをしっかり確認し、そして米欧ともしっかり意思疎通、情報交換を図りながら、我が国の対応を進めていくというのが基本的なスタンスであります。 ●今後の対応としての輸出規制などの可能性について 具体的に今、我が国として、確認をして、明らかにしているのは先ほど申し上げた部分であります。今後については、事態の推移がどう推移するのか分からないわけですから、更なる措置については、今後の事態の推移、そして各国の動き等もしっかりと確認し、情報交換をした上で、確定していくということになると思います。御指摘の点を踏まえて具体的な点については、今、申し上げることは難しいと思います。 ●原油価格の高騰に対する措置について これも再三申し上げておりますが、あらゆる選択肢を排除せずということでありますので、事態の推移をしっかり見、それに対して何が有効的なのか、これを考えていかなければならないと思います。ですから、今後の事態の推移やそれから価格の動向、こういったものを見た上で、具体的に確定していかなければならないと思います。その際にあらゆる選択肢は排除せずということを申し上げております。 ●ロシアのウクライナに対する侵攻が始まっているという認識かについて これも再三申し上げておりますが、今、ロシアに対する一連の措置、これはウクライナの主権及び領土の一体性を侵害し、国際法に違反するものであるということを申し上げ、決して認められるものではない、そして強く非難する、このように申し上げております。我が国として、この事態に対して、そうした評価の下に態度を示しているということであります。今後の推移については、しっかり注視し、欧米との意思疎通を図りながら適切に対応していきたいと思っております。 |
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●ウクライナ情勢 各国がロシアへの制裁措置発表 反発強める 2/23
ロシアがウクライナ東部の親ロシア派が事実上支配する地域の独立を一方的に承認し軍を送る準備を整えていることに対して、アメリカをはじめとする各国は相次いで制裁措置を発表し反発を強めています。 ロシアはウクライナ東部の親ロシア派が事実上支配する地域の独立を一方的に承認し、「平和維持」の名目で軍の部隊を送る準備を整えています。 これに対してアメリカは22日、バイデン大統領が「ウクライナへの侵攻の始まりだ」と強く非難してロシアの金融機関などに制裁を科すと発表するとともに、ホワイトハウスのサキ報道官が米ロ双方で原則合意していた首脳会談は実施できないという考えを示しました。 またEU=ヨーロッパ連合やイギリス、オーストラリア、それにカナダなども相次いで制裁措置を発表したほか、ドイツはロシア産の天然ガスをドイツに送る新たなパイプライン「ノルドストリーム2」の稼働に向けた手続きを停止する考えを示すなど反発を強めています。 こうした中、ロシアのプーチン大統領は23日、国民向けの動画メッセージのなかで「NATO=北大西洋条約機構などによる軍事活動が危険をもたらしている」と述べ、ロシアによるNATOの不拡大の要求を拒否するアメリカなどへの不満を改めて示しました。 アメリカは外交による解決の余地が残されていることも強調していますが、米ロの首脳会談の実施にはロシアが軍の部隊をウクライナ周辺から撤退させるなど緊張緩和を進めることが必要だと主張していて、事態の打開は依然として見通せない状況が続いています。 ●中国報道官 ロシアへの制裁措置に反対の意向示す ウクライナ情勢をめぐって、アメリカをはじめ各国がロシアへの制裁措置を相次いで発表したことについて、中国外務省の華春瑩報道官は23日の記者会見で「制裁は、問題解決のための根本的で有効な方法ではない。中国は、いかなる不法な一方的制裁にも一貫して反対している」と述べ、中国として制裁措置に反対する意向を示しました。そのうえで「対話と協議によって問題解決を図るために努力すべきだ」と述べ、関係各国に対し、対話による解決を図るよう重ねて主張しました。 ●台湾経済部次長 制裁の可能性「見極めているところ」 台湾の新聞「自由時報」の電子版は「ウクライナ情勢がさらに悪化した場合、台湾がロシアへの半導体の禁輸などを行う可能性がある」と伝えました。これについて台湾経済部の曽文生 次長は台湾の別のメディアから、半導体の輸出規制などでロシアへの制裁に加わる可能性を問われ「見極めているところだ」と答えました。台湾財政部によりますと、去年1年間の台湾からロシアへの半導体の輸出額はアメリカドルで2000万ドルを超えています。 ●プーチン大統領 国民向けに動画メッセージ ロシアのプーチン大統領は23日、軍人をたたえるロシアの祝日にあわせて国民向けに動画のメッセージを出しました。この中でプーチン大統領は、「NATO=北大西洋条約機構などによる軍事活動が危険をもたらしている一方で、すべての国を守る平等な安全保障体制の構築を求めるロシアの声にはこたえていない」と述べ、ロシアによるNATOの不拡大の要求を拒否するアメリカなどへの不満を改めて示しました。そして、国益や国民の安全が最優先だと強調したうえで「世界に類のない兵器を作り出していく」と述べ、極超音速兵器や人工知能を取り込んだ兵器などの開発を進めていくとしました。プーチン大統領は、ウクライナ東部の状況など緊張が高まるウクライナ情勢については直接言及はしなかったものの今回のメッセージの中でロシアの軍事力を誇示し、欧米を強くけん制したものとみられます。 ●専門家 “足並みをそろえた対応が重要に” ロシアの軍事や安全保障に詳しい東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠 専任講師は、ロシアがウクライナ東部の親ロシア派が事実上支配している地域の独立を一方的に承認したことについて「ロシアの意図に関する評価をわれわれは大きく変えなければいけない」と指摘しました。 ウクライナ政府軍と親ロシア派の武装勢力との間の紛争を解決しようと、2014年9月と翌2015年2月に結ばれた停戦合意「ミンスク合意」について、「ロシアにとっては親ロシア派武装勢力を維持したまま再統合し、影響力を行使できる見込みがある有利な内容だった。しかし、今はそれ以上のことをねらっていると考えざるをえない」と述べ、今回の承認はロシアのウクライナへの要求がより強くなったことを示唆しているとしています。 具体的には、ロシアはウクライナに対し、NATOに加盟しないだけでなく、非軍事化も求めていくとみられ、さらに政治・経済的に統合することまで視野に入れるようになっている局面だと分析しています。 そして「実際にどのような行動に出るのか予測しがたいが、ロシア系の住民が危ないから介入しないといけないというロジックになる可能性もまだ十分にある」と述べ、ロシアが目的の達成のため軍事力を行使する懸念があると指摘しました。 一方、外交での解決の可能性については「アメリカが反発することを分かったうえで、あえて外相会談の前のタイミングで承認している。ロシア側が対話する意思があるかは疑問だ。ロシア側に話し合う意思が薄いのであれば、できることは非常に限られてくる」と述べ、選択肢が狭まっているという見方を示しました。 そのうえで「制裁には限界があるが、政治的なメッセージとしては意味があり、ロシアにダメージがないわけではない。軍事的な衝突はロシアのためにはならないと、どこまで西側が一致してみせられるか。日本も、国際秩序や安全保障を守っているという認識でどこまで主体的にやれるのかが注目される」と述べ、足並みをそろえた対応がいっそう重要になると強調しました。 ●日本在住のウクライナ人 都内のロシア大使館近くでデモ 日本で暮らすウクライナ人が23日、都内のロシア大使館の近くでデモを行い、抗議の声を上げました。デモを行ったのは日本で暮らすウクライナ人やその支援者などおよそ30人です。参加した人たちは、都内のロシア大使館の周辺でウクライナの国旗を掲げたり、「プーチンは帰れ」や「戦争反対」などと書かれたプラカードを手にしたりしてウクライナに軍を送らず主権を守るよう求めました。さらにロシア大使館の前まで5人ずつ交代で行進し「ウクライナに平和を」などとシュプレヒコールをあげていました。参加者の1人で、ウクライナ東部ドネツク州出身の女性は「ウクライナ東部では何人も連絡がつかない知り合いがいます。ウクライナを舞台にしてロシアや、アメリカ、NATOなどさまざまな勢力の駆け引きが行われているように思いますが、私たちが犠牲になるのはごめんです」と訴えていました。 |
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●「切り取ってロシアに渡せば…」 日本で過熱する“親ロシア発言” 2/23
ロシアによるウクライナ侵攻は起こるのか。本稿を書いている今もなお、日を追うごとにキナ臭さを増していくが、それに比例して日本の言論空間でも不穏な空気が立ち込めている。一言で言えば、ロシアに批判的な言説に対する親ロシア的言説のカウンターだ。 ●司会者が「他国の領土を切り渡す」という解決法を提案 先日、BSフジでの討論番組に出演した現役議員がウクライナに非がある主張を展開し、司会者に至っては問題の解決方法として、「例えばそこ(ドネツク・ルガンスク地方)を切り取ってロシアに渡す」を提案するという、ロシアに一方的に有利な現状変更を積極的に認めるとしかとれない発言があった。21世紀に「他国の領土を切り渡す」という解決法を公言したことに、SNS上では衝撃を持って受け止められた。 また、朝日新聞デジタルでは記事に社内外の識者がコメントするコメントプラスという機能が存在するが、ウクライナ問題について識者によって見解が割れている。さらには、日本のマスコミが偽情報によりウクライナ危機を煽っているという言説まで登場するメディアもあり、ウクライナから遠く離れたこの日本でも、意図したものかそうでないかは不明だが、情報戦が過熱している。 ●世論を誘導しようとする両極端の報道 ネットを覗いても両極端の世界が広がっている。ある一方は米欧の、ある一方はロシアの報道を取り上げ、双方が互いの主張の根拠は偽情報だと非難しあっている光景を目にする。偽情報によって世論を誘導しようとしているのだと。 筆者としては、ウクライナ周辺にロシアが前例にない大兵力を展開しているのは衛星情報やオープンソースインテリジェンス(OSINT)等から疑いようのない事実であり、それが侵攻か軍事的恫喝による政治的成果を狙っているのは自明であると判断するが、ロシアを擁護する主張は少なくない。 近年はフェイクニュースなど、偽情報についての報道を目にすることが多い。しかし、偽情報による工作活動はずっと以前から行われており、ここ最近で登場したものではない。本稿ではかつて明らかになった日本を舞台にした国際的な偽情報工作を振り返り、現在溢れる偽情報について考える一助としたい。 ●発端となった毎日新聞のスクープ 事が公になったのは、1982年12月2日の毎日新聞朝刊のスクープだった。アメリカに亡命したスタニスラフ・アレクサンドロビッチ・レフチェンコKGB少佐が、ソ連の情報機関KGBによる日本での工作活動を米議会の秘密聴聞会で証言し、その内容が米議会筋からの情報として報じられたのだ。 この報道を皮切りにKGBによる様々な工作が明らかになったが、この「レフチェンコ事件」ではスパイ事件でイメージされがちな重要情報の窃取(それも行われていたが)よりも、偽情報により政治指導者や国民をソ連に都合の良い様に誘導する、アクティブメジャーズ(積極工作)の実態が明らかになったことが注目された。 その代表的なものとしては、1976年1月23日にサンケイ新聞(現・産経新聞)に掲載された『周恩来の遺言』とされるKGBが作成した偽文書がある。ジャーナリストのジョン・バロンによれば、これは当時ソ連と敵対していた中国指導部の正統性を毀損するための工作で、このサンケイ新聞の報道を起点にソ連国営タス通信によって世界中に配信され、中国指導部を動揺させたという。 ●第三国のメディアに偽情報を報道させ、それをソ連メディアが引用 ソ連のメディアが最初に報じてもすぐに偽情報と疑われるが、ソ連が第三国のメディアに偽情報を報道させ、それをソ連メディアが引用という形で世界中に配信する事である程度の信頼性を担保する手法は様々な例がある。 有名なものでは、1980年代に世界的問題となっていたエイズはアメリカが開発した生物兵器が原因とする陰謀論で、これも発端はKGBがインドで設立した新聞社の記事から世界中に拡散したものだった。それから40年近くたった近年でも、この工作に関わった東ドイツ人研究者の著書が、陰謀論を多数出版する日本の出版社から再販されるなど影響を残している。 日本で行われた工作は他にもある。『週刊現代』1979年8月23日号には、「ワシントンのうわさ」として米中央情報局(CIA)が中東でタンカーの襲撃を計画しているという記事が掲載されたが、これはKGBが捏造した偽情報を日本のジャーナリストが伝えたもので、米カーター政権に対する中傷工作だったという。 こうした偽情報はKGB第1総局A局が作成し、工作対象国の新聞記事などに紛れ込ませる形で流布される。ここで役割を担うのがマスコミ内や識者の中にいるエージェントで、KGBは彼らを介して偽情報を広めていくのだ。 ●「エージェント」は「スパイ」とはことなるもの なお、レフチェンコ事件でエージェントとされた人物のWikipedia項目を見ると、「ソ連のスパイ」と書かれていることがある。だが、当のレフチェンコはスパイとエージェントは全くことなるものとして、これらを混同する言説を批判している。レフチェンコはこう述べている。 「スパイというのは通俗語であって、諜報活動にたずさわっている人々をさす、ごく一般的な言葉なわけです。(中略)エージェントというのは、外国政府によってリクルートされて、自国の情報や機密などを相手に漏らしていく人物をさすわけです。同時に、外国政府の望み通りに、自国の政策などに影響を及ぼしていく人物も、エージェントの範疇に入ります。『レフチェンコは証言する』」 「外国政府の望み通りに、自国の政策に影響を及ぼす人物」という定義だと、一昔前の日本に大勢いたアメリカ流の新自由主義的な改革を主張する論者もエージェントに該当するかもしれない。そして、外国政府との直接的な接点が無くても、外国のエージェントたりうるのだ。実際にレフチェンコは「無意識のエージェント」というエージェントの自覚は無いが、エージェントとして使える人物を挙げている。 このエージェント観は、現在のロシアでも見ることができる。2012年のNGO法改正では、外国から資金提供を受けるロシア国内の非政府団体(NGO)を「外国エージェント」とみなして登録し、政府に報告義務を設けるなどの締め付けを強めている。2019年のマスメディア法改正では、エージェントの役割を果たすとされた外国メディアの情報を発信する個人にまで対象範囲を拡げ、報道の自由を脅かすものと国際的批判を受けている。 同様にアメリカにも外国エージェント登録法が存在し、2017年にロシア政府が資金を出している報道機関RTのアメリカ法人、2018年には中国国営CGTNがエージェントとして登録されているが、あくまで法人のみである。 ●レフチェンコの証言に懐疑的だった日本 こうした日本におけるKGBの影響力工作の実態を暴いたレフチェンコであったが、当時この証言について懐疑的な向きが日本では多かった。特に朝日新聞はレフチェンコ証言を否定する特集を組み、その執拗さに「朝日はソ連に対し愛を感じすぎている。愛は人を盲目にする」とレフチェンコを呆れさせている。朝日の名誉のために言えば、レフチェンコ証言で多くの新聞社にエージェントがいることが明らかにされたが、朝日については明らかになってない(テレビ朝日にはいた)。エージェントでなくても、思い入れで外国を利することはあるのだ。 後にKGB文書の管理者であったミトロヒンが持ち出した内部文書や、その他のKGB亡命者の証言はレフチェンコの証言を肯定するもので、さらにエージェントの議員がいるとされた日本社会党の元調査部長も冷戦崩壊後にレフチェンコと対談し、当時の社会党内でレフチェンコ証言が真剣に受け止められていたことを告白しているなど、現在は信憑性のあるものとみなしていいだろう レフチェンコが明らかにしたKGBによる偽情報の拡散は、前述のように各国メディアに影響力のあるエージェントを通じて、新聞などの伝統的メディアに掲載させることで行われていた。しかし、インターネットが普及するとエージェントを介さずとも、工作対象国の市民に対して偽情報を直接届けることが可能になった。 実際、ロシア政府と関係が深いとされるロシア企業、インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)は「偽情報の工場」と呼ばれ、2016年の米大統領選挙でFacebookを舞台に偽情報による選挙介入を仕掛けるなど、エージェントを介さずに大々的な工作活動を実施している。 ●大メディアや識者の発言にも紛れ込む偽情報 しかし、日本ではまだ事情が異なるかもしれない。総務省による「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によれば、日本人が「世の中のできごとや動きについて信頼できる情報を得る」ためのメディアとして、テレビや新聞といった伝統メディアをあげる人は全年代で半数以上を占めており、まだまだ伝統メディアの影響力は強い。当然、そこで解説を行う識者の発言が、世論に影響を与えることは想像に難くない。 前述した朝日新聞デジタルにおけるコメントについて、軍事アナリストである小泉悠東京大学先端科学技術研究センター講師は、Twitter上でロシアの情報戦理論家パナーリンの「コメントが戦略的重要性を持つ」という指摘を引き合いに、「(コメントプラスが)無自覚に権威主義体制を利するセルフ情報戦をやってしまっている感がある」と苦言を呈している。このことは、今もなお識者を介した偽情報の拡散の有効性を示しているのかもしれない。 伝統メディアからインターネットまで、我々が日々接する情報は膨大だ。自分がよく知らないことは、識者の発言が判断材料になることは多い。昨今はネットに蔓延る出所不明の偽情報が問題視されているが、過去の事例を見れば分かるように、大メディアに掲載された情報や、識者とされる人々の発言にも偽情報が紛れ込んでいる可能性があるのは、頭の片隅に留めておくべきだろう。 |
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●首都キエフ攻撃の可能性「極めて高い」 ウクライナ情勢で英外相 2/23
トラス英外相は23日、ロシアがウクライナ全土への侵攻に乗り出し、首都キエフを攻撃する可能性が「極めて高い」との見方を示した。スカイニューズとのインタビューで語った。 トラス氏はロシアがキエフへ進軍するか問われ、「それが彼(プーチン・ロシア大統領)の計画である可能性は極めて高い」と指摘。ロシア軍がウクライナ領内に入ったかどうかについては「状況は不明瞭で、完全な証拠はない」と述べるにとどめた。 |
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●対ロ経済制裁 岸田首相の発言 2/23
ウクライナ東部の一部地域の独立を一方的に承認したロシアへの経済制裁を巡る岸田文雄首相の23日の発言全文は以下の通り。 ●冒頭 2月22日、ロシアはウクライナの一部であるいわゆる2つの共和国との条約の批准、自国領域外での軍隊の使用に関する連邦院決定など一連の措置を進めた。明らかにウクライナの主権、領土の一体性を侵害し国際法に違反する行為で改めて強く非難する。ロシアに外交プロセスによる事態の打開に向けた努力に立ち戻るよう強く求める。 先ほど政府関係部局の幹部から事態の推移や各国の対応に関し報告を受けた。事態は緊迫度を増しており引き続き重大な懸念を持って注視していく。 この問題に国際社会と連携して対処する観点から日本として次の制裁措置をとることとした。1つ目は、いわゆる2つの共和国の関係者の査証(ビザ)発給停止および資産凍結。2つ目は、いわゆる2つの共和国との輸出入の禁止措置の導入。3つ目として、ロシア政府による新たなソブリン債の日本における発行、流通の禁止などだ。 今後これらの措置の詳細を決定し、必要な手続きを速やかに進めるよう指示した。今後事態が悪化する場合には主要7カ国(G7)をはじめとする国際社会と連携してさらなる措置を速やかに進めるよう取り組む。 ウクライナ在留邦人の安全確保のためにも全力を尽くす。避難措置など邦人保護業務を行うため西部のリビウに臨時の連絡事務所を設け、隣国において退避のためのチャーター機を手配済みだ。引き続きできる限りの手段を講じ邦人保護に取り組む。 エネルギーの安定供給についても申し上げる。原油市場の安定に向けて国際的に連携して取り組む。現在、原油は国、民間合わせて約240日分の備蓄があり液化天然ガス(LNG)も電力会社、ガス会社で2、3週間分の在庫を有している。今回の事態がエネルギーの安定供給に直ちに大きな支障を来すことはないと認識している。 原油価格高騰に対する備えにもしっかり取り組む。今後さらに原油価格が上昇し続けたとしても国民生活や企業活動への影響を最小限に抑えることができるように何が実効的で有効な措置かという観点からあらゆる選択肢を排除することなく、政府全体でしっかり検討し対応していく。 ウクライナをめぐる事態は緊迫度を増している。政府としても事態の改善に向けて国際社会と連携して取り組む覚悟だ。 ●質疑 ――経済制裁は具体的にいつごろをメドに発動する予定ですか。 日本の基本的な考え方、制裁の骨格は今明らかにした通りだ。これをより詳細に詰めていく。手続きなどが必要になる部分もあり、手続きが終わり次第、発効することになる。詳細は事務的に確認していただきたい。 ――今後仮にロシアの軍事的侵攻が認められた場合のさらなる措置はどうしますか。 今後の推移については予断は許されない。いろんな可能性があると承知している。今後事態が悪化する場合にはG7をはじめとする国際社会と連携し、さらなる措置も速やかに考えていかなければならないと認識している。具体的に事態がどう推移するか確認し、米欧ともしっかり意思疎通、情報交換を図りながら日本の対応を進めていくというのが基本的なスタンスだ。 ――今後、半導体分野の輸出規制などに踏み込みますか。 具体的に今、日本として確認し明らかにしているのは先ほど申し上げた部分だ。今後については事態がどう推移するかわからない。さらなる措置は今後の事態の推移、各国の動きなども確認し、情報交換した上で確定していく。具体的な点について今申し上げるのは難しい。 ――原油価格の高騰対策についてあらゆる選択肢を排除しないと発言がありましたが、トリガー条項(の凍結解除)やそれに準じた措置を指しますか。 再三申し上げているがあらゆる選択肢を排除しない。事態の推移を見て、それに対して何が有効的なのか考えていかなければならない。今後の事態の推移や価格動向を見た上で具体的に確定していかなければならない。その際に、あらゆる選択肢は排除しない。 ――日本政府はロシアによるウクライナ侵攻が始まったという認識ですか。 これも再三申し上げているが、ロシアに対する一連の措置、これはウクライナの主権および領土の一体性を侵害し、国際法に違反するもので決して認められるものではない。強く非難する。日本としてこの事態に対しそうした評価のもとに態度を示している。今後の推移を注視し、欧米との意思疎通も図りながら適切に対応したい。 |
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●NY株式市場 一時500ドル超の値下がり ウクライナ情勢への懸念 2/24
23日のニューヨーク株式市場はウクライナ情勢への懸念から売り注文が増え、ダウ平均株価は一時500ドルを超える大幅な値下がりとなりました。23日のニューヨーク株式市場は、取り引き開始直後は買い注文が出たもののアメリカ国防総省の高官がロシアによるウクライナへの軍事侵攻がいつ始まってもおかしくないという見方を示すなど緊張が高まっていることを受けて先行きへの懸念が強まり、売り注文が増えました。このためダウ平均株価は一時500ドルを超える大幅な値下がりとなり、終値は前日に比べて464ドル85セント安い、3万3131ドル76セントとことしの最安値となりました。 ダウ平均株価の値下がりは5営業日連続で、値下がりの幅は5日間で1800ドルを超えました。IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数も2.5%の大幅な下落となり、ことしの最安値となりました。 市場関係者は「欧米各国などによるロシアへの制裁の効果に懐疑的な見方も出る中でウクライナの政府機関などの公式サイトがサイバー攻撃を受けたと伝えられたこともあって、ひとまずリスクを避けようと売り注文を出す投資家が多かった。株価の下落が続くかどうかはウクライナ情勢の行方に左右されそうだ」と話しています。 |
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●米国株式市場=大幅続落、ウクライナ情勢巡る懸念強まる 2/24
米国株式市場はウクライナ情勢が一段と緊迫化する中、主要株価指数が大幅続落して取引を終えた。ウクライナ議会は23日、全土に非常事態宣言を発令することを承認した。 米国務省は、ロシアによるウクライナ侵攻が差し迫っている可能性があり、米政府はロシア軍が後退している兆候を確認してないと明らかにした。 西側諸国はロシアによるウクライナ東部への軍部隊派遣を巡り、さらなる制裁を発表。ロシアは、ウクライナ国内の外交施設に勤務する職員を全員退避させ始めた。 主要3指数ではテクノロジー株が中心のナスダック総合が2%超安と下げを主導。情報技術セクターも2.6%安と大きく値を下げ、S&P総合500種を押し下げた。 ウェドブッシュ証券の株式トレーディング部門マネジングディレクター、マイケル・ジェームズ氏は「(ロシアの)プーチン大統領は制裁強化にもかかわらず、態度を変えていない」と指摘。「さらなる攻撃的な行動や、それがコモディティーやインフレにどう影響するかを巡る懸念が高まっている」と述べた。 SoFiの投資戦略責任者、リズ・ヤング氏は「地政学的リスクや当局者発言が投資家に一段の不安を与えている」と述べた。 投資家は、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ抑制に向け積極的な金融引き締めを実施する可能性にも神経をとがらせてきた。 ダウ工業株30種は調整局面入り寸前の水準まで下落した。ナスダックは年初来で16%超下落。S&Pは前日、1月3日に付けた終値での最高値から10%超下落し、調整局面入りが確認された。 ただ、ロイター調査ではS&Pは2022年末までに依然として上昇すると予想されている。 個別銘柄ではホームセンター大手ロウズが小幅高。通期の売上高と利益見通しを引き上げた。 ニューヨーク証券取引所では、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を2.92対1の比率で上回った。ナスダックでも3.14対1で値下がり銘柄数が多かった。 米取引所の合算出来高は119億8000万株。直近20営業日の平均は約123億株だった。 |
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●ウクライナ情勢緊迫で高騰の原油相場、高止まりはいつまで続くか 2/24
●オミクロン株への警戒感が後退し 2021年12月2日以降反騰 原油相場は一段高となっている。昨年12月2日に米国産のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で1バレルあたり62.43ドル、欧州北海産のブレントで65.72ドルの安値を付けた後、上昇傾向が続いた。 すでにオミクロン株の検出が報告される前の昨年11月の高値を上回り、今年2月14日にはWTIが一時95.82ドル、ブレントが96.78ドルの高値を付けた。 相場の変動材料を振り返ると、12月2日には、OPEC(石油輸出国機構)と非OPEC産油国とで構成する「OPECプラス」の閣僚級会合で1月の産油量について従来の増産ペース通りに日量40万バレル増産する決定をした。 米国主導の備蓄放出やオミクロン株の出現を受けて増産を止めるとの見方もあったため、増産維持を受けて一時下落幅が大きくなった。しかし、声明で「感染の動向を注視し、必要ならば生産量を調整する」との柔軟姿勢を示したことなどから、結局、相場は反発した。 その後、オミクロン株の症例は軽症が多いとの報告が相次ぎ、エネルギー需要への打撃は小さいとの見方につながって、6日と7日にWTIは4.9%と3.7%、ブレントは4.6%と3.2%の大幅上昇を記録した。8日には米製薬大手ファイザーがワクチンを3回接種することでオミクロン株への高い予防効果が期待できると発表した。 しかし、英国などで新型コロナ関連の規制が強化され、オミクロン株による景気への悪影響が懸念された。9日には、格付け機関のフィッチ・レーティングスが中国の不動産開発大手の恒大集団を「一部債務不履行」と認定し、中国景気の減速不安につながった。 20日には、前日からオランダがロックダウン(都市封鎖)に踏み切るなど石油需要への悪影響拡大が想定された。また、中国人民銀行が利下げを発表すると、かえって中国景気の弱さが意識され、この日、WTIは3.7%安、ブレントは2.7%安だった。 もっとも、翌21日には、前日に米バイオ医薬品企業モデルナがワクチンの有効性を示す発表を行っていたことや前日の下落の反動から、WTIが4.2%高、ブレントが3.4%高と上昇幅が大きくなった。その後も、米当局が新型コロナ経口治療薬の緊急使用を許可したことや、引き続き軽症化傾向が確認されたことから、オミクロン株への警戒感が後退した。 ●年明け以降需給引き締まり予想と ウクライナ情勢緊迫化で上昇続く 1月4日のOPECプラスの閣僚級会合では、2月も日量40万バレルの増産を行う決定がなされた。市場参加者は産油国が需要の先行きを楽観していると好感し、相場は上昇した。 11日は、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が米上院での公聴会でさほどタカ派姿勢を示さなかったことや、リビアの原油輸出ターミナルでの障害などが支援材料だった。WTIは3.8%高、ブレント3.5%高だった。 14日は、ウクライナ情勢の緊迫化から相場が上昇した。米政府は、ロシアがウクライナ侵攻の口実を作る「偽装工作」を準備しているとの情報があると表明した。17日にはUAE(アラブ首長国連邦)でイエメンの武装組織フーシ派によるドローン攻撃があり、中東情勢の悪化も不安視された。19〜20日にかけて、WTIとブレントは昨年11月の高値を上回った。 24日には、前日に米国務省が在ウクライナ大使館の職員の家族に退避命令を出したことや、この日に米国防総省が欧州派遣に備えて兵士約8500人を派遣待機としたことなどウクライナ情勢の緊迫化が投資家心理を冷やした。25〜26日のFOMC(米連邦公開市場委員会)を控えて今後の金融引き締めへの警戒感もあって米株価が急落し、原油も売られた。 しかし、25日は反発した。ロシア産エネルギーの欧州向け供給が停止する可能性などが意識された。また、中東では前日にフーシ派がUAEの米軍基地にミサイル攻撃を行った。月末にかけて相場は上昇傾向となった。 2月2日には、OPECプラスの閣僚級会合が開催され、3月も日量40万バレル増産するという原油生産方針が維持された。小幅増産にとどまったことで、需給引き締まり観測から相場は上昇した。 一方、4日に米政権がイランの民間原子力事業に関連した経済制裁の一部免除を復活させると表明し、8日から再開される核合意再建交渉が進展するとの期待につながった。イラン産原油の供給増加の可能性が意識され、7〜8日の相場は下落した。 しかし、11日には、サリバン米大統領補佐官が記者会見を開き、ロシアによる侵攻は「いつ始まってもおかしくない」として、ウクライナ在住米国人に48時間以内の退避を勧告した。ロシア産エネルギーの供給懸念から、WTIは3.6%高、ブレントは3.3%高となった。 14日は、ウクライナのゼレンスキー大統領が「ロシアが16日にも侵攻するとの情報を得ている。我々はこの日を連帯の日にする」と呼びかける状況を受けて、原油相場はさらに上昇した。一時、WTI、ブレントともに90ドル台後半と2014年9月以来の高値を付けた。 一方、ロシアのラブロフ外相が欧州の安全保障対話の継続をプーチン大統領に進言したと伝わり、原油が売られる場面もあった。 15日は、ロシア国防省が軍部隊の一部がウクライナ国境近くでの軍事演習を終えて基地まで撤収していると説明したことを受けて、外交的解決への期待が高まった。WTIは3.6%安、ブレントは3.3%安と下落幅が大きくなった。 16日は反発した。前日はウクライナ情勢の緊張緩和期待が先行したが、NATO(北大西洋条約機構)のストルテンベルグ事務総長が「ロシアは軍の増強を続けている」と述べ、バイデン米大統領も「ロシア軍によるウクライナ侵攻は依然あり得る」との見方を示した。 しかし、その後、米国とイランの当局者が核合意再建に向けて大きく前進したと発表したことを受けて、イラン産原油の供給が増加する可能性が意識され、17日の相場は下落した。 ●需要と供給の緩やかな増加の中 原油価格は高止まり ドル建ての商品価格を抑制するはずのドル高の中でも原油相場が上昇した背景には、世界景気の回復を受けた石油需要の増加やOPECプラスの増産加速に慎重な姿勢で需給が引き締まったことに加えて、インフレに強い資産と目されたことやウクライナ情勢など地政学リスクへの警戒感もあった。 先行きについて、需要面を見ると、北半球の冬場の石油需要が一服して、需給が緩みやすい局面を迎えつつある。夏場にかけては、ガソリンを中心に需要増加観測が強まりやすくなるとみられるが、コロナ禍で落ち込んだ石油需要の回復は一巡しつつあり、需要増加ペースは鈍化すると考えられる。 供給面では、OPECプラスによる緩やかな増産が継続すると見込まれる。もっとも、供給力不足に陥っている産油国も多く、実際には毎月日量40万バレルの増産はできないとの見方もある。脱炭素化の逆風の中、米シェールオイルの増産ペースも緩やかとみられる。 原油の需要と供給がともに緩やかに増加する中、原油価格は基本的には高止まりが予想される。ウクライナ情勢の緊迫化が一服し、イラン核合意の再建がなされれば、FRBのタカ派化もあって相場上昇はいったん落ち着くだろうが、低水準の原油在庫など需給のタイトな状況は大きく変わらないと思われる。 |
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●ロンドン外為23日 ユーロ、対ドルで下落 ウクライナ情勢を警戒 2/24
23日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=1.1320〜30ドルと、前日の同時点に比べ0.0010ドルのユーロ安・ドル高で推移している。ウクライナが非常事態宣言を発令する方針を決めるなど、ウクライナ情勢を巡る緊張感が続いている。ロシアがウクライナに全面侵攻するとの警戒感は強く、地政学リスクの高まりがユーロ売り・ドル買いを促した。 円は対ユーロで上昇し、英国時間16時時点は1ユーロ=130円20〜30銭と、前日の同時点に比べ20銭の円高・ユーロ安で推移している。米欧が相次いでロシアに対する経済制裁の発動を打ち出すなど、ロシアと欧米諸国との対立関係が深まるなか、ロシアと地理的にも経済的にも近いユーロを売る動きが対円でも優勢だった。 英ポンドは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.3550〜60ドルと、前日の同時点に比べ0.0040ドルのポンド安・ドル高で推移している。23日にイングランド銀行(英中央銀行)のベイリー総裁が英議会の財務委員会に出席し、量的金融緩和で購入した資産の売却について「政策金利が1%に達した段階で検討を始めるが、再投資停止と同じようなある意味自動的なプロセスではない」、「金融政策への影響が最も少ない時期に実施したい」などと述べ、市場環境によっては政策金利が1%になっても資産売却を見送る可能性があることを示唆した。英中銀が、市場が想定するほど積極的に金融引き締めを進めるつもりはないとの見方が広がり、ポンドに売りが出た。 |
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●シカゴ市場の小麦先物、2012年以来の高値−ウクライナ情勢で供給不安 2/24
23日のシカゴ市場で小麦先物相場が上昇、約9年ぶりの高値を付けた。黒海地域で供給が混乱する可能性への懸念が背景。主食の価格を世界的にいっそう押し上げそうだ。 ウクライナとロシアはともに穀物の輸出大国で、両国の緊張激化は小麦輸出に影響が及ぶとの不安を高めている。悪天候と旺盛な需要ですでに穀物在庫が減っている中で、何らかの制限があれば重要な供給源が脅かされかねない。 小麦先物は2.8%高の1ブッシェル=8.7675ドルとなり、2012年以来の高値に上昇した。 キエフを拠点とするコンサルティング会社ウクルアグロコンサルトによると、ウクライナとロシアの主要な穀物輸出拠点である黒海とアゾフ海からの船舶運航に今のところ乱れは生じていない。 |
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●今日の株式見通し=続落、休日中のウクライナ情勢の緊迫化を受け 2/24
きょうの東京株式市場で日経平均株価は、続落が想定されている。日本の休日中にウクライナ情勢が一段と緊迫化したことを受け、幅広い業種でリスク回避の売りが先行するとみられている。休日明けの東京株式市場は、引き続きウクライナ関連の報道に左右される展開となる可能性が高く、情勢次第では日経平均は昨年来安値(2万6044円52銭=2022年1月27日)に接近すると予想されている。 日経平均の予想レンジは2万6000円─2万6500円。 23日の米国株式市場はウクライナ情勢が一段と緊迫化する中、主要3株価指数が大幅に続落した。ウクライナ議会は23日、全土に非常事態宣言を発令することを承認した。 米国務省は、ロシアによるウクライナ侵攻が差し迫っている可能性があり、米政府はロシア軍が後退している兆候を確認していないと明らかにした。 現在のドル/円は114.92円付近と、22日午後3時時点の114.68円から円安/ドル高。シカゴの日経平均先物3月限(円建て)清算値は2万6330円と22日の終値を120円ほど下回っている。 バイデン大統領は22日、ロシアがウクライナ東部の親ロシア地域の独立を承認し軍派遣を命じたことについて「ウクライナ侵攻の始まり」とし、ロシアに対する経済制裁の「第1弾」を発動すると発表した。ウクライナ情勢は日本の休日中に一段と緊迫化し、米株は連日安となっている。 市場では、ウクライナ情勢の関連報道に左右される相場に変わりはないものの、「割安感も意識され始め、中長期資金の流入が一部でみられる」(国内証券)との声が聞かれる。個人投資家との売りで綱引き状態となり、もみあう可能性が高いという。 主なスケジュールでは、国内で1月の百貨店売上高が公表されるほか、BeeXがマザーズ市場に新規上場する。米国では新規失業保険申請件数(労働省)のほか、ダイムラー(メルセデス・ベンツ)、バーレ、モデルナの企業決算を控えている。 |
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●ウクライナに住む日本人「悩みながら生活」 事態の長期化に不安も 2/24
ウクライナ情勢が緊迫の一途をたどるなか、首都キエフの街は、普段通りの生活が続いているように見える。現地に滞在する日本人は、今の状況をどう感じているのか。どのような事情があって、日本から約8千キロ離れたウクライナにとどまっているのか。キエフに暮らす2人の日本人に聞いた。 大阪府枚方市出身の寺島朝海(あさみ)さん(21)は、昨春から地元の英字メディアで記者として働いている。10歳のとき、日系企業に勤める父親の赴任に付き添ってウクライナに来た。米国に留学したこともあるが、ほとんどの時間をキエフで過ごした。 寺島さんが市民生活の変化を感じたのは、米国が在ウクライナ大使館職員の家族に国外退避を命じ、米国人に退避を促した1月下旬だった。2月中旬、米国民に対して48時間以内の国外退去が呼びかけられると、さらに緊張が高まったという。 このとき、市民には「では ・・・ |
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●米国人の過半、ウクライナ情勢関与に消極的 世論調査 2/24
ウクライナ情勢を巡る米国の関与に、米国人が消極的であることが分かった。AP通信などが実施した世論調査によると、ロシアとウクライナを巡る情勢について、米国人の過半数は自国が「比較的小さな役割」を果たすべきだとの見方を示した。 世論調査は2月18〜21日に、AP通信と米シカゴ大の世論調査センターが実施した。米国人の成人を対象に「ロシアとウクライナを巡る情勢について、米国はどの程度の役割を果たすべきか」を聞いた。これに対して「比較的小さな役割」と答えたのが52%、「役割を果たすべきでない」が20%だった。一方、「比較的大きな役割」と答えたのは26%だった。 バイデン米大統領は22日、ロシアがウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立を承認し、ロシア軍の派兵を決めたことについて「侵攻の始まりだ」と断定。米欧日はロシアの銀行の取引制限や政権幹部らの個人資産の凍結などを決めた。 |
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●アメリカ “ロシア軍大規模侵攻 いつ始まってもおかしくない” 2/24
緊張が高まるウクライナ情勢をめぐり、アメリカ国防総省の高官はウクライナの国境周辺に集結するロシア軍の部隊について「大規模な侵攻を行うための準備が完全にできている」と述べ、大規模な軍事侵攻がいつ始まってもおかしくないという見方を示し強い警戒感を示しました。アメリカ国防総省の高官は23日、記者団に対し、ウクライナを取り囲むように集結しているロシア軍の部隊について「最大限の準備ができており部隊のおよそ80%がいつでも出動できる準備を整えた」と指摘しました。そのうえで「われわれの評価ではプーチン大統領は大規模な侵攻を行うための準備が完全にできており、それは可能性の高い選択肢だ」と述べて、大規模な軍事侵攻がいつ始まってもおかしくないという見方を示し強い警戒感を示しました。バイデン政権はこれまでも、ロシア軍がウクライナの首都キエフを標的にする可能性があるという認識を示しています。 ●EU 緊急の首脳会議開催へ ロシアがウクライナ東部で親ロシア派が事実上支配する地域の独立を一方的に承認し軍の部隊を送る構えを見せていることを受けて、EU=ヨーロッパ連合は24日にベルギーのブリュッセルで緊急の首脳会議を開くことになりました。会議の開催を呼びかける書面でミシェル大統領は「ロシアの行為は国際法に違反しウクライナの領土の一体性と主権を侵害している。さらにヨーロッパの安全保障の秩序をも脅かしている」と強調し、会議ではロシアへの対応やウクライナへの支援について協議するとしています。 ●ウクライナ政府 全土に非常事態宣言 ウクライナ政府は24日、ロシアによる軍事的な脅威が高まっているとして全土を対象に非常事態宣言を発令しました。ウクライナ政府は23日、ゼレンスキー大統領などが出席して国家安全保障・国防会議を開いて、すでに非常事態宣言を出している東部の2つの州だけでなく全土を対象に非常事態宣言を出すことを決めたもので、その日のうちに議会で承認されました。 非常事態宣言の期間は24日から30日間で、当局が外出禁止や移動の制限、集会の制限などの措置をとることが可能となり、国内の平穏を保ち、経済を機能させるためだとしています。 またウクライナ軍は23日に声明を出して、18歳から60歳の市民を対象に予備役の招集を始めたと発表しました。任務に当たるのは最長で1年だとしていて、ウクライナ政府は軍事侵攻への備えを一段と強化しています。 ●ウクライナ政府機関サイトにサイバー攻撃 ウクライナの情報セキュリティー当局は23日、複数の政府機関の公式サイトがサイバー攻撃を受けたとSNSに投稿しました。それによりますと、サイバー攻撃を受けたのはウクライナの議会や外務省などの公式サイトで、攻撃は大量のデータを送りつけることでシステムをダウンさせる「DDoS攻撃」と呼ばれるものだということです。ウクライナでは今月16日にも国防省などの公式サイトがサイバー攻撃を受けていて、これについてアメリカのホワイトハウスのサイバーセキュリティーの担当者は「ロシアが関与しているとみている」と述べ、警戒感を示していました。 ●国連 各国がロシアを非難 国連総会では23日、各国の代表が演説を行いました。はじめにウクライナのクレバ外相が演説し、ロシアがウクライナ東部の親ロシア派が事実上支配する地域に「平和維持」の名目で軍の部隊を送る構えを見せていることについて「ウクライナは誰かを脅したり攻撃したりしたことはない。ロシアによるウクライナ批判はばかげている」と述べ、強く非難しました。そのうえでクレバ外相は「私たちはいま世界史の中で重要な局面にある。国連と国際社会による迅速で断固とした行動、新しいタイプの行動が必要だ」と述べ、外交を通じた平和的な解決に向けて国際社会の一致した行動を呼びかけました。クレバ外相が演説を終えると、総会議場の各国代表団から大きな拍手が沸き起こりました。このあと日本の石兼国連大使を含め各国の代表が演説を行い、ロシアの行動は国連加盟国の主権を侵害しているなどとして非難する声明が相次ぎました。これに対してロシアのネベンジャ国連大使は、ウクライナ東部ではウクライナ政府軍の砲撃などで多くの市民が犠牲になっていると改めて主張し「ウクライナによる軍事的な冒険を防ぐことに各国は集中すべきだ」などと述べ、強く反論しました。 ●ロシア・トルコ大統領が電話会談 ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領が23日、電話会談し、両国の大統領府によりますと、エルドアン大統領は「ウクライナの主権と領土保全に反する措置は受け入れられない」として、ウクライナ東部をめぐるロシアによる一方的な独立承認に反対する立場を強調したということです。これに対してプーチン大統領は「客観的に必要な決定だった」と正当化したうえで、ロシアの安全保障上の懸念や要求がないがしろにされているとして、アメリカとトルコも加盟するNATO=北大西洋条約機構への失望を改めて示したということです。トルコはロシアとウクライナの仲介に意欲を示していて、今回の電話会談で両首脳は引き続き対話を続けていくことでは一致したということです。 |
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●プーチン氏、トルコ大統領とウクライナ情勢巡り電話協議 2/24
ロシアのプーチン大統領は23日、ウクライナ情勢を巡ってトルコのエルドアン大統領と電話協議した。エルドアン氏はロシアによるウクライナ東部の親ロ派地域の独立承認を支持しないと伝えたうえ、緊張緩和のための仲介役になる意思を伝えた。両首脳は今後も意見交換を続けることで一致した。 トルコ大統領府によると、エルドアン氏はプーチン氏に早期のトルコ訪問を促した。北大西洋条約機構(NATO)の一員として、機構の中で「建設的な姿勢」を維持する考えも述べた。 一方、ロシア側によると、プーチン氏は、ウクライナが停戦と和平を定めたミンスク合意を履行していないなどとして、親ロ派地域の独立承認が必要だったと強調した。ロシアの欧州安全保障に関する提案を無視したとして、米国とNATOの反応に失望感を示した。 トルコは友好国であるウクライナの領土の一体性を支持する立場だが、エネルギーや経済、安全保障でロシアへの依存度は高く、対ロ関係も重視している。トルコメディアによると、エルドアン氏はプーチン氏との会談に先立ち、記者団に対して「どちら(の国)も捨てることはできない」と述べた。 |
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●「歴史は繰り返す」ウクライナ情勢 2/24
ウクライナへの武力侵攻をチラつかせるロシアに対して、西側諸国は一致団結して経済制裁をカマさんとイカンときにや、何が「経済協力」や! ワシと年齢かわらんのに、もうボケたか? 首相に外相! 相手は、世界一広大な領土を誇りながら、北方領土を不法に侵略し、70年以上も不法に占領を続けているばかりか、それをネタにしてわが国からゼニをむしりとろうとしよるのである。 こないだの北京冬季五輪でも、国威発揚のためなら15歳の少女にまでドーピングやらせた可能性が高い国や。それを率いるのは政敵やジャーナリストまで暗殺・投獄しかねん諜報機関上がりの大統領なんやで。 「歴史は繰り返す」とは、よう言うたもんや。現在の世界情勢は約80年前の先の大戦前夜とそっくりやないか。 1938年のミュンヘン会談で、ナチスドイツは、チェコスロバキア(当時)のズデーテン地方にはドイツ系住民が多く、迫害を受けていることを理由に同地方を「ドイツに帰属させよ」と要求。英仏などはそれ以上の領土拡張を求めんことを条件にこのムチャな要求をのんだのである。 ズデーテンをクリミアなどと入れ替えたら、今のウクライナ情勢そのままやんけ。 ミュンヘン会談が、どんな事態を生んだか…賢明なる読者の皆様(さま)には説明不要やろうけど、ヒトラーをつけあがらせ、結局、世界大戦を誘発させた当時のチェンバレン英首相は、「愚相」として、歴史にその名をとどめたやんけ。世界は「21世紀のチェンバレン」を出すつもりなんか? さらに「歴史は繰り返す」可能性があるで。1939年、不可侵条約を結んだナチスドイツとソ連(当時)は、両方からポーランドへ侵攻して分割占領。ソ連をロシア、ドイツを中国に置き換えたら、ポーランドになるんは日本やろ。13世紀の元寇の歴史が繰り返されるならば、その先鋒(せんぽう)を務めるのは朝鮮民族か? 今度は石火矢(いしびや)やのうて、核ミサイルが降ってくるで。 人類は歴史に学び、過去の誤りを正し、明るい未来を築くてか? そんなん信じとるんは日本人だけや! |
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●ウクライナ情勢 国連安全保障理事会が緊急会合開催 2/24
ウクライナ情勢をめぐって国連の安全保障理事会で緊急会合が開かれ、グテーレス事務総長のほか、多くの理事国が外交を通じた平和的な解決を改めて求めましたが、ロシアの国連大使は「この会合のさなかにプーチン大統領が特別な軍事作戦を決定した」と明らかにし、鋭く対立したまま終了しました。 国連安保理は23日夜、日本時間の24日昼前からウクライナ情勢をめぐって対応を協議する緊急会合を開きました。 会合の冒頭、グテーレス事務総長が発言し、ロシアがウクライナ東部に「平和維持」の名目で軍の部隊を送る構えを見せていたことについて「本当に作戦が準備されているなら、プーチン大統領に軍隊を止めるよう心の底から言いたい」と述べ、外交を通じた平和的な解決を改めて訴えました。 そして、アメリカなど多くの理事国がロシアに自制するよう強く求めました。 これに対して、ロシアのネベンジャ国連大使は「この会合のさなかに、プーチン大統領はウクライナ東部での特別な軍事作戦を決定した」と明らかにし、ウクライナ東部の住民を保護するためだと主張しました。 この発言を受けて、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は「重大な緊急事態で安保理の行動が必要だ。あす、われわれは決議を議論するだろう」と述べて、ロシアを非難する決議案を安保理で協議する考えを表明し、会合は鋭く対立したまま終了しました。 国連安全保障理事会の緊急会合の後、国連のグテーレス事務総長は記者団に対し、会合のさなかにロシアのプーチン大統領が特別な軍事作戦を実施すると明らかにしたことについて「事務総長としての在任中で最も悲しい瞬間だ」と述べました。 そのうえで、グテーレス事務総長は「プーチン大統領は、軍の部隊をロシアに戻すべきだ。この紛争を今すぐ止めなければならない」と強く呼びかけました。 |
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●日本駐在の10か国余の大使 ウクライナ支持訴え ロシアを非難 2/24
ウクライナ情勢をめぐって、日本に駐在する10か国余りの大使などが24日、都内に集まり、ロシアがウクライナの主権を侵害する行動を続けているなどとして、ウクライナへの支持を訴えました。 これは、2008年にロシアによる軍事侵攻を受けたジョージアの在日大使館が、日本に駐在する各国の大使に呼びかけたものです。 24日は呼びかけに応じた13か国の大使や大使館関係者が都内に集まり、ロシアがウクライナの主権を侵害する行動を続けているなどとしてロシアを非難しました。 そのうえで、参加者はウクライナの国旗が印刷された紙を持って、ウクライナへの支持を訴えました。 参加したウクライナのセルギー・コルスンスキー大使は「ウクライナの人たちにも、多くの国が私たちを支持していることを知ってほしい」と話していました。 呼びかけを行ったジョージアのティムラズ・レジャバ大使は「私たちも同じようなことを2008年に経験している。領土や主権を脅かしてはいけない。ウクライナを支持するとともに、平和が戻ることを願う」と話していました。 |
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●ウクライナ情勢の緊迫化、間接的にマレーシアにも影響しうると識者指摘 2/24
ウクライナ情勢の緊迫化を受け、マレーシアでも間接的影響を懸念する見方が広がる。マレーシア外務省によれば、在ウクライナ大使館員とその帯同家族9人を含む20人のマレーシア人が在住者として登録されている(「スター」2月14日)。同省は、そのほかの者についても安全を確保し政府からの支援を提供すべく、在ウクライナ大使館へのコンタクトと居所の登録を強く促している(注)。 2021年の貿易統計によれば、マレーシアの貿易総額に占めるロシアの比率は0.4%、ウクライナは0.1%と、いずれも主要な貿易相手国ではない。しかし、地理的に離れていても、状況が悪化すれば東南アジア全体への影響は免れないとの見解がある。その理由として、マラヤ大学で国際関係を専門とするロイ・アンソニー・ロジャース博士は「ロシア・ウクライナ間の緊張の高まりは原油生産や価格に直結する」ためだと指摘する。資源価格の高騰は、東南アジアの経済回復を妨げることが懸念されるほか、西側諸国による制裁が、(アジアも含め)ロシアの貿易相手国のマインドにも影響する可能性がある。一方で、マレーシアの立場については「ロシア、米国、中国など大国に対しては常に非同盟策を維持してきた。今回も同様だ」と分析する(「スター」2月20日)。 ASEANにおける公共問題コンサルティングを担うKRAグループのキース・レオン調査部長も、グローバル化が進展した時代において、今回の紛争はASEAN含め他地域に広範に影響し、特に新型コロナウイルス感染からの回復に大きく水を差すものだと指摘する。対ロシア制裁による石油・ガス価格の上昇も「(同様に資源国である)マレーシアに短期的には裨益(ひえき)するかもしれないが、長期的にはネガティブなインパクトの方が大きい」と強調した。 (注)参考情報として、2014年にロシア・ウクライナ間の危機が顕在化した際、同年7月にマレーシア航空MH17便がウクライナ上空でロシア製ミサイルに撃墜される事件があった。 |
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●台湾、ウクライナ情勢でロシア主張の拒否を歓迎 中国意識し 2/24
台湾総統府は24日までに、ウクライナ情勢に関連し多くの駐国連大使がロシアによるウクライナ領土への要求を拒む立場を示したことに「勇気づけられる」とし、「世界が同様に台湾に対する中国の要求を拒む日を期待する」との見解を表明した。 総統府の報道官がツイッター上の自らの公式アカウントで述べた。 台湾外交部(外務省)はこれより前に、ロシアが親ロシア派武装勢力が拠点を築くウクライナ東部地域に平和維持軍の名目で派兵を発表したことを非難し、強い遺憾の意を示していた。 一方、中国外務省は22日、ウクライナ情勢と台湾を対比することに反論。「一つの中国」原則に言及しながら、「世界に中国は一つしかなく、台湾は奪うことの出来ない中国領土の一部であることは明白な歴史的かつ合法的な事実である」と主張した。 |
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●トルコ経済界もウクライナ情勢を懸念 2/24
トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は2月22日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」(いずれも自称)の独立を承認したことに対して、「ロシアの決定は容認しがたい」との見解を表明した。「ウクライナでの戦争は、黒海地域全体の不安定化につながるもので、黒海地域に属する国としてわれわれは必要な対策を講じる」と述べ、両国に国際的なルールに従うよう呼びかけた。 ウクライナ情勢が緊迫する中、トルコの経済界では、国内経済への悪影響を懸念する声が出始めている。貿易において、穀類はロシアとウクライナからの輸入がトルコ全体の63.9%(2020年)を占めており、鉄鋼も24.8%と、その依存度は極めて高い。また、天然ガスは輸入全体の約3割をロシアに依存しており、一連の資源価格の大幅上昇は、すでに50%近い高水準にあるトルコのインフレ率(2022年2月16日記事参照)に追い打ちをかけると懸念されている。 また、両国では、トルコの建設コントラクターが多岐にわたるインフラプロジェクトに参入している。近年のウクライナにおける案件だけをみても、ドウシュ建設が橋、オヌル建設が空港改修、リマク建設が地下鉄建設の案件を落札している。 生産投資においては、トルコのビール醸造最大手のアナドル・エフェスが、ベルギーに拠点を置くアンハイザー・ブッシュ・インベブとの合弁企業(ABインベブ・エフェス)で、両国へ進出・生産(ロシアに11、ウクライナに3の醸造所)している。また、ガラス関連生産のシシェジャムも、両国(ロシアに5、ウクライナに1の工場)で生産を行っている。このように、トルコ企業の両国への投資には共通するセクターも多い。 加えて、地域の不安定化は、トルコからの物流にも悪影響をもたらすとみられている。国際輸送ロジスティック・サービス協会(UTİKAD)の推計によると、40〜50%のコスト増につながる可能性があるという。 同様に、トルコにとって重要な外貨収入源である観光部門でも、両国からの観光客数は合計で23%(2021年)を占めるとされる。2015年に起きたシリアでのトルコ軍によるロシア戦闘機撃墜事件で、両国関係が悪化した際、ロシアからの観光客が途絶え、トルコの経常収支悪化につながったことは記憶に新しい。既に両国の状況悪化は、トルコの観光部門に対して100億ドル相当の損失につながるとの試算もある。 トルコ政府はこういった事態を避けるため、NATOの枠内にとどまらず、独自のスタンスで両国の仲介を試みている。他方でトルコとしては、ロシア、ウクライナ双方との友好関係を維持しているものの、ウクライナの主権および領土一体性への支持、ウクライナへのドローン輸出や生産進出計画などではロシアと相いれない面もあり、微妙な状況だ。 |
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●「侵攻の始まりだ」ウクライナではロシアに備え“徴兵”も…事態打開は 2/24
ウクライナではロシアによる侵攻に備え、近く「非常事態宣言」が発令される見通しで、軍は予備役の徴兵を始めました。アメリカはロシア軍の派兵指示を受け、「これはウクライナ侵攻の始まりだ」として米露外相会談の中止を表明。事態の打開は…。 23日、東京・港区にあるロシア大使館周辺では、ウクライナに家族がいる人らがロシアに抗議の声をあげました。 家族がウクライナにいるデモ参加者「友達と家族が向こうにいるので、ここでこれだけ(抗議活動)ができることなので」 願いは、ロシアがウクライナに侵攻しないこと。別のデモ参加者は「日本の政府と日本のみなさん、協力お願いします」と訴えていました。 そのウクライナでは22日、東部・ルガンスク州にある火力発電所から黒煙が上がる様子が捉えられました。ウクライナメディアは「親ロシア派による攻撃だ」と伝えています。 その近くには、親ロシア派が実効支配する地域があります。その地域をロシアが“独立国家として承認”しました。その結果、ウクライナのルガンスク州とドネツク州の中に、それぞれロシアが承認した“共和国”が一方的に生まれる事態になっています。 もうひとつのドネツク州の一部をめぐっても、動きがありました。ウクライナとの国境に近いロシアの港町、タガンログには「ドネツク人民共和国」から避難してきたという人たちがいました。 「ドネツク人民共和国」から避難「『ドネツク人民共和国』はロシアに助けられて、生活はよくなると思います」 ロシアが独立を認めたことを歓迎しながらも、軍事衝突を恐れてドネツクを脱出する動きが起きています。 ウクライナでは近く、「非常事態宣言」が発令される見通しです。 ウクライナ ゼレンスキー大統領「ロシアは軍に国外の地域に出ることを許可しました。我々には犯罪にしか思えません。いろいろな国からの制裁を(ロシアに対して)もっと強くしてもらいたい」 ウクライナ軍は大統領令にのっとり、18歳から60歳までの予備役の徴兵を始めました。また、市民の銃携帯の許可に向け、議会での手続きが進められています。ロシアによる侵攻に備える動きが進んでいます。 アメリカのバイデン大統領はロシア軍の派兵指示を受け、「これはウクライナ侵攻の始まりだ」と発言しました。ロシアが侵攻しないことを条件に外相会談を開き、事態の打開を図りたい考えでしたが、ブリンケン国務長官は「侵攻は始まっているとみている。このタイミングでの会談には意味がない」とし、会談の中止を表明しました。すでにロシア側に書簡を送って伝えたとしています。 一方、ロシアでは、23日は「祖国防衛の日」と呼ばれる祝日でした。その祝日に、プーチン大統領は次のように国民に語りかけました。 ロシア プーチン大統領「私たちの国は、常に直接的かつ正直な対話を受け入れています。いくら難しい問題でも、外交的解決策を探す努力をしたい。しかし繰り返しますが、ロシアの利益と私たちの市民の安全がなによりです」 ウクライナに明確に言及しなかったものの、親ロシア派地域への派兵を正当化しているともとれる発言でした。 |
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●ロシア軍がウクライナで軍事作戦 2/24
ロシア軍は24日、ウクライナの軍事施設に対する攻撃を始めたと発表し、ロシアによる軍事侵攻が始まりました。ウクライナ側によりますと、攻撃は東部だけでなく、首都キエフの郊外や南部などの軍事施設にも及んでいて死傷者もでているということです。 ●中国外務省報道官「平和の扉閉ざすことなく対話と協議努力を」 中国外務省の華春瑩報道官は記者会見で「中国は、最新の動向を注視している。関係国は自制を保ち、状況を制御できなくなる事態を避けるよう呼びかける」と述べました。そのうえで「関係国は、平和の扉を閉ざすことなく、対話と協議の努力を続け、事態をさらにエスカレートさせないよう願う」と述べました。一方、華報道官は、ロシア側の行動がウクライナへの侵略行為にあたるかどうか認識を問われたのに対し「ウクライナ問題は、非常に複雑な歴史的背景や経緯があり、現在の状況に発展した」と繰り返し明確な回答を避けました。 ●東部2州の一部を事実上支配の親ロ派 “2州全域支配目指す” ウクライナの東部2州のうち親ロシア派が事実上支配し、ロシアが一方的に独立国家として承認した地域の幹部は、地元メディアのインタビューに対し「われわれの最大の課題は、行政上の境に到達し、ウクライナ政府の支配下にある人々を解放することだ」と述べました。 武装勢力側は、ウクライナ政府が統治する地域まで侵攻し、両州の全域を支配したいとする考えを示したとみられます。 ●日本時間19:20すぎ NY原油先物価格 1バレル=100ドル超に ニューヨーク原油市場では、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって産油国ロシアからの供給が滞る懸念が強まり、原油価格の国際的な指標となるWTIの先物価格が一時、1バレル=100ドルを超えました。WTIが1バレル=100ドル台をつけるのは、2014年7月30日以来、7年7か月ぶりです。 ●日本時間19:00すぎ 「ウクライナ軍兵士40人以上死亡」報道 ロイター通信は、ウクライナ大統領府の関係者の話として、これまでにウクライナ軍の兵士40人以上が死亡し、数十人がけがをしていると伝えました。このほか一般市民にも被害が出ているということで、現地の当局の話として、ハリコフ州の建物への攻撃で男の子1人が死亡したと伝えています。 ●ウクライナ大統領「ロシアとの断交」発表 抵抗呼びかけ ウクライナのゼレンスキー大統領はロシア軍がウクライナに軍事侵攻を開始したことをうけ「われわれはロシアとの外交関係を断絶した」と述べました。また、ゼレンスキー大統領は、市民に対して、武器を手にしてロシア軍に抵抗するよう呼びかけました。 ●17:30羽田空港発の日本航空のモスクワ便欠航 日本航空は、羽田空港からモスクワ空港に向けて出発する便の欠航を決めました。今後の運航については状況を見て判断するとしていて、ホームページなどで最新の情報を確認するよう呼びかけています。 ●ウクライナ「クリミアからロシア軍とみられる軍用車両が進入」 ウクライナの国境警備当局は24日、ロシアが8年前に一方的に併合したウクライナ南部のクリミアから、ロシア軍とみられる軍用車両が進入してくる映像を公開しました。映像には、ロシア軍のものとみられる戦車や軍のトラックなどがウクライナとクリミアとの境を次々に越える様子や、道路を走る様子が映っています。 ●ウクライナ軍「ロシア軍兵士を約50人殺害」 ウクライナ軍参謀本部は公式フェイスブックで24日、ウクライナ軍が東部のルガンスク州でロシア軍の兵士、およそ50人を殺害したと主張しました。また東部のドネツク州でロシア軍の軍用機を6機、撃墜したほか、北東部のハリコフ州でロシア軍の戦車4台を破壊したとしています。 ●ウクライナ内務省「ロシアの攻撃でこれまでに8人死亡」 ウクライナ内務省の幹部は警察当局の情報として、ロシアによる攻撃でこれまでに8人が死亡したと発表しました。それによりますと、ウクライナ南部のオデッサ州で現地時間の午前8時半ごろ爆撃があり、6人が死亡、7人がけがをしたほか、19人の行方が分からなくなっているということです。また、東部ドネツク州のマリウポリでも砲撃で1人が死亡し、2人がけがをしたなどとしています。 ●日本時間17:00ごろ ウクライナ 首都キエフでは大渋滞 ロシア軍がウクライナに対して軍事侵攻を開始したことを受けて、ウクライナの首都キエフではロシアから遠い西側へ逃れようとする市民の車で大きな渋滞が発生している様子が確認できます。西側に向かう大通りでは、複数の車線が車で埋め尽くされ、ほとんど動かない状態となっています。 ●ロシア通貨ルーブルは最安値を更新 ロシアによるウクライナへの攻撃を受けて、外国為替市場ではロシアの通貨ルーブルを売る動きが急速に強まり、ドルに対して一時、1ドル=89ルーブル台まで値下がりしてこれまでの最安値を更新しました。これを受けてロシアの中央銀行は通貨の安定に向けて市場介入に踏み切ることを決めたと発表しました。また、モスクワの取引所は24日、株式などの取り引きを一時、停止する措置を取りました。その後、株式市場で取り引きが再開されると売り注文が殺到して株価指数は前日に比べて30%を超える値下がりとなり、金融市場は大きく混乱しています。 ●日本時間16:00ごろ 仏大統領「同盟国とともに行動」 フランスのマクロン大統領は声明を発表し「ロシアが軍事侵攻を決断したことを強く非難する」として直ちに軍事行動をやめるよう求めました。そのうえで「フランスはウクライナと連帯し、戦争を終わらせるために同盟国とともに行動する」としています。フランス大統領府によりますと、マクロン大統領は日本時間の24日午後4時ごろ、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話で会談し、ウクライナへの支援を約束したということです。 ●16:00 松野官房長官「国際社会と連携して迅速に対処」 松野官房長官は午後の記者会見で「ロシア軍がウクライナ領域内に侵攻したものと承知している。力による一方的な現状変更を認めないとの国際秩序の根幹を揺るがすものであり、ロシアを強く非難するとともに、制裁の検討を含めアメリカをはじめとする国際社会と連携して迅速に対処していく」と強調しました。また、現地に滞在する日本人およそ120人に被害の情報はないとしたうえで「あらゆる事態に適切に対応できるよう、近隣国でチャーター機の手配を済ませるなどさまざまな準備を行っている」と述べました。そして「ウクライナ滞在中の邦人は自身の安全を図る行動をとるとともに、最新の治安関連情報を入手するよう努めてほしい。政府としては、極めて危険かつ流動的な現地情勢の中で在留邦人の安全確保に最大限取り組んでいく」と述べました。一方、経済への影響をめぐり「一次産品の価格への影響を含め、日本経済に与える影響を引き続き注視していく。国内のエネルギー安定供給に直ちに大きな支障を来す懸念はない。国民生活や日本経済を守るために、実効ある激変緩和措置が必要であり、できるだけ早く対応策を取りまとめ、追加的な措置を講じていきたい」と説明しました。 ●15:30すぎ 岸田首相「G7首脳会議踏まえ追加制裁措置検討」 岸田総理大臣は国会でウクライナ情勢について質問され「今後、事態の変化に応じてG7=主要7か国をはじめとする国際社会と連携し、さらなる措置をとるべく速やかに取り組んでいきたい。今夜11時からG7の首脳テレビ会議が予定されており、会議の状況も踏まえて、わが国として適切に対応を考えていきたい」と述べ、G7の緊急首脳会議を踏まえて追加の制裁措置を検討する考えを示しました。 ●15:30 東京 銀座で新聞号外 不安の声が聞かれる 東京 銀座では新聞の号外が配られ、受け取った人たちからは先行きへの不安の声が聞かれました。このうち食品関係の仕事をしている56歳の男性は「どの業界でもサプライチェーン・供給網などに影響は出てくるかなと思います。とてもショックで、第三次世界大戦だけにはなって欲しくないと思います。アジアの緊張も高まるでしょうし、日本もひと事ではないと思います」と話していました。また、53歳の会社員の女性は「ニュースを見てやっぱりそうなってしまったかというのが印象で、さらに石油の価格が上がるかもしれませんし、日本にどういう影響があるか心配です。怖いですし、もっと話し合いでうまくいけばよかったのにと思います」と話していました。 ●EU「大規模な制裁を科す」 EU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領とフォンデアライエン委員長は連名で声明を出し「ロシアによるウクライナへの前例のない軍事侵攻を最も強いことばで非難する。今回の不当な軍事行動は国際法に違反し、ヨーロッパと世界の安全と安定を脅かしている」として、ウクライナに対する敵対的な行動を直ちにやめるようロシアに要求しました。そのうえでロシアに対して大規模な制裁を科すと警告しました。EUは24日、ベルギーのブリュッセルで緊急の首脳会議を開き、今後の対応やロシアへの制裁について協議することにしています。 ●ロシア国防省「ウクライナ軍の制空権を制圧した」 ロシアの複数の国営通信社がロシア国防省の話として伝えたところによりますと、「ロシア軍はウクライナの空軍基地のインフラと対空防衛システムを無力化し、ウクライナ軍の制空権を制圧した」と明らかにしました。また「ウクライナの国境警備隊はロシア軍に対して全く抵抗していない」としています。 ●15:00 日経平均株価の終値 2万6000円割り込む 24日の東京株式市場日経平均株価の終値は22日より400円以上値下がりして、ことしの最安値を更新しました。ウクライナ情勢をめぐり、ロシアが軍事作戦に踏み切った影響でおよそ1年3か月ぶりに2万6000円を割り込みました。 ●NATO事務総長 ロシアに軍事的行動をやめるよう求める NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は24日、声明を出し「ロシアのウクライナに対する無謀で正当な理由のない攻撃は大勢の市民の命を危険にさらすものだ。われわれが繰り返し警告し、外交努力を続けてきたにもかかわらず、ロシアはウクライナの主権と独立を侵害する道を選んだ」と述べ、ロシアを強く非難しました。そのうえで、ロシアに対し軍事的な行動を直ちにやめるよう求めるとともに、加盟国で今後の対応を協議する考えを示しました。 ●14:40 松野官房長官「これから報告受ける」 松野官房長官は総理大臣官邸に戻る際、記者団が「これまでに収集された情報について報告を受けるのか」と質問したのに対し「これからだ」と述べました。 ●日本時間14:30すぎ 独首相「ヨーロッパにとって暗黒の日」 ドイツのショルツ首相はツイッターに「ロシアの攻撃はあからさまな国際法違反で正当化できない。プーチン大統領による無謀な行為を最も強いことばで非難する」と投稿し、ロシアに対し直ちに軍事行動をやめるよう求めました。また「ウクライナにとってひどい日であり、ヨーロッパにとっても暗黒の日だ」としています。ドイツ政府の報道官によりますとショルツ首相は24日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話で会談し、全面的にウクライナと連帯する考えを伝えたということです。 ●14:30ごろ 米エマニュエル駐日大使「ロシアは戦争を選択した」 自民党の茂木幹事長は、先月着任したアメリカのエマニュエル駐日大使と党本部で会談しました。冒頭、エマニュエル大使は「ロシアは戦争を選択した。ロシアにとっても簡単な選択ではない。国際社会は、これがどんな結果を招くか、はっきりと言ってきた。岸田総理大臣と日本政府が示してくれた連帯に感謝している」と述べました。これに対し茂木氏は「ウクライナの状況を大変、深刻に捉えている。何よりも重要なことは、力による一方的な現状変更の試みはウクライナだけでなく、アジアにおける東シナ海や南シナ海でも決して許容できない。価値観を共有するアメリカや日本をはじめ、国際社会が一致団結してロシアへの対応を図っていきたい」と述べました。 ●バイデン大統領「同盟国とともに厳しい制裁を科す」 アメリカのバイデン大統領は声明を出し、ウクライナのゼレンスキー大統領と緊急の電話会談を行い、このなかで「ロシア軍によるいわれのない不当な攻撃を非難した」としています。そのうえでバイデン大統領は「ゼレンスキー大統領は私に対して、ウクライナ国民への支持とプーチン大統領による攻撃を明確に批判するよう世界各国の指導者に呼びかけてほしいと依頼してきた。アメリカは同盟国などとともにロシアに厳しい制裁を科していく。今後もウクライナとウクライナ国民に支援を提供し続ける」としてロシアに厳しい制裁を科し、ウクライナを支援していく考えを改めて強調しました。 ●「金」再び最高値を更新 1g=7100円台 大阪取引所で行われている24日の「金」の先物取引は、買い注文が膨らみ、取り引きの中心となる「ことし12月もの」の価格が一時、1グラム当たり7122円をつけました。比較的安全で有事に買われやすいとされる金は、ウクライナ情勢の緊迫化を受け値上がり傾向が続いていて、今月21日に記録した7041円を上回り、取り引き時間中の最高値を再び更新しました。 ●原油市場 先物価格上昇 国際的な原油価格の指標の1つであるニューヨーク市場のWTIの先物価格は、一時、1バレル=97ドル台まで上昇しました。これは2014年8月以来、7年半ぶりの高値です。また、ロンドンの市場で取り引きされている北海産のブレント原油の先物価格は、2014年9月以来、7年5か月ぶりに、1バレル=100ドルを超えました。 ●14:30 日本政府は官邸連絡室を“対策室”に格上げ ロシアがウクライナへの軍事行動を始めたという情報を受け、政府は、総理大臣官邸の危機管理センターに設けている官邸連絡室を、官邸対策室に格上げして情報の収集などにあたっています。 ●ウクライナ大統領 国民に冷静を呼びかけ ウクライナのゼレンスキー大統領はSNS上にウクライナ国民向けのビデオメッセージを投稿し「ロシアはウクライナ国内の軍事施設と国境警備隊への攻撃を行った。また、国内の多くの都市で爆発音が確認されている」と明らかにしました。また、アメリカのバイデン大統領と電話で会談したことを明らかにし「アメリカは国際的な支援を集めようとしている」と述べました。そして国民に対し「いまは皆さんが冷静でいることが求められる」と呼びかけたうえで「軍をはじめ防衛のためのすべての組織が対応している。私たちは強く、何事にも準備ができている。ウクライナは誰にも負けることはない」と述べました。 ●14:20すぎ 日本政府は国家安全保障会議を開催へ 参議院予算委員会では、岸田総理大臣とすべての閣僚が出席して新年度予算案の実質的な審議が行われていますが、休憩に入りました。休憩に入る前の質疑で、岸田総理大臣はウクライナ情勢の緊迫化を受けて「適切なタイミングでNSC=国家安全保障会議を開催したい」と述べました。 ●日本時間13:50すぎ 英首相「プーチン大統領 破壊の道選んだ」 イギリスのジョンソン首相はツイッターに投稿し「プーチン大統領は、ウクライナに対する攻撃によって、流血と破壊の道を選んだ」と強く非難しました。そして、イギリスや同盟国はロシアに対して断固とした対応をとると強調し、ウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談でもこうした考えを伝えたということです。 ●日本時間 正午 ウクライナ「ロシアが集中砲撃を開始した」 ウクライナ軍参謀本部は公式フェイスブックで「ロシアの武装勢力は24日午前5時、東部にある我々の部隊への集中砲撃を開始した」とロシア軍がウクライナ東部で攻撃を始めたと発表しました。また、攻撃は南部や西部でも行われているとしています。具体的な場所として、首都キエフの郊外に位置するボリスピルのほか、西部ジトーミル州にあるオジョルノエ、ハリコフ州にあるチュグエフ、ウクライナ軍の東部の拠点となっているクラマトルスク、それにウクライナ南部にあるクリバキノやチェルノバエフカを挙げています。ウクライナ軍によりますと、ロシア軍はこれらの地域にある飛行場と軍事施設に対して攻撃を開始したということです。一方、「ロシア軍が南部のオデッサに上陸したという情報は真実ではない」として一部のメディアの情報を否定しました。 ●バイデン大統領が政府高官から現状の報告受ける アメリカ、ホワイトハウスのサキ報道官は23日、ツイッターに「バイデン大統領はロシア軍によるウクライナへの進行中の攻撃についてブリンケン国務長官やオースティン国防長官、ミリー統合参謀本部議長、そしてサリバン大統領補佐官から電話で説明を受けた」と投稿し、バイデン大統領が安全保障担当の政府高官らから現在の状況について報告を受けたと説明しています。 ●ウクライナ外相「ロシア 全面的な侵攻開始」 ウクライナのクレバ外相はツイッターに「ロシアのプーチン大統領はウクライナへの全面的な侵攻を開始した。平和なウクライナの都市が攻撃を受けている。ウクライナは防衛し、勝利するだろう。世界はプーチン大統領を止めなければならない。今こそ行動を起こす時だ」と投稿しました。ロシア側はこれまでのところ、軍事作戦を開始したかなどは明らかにしていません。 ●ウクライナ首都キエフで複数の爆発音 ロイター通信はウクライナの首都キエフからの情報として、現地で複数の爆発音が聞こえたと伝えました。また、東部の都市ドネツクで銃声が聞こえたと伝えたほか、地元メディアを引用する形でキエフの空港周辺でも銃声が聞こえたと伝えています。 ●バイデン大統領「プーチン大統領は破滅的な戦争を選んだ」 アメリカのバイデン大統領は23日、声明を発表し「プーチン大統領は破滅的な人命の損失と苦痛をもたらす戦争を選んだ。この攻撃がもたらす死と破壊の責任はロシアだけにある」として、プーチン大統領の決定を強く非難しました。そのうえで「アメリカは同盟国、友好国と結束して断固とした措置で対応する。世界はロシアに責任を取らせるだろう」として、攻撃によってもたらされる被害の責任はロシアが負うことになると強調しています。 ●ウクライナ国境警備局「ロシア軍がベラルーシ国境を攻撃」 ウクライナの国境警備局によりますと24日午前5時ごろ、日本時間の24日正午ごろ、ベラルーシと国境を接するウクライナ北部でロシア軍からの攻撃を受けたと明らかにしました。ロシア軍は今月20日まで、ベラルーシ軍とともにベラルーシ国内で演習を続け、終了したあとも部隊を残したままにしていました。また、ウクライナ南部で、ロシアが一方的に併合したクリミア半島からも攻撃を受けているとしています。 ●日本時間 正午前 プーチン大統領「軍事作戦を実施する」 ロシアの国営テレビは現地時間の24日朝、プーチン大統領の国民向けのテレビ演説を放送しました。このなかでプーチン大統領は、ウクライナ東部2州の親ロシア派が事実上、支配している地域を念頭に「ロシアに助けを求めている。これに関連して特別な軍事作戦を実施することにした。ウクライナ政府によって8年間、虐げられてきた人々を保護するためだ」と述べ、ロシアが軍事作戦に乗り出すことを明らかにしました。またプーチン大統領は「われわれの目的はウクライナ政府によって虐殺された人を保護することであり、そのためにウクライナの非武装化をはかることだ」としましたが「ウクライナ領土の占領については計画にない」と述べました。 |
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●ウクライナで空爆始まったか 軍事施設にミサイル、首都で爆発音続く 2/24
ウクライナメディアによると同国内の複数の都市で24日未明、激しい爆発音が聞かれた。ロシア軍の空爆が始まった可能性がある。また、内務省当局者は国境警備隊の情報として、ロシア軍が北東部ハリコフ州の国境を越え、黒海の港湾都市である南部オデッサにも上陸を開始したと明かした。 爆発音が響いたのは東部クラマトルスクや南部オデッサなど。 首都キエフでも午前5時過ぎから朝日新聞記者が断続的に爆発音が響くのを聞いた。爆発音は30分以上にわたって続いている。 内務省当局者は、北東部の中心都市ハリコフの軍事施設とキエフの軍指令施設が巡航ミサイルの攻撃を受けたことを確認した。 ウクライナのウニアン通信によると、ロシアの航空当局は同国南部のウクライナ国境周辺の空域の飛行禁止を命じた。ウクライナ当局もロシアのプーチン大統領が軍事作戦開始を表明する前の24日未明に北東部ハリコフからロシア国境沿いの空域で飛行禁止を命じた。 |
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●ロシアがウクライナ侵攻、防空システム「制圧」 東部で越境 2/24
ロシアのプーチン大統領は24日、軍によるウクライナでの特別軍事活動を承認した。これを受け、ロシア軍は首都キエフや東部などの都市をミサイルで攻撃、国防省はウクライナの防空システムを「制圧」したと表明した。 キエフでは明け方にサイレンが鳴り響いた。ウクライナのレズニコフ国防相は、東部の部隊や軍司令部、飛行場がロシアからの激しい砲撃を受けた明らかにした。 ゼレンスキー大統領は、ロシアが国内インフラや国境警備拠点にミサイルで攻撃を行い、多くの都市で爆発音が響いたとし、国内全土に戒厳令を発令した。 大統領はまたロシアとの断交や市民への抗戦を呼びかけた。 ウクライナ国境警備隊によると、ロシア軍はロシア、ベラルーシ、クリミアから攻撃を仕掛けた。ロシア部隊はその後、国境を越え北部チェルニヒウ、北東部ハリコフ、東部ルガンスクの各地域に入った。南部黒海沿いの都市オデッサやマリウポリにも侵攻したという。 被害状況は十分明らかになっていないが、ロシア軍の砲撃で少なくとも8人が死亡、南部では国境警備にあたっていた3人が死亡した。 一方でウクライナ軍によると、同軍はハリコフ近郊でロシアの戦車を破壊、ルガンスク近郊では兵士50人を殺害したほか、ロシア機6機を撃墜した。しかしロシア側は装甲車の破壊や航空機撃墜を否定、親ロ派はウクライナ機2機を撃墜したとしている。 ロシア国防省はウクライナの軍事施設や防空、空軍を高精度兵器で標的にしたと表明。ウクライナの都市は攻撃対象にしていないとしている。 インタファクス通信によると、ウクライナ東部の親ロ派は、ロシアが独立を承認したルガンスクとドネツク地域の制圧を目標としている。 プーチン氏は国民向けテレビ演説で、ウクライナからの脅威から自らを守る以外に選択肢がなかったと強調。「ロシア連邦の市民を含め、市民に対する多数の流血の犯罪を犯した人間を裁判にかける」と述べた。 また、外部勢力が行動を妨げようとするならすぐに対応し、ウクライナの非軍事化を目指すと表明。「わが国を直接攻撃すれば、敗北と悲惨な結果につながるということを誰も疑うべきではない」とけん制した。 バイデン米大統領は、ゼレンスキー大統領と電話で協議し、ロシアのウクライナ侵攻に対して国際的に結束して非難するため米国が取っている措置を説明したと表明。米国と同盟国がロシアに厳しい制裁を科すとともに、ウクライナへの支援と援助を継続すると述べた。 各国はロシアへの追加制裁を検討している。 中国外務省報道官は24日の定例会見で、ウクライナ情勢に関わる各国に自制を求めた。ただロシア軍の行動について、海外メディアが表現するようなウクライナへの「侵攻」ではないとの認識を示した。 |
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●ロシア軍、ウクライナに侵攻…プーチン大統領「東部で特殊作戦を開始」 2/24
ロシアのプーチン大統領は24日午前6時(日本時間・24日正午)頃、露国営テレビを通じて緊急演説し、ウクライナ東部で「軍の特殊作戦を開始する」と表明した。演説後、首都キエフなどで爆発が相次いだ。ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まった模様だ。 米CNNは、首都キエフのほか東部ハリコフで、「絶え間なく大きな爆発音が聞こえる」と報じた。米紙ニューヨーク・タイムズは、ウクライナ政府の話として、黒海に面したウクライナ南部のオデッサにロシア軍が上陸したと報じた。 米CBSニュースによると、ウクライナ政府は「キエフを狙った巡航ミサイルと弾道ミサイルの攻撃が続いている」と認めた。 プーチン氏は演説で、親露派武装集団が一部を実効支配しているウクライナ東部で、ウクライナ政府軍による「ジェノサイド(集団殺害)」が起きていると主張し、軍事作戦の目的は市民を保護するためだと説明。「ウクライナの絶え間ない脅威に、ロシアは安全と感じることができない」と作戦の正当性を強調した。 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、2014年3月に南部クリミアを併合して以来となる。ウクライナの親米欧政権の崩壊を狙っている公算が大きく、国際法に明確に違反する。 プーチン氏は、ロシアが米国や北大西洋条約機構(NATO)側に求めてきた、ウクライナをNATOに加盟させない確約を巡っても、1991年の旧ソ連崩壊以降、「30年にわたり、不拡大を巡って合意しようとしてきたが、我々を欺こうとする試みだった」などと説明した。 演説に先立ち、露大統領報道官は23日深夜、ウクライナ東部の一部を実効支配する親露派武装集団の幹部が「ウクライナ政府による軍事攻撃の撃退」を名目に、プーチン氏に軍事支援を要請したことを明らかにしていた。 プーチン氏は21日、親露派支配地域の一方的な独立を承認し、「平和維持」名目で部隊を派遣するよう国防省に命じていた。22日には露上院が、同地域での露軍の活動を承認した。 ロシアはウクライナ北方のベラルーシや、南部クリミアにも部隊を集め、東部の親露派武装集団を含め約19万人規模に膨らんでおり、ウクライナに東と北、南の3正面から同時侵攻する可能性が取り沙汰されていた。 旧ソ連構成国ウクライナを巡っては、プーチン露大統領が「歴史的な一体性」を主張し、NATOへの接近阻止を図ってきた。ウクライナを自国の「勢力圏」にとどめるため、強硬手段に踏み切ったとみられる。 ロシアは昨年12月以降、ウクライナをNATOに加盟させない確約などを「根本的な要求」として、米国とNATOに受け入れを迫ってきた。今月17日の米国宛ての文書では要求を受諾しない場合、「軍事技術的な措置」を警告していた。 NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は24日、ロシアがウクライナに対し「無謀で挑発的な攻撃を行った」として、非難する声明を発表した。ストルテンベルグ氏は「我々の警告と外交努力にもかかわらず、ロシアは主権のある独立国家に対し、侵略の道を選んだ」と述べた。 |
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●ウクライナ全土に戒厳令 ベラルーシ、クリミアからも侵攻― 2/24
ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、ロシアの本格侵攻を受けて全土に戒厳令を敷いた。既に親ロシア派武装勢力が実効支配していたウクライナ東部のみならず、隣国ベラルーシや、ロシアが2014年に一方的にウクライナからの併合を宣言したクリミア半島からもロシア地上部隊が侵入。現地からの報道によれば、少なくとも9人の死亡が確認された。 戒厳令の下では市民の私権が制限され、企業には国防上の協力が要請される。ゼレンスキー氏は動画メッセージで「多くの都市で爆発音が聞かれる。プーチン(ロシア大統領)はウクライナを破壊しようとしている」と危機感を表明。一方で国民に平静を保ち、自宅で待機するよう呼び掛けた。 首都キエフでは爆発音がとどろいた。比較的安全と見なされていた西部リビウの一帯にも、爆撃が加えられたという情報もある。国防省は声明で「敵が東部のわれわれの部隊や、他の地域の軍事拠点、飛行場への集中的な爆撃を開始した」と明らかにした。ウクライナ軍が東部でロシアの航空機やヘリコプターを撃墜したと発表したが、ロシアはこの情報を否定している。 クレバ外相はツイッターで「世界はプーチンを止めることができ、止めなければならない。今こそ行動の時だ」と訴え、「ウクライナは自らを守り、勝利する」と述べた。ウクライナの駐トルコ大使は24日、ロシア軍艦にボスポラス、ダーダネルス両海峡を航行させないようトルコに要請した。 また、ロイター通信によると、ウクライナの隣国モルドバで、大統領が非常事態宣言を発令する意向を示した。 一方、23日にはウクライナ政府の省庁や国家関係機関などのウェブサイトにアクセスできない事態が相次いで発生した。15日にも同様の事例が起きており、再びサイバー攻撃を受けたとみられる。 |
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●ウクライナの首都キエフで爆発音 軍事作戦決定直後 2/24
米CNNは24日、現地時間早朝にウクライナの首都キエフで複数の爆発音が聞こえたと報じた。現地からの中継で記者の男性が急いだ様子で防弾チョッキやヘルメットを着用する様子を伝えた。 ロシアのプーチン大統領は24日、ウクライナ東部への特別軍事作戦を決定したと表明し、爆発はその直後に起きたものとみられる。ウクライナ情勢での緊張は極限にまで達している。 ロイター通信もキエフで砲撃のような音が複数回にわたって聞こえたと伝えた。プーチン氏の演説から数分後の出来事だとしている。ロシア国営通信は、キエフの空港付近で銃撃音が響いたと伝えた。 |
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●ロシアがついにウクライナへ軍事侵攻…緊急サイレンが鳴り響く 2/24
ロシアがついにウクライナへの軍事侵攻に乗り出した。2月24日、プーチン大統領はウクライナ東部での特殊な軍事作戦を行うことを決断したと発表。親ロシア派勢力が支配するウクライナ東部の住民を保護することが目的としている。 ウクライナの首都・キエフでは、爆発音が鳴り響いた。 ウクライナとその周辺の地図を確認すると、ロシアが一方的に独立を承認し、住民を保護するとした親ロシア派が支配する「ドネツク」と「ルガンスク」は、ウクライナ東部の地域にある。 しかし、ウクライナが攻撃を受けたと発表したのは、首都キエフ、ハリコフ、ドニプロなど主要都市。また南東部のマリウポリにロシア軍が上陸したという報道も出ている。 さらに、ロシア軍の軍用車両がロシアの同盟国のベラルーシからウクライナに侵入したという情報も入ってきた。攻撃の対象は親ロシア派が支配するウクライナ東部に限らず、ウクライナ全土に及ぶ恐れもある。 ●ウクライナでは警報「子どもの命を守りたい」と話す市民も 榎並大二郎キャスター: 現在のウクライナの首都キエフの様子をご覧いただきます。こちら道路が大渋滞となっています。画面の奥が東側・ロシア方向から画面手前の西側・ポーランド方向に向かって4車線道路が、画面左から合流する車とでびっしりと埋め尽くされています。 榎並大二郎キャスター: ウクライナの市民の皆さんがあるいは車で避難を試みて移動して大渋滞を引き起こしている模様です。混乱が起きています。この映像の他にもウクライナ国内ではガソリンスタンドに行列ができていると言います 榎並大二郎キャスター: ではそのキエフから約460キロ、ベラルーシとの国境から約200キロ離れたウクライナ西部の町・リビウにいる立石修記者に聞きます。現地の様子はどうなっているでしょうか? FNN特派員・立石修記者: (ウクライナ西部)リビウの中心地にいます。町にはパニックは起きていないのですが、音が聞こえないかもしれませんが、先ほどからサイレンの音が鳴り響いていて、警報でしょうか、非常に不気味な感じがします。これまでに爆発音などは聞こえていませんが、町の中心部から100キロほど離れた軍事施設に攻撃があったとの情報が先ほど入ってきました。しかし、確認は取れていません FNN特派員・立石修記者: 町の様子を取材したところ、ATMの前には行列ができていたほか、出国のためのコロナ検査場にも普段より多くの人々が来ていました。空港では空の便がストップしています。アメリカから来た観光客は、荷物をまとめてすぐにポーランドに脱出すると話していました。ウクライナ市民の女性は、パニックは起こしていないが子どもの命は守りたいと話していました 加藤綾子キャスター: 数日前の立石さんの取材では、ウクライナ国内は案外落ち着いているということでしたけれども住民の方々、避難などされているんでしょうか?それから、現地でも軍事侵攻に対して何か具体的に避難など警戒を呼びかけられているんでしょうか? FNN特派員・立石修記者: ウクライナ政府は避難の呼びかけではありませんが、家にとどまるようにとの指示を出しています。一方、リビウには親ロシア派が支配する東部地方から脱出してきた人の姿が多く見られています。リビウ市ではこれまで学生への応急手当ての訓練、シェルターの準備、輸血用の血液を増やすなどの対策をとってきました。今後の状況を市民たちも今注視しているという状況です ●モスクワ市民も驚き 報道は軍事行動の正当性をアピール 榎並大二郎キャスター: 続いてロシアの首都・モスクワの関根支局長に聞きます。ロシアでは今回の侵攻をどう受け止められているのでしょうか? FNNモスクワ支局・関根弘貴支局長: プーチン大統領の決断は、モスクワの市民も驚きをもって受け止めています。ロシア国営テレビが報じているのは、ウクライナ東部で親ロシア派武装勢力が支配している地域の状況のみです FNNモスクワ支局・関根弘貴支局長: ロシア軍がウクライナの軍事インフラを攻撃し、反撃する機能を奪っていることについては一切報じていません。「虐げられている人を助けることが目的だ」とするプーチン大統領の発言を裏付ける報道ぶりで、国民に軍事行動の正当性をアピールしています FNNモスクワ支局・関根弘貴支局長: 今回プーチン大統領は「ウクライナ全土の占領は計画していない」と述べています。しかしプーチン大統領は、親ロシア派武装勢力を独立国家として承認したことを発表した時の演説で「ウクライナという国はロシアの歴史的領土を引き離して作られた」と主張していました。帝政時代や旧ソ連時代にウクライナになった領土を取り戻そうとする可能性も指摘されています ●ロシアがどこまで軍を進めるのかがポイントに 加藤綾子キャスター: 柳澤さん。プーチン大統領も戦争はしたくないと言っていましたけれども、今回の空爆などの軍事侵攻はどういった意味があるんでしょうか? ジャーナリスト 柳澤秀夫氏: プーチン大統領が戦争をしたくないという言葉を間に受けることは、当初からできなかったと思います。今始まっている軍事侵攻は、私がかつて戦争を取材したものから考えると、戦争の定石通りに事が進んでいるように見えます。ロシア側はウクライナの制空権を確保した上で、地上部隊が東側から入るときに空からの脅威をとにかく取り除きたい。そのためにウクライナの防空施設を最初に攻撃して、制空権を確保。そして地上部隊という教科書通りの進め方をしているのかなと思うのですが、ただ、どこまでロシア軍を進めるのか。一部情報にありましたベラルーシからウクライナに北から入ってきてるという情報が仮に本当だとすると、プーチン大統領が言ってるウクライナ全土を支配下占領するつもりはないという言葉もまったく根拠のないものになりかねないということなので。ここ数時間、あるいは1日24時間、どういうふうにロシア側が支配下に置こうとしているウクライナの東部に、地上部隊をどの程度どういう形で進めてくるのか。それを見極めることがポイントかなというふうに思います 加藤綾子キャスター: この短期間でその状況が見えてくると? ジャーナリスト 柳澤秀夫氏: そう思います。はい |
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●ロシア軍、ウクライナ南部上陸 全面侵攻に 2/24
ロシア軍は24日、ウクライナ南部の黒海に面した港湾都市オデッサや東部ドネツク州マリウポリに上陸し、同国への軍事侵攻を開始した。ロシアメディアの報道として、ロイター通信が伝えた。 米CNNテレビによると、黒海に面した同国の港湾都市オデッサでも複数の爆発音が聞かれたという。ウクライナのクレバ外相はロシアが「全面的な侵攻」に踏み切ったと述べた。 |
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●NATO「あらゆる手段で同盟国を守る」 ロシアのウクライナ侵攻 2/24
ロシアのウクライナ攻撃に対し、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は24日未明(日本時間24日昼)、「無謀かつ正当化できないウクライナへの攻撃を強く非難する。無数の市民の命を危険にさらすものだ」とする声明を出した。国際法の重大な違反であり、欧州・大西洋地域の安全保障に深刻な脅威をもたらしている、とも指摘した。 ストルテンベルグ氏は「我々は外交協議の努力を続けてきたが、主権を持つ独立国家への攻撃を選んだ」と、ロシアを非難して軍事行動の即時停止を要求したうえで、「NATOは同盟国を守るためあらゆる手を尽くす」と表明した。また、「我々は、恐ろしい時間を過ごすウクライナの人々とともにある」とも述べた。 ロシアのウクライナ侵攻を受け、ブリンケン米国務長官は24日未明(米国時間)、自身のツイッターに投稿し、オースティン米国防長官とともに北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長と協議したことを明らかにした。ブリンケン氏によれば、3者はNATOの連携した対応について協議。ブリンケン氏は「我々は一致してロシアに対応し、NATO(域内)の東側を強化する」と強調した。 |
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●ウクライナ侵攻、「暗黒の日」 ロシアを厳しく非難―欧州首脳 2/24
ロシアによるウクライナへの侵攻を受け、欧州各国の首脳は24日、「ウクライナにとって恐怖の日で、欧州にとって暗黒の日だ」(ショルツ・ドイツ首相)などとロシアを最大限に非難した。 ショルツ氏は声明で、侵攻は「何をもっても正当化できない」と即時攻撃停止を促した。ジョンソン英首相もツイッターで、「プーチン大統領は、流血と破壊の道を選んだ」と指摘し、断固とした対応を取ると強調した。マクロン仏大統領はツイッターで「フランスはウクライナと連帯する」と投稿した。 ロシアと国境を接するエストニアのカリス大統領は「すべての民主主義国と、現在の秩序への宣戦布告だ」と批判。ポーランドのモラウィエツキ首相もツイッターで「欧州と自由主義の世界は、プーチンを止めなければならない」と訴えた。 |
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●文大統領、ロシアによるウクライナ侵攻受け韓国政府の立場発表 2/24
韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領は24日、「韓国は国際社会の責任ある一因として、ロシアの武力侵攻を抑制し、ウクライナ事態を平和に解決するため経済制裁を含めた国際社会の努力を支持し、これに賛同する」と明らかにした。以下、パク首席が明らかにした文大統領の指示全文。 ● 国際社会の継続した警告と外交を通じた解決努力にもかかわらず、遺憾にもウクライナで懸念していた武力侵攻が発生した。大切な生命の被害を脅かす武力使用は、いかなる場合においても正当化することはできない。ウクライナの主権領土保存および独立は、必ず保障されなければならない。国家間のいかなる争いも、戦争ではなく、対話と交渉で解決しなければならない。大韓民国は国際社会の責任ある一員として、武力侵攻を抑制し、事態を平和的に解決するため経済制裁を含めた国際社会の努力を支持し、これに賛同する。政府の関連部署は緊張を維持し、在留韓国人の安全確保と経済および企業に対する影響を最小化するため万全に備え、必要な措置をとるよう要請する。 |
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●ウクライナ侵攻、プーチンが繰り出す次の一手、黒海かバルト3国か 2/24
ロシアのプーチン大統領が2月21日に、ウクライナ東部で親ロ派が支配する地域の独立を承認。同24日朝には軍事作戦を実行する方針を表明した。同地域が「ロシアに助けを求めている。ウクライナ政府によって虐げられてきた人々を保護する」との理由だ。「ウクライナ領土の占領は計画にない」というものの、親ロ派支配地域のみならず首都キエフでも爆発音が聞こえたとの情報がある。 次の一手としてどのようなシナリオが考えられるか。ベルギー防衛駐在官、またNATO連絡官としての勤務経験を持つ長島純氏は「黒海の聖域(軍事要塞)化や、バルト3国と他のNATO諸国との分断が考えられる」という。 ———ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2月21日、ウクライナ東部ドンバス地域の一部を実効支配する親ロ派勢力「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認。「この地域の住民をウクライナ軍による攻撃から守るため」との名目でロシア軍の派遣を指示しました。ウクライナをめぐる緊張がますます高まっています。 長島さんはロシアの軍事侵攻について最近2つのシナリオを提示されました。 長島: 私は、歴史と地理の観点から、プーチン大統領は大規模な軍事侵攻という選択肢を取らないとみています。プーチン大統領の最終的な望みは、欧州から米国の影響力を排除して、旧ソ連時代の版図を取り返すことだからです。単にウクライナを勢力圏に取り戻すだけでは十分ではありません。プーチン大統領にとって、ウクライナへの軍事作戦は目的ではなく一手段でしかなく、欧州は終わりの見えない戦いが始まったと考えるべきです。 プーチン大統領の目にロシア周辺の地図は次の3つに色分けされて映っていると考えます。第1は旧ソ連圏。ロシアのほか、ウクライナ東部やジョージアが含まれます。第2は併合圏。ロシア革命や第2次世界大戦前後の混乱の中で併合したバルト3国やウクライナ西部などです。そして第3が影響圏。中・東欧諸国がこれに当たります。旧ソ連圏の国々を、戦略的要衝としてロシアの側にとどめておく。そして、併合圏や影響圏の国々から、米国、NATO(北大西洋条約機構)、EU(欧州連合)などの影響力を排除することがプーチン大統領の目標なのです。 ●今が「好機」である3つの理由 ———では、プーチン大統領はなぜ今、ウクライナで緊張を高めているのでしょうか。 長島: いくつか背景があります。 1つは、ウクライナのNATO加盟をめぐる動きです。NATOは6月にスペイン・マドリードで首脳会議を開き、戦略指針を改定する予定です。同指針はおおむね10年に一度見直すNATOの基本戦略で、日本の国家安全保障戦略のようなものです。この一環として、例えば、ウクライナを「加盟のための行動計画(MAP=Membership Action Plan)」に参加させるような動きが始まっているとロシアが感じ取ったのかしれません。 ———MAPは、ある国がNATO加盟国となるための準備を支援するプログラムですね。MAPへの参加が決まれば、ウクライナのNATO加盟が一歩前進することになります。2008年にもウクライナのMAP参加が議論されましたが、ドイツとフランスが反対して見送られた経緯がありました。理由の1つが、NATOとロシアとの関係悪化につながりかねない、でした。 長島: 第2は米国の動きです。中国を念頭にインド太平洋地域を重視する姿勢を打ち出す中、欧州における米国のプレゼンスが縮小しています。オバマ政権が2013年に「世界の警察官」ではないと宣言。トランプ政権は「アメリカ・ファースト」を掲げて、米国の欧州防衛に対する信頼性を損ないました。 バイデン政権になってもこの傾向は期待されたほど改善していません。今回も同政権が発信するメッセージには好ましくないものがいくつもあります。例えば、1月21日にバイデン大統領自ら、ロシアによるウクライナ侵攻が小規模なら代償も小規模にとどまる可能性を示唆しました。これはNATO内でも物議を醸しました。 また、ウクライナ国境付近で緊張が高まる中、ロシアに対する経済制裁の可能性を繰り返す一方で、米国による軍事行使の可能性は早くから明確に否定するなど、米国の積極的なコミットメントを期待していた欧州諸国の失望を強める結果になっています。2014年のクリミア併合時と同様に、ロシアへの経済制裁は、西側諸国にとってもろ刃の刃です。ロシアへの効き目は期待できず、制裁効果を強くしようとすれば、それは西側諸国の経済への悪影響になってしまいかねません。米欧同盟は、軍事的な危機に直面する中、大きな転換点を迎えていると言っても過言ではないでしょう。 米国が軍事技術においてロシアに後れを取っているのも、プーチン大統領の判断に影響しているでしょう。米国は冷戦後も、イノベーションを通じて軍事能力面での優位性を確保してきましたが、例えば、最新の極超音速滑空体(HGV)の開発において大きな後れを取っています。ロシアはミサイル防衛網を突破し得る長射程戦略兵器「アバンガルド」を2019年に既に実戦配備。今回のベラルーシとの合同演習「同盟の決意2022」でもその他の各種HGVの実戦能力を見せつけました。これに対して米国は、HGVの試験で失敗を繰り返していて、まだ開発の途上にあります。 中距離ミサイルについても同様です。米国は中距離核戦力(INF)廃棄条約の違反を繰り返すロシアに対して、同条約が課す義務の履行を停止すると2019年2月に表明。同条約は失効しました。しかし、米国の中距離ミサイル開発は終了しておらず、欧州への配備についても予定が立たない状況です。 第3はロシアの事情で“クリミア効果”が薄れていること。2014年にクリミア半島を併合したことで、プーチン大統領の支持率は上昇に転じました。 ———60%強に下がっていた支持率が68%に上昇したと報じられました。 長島: この効果が薄れてきているので、歴史的な長期政権を目指すプーチン大統領としては、対外的に強硬姿勢を示すことで国民の愛国心を改めて鼓舞し、自身の求心力をより強化する必要があります。 ただし、「今が好機」という面はあるものの、プーチン大統領は様々なコストを計算して、軍事作戦を短期集中型のものにとどめると考えます。米欧が本格的な経済制裁に進めばロシア経済が大打撃を受けます。これはプーチン大統領としても避けたいところです。また、軍事作戦が長期化すれば、兵士や装備への被害も大きくなり、国内世論の変化にも敏感にならざるを得ません。これもロシアが避けねばならないことだと思います。 そのためにも、NATOが展開するバトルグループ(戦闘群)と直接戦闘する可能性はできる限り排除し続けるでしょう。バトルグループは現在、バルト3国とポーランドで活動しています。2月16日のNATO国防相会議では、ルーマニアに新たな部隊を配備することが決まりました。 ●黒海をオホーツク海のような聖域に ———以上の前提を踏まえて、2つのシナリオについてお伺いします。 長島: プーチン大統領は、本格的な軍事侵攻から限定的な小規模作戦まで、あらゆる軍事オプションを準備しています。私が注目する第1のシナリオは、オチャコフ(Ochakov)もしくはベルジャンスク(Berdyansk)という黒海・アゾフ海に臨む港湾地帯を占領することです。 オチャコフはクリミア半島の西の付け根に位置する港湾都市。ベルジャンスクはクリミア半島の東側、アゾフ海の北岸に位置する港湾都市です。どちらもウクライナ領内にあり、米英の支援を得てウクライナが軍港化を進めています。これらの港を含む沿岸、海域からNATO海軍力の影響を排除することは、作戦上の緊急性と重要性があります。 背景には、ロシアが地政学でいうところのランドパワーとしての性格を強く有していることがあります。 ———ユーラシア大陸の内陸部に位置するロシアは、大陸国家であり、さらなるパワーを求めて海洋進出を図る特性を持つとされます。過去の大きな争いは、このランドパワーとその拡大を抑えようとするシーパワーとの衝突という性格を帯びてきました。 長島: ランドパワーであるロシアは難攻不落の要塞と呼ばれる戦略要衝にあるのは事実ですが、これまでも不凍港を求めて南下政策を取ってきました。現在はバルト海に面したカリーニングラード、日本海に臨むウラジオストクなどがロシア領内の不凍港として挙げられます。加えて、シリアのタルトゥース港を使用できるよう同国政府と合意しています。 ———ロシアはロシア黒海艦隊の基地をクリミア半島の先端セバストポリに配置しています。これがあるがゆえに、ロシアは同半島を併合したわけですね。ウクライナがNATOに加盟して、この基地が使用できなくなれば、ロシアは黒海から地中海を経て大西洋に抜ける海洋ルートを利用できなくなってしまいます。 長島: 確かにそのとおりです。 せっかくセバストポリを手中に収めたのに、そのすぐ西隣のオチャコフや東隣のベルジャンスクに西側の軍港ができればロシアにとって面白い話ではありません。黒海艦隊の行動が制約を受ける恐れがありますし、セバストポリの安全も脅かされかねません。 ロシアとしては、黒海から西側勢力を追い出し、オホーツク海のように聖域(軍事要塞)化したいのだと思います。 ———ロシアはオホーツク海に戦略核兵器を搭載する原子力潜水艦を配備して、核抑止の要にしています。核による先制攻撃を受けても、隠密性に優れる潜水艦が残れば、反撃に転じることができる。新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「ブラバ」を搭載するボレイ級原子力潜水艦を、ウラジオストクを拠点とする太平洋艦隊に配備する予定です。 長島: ベルジャンスクについては、ウクライナ東部の独立を承認した地域に派遣するロシア正規軍とクリミア半島に駐留するロシア正規軍で挟み撃ちにすることができるでしょう。プーチン大統領がドネツクとルガンスクへの派兵命令を出したのは、こうした狙いがあるのかもしれません。 黒海をめぐる行動はロシアにとって、費用対効果においてコストの大きいものではありません。クリミア半島併合という既成事実の延長線上にある軍事オプションであり、しかも、西側がいかに反応するかを確かめながら進めることのできる選択肢と言えるでしょう。 ●NATOが警戒するポーランド・バルト3国間の国境封鎖 ———第2のシナリオはどのようなものですか。 長島: ロシアが、戦略的要衝と位置付けられるスバルキ・ギャップ(Suwalki Gap)*をコントロール下に置くシナリオです。NATO諸国にとっては、こちらの方がより重大な問題となります。NATOの結束がかかるからです。NATOが現在展開している部隊の配置を見ると、北方つまりスバルキ・ギャップを意識した布陣になっていることが分かります。 *:「ギャップ」は回廊、補給路の意味 特に、バルト3国などに展開されるNATOバトルグループや各加盟国からの増援部隊は、NATOが緊急展開部隊(NRF)を派遣するための「引き金(トリップワイヤ)」としての役割を果たすほか、非常時において国内の治安維持や避難民対応の責任を担うものです。 ———スバルキ・ギャップは、北に位置するリトアニアと南に位置するポーランドを隔てる国境線で、その距離は東西方向に100kmほど。その西端はロシアの飛び地であるカリーニングラード。東端は、ロシアの友好国ベラルーシの西端に当たります。世界の安全保障のフロントラインは、冷戦時代のドイツ・ベルリンからスバルキ・ギャップに移動したとの見方があります。 長島: ロシアがこのスバルキ・ギャップを支配下に収めれば、ポーランドとバルト3国*との間の狭隘(きょうあい)な連絡路が遮断され、バルト3国が孤立することになりかねません。兵器も人員もバルト3国に送ることができなくなる。NATOとしては後方支援面でも手の出しようがなくなってしまうのです。 *:リトアニアの北にはラトビア、さらに北にはエストニアがある。 ———冷戦期にNATOが重視したフルダ・ギャップ(東ドイツ=当時=と西ドイツ=同=結ぶ回廊)の21世紀版というわけですね。NATOはワルシャワ条約機構軍の戦車がこの回廊を通って西ドイツに侵入し、わずかの期間でフランクフルトを占領するシナリオを恐れていました。 スバルキ・ギャップをロシア軍もしくはベラルーシ軍が抑えるためにはポーランドおよびリトアニアの領土に侵入することになります。そうすると、NATOと本格的な戦争をすることになりませんか。 長島: そこは、ハイブリッド脅威による戦い方として、様々な非軍事的なやり方があるかと思います。例えば、リトアニアに暮らすロシア系住民がロシアに力を貸すかもしれません。ウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州では実際、親ロ派武装勢力がかなりの範囲を実効支配してきて今日に至ります。 2014年のクリミア半島併合の始まりのように、国籍不明の戦闘員が活動することもあり得るでしょう。クリミアでは、ロシア兵なのかどうか分からないグリーンの迷彩服を着た集団が地方政府庁舎や警察署などを襲撃しました。 さらには、夜陰に乗じてこれらのいずれかが地雷を敷設して、交通を遮断することも考えられます。 ロシア側が、事態拡大を恐れてNATOバトルグループと直接戦闘を交えることを避けようとするならば、増援部隊がこの回廊に接近してこないように長射程のミサイルを配備して、NATOの動きを事前にけん制しようとするでしょう。特に、カリーニングラードに配備しているミサイル発射装置「イスカンデル」は西側にとって大きな脅威です。 ———イスカンデルから発射する弾道ミサイル「9M723」は迎撃が困難なことで知られます。最高高度50kmと低い軌道で飛翔(ひしょう)するためレーダーで探知するのが困難。着弾前のターミナルフェーズで軌道を変える能力を備えるので着弾地点を計算するのも難しい。核弾頭も搭載できるデュアルユースであることも脅威の度を高めています。 長島: 今後、ロシアがカリーニングラードに極超音速兵器を配備することも考えられます。さらに、ベラルーシ側にもイスカンデルや極超音速兵器を配置する可能性がある。そうなれば、イージス・アショアによるミサイル防衛態勢を備えるNATOにとっても、悪夢を意味します。 ———スバルキ・ギャップを遮断するロシアの意図はどこにありますか。 長島: NATOを分断するための心理戦の一環と位置付けることができます。NATOからの支援を得られなければ、バルト3国は、ロシアの侵攻に対して非常に脆弱であり、NATOに対して不信感を抱くでしょう。 この不信感は隣国ポーランドに伝染しかねません。「次はポーランドが捨てられるかもしれない」と。そして、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニアへと伝わっていく。それは、政治同盟でもあるNATOにとって、加盟30カ国を擁する同盟の根幹を揺るがしかねない事態です。 今回のウクライナ危機を契機に、NATO同盟国の中で「ファーストクラス」「セカンドクラス」という言葉を聞くようになりました。おそらく、ファーストクラスは冷戦が終結する前からNATOに加盟していた西欧の国々。セカンドクラスは冷戦後に加盟した東欧やバルト3国などとみられます。 この区別は、ロシアがプロパガンダの一環として使い始め流布させたようです。北大西洋条約の集団防衛条項(第5条)*の考えに背くものであり、セカンドクラスの国々は、ファーストクラスの国々から見捨てられる不安を抱くことになりかねません。このような心理的な分断が、スバルキ・ギャップでの物理的分断によって増幅される恐れがあるわけです。 *:加盟国の一国に対する攻撃を全締約国への攻撃とみなす ●ロシアの“属国”と化したベラルーシ ロシアがスバルキ・ギャップを舞台にこうした心理戦を展開できるのは、ベラルーシとの関係改善があるからです。その背景に、ベラルーシに対する西側諸国の厳しい態度や制裁が大きく作用したとの見方があります。 ———確かにベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は就任した当初はロシアを警戒していた印象があります。 長島: 当初はどちらかと言えば欧州寄りでした。しかし、その後、ルカシェンコ政権が(1)難民を意図的に集め西側に不法に越境させた、(2)2020年の大統領選をめぐる不正疑惑をきっかけに起きた抗議デモを弾圧した、などを理由に西側が制裁を発動しました。ルカシェンコ大統領はこれに反発し、ロシアとの関係強化に傾いたのです。同政権は、今ではロシアと非常に良好な関係を維持しています。 ———ロシアの専門家の間では、ベラルーシは事実上「ロシアの属国」になったとの見方があります。この流れが大きくなったのは、ご指摘の大統領選挙でした。ルカシェンコ陣営による不正疑惑が浮上し、抗議デモなど、同大統領の退陣を求める動きが拡大しました。この状況を押さえ込むのに、ルカシェンコ大統領はロシアに依存したとされています。プーチン大統領はロシア内務省傘下に予備警察隊を設置し、介入する体制を整えました。 反ルカシェンコ派は「同大統領は倒したい。しかし、倒せばロシアの介入を招く」というジレンマに陥りました。この過程で、反体制派のシンボル的存在となったスベトラーナ・チハノフスカヤ氏らが国外に避難せざる得なくなったのは印象的でした。 西側諸国はベラルーシに経済制裁を発動。このためベラルーシは経済でもロシアを頼ったとされます。 長島: 現在行われている合同軍事演習「同盟の決意2022」もベラルーシ側から要請したといわれています。ロシア側は前回の2021年9月の合同演習「ザーパド」から時間がたっておらず、「まだやらなくてよい」という考えでした。 ベラルーシ軍とロシア軍の一体化も進みつつあります。シリアでの作戦では、ロシア軍の指揮下にベラルーシ軍が入ることが検討されています。これが今後、軍全体に及ぶ可能性も否定できません。 ———ベラルーシとロシアは2021年11月には28項目からなる経済統合計画に署名。さらに新たな軍事ドクトリンにも署名しました。いずれも内容は不明ですが、新軍事ドクトリンにおいて、長島さんが指摘された軍の指揮権の問題が定められているとの見方があります。ベラルーシ軍が事実上、ロシア軍の“ベラルーシ軍管区”になってしまう。 長島: さらに、ルカシェンコ大統領が起草中の改憲案には、ロシア軍の常駐を認める条文があるとして、米国防総省が警戒しています。その常駐するロシア軍が核兵器を備える可能性もある。そうなればNATOにとって最悪のシナリオでしょう。「同盟の決意2022」で様々な核兵器を取り上げているのは、この最悪のシナリオをNATOに意識させるためのメッセージと考えられます。 プーチン大統領は2014年にクリミア半島を併合する際にも「核兵器を臨戦態勢に置く用意があった」と明らかにしています。 ———ロシアは同演習において、ICBM(大陸間弾道ミサイル)「ヤルス」や、航空機から発射する極超音速弾道ミサイル「キンジャール」を発射しました。いずれも核弾頭を搭載することが可能です。 さらに、ルカシェンコ大統領は2021年12月、クリミア半島について「住民投票後、クリミアは事実上、法的にもロシアになった」と発言し、併合を承認しました。 ベラルーシの動きからも目が離せません。 |
