ウクライナ侵攻 丸二年たちました
ロシアは何を手のしたのでしょう
失った世界からの信頼
損得天秤はどちらに
1/1・1/2・1/3・1/4・1/5・1/6・1/7・1/8・1/9・1/10・・・1/11・1/12・1/13・1/14・1/15・1/16・1/17・1/18・1/19・1/20・・・1/21・1/22・1/23・1/24・1/25・1/26・1/27・1/28・1/29・1/30・1/31・・・ 2/1・2/2・2/3・2/4・2/5・2/6・2/7・2/8・2/9・2/10・・・2/11・2/12・2/13・2/14・2/15・2/16・2/17・2/18・2/19・2/20・・・2/21・2/22・2/23・2/24・2/25・2/26・2/27・2/28・2/29・・・ 3/1・3/2・3/3・3/4・3/5・3/6・3/7・3/8・3/9・3/10・・・3/11・3/12・3/13・3/14・3/15・3/16・3/17・3/18・3/19・3/20・・・3/21・3/22・3/23・3/24・3/25・3/26・3/27・3/28・3/29・3/30・3/31・・・ 第三次世界大戦 プーチン大統領の「夢」 戦争終結の道 ウクライナ分断 孤立するロシア プーチンの新冷戦 どこへ行くプーチン大統領 プーチン大統領の冬支度 ・・・ プーチン皇帝 |
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●「戦場での主導権、ロシアに」 プーチン氏、負傷兵と会談 1/1
ロシアのプーチン大統領は1日、ウクライナ侵攻で負傷した兵士とモスクワの病院で会談し、戦場の主導権は「ロシア側が握っている」と強調、目的達成まで作戦を続ける意思を改めて示した。タス通信などが報じた。 プーチン氏は、24人が死亡した西部ベルゴロド州へのウクライナの攻撃について「疑いもないテロだ。私自身、はらわたが煮えくり返っている」と述べる一方、「われわれは同じ手法は使わない。精密兵器で軍事施設だけを狙う」と強調した。 また「ウクライナは敵ではない。彼らを利用してロシアの戦略的敗北を目指す欧米こそが敵だ」とし、欧米諸国との対決姿勢を鮮明にした。 |
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●年末年始もロシア軍の攻撃続く 双方に死傷者、独TV通訳も骨折 1/1
ウクライナ空軍は1日、一晩で90機のイラン製無人機を使ったロシア軍の攻撃があり、うち87機を迎撃したと発表した。地元当局によると、南部オデッサでは迎撃した際の破片が集合住宅に落下し、1人が死亡。西部リビウの博物館では破片の落下で火災が起きた。年末年始も戦火はやまず、ウクライナ、ロシア双方で死傷者が相次いだ。 ドイツの公共放送ZDFは12月31日、記者らが滞在していた東部ハリコフのホテルが30日にロシア軍の攻撃を受け、女性通訳が肋骨を折るなどのけがをしたと明らかにした。ホテルは主に外国メディアの取材拠点だった。ZDFは声明で「報道の自由に対するロシアの新たな攻撃だ」と非難した。 ロシア側は、ウクライナ軍がロシア西部ベルゴロド州を30〜31日に攻撃したことに対する報復として、ハリコフ州の軍事施設などを攻撃したと主張した。 「ドネツク人民共和国」の首長プシーリン氏は1日、未明にウクライナ側からミサイル15発が撃ち込まれ、中心都市ドネツクで4人が死亡、13人が負傷したと表明した。 |
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● ロシア軍の攻撃続き ウクライナ南部で死傷者 厳しい新年に 1/1
ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナでは、1日にかけてもロシア軍の攻撃が続き、このうち南部のオデーサでは死傷者が出るなど厳しい新年を迎えています。 ウクライナ空軍は、前日の31日夜から1日にかけてロシア軍が90機にのぼる無人機で各地に攻撃を仕掛け、このうち87機を撃墜したと発表しました。 地元当局などによりますと、このうち南部オデーサでは、1日、撃墜された無人機の破片が住宅に落下して火災が発生するなどし、これまでに1人が死亡、3人がけがをして病院で手当てを受けているということです。 一方、ウクライナ東部ドネツク州の親ロシア派の代表プシリン氏は1日、SNSで州都ドネツクにウクライナ軍の砲撃があり、これまでに4人が死亡し、13人がけがをしたと述べました。 ロシアによる軍事侵攻が始まってから2度目の新年を迎える中、双方の攻撃の応酬が続いています。 また、首都キーウでは、先月29日のロシアによる大規模な攻撃で亡くなった人たちを追悼するため、1日を喪に服する日とし、市の中心部にある広場には半旗が掲げられることになっています。 29日の攻撃でキーウ市内で死亡した人の数はこれまでに28人にのぼり、行方不明者の捜索が続けられているということです。 |
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●プーチン大統領、ウクライナでの和平望むがロシア独自の条件に限定 1/2
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナで「際限なく」戦うことは望まないが、自国の立場は譲らず自国の条件でのみ和平の用意があるとの見解を示した。 プーチン大統領は1日、軍の病院を訪問した際、ウクライナでのロシア軍の任務遂行に満足していると述べ、敵は「徐々に萎縮しつつある」と指摘。プーチン氏は「できるだけ早期に紛争を終わらせたい」が、「われわれの条件でのみだ」と述べた。和平のために満たされねばならない条件については明示しなかった。 |
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●プーチン大統領「紛争終わらせたい」 ロシア側の条件下なら戦闘終結 1/2
ロシアのプーチン大統領は1日、自国がウクライナで続ける「特別軍事作戦」の主導権を握っており、「我々はできるだけ早く紛争を終わらせたい」と述べ、ロシア側の示す条件下であれば戦いを終わらせる用意があるとの考えを示した。軍事作戦で負傷した兵士らをモスクワの軍病院で見舞った際に明かした。 プーチン氏は「我々の敵は欧米であり、ウクライナそのものではない」と訴え、欧米がウクライナを利用してロシアを撃破しようとしているとの主張を繰り返した。その上で、欧米の論調に変化が表れたと指摘し、欧米はロシアを打ち負かすことが難しいと気づき「より早く紛争を終結させるきっかけを探している」との見解も表明した。 20人以上の死者を出したウクライナによるロシア西部ベルゴロド州への攻撃にも言及し、ロシア国内を不安定にさせるために「民間人を狙ったテロ行為だ」と非難。一方で、ロシアが戦闘で民間人を狙うことはなく、精密兵器で軍事施設を攻撃していると強調した。 プーチン氏は条件付きで戦闘を終結させる可能性に触れたが、ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアが占領した地域から撤収しない限り、戦い続ける立場を堅持し続けている。 |
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●プーチン大統領「私たちは団結」 4分弱の新年演説、軍事色抑え 1/2
ロシアのプーチン大統領は12月31日夜、年末恒例の国民に向けた新年の演説を行った。軍事色を前面に出した前年とは対照的に、ウクライナでの「特別軍事作戦」について具体的な言及はなく、国民に団結を呼びかける表現が目立った。 プーチン氏は演説の冒頭で、「私たちは多くのことを成し遂げた」と2023年を振り返り、国益や自由、自分たちの価値観を断固として守ったと強調した。「私たちを団結させるのは、祖国の運命だ。共通の利益のために働くことこそが社会を団結させる」と国民の結束を促し、「私たちは一つの国家であり、一つの大きな家族だ」と呼びかけた。 また、軍関係者に対しては「真実と正義のために前線で戦う全ての人たちに伝えたい」と語りかけ、「あなたたちは私たちの英雄であり、あなたたちを誇りに思う」とたたえた。 ロシアの独立系英字メディア「モスクワ・タイムズ」によると、プーチン氏の年末の演説は、特別軍事作戦の始まった前年は9分を費やしたのに対し、今回の演説は3分45秒と半分以下の長さだった。 |
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●プーチン大統領、新年の辞で国民の団結強調 ウクライナ言及せず 1/2
ロシアのプーチン大統領は新年に向けた演説で、国民の団結と決意の共有を強調した。ウクライナ戦争に関しては、前線で戦う兵士を英雄と称えたものの、ウクライナを名指しすることもなく「特別軍事作戦」という言葉も使わなかった。 3月に大統領選挙を控えプーチン氏は、一進一退のウクライナ戦況よりも、経済やインフレといった国民により切実な問題に有権者の関心を向けさせようとしている。 新年直前に放映された演説で、プーチン氏はクレムリンを背後に、前線で戦っている兵士に「あなたがたはわれわれの英雄だ。思いはあなたがたと共にある。あなたがたを誇りに思い、勇気を称賛する」と呼びかけた。 「われわれは最も困難な問題を解決することができ、決して後退しないことを何度も証明してきた」とし、ロシアおよびロシア国民は団結し支えあい「国益、自由と安全、われわれの価値を守る決意を持っている」と述べた。 共通の利益のための努力が社会を団結させたとし「平日も休日も、仕事でも戦闘でも、われわれの思いは共通しており、ロシア国民の最も重要な特徴である連帯、慈悲深さ、不屈の精神を示している」とした。 |
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●キーウとハリコフにミサイル、西部攻撃受けプーチン氏報復言明 1/2
ウクライナの首都キーウ(キエフ)とハリコフが2日、ロシアのミサイル攻撃を受けた。ロシアのプーチン大統領は、西部ベルゴロドがウクライナの攻撃を受けたとして報復すると述べていた。 キーウでは、朝のミサイル攻撃で爆発が起き、一部地区でガス管が損傷したり停電が発生している。 これに先立ちウクライナ空軍は、2日未明にキーウなどの都市でロシアの攻撃ドローン(無人機)35基を全て撃墜したと発表していた。 ロシア西部ベルゴロドでは年末、ウクライナの攻撃を受け民間人24人が死亡。ロシアは国境を隔てたハリコフから攻撃が行われたと指摘した。プーチン大統領は1日、攻撃は「テロリストの行為」だとし、ウクライナの標的にさらなる攻撃をすると述べていた。 ロシアは朝のピーク時にウクライナの首都にミサイルの波を浴びせ、街の一部を停電させ、墜落した武器の破片を地域全体に落下させた。 ヴィタリ・クリチコ市長はTelegramのメッセージアプリで「首都で爆発が起きている」と述べ、人々に安全を確保するよう促した。 ウクライナの空軍は火曜日未明、ロシアがキエフを含むウクライナのいくつかの都市を狙って真夜中過ぎに発射した35機の攻撃ドローンをすべて破壊したと発表した。 この攻撃は、プーチンが月曜日にウクライナのベルゴロドへの攻撃は"罰せられない"と述べた後に行われた。この攻撃により、ウクライナの大部分は数時間にわたって空襲警報が発令された。 クリチコによれば、キエフのペチェルスキー地区ではガスパイプラインが破損し、首都のいくつかのビルでは電気が遮断されたという。 ロシアのミサイル攻撃の全容はすぐには明らかにされなかった。この攻撃は、少なくとも39人が死亡した金曜日のウクライナに対するロシア最大の空爆に続くものである。 イホル・テレホフ市長は、ハリコフ市も「大規模なミサイル攻撃」を受けたと述べた。 ロシアによると、ウクライナはロシア国境を越えたハリコフ地方からベルゴロドへの攻撃を開始したという。 |
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●「ウクライナ・プラウダ」36歳編集長が向き合う使命 戦いや戦時下の報道 1/2
ロシアによるウクライナ侵略戦争は2度目の厳冬期を迎え、ウクライナ軍は厳しい戦いを強いられている。一方、欧州連合(EU)への早期加盟を目指すウクライナでは、政府による情報統制が強まる戦時下でも、ジャーナリストが国民の知る権利のために奮闘。12月中旬に来日したウクライナの代表的なネットメディア「ウクライナ・プラウダ」のセウヒリ・ムサイエワ編集長(36)は「戦時下のジャーナリストの使命は不正や腐敗から国を守ること」と強調し、「ウクライナ消滅を狙うロシアとは戦う以外の選択肢はない」と訴えた。「ウクライナ・プラウダ」は優れた調査報道で国際的にも評価の高いウクライナメディアの一つだ。 セウヒリ・ムサイエワさん 1987年生まれ。ウクライナ南部クリミア半島出身。キーウ国立大学ジャーナリズム学部卒業後、「フォーブス・ウクライナ」誌の記者などを経て2014年から現職。22年に「GPJ国際報道の自由賞」を受賞した。 ●この戦争の特質は「脱植民地化」 ――ロシアに占領された東部・南部4州の奪還を目指す反転攻勢は難航し、戦況は厳しい。このような現実をどう評価しますか。 「非常に複雑な問題です。これに対する回答は、侵攻当初、ウクライナは3日間しか抵抗できないと見られていたという事実から始めなければなりません。ウクライナは既に2年近く戦っているのです。私自身も多くの友人を失いました。この戦争はウクライナが選んだわけではありません。侵略を始めたのはロシアです。ロシアはウクライナ人とウクライナ国家を滅ぼそうとしています。ロシアは大国で、世界有数の軍事力を保有する国の一つです。異常な国に立ち向かわなければならないのは本当に大変なことなんです。しかし、ウクライナ国民一人一人は、国が(ロシアに)立ち向かう力になれるよう可能な限りのことをしています。この戦争の特質は脱植民地化戦争であることを理解しなければなりません」 ウクライナの首都キーウで、ロシア軍の攻撃で損傷したビルの後方に上がる黒煙=2023年12月29日、AP ウクライナの首都キーウで、ロシア軍の攻撃で損傷したビルの後方に上がる黒煙=2023年12月29日、AP ――ウクライナがロシアという帝国の植民地であることから脱却するための戦争ということですね。 「この戦争に勝利することで、われわれの国家は維持され、ウクライナがEUの一員となり、北大西洋条約機構(NATO)の一員となれるのです。私たちはこのことを強く望んでいます。そうなればロシアがウクライナに干渉したり、ウクライナ人やウクライナ文化を破壊することは永久にできなくなります。このことはとても重要です。 プーチン(大統領)にとっては、どれほど多数のウクライナ人やロシア人が死亡しようが問題ではない。私たちにとって一人一人の死は大きな損失です。私たちはこの戦争の代償をもちろんよく理解しています。 反転攻勢がいかに難しいかは分かっていますが、他に選択肢はないのです。降伏すれば、ただ殺されるだけだから。ウクライナはロシア軍が(首都キーウ近郊)ブチャで行った虐殺を目の当たりにした後、ロシア軍が占領した領土をそのままにしておくことができないことに気づいたのです」 ●不都合なことを隠す当局の情報操作 ――侵略したロシアとの戦争におけるウクライナでの報道の自由の現状をどのように評価しますか。戦時下では報道活動への一定の制限はやむをえません。果たしてどの程度まで許容できると思いますか。 「ウクライナには戦時検閲があります。検閲は戦時の特殊性によって規定されているからです。例えば、ミサイル攻撃の標的を公開しない、兵器配備の場所を示さないなどです。これらの規定は細かく決められています。例えば、最初の数時間はミサイル落下場所での報道が禁止されているし、ビデオ写真の公開も禁止です。 一方、戦時下の状況では最も民主的な国家であっても情報を操作しようと試みます。ジャーナリストが不都合なことに触れないようにするための(当局の)巧妙な操作を明らかにすることこそ戦時下のジャーナリストの仕事です。 わが国は生存のための戦いを続けていますが、他方で、私たちはウクライナの公務員の汚職を取材したり、政府内の見解の相違、軍の問題についても書いています。われわれが夢見る理想的な国家とはまだまだほど遠いような記事を書いており、そのために私たち(ウクライナ・プラウダ)はウクライナ社会から批判を受けています。戦争中に不快な出来事を伝えることは避けるべきだと考える人もいるからです。しかし、私たちは報道を続けます」 ●戦争中の腐敗は平時よりも深刻 ――多くの汚職の容疑者が摘発されています。 「戦争中の腐敗は恐ろしいことです。平時の腐敗よりも深刻です。なぜなら、まず道徳的原則に反するからです。ウクライナが世界から多くの支援を受け、世界から注目されている時、いかなる不正も許されません。そうでないと、国民の命を犠牲にすることになります。数十億、数百万フリブナ(ウクライナの通貨単位)を盗まれるということは、兵士たちに何かが不足する、または十分な報酬が与えられていないことを意味するのです。ジャーナリストは腐敗や不正行為の蔓延(まんえん)などから国を守らなければなりません。それがジャーナリストの使命ですから。私この仕事を続けます。 もちろん、戦時下で働くことは非常に困難です。何人もの同僚が徴兵で戦場に行ったし、家族を失った人もいるし、占領地に親戚がいる者もいます。つまりこの戦争は遠いところで起こっているのではなく、文字通り個々のジャーナリストたちに深刻な影響を及ぼしているのです」 ●EUが受け入れてくれると信じている ――汚職一掃はEU加盟の条件です。ウクライナの早期加盟は可能ですか。 「改革は成功すると思います。いかなる困難があっても、ウクライナはEUに加盟できると信じています。懐疑的な国民もいますが、加盟は時間の問題だと思います。欧州の指導者たちは、自由のために高い代償を払い、多くの苦しみを味わってきたこの国を『家族』として受け入れる必要があるのではないでしょうか。われわれは決して完璧ではないし、多くの問題点や欠点はありますが、家族は不完全な子供たちも愛してくれるものです」 ●大統領と総司令官の「見解の相違」は民主主義国家だからこそ ――ゼレンスキー大統領とザルジニー軍総司令官が対立しているとの問題を詳しく報じた記事が、国際的に注目を集めました。ロシア側につけ入る隙を与えるとの見方もありますが、戦時中の政治報道の在り方についてどう考えますか。 「(大統領と総司令官の)対立という言葉は、海外メディアがよく使う言葉ですが、私たちはその言葉は使いません。ウクライナのメディアとして、私たちは何が起こっているのか、詳しく説明することにしました。それは誰の目にも明らかで、大統領と総司令官の見解の相違に見えます。これはウクライナが民主主義国家であることを示すものでもあるわけです。 つまり二つの意見があり、そこにはある種のバランスが成立しているわけです。なぜなら、ゼレンスキー大統領は現在(戒厳令で)強大な権力を持っているからです。ザルジニー氏は政治に関与するつもりはありませんが、ウクライナ社会では非常に大きな信頼と高い評価を得ています。 ウクライナでは現在、選挙を実施できません。戒厳令が敷かれ、さまざまな制限がある中、ザルジニー氏によってバランスがとられているといえます。このような状況でもゼレンスキー氏がザルジニー氏を解任することがないよう、十分な知恵と意志があることを願っています。ウクライナ社会と軍の士気に大きな影響を与えるからです」 ●北方領土で起きたことがクリミアでも起きた ――クリミア・タタール人として、占領されているクリミア半島の現状をどうみていますか。 「14年のロシアによるクリミア占領後、私は10年、故郷に戻っていません。クリミアには友人もいますが、彼らは私と話すことさえ恐れています。もちろん、いつかはクリミアが解放されると信じています。この戦争は14年のロシアのクリミア半島占領から始まりました。クリミア半島で始まったものは、クリミア半島で終わらせなければなりません。 歴史的背景を言えば、18世紀末ごろまではクリミア半島にはクリミア・タタール人の国家(クリミア・ハン国)があり、私にとってクリミアは祖国のようなものです。併合後、クリミア・タタール人が追い出され、ロシア人が入ってきて地元の住民が入れ替わっています。かつてロシアが日本の北方領土を占領したときも日本人の島民を追放し、ロシア人を定住させましたが それは今、クリミアで起きていることです。クリミアでは10年間にわたって人権が侵害されてきましたが、国際社会の反応は十分ではありませんでした」 ●ロシアは黒海を完全に支配しようとしている ――ロシアとクリミア半島を隔てる海峡で知られるケルチ出身ですね。 「重要なのは、クリミア半島は、欧州のパートナーと文明世界全体にとって安全保障上の問題だということです。クリミア半島というのは、つまり黒海(と周辺地域)を意味するからです。ロシアは黒海を完全に支配しようとしています。ロシアがクリミア半島だけでなく(ウクライナ南部の)オデッサまで占領しようとするなら、その目的は何か。この地域にはルーマニアやモルドバ、トルコなど欧州連合(EU)加盟国がロシアと隣接しています。プーチンはクリミア半島を軍事基地化し、そこからウクライナの多くの都市に向けてミサイルを発射していますが、将来は欧州の都市に向けてミサイルを発射できるようになるでしょう。戦争が欧州に拡大するかもしれないのです。モルドバ、ルーマニア、ポーランドはどうなるのでしょうか? 1939年の(ナチスドイツによる)オーストリア併合後、ロンドンへの爆撃がいかに早く始まったか、現代史を思い出してみましょう。手を打たなければ(次の侵略が)非常に早く起きる可能性があるのです。 占領されたクリミア半島では、私の同級生がロシア軍に所属しています。そして彼らはウクライナ人を殺しに来たのです。もしプーチンがウクライナ全体を支配すれば、もともと欧州志向のウクライナの人々がウクライナ軍やロシア軍に入り、欧州の人々を殺しに行くことになるでしょう。私たちはまるで歴史を見ているようです。もし10年前にクリミア併合がなければ、2022年にウクライナ東部・南部の領土は占領されなかったでしょう。プーチンは止まりません。プーチンの目標はロシアの目標であり、帝国を復活させることです」 ●ウクライナの人々は自分の将来を予測できない ――侵略戦争はウクライナを荒廃させ、犠牲者は増加し、人口は減少しています。戦争が長期化する中、ウクライナ社会に変化はありますか。 「戦争に疲れているウクライナ人はもちろんいます。ある調査では、ウクライナ人の56%がこの戦争の死傷者と関係があるのです。つまり、この戦争はウクライナの大多数の国民に影響を及ぼしているわけです。非常に悲しいことです。ウクライナの人々は自分の将来を予測できません。毎日目が覚めて、ミサイル攻撃がなかったら、これはもう幸せなことです。当初は多数の人々が軍を志願しました。今は兵員募集を含め問題はありますが、私たちは何とかそれを克服しようとしています。非常に重要なのは、この戦争をできるだけ良い状態で終わらせることです。多くの命を救うために」 ●ロシアはプロパガンダに毒されている ――多くのロシア人はプーチン氏を支持し、政権が戦争を続けることを支持しています。この状況は将来変わると思いますか? 「(プーチン政権が誕生した)2000年以来、ロシア社会はプロパガンダに毒されています。さらにロシアの(官製)メディアは(14年のウクライナ民主政変以降)約10年間、ウクライナ人を人間以下の存在として扱ってきました。だから全面侵攻の最初の数日間、捕虜になったロシア兵全員がこう言ったんです。『われわれは君たちを解放し、ナチスと戦うためにここに来たんだ』と。しかし、彼らは、ここにはナチスが存在しないことをすぐ理解しました。 今後、もし何か想像もつかないことが起こったら、例えばプーチンがロシアで権力を失った後、言論の自由が復活し、独立したメディアが活動するようになれば、ロシア社会は徐々に気づくでしょう。『これは間違っていた。すべて間違っていたのだ』と」 ●占領地でロシアが最初にやったこと ――ロシアのプロパガンダ(政治宣伝)は東部・南部4州の占領地のウクライナ国民にいかなる影響を与えているでしょう。 「占領地ではロシアの絶対的な情報空間が確立され、残念ながら住民の大半はロシアのプロパガンダの影響下にあります。ロシアの戦争にとって、情報は最も重要な事柄の一つです。 一例をあげますと、ロシアが昨年5月に(南部ドネツク州の)マリウポリを占領すると、まず最初にやったことは、『マリウポリ』というウクライナ語の地名を1字だけロシア文字に置き換えてロシア風の地名に変えたのです。たった1文字ですが、これは重要な意味があるのです。その次に彼らはマリウポリの中心部に(プロパガンダのために)大きなスクリーンを設置しました。情報空間のコントロールは彼らの最優先の仕事なのです」 ●賠償と処罰の前に和解の話をするのは不可能 ――いつの日かロシアとの関係が正常化する可能性はあるのでしょうか。もしあるとすれば、どんな条件が必要でしょう。 「ロシアは非常に長い年月をかけて賠償金を支払わなければなりません。戦争犯罪人に対する国際刑事裁判所の判決も必要です。ロシアは、今回の侵略戦争という犯罪を背負い、さらには次の大戦への扉を開けてしまったのです。ロシアはこの代償を払わなければならないし、ロシアは罰せられなければならないのです。この戦争の根拠となったロシアのプロパガンダを広めた者を含め罰せられなければならない。これは私の個人的な夢のようなものですが、いずれは実現すると思っています。その前に和解についての話をすることは不可能です」 ●日本の支援に深い感謝を伝えたい ――日本のウクライナ支援をどう評価しますか。またウクライナ戦争における日本の役割は。 「避難民への思いやりのある受け入れも含め、日本のウクライナ支援に深い感謝の気持ちを伝えたいです。ウクライナ難民への日本人の大きな支援には驚きました。日本駐在のウクライナ人記者がいないので支援の大きさを十分に実感できなかったのですが、今回の訪日で一般の人々の支援の大きさがよく分かりました。日本政府が戦後初めてウクライナ難民に国境を開放したこと、ウクライナへの45億ドルの追加支援パッケージも重要です。東京のウクライナ大使館に行き、市民が大使館に持ってきてくれた励ましの品々を見てとても感動しました。日本の人々は私たちが直面している悲しみを、これほど真剣に受け止めてくれているのかと。日本人のこの感性はとても素晴らしいと思っています」 |
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●プーチン大統領「紛れもないテロ行為」報復示唆 ウクライナ軍が攻撃 1/2
ロシアのプーチン大統領は1日、西部ベルゴロド州で25人が死亡したウクライナ軍の攻撃について、「紛れもないテロ行為だ」と述べさらなる報復を示唆しました。 ロシア西部のベルゴロド州では先月30日、ウクライナ軍の攻撃により、25人が死亡、100人以上がケガをしました。 プーチン大統領は1日、モスクワ近郊の病院を訪問した際、「ベルゴロド州で起きたことは紛れもないテロ行為だ」「(ウクライナは)罰せられないわけにはいかない」と述べ、さらなる報復を示唆しました。 その理由について、ウクライナ軍が「多連装ロケット砲で街の中心部を攻撃したからだ」としています。 多連装ロケット砲は、複数のロケット弾を一斉に発射できるシステムですが、命中精度が低いとされていて、広い範囲を「数」で攻撃する兵器です。 今回のウクライナ軍の攻撃は、ロシア軍が先月29日、ウクライナ各地に大規模攻撃を仕掛け、41人が死亡したことへの報復とみられます。 1日にはロシア軍が再びウクライナ各地を攻撃し、南部オデーサ州で1人が死亡するなど、攻撃の応酬が続いています。 |
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●ウクライナ反撃は「テロ」=ロシア大統領、年初から公務 1/2
ロシアのプーチン大統領は1日、モスクワ郊外の病院を訪れ、ウクライナ侵攻で負傷した兵士らを見舞って懇談した。 昨年12月30日に西部ベルゴロドで25人が死亡したウクライナ軍の反撃に初めて言及。「無差別かつ広範囲を攻撃する多連装ロケット砲で都市部の民間人を狙った」として「テロ」と述べた。 プーチン氏は、報復を含めて「ロシアは精密兵器で軍事施設を攻撃している」と主張。12月29日にウクライナ各地に大規模な空爆を行ったことには沈黙した。英BBC放送によると、首都キーウ(キエフ)などで40人以上が死亡、160人以上が負傷している。 プーチン氏が1月1日に公務に当たるのは、外国首脳らとの電話会談などを除くと極めて異例。ウクライナ侵攻開始後の昨年もなく、2013年末に連続自爆テロが発生した南部ボルゴグラードを訪れた14年以来となる。 |
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●ウクライナ、予算不足近づく…米欧の資金提供滞り年金支払い遅れも 1/2
ロシアの侵略を受けるウクライナが今年早々にも、予算不足に陥る懸念が高まっている。国家予算の半分以上が軍事費に使われ、社会サービスなどの歳出は海外の支援が頼みの綱だが、米欧の資金提供が滞っているためだ。年金や公務員給与の支払いが遅れる可能性もあり、打開策は見いだせていない。 「1月から十分に予測可能な外部融資を受けることが、マクロ経済の維持に不可欠だ」 米ブルームバーグ通信によると、ウクライナのデニス・シュミハリ首相は昨年12月に先進7か国(G7)などの資金提供国・機関への書簡でこう訴え、緊急会合の開催を要請した。 会合は本来、主に復興にむけた資金調整の場だが、シュミハリ氏は「生存に必要なものを満たすことに苦しんでいる時に、復興と再建について議論するのはほぼ不可能だ」と、当面必要な予算に資金を割り当てるよう求めた。 ユリヤ・スビリデンコ第1副首相兼経済相は、英紙フィナンシャル・タイムズの取材に、公務員50万人と教師140万人の賃金、1000万人の年金給付に遅れが出る可能性があると主張している。 ウクライナの政府予算は元々、米欧などからの支援を前提に赤字で編成されている。2024年予算は歳出3兆3550億フリブニャ(約12兆4000億円)に対し、歳入は約1兆7680億フリブニャ(約6兆5400億円)しか見込んでいない。海外から373億ドル(約5兆2600億円)の援助が必要とされる。 だが、米欧からの支援は停滞している。大統領選を控える米国では、ウクライナ支援の是非が政治的な争点となっており、バイデン政権が提案する610億ドル(約8兆6000億円)の支援を含む追加予算が承認される見通しが立っていない。欧州連合(EU)でも、昨年12月の首脳会議で最大500億ユーロ(約7兆8000億円)の追加拠出案にハンガリーが反対し、議論は先送りされた。 こうした状況は、ロシアに好都合だ。ワシリー・ネベンジャ露国連大使は12月29日の国連安全保障理事会で、「ウクライナはもっぱら米英、EUの巨額資金で生き延びている」と皮肉った。プーチン大統領も12月14日の記者会見で欧米の支援について、「終わりつつある」と述べた。 露軍がウクライナ全土を標的とした大規模攻撃を行っている背景には、財政面で苦境に立つウクライナを追い込む狙いもあるとみられる。 |
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●プーチン大統領に度重なる異常行動 「認知症悪化」で核ボタンの行方は 1/2
ロシアのみならず世界にとってプーチン大統領の「健康」が重要視されるのは、その一挙手一投足の行方によって計り知れない影響が出るからだ。当然ながら「核のボタン」を握る男に一片たりとも心身の不安などあってはならない。そんなところに「認知症悪化」のニュースが飛び込んできたものだから、世界中が震えたのである。 これまでにも、がんだ、白血病だ、パーキンソン病だと健康不安説が絶えなかったプーチン大統領。そのたびにクレムリンは「バカバカしい。大統領は健康だ」と疑惑を否定してきたが、ここへきて決定的とも言える映像が公開され、疑惑が再燃している。 問題の映像は、7月19日に行われた市民のビジネスアイデアの開発を支援する非営利団体の行事にプーチン氏が出席した模様を撮影したものだ。 「この会合でプーチン氏は、ニジニノブゴロド市のイワン・シュトックマン副市長と90分以上にわって会談。シュトックマン氏がこれまでの自身の経歴を説明し、軍へ入隊する決意を語ると、感銘を受けたプーチン氏は『ただただ素晴らしい。これは私たちの子供たちとあなたの子供たちの未来のための闘いなのだ』と同氏を称賛。続いて、プーチン氏が子供の年齢を尋ねると、シュトックマン氏は『一番下は9歳で、一番上が23歳』と答えた。ところが直後、プーチン氏は何を勘違いしたのか『末っ子は3歳』と、いま聞いたばかりの年齢を間違えているんです。そこで、映像を目にした人々の間から認知症説が再燃したというわけです」(ロシアウオッチャー) プーチン氏は数日前にも、イルクーツク州のコブジェフ知事から兵士の死を伝えられた際、「彼らに私の敬意を伝えてほしい」とは答えたものの、そのあまりにもそっけない反応に薄情なのでは、との声も上がっていた。それに輪をかけることになったのが、欧州の安保当局者の談話を伝えた先月25日の米ワシントン・ポスト(電子版)の報道だった。 「プーチン氏は、あの『ワグネルの乱』が始まる2〜3日前には情報を掴んでいたようなのですが、ただ混乱し動揺するばかりで、結局クレムリンの大統領警護と施設数カ所の警備を強化しただけで、他の措置は一切取らなかったというのです。安保当局者が言うには、3日もあれば間違いなくプリゴジン氏を逮捕できる時間はあった。ところがプーチン氏にはなす術がなく、反乱が始まるとクレムリンの機能がすべて停止。結果、本人は身を隠すしか方法がなかったと書かれています。ですから、ルカシェンコ大統領が手打ちをしなければ、本当に打開策がなかった可能性もありますね」(同) 独裁国家の権威主義体制である今のロシアでは、上部の明確な指示がなければ軍隊は1ミリとて動けない。同紙は、反乱当時のこの指揮命令系統の空白が、大統領の権威にかつてない打撃を与えたとの見方を示しているが、その背景にはプーチン氏の認知症があるかもしれないということだ。 ロシアで唯一核のボタンを握るプーチン氏。そして最近では、もう一人「核のボタン」を握るバイデン大統領もトンデモ発言を連発し、こちらも「認知症疑惑」が浮上している。どうか、間違いが起こらないよう願うばかりだ。 |
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●ウクライナ大統領、「ロシアは戦闘で大きな損失」と主張 1/2
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアがウクライナとの戦争で勝利しているという考えは「感覚」にすぎず、ロシアは依然として戦場で大きな損失を被っているとの見解を示した。英経済誌エコノミストに1日掲載されたインタビュー記事で述べた。 ロシアの損失に関する主張について具体的な証拠は示さなかった。ゼレンスキー氏は2024年の優先事項として、クリミアのロシア軍をたたきウクライナ国内への攻撃回数を減らすことや東部戦線の主要都市を守ることなどを挙げた。 ロシア当局者らはゼレンスキー氏の発言に関するコメント要請に応じていない。 ゼレンスキー氏は「(昨年は)世界が望んでいたような成功を収められなかったかもしれない」と認めた上で、ロシア軍が勝利しているという考えは単なる「感覚」だと指摘。先週訪問した東部アブデーフカでのロシアの大きな損失に言及した。 一方で、ウクライナ軍がロシアの黒海封鎖を突破し、南海岸沿いの新ルートによる穀物輸出を可能にしたとし「大きな成果」を称えた。 |
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●ベルゴロド攻撃、死者25人に プーチン氏「100%報復」明言 1/2
ロシア西部ベルゴロド州で1日、ウクライナ軍の12月30日の砲撃で負傷した4歳の少女が病院で死亡し、死者は計25人になった。グラトコフ知事が発表した。プーチン大統領は「市民を標的にしたテロ」と非難。ウクライナ軍関連施設へのミサイル攻撃を続けると述べた。ロシアが報復として空爆を一層強化する可能性がある。 侵攻で負傷した兵士らと1日にモスクワの病院で会談したプーチン氏は「相手の狙いはわれわれを脅し、自信を失わせることだ」と指摘。「私もはらわたが煮えくり返っている」としながらも、ロシアは軍司令部と関連施設だけを狙うと述べ「精密誘導兵器で今日も明日も攻撃する。100%だ」と強調した。 |
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●露、ウクライナへ再び大規模攻撃 キーウと東部で1人死亡 50人超負傷 1/2
ロシア軍は2日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)などに大規模なミサイル攻撃を行った。キーウのクリチコ市長によると、市内の高層住宅にミサイルが着弾し、少なくとも16人が負傷した。東部ハリコフもミサイル攻撃を受け、市当局は1人が死亡、40人以上が負傷したと発表した。 プーチン露大統領は1日、露西部ベルゴロドに対して昨年末にウクライナ軍が実施した攻撃への「報復」を2日にも行うことを予告していた。 ウクライナ空軍によると、露軍は2日の攻撃に極超音速ミサイル「キンジャル」や自爆ドローン(無人機)を使用した。 ロシアは昨年12月29日、ウクライナ各地に過去最大規模のミサイル攻撃を実施。キーウなどで40人以上が死亡した。ウクライナは30日、報復としてベルゴロドを攻撃。ロシア側は25人が死亡したと主張した。 その後、露軍は南部オデッサ州をドローン攻撃する一方、ウクライナ軍もロシアの実効支配下にある東部ドネツク市を砲撃。双方が複数の死傷者を報告するなど、報復攻撃の応酬が続いている。 |
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●キーウとハリコフにミサイル、西部攻撃受けプーチン氏報復言明 1/2
ウクライナの首都キーウ(キエフ)とハリコフが2日、ロシアのミサイル攻撃を受けた。ロシアのプーチン大統領は、西部ベルゴロドがウクライナの攻撃を受けたとして報復すると述べていた。 キーウでは、朝のミサイル攻撃で爆発が起き、一部地区でガス管が損傷したり停電が発生している。 これに先立ちウクライナ空軍は、2日未明にキーウなどの都市でロシアの攻撃ドローン(無人機)35基を全て撃墜したと発表していた。 ロシア西部ベルゴロドでは年末、ウクライナの攻撃を受け民間人24人が死亡。ロシアは国境を隔てたハリコフから攻撃が行われたと指摘した。プーチン大統領は1日、攻撃は「テロリストの行為」だとし、ウクライナの標的にさらなる攻撃をすると述べていた。 ロシアは朝のピーク時にウクライナの首都にミサイルの波を浴びせ、街の一部を停電させ、墜落した武器の破片を地域全体に落下させた。 ヴィタリ・クリチコ市長はTelegramのメッセージアプリで「首都で爆発が起きている」と述べ、人々に安全を確保するよう促した。 ウクライナの空軍は火曜日未明、ロシアがキエフを含むウクライナのいくつかの都市を狙って真夜中過ぎに発射した35機の攻撃ドローンをすべて破壊したと発表した。 この攻撃は、プーチンが月曜日にウクライナのベルゴロドへの攻撃は"罰せられない"と述べた後に行われた。この攻撃により、ウクライナの大部分は数時間にわたって空襲警報が発令された。 クリチコによれば、キエフのペチェルスキー地区ではガスパイプラインが破損し、首都のいくつかのビルでは電気が遮断されたという。 ロシアのミサイル攻撃の全容はすぐには明らかにされなかった。この攻撃は、少なくとも39人が死亡した金曜日のウクライナに対するロシア最大の空爆に続くものである。 イホル・テレホフ市長は、ハリコフ市も「大規模なミサイル攻撃」を受けたと述べた。 ロシアによると、ウクライナはロシア国境を越えたハリコフ地方からベルゴロドへの攻撃を開始したという。 |
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●ロシア大規模攻撃、4人死亡 プーチン氏、報復継続明言 1/2
ウクライナの首都キーウ(キエフ)に2日朝、ロシアの大規模ミサイル攻撃があり、地元メディアによると、キーウや東部ハリコフで計4人が死亡した。キーウでは各地で火災が発生、一部で停電した。ウクライナのゼレンスキー大統領は通信アプリで計90人超が負傷したとし「ロシアに責任を負わせる」と訴えた。 ロシアのプーチン大統領は1日、西部ベルゴロド州に対する昨年12月30日の攻撃を「市民を標的にしたテロ」と非難し、ウクライナ軍関連施設へのミサイル攻撃を続けると述べていた。ロシアは同29日にウクライナ全土に一斉攻撃を仕掛け40人超が死亡。双方の報復合戦が激化する恐れがある。 ベルゴロド州のグラトコフ知事によると、ウクライナ軍による攻撃の死者は計25人となった。 ウクライナ侵攻で負傷した兵士らと1日にモスクワの病院で会談したプーチン氏は「相手の狙いはわれわれを脅し、自信を失わせることだ」と指摘。「私もはらわたが煮えくり返っている」としながらも、ロシアは軍司令部と関連施設だけを狙うと述べ「精密誘導兵器で今日も明日も攻撃する。100%だ」と強調した。 ロシアがウクライナ東部ドネツク州に設置した「ドネツク人民共和国」当局は1日、中心都市ドネツクと北方近郊のゴルロフカに同日夕、計17回の砲撃があったと明らかにした。ロシア通信が伝えた。 「共和国」首長プシーリン氏によると、ドネツクには1日未明にウクライナ側からミサイル15発が撃ち込まれ4人が死亡、13人が負傷した。 |
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●拡大BRICSで欧米対抗 議長国のロシア、外交の主軸に 1/2
ロシアは1日から、中国やインドなどとつくる新興5カ国(BRICS)の議長国になった。プーチン大統領は同日発表の声明で「世界の公正な発展に向けた多国間主義強化」を進めると表明。1日から新規加盟5カ国を加えて計10カ国になった拡大BRICSを、ウクライナ侵攻で制裁を科す欧米に対抗する枠組みに成長させる姿勢を鮮明にした。 ラブロフ外相も昨年末のインタビューで、BRICSを「国際政治に定着させていく」と発言。2024年のロシア外交はBRICS強化を軸に展開していくことになりそうだ。 ロシアは今年10月、中部カザンで拡大後初の首脳会議開催を計画している。 |
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●ゼレンスキー大統領、欧米の支援鈍化に英誌で憤り 1/2
ウクライナのゼレンスキー大統領は英誌エコノミストが1日に報じたインタビューで、欧米が戦争に対する「緊迫感」を失っているとして支援鈍化に憤りを示した。ウクライナ軍が反転攻勢を仕掛けた昨年の戦況について「恐らく、世界が望んだようには成功しなかった」と危機感をあらわにし、支援継続の必要性を訴えた。 ゼレンスキー氏はウクライナへの支援がロシアの侵略から欧州を守ることにつながると改めて強調した。 ウクライナ東部ドネツク州の激戦地アブデーフカで多くのロシア兵が死傷しているなどとし、ロシアのプーチン大統領が勝利に近づいているとの見方は「感覚」でしかないと訴えた。 ロシアとの和平交渉の可能性を巡っては「ロシアから根本的な和平に向けた一歩は全く見受けられない」と実現性を否定。ロシアが交渉を求めるのであれば「兵力を強化するための休止が狙いだ」と指摘した。 |
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●ロシアの空爆によりウクライナで100人以上の死傷者…激しくなる戦争 1/3
ウクライナの首都キーウと南東部のハルキウなどで2日、ミサイルとドローン数十機を動員したロシアの空爆により約100人の死傷者が発生した。ウクライナ空軍は「ロシアが昨年12月29日の大空爆を繰り返した」と明らかにした。 当局はこの日の攻撃で最小5人が死亡し100人以上が負傷したと明らかにした。ウクライナ国営エネルギー企業ウクレネルゴはこの日の空爆の影響でキーウと周辺を含む25万世帯が停電したと伝えた。 ウクライナのゼレンスキー大統領はテレグラムで「ロシアは先月31日から約170機のドローンと数十発のミサイルをウクライナに発射した」と説明した。 ウクライナ軍のザルジニー総司令官はロシアが撃ったミサイル99発のうち極超音速ミサイル「キンジャル」を10発、巡航ミサイル59発、カリブルミサイル3発の72発を撃墜したと主張した。また、この日ロシアが飛ばした35機の攻撃用ドローンをすべて撃墜したと付け加えた。 ゼレンスキー大統領は「パトリオットミサイルと他の防空システムがなかったら毎日昼夜続くロシアのテロ攻撃で数百人の命を助けることはできなかっただろう」としながら米国と西側の支援に謝意を示した。その上で「ロシアは犠牲になったすべての人命に対し代償を払うことになるだろう」と強調した。 ウクライナのクレバ外相は声明を出し「追加の防空システムとさまざまな種類の攻撃用ドローン、射程300キロメートル以上の長距離ミサイル供給を加速してほしいと同盟国に要求した」と明らかにした。 これに先立ち先月29日にロシアはミサイル122発とドローン36機でキーウ、ハルキウ、オデーサ、ドニプロなど全域に戦争勃発以降で最大の空爆を加え、約40人が死亡した。これに対しウクライナは翌日ロシアのベルゴロドなどに反撃を敢行し、ロシアはウクライナがクラスター爆弾などを使って自国民14人が死亡したと主張した。 |
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●ウクライナ、新年は服喪から プーチン氏は空爆の強化を表明 1/3
ウクライナは、新年最初の1日を服喪の日とすると明らかにした。ウクライナの首都キーウに対しては年末にロシアによる大規模な空爆が行われ、多数の死傷者が出ていた。 ウクライナ軍はCNNの取材に対し、12月29日に行われたロシアによる攻撃はロシアによる全面侵攻が始まって以降で最も大規模な空爆のひとつだったと明らかにした。 ロシアのプーチン大統領は1日、ロシアがウクライナに対する空爆を強化すると述べた。プーチン氏は、ロシア軍が「高精度の兵器」を使って軍事目標を攻撃していると主張した。 12月31日から1月1日にかけて、ウクライナ全土で人々は、空襲警報とロシアによる新たな攻撃の音とともに新年を迎えた。 ロシア・ベルゴロド州のグラドコフ知事によれば、プーチン氏は1日の攻撃について、少なくとも25人が死亡したベルゴロド州へのウクライナ軍による攻撃への報復だと述べたという。 ウクライナのゼレンスキー大統領は大みそかの演説で、戦争が始まってから2年になろうとしている今、ウクライナの人々を奮い立たせようと「我々は暗闇を打ち破った」と訴えた。 ゼレンスキー氏は「ウクライナは、より強くなった。ウクライナの人々は、より強くなった。2023年の初め、1月と2月に、誇張ではなく史上最も困難な冬を乗り越えた。我々は暗闇の中で消え去ることはなかった。闇は我々を飲み込まなかった。我々は暗闇を打ち破ったのだ」と述べた。 ゼレンスキー氏は、困難が存在することを認めながら、ウクライナの人々に対し、忍耐を求めた。 |
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●欧米に防空支援継続訴え キンジャル迎撃「記録的」 1/3
ウクライナのザルジニー軍総司令官は2日のロシアによる大規模攻撃に関し、地対空ミサイルシステム「パトリオット」でロシアの極超音速ミサイル「キンジャル」10発全てを迎撃したとして「記録的だ」とX(旧ツイッター)で述べた。欧米の防空支援に謝意を示し、攻撃激化に備え、さらなる供与が必要だと訴えた。 ウクライナ軍は99発のミサイルのうち、72発を迎撃したとしている。非常事態庁によると、首都キーウ(キエフ)などで計5人が死亡、127人が負傷した。 ウクライナは欧米からの支援のつなぎ留めを目指している。 |
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●NYダウ平均株価 ことし最初の取引 最高値を更新 1/3
ことし最初の取り引きとなった2日のニューヨーク株式市場は、地政学的なリスクが意識されながらもアメリカの利下げに対する期待は根強く、ダウ平均株価は値上がりし、最高値を更新しました。 2日のニューヨーク株式市場、ダウ平均株価は取り引き開始直後は中東情勢への懸念などから200ドル近い値下がりでスタートしました。 イエメンの反政府勢力フーシ派による紅海を航行する船舶への攻撃が相次ぐなか、イランが紅海に軍艦を派遣したと伝えられたほか、デンマークの海運大手がいったん再開を発表した紅海を通る運航を当面停止すると明らかにしたことなどが懸念材料となりました。 しかし、ことしはアメリカのFRB=連邦準備制度理事会が早い時期に利下げに踏み切ることを期待する投資家も多く、買い戻しの動きが出ました。 結局、ダウ平均株価の終値は去年の年末に比べて25ドル50セント高い3万7715ドル4セントとなり、わずかながら最高値を更新しました。 ことしはFRBが利下げに転じて景気を冷やす要因がなくなるとの期待感が投資家の間では根強くある一方、イスラエル・パレスチナ情勢やウクライナ情勢など戦争や紛争が拡大するリスクがくすぶっています。 市場関係者は「ことし秋にはアメリカの大統領選挙が予定されているほか、台湾やインドネシア、ロシアなどで大きな選挙が控えている。株式市場には不確定要因が多い1年となりそうだ」と話しています。 ●専門家に聞く 世界経済と国際政治の見通し 懸念されるリスクは ことしの世界経済、そして国際政治の見通しと懸念されるリスクについて、2人の専門家に話を聞きました。 ●CEPR ディーン・ベイカー氏 “米経済は堅調に推移”見方示す アメリカのシンクタンク、CEPR=経済政策研究センターのシニアエコノミスト、ディーン・ベイカー氏はことしのアメリカ経済について「FRB=連邦準備制度理事会が2%の物価目標にソフトランディング=軟着陸することを私は確信している。インフレが抑えられていれば最初の利下げは3月だろう。そして、年に4回、利下げが行われると予想している」と述べたうえで、「賃金はインフレ率を超えて伸びている。個人消費は堅調なペースが続くと予測している」としてアメリカ経済は堅調に推移するだろうとの見方を示しています。 また、ベイカー氏は、外国為替市場について、中東情勢やウクライナ情勢が悪化すれば、避難通貨としてドルが買われる可能性があるとしつつも「アメリカの利下げによってドル安が進み、ほかの多くの通貨に対して5%から10%ドル安が進むだろう」と指摘し、円高ドル安傾向を予測しています。 ●フランシス・フクヤマ氏 大統領選の結果が及ぼす影響懸念 「歴史の終わり」などの著作で知られるアメリカ・スタンフォード大学の政治学者、フランシス・フクヤマ氏は、「最も差し迫った危険はガザ地区でのイスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突が激化することだ。すでに国際的な海運の運賃に影響が出ている。イランを直接、巻き込んだ、より広範な戦争が起きれば、世界のサプライチェーンなどに、もっと深刻な影響が及ぶのは明らかだ」と警鐘を鳴らしています。 また、フクヤマ氏は、欧米のロシアに対する経済制裁の影響でロシアの石油やガスの市場が中国やグローバル・サウスと呼ばれる新興国や途上国に広がっているとしたうえで、「アメリカがイスラエルを支持しガザ地区で軍事衝突が続いていることで、今後、多くのグローバル・サウスの国々がロシア・中国の陣営とより広く、手を携えることになる」と指摘しています。 さらにフクヤマ氏は、「大きな不確定要素はアメリカ大統領選挙だ。トランプ前大統領が再び大統領に選ばれれば、トランプ氏は世界経済を孤立主義の方向に転換しようとし、関税を引き上げようとする。それはサプライチェーンの協力関係や世界の地政学的な安定にとって大きなリスクになるだろう」とアメリカの大統領選挙の結果が世界経済に及ぼす影響を懸念しています。 |
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●ウクライナへ再生エネ支援、政府 バイオ燃料技術供与、復興に貢献 1/3
政府は、ロシアによる侵攻が続くウクライナへの支援策として、再生可能エネルギーの関連技術を供与する方向で調整に入った。バイオ燃料の製造技術を想定しており、農業国で原材料が豊富なウクライナにとって、復興に向けた産業化に結び付くと判断した。2月19日に日本で開く予定の「日ウクライナ経済復興推進会議」で独自の貢献策として打ち出す考えだ。ウクライナ側と、日本の技術提供企業との合意を目指す。日本政府関係者が3日、明らかにした。 欧米のような軍事支援を展開できない日本は、ウクライナの復旧・復興に力点を置く。日本企業による製造技術、関連設備の提供を想定している。 バイオ燃料は農作物や、家畜の排せつ物などをもとに製造される。発電に活用されるため脱炭素を進める技術の一つとして注目される。「事業が軌道に乗れば有望な輸出品になる」(日本政府関係者)として将来的な対欧州輸出も視野に入れており、ウクライナの外貨獲得につながると期待している。 政府は復興推進会議の開催を前に、ウクライナ側の要望聞き取りを進めている。 |
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●無風のロシア大統領選 プーチン氏“信任”で再選確実視 1/3
ロシアが「特別軍事作戦」とするウクライナへの軍事侵攻後、初めておこなわれるロシア大統領選挙まで3カ月を切った。11人の候補者が名乗りを上げたが通算5期目を目指すプーチン氏の再選は確実視され、今回は得票率80%以上の「圧勝」を狙う。 まもなく3年目に突入するウクライナ侵攻について、プーチン氏は「目標が達成されれば平和になる」と述べ、この選挙が戦争継続への“信任投票”とする意図も見える。 ●「プーチンチーム」にフィギュア界の“皇帝” 目指すは得票率80%超 先月上旬、ウクライナへの軍事侵攻に参加する軍人らを前に大統領選への立候補を表明したプーチン氏。首都モスクワで開かれた推薦人団体の会合でプーチン氏の支持が全会一致で決まり、今回も無所属での出馬が確定した。 「プーチンチーム」と呼ばれる推薦人団体には、フィギュアスケート界の“皇帝“プルシェンコ氏やペスコフ報道官の妻で元アイスダンス金メダリストのタチアナ・ナフカ氏など著名人も名前を連ねる。 プーチン氏は、政権与党「統一ロシア」の党大会にも出席。同党党首のメドベージェフ前大統領は、「プーチン大統領の勝利が正当であり、議論の余地がないものにしなければならない。これは党としての仕事だ」と述べ、支持を全会一致で決めた。左派系野党の「公正ロシア」も候補者を立てず、支持を決めている。 プーチン氏が政党から支持を受けながらも、無所属で出馬することには理由がある。 主に、対立する西側諸国から「独裁者」とみられないよう対立候補と争う構図をつくり、幅広く国民から支持を得て高い得票率で勝ち、「信任を得た」とアピールするためだ。 ロシアメディアによると、政権は2018年の前回選挙の得票率76.7%を上回る80%超を狙っている。反体制派の“対立候補”を押さえ込む姿勢は鮮明になった。 ●反対勢力は徹底的に“排除”か 「平和」掲げる女性の立候補認めず ロシアの中央選挙管理委員会は、ウクライナ侵攻反対を掲げて無所属で立候補を届け出た独立系のジャーナリスト、エカテリーナ・ドゥンツォワ氏の提出書類に不備があるとして、登録を拒否した。 ドゥンツォワ氏は中央選管の対応をめぐり、最高裁判所に異議を申し立てたが、最高裁はこれを棄却。支援を呼びかけていたリベラル派の野党からも色よい返事はなく、立候補を断念せざるを得なくなった。 ドゥンツォワ氏は3人の子どもを育てるシングルマザーで、地方の市議会議員を経て、現在はジャーナリストとして活動する。ウクライナ侵攻に“NO”を突きつけ、「平和と自由、民主主義」を訴えていた。プーチン政権が、軍事侵攻に批判的な層や動員兵の家族などの間で支持が広がることを懸念したとの見方もある。 ドゥンツォワ氏は「ロシア人の大多数は、平和な民主主義の未来と単純な常識を望んでいる。党を立ち上げ、変革を推し進める以外に道はない」と述べ、新党の立ち上げを表明した。 また、反プーチンの急先鋒として知られ、ロシアの刑務所に服役中の反体制派指導者のアレクセイ・ナワリヌイ氏は、陣営を通じてプーチン氏以外の候補者に投票を呼びかける「プーチンのいないロシア」キャンペーンをおこなっている。陣営は、公式サイトに誘うQRコードを記載した巨大な看板をモスクワの市街地に設置したが、当局がその日のうちに撤去。翌日には、屋外広告へのQRコード記載を禁止する法律が成立した。 ロシアの独立系ディアは、大統領府が71歳のプーチン氏が「年寄りに見えないように」配慮して、対立候補の条件を50歳以上に設定したと報じていて、プーチン氏の脅威となりうる要素を排除し、再選に向けたお膳立てが整えられているようにも見られる。 今回の大統領選には、33人が立候補のため中央選管に書類を提出し、このうちプーチン氏を含めた自己推薦3人と政党推薦の8人、合わせて11人が受理された。自己推薦者は30万筆の署名を集める必要があるが、プーチン氏の選挙本部の報道官は、「すでに50万筆以上を集めた」と余裕をみせている。 野党第1党の共産党はハリトノフ下院議員、野党第3党の「新しい人々」はダワンコフ下院副議長を候補者に選出。極右野党「自由民主党」はスルツキー党首を指名したが、いずれもプーチン政権に協力的な「体制内野党」で、軍事侵攻にも賛成の立場。スルツキー氏は「プーチン大統領はこれまで以上に得票して勝つだろう」と公言した。 現在71歳のプーチン氏の再選はほぼ確実で、最長で2期12年、83歳までトップの座に留まることが可能になる。 ●“ポピュリスト”プーチン スターリン超えの“超”長期政権誕生へ 世論調査で、常に8割前後の支持率をキープするプーチン氏。 ロシア反体制機関の「レバダ・センター」が2023年10月に発表した調査では、「2024年以降もプーチン氏を大統領として期待する」と答えたロシア国民は約7割で、このうち約3割が、プーチン氏を「正しい政策を導き、国家を強化する」と評価した。 ソ連崩壊後の経済の自由化と、それに伴う混乱を乗り切り、安定した経済運営をおこなってきたプーチン氏を評価する国民は多い。 支持率維持のポイントのひとつが、世論の反応を敏感に感じ取ることだという。2018年の年金支給年齢の引き上げや、20年のコロナ禍にともなうロックダウン、ウクライナ軍事侵攻後の22年に実施した部分動員では、国民の不満を招いて支持率を下げた。 関係者は、「プーチン政権は世論の反応が悪かった政策は繰り返さない。同じ轍を踏まないよう注意を払っている」と指摘する。 年末恒例の国民との直接対話は、“ポピュリスト”プーチンにとって重要なアピールの場だ。軍事侵攻を理由に2022年は実施しなかったが、2023年は国内外の報道機関を招いた年末会見と合わせておこない、「卵の価格高騰で生活が苦しい」などの訴えに4時間超にわたり耳を傾けた。 2000年に発足したプーチン政権は、首相時代の8年を含めて約24年続いている。再選を果たせば、さらに12年、合わせて36年にわたってトップの座に君臨することになり、ソ連の最高指導者スターリンの29年を上回る“超”長期政権が誕生する。 まもなく3年目に突入するウクライナ侵攻は、終わりの見えない戦いが続いていて、プーチン氏は「目標を達成すれば平和が訪れる」として、「ウクライナの非軍事化、非ナチ化」を果たすまで軍事侵攻を継続する強硬な姿勢を示した。 3月17日の大統領選挙では、この軍事侵攻でロシアが一方的に併合したウクライナ東部のドネツク州とルハンスク州、南部のヘルソン州とザポリージャ州でロシア大統領選の実施が決まった。翌18日はクリミア半島を併合した日で、ことしは10年目の節目。選挙の勝利=信任として、さらなる占領地の拡大に乗り出す可能性もある。 戦時下でおこなわれる異例の選挙。動員兵の母親や妻らがSNSで早期帰還を求める声をあげるなど、国民の間で軍事侵攻に対する不満は依然少なくないものの、プーチン氏の再選はほぼ確実で、終わりの見えない戦いはことしも続きそうだ。 |
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●選挙イヤー2024年、米大統領選が中東・ウクライナの展望を左右 1/4
2024年は、米国をはじめとして世界全体で少なくとも50カ国(総人口約20億人)で国政選挙が予定されている。 ロシアのプーチン氏は3月の大統領選で再選を果たすことはほぼ確実。イスラエルのネタニヤフ首相の運命は、パレスチナ自治区ガザでのイスラム組織ハマスとの戦闘にかかっている。戦闘が終了すればすぐ、ネタニヤフ氏がその地位を追われるというのが多くの関係者の見方だ。 ただ世界にとって最も重要なのが、11月に行われる米大統領・議会選、そして現在共和党候補指名争いで圧倒的な優位に立つトランプ前大統領が返り咲くかどうかであるのは言うまでもない。 米大統領選で誰が勝つのか、またはより抑制がきかなくなり、既存体制への反発心が増したトランプ氏が権力の座に就けばどう行動するかの予想が難しいことが、世界各地で起きているさまざまな紛争の推移の理解を助ける要素となる。 もっと簡単に言えば、あらゆる勢力は、11月の選挙で米国の外交政策が一変する前に、自分たちに有利な立場を築きたいと考えているのだ。 そうした動きこそが、現在の国際的な勢力関係の大半を物語っている。具体的には、より威圧的になったライバルたちと、低下しつつもなお強い国力を有する米国が対峙する構図。その米国は内政面では分断化が一段と進んでいるように見える。 ロシアのウクライナ侵攻や、中国による台湾威嚇とフィリピンへの軍事圧力からは、ロシアと中国が、つい最近までなら米国の友好国や同盟国に対して行使するなど考えられなかった手段を積極的に用いようとしている姿勢が読み取れる。 バイデン政権は、これを意図的に米国の力を試す行為と受け取り、米国は不要なエスカレーションを回避しつつも同盟諸国を支援する必要があると主張している。 ただそれが困難な道のりであることは、もう明らかになってきた。イスラエルのガザにおける戦闘は、米国の影響力が限定的になり得ることを実証した。ネタニヤフ政権は、米国の一般国民から自制を求める声が強まっているにもかかわらず、米国の幅広い支援を失わずにガザで思う存分に行動できると信じているのは間違いない。 米国にとっては厄介なことに中東地域で火の粉が広がる兆しが出てきている。イエメンの親イラン武装組織フーシ派による紅海での商船攻撃もその一つだ。 さらにまだあまり大きく取り上げられていないが、専門家はスーダンとミャンマーの内戦も24年中に拡大してもおかしくないと警告している。その背後にはロシアと中国の影が見え隠れする。 ●中東情勢は一層緊迫化 中東情勢は24年序盤に一層緊迫化し、11月の選挙を控えた米国はますます手が回らなくなるとの懸念が浮上している。 最悪の場合、複数の危機が相互に影響し合うかもしれない。ウクライナの戦争が世界の食料価格をつり上げ、貧困国や紛争地域の人道危機をさらに悪化させたように。 ウクライナや東欧諸国の間では、米国や西欧諸国が武器支援を十分に果たしてくれないとの不満が渦巻いている。共和党が追加の軍事支援に反対しているほか、「トランプ政権」になればウクライナ支援を打ち切ってロシアとの和平を強要する展開が現実味を帯びるだけに、24年はそうした不満がもっと大きくなりそうだ。 一方トランプ氏が大統領になった場合、中国に対してどういう出方をするのかは予測がつかない。 1月13日には台湾で総統選が行われ、今のところ与党・民進党候補の頼清徳氏が勝利して中国との緊張が続く公算が大きい。台湾情勢に加え、中国とフィリピンの南シナ海の領有権争も、フーシ派の商船攻撃と同じようにバイデン政権が選挙前に情勢悪化を防ぎたい問題になる。 トランプ氏が大統領選に勝利すると、プーチン氏がロシアの軍事力強化をさらに進め、総動員を行ってウクライナへの攻勢に乗り出すのではないかとの見方も出ている。 6月には欧州各国の議会選がある。今年11月のオランダ総選挙で極右政党が勝利したことを受け、極右勢力への支持がもっと広がるかどうか注目される。今年9月にスロバキアでナショナリスト政権が誕生し、ウクライナ支援打ち切りを表明しただけに、極右の伸張はプーチン氏にとって有利な要素とみられる。 英国では24年中に行われる総選挙でキア・スターマー氏率いる野党労働党が政権を奪回しそうだ。インドはモディ首相の再選が見込まれている。 |
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●2024年、日本にとっても世界にとっても覚悟の年 1/4
●波乱の予感 明けましておめでとうございます。 さて、世界はウクライナ戦争、ガザ戦闘収まらず混沌に向かっている。今秋の米大統領選は、トランプ優勢というかバイデンのボロが隠せなくなって来て、民主党はカリフォルニア州のニューサム知事に差し替えようか、ミシェル・オバマを担ぎ出そうかと言う感じになって来ている。 シナリオは大別すれば、1トランプすんなり再選、2バイデン or 後継候補の当選、3そもそも選挙が行われず内戦状態になるか、1か2の後に内戦状態になる、に分かれる。何れにせよ牢屋にぶち込まれても当選してしまうかも知れぬ勢いのトランプに、民主党陣営はあらゆる手を打ってくるだろう。 一番可能性が高いのは、3となりそうな予感もするが、仮にそうなったとして早急に収まって欲しいものである。 もしトランプすんなり再選となった場合には、氏が予てから吠えているように、先ずウクライナ戦争の調停に乗り出し、恋人のように仲の良いプーチンの線に沿ってクリミアの安堵、ロシア本土とのその回廊ともなる南東部四州を厚めに切り取ってロシアに帰属させ、休戦or停戦or終戦の「ディール!」とするだろう。 現在ガザ戦闘で燃える中東には、氏の中東平定策を以て、これまたプーチンと調整の上で強制着陸の瀬踏みを打つも、こちらの方は宗教絡みの積年の怨念渦巻く状況であり、不動産王時代の自慢話がこれでもかと延々と続く著書「ザ・アート・オブ・ディール」のように意外と小技も繰り出し、鎮火を模索するのではないか。だが、それも失敗し第三次世界大戦に拡大する可能性もあり予断を許さない。 ●日本の覚悟 さて、日本としては、台湾情勢と北方領土が気懸りだ。筆者は予てから中国がロシアをジュニアパートナーとした中露疑似同盟間に楔を打ち込んで離反させ実質的な「日米露三国同盟」若しくは三国協商を結びインドを筆頭としたグローバルサウスも巻き込んで、拡大中国包囲網を築かぬ限り台湾は中国の手に落ち、北方領土は返って来ない処か北海道にロシアが進駐しかねないと危惧を抱いている。 いや、それどころか習近平率いる電脳監視独裁国家に世界覇権を握られれば、世界各国が柵封されウイグル、チベット化しかねない。これを阻止する事は人類最大の国際的大義である。 トランプ再選は、その中核装置と成り得る日米露三国同盟の最大にして最後のチャンスとなろう。日本は機運を逃さぬよう今からその準備体操に入るべきだが、きっしーは論外として安倍氏亡き後、日本にその大局観ある政治家在りや。 とは言え、トランプ再選となるか、バイデン or 後継候補の当選となるか、内戦となるかは未確定であり、それ自体について基本的に日本と日本人が手出し出来る事ではない。 幕末の志士の一人で、政治家、思想家の横井小楠が遺した言葉に下記のものがある。 堯舜(ぎょうしゅん)孔子の道を明らかにし 西洋器械の術を尽くさば なんぞ富国に止まらん なんぞ強兵に止まらん 大義を四海に布かんのみ これに倣い筆者は、世界がどう転ぼうと日本は主体性を持って、外交に於いては「国際的大義を伴う長期的国益の追及」、内政に於いては「ナショナル・ミニマムを伴う自立社会の構築」に向かうべきと考える。 戦争、宗教対立、テロ、大事故、パンデミック、エネルギー・食糧危機、スタグフレーション、経済恐慌、テクノロジーの光陰、天変地異がパンドラの箱からこちらを覗き出番を待っているように筆者には感じられる。 2024年は、世界にとっても、日本にとっても正念場の年となろう。 |