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●日経平均が続落、午前終値288円安 昨年来安値下回る 2/24
24日午前の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前引けは前営業日比288円15銭(1・09%)安の2万6161円46銭と、1月に付けた昨年来安値(2万6170円)を下回った。ウクライナ情勢をめぐる地政学リスクの一段の高まりを嫌気した売りが優勢だった。下げ幅は一時300円を超えた。 ロシアがウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立を承認して派兵を決定。外交的解決の糸口になるとみられていた米ロの外相会談や首脳会談が22日に相次いで撤回された。事態の深刻化を受けて米ダウ工業株30種平均は22〜23日の2日間で900ドル超下げ、祝日明けの東京市場も運用リスクを回避する売りがかさんだ。 ブリンケン米国務長官は23日、米NBCテレビのインタビューで「ロシアはウクライナに対して侵攻するための準備が整っているようだ」との見解を示した。近く大規模に侵攻する可能性に言及し、投資家の不安をさらに高めた。 日経平均が昨年来安値を下回った後は主力銘柄に買いも入って下値を支えた。三井住友DSアセットマネジメントの石山仁チーフストラテジストは「2万6000円が心理的な節目として意識されるなか、(米ロ間で)一段と緊張が高まるのか、何らかの妥協策が見いだせるのかを見極めようと、様子見の雰囲気が強まった」とみていた。 JPX日経インデックス400と東証株価指数(TOPIX)は続落した。 前引け時点の東証1部の売買代金は概算で1兆5605億円、売買高は6億4850万株だった。東証1部の値下がり銘柄数は1349と、全体の約6割を占めた。値上がりは723銘柄、変わらずは108銘柄だった。 ファナックやスクリン、フジクラが下落した。京王や小田急も安い。半面、住友鉱やDOWAが買われた。川崎汽、商船三井も高い。 |
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●原油急騰、100ドル突破 ウクライナ侵攻で7年ぶり 2/24
ロシアのウクライナ侵攻を受け、原油価格の代表的な指標の一つの英国産北海ブレント先物相場が24日、1バレル=100ドルを突破した。2014年9月以来、約7年5カ月ぶり。市場ではさらに上昇するとの見方もあり、ガソリン高などを通じ日本の消費者にも影響が出そうだ。 北海ブレントは前日比5%超値上がりし、102ドル台を付けた。年初からの上昇率は約30%に達した。もう一つの指標である米国産WTI先物相場も一時、前日比5%超高の97ドル台と急騰した。 欧米諸国によるロシア経済制裁と、それに対する報復措置が原油市場に混乱をもたらすとの懸念が広がった。石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどで構成する「OPECプラス」は現時点で追加増産に慎重な姿勢を崩していない。米国などでシェールオイルの開発が進む可能性もあるが、石油の需給は当面逼迫(ひっぱく)する恐れがある。 |
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●ロシア ウクライナ軍事侵攻 “80以上の施設攻撃”ロシア国防省 2/25
ロシアは24日、ウクライナに対する軍事侵攻に踏み切り、ロシア国防省はこれまでに11の空港を含むウクライナ軍の80以上の施設を攻撃したと発表しました。プーチン大統領は「ほかに選択肢はなかった」と述べ、軍事侵攻を正当化しました。ロシアによる軍事侵攻は24日、ウクライナの各地で始まり、ロシア国防省はこれまでに11の空港を含むウクライナ軍の83の地上施設を攻撃したと発表しました。ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は、あくまでも軍事施設を対象にした攻撃であり、民間人に対する脅威はないと主張しました。 一方、ウクライナ軍参謀本部によりますと、首都キエフの郊外にある軍事施設が巡航ミサイルの攻撃を受けたほか、ウクライナ軍の東部の拠点となっているクラマトルスクや、南部にある軍事施設など各地で攻撃が続いたということです。ゼレンスキー大統領は国民に向けて演説し、一連の攻撃でこれまでにウクライナ人137人が死亡し、316人がけがをしていると明らかにしました。また、ウクライナ大統領府の幹部は地元メディアに対して、国内にあるチェルノブイリ原子力発電所が激しい戦闘の末、ロシア軍の部隊に占拠されたとしています。敷地内にある放射性廃棄物の貯蔵施設の状態は不明だということです。 さらに、ウクライナ東部の親ロシア派の幹部は、ウクライナ政府が統治する地域まで侵攻し、2つの州の全域を掌握したいとする考えを示しました。 ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアによる軍事侵攻を強く非難したうえで、ロシアとの国交の断絶を表明しました。 こうした中、ロシアのプーチン大統領は24日、国内の経済界との会合で「いま起きていることはすべて必死の手段だ。ほかに選択肢はなかった」と述べ、軍事侵攻を正当化しました。ロシア軍は、欧米側の警告を無視してウクライナ各地で軍事侵攻に踏み切り、国際社会からの非難が強まっています。 ●被害現場の様子は ロイター通信は、ロシア軍が攻撃を行ったとされる、ウクライナ東部、ハリコフ州での複数の被害現場の様子を伝えています。このうち、州都のハリコフにある建物の室内を映した映像では、部屋の屋根や壁が大きく崩れ、破片が床に散乱して足の踏み場もない状態になっています。また、州内の別の都市のチュグエフにあるマンションは、壁一面の窓ガラスのほとんどが割れてなくなり、ベランダの部分がめちゃくちゃに壊れ、がれきが地面に散乱しています。近くには、毛布にくるまって不安そうに電話をかける女性や、壊れたマンションの前で立ちすくむ人たちの姿もありました。一方、親ロシア派が事実上支配している東部のドネツク州でも被害が出ていて、避難を余儀なくされる住民からは不安やとまどいの声が聞かれました。住民の女性たちは「自分の家を離れなければならない。いったい何が起きているのか」とか「1人なのにどこに逃げればいいの」などと半ば叫ぶように話していました。 ●防空ごうとして使用か 地下鉄の駅に多数の市民集まる ウクライナ第2の都市、ハリコフでロイター通信が24日に撮影した映像では、多くの市民が薄暗い地下鉄の駅の構内で硬い床の上で隙間なく座ったり、身を寄せ合ったりしている様子が確認できます。小さな子どもを連れて避難して来た人や床の上で横になって休む人の姿もみられます。駅に避難してきた男性は「軍は私たちに地下鉄の駅に集まるよう呼びかけている。ロシア軍が怖い」と話していました。海外メディアによりますと、首都のキエフでも地下鉄の駅が防空ごうとして使われ、大勢の人が集まった場所もあるということです。 ●ウクライナと国境接するポーランドに避難の人々 ウクライナと国境を接するポーランドには車や列車などでウクライナの人々が逃れ始めています。このうちポーランド南東部の町メディカにある国境では、24日、仕事などでの通常の往来に加え、ウクライナ側から歩いて国境を渡る人たちが目立ち、ベビーカーを押す母親や、スーツケースを引く家族の姿が見られました。また、国境に近い都市、プシェミシルの駅では、予定より4時間ほど遅れてウクライナの首都キエフからの列車が到着しました。ホームにはポーランドの国境警備隊や警察が出動し、ものものしい雰囲気の中、乗客は足早に駅をあとにしていました。ポーランド政府は、ウクライナから多くの避難民を受け入れる用意があるとしていて、国境近くのスポーツ施設には、避難所が設けられ、地元の消防隊員たちが、マットレスを運び込んで準備を進めていました。 ●ウクライナ側発表の被害状況 ウクライナ大統領府の補佐官は24日の会見で、ロシア軍の侵攻開始以来、ウクライナ軍の兵士40人以上が死亡し、数十人が負傷したと発表しました。現地メディアによりますと、補佐官は、被害は主に空爆やミサイル攻撃によるものだとしたうえで「一定の消耗はある」としながらも、人員、弾薬、戦闘能力のいずれにも深刻な影響は出ていないという見方を示しました。また、ロイター通信は、地元当局の話として、黒海沿岸の港湾都市オデッサ周辺では、ミサイル攻撃によって市民など少なくとも18人が死亡したと伝えています。さらに、ウクライナ警察の発表として24日にロシア側から203回にわたって攻撃を受け、領土のほぼ全域で戦闘が繰り広げられていると伝えています。ウクライナのクレバ外相は「ロシアの侵攻は東部にとどまらず、多方面から全面的な攻撃を受けている。ウクライナは防衛を続ける」とSNSに投稿し、国内全土に戦闘が広がっているとしました。また、ウクライナ軍参謀本部はSNSで24日、ウクライナ軍が東部のルガンスク州でロシア軍の兵士およそ50人を殺害したとしました。 ●米 国防総省「大規模な軍事侵攻の初期段階にある」 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻についてアメリカ国防総省の高官は24日「大規模な軍事侵攻の初期段階にある」と指摘し、首都キエフに侵攻し、ウクライナ政府を崩壊させることを意図しているという見方を示しました。具体的には、ロシア軍は人口が集中する地域を奪取するため、ウクライナ北部と国境を接するベラルーシから首都キエフに向かうルートなど、主に3つのルートで前進しているとしています。また、ロシア軍の最初の攻撃では短距離弾道ミサイルをはじめ、中距離弾道ミサイルや巡航ミサイルなど推定で100発以上が発射されたほか、爆撃機などおよそ75機が使われたとしました。これらの攻撃は弾薬庫や飛行場など軍事施設を主な標的としていて、民間人を含む死傷者の数は分からないとしています。国防総省の高官は「ロシアは首都キエフに向かっていて、われわれの分析では彼らはウクライナ政府を崩壊させ、自分たちの統治方法を確立するつもりだと考えられる」と指摘しました。この高官は、ウクライナに軍事支援などを続ける方法を探るとしましたが、ウクライナ国内にアメリカ軍の部隊を派遣することはないと重ねて強調しました。 ●ゼレンスキー大統領「新たな鉄のカーテンが下りた」 ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、国民に向けて演説を行いました。この中でゼレンスキー大統領は「私たちがいま耳にしているのは、ロケットの爆発音や戦闘の音、軍用機のごう音だけではない。新たな鉄のカーテンが下りてロシアを文明世界から切り離す音だ。このカーテンを私たちの国に下ろすのではなくロシア側にとどめなければならない」と述べ、東西冷戦時の「鉄のカーテン」という表現を用いてロシアを非難しました。一方、多くのロシア市民も今回の侵攻に衝撃を受け、中にはSNSで反対を表明している人もいるとして、こうした人々にプーチン大統領に直接、訴えかけてほしいと呼びかけました。そしてウクライナ国民に対しては「祖国防衛に協力し、軍や国境を守る部隊に参加してほしい。敵にさらなる侵攻を許すかどうかは私たちの対応にかかっている。献血などを行ってボランティアや医療関係者も助けてほしい」と述べ、国民に結束と協力を呼びかけました。さらに世界の政治指導者に向け「自由世界を率いるあなたたちがいま私たちに手を差し伸べなければ、あすはあなたたちが戦禍に見舞われるだろう」と述べ、ウクライナへの支援を呼びかけました。 ●プーチン大統領 各国首脳と相次ぎ会談 ロシアのプーチン大統領はウクライナへの軍事侵攻を開始したあとの24日、モスクワを訪問中のパキスタンのカーン首相と会談しました。パキスタン首相府によりますと、この会談は、アフガニスタンの人道支援などを話し合うためもともと予定されていたものだということです。このなかで、カーン首相はウクライナの情勢について、遺憾の意を表し、外交によって軍事衝突を回避するよう望むとプーチン大統領に直接伝えたということですが、会談でのプーチン大統領の発言はこれまでのところ、伝えられていません。また、インド政府によりますと、24日夜、モディ首相とロシアのプーチン大統領が電話で会談しました。この中でモディ首相は、ロシアとNATO=北大西洋条約機構の間の相違は真摯(しんし)な対話によってのみ解決できると指摘したうえで、暴力の即時停止と、外交の場に戻るためにすべての当事者が一致して取り組むことを求めたということです。一方、インド外務省のシュリングラ次官は24日夜の会見で、ロシアに対する制裁について「アメリカやEU、オーストラリア、日本、イギリスなどが追加的な制裁を科すとしているが、事態は刻々と変化しており、これらの措置が自国の利益にどのような影響を与えるのか慎重に見極める必要がある」と述べ、直ちに制裁などの措置をとる考えはないことを明らかにしました。インドはロシアと長年友好関係にあり、特に軍事面の結び付きが強いことで知られています。イラン大統領府は、24日、ライシ大統領が、ロシアのプーチン大統領と電話で会談したと発表しました。この中でライシ大統領は「NATO=北大西洋条約機構の東方への拡大は、さまざまな地域の安全や安定に対する深刻な脅威だ」と述べて、ウクライナへの軍事侵攻に踏み切ったロシアの立場に理解を示しました。そのうえで「この事態があらゆる国民や地域にとって恩恵がある形で終わることを望む」と述べたということです。これに対し、プーチン大統領は「現状起きていることは、ロシアの安全保障を脅かす西側の行為に対する正当な対応だ」と応じたとしています。イランは敵対するアメリカに対し、制裁の解除などを求めて間接的な協議を続けていますが、このところ、同じようにアメリカとの対立を深めるロシアとの関係を強化する姿勢を鮮明にしています。 ●仏 マクロン大統領 プーチン大統領と電話会談“軍事作戦停止を” フランスのマクロン大統領は24日、ロシアのプーチン大統領と電話で会談しました。フランス大統領府によりますと、マクロン大統領は、今回の軍事作戦によってロシアは大規模な制裁にさらされているとして、プーチン大統領に対しウクライナでの作戦を直ちにやめるよう求めたということです。ただ、これに対しプーチン氏がどう答えたかなど、詳しいやり取りの内容は明らかにされていません。 ●米各地でロシア軍事侵攻に抗議のデモ アメリカでロシアの軍事侵攻に抗議するデモが各地で行われました。このうちニューヨークでは、ウクライナ出身の人など数百人が集まり、「戦争反対」や「ウクライナはロシアの一部ではない」と書かれたプラカードを掲げながら、ウクライナの国歌を歌ったり「今すぐロシアを止めろ」などと声を上げたりしていました。13歳の息子と一緒に参加したウクライナ出身の女性は、「自分と夫が生まれた場所が攻撃されているのでここに来ました。ウクライナで何が起こっているのか、アメリカや世界の人々に知ってもらいたいです。世界は再び団結する必要があります」と話していました。また、家族や親戚がウクライナに住んでいるという女性は「この2、3週間、希望を持っていましたが、実際にこんなことが起こり、ショックで信じられません。ウクライナ西部にいる父方の親戚からは連絡がないので私たちはただここで祈るしかありません」と話していました。 ●仏 英でロシアへの抗議デモ ロシアの軍事侵攻に対して、フランスのパリにあるロシア大使館の前では24日、ウクライナ出身の人たちなど数百人が集まり、ウクライナの国旗を掲げながら「プーチンを止めろ、戦争をやめろ」などと、抗議の声を上げました。幼い子ども2人を連れて参加した女性は、ウクライナに住む家族とのチャットで砲撃が始まったことを知ったと話しました。女性は「首都キエフに住む妹は朝4時から砲撃の音が聞こえて眠れないと書き込んでいて、地方に暮らす父が迎えに行くそうです。この恐怖と惨事を止めるために、世界の支援が必要です。ウクライナだけでは無理です」と訴えていました。また、キエフ出身の留学生の男性は現地の家族と1時間おきに電話で連絡をとって無事を確認しているということで「砲撃に備えて両親や兄の子どもたちが避難できるように地下室を準備しているそうです。食料の心配はまだありませんが、少し混乱があるようで、多くの人が肉などを買おうとしているそうです」と話していました。また、イギリスのロンドンでも、首相官邸前に、ウクライナ出身の人など数百人が集まり、プーチン大統領への抗議の声をあげるとともに、イギリス政府に対し、ロシアへの厳しい制裁を求めました。参加した女性は「ロシアを国際的な決済システムから遮断するなど、厳しい制裁を科してほしい」と話し、別の男性は「ロシアは国際法を完全に無視し、民間人を殺害している。ウクライナの友人たちは、兵士として戦い、何の理由もないのに死んでいる」と怒りをあらわにしていました。 ●ロシア国内でも軍事侵攻に反対するデモ 約1400人が拘束 ロシアのウクライナに対する軍事侵攻に反対するデモはロシア国内でも行われ、首都モスクワでは24日、多くの市民が集まって「戦争はいらない」などと声を上げながら、デモ行進しました。フランスのAFP通信によりますと、このデモにはおよそ2000人が参加したということで、参加した女性は「対立はどちらの側からも暴力的な行為なしに平和的に解決されなければなりません」と話していました。参加した人たちは静かに行進を続けていましたが、一部の人は警察に拘束され、次々に車両に乗せられていました。ロシアではこの日、モスクワのほか、第2の都市サンクトペテルブルクなど各地で抗議デモが行われましたが、人権監視団体によりますと、警察に拘束された人は国内の51の都市で合わせておよそ1400人に上るということです。 ●国連 グテーレス事務総長「軍事行動を中止し直ちに撤退を」 国連のグテーレス事務総長は24日、記者会見し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「間違っている。国連憲章に反している。受け入れられない」と述べ、ロシアのプーチン大統領に対して軍事行動を中止し軍を直ちに撤退させるよう求めました。そのうえで「罪のない人たちが常に最も大きな代償を払うことになる。民間人の保護を最優先にしなければならない」と述べ、国連の基金から2000万ドル、日本円にして23億円余りを拠出して、ウクライナに緊急人道支援を行うことを明らかにしました。 ●ノーベル平和賞受賞のロシアの新聞編集長 軍事侵攻に反対の声 ウクライナへの軍事侵攻についてロシアの主要メディアが政権の意向に沿ってロシアの行動を正当化する報道をしている中、反対の声を上げる記者たちもいます。このうち、プーチン政権の強権的な姿勢を批判する報道を貫き、去年、ノーベル平和賞を受賞したロシアの新聞の編集長、ドミトリー・ムラートフ氏は、24日、新聞社の公式サイトに動画のメッセージを掲載しました。この中でムラートフ氏は「私たちは悲しみの中にある。わが国はプーチン大統領の命令で、ウクライナとの戦争を始めてしまった。止める者は誰もいない。私は悲しいとともに、恥ずかしいと感じる」と、心境を語りました。そして「私たちはウクライナを敵国と認めず、ウクライナ語を敵国語としない」と述べたうえで今後、ムラートフ氏の新聞社ではウクライナ語とロシア語の2か国語で記事を執筆し、ウクライナの人たちに向けてもメッセージを発信していくことを明らかにしました。さらに「最後にもう1つ。この地球上の命を救えるのはロシア人の反戦運動だけだ」とし、ロシア側から戦争反対の声を上げ続けることの重要性を訴えました。 ●専門家「ゼレンスキー大統領 非常に厳しい局面」 ウクライナ政治が専門で神戸学院大学の岡部芳彦教授は「汚職撲滅やクリミア半島の返還を訴え国民的な人気を得てきたゼレンスキー大統領がロシアに歩み寄る選択肢は考えられず、非常に厳しい局面に立たされている」と指摘しています。ゼレンスキー大統領は、コメディアンや俳優として活躍した元人気タレントで、高校教師が大統領に転身し、次々と政治改革を進めていくテレビドラマ「国民のしもべ」で主役を演じ、41歳だった2019年に、実際に大統領選挙で当選しました。クリーンなイメージで汚職撲滅やクリミア半島の返還を訴え、国民的な人気を集め、安定した政権運営を進めてきたということです。岡部教授はゼレンスキー大統領が置かれている状況について「政府は今のところ機能していると思うが情報が錯そうし、指揮系統が維持されているかはわかりにくい。部分的な侵攻であれば何とか持ちこたえられたかもしれないがここまで大規模になるとロシアに太刀打ちする手段はない。欧州路線を明確にしてきただけにロシアに歩み寄る選択肢は考えられず、引き続き国際社会に支援を訴えていく形になるが非常に厳しい局面に立たされている」と指摘しています。 |
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●ロシアがウクライナに軍事侵攻 2/25
●日本時間11:00すぎ 「首都キエフで複数の爆発音」 現地メディア ウクライナのメディアによりますと、日本時間のきょう午前11時すぎ、ウクライナの首都キエフで複数の爆発音が聞こえたということです。ウクライナ内務省の関係者がフェイスブックに投稿した内容によりますと、ウクライナ軍がキエフ上空を飛行するロシア軍の軍用機を撃墜させ爆発が起きたということです。これによってキエフの中心部にある9階建てのビルが炎上したということです。 ●日本時間10:00 ウクライナの駐日大使「最悪のシナリオも想定」 ロシアがウクライナに対する軍事侵攻に踏み切ったことを受けて、ウクライナのコルスンスキー駐日大使が都内で会見を開き「最悪のシナリオも想定しなければならない」と強い危機感を示すとともに、日本も国際社会と足並みをそろえ、ロシアへの制裁を強化するよう求めました。 ●ウクライナ大統領 “137人が死亡” ウクライナのゼレンスキー大統領は日本時間の25日、国民向けのビデオメッセージをフェイスブックに投稿しました。この中で「悲しいことに137人の英雄たち、市民たちを失い、316人がけがをした。ウクライナのために命をささげた人たちは永遠に記憶される」とした上で、兵士だけでなく民間人にも犠牲者が出ていることを明らかにし、沈痛な表情で黙とうをささげました。 ●ウクライナ首相 “ロシア軍 チェルノブイリ原発を占拠” ウクライナのシュミハリ首相は24日、北部にあるチェルノブイリ原子力発電所が戦闘の末、ロシア軍に占拠されたと明らかにしました。AP通信の映像では、所属不明の軍用車両とみられる複数の車両が原子力発電所の敷地内に入り込んでいる様子が確認できます。チェルノブイリ原子力発電所では旧ソビエト時代の1986年、運転中の原子炉で爆発が起こり、史上最悪の事故と言われています。シュミハリ首相は、戦闘による犠牲者はいなかったとしていますが、敷地内にある放射性廃棄物の貯蔵施設の状態は分かっていません。 ●国連事務総長 “ウクライナに緊急人道支援“ 国連のグテーレス事務総長は24日、記者会見し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「間違っている。国連憲章に反している。受け入れられない」と述べ、ロシアのプーチン大統領に対して軍事行動を中止し軍を直ちに撤退させるよう求めました。その上で「罪のない人たちが常に最も大きな代償を払うことになる。民間人の保護を最優先にしなければならない」と述べ、国連の基金から2000万ドル、日本円にして23億円あまりを拠出して、ウクライナに緊急人道支援を行うことを明らかにしました。 ●日本時間8:40ごろ 鈴木財務大臣 ロシア3銀行の資産凍結を発表 ロシア軍によるウクライナへの侵攻を受けて、鈴木財務大臣は、25日の閣議のあとの記者会見で、追加の経済・金融制裁としてロシアの3つの銀行を対象に資産凍結を行う方針を明らかにしました。対象となる3行は、開発対外経済銀行とプロムスビヤズ・バンク、バンク・ロシヤです。 ●日本時間8:20ごろ 岸田首相会見「厳しく非難」 岸田総理大臣は25日朝、記者会見を行い、「国際社会の懸命の努力にもかかわらず行われた今回のロシア軍によるウクライナへの侵攻は、力による一方的な現状変更の試みであり、ウクライナの主権と領土の一体性を侵害する明白な国際法違反だ。国際秩序の根幹を揺るがす行為として断じて許容できず、厳しく非難する」と述べました。その上で「わが国の安全保障の観点からも決して看過できない。G7をはじめとする国際社会と緊密に連携し、ロシアに対して、軍の即時撤収、国際法の順守を強く求める」と述べました。そして、追加の制裁措置として、資産凍結とビザの発給停止によるロシアの個人・団体などへの制裁、ロシアの金融機関を対象とする資産凍結、ロシアの軍事関連団体に対する輸出や半導体などの輸出に対する規制を行う考えを示しました。また、岸田総理大臣は、ウクライナに在留する日本人およそ120人の安全確保に向け、最大限努力すると強調し、西部のリビウに設けた臨時の連絡事務所で、隣国のポーランドに陸路で退避する場合の支援などを行うほか、ポーランドから他国に移動するためのチャーター機をすでに手配していると説明しました。 ●日本時間8:00ごろ 日本政府 NSC閣僚会合開く 政府は、午前8時ごろから総理大臣官邸で、岸田総理大臣をはじめ、林外務大臣や岸防衛大臣らが出席してNSC=国家安全保障会議の閣僚会合を開きました。 ●アメリカ バイデン大統領「プーチン大統領は侵略者だ」 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、アメリカのバイデン大統領は演説で「プーチン大統領は侵略者だ」と述べて強く非難するとともに、ロシア最大の金融機関の資産凍結や輸出規制の強化など、日本を含む同盟国などと足並みをそろえて大規模な制裁で応じると明らかにしました。 ●ロシア プーチン大統領「ほかに選択肢はなかった」 ロシアは、24日、ウクライナに対する軍事侵攻に踏み切り、ロシア国防省は、これまでに11の空港を含むウクライナ軍の80以上の施設を攻撃したと発表しました。プーチン大統領は「ほかに選択肢はなかった」と述べ、軍事侵攻を正当化しました。 ●ドイツ ショルツ首相「これはプーチンの戦争」 ドイツのショルツ首相は24日、国民に向けてテレビ演説を行いました。この中で、ウクライナの人々との連帯を強調したうえで「プーチン大統領はあらゆる警告や外交的解決に向けた努力に取り合わなかった。彼ひとりがこの戦争を決断し、全面的に責任を負う。これはプーチンの戦争だ」と述べ、プーチン大統領を厳しく非難しました。 ●ウクライナ 被害状況発表 ウクライナ大統領府の補佐官は24日の会見で、ロシア軍の侵攻開始以来、ウクライナ軍の兵士40人以上が死亡し、数十人が負傷したと発表しました。また、ロイター通信は、地元当局の話として、黒海沿岸の港湾都市オデッサ周辺では、ミサイル攻撃によって市民など少なくとも18人が死亡したと伝えています。さらに、ウクライナ警察の発表として24日にロシア側から203回にわたって攻撃を受け、領土のほぼ全域で戦闘が繰り広げられていると伝えています。 ●日本時間3:15 ウクライナと国境接するポーランドに避難の人々 ウクライナと国境を接するポーランドには車や列車などでウクライナの人々が逃れ始めています。このうちポーランド南東部の町メディカにある国境では、24日、仕事などでの通常の往来に加え、ウクライナ側から歩いて国境を渡る人たちが目立ち、ベビーカーを押す母親や、スーツケースを引く家族の姿が見られました。 ●ゼレンスキー大統領「新たな鉄のカーテンが下りた」 ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、国民に向けて演説を行いました。この中で「私たちがいま耳にしているのは、ロケットの爆発音や戦闘の音、軍用機のごう音だけではない。新たな鉄のカーテンが下りてロシアを文明世界から切り離す音だ。このカーテンを私たちの国に下ろすのではなくロシア側にとどめなければならない」と述べ、東西冷戦時の「鉄のカーテン」という表現を用いてロシアを非難しました。 ●日本時間2:30すぎ プーチン大統領 パキスタン カーン首相と会談 ロシアのプーチン大統領はウクライナへの軍事侵攻を開始したあとの24日、モスクワを訪問中のパキスタンのカーン首相と会談しました。パキスタン首相府によりますと、この会談は、アフガニスタンの人道支援などを話し合うためもともと予定されていたものだということです。このなかで、カーン首相はウクライナの情勢について、遺憾の意を表し、外交によって軍事衝突を回避するよう望むとプーチン大統領に直接伝えたということですが、会談でのプーチン大統領の発言はこれまでのところ、伝えられていません。 ●ロシア ウクライナ軍事侵攻 “80以上の施設攻撃”ロシア国防省 ロシアによる軍事侵攻は24日、ウクライナの各地で始まり、ロシア国防省はこれまでに11の空港を含むウクライナ軍の83の地上施設を攻撃したと発表しました。ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は、あくまでも軍事施設を対象にした攻撃であり、民間人に対する脅威はないと主張しました。 ●岸田首相「さらに強い措置 きょう中にも明らかに」 G7の緊急首脳会議のあと、岸田総理大臣は、総理大臣官邸で記者団に対し「今回のロシア軍の侵攻を受けてきのう発表した一連の措置に加え、さらに金融、輸出管理などの分野で、欧米と足並みをそろえて、速やかにさらに厳しい措置をとるべく取り組んでいく。引き続きG7をはじめとする国際社会と連携しながら、取り組んでいきたい」と述べました。そのうえで「速やかにさらに強い措置を取るべく取り組んでいきたい。内容については、きょう中にも明らかにしたい」と述べました。 ●G7首脳会議 岸田首相「ロシアを強く非難 連帯して対処する」 ウクライナ情勢をめぐり、G7の緊急首脳会議が日本時間の24日夜11時すぎから1時間余りオンライン形式で開かれ、岸田総理大臣も参加しました。この中で岸田総理大臣は「今回のロシア軍による侵攻は、ウクライナの主権および領土の一体性の侵害、武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反であり、国連憲章の重大な違反だ。力による一方的な現状変更を認めないとの国際秩序の根幹を揺るがすものであり、ロシアを強く非難する」と述べました。その上で「G7の一員として完全に連帯して対処する。今回の侵攻を受け、さらに金融、輸出管理などの分野で、アメリカ・ヨーロッパ諸国と足並みをそろえて速やかにさらに厳しい措置をとるべく取り組んでいるところだ」と述べました。さらに「このような困難な状況の中で、国際社会として引き続き、ウクライナの主権、領土の一体性への支持を強く表明していく必要がある」と指摘しました。また「世界経済、特にエネルギー価格への影響にも対処する必要がある。G7がエネルギー市場の安定化に向けた強い姿勢を示すことが重要だ」と述べました。そして「本件は、法の支配に基づく国際秩序に対する挑戦だ。われわれがロシアの行動に適切に対処することは、ほかの国々に誤った教訓を残さないためにも必要だ。引き続き、G7が共通の価値に基づく秩序を守るため、よく意思疎通し、強固な連携と断固たる決意を示していくべきだと考える。引き続きG7のあらゆるレベルで緊密に連携していきたい」と述べました。 ●仏 マクロン大統領「制裁 ロシアの攻撃に見合ったものに」 フランスのマクロン大統領は24日、国民向けにテレビ演説を行い「プーチン大統領は約束を破り、外交ルートを拒絶し、戦争を選ぶことによってウクライナを攻撃しただけでなく、主権を踏みにじり最も深刻な方法で、何十年も続いてきたヨーロッパの平和と安定を侵害することを選んだ。昨夜から起きたことはヨーロッパとフランスの歴史の転換点だ」と述べ、厳しく非難しました。そして「われわれの制裁は、ロシアの攻撃に見合ったものになる。手加減はしない」と述べ、EU=ヨーロッパ連合としてロシアに厳しい制裁を科す考えを示したうえで「われわれは自由と主権、それに民主主義の原則への連帯を諦めない」と述べ、国民に連帯を呼びかけました。 ●IOC声明「休戦求める決議違反 強く非難」 国連総会は、オリンピックとパラリンピックの期間中に休戦を求める決議を各大会の前年に採択していて、北京大会に向けた決議は去年12月にロシアを含む173か国が共同提案国となって採択され、先月28日からパラリンピック閉幕の7日後にあたる来月20日までの間、世界のあらゆる紛争の休戦を呼びかけています。IOCは「ロシア政府によるオリンピックとパラリンピックの期間中の休戦を求める決議違反を強く非難する」という声明を公式ホームページで発表しました。声明では、北京オリンピックの開会式や閉会式でバッハ会長が休戦を求める決議を順守するよう求めたことに触れ、世界の政治指導者に改めて連帯と平和を呼びかけています。そのうえでIOCとして「ウクライナのオリンピック関係者の安全を深く懸念する」として人道的支援に乗り出す考えを示しました。 ●G7首脳会議始まる G7=主要7か国の首脳による緊急の会議が、日本時間の24日夜、オンライン形式で始まりました。会議では、ロシアへの厳しい制裁を含めた対抗措置について意見を交わすほか、ウクライナに対する支援についても協議し、G7として結束して対応する方針を確認するものとみられます。首脳会議に先立って、議長国ドイツのショルツ首相は24日記者団に対し、ロシアによる軍事侵攻について「プーチン大統領の戦争であり、正当化することはできない」と非難したうえで「G7の首脳会議では、強い経済力をもつ世界の民主主義国家として、一致した明確な対応をとれるよう力を尽くす」と述べました。 ●英 ジョンソン首相「世界の民主主義と自由に対する攻撃」 イギリスのジョンソン首相は24日、テレビ演説を行い「最も恐れていたことが今、現実のものとなった。ロシアのプーチン大統領は、われわれのヨーロッパ大陸で戦争を始めた。ウクライナにとどまらず、東ヨーロッパ、そして世界の民主主義と自由に対する攻撃だ」などと厳しく非難しました。そして、自由が奪われるのを見過ごすことはできないとして、同盟国と協調して、ロシア経済にとって打撃となる厳しい経済制裁を行う考えを強調しました。また、ジョンソン首相は、ウクライナに対して支援を続ける考えを示したうえで「われわれの使命は明らかだ。外交面、政治面、経済面、そして最終的には軍事面で、プーチン大統領によるおぞましく野蛮な企てを失敗に終わらせることだ」と主張しました。 ●NATO「即応部隊」速やかに派遣する態勢 ロシア軍のウクライナへの軍事侵攻を受けて、NATO=北大西洋条約機構は、加盟国を守るため、必要に応じてNATOの即応部隊などを速やかに派遣するための態勢をとることを決めました。 |
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●ロシアがウクライナに軍事侵攻 2/24 ●日本時間24日20時過ぎ 林外相がEU上級代表と会談 「緊密に連携」 林外務大臣は、24日夜8時からおよそ15分間、EU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表と電話で会談しました。会談はEU側が呼びかけたもので、ボレル上級代表は、ロシアによるウクライナへの侵攻を強く非難し、EUとして、これまでにない厳しい制裁を科す予定だと伝えました。これに対し、林大臣は、今回のロシアの行動は、ウクライナの主権と領土の一体性を侵害し、国際法の重大な違反でもあり、決して認められないなどとした日本の立場を伝えました。また、ロシアのガルージン駐日大使を呼んで、直接抗議したことを説明しました。そして、両氏は、G7=主要7か国をはじめとした関係各国で、引き続き、緊密に連携しながら対応していくことを確認しました。 ●中国 王毅外相 対話に戻るよう呼びかけ 中国の王毅外相はロシアのラブロフ外相と電話で会談しました。中国外務省によりますと、この中で、ラブロフ外相はNATO=北大西洋条約機構がアメリカとともに約束をほごにして東方への拡大を続けたと指摘した上で「ロシアは、自国の権利と利益を守るために必要な措置をとらざるを得なくなった」と述べ、今回の軍事行動に至ったロシア側の立場を説明したということです。これに対し、王外相は「安全保障問題に関するロシアの合理的な懸念を理解している」としてロシア側の行動に一定の理解を示す一方「中国は一貫して、各国の主権と領土の一体性を尊重している」とも述べました。その上で「対話と協議を通じて、均衡がとれた有効で持続的なヨーロッパの安全保障メカニズムが形成されるべきだ」として、ロシアを含む当事者に対し改めて対話に戻るよう呼びかけました。 ●外務省 新たな「海外安全情報」ウクライナの主要空港閉鎖か ウクライナ情勢をめぐって、外務省は、24日夜、新たな「海外安全情報」を出しました。この中では、ウクライナ上空全域が「飛行禁止空域」に指定され、現時点で、キエフ市内の国際空港を含め、国内の主要空港はすでに閉鎖されたという情報があるとしています。そして、情勢は極めて不安定で、さらなる攻撃もあり得るとしたうえで、滞在する日本人に、最新の情報の入手に努め安全を最優先に行動するよう呼びかけています。また、今いる場所が安全でない場合は、周囲に細心の注意を払いながら、近くのシェルターなどに避難するよう促しています。外務省によりますと、ウクライナに滞在する日本人は、現在、およそ120人いるということです。 ●ロシア国防省「都市や町への攻撃 行っていない」 ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は、24日、ウクライナでの軍事作戦について説明し、ウクライナ東部2州の親ロシア派が事実上、支配している地域の人々を保護する目的だと主張しました。そして、親ロシア派の武装勢力がロシア軍の支援を受けて攻撃を開始し、ウクライナ政府軍との間で戦闘が続いているとしています。そのうえで「ウクライナの国境警備隊は、ロシア軍の部隊に抵抗していない。ウクライナ軍の兵士も武器を捨てて、退避している」と述べました。また、コナシェンコフ報道官は、ロシア軍の高性能の兵器を使った攻撃によってウクライナの軍の施設や飛行場などが無力化されたとする一方で、「ロシア軍は、ウクライナの都市や町への攻撃は行っていないと強調したい。民間人に対する脅威はない」と主張しました。 ●中国外務省報道官「平和の扉閉ざすことなく対話と協議努力を」 中国外務省の華春瑩報道官は記者会見で「中国は最新の動向を注視している。関係国は自制を保ち、状況を制御できなくなる事態を避けるよう呼びかける」と述べました。そのうえで「関係国は、平和の扉を閉ざすことなく対話と協議の努力を続け、事態をさらにエスカレートさせないよう願う」と述べました。一方、華報道官は、ロシア側の行動がウクライナへの侵略行為にあたるかどうか認識を問われたのに対し「ウクライナ問題は、非常に複雑な歴史的背景や経緯があり現在の状況に発展した」と繰り返し明確な回答を避けました。 ●東部2州の一部を事実上支配の親ロ派 “2州全域支配目指す” ウクライナの東部2州のうち親ロシア派が事実上支配し、ロシアが一方的に独立国家として承認した地域の幹部は、地元メディアのインタビューに対し「われわれの最大の課題は、行政上の境に到達し、ウクライナ政府の支配下にある人々を解放することだ」と述べました。武装勢力側は、ウクライナ政府が統治する地域まで侵攻し、両州の全域を支配したいとする考えを示したとみられます。 ●日本時間24日19:20すぎ NY原油先物価格 1バレル=100ドル超に ニューヨーク原油市場では、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって産油国ロシアからの供給が滞る懸念が強まり、原油価格の国際的な指標となるWTIの先物価格が一時、1バレル=100ドルを超えました。WTIが1バレル=100ドル台をつけるのは、2014年7月30日以来、7年7か月ぶりです。 ●林外相 駐日ロシア大使に抗議も“侵攻起こっていない” 林外務大臣は、ロシアのガルージン駐日大使を外務省に呼び、この中で「緊張緩和を求めてきたにも関わらず、今回行われた侵攻は、ウクライナの主権と領土の一体性の侵害であり、明らかに国際法違反で断じて認められず強く非難する。ただちに侵攻をやめてロシアに撤収すべきだ」と強く抗議しました。そして日本人を含めた民間人の安全を無条件で守るよう求めました。これに対しガルージン大使は「大臣の発言はモスクワに報告する。同時にこちらから反論したい。ロシアによるウクライナの侵攻というようなことは起こっていない。今起きていることは、大統領の決定による特殊軍事作戦で、その目的は、ウクライナ政府によって『ドネツク人民共和国』と『ルガンスク人民共和国』で虐げられた人を保護することだ」と述べました。 ●ロシアの駐日大使「目的は住民の保護だ」 ロシアのガルージン駐日大使は、外務省で記者団に対し「今回は、侵略や侵攻ではなく特殊軍事作戦で、その目的はジェノサイドを受けていた『ドネツク人民共和国』と『ルガンスク人民共和国』の住民の保護だ。また、NATOの東方拡大によるロシアの安全への脅威に対する 自衛の行動でもあると強調したい」と述べました。また、日本を含めた関係各国がさらなる制裁措置を検討していることについて「そのような制裁措置の発動は、いい雰囲気を作るために役に立つだろうかと聞きたい。私は役に立たないと思う」と述べました。 ●日本時間24日19:00すぎ 「ウクライナ軍兵士40人以上死亡」報道 ロイター通信は、ウクライナ大統領府の関係者の話として、これまでにウクライナ軍の兵士40人以上が死亡し、数十人がけがをしていると伝えました。このほか一般市民にも被害が出ているということで、現地の当局の話として、ハリコフ州の建物への攻撃で男の子1人が死亡したと伝えています。 ●ウクライナ大統領「ロシアとの断交」発表 抵抗呼びかけ ウクライナのゼレンスキー大統領はロシア軍がウクライナに軍事侵攻を開始したことをうけ「われわれはロシアとの外交関係を断絶した」と述べました。また、ゼレンスキー大統領は、市民に対して、武器を手にしてロシア軍に抵抗するよう呼びかけました。 ●24日17:30羽田空港発の日本航空のモスクワ便欠航 日本航空は、羽田空港からモスクワ空港に向けて出発する便の欠航を決めました。今後の運航については状況を見て判断するとしていて、ホームページなどで最新の情報を確認するよう呼びかけています。 ●ウクライナ「クリミアからロシア軍とみられる軍用車両が進入」 ウクライナの国境警備当局は24日、ロシアが8年前に一方的に併合したウクライナ南部のクリミアから、ロシア軍とみられる軍用車両が進入してくる映像を公開しました。映像には、ロシア軍のものとみられる戦車や軍のトラックなどがウクライナとクリミアとの境を次々に越える様子や、道路を走る様子が映っています。 ●ウクライナ軍「ロシア軍兵士を約50人殺害」 ウクライナ軍参謀本部は公式フェイスブックで24日、ウクライナ軍が東部のルガンスク州でロシア軍の兵士、およそ50人を殺害したと主張しました。また東部のドネツク州でロシア軍の軍用機を6機、撃墜したほか、北東部のハリコフ州でロシア軍の戦車4台を破壊したとしています。 ●ウクライナ内務省「ロシアの攻撃でこれまでに8人死亡」 ウクライナ内務省の幹部は警察当局の情報として、ロシアによる攻撃でこれまでに8人が死亡したと発表しました。それによりますと、ウクライナ南部のオデッサ州で現地時間の午前8時半ごろ爆撃があり、6人が死亡、7人がけがをしたほか、19人の行方が分からなくなっているということです。また、東部ドネツク州のマリウポリでも砲撃で1人が死亡し、2人がけがをしたなどとしています。 ●日本時間24日17:00ごろ ウクライナ 首都キエフでは大渋滞 ロシア軍がウクライナに対して軍事侵攻を開始したことを受けて、ウクライナの首都キエフではロシアから遠い西側へ逃れようとする市民の車で大きな渋滞が発生している様子が確認できます。西側に向かう大通りでは、複数の車線が車で埋め尽くされ、ほとんど動かない状態となっています。 ●ロシア通貨ルーブルは最安値を更新 ロシアによるウクライナへの攻撃を受けて、外国為替市場ではロシアの通貨ルーブルを売る動きが急速に強まり、ドルに対して一時、1ドル=89ルーブル台まで値下がりしてこれまでの最安値を更新しました。これを受けてロシアの中央銀行は通貨の安定に向けて市場介入に踏み切ることを決めたと発表しました。また、モスクワの取引所は24日、株式などの取り引きを一時、停止する措置を取りました。その後、株式市場で取り引きが再開されると売り注文が殺到して株価指数は前日に比べて30%を超える値下がりとなり、金融市場は大きく混乱しています。 ●日本時間24日16:00ごろ 仏大統領「同盟国とともに行動」 フランスのマクロン大統領は声明を発表し「ロシアが軍事侵攻を決断したことを強く非難する」として直ちに軍事行動をやめるよう求めました。そのうえで「フランスはウクライナと連帯し、戦争を終わらせるために同盟国とともに行動する」としています。フランス大統領府によりますと、マクロン大統領は日本時間の24日午後4時ごろ、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話で会談し、ウクライナへの支援を約束したということです。 ●24日16:00 松野官房長官「国際社会と連携して迅速に対処」 松野官房長官は午後の記者会見で「ロシア軍がウクライナ領域内に侵攻したものと承知している。力による一方的な現状変更を認めないとの国際秩序の根幹を揺るがすものであり、ロシアを強く非難するとともに、制裁の検討を含めアメリカをはじめとする国際社会と連携して迅速に対処していく」と強調しました。また、現地に滞在する日本人およそ120人に被害の情報はないとしたうえで「あらゆる事態に適切に対応できるよう、近隣国でチャーター機の手配を済ませるなどさまざまな準備を行っている」と述べました。そして「ウクライナ滞在中の邦人は自身の安全を図る行動をとるとともに、最新の治安関連情報を入手するよう努めてほしい。政府としては、極めて危険かつ流動的な現地情勢の中で在留邦人の安全確保に最大限取り組んでいく」と述べました。一方、経済への影響をめぐり「一次産品の価格への影響を含め、日本経済に与える影響を引き続き注視していく。国内のエネルギー安定供給に直ちに大きな支障を来す懸念はない。国民生活や日本経済を守るために、実効ある激変緩和措置が必要であり、できるだけ早く対応策を取りまとめ、追加的な措置を講じていきたい」と説明しました。 ●24日15:30すぎ 岸田首相「G7首脳会議踏まえ追加制裁措置検討」 岸田総理大臣は国会でウクライナ情勢について質問され「今後、事態の変化に応じてG7=主要7か国をはじめとする国際社会と連携し、さらなる措置をとるべく速やかに取り組んでいきたい。今夜11時からG7の首脳テレビ会議が予定されており、会議の状況も踏まえて、わが国として適切に対応を考えていきたい」と述べ、G7の緊急首脳会議を踏まえて追加の制裁措置を検討する考えを示しました。 ●24日15:30 東京 銀座で新聞号外 不安の声が聞かれる 東京 銀座では新聞の号外が配られ、受け取った人たちからは先行きへの不安の声が聞かれました。このうち食品関係の仕事をしている56歳の男性は「どの業界でもサプライチェーン・供給網などに影響は出てくるかなと思います。とてもショックで、第三次世界大戦だけにはなって欲しくないと思います。アジアの緊張も高まるでしょうし、日本もひと事ではないと思います」と話していました。また、53歳の会社員の女性は「ニュースを見てやっぱりそうなってしまったかというのが印象で、さらに石油の価格が上がるかもしれませんし、日本にどういう影響があるか心配です。怖いですし、もっと話し合いでうまくいけばよかったのにと思います」と話していました。 ●EU「大規模な制裁を科す」 EU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領とフォンデアライエン委員長は連名で声明を出し「ロシアによるウクライナへの前例のない軍事侵攻を最も強いことばで非難する。今回の不当な軍事行動は国際法に違反し、ヨーロッパと世界の安全と安定を脅かしている」として、ウクライナに対する敵対的な行動を直ちにやめるようロシアに要求しました。そのうえでロシアに対して大規模な制裁を科すと警告しました。EUは24日、ベルギーのブリュッセルで緊急の首脳会議を開き、今後の対応やロシアへの制裁について協議することにしています。 ●ロシア国防省「ウクライナ軍の制空権を制圧した」 ロシアの複数の国営通信社がロシア国防省の話として伝えたところによりますと、「ロシア軍はウクライナの空軍基地のインフラと対空防衛システムを無力化し、ウクライナ軍の制空権を制圧した」と明らかにしました。 また「ウクライナの国境警備隊はロシア軍に対して全く抵抗していない」としています。 ●24日15:00 日経平均株価の終値 2万6000円割り込む 24日の東京株式市場日経平均株価の終値は22日より400円以上値下がりして、ことしの最安値を更新しました。ウクライナ情勢をめぐり、ロシアが軍事作戦に踏み切った影響でおよそ1年3か月ぶりに2万6000円を割り込みました。 ●NATO事務総長 ロシアに軍事的行動をやめるよう求める NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は24日、声明を出し「ロシアのウクライナに対する無謀で正当な理由のない攻撃は大勢の市民の命を危険にさらすものだ。われわれが繰り返し警告し、外交努力を続けてきたにもかかわらず、ロシアはウクライナの主権と独立を侵害する道を選んだ」と述べ、ロシアを強く非難しました。そのうえで、ロシアに対し軍事的な行動を直ちにやめるよう求めるとともに、加盟国で今後の対応を協議する考えを示しました。 ●24日14:40 松野官房長官「これから報告受ける」 松野官房長官は総理大臣官邸に戻る際、記者団が「これまでに収集された情報について報告を受けるのか」と質問したのに対し「これからだ」と述べました。 ●日本時間24日14:30すぎ 独首相「ヨーロッパにとって暗黒の日」 ドイツのショルツ首相はツイッターに「ロシアの攻撃はあからさまな国際法違反で正当化できない。プーチン大統領による無謀な行為を最も強いことばで非難する」と投稿し、ロシアに対し直ちに軍事行動をやめるよう求めました。また「ウクライナにとってひどい日であり、ヨーロッパにとっても暗黒の日だ」としています。ドイツ政府の報道官によりますとショルツ首相は24日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話で会談し、全面的にウクライナと連帯する考えを伝えたということです。 ●24日14:30 米エマニュエル駐日大使「ロシアは戦争を選択した」 自民党の茂木幹事長は、先月着任したアメリカのエマニュエル駐日大使と党本部で会談しました。冒頭、エマニュエル大使は「ロシアは戦争を選択した。ロシアにとっても簡単な選択ではない。国際社会は、これがどんな結果を招くか、はっきりと言ってきた。岸田総理大臣と日本政府が示してくれた連帯に感謝している」と述べました。これに対し茂木氏は「ウクライナの状況を大変、深刻に捉えている。何よりも重要なことは、力による一方的な現状変更の試みはウクライナだけでなく、アジアにおける東シナ海や南シナ海でも決して許容できない。価値観を共有するアメリカや日本をはじめ、国際社会が一致団結してロシアへの対応を図っていきたい」と述べました。 ●バイデン大統領「同盟国とともに厳しい制裁を科す」 アメリカのバイデン大統領は声明を出し、ウクライナのゼレンスキー大統領と緊急の電話会談を行い、このなかで「ロシア軍によるいわれのない不当な攻撃を非難した」としています。そのうえでバイデン大統領は「ゼレンスキー大統領は私に対して、ウクライナ国民への支持とプーチン大統領による攻撃を明確に批判するよう世界各国の指導者に呼びかけてほしいと依頼してきた。アメリカは同盟国などとともにロシアに厳しい制裁を科していく。今後もウクライナとウクライナ国民に支援を提供し続ける」としてロシアに厳しい制裁を科し、ウクライナを支援していく考えを改めて強調しました。 ●「金」再び最高値を更新 1g=7100円台 大阪取引所で行われている24日の「金」の先物取引は、買い注文が膨らみ、取り引きの中心となる「ことし12月もの」の価格が一時、1グラム当たり7122円をつけました。比較的安全で有事に買われやすいとされる金は、ウクライナ情勢の緊迫化を受け値上がり傾向が続いていて、今月21日に記録した7041円を上回り、取り引き時間中の最高値を再び更新しました。 ●原油市場 先物価格上昇 国際的な原油価格の指標の1つであるニューヨーク市場のWTIの先物価格は、一時、1バレル=97ドル台まで上昇しました。これは2014年8月以来、7年半ぶりの高値です。また、ロンドンの市場で取り引きされている北海産のブレント原油の先物価格は、2014年9月以来、7年5か月ぶりに、1バレル=100ドルを超えました。 ●24日14:30 日本政府は官邸連絡室を“対策室”に格上げ ロシアがウクライナへの軍事行動を始めたという情報を受け、政府は、総理大臣官邸の危機管理センターに設けている官邸連絡室を、官邸対策室に格上げして情報の収集などにあたっています。 ●ウクライナ大統領 国民に冷静を呼びかけ ウクライナのゼレンスキー大統領はSNS上にウクライナ国民向けのビデオメッセージを投稿し「ロシアはウクライナ国内の軍事施設と国境警備隊への攻撃を行った。また、国内の多くの都市で爆発音が確認されている」と明らかにしました。また、アメリカのバイデン大統領と電話で会談したことを明らかにし「アメリカは国際的な支援を集めようとしている」と述べました。そして国民に対し「いまは皆さんが冷静でいることが求められる」と呼びかけたうえで「軍をはじめ防衛のためのすべての組織が対応している。私たちは強く、何事にも準備ができている。ウクライナは誰にも負けることはない」と述べました。 ●24日14:20すぎ 日本政府は国家安全保障会議を開催へ 参議院予算委員会では、岸田総理大臣とすべての閣僚が出席して新年度予算案の実質的な審議が行われていますが、休憩に入りました。休憩に入る前の質疑で、岸田総理大臣はウクライナ情勢の緊迫化を受けて「適切なタイミングでNSC=国家安全保障会議を開催したい」と述べました。 ●日本時間24日13:50 英首相「プーチン大統領 破壊の道選んだ」 イギリスのジョンソン首相はツイッターに投稿し「プーチン大統領は、ウクライナに対する攻撃によって、流血と破壊の道を選んだ」と強く非難しました。そして、イギリスや同盟国はロシアに対して断固とした対応をとると強調し、ウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談でもこうした考えを伝えたということです。 ●日本時間24日13時半 キエフ在住女性「テレビで銃撃音報道も」 ウクライナの首都キエフから南に150キロほど離れた場所に住むステパニュック・オリガさん(67)は日本時間の午後1時半ごろオンラインのテレビ電話で都内に住む娘のオクサーナさんに現地の状況を語りました。オリガさんは現地の様子について「テレビでは大統領の緊急のスピーチが流れていて、侵攻が始まったことを伝えている。テレビでは銃撃音がしているという報道もされている」と話していました。そのうえで「自宅にとどまり、パニックにならないように努めている」と話しています。 ●日本時間 正午 ウクライナ「ロシアが集中砲撃を開始した」 ウクライナ軍参謀本部は公式フェイスブックで「ロシアの武装勢力は24日午前5時、東部にある我々の部隊への集中砲撃を開始した」とロシア軍がウクライナ東部で攻撃を始めたと発表しました。また、攻撃は南部や西部でも行われているとしています。具体的な場所として、首都キエフの郊外に位置するボリスピルのほか、西部ジトーミル州にあるオジョルノエ、ハリコフ州にあるチュグエフ、ウクライナ軍の東部の拠点となっているクラマトルスク、それにウクライナ南部にあるクリバキノやチェルノバエフカを挙げています。ウクライナ軍によりますと、ロシア軍はこれらの地域にある飛行場と軍事施設に対して攻撃を開始したということです。一方、「ロシア軍が南部のオデッサに上陸したという情報は真実ではない」として一部のメディアの情報を否定しました。 ●バイデン大統領が政府高官から現状の報告受ける アメリカ、ホワイトハウスのサキ報道官は23日、ツイッターに「バイデン大統領はロシア軍によるウクライナへの進行中の攻撃についてブリンケン国務長官やオースティン国防長官、ミリー統合参謀本部議長、そしてサリバン大統領補佐官から電話で説明を受けた」と投稿し、バイデン大統領が安全保障担当の政府高官らから現在の状況について報告を受けたと説明しています。 ●ウクライナ外相「ロシア 全面的な侵攻開始」 ウクライナのクレバ外相はツイッターに「ロシアのプーチン大統領はウクライナへの全面的な侵攻を開始した。平和なウクライナの都市が攻撃を受けている。ウクライナは防衛し、勝利するだろう。世界はプーチン大統領を止めなければならない。今こそ行動を起こす時だ」と投稿しました。ロシア側はこれまでのところ、軍事作戦を開始したかなどは明らかにしていません。 ●ウクライナ首都キエフで複数の爆発音 ロイター通信はウクライナの首都キエフからの情報として、現地で複数の爆発音が聞こえたと伝えました。また、東部の都市ドネツクで銃声が聞こえたと伝えたほか、地元メディアを引用する形でキエフの空港周辺でも銃声が聞こえたと伝えています。 ●バイデン大統領「プーチン大統領は破滅的な戦争を選んだ」 アメリカのバイデン大統領は23日、声明を発表し「プーチン大統領は破滅的な人命の損失と苦痛をもたらす戦争を選んだ。この攻撃がもたらす死と破壊の責任はロシアだけにある」として、プーチン大統領の決定を強く非難しました。そのうえで「アメリカは同盟国、友好国と結束して断固とした措置で対応する。世界はロシアに責任を取らせるだろう」として、攻撃によってもたらされる被害の責任はロシアが負うことになると強調しています。 ●ウクライナ国境警備局「ロシア軍がベラルーシ国境を攻撃」 ウクライナの国境警備局によりますと24日午前5時ごろ、日本時間の24日正午ごろ、ベラルーシと国境を接するウクライナ北部でロシア軍からの攻撃を受けたと明らかにしました。ロシア軍は今月20日まで、ベラルーシ軍とともにベラルーシ国内で演習を続け、終了したあとも部隊を残したままにしていました。また、ウクライナ南部で、ロシアが一方的に併合したクリミア半島からも攻撃を受けているとしています。 ●日本時間24日正午前 プーチン大統領「軍事作戦を実施する」 ロシアの国営テレビは現地時間の24日朝、プーチン大統領の国民向けのテレビ演説を放送しました。このなかでプーチン大統領は、ウクライナ東部2州の親ロシア派が事実上、支配している地域を念頭に「ロシアに助けを求めている。これに関連して特別な軍事作戦を実施することにした。ウクライナ政府によって8年間、虐げられてきた人々を保護するためだ」と述べ、ロシアが軍事作戦に乗り出すことを明らかにしました。またプーチン大統領は「われわれの目的はウクライナ政府によって虐殺された人を保護することであり、そのためにウクライナの非武装化をはかることだ」としましたが「ウクライナ領土の占領については計画にない」と述べました。 |
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●地政学リスクとウクライナ情勢をどう捉えて立ち回るべきか 2/25
●世界の目がロシアに… 例年以上の厳しい寒さと、またしても外出自粛を余儀なくされた今年の冬。すっかり冷え切った心身を北京冬季オリンピックの日本人選手たちの活躍で温めた人も多いことだろう。 「同じ都市で夏と冬のオリンピックが開かれるのは、北京が初めてなんだよ」 「夏のオリンピックは最近だったような気が……。あれはいつだったっけ?」 「14年前、2008年の夏だよ。割と前だよ」 こんな会話を交わしながら、世界を代表する選手たちの競技を楽しんだ2人もいたかもしれない。 競技以外で気になることも多かった今回の北京冬季オリンピック。開幕式などで随所に垣間見える、今や世界をリードする中国の先端技術の強大なパワーと、3000年とも4000年ともいわれる悠久の中国の歴史観が織りなす冬のスポーツの祭典に不思議な感覚を覚えた。やはり、オリンピックが持つ発信力は強烈で興味深い。 それこそ中国らしいといえば中国らしい幕開けだった。 過去のドーピング問題の影響もあって、国ではなくオリンピック委員会の代表として自国の選手を送り出したロシア。そのロシアのプーチン大統領はオリンピックの開幕式に先立って北京を訪問、中国の習近平国家主席とのトップ会談を実現した。 その後、オリンピックの盛り上がりと同時並行で、日々、緊迫を増したウクライナ情勢。くすぶり続けていたこの「地政学リスク」の表面化に、何も今このタイミングで、と感じた人も少なくないはずだ。私もその1人。おかげで競技観戦に集中できない日々が続いてしまった。 ●ウクライナ情勢がもたらす投資課題 「地政学」とは、国と国との地理的な条件から、国際的な関係やその影響をひもとく学問のこと。地理的な条件によって引き起こされるリスクが「地政学リスク」だ。日本に住む人の多くは、すぐ隣の朝鮮半島が頭に浮かぶだろう。 ロシアがウクライナを敵対視して、態度を硬化させる理由は、ざっくり言えばウクライナが欧米諸国と仲が良過ぎるからだ。好きで気になる相手が他の人と仲良くしていると面白くないのは、国も人も同じだ。 ウクライナが欧米の軍事同盟、NATO(北大西洋条約機構)へさらなるアプローチをしたことが、ロシアの感情をますます逆なでしてしまった。 ロシアとウクライナの微妙な関係は、実は今に始まったことではない。 08年に、いわばウクライナ紛争の前哨戦ともいえる南オセチア紛争が勃発。14年に衝突した際には、ウクライナの領土だったクリミア半島がロシアに併合された。当時のウクライナ政権が欧米寄りであったことが要因だ。以来、両国の小競り合いが続いた末に、ついに開戦してしまった。 ロシアの厳しい寒さは、波立つ海も凍らせてしまうほどで、冬場は使用できない港も珍しくない。広大な国土を有するが、人が住むエリアは限定される。一方、隣の欧州の国々は概して気候は穏やかで、年間を通じて安定的な経済活動が可能だ。人が住むのに適したエリアも広い。 このちょうど境目に位置するのがウクライナだ。昔から、異なる環境や思想が接する地域では紛争が起きやすい。地政学リスクはさまざまな分野に影響を及ぼすが、その代表的なものの1つが株式市場など「マーケット」の動きだ。 今年1月下旬以降の日米株式市場は、全体として下がりつつ、上にも下にも大きく動く日々が続いた。マーケットはさまざまな要因が複合的に絡み合うことで、その水準を形成するため、要因を1つに絞り込むのは難しい。 12月末を会計基準とする米上場企業の決算発表の集中や、モノやサービス価格の歴史的な上昇(インフレ)率、米国の利上げ姿勢に伴う「円安・ドル高」の動きも重なった。そこにウクライナ情勢の緊迫化が伝われば伝わるほど、マーケットの動きは激しくなった。開戦で、地政学リスクの影響を受けたことは明らかだ。 ●「狼狽売り」から始まる地政学リスクとマーケットの関係 歴史を振り返ると、地政学リスクが表面化した直後のマーケット、特に株式市場ではいつも同じ現象が起きる。株価が急落し、その動きに慌てて売る、業界用語でいう「狼狽(ろうばい)売り」が発生し、マーケットが下落するのだ。 リスクが顕在化したばかりの初期段階で、事実を正確に捉えて、国と国との今後の関係は? 世界的な影響は? 経済活動の変化は? 資金の流れは? など先行きを見通すことは難しい。 状況が不透明な中で、多くの投資家は、手持ちの株式を売って現金化する。下がったときに買って、上がったときに売るのが投資の大原則であることは重々承知だが、いったん売って様子を見たい気持ちもよく分かる。 「有事の金(ゴールド)買い」といわれた時代が長く続いた。ただ、世界的な金融緩和で世の中に投資資金があふれた近年、株価が下がれば「金の価格」も下がり、株価が上がれば「金の価格」も上がることが増えた。 コロナ禍は、金融市場の過去のセオリーも覆したと思っていた直後、今起きている「地政学リスク」は、株価が下がる過程で、「金の価格」を上げる従来の動きを再現した。 思えば実用性がなく、非日常的な「金」は、身の回り品の買い物には使えない。現金化の対象が「米国ドル」や「日本円」など、流通性や信用力において有利な国の通貨に変わるのが当然とも思えるが、「地政学リスク」となると話は別なのか、一筋縄ではいかないマーケットとなった。 地政学リスクは表面化してすぐの時点では正体不明であるが、時間の経過とともに分析され理解され、先行きの予測まで可能になっていく。当初抱いていた不安感や危機感は薄れて、すっかり日常化してしまう。 ●リスクとの正しい付き合い方 日本の隣の朝鮮半島リスクもその一例だろう。北朝鮮は今年に入り、立て続けに短距離ミサイルを発射。核実験や大陸間弾道ミサイル発射の再開も示唆したが、マーケットの動きは無反応といっていい。 さらに時間が経過すると、いまだリスクは終息していないにもかかわらず、リスクをリスクと感じない最終段階に入っていく。マーケットがリスクを相手にしない、極論すれば無視するに近い状況といえる。 注目すべきは、この段階で再び動き始める、株式の売却によって形を変えた現金だ。マーケットに存在してこそリターンを生み出すことができる現金は、自らの場所を求めて動き始める。しかも、いち早くマーケットに戻らないと、得られるはずのリターンを獲得し損なってしまう。 地政学リスクの表面化は、初期段階の短期間において、投資家に不安感や危機感を抱かせるが、長期間にわたって影響を与え続けることが少ない理由はここにある。地政学リスクによって動かされる投資資金は抜けるのも速いが、戻るのも速い。開戦後、どのタイミングで収束するかによって、投資家の戦略も大きく変化していくことだろう。 ウクライナ情勢に気を取られていたせいもあって、あっという間に北京オリンピックも閉幕した。北京一都市での「夏」と「冬」の五輪開催は、東京一都市では実施不可能であることを思えば、確かに注目に値する。 「前回の北京は08年、私たちが出会う前だね。ねぇねぇ、誰と見ていたの?」 「あの頃から付き合っていたら、今、2人でこうして一緒にいられたか分からないぞ」 「じゃあ、これで良かったということで」(微笑) 付き合って別れて、また付き合い始める、いわゆる「元サヤ」の関係。その後、うまくいくか、いかないかは恋愛討議のテーマになりがちだが、ロシアとウクライナのようにここまでこじれると、さすがに1度や2度の「元サヤ」では済まないだろう。今後、連鎖的な戦争が発生しないか注視が必要だ。 08年の北京夏季オリンピックから14年。月日は国家の関係を大きく変えた。人の感情が動き動かされて「恋愛」へと変化するように、マーケットに戻った現金は「投資資金」に形を変えて、また動き始める。願わくは世界中のマーケットを巡りながら、世の「愛と経済」に潤いを与えてほしいものだ。 |
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●首都キエフ中心部で爆発音 朝日記者もシェルターに避難 2/25
ロシアが隣国のウクライナに全面的な侵攻を開始しました。プーチン大統領が宣言した「特別な軍事作戦」に基づいて、東部国境からロシア軍が侵攻しています。北隣のベラルーシからの南下に加えて、上空からも降下部隊を送り込むなどして、ウクライナの首都キエフに迫っている模様です。欧米や日本などが制裁を発動して圧力を強め、混迷の度合いが増すウクライナ情勢の最新状況をタイムラインでお知らせします。(タイムスタンプは日本時間。括弧内は現地時間) ●13:00 JT、ウクライナ工場を停止 日本たばこ産業(JT)は25日、ロシアのウクライナ侵攻を受け、ウクライナ中部のクレメンチュクにあるたばこ工場の稼働を24日から停止したことを明らかにした。現地には約900人の従業員がいたが、全員の安全も確認したという。 ●11:35(台北25日10:35) 台湾、ロシア制裁に参加を発表 中国の動向にも警戒 台湾外交部(外務省)は25日、ロシアのウクライナ侵攻が各国の主権や領土保全を定めた国際法に違反しているとして、米国などの対ロ制裁に加わると発表した。台湾の政財界では今回の侵攻を中台関係にだぶらせて、中国の動向に対する警戒が強まっている。外交部は現時点で、制裁の具体的な内容について言及していない。台湾企業は自動車や家電などに広く使われる半導体の生産で世界の大きなシェアを占めている。今後、米国などの要請で半導体関連の制裁に踏み切る可能性もある。一方、蔡英文(ツァイインウェン)総統は23日、政権内に設けたウクライナ問題検討チームから報告を受け、台湾への軍事圧力を強める中国を念頭に、台湾海峡の軍事動向への警戒を強化するよう指示した。また、台湾世論の動揺を狙ったフェイクニュースへの対応を強めるよう求めた。蔡氏は「台湾とウクライナの問題は地政学などの点で本質的に異なる」としながらも、中国への直接の言及は避けつつ、「域外勢力がウクライナ情勢に乗じ、台湾の民意に影響を与える『情報戦』を防ぐ必要がある」と警戒感を示した。(台北=石田耕一郎) ●11:30 日経平均、上げ幅一時400円超 午前の取引終了 ウクライナに侵攻したロシアへの追加の経済制裁の影響が限定的との見方が広がり、25日の東京株式市場では日経平均株価が大きく値上がりしている。午前の終値は382円76銭高い2万6353円58銭だった。前日まで5営業日続落で計1400円超値下がりしていたが、下落相場から一転。上げ幅は一時400円超まで拡大した。24日の米ニューヨーク株式市場で、ハイテク株を中心に買い戻す動きが拡大。主要企業でつくるダウ工業株平均は、6営業日ぶりに上昇して取引を終えた。この流れを受け、日経平均も25日は買い戻された格好だ。米国が24日に発表した経済制裁に、ロシアの銀行を国際的な資金決済網から外すことが含まれなかったことを市場は好感している。半導体関連などハイテク株が買われたほか、円安ドル高が進んだことから電気機器や機械など輸出関連銘柄の上昇も目立つ。 ●10:15ごろ(ブリュッセル25日02:15ごろ) 「ロシアに航空機販売しない」 EU首脳会議終了 欧州連合(EU)は25日未明、ロシアへの経済制裁などを議論した緊急の首脳会議を終えた。ミシェル常任議長らが記者会見し、加盟27カ国の首脳で合意した制裁の概要について説明した。ロシアの航空会社にエアバスなどの航空機やその関連製品を販売することを禁じるほか、金融分野では、EUの金融市場へのアクセス制限を科す。ロシアの銀行だけでなく、防衛分野などの国営企業も対象にする。貿易では、半導体や最先端ソフトの輸出を規制し、天然ガスと並ぶロシアの収入源である原油部門を狙ってインフラ設備関連の輸出を禁じる。EUに依存しているという石油精製施設の性能向上を阻むという。EUの天然ガス輸入の4割はロシアからだが、日本からの融通も含めて液化天然ガスの確保を進めており、フォンデアライエン欧州委員長は「ロシアが(報復措置で)供給を止めても、この冬を乗り切るだけの量がある」と説明した。一連の制裁は、米国や英国にとどまらず、韓国や日本とも緊密に協議していると説明。フォンデアライエン氏は「我々の結束は、我々の力だ」と語った。(ブリュッセル=青田秀樹) ●11:20ごろ(キエフ25日04:20ごろ) キエフで2度、爆発音の情報 AFP通信が、キエフ中心部で爆発音があったと報じた。キエフ市内のホテルに滞在して取材中の朝日新聞記者は、空爆があったと見られるとの情報を受けたホテルの指示で、地下シェルターに避難した。2度大きな爆発音がしたという情報がある。音を聞いた他の宿泊客によると、爆発音は近くはなかったという。 ●11:00(ブリュッセル03:00) フランス大統領、対話の通路「開いておく」 フランスのマクロン大統領は25日未明、軍事侵攻したロシアのプーチン大統領について、「(対話の)通路を開いておくことは私の責務だと思う。条件が整った日が来たときに、ウクライナ国民への戦闘行為をやめさせるようにするためだ」と述べた。ブリュッセルで開かれた欧州連合(EU)の臨時首脳会議後の記者会見で語った。マクロン氏は会見で、前日夜にプーチン氏と短く電話協議した際、侵攻の中止を求めると同時に、ウクライナのゼレンスキー大統領と協議するよう求めたことも明らかにした。ゼレンスキー氏はプーチン氏と直接連絡が取れず、メッセージを伝えるようにゼレンスキー氏がマクロン氏に依頼していたという。 ●08:40 岸防衛相、ロシアの手法は「ハイブリッド戦」 ロシア軍によるウクライナ侵攻について、岸信夫防衛相は25日の閣議後の記者会見で、「ロシアが軍事手段と非軍事手段を組み合わせた、いわゆるハイブリッド戦の手法をとっているとみられる」と指摘し、防衛省として情報収集、分析に努める考えを示した。岸氏は、ロシアの侵攻に先立ち、親ロシア派組織が名乗る二つの共和国側が、ウクライナ軍による砲撃があったと発表する一方、ウクライナ側が偽情報と主張している状況を説明し、ロシアによる「ハイブリッド戦の手法」と指摘した。 |
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●ロシア軍がキエフから32キロの距離に、米当局者が議員に伝える 2/25
ベラルーシからウクライナに侵入したロシア軍の機械化部隊が、ウクライナ首都キエフから20マイル(約32キロ)の距離にいると、米政権当局者が下院議員へのブリーフィングで伝えたことがわかった。2人の情報筋が明らかにした。 当局者は、ロシアからウクライナに入った別のロシアの部隊はもう少し離れた距離にいるとも説明。どちらもキエフに向かって進軍していて、キエフの包囲を目的とし、ウクライナ政府の転覆を図る狙いもありうるとしている。 |
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●ロシア軍がチェルノブイリ原発の立ち入り禁止区域に侵入、激しい戦闘 2/25
ウクライナ内務省顧問は24日、自身のSNSで、ロシア軍がウクライナ北部のチェルノブイリ原発周辺の立ち入り禁止区域内に侵入し、原発の警備隊との間で激しい戦闘が起きていることを明らかにした。 チェルノブイリ原発はソ連時代の1986年に原子炉が爆発し、史上最悪の放射能汚染事故に発展した。この顧問は砲撃などで原発が大きな被害を受ければ、影響は隣国のベラルーシや欧州連合(EU)加盟国にも及ぶ恐れがあると警告している。 ロシア軍はウクライナ北方のベラルーシから侵攻したとみられているが、ベラルーシ軍の部隊が混じっているかどうかは明らかにしていない。 |
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●“チェルノブイリ原子力発電所 ロシアが占拠” ウクライナ首相 2/25
ウクライナのシュミハリ首相は24日、北部にあるチェルノブイリ原子力発電所が戦闘の末、ロシア軍に占拠されたと明らかにしました。 AP通信の映像では、所属不明の軍用車両とみられる複数の車両が原子力発電所の敷地内に入り込んでいる様子が確認できます。 チェルノブイリ原子力発電所では旧ソビエト時代の1986年、運転中の原子炉で爆発が起こり、史上最悪の事故と言われています。 シュミハリ首相は、戦闘による犠牲者はいなかったとしていますが、敷地内にある放射性廃棄物の貯蔵施設の状態は分かっていません。 ロシアのプーチン大統領は今月21日の国民向けの演説で、ウクライナがソビエト崩壊後に放棄した核兵器を改めて保有するという趣旨の発言をしているとしたうえで「ウクライナが大量破壊兵器を手に入れれば、ヨーロッパやロシアの状況は一変する」と主張していました。 ロシアとしては貯蔵されている放射性廃棄物をウクライナ側に渡さないようにするねらいがあるとみられますが、ウクライナの大統領府顧問はロイター通信に対して「ヨーロッパにとって深刻な脅威の1つになった」と述べ、ロシアを非難しています。 IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は24日、ホームページ上で「ウクライナ情勢に深刻な懸念をもって注視している」とする声明を発表し、チェルノブイリ原発を含むウクライナの原子力関連施設を危険にさらすような行動を自制するよう呼びかけました。そのうえで、ウクライナの原子力規制機関から稼働中の原発に関しては安全性が確認されているという連絡を受けている一方、正体不明の武装勢力がチェルノブイリ原発の全施設を掌握したとする通知をウクライナから受けたことを明らかにしました。IAEAはこれまでのところ、チェルノブイリ原発に関係する死傷者や破壊などの報告は受けていないということです。グロッシ事務局長は「原子力施設に対するいかなる武力攻撃や脅威も国連憲章や国際法、IAEA憲章に違反する」として、自制を強く呼びかけました。 |
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●ウクライナ侵攻に米「厳しい代償払わせる」としたものの…打つ手乏しく 2/25
ロシアがウクライナへの攻撃に踏み切ったことで、侵攻阻止に向けた外交努力を続けてきた米国のバイデン政権にとっては大きな打撃となった。北大西洋条約機構(NATO)などの同盟国と連携して対応にあたる構えだが、ロシアに対抗する手段は限られており、バイデン政権は試練に直面している。 ●団結を強調 攻撃開始後、米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官は、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長と電話会談し、対応を協議した。ブリンケン氏は会談後、ツイッターで「我々はロシアに対応し、NATO東側(の防衛)を強化するため団結する」と強調した。バイデン大統領はNATO加盟国でないウクライナへの軍事介入は行わない方針で、追加制裁以外は打つ手が乏しいのが実情だ。東欧に増派されている米軍は、ウクライナから陸路で隣国に脱出する避難者の急増を想定し、ポーランドでの収容キャンプ運営など、後方支援に回る見通しだ。 ●対話実らず バイデン氏には副大統領を務めたオバマ政権下での2014年、ロシアのクリミア侵攻を防げなかった苦い経験がある。このため今回は、軍事侵攻の口実をでっち上げるロシアの「偽装工作」に関する情報や、軍内部の指示などの機密を積極的に同盟国などと共有し、「厳しい代償を払わせる」と制裁発動をちらつかせて侵攻抑止を図ってきた。一方で、トップ間の直接対話も重視し、昨年12月7日にはオンライン形式でプーチン大統領と会談して自制を促した。12月30日と今年2月12日にも相次いで電話会談し、緊張緩和に向けた糸口を探ってきた。そうした努力が実らなかったことで、米政府内には無力感が漂う。 ●理想と現実 バイデン政権は発足直後から、米欧日などの民主主義国との関係を再構築して一致した対応を取り、「唯一の競争相手」と位置付ける中国をはじめとする「専制主義国」に対抗することで、外交の主導権を握る戦略を描いてきた。だが、実際はロシアに振り回され、対中国との「二正面作戦」を余儀なくされている。対中抑止の具体的な政策は打ち出せず、北朝鮮はミサイル発射で挑発を繰り返している。ウクライナ情勢を巡るロシアの姿勢を中国は批判せず、中露の接近も鮮明になった。トランプ前大統領はロシアによる攻撃開始直後、米FOXニュースに出演し、「中露を一緒にしてしまったのは最悪だ。プーチン氏は、この政権の弱さと無能さを目の当たりにしている」とこき下ろした。昨年8月にアフガニスタンからの駐留米軍撤収を巡って混乱を招いた後、各種世論調査でバイデン氏の支持率は急落した。今年11月の中間選挙に向け、バイデン氏はさらに厳しい状況に追い込まれている。 |
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●米大統領 ロシアへの経済制裁など決定 2/25
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて、アメリカのバイデン大統領はロシア最大の金融機関の取り引き制限など、大規模な経済制裁を実施すると発表しました。アメリカ軍の部隊をヨーロッパに追加で派遣することも決め、ロシアに対し断固たる姿勢で臨むと強調しました。 バイデン大統領は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて24日、ホワイトハウスで演説し「プーチン大統領は侵略者だ」などと、強く非難したうえで大規模な制裁を科すと発表しました。 具体的には、ロシアの政府系銀行で国内最大の「ズベルバンク」など5つの大手金融機関について、ドル建ての取り引き制限や、アメリカ国内の資産の凍結を行うと明らかにし、その結果、資産ベースで、ロシア国内の銀行の80%が制裁の対象になるとしています。 これらの大手金融機関は、ロシアの石油や天然ガスなどを扱う多くの企業に融資を行っているため、ロシア経済に幅広く打撃を与えるねらいです。 さらに、ロシアによる最先端技術へのアクセスを断つとして、アメリカからのハイテク製品の輸出規制を実施するとしています。 一方、軍事面の圧力としてバイデン政権は、NATO=北大西洋条約機構の加盟国の防衛態勢を強化するため、7000人規模のアメリカ軍の部隊をドイツに追加で派遣することを決めました。部隊は数日中に出発し、必要に応じて、そのほかの地域に展開するということです。 バイデン大統領は演説で、アメリカ軍の部隊をNATOの加盟国ではないウクライナに派遣することはないと改めて明言しましたが、大規模な制裁や周辺地域への部隊の配置によって、ロシアに対し断固たる姿勢で臨むと強調した形です。 ●米 バイデン政権 対ロシア大規模制裁の内容は アメリカのバイデン政権が24日発表した大規模な経済制裁の内容です。 まず、ロシアの政府系銀行で国内最大の「ズベルバンク」と、2位の「VTBバンク」を含む5つの大手金融機関について、ドル建ての取り引きを制限したりアメリカ国内の資産を凍結したりします。 制裁の対象はロシアの銀行の資産の80%になるとしています。 これらの大手金融機関は、ロシアの石油や天然ガス、それに鉱物資源を生産する多くの企業に融資などを行っているため、ロシア経済に幅広く打撃を与えるねらいです。 そして、ロシアによる最先端技術へのアクセスを断つとして、ハイテク製品の輸出規制を実施します。 防衛や航空産業に使われる処理能力の高い半導体やレーザー、センサーなどを、アメリカ企業などがロシアに輸出できないようにする措置で、ロシアのハイテク分野の輸入が50%以上減少すると見込んでいます。 このほか、ロシア最大のガス会社「ガスプロム」を含む国有企業など13社がアメリカの市場で新たな株式や社債の発行をできなくする規制の導入や、プーチン大統領の側近の家族らの資産の凍結を実施するとしています。 バイデン大統領は記者会見で「ロシア経済への資金と技術を制限し、ロシアの産業力を低下させる」と述べ、ヨーロッパや日本などと協力してロシアに対抗していく姿勢を強調しました。 ただ、大規模な制裁は、原油や天然ガス、穀物などの供給への懸念を高め、価格の上昇に拍車をかけたり、輸出規制によって世界のサプライチェーンに混乱を招いたりするおそれもあります。 このため、世界経済の大きな課題になっているインフレ圧力を高めることにつながらないか、注視する必要があります。 一方、ロシアに対する最も厳しい措置の一つとされる銀行間の国際的な決済ネットワークであるSWIFT=「国際銀行間通信協会」からロシアの銀行を排除する措置は、今回の制裁に含まれていません。 これについてバイデン大統領は「常に選択肢の一つだが、いまヨーロッパ各国はそれを望んでいない」と述べました。 また、記者から、制裁が抑止力になっていないのではないかと問われたバイデン大統領は「制裁が彼を止められるとは言っていない。制裁が効果を発揮するには時間がかかるが、ロシアを弱体化させることにつながる」と述べ、ロシアの侵攻を直ちに食い止めることを目指したものではないとしました。 また、バイデン大統領は現時点でプーチン大統領と会談する予定はないとしたうえで、25日にはNATO=北大西洋条約機構の首脳会議を開いて連帯を確認するとともに、今後の対応について協議するとしています。 ●EU首脳会議 ロシアに追加制裁で合意 ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻を受けて、EU=ヨーロッパ連合は緊急の首脳会議を開き、ロシアに対し、金融やエネルギーなどの分野で追加制裁を科すことで合意しました。 EUは24日、ロシアへの対応などを協議するためベルギーのブリュッセルで緊急の首脳会議を開きました。 首脳会議では、軍事侵攻を強く非難し、ロシアに対して直ちに軍事行動をやめるよう求めることで一致しました。 そして、金融やエネルギー、それに半導体をはじめ先端技術を使った製品の輸出などに関して、追加の制裁をロシアに科すことで合意し、今後速やかに手続きを進めるとしています。 会議のあとの記者会見でEUのフォンデアライエン委員長は「プーチン大統領は力でヨーロッパの地図を書きかえようとしているが、かならず失敗するだろう」と述べ、EUとしても強力な制裁を科すことでこれ以上の軍事侵攻を阻止したい考えを強調しました。 EUは、先月の時点で天然ガスの輸入の4割をロシアに依存しており、ロシアが制裁の対抗措置としてEUへのガスの輸出を制限する可能性もあるとみています。 このため今回の首脳会議では、エネルギーの分野も含め不測の事態への備えを進めるよう、EUの執行機関であるヨーロッパ委員会や各加盟国などに求めました。 ●英 ジョンソン首相 新たな対ロシア制裁措置発表 イギリスのジョンソン首相は、24日、ロシアに対する新たな制裁措置を発表しました。 それによりますと、すべてのロシアの銀行の資産の凍結を行う計画で、このうち、ロシアの政府系銀行で国内2位の「VTBバンク」の資産は即時凍結するとしています。 アメリカと協調した制裁で、ジョンソン首相はロシアの貿易のおよそ半分はアメリカドルやイギリスポンド建てで行われているため、これらの通貨による決済が難しくなると説明しています。 また、貿易の規制も強化し、通信機器や航空関連の部品など安全保障上、重要とされる製品について、軍事目的に転用できないようロシアへの輸出を禁止します。 このほか、プーチン政権と近い100を超える企業や実業家に対し、資産の凍結やイギリスへの渡航禁止の制裁を科すことや、ロシアのアエロフロート航空のイギリスへの発着を禁じることなども含まれています。 今回の発表には、銀行間の国際的な決済ネットワークであるSWIFT=「国際銀行間通信協会」からロシアの銀行を排除する経済制裁は含まれておらず、ジョンソン首相は、除外してはいないと説明したうえで「こうした手段を成功させるにはG7各国の結束が重要だ」と述べました。 ●独 ショルツ首相「これはプーチンの戦争」 ドイツのショルツ首相は、ロシアがウクライナに軍事侵攻したことを受け、24日、国民に向けてテレビ演説を行いました。 この中でショルツ首相は、ウクライナの人々との連帯を強調したうえで「プーチン大統領はあらゆる警告や外交的解決に向けた努力に取り合わなかった。彼ひとりがこの戦争を決断し、全面的に責任を負う。これはプーチンの戦争だ」と述べ、プーチン大統領を厳しく非難しました。 そして「ウクライナへの攻撃を受け、われわれはさらに徹底した制裁を科す。ロシア経済にとって痛烈な打撃となるだろう」と警告しました。 さらに「われわれは決然と、結束して行動する。そこに自由な民主主義国家としての強さがある。プーチン大統領は勝利しないだろう」と述べ、各国と緊密に連携しながらロシアに対じしていく姿勢を強調しました。 ●台湾 行政院長「侵略行為を厳しく非難」 台湾の首相にあたる蘇貞昌 行政院長は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について報道陣の取材に答え「われわれはこのような侵略行為を厳しく非難するとともに、民主国家と歩調を合わせて制裁を加える」と述べました。 また、台湾外交部も「国際社会のロシアに対する経済制裁に参加する」と表明しました。 制裁の具体的な内容について王美花 経済部長は「各国と調整する」としていますが、台湾のメディアは、さきに半導体の輸出規制などを行う可能性があると伝えています。 ●南米 “非難” “配慮” “支持” 対応分かれる ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり、南米ではコロンビアやアルゼンチンなど多くの国が懸念を示す一方で、ブラジルのボルソナロ大統領がロシアとの関係に配慮する姿勢を示すなど対応が分かれています。 このうちコロンビアやアルゼンチン、チリなど多くの南米の国では、ロシアの軍事侵攻を厳しく非難しています。 一方ブラジルでは、ボルソナロ大統領がロシアの軍事侵攻を非難した副大統領に対し「この問題で発言する権利があるのは私だけだ」と注文をつけるなど、ロシアとの関係に配慮する姿勢も示しています。 さらにロシアの支援を受けて独裁を続けるベネズエラの外務省は24日、声明を発表し「アメリカが主導するNATOが停戦合意に違反したことは遺憾だ。ロシア国民に対する違法な制裁は認められない」などと述べ、ロシアを支持する姿勢を強調しました。 |
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●ロシア各地でウクライナ侵攻への抗議デモ…サンクトペテルブルクでも 2/25
ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の故郷であるサンクトペテルブルクで2022年2月24日、大規模な抗議デモが発生し、人々はウクライナへの侵攻に反対の声を上げた。 ツイッターに投稿された動画には、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクの一角に集まった多くの人々が映し出され、ロシアのウクライナ侵攻に異議を唱える様子が映し出されている。 ソーシャルネットワーク「Telegram」上のベラルーシのメディアチャンネルであるNEXTAは、ロシア政府のものと見られる建物の外に多くの人々が集まり、抗議行動に隣接する通りにはバスが並んでいる映像を投稿しました。 ロシアの報道機関Meduzaのニュース編集者であるエイリシュ・ハート(Eilish Hart)がツイッター(Twitter)に投稿した写真には、市内の宮殿広場に並ぶ警察官が写っていた。 ロシア当局は、街頭に出た反戦デモ参加者は逮捕すると警告している。ロシア連邦捜査委員会は声明で、「緊迫した外国の政治状況に関連した」無許可の抗議行動に参加しないよう市民に警告した。 |
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●プーチン氏自滅、真の勝者は「グレタさん」―ウクライナ危機 2/25
あまりに傲慢であまりに愚かと言うべきだろう。ロシアのプーチン大統領は、24日、対ウクライナ軍事作戦を決定してしまった。ウクライナ政府軍と親ロシア派が衝突を繰り返しているウクライナ東部のみならず、同国首都キエフ近郊もロシア軍によって攻撃されるなど、事態は全面戦争に発展しつつある。ロシアの圧倒的な戦力ならば、軍事的に勝利することも容易、プーチン大統領はそう考えているのだろう。だが、露骨な「力による現状変更」は、国際社会のプーチン大統領への不信感を決定的にした。それでなくても地球温暖化防止のため、脱炭素社会を目指す欧州は、天然ガスや石油へのロシア依存を見直し、それはプーチン政権の終わりの始まりとなるのだろう。 ●ロシアのガスへの依存、欧州が見直しへ ウクライナ情勢が緊迫する中、ここ最近、欧州で活発に論議されていたのが、エネルギー受給における「脱ロシア依存」だ。ロシアは豊富な地下資源を誇り、とりわけ天然ガスの埋蔵量・生産量ともに世界最大で、石油も原油生産量で米国やサウジアラビアに次ぐ第3位(2019年)。そして、欧州各国は、EU(欧州連合)全体として、発電や暖房等のための天然ガス需要の約4割をロシアに依存してきたのである。その気になれば、ロシアは欧州各国をエネルギー危機に陥らせることもできる―それが、プーチン大統領の強気さの要因の一つであることは間違いない。実際、ドイツがウクライナ情勢を鑑み、ロシアからの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の計画を停止したことについて、プーチン大統領の側近でロシア前首相のメドベージェフ氏は、「よろしい。EUは法外な価格で天然ガスを買うことになるだろう」と自身のツイッターに投稿しているのだ。 こうした、天然ガスを外交・安全保障上の「武器」として使ってくるロシアにエネルギーを依存してきたことへの反省の弁がEU内であがってきている。例えば、EU委員会で温暖化対策を担当するフランス・ティメルマンス副委員長は、今年1月、欧州各国の環境大臣らの会合で「プーチンの懐を肥やしたくないのなら、(太陽光や風力などの)再生可能エネルギーへの投資を迅速に行うべきだ」「人々に安定してエネルギーを供給したいのであれば、再生可能エネルギーがその答え」と語ったという(通信社「ブルームバーグ」等が報道)。 今月16日には、ウルズラ・フォン・デア・ライエンEU委員長も「EUへの液化天然ガスLNG輸出を多くの国々と協議し、今年1月の時点で120隻の船舶が膨大なLNGを欧州に運んできてくれた」「欧州全域のガスパイプラインと電力相互接続ネットワークを強化した」と、対策を行なっていることを報告した上で、「この危機からすでに得られる教訓の一つは、ロシアのガスへの依存を取り除き、再生可能エネルギー源に多額の投資を行い、エネルギー源を多様化する必要があるということだ。それは地球に優しく、私達のエネルギー安全保障のためにも良い」と強調している。さらに今月23日もノルウェーのストーレ首相との会談後「ロシアや化石燃料にエネルギーを依存するのをやめ、再生可能エネルギーへの移行をすすめなくてはいけない」と語っている。 ●脱石炭だけでなく脱ガス、欧州の再エネ移行が加速 石炭火力発電に比べれば、天然ガス火力発電から排出されるCO2は半分程度であるため、EU各国は脱石炭をすすめる一方、天然ガス火力への依存を深めてきた。しかし、それは破局的な温暖化の進行を防ぐものではないとして、グレタ・トゥーンべりさんはじめ多くの環境活動家や気候学者らが見直しを求めてきたことなのだ。今回のウクライナへの侵攻で、欧州各国のプーチン政権下のロシアに対する不信感は決定的となり、また天然ガスや原油の供給不足や価格上昇と相まって、再生可能エネルギーの推進や省エネ化がより進むことになるだろう―そう観るのは、筆者だけではなく、米国のテレビネットワークのCNNや、著名誌『タイム』、英紙『ガーディアン』なども同様の論調で報じている。本稿のタイトルを、"真の勝者は「グレタさん」"としたのは、上述ような流れが加速するだろうからである。 ●ロシア経済に打撃 こうした、ロシアの天然ガスから再生可能エネルギーへのシフトが欧州で進むことで、プーチン政権の「武器」となっていた天然ガスは諸刃の剣として、ロシア経済を揺るがすことになる。ロシアの輸出全体の中で、以前よりは若干減少しているとは言え、EUは最も割合が大きく4割強を占める。もし、これが失われるのなら、ロシア経済にとっては大きな打撃だ。なぜならば、ロシアの政府歳入の約5割を石油・ガス関連収入が占め、文字通り国家の財政基盤であるからだ。仮に、欧州各国だけでなく、米国の呼びかけで日本や韓国、インド、トルコ等がロシアの天然ガス輸入を止めた場合は、さらにプーチン政権は苦しくなる。中国がロシアからの天然ガス輸入量を増やすかもしれないが、中国もまた脱炭素社会の実現に向け、猛烈な勢いで再生可能エネルギーを増やしている。ごく短期的ならともかく、中長期的に欧州その他の国々の穴を中国が埋められるかは、何の保証もない。また、中国に大きく依存することで、同国に経済的に支配されるリスクもある。つまり、プーチン大統領は、軍事力でウクライナを圧倒することはできるだろうが、国家戦略としては、ウクライナへ軍事侵攻した時点で、既に負け始めているとも言えるのだ。 ●日本も再エネ移行を急げ ウクライナ危機は、日本にとっても他人事ではない。ロシア軍の侵攻開始によって、石油や天然ガスの価格は高騰し、日本経済にも悪影響が及ぶだろう。だからこそ、EUと同じく、エネルギー安全保障と脱炭素を兼ねて、再生可能エネルギー中心の社会の実現へギアを上げていくべきである。それは「力による現状変更」に対して、ただ「遺憾」の意の表明するではなく、毅然とした対応をしっかりと取るという意味においても重要なことなのだ。 最後に、これまで中東の紛争地を取材してきた者としては、流される血が一滴でも少ないうちに、一刻も早く戦争が終結することを心から祈りたい。 |
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●仏マクロン大統領、プーチン大統領に侵攻即時停止要求 2/25
フランスのマクロン大統領は24日、ロシアのプーチン大統領に電話し、ウクライナに対する軍事作戦の即時停止を要求した。フランス大統領府が発表した。侵攻後、プーチン氏と欧米諸国首脳の電話会談が明らかになったのは初めて。 一方、パリの共和国広場では24日、ウクライナ侵攻に抗議するデモが行われ、報道によると、約2800人が集まった。ウクライナの国旗を掲げたり、身にまとったりした参加者らは「プーチンはテロリスト、プーチンは殺人者」と叫んだ。 |
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●「ロシアは世界経済の一部」 制裁覚悟とプーチン氏 2/25
ロシアのプーチン大統領は24日、クレムリンでロシアの財界人らと会談、同日開始したウクライナでの軍事作戦を念頭に「ロシアは世界経済の一部であり続ける。世界の経済システムを損なう考えはない」と述べた。予想される欧米側からの大規模制裁には「準備ができている」と強調した。 プーチン氏は、北大西洋条約機構(NATO)東方不拡大の確約など欧州安全保障に関するロシアの提案に「ほんのわずかな歩み寄りも見せなかった」と欧米側を批判。ウクライナへの攻撃は「ほかに方法がなかった」と正当化した。 |
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●プーチン大統領 軍事行動に踏み切った3つの要因 2/25
ロシア政治を専門とする筑波大の中村逸郎教授は、ロシアのプーチン大統領が軍事作戦に踏み切ったタイミングに3つの要因を挙げた。 1つはウクライナ政権の支持率低下。「ゼレンスキー大統領は昨年から側近の離反が相次ぎ支持率が過去最低の20%台に。その足元のぐらつきを狙った」と指摘した。加えてバイデン米大統領の弱腰にも言及。「バイデン大統領は軍事衝突という最悪の事態を回避するために、まごまごしている。経済制裁だけで終わる可能性もある」とした。 最後に挙げたのは2月の欧州の気候を狙ったというもので「ヨーロッパに天然ガスを送るパイプラインはウクライナを通るものが大動脈。冬の電力が必要な時期にNATOも強く歯向かえない」と強調。今後、米国が猛反撃するなど、プーチン大統領の綿密なシナリオが狂った時には「ロシアが捨て身の攻撃をするかもしれない」と懸念した。 |
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●早朝に電撃的発表 ウクライナ侵攻でロシア大統領 2/25
ロシアのプーチン大統領が24日、ウクライナでの軍事作戦に踏み切った。ウクライナの親ロシア派からの軍事支援要請の発表から約6時間後の24日早朝。プーチン氏は国営テレビを通じた国民向け演説で電撃的に軍事作戦の開始を宣言し、世界中に大きな衝撃を与えた。 プーチン氏は21日に署名した大統領令で、ウクライナ東部の親ロ派支配地域に「平和維持」名目でロシア軍を派遣するよう指示。22日の記者会見では「今すぐ部隊が行くとは言っていない」と語っていたが、国際社会はプーチン氏にまたも裏をかかれる形となった。 ロシアとウクライナは歴史的にも文化的にも結び付きが強く、両国には互いに親族がいる人も多い。ウクライナ侵攻に関し、専門家の間には「政治的には準備ができていない。国民はおびえており、戦争を望んでいない」(軍事評論家パベル・フェリゲンガウエル氏)と、国民の支持は得られないとの見方もあった。フェリゲンガウエル氏ら多くの専門家は、ロシアが長年、親ロ派を軍事支援してきたことから、正規軍が平和維持部隊として介入しても状況は大きく変わらないと予想していた。しかし、プーチン氏はロシア軍による大規模な軍事侵攻を選択した。 プーチン政権は先週以降、ウクライナに対する国民の反感をあおる大規模なプロパガンダを続け、軍事作戦に向けて国内的な環境づくりを図ってきた。ただ、戦争を積極的に支持する国民は多くないもようだ。ロシア軍にも犠牲が出るなど事態が泥沼化すれば、プーチン氏が国内でも厳しい批判にさらされる可能性がある。 |
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●ウクライナ情勢に専門家は「第二次世界大戦以来最大の危機」 2/25
ロシアとウクライナの関係や侵攻に至った経緯などについて兵庫県にある神戸学院大学の岡部芳彦教授に話を聞きました。日本におけるウクライナ研究の第一人者です。 「ウクライナは非常に簡単に言うと日本の隣の隣の国。共通点としては原子力災害を経験したこと、ロシアが隣国であること、領土問題をロシアと抱えているといった特徴があります。」 攻撃が始まって1日が経ち、避難する人たちの姿もみられます。ウクライナの現在の状況はどうなのでしょうか。 「2月23日まではウクライナの各地は非常に平穏というか日常の生活が送られていたんですけど、2月24日からは事実上の戦争状態になっていて、避難も始まっている。ただネット網の寸断とかインフラの停止はありません。ウクライナの人は2014年のクリミア占領、東部の戦闘から8年間戦闘が続いていましたので、比較的冷静な対応を24日の朝までしていましたけれど、24日からは状況が一変して市内からも避難が始まっています。」 ロシアの攻撃により世界情勢はどう変わるのでしょうか。 「実際今がどういう状況かというとあまり認識がない方も多いですけど、正直言うと第二次世界大戦以来最大の危機を迎えつつありまして,世界中は危機で大騒ぎだけど日本は国会を中心にコロナの話題が中心で、ウクライナ情勢は二の次という感じ。ただ第二次世界大戦直前、あるいはそれ以来最大の危機に直面しているのが現状です。」 |
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●ウクライナ情勢 影響が日本の酪農にも広がる懸念 酪農家は 2/25
ウクライナ情勢の影響が日本の酪農にも広がる懸念が出ています。世界有数の穀物輸出国であるウクライナの混乱で、餌となるトウモロコシの国際価格は上昇傾向にあり、酪農家の間からはさらにコストが増えることに不安の声が上がっています。 海外からの輸入に頼る家畜の餌、飼料用トウモロコシの国際価格は、中国国内の需要の増加や南米での不作を受けおととしごろから高止まりが続いています。 こうした中、世界でも有数の輸出国、ウクライナから供給が滞るのではないか、という警戒感が、国際価格をさらに上昇させる新たな要因となっています。 北海道鹿追町で130頭の牛を飼育する内海洋平さんは「穀物を海外に頼っている以上は外国の非常事態に左右されるのは仕方ないが、飼料価格がずっと値上がりしていた中、追い打ちのような状況だ」と不安を強めています。 内海さんの牧場では、去年1年間で餌の価格が前の年より最大で30%上昇した結果、コストが想定より400万円近く増え、経営にとって大きな負担となっています。 内海さんは、コストを抑えようとみずから栽培したトウモロコシを一部混ぜるなどしているものの、餌の内容を大きく変えるのは牛の健康にも影響を与えるため、これ以上の対応は厳しいといいます。 新型コロナウイルスによる影響で生乳の需要が減少していることから、道内の酪農家は新年度から16年ぶりに生産抑制を余儀なくされ、売り上げを伸ばすことが困難な状況にあります。 内海さんは「『あまり絞らないでね、生乳の値段も安くしますよ、でも材料は高いですよ』では、先の未来が見えなくなっている。牛乳はいつまでも安い、安くあるべきみたいなところは少し考え直してもらえれば」と話しています。 ●JA全農「ウクライナ侵攻で価格上昇も」 JA全農=全国農業協同組合連合会でトウモロコシの買い付けを担当する穀物外為課の鮫嶋一郎さんは「ウクライナの情勢不安によって供給制限への懸念が生じてトウモロコシの市場価格が上昇する一因になっている」と指摘しています。 鮫嶋さんによりますと、おととし以降、穀物取引の国際指標であるアメリカ・シカゴ商品取引所のトウモロコシの先物価格は高騰が続いているということです。 主な原因として、中国の輸入量の急増と、南米での天候不良によるトウモロコシの不作などがあげられるということです。 こうした中でトウモロコシの相場に影響を持つ世界有数の生産国であるウクライナの情勢不安が、新たな価格の上昇要因として加わったと分析しています。 鮫嶋さんは「2014年のクリミア半島の併合時に、ウクライナからの供給制限への懸念が出たことでトウモロコシ相場の上げ要因となった」と述べ、8年前の2014年にロシアが一方的にウクライナ南部のクリミアを併合した際も国際価格の上昇が見られたと指摘しています。 日本はトウモロコシを主にアメリカから輸入しています。 ロシアがウクライナに侵攻した場合の影響について鮫嶋さんは「ウクライナからの輸出が制限される、あるいは完全に止まることになれば、その分の需要がアメリカなどほかの輸出国に加わることになり、穀物相場の上昇要因となる」と述べ、アメリカ産の需要が世界的に高まることで日本にとって輸入価格が上昇する可能性に懸念を示しました。 ●ウクライナは「ヨーロッパの穀倉」 ウクライナは肥沃(ひよく)な黒土地帯を抱え、国土のおよそ70%を農地が占める「ヨーロッパの穀倉」とも呼ばれる世界有数の穀物輸出国です。 アメリカ農務省によりますと、ウクライナの2020年度から2021年度にかけての穀物輸出量は、トウモロコシが世界4位となる2300万トン余り、小麦が世界6位となる1600万トン余りに上り、穀物の国際相場にも大きな影響を与えています。 日本は飼料用トウモロコシの90%近くを海外からの輸入に頼っており、日本の酪農家にとってトウモロコシの国際価格の変動は飼料コストに直結する問題となっています。 |
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●ウクライナ情勢が中央アジア周辺の物流に影響 2/25
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、中央アジア周辺での物流に影響が出始めている。 外洋に接していないカザフスタンやウズベキスタンなどの中央アジア諸国は、欧州との貿易にロシア経由のトレーラー輸送を利用することが多い。現在、ロシアとウクライナ国境、ベラルーシとポーランド国境、ロシアの黒海沿いのノボロシースク港経由での物流が機能しておらず、ジョージアのポティ港・黒海経由での輸送も難しくなりつつあることから、物資輸送に支障が発生している。 カザフスタンの物流企業クルーズ・ロジスティクスはジェトロのインタビューに対し、「現時点では、中央アジアと欧州間の貨物輸送はイランのバンダルアバス港などを経由するルートを使うしかない」と話す。また、中国と欧州や「一帯一路」沿線国を結ぶ国際貨物列車「中欧班列」についても「影響の顕在化は時間の問題ではないか」との認識を示している。 中央アジアと日本とを結ぶ物流について、クルーズ・ロジスティクスは「米国の対ロシア追加制裁の内容次第では、ナホトカやウラジオストクなどロシア極東経由の輸送ルートにも影響が出る可能性がある。その場合は、国境通関での渋滞が慢性化している中国経由ルートを使わざるを得ない」と述べている。 ウズベキスタンのサルドル・ウムルザコフ副首相、カザフスタンのバヒト・スルタノフ副首相は最近相次いでイランの首都テヘランを訪問した。2月21日にはイラン・ウズベキスタン、22日にはイラン・カザフスタンの政府間委員会が開催され、両委員会とも物流を含む多分野で協力関係を深化させることで意見が一致している。 |
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●ウクライナ問題で中国の出方が歴史を変えるか 2/25
●中国とロシアは70年ぶりの接近 現在、悪化の一途を辿っているウクライナ情勢は、冷戦後の国境を新たに引き直す動き、ともされる。ただし、これが「新冷戦構造」へと発展していくのかどうかについては、今後の中国の出方が大きな鍵を握るだろう。中国がいわばウクライナ情勢の「影の主役」、とも言えるのではないか。 2月4日の北京冬季五輪開会式の日に首脳会談を行った中国の習近平国家主席とプーチン大統領は、お互いの立場を支持する考えを表明した。即ち、中国は、ウクライナ問題で、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大に反対するロシアの立場を支持し、ロシアは台湾問題に関して「一つの中国」という中国の立場を支持したのである。 冷戦初期に、中国は同じ社会主義国のソ連とは袂を分かち、独自の社会主義、独自の経済体制を追求してきた。米国への対抗という点で利害の一致を見出した中国とロシアは、70年ぶりに再び緊密な関係を取り戻しつつあるように見える。 ウクライナ問題を巡り、中国はロシアの立場を支持する一方で、対話による解決を呼び掛けてきた。中国の外交政策は、建国後間もなく当時の周恩来首相が表明した「平和五原則」を踏襲しているとされ、いかなる国でも他国への侵略や内政干渉を支持しないとの立場をとる。中国がロシアによる2014年のクリミア併合を支持しなかったのはこのためだ。しかし現状では、よりロシアの立場に理解を示すなど、変化も見られている。 ロシアがウクライナ東部の2つの共和国の独立を承認し、さらに侵攻を行ったことを受けて、欧米、日本など先進各国は、ロシアへの制裁措置を段階的に打ち出している。中国はこうした先進国の対ロシア制裁措置を非難しているのである。他方で、ロシアの軍事進攻の評価についてはコメントを避けており、明らにロシア寄りの姿勢を示している。 ●中国が制裁で打撃を受けるロシアを支援する可能性 第2弾の制裁措置で、米国はロシアの主要銀行のドル調達を制限し、貿易決済に打撃を与えた。しかし、対ロシア制裁措置が欧州への天然ガスの供給停止やエネルギー価格の上昇を通じて先進国経済への打撃に跳ね返ってくる影響に配慮して、エネルギー関連の取引を対象から外す措置とした。依然として抑制された措置にとどまっている面があるのだ。 ただし今後のウクライナでのロシアの行動次第では、米国など先進国は制裁をさらに強化していくことになる可能性は高い。現状ではなお措置を温存している状況なのである。 その追加措置には、今度はエネルギー関連も含めて、米国金融機関のロシア大手5行の取引を制限する、SWIFT(国際銀行間通信協会)からロシアの大手銀行を除外する、SWIFTからロシア銀行すべてを除外する、など何段階か考えられる(コラム、「実効性をやや高めた第2弾の対ロシア追加制裁」、2022年2月25日)。 その際、中国が、ルーブル建てあるいは人民元建てで原油、天然ガスをロシアから追加購入すること等で、ロシアを支援する可能性がある。また、中国が人民元建ての独自の決済システムCIPSを用いて、ロシアの貿易決済を助ける可能性も考えられる。 仮に中国が先進国による経済制裁で打撃を受けるロシアを支援する場合、先進国の対ロシア制裁措置は、その分効果が低下してしまうのである。 ●注目される中国の覚悟 ただし、中国も制裁対象になってしまう可能性や、米国など先進国との関係悪化が決定的になってしまうリスクを考えれば、中国も簡単にはロシアの支援に本格的に乗り出せないだろう。 それでも、米国への対抗で利害が一致する最近の中国とロシアの緊密化の流れを踏まえれば、そうした問題点を甘受しつつ、中国が何らかの形でロシアの支援に回る可能性は、現時点で50%をやや上回るのではないか。 中国がロシア支援に明確に乗り出す場合には、中国と米国との関係は一段と悪化し、中国とロシアが経済、金融、そして安全保障面でも結束を強め、世界が中ロを中心とする権威主義的なグループと市場原理を基盤とする民主主義諸国とに二分されていく、まさに「新冷戦」の起点となってしまう可能性がでてくるのではないか(コラム、「FRBが救世主にはなれないウクライナ情勢による金融市場の混乱:中国の対応も市場の注目に」、2022年2月22日)。 米国がロシアの銀行をSWIFTから排除する決定をする場合には、そこには中国へのメッセージも暗に込められる可能性があるだろう。つまり、中国がアジア地域での軍事的な行動をエスカレートする、あるいは国内での人権問題を悪化させる場合には、中国の銀行もSWIFTから排除される可能性もあるという一種の脅しなのである。 このように、米国あるいは他の先進国は、ウクライナ問題でロシアへの対応を進める中でも、常に中国の出方を窺い、またアジア地域での中国の動きへの影響を強く意識するだろう。この点から、ウクライナ問題での影の主役は中国なのである。 |
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●ロシアのウクライナ侵攻と日本経済にとっての真のリスク 2/25
ロシアによるウクライナへの侵攻が現実味を帯びたと報じられた2月11日から、ウクライナ情勢を伝える報道に世界の株式市場は一喜一憂した。事前に軍事侵攻の可能性は低いとの専門家などの見解が目立った中で、事態が深刻化するにつれて金融市場の認識が変わったことが世界的な株安を招いたようにも見える。 ただ、2014年のクリミア半島へのロシアの侵攻から、ウクライナとロシアの領土紛争が続いてきた。ロシアの強硬な政治行動の手段の一つとして、再び軍事侵攻する可能性はありえるだろうと、筆者は予断を持たずに考えていた。もちろん、ウクライナ国民にとっては悲劇でしかないが、米欧の金融市場関係者の多くは同様に認識していた様に思われる。 実際には、ウクライナ情勢を巡る報道が11日以降日増しに増えたので、これらを消化する時間的な余裕がなかった。このため、とりあえずリスク資産である株式をキャッシュ化する動きが強まり、2月11日以降の米国市場を含めた株安を引き起こすきっかけになったのだろう。 ●FRBによる利上げが米国株下落をもたらす主因になっていた その後、ブーチン大統領がドネツク人民共和国などの独立承認、ロシア軍の進駐を命じた22日から、金融市場のウクライナ情勢に対する反応はより複雑になった。ロシアによる軍事行動が始まり、それが各国の経済活動に及ぼす影響を考えるフェーズにシフトしたとみられる。 22日に大幅安で始まった欧州株市場は買い戻され小幅高となり、翌23日にほぼ同水準を保った。一方、米国株市場は22日、23日両日ともに大きく下落、ウクライナ情勢への懸念から株価下落が続いたとメディアで解説されている。ただ、米国株の値動きを見ると、バイデン大統領のロシアへの経済制裁、ウクライナ政府がサイバー攻撃を受けた、などの報道が悪材料になったように見えるが、いずれも予想された動きに過ぎないだろう。 また、米国の債券市場では、ウクライナ情勢が緊迫化する中で、24日時点で10年金利はほぼ2%と先週時点と同水準で推移している。ウクライナ情勢への懸念よりも、FRBによる利上げによってハイテク株を中心にバリュエーション調整が起きていることが、米国株下落をもたらす主因になっていると筆者はみている。 23日時点でのS&P500指数終値は、1月3日の高値から約-12%下げた水準まで下落した。筆者は、インフレ沈静化に注力するFRBの利上げで金融環境がタイト化する余地が大きいと従来から考えていたので、ウクライナ情勢の緊迫化がなくても、今起きている程度の米国市場での株安は早晩起きていたとみている。そして、ウクライナへの軍事侵攻が始まった中で、供給制約の緩和を試みるFRBの大幅な利上げを試みる姿勢は変わらないだろう。24日に米国株市場は反発したが、引き続き慎重にみた方が良いだろう。 ●「日本の購買力」が下がる側面が強調されているが...... ところで、ウクライナ情勢の緊迫化が、日本を含めた世界経済全体に及ぼす波及効果として影響が大きいのは、原油などの資源価格上昇である。国会においても、政府のガソリン価格上昇への対応を巡り質疑が行われている。 ガソリン高に加えて食料品などにも価格が上昇する散見されるなかで、経済メディアなどでは「円の価値」が大きく低下してとの報道が目立っている。BIS(国際決済銀行)が発表している、貿易量と価格変動を調整した実質実効ベースの円の水準が、1972年以来約50年ぶりの水準まで低下しているのだが、最近は、この試算値が発表される度に経済メディアで取り上げられる様になっている。 一般的な「ドル円」と異なる尺度で円の価値を測ることが、ニュース価値があるとメディアが認識しているのかもしれないが、通貨円が「歴史的な水準」まで低下しており、「円の実力」が下がっているなどとメディアでは評されている。ウクライナ情勢の緊迫化で原油価格上昇に対する懸念が高まっているので、「日本の購買力」が下がる側面が強調され、通貨安が日本の貧しさを示唆しているかのように報じられている。 ただ、先進国の場合、通貨価値が、国力や経済的な豊かさが比例的に関係するわけではない。実質実効円レートの過去の推移を見れば、1995年の円高進行時に実質実効ベースの円は過去50年で最も上昇したが、1990年代後半から日本経済は、長期デフレと低成長局面にシフトしている。 当時既に日本ではデフレは静かに始まっていた中で、為替市場では大幅な円高が起きた。一方、1980年代の米英での高インフレの記憶が残る中で、バブル崩壊後の日本銀行の金融政策は引き締め的に作用していた。そして、1990年代後半から2000年代初頭まで、「通貨高は強い国の象徴」という不可思議な信条を抱く経済官僚によって、金融財政政策が運営されていた。 日本経済の実力に不相応な「行き過ぎた円高」が起きて、それがデフレと低成長の問題を深刻にした。この政策運営の失敗が、先進国の中で日本だけが長期デフレをもたらした、と筆者は総括している。その後も2000年代にかけて経済の低成長が長引いたので、最も豊かな先進国の一つであった日本は「普通の先進国」となり、近年では台湾、韓国に経済的な豊かさではほぼ追いつかれている。 つまり、経済成長率などの本当の実力相応に、通貨円の価値が程よく調整されるマクロ安定化政策が適切に行われるか否かが、経済的な豊かさである「日本経済の実力」を決定的に左右する。円の価値そのものは国力の一つの側面でしかなく、むしろ円の価値が高過ぎたデフレ期に、日本の豊かさが年々失われたことが、日本が経験した痛恨の失敗だと言える。 ●1970年代と比べれば米国の実質実効ドルも安くなったが...... なお、米国の実質実効ドルを見ると、1970年代初頭と比べるとドルは安くなっている。この意味では円とドルは同じだが、ドル安によって経済貧しくなったという議論は米国ではほとんど聞かれない。また1990年代頃と比べると現在はドル高になっているが、そもそも過去の一時点と、現時点の通貨価値を比較することにほとんど意味はない。 ただ、過去50年のドルと円の違いは、大きく変動した円と比べてドルの変動率が小さかったことである。1990年代から2021年前半までのFRB(連邦準備理事会)の金融政策によって、2%前後のインフレと持続的な経済成長が実現した。経済政策が失敗する局面が目立った日本の様には、ドルが大きく変動しなかったことを意味する。米国では適切な金融政策を反映して通貨価値が程よく動いたので、2012年まで金融政策が失敗した日本と異なり、経済的な豊かさが保たれたと言えるだろう。 ●日本で、経済的な観点でもっとも懸念すべき点は...... 現在の実質実効ベースの円は、2015年半ばとほぼ同様の水準である。2013年以降の日銀の金融緩和政策が続いているので、円が経済情勢に応じて安定しており、2012年以前よりはむしろ望ましいと言える。この点を見過ごして、「円の実力の低下」を強調する見解はかなり偏っているのだが、こうした記事が掲載される経済メディアにおいてこそ「実力の低下」が起きているように筆者には見える。 また、こうした報道が増えていることには、岸田政権となって、マクロ安定化政策の主導権が、緊縮志向を抱く経済官僚に移りつつあることが影響しているのかもしれない。安全保障の専門家などが指摘するように、ウクライナ情勢の緊迫化が東アジアの地政学リスクを高める点を我々は警戒すべきだろうが、経済的な観点で懸念すべき点は、円の実力の低下ではなく、岸田政権においてマクロ安定化政策が再び機能不全に陥ることだろう。 |
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●“チェルノブイリ原子力発電所 ロシアが占拠” ウクライナ首相 2/25
ウクライナのシュミハリ首相は24日、北部にあるチェルノブイリ原子力発電所が戦闘の末、ロシア軍に占拠されたと明らかにしました。 AP通信の映像では、所属不明の軍用車両とみられる複数の車両が原子力発電所の敷地内に入り込んでいる様子が確認できます。 チェルノブイリ原子力発電所では旧ソビエト時代の1986年、運転中の原子炉で爆発が起こり、史上最悪の事故と言われています。 シュミハリ首相は、戦闘による犠牲者はいなかったとしていますが、敷地内にある放射性廃棄物の貯蔵施設の状態は分かっていません。 ロシアのプーチン大統領は今月21日の国民向けの演説で、ウクライナがソビエト崩壊後に放棄した核兵器を改めて保有するという趣旨の発言をしているとしたうえで「ウクライナが大量破壊兵器を手に入れれば、ヨーロッパやロシアの状況は一変する」と主張していました。 ロシアとしては貯蔵されている放射性廃棄物をウクライナ側に渡さないようにするねらいがあるとみられますが、ウクライナの大統領府顧問はロイター通信に対して「ヨーロッパにとって深刻な脅威の1つになった」と述べ、ロシアを非難しています。 ●IAEA事務局長「危険にさらすような行動自制を」 IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は24日、ホームページ上で「ウクライナ情勢に深刻な懸念をもって注視している」とする声明を発表し、チェルノブイリ原発を含むウクライナの原子力関連施設を危険にさらすような行動を自制するよう呼びかけました。 そのうえで、ウクライナの原子力規制機関から稼働中の原発に関しては安全性が確認されているという連絡を受けている一方、正体不明の武装勢力がチェルノブイリ原発の全施設を掌握したとする通知をウクライナから受けたことを明らかにしました。 IAEAはこれまでのところ、チェルノブイリ原発に関係する死傷者や破壊などの報告は受けていないということです。 グロッシ事務局長は「原子力施設に対するいかなる武力攻撃や脅威も国連憲章や国際法、IAEA憲章に違反する」として、自制を強く呼びかけました。 ●専門家「原子力施設を“人質”に取る可能性も」 ロシアの軍事侵攻に伴う、チェルノブイリ原発を含めた原子力施設への影響について、核セキュリティーに詳しい公共政策調査会の板橋功研究センター長は「今回の戦闘で施設が破壊・損傷され、放射性物質が飛散しないか懸念している。戦闘行為が続くかぎり、この危険性はあり、風向きによってはヨーロッパの広範囲に放射性物質が広がる可能性もある」と述べました。 そのうえで「ウクライナ政府の管理下にあったものが、本当にロシアの軍隊によって占拠されているのであれば、いったい誰が責任を持って施設や使用済み核燃料などの放射性物質を管理するのか。管理者がわからない“宙ぶらりん”の状態で原子力施設が存在することは非常に憂慮される」と述べ、IAEA=国際原子力機関などがロシアに抗議するなど、対応すべきだと指摘しました。 また、占拠のねらいについては「プーチン大統領の考えはわからないが、核物質がある原子力施設そのものを“人質”に取る可能性はある。少なくとも欧米諸国にとっては非常に大きな圧力になり、交渉材料の1つにするなど、何らかの意図を持って占拠している可能性は十分に考えられる」と述べました。 ●ロシア側 “線量異常なし ウクライナ側と共同警備で合意”と主張 ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は25日、軍の空てい部隊がウクライナのチェルノブイリ原子力発電所とその周囲を完全に掌握したと明らかにしました。これに関連してウクライナの原子力規制当局は25日午前8時、日本時間の25日午後3時に「立ち入り禁止区域のモニタリングシステムによるとかなりの数の観測地点で放射線量のレベルに異常がみられる」と発表しました。 理由については「ロシア軍によって占拠されているため、特定することはできない」としています。一方、ロシア側は周辺の放射線量のレベルに異常は確認されていないとしています。そのうえでウクライナ側と共同で警備にあたることで合意したなどと主張しています。 また、ロイター通信などは専門家の話として「周辺で軍の大規模な移動があったことで放射性物質を含むちりが空中に広がったため」とする見方を伝えています。 |
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●IAEA事務局長「最大限の自制を」 ウクライナ情勢で声明 2/25
ウクライナ情勢について、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は25日(現地時間24日)、「深刻な懸念をもって注視している。同国内の原子力施設を危険にさらすことのないよう、最大限の自制を呼びかける」との声明を発表した。 声明によると、チェルノブイリ原発については、「正体不明の武装勢力」に掌握されたとの連絡がウクライナ当局からあったとしている。死傷者や施設の被害については報告されていないという。 また、ウクライナ国内で稼働中の原発については、安全性が確保されているとの連絡もウクライナ当局から受けたという。 |
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●プーチンは今なぜウクライナ侵攻に踏み切ったのか 2/25
ロシア軍は、2月24日午前、ウクライナに軍事侵攻し、首都キエフや各地の軍事施設をミサイルで空爆した。米国防総省やウクライナ政府によるとロシア軍は3方向から攻撃し、短距離弾道ミサイルなど1000発以上を使用。ベラルーシとの北部国境や南部クリミア半島との境界から地上部隊が侵入した。ロシア国防省はロシア軍がウクライナにある陸上の標的83カ所を破壊し、24日の攻撃目標を達成したと発表した。 軍事侵攻に先立ってプーチン大統領は、2月24日午前6時(日本時間24日正午)頃、国営テレビで放送したビデオ声明で表明した。「(ウクライナ東部の住民が)ロシアに支援を求めている。ウクライナ政権によるジェノサイド(集団殺害)にさらされている人々を保護するために(地域の)非軍事化を目指す」と説明した。あくまで人道目的での軍事作戦だと強弁した。 「ロシアの計画にはウクライナの占領は含まれていない」と説明し、ウクライナに抵抗を諦めるよう迫った。 一方、国連安全保障理事会は日本時間24日午前11時半すぎから緊急会合を開催した。 グテレス国連事務総長は会合後、記者団に対し「人道の名の下に、軍隊をロシアに戻すよう(プーチン)大統領に求める」と述べた。 同事務総長がウクライナに関して声明を出すのは筆者の知る限りこれが最初である。同事務総長は、これまでのところ、平和的な解決のための仲介に当たっていない。 さて、筆者は拙稿「徹底解説:ウクライナ危機とNATO東方拡大の歴史(2022.1.24)」で、「ロシアは、第3次世界大戦に発展する恐れのあるウクライナへの大規模侵攻は行わず、今回もクリミア併合と同じ手法を取ると見ている」と述べた。 すなわち、クライナ東部の親ロシア派武装勢力が実効支配するドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国地域を「独立国家」として認め、ロシア人保護を名目に軍を派遣し、次に両共和国をロシア連邦に編入する。 そして、親ロ派地域を足掛かりに勢力範囲を広げ、現ウクライナ政権に圧力をかけるというものである。 ところが、ロシアは、筆者の推測と異なりウクライナ全域に対する軍事侵攻に踏み切った。 なぜロシアは軍事侵攻に踏み切ったのか。その他にもいろいろな「なぜ」がある。以下、それらの理由等を考察してみたい。 ●1.なぜロシアは軍事侵攻に踏み切ったのか ●米国が軍事力の行使を放棄した 米国は2021年12月の時点で、「ロシアによるウクライナ侵攻に対抗するため、米国が単独で軍事力を行使するような選択肢は今のところない」と述べた。 また、NATO(北大西洋条約機構)も、東欧の同盟国の防衛力強化のための部隊派遣を行ったが、ロシアによるウクライナ侵攻に対抗するために軍事力を行使するとは明言していなかった。 2月25日になって、NATOのストルテンベルグ事務総長は、ロシアのウクライナへの侵攻を厳しく非難しつつもウクライナに部隊は送らないと述べた。 米国が早期に軍事力行使を放棄したことにより、プーチン大統領は、米国をはじめとするNATO軍との軍事衝突のリスクを恐れずにウクライナ全域に対する軍事侵攻することができた。 いくらプーチンといえども欧米諸国との大規模軍事衝突は避けたかったであろう。 ロシア側は、米国をはじめNATOの部隊の活動状況を偵察衛星などで監視し、部隊が作戦準備態勢にないことも把握していたと思われる。 さらに、今回、ロシアは核弾頭を搭載できる弾道ミサイルの発射演習を行うなど、欧米への揺さぶりを強めた。 もともと米国が軍事力行使を放棄したのは軍事衝突が核戦争に発展する可能性を恐れたからであると見られている。 つまり、ジョー・バイデン大統領は初めからプーチン大統領とのいわゆる“チキンレース”に敗北していたのである。 “チキンレース”では、当事者の胆力だけでなく自国の国民やマスコミの支持がなければ勝利できない。 ●プーチンの頭の中を理解できなかった テレビのさるコメンテイターが、大国ロシアの大統領がこのような国際法違反を行うのは信じられないと述べていた。 脳科学者の中野信子氏は、歴史的な英雄や指導者もサイコパスであった可能性があると指摘する。 彼らは良心や共感性が欠如しているので、他者の痛みや苦しみを理解することがない。 しかしその一方、リスクへの不安も感じないので、プレッシャーにさらされても極めて冷静な判断を下し行動することができるとも指摘している。 欧米諸国はプーチンに重い代償を払わせると主張するが、他者の痛みや苦しみを理解することのできないサイコパスであるプーチンには経済制裁は効果がないであろう。 中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩総書記なども中野氏がいうサイコパスに該当しているのではないかと筆者は思う。 ●国連・安全保障理事会が機能不全 国際社会において唯一の包括的・普遍的な組織である国連の中で、国際の平和と安全の維持につき主要な責任を有している安全保障理事会が機能不全に陥っている。 ロシアはこの状況を好機と見た。 国連は、第2次世界大戦を防ぐことができなかった国際連盟の反省を踏まえ、米国、英国、ソ連、中華民国などの連合国が中心となって設立(1944年)された。 国連設立の最も重要な狙いは、国際連盟の失敗を反省し、国連軍による集団安全保障制度を導入し、戦勝五大国(米・英・ソ・仏・中)の安全保障理事会における意思決定を重視した。 そのため、(1)安全保障理事会に大きな責任と権限を付与し(2)常任理事国に拒否権を付与した。 しかし、常任理事国に拒否権を付与したことがあだとなり、常任理事国間の対立を背景に常任理事国が拒否権を行使するため、何ら重要な決議が採択されない状態となっている。 ●国家間の紛争を解決する権威ある組織が世界に存在しない 岸田文雄首相は2月25日、ロシアによるウクライナへの大規模な侵攻を受けて記者会見で「力による一方的な現状変更の試みで、明白な国際法違反だ。国際秩序の根幹を揺るがす行為として、断じて許容できず、厳しく非難する。」と厳しく批判した。 しかし、ロシアは、自国民保護のために軍が行動していることを理由に国際法違反ではないと主張するであろう。 では、ロシアと欧米の言い分のどちらが正しいかを判断するは誰なのか。 オランダのハーグには国家間の紛争を平和的に解決することを任務とする国際司法裁判所が存在する。 国際司法裁判所は、被告国が裁判の開始に同意して初めて裁判が開始される。その判決には法的拘束力があり、一方の国が判決に従わない場合には国連の安全保障理事会は判決に従うように「勧告」することができる。 だが、ロシアが常任理事国である限り、ロシアを非難する「勧告」は決して発出されないであろう。 とするならば、大国であれば国際法を守らなくてもよいことになる。まことに不条理な話である。 ●2. なぜ今なのか ●2-1 戦術的側面 ●ロシア軍は、早期に行動を起こさない場合、夏まで侵攻を待たなければならなくなる。 3月にはこの地域は悪名高い「ラスプティツア」と呼ばれる時期となり、道や田野は雪解けによる泥でぬかるんだ状態となり軍事行動の障害となるからである。 ●ロシアは、2021年11月頃から、ウクライナとの国境周辺に約10万の大規模な部隊を集結させた。 極寒のこの時期に3か月以上野営することはお金もかかるが兵士の士気にも影響する。2月末が限界であったのであろう。 ●2-2 戦略的側面 ●今、米中間で熾烈な覇権争いが続いている。そして、米国の関心がアジアにあることは否めない。 現に、今回のウクライナ情勢についても米国はイニシアチブを取ろうとしていない。結果、欧米の足並みが揃わない。プーチンは今がチャンスと見て、ウクライナに軍事侵攻をしたのであろう。 ●今、中ロ関係は、歴史上最も良好である。 ロシアは、欧米諸国から経済制裁を科されても中国からの支援が期待できると見ているのであろう。中国の習近平国家主席とプーチンは2021年5月19日、中国でのロシア製原発の新規建設に関する記念式典にオンライン形式で出席した。新華社によると、習近平氏は2021年が善隣友好協力条約の締結から20周年となることに触れ、「両国関係を幅広い領域で、より深く、より高い水準へと発展させていく」と強調。プーチンも「露中関係は歴史上、最も良好で、習近平主席との共通認識は着実に実行されており、協力の範囲は日増しに広がっている」と述べた。また、プーチンは北京オリンピック開会式に合わせて中国を訪問し、習近平主席と会談した。プーチンとしては、ロシアの安全保障上の懸念について中国から理解を取り付けたと見られている。 ●3 おわりに 中国は、今回のロシアのウクライナへの軍事侵攻対する国際社会の対応は、将来の台湾侵攻や尖閣諸島占領に向けた参考事例にするであろう。わが国とっても他山の石である。中国は、2014年のロシアによるクリミア侵攻で当時のバラク・オバマ米政権を含む国際社会がロシアの行動阻止に向けて積極的に動かなかったと見ている。 今回のウクライナへの軍事侵攻については現在進行中であるが、これまでのところ、バイデン米政権を含む国際社会が毅然とした対応をしたようには見られない。対抗手段が経済制裁に限定されている。 仮に、尖閣諸島有事の際、ウクライナと同盟国日本に対する米国の対応は異なるであろう。しかし、米国を頼ってばかりではいられない。軍事力による脅しには、毅然として軍事力で対応する覚悟と準備をしていなければならない。そのためには国民とマスコミの支持が不可欠である。 |
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●ロシア「突然の軍事侵攻」その先にある4つの狙い 2/25
ロシアのウクライナへの攻撃が開始され、世界がこれまでにない緊張に包まれている。筆者は、ロシアのシナリオとして、ロシアがウクライナ東部(ドンバス)地域の「ドネツク人民共和国」、「ルガンスク人民共和国」の独立を承認し、同「国家」との国際条約に基づくウクライナ東部地域への軍の駐留を行う可能性を以前から指摘していたが(世界が大騒ぎ「ロシアのウクライナ侵攻」その理由)、正直、ここまでスピーディな展開は予想していなかった。 ロシアは、なぜドンバスへの軍の駐留にとどまらず、キエフやハリコフを含むウクライナ各地の軍事施設へのミサイル攻撃に踏み切ったのだろうか。世界は、アメリカ、欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)、国連といったさまざまな国や組織のロシア非難で渦巻いているが、ロシアの行動を理解し、その狙いを考察するには、何よりもロシア自体の言葉に耳を傾ける必要がある。 また、当事者であるウクライナや、新たな「国家」であるドンバス地域、そしてロシアとアメリカの望んでいたシナリオを改めて考察する必要があるだろう。今回の強引な軍事侵攻についてはウクライナで兵士だけではなく、民間人の犠牲者が出たり、一般の人々の生活を脅かしていることを踏まえると、その行動を正当化することはできない。だが、ここではあえてロシア側の思惑を探ることで解決の糸口を考えてみたい。 ●ドンバス住民はロシアにとって「国外の同胞」 まず、ロシアにとってのドンバスが持っている意味だが、これはプーチン大統領が2月21日に行った国民向けの演説でも繰り返し言及しているように、ロシア語、ロシアの伝統や文化を守っているロシア系住民の居住地である。2020年のロシア憲法改正において、「国外の同胞の権利、利益の保護、ロシア文化のアイデンティティの維持」を新たに追記している。ドンバス住民はロシアにとって「国外の同胞」にほかならない。 つまり、ロシアは憲法に従って、ドンバス住民の権利と利益を保護する義務を負っていることになる。2014年のウクライナの政変で民族主義色の強いポロシェンコ政権が誕生したことで(現在のゼレンスキー大統領はその後任)、ドンバスの分離派勢力は彼らの権利が侵害されることを危惧して独立を宣言し、武装闘争を開始した。当然ウクライナ政府はこれを認めず、激しい戦闘が起こった。これが2014年から2015年の初めにかけてのウクライナ情勢である。 ロシアは憲法に定められた国是に従ってこの問題に介入し、分離派勢力を軍事的に支援したが、ドイツやフランスの仲介で、停戦合意に至った。これがミンスク合意である。 ミンスク合意はドンバス地域の自治を拡大するという内容を含むものだった。ロシアとしては、ドンバスの自治が確立されればドンバスのロシア系住民の権利が守られると考えたのである。一方、ウクライナはドンバスに強い自治を与えることは、ウクライナの統合にとって望ましくないと考えるようになり、ミンスク合意の内容は7年以上にわたって履行されなかったわけだ。 ●軍事力を増したウクライナに脅威 このような中、アメリカがウクライナへの数十億ドルに上る軍事支援を行ってきたことで、同国は欧州地域でロシアの次に軍事力が大きい国に成長してしまった。プーチン大統領は、この事実を強く非難する。なぜだろうか。 ウクライナは、ドンバス地域の紛争が「凍結された紛争」となり、分断が固定化されることを望まなかった。自治を与えれば分断が固定化されてしまう。何としてもドンバスとクリミアを取り返さなければならない。そのためには軍事的に制圧する選択肢も捨てていなかった。ウクライナがミンスク停戦合意の履行を渋っていた理由である。 ウクライナがアメリカの軍事援助で強化されればされるほど、ドンバスにおけるウクライナ政府軍と分離派勢力の軍事バランスは崩れてしまう。というよりも、すでに崩れていたのである。 それゆえに、昨年末、ロシアはウクライナ東部国境に10万規模の軍部隊を集結させて圧力を加えた。ウクライナ政府軍を牽制し、東部の軍事バランスを回復するためだ。これが、ロシアがアメリカによるウクライナの軍事力強化を非難する本当の理由である。 そのうえでロシアはNATO東方拡大阻止と、ロシア周辺のミサイル基地などの攻撃兵器の撤廃といった要求をアメリカ及びNATOに突きつけた。NATO側は、「オープンドア・ポリシー」(NATOに加盟したい国は受け入れる)という旗を降ろすことはできないとはっきりと拒否した。それはNATO側からすれば当然の話で、集団防衛のための組織であるというNATOの根本的な理念にも合致している。 しかし、ロシアが求めていたのは「オープンド・ポリシー」を捨てろということではなく、「ウクライナとジョージア(グルジア)を加盟させるな」ということだったのである。プーチン大統領は、ウクライナがNATOに加盟すれば、ロシア対NATOの戦争になる、と何度も警鐘を鳴らしてきた。どういうことだろうか。 ●NATOの東方拡大の放棄を迫ったが… ウクライナはクリミアとドンバスの失地回復を公約に掲げている。仮に、ウクライナがNATOに加盟すれば、NATOはウクライナを防衛する義務を負うことになる。その状態でウクライナが失地回復を求めて攻撃的な行動、例えばドンバスへの攻勢に出れば、ロシアが反撃してきた場合、NATOがウクライナ側に立ってロシアを撃退してくれるはずだ。これがウクライナの思惑だ、とロシアは考えたのである。 ゆえに、ウクライナがNATOに加盟すれば、ウクライナは必ず軍事的な攻勢に出て、クリミアとドンバスを取り返そうとしてくるだろう。それだけは何としても阻止しなければならない。NATOとの戦争になるからである。 しかも、NATOとアメリカはウクライナを軍事的に強化している。時間はロシアに味方してくれない。待てば待つほど、ドンバスやロシアの状況は悪くなっていくのである。ちなみに、ウクライナのゼレンスキー大統領は核武装の可能性にまで言及しており、これがまたプーチン大統領の不安をたきつけてしまった面もある。 ロシアが何度もNATO東方拡大の放棄をアメリカやNATOに迫ったが、ゼロ回答だった。ロシアは、アメリカやNATOが時間稼ぎをしていると考えたであろうことは想像に難くない。ミンスク合意を一向に履行しようとしないウクライナも時間稼ぎという点では同じである。一刻も猶予はならない。物欲しげな顔をして口を開けて待っていても、煮え湯を飲まされるだけだ。 そこでプーチン大統領は電光石火、ドンバス住民のロシア領内への避難、ドンバスの独立承認、ドンバス国家との友好協力相互支援条約の締結、軍の派遣、ウクライナへの攻撃、と次々と指示を出した。これがロシア側から見たこれまでの経緯だ。 ロシアの「このままではウクライナを利用したアメリカやNATOに追いつめられる」という恐怖感を踏まえれば、ロシアはどこまで進むつもりなのだろうか。 ●ロシアの4つの狙い ロシア軍はすでにウクライナの空港を始めとする軍事施設を攻撃している。一部地域については制圧したとしている。プーチン大統領は、「ウクライナの占領は計画していない」とし、ウクライナの非武装化が目的だと発言している。ここでこの「非武装化(demilitarization)」とはどこまでを意味するのかが焦点になってくる。上で解説したロシアの立場を踏まえれば、ロシアの狙いはウクライナの"中立化”であり、具体的には次の4点に絞られる。 1 ウクライナの軍事力をロシア(というよりもドンバス)に脅威にならないところまで破壊する。 2 アメリカによるウクライナへの軍事支援をあきらめさせる。 3 ウクライナのNATO加盟を絶対に認めないことを思い知らせる。 4 欧州の安全保障体制についてのテーブルにアメリカをつかせる。 この観点から見れば、現時点ではウクライナが反撃できないようになることが、最も重要な目標となるだろう。どこまでやればウクライナが反撃できないまで非武装化されたと言えるのか、それは正直わからないが、プーチン大統領が言うように、ウクライナを占領下に置くことまではしないだろう。そこまでしては、2、3、4といった次の目標を達成する可能性がなくなるからである。 この「非武装化」というのは奇妙な戦争である。プーチン大統領はこれを戦争とは呼んでいない。「特殊軍事作戦」だという。これもまた、いわゆるハイブリッド攻撃、マルチドメインオペレーションと言える。つまり、占領を目的とせず、ある程度の攻撃で無力化したら、交渉によって目的とする成果を勝ち取る、というある意味で柔軟な戦術である。 注意すべきは、「非武装化」というのは、単に現存する軍事施設を破壊することを意味するだけではなく、将来にわたってウクライナが軍事力を一定以上に強化しないことを意味しているだろうということだ。これが、2以降のウクライナの中立化という戦略目標にかかわってくるのである。 ロシアの作戦がいつまで続くのかだが、ウクライナやアメリカがロシア側との交渉のテーブルにつくまでということになるだろう。 ●日露戦争との奇妙な類似点 以上、ロシアの立場をロシア側の発言に即して分析してきたが、ロシアが抱いている懸念を妥当と見るかどうかはそれぞれだろう。ただ、1つ興味深い参照例をあげてみたい。今回のウクライナをめぐる事案は、日露戦争における極東の状況と類似しているところがあるということだ。 日露戦争前夜、ロシア軍は満州に駐留し、ロシアが朝鮮にも手を伸ばそうという形勢の中、満州はロシア、朝鮮は日本の勢力圏として認め合おうという日本側の提案をロシア側は拒否。このままでは時間とともに日本が不利になると考えた日本はついに日露開戦を決定している。 ここでロシア帝国をアメリカ・NATOに、NATO加盟の東欧を満州に、朝鮮をウクライナに、日本をロシアに置き換えればどうだろう。何となく、現在のロシアの置かれた立場が見えてくるのではないだろうか。 もちろん、日露戦争は100年前のことであり、国際社会は全く変わっているので、単純に比較することは適切でない。しかし、国際社会一部の国にとって、国際政治の現実は100年前と比べて、思ったよりも変わっていないのかもしれないということを頭の片隅に置いておくべきだ。 |
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●「ロシア軍のウクライナ侵攻」で、首都キエフが制圧されるシナリオとは 2/25
●プーチンがこのタイミングでウクライナ侵攻を決めた理由 まず、これまでの流れを振り返ってみよう。10万人といわれるロシア軍が、ウクライナ国境近くに集結したのは、昨年11月だ。そして、プーチンは、「ウクライナをNATOに加盟させない法的保証」などを、米国と北大西洋条約機構(NATO)に求めた。なぜこのような事態となったのか? 世界は戦後、米国を中心とする資本主義陣営とソ連を中心とする共産主義陣営に分かれた。欧州も、米国側の西欧と、ソ連側の東欧に二分された。そして、両者の境界となるドイツは、米国側の西ドイツ、ソ連側の東ドイツに分断された。しかし1989年にベルリンの壁が崩壊し、1990年には、「東西ドイツを再統一しよう」という動きが活発になってくる。 こうした中、米国は、「東西ドイツの統一を認めるか」とソ連に尋ねた。すると、ソ連のゴルバチョフ大統領は、「統一ドイツより東にNATOを拡大しない」という条件を提示。そこで米国は、NATOの不拡大を約束した。だが、1991年12月にソ連が崩壊すると、ゴルバチョフとの約束はあっさり破られ、米国は「反ロシア軍事同盟」NATOを拡大していく。 ソ連崩壊時に16カ国だったNATO加盟国は、現在30カ国まで増えた。新しい加盟国には、かつてソ連領(ロシア人に言わせるとロシア領)だったバルト三国も入っている。 そして米国は、ロシアの西の隣国で旧ソ連の国ウクライナや西南の隣国で同じく旧ソ連のジョージアも、NATOに加盟させようとしている。そのため、プーチンは、反ロシア軍事同盟の膨張を止めようとしているのだ。 だが、NATOの拡大は今に始まったことではない。にもかかわらず、なぜプーチンは、今になって大軍をウクライナ国境に送ったのだろうか? プーチンの狙いは、本人と側近以外は誰にもわからないだろうが、筆者は「米中覇権戦争が激化していることと関係がある」と見ている。 米国は、中国との戦いで忙しい。中国とロシア、両国を同時に敵に回すことはできないから、「今なら譲歩を勝ち取れる」と予想したのだろう。そして、ロシアは米国のみならず、欧州、NATOとも交渉を始めた。昨年12月8日にバイデンとプーチンのオンライン会談が行われた後、幾度となく交渉が繰り返されてきた。しかし、プーチンは望む結果、すなわち「ウクライナをNATOに入れない法的保証」を得ることができていない。 ●ウクライナ軍による攻撃激化がロシア軍侵攻の口実になる恐れ そして2月18日、プーチンは動き始めた。「ウクライナ軍の攻撃が激化して危険だから」との名目で、ウクライナ東部のドネツク、ルガンスクから、住民の避難を始めさせたのだ。女性、子ども、高齢者を中心に、これまで6万人以上がロシア領に避難したと報じられている。 「攻撃が激化して危険」というのは事実だ。欧州安全保障協力機構(OSCE)によると、1日1000〜2000件の銃撃が行われている。だが、ウクライナ側は、「ドネツク、ルガンスク側が攻撃をしかけている」と主張している。真相は分からないが、ウクライナ側には攻勢を強める動機はない。 なぜか? ウクライナは、ドネツク、ルガンスクの後ろに、(国境を隔ててはいるが)10万人のロシア軍が控えていることを知っているからだ。ウクライナ軍が攻撃を激化させれば、ロシア軍に侵攻の口実を与えてしまう。したがって、ドネツク、ルガンスク側が意図的に戦闘を激化させ、「ウクライナ軍が攻撃している」と主張することで、ロシア軍が侵攻しやすい環境を整えたのではないかと、筆者は考えている。 実際、プーチンは、「ドネツク、ルガンスクでジェノサイドが起きている」と主張し、2月21日に、親ロシア派勢力が支配する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認した。さらに、平和維持部隊を送ることを決めた。 ●ロシアに独立承認された親ロシア派地域の2つの「国」 ところで、「ドネツク」「ルガンスク」とは、どういう地域なのか? ロシアと国境を接するウクライナ東部に位置しており、ウクライナでは、「ドネツク州」「ルガンスク州」と呼ばれている。ドネツク州の人口は約460万人、ルガンスク州は、約240万人である。2014年3月、ロシアが、ウクライナからクリミアを奪い、併合した。当時、ロシア系住民が多いドネツク州、ルガンスク州では「クリミアに続け!」という機運が高まった。そして、ドネツク州の親ロシア派は2014年4月、ドネツク人民共和国の建国を宣言。ドネツク州460万人のうち、半数にあたる約230万人がドネツク人民共和国内に住んでいる。 ルガンスク州の親ロシア派も同時期に、ルガンスク人民共和国の建国宣言を行った。ルガンスク州240万人のうち、約150万人がルガンスク人民共和国内に住んでいる。 一方のウクライナは、当然ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国の独立を認めず、内戦が勃発。だが、2015年2月、「ミンスク2停戦合意」が成立し、以後大規模な戦闘は抑えられてきた。こうした中で今回、ロシアが世界で初めてドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国を国家として承認したのだ。 ●ウクライナの首都キエフをロシア軍が制圧する可能性 さて、ロシア軍が、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国に入った。プーチンは22日の段階では、「軍を派遣するかは現地の状況次第」と語り、派兵を公式には認めていない。しかし、欧米は「すでに入った」とみている。たとえばEUのボレル外相は22日、「ロシア軍がドンバス地域(=ドネツク、ルガンスク)に入った」と断言した。ロシア軍の動きは人工衛星から把握できるので、ボレル外相の言葉は事実だろう。両地域については、ウクライナのみならず国際社会も「ウクライナの一部」と認識しているので、「ロシアがウクライナへの侵攻を開始した」といえる。 問題はこの後のロシア軍の動きである。ロシア軍はドネツク、ルガンスクで止まるのか、それとも、ウクライナの首都キエフまで進むのか?『ウクライナ侵攻をもくろむプーチンの「本当の狙い」はどこにあるか』にも書いたが、「ドネツク、ルガンスクをウクライナから完全独立させて、ロシアの属国にする」のは、「予想通りの展開」だった。 ただし、「キエフ侵攻」は、現時点での可能性は低い。もしもロシア軍がキエフを侵攻すれば、プーチンは、「現代のヒトラー」として、その悪名を歴史に残すことになるだろう。だが、状況次第では、キエフ侵攻が起こる可能性もある。 問題は、自国領にロシア軍が侵攻してきたと認識しているウクライナ政府とウクライナ国民の動きだ。ウクライナのゼレンスキー大統領は2月22日、国民に向けた演説で、「ロシアは、2014年からドンバス地方(=ドネツク、ルガンスク)にいたロシア軍を合法化した」と語った。ロシア軍は2014年からドネツク、ルガンスクにいたが、ロシアはその存在を認めていなかった。だが、プーチンは「これから平和維持軍を送る」と宣言し、「元からいたロシア軍」が「公に活動できるようにした」ということだ。ゼレンスキーが冷静さを保ち、ウクライナ国民の怒りを鎮めることに成功し、ドネツク、ルガンスクへの攻撃を自制できれば、ロシア軍のキエフ侵攻は起こらないだろう。だが、ウクライナ国民の怒りをコントロールできず、「ドネツク、ルガンスクからロシア軍を追い出す!」ということになれば、全面戦争に突入する。そうなれば、プーチンはキエフ侵攻の命令を下すだろう。 そう考えると、ウクライナはロシア軍と戦うことを自制したほうがいいと、筆者は思う。だが、それは他国の話だからでもあろう。たとえば中国が尖閣に侵攻したとき、「日本は中国軍と戦うな」とは言えないだろう。ウクライナ国民から見れば、ロシア軍が自国内に侵攻してきたのだから、「戦って追い出そう」となるのは当然だ。それでも筆者は、ウクライナとロシアの戦いがここで鎮静化することを願う。 ●戦術家プーチンはロシアを地獄に連れていく 国のトップに「戦術家」がいるとロクなことがない。ナポレオンもヒトラーも、優秀な戦術家だったが、結局敗北した。プーチンは、間違いなくすぐれた「戦術家」だ。だが、「戦略家」ではない。 彼は2014年、ほぼ無血でクリミアを奪ったし、今回も、ほぼ無血でドネツク、ルガンスクを奪った(プーチンは、両人民共和国を「併合しない」としているが、実質支配していることに変わりはない)。ロシアにとってはいずれも「戦術的大勝利」である。しかし、「戦略的勝利」とはいえない。2000年から2008年、すなわちプーチンの1期目と2期目、ロシアのGDPは年平均7%成長していた。当時は非常に勢いのある国だったのだ。しかし、2014年にクリミアを併合した後、経済は全く成長しなくなった。2014年から2020年までのGDP成長率は、0.38%にとどまっている。成長が止まった最大の理由は、欧米日の経済制裁だ。 プーチンとロシア国民は、「クリミアを奪った罰」を受けている。それは、「貧困」という罰だ。 ロシアの1人当たりGDPは2008年の1万2464ドル(約143万4000円)から、2020年には1万115ドル(約116万4000円)にまで減少している。また、CEIC DATAによると、ロシア人の平均月収は2021年11月時点で、767ドル(8万8205円)にすぎなかった。そして今回、プーチンは、同じ過ちを繰り返している。 日米欧からさらに強い制裁が科され、ロシア経済はボロボロになるだろう。 「戦術家」プーチンは、ウクライナ国民を不幸にするだけでなく、ロシアを孤立させ、貧困に突き落とし、LOSE-LOSEの道をばく進する。1月末、「全ロシア将校協会」のイワショフ会長(退役上級大将)は、ウクライナ侵攻の結果について、公開書簡の中で「ロシアは間違いなく平和と国際安全保障を脅かす国のカテゴリーに分類され、最も厳しい制裁の対象となり、国際社会で孤立し、おそらく独立国家の地位を奪われるだろう」と書き、「プーチン大統領の辞任」を要求した。 ロシアが「独立国家の地位を奪われる」とは思わない。しかし、国際社会で孤立し、最も厳しい制裁の対象になるのは、間違いない。プーチンは、ウクライナだけでなく、ロシアも破壊することになるだろう。 |
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●プーチン氏はなぜウクライナに侵攻したのか、何を求めているのか 2/25
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はこの数カ月もの間、ウクライナを攻撃して侵攻するつもりはないと繰り返していた。しかし21日にはついに、停戦協定を破棄し、ウクライナ東部で親ロシア派の武装分離勢力が実効支配してきた2つの地域について、独立を自称してきた「共和国」を承認した。そして24日、ロシアは陸海空からウクライナ侵攻を一斉に開始した。死者の数は増え続けている。プーチン氏は今や、欧州の平和を打ち砕いたと非難されている。この次に何が起きるのか。それは欧州全体の安全保障体制を脅かすものになりかねない。 ●ロシア軍はどこへ、それはなぜ ロシア軍が最初に攻撃したのは、ウクライナ各地の都市に近い空港や軍本部だった。首都キーウ(キエフ)のボルィースピリ国際空港も標的になった。 続いて戦車や部隊は、人口140万人の北東部の都市ハルキウの近くから国境を越えて侵攻した。東はルハンスクの近くから、北はベラルーシから、南はクリミアから、次々と進んだ。 キーウ近郊の空軍基地を空挺部隊が制圧し、オデーサ(オデッサ)やマリウポリの大港湾都市にもロシア軍は上陸した。 侵攻開始の直前、プーチン大統領の演説がテレビで放送された。プーチン氏はその中で、今のウクライナから脅かされているため、ロシアは「安全を感じられないし、発展もできなければ、存在もできない」と述べた。 プーチン氏の主張のほとんどは、事実と異なるか、非合理的だった。自分の目的は、威圧され民族虐殺に遭っている人たちを守るためだとしたほか、ウクライナの「非軍事化と非ナチス化」を実現するのだと述べた。ウクライナで民族虐殺は起きていない。ウクライナは活発な民主国家で、大統領はユダヤ系だ。「いったいどうやったら私がナチスだというのか」と、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は反発した。逆にゼレンスキー氏の方が、ロシアによる侵攻は第2次世界大戦のナチス・ドイツによる侵略に匹敵すると批判した。 ウクライナでは2014年に親ロシア派のヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領が、数カ月続く国内の反対運動の末、失脚した。これ以降、プーチン氏はこれまでも頻繁に、ウクライナは過激派にのっとられたと非難していた。ヤヌコヴィッチ氏失脚を機に、ロシアはクリミア半島を併合した。さらに、ウクライナ東部の反政府分離運動を引き起こし、分離派を後押しした。この分離派とウクライナ国軍の戦いでは、すでに1万4000人が死亡している。 プーチン氏は2021年後半には、ウクライナ国境周辺にロシア軍部隊を大々的に集結させた。そして21日にはウクライナ東部をめぐる2015年の和平協定を破棄し、分離派が一方的に「共和国」を名乗った地域の独立を承認した。 ロシアは以前から、ウクライナが欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に入ろうとする動きに反発してきた。24日に侵攻開始を宣言したプーチン氏は、NATOが「我々の民族としての歴史的未来」を脅かしていると非難した。 ●ロシアはどこまでやるのか ロシアは、ウクライナで民主的に選ばれた政府を倒すつもりなのは今や明らかだ。ウクライナは抑圧から解放され、「ナチスから浄化されるべき」だとしている。 ウクライナのゼレンスキー大統領は、自分が「標的その1、私の家族が標的その2」になっていると警告されたことを明らかにした。 「ウクライナは2014年にファシストに制圧された」という、事実と異なる理屈は、ロシアの政府系テレビが繰り返し展開しているものだ。プーチン氏は「民間人に対する流血の犯罪を繰り返した」者たちを法廷で裁くつもりだと言及している。 ロシアがウクライナをどうするつもりかは不明だが、ウクライナ国民は強くロシアを敵視しており、激しい抵抗が予想される。 今年1月にイギリス政府は、ロシアが傀儡政権をウクライナに樹立するつもりだと非難。ロシアは当時これを、あり得ない話だと一蹴した。未確認の英情報部報告は、ロシアがウクライナを2分しようとしているとしていた。 侵攻開始の数日前、ウクライナ国境の近くに最大20万人規模の兵を集めていた時、プーチン氏は東部に意識を集中させていた。 ロシアが操るルハンスクとドネツクの「人民共和国」の独立を認めることで、プーチン氏はすでに両地域はウクライナの一部ではないと決定していた。続いて、両「共和国」がさらにウクライナ領土を獲得する権利があるという主張も、支持してみせた。 自称「共和国」の面積は、ルハンスクとドネツク地方全土の約3割強を占めるが、分離派勢力は両地域のすべてを獲得しようとしている。 ●欧州にとってどれほど危険な事態なのか 欧州の主要国が隣国に侵攻するのは、第2次世界大戦以来、初めてのことだ。その渦中にいるウクライナの人たちと、それを目撃している欧州の人たちにとって、これは恐ろしい事態だ。 ドイツが「プーチンの戦争」と呼んだ戦いで、すでに軍人か民間人かを問わず、数十人が死亡している。1940年代以降、欧州諸国の首脳たちがこれほど暗く厳しい思いをしたことは、めったになかった。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、欧州の歴史にとって転換点だと述べた。冷戦時代を念頭に、ゼレンスキー大統領は、ロシアが新たな「鉄のカーテン」を閉じて文明世界を排除しようとしているとして、ウクライナがそのカーテンの後ろに引き込まれることがあってはならないと述べた。 ロシアとウクライナ両国では軍関係者の家族が、これから不安な日々を送ることになる。ウクライナはすでに8年間、ロシアの傀儡(かいらい)相手にkビしい戦闘を続けてきた。ウクライナ軍は18〜60歳の予備役を全員招集した。アメリカのマーク・ミリー統合参謀本部議長は、ロシア軍の規模から類推して、人口が密集する都市部でも戦闘が起きる「恐ろしい」シナリオが予想されるとしている。 ロシアとウクライナに国境を接する他の国々にも、この侵攻の波及効果が及ぶ。国連は最大500万人の難民が発生する可能性があるとしている。ポーランド、モルドヴァ、ルーマニア、スロヴァキア、ハンガリーは避難民の大量流入に備えているという。 ロシア国民も決して、この戦争に対する備えをしていなかった。侵攻作戦を異論なしで承認したのは、国民をほとんど代表しない上院だった。 ●西側には何ができるのか NATOは戦闘機を警戒態勢においているが、NATOはウクライナそのものに戦闘部隊を派遣する予定はないと、態度を明示している。代わりに、軍事顧問や武器や野戦病院を提供してきた。この間、バルト三国とポーランドに兵5000人規模の部隊を配備した。ルーマニア、ブルガリア、ハンガリー、スロヴァキアにはさらに計4000人の部隊が派遣される可能性もある。 代わりに西側は主に、ロシアの経済と産業、特定の個人を標的にしている。 EUは、金融市場へのロシアのアクセスを制限し、ロシアの産業界が最先端技術を使えないようにすると約束した。ロシア議会の議員351人に制裁を科すほか、幅広い制裁措置に合意した。 ドイツ政府は22日、ロシアからの天然ガス輸送パイプライン、ノルドストリーム2のプロジェクト承認停止を明らかにした。パイプラインはロシアと欧州諸国による大規模な投資事業だ。 アメリカ政府は、ロシアの主要銀行2行や政府発行の国債を対象にした金融制裁のほか、プーチン氏に近いロシアの「エリート」を対象に資産凍結などの制裁を発表した。 イギリス政府は、全ての主要ロシア金融機関の資産を凍結するほか、100の個人や組織を制裁対象にすると発表した。ロシアの航空会社アエロフロートのイギリス乗り入れも禁止した。 カナダ政府も、カナダでのロシア国債の売買禁止や、ロシアの銀行との取引停止など、金融制裁措置を発表した。 日本政府は、特定のロシア関係者に対するビザ発給停止と資産凍結、両「共和国」との輸出入の禁止、ロシアによる日本での国債などの発行・流通禁止――の制裁措置を発表した。 ウクライナ政府は西側諸国に、ロシアの石油や天然ガスを購入するのをやめるよう働きかけている。バルト三国はすでに、国際銀行間通信協会(SWIFT、本部・ベルギー)からロシアを切り離すよう、国際社会に呼びかけている。SWIFTとは、国際銀行間の送金や決済に利用される安全なネットワーク等を提供する非営利法人。ただしこの制裁措置を実施すると、欧米諸国の経済も厳しい打撃を受ける可能性がある。 スポーツの分野では、ロシアのサンクトペテルブルクで予定されていた欧州チャンピオンズリーグ決勝の開催地は、安全上の懸念から、フランス・パリに変更された。欧州サッカー連盟(UEFA)は、さらに現状を踏まえた対応を検討しているという。 ●プーチン氏の目的は ロシアはNATOとの関係再構築を求め、今が「真実の時」だとして、特に3つの要求を強調してきた。 第一に、NATOがこれ以上拡大しないという法的拘束力のある確約を、ロシアは求めている。 プーチン氏は、侵攻開始は、NATOの東方拡大のせいでもあると述べた。ロシアは「もうこれ以上どこにも後退できない。我々がただ手をこまねいているだけで済むとでも、(西側は)考えているのか」と話していた。 ウクライナはNATO加盟の明確な行程表を求めていた。一方で、セルゲイ・リャブコフ外務次官は昨年、「我々にとって、ウクライナが決して絶対にNATO加盟国にならないという保証は、絶対的に必要だ」と述べている。 プーチン大統領は昨年、長い論文を発表し、ロシア人とウクライナ人は「ひとつの国民」だという持論を展開した。プーチン氏は以前から、1991年12月のソヴィエト連邦崩壊を「歴史的なロシアの崩壊」だと位置づけている。さらに21日の演説では、今のウクライナは共産主義時代のロシアが作り上げたもので、今や西側に操られている傀儡国家だと非難した。 プーチン大統領はさらに、もしウクライナがNATOに加盟すれば、NATOはクリミア半島を奪還しようとするかもしれないと主張する。 ほかの主な要求は、NATOが「ロシア国境の近くに攻撃兵器」を配備しない、1997年以降にNATOに加盟した国々からNATOが部隊や軍事機構を撤去する――など。 1997年以降のNATO加盟国というと、中欧、東欧、バルト三国を指す。ロシアは実際には、NATOの範囲が1997年以前の状態に戻ることを求めていることになる。 プーチン大統領からすると、西側は1990年の時点で、NATOが「一寸たりとも東へ」拡大しないと約束したのに、それでも東方に拡大したということになる。 西側の約束はソ連が崩壊する前のことだ。なので当時のミハイル・ゴルバチョフ・ソ連大統領への約束は、ドイツ再統一の文脈における東独についてのものだった。 ゴルバチョフ氏は後に、「NATO拡大の話題は(当時)一度も出なかった」と述べている。 ●NATOの反応 NATOは加盟希望国へ「門戸開放政策」をとっており、現在の加盟30カ国は、この方針に変化はないと力説している。 ウクライナの大統領はNATO加盟へ向けた、「明瞭で実現可能な期限設定」を呼び掛けている。しかし、ドイツのオラフ・ショルツ首相が言明したように、これが実現する見通しは当面ない。 すでにNATO加盟国になっている国が、その立場を手放すなど、あり得ないことだ。 ●外交的な出口はあるのか 米ロ大統領同士の首脳会談という話も出ていたが、今のところそれは実現しなさそうだ。 外交による合意があり得るとしても、そこにはウクライナ東部での戦闘への対応と、軍縮交渉の両輪が含まれなくてはならない。 アメリカは、短距離や中距離ミサイルの制限について、さらには大陸間弾道ミサイルに関する新条約へ向けて、交渉開始をロシアに提案している。ロシアは、アメリカが自国領土以外に核兵器を配備することの、全廃を求めている。 ロシアは、ミサイル基地(ロシア国内2カ所、ルーマニアおよびポーランド国内の2カ所)で相互チェック体制を確保するため提案されている「透明性メカニズム」には、前向きな姿勢を示していた。 |
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●首脳会談も無力「ロシア軍侵攻」欧州が見誤った事 2/25
刻一刻と事態の動くウクライナ情勢だが、ロシア軍がウクライナの軍事施設を「高精度兵器」で標的にし、軍事インフラ、防空施設、軍用飛行場、ウクライナ空軍を無力化する攻撃を開始して以来、ロシアのプーチン大統領と欧米首脳の外交交渉目的は、戦争回避から戦争の停止へ移った。 プーチン氏の強気な攻勢は間髪を入れず、行動に移されている。ウクライナ東部の親ロシア派が実効支配する一部地域を一方的に独立国として承認。同地域に平和維持の名目でロシア軍を派遣するように命じ、さらに首都キエフなどへの軍事攻撃を行っている。アメリカのバイデン政権は侵攻という言葉を当初避けたが、前言を翻し、ロシア軍の平和維持活動について侵攻との認識を示した。 すでにウクライナとの国境沿いのロシア領土および、ベラルーシ南部でロシア軍が演習を行った事実も加え、ウクライナに対してロシアが軍事侵攻する意志があったことが明確になった。しかし、振り返ってみれば、欧米首脳は危機を警告するだけで「平和的解決は可能」という考えに固守し、プーチンの本気度を見誤った可能性は高い。 ●フランス、ドイツのアプローチも実を結ばず アメリカと足並みをそろえて、ロシアへの経済制裁を開始した欧州連合(EU)にとって、ウクライナは陸続きなだけに、アメリカ以上に危機感を持っている。アメリカのトランプ前政権以来、北大西洋条約機構(NATO)に対して欧州加盟国の役割強化の流れにある欧州の主要国、フランス、ドイツ、イギリスは、第2次世界大戦後の過去のいかなる時期よりもロシアの脅威に対する責任が増している。 ところが、フランス、ドイツをはじめとしたロシアへのアプローチは効果を生んでいない。 フランスのマクロン大統領は2月7日に、ドイツのショルツ首相は15日にモスクワを訪問し、プーチン氏と首脳会談を行った。 またマクロン氏は20日にバイデン氏とプーチン氏に対して米露首脳会談を提案し、原則合意したとフランス大統領府は発表した。ところが翌日、プーチン氏がウクライナの一部地域の独立を承認。米露首脳会談の前提条件である軍事侵攻しないという状況を壊したことから、欧米各国首脳は「国際法への完全な違反」と不快感を示し、米露首脳会談は流れた。 注目すべきは、すべてプーチン氏のペースで物事が動いていることであり、米欧首脳はメディア向けに危機感を表明する一方、対応の迅速さは見られないままだ。 その間、プーチン氏は最大の交渉相手であるアメリカおよび欧州諸国の反応を見ながら、状況を正確に見極め、各国の微妙な対ロシア外交の違いの隙をついてゲームを進めているように見える。 アメリカのトランプ前大統領は「プーチンは天才的だ」と外交手腕を称賛し、「自分が相手なら彼は今回のような行動には出なかったはず」といつもの自画自賛のメッセージを流した。 自身も2月11日にモスクワを訪問したイギリスのベン・ウォレス国防相は、ロシアの軍事侵攻阻止のため宥和策を土壇場で示す西側の外交努力について「ミュンヘンの気配がする」と述べ、物議を醸した。 ロシアの軍事侵攻を警告したウォレス氏は、「彼(プーチン)が戦車のエンジンを切るだけで、私たちは皆、家に帰れるが、西側のどこかからミュンヘンの気配が漂っている」と付け加えた。 ●失敗の宥和策だったミュンヘン協定の二の舞? 「ミュンヘンの気配」とは第2次世界大戦前夜の1938年9月、ドイツ系住民が多数を占めるチェコのズデーテンの領有権を主張するドイツのアドルフ・ヒトラー総統に対し、イギリスとフランスの首脳が、これ以上の領土要求を行わないことを条件に、ヒトラーの要求を全面的に認めたミュンヘン協定を指す。 ところが、ヒトラーは停戦協定を破ってチェコに侵攻し、欧州を第2次大戦に引きずり込んでいった。イギリス、フランスを手玉に取られた外交として知られ、ナチスドイツの覇権を一挙に拡大させた「失敗の宥和政策」として語り継がれている。戦争回避を取り付けたイギリスのチェンバレン首相やフランスのダラディエ首相が英雄気取りで帰国する中、ヒトラーは2人がいかに愚か者かと周辺に漏らしていたことが知られている。 プーチン氏がすでにウクライナへの侵略に熱心である中で、ウォレス氏の発言は弱腰の欧州首脳の外交努力は効果がないとの不満の声でもあった。この発言に対し、イギリス国内では戦争の可能性が最高度に高まる中でプーチン大統領を刺激するとして、適切でないとの批判の声も上がったが、指摘は的中した。 一度は米露首脳会談実現の功労者になろうとしていたマクロン大統領は、プーチン氏の想定外の行動で冷や水を浴びた状態に陥った。同時にプーチン氏が外交交渉で一枚も二枚も上手なことを見せつけ、マクロン氏は自らの甘さとプーチン氏にとってのフランスの存在の低さを思い知らされた。 それでも4月にフランス大統領選の出馬期限が迫る中、続投を狙うマクロン氏は、外交得点なしに出馬表明する事態に陥っている。 野党候補らは最有力候補とされるマクロン氏への攻撃材料と見なし、マクロン外交の失敗として攻勢を強めている。フランス通信社AFPは「フランスの敗北」と指摘した。 無論、ショルツ首相もイギリスのジョンソン首相もプーチン氏から軽く見られていることに変わりはなく、あとはロシアへの経済制裁を実行するくらいしか、選択肢は残されていない。 第2次世界大戦以来、最大の危機に直面しているといわれる欧州の中で、EU議長国を務めるフランスには重苦しい空気が漂っている。EU内にはロシアの脅威を訴え続けてきたポーランドやバルト三国に耳を傾けなかったことを批判する声もある。 ウクライナのゼレンスキー大統領は非常事態宣言を出し、国際社会に「ただちに行動する」よう呼びかけた。さらに「プーチンによるウクライナの侵略を阻止できるのは、団結した強力な行動だけだ」とし、「慌てる必要はない」「私たちは勝つ」とウクライナ国民の団結を呼びかけている。 ●プーチンの我慢が限界に達した? そもそもロシアの要求は、ウクライナがEUとNATOに加盟しないことの国際法上の確約を得ることだった。 裏を返せば、EUもNATOも2014年のロシアによるクリミア併合のときに取り交わしたミンスク合意(ウクライナ、ロシア、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国が調印したウクライナ東部ドンバス地域における休戦合意)が、紛争の再燃で事実上破綻していたのを放置する中、プーチンの我慢が限界に達したことにあるともいわれている。 フランス国際関係戦略研究所(IRIS)のディレクターで欧州安全保障の専門家、エドゥアール・シモン氏はフランス日刊紙ル・モンドのインタビューで、「(東欧に)派遣された部隊は、アメリカ兵であろうとほかのNATO加盟国の軍の兵であろうと、ロシアによるウクライナへの攻撃の際に使用されることを意図していない。NATOの枠組みの中での同盟国の防衛目的にほかならない」と指摘する。 さらに「そのNATOに対するマクロン大統領の姿勢は、欧州で広く理解されているわけではない」とシモン氏は言う。マクロン氏は2019年「NATOは脳死状態にある」と挑発的な発言を行い、欧州独自の防衛体制の構築を提唱するとともに、一方的にロシアとの対話を開始した。この行動は「特に中・東欧諸国の加盟国を不安にさせている」とシモン氏は述べている。 今回はEU議長国という立場から、欧州自治の強化とNATO加盟の関係について、より現実的な立場の構築を目指すフランスが、対ロシア交渉で道を開こうとしたが失敗に終わった。理由の1つはロシアの交渉相手はアメリカであり、フランスやドイツではないからだ。マクロン氏はそれをわきまえて米露首脳会談を提案したが、プーチン氏は気に入らなかったようだ。 「長期的にはアメリカがヨーロッパの領土での存在感を持続的かつ大幅に強化することに対して関心も手段も持っていないと思われる」「(バイデン政権にとって)インド太平洋および中国との戦略的競争にアメリカの利益の軸足があるようだ」「アメリカはNATOへのヨーロッパ人のコミットメントが彼らの利益になると考えている」との認識をシモン氏は示した。 実際、NATO加盟国でもないウクライナの危機に対して、ロシアの軍事侵攻を受け、バイデン大統領は「わが国の軍は紛争に関与しておらず、今後も関与しないだろう」と述べ、「わが軍はウクライナで戦うためにヨーロッパに行くのではなく、NATO同盟国を守り、東部の同盟国を安心させるために動員する」として、同盟国を守る大義名分を明確にした。 何人かのフランス人に取材すると、「冷戦は終わったというのは幻想だった。ロシアの本質は今も変わっていない」(45歳、IT系企業社員)、「もっと早くプーチンのロシアを何とかすべきだった」(51歳、地方公務員)と言う。国際情勢に詳しいアナリストは「そもそもドイツのメルケル政権がロシアに甘かったことで、ウクライナは苦境に立たされた。今回の危機はドイツが生んだものだ」とドイツを手厳しく批判した。 ●「われわれはプーチンのゲームを誤解している」 IRIS創設者のパスカル・ボニファス所長は、ロシアのウクライナ侵攻について「ロシア、欧州双方に甚大なダメージをもたらすリスクを生んだ」と警告している。 ソ連邦崩壊後のロシアの安全保障戦略を専門とするフランス政治社会科学研究所(ISP)のアンナ・コリン・レベデフ氏は「われわれはプーチンのゲームを誤解している」と述べ、プーチンは歴史を操作することによって「彼自身の栄光の物語を書こうとしている」と指摘した。 さらに「2014年のロシアによるクリミア併合以来、ロシアはわれわれが合理的だと思う以上の行動をとることができる」ことを学んだはずなのに、今回もその合理性で交渉しようとしたことに疑問を投げかけた。 中国の台頭でかつてのアメリカに対峙した大国ロシアは冷戦後、存在感が薄れ、その受け入れられない現実への不満が頂点に達し、プーチン氏は自分の栄光のためにも世界の目をウクライナに向けさせ、力の誇示をはかったともいえる。その不満と怒りの感情に関心を払わなかった西側諸国の無関心が戦争を引き起こす一因だったと筆者は見ている。 |
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●プーチン大統領が「事実上の宣戦布告」、ウクライナ人が慌てない理由 2/25
●首都キエフは静かだが ロシア大使館の閉鎖が決定 ウクライナ東部のドンバス地方で、ウクライナ軍とロシアからの支援を受けた武装勢力が戦闘を開始したのが2014年4月。それから約8年の間に1万4000人以上が死亡し(ウクライナ政府発表)、そのうち約3500人は一般市民であった。 2014年4月以降、ドンバス地方では双方の戦闘によって住む場所を失った市民が続出。住み慣れた地域を離れて周辺国に移り住む市民も少なくなかった。何年もの間、日本や欧米諸国で報じられるウクライナ関連のニュースの多くが、ドンバスにおける戦闘に関するものであった。 ドンバスから離れた首都のキエフで、市民はロシアによる武力侵攻の可能性をどのように考え、どのような準備をしているのだろうか? 8年前のマイダン革命(親ロ的な政治姿勢のヤヌコビッチ政権を打倒した市民の抗議活動)時、連日の取材に協力してくれたタチャーナ・オリニークさんは、マイダン革命からしばらくしてキエフを離れ、西部のリビウでスタートアップの会社を立ち上げ、その間にイギリスに1年間留学している。数年前にキエフに戻ったオリニークさんは政府組織に勤務している。19日、キエフのアパートでくつろぐオリニークさんとビデオチャットで話をした際、筆者は聞いてみたいことがいくつもあった。 「キエフだって、安全が保障されているわけではない。普段はどのような生活をしているのか」という筆者の問いに、オルニークさんは「ほとんど、いつも通りの生活ですよ」と答えた。 「平日の仕事はコロナの影響もあってテレワークで行うこともあり、それ以外はスーパーマーケットに買い出しに行ったり、ストリーミングで映画を見たりする生活スタイルになっていますね。昨日は村上春樹原作の映画『ドライブ・マイ・カー』をストリーミングで楽しみました。友人や知人にも会います。非常時にどう行動するかは、近くの地下鉄駅をシェルターとして使おうと考えているくらいです」 キエフから離れることは考えていないと話すのは、オリニークさんだけではない。キエフの英語メディア「キエフ・インデペンデント」で記者として働く寺島朝海さんは、「記者としてできることは、最後までやりたい。実際にロシア軍がキエフまで侵攻したとしても、私は車も自転車すらも持っていないので、まだどのようにキエフから出ていくのか、真剣にシミュレートしたことがないんです」と語る。 大阪で生まれ、10歳の時に両親の仕事の関係でキエフに移り住んだ寺島さんは、まだ21歳。駆け出しの記者だが、8年前のマイダン革命ではまだ13歳だった。可能な限り今のキエフの様子を記録し続けたいのだという。 「戦争」や「軍事侵攻」という言葉とマッチングしない雰囲気すらある現在のキエフだが、各国の大使館は職員をキエフから退避させ、多くが西部の都市リビウに臨時の事務所を開設している。 アメリカのブリンケン国務長官は14日、キエフのアメリカ大使館を暫定的に閉鎖し、残っていた少数の職員をリビウに避難させると発表した。また、23日にはキエフのロシア大使館で国旗が降ろされた。複数のメディアは職員の退避が本格的に始まったと伝えている。 17日朝にはロシア大使館の煙突から煙が上がる様子が近くを通った市民らによって目撃されていたが、ロシアの国営タス通信は23日に関係者の話として、大使館閉鎖前に書類の焼却が行われていたと報じている。 ●ロシア軍の侵攻に対してウクライナの人たちが慌てない理由 キエフにはもう一人、日本出身で現地メディアに勤務する日本人がいる。ウクライナの国営通信社ウクルインフォルムで日本語版編集者として働く平野高志さんだ。 ウルクインフォルムは100年以上の歴史を持つ、ウクライナ最古の通信社だが、平野さんはキエフの日本大使館に約5年勤務したのち、ウルクインフォルムに転職というキャリアを持つ。 平野さんはキエフ市民の多くがパニックに陥っていない理由として、ウクライナ国内外では「ロシア軍による軍事侵攻」に対する認識の差が存在するとして、現状について次のように語る。 「キエフでは普段通りに買い物をしたり、レストランやカフェで食事をしたりする人も多いです。一方で、万が一に備えて大切なものをリュックなどに詰めて、非常時にはすぐに逃げられる準備をしている家庭も少なくありません。いずれにせよ、慌ててパニックに陥っている人は少数です」 平野さんは続ける。「ウクライナの人からすると、2014年のロシア軍のクリミア・ドンバスへの侵攻は終わっておらず、ドンバスでの戦闘でウクライナ軍や市民にどれくらいの被害が出たのかを伝えるニュースは毎晩流れている状態なので、新たな軍事侵攻があるという受け止め方ではないんです。大きな侵攻はあるかもしれませんが、戦争そのものは8年間ずっと続いています。ロシアが何かを仕掛けてくるという感覚を8年近く持ち続けているため、(大規模な侵攻に対して)心の準備をしている人は多いと思います」 平野さんは欧米や日本のメディアが使う「親ロシア派勢力」という言葉にも疑問を呈する。 「親ロシア派という言葉を聞くと、ロシア寄りの人たちが団体を作ったかのように聞こえます。実際、ロシアが武器やお金などあらゆるものを支援して作られたため、組織のトップはロシア政府との結びつきも強いですが、地元の人たちを代表するような役割は何もないんです。そういった事情があるにもかかわらず、ウクライナ東部に住む住民を代表するというスタンスや呼び名が、私には非常に気になるのです」 地元メディアの報道などでも、キエフで市民がパニックになって買い占めなどを行ったという話は聞こえてこない。ショットガンやライフルを準備し、携帯電話が使えなくなった場合に備えて家族で使える無線を購入した家庭もあったが、筆者自身も大多数のキエフ市民がそういったことを行っているとは考えにくいと考える。 ●ウクライナ周囲を囲むロシア軍と連日続く情報戦 NATO加盟国はウクライナに兵器の提供などで支援を行い、地理的にウクライナと近いNATO加盟国には米陸軍空挺(くうてい)師団などが駐留を開始した。 しかし、ロシア軍がウクライナに対して本格的な軍事侵攻を開始した場合、NATO加盟国ではないウクライナで、NATO軍部隊が活動できるとは現時点では考えにくい。 ウクライナの軍事予算は年間6000億円程度だが(2020年度)、国内でロシア軍と戦うためにはより多くの予算が必要との見方は強く、ウクライナ各地では中小企業の経営者や市民らが寄付金を集めて、軍事費の足しにしてもらっている。 軍事費よりも大きな懸念材料は、戦火が拡大することでウクライナ経済の停滞がより深刻になる可能性が大きいことだ。米ビジネス経済研究センターの試算によると、8年近く続いたウクライナ東部の戦闘だけで、ウクライナのGDPが約30兆円減となった。 ウクライナ東部の前線にいる兵士の士気は高いと伝えられているものの、新たな問題も発生している。 前線の兵士はメッセージアプリ「テレグラム」を使って、グループ内で情報交換などをするケースが多いが、ここにウクライナ兵を装ったロシアの諜報(ちょうほう)機関関係者らしき人物が紛れ込み、ニセの情報が拡散され、それらの情報をウクライナ軍側が見つけて削除するイタチごっこが続いているのだという。 さまざまな情報が飛び交う中で、ウクライナでは軍の兵士も市民も長期戦に備えている。緊張状態が続く中、ロシアメディアは24日午前、プーチン大統領が支配地域におけるロシア軍の軍事行動を承認したと速報で伝えた。 事実上の宣戦布告だ。連日、数時間おきに情勢が変化しているが、これから何度かにわたってウクライナ危機についてリポートしていく。 |
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●「頭の中が100年単位で古い」プーチンの“あまりに特殊な国家観” 2/25
「戦争犯罪者に煉獄はない。地獄に一直線に落ちるだけだ」 ウクライナ情勢を巡り国連の安全保障理事会が緊急会合を開催していたその最中にはじまったロシアのウクライナ侵攻。ウクライナのキスリツァ国連大使は、ロシアがウクライナに宣戦布告したと表明し、ロシアのネベンジャ国連大使に対して冒頭のように強く言い放った。 再三にわたる国際社会からの「ストップ」にもかかわらず、ついに起こってしまったこの事態。あまりに強引な侵攻に、世界各国からロシアへの批判が巻き起こっている。 ロシアは一体なぜ、このような振る舞いを起こしたのか。軍事評論家で、東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏のインタビューの中から、その理由を読み解くヒントとなる、プーチン大統領のあまりに特殊な世界観についてここに再公開する(初出:2019年11月24日 以下、年齢・肩書き等は公開時のまま)。 ●ロシアのあまりに特殊な国家観 〈ロシアの行動原理を理解するためには「彼らの独自のルールブック」を知る必要がある――そう著書に記した小泉氏。まずは、その「あまりに特殊な」国家観について聞いた。〉 ――まずプーチン、そしてロシアという国は、いまの世界、そして国際政治の現場をどのように捉えているのでしょうか。 ソ連が崩壊して、スーパーパワーでなくなってしまったということが、ロシアにとってはわれわれが想像する以上に面白くないことでもあったし、もっと言うと脅威でもあったと思います。ロシアの世界観は、パワーに大きく依存しています。世の中や国際政治を動かすパワーと一口に言っても様々ですが、ロシアは剥き出しの「軍事力」を極端に強調するんです。「強制的に相手の行動を変えるようなパワー」こそが、国際政治の主要因だと考えているのです。ロシアがこの価値観で自国をみると、実体以上に自分たちのパワーがものすごく弱くなってしまったようにみえる。「外国にいいようにされてしまう」と理解していると思います。 ――そのような「特殊な世界観」でみると、他国はどう見えているのでしょうか。 力が弱い国、特に自前で安全保障が全うできないような国は、一人前の国家ではないと見なします。「半主権国家に過ぎない」みたいな言い方をするわけです。「主権」はどの国も確かに持っているんだけど、その主権をフルスペックで発揮できるかどうかは軍事力による、という世界観です。たとえば、プーチンに言わせれば、アメリカに守られているドイツは主権国家ではないとなる。だからロシアにとって、国連常任理事国プラス数カ国ぐらいしか主権国家と呼べる国はないという世界観なんですよね。ロシア自身、90年代はソ連崩壊でもう主権国家ではなくなってしまうかもしれないという恐れを抱いたと思うんです。そこから盛り返し、2000年代の最初の8年間で、年平均7パーセントの経済成長をしてほぼGDPが倍になった。その頃、「ロシアはソ連崩壊後の混乱は抜け出した」と言い始めます。軍事力を支える経済力が増して、外国に支配されるかもしれないという危機も脱し、確固たる主権国家としての地位を取り戻したという宣言だったわけです。 ●「もし、そのまま…」ロシアの“if” ――自信を取り戻したんですね。 自信が戻ったのは、もう一つ要因があります。アメリカとの相対的なパワーバランスです。つい10年前まで冷戦をやっていたわけですから、ロシアは冷戦後もずっとアメリカを気にしていて、なかなか頭から離れない。ちょっとロシアが弱ったら、またこいつらがつけ込んでくるのではないかという気持ちがすごく強かった。しかも、90年代はメチャクチャになったロシアに対して、アメリカは経済も順調。IT革命みたいなイノベーションも起こして全然衰える様子がなかった。それが2000年代になってくると、アメリカはリーマンショックを食らってだいぶ弱った。しかも、そこにインド、中国、ブラジルなど他の新興大国が伸びてきた。そこでロシアは、パワーバランスがだいぶ相対化されたのではないかという、ちょっと楽観的な認識を持ったわけです。アメリカはもちろん、まだ強いんだけれども、だいぶ相対化されてきて、ロシアにとって悪くない世界に近づいたというように、2000年代にロシア側は見たのです。 ――2000年代は、経済発展が著しかったブラジル、ロシア連邦、インド、中国、南アフリカ共和国の5カ国の頭文字を取って、BRICS(ブリックス)と呼ばれていた時代ですね。 もし、そのままロシアの経済が順調に伸び続けていれば、ロシアは平和的台頭を果たすことができたと思います。2009年のロシア政府の政策文書『2020年までの国家安全保障戦略』では、2020年までにGDPで世界トップ5に入り、イノベーションも起こして原油依存経済もやめるとあります。実際に、2013年には購買力平価で世界第6位までGDPが上がる。しかし、急ブレーキがかかりました。1つは、2014年からの原油価格の急激な低下。もう1つは、2014年2月にロシアがクリミア危機を起こしてしまったことです。クリミア侵略はなぜ起こったのか ――どうしてそんなタイミングでクリミアを侵略したのでしょうか。経済制裁の可能性は検討されなかったのでしょうか。 ロシアからしてみれば侵略じゃないんですよね。あくまで「防衛的行動」を取っただけだと思っている。さきほどから説明しているロシアの世界観で言うと、ウクライナをはじめとした旧ソ連の国々は「半人前」の国家です。「その保護者は誰?」というと、ロシアであるという気持ちでいる。要するに、「君たちは一応独り立ちしてお家をもらったけど、まだ僕の保護下だよね」と思っていて、半人前なのだから、「親の知らないところで勝手なことしちゃ駄目だよ」と。クリミア侵攻の時は、ウクライナちゃんがフラフラとNATOのほうに付いていこうとしたので、ロシアは「駄目だぞ」といって、ゲンコツでポカッとやった。その程度のつもりでいるんですよ。 ――旧ソ連諸国には、いまだ「保護者」として振る舞うわけですね。 ロシアの世界観では、まだ危なっかしい独り立ちできない旧ソ連の子たちをアメリカがたぶらかそうとしていると思っている。ウクライナのオレンジ革命、グルジアのバラ革命、キルギスのチューリップ革命……。2000年代に一連の民主化革命が旧ソ連の国々で起こりました。普通なら、「それらの国の政府が汚職にまみれていてパフォーマンスが低かったから、国民に見放されたんだ」と理解するわけですが、ロシアの見方は違います。「これはアメリカの陰謀なんだ」と理解するわけです。全部アメリカが裏から糸を引いていると。さらに2010年代にアラブの春が起きると、また同じように理解する。「あれもこれも全部アメリカが内乱を人為的に引き起こして、気に入らない政府をつぶして回っているんだ」というわけです。そんななか、2014年にキエフで政変が起き、クリミア侵攻につながっていく。ロシアからすれば、「保護下にあるまだ無力で未熟な国々を、アメリカは裏から操って、そこでこういう政権崩壊を引き起こした。われわれが素早く入っていって守らなければ」という認識で介入したわけです。でも、当然これはわれわれ西側の人間から見たら、「なんていうことをしてくれるんだ!」という話になりますよね。挙句の果てに、クリミア半島を併合までしてしまう。クリミアって大きいんですよ。九州の7割ぐらいの面積があるので。そこに200万人以上が住んでいるというものすごく大きなところを、軍隊で占領して、併合してしまうって、19世紀みたいですよね。実際、ドイツのメルケル首相は「19世紀とか20世紀前半みたいな振る舞いだ」という言い方をして批難しました。われわれからすると受け入れがたいし、やはり危険だと見えるわけです。 ●プーチンは「頭の中が100年単位で古い。数世紀遅れている」 ――歴史の教科書で見るような事件に思えました。 まさに時代錯誤なんですよ。要するに、「古臭い」んですよね。ロシアの「パワーこそすべて」みたいな世界観とか、「君らは僕らの勢力圏内にいるんだから、お前らには完全な主権はない」という考え方は、18世紀、19世紀なら普通の考え方だった。プーチンが18世紀のロシア帝国の皇帝だったら名君です。でも、それを21世紀にやってしまったことが大問題なんです。ですから、僕のプーチンのイメージは、「天才戦略家」だとか、「悪のリーダー」だとかいうよりも、「古い男」。頭の中が100年単位で古い。数世紀遅れているというイメージなんです。 ――プーチンには、なぜそのような時代遅れの価値観が染みついてしまったのでしょうか? プーチンを支えるロシアの外交や安全保障、諜報機関、エリートたちの世界観がもともと古いんですよね。なんでロシアだけが?と思うかもしれませんが、例えば中国も近いんじゃないかと思います。彼らの場合は、経済も成長しているし、イノベーションも起きているから、ロシアよりもう少し頭が柔らかいかもしれませんが。でも、僕は中国の行動にはロシアとかなり近いものを感じます。 ――たしかにロシアは、中国と繋がりを深めていますね。 中露が気が合っているのは、互いに「権威主義体制(編集部注:一部のエリートによる非民主的な体制)」が必要だと思っている国だからかなと思っています。権威主義はいずれ倒されて民主化されていく――という認識が西側の国にはあるじゃないですか。だから、中国やロシアについても「まだ民主化していない」という言い方をする。ところが中国やロシアからしてみると、「いつか民主化する」なんて思ってもらったら困るんですよ。巨大な国家を統治するためにはこういう政体しかないのであって、いずれ民主化するというビジョンを持たれたら困る――と思っているんです。ロシアなんて、「民主化をしろ」とか、「ジャーナリストを殺害してけしからん」とか言われると、「またそうやって西側は情報戦を仕掛けてきている。民主化の名の下にわれわれの国体を覆す気だな」って認識する。たぶん、これは中国共産党も同じでしょう。 ――彼らから見ると存在そのものを否定されているように見えてしまうわけですね。 そう考えると、2010年代ってすごいんですよ。ヨーロッパは「私らポストモダンで安全で豊かな社会に生きています」みたいな顔をしていますけれども、一方では、まだナポレオン戦争の頃のような価値観を持ったロシアみたいな国がいる。さらには、ロシアがクリミアを取って「18世紀かよ」とか言われていた2014年に、イスラム国が登場して16世紀みたいな「カリフ制」の再開を宣言する。針をギュッと巻き戻った時計がいっぱい出現したんですね。 ――さまざまな世界観が共存することなど出来るのでしょうか? 共存できていないんだけれども、併存はしている。その世界観同士がガチガチとぶつかっている時代にみえます。冷戦が終わった後に、サミュエル・ハンティントンが『文明の衝突』を書いて、「これからは文明の地金みたいなものが決定的な役割を果たす。だから文明単位のぶつかり合いになるんだ」というようなことを言っていましたが、私もそう思います。ロシアも中国も、形の上では一応は「民主主義ですよ」と言うんですが、彼らの言う民主主義のやり方は全然違う。たとえば、プーチンのアドバイザーを務めたスルコフという人が「主権民主主義」という概念を持ち出しました。どういうことかというと、「みんな意見は自由に述べてよろしい。政府を批判するのも自由だ」。しかし、「一回リーダーが決めたことに逆らうのは許さん」と(笑)。 ●当初は「ずっと自由だった」ロシアの方針が変わった理由 ――ロシアの印象そのままですね。 いまやロシアはそうした抑圧的なイメージを持たれますが、当初はプーチンもここまでやろうとはしていませんでした。もちろん彼はKGB出身で強面なので、最初からやることはやったけど、ロシアメディアも10年前はずっと自由でした。特にインターネットなんて完全に野放しでしたよ。 ――それがどうして変わったんでしょう? 時間とともに、国民に体制に対する不満が溜まってきたからでしょうね。反体制運動なども起こってくるし、経済だって駄目になって。普通に考えると、国民の不満の根本的な原因を直さなければいけないわけですが……。プーチンは、やはり対策がKGB的なんです。「国民の不満が高まったら、監視や取り締まりを強化する」という方向に、どうしても行ってしまう。これは彼のキャリアによってビルトインされた思考の癖ですし、彼を支えている政策エリートたちもKGB出身者が多いので、どうしてもそういう解決策ばかり出てきてしまう。 ――その結果、他の国とは世界観が分断された国になってしまったのですね。 その分断線にしたがって、例えば、ネット環境も違ってきた。たとえば、中国のインターネットは、他の国とは別の世界になりつつありますよね。Googleも使えないし、TwitterにもFacebookにもつなげない。代わりに、中国の政府の監視下にある同じようなアプリなら使えます。インターネットというテクノロジーは同じものを使っているにもかかわらずです。最近、ロシアも徐々にそうなりつつあって、インターネットの監視が非常に厳しくなってきている。ロシア政府は、「ルー・ネット」という有事にグローバルなインターネットから切り離してロシアだけのインターネット空間を作れないかと検討しています。そういう分断の時代を迎えているイメージを僕は持っているんです。 ●ロシアが得意とする“柔術外交”とは? 〈2014年にはクリミア半島を強引に併合し、中国とも合同軍事演習を続けるロシア。アメリカ大統領選をめぐって、「ロシアゲート」という言葉が聞かれる現状で、ロシアという国は至るところで暗躍する「陰謀国家」のような印象を受ける。ところが、それは一面的な見方でしかないと小泉氏は語る。キーワードは「柔術」だ。〉 ――ロシアは、自国のイメージが悪化することを恐れないのでしょうか? そもそもロシアは、自国のイメージを良くする必要を感じているのかどうか、ということです。経済力で劣るロシアは、平時の体力が弱い。世の中が平和だと、ロシアという国はあまり目立たない。世の中が乱れだすと、途端にロシアという国は輝きを放つんです。ロシアにしてみると、普通に「いい国ですね」と言われて好かれても埋没してしまう。他方、怖がらせる能力は突出して高いわけですから、怖がられることで、その存在感は上げられるわけです。ある意味で“炎上マーケティング”、炎上型ユーチューバーみたいなものです。忘れられているよりはずっとマシ。人目に触れて存在感さえ高まっていれば、その注目度は何かしら価値に変換できる――という考え方があると思います。アメリカなど西側の国は、「秩序」から恩恵を受ける側なので、秩序を維持しようと介入をする。ところがロシアは、秩序を維持しても別に儲からない。だから、軍事介入にしても、秩序に関心がないので、混乱の中から何かロシアにとって役に立つものを掠め取るための介入なんです。アメリカの外交が戦略ゲームである「チェス」に喩えられるとしたら、プーチンがやっているのは「柔道」。ロシアは主導権を握る力はないので、相手の力を利用して、タイミングを合わせて大技を狙っている。どんな技が決まるかは誰にも予測できない。相手の出方や状況によって、仕掛ける技は一本背負いかもしれないし、腕ひしぎかもしれないのです。 ――プーチンは緻密な戦略家という評価もありますが、イメージが変わります。 プーチンは戦略家というよりも戦術家であると思う。ある瞬間に物事に対応する力はすごい。ただ、何か中長期のプランがあるのかというと、あまりないのではないか。「大国であるロシア」「旧ソ連諸国を統合するロシア」という自己意識はあるけど、それを実現する具体的なプランや戦略は乏しい。クリミアの侵攻作戦をみても、あれは教科書に載るような「戦術」のお手本です。けれど、結果的にそれでロシアは何を背負い込んだかというと、経済制裁やウクライナ人の反発でした。我々から見ると、結局はマイナスに働いているんじゃないかという気がします。 |
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●「プーチンは城に閉じ込められている・・・」 ロシアの未来と東アジア戦略 2/25
ロシア軍は24日、ウクライナの軍事施設に対する攻撃を始めたと発表し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まった。ウクライナ側によれば、攻撃は東部だけでなく郊外や南部などの軍事施設にも及び、25日には首都キエフにも侵攻して死傷者もでているという。 再三にわたる国際社会からの「ストップ」にもかかわらず、ついに起こってしまったこの事態。世界各国からロシアへの批判が巻き起こっているが、北方領土をはじめロシアと近接する日本には、いま何が求められているのか。 軍事評論家で、東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏のインタビューを、ここに再公開する(初出:2019年11月24日 以下、年齢・肩書き等は公開時のまま)。 ●ロシアの東アジア戦略とは? 〈あまりに特殊な18世紀並みの国家観をもつ大国、ロシア。2020年以降、ロシアはどこへ行くのか。小泉氏は展望を次のように語る。〉 ――日本からすると、中国やロシアと囲んだトライアングルの関係がどうなるかを考えなければいけませんね。 中国とロシアは有事に協力し合う関係、例えば尖閣諸島をめぐる有事にロシアの太平洋艦隊が駆けつけてくるような関係ではない。けど、尖閣諸島をめぐる議論の中でロシアが中国側に付く、というような展開はあり得る。実際に、南沙諸島でロシアはそれに近いことをやった。中国が主張した南沙諸島の領有権を国際仲裁裁判所が退けた際、プーチンは「今回の中国の主張を棄却した判決は中国側の意見を聞いていない。手続きに問題があるから支持しない」という言い方をして、中国に肩入れすることをやった。中国もクリミアに関しては、支持しないんだけれども、クリミアの手前まで艦隊を送ってくるぐらいはする。お互い「半ナマ」ぐらいのところで領土問題をサポートし合っています。 ――軍事演習も続きますか? お互い領有権問題を抱えている場所の近くまで行って演習をやるようにはなるでしょう。それが何を意味しているかはあえて言わないけど、黙って中露で演習する。目的は、外野が勝手に判断してください、と。この夏(2019年)、中露の爆撃機が尖閣諸島周辺にきた件が典型例です。ちなみに、ロシアの爆撃機が日本一周する時は、最後は北方領土を通って帰るんです。今後、中露の爆撃機が一緒に日本を一周して、帰りに北方領土の上空を通っていった、なんて状況になると面倒です。そうやって領土問題に中国を引っ張り込む、あるいは中国が領土問題にロシアを引っ張り込む、という展開はあると思います。 ――日本が中国や韓国と揉めている状況は、ロシアにとってはメリットがある? もちろん、メリットが大きい。先述の通り、ロシアは秩序ではなく乱世の国なんです。2019年7月にロシアの爆撃機が竹島の近くを通ったときも、日本と韓国が徴用工やGSOMIAでもめている真っ最中。黙って飛んでいただけで、勝手に日韓がエキサイトしてくれる。実際韓国機が警告射撃をしたら、日本側は「何事だ」と抗議した。「ただちょっとコースを変えただけなのに勝手にエキサイトしてくれた」とロシアは思っているでしょう。 ●ロシアの未来はプーチンの辞め方次第 〈ロシアの未来を占うポイントについて、小泉氏は20年続いてきたプーチン体制の終わらせ方に注目しているという。小泉氏はいう――「プーチンは、城に閉じ込められているようなものなんですよ」〉 ――プーチン体制はいつまで続くのでしょうか。プーチン後のロシアはどうなるんでしょう。 現状、ミニプーチンならいっぱい居るんですよ。例えば、トゥーラ州の知事をやっているデューミンという人物は元KGB系の切れ者で、にらみが利く。プーチンが辞めた後、プーチン的な統治を続けることはできると思うんです。問題は、そのプーチン的統治を続けても、国としてジリ貧だということです。プーチンは、自身について「私は混乱して崩壊の瀬戸際に立たされたロシアという国を任された、非常時の指揮官である」という認識を持っていると思う。言うなれば、戒厳令下の戒厳司令官です。90年代のロシアは本当にメチャクチャだった。それを何とか立て直す、そのためには多少の強権も非常手段もやむを得ないという認識でプーチンが登場して、一定の秩序をロシアに取り戻したわけです。 ●「城」から出られないプーチンの未来 ――その危機を脱したのでは? だけど、まだ非常事態体制をうまく解除できてないわけです。非常事態体制そのものから、利益を得ている人がいるから。例えば産業が国家の統制下に置かれて、その利益というのはプーチンのお友達に配分されているわけです。今さらこれをやめて、じゃあもっと自由で公正な市場にしますと言っても、これはプーチンサークルがまず承知しない。いわば、カフカ的な状況ですね。カフカの『城』はいつまでも城の中に入ることができない男の話ですが、プーチンの場合は自分の築いた「城」から出られない。誰もが、どうすればいいかは分かっているんです。対外的な緊張を緩和させて、国内の既得権益層を退場させればいい。でも、それはプーチン的なシステムの延長ではできない。ミニプーチンで数年はしのげるかもしれないけれど、数年後にちゃんと新しいリーダーにスイッチできないと国が保たない。ベストのシナリオは、2024年にちゃんと任期通りにプーチンが辞めることですが、ここで辞めるとプーチンは逮捕されたり、身に危険が及ぶ可能性が高い。 ――城から生きてでることはできないと? 城から出た瞬間に、権力がなくなった瞬間に破滅する。ロシアの中にも、プーチンが権力を失った瞬間にのし上がってやろうと思っている連中はいっぱい居る。そうすると、プーチンとしては怖くて辞められない。だから、身の安全を維持できるぐらいの権力を保ちながら半引退するみたいなことができればいいけど、それが難しい場合、本当に「終身独裁」を続けることになるかもしれない。 ――ソフトランディングできるのでしょうか? 頭の柔らかい若い世代の指導者が現れれば、ベストだろうと思います。最近では国家安全保障会議議長に国防大臣などの任命権を持たせて、プーチンがそのポジションに横滑りで就任するという説が囁かれています。中国共産党も、国家主席を辞めても、その後中央軍事委員会の主席をやって、引退することが多い。ロシアもそれを参考にしているのかもしれない。もっとも、肝心の習近平が国家主席の任期を撤廃してしまいましたが(笑)。たぶんプーチン政権は、日本でいえば「55年体制」みたいなものなんです。あの構造を破るのは本当に大変だったと思う。危機からの復興というかたちで、緊急的に生まれて、利権が固まり、成長が止まった後もずっと構造だけが残ってしまっていたのです。 ●日本に何ができるのか 〈ロシアという「西側の尺度」では捉えきれない大国を隣国にもつ日本。膨張を続ける中国という大国、関係が悪化する一途の韓国、ミサイルを撃ち続ける北朝鮮と、混沌とする東アジアの中で日本はどのように方針を立てればいいのだろうか。〉 ――今後、日本がロシアを利用できる場面はないのでしょうか。 日本がロシアを利用できればいいのですが、やはり“柔道家”としてはプーチンのほうが上なんですよね。下手に日本から技をかけると、完全に逆手に取られる可能性がある。だからできることは、日本とロシアの国益で一致する部分を積極的に探すことだと思います。例えば、中露がいくら接近しても、ロシアも手放しで中国に接近するのは怖い。それで最近ロシアはインドを仲間に入れようとしている。(2019年)9月のロシアの軍事演習でも、今年は中国に加えてインドとパキスタンも参加した。中国と直で組むとロシアはどうしても国力の差で引きずられるけど、少なくとも中印露の3カ国でやれば多少緩和できる。同時期にウラジオストックで開かれた「東方経済フォーラム」のメインゲストは、インドのモディ首相だった。前年のゲストは習近平だったのですが、「中国だけではなく、インドとの関係もあるんだよ」と内外に見せた。そうやって、ロシアは中国を相対化しようとしていると思うんです。日本も、日中露みたいな関係までは国力の差もあって難しいかもしれませんが、日印露の枠組みくらいなら、できるかもしれない。非軍事的な協力を、海軍などを使ってやったりすると、印象的かもしれないですよね。 ――ロシアに「中国一辺倒じゃなくても大丈夫」という枠組みを用意するということでしょうか。 そうですね。あるいは、中国に会いに行く時に、怖いから一緒に付いて行ってあげる、というようなやり取りは出来るかもしれない。要するに、ワンオンワンで目を見つめ合うと、中国のほうが「目力」が強い。でも、3、4人で会えば、ずっと見つめ合ってなくてもいい。日本が上手くそういう関係を作って、「僕も一緒に行くよ」とロシアに言ってあげるタイミングを作る、もしくはセッティングしてあげる外交ができるといい。日本は中国に次ぐ世界第3位の経済大国で、G7のなかで唯一の非NATO加盟国。ロシアにとっても、アジア太平洋地域を考えたときに、その存在は大きな意義を持ちます。中国の台頭や、ロシアのしたたかさは認めざるを得ない。その上で、日本としてできることを探していくということだと思います。 |
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●”8年越しのオペレーション”ロシアの侵攻にウクライナが「孤立無援」の理由 2/25
首都陥落が間近と伝えられるウクライナ。今後の展開はどうなるのか、ロシアの外交・安全保障が専門の笹川平和財団・畔蒜泰助主任研究員に聞きました。 ●死者137人「孤立無援」ウクライナ 井上貴博キャスター: ウクライナの首都キエフが陥落の危機と言われています。ウクライナのゼレンスキー大統領によると、死者は137人、負傷者は316人ということです。狙いについて話を進めていきます。やはりどの国でも首都が政府機能の集まっているということで、ロシアは執拗な攻撃を行っています。ゼレンスキー大統領によると「ロシアの破壊活動に従事する部隊がキエフに入った」。平和維持軍なんてとんでもない、破壊活動に従事する部隊がもう入ったんだと発言しました。「敵は私を第1の標的に定めた」何よりの自分の政権を転覆させるということが敵国ロシアの目的なんだということを発信しています。アメリカのブルームバーグ通信は「近くキエフが陥落し、ロシアの手の中に落ちるかも知れない」と日本時間の25日午前5時頃に伝えましたが、近くというのがどういうタイムスパンで話しているのかこの辺りも見ていく必要がありそうです。 笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員は「首都を制圧し、ゼレンスキー大統領に『NATOに加盟しない』と宣言させたい。しかしそれができないとなれば、ロシアは現政権を追い出し、NATOに加盟しない親ロシア政権を樹立させる、つまりゼレンスキー大統領、そしてその政権を転覆させて、新しいロシア寄りの政権を樹立させたい」と話しています。 ホラン千秋キャスター: ウクライナに「NATOに加盟しませんよ」と言わせるためだけにといいますか、それが理由でここまで軍事行動を起こすまでにロシアにとってはNATO非加盟は重要なポイントということなんでしょうか。 畔蒜泰助: ロシアからすると、実は8年前に親ロ派の政権が転覆させられたので、要するに8年越しのオペレーションってことなんですね。その間、外交をやったけども上手くいかなかったということなんですね。 ホラン千秋: これは実際に可能なんでしょうか? 畔蒜泰助: ゼレンスキー大統領は既に中立をした場合に、我々を誰が守ってくれるんだという発言をしていますので、中立を宣言することは念頭に置いてはいると思います。 ホラン千秋: 収束の可能性としてはもうそれ以外ないということなのか他にも可能性が方法としてあるのか、いかがですか。 畔蒜泰助: 収束するという意味においては、それしかないんだろうなと思います。 ホラン千秋: 今村さんは歴史時代小説家でいらっしゃいますので人の争いの歴史みたいな部分にも触れることがあると思います。現代でこういった争いが起きてることをどうご覧になっていますか。 作家 今村翔吾さん: やっぱりクリミア半島のことがあってから、あり得るってことは重々わかってはいるもののやはり「まさか」みたいな感じを正直受けてしまうのは、平和に慣れてしまっているのかなとは一つ思いますし、ロシア側の肩を持つとかではないんですけどロシアにはロシアの言い分があって、その言い分同士が交わらないからこういうことになるわけで、行くところまで行ったらこういうことになるんだなっていうのを改めてまざまざと現実を突きつけられた感じですね。 井上貴博: 先ほど畔蒜さんが少し触れていらっしゃいましたけれども、ゼレンスキー大統領が実際に声明で「私はもう孤立無援だ」という言葉を使いました。結局のところNATOもあまりそこまで本気で助けてくれないんじゃないか、アメリカは本気で何かやってくれるわけではなく助けてくれない。こうやって孤立無援になることをロシアのプーチン大統領は見透かしていたとも言えるんですか。 畔蒜泰助: ある意味、このオペレーションをやる上でNATO、アメリカがウクライナの支援をする、軍事的な武器を売るとか共有するといった実際の戦闘に参加するってことがないということは、バイデン大統領自身がはっきり明言していましたので、残念ながらそういうことなんだと思います。 井上貴博: 本当に首都が陥落するってありうるのかという観点で専門家に話を伺いました。間近とは言われるんですけれども、ウクライナ軍の兵士の数は約20万人です。多くは地上部隊だということを考えると、軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんは「ウクライナ軍はもう制空権を取られている、このことが大変大きいんだ」と指摘しています。地上戦で抵抗するしかなく空爆されたらほとんど無力状態でプーチン大統領がその気になれば首都はいつでも制圧できる状況なんだと話しています。 ●水面下で降伏の条件交渉の可能性も ホラン千秋: いつでも制圧できる状況だけれども、踏み出すのかどうかという部分は何を見極めているんでしょうか。 畔蒜泰助: 実は24日、フランスのマクロン大統領がプーチン大統領に電話をしています。それはゼレンスキー大統領の意向を受けて電話をしているということを発言していますので、ということはすでにゼレンスキー大統領はマクロン大統領を通じて、要するに和平交渉というか降伏の条件闘争をやっている可能性が一つあるんじゃないかと思います。 ホラン千秋: 先ほどバイデン大統領は軍事的に支援するということは無いと仰っていましたが、NATOやアメリカがウクライナ国民を助けるということを決断することは難しいんでしょうか。 畔蒜泰助: 残念ながらウクライナはNATOの加盟国ではなく「加盟したい」と言っています。一方ロシアは「加盟させるな」と言っています。フランスやアメリカは「加盟をさせない」とは言わないと。けれど加盟したいというウクライナの要望には「まだ早い」っていうことしか言わないわけですよね。残念ながら「孤立無援」というゼレンスキー大統領のコメントはその通りなんだと思います。 井上貴博: フランスを通してすでに条件交渉をやっている可能性があるとすると、そこで踏みとどまり、最悪のケースを回避する可能性はどれぐらいあるとお感じになっていますか。 畔蒜泰助: ロシア国内でも反戦のデモが起っているということを考えると、プーチン大統領としても国内の世論への影響を考えてあまり悲惨な状況を生むというのはやはりやりたくないんだと思うんですね。そういうことも今後の展開に影響してくると思います。 |
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●ロシアはなぜウクライナにこだわるのか…人類史上初めて原発を抱える戦地 2/25
今、ウクライナで何が起きているのでしょうか。挑発の裏に潜むロシアの思惑、その背景にある歴史の溝…緊迫のウクライナ情勢を取材しました。(報道特集 2月19日放送より抜粋・編集) ●在日ウクライナ人は今の状況をどう感じているのか 日本にいるウクライナ人は、祖国をとりまく情勢をどう見ているのでしょうか?日本の商品をネットを通じて世界中に販売する大阪市のベンチャー企業「ゼンマーケット(株)」。海外では日本の化粧品や釣り具、衣類が良く売れると言います。 「ゼンマーケット(株)」を起業したのはウクライナ人のグループで社員100人のうち、半数以上はロシアを含む27か国出身の外国人です。普段、政治的なことを話さないようにしていますが、ウクライナ人同士で集まれば、今の祖国が置かれている状況は気になるようです。 ゼンマーケット(株) 代表取締役 ナウモヴ氏「今のウクライナの状況は本当に心配です。まさか21世紀に戦争になるかもしれないという状況に陥ると思っていなかったのですが…家族も自分の国も、とても心配です」 ――家族との連絡は? 同代表取締役 スロヴェイ氏「ほぼ毎日のように(連絡を)とっています。本当に侵攻があれば今まで体験したことのない大変なことになるため、家族とは『どうする?』と、話し合っているところです」 同代表取締役 コーピル氏「首都(キエフ)に対して核兵器が使われないかすごく心配です。(核兵器が)使われたらどうなるのか。ウクライナ人もおそらくパニック状態に陥ってしまう」 ウクライナ人の女性社員にも話を聞いてみました。 女性社員「最初、この状況について聞いたとき『またかよ』と思いました。どうしてウクライナをほっておいてくれないのか」 別のウクライナ人女性社員は次のように話します。 女性社員「一番の感情は心配というよりも怒りですね。隣国の欲望のために、自分の親・兄弟・自分の一緒に育った人たちが明日どうなるのかわからないという現状に関して、非常に怒っています」 ●ウクライナ問題〜その背景にあるもの ロシアと国境を接するウクライナ東部。緊張が高まるこの場所に、世界の注目が集まっています。先月、JNNの記者がウクライナ東部ルガンスク州に入り取材を行いました。 ロシアとの国境付近にはウクライナ軍が常駐しており、緊迫感が漂っています。前線のウクライナ兵が対峙するのはロシア軍だけでなく、同じ州内に住む親ロシア派武装勢力からの攻撃もあるようです。武装勢力との衝突は2014年から続いており、これまでに約1万4000人もの死者が出たと言います。 元々、ソ連の一部だったウクライナはソ連崩壊に伴う独立後も、ロシアと良好な関係を望む住民が多くいました。しかし、その状況が大きく変わった出来事があります。 2014年、親ロシアの大統領が失脚するきっかけとなった反政府デモです。 この反政府デモでは、デモ隊と治安部隊の激しい衝突の末、100名を超す市民が命を落としました。結果、親ロシア派の政権が倒れ、親欧米派の政権が誕生します。 これに危機感を抱いたロシアは、ロシア系住民が多いクリミア半島を一方的に併合。さらにウクライナ東部で親ロシア派の勢力が武装蜂起し、実効支配するようになりました。そこには、ロシア側の軍事的支援があったと見られています。 「ロシアはウクライナを分裂状態に置くことで欧米化の流れを阻止する狙いがあったのではないか」と話すのは、ウクライナとロシアでのビジネスに関わり現地の事情に詳しい西谷公明氏です。 西谷氏「公式には(親ロシア派の武装蜂起に)ロシア政府は関わっていないと言っているが、国境地帯は開います。今も、人・物・資金・弾薬・兵器など、出入り自由と言ってもいいんです。ウクライナのNATOの加盟を阻むための楔ということでロシアは(軍事支援を)やったんだろうと」 一方、ウクライナの人たちの反発はむしろ高まったとみられます。ロシア政府は2019年、親ロシア派が実行支配するウクライナ東部2つの州のロシア系住民に対し、ロシア国籍を与えるとしましたが、これに応じたのは3分の1にも満たないという結果となりました。 西谷氏「ロシア系住民ですら、ウクライナ国籍のままでいることを選んでいるという現実が、プーチン大統領の目の前にあるんですね」 ――そうなるとプーチン大統領としては危機感を持ちますよね? 西谷氏「今回の件も含めて、その危機感はプーチン大統領の根底にあると思います。多くのロシア系住民も含めて、ウクライナが西(欧州)を向く国になったのが大きな変化だと思います。その現実はとても大きい」 ●ロシア側は事態をどう捉える〜ロシア住民の認識 ロシア側は事態をどう捉えているのでしょうか?ロシアの世論調査機関(独立調査機関レバダセンター)によると、緊迫化するウクライナ情勢の原因について50%の人が「アメリカ・NATOが悪い」と回答しています。「ウクライナが悪い」と回答した人が16%、「ロシアが悪い」と回答した人は4%となっています。 実際にロシア国民はどう思っているのか?話を聞いてみました。 ――ウクライナ東部で緊張感が高まっている。責任はどこにある? ロシア国民女性「緊張が高まっているというのは作り話で、危険なことなんて起こりませんよ。捏造された問題が無ければウクライナとは良い関係だったのに...」 ロシア国民男性「意図的に緊張を高めている人がいる。ウクライナ人も私たちも人質のような存在です。バイデン大統領は世界最高の権力者だとアピールしたいんですよ」 ●ロシア側は事態をどう捉える〜駐日ロシア大使の認識 金平茂紀キャスターが、ミハエル・ガルージン駐日ロシア大使にロシア政府としての認識を伺いました。 ガルージン駐日ロシア大使「ロシアはNATOの拡大という安全に対する大きな脅威に直面しているため、自国の防衛力の維持と向上を行わなければなりません。ですから、国のあちこちで軍事演習を行っています」 金平キャスター「ただ、あらゆる軍事演習全てが防衛的なものだとは限らないですよ」 ガルージン駐日大使「なぜ?金平さんは軍事専門家なのですか?」 金平キャスター「軍事演習の性格をどう見るかというのは、当事者によって違うんです」 ガルージン駐日大使「(軍事演習の目的については)ロシア国防省が正式に公表しています。マスコミの皆さんはロシアの正式な公表ではなく、でたらめなアメリカの発言を引用しています。アメリカはロシアの行動について判断する立場にないんですよ。自分の犯罪的な侵略歴が極めて長いから、黙った方がいいですよ。あの国は!(怒)」 ロシア側は“国を守るための演習”であることを強調し、アメリカなどの西側諸国を痛烈に批判する形です。なぜロシアはウクライナにこだわるのでしょうか? 第二次世界大戦時にウクライナはナチスドイツとソ連軍の主戦場となり、数多くの戦死者が出ました。そのため、ロシアは「ヨーロッパをナチスドイツから解放するための礎となった場所」としてウクライナを重要視しているのです。 ガルージン駐日大使「我々はウクライナとロシア、ベラルーシは1つの国民であると考えています。ロシアとウクライナ、2つの国は人間的・文化的・言語的・経済的・政治的・親族的にとても緊密に結び付けられている国だと考えています」 ●原発を抱える地域が戦地化することへの懸念 2月9日、セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使が会見を行い、金平キャスターが質問を行いました。 ――2014年のドネツク・ルガンスクの内戦状態の取材に伺って、ウクライナの人達同士が殺し合っているのを見てとても悲しい思いをしました。 コルスンスキー駐日ウクライナ大使「まず、あなたが言った『内戦』という表現について全面的に否定したい。(親ロシア派武装勢力は)ロシアの正規軍と連携をとっているのですよ。それが内戦ですか?」 コルスンスキー駐日大使は、ウクライナが人類史上初めて原発を抱える戦地と化すことへの危機感も露わにしています。 コルスンスキー駐日大使「ウクライナ全土が攻撃されたらどうなるか。人類史上初めて15基の原発と石油ガスパイプライン網や化学工場が戦地と化してしまうのです。北部の首都キエフ周辺にはチェルノブイリがあります。原発事故の放射性物質によって汚染された地域です」 ●繰り返してはならない原発事故〜放射能汚染で苦しむ住人 現在、ウクライナ国内にはあわせて15基の原発があります。 1986年4月、史上最悪のチェルノブイリ原発事故は旧ソ連時代に起きた事故です。ソ連から独立し、事故から35年以上過ぎた今でも、周辺住民は事故の影響に苦しめられています。 ウクライナ北部のナロジチ村は、チェルノブイリからおよそ70キロ離れているものの、事故当時の風向きで高濃度の放射性物質に汚染された地域です。ナロジチ村で生まれ育ったタチアナ・ルーチコさんは事故当時16歳でした。 旧ソ連政府が事故を隠蔽したことも被害拡大につながり、ルーチコさんは事故からおよそ5年後に長男を妊娠した際、放射能による被害が明らかとなりました。 長男を出産したあと流産と死産を繰り返し、ようやく授かったのが娘・マリアさんです。マリアさんは今、この村で教師として働いています。 ルーチコさん「流産が4、5回ありました。チェルノブイリの事故が原因だと言われました。同じ事が起こらないよう子どもにも事故のことを伝えていきます。悲劇が起こらないために」 マリアさん「私を産んでくれた事に感謝しています。私も自分の子どもを産み、ずっとこの村で暮らしていきたいです」 マリアさんは、心臓と甲状腺に疾患を抱えており、医師からは放射能による被害が原因だと指摘されたと言います。 マリアさん「いつも調子が悪いし息切れします。医師から甲状腺の検査をして下さいと言われました。甲状腺の病気は原発事故と関係があると思います。医師にも『その地域に住んでいるので当然だ』と言われました」 ナロジチ村はロシア軍が活発に活動しているベラルーシとの国境から50キロの近距離にあることから、タチアナさん一家は今も続く放射能被害とともに、戦争でさらに村へ被害が及ぶことを懸念しています。 マリアさん「もちろん不安です。何かあったらこの村は首都(キエフ)への通り道になるので」 ルーチコさん「ロシア人というよりもロシアの大統領が悪いのです。ロシア人全体ではありません。良い方向へ向かうと希望は持っています」 マリアさん「私の夢は平和と皆が健康でいられることです。戦争が起こらないように」 |
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●世界が瓦解する音が聞こえる──ウクライナ侵攻の恐怖 2/25
<昨日までの世界は砕け散った。世界は再び、武力によって、しかも適当な開戦理由をでっちあげて他国を侵略できる時代に逆戻りした> 2022年2月24日正午ごろ、プーチン大統領の対ウクライナ宣戦布告と侵略開始で、世界が変わってしまった。私が「勝手に」信じていた世界観は、砂上の楼閣である以前に蜃気楼だと徹底的に思い知らされた。もう元に戻らないだろう。 昨年末ごろから、日本でもロシア問題の専門家や軍事事情通が、ウクライナへのロシア軍国境展開とその危険性を大きく伝え始めた。当然彼らは殆どの場合、アメリカの偵察衛星や諜報機関から直接情報を仕入れているわけではなく、客観的な報道や現地情報へのアクセス等で「ロシア軍の侵攻は近い」と判断していた。私は雑誌『軍事研究』を定期購読する程度の趣味人のレベルだが、当然この手の話題には敏感であった。 しかし当時、私も、或いはロシア専門家も、軍事通も、その少なくない人々が「仮にロシアがウクライナに侵攻しても、最悪でも東部2州(ドンバス地方)への限定攻撃にとどまるだろうし、現在のロシア軍の集積は西側に揺さぶりをかけるブラフ行為ではないか」と思っていたに違いない。というか、そう思うしか無かった。 20万人前後の大量の地上部隊が、多方面から一斉に国境を侵犯する。しかもその相手が、人口4300万人を誇り国土面積が日本の1.6倍もある地域大国ウクライナならば尚更不可能であろう、という見立てである。ソ連は1979年にアフガニスタンに侵攻したが、当時のアフガンの人口は約1300万人に過ぎず、経済力でも圧倒的に劣後する小国である。1990年にはイラクのフセインがクウェートを侵略した。クウェートは当時から富裕国であったがその人口わずかに約200万人、日本の四国全県を合わせたよりもさらに狭小な小国である。 ●古典的な侵略戦争が戻ってきた だからウクライナのような地域大国に、ロシア軍が多方向から、陸上の国境を侵犯して、電撃的に一気に攻め込むという古典的な大侵略戦争は、常識的に考えると起こるわけがなく、そういった戦争は第二次大戦で最後かつ最終的だと思っていた。具体的にいえばドイツによるポーランド侵攻、西方電撃戦(対仏)、バルバロッサ(独ソ戦)、ソ連の対日参戦等々である。 古典的な大侵略はもう終わった過去の世界のお話である、そしてそれは愚かではあったが、あくまで過去の過ちである──という安心感があるからこそ、私たちは空想やゲームの中でそれを追体験して楽しんでいた。 スウェーデンのゲーム会社「paradox」社が開発した戦争ゲーム、『ハーツオブアイアン(Hearts Of Iron)』シリーズは、国産の『提督の決断』(光栄)などをはるかに凌ぐ大量のユーザーが世界中に居る(もちろん、彼らはロシアにもウクライナにも居る)。そこでは古典的な大侵略が、毎日、愛好家の手によって行われてきた。彼らはスターリン、或いはヒトラー、変則的にはドゴールやチャーチル、大本営、ルーズベルト等になりきって、多方面からの陸空攻撃を伴った立体的電撃作戦の手腕を競っていた。私もその熱心なユーザーの一人(熟練者レベル)である。 ポリティカルコレクトネスを度外視してこのゲームが世界中で愛されているのは、ゲームの歴史的再現度の緻密さや完成度もさることながら、「この手の古典的侵略戦争はもう起こらない」というある種の安心感があったからだ。しかしこのゲームの実況動画は、昨日を境に殆ど投稿(YouTubeへの公開など)がなされなくなった。ゲームの世界の古典的侵略が現実のものとなり、もはやその再現が笑えなくなったからだ。 9.11以降、或いはそのもっと以前から、現代戦とは古典的な地上からの侵略ではなく、サイバー戦・電子戦、無人機(ドローン)攻撃、そこに場合によっては宇宙も絡んだ複雑高度な多種多様の情報戦をも含んだものであると教科書的には規定されてきた。いかにも陸上国境を侵犯して正規軍同士が衝突する事態がなくなったわけではないが、それはある種の権威主義的な小国同士の紛争であって、一般的には戦争の次元は変化したのである、という理解があったことは間違いないだろう。 ●起こるはずのない戦争だった もちろん今次のウクライナ侵略にも情報戦や電子戦は行われているが、G8から除名されたとはいえ、仮にも国連常任理事国が20万もの大軍を越境させて多方面から一斉に侵略するという、そんなことをする訳がないし、実際にそうするのではないかという「そぶり」を見せたとしても、それは実際には実行しえないのだ──という、どこか弛緩した安心感というのがあった。 だから2022年に入り、「2月16日にもロシア軍がウクライナを攻撃する可能性濃厚」といったバイデン大統領の発言があっても、実際にはその期日を過ぎてもロシア軍が越境しなかったのだから、それは「あまりにも大げさだ」とか「寧ろ米英の対ロ煽動ではないか」という声が聞こえてきた。 2022年2月24日の午前(日本時間)まで、そういった声は底流では根強かったのではないか。2022年に入って、ロシア軍が仮にだが越境してもそれは東部2州程度までで、首都キエフや第二都市ハリコフへ軍を進めるとは考えにくい──ウクライナに駐在経験がある専門家も、一部の国際関係専門家もそういう人が少なくなかった。 クリミア併合以降、対ロ制裁の影響でロシア経済の成長率は鈍化しており、そんなこと──古典的大侵略戦争──が起これば、プーチンもただでは済むまい。如何に彼とて、ジョージア(グルジア)とは全然相手の規模が違うのである。よもやそんな損得計算ができない訳ではあるまい。彼ら専門家や事情通の認識が甘かったというよりも、そんな第二次大戦のような戦争の仕方を、私たちは殆ど等しく、「過去のもの」と忘却して、「もう起こらない」或いは「起こるはずがない」と決めつけてきた。あれだけの大戦争で何千万人が死んだのだから、人類は進歩し、反省し、学習したのである。だからプーチンにもそういった最低限の道徳めいたものがあるに違いない(仮にいかなるプーチン側の思想があるにせよ)、と勝手に思い込んでいた。 それが全部裏切られた。プーチンは、我々人類の中にある、そういった弛緩の裏をかいて、第二次大戦後、77年をして我々の世界観を完全にひっくり返した。私たちが忘却し、或いは忘却しなかったとしても「戦争の方法そのものが変わったのだ」という現代戦の教科書的解説にすがって、「そんなことはあり得ない」「起こらないのだ、仮に起こしたくても無理なのだ」という若干願望めいた世界観をことごとく破壊した。我々は完膚なきまでにプーチンにしてやられたのだ。 思えば侵略戦争の加害国は、すべて敵の弛緩の裏をかいてきた。ヒトラーが1938年のミュンヘン会談で英仏にチェコのズデーテン地方の併合を認めさせた時、英首相チェンバレンは「これ以上の領土的野心はない」というヒトラーの詭弁を信じ、ロンドンに凱旋した。チェンバレンは「これで平和は守られた」とスピーチして喝さいを浴びた。ところがヒトラーは翌年ポーランドに電撃侵攻してその全土を約2週間で占領した。第二次大戦の悪夢が始まったのである。 フランスは独国境にマジノ線要塞があるから対独防備はまず大丈夫である、と高を括っていた。ドイツ軍参謀マンシュタインはその裏をかき、ドイツ機械化部隊はマジノ線を無視してオランダ・ベルギーから一気呵成に越境してパリを占領した。マジノ線は当時のフランスが総力を挙げて築き上げた大要塞であり、これがあれば概ね不安はない、という弛緩した空気の虚を突かれた。 ●真珠湾攻撃もそうだった 1941年6月、ソ連首相スターリンは諜報機関からドイツ軍の国境集結の情報を受け取っていながら、「侵攻は無い」と結論して安堵したために、緒戦で赤軍は壊滅し、モスクワ占領一歩手前までの窮地に立たされた。或いは1941年12月、ルーズベルトは「仮に日本が太平洋方面を攻撃するとすれば、それはフィリピンだ」として、ハワイ防衛の必要性を軽視した。そしてあの真珠湾攻撃が起こった。 「侵略者は常に相手の裏をかく」という、いわば古典的侵略戦争における"原則"をこれだけ我々は歴史的に経験しながら、「ああいった大規模侵略は、最早起こりようがないのだ」と弛緩したために、またもその裏をかかれたのだ。少なくとも西側の私たちは常日頃「歴史からの教訓」と口にするが、実際には何も教訓としていなかったばかりか、皮膚感覚に、私たちの心の奥底に打刻することを怠ったのだ。そしてそれを事前に、ほとんど正確に予測していたアメリカの諜報機関等による情報精度が如何に高かったのかを、世界は直後に知ることになったのである。 ベラルーシ国境から、或いはロシアが不法に併合したクリミアから、ロシアの装甲部隊が正々堂々と越境する映像をCNNで観て、私は「これは夢か」とわが目を疑った。しかし現実なのである。世界中の人々が、或いは私という局所的な存在が信じていた世界は、昨日の正午粉みじんに飛び散って終わった。 「はい、これで平和が達成され、世界は元の秩序に戻りました」という大団円時代はやってこないだろう。世界は再び、力と力が奇妙に均衡するどころか、武力によって、しかも適当な開戦理由をでっちあげて他国を侵略できるという時代に逆戻りした。第二次大戦後のこの77年間はなんだったのだろうか。それは後世の歴史家から「(大国同士の戦争という意味においては)大いなる戦間期であった」と評されるのだろうか。この原稿を書いている2022年2月25日午後3時、ロシアの機甲部隊はキエフを占領せんとして攻撃を仕掛け始めている。残念ながらどう考えてもキエフは落ちるだろう。 ただひたすら、ただ率直に、虚無と徒労を感じる。破滅と絶望を感じる。「明けない夜は無い」とか、「明日があるさ」とか、もうそんな美辞麗句すら全く信じられなくなった。漆黒の永い夜は、いま始まったのだから。 |