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●イランで爆発、約100人死亡 殺害司令官の墓近辺 「テロ攻撃」と当局 1/4
イラン南東部ケルマンで3日、爆発が2回あり、エイノラヒ保健相によると、95人が死亡、211人が負傷した。政府当局者は「テロリストによる攻撃」という認識を示している。犯行声明は出ていない。 国営テレビによると、2020年に米軍の無人機攻撃で殺害されたイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官の墓のある墓地で行われていた追悼式典中に爆発が発生した。1回目の爆発から20分後に2回目の爆発があったという。 地元当局者は国営イラン通信(IRNA)に対し、「墓地に通じる道沿いに仕掛けられた爆発物2つがテロリストの遠隔操作によって爆発した」と語った。 ライシ大統領は「凶悪かつ非人道的な犯罪」と非難した。国営イラン通信(IRNA)によると、ライシ大統領は事件を受け、4日に予定していたトルコ訪問を中止した。 最高権力者ハメネイ師は声明で「間違いなく厳しい対応が取られる」と警告したほか、バヒディ内務相も「イラン治安部隊による強力かつ断固たる対応」が取られると言明した。 他国からも非難の声が上がり、ロシアのプーチン大統領は、イラン指導部に哀悼の意を表した上で、罪のない人々に対する攻撃は残虐で衝撃的とし、「いかなるテロ」も非難すると述べた。ロシア通信社RIAノーボスチがロシア大統領府(クレムリン)の声明を報じた。 こうした中、コッズ部隊のガアニ司令官は、爆発が「シオニスト政権(イスラエル)と米国の工作員」によるものと主張。国営テレビは、群衆が夜間に墓地に集まり、「イスラエルに死を」、「アメリカに死を」と叫ぶ映像を放映した。 米国務省のミラー報道官は記者会見で、米国はいかなる形でもイランの爆発に関与しておらず、イスラエルが関与していると信じる理由もないと述べた。 米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官も、米国はイスラエルが爆発の背後にいた兆候を確認していないと述べた。 |
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●2024年も世界を見るためインドの動きに注目か 1/4
2024年はどのような年になるだろうか。特にインドを念頭に置いた場合、インドの外交は変化するだろうか。日本で関心を集める点があるとすれば、インドの対中戦略が変化するか、ということであろう。 ●高まるインドと中国の警戒感 23年、インドの対中戦略は、非常に強いものだったといえる。20年に死傷者多数だした衝突以降続く、印中国境における緊張によって、モディ首相は、習近平国家主席との接触を極力避けてきた。 両指導者が直接会談したのは、南アフリカで開かれた新興5カ国(BRICS)首脳会談の際だけである。そのBRICS首脳会談で緊張緩和に進むかと思われたが、その直後に中国が出した自国領を示す地図にインドが主張する領土が含まれていたこともあって、その雰囲気は一瞬で消し飛んだ。 インドは23年、7月の上海協力機構と9月の主要20カ国・地域(G20)の議長国であった。だから、その際に、インドと中国の指導者が会談する可能性もあった。しかし、インドは上海協力機構の首脳会談はオンラインにしたし、9月のG20に習氏が出席しなかった。もともと中国が自国の存在感を示す場として利用してきたG20は、今年、インド主導で、主要7カ国(G7)とグローバルサウス各国の首脳が中国抜きで話し合う場になったのである(「G20からの中国追い出しと西側へ顔向けた議長国・インド」)。 インドはグローバルサウス各国に呼び掛けた会議も行ったが、自国もグローバルサウスと主張する中国には招待状を出さなかった。グローバルサウスにおけるインドと中国の影響力争いが激化しつつあり、インドの警戒感と中国の警戒感は双方とも激化しつつある。 一方、インドは日米豪印4カ国による連携の枠組み「クアッド(QUAD)」各国との間で防衛協力を進めつつある。23年春には、中国全土を爆撃できるB-1爆撃機がインドに展開し、日本もオブザーバー参加して、日米印共同演習を実施した(「印中国境の米印軍共同演習に日本が参加する意義」)。 24年1月26日のインド共和国記念日の軍事パレードの主賓として、インドはQUAD各国の首脳を招待している(ただ、結局調整がうまくいかず、24年はフランスのマクロン大統領になった)。23年実施は見送られたものの、24年に日米豪印英仏空軍の戦闘機と6カ国のオブザーバーを含む共同演習「タラング・シャクティ」も企画している。 問題はこうしたインドの外交姿勢が24年に変化するか、である。もしこのような姿勢が変化するとしたら、何が考えられるだろうか。多くの要因があり得るが、少なくとも以下の3つは影響を与えるだろう。 ●モディ首相のタクトに影響する総選挙 インドは今年の春、総選挙を迎える。現在、下院の過半数はモディ首相率いるインド人民党(BJP)が握っており、上院も意見の近い政党との協力をするだけで過半数を獲得できる状況にある。 モディ首相は、比較的自由に政策を決めることができる状態にある。しかし、逆に言えば、状況が変われば、インドの政策は変わるかもしれない。 インドの世論調査を見る限り、モディ首相個人の人気は揺るがないものがあるが、与党BJPの人気はそれほどでもない。インドは広い国なので、地方に行けば、地方に有力な政党がいる。だから、最終的にBJPは過半数とることができるのか、さまざまな予測が出ている。 もし仮に、モディ首相もBJPも圧勝するならば、現在の政策は引き継がれることになろう。もし、BJPが過半数をとれず、連立する場合でもモディ政権が維持されるなら、政策的には継続する可能性がある。ただ、現在見せているようなモディ首相の実行力は落ちるだろう。 1990年代のバジパイ政権はBJP主導の連立政権だった。そのころに近く、連立相手に配慮しながらの政策決定になろう。 一方、野党が連立を組む場合、インドの政治は大きく変わる可能性がある。野党の場合、強力なBJPを倒すために、政治的な意見が違ってもいいから手を組むことになる。そうなると、右派から左派までいろいろな意見が集まった、「烏合の衆」的な政権が樹立されるかもしれない。 2014年にモディ政権が成立する前、インドの政治はまさにさまざまな意見の政党が含まれた連立政権だった。それは実行力に反映された。 特に、米国との防衛協力関係には、常に共産党などの左派政党が反対し、思い切った政策ができなかったのである。米国との防衛協力を進めるために、大きく3つの協定が協議されていたのであるが、交渉開始は2000年代初めなのに、15年近く交渉は進まず、成立したのはすべて、14年にモディ政権が成立してからだ。 24年の選挙で野党が勝った場合は、そのような時代に戻る可能性がある。左派やロシアとつながりのある、いわばQUAD強化に反対する政党が連立に入る可能性は、野党の連立政権の方が、右派のBJP主導の政権に比べ、高いだろう。米国や他のQUADとの協力関係は、進まない時代になるかもしれない。 ●軋轢の火種がくすぶる米国の選挙結果 24年のインドの外交姿勢に大きな影響を与える要素として、やはり米国大統領選挙がどうなるか、その予測が影響を与えることになるものと思われる。 過去の経緯を見ると、一見すると、米印関係は、米国政権が共和党であろうと、民主党であろうと、関係ないようにみえる。実際、米印関係は、民主党のクリントン政権、共和党のブッシュ政権、民主党のオバマ政権、共和党のトランプ政権、民主党のバイデン政権と、一貫して強化されてきた。中国からの挑戦に対抗するためにインドと組む必要があるという認識は、米国の共和党・民主党を問わないものだから、と考えられる。 しかし、細かな点を見ると、火種がくすぶりつつある。特に、米国では、インドの民主主義が後退しているとの指摘がでている。また、西側各国に潜伏するシーク教徒過激派指導者に対する暗殺にインド政府が関与しているという疑惑も取り上げられるようになっている。 このような火種に対する対応は、米国の政権が共和党、民主党によって異なるものになるかもしれない。民主党の方がイデオロギー的な色彩が強く、共和党の方が防衛問題重視の傾向がある。民主党政権では、インドの民主主義、シーク教徒過激派暗殺の問題がよりクローズアップされるかもしれない。 ●新たな戦争・危機 最後に、無視しえない要素がある。それは新しい戦争や危機が起きることだ。ここ3年、毎年、大きな危機が生じ続けているから、次の1年で何も起きないとみるのは楽観すぎるだろう。21年に米軍のアフガニスタン撤退とタリバン政権の成立、22年にロシアのウクライナ侵略、23年にハマスによるテロ大規模攻撃が起きている。 これらの戦争や危機は、米国の対中戦略と関係して起きている。米国はアフガニスタンやヨーロッパ、中東から撤退し、インド太平洋に戦力や労働時間を集中させようとしている。しかし、この再配置は、上手にやらないと、問題を作り出す難しいものになってしまう。 まず、アフガニスタンでは撤退の際に米国の権威は失墜してしまった。権威が失墜すると、他の国も動き出す。 ロシアのウクライナ侵略は、米国がアフガニスタン撤退で権威を失ったころから、準備が進められてきた。もともと、米軍のヨーロッパ駐留兵力は、以前いた10万人から2万人減少させていたから、ヨーロッパが手薄な状況になりつつあった。そこにアフガニスタンからの撤退が起き、バイデン政権の実力が低くみえてしまった。プーチン大統領は「勝てる」と思い込んだ可能性がある。 さらに、米国の中東からの撤退も、ハマスの攻撃につながってしまった。米国は中東でイスラエルの保護とイラン封じ込めをできるようにしてきた。そのために、イスラエルとサウジアラビアを国交正常化させ、米国が撤退しても「留守番」ができるように画策した(「中立なインドがハマス攻撃でイスラエルを支持する理由」)。 トランプ政権末期に、米国がイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交正常化をアレンジした時は、それがイスラエルとサウジアラビアの合意に結びつくようにみえた。政権の動きが早く、勢いがあったからだ。しかし、その後、バイデン政権になって、人権問題でサウジアラビアに制裁をかけ、この勢いは断たれてしまった。 その後3年、イスラエルとサウジアラビアの国境正常化は実現しなかった。その時間はハマスに味方したのである。 ハマスにとっては、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化は、ぶち壊しにしたい合意であった。イスラエルと合意したアラブ各国は、パレスチナ問題への関心を失うことが予測されたからだ。 ハマスは2年かけて周到なテロ攻撃を準備し、イスラエル対アラブ、といった形での戦争を起こし、この国交正常化交渉をぶち壊しにすることに成功したのである。 ●多くのケースで絡むインドの存在 このような経緯を見る限り、現在のバイデン政権は、反米勢力から狙われている。米国の次の大統領が決まる前に、バイデン政権の下で、次の戦争や危機が起きる可能性はある。 それは中国がらみであれば、台湾周辺かも知れないし、印中国境かも知れない。動くのは北朝鮮かも知れないし、イランかも知れない。 どの戦争や危機が起きたとしても、インドは対応を迫られる。その決断は、インド外交が今後、どういう方向性に進むか、影響を与える可能性があろう。 具体的には、米国が頼りないことが強調されると、インドは、QUADとの協力よりも、独自の道へ進もうとする傾向を強めるかもしれない。そうではなく、QUADが協力して対中国政策を一致させることができるよう、強く望むものである。 |
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●ウクライナ、捕虜200人超交換 ロシアの侵攻開始後「最大規模」 1/4
ウクライナ政府は3日、ロシアとの戦争捕虜の交換によって、ウクライナ軍兵士ら230人が帰国したと明らかにした。ロシア国防省は、248人の捕虜がロシアに帰国したと発表した。ウクライナ側によると、捕虜交換は2023年8月以来となり、22年2月の侵攻開始以降で最大規模となった。 アラブ首長国連邦(UAE)が捕虜交換を仲介した。ウクライナメディアが伝えた当局者の話によると、23年12月時点でウクライナ人捕虜は少なくとも3500人いた。 帰還者の中には、南東部マリウポリのアゾフスターリ製鉄所での抗戦に参加した兵士も含まれている。6人は違法に連行された民間人だという。 |
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●ロシアとウクライナが230人超の捕虜交換 兵士や“違法連行”の民間人も 1/4
ロシアとウクライナが、戦争の捕虜交換によって、それぞれ230人を超える兵士らを解放した。 ウクライナ当局は3日、ロシア側との捕虜交換で230人の兵士らが帰国したことを明らかにした。 解放された中には、違法に連行された民間人6人が含まれているとしている。 捕虜となっているウクライナ人は、少なくとも3,000人以上いるとみられ、ウクライナのゼレンスキー大統領は「すべての捕虜の帰還に向けて交渉を続ける」と述べた。 一方、ロシア国防省側も、捕虜となっていた248人のロシア軍兵士が帰国したことを明らかにした。 捕虜の交換は、中東のUAE(アラブ首長国連邦)の仲介で5カ月ぶりに行われ、2022年2月に軍事侵攻が始まって以来、最大規模となった。 |
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●ロシア 戦闘長期化見据えウクライナの防衛産業標的か 英国防省 1/4
ロシア軍が年末年始にウクライナに対し攻勢を強めていることについて、ロシアが戦闘の長期化を見据え、ウクライナの防衛産業を標的にしているとの見方が出ています。 ロシア軍はウクライナに対して先月29日、軍事侵攻が始まって以降最大規模の攻撃をしたのに続き、新年となった今月2日にも大規模な攻撃を行うなど攻勢を強めています。 これについてイギリス国防省は3日、SNSで「去年の冬にエネルギー施設が標的となったのとは対照的に、最近のロシア軍の攻撃は主にウクライナの防衛産業をねらっているようだ」との分析を明らかにしました。 そのうえで「戦闘の長期化に備え、防衛産業の力がますます重要になっていることをロシアが認識していることはほぼ確実だ」として、戦闘の長期化を見据えてロシアが一時的に攻撃の標的を防衛産業に変えたとの見方を示しました。 ウクライナのゼレンスキー大統領は国内で兵士の装備品や無人機などの武器の生産能力を強化したい考えで、アメリカなどの軍事産業とも連携したいとしています。 これに関連してアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、ロシア軍の攻撃について「欧米との共同生産を模索するウクライナの努力を混乱させようとしている可能性が高い」と分析しています。 |
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●英提供のウクライナ掃海艇、トルコが通航認めず 黒海の輸出ルート、米英と溝 1/4
ロシアに侵略されたウクライナから黒海を経由した農産物の輸出ルートの安全を確保するため、英国がウクライナに掃海艇の供与を決めたことに関し、黒海と地中海を結ぶボスポラス、ダーダネルス両海峡を管理するトルコが掃海艇の通航を認めず、供与は当面先延ばしとなった。北大西洋条約機構(NATO)加盟国のトルコはロシアとウクライナの双方と関係維持を図る独自外交を展開しており、今回の措置で英米などNATO諸国との溝が一層深まる可能性がある。 英国は昨年12月、ロシアがウクライナ産の農産物の海上輸送を妨害しようと、同国の港湾の周辺に機雷の敷設を図っている兆候があるとして、機雷除去のための掃海艇2隻を供与すると発表した。 英国は北欧ノルウェーと協力し、黒海でのウクライナの掃海能力の強化支援を進めており、掃海艇の供与はその中心的取り組みに位置づけられていた。 ところが、トルコ政府は今月2日、交流サイトX(旧ツイッター)に出した声明で、戦争中に交戦国の艦船が両海峡を通航するのをトルコが制限できるとした1936年のモントルー条約を根拠に、「ウクライナに供与された掃海艇は戦争が続いている間は海峡を通れない」と表明した。 トルコは2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始直後、両国の艦船の海峡通過を制限すると発表したが、ウクライナ南部クリミア半島のセバストポリを母港とする露黒海艦隊は制限の影響を受けずに黒海で作戦行動が可能だ。 一方で条約は、通航の可否は最終的にトルコの判断で決められるとしており、英国の取り組みに事実上の横やりを入れる今回の措置はNATOの結束に改めて影を落としそうだ。 |
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●五輪の未来 IOC自らが閉ざすのか 1/4
1924年にパリ五輪が開催されてから100年の今年夏、聖火が再びパリにやって来る。聖火は5月から平和を告げる使者としてフランス全土をめぐる。世界で争いが続く今、「普遍の平和」という五輪のメッセージはどこまで人々の心に届くだろうか。 国際オリンピック委員会(IOC)は昨年12月、ウクライナ侵攻を続けるロシアと同盟国ベラルーシ両国の選手について、パリ五輪参加を容認すると決めた。 もちろん条件付きである。国歌や国旗の使用を禁じた。団体競技の出場は認めず、個人の中立選手に限る。軍に所属する選手なども除外する。 昨年12月時点で出場資格を得た選手の総数は約4600人で、そのうちロシア、ベラルーシ勢は約10人だという。IOCにしてみれば、極めて“クリーン”な少数の選手しか参加できないとの目算だろうが、数の多寡が問題ではない。 「五輪憲章」では、オリンピズムの根本原則をこう表す。「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てる」 ロシアのプーチン大統領はウクライナの「非武装化」や「中立化」を確保するまで軍事侵攻を継続すると表明している。根本原則を貫くなら、東西冷戦終結後の国際秩序を根底から覆し、非人道的な軍事行動を重ねるロシアの参加など認められない。 一方、憲章はこうも記す。「権利および自由は(中略)政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身(中略)などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない」。ロシア、ベラルーシ勢に対して参加の道筋を閉ざす決断は、理念に反することになる。 参加の可否の判断を先送りしてきたのも、このジレンマをIOCは抱え続けてきたためだ。 水面下での調整を進めたうえでの結論とはいえ、ウクライナをはじめ、強く反発する国や国際競技団体は少なくない。一方のロシアも「差別的だ」と批判を募らせる。 2021年の東京五輪を思い返したい。新型コロナウイルス禍で、なぜ五輪の存続が多くの人に受け入れられたのか。困難から逃げずに立ち向かうアスリートと、それを支える周囲の献身的な姿に、五輪の本質である相互理解や連帯を見たからだ。 東京五輪以降、IOCはその精神をより広く浸透させる努力をしてきただろうか。憲章との矛盾を抱えたままでのIOCの決断は、五輪の未来を自ら閉ざしているように思えてならない。 |
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●2024年 ロシア軍事侵攻が影落とすパリ五輪 1/4
2024年。ことしはパリでオリンピックが開かれますが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が影を落とすことになりそうです。 Q)パリオリンピックが開かれる新しい年、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中で迎えましたね。 A)はい。年末年始もミサイルなどによる攻撃が止むことはありませんでした。 ロシアによる軍事侵攻が始まったのは2022年、北京での冬のオリンピックの直後だったので、ことし夏のパリ大会は、侵攻後初めてのオリンピックとなります。 IOC=国際オリンピック委員会は去年12月、ロシアと同盟国ベラルーシについて、国としての参加は認めず、選手については「中立な立場の個人資格」で参加を認めると発表しました。 そのうえで、 ・軍の関係者や軍事侵攻を積極的に支持する選手は認めないこと、 ・チームとしての出場は認めないこと、 また、 ・個人の参加についても具体的には各競技団体が判断すること、 ・大会にはロシアとベラルーシの政府関係者も招待されないことになりました。 ところがこの決定に、ウクライナ、ロシア・ベラルーシの双方が反発しています。 Q)どのように反発しているのでしょうか。 A)ウクライナ政府は、ロシアによる軍事侵攻で400人ちかくの選手やコーチが犠牲になったとして、どのような条件であっても両国の選手の参加を認めること自体「無責任」だと厳しく非難しています。 一方ロシアとベラルーシの政府も、両国の参加が制限され、決定は「差別的」だと主張しています。 ロシアは2018年のピョンチャンの冬の大会から国としての参加を認められていませんが、これまでは組織的なドーピングの疑いが理由でした。 しかし今回の決定は軍事侵攻が大きな理由となります。 ロシア国内では、ガザに侵攻するイスラエルの参加が認められるのはなぜなのかという不満もくすぶっています。 Q)ロシアは今後どう対応するつもりなのでしょうか。 A)プーチン大統領は、IOCの決定は差別的でオリンピックの精神に反している。また商業主義を強め、スポンサーの意向に左右されていると批判し、条件を分析して今後の対応を検討するとしています。 このようにプーチン大統領は主張しますが、これまで組織的なドーピング疑惑と軍事侵攻によって、スポーツ、そして「平和の祭典」とされるオリンピックをないがしろにしてきたのは、ほかならぬロシアだったのではないでしょうか。 Q)オリンピックと国際政治を切り離すことは難しそうですね。 A)そのことを改めて浮き彫りにしています。 国連総会では去年11月、パリオリンピック・パラリンピックの期間中、世界のあらゆる紛争の休戦を呼びかける決議が採択されましたが、ロシアは棄権しました。 またロシアは、パリオリンピックの後、友好国を集めたスポーツ大会を開催する計画で、このことは国際スポーツの分断を深めることにつながりかねません。 パリオリンピックがどのように行われるのか、ことしは、オリンピックと“戦争”の関係が問われる年となりそうです。 |
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●トルコ、英船通航を認めず ウクライナに譲渡の掃海艇 1/4
トルコ政府は4日までに、英国がウクライナへの譲渡を発表した掃海艇2隻について、トルコが管理する地中海と黒海を結ぶ海峡の通航を認めないと発表した。ロシアとの関係を維持するトルコが、ウクライナ支援を妨害した形だ。 黒海はウクライナ産穀物輸出の主要ルートだが、ロシア軍が機雷の敷設を図っている可能性がある。英国防省は昨年12月、ウクライナによる黒海の安全確保の取り組みを支援するため、海軍の掃海艇2隻を譲渡すると発表していた。 これを受け、トルコ政府は今月2日「ウクライナに譲渡された掃海艇は戦争が続いている間、トルコの海峡を通過して黒海に向かうことは許可されない」と表明した。 |
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●プーチン氏、ロシア軍などと契約の外国人に国籍付与へ 大統領令 1/5
ロシアのプーチン大統領は4日、ウクライナでの「特別軍事作戦」で軍などと契約を結んだ外国人とその家族にロシア国籍取得を認める大統領令を発表した。 ロシア軍をはじめ「軍事組織」と最低1年間の契約を結んだ外国人が国籍を申請できるとしており、民間軍事会社ワグネルのような組織にも適用される可能性がある。 兵役経験を持つ外国人の入隊に新たなインセンティブを設ける狙いがあるとみられる。 |
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●「軍事ケインズ主義」進めるプーチン 2024年のロシア経済 1/5
ロシアのRIAノーヴォスチ通信は暮れに、2023年のロシア経済十大ニュースを発表した。それを整理すると、以下のとおりとなる。 1. 経済の崩壊ではなく成長が生じた 2. 記録的な失業率の低さ(それと裏表の人手不足) 3. 物価沈静化に奔走も年末には卵が高騰 4. ガソリン不足 5. 為替安定のため対策に追われる 6. 過去最大の財政歳出 7. 冶金・化学の大企業中心に超過利潤税を課税 8. 富豪YouTuberの課税逃れに対する取締強化 9. 石油輸出国機構(OPEC)+の枠組みでの石油減産続く 10. 対露制裁拡大、ロシアは友好国との連携強化 トップの項目にあるとおり、無謀なウクライナ侵攻を続け、国際的な制裁包囲網を敷かれながら、23年もロシア経済が崩壊することはなかった。23年に国内総生産(GDP)が3%前後のプラス成長を記録することは、確実視されている。プーチン大統領に至っては3.5%成長という見通しまで示している。 「プーチンの言うことは信用できない」という読者のために、コンセンサス予測というものを紹介しておこう。これは、ロシアの「発展センター」というシンクタンクが、内外の専門家を対象に主要経済指標の見通しに関するアンケート調査を実施し、それを平均して定期的に発表しているものなので、一定の信憑性がある。 表に見るのは、最新の11月2〜14日の調査結果であり、これによれば23年の成長率は2.6%となっている。24年以降も、1%台半ばと決して高くはないものの、一応はプラスの成長が続くという見通しである。 ロシア経済に関する最近の論評を眺めていると、しばしば目にするのが、「経済の過熱」という言葉である。むろん、そこにはさまざまなひずみが潜んでいるにしても、今のロシア経済が「不況」から程遠いことだけは、認識しておくべきだろう。 ●ロシア軍の弾は切れなかった もっとも、マクロ経済的に考えれば、ロシアが悪くない成長率を示しているのも、道理ではある。戦争は究極の景気対策とも言える。 今のロシアのように、財政赤字を厭わず、軍事支出を拡大すれば、目先の経済が成長するのは当然だ。経済を牽引する役割を意図的に戦争に託そうとする路線は、「軍事ケインズ主義」と呼ばれるが、プーチン・ロシアは確実にその道を歩み始めている。 実際、最新のロシア鉱工業生産統計を参照しても、伸びが目覚ましいのは軍需部門である。ある専門家によれば、現状で鉱工業生産の伸びの少なくとも3分の2は、軍需および関連部門によってもたらされているという。 そこで、鉱工業生産の中で、特に軍需と結び付いていると考えられる部門を選び、それぞれの生産水準がどう推移してきたかを、グラフにまとめた。選んだのは、「その他の完成金属製品」(砲弾などはここに含まれると思われる)、「コンピュータ・電子・光学機器」、「航空・宇宙機器」の3部門である。 グラフに見るとおり、軍需関連部門は、きわめて特徴的な季節変動を示している。ロシアでは年初に経済活動が落ち込むのが通例だが、軍需関連部門はとりわけ1月、2月の生産水準が低調である。それが年の後半にかけて拡大していき、年末にピークを迎えるというのが、軍需のパターンとなっている。 ロシアの財政は1月始まり・12月終わりなので、国家発注を年度内に消化するために、年末に生産が急増するものと考えられる。23年はまだ11月の数字までしか出ていないが、12月の生産が再び顕著に伸びるのは確実だろう。というわけで、軍需生産は一直線に伸びているわけではなく、大きな季節変動を伴ってはいるが、その生産水準が全般的に高まっていることは歴然である。 12月19日にロシア国防省で恒例の拡大幹部評議会が開催され、プーチン大統領、ショイグ国防相が演説を行った。この席でプーチン大統領は、23年の国防発注は約98%達成される見通しだと述べ、軍需産業の成果を誇ってみせた。 ショイグ国防相はさらに具体的に、軍需産業の稼働状況について語っている。国防相によると、22年2月の開戦以来、ロシア軍需産業における生産は、戦車で5.6倍、歩兵戦闘車で3.6倍、装甲兵員輸送車で3.5倍、ドローンで16.8倍、砲弾で17.5倍に拡大したという。 むろん、これらの数字は慎重に吟味すべきであるものの、現時点でプーチン政権が軍需産業の面からの継戦能力に自信を深めていることは、間違いないと思われる。 ●大砲とバターの両立 ロシアの国家財政も、意外にしぶとかった。一つには、ロシア財政の柱である石油・ガス歳入が踏みとどまったことが大きい。 エネルギー担当のノバク副首相が先日述べたところによると、23年の石油・ガス歳入は9兆ルーブルほどに達しそうということである。これは、上半期に価格が高騰した22年の11.6兆ルーブルには及ばないものの、21年の9.1兆ルーブルにほぼ匹敵する規模である。さらに、最近のロシア政府は、超過利潤税、新たな輸出税など、非石油・ガス歳入の確保にも余念がない。 23年の連邦財政の歳出は、過去最大の32.2兆ルーブルに膨らむ見通しである。それでも、上述のとおり歳入が確保できているので、屋台骨は揺らいでいない。 23年のロシア連邦予算は元々、対GDP比2.0%の赤字で編成されていた。しかし、実際にはそれよりも良好に推移しており、先日シルアノフ財務相が述べたところによると、対GDP比1.5%程度の赤字で済みそうということであった。かくして、財政が破綻しプーチンが戦争を続けられなくなるというシナリオもまた、遠のきつつある。 24年のロシア連邦予算では、前年をさらに上回る36.7兆ルーブルの歳出が計上されている。とりわけ、物議を醸しているのが、国防費の大幅増である。 24年の国防費は10.8兆ルーブルに上っており、これはGDPの実に6.0%に相当する。ロシアの国防費は22年まではGDPの3%程度だったから、そこから倍増する形だ。しかも、軍事関連の歳出は他の費目の中にも隠れており、実際の国防費はもっと多いはずという指摘もある。 それでは、軍事費が肥大化している分、国民生活にしわ寄せが及んでいるかというと、これが必ずしもそうなってはいないのだ。少なくとも、大統領選が終わる24年3月までは、国民にそれを実感させないように配慮している。その典型例は公共料金の光熱費であり、23年はずっと据え置きで、次回の値上げは24年7月に決まっている。 18年5月にスタートした現プーチン政権において、国民の支持率がガクっと下がった出来事があった。同年6月、受給年齢を10年間かけて段階的に5歳引き上げるという年金改革を決定し、国民の大反発を食らったものである。サッカー・ワールドカップ開幕のどさくさに紛れて発表したにもかかわらず、それでも国民の反発はすさまじかった。おそらくプーチン政権のトラウマになっていると思われる。 最近、プーチン政権が神経質になっているものに、卵の値上がりがある。23年に卵は59%ほど値上がりし、国民の不満が募っている。政府は慌ててトルコやアゼルバイジャンから関税を免除して卵を緊急輸入することを決めた。ウクライナ侵攻や反体派弾圧では情け容赦ないこわもてプーチンが、卵ショックにはうろたえているというのは、興味深い現象である。 ●ナワリヌイは北極送り プーチン大統領は12月8日、24年3月の大統領選に出馬する考えを表明した。ウクライナでの戦況という不確定要素はあるにしても、再選に向け、これといった死角は見当たらない。公正な選挙をやっても、プーチンは過半数くらいとれるはずであり、ましてや公正な選挙ではないのだから、80%以上を得票して圧勝するのが既定路線である。 暮れになり、反体制派のリーダーであるナワリヌイ氏が、西シベリア北部のヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所に移送されたことが明らかになった。政治犯をシベリア送りにするのはロシアの伝統だが、今回は北極送りである。 ナワリヌイ氏は、必ずしも絶大な人気を誇るわけではないが、獄中からでもメッセージを発し、ロシア政治を流動化させる触媒的な役割を果たすポテンシャルは秘めている。プーチン政権としては、そうしたリスクの芽を摘んでおくために、北極圏の監獄で厳重に監視することにしたのだろう。 筆者には、ウクライナ侵攻に反対する運動や、ナワリヌイ氏解放を求める大規模なデモが近い将来にロシアで巻き起こることは、想像できない。しかし、ロシア国民も、自分に身近な社会・生活の問題で怒りを覚えれば、立ち上がることもある(さすがに上述の卵では無理かもしれないが)。しかも、政治デモなどと異なり、プーチン体制は生活に根差した庶民の要求を弾圧はしにくい。 ●気になるのは住宅市場 そうした観点から、筆者が注目している分野に、住宅市場がある。ロシア国民は持ち家志向が強く、無理な借金をしてでも、住宅を買いたがる傾向がある。目下、それが過熱し、住宅バブルが発生している。 ただ、不思議に思う読者もいるだろう。ロシアでは、年末に政策金利が16%にまで引き上げられている。そんな高い金利で、ローンを組み住宅を買う人がいるのだろうか、と。 実はそれにはからくりがあり、プーチン政権は数年前から、持ち家促進政策として、一定の条件を満たした住宅購入者には、国の補助で優遇金利を利用できるようにしている。その制度を使えば、新築住宅を買う人は年利8%で、幼い子供がいる家庭は6%で、ローンが借りられる。 ウクライナ侵攻開始後、ロシアの住宅市場はしばらく不活発だった。それが、23年半ば頃から、急にバブル的な様相を呈するようになった。優遇ローンの利用条件が段階的に厳格化される見通しとなり、ルーブル下落が進み、市場金利が急上昇したため、ロシア国民特有の「すぐにでも不動産に換えて資産を守らなければ」という心理が働いた結果であった。 当然のことながら、上昇する一方の市場金利は敬遠され、国の補助による優遇ローンに申し込みが殺到した。23年の前半まで、新築住宅購入のローンに占める優遇ローンの比率は3分の1くらいだったが、同年暮れには85%程度を占めるまでになった。なお、現時点では、国の補助による優遇ローンが利用できるのは24年6月までとされており、これがさらに特需に拍車をかけている。 当局も住宅市場の過熱は問題視しており、優遇ローンの利用条件を厳格化するため、頭金の比率を段階的に引き上げ、12月には30%とした。それでも、消費者金融で頭金の資金を借り、優遇ローンに申し込むような者もいるという。ロシア中央銀行は、こうした状況が金融市場の健全性を損なうリスクを、強く警戒している。 思えば、08年のリーマン・ショックも、発端となったのは米国のサブプライム住宅ローン問題だった。ロシアの住宅バブルがすぐにはじけて、春の大統領選を左右するとまでは行かないだろうが、この問題が今後プーチノミクスのアキレス腱になっていく可能性はある。 |
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●ロシアがウクライナに対し「北朝鮮供与の弾道ミサイル使用」=米高官 1/5
アメリカは4日、ロシアが全面侵攻を続けるウクライナに対し、北朝鮮から供与された弾道ミサイルと発射装置を使用しているとの見方を示した。 米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は、こうした武器供与について、北朝鮮政府によるロシア支援をめぐる「重大かつ懸念すべきエスカレーション」だと述べた。 そして、アメリカは国連安全保障理事会にこの問題を提起し、武器の譲渡を促進しようと動いている人物に追加制裁を科すとした。 ロシア政府は、こうした協力関係を否定している。 ただ、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は昨年9月にロシアを訪問した際、ウラジーミル・プーチン大統領と軍事協力の可能性を協議している。 アメリカはこれまで、北朝鮮政府がロシアに武器を供与していると非難してきた。しかし、900キロ先の目標物に到達できる自動誘導式の弾道ミサイルに関する詳細を、米情報機関が共有したのは今回が初めて。 カービー氏は4日、ホワイトハウスでの記者会見で、ロシアが北朝鮮から弾道ミサイルを調達する行為は、数々の国連安保理決議に直接違反するものだと述べた。 「我々は、ロシアが国際的な義務に再び違反した責任を、ロシアに負わせることを要求する」 また、ロシアにはイランの近距離ミサイル購入計画があると、アメリカは考えているものの、ロシアは実際にはまだ購入はしていないと、カービー氏は述べた。 イギリスは、ロシアが北朝鮮から調達した弾道ミサイルをウクライナで使用したことを「強く非難する」とした。 「北朝鮮は強力な制裁体制の対象になっている。ウクライナにおけるロシアの違法な戦争を支援する北朝鮮に、高い代償を確実に払わせるため、我々はパートナー各国との連携を継続していく」と、英外務省の報道官は述べた。 ●ウクライナ支援のための追加予算承認を求める カービー氏は記者会見で、ウクライナ支援のための追加予算を「遅れなしに」承認するよう米連邦議会に求めた。 「ウクライナ国民に対するロシアの恐ろしい暴力行為に、最も効果的に対応する方法は、不可欠な防空能力やその他の軍事装備をウクライナに提供し続けることだ」とカービー氏は強調した。 「イランと北朝鮮は、ロシアを支持している。ウクライナ人には当然、アメリカ国民と米政府が味方であり続けるということを知らせておくべきだ」 ホワイトハウスは昨年12月27日、2億5000万ドル相当の武器などを提供する内容の、ウクライナへの軍事援助パッケージを承認した。新たな議会承認を必要とせずにバイデン政権が提供できる、最後の支援枠だった。 連邦議会では野党・共和党が、ウクライナ支援継続を認めるには、同時にアメリカ・メキシコ国境の不法移民対策強化がセットでなくてはならないとの立場を譲らず、協議が停滞している。 ウクライナは西側諸国からの追加援助が速やかに得られなければ、戦争遂行と財政が危機的状況になると警告している。 |
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●NATO ウクライナ交え大使級の協議開催へ 防空力の強化を検討 1/5
ウクライナでは、4日、ロシア軍の攻撃が続き、各地で民間人の死傷者が増え続けています。こうした中、NATO=北大西洋条約機構は大使級の協議を来週開き、ウクライナを交えて防空力の強化を検討する見通しです。 ロシア軍は4日、ウクライナ各地に砲撃を行い、地元当局などによりますと、ウクライナ中部のキロボフラード州にある工業施設が破壊され、1人が死亡したほか8人がけがをし、東部ドネツク州でも1人が死亡するなど民間人の死傷者が増え続けています。 こうした中、NATO=北大西洋条約機構は、ウクライナと協議を行う枠組みNATOウクライナ理事会を10日に大使級で開催すると明らかにしました。 これは、ロシア軍によるウクライナへの年末年始の大規模攻撃を受けてウクライナ政府が開催を要請したもので、ウクライナのクレバ外相はSNSで「主要議題の1つは、ウクライナの防空能力の強化についてだ」としています。 一方、ロシアのプーチン大統領は4日、ウクライナへの軍事侵攻が続く間に、最低1年間、ロシア軍などと契約を結んだ外国人とその家族がロシア国籍を取得できるようにする大統領令に署名しました。 今回の措置は、戦闘が長期化する中、ロシア軍に入隊を希望する外国人を増やし、兵力を増強するねらいがあるものとみられます。 |
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●なぜ宗教は争いを生むのか。現実世界を動かす「宗教」というファクター 1/5
宗教的確執を抱えるロシア・ウクライナ戦争やイスラエル・ハマス戦争が勃発、国内では安倍元総理銃撃事件が起こるなど、人々の宗教への不信感は増す一方だ。なぜ宗教は争いを生むのか? 国際情勢に精通した神学者と古代ローマ史研究の大家が、宗教にまつわる謎を徹底討論——。 ●近代合理主義の限界と宗教の影響力 本村 古代ローマ史を研究してきた僕から見ると、いまの歴史教育はルネサンス以降、あるいはフランス革命以降の近代史を重視しすぎて、前近代が軽視されているように感じます。 もちろん、自分たちにとって身近な時代のことを知りたいのはわかりますし、たしかに近代について学ぶのは大事だとは思いますよ。とはいえ、5000年に及ぶ人類の文明史のうち、4000年は古代ですからね。切り捨てていいわけがありません。 ところが高校の世界史の授業でも、古代からやっていると時間が足りなくて20世紀までたどり着けないという理由で、近代史から始めたりしています。それはいいことです。しかし、身近な時代は馴染みやすいので自分の感覚で理解できる面がありますが、遠い昔のことはリアリティを感じにくいですよね。だからこそ、前近代、とくに古代のことは本来より深く勉強する必要があるでしょう。 それに、長い前近代史は、その後の歴史を読み解く上でのひとつのモデルとしても重要です。とりわけ宗教の問題は、現代の社会でも避けて通ることができません。いまも世界情勢に大きな影響を及ぼしているユダヤ教、イスラム教、キリスト教という一神教は古代地中海世界で生まれました。 そしてロシア・ウクライナ戦争など、現代の国際問題を捉える上で宗教的視点は欠かせません。そこで今回は、国際情勢に詳しく、キリスト教の神学者でもある佐藤さんと、近代社会における宗教の存在意義や、宗教と戦争との関係などについて、じっくり語り合いたいと思いました。 佐藤 近代的な価値観や常識は、必ずしも人類史全体に通用するものではありません。しかも近代という枠組みそのものが、二〇世紀以降はいろいろな意味で限界を迎えようとしています。 したがって、いまは近代とは異なる世界像について考えを深めなければいけないと私も考えていました。そのためには、前近代史の専門家の力を借りる必要があります。そういう意味で、こうして本村さんとお話しする機会が得られたのは、私にとっても大変ありがたいことです。 18世紀的な近代合理主義は、ロマン主義的な反動もある程度はあったものの、一応は19世紀を乗り切りました。しかしその後、近代的な合理主義と科学技術の発展が何をもたらしたかといえば、第一次世界大戦における大量殺戮と大量破壊です。その時点で、すでに近代の限界は見えていました。 ところがその問題が解決されないうちに、第二次世界大戦はアメリカが物量にものを言わせて勝ってしまった。これは「合理的なやり方をしたほうが勝つ」という意味で、18世紀型の戦争です。 その結果、第一次世界大戦で見えた近代の限界が、第二次世界大戦では逆に見えにくくなりました。自由と民主主義を謳歌し、物量をたくさん生産できる経済力を持つ者が強い──という話になったわけです。 ●「マインドコントロール」は宗教だけの話ではない 本村 なるほど。そのためわれわれは、限界を迎えたはずの近代合理主義であるのに、その枠組みからまだ抜け出せていない。しかし実際には、近代合理主義では割り切れない「宗教」というファクターが、国外でも国内でも常に社会に影響を及ぼしていますよね。 佐藤 とりわけ2022年は、宗教をめぐってさまざまな問題が噴出した嵐の年でしたね。日本国内では、安倍晋三元総理の銃撃事件によって、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題が浮上しました。じつはこの問題をめぐる議論の中でも、近代合理主義の限界が露呈しています。 というのも、旧統一教会を批判する人たちのロジックは、単純な啓蒙思想に基づいています。「宗教のように非合理なものを信じて多額の金を寄付するのは、マインドコントロールによって理性を失っているからだ」というわけです。 しかしマインドコントロールによって非合理なものを信じることは、宗教にかぎらず、あらゆる局面であるわけですよ。たとえば「厳しい受験競争に勝って難関大学に入学すれば将来は安泰だ」と信じている受験生やその保護者も、そういうマインドコントロールを受けていると言えます。 本村 それこそ人権思想を多くの人々が信じているのも、ある意味では近代社会によるマインドコントロールの結果と見ることもできますからね。歴史的には、たとえばヨーロッパで起きた1848年革命が、人々が人権思想に洗脳されたと見ることができる最たる出来事です。この年に、カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスによって『共産党宣言』が刊行されています。 約半世紀前に起きたフランス革命もあって、人権思想が人々に浸透した結果、普通選挙の実現を拒否した王政に反発して革命が起こり、フランスは第二共和政に移りました。まだ領邦国家が群立するイタリアにすら人権思想が広まり影響がもたらされたほどで、ヨーロッパ中がある種のマインドコントロール下にあったと言えるでしょう。 近代社会でなくとも、ローマでは共和政に対する信奉が根強く、これも見方によってはマインドコントロールと捉えることができます。カエサルがこの体制を破壊したことで、暗殺にすら発展しているわけです。マインドコントロールはごく自然に起こっている。 佐藤 おっしゃるとおりです。旧統一教会問題では、被害者救済のための新法にこの「マインドコントロール」なる文言を入れるかどうかが議論になりました。これは、きわめて危うい議論です。 たとえばキリスト教なら、「生殖行為なしに生まれた男の子が救い主となり、その救い主は死んでから三日目に復活した」という教義が、ほとんどの教派で採用されています。こんな非合理な話を信じているのですから、キリスト教徒はほぼ全員がマインドコントロールされていることになる。したがって、もしマインドコントロールを法律で禁止できるとなれば、キリスト教を禁止できることになるわけですよ。 本村 世界中が大騒ぎになって、戦争になるでしょうね。実際、八世紀に中世スペインで起きたレコンキスタ(国土回復運動)がそうでした。キリスト教徒、ムスリム(イスラム教徒)、ユダヤ教徒がこの土地には共存していたわけですが、キリスト教徒がムスリムたちを追い出そうとしたわけです。1492年に成功したものの長きにわたる混乱に陥りました。 一方で、それとは反対に東のオスマン帝国は非常に寛容で、国教はイスラム教でも、キリスト教徒やユダヤ教徒も受け入れています。とくにユダヤ商人の活躍は、オスマン帝国が繁栄する大きな要因にもなりました。マインドコントロールを禁止するとなると、宗教を互いに認めることは不可能になってしまう。 佐藤 それを議論すること自体が危険すぎますよ。そういう危うさに対して鈍感になってしまうのが、啓蒙思想というマインドコントロールの怖いところです。 近代的な思考に限界があること自体は、日本では1980年代にいわゆる「ポストモダン」的な思想が嵐のように吹き荒れて以降、みんな口やかましく言ってきました。ところが、いざ日常的な問題を前にすると、単純な啓蒙思想で片づけようとするんです。 もうひとつ、多くの人々が依存しがちな考え方があるとすれば、ナショナリズムですね。国民国家の概念も前近代にはなかったものですが、いまはそれが自明の枠組みであるかのように語られる。18世紀的な啓蒙思想と19世紀的なナショナリズムによってほとんどの物事が動いているのが、現在の世界です。 ●疫病・戦争・飢餓をめぐる「ハラリ・モデル」の崩壊 本村 啓蒙思想もナショナリズムも、近代の産物にすぎません。人類の文明史全体から見れば、最近になって出てきた新しい枠組みです。しかしそれが普遍的な「常識」だと思い込まれているから、疑おうとしないんですよね。 イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは、『ホモ・デウス 〜テクノロジーとサピエンスの未来』(柴田裕之訳/河出書房新社)という著書で、人類は疫病、戦争、飢饉を撲滅する時代に近づいていると言いました。すでにそれらが「撲滅された」と言ったわけではありませんが、その本が出てから間もなく、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが発生したのは皮肉です。 まあ、いまから考えれば、疫病についてはハラリの予想どおりにならないことは十分にあり得ました。しかし戦争に関しては、「もうそれほどひどい争いは起きないのではないか」と現代人が考えていたのはたしかだと思います。 ところが、ハラリの予想を嘲笑うかのような戦争がウクライナで始まりました。前近代史をやっている私の目には、フランス革命以前の時代に覇権主義を掲げて行われた戦争と似たことが起きたように見えます。そういう意味で、ロシアのウクライナ侵攻は衝撃的でした。 佐藤 いわゆる「ハラリ・モデル」の崩壊ですよね。ロシア・ウクライナ戦争だけでなく、2023年10月7日に起きたパレスチナ自治政府のガザ地区を実効支配するイスラム教スンナ派武装集団ハマスによるイスラエルに対するテロと、その後のイスラエル軍によるハマス掃討作戦も、ロシア・ウクライナ戦争以上のインパクトを国際政治にもたらしました。2018年と2020年のダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)で、ハラリは基調報告を行いました。つまりその時点までは、世界の政治エリートや経済エリートたちが、今後の世界は「ハラリ・モデル」にしたがって動いていくと思っていたわけですよ。 しかしそのモデルに反して、人類は疫病も戦争も克服できていませんでした。それに関するハラリの釈明文の翻訳が朝日新聞に載りましたが、ほとんど説得力がありませんでしたね。私の見立てでは、すでに時代はハラリからエマニュエル・トッドに移っているんです。 トッドの『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(堀茂樹訳/文藝春秋)には、ハラリに関する言及も引用も一切ありません。それ自体が、ハラリに対する彼の端的な評価だと思います。おそらくトッドの認識では、ハラリなど視界に入れる水準にも達していないエセ学者ということなのでしょう。 本村 人口動態学を基本に据えて、家族類型によってデモクラシーを分析したところがトッドの慧眼ですね。 ●人間を救済するはずの宗教が残虐性や暴力性を見せる時 本村 さて、家族形態が「無意識」レベルで社会を動かすと考えるトッドは、宗教も同じように位置づけています。かつてはユダヤ教、キリスト教、イスラム教などの宗教が「意識」レベルで社会生活の枠組みを決めていたけれど、現在は「無意識」に押し込められた形で社会を動かしている、というわけですよね。 佐藤 そうです。世俗化が進んでも、宗教システムに由来する信念などが部分的に延命されているんですよね。たとえば人々がカトリック教会に行かなくなっても、その社会にはカトリックのモラルが残っているわけです。トッドはそれを「ゾンビ・カトリシズム」と呼んでいますね。 本村 古代史研究をしていると、叙事詩などの古典作品は、古ければ古いほど人々が神々の世界を身近に感じていたような印象を受けます。メソポタミアの『ギルガメシュ叙事詩』はもちろん、古代ギリシャで書かれたホメロスの叙事詩でも、神々が人間に働きかけているんですね。人間が神の声を聞くというのは、市民にとってごく自然なことだったはずです。 しかし、時代を経るごとにその感覚が徐々に薄れてきたわけです。神の声を直接的に聞くことができなくなっていきました。ただし、現在でも無意識のレベルで神々は人々の中に存在しています。そのため、人々の信仰の違いが表面には表れていなくても、宗教的な対立がなくなったわけではありません。本来、宗教は人間を救うものですが、それが戦争や暴力を助長することもあります。 佐藤 人間を救済するはずの宗教が、一方で、時に残虐性や暴力性を見せるということは、歴史の中で何度も繰り返されてきました。今世紀に入ってからも、われわれの世界は二度、大きな衝撃を受けたと思います。 一回目の衝撃は、2001年9月11日。アメリカで発生した同時多発テロです。それ以前から、宗教とからみ合った紛争は世界各地で起きていましたが、それらは中東やアフリカの民族間戦争、あるいはスリランカの内戦など、いずれも局地的なものでした。アメリカのど真ん中で宗教的な誘因が入った形での重大なテロが起きたのは、それらとは比較にならない衝撃です。 ただあの一件では、ひとつ頭の片隅に置いておかなければいけないことがあります。あのテロは当初からアルカイダの仕業だと見られていましたが、その一方で「白人至上主義者によるテロかもしれない」という見方もありました。現実にはそうではなかったとはいえ、そういう見方が出てくるということは、アメリカにおいては白人至上主義がキリスト教原理主義と結びつく形での暴力的な運動もあり得るということです。 本村 いずれにしろ、宗教は暴力を引き起こすことができるわけですね。9・11以降のイラク戦争の顛末を見ると、悪者であるサダム・フセインに何でも結びつけて、アルカイダ一味の滅亡を図っていることは明らかでした。その後のイラク戦争は、誰が見てもおかしなことだと、われわれ日本人なら思うわけです。 それがアメリカ社会では受け入れられた。宗教と暴力の関係があったからこそ、フセイン悪、イスラム悪という図式がアメリカ人の頭にはあったという気がしますね。 ●「正教 対 悪魔崇拝」の価値観戦争になったロシア・ウクライナ戦争 佐藤 そういうことです。そして、宗教の暴力性をわれわれに思い知らせた二番目の衝撃が、2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻でした。これも、ある意味で「宗教戦争」なんですよね。 ただしこちらは、イスラム原理主義対キリスト教という構図の同時多発テロと違って、キリスト教内の宗教戦争です。 本村 なるほど。一般的には、そうは見られていませんよね。同一宗教間の戦争といえば、17世紀前半にドイツで起きた三十年戦争が有名です。これも、新旧キリスト教間での戦いでした。1648年にウェストファリア条約において和平が認められたことで、その後に国民国家の理念が出来上がっていきました。 今回のロシア・ウクライナ戦争というのは、この三十年戦争に見られた同一宗教内の争いに似ており、非常に前近代的な覇権争いのように見えます。 佐藤 西側からすると「民主主義陣営」対「独裁国家」という非宗教的な図式になるわけですが、そもそも民主主義の根幹にある近代的な人権思想は、神の権利が維持できなくなったから生まれたものです。「神権」が「人権」に変わったんですね。ですからこれは、ある意味で、西側のカトリック、プロテスタント諸国において世俗化した宗教的な価値観でもあるわけですよ。 本村 まさに「無意識」レベルの話ですね。時が経つにつれて、神々の仕業だと考えられていたものが次第に科学などに置き換わっていく。そうなると神々を中心に回っていたはずの世界が立ち回らなくなってしまい、人間が中心に置き換わる。こうして神権の延長線上に人権があると考えれば、「民主主義陣営」の宗教的側面も浮かび上がってきます。 佐藤 そうです。とはいえ、これは最初から宗教戦争だったわけではありません。開戦当初は、ウクライナ国内のロシア系住民の処遇をめぐるロシア・ウクライナ間の戦争でした。 本村 そうですよね。もはや忘れられてしまった感もありますが、そもそもは「西方のロシア系住民をウクライナのネオナチから解放する」という話でした。 佐藤 しかしアメリカは、この戦争を「民主主義対独裁という価値観の戦争だ」と位置づけました。一方、もともとは地域紛争の枠組みで考えていたロシアでも、2022年9月30日に転換が起こるんです。「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」、ヘルソン州とザポロージャ州の併合を宣言した演説の中で、プーチンが、同性愛や性別適合手術などを受け入れるような価値観に覆われている西側世界は「純然たるサタニズム(悪魔崇拝)の特徴を帯びている」と言ったんです。 これが、ひとつの分水嶺でした。ロシア側も、「正教対悪魔崇拝(サタニズム)」の価値観戦争に切り替えたわけです。だからそれ以降は、西側もロシアもこれを「価値観戦争」という枠組みで認識しているわけですね。 もちろん西側の価値観は世俗化されているので、宗教性はあまり前面に出しません。しかし、それが剥き出しになっている部分もあります。 たとえば、ウクライナのアゾフ連隊の奥さんたちに、フランシスコ教皇が会ったことがありました。さらにフランシスコ教皇は、イエズス会系のウェブ雑誌『アメリカ』での発言で、「今回の戦争でもっとも残虐なのはブリヤート系とチェチェン系だ」と、特定の民族と残虐性を露骨に結びつける偏見をさらしてもいます。この発言は、のちにバチカンが撤回しましたけれどね。 いずれにしろ、キリスト教の暴力性がこれほど露わになった現象は久しぶりのことです。宗教と暴力の問題は正面から見るべきですが、意外とロシア・ウクライナ戦争が孕んでいる宗教の暴力性に気づいていない人が日本には多いんですよ。 しかしこの戦争はおそらく片がつくまでに10年ぐらいかかりますし、日本はG7の中で本土がロシアと直接国境を接している唯一の隣国です。アメリカはアラスカでロシアと国境を接していますが、アラスカは飛地なので地政学的意味が異なります。それを考えたら、事態は楽観できません。西側とロシアの価値観戦争によってデカップリングが進んでいることを深刻に考えないといけないと思います。 本村 近代的な民主主義が普遍的な価値観だと思い込んでいると、そういう枠組みは見えてきませんよね。この戦争はある意味で第二次世界大戦にも通じるところがあります。 日本は別ですけれども、第二次世界大戦はキリスト教内の対立戦争でもありました。しかし、一方では民主主義を守る勢力としての連合国側があり、他方では後発資本主義国家のドイツ、イタリア、日本という自分たちの生命線と領土内の安定を図った枢軸国側があったわけです。 英米、それからフランスといった勢力に対して日独伊が生命線を守る戦いであれば、民主主義が普遍的な価値観だというだけで終了していたはずです。そうはいかずに民主主義が資本主義と対立している点で、この戦争も価値観戦争と見なすことができます。 佐藤 しかもこのロシア・ウクライナ戦争に関して、日本では西側連合による圧倒的な支援を受けているウクライナのほうが強いと考えている人が多数派です。 ところが実際には、現時点(2023年7月)までにロシアがウクライナの国土を20%も占領しました。ウクライナは「反転攻勢をやる」と言ってはいるけれど、膠着状態からなかなか抜け出せません。 自由民主主義陣営とロシアのどちらが強いのか、いまはまだわかりませんが、少なくとも現時点では後者のほうが強いわけです。ロシアが占領しているのは、北海道と九州を足したのと同じくらいの面積ですからね。 本村 ある意味で、「前近代」的な陣営が「近代」的な陣営を抑え込んでいるとも言えるでしょう。しかし、こうした前近代的な価値観が、近代的な価値観と対立するというのは、珍しいことではありません。たとえば、アメリカも原理主義的なキリスト教であり、前近代的なものを持っているところがあります。 アメリカ社会の中にはアーミッシュというキリスト教のグループがあり、彼らの主義では、車にも電力にも頼ってはならない。文明的な機械を一切使わないで、自然の生活に徹するというところがある。最近ではずいぶん事情が変わったらしいですが。 歴史的に見ても、三十年戦争後のウェストファリア条約によって国民国家が出来上がっていきますが、そこには非常に近代的なものと前近代的なものが混在していました。18世紀のヨーロッパといえども、前近代的なものと近代的なものが対立しているというのが当たり前のようにしてあったわけで、必ずしもその対立で近代的なものが勝っているわけではないのです。 佐藤 LGBTQ+の人権を認めないプーチンの姿勢は、まさに前近代的ですね。「神は男と女しかつくっていない」というわけですから。それ以外のセクシュアリティを認める西側諸国は、プーチンから見れば、不自然な肉の欲によって神罰を受けた「ソドムとゴモラ」みたいなものです。 そういう価値観で動く勢力が大きな力を持っているのですから、近代的な価値観を自明のものとしていられるわけがありません。 |
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●ウクライナ軍、東部シンキフカ付近でロ軍戦車を撃退 1/5
ウクライナ軍は4日、東部ハリコフ州シンキフカ付近での激しい戦闘の映像を公開した。ウクライナ軍によると、映像にはシンキフカに向けて進軍するロシア軍の車両や戦車が映っており、その一部がウクライナ軍のミサイルによって破壊された。攻撃を受けた戦車から兵士が逃げ出す様子も映っている。 ロイターは地形の特徴などから撮影場所を特定したが、撮影日時を独自に確認することはできなかった。 ウクライナのメディアは先月28日、ウクライナのシルスキー陸軍司令官の発言として、シンキフカへの攻撃を行ったロシア軍の戦車1両、装甲兵員輸送車3台、ロシア兵30人を排除したと伝えた。 ロシアはウクライナ東部と南部で広範囲を依然占拠しており、来月で2年を迎える戦争に終結の兆しは見えない。 ロシアは、昨年半ばに開始されたウクライナの反攻は失敗だったとの主張を展開している。前線ではこの数カ月膠着状態が続いている。 |
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●クリミアにミサイル攻撃 ウクライナ 1/5
ロシア国防省は4日、実効支配するウクライナ南部クリミア半島上空にウクライナのミサイル10発が飛来したが、いずれも防空システムで迎撃したと発表した。ウクライナ空軍のオレシチュク司令官は「空軍パイロットと計画した皆に感謝する」と通信アプリに投稿し、攻撃を認めた。 クリミア半島にあるセバストポリのラズボジャエフ市長は「最近では最大級の攻撃」と述べ、ミサイルの破片が住宅に落下し1人が負傷したと通信アプリに投稿した。 ウクライナ国防省情報総局は4日、ロシア南部チェリャビンスクの飛行場でロシアのスホイ34戦闘爆撃機が炎上したとし、映像を公表した。 |
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●首がおかしい! プーチンの「外見」に違和感…「AI生成された偽物では?」 1/5
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2023年12月31日夜、国民向けに演説を行った。だがネットでは、その内容よりも映像に注目が集まっている。映像の中のプーチンの外見に「違和感」があると感じた人は多かったようで、何らかのデジタル技術が使われたのではないかという憶測が飛び交っているのだ。 新年を前に大統領が国民に向けて行うテレビ演説は、旧ソ連時代にレオニード・ブレジネフ書記長(当時)が最初に行ったもので毎年恒例の伝統行事となっている。ロシアにある11の時間帯それぞれの地域で、12月31日の深夜0時を迎える少し前から放送されている。 プーチンは今回の演説の中で、「我々は最も困難な問題を解決することができる」と述べ、さらに「いかなる勢力も我々を分断することはできない」と続けた。だがネット民が注目したのは演説の内容よりもプーチンの外見で、演説が終わった直後から、インターネット上にはプーチンの外見が現実離れしていると示唆する書き込みが投稿された。 X(旧ツイッター)で3万人のフォロワーを擁するミハイロ・ゴラブは、「プーチンの新年の演説は明らかにAIで生成されたものだ」と投稿。プーチンの演説動画を添付し、首のあたりを青い線で囲って、頭部と体のつながりがおかしいと示唆した。 ●不自然な首は「たるみ」か「AI生成の証拠」か RASSELは「首のあたりを見てみろ。スーツの中におさまっていない。これは何だ?たるみすぎてスーツにおさまっていないのか?それともAI生成なのか?」と書き込んだ。ウクライナを支持するエストニアのレジーナ・バウアーはこの投稿をシェアし、プーチンの演説は「AI生成か、もしくはグリーンバックの前で撮影されて合成されたもののように見える」と投稿した。 一連の投稿は軽いノリで行われたもので、演説を行ったのがプーチン本人ではないことを示す証拠はない。本誌はこの件についてロシア政府にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。 「プーチンとAI」と言えば、今回の演説が行われる少し前の昨年12月にテレビ放送された、毎年恒例の国民との直接対話を行うイベントでも話題となったテーマだ。このときには、サンクトペテルブルク大学の学生が作った「AIプーチン」の質問に、本物のプーチンが回答するという一幕があった。 ●プーチンに「影武者がいるのは本当?」と質問 イベントに映像参加した、顔と声がプーチンそっくりの「AIプーチン」は本物のプーチンに対して、プーチンに何人もの影武者がいるという西側メディアの報道は本当なのかや、AIの開発に対するプーチンの考えについて質問した。 これを受けてプーチンは「あなたは私の声色や声の高さを使って話すことはできるが、私のように話せる人物は一人しかいないと思う」と回答。「それは私だ」と述べた。 プーチンは新年の演説の中でウクライナでの戦争に直接言及はしなかったが、ロシア軍を称賛し「団結」を呼びかけた。一年前は背後に大勢の兵士を従えて演説を行ったが、今回の演説の背景はクレムリンの夜景だった。 プーチンはさらに、ロシアは「国益、自由と安全、我々の価値観を守る決意を固めている」と述べ、「共通の利益のための努力が社会を団結させている」と語った。プーチンは3月に行われるロシア大統領選挙への立候補を表明しており、当選が確実視されている。当選すれば2036年まで大統領を続投することになる見通しだ。 |
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●高い「中絶率」が軍隊と国家の存続問題 戦争長期化で「中絶阻止」強化 1/5
これも、対ウクライナ戦争長期化を睨んだ、プーチンの政策の一環なのか。ロシアでは数十年前から中絶が合法とされてきたが、ウクライナ侵攻開始以降、ロシア正教会を中心にした宗教的保守派による中絶反対の声が急激に高まっているというのだ。 ロシアの現状に詳しいジャーナリストが解説する。 「ロシアは1920年、旧ソ連時代に社会主義政権が樹立した直後、男女平等という旗印のもと、世界で初めて中絶を合法化した国で、その後スターリン政権下では20年ほど禁止されたものの、復活後は多くのロシア女性たちが妊娠中絶手術を受けています。中絶が女性の権利として認識され、ソ連時代は中絶手術が無料だったことも後押ししていました。政府の統計によれば、ソ連時代の65年には中絶手術を受ける女性は550万人以上で、95年の統計でも280万人。14年には相当減少したものの、それでも年間約93万人が中絶手術を受けており、出生数に対する割合は5割を超えます。これだけでも、ロシアの中絶率が極端に高いことがわかるはずです」 ところが、人口減少が急速に進み始めたことで、ロシアでも少子化が深刻な問題になってきた。むろんそれだけが少子化の原因ではないものの、中絶が国家の存続問題になっているとして、しだいに国内でも「中絶反対」の声が高まりつつある中、勃発したのがウクライナ侵攻だった。 「つまり、『胎児殺しは断じて許されない』と主張する中絶反対派は、この戦争によって大義名分を得たわけです。プーチン大統領としても将来に備えて、兵士になる男性は確保しておきたい。そんな両者の思惑によって、政府系病院ではすでに規制が導入されたところもあり、今後は全面的な中絶禁止に向けた動きがあるかもしれません」(同) 実際、ロシア各地ではロシア正教会や保健当局が、地元の民間クリニックに働きかけ、中絶を規制しようとする動きが相次いでいるという。 「なかには中絶を回避させた医師に報奨金を支給する地域もあります。一方、昨年12月には、飛び地のカリーニングラード州議会が中絶を勧めることなどを禁止する法案を可決しました。この法案に違反した市民には最高5000ルーブル(約7800円)、公務員には同2万ルーブル、法人には同5万ルーブルの罰金が科されることになり、政府系病院を運営する保健当局は政府の方針に基づき、女性たちに中絶を思い留まらせるよう指導していくとのこと」(同) とはいえ、一昨年行われたロシアの世論調査では、ロシア人の72%が中絶禁止に反対しているという現実がある。 「民間クリニックでの中絶が禁止されれば、中絶薬の闇市場が拡大し、違法な中絶処置が広がる危険をはらんでいます。プーチン政権がどこまで先を見通して中絶禁止を推進しているのかはわかりませんが、本格的な規制施行までには問題山積しています」(同) 戦死者が急増し、男性の寿命に関する話題がタブーとされるこの国で、再び高まり始めた中絶反対の機運に、市民から戸惑いの声が上がっている。 |
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●ウクライナ軍 クリミアに2日間連続 ミサイルや無人機で攻撃 1/5
ロシアに併合されている南部クリミアの奪還を目指すウクライナ軍は、2日間連続でミサイルや無人機による攻撃をしかけ、ロシア側は「最近では最大規模の攻撃だった」として警戒を強めています。 ウクライナ南部クリミアを一方的に併合しているロシアの国防省は4日「ウクライナ軍による10発のミサイル攻撃をクリミア上空で迎撃した」と発表しました。 これについて、ウクライナ空軍のオレシチュク司令官は4日、SNSで「空軍のパイロットと作戦を立案したすべての人に感謝する」と攻撃を認めました。 クリミアの軍港都市セバストポリを支配するロシア側の市長は、落下した破片によって1人がけがをしたと明らかにしたうえで「最近では最大規模の攻撃だった」として警戒を強めています。 ロシア国防省は、5日もウクライナ側がクリミアで36機の無人機で攻撃をしかけたと明らかにしていて、クリミアの奪還を掲げるウクライナ側が2日連続の攻撃で揺さぶりを強めているとみられます。 一方、アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は4日、ロシアが北朝鮮から弾道ミサイルの供与を受け、先月30日や今月2日にウクライナに対し発射したとみられると記者会見で明らかにしました。 さらに、ロシアがイランからも短距離弾道ミサイルを入手しようとしているとの情報があるとしています。 アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は4日、ロシア軍は弾道ミサイルによる攻撃がウクライナの防空システムを突破するのに効果的だと考えていると指摘したうえで「ロシアは国外からの弾道ミサイルの調達を強化する可能性がある」と分析しています。 |
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●上川外相 欧州など歴訪へ 米で首相の公式訪問すり合わせ 1/5
上川外務大臣は5日夜からヨーロッパや北米などを訪問します。アメリカでは、ブリンケン国務長官と会談し、3月上旬で調整が進められている岸田総理大臣の公式訪問に向けたすり合わせを行うことにしています。 上川外務大臣は記者会見で、5日夜から今月18日までの日程で、ヨーロッパとアメリカ、カナダ、トルコを歴訪すると発表しました。 このうちアメリカのワシントンではブリンケン国務長官と会談し、インド太平洋や中東、ウクライナ情勢について意見を交わすほか、3月上旬で調整が進められている岸田総理大臣の国賓待遇での公式訪問に向けて、すり合わせを行うことにしています。 ヨーロッパではフィンランドやスウェーデン、ドイツなどを歴訪する予定で、北欧では男女共同参画などの分野で連携を確認することにしています。 また、オランダのハーグにあるICJ=国際司法裁判所や、ドイツのハンブルクにある国際海洋法裁判所も訪れ、法の支配に基づく国際秩序を重視する姿勢を示す考えです。 上川大臣は記者会見で「分断や対立が深まる今こそ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化することが重要で、幅広くパートナーとの連携を図り、1年間の日本外交につなげていく」と述べました。 ●上川外相「世界100以上の国や地域などからお見舞い」 上川外務大臣は記者会見で「これまでにアメリカや、その他のG7各国、中国、台湾を含め、世界各地の100以上の国や地域などからお見舞いのメッセージや支援の申し出を受けており、深く感謝している。例えば台湾は義援金6000万円の寄贈を発表していて、国際機関の間で調整を行っている」と述べました。 |
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●イタリア首相“G7議長国としてウクライナ支援継続”の考え示す 1/5
ことしのG7=主要7か国の議長国を務めるイタリアのメローニ首相が4日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話で会談し、議長国としてロシアの軍事侵攻の問題を中心に据える考えを伝えるとともに、ウクライナへの支援を継続する考えを示しました。 イタリアのメローニ首相は4日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話で会談しました。 イタリア首相府によりますと、メローニ首相はことし、イタリアがG7の議長国に就任したことを踏まえ、議長国としてロシアの軍事侵攻の問題を中心に据える考えを伝えるとともに、あらゆる分野でウクライナへの支援を継続していく考えを示しました。 一方、ウクライナ大統領府によりますと、ゼレンスキー大統領はこれまでにイタリアが行ってきた支援への感謝を伝えたうえで、イタリアのG7議長国への就任を祝ったということです。 また、両首脳はウクライナが「平和の公式」と名付けて提唱する10項目の和平案について、今月、スイスのダボスで開かれる予定のG7や新興国による協議に向け、準備を進めていくことも確認しました。 外交筋によりますと、イタリアはウクライナへの支援に消極的な姿勢に傾いてきたという見方もあったことから、今回、G7の議長国として主導権を発揮する姿勢を示したことで、今後の対応が注目されます。 |
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●プーチン大統領の影武者2人が毒物盛られひどい発疹 1/6
ロシアのプーチン大統領の影武者2人が、毒物を盛られたあと、ひどい発疹が出ているとテレグラムチャンネル「ゼネラルSVR(ロシア対外情報庁)」が伝えていると英エクスプレス紙が報じた。 SVR将軍と呼ばれる同メディアを運営しているのは、SVRの元上級幹部で、ベラルーシ出身の大工とされる影武者が手足と首の皮膚に発疹が現れてアレルギー反応に苦しみ、大統領府の医師の診断を受けたと伝えている。ロシア連邦保安庁とロシア連邦警護庁は、暗殺未遂の疑いで捜査を開始したと主張している。 ウクライナ軍情報機関を含む複数の情報筋も、毒を盛られたのはプーチン大統領の複数いる影武者の中の一人だと主張しているという。 プーチン氏には少なくとも3人の影武者がいるとされており、英サン紙は3日に「役に立たなくなったら全員が殺される」とウクライナの情報筋の話を伝えていた。 SVR将軍によると、致死量の毒物ではなかった可能性が高く、命に別条はないという。現在、どのように有害物質が体内に取り込まれたのか調査しているという。影武者は、プーチン大統領に代わって数多くの会議やイベントに出席しており、多くの人と接触していることからどこかで毒を盛られた可能性があると伝えている。 ロシアでは、プーチン大統領は昨年10月に末期がんの闘病の末に死亡し、影武者が大統領に成りすましているとの陰謀論が根強くはびこっている。昨年大みそかに行った国民に向けた演説を巡っても、人工知能(AI)生成された偽物説が浮上していた。 |
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●ゼレンスキー氏、国民鼓舞 「今年を耐え抜く」 1/6
ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は5日の声明で「今年を耐え抜くことは戦争自体を耐え抜くことを意味する」と述べ、国民を鼓舞した。防衛や作戦のために装備や人員を確保することが優先事項だとして「重要かつ決定的な時期だ」と訴えた。 ウクライナ東部ドネツク州のマリンカ、バフムト、アブデーフカなどで依然として激しい戦闘が続いていると述べた。トルコのエルドアン大統領と5日、電話会談し、黒海からの輸出の取り組みに対する協力に謝意を述べたと明らかにした。 |
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●ウクライナが全て取り戻すは困難 停戦に向けたシナリオすら困難な理由 1/6
終わりが見えないウクライナ戦争。いまどんな状況なのか、今後の展開はどうなるのか。慶応義塾大学法学部教授・大串敦さんに聞いた。 ウクライナ戦争は、いまどんな段階にあるのか。2023年6月頃からのウクライナによる「大規模な反転攻勢」は、じゅうぶんな成果は得られず失敗に終わったと見ていいと思います。逆にここで持ちこたえたロシア軍が、最近は攻勢に転じているとの情報が多いようです。 私見ですが、ウクライナ軍は軍隊として分権化されている傾向があり、守りではなく攻勢に出るにあたっては全体としてバランスの取れた作戦がとれなかった。組織作りの弱い部分が、反転攻勢では出てしまったように思います。 逆にロシアは、兵器の生産能力にしてもまだかなり余裕がありそうです。開戦当初から「すぐに枯渇する」と指摘されてきましたが、その気配はない。私が調査する範囲では、大都市部での市民の生活ぶりも変わりない。ロシアという国の「基礎体力」の高さは、多くの人が見込み違いをしていたと言えます。 ロシアの世論も、動員兵の妻や母親らが早期の帰還を求めて署名活動を始めるなどの動きはあったものの、プーチンへの支持は比較的高い水準を維持しています。直接戦争の被害を被っている層以外の部分で反戦運動が高まり、反プーチン的な動きに大きくつながっていくかと言われると、私は悲観的です。 ●「和平」望む声も 一方のウクライナでは、「徹底抗戦だ」という世論が圧倒的に多いものの、「領土を少し諦めてでも、和平を結んだらどうか」という声がこの2カ月ほどで増えてきているのは事実です。 さらに戦況が悪くなったとき、少数派の声が増えていく可能性もありうるでしょう。そのときに「意外と世論を見ながら動く人」でもあるゼレンスキー大統領が、どう動くのか。そこは気になるところです。 ウクライナがさらに頭が痛いのは、アメリカやEUからの支援が細っていく可能性です。アメリカでは共和党の反対で、追加支援の先行きが不透明な状態。EUでもスロバキアでは9月末の選挙でウクライナ支援継続反対の政党が政権をとるなど、とくにウクライナに隣接している国々で「支援疲れ」が見られるのは確かでしょう。EUによる資金援助にハンガリーが拒否権を行使していますが、これにスロバキアなどが同調しないとも限らない。ロシアがいまだ兵器の生産能力が高いのに対し、ウクライナは西側からの支援がないと、その意思はあっても現実問題として戦い続けることはできないでしょう。 ロシアは開戦当初、「譲れないライン」として「ウクライナをNATOに入れない」「東部のドンバス(ドネツク、ルハンスクの2州)の保護」の二つを目標にしていたように見えました。いまはロシア的にはザポリージャ州とヘルソン州も併合したことになっているので、この2州も含めての要求をウクライナにのませることが目標になっているのかもしれません。 一方でゼレンスキー大統領はあくまでも「すべて奪い返す」──つまりドンバスとクリミア半島も含めたすべてを、ということをいまは一貫して譲っていません。 しかし、戦況や支援の先細りを前提にすれば、「ウクライナがすべてを取り返す」ことに関しては、かなり悲観的にならざるを得ないと思います。 開戦当初によく言われた「(開戦日の)2月24日のラインに戻す」で、譲歩をするか。でもこれにさえ、今やロシアは納得しないでしょう。あるいは、ドンバス2州とザポリージャ、ヘルソンの2州は断念した上で、何らかのウクライナの安全保障の仕組みを作り、停戦するか。 ただ、これは戦争がいったん終わり、死ぬ人が少なくなるという点で意義はあるものの、ウクライナ側に大きな禍根を残すので、良いシナリオと言えるかどうかはわかりません。ウクライナ戦争は、「停戦に向けた、よりベターなシナリオ」を思い描くことさえ、きわめて難しい。そんな状況です。 |
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●ウクライナ、クリミアの航空基地攻撃 攻勢強める 1/6
ウクライナ空軍のオレシチュク司令官は6日、ロシアが実効支配するウクライナ南部クリミア半島西部のサキ航空基地を攻撃したと明らかにした。通信アプリに「全ての目標に命中した」と投稿した。 ウクライナ側は4日にもロシア黒海艦隊が司令部を置く同半島セバストポリ近郊などを攻撃したと表明、クリミアへの攻勢を強めている。 一方、米シンクタンク、戦争研究所は5日、ロシア軍が数週間のうちに東部ハリコフ州クピャンスクの制圧に向け、消耗の少ない部隊を配置しようとしている可能性があると分析した。 ウクライナ側は、ロシア軍が冬の間にクピャンスクやその近郊の制圧を狙っているとみている。ロシア軍はハリコフ州を流れるオスコル川東岸からウクライナ軍を撤退させようとしていると指摘した。 北朝鮮が複数の短距離弾道ミサイルと発射装置をロシアに提供し、ロシアがウクライナへの攻撃で使用したとの米国の発表を受け、ハリコフ州知事は5日、ロシア軍が州内に撃ち込んだミサイルのうちロシアで製造されていないものがあると述べ、確認するとした。地元メディアが伝えた。 ウクライナのゼレンスキー大統領は5日の声明で「今年を耐え抜くことは戦争自体を耐え抜くことを意味する」と述べ、国民を鼓舞した。防衛や作戦のために装備や人員を確保することが優先事項だとして「重要かつ決定的な時期だ」と訴えた。 |
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●ゼレンスキー大統領「ことしを耐え抜く」 徹底抗戦呼びかけ 1/6
ウクライナのゼレンスキー大統領は、東部などでロシア軍の攻撃が続いているとした上で「ことしを耐え抜くことは、戦争に耐え抜くことを意味する」と訴え、反転攻勢の停滞も指摘される中、国民に徹底抗戦を呼びかけました。 ゼレンスキー大統領は5日、国民に向けた動画の演説で「ことしも日々、激しい戦闘が起きている」と述べ、東部ドネツク州のアウディーイウカやマリインカ近郊、それにバフムトのほか、東部ハルキウ州のクピヤンシクなどの前線でロシア軍の攻撃が続いていると指摘しました。 そして「ことしを耐え抜くことは、戦争に耐え抜くことを意味する。重要かつ決定的な時期だ」と訴え、反転攻勢の停滞も指摘される中、国民に徹底抗戦を呼びかけました。 また、ゼレンスキー大統領はトルコのエルドアン大統領と電話会談を行ったと明らかにし、ウクライナ産の農産物の輸出ルートとなっている黒海の安全保障について、ロシア側の妨害がないようトルコ側に協力を求めました。 一方、戦況を分析するアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は5日、「ロシア軍は今後数週間、ハルキウ州クピヤンシクの占領に向けた取り組みを強化する可能性がある」と指摘しました。 この地域に展開するロシア軍がほかの地域と比べて部隊の劣化が少ないなどとしていて、作戦の強化に向けた準備を整えている可能性があると分析しています。 |
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●「大統領は重い病気を患い、回復の見込みはない」“ロシア人謎のブロガー”による真偽不明情報も…プーチンは“終身独裁”を手に入れられるのか 1/7
ウクライナ侵攻を続けるロシアは、2024年3月17日の大統領選に向けて「政治の季節」に入った。政権担当二十三年になるプーチン大統領は出馬の構えで、当選すれば、2030年まで6年の続投が可能。スターリンを抜いて、20世紀以降のロシアで最長在位の指導者となる。 一方で、6月に起きた民間軍事会社「ワグネル」の反乱は、プーチン体制下で初の武装蜂起であり、政権の動揺を示した。創設者のプリゴジン氏らワグネル幹部三人が8月23日、小型ジェット機の墜落で即死した事故は、政権による粛清劇とみられる。選挙を前に、不測の事態につながる「ワイルドカード」が一掃されたことで、政権基盤は強化されたが、新たなサプライズが起きる可能性もないとはいえない。 ●目指すは大統領選の「記録的勝利」 プーチン氏にとって、続投は最重要課題だろう。大統領は軍最高司令官であり、退陣すれば、戦争指導ができなくなる。国際刑事裁判所(ICC)からウクライナの児童連れ去りで逮捕状を発行されており、辞めれば、国際法廷で戦争犯罪を裁かれかねない。2020年、2期続投に道を開く憲法改正を行っており、「終身独裁」を狙っているのは明らかだ。 ロシアの独立系メディア「メドゥーザ」(7月19日)は、クレムリン当局者の話として、プーチン氏が80%以上の得票率で圧勝する方向で、秋に愛国イベントを開催するなど準備を開始したと伝えた。政治戦略を担当するキリエンコ大統領府第一副長官がチーフで、行政や政府系企業を総動員して記録的勝利を達成する方針という。プーチン氏が過去4回の選挙で8割の票を得たことはなかった。 ロシアの選挙は不正の多い「官製選挙」だが、政権側は盤石の体制を固めつつある。この夏、プリゴジン氏だけでなく、左右両派の反プーチン勢力が弾圧された。服役中の活動家、アレクセイ・ナワリヌイ氏に対して新たな裁判が実施され、19年の刑が言い渡されたほか、多くのリベラル派が拘束された。続投に反対していた極右の活動家、イーゴリ・ギルキン氏も逮捕された。 ●プーチン大統領(71歳)の大統領選対抗馬は、79歳の共産党委員長 クレムリンがコントロールする議会は8月、選挙監視団体の活動を大幅に規制する法律を制定した。従来の選挙では、民間選挙監視団体が不正や混乱の実態を動画で撮影して公表したが、今後は投票所や開票所の監視活動が制限される。最大の監視団体、ゴロスの幹部らも逮捕された。政権側は対立候補の人選も進めており、野党第一党の共産党に対しては、79歳のジュガーノフ委員長に出馬を要請した。これは、71歳になるプーチン氏の高齢問題が争点になるのを防ぐためで、対立候補は高齢者やアピール度の低い候補で固める意向という。 選挙までは、国民の反発を防ぐため、「安全運転」を進めそうだ。2022年9月の部分的動員令後、ロシア各地で反戦運動が発生しただけに、総動員令や戒厳令は避けるとみられる。年金や公務員給与の増額などバラマキ政策も進めそうだ。当選すれば、6年のフリーハンドを得て、民意を気にせず、戦争継続が可能になる。一方のウクライナは、長引く戦火で経済は疲弊し、国民の厭戦気分が高まりつつある。2024年11月の米大統領選で共和党候補が当選すれば、西側の結束は一気に弱まる。戦争長期化はロシアに有利とプーチン氏が考えているのは間違いない。 とはいえ、長期政権に伴うひずみや閉塞感も確実に高まっている。 ●プーチンが抱える“4つの不安要素” 第一に、プーチン大統領の健康問題がある。謎のブロガー「SVR(対外情報庁)将軍」は、「プーチンは重い病気を患っており、回復の見込みはない。代わりに、影武者が公務をこなしており、出番が増える一方だ」と繰り返しSNSに投稿している。真偽は不明だが、プーチン氏の動作には、かつてのマッチョぶりはみられない。 第二に、プーチン氏続投の場合、国際的孤立が長期化するとの不安がエリート層にある。ICCから逮捕状を出されたプーチン氏が外遊できる国は、旧ソ連諸国や中国程度で、大統領の任務である外交の遂行は困難だ。西側の経済制裁への経済界の不満も根強い。 第三に、軍事統制経済の長期化が経済・社会を束縛している。国家予算の半分近くが軍事費と治安対策費に充てられ、財政赤字も拡大。若く有能なIT人材など百万人以上が国外脱出した。ロシア経済は技術開発が遅れ、資源依存、中国依存体制が一段と強まった。 第四に、ロシア各地では2022年2月のウクライナ侵攻後、これまでに一千件以上の中・大規模な爆発・火災が発生。連日のように現場の動画がSNSで拡散しており、負傷者は計一万人以上とされる。過失の可能性もあるが、ウクライナ軍のドローン攻撃も激化した。ウクライナのパルチザンやロシアの反体制派のテロの可能性も憶測される。情報統制下で調査結果が公表されておらず、国民の不安や疑心暗鬼を強めている。 ●くすぶるロシア国内の閉塞感 ロシアの世論調査では、70%以上がウクライナ侵攻を依然支持しているが、6月のプリゴジンの乱でワグネルがロストフナドヌーの南部軍管区司令部を制圧すると、若者ら市民が大量に集まって歓声を上げ、食料を差し入れたり、スマホで撮影する動画が発信された。SNS利用が巧みなプリゴジン氏は、エリートの腐敗を非難したり、「ウクライナは主権国家だ」と戦争目的を否定したり、「即時終戦」を訴えたこともある。社会の閉塞感への不満と現状変更への欲望が、ワグネルへの歓声につながったようだ。 新興ネットメディアでは、プーチン氏の後継者予測が論じられるようになった。プーチン氏の5選が確実と言い切るのは、まだ早いかもしれない。 |
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●プーチンの再選は確定 形骸化した選挙で強烈な個性放つ美容インフルエンサー 1/7
ロシアの大統領選が3月に行われる。33人が中央選管に立候補の書類を出し、11人が受理された。プーチン大統領が80%以上の得票率となるかどうかだけが焦点で、信任投票と化している。そんな中、美容インフルエンサー候補が注目を集めている。 選管は、ウクライナ戦争終結と政治犯の釈放を公約に掲げるテレビジャーナリストのエカテリーナ・ドゥンツォワ氏の出馬を禁止した。書類の不備だという。ライバルにはならないとみられるが、プーチン氏の意向が働いたといわれている。反体制派指導者のアレクセイ・ナワリヌイ受刑者は政治犯として服役中だ。 無風の選挙戦となりそうだが、注目を集めるのは美容インフルエンサーのラダ・ルスキフ(39)だ。12月29日にロシアのSNS「テレグラム」に「最終日に書類を受け取った中央選挙管理委員会、特に中央選挙管理委員会委員長に感謝します」と記した。 ロシア事情通は「ラダはインスタグラムとテレグラムなどでトータル80万人以上のフォロワーを持つ人気インフルエンサーですが、かなりの変人候補=Bプーチンがまともで有能に見え、プーチン人気を高めるためだけに出馬を許可されたようなものです。反体制派、民主主義推進派は候補者から排除されたので、公正な選挙をやるという体裁を整えるためもあり、クレムリンが白羽の矢を立てたという話もあります」と指摘する。 ラダは「なぜ世界がロシア人についてこれほど不満を言うのか、私はよく理解しています。なぜなら、現時点ではロシアは美女と優れたメークアップアーティスト以外には何も世界に与えていないからです。ロシア人も成長しないといけない」と主張している。 プーチン氏に勝つつもりはないというが、選挙に注目は集まりそうだ。 |
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●日本が戦争犯罪の“抜け穴”になるおそれも…プーチン大統領に“逮捕状” 1/7
ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、2023年3月にプーチン大統領に戦争犯罪容疑で逮捕状を出した国際刑事裁判所の赤根智子裁判官が、NNNの単独取材に応じた。赤根氏は「日本が戦争犯罪のループホール(抜け穴)になるおそれがある」と指摘する。その理由とは。 ●ロシアから指名手配の赤根氏「夜は出歩かず、食事相手は知人のみ」 2018年、ICC(=国際刑事裁判所)の裁判官に就任した赤根智子氏。日本人としては3人目だ。22年2月、ロシアがウクライナへの侵攻を開始したことについては、「ヨーロッパで戦争犯罪が大々的な形で起きるとは思っていなかったので衝撃を受けた。自分自身も目が覚めた気がする」と振り返る。23年3月には、ウクライナの占領地からの子どもの連れ去りに関与したとして、ロシアのプーチン大統領に対し、戦争犯罪容疑で逮捕状を出す判断に加わった。 ロシア側は激しく反発し、赤根氏らを指名手配している。赤根氏は、指名手配されたことを受け、日ごろから安全面に配慮していると語った。 「私はもともと日本の検事です。被疑者による物理的・肉体的、あるいはそれ以外の脅威にさらされることがないわけではない。それに負けていては、司法の仕事は務まらない。(ロシアに指名手配されて以降)なるべく昼間に出歩き、外では飲み歩かないようにしている。食事も知人ととるようにしていて、面識がない人とは食事に行かない」 赤根氏は、自らの身に危険が及ぶことは「あり得る」と語った。指名手配されて以降、実際に怖い目にあったことがあるかについては「さまざまな関係者がいるので申し上げられない」と述べるにとどめた。 ●「ICCは最後の砦(とりで)」 逮捕状に有効期限なし ICC(=国際刑事裁判所)はオランダ・ハーグにある。戦争犯罪や人道に対する罪、大量虐殺などを犯した個人を訴追して処罰するために設置された常設の国際刑事裁判機関だ。2002年に設立条約が発効し、日本は07年に加盟した。現在123の国と地域が加盟しているが、ロシアやアメリカ、中国などは加盟していない。そのため、プーチン氏が自国にとどまる限り、逮捕は困難な状況だ。ただ、ICCの加盟国を訪問すれば身柄を拘束される可能性があり、逮捕状が出たことでプーチン氏の外遊は事実上、制限されている。 赤根氏はプーチン氏への逮捕状について「3人の裁判官で慎重に相談しながら決めた」とした上で、十分な証拠があったことを強調。「日本の逮捕状とは異なり、ICCの逮捕状には有効期限がない。長いスパンで見ている」と述べ、ICCが「最後の砦(とりで)」としての役割を果たすことが重要だと語った。 ●日本が戦争犯罪の“抜け穴”に 法整備が急務 ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとイスラム組織「ハマス」による衝突など、世界では戦争犯罪が疑われるケースが後を絶たない。しかし、日本の法制度には戦争犯罪や人道に対する罪に関する処罰規定はないため、赤根氏は「日本が戦争犯罪のループホール(抜け穴)になるおそれがある」と指摘。法整備が急務だと訴えた。 「ヨーロッパの多くの国々には『戦争犯罪』に関する国内法がある。しかし日本には、国外で外国人が行った戦争犯罪に関する処罰規定がない。そのため、たとえば国外で起きた日本人が関わっていない戦争犯罪の容疑者が日本に“難民”として入ってきた場合、日本では何の法的措置もとることができないのが現状だ。日本は戦争犯罪者が逃げ込める場所になってしまうのではないか、日本の法制度がループホール(抜け穴)になってしまうのではないか…と懸念している。最終的には、法の世界における日本の安全保障にもつながる問題で、こうした事態をなるべく早く解消するべきだ」 ――日本に戦争犯罪に関する国内法がないのは、なぜか? 「日本は戦後、ずっと平和を維持していて、日本周辺でも大きな有事が起きていない。そのため、戦争犯罪に関する国内法は必要ないという声が一番大きかったのではないか」 「ただ、ウクライナ(侵攻)の事態が起きて世界の情勢が大きく変わり、法整備の必要性が増していると感じる。正直、私自身もウクライナの事態が起きるまでは、あまり考えていなかった。ただ、今は日本の近辺で戦争犯罪が起きないという断言はできない。日本を守るのは防衛力だけではない。法の力によって“そういうことをしたら処罰されるのだ”という姿勢を示すことが重要だ」 ●並々ならぬ正義感 『銭形平次』の影響も… 赤根氏へのインタビューを通して感じたのは、並々ならぬ正義感だ。その強い正義感は、どこで培われたものなのかと聞くと、子どもの頃に見ていたテレビ時代劇『銭形平次』に少なからず影響を受けたという。善事を勧め、悪事を懲らす「勧善懲悪」のストーリーが好きで、検事やICCの裁判官としての仕事にも通ずるものがあると語った。 「勧善懲悪――最終的には必ず善が勝つというストーリーが非常に好きだった。誰かが悪いことをしたときは、処罰されなければならない。検事は、法律上の手続きやプロセスが大切で、有罪が認められるかという問題もあるので、単純ではない。ただ、正義のために仕事をしなければならないという気持ちは変わらなかった」 「検事として正義のためにずっと仕事を続けてきて、今もその延長線上にいる。世界でも不正義、不処罰がまかり通っている。そういうことに対して、何らかの形で法的に改善する方法を考えたい、その一心だ」 |
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●年のはじめに考える 賄賂が人間的とされる国 1/7
バルト諸国を除く旧ソ連圏の国々は総じて汚職天国です。「賄賂は潤滑油」と、かの地でもよく言われます。大学はじめ学校の入学や成績、車の運転免許証取得に絡むものなど賄賂は日常的です。 中でも最も身近なのは交通違反もみ消しのための賄賂でしょう。 車を運転中に交通警察官に停止を命じられて、違反切符を切られる。手続きが煩わしくて時間がかかるし、ささいな違反に難癖をつけてきた警官に口答えしたら、免許証を没収されかねないという懸念も先に立つ。 取り締まりを賄賂目当てにしている警官がいることは市民の間では常識です。 少しばかりカネがかかってもさっさと片付けたい、と思うのが人情というもの。そこで、警官に袖の下を持ち掛ける際に使われるのが、次の常套句(じょうとうく)です。 「人間的に解決しましょう」 ●法律はすり抜けるもの クレプトクラシー(泥棒政治)という言葉があります。ひと握りの権力者とその取り巻きが国の富を食い物にする体制を指します。 その最たるものがロシアのプーチン体制。贅(ぜい)を尽くした「プーチン宮殿」の存在を暴いた野党指導者のナワリヌイ氏は獄につながれたままです。 昔の話になりますが、「役人に賄賂をたかられて困る」と苦情を聞かされたプーチン大統領が「賄賂をせびる連中の手を切り落としてしまえ」と毒づいたことがありました。 それが今では…。「魚は頭から腐る」ものなのでしょう。 「合意は拘束する」と教えるローマ法の精神が根付いた西欧とは違い、ロシアは、権威主義的なビザンチン文明の影響を強く受けました。 ロシアには「法は電柱のようなもの」ということわざがあります。電柱は跳び越えられるものではなく、すり抜けていくものだ、という意味です。法を軽視するロシア人気質を表しています。 腐敗役人には袖の下をもらうことに罪悪感はうかがえません。むしろ賄賂は自分のポストに見合った役得と見なしているふしもうかがえます。 帝政時代を含めロシアの支配が長かった旧ソ連圏。汚職はそこにはびこる風土病ともいえます。 欧州連合(EU)は昨年末の首脳会議でウクライナとの加盟交渉を開始することを決めました。ロシアの引力圏を脱して欧州を志向するゼレンスキー政権にとって、EU加盟は北大西洋条約機構(NATO)加盟と並ぶ悲願です。 ただし、ウクライナが乗り越えなければならないハードルは高い。EUは加盟条件に汚職対策や法の支配の確立を挙げています。 世界の汚職を監視する非政府組織トランスペアレンシー・インターナショナルによる2022年の国別腐敗度調査では、180カ国・地域の中でウクライナは116位。以前よりは改善しているものの、137位のロシアをはじめ旧ソ連各諸国とともに下位グループの常連です。 ●ウクライナの脱露入欧 ウクライナを支援する欧米からうるさく言われて、ゼレンスキー大統領も汚職摘発の手を強めています。 最高裁長官が判決に手心を加えた見返りに270万ドルの賄賂を受け取った容疑で逮捕・罷免されました。 各州の徴兵窓口のトップが全員解任されたこともあります。徴兵逃れと引き換えに賄賂を受け取った腐敗が蔓延(まんえん)したためです。賄賂は5千〜1万ドルが相場。ちなみに、欧州の最貧国の一つであるウクライナの平均給与は月額500ドル足らずです。 オデッサ州のトップはスペインで計500万ドル相当の別荘や高級乗用車を購入するのに汚いカネを充てていました。前線では兵士が死を賭して戦っているのを尻目に、私腹を肥やす連中が後を絶ちません。 ロシアとウクライナは一体だ、と見なすプーチン氏は、ウクライナが西を向くのが許せません。力ずくで自分の縄張りに留め置こうと侵略に及びました。これはまるっきり逆効果になりましたが。 一方、EUの加盟条件が意味するところは、ロシア的なるものとの決別です。染み付いた腐敗体質を改めるというよりも、まったく新しい社会に生まれ変わるに等しい。並大抵の努力では成し遂げられません。 加盟までには長い時間がかかるでしょう。ウクライナは初志を貫徹する覚悟を問われます。 |
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●ロシア軍、北朝鮮製ミサイルでウクライナの兵站基地爆破 対応難しく 1/7
ロシアはウクライナとの国境のすぐ北の陣地から、北朝鮮製の弾道ミサイルをウクライナに撃ち込んでいる。 ミサイルはKN-23短距離弾道ミサイルとみられ、すでにウクライナ側に大きな損害を与えた可能性がある。あるオープンソース・インテリジェンス(OSINT)アナリストは、ロシアが使い始めた北朝鮮製のミサイルによって最近、ウクライナ軍の兵站基地2カ所が攻撃され、貴重なタンク車少なくとも9両が撃破されたとみている。 KN-23は500kgほどの弾頭を搭載する重量およそ3400kgの固体燃料式ミサイルだ。ロシアによるKN-23の入手は、ロシアがウクライナで拡大して23カ月目になる戦争が大幅にエスカレートしたことを意味する。ウクライナは同様の兵器で反撃することはできないかもしれない。 北朝鮮が自国製のミサイルを輸出することは国際的な制裁で禁じられている。だが、ウラジーミル・プーチンと金正恩という2人の独裁者がそれぞれ支配するロシアと北朝鮮の政権が、制裁をあからさまに無視し、戦争を拡大したところで、ウクライナやその支援諸国から重大な対抗措置を招くことはないと踏んでいるのは明らかだ。 米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は先週の記者会見で、北朝鮮がロシア側にミサイルのほか発射機も提供したことを明らかにしている。慣性誘導の弾道ミサイルであるKN-23は通常、装輪の輸送起立発射機(TEL)から発射される。射程は640kmかそこらで、照準点から32m以内に着弾するとされる。 KN-23は超強力な兵器というわけではない。というより、おおむねロシアのイスカンデル弾道ミサイルに似ている。ウクライナ軍は、保有する最高の米国製防空システムであるパトリオットPAC-2地対空ミサイルシステムで、イスカンデルをたびたび撃墜している。 だが、ウクライナにはパトリオットの発射機が3基しかない。おそらく首都キーウ、南部の港湾都市オデーサ、東部の主要都市ハルキウに1基ずつ配備されている。ほかの都市は弾道ミサイルに対して無防備な状態にある。実際、カービーの説明では、ロシア軍によるKN-23を用いた最初の攻撃で目標にされたのは南部の都市ザポリージャだった。ザポリージャはパトリオットでカバーされていない。 北朝鮮はKN-23の提供によってロシアのミサイル在庫数を増やし、先月以来、ロシア軍がウクライナに対して過去最大規模のミサイル一斉攻撃を続けるのを手助けしている。ロシア側の狙いが、防空兵器の供給が限られるウクライナ側が迎撃できる以上のミサイルを発射することにあるのは明らかだ。 ●ATACMSなど西側製兵器がなければ効果的な対応は難しい ウクライナはKN-23の発射機を攻撃目標にできるかもしれないが、攻撃の手段が問題になる。ウクライナ国産のトーチカU弾道ミサイルの射程は120kmほどにとどまる。ウクライナは英国とフランスから空中発射型の巡航ミサイル、米国から地上発射型のミサイルを供与されているものの、これらについてはロシア国内の攻撃に使わないことを支援国側に保証している。 ウクライナは長距離攻撃用のドローン(無人機)を製造しているほか、古いS-200地対空ミサイルシステムを射程480kmの地対空兵器に改造してもいる。しかし、いずれも地上のKN-23ミサイルシステムを破壊できるほどの迅速さと精度で攻撃できるのかは不明だ。 そもそも、KN-23の発射機を直接狙うとすれば、ウクライナ側はミサイルの発射前、あるいは発射後十分早い時点で探知する必要があるが、それができるのかどうかすらわからない。 ウクライナは占領下のクリミアなど国内のロシア軍の後方地域への攻撃を強めることで、非対称的に対抗することもできるかもしれない。しかし、やはりその手段が問題になる。ウクライナが自国で生産している遠距離攻撃用の弾薬は月に数えるほどだ。残りの弾薬ニーズは支援国に頼っている。だが、支援国は当てにできない。 最悪なのは米国だ。米国は昨年、射程が160kmあるATACMS地対地弾道ミサイルを20発かそこらウクライナに供与したが、それ以降、ATACMSの補充を拒んでいる。 ホワイトハウスが最も強力な兵器類のウクライナへの大量供与に消極的なのは問題である。ただ、それよりもはるかに大きな問題は、米議会のロシア寄りの共和党議員らが、ホワイトハウスによる610億ドル(約8兆8000億円)規模の対ウクライナ支援予算案の採決を何カ月も拒んでいることだ。 共和党がロシアではなくウクライナを支えると決断するまで、ロシアは弾頭と合わせれば4t近くの重さになる北朝鮮ミサイルを、防御が薄くなってきているウクライナに撃ち込み続けることができる。ウクライナ側には、反撃する手段がほとんどなくなってしまうだろう。 |
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●ロシアで潜入行 ウクライナ工作員、闇夜にSu-34爆撃機燃やす 1/7
ウクライナの工作員がロシアに潜入し、1450kmほど移動して中南部のチェリャビンスク空軍基地まで行き、雪に覆われた駐機場に夜の闇に紛れて忍び込み、ロシア空軍のスホーイSu-34戦闘爆撃機に火をつけた。 ウクライナの工作員によるロシア国内での破壊工作はこれが初めてではないが、そのなかでも最も大胆不敵なものだったかもしれない。ロシア空軍は「絶滅危惧種」になりつつあるSu-34をまた1機失った可能性がある。 ウクライナ国防省情報総局(GUR)は、このSu-34は第21混成航空師団所属のものだとしている。放火した様子とみられる動画を投稿し、「機体からなぜ出火したのか明らかになった」と皮肉っている。 ウクライナの工作員は直近では2022年10月にもロシア北西部プスコフの飛行場に潜入し、カモフKa-52攻撃ヘリコプターを爆破していた。プスコフはウクライナとの国境からおよそ800km離れている。ちなみにチェリャビンスクはウラル山脈の東麓、カザフスタンのすぐ北にある都市だ。 ウクライナが何百kmも離れたロシアの航空基地を攻撃する手段はドローン(無人機)やミサイルなどほかにもあるが、直接の破壊工作はロシアにとって最もばつの悪いものかもしれない。航空基地のセキュリティーはいったいどうなっているのだ? ロシアはいまが戦時中だということも知らないのか? ウクライナがチェリャビンスク空軍基地やSu-34を攻撃目標に据えた理由は明らかだ。双発複座の超音速機であるSu-34はロシア空軍で最高峰の戦闘爆撃機であり、ロシアがウクライナで拡大して23カ月目になる戦争の1000km近くにおよぶ戦線で、最も活発に行動しているロシア軍機の一つでもあるからだ。 Su-34は連日のように出撃し、射程約40kmの衛星誘導の滑空爆弾をウクライナ軍の陣地に向けて投下している。ウクライナの軍人オレクサンドル・ソロニコは、強力な滑空爆弾はウクライナ軍部隊に「最も大きな恐怖を与えるものの一つ」になっていると述べている。 ウクライナはロシア空軍のSu-34を破壊するためにあらゆる手を尽くしている。先月には、南部で長距離防空システムを機動的に運用して1週間で4機のSu-34を撃墜した。もし今回火をつけられた機体が修復不能なら、戦争拡大前に150機超あったロシア空軍のSu-34は125機ほどに減った可能性がある。 ウクライナの破壊工作作戦は有効だが危険をともなう。これまでにウクライナの破壊工作員が何人も捕まり、殺害されている。最も新しいとみられるケースでは昨年8月、ウクライナと国境を接するロシア南西部ブリャンスク州に密かに越境しようとしたウクライナの工作員チームがロシア軍に制止され、うち2人が殺害されたと伝えられる。 |
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●上川外務大臣のウクライナ訪問 1/7
1月7日(現地時間同日)、上川陽子外務大臣は、ウクライナを訪問し、キーウにてドミトロ・クレーバ外務大臣との間で日・ウクライナ外相会談等を行います。 1 今次ウクライナ訪問においては、上川外務大臣からクレーバ外務大臣に対し、現下の厳しい国際情勢においても、ウクライナに寄り添って支援していくとの姿勢は不変であるとの我が国の立場につき改めてウクライナ側に直接伝達するとともに、我が国による具体的支援やその方針につきウクライナ側に説明する考えです。 2 また、本年2月19日にシュミハリ・ウクライナ首相の出席を得て、日本で開催予定の「日・ウクライナ経済復興推進会議」を通じて、日本が官民をあげてウクライナの復旧・復興に取り組む姿勢を内外に力強く示したいとの我が国の姿勢を改めて伝達し、今後、同会議の成功に向けて、両国でいかに協力を強化していくかについても協議を行います。 3 さらに、ウクライナ側が重視する公正かつ永続的な平和実現に向けた取組、とりわけ、その実現に向けた我が国による具体的貢献の方途について、率直にウクライナ側と意見交換を行う考えです。 4 今次訪問日程においては、越冬支援のための大型電力関連機材供与式に参加するとともに、女性自身が指導的な立場にたって復興や平和構築に参画することで、より持続可能な平和に近づくというWPSの考え方を重視する観点から、女性及び子供等への支援現場を訪れる予定です。 5 今般の訪問全般を通じ、ロシアによるウクライナ侵略のような力による一方的な現状変更は決して認めてはならないとの観点から、我が国として「法の支配」に基づく国際秩序を守り抜く決意であることを示すとともに、戦争において特に脆弱な立場に立たされる女性・子供を守り、「人間の尊厳」が確保されることの重要性についても強調する考えです。 |
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● 上川外相がウクライナ訪問、キーウで外相会談へ…支援強化の方針 1/7
外務省は7日午前、上川外相がウクライナを訪問したと発表した。同国の首都キーウでドミトロ・クレバ外相らと会談し、官民が連携してウクライナ支援を強化する方針を伝える見通しだ。ロシアによる侵略以降、日本の外相がウクライナに入ったのは2例目となる。 |
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●侵攻戦死者遺族に支援約束 プーチン氏、クリスマスイブに 1/7
ロシアのプーチン大統領はロシア正教のクリスマスイブに当たる6日深夜、ウクライナで続ける侵攻作戦で戦死した兵士らの遺族とモスクワ郊外の大統領公邸で会談し、国の支援を約束した。タス通信が伝えた。 プーチン氏は、戦死者は「勇敢に戦った」と称賛し、遺族が必要とする支援を国を挙げて実施していくと述べた。 プーチン氏はこの後、公邸の敷地内にある教会で行われたクリスマスのミサに遺族らと共に出席した。 |
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●プーチン大統領の“実は…”に迫る 遅刻魔、独演会、番記者…意外な素顔も? 1/7
2023年12月8日にロシア大統領選挙で通算5回目の出馬を表明したプーチン大統領。24年2月24日にはウクライナ侵攻開始から2年を迎える。中東情勢でニュースへの登場回数は減っているが、良くも悪くも世界の注目度は変わらない。日々のニュースでは紹介できないプーチン大統領の実像の一端を、モスクワからリポートする。 ●疾走する公用車 プーチン大統領の“出勤” NNNモスクワ支局が面するクツゾフスキー大通りは時折、騒音が“ピタリ”と止まる瞬間がある。このとき、車は1台も走ってない。やがて空気を切り裂くような音をまとって車列が駆け抜ける。プーチン大統領自慢の国産車「アウルス」だ。郊外にある大統領公邸から、クレムリンへの出勤風景である。 ●大使に言い訳…“遅刻魔”プーチン大統領 「厳粛な式典を少し遅らせざるを得なくなったことをご理解いただきたい」。23年12月4日、新任大使21人を迎える式典の冒頭で、プーチン大統領は遅刻の言い訳から始めた。実は、プーチン大統領は“遅刻の常習犯”である。 この日の予定で明らかにされていたのは「ロシア展の視察」と「新任大使との式典」。ロシアメディアは「式典」を中継すべく午後2時前からスタンバイしていたが、大統領の車列がわれわれの支局の前を通ったのが、既に午後2時すぎ。ところがその車列はまず「ロシア展」に向かったため、「新任大使との式典」は大幅な遅刻となった。 このほかにも、予定された演説の開始時間が遅れることはメディアの中では“常識”である。ロシアメディアにすら伝えられないらしいプーチン大統領の「予定」。それが公に批判されることはない。 ●プーチン大統領の「予定」は「未定」 こうしたことから、プーチン大統領の「予定」はほぼ分からない。モスクワ支局からは毎週、「来週の予定」を東京に報告するのだが、大イベントでない限り、事前に「プーチン大統領の動き」を知ることはできない。 12月4日もそうだった。夜になって突然、国営タス通信がプーチン大統領のアラブ首長国連邦とサウジアラビアへの外遊を伝えた。しかし、「いつ」がない。もちろん、「時間」などない。通常、プーチン大統領の日程は、ぺスコフ大統領報道官が昼頃の記者会見でロシアメディアなどに対して明らかにする。それでも「決まったら良きタイミングでお知らせします」と述べるばかり。非友好国「日本」のメディアが「大統領の予定」を知る術はない。 ●唯一、大統領に密着できる「ザルビン記者」とは? ところが、このプーチン大統領の動向を事前に完全に知っているとみられる記者が1人だけいる。国営「ロシアテレビ」記者のパベル・ザルビン氏だ。42歳。地方出身で大学卒業後すぐに国営放送記者となり、2018年から番組「モスクワ・クレムリン・プーチン」のリポーターを務めている。執務室にも出入りが許されているようで、ロシアでは知られた存在である。 ちなみに、彼がリポーターを務める番組「モスクワ・クレムリン・プーチン」は、毎週日曜「夜11時頃」放送される。プーチン大統領の一週間をまとめた45分程度の番組で、登場するのは、ほぼプーチン大統領1人だ。この番組の大統領インタビューを国営メディアが速報することすらある。ザルビン記者のみが知り得ることがあるのである。 ●毎日、テレビに登場! 4時間超の記者会見も… そんなプーチン大統領は、ほぼ毎日、どこかで挨拶か演説をしている。国営ニュースチャンネルは、それを必ず放送する。“毎日プーチン”状態だ。 実は、この演説は毎回かなり長い。日本のニュースで扱う場合は10〜15秒に編集せざるを得ないのだが、実際には20分から1時間半以上も話しているのも珍しくない。大統領選挙が告示されてからも変わらない強力なPR活動だ。 ただ驚くのは、メモを手にしながらとはいえ、とうとうと話し続けることである。日本の政治家でここまでできる人を知らない。23年12月14日に開いた「国民直接対話」と「大規模記者会見」の合体イベントは、実に4時間3分話し続けた。これまでの最長記録は、2008年の4時間40分。プーチン大統領は相当な雄弁家である。 ●自慢の高級国産車「アウルス」…黄金のロシア 話は横道にそれるが、冒頭でお伝えしたプーチン大統領自慢の公用車「アウルス」についても紹介しておきたい。大統領は以前、「メルセデス・ベンツS 600ガードプルマン」を公用車に使っていたが、18年5月7日の大統領就任式から「アウルス・セナート・リムジン」に替えた。 「アウルス」はロシアが威信をかけて開発した高級国産車ブランド。大統領公用車には防弾ガラスはもちろんのこと、パンクしても、時速60キロであればそのまま80キロ走り続けることができるタイヤも装着している。車重は約6トンで一般車の3倍以上。説明によれば「他のクルマよりも安全」なのだとか。23年9月には、極東を訪れた北朝鮮の金正恩総書記に「これが我々のアウルスだ」と自慢している。 ●「プーチンカレンダー」の“忖度” 日本ではまず見ない光景として、毎年秋に書店に並ぶ「プーチン・カレンダー」がある。12か月すべてがプーチン大統領の写真で占められている。製作しているのはカレンダー製作会社、新聞社、出版社で、一部300〜800ルーブル(約470〜1250円)と高くはない。販売案内には「関係者への贈り物にどうぞ」と書いてある。 大統領選を控えた2023年度版は「サングラス姿」、「柔道着姿」、「市民との歓談」など、いずれも“強さ”と“庶民性”を強調した写真が採用されている。「ウクライナ侵攻」に関する写真はない。果たして、この写真は誰が選ぶのか。大統領府なのだろうか…? 製作したサンクトペテルブルクの出版社に聞いてみたところ「大統領府が関与しているわけではない。公開された写真ライブラリーから選んでいる」というが、「古い写真を使う」のだそうで、71歳になったプーチン大統領への忖度が、そこに働いているようだ。 ●“プーチン死去”情報と“影武者”報道 プーチン大統領の健康問題は関心の的であることは間違いない。大手メディアが報じることはないが、ネットには時々、そうした情報も流れる。23年10月26日には、ロシアでも閲覧できるフォロワー45万人のテレグラムに「プーチン大統領が自宅で死去。医師は蘇生を中止した」というのもあった。これにイギリスの大衆紙「ザ・サン」が食いつき、その後姿を見せたプーチン大統領について「生き返ったといううわさがロシア中を駆け巡っている」と“影武者”疑惑を展開した。 確かに、毎日のようにテレビで演説するプーチン大統領が23年1月は一週間程度、姿を見せなかったことはある。この1年は、演説中によく“せき払い”もしていた。23年6月には感染症を極端に警戒する大統領が突然、南部ダゲスタン共和国を訪問し、民衆の中で写真に収まる行動に出た。今回の“死亡説”と“替え玉”疑惑の発端である。 ただ、大統領府は余裕の表情だ。ペスコフ大統領報道官は11月の講演会で「専門家は“影武者”は3人なのか4人なのか、と推測しているけれど、けさの式典に出たプーチンが、“影武者”の3人目なのか4人目なのか、それはわかりませんね」と笑い飛ばした。 プーチン氏は24年3月17日、通算5回目となる大統領選挙に臨む。当選して6年の任期を全うすれば、77歳。それでも、現在81歳のアメリカ・バイデン大統領より、まだ若いのだが…。 |
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●ロシア兵器生産能力 多額投資で大幅増強 ウクライナによる膠着打開の戦略? 1/7
ウクライナ軍は、反転攻勢が膠着状態に陥る一方、ロシア軍が東部で攻勢を強め、厳しい状況が続く。しかも、米国そしてEU のウクライナ支援は、まだ新規の予算成立のメドが立っていない。 米政界で民主党、共和党にまたがりロシア政策に関わったフィオナ・ヒル氏は、ウクライナ侵攻でロシアが勝利するリスクについて警鐘を鳴らす。「世界におけるアメリカの地位が低下し、イランと北朝鮮が勢力を拡大し、中国がインド太平洋を支配し、中東が不安定になり、核拡散が敵味方ともに加速するような世界」。プーチン大統領が勝利する世界はどうなるのか。 2023年12月24日『BS朝日 日曜スクープ』は、米国のシンクタンク、戦争研究所に所属する気鋭のアナリスト、カテリナ・ステパネンコ氏を緊急取材。ステパネンコ氏は、両軍の戦力に大きな差はなく、ロシアの防衛線についても、これまでの戦いで得た情報から、対応が準備できると分析する。ただ、ウクライナが反撃するには、欧米の支援が不可欠とも指摘した。 さらに日曜スクープは、ロシアの軍事産業に詳しいジャーナリスト、パトリシア・マリンズ氏も取材。マリンズ氏は、ロシアの軍事企業が戦車や装甲車の生産を拡大して、前線に送り込み損失を補填していると分析し、「わずか4年前には、ロシアの軍産複合体の80%以上が 破産手続き中だった」「ロシア政府は、ウクライナ侵攻後、120億から150億ドル、日本円で最大2兆円を超える多額の投資を行い、生産体制を強化した」と指摘する。 戦時体制を整えるロシアに対して、国際社会はウクライナへの連帯を改めて示し、支援を継続することができるのか。 |
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●今また増え続ける壁と国連の意義とは? 1/7
世界を東西に大きく分断する象徴だったベルリンの壁崩壊から35年。世界には民主主義が広まり平和と安定が訪れるかに思われましたが、新たな壁がよみがえっています。 ●ベルリンの壁崩壊から35年 1989年、東西ベルリンを分断する壁が壊されます。 自由の喜びを知った東側の人々の間に民主化への機運が高まり、翌年、東西ドイツが統一。東欧諸国でも、次々と社会主義政権が倒れ、自由と民主主義に向かう動きは加速します。 そして1991年、その波は大国・ソビエト連邦をも崩壊させたのです。 東西冷戦時代、「鉄のカーテン」を挟んで、にらみ合いが続いた、西側のNATOと、ソ連を筆頭とする「ワルシャワ条約機構」。この軍事同盟もソ連崩壊によって消滅します。 ●冷戦崩壊を嘆いた人物は今 こうした光景を驚きを持って受け止めた、一人のソ連工作員がいました。当時30代のプーチン氏。彼はソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的悲劇」と嘆いたのです。それから30年余り… ロシアの大統領となったプーチン氏はウクライナに侵攻。 プーチン大統領「紛争が激化し、犠牲者が増えているのはすべては西側の責任だ」 プーチン大統領が侵攻の大義の一つに掲げたのが、西側の軍事同盟であるNATOの拡大阻止。現在その加盟国は31カ国に達しています。 プーチン大統領「(NATOの)軍事インフラにはその脅威に応じた対抗措置をとる」 まるで冷戦時代に逆戻りしたかのように、新たな「東西対立」の壁が築かれようとしているのです。 ●「歴史の終わり」著者は今 冷戦終結当時、世界中でベストセラーとなった本があります。フランシス・フクヤマ著「歴史の終わり」。 この本の中で、冷戦終結で、民主主義だけが唯一のイデオロギーとなり、世界に平和と安定がもたらされるとしていたフクヤマ氏は、今… フランシス・フクヤマ氏(米スタンフォード大学教授・国際政治学)「(冷戦終結は)非常にうれしかった。共産主義国が、民主主義国に置き換わり、広がることは、世界の人々にとって非常にいい結果だと思いました。しかし、多くのことが起きて、民主主義の後退を招いたのです」 ●冷戦後の歪みと矛盾とは? 冷戦後の世界は、平和が訪れるどころか、東西二つの大国によって保たれていたバランスが崩れ、その歪みや矛盾が各地で噴出します。 ブッシュ大統領(当時)「世界が民主主義を求めている」 そしてアメリカによる民主主義を根付かせようという試みはうまくいきませんでした。また、中東諸国で広がった民主化運動「アラブの春」が波及したリビアやシリアなどでは、内戦によって多くの難民が生み出されています。 ヨーロッパでは流入する難民を阻止するためのフェンスが築かれ、人々の心に不寛容、排他主義という、新たな「壁」が生みだされます。 またアメリカでも… トランプ大統領(当時)「壁なしには国境の安全は得られない!」 当時のトランプ大統領が、メキシコとの国境に巨大な壁の建設を掲げます。 そしてウクライナ侵攻後には、ロシアと接するポーランドやフィンランドで国境沿いに長大なフェンスが築かれたのです。 分断の象徴だった「ベルリンの壁」崩壊から35年。世界には、新たな壁が次々と築かれています。 さらに今、「見えざる壁」が立ちはだかろうとしているのです。 F・フクヤマ氏「民主主義が人々を失望させて他のシステムがよく見え、期待するようになりました。特にアメリカの民主主義が機能していません。大衆に迎合した政治家の台頭が民主主義の基盤を脅かす一方で、ロシアや中国のような権威主義国家が強化されています」 ●「見えざる壁」とは? 「民主主義」と「権威主義」の対立です。ウクライナに攻め込んだロシア。習近平主席による強力な独裁体制のもと覇権を強める中国。核・ミサイル開発を進める北朝鮮もロシアに接近する中、こうした国々と、西側諸国の対立は先鋭化しています。 その対立によって… 中満泉氏(国連事務次長・軍縮担当上級代表)「冷戦末期以来、核兵器が使用されるリスクがこれほど高まった時期はありません」 国連安保理でこう訴えたのは、国連軍縮部門トップの中満泉さん。今回、番組の取材に応じました。 中満泉氏「(核兵器が)あたかも実際に戦場で使用可能な兵器であるという、非常に誤った言説が広まりつつあると。核戦争に繋がっていくようなそういったリスクが色々なところにある」 実際、ロシアはウクライナに対し「核の威嚇」を続け、また去年、イスラエルの閣僚はパレスチナに対して核兵器の使用に言及しています。 忍び寄る、核戦争の危機。それを防ぐべく、今回のウクライナやガザでの停戦を導く役割を期待されたのが、国連安保理でした。ところが… ウクライナからロシアの即時撤退を求める決議案はロシアの拒否権行使で否決。 ガザでの戦闘停止を求める決議案も… 安保理議長「決議案は否決されました」 アメリカの拒否権によって否決。 国連安保理が、大国の拒否権によって戦争を止められない事態を中満さんは… 中満泉氏「(ガザは)もう2万人の犠牲者を超える状況に達している。私たちにとっては非常に衝撃的 なことでもある。本当に苦しいですし、無力感もある。もっと何かできることがあるんじゃ ないか、毎日考えながら仕事している。私たちの持っている、ある意味武器というのは、“言葉”、“メッセージ”。そのメッセージを持って様々なことを伝えていくことこそが、国連の最も重要な部分。国連が、やはりこういう時代だからこそ必要とされている」 分断する世界で、改めて国連の意義が問われています。 |
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● ウクライナ 軍事侵攻で多数動員も徴兵めぐり不公平感広がる 1/7
ウクライナでは、ロシアによる軍事侵攻が始まって以降、総動員令が出され、18歳から60歳の男性は原則、出国が禁じられています。これまで多くの人が動員されていますが、軍事侵攻が長期化する中、ウクライナ国内では、実際に徴集される人と、そうでない人との間の不公平感が広がっています。 首都キーウの広場などでは、夫が戦地にいる妻たちが政府に対する抗議活動を行い、一定の期間がたてば夫を返すよう訴えるとともに、兵役の義務を果たしているのは一部の人に限られていると批判しました。 こうした中で、追加の動員をめぐる議論も進んでいて、ウクライナ政府は、徴兵の対象年齢を現在の27歳から25歳に引き下げるなどして、より多くの人を動員できるよう、関連する法案を議会に提出しています。 ゼレンスキー大統領は、1月1日付けのイギリスの経済誌「エコノミスト」のインタビュー記事の中で、追加の動員について「前線に行く兵士だけではなく、私たち全員の問題だ。国を守り、占領された土地を解放する唯一の方法だ」と述べ、必要性を強調しました。 また、12月19日に開いた会見では、「軍は45万人から50万人の追加の動員が必要だと要求している」と述べました。 この発言について、ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、軍は具体的な数字は出していないと否定したものの、「われわれは資源を必要としている。武器であり、弾薬であり、そして人々だ」と述べ、追加動員の必要性を訴えました。 ウクライナ国内では、戦闘には参加したくないと、徴兵を担当する当局の関係者に賄賂を贈るといった汚職も後を絶たず、徴兵逃れが社会問題となっています。 ●徴兵避けるため 再び大学に入学するケースも ウクライナでは、学生などは徴兵の対象外となるため、すでに卒業している人たちが再び大学に入学するケースも増えています。 ウクライナのジャーナリストなどでつくる団体「NGL.media」は、2023年11月、徴兵を逃れるために大学が広く利用されているとする報告を発表しました。 それによりますと、30歳から39歳で新たに学生になった男性の数は、ロシアによる軍事侵攻前の2021年には2186人だったのが、2023年は4万3722人と20倍に急増しています。 NHKの取材に応じた30代のウクライナ人の男性は、すでに大学を卒業していましたが、去年、再び大学に入学しました。 入学は、よりよい仕事を得るため新たな専門性を身につける目的だとする一方で徴兵の猶予も理由の一つだとしています。 男性には妻と、幼い2人の娘がいますが、侵攻が始まって以降海外に避難し、1年以上会っていないということです。 動員されて戦地でもしものことがあったときに、残された家族のことが心配だということで「もし戦闘で手や足を失ったとしたら、どうやって生活し誰が子どもを養うのでしょうか。現状では負傷した兵士などへの社会的な保護も十分ではありません」と話していました。 また「ロシアに対する怒りの感情で敵を殺しに行く人もいますが、私にはその準備ができていません。怖いのです」と話していました。 男性は、徴兵を避けるために、大学に入学する人は自分のほかにも大勢いるとしたうえで「給与や社会保障などとは関係なく戦場に行こうという思いにあふれた人たちは、もういなくなってしまいました。私たちは家畜ではなく、みずから選択する人間です。もしも兵士になってほしいのであれば、政府は、人々を追いかけ回すのではなく、みずから志願するように適切な給与を支払うべきです」として、ウクライナ政府が兵士の待遇改善などを進め、志願する人が増えるような環境を整えるべきだと訴えました。 ●前線での戦闘兵士以外の職種で人員確保も ウクライナでは徴兵逃れが相次ぐなか、前線での戦闘に従事する兵士以外にも仕事があるとアピールして、人員の確保に取り組む部隊もあります。 ウクライナ内務省傘下のアゾフ旅団では、戦闘の長期化により、軍の人員の確保が課題となる中、歩兵や砲兵以外にも運転手や料理人、機械工など、20以上の職種で専門的な技術を持った人材を募集しています。 首都キーウにあるアゾフ旅団の施設では、採用を担当するスタッフが市民に直接電話をかけて、溶接工や医療スタッフなどの仕事もあると勧誘していました。 担当者などによりますと、働き始めたあとになって、戦闘に直接携わる職種に変更されることは原則ありません。 また、ほかの部隊に動員される対象にもならないということで、連日10人以上が問い合わせや面接のために施設を訪れているということです。 アゾフ旅団の採用担当者は「戦闘が長引く中、人々も疲れ果てていて、普通の呼びかけでは不十分なときもある。人は、自分の専門性に合うことをするといい仕事ができる。採用に非常にいい影響が出ている」と話していました。 施設を訪れた43歳の溶接工の男性は、装備品の修理などの業務にあたりたいとして、「職種を選ぶことができるのは、とてもよい取り組みだ。何をするか強制もされずに、自分の体調にもあわせて仕事を選ぶことができる」と話していました。 ●専門家 “政府は情報発信と兵士の待遇改善を” ウクライナで相次ぐ徴兵逃れについて、軍事専門家、オレクサンドル・ムシエンコ氏は「徴兵を逃れようとする人はいるが、多くを占めるわけではない」として、現時点で兵員の確保に影響はないとしています。 一方、「300万人、400万人が一度に動員されるわけではないのに、多くの人たちがパニック状態に陥っているように見える」として、市民の間には不安が生じているとも指摘しています。 そして、「動員は『罰』ではなく、国のためになることだと人々の考えを変えていかなければならない。各地で軍事訓練を行い、将来の兵士を育てる準備を進め、よりよい給与を支払わなければならない」として、ウクライナ政府は、人々の理解を得るために情報発信を強化するとともに、兵士の待遇の改善を進めるべきだと指摘しました。 そのうえで、「戦争によって経済が悪化する中、兵士への給与の支払いなどについては、友好国からの支援が大きな役割を果たしている。アメリカやヨーロッパ、日本などからの援助が望まれる」と述べ、軍事支援だけでなく、財政面の支援も必要だと訴えました。 |