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●ウクライナ侵攻で微妙な中国 肩入れ避ける理由は 2/25
ロシア軍がウクライナに侵攻したことに対し、中国は米露を含む各国に「自制」を呼び掛けることに終始した。中国は、台湾問題や新疆(しんきょう)ウイグル自治区などの分離・独立運動に波及することや、ロシアに巻き添えを食う形で国際的に孤立感を深めることを警戒。対米共闘で連携を強めるロシアを非難することはないものの、侵攻に肩入れすることも慎重に避けている。 「各国が自制を保ち、情勢を制御できなくなることを避けるよう呼び掛ける」 中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)報道官(外務次官補)は24日の定例記者会見で、ウクライナ情勢についてこう繰り返した。記者からは「ロシアの行為は侵略か」「非難しないのか」といった、中国の認識や立ち位置を確認する質問が相次いだが、華氏は「ウクライナ問題は非常に複雑な歴史的な背景と経緯がある」などと正面からの回答を避け続けた。 ウクライナ問題をめぐる中国の立場は微妙だ。ロシアとは近年、ともに対立する米国を前に関係強化を進めてきた。米英などが北京冬季五輪で政府代表を派遣しない「外交的ボイコット」に踏み切った中、数少ない主要国の指導者として開会式に参加したプーチン露大統領には借りがある。 一方、中国はウクライナとも巨大経済圏構想「一帯一路」など、経済を中心に強固な関係がある。北京のシンクタンク研究員は「ロシアもウクライナも中国の重要なパートナーだ。中国は自制し、慎重に発言する必要がある」と述べ、双方に配慮が必要な中国の難しい事情を指摘した。 ロシアがウクライナ東部の親露派支配地域の「独立」を承認したことを中国が認めれば、台湾問題などへの波及も懸念される。王毅(おう・き)国務委員兼外相は19日に「各国の主権、独立、領土保全は守られるべきだ。ウクライナも例外ではない」とロシアにクギを刺すような発言をしている。 今秋に習近平総書記(国家主席)の3期目入りを目指す共産党大会を控え、内政、外交ともに混乱を避けたいのが本音だ。ウクライナ問題をめぐり米欧との関係がさらに悪化することは得策ではないという計算が働いているとみられる。 |
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●スペイン、ウクライナ情勢受けエネルギー価格高騰の長期化を強く懸念 2/25
スペイン政府は2月24日のロシアによるウクライナへの軍事行動を受け、国家安全保障会議を緊急開催した。ペドロ・サンチェス首相は同会議後の声明で「これは不当かつ前例のない重大な侵略であり、世界の安全保障と安定を危険にさらす明白な国際法違反」と強く非難。ウクライナの領土の一体性と主権をあらためて支持するとともに、「全力で平和維持に努める」と述べた。スペインはウクライナ情勢が緊迫化した1月下旬以降、NATOとの協調の下、ロシア国境地域付近に兵力や戦艦、戦闘機を派遣している。 また、サンチェス首相はロシアへの経済制裁により、スペインやEU諸国の経済、特にエネルギー市場が大きな影響を受けるとの懸念を示し、「家計や企業、産業、新型コロナウイルス禍から回復を始めたばかりの経済への打撃を軽減するための措置を講ずるよう、EUに求めていく」と強調した。 スペイン石油ガス備蓄協会によると、スペインは天然ガスの輸入の4割強がアルジェリア産で、ロシアへの依存は限定的だ。ロシアから欧州向けの供給が一時停止しても、影響は極めて軽微だ。国内には欧州の液化天然ガス(LNG)受け入れ基地の約3分の1に相当する6カ所が立地するほか、アルジェリアと2本のガスパイプラインで接続されており、多様な供給源から調達できる。 テレサ・リベラ第3副首相兼環境移行・人口問題相は24日の下院で、「エネルギー供給は保障されている。スペインが大きな影響を受けるのは、国際価格の高騰によるエネルギー価格全般のさらなる高騰だ」と警告を繰り返した。 再生可能エネルギー発電の導入を急速に進めるスペインでは、卸売り電力価格の高騰が特に深刻だ(2022年1月19日記事参照)。卸売り電力市場では、バックアップ電源が稼動する場合、その価格が市場価格となる。再エネ電力もその価格で取引されるため、天然ガスを燃料とするコンバインドサイクル発電のコスト上昇が卸し発電価格に影響し、電力価格は過去最高水準で推移している。 スペイン政府は2021年後半から、電力料金の各種減税や、卸売り電力市場における再エネ・原子力発電事業者の売電額カット、困窮層への電気料金引き下げなど、あらゆる手を打ってきた。しかし、電気料金の上昇は食い止められていない。同年秋からEU共通の卸売り電力価格決定システムの抜本的な改革を提案してきたが、加盟国の多数派の支持は得られていない。 21日にスペインを公式訪問した欧州委員会のカドリ・シムソン委員(エネルギー担当)は「現在の卸売り電力価格決定システムには改革の余地もある」との認識を示した。ウクライナ情勢の緊迫化に伴い、エネルギー価格高騰の長期化懸念が高まったことで、欧州委がガス・電力価格の引き下げに本腰を入れるとの期待も強まっている。 |
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●株式市場はウクライナ情勢に敏感に反応 原油価格は高騰 2/25
株式市場は、ウクライナをめぐる動向に敏感に反応しています。 「(侵攻が)始まったので、少し見た方がいいかなと思うんですよ」 証券会社には朝から、ウクライナ情勢をめぐる問い合わせの電話が相次ぎました。株価ですが、前日までの5営業日で1400円以上値下がりしていたことで割安感が出た銘柄などに買い注文が集まり、結局、きのうより382円高い、2万6353円58銭で午前の取り引きを終えています。 一般投資家「やっぱり気にはなりますよね。今後の先行きが、どのようになるのかというのは、かなり不安定な状態ですから」 また、原油の供給が停滞することへの不安から原油価格が値上がりしています。国際的な原油価格の指標もきのう、1バレルあたりの価格が一時、100ドルを超えるなど、およそ7年半ぶりの高値を記録しています。こうした原油価格の高騰は企業業績への悪影響や、生活用品などのさらなる値上げにつながりかねず、日本経済への打撃になる可能性があります。 市場関係者は「ウクライナ情勢を巡る不透明さは根強く、市場が情報に敏感に反応する状況は続く」と警戒感を示しています。 |
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●ウクライナ情勢でリスク回避姿勢強く 2/25
25日の東京株式市場で日経平均株価は振れ幅の大きい展開か。バイデン米大統領がロシアの金融機関に対する追加制裁を表明し、前日の米株式市場で金融株が大きく売られた。一方、ハイテク株を買い戻す動きも目立った。東京市場でも主力の半導体関連などに買いが先行すれば、相場の押し上げにつながるだろう。もっとも、日中はウクライナ情勢を巡る報道で相場の下落圧力が強まることも考えられる。日経平均は前日終値(2万5970円)から上下500円程度は変動幅がありそうだ。 24日の米株式市場で米ダウ工業株30種平均は6営業日ぶりに反発し、前日比92ドル高の3万3223ドルで終えた。バイデン米大統領は同日、ホワイトハウスでの演説でロシアによるウクライナ侵攻を批判し、ロシアに対して「強力な追加制裁と新たな輸出制限を承認する」と述べた。米国で取引を禁じる銀行への措置をめぐり、ロシア最大手のズベルバンクと2位のVTBバンクを含む大手金融機関を幅広く制裁対象に加える。これを受けて金融株など景気敏感株が売られた。 金融株売りの一方、買いが入ったのは半導体関連などハイテク株だ。短期筋による売り持ちの巻き戻しでナスダック総合株価指数は前日比3.3%高と、6営業日ぶりに反発した。フィラデルフィア半導体株指数は3.7%高となった。 東京市場でも主力の半導体関連株などを買い戻す動きが広がれば、日経平均の寄与度が大きいだけに、相場の大幅反発につながる可能性がある。もっとも、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は首都キエフにも及ぶなど事態は深刻化している。日中は報道で相場が急変動することも考えられ、投資家のリスク回避姿勢は引き続き強いだろう。 日本時間25日早朝の大阪取引所の夜間取引で日経平均先物は上昇した。3月物は前日の清算値と比べ330円高い2万6260円で終えた。 |
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●午前の日経平均は反発、米ハイテク株高を好感 2/25
25日午前の東京株式市場で、日経平均は前営業日比382円76銭高の2万6353円58銭と、6営業日ぶりに反発して午前の取引を終えた。前日の米国市場でのハイテク株高の流れを引き継いで堅調な推移となった。一方、ウクライナ情勢への警戒感も継続した。 日経平均は、朝方に反発して始まった後も上げ幅を拡大した。半導体関連や電子部品、グロース(成長)株を中心に買い戻す動きが目立った。ドル/円が堅調に推移する中、自動車など輸出関連もしっかりだった。日経平均は一時、前営業日比449円07銭高の2万6419円89銭まで上昇した。 ただ、その後は高値圏で売買が交錯し、伸び悩んだ。市場で警戒されたロシアの侵攻開始を受けて、いったん悪材料出尽くしとの見方がある半面、ウクライナ国内の戦闘状況や主要国の経済制裁などへの警戒感も市場にくすぶっている。 前日までの5営業日での下落が1600円超だったことを踏まえると「自律反発の域を出ない」(三木証券の北澤淳商品部投資情報グループ次長)と受け止め「ウクライナ情勢はまだ流動的な上、米国での利上げが見込まれる中では、積極的に買う流れになりにくい」(北澤氏)との見方が出ていた。 TOPIXは0.72%高の1870.96ポイントで午前の取引を終了。東証1部の売買代金は1兆6588億0100万円だった。東証33業種では、値上がりは海運業や電気機器、空運業など18業種で、値下がりは鉱業や保険業、銀行業など15業種だった。 個別では、東京エレクトロンやキーエンス、エムスリーが大幅高。ソフトバンクグループも買われた。一方、INPEXや三菱UFJフィナンシャル・グループ、SOMPOホールディングスはさえなかった。 東証1部の騰落数は、値上がりが1189銘柄(54%)、値下がりは906銘柄(41%)、変わらずは84銘柄(3%)だった。 |
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●欧米の利上げ観測揺るがず、ウクライナ情勢は景気と物価の両面に影響 2/25
ロシアによるウクライナ侵攻で経済成長が鈍化するリスクがあるにもかかわらず、金利トレーダーは米国と欧州の金融当局が政策引き締めを強めるとの見方を変えていない。 金利スワップ市場は米連邦公開市場委員会(FOMC)が年内に0.25ポイントの利上げを6回実施すること、およびイングランド銀行(英中央銀行)が5回、欧州中央銀行(ECB)が1回それぞれ政策金利を引き上げることを織り込みつつある。 これはロシアがウクライナに軍事攻撃を仕掛けたことを受け、北海ブレント原油先物が2014年以降初めて1バレル=105ドルを上回った後と前とで、ほとんど変わっていない。 トレーダーのポジション構築が揺らいでいない背景には、軍事行動により主要なエネルギーや商品(コモディティー)の供給が混乱し、既に著しい価格押し上げ圧力が一段と強まるとの懸念がある。 |
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●ロンドン外為9時半 ユーロ、上げ幅縮小 ウクライナ情勢悪化 2/25
25日午前のロンドン外国為替市場で、ユーロは対ドルで上げ幅を縮小し、英国時間9時30分時点は、1ユーロ=1.1170〜80ドルと、前日の同16時時点より0.0060ドルのユーロ高・ドル安で推移している。地政学リスクへの警戒から、前日に急速にユーロ安・ドル高が進んでいたため、持ち高を調整するユーロ買い・ドル売りが優勢となっている。もっとも、ロシアはウクライナへの攻撃を強めており、現地の情勢は悪化している。ロシアにエネルギー資源を依存するユーロ圏経済への影響を懸念したユーロ売りが上値を抑えた。 英ポンドも対ドルで上げ幅を縮小し、英国時間9時30分時点は1ポンド=1.3370〜80ドルと、前日の同16時時点より0.0100ドルのポンド高・ドル安で推移している。前日に大きく下げた英株価指数が反発するなど、投資家のリスク回避姿勢がやや和らぐなか、ポンド買い・ドル売りが優勢となっている。ただ、ウクライナ情勢が不透明ななか、ポンド買いを進める動きはみられず、上値は限られている。 |
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●4月 電気・ガス料金値上げ ウクライナ情勢で燃料高値 2/25
4月も電気・ガス料金の高い状態が続く。ウクライナ情勢などで火力発電用の燃料の高値が続く中、大手電力会社10社のうち7社は、25日、4月の電気料金を値上げすると発表した。 電気料金をめぐっては、電力の安定供給維持のため、燃料の高騰分を電気料金に自動的に上乗せする仕組みになっていて、残りの3社は、上乗せ可能な上限をすでに超えているため、値上げできる上限となっている。 一方、東京ガスなど大手都市ガス4社も、8カ月連続で値上げとなる。 |
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●ガソリン価格 13年5か月ぶり高値水準 ウクライナ情勢悪化で原油高騰 2/25
宮城県内の今週のレギュラーガソリンの平均小売価格は、1リットルあたり168円80銭で前の週から2円値上がりしました。13年5か月ぶりの高値水準です。 石油情報センターによりますと、21日時点の宮城県内のレギュラーガソリンの平均小売価格は、1リットル当たり168円80銭で、前の週より2円値上がりしました。全国平均は、1リットル当たり60銭高い172円ちょうどとなっています。石油情報センターによりますと、「ウクライナ情勢の悪化で原油価格が高騰していて、来週以降も値上がりが見込まれる」としています。 |
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●ロシア ウクライナに軍事侵攻 26日の動き 2/26
(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります) ●HRW「クラスター爆弾使用の可能性」ドネツク州 国際的人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、親ロシア派が事実上支配している東部のドネツク州で病院の近くにミサイルが着弾し、民間人4人が死亡、医療従事者を含む10人がけがをしたと発表しました。ヒューマン・ライツ・ウォッチが病院の医師などに確認したということで、現地で撮影された写真から、残虐な兵器として使用を禁止する国際条約があるクラスター爆弾が使用された可能性もあるということです。 ●西部リビウ 軍用機来襲知らせるサイレンが連日 ポーランド国境に近いウクライナ西部のリビウでは26日午前6時すぎ、軍用機の来襲などを知らせるサイレンが鳴り、ホテルの宿泊客などが近くにある別の建物の地下の部屋に避難しました。氷点下の気温のなか首都キエフなどから避難してきた子ども連れの家族など数十人が、警報が解除されるまでの1時間ほど静かに座って身を寄せていました。リビウでは前日にも3回サイレンが鳴り響きましたが、これまでのところ市内での被害は伝えられていません。 ●日本時間17:00 ウクライナ保健相 「攻撃で198人死亡」 ウクライナのリャシュコ保健相は26日、みずからのフェイスブックで、ロシア軍による攻撃によってこれまでに子ども3人を含む198人が死亡したと明らかにしました。およそ1100人がけがをして、30人余りの子どもも含まれているということです。 ●日本時間16:00 ロシア人も都内で抗議集会 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に対しては、ロシアの人々からも反対の声が上がっています。日本で暮らすロシア人が都内で集会を開き、抗議の声を上げました。日本で暮らすロシア人のグループがSNSを使って集会への参加を呼びかけたところ、新宿駅前の広場には26日午後4時ごろ、ロシア人を中心に100人余りが集まりました。参加者たちは「私たちはロシア人だが、戦争に反対する」と書かれたプラカードを掲げ「ウクライナに平和を!」などと繰り返し声をあげ、連帯の姿勢を示していました。 ●首都キエフの近くでロシア軍の車列破壊か AP通信はウクライナ軍からの情報として26日、首都キエフの近くでロシア軍の車列が破壊されたと伝えています。撮影された映像には、道路上で激しく壊れ全体が黒く焼け焦げた車両と、その周辺を調べるウクライナ軍の兵士の様子が映っています。 ●ウクライナ大統領が新たな動画「自分の国を守る」 ウクライナのゼレンスキー大統領は26日、新たな動画を公開し「インターネット上では私が軍に武器を捨てるよう呼びかけ、避難しているというような多くの偽の情報も出回っている。私はここにいるし、武器は捨てない。私たちは自分の国を守る」と強調しました。そのうえで「私たちにとっての武器は私たちの真実だ。真実とは、私たちの土地であり、国であり、私たちの子どもたちであり、私たちはこれらすべてを守る」と述べ、ウクライナの領土と国民を守り抜こうと結束を呼びかけました。 ●キエフの高層アパートに砲撃 ウクライナ内務省によりますと26日、首都キエフの中心部にある高層アパートに砲撃があったということです。地元メディアによりますとけが人がいるという情報もあり、救助作業が進められているということです。地元メディアは、ロシア軍によるミサイル攻撃だと伝えています。この高層アパートはキエフ中心部の「独立広場」から5キロほどしか離れておらず、周囲には学校やホテルなどもあり人口が密集している地域です。 ●政府がロシアへの制裁措置を了承 政府は、持ち回りの閣議で、さきに発表したロシアに対する制裁措置を了解しました。具体的には、 ・ 金融機関を対象とする資産凍結や ・ 軍事転用が可能な製品の輸出管理の強化、 ・ ロシアの国債などの日本での発行・流通の禁止、それに、 ・ ロシアが一方的に独立を承認したウクライナ東部の一部地域の関係者の資産凍結などが盛り込まれています。 政府は、ロシアの個人や団体の資産凍結や、半導体の輸出規制などを行うことも発表していて、必要な準備を進めています。 ●ウクライナ大統領「首都を失うわけにはいかない」 ウクライナのゼレンスキー大統領は、25日、声明を発表し、首都キエフへの侵攻が迫っているとして国民に対して改めて抵抗を呼びかけました。ゼレンスキー大統領は25日、国民に向けてビデオで声明を発表し「多くの都市が攻撃を受けている。特にキエフに注目が集まっているが、首都を失うわけにはいかない」と述べ、首都キエフへの侵攻に強い危機感を示しました。 ●ウクライナ南部で貨物船に砲撃か 日本の海運会社の子会社所有 ウクライナ南部の黒海で日本の海運会社が関係する貨物船が砲撃を受けたという情報を受け、国土交通省が確認を進めています。関係者によりますと、砲撃を受けたのはパナマ船籍の貨物船「ナムラ・クイーン」で、愛媛県今治市にある海運会社のパナマの子会社が所有しているということです。船の運航や管理に日本の企業は関係しておらず、フィリピン人の乗組員およそ20人のうち1人が軽傷とみられるということで、国土交通省が被害の詳細について確認を進めています。 ●米バイデン大統領がウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談 アメリカのバイデン大統領は25日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談しました。会談後のホワイトハウスの声明では「自分たちの国を守るために戦っている、ウクライナの人々の勇敢な行動を称賛した」としたうえで、ウクライナに対する経済や安全保障上の支援を続けるとともに、ほかの国々にも同様の支援を促していることを伝えたとしています。 ●米国防総省「ウクライナ側が激しく抵抗」 アメリカ国防総省の高官は25日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の状況について、最新の分析結果を明らかにしました。それによりますと、ロシア軍はウクライナの国境周辺に展開する地上部隊のうち、およそ3分の1の戦力をウクライナ国内に投入し、引き続き主に3つの方向から前進しているということです。このうち、ウクライナ北部と国境を接するベラルーシから首都キエフに向かうルートでは、キエフに向かうロシア軍に対し、ウクライナ側がロシアの想定よりも激しく抵抗していると分析しています。そのうえで「ロシア軍はキエフへの前進を引き続き試みているが、彼らが予想していたほど速くは移動できていない」と述べ、キエフへの侵攻がロシア側の想定よりも遅れているという認識を示しました。アメリカ国防総省の高官は、ロシア軍はこれまでのところ、人口が集中する地域を奪えておらず、ウクライナの制空権も確保できていないとしていますが「情勢は急速に変化する可能性がある」と述べ、警戒感を示しています。 ●日本時間9:00前 日米外相会談「侵略は一方的な現状変更の試み」 ウクライナ情勢をめぐって、林外務大臣は、アメリカのブリンケン国務長官と電話で会談し、ロシア軍による侵略は、力による一方的な現状変更の試みで、アジア地域も含めた国際社会全体の秩序にも影響があるという認識で一致し、日米同盟の抑止力と対処力を強化していくことを確認しました。 ●日本時間8:00 ニューヨークでロシアへの抗議デモ アメリカのニューヨークでは25日、前の日に続いて、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に抗議するデモが行われました。マンハッタンのタイムズスクエアに集まったウクライナ出身の人など数百人は青と黄色の国旗を広げ、「ウクライナのために祈ろう」などと書かれたプラカードを掲げながら「プーチンを止めろ」と声を合わせて訴えました。 ●キエフの駅には大勢の人が殺到する様子も 首都キエフの駅で撮影された映像には、西部のリビウに向かう列車に乗ろうと荷物を抱えた大勢の人たちが殺到する様子が写っています。列車から離れるよう注意を促すためとみられる空砲が鳴り響くと、悲鳴が上がり、ホームは騒然としていました。 ●“プーチン大統領の長年の友人”指揮者 米NYでの公演前日に交代 ニューヨークのカーネギーホールで、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮をする予定だったロシア人指揮者のワレリー・ゲルギエフ氏が、公演開始前日に交代すると発表されました。ゲルギエフ氏はロシアのプーチン大統領の長年の友人とされ、NHKの取材に対し劇場側は、交代の理由について「最近の世界情勢を踏まえたものだ」と説明し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が影響したとみられています。 ●日本時間7:40ごろ 国連安保理 ロシア拒否権で決議案は否決 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり、国連の安全保障理事会では、ロシア軍の即時撤退などを求めるアメリカなどが提案した決議案が採決にかけられ、理事国15か国のうち欧米など11か国が賛成しましたが、ロシアが拒否権を行使し決議案は否決されました。 ●ロシア 首都陥落に向け本格作戦か 一方で話し合いに応じる姿勢も プーチン大統領は25日、クレムリンで安全保障会議を開催し「ウクライナ軍の兵士に訴える。あなた方の手で権力を奪取しなさい。あなたたちと話す方が、簡単なようだ」と述べ、ウクライナ軍に対して、ゼレンスキー政権を見限り、権力を奪取するよう促しました。また、ウクライナのゼレンスキー大統領がプーチン大統領に会談を求めたのに対し、ロシア大統領府のペスコフ報道官は「ウクライナの中立的な地位について話し合うなら会談する用意がある」と述べ、ウクライナの非軍事化・中立化を条件に隣国のベラルーシでウクライナ側と会談する用意があることを明らかにしました。ロシアは軍の部隊をキエフに向けて進めながら、対話の条件として非軍事化の要求を突きつけ、ウクライナのゼレンスキー政権への揺さぶりを強めています。 ●ウクライナ大統領が動画投稿「私たちは皆ここにいる」 ウクライナのゼレンスキー大統領は、大統領府のフェイスブックなどに動画を投稿し、自身がまだウクライナに残っていると強調しました。動画は30秒余りで、ロイター通信によりますと、首都キエフの街なかで撮影されたということで、ゼレンスキー大統領が政府の高官ら4人とともに映っています。いつ撮影されたかは不明ですが、1人がスマートフォンの画面に表示された時間を示す様子も映っています。動画でゼレンスキー大統領は「皆さんこんばんは」と呼びかけたうえで「私たちは皆ここにいる。兵士もここにいるし、市民もここにいる。私たちは独立を守る。ウクライナに栄光あれ」などと語りかけています。 ●国連難民高等弁務官事務所「400万人がウクライナ国外避難も」 UNHCR=国連難民高等弁務官事務所は25日、ウクライナでは安全を確保するために避難を始めた人の数が、推計で10万人を超えるとみられると明らかにしました。また、5万人以上がすでに国境を越えて周辺国に逃れたとみられるとしています。UNHCRのマントゥー報道官は25日、スイスのジュネーブで開いた定例の記者会見で「今後、状況がエスカレートすれば、400万人に上る市民がウクライナから国外へ逃れることになるかもしれない」と述べました。UNHCRは近隣の国々に対して、国境を閉ざすことなく避難してきた人たちを受け入れるよう呼びかけています。 ●米国防総省 “ロシア軍激しい抵抗受け首都侵攻に遅れ” アメリカ国防総省の高官は25日、記者団に対し、キエフに向かっているロシア軍がウクライナ側から激しい抵抗にあっていると指摘しました。そのうえで「ロシア軍はキエフへの前進を引き続き試みているが、彼らが予想していたほど速くは移動できていない」と述べ、キエフへの侵攻がロシア側の想定よりも遅れているという認識を示しました。さらに人口が集中する地域はいずれもロシア側に奪われておらずウクライナの制空権もまだ制圧されていないとしています。一方、この高官は、ウクライナへの侵攻に展開されているロシア軍の部隊のうち、現在、ウクライナ国内に投入されているのは、全体の3分の1の戦力で、残りの部隊は国境周辺にとどまっているほか、アゾフ海に面した東部ドネツク州のマリウポリの西側では、ロシア軍の数千の部隊が上陸している可能性があると明らかにし「情勢は急速に変化する可能性がある」と述べて、警戒感を示しました。 ●米報道官「ロシアは見せかけで強圧的な外交」 ロシアのプーチン政権が、ウクライナの非軍事化と中立化を条件に話し合いに応じる姿勢を示していることについて、アメリカ国務省のプライス報道官は25日、記者会見で「ミサイルや迫撃砲などでウクライナの人たちを狙っている中での提案であり、本物の外交ではなく、見せかけで強圧的な外交だ」と強く批判しました。そのうえで「もしプーチン大統領が外交に真剣に取り組むつもりなら、市民を狙った爆撃をやめ、軍の部隊を撤退させるべきだ」と述べました。 ●EU プーチン大統領とラブロフ外相に制裁決定 EUは25日、ベルギーのブリュッセルで外相会議を開き、24日の緊急の首脳会議で合意したロシアへの追加制裁の詳しい内容について協議しました。会議のあと記者会見したEUの外相にあたるボレル上級代表は、加盟国がロシアのプーチン大統領とラブロフ外相に制裁を科すことで一致したと明らかにしました。EU域内の資産の凍結などの対象になるとみられます。ボレル上級代表は「これは重要な一歩だ。EUがこれまでに制裁を科した世界の国のトップは、シリアのアサド氏とベラルーシのルカシェンコ氏だけだ」と述べ異例の措置だと強調しました。追加制裁ではこのほか、金融の分野や輸出の規制の面でも制裁措置の対象を拡大するとしていて、今後も状況に応じてさらに制裁を強化する方針です。 ●日本時間3:30すぎ “隣国など避難者受け入れ整備” ロイター通信 ロイター通信によりますと、ポーランドには、侵攻が始まった24日に、ウクライナから2万9000人が入国し、その半数は攻撃から逃れてきた住民だということです。ポーランド政府は最大で100万人の受け入れに備えるとしています。また、ルーマニアでは24日以降、ウクライナからおよそ1万9000人が入国し、そのうち8000人ほどはブルガリアやハンガリーに向かったということです。このほか、スロバキアには24日、およそ3000人がウクライナから入国してきたということで、各国は滞在施設を準備するなど受け入れ体制の整備を進めています。ウクライナは、徴兵の可能性がある18歳から60歳の男性の出国を制限していて、避難民の多くは子どもや女性だということです。 ●日本時間3:00ごろ NATOが記者会見 東欧に部隊派遣へ NATOは25日、オンラインで緊急の首脳会議を開き、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けた今後の対応を協議しました。ストルテンベルグ事務総長は会議のあとの記者会見で「NATOの一部の加盟国と接するパートナー国が全面的な侵攻を受けている。ヨーロッパにおいてこの何十年もの間で最も深刻な安全保障上の危機だ」と述べ強い懸念を示しました。NATOは声明でウクライナに近いヨーロッパ東部の防衛態勢を強化することで加盟国が合意したとしたうえで、不測の事態に迅速に対応するため高度な能力を備えた即応部隊を派遣するとしています。部隊の規模や派遣先は具体的には明らかにしていませんが、ロシアがウクライナ国内で軍事侵攻を続ける中、自国の安全保障に不安を強めているヨーロッパ東部の加盟国の求めに応じた形です。 ●英首相 “プーチン大統領とラブロフ外相制裁へ”NATO首脳会議で イギリスのジョンソン首相は、現地時間の25日、NATOの首脳会議で、前日に発表したロシアへの経済制裁に加え、プーチン大統領とラブロフ外相に対し、近く制裁を科す意向を明らかにしました。さらに、プーチン政権に対し最大限の痛みを与えるためとして最も厳しい措置の1つとされる、銀行間の国際的な決済ネットワークであるSWIFT=「国際銀行間通信協会」からロシアの銀行を排除する措置を各国で協調して実施する必要があると呼びかけました。首脳会議で、ジョンソン首相は「プーチン大統領が東西冷戦後の秩序をひっくり返そうとしている。その野望はそこにとどまらないだろう」として、今回の侵攻はヨーロッパと大西洋にとっての危機でもあるという考えを示したということです。 ●日本時間未明 エッフェル塔 ウクライナの国旗の色でライトアップ フランス パリでは、現地の25日夜にエッフェル塔がウクライナの国旗の色にライトアップされました。塔の上半分が青色、下半分が黄色に照らされていて、ロイター通信によりますと、パリ市のイダルゴ市長がウクライナの人たちへの連帯を示すために実施を要請したということです。 ●ロシア軍 道路脇の監視カメラ使えないように動かしたか ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が各地で続く中、ウクライナ南部のヘルソン州の道路脇に設置された監視カメラには、南部のクリミアからヘルソンに向かってロシア軍のものとみられる複数の戦車やトラックなどが列を作って進む様子が映されていました。また、監視カメラを使えないようにするためか、兵士たちが監視カメラの角度を下向きに動かしたあと、再び移動を始める様子も映っています。 |
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●ウクライナ大統領、市民に侵攻への抵抗呼びかけ 2/26
ロシア軍の侵攻に抵抗を続けるウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は25日、ロシア軍を食い止めるよう市民に呼びかけるとともに、欧州諸国に対して支援の強化を求めた。侵攻2日目のこの日、ロシア軍の戦車が首都キーウ(キエフ)に初めて侵入した。ウクライナ当局は、有志の市民に約1万8000丁の銃を配布し、火炎瓶の作り方も教示したという。アナリストたちは、ウクライナ側の激しい抵抗により、ロシアの進軍速度が減速しているとしている。 戦闘経験がなく、ウクライナの防衛隊への参加を希望する人々が行列する様子が目撃されている。軍隊に参加可能な年齢制限は撤廃された。英国防情報当局トップのジム・ホッケンハル中将は、ロシア軍は首都に向かって前進を続けているが、ウクライナ軍が「主要都市の防衛に重点を置き、強い抵抗を続けている」と述べた。ロシア軍は南、東、北の3方向からウクライナへの軍事攻撃を続けている。 ●ウクライナ各地で被害 キーウは25日夕、新たなミサイル攻撃に見舞われた。発電所近くでの爆発が報告されたほか、市内では銃声が聞こえた。北東部にある第二の都市ハルキウ(ハリコフ)でも複数の大きな爆発があったと報告されている。ウクライナ側は、ロシアの進軍を食い止めたとしている。アゾフ海に面した、戦略的に重要な港湾都市マリウポリが攻撃をけているとの報道もある。黒海に面したズミイヌイ島では24日、任務にあたっていたウクライナの国境警備隊13人が、ロシア軍に降伏するのを拒み、ロシア軍を罵倒した後、砲撃されて死亡した。13人は英雄として称えられている。ウクライナによると、これまでに民間人と兵士が計137人死亡した。一方でロシアは、自国側に死者が出ているとは認めていない。 国連難民高等弁務官事務所は24日、侵攻によって10万人以上が家を追われているとし、最大500万人が避難を余儀なくされる可能性があると推計した。欧州各国は難民の流入に備えている。EU加盟国でウクライナの隣国ポーランドやハンガリーの国境には、主に家族連れの人々が車や徒歩で到着している。国連難民高等弁務官のフィリッポ・グランディ氏は、過去48時間で5万人以上が出国し、そのほとんどがポーランドとモルドヴァに向かったとした。 ●ロシアが協議提案も、「非軍事化」が条件 ロシア政府のドミトリー・ペスコフ大統領報道官は25日、同国にはウクライナと協議を行う用意があると明らかにした。ただ、その内容は「非軍事化」とウクライナの「中立的地位」についてのみだとの条件を付けた。ロシア側が協議を申し出るのは、ウクライナ情勢が緊迫してから初めて。ゼレンスキー氏は侵攻が始まる前からウラジーミル・プーチン大統領との会談を求めていた。ロシアはかねて、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を認めないよう要求している。セルゲイ・ラヴロフ外相は先に、ウクライナが武器を捨てない限り会談は行えないと述べている。こうした条件付きの会談に応じる気配を見せていないゼレンスキー氏は、軍に対して「強く立ち向かえ。あなた方は我々のすべてだ。我々の国を守っているのはあなた方だけだ」と述べた。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、NATOはウクライナへの武器の供給を継続し、加盟国の防衛を強化するために欧州に数千人規模の部隊を配備すると述べた。 ●プーチン氏、ゼレンスキー氏を中傷 プーチン氏は、ウクライナ軍はゼレンスキー政権に反旗を翻し、同政権を倒すべきだと演説した。プーチン氏は、ユダヤ系のゼレンスキー氏を「ネオナチ」と根拠なく中傷。ゼレンスキー政権はテロリストで麻薬密売人の集団だと、攻撃した。また、ウクライナが住民を人間の盾にし、民間の建物にミサイルや重火器を設置していると非難した。 |
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●ロシア軍 首都キエフに攻撃開始 ウクライナに軍事侵攻 2/26
ウクライナに軍事侵攻しているロシア軍が、首都キエフへの攻撃を開始したとみられる。 ウクライナ・キエフ在住の中村仁さん「2月25日午後10時35分、空襲警報が初めて聞こえました」 ウクライナの首都キエフでは、日本時間の26日朝から断続的に爆発音が聞かれ、地元メディアは、ロシア軍が首都キエフ中心への攻撃を開始したと伝えている。また、首都キエフ市内の西で、ロシア軍とウクライナ軍との間で激しい戦闘があったと報じている。 ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア軍が26日にも、首都キエフを攻撃するとの見通しを示し、最も厳しい1日になると警戒を強めていた。ゼレンスキー大統領は、閣僚らとともに自撮りした動画を公開し、「わたしは今もキエフにいる」と語り、ロシア軍から逃げずに戦う姿勢を示している。 ロシア軍は、25日に制圧した首都キエフ近郊の空港に空挺(くうてい)部隊を送り込んだほか、クリミア半島から25日、多数の軍用車両がウクライナに進軍するなど、さらに戦力を増強している。 ウクライナは、徹底抗戦の構えを示す一方で、ロシアに対して和平交渉を呼びかけているが、ロシア側は、「ウクライナ軍が武器を捨てれば交渉の用意がある」と述べ、交戦が続いている間は、話し合う考えはないとの姿勢を示している。 |
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●ウクライナ大統領 “首都に侵攻迫る” 国民に抵抗呼びかけ 2/26
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く中、ウクライナのゼレンスキー大統領は、25日、声明を発表し、首都キエフへの侵攻が迫っているとして、国民に対して改めて抵抗を呼びかけました。 ロシアによるウクライナの軍事侵攻が各地で続く中、ロシア軍は、首都キエフの陥落に向けて本格的な作戦を進めているという見方が強まっています。 こうした中、ウクライナのゼレンスキー大統領は25日、国民に向けてビデオで声明を発表しました。 この中で「多くの都市が攻撃を受けている。特にキエフに注目が集まっているが、首都を失うわけにはいかない」と述べ、首都キエフへの侵攻に強い危機感を示しました。 そのうえで「今夜、敵はあらゆる力を使って、残虐な手段で、私たちの抵抗を破壊しようとするだろう。今夜、彼らが襲いかかってくることを皆が知っておくべきで、私たちは耐えなければいけない。ウクライナの運命は今、決定づけられようとしている」と述べ、国民に対して改めて抵抗を呼びかけました。 一方、ロシアのプーチン政権は、ウクライナの非軍事化と中立化を条件に話し合いに応じる姿勢を示し、ゼレンスキー政権への揺さぶりを強めていますが、これについてウクライナの大統領報道官は25日、SNSへの投稿で「ウクライナは停戦と和平について話し合う用意がある。われわれはロシアの大統領の提案に同意した」として、ロシア側と調整していることを明らかにしました。 |
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●“ウクライナ軍の抵抗でロシア軍侵攻に遅れ” 米国防総省高官 2/26
アメリカ国防総省の高官は25日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の状況について、最新の分析結果を明らかにしました。 それによりますと、ロシア軍はウクライナの国境周辺に展開する地上部隊のうち、およそ3分の1の戦力をウクライナ国内に投入し、引き続き主に3つの方向から前進しているということです。 このうち、ウクライナ北部と国境を接するベラルーシから首都キエフに向かうルートでは、キエフに向かうロシア軍に対し、ウクライナ側がロシアの想定よりも激しく抵抗していると分析しています。 そのうえで「ロシア軍はキエフへの前進を引き続き試みているが、彼らが予想していたほど速くは移動できていない」と述べ、キエフへの侵攻がロシア側の想定よりも遅れているという認識を示しました。 また、ウクライナの北東方向から国境を越えて第2の都市、ハリコフに南下するルートでは、ハリコフで今も戦闘が続いているということです。 さらに、ウクライナ南部のクリミアから北上するルートでは、これまで確認されていた北西方向にある都市、ヘルソンに向かうルートに加えて、新たに北東方向に進む部隊が確認されたということです。 これらの部隊は、東部ドネツク州のマリウポリなどがある地域に向かっているとしています。 また、アゾフ海に面するマリウポリの西側では、ロシア軍による水陸両用作戦が行われ、数千人の部隊が上陸している可能性があるということです。 一方、ロシア軍は、軍事関連施設を主な標的として、これまでに200発以上の弾道ミサイルや巡航ミサイルなどを発射しましたが、そのうちの一部が住宅地に落ちたということです。 アメリカ国防総省の高官は、ロシア軍はこれまでのところ、人口が集中する地域を奪えておらず、ウクライナの制空権も確保できていないとしていますが、「情勢は急速に変化する可能性がある」と述べ、警戒感を示しています。 |
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●「人口密集地奪われていない」米分析 ウクライナ軍、予想以上の抵抗 2/26
ウクライナで侵攻を続けるロシア軍の部隊が、首都キエフに迫っている。ウクライナのゼレンスキー大統領は26日未明、ビデオメッセージを公開し、「今夜は非常に難しい夜になる」と国民に最大限の警戒を呼びかけた。 ゼレンスキー氏はビデオで、国内の多くの都市が攻撃を受けていると明かした。「キエフは特別の注意が必要だ。首都を失うわけにはいかない」と述べ、前線で戦う兵士に向けて「今夜、敵はあらゆる力を使って我々の抵抗を破ろうとするだろう」と語った。 「彼らは今夜、攻撃をしてくる。我々は耐えなければならない。ウクライナの運命はいま、決まろうとしている」と述べ、市民には危険があればシェルターに入るよう呼びかけた。 AP通信によると、ゼレンスキー氏は25日にも、大統領府の外で側近らと撮影したとするビデオメッセージを公開。「私たちは皆、ここで国の独立を守っている」と語り、逃亡せずに首都にとどまっていると強調した。 CNNによると、キエフでは ・・・ |
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●徹底抗戦のウクライナ、市街戦で民間人被害拡大の懸念… 2/26
ロシア軍はウクライナの首都キエフへの攻撃を続け、25日までに、市中心部から約10キロの地点まで迫った。英BBCが伝えた。ウクライナ軍は徹底抗戦の構えで、今後、市街戦に発展して民間人らへの被害が拡大する懸念も強まっている。攻防が続く中、双方は停戦協議の調整も進めている。 ロシア軍はウクライナ北方のベラルーシから進軍し、キエフ市の北方と東方の2方面から中心部に迫っているとみられる。露国防省は25日、 空挺くうてい 部隊が市の西側から包囲したと発表した。ロイター通信によると、アントノフ空港周辺で両軍が衝突した。 市内にはミサイル攻撃も加えられた。米国防総省高官によると、弾道、巡航ミサイルの発射は200発を超えた。標的の大半は軍事施設で、一部は住宅地にも撃ち込まれたとしている。ウクライナのウニアン通信は、キエフ周辺で、空爆によって民間人4人が死亡し、15人が負傷したと伝えた。 市によると、25日夜、市内の北東部にある発電所で計5回の爆発が起きた。停電は発生していない模様だ。市内では25日深夜も、地下鉄駅構内などへ避難を指示する警報が発令された。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は25日夜、市内で首相らと共に「国を守るために我々はここにいる」と語る動画をSNSに投稿した。地元メディアによると、ウクライナ国防省は25日、キエフ防衛のため、市民に機関銃1万丁の配布を開始した。 |
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●ロシアが拒否権行使、安保理の非難決議案は否決…中国など3か国棄権 2/26
国連安全保障理事会は25日、ウクライナ情勢を巡る会合を開き、ウクライナに軍事侵攻したロシアを非難し、武力行使の即時停止と撤退などを求める安保理決議案を採決した。米欧など11か国が賛成したが、常任理事国のロシアが拒否権を行使し、否決された。 中国、インド、アラブ首長国連邦(UAE)の3か国が棄権した。決議案は米国とアルバニアが作成し、日本も共同提案国に加わった。 |
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●「プーチンを止めろ」ロシア軍事侵攻に抗議デモ ニューヨーク 2/26
アメリカのニューヨークでは25日、前の日に続いてロシアによるウクライナへの軍事侵攻に抗議するデモが行われました。 マンハッタンのタイムズスクエアに集まったウクライナ出身の人など数百人は、青と黄色の国旗を広げ、「ウクライナのために祈ろう」などと書かれたプラカードを掲げながら「プーチンを止めろ」と声を合わせて訴えました。 8歳の息子と一緒に2日続けて参加した女性は「首都キエフから南に200キロ離れた町で暮らす母が無事かを確認すると、電話越しにはサイレンが聞こえます。あすは連絡が取れなくなるかもしれません。母は手術を受けたばかりで避難するのも難しいので、心配です」と話していました。 そして「これはウクライナだけの戦争ではなく、ヨーロッパの戦争です。西側諸国の助けが必要なんです」と国際社会の支援を求めました。 また、16歳の男子高校生は「ウクライナにいる親戚や友人たちと連絡が取れるまで時間がかかり、少し泣いてしまいました。皆、戦争を怖がっています。最も重要なのは、一刻も早く外交的な手段で戦争を止めることです」と話していました。参加した人たちによりますと、ニューヨークではこの週末も抗議デモが呼びかけられているということです。 |
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●ウクライナ情勢から考えるサイバー戦の第一線に生きているという現実 2/26
●サイバー戦といえば、何を連想する? さて。読者の皆さんは、「サイバー戦」と聞いたときに、どんな状況を連想されるだろうか。おそらく、もっともポピュラーな展開は「コンピュータに不正侵入してデータを窃取・改竄する」とか「DDoS攻撃などで過負荷に追い込んで動作不可能にする」とかいった類の話ではないだろうか。 ウクライナ情勢に関連するところでも、侵攻開始より数日前から、ウクライナの政府機関Webサイトがつながらなくなったり、つながりにくくなったり、という話が出てきていた。かつてグルジア紛争に際しては、グルジアの大統領の顔に「チョビ髭」を書き足したコラ画像が、グルジア政府のWebサイトに送り込まれたこともあったと記憶している。 つまり、「誰もが真っ先に連想しそうなサイバー戦」はなくなったわけでもなんでもなくて、今でもポピュラーである。ただし、それ「だけ」がサイバー戦だと考えるのは大間違いですよ、というのが今回の話の趣旨。 もっとも、これは以前から自著などで何回も書いている話なので、御存じの方も少なくないと思う。それは、「われわれが日常的に利用しているインターネットは、情報戦・心理戦の戦場である」という話。これもレッキとした、サイバー空間で行われている戦争の一形態なのである。 ●変わる、情報戦のツール 情報戦や心理戦といった類の戦争の様態は、昔からある。古典的な手法としては、ビラを撒く手法がある。 太平洋戦争の末期に、米陸軍航空軍は日本の街の上空で、B-29爆撃機が爆弾を投下している模様を撮影した写真を紙に印刷して「今度はあなたの街が爆撃されますよ」と宣伝するビラをばらまいた。紙に印刷したものなら、誰でも手に取って見ることができるから、少なくとも「読ませる」効果は期待できる。 飛行機からビラをばらまくだけでなく、砲弾にビラを詰め込んで撃ち込み、敵地でビラを散布する、なんていうものが、かつてのソヴィエト連邦で用いられていたとの話もある。 もうちょっとハイテク化(?)すると、今度はテレビ・ラジオ放送が登場する。朝鮮半島の38度線ではラウドスピーカーを使った怒鳴り合いが行われているらしいが、それではリーチが限られる。電波に乗せる方が、広い範囲を対象にできる。 そしてとうとう米空軍のように、宣伝放送のために専用の飛行機を用意する事例まで現れた。それがEC-130Eコマンドソロと、その後継機であるEC-130JコマンドソロII。要するに空飛ぶ放送局である。ただし、アナログ時代のテレビ放送にはNTSC方式とPAL方式があったから、コマンドソロはどちらの方式でも放送できるようになっている。いくら放送を流しても、受信してもらえなければ意味がないから。 ところが近年では、もっとお手軽、かつ効果が高い手段が一般化した。いわずと知れたインターネットである。シンプルに考えれば、アジビラをばらまく代わりにWebサイトを立ち上げることになるのだが、それでは読み手が見に来てくれないことには役に立たない。 ところが、SNS(Social Networking Service)の普及で状況が変わってきた。いったん注目を集めれば、読み手が勝手に拡散してくれるのだから、こんな手のかからない方法はない。そして現在進行形で、ロシアがウクライナ侵攻を正当化するための宣伝戦を実施しているのは、知っている人は知っている話である。 おまけに、大昔のテキスト・ベースで動いていたインターネットならいざ知らず、今や誰でも動画を作ってばらまける御時世である。しかも、その動画の信頼性を誰かが担保してくれるわけではない。もっともらしく見えれば、必ず、それを信じ込む人は出る。 ●戦場に暮らしているわれわれという現実 つまり、われわれが日常的に利用している各種SNSのサービスは、事実上、サイバースペースにおける宣伝戦・心理戦の戦場、それも第一線なのである。「うわっ、すごい!」あるいは「これは大変だ!」といって拡散する、そのタップ操作(またはクリック操作)ひとつが、宣伝戦や心理戦に加担する行為であるかもしれないのだ。 今回のウクライナ侵攻についていえば、ロシア側の言い分を正当化する趣旨で、さまざまな動画がばらまかれている。その中にはつくりが雑で、「先に作って仕込んでおいたのがバレバレ」あるいは「いってることが嘘っぱちだとモロ分かり」なものが多いとの評判だが、誰もが嘘を嘘と見抜けるわけではない。 そうでなくても、もともと、「戦争や事故の第一報は錯綜する」という性質がある。多くの人が情報を求める中で、あやふやな情報でもとりあえず流してしまう事例は引きも切らない。そしていったん誤報が広まると、それを後から訂正したところで、最初の誤報が根絶やしになることは、まずない。 それと同じデンで、意図的に情報戦・心理戦を仕掛ける目的でばらまかれた贋情報や贋動画も、いったん拡散してしまえば、それは「真実」として一人歩きを始める危険性を内包している。実際、ウクライナの件でも「どこそこで攻撃がありました」とか「どこそこで爆発がありました」といった類の動画がそこここで流れてきているが、その中の何割がホンモノで、何割がニセモノだろうか。しつこく書くが、もっともらしく見えれば、それを信じ込んで拡散する人は必ず出る。 つまり、サイバースペースにおける情報戦・心理戦という話についていえば、「軍事とIT」は軍事分野に興味・関心がある人だけの話ではないのだ。誰もが知らず知らずのうちに関わり、巻き込まれている話なのである。そういう自覚を持って、日々、流れてくるさまざまな情報に接してほしい。 |
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●ウクライナ問題で沈黙するインド、西側諸国はどう見るのか 2/26
ウクライナに侵攻したロシアの行動を、米国とその同盟国は強く非難している。一方、安全保障に関して西側諸国との結びつきを強めてきたインドは、ロシアの行動を非難することも、ウクライナの主権を支持することもせず、慎重な発言を続け、中立性を保とうとしている。 ウクライナ情勢について話し合うため、2月21日に開かれた国連安全保障理事会の緊急会合でも、インドのT・S・ティルムルティ国連大使は、問題解決のための「建設的な外交」を求めるにとどまり、ロシア政府を批判することは避けた。 このとき、ウラジーミル・プーチン大統領はすでに、ウクライナの分離独立派が支配してきた東部2地域の独立を承認。ロシア軍部隊の派遣を命令していた。 さらに、インドはこの会合でウクライナに関しては、これまで自国と中国の国境地域やインド太平洋地域の問題について頻繁に使ってきた「主権」「領土保全」といった言葉を使わなかった。これは、西側諸国をいら立たせる態度だったと考えられる。 また、インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相は、19日にドイツで行われた(各国の代表が安全保障の課題について議論する)ミュンヘン安全保障会議で、インド太平洋地域における中国の問題と、欧州におけるロシアの問題は「類似したものではない」と主張。その後も仏紙ル・フィガロに対し、ウクライナの現在の状況は過去30年の「一連の出来事」の結果だと語るなど、綱渡り外交を続けている。 ウクライナ情勢を巡り、1月31日に開かれた国連の安全保障理事会では、この会合を非公開にするよう求めたロシアの提案に対して10カ国が反対票を投じるなか、インドと中国の2カ国だけが賛成していた。 米シンクタンク、ブルッキングス研究所の上級研究員であるタンヴィ・マダンはツイッターへの投稿で、インドは軍事面でのロシアへの依存度が高く、それがウクライナ問題に対する態度に影響を及ぼしていると指摘する。 マダンはこの問題に対するインドの態度について、次のようにツイートしている。 「インド軍が保有する軍用機器は、50〜80%がロシア製だと推定される」 「自分がなめられたと感じれば、プーチンがそれをよく受け止めないことは分かっている。相手が誰であれ、自分が腹を立てたことを懲罰的な形で知らしめる方法を見つけ出す」 数十年にわたってロシアとの戦略的な関係を築き、軍用品の多くをロシア製に頼るインドは、外交においては現在、板挟みの状態だ。プーチン大統領が昨年12月にインドを訪問したときには、インド政府はロシアとの関係について、「特別かつ特権を有する戦略的パートナーシップ」であることを再確認したと明らかにしている。 一方、中国がますます好戦的になるなか、インドは米国、日本、オーストラリアとの新たな枠組み「クアッド」に加わるなど、米国とも安全保障上のパートナーシップを強化してきた(中国はこのクアッドを「インド太平洋版のNATO(北大西洋条約機構)」と呼び、強く反発している)。 インドは中国がロシアとの関係を緊密化させていることについても、懸念を強めている。ロシア政府に対して批判的な態度を取れば、中露関係をさらに強化させることにつながるとの警戒感もある。 だが、インドがウクライナ問題でロシアに対して口をつぐむことは、西側諸国にはどのように映るだろうか。ロシアの行動に対する支持表明とみなされる可能性があるとの見方は、インド国内にもある。 |
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●「ウクライナ侵攻は台湾海峡へ飛び火する」の矛盾――中国の気まずさとは 2/26
ロシアの侵攻が始まる前から「ウクライナ問題が台湾海峡に飛び火しかねない」という説はあちこちで聞いたが、中国とロシアをとにかくセットで扱う思考は状況認識をかえって誤らせかねない。 ●中国にとってのウクライナ危機 ロシア軍がウクライナ侵攻を開始した2月24日、中国の王毅外相はロシアのラブロフ外相との電話会談で「やむを得ず必要な措置をとった」というロシアの言い分に「安全保障上の懸念を理解する」と応じた。これが「西側に対抗する中ロ同盟」のイメージを強めたことは不思議でない。 ウクライナ侵攻の前から中ロは頻繁に接触していた。習近平国家主席は2月初旬、プーチン大統領との会談で「欧米の軍事的圧力」に反対することで一致し、共同声明では「欧米との協議でロシアが提案する長期的な安全保障を中国は理解し、支持する」と盛り込まれた。 また、欧米や日本の対ロシア経済制裁に対して、中国は「制裁は解決にならない」と加わっていない。 その見返りのように、習近平とプーチンの共同声明では「一つの中国」の原則が再確認され、これが中国のナショナリストを喜ばせた。中国国営新華社通信の上級編集員によれば、「中国はロシアを支持しなければならない…将来、中国は台湾の問題でアメリカと渡り合うときにロシアの支持を必要とする」。 一方、その裏返しで海外では「ロシアのウクライナ侵攻を中国が認め、中国の台湾侵攻をロシアが認める」という危機感が増幅した。台湾の蔡英文総統は23日、ウクライナ危機をきっかけに中国が軍事行動を起こしかねないと強調しており、イギリスのジョンソン首相なども同様の警戒感を示している。 ●ウクライナと台湾は違う しかし、ウクライナと台湾を同列に扱うことはできない。また、中国とロシアが「反西側」で一致していることは間違いないが、両者を一枚岩と捉えることもできない。 最大の理由は、ロシアによるクリミア半島の編入(2014)や今回のウクライナ侵攻を認めることが、中国にとって具合が悪いからだ。 念のために確認すれば、侵攻に関するロシアの言い分は「ウクライナの‘軍事政権’によって弾圧され、‘大量虐殺’の危機に直面する現地の人々の要請に基づいて部隊を派遣した」。ここでいう‘現地’とは、ロシア系人やロシアから送り込まれた民兵を中心とする勢力で、彼らは2014年以降ウクライナ東部を実効支配してきた。 いわば分離主義者を煽り、その独立要求を大義名分に介入するのがロシアのやり方だ。それがたとえ露骨な国際法違反でも、「現地の意志こそ全て」という論理である。 だとすると、これを認めることは中国にとってヤブ蛇になる。 「現地の意志こそ全て」だとすれば、独立志向を強める台湾の意志を最大限に尊重しなければならなくなるからだ。中国版Twitterとも呼ばれるWeiboなどで「今こそ台湾を取り戻すとき!」と叫ぶ中国人ナショナリストも、「ロシアの支持を受けた中国の台湾侵攻が近い」とひたすら強調する海外も、この論理矛盾を華麗にスルーする点では同じだ。 台湾だけではない。香港でも新疆ウイグル自治区でも反体制派は「中国を分断しようとする分離主義者、テロリスト」と位置付けられ、弾圧されてきた。その意味で、ロシアの手法は中国の論理とは相性が悪い。 だからこそ、中国政府は国内で反ロシア世論を取り締まりながらも、「台湾はウクライナではない」としきりに強調してきたのだ。 ●中国の「気まずい立場」 これに関して「中国はロシアの立場を認めたではないか」という反論もあるだろう。 しかし、外交で重要なのは言質をとられないことだ。国際政治は力と利益が支配する領域だが、第三者に申し開きする用意だけは必要である。 その観点からいうと、2月初旬の首脳会談で、習近平は確かに「欧米との協議でロシアの立場を支持する」とプーチンに約束したが、あくまで「話し合いをする時の立場」を支持したのであって、「軍事行動を支持する」とは言っていない。 また、冒頭に述べた24日の電話会談で、王毅はロシアの行動を「理解する」とは言ったものの、ラブロフや中国人ナショナリストが望んだであろう「支持する」の一言はなかった。「理解」が論理的に合点するという意味で、心情的に認める、道義的に受け入れる「支持」とは違うことは、いわば常識だ。 ちなみに、2014年のロシアによるクリミア編入に関しても、中国政府は公式には承認していない。つまり、中国は「ロシアが欧米と対決することを支持しても、ウクライナの領土や主権に関するロシアの言い分を認めているわけではない」というグレーな立場にあるのだ。 さらにいえば、中国はミャンマーの軍事政権などの人権侵害を黙認してきたが、そこには「内政不干渉」の論理がある。一方、クリミア編入やウクライナ侵攻は「内政干渉」以外の何物でもない。いわば中国の公式の方針を否定する内容だが、異論も挟みにくい。米国ジャーマン・マーシャル財団のボニー・グレイザーの言い方を借りれば、中国は「気まずい立場」にある。 ●中ロは一枚岩ではない そのうえ、忘れられやすいが、中国はウクライナとも深い関係がある。 中国初の航空母艦「遼寧」は1998年にウクライナから購入したものだ。ソ連末期に建造がスタートした「ヴァリヤーグ」がソ連崩壊後、未完成のまま放置されていたのを中国が買い取ったのである。その後2012年に正式に就役した遼寧は、海洋進出を加速させる中国海軍の一つのシンボルともなった。 ソ連崩壊後のウクライナが中国の海洋戦力強化の起点になったことは、裏を返せばロシア(ソ連)がこの分野で中国にほとんど協力してこなかったことを意味する。そこには冷戦期、東側陣営のリーダーの座を中国と争って以来のロシアの警戒感がある。 東西冷戦で西側陣営が最終的な勝者となり得た一つの要因には、東側陣営の内部分裂があった。冷戦時代のソ連と中国は、ダマンスキー島(珍宝島)などで領土をめぐって軍事衝突(1969)しただけでなく、ソ連が支援するベトナムへの中国の侵攻(1979)や、やはりソ連が支援するエチオピア(1974-1991)などで中国が反体制派を支援するといった足の引っ張り合いが目立った。 西側も決して一枚岩ではなかったが、より分裂の大きい東側の方が消耗しやすかったといえる。 この微妙な関係は現在も基本的に同じで、中国がウクライナ侵攻を「支持」しないのと同じように、ロシアは「一つの中国」の原則を認めても「中国があらゆる手段を行使することを支持する」とは言っていない。 これに照らせば、ウクライナ侵攻や台湾危機といった現代の脅威に対応する場合、中ロの共通性にばかり目を向けるのではなく、両者の違いを無視せず、むしろその足並みを揃えにくくさせることの方が重要だろう。その意味で、とにかく「民主主義国家vs中ロ」を強調することは、スターウォーズやマーベルなどに擬えてわかりやすい構図を提供し、国内の反中感情や反ロシア感情を満足させるとしても、あまり建設的ではないのである。 |
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●中国、ウクライナ侵攻の事実認定拒む姿勢維持 米に反論 2/26
中国外務省の報道官は25日、ロシアによるウクライナ侵攻やウクライナ情勢に関する30件以上の質問に直接答えることを避けながら、侵攻の事実を認定しない姿勢を維持した。 定例会見で、全ての国の主権と領土保全は尊重されるべきだとの従来の立場を主張。また、「ロシアの安全保障問題に関する合法的な懸念は理解する」と繰り返し、全ての当事者に自制を促し、事態のさらなる悪化を防ぐよう求めた。 半面、ロシアを支持する国は全て汚名を着ることになるだろうとしたバイデン米大統領の24日の演説に反発。「真に信用出来ない国は他国の国内問題に理不尽に干渉し、民主主義や人権の名の下で外国で戦争を起こす国だ」と反論した。 中国は、相互の尊重、平等や相互利益を敬う精神のなかでロシアとの通常の貿易関係は続けるとも強調。その上で、制裁は問題解決につながる根本的かつ有効な措置では決してないと断じた。 外務省報道官は23日の会見で、欧米諸国らが打ち出す対ロシア制裁に中国は追随しないことを明らかにしていた。中国は違法かつ一方的な制裁には常に反対してきたとも述べていた。 24日の会見では、ロシアからの小麦輸入を開始する計画も発表。この輸入に関する協定はロシアのプーチン大統領が今月、北京冬季五輪に出席するため訪中した際に発表されていた。小麦輸入は、欧米諸国がロシアに打ち出す制裁の効果をそぐ可能性もある。 一方、在ウクライナの中国大使館はロシア軍の侵攻を受け、ウクライナ内に居住する自国民に対し車両で移動する際、中国国旗を掲示するよう推奨した。 声明で、街頭で大きな暴動が発生する恐れもあるとし、在宅し、窓などから離れた場所にとどまることも指示。車を使う場合、中国国旗を車体の目立つ場所に掲げるよう求めた。 さらに24日には治安が混乱するリスクが高まったとして、中国国民を国外へ退避させるチャーター便を準備していることを明らかにした。 |
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●欧米の株式市場 株価大幅値上がり 2/26
欧米の株式市場では25日、各国によるロシアへの制裁が世界経済に及ぼす影響への警戒感が和らいでいることなどから、ニューヨーク株式市場でダウ平均株価が800ドルを超える値上がりとなるなど株価が大幅に値上がりしました。 25日のニューヨーク市場は取り引き開始直後から買い注文が膨らみ、ダウ平均株価は800ドルを超える大幅な値上がりとなりました。 終値は、前日に比べて834ドル92セント高い、3万4058ドル75セントでした。ダウ平均株価の値上がりは2営業日連続です。 IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数も1.6%の大幅な上昇となりました。 ヨーロッパの市場でも25日、前日に値下がりした銘柄を買い戻す動きが広がり、主要な株価指数の終値は、ロンドン市場で3.9%、ドイツのフランクフルト市場で3.6%、パリ市場で3.5%と、いずれも大幅に値上がりしました。 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて前日の欧米の市場では緊張が高まりましたが、欧米など各国によるロシアへの制裁が世界経済に及ぼす影響への警戒感が和らいでいることなどが株価の上昇につながりました。 このほか、25日のロシアの株式市場でも前日に大幅に下落していた代表的な株価指数の終値が26.1%の大幅な値上がりとなりました。 |
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●ウクライナ情勢、世界に影 原油・小麦高騰が回復阻害 2/26
ロシアによるウクライナ軍事侵攻が、世界経済の先行きに大きな影を落としている。両国とも原油や小麦などのコモディティー(商品)の有力輸出国だけに、供給不安から関連相場が高騰。各国を悩ますインフレを加速させ、新型コロナウイルス危機からの回復を阻害する恐れが浮上している。 「世界に重大な経済リスクをもたらす」。国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は24日、ウクライナ情勢が世界経済に及ぼす影響に懸念をあらわにした。 ロシアは世界屈指のエネルギー輸出国。また国連食糧農業機関(FAO)によると、2020年の小麦輸出でロシアは世界1位、ウクライナは5位。紛争による供給混乱への懸念から、米国産標準油種WTI先物は一時、14年以来となる1バレル=100ドル台に急騰。シカゴ市場で取引される小麦先物も、12年以来の高値となった。 コロナ感染拡大に関連した供給制約により、ただでさえ世界各地でインフレが進んでいる。燃料や食料が一段と値上がりすれば、特にワクチン接種の遅れなどでコロナ禍の打撃が深刻だった開発途上国にとって、さらに重しとなるのは必至だ。 IMFは「新興国や低所得国の住民にとって、食料は消費支出の3分の1から半分を占め、価格上昇の負担は最も重い」と分析する。 苦境は途上国に限らない。ユーロ圏のインフレ率は1月に過去最高の5.1%を記録したが、物価高の主たる要因はエネルギー価格の高騰だ。欧州は天然ガス輸入の相当部分をロシアに依存しており、対ロ経済制裁に関連して供給が混乱すれば、エネルギー価格をさらに押し上げかねない。 欧州中央銀行(ECB)はエネルギー価格などを除いた物価は安定しているとして利上げには慎重だが、インフレがさらに加速すれば、対応に苦慮しそうだ。シュナーベルECB専任理事は24日の会合で「戦争ショックは世界の中銀が直面する課題を増大させる」と警戒した。 |
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●ウクライナ情勢、北京パラに影 参加不透明、開幕まで1週間切る 2/26
開幕まで1週間を切った北京冬季パラリンピックは26日、ロシアによるウクライナ侵攻の影響が影を落とした。国際パラリンピック委員会によると、ド―ピング問題の制裁を受けて個人資格で参加するロシア・パラリンピック委員会の選手の一部は同日までに北京入り。一方でウクライナ選手の参加は不透明な情勢になっている。 ウクライナ・パラリンピック委員会によると、ノルディックスキ―距離とバイアスロンの2競技で男女約20の出場枠を得ている。18年平昌冬季大会では「金」7個を含む22個のメダルを獲得した強豪。14年ソチ大会でも、役員を含めて約30人の選手団で参加した。 |
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●欧州へガス追加融通検討 ウクライナ情勢受け―政府 2/26
政府がロシアのウクライナ侵攻を受け、液化天然ガス(LNG)の欧州への追加融通を検討していることが26日、分かった。既に3月分までの融通は決定しているが、欧州連合(EU)との協議やウクライナ情勢に応じ、4月以降も国内消費の余剰分を融通する構えだ。 |
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●ウクライナ 首都キエフのアパ―トに攻撃 40の民間施設が被害 2/26
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって3日目となる26日、ウクライナの保健相はロシア軍による攻撃で198人が死亡したと発表しました。首都キエフでは爆発音や銃声が伝えられているほか、中心部にある高層アパ―トが攻撃をうけるなど、ロシア軍はキエフの掌握に向けて本格的な軍事作戦を進めているとみられます。 ウクライナ内務省などによりますと、26日朝(日本時間26日午後)キエフ中心部にある高層アパ―トに攻撃があり、メディアによりますと、けが人が出ているということです。メディアが公開した映像ではアパ―トの上部が攻撃された直後、オレンジ色の閃光と黒い煙が上がっている様子がうかがえます。 ウクライナのクレバ外相はロシアの地上部隊からミサイル攻撃を受けたと強調し「私は世界に要求する。ロシアを完全に孤立させ、大使を追放し、石油を禁輸し、経済を破たんさせることだ。ロシアの戦争犯罪者を阻止してくれ」と国際社会に強く訴えました。 ●子ども3人含む198人死亡か ウクライナのリャシュコ保健相は26日、ロシア軍によるこれまでの攻撃で、子ども3人を含む198人が死亡したと発表しました。一方でロシア国防省の報道官は高層アパ―トへの攻撃が起きたあと声明を発表し「住宅や社会インフラは標的にしていない」として、攻撃の対象はあくまでも軍事施設だと主張しています。ただキエフ中心部でも軍用機の来襲などを知らせるサイレンがたびたび鳴っているほか爆発音や銃声も伝えられるなど、ロシア軍はキエフの掌握に向けて本格的な軍事作戦を進めているとみられます。 ●攻撃 軍施設以外の場所でも NHKが取材した日本で暮らすウクライナ人の女性のもとには、現地の知人から現状を伝える動画が次―に寄せられていて、ウクライナ軍の施設以外の場所にもロシア軍によるものとみられる攻撃が続いていることが確認できます。ウクライナ東部のスムイで撮影された動画では、銃声が鳴り響く中、教会やマンションのすぐそばで火災が起きている様子が確認できます。同じ東部のハリコフで25日、ドライブレコ―ダ―に記録された映像では、一般の道路をめがけて複数の攻撃が行われ、大きな音とともに路面から砂ぼこりがあがり、男性が攻撃を避けるように運転している様子がうつっています。南部のヘルソン州で25日に撮影された動画では、男性が車を運転中にすぐ近くで攻撃があり、砂ぼこりが舞い上がる様子が捉えられています。 ●40の民間施設が攻撃か ウクライナの地元メディアは26日、ウクライナ内務省の高官の話として、キエフ市内にあるウクライナ軍参謀本部の施設の近くにある橋がロシア軍によって攻撃されたとしています。ウクライナ各地で1日で40の民間施設が攻撃されたということです。この高官は「ロシアは民間施設を攻撃していないとうそをついている。子どもたちが殺害されたことを忘れてはならない」と強く非難しました。 ●ロシアで軍事侵攻に反対するデモ続く ロシアではプ―チン政権が進める軍事侵攻に反対するデモが警察の厳しい取り締まりにもかかわらず続いています。ウクライナへの軍事侵攻に反対するデモは25日、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクで行われ、参加者は「戦争反対」と声を上げながら大通りを歩きました。警察は厳しく取り締まり、平和のシンボルとされる「ピ―スマ―ク」が描かれた紙を掲げた参加者は突然警察官に拘束され、警察の車両に乗せられていました。ロシアの人権監視団体によりますと、ウクライナへの軍事侵攻に反対するデモに参加し拘束された人は25日時点で60都市1839人に上り、26日も各地でデモが行われ、拘束者が相次いでいるということです。 |
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●ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置 2/26
ウクライナをめぐる現下の国際情勢に鑑み、国際的な平和及び安全の維持を図るとともに、この問題の解決を目指す国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため、今般、主要国が講ずることとした措置の内容等を踏まえ、閣議了解「「ドネツク人民共和国」(自称)及び「ルハンスク人民共和国」(自称)関係者並びにロシア連邦の特定銀行に対する資産凍結等の措置、両「共和国」(自称)との間の輸出入の禁止措置、ロシア連邦の政府その他政府機関等による新規の証券の発行・流通等の禁止措置、特定銀行による我が国における証券の発行等の禁止措置並びに国際輸出管理レジ―ムの対象品目のロシア連邦向け輸出の禁止等に関する措置について」(2月26日付)を行い、これに基づき、外国為替及び外国貿易法による次の措置を実施することとしました。 ●1 資産凍結等の措置 外務省告示(2月26日公布)により「ドネツク人民共和国」(自称)及び「ルハンスク人民共和国」(自称)(以下「両「共和国」」という。)関係者として指定された24個人及び資産凍結等の措置の対象となるロシア連邦の団体として指定された1団体に対し、(@)及び(A)の措置を実施します。 (1-1) 支払規制 / 外務省告示により指定された者に対する支払等を許可制とします。 (1-2) 資本取引規制 / 外務省告示により指定された者との間の資本取引(預金契約、信託契約及び金銭の貸付契約)等を許可制とします。 (注)ロシア連邦の団体として指定された1団体に対する資産凍結等の措置は令和4年3月28日から実施します。 ●2 両「共和国」との輸出入禁止措置 ウクライナ(「ドネツク人民共和国」(自称)又は「ルハンスク人民共和国」(自称)を原産地及び仕向地とする場合に限る。)との輸出入を禁止する措置を導入します。 ●3 ロシア連邦政府等による我が国における新規の証券の発行・流通禁止措置 (3-1) 証券の発行又は募集に係る規制 / 外務省告示(2月26日公布)により指定されたロシア連邦の政府その他政府機関等(以下「ロシア連邦政府等」という。)による本邦における新規の証券の発行又は募集を許可制とします。 (3-2) 証券の取得又は譲渡に係る規制 / ロシア連邦政府等が新規に発行した証券の居住者による非居住者からの取得又は非居住者に対する譲渡を許可制とします。 (3-3) 役務取引規制 / ロシア連邦政府等が本邦において新規に証券を発行し、又は募集するための居住者による労務又は便益の提供を許可制とします。 ●4 ロシア連邦の特定の銀行による我が国における証券の発行等の禁止措置 本邦における証券の発行等を禁止しているロシア連邦の特定の銀行について、より償還期間の短い証券(30日超)を当該禁止措置の対象とします。 ●5 国際輸出管理レジ―ムの対象品目のロシア連邦向け輸出の禁止等に関する措置 国際輸出管理レジ―ムの対象品目のロシア連邦向け輸出及び役務の提供について、審査手続を一層厳格化するとともに、輸出の禁止等に関する措置を導入します。 (注)先ずは審査手続を一層厳格化することとし、添付資料のとおり措置します。 |
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●ウクライナ侵攻はプーチンの「戦略的判断ミス」 2/26
ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(2月25日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。24日午前にウクライナ東部での「特殊軍事作戦」の実施を宣言したロシアのプーチン大統領のテレビ演説内容のポイントを解説した。 ●得られる利益と比べ明らかに不利な「侵攻」をしたのは「戦略的な判断ミス」 宮家)まず一般論として、多くのロシア専門家は「軍事侵攻はないんじゃないか」と言っていたんですよ。もちろん、すべての人ではないですが……。けれども、戦争って実際に起きるんですよ。戦争っていうのは往々にして独裁者が「誤算」をしたときに起きるんです。人間が合理的に判断すれば、こんなバカなことするわけないでしょう。私は、プーチンさんの今回の判断はおそらく戦略的なミスだったと思います。おそらくこれからロシアが被るであろう不利益と、それから仮にウクライナの一部を占領、もしくはウクライナで政権交代をしたとしても、それで得られる利益と比べたら、明らかにロシアにとって不利な判断ですよ。なんでこんな判断するかといえば、どこかで判断を間違えた。もうお年なのか……そんなことはないと思いますけどね、まだ70前でしょ?もしくは何かウクライナに対して特別の感情を持っていたか、理由はわかりませんが、これは後で本人に聞いてみるしかないんですけども、今回僕はこのプーチンさんの戦略的判断ミスがすべてだったと思っています。 その上でこのプーチン大統領のテレビ演説の内容を読みました。要するに、簡単に言うとですね、8年前、得体の知れない人達が何か他国(ウクライナ東部)に入っていって占領して、8年かけて今度は傀儡政権を作って、それで『自国民保護だ』と言って本格的に入っていくわけでしょう。これは「満州事変」ですよね。要するにそれと同じ非常に稚拙なやり方だと私は思う。これで『我々の国境に脅威が迫ってる』……それは逆だろうと……。 ●アメリカの対応は正しかった 宮家)『イラクの時だって大量破壊兵器はなかっただろう』と、アメリカのインテリジェンスをあざ笑っているわけですが、「ないものを探す」っていうのは、なかなか難しいんですよ。でも今回は、「あるものを上(衛星などからの情報)から見ている」わけだから。多くの人が「プーチンが合理的な判断すれば戦争はない」っていうのはその通りなんだけれども、実際にアメリカの情報は今回正しかったんですよ。なぜ正しいかというと、それは相当程度のことが、上から見えるからです。もちろん、いろいろな情報を総合している。軍隊というのは簡単に「ほい、明日から行け!」っていう組織ではないので、しっかり準備していくものですから、プロが見ればこれが本当に戦闘態勢に入ってるのか入っていないのかって、わかるはずなんです。その意味ではアメリカは今回正しかった。でも、なぜ今回はバンバン情報を出したのでしょうか、普通は出さないですよね。出すとどこから情報を取ったかがわかってしまうわけで、下手したら大勢の人が殺されちゃうわけだから。そのくらい大事な情報をなぜ出したかといえば、おそらくプーチンさんに「俺たち、ここまで知ってるんだぞ」と、「だからやめたほうがいいぞ」というふうに言ったつもりなんだろうけど、やっぱりプーチンさんはそれも聞かなかった。なぜ聞かなかったのか。「判断ミスしたから」ですよ、と私は思う。 さらに『我々の計画にウクライナの領土の占領は含まれていない』とも言っている……うーん、そうかな。まあどっちみちウクライナ全土の占領はできないですが、部分的にはやるのではないかと。 ●戦争の目的がよくわからないままの軍事行動であれば、成功はしない 宮家)一番大事なことはですね。戦争をやるときに戦争目的っていうのがあるわけですよ。目的のない戦争なんてないですから。今回ロシアはウクライナに兵を進め『ウクライナ東部での特殊軍事作戦をやった』と、こう言ったわけですけれども、「特殊軍事作戦」とは何を言ってるのか。よくわからないけれども、東部でやるのだとしても、当然のことながらウクライナの「制空権」もしくは「航空優勢」と言いますが、空の支配ですよね、これをやるためには、当然指揮命令系統、飛行場、武器弾薬庫等々を一気にやらないといけない。もちろんサイバー戦などいろいろな手を使うわけですけれども、そうやって制圧をしていくわけですよね。でも、まだここでも戦争の目的がはっきり示されていない。何を求めているのかわからないけれども、もしこうやって戦略目的がよくわからないままに軍事行動だけをしているのであれば、これはやっぱり成功はしないでしょうね、というのが私のイメージでございます。 残念ですけれども、これが始まってしまった以上彼らは、ウクライナを少なくとも中立化させるために相当エネルギーを使って時間をかけて、そして目的を達成しようとするでしょうね。その時にどのくらい経済制裁をわれわれができて、そしてそれで思いとどまらせるかどうかでしょうが、おそらくロシアは言うこと聞かないでしょうね。そういったイメージですね。 |
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●ロシア“ウクライナが交渉拒否”と主張 ウクライナ“交渉の拒否していない” 2/27
ウクライナ情勢をめぐり、ロシア政府は、ウクライナが和平交渉を拒否したと主張したうえで、さらに攻撃を強める考えを示している。 ロシアの大統領府によると、ウクライナからの和平交渉の呼びかけを受けて、プ―チン大統領は25日、一時進軍停止を命令したが、ウクライナ側が交渉を拒否したため、進軍を再開したと主張した。ロシア国防省は、作戦計画に従ってあらゆる方向に攻撃を展開すると述べ、さらに攻勢を強める構えを見せている。 しかし、ウクライナ側は、交渉を拒否していないと真っ向から反論していて、両者の主張は食い違っている。 一方、アメリカ国防総省の高官は26日、ウクライナとの国境に展開していたロシア軍部隊のうち、半数以上がウクライナの戦闘に投入されたという分析を明らかにした。 しかし、ウクライナ軍の抵抗が強く首都キエフでは、30km離れた地点から近づけていないと示している。一方で、情勢は流動的だともしていて、首都キエフをめぐるウクライナとロシアの攻防が焦点となっている。 |
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●米 ウクライナに最大3.5億ドルの軍事支援 対戦車ミサイルなど 2/27
アメリカのブリンケン国務長官は26日に声明を出し、ウクライナに対して最大3億5000万ドル、日本円にしておよそ400億円の追加の軍事支援を行うと発表しました。 声明では、ウクライナ軍がロシア側の装甲車両や軍用機などの脅威に対応するため殺傷力のある防衛兵器を供与するとしていて、アメリカ国防総省の高官は記者団に対し、供与される兵器には対戦車ミサイル「ジャベリン」も含まれることを明らかにしました。 「ジャベリン」は戦車などの装甲を貫通する強力なミサイルを標的に向けて自動で誘導する精密兵器で、アメリカ政府はウクライナの防衛力を強化するためだとして、これまでも供与してきました。 ウクライナ軍は「ジャベリン」で破壊したとするロシア軍の戦車の写真をSNS上に公開していて、アメリカに対して追加の供与を求めてきました。 声明の中でブリンケン長官は「アメリカはウクライナの人たちとともにあるという明確なシグナルだ」と強調しています。 ヨ―ロッパ各国もウクライナに対する軍事支援を相次いで発表しました。 ドイツは政府報道官が26日、声明を発表し、1000の対戦車兵器と携帯型の地対空ミサイル「スティンガ―」500基をできるだけ早期にウクライナに供与すると発表しました。 ショルツ首相はツイッタ―で「プ―チン大統領の侵略軍に対する防衛で、ウクライナを力の限り支援することがわれわれの義務だ」と述べました。 ドイツは紛争地域などへの武器の供与には慎重な立場をとり、ウクライナに対してもこれまで殺傷力のある兵器の供与は行わないとして軍用ヘルメットの供与などにとどめていましたが、ロシアによる軍事侵攻を受けて方針を転換した形です。 オランダ政府もウクライナからの要請を受けて26日、「スティンガ―」200基を供与すると発表しました。 |
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●プ―チン大統領作成「斬首リスト」の中身…第1標的はウクライナ大統領 2/27
主権国家としてのウクライナは消えてしまうのか。北部、南部、東部から全面侵攻するロシア軍の勢いは止まらず、首都キエフは陥落寸前だ。ロシア政府が作成中の「処刑リスト」には目障りな存在がズラリと並んでいるという。ウクライナ政権の転覆に狙いを定めたプ―チン大統領は、ゼレンスキ―大統領の首を取りにいくのか。ウクライナ情勢は重大局面に差し掛かっている。 ロシアによる侵攻から2日目を迎えた25日、ゼレンスキ―大統領は2時間に1回のペ―スでビデオメッセ―ジを発信。戦況を逐一説明し、国民に結束を呼び掛けた。その一方、「敵は私を第1の標的に定めた」「私の家族は第2の標的だ。国家元首を失脚させることでウクライナを政治的に壊滅させるつもりだ」と強調。「斬首作戦」のタ―ゲットであると明言しつつも、「私は首都にとどまる。家族もウクライナにいる」と訴え、徹底抗戦の姿勢だった。 プ―チン大統領が親欧米のゼレンスキ―大統領を狙っているのは間違いないだろう。やたらとインテリジェンス(機密情報)を公開している米国のブリンケン国務長官も、「プ―チン大統領がウクライナの政権転覆を図っていると確信している」と認めている。問題はやり方だ。出し抜けに亡命したアフガニスタンのガニ大統領のように、ゼレンスキ―大統領を追い詰めるのか。あるいは、手をかけるのか。 米メディアによると、バイデン政権はロシア政府が作成中の「ウクライナ人処刑リスト」を入手。対象は反ロシア的人物が中心で、侵攻による混乱のドサクサに紛れ、処刑あるいは強制収容所送りにする計画だ。ロシアやベラル―シからの亡命者、ジャ―ナリスト、反腐敗活動家のほか、少数民族や宗教的マイノリティ―、LGBTQも含まれるという。 「米国の世論がウクライナ情勢への積極的な関与を求めていないことなどから、バイデン大統領は軍事介入に及び腰ですが、斬首作戦を許せば世界の秩序はメチャクチャになる。いよいよ、マズイ局面に入ったとなれば、状況は大きく動く可能性があります」(上智大教授の前嶋和弘氏=現代米国政治) もっとも、ゼレンスキ―大統領もシタタカだ。ビデオメッセ―ジで「われわれはひとりで国を守っている状況だ。世界で最も強力な国は遠くから傍観している」とバイデン大統領をあてこすりながら、プ―チン大統領には停戦協議を呼びかけ。「ロシアは遅かれ早かれ、われわれと協議しなければならなくなる。どのようにして戦いを終わらせ、侵攻をやめるかについて話す必要がある」「協議開始が早ければ早いほど、ロシアが負う損失は小さくなるだろう」と主張していた。 終結の落としどころとして、ウクライナを非武装中立地帯とする条約を関係国で締結するというプランも浮上している。しかし、トンデモない被害を受けているウクライナが納得するのか。混沌とする情勢に出口は見えない。 |
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●ロシア軍進撃足止めか 首都一帯で攻防戦―ウクライナ侵攻 2/27
24日にウクライナへの本格侵攻を開始したロシア軍は27日、首都キエフ制圧に向けた軍事作戦を続行した。キエフ一帯ではウクライナ軍との間で激しい攻防戦が続くが、ロシア側の動きをめぐっては、当初想定より進撃に遅れが生じている可能性がある。 ウクライナのゼレンスキ―大統領は26日夜に公表した動画メッセ―ジで「われわれは国を解放するまで戦い続ける」と訴えた。 米国防総省高官は26日、ロシア軍が激しい抗戦に遭い、キエフの北方約30キロの地点にとどまっているとの分析を明らかにした。「ロシア軍は進軍の遅れにいら立ちを募らせている兆候がある」と記者団に語った。 高官は、ロシア軍がウクライナ国境地帯に集結した部隊の5割以上を投入したと指摘。ただ、「いまだ都市部を制圧しておらず、制空権も確保していない」と述べた。 |
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●政権転覆目指す姿勢あらわに ウクライナ侵攻でロシア大統領 2/27
ウクライナへの本格侵攻を続けるロシアのプ―チン大統領の狙いが、ウクライナのゼレンスキ―政権転覆にあることが鮮明になってきた。プ―チン氏は25日、ウクライナ軍に「権力を手に入れろ」とク―デタ―を公然と呼び掛け。自らの意のままになる親ロシア派のかいらい政権の樹立を一方的な目標に据えているようだ。 プ―チン氏は25日の安全保障会議で、ウクライナ軍への呼び掛けとして、ゼレンスキ―政権が「あなたの子供や妻、年長者を人間の盾にすることを許してはならない」と訴えてみせた。ゼレンスキ―大統領から権力を奪い取るよう促し「あなたたち(ウクライナ軍人)の方が合意に達するのが簡単だ」とけしかけた。 プ―チン氏は24日の演説で、侵攻の目的に関し、ウクライナの「非軍事化」に加え、「非ナチ化」を挙げた。第2次大戦後の東西ドイツで取られたナチズム一掃の措置を念頭に置いているとみられる。プ―チン氏はゼレンスキ―政権を「ネオナチ」と位置付けていることから、排除の対象になる。ゼレンスキ―大統領も「敵は私を一番の標的と位置付けている」と認めた。 英外務省は1月22日、ロシアがウクライナに親ロシア派政権樹立を目指していると警告していた。ロシアは当時、こうした見方を「偽情報」(外務省)と一蹴したが、結局は警告通りの展開となっている。 |
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●カザフは侵攻参加拒否 ウクライナ、米報道 2/27
米NBCテレビは27日までに、ロシアと緊密な中央アジアのカザフスタンがウクライナ侵攻への軍派遣を求められ、断っていたと報じた。当局者の話としている。 報道によると、ロシアが侵攻に先立ち承認したウクライナ東部の親ロ派2地域の独立についても、カザフは認めていない。 カザフのトカエフ大統領は1月、燃料価格引き上げに抗議するデモが暴徒化した際、ロシア主導の集団安全保障条約機構(CSTO)に部隊派遣を要請して治安を回復。ロシアとの関係を強めたとみられていた。 |
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●ロシアのSWIFT排除、ウクライナ侵攻の資金源遮断が目的=米高官 2/27
米バイデン政権の高官は26日、ロシアを国際銀行間の送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除する欧米諸国による追加制裁について、プ―チン大統領がロシア中央銀行の外貨準備6300億ドルをウクライナ侵攻や通貨ル―ブル防衛の資金に使うことを阻止するのが目的だと明らかにした。 高官は「プ―チン政権は国際金融システムから排除されつつある」と語った。 |
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●ウクライナは持ちこたえる 「共通の利益」へ支援強化要請 元高官 2/27
ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキ―政権で経済発展・貿易・農業相代行を務めたパブロ・クフタ氏(36)が26日、首都キエフから時事通信のオンラインによる取材に応じた。 戦争の影響は欧州だけでなくアジアにも波及する恐れがあると訴え、自由民主主義国の「共通の利益」のため戦火を食い止めなくてはならないと主張した。 ――現在の状況を。 キエフ郊外に家族を連れて一時避難しているが、戻るつもりだ。キエフは爆撃され、市街戦も起きた。ロシア兵がウクライナ人のふりをしてキエフに入ろうとしているという情報もある。しかし首都はまだウクライナ政府の統制下にある。 ――市民も戦闘に参加しているのか。 武器を取って立ち上がっている。多数が(正規軍でない)「領土防衛隊」に登録し、昨夜までにキエフだけで5万丁の銃が配られた。地方でも人―は武装し、検問所を設けるなど軍を支えている。国民は完全に団結している。 ――次に何が起きるか。 ロシアはベラル―シ南方に兵を集結させていると聞く。首都攻撃は激化するだろう。ロシアは首都を奪い、ウクライナを「斬首」しようとしている。しかし、まだどの大都市も奪われていない。ウクライナは持ちこたえており、戦い続ける。 ――国際社会に望むことは。 西側は制裁を強化したが、十分ではない。もっとできることはある。(1)武器供給の加速(2)国際銀行間通信協会(SWIFT)からのロシア排除(3)ロシア中銀への制裁(4)ウクライナ上空の飛行禁止区域設定―などだ。これらが実行されれば、状況は変わり、ロシアは後退せざるを得ない。 ――プ―チン大統領の目的は。 ウクライナを占領し、欧州を不安定化させることだ。欧州の次には台湾問題を抱える極東でも何かするかもしれない。(野放しにすれば)影響は波及する。侵略をウクライナで食い止めることは自由主義世界の共通の利益だ。 |
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●ウクライナ侵攻 安保理の権威は失墜した 2/27
ロシア軍によるウクライナ侵攻で、多数の住民が命の危険にさらされている。この危機的な事態に対して、国連安全保障理事会が何ら手を打てないというのは、一体、どうしたことか。 国連憲章は、安保理が国際の平和と安全の維持に主要な責任を負うと定め、軍事的強制措置の決定を含む幅広い権限を与える。 本来ならば、ロシアに撤退を促すのは安保理の役割のはずだ。常任理事国であるロシアの拒否権行使で身動きが取れないというのであれば、何のための安保理か。その権威は、地に落ちたと言わざるを得ない。 ウクライナ危機を議論した23日の緊急会合開催中、ロシア軍の侵攻開始が伝えられた。「攻撃をやめてほしい」と語ったグテレス国連事務総長の訴えはロシア側に完全に無視された。 25日には、米国などが提出したウクライナ攻撃の非難決議案が採決にかけられたが、ロシアの拒否権行使で否決された。 通常、常任理事国が当事国となっている問題は安保理討議の俎上(そじょう)に載らない。拒否権行使によって必ず葬られるからだ。 だが、今回は、日本を含む約80カ国が決議案を支持する共同提案国となった。15理事国のうち、賛成は11、棄権が中国を含む3にとどまり、ロシアの孤立を印象付けることにはなっただろう。 拒否権行使は織り込み済みだというのなら、米欧や日本は別の手立てを講じる必要がある。総会の場で平和のための結集決議を行うなど、あらゆる機会を捉えてロシアの非を鳴らすべきだ。 これまでも安保理は、北朝鮮の核・ミサイルへの対応などで米欧と中露が対立し、意見がまとまらないことが多かった。この問題を打開する努力を怠ったことが、今回の機能不全につながったのではないか。 北朝鮮問題では、安保理とは別に米欧や日本が個別の声明を発表してきたが、ウクライナ侵攻のような重大事態は、それでは通用しないと知るべきだ。 そもそも、常任理事国である米英仏露中は第二次大戦の戦勝国であり、この5大国に平和を主導させようとしたのは、はるか昔の発想である。プ―チン露大統領は今回、大国主導の平和という国連の発想自体もぶち壊した。安保理は抜本的に変わらねばならない。 |
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●ロシア フェイスブックやツイッタ―の利用を制限 2/27
ロシアによるウクライナへの侵攻をめぐり、誤った情報の対策を強化しているアメリカのIT大手メタは、ロシア当局から国営メディアなどの投稿に対するファクトチェックなどの対応の停止を求められたことを明らかにしました。会社側が拒否したところ、ロシア国内におけるフェイスブックへのアクセスを制限する措置がとられたということです。 メタはロシアによるウクライナへの侵攻をめぐり、誤った情報が拡散しないようフェイスブックへの投稿の監視を強化していて、ロシアの国営メディアなどの4つのアカウントの投稿に対してファクトチェックや警告を付けるなどの対応をとっています。 メタの幹部によりますと、会社は24日、ロシア当局から警告を付けるなどの対応を中止するよう命じられ、会社側はこの命令を拒否したということです。 これに対しロシア当局は、こうした規制は検閲にあたり違法だとして、国内におけるフェイスブックへのアクセスを制限する措置をとったということです。 アメリカメディアはアクセスの制限が具体的に何を指すのか明確になっていないとしていますが、通信速度を下げる措置とみられると報じています。 メタの国際渉外部門トップのニック・クレッグ氏は「ロシアの国民はみずからを表現したり、団結したりするために私たちのSNSを使っている。今後も彼らの声が届くよう望んでいる」などとコメントしています。 ツイッタ―社は26日、ロシア国内の一部の利用者がツイッタ―の利用を制限されていると発表しました。会社は「われわれのサ―ビスを安全に利用してもらえるよう努める」としています。アメリカメディアは「ロシアが情報の流れを止めるためにやっていることは明らかだ」などと報じています。 |
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●ウクライナ副首相、AppleやGoogleにロシアでのサ―ビス停止を 2/27
ロシア侵攻が続くウクライナのミハイロ・フェドロフ副首相は2月26日(現地時間)、米Appleのティム・クックCEOにロシアでの製品とサ―ビス提供停止を求めたと、書簡の画像付きでツイ―トした。 クック氏は同日、ウクライナ情勢を深く憂慮するとツイ―トしていた。 フェドロフ氏はその後、「最新テクノロジ―は、戦車やロケット、ミサイルへの最良の対抗策の1つだ。(中略)私は複数のハイテク大手企業にロシア連邦からのこのとんでもない攻撃を阻止するのを支援してくれるよう頼んだ」とツイ―トした。 同氏は、Google、Netflix、(Google傘下の)YouTubeに同様の依頼をしたとツイ―トした。 SpaceXのイ―ロン・マスクCEOに対しては、Starlinkによる衛星ブロ―ドバンドをウクライナに提供するようツイ―トで呼び掛けた。「あなたは火星を植民地化しようとしているが、ロシアはウクライナを占領しようとしています! SpaceXのロケットは宇宙飛行を成功させているが、ロシアのロケットはウクライナ国民を攻撃しています!」 マスク氏は約10時間後、「Starlinkをウクライナで稼働させたよ」とリプライした。 YouTubeは米Reutersに対し、ロシアの複数のチャンネルの広告収益化機能を一時停止したと語った。 Meta(旧Facebook)でセキュリティポリシ―責任者を務めるナサニエル・グライチャ―氏は26日、ロシア国営メディアによるプラットフォ―ム上での広告掲載を含む収益化を停止したとツイ―トした。 Twitterは26日、ロシアとウクライナでの広告表示を一時停止したとツイ―トした。こちらは収益化阻止というより誤情報表示のリスクを回避するのが目的だ。また、フェデロフ氏によると、Twitterはロシアでの新アカウント作成を停止したという。 本稿執筆現在、Apple、Google、Netflixについての動きは特に報じられていない。 同氏は27日午前2時(現地時間)には「楽天のCEOとPayPalにもロシアへのサ―ビス停止をお願いした」とツイ―トした。添付された書簡の楽天への宛先はRakuten Europeの大塚 年比古社長になっている。 楽天の三木谷浩史氏は25日、ウクライナ国内のスマ―トフォンの97%にインスト―ルされているとするメッセンジャ―サ―ビス「Viber」とアプリ外の音声通話を無料にすると発表している。 |
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●ロシア国内でも ネット上でウクライナ侵攻に抗議の声広がる 2/27
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に対しては、ロシア国内でも抗議の声が広がっています。ロシア国内のNGOが「大統領への戦争終結の訴え」と題してインタ―ネット上で電子署名の呼びかけを26日に始めたところ、日本時間27日午前3時時点で、440の団体が賛同しています。 訴えの内容は「われわれは人間の尊厳のため、また命を救うために闘っている。戦争はその基本原則と相いれず痛みと苦しみを倍増させる人災で、われわれの長年にわたる努力が水泡に帰すことになる。政治的な争いを解決するための武力行使は非人道的であり、大統領には砲撃をやめて話し合いを始めるよう求める」というものです。 ロシアが軍事侵攻を開始した今月24日には、ロシア科学アカデミ―に所属する科学者をはじめ、国内外のロシア人科学者たちが連名で強い抗議を表す公開書簡をウェブサイトに掲載しました。 それによりますと、2000人以上が名前を連ねているということで「この致命的な一歩は甚大な人命の損失を招き、確立された国際安全保障体制の根幹を揺るがすものだ。この戦争に合理的な正当性はなく、ウクライナ東部の情勢を軍事作戦の口実にしようとする試みは信用できない」とプ―チン大統領の決定を厳しく批判しています。 そして「戦争によってロシアは国際的な孤立を余儀なくされた。科学研究は外国の仲間との全面的な協力なしには成り立たない。世界からの孤立はロシアの文化的、技術的な劣化をさらに進めることを意味し、将来の展望はない」として軍事行動の即時停止とともに、ウクライナの主権と領土の一体性を尊重するよう求めています。 このほかフェイスブック上では「ロシアにいる同胞への呼びかけ」という意味のハッシュタグをつけたロシア語の投稿が相次いでいて、プ―チン政権に対する非難とウクライナへの支持を呼びかけています。 |
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●ロシア大統領府サイトがダウン、ウクライナは「IT部隊」創設 2/27
ロシア大統領府のウェブサイトが26日、ダウンした。これに先立ち、ロシアのさまざまな政府機関や国営メディアのサイトがDDoS(分散型サ―ビス拒否)攻撃を受けていると伝えられていた。 ウクライナのミハイロ・フェドロフ副首相はこの日、ロシアのサイバ―攻撃に立ち向かうため、IT部隊を創設すると発表した。また、国際ハッカ―集団「アノニマス」も、ロシアにサイバ―攻撃を仕掛ける計画を明らかにしていた。 ウクライナでは23日、複数の政府機関サイトがアクセス不能に陥り、政府は大規模なDDoS攻撃が開始されたと明らかにした。 |
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●ウクライナ軍事侵攻で露呈した「NATO」の体たらく 2/27
ヨ―ロッパでは新たな紛争の最前線が形成されつつある中、北大西洋条約機構(NATO)が効果的に対応できるのかどうか、あるいは、そもそも対応できるのかどうかさえも疑問視されるほど、リスクが高まっている。 ウクライナに侵攻し、迎合的なベラル―シに軍隊を配備したロシアは、突然、バルト諸国を含むいくつかのNATO諸国の国境まで軍事力を拡大している。 ●NATOにとって東側の国境防御が困難に 多くの専門家が予想しているように、ロシアがウクライナの占領、およびベラル―シの基地を維持することに成功した場合、ロシア軍はバルト海とポ―ランドの国境からスロバキア、ハンガリ―、ル―マニア北部まで広がり、NATOにとって東側の国境防御が著しく困難になる。 そして、リトアニアとポ―ランド間の長さ約60マイルの細い回廊だけが、ベラル―シのロシア軍と、通常弾頭あるいは、核弾頭を装着するミサイルが充満し、ヨ―ロッパ中枢に容易に発射することができるバルト海に面したロシア領カリ―ニングラ―ドとを隔てるものとなる。 「NATOのリスクレベルは、突発的に非常に高まった」と、ジャ―マン・マ―シャル・ファンド(GMF)のブリュッセル事務所を率いる元アメリカ政府高官、イアン・レッサ―氏は話す。「黒海、サヘル、リビア、シリアなど、ヨ―ロッパやその他の地域でロシア軍と衝突する可能性は危険であり、今後数年間は問題になるだろう」。 元イギリス外交官で、欧州改革センタ―(CER)で外交政策を担当するイアン・ボンド氏は、「これはNATOにとってすべてを変えるものだ」と見る。「ロシアの狙いは、ヨ―ロッパの主権国家であるウクライナを消滅させることだ。今、私たちはすべてを懸念する必要があり、再び(すべてに)真剣に取り組む必要がある」。 NATOはすでにロシアの軍拡に小規模に対応し、ロシアに最も近い加盟国に部隊と航空機を追加で派遣している。2月24日、NATOはさらなる不特定多数の派兵を決定し、またNATOの東側加盟国への武力配備に制限を設けたものの、ロシアが8年前にウクライナに侵攻しクリミアを併合した際に違反している、1997年にNATOがロシアと結んだ基本文書を最終的に廃止することについて真剣な議論が行われている。 NATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長は、「ロシアの行動は、ヨ―ロッパと大西洋の安全保障に深刻な脅威をもたらし、地政学戦略的な結果をもたらすだろう」と述べている。「同盟の東側諸国に防衛目的で陸軍と空軍を追加配備し、海上戦力も追加配備している」。 ●NATOが忘れていたこと NATOの東側にはロシア軍が配備されており、ヨ―ロッパの安全保障体制を再構築するためのロシアとの話し合いは、これまでとは異なる様相を呈している。 ロシアがクリミア半島を占領後の対応では多少の増加だったが、今回のロシアの新たな侵略に対応して軍事費を大幅に増加させ、軍隊、装備、航空機、さらにはミサイルを新たに恒久的に配備するとなると、過去30年間の同盟の比較的平和で繁栄し、自己満足していた状況に大きな打撃を与えることになるだろう。 「NATOは、気候問題やサイバ―攻撃など、その中核的な責任とはあまり関係のない、重要だが、よりファッショナブルなものばかりに目を向けていた」とGMFのレッサ―氏は話す。「しかし、世の中には冷酷な人間がいることを忘れていた。彼らにとって、外交政策は流血を伴うスポ―ツなのだ」。 NATOはすでに12年前の戦略構想を練り直し、10月1日に退任するストルテンベルグ氏の後任について議論を開始していたが、この問題は今や喫緊の課題となった。レッサ―氏は、「NATOはすでに、その存在意義についてより広く考える段階に入った」と語る。 しかし、元在欧米軍司令官であり、現在は欧州政策分析センタ―勤務のベンジャミン・ホッジス氏は、「さらに攻撃性を増したロシアを抑止するための本格的な取り組みは、簡単なものではない」と指摘する。冷戦後のヨ―ロッパには、重装備に耐えられない橋や鉄道も存在し、軍隊や装備を移動させるだけでも一苦労だからだ。 かつて、ドイツのフルダ峡谷は冷戦の戦略家たちにとって悩みの種だった。ワルシャワ条約機構によって戦車が東ドイツからライン川へ送られるのを防ごうと、アメリカ軍がこの地を厳重に警備していたからだ。今回懸念されている場所は、ポ―ランドとリトアニアを結ぶ狭い隙間である「スヴァウキ回廊」だ。ここが占領されれば、バルト三国はNATOのほかの国―から切り離されることになる。 この回廊は、ベラル―シとカリ―ニングラ―ドを切り離している。カリ―ニングラ―ドはロシアのバルチック艦隊の司令本部であり、ソ連崩壊時にロシアの飛び地となった場所だ。ブルッキングス研究所のロバ―ト・ケ―ガン氏は、ワシントンポスト紙のコラムに寄稿し、「プ―チンがベラル―シからカリ―ニングラ―ドに直接アクセスすることを要求する可能性は十分にある」と指摘した。 ●バルト諸国をNATOから切り離そうとしている 「しかし、それもまたロシアの新戦略の一部にすぎない。ロシアは、NATOがバルト諸国を保護できる望みはもうないことを示し、バルト諸国をNATOから切り離そうとしている」と同氏は書いている。 ボンド氏は、「ポ―ランドへの脅威は今や深刻化している」と語り、「アメリカはポ―ランドに2大隊を早急に配備すべきであり、バルト三国への配備も強化すべきだ」としている。 2016年、NATOはポ―ランドとバルト3国に大隊を配備することに初めて合意した。「抑止防衛体制の強化」として知られるこの大隊は、それぞれ約1100人の兵士で構成されており、戦闘力は高いが規模は小さい。そのため、長期間にわたりロシアの進出を食い止めるというよりも、トリップワイヤ(仕掛け線)のような役目を果たしてきた。 NATOは2014年、現在はトルコの指揮下にある「高高度即応統合任務部隊」も立ち上げた。NATO主権への脅威に対する短期決戦を想定して立ち上げられた同部隊は、約5000人の陸上旅団で構成されている。航空・海上・特殊部隊の支援により、30日以内にさらなる増援を配備できる体制となっている。 だが、より小規模な部隊は、基本的に実戦は未経験である。さらに同部隊が尖兵を務めるより大規模な応戦部隊も、ウクライナに侵攻したロシアの部隊のわずか4分の1に過ぎない。大規模な部隊は2002年に結成され、迅速に展開されることを意図されていた。だが、4万人の構成員はそれぞれ自国を拠点にしており、召集には時間がかかる場合がある。 またウクライナに武器を提供し、ロシアへの反撃や抵抗運動を応援するとのNATO加盟国の約束についても疑問があがっている。たとえNATOの兵士ではなく請負業者が輸送したとしても、空路、鉄道、陸路でウクライナに武器を提供しようとする試みは、ロシア政府によって妨害されたり阻止されたりする可能性がある。 それに、ロシア軍が国境の向こうで配備されていることを知りながら、あえて危険を冒して抵抗運動を支援しようとする国がはたしてあるだろうか。 総じて、新たな脅威はEU、およびNATOは防衛に関する協力をさらに深めるべきであるというロジックを強化するだろうと、レッサ―氏は言う。「両者は政治的な立場や信仰上の違いを乗り越えて関係を結び直すことになるだろう」と同氏は指摘する。 ●トランプ氏「復活」に対する懸念 経済制裁、サイバ―レジリエンス、エネルギ―安全保障、情報戦などといったNATOの得意分野をめぐってEUと協力することは、両組織にとって必ず有益となるだろうと同氏は言う。EUの27の加盟国のうち21はすでにNATOに加盟しており、スウェ―デンやフィンランドなどそうでない国も緊密な同盟国であるからだ。 「われわれにはアメリカの助けが必要だ」とボンド氏は言う。「だが、ヨ―ロッパの独立性とさらなる自主性の理念を放棄するべきではない」。ヨ―ロッパでは、アメリカのバイデン大統領が2024年に再選を果たせないのではないか、あるいは出馬を見送るのではないかという懐疑的な見方もある。代わりに、ドナルド・トランプ前大統領や、同氏のより孤立主義的で自国第一主義的な理念に共鳴する共和党の候補が就任するという懸念があるのだ。 「その場合、ヨ―ロッパはきわめて脆弱な立場におかれる。そのため、軍事費や効率性を増強し、実際の機能上のニ―ズを満たす必要がある」とボンド氏は言う。「これらはただの理想論ではなく、今すぐ必要なことだ」。 |
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●ロシア軍ウクライナ侵攻が日本の食卓を直撃…「イクラ軍艦」が消える? 2/27
ロシア軍がウクライナ侵攻を開始したことで、日本の食卓にも大きな影響を及ぼす可能性がある。 まずはパンやピザ、カップ麵、うどんなどの小麦加工品だ。ウクライナは、小麦の輸出が世界5位。“欧州のパンかご”と呼ばれる世界有数の小麦の生産地で、一方、ロシアの小麦輸出量は世界1位だ。2017/18年度のロシアの小麦輸出量は4142万トン(農林水産政策研究所)。経済複雑性観測所によれば、2019年のロシアとウクライナの小麦の輸出量は「世界全体の4分の1以上」を占めていたという。 日本の小麦は約9割が輸入で、ほぼアメリカ、カナダ、オ―ストラリアの3国に頼っているが、ロシアとウクライナの小麦が世界に出回らなくなれば高騰することは間違いなさそうだ。 また、アメリカ農務省(USDA)によると、ウクライナのトウモロコシの輸出量(2021/22年度)も約3050万トンで世界4位。ロシアは世界5位だ。日本はトウモロコシを家畜用飼料として9割世界から輸入しているため、国際的な飼料価格の増加の影響を受けることになるし、さらに小麦の高騰に加えて、コ―ンパンやツナマヨコ―ンピザも庶民の手に届かなくなるかもしれない。 そして、日本人がもっとも困るのはファミリ―の外食に欠かせない「回転ずし」だろう。国内ではサケマスが不漁で、イクラはここ5年で輸入品が7割程度まで増えている。逆にロシアのサケマスは豊漁で、寿司や丼もので人気のイクラはロシア頼みだからだ。 連邦税関庁(速報値)によれば、2021年のロシアから日本への水産物の輸出はイクラを主とした「魚卵・肝臓・白子」が金額ベ―スで58%増加している。「スシロ―」や「くら寿司」など大手回転ずしの「イクラ」の多くは、原産地にロシアと表示されている。ロシアからの輸入がストップになれば、回転ずしでイクラが回らなくなるかも? |
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●ウクライナ侵攻のニュ―スは、マスメディアを越えて世界を断片的に駆け巡る 2/27