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●上川外相がキーウ訪問―54億円支援、連帯アピール 1/7
上川陽子外相は7日(日本時間同)、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪れ、クレバ外相と会談した。ロシアのドローン(無人機)による攻撃で大きな被害が出ていることを踏まえ、その動きを把握する「対無人航空機検知システム」を供与すると表明。日本として引き続き支援に当たる方針を伝えた。 2022年2月の侵攻開始後、岸田内閣の閣僚以上によるウクライナ訪問は3例目。 支援額は3700万ドル(約54億円)で、北大西洋条約機構(NATO)の信託基金に拠出する。ドローン対策のシステム供与は昨年7月に岸田文雄首相がNATO首脳会議に出席した際に表明しており、今回はその追加分。 会談後の共同記者発表で、上川氏は「ロシアが年末年始もキーウを含めた各地へのミサイルや無人機による攻撃を継続していることを強く非難する。ウクライナを支え続ける」と強調。クレバ氏は謝意を示し、「防空システムの支援によって、われわれは今後も戦うことができる」と語った。 上川氏は、2月に東京で開く「日ウクライナ経済復興推進会議」に向け、現地のニーズについてクレバ氏と意見交換。戦闘の長期化で欧米に「支援疲れ」が目立つ中、復旧・復興に向けて日本が寄り添う姿勢を内外にアピールした。 |
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●ウクライナ、日本へ「哀悼と連帯」 ロシアは能登地震に沈黙 1/8
ウクライナのメディアによると、同国のクレバ外相は7日、能登半島地震を受けて「犠牲者への哀悼と日本国民への連帯」の意を示した。 首都キーウ(キエフ)を訪れた上川陽子外相との共同記者発表で発言した。負傷者の一刻も早い回復を祈るとも述べた。 侵攻を続けるロシアは、ウクライナを支援して対ロ制裁を発動した日本を「非友好国」に指定。プーチン大統領は昨年12月中旬の中国内陸部の地震に関しては、発生後すぐさま習近平国家主席に見舞い電を送っている一方、能登半島地震には沈黙している。 |
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●ウクライナとロシア、開戦以来最大規模の捕虜交換…5カ月ぶり 1/8
ロシアとウクライナが開戦後最大規模の捕虜交換を実施した。 ロイター通信によると、ロシアとウクライナは3日にそれぞれ248人と230人の戦争捕虜を交換した。開戦以降で最大規模だ。昨年8月の捕虜交換から5カ月ぶりだ。今回の交渉はアラブ首長国連邦(UAE)が仲裁したという。 ロシア国防省は「UAEの人道的仲裁のおかげでロシアの戦争捕虜248人がウクライナからロシアに送還された」と明らかにした。ウクライナのゼレンスキー大統領も「われわれの国民230人が帰国した。5カ月ぶりに行われたもの」と説明した。 UAEはロシアとウクライナ双方と非常に友好的な関係を結んでいる。UAE外務省は「今回の捕虜交換だけでなく戦争の平和的解決案もともに提示した。両国の悲劇的な戦争が1日も早く終わるよう最善を尽くすだろう」と話した。 ウクライナ帰還捕虜のうち一部は行方不明者あるいは死亡者とされた人が含まれた。彼らはウクライナに到着すると歓迎の人たちとともに国旗を体に巻いて国歌を歌い喜びを隠さなかった。ある帰還兵士は「ウクライナ国民が私たちを忘れなかったおかげで私たちが帰ってくることができた」として涙を流した。 一方、ロシアには4000人以上のウクライナ戦争捕虜が抑留されていると推定される。ただ両国軍が捕虜関連情報を公開しておらず具体的な数字を把握するのは難しいとロイターは伝えた。 |
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●2023年12月の世界製造業PMI発表 1/8
中国物流購買連合会は6日、2023年12月の世界製造業購買担当者指数(PMI)を発表しました。指数は前月から横ばいで、15カ月連続で50%を下回っており、世界経済の回復の安定性は弱く、回復のモメンタムが不足していることを示しています。 2023年12月の世界製造業PMIは48%と前月から横ばいとなり、15カ月連続で50%を下回っています。2023年、世界製造業PMIの年間平均は48.5%で、2022年より3.3ポイント低下となり、通年の各月とも50%以下で推移しました。これは、世界経済の成長の勢いが2022年に比べやや鈍化したことを示しています。 世界経済回復の原動力が引き続き弱まっていることを踏まえ、世界の主要機関は、2024年の経済成長速度は2023年をやや下回るとの見方を示しています。ロシアとウクライナの戦争、イスラエルとパレスチナの紛争、紅海周辺の海運情勢などの地政学的衝突は世界貿易に影響を与え、2024年の世界経済回復を困難にする主要な要因となり、世界の産業チェーンとサプライチェーンの安定性への課題となっています。 2023年のアジア製造業購買担当者指数(PMI)の年間平均値は2022年と同水準の50.7%で、アジアの経済成長の強靭性が比較的強いことを示しました。世界の主要機関のアジアの経済成長に対する期待は他の地域よりも高く、世界の経済成長に対するアジアの貢献度は徐々に高まっています。発展環境の相対的な安定と地域協力の段階的な強化は、アジア経済が発展の強靭性を維持するための重要な保障となっています。中国経済は安定した回復を続けており、引き続きアジア経済の安定回復の主要なけん引力となっています。 |
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●ウクライナへの攻撃続く 日本は発電機供与などの支援を表明 1/8
ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナでは、7日にかけてもロシア軍の攻撃が続き、東部ドニプロではけが人が出ています。 ウクライナ空軍は7日、6日の夜から7日にかけて、ロシア軍による自爆型の無人機28機とミサイルを使った攻撃があり、このうち無人機21機を撃墜したと発表しました。 ロイター通信によりますと、一連の攻撃で東部ドニプロでは12人がけがをし、教育施設や集合住宅などが被害を受けたということです。 現場を撮影した映像では集合住宅の窓ガラスが吹き飛ばされてほとんど無くなり壁の一部が焦げているのが確認できます。 一方、首都キーウでは7日、現地を訪問した上川外務大臣がウクライナ政府の閣僚らと会談し、厳しい冬を乗り越えるため新たに5つのガスタービンの発電機を供与するなどの支援を行うと表明しました。 ロシアは、おととしの軍事侵攻以降、ウクライナ各地の発電所や送電施設を繰り返し攻撃していて、ウクライナの電力供給能力はおよそ50%にとどまっているとされます。 ウクライナのハルシチェンコ・エネルギー相は日本から供与される設備を電力不足が深刻な地域に優先的に配備するとしたうえで「ロシアの侵攻直後から支援してくれた日本に心から感謝している。真に必要な支援だ」と謝意を示しました。 |
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●ウクライナ東部など複数地域で 6人死亡40人負傷…ロシア軍の空爆受け 1/8
ウクライナで東部ドニプロなど複数の地域がロシア軍の空爆を受け、6人が死亡、40人が負傷した。 ウクライナ当局は8日、東部ドニプロや南部ヘルソン州、北東部のハルキウ州など複数の地域で、ロシア軍からおよそ60発のミサイルとドローン攻撃を受けたと明らかにした。 このうち、ミサイル18発とドローン8機を撃墜したという。 ドニプロでは少なくとも4回のミサイル攻撃を受け、爆風でバスが横転し子ども5人を含む乗客24人が負傷。 ヘルソン州では民家や店舗、工場が被害を受け、2人が死亡、5人が負傷。 さらに、ハルキウ州では教育施設にミサイルが命中するなど、ウクライナ全土で少なくとも6人が死亡、40人が負傷した。 ロシア国防省は、「ウクライナの軍産複合体の施設に対して、極超音ミサイル「キンジャール」を含む高精度の兵器で複数回攻撃をおこなった」と発表している。 |
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●ウクライナ4州に大規模攻撃、4人死亡 防空強化の必要性浮き彫りに 1/8
ウクライナの4州で8日午前、ロシア軍による大規模な攻撃があった。ウクライナ空軍によると、自爆型ドローン(無人機)8機は全て撃墜したが、ミサイルは計51発のうち18発しか撃ち落とせず、現地時間正午時点の警察のまとめでは、少なくとも4人が死亡し、38人が負傷した。 ゼレンスキー大統領は7日、スウェーデンで開かれた安全保障関連会議にオンラインで出席し、「前線でもウクライナの各都市でも、空の守りが足りていない。ロシアは空の支配を失えば、前線でも力を失うことになる」と指摘。防空能力強化の必要性を訴えていたが、改めてそのことが浮き彫りになった。 8日の攻撃による被害が大きいとみられるのは、中部ドニプロペトロウスク州。知事らによると、62歳の女性が死亡したほか、28人が負傷した。ゼレンスキー大統領の故郷である州内の工業都市クリビーリフでは、ショッピングセンターと二十数軒の民家が被害を受けたという。 また、各州の知事らによると、中西部フメリニツキー州では2人が亡くなった。インフラ施設も攻撃を受けたという。北東部ハルキウ州では50歳の男性が死亡し、民家や倉庫、教育施設も損壊した。中南部ザポリージャ州では5人が病院に運ばれ、1人は重体という。 ウクライナでは昨年12月29日、ロシアの全面侵攻開始以来で最大規模となる空からの攻撃があり、各地で計50人以上が死亡した。また、今年に入ってからもロシア軍による攻撃は続いており、1月2日の攻撃では首都キーウやハルキウで少なくとも5人が亡くなり、6日には東部ドネツク州への攻撃で11人が死亡した。 |
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●ロシア ウクライナに軍事侵攻 1月8日の動き 1/8
●ロシア ミサイル攻撃 一段と強める ウクライナ各地で被害 ウクライナ軍のザルジニー総司令官はロシア軍が8日朝、弾道ミサイルや無人機などあわせて59の飛しょう体で攻撃し、このうち、18発のミサイルと8機の無人機を迎撃したと発表しました。 この攻撃でウクライナ大統領府などは東部のドニプロペトロウシク州で1人が死亡、ハルキウ州で1人が死亡、そして西部フメリニツキー州では2人が死亡し、あわせて30人以上がけがをしたとしています。 攻撃は南部ザポリージャ州などでも行われ、各地で被害がでています。 ロシア国防省は8日「ウクライナの軍産施設に対しキンジャールなどで集団攻撃を行った」として、攻撃は極超音速ミサイルだとしているキンジャールも使用したと発表し、ロシア軍は無人機に加え、ミサイルによる攻撃を一段と強めています。 ●プーチン大統領 兵士遺族の支援を強調 ロシアのプーチン大統領はロシア正教でクリスマスイブにあたる6日夜、ウクライナへの軍事侵攻で死亡した兵士の遺族をモスクワ郊外の公邸に招き、遺族を支援する姿勢を強調しました。 これについてアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は7日、「プーチン大統領は最近も軍関係者を気遣う同様のイベントに出席し、問題を解決できる指導者だとアピールしている。選挙活動の一環として利用している可能性が高い」と指摘し、ことし3月の大統領選挙に向けて選挙活動を強化しているという見方を示しています。 ●ロシア軍の攻撃続く 東部ドニプロで教育施設など被害 12人けが ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナでは、7日にかけてもロシア軍の攻撃が続き、東部ドニプロではけが人が出ています。 ウクライナ空軍は7日、6日の夜から7日にかけて、ロシア軍による自爆型の無人機28機とミサイルを使った攻撃があり、このうち無人機21機を撃墜したと発表しました。 ロイター通信によりますと、一連の攻撃で東部ドニプロでは12人がけがをし、教育施設や集合住宅などが被害を受けたということです。 現場を撮影した映像では、集合住宅の窓ガラスが吹き飛ばされてほとんど無くなり、壁の一部が焦げているのが確認できます。 ●キーウ訪問の上川外相 発電機供与など支援表明 首都キーウでは7日、現地を訪問した上川外務大臣がウクライナ政府の閣僚らと会談し、厳しい冬を乗り越えるため、新たに5つのガスタービンの発電機を供与するなどの支援を行うと表明しました。 ロシアは、おととしの軍事侵攻以降、ウクライナ各地の発電所や送電施設を繰り返し攻撃していて、ウクライナの電力供給能力はおよそ50%にとどまっているとされます。 ウクライナのハルシチェンコ・エネルギー相は、日本から供与される設備を電力不足が深刻な地域に優先的に配備するとしたうえで「ロシアの侵攻直後から支援してくれた日本に心から感謝している。真に必要な支援だ」と謝意を示しました。 |
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●2024年、世界で何が起きるか 必要な10の視点 1/9
2023年11月6日付の英Economist誌は、Tom Standage同誌副編集長による、年末恒例の特集記事である「2024年の10の注目トレンド」と題する論説を掲載している。 世界は驚くべき速さで変化している。来年、注目すべき10のテーマは次の通りである。 第一は、世界中で選挙が行われ、民主主義の状況に焦点が当たる。2024年には42億人が居住する国々で70の選挙がある。ただし、多くの選挙は自由でも公正でもない。 第二は、米国の選択である。ドナルド・トランプが大統領に再当選するかは、一握りのスウィング・ステートの選挙民にかかっているが、その帰結はグローバルなものである。 第三は、ヨーロッパである。米国の状況は上記の通りなので、ヨーロッパがウクライナに必要な軍事的・経済的支援を提供し、欧州連合(EU)加盟に向けての道を示していかなければならない。 第四は、中東の混乱である。ハマスのイスラエルへの攻撃、イスラエルのガザへの報復は、地域を大混乱させた。手を広げ過ぎている超大国の米国にとっては、更に複雑で脅威を増す世界に適応できるか試練である。 第五は、多極化する無秩序である。米国は、力を増す中国との対抗に集中しようとしていたが、ウクライナ戦争とガザによって狂わされた。世界にはより多くの紛争が起こっている。 第六は、「第二の冷戦」である。台湾を巡る緊張は高まり、米国は先進技術への中国のアクセスを制限し続けるだろう。一方、企業にとって中国への依存を減らすのは簡単ではない。 第七は、新エネルギーの地理的構図である。クリーン・エネルギーへの転換は新たな超大国を生み、資源地図を書き換える。リチウム、銅、ニッケルの重要性が増す。 第八は、経済の不確実性である。金利は以前より高く、企業にとっても家計にとっても苦しい状況である。中国がデフレに突入する可能性がある。 第九は、AIがリアルなものとなる。当局はAIを規制しようとし、IT企業はAIの進化を図る。どのような規制が最善なのかの議論が更に高まろう。 第十は、世界が一つとなるかである。パリ五輪、宇宙飛行士による月探査等の機会には、イデオロギーの相違が脇に置かれるだろうが、世界が一つとなる希望は打ち砕かれる可能性が高い。 ● 今年で38年目となるエコノミスト誌の年末恒例の翌年の予想特集記事である。英国メディアから見た2024年の予想として、常識的な内容だが、子細に見ると注目すべき点はいくつかある。 24年の予想の前提として、23年を振り返るため、一年前に同誌が23年の予想として提示した10項目を振り返ると、次の通りであった。1ウクライナ情勢、2景気後退、3気候変動、4中国はピークを打ったのか、5分断されたアメリカ、6一触触発地域、7変化する世界の協力、8回復する観光産業、9メタバースの現実性、I新年に新たな専門語。 23年の予想が外れた点として、第一に、「景気後退」は予想ほど悪くなかったこと、第二に、新たな「世界の協力」としてサウジアラビアのアブラハム合意への参加も言われていたが、中東では危機が勃発した。 今回の24年の予想で目を引くのは、大きな流れとして、「多極化する無秩序」の時代となり、「手を広げ過ぎている超大国の米国」として対応が困難となりつつあることが示されたことである。ウクライナに加えて中東の危機が起こり、危機の多発に対して米国の能力が明らかとなり、それに加えて、24年11月の米国大統領選挙次第で大きな政策変更が起こりかねない。さらに、ロシア、中国、北朝鮮、イランの連帯の強化、新興5カ国(BRICS)の拡大(アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、UAEの新規加盟)など気になる動きが起こっている。 「第一の危機」であるウクライナへの注目度は、トップの項目として取り上げられていた23年に比して下がった。24年には三番目の項目としてヨーロッパ側の対応として掲げられているに止まっている。 長期戦を覚悟する構えに入っていると想像される。ここでは、外からの支援に焦点を当てているが、長期戦になれば、国内の団結の維持も重要な課題となってこよう。 23年に勃発した「第二の危機」である中東が、24年には四番目と上位にリストされている。ガザでの戦闘が継続する中、米国の対イスラエル姿勢がどのようになるのか注目されるが、これもウクライナと並んで米国大統領選挙による政策の振れ幅が大きい分野である。 24年のトップに挙げられているのが、多くの国で選挙が行われることである。エコノミスト誌によれば、選挙が行われるのは人口の多い方から、インド、米国、インドネシア、パキスタン、ブラジル、バングラデシュ、ロシアである。 一方、影響の大きさから言えば、米国は別として、1月の台湾の総統選挙に注目しないわけにはいかない。これは、東アジアで「第三の危機」が起こるかどうかにも関わる。 中国への注目度は、四番目の項目として取り上げられていた23年に比して若干下がった。24年には六番目に「第二の冷戦」として取り上げられている。中国については見るべき視点は多い。 国内統制や対外的姿勢、経済成長の鈍化、人々の価値観の多様化等、中国にはいくつもの「顔」がある。それらがどのように絡んでいくのか、複眼的に見ていく必要があろう。 全般として24年の注目リストは暗い話題が多い。その予想が良い意味で覆されることを期待したいが、残念ながら、秩序を作る力より秩序を壊す力の方が強くなっていることを認めざるを得ない現状である。 |
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●戦争と日常が共存 頻発する空襲警報、にぎわいも―上川外相キーウ訪問 1/9
ウクライナの首都キーウ(キエフ)を7日(日本時間同日)に訪れた上川陽子外相を時事通信記者が同行取材した。ロシアの侵攻から約1年11カ月が経過。廃虚となった建物が立ち並び、空襲警報が鳴り響く一方、クリスマスツリーが飾られ、日常生活を楽しむ市民の姿も見られた。ウクライナでは戦争と日常が共存していた。 ●夜行列車で9時間 上川氏や随行員、記者団を乗せた専用夜行列車はポーランド東部の駅を6日夜に出発し、約9時間かけてキーウ近郊に到着。走行速度は比較的ゆっくりだったと感じた。 日ウクライナ外相会談が行われたキーウ中心部の外務省は、白亜の巨大な石柱が並ぶ神殿風の歴史ある建物。入り口周辺は土のうが積まれ、銃を携帯した国軍兵士が目を光らせ、緊張感が伝わってきた。 上川外相とクレバ外相との会談は7日午前11時すぎから始まった。その直前、遠くから重低音の「ウー」という空襲警報が外で鳴っているのがかすかに聞こえたが、ウクライナのメディア関係者の多くは落ち着いた様子だった。 在ウクライナ日本大使館員によると、ロシア軍の訓練飛行でも空襲警報が鳴る場合があるため、多くの市民は手持ちのスマートフォンを使った情報収集で「逃げなくてもいい、逃げる必要があるという基準を自分なりに持っている」という。 午後0時20分ごろ、外相会談中に空襲警報が再び発令。外務省内で休んでいた兵士は急いでヘルメットをかぶり、外に駆け出した。 会談後の共同記者発表の場所は、当初予定していた1階ホールから地下シェルターに変更。配管がむき出しとなった部屋で、上川氏は記者団に「急きょ、このシェルターでの発表となった。ウクライナの人々の大変厳しい環境を身をもって改めて感じている」と述べた。 ●焼けた店舗、崩落した橋 上川氏は会談に先立ち、ロシア軍によって民間人が大量に殺害されたキーウ近郊のブチャを視察。周囲に警護要員が10人以上配置される厳戒態勢が取られた。 ブチャからキーウに向かう車窓からは、ロシア軍の攻撃を受けて黒く焼け落ちたスーパーマーケット、同軍の侵攻を遅らせるためにウクライナ側が崩落させた橋といった戦争の傷痕が生々しく残されていた。 その一方、道路沿いにはファストフード大手マクドナルドの店舗やガソリンスタンドが営業を続けていた。雪が降った道路で遊ぶ子どもや、楽しそうに町を歩く若い親子連れもいた。キーウは日常生活を取り戻していると感じた。 ただ年末も、キーウ中心部で電力関連施設を狙ったロシア軍によるドローン攻撃があったとされ、日本政府関係者は「戦争状態であることには変わりがない」と指摘。キーウ駅構内には子ども向けの遊具が置かれた場所があり、そこにいたウクライナ人女性は「早く空襲警報を気にしないで外で遊べるよう平和になってもらいたい」と話していた。 |
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●ロシア・ベルゴロド州、住民の移住を支援 ウクライナ軍の攻撃頻発で 1/9
ウクライナと国境を接するロシア・ベルゴロド州のグラドコフ知事は、最近頻発しているウクライナ軍による致命的な攻撃に不安を感じている市民について、移住を支援すると約束した。ウクライナの人々には大きな影響を与えたものの、かつては遠い存在だった戦争がロシア国内にもたらす危険性を珍しく認めるものとなった。 ベルゴロド州では、ウクライナ軍による攻撃が相次いでいる。昨年12月下旬には、ベルゴロド市への攻撃で少なくとも25人が死亡した。 ウクライナは国境近くのロシア地域を標的にしている。12月30日にベルゴロドに対して行われた攻撃は、報告されているものの中で最も死者数が多い事案のひとつと考えられている。 ベルゴロド州への攻撃を受け、住民の1人はロイター通信の取材に対し、「人々は実際に戦争が起きていることに気がつき、それが今ではベルゴロドにやってきた。おそらく初めてではないものの、最も深刻で恐ろしいものだ」と述べた。 グラドコフ知事は住民に直接話しかけ、「SNSで『怖いので安全な場所に行くのを手伝ってください』という依頼をいくつか見かけた」と述べた。 グラドコフ知事は「もちろん助ける」と述べ、いくつかの家族がすでに移住したと明らかにした。 グラドコフ知事は心配する住民に対して、当局と連絡を取り、「退去する準備ができている」ことを伝えるよう指示した。 |
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●ローマ教皇、民間人への「無差別攻撃」は戦争犯罪 1/9
ローマ教皇フランシスコ(87)は8日、外交関係者向けの年次演説で、民間人に対する「無差別な攻撃」は国際的人道法に抵触するため戦争犯罪となると訴えた。 演説はバチカン(ローマ教皇庁)が認めている184カ国の特使らに45分にわたり行われた。 このほか、アフリカとアジアの紛争、米国と中南米の移民危機、気候変動、キリスト教徒への迫害にも言及した。 教皇は、近代の戦争はしばしば民間と軍事の標的を区別せず、民間人への無差別攻撃に至らない戦争はなくなっていると指摘。「ウクライナとパレスチナ自治区ガザの紛争にはこれを明確に証明している。国際的人道法の重大な違反は戦争犯罪であることを忘れてはならない。指摘するだけでは不十分で、阻止しなければならない」と述べた。 その上で「国際社会は国際的人道法の擁護と実践に向け、さらに努力する必要がある」と呼びかけた。 |
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●「2049年には人類の4人に1人がアフリカ人に…」 国連の最新予測が“過少” 1/9
「2049年には人類の4人に1人がアフリカ人になり、この比率は2100年にはほぼ4割に達する」。国連経済社会局人口部の最新予測だ。この数字はあちこちで引用されるが、私は、この見積もりは過少だと考えている。 世界すべての国の人口統計を揃え、各国別に長期予測を作成して人類の総数をカウントする――この壮大な事業において国連人口部に敵う機関は世界中どこにもない。国連予測が使われるのは、これが唯一無二の予測だからである。 だが、日本の人口予測に関しては国立社会保障・人口問題研究所(IPSS)の予測が専ら使われ、国連予測が引用されることはない。なぜなら両者が大きく異なっているからだ。IPSS最新予測では2070年の日本人口は8700万で合計特殊出生率(TFR)が1.36なのに対して、国連予測は8950万でTFRは1.51とされている。 国連はこれまでも日本の出生率は直(じき)に回復すると想定し、将来人口をIPSSより常に多めに予測してきた。その結果、予測を外し続けてきたのである。この事情は日本に限ったことではなく、TFRが人口置換水準、およそ2.1を割ったすべての国について同水準への復帰シナリオを作成してきた。確率論の手法を取り入れるようになった2010年版からはさすがに単純一律な復帰予測ではなくなったが、それでもTFRが上昇反転するという想定は維持されている。だから、国連人口部の先進国人口予測は毎回上振れする。 ●アフリカの人口統計は“国連の作品” 一方アフリカに関しては、TFRは即座に低下トレンドに乗り世紀末までには人口置換水準に落ち着くと想定している。出生届や死亡届、人口センサスが整備されていない開発途上国、なかでもサブサハラ・アフリカの人口推計・予測に関して、国連は試行錯誤を続けてきた。各種サンプル調査を通じて人口情報を集め、推定モデルを作成して精度を高めてきたのである。アフリカの人口統計は“国連の作品”といえるほどだ。 ではなぜ国連人口部は、先進国の人口を高めに、アフリカの人口を低めに予測するのか。それは人口転換論という思想を予測の前提にしているからだ。 人口転換論とは「近代化が進行するにつれ死亡率は低下していくが、その過程で、多産多死時代の高い出生率がしばらく維持され、出生率が下がるまでのあいだ多産少死状態が現出して、一回きりの人口爆発が起こる。やがて出生率も低下して少産少死となり、人口はふたたび定常状態に復帰する」というものである。国連人口部はこの思想に基づいて、人類全体の人口定常化をおよそ100年後に遠望しているのである。 ●アフリカ農業は女性と児童労働に依存 しかし、人口学が発展するにつれ人口転換論の綻びが徐々にみえてきた。なかでも深刻なのは新たな人口定常、すなわち出生率の人口置換水準への回復が、どの国においても実現していないことだ。出生率の動向を説明できる理論はいまだ存在しない。したがって出生率を引き上げる決定的政策もない。先進諸国の人口増加率を動かしているのは、むしろ移民の数である。 他方アフリカに関しては、数々のサンプル調査から判断する限り、国連人口部が想定するスピードでTFRが下がっていくという確たる証拠はない。一夫多妻婚比率は安定して高く、児童婚・若年婚比率も高く、夫妻双方における希望子供数は多くの国で5人を超えている。10代で結婚する女性が多く、これが一夫多妻制を支え、出産期間を長くしているのだ。そこには、いまだ6割の人口が農村に暮らしていて、その過半が食糧生産に従事し、農地が拡大し続けているという背景がある。アフリカ農業は女性と児童労働に多くを依存しているのである。 ●人口集中がもたらすもの 通常引用されるのは出生率中位予測だが、国連人口部はほかにも、出生率低位と高位、出生率一定、死亡率一定など複数シナリオを公表している。このなかで、今世紀に入ってからアフリカや日本の実態にもっとも近かったのは出生率一定シナリオだった。つまり、日本においてもアフリカにおいても出生率は、想定ほど変化しなかったということだ。そこで試みに、TFRが低下している最中の国については中位予測を、TFRが人口置換水準を下回っている国と、本格的低下が始まっていないアフリカ諸国については出生率一定予測を組み合わせて世界人口予測を作り直してみると、2086年にはアフリカの人口がおよそ65億人となって、人類総数の50%に達する。 人類の2人に1人がアフリカ人になる――まさに未曾有の事態だ。20年を超えると人口予測はほとんど当たらないのだが、それでも、現在のトレンドはその方向を向いている。そのなかでなにが起こると予想されるか。 ●人口縮小社会が経済力を維持していくためには… 第一の懸念は食糧需給で、そのことはウクライナ戦争で既に垣間見えている。アフリカ大陸は水資源が決定的に不足していることから、農業増産には超えられない限界がある。増えていくアフリカの人口を支えきるだけの食糧増産を、はたしてどの国が賄えるか。また日本のように輸入によって食糧供給を維持している国は、タイトになっていく国際供給体制のなかで自給率を高められるのか。 人口と経済力の偏在が進むと移民圧力が加速的に強まる。その反発としてナショナリズムが高まり政変につながる動きを、我々は既にみている。世界の移民分布における希薄地帯は東アジアだ。人口減少が始まった東アジアに、アフリカ移民を受容して活用する社会的能力が生まれるだろうか。 人口縮小社会が国外のダイナミズムと市場を取り込んで経済力を維持していくためには、まず世界の姿を知ることだ。産業力の弱いアフリカの域外依存度は、一貫して高まっている。その商機を認識できているだろうか。 |
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●味はほぼ同じで安い…「コカ・コーラ」撤退 ロシアで「パクリコーラ」が大人気 1/9
ウクライナ戦争が始まって間もない22年3月、ロシア国内の工場での生産を停止し、そのまま同国から撤退したコカ・コーラ。だが、今もスーパーなどの店頭で売られ、多くの飲食店で提供されているという。 「現在、ロシアで流通しているコカ・コーラはすべて輸入品で、スプライトやファンタといった同社の他の飲み物も普通に手に入ります」(ロシア事情に詳しいジャーナリスト) 実は、コカ・コーラの工場は、カザフスタンやウズベキスタン、アゼルバイジャンなどロシアと友好関係にある中央アジア諸国にも存在する。どうやら、これらの国から大量に輸入されているようだ。 「ところが、他にもEU諸国や英国など、ヨーロッパの国々からも輸入されているんです。食品は経済制裁の対象外で、ロシア政府も規制しておらず、西側の有名ブランドは流通量こそ減っても完全に手に入らなくなった商品はほとんどないのです」(前出・ジャーナリスト) ただし、輸入品なので輸送コストに加え、インフレの影響もあって価格が高騰。戦争前はスーパーで500ミリリットルのペットボトルが30ルーブル(約46円)ほどで売られていたが、現在は10倍以上に跳ね上がっているという。 だからかどうか、実は、ロシアではかつてコカ・コーラの現地法人だった会社が製造する「コカ・コーラのパクリ飲料」とも言われる炭酸飲料が、全炭酸飲料中で売り上げが2位になるなど大人気となっている。 「パクリコーラの需要が伸びたのは味がほぼ同じで安いから。でも、本家コカ・コーラがいいというロシア人が多いのも事実です。輸入品で高価と言ってもスタバのパクリチェーンなど小奇麗なカフェでコーヒー1杯注文するのと大差ない値段ですし、最近はちょっとした高価な嗜好品のような扱いになっています」(前出・ジャーナリスト) コカ・コーラの撤退によって本家コーラはブランド化され、その一方でパクリコーラが急成長するという、なんとも皮肉な状況になっているようだ。 |
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●ことし最大のリスクは「アメリカの分断」 米調査会社 1/9
国際情勢を分析しているアメリカの調査会社は「ことしの10大リスク」を発表し、最大のリスクとして「アメリカの分断」を挙げ、11月の大統領選挙に向けて政治的な分断がさらに深まり、地政学的な不安定さを世界にもたらす可能性があると危機感を示しました。 アメリカの調査会社「ユーラシア・グループ」は、恒例となっている「ことしの10大リスク」を8日発表し、最大のリスクとして「アメリカの分断」を挙げました。 この中で、アメリカの政治システムの機能不全は先進的な民主主義国の中で最もひどく、11月の大統領選挙に向けて政治的な分断がさらに深まるという見方を示した上で、前回の選挙結果を覆そうとしたなどとして複数の罪で起訴されたトランプ前大統領と現在81歳という高齢のバイデン大統領はいずれも「大統領にふさわしくない」と指摘しました。 グループを率いる国際政治学者のイアン・ブレマー氏はオンラインでの記者会見で、世界で最も強力な民主主義国家が政治的危機に直面すれば地政学的な不安定さを世界にもたらす可能性があると危機感を示しました。 一方、2番目のリスクにはイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続く中東情勢を挙げたほか、3番目のリスクとしたウクライナ情勢については、アメリカの支援などが滞る中、ウクライナの領土が事実上ロシアに割譲される可能性があるとしています。 ●ことしの10大リスク アメリカの調査会社「ユーラシア・グループ」が8日に発表した「ことしの10大リスク」は、以下のとおりです。 1「アメリカの分断」 11月の大統領選挙に向けてさらに政治的分断が深まり、地政学的な不安定さを世界にもたらす可能性がある。 2「瀬戸際に立つ中東」 イスラエルとハマスの戦闘を終わらせる明確な方法はなく、この戦闘をめぐる政治的分断が世界に影響を与える。イエメンの反政府勢力フーシ派による船舶への攻撃で物流網への影響なども懸念される。 3「ウクライナの事実上の割譲」 ロシアは現在、戦場での主導権を握っており、アメリカの支援などが滞る中、ウクライナの領土が事実上、ロシアに割譲される可能性がある。 4「AIのガバナンス欠如」 企業がほぼ制約を受けないままさらに強力なAIモデルなどが開発され、政府のコントロールを超えて普及する可能性がある。 5「ならず者国家の枢軸」 ロシア、北朝鮮、イランというならず者国家が、ロシアによるウクライナへの侵攻以降、協力関係を深め、既存の制度や原則を弱体化させようとしている。 6「回復しない中国」 すでに外国人投資家の撤退など不調の兆候があったが、中国政府が金融のぜい弱性や需要不足に対応できず、中国経済の回復は難しいだろう。 7「重要鉱物をめぐる争奪戦」 重要鉱物はイノベーションから国家安全保障まで、事実上、すべての領域で大切だが、その生産地は一部地域に偏り、各国政府は価格変動を増大させるなど保護主義的な措置をとる可能性がある。 8「インフレによる経済的逆風」 しぶといインフレに起因する高金利が、世界中で成長を鈍化させるだろう。 9「エルニーニョ現象の再来」 異常気象によって、食糧難、水不足、物流の混乱、病気の流行、政情不安などをもたらすだろう。 10「分断化が進むアメリカでビジネスを展開する企業のリスク」 大統領選挙が近づくにつれて国内市場が分断され、全米に展開する企業は特定の州の市場からの撤退などを迫られる可能性がある。 |
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●ウクライナ 軍需産業の生産能力強化へ 民間企業に生産を要請も 1/9
ロシアの軍事侵攻が長期化する中、ウクライナでは兵器の確保が大きな課題となっていて、国をあげて生産能力の強化に乗り出しています。 ウクライナは航空戦力で劣勢に立たされているとされるほか、前線では弾薬不足が指摘されています。 しかし、最大の支援国、アメリカでは軍事支援の継続に必要な緊急予算が議会で承認されておらず、先行きは不透明なままです。 ゼレンスキー大統領は新年に向けた声明で「来年はより多くの兵器を生産する準備をしている。ウクライナの兵士や国が必要な解決策のため各国と協力している」と述べ、兵器の確保に力を入れていく考えを示しました。 シュミハリ首相は、今月3日の政府の会合でことし中に軍需産業の生産能力をおととしと比べて6倍に増やす目標を掲げました。 無人機については国内で100万機製造する計画です。 さらにウクライナ政府は、以前は軍需産業と無関係だった民間企業などに対し軍の装備品などの生産を要請し、これまでに100を超える企業が生産を始めました。 このうち、軍事侵攻を受けて農業関連製品から軍需品の生産へと転換した企業の社長が取材に応じました。 この企業では負傷した兵士を運ぶ台車や、前線で利用できるトイレやシャワーが備えられたコンテナなどを生産し、ウクライナ軍に届けています。 現在は企業が生産する製品の9割以上が軍に関係するものだということで、従業員たちは年始から溶接などの作業に取り組んでいました。 社長は軍事侵攻の直後にゼレンスキー大統領が首都キーウにとどまり戦い続ける姿勢を示した姿を見て企業としてできることがないか考え、軍需品の生産に乗り出すことを決めたということです。 軍に関わる施設はロシア軍の標的になる可能性もありますが、社長は「従業員が被害を受けることを心配してはいますが、怖がってばかりいたら国を失ってしまいます。家族や国のためになることをするだけです」と話していました。 |
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●2024年の最大リスクは「米国の政治的分断」 米調査会社 1/9
国際政治のリスク分析を行う米調査会社「ユーラシア・グループ」は8日、今年の「10大リスク」をまとめた報告書を発表し、首位に米国の政治的分断を選んだ。11月の大統領選に向けて分断はさらに悪化すると指摘。民主党はバイデン大統領、共和党はトランプ前大統領が本命候補だが、どちらが勝利しても社会や政治制度が損なわれ、米国の国際的な地位が低下すると予測した。 報告書は「米国の政治システムは他の先進的な民主主義国家よりも機能不全に陥っている」と分析。2期目を最後まで務めれば86歳になるバイデン氏も、前回2020年大統領選での落選を覆そうとした罪などで起訴されたトランプ氏も、いずれも大統領に不適格で「国民の大半はどちらにも国を率いてほしくない」と指摘した。 また、トランプ氏が共和党の候補に指名された瞬間から、その政策方針は論争を巻き起こすと予測。大統領選で勝利の可能性が高まれば同盟国も敵対国も身構え、就任する前から国際社会は不安定化するとした。敗北してもあらゆる手段を講じて結果に異議を唱えるだろうと懸念を示した。 2位には「緊迫化する中東情勢」を挙げた。イスラエルは23年10月以降、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとの戦闘を続け、レバノンを拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラとの戦闘も激化している。ガザ地区以外での衝突が拡大すれば、世界経済のリスクが増し、地政学的な分断や過激主義の台頭を招くと警告した。 3位は「ウクライナの分割」だった。来月で2年を迎えるロシアによる軍事侵攻で、ウクライナは欧米諸国の後ろ盾を得ているが、支援は停滞している。報告書は、ウクライナや西側諸国にとって受け入れがたい結果だが「ウクライナは今年、事実上分割される」と指摘。ロシアは戦場での主導権を握っており、今年が「戦争の転換点となる」と予測した。 ユーラシア・グループは国際政治学者のイアン・ブレマー氏が社長を務める。8日のオンライン記者会見でブレマー氏は、米国の分断やイスラエルとハマスの戦闘、ウクライナ侵攻に関して「どの指導者もこれらを終わらせようとする意思もなく、能力もない」と指摘した。 |
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●ロシア動員兵の妻、無名戦士の墓に花 大統領府に抗議 1/9
ロシア・モスクワで6日、ウクライナで戦う動員兵の妻たちが、大統領府(クレムリン)の壁際にある無名戦士の墓に花を手向けた。≪写真は、無名戦士の墓に花を手向けに訪れる女性たち≫ ウラジーミル・プーチン大統領はウクライナ侵攻開始から7か月後の2022年9月、予備役の動員を発表。数か月がたち、動員兵の家族は怒りを募らせている。 6日には15人の女性が寒空の中、赤い花を手向けた。 夫が2022年11月に動員されたというマリアさん(47)はAFPに対し「私たちの訴えに、当局や世間に関心を向けてもらいたい。議員らに書簡を送付するなどもしてきたが、私たちの声は聞き入れてもらえなかった」と語った。 別の女性は当局に対し、ウクライナとの「和平交渉」を求めた。 通常、ウクライナ侵攻に対する抗議は初期のうちに厳しく取り締まられるが、今回は警察は介入しなかった。 1歳の子どもを持つポーリーナさんは、断固として夫を取り戻したいと考えている。 今回の抗議行動は「平和的な行為で、法律でまだ禁止されていない」と話した。「当局は私たちのことを厄介がっているようだが、誰も黙ったままではいない」とし、自分たちの主張に注目が集まるよう「毎土曜日に花を手向ける」と強調した。「いつか、私たちを無視できなくなる」 国営メディアはこれまでのところ女性たちの抗議行動をほぼ無視している。大統領府は、プーチン氏の再選が確実視される大統領選に向け、国内が団結しているとの印象を維持したい考えだ。 プーチン氏によると、ウクライナでの戦闘に従事する兵士は61万7000人で、うち24万4000人が動員兵。 |
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●岐路に立つ北極海LNG 1/9
日本も参加したロシアの北極海の巨大な液化天然ガスプロジェクトが、アメリカからの制裁の対象となり、日本は難しい立場に立たされています。石川一洋専門解説委員に聞きます。 Q この巨大な施設はなんですか A ロシアの北極圏ヤマル半島の巨大な液化天然ガス製造施設アークティック2です。完成すれば年間2000万トン近いLNGを生産する計画で、北極海航路でヨーロッパとアジアに輸出しようという巨大プロジェクトで、ロシアは春にも生産を開始するとしています。 交通の便利な港で組みたてた施設を海上輸送で未開の極地に運び埠頭に設置するモジュール方式と呼ばれる工法で建造された巨大工場です。ロシアの民間ガス会社でプーチン大統領と繋がりの深いNOVATEKが主体となり、日本、フランス、中国が資本参加しています。 しかしそのプロジェクトそのものを潰すとして、アメリカが去年11月経済制裁の対象に加えました。日本もその影響をもろに被った形です。 Q 日本にどんな影響があるのですか? A 日本はプロジェクトに参加を決定したのは2019年、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の3年前です。日本政府は、侵攻前からすでに動き出していたプロジェクトで日本のエネルギー安全保障にとって重要だとしてアメリカに制裁しないよう求めてきました。しかしアメリカはまだ生産が始まっていない“新規”のプロジェクトで、ロシアのエネルギー権益を増大させるとして制裁に踏み切りました。LNG輸出国のアメリカとしては競争相手を排除するという思惑もあるでしょう。 プロジェクトには民間から三井物産も参加しており、日本を含む参加企業はアメリカ政府から制裁を受ける恐れもあります。日本としては、そうしたことを避けるために今後アメリカとのハイレベルでの交渉も必要となるでしょうが、撤退あるいは凍結という苦渋の決断を迫られることになるかもしれません。 Q プロジェクト自体も沈没するのでは? A ロシアは日本や欧米に販売できなくても、中国やインドなどグローバルサウスにいくらでも買い手があると強気の姿勢を崩していません。2024年はエネルギー分野でも米ロが正面から戦う年となりそうです。 |
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●戦争の準備か、ウクライナ戦争の余波か...中国軍を大粛清した習近平の真意 1/9
●核兵器を担当するロケット軍幹部ら9人を解任 中国共産党は、ある慣行を実施して2023年を終えた。粛清だ。今回標的となったのは中国軍で、12月29日、国会に相当する全国人民代表大会(全人代)で軍高官9人の代表資格が取り消された。 全人代自体は形式的なものだが、こうした解任はさらなる処分や刑事告発につながることが多い。今回の粛清には、人民解放軍で核ミサイルの管理・運用に当たる「ロケット軍」の複数の高官が含まれており、同軍は昨年夏から調査されている。李尚福(リー・シャンフー)前国防相も、公の場から姿を消してから数カ月がたった10 月に正式に解任されたが、解任理由はいまだ発表されていない。 西側のタカ派の間では、中国における軍の粛清は全て戦争の準備とみる向きもある。抽象的な意味ではそうかもしれない。軍の役割は戦争に備えることであり、中国の指導部は腐敗を軍の即応性に対する脅威と考えている。しかし、今回の粛清は特定の紛争に対する備えを意味するものではない。軍の粛清は独裁支配の特徴であり、特に共産主義国家では政権が軍に対する優位性を主張しようとする。 中国が軍内部の汚職を管理する必要があることは以前から明白で、しばしば明言されてきた。軍高官は長年汚職に手を染め、文化大革命の混乱の中で軍が経済の大部分を掌握した1970年代以降、その傾向が顕著になった。 12年に党総書記に就任して以来、習近平(シー・チンピン)は汚職の取り締まりを強めてきた。14年には、癌で死期が迫っていた軍高官を拘束し、党から追放した。習は粛清の必要性について、長期的には台湾をめぐる紛争に備えるためだと考えているかもしれない。だが短期的には軍という重要な組織を自ら支配するためだ。 ●結局汚職はなくならない ロケット軍に汚職があったのなら、どんな汚職で、関与した人物はなぜ摘発されたのか。1つの可能性は、彼らが中国の不動産市場低迷の何らかのあおりを受けたことだ。あるいはもっと直接的な理由かもしれない。中国は核兵器増強のため国内西部の土地を大量に取得しており、それが汚職の温床になった可能性だ。 不動産と政府資金の組み合わせは、汚職の機会を多く生んできた。役人が地方政府から土地を接収したり、安く購入したりする口実があれば、民間利用のためにそれを売却し、多額の利益を得ることができる。 ●腐敗の問題はなくならない 兵器開発と兵站(へいたん)も汚職が起きやすい分野だ。中国は、ロシアの対ウクライナ戦争を注視してきた。中国の予想に反して22年にロシアが侵攻に失敗した理由の1つは、小規模な腐敗が蔓延していたことで、古くなった食料やタイヤが部隊に供給されるなどした。そのため、中国指導部はロケット軍の物資調達と兵站に目を光らせ、汚職の発覚につながった可能性もある。 どのような計画であれ、中国の汚職撲滅運動が長期的にロケット軍の作戦に大きく影響することはない。結局、どれだけ取り締まりをしても腐敗の問題はなくならない。軍を事実上監督できる唯一の機関は中国共産党だが、党は軍よりも透明性が低いからだ。 22年に中国の国策半導体ファンドをめぐる汚職で幹部を摘発したときと同じように、中国の核近代化に投資された資金は、しばらくの間、行き場を失うかもしれない。 |
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●「召集令状メール」も可能に 兵員不足に悩むウクライナ、動員規則変更を審議 1/9
ロシアとの戦争が長期化する中、ウクライナは徴兵逃れを厳しく取り締まり、より多くの兵士を招集できるよう軍の動員規則の変更を検討している。その具体的な中身について解説する。 <現状はどうなっているのか> ロシアが本格的に侵攻した2022年2月、ウクライナ政府は戒厳令を布告し、民間人の軍への動員を始めた。当初は大勢の志願兵が集まったが、その後志願者は減少している。先月、ウクライナのゼレンスキー大統領は、軍が最大50万人の追加招集を提案したと述べた。 ゼレンスキー大統領「これは非常に重大な数字であり、私はこの考えを支持するにはもっと論拠が必要だと述べた。これは国民や司法、防衛力、そして財政にまで至る問題だ」 <動員年齢の引き下げ> 予備役を強化するため、法案は戦闘任務への動員年齢を27歳から25歳に引き下げることを提案している。 <徴兵逃れに対する罰則> 徴兵忌避者に対する厳しい罰則も議論を呼んでいる。財産取引が制限され、海外旅行や車の運転も禁止される可能性がある。また、ローンを組むことや公共サービスも受けられなくなる。さらに別の法案では、動員法に違反した者に対する罰金を大幅に引き上げるよう求めている。 このほか軍の健康診断を拒否した者には5年以下の懲役を科すとした。 <ネットを活用> もう1つの変化はデジタル化だ。法案では徴兵事務所が召集令状を郵送したり本人に手渡す代わりに、メールなどの電子的なプラットフォームで送ることを可能にしている。 <海外在住者の追跡> 現行法では、軍は海外在住者を招集することはできない。法案では海外在住者の追跡と、海外在住者に対し軍籍登録の更新を義務付けるよう求めている。法案が成立した場合、パスポートの発行といった領事サービスも軍籍登録の提示が求められる。 <復員> 今回の法案で、兵士の家族にとって最も関心が高いことの1つが復員に関する規定だ。現行法では戦時中の兵役は無期限だが、この法案は戒厳令中に連続36カ月兵役に就いた兵士は除隊させるとしている。ただ陸軍総司令官はこの点について、戦線がこれ以上拡大せず、2025年までに部隊の代替となる十分な予備役を確保できた場合のみ、これを認めるべきだとしている。 これらの法案が成立するためには、議会の承認とゼレンスキー大統領の署名が必要。ただこれらの法案は国民や一部の政治家の批判にさらされている。またウクライナ議会の人権委員は、法案の一部内容が憲法に反すると指摘している。 法案は早ければ今月中にウクライナ議会で審議が始まる見通し。 |
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●24年の世界成長率2・4% 世銀、3年連続で経済減速 1/9
世界銀行は9日公表した最新の世界経済見通しで、2024年の世界全体の実質成長率を2・4%と予測した。欧米の抑制的な金融政策や貿易取引と投資活動の世界的な低迷を反映し、成長率は3年連続で減速する見込みだ。日本は0・9%成長と試算したが、能登半島地震の経済的影響は含まれておらず「今後数週間のうちに分析する」としている。 新型コロナウイルス禍からの回復以降、世界経済は22年が3・0%、23年が2・6%と勢いの弱さが目立つ。特に途上国では24年末時点でも約4分の1の国・地域の人々がコロナ禍前より貧しいままとなる見通し。世銀の担当者は「豊かな国ほど経済が良く、世界で際立った不均等が生まれている」と警鐘を鳴らす。 世界全体では、25年が2・7%成長になると予測した。ただ、ロシアによるウクライナ侵攻に加え、パレスチナ自治区ガザ情勢がエネルギー価格の高騰を招く恐れがあり、今後2年は「見通しが暗い」と指摘した。 日本もコロナ禍後の需要回復が目立った23年の1・8%成長から、24、25年は減速が続く。 |
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●EUミシェル大統領が任期満了前に退任の見通し 1/10
EU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領が今年6月のEU議会選挙への出馬を決め、任期満了を待たずに退任する見通しとなりました。 EUのミシェル大統領の側近によりますと「ミシェル氏は今年6月に行われるEU議会選挙への出馬を決めた」ということです。 ミシェル氏の大統領の任期は今年11月までですが、任期満了を待たずして退任することになります。新たな大統領はEU首脳会議で決めることになっていて、ミシェル氏の側近は「6月には後任が決まることになる」と話しています。 ただ、ミシェル氏の退任後、すぐに新大統領が就けない場合、今年7月から議長国となるハンガリーのオルバン首相がEU首脳会議を取り仕切ることになります。 オルバン首相はEUの政策に反対の立場を貫くことが多く、ロシアのプーチン大統領とも親しいとされていて、ミシェル大統領の決断には批判の声も上がっています。 |
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●ロシアの一斉空爆 戦争拡大の危機高めた 1/10
年末から年始にかけて、ロシアとウクライナが激しい攻撃の応酬をした。きっかけは昨年12月29日、ロシアによるドローンやミサイルを使ったウクライナ全土への一斉空爆である。 36機の無人機を使って複数の方角から攻撃し、18機の爆撃機が90発の巡航ミサイルを発射した。 侵攻から約1年10カ月、最大規模となるミサイル攻撃で、ウクライナ側によると、住宅や学校、産院が攻撃を受けた。40人以上の死者が出て、負傷者は160人を超えた。 バイデン米大統領は声明で、ウクライナを消し去るというプーチン大統領の目標は変わっていないとし「食い止めなければならない」と強調した。 ロシアでは3月に大統領選がある。有力な対立候補はおらずプーチン氏の再選が確実視されている。 一斉空爆は、ウクライナ侵攻が世論の支持を得ていると、自らを正当化する意味合いもあろう。権力を維持するために、ウクライナ市民の命が犠牲になっている。 一斉空爆では、ロシアのミサイルが一時、ウクライナの隣国ポーランドの領空を通過した可能性があり、ポーランド外務省はロシアの臨時代理大使を呼び出した。ポーランドは北大西洋条約機構(NATO)の加盟国で、NATOは加盟国が攻撃を受けた場合、武力行使を含む行動を直ちに取ることができる。 一斉空爆は周辺国の緊張をもかつてないほどに高めた。長引く戦火で紛争地が拡大する危険性がある。 ウクライナのゼレンスキー大統領は「テロには必ず報復する。国民の安全を確保するために戦う。ロシアは敗北しなければならない」などと強く非難。国境近くのロシア地域を標的に相次いで攻撃を仕掛けた。 ロシア西部ベルゴロド州では各地で爆発が起き、商業施設や住宅など10カ所以上で火災が発生。ロシア側によると子どもを含む24人が死亡し、100人以上が負傷した。 同州のグラトコフ知事は、頻発しているウクライナ軍の攻撃に不安を感じている市民について、移住を支援すると約束した。ロシアの国民にとっても既に戦争が身近なものとなっているという現実がある。報復による報復でロシアとウクライナの双方で犠牲が拡大している。昨年8月の時点で既に、両軍の死傷者は50万人近くに上っているとの分析もある。 国連安全保障理事会はロシアの一斉空爆を受けて緊急公開会合を開き、日本や欧米はロシアが民間施設を標的にしたとして非難した。 上川陽子外相はウクライナを初訪問し、越冬支援のため、可動式発電機5基を供与することなどを表明した。 女性や子どもに教育、保健医療を支援する考えも示した。 ガザを含め、子どもを含む市民の犠牲が拡大している状況は「人類の危機」(グテレス国連事務総長)である。国際社会は一人でも多くの命を救うために、行動を取るべきである。 |
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●「ウクライナは今年、分割される。来年にも敗戦の恐れ」米調査会社が分析 1/10
●「今年は戦争の転換点」 [ロンドン発]国際情勢を専門とする米調査会社ユーラシア・グループは8日、今年の「世界10大リスク」を発表した。 中でも衝撃的なのは、3番目のリスクとして挙げられた「ウクライナ分割」だ。 「ウクライナは今年、事実上分割される。ウクライナと西側には受け入れがたいが、現実となるだろう。戦争は最前線が変わらないまま互いに防戦となり、ロシアは少なくとも現在占領しているクリミア半島とドネツク、ルハンスク、ザポリージャ、ヘルソンの4州(ウクライナ領土の18%)を維持するだろう」(ユーラシア・グループ) 物量に勝るロシアは戦場で主導権を握り、今年さらに領土を獲得する可能性がある。 「今年は戦争の転換点となる。ウクライナが早急に兵員の問題を解決し、兵器生産を増やし、現実的な軍事戦略を立てなければ、早ければ25年にも戦争に“敗北”する恐れがある」(同) 米シンクタンク、ピュー研究所が23年11月27日〜12月3日にかけ、全米の5203人を対象に実施した世論調査によると、31%がロシアと戦うウクライナに対して米国は過剰な支援をしていると回答。29%が「適切な支援をしている」、18%が「十分な支援をしていない」と答えた。 ●「米国はウクライナを援助しすぎ」と考える米国人が増加 共和党員と共和党寄り有権者の48%が「米国はウクライナを援助しすぎ」と回答。23年6月の44%から上昇した。民主党員と民主党寄り有権者で「米国の援助レベルは過剰」と考えているのはわずか16%だった。民主党員の39%が「米国は適切な額の援助を行っている」と答え、24%は「十分な援助を行っていない」と回答した。 米シンクタンク、外交問題評議会によると、22年1月〜23年10月にかけ、米国は軍事支援463億ドル、財政支援264億ドル、人道支援27億ドルの計754億ドルをウクライナに提供したものの、すでに大半を使い果たしている。ウクライナに送られる米軍の武器弾薬や装備の備蓄を補うための残り資金は11億ドル。補充できるのは48億ドルに過ぎない。 米議会上下両院指導部は政府機関の閉鎖を回避するため1月7日、23年10月〜24年9月の歳出規模を1兆5900億ドルにすることで合意したが、ウクライナへの600億ドルの追加支援は別ものだという。 「議会が24年の追加軍事支援を承認したとしても、おそらくウクライナが米国から得られる最後の重要な支援となるだろう」(ユーラシア・グループ) 過去にウラジーミル・プーチン露大統領を称賛し「私が大統領に返り咲いた暁にはウクライナ戦争を1日で解決できる」と言ってのけるドナルド・トランプ前大統領が11月の米大統領選に勝利すればウクライナ支援を大幅に削減するのは必至。ジョー・バイデン現大統領が勝利しても民主党が上下両院で過半数を占めない限り、新たな大型予算は望み薄だという。 ●GDPの6%が戦争に費やされるロシア 欧州連合(EU)はプーチンとの蜜月ぶりを隠さないハンガリーのオルバン・ビクトル首相の反対で550億ドルのウクライナ支援がストップしており、米国の代わりをするのは難しい。ドイツの中道右派・キリスト教民主同盟(CDU)出身のミヒャエル・クレッチマー東部ザクセン州首相は停戦を確実にするためウクライナ政府が領土を一時的に放棄することを示唆した。 「ロシアは新規契約でかなりの兵員を集めているため、政治的に望ましくない今年の第2次動員は今のところ不必要とみられている。プーチンは経済を戦時体制に転換することにも成功した。今年は政府支出の約3分の1、国内総生産(GDP)の6%が戦争に費やされる。ロシアのミサイルと砲弾の国内生産量は戦前を上回っている」(ユーラシア・グループ) 軍事費がGDPの6%に達するのはソ連崩壊後初めて。社会費(GDPの5%以下)を上回るのもロシア近代史上初めてだ。原油価格が高止まりする限り、プーチンはウクライナ戦争を継続できる。ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)加盟国の沿岸を通るルートを開拓したが、ロシアは機雷を敷設しており、間違って西側諸国の船舶が破壊される恐れもある。 「西側の支援が低下し、国内の政治的内紛が激化すれば、ウクライナはますます絶望的になり、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はリスクをとる恐れがある。ウクライナは国際社会の関心を維持するため最前線から離れた場所で非対称戦に転じ、NATOを戦争に巻き込む可能性がある」(同) 米国は戦争に巻き込まれるのを恐れ始めている。 ●「ならず者国家」の枢軸 ユーラシア・グループが5番目のリスクとして挙げたのは、ロシア、北朝鮮、イランという強力な「ならず者3国家の枢軸」だ。ロシアがウクライナに侵攻して以来、3カ国は協力関係を強化してきた。 「3カ国を結束させているのは厳しい制裁、米国に対する憎悪、自分たちの犠牲の上に西側が利益を得ていると彼らが一方的に考えている国際秩序を打破しようとする野望だ」(ユーラシア・グループ) 北朝鮮はロシアから「よく言えば厄介者、悪く言えばお荷物」とみなされていた。しかしロシアの孤立と軍事経済化、旧ソ連軍と同じ規格の砲弾の在庫を大量に抱えていたおかげで、北朝鮮はプーチンにとって武器弾薬の供給源となった。代わりにロシアは北朝鮮に食料、エネルギー、人工衛星開発の技術支援を行う。 シリアのアサド政権を支えてきたロシアとイランとの関係も「限定的な戦術的同盟」から「より包括的で戦略的な軍事的・経済的パートナーシップ」へ格上げされた。カミカゼドローン(自爆型無人航空機)を提供するイランは西側の制裁を回避するノウハウをロシアに伝授する。ロシアは中東で米国やイスラエルと戦うイランの代理組織との関係も強化している。 「北朝鮮とイランは数十年にわたり核・ミサイル開発で協力してきた。北朝鮮はハマスやその他イランが支援する武装勢力に武器やミサイルの設計図を提供しているとされる。ならず者国家は連携を深めて相互に支援して能力を高め、ますます協調的かつ破壊的な行動をとり、世界の安定に対する脅威を増大させる。ロシアはリスクの主な推進役となるだろう」(同) ●今年最大のリスクは米国 しかし今年最大のリスクは米国だ。米国最大の敵は米国なのだ。 「軍事力と経済力は極めて強力なままだが、政治システムの機能不全は先進工業民主主義国の中で最もひどい。今年はそれがさらに悪化するだろう。大統領選は米国の政治的分裂を悪化させ、過去150年間経験したことがないほど米国の民主主義が脅かされ、国際社会における信頼性を損なう」(ユーラシア・グループ) 米世論調査会社ギャラップの調査では、議会に対する国民の信頼は8%と圧倒的に低い。最高裁判所は27%。大統領は28%。教会や宗教団体は32%。公立学校は28%。TVニュースは14%。インターネット上のニュースは16%といずれも歴史的な低水準を記録している。党派対立は歴史的な高水準にあり、人工知能(AI)を使って偽情報が量産される恐れがある。 「2大政党の大統領候補はいずれも大統領に不適格だ。トランプ氏は何十件もの重罪で訴追を受けており、その多くは在任中の行いに直接関係している。最も重大なのは、自由で公正な選挙の結果を覆そうとしたことだ。バイデン氏は2期目終了時に86歳になる。米国人の大多数はどちらも国のリーダーにはしたくないと考えている」(同) 考えたくもないテールリスクが存在するという。大統領選を妨害するため、サイバー攻撃や偽情報、選挙プロセスへの物理的な攻撃、当日の投票を妨害する目的でテロが行われるリスクも否定できない。今年の大統領選ほど地政学的に重要な標的はない。「米国の混乱を見たいと思っている敵は国内外にたくさんいる」(同)という。 中国では米大統領選は「年寄りと狂人の闘い」とささやかれている。しかし今年の「世界10大リスク」を一読して米国全体が集団ヒステリーに陥っているように見えるのが怖い。 |
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●15日からダボス会議、イスラエルのガザ攻撃など地域紛争議題に 1/10
スイス東部のダボスで15─19日に世界経済フォーラムの年次総会(通称ダボス会議)が開催される。世界各国の政府首脳や企業経営者らが集まり、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃など地域紛争が主要議題の一つとなる見通し。 ダボス会議のボルゲ・ブレンデ総裁は、今年の会議はこれまでで最も複雑な地政学環境下で開催されると述べ、中東やウクライナ、アフリカなどの紛争を巡りハイレベル外交協議が行われると説明した。 米国からはブリンケン国務長官とサリバン国家安全保障担当大統領補佐官が出席する。中東地域はカタールやアラブ首長国連邦の首脳らが参加予定で、イスラエルはヘルツォグ大統領が出席する。国連のグテレス事務総長や40カ国以上の外相も参加する。 過去2回のダボス会議ではウクライナ戦争が主要議題となった。今回もウクライナのゼレンスキー大統領がスピーチを行う。ロシア政府関係者が出席するかは不明。 中国は2017年に習近平国家主席が出席して以来、最もハイクラスの高官として李強首相を送る予定。 各国の中央銀行の政策や債務増加問題なども主要議題となる見通し。ロイターが入手した関連資料によると、非公開セッションでは英銀バークレイズ(BARC.L)とカナダの生命保険会社マニュライフ・ファイナンシャル(MFC.TO)の最高経営責任者の出席が予定されている。 |
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●露朝間のミサイル移転に関する外相共同声明 1/10
1月10日、我が国は、米国を始めとする有志国と共に、標記外相共同声明を発出しました。なお、本件は、計48か国・1機関による共同声明です。 (声明) 我々は、ロシアによる2023年12月30日及び2024年1月2日の北朝鮮製のミサイルのウクライナに対する使用と共に、北朝鮮による弾道ミサイルの輸出及びロシアによるこれらの調達を可能な限り最も強い言葉で非難する。これらの兵器の移転は、ウクライナの人々の苦しみを増大させ、ロシアの侵略戦争を支援し、国際的な不拡散体制を損なうものである。ロシアによる北朝鮮製の弾道ミサイルのウクライナにおける使用は、北朝鮮に貴重な技術的及び軍事的知見を提供するものでもある。我々は、この協力が欧州、朝鮮半島、インド太平洋地域全域、そして世界中における安全保障に与える影響を深く懸念している。 我々の政府は共に、露朝間の武器移転に断固として反対する。北朝鮮からロシアへの弾道ミサイルの移転は、その他の武器や関連物資の移転と共に、複数の国連安保理決議、具体的には、ロシア自身が支持した、決議第1718号(2006年)、決議第1874号(2009年)及び決議第2270号(2016年)にあからさまに違反する。我々は、これらの武器輸出の見返りとして、ロシアが北朝鮮に対して何を提供するかを注視している。我々は、北朝鮮及びロシアに対し、関連する国連安保理決議を遵守するとともに、それらに違反する全ての活動を直ちに停止するよう求める。 我々は、全ての国連安保理理事国を含む全ての国連加盟国に対し、我々と共にロシアと北朝鮮による国連安保理決議へのあからさまな違反を非難するよう強く求める。ロシアがウクライナの人々に対し、ミサイルや無人機を繰り返し発射する中、我々はウクライナを支援するために団結し続ける。我々はさらに、北朝鮮に対し、朝鮮半島における恒久的な平和への唯一の道である、外交に戻るという度重なる真摯な申出に応じるよう求める。 |
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●民間人死者100人規模に 昨年末以来 ロシアとウクライナ、報復連鎖 1/10
ウクライナ国境に近いロシア西部オリョール州の知事は9日、州内の燃料・エネルギー施設がウクライナ軍の無人機攻撃を受け、3人が負傷したと主張した。隣接するクルスク州の知事も9日、州内の集落がウクライナ軍の砲撃を受け、女性1人が死亡したとした。一方、ウクライナ東部ハリコフ市当局は9日、露軍のミサイル攻撃を受けたが、同日夜時点で死傷者は確認されていないとした。 昨年末に激化した双方の長距離攻撃の応酬による民間人の死者はこれまでに計100人規模に達し、負傷者も数百人に上っている。 ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、東部や南部で4人が死亡、40人以上が負傷した同日の露軍のミサイル攻撃に対する報復を行うことを示唆していた。 ロシアは昨年12月29日、ウクライナ各地に過去最大規模のミサイル攻撃を実施。首都キーウ(キエフ)などで50人以上が死亡した。ウクライナは30日、報復として露西部ベルゴロドに砲撃などを行い、ロシア側によると25人が死亡した。双方はその後も報復攻撃の応酬を続け、死傷者が拡大。ロシアは今月2日と6日にも大規模なミサイル攻撃を行い、ウクライナ側によると、両日だけで各地で子供5人を含む少なくとも16人が死亡した。 ウクライナ空軍のイグナト報道官は9日、露軍のミサイルの残存数について、使用数と生産数から推計して「2カ月前の水準と同じ約900発だ」とする見方を地元テレビで示した。 |
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●知的人材と資本の流出が止まらない...既に「経済戦争」は敗戦状態のロシア 1/10
戦況は膠着状態で、政治の機能不全のせいで欧米の支援は揺らぎ、資源や注目は中東で新たに勃発した戦争のほうに転換──。今やウクライナは、2022年2月のロシア軍の侵攻以来、おそらく最も厳しい状況に直面している。 だからといって、得しているのはウクライナの敵、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領だという欧米メディアの皮肉な見方は飛躍しすぎだ。 昨年12月には、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のコラムニストが「今年の勝者」の1人にプーチンを選出。ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、多国籍企業1000社以上がロシアから撤退したことが逆効果になり、プーチンと取り巻きの富が膨らんでいると示唆した。 だが、プーチンは万事順調、と思い込む罠に陥ってはならない。プーチンに圧力をかける効果的な手段を捨て去ることも許されない。 実際には、あらゆる証拠が示すように、企業の「ロシア脱出」は数々の損失をもたらしている。ロシア経済が巨大なツケを払っていることは、経済データを見れば明らかだ。 譲渡された資産が無価値同然なら、ロシアもプーチン一味も得はしない。ロシアで事業展開するアジア企業や欧米企業の一部資産は没収され、大半の企業はロシアを離れるため進んで巨額の損失を計上した。だが、こうした企業の行為は好感され、時価総額が急増する結果になっている。 石油大手の米エクソンモービルや英BPの撤退で、ロシア側は資源探査に不可欠な技術を失っている。 WSJは昨年3月、現地のジャーナリストの記事として、大規模な供給崩壊でロシアの各部門の工場が休業に追い込まれていると報道。勇敢にも真実を伝えた記者の1人は当局に逮捕され、現在も拘束されている。 本当のところ、ロシアはどうなっているのか。筆者らが信頼性を確認した経済データから検証してみると──。 ●人材流出 ウクライナ侵攻直後の数カ月間、推計50万人がロシアを離れた。その多くが、ロシアにとって必要不可欠な高学歴の熟練労働者だ。 侵攻から2年近くたつ今、離脱者は少なくとも100万人に膨れ上がっている。試算によれば、この異例の人材大量流出によって、ロシアは技術系労働力の1割を失った。 ●資本流出 ロシア中央銀行の報告書にあるように、22年2月〜23年6月までにロシアから引き揚げられた民間資本は計2530億ドル。それ以前の資本流出額の4倍以上だ。試算によれば、ロシア在住の富豪の数は33%減少した。 ●欧米の技術・ノウハウの喪失 この現象はテクノロジーや資源探査など、幅広い基幹産業で起きている。石油大手ロスネフチだけを見ても、同社の公開資料によれば、昨年末までの1年間の設備投資は100億ドル近く増大。 原油1バレルを輸出するごとに、およそ10ドルの追加経費がかかる計算だ。さらに、同社の北極圏の油田開発計画も、欧米の技術や専門知識に頼り切っていたため継続が危ぶまれている。 ●外国直接投資(FDI)の停止 複数の措置によって、ロシアへのFDIはほぼ完全に止まっている。ウクライナ戦争以前、年間FDI額は約1000億ドルに達していたが、侵攻開始から昨年12月までの各月のうち、流入超過を記録したのはひと月だけだった。 ●ルーブルの通貨交換性の喪失 多国籍企業の大量撤退ではばかるものがなくなったプーチンは、通貨ルーブルに厳しい資本規制を導入した。ロシア市民による外国銀行口座への送金を禁止し、ドル預金口座からの資金引き出しを最大1万ドルに制限。 輸出企業に獲得外貨の8割をルーブルに両替することを義務付け、ルーブル口座を持つ個人へのドル直接交換、およびドル建て融資やロシアの銀行によるドル販売を停止した。 ルーブル取引高が90%減少したのも、これでは当然だ。ルーブル資産はグローバル市場で無価値に等しくなり、交換不能になっている。 ●資本市場へのアクセスの喪失 企業にとって欧米の資本市場は今も、最も深度があって流動性が高く、安価な資金源だ。ウクライナ侵攻以来、欧米金融市場で株式・社債を新規発行できたロシア企業はゼロ。 つまり、もはやロシア企業は、高利で融資する国有銀行(指標金利は16%)など、国内の資金提供源を当てにするしかない。多国籍企業撤退で、ロシアのベンチャー企業は資金調達の選択肢を奪われ、国際的投資家に出資を求めることも不可能になった。 ●富の大破壊と資産評価の急落 グローバル多国籍企業の大量撤退が一因で、ロシアでは、あらゆる分野で資産評価が急激に落ち込んでいる。筆者らの調べによれば、国有企業の企業価値はウクライナ戦争以前と比べて75%低下。NYTが指摘したように、多くの民間部門の資産価値は50%目減りしている。 これらの7つの現象は、グローバル企業が大量撤退したせいで、プーチンが強いられているコストの一部にすぎない。さらに、ロシア産原油に価格上限を設定する米財務省の措置など、効果的な経済制裁がロシア経済に与えている打撃も考慮すべきだ。 ロシアによる輸出の3分の2以上を占めるエネルギー資源は、輸出規模が半減している。工業分野でも消費者分野でも、グローバル経済において製品提供国でなかったロシアは麻痺状態にある。 簡単に替えが利く原材料を生産するばかりで、経済超大国には程遠い。今や国家に管理される企業の「共倒れ」体制によって、辛うじて戦争マシンを動かしている。 豊富な経済データを検証すれば、状況は明らかだ。外国企業の前代未聞の「ロシア大脱出」で、プーチンの戦争マシンには支障が出ている。ウクライナが瀬戸際に立たされるなか、極度に楽観視するのは過ちだが。 |
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●大統領、ダボス会議出席へ ウクライナ支援継続訴え 1/10
世界経済フォーラム事務局は9日、スイス東部ダボスで15日に開幕する同フォーラム年次総会(ダボス会議)に、ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領が出席すると発表した。各国から60人以上の代表が参加する予定で、ゼレンスキー氏は先細りが懸念されるウクライナ支援の継続を直接訴える考え。 ウクライナの最大の支援国である米国からは、ブリンケン国務長官とサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が出席する。 会議に先立つ14日には、ウクライナが提唱する和平案「平和の公式」について協議する安全保障・外交担当の高官級会合が開かれる。ゼレンスキー氏も出席する可能性がある。 |
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●プーチンにNOを言えない国民ソ連化≠ェ加速するロシア 1/10
2022年2月のウクライナ侵攻開始から約2年を経て、ようやく戦況で優位な立場を固めつつあるロシアのプーチン大統領は、24年3月の大統領選で圧倒的な勝利を誇示する態勢を整えつつある。政敵を北極圏送り≠ノするなどなりふり構わぬ手法で、実質30年にわたる超長期政権を手中に収める構えだ。 プーチン氏の圧勝は一方でロシア国民にとり、兄弟国家のウクライナを侵略し、破壊する行為に賛同するという、精神的な一線を越えることになる。巨大な独裁国家「ソ連」への回帰ともいえる流れが加速するのは必至で、ロシア社会は自由な言論がさらに容認されない、厳しい窒息状態に陥ることになる。 ●周到に準備された芝居 「今こそ、そのような決定が下されるべき時なのだろう。私は、大統領選に出馬する」 23年12月8日、プーチン大統領は表情も変えずにそう言い切った。モスクワで行われた、ウクライナ侵攻に従事した軍人らに勲章を授与する式典でのひとこまだった。 式典が終わった直後に、ロシアが占領するウクライナ東部の武装勢力「ドネツク人民共和国」の軍人が、プーチン氏に「私たちは、ロシアに再統合された、ドンバス地域(ウクライナ東部)のすべての人々の総意として、あなたに大統領選に出馬してほしいのだ」と要請。その言葉に応える形で、プーチン氏は出馬を宣言した。 軍人らが動き出すや、テレビカメラが素早く回り込み、プーチン氏の発言を撮影していた。ロシア政府は「準備されたものではない」と主張するが、周到に用意された発言であったのは明らかだ。さらにプーチン氏の発言はまわりくどく、芝居≠ニの印象をさらに強めていた。 ●ロシア軍は31万人が死傷 ウクライナ侵攻をめぐり、プーチン氏はロシアが前線で優位な立場に立ちつつあると、繰り返し誇示している。ウクライナに対する欧米の支援疲れが鮮明になるなか、ゼレンスキー大統領が厳しい局面に追い込まれているのは間違いない。 ただ米情報機関はロシアが、31万人超ともいわれる死傷者を出していると分析しており、この数字は約7万人とされるソ連のアフガニスタン侵攻での死傷者の4倍を超える。それでも、ウクライナ侵攻の明確な出口は依然見えておらず、プーチン氏が当初目指していたウクライナ全土の制圧には、程遠い状況にある。 そのようななかでの大統領選への出馬を正当化するには、プーチン氏には相当の理由付け≠ェ必要だった。その意味で、ロシアが「戦果」として占領したウクライナ東部の軍人からの、プーチン大統領への再出馬の要請は、プーチン氏の再出馬を正当化できる最大限の理由だと政権側は考えたに違いない。 ●北極圏で封じ込め プーチン政権は一方で、大統領選での圧勝をおぜん立てるために、これまで以上に反体制派の封じ込めにやっきになっている。その象徴が、アレクセイ・ナワリヌイ氏の北極圏送りだ。 ロシア当局はナワリヌイ氏を繰り返し拘束、拘留して、23年8月には過激派団体を創設したとの罪で、懲役19年の判決を下した。同氏は刑務所に入れられていたが、12月に入り、突然動静が不明となった。 処刑されたかもしれないとの懸念が高まったが、ナワリヌイ氏は同月末、ロシア北部ヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所に移送されていたことが判明した。外部はマイナス30度にもなる、永久凍土に覆われた同刑務所は、かつて旧ソ連の強制収容所として利用されていた場所だ。同氏の活動は完全に封じ込められた格好で、政権の強い警戒感がにじみ出ている。 3月のロシア大統領選をめぐっては、ウクライナ侵攻を批判する独立系のジャーナリストが中央選挙管理委員会によって出馬を拒否されるなど、あからさまな政敵の排除が進む。体制内野党≠ニ揶揄される、実質的に政権の一部となっている野党や、一部の改革派が出馬する見通しだが、プーチン氏に脅威をもたらす可能性はまずない。 ●再選支持一色が意味すること 一方的に仕掛けた戦争で、自国の兵士30万人以上が死傷し、さらに兄弟国家とされた隣国への破壊を続けるリーダーに対してロシア国民はなかば無感情に投票することを余儀なくされる。政権からのメッセージは明確であり、それに従わない危険を冒すロシア人はほとんどいない。 ロシア国内のメディアも、プーチン氏の再選を強く支持する。 象徴的だったのは、高級紙≠ニ位置付けられる「独立新聞」の報道だ。同紙は12月26日に掲載した「今年の重大ニュース」のランキングで、プーチン大統領の再選出馬を第1位に掲げた。記事の大半は、今後の正式な出馬へのプロセスを延々と紹介するものだったが、再選出馬が確実視されるプーチン氏の出馬をあえて1位に選ぶ状況にも、メディア側からの政権への配慮≠ェ強く感じられる。 今回の大統領選はウクライナ侵攻開始後で初の大統領選になるため、多くのロシア国民にとり、その投票行動はプーチン氏の言動に「賛成する」との意思を国内外に表示することにつながる。その行動により彼らは、侵攻の連帯責任を、明確に負うことになる。 この一線を越えれば、プーチン政権が国内の独裁体制強化をさらに加速することは必至だ。反体制派に対する圧力を強め、国内の言論統制が進む。社会の硬直化が進み、軍事面においても、より苛烈な作戦が遂行されることは確実だ。 ●戦況、経済で優勢を誇示 プーチン大統領は同月中旬に行われた大規模記者会見で、こう強調した。 「われわれの目標は変わっていない。つまりそれは、ウクライナの非ナチス化であり、非軍事化、中立化だ。もし彼らが、非軍事化に応じないのだとすれば、軍事的手段を含めた対応を行う必要がある。ウクライナは今日、すでにほぼ、何の(武器の)生産も行っていない。彼らは、他国からの供給でそれをまかなっているだけだ。しかし、それはいつかついえるのだ」 発言からは、ウクライナ侵攻で優位な立場にあると誇示するプーチン氏の強い意図が伺える。戦況においては、ロシア軍は12月末にはウクライナ東部ドネツク州の激戦地マリンカを陥落させるなど、守勢にまわるウクライナ軍に対し攻勢をかけている。国民が懸念する追加の動員も、十分な志願兵がいるとし、否定した。 経済面でも、ロシアは23年の国内総生産(GDP)成長率が3.5%を記録したとみられるなど、プーチン氏は厳しい欧米諸国の経済制裁に耐えた事実を強調した。欧州などが買い控えた原油を中国、インドが代わりに買い支えたほか、兵器生産のための公共投資が経済を押し上げたとみられている。日本のGDP成長率が1.7%、ドイツがマイナス成長に陥ると予想されていることを考えれば、プーチン氏がその成果を誇示することは不思議ではない。 この傾向は、24年も劇的に変わることは考えにくい。消耗品である兵器への公共投資は、再投資にはつながらず国家の中長期的な経済成長にはつながらない。ただ、一定の成長を維持する効果はあり、短期的にはその矛盾に気づきにくい。 中国、インドの資源輸入においても、両国がロシア産原油を安く買いたたくことができるという構図がさらに深まるものの、経済的に孤立させるという当初の制裁の目論見は外れてしまったのが現実だ。 ●進められる全体主義的な政策 ただ、ロシア国内でその先に待ち受けているのは、さらに声を上げられない℃ミ会の深化だ。国民は、投票を経てウクライナ侵攻に全面的に「賛同」したとの言質を取られる。プーチン氏の行動に制限をかける権利は、彼らにはもうない。 プーチン氏が大統領選後、具体的にどのような施策を進めるかは不透明だ。ただ確実に手を付けると考えられるのが、プーチン氏が強い執着を持つ、ソ連の復活を思わせる全体主義的な施策だろう。プーチン氏はソ連崩壊を「20世紀における、地政学上の最大の悲劇」と言ってはばからない。 プーチン氏は22年、多産した女性を表彰するソ連時代の勲章制度の復活を打ち出したほか、ソ連版のボーイスカウトと呼ばれた「ピオネール」活動を復活させた。ソ連時代に、国の人口維持や優れた共産主義者を輩出することなどを目的に実施された施策であり、国家主義的な色彩が極めて強いものだ。 ウクライナ侵攻後、政権に不満を持つ多くの若者らが国を去った結果、ロシア国内の反政権活動は、一層弱体化した。24年のロシアは、大統領選を経て翼賛体制が進むのは必至で、プーチン氏の動きに国内からブレーキをかけることはほぼ期待できなくなる。ソ連崩壊後、民主主義の歩みを進めたはずのロシアが、その歩みを止めてソ連に回帰するという厳しい現実に、国際社会は直面することになる。 |
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●ウクライナ「戦争終了の圧力受けず」、ゼレンスキー氏バルト3国歴訪 1/10
ウクライナのゼレンスキー大統領は10日、訪問先のリトアニアで、ウクライナはロシアとの戦いをやめるよう同盟国から圧力を受けていないと述べた。 ゼレンスキー氏はロシアとの戦争やウクライナの北大西洋条約機構(NATO)・欧州連合(EU)加盟について協議するため、バルト3国のエストニア、ラトビア、リトアニアの歴訪を開始。X(旧ツイッター)でビリニュスに到着したと発表し、「安全保障、EUおよびNATOへの統合、電子戦や無人機に関する協力、欧州の支援に関するさらなる調整などが議題だ」と説明した。 ただ、ゼレンスキー氏とリトアニアのナウセーダ大統領との会談が始まる直前、イタリアのクロセット国防相がイタリア議会で、ウクライナの反転攻勢は望ましい結果を生んでおらず、軍事的な状況を現実的に見る必要があるとし、和平に向けた外交の時が来たと発言。 ナウセーダ大統領との共同記者会見で、ウクライナのパートナーはウクライナに対し戦闘を止める促しているのかとの質問に対し、ゼレンスキー氏は「パートナーから防衛を止めるよう圧力は受けていない。紛争の凍結に向けた圧力はまだない」と述べた。 バルト3国はウクライナのEU、NATO加盟を強く支持。ゼレンスキー氏は、ロシアがウクライナで勝利を収めればモルドバと共にバルト3国がロシアの次の標的になるとしている。 ゼレンスキー氏はビリニュス中心部で数千人の観衆を前に行った演説で「戦争が終わった後の日が来る。プーチン(ロシア大統領)の後の日が来る」と述べた。 |
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●ウクライナ ロシア西部に越境攻撃か ロシアも攻撃で応酬激化 1/10
ウクライナ軍は東部の国境に接しているロシア西部の州に対して越境攻撃とみられる動きを強めていて、侵攻するロシア側への揺さぶりを続けています。これに対し、ロシア側は「脅威を排除する」としたうえで、国境を接するウクライナ側の州で攻撃を続けていて、双方の応酬が激しくなっています。 ウクライナへの侵攻を続けるロシアの国防省は9日、ウクライナと国境を接するロシア西部ベルゴロド州で、ウクライナ軍がミサイルと無人機で攻撃をしかけ、これを迎撃したと発表しました。 ベルゴロド州では先月30日に、ウクライナ軍による攻撃で25人が死亡したと現地の州知事が発表していて、ウクライナ軍は最近、越境攻撃とみられる動きを強め、揺さぶりを続けています。 ロシア大統領府のペスコフ報道官も9日、「この脅威を排除するためにあらゆる努力を行う」と述べ、強い警戒感を示しました。 一方、ベルゴロド州と国境を接するウクライナ東部のハルキウ州ではロシア軍の激しい攻撃が続き、10日、ハルキウの市長は市の郊外の子ども向けのキャンプ施設でロシア側から夜間、ミサイル攻撃があり、建物が被害を受けたと発表しました。 アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は9日、「ベルゴロド州との『緩衝地帯』を創設するため、ロシア軍がハルキウ州で大規模な軍事作戦を実施しようとする動きがでている」と指摘し、国境地帯で双方の応酬が激しくなっています。 |
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●北朝鮮ミサイルでロシアがウクライナ攻撃、日米欧が武器取引停止を要求 1/10
日米欧など48か国と欧州連合(EU)の外相は9日(日本時間10日)、ウクライナ侵略を続けるロシアに北朝鮮が弾道ミサイルを供与したとして両国を非難する声明を発表した。露朝の軍事協力拡大が世界中の安全保障に与える影響について深い懸念を示し、武器取引の即時停止を要求した。 ロシアは北朝鮮から数十発の弾道ミサイルの供与を受け、昨年12月以降、ウクライナへの攻撃に使用している。声明は「ウクライナの人々の苦しみを増大させ、ロシアの侵略戦争を支援するものだ」と批判し、「断固反対する」と強調した。 複数の国連安全保障理事会決議に違反していると指摘した上で、全ての国連加盟国に違反を非難するよう強く求めた。 |
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●ソ連の版図を求めるならソ連の経済もどうぞ〜プーチン、軍事ケインズ主義 1/11
FSBの支持がある限り、プーチンとその後継者の権力は維持される。しかし今や、製造業の大半は軍需がらみ。原油価格低迷の中、ルーブル下落とインフレを抑えるために補助金がばらまかれて、インフレ圧力をさらに高める。プーチンはウクライナ問題で我を通そうとして、元々弱体のロシア経済を破壊してしまったのである。 ●軍需に経済を全振りした結果 2年前、ロシア軍のウクライナ侵略開始とその直後の西側の本格的制裁は、ロシア経済に大きな衝撃を与えた。制裁はEUというロシア原油・天然ガスの大市場の門戸を閉ざした(輸出は一部続いているが)ばかりでなく、SWIFTという国際決済メカニズムからロシアを追放するものだったからである。 これを受けてルーブルはドルに対して一時50%近くの暴落を示し、ロシアは財政破綻、輸入インフレ必至という状況に追い込まれた。2022年のGDPはマイナス2.1%の縮小を見せた。 しかしロシアは持ちこたえる。輸出企業の手持ちの外貨を強制売却させてルーブル・レートを引き上げる。更に皮肉なことに、制裁で世界の原油・天然ガス価格がはねあがったから、ロシアの輸出収入はかえって増加することになった。 そして予算が軍需生産部門につぎこまれたせいで、製造業部門の生産額が急増。今年3月の大統領選挙を念頭に、プーチンは住宅ローン、消費者ローンの金利に補助金をつけて、低利を維持したから、建設、消費も好調だった。 このため2023年GDPは3%強の成長を見せ、プーチン初め政策当局者達は「ロシアは制裁を乗り切った」と虚勢を張っている。モスクワなど大都市では、人々が戦争の恐怖、あるいは同胞ウクライナ人を殺しているという後ろめたさを振り払いたいかのように、消費、遊興にうつつをぬかす。 しかしこの宴は、タイタニック沈没直前の舞踏会のようなものになろう。 ●まるでソ連時代の補助金、低価格制度 破綻は2022年の末に始まっている。この時原油価格の急落を受けて、ルーブルは下落を始め、半年で50%近くの下落を見せた。ルーブルを支えるために、ロシア銀行(中銀)は利上げを繰り返し、10月末には15%とした。 プーチンは、これが住宅ローン、消費者ローン金利を引き上げて返済を難しくするのを恐れ、ローンの金利に政府補助金をつけさせる。また国営企業も銀行融資金利への補助金給付を求め、これによって金利への補助金がついた融資の残高は、GDPの7%相当に達している(11月3日付「Bellingcat」)。 これは、あらゆるものが政府からの補助金、それに類するもので低価格に維持されていたソ連の時代を想起させる。1980年代末期、国際原油価格の低迷で、この補助金支給の負担に耐えられなくなったゴルバチョフ政権は、補助金削減・廃止に向かう。これでインフレが始まり、商品は店から消えて、住民の不満と不安が高まり、エリツィンによる権力奪取に至ったのである。 今回、補助金はインフレを激化させ、インフレは中銀に利上げを迫る。中銀が利上げをすれば益々多額の補助金が支給されて悪循環となる。ソ連末期のハイパー・インフレの足音が近づく。 ●軍事経済の果てにあるもの 補助金漬け経済と並んでソ連時代を彷彿とさせるのが、経済の軍事化である。冷戦時代米国との核競争は金食い虫で、ソ連の製造業の過半は軍需関連となっていた。消費財生産は巨大軍需工場の片隅で行われることが多かった。 今年、軍事予算は昨年度より70%増額されて、GDPの6%に及ぶこととなっている(9月23日付「Intellinews」)。軍需部門がエンジニア、労働力、資材の多くを吸い上げるだろうから、民需生産はソ連時代と同様、「片隅」に追いやられる。 外国製造業の多くがロシアから撤退したことも、今後の見通しを暗いものとする。乗用車の生産、販売から西側企業が大きく撤退したことで、新車販売の中での中国車のシェアが急増している。中国車はロシア国内で生産されていないから、その供給には不安がある。 もっとひどいのは航空機で、冷戦後の開放政策で、ロシアの航空会社は西側製航空機に大半を依存するに至った。2022年2月、西側がロシア制裁で、航空機のリース契約破棄を決めると、ロシアは航空機を差し押さえ、今でも運用している。部品の入手、そしてメンテは制裁に加わっていない中国などを通じて行っている。おそらくこれでは足りないのだろう。昨年末には旅客・貨物便双方で、機材の不具合による欠便増加が報道されている。 ●エリツィン政権の終末を見るような そして昨年末には、アゼルバイジャンから約50トンの卵が緊急輸入されている(2023年12月24日付「RIA Novosti」)。昨年を通じて卵の価格は60%近く上昇したし、通常年末には卵の需要が高まるからなのだが、卵の価格は他の食料の価格動向を先導する。 泣きっ面に蜂で、最近の国際油価は下落傾向にある。中国経済は言うに及ばず、米国経済も破綻ということになれば、油価は底を見るだろう。アンゴラはOPECを脱退して、増産で収入を確保する策に出ており、同様の動きが続けば油価下落要因となる。 1998年8月、借金漬けで首がまわらなくなったロシアは、公的債務支払いのデフォルトを宣言。ルーブルは暴落し、経済は止まった。 万策尽きたエリツィン大統領は、次の年、チェチェンに戦争をしかけてその指揮をプーチン首相に取らせる。軍がチェチェンを踏みにじる中、プーチンの人気はうなぎのぼりとなり、前期のように同年12月にはエリツィンは辞任。プーチンを大統領代行に任命する。 気をつけないと、同じようなプロセスが今回も展開することになるかもしれない。 |
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●3月大統領選へ「遊説」開始=プーチン氏、ロ最東端で体力誇示 1/11
ロシアのプーチン大統領は10日、ベーリング海に面した最東端のチュコト自治管区を訪問し、中心都市アナディリで住民らと懇談した。 自身の通算5選が確実視される3月投開票の大統領選が約2カ月後に迫る中、事実上の「地方遊説」を開始した格好だ。 アナディリは首都モスクワから直線距離が6000キロ以上で、この日の気温はマイナス30度前後。プーチン氏は現在71歳だが、さらなる長期政権を見据え、健康や体力に問題がないことをアピールした。 タス通信によると、住民らの質問に答える形で「毎日少なくとも2時間は(トレーニングや水泳に)取り組んでいる」とも説明した。ウクライナ侵攻下、西側諸国の一部メディアでうわさされた「健康不安説」を一蹴したとみられる。 プーチン氏が2000年の大統領1期目就任後、チュコト自治管区を訪れるのは初めて。ペスコフ大統領報道官は「唯一訪問していなかった地方であり、これでロシア全土に足を運んだと言える」と強調した。 |
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●ウクライナに停戦圧力なし 1/11
ウクライナのゼレンスキー大統領は10日、リトアニアの首都ビリニュスを訪れ、ナウセーダ大統領と会談した。共同記者会見で、友好国からロシアとの停戦を要求する「圧力は受けていない」と主張し、反攻を続ける考えを示した。欧米で停戦を探る動きがあることについて「さまざまな意見はあるが、私は直接聞いていない」と述べた。 ゼレンスキー氏は、ロシアに停戦の考えはないとし「プーチン大統領はウクライナを破壊するまで静まることはない」と述べた。今年が侵攻の行方を左右する「決定的な年になる」と訴えた。ナウセーダ氏は新たに2億ユーロ(約320億円)の軍事支援を表明した。 リトアニアはバルト3国を構成するエストニア、ラトビアと共にウクライナの支援国として知られ、ナウセーダ氏は「ウクライナの完全勝利に関心がある」と語った。 一方、今年の先進7カ国(G7)議長国イタリアのクロセット国防相は10日、議会で演説し「ウクライナへの支援は変わらない」とした上で「外交で動くべき時が来たようだ」と発言。ウクライナの反攻失速や、ロシア国内の疲弊に言及し、交渉に向けた「重要なシグナルが双方から出ている」との見方を示した。 ゼレンスキー氏は、エストニアとラトビアも訪れる見通し。スイスで15日に開幕する世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)にも出席する。 |
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●予想をはるかに上回るロシア軍の戦闘能力、ウクライナ軍は崩壊寸前に 1/11
新年を迎えたものの、世界の三大戦略要域である東アジア、中東、欧州は戦争がいつ起きてもおかしくない状況か、戦火に見舞われたままだ。 そのなかで、開戦から2年に達しようとしているウクライナ戦争は、ロシア勝利の見通しが高まっている。 ウクライナ戦争の現状と今後の見通しについて概観し、最後に日本の今後の在り方について付言する。 ●威力を発揮できず南部正面で敗退したNATO型編成・装備のウクライナ軍 2023年6月初旬から始まったウクライナ軍の攻勢は、2023年11月末に失敗に終わった。現在はロシア軍が全正面で本格攻勢に出ている。 その直後の2023年6月13日にウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナは「戦車160両、装甲車360両以上を失ったが、ロシアが失った戦車は54両だ」と述べた。 ロシアの損害は相手の10分の1で、軍事作戦の目的は不変だと述べている。また、戦死者数についても、ウクライナ軍はロシア軍の10倍だと発言している。 いずれも強気の発言だが、ロシア軍の徹底した火力消耗戦によりウクライナ軍が2022年9月から行ってきた攻勢作戦により大量の兵員と装備の損害を出していることを指摘し、また攻勢を繰り返しても同じ結果になると警告したものと受け取れる。 ウクライナが再度攻勢を試みた背景には、NATO(北大西洋条約機構)の支援があった。 2023年6月からの攻勢は、NATOから供与されたレオパルド戦車、ブラッドレー装甲戦闘車、火砲、対空・対戦車ミサイルなどの新鋭装備とNATO加盟国で訓練された精鋭部隊12個旅団、約6万人を基幹とする本格的な攻勢であった。 この攻勢により、ウクライナ軍もそれを支援するNATOも、南部ザポリージャと東部ドンバスのロシア軍を分断し、占領地域の多くを奪還できるものと期待されていた。 攻勢戦略の全般構想は当初、アゾフ海に最も近い南部ザポリージャ正面の戦線から突破してアゾフ海に進出し、ロシア軍を分断する。 その後、戦果を拡張してクリミア半島を奪還するとともに、東部ドンバスのロシア軍も撃退するというものだったと思われる。 ただし、具体的な戦力配分については、米側とウクライナ側では意見が一致しなかった。 米軍側はザボリージャ正面のロポティネ地区に攻勢部隊の全力を集中するようウクライナ側に勧告した。 これに対しウクライナ側は、戦力を集中してもロシア軍の航空攻撃やミサイルの集中攻撃を受けて壊滅するおそれがあるとし、戦力を分割することを主張したと伝えられている。 その結果、ウクライナ軍は戦力を3分し、激戦地区の東部ドンバスのパフムート、アディエフカ及び南部ザボリージャの3正面から攻勢を発動することを主張した。 結果的にウクライナの主張が通り実行に移された。 特にロポティネ正面には、NATO型編成・装備と訓練された兵員からなる精鋭7個旅団が集中され、ロシア軍の陣地帯に対する突破が試みられた。 しかし、数日以内に主力のレオパルド戦車やブラッドレー装甲戦闘車が数十両一挙に破壊され、当初の目論見は外れた。 その原因について、作戦に参加したウクライナ軍下士官が西側報道機関のインタビューに答えて、概略以下のように説明している。 「攻勢を開始してロシア軍の陣地帯の堅固さに驚いた。全正面にわたり縦深約4マイルの地雷原と障害帯があり、その背後にさらに縦深約4マイルの主陣地線があった」 「特に問題になったのは地雷原など障害の処理だったが、障害を処理しようとするとドローンに発見され精密誘導のミサイルや砲撃を受け処理チームが損害を被り処理が進まなかった」 「その間に後方で待機あるいは前進途上の戦車や装甲車がドローンなどに発見され、その多くが破壊されてしまった」 「車両がなくなったため、砲弾の補給ができなくなり、その後のロシア軍の砲兵火力に対抗できず、一方的に損害を招く結果になったとのことである」 なお、このロポティネ正面の戦闘は、約10キロ正面に5個旅団を集中して運用するというNATOの作戦教義に沿った運用だった。 しかし、失敗に終わった。 このような作戦経過を見ると、ロシア軍の火力消耗戦の実態を熟知しているウクライナ側の主張の方がより的確だったと言えよう。 戦略的に戦力を3分したとはいえ、少なくともロポティネ正面ではNATO教義に沿った戦力密度が集中されていたが、それでもロシア軍の火力消耗戦に敗北したことになるからである。 1正面に集中していれば、なお被害は甚大だったかもしれない。 戦力集中により陣地線を若干突破できたとしても、3線以上の陣地帯を突破はできなかったとみられる。 このような状況下で当初投入された5個旅団内の戦車、装甲車、支援した火砲の大半が戦力を失い、残された2個旅団はレオパルド戦車も含めアディエフカ、パフムート正面に転用された。 その後もロポティネ正面での攻勢は続けられたが、ウクライナ軍は乗車攻撃をやめ、10人前後の下車歩兵を主に多数か所から障害帯を越えて敵陣地に接触し、侵入地域を徐々に拡大するという戦法に移行した。 ただし、ロポティネ正面でウクライナ軍が侵入した地域は、大半が警戒陣地と呼ばれる主陣地前方の深さ7〜10キロの地帯であり、戦車や装甲戦闘車は障害帯を突破できず、主陣地の突破は一部の歩兵による侵入程度に止まっている。 ロシア軍の陣地帯はロポティネ正面には3〜4線構築されていたが、その最初の陣地帯を突破できなかったのが実態である。 しかも、ウクライナ軍の北方から進出した突出部の地形は、3正面を比高差約100メートルの高地帯に取り囲まれた低地帯であった。 対するロシア軍は3方向の高地上に陣地線を構え、3正面から火力制圧をしてきた。目標偵察のため多数のドローンも併用していた。 この様相は秋の泥濘期に入り、さらに悪化した。 車両は道路以外使用できず、歩兵も泥に足を取られ前進は進まない。補給も受けられず低地にくぎ付けになったウクライナ軍歩兵部隊をロシア軍の精密誘導砲爆撃が襲い、被害が続出した。 後述するように、ウクライナ軍は2023年11月、それ以上の無益な犠牲を避け、ロシア軍に両翼から包囲されるのを回避するため、ロポティネ正面突出部の南部から撤退を余儀なくされるのである。 ●兵力を増強するロシア軍と予備役も枯渇しているウクライナ軍 NATO側は2014年のマイダン革命(実態はクーデター)以降、毎年約8000人の要員をNATO各国で軍事訓練を施し、装備品もNATO装備に逐次切り替えるなど、ウクライナ軍のNATO軍化を進めてきた。 開戦時にはウクライナ軍は正規軍約21万人、予備役約90万人とされ、開戦と同時に予備役にはほぼ全面的動員がかけられ、18〜60歳の男性の出国が禁止されている。 戦争が近いとのうわさが流れ、若い男性の国外脱出が増加していたためとされている。 他方、プーチン大統領は、当初から限定特殊軍事作戦という言葉を使い、戦争目的をウクライナの非ナチ化、非軍事化、中立化にあるとし、この一貫した戦争目的が不変であることは、後述するように2023年12月末の段階でも強調している。 そのため、ロシア軍はいまだに予備役200万人の全面動員はかけていない。 開戦から2022年9月頃までロシア軍は、南部18〜22万人、東部と北部に各15〜20万人、計48〜62万人で戦っている。 ウクライナの首都キーウから撤退して以降の2022年8月までの戦いは、ロシア系住民地区の占領とアゾフなど極右武装勢力の制圧を重点とし、マリウポリの戦いが焦点であった。 そのマリウポリは2022年5月17日に陥落した。 ロシア軍はウクライナ軍の攻勢を予期し、伸び切った戦線を約1000キロに縮小しつつ2022年夏頃からスロビキン・ラインと呼ばれる堅固な陣地帯を構築している。 陣地帯は、現接触戦から数キロ以上離隔した西側から南部のロシア占領地域内の要域に沿い全正面幅約1000キロにわたり、少なくとも1線、特に南部については3線以上も構築された。 このような大規模な陣地構築が可能になったのは、地形が平坦であっただけでなく、航空優勢下に機械力を駆使して陣地や障害帯を迅速に構築することが可能であったことによる。 そのうえ、ロシア軍は総兵力約72万人とウクライナ軍の数倍の兵力を展開し、7〜10倍の圧倒的に優勢な砲兵と砲弾・ロケット弾などを集積し、ウクライナ軍の2022年9月からの攻勢に対し徹底した火力消耗戦を挑んだ。 航空優勢もなく兵員数も火力も劣勢であったにもかかわらず、ウクライナ軍は攻勢反復に固執したため、ウクライナ軍の損耗は急増した。 退役米陸軍大佐ダグラス・マグレガー元米国防省顧問は、2023年末の時点で最大50万人以上が戦死し、同数かそれ以上の兵員が戦傷したと見積もっている。 ウクライナ軍の実際の損耗数についてはウクライナ側からは公表されてないが、マグレガー氏は、衛星画像分析、戦死者通知、ウクライナ国内の新たにできた墓の数、病院での調査結果、インタビューなどを集約して得られた見積もりだとしている。 2024年1月5日のユーチューブ上のマグレガー氏の発言によれば、2023年1月時点でロシア軍は、次の火力消耗戦とウクライナ軍の攻勢に備えるため、戦車2000両を含む戦闘車両5000両、火砲数1000門、無人機数1000機などの装備を集中している。 これに対し、米国のバイデン政権は約30億ドルの武器援助を約束したが、攻勢戦力を補うには不十分であった。 その後、半年間はロシア軍の火力消耗戦が続き、ウクライナ軍の兵力、装備は損害が増加していったが、全般的に活発な動きには乏しく、パフムートなど都市部でのワグネルとの戦闘など都市の攻略戦が焦点となった。 2023年6月からの攻勢を担った基幹部隊は、上述したようにNATOで訓練されNATO型の編成・装備で固めた約12個旅団基幹約6万人だった。 しかしその部隊もロポティネやパフムートの戦闘でほぼ失われた。2023年12月時点で、ウクライナ軍の予備部隊はほぼ枯渇したと言えよう。 ロシア軍側の損耗については、戦死と戦傷を合わせて約31.5万人との米情報機関の見積もりが2023年12月に報じられている。 そのうち戦死者数については、戦傷者数は戦死者数の3倍程度という通常の比率から見て約6〜10万人程度とみられる。 特に、2023年12月以降ロシア軍が攻勢に転じてから損耗が増大したとみられているが、それでも戦死者数はウクライナ軍が5〜8倍になる。 ロシア大統領府は2023年12月1日、プーチン大統領が軍の最大兵員数を約17万人増やす大統領令に署名したと発表した。 これにより軍の正規兵力は132万人になると報じられている(『ロイター日本語版』2013年12月2日)。 プーチン大統領は、2023年12月14日のテレビ記者会見において、これまでに政府の目標を上回る48万6000人が入隊の契約を済ませ、志願兵と合わせればその数は2023年末までに50万人に達するだろうと説明。 「どうして動員をかける必要があるだろうか。その必要はない」と述べている(『Bloomberg News』2023年12月14日)。 他方、ウクライナ軍の開戦時の兵力は約21万人、予備役は約90万人とみられていたので、総計111万人となる。 ウクライナ側では総兵力を2022年7月時点で70万人としていると報じられている(『読売新聞』2023年4月28日)。 その後は、100万人前後とウクライナ側は公表してきているが、2023年12月時点では交代要員もいないことが留守家族の発言で明らかになっている。 その兆候として、ウクライナ国内では、兵役期間を無制限にせず、軍が退役期日を明確に示すことを要求する嘆願書が、2万5000人の署名を得て、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領に提出されている(『ロイター日本語版』2023年11月28日)。 このように、厭戦気運がウクライナ国内では高まっている。 ウクライナ国内の独立系調査機関による2023年11月の調査結果によると、ロシアとの交渉を拒否し全土奪還するまで戦うとの意見に賛成するのは48%にとどまり、戦争終結への妥協を期待するとの意見とほぼ拮抗している(『ロイター日本語版』2023年12月5日)。 ウクライナ軍の損耗数が約100万人に上るとすれば、開戦時兵力の111万人としても、損耗比率は実に9割になる。 ウクライナ軍は開戦後新たに兵員を補充したとみられるが、それを加算しても軍はほぼ壊滅状態に近いと言える。 2023年12月に、ウクライナ軍現役兵士の平均年齢が43歳と報じられたことがあるが、あながち誤りとはいえないであろう。 マグレガー氏は、正規の開戦時のウクライナ軍は2022年9月頃までにほぼ壊滅し、その後の3か月間の攻勢で若い予備役兵士主体の部隊も戦力を失った、その後のウクライナ軍は新編された訓練不十分な老兵と少年兵が主になったと述べている。 2023年12月19日、ゼレンスキー大統領は、国外のウクライナ人男性、国内の女性も含む45万〜50万人の追加徴兵の要請を軍から受けていることを明らかにしている。 同月26日ヴァレリー・ザルジニー総司令官は、追加動員の具体的な人数について言及は避けつつ、「軍の兵士は極めて困難な状況の中で前線に立っている」と述べ、理解を求めた(『朝日新聞DEGITAL』2023年12月27日)。 このように、ウクライナ軍の兵員不足は軍総司令官が認めるほど深刻になっている。 兵力不足のため、2023年12月初旬から始まったロシア軍の攻勢に対し、当初果敢に逆襲を試みていたウクライナ軍も、12月20日頃からロポティネ正面の突出部の部隊を撤退させ、ロシア軍が突出部南部を奪還したことが衛星画像から判明している。 なお2023年12月26日の同上記者会見で、ザルジニー総司令官は、東部の要衝マリインカから部隊を撤退させる方針を示し、事実上の同市陥落を認めている。 また、ザルジニー総司令官は同記者会見で、「軍として人数を挙げて要請した事実はない」とゼレンスキー大統領の発言を否定している。 ザルジニー司令官と大統領の間にあつれきもささやかれており、解任説までささやかれている(『時事通信ニュース』2023年12月27日)。 このように兵員不足問題はウクライナ指導部内の亀裂まで生んでおり、ゼレンスキー大統領に対する不信と不満が軍内に高まっていることも示唆されている。 ●準備周到だったロシアの装備・弾薬の増産に追いつけない準備不足のNATO 装備や弾薬の緊急増産能力についても、2023年末時点でNATO側はロシア側に追いつかないことが明らかになっている。 その根本原因は、冷戦崩壊後、米国はじめNATO加盟国間では、米国の一極覇権が確立され今後は大規模な戦争はないものとの考え方が支配的になり、9.11を契機に対テロ戦争や低強度紛争用の編成・装備や戦法に重点が指向されたことにある。 特に、米国は軍事生産基盤を大幅に縮小し、最先端の売れる兵器の研究開発や整備に力点を置いてきた。 そのため、戦車、火砲、ロケット弾、戦場防空用対空ミサイル、工兵能力、ドローン、電子戦などの装備の開発配備や備蓄を怠ることになった。 また、米軍内では湾岸戦争が将来戦の様相の基準とされ、砲弾も湾岸戦争の実績値に基づき、月産1.9万発とされてきた。 この量は、現在のウクライナ戦争のウクライナ軍の所要数1日6000発の約3日分に過ぎない。 それに対しロシア軍は、経済制裁にもかかわらず、NATOが予想していた生産量の2倍の年間200万発を生産している、 そのペースはさらに増大しており、NATOの砲弾生産量はロシアの7分の1に過ぎないと報じられている(『New York Times』2023年9月13日)。 国際的な支援もある。NATO以外では韓国が開戦から1年10か月間に、50万発の砲弾をウクライナに貸与している。この量は欧州全体の量よりも多い(『HANK YOREH』2023年12月5日)。 他方、2023年10月の露朝首脳会談では、北朝鮮がロシアに砲弾など数百万発を供与することに同意したと伝えられている。 ほかに、イランからドローン、中国から装輪車両・半導体などがロシアに供与されている。2023年12月25日には、ロシア軍が北朝鮮製の砲弾を使用していることを、ロシア国営放送が報じている。 ロシア軍は、ソ連時代の軍事生産基盤をそのまま温存し、その後も増強してきていた。 開戦前にNATOが予想していた量に比較し、ロシア軍の備蓄量は3倍、緊急増産能力は2倍あったとみられている。 NATOはロシアの戦時使用可能弾量について過小評価していた。 それに対し米国はじめNATO側は、砲弾やミサイルの備蓄、緊急時増産能力の向上も遅れ、経済の国際化の流れの中、特に米国の軍需産業を含めた生産基盤が中国などに移転されていった。 そのため、開戦以降になり軍需生産能力を増強しようとしても、技術者も熟練の現場労働者も生産設備もない、工場も再建が必要という状況に陥っている。 米国を含めNATO加盟国が全力で増産しても、ウクライナの所要である砲弾等1日6000発の要求をまだ満たせないでおり、2024年3月までの年間100万発の生産目標も達成困難とみられている。 また2023年10月にハマスとイスラエルの戦争が始まって以降、ウクライナに対するNATOの支援は、2023年に比べ3割から1割強にまで激減したとされ、ウクライナ側の強い不満の一因となっている。 増強された装備数にも圧倒的格差がある。 ロシア側は2023年12月に、2023年中に戦車2000両、戦闘車2万両を受領したと公表している。 それに対し、ザルジニー総司令官は2023年12月、「我々はNATOから数百両の戦車と数百両の戦闘車を受領したが、それではとても足りなかった。HIMARS(高機動ロケット砲システム)も200基は必要だったのに、50基しか受け取れなかった。それでも戦わざるを得なかった」と不満をもらしている。 ウクライナの戦場で最も効果を上げ戦場様相を一変させたドローンについても、ロシアは自ら1万機を生産し、イランなどからも導入し、戦場での展開数はウクライナ側の約7倍に達していると米軍関係者は評価している。 ロシア軍の受領した装備の5〜10分の1しかウクライナ軍はNATOから受領できなかったことになる。 ウクライナには自らこれらの装備を生産する能力はなくNATOに依存している。 しかも、多種多様な装備品が送り込まれており、部品の補給や整備すら容易ではない。これでは火力消耗戦を戦い抜くことはできない。 ●表面化してきた停戦交渉に向けた動き ウクライナ軍要人は2023年12月に、2022年3月にロシアとトルコで交渉した際のロシア側の要求は、ウクライナの中立化であり全土占領ではなかったと証言している。 これが、ロシアが当初過小な兵力で侵攻した理由とみられる。 その交渉の直後にボリス・ジョンソン英首相が来て、いかなる文書にも署名しないと主張し、交渉を決裂させたことも暴露している。 その半面でジョンソン首相は、NATOはウクライナが勝つまで全力で支援するから、戦争を続けるよう説得したと言われている。 この約束に反して、NATO、特に米英は、今になって十分に支援をしていないとの不満が、ウクライナ側のこれらの発言からうかがわれる。 なお、2023年12月にプーチン大統領は、ロシアが受け入れる戦争停止の条件は、ウクライナの非ナチ化、非軍事化、中立化だと表明している。 このことは、アゾフなどのウクライナの反露極右武装戦力を一掃し、自衛以上の軍事力は保有させない、NATO軍化は許さないということを意味している。 この条件は前記の、開戦直後の要求と同じで、ウクライナ側が2022年3月にいったん応じようとした経緯を見ると、NATO、特に米英の支援に失望し不信を持つに至ったウクライナがロシアとの間で停戦交渉を進める可能性はあると言えよう。 それを示唆するかのように、2024年1月3日、ロシアとウクライナ間でアラブ首長国連邦の仲介で捕虜交換がなされた。 米国内でもイスラエル・ロビーが背景にいることから、対ハマス戦争で国際的に孤立しつつあるイスラエルに対し支援するよう求める声が強まっている。 他方では、若者を中心にパレスチナ支援を求める声も高まっており、米国内の関心はウクライナから離れ中東戦争に向けられるようになっている。 大統領選挙を控えたバイデン政権にとり、イスラエル支援問題が国際政治面での最大の政治課題になり、ウクライナ支援の陰が薄くなってきている。 バイデン政権も約600億ドルに上る対ウクライナ支援予算を含む総額1000億ドルの緊急予算が米議会の共和党の反対で通過しないことを口実に、ウクライナ支援を断ち切りウクライナとロシアの直接交渉にゆだねる方向に舵を切る可能性が高まっている。 ジョー・バイデン米大統領は2023年12月6日、ホワイトハウスで演説し、ウクライナ支援予算について、「もしプーチンがウクライナを奪ったら、そこで止まらない」と述べ、ロシアはNATO同盟国に侵攻し米露戦争になる恐れがある、だからプーチンに勝たせてはならない、そのためには約600億ドルのウクライナ支援が必要なのだと釈明している。 しかしプーチン大統領は12月14日のテレビ記者会見で、「ロシアが目標を達成した際に平和は訪れる」と発言、ロシアの目標は「変わらない」とし、ウクライナの非ナチ化、非武装化、中立的地位の確保が目的だとの従来の主張を繰り返したと報じられている(『Bloomberg News』2023年12月14日)。 すでにウクライナとロシアの捕虜交換が実現している。 ロシア側の、ウクライナ全土の占領ではなくロシア系住民地区の安全確保、彼らを弾圧してきた極右武装組織の制圧、およびNATO軍化の阻止を追求しているとの主張をウクライナ側が受け入れれば、停戦交渉も進展する可能性が高まっている。 もともとウクライナ戦争は2022年5月頃には、ロシアとウクライナの直接交渉で、ウクライナ側がNATO化を止め中立を保障し、マリウポリ陥落で主力を制圧された極右武装組織を排除しロシア系住民の保護を保証していれば、終結するはずであった。 そこにジョンソン英首相が割って入り、署名を拒否して交渉を破綻させ、他方でNATOが全面的に支援すると約束したことで、それ以降エスカレーションと長期化の段階に入った。 このジョンソン英首相の動きは、米バイデン政権の意向を受けたものであり、その背後には、アントニー・ブリンケン国務長官やビクトリア・ヌーランド国務次官など政権内ネオコングループのウクライナ戦争を拡大長期化させ、ロシアを弱体化させようとの意向があったとみるべきであろう。 ヌーランド氏が、親露派大統領を追い出した2014年2月のマイダン革命を画策し指揮したことが知られている。 それ以降、ロシア系住民に対する弾圧が強まり、内戦状態になっている。ウクライナ戦争はこの2014年2月の時点から事実上始まっていた。 ネオコングループの狙いは、ロシアを弱体化させ、最終的にはプーチン体制を打倒し、ロシアの資源利権を、ボリス・エリツィン時代のように再度グローバリストからなるユダヤ系国際金融資本家たちの手に取り戻すことだったとみられる。 また彼らの政治的理念は、ヌーランド氏の夫ロバート・ケーガン氏が米国随一のネオコン理論家であると同時にトロッキズム理論家であることからも分かるように、ナショナリストのプーチン政権を打倒しロシアを支配下に入れ、トロッキストが夢想してきた世界統一政府を樹立することにあったとみられる。 すなわち、グローバリズムであり、共産主義もトロッキズムもその一派に過ぎない。 ●まとめ : 欧米追随をやめ自立国家に立ち返るべき日本 このネオコングループが主導してきたグローバル化の潮流は、遡ればフランス革命以前にまで淵源する世界的な政治イデオロギーであり、日米欧の特に言論界やメディアはすでにこのイデオロギーに支配されている。 しかし、今回のウクライナ戦争においてナショナリズムに立つロシアが勝利することになれば、グローバル化の流れは今後退潮し、世界の主流の政治思想、政治理念は、それぞれの国が固有の歴史、文化、地政学的条件などに基づき国益を追求するナショナリズムになるであろう。 また、国際政治構造を規定するのは、リアリズムに立つ主要大国間のバランス・オブ・パワーになるであろう。 その他の面でも、文化的には、西欧近代文明が退潮し非西欧の旧文明が復興し、地政学的には、海洋覇権国から大陸国の覇権の時代に戻ることになる。 新大陸発見以来続いてきた、西欧列強の海洋覇権国が世界を主導する時代は終わりつつある。 その兆候は、G7の影響力の低下、BRICS+台頭の動きにも表れている。 日本は明治開国以来、植民地化を免れるため、国を挙げて欧米近代化に取り組んできた。 さらに戦後は、GHQの日本弱体化政策により日本固有の歴史と文化、価値観を忘れさせられ、欧米への無批判な追随、特に安全保障面での米国依存政策に終始してきた。 しかし、今時代は大きく変化しようとしている。 日本は、縄文時代以来の最も古く長い歴史と伝統を持ち、皇統を一貫して継承してきた国である。 もう一度、この国柄の価値を再認識し、そこに立ち返るべき時代が来ている。 その第一歩は、安全保障面での対米依存、文化面での欧米追随をやめ、独自の国柄に基づく自立国家として再出発することにある。 |
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●宥和政策の過ち重ねるな/ウクライナ情勢とロシア 1/11
ロシアの侵略と戦うウクライナにとり2024年は厳しい年になるだろう。期待された反転攻勢が失敗し、米欧諸国はウクライナへの大規模な軍事・経済支援継続にちゅうちょしている。米欧は「支援疲れ」からウクライナを見捨てて、ロシアへの事実上の降伏となる「和平」を押し付けてはならない。ロシアに譲歩する「宥和(ゆうわ)政策」に逆戻りすれば、3月の大統領選で勝利が確実のプーチン大統領の思うつぼだ。 かつて英国がナチス・ドイツの領土拡大要求に譲歩し、結果として第2次大戦を招いた教訓を忘れず、米欧と日本はウクライナ支援と対ロ経済制裁を堅持すべきだ。 昨年末にロシア軍はウクライナ全土を空爆し、年明け以降も攻撃を続けている。米欧の支援停滞でウクライナ軍は砲弾不足に苦しんでおり、兵器、弾薬を集中的に生産するロシアは優位にある。ロシアを勝利させないため米欧はウクライナ支援を継続するが、規模の縮小は避けられない。24年にウクライナは防衛専念を迫られそうだ。 12月末に一部の米有力メディアが「プーチン氏が現在占領するウクライナ領土約2割を維持することを条件に、停戦の用意を伝えてきている」と報じた。全領土奪還を掲げるウクライナのゼレンスキー大統領が応じるはずがない。 ロシアがウクライナに事実上の全面降伏を求める裏で柔軟な姿勢も示唆するのは、「領土を犠牲にしてもロシアと和平交渉に臨むべきだ」との声がウクライナ国内や米欧で出ていることを意識しているからだ。11月の米大統領選に向け、ウクライナ支援に後ろ向きな共和党のトランプ前大統領返り咲きの可能性がささやかれており、プーチン氏は、米欧がいずれウクライナにロシアへの譲歩を迫ると見越しているようだ。 しかし米欧や日本は、ロシアの領土拡張要求がウクライナだけで終わらない事態を想定しておくべきだ。「ウクライナは元々ロシア領土だ」と主張し侵略に踏み切ったプーチン氏は、「ロシアの歴史的版図の回復」という危険思想の信奉者だ。「次は(旧ソ連領だった)バルト3国」との懸念がくすぶる。「プーチン氏がウクライナに勝てば、次は北大西洋条約機構(NATO)加盟国を襲う」とのバイデン米大統領の警告には理由がある。 2000年に大統領に就任したプーチン氏は、出身母体の秘密警察を使って野党や独立メディアを弾圧、自らに権力を集中させた。20年夏の憲法改正で独裁体制を完成させ、さらに2期12年の続投を可能にした。ロシアの選挙は体制が完全に統制しており、3月にプーチン氏の通算5期目の続投が決まるのは確実だ。ただ、米欧にはロシア大統領選の合法性を疑問視する声があり、今後、プーチン大統領の正統性を認めるかどうかが焦点となろう。 米欧は核大国ロシアを刺激しないよう宥和政策を取り続けた。北方領土交渉を優先した日本も同じだ。08年のグルジア(現ジョージア)紛争、14年のウクライナ南部クリミア半島の併合など、ロシアの旧ソ連諸国への軍事介入に厳しく対応せずにプーチン氏をつけ上がらせ、ウクライナ侵攻の一因となった。日米欧は同じ過ちを繰り返すことなく、ウクライナ侵略戦争を仕掛けたプーチン氏への毅然(きぜん)とした対決姿勢を貫くべきだ。 |
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●国連機関、今年のウクライナ支援に31億ドルの拠出を要請へ 1/11
国連機関は来週、今年のウクライナ支援資金として31億ドルの拠出を要請する。国連人道問題調整事務所(OCHA)の高官、エデム・ウォソルヌ氏が10日、米ニューヨークで開催された国連安全保障理事会で明らかにした。 ウォルソヌ氏は「ウクライナにおける戦争は衰えることなく続いているのに伴って人道的ニーズが高まっており、資金援助の継続が必要だ」と主張。15日にジュネーブで国連難民機関とともに立ち上げる2024年の国連対応計画の下で、ウクライナの850万人の支援に向け31億ドルの調達を目指していると付け加えた。 OCHAは、ロシアの全面的な侵攻により、ウクライナの人口の40%に相当する1460万人余りが今年、人道支援を必要とすると見積もっている。紛争によって国外への避難を迫られた人々も約630万人に達する。 OCHAによると、ウクライナ国内では100万人近い子どもを含む400万人が避難生活を強いられている。 |
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●ロシア軍に捕虜処刑されたウクライナ旅団、ロボティネ周辺で怒りの逆襲 1/11
ウクライナ南部ザポリージャ州の前線では、西にロボティネとノボプロコピウカ、東にステポベを望む3つの丘が、戦術上重要な場所になっている。 161高地、162高地、166高地と呼ばれるこれらの丘は、ロシアがウクライナで拡大して1年11カ月目に入る戦争の初期以来、ロシア軍の連隊が支配してきた。 昨年10月、ウクライナ軍の反転攻勢をロシア軍が押しとどめられたのも、これらの高地を支配していたことが寄与した。だが、ロボティネ南東のこれらの丘をめぐる戦いが終わったと思ってはいけない。 戦いは終わっていないのだ。今週、ウクライナ空中強襲軍(空挺軍)の最強部隊である第82独立空中強襲旅団はこれらの丘周辺で逆襲した。軍事アナリストのトム・クーパーによれば、第82旅団はロシア軍に最近奪われていた土地の大半を奪還し、「161高地、162高地、166高地を結ぶ塹壕(ざんごう)システムにくさびを打ち込んだ」。 この攻防戦はこの戦争の新たな局面の縮図にもなっている。双方とも決定的な優位に立てず、ひたすら相手を消耗させようとする陣地戦・消耗戦という局面だ。 ウクライナ側は、もし当初161高地、162高地、166高地の軍事的な価値に気づいていなかったとしても、昨年の夏の終わりにはそれを理解し、懸念すら抱いたに違いない。反転攻勢部隊が南進してロボティネを解放したあと、東のベルボベに向けて進軍した時、これらの丘に陣取るロシア軍の5個か6個の連隊と正面から対峙(たいじ)することになったからだ。 クーパーは当時すでに、ロシア側によるこれらの高地の支配がもつ意味合いを理解していた。ウクライナ軍が「どうやれば161、162、166高地とベルボベの間を突き抜けられるのかはわからない」とニューズレターに記している。 実際、第82旅団とウクライナ地上軍(陸軍)の第33、第47、第116各独立機械化旅団を中心とする反攻部隊は、これらの丘の手前で停止した。損耗し、疲弊した機械化旅団は休息や補充のために後退したのかもしれない。いずれにせよ、第47旅団と第116師団は昨年10月から11月にかけて東部ドネツク州のアウジーイウカ方面に転用され、ロシア軍の恒例の冬季攻勢に対応している。 ロシア軍はウクライナ軍による昨夏の反攻の成果を帳消しにすべく、ロボティネ周辺でも攻勢に転じた。その攻撃のひとつで、ロシア空挺軍第76親衛空挺師団に所属する空挺兵らは第82旅団のウクライナ兵3人を捕虜にし、即刻処刑した。 第82旅団は復讐した。砲撃やドローン(無人機)の支援を受けながら、ドイツ製のマルダー歩兵戦闘車、米国製のストライカー装甲車、英国製のチャレンジャー2戦車で攻撃した第82旅団は、161、162、166高地の間を遮断し、ロシア軍の塹壕の一区画を奪った。 とはいえ、第82旅団は3つの高地そのものを掌握したわけではない。そして、この戦域を支配しているのは依然としてこれらの丘だ。第82旅団は第76師団の攻勢を押し返したにすぎない。「これもまた消耗戦のエピソードのひとつだ」とクーパーが述べているとおりだ。 こうした一進一退の攻防はこの戦争の現在の性格をよく表している。ロシア軍は複数の戦域で攻勢をかけているものの、廃墟化している東部の都市バフムートの北にある戦線のごく一部を除き、大きな前進は遂げていない。 それ以外の戦域では、ロシア軍の攻撃はウクライナ側の堅い防御に阻まれるか、ウクライナ軍による局所的な逆襲を受けて後退を余儀なくされている。 ロシア軍が人員や戦車、大砲、砲弾の数でなおウクライナ軍を上回っているのは確かだ。しかし、ウクライナ軍はドローンをより巧みに運用しており、ロボティネ周辺ではロシア軍による戦争犯罪を受けて怒りをたぎらせている。 |
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●無謀な突撃繰り返すロシア部隊、出撃車両の9割は戻らず ウクライナ南部 1/11
ウクライナ南部で、ロシア軍が支配するドニプロ川左岸(東岸)に位置するクリンキ。ここにウクライナ軍側が築いた橋頭堡(きょうとうほ)に向け、ロシア軍が戦車や歩兵戦闘車両を10両向かわせると、戻ってくるのはたったの1両だ。 あるロシア人ブロガーは「われわれの側には、失敗から学ばず、クリンキに装備を運ぶ愚か者が何人かいる」と投稿。「そこに運ばれた装備の90%は戻ってこない」と指摘した。 ウクライナ軍の第35独立海兵旅団がまずモータボートでドニプロ川を渡り、その後繰り広げた一連の激しい歩兵戦を経てクリンキに橋頭堡を確保して以来、クリンキで何が起きているかはロシア軍、ウクライナ軍の双方が知っている。 「敵が大砲とドローン(無人機)で優位に立っているときは、急襲することはできない」と前述のロシア人ブロガーは書いた。そしてクリンキでは予想に反して、数で劣るウクライナ軍が3カ月もの間、火力とドローンでロシア軍を圧倒することに成功した。 たしかに海兵旅団は死傷者を出している。だが、ロシア軍の第810海軍歩兵旅団、第104親衛空挺師団、陸軍付属の連隊の死傷者ははるかに多い。 ウクライナ国防省によると、ロシア側がある時に仕掛けた攻撃は、ウクライナ軍の第501独立海兵大隊が、爆発物を搭載した一人称視点(FPV)ドローンで戦車を攻撃し、大きな爆発を引き起こしたことで、「非常にまばゆく終わった」。 ロシア、ウクライナ共に月に数千機のFPVドローンを製造または購入している。だがドローンの入手は、戦略や方針から始まり、重量900gのクアッドコプターが重さ40トンの戦車を爆破するに至るまでの一連の流れの一部分にすぎない。 クリンキや、ウクライナに対するロシアの1年11カ月にわたる戦争の約965kmに及ぶ前線の他の重要な領域では、ウクライナ軍はロシア軍のドローンとその操縦士をつなぐ無線を妨害し、同時にロシア軍がウクライナ軍の無線を妨害するのを防いでいるため、局所的な制空優勢を握っている。 ●ドローンで優位性を持つウクライナ軍 「クリンキ地区では、ウクライナ軍は電子面で優位に立っているようだが、これはドローンで優位性を持っていることを意味する」と軍事アナリストのドナルド・ヒルは同僚のトム・クーパーが運営するニュースレターで指摘した。「彼らはロシア軍のドローンを妨害し、地雷や投下弾、自爆型ドローンを使ってロシア軍の車両を破壊している」 ヒルは「ロシア軍の戦線のずっと後方で、電波妨害装置や対砲兵レーダー、ロケット発射機、対空システムが攻撃されている」とも指摘した。りゅう弾砲やロケット砲を発射するにはドローンに標的を偵察してもらう必要があるため、ウクライナ軍のドローンでの優位性は大砲での優位性につながっている。 そのため、橋頭堡へのロシア軍の攻撃はいつも同じ結末を迎える。攻撃を仕掛ける部隊は地雷を踏み、砲火を浴び、 目的地までもうすぐのところで自爆型の小型ドローンの大群に囲まれる。ロシア軍はドローンや大砲で部隊を救うことはできない。 この状況は、数字が物語っている。昨年10月中旬以降、ロシア軍はクリンキ周辺で18両の戦車と58両の戦闘車両を含め、少なくとも152の重装備を失った。ウクライナ軍の損失数は31で、そのほとんどが大砲だ。 ウクライナ軍は少なくとも50隻のボートも失っている。ボートが最も攻撃を受けやすいのは水上だ。「ウクライナ軍が数百mほどしか展開できていないのは、ロシア軍の攻撃のせいではなく、ドニプロ川両岸への攻撃と、川を行き来して物資や弾薬、交代要員、負傷者を運ぶボートへの攻撃のためだ」とヒルは指摘した。 ロシア軍がクリンキの橋頭堡を潰す最も簡単な方法は、ウクライナ軍がドニプロ川を渡れなくして、左岸に展開する海兵部隊の補給源を断つことだろう。 だが、橋頭堡の背後への水上攻撃にはドローンが必要であるものの、ロシア軍はドローンを飛行させられない状態にある。空からも水上からもウクライナ軍の補給線を断ち切れないロシア軍は、地上で攻撃を続けている。 あるロシア人ブロガーは、ロシア軍が最近実施した攻撃について、旧ソ連軍のゲオルギー・ジューコフ将軍にちなみ「大胆なジューコフ作戦」と呼んだ。ジューコフは第2次世界大戦中、ドイツ軍の地雷原を兵士に徒歩で越えさせたと主張し(おそらく虚偽の主張だ)悪名を得た人物だ。 冒頭で紹介したロシア人ブロガーは、クリンキに展開するウクライナ軍の海兵部隊を攻撃するために地雷やドローン、大砲の攻撃をくぐり抜けようと試みては失敗を繰り返し、そのたびに車両10両のうち9両を失っている突撃隊を、独特な言葉で表現している。 その言葉とは「一時的な部隊」だ。 |