ロシアによるウクライナへの侵攻のニュ―スが、ソ―シャルメディアを駆け巡っている。人―が投稿した現地からの写真や動画を含む小さな断片情報は、いまやマスメディアを越えて世界中で可視化され、歴史に刻まれるようになった。だが、それゆえの問題点も浮き彫りになる。 ロシアによるウクライナへの侵攻に関するニュ―ス記事を、2月24日(米国時間)の朝に何本も読んだ。しかし、その最初の記事を開くずっと前の段階で、その知らせはスマ―トフォン経由ですでに届いていたのである。 例えばTwitterは、ニュ―スメディアや政府当局者からの数多くのツイ―トをとりまとめて配信している。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキ―大統領の「まだ良心を失っていないロシアのすべての人―に、今こそ街頭に出てウクライナとの戦争に抗議するよう求めます」というツイ―トなどがそうだ。 グル―プチャットに参加している友人たちは、キエフを脱出するクルマの様子を伝えるケ―ブルテレビのニュ―スが映る自身のテレビ画面の写真を投稿した。その後すぐ、その他のプラットフォ―ムからの通知も届き始めた。こうしてスマ―トフォンのホ―ム画面は、ウクライナ関連の情報でいっぱいになった。 ●可視化された断片情報 ご存知の通り、いまやほとんどの人はこのようにしてニュ―スに触れるようになっている。さまざまな場所やプラットフォ―ムから、小さな断片情報が集まってくるのだ。 しかし、同時に別の現象も起きていた。まったく異なる情報源からの情報を投稿する人が現れ始めたのだ。ロシアの情報を伝えるメディア『Meduza』のエディタ―のケヴィン・ロスロックは、航空機の飛行状況を確認できるアプリ「Flightradar24」のスクリ―ンショットを投稿し、ウクライナとベラル―シ上空を航空機が避けている様子を「戦争で生じた空の空白」として紹介していた。 これを受けてFlightradar24の利用者数は急増した。「普段の訪問者数は1日あたり300万ユ―ザ―ですが、数時間のうちに1時間あたり100万ユ―ザ―のペ―スに跳ね上がりました」と、Flightradar24の広報担当者は説明する。 また、ミドルべリ―大学教授のジェフリ―・ルイスは、Google マップのスクリ―ンショットをTwitterに投稿した。ウラジ―ミル・プ―チン大統領が「特別軍事作戦」を発表するほぼ同時刻に、ロシアのベルゴロドからウクライナ国境に向かう道路がロシア軍の車列で「渋滞」している様子だ。『ニュ―ヨ―ク・タイムズ』までもがこうした動きに加わり、ロシア軍がクリミア半島からヘルソン州に入る様子が記録された防犯カメラの画像を投稿している。 ●ソ―シャルメディアの利点と問題点 このように映像や画像が拡散されていく現象は、いまに始まったものではない。だが、世界規模の出来事に関する情報にこうしたかたちで触れると、そのぶんなぜか説得力が増したように感じられる。あたかもソ―シャルメディアによって、自ら情報源を探さなければならないことがわたしたちの脳に教訓として刻まれているかのようだ。 インタ―ネット時代が到来して人―の集中力が続く時間が短くなったという人もいる。だが、事態を把握するには複数の情報源から情報を収集しなければならないという教訓が、人―の脳に刻み込まれたことにはいくつかメリットもあるのだ。 もちろん、デメリットもある。最大のデメリットは、インタ―ネットに投稿される内容には不正確なものもあるということだ。ウクライナからの中継だというTikTokには、実際にはそうではないものもある。 それにロシア政府は、“偽情報の生成装置”のようなものだ。当局者からのメッセ―ジは、事態の一部しか伝えないものもある。そのなかで、目撃者からのツイ―トでようやく事態の全容がわかる場合もある。偽情報はインタ―ネットの疫病と化しているが、場合によってはソ―シャルメディアが現地からの情報を最も素早く拡散できる手段になることもある。 ●歴史はいかにつくられるのか インタ―ネットでは、ときに現在進行中の状況に関する断片的な情報をとりまとめるような動きが見られるが、常にうまくいくわけではない。ウクライナで事態が動いた当初、Wikipediaの編集者たちの間では、「何が正しいのか」という論争が起きていた。 ある意味、これが健全な姿だろう。いまウクライナで起きていることの真実は、今後長い時間をかけて明らかになっていく。誰もができるだけ多くの情報源に当たるべきなのだ。それに共有するなら性急にではなく、まず内容の真偽を確認することも必要になる。 ジャ―ナリズムとは、歴史の草稿の第1稿を書く作業だと言われている。そして、歴史は勝者によって書かれていくとも言われている。だが、そうではない側面もあるのかもしれない。ひょっとすると、歴史はインタ―ネットという実体なき空間の中で書かれていき、それに注意深く接する責任はわたしたちが負っているのかもしれない。 |
●ウクライナ侵攻、世界はどこで道を間違えたのか 2/27
2022年2月24日、ウラジ―ミル・プ―チン大統領はテレビ演説し、そのなかで、「国際連合憲章第7編第51条に従い、ロシア連邦評議会の認可を得て、本年2月22日に連邦議会が批准したドネツク人民共和国(DNR)およびルガンスク人民共和国(LNR)との友好および相互援助に関する条約に基づき、特別軍事作戦を実施する決定を下した」と語った。 さらに、「その目的は、8年間キエフ政権によって虐待や大量虐殺にさらされてきた人―を保護することだ。そしてこの目的のために、我―はウクライナの非軍事化と非ナチ化をめざし、ロシア連邦の市民を含む一般市民に対して数―の血生臭い犯罪者たちを裁きにかけるつもりだ」と語ったのである。 この発言のなかで、「非軍事化」と「非ナチ化」は意味深長なものである。「非軍事化」は単に武装解除するというものではない。北大西洋条約機構(NATO)を1ミリでも東方に拡大させないために、ロシア軍の力でウクライナのいまの軍事力を圧殺するということらしい。そのためには、ウクライナ軍とその軍備を撤廃し、ウクライナは明らかに、ロシアと西側の間の非武装緩衝地帯のようなものにしなければならないという決意が込められている。いまの政権を、NATO加盟を永久に放棄する政権に交代させなければならないということでもあろう。ただ、「領土を占領することは考えていない」とした。 もう一つの「非ナチ化」という概念はわかりにくい。Entnazifizierungというドイツ語をロシア語化したもので、戦後のドイツとオ―ストリアの社会、文化、報道、経済、教育、法学、政治からナチスの影響を排除することを目的とした一連の措置を指す。なぜプ―チンがそんなことを言い出したかは後述するが、彼自身の言葉で言えば、「NATOの主要国は、自分たちの目的を達成するために、ウクライナの極端なナショナリストやネオナチを支援している」という。そのナショナリストやネオナチをつかまえて裁こうというのである。 そして、いま現実にロシアに全面侵攻が行われ、ウクライナによる抵抗がつづいている。 筆者は、法律に知悉(ちしつ)しているプ―チンが全面的侵攻に出るとは考えてこなかった。24日の演説を聞いても、その思いは変わらなかった。だが、そうではなかった。「熊が来る」という米国政府の予測が現実になったことになる。筆者の不明を恥じなければならない。それだけでなく、読者にも謝罪しておきたい。 ただ、「ロシア悪し」という世界中に広まりつつある声に対して、むしろ冷静になることを求めたい。彼の暴力は非難に値するが、それだけでは問題は解決しない。どこで世界は「道を間違えたのか」を探ることでしか、この問題を本質的なところから理解することはできないと思う。 ●リヴィウについて 「非ナチ化」というプ―チンのとらわれている想いを理解するためには、「ユダヤ人問題」を知らなければならない。そこで、最近、名前を聞く機会が増えているリヴィウという都市の話からはじめたい。 ウクライナの首都キエフから大使館機能をここに移す動きが広がり、日本の報道機関もこの地からウクライナ情勢を伝える機会が増えている(2022年2月18日付の「ワシントン・ポスト」を参照)。だが、リヴィウそのものへの説明がないために、この地を理解すれば、ウクライナ問題の本質に近づけることを多くの日本国民は知らない。 筆者は2014年に上梓(じょうし)した『ウクライナ・ゲ―ト』の序章の冒頭部分でつぎのように書いておいた。 「ウクライナという国家は本書の前扉に示したように、東はロシア、西はポ―ランド、ル―マニアなど、北はベラル―シ、南は黒海に挟まれた地域である。ウクライナの歴史を理解するには、三つの言語ごとに若干異なる名前をもった場所に注目するとわかりやすいかもしれない。それは、ウクライナ語でリヴィウ(Львів)、ロシア語では、リヴォフ(Львов)、ポ―ランド語ではルヴォフ(Lwów)と発音される。つまり、それぞれの国家がこの場所を支配下に置いたことがあり、わが領土として自国語で呼び習わしてきたことになる。この場所はカルパチア山脈の西側にある。その意味で、リヴィウはその東側の地域と宗教も習俗も大きく異なっていた。」 にもかかわらず、1945年2月のヤルタ会談で、リヴィウのウクライナへの帰属が決められる。当時のリヴィウの人口構成比からみると、この地はポ―ランド領となっていたほうが自然であったように思われる。だが、国際連合創設を最優先に考えていたフランクリン・ル―ズベルト米大統領はソ連のスタ―リンに安易に妥協し(なお、このとき、ソ連のスパイによってル―ズベルトの考えはスタ―ンに知られていた)、それがリヴィウに住む多くの人―に西側から見捨てられたという心情をかきたてたのだ。何しろ、リヴィウから西に100kmもクルマを走らせれば、ポ―ランドのプシェムィシルに着くのであり、リヴィウの人―を焚きつけて親ロシア政権の打倒を画策することは簡単なことだったのである。 問題はそれだけではない。「閑話休題」に書いたように、この地にはユダヤ人が多く住んでおり、彼らのなかには、ソ連の社会主義から、ナチスの迫害から身を守るために、米国などへの移住を余儀なくされた人―が多くいたのである。そうした米国移住者の子孫から、ヴィクトリア・ヌ―ランド国務省次官など、いわゆる「ネオコン」としていまの国際政治を揺るがす政策を意図的にとっている者が生まれることになるのだ。 同時に、ユダヤ人を迫害・殺害したナチスから彼らを解放するため、ソ連軍の数百万人もの血が流されたことも指摘しておかなければならない。 ●「何か大切な処で道を間違えた」という反省 さだまさしの「風に立つライオン」に「やはり僕たちの国は残念だけれど 何か大切な処で道を間違えたようですね」という歌詞が出てくる。たぶん、このヤルタこそ、「何か大切な処で道を間違えたようですね」という場所にあたるようにみえる。それは奇(く)しくもクリミア半島に位置している。 ヤルタ会談でウクライナに加えられたリヴィウ以西はウクライナのなかでも貧しい地域として放置されてきた(詳しくは拙稿『ウクライナ2.0』)。そうしたなかで、親欧米反ロシアの感情が芽吹き、それを刺激したのが米国のネオコン(新保守主義者)であった。そうしたナショナリズムの扇動を主導したのがヴィクトリア・ヌ―ランド国務省次官補(当時)である。拙稿『ウクライナ・ゲ―ト』において、つぎのように記述しておいた。 「それでは、2014年2月以降、何が起きたのかをもう少し詳しく考察してみよう。それを示したのが巻末表である。時系列的にみると、1月から武力衝突が繰り返されていたことがわかる。おそらく「マイダン自衛」が徐―に武力を整えていった時期と重なる。英国のフィナンシャル・タイムズと提携関係にある、比較的信頼できるロシア語の新聞「ヴェ―ドモスチ」が2月20日付で伝えたところによると、ウクライナ西部のリヴォフ市長は、三つの地区警察署の武器保管庫が襲われ、約1500もの銃火器が持ち出されたことを明らかにした。リヴィウ(リヴォフ)の南東にあるイヴァノ・フランキ―ウスクでは、武器が自衛組織との共同管に移行したという。この時点で、行政庁舎が自衛組織によって占拠されていたのは、ル−ツィク、リウネといった北西部の都市、イヴァノ・フランキ―ウシクである。リヴィウの場合、行政庁舎のほか一部の警察署も占領されていた。」 当時に有力となったのが、政党「自由」であり、その党首オレグ・チャグニボクの写真をご覧いただきたい(下参照)。インタ―ネット上で入手できる画像をダウンロ―ドしたものだが、左手を高く掲げて党の敬礼をする姿を見ると、ヒトラ―を連想しないわけにゆかない。 こうしたナショナリストたちは、ナチスを思わせる暴力集団と化し、彼らが民主的な選挙で選ばれて大統領となったヴィクトル・ヤヌコヴィッチを武力で追い出したのである。当時の雰囲気を知ってもらうために以前、紹介したのが以下のBBCの番組であった。 実際に暫定政権ができると、「自由」のメンバ―が入閣した。当初、アレクサンドル・スィチ副首相、イ―ゴリ・シュヴァイカ農業政策・食糧相、アンドレイ・モフニク環境・天然資源相、イ―ゴリ・チェニュ―フ国防相の4人が閣僚に任命されたのだ。このとき、首相になったアルセニ―・ヤツェニュ―クは駐ウクライナ大使やヌ―ランドの指示を受けていたことは間違いない。 こうした事情から、プ―チンはウクライナでナショナリストやネオナチによるク―デタ―が引き起こされたとみなしている。もちろん、これはプ―チンの思い込みではない。たしかに、2013年から2014年当時、こうしたナショナリストが「大活躍」していたことは事実だ。にもかかわらず、欧米諸国は彼らの横暴を赦(ゆる)し、プ―チンのクリミア併合だけを批判した。その後、どうなったかというと、ナショナリストらが軍に吸収されただけでなく、民兵や義勇兵として残存し、ウクライナ国内で隠然たる勢力となってしまったのである。そのため、2015年のいわゆる「ミンスク合意」を履行しようとしても、彼らの強い反発が予想されることから、実際には何もできない状態が7年間もつづいてしまったのである。 しかも、こうしたウクライナの政情を米独仏も放置していた。米国に至っては、バイデン政権になっても駐ウクライナ大使さえ任命しないまま、ウクライナに関心を示そうとはしなかった。 ●もう一つの「大切な処で道を間違えた」という事実 つぎに、プ―チンが持ち出した国際連合憲章第7編第51条について知る必要がある。ここに、もう一つの「大切な処で道を間違えた」という事実が関係しているからである。 この条文には、つぎのように書かれている。 「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が行われた場合には、安全保障理事会が国際の平和および安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的または集団的自衛の固有の権利を損なわないものとする。この自衛権の行使において加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告されなければならないが、この憲章に基づく安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとる権限および責任に何ら影響を与えるものではない。」 1999年3月、北大西洋条約機構(NATO)はセルビア人によるコソボ・アルバニア人の「民族浄化」を食い止めるため、ユ―ゴスラビア共和国への空爆作戦を開始した。このとき、NATOが持ち出したのがこの第51条であった。といっても、これは、国連加盟国への武力攻撃に対する自衛権の行使を認めたものであり、コソボに適用することには疑義があった。 国連安保理は1998年3月に第7編を発動し、武器禁輸を課してコソボ情勢に対処していた。武力行使に至る過程で、NATOのソラナ事務総長は、「コソボにおける人道的災害の危険性」を理由に、想定される介入が正当化されることを明言する。 1998年10月に行われたソラナとNATO常設代表との会合に基づき、ソラナは「人道的惨事が続いていること」「コソボに関して明確な強制措置を含む別の国連事務局決議が当面の間期待できないこと」「コソボの状況の悪化とその規模は地域の平和と安全に対する深刻な脅威を構成すること」を指摘する。そして、NATO安全保障総局は、「同盟国は、コソボにおける現在の危機に関する特定の状況には、同盟国が威嚇し、必要であれば武力を行使するための正当な根拠があると考える」と結論づけたのである。 当時、ロシアはこうしたNATOの独断的結論に猛反対した。にもかかわらず、NATOは空爆を断行した。これを強く主張したのは、マデレ―ン・オルブライト国務長官である。彼女こそ、伝統的な地政学の考え方を米ソ冷戦時代に適合させて、「ユ―ラシアの征服」という野望をいだきつづけてきたズビグニュ―・ブレジンスキ―の文字通りの弟子だ。ユダヤ系の彼女もネオコンと言えよう。 このNATO空爆こそ、もう一つの「大切な処で道を間違えた」事件と言えまいか。だからこそプ―チンは、24日の演説でつぎのようにのべている。 「まず、国連安全保障理事会の承認なしに、ヨ―ロッパの中心で航空機とミサイルを使ってベオグラ―ドに対する流血の軍事作戦が実施された。数週間にわたり、都市や生命維持に必要なインフラを継続的に爆撃した。」 国連憲章で自衛権を規定した第51条については、その後、米英軍などによるイラク侵攻の際にもこの第51条との関連が問題になる。プ―チン演説では、「その後、イラク、リビア、シリアという順だ」とされている。もちろん、在外国民を保護するという概念を第51 条の枠内に収めるのは無理がある。にもかかわらず、そうした論理を駆使して、空爆や侵攻を繰り返してきたのは欧米諸国だとプ―チンは考えているのだ。 ゆえに、プ―チンに言わせれば、同じ論理に基づいて、今度はロシアが「第51条に従い」「本年2月22日に連邦議会が批准したドネツク人民共和国(DNR)およびルガンスク人民共和国(LNR)との友好および相互援助に関する条約に基づき、特別軍事作戦を実施する決定を下した」ということなる。 ●読者への謝罪と今後について 実は、2月19日、筆者の尊敬するジャ―ナリストでこのサイトにおける考察にも多大な影響をあたえている、ユ―リヤ・ラティニナは毎週放送しているラジオ番組の冒頭、「正直なところ、プ―チンが攻撃を決断するとはずっと思っていませんでした。昨日の夜から、私は完全にショックを受けている。尊敬する聴衆に謝らなければならない。これは非常に重大なことです」と語った。筆者も彼女と同じ言葉を繰り返したい。 彼女の発言にしたがっていれば、もう少し早く方向転換できたかもしれない。それでも、事態を見守ることでしか対応できなかった。まだどこかにプ―チンの抑制力に期待していたからだろう。 筆者自身にとって、「大切な処で道を間違えた」と言わざるをえないのはどこだったのか。2008年8月にグルジア(現ジョ―ジア)で起きた「五日間戦争」に惑わされたせいかもしれない。いまでは、ロシアがジョ―ジアに開戦したという誤報が真実のように日本のマスメディアに飛び交っているが、彼らは事実を何も知らない。 当時、米国務省でグルジア担当だったマシュ―・ブライザ(Matthew Bryza)は当時のミヘイル・サ―カシュヴィリ大統領に何度もロシアの挑発に応じないように求めていた。しかし、サ―カシヴィリはNATOからの支援を信じて、大砲を撃ちこみはじめたのだった。 今回の場合、「ロシアのウクライナ侵攻計画」なるものをリ―クしたことで、むしろ米国がロシアを挑発しているように感じられた。なぜなら何度も書いてきたように、ヴィクトリア・ヌ―ランド国務省次官がそのリ―クの背後にいると思われたからである。この見立てが間違っていたのかもしれない。最初からプ―チンは断固たる決意であったのだろう。 そんな筆者だが、何も知らずに一知半解な虚言を吐くのではなく、徹底した考察から世界の変化を精緻に分析しつづけていきたい。それは、ラティニナの反省と出直しに呼応するものでもある。 今回の考察がそうした姿勢を貫くための最初の一歩になりえていることを願っている。 |
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●ウクライナ軍とロシア軍 首都キエフ周辺などで激しい戦闘続く 2/27
ウクライナに軍事侵攻したロシア軍は、首都キエフの周辺など各地で攻勢を強め、抵抗するウクライナ軍との間で激しい戦闘が続いていて、死傷者がさらに増えることが懸念されます。ロシア政府は26日、ウクライナ側に停戦交渉を拒否されたと主張して部隊の進撃を再開し、ロシア国防省は「すべての部隊が全方向で攻勢を展開するよう命令を受けた」としています。 アメリカ国防総省の高官は26日、国境に集結していたロシア軍の大規模な戦闘部隊のおよそ半分がウクライナ国内に投入されたという分析を明らかにしました。 そのうえで、首都キエフ周辺と北東部のハリコフ周辺で、ウクライナ軍が激しい抵抗を続けているとしています。 キエフでは、中心部にある高層アパートがロシア軍によるとみられる攻撃を受けたほか、近郊の石油関連施設などで2回の大きな爆発が起きたと伝えられています。 また、東部のドネツク州ではロシア軍の砲撃で市民19人が死亡したと伝えられているほか、ギリシャ国籍の市民10人がロシア軍の空爆で死亡し、ギリシャ政府がロシア大使に抗議しました。 ウクライナの保健相は26日、これまでに198人が死亡したと発表していますが、死傷者はさらに増え続けているもようです。 こうした中、アメリカ政府がウクライナに対し、対戦車ミサイルなど、最大で3億5000万ドル、日本円にしておよそ400億円の追加の軍事支援を行うと発表したほか、これまで武器の供与には慎重だったドイツ政府も携帯型の地対空ミサイル500基などをウクライナ政府に供与すると発表しました。 今後、首都キエフをめぐるロシア軍とウクライナ軍との攻防が激化するとみられる中、市民などの犠牲者がさらに増えることが懸念されます。 |
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●プーチン指揮下ロシアの恐ろしすぎる“プロパガンダの実態”と内部の“希望” 2/27
ついにウクライナへの軍事侵攻に踏み切ったロシア。2022年の日本において「戦争」は非現実的な事態だ。国境を接する国が起こしたこととはいえ、リアリティを感じられずにいる人も多いのではないだろうか。 しかしロシア軍は首都キエフの陥落を目論み、ウクライナに多方面から侵攻している。26日、ウクライナ保健省は子ども3人を含む民間人198人が死亡、1115人の負傷者が出たと公表した。軍の被害も甚大だ。ウクライナ大統領府は、ロシア軍の3500人が死亡し、200人が捕虜になったと伝えている。ウクライナ側の被害の全体像はいまだみえていない。 いま、ロシア国内はどういう状況なのか。モスクワの在留邦人に取材すると、「まるで太平洋戦争中の日本のような状況」になっているという――。 ●「神の祝福を!」ロシアが始めたプロパガンダ 2月17日、ウクライナ情勢が危機的な状況にあることを、世界中の人々がようやく現実問題として捉え始めた。ウクライナ国防省は同日、東部ルガンスク州で子供20人を含む38人がいた幼稚園が親ロシア派の攻撃を受け、職員3人が怪我をしたと発表したからだ。欧米諸国はこれを強く非難。ロシアのあまりに強硬な姿勢に、SNSにはいろいろな言語で批判が投稿されていた。 しかし同時期、ロシアメディアはすでに「ロシア側が被害を被った」との報道を始めていた。 「17日に親露派が攻撃されたと報じられ、18日には『ロシア側に避難するように』との政府声明が出されました。どこまで事実なのかはよく分からない部分もあるのですが、ロシアとしては、『追い込まれ始めざるを得なかった戦争』というストーリーを描いているように感じました」(大手紙国際部ロシア担当記者) その後の2月24日、ビデオ声明でプーチン大統領は開戦をこう宣言する。 《ドンバス地域(ウクライナ東部)の人々(親ロシア派)は、ロシアに助けを求めました。そして、私は特別な軍事作戦を行うことを決定しました。キエフ政権から8年間、虐待・虐殺(ジェノサイド)された人々を保護する目的であり、ウクライナを非軍事化および非武装化し、ロシアを含む平和を願う人々に対して数々の血なまぐさい罪を犯した人々を裁判にかけることを目指します》 同日、プーチン大統領の宣言に前後して、ロシア軍はウクライナ侵攻を開始。ロシア政府のプロパガンダ紙ともいわれる「RT(旧・Russia Today)」は、色めき立った。 ロシア軍の戦車が侵攻する様子を「We have been waiting for this for 8 years!(この8年ずっと待っていた!)」「God bless you guys!(あなたに神の祝福を!)」などとテロップを付けた動画を配信。プーチンの決断を支持する動画は、多くのロシア国民の目に触れたことだろう。 開戦のこの日から今に至るまで、テレビでも戦争を支持する内容が流され続けているという。モスクワに住む30代の邦人男性はこう漏らした。 ●国民を“洗脳”「テレビや新聞は異常」 「モスクワの街は一見穏やかですが、至る所で老若男女が戦争について話しています。雰囲気は暗い。でも、テレビや新聞は異常です。ロシア国営放送は、延々とウクライナ関連のニュースを放送していますが、どれも侵攻を正当化するようなものばかり。戦争の目的を『ジェノサイドからの保護』と話したプーチンの『宣戦布告』は、もう何度流されたかわからず、テレビを見ていると頭がおかしくなりそうになります」 前出の大手紙国際部ロシア担当記者もこう語る。 「ロシア軍にも相当数の死者が出ているはずです。海外メディアでは3500人以上が死亡したとも報じられています。しかし、国内では死者数などは報じられていません。自ら情報を集めないと『洗脳』されてしまうのがロシアなんです」 ●国を掌握した情報統制とプロパガンダ ロシアはこれまで、こうしたプロパガンダと情報統制によって国内をまとめ上げてきた。2014年のクリミア併合の際には、ウクライナ情勢をめぐる強硬姿勢によってプーチン大統領の人気が爆発的に上がり、支持率は90%を超えた。 「ロシア政府の統計は恣意的な操作がされている可能性が高くあてになりませんが、これは信頼のおける調査機関『レバダセンター』による統計なんです。同機関は政府と距離があり“スパイ認定”もされているほどです。そんな機関がプーチン大統領の支持率を90%と出してきた。これは極めて当時の実態に近い数字だったと考えられます」(前出・大手紙国際部ロシア担当記者) しかし徐々に支持率は落ち、2020年夏頃にレバダセンターが発表したプーチン大統領の支持率が60%を切った。 「これまでの欧米各国の制裁による経済成長の鈍化や、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからなかったことから支持が低迷し始めたんです」(同前) それでも支持率は十分高いように思えるが、情報統制が敷かれた近年のロシア国内では“異常事態”だった。この一因となったのがSNSの隆盛だ。 「ロシアでも日本同様に、若い世代を中心にTwitterやInstagramなどのSNSの利用が広がり、自ら国外の情報を取りに行ける人が増えているんです。今回も、戦争が始まり、すぐにTwitterのトレンドで1位となったのは『нетвойне(ニェットバイニェ)』。つまり『戦争反対』でした。 『ウクライナに謝りたい』という書き込みも目立ちます。世界的に著名な各界のロシア人らも、表立ってプーチンの批判はしていませんが、『戦争が早く終わるように』といった間接的に戦争を批判する投稿をしています」(同前) しかしながら、いまなお国内では政府を批判する声をあげにくいというのも事実だ。開戦2日足らずで、ロシア当局は全国50都市以上で、反戦デモなどに加わっていた1700人を超える身柄を拘束しているとも報じられている。 ●戦禍のなかで“変わる可能性”が芽生えている 前出の国際部記者はこう解説する。 「テレビや新聞しか見ない高齢の世代を中心に、いまだプーチン大統領の支持層は厚い。実際、レバダセンターの昨年末の調査で、ウクライナ情勢の悪化の責任がアメリカやNATOにあると答えたのは50%と最多。ウクライナに責任があると答えた人は16%、ロシアに責任があると答えた人は僅か4%でした。 しかし、今回ばかりは若い世代を中心に反戦の機運が広がっているのを確かに感じます。レバダセンターの調査などの客観的なデータはありませんが、国民の半数以上は戦争反対なのではないでしょうか。ウクライナへの侵攻はあってはならない惨事です。ですが、戦禍のなかで、内側からロシアが変わるきっかけになる可能性が芽生えてきている気がします」 そして、最後にこうも語った。 「ウクライナとロシアは人種も一緒で、親族が両国にまたがっている家族は数え切れません。一刻も早く事態が落ち着くことを祈っています」 25日、ウクライナはロシアに協議を求め、ロシアもそれに応じる構えをみせていた。しかしBBCによると、26日にウクライナ大統領府が「ロシアが示した停戦条件が、降伏を強いるものだ」とロシアとの協議を拒否。一時停止していたロシア軍主力部隊の侵攻が再開した。 フランスのエマニュエル・マクロン大統領が「世界は長期戦に備えなければならない」と発言している。この戦争の先行きは不透明さを増すばかりだ。 |
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●ドイツ、ウクライナに武器供与を発表…消極姿勢から方針転換 2/27
ドイツ政府は26日、ウクライナに対し、対戦車砲1000門と携行式地対空ミサイル500発を提供すると発表した。武器の直接供与はウクライナ情勢の緊張をかえって高めるとして消極的だったが、ロシアの軍事侵攻を受けて方針を転換した。 ドイツが紛争地への武器供与に踏み切るのは2014年にイスラム過激派組織「イスラム国」対策としてイラク・クルド自治政府に提供して以来。ショルツ首相は「ロシアの侵攻は冷戦後の国際秩序を脅かすものだ。ドイツはウクライナの側に立っている」と説明した。独政府の広報担当者によると、エストニアとオランダから求められていたドイツ製武器のウクライナへの供与も承認した。 米政府もウクライナに対して、3億5000万ドル(約400億円)規模の軍事支援を行うことを発表している。 |
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●ウクライナ情勢を受けトゥトベリーゼ氏が他国コーチに電撃移籍浮上 2/27
フィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(15=ロシア)を巡るドーピング問題で渦中にあるエテリ・トゥトベリーゼ・コーチ(48)が、ウクライナ情勢を受けて他国コーチに電撃移籍する可能性が浮上し、日本も有力候補になりそうだ。 ロシアメディア「MKスポーツ」は、同国によるウクライナ侵攻を受けてスポーツ界でロシア勢の締め出し≠ェ始まっていると指摘。今後の展望について、RMAビジネススクールの責任者でスポーツ経営学部の学部長であるキリル・クラコフ氏の見解を報じた。 「短期的に見れば、ロシアのスポーツ界は大変なことになっている。最初の一歩はすでに踏み出され、やがて連鎖反応が起こる。すべての国際連盟や協会は、我々をスポーツから排除し、契約を破棄するだろう」と指摘。ロシア勢がスポーツ界の公式大会から次々と出場を禁じられるとの見通しを示した。 クラコフ氏はそれによってまず起きるのが、仕事上で国籍は関係ない指導者の流出と分析。「もちろん最高のコーチたちが外国の連盟で働きに行くようになる。たとえば、エテリ・トゥトベリーゼは競合国に移る可能性が非常に高い」との見通しを示した。トゥトベリーゼ氏は北京五輪で教え子のシェルバコワが金メダル、トルソワが銀メダルを獲得するなどフィギュア界で現在最も勢いのある指導者。働き口を求めて他国へ移籍する動きが出ているのだ。 トゥトベリーゼ氏は結果至上主義のため強豪国への移籍となりそうだが、米国ではワリエワを巡るドーピング問題で批判が根強い。そうなると、フィギュア大国の日本などが有力候補になりそうだ。 フィギュア界でまさかのトゥトベリーゼ・ジャパン≠ェ誕生するのか。その動向から目が離せなくなってきた。 |
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●中国の学者有志が戦争反対の声明発表→まもなく削除され閲覧不能に 2/27
ロシア軍によるウクライナへの侵攻を巡り、中国の複数の歴史学者が26日午後、ロシア政府とプーチン大統領に対し戦争の停止を呼びかける声明を、中国のSNSで発表した。中国政府はロシアの軍事行動を侵攻とは認定しておらず、北大西洋条約機構(NATO)の拡張に反対するロシアの立場にも支持を表明している。政府の姿勢とは一致しない学者らの提言は、まもなく削除され、閲覧不能になった。 「ロシアのウクライナ侵攻と私たちの態度」と題した声明を発表したのは、南京大学の孫江教授ら歴史学者5人。「さまざまな意見がある中で、私たちも声を発する必要を感じた」としたうえで、「ロシアがウクライナに対して起こした戦争に強く反対する。ロシアにいくら理由があっても、武力による主権国家への侵攻は既存の国際安全保障システムを破壊するものだ」と批判した。 さらに、孫氏らは「ウクライナ国民の国を守る行動を断固支持する」とし、ロシア政府とプーチン大統領に対し「戦争を停止し、交渉で紛争を解決するよう強く呼びかける」と求めた。 王毅(ワンイー)国務委員兼外相は26日、中国外務省のウェブサイトでウクライナ問題に対する中国の基本的な立場を発表。「現在の情勢は見たくないものだ」として対話による解決を促す一方、「NATOが東へ拡大している状況下で、ロシアの安全保障面での正当な訴えは当然重視され、適切に解決されるべきだ」と、ロシア寄りの姿勢もにじませた。中国政府は、ロシアの行動が侵略にあたるかどうかについても、「我々は結論を急がない」(華春瑩外務省外務次官補)と言及を避けている。 声明は、中国政府の姿勢については論評していないが、「インターネットサービスの管理規定に違反している疑いがある」との理由で間もなく削除された。 孫氏は朝日新聞の取材に対し ・・・ |
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●ウクライナ侵攻3日目、首都キーウの抵抗続く 西側の対ロ制裁と支援拡大 2/27
ロシアによるウクライナ侵攻開始から3日目の26日、首都キーウ(キエフ)への攻撃は続いたが、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は政権を維持し、徹底抗戦を国民に呼びかけると共に、国際社会の支援を要請している。この間、西側諸国は国際決済ネットワーク「SWIFT」からロシアの一部銀行を排除し、ロシア中央銀行の外貨準備を規制するなど金融制裁の強化を決定。さらに、ウクライナへの金融支援と武器供与支援も拡大する方針を示した。 ゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍は首都キーウのほか、南部オデーサ(オデッサ)と北東部ハルキウでロシア軍と戦闘を続けていると説明。「占領軍はこの国の中枢を封じ込めようとしたが、私たちはその計画をくじいた」と述べた。 一方でロシア軍はキーウ包囲作戦を進めており、市街地への爆撃も続いた。政府と市当局は住民に、夜間外出禁止と灯火管制を指示。さらに、28日朝まで屋内に留まるよう呼びかけている。 キエフ近郊のヴァシルキウでは、ロシアのロケット砲が石油貯蔵所を攻撃したという複数の情報が相次いでいる。 地元メディアによると、ヴァシルキウ市のナタリア・バラシノヴィッチ市長とウクライナ内務省のアントン・ジェラシェンコ顧問が被弾を確認した。 ソーシャルメディアに投稿された映像では、ターミナルから巨大な炎が上がる様子が見える。ただしBBCは映像の真偽を検証していない。 同日未明にはキーウ南西部で高層の集合住宅の一部が破壊された。近くにはジュリャーヌィ国際空港がある。キーウ南西部には同日未明、ミサイル2発が撃ち込まれたという。爆撃された高層集合住宅では、少なくとも5階分が被害を受けている。当局によると、死者は出ていないもよう。 ウクライナのヴィクトル・リヤシコ保健相によると、これまでに民間人と兵士が計198人死亡した。この中には3人の子供も含まれる。国連によると過去48時間で12万人以上が国外に避難した。 一方でロシアは、自国側に死者が出ているとは認めていない。 |
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●ゼレンスキー大統領 “ロシアを国際司法裁判所に提訴” 2/27
ウクライナのゼレンスキー大統領は27日、「ウクライナはロシアに関する書面を国際司法裁判所に提出した。ロシアは大量虐殺の概念を操作して侵略を正当化した責任を問われなければならない」とツイッターに投稿し、ロシアを提訴する手続きを行ったことを明らかにしました。 その上で「われわれはロシアによる軍事行動を今すぐやめさせる緊急決定を行うよう、国際司法裁判所に要請している」として、関連する審理が来週にも始まることに期待を示しました。 |
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●ウクライナ、停戦交渉に合意 ロシアは「核」ちらつかせ無条件降伏要求か 2/27
ウクライナのゼレンスキー大統領は27日、ベラルーシとの国境付近でロシアとの停戦交渉に応じる意向を示した。ロシアのプーチン大統領は27日、米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)側が攻撃的な発言をしているとして「核抑止力部隊」を厳戒態勢に移行させるようショイグ国防相らに命じた。核兵器の限定的な使用をちらつかせて、米欧諸国やウクライナを揺さぶる狙いとみられる。 ●第2都市ハリコフで激戦 ロシア軍は27日、東部にある第2の都市ハリコフに侵入し中心部で激しい戦闘が起きたが、ハリコフ州知事は「敵を撃退した」と明らかにした。現地メディアが伝えた。 26日夜には、ハリコフにあるガス輸送管や首都キエフの石油基地がロシア軍の攻撃を受けた。ロシア国防省はハリコフ郊外でウクライナのミサイル部隊471人が投降したと発表したが、ウクライナ政府は「偽情報」と否定している。 ハリコフは人口140万。軍需など製造業が盛んなため、ロシアの標的にされると懸念されていた。キエフではウクライナ軍の対戦車ミサイル攻撃や市民の抵抗でロシア軍が押しとどめられているもようだ。 ●避難民は36万8000人に ウクライナ非常事態省は27日、ロシア軍の攻撃によりハリコフやキエフなどで新たに民間人10人余りが死亡したと明らかにした。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は27日、ウクライナの避難民が36万8000人に上ったと発表した。 ロシアのペスコフ大統領報道官は27日、停戦交渉を行うロシア使節団がベラルーシ南東部ゴメリに到着したと発表。ゼレンスキー氏は交渉に前提条件は付けないとしている。ゼレンスキー氏は、これまでロシア軍の侵攻に協力しているベラルーシ以外での開催を求めていた。 ロシアはウクライナに対し、政権交代を含めた「無条件降伏」のほか、2014年のウクライナ南部クリミア半島の併合を承認するよう要求するとみられる。 |
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●ウクライナ情勢に関する我が国の対応について 2/27
本日はウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行う予定でしたが、先方から、現在、緊急事態となったため電話を別の日程としたい旨連絡がありました。こうした緊急事態となったことを踏まえながら、改めて我が国は主権と領土、そして祖国と家族を守ろうと懸命に行動するウクライナの国民と共に在ることを表明し、また、既に表明した1億ドル規模の借款に加え、困難に直面するウクライナの人々に対する人道支援として1億ドルの緊急人道支援を行ってまいります。今回のロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為です。明白な国際法違反であり、断じて許すことはできず、厳しく非難いたします。今こそ国際秩序の根幹を守り抜くため、結束して毅然(きぜん)と行動しなければなりません。我が国として、このことを示すべく断固として行動してまいります。こうした暴挙には高い代償を伴うことを示してまいります。国際社会は、ロシアの侵略により、ロシアとの関係をこれまでどおりにしていくことは、もはやできないと考えています。日本は、G7各国、国際社会と共に、ロシアに対して更に強い制裁措置を採っていきます。その観点から、日本はプーチン大統領を含むロシア政府関係者等に対しても、資産凍結等の制裁措置を採ることを決定いたしました。そして今朝発出された欧米諸国による表明では、SWIFT(国際銀行間通信協会)からのロシアの特定銀行の排除を始め、ロシアを国際金融システムや世界経済から隔離させるための措置を講ずることとされています。欧米諸国からこの声明への参加要請があり、日本もこの取組に加わります。他のG7諸国からは、これを強く歓迎する意向が示されています。こうした内容については、現地、松田大使を通じて、ゼレンスキー大統領にお伝えしていきたいと考えています。 ●SWIFTに関して日本が欧米より遅れて声明を出すこととなった理由について 遅れたとは認識しておりません。今回の事態に対して日本は、これまでもG7を始めとする国際社会と連携しながら対応してきており、そうした立場は変わりません。そして今回の声明については、欧州と米国の間で調整し、大西洋協力の枠組みで発出されたものであります。欧米諸国からこの声明への参加の要請が日本にもあり、日本もこの取組に加わっていくということを決定した次第であります。他のG7諸国からこれを強く歓迎する、こうした意向が表明されていると、今、申し上げたとおりであります。 ●北方四島での共同経済活動等の今後について まず、北方領土問題については、次の世代に先送りせず、領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針の下、これまで粘り強く交渉を進めてきました。しかし、今回のロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みとして国際秩序の根幹を揺るがすものであり、これに対しG7を始めとする国際社会と結束して毅然と行動する必要があります。北方領土問題に関する我が国の立場や、御高齢になられた元島民の方々の思いに何とか応えたいという私自身の思いは、いささかも変わりありませんが、今この時のこの状況に鑑みて、この平和条約交渉等の展望について申し上げられる状況にはないと考えております。 ●ウクライナでの邦人の保護や退避の状況について 引き続き、現地においては、ウクライナ人の家族であるなど現地にとどまっている邦人の方がおられます。そういった方々の安全を確認して、そしてこの避難等を支援するために、現地においては松田大使等がキエフにおいて努力を続けているわけでありますし、政府としてもそれをしっかりと支えている、こういった状況にあります。努力を続けている最中ではありますが、状況は混沌(こんとん)としております。引き続きまして、現地としっかり意思疎通を図りながら、邦人の安全のために努力を続けていきたいと思います。政府としましても、チャーター機の準備など、現地の努力をしっかり支えるために万全の態勢で臨んでいるところであります。 ●SWIFTに関する我が国の対応について あれは要するに、SWIFTというのは民間団体ですから、それに対して欧米においては、いろいろ調整して声明を表明したということですが、内容については日本政府にも是非参加の要請があり、その内容についての調整が行われているということであります。日本もそういった意思疎通を図りながら、そうした取組を支持する、加わっていく、こうしたことを決定したということであります。 ●ベラルーシへの制裁の検討状況について 様々な議論・検討は行っていますが、今日現在、具体的に決定したということはありません。引き続き情勢をしっかり把握して、適切に対応していきたいと考えています。 ●プーチン大統領以外の制裁対象となるロシアの閣僚について プーチン大統領以外のロシア政府関係者に対して資産凍結の制裁措置を採ることを決定いたしました。当然プーチン大統領以外のロシア政府関係者も含まれるということであります。そして具体的にこのロシア関係者・団体を措置の対象にすること、いかなるロシア関係者・団体を措置の対象にするのか、対象をどうすることが適当であるか、こういったことについて、早急に、今、確認する作業を行っているというのが現状であります。早急に確認したいと思っています。 |
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●プーチン氏の対ウクライナ戦争を巡る7つの重大な疑問 2/27
ロシアのプーチン大統領によるウクライナへの襲撃は、第2次世界大戦後の欧州史における劇的な分岐点だ。そこからは軍事行動の端緒やタイミング、今後起こりそうな展開についての極めて重要な疑問が浮かび上がる。ジョージ・W・ブッシュ元米大統領による2003年のイラク攻撃、あるいはイラクの独裁者、サダム・フセイン元大統領による1990年のクウェート侵攻以来、今回プーチン氏が踏み切った攻撃ほど無謀な様相を呈したものは見られない。 侵攻から生じる疑問は以下の7点だ。 ●1 まず、なぜプーチン氏はウクライナ攻撃をバイデン米政権の期間中に選択したのか? ドナルド・トランプ氏が大統領だった時期ではなかったのか? 結局のところトランプ氏は、プーチン氏による「ロシアを再び偉大にする」計画の熱心な協力者だったようだ。わざわざプーチン氏にすり寄り、北大西洋条約機構(NATO)の同盟の意義も低下させた。NATOの弱体化は、かねてプーチン氏が目標としていたところだ。 おそらくはトランプ氏がプーチン氏と個人的に親しい間柄だったことから、当時の政権はロシアに対し幾分厳しい姿勢を取っていた。2018年、トランプ政権は約4000万ドル相当の殺傷兵器をウクライナ政府に売却することを承認。同政府はウクライナ東部でロシアの支援する反政府勢力と戦闘を繰り広げていた。さらに同年、トランプ政権はロシアの外交官60人を米国から追放した。ロシアに対し、英国に住むロシア人の元スパイを神経剤で暗殺しようとした疑惑が生じたことを受けての措置だった。 ●2 ここまでの内容から2点目の疑問が導き出される。バイデン政権による昨年8月のアフガニスタン撤収は、ウクライナをめぐるプーチン氏の意思決定にどの程度の示唆を与えたか? 間違いなく、アフガニスタンを見捨てるというバイデン大統領の決断には、米国側の撤退の意向が表れていた。それは選挙で選ばれたアフガニスタン政府内の協力者らをイスラム主義勢力タリバンからの過酷な扱いにさらす一方、米国のNATO同盟国もいら立たせた。これらの国々は米国による撤退の結果、同じくアフガニスタンからの撤収を余儀なくされた。なぜなら、米軍が供給する多大な空軍力や諜報(ちょうほう)のおかげで、各国の軍隊はアフガニスタンでの活動が可能になっていたからだ。 中国の国営メディアは、米軍によるアフガニスタンの放棄から台湾の命運に関する教訓が得られると指摘した。つまり米国は同盟国にとって、いざという時当てにならない友人であり、張子の虎だというわけだ。「カブール陥落で際立ったのは、米国の国際的なイメージと信頼の失墜である」。中国国営新華社通信は、そのような見解を示した。 昨年11月初め、米国によるアフガンからの完全撤退が大失敗に終わってからわずか2カ月余りのタイミングで、プーチン氏は大規模なロシア軍の移動を開始。ウクライナ国防省によると、9万人の兵士を同国との国境に向かわせた。 ロシアもNATOも実際のところウクライナのNATO加盟を望んでいないのは周知の事実だ。その理由はまさしく我々が今、ウクライナで目にしている状況に表れている。もしウクライナがNATOに加盟すれば、ロシアの侵攻によって北大西洋条約の第5条が発動する。そうなると今度は逆に、NATO主導の対ロシア戦争が引き起こされる。核を巡る対立に発展する可能性も出てくる。 NATO諸国にはウクライナでの戦争に兵士を送る意欲など毛頭なく、バイデン大統領も米軍の現地派遣は一切行わないと述べている。ただ同氏は一方で、仮に戦争が拡大し、ロシアが東欧のNATO加盟国を攻撃する事態になれば米軍が介入するとも明言した。ではなぜ今、戦争なのか? ひょっとするとプーチン氏は、今のうちなら侵攻しても罰を受けずに済むと感じているだけなのかもしれない。 しかし、プーチン氏が見かけの上で行った米国とNATOの弱体化に関する計算は、やや裏目に出た格好だ。バイデン政権はNATO提携国と緊密に連携しており、同盟自体も結束を維持。ロシアの侵攻に対する共同戦線を張っている。 一方、米国の情報機関は期待通りの活躍を見せた。同国の政策立案者に戦略的な警告を発し、プーチン氏がいつウクライナに侵攻してもおかしくないと正確に予測(侵攻を正当化する「偽旗作戦」を実施する公算が大きいとしていた)。また侵攻の目的が選挙で選ばれた現ウクライナ政権の転覆にあるとの見方も示した。バイデン政権によるこうした情報の公表も、効果を発揮している。 ●3 そこで別の疑問だ。プーチン氏が早い段階で軍事的勝利を収めた場合、それは03年の米国によるイラクでの「勝利」の再現になるのか? その後のイラクは手に負えない反乱が長期化、内戦状態に陥った。 その可能性は確かにある。マキャベリが500年前に指摘したように、「戦争は意図すれば始められるが、希望通りに終わるものではない」。 ●4 (プーチン氏が勝利した場合、)米中央情報局(CIA)はウクライナの反体制派への資金提供を開始するか? 13年にはシリアのアサド政権と戦う反体制派にそのような資金提供が行われた。 そのCIAによる取り組みは失敗し、アサド政権は事実上、ロシアが15年にシリア戦争に介入したことで救われた。果たしてCIAの努力はウクライナで実を結ぶだろうか? ●5 米国によるプーチン氏の側近とロシア経済に対する厳しい制裁措置は、同氏にウクライナ政策を再考させるだけの効力を持つのか? それは疑わしい。独裁主義の体制というものは概して、過酷な制裁であっても自らの国民を犠牲にすることでそれらを跳ねのけてしまう。現在の北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記や、1990年代のフセイン政権時代のイラクを見ればわかる。懲罰的な米国の制裁により北朝鮮とイラクの国民は貧困化が進んだが、それぞれの体制に十分な影響が及ぶことはなかった。 ●6 ウクライナ東部の分離派が支配する2地域についてプーチン氏が独立を承認した際、トランプ氏はこれを「天才的」な措置と評していたが、同氏はこの発言で多少なりとも政治的な代償を払うのだろうか? トランプ氏による数多くの行動と同様、前代未聞の発言だ。前大統領が、現職の大統領の敵国に対する外交政策について、公然とその価値を貶めることなどかつてなかった。プーチン氏を「抜け目がない」「天才的」と評したトランプ氏のコメントは今月22日に発したもので、その後プーチン氏は軍をウクライナに侵攻させた。 トランプ氏に先導される形で、共和党の一派はプーチン氏の応援団と化した。プーチン氏を擁護する主要なリーダーの1人が、FOXニュースの司会者、タッカー・カールソン氏だ。同氏は先月、「なぜロシア側につくと道義に反し、ウクライナ側につくと道義的という話になるのか?」と疑問を呈していた。 カールソン氏は22日、自身の番組内で、プーチン氏擁護の姿勢をさらに強く打ち出し、大げさにこう問いかけた。当該のロシアの独裁者がこれまで「人種差別」を推奨したり、「キリスト教を弾圧」しようとしたことがあったか、合成麻薬フェンタニルを製造したり、犬を食べたりしたことがあったか、と。 カールソン氏は、プーチン氏とその取り巻きが過去に政敵を殺害したかどうか、風変わりな武器でそうした人々に毒を盛ったことがあるかどうか尋ねるのを忘れた。罪をでっち上げて彼らを投獄し、近隣諸国に侵攻し、ロシア国民への略奪を働いたことがあるかどうかは問わなかった。 ●7 最後に、長い目で見れば戦争の勝者は誰になるのか? 当然ながら、それは誰にも分からない。79年12月、当時のソ連は隣国アフガニスタンを楽々と侵攻したかに見えた。ところが、首都カブールをあっという間に制圧したにもかかわらず、10年後には同国から撤退。これにより、ソ連崩壊の時期は早まった。逆にプーチン氏は、ウクライナから2014年に併合したクリミア半島を現在に至るまで手放していない。戦争は常に、最も先が読めない事業だ。 プーチン氏は過去22年にわたりロシアを事実上支配してきた。20年には憲法改正をめぐる国民投票を経て、36年まで大統領の地位にとどまることが可能になった。 自然の原因による介入がなければ(ほぼ完全に外界から隔絶された本人の状況から判断して、プーチン氏は自身の健康を大いに気にかけている)、プーチン氏がロシアの支配者として居座り続ける期間はスターリンの30年、あるいはエカチェリーナ2世の34年を超えるかもしれない(もちろんプーチン氏が未知の力によって打倒される可能性は常にある。しかし権力を完全に掌握している現状を考慮すると、それはきわめてわずかなものに思える)。従ってプーチン氏には、この先も自らの構想の実現を図る時間が多く残されている公算が大きい。その構想とは、ソビエト帝国を復興し、「ロシアを再び偉大にする」ということに他ならない。 |
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●株価指数先物週間展望 2/27
「日経225先物はウクライナ情勢と米金融政策の行方を探りながらの展開に」 今週の日経225先物は、ウクライナ情勢と米国の金融政策の行方を探りながらの相場展開になりそうだ。ウクライナ情勢については停戦に向けた動きが報じられたことを受けて、25日の米国市場ではNYダウが830ドルを超える上昇となるなど、主要な株価指数が大幅に続伸。シカゴ日経平均先物は大阪比480円高の2万6980円で取引を終えており、週明けはこれにサヤ寄せする格好でギャップスタートになりそうだ。ウクライナ情勢の緊迫化が警戒されるなか、これまでショート寄りのポジションに傾いていたと見られるため、目先的にはショートカバーに伴う動きが相場の下支えとなる可能性がありそうだ。 ただし、25日にウクライナ大統領が「交渉の座に着く」ことを呼びかける一方で、26日にロシア側が「ウクライナが交渉を拒否した」として攻撃を継続するなど、情報戦の中では先行きは不透明な状況である。引き続き報道内容に大きく振られやすく、ボラティリティのい需給状況となろう。また、27日には北朝鮮による飛翔体の発射が報じられている。ウクライナ情勢は中国・台湾間の緊張感を高める要因にもつながりかねないため、しばらくは東アジアを含む地政学リスクの高まりが市場ムードを神経質にさせよう。 ロシアとウクライナが停戦交渉につけば、ショートカバーに加えて、中長期的なポジションを抑えていたロングの動きも入りやすいだろう。チャート形状では切り下がる25日移動平均線が上値抵抗線として意識されているため、同線が位置する2万7000円辺りでは強弱感が対立しやすいが、これをクリアし75日線が位置する2万8150円辺りへのリバウンドも想定されてくる可能性がありそうだ。 一方、米国では、4日の雇用統計など重要な経済指標の発表が予定されている。また、バイデン米大統領が1日にインフレと経済を重点に置いた一般教書演説を行うほか、2日、3日にはパウエルFRB議長が半期に一度の金融政策報告について上下院で証言を行う予定である。市場は3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを開始する可能性自体は織り込んできているものの、利上げやバランスシート縮小の時期などを探るうえで様子見姿勢が強まりやすく、上値を抑える要因になりそうだ。 これらを受けた米国市場の動向に影響を受けやすいなか、日経225先物はナイトセッションで大きく反応を示し、日中はギャップスタートとなる可能性が高いだろう。まずは2万7000円水準を明確に上放れてくるかを見極めつつ、戻り売りスタンスに。抵抗線突破となれば2万8000円をターゲットにロング比率を高めていきたいところ。なお、VIX指数は27.59に低下し、安心感につながるものの、25日線水準までの低下であり、もう一段の調整をみせてこないと慎重姿勢は崩せない。 先週のNT倍率は、先物中心限月で14.09倍に上昇した。24日に13.94倍に低下した後に、週末はリバウンドを見せた格好だ。週明けは米国市場の上昇を受けてNT倍率は上昇が見込まれるものの、下向きのトレンドは継続している。抵抗線として意識される25日線が位置する14.16倍辺りまでのリバウンドは想定しつつも、その後のリバランスを想定したNTショート(日経225先物売り・TOPIX先物買い)の組成も入りやすいタイミングになりそうだ。 2月第3週(2月14日-18日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物と先物の合算では2週ぶりに売り越しており、売り越し額は59億円(前週は2169億円の買い越し)だった。なお、現物は32億円の買い越し(同148億円の売り越し)と6週ぶりの買い越しであり、先物は91億円の売り越し(同2318億円の買い越し)と2週ぶりに売り越している。個人は現物と先物の合算で1142億円の買い越しで、3週ぶりの買い越しだった。 経済スケジュールでは、28日に1月鉱工業生産速報値、3月1日に中国2月製造業購買担当者景気指数(PMI)、米国2月製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値、米国2月ISM製造業景況指数、2日に10-12月期法人企業統計調査、米国2月ADP雇用統計、米国地区連銀経済報告(ベージュブック)、3日に中国2月財新サービス部門PMI、米国2月サービス部門PMI改定値、2月ISM非製造業景況指数、4日に1月失業率、米国2月雇用統計などが予定されている。 |
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●ウクライナ情勢を注視するダービス・ベルターンス 2/27
人生にはバスケットボールより重要なこともある。実は、それは数多い。真っ先にあがるのは、生と死だ。だからこそ、新たにダラス・マーベリックスに加わったダービス・ベルターンスは今、バスケットボールよりも多くのことを考えている。 トレードデッドライン(トレード期限)にクリスタプス・ポルジンギスの取引でスペンサー・ディンウィディーとともにマーベリックスがワシントン・ウィザーズから獲得したベルターンスは、ラトビアの出身だ。ラトビアがロシアの支配から完全な独立を勝ち取ったのは、1990年代になってからのことである。 2月25日(日本時間26日)のユタ・ジャズ戦で109-114とマーベリックスが敗れた試合後、ベルターンスは「正直なところ、今はバスケットボールよりも話すべきことがある」と述べた。 「ウクライナで起きていることを見ていても、コートに立てばそれを忘れ、バスケットボールのことを考え、プレイに集中している」。 「でもコートを離れたら、あそこで起きていることばかり気になっている。以前、僕の国はあの立場にあった。だから、あまりに身近なことに感じるんだ。正直に言うと、今はバスケットボールの試合で負けたとしても、もしそれがこの数週間で僕らに起きる最悪のことだというなら、僕らは本当にラッキーだ」。 ベルターンスは「ウクライナの人たちには、本当に強くあってほしい。正直、彼らは僕らバルト諸国やその他の欧州諸国にとっての最前線だからだ」と話している。 「本当にうまくいくことを願っている」。 「その他の世界が彼らをできるだけ助け、彼らがこの事態を乗り越え、ウクライナが自由な国であり続けて、無意味な流血が本当にすぐに終わり、ロシアの占領者が国に帰ることを願っている」。 NBAには欧州出身の選手が大勢おり、その多くが戦時中とはどのようなものかを強く意識している。ユーゴスラビア内戦はそれほど昔のことではないのだ。 ベルターンスは、幸いにも今のところ家族は無事だと明かしている。だが、東欧では誰もがウクライナ情勢を注視している。 「僕は幸いにも近しい人が今のあそこにいない」とベルターンスは述べた。 「でも、あの国はそれほど遠いところではない。僕の知人がいるかもしれない。(もしもそうならば)無事であることを願う」。 「僕の両親は安全だ。ベルギーでプレイしている兄弟たちもね。(土曜に)帰国すると思う。家族のためにすべきこと、避難すべきかどうか、本当に注意深く見守っているところだ」。 母国の友人や家族の話を聞いており、ウクライナについても多くを学んだベルターンスは、「自分が見聞きしてきたすべてから、彼らは本当に誇り高き愛国心のある国だと思う」と言う。 「ウクライナとキエフにとどまった家族もいる。男性はみんな闘っており、一部の女性や子供たちは国を離れた」。 「ほかのヨーロッパ諸国や僕たち(アメリカにいる欧州人)が、この状況でできる限り助けられることを願う。メッセージは『強くあれ』だ。自分たちより大きくて強い国を相手に闘い、素晴らしい仕事をしていると聞いた」。 ベルターンスは「ロシア軍の兵士の大半が、何のために闘っているのか分からないんじゃないか」と、ロシアが何を成し遂げようとしているのか、明確なビジョンはあるのか分からないと言う。 「ウクライナの人たちの強さ、国のために耐えて闘っていく意志を持って乗り越えていくだろうと感じている。本当に、そうなることを願っている」。 |
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●ウクライナの母親から「毎日爆発の音が聞こえる」 2/27
親ロシア派の武装勢力が一部を事実上支配するウクライナ東部の州の出身で東京に暮らす男性のもとには、ふるさとに暮らす母親から爆発音や断水などが相次いでいるという現地の緊迫した状況が伝えられています。 ウクライナ東部のドネツク州出身で東京で暮らすドミトロ・アブラメンコさんは、ロシア軍の侵攻が始まってから毎日数時間おきに実家の母親と連絡をとっているといいます。 故郷の町は親ロシア派の武装勢力が事実上支配している地域から数十キロの場所に位置し、ドネツク州のうちウクライナ政府の統治が及んでいる地域にあります。 ドミトロさんは25日も母親とパソコンでテレビ電話をつなぎ、安否を確認していました。 ドミトロさんの母親は「町の周辺にいろいろな場所からミサイルが来ていて、今のところ毎日爆発の音が聞こえる」と話し、戦闘は激しさを増していると明らかにしました。 給水施設が攻撃を受けたことに言及し「ポンプ場が動かなくなり給水所の水しか使えない。人はパニック状態のままでATMやス―パ―で行列ができている。パンが足りない」と話し、日常生活にも支障が出ているということです。 自宅近くの病院では兵士の受け入れに備えて患者が家に帰されたと話し、医療の提供にも影響が出始めているということです。 そして「生まれた場所で平和に生きていきたい。世界ができるだけさまざまな方法でプ―チンを止めてほしい。ウクライナが独立国家として平和なままであってほしい」と述べ、ロシア軍は一刻も早く攻撃をやめるべきだと疲れた様子で訴えていました。 母親との会話を終えたドミトロさんは「ウクライナ中に友達や親戚がいる。今では全土で戦闘が起こっていて全員が心配だ。私たちは敗者にはならない」と話していました。 |
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●世界が抗議「戦争やめろ」 ウクライナ侵攻後初の週末 2/27
ロシアのウクライナ侵攻後、初の週末を迎えた欧米や日本などで抗議デモが相次ぎ、人々が怒りの声を上げた。「戦争やめろ」「ウクライナと連帯を」。各国で青と黄色のウクライナ国旗を手にした参加者が通りにあふれ、ロシアを非難するプラカードを高く掲げた。 26日、英ロンドンの官庁街はデモ参加者で埋め尽くされた。フランスではパリなど各地で計2万人以上がデモに参加。オーストリアの首都ウィーンでは市民らがウクライナ国旗を身にまとい、「侵略をやめろ」「爆撃をやめろ」と声を合わせた。 米ワシントンのホワイトハウス前には数百人が詰め掛けた。 |
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●渋谷でウクライナ人が戦争反対デモ ロシア人女性も参加 2/27
ウクライナに武力侵攻をするロシアに対して、日本在住のウクライナ人が27日午後、東京・JR渋谷駅前のハチ公広場で抗議するデモを連日実施した。 デモ会場に訪れたウクライナ人のヤロスラブ・ザバツオさん(36)は首都キエフから西に約350キロのリウネの出身だが、その故郷にもミサイルが着弾していると話し「いてもたってもいられず多くの人が集まっていると聞いて渋谷にきた」とつぶやいた。2年前に結婚した妻阿部奈津子さん(35)は「彼のいとこが市民アーミーに所属していて、ときどきいとこからの連絡も途絶えたりして『オレも戦いにいく』といってきかない。なんとか止めているんですが」と震えた声で語った。 ロシアのウクライナへの武力紛争に関するビラを配布していたウクライナ人女性ナタリアさんは日本在住16年目で「私の故郷はキエフから西に200キロのチェルカシーですが、兄はキエフにいる。とても心配です。日本のみなさんは話を聞いてくれて優しい。なんとか戦いをやめてほしい」と道行く人にビラを配り続けていた。 デモに集まった群衆に向けてマイクを握った中にはウクライナ人と仕事場で同僚というロシア人女性も参加し「心を痛めています。ロシア人もこのような争いは求めていない」と声を詰まらせながら心情を吐露した。渋谷では約450人(主催者発表)が平和を訴えた。新宿でも100人以上が集まって声を上げた。 都内の在日ロシア大使館前は約10台の警察車両が道路前に並び、200人前後の警察官が周辺に配置され厳重に警備していた。都内各所で行われているデモ活動などはなく、大使館正門前の道路では警察官が「すべての方にお願いしております」とことわりを入れて身分照会を求めていた。大使館内にはときおりアルファベットのナンバーの車が出入りするだけで、門は閉ざされたままだった。 |
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●在日ウクライナ人やロシア人が参加 軍事侵攻への抗議集会 渋谷 2/27
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で市民を含め多くの死傷者が出る中、東京 渋谷では日本に住むウクライナやロシアの人たちなどが参加する抗議集会が開かれ、「戦争反対」などと声をあげました。 27日東京のJR渋谷駅前で行われた抗議集会には、SNSでの呼びかけなどに応じた日本に住むウクライナやロシアの人たちなどが参加しました。 主催者によりますと、およそ1000人が参加したということで、集まった人たちは「プーチンを止めろ」と日本語や英語で書かれたプラカードや「ウクライナに平和を」と書かれた横断幕を掲げたりしながら「戦争反対」などと声をあげていました。 参加したウクライナ人の女性は「3日前までは想像もしていなかった状況で、ウクライナにいる家族や友人はみんな不安に感じています。日本の人たちも、戦争を止めるためにできることをしてほしいです」と訴えていました。 また、ロシアで生まれ育ち日本国籍を取得した男性は「自分の生まれた国が起こした痛みや苦しみを許すことはできません」と話していました。 集会には多くの日本人も参加し、夫や子どもと参加した42歳の女性は「小さな子どもがいる現地の人たちは、どれだけ不安な思いをしているのだろうと考えてしまいます。一刻も早く平和になることを世界中の人たちが願っていると発信し続けることが大事だと思います」と話していました。 |
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●ロシア ウクライナに軍事侵攻 28日の動き 2/28
ロシアは24日、ウクライナに対する軍事侵攻に踏み切り、ロシア軍とウクライナ軍の戦闘が続いています。ロシア、ウクライナ、アメリカ、そして日本などの28日(日本時間)の動きを随時更新してお伝えします。(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります) ●成田〜ヘルシンキ便 運航停止へ ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けてフィンランドの航空会社「フィンエアー」は、成田空港や関西空港とフィンランドの首都ヘルシンキを結ぶ定期便の運航を28日から1週間停止することになりました。 ●EUがウクライナに初の兵器供与 支援強化決める EU=ヨーロッパ連合は27日、オンラインで外相会議を開いてウクライナへの支援などについて協議しました。会議のあとの記者会見でEUの外相にあたるボレル上級代表は「ウクライナで全面的な戦争が起きている。ウクライナのためにあらゆる支援をしたい」と述べ、5億ユーロ(日本円でおよそ650億円)に上る軍事支援を行うことを明らかにしました。 ●ロシア便の運航を取りやめる動き広がる EUの決定に先立ってドイツやフランスをはじめとする主な加盟国やイギリスなどは独自に飛行禁止に踏み切っていて、これでヨーロッパ各国の足並みがそろうことになります。一方、ロシアもヨーロッパの航空会社を対象に段階的に領空内の飛行を制限しています。このためヨーロッパの航空会社の間ではロシア便の運航を取りやめる動きが広がっています。さらにヨーロッパと日本を含むアジアを結ぶ便は多くがロシアの領空内を飛行することからルートの見直しを迫られる可能性が出ています。このうちエールフランスは27日、ロシアの領空を避ける飛行計画を検討する間、日本や中国、韓国とを結ぶ便の運航を一時、停止すると発表し、アジア便にも影響が出始めています。 ●FIFA ロシアでの国際試合の禁止を発表 FIFAはロシアによるウクライナへの侵攻を受けてロシア国内で予定されていた国際試合の開催をすべて禁止し、代替地となる中立国で観客を入れずに行うとしています。これはFIFAがホームページで明らかにしたものです。また、ロシアとしての試合への参加を認めず、選手は「ロシアサッカー連合」のメンバーとして出場することになるとしています。試合ではロシアの国旗や国歌の使用も禁じるということです。 ●日本時間5:00すぎ 国連総会の緊急特別会合開催を決定 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり、アメリカなどがすべての国連加盟国が参加できる国連総会の緊急特別会合の開催を提案し、安全保障理事会での採決の結果、賛成多数で開催されることが決まりました。緊急特別会合は28日から始まり、アメリカとしては、すべての国連加盟国が参加できる国連総会の場でロシアを非難する決議案の採決を目指していて、ロシアの国際的な孤立を一層際立たせ、圧力を強めたい考えです。 ●ウクライナから国外への避難 36万8000人に UNHCR=国連難民高等弁務官事務所は27日、ロシアによる軍事侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数が、36万8000人に上ると明らかにしました。多くは陸路で隣国のポーランドのほか、ハンガリーやルーマニア、モルドバなどに逃れているということです。 ●IAEA “放射性廃棄物処理施設周辺でミサイル攻撃” ウクライナ情勢をめぐってIAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は声明を発表し、ウクライナ側から27日、首都キエフにある放射性廃棄物処理施設の周辺でミサイルの攻撃があったと報告を受けたことを明らかにしました。ただ、建物に被害はなく、放射性物質が漏れ出ている兆候もないということです。グロッシ事務局長は「戦闘中に放射性物質を保有する施設が被害を受け、人々の健康と環境に深刻な結果をもたらす可能性があるというリスクを浮き彫りにしている」と警鐘を鳴らしたうえで、原子力関連施設を危険にさらす行動をとらないよう強く促しています。グロッシ事務局長は「戦闘中に放射性物質を保有する施設が被害を受け、人々の健康と環境に深刻な結果をもたらす可能性があるというリスクを浮き彫りにしている」と警鐘を鳴らしたうえで、原子力関連施設を危険にさらす行動をとらないよう強く促しています。 ●ドイツで大規模な抗議デモ ドイツの首都ベルリンでは27日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に抗議する大規模なデモが行われました。市内中心部にあるブランデンブルク門周辺には警察の発表で10万人以上が集まり、大通りを埋め尽くしました。集まった人たちはウクライナの人々との連帯を示すため国旗を持ったり、「プーチンを止めろ、戦争を止めろ」などと書かれたプラカードを掲げたりして、直ちに停戦するよう訴えていました。参加した女性は「今起きている戦争に非常に大きなショックを受けています。平和への思いと連帯を示すために来ました」と話していました。 ●ロシアとウクライナ 代表団会談へ ウクライナのゼレンスキー大統領は27日、ウクライナの代表団がロシアの代表団と会談することで合意したと明らかにしました。会談は、ベラルーシ南東部のゴメリ州で開かれるとみられ、ゼレンスキー大統領は前提条件なしで行われるとしています。会談についてゼレンスキー大統領は「この会談で結果が出るとは思わないが交渉してみよう。わずかでも戦争を止めるチャンスがあったのに何もしなかったということがないように」などと述べました。ゼレンスキー大統領が25日、市民の犠牲を防ぐためとして話し合いを求めたのに対し、ロシア側はウクライナの非軍事化・中立化を条件に隣国のベラルーシで会談する用意があるとしていました。会談について、ロシア側の交渉団トップを務めるメジンスキー大統領補佐官は27日、「われわれはいつでも和平交渉に応じる用意がある」と述べました。ロシアによる軍事侵攻が始まってからロシアとウクライナの会談が行われるのは初めてで、ウクライナ各地で激しい戦闘が続く中、停戦につながる交渉が行われるかが焦点です。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐって双方の代表団が会談するのに先立って、27日、ウクライナのクレバ外相は記者会見を行い「話し合いの結果が平和と戦争の終結につながるのであれば歓迎されるべきだ」と述べました。一方で、「ロシアの言い分を聞くために行く。私たちは降伏しないし、わずかな領土も譲ることはない」と譲歩しない姿勢を強調しました。 ●G7外相緊急会合 ロシア軍事侵攻「侵略」と強く非難 ウクライナ情勢をめぐり、G7=主要7か国の外相による緊急会合が、オンライン形式で開かれました。ロシアによる軍事侵攻を「侵略」という表現で改めて強く非難し、制裁を含めた今後の対応などで、引き続き緊密に連携していくことで一致しました。この中では、今回のロシアによるウクライナへの軍事侵攻についてG7として「侵略」という表現を用いて、改めて強く非難しました。そのうえで、戦闘が続く現地の状況について、各国がそれぞれ把握している情報を共有したうえで議論を行い、ロシアへの制裁を含めた今後の対応や、ウクライナと周辺の関係国の支援を進めていくにあたり引き続き緊密に連携していくことで一致しました。 |
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●「核の使用」もチラつかせるプーチンが、米欧に突き付けた「本気の脅迫」 2/28
●「ロシアは最強の核保有国」 ウクライナ侵攻に踏み切り、国営テレビを通じてロシア国民向けに「ウクライナ政府によって虐げられた人々を保護するため、『特別な軍事作戦』を実施することを決定した」と演説し、正当性を訴えたプーチン大統領。同じ演説の中で「ロシアは、ソ連が崩壊したあとも最強の核保有国の一つだ。ロシアへの直接攻撃は、敗北と壊滅的な結果をもたらす」と述べ、核使用をちらつかせて米欧を強く牽制した。 侵攻直前の19日には戦略核兵器を使った「戦略抑止力演習」に踏み切り、相対的に威力の小さい戦術核兵器まで動員しての大規模な演習を実施した。戦略抑止力演習はロシアの訓練年度(12月1日〜翌年11月30日)の終盤に当たる毎年秋に実施しており、2月の実施は異例だ。 演説と核演習を通じて、ロシアと戦うならば核兵器を使うと脅したに等しく、この論法が通るならば、核保有国であれば、国際法違反の軍事侵攻に踏み切るハードルが下がることになる。足並みが乱れ、効果的な対抗策を打ち出せずに来た米欧の迷走ぶりは、力による現状変更の試みを続ける核保有国・中国の習近平国家主席に自信を与え、台湾を武力統一するシミュレーションを深める絶好の機会となった。 ●これまでも「予兆」はあった プーチン大統領の「核大国発言」は今回が初めてではない。 2014年にウクライナのクリミア半島を実効支配した後に「ロシアは最も強力な核大国だ」と発言。翌15年、国営テレビ番組で「クリミアの状況がロシアに不利に展開した場合、核戦力を戦闘準備態勢に置く可能性はあったか」と問われ、「われわれにはそれをする用意があった」と明言した。 4期目に入る大統領選直前の2018年3月には、モスクワのクレムリンで行った年次教書演説で、核弾頭を搭載できる極超音速ミサイル「アバンガルド」の実戦配備を発表し、同ミサイルが米国のフロリダ半島そっくりの地域に落下するCGを上映。潜水艦から発射する長射程ミサイルも紹介して「(西側諸国は)新たな現実を考慮に入れなくてはならず、(新兵器が)コケ威しでないと理解しなくてはならない」と述べた。 ストックホルム国際平和研究所によると、2020年のロシアの国防費は世界第4位の617億ドル。世界トップの米国(7780億ドル)の12分の1でしかない。一方、核兵器の保有数は6255発で、米国の5550発を上回り、世界第1位だ。通常戦力で米国に劣るロシアは、核兵器に依存する戦略を取る。 そのロシアは2020年6月、突然、「核抑止の分野におけるロシア連邦国家政策の基礎」という標題を付けた「ロシア核戦略」の全文を公表した。「ロシアにとって核兵器はもっぱら抑止の手段であり、その使用は極度の必要性に駆られた場合の手段であると見なす」とあり、核兵器の先制不使用をうかがわせた。 しかし、「極度の必要性に駆られた場合」には「国家が存立の危機に瀕した場合」が含まれるとあり、通常戦力で攻撃された場合であっても核兵器で反撃する可能性を残し、結局、先制使用を禁じていない。 これまでロシアが公表してこなかったマル秘中のマル秘である核戦略を全文公表したのは、米国が2018年2月に発表した「核体制の見直し」(NPR)でロシアの核戦略に懸念を示し、潜水艦搭載型の小型核の開発・配備を目指す方針を表明したこと、また実際に2020年2月に潜水艦に搭載する弾道ミサイル(SLBM)に爆発力を抑えた小型核弾頭を実戦配備したと米国が発表したことを受けたとみられる。 「使える核兵器」を配備した米国に対し、ロシアは通常兵器による攻撃であっても「国家が存立の危機に瀕した場合」に該当すると判断すれば、核兵器で報復すると宣言したといえる。 ●ロシア軍による段階的な「脅し」 そして今回、加盟国に模範を示すべき国連安全保障理事会常任理事国であるロシアが国連憲章破りの軍事侵攻という常識外れの行動に出た。 こうした文脈からすれば、ウクライナ侵攻をめぐるプーチン大統領の「核大国発言」や侵攻直前の核演習は、米欧からはプーチン氏の言葉通り、単なるコケ威しにはみえない。ロシアに対する軍事的制裁の放棄を促す結果になった可能性は高い。 侵攻直前に実施された核演習の「戦略抑止力演習」は、「核の三本柱」の戦略核兵器にあたる大陸間弾道ミサイル(=ICBM、戦略ロケット部隊)、戦略ミサイル原潜(=SSBN、海軍北洋艦隊および太平洋艦隊)、長距離戦略爆撃機(航空宇宙軍遠距離航空部隊)が登場した。 今回は戦略核兵器を持たず、戦術核兵器の保有にとどまる南部軍管区と黒海艦隊も参加した。模擬弾頭に付け替えて発射された戦術核兵器は、南部軍管区地上軍の地対地巡航ミサイル「イスカンデル」、黒海艦隊の艦対地巡航ミサイル「カリブル」、北洋艦隊の極超音速ミサイル「ツィルコン」、航空宇宙軍の戦闘機から空中発射された弾道ミサイル「キンジャル」の4種類だ。 ウクライナに接する南部軍管区と黒海艦隊が参加し、フリゲート艦から発射された「カリブル」がクリミア半島の演習場に落下したのをみても、昨年12月のうちにウクライナへ派兵しないことを言明した米国を含む北大西洋条約機構(NATO)に対し、今後ともウクライナに軍隊を送り込まないよう強く牽制したのは明らかだ。 ロシア海軍最強の北洋艦隊が音速の8倍、射程1万キロメートルという極超音速で長射程の最新ミサイル「ツィルコン」をバレンツ海で発射したのは、ロシアに向かう米海軍の艦艇を攻撃できる能力を示し、接近しないよう脅したといえる。 ロシアがNATOに対し、軍事的な圧力を強めてきたのは今年1月からだ。 1月24日にはバルト海でバルト艦隊所属の約20隻が演習を開始、同26日ノルウェー海で北洋艦隊約30隻が演習を開始した。2月2日には北洋艦隊の対潜哨戒機が大西洋上の艦艇と連携した対潜水艦戦訓練を実施し、同3日に航空宇宙軍の爆撃機がバレンツ海、ノルウェー海および大西洋上空を飛行した。 つまり、プーチン大統領がこれ以上、ロシア側へ東方拡大しないよう求めているNATOに対し、通常兵力で脅し、次には核兵器使用をちらつかせてダメ押しをしたのだ。 ●太平洋側でも動きが… ロシアの求める接近阻止は、欧州側に止まらない。 太平洋側でも2月1日から太平洋艦隊の艦艇約20隻が日本海とオホーツク海で演習を実施した。「洋上へのミサイル射撃のため」として、ロシア政府は2月7日から25日まで北海道東方および宗谷海峡東の海域に航行警報を発令、漁船や自衛隊の艦艇に近づかないよう警告した。日本や米国への牽制であり、ウクライナ問題が「対岸の火事」ではないことを示した。 「戦略抑止力演習」では、「核の三本柱」が模擬弾頭に付け替えて発射された。ICBM、SLBM、そして長距離戦略爆撃機から投下された模擬核爆弾は、いずれも極東ロシアのカムチャッカ半島にある射爆撃場に落下している。そのさらに東方にあるのはアメリカ大陸だ。 ロシアは太平洋側でも通常兵力と核兵器で念入りに米国を脅したのだ。 ロシアによる軍事行動は、米国が諜報機関から得た情報を詳細に公表し、かなりの精度で的中した。米欧が早い段階でウクライナ侵攻に対する武力介入を断念したのは、ウクライナがNATO未加盟国であり、共同防衛の責務がないことだけではないだろう。 ロシアによる威嚇が核使用をうかがわせるほど狂気をはらんでいたことも見逃せない。その結果、対抗する手段が経済制裁に限定され、それも小出しにしたことから、プーチン大統領に足元をみられた。 第二次世界大戦後、「もはやない」と各国が信じてきた大国による軍事侵攻が現実となった以上、世界は「核兵器の復権」に目を向けざるを得なくなった。それは長い時間をかけて核軍縮の議論をしてきた各国の努力が水泡に帰すばかりでなく、核廃絶を願ってきた人々の希望を砕き、世界の終わりを呼び込む号砲となるのかも知れない。 逆に「核の脅しには屈しない」という国際世論を高めることができれば、「核の先制不使用」を国際会議のテーブルの上に載せられるのではないだろうか。どちらを選択するのか、わたしたちの運命はわたしたちの手に握られている。 |
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●西側の強力な制裁に…プーチン大統領、核兵器部隊に特任命令 2/28
ロシアのウクライナ侵攻を狙った西側の団結された制裁が強化される状況でロシアのプーチン大統領が27日、自国の核兵器運用部隊に警戒態勢を強化するよう指示した。 ロシア国営タス通信とAP通信など外信によると、プーチン大統領はこの日のテレビ演説で「西側諸国が経済分野でロシアに対し非友好的な行動をするだけでなく、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の高官までロシアに積極的発言をはばからなくなっている。戦略軍に特別戦闘任務態勢に入らせることを国防相と総参謀長に指示した」と話した。彼は続けて「西側の制裁はだれもがよく知っているように違法なもの」と強調した。 ロシア戦略軍は核戦争力を使ってロシアとその同盟国に対する攻撃を防衛する部隊で、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を運用するロシア戦略ロケット軍など核兵器を掌握する部隊を称する。 プーチン大統領のこうした命令は前日に米国がフランス、ドイツ、英国、イタリア、カナダと共同声明を通じてロシアの銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)決済網から排除する強力な経済制裁を発表した後で出てきたものだ。27日に日本の岸田文雄首相も「ロシアのウクライナ侵略は力による一方的な現状変更の試みで国際秩序の根幹を揺るがす行為」としてSWIFT制裁参加を発表し、先進7カ国(G7)首脳の合意がなされた状況だ。 これに先立ちプーチン大統領はウクライナ侵攻直前の演説で「われわれを妨害したりさらにわが国や国民に脅威を加えようとする者はロシアが即刻対応し、その結果はあなたたちが歴史で一度も経験したことのないものになるだろうと知っておかなくてはならない」と警告している。 これと関連してワシントン・ポストは「ウクライナ紛争介入に報復すると話したプーチンが、ロシアが核保有国であるという亡霊を持ち出した」と伝えた。BBCは「この命令はより速く核兵器運用に着手できるようにするという意味だが、それでも使うという意味ではない」と伝えた。西側の強力な制裁に対抗しプーチンの「応戦」ともいえる威力誇示と解釈できるものだ。 この日米国のトーマスグリーンフィールド国連大使はCBSとのインタビューで「プーチン大統領が到底受け入れることはできない方法でこの戦争を拡大し続けることを意味する。われわれは最も強力な方法で彼の行動を防ぎ続けなければならない」と強調した。 一方、この日ウクライナ大統領府はロシア代表団と「条件のない」交渉に応じると明らかにした。大統領府はこの日午後3時ごろ「ベラルーシとの国境地域であるプリピャチ川近くで前提条件なくロシア代表団と会うことに同意した」と伝えた。正確な会談時期は明らかにされていない。ロシア外務省は「今回の会談がウクライナでの軍事作戦を放棄することを意味するものではない」と強調した。 |
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●核兵器準備も指示 失脚に焦るプーチン大統領 ロシア各地“反戦”デモ 2/28
ウクライナに侵攻したロシア軍は、首都キエフや第2の都市ハリコフなどをめぐり、祖国を守るウクライナ軍と激しい攻防戦を続けている。街は破壊され、多数の死傷者が出ている。欧米諸国は、対露制裁として国際決済ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からロシアの一部金融機関を排除すると発表し、日本も続いた。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は27日、国際司法裁判所(ICJ)にロシアを提訴したことと、ロシアと停戦交渉を実施することで合意したと発表した。こうしたなか、「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が失脚危機にある」という分析もある。経済苦境と戦争反対の声、大物退役軍人らの反発とは。産経新聞論説副委員長の佐々木類氏が緊急寄稿した。 「ウクライナは、国際司法裁判所にロシアを提訴しました。ロシアはジェノサイド(大量虐殺)の概念を歪曲(わいきょく)し、侵略戦争を正当化した責任を負わなければならない。私たちは裁判所に、ロシアの軍事行動をやめさせ、来週審理を開くよう要請します」 ゼレンスキー氏は27日、ツイッターでこう発信した。怒りは伝わるが、裁判を開くには、紛争当事国間の合意が必要なため、簡単ではない。 国際法に違反するロシアの全面侵攻から4日目の同日、ロシア軍はハリコフに侵入し、ウクライナ軍と市街戦になった。ウクライナ軍が、ロシア軍をハリコフから撃退したとの情報がある。 ロシア軍はキエフの西側に部隊を集結して封鎖を維持したうえで、工作員を侵入させて破壊活動を行っているという。キエフ近郊の石油貯蔵施設はロシア軍のミサイル攻撃で炎上した。プーチン氏は27日、核抑止力部隊に「高い警戒態勢」を命じた。 停戦交渉はウクライナ側が呼び掛けた。ロシアにも民間人の巻き添えが避けられない本格的な市街戦を避けたいとの考えがあったとみられる。 ただ、ロシアはウクライナの「中立化」と「非軍事化」を条件に掲げ、NATO(北大西洋条約機構)に加盟しない確約を求めるのは確実。プーチン氏に都合のいい「親露派」政権樹立を狙っていると見られるため、交渉の成否は見通せない。 侵略戦争を実行したロシアに対し、国際社会の批判は高まっている。ロシア国内でも、プーチン氏への視線は厳しい。 米国とEU(欧州連合)は26日、これまでの経済制裁に加え、SWIFTからロシアの一部の銀行を排除する追加制裁で合意した。岸田文雄首相も27日、日本の参加を表明した。数日中に発動する。ロシア経済にダメージを与える最も厳しい手段とされる。 ロシアは2014年、ウクライナ南部クリミア半島を併合したが、欧米の制裁で、国内経済は疲弊した。プーチン氏の強権政治も重なり、ロシア国民の不満のマグマだまりとなっているという。 今回のウクライナ侵攻でも、ロシア各地で「反戦デモ」が広がっており、当局に拘束された参加者がこれまでに40以上の都市で計4500人を超えたと、ロシアの人権団体「OVDインフォ」が27日明らかにした。 ノーベル平和賞を受賞したロシア紙「ノーバヤ・ガゼータ」のドミトリー・ムラトフ編集長も、プーチン氏の命令で戦争が始まったことに、「悲しみと恥ずかしさがある」と吐露。ウクライナ人は敵ではないとし「ロシア人の反戦運動だけが地球上の命を救える」と訴えた。 こうしたなか、ウクライナ侵攻前に発表された、ある文書が注目されている。ロシア軍関係の組織「全ロシア将校会議」議長のレオニード・イワショフ退役上級大将による「ロシア大統領と国民に向けたアピール『戦争前夜』」だ。 イワショフ氏は、これまでのロシアがかかわった戦争は、外敵に攻められて仕方なく応戦した戦争(=自衛戦争)だったが、いま目の前で起ころうとしている戦争は人為的で利己的なものであると指摘した。 つまり、ウクライナへの軍事侵攻は、プーチン氏が自らの財産を守り、政権を維持するための私利私欲の戦争でしかないというのだ。 イワショフ氏は「ウクライナに侵攻すれば、ロシアの国家としての存在そのものが危うくなる。ロシア人とウクライナ人を永遠に不倶戴天の敵にするだけでなく、多くの若者が殺され、NATOと直接対峙(たいじ)することになる」と反対している。 刮目するのは、ロシア将校の総意として、プーチン氏に対し、ウクライナ侵攻という犯罪的な政策を放棄し、「大統領の辞任を要求する」と明言したことだ。 ロシアの反体制派の政治家、アレクセイ・ナワリヌイ氏が20年、毒殺されそうになり、ロシア帰国後に収監されたことは記憶に新しい。プーチン政権がそんな恐怖政治を敷くなかでの声明だ。イワショフ氏の身辺が危ぶまれる。 またはその逆で、プーチン氏自身が崖っぷちに立たされている可能性がある。侵攻によってウクライナ側の軍事的反撃と、米国など西側諸国による厳しい経済制裁が待っている。ウクライナを制圧しても、国内の経済的疲弊が加速し、支持率は低下をたどるだろう。 何の成果もなく軍を撤退させればロシア国内での求心力が急激に低下し、プーチン氏自身がナワリヌイ氏の立場に置かれかねない。 ロシアの国力は、14年のクリミア併合を機にピークアウトしている。欧米諸国による経済制裁の結果である。こういうときが一番危ない。手負いのトラが最も危険とされるゆえんだ。 北方領土を不法占拠されている日本にも、いつ何時、危機が派生するか分からないという点で、人ごとではない。台湾をめぐっては中国が虎視眈々と併合する機を伺っている。緊張感を持って国防に当たるしかない。 |
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●プーチン氏、核抑止部隊に「特別警戒」命令 ゼレンスキー氏、交渉に合意 2/28
ロシアによるウクライナ侵攻開始から4日目の27日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、戦略的核抑止部隊に「特別警戒」を命令した。西側諸国がロシアに「非友好的な行動」をとったことを理由にしている。これと前後して、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は同日、ロシアの同盟国ベラルーシとの国境沿いで「前提条件なし」の交渉に応じると発表した。 プーチン大統領は日本時間27日深夜、セルゲイ・ショイグ国防相を含む軍幹部に対して、西側がロシアに「非友好的な行動」をとり、「不当な制裁」を科したとして、核抑止部隊に「特別警戒」を命令した。ロシアの核部隊にとって、「特別警戒」は最高レベルの警戒態勢。 アメリカのリンダ・トマス=グリーンフィールド国連大使は、プーチン氏の発言を受けて直ちに、このような動きは「容認できない」と米CBSニュースに述べた。 「プーチン大統領は依然としてこの戦争のエスカレーションを、まったく容認できない形で続けている。私たちは引き続き彼の行動を、可能な限り強力に制止しなくてはならない」と、大使は述べた。 北大西洋条約機構(NATO)のイエンス・ストルテンベルグ事務総長は、プーチン氏の命令は「危険」で「無責任」だと批判。「もちろん今回のこの発言と、(ロシアが)ウクライナの地上で何をしているかと合わせれば、状況はますます深刻になる。ロシアは独立主権国家に対して、全面侵攻を仕掛けているからだ」と、事務総長は米CNNに述べた。 米ホワイトハウスのジェン・サキ大統領報道官は、「(プーチン氏は)同じことを何度も繰り返している。ロシアがNATOの脅威にさらされていたことは一度もないし、ロシアがウクライナの脅威にさらされていたこともない」と米ABCニュースに話した。「これはプーチン大統領による相変わらずの行動で、私たちはそれに対抗していく」。 「私たちには自衛能力があるが、プーチン大統領が何をしているのか、私たちが指摘する必要もある」とも、サキ氏は述べた。 BBCのゴードン・コレラ安全保障担当編集委員は、「特別警戒」をとることでロシアは核兵器を発射しやすくなるが、いま核を使うつもりがあるというわけではなく、こうして大統領が公言したのはNATOに対するロシア政府としての警告だろうと解説する。 また、プーチン氏が先週すでに「ロシアを妨げようとする者」は「歴史上見たこともないような結果」を見ることになると警告していたと、編集委員は指摘した。プーチン氏のこの発言は、西側諸国がロシアのウクライナ侵攻を妨害するなら、核兵器を使う用意があるという警告だったと、広く受け止められていた。 ロシアの核兵器保有数は世界最多。しかし、仮にロシアが先制核攻撃を仕掛けた場合、ロシアを滅ぼせるだけの核戦力をNATOが持つことは、ロシアも承知しているという。 それだけに、NATO諸国がこれ以上ウクライナを支援しないよう、自分がどこまでやるかつもりなのか、そしてどういうウクライナ支援がやりすぎなのか、不透明感と恐怖を西側諸国に与えることがプーチン氏の狙いだと、コレラ編集委員は解説した。 ●ウクライナ、交渉に合意 プーチン氏のこの発言とほぼ同時に、ウクライナのゼレンスキー大統領はベラルーシ国境沿いで「前提条件なし」の交渉に応じる用意があると発表した。 ゼレンスキー氏は、ロシアの盟友ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領と電話会談。その後、「ウクライナ・ベラルーシ国境で、プリピヤチ川の近くで、前提条件なしに、ウクライナ代表団はロシア代表団と会うと合意した」と発表した。 「アレクサンドル・ルカシェンコは、ウクライナ代表団の移動中、協議中、帰国中、ベラルーシ領内に配備されているすべての飛行機とヘリコプターとミサイルは確実に地上に留まるよう、責任を負うと述べた」と、ゼレンスキー氏は続けた。 ロシア政府は同日、代表団がベラルーシに到着したと発表していた。ベラルーシはロシアの同盟国でウクライナの北に国境を接する。 ウクライナのゼレンスキー大統領は27日朝、自国を攻撃しているベラルーシでの交渉を拒否したと当初明らかにしていた。 日本時間28日未明には、ウクライナの代表団もベラルーシ国境沿いに到着したという。 ●核の警告、まさにNATOが恐れていたこと――フランク・ガードナーBBC安全保障担当編集委員 核抑止部隊を「特別警戒」態勢においたというロシアの発表は、プーチン大統領が西側の対ロ制裁にいかに怒っているかの表れだ。同時に、自分の国はNATOに脅かされているという彼の、消えることのない妄執の表れでもある。 確かにこの動きに西側はハッとなった。こうしたエスカレーションはまさしく、NATOの軍参謀たちが恐れていたことで、だからこそNATOは、侵略者ロシア軍の撃退を手伝うためウクライナに部隊を派遣するようなことはしないと、繰り返し表明していたのだ。 しかし、ロシアの攻撃は必ずしも計画どおりに進んでいない。4日目に入って、まだウクライナのどの都市もロシアの手に落ちていないし、ロシア軍にはかなりの死傷者が出ているようだ。 モスクワの政府はこの事態にかなりいらだち、歯がゆく思っていることだろう。そして、ベラルーシ国境沿いで予定されるウクライナとロシアの話し合いが、両政府が受け入れられる合意をもたらすとは、あまり考えられない。 プーチン氏は、ウクライナが完全にロシアの勢力圏に戻ることを求めている。ゼレンスキー政権は、ウクライナの独立維持を求めている。ウクライナの国土を分割するのでない限り、妥協の余地はあまりない。 それだけに、核の使用をほのめかして西側に「これ以上手出しするな」と警告したのと合わせて、ウクライナでのロシアの攻勢は今後ますます激化するだろう。すでに多く出ている民間人の被害を、ロシアは今まで以上に軽視するに違いない。 ●第2の都市で戦闘 ハルキウ州のオレフ・シネグボウ知事は、ハルキウ市への爆撃が夜通し続いた後、軽量の軍用車両が市内に入ったと明らかにした。知事は、人口140万人の市民に、屋内にとどまるよう呼びかけた。知事は日本時間27日夜には、ソーシャルメディア「テレグラム」に、「ハルキウは完全に我々の管理下に戻った! 軍と警察と防衛隊の働きで、敵を完全に市内から追い出した」と書いた。 市内の救急当局によると、9階建ての高層集合住宅が被弾し、高齢の女性が1人亡くなったものの、地下室に避難していた約60人は無事だったという。 ウクライナの通信当局によると、ロシア軍はハルキウに近い天然ガスパイプラインも爆破したという。 26日には、首都キーウ(キエフ)近郊のヴァシルキウで石油貯蔵所がミサイルで破壊され、大気汚染警報が出された。 キーウでは28日午前8時まで、厳しい外出禁止令が敷かれている。 首都キエフのヴィタリ・クリチコ市長は、ロシア軍はまだ市内に侵入していないものの、ロシアの破壊工作員が市内で活動していると述べた。 北東部オフティルカの地元当局によると、25日にロシア軍の攻撃で、7歳の女の子を含めウクライナ人が少なくとも6人死亡したという。地元当局は、破壊された建物の中には幼稚園と孤児院が含まれていたと主張している。ロシア側はこれを否定している。 ウクライナ政府のオンブズマン、リュドミラ・デニソワ氏によると、ロシアの侵攻でこれまでにウクライナの民間人210人が死亡し、1100人が負傷した。 また、ドミトロ・クレバ外相は、ロシア軍による戦争犯罪が起きていると主張し、国際刑事裁判所(ICC)による捜査を要求した。 ゼレンスキー大統領は、ウクライナ政府としてロシアについてICCに捜査を申し立てたと明らかにした。さらに大統領は、ICC判事たちにがロシアに侵攻停止を命じるよう要求したという。 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、ウクライナでの戦闘でこれまでに少なくとも民間人240人が被害に遭い、64人が死亡している。OHCHRは、死傷者に加えて、住宅や生活に必要なインフラ施設が破壊され、大勢が水や電気を使えない状態にいると明らかにした。 ●ロシアは南部で軍施設を攻撃と ロシア国防省のイーゴル・コナシェンコフ報道官は、南部ヘルソンと南東部の港湾都市ベルディヤンスクを包囲し、ウクライナ軍のインフラ設備にミサイル攻撃を重ねたと述べた。 ヘルソンはその後、ウクライナ軍が奪還している。 コナシェンコフ氏はさらに、ヘニチェスク市と、ヘルソンに近いチョルノバイウカ空軍基地をロシア軍が占拠したとした。 報道官によるとロシア軍は26日、空と海から発射した巡航ミサイルでウクライナの軍事インフラを破壊したという。 ●約37万人が避難 周辺国へ避難する人も相次いでいる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、これまでに36万8000人がウクライナから避難した。 スロヴァキア当局は、26日午前6時までの24時間で、約1万人がウクライナから入国したと発表。これは通常の10倍近い人数という。 ロシアの侵攻開始から3日間で4万3000人以上がルーマニアへ、15万人以上がポーランドに入った。ほかにも国境を接するハンガリーとモルドヴァにも、数千人が避難した。 ●ハルキウで激戦、ウクライナ軍は各地で徹底抗戦=英国防省情報 英国防省は27日、ウクライナの戦況について最新情報を発表。それによると、ロシアの非正規軍とウクライナ軍がキーウで2晩連続で戦ったが、前日に比べると戦闘の勢いは鈍化している。 首都キーウの包囲と孤立を目指すロシア軍は北部チェルニヒウに進んだものの、激しい抵抗に遭ったため、同地域を迂回(うかい)して、キーウへ南下しようとしているという。 東部ハルキウでは激しい戦闘が続き、双方でロケット砲が使用された。 ロシア軍は引き続く複数の軸からウクライナ侵攻を続けているものの、ウクライナ軍はこれに徹底抗戦しているという。 ●キーウへのミサイルを撃墜=ウクライナ外務省 ウクライナ外務省のオレグ・ニコレンコ報道官は、ロシアの同盟国ベラルーシから飛来した戦闘機がキーウへミサイルを発射したものの、ウクライナ空軍がこれを撃墜したとツイートした。 ●ロシア兵4300人死亡=ウクライナ国防次官 ウクライナのハナ・マリヤル国防次官は27日、ロシア軍側の推定被害規模をフェイスブックで公表した。 攻撃開始から3日間の被害推計は今後変わる可能性があるが、現時点ではロシア兵4300人が死亡したという。さらに、ロシア軍用機27機、ヘリコプター26機、戦車146台、装甲車706台、大砲49門、ブーク対空防衛システム1基などを破壊したという。 ウクライナによるこの数字を、BBCは検証できていない。ロシアはこれまで、自軍の死傷者数を公表していない。 ゼレンスキー大統領はこの日、「外国人部隊」を作る意向を示した。複数のソーシャルメディア・アカウントから、「世界中の市民、ウクライナと平和と民主主義の友」に、「ウクライナと欧州と世界の防衛に参加したい人は誰でも、ロシアの戦争犯罪人に対してウクライナ人と共に戦える」と呼びかけた。 ●プーチン氏は特殊部隊に感謝、柔道連盟は地位停止 ロシアのプーチン大統領は27日朝に放送されたテレビ演説で、ロシア軍の特殊部隊が「ロシア人民とこの偉大な母国の名において」、「誓いを忠実に果たし、非の打ちどころない働き」で、「ドンバスの人民共和国」を支援してくれたと感謝した。 一方、プーチン氏が名誉会長を務めていた国際柔道連盟は27日、職務を停止すると発表した。 声明で「国際柔道連盟は、ウクライナで進行中の紛争を考慮し、プーチン氏の連盟における名誉会長および大使としての地位停止を発表する」と表明した。 プーチン氏は柔道で黒帯を保有している。 ●西側の制裁強化 欧州連合(EU)とアメリカ、および同盟諸国は26日(日本時間27日朝)、ロシアの複数銀行を国際決済システム「SWIFT」から切り離すことで合意した。共同声明には、欧州委員会、フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、カナダ、アメリカの首脳が署名した。制裁には、ロシア中央銀行の外貨準備に関する規制も含まれる。日本政府は27日、この制裁に参加すると発表した。 共同声明は、「第一に特定のロシア銀行をSWIFT通信システムから排除する。これによって対象の銀行は国際金融システムから切り離され、世界的に活動する能力が損なわれる」とした。 ロシアは石油と天然ガスの輸出などで、「SWIFT」による決済に大きく依存している。ただし、この措置はロシアと取引のある西側企業にも損害を与えかねない。 SWIFTとは、国際銀行間の送金や決済に利用される安全なネットワーク等を提供する非営利法人「国際銀行間通信協会(SWIFT、本部・ベルギー)」。国境を越えた速やかな決済や送金、資金の支払いなどを可能にする。世界中の1万1000以上の銀行や金融機関の間で、簡便な取引を支援している。 世界中のほとんどの銀行が使う仕組みだけに、SWIFTから切り離されることはロシア経済に強い制裁効果を与えるとみられる。ただし、ロシアと取引する企業にとっても打撃となる。 ロシアの銀行は、経済の要となっている石油・ガスの輸出取引に、SWIFTを活発に利用している。ロシアによる取引は、SWIFTの世界全体の取引の1.5%を占める。 共同声明はさらに、「第二に、我々の制裁の影響力を損なう形で、ロシア中央銀行が外貨準備を活用できないように、制限的措置を実施する」とした。共同声明は続けて、「ウクライナでの戦争とロシア政府の加害行動に便宜を図る人々に対抗して行動する」として、「いわゆる『ゴールデンパスポート』と呼ばれる、市民権販売の規模を縮小するための措置をとる。このゴールデンパスポートは、ロシア政府とつながるロシアの富裕層が、我々の国の国民となり、我々の国の金融システムを活用する手段となっている」とした。 西側のこの発表に対して、ロシア中央銀行は国民による取り付け騒ぎを防ごうと、「ロシア中央銀行は金融の安定性を維持し、金融セクターの業務的連続性を確保するため、必要なリソースと道具を保持している」とコメントを発表した。 ロシア中央銀行の外貨準備は約6300億ドル(約73兆円)。 ●西欧諸国もロシア機飛行禁止に フランス、ベルギー、フィンランド、アイルランドの政府は27日、自分たちもロシア機の領空通過を禁止する方針を明らかにした。いつから開始されるかは明らかになっていない。 フィンランドはロシアと1300キロにわたり国境を接する。フィンランド領空を飛行できないということは、ロシアからの主要な西向きルートは使えないということになる。 これに先立ち、エストニア、ラトヴィア、スロヴェニア、ルーマニア各国は26日、ロシア機の領空通過を禁止すると発表した。 エストニアのカヤ・カラス首相はツイッターで、「侵略国の飛行機が民主国家の空を飛ぶなど認められない」として、他のEU諸国に同様の対応を呼びかけた。 スロヴェニアのヤネス・ヤンシャ首相は、カラス首相のこのツイートを引用し、「スロヴェニアも同じようにする」と書いた。 ラトヴィアのタリス・リンカイツ運輸相もツイッターで、「ラトヴィアはロシア登録の民間機に対して領空を閉鎖する」と書いた。 ロシア登録機はイギリス、ブルガリア、ポーランド、チェコ共和国の領空に入ることもすでに禁止されている。 東欧の大部分を飛行できなくなったロシア機は、大幅な迂回(うかい)を余儀なくされている。 民間機の航路追跡サイト「フライトレーダー24」によると、26日にはモスクワ発ブダペスト行きのアエロフロート機がポーランド上空を避けるルートを飛び、所要時間は通常より75分長くかかった。 一方でロシアは、すでにイギリスの旅客機の領空通過を禁止しているほか、ラトヴィア、リトアニア、エストニア、スロヴェニア、ブルガリア、ポーランド、チェコ共和国に対して、領空通過を禁止した。 |
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●ウクライナ隣国ベラルーシ、ロシアの核兵器の配備可能にする改憲承認 2/28
ウクライナの隣国ベラルーシで27日、憲法改正の是非を問う国民投票が実施され、中央選管によると65.2%の賛成多数で改憲が承認された。核兵器を持たず中立を保つとの現行憲法の条項を削除する内容。複数のロシアの通信社が伝えた。ベラルーシにロシアの核兵器を配備することが可能になる。 ベラルーシではルカシェンコ大統領への抗議デモはしばらく抑え込まれてきたが、今回の国民投票は幾つかの都市でデモを誘発し、人権団体によると少なくとも290人が拘束された。 同氏はロシアのウクライナ侵攻後、一時は仲介役を務めるそぶりも見せたが、その後は姿勢を転換。この日は世論調査の投票所の1カ所で演説し、西側の核保有国がベラルーシ国境に近いポーランドやリトアニアに核兵器を配備するなら、ロシアのプーチン大統領に核兵器を返してくれるよう求めるとの考えを改めて表明した。ベラルーシはソ連崩壊後、国内に配備されていた旧ソ連軍の戦略核をロシアに引き渡している。 西側諸国は既に、国民投票の結果は正統な民意と認めないとの姿勢を明確にしている。 ルカシェンコ氏は強権的手段で国内の反対派を徹底弾圧し、欧米から圧力を受けていることで、ロシア寄りの立場を強めてきた。 |
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●ロシア軍事侵攻 ウクライナ軍各地で抵抗続ける 戦闘一層激化か 2/28
ウクライナでは、軍事侵攻したロシア軍に対し、ウクライナ軍が第2の都市ハリコフなど各地で抵抗を続け、戦闘は一層激しさを増しているものとみられます。 ●ウクライナ第2の都市ハリコフの状況 ロシア軍とウクライナ軍との激しい戦闘が伝えられているハリコフについて、地元の州知事は27日、自身のフェイスブックに「完全に私たちがコントロールしている」などと投稿し、ロシア軍を退けたと主張しています。現地で撮影されたとみられる映像にはロシア軍の軍用車両などが放置されている様子が映っています。 ●ハリコフの日本語学校経営者「街の中でも朝から戦いあった」 激しい戦闘が伝えられているウクライナ第2の都市、ハリコフに住むウクライナ人の男性が現地時間27日午後5時ごろ、NHKのインタビューに日本語で応じました。ボリス・モロズさん(36)はハリコフで日本語学校を経営し、中学生から社会人までの生徒およそ30人に日本語を教えています。ロシア軍とウクライナ軍との戦闘は激しさを増しているということで、モロズさんは「もう4日間続いていて、戦争が始まっていまがいちばんひどい爆撃が続いています。眠るのも難しく夜もミサイルが次々と発射されとても恐ろしい音です。街の中でも朝から戦いがあった」と現地の状況を説明しました。そして、「ロシアはウクライナ軍の関係の所だけ爆撃すると述べていますが、現実はそんなことはないです。街にはあちらこちらにミサイルの一部があります」と話していました。また、ハリコフでの生活については、街中でパンが無料で配られていて、長い行列ができるとしたうえで、「ガスと電気は時々止まりますが、修理してくれる人も街に残っています。食べ物はまだ残っていますが少なくなっています」と話していました。モロズさんはロシアがウクライナに軍事侵攻したあとも、日本語のオンライン授業を続けているということです。モロズさんは、「子どもたちはとても怖がっているので、日本語を教えるだけでなく生徒たちを安心させてみんなが大丈夫かどうか知るために続けています。私はここに生まれた。私の街なので、逃げるつもりはない」と話していました。 ●首都キエフの状況 一方、首都キエフの状況について、クリチコ市長はAP通信のインタビューで、市民を街の外に避難させる計画があるかという問いに対し、「すべての道がふさがれているためできない。今はロシア軍に包囲されている状態だ」と明らかにしました。ただ、このあとクリチコ市長はSNSへの投稿でこうした内容を否定しています。キエフ市内では27日、ワインの空き瓶などを使って火炎瓶を作る市民の姿が見られたほか、ウクライナ議会議員もNHKに対し、ロシアから侵攻を受けた直後にすべての議員に銃が配られたことを明らかにし、抵抗を続ける姿勢を強調しました。ロシア国防省は27日、ウクライナ軍のミサイルなど、これまでに1067の標的を破壊したと発表したほか、ロイター通信はウクライナの保健省の情報としてこれまでに14人の子どもを含む、352人が死亡したと伝え、各地で戦闘は一層激しさを増しているものとみられます。 ●キエフでは火炎瓶を作る市民の姿も ウクライナに軍事侵攻したロシア軍が地方の主要都市で攻勢を強める中、首都キエフの街なかでは27日、ワインの空き瓶などを使って火炎瓶を作る市民の姿が見られました。ウクライナ国防省は、2014年に「領土防衛部隊」を結成し、市民に対して銃など武器の扱い方などの講習を行っていて、非常時には最大12万人が編成される見通しで、軍の指揮下に置かれることになります。また、1月には「国家レジスタンス基本法」が施行され、ロシア軍が侵攻してきた場合、市街戦になることも想定し、国民が一丸となって抵抗するとしています。 ●ウクライナ西部 リビウの状況 ロシアによる軍事侵攻が続く中、ウクライナ西部の都市リビウでは連日、ふだんは別の仕事をしている予備役などの人が軍に参加する手続きのために、軍の施設に集まっています。27日も、さまざまな職業の男性たち、およそ30人が手続きを待っていました。このうち30歳のプログラマーの男性は「戦争は恐ろしいものだが、誰かに攻め込まれたら撃退しなければならない」と話していました。また、34歳の自動車エンジニアの男性は、「戦闘となればもちろん人間として怖い。ただ、国を守るためには命じられたことをやるのみだ」と話していました。一方、リビウの教会では前線にいる兵士の助けとなるよう支援物資を募っています。ミサの最中にも市民がひっきりなしに食料品や医薬品などを届けに来ていて、教会の一角にはチェーンソーや車のバッテリー、それにマットレスなどさまざまなものが積まれていました。物資を届けた52歳の女性は「私は今は働いておらず、こうした形でしか貢献できないが、戦う同胞たちを支えたい」と話していました。また、ウクライナ内外で募金を集め、医薬品などを購入して提供しているという33歳の男性は「海外から支援が集まるのは世界がこれ以上の事態の悪化を望んでいないからだと思う」と話し、海外からの支援に感謝していました。そして教会の神父は「お年寄りも若者もできるかぎりのことをしようと物資を持ってきてくれる。みんなが国を守るヒーローだ」と、市民一丸となっての協力に目を潤ませていました。 ●アメリカ国防総省 “ロシア軍は主要な都市は制圧できていない” アメリカ国防総省の高官は27日、記者団に対し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の状況について、これまでのところロシア軍は主要な都市は制圧できていないとの認識を示しました。この高官はその理由についてウクライナ側から激しい抵抗を受けていることに加え、燃料などの不足に直面していると指摘しました。また、ウクライナ側は現在も防空システムや航空機を使用できており、ウクライナの制空権をめぐる攻防は続いているとしました。また、首都キエフについてはロシア軍が市街地からおよそ30キロの位置に引き続きいるとしたうえで、偵察部隊の一部がキエフ市内に入り、小規模な戦闘が起きているということです。さらにロシア軍は、これまでに320発以上の短距離弾道ミサイルなどを発射したということです。この高官は、ロシア軍がウクライナ国内に投入する戦力を増やしているものの、今も国境周辺に展開する戦闘部隊の3分の1の戦力を投入せずに維持しているとして警戒感を示しました。 |
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●ウクライナ大統領「今後24時間が正念場」 2/28
●日本時間2月28日08:40(ロンドン27日23:40) ウクライナ大統領「今後24時間が正念場」 ロシア軍のウクライナ侵攻をめぐり、英国のジョンソン首相は27日夜、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話協議した。英首相官邸の発表によると、ゼレンスキー氏は「今後24時間がウクライナの正念場となる」と述べたという。ジョンソン氏は、ウクライナの主権に対する英国の「揺るぎない支持」を改めて強調し、英国を含めた国際社会からの防衛支援がウクライナに届くよう「やれることを全てやる」と伝えたという。ウクライナでは、首都キエフ周辺や北東部にある第2の都市ハリコフなど各地で戦闘が続いている。ハリコフでは市街戦が起きていると伝えられている。 ●日本時間2月28日05:10(ニューヨーク27日15:10) 40年ぶりに国連総会緊急特別会合へ ウクライナ危機をめぐり、193カ国が加盟する国連総会で、緊急特別会合が開催されることになった。安全保障理事会が27日、総会での会合を求める決議案を賛成多数で採択した。緊急特別会合が安保理の要請によって開かれるのは、40年ぶりとなる。この安保理決議は常任理事国にも拒否権は行使できない。賛成は11カ国。ロシアが反対し、中国、インド、アラブ首長国連邦(UAE)は前回のロシア非難決議案と同様に棄権した。総会緊急特別会合は、安保理が意見を一致させられず、その責務である国際の平和と安全の維持が困難になった際に開かれる。開催の条件は、安保理か、国連加盟国の半数が要請することとなっている。開催は要請から「24時間以内」と定められ、28日の予定だ。この仕組みは1950年、朝鮮戦争をめぐってソ連が拒否権を行使したことを受けてつくられた。仕組みを定めた国連総会決議は「平和のための結集決議」と呼ばれる。緊急特別会合は56年以降、10の議題について開かれ、安保理が要請したものとしては、82年に開かれたのが最後だった。 ●日本時間2月28日04:10(パリ27日20:10) フランスが安保理決議案を提出へ ロシアの侵攻を受けているウクライナをめぐり、フランスは28日の国連安全保障理事会で、現地での人道支援活動が保障されるよう求める決議案を提出することを決めた。27日、フランス大統領府が明らかにした。ウクライナに残され、緊急支援を必要とする人々へのアクセスが確保されるよう要求するという。フランス大統領府は同日、マクロン大統領がウクライナのゼレンスキー大統領に同日夕に電話し、近況を確認したこともあきらかにした。 |
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●ASEAN、ウクライナ情勢「深い懸念」 ロシア名指しせず 2/28
東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国であるカンボジア政府は27日、ロシアによるウクライナへの侵攻について「武力闘争に深い懸念」を表明し、すべての当事者に自制を呼びかけ、対話を通じた平和的解決を求める声明を発表した。 声明は26日付でASEAN各国の外相名義。ロシアを名指しで批判していない。ベトナムなどロシアと関係が深い加盟国があるため、表現に配慮したとみられる。ASEANの各国外務省はウクライナ情勢を巡り、平和的解決を促す声明をそれぞれ発表していたが、ASEAN全体としての声明の公表は遅れていた。 2021年2月のクーデターで全権を掌握したミャンマー国軍はロシアを支持する声明を出している。「ロシアは世界に対し強国であることを示した」(国軍報道官)と主張している。 |
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●G7緊急外相会合 日本も「ロシアのSWIFT排除」など伝え各国が歓迎 2/28
ウクライナ情勢をめぐるG7=主要7か国の外相による緊急電話会合が開かれ、林外務大臣は日本もG7各国と足並みを揃えプーチン大統領の資産凍結など新たな制裁措置を決めたと伝えました。 昨夜11時過ぎからおよそ2時間にわたり行われたG7外相による緊急電話会合で、林外務大臣はロシアによるウクライナ侵略をあらためて強く非難した上で、日本も欧米各国に続いてロシアの特定の銀行を国際的な決済ネットワーク「SWIFT」から排除すること、さらにプーチン大統領らの資産凍結でも足並みを揃える事を伝え、各国から強く歓迎されたという事です。 会合の後半にはウクライナのクレバ外相も参加。ロシアとの戦況や和平交渉の模索など、最新の情報を共有したものと見られます。 |