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●日米韓など8か国、共同声明でロシアによる北朝鮮ミサイル使用を非難 1/11
国連安全保障理事会は10日、ウクライナ情勢に関する公開会合を開いた。ロシアによるウクライナでの北朝鮮製弾道ミサイルの使用を日米欧が強く非難したのに対し、ロシアは反発した。 10日、米ニューヨークの国連本部で開かれたウクライナ情勢に関する安保理会合=金子靖志撮影 米国のロバート・ウッド国連代理大使は、「国連加盟国は北朝鮮からの兵器関連物資の調達は禁止されている」と指摘した。「ロシアは北朝鮮の弾道ミサイルでウクライナの重要なインフラを破壊し、市民を殺害している」と非難した。 今月から安保理入りした韓国の 黄浚局 国連大使は、「北朝鮮はロシアに弾道ミサイルを輸出することで、ウクライナを実験場として利用している」と強調した。日本の山崎和之国連大使は、「北朝鮮とロシアの間の兵器移転は地域を不安定化させる」との見解を示した。 これに対し、ロシアのワシリー・ネベンジャ国連大使は「西側諸国はロシアが北朝鮮のミサイルをウクライナで使用したと繰り返しているが、米国による間違った情報だ」と反発した。 会合に先立ち、日米韓など8か国はロシアに対し、年末年始のウクライナへの攻撃で北朝鮮の弾道ミサイルが使われたことを非難する共同声明を発表した。声明は「兵器移転を直ちに停止し、安保理決議を順守するよう求める」と訴えた。 |
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●上川外相とスウェーデン外相 ウクライナ支援継続へ連携で一致 1/11
上川外務大臣は訪問先のスウェーデンでビルストロム外相と会談し、ロシアによる侵攻が続くウクライナへの支援を継続するため、緊密に連携していくことで一致しました。 上川外務大臣は、日本時間の10日夜、スウェーデンの首都ストックホルムでビルストロム外相と会談しました。 会談で、上川大臣は、ロシアによるウクライナ侵攻などを念頭に「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序が揺らぐ中、同志国との連携はこれまで以上に重要になっている。スウェーデンがNATO=北大西洋条約機構への加盟を申請した決断を支持する」と伝えました。 これに対し、ビルストロム外相は「スウェーデンはNATOへの加盟を通じてヨーロッパの安全保障の強化に貢献していきたい。日本がNATOと関係を強化していることを歓迎している」と述べました。 そして、両外相は、欧米各国でウクライナへの「支援疲れ」も指摘される中、支援を継続するため緊密に連携していくことで一致しました。 また、東アジア情勢についても意見を交わし、核・ミサイル問題や拉致問題を含め北朝鮮への対応などで連携していくことを確認しました。 |
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●ウクライナ防衛強化を再確認=NATO 1/11
北大西洋条約機構(NATO)は10日、「NATO・ウクライナ理事会」をブリュッセルで開き、ロシアの侵攻が続くウクライナの防衛を一層強化することを再確認した。発表によると、多くの加盟国が今年、数十億ユーロ規模の戦闘能力を提供する計画を示した。 理事会では、ウクライナの空軍司令官と内務副大臣がオンライン形式で情勢を説明した。NATOのストルテンベルグ事務総長は、ロシア軍によるウクライナ市民への攻撃を非難した上で、ウクライナを疲弊させようとする行為は「成功しないだろう」と強調した。 |
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●将来の北方領土訪問を示唆 プーチン氏、ロシア極東視察で 1/11
ロシアのプーチン大統領は11日、視察先のロシア極東ハバロフスク地方で、将来必ずクリール諸島(北方領土と千島列島)を訪問すると述べた。タス通信などが伝えた。日本が返還を求めている北方四島を念頭に置いた発言とみられる。 プーチン氏はハバロフスクでの住民らとの会合で、クリール諸島の観光産業発展の可能性に触れ「残念ながら一度も行ったことがない。必ず行く」と述べた。 |
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●ウクライナ東部ハルキウのホテルにロシアのミサイル、「民間人」11人負傷 1/11
ウクライナ第2の都市ハルキウで10日、ロシア軍のミサイル2発がホテル1棟を直撃し、11人が負傷した。 ハルキウ州のオレグ・シネグボフ知事が発表した。 ウクライナ国家緊急サービスが公開した複数の画像には、ひどく損傷したホテルと、駆けつけた消防隊員が写っている。 シネグボフ知事によると、州都ハルキウで10日午後10時30分ごろ、ロシアの長距離地対空ミサイル「S-300」2発が着弾した。負傷者には複数のトルコ人ジャーナリストも含まれるという。 負傷者9人が病院に搬送された。このうち、35歳の男性は重体だと、シネグボフ知事はメッセージアプリ「テレグラム」で明らかにした。 ウクライナのウニアン通信は、ハルキウ市のイホル・テレホフ市長の話として、攻撃を受けたホテルには当時、「軍関係者はまったくおらず」、いたのは民間人30人だったと報じた。ホテルはハルキウ市中心部に位置し、近隣の複数の住宅や車も被害を受けたと、市長は話したという。 ロシアはこの2週間、ウクライナ各地の都市への空爆を強化している。 ウクライナ当局によると、こうしたドローン(無人機)やミサイルによる攻撃で、これまでに民間人数十人が死亡している。 ハルキウ市はロシアとの国境から30キロメートルしか離れていない。2022年2月にロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウウクライナに対する全面侵攻を開始して以降、空爆による甚大な被害を受けている。 ●ゼレンスキー氏、防空支援の強化を要請 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は10日、リトアニアを訪問。西側の協力国に対し、防空兵器の追加供与を要請した。リトアニアはウクライナのロシアへの抵抗を最も強固に支える国の一つ。 「我々にとって最も欠けているのが防空システムだ。ドローンと戦う必要がある。リトアニアやそのほかの多くのパートナー国と合意を結べていることをうれしく思う」と、ゼレンスキー大統領はリトアニアの首都ヴィリニュスで語った。バルト3国のリトアニア、ラトヴィア、エストニアは旧ソヴィエト連邦の構成国で、現在は北大西洋条約機構(NATO)に加盟している。 ドイツのキール世界経済研究所の報告によると、リトアニアのウクライナへの軍事支援額は、国内総生産(GDP)比ではノルウェーに次ぐ世界2位。ただ、ウクライナの国防面へのアメリカの貢献度は圧倒的に大きい。 ゼレンスキー氏は、プーチン氏は「ウクライナを破壊するまで静まらないだろう」と述べたと、インタファクス・ウクライナは報じた。 「彼(プーチン氏)は我々を完全に占領しようとしている。そして、ウクライナへの資金援助や軍事援助、素早い対応に対するパートナー国の疑念が、ロシア連邦に勇気と力を与えることもある」 さらに、プーチン氏は「これ(戦争)を終わらせるつもりはないだろう。我々全員が(戦争を)彼ともども終わらせるまでは」と述べ、次に狙われるのはバルト3国とモルドヴァ「かもしれない」と警鐘を鳴らした。 ●西側諸国と集中協議 ゼレンスキー氏はここ数日、ロシアに抵抗するうえで不可欠な武器の供給を維持するために、西側の協力国と集中的な協議を行っている。昨年後半にウクライナ軍が開始した反転攻勢ではほとんど進展がなかった。また、西側諸国の中にはウクライナ政府の戦略を疑問視する国もあり、戦費をめぐる懸念が高まっている。 ロシアが軍事支出を大幅に増やすと表明するなか、NATO加盟国は砲弾やそのほかの重火器の製造拡大に苦慮している。 欧州連合(EU)のウクライナに対する500億ユーロ(約7.8兆円)の軍事支援は、ハンガリーが拒否権を発動し行き詰っている。米議会でも、新たな軍事支援をめぐり分断が生じている。 NATOは9日、ウクライナ政府とのビデオ会談後、ウクライナに今年、「数十億ユーロ相当」の追加支援を提供する計画があるとした。 「NATOは、北朝鮮やイランから供与された武器を含む、ウクライナの民間人に対するロシアのミサイル攻撃やドローン攻撃を強く非難する」と、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は述べた。 |
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●国連機関、今年のウクライナ支援に31億ドルの拠出を要請へ 1/11
国連機関は来週、今年のウクライナ支援資金として31億ドルの拠出を要請する。国連人道問題調整事務所(OCHA)の高官、エデム・ウォソルヌ氏が10日、米ニューヨークで開催された国連安全保障理事会で明らかにした。 ウォルソヌ氏は「ウクライナにおける戦争は衰えることなく続いているのに伴って人道的ニーズが高まっており、資金援助の継続が必要だ」と主張。15日にジュネーブで国連難民機関とともに立ち上げる2024年の国連対応計画の下で、ウクライナの850万人の支援に向け31億ドルの調達を目指していると付け加えた。 OCHAは、ロシアの全面的な侵攻により、ウクライナの人口の40%に相当する1460万人余りが今年、人道支援を必要とすると見積もっている。紛争によって国外への避難を迫られた人々も約630万人に達する。 OCHAによると、ウクライナ国内では100万人近い子どもを含む400万人が避難生活を強いられている。 |
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●伊国防相、和平交渉に言及 ウクライナ大統領「停戦はロシア利する」 1/11
イタリアのクロセット国防相は10日の議会で、ウクライナ情勢について、「軍事支援と並行して外交を研ぎ澄ます時期が来たようだ」と述べ、侵攻を続けるロシアとの和平交渉を本格的に検討する必要があるとの認識を示した。 昨年のウクライナ軍による反転攻勢は望ましい成果が出ず、情勢を現実的に見なければならないと指摘した。ロイター通信が伝えた。 一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、訪問先のエストニアで記者会見し、「(戦闘の)一時停止はロシアを利するだけだ」と早期の政治決着を否定。停戦はロシア軍強化の猶予を与えるとして、継戦の必要性を主張した。 |
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●中国はウクライナ問題で平和と対話の側に立つ 1/11
中国の耿爽国連次席大使が現地時間10日に開かれたウクライナ情勢をめぐる国連安全保障理事会の会議で発言し、「ウクライナ問題において中国は一貫して平和と対話の側に立つ」と強調しました。 耿次席大使は「ウクライナ危機が長引いている中、悪意のある攻撃や民間人の死傷事件が頻発し、人道状況が持続的に悪化している。中国はこれに深い憂慮と痛みを感じている」としたうえで、「自制と冷静さを保ち、国際人道法を厳格に順守し、民間人や公共インフラ、特に核施設の安全を守らなければならない」と紛争の当事国に求めました。 |
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●ロシア プーチン大統領「北方領土に必ず行く」 1/12
ロシアのプーチン大統領は視察先の極東で「北方領土に必ず行く」と述べ、初訪問に意欲を見せた。 プーチン大統領「あそこ(北方領土)はとても面白いと聞きます。私は残念ながら行ったことがありませんが、必ず行きます」 プーチン大統領は11日、ハバロフスク地方で現地の経営者らとの会合で北方領土を訪問する可能性を示した。 国後島を中心に観光客が増えていることを受けて、「観光産業を発展させる必要がある」として、北方領土のさらなる開発にも意欲を見せた。 具体的な時期は明らかにしなかったが、訪問が実現すれば初めて。 ウクライナ侵攻をめぐり、日ロ関係が悪化する中、北方領土をロシアの領土とアピールする狙いもあるとみられる。 |
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●プーチン大統領「『日本と領有権紛争』のクリル諸島、必ず訪問する」 1/12
ロシアのプーチン大統領が11日(現地時間)、日本と領有権紛争中のクリル諸島(北方領土と千島列島)を訪問すると述べた。具体的な訪問時期は言及しなかったが、実現した場合、プーチン大統領の初めてのクリル諸島訪問になる。 リアノボスティ通信によると、プーチン大統領はこの日、ロシアのハバロフスクで極東地域の企業家らと会い、クリル諸島について「残念ながらまだ行ったことはないが、必ず行くつもりだ」と述べた。具体的な訪問時期や地域については言及していないプーチン大統領は「クリル諸島は非常に興味深いところだと聞いた」とし、この地域に観光クラスターを開発するアイデアを支持すると述べた。 ロシアと日本は、国後島、択捉島、歯舞群島、色丹島の南端四島をめぐって領有権紛争を繰り広げている。現在、これらの島はロシアのサハリン州が管轄している。ロシアは第2次世界大戦後、四島が旧ソ連の一部となり、ロシアが領有権を持つと主張している。 一方、プーチン大統領はこの席で、昨年のロシアの経済成長率が予想値(3.5%)より高いと予測されると述べた。プーチン大統領は昨年の経済成長率が4%より高い可能性もあるとし、「我々は2022年に(ロシア)経済が2.1%減少すると考えたが、実際には1.2%減少した」と説明した。 プーチン大統領は昨年12月に首都モスクワで開かれた記者会見でも、西側制裁にもかかわらず、自国の国内総生産(GDP)増加率を3.5%と予想した。特に製造業は2022年対比7.5%成長したとし、ロシア経済は健在だと強調した。 |
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●ロシア、プーチン氏の再選前に戦術的前進図る=ウクライナ大統領 1/12
ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、戦場におけるロシアの作戦はプーチン大統領が3月の再選を目指す前に戦術的な前進を図ることであり、今後、より大規模な軍事行動が予想されると述べた。 バルト3国歴訪の一環で最後に訪れたラトビアで語った。 |
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●ロシア “兵員補充は順調” ゼレンスキー大統領は支援訴え 1/12
ウクライナへの侵攻を続けるロシアの安全保障会議のメドベージェフ副議長は、契約軍人による兵員の補充が順調に進んでいるとし、長期戦に備える構えを示しました。一方、バルト三国を歴訪中のウクライナのゼレンスキー大統領は、エストニアで支援の必要性を訴えました。 ロシアの安全保障会議のメドベージェフ副議長は11日、軍の追加人員に関する会議で「去年1年間で契約軍人を中心に50万人以上が兵役に就いた」と明らかにしました。 プーチン政権は、おととし9月、30万人規模の予備役の動員に踏み切りましたが、国民の間で不安や反発が広がり、その後は高額の報酬などを示しながら、契約軍人を募り、兵員を補充しています。 メドベージェフ副議長は「プーチン大統領によって設定された任務は完全に履行された」と述べ、兵員の補充が順調に進んでいるとし、長期戦に備える構えを示しました。 一方、バルト三国を歴訪中のウクライナのゼレンスキー大統領は11日、エストニアの議会で演説し「われわれはこの戦いに勝たなくてはいけない。この戦いは、ウクライナだけでなくロシアと国境を接するすべての国の運命を決める」と述べました。 そのうえで、EU=ヨーロッパ連合のウクライナに対する巨額の資金支援の協議がハンガリーの反対でまとまっていないことについて「この支援がなければ、われわれが生き残ることは非常に難しい」と述べ、支援の必要性を訴えました。 |
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●ロシアに連れ去られた子どもたち NGOによる「命がけ」の救出作戦が続く 1/12
ウクライナの子供が多数ロシアに連れ去られ、「ロシア人になるように」と洗脳を受けている。その救出に当たるウクライナのNGOが取材に応じた。洗脳された子の中には「ロシア人化」してしまい、NGOが帰国を働きかけても拒否するケースがあるという。そうした子らを敵国ロシアにまで乗り込んで取り戻す「命がけの作戦」があるという。 ●1万9千人が連れ去られる? 救出に当たるNGOは「セーブ・ウクライナ(Save Ukraine)」(本部・キーウ、約300人)。2023年12月24日、ロシア側に連れ去られたウクライナ人の男の子3人をロシア軍占領地からウクライナへ移送し、保護した。うち2人は18歳になったばかりで、ロシア軍にあやうく徴兵されるところだったという。 「徴兵されれば、ウクライナ人どうしが戦うことになってしまいます。私たちは、徴兵年齢に達しかけているティーンエージャーの救出に全力をあげています」 セーブ・ウクライナの広報担当、オリハ・エロヒナさん(40)が、オンライン取材に対し、こう語った。 18歳の2人は両親がいなかった。孤児院で暮らしていたところを連れ去られ、ウクライナ国内のロシア軍占領地に住まわされた。そんなとき、セーブ・ウクライナのもとに「ロシアの占領当局が召集令状を出した」という情報が届いたという。エロヒナさんは言う。「私たちは、(被占領地やロシアを含む)各地に情報網を持つ。子供に召集令状が出されていないかどうか、特に注意を払っています」 ウクライナ政府は、強制連行された子供を捜すため、インターネットに「戦争の子供たち」というサイトを開設。1万9千人余りの子供の情報提供を呼びかけている。しかし、母国に戻れたのは2%の387人。その半数以上の213人を、セーブ・ウクライナが救出した。 ほとんどの子が戻ってこない理由として、エロヒナさんは以下の三つを挙げる。 1 孤児や貧困家庭で育つなど、ウクライナとの絆の薄い不利な条件の子が狙われる 2 ロシアや被占領地で、軍事教育を含む「ロシア化」教育が行われている 3 キャンプ地など数カ所を転々とさせられる子が多いため追跡が難しい エロヒナさんによると、ロシア軍占領地(南部ヘルソン州)にいた17歳の男児は3回、強制移送させられた。その子は、解放されてキーウに移った後、次のように証言した。 「世話役のおばあさんが心臓発作で死んだため、独りで自宅に住んでいたが、突然、ロシア軍人が来て、地元の学校寄宿舎へ入れられました。何を学びたいのかなど、希望はいっさい聞かれませんでした。毎朝、グラウンドに整列させられ、ロシア国旗が掲揚。ロシア国歌の斉唱を強制されました。僕が拒否したら、トイレ付きの小部屋に15日間、閉じ込められました。そこはテレビも本もありませんでした」 「授業はすべてロシア語で行われ、『ウクライナの大人たちは君を見捨てた』『ウクライナは君を必要としていない』と繰り返し言われました。歴史もロシアのものを教えられました」 「同級生の女の子が授業中、ウクライナ語で『トイレに行きたい』と教師に訴えたところ、ロシア語を使うように言われ、どこかへ連れていかれて、数時間、戻ってこないこともありました」 この男児はその後、(ロシアが一方的に併合した)クリミア半島、さらに別のロシアの都市へ移送されたが、セーブ・ウクライナが救出に成功し、その後、キーウへ移った。 ●親がロシアに乗りこむ例も 一方で、命にかかわる失敗例もある。エロヒナさんは「10歳前後の子の心はプラスチックのよう。強制移送されるのは孤児のような家庭環境に恵まれない子も多く、なおさらのこと、もろい。そこへ、ロシアのパスポートを与えられたり、一方的な情報を与えられたりするので、『ここに残ろう』と思ってしまうケースも出てくる」と話す。 ウクライナ南部に住んでいた孤児の男児(17)は、2022年2月のロシア侵攻後、街中でウクライナ国旗を掲げるなど、ロシアの占領に抵抗していた。ところが、ロシアへ強制移送された後、親ロシアのプロパガンダに感化され、ロシア国防省傘下の「青少年軍(ユナミル)」に入った。「青少年軍」は、子供に射撃などの軍事教練をさせ、ロシアへの忠誠心を養うことを目的とする。 ロシアに「同化」した男児の救出は難航が予想された。名づけ親(ゴッドマザー)が帰還の説得役に選ばれ、5月、ロシアへ派遣された。しかし、彼女はモスクワで当局に拘束されてしまった。そこで2日間、尋問を受け、さらにベラルーシへ移送され、そこでも尋問を受けた。その後、彼女とは連絡が取れなくなったという。 もう一つの危険を伴う救出作戦の模様を、11月、米国のテレビ局CBSが次のように報じた。 NGO「セーブ・ウクライナ」のホットラインに、ポーランドに避難中のウクライナ人女性ポリーナさんが「9歳の孫ニキータがロシアに連行された」と電話してきた。NGOスタッフは共にモスクワに向かった。ポリーナさんは、ニキータ君が収容されたロシアの養護施設に着くと、門番に「ポーランドから人道支援のために来たボランティアです」と身分を偽って、中に入ることに成功する。 しかし、施設長は引き渡しを拒否。DNA鑑定もやらされ、70日間待たされた。だが、ポリーナさんが実の祖母であると証明され、帰還が決まり、ニキータ君を抱きしめる。セーブ・ウクライナによると、ロシアはウクライナ人の親や親族がロシアまでやってきて、引き取りを求めた場合には、子どもたちの帰還を認める場合があるという。 ポリーナさんはモスクワへ行く際には、地雷原もスタッフの車で走り抜けた。戦場を突破する命がけの道中だった。 このケースでも、ロシア軍が、保護者や親類の許可なく、ウクライナ領内の養護施設からニキータ君ら児童80人を移送。3回、クリミアやロシア本土など移転を繰り返し、児童の失踪の跡を追いづらくしていた。 セーブ・ウクライナはこれまで14回、救出作戦を行った。5月にあった5回目の作戦では、31人の奪還に成功。キーウで記者会見もした。そこには16歳のビターリー君も出席、自らが騙され、拉致された様子を、次のように証言した。 「クリミア半島で2週間だけのキャンプ、という説明を受けました。しかし、着くと、鉄条網に囲まれた場所でした。その中で、毎日4、5時間、ロシア国歌を聞かされ、施設の教師から『ウクライナはテロリスト国家だ』『ゼレンスキーは薬物中毒者だ』などと言われました。また、『(出身地の)ヘルソン州は砲撃が続いており、君の両親も引き取りを拒否している』とも言われました。結局、半年間、そこから出られませんでした」 ロシアの経済紙「RBK」によると、ロシア国防省は本格侵攻から5カ月後の2022年夏、30万人余りのウクライナの子がロシア領にいることを認めていた。 一方、ロシア国営タス通信によると、昨年11月から、中東・カタールの仲介で、外交ルートでロシアからウクライナへの子供の帰還が行われるようになった。タス通信によると、11月に4人、12月に計8人の子供がウクライナへ戻った。 この動きについて、エロヒナさんは「あまりにも数が少ない。ロシアが象徴的な返還により犯罪行為を少しでも帳消しにしようとしている」と語る。 犯罪行為とは、国際刑事裁判所(オランダ・ハーグ)が2023年3月、ロシアのプーチン大統領と、その補佐役のマリア・リボワベロワ氏に逮捕状を出したことを指す。その容疑は、2人が「少なくとも数百人の子供を、孤児院や養護施設からロシアへ強制移送し、永久に母国から切り離そうという意図を持っている」ことだ。 皮肉なことに、ロシアの犯罪性を浮き彫りにした逮捕状の発出後、セーブ・ウクライナの活動は難しさを増した。エロヒナさんは「ロシアは警戒心を高め、徐々に戦術を変えてきた。バルト諸国など様々な救出ルートがあるが、ロシアは監視を強めている」という。 子供の強制移送の実務を担うリボワベロワ氏は、記者会見などでは「子供を戦争の危険から保護している」と弁解する。だが、孫のニキータ君を取り戻そうとしたポリーナさんには、「お金や車をあげるから、ロシアに留まるつもりはないか」と声をかけてきたという。 また、ロシア領に連れ去られたボグダンさん(17)は、リボワベロワ氏から「罵詈雑言を投げかけられた」と証言したという。当時、ボグダンさんは、ロシア国防省から召集令状を受け取ったにもかかわらず、ウクライナへの帰還を求めており、それが彼女の反感を買ったようだった。 ウクライナの調査報道機関「Molfar」によると、リボワベロワ氏を支える政府高官ら14人からなるチームが存在しており、連れ去りが国家ぐるみで行われている疑いがある。 こうした状況に対し、エロヒナさんは次のように語った。 「ウクライナでは、大人はロシアに殺害され、子供はロシア人化されてしまう。ウクライナのアイデンティティを消すのがロシアの狙い。セーブ・ウクライナは、子供の救出のため、さらに積極的に救出者を現地に送り込んでいく方針です」 |
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●対ロ国境閉鎖を延長 2月半ばまで通行不可―フィンランド 1/12
フィンランド政府は11日、ロシアとの国境検問所の閉鎖措置を1カ月間延長すると発表した。2月11日まで引き続き全検問所が通行不可となる。ロシアのプーチン政権は、ウクライナ侵攻開始後にフィンランドが北大西洋条約機構(NATO)に加盟したことを受け、報復として国境に中東出身の移民を送り付けているとされる。 フィンランドは昨年11月、ロシア経由での越境者の急増を受けて検問所を閉鎖。12月に2カ所を再開したところ、2日間で300人以上がロシア側から入国を試みたため、再び全検問所を閉じた。今月15日に再開する計画だったが、事態の改善が見込めないことから延長を決めた。 |
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●NYマーケット続伸 ダウ平均3万7711ドル02セント ナスダック1万4970.19 1/12
11日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は続伸した。 米長期金利の低下が好感され買い注文が優勢となり、一時3万7801ドル90セントと取引時間中の最高値を付けた。 また、この日発表された米消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率は市場予想を上回り、米連邦準備制度理事会(FRB)が早期に利上げに踏み切るとの見方が後退、ダウ平均の上値を抑えた。 結局、前日比15ドル29セント高の3万7711ドル02セントで取引を終えた。 また、ハイテク株主体のナスダック総合指数は5営業日続伸し、0.54ポイント高の1万4970.19だった。 個別銘柄ではITのセールスフォース・ドットコム、スポーツ用品のナイキの上昇が目立った。 |
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●米のウクライナ支援は「現在停止中」=ホワイトハウス 1/12
米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は11日、ロシアとの戦争において米国がウクライナに提供している支援は「現在、停止している」と述べた。 また、パレスチナ自治区ガザに十分な支援物資を積んだトラックが到着しておらず、ガザは食料安全保障の問題に直面しているとした。 |
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●ハンガリーのウクライナ政策に「失望」、EUで孤立=米国務次官補 1/12
オブライエン米国務次官補(欧州・ユーラシア担当)は11日、ハンガリーのウクライナ政策に失望感を示し、スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟を最後に批准する国にはならないという約束を果たすことを期待していると述べた。 オブライエン氏はブリーフィングで「われわれは失望している。(ハンガリーの)オルバン首相がウクライナを支援する闘いを疑問視し、欧州連合(EU)で孤立することを選んだ」と述べた。 EUとNATO加盟国のハンガリーは2022年のロシアによる侵攻以降、ウクライナへの軍事支援を拒否しているほか、トルコとともにスウェーデンのNATO加盟を妨げている。 オブライエン氏は、スウェーデンが近くNATOに加盟することを望むとし、批准する最後の国にはならないという約束をオルバン政権が果たすかどうかに注目していると指摘。ハンガリーが建設的なパートナーになるよう期待すると述べた。 |
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●八方美人?全方位外交サウジの引力 イランやイスラエルとも接近 1/12
●中東新時代1サウジアラビアの「引力」 今、中東で目を離せないのがイスラム世界の盟主を自負するサウジアラビアです。はたから見れば「八方美人」とも言える、全方位外交を展開。その中心にいるのは、現サルマン国王の七男で事実上の指導者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子(38)です。 近年のサウジアラビアの「積極的中立主義」は、大国アメリカ・バイデン政権の外交姿勢を一変させ、ウクライナ危機では対立するウクライナとロシアの双方と対話を維持。往年の敵とされるイランとは、中国の仲介で外交関係を正常化させ、さらにアラブ諸国と敵対してきたイスラエルとの国交正常化と引き換えに、アメリカから核開発能力を引き出そうとしています。 世界に衝撃を与えたパレスチナのイスラム組織ハマスによるイスラエルへの越境攻撃は、サウジアラビアが進める外交にどのような影響を与えうるのか。その特別な立場から紐解きます。 ●サウジアラビア アラビア半島の8割を占める君主国家で、人口は約3500万人。首都はリヤド。イスラム教の二大聖地メッカとメディナがある。世界最大級の石油埋蔵量と輸出量を持ち、2022年の原油輸出量は世界最大の3億6480万トンで、日本も総輸入原油の4割をサウジ産に頼る。国の財政収入の8割を石油に依存しているため、2016年にサルマン国王とムハンマド皇太子の指揮で石油依存からの脱却や包括的発展を目指す成長戦略「サウジ・ビジョン2030」を公表。2018年からそれまで許されなかった女性の自動車運転を認めるなど、社会改革を進める。アラブ諸国で唯一のG20メンバー国。 ●サウジアラビアの「積極的中立主義」とは 「サウジに代償を払わせ、のけ者にする」 当時、大統領選の民主党候補だったバイデン氏は2019年、その前年にアメリカメディアのコラムニストだったサウジアラビア人のジャマル・カショギ氏がトルコにあるサウジアラビア領事館内で工作員に殺害されたことを受けて、サウジアラビアを強く非難し、こう発言しました。 アメリカとサウジアラビアの外交関係は、「石油と安全保障の交換」とも呼ばれ、1940年代にまでさかのぼります。 アメリカはエネルギー安全保障の観点から産油国であるサウジアラビアとの外交関係を重視してきましたが、イラクやアフガニスタンから撤退するなど、中東自体への関与を弱めると同時に、台頭する中国への対抗を念頭に、外交の軸足をアジア太平洋地域に移してきました。 トランプ大統領が就任後、最初の外遊先としてサウジアラビアを選んだのに対し、バイデン大統領はカショギ氏の問題を受け冒頭のように発言するなど、人権問題の観点からサウジアラビアに厳しい態度を示していました。 しかし、その態度が一転したのは2022年7月。バイデン大統領はイスラエルを訪問したその足で、サウジアラビアを訪問しました。大統領就任後、初めてのことでした。 訪問の最大の動機となったのは、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ軍事侵攻でした。 欧米各国がロシアへの経済制裁を科す一方で、世界的にエネルギー価格が高騰。バイデン大統領としては、サウジアラビアに対し原油の増産を求めざるを得なくなったのです。バイデン大統領はこれを機に態度を一変させました。2023年9月には、G20に合わせてインドからサウジアラビア、そしてイスラエルを経由して、ヨーロッパに通ずる「経済回廊」を実現すると発表。2022年7月のサウジ訪問の際は、ムハンマド皇太子と拳を合わせただけでしたが、この時は固い握手を交わしたのです。 さらにサウジアラビアは、対岸にあるイランとの関係では、中国を仲介役に外交関係を正常化。戦争状態にあるロシアとウクライナ双方と対話ができる関係を維持しています。 特にウクライナ関係では、ゼレンスキー大統領のG7広島サミット訪問の陰でほとんど注目されませんでしたが、ゼレンスキー大統領が日本の直前に訪問していたのはサウジアラビアです。 ゼレンスキー大統領が出席したアラブ連盟の首脳会議で、ホスト国であるムハンマド皇太子は、「我々は、ロシアとウクライナの間の仲介努力を継続し、安全保障の達成に貢献する方法で、この危機を政治的に解決することを目的としたすべての国際的努力を支援する」と述べ、2023年8月には、40カ国が出席するウクライナ和平会議をサウジアラビアで開催したのです。 サウジアラビアの近年の外交姿勢は「積極的中立主義」とも呼ばれています。 一見すると八方美人にも見えるその姿勢を他の中東の専門家はどう見ているのでしょうか。 湾岸地域に詳しいイスラエルの研究者は、その「巧みさ」を評価しています。 ●イスラエル国家安全保障研究所 ヨエル・グザンスキー上級研究員 「サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)は、ウクライナ戦争に続くエネルギー危機や最近の原油価格の高騰を受けて、産油国である自分たちが世界的に重要な存在であると認識している。アメリカ寄りでもなく、ロシア寄りでもなく、さらには中国寄りでもない。より独立した外交政策を手に入れようとしている。そして、これまでのところ、その外交政策がうまく行っていると言える。ただ、サウジアラビア側も、アメリカの存在が他の国と代替可能だと思っていないが、今よりもサウジアラビアの安全保障を考える存在であってほしいと思っているはずだ」 ●安全保障の対価=イスラエルとの正常化 「なぜハマスがイスラエルを攻撃したのか。理由の一つは、私がサウジアラビアと(イスラエルの国交正常化について)交渉しようとしていることをわかっていたからだ」 2023年10月7日、パレスチナのイスラム組織ハマスによるイスラエルへの奇襲作戦は世界に衝撃を与えました。この攻撃でも、サウジアラビアの影が見え隠れします。 冒頭の発言は、アメリカの首都ワシントンで開かれた会合でバイデン大統領が行ったもの。ハマスが、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化を阻止するために攻撃を実施したという見方を示したのです。パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するハマスからすれば、同じアラブ諸国のサウジアラビアがイスラエルと関係改善すれば、パレスチナ問題の解決が置き去りにされかねないという見方で、こうした分析をする人は少なくありません。 アメリカがイスラエルとアラブ諸国の接近を促してきた背景には、イランとの関係があります。中東への関与を弱めつつ、地域大国として台頭を続けるイランを封じ込めるための抑止策としてイランと長年のライバル関係にあるサウジアラビアと、同じくイランと敵対するイスラエルを結びつけることで、いわゆる包囲網を築こうと考え、国交正常化の交渉を進めていたとされています。 これにはイスラエル側にもメリットがありました。 イスラエルとサウジアラビアには国交はないものの、水面下では交流があるとされています。それでも、正式に国交正常化が実現すれば、イスラエルとアラブ諸国の対立が、少なくとも政治レベルでは終わったことを意味し、パレスチナ問題を事実上、葬り去ることを意味するのです。ハマスはこれを恐れていたとされているのです。 交渉にあたり、サウジアラビア側は国交正常化の「対価」として、いくつかの条件をアメリカ側に提示しました。 アメリカの有力紙ウォールストリート・ジャーナルによると、NATO(北大西洋条約機構)の第5条のような集団的自衛権を含む安全保障条約の締結、F-35戦闘機などの最新型の兵器の供与、そして、核開発能力の支援を求めていたとされています。 2023年8月9日付の同紙の報道では、アメリカ政府関係者が「今後9カ月から12カ月程度でより詳細な和平案で合意できる」とする楽観的な見方すら示していました。 さらに、9月には、ムハンマド皇太子が、アメリカFOXニュースの単独インタビューに応じ、「パレスチナ問題は非常に重要で、この問題は解決しなければならない」としつつも、イスラエルとの国交正常化について、時期は明言しないまでも「日々(和平に)近づいている」と述べ、正常化の可能性にも言及したのです。 ●ハマスが変えた世界と、サウジとパレスチナ問題 パレスチナ問題においてサウジアラビアは特殊な立場を維持してきました。 サウジアラビアはメッカとメディナという二つのイスラムの聖地を抱えていることに加え、2002年の「アラブ和平案(Arab Peace Initiative)」を主導し、パレスチナの最大の後ろ盾となってきました。 この和平案では、国連決議242の履行、つまり1967年の第3次中東戦争以降、イスラエルが占領するすべての土地からの撤退を求めるとともに、イスラエルとの国交正常化は、東エルサレムを首都とするパレスチナ国家の独立と引き換えであることを明確にしたのです。 「パレスチナ国家なくして、イスラエルとの国交正常化なし」。この方針は、2020年にUAEやバーレーンなどのアラブ4カ国が、アメリカのトランプ政権の仲介によってイスラエルと国交正常化するまで守られてきました。 このため、2020年のアラブ4カ国とイスラエルの国交正常化の合意はこの方針が破られたことを意味するからこそ、衝撃的でもあり、サウジアラビアとの国交正常化が実現するかが大きな焦点となっているのです。 そうした流れの中で起きたのが、今回のハマスによる攻撃でした。 サウジアラビアが一体どのような声明を出すのかも注目されましたが、攻撃の翌日に出した外務省の声明では、一貫してパレスチナの立場を擁護し、「我々は(イスラエルによる)占領の継続や、パレスチナ人の正当な権利の剥奪、それに聖地に対して繰り返される構造的な挑発の結果として、情勢が爆発する危険性について幾度となく警告してきた」とイスラエル側を非難したのです。 その後も、度々、即時停戦を求めるとともに、10月に国連の会合の後に記者のぶら下がりに応じたファイサル外相は「和平プロセスを再開させなければならない。アラブは本気だ」と語気を強めて、パレスチナ問題の解決を求めました。 ●イスラエルとの正常化への影響は 最大の焦点は、今回の激しい軍事衝突が、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化にどれだけの影響を与えるかです。専門家の見方も分かれています。 アメリカのシンクタンクCNAS(新アメリカ安全保障センター)のジョナサン・ロード氏は、米紙「ザ・ヒル」に寄稿した論考の中で、今回アメリカがイスラエルに対して極めて迅速な軍事的な支援を行ったことに触れ、「アメリカとイスラエルがパートナーシップを組んでいたことによってもたらされた安全と保障が実証される形となった」と指摘し、安全保障面の観点から、サウジアラビアをより国交正常化に傾かせ、ハマスにとっては裏目に出る可能性もあると指摘しました。 また、エルサレム戦略・安全保障研究所(JISS)のエフライム・インバル所長は、ハマスがサウジアラビアにとっては脅威でもあるイスラム組織「ムスリム同胞団」から分派した組織だという経緯を踏まえ、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化の流れは変わらないと指摘しました。 ●エルサレム戦略・安全保障研究所(JISS)のエフライム・インバル所長 「サウジアラビアにとっての最大の敵はイランだ。イランの脅威に対応するためにはイスラエルとの同盟関係が必要だと考え、イスラエルとの戦略的関係を築きたいという考えは変わらない。表向きに言うこととは別に、サウジアラビアはハマスの台頭を望んでおらず、イスラエルに戦争を続けて欲しいとも思っているはずだ」 しかし、こうした考えに疑問を呈する専門家もいます。 イスラエルを代表する著名な歴史・思想研究家であるヘブライ大学のアビシャイ・マルガリット名誉教授は、ハマスはムスリム同胞団に端を発するものの、政治的には独立して活動していると指摘。むしろ、ハマスもサウジアラビアもイスラム教のスンニ派であることや、サウジアラビアの発展に多くのパレスチナ人が貢献してきたことなども踏まえ、次のように指摘しました。 ●ヘブライ大学 アビシャイ・マルガリット名誉教授 「サウジアラビアとイランは互いに脅威を感じている。イランには、サウジアラビアがイラクのサダム・フセインのイラン攻撃を支援したという記憶がある。なぜイランが核開発を進めるのかといえば、サウジアラビアの脅威のためであり、イスラエルのためではない。しかし、サウジアラビアは近年、イエメンのシーア派系の反政府武装組織フーシの攻撃を受けるなど、脆弱さを露呈した。ムハンマド皇太子がパレスチナ問題を真剣に捉えていないこともある。そこで、アメリカが主導する形で同盟関係を築こうとしてきたが、今回の戦争を受けてすべてが振り出しに戻った。元に戻すのには時間がかかるだろう」 ムハンマド皇太子は若干38歳。一方のアメリカのバイデン大統領は現在81歳。2024年の年明けからは大統領選再選に向けた活動が本格的に始まり、選挙に向けた実績づくりとしてもサウジアラビアとイスラエルの国交正常化を進めたい思いが透けます。 日本の外交筋からは、「若いムハンマド皇太子が国王に即位すれば、その治世は何十年と続く。イスラム世界の盟主を自負するサウジアラビアとして、イスラエルとの国交正常化に急ぐ必要はない」と指摘する声もあります。 そして、イスラエルとハマスの戦闘から2カ月が経ち、興味深い世論調査もあります。 イスラエル寄りとしても知られるアメリカのシンクタンク・ワシントン近東政策研究所による最新の調査では、「イスラエルとの経済交流を支持する」という人の数は、2022年11月には43%に上っていましたが、最新では17%にまで低下しました。 これは、2020年にイスラエルとUAEなどが国交正常化する前のレベルで、いわゆるイスラエルとアラブの「接近ムード」は後退したと言っても過言ではなさそうです。 ただ、予想だにしないことが起きるのも中東です。 思い起こせば、UAEがイスラエルと国交正常化を果たす前、イスラエルのネタニヤフ首相は、パレスチナのヨルダン川西岸地区を併合すると宣言していました。 UAEは、アラブ和平案を破棄してイスラエルと国交正常化した際、”我々は国交正常化によって併合を止めたのだ”と主張していました。「アラブ和平案」という過去の約束をほごにした形ではありますが、このような主張をすることで、「正当化」を試みることができるのが、中東の現実主義的な外交でもあります。 サウジアラビアは、イスラエルとの国交正常化の条件として、パレスチナ問題でも大幅な譲歩を求めていたとされています。 まずはガザ地区での戦闘が集結し、その後の統治問題など課題は山積みですが、そのさらに後にパレスチナ問題がどのように扱われていくのか、サウジアラビアが大きな鍵を握っていることは間違いありません。 |
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●仏・アタル新内閣発足 外相にマクロン大統領の側近セジュルネ氏(38) 1/12
フランスのマクロン大統領は、戦後最年少のアタル首相率いる新内閣の閣僚名簿を発表し、外相に38歳のセジュルネ氏を起用した。 セジュルネ外相(38)はマクロン大統領の側近で、マクロン氏が創設した政党の代表を務めている。 また地元メディアは、同性愛を公表しているアタル首相のパートナーだと報じていた。 一方、経済・財務相や国防相、内相などの主要閣僚は留任。 マクロン大統領は、年金制度改革や移民法などをめぐり政権運営が難航し、求心力の低下が指摘される中、内閣の若返りをアピールするためアタル首相に続き、セジュルネ外相を抜てきしたものとみられる。 |
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●ロシア不法占拠、35%「知らない」 北方領土問題で内閣府調査 1/12
内閣府は12日、北方領土問題に関する世論調査の結果を発表した。ロシアが不法占拠し続けている現状を「知らない」との回答が35.0%に上り、30代以下では5割弱が「知らない」と答えた。政府の担当者は「若い世代の認知度が低い。SNSでのアプローチを強化したい」と語った。 「現状をどの程度知っているか」との問いに対し、「よく知っている」10.0%、「ある程度知っている」54.1%。「北方領土という言葉を知らない」は0.6%だった。 年代別では18〜29歳の47.0%が「現状までは知らない」、2.0%が「言葉を知らない」。30代は49.1%が「現状までは知らない」と回答した。 北方領土返還運動に「あまり参加しようと思わない」は58.1%、「絶対に参加したくない」4.3%で、合わせて6割を超えた。理由(複数回答)は「自分が参加しても領土が返還されると思えない」が45.7%で最多だった。 調査方法が異なるため単純比較はできないが、2018年実施の前回調査では「北方領土について聞いたことはあるが、現状までは知らない」31.3%、「全く聞いたことがない」1.0%だった。 調査は昨年10月5日〜11月12日に全国の18歳以上の3000人を対象に郵送方式で実施。有効回収率は54.1%。 |
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●ウクライナ・イスラエルでのバイデンの苦境―背景に民主党の分裂 1/12
●バイデン政権の深刻な支持低下 12月10日−14日に行われたニューヨーク・タイムズとシエナ大学の共同世論調査で、イスラエル・パレスチナ衝突におけるバイデン政権の政策については支持が33%、不支持が57%という結果が示された。しかも同世論調査によるバイデンとトランプの比較で、イスラエル・パレスチナ衝突をどちらがうまくやると思うかについて、バイデン38%、トランプ46%とトランプが優位な結果が出た。そして、同世論調査で、大統領候補として投票する先は、トランプ49%、バイデン43%とトランプがリードしている。共和党優位の米国の選挙人団制度の仕組みを考慮すると、全米の世論調査が同じでも共和党候補が優位になる傾向があり、選挙は約1年後とはいえ、バイデン陣営にとっては、厳しい調査結果が示されたといえる。 この世論調査では、回答者の44%が、その時点ですでに2万人を超えるガザの民間人の死者が出ていた状況について、イスラエルはハマスに対する軍事作戦を停止すべきだと回答している。そして48%の回答者は、イスラエル軍はガザにおける民間人の死傷を避けるために十分な姿勢を示していないと回答している。 共和党の大統領候補としてトランプ氏が指名を獲得する可能性がより高まっている中で、インフレと経済政策への不満に加えて、イスラエルとハマスの衝突が、バイデン政権にとって、再選への深刻な障害として浮かび上がっている。 ●ウクライナ支援の条件の国境対策が進まない背後に民主党左派の存在 ウクライナ支援とイスラエル支援をパッケージにして、共和党議会からの支持を得ようとする戦術についても、バイデン政権はワシントンDC内で不満を持たれている。筆者がワシントンDCのメディアや外交安保政策の専門家にインタビューをした際、回答者は例外なく、米国はウクライナ支援を継続すべきだという意見で一致していたが、バイデン政権の議会対策については失敗しているという評価が多かった。例えば、バイデン大統領自身が反対派の議員をホワイトハウスに招待して説得をするなどの積極的姿勢が欠けている点などが、批判の理由だ。 バイデン政権は、議会共和党の強硬派にウクライナ支援の予算を反対され、クリスマス休暇を迎えようとするワシントンDCで議会での厳しい交渉が続いてきた。危機感を抱いたウクライナのゼレンスキー大統領は、12月12日、米国を訪問して、バイデン大統領、上院議員全員およびウクライナ支援に懐疑的な議員を多くかかえる下院共和党の指導者、マイク・ジョンソン下院議長と会談を持ち、自国への支援継続を訴えた。 ジョンソン議長はゼレンスキー氏との会談後、「プーチンの残忍な侵攻に我々は共に立ち向かう。米国民は自由を支持しており、この戦いで正しい側にいる」と話したが、追加予算案を容認する条件は、米国境警備の強化策と、ウクライナが対ロシア戦争で勝利する詳細な戦略の提示だと発言した。ここには、来年の選挙を睨み、内向きで保守的な共和党支持者の意向が反映されている。 バイデン政権は614億ドル(約9兆円)のウクライナ支援の予算を議会に要請しているが、議会共和党は反対している。行政管理予算局(OMB)のヤング局長は、ウクライナ支援の予算が年内に枯渇するという書簡を議会指導部に送り、警告をしている。 他方ウクライナ支援を継続したいバイデン大統領は、12月6日に、急遽、議会と国民向けにテレビ演説を行い、12月下旬までにウクライナ支援追加予算案を可決するように訴え、それができなければ、ロシアのプーチン大統領に対する「最高の贈り物」になると語っている。 この演説の中に、以下の文脈で日本がでてくる。「考えてほしい。もし我々がウクライナを支援しなければ他国は何をするのか?ウクライナを支援している日本はどうするのか?G7はどうするのか?我々のNATOの同盟国はどうするのか?彼らはどうするのか?」 ワシントンDCでのインタビューによると、バイデン政権の日本に対する期待は、日本で考えるよりも大きいようだ。バイデン大統領にとっては、中国との競争を最優先する共和党の保守派に対して、対中競争の重要なパートナーである日本もウクライナ支援に協力していることを示し、ウクライナ支援は、対中競争戦略にも重要な要素であることを訴えたいのかもしれない。事実、サリバン国家安全保障担当補佐官は、フォーリン・アフェアーズ誌に寄稿し、侵略戦争から国を守るために、ロシアに立ち向かうウクライナを支援するための国家連帯を組織していると述べ、アジアについても同様のことを行っており、日本の防衛予算の倍増とトマホーク・ミサイルの購入が、地域のライバル(中国)への抑止力強化となると指摘している。 共和党のウクライナ支援の条件は、メキシコ国境の管理の厳格化であるが、これは民主党左派が反対する政策である。バイデン政権にとっては、来年の大統領選挙を睨めば、民主党左派を離反させる政策はとりにくい。先に見たバイデン政権のイスラエル・パレスチナ紛争への政策に対する不興も、特に民主党左派と若年層からのものであることを考えると、下院共和党議会が、ウクライナ支援の条件について国境警備を持ち出したことは、民主党分断を見据えた効果的な戦術と考えることができる。しかも民主党左派は、基本的に共和党右派と同様に、ウクライナ支援のような対外関与の拡大に懐疑的である。例えば、2022年10月に民主党左派のプログレッシブ・コーカスは、中間選挙を前にバイデン大統領に、ロシアとの直接対話を求める書簡を送った。その後、民主党内の分裂を避けるために書簡を差し戻したが、民主党左派はウクライナ支援の継続に前向きとはいえない。 ●中東政策でもトランプ支持が増える矛盾 そもそも、米国の世論が不満を持つイスラエルの対ガザへの強硬姿勢は、強権化を強めるイスラエルの現ネタニヤフ政権の性格が反映している。ネタニヤフ首相は、汚職の嫌疑で起訴されて一度首相と議員を辞任したが、同志が法律を変えて、彼が首相に返り咲き組閣をすることを可能にした。しかしリベラル・中道派は、ネタニヤフと連立を組むことに反対し、極右政党と連立を組むことになった。その結果、現在のネタニヤフ政権は、パレスチナのガザとヨルダン川西岸の住民に対して、最も強権的な姿勢をとる結果となり、現在のガザでの暴力の拡大と死傷者の増大にもつながっている。 ネタニヤフ首相は、自らの起訴を無効にする狙いで、司法の議会に対する優位を解消するための憲法改正を狙い、リベラル・中道派から大きな反対を受けた。それがイスラエル各地での大規模な反ネタニヤフ・デモにも発展した。 トランプ前政権では、中東和平特使であったトランプの女婿のクシュナー氏がネタニヤフとの家族ぐるみの付き合いという関係もあり、彼と緊密な関係を築いてきた。クシュナー氏は、やはり強権的で民主党左派から批判されてきた、サウジアラビアの実質的指導者であるムハンマド・ビン・サルマン(MBS)皇太子とも協力関係を築き、アブラハム合意などの中東和平政策を進めてきたが、パレスチナを置きざりにした政策が、ハマスに危機感を抱かせ、今回の武力衝突を引き起こしたイスラエルでのテロにつながったという見方もされている。 自身への起訴を抱えながら権力に返り咲き、政治的な生き残りを図っているネタニヤフ首相にとって、自分と似た境遇にあり、個人的な関係もあるトランプ氏が来年の大統領選挙でカムバックしてくることは、優位だと考えているはずだ。また、ウクライナへの侵略戦争が難航して多くの人的犠牲を出し、戦局が膠着しているロシアのプーチン大統領にとっても、トランプ氏が大統領に返り咲くことは、願ってもないチャンスだろう。 強権指向のストロングマンと呼ばれる政治リーダーが、多くの市民の権利や生命を犠牲にしながら政治的に生き残ることが、米国の民主党左派が望む状況ではないはずだ。しかし冒頭の世論調査で示したように、ストロングマンの暴挙を止めることができないバイデン政権への民主党左派と若年層の不満は強く、バイデン外交の手足を縛っている。 渡辺将人慶應義塾大学総合政策学部准教授は、議会の民主党最左派のウクライナ支援反対は左派内で抑え込まれたが、イスラエル情勢では左派が結束して政権に圧力をかけている状況を解説している。 そもそも中東におけるバイデン外交の手足を縛ってきたのは、民主党左派の人権重視姿勢である。そして左派が手足を縛ってきたバイデン政権の中東政策での難航は、左派の不満の対象となり、バイデン政権を失速させ、めぐりめぐって、米国内外のストロングマンたちを優位にしている。これは出口のない矛盾構造といえるだろう。 このような矛盾構造から脱却するために、イスラエル・パレスチナ紛争とウクライナ戦争に対する民主党左派と米国有権者の認識をどのように変えて、自らの支援につなげるのかが、バイデンの選挙体制の大きなカギとなるだろう。 |
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●ウクライナ軍、ロシアが完成間近の鉄道橋を破壊 補給に新たな打撃 1/12
ウクライナ軍は先週末、アゾフ海の沿岸から北へ40km、ロシアの占領下にあるウクライナ南東部の前線から南へ80kmほどに位置する東部ドネツク州フラニトネ村の南で、ロシアの労働者が建設中だった鉄道橋を爆破したもようだ。攻撃にはロケット砲が使われたとみられる。 兵站が鍵を握る持久戦になっているこの戦争の出来事としては、ここ数カ月で最も報道が不十分なものだ。だが、ウクライナ軍は、この村を流れるカルミウス川に架けられつつあった未完成の橋を崩落させることで、被占領下のウクライナ南部クリミア半島やその周辺への補給線を改善しようとするロシア軍の取り組みを後退させた。それをあざ笑うようなやり口でもあった。 「ウクライナはロシア軍の主要な兵站構想に穴を開け、ロシア側が半年近く本格的に取り組んできた補給計画を妨害した」。地元紙キーウ・ポストの上級国防担当記者ステファン・コルシャはそう解説している。 ロシア軍が本土からウクライナ南部の部隊に大量の補給物資を運ぶ方法は主に、(1)クリミアへの海路、(2)ケルチ橋(クリミア大橋)経由でのクリミアへの道路と鉄路、(3)ウクライナ南東部への鉄路──という3つがある。 ロシアが2022年2月にウクライナに対する戦争を拡大して以来、ウクライナ軍はこれら3つの補給線をすべて攻撃してきた。 (1)については、ウクライナ軍はミサイルや水上ドローン(無人機)で、補給物資を運搬する黒海艦隊所属の揚陸艦の大半を損傷させるか撃沈し、残りの艦艇にとってもクリミアの港を非常に危険な場所に変えた。(2)のケルチ橋も、爆弾やミサイルなどの攻撃で再三損傷させている。 (3)に関しても、陸上を走る主要な鉄道は前線方向に北へ何度か蛇行しているため、ウクライナ軍の榴弾砲の十分な射程圏内にある。ウクライナ軍の砲兵が、通過する列車や路線自体を攻撃するのは造作ないということだ。 こうした攻撃にさらされてきたため、ロシアは第4の補給線として海岸沿いに鉄道を建設し始めた。この鉄道路線もウクライナ軍のロケット砲や遠距離攻撃兵器の射程に入るものの、少なくとも榴弾砲による攻撃からは列車を逃がすことができる。 ただ、この鉄道路線はカルミウス川を越える必要がある。カルミウス川はフラニトネを通って南へ流れ、戦争拡大の初期からロシア軍が占領するマリウポリでアゾフ海に注ぐ。 ロシアの労働者がフラニトネで橋の建設に本格的に取り掛かったのは昨年9月のことだった。ウクライナ軍が攻撃した時には完成間近だったとみられる。キーウ・ポストのコルシャの記事によれば、米国製の高機動ロケット砲システム(HIMARS)が使われた可能性が高い。おそらく、射程80kmでGPS(全地球測位システム)誘導のM30/M31弾が一斉射撃されたのだろう。 建設中だったこの橋を、ウクライナ軍がこれまで攻撃できなかった理由があったわけではない、とコルシャは指摘する。 「ロシア軍の意思決定を揶揄したい人ならおそらく誰でも(中略)、ウクライナ軍の精密誘導弾の射程に完全に入る川に鉄道橋を架けようとするロシア軍の大掛かりな土木作業を、なんとも愚かしい計画と考えるだろう」とコルシャは書いている。 さらに「クレムリンに批判的な向きは、橋の建設が始まってからまる5カ月たったあとでそれを破壊し、ロシアの橋建設業者の作業を降り出しに戻したという点に、(ウクライナ側の)ユーモアのセンスすら感じるかもしれない」と続けている。 既存のものであれロシア側が必死に構築中のものであれ、ウクライナ南部の補給線を攻撃されるたびに、ロシア軍の連隊や旅団は圧迫され、物資が不足する。ウクライナ南部ヘルソン州のドニプロ川左岸(東岸)で、ロシア軍が数千人以上の兵力を投入しながら、数百人規模のウクライナ海兵隊部隊が保持する橋頭堡をいまだに排除できていないのも、それが理由のひとつだ。 |
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●英、ウクライナ向け軍事支援を増額 首相訪問で安保協定に署名 1/12
英国のスナク首相は12日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問し、ゼレンスキー大統領と2国間の安全保障協定に署名した。また、来年度の支援を25億ポンド(約31億9000万ドル)とし、過去2年間に比べ2億ポンド増額することを明らかにした。ドローン(無人機)や長射程兵器の購入に充てる。 スナク首相は会見で「世界中の敵対勢力は、われわれには長い戦争に耐える忍耐力も資源もないと考えている。今揺らげば、プーチン大統領だけでなく北朝鮮やイランなど他国もあおることになる」と語った。 ゼレンスキー大統領は会見で、米国からの援助も実現の手応えを感じており、先月よりも楽観的になっていると語った。 ゼレンスキー氏は、署名された協定はウクライナに対する「前例のない安全保障協定」だとし、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟するまで効力を持つと表明。「最初の協定を英国と締結できたことをうれしく思う。この協定は他のパートナーと協力する際に基礎となる」と述べた。その後、短文投稿サイト「X」(旧ツイッター)に「これは単なる宣言ではない」と投稿した。 ウクライナの議員は、スナク首相がウクライナ議会で演説し、スタンディングオベーションを受ける動画を投稿。スナク氏は議員に対し「現在、ウクライナの自由を求める闘いにおける困難な時期にある。紛争中に困難な時期が訪れることは常にある。長い闘いを覚悟しなければならない」と語った。 英国はこの協定について「情報(インテリジェンス)共有、サイバーセキュリティー、医療・軍事訓練、防衛産業協力など、英国がウクライナの安全保障のために提供してきたさまざまな支援を正式に表明するもので、今後も継続していく」と表明。 スナク首相は声明で、ウクライナは2年間、自由と民主主義の原則のために戦ってきたとし、「われわれは苦難な時期も、将来のより良い時期も、ウクライナと共にある」とした。 |
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●中ロ貿易、23年は過去最高の2400億ドル 26%増 1/12
中国税関総署が12日公表した統計によると、2023年の中国とロシアの貿易総額は過去最高の2400億ドルだった。両国の経済関係が緊密化していることが浮き彫りになった。 中国は世界最大の石油消費国。西側諸国の制裁下にあるロシアにとって極めて重要なエネルギー輸出先となっている。また、ロシアは欧米企業の撤退を受け、中国製の自動車やスマートフォンなどの輸入も増やしている。 23年の両国の貿易総額はドル建てで前年比26.3%増の2401億ドル。 中国からロシアへの輸出は前年比46.9%増。ウクライナ戦争前の21年との比較では64.2%急増した。 ロシアからの輸入は13%増だった。 ロシアの国営通信がノバク副首相の発言として先月下旬に伝えたところによると、23年のロシアの石油輸出の半分は中国向けだった。 |
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●中国、台湾総統選で「正しい選択」せよと警告 アメリカには「口出し」を非難 1/12
台湾総統選を目前にした11日、中国が台湾の有権者に向け、「正しい選択」をするよう警告した。 中国の国務院台湾事務弁公室は、13日投開票の総統選で与党・民進党の頼清徳氏が勝利すれば、台湾で独立運動がさらに進み、中台の関係は危うくなるだろうとする声明を発表。 国務院は頼氏について、「『独立』をそそのかす邪悪な道を歩み続け、(中略)台湾を平和と繁栄からいっそう遠ざけ、戦争と衰退にますます近づけるだろう」とした。 また、アメリカが中国に対し、選挙前に緊張をあおるなと警告したことについて、「厚かましく口出し」しているとアメリカを批判した。 総統選は誰が勝つかで、台湾がこれまでより中国に接近するか、遠ざかるかの変化が生まれる可能性がある。 台湾は、アジアでの優位を争う中国とアメリカの争いにおいて、重要な火種となっている。 頼氏は有権者に、台湾の主権を維持するため「正しい道を選ぶ」よう呼びかけている。 一方、主要対立候補の国民党・侯友宜氏は頼氏について、中国との関係を危険にさらす人物だとしている。 頼氏は今月2日に世論調査が禁止されるまで、最有力候補と目されてきた。13日には立法院(議会)選挙も同時に実施される。 |
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●イラン、オマーン湾で石油タンカーを拿捕 アメリカが非難 1/12
イランは11日、オマーン湾でマーシャル諸島籍の石油タンカーを拿捕(だほ)した。 報道によると、オマーンのソハール港付近を航行していた「セント・ニコラス」に武装した男たちが乗り込み、イランの港へ向かうよう指示したという。 イランの国営通信は海軍からの情報として、タンカーを差し押さえたとし、昨年アメリカがイランの船と積み荷の石油を没収したことに対する報復だと報じた。また、拿捕した船はギリシャの所有だが、アメリカのものだと伝えた。 セント・ニコラスはイラク・バスラ港とトルコの目的地との間を航行中だった。 英国海運貿易オペレーション(UKMTO)は11日、グリニッジ標準時午前3時30分(日本時間午後12時30分)に、4〜5人の「無許可の人物」が乗船したとの報告を受けたと発表した。「軍服風の黒い制服に黒いマスク」を着用していたという。 また、セント・ニコラスとの通信は途絶えており、当局が調査中だと付け加えた。 セント・ニコラスを所有するエンパイア・ナヴィゲーションによると、同船には原油14万5000トンが積載されていた。また、乗務員はフィリピン人が18人、ギリシャ人が1人だと発表した。 セント・ニコラスは、船名が「スエズ・ラジャン」だった昨年4月、イランに対する制裁の一環として、アメリカに拿捕されている。 当時この船をチャーターしていたスエズ・ラジャン・リミテッドはその後、イランに代わって国外で石油をひそかに販売・輸送し、制裁違反に共謀したとして有罪を認めた。 アメリカは、船舶と乗組員の即時解放を要求し、今回の件はイランによる国際貿易を妨害する最新の試みだと述べた。 米国務省のヴェダント・パテル報道官は、「このような行為は、商船や地域経済、世界経済にとって、単に不確実性を高めるだけだと考えている」と述べた。 アラビア半島の周辺地図 オマーン湾は、アラビア半島の北側に位置している。同半島の反対側にある紅海では、イランの支援を受けているイエメンの武装組織フーシ派が商船に攻撃を繰り返しているが、この二つは別の事案だと考えられている。 紅海に展開するアメリカとイギリスの海軍は12日、フーシ派を標的とした空爆を同国各地で実施した。 |
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●ウクライナに訪れるターニングポイント 1/12
1月6日、大勢の人々がウクライナの沿岸都市オデーサで、冬の気温をものともせず黒海に飛び込んだ。キリスト教の祝日である公現祭に合わせ、キリストの洗礼を記念する行事の一幕だ。 凍える海への今年の飛び込みには、一段と重要な意味があった。戦禍に見舞われたウクライナが初めて、当該の祝日をグレゴリオ暦に従い(1月6日に)祝ったのだ。従来であればユリウス暦の日付(1月19日)だった。 昨年、ウクライナは法律を制定し、クリスマスを祝う日も多くの西側諸国と同じ日に移行した。ロシアと共通する祝日の伝統からまた一歩距離を取った形だ。 しかしこの2〜3週間はとりわけ、迫りくるロシアから自らを引き離すのはほとんど不可能だった。ミサイルとドローン(無人機)のすさまじい一斉攻撃が、オデーサを含むウクライナの複数の都市に降り注いだからだ。 2023年が幕を下ろそうとする中、ロシアは本格侵攻の開始以降で最大となる攻撃をウクライナに仕掛けた。わずか2〜3日後にも、ほぼ同程度の一斉攻撃が行われた。 これらの攻撃の強度と頻度は、ウクライナ軍の反転攻勢の失速や西側の巨額支援の行き詰まりに関する報道を背景に、戦争の重要なターニングポイントを示すものとなっている。 世界の注目が中東のイスラエル・ハマス紛争に大きく転換する状況では、ウクライナ人が不安に駆られるのも無理はない。 ロシアによる全面侵攻が開始してから初めて、最も百戦錬磨の知人でさえ今では懸念の声を上げるに至っている。年明け2度目の一斉攻撃の後は特にそうだ。 「あの朝はひどかった。ドローンだけでなくロケット弾も撃ち込まれた。事態が本当に深刻となったのは、ロシアのロケット弾を迎撃するパトリオットミサイルがいくつ残っているのかが分からなかったからだ」。友人で欧州安全保障協力機構(OSCE)の元同僚、オルハ・ラドケヴィチ氏は、筆者にそう語った。 「ここで問題になっているのは人の命であり、誰もが実感している通り、もし米国が我々への支援を止めればそうした攻撃はより頻繁で激しいものになるだろう」「人々は最近になってすっかり疲れ切ってしまった。疲労がますます見て取れる。人はこんな環境でどれくらい生きられるのだろうか?」(ラドケヴィチ氏) 大晦日(おおみそか)は友人たちと夕食を共にした同氏だったが、それでも戦争を忘れようとする努力は無駄に終わった。ロシア軍のドローン1機が近所を飛び回り、注意を払わざるを得なかったためだ。 過去には安全保障の専門家が、ロシア軍の兵器の備蓄について枯渇しつつあると推測したこともあった。しかしクレムリン(ロシア大統領府)は再供給を済ませたらしく、現在報じられるところによれば同盟国である北朝鮮製の短距離弾道ミサイルをウクライナで使用している。 一方、イランからのドローンの供給はほぼ際限なく行われているようだ。同国を巡っては既に技術を移転し、より多くのドローンをロシア国内で製造する態勢にあるとの不安な報道も流れる。そこでの新たな備蓄は、従来の規模を「格段に上回る」とされる。 ●兵力の動員:政治的難題 ロシアの全面侵攻から丸2年の節目が近づき、近い将来の収束も見通せない中、ウクライナの指導者たちは自国の市民により多くを求めなくてはならない状況にある。 国会が今後通す見込みの新たな動員法により、最大50万人が戦場に投入される可能性がある。 ゼレンスキー大統領はこの物議を醸す法律から巧みに距離を置いているようだが、動員については必要な措置であり、これによって前線で数カ月戦っている兵士たちの困難が軽減すると述べている。露骨に政治的な動きの中で、同氏はその責任を軍の上層部、とりわけザルジニー総司令官に負わせた。潜在的な政敵とも目されている同氏が、動員の論拠を一般国民に説明する形となっている。 ゼレンスキー氏はまた、徴兵年齢の下限を現行の27歳から25歳に引き下げる考えも示唆した。 動員に関する変更は政治的な難題であり、わざわざ手を付ける指導者はほとんどいない。ロシアのプーチン大統領ですら、第2次大戦以降初となる動員令を署名するまでに数カ月間様子を見ていた。 ウクライナの戦死者の正確な数を算出するのは不可能だが、誰であれ西部リビウにある墓地の軍人用の区画を訪れれば、そこに眠る戦死者の数がこれ以上埋葬できない水準近くまで増加しているのを確認できる。 ●多くの前線を抱える戦争 この戦争は多くの前線を抱えている。クリスマス前のキーウを訪れた時、筆者は明確な経済活動の停滞を目の当たりにした。戦争の傷の広がりも、今やほとんど無視できないものとなっている。 中央駅を出てすぐ旅客らの目に飛び込んでくる背の高いオフィスビルは、正面が爆発で激しく損壊している。街の中心部にあるビストロは、かつて外国人が足繁く通っていたが、この時はウエートレスがたった一人。テーブルも二つしかなかった。「人々はどんどん貧しくなる。状況は毎月悪化している」。ウエートレスは筆者にそう告げた。 米国と欧州連合(EU)による二つの支援パッケージはそれぞれ610億ドル(約8兆9000億円)と520億ドルだが、これらは政争のために滞る恐れがある。ウクライナ全土の空気が打ち沈んだものに転じるのも無理はない。 時計の針は、かつてないほどの音量で鳴り響く。ウクライナの抱える財政赤字は膨大で、報道によれば来る2月には公共部門への賃金の支払いができなくなる見通しだ。 ●24年は大いなる凍結解除の年に? しかし少なくとも一つの領域において、ウクライナは希望を抱くことができる。ロシアの資産だ。ウクライナは先週、大きな勝利を挙げた。EUがロシア最大のダイヤモンド採掘会社アルロサとその最高経営責任者(CEO)に対する制裁を承認したのだ。EUによれば、ロシアのダイヤモンド生産の9割を占める同社は「経済分野の重要な部分を構成しており、政府に実質的な収益を提供している」。 ロシアのダイヤモンド輸出の総額は年間約44億ドル。そのうち16億ドルをEUが輸入している。制裁が巨大な穴となり、プーチン大統領の軍事機構に対する資金供給に影響が及ぶ可能性もある。 ウクライナは間もなく、ロシアが国外に蓄える推定数千億ドルの凍結資産から利益を得るかもしれない。手始めは税収としてベルギーが徴収する分だ。同国は膨大な量に上るロシアの凍結資産を保有している。推定24億ドルのこの税収は、ウクライナの財政赤字を建て直す上での大きな追加分となるだろう。 米国と西側の同盟国は、それ以外の凍結資産の対応にも熱心に取り組んでいる。米国が主導する工程表の展開は、全面侵攻から丸2年を迎える2月半ばの前にも実現するかもしれない。 それでも最終的に、プーチン氏の目的達成の阻止はウクライナ人自身の肩に掛かってくるだろう。同氏が目指すのは、ウクライナ人国家の完全な破壊に他ならない。ウクライナ国内の武器生産が23年に3倍に拡大し、何もないと見られる状況から先進的なドローンを生み出したとの知らせは、筆者に希望を与えてくれる。西側による支援の増強があろうがなかろうが、ウクライナはロシアを撃退するだろう。 それが遠い幻想に感じられるときはいつも、議員で政党ホロスを率いるキラ・ルディック氏に言われたことを思い起こすようにしている。同氏は1月2日、キーウにある自身のアパートをロシア軍の攻撃によりひどく破壊された。「非常に多くの愛情と支援、共に働く人々を目の当たりにしてきた。普段はとても目にすることのないものだ。だから疲弊していると誰かに言われれば当然、戦争で疲れ切った状態にはある」(ルディック氏) 「しかし自分たちの中にもっと戦う意志と、互いに支え合う気持ちがあるかと問うなら、答えは絶対にイエスだ」 |
●ロシア 米英軍のフーシ派拠点空爆「無責任な行動」と非難 1/12
アメリカ軍とイギリス軍がイエメンの武装組織フーシ派の拠点を空爆したことを受け、ロシアは地域の緊張激化につながる「無責任な行動だ」と非難し、国連安全保障理事会の緊急会合を開催するよう要請したことを明らかにしました。 ロシア外務省のザハロワ報道官は12日、アメリカ軍とイギリス軍による空爆について、「地域の情勢の不安定化を引き起こす可能性がある無責任な行動だ」と非難。国連安全保障理事会の承認がない攻撃だとして「国際法に反している」と主張しました。 そのうえで国連安全保障理事会の緊急会合を現地時間の12日に開催するよう要請したことを明らかにしました。 ロシアはフーシ派の後ろ盾とされるイランと友好関係にあり、ウクライナ侵攻後に対立を深めるアメリカなどへの対抗で連携を強めています。 |
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●イギリス、ウクライナに25億ポンドの軍事支援を発表 首相がキーウ訪問 1/13
イギリス政府は12日、ウクライナに向こう1年で25億ポンド(約4600億円)の軍事支援を行うと発表した。イギリスによる年間支援額としては、2022年2月にロシアによる全面侵攻が始まって以来、最多となる。 リシ・スーナク英首相はこの日、ウクライナの首都キーウを訪問し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談。ウクライナは「決して孤立しない」と述べた。 また、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「ウクライナで勝利した場合、そこで止まることはない」と話し、ウクライナ支援の重要性を強調した。 支援は4月からの新会計年度から始まる。イギリス当局によると、新たな支援パッケージには長距離ミサイルや防空システム、砲弾などが含まれる。 また、約2億ポンドがドローン(無人機)に振り向けられるという。その大半がイギリス製で、外国からウクライナへのドローン供与としては過去最大規模となる見込みだ。 他方、スーナク首相が数年単位の財政支援を約束しなかったことが注目される。 英政府内では一部の閣僚や軍高官たちが内々に、数年間の財政支援継続を約束した方が、イギリスがウクライナを長期的に支えるのだという強いシグナルをロシアに送ることになると主張していた。 スーナク氏はその代わりに、これまで年間23億ポンドだったウクライナへの支援を、さらに2億ポンド増やすことを選んだ。 英首相官邸は、この支援パッケージは「ウクライナとイギリスの100年にわたる、揺るぎないパートナーシップ」の第一歩となるとしている。 パッケージには1800万ポンドの人道支援も含まれており、エネルギーインフラの防御を助けるほか、オンラインでの英語学習への支援額も拡大した。 イギリスのジェイムズ・ヒーピー国防担当閣外相はBBCのテレビ番組に出演し、ドローンが今後数年のウクライナに有利を与えるだろうと語った。 「このドローンは、この2年間ウクライナで見てきたことから、すべての教訓を学びながら、急ピッチで開発されているものだ」と、ヒーピー氏は説明。 また、今回の支援は、イギリスがウクライナへの第2位の援助国として、欧州における指導的地位を維持していることを示していると付け加えた。 スーナク首相はキーウの大統領府でゼレンスキー氏と会談したほか、市内の緊急サービス職員や住民とも会った。 スーナク首相のウクライナ訪問は2022年11月以来、1年3カ月ぶり。同首相は、「私からのメッセージはひとつだ。イギリスも、たじろいだりしない。我々はウクライナの最も暗い時期にも、そして今後訪れる、これまでより良い時期にも、ウクライナと共にあり続ける」と述べた。 「イギリスはすでに。ウクライナの最も緊密なパートナーのひとつだ。ウクライナの安全保障は我々の安全保障だと認識しているからだ」 「我々はさらに前進し、軍事支援を拡大し、数千機の最新鋭ドローンを提供し、ウクライナに長期的に必要な保証を提供する歴史的な新しい安全保障協定に署名する」 「ウクライナはこの2年、ロシアの残忍な侵略を撃退するために勇敢に戦ってきた。ウクライナは今もなお、国を守り、自由と民主主義の原則を守るという決意を揺るぎなく持って戦っている」 BBCニュースから、イギリスは複数年にわたる資金援助パッケージを発表すべきだったのではないかとの質問を受けたスーナク首相は、イギリスがウクライナと長期の安全保障協定を結んだ最初の同盟国だと強調した。 「今回の支援は、プーチンや他の国々に、我々はここに留まるという強いシグナルを送ることになる。我々は長期的にウクライナを支援するためにここにいる」と、首相は説明した。 ゼレンスキー大統領はスーナク氏の「個人的なリーダーシップ」を称賛し、イギリスとの協定が「他のパートナーとの活動の基礎になるだろう」と述べた。 今回の協定は、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟前からロシアの侵略を抑止できるよう、軍事的・経済的支援に関する二国間の保証で構成されている。 主要7カ国(G7)は昨年のNATO首脳会議で、ウクライナとこうした協定を結ぶと約束しており、イギリスがその最初の国となった。 イギリス国内ではこの数カ月、イギリス政府はウクライナが軍事計画を進展させられるよう、より早く、より明確な情報を与えるべきだったと、議員らが圧力をかけていた。 一方、ウクライナが砲弾とミサイルの増援を切実に必要としている中、アメリカと欧州連合(EU)がそれぞれの支援策に合意するのに苦慮している。 スーナク氏は、同盟国が「一丸となってウクライナを支援し続ける」ことに、自信を持っていると述べた。 |
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●2024年・ロシアのプーチン大統領はどこへ行く? 1/13
2024年を迎え、ロシアによるウクライナ侵攻は2月末には、いよいよ3年目に入る。国際的な最大の関心は、もちろん戦争の行方だ。 しかし、戦局の膠着化、不透明感の強まりを受け、侵攻の現状・見通しを歴史的文脈から考える必要性が、より高まってきたと筆者は考える。そこで、今回の論考では、そういった観点も踏まえて「どこへ行く、プーチン・ロシア」をテーマに分析してみた。 2023年12月14日、プーチン大統領は侵攻後、中止していた恒例の大規模記者会見を復活した。その前後も様々な場で発言を行った。 ●プーチン「和解はありえない」 もともと系統立てて長広舌を展開するのが得意のプーチン氏。2023年6月からのウクライナ軍の反攻作戦を不発に終わらせた結果に気を良くしてか、余裕の表情を浮かべながら、自らの強気な論理を滔々と展開した。こうした発言はロシア・ウオッチャーにとって、プーチン氏の心根を探る上で重要な機会となった。 その結果、数々の言葉をつなぎ合わせていくと、今後に向けた「プーチン戦略」が、次第に一つの像のように浮かび上がってきた。その像とは、この侵攻が「ロシアを敵視する傲慢な西側」との長期的敵対関係の始まりに過ぎず、西側が大幅に譲歩し歩み寄ってこない限り、和解はありえないとのプーチン氏の強い意志だ。 その思いを象徴的に吐露したのが、2024年1月1日、モスクワの病院に入院している負傷兵を見舞った際に語った発言だ。その概要はこうだ。 「彼ら(西側を指す)がわれわれの敵(ウクライナ)を助けているわけではない。彼ら自身がわれわれの敵なのだ。これが問題のすべてだ。数世紀にわたり、そうだったし、今も続いている。ウクライナ自身は我々の敵ではない。国家としてのロシアを消滅させることを望む西側こそ敵なのだ」 ここで言う「西側こそ敵なのだ」とは何を意味するのか。それは、たとえ侵攻でウクライナに勝っても、問題は終わらないし、その後も西側との敵対関係が続くとロシア国民に長期戦への覚悟を求めたもの、と筆者は考える。 この「数世紀にわたる」西側の敵意、を一言で象徴する言葉として、プーチン氏が最近の演説で従来以上に多用し始めたのが、「ルッソフォビア(ロシア嫌悪)」という言葉だ。 これは、主に18世紀半ばから19世紀半ばにかけ、フランスやイギリスで広まった反ロシア感情を指す、歴史的なロシア語だ。ロシアで長い間、使われなかったこの言葉を政治の舞台に復活させたのはプーチン氏自身だ。 ●ルッソフォビア(ロシア嫌悪)の受難国 2014年の一方的なクリミア併合を契機にした西側との関係悪化を受け、プーチン政権は、国際的孤立の原因はロシアの行動ではなく、もともとロシアを敵視している西側であると自らを正当化するために使い始めていた。侵攻開始の際にも使った言葉だ。 しかし最近、プーチン氏はこのルッソフォビア批判のボルテージをさらに一段と上げた。2023年11月末、「ルッソフォビアは、事実上、西側の公式イデオロギーになった」と宣言したのだ。 つまり、侵攻を機に形成された西側の対ロシア包囲網が一時的なものでなく、対ロ外交の長期的枠組みとして、ビルトインされた(組み込まれた)との認識を明確に初めて打ち出したのだ。 では、この「公式イデオロギー発言」にはどういう狙いがあったのか。筆者は以下のように解釈する。 東西冷戦時代は「資本主義体制VS社会主義体制」の2つの政治制度の競争であり、対決であった。それが現在は、ルッソフォビアこそ今後のロシアと西側との主要な対立軸であると、プーチン氏は言い切ったのだ。 ロシアがウクライナへの侵略国家であると西側から断罪されている中、ロシアはルッソフォビアの受難国であると説き、国民に団結と忍耐を訴えたのだ。 こうした受難論をベースに、プーチン氏は、2023年から新たな国づくりに踏み出した。代表的なのは、ルッソフォビアを初めて刑事罰の対象とする刑法改正の動きだ。 何をもって「ルッソフォビア」と規定するのか。まだ法律論議が続いているが、例えば、海外でのロシア国民に対する差別や、西側やウクライナを支持するような言動に禁錮5年の処罰を与えるような案が練られているようだ。 教育面でも、この受難論に沿った変化が進んでいる。ソ連時代のような、生徒への軍事教練が導入された。歴史の書き換えも進んでいる。 プーチン氏の指示を受け、高校生年代用に2023年秋に導入された全国統一教科書では、ルッソフォビアを初めて取り上げ、「西側のあからさまなルッソフォビアの狙いは、ロシアの解体である」と記した。 ●米欧との対立軸として「ルッソフォビア」 まるでソ連時代に敵だった「資本主義陣営」のような位置付けなのである。今やロシアも米欧も経済面では同じ資本主義国家であり、経済制度上の対立はない。プーチン氏としては、ロシアと西側の対立軸を象徴するキーワードとして、「ルッソフォビア」を使い始めたのだ。 だが、こうした司法面、教育面での制度変更は、まだ途中段階の措置のようだ。新たな国づくりの最終的到達地点として、プーチン氏が根本的な、歴史的国家改造に踏み出す可能性が出てきている。 プーチン氏の側近であるロシア連邦捜査委員会のバストルイキン委員長が2023年11月22日、「国家イデオロギー」を制定する必要があると主張したのだ。同委員長は「国家イデオロギー」のあるべき具体的内容には言及しなかった。 しかし、興味深いのは、この発言が、ルッソフォビアが西側の「公式イデオロギー」になったとした先述のプーチン演説と時期的に相前後して行われたことだ。「西側の公式イデオロギー」と「ロシアの国家イデオロギー」が、踵を接して飛び出したのは偶然とは思えない。 「国家イデオロギー」と言えば、「共産党独裁」という国家の根本原則を掲げていたのが旧ソ連だ。ソ連憲法第6条で、これを規定していた。 だがこの規定はゴルバチョフ氏がペレストロイカ(改革)の目玉として、1990年2月7日に放棄を決めた。ソ連は1991年末に解体されたが、この日こそ、事実上「ソ連がソ連でなくなった日」であった。現ロシア憲法は「国家イデオロギー」の制定そのものを禁止し、今に至っている経緯がある。 バストルイキン氏は、この禁止規定を撤廃し、国家イデオロギーを復活させることを主張したのだ。この発言がプーチン氏の意向を反映したものであることは間違いないだろう。現在、クレムリン内で国家イデオロギー制定の是非や、制定の場合の内容について検討が進んでいるもようだ。 では、何が新たな国家イデオロギーとして、掲げられるのだろうか。共産党独裁の代わりに、プーチン政権が進める「独裁的権威主義政治」をさすがに国家の表看板として掲げるわけにはいかないだろう。 ●国家イデオロギーとしての「ルッソフォビア」 こう考えると、ルッソフォビアである西側への対抗姿勢が新たな「国家イデオロギー」として、何らかの形で盛り込まれる可能性はあると筆者はみる。 では、仮に「ロシアを敵視する西側への対抗」をうたう「国家イデオロギー」が制定されれば、何を意味するのか。 それは、「プーチン・ロシア」が「擬制の復活版ソ連」として、国際社会に登場してくることを意味する。かつての東西冷戦を想起させる対立構造をロシアが国際政治の場に持ち込んでくることになるだろう。 そういう事態になれば、ウクライナを舞台に展開されているロシアと米欧との対立関係は現在の地域的枠を超えて、いっそう広がることは必至だ。 すでに警戒すべき動きが起きている。2023年12月4日、プーチン氏がバルト3国で「ルッソフォビア的事象」が起きていると批判したのだ。 バルトでは各国政府と、旧ソ連時代から居住するロシア系住民との間でトラブルが続いている。プーチン氏は「海外に住むロシア人に対する差別には対抗措置を取る」とも言明した。 これまでプーチン氏はルッソフォビアについては、主にロシア国民向けに西側への警戒心、対抗心を煽るために使ってきたが、ここにきて外交面でも使い始めたのが不気味だ。このプーチン発言を受け、すでにNATO加盟国であるバルト諸国だけでなく、NATO全体に警戒心が広がっている。 プーチン氏はウクライナにとどまらず、かつての旧ソ連指導者のように欧州地図全体を見ているのだろう。今後、ウクライナ侵攻をめぐっては停戦に応じる動きに出る可能性は否定できない。 しかし、仮にそう動いたとしても、それは短期的な一時休止的な行動に過ぎないだろう。なぜなら、擬制的ながら、プーチン氏がはっきりと復活に向け動き始めた「ソ連」の主要な属性の1つが、西側との緩衝帯として、旧東欧衛星国家群を有していたことだからだ。 この21世紀に、かつての東欧諸国のような衛星国家を有するなど、時代錯誤の妄想としか筆者には思えないが、プーチン氏は大真面目なのだ。それを裏付ける動きが実は侵攻前からあった。 ●ヤルタ首脳会議の再現を狙ったプーチン プーチン氏は2019年頃から、米英中仏の他の国連安保理常任理事国に対し、欧州秩序に関する会議を開催するよう打診していた。これは、第2次大戦末期の1945年2月に開催され、欧州における東西勢力圏を確定したヤルタ首脳会議の再現を狙ったもので、「ヤルタ2」構想と呼ばれていた。 プーチン氏からすれば、西側から批判されたクリミア併合などを新たな欧州秩序として国際的に受け入れさせ、ウクライナ全体をロシアの勢力圏として認知させることを狙ったものだ。 この時、プーチン氏の頭の中ではウクライナだけでなく、バルト3国なども勢力圏としてにらんでいたのかもしれない。しかし、この時代に、勢力圏の復活には米欧は冷淡で、「ヤルタ2」構想はまったく相手にされなかった。 ここまで述べてきたプーチン氏の世界観を踏まえ、2024年、西側はプーチン・ロシアとどう向き合うべきなのか。 近い将来における「擬制の復活版ソ連」の登場というシナリオに対し、現実感をもって備えるべきだ。もはやウクライナ紛争は単なる地域紛争ではなくなっている。憲法で「平和主義」を掲げる日本も、その枠を守りつつ西側の一員として今後対応していかなければならない。 その意味で、2024年1月初めにキーウに入った上川陽子外相のウクライナ電撃訪問は高く評価できる。 ウクライナへの国際的支援の息切れが懸念される中、ウクライナに対無人航空機検知システムを供与するための資金供与を表明したことは、日本国内で見ている以上に「あの日本が」と国際的インパクトが大きかった。国際的支援再拡充の動きに一定の弾みを与えた。 プーチン氏は2024年3月半ばに大統領選を迎える。国民の支持率は依然として70%の水準を保っている。 反政権派の立候補希望者の出馬を排除するなど、クレムリンが選挙をがっちり管理しており、5選を果たすのは間違いない。選挙戦の過程で上記した「ルッソフォビア」や「国家イデオロギー」に言及するかが注目される。 |
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●ウクライナ情勢とロシア 日米欧は対決姿勢貫け 1/13
ロシアの侵略と戦うウクライナにとって、2024年は厳しい年になるだろう。期待された反転攻勢が失敗し、米欧諸国はウクライナへの大規模な軍事・経済支援継続にちゅうちょしている。米欧は「支援疲れ」からウクライナを見捨て、ロシアへの事実上の降伏となる「和平」を押し付けてはならない。ロシアに譲歩する「宥和(ゆうわ)政策」に逆戻りすれば、3月の大統領選で勝利が確実のプーチン大統領の思うつぼだ。 かつて英国がナチス・ドイツの領土拡大要求に譲歩し、結果として第2次大戦を招いた教訓を忘れず、米欧と日本はウクライナ支援と対ロ経済制裁を堅持すべきだ。 昨年末にロシア軍はウクライナ全土を空爆し、年明け以降も攻撃を続けている。米欧の支援停滞でウクライナ軍は砲弾不足に苦しんでおり、兵器、弾薬を集中的に生産するロシアは優位にある。ロシアを勝利させないため米欧はウクライナ支援を継続するが、規模の縮小は避けられない。24年にウクライナは防衛専念を迫られそうだ。 12月末に一部の米有力メディアが「プーチン氏が現在占領するウクライナ領土約2割を維持することを条件に、停戦の用意を伝えてきている」と報じた。全領土の奪還を掲げるウクライナのゼレンスキー大統領が応じるはずがない。 ロシアがウクライナに事実上の全面降伏を求める裏で柔軟な姿勢も示唆するのは、「領土を犠牲にしてもロシアと和平交渉に臨むべきだ」との声がウクライナ国内や米欧で出ていることを意識しているからだ。 11月の米大統領選に向け、ウクライナ支援に後ろ向きな共和党のトランプ前大統領返り咲きの可能性がささやかれており、プーチン氏は、米欧がいずれウクライナにロシアへの譲歩を迫ると見越しているようだ。 だが米欧や日本は、ロシアの領土拡張要求がウクライナだけで終わらない事態を想定しておくべきだ。 「ウクライナは元々ロシア領土だ」と主張し侵略に踏み切ったプーチン氏は、「ロシアの歴史的版図の回復」という危険思想の信奉者だ。「次は(旧ソ連領だった)バルト3国」との懸念がくすぶる。「プーチン氏がウクライナに勝てば、次は北大西洋条約機構(NATO)加盟国を襲う」とのバイデン米大統領の警告には理由がある。 2000年に大統領に就任したプーチン氏は、出身母体の秘密警察を使って野党や独立メディアを弾圧、自らに権力を集中させた。20年夏の憲法改正で独裁体制を完成させ、さらに2期12年の続投を可能にした。 ロシアの選挙は体制が完全に統制しており、3月にプーチン氏の通算5期目の続投が決まるのは確実だ。ただ、米欧にはロシア大統領選の合法性を疑問視する声があり、今後、プーチン大統領の正統性を認めるかどうかが焦点となろう。 米欧は核大国ロシアを刺激しないよう宥和政策を取り続けた。北方領土交渉を優先した日本も同じだ。08年のグルジア紛争、14年のウクライナ南部クリミア半島の併合など、ロシアの旧ソ連諸国への軍事介入に厳しく対応せずにプーチン氏をつけ上がらせ、ウクライナ侵攻の一因となった。日米欧は同じ過ちを繰り返すことなく、ウクライナ侵略戦争を仕掛けたプーチン氏への毅然(きぜん)とした対決姿勢を貫くべきだ。 |
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●ロシア黒海艦隊、ジョージア親ロ派地域に新拠点 ウクライナ攻撃受け 1/13
旧ソ連構成国のジョージア北部で、親ロシア派の分離独立派が支配するアブハジアの「国家安全保障委員会幹部」が、2024年中にもロシア海軍の拠点を同地域に設けると述べたと、ロシアの英字メディア「モスクワ・タイムズ」が12日、伝えた。 アブハジアは黒海に面しており、ウクライナ軍の攻撃で多数の艦船を失ったロシア黒海艦隊の艦船の避難先になるとみられる。 黒海艦隊は、ロシアが実効支配するウクライナ南部クリミア半島で司令部があるセバストポリ、フェオドシヤ、ドヌズラフの3港と、ロシアのノボロシースク港を拠点とする。 だが、昨年9月にウクライナ軍のミサイル攻撃でセバストポリの司令部や艦船が被害を受けたほか、先月下旬にもフェオドシヤがウクライナ側の攻撃を受け、大型揚陸艦が爆発した。 モスクワ・タイムズによると、ウクライナ侵攻後の2年近くの間に、旗艦だった巡洋艦「モスクワ」なども含め、少なくとも20隻を失ったとしている。 ロシアはクリミアの「併合」後、巨額の投資を黒海艦隊の防衛などのためにかけてきたが、「もはやクリミアは安全ではない」との専門家の声を紹介している。 |
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●EU加盟のためにオリガルヒを駆逐するウクライナの「大いなる矛盾」 1/13
ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから、まもなく2年が経とうとしている。西側諸国から支援を受けてロシアに対抗してきたゼレンスキー大統領だが、さらなる保護を得るために欧州連合(EU)への加盟を目指している。しかし、そのためにはウクライナが抱える「汚職」という大きな課題に立ち向かわなくてはいけない。 ●汚職問題を解決したいウクライナ ウクライナは今後2年以内のEU加盟を望んでいるが、その障害となっているのが同国の汚職問題だ。ソ連崩壊後に強い力を持つオリガルヒたちが現れ、コネや権力、賄賂によって同国の政治に影響を及ぼしてきた。一方、彼らは親露派と親欧米派との勢力を均衡させてもいた。 しかし、ゼレンスキーが政権を握ると、その均衡が崩れ、ロシア侵攻に至ったのだ。ウクライナ大統領府は、EU加盟の妨げとなっているオリガルヒによる支配に終止符を打ちたがっている。しかし、その試みは失敗に終わるかもしれない。古くからいるオリガルヒたちが、新しい者に取って代わるだけに終わるかもしれないからだ。それもゼレンスキーの大統領府にいる者たちに。 ウクライナは、世界でもっとも汚職の多い国のひとつで、ロシア以上にひどい。ザンビアやシエラレオネと同レベルだ。国の指導部は、欧米諸国の資金援助を繋ぎ止めるため、この不都合な問題をもみ消そうとしている。 汚職のために国防大臣オレクシー・レズニコフなどの6名が辞任へと追い込まれ、そのうちのヴャチェスラフ・シャポヴァロフ国防副大臣は逮捕された。ゼレンスキー政権は反発を抑えるため、戦争中には汚職を国家反逆罪と同等とするという法案を提出しようとした。しかし、大統領府が同法案の国会への提出を拒んだために実現していない。 ウクライナの産業界はかなり前から政権と癒着している。同国の長者番付に名を連ねる上位11人のオリガルヒたちは、2022年以前には議員や大臣、知事を務めていた。元大統領のペトロ・ポロシェンコなどもそうだ。彼は、選挙に勝利する前は大手製菓会社ロシェンを経営する実業家だった。 ドニプロペトロウシスク州の元知事である大富豪のイーホル・コロモイスキーは、準軍事組織である「ドニプロ」と「シトゥルム」という義勇兵大隊に資金提供していた。もっとも裕福なオリガルヒであるリナト・アフメトフは、最高議会で二度、議員を務めた。 オリガルヒに対抗するため、ゼレンスキーはウクライナ保安庁(SBU)に実質的に職務の範囲内で無制限の権限を与えている。しかし、そのことは国内外で問題視されている。米国政府が最近作成したウクライナが「優先すべき改革」のリストでは、SBUの権限を制限し、同庁と連携する防諜機関の設立を検討するよう提言されている。 ●「脱オリガルヒ」を目指すゼレンスキー 大統領選に出馬した際にゼレンスキーが掲げた公約の一つに、「脱オリガルヒ」があった。彼は戦争開始前に「反オリガルヒ法」を制定している。当時はかなり物議を醸した同法にはオリガルヒの定義がある。次の4つの基準のうち、3つを満たす者がそうだ。(1)資産が8000万ドル以上あること、(2)政治に対する影響力を持つこと、(3)メディアを所有していること、(4)なんらかの産業分野で独占的地位を確立していることだ。 同法は、巨大企業が政治に及ぼす影響の抑制にある程度成功した。ウクライナ国家安全保障・国防会議(NSDC)にオリガルヒとみなされた実業家は、政党への資金提供や国営企業の民営化に関与できなくなる。 この法はかなり厳しく、欧州評議会のヴェニス委員会(法による民主主義のための欧州委員会)から厳しい批判を受けた。こうした政策はビジネスの妨げとなり、欧州人権条約と多元主義の原則に反すると判断されたのだ。同委員会はさらに同法の発効を延期するよう勧告した。 脱オリガルヒの最初の標的となったのは、親ロシア派の「野党プラットフォーム―生活党」の党首、ビクトル・メドベチュクだった。2021年に同国の長者番付12位となり、プーチンとの関係が深い彼は国家反逆罪で起訴され、自宅軟禁されていた。ロシアによる侵攻後、彼はウクライナの軍服を着てロシアへ逃れようとしたが、特殊部隊に見つかり、拘束された。 その後、メドベチュクはウクライナに捕えられていた55人のロシア人兵士とともに、捕虜交換でロシアに引き渡された。代わりにロシアで拘束されていた、アゾフ連隊の戦闘員108人を含む215人のウクライナ人捕虜が解放されている。現在、メドベチュクはモスクワにおり、ウクライナでの彼の党による活動は裁判所によって禁止されている。 ●追い詰められるオリガルヒ メドベチュクは、最高議会議員として政治に影響力を持っていた。支配下にある複数のテレビチャンネルを通じてロシアに資するロビー活動もできた。つまり、「ウクライナでは内戦が起きており、クリミアは適切な方法でロシアに併合されたのであって、キーウを操っているのは米国だ」というロシアのプロパガンダを伝えたのだ。 2021年、ゼレンスキーはメドべチュクの影響下にあるテレビ局を閉鎖した。彼とその妻の資産は差し押さえられ、ウクライナ国内の銀行口座は凍結された。 さらに戦争によってウクライナのオリガルヒたちの状況は非常に悪化した。同国の長者番付上位20人の合計資産はほぼ半減し、22億ドル(約3兆円)以下となった。打撃をもっとも受けたのは、同国でもっとも裕福なリナト・アフメトフだ。最新の推計では、彼の資産は137億ドル(約20兆円)から44億ドル(約6兆円)と3分の1にまで減った。彼の鉄鋼事業の3分の2を占めていたマリウポリにあるアゾフスターリ製鉄所とイリイチ製鉄所は、ロシアによる攻撃で破壊されてしまった。 それに加え、戦争によってオリガルヒの社会や政治への影響力は奪われた。彼らが支配してきたテレビなどのマスメディアは、いまや戦争法にのっとって運営されている。主要チャンネルが放送時間の大部分を割くのは、ロシア侵攻以降に始まった「ユナイテッド・ニュース」という番組だ。この番組の放送内容に責任を負っているのはウクライナ大統領府だと言われる。 オリガルヒたちは、マスコミを操ることで得ていた利益も失った。広告収入が急減し、テレビ局の収入の大部分を占めていた新企画の制作もできなくなったため、従業員が大量に解雇され、残った従業員も減給された。アフメトフが所有するテレビ局と出版メディアは、ライセンスを市場で売却できず、すべて国に引き渡されたのだ。 ●オリガルヒを取り締まっても、新たな腐敗が出る「汚職大国ウクライナ」 ウクライナのゼレンスキー大統領は、西側諸国からさらなる保護を得るために欧州連合(EU)への加盟を目指す。しかし、そのためにはウクライナが抱える「汚職」問題を解決しなくてはならない。ゼレンスキーは「オリガルヒ」による支配体制を解体しようとしているが、それは本当にうまくいくのだろうか。 ●自らの支援者をも粛清 ウクライナではいま、同国最大の金融グループ「プリヴァト」の創業者で、もっとも影響力を持つイーホル・コロモイスキーが、当局と対立している。 反露派のコロモイスキーは2019年の大統領選でゼレンスキーを強く支持し、ゼレンスキーの「政治上の父」「メインスポンサー」と報じられた。彼が所有するテレビ局「1+1」は、選挙戦でゼレンスキーのキャンペーンを積極的に宣伝し、『国民の僕(しもべ)』など、彼が出演する人気のコメディ番組を放映していた。ゼレンスキーの当選後、コロモイスキーは地方行政の長として顧問の一人に任命された。 しかし、2023年9月2日、キーウの裁判所はコロモイスキーを逮捕した。詐欺と、5億フリヴニャ(約19億円)以上を国庫から不正に引き出した疑いがかけられたのだ。しかし、彼は容疑を否認し、釈放のための保釈金の支払いも拒んでいる。彼の弁護士はこの件について、「コロモイスキーらが所有する銀行の不当な没収から始まった政治的動機によるキャンペーン」の一部だと訴えている。 コロモイスキーはこれまでにも複数の法的トラブルに直面してきた。彼は金融詐欺事件に関与した疑いでFBIとイスラエル警察によって捜査されており、米国は彼に制裁を科している。モスクワでは2014年に「組織的殺人」の罪で逮捕状を出された。彼は法律で禁止されているにもかかわらず、二重国籍を持っているため、「ウクライナの安全保障を脅かす存在」としてNGOによるデータベースにも掲載されている。 彼の逮捕からわかるのは、ゼレンスキーが本当に真剣に汚職との闘いに取り組んでいるということだ。しかし、コロモイスキーの主要事業で、ウクライナでもっとも人気のある銀行である「プリヴァトバンク」が国有化されたのは、前出のポロシェンコが大統領だった2016年のことだ。債務超過がその理由とされた。 ゼレンスキーが政権を取ってから、ウクライナでは「反コロモイスキー法」と呼ばれる法律が制定された。銀行が国有化されると、その元オーナーらは裁判所を介しても銀行を監督する権利を得られないというのだ。この法の導入を進めたのは西側諸国だった。国際通貨基金(IMF)は、同法成立のために50億5000万ドル(約7兆円)の支援を約束し、結局80億ドル(約11兆5000億円)を渡した。 ゼレンスキーは同法を推進し、2020年5月、数多くの修正を経て同法案は最高議会で採択された。新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっていた2020年、ウクライナは資金を必要としていた。 ●オリガルヒ一掃では解決できない汚職問題 戦争によって、ウクライナ政府はオリガルヒに対抗するのに必要なあらゆる権限を得た。2023年9月、ゼレンスキー大統領は「オリガルヒの一族に未来はない」と述べ、汚職との闘いを宣言した。ゼレンスキーの経済顧問であるロスチスラフ・シュルマは「戦争終結後のウクライナにはオリガルヒは一人も残らない」と語る。 一方、オリガルヒとは無関係である汚職も多い。2023年初めに発覚した、同国国防省内の汚職事件に彼らは関与していなかった。国防省はいくつかの軍事地域で軍用食料をキーウの食料品店の3倍の高値で買い付けていたことが発覚し、国防大臣のレズニコフの辞任に至った。 それでも、オリガルヒが関与する汚職事件もある。2023年5月、ウクライナ国家汚職防止庁(NABU)は、同国最高裁判所長官フセヴォロド・クニャゼフを拘束した。300万ドルの賄賂を受け取り、元議員の有力オリガルヒであるコンスタンチン・ジェヴァゴに有益な判決を下していたためだ。逮捕されたクニャゼフは最高裁長官の地位を奪われたが、まだ判事としての地位は保っている。彼を最終的に解任できるのは最高司法評議会だけで、拘置所から大富豪たちの事件に関与し続けている。 ジェヴァゴは破産したファイナンス・アンド・クレジット銀行から1億1300万ドルを着服した罪に問われている。2022年、彼はフランスのクールシュヴェルで拘束されたが、フランス当局はロシアへの引き渡しを拒否した。彼は100万ユーロの保釈金を払って釈放されている。 ●オリガルヒが果たしてきた重要な役割 オリガルヒ体制の解体によって、ウクライナのEU加盟は進むはずだ。しかし同政府は、その取り組みによって、同時に新たなオリガルヒを育てている。古参者を排除することで、新たな隙が生まれているからだ。たとえば、大統領顧問の多くが未来のオリガルヒとなる可能性がある。 「当局との繋がりや横領によって、新たなオリガルヒが出現するリスクはあります。それを未然に防ぐには、司法改革を成し遂げ、強力な制度を作る必要があります」と、同国汚職対策センターのダリア・カレニュク所長は言う。 オリガルヒたちは、多くの詐欺や汚職事件に関与しているが、独自の役割も果たしてきた。ロシアのオリガルヒたちがウラジーミル・プーチンの周囲で団結しているのとは異なり、ウクライナのオリガルヒは互いに競い合っている。そのため、同国では多様な勢力が存在し、親露派のメドべチュクも、親欧米派のコロモイスキーも、国政に影響を与えてきた。 他にも、ウクライナのオリガルヒは革命や軍事抵抗に対して資金を提供してきた。2004年のオレンジ革命と2014年のユーロ・マイダン革命が成功したのは、反ロシア的な立場を明確に示した実業家たちによるところがある。 ウクライナ保安庁の影響力拡大は、同国の戦後の政治競争に著しい打撃を与えかねない。金を持っている者に有利に働く司法制度にも欧米流の改革が必要だ。 「保安庁の改革は防諜の問題で、至急対応すべき課題です。同庁には捜査権を乱用してきた長い歴史があり、法執行機関として全能を与えられるべきではありません」と、同国最高議会議員で反汚職政策問題国民評議会会員のアナスタシア・ラジナは言う。 ゼレンスキーはオリガルヒらから政治的影響力を奪いつつ、戦争終結後の潜在的な反対勢力を一掃しようとしている。ゼレンスキーは少なくとも戦争終結時まで大統領の座にとどまる。しかし、この政治的粛清によって、彼に比肩する響力のある者は誰もいなくなるかもしれない。 |
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●ロシアのサイバー攻撃でウクライナの通信網ダウン、日本も狙われていると思え 1/13
●ウクライナ最大の通信会社のサービスが停止 昨年12月12日、ウクライナに大規模なサイバー攻撃が仕掛けられた。犯行はロシアに関係するハッカー集団によるものと見られている。そしてこのサイバー攻撃は、2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻してから最大規模の攻撃だった。 標的となったのはウクライナ最大の通信事業者キーウスターだった。同社は約2400万人の携帯電話加入者と110万人以上の家庭用インターネットユーザーを抱えているが、この日、強力なサイバー攻撃を受け、サービスを停止せざるを得ない状況に陥った。 朝からサービスが不安定になっていたが、その後、SNSを通じて、強力なサイバー攻撃の影響で「大規模な技術的障害」が発生していることを認めたのだった。 この影響で、同社が提供するモバイルサービスやインターネット通信が遮断され、さらにはキーウ州の一部では空襲警報システムが停止した。ビジネスや社会生活に不可欠になっている重要な通信インフラを遮断されたことは、世界の政府関係者やサイバーセキュリティ関係者らにも衝撃を与えた。 同社CEOは、「私たちはこのハッキング攻撃に対して、サイバー空間で対抗することができなかった。それゆえに敵の不正アクセスを食い止めるためにキーウスターのシステムを物理的にシャットダウンした」と語り、「戦争はサイバー空間でも起きている」と述べている。 ●攻撃を仕掛けてきたハッカー集団の名は「Sandworm」 この攻撃の後、筆者がウクライナ保安庁(SBU)の関係者に取材をしたところ、「攻撃者はロシアのGRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)のサイバー攻撃グループによるものだ」と断言した。ウクライナ侵攻以降、ロシアがたびたび仕掛けてきたサイバー攻撃だが、今回は「かなり深刻なサイバー攻撃であると認識している」とも述べている。 さらにウクライナ政府は、キーウスターへの攻撃は、ロシアのGRUとつながりのあるサイバー攻撃グループ「Sandworm(サンドワーム)」が実行したとの見解を明らかにしている。サンドワームは、過去にもウクライナの電力網をサイバー攻撃して大規模停電を引き起こすなど、数々の悪意あるサイバー攻撃を仕掛けてきた悪名高きグループである。 一方で、今月になり、逆に親ウクライナのハッキング集団「ブラックジャックグループ」が、ロシアのインターネットプロバイダー「M9com」からデータを盗んで停止させているという事態も発生している。サイバー空間では、ウクライナとロシアのせめぎ合いが続いているのである。 このサイバー攻撃、実は欧米や日本にとっても決して他人事ではない。というのも、今回のキーウスターへの攻撃は、被害が起きる6カ月ほど前に始まっていたことが判明している。そうであるならば、ロシア(あるいはそれ以外の第三国)によるサイバー攻撃が、すでに日本や欧米でも、人知れず進行している可能性が十分あると言える。平時から密かに展開されるサイバー攻撃は、犯行者が望むタイミングでターゲットに多大なる影響を及ぼすことになる。その破壊力は、今回のウクライナのケースを見れば分かるように、一国のインフラを簡単にズタズタにすることができる。 今回、筆者は、キーウスターへの攻撃について、2022年のロシアによるウクライナ侵攻より前からの知己で、2023年11月までウクライナの特別通信情報保護局(SSSCIP)のナンバーツーだったサイバーセキュリティ専門家のビクトル・ゾーラ前副長官に話を聞いた。 ゾーラ氏は、キーウスターへの攻撃については現在も情報が錯綜しているため「少し解説が必要であると感じている。そこで私自身の結論を共有したい」とし、「私たちのサイバー戦の最前線で何が起きているのかを国際的に知ってもらうのは重要だと考えている」と述べて取材に応じてくれた。 ●「敵」は管理者レベルのアクセス権限まで獲得していた ――攻撃者は遅くとも2023年5月から侵入していたとのことですが。 ゾーラ氏 ハッキングによる最初の侵入から、システムの「コア」な部分までアクセスできるようにするには、いくつものセキュリティのレイヤーと複雑なネットワークアーキテクチャを考えると、かなり長い道のりが必要になります。したがって、多くの時間をかけて、横方向の移動などによるアクセス範囲を拡大し、システムの管理者レベルのアクセス権限を獲得していったのです。 このプロセスに6カ月もかかったのかどうかは、まだわかりません。もしその所要時間が短かったとしたら、最終的なアクセス獲得から攻撃までの余分な時間は、顧客データなどの窃取に使われたと考えられます。ただ、データ窃取では、気づかれないように大量のデータを引き出すのは難しいため、それほどの被害ではない可能性が高い。キーウスターは、加入者の個人データへの長期的な不正アクセスと漏洩を否定しています。公式の調査結果が待たれます。 サンドワームは、ロシアの諜報機関であるGRUの74455部隊の中にある。国家レベルでのスパイ工作やハッキングによるデータ窃取、システムの完全消去、さらに影響工作も行っています。 ●他国にもすでに入り込んでいる、まだ被害が出ていないだけ ――攻撃成功の後もまた同社に不正アクセスしようとする攻撃が来ていると耳にしているが、それは事実ですか? ゾーラ氏 もちろん攻撃は来ています。ロシアのサイバーテロリストは、「犯罪現場」に戻ろうとする。したがって、こうしたサイバー攻撃に対応する際には、攻撃者の埋め込んだ不正プログラムなどを最終的にきちんと除去し、攻撃に使用されたりしないよう、残された「穴」を塞ぐことが重要になります。 ――この攻撃は、欧米へのメッセージでもあると思うか。 ゾーラ氏 もちろんです、疑うことすらしてはいけない。もうすでに入り込んでいる。被害がまだ起きていないだけなのです。 今回、キーウスターへの大規模サイバー攻撃を成功させたロシア諜報機関関連のサイバー攻撃グループは、その高い技術力と忍耐で、ターゲットのネットワークに忍び込み、システムをハッキングしていく。ただでさえロシアのハッカー集団は全世界に向けてサイバー攻撃を仕掛けているのに、ウクライナを支援しロシアに制裁を科している日本は、ロシアが膨大なエネルギーを注ぎ込んででもハッキングするに足る存在になっている。 いったん忍び込まれたら容易に察知することはできない。日本も重々警戒しなければならない。 |
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●米国がウクライナに渡した兵器、10億ドル分が「行方不明」 盗難の恐れも 1/13
米国防総省は11日、米国などがウクライナに供与した兵器について、およそ10億ドル(約1450億円)相当分が適切に追跡されていないとする報告書を公表した。米議会がウクライナ向け追加予算をめぐって紛糾するなか、これらの兵器は盗まれたのではないかという疑念も出ている。 国防総省の監察総監がまとめた報告書の編集済み版によると、米国とパートナー諸国からウクライナに送られたおよそ16億9000万ドル(約2450億円)相当の兵器のうち、10億ドルあまりの在庫管理が「未処理」となっている。政府のデータベースで当該在庫について「完全な説明責任を果たせない」ことが原因とみられるという。 報告書は、兵器の追跡をおろそかにすれば「盗難や流用のリスクを高めかねない」と警告する一方、ウクライナ向け兵器の追跡は今後、在庫状況が変化していくなかでさらに難しくなるとの見通しも示している。 サーシャ・ベーカー米国防次官(政策担当)代行は、要求される会計処理の手続きは「戦時下の厳しく、変化の激しい環境では現実的でない」と述べている。 米紙ニューヨーク・タイムズが入手した編集前の報告書によれば、これまでに米国からウクライナに供与された兵器数は3万9139点にのぼる。適切に追跡されていない兵器の正確な数は不明だという。 米国務省によると、ロシアが2022年2月にウクライナに全面侵攻して以降、米政府はウクライナに442億ドル(約6兆4100億円)超の軍事援助を行っている。ニューヨーク・タイムズは、米国からウクライナに供与された兵器には対戦車ミサイルや地対空ミサイル、ドローン(無人機)、中距離ミサイル、暗視装置などが含まれると報じている。 国防総省の監察総監は2022年10月のリポートで、西側諸国からウクライナに供与された兵器の一部が犯罪者や義勇兵、密売業者に盗まれたと警鐘を鳴らしていた。ウクライナでの米国の軍事的プレゼンスは限られるため、米国からウクライナに送られた装備品を国防総省が追跡する能力は「難題」に直面しているとも認めていた。 CNNが当局者の話として伝えているところでは、ジョー・バイデン米政権はウクライナに送る兵器に関して、一部が適切な相手の手に渡るのであれば追跡不能なものが出るのもやむを得ないと判断しているという。 米議会では、野党・共和党がウクライナ向け追加予算の成立を滞らせている。議会の民主、共和両党の指導部は今週、2024会計年度(2023年10月〜2024年9月)予算の大枠で合意したと発表したが、交渉はなお続いている。 |
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●プーチン大統領の健康不安が再び...市民との対話の席で「椅子にしがみつく」 1/13
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、「大統領の椅子」だけでなく、実際の椅子に必死にしがみついていると揶揄する動画が、ネットで話題になっている。ロシア国内での市民との懇談会の様子を捉えた動画なのだが、たしかにその中でプーチンは、右手で不自然なほど椅子を握りしめ続けている。 ウクライナ内務省顧問のアントン・ゲラシチェンコは、ロシア最東端チュクチで演説するプーチンの動画をX(旧Twitter)に投稿した。「プーチンは椅子にしがみつきならが、『非合法の諜報活動』における自らのキャリアと特別訓練について説明した」とゲラシチェンコは指摘している。この動画は、1月11日時点で83万5000回以上再生されている。 プーチンは1月10日、ベーリング海峡を隔てて米アラスカ州と向かい合うチュクチ自治区の首都アナディリで、住民との懇談会に出席した。 ゲラシチェンコが注目したのは、プーチンのボディランゲージだ。プーチンは自らキャリアについて語りながら、右手で椅子の脚をしっかりと掴んでいる。 ●大統領として初めてチュクチ自治管区を訪問 「私の経歴はよく知られている。学校、大学、レニングラード大学(現在のサンクトペテルブルク国立大学)法学部。それからソ連のKGBの特別学校、非合法の諜報活動の特別訓練、そして合法の諜報活動だ」とプーチンは語った。 プーチンは1975年にKGBに入省。東ドイツのドレスデンに勤務し、1989年のベルリンの壁崩壊の際も同地に赴任していた。その後のソ連崩壊について、プーチンは後に「今世紀最大の地政学的惨事」と述べている。 プーチンは今回、大統領として初めてチュクチ自治管区を訪問した。同自治管区はモスクワと9時間の時差があり、サッカーのイングランド・プレミアリーグ、チェルシーの元オーナーであるロマン・アブラモビッチが知事を務めたこともある。 ●極寒の地でオフロード車を自ら運転 ロシア国営タス通信によると、プーチンはマイナス25度という極寒の中、オフロード車を自ら運転し、温室を訪れたという。地元住民との対話集会では、多産を推奨する政策に対する国の支援を発表した。 プーチンは、3月に行われる大統領選への再出馬を発表した後、ロシアの極東地域を視察している。大統領選では、慎重に管理された政治環境の中で、プーチンが勝利するというのが大方の見方だ。 1月11日には、南東部ハバロフスクで経営者らと懇談し、昨年12月の国民とのテレビ対話で指摘された卵の価格高騰は、政府の判断ミスによるものだと認めた。また、2023年のロシアのGDP成長率は、従来の予想の3.5%を上回り、4%を超える可能性があるとの見方を示した。 |
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●ウクライナ侵攻への動員兵の家族ら、首都モスクワで“帰還”訴え 1/13
ロシアの首都モスクワで13日、ウクライナ侵攻に動員されている兵士の家族らが集まり、動員兵の帰還を訴えました。 これは動員兵の家族らでつくる「家への道」というグループがSNSで呼びかけたものです。13日、モスクワのクレムリンに隣接する「無名戦士の墓」に、およそ20人が集まって無言で献花をし、動員兵の帰還を訴えました。 恋人が動員されている女性「私の彼氏たちが死ぬとしたら、それは納得できない」 息子が動員されている女性「動員された人々がいつ帰るのか、その時期を知りたい」 グループの代表が「夫や息子を戻して」と書いたプラカードを掲げたため、一時、拘束されるなどしました。 ロシア軍の動員は、2022年9月にプーチン大統領が導入しましたが、兵役の期間については明らかにされていません。 |
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●ロシア プーチン大統領の長女マリヤ氏がメディアに 極めてまれ 1/14
ロシアのプーチン大統領の長女マリヤ氏が地元の医療系の非営利団体とのインタビューに応じ、プーチン大統領の家族がメディアに出てくるのは極めてまれなことから、注目を集めています。 小児内分泌学者のマリヤ氏は、インタビューで「人の命には至上の価値がある。ロシアは経済ではなく、人間を中心とした社会だ」と述べ、医薬品の世界的な進歩や文学、芸術などについて発言していますが、ウクライナ侵攻については言及していません。 また、本人や取材者からマリヤ氏がプーチン大統領の娘であることについても触れられていません。 インタビューは去年12月に収録されたもので、ここ数日、欧米のメディアが取り上げています。 マリヤ氏を含むプーチン大統領の2人の娘は、ロシアによるウクライナ侵攻後、欧米や日本による資産凍結などの制裁対象になっています。 イギリスの公共放送BBCの記者は、マリヤ氏が人命の価値に言及したことに触れ、SNSに「彼女の父親によって『予備的な部分動員』に巻き込まれた兵士は同意するだろうか」と皮肉っています。 |
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●「雪豹」仕様のレオパルト1戦車、東部激戦地のロシア兵狩りへ爪を研ぐ 1/14
ウクライナ軍のレオパルト1A5戦車の一部は、冬用の擬装を施されている。「雪豹」に姿を変えたこれらのレオパルトは、必要性が明らかな爆発反応装甲はまだ付けられていないが、ウクライナの戦車兵らによれば、近くそうする予定とのことだ。 重量40t、乗員4人のドイツ製戦車であるレオパルト1A5は、ドイツとデンマーク、オランダが共同で200両近くをウクライナに供与すると表明している。これまでに引き渡されたレオパルト1A5を配備されているウクライナ軍部隊は、そのすべてに冬用の擬装をさせ、爆発反応装甲を追加するのが最も望ましい。 ロシアがウクライナで拡大した戦争が23カ月目に入るなか、およそ1000kmにおよぶ戦線の最も重要ないくつかの戦域で、ウクライナ軍部隊は機動的な火力支援をますます必要とするようになっている。冬景色に溶け込み、防護力を増したレオパルト1は、その必要を満たしてくれるものになるだろう。とくに期待されるのが、東部ドネツク州アウジーイウカ方面の戦いでのそうした役割だ。 アウジーイウカ周辺では昨年10月半ば以来、ウクライナ軍の1個師団規模(計6個の機械化旅団と戦車旅団)の守備隊が、2個野戦軍を含むロシア軍のはるかに大規模な攻撃部隊を相手に果敢な機動防御戦を展開してきた。投入兵力はおそらく、ウクライナ側が1万人、対するロシア側が4万人程度と考えられる。 困難な状況にもかかわらず、アウジーイウカ守備隊は持ちこたえてきたばかりか、攻撃してくるロシア軍部隊に多大な損害を与え、最初の2カ月だけで1万3000人にのぼる死傷者を出させた。自軍側の人的損害は低く抑えている。 ロシア軍はアウジーイウカ周辺で戦車やその他の戦闘車両も数百両失っており、その数はすぐに補充できる数をはるかに上回る。車両の損害もロシア側に偏っており、ロシア側の損害数はおそらくウクライナ側の10倍にのぼる。ロシアの独裁者ウラジーミル・プーチンは持久力でウクライナを打ち負かすという意思を公然と示しているが、ウクライナ側はそれを踏みにじってみせた格好だ。 戦車はアウジーイウカの防衛で重要な役割を果たしてきた。ウクライナ軍の第1独立戦車旅団と第116独立機械化旅団のT-64BV戦車、第47独立機械化旅団のレオパルト2A6戦車は、アウジーイウカ周辺の無人地帯でロシア側の戦車と交戦したり、ロシア軍の歩兵を吹き飛ばしたり、あるいは孤立した味方部隊を救援したりしている。 もっとも、戦車はアウジーイウカ方面の過酷な戦闘で最も重要な兵器というわけではない。戦車よりもりゅう弾砲などの大砲とドローン(無人機)が重要なのはいつも変わらない。精度の高い25mm機関砲を備え、機敏で、しかも防護もしっかりしている米国製M2ブラッドレー歩兵戦闘車が僅差でそれに続くだろう。 それでも、戦車もやはり非常に重要だ。アウジーイウカ守備隊が戦車部隊の増援を断ることはまずないだろう。第47旅団は手元に残っていた数少ないレオパルト2A6を、アウジーイウカの北方にある東部ルハンスク州クレミンナ周辺で陣地を守る第21独立機械化旅団に譲り渡したらしいので、むしろ喜んで受け入れるはずだ。 ウクライナ軍が保有するレオパルト1A5の大半は、新編の第5独立戦車旅団に配備されているもようだ。第5戦車旅団は中部ドニプロペトロウシク州クリビーリフで準備してきたとみられる。100両かそこらの戦車やその乗員の用意が整ったあと、この旅団がどこに配置されるのかは現時点では不明だ。 もし新たな戦車を100両規模擁する新たな旅団がアウジーイウカに来るとなれば、守備隊が歓迎するのは間違いない。とりわけ、その戦車が冬用の擬装をきちんと施され、防護力の高い爆発反応装甲も追加で備えていれば、大歓迎だろう。 |
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●ロシア著名司祭の聖職剥奪 正教会裁判所、侵攻反対で 1/14
ロシア正教会の裁判所は13日、モスクワ中心部の教会で約30年活動してきたアレクセイ・ウミンスキー長司祭(63)の聖職を剥奪する決定をしたと発表した。正教会の最高位キリル総主教の指示に従わなかったことを理由としている。ウミンスキー氏はウクライナ侵攻に反対し、今月初めに拠点教会の主任を解任されていた。 キリル総主教はプーチン大統領と親しく、侵攻支持を表明している。 ウミンスキー氏はテレビの解説番組や信仰に関する著作で知られ、2022年に死去したゴルバチョフ元ソ連大統領の葬儀を取り仕切った。プーチン政権に反対する野党活動家らを支援するなど、リベラルな立場を取っていた。 |
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●EUの新たな頭痛の種スロバキア 1/14
欧州連合(EU)は現在、27カ国から構成されているが、ポーランドとハンガリーの2国はこれまでEUの共通価値観である民主主義と法治国家の原則に違反しているとしてブリュッセルから批判されてきた。ただし、ポーランドで昨年12月11日、元欧州理事会議長のドナルド・トゥスクを首相とした新政権が誕生したことで、そのEU政策もブリュッセル寄りに変わってくることが予想される一方、昨年10月に発足したスロバキア新政権はEUのウクライナ支援に消極的な姿勢を示すなど、スロバキア・ファーストを歩み出してきた。ハンガリーと共に、スロバキア新政権は、EUの結束に大きな影を投げかけている。 昨年9月30日に実施されたスロバキア議会の繰り上げ選挙で、ロバート・フィツォ元首相が率いる野党「社会民主党(スメル)」が第1党にカムバックした。その結果、中道左派「方向党−社会民主主義(Smer−SD)」を中心とする、中道左派「声−社会民主主義(Hlas−SD)」および中道右派「自由と連帯(SaS)」から成るフィツォ連立政権が発足した。 フィツォ氏は2006年から2010年、そして2012年から2018年まで首相を務めた。2018年にジャーナリストのヤン・クシアク氏とその婚約者が殺害された事件を受けて、イタリアのマフィアとフィツォ首相の与党の関係が疑われ、ブラチスラバの中央政界を直撃、国民は事件の全容解明を要求、各地でデモ集会を行った。フィツォ首相(当時)は2018年3月15日、辞任を余儀なくされた。 その後のスロバキアの政情は腐敗とカオス状況が続いた。フィツォ首相の後継者に同じ社会民主党系スメルからペレグリニ副首相が政権を担当、スメル主導の連立政権を継続した。ただし、2020年2月に総選挙が行われ、マトヴィチ党首率いる「普通の人々」、「我々は家族」、「自由と連帯」、「人々のために」の4党から成るマトヴィチ首相率いる新政権が発足したが、連立内の対立でマトヴィチ首相は辞任。ヘゲル新政権が発足したものの、少数派政権となって2022年12月、内閣不信任案が可決され、総辞職に追い込まれ、昨年9月の繰り上げ総選挙実施となったわけだ。そしてフィツォ氏が再びスロバキア政治の表舞台に登場してきたわけだ。 5年前のジャーナリスト射殺事件で引責辞任に追い込まれたフィツォ氏が政治にカムバックできた背景には、前政権の行政能力のなさがあることは明らかだ。また、新型コロナウイルスの席巻、ウクライナ戦争の長期化で、国民経済が停滞し、国民の生活は厳しいという事情がある。 そのスロバキアで11日夜、フィツォ新政権に反対して数千人の国民が抗議デモを行った。野党3党が主催した抗議デモは経済犯罪や汚職との戦いを担当してきた特別検察庁(USP)の廃止に抗議することが大きな目的だ。野党は法の支配に対する脅威と警告し、「フィツォ政権は過去の汚職事件を隠蔽しようとしている」と非難している。現地からの情報では、ブラチスラバの抗議デモには約2万人が参加し、「フィツォは辞めろ!」「フィツォを刑務所へ!」などのスローガンを掲げた横断幕が掲げられた。 ところで、EUのウクライナ支援が揺れ出した。ロシア軍のウクライナ侵攻以来、ハンガリーのオルバン首相はウクライナへの武器供与を拒否、ハンガリー・ファーストを推進する一方、ロシアのプーチン大統領とも友好関係を築いている。フィツォ首相は施政方針でオルバン政権と同じように、スロバキア第一主義を前面に打ち出し、国益重視の外交を主張している。 欧州委員会は、フィツォ新政権が特別検察庁の廃止を実施した場合、スロバキアの法治体制が大幅に制限される、と懸念している。同時に、スロバキアがEU内で「第2のハンガリー」にならないように注意深く監視しているところだ。 なお、スロバキアの政情を予測するうえで、3月に予定されている大統領選挙は重要となる。スロバキアの大統領は法律に拒否権を発動したり、憲法裁判所で異議を申し立てたりすることができるからだ。ただし、ズザナ・チャプトヴァー現大統領は昨年6月、「殺害の予告を受けている」として、3月の大統領選には出馬しない意向を表明している。 フィツォ首相は国民の抗議デモに屈して辞任に追い込まれた2018年の再現を避けるため、国民経済の停滞や社会の閉塞感はブリュッセルの政策に起因するとEUを悪役にし、ハンガリーと連携をとって政治的・外交的延命を図る可能性が考えられる。 |
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●戦死者を「ウクライナの英雄」に、遺族の嘆願書が殺到 1/14