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●IAEA、ウクライナ情勢巡り2日に臨時会合開催へ 2/28
国際原子力機関(IAEA)は3月2日に理事会の臨時会合を開き、ウクライナ情勢について協議する。ロシアの侵攻で戦闘が続くウクライナには、稼働中の原子力発電所4基のほか、事故が起きたチェルノブイリ原発を含め複数の核廃棄物処理施設がある。 外交筋によると、理事会メンバーのカナダとポーランドがウクライナから要請を受け、会合開催を求めた。 ある外交筋は、ウクライナ情勢による安全面や安全保障への影響が議題になると述べた。 |
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●ドイツ、連邦軍強化へ13兆円 ウクライナ情勢「世界は転換点に」 2/28
ドイツのショルツ首相は27日、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて急きょ開いた連邦議会で演説し、国防費を増額すると発表した。2022年予算から緊急で1千億ユーロ(約13兆円)を連邦軍の装備強化などに充てる。さらに、国内総生産(GDP)比1・5%ほどにとどまる国防費を、今後は毎年2%以上に引き上げる。 ショルツ氏は、ロシアによるウクライナ侵攻で「世界は転換点にいる」とし、「自由と民主主義を守るには、国防に大きく投資する必要がある」と述べた。22年予算から特別につくる基金1千億ユーロは、戦闘機や軍艦、兵の装備に投資し、連邦軍を強化する意向だ。 |
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●中国はロシアのウクライナ侵攻非難を=米ホワイトハウス 2/28
米ホワイトハウスのサキ報道官は27日、MSNBCのインタビューで、ロシアのウクライナ侵攻を非難するよう中国に求めた。 サキ氏は、中国は米国とその同盟国がロシアに科した制裁の一部を履行し、先週にはウクライナの主権を支持する発言をしたと語った。 しかし、中国政府にさらなる行動を求め、「傍観している時ではない。(ロシアの)プーチン大統領とロシアが主権国家を侵略していることを声高に非難すべき時だ」と述べた。 また、バイデン大統領が中国の習近平国家主席とこのところ電話会談を行っていないとし、今後行われる可能性を否定しなかった。 |
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●G7、ベラルーシにも制裁 侵攻に協力「強く非難」―外相会合 2/28
先進7カ国(G7)は27日、オンラインで緊急の外相会合を開き、ロシアのウクライナ侵攻に協力しているとして、ベラルーシに制裁を発動することで一致した。議長国ドイツが会合終了後、声明を発表した。会合にはウクライナのクレバ外相も参加した。 声明は「G7外相は、ベラルーシの協力を受けて行われているロシアのウクライナに対する攻撃に強い非難を表明した」と強調。制裁の標的にはベラルーシも含まれるとした上で、「ロシアが戦争をやめなければ一段の措置を取る」と警告した。 |
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●ブラジル大統領「中立維持」、ロシアのウクライナ侵攻巡り 2/28
ブラジルのボルソナロ大統領は27日、ロシアによるウクライナ侵攻を巡りブラジルは中立の立場を取ると述べた。 ボルソナロ氏は会見で「われわれはどちらの側にもつかず、中立を保ち、可能な限り協力する」と説明した。 プーチン氏の行動を非難するかとの問いに対して、最終報告を待ち、事態がどのように解決するかを確認してから意見を述べると語った。その上で、ブラジルに悪影響を及ぼすような制裁には反対だと述べた。 |
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●ウクライナ「降伏も1インチの領土放棄もない」 ロシアと直接協議へ 2/28
ロシア軍の侵攻でウクライナ各地に広がった武力衝突をめぐり、両国が27日、直接協議する場を持つことで合意した。事実上の降伏を求めるロシアに対し、ウクライナ側は「降伏することも、1インチの領土も放棄することもない」との立場を示している。協議の明確なテーマも明らかでなく、事態打開の糸口が見つかるかどうかは見通せない。 協議は、ロシアを支援するベラルーシとウクライナとの国境地帯の検問施設で開く予定で、日時や出席者の顔ぶれなどは発表されていない。米CNNは、ウクライナ当局者の話として、協議は現地時間の28日朝に行われると伝えた。 |
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●ウラジーミル・プーチンの戦争、一体どこでやめるのか? 2/28
ロシア大統領が正当な理由なしに隣国への攻撃を開始した。灰色の雲が重く垂れ込めた2月24日の早朝に始まった頃には、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が命じたウクライナへの猛攻撃は、吐き気を覚えるような必然性を帯びていた。だが、この戦争をめぐっては、避けられないことなど何一つなかった。これは完全にプーチン氏が作り出した紛争だ。これからもたらされる戦いと苦難の過程で、ウクライナ人とロシア人の血が大量に流れることになる。そしてその血の一滴一滴がプーチン氏の手を染めていく。 ●明らかになるプーチン大統領の野望 この数カ月、プーチン氏が隠遁生活を送り、およそ19万人のロシア兵をウクライナ国境地帯に結集させている間は、この男は何を望んでいるのか、というのが疑問だった。 それが戦争だったことが判明した今、問題は、一体どこでやめるのかということだ。 侵攻前夜の話を聞く限り、プーチン氏は、手段を選ばず、どこまでもやる男だと世界に思わせたがっているようだ。 2月21日に録画し、同じスラブ人に向けて巡航ミサイルの第一波を発射した頃に公開した戦争演説で、西側という「嘘の帝国」を罵倒した。 保有している核兵器について誇らしげに語りながら、自分の邪魔をする国はどこであろうと「叩き潰す」と言い切った。 当初の報道は、未確認のものも含め、プーチン氏の野望の大きさを強調するばかりだった。 土壇場での外交活動の対象となったドネツクとルガンスクというウクライナ東部の2州――そこにはロシアが後ろ盾になっている小さな飛び地がある――を制すれば満足するとの観測もあった。 だが、そうした見方は、ロシアによる広い範囲への攻撃の前に瓦解した。 報道によれば、ロシアの地上部隊は東部の国境を越えてウクライナ第2の都市ハリコフに向かっている。 南部のクリミアから侵入した部隊はヘルソンを、ウクライナの北の隣国ベラルーシから侵入した部隊は首都キエフを目指している。 どれほどの戦力を動かしているかは不明だ。ただ、英米の諜報報告でずっと主張されていたように、プーチン氏はウクライナ全土を手中に収めたがっているようだ。 行動に出ることで、同氏は政治的なリスクと利益を推し量る普段の計算を退けた。 その代わり、自分には歴史との約束がある、これは運命なのだという危険な妄想に駆り立てられている。 ●NATOへの異常な執着 仮にプーチン氏がウクライナ領の大部分を奪取することになっても、国境線で止まって和睦することが見込めないのは、そのためだ。 旧ソビエト連邦の一部だった北大西洋条約機構(NATO)加盟国に攻め入ることは、少なくとも当初はないかもしれない。 だが、勝利で慢心したプーチン氏はこれらの国を、紛争までには至らないサイバー攻撃や情報戦の標的に据えるだろう。 プーチン氏は今後、そうやってNATOを脅かしていく。なぜなら、NATOがロシアやその国民を脅かしていると考えるに至ったからだ。 同氏は2月下旬の演説で、NATOの東方拡大に怒りを露わにした。 その後、西側がウクライナで「ジェノサイド(集団虐殺)」を支援しているとの話をでっち上げ、激しく非難した。 プーチン氏としては、ロシア国民に対して、自由を手に入れたウクライナの同胞をロシア軍が攻撃していると言うわけにはいかない。 そのため、ロシアは米国やNATO、そしてその代理勢力と戦争をしていると話している。 忌まわしい真実は、プーチン氏が隣の主権国家を正当な理由なく攻撃し始めた、ということだ。 大統領は、ロシアの西に存在する防衛同盟に取りつかれている。そして、21世紀の平和を下支えしている原則を踏みにじっている。 世界がプーチン氏に対し、今回の攻撃について大きな代償を払わせなければならないのはそのためだ。 ●厳しい制裁と防衛体制強化を これはロシアの金融システムとハイテク産業、そして裕福なエリートに対する大規模な懲罰的制裁から始まる。 侵攻の直前、ロシアが2つの共和国を承認した際、西側は軽微な制裁しか科さなかった。今度はためらってはならない。 ロシアは要塞経済の構築に乗り出したものの、まだ世界とつながっている。そしてロシアの株式市場が当初45%下落したことが示唆するように、制裁は同国を苦しめる。 確かに、制裁は西側にも痛みをもたらす。 侵攻を受けて原油価格は急騰し、1バレル100ドルを突破した。欧州にとってロシアは天然ガスの主要供給国だ。ロシアはニッケルやパラジウムといった金属を輸出しており、ウクライナと同様に小麦も輸出している。 世界経済がインフレとサプライチェーン(供給網)の混乱に苦しんでいる時期だけに、これらはいずれも問題を引き起こすだろう。 だが、裏を返せば、西側が制裁発動の痛みを負う用意ができているという事実は、今回の侵略行為を西側が非常に懸念しているとのメッセージをプーチン氏に送ることになる。 2つ目の課題は、NATOの東側の側面を強化することだ。 NATOはこれまで、1997年にロシアと交わした協定の範囲内で活動しようとしてきた。旧ソ連圏におけるNATOの活動を制限する内容だ。 NATOはこの基本文書を破棄し、それによって得られる自由を行使して東方に部隊を駐留させるべきだ。 これには時間がかかる。その間は、NATOは4万人強の即応部隊を前線に立つ加盟国に直ちに派遣することにより、その結束と意図を示すべきだ。 これらの兵力は、いずれかの加盟国への攻撃は全加盟国への攻撃だというNATOの原則の信頼性を高めることになる。 またプーチン氏に対しても、ウクライナに深く攻め込むほどその国境におけるNATOのプレゼンスが強まり、プーチン氏の狙いとは正反対の展開になる可能性が高まるだけだというシグナルを送る。 ●世界でウクライナを支援 そして世界はウクライナが自国と自国民を守ることに手を貸すべきだ。 ウクライナ国民はこれから重荷を背負うことになる。戦争が始まって数時間もたたないうちに、兵士と民間人の双方で死者が出たと報じられた。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は国民に、抵抗するよう呼びかけた。 もしプーチン氏がウクライナに傀儡政権を樹立するようなことになったら、ウクライナ国民はプーチン氏とその軍隊、代理勢力をいかにして、かつどこで追い払うかを決めなければならない。 NATOは目先、ウクライナに部隊を派遣しない。核兵器を保有する大国同士の対決に発展しかねないことを考えれば、これは当然の方針だ。 だが、NATO加盟国はウクライナを支援するべきだ。兵器や資金を送ることに加え、難民や、必要なら亡命政権に受け入れ場所を提供すべきだろう。 プーチン氏は現実との接点を失っているし、事態をエスカレートさせたり、計算ミスを犯したり、中国に抱きついたりしかねないため、こうした形で同氏を刺激するのはリスクが大きすぎると言う人もいるだろう。 だが、それ自体が計算ミスだ。 22年間も国のトップに君臨すれば、たとえ自分の運命に対する感覚が発達しすぎた独裁者であっても、生き残るための能力や権力の盛衰を嗅ぎ取る力は持っている。 何もないところから発生した危機に釈然としない多くのロシア国民は、ウクライナの同胞に対して悲惨な戦争を仕掛けることに熱心でないかもしれない。 西側がつけ入る隙はここにある。 ●宥和は危険 感じよく振る舞うようになることを期待してプーチン氏に便宜を図ることは、もっと危険だ。 中国でさえ、国境を越えて暴れまくる人物は中国の求める安定を脅かす存在であることを理解するはずだ。 今日の進軍が自由であればあるほど、自分のビジョンを明日押しつけようとするプーチン氏の決意が強まる。 そして、ついに同氏の動きを阻止する時に流される血の量も多くなる。 |
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●ウクライナ軍事侵攻で米ロ対立はどこまで行くか 2/28
「ロシア側から戦争をしかけることはない」 2月2日、ミハイル・ガルージン駐日ロシア大使は筆者の目の前で、はっきりとこう述べた。その口調に淀みはなく、自信に満ちあふれていた。 その明快な語り口から、その頃特定の専門家が指摘していた通り、ロシアはウクライナに軍事侵攻しない可能性があるとの思いを抱いたほどである。 しかし3週間ほど経った2月24日、ロシアはウクライナに軍事侵攻する。大使の「戦争をしかけることはない」との言説はどこにいったのか。 ガルージン氏はロシアの外交使節団の最上級にいる特命全権大使であり、ロシアという国家を背負っている人物である。 ロシアがウクライナに侵攻したことで、国家が嘘をついたと解釈されてもおかしくない。 そして同大使は2月25日午後2時過ぎ、日本外国特派員協会の会見に現れて、軍事行動についての言い訳をする。 「(ウクライナの東部紛争地域に住む)親ロシア派の住民に対するジェノサイド(集団殺害)を防ぐため」 2月2日に「戦争をしかけることはない」と言明した時に比べると、同大使の目は虚ろだった。自己矛盾に陥ったと思えるほどで、こうも述べた。 「市民を守るためであり、ウクライナを占領する意図はない」と言った後、「ロシアはウクライナの市民に対しては一切、軍事行動を起こしていない。軍事施設を攻撃しているだけだ」と発言した。 大使として母国を擁護する立場にあることは理解できるが、一方的にウクライナに軍事侵攻した軍事行動は許されざる行為である。 ウクライナ保健省が2月26日に発表した今回のロシア侵攻による同国の死亡者数は198人にのぼる。 そして同日午後4時から、同じ日本外国特派員協会で今度は赴任して間もないラーム・エマニュエル駐日米国大使が登壇した。 辛辣なロシア批判は2時間前のガルージン大使へのカウンターパンチとでも言える内容だった。 「ロシアがとった過去36時間の軍事行動は許すことができない。ロシア政府が何を言おうとも、今回の侵攻を正当化することはできない」 「国際法を違反し、ウクライナの主権、そして基本的な人間の尊厳を侵害する犯罪行為だ」 さらに早口でこう捲したてた。 「プーチン大統領は世界を脅迫しました。同大統領の言葉を引用すると、『ロシアは最強の核保有国の一つであり、仮に我が国に直接攻撃をしかけてくるところがあれば、いかなる侵略者も敗北し、不幸な結果を招くことになる』」 米露両国の駐日大使が同じ場所で数時間の間隔をあけて真っ向から対立したのである。言説はロシア側に矛盾があることは明らかだろう。 ただここで考えなくてはいけないのは局面の打開策であり、ロシアに対する制裁がどこまで効力を持つかということである。 制裁について端的に述べると、残念ながら「機能しない」と考えた方がいいかと思う。 ホワイトハウスは過去5カ月以上、ロシアによるウクライナ侵攻を阻止するため、何百時間もの議論を重ね、経済制裁を練り上げてきた。 ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライに対する制裁をはじめ、ロシアの主要銀行5行への制裁などが公表されたが、米政府内ではすでにその効力についての懐疑論が出ているという。 ジョー・バイデン大統領が2021年、ウクライナに米軍を派遣しないと述べた時点から、米国にはロシアの侵攻を実質的に阻止することは難しいとの見方が広がっていた。 その背景にはもちろん、過去のイラクやアフガニスタンでの軍事的失敗がある。 軍事的な過ちを繰り返さないために経済制裁が比較的容易に米政府内で議論されるようになったが、実質的な効力は弱いのが現実だ。 ドナルド・トランプ政権の元国務副長官だったスティーブン・ビーガン氏は「制裁という外交ツールはもう飽きられた」とさえ述べる。 つまり、制裁を発動することで、ある種のインパクトを与えることはできても、相手国の行動を阻止し、変容させることはほとんどできなくなっているというのだ。 今回のウクライナ問題でも、制裁の第1弾でプーチン大統領の行動を制限させることはできなかった。 むしろ、制裁発動後からロシアによるミサイル攻撃があり、キエフへの攻撃も行われた。 取材をしていく中で気づかされたのは、ロシアを経済的に締め上げることはかなり困難な作業であるということだ。 核武装しているロシアは軍事的な大国であるというだけでなく、世界第1位の小麦輸出国であり、世界第3位の原油と石炭の輸出国としての経済力を保持している。 さらに国連安保理の常任理事国の一国であることから、拒否権を発動する権利をもつ。 日本時間2月26日に安保理は、ロシア軍のウクライナからの即時撤退などを求める決議案をだした。 だが当事国ロシアが拒否権を発動したことで、即時撤退を求める決議案は否決される。 近年、国際政治の中で発動される制裁は不確実性が高まっている。 2014年のクリミア侵攻後の米欧の制裁はロシア全体としては中程度の打撃にしかなっていない。ロシアは中国や中東諸国で新たな投資先や市場も見出してさえいる。 2021年、ロシア経済の成長率は4.3%と報告されている。ロシアの農業は過去10年間、活況を呈しているし、輸出のドル箱である原油と天然ガスは世界市場で高騰している。 こうした状況下で、米国を含めたNATO(北大西洋条約機構)はどうすべきなのか。 バイデン政権は直接的な軍事介入は紛争拡大のリスクが高いために踏み込まない。 米マサチューセッツ州にあるストーンヒル大学国際関係学部のアナ・オハンヤン教授は、今回の危機を脱するためには新しい考え方が必要になると述べる。 「経済制裁に依存するだけではクレムリンの行動を大きく変えることはできない」 「NATOとロシアの間で集団安全保障条約における制度的協力体制を整えたり、新たな外交戦略が必要になるかもしれない」 軍事行動の代わりに制裁を課しても機能しないことが分かれば、新たな領域を開拓しながら、様々ことを模索していく必要が生じる。 だが今回のウクライナ紛争の落とし所はまだ見えていない。 |
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●ロシア ウクライナに軍事侵攻 戦況は 2/28
●ロシア軍はどこまで侵攻しているのか? アメリカのシンクタンクが公開した地図です。赤い部分はロシア軍が掌握したとされる地域です。ロシア国防省は27日、ウクライナ軍のミサイルなど、これまでに1067の標的を破壊したと発表しています。また、アメリカの衛星会社「マクサー・テクノロジーズ」が27日午前に撮影した写真には、首都キエフに向かうロシア軍の車列が写っています。撮影された場所は、キエフから北におよそ60キロの地点で、戦車など数百台が5キロ以上連なり、ロシア軍が圧力を強めていることがうかがえます。 ●どこで戦闘が行われているのか? 東部ドネツク州では広い地域で激しい攻撃が続いていて、26日にはロシア軍の砲撃で市民19人が死亡したと州の知事が明らかにしました。第2の都市で北東部にあるハリコフ州と隣接するスムイ州でも、複数の地域でロシア軍との戦闘が起きていると州政府が伝えています。州政府によると、州の南部では25日、幼稚園などがロシア軍の攻撃を受けて、子ども1人を含む、民間人6人が死亡したということです。 ●ロシア軍は侵攻した先でどんなことをしているのか? ロシア軍は、ウクライナの南部、北部、東部にある地方都市で攻撃を行ったり、一部の施設の占拠を続けたりしています。このうち、クリミア半島に近い南部の都市ノバ・カホフカでは、ロシア軍が水力発電所を占拠しています。ノバ・カホフカの市長によると、ロシア軍はウクライナへの侵攻を開始した24日に発電所に侵入し、占拠を始めたということです。ロシア軍は、水力発電所のほか、クリミア半島につながる水路に関わる建物も押さえるなど、ロシアが一方的に併合しているクリミア半島への管理を強める一環とみられます。 ●ウクライナ軍の抵抗は? ハリコフ州では、ロシア軍とウクライナ軍との激しい戦闘が伝えられていて、州知事は27日、自身のフェイスブックに「完全に私たちがコントロールしている」などと投稿し、ロシア軍を退けたと主張しています。現地で撮影されたとみられる映像には、ロシア軍の軍用車両などが放置されている様子が映っています。 ●首都キエフはどんな状況なのか? 首都キエフの状況についてクリチコ市長は、AP通信のインタビューで、市民を街の外に避難させる計画があるかという質問に対し「すべての道がふさがれているため、できない。今はロシア軍に包囲されている状態だ」と明らかにしました。ただ、このあとクリチコ市長はSNSへの投稿でこうした内容を否定しています。一方、キエフ市内で27日、ワインの空き瓶などを使って火炎瓶を作る市民の姿が見られたほか、ウクライナ議会の議員もNHKに対し、侵攻を受けた直後にすべての議員に銃が配られたことを明らかにした上で「これまで一度も銃を使ったことはないが、ロシア軍に私たちの街は渡さない」と話しました。 ●戦況についてアメリカはどう分析しているのか? アメリカ国防総省の高官は27日、記者団に対し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の状況について、これまでのところロシア軍は主要な都市を制圧できていないとの認識を示しました。高官はその理由について、ウクライナ側から激しい抵抗を受けていることに加え、燃料などの不足に直面していると指摘しました。また、ウクライナ側は現在も防空システムや航空機を使用できており、ウクライナの制空権をめぐる攻防は続いているとしました。また、首都キエフについては、ロシア軍が市街地からおよそ30キロの位置にいるとした上で、偵察部隊の一部が市内に入り、小規模な戦闘が起きているということです。 ●ウクライナ側にはどのくらいの被害が出ているのか? ロイター通信はウクライナ保健省の情報として、これまでに14人の子どもを含む352人が死亡したと伝えています。また、国連の機関によりますと、数百の民間住宅が被害を受けたほか、砲撃によって複数の橋や道路が破壊され、一部の地域では停電や断水が起きているということです。 ●ロシア軍砲撃で6歳女児死亡 ウクライナ東部 AP通信 AP通信が配信した映像によりますと、ウクライナ東部ドネツク州のマリウポリでは27日、ロシア軍の砲撃で重傷を負った6歳の女の子が病院に緊急搬送されました。救急車の中では、医療従事者が懸命に女の子に心臓マッサージを行い、母親はその様子を泣きながら見守っています。その後、女の子は、ストレッチャーに乗せられて病院内に運び込まれ、蘇生措置が行われましたが、亡くなりました。蘇生措置を行っていた医師の1人は「この状況をプーチンに見せろ!」とカメラに向かって叫び、強い憤りを表していました。また、女の子が亡くなったのを受けて、医療従事者の中には、涙をこらえきれずに泣きだす人もいました。この病院では、女の子の父親も集中治療室に運ばれ、治療を受けているということです。 ●どれくらいの人たちが避難しているのか? 国連の機関は27日、ウクライナから国外に避難した人の数が、少なくとも36万8000人に上ると明らかにしました。実際、ポーランドとの国境に近い、ウクライナ西部の都市リビウを取材すると、国内のほかの地域から列車などで逃れてきた人たちが集まっていました。「25日に空爆があり、3時間シェルターで過ごしました。いつ攻撃されるか分からないストレスに耐えられず避難してきました。列車はすし詰め状態の混雑でした」(キエフからリビウに到着したカップル)「こんなことになるとは思いませんでした。プーチンは恐ろしい男で、私たちが帰る町が占領されてなくなってしまうのではと心配しています」(家族と一緒に隣国ポーランドを目指すという33歳の母親) ●ロシアとウクライナの交渉は? ウクライナのゼレンスキー大統領は27日、ウクライナの代表団がロシアの代表団と会談することで合意したと明らかにしました。双方による会談は、軍事侵攻後、初めてです。会談についてロシア国営のタス通信は、関係者の話として、現地時間の28日午前、ベラルーシ東南部にあり、ウクライナと国境を接するゴメリ州で行われる見通しだと伝えました。ウクライナ側は、前提条件なしで行われると主張しているのに対し、ロシア側はウクライナの非軍事化・中立化を条件としていて、双方の主張が対立する中、会談が停戦につながるかは不透明な情勢です。 ●ロシアの軍事侵攻に世界は? 軍事侵攻をめぐって、アメリカなどがすべての国連加盟国が参加できる国連総会の緊急特別会合の開催を提案し、27日午後に行われた採決では、常任理事国は拒否権を行使できず、理事国15か国のうち11か国が賛成し、緊急特別会合が開催されることになりました。ロシアは反対し、中国、インド、UAE=アラブ首長国連邦は棄権しました。国連総会の緊急特別会合は28日から始まり、アメリカとしては、すべての国連加盟国が参加できる国連総会の場でロシアを非難する決議案の採決を目指していて、ロシアの国際的な孤立をいっそう際立たせ、圧力を強めたい考えです。 |
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●ロシアはなぜウクライナに侵攻したのか?背景は? 2/28
ロシアはなぜウクライナの軍事侵攻に踏み切ったのか?その背景を、ロシアの外交・安全保障の専門家などに詳しく聞くと、2つのキーワードが浮かびあがってきました。 1「同じルーツを持つ国」 2「NATOの”東方拡大”」 そもそもから、わかりやすく解説します。 ●“同じルーツを持つ国”とはどういうことなの? それを知るカギは、30年前のソビエト崩壊という歴史的な出来事にさかのぼる必要があります。もともと30年前まで、ロシアもウクライナもソビエトという国を構成する15の共和国の1つでした。ソビエト崩壊後、15の構成国は、それぞれ独立して新たな国家としての歩みを始めました。これらの国では新しい国旗や国歌が制定されました。ソビエト崩壊から30年たっても、ロシアは同じ国だったという意識があり、とりわけウクライナへの意識は、特別なものがあると言われています。 ●ロシアはウクライナをどうみているの? ロシアの外交・安全保障政策に詳しい笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員は、ロシアとウクライナの関係を考えるうえでは、さらに歴史をさかのぼる必要があると指摘しています。8世紀末から13世紀にかけて、今のウクライナやロシアなどにまたがる地域に「キエフ公国=キエフ・ルーシ」と呼ばれる国家がありました。その中心的な都市だったのが、今のウクライナの首都キエフでした。こうした歴史から、同じソビエトを構成した国のなかでも、ロシアはウクライナに対して特に“同じルーツを持つ国”という意識を強く持っていていると指摘しています。 ●プーチン大統領は? 旧ソビエト時代から長年にわたってロシアを取材してきたNHKの石川一洋解説委員は、プーチン大統領はウクライナを“兄弟国家”と呼び、「強い執着」があると指摘しています。実際、プーチン大統領は去年7月に発表した論文の中でロシアとウクライナ人は同じ民族ということを述べています。プーチン大統領はいまだに旧ソビエト時代の意識から脱却できていないようだと分析しています。 ●ウクライナはロシアをどうみているの? 一方、ウクライナはそうした“兄弟意識”はなくなったと、石川解説委員は指摘しています。ソビエトが崩壊してこの30年間で、当初はあいまいだったウクライナ国民という意識がつくりあげられたということです。ただ、ウクライナ側にも少し複雑な事情を抱えています。ロシアと隣接するウクライナ東部はロシア語を話す住民が多く暮らしていて、ロシアとは歴史的なつながりが深い地域です。一方で、ウクライナ西部は、かつてオーストリア・ハンガリー帝国に帰属し、宗教もカトリックの影響が残っていて、ロシアからの独立志向が強い地域です。つまり同じ国でも東西はまるで分断されている状況となっています。 ●ロシアはウクライナにどんな行動をとってきた? “同じルーツを持つ国”と位置づけるウクライナに対して、プーチン政権はこれまでも、東部のロシア系住民を通じて、その影響力を及ぼそうとしてきました。それはウクライナの大統領選挙にも及び、2004年のウクライナ大統領選挙では、プーチン大統領が2度も現地に乗り込み、東部を支持基盤にロシア寄りの政策を掲げた候補をあからさまに応援しました。そして、2014年に欧米寄りの政権が誕生すると、プーチン大統領はロシア系の住民が多く、戦略的な要衝でもあったウクライナ南部のクリミアにひそかに軍の特殊部隊などを派遣。軍事力も利用して一方的に併合してしまいました。 ●NATOの“東方拡大”とはどういうこと? もう1つのカギになるのが「NATO」=北大西洋条約機構の“東方拡大”です。「NATO」は、もともと東西冷戦時代にソビエトに対抗するために、アメリカなどがつくった軍事同盟です。畔蒜主任研究員によりますと、ソビエトが崩壊すると、NATOはもともと共産主義圏だった国々に民主主義を拡大する、いわば政治的な役割も担うようになりました。当時、東欧諸国などの多くが、経済的に豊かだった民主主義陣営に入ることを望んでいて、その入り口となったNATOへの加盟を望む国が相次いだといいます。実際、1999年にポーランドやチェコ、それにハンガリーが正式に加盟。また、2004年にバルト3国などが加盟しました。こうした動きを“東方拡大”と呼びます。また、ウクライナやモルドバ、ジョージアでも欧米寄りの政権が誕生し、NATOに接近する姿勢を示しています。 ●NATOの“東方拡大”をロシアはどうみている? 畔蒜主任研究員によりますと、ロシアはこれまで、西側から陸上を通って攻め込まれてきた歴史があるため、安全保障の観点から、東欧諸国を“緩衝地帯”だと考える意識が強いようです。そのため、NATOの“東方拡大”に強い抵抗感があり、東欧諸国がNATOに加盟することも、東欧諸国に軍事施設を設けることを嫌がるのだといいます。一方で、ソビエト崩壊後しばらくは、ロシアは感情的に好ましいとは思ってはいなかったものの、否定や反対は明確に表明していなかったそうです。転機となったのが、2006年に旧ソビエト時代の債務を完済し、翌年・2007年にドイツのミュンヘンでの演説でプーチン大統領がNATOの東方拡大について初めて公の場で批判したことだといいます。その後、ジョージアやウクライナのNATO加盟の動きについても、強くけん制しています。プーチン大統領は、最近でもNATOの東方拡大について「約束違反だ」と厳しく批判しています。 ●プーチン大統領が「約束違反だ」と主張する根拠は? プーチン大統領が指摘する「約束」について、畔蒜主任研究員は1990年代に、当時のアメリカの国務長官とソビエトのゴルバチョフ書記長との間で交わされたとされる“口約束”を指しているといいます。プーチン大統領の主張では、1990年に東西ドイツが統一する際、東ドイツに駐留していたおよそ10万人のソビエト軍を撤退させるために、アメリカのベーカー国務長官がゴルバチョフ書記長にNATOを東に拡大しないという趣旨の約束をしたといいます。ただ、口頭での約束で文書は残っておらず、本当にそのようなやりとりがあったのかどうか諸説あるということです。畔蒜主任研究員は今回の軍事侵攻の背景には、プーチン大統領が、NATOへの加盟を希望するウクライナの政権を“同じルーツを持つ国”に誕生したアメリカ寄りの“かいらい政権”と捉えていることや、NATOのこれ以上の“東方拡大”を容認できないとする安全保障観が影響しているものと分析しています。 |
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●ゼレンスキー・ウクライナ大統領との電話会談 2/28
●ゼレンスキー大統領との電話会談について ただ今、ウクライナ、ゼレンスキー大統領と電話会談を行いました。その中で、日本はウクライナと共に在ること、ロシアの侵略による犠牲者への心からのお悔やみ、そしてウクライナの主権と領土的一体性に対する確固たる支持、こうしたものを伝えました。我が国は主権と領土、そして祖国と家族を守ろうと懸命に行動するウクライナの国民と共に在ります。また、ゼレンスキー大統領に対して、既に表明した1億ドル規模の借款に加え、困難に直面するウクライナの人々に対する人道支援として1億ドルの緊急人道支援を行うことを伝えました。昨日も申し上げたとおり、国際秩序の根幹を守り抜くため国際社会と結束して、我が国としても毅然(きぜん)と行動してまいります。そうした観点から、昨日申し上げた措置に加え、次の措置を採ります。日本も参加した欧米諸国の共同声明にある取組として、更に国際社会におけるロシアへの金融制裁の実効性を高めるため、今般、ロシア中央銀行との取引を制限する制裁措置を採ることを決定いたしました。ベラルーシに対する制裁については、今回の侵略に対するベラルーシの明白な関与に鑑み、ルカシェンコ大統領を始めとする個人、団体への制裁措置や輸出管理措置等を講じていきます。これらの我が国の取組に対し、ゼレンスキー大統領から高い評価と感謝の意が表明されました。また、今般、ウクライナにおける情勢の緊迫化を受け、本28日、ウクライナ国境に近いポーランド、ジェシュフ市に臨時の連絡事務所を開設することを決定いたしました。今般、キエフの在ウクライナ大使館及びウクライナ西部のリヴィウ市に設置した臨時の連絡事務所と連携し、在留邦人の安全確保及びウクライナからポーランドへ陸路で退避してくる邦人の受入れに万全を期してまいります。ウクライナの皆さんとの連帯の意思を更に強固にするため、帰国に不安を抱く在留ウクライナ人の方々の在留の延長を可能とする措置を採ることといたします。加えて、後ほど午前1時15分から、バイデン大統領が主催し、米国の同盟国及びパートナーが参加するウクライナ情勢に関する首脳電話会議に参加し、ロシアへの制裁を含む今後の対応やウクライナ及び周辺諸国への支援等について議論を行う予定です。今後も我が国として、G7を始めとする国際社会と連携しながら、引き続き適切に対応してまいります。 ●邦人の退避に協力するウクライナ周辺国などへの支援についての検討及び電話会談での言及の有無について 今後の情勢をしっかりと確認していきたいと思います。今、申し上げたとおり、我が国として、我が国の在留邦人を守り、そして安全に退避するために全力を注いでまいります。その際に既にポーランドには国境における受入れなど、協力をお願いしているわけですが、今後、状況に応じて周辺国の協力もお願いしなければならないと思っています。御質問はそういった国への支援を考えないかということでありますが、そういった点についても、それは適切に必要であれば、しっかりと対応していきたいと考えます。 ●電話会談における、ロシアとウクライナの停戦交渉についての言及及びウクライナの情勢についてのゼレンスキー大統領からの説明の有無について 先ほどの会議において、ゼレンスキー大統領の方からは現下のウクライナの情勢、また、ウクライナの政府の対応、こうしたことについて説明はありました。しかし、詳細については、外交のやり取りでありますので、控えさせていただきます。 ●トヨタ自動車の取引先がサイバー攻撃を受け、明日、国内の全工場の稼働を停止するとの報道があることについて、政府の把握状況、ロシアなどとの関係性についての考え及び経済安全保障法案の早期成立の重要性の認識について まず、御指摘の点については、報道、承知しています。そして、政府としてもその点について実態を確認させているという状況であります。ですからロシアとの関係等についても、それはしっかり確認した上でなければお答えすることは難しいと思っています。それから経済安保法案の必要性ですが、要するに今回の件との関係については今回の件の実態を明らかにしないと、これはなんとも申し上げられないと思います。言うまでもなく、経済安全保障法案、これは重要な法律であると認識しています。 ●午前1時15分から行われる首脳電話会議において、どのような議論をしたいかについて 先ほど紹介した、午前1時15分から開催される首脳会談ですが、米国の主催によって、米国の呼び掛けを受けて参加する会議であります。出席者は米国の同盟国及びパートナーということでありますが、その会議の中で、ロシアへの制裁を含む今後の対応やウクライナ及び周辺諸国への支援等について議論を行うという予定であるということは承知しております。それ以上はとりあえず参加してどんなやり取りがあるのか、それを確認してからでないと、ちょっと申し上げることは難しい状況です。 ●電話会談における、ゼレンスキー大統領からの新たな支援や日本の対応への要望の有無について 具体的に今申し上げたこと以上のことについて要請があったということはなかったと思います。いずれにしろ、引き続き日本に対してウクライナに対する様々な協力や支援をお願いしたいという意向は表明されておられました。 ●ゼレンスキー大統領の言葉を聞いた感想及び個人的に交わした言葉の有無について ゼレンスキー大統領、正に大変な困難の中にあり、我が身の危険にも直面している中での電話会談でありました。その真剣な姿勢については、感じたところです。それ以上詳細については申し訳ありませんが控えます。 |
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●「プーチンならやる」ジャーナリストも危惧する「小型核爆弾で北海道恫喝」 2/28
「外部からの邪魔を試みようとする者は誰であれ、歴史上で類を見ないほど大きな結果に直面するだろう」 ロシアが核兵器を使用することも辞さないとも取れるプーチン大統領のこの発言が、世界中を震撼させている。 第二次世界大戦終了後、核が戦争に使用されたことはないが、今回のウクライナ侵攻で、ついにその “切り札” が使われてしまうのだろうか。 チェチェン紛争での従軍経験があるジャーナリストの常岡浩介氏は、「ロシアなら十分にありうる」と断言する。 「たしかに、ICBMなどの大型核兵器は、プーチン自身が『使ったら勝者はいないだろう』と語っているように、撃ち合いになった場合に被害が甚大すぎるため、現実的には使用不可能な兵器です。しかし、小型核兵器であれば、実戦でも使用される可能性は十分にあると思っています」 プーチンが使う可能性のあるという小型核兵器とは、どのようなものなのだろうか。 「1999年のチェチェン紛争の際に、ロシアがテロ組織の拠点に使用することを想定した小型核兵器の開発を進めていることが明らかになりました。その小型核兵器が使用されたことはまだありませんが、もうすでにロシアはそれを持っているはずです。先のプーチン大統領の発言もあり、使わないという保証はどこにもないと思いますね」(常岡氏) 常岡氏は、この脅威はけっして他人事ではない、と強調する。 「ロシアが北方領土の独立を敢行し、“北方領土人民共和国” を作り、治安維持のため、ロシア本国から軍隊を派遣する、というようなシナリオすらも、本気で考えておかなければいけないと思います」 北方領土でロシアとの戦闘が始まった場合、標的となるのは、もちろん北海道だ。 「2016年、メドベージェフ前首相は、北方領土の基地を拡大し、択捉島にS300Vという巨大地対空ミサイルの基地を造りました。そこには、最新型の戦車なども配備されています。しかも、日本にとっての脅威は北方領土だけではありません。カムチャツカ半島には、核兵器を積んだ原子力潜水艦の基地もあるんです。今すぐ侵攻を仕掛けることはないでしょうが、そのための拠点はすでに持っています。日本にも、今回のウクライナと同様に核の脅威が向けられ、それをもとにロシアが強硬な交渉に打って出る日は、いつか必ず来ると思ったほうがいいでしょう」(常岡氏) |
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●ウクライナ情勢を読み解く 「9条で日本を守れるのか?」 2/28
●「経済制裁」でも蚊帳の外にいた日本 ウクライナ情勢は、この一週間で大きく変わった。 あるロシア専門家は筆者に「30年以上、ロシアを研究してきたが、これほどのショックと無力感はない」と肩を落としていた。 時系列を追えば、2月21日、「米ロ首脳会談に双方が原則合意」と報じられて一安心と思ったら、翌22日「ウクライナ親ロシア派地域 “国家として承認” プーチン大統領」となった。 これは、外交的解決の唯一の頼みであった「ミンスク合意」の前提条件が根本から破られたことを意味し、その後、24日のロシアの軍事侵攻「“ウクライナを攻撃開始” ロシアの複数の国営通信社が伝える」まで事態は一気に進んだ。 ロシアに対し、欧米諸国は「最大限の制裁を課す」としてきたが、NATOやアメリカは当初から軍隊の派遣を行わないと明言していた。ロシアは他国による軍事的なカウンターをおそれず、ウクライナからの反撃のみを警戒すればよかった。 日本は、欧米が軍事介入しない以上、経済制裁のみ欧米と協調すればいいとの立場だが、はっきりいって蚊帳の外にいた。 2月27日日曜日の朝8時少し前、ロシアの大手銀行などを国際的な資金決済網(SWIFT)から排除する追加の金融制裁で合意したというニュースが入ってきた。SWIFTからの排除は「金融核兵器」とも言われる最強力な制裁措置なので、筆者は思わず「キタ」とツイートした。この措置により、ロシアの今後5年間の破綻確率は2割程度まで高くなっている。 ホワイトハウスのサイトをみると、たしかに金融制裁に合意した共同声明がある。だがよくよくこの声明を読むと、合意したのは米英独仏伊加の6ヵ国と欧州委員会であって、日本が抜けていることがわかる。 まさかと思っていたら、その27日の朝8時からのNHK日曜討論において、林外務大臣が8時40分頃、「金融市場への影響などを注視しながら対応していく」と発言した。やはり日本は蚊帳の外だったのだ。 ●安倍元首相の「核シェアリング」発言 筆者は、これまで日米間においてバイデン発言の日本への事前連絡がないことや日米首脳会談が対面で行われないことに懸念を持っていたので、やはり日本は蚊帳の外だったのかと落胆した。 日曜の夜になって、ようやく日本も追随することを発表した。ホントにやることが遅い政権だ。 この日の朝には、7時30分からのフジテレビの『日曜報道』に安倍元首相が出演しており、こちらも目が離せなかった。安倍さんの発言で注目すべきは、安全保障のために「核共有」(=核シェアリング)の議論をすべきだという点だった。 一方、護憲派は、「9条で日本を守れるのか?」という根本的な疑問が噴出していることに危機感を持っている。 志位共産党委員長は、「憲法9条をウクライナ問題と関係させて論ずるならば、仮にプーチン氏のようなリーダーが選ばれても、他国への侵略ができないようにするための条項が、憲法9条なのです。」としたが、松井維新代表は「志位さん、共産党はこれまで9条で他国から侵略されないと仰ってたのでは?」と応じた。ネット上では、「9条で日本を守れる」といった護憲派のかつての発言がやり玉にあがっている。護憲派は都合が悪くなると、ゴールを変えてはいないか。 筆者の中では、安全保障のために何をすべきか、とっくに答えは出ている。 本コラムでも、2015年7月20日付本コラム「集団的自衛権巡る愚論に終止符を打つ! 戦争を防ぐための「平和の五要件」を教えよう」において、戦争確率を減らすために、(1) 同盟関係をもつこと (2) 相対的な軍事力 (3) 民主主義の程度 (4) 経済的依存関係 (5) 国際的組織加入が重要であり、それぞれについて戦争確率をどの程度減らすのかを定量的に論じている。(1)と(2)はリアリストの立場、(3)(4)(5)はリベラリストの立場であり、ともに一理あることを定量的に分析したものだ。 今回のウクライナの事例で考えると、相手国が国連常任理事国であると、国連が機能しないことなどから(4)と(5)は意味がなくなる。 ●憲法改正をする必要はない そこで、(1) 同盟 (2) 相対的な軍事力 (3) 相手の民主主義の程度が重要になってくる。残念だが、自国で9条のような憲法規定があることはさしたる意味を持たない。9条の趣旨は、第一次大戦後の不戦条約に起源があるが、同条はその後の戦争回避に役立たなかったというのは、有名な史実だ。 ウクライナの場合、(1) 同盟なし (2) ロシアに比べて劣る軍事力 (3) ロシアの民主度は低い(英エコノミスト誌による2021年の民主主義指数は3.24。世界167ヵ国中124位)から、起こるべくして起こったともいえる。 他のヨーロッパ諸国の場合、NATO加盟国なら、(1) 同盟あり (2) 自国軍事力が弱い場合でもNATO軍の補完で、安全保障を確保している。 特に、(1)に付随して(2)を高めるために、「核シェアリング」がNATOで行われていると、2017年9月11日付け本コラム「北朝鮮危機回避の最後の外交手段?「核シェアリング」とは何か」で紹介したことがある。 核シェアリングは核保有ではないが、アメリカが核を提供し、核基地を受け入れ国で共同運用するもので、いわば核のレンタルである。 具体的には、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコで行われている。それぞれの国で、クライネ・ブローゲル空軍基地(ベルギー)、ビューヒェル空軍基地(ドイツ)、アヴィアーノ空軍基地(イタリア)、ゲーディ空軍基地(イタリア)、フォルケル空軍基地(オランダ)、インジルリク空軍基地(トルコ)で、戦術核兵器が持ちこれている。 今の日本を考えると、(1) 日米同盟あり (2) 中国・ロシアに比べると劣る軍事力 (3) 中国・ロシアの民主度は低い(前述したものでみると、中国の民主主義指数は2.21、世界67ヶ国中148位)なので、(1) を除くと、ウクライナと大きな違いはない。 台湾で見ると、(1) 明示的な同盟なし(戦略的曖昧) (2) 中国に比べると劣る軍事力 (3) 中国の民主度は低いなので、ウクライナと似たような状況だ。台湾が有事になれば、尖閣も巻き込まれるので日本の有事でもある。 なお、私見では、日本で核シェアリングを実施するためには、憲法改正ではなく、非核3原則の一つ(持ち込ませず)を見直せばいいと基本的に考えている。非核三原則の見直しで法改正は不要で政府見解の変更のみでいい。 護憲派のいう9条堅持のみと、リアリストの核シェアリングでは、安全保障論としては天と地の差がある。いずれにしても、内容とともに手順論についても夏の参院選に向けて大いに議論してもらいたいものだ。 安保法制の議論の時にも、抑止力を持つと戦争のリスクが高まると言う人がいたが、根本的に間違っている。過去の戦争データ実証から定量的に戦争リスクは低下する。このあたりを是非とも議論してほしい。 |
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●岸田首相 ウクライナ大統領と電話会談 2/28
岸田総理大臣は今夜ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行いました。ウクライナ政府や国民と連帯し、できる限りの支援を行うとともにアメリカなどと連携しながらロシアに対し、厳しい姿勢で臨んでいく方針を伝えたものとみられます。 岸田総理大臣は28日午後7時すぎからウクライナのゼレンスキー大統領と、ロシアによる軍事侵攻のあと初めてとなる電話会談を行いました。 会談の詳しい内容は明らかになっていませんが、岸田総理大臣は、困難に直面するウクライナ政府や国民と連帯し、できる限りの支援を行うとして、先に表明した1億ドル規模の円借款に加え、1億ドルの人道支援を行う方針を伝えたものとみられます。 また、ロシアによる侵略はウクライナの主権と領土の一体性を侵害する重大な国際法違反であり断じて容認できないとする日本の立場を改めて表明したものとみられます。 そして、ロシアのプーチン大統領らの資産凍結を決定したほか、国際的な決済ネットワークからロシアの特定の銀行を締め出す措置に日本も加わることを説明しアメリカやヨーロッパなどと連携しながらロシアに対し厳しい姿勢で臨んでいく方針を伝えたものとみられます。 |
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●SWIFT影響「見通し困難」…週明け金融市場はウクライナ情勢で左右 2/28
●米利上げへ影響も 週明けの金融市場は、引き続きウクライナ情勢に左右される展開になりそうだ。ロシアの銀行の国際決済網「SWIFT」からの排除による影響も懸念される。市場の動揺は、利上げに向かう米連邦準備制度理事会(FRB)の政策運営にも影響しそうだ。 「どこまでロシアビジネスに影響が出るのか、金融市場がどう反応するか、見通すのは難しい」。証券関係者は27日、対露経済制裁の切り札とみられてきたSWIFTからのロシアの銀行排除が現実となったことに警戒感をにじませた。 ウクライナ情勢の緊迫化を受け、世界の金融市場では2月中旬以降、資金を投資リスクのある株式から安全資産とみなされている国債や円に退避させる動きが拡大した。日経平均株価(225種)は17日から5営業日連続で下落し、24日にはロシアのウクライナ侵攻開始を受けて一時、2万5700円台まで下がった。 海外市場でも、米ダウ平均株価が16日からの5営業日で計1800ドル超下がり、ロシアとの経済関係が強い英独仏の指標も軒並み下落した。25日は値下がりした銘柄を買い戻す動きなどから世界的に相場は上昇したが、ウクライナ情勢次第で不安定な値動きは続きそうだ。 FRBは、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを決める考えを示している。FOMCメンバーである米クリーブランド連銀のロレッタ・メスター総裁は24日の講演で、利上げ方針を堅持しつつ、「ウクライナ情勢は、利上げペースを考える上での重要な材料だ」と述べた。市場では「(22年中に3回とする)年間の利上げ回数が、想定より減る可能性がある」(大手証券)との見方もある。 原油や穀物の価格高騰でインフレ(物価上昇)圧力が一段と強まり、FRBの利上げは避けられない情勢だ。ただ、金融引き締めを急げば、コロナ禍から回復する米経済に水を差し、金融市場の混乱を招く恐れもある。 ●市場の動き 識者に聞く ●原油高止まり続く…東海東京調査センターシニアストラテジスト 中村貴司氏 ロシアは原油や天然ガスの世界有数の産出国で、「SWIFT」からの排除で決済が滞れば、供給が不安定になる可能性がある。原油は、コロナ禍からの景気回復に伴う世界的な需要急増に供給が追いついていない。産油国は脱炭素の流れで増産に慎重だ。原油価格は、今年半ばまでは1バレル=85〜110ドルで高止まりが続くだろう。 ●株2万7000円台遠く…ニッセイ基礎研究所上席研究員 井出真吾氏 ロシアのウクライナ侵攻で世界的に広がったリスク回避の動きはいったん落ち着いたが、「SWIFT」からの一部ロシア銀の排除による貿易決済などの停滞懸念から、週明けの株式市場は再び下落に転じる可能性もある。ロシア事業を手掛ける日本企業への悪影響は避けられず、日経平均株価は2万7000円台の回復が遠のいた。 ●円安・ドル高基調に…野村証券チーフ為替ストラテジスト 後藤祐二朗氏 対露経済制裁をはじめ、ウクライナを巡る市場の取引材料が出尽くせば、投資家の関心は再び米欧の金融政策の正常化に向き、為替相場は円安・ドル高基調に戻るだろう。FRBの3月利上げはほぼ決定的だ。大規模な金融緩和を続ける日本銀行との対比で、日米の金利差拡大がより一層意識され、6月末には1ドル=117円台も視野に入る。 |
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●不安定、ウクライナ情勢と米引き締めへの警戒が継続=今週の東京株式市場 2/28
今週の東京株式市場は不安定な展開が予想される。ウクライナを巡る地政学リスクの高まりに加え、3月米連邦公開市場委員会(FOMC)が近づく中で、米金融引き締め加速への警戒感も、相場のかく乱要因として改めて意識されそうだ。 日経平均の予想レンジは2万5900─2万6900円。 ウクライナを巡っては、欧米などがロシアの一部銀行を国際銀行間の送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除することで合意し、市場では、世界経済への影響を見極めたいムードが高まっている。ウクライナ国内での戦闘状況のほか、各国による制裁の動きが流動的で、関連報道次第では相場が動意づきかねない。加えて、米金融引き締めへの警戒感もくすぶっている。 ウクライナのゼレンスキー大統領は27日、ロシア側交渉団との協議をベラルーシ国境で前提条件なしで行うと明らかにしており「進展があればある程度の買い戻しは早そう」(国内証券)とみられるが「対ロ制裁の経済影響の先行きが見通せないと、さらに買い上がるのは難しいのではないか」(別の国内証券)という。 金融市場にとって地政学リスクは、短期的なインパクトにとどまるのが通例とされるが、今回のウクライナを巡るリスクの高まりは、各国中銀が金融引き締めに向かう局面で生じており、そのことが事態を複雑にしている。 株式市場にとって、地政学リスクは米金融政策にポジティブとネガティブの両側面からの影響が警戒されている。ネガティブな側面は、原油など資源価格の上昇が促されてインフレ高進を招き、金融引き締めが加速しかねないとの見立てだ。 WTI原油先物は節目の1バレルあたり100ドルを一時上回った後、いったん伸び悩んだが、ロシアの一部銀行のSWIFTからの排除が伝わる中、再び上昇圧力が強まっている。「ロシアの侵攻が継続する間は、原油価格の上昇圧力はくすぶり続ける」(同)との見方は多い。 一方、地政学リスクが世界経済に与える影響を米連邦準備理事会(FRB)が考慮し、引き締めペースが緩やかになれば株価にポジティブとの思惑もある。 |
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●株価 小幅な値上がり ウクライナ情勢をめぐって売り買い交錯 2/28
週明けの28日の東京株式市場は、ウクライナ情勢をめぐって売り買いが交錯し、株価は小幅な値上がりとなりました。 日経平均株価、28日の終値は先週末より50円32銭高い、2万6526円82銭。東証株価指数=トピックスは、10.69上がって1886.93。1日の出来高は14億4822万株でした。 市場関係者は「SWIFTと呼ばれる国際的な決済ネットワークから、ロシアの特定の銀行を締め出す経済制裁が実施されれば、ロシアから天然ガスや原油の供給が滞るのではないかという懸念が広がり、売り注文が増える場面もあった。一方、ロシアとウクライナの代表団が会談する見通しとなり、情勢の悪化に歯止めがかかるのではないかという見方から、買い注文も入った」と話しています。 |
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●ロシア「ウクライナ侵攻」のウラで…“神様”バフェットがひっそり仕込む 2/28
●バフェットは石油へ 「ウクライナは単なる隣国ではない。我々自身の歴史、文化、精神的空間の切り離しがたい一部なのだ」 2月21日、ロシアのプーチン大統領は高らかにこう謳い上げて、ウクライナ東部で親ロシア派武装勢力が一方的に独立を宣言した「ルガンスク人民共和国」と「ドネツク人民共和国」の独立を承認した。 両地域の「要請」を受けて、ロシアは「平和維持」を名目に軍隊を派遣することを決定。米欧はこれに強く反発し、対抗措置を取ることを決定した。(編集部追記:24日にロシアが侵攻を開始、27日23時ごろ、ウクライナ大統領府が同国とベラルーシとの国境でロシアとの対話を行うと発表したとの報道あり) だが、今回のウクライナの問題は今年に入って突然、緊張が高まったわけではない。すでに昨年春頃からロシアがウクライナ国境付近に軍隊を集結し始めていた。 少なくとも'36年まで大統領の座に君臨し続けることのできる“皇帝”プーチン大統領にとってウクライナ併合は悲願の一つだ。 権力を保持し続けるためには、ロシア国民に目に見える成果をもたらすことが必要で、それがロシア側から見れば「同じスラブ民族」であり、旧ソ連第2位の人口を誇るウクライナの併合なのである。 '14年のクリミア併合も含め、プーチン大統領のロシアは昔も今もウクライナを狙っている。それがロシアと欧米の全面的な武力衝突に向かうかどうかは、なお予断を許さない。 こうした危機の高まりに対し、マネーの流れに敏感な世界の大金持ちたちは動き始めている。彼らは自分たちの資産がどれだけ莫大であろうと、1ドルたりとも損をしないよう対処する。ウクライナ危機に先んじて、すでに資産防衛の動きを活発にしているのだ。 たとえば米国の著名投資家であるウォーレン・バフェット氏は、すでに昨年から資産の組み換えに動いている。同氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイは昨年10月から12月にかけて、米石油大手、シェブロンの株を3割も買い増した。 同社は「スーパーメジャー」と呼ばれる国際石油メジャーの一角。ウクライナ事変で世界最大の原油・天然ガス輸出国の一つであるロシアからの輸出が少なくなれば、当然、原油価格は高騰していく。原油の値段が高くなれば、米国の石油企業の儲けはどんどん大きくなるという理屈だ。 シェブロンはコロナによる業績低迷から劇的に復活していて、'21年12月期の通期利益は156億ドル(約1・8兆円)となった。前期55億ドル(約6300億円)の赤字からのV字回復である。 アフターコロナの時代になり、石油の需要が回復する一方、ウクライナ危機で原油価格が上昇すれば、米国の石油会社が儲けられるのは間違いない。「オマハの賢人」と呼ばれたバフェット氏はもう91歳だが、その眼力はいまだ信用に値する。 エネルギー危機に加えて、ウクライナ事変がもたらすもう一つの危機は世界的なインフレだ。コロナからの脱却ですでに問題になっているが、軍事的衝突がそれに拍車をかけそうだ。インフレを防ぐために行われるのが、各国の利上げである。 |
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●ロシア「ウクライナ侵攻」のウラで…大富豪たちが仕込む「やらない」投資 2/28
●ダリオはITを売った バフェット氏と並ぶ米国の著名投資家、レイ・ダリオ氏が率いる世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーターは昨年10〜12月に、米ネットフリックスや米アマゾン・ドット・コムの株を売り払って、代わりに米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)や米ペプシコの保有比率を高めた。 国際金融の最前線で世界情勢を分析してきた元HSBC証券社長の立澤賢一氏がその意図をこう読み解く。 「米国のハイテク株が市場を牽引してきたのは確かですが、ハイテク株はほとんど配当を出さないために利回りが悪く、金利上昇局面では売られる傾向にあります。ダリオ氏が米国のIT銘柄の保有比率を下げるのは、そうした流れを先読みしているからです。 ハイテク株とは逆に、これまで売られ続けた企業の中で割安感のある株に資金の割り当て先を替えているのでしょう。P&Gは65期にわたって増配(前期よりも配当を増やすこと)を続け、ジョンソン・エンド・ジョンソンも58期連続で増配しています。 ハイテク株は配当が少なく、株価が下がれば、その分、損をするだけですが、高配当銘柄はたとえ株価が下がったとしても、配当収入があります。だからこそ、株価が下がりにくいという側面もあるのです」 ほかにも、米国のコカ・コーラやスリーエム、ペプシコが似たような銘柄として挙げられると、立澤氏は指摘する。 国内ではバイデン大統領に対してウクライナ問題に関与すべきではないとの声が大多数だ。むしろ、米国内のインフレに対処してほしいというのが米国人の本音だ。 ダリオ氏は、2月に行われたインタビューで、 「米国でインフレ対策のための金融引き締めが行われると不況につながり、国内が混乱します。国際的な地政学的課題に対してもより脆弱になる可能性があり、たとえば、台湾と中国、ウクライナとロシアで摩擦が過熱する可能性があるでしょう。米国は成長率の見通しが低く、経済指標も弱くなっています。一方、中国は今後10年間で、毎年5%近辺の成長が見込めます。そうなれば、中国が米国より強力になっているかもしれません」 と語っている。この言葉を裏付けるように、昨年後半には、ダリオ氏のヘッジファンドは中国のネット通販企業のアリババやJDドットコム、ピンドゥオドゥオ、検索エンジン会社のバイドゥなどを買い増している。 ●ロジャーズは農業国に注目 一方、世界的投資家のジム・ロジャーズ氏は、「危機は投資の機会だ」と力説する。取材に答えたロジャーズ氏の言葉に耳を傾けよう。 「ウクライナ危機が戦争に発展したら、世界経済は大混乱に陥ります。戦争になると物価は高騰し、株価は世界中で暴落する。戦争の終わりが見え始めたら、暴落した株は『買い』ですが、戦争がいつ終わるかは今のところ、誰にもわかりません。米国が戦争をしたがっているように見えるからです。それを考えると、現時点では株式をすぐに買えるような段階ではないように思われます」 では、危機が去るのをじっと待つことしかできないのだろうか。そうではないと、ロジャーズ氏は言う。 「危機が起きると、大半の人は苦しむことになりますが、おカネを得られる人もいます。たとえば、小麦などを生産する農業国は需要が高まり、儲けられるでしょう。銅や鉛、リチウムなどを産出する国も潤うはずです。同じ流れで、原油や天然ガス、小麦、産業用金属などを扱う会社の株を買うチャンスです。金はすでに高くなっていますが、価格が下落したタイミングでは買ってもいいと考えています」 なお、原油や小麦、産業用金属は、その価格に連動する上場投資信託(ETF)が東京証券取引所に上場されている。ロジャーズ氏の見解を参考にするのならば、こうした投資信託で資産防衛を図るのも一つの方法なのかもしれない。 世界中で金融サービスを提供するUBSグローバル・ウェルス・マネジメントの株式ストラテジスト、デービッド・レフコウィッツ氏が投資家たちの動向を分析する。 「2月23日現在、ロシアがウクライナに再侵攻をするのか、非常に流動的な状況です。もし、実際に侵攻が起これば、主力株は暴落するでしょう。(編集部追記:24日にロシアが侵攻を開始、27日23時ごろ、ウクライナ大統領府が同国とベラルーシとの国境でロシアとの対話を行うと発表したとの報道あり)ただ、侵攻が短期で終われば、すぐに市場は回復するはずです。今は株を購入するのに適した環境ではありませんが、エネルギーや肥料、海運業といった業種は強気の値動きが続いています。欧州がロシアから天然ガスを得られなくなり、液化天然ガス(LNG)が高騰するケースを想定して、米国のLNG関連会社、シェニエール・エナジーの株価上昇を見込んで買っている投資家も多くいます」 元世界銀行CIO(最高投資責任者)で、現在は世界最大級の多様な経営者による投資会社である、米ロッククリークの創業者兼CEOのアフサネ・べシュロス氏は新興国への投資が活況を呈していると指摘する。 「ロシアのウクライナ侵攻がよりエスカレートするかはわかりませんが、その可能性が高まったことにより、先進国の市場の不確実性とボラティリティ(変動性)が増大しました。一方で、安全な投資先として新興国へ資金が流入しています。今の状況は非常に複雑です。ウクライナ情勢が沈静化するかどうか、自動車レースのようにチェッカーフラッグが振られて終了するわけではありませんから。軍事的衝突がひとたび起これば、状況はしばらく鎮火しない可能性のほうが高く、先進国のマーケットはこういう状況を好みません。しかし、新興国の市場は、堅調に推移しています。株式も現地通貨も好調です。FRBの利上げの影響は受けますが、それまでは高まる緊張の中で、最も影響を受けにくいのが、新興国市場と言っていいでしょう」 実際にウクライナから遠く離れた東南アジアの株式市場は活発に動いている。新興国に投資マネーが流入し、タイやシンガポール、インドネシアの株価指数は相次いで年初来高値を更新したのだ。エネルギー価格の高騰も、資源産出国の多い東南アジアには追い風になっている。 ●日本にマネーが集まる 新興国だけではない。富裕層のマネーが向かう先が、意外なことに日本の不動産市場だと指摘するのは、英国在住で、富裕層の資産運用に詳しいS&Sインベストメンツ代表の岡村聡氏だ。 「英国ではこの2年間続いてきたコロナのニュースがいまやゼロです。日本人がロンドンに来たら驚くと思いますが、誰もマスクをつけていませんよ。ほぼすべての規制はもうなくなりました。代わりに朝から晩まで詳しく報じられるのがウクライナ関連のニュースです。欧州は天然ガスなどのエネルギーをロシアに頼っており、今は真冬とあって、生命の危険につながりかねない重大な懸念なのです。こうした中、問題がさらに深刻になれば、天然ガスの調達をロシアに依存する欧州はどうしようもありません。ユーロも英ポンドも売り込まれる。そうなる前に、資産をスイスフランや米ドルに移すという動きが活発になっています」 かつては「有事の円買い」と言われ、世界的な危機や災害が起こったときは円高になってきた。しかし、長期停滞が続く日本の通貨は存在感が薄れ、ウクライナでの緊張が高まる今も、円安のまま放置されている。その日本に、世界のマネーが集まる余地がある。 「円安のため、欧州から見ても日本の物価は激安です。何を食べてもおいしくて、安い。感覚的には英国の3分の1の物価水準のように感じます。日本の入国規制が緩和されれば、インバウンド需要はとてつもないことになるはずです。こうした展開を見越しているのか、昨年は米投資ファンド大手のブラックストーン・グループが近鉄グループホールディングスからホテル8棟を購入。今年に入ってシンガポールの政府系ファンドが西武ホールディングスから『ザ・プリンスパークタワー東京』をはじめ、31物件を取得しました。海外の大金持ちから見たら、日本の不動産も破格。ぼやぼやしていると根こそぎ持っていかれるでしょう。逆に目端の利く人は不動産分野で稼ぐチャンスがあることもまた事実です」(岡村氏) |
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●ロシア ウクライナに軍事侵攻 3/1
●国連安保理 ウクライナの人道状況協議の緊急会合を開催 国連安保理は28日午後、ウクライナの人道状況について協議する緊急の会合を開きました。この中で会合の開催を提案したフランスのドリビエール国連大使は「ロシアの攻撃によってウクライナの人道状況に著しい影響が出ている。子どもを含む民間人の犠牲者が 増え続けている」と述べ、ロシアを非難しました。そして「ウクライナ国民のため、国際人道法の尊重や民間人の保護、人道支援を妨げないことなどを求める決議案を準備している」と明らかにしました。これに対して、ロシアのネベンジャ国連大使は、「軍事作戦の5日間にロシア軍の過失で民間人が死亡したという証拠はない」と反論し、「ウクライナ軍から絶え間なく攻撃を受けたウクライナ東部の住民に支援を続けたのが唯一、ロシアだ」と述べ、フランスなどが準備している決議案に慎重に対応する姿勢を示しました。 ●キエフ近郊 戦闘で荒廃 町には人影ほとんどなし ウクライナの首都キエフから北西におよそ20キロ離れたブチャでロイター通信が28日、撮影した映像では▽焼け焦げた軍用車両や自動車が路上に放置されている様子や▽道路が大きく陥没している様子が確認できます。町には人影がほとんどなく、スーパーマーケットでは窓が激しく壊れ、瓶のようなものが床に散乱しているのも確認できます。ブチャには、27日にロシア軍の戦車が入り、ウクライナ軍と散発的に銃撃戦になったということでここに住む男性は、「ウクライナはこの戦いに勝ってプーチンを止めます。これは卑劣で残虐な行為で人間にこんなことはできません」と怒りをあらわにしていました。アメリカ国防総省が28日、発表した最新の分析によりますと、ロシア軍はキエフから北におよそ25キロの地点にいて今後さらに前進を続け、数日のうちにキエフを包囲しようとしているということです。 ●岸田首相 “国際社会が結束し きぜんと対応を” ウクライナ情勢をめぐり、アメリカのバイデン大統領の呼びかけでG7=主要7か国などの首脳らによる電話会議が、日本時間の1日未明行われ、岸田総理大臣も参加しました。これについて岸田総理大臣は1日朝、総理大臣官邸で記者団に対し「私からは、ロシアのウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがすものであるということ、また国際社会が結束して、きぜんと対応することが重要であることなどを訴えた」と述べました。また「唯一の戦争被爆国、とりわけ被爆地・広島出身の総理大臣として、核による威嚇も使用もあってはならないと強調した」と述べました。さらに会議では、各首脳らが「ロシアによるウクライナ侵略は武力の行使を禁止する国際法の深刻な違反だ」として厳しく非難した上で、国際社会が一致して強力な制裁措置をとっていく必要性を確認するとともに、引き続きウクライナ政府や避難民への支援で協力していく方針で一致したと説明しました。 ●ゴルバチョフ氏が代表務める財団 即時停戦と和平交渉訴え ロシアのプーチン政権によるウクライナへの軍事侵攻について、旧ソビエトの大統領で、1990年にノーベル平和賞を受賞したミハイル・ゴルバチョフ氏が代表を務める財団は28日までに声明を出し、即時停戦と速やかな和平交渉の必要性を訴えました。声明では「人の命ほど尊いものはこの世に存在しないし、存在し得ない。相互の尊重と配慮に基づく交渉と対話のみが最も深刻な問題を解決し得る」として、プーチン政権に対して強硬姿勢を改め交渉による事態の打開を求めています。 ●北欧諸国 方針転換しウクライナに兵器供与へ アメリカやイギリス、ドイツなど各国がウクライナへの軍事支援を進めるなか、これまで紛争中の国に兵器を供与しない立場をとってきた北欧諸国も方針を転換し、同様の措置を打ち出しています。このうちロシアの隣国で、1939年に当時のソビエトの侵攻を受けたフィンランドは28日、ウクライナにライフル2500丁や1500の対戦車兵器などを供与すると発表し、マリン首相は記者会見で「歴史的な決定だ」と述べました。また、スウェーデンも27日、ウクライナに5000にのぼる対戦車兵器とヘルメットや防護服などを送ると発表しました。スウェーデン政府によりますと、兵器の供与はかつてソビエトの侵攻を受けたフィンランドに供与して以来だということで、アンデション首相は「ウクライナへの支援はスウェーデンの安全保障上の利益となる」とコメントしています。 ●シェル 石油・天然ガス開発事業「サハリン2」から撤退 イギリスの大手石油会社シェルがロシア・サハリンの石油・天然ガス開発事業「サハリン2」から撤退すると発表しました。サハリン2は、サハリン北部の天然ガスからLNG=液化天然ガスを生産するなどの国際的な開発事業で、ロシア最大の政府系ガス会社ガスプロムが主導する合弁会社にイギリスのシェル、そして日本の三井物産と三菱商事がそれぞれ出資しています。シェルは声明で、「世界各国の政府と協議しながら関連する制裁を遵守する」と述べており、シェルの撤退で日本側の対応が問われることになりそうです。サハリンで生産されるLNGの多くは日本向けに輸出されており、日本にとってはエネルギー安全保障の観点から重要なエネルギーの調達先となっています。 ●G7などの首脳ら電話会議 強力な制裁措置の必要性を確認 ウクライナ情勢をめぐり、G7=主要7か国などの首脳らによる電話会議が行われ、日本から岸田総理大臣も参加しました。各首脳らは、ロシアによる軍事侵攻を厳しく非難し、国際社会が一致して強力な制裁措置をとっていく必要性を確認しました。 ●米国防総省の高官 “ロシア軍 数日のうちにキエフの包囲ねらう” アメリカ国防総省の高官は28日、記者団に対し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の状況について最新の分析を明らかにしました。それによりますとロシア軍はウクライナの国境周辺に展開していた戦闘部隊のうち、これまでに75%近くの戦力をウクライナ国内に投入したほか、380発以上のミサイルを発射したということです。そしてロシア軍は首都キエフに向けてこの1日で5キロ前進し、キエフから北におよそ25キロの地点にいるということです。この高官はキエフへの侵攻は依然としてロシア軍の主要な作戦だとして、今後、さらに前進を続け、数日のうちにキエフを包囲しようとしていると指摘しました。また、ロシアのプーチン大統領が27日、国防相などに対して、核戦力を念頭に、抑止力を特別警戒態勢に引き上げるよう命じたことについて「われわれは監視を続けているが、プーチン大統領の命令を受けた具体的な動きはまだない」と指摘しました。 ●プーチン大統領 “停戦条件 ウクライナ非軍事化と中立化”と強調 ロシアのプーチン大統領とフランスのマクロン大統領は28日、電話会談を行い、ロシアが軍事侵攻を続けているウクライナの情勢について意見を交わしました。ロシア大統領府によりますと会談でプーチン大統領は停戦の条件について「ウクライナ国家の非軍事化と、中立的地位の確保など、ロシアの安全保障上の利益が無条件に考慮された時にのみ可能だと強調した」として、あくまでもウクライナの非軍事化と、NATO=北大西洋条約機構の加盟阻止につながる中立化を求めていく姿勢を示しました。 ●ロシアとウクライナの会談 交渉継続合意も停戦実現楽観できず ロシアとウクライナの代表団が28日、ロシア軍の侵攻が始まってから初めてウクライナと国境を接するベラルーシ南東部でおよそ5時間にわたって交渉にあたりました。ウクライナ側は即時停戦と軍の撤退を求めているのに対し、ロシア側はウクライナの非軍事化と中立化を要求していて、双方が歩み寄りを見せるかが焦点になっています。交渉のあとロシア代表団のトップのメジンスキー大統領補佐官は「あらゆる議題が詳細に話し合われ、いくつかの点では共通の土台を見いだせる」と述べ、双方がいったん帰国し、数日以内に再びベラルーシとポーランドの国境地帯で交渉する見通しを明らかにしました。一方、ウクライナ代表団のポドリャク大統領府顧問もツイッターで、「ロシアから突きつけられていた 最後通ちょうは無くなった」として一定の進展があったことを示唆しました。ただ、「交渉は難しい。ロシア側は自分たちが始めた破壊的なプロセスにこだわっている」として、ロシアが強硬な姿勢を崩さず双方の主張の隔たりが大きいことをうかがわせていて、今後の交渉が停戦につながるのかなお楽観できない情勢です。 ●ウクライナからの国外避難 50万人以上に UNHCR UNHCR=国連難民高等弁務官事務所は28日、ロシアによる軍事侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数が50万人以上に上ったと明らかにしました。AP通信がUNHCRのまとめとして伝えたところによりますと、避難した人が最も多いのはポーランドで28万人以上、ハンガリーがおよそ8万5000人などとなっています。ポーランドとの国境に近い、ウクライナ西部の都市リビウの駅は、ポーランドなどへ向かう列車に乗ろうとする人々であふれかえっていて、国外に逃れるため、目的地の変更を強いられる人も出てきています。ウクライナの首都キエフからルーマニアに到着した男性は、3日待ってもポーランドに入ることができなかったと話し、「危険なのでキエフを離れざるを得ませんでした。ポーランド国境を通ろうとしましたが、人が多くて通ることができず、ようやくここに来ました」と疲れた様子で話していました。 ●エアビーアンドビー 避難民に一時的な住居10万人分 無償提供へ アメリカの民泊仲介サイト大手、「エアビーアンドビー」は、ウクライナから近隣諸国へ避難している人たちに対し、一時的な住居10万人分を無償で提供すると発表しました。会社は、28日、ポーランド、ドイツ、ハンガリー、それにルーマニアの指導者たちに書簡を送り、支援を表明したということで、各国のニーズに応じて、長期的な滞在も支援したいとしています。エアビーアンドビーのチェスキーCEOは、ツイッターで、「避難民に住居を提供できるという人はぜひ支援してほしい。住居を提供できなくても寄付で助ける方法もある」などと呼びかけています。 ●ベラルーシ 憲法改正へ 核兵器配備につながらないか欧米側は懸念 ウクライナと国境を接するベラルーシでは、28日、国民投票の結果、憲法が改正されることになりました。改正される憲法では「自国の領土を『非核兵器地帯』にして『中立国家』を目指す」というこれまでの憲法に明記されていた条文の一部が削除されています。ベラルーシは、ロシアと軍事面での連携を強化していてルカシェンコ大統領は、NATO=北大西洋条約機構の加盟国などを念頭に「敵国が愚かなことをしてくるのであれば核兵器の配備もありうる」として、威嚇する発言を行っていました。ベラルーシで改正される憲法で「中立国家」と「非核兵器地帯」という文言が削除されたことで、ベラルーシ国内にロシアの核兵器が配備されることにつながらないか欧米側からは懸念の声が上がっています。 ●アメリカ国務省 ベラルーシにある大使館の業務停止 アメリカ国務省は28日、ウクライナの隣国のベラルーシにある大使館の業務を停止し、職員に対し国外退避を命じたと発表しました。ベラルーシは、ロシア軍によるウクライナ侵攻の拠点のひとつとされていて、現地のアメリカ人に対しても速やかに出国するよう求めています。また、国務省は、ロシアの首都モスクワにある大使館の一部の職員について、希望すれば国外への退避を認めることを決めました。そして、ロシア国内に住むアメリカ人に対しては、治安当局による嫌がらせなどのおそれがあるとして、ロシアを出発する航空機が運航しているうちに、速やかな出国を検討するよう呼びかけています。 ●国連の人権理事会 ロシア非難相次ぐ スイスのジュネーブで開かれている国連の人権理事会では28日、各国の代表からロシアによる軍事侵攻を非難し、ウクライナの現状に懸念を示す発言が相次ぎました。このうちカナダのジョリー外相は「平和と法律に基づく国際的な秩序、それに、第2次世界大戦以降世界が築き上げてきた国連憲章に対する挑戦だ。ロシアはこうした体制をあざけり、『力は正義』という世界に逆戻りさせようとしているが、許してはならない」と強い口調で述べました。一方で軍事侵攻についてロシアの代表は、親ロシア派が事実上支配している地域について、ロシアが独立国家として承認したあともウクライナ側からの砲撃がやまず、むしろ状況が悪化したからだとした上で「惨事を防ぐため、特別な作戦を行うほか選択肢はなかった」と述べ、軍事侵攻を正当化しました。 ●日本時間0:00すぎ 国連総会の緊急特別会合始まる ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり、すべての国連加盟国が参加できる国連総会の緊急特別会合がアメリカ・ニューヨークの国連本部で始まりました。緊急特別会合は数日間開かれ、アメリカは、ロシアを非難する決議案を採決し圧力を強めたい考えです。 ●ロシア政府 36の国と地域の航空会社対象に運航制限 ロシア政府の航空運輸局は28日、ヨーロッパ各国がロシアの航空会社の運航を禁止したことへの報復措置として36の国と地域の航空会社を対象に運航を制限すると発表しました。対象にしたのは、イギリスやドイツ、フランス、スペイン、イタリアなどヨーロッパの主要国のほかカナダなどの航空会社で、こうした国や地域からの運航には航空運輸局かロシア外務省の特別な許可が必要だとしていて、空の便でも影響が広がっています。 ●ウクライナ第2の都市ハリコフ 市街地砲撃 民間人5人含む7人死亡 ロシア軍との激しい戦闘が伝えられているウクライナ第2の都市ハリコフの当局によりますと28日、市街地が多数の砲撃を受け、44人が病院に運ばれ民間人5人を含む7人が死亡したということです。ウクライナ軍が公表した動画では、建物の壁面にいくつものせん光が見え、煙が立ち上る様子が確認できます。ハリコフの当局によりますと、けが人は今後増えるおそれもあるということです。 |
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●プーチンは軍事力で「ロシアの栄光」を取り戻せるのか? 3/1
ロシアのプーチン大統領は2月21日、ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力支配地域に設立された「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認する大統領令に署名した上で、これらの「共和国」とロシアの友好相互援助条約に調印した。 条約にのっとり、ロシアはこれらの「共和国」内に軍事基地を建設する権利を持った。プーチン大統領は早速、「平和維持」を目的として軍を派遣するよう国防省に指示を発した。この時点では親ロ派武装勢力支配地域へのロシア正規軍進駐にとどまるのではないかと筆者はみていたのだが、そうではないことが数日後に明らかになった。 ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランス4カ国によるウクライナ東部紛争解決の道筋を定めた2015年の「ミンスク合意」は崩壊した。合意はもはや存在しないと22日にプーチン大統領は明言した。ウクライナ政府が親ロ派支配地域に「特別な地位」を与えることが、この合意には盛り込まれていた。高度な自治権付与を意味すると解されていた。 だが、自国の分裂を助長するような動きをウクライナ政府はよしとせず、プーチン大統領はそのことを非難し続けていた。そこにロシアがつけ入るスキがあったとも言える。 2つの「共和国」への国家承認からさほど間を置かず、24日にロシアはウクライナに対する広範囲な軍事攻撃に踏み切った。ウクライナ全土を占領する目的ではなく、軍事的にウクライナを無力化する狙いからである。キエフ近郊を含むウクライナ空軍の防空施設などを先制攻撃して制空権を握ろうとしたほか、ウクライナの主要な港湾都市への上陸作戦も実行されたようだ。 欲しいものを手に入れるために冷徹に手を打ってくるプーチン大統領に対して、米欧の手持ちのカードはそう多くはなく、手詰まり感が漂う。 ●説得力を持たない米国 24日の軍事侵攻よりも前の段階で、バイデン米大統領が自ら発表したものを含めて米国による対ロシア経済制裁の内容がさほど強力なものでなかったことに関しては、「ロシアによる本格的な軍事侵攻に備えて切り札を温存した」「強いカードを発動しないでおくことによりロシアの行動を抑止する効果を期待した」といった説明が、マスコミ報道の中に散見されていた。だが、そうした説明に、説得力はほとんどなかった。 制裁カードが潤沢にあるのならば、事態の推移に応じて出していけばよいはずである。ロシアが「ミンスク合意」を破棄した場面は、1つの大きなヤマ場だった。 だが、ロシアのエネルギー産業を制裁対象にすることには、ロシアからの天然ガス輸入への依存度が高い欧州連合(EU)の側に、強い抵抗感がある。 銀行間の国際決済ネットワークからロシアを排除してしまうという選択肢もある。だが、これもまた、ロシアと経済・金融面でつながりが強い欧州諸国の経済・金融システムにもたらされ得るダメージを無視できない。 手持ちの使えるカードが少ないがゆえに、臨機応変に出すことができなかった。急いで出してしまうと事態が一層深刻化した際に対処するカードがなくなると危惧されたのが、実情だろう。そうした米欧の足元を見透かしたロシアは、ついに自信を持って軍事行動に出たというわけである。 シン米大統領副補佐官(国家安全保障担当)は2月22日の記者会見で、「ロシアが事態をエスカレートさせれば、われわれも制裁をエスカレートさせる」と述べたものの、「残された制裁でプーチン大統領のさらなる行動を抑止できるのか」と問われると、「制裁は徐々に効いてくる。発動して初日に効果が表れるものではない」といった、苦しい回答に終始したという(2月24日付 読売新聞朝刊)。 経済制裁をうけて海外マネーの買いが入らなくなったロシア国債の利回り大幅上昇についても、少なくとも短期的にはロシア政府にとってほとんど問題にならないだろうとされている。エネルギー価格大幅上昇による歳入増加、6300億ドルを超える多額の外貨準備、政府債務比率の低さが、その根拠である(2月24日付 フィナンシャル・タイムズ)。 ドイツのショルツ政権はロシアとの間に敷設された天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の認可手続きを停止する決定を下した。ロシアの動きをもはや看過できなくなる中での、米国からの強い要請をうけた措置だろう。けれども、この動きについてロシア側から、計画をこのまま中止するならドイツにとっては経済的に自殺行為ではないかと評するシニカルな声も出ている。 ハーベック独副首相兼経済・気候保護相からは22日、「ノルドストリーム2」経由で追加供給がなくても天然ガス供給は確保されるという強気の発言もあった。だが、ロシアに代わる有力な天然ガス調達先と目されているカタールのアルカービ・エネルギー相は同日、ロシア産天然ガスの肩代わりを一国で迅速に担うのは不可能に近いと述べた。 ロシアのしたたかさは、軍事行動のタイミングにも表れていた。北京冬季五輪の閉会式が行われた直後に、ロシアは軍を動かした。 過去のロシアの軍事行動と五輪開催のタイミングの近接は、以前からしばしば指摘されていることである(最近では1月31日付 東京新聞朝刊)。 ウクライナ南部のクリミア半島をロシアが併合したのは、14年にロシア国内で開催されたソチ冬季五輪・パラリンピックの直後だった。 ●政治的に支え合う? 中ロ 08年の北京夏季五輪では、開会の直後にジョージア(グルジア)の南オセチアに対し、ロシアが軍事介入をした。この時は、五輪開催国の中国が五輪精神を引き合いに出し、両国に開催期間中の停戦を呼び掛けた。 今回は、同じ北京で開かれた五輪の閉幕を待った上でロシアは動いたわけだが、米国と対抗する上でこのところ連携を深めている中国・習近平(シー・ジンピン)国家主席への政治的な配慮があったのではないかと推測される。 北京五輪開会式当日の中ロ首脳会談は、両国の対米共闘姿勢をアピールする場になっていた(当コラム2月8日配信「『世界の分断』が浮き彫りになった北京オリンピック開会式」ご参照)。 ロシアは、米国の対抗策の手詰まり感や欧州との足並みの乱れを見透かしつつ、今後も強気の姿勢を維持すると見込まれる。 筆者のみるところ、今回のウクライナ危機を外交的手法で解決しようとする際に大きな障害になるのは、米国のバイデン大統領の「理想主義」である。 基本的人権、民主主義、国際協調。いずれも普遍的な価値を有する概念だと筆者は思うのだが、どろどろした国際政治の世界では時に理想を棚上げして双方の利害を合致させる妥協点を見いだそうとする、マキャベリスティックな姿勢が必要になってくる。 理想主義的な姿勢を前面に出すばかりでは、仮にロシアとの間で交渉が今後再開される場合でも、両国の主張は常に平行線のままであり、妥協の糸口を見いだすのは極めて困難だと言わざるを得ない。 ●レガシーづくりにいそしむプーチン 一方のプーチン大統領はどうか。長期政権を築き上げる中で近年は、旧ソ連が崩壊した後のロシアの影響力低下を強く問題視しているようである。「ロシアの栄光」を取り戻すこと、旧ソ連圏への影響力を強めるなどして安全保障面の防壁を強化することが、プーチン大統領にとって「レガシー」づくりの中心にあるように見える。 ロシア軍が侵攻するよりも前の話だが、英経済紙フィナンシャル・タイムズが伝えていた話で筆者が印象的だったのは、フランスのマクロン大統領に同行してプーチン大統領の様子をじかに見ていたと推測される、フランス政府高官のコメントである。この人物によると、プーチン大統領はもはや西側を信頼しておらず、西側に「恐れられる存在」になりたがっているようだという。 歴史は政治家のパーソナリティーによりつくられるのか、それとも経済社会状況が歴史のありようを規定していくのか。クリアカットな結論が出にくいテーマであるわけだが、今回のウクライナ危機に関して言えば、米国とロシアの政治指導者の動き方次第で、今後現出する状況のかなり多くの部分が左右されるのではないか。 バイデン大統領は、11月に中間選挙を控えているものの、支持率は低迷している。ピューリサーチセンターが1月25日に公表した世論調査結果で、バイデン大統領の支持率は41%、不支持率は56%になった。これより前、1月20日にロイター/イプソスが発表した別の調査では、支持率は43%で就任以来最低。不支持率は53%である。 新型コロナウイルス感染拡大への対応も含めて民主党支持者と共和党支持者の分断が深まっている上に、物価上昇率が高くなって米国民の不満が強まった。看板政策の1つである育児支援・気候変動対策などを盛り込んだ大型歳出法案は、民主党内の穏健派であるマンチン上院議員の強い反対姿勢ゆえに成立のめどが立たない状態となっている。 そして、物価高である。バイデン政権による財政出動が高いインフレ率の原因だとみるエコノミストはほとんどいないものの、生活苦に対する国民の不満が政権トップへと向きやすくなっている。 内政で苦しい立場に追い込まれた場合に政治家が用いる常とう手段が、対外的な危機へと国民の関心を引き付けることである。けれども、バイデン大統領はウクライナへの米軍部隊の直接派兵を記者会見などの場で繰り返し否定している。 バイデン大統領の頭の中では、仮に米軍部隊が戦渦に巻き込まれて死傷者が出る事態となれば中間選挙で大きなハンディになりかねないという思惑も働いているだろう。アフガニスタンからの性急な米軍撤退がその後の大きな混乱につながり、非難を浴びたことも記憶に新しい。 ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)加盟国ではないことから、米国に防衛義務は全くない。仮に米軍とロシア軍が対峙(たいじ)して偶発的にせよ直接戦火を交えるようなら、第3次世界大戦勃発の危機が生じ得る。そうした点からは、米軍を直接投入しないことは合理的である。 ●米国はどこまで関与すべきか しかしその一方で、ウクライナの民主主義に依拠する政権が専制主義国ロシアの強大な武力によって大きな危機に直面していることもまた事実である。民主主義の旗手を標榜し続けるのであれば、より一層強い関与が必要になるという見方もあるだろう。 中間選挙で上下両院の過半数を野党共和党が握る場合(そうなる可能性が現状では高い)、バイデン政権はレームダック化してしまい、残る2年ほどの大統領任期を空費してしまう可能性がある。 これに対し、ロシアのプーチン大統領が次に選挙の試練を与えられるのは2024年であり、まだかなり先のこと。21年4月5日に成立した改正大統領選挙法により、現在の大統領任期が24年に満了しても、プーチン氏はさらに2期12年、2036年まで続投することが可能になった。レガシーづくりをする時間は、24年までに限る場合でも、まだ十分にある。 軍事力を自在に用いて事態を動かしているロシアと、ウクライナへの直接派兵を全否定した上で乏しい経済制裁カードに頼る米国。クリミアに続き、安全保障面の防壁を厚くして既成事実化しようとするプーチン大統領優位の状況は、今後も変わらないだろう。 |
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●バイデン政権の「情報戦」に敗北したプーチン 3/1
ロシアの大統領・ウラジーミル・プーチンは2月24日、ウクライナに対する大規模な攻撃を命じた。 主権国家ウクライナに対するプーチンの暴挙は、明らかな国際法違反であり、ウクライナのみならず欧州および世界の安全保障体制を根本から揺るがしている。 最近、私は情報戦(IW: Information Warfare)について書籍『日本はすでに戦時下にある』(ワニ・プラス)を書いたり、講演することが多くなってきた。 情報戦は現代戦において最も重要で基本的な戦い(warfare)であり、「攻撃と防御の両方の作戦を含む、競争上の優位性を追求するための情報の使用と管理に関する戦略」と定義される。 この情報戦は、ロシアがウクライナを併合した時に採用したとされるいわゆるハイブリッド戦(Hybrid Warfare)の重要な構成要素であり、特に中国やロシアは重視し採用している。 情報戦は幅広い概念で、情報を使って相手のものの見方・考え方や行動をコントロールして目的を達成しようとする政治戦、影響工作(Influence Operation)、心理戦、認知戦などを含んでいる。 中国などはさらに、サイバー戦、宇宙戦、電磁波戦など情報が関係するあらゆる戦い(Warfare)を情報戦の範疇に入れている。 情報戦は、平時および戦時を通じて行われるが、特に戦争開始前の情報戦は非常に重要である。 平時において情報戦が成功すると、孫子が言うところの「戦わずして勝つ」ことができる。 ロシアや中国は情報戦大国である。 しかし、プーチンのロシアは、今回のウクライナ侵攻前後の情報戦において、ジョー・バイデン大統領の米国に敗北した。これが私の結論である。 本稿においては、なぜプーチンはバイデン政権との情報戦に敗北したのかについて説明する。 ●バイデン政権が実施した「開示による抑止」 バイデン政権の政府高官らが、2月に入ってから積極的に会見やインタビューに応じ、ロシア軍の兵力数、部隊の配置状況、ウクライナに攻撃を開始するか否か、攻撃するとすればその時期、攻撃の要領(攻撃目標、攻撃方向、兵力)といった機密情報を次々と開示した。 例えば、米国務省のネッド・プライス報道官は2月16日に「ロシア当局者がウクライナ侵攻の口実となるような偽情報を報道機関に広めており、多くの誤った主張が拡散している」と警告した。 また、2月23日には「ロシア軍の80%が臨戦態勢に入っている。プーチン大統領はいつでもウクライナに侵攻できる状態にある」「ロシア軍はウクライナ国境において、北・南・東から攻撃する態勢を完了している」、24日には「大規模侵攻が48時間以内に迫っている」「事実上、いつでも攻撃可能である」などと情報を開示した。 バイデン大統領みずからも「侵攻は数日中にもある」「プーチン大統領は侵攻を決断したと確信している」などと発言した。 このように米国政府は機密情報をあえて積極的に開示する異例の戦略を取ってきたが、安全保障の専門家でもこのバイデン政権の情報開示に驚いた。 NHKのWEB特集 によると、この戦略は「開示による抑止(Deterrence by disclosure)」と呼ばれるもので、相手側の機先を制し、行動を抑止するのが狙いだ。 「開示による抑止」の具体的な目的は以下の3点だ。 1ロシア側の行動の機先を制し、ロシア側の状況を把握していることを明らかにし、攻撃の中止などの行動の変化を促す。 2ロシア側の偽情報を早めに開示することにより、世界にロシアの嘘を明らかにし、ロシアの偽情報を根拠とする侵攻の正当化を防ぐ。 3ロシア側の手の内を明らかにすることで、同盟国や友好国との相互理解・連携を密にし、ロシア側の行動に先んじて対応策を講じる。 当然ながら機密情報を開示することで、以下のような問題も発生する。 1情報源を危険にさらしたり、情報収集の方法を知られるおそれがある。 2侵攻が間近に迫っていると繰り返すことで、「オオカミ少年」の非難を受ける可能性がある。 3開示した情報どおりにならなければ、バイデン政権自身が信用を失うことになる。 バイデン政権が情報発信を強化した背景には2014年にロシアによるウクライナ領クリミア半島の併合を許した失敗の教訓がある。 当時のバラク・オバマ政権は情報開示に消極的で、欧州の同盟国などにも情報を十分に伝えなかったという。 オバマ政権の元高官は、「知っている情報を世界に発信すれば、我々の利益になると思ったことが何度もあった」と振り返っている。 私は、バイデン政権が「開示による抑止(Deterrence by disclosure)」を採用したことは適切だったと思っている。 バイデン政権が開示した多くの情報は正確であったことは大多数の識者が認めるところだ。 確かに、「開示による抑止」によってプーチンのウクライナ攻撃を抑止できなかった。しかし、「開示による抑止」により、プーチンの主張の欺瞞性を世界に明らかにできた。 また、米国と同盟国や友好国との相互理解は深まったし、機先を制する米国の情報開示にプーチンの対応が難しくなったことは確かであろう。 結論として、プーチンの嘘(ロシアはウクライナ侵攻計画を持っていない、米国が戦争を煽っている、ロシア軍は撤退をしている、ウクライナがロシア人に対するジェノサイドを行っているなど)に基づく情報戦は、バイデン政権の「開示による抑止」に敗北したのだ。 「開示による抑止」を可能にしたのは、バイデン政権がロシアのウクライナ侵攻に対処するために編成した「タイガー・チーム」の存在が大きい。 ●タイガー・チームとは何か 以下の記述は、2月14日付のワシントンポスト紙の記事(Inside the White House preparations for a Russian invasion)に基づく。 タイガー・チームは2021年11月に正式に誕生した。 国家安全保障担当のジェイク・サリバン大統領補佐官が国家安全保障会議(NSC)のアレックス・ビック戦略計画担当ディレクターに、複数の省庁にまたがる計画策定の指揮をとるよう依頼したことが始まりだ。 ビック氏は、国防省、国務省、エネルギー省、財務省、国土安全保障省に加え、人道的危機を所掌する米国際開発庁を加入させた。 また、情報機関も関与させ、ロシアが取り得る様々な行動方針、それに対するリスクと利点などを検討したという。 シナリオには、サイバー攻撃、ウクライナの一部だけを占領する限定的な攻撃、ヴォロディミル・ゼレンスキー政権を崩壊させ、国土の大半または全部を占領しようとする全面的な侵攻まで幅広いシナリオを想定し、侵攻から2週間後までの対応策をまとめた「プレイブック」を作成した。 この「プレイブック」を基に現在もロシアの侵攻に対処している。 ロシアを抑止するために検討してきたテーマは、欧州などと協調した外交努力や経済制裁、米軍の展開、ウクライナへの兵器支援、大使館の警備体制など幅広い。 以上のような取り組みは、起こりうる事態を予測するのに役立っただけでなく、ロシアの情報戦に先手を打ち、その意図を事前に暴露し、ロシアのプロパガンダ力を削ぐことであった。 ●プーチンを信じ彼を擁護し続けた日本人 最後に、ロシアの情報戦を信じて「プーチンは悪くない。米国の陰謀だ」「すべて米欧が悪い」と思い込んでいる日本人について書きたい。 タイガー・チームの編成と「開示による抑止」により、プーチンの主張の多くが嘘であることは世界に提示された。 しかし、その嘘をいまだに信じる日本人が相当数いることには驚きを禁じ得ない。 これは、ソーシャルメディアの誕生と密接な関係がある。 ソーシャルメディアがなかった一昔前には、プーチンやロシアを擁護する歪んだ意見を持つ人々が世界に発信するチャンネルがなかった。 しかし、今や一般人がソーシャルメディアを通じて自らの主張をしつこく繰り返すようになっている憂慮すべき現状がある。 実例を挙げよう。筑波大学の東野篤子准教授は、各種メディアにおいてウクライナ・ロシア情勢について立派な的を射た解説をされていた。 ところが、彼女はツイッターで偽情報を信じる陰謀論者に攻撃されていることを以下のように訴えている。 「コメント欄がここしばらく荒れてきまして、定番の『すべて米国の陰謀』や私への罵倒だけではなく、明らかに誤った分析を事実であるかのように開陳してしまわれる方も増えてきました」 「人の命がかかっている状況で、弊アカウントがディスインフォメーションの拡散に間接的に加担することは避けたいので、大変恐縮ですが当面、私がフォローしている方以外がコメント出来ないよう設定させていただきます」 「自分が『正しい見方』を教えてやるからありがたく思え!という方、全部米欧のせいだと仰りたい方、色々いらっしゃると思いますし、色々な見方があってよいのですが、そのご披露はどうか私へのコメントではなく、ご自身のアカウントで自己完結させていただくようお願いします」 国際政治や安全保障を学んだ者の大部分は、「ロシアのウクライナ攻撃の責任はプーチンにある。プーチンが命じたウクライナへの攻撃は国際法違反である」と言っている。 「ロシア軍によるウクライナ侵攻反対」というデモがロシア国内でさえ起きている。 プーチンこそが、今回のロシア軍によるウクライナ侵攻の責任を負うべきであることを強調する。 そして、ソーシャルメディアを通じた情報戦にいかに対処するかという大きな課題があることを指摘したい。 ●おわりに ロシア軍のウクライナでの攻撃は続いているが、米欧諸国はロシアの一部銀行に対するSWIFT(国際銀行間の送金・決済システム)からの排除、ロシア中央銀行への制裁などの強い制裁を発動した。 この制裁によりロシア国内の経済・金融は大混乱に陥るであろう。 プーチンのウクライナ侵攻は、戦略的には明らかに失敗であり、その後始末に苦労するであろう。 現代戦は、全領域戦(All-Domain Warfare)がその本質である。 全領域戦とは陸・海・空戦、サイバー戦、宇宙戦、電磁波戦、情報戦、外交戦、経済制裁などの経済戦、法律戦などを含むあらゆる手段を駆使した戦いである。 バイデン政権のタイガー・チームの編成は、全領域戦の実践であると私は思う。 |
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●ロシア国民への「経済的不安」が与えるプーチン政権への影響 3/1
アメリカ財務省は2月28日、ウクライナに侵攻したロシアへの追加制裁として、ロシア中央銀行との取引を禁止し、アメリカ国内の資産を事実上凍結すると発表した。外貨を使ってロシアの通貨「ルーブル」を買い支えることを防ぐ狙いがある。 飯田)中銀への制裁と言うと、イランに対しても行われていますが、アメリカはそこまで踏み込んで来たということになるのですか? 小泉)そうですね。私は経済や経済制裁は専門ではないので詳しくはないのですが、ロシアはこれまで、国際秩序のなかでやや異質な振る舞いはするけれども、北朝鮮やイランとは違った存在だったと思います。しかし、今回のことで「国際秩序に対する公然たる挑戦者」という位置付けになって来たということです。 飯田)世界全体の雰囲気がそうなりつつあるということですね。経済についての制裁が私企業でも行われていますが、この切り離しが今後も進んで行くことになりますか? 小泉)そうですね。現状、軍事力を使ってロシアの行動を止めに行くことはできません。ロシアは核兵器を持っているので、そうなれば核戦争になってしまいますし、プーチン大統領も今回、その点をアピールしています。となると、経済的な方法を使うことしかできません。経済的な方法を使ってもロシアの動きを止めることはできないけれど、大きな代償がつくということを示さざるを得ません。 飯田)そうですね。 小泉)実際に2014年に起きた最初のウクライナ侵攻以降、アメリカは厳しい経済制裁をしていて、2017年にはトランプ政権下でも制裁を強化しています。今回はさらにレベルを上げて、単なる制裁ではなく、ロシア経済の基礎体力そのものや、軍事力を支える技術や金融機関に標的を絞るということですから、フェーズが変わったのではないでしょうか。 飯田)週末には、国際銀行間通信協会(SWIFT)という国際的な決済機構からも締め出す方針が出されました。ロシア国内からの報道だと、ATMに長い行列ができているということですが、早くも影響が出ているということですか? 小泉)実際にどのくらい影響が出ているかはよくわからないのですが、ロシア人は1991年のソ連崩壊当時をよく覚えているのです。あのときに経済の仕組みそのものが変わって、大混乱になりました。1992年には約2800%のハイパーインフレが起こっているのです。 飯田)2800%。 小泉)1年で物価が28倍。あるいは貯金が28分の1になってしまうということです。ソ連時代にコツコツ働いて貯めたお金が、すべてなくなってしまった人々がいるわけです。また、1998年にはデフォルトになっています。そういう記憶があるので、心配になると、すぐに取り付け騒ぎになってしまうのです。今回もそういう国民の不安心理が刺激されていることは想像がつきます。 飯田)あの当時は、「通貨よりマルボロの方が」というようなことが、まことしやかに言われました。 小泉)そこまでにはならないかも知れませんが、ロシアもこれだけ外国に依存している、あるいは外国にエネルギーを売ることによって成り立っている経済ですので、国際的に孤立すれば当然、マーケットも国民も不安ですよね。 飯田)国内で不安が広がることが、プーチン政権にどのように影響しますか? 小泉)大きく2つの影響があると思います。1つは、プーチン大統領がこれまで強いリーダーでいられたのは、「プーチンさんが強いから国民がついて来る」というよりも、「国民がついて来るからプーチンさんが強い」というメカニズムによるものだった部分が大きいと思います。 飯田)逆なのですね。 小泉)つまり神輿だと思います。みんなが担いでくれるから「わっしょいわっしょい」とできるわけで、1人でそれはできません。 小泉)「プーチンさんについて行くと生活がよくなる、安定する」、あるいは「ロシアの国際的な地位が上がって行く」という考えがあったのだと思うのですが、今回はプーチンさんがロシアの首を絞めるようなことばかりしているわけです。これがどう出るのか。 飯田)国民がどう受け取るか。 小泉)他方で、これまでも反プーチン運動が盛り上がったことがあるのですが、プーチン政権がこれに応えて「やり方がまずかったな」と方向性を改めたわけではありませんでした。「国民が反発すると、より取り締まりを強化する」という方向に進んで来た。今回もプーチン政権に対する反発はあるのでしょうが、それにプーチン大統領がどう対応するか。これまでの対応を見ていると、あまり楽観視できないと思っています。 |
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●プーチンの“想像を超える”ウクライナの抵抗…「泥沼化」 3/1
●ロシア側の進撃が遅れている アメリカのシンクタンク「戦略研究所」によると、ロシア軍はウクライナへの侵攻を開始してから4日目にあたる2月27日の日曜日、ウクライナ軍の激しい抵抗に遭い、前日からほとんど占領地域を拡大できていないという。 ウクライナ第2の都市ハリコフでは、軽装備の部隊の進軍が確認され市街戦に突入したものの、首都キエフ周辺では郊外で足止めされており、いまだに市の中心地には侵入できていないというのだ。 2月26日土曜日には、ウクライナのゼレンスキー大統領が動画メッセージを公表して「われわれは国を解放するまで戦い続ける」と訴えるなど戦意は旺盛だ。 一方、米欧諸国は同じく26日、ロシアに対する追加制裁を決定。実施困難とみられていた国際銀行間通信協会(SWIFT)の決済網からロシアの大手銀行を排除することに合意するなど制裁を強化し始めた。 さらに、軍事、物資、資金の支援の輪が広がっているほか、ロシア内外で市民から軍事侵攻に対する抗議の声が挙がっている。 ウクライナを巡る戦闘の泥沼化が懸念され始める状況に、一番焦りを感じているのは戦端を開いたロシアのプーチン大統領ではないだろうか。 兵力の大半をつぎ込んで早期にキエフを制圧、ゼレンスキー政権を倒して傀儡政権を樹立しようと目論んでいたものの、アテが外れかねないからである。 同大統領は27日、ついに核戦力を含む軍の核抑止部隊に高度な警戒態勢への移行を指示。核戦力を誇示して第3次世界大戦のリスクをちらつかせることで、欧米などの対ロ制裁網をけん制する構えも見せている。 26日までの情報をまとめると、ロシアのペスコフ大統領報道官が同日、停戦交渉について「ウクライナ側が交渉を拒否した」と述べ、軍事侵攻を推進すると表明。ロシア国防省は、ウクライナの軍事インフラ施設821ヵ所を破壊したと主張し、この中には14の飛行場や、戦闘機7機、ヘリコプター7機の撃墜情報も含まれている。 そのうえで、国防省報道官は、攻撃について軍事インフラに限定しており、住宅などは攻撃していないと強調している。 これに対し、ウクライナのリャシュコ保健相は、これまでのロシア軍の侵攻ですでに子供を含むウクライナ人198人が死亡、1115人が負傷したと反論した。 一方、米国防総省高官は、記者団に対し、ロシア軍がウクライナ周辺に展開した兵力の50%以上がウクライナ領に侵攻したとの分析を明らかにした。そのうえで、ロシア軍が激しい抗戦に遭い、キエフの北方約30キロの地点にとどまっているとし、「ロシア軍は進軍の遅れにいら立ちを募らせている兆候がある」ほか、「いまだ都市部を制圧しておらず、制空権も確保していない」と述べたという。 ウクライナのゼレンスキー大統領も、この日、キエフ中心部で撮影したとみられる動画を公開、「私はここにいる。国を守っていく」「私が武器を捨てて避難しろといったかのような偽情報がインターネットに流れている。いかなる武器も捨てない」と語り、ロシアの侵攻に抗い続ける方針を強調した。ゼレンスキー大統領の言葉の通り、27日にはロシア軍の進軍が止まったのだ。 ●ルーブルの通貨防衛手段を奪う ウクライナ各地での戦闘の激化を受けて、強硬な対ロ制裁に慎重だった欧州連合(EU)とEU加盟国が積極姿勢に転じ、米、英、独、仏、伊、加の6ヵ国と欧州委員会は26日、制裁の強化に合意したとそれぞれが独自に発表した。 柱は、冒頭で触れたSWIFTの決済網からのロシア大手銀行の排除と、ロシア中央銀行に新たな制裁を科すことの2つだ。 2番目の措置については、米財務省が28日、ロシアの中央銀行が米国の金融機関などと米ドルを取引するのを禁じる追加制裁の実施を発表した。措置は即日発効した。この措置の主眼は、ロシア通貨ルーブルの通貨防衛手段を奪う事にある。 これにより、「ドル売り・ルーブル買い」介入を不可能にし、ルーブル安を加速させて通貨安とインフレを誘発、ロシア経済に打撃を与えることを目論んでいるのではないかというのだ。 一方、米財務省が追加制裁を発表したのと同じ28日、ロシア中央銀行は、政策金利を従来の9.5%から20%に引き上げると発表した。米欧の経済制裁によって通貨ルーブルが急落し、この日、過去最安値をさらに更新したのに伴う措置で、通貨安に伴うインフレの加速を抑えるための緊急対応に追われたのだ。 ロシアで政策金利が20%台になるのは2003年以来およそ19年ぶりの異常事態だ。報道によると政策金利の20%は、アルゼンチンの42.5%に次ぎ、トルコの14%を上回る水準だ。 振り返れば、ロシア軍が2月24日にウクライナへの侵攻を始めた時点で、世界の金融・資本・商品市場は激震に見舞われたが、中でも激しく影響を受けたのがロシア市場だった。通貨、株式、債券の各市場が同時に急落するトリプル安に陥ったのである。 ルーブルがドルに対しておよそ6年ぶりに史上最安値を更新。株価指数RTSは前営業日に比べて一時50%安と大暴落。債券もロシア政府が2017年に発行した30年物のアメリカ・ドル建て債の利回りが24日の時点で6%台半ばまで上昇、1ヵ月弱で2%ほど上昇した計算となっていた。 欧州は天然ガス供給の約4割をロシアに依存しており、厳格な経済制裁は難しいとの見方が当初は多かった。実際、できれば強力な制裁は避けたいというのが欧州諸国の本音だったのだろう。 しかし、そうした事情を見透かしたかのように戦端を開き、ウクライナ領内深くに侵攻しようとするプーチン大統領の蛮行に、さしもの欧州諸国も業を煮やした。 その軌道修正が、もっと煮え切らないバイデン米大統領も動かしたという。 27日夜には、岸田総理が首相公邸で記者団に対し、日本もロシアの大手銀行をSWIFTから排除する米欧などの追加制裁措置に参加すると表明した。 ●世界中で広がる抗議行動 もうひとつプーチン大統領にとって頭が痛いのは、軍事侵攻に対する世界的な批判の高まりだ。侵攻が始まった24日には、パリで3000人が集まる抗議集会が開かれたほか、ベルリンやロンドン、マドリード、ベルン、プラハなど欧州各地で抗議行動が行われた。 26日には、アメリカの首都ワシントンでも数百人がホワイトハウスの前でデモを繰り広げた。 日本国内でもこれまでに札幌、渋谷、新宿、名古屋、京都、大阪、広島、長崎、那覇などで抗議集会が催された。こうしたデモや抗議集会は各地で繰り返され、日を追って規模も拡大の一途を辿っている。 驚くべきことに、ロシア国内でも首都モスクワをはじめ各地で、ウクライナ侵攻が発表された24日に早くも「反戦デモ」が開かれ、プーチン政権が機動隊を投入して、全土で参加者を拘束したと伝えられている。独立系放送局「ドシチ」によると、ロシア国内の52都市で合計数千人がデモに参加し、人権団体OVDインフォの集計で1800人以上が拘束されたというのである。 参加者中には青と黄のウクライナ国旗を振った人も多かったそうだ。プーチン政権が力で抑え込もうとしても、ロシア国内の抗議活動は一向に鎮静化の兆しを見せていない。 客観情勢はさておき、プーチン大統領には2014年のクリミア半島併合の成功体験があり、今回のウクライナへの軍事侵攻にも相応の勝算をもって臨んだものと推察される。天然ガスや原油といった天然資源高を背景に外貨準備をため込んでいたうえ、その比重を米ドルからユーロや人民元、金などに移す周到な準備を進めていたからである。 プーチン大統領が、早期にウクライナを制圧、ゼレンスキー政権を打倒して傀儡政権を樹立することを想定していたであろうことも想像に難くない。 しかし、国際世論のプーチン氏への反発は強まる一方だ。こうなると、欧米を中心とした国際社会は、ウクライナに対する軍事物資を含む支援を活発化させるとともに、ロシアに対する経済制裁の手を緩めることもないだろう。 むしろ、国際世論に後押しされる形で、SWIFTから除外するロシアの金融機関をさらに増やしたり、禁輸対象品目を拡大して全面的な禁輸の方向に振れる可能性も否定できない。 ウクライナの抵抗が続くことで、事態は急速に泥沼化しかねない状況だ。予想外の早期に、侵攻したプーチン政権の方が窮地に追い込まれることにもなりかねない。 ロシアとウクライナの両代表団は28日、ベラルーシとウクライナの国境地帯で停戦を巡る対話を開始した。ウクライナの非武装化などを求めるとみられるロシアと、停戦やロシア軍の即時撤退を求めるであろうウクライナ側とは、主張の隔たりが大きい。 対話が停戦に繋がるか不透明なものの、糸口を見つけられなければ、プーチン大統領が一段と深刻なジレンマに陥ることも避けられない。 |
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●ロシアとウクライナの会談 交渉継続合意も停戦実現楽観できず 3/1
ロシア軍がウクライナに侵攻してから初めてとなる、ロシアとウクライナの代表団による会談が行われ、双方は交渉を継続していくことで合意しました。しかし、双方の主張の隔たりは大きく停戦が実現するかは楽観できない情勢です。 ウクライナでは、ロシアによる軍事侵攻が各地で続き、民間人も含めて犠牲者が増えています。 こうしたなか、ロシアとウクライナの代表団が28日、ロシア軍の侵攻が始まってから初めてウクライナと国境を接するベラルーシ南東部でおよそ5時間にわたって交渉にあたりました。 ウクライナ側は即時停戦と軍の撤退を求めているのに対し、ロシア側はウクライナの非軍事化と中立化を要求していて、双方が歩み寄りを見せるかが焦点になっています。 交渉のあとロシア代表団のトップのメジンスキー大統領補佐官は「あらゆる議題が詳細に話し合われ、いくつかの点では共通の土台を見いだせる」と述べ、双方がいったん帰国し、数日以内に再びベラルーシとポーランドの国境地帯で交渉する見通しを明らかにしました。 一方、ウクライナ代表団のポドリャク大統領府顧問もツイッターで、「ロシアから突きつけられていた最後通ちょうは無くなった」として一定の進展があったことを示唆しました。 ただ、「交渉は難しい。ロシア側は自分たちが始めた破壊的なプロセスにこだわっている」として、ロシアが強硬な姿勢を崩さず双方の主張の隔たりが大きいことをうかがわせていて、今後の交渉が停戦につながるのかなお楽観できない情勢です。 ●プーチン大統領 停戦条件はウクライナの非軍事化と中立化と強調 ロシアのプーチン大統領はフランスのマクロン大統領と電話会談を行い、ウクライナでの停戦について、あくまでもウクライナの非軍事化と中立化が条件であることを強調しました。 これに対してマクロン大統領は、攻撃をやめて即時停戦を実現することの必要性を訴えたということです。 ロシアのプーチン大統領とフランスのマクロン大統領は28日、電話会談を行い、ロシアが軍事侵攻を続けているウクライナの情勢について意見を交わしました。 ロシア大統領府によりますと会談でプーチン大統領は停戦の条件について「ウクライナ国家の非軍事化と、中立的地位の確保など、ロシアの安全保障上の利益が無条件に考慮された時にのみ可能だと強調した」として、あくまでもウクライナの非軍事化と、NATO=北大西洋条約機構の加盟阻止につながる中立化を求めていく姿勢を示しました。 またウクライナでロシア軍が民間人を脅かしたり民間の建物を攻撃したりしてはいないと主張しました。 一方、フランス大統領府によりますと、マクロン大統領は、ウクライナへの攻撃をやめて即時停戦を実現することの必要性を訴えたということです。 両首脳は今後も連絡を取り続けることで一致したということですが、プーチン大統領の強硬な姿勢が変わらない中で停戦が実現するかは依然、不透明です。 ●米国防総省の高官 “ロシア軍 数日のうちにキエフの包囲ねらう” アメリカ国防総省の高官は28日、記者団に対し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の状況について最新の分析を明らかにしました。 それによりますとロシア軍はウクライナの国境周辺に展開していた戦闘部隊のうち、これまでに75%近くの戦力をウクライナ国内に投入したほか、380発以上のミサイルを発射したということです。 そしてロシア軍は首都キエフに向けてこの1日で5キロ前進し、キエフから北におよそ25キロの地点にいるということです。 この高官はキエフへの侵攻は依然としてロシア軍の主要な作戦だとして、今後、さらに前進を続け、数日のうちにキエフを包囲しようとしていると指摘しました。 このほかの都市ではロシア軍がウクライナ第2の都市のハリコフを狙って激しい戦闘となっているほか、東部ドネツク州のマリウポリへの侵攻も試みていますが、いずれも制圧できていないということです。 さらにウクライナの空域でも攻防が続いていて、ロシア軍はウクライナ全土の制空権を奪えておらず、ウクライナ軍の航空機やミサイル防衛システムは維持されているとしました。 一方、一部のメディアがアメリカ政府関係者の話としてウクライナと国境を接するベラルーシがロシア軍を支援するためウクライナへの部隊の派遣を準備していると報じたことについて、「ベラルーシ軍が準備を整えたりウクライナに向かっていたりする兆候はない」と述べました。 またロシアのプーチン大統領が27日、国防相などに対して、核戦力を念頭に、抑止力を特別警戒態勢に引き上げるよう命じたことについて「われわれは監視を続けているが、プーチン大統領の命令を受けた具体的な動きはまだない」と指摘しました。 ●松野官房長官「高い関心持って注視」 松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「わが国としても、ロシアとウクライナ両国の交渉の行方を高い関心を持って注視している。今回のロシアによるウクライナへの侵略は力による一方的な現状変更の試みで、国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、明白な国際法違反だ。断じて許容できず厳しく非難する」と述べました。 その上で「困難に直面するウクライナの人々に対する支援として、すでに供与する用意があると表明した、少なくとも1億ドル規模の借款に加え、1億ドルの緊急人道支援を行っていく考えだ。これらはきのうの日ウクライナ首脳電話会談で、岸田総理大臣からゼレンスキー大統領に伝達され、高い評価と深い感謝の意が表された」と述べました。 |
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●ウクライナ侵攻で噴出したプーチンへの怒り 停戦に向かうか 3/1
ロシアのプーチン大統領は、クレムリンの密室政治や大統領の思考を読み解く「プーチノロジー」に長けた専門家の予想を裏切り、隣国ウクライナへの全面攻撃に踏み切った。キエフ政府は反ロシアのファシスト政権であると国民に煽り、「自衛のためだ」と開戦の大義を語っている。しかし、今回の武力行使の余波は、これまで曲がりなりにも成功を収めてきたプーチン流支配の様相と大きく異なっている。国父であるはずのプーチン大統領を「恥ずかしい」「妄想に取りつかれている」と嘆く多くのロシア国民がいる。 ウクライナへの全面的軍事作戦を決行したことを踏まえ、多くの人々がグローバル化が進んだ21世紀の現代にありえない蛮行であり、プーチン大統領の判断を全く理解できないと思ったはずだ。敵対する勢力との間に緩衝国(地帯)を置いてモスクワを守ろうとする過剰な国防意識と、冷戦時代に頭の中にこびりついて離れない対米感情がプーチン大統領を開戦に踏み切らせたということが考えられる。 ●これまでの軍派遣とは全く異なる ソ連時代、国境線を乗り換えて軍部隊を派遣する武力介入事件は何度もあった。 象徴的なのは、1956年のハンガリー動乱、68年のプラハの春(チェコ事件)、91年のリトアニアの血の日曜日事件だろう。それぞれの国で起こった出来事の背景は異なるものの、クレムリンが民主運動のうねりを力でねじふせたことは一致している。 ハンガリーも、チェコスロバキアも、そして当時はソ連内にあったリトアニアはもちろん、こうした民主派のうねりはいずれ、ロシア本国に押し寄せるというクレムリンの国防意識があった。米国が背後に暗躍していると考えていた。 当時、それぞれの市民が聞いたソ連軍戦車のキャタピラの音や犠牲者を出したことへの恨み・憎しみはその後もずっと残り、東欧諸国の革命やソ連邦解体へと導く市民の原動力となった。 今回のウクライナへの軍事侵攻が持つ重みはそれらの事件をはるかに上回る。プーチン大統領はかつての同胞に本格的な戦争をしかけ、政権転覆をはかろうとしている。2月24日以前のロシア・ウクライナ関係に決して後戻りはできない一線を越えてしまった。ウクライナ人の怒りは振り切られた。民間人の犠牲者も多数出ており、ウクライナ国民の多くは、プーチン大統領への恨み、憎しみを末代まで抱えることになるだろう。 そして、たとえ今、プーチン大統領がキエフの政権を一時的に抑え込んだとしても、その恨みは後に逆流して、クレムリンの主に打撃を与えることになるのではないか。それは東欧諸国での民主運動のうねりと、ソ連崩壊に向かう歴史が雄弁に物語っている。 ●ロシア国内で起きていた三つの分断 ロシアでは今、ウクライナ侵攻をめぐって、これまであった社会の「分断」がますます浮き彫りになっている。分断は米国社会でも深刻化しているが、ウクライナ開戦を機に、一枚岩であったはずのロシア社会に綻びの萌芽が見える。 水と油のように相いれないロシアでの分断には三つのタイプがある。一つ目の境は「ソ連時代を知っているかどうか」だ。91年にソ連邦崩壊後に生まれた世代は、米国と覇を競った栄光の時代を全く知らない。プーチン大統領がいくら大国ロシアの復活を訴えたとしても、ソ連を知らない若者の心には響かない。 二つ目の分断は「スマホを使いこなし、自由な情報に触れているか否か」だ。ロシアは今、情報統制を強化しており、国営メディアが政権に都合の良い情報ばかりを流し続けている。当然、国営放送のテレビやラジオしか見聞きしていない層は、すっかり政権がコントロールする情報に洗脳されてしまっている。 三つ目は「今のウクライナを知っているか否か」だ。ウクライナは独立後、政治・社会の混乱が続いたが、自由な空気に触れ、ソ連時代とは全く違った国になった。ロシア語を話し、同じ文化圏であるはずの「きょうだい」たちが実はすっかり違う精神社会で生きているのに、その変化を読み取れていない人たちがロシア国内にいる。 プーチン大統領はすべてを織り込み済みで、今回のウクライナ侵攻に踏み切ったはずだ。しかし、この三つの分断で自分たちとは異なる層、つまり、「ソ連時代を知らず、政権がコントロールできないネット上の言論空間に触れている人たち」の行動を読み誤ってはいまいか。 日本で人気のフィギュアスケートのエフゲニア・メドベージェワさんに代表されるようにロシアのスポーツ界からも相次いで反対の声があがっている。ロシアのスポーツ界はプーチン大統領の支持基盤でもあったはずだ。さらに、相手がウクライナであるが故、ソ連人であり、国営メディアしか見ていない人でも、かつての絆や同情心から「戦争をやめて」と訴えている。 取材すると、今、ロシアでは家族内や友人同士でも今回のウクライナ侵攻に関する意見が食い違っている状況が起きている。ウクライナ侵攻がテーマになると、口論が起き、場合によっては絶交状態に陥ることもあるという。 ●世論の動向が今後の情勢を占う 今後、戦争が長期化し、犠牲者が増えれば、反戦、厭戦機運はさらに広がる可能性はあるだろう。 断言できるのは、2014年クリミア半島併合の時はプーチン支持率が一気に高まったのに、今回、ウクライナ侵攻で国民の支持が同等に得られることはないということだ。それだけロシア人にとってクリミア半島は特別な地域であったという証左だが、ロシア国内の情勢は明らかに8年前と異なっている。 今後、制裁が国民の痛みとなって現れ、プーチン大統領の周辺だけが金儲けできる特異な国内事情への不満と直結すれば、それは反プーチン運動に転化する可能性はあるだろう。ただ、現段階ではそれは一つのシナリオでしかない。国内で政敵を追い出したプーチン政権の支持基盤はまだまだ強固だからだ。 ウクライナの国民はウクライナ語もロシア語も話せる。むしろ、近年はロシア(ソ連)のくびきから外れようとして、ウクライナ語の普及を徹底させていたが、いま、ウクライナ国民はロシアの一般庶民に語り掛けるため、ネット空間を利用して、多くの人たちがロシア語で「戦争をやめてほしい」と訴えている。 制裁強化など国際社会のロシアへの圧力は、ウクライナでの戦闘継続に一定の効果をもたらすだろう。それと同時に、ロシア国内の世論動向やそれを抑え込もうとする治安部隊との押し引きが今後の情勢を占うキーポイントとなるはずだ。 ロシアの国内世論でかすかに起こる変化の兆しが見える。ウクライナ、ロシア両国の怒りのマグマがどこに向かい、プーチン大統領がどう対処するのかという「プーチノロジー」の分析がますます重要になるだろう。 |
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●ウクライナ情勢で3日に緊急会合 中ロ反対、インド棄権―国連人権理 3/1
国連人権理事会は28日、ウクライナ情勢に関する緊急会合を3月3日に開くことを賛成多数で決めた。緊急会合では、ロシアのウクライナ侵攻などに関連する人権侵害の調査について、採決が行われる。 緊急会合の開催はウクライナが要請し、日米欧や韓国のほか、対ロ制裁に参加していないブラジルを含む29カ国が賛成した。ロシア、中国、キューバ、ベネズエラ、エリトリアの5カ国が反対し、インドなど13カ国は棄権した。 |
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●米、ウクライナ情勢エスカレートなら対ロ追加制裁=国務省 3/1
米国務省のプライス報道官は28日の定例記者会見で、ロシアがウクライナとの紛争をエスカレートさせ続ければ、追加制裁を科すと述べた。 米国の制裁は同盟国やパートナーの制裁と「対称的で相互に補強し合うものになる」と説明。「ロシアがエスカレートさせ続ければ、われわれはさらに行動する」とした上で、ロシア側が譲歩する様子は現時点で見られないと述べた。 また、ベラルーシのルカシェンコ大統領についても、自国領土からロシア軍がウクライナを攻撃するのを容認したと非難した。 |
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●タリバンがウクライナ情勢で「平和的解決」を呼びかける 2/28
アフガニスタンのタリバン政権が2月25日午後(日本時間)、ロシアのウクライナ侵攻について、双方に暴力の停止と対話による平和的な解決を求める声明を出した。アフガン外務省のアブドルカーヒル・バルヒ報道官が、自らのTwitterアカウントで英文の声明文をツイートした。SNS上では世界中で驚きの声もあがっているが、これには歴史的な背景がある。 ●タリバンの声明、その中身は 声明でタリバン政権は「ウクライナの状況を注視しており、民間人の犠牲者が増える可能性を懸念している」としたうえで、「イスラム首長国(タリバン政権の自称)は、両当事者に抑制を呼びかける。イスラム首長国は中立外交政策に沿い、対話と平和的手段を通じて危機を解決するよう紛争の両側に呼びかける」と対話を求めた。また、ウクライナに暮らすアフガン人の保護を求めた。 ●声明に世界で驚きの声 タリバンと言えば、2020年8月に米軍撤退と前アフガン政府の崩壊で復権するまで、アフガン各地で構成員の自爆テロなどを繰り返し、米軍や前政府の攻撃を続けてきた。そのタリバンが「平和的解決」を呼びかけていることに、Twitter上では世界中から「「オニオン(*アメリカのパロディニュースサイト)かと思ったら本物だった」「おまいう」「タリバンが抑制をよびかける....だ?」といった反応が相次いでいる。 ●タリバンは米だけでなくロシアとも距離 しかし、これには歴史的な背景がある。アフガニスタンでは1979年に旧ソビエト連邦軍が侵攻。抵抗するイスラム勢力などと10年にわたる凄惨な戦闘を続け、敗退した。ソ連と冷戦状態にあったアメリカは当時、イスラム勢力を直接、間接に支援した。その1人が、2001年9月11日に米同時多発テロを起こすことになる国際テロ組織アルカイダの首領オサマ・ビンラディンだ。ソ連軍撤退後の混乱と内戦が続いていた1994年に「イスラムに従った世直し」を掲げて発足したタリバンは、1996年にアフガンの大半を平定。首都カブールを掌握した。しかし、ビンラディンを「客人」として保護していたことから、同時多発テロの直後「テロとの闘い」を掲げる米軍による攻撃を受けて政権を失った。その後20年にわたって地方部に潜伏し、じわじわと勢力を再拡大。昨夏に再び政権を再奪取した。こうした経緯から、タリバンはアメリカと激しく対立してきた一方、アフガンの混乱の要因となった侵攻を行ったソ連の後継国家ロシアにも、強い警戒感を抱いている。そして、かつては「反政府勢力」として攻撃を続けたものの、いまや政権の座に就き、国連大使の派遣受け入れも求めている。政府として自国民を保護する義務もある。そうである以上、「暴力による現状の変更は認めない」という国際社会の基本的な考え方を尊重する必要があり、このような声明を出したとみられる。 |
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●国際刑事裁判所がウクライナ情勢を捜査へ 戦争犯罪で 3/1
国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官は28日、ロシアによる侵攻を含む近年のウクライナ情勢を巡り、戦争犯罪と人道に対する罪の疑いで近く捜査を開始する方針だと明らかにした。 2013〜14年のウクライナ首都キエフでの親ロシア政権によるデモ弾圧、ウクライナ東部や14年にロシアが強制編入した南部クリミア半島での犯罪も捜査対象となる。 カーン氏は声明で「戦争犯罪と人道に対する罪がウクライナで行われたと信じるに足る合理的な根拠がある」と述べた。 ウクライナとロシアはいずれもICCに加わっていないが、ウクライナは戦争犯罪と人道に対する罪についての捜査権限をICCに与えていた。 最近のウクライナ情勢を巡っては、バチェレ国連人権高等弁務官がロシアの行動を「明確に国際法違反だ」と厳しく批判。国連人権理事会は3月3日に緊急討議を開く。 |
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●ロシア、グーグルに広告規制指示 「ウクライナ情勢で誤情報」 2/28
ロシア通信規制当局は28日、米アルファベット傘下グーグルに対し、ウクライナでの軍事行動に伴うロシア軍やウクライナ市民の被害状況について誤った情報を即遮断するよう命じた。そうした情報がグーグル広告を通じて流れるのを問題視している。当局は、問題ある情報を削除するよう要求、誤った情報の発信元を遮断すると警告した。 |
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●経産省 電力・ガス会社に”燃料の確保を” ウクライナ情勢受け 2/28
ウクライナ情勢を受けて、経済産業省は電力会社やガス会社などと連絡会議を開き、エネルギー供給の不安定化が懸念される中、各社に対し、不測の事態に備えて燃料を十分に確保するよう呼びかけました。 ウクライナに軍事侵攻したロシアに対し、欧米や日本が経済制裁を強める中、ロシアが対抗措置としてエネルギーの供給を絞る可能性があるという見方が出ています。 こうした中、経済産業省は28日、大手の電力会社やガス会社などとともに連絡会議を非公式で開き、今後の対応を協議しました。 この中で、経済産業省は火力発電の燃料となるLNG=液化天然ガスの全国の在庫状況について、今月20日時点で182万トンと、2週間から3週間程度の在庫があり、電力の安定供給に直ちに大きな支障はないことを説明しました。 そのうえで、各社に対し、今後の不測の事態に備えて燃料を十分に確保するよう呼びかけるとともに、足りない場合には各社で燃料を融通しあうなど連携して対応していくことを確認しました。 |
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●中国は「苦しい立場」に ロシアのウクライナ侵攻で 米高官 3/1
米国家安全保障会議(NSC)のキャンベル・インド太平洋調整官は28日、ロシア軍によるウクライナ軍事侵攻を受け、ロシアとの関係を強化してきた中国が「苦しい立場に置かれているのは否定しようがない」と述べた。 米シンクタンクのオンライン会合で語った。 キャンベル氏は、ロシアの軍事侵攻に対し米国と同盟・友好国が結束を示していることを中国の指導者が「懸念している」と強調。米欧諸国を中心に各国がロシアへの非難を強めていることで「状況は(中国にとって)厳しいものだ。中ロの連携は今、非常に気まずいものとなっている」と指摘した。 |
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●米バイデン政権は本当に日本を守る?ウクライナ侵攻で浮上した大不安 3/1
●孤立無援のウクライナ 米国もNATOも派兵は否定 「われわれは孤立無援で防戦している。共に戦ってくれる者はいないようだ」 ロシア軍の侵攻開始から一夜明けた2月25日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は米国や北大西洋条約機構(NATO)からの支援が得られないことに悲壮感を漂わせた。主権国家があっという間に侵攻され、その模様がSNSなどで世界中に拡散。一方で、国連も米軍も介入せず「傍観者」となっている現状はあまりに衝撃的だ。 欧米主要国は、これまで首脳レベルでロシアのウラジミール・プーチン大統領の説得を試みるなど外交努力を続けてきた。しかし、実際に軍事侵攻が開始された後は無力だった。 「プーチン大統領はウクライナへの攻撃により、流血と破壊の道を選択した。英国と同盟国は断固対応する」(英国のボリス・ジョンソン首相)、「侵略者のプーチン大統領に代償を払わせる」(バイデン大統領)――。そう厳しく非難を浴びせるものの、軍事侵攻をストップさせるだけの行動力も影響力も持ち合わせていない。 各国は相次いで対ロ制裁を発動し、ウクライナへの支持と連帯を発信している。制裁に一定の効果はあるにせよ、ウクライナが渇望するのは「ただ戦況を見ているだけの傍観者が増えることではない」(外務省幹部)のは明らかだ。 ジョンソン首相は2月24日、ゼレンスキー大統領との電話会談で「西側諸国が傍観することはない」と伝えたというが、ウクライナの「孤立」は変わってはいない。 バイデン大統領は「NATO加盟国を守り、新たな動きに備える」として米軍の派遣を指示したものの、約7000人の派遣先はドイツ。東欧に紛争が波及する事態に備えたものだ。 NATOという軍事同盟に加盟していないウクライナに対しては、米大統領自ら「米軍はウクライナでの紛争に関与しない」と公言し、軍事介入の可能性を否定。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長も、集団防衛義務を定めたNATO条約に基づき即応部隊を東欧に派遣すると表明したが、ウクライナへの派兵は否定している。 ●核放棄と引き換えに手にした 「安全保障の約束」が反故に かつて世界3位の核保有国だったウクライナは1994年に締結した「ブダペスト覚書」で、米国、英国、ロシアが安全を保障する代わりに核兵器を放棄した。だが、米国からも英国からも援軍が得られず、当事国のロシアから軍事侵攻に遭っている状況だ。ウクライナのドミトロ・クレバ外相は「米国が交わした安全保障の約束を守らなければならない」と憤る。 多くの国々は「力による一方的な現状変更は許さない」とロシアを非難するものの、ただ遠巻きから戦況を眺めているだけだ。これでは「侵略した者の勝ち」を認めると言われても仕方ないだろう。 米国にいたっては、世界最強の情報収集能力で早い段階からロシアの軍事侵攻計画をキャッチしていたものの、プーチン大統領の本気度を見誤って包囲網構築に失敗。侵攻後に目立つ動きといえば、ロシア軍の動きを伝える「実況中継」のような公式発表ばかりだ。「世界の警察」とまでいわれた米国のプレゼンス低下は隠せない。 ここで一つの問題が浮かび上がる。それは、日本がウクライナと同じような状況に陥った場合、米国は本当に守ってくれるのかという点だ。 ●ウクライナ危機の行方次第で「台湾危機・日本有事」のリスクも ジョンソン首相は2月19日の演説で、「ウクライナが危機にさらされれば、影響は東アジア、台湾にも波及するだろう」と懸念を表明した。念頭にあるのは、軍拡・覇権主義を突き進む中国の動きだ。 昨年末、習近平国家主席は「祖国の完全統一は、中国と台湾の同胞にとって共通の願いである」と表明。台湾統一は「必ず実現する」と強調してきた。米国は中国が台湾侵攻能力を保有しつつあると見ており、近い将来の「台湾有事」を警戒する声は高まる。 今回のウクライナ侵攻について「ロシアの安全保障問題に関する合法的な懸念は理解する」と繰り返す中国が、米軍の出方をうかがっているのは間違いない。米国もNATOもその他の国々もウクライナに派兵せず、国連の安全保障理事会も拒否権を持つロシアの反対で「無力化」されると判明した今、ウクライナ危機が危険なシグナルとなりかねないといえる。 台湾は沖縄・与那国島から約110kmと近く、「台湾への武力侵攻は日本に対する重大な危険を引き起こす。台湾有事は日本有事」(安倍晋三元首相)とされる。万が一の際は尖閣諸島や南西諸島も極めて重要なエリアになる。 仮に在日米軍基地から出撃して米国が介入することになれば、日本も安全保障関連法に基づいた役割を求められる可能性は高い。 岸田文雄首相は昨年10月のバイデン大統領との電話会談で、尖閣諸島が日米安全保障条約第5条(対日防衛義務)の適用対象になることを改めて確認している。しかし、「日本はもっと自分たちの国は自分たちで守るという意識を持つ必要がある。(『ブダペスト覚書』のような)『覚書』と『条約』は重みが違うから必ず米軍は日本を守ってくれるはず、と信じるだけで本当に良いのか」(閣僚経験者)との声が漏れる。 ロシアが占拠している北方領土にいたっては、さらに厳しい心構えが必要だ。日本が実効支配していない地域のため、「いざ」となっても日本の施政権が及ばないとの理由から安保条約上の防衛義務はないとされている。 加えて、安倍元首相と蜜月関係を築いたドナルド・トランプ氏は米大統領を退任し、現在のバイデン大統領はいまだに岸田首相との対面での首脳会談にも応じていない。 ●「核戦争の回避」は重要だが 日米安保条約の防衛義務の保証は? ウクライナ危機でもう一つ重要な点がある。米国がウクライナ派兵を見送る理由の一つには、プーチン大統領が「外から邪魔を試みようとする者は誰であれ、歴史上で類を見ないほど大きな結果に直面するだろう」と核兵器の行使を示唆したことが挙げられている。 バイデン大統領は26日公開のインターネット番組で「選択肢は二つだ。ロシアと第3次世界大戦を起こすか、国際法違反の国に代償を払わせるかだ」と述べた上で、経済・金融制裁の選択を強調した。地球の破壊につながる第3次世界大戦に発展しかねない状況を避けるために、という米国の判断は現実解としてあり得るだろう。 ただ、このバイデン大統領の判断を「日本危機」に当てはめて考えた場合はどうか。「日米安保条約の防衛義務はあるものの、核戦争になりかねないので米軍は関与しない」という判断にならない保証はどこまであるのか。 国連が機能せず、サイバー攻撃が行われ、重要な合意や首脳による約束も意味を失いつつあるウクライナ危機を見ると、主権国家の安全保障を再点検・再構築すべき時期を迎えているのは間違いない。いくら合同軍事演習を繰り返したとしても、現実には「米国による武器の供与」で終わってしまう可能性は高い。 ロシア、中国という核保有国に加え、核開発や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮の脅威にもさらされている日本。岸田首相は「明日はわが身」との危機感を持ち、早期にウクライナ危機を踏まえた対処方針を再検討する必要がある。 |
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●国連総会の緊急特別会合始まる ロシアを非難する発言相次ぐ 3/1
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり、すべての国連加盟国が参加できる国連総会の緊急特別会合が国連本部で始まり、多くの加盟国からロシアの軍事侵攻を非難する発言が相次ぎました。緊急特別会合は数日にわたって開かれ、アメリカなどはロシアを非難する決議を採択し圧力を強めたい考えです。 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐる国連総会の緊急特別会合は、28日午前、日本時間の1日午前0時すぎからニューヨークの国連本部の総会議場で始まりました。 冒頭、今回の軍事侵攻で命を落とした人々のために黙とうがささげられました。 そして国連のグテーレス事務総長が演説し、「ウクライナでの戦闘を今すぐ止めなければならない」と訴え、ロシアの核戦力を運用する部隊が人員を増強し特別警戒態勢に入ったことについて、「核兵器の使用を正当化できるものは何もない」と厳しく批判しました。 続いてウクライナのキスリツァ国連大使が演説し、ロシア軍によるミサイル攻撃などで子どもを含む多くの市民が犠牲になっているとして、ロシアを非難しました。 これに対しロシアのネベンジャ国連大使が演説し、今回の作戦がウクライナ軍からウクライナ東部のロシア系住民を守るためものだと反論しました。 このあと、各国の代表による演説が行われ、ロシアを非難する声明が相次いでいて、国連によりますと193の加盟国の半数以上が演説することから会合は数日間にわたる見通しだということです。 国連総会の緊急特別会合の開催を提案したアメリカなどは、安全保障理事会での決議案がロシアの拒否権によって否決されたことから、すべての加盟国が参加する国連総会でロシアを非難する決議を採択することでロシアの国際的な孤立を際立たせ圧力を強めたい考えです。 ●ロシアの国連大使 軍事侵攻を正当化 ウクライナのすぐあとに演説したロシアのネベンジャ国連大使は、今回の軍事侵攻について「ウクライナ東部をめぐる停戦合意の履行をウクライナ側が怠ってきたからだ」と述べて正当化しました。そのうえで、「われわれの計画にウクライナの占領は入っていない」と述べ、侵攻はウクライナの非軍事化などが目的だと主張しました。 ●日本「ヨーロッパと世界の国際秩序の基盤を揺るがす」 国連総会の緊急特別会合で演説した日本の石兼国連大使は「力によって現状を変えようとする一方的な試みは、ヨーロッパと世界の国際秩序の基盤を揺るがすものだ。ロシアの一連の決定と行動は、国際法と国連憲章に明確に違反している」と述べ、強く非難しました。そのうえでロシアに対し、「直ちに攻撃をやめて軍を撤退させ、外交の道に戻らなければならない」と求めました。 ●英仏もロシアを強く非難 国連総会の緊急特別会合でイギリスのウッドワード国連大使は「ロシアは正当な理由なくウクライナに侵攻した。人道状況の悪化は計り知れず、ウクライナの民間人に対する無差別攻撃が行われている」と強く非難しました。そのうえで「今われわれがウクライナ人たちのために立ち上がらなければすべての国の国境と独立が危険にさらされることになる」と述べ、国際社会が一致してロシアの軍事侵攻に反対すべきだと強調しました。また、フランスのドリビエール国連大使は「国連総会は今、歴史的な責任を負っている。この戦争の即時終結とウクライナからのロシア軍の撤退を求めるすべての大陸の市民の声を、はっきりと伝えなければならない」と述べました。そのうえで、会合の最終日に採決が行われるロシアを非難する決議案について「すべての加盟国に賛成するよう求める。これはウクライナ情勢にとどまらず国連憲章と国連の存在意義を守る問題だ」と呼びかけました。 ●中国 ロシアへの非難控えウクライナに対応求める 一方、中国の張軍国連大使は「現在の状況はわれわれが目の当たりにしたくない事態にまで発展した。当面の優先事項はすべての当事者が自制して外交努力を強化し、状況のさらなる悪化を防ぐことだ」と述べ、現状に懸念を示しながらも、ロシアへの非難は控えました。そのうえで「ウクライナは、大きな権力の対立の最前線に立つのではなく、東西の間の橋渡し役を務めるべきだ」と述べて、ウクライナに対して事態の打開に向けた対応を求めました。 |
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●「新冷戦」勃発は杞憂?ロシアがウクライナ侵攻で窮地に追いやられる理由 3/1
●地政学的にロシアvs欧米・NATOを考える ロシアの軍事施設への空爆は、ウクライナ全土に広がり、首都キエフにもロシアの軍用車両が入り、銃撃戦が起きているという。 ウラジーミル・プーチン大統領は、「ロシアは世界で最も強力な核保有国の一つだ。わが国を攻撃すれば壊滅し、悲惨な結果になることに間違いない」と強調し、繰り返し核兵器使用の可能性に言及して国際社会を威嚇している。 これまで、プーチン大統領は「ソ連崩壊は20世紀最大の地政学的大惨事」と主張してきた。旧ソ連の影響圏を復活させる「大国ロシア」復権の野望があるという。ウクライナを制圧し、次は旧ソ連構成国だったエストニア、ラトビア、リトアニアの「バルト3国」、そして旧共産圏だった東欧諸国と、旧ソ連の影響圏だった国を取り戻そうとしているという。 この連載では、プーチン大統領の「大国ロシア」は幻想だと主張してきた(本連載第142回)。現在起きていることが何なのかを、地政学的に検証して正確に理解する必要がある。まず、次のページの地図を見てもらいたい。 東西冷戦期、ドイツが東西に分裂し、「ベルリンの壁」で東西両陣営が対峙した。旧ソ連の影響圏は、「東ドイツ」まで広がっていた。しかし、現在ではベラルーシ、ウクライナなど数カ国を除き、ほとんどの旧ソ連の影響圏だった国が北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合(EU)加盟国になった。 つまり、東西冷戦終結後の約30年間で、旧ソ連の影響圏は、東ドイツからウクライナ・ベラルーシのラインまで後退したということだ。 ●ロシアが懸念する、自由民主主義の浸透 2014年に、ロシアがクリミア半島を占拠した。「大国ロシア」復活を強烈に印象付けたというかもしれないが、それは違う。ボクシングに例えるならば、まるでリング上で攻め込まれ、ロープ際まで追い込まれたボクサーが、かろうじて繰り出したジャブのようなものではないだろうか(第77回)。 今回のウクライナ危機も、ロシアと米国、NATOの力関係の構図は同じだ。だが、ロシアの状況は、2014年より深刻だ。2014年のロシアによるクリミア半島併合後、ウクライナでは自由民主主義への支持が高まった。NATO・EUへの加盟のプロセスは、具体的に動いてはいないが、実現可能性は高まっていたからだ。 ロシアと国境を接し、ロシアとの二重国籍者もいるというウクライナ(法的にウクライナでは認められていない)が自由民主主義陣営に加わることは、ロシアには絶対に容認できない。NATO軍と直接対峙するリスクだけではなく、ロシア国内に自由民主主義が浸透していく懸念もあるからだ。その懸念の大きさは、プーチン大統領の米国とNATOに対する要求を読めば明らかだ。 プーチン大統領は、「NATOがこれ以上拡大しないという法的拘束力のある確約」「NATOがロシア国境の近くに攻撃兵器を配備しない」「1997年以降にNATOに加盟した国々からNATOが部隊や軍事機構を撤去する」の3つの要求をしている。 これは、1997年以降のNATO加盟国である中欧、東欧、バルト3国からNATOが撤退し、NATOの範囲が1997年以前の状態に戻ることを求めていることになる。到底、米国、NATOがのむことができない強気な要求にみえる。 だが、プーチン大統領の要求は、一見強気な姿勢とは裏腹に、実はロシアの苦境を示している。拡大を続けるNATOをなんとか止めなければ国家存亡に関わる。必死の「守り」なのである。 ●NATO軍との長期的総力戦に耐えられないロシア ここで、ロシアの「実力」を考察する。確かに、ロシアのウクライナへの軍事侵攻は電撃的であった。綿密な作戦を練り上げて、周到な準備をしてきたのがわかる。 しかし、ロシアには東欧やバルト3国に戦線拡大する実力はない。NATOは集団安全保障体制だ。加盟国が攻撃されれば、それは全加盟国に対する攻撃とみなされる。全加盟国は、個別的または集団的自衛権を行使して、攻撃を受けた国を援護することになっている。つまり、ロシアが東欧やバルト3国を攻撃すれば、NATO全加盟国と戦争になる。 ロシア軍が精強で、奇襲や局地戦には強いことは明らかだ。だが、NATO軍との全面的な総力戦に長期的に耐えられるものではない。プーチン大統領は、それを百も承知だ。核兵器使用の可能性を繰り返し強調するのは、裏返せば核兵器をちらつかすしかないからだ。 ロシアが長期的な総力戦に耐えるのに必要な条件である「経済力」を考えてみたい。まずは、ロシアと欧州をつなぐ天然ガスパイプラインについてである。 ロシアなど天然ガス供給国は、EUなど需要国に対して圧倒的交渉力を持つとされている。ロシアの資源量が圧倒的なのに対し、EUはエネルギー資源に乏しい。EUはロシアの強引な天然ガスを利用した外交攻勢や価格引き上げ攻勢に悩まされる。だから、EUは対ロ経済制裁に慎重にならざるを得ないというものだ。 だが、現実の天然ガスの長距離パイプラインのビジネスでは、供給国と需要国の間で、一方的な立場の有利、不利は存在しない。物理的に取引相手を変えられないからだ。 一方、天然ガスは石油・石炭・原子力・新エネルギーでいつでも代替可能なものだ。供給国が人為的に価格を引き上げたりすると、たちまちに需要不振になる。なによりも、供給カットなどを行うと、供給国は国際社会での信頼を一挙に失ってしまうのだ。 だから、ロシアなど供給国が、需要国に対して価格引き上げや供給カットで外交攻勢をかけることは事実上不可能だ。現実の天然ガスビジネスでは、供給国と需要国の交渉力は、ほぼ対等の関係にあるのだ(第52回・p3)。 実際、2014年のウクライナ危機の際、ロシアは欧州の経済制裁に対する報復となるパイプラインの供給カットは一切行わなかった(第84回・p3)。ロシアは、ソ連時代から欧州にとって、最も信頼できるガス供給者であり、天然ガスを国際政治の交渉手段として使ってきた事実はほとんどないのだ。 現在、ドイツとロシアをつなぐ2本目の天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」が昨年9月に完成しながら、EUの承認が遅れていまだに稼働していない。EUは、天然ガスがロシアに武器として利用されないよう、あらゆる手段を尽くすと表明している。 EUはロシアの出方を警戒してはいるが、着実に手を打っていて、米国などから天然ガスを調達しようとしている。パイプラインでなく、LNG(液化天然ガス)として輸送するのでコスト高ではあるが、それを我慢すれば、他から調達可能なのだ。 ●技術力がなく資源が支え、脆弱なロシア経済 さらに、ロシア経済の脆弱な体質を指摘しておきたい。 ロシアは旧ソ連時代の軍需産業のような高度な技術力を失っている。モノを作る技術力がなく、石油・天然ガスを単純に輸出するだけだ。その価格の下落は経済力低下に直結してしまうのだ。 実際、2008年のリーマンショック後や、2014年のウクライナ危機の後の経済制裁、その後の長期的な原油・ガス価格の下落は、ロシア経済に深刻なダメージを与えてきた。輸出による利益が減少、通貨ルーブルが暴落し、石油・天然ガス関係企業の開発投資がストップ。アルミ、銅、石炭、鉄鋼、石油化学、自動車などの産業で生産縮小や工場閉鎖が起きたのだ(第142回・p2)。 現在、世界の原油・ガス価格は高騰している。長期的な価格低迷から脱して、ロシア経済は一息つき、安定している。それが、「欧米の経済制裁は効果がない」と、プーチン大統領を強気にさせている。 しかし、原油・ガス価格の決定権を究極的に持つのは、「シェール革命」で世界最大級の産油・産ガス国に返り咲いた米国だということを忘れてはならない(第173回)。米国がシェールオイル・ガスを増産し、石油・ガス価格が急落すれば、ロシア経済はひとたまりもない。 バイデン政権は、民主党を支持する環境関連団体との関係もあり、シェール増産には慎重だ。だが、ロシアの生殺与奪の権利を有しているのは間違いない。 そして、SWIFTからロシアを排除する制裁措置である。 ●大国ロシアの復活は幻想だが、中国は… 結論から言えば、これは絶大の効果がありそうだ。SWIFTは国際貿易における資金送金の標準的な手段となっているが、ロシアの銀行がSWIFTから排除されると、世界中の金融市場へのアクセスが制限される。ロシアの企業や個人は、輸出入の代金の支払いも受け取りも困難になる。 ロシア経済の大部分を占める石油・天然ガスのパイプラインでの輸出は、取引が停止する。ロシアは国家収入の大部分を失うのだ。しかし、取引相手の欧州は、コスト高に直面はするが、LNGを米国、中東、東南アジアからかき集めることができる。 米国が本気になれば、石油・天然ガスを増産して欧州を助けることができる。ロシア経済に甚大な打撃を与えることになるのは間違いない。プーチン大統領は、できるだけ早期の事態の収束に乗り出さざるを得なくなるだろう。 「3つの要求」を米国やNATOが受け入ることはない。ウクライナの大部分を実効支配できる可能性はあるが、得られるものはそれだけだ。プーチン大統領は、次第に厳しい状況に追い込まれていくことになる。 「大国ロシア」の復活は、幻想にすぎない。東西冷戦終結後、米国や欧州が築いてきた国際秩序は崩壊などしていない。むしろ、NATO・EUの東方拡大という戦略は、ほぼ完成している。だからこそ、追い込まれたロシアは「窮鼠猫を噛む」的に暴れたのだ。 地政学的に見れば、欧州よりも、太平洋のほうがより深刻だ。 ランドパワーを持つ中国が台湾を武力で統一すれば、日本列島からフィリピンの「第1列島線」を越えて、中国が本格的に太平洋に進出するシーパワーとなるからだ。それは、欧米や日本などが築いてきた国際秩序が太平洋で完全に崩壊することを意味する。 |
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●専門家が指摘「プーチン」にコロナ禍で起きた変化 3/1
自らの大統領のことはわかっている——。ロシアの人々はそう考えていたが、これは間違いだった。 そして2月24日には、すでに取り返しのつかない状況になっていた。 大統領に就任してからの22年間、ウラジーミル・プーチンは国内に対してはほぼ一貫して、静かな決意を秘めた指導者のオーラをまとってきた。卓抜した危機管理能力によって、世界最大の国土を誇るロシアを巧みに導く人物。それがプーチンの国内的イメージだったのだ。 だが、こうしたイメージはウクライナ侵攻で崩れ去り、指導者プーチンのまったく別の姿がむき出しとなった。プーチンは核の超大国を出口の見えない戦争に引きずり込み、ソ連崩壊以降30年にわたり平和な世界秩序の中で居場所を見つけようとしてきたロシアの試みに終止符を打とうとしているようにしか見えないからだ。 ●プーチンの行動はもはや理屈では理解不能 2月24日、ロシアの人々は衝撃の中で目を覚ますことになった。午前6時前に放送された国民向けのテレビ演説で、プーチンはウクライナへの全面攻撃を命じたと明らかにした。ウクライナは、政治的な立場にかかわらずロシアの人々がしばしば「兄弟国」と呼ぶ、ロシアとつながりの深い国だ。 開戦に対し国民から歓喜の声が自然と沸き起こることはなかった。長年にわたりプーチンの権威主義と妥協し、適応を試みてきたリベラル派の著名人たちは、自分たちには止めるすべのない戦争に反対する意見をソーシャルメディアに投稿する以外、何もできない状態となっていた。 国民の中にはもっとはっきりと声を上げる人たちもいた。サンクトペテルブルクからシベリアまで、何千という人々が圧倒的な数の警察隊を前にしながらも街頭で「戦争反対」のデモを繰り広げ、人権団体のOVDインフォによると、24日だけで1700人を超える拘束者を出した。 そして、モスクワの外交政策ウォッチャーの多くは、彼らが何十年と研究し続けてきたプーチンの意図を、とんでもなく読み違えていたことを認めた。アナリストの圧倒的大多数はここ何カ月と、ウクライナを軍事的に包囲するプーチンの行動を、抜け目なく巧みな「はったり」と位置づけてきた。 「私たちが考えていたことは、すべて間違いだったことが明らかになった」と、アナリストの1人は話した。このアナリストは、何を言うべきか途方に暮れているため、記事では名前を伏せて欲しいと強く要望した。 別のアナリストは、「動機も、目標も、可能性としてどのような結果が考えられるのかもわからない」とし、「とても奇妙なことが起きている」と語った。 もう1人のアナリスト、政治分析会社Rポリティックのタチアナ・スタノヴァヤは、「ずっとプーチンを理解しようとしてきた」が、もはやロジックによる分析は限界に達したようだ、と話した。「現実路線は後退し、彼は感情任せで動くようになっている」。 ●楽観から一転、「出口なき戦争」に広がる絶望 その一方でロシアの株価は暴落、ATMもドル不足に陥り、国民はインターネット上でロシア自慢の軍隊が、自分たちの親戚や友人が何百万人と住むウクライナで殺戮を繰り広げる様子を目にした。 「世界がひっくり返ってしまった」。24日夜、機動隊が多数出動する中、モスクワ中心部で反戦デモに参加していたアナスタシア(44)はそう言って涙を流した。「どんなにひどいことになるか想像もつかない。破滅的な出来事だ」。アナスタシアは報復を恐れ、ファーストネームしか明かさなかった。 国民の多くはそれまで、クレムリンが喧伝する「ロシアは平和を愛する国家であり、プーチンは計算高く慎重な指導者だ」という物語を受け入れていた。国民の多くは今でも、ロシアが1990年代の貧困と混沌を脱し、それなりの生活水準と国際社会からの尊敬を得られる国になれたのはプーチンのおかげだったと考えている。 過去3カ月間、ウクライナ周辺にロシア軍が集結しているのは侵攻の前触れにほかならないとアメリカの当局者が警告する中、ロシア国民はこうした見方を一笑に付してきた。 プーチンはリスク管理を重視する指導者であり、軽率な行動に出て予測不能な事態を招くはずなどないが、西側にはそうしたことが理解できないのだ、という立場である。反体制派の大物は獄中か国外という状況の中、反戦運動を組織できるだけの影響力を備えた人物はほとんどいなくなっていた。 ロシア政府とつながりのある著名人には侵攻説を荒唐無稽と決めつける態度を改める者も出るようになっていたが、彼ら自身が認めるように、もはや手遅れだった。国営テレビの深夜番組で突出した知名度を誇るコメディアン、イヴァン・ウルガントは、2月に入ってからも、戦争が近づいているという見方を自身の番組内でからかっていた。そのウルガントは24日、インスタグラムに真っ黒な正方形の画像を投稿し、「恐怖と苦痛」という言葉を添えた。 ●「考えられる最悪シナリオしかない」 一方、有名テレビパーソナリティーのクセーニア・サプチャクは、1990年代にプーチンの師匠となった元サンクトペテルブルク市長を父に持つ人物だが、そのサプチャクはインスタグラムの投稿に、祖国の未来についてはもはや「考えられる最悪のシナリオしか信じられるものはない」と記した。彼女はその数日前、ウクライナやアメリカの大統領に比べると「成熟し、適切な資質を備えた政治家だ」としてプーチンを称賛したばかりだった。 「私たちの誰もが、この状況から逃れられない」とサプチャクは24日の投稿に書いた。「出口はない。私たちロシア人は、今日という日がもたらした結果から抜け出すのに何年ももがき苦しむことになるだろう」。 新型コロナ禍の中で、アナリストたちはプーチンのある変化に目を留めていた。西側諸国の指導者とは比較にならないほど厳しい隔離のバブルに引きこもったプーチンは、孤立の中で怒りを強め、より感情的になり、硬直した歴史的な文脈の中で自らの使命を語ることが増えた。 ロシアが西側から過去何世紀にもわたって押しつけられてきた誤った歴史を正す必要があるとプーチンは語り、公の発言で見せる歴史観はかつてなく歪んだものになっていた。 2011年に仲たがいするまで顧問としてプーチンを近くで支えた政治学者のグレブ・パブロフスキーは、1時間に及んだ21日の国民向けテレビ演説でプーチンがウクライナをロシアに対する差し迫った脅威だとする、わけのわからない言葉を口走るのを見て愕然としたと話した。 「何がきっかけでそのような考えを持つようになったのか検討もつかない。とてつもなく奇妙な文書に目を通しているのだろう」とパブロフスキーは言った。「彼は孤立している。かつてのスターリン以上に孤立している」。 ●それでも「プーチン降ろし」は起こらない 前出のアナリスト、スタノヴァヤは、今から考えると、ここ何年かでプーチンが歴史に取りつかれるようになったことが彼の動機を読み解くカギになっていたように思うと話した。 何しろ、ウクライナ侵攻は「戦略」で説明できるような動きではない。この戦争に明確な落としどころはなく、国外の反ロシア感情に拍車をかけ、北大西洋条約機構(NATO)との対立をエスカレートさせる結果しかもたらさないのは目に見えている。 スタノヴァヤによれば、プーチン周辺の高官らはどう見てもウクライナ侵攻が実際に始まるとは考えておらず、どう対処すべきかもわかっていなかった。国営テレビの出演者とクレムリンを支持する政治家を除いては、ロシアの著名人から戦争を支持する声はほとんど上がらなかった。 しかし、だからといってプーチンに「宮廷クーデター」の危険が迫っていることにはならないとスタノヴァヤは言った。プーチンはロシア全土に張り巡らされた治安機構をがっちりと掌握し、過去1年にわたり反対派を広範囲に取り締まってきた。 「プーチンがなお、長期にわたってロシアを動かし続ける可能性はある」と、スタノヴァヤは語った。「ロシア国内では、プーチンは政治的なリスクからほぼ完全に守られているといっても過言ではない」。 |
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●「プーチン氏はナポレオンやヒトラーのようなミス」 米元高官 3/1
戦略家として著名なマクマスター元米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は2月28日、ロシアのウクライナ侵攻に関して「ロシア軍にウクライナを従属させるだけの力はない。プーチン露大統領は戦略的な判断を誤った。(ロシア帝国やソ連の侵攻に失敗した)ナポレオンやヒトラーのように、地図だけ見て(作戦を考え)、実際の縮尺を考慮しないミスを犯したのかもしれない」と指摘した。 元米陸軍中将でもあるマクマスター氏は、日本部長を務める米シンクタンク「ハドソン研究所」で、記者団の質問に答えた。 ロシアの侵攻の狙いについて「首都キエフを制圧して現在の指導者を排除し、ロシアに従属的な指導者にすげ替えようとしたのだろう」との見方を示した。 その上で「ロシア軍の中でも(市街戦に適した)近接戦闘の部隊は3割程度だ。都市制圧には大量の歩兵が必要なのにロシアは(東部や南部など)五つの戦線に軍を分散させており、間違いを犯している」と分析した。 また、ロシアが2014年にウクライナ南部クリミア半島を一方的に編入した後、ウクライナが軍士官養成や国防産業活性化に力を入れてきたと指摘。「プーチン氏は戦車やロケット発射装置の数などハードウエアだけで判断し、ウクライナ軍には有効な抵抗はできないと想定したに違いないが、戦意の高いウクライナ国民と戦う羽目になっている」との見方を示した。 米欧が侵攻の抑止に失敗したことについては、21年の米軍のアフガニスタン撤収時の混乱、14年にシリアの化学兵器使用疑惑が発覚した際の軍事介入回避、クリミア半島の一方的編入に対する制裁の甘さなどを挙げ「ロシアはそうした行動を弱さとみなし、抑止の意思がないと判断した」と指摘した。 また、中国の習近平国家主席もプーチン氏と同様、最近の米欧などの状況を見て「民主主義は弱く、権威主義は強い」と考えていると指摘。「中国はウクライナ情勢を注視している。台湾や南シナ海の安全保障を考えると、ロシアを失敗させることが非常に重要だ」と強調した。 |
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●「3日間で戦闘部隊30%失った」…ウクライナを軽視したプーチン露大統領 3/1
ロシアのウクライナ全面侵攻5日目、ロシアがウクライナを容易にねじ伏せるという予想とは違う戦況に向かっている。ロシアは主要目標とするウクライナの首都キエフ、第2の都市ハリコフ、黒海沿岸の拠点マリウポリをまだ占領していない。 戦争の序盤、ロシアの損失はかなり大きい。21世紀軍事研究所のリュ・ソンヨプ研究委員は「ウクライナ国防省の26日の発表によると、ロシアの戦車146台と装甲車706台が破壊された」とし「普通、全体戦力の30−50%ほど被害を受けた部隊を戦闘不能とみる。25−30個大隊戦術団を失ったということ」と述べた。大隊戦術団とは戦車(10台)・装甲車(40台)を中心に砲兵・防空・工兵・通信・医務を集めた大隊規模のロシア軍臨時部隊編成だ。 ロシアは今回の戦争に160個大隊戦術団を動員し、100個を戦闘に投入した。3日間(26日基準)の戦闘で30%を失ったという数値だ。ウクライナが善戦しているということだ。 その理由について韓国国防研究院のバン・ジョングァン研究員(予備役陸軍少将)に話を聞いた。 ●ロシアの判断ミス ロシアは速戦即決で戦争を終える考えだった。ロシア軍が3方面から大規模に侵攻すれば、ゼレンスキー大統領を含むウクライナ政府の指揮体系は瓦解すると仮定した可能性がある。その通りに戦争が進行すれば、5日目に無条件降伏に近い状況で終わった2008年のジョージア戦争と同じ様相になったはずだ。 ロシアが今回の戦争のために動員した15万人の兵力は、ウクライナの領土と人口を考慮すると十分でない。それでウクライナの首都キエフを含む大都市を核心目標に選定したとみられる。 ゼレンスキー大統領を中心にウクライナ国民は老若男女を問わず銃を握っている。ウクライナ国民の強い戦意はロシアが開戦を決定した時に考慮した「仮定」とは違っていたのだろう。プーチン露大統領の仮定は外れ、速戦即決の成功の可能性は遠ざかっている。 開戦の2、3日後、ロシアは包囲した大都市に進入するかどうかを悩んだ可能性がある。「都市は兵力をのみ込む」という言葉がある。市街戦は攻撃側に非常に不利だ。都心の建物は進撃を妨害し、敵軍には最適な待ち伏せ場所となる。このためロシアは1994−95年の第1次チェチェン戦争当時、チェチェンの首都グロズヌイで大きな被害を受けた。 キエフを含む市街戦でロシア軍に多くの死傷者が発生すれば、プーチン大統領は政治的に厳しい。ロシアは独裁国家だが、選挙を行う。次の大統領選挙でプーチン大統領は決して有利ではないはずだ。 ●西側の支援 昨年11月、ロシア軍が大規模な兵力を集結すると、米国はこれをメディアに積極的に公開し始めた。前例のないことだ。米国は2014年のクリミア半島、2021年のアフガニスタン撤収作戦の情報失敗を挽回するため切歯腐心したとみられる。米国が最初の侵攻予定日として公開した2月16日が実際にロシアが最初に計画した日程だったが、奇襲効果が消えて遅らせたという主張が説得力を持つ。 米国とNATO(北大西洋条約機構)はウクライナへの派兵を検討していない。しかし軍事支援は続けている。米国だけでも2014年のロシアのクリミア半島強制合併以降、ウクライナに54億ドル(約6兆5000億ウォン、約6240億円)の軍事援助をした。バイデン米大統領は3億5000万ドル規模を承認し、議会に64億ドルの予算を要請した。 米国はウクライナにジャベリン対戦車ミサイル、スティンガー地対空ミサイルなどを提供し、都心地域を中心に防御するよう助言したとみられる。携帯と操作が容易で、自発的に戦闘に参加する民兵も運用できるというのが、これら武器の長所だ。実際、ウクライナがロシアの戦車と装甲車、ヘリコプターを防ぐのに決定的に寄与している。 ●大隊戦術団の限界 ロシアは大隊戦術団という独特の部隊編成で戦闘に投入した。地域紛争介入に最適化された部隊編成だ。大隊戦術団の長所は小規模に戦車、装甲車、砲兵、防空など諸兵協同要素を最大限に含めた点だ。最も大きな短所は整備・補給などを担当する組織の編成が微弱という点だ。 このためロシアは2014年のドンバス紛争で大隊戦術団が敵地深くまで進撃しないよう指示したという米国の報告書がある。ロシア大隊戦術団はウクライナでの長期間作戦を制限せざるを得ない。一定の時間が経過すれば国境の外に待機中の大隊戦術団と交代で投入される可能性がある。 |
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●日本政府、プーチン氏ら露要人6人の資産を凍結 外相、国防相も 3/1
政府は1日午前、ウクライナを侵攻したロシアに対する制裁措置として表明している資産凍結の対象として、プーチン露大統領ら6人とロシアの銀行3行を発表した。プーチン氏のほか、ラブロフ外相、ショイグ国防相、ゲラシモフ参謀総長、国家安全保障会議のパトルシェフ書記とメドベージェフ副議長の名前を挙げた。 岸田文雄首相は1日未明に行われた欧米諸国の首脳との電話会議で「日本は、欧米諸国と足並みをそろえて迅速に厳しい対ロシア制裁措置を打ち出してきている」と説明していた。 資産凍結の対象となった銀行は政府系の対外経済銀行(VEB)、軍との関係が深いプロムスビヤズ・バンク、ロシア中央銀行。また、外務省は対外諜報庁や連邦保安庁、造船会社など49団体を対象とした禁輸措置を告示し、8日から実施する。 |
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●プーチン大統領らの資産凍結 ロシア中銀も制裁―閣議了解 3/1
政府は1日午前の閣議で、ロシアのウクライナ侵攻を受け、プーチン大統領ら6個人とロシア中央銀行など3銀行の資産を凍結する制裁措置を了解した。 ロシア中銀への制裁は即日実施。松野博一官房長官は記者会見で「欧米諸国と足並みをそろえて実行に移したことで、ロシア中銀が制裁の効果を損なう形で外貨準備を展開することを阻止することにつながる」と意義を強調した。 今回の制裁措置は、岸田文雄首相が2月25日に大枠を発表。対象の個人には、パトルシェフ安全保障会議書記、ラブロフ外相、ショイグ国防相らが含まれる。銀行は、開発対外経済銀行、プロムスビャジバンクも対象とした。 軍事関連企業など49団体への輸出禁止、半導体などを念頭にロシアの軍事力強化に資する汎用(はんよう)品の輸出禁止も正式に決めた。 |
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●岸田首相 ウクライナ情勢 “国際社会結束し きぜんと対応を” 3/1
岸田総理大臣は、ウクライナ情勢をめぐるG7=主要7か国などの首脳らによる電話会議に参加し、ロシアによる軍事侵攻に対し、国際社会が結束し、きぜんと対応することが重要だと訴えました。首脳らは、ロシアを厳しく非難し、国際社会が一致して強力な制裁措置をとっていく必要性を確認しました。 ウクライナ情勢をめぐり、アメリカのバイデン大統領の呼びかけでG7=主要7か国などの首脳らによる電話会議が、日本時間の1日未明行われ、岸田総理大臣も参加しました。 これについて岸田総理大臣は1日朝、総理大臣官邸で記者団に対し「私からは、ロシアのウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがすものであるということ、また国際社会が結束して、きぜんと対応することが重要であることなどを訴えた」と述べました。 また「唯一の戦争被爆国、とりわけ被爆地・広島出身の総理大臣として、核による威嚇も使用もあってはならないと強調した」と述べました。 さらに会議では、各首脳らが「ロシアによるウクライナ侵略は武力の行使を禁止する国際法の深刻な違反だ」として厳しく非難したうえで、国際社会が一致して強力な制裁措置をとっていく必要性を確認するとともに、引き続きウクライナ政府や避難民への支援で協力していく方針で一致したと説明しました。 そして岸田総理大臣は「今後もわが国としては、G7や国際社会と連携をとりながら、引き続き適切に対応していきたい」と述べました。 ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、岸田総理大臣との電話会談のあと、みずからのツイッターに投稿し、日本の支援に謝意を表明しました。 この中では「侵略に対抗するウクライナへの強力な支援に感謝する」として、具体的には、先に日本が表明した1億ドル規模の円借款に加えて1億ドルの人道支援を行う方針や、ロシアに対して厳しい制裁措置をとるとした姿勢を評価しています。 その上でゼレンスキー大統領は「真に世界的な反戦連合が動きだしている」として、日本を含む国際社会の支持のもとロシアに断固として即時停戦と軍の撤退を求めていく姿勢を強調しています。 |
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●米大統領 ウクライナ対応めぐり 岸田首相に謝意 訪日の意向も 3/1
アメリカのバイデン大統領が岸田総理大臣に対し、ウクライナ情勢をめぐる日本政府の制裁措置やLNG=液化天然ガスの一部をヨーロッパ向けに融通したことなどへの謝意とともに、数か月以内に日本を訪問する意向を示す書簡を送っていたことが分かりました。 政府関係者によりますと、アメリカのバイデン大統領から28日、岸田総理大臣に対し、ウクライナ情勢での一連の日本政府の対応に謝意を示す書簡が送られたということです。 この中では「ロシアにおけるウクライナ侵略への対応における岸田総理大臣のリーダーシップに特に感謝している。日本の強力な対応は、ロシアによる理不尽で不当な攻撃に対し、国際社会が連帯して立ち向かうメッセージとなった」としています。 そのうえで、「岸田総理大臣が安定した石油市場の確保に関する最近の声明やLNG=液化天然ガスの日本からヨーロッパへの振り分けに関する迅速な行動だけでなく、厳しい金融制裁と輸出管理措置の発表についても、緊密に連携してくれていることに感謝する」としています。 そして、「今後、数か月のうちに日本で岸田総理大臣とお会いし、極めて重要な日米同盟を前進させるため、引き続き、ともに取り組んでいくことを楽しみにしています」と結んでいます。 |
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●首相「核で威嚇、許されず」 米欧とウクライナ情勢協議 3/1
岸田文雄首相は1日、ウクライナ情勢を巡る米欧首脳との電話協議で「唯一の戦争被爆国、被爆地・広島出身の首相として核による威嚇も使用もあってはならない」と強調した。協議の後に首相官邸で記者団に明かした。 協議は1日に米国のバイデン大統領の呼びかけによって主要7カ国(G7)の首脳らが参加した。ウクライナに侵攻したロシアは核戦力を含む抑止部隊が警戒態勢に入ったと発表している。 首相は協議で「ロシアのウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがす」と発言した。「国際社会が結束して毅然と対応することが重要だ」と唱えた。 各国首脳はロシアを厳しく非難し、国際社会が一致して強力な制裁措置をとっていく必要があると確認した。ウクライナ政府や避難民への支援でも協力すると確かめた。 首相は記者団に「今後もG7、国際社会と連携をとりながら引き続き適切に対応していきたい」と述べた。 |
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●ウクライナ軍事侵攻 敗戦国として改めて反戦を唱えるときだ 3/1
ウクライナの首都・キエフで、ロシア軍による大規模軍事作戦で損傷した住宅。2月24日、ウクライナのNATO加盟阻止を目指し、圧力を強めていたロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始。ウクライナ保健相によると24日時点で少なくとも57人が死亡、169人が負傷。今後ますます戦闘は激化する恐れがある。 今年の米オスカーで4部門にノミネートされたことでも話題の村上春樹原作・濱口竜介監督映画『ドライブ・マイ・カー』の中で、舞台の演出を務める主人公がチェーホフを「恐ろしい」と表現する場面がある。 「彼のテキストを口にすると、自分自身が引きずり出される。そのことにもう耐えられなくなってしまった」。 日本で言えば森鷗外らと同世代のチェーホフは、19世紀末のロシアで活躍した作家だが、生まれは現在のウクライナに隣接するロストフ州の国境近くの港町タガンロークである。 アゾフ海に面したその町は、古くは大北方戦争の時代にロシア艦隊の基地がつくられたものの、オスマン帝国との争いの中でピョートル大帝が破壊・放棄し、約50年後に再びロシア軍の手に渡るまで長らく廃墟であった。 巨大な国の端っこに位置するだけに歴史は荒々しい。チェーホフが生まれる5年前にはクリミア戦争で上陸した英仏軍に市街地まで攻撃され、第二次世界大戦では、2年間に及ぶナチスドイツ軍の占領によって再び町が破壊されている。 モスクワ大医学部を出たチェーホフは以後、モスクワを主な拠点として活動するが、持病の結核療養を機にヤルタに移住、ドイツの鉱泉地で他界するまでそこに居を構えた。このヤルタは、2014年以降ロシアが実効支配しているクリミア半島の都市である。 国際社会の多数派はロシアによるクリミア併合を認めておらず、帰属については係争状態にあると説明される。『かもめ』や『ワーニャ伯父さん』など、演劇史上極めて重要な作品を残した大作家の足取りを辿ると、緊迫するウクライナ情勢の最前線に隣り合う。 ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めた。NATOの東方拡大への懸念と不満を背景に、再び力で国境を変更しようとするプーチン大統領の試みは、米欧の警告を無視した実力行使に発展。2月24日に空爆で各地の軍事インフラ施設を破壊したほか、首都キエフの空港ではウクライナ軍と戦闘した。 G7は共同声明で厳しく非難したほか、引き続き経済金融制裁で協調することも確認しているが、クリミア併合後のロシアは米欧の制裁を見越して周到な対策を強化している。資源豊富で広大な国土を有する同国が、制裁と孤立によってどれほどの打撃を受けるかは未知数だ。 米中二強が鮮明となる中で、米国が主導してきた冷戦後の国際秩序が立て直しを迫られている。ただし、武力で変更しようとするロシアの姿勢は非難し続けなければならない。人を殺すウイルス対策にかすかな出口が見えだしたとき、今度は人が人を殺す争いが現実に始められた。この事態をどう受け止めるのか。 私は軍事侵攻が始まった24日、ギャルAV女優と清純派AV女優を競わせて勝敗を決める番組の収録をしていて、休憩中に誰かが「戦争始まった」と言ったけれど、それだけだった。戦争を語る言葉が貧弱になっていく中で、敗戦を最も重要な立脚点とする国として改めて反戦の意志を唱えることは思いのほか重要に思える。戯曲のテキストが役者の内面を引きずり出すように、言葉によって向き合える歴史というものがある。 チェーホフはこう書いた。「いままでの人生が、いわば下書きにすぎず、もうひとつの人生がまっさらにはじめられたらとね。そうなれば、誰もがまず自分の犯した愚を繰り返すまいとするでしょう」(三人姉妹)。 人も国も、歴史をまっさらにはできないが、だからこそ犯した愚を語ることができる。 |
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●ウクライナの「非武装化」主張 プーチン氏、仏大統領に 3/1
ロシアのプーチン大統領は28日、フランスのマクロン大統領と電話会談し、ウクライナの「非武装化」や「中立的地位」、クリミア半島におけるロシアの主権承認が問題解決の条件だと主張した。ロシア大統領府が発表した。 プーチン氏はこれらの「ロシアの安全保障上の正当な利益」が無条件で考慮される場合にのみ、問題解決は可能だと一方的に表明した。ロシアはウクライナとの交渉にオープンだとも伝えた。 一方、仏大統領府によると、マクロン氏はウクライナでの「民間人および住居に対する全ての攻撃を中止する」よう要求し、プーチン氏は同意した。 マクロン氏は即時停戦の必要性を改めて強調し、今後数日間、連絡を取り合うことを提案。プーチン氏も同意したという。ロシアのウクライナ侵攻開始後、両首脳の電話会談は2回目。AFP通信によれば、会談は1時間半に及んだ。 |
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●プーチン氏、ウクライナ終戦条件を提示 都市砲撃で11人死亡 3/1
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2月28日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領との電話会談で、ロシアによるウクライナ侵攻を終結させる条件を提示した。 ロシア大統領府によると、プーチン氏は長時間にわたる電話会談で、終戦の条件として、ウクライナの「非軍事化と非ナチ化」を求めたほか、クリミア半島でのロシアの主権承認を西側諸国に要求した。 ロシア軍はこの日、ウクライナ第2の都市ハリコフを砲撃。同国当局によると、少なくとも11人が死亡した。ハリコフ州知事は、重要なインフラもなく、軍部隊も配置されていない住宅地が標的になったと語った。 27日には現地入りしたAFPのカメラマンが、破壊された学校や、焼け焦げたロシア軍用車両数台を確認。街頭には軍服を着た複数のロシア人の遺体も見られた。 ウクライナ当局によれば、24日の侵攻開始以来、子ども14人を含む350人以上の民間人が死亡。国連(UN)によると、国外に避難した人の数は50万人以上に上る。 先週末にはハリコフのほか首都キエフが攻撃されたが、欧米の国防当局やウクライナ政府は、ロシア側に掌握された主要都市は今のところないとしている。ただウクライナ当局によると、南部の小都市ベルジャンスクは制圧された。 |
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●ロシア国内の“3つの分断・格差”に焦るプーチン大統領… 3/1
2月27日、核を含む抑止力部隊を厳戒態勢に移すよう指示したロシアのプーチン大統領。28日にはショイグ国防大臣がプーチン大統領に対しロシア軍の戦略核兵器部隊が戦闘態勢に入ったことを報告したと発表している。 元産経新聞モスクワ支局長で大和大学社会学部教授の佐々木正明氏は「プーチン大統領がわざわざ国営メディアを使ってこの命令出す場面を見せたところに注目している。プーチン大統領としては大きく3つの誤算があり、そこも踏まえての“抑止力”だということだろう」と話す。 「1つ目が、国際社会による、SWIFTまでを含む制裁強化が予想以上の早さで行われたということ。2つ目がウクライナ軍の反撃。そして3つ目が、ロシア国内の世論の予想以上の高まりだ。産経新聞の私の後輩記者がモスクワ市内の公園で市民10人くらいに聞いてみると、外国のメディアに対して“戦争はいけない”ということを言う。これだけでも信じられないほどの雰囲気だし、フィギュアスケーターのメドベージェワさんがInstagramでメッセージを出した。こういう意見が外に漏れてくるというのは、ちょっと緩くなっている感じがする。 プーチン大統領には政敵がおらず、今も支持基盤は盤石なので、あくまでも“反戦”であって“反プーチン”ではないということには注意すべきだが、制裁は“兵糧攻め”のようにじわりじわりと影響を与える。プーチン大統領としても事前に様々な反動があることを計算して武力行使に移ったはずだが、今後の国内世論の動向、治安部隊の動きに注目だ」。 その上で佐々木氏は、デモの参加者に注目していると話す。 「プーチン政権が始まって以降、ロシア国内には“3つの分断・格差”がある。1つ目が、ソ連崩壊から30年が経っているので、あの時代を知っている人と、そうでない人とでは、全く違った考え方をすることだ。2つ目が、プーチン大統領の演説をずっと見させられるような、ある意味では“洗脳”みたいな報道をしている国営メディアの情報にばかり接している人と、独立系メディアや西側からの情報に触れている人との違いだ。そして3つ目だが、今のウクライナを知っている人と、知らない人の違いだ。こうした分断・格差が大きくなった結果が、予想以上のデモに結びついているのではないか」。 とりわけ注目されるのが、“若い世代”だという。 スマホを持って、西側の情報にも接している若者にとっては、ソ連の崩壊は日本で言う明治維新のような感覚だと思う。また、モスクワにいる、インテリで、西側にも旅行をしたことのあるような若い層は、反政府運動の指導者ナワリヌイ氏の支持層とも重なる。そこにウクライナのことを知っている人、ウクライナに親戚がある層も加わってきている。ウクライナのゼレンスキー大統領も、これらの層を狙って情報を発信していると思う。例えばロシアで流行っているTelegramというSNSは秘匿性が高く1日で履歴が消えてしまうものなので、反政権の気持ちを持つ人たちはそこで情報のやり取りをしている。ゼレンスキーさんは、このTelegramを使って、ロシア語の演説を行った。 一方、プーチン大統領には若者を使って“プーチン親衛隊”みたいなものを作っているし、第2次世界大戦中にバンデラという人物がナチス・ドイツとくっついてソ連人を殺害したことを踏まえ、今のキエフを“ナチスの亡霊”だと呼び、NATOと一緒になってロシアに攻めてくると煽っている。しかし今のウクライナにはそんな人はいないし、親戚がいる人、ビジネスをしている人など、ウクライナと関わりのある人であれば、この戦争には大義が無いと思うだろう。通常戦力でもウクライナを圧倒できるにも関わらずプーチン政権が早い段階で核攻撃を持ち出してきたこと、OMONという治安部隊を出して国内世論を抑えようとしていることも、やはり誤算への焦りなのではないか」。 |
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●狂気の核暴走<vーチン大統領、危うい精神状態 3/1
ロシアとウクライナは2月28日、ウクライナ・ベラルーシ国境で、ロシアの侵攻後初めて停戦交渉し、対話継続で一致した。ただ、交渉中もロシア軍による攻撃は続き、祖国を守ろうとするウクライナ軍は激しく抵抗している。ジョー・バイデン米大統領や同盟・友好国の首脳は1日未明、電話会談を開き、ロシアによる国際法違反の軍事侵攻を厳しく非難し、強力な制裁措置をとっていく必要性を確認した。日米欧の経済制裁強化を受け、ロシアの通貨ルーブルは急落している。こうしたなか、核兵器による恫喝(どうかつ)を続けるロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対し、米国の有力議員から精神状態を疑問視する声が噴出している。 「狂っているプーチン大統領を信じられるわけがない」「ロシア市民はいい人たちだと思うけれど、プーチンは狂気じみている」 ロシアとの停戦交渉について、祖国を蹂躙(じゅうりん)されたウクライナ国民は、ロシア最高指導者への強い怒りと不信感を抱えていた。 注目の交渉は約5時間続いた。ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領府長官顧問は終了後、双方がいったん帰国すると説明した。ロシア側代表のウラジーミル・メジンスキー大統領補佐官は、近日中にポーランド国境のベラルーシ領内で交渉を再開することで一致したと述べた。 プーチン氏は2月28日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領との電話会談で、ウクライナ問題の解決には、2014年にロシアが併合した「クリミア半島におけるロシアの主権承認」や、ウクライナの「非武装化」「中立化」が条件だと述べた。中立化は、NATO(北大西洋条約機構)加盟断念を意味する。これらを「ロシアの絶対的国益だ」と強調したという。ロシア大統領府が発表した。 事実上、侵略国家・ロシアに対する、ウクライナの降伏を意味する。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はとても同意できず、今後の交渉は難航が必至とみられる。米欧はロシアのクリミア併合は「不当かつ違法」として認めていない。 ロシア軍は停戦交渉と並行して、首都キエフや東部ハリコフを含むウクライナ各都市への攻撃を続けた。ウクライナ軍は強固な抵抗を続けており、英国防省は「ロシア軍の主力は、キエフ北方30キロ地点からなお前進できていない」と指摘した。 自由主義諸国の対露制裁も強まっている。 日米欧各国は、ロシアの一部銀行を国際決済ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除する方針を打ち出した。また、ロシア中央銀行との取引を禁止・制限する追加制裁も進めている。 これらを受け、ロシアの通貨ルーブルは2月28日、最安値に急落した。ロシアの各都市では、ドルなど外貨を引き出すために現金自動預払機(ATM)に長蛇の列ができたという。 ロシア兵の命や経済を犠牲にしても、プーチン氏は狂気の暴走を続け、核兵器運用部隊に高い警戒態勢への移行を命じた。米国の有力議員らから、プーチン氏の精神状態を疑問視する声が出ている。 米上院情報特別委員会のマルコ・ルビオ上院議員はツイッターで、「本当はもっとお話ししたいが、今言えるのは誰もが分かる通り、プーチン氏は何かがおかしいということだ」と指摘した。米メディアによれば、ルビオ氏は、プーチン氏の精神状態について政府報告を受けている。 ジョージ・ブッシュ(子)政権で国務長官を務めたコンドリーザ・ライス氏はFOXニュースに、「プーチン氏とは何度も会ったが以前の彼とは違う。不安定に見え、違う人物になってしまっている」と語った。 USAトゥデー紙によれば、ドナルド・トランプ政権で大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務めた元陸軍幹部のハーバート・マクマスター氏は、テレビ映像で伝えられるプーチン氏がテーブルで落ち着きなく指を動かすしぐさなどいら立っている様子から、理性的な判断ができなくなっている可能性を推測した。 バラク・オバマ政権時代に駐ロシア大使だったマイケル・マクフォール氏も「彼は不安定さを増している」と指摘。約20年に及ぶ権力集中や新型コロナウイルス拡大による隔離状態が精神状態に影響を与えていると分析した。 プーチン氏は「核のボタン」を握っている。ロシア軍のウクライナ侵攻開始まで、多くの識者は「プーチン氏は合理主義者。全面侵攻などあり得ない」と否定していた。「正常性バイアス」を捨てて対処すべきだ。 |
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●ロシア軍の離反がプーチン大統領暴走のブレーキに “重鎮”が異例の辞任要求 3/1
プーチン大統領の暴走を止めるのはロシア軍か──。ロシアがウクライナへの軍事侵攻に踏み切ってから6日。ウクライナ軍をはるかにしのぐ軍事力を持ちながら、ロシア軍は大苦戦している。国の独立を守ろうとするウクライナ兵と異なり、ロシア兵は「戦争の大義」に首をかしげ、士気も下がっているという。プーチン統領への不満は募る一方だ。 もともとウクライナ侵攻は、軍関係者からも疑問の声が上がっていた。退役将校でつくる「全ロシア将校の会」の会長を務めるレオニード・イワショフ退役大将(78)の「公開書簡」(1月31日に会のHPに投稿)は衝撃だ。 イワショフ退役大将はNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大にも断固反対しているタカ派だ。プーチン政権も支持してきた。しかし、ウクライナ侵攻には強く反対している。 「公開書簡」によると、NATOの脅威は差し迫っておらず、ウクライナへの軍事侵攻は「権力と国民から盗んだ富を守る手段だ」とバッサリ。「プーチン辞任」まで求めている。軍OBの“重鎮”が辞任要求するのは異例のことだ。 軍事ジャーナリストの前田哲男氏はこう言う。「最前線のロシア兵も、イワショフ氏と同じ思いではないか。アフガン戦争中の1983年に捕虜となったソ連兵にインタビューした時、兵士が『何のために戦っているのか、分からなかった』と語ったのを思い出しました。ウクライナに送り込まれた兵士も侵攻の必要性に疑問を抱いているように見えます。しかも、銃を向ける相手は“兄弟国”です。兵士は、訓練と聞かされて派兵されたとも報じられている。ロシア軍の士気が上がらないのは当然です。キエフ陥落が難航しているのもロシア兵の低い士気が影響しているのでしょう」 さらに、ロシア兵のやる気の低下を加速させそうなのが、国際決済システムのSWIFTからのロシア排除だ。 SWIFTが利用できないと、ロシアは外貨取引が封じられ、ロシア通貨「ルーブル」が暴落する。28日の外国為替市場でルーブルは過去最安値の1ドル=119ルーブルをつけた。ルーブル急落と物価高騰が進めば、兵士の給料も目減りする。ますます士気は萎えるだろう。 「プーチン大統領がこのまま戦争を続け、ロシア兵の犠牲者が増えれば、兵士の不満は大義なき戦争を強いたプーチン氏に向かうでしょう。戦争反対の訴えは、退役大将の“公開書簡”もそうですが、ロシア国内でデモまで起きています。旧ソ連以来、見られなかった現象です。戦争が長期化する前に、ロシア国内の声によってプーチン氏の暴走が止まるのを期待したい」(前田哲男氏) ソ連の秘密警察「KGB」出身のプーチン統領は、国内警察は牛耳っているが軍は門外漢。完全に掌握していない可能性がある。ロシア軍の離反が戦争にブレーキをかけるのか。 |
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●ウクライナ侵攻を正当化するロシアの現実主義 3/1
元外務省主任分析官の佐藤優氏は毎日新聞政治プレミアに寄稿した。ロシアのウクライナ侵攻について、「ロシアは、国際社会では到底受け入れられないような無理筋の主張をすることがある。ロシアは国際法の乱用者なのである」と語った。 佐藤氏は「プーチン氏の論理では、両『人民共和国』の安全を保障するためには、ウクライナのゼレンスキー政権を打倒し、ロシアに融和的な政権を樹立する必要がある」と指摘する。 そのうえで「(ウクライナの次期政権を)ロシアの軍事力を背景に2〜3年維持できれば、ウクライナはそれを受け入れざるを得なくなるとロシアの政治エリートは考えている」と語った。 |
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●「自殺したいなら地下壕で」 ウクライナ国連大使、ヒトラーにたとえる 3/1
ウクライナのキスリツァ国連大使は2月28日、国連総会の緊急特別会合で、ロシアのプーチン大統領を「1945年5月に独ベルリンの地下壕で自殺した男」ヒトラーになぞらえ強く非難した。 ウクライナのキスリツァ国連大使「この戦争は、引き起こされたものではなく、今まさに、地下壕に座っている誰かが選択したものだ。1945年5月、ベルリンの地下壕に座っていた男の末路を、私達の誰もが知っている。地政学的な拡大を狙う軍国主義の大国が、小さな隣国の侵略を狙い、大規模な軍事攻勢をしかけている。破壊的な砲弾が、ウクライナ全土で市民の頭上に投下され、ロシア軍は自国、ベラルーシ、ウクライナのドンバスとクリミアの占領地域からウクライナの国境を越えた。何かに似ていないだろうか? そうだ。第2次大戦の始まりと、非常に良く類似しているのではないか。プーチン氏は核抑止部隊を高度警戒態勢に移行させた。なんという狂気だろう。もし自殺したいのなら、核兵器を使用する必要はない。1945年5月にあの男がベルリンの地下壕でしたのと同じことをすればいいだけだ」 |
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●プーチンの資産凍結に効果はある? 黒海の宮殿、モナコの愛人豪邸… 3/1
西側諸国は2月25日、ロシアのウクライナ侵攻への制裁として、ウラジーミル・プーチン大統領の個人資産を凍結すると発表した。しかし、プーチンの莫大な資産を欧米政府がどこまで把握しているかは不明だ。 事実、プーチンが所有する財産やそれらがどこにあるかについては、ほとんど知られていない。長らく噂や憶測が飛び交ってきたものの、取り巻きたちの口座に数十億ドル単位で移したり、家族名義で高級不動産を所有するなど、その富の実態は不透明なままだ。 プーチンの資産公開記録によれば、年収は14万ドルで、小さなマンションを所有していることがわかっている。だがこれはあくまで公式記録による表向きの数字であり、以下のような「隠し財産」は含まれていない。 まずは黒海沿岸のリゾート地にある通称「プーチンの宮殿」。10億ドル相当と推定されるこの豪邸は、プーチンの所有にはなっていないものの、さまざまな形でプーチン政権とつながりがあることがわかっている。 「プーチンのヨット」と呼ばれる1億ドルの高級クルーズ船もある。この船はドイツで改修が行われていたが、ウクライナ侵攻が始まる数週間前にロシアへ移動された。 それからモナコには、プーチンの愛人と伝えられる女性がオフショア企業を介して購入した410万ドルの大邸宅があり、南仏にはプーチンの元妻が所有する高級ヴィラがある。 アメリカやその同盟国にとって厄介なのは、これらの資産がいずれもプーチンと直接にはつながっていないことだ。 |
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●バッハ会長のロシア批判はポーズか…“プーチンのプードル” 3/1
ウクライナへの軍事侵攻で世界中から「NO!」を突き付けられているロシア。スポーツ界でもその動きは顕著だ。 ●世界中のスポーツ界でロシア拒否 今年11月に行われるサッカー・カタールW杯の欧州予選プレーオフで、ロシアと対戦するポーランド、対戦の可能性のあるチェコとスウェーデンがロシアとの試合を拒否。FIFAと欧州サッカー連盟(UEFA)は2月28日、ロシアの代表、全クラブチームの主催大会への出場を当面の間、停止すると発表した。 他にも国際スキー連盟や国際体操連盟は、ロシアやベラルーシで予定される今季のW杯などの中止・開催地変更を決定。国際柔道連盟はプーチン大統領が務める名誉会長職とアンバサダーの職務停止を発表した。 こうなると安穏としていられないのが、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長(68)だろう。IOCは2月24日、五輪開幕7日前からパラ終了7日後までの休戦決議を破ったロシアを批判。バッハ会長も「休戦を守り、平和にチャンスを与えてほしい」と訴えたが、それも「ポーズではないか」と勘ぐる向きがある。バッハ会長はロシアのプーチン大統領と親しく、母国ドイツでは「プーチンのプードル」、つまりポチと揶揄されている。 2014年冬季ソチ五輪で組織的ドーピングが発覚したロシアに対し、その後も「ロシア・オリンピック委員会(ROC)」などとして参加を承認。今大会ではフィギュア女子ROC代表のワリエワにドーピング疑惑が持ち上がったが、すぐに結論を下せず。そうこうしているうちにスポーツ仲裁裁判所(CAS)が「ワリエワは出場可」の判断を下した。 ある放送関係者は「IOC内外でバッハ会長降ろしの動きが活発化するのではないか」とこう続ける。 ●スポンサーが怒り心頭 「特に不満を抱いているのが米放送局NBCです。今やIOCの総収入の3割以上がNBCからの放映権料。22年から32年までの6大会で9000億円近いカネを払いながら、疑惑と不祥事がてんこ盛りだった北京五輪の視聴者数は五輪史上ワーストで、NBCも怒り心頭なのです。こうなると、NBCはIOCにさらなる改革案を突き付けるか、あるいはバッハ会長の退陣を要求してもおかしくない。米国はただでさえ、対中・ロの急先鋒。そこにきて、中国とロシアにべったりのバッハ会長が居座るようでは、米国民の五輪への関心はさらに薄れかねない。もし、今後の五輪で『我々はロシアとの対戦を拒否する』なんて国が出てくれば五輪は台無し。放送局としても大打撃ですから」 IOCは1984年ロス五輪から商業五輪に転換。カネと引き換えに、スポンサーの意向が強く反映されるようになった。 バッハ会長の任期は2025年まで。歴代IOC会長で途中退任した者はいないが、独裁者のポチがその1号となるかもしれない。 |
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●FIA、ロシアのウクライナ軍事侵攻を受け、WMSC臨時会議を開催決定 3/1
ロシアがウクライナに侵攻したことに関連する問題を議論するため、FIAは世界モータースポーツ評議会(WMSC)の臨時会議を、3月1日に開催することを決定した。 2月24日、ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始。これを受けてF1は、9月に予定されていたF1ロシアGPを「現在の状況では開催できない」として、事実上の中止を決定した。 その流れはモータースポーツに留まらず、他のスポーツも、ロシアとの関係を断ち切る姿勢を見せている。 FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長は、ウクライナの自動車連盟に対して支援行なう用意があるとする書簡を送った。これに応じる形でウクライナ自動車連盟のレオニード・コスチュチェンコ会長は、ロシアとベラルーシのライセンスを持つ競技者の、FIAのイベントへの参加禁止を求めた。 国際オリンピック委員会(IOC)も、国際的なスポーツ連盟やスポーツイベントに対して、ロシアやベラルーシの選手や関係者が参加しないように勧告する声明を、2月28日に発表している。なおIOCは、ロシア軍のウクライナ侵攻は”五輪休戦協定違反(オリンピック、パラリンピック期間中は、戦争や紛争を停戦する協定)”だとして、厳しく非難している。 なおFIAも、IOCの承認を受けた連盟のひとつ。FIAの広報担当者は月曜日(2月28日)の夜に声明を発表し、WMSCの臨時会議を3月1日に急遽開催。今回の問題に対する話し合いが行なわれることになったと認めた。 「ウクライナで起きている危機に関する問題を議論するため、世界モータースポーツ評議会の臨時会議が、明日(3月1日)開催される」 「会議の後に、さらなる情報のアップデートが行なわれる」 IOCの勧告に応じることをFIAが決定すれば、ハースF1のニキータ・マゼピンの活動に大きな影響を及ぼすことになるだろう。 マゼピンの父親が運営する会社であり、ハースF1のタイトルスポンサーを務めているウラルカリのロゴは、すでに同チームのマシンなどから排除されている。マゼピンのF1ドライブもこのウラルカリが持ち込む資金が重要な役割を占めていたため、彼のF1での将来はその点においても疑問符がつけられている。 なおサッカー界では、国際サッカー連盟(FIFA)と欧州サッカー連盟(UEFA)が、「代表チームまたはクラブチーム問わず、全てのロシアチームの、FIAとUEFAの大会への参加を停止することを決定した」とする共同声明を発表している。 |
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●ウクライナ戦争のウラで中国が進める対ロシア「漁夫の利外交」 3/1
●習近平政権の動き 先週2月22日以来、世界中の視線が、人口4400万人、日本の1.6倍の国土を持つウクライナに集中している。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が仕掛けたウクライナ戦争によって、米欧とロシアとの対立は決定的となった。世界は一気呵成に「米ロ新冷戦」の時代を迎えた。 2月26日には、欧米側が「金融核兵器」(Financial Nuclear Option)と呼ばれるSWIFT(国際銀行間通信協会)からのロシア追放を決めた。これによって、ロシアはドル決済による貿易を行うことが、事実上不可能となる。 そんな中、中国ウォッチャーの私は、連日、様々な立場、階層の中国人に、この戦争について聞いている。興味深いのは、中国人の「プーチン観」が、はっきり二分されていることだ。 ごく大雑把に言うと、「習近平贔屓(びいき)」≒「プーチンファン」≒「低中階層」、「反習近平」≒「プーチン嫌い」≒「高所得者、インテリ」という構図だ。習近平主席に対する評価と、プーチン大統領に対する評価が重なっているところがポイントだ。 そんな習近平政権は現在、決して目立ちはしないが、着々と「漁夫の利外交」を進めている。それには、「ロシアに対する顔」と「米欧に対する顔」があるが、今週は前者に絞って論じてみたい。 ●中立的な態度を保持しながら 習近平政権のウクライナ戦争に対するスタンスの原点は、2月4日の北京冬季オリンピック開会の日に行われた習主席とプーチン大統領の38回目の中ロ首脳会談にあった。 中国紙『海納新聞』(2月27日付)は、「プーチンの選択は冬季オリンピック後の開戦、アメリカのウクライナへの承諾は瞬時に瓦解、中国の態度が大きなカギ」と題した長文の記事を報じた。少し古い内容も含まれるが、そこには中国のホンネが覗く。 〈 2月4日に中ロ両国の元首が会談を行った後、共同声明を発表し、20項目近い貿易協定を結んだ。だが、その20日後にプーチン大統領がウクライナに対する直接の軍事攻撃発動を選択するとは、誰も想像していなかった。おそらく今回の冬季オリンピックの開催国である中国に、「面子(メンツ)」を与えたのだ。それでプーチンは、冬季オリンピックの開催中に行動を起こさず、閉会してから一連の直接行動に出たのである。(中略) 制裁の効果が不明確な状況下で、アメリカは中国が、もしかしたらウクライナ危機のカギとなる要素ではないかと意識するようになった。現段階において中国だけが、ロシアに一定の影響力を与えられ、ロシアを交渉の席上に戻るよう説得できるというわけだ。現状から言って、中国が直接、ロシアに軍事行動の停止を勧告することは、現実的ではない。ひっきょうロシアのいわゆるウクライナへの軍事打撃の発動の本質的な目的は、ロシアの態度と立場を示すことだ。すなわち、アメリカとNATO(北大西洋条約機構)にウクライナ危機で妥協と譲歩を出させることだ。NATOとアメリカが主導的に軟化するまでは、ロシアは必然的に強硬な態度を保持するだろう。中国は現在、まさに中立的な態度を保持している。国際法を遵守し、ロシアの合理的な要求を保証するという前提のもとで、ロシアとウクライナの双方が(2015年2月にロシア、ウクライナ、フランス、ドイツで結んだ)ミンスク合意の席上に戻ること、そして交渉と対話を通してのみ、双方の分岐と矛盾が解決できるというものだ。当然ながら、アメリカとNATOが、もしもウクライナ危機がますます激化していっても、中国が示した建議を考慮したくないというのであれば、それは注意して運んできた石を自分の足に落とすようなことになるだろう 〉 以上である。私の聞いているところでも、2月4日午後3時過ぎ(北京時間)から釣魚台国賓館の芳華苑3階にある「牡丹亭」で開かれた習近平・プーチン会談で、習主席はプーチン大統領に、釘を刺した。 「今日から始まる『平和の祭典』の開催期間中は、絶対に平和を乱すような行動は避けてほしい」 会談中、プーチン大統領は何度も、「わが国にとって中国は、最も重要な戦略的パートナーだ」と言い続けた。中国側はこうしたプーチン大統領の態度を、「中国側の要求を承諾した」と受けとめた。 もっともロシア側も、ウクライナに攻撃すれば、米欧からの激しい経済制裁に遭うのは自明の理なので、中国が最大の「命綱」となる。何と言っても昨年の中ロ貿易額は、前年比26.6%増で過去最高の9486億元(1517億ドル)に達したのだ。ロシアにとって中国は、12年連続で最大の貿易相手国である。 ●石油と天然ガスの中国シフト 2月4日の会談を経て中ロは同日、計15項目にわたる協定に署名した。具体的は、以下の通りだ。 1) 独占禁止法と競争政策分野の提携協定 2) 両国外交部(外務省)の2022年交渉計画 3) 中国商務部とロシア経済発展部の「中ロ貨物貿易とサービス貿易の高質発展ロードマップ」を完成制定することに関する共同声明 4) 中国商務部とロシア経済発展部の持続可能なグリーン分野の投資提携の覚書 5) 中国税関総署とロシア税関署の「認定事業者」(AEO)の相互処理関連 6) 中国税関総署とロシア消費者権益保護・公益監督局の国境衛生検疫提携協定 7) 中国税関総署とロシア農業部のロシアから中国へ輸出する小麦植物検疫の要求議定書の補足条項 8) 中国税関総署とロシア獣医植物衛生監督局のロシアから中国へ輸出する大麦植物検疫の要求議定書の補足条項 9) 中国税関総署とロシア獣医植物衛生監督局のロシア産ウマゴヤシの中国への輸出に関する検査検疫要求議定書 10) 中国国家体育総局とロシアスポーツ部の2022年-2023年中ロスポーツ交流年共同声明 11) 中国衛星ナビゲーションシステム委員会とロシア国家宇宙グループの北斗・グロナス(GLONASS)全世界衛星ナビゲーションシステムと時間相互操作の提携協定 12) 中国石油天然ガス集団(CNPC)とガスプロム(ロシア天然ガス工業)の極東天然ガスの販売協定 13) 「中国西部の練炭工場に提供する原油販売の保障契約」の補足協定その3 14) 中国石油天然ガス集団(CNPC)とロスネフチ(ロシア石油)の低炭素発展分野の提携覚書 15) 情報化とデジタル化分野での提携協定 このうち、特に注目すべきことが3点ある。第一に、12)13)14)のロシア産の石油と天然ガスの中国シフトだ。 ロシアのウクライナ攻撃により、ロシアにエネルギーを依存していたEUが、ロシア産の天然ガスを排除していく方向を明確にした。2020年のEUのロシア依存度は、原油29%、石油製品39%、LNG(液化天然ガス)15%、天然ガス37%だ(野村アセットマネジメント調べ)。 特にその象徴と言えるのが、バルト海の海底でロシアからドイツに直送する天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム2」の停止である。 このパイプラインは昨年9月に完成したばかりだが、発足したばかりの独オーラフ・ショルツ政権は2月22日、運用開始に向けた手続きの停止という英断を下した。2020年には天然ガスの55%をロシアからの輸入に頼っていたドイツだが、さすがにロシアは許せないという世論に傾いた。 ロシアとしては、こうしたことを織り込んで、「西方がダメなら東方へ」というわけで、中国側に大量に放出することにしたわけだ。これはエネルギー不足に悩む中国としても、熱烈歓迎である。 天然ガスに関しては、中ロは2019年12月から、毎年380億㎥を中国に送るという30年契約を結んでいる(締結は2014年5月)。今回その契約を100億㎥積み増し、毎年480億㎥とした。 石油に関しても、今後10年で1億tの原油を、新たにロシアから中国に拠出することで合意した。これらはロシアにとって、EUへの拠出分を完全に埋め合わせるわけではないが、当面の安堵は得られるものだ。何より中国が今後、これらをキャンセルしてしまうリスクが低いことが魅力だ。 これらの提供価格について、中ロは発表していないが、おそらく中国側がかなり買い叩いたのではないか。2014年5月の上海での提携時に、私は取材したが、中国側のある関係者はこう述べていた。 「5月20日から21日にかけて、徹夜の交渉になった。ロシア側は1000㎥あたり388ドルまで下げ、中国側が380ドルまで上げ、明け方に暫定的な価格合意に至った。総額4000億ドルに上る中ロ貿易史上最大の契約となった。今後、エネルギー価格が上がっていくことを見越せば、中国側にとって悪い買い物ではなかった。それに外交戦略上も、これからは中国がロシア経済を握ることになる。これは中国にとって『100年の夢』だったのだ」 最後の「100年の夢」というのは、説明がいるだろう。 昨年7月、北京で盛大に100周年を祝った中国共産党は、1921年7月、「ソ連共産党上海支部」のような形で産声を上げた。以来、人事も活動資金もモスクワに握られていたし、1949年の新中国建国後も、ソ連の技術者たちがインフラを整備してくれたのだ。「建国の父」毛沢東主席は、ヨシフ・スターリン書記長に、まったく頭が上がらなかった。 20世紀後半の冷戦期にも、アメリカの最大の脅威はあくまでもソ連であり、中国の脅威は軽視していた。そのため、いまからちょうど50年前にリチャード・ニクソン米大統領が電撃訪中し、「中国を取り込んでソ連を包囲する」策に出たほどだ。 その後、1989年の天安門事件で中国は辛うじて生き残り、ソ連は同年のベルリンの壁崩壊後、1991年に消滅した。そのことで20世紀の「ソ連>中国」の構図は、「ロシア≒中国」に変化してきた。 それが中国側は、習近平政権発足の翌年に結ばれた前述の「4000ドル契約」によって、ついに「中国>ロシア」の時代が到来したと考えたのだ。実際、おそらく2022年は、「中国のGDPがロシアの10倍を超えた年」として記憶されるだろう。 ●ロシアが「人民元経済圏」に入る日 さて、2月4日の「15項目協定」で注目すべき2点目は、今後のロシアが「人民元経済圏」に入っていくことを予感させるということだ。これは15)にも、そうした含意があるだろう。 EUのウルズラ・フォンデアライエン委員長は2月26日、冒頭述べたように、ロシアをSWIFTから排除すると発表した。これによってロシアは事実上、ドル決済による貿易はできなくなる。 ロシアがウクライナ攻撃を開始した2月21日以降、ルーブル安、ロシア株安、ロシア債券安の「トリプル安」が続いており、ルーブルで取引しようという貿易相手は、ほぼいない。そうなると、ロシアは一定程度、人民元取引を強いられることになるだろう。 おそらく中国がロシアの通貨介入に走り、人民元とルーブルのスワップその他の手段によって、ルーブルを支えることになる。そうなると、ロシア経済はますます中国依存を深めていく。 中国は2022年を、「デジタル人民元元年」と捉えている。アメリカが「デジタルドル」を躊躇(ちゅうちょ)しているうちに、機先を制してデジタル人民元の国際化を図ろうという狙いだ。そんな中、「困ったロシア」を経済的に取り込んでいくことは、格好の突破口となる。 今回の「15項目合意」(12の天然ガスと14の石油)は、その前段階として、「ドルに代わるユーロ決済」となった模様だ。中国の著名な国際法学者である劉瑛武漢大学教授は、2月12日に『騰訊ネット』に、「中ロの15項目戦略提携協定署名は、ドルに代わりユーロ決済となり、両国が共同でアメリカに反撃する」と題した文章を掲載した。その要諦は、以下の通りだ。 〈 注意に値するのは、今回の中ロの新たな長期にわたる天然ガス契約の決算が、ドルからユーロに代わったことだ。これは中ロ両国のアメリカに対する有力な打撃となる。米国務省のプライス報道官は2月3日、もしも中国企業がロシアと提携したなら、アメリカは中国企業にも制裁を科すと述べた。アメリカが世界で全能に振る舞う最大のバックボーンが、「世界通貨」の地位を持つドルによる決済システムだ。そこで中ロは、ユーロを貿易決算に用いることで、アメリカの対ロシア経済制裁のマイナス効果を減らすと同時に、中国のドル決済依存も減らし、もし近未来に中国のドル決済にも制限をかけてきた際の影響を小さくしたのだ。 今月合意に達した中ロ天然ガス供給協定は、双方が人民元で決済するとはなっていない。だが、中ロ双方は一歩一歩、エネルギー貿易の分野で人民元決済にしていく明るい前景が、十分に見えてきた。事実上、2016年以来、中ロの石油貿易では、人民元決済を始めている。この数年、人民元決済は、中ロの天然ガス貿易でも、少しずつ行われ始めている。ロシア以外にも、最近では中国とイラン、UAEなどとの石油貿易決済における人民元決済の比率は、増えつつあるのだ 〉 ●「宇宙軍事分野」における趨勢 今回注目すべき3点目は、11)の「北斗・グロナスの提携」だ。 北斗衛星ナビゲーションシステムは、中国がアメリカのGPSに対抗するため、21世紀に入って必死に構築した衛星システムだ。2020年7月に完成し、GPSを凌ぐ性能を持つ。実際、私も「百度地図」や「高徳地図」を検索で使用しているが、その精度には驚かされる。 一方のグロナスは、ソ連時代の1976年に開発を始めたが、1991年のソ連崩壊とともに資金不足に陥った。それでロシア時代になって、アメリカやインドとの提携を模索してきたが、最終的に中国との提携に落ち着きつつある。 ロシアとしては、「宇宙軍事分野」の先導役とも言える衛星システムで、中国に便乗するのは、決して本意ではないだろう。だが「いまそこにあるアメリカの危機」に対抗するには、他に選択肢はないのだ。客観的に見て、圧倒的な「北斗>グロナス」の形勢から、宇宙軍事分野においても、徐々に中国がロシアを取り込んでいく趨勢である。 2月25日午後(北京時間)、習近平主席とプーチン大統領が、緊急の電話会談を行った。新華社通信が伝えた習主席の発言は、以下の通りだ。 「先日は、北京冬季オリンピックの開会式に訪中してくれて、感謝申し上げる。ロシアの選手たちは、世界第2位のメダル獲得数という好成績を収めた。祝賀を示したい。このところ、ウクライナ東部地域の情勢は劇的に変化しており、国際社会の高度な注目を引き起こしている。中国は、ウクライナ問題の本質的な是非曲直に基づいて、中国の立場を決めていく。冷静思考を捨て去らねばならない。各国の合理的な安全への懸念を重視、尊重し、交渉を通じて、均衡と有効性、持続可能なヨーロッパの安全体制を形成していくべきだ。中国は各国の主権と領土の整備を尊重し、国連憲章の主旨と原則を順守するという基本的な立場は一貫している。中国は国際社会と一体となって、共同で総合的で協力的、持続可能な安全観を提唱する。そして国連を核心とした国際システムと国際法を基礎とした国際秩序を固く維持、保護していく」 以上である。このように、中国は決してロシアに、全面的に賛同しているわけではない。むしろ、意識して「距離」を取っているように見受けられる。 実際、25日午後(アメリカ東部時間)に開かれた国連安保理事会におけるウクライナ侵攻非難決議では、15ヵ国の理事国のうち、11ヵ国が賛成、ロシアが反対だったが、中国は棄権している。ちなみに、インドとUAEも棄権した(インドは中国と並び、老獪な外交を見せている)。 中国のこうした態度は、あえてロシアとの「距離感」を示すことで、「平和と協調の中国」を演出しているように思える。そしてあわよくば、アメリカとヨーロッパの中国に対するマイナスイメージを払拭しようというわけだ。 ●アメリカに追いつくための「時間」 中国の関係者に改めて、ロシアのウクライナ攻撃と中国の思惑について、個人的見解を聞いた。 「ロシアがウクライナに全面戦争を仕掛けるなど、つい数日前まで信じていなかったし、信じたくもなかった。その意味では、自身の見通しの甘さを恥じ入る限りだ。だが、もしかしたら、今回の戦争はロシアにとって、『プーチン時代の終わりの始まり』を意味するかもしれない。プーチン大統領の歴史観は理解できなくもないが、1979年のアフガニスタン侵攻の教訓を、まったく活かしていない。ソ連はあの無謀な戦争が遠因となって崩壊したのだ。今回も、早くもルーブル安、ロシア株安、ロシア債券安の『トリプル安』となっているではないか。 思うに、今回のロシアの行動は、『21世紀の九一八事変(満州事変)』だ。1931年9月、日本の関東軍は電光石火のごとく、わが満州に攻め入って占領。満州国なる傀儡(かいらい)国家を作ってしまった。当初は景気がよかったけれども、そのうち支えきれなくなって無理を重ねたため、米欧から強烈な制裁を喰らい、最後は崩壊した。今回のロシアも、西側諸国の経済制裁がボディブローのように利いてきて、経済は衰退していくだろう。『大きな北朝鮮』のようなイメージだ。わが国の『一帯一路』は、2035年までの整備を目標としている。ユーラシア大陸で中国に次ぐ大国であるロシアが『中国経済圏』に組み込まれていけば、『一帯一路』の完成は近づくというものだ。そして『一帯一路』の完成は、中国の悲願であるアメリカと対等の地位を得ることを意味するのだ。加えて、今後当面の間は、米欧はロシア対策に集中するから、激しい中国への攻勢は止まる。これは中国にとって、何よりもほしい『時間』を与えられることになる。その時間は、あらゆる意味でアメリカに追いつくための努力に費やされることになるだろう」 このように、ロシアのウクライナ侵攻で最終的に「漁夫の利」を得るのは、中国だというわけだ。今回は中ロ関係から述べたが、米欧も「ロシアへの説得」を求めて、中国に擦り寄る兆候が出始めている。 中国は3月5日から、年に一度の全国人民代表大会(国会)を開催。習近平主席はますます国内の権力基盤を強化しようとしている――。 |
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●ロシアのウクライナ侵攻であり得ないコメントを出した李在明候補 3/1
2022年に入ってから世界情勢が目まぐるしく変化している。北朝鮮が頻繁にミサイルを発射し、トンガでは大規模な噴火と津波が発生して甚大な被害が生じた。 先日閉会した北京冬季オリンピックでも規定違反による失格者が相次ぎ、ロシア人選手に再びドーピング疑惑が浮上するなど物議を醸した。 そして、ようやくオリンピック騒動が落ち着いてきたかと思えば、今度はロシアがウクライナに対する軍事侵攻に踏み切り、激しい戦闘が始まっている。 忘れがちだが、ウクライナがロシアの隣国であるように日本もロシアの隣国だ。第二次世界大戦のどさくさに紛れて北方四島がロシアに奪われたように、また、竹島が韓国に実行支配されたように、世界が混乱する中、周辺国家が密かに日本領土略奪を企てているかもしれない。近年は中国による尖閣諸島沖での領海侵入も深刻だ。明日は我が身である。 筆者の研究対象である韓国は、文在寅大統領が2月24日に、「罪のない人命に被害を引き起こす武力の使用は、いかなる場合も正当化できない」と対ロシア制裁を支持するコメントを発表した。この翌日、在韓ウクライナ政府高官はロシアによるサイバー攻撃を防衛するため、韓国に支援を要求した。韓国政府はこれに応じるものと思われる(※現在、韓国側はコメントを控えている状態)。 北京冬季オリンピック中盤からロシアによるウクライナ侵攻が始まるまで、韓国人による在韓ロシア人攻撃が酷かったという。「お前がプーチンの代わりに謝れ」「ロシア人は今すぐ韓国から出て行け」など、特定のロシア人に対する悪質コメントが急増した。 ロシア人を攻撃する韓国人は、オリンピックのドーピング騒動やウクライナ侵攻によって世界の規律を乱すロシアに対し、正義を振りかざしたつもりなのだろう。 ●李在明候補の信じられないコメントに韓国人も呆れ顔 特定のロシア人に対して抗議する韓国人がいる一方で、左派色の強い韓国放送局のMBCは、「ウクライナのゼレンスキー大統領のアマチュアのような政治がロシア侵攻のひとつの原因(2月25日公式ユーチューブサイトに掲載)」と、ロシアを擁護するかのような番組を放映した。 加えて、与党「共に民主党」の大統領候補である李在明候補も、2度目の第20代大選候補者討論会の場で、「ウクライナがロシアを刺激したことで衝突となった」「ゼレンスキー大統領はキャリア6カ月で大統領に就任した初心者政治家であるから、外交に失敗して戦争を招いた」と発言した。現在、この発言には国内からだけでなく、海外からも批判の声が集まっている。 これに反応した韓国人は、“対ロシア批判”ではなく“対ウクライナ謝罪”に切り替えたようだ。ロシア政府を批判する声は変わらずあるが、NAVERやSNSを見ていると、特定のロシア人を批判する声は減少し、ウクライナに対する謝罪と応援のコメント、そして李候補を批判するコメントが増加した印象だ。 「ゼレンスキー大統領を尊敬します。李在明の発言に対し、私が大韓民国の一員として代わりにお詫びいたします」「全世界から“コリアンサイコ”と非難されている李在明は今すぐ地獄に消えろ」「李在明と共に民主党は反省しろ」「李在明はウクライナを侮辱したが、これは全ての韓国人の意思と異なる。ロシアに絶対に負けないで」といったコメントが目立つ。 ●韓国の次期大統領はゼレンスキー氏のように振る舞えるか? あまりにも李候補を批判する声が多かったことから、当の本人は討論会の翌日(26日)に、「私の本意と異なる。一部でもウクライナ国民のみなさんに誤解を与えたのなら、私の表現力が足りなかった」「制限された時間内に十分説明できなかった」と釈明。それと同時に「(国民の力の)尹錫悦候補はウクライナ問題を自身の先制打撃論と核兵器共有論を正当化し、私と文在寅大統領を非難する機会にしている。このような態度が、私が討論会で指摘した“初心者政治家”の限界ということだ」と尹候補を批判した。 ゼレンスキー大統領は元コメディアンであり、彼を政治素人だと批判する気持ちはもちろん理解できる。しかし、ロシア軍に殺害される危険があるにも関わらず、国内に残って祖国や国民のために指揮するその姿は、コメディアンよりも大統領と呼ぶに相応しい。 そんな逞しいゼレンスキー大統領を批判した李候補こそ、韓国が周辺国家から攻められた際に、最前線に立って国民を扇動できる人物なのだろうか。スキャンダルが公になる度、表面上の謝罪だけをして説明責任から逃れる姿を見る限り、到底、彼には務まらないように思える。 ●国民感情を見誤った大統領候補の行く末 李候補はただ単に、政治経験のない尹候補とゼレンスキー大統領を関連付け、「ゼレンスキー大統領のように政治初歩者である尹候補が大統領になれば、韓国も戦争を起こす可能性がある」と、国民の印象を操作したかったのだろう。 彼は過熱するスキャンダル合戦によって、相手を批判し蹴落とすことで大統領の座が勝ち取れると勘違いしているようだ。そのことが影響し、韓国の大統領にとって最も重要な国民情緒をも読み誤った。 今回のウクライナ騒動で、今後発表される大統領候補者の支持率がどのように動くか動向を見届けたい。あと数日で次期大統領が決まる。 |
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●トヨタ・日産・三菱自…ウクライナ情勢深刻化、日系自動車メーカーへの影響? 3/1
ロシアのウクライナ侵攻を受け、日系企業が対応を迫られている。トヨタ自動車はウクライナ情勢の深刻化を受け、住友商事を通じて展開する同国全土の販売店で24―25日は営業を停止し、営業再開は未定としている。トヨタは同国では年約2万台の車両を販売している。一方のロシアではサンクトペテルブルクに生産拠点を構えているが、現時点で生産や現地従業員への対応に影響は出ていない。 直接的な影響以上に懸念されるのが欧州経済の冷え込みだ。原油といったエネルギー価格の高騰など、経済への影響は避けられない見通し。トヨタは全社の約1割にあたる100万台規模の車両を欧州で販売しており、今後は販売などに影響が表れる可能性がある。 足元では想定しうる経済制裁により発生するリスクへの備えを進めている。ウクライナ危機がささやかれ始めた頃から取引先の金融機関や商流、調達物資洗い出しなどサプライチェーン(供給網)全体の調査を強化した。 ロシアにシートの生産拠点を置くトヨタ紡織では事業への影響は出ていない。欧州の地域統括会社とともに想定されるリスクの洗い出しを進めている。 日産自動車はサンクトペテルブルクでスポーツ多目的車(SUV)「エクストレイル」や「キャシュカイ」などを生産する。2021年のロシアでの販売実績は約5万台だった。同国での生産は継続している。ロシアとウクライナ両国での販売活動については状況を確認中としている。 ロシアのカルーガ州にある仏グループPSA(現欧州ステランティス)との合弁工場でSUV「アウトランダー」などを生産する三菱自動車。21年の同国での生産実績は約2万台だった。車両生産を継続しており、今後の影響や状況を注視していきたいとしている。 マツダはウラジオストク市にロシア自動車メーカーのソラーズとの合弁会社でSUV「CX―5」などを生産している。日本からも輸出している。21年の販売台数は約3万台。「状況を注視していく」とする。 三菱ふそうトラック・バスは現時点で影響はないという。ロシアでは親会社の独ダイムラートラックと露商用車大手カマズが合弁会社でトラックの組み立てや販売をしている。現地の操業は今のところ通常通りだ。 住友電気工業と子会社の住友電装などは25日からウクライナ西部テルノーピリにある自動車用ワイヤハーネス(組み電線)の工場を停止している。従業員約6000人の安全を優先した。日本人社員は駐在していない。今後の供給については顧客と協議し、顧客に近い他国での代替生産も含め対応を検討する。 フジクラはウクライナ西部リヴィウにある欧州自動車メーカー向けワイヤハーネス工場の操業を24日正午で停止。約1400人いる従業員は帰宅を開始した。同工場に日本人の社員はいない。28日まで操業を停止し、3月以降は状況を見て改めて判断する。代替生産についても顧客との検討を開始した。 |
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●ウクライナ情勢への思い〜 3/1
ウクライナ情勢が緊迫している。ウクライナ国境でロシア軍による侵攻の準備が進められているとして、米国のバイデン大統領は、2022年2月に米軍を東欧に派遣した。本コラム執筆現在(2022年2月22日)、ウクライナを巡ってロシアと米国のにらみ合いが続いている。 「革命」と呼ばれるものから街頭デモまでを含めると、ここ20年、旧ソ連圏で反体制機運が高まっている。2003年のグルジア(現ジョージア)におけるバラ革命、2004年のウクライナにおけるオレンジ革命、2005年、10年、20年のキルギス共和国における反政府運動とそれに伴う政権崩壊、2020-21年のベラルーシ、そして2022年のカザフスタンにおける反政府デモがその実例である。旧ソ連地域は、ソ連崩壊をきっかけに心構えがないまま独立に至り、独立後も旧ソ連時代の権威主義体制を継承した国が多い。独立後十数年経った頃から、その歪みが次々と顕在化し始めたことが反政府運動につながった。さらに、この歪みを複雑化したのは、強国を目指すロシアと、民主化を後押ししたい米国という2大勢力の存在である。2022年2月に深刻化したウクライナ情勢を巡っては、その対立が最も鮮明化し、一触即発の事態にまで発展している。 今、世界で注目されているウクライナは、日本人にとって馴染みの薄い国かもしれない。2007年、筆者はロシア語学習のため、ウクライナの首都キエフで3週間のホームステイをした。ここでは少し、その時の体験と印象を紹介させていただきたい。 ウクライナはウクライナ語を第一言語とし親欧米派が多いとされる西部と、ロシア語を第一言語とし親露派が多い東部に分かれているといわれるが、両言語は似ており、人口の大半がロシア語とウクライナ語を話すことができる。その一方で、英語はほとんど通じない。人々はとても親しみやすく、「お客さん好き」な国民性であると感じた。街並みは、アパートなどソ連時代からの建物が多く残る一方で、世界遺産にも登録された大聖堂や修道院といったウクライナ文化を象徴する建造物も多い。ソ連時代の影響とウクライナ文化が共存した、欧米ともアジアとも異なる国といった印象を抱いた。 ソ連時代の影響といえば、ウクライナで出会った人から聞いた忘れられない話がある。それは、ソ連崩壊直後の生活の苦しさである。ソ連崩壊後の数年間、ハイパーインフレで人々の生活は困窮を極めた。1994年の消費者物価上昇率は、800%を超えるほどの高さであった。物資不足で何を買うにも長蛇の列に並ばなくてはならず、給与の遅延が横行した。学校の教師は、給与が砂糖ということもあったという。その日を暮らすのに精一杯な時代であった。 それから30年経った今も政治的・地政学的リスクはくすぶり続け、人々は生活の安定性を失っている。米国やロシアの目線で語られることが多いウクライナ情勢だが、その動向による影響を全面に受けるのはウクライナ一般市民であることを忘れてはならない、というのがウクライナの人と文化に接した筆者の思いである。 |
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●米など石油備蓄協調放出で調整 ウクライナ侵攻で原油価格上昇 3/1
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響で原油価格が上昇する中、アメリカなどの主な原油消費国が近く、石油の備蓄を協調して市場に放出することで調整を進めていることがわかりました。 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響でニューヨーク原油市場では原油取り引きの国際的な指標、WTIの先物価格が先週、一時、7年7か月ぶりに1バレル=100ドルを超えるなど、上昇傾向が続いています。 アメリカなどの複数のメディアは28日、この事態を受けて、IEA=国際エネルギー機関に加盟するアメリカなどの主な原油消費国が原油の安定確保に向けて、石油の備蓄を協調して市場に放出することで調整を進めていると伝えました。 これに関連してIEAのビロル事務局長はツイッターへの投稿で、「1日に臨時の会合を開催してエネルギー市場の安定に向けた加盟国の役割を協議する」と明らかにしました。 ウクライナ情勢を受けた石油備蓄の放出をめぐっては、ロシアに対する経済制裁による影響も懸念される中、アメリカが原油の価格上昇を抑えるための手段として検討を進めているほか日本もIEAからの要請があれば積極的に参加する意向を示しています。 |
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●ロシア ウクライナに軍事侵攻 3/2
●国際人権問題担当の首相補佐官 国連の人権理事会で演説 国際人権問題を担当する中谷総理大臣補佐官は、日本時間の2日夜、スイスのジュネーブで開かれている国連の人権理事会で演説しました。中谷補佐官は、冒頭、ロシアの軍事侵攻に触れ「今回の侵略はウクライナの主権と領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁じる国際法の深刻な違反で、国連憲章の重大な違反になる。わが国は最も強い言葉で非難する」と述べました。その上で「ロシアに対しては、国際法上の義務の履行を強く求める」と述べました。 ●首相 “台湾海峡めぐる情勢への影響注視” 参院予算委集中審議 国会では2日、参議院予算委員会でウクライナ情勢などをテーマに集中審議が行われました。岸田総理大臣は、力による現状変更をとりわけ東アジアで許してはならないとした上で、台湾海峡をめぐる情勢に与える影響を注視していく考えを示しました。 ●ウクライナ治安当局 “ロシア軍捕虜を撮影とする動画” 公開 ウクライナの治安当局は1日、SNS上で、ロシア軍の捕虜を撮影したとする動画を相次いで公開しました。このうちひとつの動画ではロシア軍の戦車を操縦していたという男性が「どうしてウクライナにきたのか」と質問されると、「最初は軍事訓練のために近づいた。その後、ゼレンスキー大統領がすでに降伏したと言われた」と答え、ウクライナへの侵攻だとは知らされていなかったと話していました。そして、「プーチン大統領によるこのような政治を残念に思う。私は支持していない」と、政権を批判していました。また、別の動画ではロシア軍の捕虜とされる男性が母親と電話で話す様子が映っていて、男性は「自分は拷問を受けておらず、食事も与えられている。ロシア軍は負傷した味方の兵士を殺していて、自分のような捕虜の交換に応じるかはわからない」と話していました。母親が「早く家に帰っておいで」と呼びかけると、男性は顔を手で覆うようにして泣いていました。 ●林外相 ウクライナ駐日大使と会談 林外務大臣は、ウクライナのコルスンスキー駐日大使と会談しました。林大臣は、ウクライナの主権と領土の一体性に対する確固たる支持を重ねて示し、停戦に向けて、国際社会と緊密に連携して対応していく考えを伝えました。 ●中国 停戦に向けた仲介 具体的な言及避ける ウクライナのクレバ外相が、1日、中国の王毅外相との電話会談で中国側に停戦に向けた仲介を求めたことについて、中国外務省の汪文斌報道官は2日の記者会見で、提案に応じる考えがあるかどうか問われたのに対し「中国は、ウクライナ危機の平和的解決につながるあらゆる外交的努力を支持している。中国は引き続き、ウクライナ情勢の緩和に建設的な役割を果たしていく」と述べるにとどめ、具体的に仲介を行う用意があるかどうか言及を避けました。 ●ホンダ ロシア向け輸出を停止 ウクライナに軍事侵攻したロシアへの経済制裁が強まる中、自動車メーカーのホンダは、ロシア向けの乗用車やオートバイの輸出を一時、停止する方針を決めました。ホンダはロシアには工場がなく、乗用車については、製造拠点のあるアメリカからロシアに向けてSUV=多目的スポーツ車を輸出し、年間およそ1500台程度を販売しています。現地の物流網が混乱していることに加え、経済制裁の影響で今後、決済や資金の回収ができなくなるリスクを考慮したとしています。 ●キエフの男性 緊迫した状況語る ウクライナの首都キエフに住む35歳の男性が、現地時間2日の午前1時すぎにNHKのインタビューに応じました。男性は4歳から16歳まで日本で育ち、現在は日本の健康商品などを輸入販売する会社を経営しています。自宅から車で20分ほどの場所にあるテレビ塔が攻撃を受けたことについて、男性は「非常にショッキングです。犬の散歩で外に出たらドーンという大きな音がしたので家に戻り、ニュースを見たらテレビ塔が攻撃されたということでした。すごく近くまで被害が迫っていると感じます」と話していました。そして「爆撃や銃声が聞こえ緊迫した状態なので、極力明かりをつけないで窓には近づかず、すぐに防空ごうに避難できるように待機しています」と、緊張を強いられながらもキエフにとどまる決意を語りました。 ●キエフの姉妹都市 京都市が献花台を設置 ロシアによる軍事侵攻を受けているウクライナの首都・キエフと50年以上前から姉妹都市となっている京都市は、ウクライナへの連帯と平和への願いを示すため、2日、市役所前の広場に献花台を設置しました。献花台は京都市役所前の広場にある姉妹都市のキエフから贈られた大理石のモニュメントの前に設けられ、2日は門川市長も花束を手向けました。 ●ノーベル平和賞受賞団体などが共同声明 ロシアのプーチン大統領が核戦力を念頭に抑止力を特別警戒態勢に引き上げるよう命じたことについて2017年にノーベル平和賞を受賞した国際NGO、ICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンと、去年、ノーベル平和賞を受賞したロシアの新聞の編集長、ドミトリー・ムラートフ氏は連名で共同声明を出しました。声明では「ロシアが核兵器の脅威を段階的に拡大させていることによって、私たちはいま、キューバ危機以来となる危険なレベルの脅威にさらされている」として、特別警戒態勢の命令の取り消しやウクライナからの撤退を求めました。 ●ロシア人国連職員1人が国外追放 国連のデュジャリック報道官は、1日、国連に勤務するロシア人職員1人が諜報活動を行ったとして国外追放されるとアメリカ政府から連絡を受けたことを明らかにしました。報道官は「もともと契約は今月3月14日に終了する予定だった」と説明しましたが、職員の業務内容など詳しいことは明らかにしませんでした。 ●バイデン大統領 一般教書演説でロシアを非難 アメリカのバイデン大統領は1日、日本時間の2日午前11時すぎから、今後1年の施政方針を示す一般教書演説を行い、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「独裁者が侵略行為への代償を払わなければ彼らはさらなる混乱を引き起こす」と述べ、国際秩序を揺るがそうとするロシアの行為は許すべきではないと強調しました。そして「プーチン大統領が始めた戦争は事前に計画された理不尽なものだ。プーチン大統領は世界からかつてなく孤立している」と述べ強く非難しました。 ●東京原油先物が上昇 NY原油も一時109ドル台に ウクライナ情勢の緊迫化を受けて産油国ロシアからの原油の供給が滞ることへの懸念が広がり、東京市場の原油の先物価格は午前中に一時、1キロリットル当たり6万5000円をつけ、1日と比べて2000円以上、率にして3.8%余り値上がりしています。ニューヨークの原油市場でも1日、国際的な指標となるWTIの先物価格が一時、1バレル=109ドル台をつけるなど大幅に上昇しました。 ●松野官房長官 大使館業務「リビウ連絡事務所などで業務継続」 松野官房長官は午前の記者会見で「ロシアよる侵略が拡大し、首都キエフの情勢が極度かつ急速に緊迫したことやG7=主要7か国すべての大使館が閉鎖したり、ウクライナの西部リビウに移動したりしたことを踏まえ、一時閉鎖し、大使館業務をリビウの臨時連絡事務所に移転した」と説明しました。その上で「引き続きリビウ連絡事務所やポーランドのジェシュフ連絡事務所などで業務を継続し、日本人と密接に連絡を取りつつ安全確保や出国支援に最大限の取り組みを続ける」と述べました。 ●ウクライナ北西部のジトーミルで爆撃 2人死亡 ウクライナの当局は1日夜、首都キエフから西におよそ130キロ離れた都市、ジトーミルで爆撃があり、住宅10棟が損壊し少なくとも2人が死亡し、3人がけがをしたと明らかにしました。10棟のうち3棟が焼けたほか、病院でも被害が確認されているということで、がれきの下に取り残されている人がいる可能性が高いとしています。 ●エクソンモービル 「サハリン1」撤退へ ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、アメリカの大手石油会社エクソンモービルは、ロシア極東のサハリン沖で日本の大手商社などと進めている石油・天然ガス開発事業「サハリン1」の稼働を中止し、撤退に向けた手続きを始めると発表しました。 ●アップル ロシアで全商品の販売取りやめ アメリカのIT大手アップルは、ロシアの国内で、シェア1位のスマートフォンを含むすべての商品の販売を取りやめました。アイルランドの調査会社によりますとロシア国内におけるスマートフォンのメーカー別のシェアは先月、アップルが26%を超えて1位となっていますが、このスマートフォンを含めてすべての商品の販売を取りやめます。さらにスマートフォンを利用した電子決済などのサービスの利用を制限したほか、国外ではロシアの政府系メディアのアプリをダウンロードできなくする措置を取りました。 ●首都キエフにある日本大使館 一時閉鎖に ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続き、急速に事態が緊迫化していることから、外務省は2日、首都キエフにある日本大使館を一時閉鎖しました。残っていた大使館員も退避したということです。外務省ではウクライナの西部、リビウに設けている臨時の連絡事務所で在留する日本人およそ120人の安全確保や出国支援などを続けるとしています。 ●米国防総省 ロシア軍は国境周辺の戦闘部隊の80%以上を投入 アメリカ国防総省の高官が1日、記者団に明らかにしたところによりますと、ロシア軍はウクライナ国内で戦力を増強し続け、国境周辺に展開していた戦闘部隊のうち、これまでに80%以上を投入したということです。首都キエフに向けて南下しているロシア軍の部隊については、前日と同じ、北におよそ25キロの地点にとどまっているとの認識を示しました。ロシア軍はウクライナ第2の都市ハリコフでは包囲を目指してウクライナ軍と激しい戦闘を続け、東部ドネツク州の都市マリウポリでは市内を砲撃できる位置にまで接近していると分析しています。またウクライナの空域での攻防も続いていて、ロシア軍が一部の地域で支配を強めているものの、全土の制空権は奪えておらず、ウクライナ軍の防空やミサイル防衛システムは維持されているということです。さらにロシア軍のいくつかの部隊は戦わずに降伏しているとして、高官は「これらの兵士の多くは徴兵で戦闘の経験がなく、戦闘に参加することを知らされていなかった者もいる」と指摘し、ウクライナ側から激しい抵抗を受けて士気が低下している兆候もあるとしています。 ●ベラルーシ大統領 「ロシアの軍事作戦には参加していない」 ベラルーシのルカシェンコ大統領は1日、安全保障に関する会議で「ベラルーシはロシアの軍事作戦には参加していない。将来的にも、われわれはウクライナにおける今回の特別な軍事作戦に加わるつもりはない」と述べました。 ●ポーランドへの避難 およそ41万人 ポーランド内務省によりますと、ロシアの軍事侵攻以降、ウクライナからポーランドに避難してきた人は1日の午後3時現在でおよそ41万人にのぼるということです。このうち、ポーランド南東部の町、メディカにある国境では1日も大勢の人たちが、ウクライナ側の検問所から歩いたり、用意されたバスに乗ったりしてポーランド側に逃れてきました。ウクライナでは、防衛態勢の強化のため18歳から60歳の男性の出国が制限されていることから国境を越えてくるのは子どもを連れた女性や年配の人たちがほとんどで、待ち受けていた人たちと再会し、涙を流す人の姿も見られました。 ●バイデン大統領 ゼレンスキー大統領と電話会談 アメリカのバイデン大統領は1日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話で会談しました。ホワイトハウスの声明によりますと会談はおよそ30分続き、バイデン大統領はウクライナに対して安全保障や経済、それに人道の面で引き続き支援する考えを強調したということです。一方、ゼレンスキー大統領は会談後、「ロシアに対する制裁やウクライナ防衛に向けた支援について話し合った。われわれは侵略者をいますぐ止めなければならない」とツイッターに投稿しました。 ●ゼレンスキー大統領「人々への砲撃はやめるべきだ」 ウクライナのゼレンスキー大統領は1日、首都キエフでロイター通信のインタビューに応じました。このなかでロシアとの交渉について「圧力をかけたい側とそれを受け入れられない側で立場は一致していない」と述べ、隔たりが大きいことを明らかにしました。そのうえで「われわれは対話を続けるつもりはあるが、せめて人々への砲撃はやめるべきだ。軍用機が頭上を飛び交い、砲撃が行われている状況で交渉のテーブルにつくことはできない」と述べ、ロシアに対して攻撃をやめるよう訴えました。そして「ウクライナが負ければ、ロシア軍はNATO加盟国の国境に押し寄せることになる。挑発的な行動をとり同じ問題を起こすだろう」と述べ、西側諸国に支援を求めました。 ●ウクライナ外相 中国に停戦仲介を求める ウクライナ情勢を受けて、中国の王毅外相とウクライナのクレバ外相が1日、電話会談を行い、クレバ外相は中国側に停戦に向けた仲介を求めました。中国外務省によりますと、この中でクレバ外相は、先月28日に行われたロシアの代表団との会談について説明し「戦争を終結させることがウクライナの最優先事項であり、現在の交渉は順調ではないが、冷静さを保って交渉を続けたい」と述べたということです。その上で「中国はウクライナ問題で建設的な役割を果たしており、停戦を実現するために中国の仲介を期待したい」と述べ、中国側に停戦に向けた仲介を求めました。これに対し、王外相は「われわれは一貫して各国の主権と領土の一体性を尊重すると主張しており、当面の危機に対し、ウクライナとロシアが交渉によって問題解決の方法を見いだすよう呼びかけている」と述べ、話し合いによる解決を目指すべきだという立場を改めて示しました。その一方で、ロシアがNATO=北大西洋条約機構をさらに拡大させないよう求めていることを念頭に「一国の安全は他国の安全を損なうことで達成することはできず、地域の安全は軍事的なグループを拡大することで実現することはできない」とも述べ、ロシア側に配慮する姿勢も示しました。 ●NY原油 一時106ドル台に大幅上昇 ニューヨークの原油市場では1日、原油価格の国際的な指標となるWTIの先物価格が一時、1バレル=106ドル台まで大幅に上昇しました。1バレル=106ドル台をつけるのは2014年7月以来、7年8か月ぶりです。1日にはIEA=国際エネルギー機関の臨時の閣僚会合で日本や欧米諸国などの加盟国が協調して6000万バレルの石油備蓄を放出することで合意しましたが、原油価格の上昇には歯止めがかかっていません。 ●首都キエフのテレビ塔の周囲から大きな黒い煙 ウクライナ内務省は1日、首都キエフのテレビ塔がロシア軍に攻撃されたと明らかにしました。ウクライナの当局はこの攻撃でこれまでに5人が死亡し、5人がけがをしたとしています。現地で撮影された映像では市の中心部にあるテレビ塔の周囲で爆発が起きたあと、大きな黒い煙があがっている様子が確認できます。この攻撃の前にはロシア国防省がキエフにある情報作戦の拠点などを攻撃するとして周囲の住民に避難を呼びかけているとロシア国営のタス通信が伝えていました。 ●日米欧など石油備蓄の協調放出で合意 原油安定供給のため ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響で原油の安定供給に懸念がでるなかIEA=国際エネルギー機関の臨時の閣僚会合が開かれ日本や欧米諸国などの加盟国は協調して6000万バレルの石油備蓄を放出することで合意しました。会議の後、萩生田経済産業大臣が明らかにしました。IEAの決定を受けた協調放出は、2011年、リビア情勢の悪化を受けて放出して以来、およそ11年ぶりです。 |
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●「ロシア世界」を守るためには仕方ない…プーチンが軍事介入を正当化 3/2
ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵攻についてのテレビ演説で「非軍事化と非ナチ化を目指す」と語っている。なぜウクライナを第二次世界大戦時のナチス・ドイツにたとえたのか。それは「過去の歴史を武器に侵攻を正当化する」というのが、プーチン大統領の得意なやり方だからだ。アメリカのブルッキングス研究所の研究員らの共著『プーチンの世界 「皇帝」になった工作員』から紹介する――。 ●クリミア危機が起きた2014年にプーチンが行ったこと プーチンにとって、2014年は記念すべきイベントが集結する年だった。第一次世界大戦勃発から100周年、第二次世界大戦勃発から75周年。そして、レニングラード包囲戦の終結やノルマンディ上陸作戦など、第二次世界大戦の終戦につながった画期的な出来事から70周年……ピックアップするネタには事欠かなかった。 14年1月、プーチンは年明け早々行動に乗り出し、レニングラード包囲戦の終結を記念する式典で花輪を手向けた。 彼は包囲戦との個人的なつながり(「これは私自身の家族史に刻まれた出来事だ」)やレニングラード市民(彼の両親も含む)の払った犠牲について強調した。 ロシアの国営テレビは、ナチスのソ連侵攻をテーマとした映画やドキュメンタリーをひっきりなしに放映した。 ●「新たなファシスト」という“詭弁” そうした映像のなかで語られる事実の数々は、プーチンやクレムリンがキエフに誕生した「新たなファシスト」の脅威となぜ戦わなければいけないのか、その理由を説明するものだった。 第二次世界大戦の記念日を利用してウクライナ作戦やクリミア併合を正当化する物語を紡ぎ出すために、プーチンは手持ちの道具をさらに磨き上げる必要があった。 それまで彼は、ウクライナ人とロシア人を単一の民族としてひとくくりにしていたが、今度は両者を引き離さなければならなかった。 ●「第二次世界大戦中のウクライナ人」を持ち出す 第二次世界大戦というレンズを通して見ると、民族としてのウクライナ人は第五列だった。つまり、彼らはロシア人やロシア国家の敵だった。 クリミア併合を発表するプーチンの3月18日の演説は、この点をきっちりと反映させたものだった――2011〜12年のデモで国家を脅かしたロシア国内の第五列と、ウクライナ人を巧みな言い回しで結びつけたのだ。 戦時中の第五列といえば、国家の裏切り者であり、ナチスに協力したソ連の人々や民族を指す。そこで、プーチンはソ連の歴史のなかでも混迷をきわめた20年間――ロシア革命から第二次世界大戦勃発までの時期――についてあえて言及した。 ●史実を「侵攻の武器」として利用する 当時、ウクライナ人はたびたびロシア人と対立し、ソ連支配に反対するウクライナの民族主義グループが次々と組織された。 その一つであるウクライナ民族主義者組織(OUN)は、国境を越えたポーランドに拠点を置くグループだった。 当初、OUNとその指導者のステパン・バンデラは、1939〜41年にポーランドとウクライナに侵攻したドイツ軍と協力関係にあった。彼らの心には、ドイツがウクライナ独立を支持してくれる、という(無益な)期待があった。 OUNがドイツと協力関係にあったという史実を利用して、プーチンは、ステパン・バンデラをヒトラーの右腕とイメージづけようとした(実際のところ、バンデラはヒトラーに会ったこともなく、最後にはナチスとソ連の両方から迫害されることになる)。 さらにプーチンは、ウクライナの新政府がステパン・バンデラの思想の流れを引くものだと印象づけようとした。 彼は数々のスピーチや発言のなかで、国家の生き残りとロシア世界(ルスキー・ミール)の防衛を賭けたロシアの長年の戦いについて繰り返し語り、古い物語を引っぱり出してきた。 ●「ウクライナはユダヤ人虐殺の実行犯」という物語 2014年、ロシアの長い奮闘の最新章の1ページに立ったプーチンは、「ステパン・バンデラのウクライナ」に潜む第二次世界大戦の恐怖の再来を必死に食い止めようとしていたのだ。 一方、第二次世界大戦中のナチス・ドイツとロシアの協力については、プーチンは巧みな話術を駆使して正当化した。 ドイツによるポーランド侵攻を容易にした1939年の独ソ不可侵条約と、スターリンとヒトラーによる秘密取引は、ロシアの生存のために必要だったとして弁護された。 ところが、ステパン・バンデラとウクライナの民族主義者たちは、過激思想や反ユダヤ主義に駆られ、ナチスに仕えてウクライナのユダヤ人を虐殺したとして非難された。 メディア戦略によって広められた「プーチンが語る物語」のなかでは、彼らはホロコーストの実行犯であり、ウクライナの民族主義思想を掲げてロシア人をも攻撃した危険分子だった。 プーチンは訴えた。 今、世界は新たなファシストの台頭に直面している。 しかしアメリカや西側諸国の政府は、1940年代の戦時中の同盟ではロシアと手を組んだにもかかわらず、今回はそうしようとせず、なぜかウクライナの過激派を支援・扇動しようとしている。ロシアを崩壊させたいという欲求から、アメリカとヨーロッパの米同盟国は第二次世界大戦の原則そのものを裏切っているのだ。 ●「あなたたちはどちらの味方だった?」 プーチンはそれまでの政治論争でも、こうした戦術や言葉遣いを試したことがあった。 例えば2000年代のチェチェン紛争中には、チェチェン人の歴史が利用された。07年4月のタリンのソ連兵戦没者慰霊碑の撤去をめぐる論争ではエストニア人、08年8月のグルジア戦争中にはグルジア人の戦時中の過去がほじくり返された。 これもケース・オフィサー流の脅迫の一種といっていい。 いずれの場合も、プーチンはこう言っているも同然だった。 「わ れわれはあなたたちの汚れた過去を知っている。ソ連の一部だったあいだは黙っていたが、現在のあなた方の行動を見ていると、もう一度話をしなければいけないようだ。第二次世界大戦の記念の年は、この質問を問いかける絶好の機会になる――当時、あなたたちはどちらの味方だった? そして今、どちらの味方に付くつもりだ?」 こうした国家や個人の忠誠と裏切りの物語は、プーチンが談話のなかで好んで取り上げるテーマである。 ●「戦時中にソ連を裏切ったのは誰か」 『プーチンの世界』第5章で説明したとおり、第二次世界大戦中、プーチンの父は内務人民委員部(NKVD)の破壊工作部隊に所属し、レニングラードからナチスの占領地へと送られた。 あるとき、現在のエストニアに入った彼は、敵の協力者を殺し、占領軍にとって有利なものをすべて破壊することを命じられた。いわば特攻作戦だった。 プーチンの父はケガを負ったが、何とか生還して故郷に戻ることができた。父親の体験を語るとき、プーチンは「戦時中にソ連を裏切ったのは誰か」という強い思いを必ず口にした。 そのなかにはエストニア人とウクライナ人が含まれていた。 情状酌量の余地はあるとしても、彼らの行動はプーチンにとって許しがたいものだった。ウクライナについていえば、1930年代のソ連の集団農場化政策や大飢饉ききんの被害によって、モスクワ政府に対する敵意がはぐくまれていったことは確かだった。 ソ連指導者のニキータ・フルシチョフは、当時の苦痛への謝罪の意味も含めて、1954年にクリミアをウクライナに移管した(そのときにはもちろん、ソ連の解体など想定されていなかった)。しかしプーチンにとって、こうした歴史は2013〜14年の自身の物語とはいっさい関係がなかったのである。 ●エリツィン大統領から引き継がれた思想 歴史を武器として使うことによって、プーチンはウクライナの民族間の緊張や恐怖に薪をくべた。次に彼が訴えたのは、たとえどこに住んでいようとも、ロシア民族とロシア語話者を攻撃から守るのが国家の権利と義務であるということだった。 この権利は、1990年代初頭にボリス・エリツィン大統領が初めて主張したもので、のちにロシアの軍事政策へと正式に盛り込まれた。 プーチンはこうした義務と、意のままに操ることのできる法律の力を駆使し、2014年5月25日に予定されていたウクライナ大統領選挙に先駆けて、クリミア半島を実効支配した。 プーチンがこのときに道具として用いたのは、クリミア半島へのロシア黒海艦隊の長期駐留を認めるウクライナとの二国間条約、ロシアの支援を求めるヤヌコーヴィチ大統領や地方当局の要望、ロシア議会の決議だった。 これらの道具は、軍や民間の建物やインフラを守る治安部隊の活動を法的に援護するものだった。そして、3月16日に慌てて行われたクリミアのロシア併合に関する住民投票が、今回の行動を正当化する最後の要素となった。 |
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●「プーチンが歴史的敗北に向かって突き進んでいるように見える」 3/2
開戦から1週間も経たないが、ウラジーミル・プーチンが歴史的敗北に向かって突き進んでいる可能性がますます高くなっているように見える。たとえプーチンがすべての戦闘で勝っても、この戦争は彼の負けになりうるのだ。 プーチンが夢見るのはロシア帝国の再興だが、その夢ははじめからウソの上に成り立つものだった。並べられたウソ八百は、ウクライナは本当の意味では国ではなく、ウクライナ人も本当の意味では国民ではなく、キエフやハリコフやリヴィウの住民はロシアの統治を待ち望んでいる、というものだった。 だが、実際にはウクライナは1000年を超える歴史がある国であり、モスクワがまだ村でもなかった頃からキエフはすでに大都市だった。ロシアの独裁者はウソを何度もついているうちに自分でもそれを信じるようになってしまったに違いない。 ●裏目に出た「プーチンの賭け」 ウクライナ侵攻を計画したとき、プーチンには、すでにわかっていることが幾つかあった。ロシアが軍事力でウクライナを圧倒していることはわかっていた。欧州諸国がロシアの石油や天然ガスに依存しており、ドイツなどが厳しい制裁を科すことに躊躇するだろうこともわかっていた。 プーチンはこうした事実を踏まえ、ウクライナには迅速かつ強烈な攻撃を仕掛けてウクライナ政府の指導部を取り除き、キエフに傀儡政権を樹立して西側諸国の制裁をしのぐつもりだったのだろう。 だが、この計画には大きな見落としがあった。それは米国がイラクで学び、ソ連がかつてアフガニスタンで学んだことでもあるのだが、一国を征服するのは、その国を保持していくことにくらべれば、はるかに簡単だということだ。 プーチンはウクライナの征服ならできるとわかっていた。だが、はたしてロシアの傀儡政権をウクライナ人はすんなりと受け入れるのかは不明だった。きっと受け入れるだろうとプーチンは賭けに打って出たわけだ。 なにしろ彼はこれまで自分の話を聞いてくれる人なら誰彼なしに、ウクライナは本当の意味では国ではなく、ウクライナ人は本当の意味での国民ではないのだと繰り返し語ってきたのだ。2014年のクリミアでも住民はロシアの侵攻に抵抗しなかった。2022年もきっと同じはずだという理屈だった。 だが、プーチンの賭けが裏目に出ていることは日を追うごとに明らかになっている。ウクライナの人々が一心に抵抗活動を繰り広げ、その姿が全世界から称賛されているのだ。ウクライナの人々が戦争に勝ちつつあると言ってもいいほどである。 ●「憎しみ」を生んではいけなかった もちろんこれから先、暗い日々が何日も続くに違いない。ロシアがウクライナ全土を征服する可能性もある。だが、ロシアがこの戦争に勝つにはウクライナを保持していかなければならないのだ。それができるのはウクライナの人々がそれを許すときだけであり、これからそのような状況になるとは、ますます考えにくくなっている。 ロシアの戦車が一台破壊され、ロシアの兵士が一人殺されるたびに、ウクライナ人の抵抗する勇気が強まる。ウクライナ人が一人殺されるたびに、侵略者に対するウクライナ人の憎しみが深まる。 憎しみは感情のなかで最も醜いものだ。だが、虐げられた国民にとって憎しみは隠された宝でもある。この宝を心の奥深くに隠すからこそ、抵抗活動は何世代も続けられるのだ。 プーチンがロシア帝国を再興したいなら、流血があまり多くない勝利を収め、占領の際にも憎しみがあまり高まらないようにする必要があった。ウクライナ人の血が流れれば流れるほど、プーチンの夢の実現は遠のくのだ。 ロシア帝国の死亡証明書に記されたる名前はミハイル・ゴルバチョフのものではない。そこに記されるのはプーチンの名前なのだ。ゴルバチョフのもとではロシア人とウクライナ人は兄弟同士のようだった。そんなロシア人とウクライナ人を敵として反目させたのがプーチンであり、ロシアに立ち向かうことをウクライナの国是としてしまったのだ。 ●物語は戦車よりも重みを持つ 国というものは、突き詰めて言うと、物語の上に築かれるものだ。いまウクライナの人々の物語は日を追って増えており、そうした物語の数々はこれから先の暗い日々に語られるだけでなく、数十年後、数世代後にも語り継がれるだろう。 大統領が首都から逃げ出すのを拒み、米国に対して必要なのは弾薬であり(避難のための)乗り物ではないと言った物語がある。 ロシアの軍艦に「地獄に落ちやがれ」と言ってのけたズミイヌイ島の兵士たちの物語もある。 道に座ってロシアの戦車を止めた民間人たちの物語もある。 国を作り上げるのはこうした物語の数々だ。長期的にはこうした物語のほうが戦車よりも重みを持つのだ。 そのことをほかの誰よりも知っていたはずだったのがロシアの独裁者だ。彼は子供の頃、レニングラード包囲戦での残虐なドイツ軍と勇敢なロシア人の物語を聞いて育った。プーチンによっていま似たような物語がたくさん作られているが、彼自身はそうした物語でヒトラーの役柄を演じる始末である。 ウクライナ人の勇敢な行動の物語によってウクライナ人だけでなく、世界の人々の覚悟も決まった。その物語は欧州諸国の政府、米国の政権、それからロシアの抑圧された市民にも勇気を与えたのだ。 ●傍観者でいてはいけない ウクライナ人が覚悟を決めて素手で戦車を止めるなら、ドイツ政府も覚悟を決めてウクライナ人に対戦車ミサイルを供給し、米国政府は覚悟を決めてロシアをSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除し、ロシアの市民も覚悟を決めて無意味な戦争に反対するデモを敢行するのだ。 私たち全員も覚悟を決めて何かをできるだろう。寄付や難民の受け入れのほかにも、インターネットで戦いを助けるといったことができるかもしれない。ウクライナでの戦争が世界のこれからを決めるのだ。圧政と侵略の側が勝つことになれば、それは私たち全員の苦しみとなる。 単なる傍観者でいることには何の意味もない。いまは旗幟を鮮明にすべきときだ。 不幸なことに、この戦争は長期化するおそれがある。形を変えながら何年も続くこともありうる。だが、最も重要な問題は、すでに決着がついているのだ。 この数日で全世界は確証を得た。ウクライナは本当の意味で国であり、ウクライナ人は本当の意味での国民であり、ウクライナ人は新ロシア帝国では暮らしたくないのだ。 まだ決着がついていない主要な問題は、このメッセージがクレムリンの分厚い壁を突き抜けるまで、あとどれくらい時間が必要なのかというところだ。 |
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●「プーチンは別の世界に住んでいるようだ」政権批判者が次々に殺害される… 3/2
●かつてのソ連、いまのロシア、批判は… かつてのソ連時代には言論の自由がなく、政府を批判した人物は逮捕されました。あるいは、「こんなに理想の社会を悪く言うとは、精神に問題がある」として、精神科病院に収容されました。 一方、いまのロシアには言論の自由があり、政府の批判をしても逮捕されることはありません。その代わり、何者かによって殺害される危険があります。 さて、どちらがいいか……などというのはブラックジョークですが、いまのロシアは、まさに「おそロシア」と呼ばれるような状態になってしまいました。有力な野党指導者が、モスクワ市内の中心部で暗殺されたからです。 プーチン大統領の執務室があるクレムリン。クレムリンとは「城塞」の意味で、帝政ロシア時代に建設された宮殿のこと。ロシア革命でソ連共産党が政権を握ると、共産党の本部が置かれ、クレムリンは共産党の別称になっていました。ソ連崩壊後は、エリツィン、そしてプーチン大統領の居住区兼執務室です。 このクレムリンに近いモスクワ川にかかる橋で、2015年2月27日深夜、元第一副首相のボリス・ネムツォフ氏が何者かに銃撃されて死亡しました。 ネムツォフ氏が政治に関与するようになったきっかけは、1986年にウクライナで起きたチェルノブイリ原子力発電所の事故でした。原発反対運動をする中で政治の世界に入り、同じボリスという名前のエリツィン大統領の知遇を得ました。 元第一副首相という肩書でわかるように、彼はエリツィン大統領時代には政権中枢にいて、経済改革で腕を振るい、一時はエリツィンの後継者にも擬せられたほどの人物でした。しかし、経済改革に不満を持つ勢力によって解任され、プーチン政権では、リベラル派の野党に転じました。 その後、2004年にウクライナで「オレンジ革命」と呼ばれる民主化運動が起きると、民主化指導者のヴィクトル・ユシチェンコを支持し、ユシチェンコ大統領が誕生後は投資問題担当の大統領顧問に任命されました。 今回の事件の直前に、ネムツォフ氏は、「ウクライナの内戦にロシア軍が介入している証拠がある」と語っていたと言われますが、ウクライナとの関わりは、このときから始まっていたのです。 今回の事件後、プーチン大統領直属の捜査機関である捜査委員会は、ネムツォフ氏の自宅の家宅捜索から始めました。「交友関係のもつれやビジネス上のトラブルが原因である可能性があるから」というわけですが、この家宅捜索により、ネムツォフ氏と連絡を取り合っている野党勢力の全貌をプーチン政権が把握することが可能になりました。何のための捜査なのか、目的は明白ですね。 ●プーチン政権批判者は消される 今回の事件を捜査している捜査委員会は、ロシア南部のチェチェン共和国の関係者5人を逮捕したと発表しました。 はてさて、不思議な話です。なぜネムツォフ氏が、まったく関係のないチェチェンの関係者に殺害されなければならないのか。 事件の第一報を聞いて多くの人が感じた「プーチン政権寄りの勢力による犯行」の可能性はどうなのか、不明です。真犯人は、別にいるのではないかとの疑惑は晴れません。 というのも、これまでロシアでは、プーチン政権に批判的な政治家やジャーナリストが、次々に殺害されているからです。 たとえば2006年にはプーチン政権に批判的な報道を続けてきた独立系新聞社「ノーバヤ・ガゼータ」(新しい新聞)の女性記者アンナ・ポリトコフスカヤ氏がアパートのエレベーター内で何者かに射殺されました。容疑者として、このときもチェチェン出身者が逮捕されましたが、背後関係は解明されませんでした。 同じ年、ロシアの元情報機関幹部でイギリスに亡命したアレクサンドル・リトビネンコ氏が、ロンドンで放射性物質「ポロニウム210」を摂取させられて、死亡しました。 ポロニウム210は、大規模な核施設がなければ生成させることはできないもの。国家的な組織にしかできない犯行でした。ロンドン警視庁は、事件の容疑者としてロシア人を特定し、ロシア政府に身柄の引き渡しを求めますが、ロシアは拒否。名指しされた人物は、その後、国会議員選挙で当選。ロシア国会の議員になっているのです。 さらに2009年には、チェチェンの人権問題に取り組んでいた弁護士のスタニスラフ・マルケロフ氏と、一緒にいた「ノーバヤ・ガゼータ」の嘱託記者アナスタシア・バブロワさんが銃撃されて死亡しています。 ●「プーチン大統領は別の世界に住んでいるようだ」 今回の事件に関連し、2月28日、ロイター通信は、1924年にイタリアの首都ローマで起きた殺人事件を引き合いに出した論評を配信しました。 殺害された政治家はジャコモ・マッテオッティ氏。同氏は殺害される少し前に議会で当時の指導者ベニート・ムッソリーニと彼が率いる国家ファシスト党を批判する演説を行ってきました。事件後、複数の容疑者が逮捕されましたが、裁判の判事は政権派に代えられ、有罪判決を受けた者たちは恩赦が与えられたそうです。 その後、イタリアがどのような道を進んだかは、ご存じの通りです。 2014年2月、ウクライナの停戦をめぐり、プーチン大統領と会談したドイツのメルケル首相は、アメリカのオバマ大統領に対して、「プーチン大統領は別の世界に住んでいるようだ」と感想を語ったそうです。 ロシアはもう、「別の世界」に行ってしまったのでしょうか。 |
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●副編集長が不審死、女性記者がエレベーター内で射殺され… 3/2
●副編集長が不審死、記者が射殺… ロシアに、プーチン政権を批判し続けてきた新聞があります。「ノーバヤ・ガゼータ」(新しい新聞)という名前の新聞です。この新聞は、多くの記者の犠牲を出しながらも、政権批判という孤塁を守ってきました。 言論の自由がなかったソ連が崩壊後、自由な言論活動をするメディアが次々に生まれましたが、プーチン政権になると共に、ロシアの放送局は次々に政権寄りの報道をするようになります。政権寄りでない放送局はプーチン政権に近い富豪によって買収され、批判しなくなります。新聞社も御用新聞ばかりになりました。 それだけに「ノーバヤ・ガゼータ」は貴重な存在ですが、払った犠牲も大きなものです。これまでに5人もの記者が殺害されてきたからです。 2003年には副編集長が不審死を遂げています。高熱を出してモスクワの病院に入院しましたが、顔の皮膚が剝げ、脱毛も始まり、呼吸困難となって死亡しました。 当時は原因が不明でしたが、放射性タリウムを、何らかの方法で体内に入れられたためと見られています。放射性タリウムなど、普通の人が入手することは困難です。 2006年には、女性記者のアンナ・ポリトコフスカヤ氏がアパートのエレベーター内で何者かに射殺されるという悲劇に見舞われました。 ●「彼女の書いた政権批判の記事以上に、暗殺によってロシアは大打撃を被った」 この事件には、多くの人が衝撃を受けたのですが、プーチン大統領はポリトコフスカヤ記者の関係者にお悔やみを言うことは一切ありませんでした。普通ならば、とりあえずは「言論の自由に対する侵害だ」などと言うところでしょうが、「彼女の書いた政権批判の記事以上に、暗殺によってロシアは大打撃を被った」と言ってのけたのです。反政府のジャーナリストが殺害されるのは、プーチン政権を貶めようとする陰謀だというわけです。 このポリトコフスカヤ氏以外にも、2009年には、同紙の顧問弁護士でチェチェンの人権問題に取り組んでいたスタニスラフ・マルケロフ氏と、彼を取材中だったアナスタシア・バブロワ記者が白昼の路上で射殺されています。 「ノーバヤ・ガゼータ」は、ソ連崩壊後の1993年に創刊。ソ連最後の大統領となったミハイル・ゴルバチョフも出資して話題になりました。週3回の発行で、発行部数は公称27万部という小さな新聞です。 しかし、広告が激減し、苦しい経営が続いています。民間の新聞や放送局に広告を出している広告主に圧力をかけ、広告を出すのをやめさせる。気に食わないメディアを黙らせるには、これが一番有効な方法であることを、「ノーバヤ・ガゼータ」の悲劇は物語っています。ロシアから「言論の自由」の灯が消えかかっているのです。 ●「メディアを懲らしめる」はロシアだけではない ここまで読んでこられた読者は、私が何を言いたいか、もうおわかりですね。2015年、日本にも「メディアを懲らしめるには広告収入をなくせばいい」と発言した議員がいた件です。この議員が所属している政党の名前には「自由」と「民主」の言葉が入っています。自由で民主的な世の中が素晴らしいと思っている人たちの集まりのはずなのに、そうでない人もいたのですね。 こういう人に想像してもらいたいことがあります。将来、再び政権交代が起きたときのことです。政権を取った政党の議員が、同じことを発言したら、どう思いますか? その政党の議員が「懲らしめる」対象として考えるメディアが、自分の愛読している新聞だったら、どうしますか? あってはならないことだとは思いませんか。 状況が悪化しているのはロシアばかりではありません。次はトルコの状況です。 2014年12月、トルコの警察当局は、トルコの大手新聞「ザマン」の編集長やテレビ局のプロデューサーらジャーナリストを中心に27人の身柄を拘束しました。 大手新聞「ザマン」とは「時」という意味ですから、英語名にすれば「タイム」ですね。トルコを代表する高級紙ですが、エルドアン大統領が独裁色を強めるにつれ、政権批判を強めていました。 エルドアン氏は、首相の任期中に大統領選挙に出て当選。トルコは首相が政治の実権を握り、大統領は象徴的な国家元首にすぎなかったのですが、エルドアン氏が大統領になるや、憲法を改正して、大統領に実権を集中させようとしています。これを批判的に報道する新聞記者たちは、次々に逮捕されます。 政権からの攻勢に「ザマン」が苦しんでいるのは、編集長逮捕だけではありません。広告料収入の減少に見舞われているのです。 エルドアン大統領による独裁色が濃くなると、これまで「ザマン」に広告を出していた企業が、次々に広告を取りやめるようになったのです。「ザマン」は高級紙ですから、読者にインテリや富裕層が多く、広告の媒体としては魅力です。 それなのに、広告が減少。広告を出すと、紙面で一目瞭然ですから、政権側からの猛烈な嫌がらせにあうというのです。 こうして、トルコの「表現の自由」は蝕まれているのです。2016年、ついに「ザマン」は政府の管理下におかれてしまいました。 ●「自由民主」の名の行方 「メディアを懲らしめるには、広告収入をなくせばいい」 トルコのエルドアン政権は、まさにそれを実践しているのですね。 そういえば安倍晋三首相は、ロシアのプーチン大統領やトルコのエルドアン大統領と大変ウマが合うことで有名です。安倍首相の応援団を自任する自民党の若手議員たちは、ロシアやトルコに見習うべきだと考えているのでしょうか。 |
●プーチン・ロシアへの「強力な経済制裁」、ロシア経済への「打撃」 3/2
●ロシア経済、最大の弱点とは? 経済制裁の効果を最大限発揮するためには、相手国経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を見極め、それに合致したプランを用意する必要がある。相手の弱い面を突かなければ意味がないという点で、通常の軍事オペレーションと大きく変わるものではない。 基本的にロシア経済は原油に依存しており、原油価格が上がると財政収支も国際収支も黒字になり、逆に原油価格が下落すると、両方が赤字に転落する。ロシアの2021年における名目GDPは173兆円と、米国の14分の1、中国の10分の1、日本の3分の1しかなく、経済的に見ればロシアは小国でしかない。しかも、ロシアの国内経済は極めて脆弱であり、通貨ルーブルは弱く、常に通貨売りの圧力がかかるのでインフレになりやすい。 ロシア経済は、市場メカニズムが支配する国際金融市場において立場が弱く、しかも原油価格依存型になっており、相手国にとってはそこが最大の攻め所となる。プーチン政権は、こうしたロシア経済の弱点を十分に理解しており、市場からの影響をできるだけ受けない国家体制を志向している。 具体的には、重税で国民に重い負担を課す一方、国債発行を最小限にとどめ、政府の財政については極めて緊縮的に運営している。国債を大量発行すると、政府の予算が債券市場に依存してしまうので、意図的にこうした事態を避けていると考えられる(大量の国債を消化できないと言い換えることもできる)。 1853年に発生したクリミア戦争では、当時のロシア帝国は財政難で、大量の国債発行を余儀なくされていた。ところが金融市場の中心地は英国のロンドンであり、ロシアは戦費を調達するため、敵国だった英国に資金調達を依存するという苦い経験をしている。プーチン氏は、良くも悪くも明確な歴史観を持っているとされるが、こうしたロシアの歴史も政権運営に影響を与えているはずだ。 リアリストであるプーチン氏の性格は軍事費の扱いにも表われている。現代の軍隊はハイテク化されており、装備にも相応のコストがかかる。基本的に投入できる軍事費はGDP(国内総生産)に比例するので、経済規模が小さい国は強力な軍隊を持つことはできない。ロシアは軍事大国というイメージがあるが、現実はそうでもない。ロシアの軍事費(2020年)はわずか6.5兆円であり、米国(81.7兆円)、中国(26.5兆円)と比較すると圧倒的に少なく、もはや日本の防衛費と大差ない水準である。 プーチン氏はロシア経済が脆弱であることを十分に理解しており、財政が経済状態や市場メカニズムに依存しないよう緊縮財政を維持し、その範囲で最大限の軍事費を捻出している。 通常、経済が混乱すれば、政府の体制はガタガタになってしまうものだが、ロシアの場合、西側各国とは状況が異なり、経済活動に少々、圧力を加えただけでは、大打撃を与えることはできない。 一方で、ロシアはギリギリの範囲で軍事支出を行っている。多額の支出を長期継続する余力はなく、ここがロシアにとって最大の弱点となるだろう。国内経済がインフレに極めて弱いという欠点もあるので、通貨を下落させインフレを加速させることは有益である。 ●SWIFTから排除しても… では、こうしたロシアのファンダメンタルズに照らし合わせた場合、米欧が実施を表明している経済制裁はどの程度効果が見込めるのだろうか。 米国は当初、ロシアの大手銀行に対するドル決裁の停止、ハイテク製品の輸出規制の実施などを発表し、欧州も金融システムへのアクセス制限や輸出規制など、米国と同様の制裁を実施すると表明した。だが、一連の制裁は当初からロシア側も想定済みであり、当然のことながら対策を打っている。 米欧がロシアに本格的にダメージを与えるためには、SWIFTと呼ばれる国際送金ネットワークからロシアの銀行を完全排除する措置がどうしても必要となる。だが、この手法は諸刃の剣であり、全面的にSWIFT排除を実施すると、欧米企業の対ロシア取引も大きな影響を受ける。SWIFTからのロシア完全排除については、欧州内で意見が相違しており、当初の制裁プランにSWIFT排除は入っていなかった。米欧各国の調整を経て、最終的にはロシアのSWIFT排除が決定したものの、あくまで限定措置であり、すべての金融機関が排除されるわけではない。 ロシアに対する制裁の効果は、どの金融機関を制限対象に加えるかによって大きく変わってくる。ロシア側の出方を見ながら、必要に応じて排除する金融機関を増やしていくことになるだろう。排除された金融機関を迂回して決済する方法も残されているが、大半の金融機関が対象となった場合、送金業務がほぼ頓挫するのは間違いない。 ロシアにとって一連の制裁は、ジワジワと兵糧攻めになっていくことを意味するので、SWIFT排除には相応の効果が見込める。しかしながら、SWIFT排除というのは「伝家の宝刀」でもあり、実際に抜いてしまうとその効果が剥落するリスクも同時に抱えてしまう。 仮に米欧側がロシアの金融機関を全面的に排除すれば、確かにロシアは貿易の決済が出来なくなる。だが、ここまで来ればロシアにとっては最後通牒を突きつけられたも同然であり、最終手段としてSWIFTを介さず、直接、決済するという方法を選択するかもしれない。 SWIFTはあくまで送金情報をやり取りする仕組みであり、送金自体を止めることはできない。人海戦術になるが、SWIFTが登場する前の時代に戻り、人出をかけて多くの送金情報を取りまとめれば、(処理できる量は激減するだろうが)送金を継続すること自体は可能である。 ●中露は準備をしてきた さらに言えば、(かなりの困難が伴うだろうが)中国が提供する人民元ベースの国際送金ネットワークに移行するという手段もある。中国は2015年、ドル覇権からの離脱を目指し、人民元ベースの国際決済システム「CIPS」を構築した。世界全体でのシェアはまだ低いが、日本のメガバンクや地銀も多数、参加している。 かつてロシアは欧州や米国、日本などからハイテク製品を輸入する必要があり、ここが最大の弱点となっていた。しかし2014年のクリミア併合以降、プーチン政権はハイテク製品の欧米依存からの脱却を目指し、輸入代替政策と中国との貿易拡大を進めている。 輸入代替策とは、自国で生産できるものは可能な限り、自国生産に切り換える政策である。輸入代替政策を行うと、国民の生活水準が低下したり、インフレが発生しやすくなるといった欠点があるが、この点においてロシアは独裁政権であり、民主国家と比べて、国民の不満はある程度までなら力で抑制できる。加えてロシアは、中国との貿易を急拡大しており、今や中国はロシアにとって最大の貿易相手国になった。 欧米各国が製造できるものは、たいていは中国も製造できるので、中国との関係が続く限り、ロシアには中国からの輸入で対処するという選択肢が残されている。 これはまさに最終手段であり、経済的には相当な混乱と打撃が予想されるものの、中国との取引を拡大し、人民元ベースで決済を行えば、ドルやユーロによる制限はほとんど受けない。ロシアの国民生活は窮乏するだろうが、もともとロシア経済は豊かではなく、欧米の感覚では到底耐えられない状況でも、思いのほか長期間、継続する可能性がある。あくまで最終手段ではあるが、オプションが残されていることは、ロシアにとって大きな交渉材料だろう。 ●「時間引き延ばし」が最大の攻撃材料 そうなると、米欧側としては一気に事を進めず、段階的にSWIFTから除外し、ジワジワとロシアを追い詰める戦略を採用せざるを得ない。 ロシアのルーブルは弱くなるので、国際金融市場でルーブルを売り、ロシアのインフレを加速させるというやり方もある。実際、2014年のクリミア併合では、米国の経済制裁に加え、シェールガスの大量採掘によって原油価格が下がったことからルーブルが暴落、ロシア経済は大打撃を受けた。米欧は中央銀行に開設しているロシア中央銀行の預金に制限を加え、外貨準備を使って為替介入ができないようにする措置も表明している。ルーブルは基本的に下落傾向が顕著となるので、ロシア経済にとっては大打撃となるだろう。 しかしながら、一連の制裁が効果を発揮するまでにはやはり時間がかかる。軍事的なオペレーションは短期的に結果が出るケースが多いので、両者のギャップは交渉において大きな障壁となる。 ロシアにとって最大の弱点は、経済基盤が脆弱であり、長期的かつ過大な軍事オペレーションに耐えられないことである。ロシアは今後、ウクライナの政権転覆や親ロシア政権の樹立などを画策するだろうが、欧米側が間接的な軍事圧力を加えることで、ロシアのウクライナ駐屯を長期化させ、財政難に追い込むことは不可能ではない。 交渉が長期化するにつれて経済制裁の効果が高まってくるので、ロシア側は時間が経過するほど不利になる。ロシアに対する制裁や交渉は、(経済面に議論を限定すれば)長期化に持っていけるかどうかがカギを握りそうだ。 |
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●プーチン大統領の「早期決着」目算はずれる? 内外の反発で誤算続く 3/2
ロシアによるウクライナ侵攻の行方が不透明さを増してきた。ウクライナ軍の抵抗が予想を超えるほか、侵攻前はロシアに配慮をみせていた欧州が一気に強硬に転じ、ロシア国内でも反戦運動が起きた。2日で侵攻が7日目を迎えるなか、内外で強まる3つの反発がプーチン大統領の前に立ちはだかっている。 ●「卑劣さに吐き気がする」 「(先月24日の)侵攻初日は午前5時にミサイルを撃ち込んできた。ロシアの卑劣さに吐き気がする」。ウクライナ南部オデッサの海洋研究所で働く女性(40)が会員制交流サイト(SNS)を通じて取材に答えた。ロシア兵の上陸を阻むために海岸沿いには機雷が設置され、街に残る市民は徹底抗戦の構えという。 米情報機関は「ロシア軍が侵攻した場合、キエフは2日以内に陥落する」と分析していたが、抵抗は予想を超えていた。背景には2014年のロシアによるクリミア半島併合で、電撃的な侵攻を止められなかった教訓がある。 その後ウクライナ軍は、米欧から対戦車ミサイルの供与や軍事訓練を受け、戦闘力を高めてきた。今回の侵攻でも米欧から供与された対戦車ミサイルでロシア軍隊列を破壊し、市街地では市民が政府から渡された銃で応戦している。 さらにロシア軍はウクライナ国内の商店で食料品を奪うなど、規律の乱れや士気の低さがうかがわれる。プーチン氏は27日に核戦略の部隊出動を示唆したが、作戦の遅滞に焦ったためともとれる。 ●金融と物流を絶たれ、深まる孤立 米欧の制裁も厳しさを増している。大手銀行の国際決済システム「国際銀行間通信協会(SWIFT=スイフト)」排除に続き、ロシア機の欧州連合(EU)領空飛行も禁止に。金融と物流を遮断されたロシアの孤立は顕著になった。 当初後手に回った米欧の対応が盛り返した原動力は、外交的解決を模索した末にプーチン氏に裏切られた独仏政権の危機感だ。 大統領選を来月に控えるマクロン仏大統領は、プーチン氏との直接対話に期待を掛けすぎ、その外交姿勢が野党陣営から「失政」と攻撃された。昨年末に発足した独ショルツ政権も、経済関係を重視するあまり対ロ制裁で躊躇が見られ、国内外から猛批判を浴びた。 仏はEU、独は先進7カ国(G7)の議長国でもある。ウクライナ以外の旧ソ連圏にも領土的野心をうかがわせるプーチン氏を勢いづかせた責任論が高まったことで、スイフト排除に慎重だった両国が容認に傾き、制裁強化の流れが一気に加速した。 ●広がる国内反戦デモ、6400人超拘束 14年のクリミア併合は国民の愛国心をくすぐり、プーチン氏の支持率が30ポイントも跳ね上がった。しかし今回は同じスラブ民族の「兄弟国家」と呼ばれるウクライナと全面的に戦うことに反発する市民も多い。ロシア国内に広がるデモでは、これまでに6400人以上が拘束。米欧側の経済制裁で、預金の引き出しや決済ができなくなるとの不安も広がっている。 軍事評論家のフェルゲンガウエル氏は「今回の戦争は終局やウクライナとの交渉の『落としどころ』が見えず、人々の不安をかき立てている」と、今回の危機の長期化を予想している。 |
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●「富と贅沢にとりつかれた」1400億円“プーチン宮殿”の全貌 3/2
ロシアのプーチン政権がウクライナに侵攻してから1週間が経つ。ロシア軍は首都キエフなどで激しい戦闘を続けている。それに対して、国際社会は厳しい制裁を次々と科すが、ロシアがひるむ様子はない。こうしたプーチン大統領の「暴走」とも言える決断について、元産経新聞モスクワ支局長の佐々木正明氏によれば、ロシア国内からも「ニェット」(NO)を掲げる批判のマグマが溜まりつつあるという。 だが、ロシア国内では、ウクライナ侵攻以前から一部でプーチン政権に対する批判の声が上がっていた。昨年1月にはロシアの反体制派指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏がプーチン氏が建てた「宮殿」に1400億ルーブルが投じられたと告発した。その動画の再生回数は1億回を超え、プーチン氏への批判は徐々に強まってきていた。 ロシアの反体制派指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏(44)が主宰する団体「汚職との戦い基金」がユーチューブ上に投稿した「プーチン宮殿」の動画が、国内外で大きな反響を呼び起こしている。 ●動画の再生回数はロシアの全人口(1億4500万人)に近づきつつある ナワリヌイ氏自らが説明役となって、「プーチン宮殿」の開発に1000億ルーブル(1400億円)が投じられたと告発した約2時間の動画は、投稿10日も経たない間に再生回数1億回以上に達した。至れり尽くせりの豪華絢爛の宮殿内には柔道家のプーチン氏のために畳のあるトレーニングルームまで用意されているという。さらに敷地内には、ヘリポートやスケートリンク、教会、円形劇場まで設置されている。ナワリヌイ氏は「内部を見ると、ロシア大統領は精神的な病であることがわかる。彼は富と贅沢に取りつかれてしまった」と指摘している。 動画はロシア語版のみだが、動画の再生回数はロシアの全人口(1億4500万人)に近づきつつある。このスピードだと、いずれ凌駕することは間違いない。プーチン大統領自身は「宮殿は私のものではない」と否定。1月30日にはプーチン氏の柔道の仲間である大富豪アルカディ・ローテンベルク氏が「私のものだ」と答えるなど火消しに躍起だ。ナワリヌイ氏の訴えは、経済不況と新型コロナウイルス禍に苦しむロシア国民の怒りの導火線に火をつけた。1月31日、極寒の中で行われたデモはロシア全土に及び、参加者は「プーチンは泥棒」などとスローガンを叫び、クレムリンの主への抗議の意を露わにした。 実は「プーチン宮殿」の概要が明るみになったのは、今回が初めてではない。すでにロシア国内でも「南方プロジェクト」として何度か報じられており、その都度、プーチン氏への関与が政権により否定されてきた経緯がある。 ●約15年前に始まった「南方プロジェクト」 「南方プロジェクト」と名付けられた開発は約15年前の2005年、クラスノダール州の手付かずの自然が残る、黒海沿岸の森林地帯で始まった。当時はプーチン政権2期目にあたる。石油ガスの値が高騰し、ロシアが高度経済成長を続けていた時期だ。「子供用のキャンプが建設される」という触れ込みで突然フェンスがはられ、周囲は立ち入り禁止になった。しかし、それはすぐに嘘と分かった。この地域には水道が通っていなかったし、断崖絶壁の沿岸は危険すぎて、海水浴には不適切な場所だったからだ。 2010年には、南方プロジェクトの開発に携わった実業家、セルゲイ・コレスニコフ氏がこの開発がプーチン氏のために行われていることを暴露した。コレスニコフ氏は当時のメドベージェフ大統領宛てに、プーチン氏の仲間であるオリガルヒ(新興財閥)や利権を与えられた側近らが汚職にまみれた資金を投入しているとして、そのからくりを記した公開書簡を発表した。その中に「南方プロジェクト」についても語られていた。その後、エストニアに亡命し、欧米メディアのインタビューに答え、「ロシアには皇帝がおり、その皇帝に従わなければ、奴隷になるしかない」と訴えた。 2011年には敷地内部に、環境保護活動家が侵入し、宮殿の外観を撮影することに成功した。途中、活動家は警備員に捕まり、持ち物を全て没収されたが、靴の中に写真のデータを収めたフラッシュドライブを隠し、外部に持ち出すことができたのだった。 その活動家はロシアのメディアに対し、この警備員はロシア連邦保安庁(FSB)の要員だったと答えた。「なぜFSBがこんな場所を警備するのかと聞いたが、対応した要員たちは誰も答えられなかった」という。 一方、ナワリヌイ氏はこれまでも独自調査でプーチン政権と与党幹部らの不正蓄財を次々と暴露してきた。その都度、全国で大規模な抗議デモが起き、無許可の違法デモを呼び掛けたとして何度も逮捕されている。反体制政治家としての存在感は増してきており、目下のところ、プーチン体制に歯向かう急先鋒である。 ●化学兵器の神経剤によって毒殺されかけたナワリヌイ氏 ナワリヌイ氏は、昨年8月、統一地方選を前にシベリア各地を行脚した後、モスクワに戻る機中でこん睡状態に陥った。後に、化学兵器の神経剤によって毒殺されかかったことがわかり、長期療養のためドイツへ渡航。治療のかたわら、今回の動画の作成に携わり、1月18日にロシアに帰国した直後に再び拘束された。過去の有罪判決による執行猶予の条件を守らなかったなどの理由で、今後、数年間の服役の有罪判決を受ける恐れがある。 ナワリヌイ氏のチームは「プーチン宮殿」の建設に関わった業者らから見取り図や豪華家具など内装情報を独自に入手。最初の告発者、コレスニコフ氏のインタビューや行政機関への照会で登記簿上の記録を照らし合わせ、いったい誰が開発にかかわったのか、支払われた金額はどれほどになるのかを1つ1つ突き詰めていった。 ●ロシアで最も秘密めき、最も警備が手厚い施設 判明した「宮殿」の敷地面積はモナコ公国の国土の39倍の7800ヘクタールにも及ぶ。周囲をFSBが警備し、近くの街から入るときはいくつかの検問所を通過しなくてはならない。海からも沿岸に近づくことは禁止されている。この敷地内では今も「数千人の労働者」が働いており、内部にはカメラ付きのスマートフォンを持ち込むことを禁じられている。さらに、内部に進入する車は国境通過のような厳重な検査を受ける。 そうした厳しい条件にもかかわらず、ナワリヌイ氏のチームは果敢に内部の状況把握に努めた。数人が近くの港町からゴムボートで沿岸に近づき、ドローンを飛ばして、上空からの撮影に成功。動画ではこれまで集めた数々の情報を詳細につなぎ、一部をコンピューターグラフィックスで再現した。 ナビゲーター役のナワリヌイ氏は動画でこう語った。 「誇張なしで言うが、(この宮殿は)ロシアで最も秘密めき、最も警備が手厚い施設だ。これはダーチャ(別荘)でもなく、カントリーハウスでもない。いうなれば、都市そのものであり、王国なのです。難攻不落のフェンス、独自の港、独自の警備員、教会やアクセスする際の独自の態勢まで完備されている。そして上空は飛行禁止区域に設定されていて、独自の国境検問所まである。これはロシア国内にある1つの独立した国家なのです。そして、この国家には唯一のかけがえのないツァーリ(君主)がいます。そうプーチン氏です」 ●宮殿の床面積は1万7691u、ロシアで最も大きな邸宅 映像や写真は動かぬ証拠であり、動画を見れば、その詳細がわかる。さらに特別サイトには宮殿の見取り図や登記簿、衛星写真、イタリア製の豪華インテリアの値段まで紹介されている。 港から断崖絶壁の先の地上部分に行くためにはトンネルが掘られており、その中には直通エレベーターが設置されている。宮殿の床面積は1万7691uにもなり、ロシアで最も大きな邸宅だという。内部にある385uの25m用プールにはマッサージ室、サウナ、医務室が併設されている。さらにプールの外には豪華な噴水が設置されている休息用のスペースもある。 そのほかにも、196uの屋内劇場、134uの読書室、134uの音楽視聴室、109uの映画館、106uのカジノホール、72uのビリヤード用ホールなどの娯楽用の施設が完備されている。 イタリア製の最も高価な机は419万3438ルーブル(570万円)。ソファーは208万421ルーブル(290万円)。宮殿内には多くの客間、従業員用の部屋があり、床は大理石で施され、調度品の数々はまさに贅沢の限りを尽くした王朝の貴族の暮らしぶりを彷彿させる。 ●宮殿で働く従業員の居住棟まで ナワリヌイ氏のチームのドローンは宮殿以外の建物も映し出した。屋根が緑の丘のような施設の内部には、ホッケーのリンクがあるはずと指摘する。ナワリヌイ氏らが入手した宮殿を撮った衛星写真を見ると、ホッケーリンクとちょうど同じ大きさの枠組みがあるのがわかる。プーチン氏は柔道以外にも、ロシアの冬の国技であるアイスホッケーをプレーすることでも知られる。 緑の中にある円形劇場はまだ建築中で骨組みのままだ。敷地内には80mに及ぶ巨大な橋まである。2500uの面積を持つ温室棟には約40人の従業員が絶えず、植物を育てている。さらに、宮殿まで続く道路の途中には、この宮殿を管理するオフィス棟とここで働く従業員の居住棟まであった。 この複合体施設の総面積は68ヘクタールにもなる。しかし、その100倍の領土の7000ヘクタールの区域をFSBが管理していることも登記簿で判明した。この区域は2020年9月から2068年まで宮殿を所有する会社にリースされている。 ●独裁者の絢爛豪華な宮殿は民衆の怒りを爆発させる それにしても、歴代のロシアの最高指導者は黒海沿岸が好きらしい。ロシア革命まで約300年続いたロシア帝国の最後の皇帝ニコライ2世はクリミア半島に離宮を所持し、家族で最後の時を過ごした。2014年に冬季五輪が開かれた保養地ソチでは、ソ連の独裁者ヨシフ・スターリンが別荘を構えた。そして、ソ連最後の大統領、ミハイル・ゴルバチョフはクリミア半島の黒海沿岸のフォロスに休養中の1991年夏、古参共産党幹部のクーデターにより、軟禁状態に置かれた。ロシアの最高指導者と黒海沿岸の邸宅の組み合わせには不幸も付きまとう。 過去の歴史を紐解いても、ルーマニアのチャウシェスク大統領しかり、リビアのカダフィ大佐しかり、フィリピンのマルコス大統領しかり……独裁者の絢爛豪華な宮殿は民衆の怒りを爆発させ、その後のクーデターや政権転覆につながったケースは少なくない。 ロシアでは2014年のクリミア併合以降、欧米の制裁措置が国内経済に打撃を与え、民衆の暮らしぶりが次第に汲々としてきている。貧富の差はさらに広まり、高齢者は少ない年金で糊口をしのいでいる。さらにプーチン体制が20年以上の長期に及ぶに至り、仲間内の側近政治がさらに加速、社会の閉塞感も強まっている。 ●「宴会の悪役たちに従うことに賛成しないでほしい」 ドイツの専門家はロシアの抗議デモはナワリヌイ氏の釈放を求める勢力だけでなく、こうした苦境を訴える人たちも集まってきていると指摘している。 ナワリヌイ氏は動画の最後にこんなメッセージを付け加え、民衆に呼びかけた。 「私たちのすべきことはただ一つ。耐えることをやめましょう。立ち止まって待つことをやめましょう。私たちの暮らしと税金をお金持ちの人々に使うのをやめましょう。私たちの未来は私たちの掌中にある。沈黙しないで。そして、この宴会の悪役たちに従うことに賛成しないでほしい」 ソ連崩壊から30年。ロシアはまた、激動の年を迎えるのか。プーチン大統領がナワリヌイ氏の処遇を間違えば、王国崩壊に向かう加速度はさらに強まるかもしれない。 |
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●プーチン氏の精神状態に異変? ウクライナ攻撃は「密室決定」か 3/2
ロシアのプーチン大統領が2月24日、軍部隊にウクライナ侵攻を命じ、首都キエフやハリコフで激しい包囲戦に入った。ウクライナ軍の抵抗や国際社会の制裁があっても、ひるむ気配はなく、凄惨(せいさん)な市街戦となってきた。 プーチン大統領は核兵器運用部隊に高い警戒態勢への移行を命じており、緊張が高まっている。米国では、狂信的なプーチン氏の精神状態を疑問視する見方も出てきた。 侵攻を決めたのは、プーチン氏ら旧ソ連国家保安委員会(KGB)の元同僚とする見方が有力。外部を遮断した「密室決定」が要注意だ。 マクロン仏大統領は2月7日、クレムリンで5時間以上プーチン氏と会談した後、「彼は3年前とは別人になってしまった。頑固で、孤立している」と側近に漏らした。マクロン氏は2019年に相互訪問するなど親交を深めたが、その後新型コロナ禍で会っていなかった。 プーチン氏の「異変」については、トランプ米政権で国家安全保障会議(NSC)欧州ロシア上級部長を務めたフィオナ・ヒル氏が、「プーチンはこの2年間、コロナ禍で隔離生活を行い、ほとんど誰とも会っていない。感情的になり、極度に緊張している。病気だという噂もある」と指摘。マクフォール元駐ロシア大使も、20年に及ぶ権力集中や隔離生活が「精神状態に不安定さを増している」と述べた。 一連の演説を見ると、早口になり、目が座っている印象だ。一般市民への容赦ない攻撃、頻繁な核のどう喝は、従来のプーチン氏からすれば異変を感じさせる。 「プーチン氏は何かがおかしい」(ルピオ米上院議員=共和党)とすれば、核のボタンを握る最高司令官だけに、不気味だ。 ●ルーツはレニングラードKGB プーチン氏はコロナ禍で孤立し、一握りの側近としか話をしなくなったといわれる。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」(1月30日付)は、プーチン氏が安全保障問題で頻繁に会う人物として、パトルシェフ安保会議書記、ナルイシキン対外情報局(SVR)長官、ボルトニコフ連邦保安局(FSB)長官、ショイグ国防相の名を挙げた。 このうち、ショイグ国防相を除く3人はKGBでプーチン氏と同僚だった。1975年にKGBに入省したプーチン氏は、レニングラード(現サンクトペテルブルク)支部の防諜機関に勤務し、80年代初めに対外スパイ部門に移った。 ソ連時代、レニングラードKGBは反体制派の弾圧が激しかったことで知られる。 プーチン氏は2000年の大統領就任後、KGB時代の同僚を政権に呼び寄せ、最大派閥「サンクト派」のシロビキ(武闘派)が形成された。KGBは内外の敵を識別する組織。反米、愛国主義の強烈なインナーサークルがクレムリンに誕生した。 ロシアの反政府系メディアは、2014年のクリミア併合決定も、元KGBサンクト派の「密室決定」だったと書いていた。 ●黒幕は… ロシアの政治評論家、アンドレイ・コレスニコフ氏は、「ウクライナ危機は、帝国主義に増幅されたロシアの愛国主義の暗黒の展開だ。ロシアの安保エリートの目標は、帝国復活にある」と指摘した。 4人のうち、プーチン氏が最も信頼するとされるパトルシェフ書記は昨年末、メディアに登場し、「ウクライナ指導部はヒトラー並みの悪人ぞろいだ。キエフの政権は人間以下の存在だ」と酷評していた。 この激しいレトリックは、「ウクライナの極端な民族主義者やネオナチ」を糾弾したプーチン氏の開戦演説と重複する。開戦決定や、戦争目的をウクライナの非軍事化、中立化、非ナチ化に設定したことも、側近らとの「密室決定」だったかもしれない。 2月に逮捕された反政府系学者ワレリー・ソロベイ氏は「ロシアはプーチンの国だが、政権はパトルシェフのものだ」と述べ、パトルシェフ氏が政権運営の第一人者と分析していた。同氏の長男は4年前、30代で農相に抜擢された。 ●独裁的権力を誇示 プーチン大統領は2月21日、最高意思決定機関、安全保障会議を公開で開き、ウクライナ東部の親ロ派が支配する2地区の独立承認を決めた。プーチン氏が司会し、メンバー全員が意見を述べたが、この中でナルイシキン長官とのやりとりが話題を呼んだ。 登壇した全員が独立承認を支持する中、ナルイシキン氏だけは「西側のパートナーに対し、ウクライナに平和とミンスク合意の履行を早期に認めさせるようチェンスを与えてみても……」としどろもどろだった。 プーチン氏は「あなたはどっちなんだ。はっきりしてくれ」と迫った。ナルイシキン氏が「私は人民共和国のロシア編入を支持します」と話すと、プーチン氏は「そんな話はしていない。独立承認か否かだ」とたしなめ、ナルイシキン氏は「独立承認を支持します」と引き下がった。 安保会議の公開は全会一致を強調する政治ショーで、プーチン氏が反対意見を排除する独裁権限を持つ印象だった。 その中で、対外情報機関トップとして欧米の事情を知るナルイシキン氏は当初、外交交渉に期待をかけようとしたかに見えた。同氏は下院議長時代、日ロ交流の窓口も務めた。 とすれば、ナルイシキン氏は開戦を決めた「密室会議」に入っていないかもしれない。 ●ナルイシキン氏の諫言に期待? ウクライナ攻撃決定には、2月14日時点で大統領に「米欧と合意のチャンスはある」と交渉を提言していたラブロフ外相も加わっていないとみられる。ミシュスティン首相以下、経済閣僚が排除されたのは明白だ。 攻撃が泥沼化する中、ロシアの経済人や文化人、スポーツ選手らはSNSなどで戦争反対のメッセージを発信。数千人が参加する反戦運動も主要都市で行われた。 しかし、プーチン氏の性格から見て、世論や諸外国の非難は効果がなく、逆ギレする恐れもある。孤立するプーチン氏を唯一諫(いさ)められるのは、シロビキの同僚だろう。 プーチン氏とはレニングラードKGBの後輩で、一時は「外交交渉継続」を口走ったナルイシキン氏の役割に期待したいところだ。 |
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●プーチン、じつはウクライナと「全面戦争」をしたくないワケ 3/2
●プーチン、「ウクライナ全面戦争」は避けたい ついに、その時がやってきてしまいました。 ロシア軍はウクライナへの攻撃を開始し、首都キエフをはじめ、ウクライナ各地で戦闘が発生したと報じられています。 (*注 原稿執筆時。2月28日20時現在の報道によると、ロシアとウクライナの停戦交渉が開始された) 私は、先日の記事『プーチンの『焦り』…じつは一番恐れている『ロシア年金問題』の深刻事情』や『プーチンの『本音』を知ればわかる、ウクライナ『楽観論』が危ない『3つの理由』』などを通じて、ロシアが軍事行動に出る可能性は高いと、訴えてきました。 その懸念が、不幸にも当たってしまった模様です。 ただ、これから戦闘が拡大するのか、それとも部分的な戦闘で収束するのかは、まだまだ不透明です。 ロシアが本当に制空権を確保できていれば、戦闘自体は短期決戦もあり得ると思います。ただ、その後の占領統治は困難なものになるでしょう。 ウクライナはユーラシア大陸で2番目の面積を持つ大国です。そのウクライナを占領するための地上戦となると、100万人以上の兵力が必要だと言われています。 一方、報道されているロシア軍の規模は17万5000人に過ぎません。ウクライナ全土を占領するには少な過ぎます。 ですから、ロシアといえども、ウクライナとの全面戦争に突入することは避けたいはずです。 ●キエフ攻撃の「狙い」 そのため、ロシア軍は、あくまでウクライナ東部の親ロシア派支配地域や、クリミア半島を中心に行動すると推測されていました。 ところが、ロシア軍は首都キエフを狙った巡航ミサイル、および弾道ミサイルの攻撃も開始しています。ただ、首都キエフを狙った攻撃は、ウクライナとの全面戦争リスクを高めます。 なぜロシアは、全面戦争のリスクを冒してまで、首都キエフを攻撃したのでしょうか。 ここに、今回のプーチン大統領の行動を読み解くカギがあると思います。 ●ロシアの「本気度」 プーチン大統領が、首都キエフを攻撃した理由は、一つしかありません。 それは、ウクライナ政府に対する「脅し」です。 親ロシア派が支配するドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国は、ウクライナの東部にあります。ロシアとの国境に近く、首都キエフからは離れています。 2014年にロシアが「併合」したクリミア半島も、同様に首都キエフからは遠い地域です。 首都から遠い地域で、限定的な攻撃があったとしても、ウクライナ政府はそれほど大きく動揺しないかもしれません。 日本の場合、尖閣諸島周辺で領海侵犯があったとしても、ニュースを騒がせて終わりです。もちろん、ウクライナ危機は程度が違いますが、ウクライナ政府に「ロシアの本気」を示すには、やはり政治の中枢キエフへの攻撃が必要だったのかもしれません。 これは、ある興味深い事実を示しています。 ●ウクライナとの「交渉」はどうなるのか…? すなわち、こうした「脅し」作戦を通じて、プーチン大統領はあくまで「ウクライナ政府との交渉」をイメージしている、ということになるのです。 つまり、限定的な軍事作戦によって、ウクライナ政府の譲歩を引き出そうというのが、ロシアの「ほんとうの狙い」だと考えられるのです。後編記事『「焦る」プーチンが、ウクライナ「ゼレンスキー大統領」に迫る「難しい判断」』では、そうまでしてプーチン大統領が引き出そうとしている「譲歩」とは、具体的にどのようなものなのかについて見ていきましょう。 |
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●「プーチンは現実から切り離された自分の世界に生きている」 独裁者のウソ 3/2
●ドレスデンでのKGB活動 KGB(ソ連の秘密警察)のスパイとして、37歳までの4年間を東ドイツ(当時)のドレスデンで過ごしたプーチン。本人いわく「我々に課せられた主要な任務は、市民の情報を集めることだった」。プーチンは、妻と娘ふたりとともに、ドイツ語を素早く習得した。芸術と音楽の都だったドレスデンの中心地にある薄暗いバーで、プーチンは内通者候補と面会を行なった。 一方、シュタージ(東ドイツの秘密警察)が所有する川沿いのホテルの優雅なレストランや客室には、スパイ活動のための隠しカメラが仕込まれていた。KGBとシュタージは協力関係にあり、彼らの諜報活動には脅迫が用いられた。とはいえ首都ベルリンとは違い、そこまでドラマチックな展開があるわけでもなかった。プーチンはむしろ、ドレスデンでの生活を楽しんでいた。それゆえ不覚にも10キロ以上太ってしまった。腹まわりに贅肉がついたのは、美味しい地ビールをつい飲みすぎたせいだ。 しかし1989年、ベルリンの壁崩壊によって、事態は一変する。1カ月後には、KGBドレスデン支部の鉄フェンスの向こうに、敵意に燃える東ドイツのデモ隊が結集した。プーチンは彼らにこう言い放った。 「下がれ! ここはソ連の領土だ。ここには武装した兵士がいて、発砲する権限がある」 実際には、武装した兵士はいなかったが、ハッタリをかまして時間稼ぎをしたのだ。「お前は誰だ」とデモ隊に詰め寄られて、「通訳だ」と嘘をついて切り抜けたりもした。苦境に立たされるプーチン。だが、ソ連軍の司令部に電話をかけても、「モスクワから指令があるまで何もできない」と言われるばかり。 取り残され絶望的な気分となったプーチンは、山ほどあるKGBの書類やファイルをかき集めて、小さな薪ストーブに放り込んだ。昼も夜も燃やし続けたため薪ストーブは壊れ、真っ黒焦げの鉄の塊と化した。数カ月後、プーチンはふたりの幼い娘を連れて、中古の大衆車のハンドルを握り、ドレスデンから逃げ出した。 この屈辱的な出来事と、その後のソ連の崩壊から、プーチンは決して忘れられない教訓を得た。当局の監視下にないデモや自由をいきなり認めてしまっては、絶大な軍事力を持つ帝国すら崩壊するのだ、と。ドレスデンでのKGB活動について「第一の敵はNATOだった」と発言したことがあるプーチン。そして、その考えは、現在に至るまで変わっていないのだ。 ●ヒトラー、スターリン、そしてプーチン。ウクライナへの野望 現代の独裁者ともいうべきプーチンが抱く、ウクライナ征服への野望。その根本の動機には、ロシアを世界の大国にしたい、昔のような帝国として復活させたい、との思いがある。現代の皇帝(ツァーリ)を目指すプーチンらしい発想だ。そのためには、隣国ウクライナを、EUやアメリカではなく、ロシアの勢力圏にとどめる必要がある。 ヨーロッパで2番目に広いウクライナには、肥沃な農地が広がり、鉄鉱石・天然ガス・石油などゆたかな天然資源が埋まっている。東側と西側とにまたがる地政学上の要所でもある。それゆえ、プーチンのみならず、過去にはヒトラーやスターリンといった独裁者たちからターゲットにされ悲惨な目に遭ってきた。 2014年、ウクライナがEUと政治経済にかんする包括協定を結ぼうとしていたときのことだ。ウクライナをEUから引き離したいプーチンは、断固として協定を結ばせまいとし、ウクライナ政権のヤヌコーヴィチ大統領(当時)に圧力をかけた。すでに腐敗した政権だったということもあり、プーチンの思惑通りに進むかに見えた。だが、恐れを知らぬキエフの若者たちによるデモが起こる。数日間のうちに、たちまちデモに参加する群衆の数は膨れあがり、ヤヌコーヴィチ大統領の腐敗政権を終わらせよ、との声が高まった。 注意深く観察していたプーチンは、警戒心を強めた。なぜならドレスデン駐在のKGB時代に経験した、ベルリンの壁崩壊時の苦い思い出があったからだ。ロシアの“利益圏”とみなしていた地域で、“衆愚政治“が広がっているーー過去のトラウマが、プーチンを一気に目覚めさせた。 ●電光石火のウクライナ侵攻作戦 ヤヌコーヴィチがロシアへ逃げ出したその1週間後。プーチンによる電光石火のウクライナ侵攻作戦に、当時は弱体化していたウクライナ軍は不意打ちを食らった。アメリカも油断していた。プーチンと同じく警察国家育ちで、KGB出身のプーチンの残虐さを知り抜いたメルケルでさえ、ウクライナについてはEU任せにしていたふしがあった。 メルケルは、プーチンが自由を愛する民主主義者に変わるという幻想は一度も抱いたことはなかった。とはいえ、経済成長を続ける西側をまのあたりにして、富を愛するプーチンがEU寄りの政策を取るのではないかと期待していたのだ。 しかしウクライナ侵攻により、「欧州の安全保障」という幻想は粉々に打ち砕かれた。プーチンが選んだロシアの未来とは、「西側の一員となる未来」ではなく、「西側に対抗する未来」だった。 プーチンが仕掛けたのは、「欺瞞作戦(マスキロフカ)」だった。これは20世紀前半にロシア軍が生み出した手法で、「だまし、否定、偽情報」の3つを駆使するというものだ。 プーチンは、クリミアのロシア系住民がロシアの介入を求めたと言い張った。「ファシストによる非合法の暫定軍事政権が、キエフやクリミアに住むロシア人の脅威となっている」と主張し、現地の群衆をあおり立てた。クレムリンによる同じような作り話は、1956年にハンガリー革命の制圧を正当化するのにも使われたし、1968年の“プラハの春”でも鎮圧のための戦車派遣を合法化するのにも使われた。さらには1948年、東西冷戦のはじまりともいうべき西ベルリンの封鎖を正当化するときにも使われている。 ●メルケルvsプーチン 2014年のウクライナ危機に際して、西側代表としてプーチンとの外交交渉を担ったのがメルケルだった。KGB仕込みのプーチンの恫喝に動じない唯一の西側リーダーが彼女だからである。オバマはプーチンには関わりたくないと思い、それゆえ彼女に舵取りを任せた。 じつは学生時代にロシア語の弁論大会で優勝したこともあるメルケル。もちろんプーチンもドイツ語は得意だ。プーチンとの会話はいつもまずロシア語ではじまる。だが、このときはプーチンに道理を説こうとするあまり、「アンタは、国際法を公然と無視してる」と、ついタメ口のドイツ語になることもあったという。 対するプーチンは、「その軍隊は、我々ロシアの軍隊ではない」と嘘をつき、「誰でもロシア軍の軍服を買える」とあからさまな言い訳をした。「プーチンは現実から切り離された自分の世界に生きている」――メルケルはオバマに愚痴った。 メルケルは、21世紀の戦争における最も危険な武器は、戦車やミサイルではないと認識していた。サイバー攻撃、SNS、フェイクニュースなどがあらたな戦場となっている。プーチンは、いわばハイブリッド戦争を展開しているのだ、と。 ●ファクトをもとに責任を問う 一方でメルケルも、プーチンに対して独自の「欺瞞作戦」を使うこともあった。プーチンは、ソチオリンピックに引き続き、同地にて開催予定のG8サミットで、帝政ロシアの復活をアピールしようと目論んでいた。しかしメルケルは、ソチでのG8は開催しないと発表。プーチンの“パーティ”を台無しにしてみせた。のみならず、ロシアはもはやG8のメンバーではない、とまで述べ、プーチンに強烈なパンチを食らわせたのだ。 そして7月、一般市民を乗せたマレーシア航空の飛行機が、ウクライナ上空で撃ち落とされるという痛ましい事件が起きた。これをきっかけに、国際世論におけるロシアへの非難が高まり、ついにオバマも本気を出してメルケルを支援するようになる。 2014年9月、ベラルーシのミンスクにある独立宮殿の壮麗な式典の間には、紛争地域の地図に身をかぶせるようにして話し合うメルケルとプーチンの姿があった。ときには15時間ぶっ続けで話し合いを行った。供される食事が肉料理か、それともジャムを添えたパンかによって、夜なのか朝なのかがわかるという状態だった。 元科学者らしく事実をもとにプーチンを追及するメルケル。現地の航空写真や戦場地図、ロシア軍の最新の動きなど、分単位でアップデートされる情報を入手していた。一日ごとの民兵の動き、拠点として押さえた場所、犠牲者の数――ファクトがあればプーチンの責任を問うことができる。 9月4日、ミンスク宮殿にて停戦交渉が終わった。合意文書にはプーチンの署名もあった。 |
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●ウクライナ侵攻の裏で「サイバー攻撃」応酬の行方 3/2
2月24日のウクライナに対するロシアの軍事侵攻開始に続き、数多くの民間人やハッカー集団も加わっての戦いがサイバー空間で繰り広げられている。いくつかのハッカー集団が、ウクライナ情勢に関連してサイバー攻撃への参加を表明。すでにロシアの国防省などの政府機関や銀行、ロシアの同盟国のベラルーシに対する複数の大規模なサイバー攻撃が報じられている。 また、ウクライナ政府は、民間のサイバーセキュリティ専門家に重要インフラ防御とロシア軍へのサイバー攻撃支援を要請しており、世界中から500人近くがすでに参加したという。 ●「アノニマス」ロシア政府へのサイバー戦争を宣言 国際ハッカー集団「アノニマス」は、軍事侵攻の直後に、ロシア政府へのサイバー戦争をツイッターで宣言。クレムリン(大統領府)や国防省、ロシア国営テレビ局「RT」のウェブサイトをダウンさせたと発表している。クレムリンは否定したが、RTの広報担当者はニュースサイト「マザーボード」の取材に対し、「アノニマスの宣言後、RTのウェブサイトは、1億もの機器から大規模なDDoS(※)攻撃を受けた」と明らかにした。 ※DDoS(分散型サービス拒否、ディードス)攻撃とは、対象のサーバーやウェブサイトに大量のデータを送りつけることで、過剰な負荷をかけ、ダウンさせてしまう手法を指す。 2月26日時点でも、ウクライナ政府によると、外務省、国防省、連邦保安庁、内務省、メディアの監督官庁など6つのロシア政府機関のウェブサイトがダウンしたままとなった。少なくとも2月27日の午後の時点でも、クレムリンと国防省のウェブサイトはまだダウンしている。 さらに2月26日、複数のロシアの国営テレビ局がサイバー攻撃を受けて乗っ取られ、ウクライナの愛国的な歌やロシアの軍事侵攻の映像が代わりに放送された。 同日、ロシアのペスコフ大統領報道官は、クレムリンのウェブサイトが頻繁にダウンしているのはコンスタントに攻撃を受けているためと認めた。ロシアの宇宙開発機関「ロスコスモス」、国営鉄道もサイバー攻撃を受けているという。 また、アノニマスは、なんと、ロシア国防省のデータベースから盗んだメールや、パスワード、電話番号などの情報をオンライン上にリークし始めた。2月26日、ベラルーシの軍需企業「Tetraedr」からの200ギガバイト相当の大量のメール情報を見つけたと発表、同企業がウクライナへの軍事侵攻においてプーチンに後方支援していたと断じた。データベースで見つけたロシア関係者に対して、スパムメールやコンピュータウイルスによるサイバー攻撃も始めたという。 2月28日には、タス通信、コメルサント紙、イズベスチア紙、RBCなどのロシア・メディアのウェブサイトが改ざんされ、「こんな常軌を逸したことはやめてほしい。息子さんやご主人たちを死に追いやらないでくれ」「5300人。これは、ウクライナが主張しているロシア兵の死者数だ」などのメッセージが掲載された。アノニマスのロゴも付いている。 ●ベラルーシの反体制派ハッカー集団も参戦 2月24日、ベラルーシの反体制派ハッカー集団「サイバー・パルチザン」の広報担当者であるユリアナ・シェメトヴェッツは、「ロシアの独裁者がウクライナへの戦争を開始したため、『ベラルーシ戦術グループ』を作った」とツイッターで宣言した。 このハッカー集団は、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が大統領選挙で6戦を果たした後の2020年9月から、ルカシェンコ政権打倒と民主主義の獲得を目指して活動をしている。 「ウクライナ人とベラルーシ人の共通の敵は、プーチンとクレムリンと帝国主義的政権だ」と断じ、サイバー・パルチザンは、ウクライナ軍の支援をしているボランティアに協力すると表明した。この「ボランティア」については後述するが、2月24日以降、ウクライナ国防省によって組織されているサイバー・レジスタンスたちを指している。ウクライナ政府の指示に基づき、ロシアからのサイバー攻撃の防御と、ウクライナ軍によるロシアへのサイバー攻撃の支援を行う。 「サイバー・パルチザン」の2月27日の発表によると、ベラルーシの鉄道のシステムに侵入し、保存データの暗号化に成功、一部の鉄道がミンスク、オルシャ、オシポヴィチで運行停止している。データの暗号化ということは、金銭目的ではなく、政治目的達成のためのランサムウェア攻撃だった可能性がある。 今回のサイバー攻撃を行った理由として、同集団は、ベラルーシ国内の基地からウクライナ北東部へのロシア軍の移動を遅らせ、ウクライナ人がロシアからの攻撃に反撃するための時間を稼ぐためだったと主張している。しかし、ブルームバーグによると、サイバー攻撃が成功したとの主張が正しいかどうか確認は取れていない。 なお、「サイバー・パルチザン」がウクライナ情勢に関連してベラルーシの鉄道に攻撃したと主張するのは、2回目だ。ロシアとベラルーシが2月10日から行った合同軍事演習のため、ロシア軍が装備品と部隊をベラルーシ鉄道でウクライナ国境近くに輸送したことに「サイバー・パルチザン」は、反対を表明。1月24日、ベラルーシ鉄道にランサムウェア攻撃を仕掛けたとツイッターで宣言していた。 加えて、1月25日付のイギリス「ガーディアン」紙の取材に対し、「罪のない人々がケガをしないと確信できれば、今後は(鉄道の運行を麻痺させるような)攻撃をするかもしれない」と語っている。1月の攻撃も本当にランサムウェア攻撃だったのかは確認が取れていないが、少なくとも1月からの決意を今回実行に移そうとしたようだ。 2月25日、 ランサムウェア攻撃者集団「Conti」は、ロシア政府への全面支援を公に宣言した。Contiが、ロシア政府支持を表明した最初のサイバー犯罪集団となる。 Contiは、ロシアから主に欧米企業に対してランサムウェア攻撃を行ってきた集団であり、ロシア情報機関との繋がりも指摘されている。アメリカ政府の2021年9月の発表によれば、2020年春から2021年の春にかけて400回以上もの攻撃を実施してきた。 Contiは、医療機関に対しても容赦なく攻撃を行うことで知られている。例えば、2021年5月、アイルランドの公的医療サービス機関を攻撃し、全ITシステムがダウン。外来予約をキャンセルする医療機関が出るなど、医療体制に多大な影響が出た。感染したITシステムの入れ替えやサイバーセキュリティ企業の支援への報酬など、復旧作業に4800万ドル以上(約55億円以上)かかっている。 ●Contiのウクライナ人メンバーが反発 Contiは、2月25日にロシア政府支持を表明した際、当初は、ロシアに対してサイバー攻撃や戦争行為を行ういかなる組織の重要インフラにも反撃するため、あらゆるリソースを使うと宣言していた。ところが、Contiのウクライナ人メンバーたちが宣言文に反発し、怒りを募らせた。1時間後、Contiは文言を修正して語調をやわらげ、重要インフラへの攻撃に関する文言を削除した。 ただし、「いかなる政府とも連携しておらず、現在続いている戦争を非難する」としつつも、ロシア市民に対してサイバー戦を仕掛けようとする西側の挑発行為とアメリカの脅威に立ち向かうため、全能力を振り絞って反撃するとも述べている。そのため、Contiによるランサムウェア攻撃には引き続き警戒する必要があろう。 一方、Contiのウクライナ人メンバーのうちの1人が、2月28日、Contiが以前行ったランサムウェア攻撃に関する内部メッセージを6万件以上、欧米のサイバーセキュリティ専門家たちにリークした。この内部メッセージが本物であることは、複数のセキュリティ専門家によって証明されている。 リークした際、このウクライナ人は、「Contiランサムウェア集団は、ロシア政府に味方するとの声明を出している。本日、Contiメンバーがデータのリークを始めた」「ウクライナに栄光あれ!」とサイバーセキュリティ専門家たち宛のメッセージに記していたという。 Conti以外にも、ロシアのサイバー犯罪集団「Red Bandits」やランサムウェア攻撃者集団「CoomingProject」がロシア政府支援を表明している。 一方、ウクライナ情勢に関与しないと表明したランサムウェア攻撃集団もいる。「LockBit 2.0 」と呼ばれる攻撃集団は、2月28日にダークウェブ上に日本語を含む複数言語で声明を発表し、ロシアへのサイバー攻撃に関与しないと断言した。自分たちのコミュニティにはロシア人やウクライナ人もおり、同集団が関心を持っているのは、あくまでもランサムウェア・ビジネスから得られる金銭のみであるという。 「LockBit 2.0」は、2021年7月から活動を続けており、日本でも病院などで被害が発生している。 ロシアが軍事侵攻してきた2月24日、 ゼレンスキー大統領は国民総動員令に署名した。同日、ウクライナ国防省は、民間企業に依頼してオンライン上のハッカーフォーラムに広告を出し、地下のハッカーたちやサイバーセキュリティの専門家たちに、重要インフラ防御とロシアに仕掛けるサイバー攻撃のための支援を呼びかけた。 志願する人たちは、コンピュータウイルス作成やDDoS攻撃など12分野の中から得意分野を選んでGoogle Docの申請書類に記入しなければならない。身元証明書の提出と信頼されている既存メンバーからの推薦が求められる。 選ばれた人たちは、防御チームと攻撃チームに分けられる。防御チームは、電力や水道などの重要インフラをサイバー攻撃から守る。一方、数々のサイバーセキュリティ企業の創設者であるイェゴール・アウシェフ氏がリーダーを務める攻撃チームは、軍事侵攻してくるロシア軍に対してウクライナ軍が行うサイバースパイ作戦を支援する。何を守る必要があるか、何を狙うかは、国防省からの指示に従わなければならない。 アウシェフ氏によると、現時点で、ウクライナ人だけでなく、アメリカ人やイギリス人など500人ほどがウクライナ国内外から参加している。ウクライナ軍事侵攻に反対するロシア人も2、3人交じっているという。なんと、17歳の学生も参加したとのことだ。 アウシェフ氏は、『フォーブス』誌の取材に対し、キエフがたとえ陥落しても、ボランティア・チームは解散せず、ウクライナの防御とクレムリンへの攻撃を続行すると語っている。 ●ウクライナ副首相も参加を呼びかけ ウクライナのムィハーイロ・フョードロフ副首相兼デジタル革新担当相は、2月26日、ロシアからのサイバー攻撃に対抗するためIT軍に参加するよう、サイバーセキュリティの専門家だけでなく、デザイナーやコピーライター、マーケティング担当者などのIT人材にもツイッターと無料暗号化メッセージアプリのテレグラムで呼びかけた。 フョードロフ副首相は、「全員に仕事がある。われわれは、サイバー前線で戦い続ける。最初の任務は、サイバー専門家向けの(テレグラム)チャンネルに記してある」とツイート。 テレグラムにできた専用チャンネルには、2月26日時点の標的リストとして、政府機関だけでなく、天然ガス供給大手「ガスプロム」、石油大手「ルクオイル」、銀行3行など31のロシアの官民のウェブサイトが列挙されていた。翌日には、ベラルーシのウェブサイトも追加されている。 ITやサイバーセキュリティ関連のニュースサイト「ブリーピング・コンピュータ」は、「ロシアのウクライナ侵攻の様子をテレビやソーシャルメディアで見れば、IT軍に参加し、ロシアの組織にサイバー攻撃したいと思うかもしれないが、DDoS攻撃、ネットワークやコンピュータへの侵入、ウェブサイトへの侵入などの行為は大抵の国では違法行為である」と指摘。IT軍への参加志願者たちに再考を促している。 このIT軍がどれだけの「成果」を収めるのかは判断が難しい。テレグラムの専用チャンネルには、2月27日時点で17万5000人以上が参加しており、自分が行ったと称するサイバー攻撃についての画像を投稿している。しかし、それらの「証拠」が本物であるかどうかはわからない。 2月28日には、IT軍のメンバーたちが、テレグラムの専用チャンネル上で、モスクワ証券取引所やロシア銀行最大手のズベルバンクのウェブサイトへのサイバー攻撃について話し合い始めた。2月28日朝にモスクワ証券取引所のウェブサイトがダウンし、アクセスできなくなった。 事実かどうかは不明であるが、IT軍のメンバーたちは「たった5分でダウンさせた」とテレグラム上で主張している。ズベルバンクのウェブサイトも、同日の午後にアクセスできなくなった。 ●懸念すべき点 非常に懸念すべきなのは、今回のサイバー攻撃の目標に政府や軍の関連組織だけでなく、金融機関やエネルギー、鉄道などの企業も入っていることだ。 サイバー攻撃は、ミサイルなどの兵器による攻撃と異なり、被害が目に見えづらいかもしれない。その分、被害の発見が遅れ、国境のないインターネットを通じて、コンピュータウイルスの感染が攻撃者の想定以上に広がることも十分あり得る。また、攻撃を受ける企業の業種によっては、ドミノ式に顧客企業の業務に多大な打撃が及ぶサプライチェーン・リスクもある。 例えば、昨年5月、アメリカのパイプライン大手「コロニアル・パイプライン」はロシアからランサムウェア攻撃を受け、数日間操業が停止した。その結果、東海岸のガソリンスタンドはガソリン不足となり、アメリカン航空は飛行ルートを一部変更、バイデン大統領はランサムウェア攻撃を国家安全保障問題として捉えるようになった。現時点で、アメリカの重要インフラが受けた最大のランサムウェア攻撃の1つと見られている。 ところが、アメリカのサイバーセキュリティ企業「クラウドストライク」の共同創業者であり元最高技術責任者(CTO)のドミトリ・アルペロヴィッチ氏は、「ロシアが本気を出して総力を挙げて攻撃してくれば、コロニアル・パイプラインの事件など子どものお遊びのように見えてしまうだろう」と警告している。 サイバー空間が第5の作戦領域と目されてから10年以上が経つ。今回のウクライナへの軍事侵攻を受けて、サイバー空間でも政府や軍だけでなく、ハッカー集団や民間のサイバーセキュリティ専門家も入り交じっての総力戦となっている。今後、どのような手法のサイバー攻撃がどの業種や企業に対して仕掛けられるか予断を許さない。 ウクライナ情勢に関連し、民間ハッカーや国際ハッカー集団によるサイバー攻撃の「誤爆」被害や、意図しないサプライチェーン攻撃もあり得よう。その被害を受けて、さらに相互のサイバー攻撃が激化しかねない。 世界情勢、国際政治、安全保障、エネルギー問題などさまざまな要素が加わって、サイバー攻撃が行われている。そのため、サイバー攻撃の対応にあたっては、ITシステムやコンピュータウイルスに詳しい技術者だけでなく、国際安全保障や地政学、経済、語学、インテリジェンス、法律など多様な分野の専門家の参加も不可欠だ。 経済産業省と金融庁も、ウクライナ情勢を踏まえ、2月23日にサイバーセキュリティ強化を求める注意喚起を出した。日本でも、脆弱性対策を早急に進めるとともに、データが失われたとしても迅速な復旧ができるよう、こまめにバックアップデータを取り、オフラインでも保存しておくことが必要だ。また、サイバー攻撃の兆候の監視や、攻撃を受けた際の連絡体制を含めた対応要領の確認も進めておきたい。 |
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●ウクライナ ゼレンスキー大統領「砲撃をやめるべきだ」 3/2
ウクライナのゼレンスキー大統領は1日、首都キエフでロイター通信のインタビューに応じました。このなかでロシアとの交渉について「圧力をかけたい側とそれを受け入れられない側で立場は一致していない」と述べ、隔たりが大きいことを明らかにしました。 そのうえで「われわれは対話を続けるつもりはあるが、せめて人々への砲撃はやめるべきだ。軍用機が頭上を飛び交い、砲撃が行われている状況で交渉のテーブルにつくことはできない」と述べ、ロシアに対して攻撃をやめるよう訴えました。 そして「ウクライナが負ければ、ロシア軍はNATO加盟国の国境に押し寄せることになる。挑発的な行動をとり同じ問題を起こすだろう」と述べ、西側諸国に支援を求めました。 |
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●ウクライナ侵攻 企業 ロシア事業見合わせの動き拡大 3/2
ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、民間企業の間では自動車や海運、それにクレジットカードといったさまざまな分野でロシアでのビジネスを見合わせる動きが広がっています。 このうち自動車メーカーでは、アメリカのGM=ゼネラル・モーターズがロシアへの自動車の輸出をいったん停止すると決めました。 また、スウェーデンのボルボがトラックの現地生産を停止し乗用車の輸出もやめるほか、ドイツのダイムラートラックホールディングスも、ロシアでの事業を当分の間停止すると発表しました。 さらに、トヨタ自動車はロシアの工場について「部品の調達ができなくなっているため、生産の継続が難しくなっている」として、近く、生産を停止する可能性があるとしています。 一方、海運大手も食品や医療機器などを除くコンテナ輸送の停止を相次いで打ち出していて、スイスのMSCとデンマークのA.P.モラー・マースクは、ロシア発着の貨物予約を一時停止すると発表しました。 このほか、アメリカの大手クレジットカード会社マスターカードとビザはそれぞれ決済ネットワークからロシアの複数の金融機関を排除したと発表しています。 民間企業の間でロシアでのビジネスを見合わせる動きは今後さらに広がるとみられ、ロシア経済が一段と厳しい状況に追い込まれる可能性が出ています。 |
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●首都の在ウクライナ日本大使館を一時閉鎖、西部リビウへ… 3/2 外務省は2日、ロシア軍によるウクライナ侵攻の拡大を受け、首都キエフの在ウクライナ日本大使館を同日付で一時閉鎖すると発表した。大使館の機能は同国西部リビウに設けた臨時の連絡事務所に移し、在留邦人約120人の安全確保や出国支援などを継続する。 松田邦紀大使ら大使館員数人はロシア軍の侵攻以降もキエフに残り、業務を続けていた。岸田首相は2日の参院予算委員会で、「周辺諸国と連携しながら邦人保護に全力を尽くす」と述べた。 |
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●ウクライナ 中国 外相電話会談 停戦に向け仲介求める 3/2
ウクライナ情勢を受けて、中国の王毅外相とウクライナのクレバ外相が1日電話会談を行い、クレバ外相は中国側に停戦に向けた仲介を求めました。 中国外務省によりますと、この中でクレバ外相は2月28日に行われたロシアの代表団との会談について説明し「戦争を終結させることがウクライナの最優先事項であり、現在の交渉は順調ではないが、冷静さを保って交渉を続けたい」と述べたということです。 そのうえで「中国はウクライナ問題で建設的な役割を果たしており、停戦を実現するために中国の仲介を期待したい」と述べ、中国側に停戦に向けた仲介を求めました。 これに対し、王外相は「われわれは一貫して各国の主権と領土の一体性を尊重すると主張しており、当面の危機に対し、ウクライナとロシアが交渉によって問題解決の方法を見いだすよう呼びかけている」と述べ、話し合いによる解決を目指すべきだという立場を改めて示しました。 その一方で、ロシアがNATO=北大西洋条約機構をさらに拡大させないよう求めていることを念頭に「一国の安全は他国の安全を損なうことで達成することはできず、地域の安全は軍事的なグループを拡大することで実現することはできない」とも述べ、ロシア側に配慮する姿勢も示しました。 また王外相は、ウクライナで避難しようとしていた中国人が銃撃に遭ったという情報もあることから、中国人の安全確保や避難に向けて便宜を図るよう求めました。 |
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●国際司法裁判所 ロシアのウクライナ軍事侵攻を来週審理へ 3/2
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐって、オランダ・ハーグにある国際司法裁判所は1日、審理を開くことを発表しました。 ウクライナはロシアによるウクライナでの軍事行動には正当な理由がないとして国際司法裁判所に提訴しています。 今回の審理は、ウクライナが裁判所に対し、ロシアに軍事行動を直ちにやめさせるため暫定的な命令を出すよう併せて求めたことを受けたもので、審理は今月7日と8日の2日間行われます。 |
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●ウクライナ ロシア軍攻撃で犠牲増加 キエフ テレビ塔で5人死亡 3/2
ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナで1日、首都キエフのテレビ塔がロシア軍に攻撃され、当局は、これまでに5人が死亡したことを明らかにしました。ロシアとウクライナによる2回目の会談を前にロシア軍は各地で攻撃を続け、犠牲者が増え続けています。 ロシア軍がウクライナ各地で侵攻を続ける中、ウクライナ内務省は1日、首都キエフにあるテレビ塔がロシア軍に攻撃されたと明らかにしました。 当局はこの攻撃でこれまでに5人が死亡し、5人がけがをしたとしています。 攻撃の前にはロシア国防省がキエフにある情報作戦の拠点などを攻撃するとして周囲の住民に避難を呼びかけているとロシア国営のタス通信が伝えていました。 また第2の都市ハリコフでは中心部や住宅街がロシア軍によるミサイル攻撃を受けたということで、ウクライナ内務省の高官は一連の攻撃で少なくとも10人が死亡したとしています。 ロシアとウクライナの両国は先月28日に行われた代表団による会談で、交渉を継続することで一致していて、ウクライナのゼレンスキー大統領は1日、キエフでロイター通信のインタビューに応じ、「まずは砲撃をやめて、交渉のテーブルにつくことが必要だ」と述べて攻撃をやめるよう訴えています。 一方でロシアのショイグ国防相は1日、軍の指導部との会議で「目的を完了するまで作戦を継続する」と述べ、軍事的な攻勢を強める構えを強調しました。 ロシアとウクライナの高官による2回目の会談は数日以内に行われる見通しですが、これを前にロシア軍は各地で攻撃を続け、犠牲者が増え続けています。 アメリカ国防総省の高官が1日、記者団に明らかにしたところによりますと、ロシア軍はウクライナ国内で戦力を増強し続け、国境周辺に展開していた戦闘部隊のうち、これまでに80%以上を投入したということです。 また、これまでに400発以上のミサイルを発射したとしています。 首都キエフに向けて南下しているロシア軍の部隊については、前日と同じ、北におよそ25キロの地点にとどまっているとの認識を示しました。 理由について、ウクライナ軍の激しい抵抗を受けている上、燃料や食料も不足して遅れが出ているという見方を示した一方、部隊の再編成や作戦の再評価のためみずからの判断で作戦を中断している可能性もあると指摘しました。 ロシア軍はウクライナ第2の都市ハリコフでは包囲を目指してウクライナ軍と激しい戦闘を続け、東部ドネツク州の都市マリウポリでは市内を砲撃できる位置にまで接近していると分析しています。 またウクライナの空域での攻防も続いていて、ロシア軍が一部の地域で支配を強めているものの、全土の制空権は奪えておらず、ウクライナ軍の防空やミサイル防衛システムは維持されているということです。 さらにロシア軍のいくつかの部隊は戦わずに降伏しているとして、高官は「これらの兵士の多くは徴兵で戦闘の経験がなく、戦闘に参加することを知らされていなかった者もいる」と指摘し、ウクライナ側から激しい抵抗を受けて士気が低下している兆候もあるとしています。 |
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●プーチン大統領の資産「少なくとも12兆円」報道… 3/2
ロシア軍によるウクライナ侵攻が続いている。2月28日には、両国の代表団による停戦協議がおこなわれたが、決着はせず、今後の展開は不透明なまま。 そんななか日本政府は、3月1日、ロシアへの制裁としてプーチン大統領ら政府関係者6人の資産を凍結すると発表した。これにより、プーチン氏は日本国内の金融機関に持つ資金を移動できなくなった。日本国内から対象者への送金も不可能となる。 2000年に大統領になって以来、長年にわたり、ロシアに君臨してきたプーチン氏。その資産については、さまざまな推測がおこなわれてきた。国際ジャーナリストが次のように語る。 「ロシア政府の発表によると、プーチン氏の年収はおよそ1400万円程度。保有資産は小さなアパートと駐車場、車数台となっており、他の閣僚より少ないほどです。 しかし、アメリカの新聞『ニューヨーク・タイムズ』は2月27日、プーチン氏は少なくとも12兆円の資産を、協力者や友人を通じて海外に隠し持っていると報じました。 記事では、ロシア南部の黒海沿岸に1400億円規模の宮殿を保有、さらに、愛人と噂される女性が4億円超のアパートを購入しており、ほかにも、前妻とともに購入した高級別荘、複数のヨットや航空機を持っているとしています。 2017年には、プーチン氏と親交があった投資家が、アメリカ上院の委員会で『資産総額は20兆円を超える』と証言したこともあります。もしこれが正しければ、プーチン氏はアマゾンのジェフ・ベゾス氏やマイクロソフトのビル・ゲイツ氏を超える世界トップレベルの大富豪ということになります」 そんな金持ちのプーチン大統領は、なぜウクライナ侵攻を始めたのか。 開戦理由を説明した演説では、「ウクライナはロシアの一部だったが、極右ナショナリズムが台頭して、ロシアを脅かすようになった。(アメリカを中心とする軍事同盟)NATOが力を持ちすぎた」などと語っている。 だが、前述の国際ジャーナリストは、プーチン大統領の隠された意図を、こう指摘する。 「憲法改正により、プーチン氏は、最長で2036年まで大統領職に就くことが可能ですが、もちろん、任期が満了したら選挙が待っています。プーチン氏は2024年に4期めが満了となるため、是が非でもこの選挙に勝たなければなりません。 そのため、今回のウクライナ侵攻が支持率を上げるためではないかと推測する海外メディアもあります。 ロシアの世論調査機関『レバダセンター』によると、昨年11月にウクライナ侵攻説が浮上すると、プーチン氏の支持率は6ポイント上昇して69%になりました。2014年のクリミア併合の際は、20%近く跳ね上がって過去最高の89%になったのです」 もしプーチン大統領の政治的野望が事実だとしたら、犠牲になったウクライナは災難だが、ロシア国民にとっても不幸なのは言うまでもない。 「いちばんひどい目にあっているのは、戦場に派遣されているロシア兵でしょう。EU圏のニュースサイト『EU Today』は、2月22日、ロシア軍の給与事情を取り上げています。 この記事では、正規兵の月給は約9万円、徴兵された兵士の月給は約3000円だと報道しています。単純に30で割れば、正規兵の日給は3000円、徴兵兵士が100円となるのです」(同) 1日10時間労働だとしたら、正規兵でも時給は300円、徴兵兵士ではわずか10円という惨状だ。この報道に対し、ネット上では、 《ロシアはとんでもないブラック国家やね》《そんなに酷いんですか? ソ連時代と変わってない……》《お辛い…命の値段としてはあまりにも…防衛戦ならともかく侵攻ですし》 などの声が寄せられている。乏しい対価で命をかけるロシア兵たち。その対象がプーチン大統領の支持率だとしたら、納得できるものではないだろう。 |
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●プーチン氏判断に懸念 米高官、情報収集を指示か 3/2
ロシアのウクライナ侵攻が激化する中、プーチン大統領が正常な判断をできているかどうか懸念する声が高まっている。CNNテレビ(電子版)は1日、米政府高官が情報機関に対し、プーチン氏の精神状態に関する情報収集を指示したと報じた。 「プーチン氏を30年以上観察してきた。彼は変わった。現実から完全に切り離され、錯乱しているようだ」。マクフォール元駐ロシア米大使は2月26日、ツイッターにこう投稿した。プーチン氏は核戦力の警戒態勢強化を命じており、窮地に追い込まれた末に核使用に踏み切る可能性まで議論されるほどだ。 サキ米大統領報道官も同27日、ABCテレビに出演し、最近のプーチン氏の言行を「深く懸念している」と語った。 |
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●「プーチン氏は暴力と混沌を解き放った」 米大統領が一般教書演説で非難 3/2
バイデン米大統領は1日夜(日本時間2日午後)、連邦議会の上下両院合同会議で、就任後初の一般教書演説を行った。ロシアのプーチン大統領が始めたウクライナ侵攻について「計画的で理由がない」と強く非難し、「自由は常に専制政治に勝利する」と立ち向かう姿勢を強調。第2次世界大戦後の国際秩序を根底から揺るがす重大な脅威への対処方針を表明し、世界に結束を呼び掛けた。 一般教書演説は、今後1年の内政、外交の施政方針を議会に表明する大統領の最も重要な演説。今年はウクライナ侵攻を受け、外交から演説を始める異例の対応となった。会場にはウクライナのマルカロワ駐米大使を招き「われわれはウクライナの人々とともにある」と呼び掛けた。 バイデン氏は「独裁者が侵略の代償を払わなければ、さらなる混乱を引き起こす」と指摘。「プーチン氏は暴力と混沌を解き放った」として「戦場で利益を得たとしても、彼は長期間にわたって高い代償を払い続ける」と強調した。 具体例として、日本や欧州諸国とともに取り組んでいる厳しい経済制裁によりロシア経済が混乱していることに言及。新たな制裁として、ロシアの航空機に対して米国の空域を閉鎖すると発表した。欧州連合(EU)の空域閉鎖措置と歩調を合わせた。 バイデン氏は「この時代の歴史は、プーチン氏のウクライナに対する戦争は、ロシアを弱体化させ、残る世界を強くしたと書かれるだろう」と国際協調の意義を述べた。 一方、ロシアとの対立で、高止まりしている物価が一段と高騰する懸念が強まっている。バイデン氏は演説で「物価高騰と闘うプランがある」として、技術革新などでコストを引き下げ、物価を抑える計画などを示した。 |
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●米NBC「プーチン、ウクライ苦戦に挫折…側近に激怒」 3/2
ウクライナを侵攻中のロシアのウラジーミル・プーチン大統領が首都キエフの陥落が遅れていてロシア軍が苦戦を強いられている状況に対し、異例にも怒りを表出し、内閣に非難を浴びせている。米国NBC放送が米情報当局者の言葉を引用して28日(現地時間)、報じた。 報道によると、プーチン大統領は現在新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)に対する懸念で首都モスクワのクレムリン宮を離れているにもかかわらず、ウクライナでの戦闘状況を聞いて閣僚に対して激怒した。 NBCは「西側の情報当局がプーチン大統領の一挙手一投足に対する情報を収集している」とし「プーチン大統領が過去とは違う様相を見せているという」と伝えた。プーチン大統領は2008年執権以降、冷血漢独裁者としてのイメージを築いてきた。しかし数日あれば降参するだろうと思っていたウクライナ侵攻が市民の激しい抵抗線にぶつかり、プーチン大統領は感情をコントロールできない姿も見せているという。 マーク・ワーナー米上院情報委員長もMSNBCとの最近のインタビューで、戦争状況がプーチン大統領の思い通りに進んでいない点を指摘して「プーチンは現在、制限的な量の情報だけを聞いているが、そのほとんどがご機嫌取りの情報」と懸念した。 ある外交官もNBC放送に「プーチンは現在、新型コロナによってクレムリン宮にはおらず孤立している」とし「戦場の現場でどんなことが起きているのか、彼は知らずにいる」と指摘した。 |
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●「私はプーチン大統領を信じています」 皇帝プルシェンコ氏 3/2
フィギュアスケートの元ロシア代表で2006年トリノ冬季五輪金メダリストのエフゲニー・プルシェンコ氏(39)が2022年3月1日にインスタグラムを更新し、スポーツ界に広がるロシア追放の流れに反発の声を上げた。 スポーツ界ではロシアのウクライナへの軍事侵攻を受け、ロシアのアスリートを国際大会から除外する流れが広まっている。国際オリンピック委員会(IOC)は2月28日にロシアの選手を国際大会から除外するよう国際競技連盟などに勧告した。 IOCの勧告を受け国際スケート連盟(ISU)は3月1日に世界選手権を含むISU主催の大会にロシア選手の出場を認めないことを発表。国際サッカー連盟(FIFA)、欧州サッカー連盟(UEFA)は、ロシアに対して全ての代表、クラブチームの主催大会への出場を禁じた。 世界的にロシア選手を除外する流れが加速するなかで、プルシェンコ氏はインスタグラムに長文を投稿し、現在ロシアのアスリートが置かれている状況に触れ、スポーツと政治を混同してはならぬとの見解を示した。 「IOCがすべてのスポーツで選手を停止するよう呼びかけた後、FIFAとUEFAはすべての大会からチームを除外しました。今日ISUはロシア人が(ISU)主催の競技会に参加することを禁止しました。これは大きな間違いです」 ●「誰もが平和を望んでいて、私はそれを望んでいます」 さらに「スポーツと政治を混同させたり、アスリートを罰したり、パフォーマンスや競争の権利を奪ったりすることはできません。これは差別であり、アスリートの権利を直接侵害するものです」と主張した。 そして「誰もが平和を望んでいて、私はそれを望んでいます。できるだけ早くすべてが終わり、交渉が実を結ぶことを心から願っています。私は私たちの大統領を信じています」などのコメントを投稿した。 スポーツと政治は別だとするプルシェンコ氏の主張に反する形で、世界のスポーツ界では、ロシアに制裁を科す動きがさらに続いている。 プロボクシングの主要4団体はロシア選手を世界ランキングから除外する方針を打ち出し、陸上では世界陸上と世界室内陸上選手権からロシア選手が除外された。また、バレーボールでは、ロシアが8月から予定していた世界選手権の開催権をはく奪した。 |
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●中立国スイスもプーチンの資金遮断…ロシア人367人の110億ドル資産凍結 3/2
中立国のスイスが従来の立場を変え欧州連合(EU)の対ロシア金融制裁に参加する意向を先月28日に公式化した。 スイス連邦議会の会議を主宰した同国のカシス大統領が直接明らかにした内容だとしてニューヨーク・タイムズがこの日報道した。これによりロシアのプーチン大統領だけでなくミシュスティン首相らEUの制裁リストに上がった367人のスイス国内資産が凍結されるものとみられる。同紙はスイス国内にロシア企業と個人が保有する資産規模は2020年基準で約110億ドルに達すると伝えた。 ロシアのラブロフ外相はこれを防ぐため急きょジュネーブ行きのアエロフロート機に搭乗しようとしたが不可能だった。EUがラブロフ外相の欧州域内旅行禁止措置を下したためだ。 今回の措置はスイスにも危険な賭けだ。これまで中立国として積み重ねてきた国のアイデンティティをぼやけさせ経済的にも打撃になりかねないためだ。 こうした理由からスイスは制裁参加に微温的だった。先週だけでもカシス大統領は「(制裁後に)ロシアから新たに流入する資金は防ぐだろうが預金者の口座接近は止めない」と明らかにした。彼は「スイスの中立国としての地位を考慮せざるをえない」と説明した。しかしプーチン大統領が実際にウクライナへの侵攻を敢行し民間人の死亡者まで出てスイス国内世論が悪化するとカシス大統領も立場を変えた。同紙は「スイスに中立国の地位は伝統であり意味が大きい戦略。これをしばし下ろすことにしたというのは重要な意味を持つ」と伝えた。 |
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●プーチンに異変…ロシア軍へのウクライナ「意外すぎる作戦」 3/2
安定しない視線、テーブルの上で落ち着きなく動く指ーー。 テレビに映るロシアのプーチン大統領(69)の姿からは、イラ立ちが伝わってくる。ウクライナ情勢が、思うように進展していないからだろう。 「諸外国は、経済制裁を強めています。国際的な決済ネットワーク『SWIFT』から、ロシアの主要銀行を除外することを決定。ロシアは、国内通貨ルーブルの大暴落とハイパーインフレの危機にあるんです。侵攻したロシア軍も、苦戦を強いられています。当初は2日で陥落するとみられていた首都キエフは、いまだに制圧できていません。ウクライナ軍の抵抗が、予想以上に激しいからでしょう。 プーチン大統領の不安の種は、国外だけではない。ロシア国内ではモスクワやサンクトペテルブルクなど、60以上の都市で反戦デモが発生。ネット上で反戦を呼びかける署名は、100万人近くになりました。当局は規制を強め、2月26日からSNSの通信を制限しています。また『侵攻』『攻撃』などの表現でウクライナ情勢を報じるメディアには、最大500万ルーブル(約545万円)の罰金を科すとしたんです」(全国紙記者) 内憂外患で、プーチン大統領の焦りが募るのも当然だろう。精神状態を不安視する声も多い。米国のマルコ・ルビオ上院議員は、ツイッターでこう記した。 「本当のことをもっと明かしたいが、今間違いなく言えることは一つ。プーチン大統領は、何かがおかしいということだ」 オバマ大 |