アンナ・バーズルさん(35)は昨年11月、ウクライナ東部におけるロシア軍との戦闘で弟を亡くした。2日間は悲しみに打ちひしがれていたが、すぐに行動を起こした。 弟のボーダン・クロトフさん(29)に軍の最高栄誉称号である「ウクライナ英雄」を授与するよう、バーズルさんはゼレンスキー大統領に宛てた嘆願書をしたためた。 「26日に弟を埋葬し、翌27日にはすでに書き終えていた」とバーズルさんはキーウの墓地にあるクロトフさんの墓石の前に立ち、涙ながらに語った。 衛生兵を務めたクロトフさんは、遺影の中で笑顔を浮かべていた。その上では、内務省の管轄下にある所属部隊の記章が描かれたウクライナ国旗がはためいていた。 こうした嘆願書は、2022年2月にロシアが侵攻を開始して以降、少なくとも2000件提出されている。多くが親戚や友人によって書かれ、命を落としたウクライナ兵に栄誉を与えるよう、ゼレンスキー大統領に呼び掛ける内容だ。 ウクライナで戦争が始まって以降、「ウクライナ英雄」を授与された兵士は400人に満たない。「英雄」は敵の進軍阻止に貢献したなどの勇敢な行動を称え、その多くは死後に授与されている。 この請願制度は2015年、国民が大統領へ訴えかけることのできる機会として導入された。ただ、1998年に創設された同称号の候補者を決める手続きの正式な一環とはなっていない。 ウクライナ軍がロシア政府を後ろ盾とする分離派勢力との戦闘を行っていた際には、嘆願書の数はさほど多くなかった。 だが現在では、ほぼ毎日のように、兵士の死を悼む妻や母親、子どもたちからの新たな嘆願書が寄せられており、大統領府のウェブサイトに掲載された後、ソーシャルメディア上で拡散されている。国民が団結しながらも戦争終結の兆しが見えない中、遺族による嘆願書の提出はウクライナで慣例になりつつある。 こうした動きからは、ウクライナの人々の集団的トラウマが深刻であり、戦死した兵士全員が侵略行為からウクライナを守る「英雄」だと見なされていることがうかがわれる。 ウクライナ政府は戦死した兵士の数を明らかにしていない。ただ、西側の情報機関は、これまでに数万人に上るウクライナ兵が死亡したと予測している。 ●幅広い署名活動 昨年6月に反転攻勢が開始される以前に強襲旅団に加わったクロトフさんの人柄について、姉のバーズルさんは陽気で自分よりも他人を優先する性格だったと話す。幼い頃、父親の存在が無い時にも、思いやりがあって支えになってくれたと振り返った。 「フリブ」という通り名で親しまれていたクロトフさんは自分の家庭を持つことを夢見ていた、とバーズルさんは言う。戦場では責任感を感じていたとも語った。 バーズルさんは嘆願書に、クロトフさんが激しい銃撃戦の中、戦場から負傷した兵士を引きずりだして救出したことを記した。戦友たちは「涙を浮かべながら」クロトフさんをしのんでいたという。 クロトフさんは亡くなった当日、4人を助けていたとバーズルさんは同僚兵士の証言を基にロイターに話した。 バーズルさんは他の嘆願者と同様、ソーシャルメディアを通じた署名活動を行っている。中には著名人もいる友人やフォロワーに対して、各自のアカウントでも嘆願書を共有するよう強く呼びかけたという。 時間との戦いだ、とバーズルさんは話す。嘆願書が考慮の対象となるには、掲載してから90日以内に2万5000人分の署名を集めることが必要とされている。 「署名した人は、今もまだ私のことを覚えていると思う。皆に電話をかけて回りながら、『今すぐに、お願い。土下座でもする覚悟だ』と感情的に懇願していたから」 バーズルさんの嘆願書には9日時点で、1万8800人からの署名が寄せられた。 必要数の署名を集めた嘆願書は、軍の指揮系統へと回され、嘆願書の急増を受けて昨年5月に設立された大統領委員会で審査される必要がある。 委員会設置に際した声明でゼレンスキー大統領は「われわれは、ウクライナの英雄全員の名前を知らなければならない」と述べた。 この記事に関してウクライナ大統領府に質問したものの、返答は得られなかった。 ●死者の記憶 称号が授与された場合、本人や遺族に対し、住宅の無償提供などの十分な経済的支援が行われる。 しかし、こうした支援が念頭にあるわけではないと話す遺族もいる。ビクトリーア・ウラセンコさん(26)もその一人だ。夫のオレクサンドルさんは2022年6月、ロシア軍の占領下におかれた南部へルソンを奪還するウクライナ軍の作戦中に亡くなった。 「(金銭的報酬は)私にとって全くもって重要なことではない」 ウラセンコさんの目的は、オレクサンドルさんが一度も会うことのなかった1歳の息子マカルくんに父親の思い出を残すことだという。 「息子が心の片隅にでも父親を記憶し、次の世代に受け継いで欲しい」とウラセンコさんは自身の嘆願書に記した。 この嘆願書は2万5721人の署名を集め、現在、審査が進められている。 ウクライナでの戦闘が続く中、戦死者を記憶に残すことが急務になりつつある、とスウェーデンの首都ストックホルムにあるセーデルテルン大学で上級講師を務めるユリヤ・ユルチュク氏は言う。 政府当局は先月、活動家や遺族からの強い要望を受け、大幅に遅れていたキーウにおける国立戦没者墓地の建設計画を承認した。 ただ、嘆願書が殺到している状況にウクライナ退役軍人の一部からは、多数に授与することで称号の価値を下げることに繋がりかねないと懸念する声も上がっている。 ユルチュク氏はこの現象が、国民全体の士気を保ちながらも顕彰にふさわしい人を選出するという難題をウクライナ政府に突き付けていると指摘する。 「個人や家族間における記憶がある一方で、国家としての記憶も存在する。後者は国民を一致団結させ、動員させるために働きかけるために必要な記憶だ」 |
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●自走砲の「砲身」が足りないロシア軍、古いけん引砲から取り外して再利用 1/14
北朝鮮から大量の砲弾が送られてきたおかげで、ウクライナで戦うロシア軍の部隊は砲弾に余裕がある。 余裕がないのはりゅう弾砲の砲身だ。そして、ロシア軍が使い物にならない砲を解体することによって、最も活躍している砲を維持していることが明らかになっている。 りゅう弾砲の砲身は通常、鋼鉄がもろくなったり曲がったりするまでに数千発は発射できる。 適切な時に消耗した砲身を交換しなければ、砲弾が砲の内部で爆発して大惨事になりかねない。このような事態は、ウクライナで1年11カ月にわたって繰り広げられてきたこの戦争の両陣営で幾度となく発生している。 ロシア軍の砲手にとって、計算は容赦のないものだ。約1000kmに及ぶ前線に沿って配備されているロシア軍のりゅう弾砲は2000門ほどだろう。これらの砲は1日に少なくとも計1万発を発射している。 平均すると1門あたり1日にたったの5発だ。このペースであれば、りゅう弾砲の砲身は1年強もつはずだ。だが実際には、前線の最も重要な方面の砲は平均よりはるかに多く発射し、一方で戦闘が少ない方面の砲は発射回数が少ないと考えられる。 ウクライナ東部のアウジーイウカやバフムート、南部のクリンキ周辺に展開するロシア軍の砲兵隊は、数カ月ごとに砲身を交換する必要があるだろう。 砲身の生産には高品質の鋼鉄と精密な機械加工が求められる。ロシアがウクライナに侵攻する前、ロシアで砲身を生産できる工場はペルミのモトビリハ工場とボルゴグラードのバリカディ工場の2つだけだった。ロシアが新たな生産施設を設立したのか、代替の砲身の調達先を外国に確保したのかは不明だ。調達先は北朝鮮かもしれない。 いずれにせよ、現在のように高頻度のペースで大砲を撃ち続けるために必要な、何千もの交換用の砲身をロシアが生産するのに苦労しているのは明らかだ。 オープンソースのアナリスト、リチャード・ヴェレカーによると、ロシアは冷戦時代のけん引式のりゅう弾砲を長期保管庫から数千門引っ張り出しているという。だが、ウクライナに侵攻した2022年2月以降にロシア軍が失った約1100の大砲を補うために、古いがさほど使用されていないそうした砲を必ずしも前線に送っているわけではない。 そうではなく、技術者たちは代わりに古いけん引砲の砲身を外し、最も重要な自走砲の消耗した砲身と交換しているようだ。 ヴェレカーは、ロシア軍のけん引砲の損失が急減していることに注目し、けん引砲は「(自走砲よりも)先に保管庫から引っ張り出されるが、これは砲身を取り外して自走砲に取り付けるためではないか」との結論に達した。 ヴェレカーの主張が正しく、ロシア軍が自走砲を稼働させるためにけん引砲を解体しているとすれば、自由なウクライナを支持する者が気になるのは、ロシアにどれだけの古い砲が残っているのか、つまり砲身を新たに生産しなくても、どれだけ予備の砲身を用意できるのかという点だ。 この疑問は、砲身がロシア軍の大砲供給のボトルネックになっているのか、そして砲身不足がロシア軍の火力を制限する可能性はあるのかという問いにもつながる。 たとえそうした事態になるとしても、今年ではないだろう。ヴェレカーによると、ロシアは2021年に1万2300門の古いけん引砲を保有していた。2年近い戦闘を経て、保管されているけん引砲は7500門に減った。4800門もの古いけん引砲から砲身を取り外したことになる。 回収された砲身とロシアの産業界が生産した砲身の合計数は、2000門のりゅう弾砲を2年間稼働させるのに十分なものだった。倉庫にまだ残っている7500門の古いけん引砲のほとんどが完全に消耗していないと仮定すると、これらの砲の砲身に取り替えることで前線のりゅう弾砲をさらに2年間稼働させ続けることができる。 もしそうなら、ロシア軍の兵器供給は2026年に危機に陥る。偶然にも、それは同軍が歩兵戦闘車と戦車を使い果たす可能性のある年でもある。 |
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●台湾総統選挙 与党・頼清徳氏勝利も厳しい政権運営 1/14
13日に行われた台湾総統選挙は接戦の末、与党・民進党の頼清徳氏が当選しました。野党の得票も多く、勝利宣言では「努力する」という発言も聞かれました。 与党・民進党 頼清徳氏「頼清徳と蕭美琴は、この礎を踏まえて国がしっかりと進み続け、人々が良い暮らしを送れるようさらに努力を重ねていきます」 与党と2つの野党の3つどもえの構図で争われた台湾総統選挙。投票率は前回を3ポイント下回る71.9%でした。 およそ558万票を獲得し当選を決めた頼清徳氏ですが、野党候補の得票は合わせて836万票に上り、台湾で初めて8年以上の長期政権を担う与党に対する不満もあらわになりました。 頼清徳氏が正式に総統に就任するのは5月20日ですが、難しい政権運営をせまられそうです。 |
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●和平案めぐる協議 複数国がウクライナに停戦応じるよう説得か 1/14
ウクライナが提唱する和平案を巡る先月の非公式協議で、ウクライナに対し、複数の国の高官からロシアとの停戦に応じるよう説得する発言が相次いだことがわかりました。 スイスのダボスでは14日、4回目となる協議が開かれますが、各国が和平案の実現に向けて一致できるか不透明な情勢です。 ウクライナが「平和の公式」と名付けて提唱する10項目の和平案を巡っては、先月16日、サウジアラビアの首都リヤドで、案の実現に向けた戦略をより現実的なものへと軌道修正しようと、G7=主要7か国やグローバル・サウスと呼ばれる新興国などの高官が非公式協議を開きました。 外交筋によりますと、非公式協議では、複数のグローバル・サウスの国々の高官から軍事侵攻による死傷者をこれ以上増やさないという観点から、ウクライナに対し、ロシアとの停戦に応じるよう説得する発言が相次いだということです。 これに対しウクライナ側は「意見は聞いたが立場は変わらない」などと述べ徹底抗戦を続ける姿勢を強調したということです。 スイスのダボスでは14日、およそ80の国や国際機関が参加して4回目となる協議が開かれますが、前回の非公式協議で浮き彫りになった立場の違いから各国が和平案の実現に向けて一致できるか不透明な情勢です。 ●フランス 外相 ウクライナに支援続ける考え示す ウクライナの首都キーウには13日、就任したばかりのフランスのセジュルネ外相が訪れました。 セジュルネ外相は、今月9日に新たに任命されたアタル首相が率いる内閣の外相に起用され、初めての外国訪問先にウクライナを選び、クレバ外相と会談しました。 会談のあとの記者会見でセジュルネ外相は「ロシアは、ウクライナと、その支援国が、先に疲弊することを望んでいるが、われわれは弱体化しない」と強調し、支援を続ける考えを示しました。 そのうえで「フランス企業にウクライナへの投資を働きかけたい」と述べ、輸送やエネルギー、それに通信関係など民間分野での支援を拡大させる方針を明らかにしました。 これに対し、クレバ外相はフランスの防衛産業との協力関係の拡大に期待を示しました。 |
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●「一番の敗北者は中国」台湾総統選巡る反発 佐藤正久氏 1/14
「中国が反発するということは、日本政府が正しいことをやっているということだ」 13日に投開票された台湾の総統選で当選した頼清徳副総統に上川陽子外相が祝意を示したことに対し、中国が反発を強めていることについて、自民党の佐藤正久元外務副大臣は14日、産経新聞の取材にこう語った。 佐藤氏は、台湾総統選の結果について「国民党の敗北というよりも、一番の敗北者は中国だった」と語る。対中融和路線の最大与党、国民党の候友宜新北市長が敗れたことは、台湾統一を目指す中国の習近平国家主席にとって痛手だったというわけだ。その上で、佐藤氏は「習氏は相当怒っていると思う」と話す。 上川氏の祝意に対して「強烈な不満と断固とした反対」を表明した談話を発表したのは、在日本大使館の報道官だった。佐藤氏は「在日本中国大使館としては、こういう時は習氏に寄り添った態度を出さないと(駐日中国)大使の立場がないと考えたのではないか」と語る。 一方、佐藤氏が懸念するのは、中国政府内で習氏に報告される情報が偏っている可能性だ。「習氏に正しい情報が上がっていない。台湾総統選に関しても、習氏の予想と違った可能性がある。在日本中国大使館も悪い情報を上げていない」とみる。 中国と同じ権威主義国家のロシアをめぐっては、プーチン大統領に正しい情報が伝わっていなかったことがウクライナ戦争につながったという指摘もある。こうした見方を念頭に、佐藤氏は述べた。 |
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●中東、ウクライナで連携 上川氏、カナダ外相と会談 1/14
上川陽子外相は13日(日本時間同)、カナダ東部モントリオールでジョリー外相と会談し、中東やウクライナの情勢を巡り緊密に連携することで一致した。総統選で与党候補が勝利した台湾や中国、北朝鮮についても意見交換した。日本外務省が発表した。 イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が続く中東情勢に関し、上川氏は人質の即時解放と人道状況改善、事態の早期沈静化を目指す日本の立場を改めて強調。「中東地域全体への波及を防ぐため同志国と連携したい」と述べた。 能登半島地震と羽田空港での航空機衝突事故に対するカナダ政府からのお見舞いに謝意を伝えた。 |
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●ウクライナ首相 安全保障協定の締結に向け約30か国と交渉 1/14
ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナのシュミハリ首相は、ウクライナの長期的な安全の確保のため、およそ30か国との間で安全保障協定の締結などに向けて交渉していると明らかにしました。 ウクライナでは、13日から14日にかけてロシア軍による攻撃が相次ぎ、このうち東部ハルキウ州の知事によりますと、州内の15以上の集落が迫撃砲などによる攻撃を受けたということです。 ロシアによる軍事侵攻が続くなか、ウクライナのシュミハリ首相は13日、地元のテレビ番組で、ウクライナの長期的な安全の確保のため、G7=主要7か国を含めたおよそ30か国との間で安全保障協定の締結などに向けて交渉していると明らかにしました。 G7は去年7月、共同宣言を発表し、ウクライナへの将来のロシアによる侵略を抑止するため、長期的な支援を行う方針を表明していました。 これに基づき、イギリスのスナク首相が12日、首都キーウでゼレンスキー大統領と会談し、新たな安全保障協定に署名しています。 日本も安全保障分野などで協力していく内容を定める2国間文書の作成に向けて、去年10月から交渉を行っています。 シュミハリ首相は「パートナー国と類似した協定の署名に向けて協議を進めている」と述べ、目下の軍事支援にとどまらず、ウクライナがNATO=北大西洋条約機構に加盟するまでの安全保障を担保するものだと重要性を強調しています。 |
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●北朝鮮の崔善姫外相、訪露…プーチン大統領と兵器取引など議論の可能性 1/15
北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外相が15日から17日までロシアのラブロフ外相の招待でロシアを訪問すると、朝鮮中央通信が14日、報じた。 金正恩(キム・ジョンウン)委員長とロシアのプーチン大統領の昨年9月の首脳会談後、両国の協力が拡大する中、崔外相は訪露期間中にラブロフ長官と会談するものとみられる。これに先立ち、ラブロフ長官は昨年10月の訪朝当時、崔外相に「都合のいい時期にモスクワを訪問してほしい」と招待していた。 外交街では、崔外相がプーチン大統領と会談し、兵器取引をはじめとする両国の核心懸案を話し合う可能性があるという観測も出ている。朝露は昨年9月の首脳会談後、ラブロフ長官の訪朝(10月)、朝露経済共同委員会(11月平壌)の開催、沿海州政府代表団の訪朝(12月)などを続け、軍事分野はもちろん農業特区の共同運営、羅津(ナジン)・ハサンプロジェクトの再開などに協力を拡大している。 |
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●ロシア消費者物価、23年は7.42%上昇 前年の2桁台から鈍化 1/15
ロシアの統計局が12日発表した2023年の消費者物価指数(CPI)は7.42%だった。中央銀行の見通し(改定値)の上限。2桁台だった前年からは鈍化した。 3月の選挙で再選を目指すプーチン大統領にとって高いインフレ率は課題の1つだ。しかし、軍事費の急伸と西側による原油価格上限を回避し、ロシア経済は回復している。 12月のCPIは前年同月比7.42%上昇し、前月の7.48%から伸びが鈍化。アナリスト予想の7.6%をやや下回った。中銀が予想していた7.0─7.5%の上限で着地した。中銀が目標としていた4%は大きく上回った。 前月比では、0.73%上昇。22年4月以降で最大の伸びとなった11月のプラス1.11%から鈍化した。アナリストは0.9%の上昇を予想していた。 |
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●デンマークで新国王が即位 在位52年のマルグレーテ女王が退位 1/15
ヨーロッパの君主として在位が最長となっていたデンマークの女王が退位し、長男が王位を継承した。 デンマークのコペンハーゲンで14日、王位継承の式典が行われ、83歳のマルグレーテ女王が退位し、長男のフレデリック皇太子が国王に即位した。 宮殿前の広場に集まった多くの国民から盛大な祝福を受けた。 式典が行われた14日は、1972年にマルグレーテ女王が即位してから、ちょうど52年にあたる。女王はヨーロッパで最も在位期間の長い君主だった。 マルグレーテ女王は昨年の大みそかに、国民に向けたテレビ演説で、退位する意向を明らかにしていた。 デンマークで君主が自らの意思で退位するのは約900年ぶり。 |
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●米英がイエメン「フーシ派」攻撃開始。崩れる中東のバランスと進む世界の分断 1/15
ハマスによる突然のイスラエル襲撃から3ヶ月あまり。ついに米英軍が反米・反イスラエルの姿勢を鮮明にするフーシ派の拠点に対して空爆を開始し、中東地域のバランスがさらに大きく崩れようとしています。この事態を早くも予見していた識者はどう見るのでしょうか。元国連紛争調停官の島田さんが、「戦争拡大に対する抑止力の不在」の顕在化を指摘。その上で、今後の国際社会を不安定で緊張感に満ちたものにしないため我々がなすべき努力について考察しています。 ●ついにイエメン反政府勢力「フーシ」に米英が空爆開始 迷走する国際秩序と世界の分断 「Kuniはよく国際秩序というけれど、ちなみに国際秩序なるものは存在するのだろうか?」 複数の国際紛争・国内での紛争案件を同時進行で扱う中、調停グループの複数の専門家から投げかけられた問いです。 私なりの定義があるとしたら、「国際秩序とは法の支配(Rule of Law)が尊重されながら、国際社会のメンバー(つまり国々)が互いの違いを認め合いつつ、協調関係を成り立たせるために必要なルールと規則」と考えています。 しかし、協調関係の維持のみが国際秩序を構成しているのではなく、そこにはbalance of powers (勢力均衡)の要素も大いに含まれるでしょうし、EU(欧州連合)の形式に代表されるような“共同体の設置”という要素も大いに含まれると考えます。 ただ強調、BOP、そして共同体(コミュニティ)の要素に共通するものとして【ルールに基づく統治・体制】という特徴があります。 “国際秩序”と聞かれていろいろと想起される内容があると思いますが、あえて上記の“共通ルールに基づく統治”という定義で見る場合、とても大きなクエスチョンマークが生まれてはこないでしょうか。 例えば、このような問いが出てきます。 【その“共通のルール”とは、誰の観点からのルールなのでしょうか?】 【そのルールは誰によって課され、遵守の信憑性を保証されているのでしょうか?】 【不遵守の場合、誰がどのような権利・権限に基づいて罰則を科すのでしょうか?】 【相反する“国際”秩序が存在し、成り立っている場合、それらは平和裏に共存できるものなのでしょうか?】 いろいろと問いが浮かんできますが、答えもまたいろいろ存在するのだと思います。そして何よりも“どの答えも同等に正しい”というのが認識かと思います。 ただここに大きな問題が存在します。 それは見る人によって定義が変わり、ルールを適用する国・機関によって“正しいこと”は変わります。 アメリカや欧州の多くの国々、そして日本などのG7諸国の観点からは、基盤に自由で開かれた社会制度があり、法による支配(専断的な国家権力の支配を排し、権力を法で拘束するという英米法系の基本的原理)の概念が国際秩序の根幹と捉えられ、また民主主義が統治の根幹に存在すると考えられます(もちろん、G7およびその仲間たちの間でも政治体制に差異があります)。 中国やロシア、アラブ諸国、そして多くのアフリカや中南米の国々では、中央集権的に適用されるルールによって確保できる統一性を重んじる政治・社会文化の維持が根幹に存在します。 また【法による支配(Rule of Law)】と言っても、それが国際法によるuniversalityを指すのか、国内における法が国際法を凌駕するという考え方なのか、それとも党や宗派の教義の尊重と遵守を法の支配と呼ぶのか、その出口はまちまちではないかと思われます。 特に、中国やロシア、中東アラブ諸国ほどのextremeでないにせよ、Rule of Lawの要素として挙げられる“専断的な国家権力の支配”を否定する概念は、地球上の多くの国では受け入れがたい認識になっています。 ●国際秩序の崩壊を決定づけたウクライナ侵攻とガザ紛争 そしてさらに私が問題だと認識しているのは、同じ国であってもケースバイケースで国際秩序や平和、正義(justice)、そして国際人道法に対する定義を使い分けているという国際政治の現実です。 調停グループに参加する国際政治の専門家によると「現在の国際社会はダブルスタンダードどころかmultiple standardsが蔓延っており、スタンダード(基準)を主張する国が、自国の利害に基づいて定義を自在に変えて、自らの行動や言動を正当化する矛盾に満ちた世界だ」と表現しています。 その現実がまさに私たちが目にしている各国のロシア・ウクライナに対する態度、イスラエル・ハマスの戦争に対する態度、そしてアフリカや中南米、アジアで長年続く紛争・戦争・内戦に対する態度(ほぼ無関心)として表れています。 この矛盾に満ちた対応は、一貫した姿勢と認識に基づく対応を阻むだけでなく、ルールを遵守し、相互に利害を尊重し合うという国際協調体制(もしかしたらただの幻想だったのかもしれませんが)を根本から覆し、結果、いわゆる“国際秩序”を崩壊させたのではないかと考えます。 崩壊の兆しはもうずいぶん前からあったのでしょうが、それを決定づけてしまったのが、ロシアによるウクライナ侵攻による世界の分断を経て、現在進行形のイスラエルとハマスの戦争を巡る各国の対応でしょう。 コロナのパンデミックやロシアによるウクライナ侵攻以前はまだ【自由民主主義】【基本的人権の尊重】【国際人道法の遵守】【武力侵攻の禁止】といった理念が意識され、違いを受け入れつつも、国際社会の安定と平和という朧げな目標の下、国際協調体制が成り立っていたように思いますが、ウクライナ、そしてその後のイスラエル・パレスチナ問題の再燃、世界中で顕在化する格差の拡大などが幾層にも重なり、“明日はきっと今日よりは良くなる”という進歩への信仰が薄れ、“失ったもの・奪われたものをいかに取り戻していくかという実利主義”に基づいた対応が力を持ち出しました。 こじつけとお叱りを受けるかもしれませんが、それがグローバルサウスの台頭であり、ロシアによるウクライナ侵攻の背景にある思想の一つであり、そしてイスラエルとハマスの攻防の背景にあるのではないかと感じています。 グローバルサウスの国々は緩い連帯を示し、相互の国内情勢には不可侵を貫いているという特徴以外に、かつて欧米列強国に蹂躙され、天然資源をはじめとする資産を奪われ、従属させられた過去を繰り返さない・繰り返させないという強い意志が存在します。 これを可能にしたのは、各国の経済発展に伴う経済力の向上と、国際協調の下、進められたグローバリゼーションが与えた国際経済への影響力とつながりだと考えます。 これによりグローバルサウスの国々の発言力が上がり、これまで欧米諸国の身勝手な方針に盲従させられていた過去から脱却し、自国の実利に照らし合わせて対応を考え、毅然とした態度で要求にも対峙するという構図が出来上がっています。 その結果、ロシアによるウクライナ侵攻に対するグローバルサウスの国々の反応は、ロシアの武力侵攻という事実に対しては非難するものの、欧米諸国とその仲間たちが構成し、参加を迫った対ロ包囲網と経済制裁からは距離を置き、ロシアや中国とも、欧米諸国とその仲間たちとも適切な距離を保ちつつ、しっかりと利益を確保するという現実的な戦略を取っています。 ●ウクライナ侵攻によって否定された「ありえない」状況 またイスラエルとハマスの問題についても、人道的な観点から即時停戦と迅速な人道支援の必要性に触れつつも、事態からは距離を置き、飛び火を非常に警戒する安全保障戦略を取っています。 これはまた“ありえない”と妄信的に信じられていた状況から距離を置くことも意味します。 例えば【主権国家が他国に対して武力侵攻するというのは、現在の世界においてはあり得ない】という幻想は、約2年前のロシアによるウクライナ侵攻によって否定されました。 そしてロシア軍がウクライナ全域を対象に攻撃を仕掛け、ウクライナを攻撃しつつ、その背後にいるNATOに対して「ロシア、そしてロシアの裏庭に構うな」というメッセージを突き付け、国際社会の分断を鮮明化しています。 ロシアによるウクライナ侵攻以降、度々、ロシアが核兵器を使用する可能性(核使用の脅威)についての懸念が述べられ、プーチン大統領とその取り巻きも核を脅しとして使っていますが、実際に核兵器を使用するシナリオは考えづらく、ロシアの核兵器使用のドクトリンに挙げられる“ロシアおよびその国民に対する差し迫った安全保障上の脅威が引き起こされる場合”が現実になる以外は起き得ないと考えていますが、これも“ありえない”とは言い切れないかもしれません。 現在、ロシア軍がウクライナ戦線において選択している戦略は、ウクライナ東部の支配地域の拡大・維持というよりは、大規模かつ同時発生的なミサイル攻撃をウクライナの大都市に対して行うことで、ウクライナがNATO加盟国、特にアメリカから供与されたパトリオットミサイルなどの防空迎撃ミサイルをどんどん使わせ、在庫を枯渇させることを目的にしているように見えます。 真偽のほどは分かりませんが、ウクライナ軍の司令官の表現を借りれば「あと数回分の大規模ミサイル攻撃に対応する分の迎撃ミサイルしかない」状態にあり、NATO諸国からの支援の先細りと遅延により、さらに状況が悪化する恐れがあります。 また分析によると、ロシアが極超音速ミサイル・キンジャールを含む、弾道ミサイルを対ウクライナ攻撃に用いるケースが増えていますが、弾道ミサイル迎撃システムはウクライナでは機能しておらず、実際にウクライナに着弾し、インフラを次々と破壊する事態に陥っているようです。 そのロシアもミサイルが枯渇しているとの楽観的な報道が時折なされていますが、実際には欧米諸国とその仲間たちによる厳しい制裁にも関わらず、地上戦における戦況の停滞状況を活かし、弾道ミサイルの量産体制を強化して来るべき一斉攻撃に備えていようです。そこに北朝鮮やイランなどからの“つなぎ”支援を得てさらに時間稼ぎをしていますし、“悪魔の商人”としてのトルコも(トルコの皆さん、ごめんなさい)、NATO加盟国としてウクライナに無人ドローンを供与してロシア攻撃に投入している半面、ロシアにも武器を供与して、しっかりと利益を得ています。 アメリカ政府における対ウクライナ支援のための資金が枯渇し、欧州各国も対ウクライナ支援を控え始める中、ロシアは苦境から回復し、弾道ミサイルを量産して攻撃態勢を整え始めるという現状が存在することで、もしNATOがウクライナを見捨てるような事態になれば、ウクライナの存在は危ぶまれますし、その波が一気にユーラシアの近隣諸国に押し寄せる可能性が出てきます。 ●ウクライナで拡大する「反ゼレンスキー」の声 ウクライナ国内に目を向けると、ゼレンスキー大統領と統合参謀本部議長のザルジーニ氏の確執が目立ってきており、一旦延期された大統領選挙をやはりこの4月に実施すべきとの声も高まる事態に陥っています。 NATOからの支援の先細りを懸念してか、ゼレンスキー大統領が国外にいる18歳から60歳の成人男子をウクライナに呼び戻して徴兵するという方針を示したことで、一気にゼレンスキー大統領に対する反対の声が拡大し、国内における政治的な支持基盤が脆弱になり始めているという分析結果も出てきています。 その背景には、もちろん、ロシアによる情報戦と政治工作も存在するでしょうが、インフラを徹底的に破壊し、補給路を断ち、国内でも揺さぶりをかけるという厳しい心理戦がウクライナ国民に対して行われているようです。 これまで自国が掲げる絶対的なルールである基本的人権の尊重や汚職の撲滅といった規範の不履行には目を瞑り、ロシア憎しでウクライナの後ろ盾となり、おまけにEUは支援が遅延することへの非難をかわす狙いでウクライナのEU加盟交渉の開始を提示しましたが、今、多方面から欧米諸国の勝手なダブルスタンダードが指摘され始め、次第に他国の案件から手を退き、自国ファーストの内向きの政治に傾く傾向が顕著になってきています。それが欧州各国で表出する右派の躍進と国家主義体制の構築として見られるようになってきています。 その影響を喰らっているのが、イスラエルとハマスの戦いとガザにおける悲劇への対応の遅れと矛盾でしょう。 アメリカ政府は今秋に予定されている大統領選挙および議会選挙への影響を考慮して、国内のユダヤ人層の支持固めのためにイスラエル寄りの姿勢を鮮明にしていますが、その思惑は、アメリカの言うことを聞かずに暴走するイスラエルのネタニエフ首相と政権の存在と、アメリカ国内のユダヤ人若年層による政府批判とパレスチナ支持の表明と拡大により、崩れ去りそうになっています。 まさに国内において政府が用いるダブルスタンダードを非難され、民主党内部でも左派が公然とバイデン政権を非難し始め、さらに国際社会においてアメリカのリーダーシップと信憑性が非難に晒されている現状を受けて、バイデン政権の対イスラエル支援に変化の兆しが見られるようになってきています。 今でも基本的にはPro-イスラエルの姿勢は堅持していますが、今週アラブ諸国とイスラエルを訪問しているブリンケン国務長官もイスラエルに対して苦言を呈し、過剰な防衛はイスラエルを崩壊させるかもしれないと懸念を表明しつつ、「アメリカ政府はこれ以上、イスラエルを支持できない可能性がある」旨、ネタニエフ首相に伝えたらしいという情報も入ってきています。 そして、イスラエルは沈黙していますが、今週起きたヒズボラの幹部暗殺事案は、これまで人質解放の交渉に尽力してきたカタール政府を憤慨させ、「すべての和平と人質の生命を守るための試みを一瞬で吹っ飛ばし、地域におけるデリケートな安定を崩しかねない愚行」(首相兼外相)という非難が出ている事態は、大いに懸念されます。 そこに今年に入って起きたイラン革命防衛隊の幹部の殺害(シリア)や故ソレイマニ司令官の追悼式典におけるISによるテロなどが重なり、次第にアラビア半島およびペルシャ湾岸諸国も、ずるずるとイスラエルとハマスの血で血を洗うような凄惨な戦いに引きずり込まれつつあります。 これは口頭ではパレスチナ・ガザとの連帯を叫びつつ、実質的には何もしない方針を取ってきたサウジアラビア王国やUAE、ただでさえ不安定なイラク、反米反イスラエルを明確にするイエメンのフーシ派、そしてイランへの戦火の飛び火が現実になりかねない事態がそこまで来ています。 ●顕在化する戦争拡大に対する抑止力の不在 このような危機に対して、口は出し、懸念は表明するものの、実質的には何もコミットしない欧州各国とアメリカの姿勢が浮き彫りになり、戦争拡大に対する抑止力が不在であることが顕在化してきているように感じます。 イスラエルとの関係改善と経済的・技術的な利益を得たいUAEなどのアブラハム合意当事国と合意が近いとされていたサウジアラビア王国は、あまりイスラエルを刺激したいとは思っていませんが、サウジアラビア王国の場合、原則言論の自由を保障していないことで民衆のデモを規制していても、パレスチナとの連帯を表明しないと、いつアラブの春のような民衆蜂起が起きるか分からなくなるため、ハマスやヒズボラ、そして最近は関係改善に努めているイランとの距離感が悩みの種とのことです。 そして中東諸国にとってさらに悩ましいのが、アメリカや欧州各国との距離感です。サウジアラビア王国やUAEなどは長くアメリカとの同盟関係を結んできましたが、アメリカにとっての中東諸国の重要性が低下したことを受け、両国ともロシアや中国との関係を深め、軍事・経済戦略パートナーシップ協定を締結しています。 10月7日のハマスによる同時攻撃までは、アメリカの力添えを軸に、アブラハム合意の拡大を進めてきましたが、イスラエル・パレスチナ問題が再燃し、ガザの悲劇が悪化していく中、地域において反米・英・仏の意見が強まってきています。 特に「イスラエルの建国を許し、アラビア半島を滅茶苦茶に蹂躙したのは英仏の嘘に端を発し、その後、米国によるイスラエルへの過度の肩入れによって、パレスチナ人は土地や権利を奪われただけでなく、人質に取られてしまった」という認識が再燃し、一触即発の状態にまで悪化しているようです。 その一触即発の“事態”となり得るのが、ヒズボラの幹部暗殺事案へのイスラエルの関与と、比較的穏健的なカタールの憤怒、イラン革命防衛隊幹部の暗殺に起因するイランによる対イスラエル報復宣言、さらにはISの犯行とされている故ソレイマニ司令官(イラン革命防衛隊)追悼イベントでのテロ攻撃など、アラブ諸国とイランの中での怒りのレベルが最高潮に達している状況です。 イスラエルが一向に退く素振りを見せず、かつハマスの壊滅を目的に掲げてガザにおける殺戮を繰り返しながら、ヒズボラや他の親イラン勢力の掃討まで行おうとしていることには、非常に危機感を感じていますし、ヒズボラを嫌っているアメリカ政府でさえ、イスラエル・ハマスの戦争が隣国に飛び火する事態を何とか避けたいと願い、イスラエルに自制を強く迫る状況に発展しています。 アメリカ国務省やペンタゴンの関係者によると、アメリカ政府としては紛争の拡大の抑止のために空母攻撃群を東地中海や紅海近辺に展開するが、NATOの核(コア)としてウクライナ対応も行う必要や、高まり続ける台湾海峡に対する中国の威嚇への対応も必要であるため、中東に割ける兵力はあまり期待できないと考えているようです。 その手詰まり感をNATOの欧州各国も感じているようで、今、東地中海での案件が南欧諸国に飛び火したり、トルコとギリシャの領海争議を再燃させたりすることを何とか避けるために、イスラエルとハマス、そしてアラブ諸国に対して即時停戦と人道支援の迅速な実施と拡大を求めてプレッシャーをかけています。残念ながら、奏功していませんが。 ●中東の「利権の確保」に移り始めた国際社会の関心 そして今年2024年、世界の人口約80億人のうち、42億人強を占める国々でリーダーを決める選挙が行われることも、国際秩序の今後に対する不確実性を高めています。 アメリカでは秋に大統領選挙があり、もしトランプ大統領が再選されるようなことがあれば、ウクライナへの支援は完全に終わり、以前、宣言したようにNATOからも離脱する可能性があります。在日・韓米軍の撤退もあり得るとの分析結果もあります。 アメリカにおいて誰が次の政権を担うのかによっては、欧州はウクライナを背負い、高まる安全保障上のリスクとコストをアメリカ抜きで担う必要性に駆られます。トランプ大統領のアメリカがイスラエルを見捨てることはないでしょうが、トランプ大統領の復権がパレスチナやアラブ社会に及ぼす影響は未知数であるため、恐らく東地中海における様々な紛争の処理を欧州が主導しなくてはなりません。 しかし、ご存じのように、残念ながら英国が抜けたEUにはその能力はありませんし、仮に英国が輪に加わっても、アラビア半島や北東アフリカ、ペルシャ湾に至る安定を守るだけのキャパシティーはありません。 ロシアもプーチン大統領が5期目をかけて選挙が行われますが、ロシアの制度上、プーチン大統領の統治が継続されることは確実視されており、4月に5期目を獲得した暁には、ウクライナに対するEnd gameを仕掛けてくると予想されています。 そして国内外で影響力の再建に着手し、その影響は、欧州全土はもちろん、広くシベリアから中東、アフリカ、そして昨今、進められている中央アジア諸国(スタン系)と南アジア諸国(インド、バングラデシュなど)を繋ぐ回廊を通じて南アジアまで及ぶよう画策してくると思われます。 その成否は、実はアメリカや欧州、アジア諸国の団結によってではなく、中国がどのような姿勢を取り、インドがどこまでロシアと協力するかにかかってくるでしょう。 そして延期されることになっているウクライナ大統領選挙がもし予定通りに開催され、ゼレンスキー大統領が下野してウクライナにロシア寄りの政権ができたり、東南部(ドンバス、マリウポリなど)・中央部(キーウなど)・西部(リビウなど、かつてポーランドと合わせてガリツィアと呼ばれた地域)に分裂したりした場合には、EUの東端地域の安全保障環境が緊張に満ちたものになると予想されます。 ロシアとウクライナの戦争の落としどころが見えず、最悪の場合、ロシアにウクライナが飲み込まれる事態が恐れられる中、すでに当事国以外はポスト・ウクライナの世界、そして“国際秩序”の構築に重点を移し始めています。 欧米諸国はもちろん、日本も、中国も、トルコも、そしてロシアの脅威に苦しめられてきたスタン系とジョージアなどの国々も、その輪に我先にと加わり、戦後復興という大義の下、それぞれのウクライナ(とロシア)における権益の拡大を画策しています。 そして先の見えないイスラエルとハマス、そしてヒズボラの戦いにおいても、同様の動きが活発化してきています。ガザの悲劇に心を痛め、涙し、即時停戦と人道支援の実施を訴えかける裏で、すでに“国際社会の関心”は、いかに中東地域の安定を取り戻し、利権を確保するかに移っており、そこにはアラブ諸国も含まれています。 「パレスチナ人、ガザと共に」と叫びながら心はここにあらずで、関心は影響力と経済力の拡大に注がれています。 そのような中、戦後の統治の世界に自らの居場所がないことを悟っているネタニエフ首相は、自身の保身のためにガザにおける民間人と人質に取られた同胞たちの生命を犠牲にしてでもこの戦争を長期化させ、自分が権力の座に居座るための口実・正当性を高めようとしています。 ●解決の機会が訪れているにも関わらず放置される「火薬」 同じことはプーチン大統領にも、残念ながらゼレンスキー大統領にも当てはまると、いろいろな情報や分析を総合してみた時、どうしても私はそう感じざるを得ません。 そして新しい国際秩序の構築を模索する際、顧みられない数々の紛争や内戦を解決するための絶好の機会が訪れるにも関わらず、30年以上続き600万人の生命を奪っているコンゴの内戦も、東アフリカのデリケートな安定を根本から覆しかねないスーダン内戦も、いつ再燃するかわからないエチオピアの内戦も、そしてアジアに目を移せばミャンマー情勢は緊迫化し、アフガニスタンは見捨てられ、そして朝鮮半島情勢は緊迫し、タイ深南部(マレーシアとの国境付近、南部のパッターニー県を中心とする地域を指す)のポンドュックとそのライバルたちによる分離独立紛争も、相変わらず放置・無視されたまま、各地域の不安定化の要因として残留し、そして常に紛争の拡大のための火薬として存在する事態が放置されることになります。 各国が安全保障問題や国際秩序を、世界の安定のためのパッケージとして捉えていた協調時代から、各国それぞれの利害・実利の観点から、アラカルト形式で関心を持ち、介入するか否かを判断する傾向を強め、どんどんブロック化し、世界を分断する方向へと導かれることになります。 その結果、“国際秩序”は複数の定義が存在し、それぞれが自らの秩序の正当性を争い合うとても不安定で緊張感に満ちた世界が、今後、生まれることになります。 それを防ぐには、ウクライナなガザの問題のみならず、世界各地で起きている紛争や自身の身近なところで起きうる紛争の種に目を向け、紛争が起こり、拡大し、そして互いに共鳴し合うまえに、その芽を摘んでおく努力をしなくてはなりません。 そのためには関心を持ち続け、世界の不条理から目を背けず、それぞれが出来ることを行っていくことが、安定した国際秩序の構築を可能にし、再び協調の下、平和が訪れる世界を作り出すことが出来ると考えます。 |
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●ウクライナ大統領、ダボス会議でダイモン氏と面会へ−関係者 1/15
ウクライナのゼレンスキー大統領は今週、スイスのダボスで開かれる世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)で米銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)と面会する予定だと、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。ゼレンスキー氏はロシアと戦うための財源を補充しようとしている。 ウクライナの数カ月に及ぶ反攻作戦も突破口を見いだせず、同盟国は多額の戦費に疲弊しており、欧米による計1000億ドル(約14兆5000億円)余りのウクライナ支援は滞っている。戦争が3年目に入ろうとしている今、国際舞台でウクライナの支援要請は昨年10月に始まったイスラエルとイスラム組織ハマスの戦争に押され気味だ。 ニューヨークに本拠を置くJPモルガンは、さまざまな再建プロジェクトへの民間資本の誘致でゼレンスキー氏に助言している。昨年9月には、同行のアセット&ウェルスマネジメント部門責任者メアリー・アードーズ氏が、シタデルのケン・グリフィン氏やブラックストーンのジョン・グレイ氏ら米金融界のトップとゼレンスキー氏との会合をアレンジし、ウクライナ復興支援への民間資金の活用が話し合われた。 ゼレンスキー氏はダボス会議で演説を行う予定で、ダイモン氏のほか、スイスのアムヘルト大統領とも面会する。 一方、ゼレンスキー氏のダボス会議での予定はまだ決まっていないと報道官は説明。JPモルガンはコメントを控えた。 |
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●ロシア軍の「使い捨て」ストームZ部隊、肉弾戦で全滅 ウクライナ南部 1/15
ウクライナ軍の海兵らがドニプロ川をモーターボートで渡り、ロシア軍が支配する左岸(東岸)に橋頭堡(きょうとうほ)を築いてから3カ月になる。ロシア軍はいまだに海兵らを駆逐できていない。 むしろ、ウクライナ南部クリンキの橋頭堡周辺におけるロシア軍の運命は悪い方へと向かうかもしれない。ウクライナ軍南部方面司令部のナタリヤ・グメニュク報道官によると、クリンキでウクライナ軍の防衛を突破するのにロシア軍の司令官らが当てにしていた、訓練不足で軽装備の「ストームZ」突撃部隊のほとんどが死傷しているか、捕虜になっているという。 ストームZの隊員のほとんどは前科者か召集兵あるいは元傭兵だ。軍事アナリストのトム・クーパーによると、ストームZ部隊は「ろくに訓練も受けず、まともな戦闘服もないまま武器を与えられ、航空機や大砲による適切な支援がない中を攻撃に送り込まれる」のだという。 ロシア政府にとって、ストームZの隊員は使い捨てだ。そして昨年あたりから、ロシアの戦争の計画に不可欠な存在になっている。歩兵が先頭に立ってウクライナ軍の要塞を正面から攻撃するロシア軍の「肉弾戦」において、ストームZの隊員は「肉」だ。 ロシア軍が最近優勢となったところでそうなったのは、肉弾戦でウクライナ軍を圧倒したからだ。ロシア軍が地歩を広げられなれなかったところでそうした結果になったのは、ウクライナ軍がストームZ部隊を100人単位で殺して肉弾戦に勝ったからだ。 「特に我々の方面では、ストームZタイプの部隊が減少している」とグメニュクは指摘した。「敵の損失はかなり大きい。10〜15人の部隊が我々の陣地を襲撃しようとすると、少なくともその半分はその場で死亡する」 ストームZの隊員が死亡したか、負傷しているため、左岸にいる海軍歩兵や空挺隊員、陸軍機械化部隊などのロシア軍部隊は、ウクライナ軍の橋頭堡に「肉」を送り込むことができない。もちろん、自分たちが「肉」になることを選ばなければの話だ。 「このため、ロシア軍の部隊では道徳的な問題や精神的混乱、さまざまな種類の争いが起きている」とグメニュクはいう。「海軍歩兵や空挺部隊の割合が高くなっている。自分たちはエリートだと考えており、そのような行きたくない攻撃には行かない」 グメニュクの指摘が正しければ、クリンキ周辺ではロシア軍の指揮統制にほころびが生じている。「ドニプロに展開する部隊の指揮には多くの混乱がある」(グメニュク)。 そうした評価を行うのはグメニュクだけではない。あるロシア軍の空挺隊員によると、左岸にいるロシア軍の指揮の危機は昨年12月初めには明らかになっていたという。「上級の司令官は一部の部隊と意思疎通を図ることができない」と空挺隊員は当時手紙に書いている。 砲火を浴びてストームZ部隊が全滅する前、クリンキ周辺のロシア軍の司令官らが部隊を統制できていなかったとすれば、ストームZ部隊より訓練を受けた部隊がウクライナ軍の砲火を浴び始めなければならないいま、苦慮している事態が想像できる。 |
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●世界の海に忍び寄る戦争、波を制するのは誰か? 1/15
米国によるフーシ派攻撃は、海をめぐってエスカレートする争いの一環だ。 数十年にわたって穏やかだった世界の海で、嵐が発達しつつある。 紅海では武装組織フーシ派がドローン(無人機)やミサイルでの船舶攻撃を繰り返し、米軍をばかにする仕草を見せながら、スエズ運河でのコンテナ輸送を90%減少させている。 黒海は機雷と破壊された軍艦でいっぱいだ。 ウクライナは今年のうちに、18世紀の女帝エカチェリーナの時代から基地にされているクリミアからロシア海軍を追い出したいと思っている。 バルト海や北海は、海底を走るパイプラインや通信ケーブルの破壊工作という影の戦争に直面している。 そしてアジアでは、第2次世界大戦以来の大規模な海軍力増強が進められており、中国が台湾に統一を迫ろうとしている一方、米国が中国による侵攻を抑止しようとしている。 13日の台湾総統選挙が終わった後、緊張がさらに高まるかもしれない。 ●再び争いの場と化した海 これらの出来事が重なっているのは偶然ではなく、この惑星の海洋に大きな変化が生じている兆しだ。 世界経済はまだグローバル化されている。 貿易は数量ベースで全体の約80%、金額ベースで50%がコンテナ船やタンカー、貨物船など10万5000隻の船舶を使って行われている。 昼夜を問わず定期的に海を渡って人々の生活を支えているが、当の人々はそれを当たり前だと思っている。 しかし、超大国同士の対立とグローバルなルールや規範の衰退は、地政学的な緊張が深刻化していることを意味する。 必然的で、まだ過小評価されているその結果は、海洋が第2次世界大戦後で初めて争いの場になっていることだ。 海での機会と秩序の探求には長い歴史がある。 オランダの法学者グロティウスが公海自由の原則を唱えたのは17世紀のことであり、英国が海軍と港湾・砦のネットワークを用いてその原則を施行したのは19世紀のことだった。 開かれた海という概念は1945年以降の秩序に採用され、1990年代からは海の世界がグローバル化と米国の国力の台頭を反映した。 そこでは効率の高さと極度の集中が重視された。 今日ではコンテナの62%がアジアと欧州の海運会社5社によって運ばれ、船舶の93%が中国、日本、韓国で建造され、船舶の86%がバングラデシュかインド、またはパキスタンでスクラップにされている。 米国海軍は、海洋での安全を守るという特殊な役目を独占に近い形で担っており、280隻を超える軍艦と34万人の兵士を投じている。 ●地政学的な緊張と海洋法の力の減退 この巨大かつ入り組んだシステムが今、2つの困難に直面している。 1つ目は地政学的な緊張だ。中国海軍の増強により、太平洋における米海軍の覇権的な地位が1945年以降で初めて脅かされている。 もっと手荒なことをするアクター(主体)もいる。 イランの支援を受けているフーシ派に加え、内陸国エチオピアの独裁者は隣のソマリランドから紅海に面した海軍基地を借り受けようとしている。 2つ目は、海洋法が以前ほど守られなくなっていることだ。 中国は仲裁裁判所の判断に反発し、これを無視している。また西側諸国の経済制裁は密輸ブームの引き金を引くことになった。 今では世界のタンカーの10%が、主流の法や金融システムの外側で活動する無法の「ダークフリート(闇の船団)」に属している。この割合は1年半前の2倍に当たる。 地政学的な風は、技術のディスラプション(破壊的変化)や気候変動によって強められている。 中国は対艦ミサイルに投資し、米海軍の艦船をさらに沖へと遠ざけた。 兵器の拡散も著しく、つい最近まで国家しか所有していなかった巡航ミサイルをフーシ派のような民兵組織が入手するに至っている。 知識経済――そしてウォール街とシリコンバレーの支配――は、破壊工作に見舞われやすい600本あまりの海底通信ケーブルに依存している。 気候変動は地理とインセンティブを変えつつある。 パナマ運河は水不足に陥り、北極海では氷が溶けて航路が広がっている。グリーンエネルギー・ブームは海底からの鉱物採取競争を促している。 ●公海の無秩序がもたらすコスト このため、公海に無秩序が迫りつつある。 それがもたらすコストの一つは、貿易が過渡的な混乱に陥ることだ。 海上貿易の規模は現在、世界全体の国内総生産(GDP)の約16%に相当する。海運システムは変化に適応できるものの、それにもやはり限度がある。 単発のショックは吸収できることが多い。 フーシ派による攻撃は保険料と輸送運賃の一時的な急上昇を招いたが、幅広い上昇を引き起こすにはまだ至っていない。コンテナ輸送業界や石油市場に供給余力があるためだ。 市場の需給が引き締まったり、同時多発的にショックが起きたりすれば、コストはその分高くなる。 新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)開けに生じた2021年の海運需給逼迫と、2022年の黒海における穀物輸送の混乱は世界規模のインフレを引き起こした。 大半の製品の最終価格に占める海上運賃の割合は小さいが、海上輸送に予測不可能性が混じれば、企業はサプライチェーン(供給網)の縮小に動き、コスト増を招く。 ●大規模紛争が勃発すれば・・・ 海上での大規模な紛争は壊滅的なものになり得る。 海での対立にはほかにはない特徴がある。艦隊を迅速に増強することが難しいため、陸上に比べると事態がエスカレートしにくいからだ。 それでも、紛争が勃発しかねない場所を特定するのは容易だ。 例えば、イランやロシアがパイプラインや液化天然ガス(LNG)の航路、通信ケーブルに攻撃を加えてきたら、深刻なダメージが生じる。 南シナ海やインド洋では、戦略的に重要な島をめぐる小競り合いが紛争の引き金を引きかねない。 そしてロシアやイランよりも経済が発展した国への通商禁止措置は、ケタ外れに大きな打撃をもたらすだろう。 ブルームバーグが行ったシミュレーションによれば、台湾が封鎖されて西側諸国が対抗措置を取った場合、世界全体のGDPが5%減るという。 こうしたことはすべて、ならず者のアクターや敵対的な国家を抑止する必要性を浮き彫りにしている。 とはいえ、1990年代の穏やかな海に戻る安易なルートは存在しない。 普遍的な原則の遵守を訴えても、成功はおぼつかない。貿易への依存度が高い中国は失うものが多いが、西側の制裁を覆し、南シナ海における違法な主張を押し通したいと思っている。 海事法の要(かなめ)となる国際条約を米国が批准していないことも足かせになる。 慢性的な過小投資の後だけに、西側の海軍力を早急にてこ入れし、海を再び支配することもできない。 世界全体の船舶建造力に占める割合が5%しかない状況では、艦隊の再建には数十年かかるだろう。 ●静穏な海なしでは世界経済が沈没 従って、異なる対応が求められる。 まず、西側諸国は例えば潜水艦や自律運航船などにおける技術的優位を維持することにさらに力を入れなければならない。 パイプラインなど脆弱な海のインフラを政府と民間が協力し合って監視することも重要だ。通信ケーブルのバックアップを別のケーブルや衛星回線で確保することも欠かせない。 そして、海洋のパトロールに利用できる資源を増やすために同盟の輪を拡げる必要もある。 米国はアジアで海軍の協力関係を再構築している。紅海で始まったフーシ派への対応は、参加する西側諸国やアジア諸国の海軍が増えている有望なモデルだ。 重要性の高さゆえに、海の秩序を維持することは国際協力の最小公分母となる。これは孤立主義者でさえ賛同するべきものだ。 この秩序が保たれなければ、世界経済は沈没する。 |
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●ヘルソン州の消防署攻撃 ロシア、インフラ標的 1/15
ウクライナ南部ヘルソン州のプロクジン知事は通信アプリで14日、同州の村の消防署にロシア軍の無人機(ドローン)攻撃があり、消防士4人が負傷したと伝えた。地元メディアによるとヘルソン市も13日に砲撃され、少なくとも住民ら6人が負傷した。 ヘルソン市は昨年11月にウクライナ軍が奪還したが、その後もロシア軍の激しい攻撃が続く。13日は住宅やインフラ施設が砲撃された。住民男性ががれきの下敷きになったが、救出された。 一方、ロシア西部クルスク州のスタロボイト知事は通信アプリで14日、ウクライナ軍の無人機が国境に近い同州の村を攻撃し、男性1人が負傷したと伝えた。 |
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●ダボス会議 15日から 世界の政財界のリーダーら2800人余参加へ 1/15
世界の政財界のリーダーが集まる、通称「ダボス会議」が15日からスイスで始まります。ウクライナ侵攻や中東情勢に加え、世界経済の行方やAIの活用のあり方など、重要な課題について議論が交わされます。 「ダボス会議」として知られる世界経済フォーラムの年次総会は、スイス東部のダボスで例年この時期に開かれていて、ことしの開催は15日から19日までとなっています。 120の国と地域から合わせて2800人余りの政財界のリーダーたちが参加する見込みで、ことしは「信頼の再構築」という全体テーマが掲げられています。 ロシアによるウクライナ侵攻や人道危機が深刻化する中東情勢を議題としたセッションが予定され、世界の分断が一段と進む状況に各国がどう対処すべきか議論が行われます。 現地には60人以上の各国の首脳らも訪れる予定で、16日にはウクライナのゼレンスキー大統領が演説し、改めて支援の継続を訴えるものとみられます。 また、根強いインフレや各国の中央銀行が進めてきた利上げによる世界経済への影響、急速に普及が進むAIの活用や規制のあり方についても意見が交わされる見通しです。 このほか、気候変動やエネルギー問題についても議論される見込みで、世界が直面するさまざまな重要課題に有効な解決策が示されるか注目されます。 ●ことしの注目点は ことしの世界経済フォーラムの年次総会、通称「ダボス会議」は、「信頼の再構築」という全体テーマを掲げています。 これについて、世界経済フォーラムのシュワブ会長は「世界では分断が拡大し、不確実性と悲観主義のまん延につながっている。問題の根本原因に目を向け、より有望な未来をともに築くことで、未来に対する信頼を再構築しなければならない」として、グローバルな課題について対話を進める重要性を強調しています。 5日間の会期中には200以上のセッションが予定され、異なる4つの主要テーマが議論の中心となる見通しで、その内容が注目されます。 ●1. 分断された世界における安全保障と協力の実現 ロシアによるウクライナ侵攻や、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続く中東情勢を踏まえ、安全保障の危機や政治的な分断に対しどう対処するかについて意見が交わされます。 16日にはウクライナのゼレンスキー大統領が初めて対面で出席して演説を行うほか、アメリカのブリンケン国務長官や安全保障政策担当のサリバン大統領補佐官が現地入りする予定で、ウクライナ情勢などについて突っ込んだ議論が行われるか注目されます。 ●2. 新しい時代の成長と仕事の創出 世界経済の減速を避け、人々の生活を豊かにするためには、どのような政策や協調が必要かも議論されます。 インフレを抑えるため各国で進められてきた利上げや債務の増加などが課題となる中、関係するセッションには、ヨーロッパ中央銀行のラガルド総裁やWTO=世界貿易機関のオコンジョイウェアラ事務局長など、中銀や国際機関の関係者が参加します。 日本からは新藤経済再生担当大臣が参加して、日本経済の現状などについて説明するほか、河野デジタル大臣も出席します。 また、中国からは李強首相、G7=主要7か国の中では夏にパリオリンピック・パラリンピックを控えるフランスのマクロン大統領が、現地でスピーチを行います。 ●3. 経済と社会をけん引するAI 普及や開発が急速に進むAIも主要な議題となります。 世界経済フォーラムが10日に発表した報告書では、社会や政治の分断を拡大させるおそれがあるとして今後2年間で予想される最大のリスクに「偽情報」をあげ、AIがリスクを増大させていると警鐘を鳴らしています。 18日には生成AIの「ChatGPT」を開発したアメリカのベンチャー企業、オープンAIのアルトマンCEOが参加するセッションも予定され、AIの活用や規制について活発な議論が見込まれます。 ●4. 気候、自然、エネルギーに関する長期戦略 気候変動などの地球規模の課題も去年に続き、議論の柱となります。 企業の代表や研究者のほか、気候変動問題を担当するアメリカのケリー特使などの政府要人も含め、さまざまな立場の参加者が、再生可能エネルギーの活用から異常気象による被害まで幅広い議題で意見を交わす見通しです。 |
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●北朝鮮外相がロシア入り ラブロフ氏が招待 1/15
朝鮮中央通信は15日、北朝鮮の崔善姫(チェソンヒ)外相を団長とする政府代表団がロシアを公式訪問したと報じた。ラブロフ外相の招待を受け、空路で14日にモスクワ入りしたとしている。 崔氏らは17日まで滞在する予定。ラブロフ氏との会談で、労働者の派遣などについて話し合うとみられるほか、プーチン大統領の訪朝についても協議する可能性がある。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が2023年9月に訪ロした際、正恩氏からの訪朝の要請をプーチン氏は受諾している。 聯合ニュースは15日、ロシアのペスコフ大統領報道官が崔氏の訪ロに関連し「北朝鮮とは全ての分野でパートナーシップを発展させる。あらゆるレベルで対話は続く」と語ったと報じた。同ニュースによると、崔氏が外相就任後、単独で海外を訪れるのは初めて。 |
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●プーチン氏に批判的なロシアの詩人が死亡、モスクワで交通事故 遺族公表 1/15
ロシアの詩人で、ウラジーミル・プーチン大統領に批判的なレフ・ルビンシテイン氏(76)が今月、モスクワで交通事故に遭い、死亡していたことが明らかになった。同氏の娘が14日に公表した。 ルビンシテイン氏は旧ソ連の地下文学界の中心的人物で、プーチン大統領に批判的だった。 娘マリア氏によると、ルビンシテイン氏は8日、モスクワ市内で車にはねられて昏睡状態に陥った。6日後の14日に死亡したという。 「私のパパ、レフ・ルビンシテインは今日(14日)亡くなった」と、マリア氏はブログに書いた。 ルビンシテイン氏はソ連時代の、非公式な芸術運動「コンセプチュアリズム」の共同創設者として知られる。 この運動は1970年代から80年代にかけて、様々なかたちで芸術を用いて、ソ連時代の伝統的な規範を覆し、社会主義リアリズムの公式教義を批判した。社会主義リアリズムとは、ソ連時代に台頭し公式化された芸術様式で、芸術を用いて政治アジェンダを推し進めるものだった。 2022年のノーベル平和賞を受賞したロシアの人権団体「メモリアル」は、ルビンシテイン氏を「震えるほど詩的で、洞察力の鋭い、皮肉さを兼ね備えた人物」と評した。 メモリアルはロシアで最も古い人権団体の一つ。ロシア政府がウクライナ侵攻反対派への弾圧を強化したため、2021年12月に解散を余儀なくされた。 メモリアルが「親しい友人」と呼ぶルビンシテイン氏は、ロシア政府によるウクライナ侵攻や、LGBT(性的マイノリティー)の権利に対する政府の姿勢に、強く反対していた。 ルビンシテイン氏はこの2年間、「あらゆることがあったにも関わらず」モスクワに留まることを選んだと、同団体は述べた。 「(そうしたのは)彼自身のためだけでなく、ほかの人たちのためでもあった。自分たち自身を再び見出すための言葉を、そしておそらく、もしかしたら、抵抗するための言葉を見つけようとしている人たちのために」と、メモリアルはソーシャルメディアに投稿した。 |
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●ウクライナ人捕虜200人以上に長期刑 ロシア 1/15
ロシア連邦捜査委員会(Investigative Committee)は15日、ウクライナ人捕虜200人以上に対し、終身刑を含む長期刑を言い渡したと発表した。 同委員会のアレクサンドル・バストリキン(Alexander Bastrykin)委員長は国営ロシア通信(RIA)のインタビューで、「200人以上のウクライナ軍関係者が、民間人殺害や捕虜虐待の罪で長期刑の実刑判決を受けている」と述べた。 ロシアが拘束しているウクライナ人捕虜の総数は不明だが、数千人単位とみられており、多くは2022年にロシア軍がウクライナ南東部の港湾都市マリウポリ(Mariupol)を包囲した際に連行された。 ウクライナ政府や国際人権団体は、ロシアによるウクライナ人捕虜の裁判は違法だと非難している。 ウクライナ人捕虜の一部はロシアに連行されたが、多くはロシア占領下のウクライナ東部で拘束されている。バストリキン氏は、捕虜らがどちらの国内で裁判を受けたのか明らかにしなかった。 だが、ロシア国営テレビRTは捜査委関係者の話として、242人がロシア占領下のウクライナで判決を受けたと伝えた。 |
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●ロシア軍の猛攻でウクライナの反転攻勢が頓挫した理由 1/15
2023年6月に始まったウクライナ軍の反転攻勢は、ロシア軍の3線防御を突破できなかった。 計画では、表面土壌が泥濘化する前に防御ラインを突破し、アゾフ海への進出を、少なくともその地への進出の足掛かりまでは、達成したかったと思われる。 現実には、南部戦線の一部で第2防御ラインにたどり着き、突破の穴を開けようとするところまでだった。 反転攻勢から4か月が過ぎ、10月からロシア軍は東部と北部の戦線で損害を厭わない猛攻をしかけてきた。 ウクライナ軍は、防御線陣地の一部を侵食されているところもあるが、ロシア軍の猛攻を受け止めている。 南部戦線でも、攻勢を止め防勢に転移した。 へルソンの西部戦線では、ドニプロ川の東岸にとりついたウクライナ軍が、ロシア軍の執拗な攻撃を受けてはいるが、対岸に橋頭堡を作る足掛かりを確保している。 ウクライナ軍の防勢への転移は、悪い要素ばかりではない。 敵が大量の兵力で攻撃してくれば、防勢に転移して、待ち受けの利を使い敵戦力を減殺することも必要な作戦戦術なのである。 戦略持久・戦略的防勢転移と言ってもよい。 では、このような戦闘推移におけるウクライナ軍は、何を企図しているのか、その企図を達成しようとする具体的な取り組みを行っているのか、今後の戦況を予想する。 ●1.ウクライナ軍が防勢に転移した要因 ウクライナ軍の攻勢は、南部戦線でロシアの防御ラインを突破する途中でほぼ止まってしまった。 それは、ウクライナ軍総司令部が「防勢にならざるを得なかった」のか、あるいは「意図的にいったん防勢に転移した」のかは、外部から見ると明らかになってはいない。 まず、ウクライナ軍にとって防勢に転移した要因を考察する。 1つの要因で、ウクライナ軍の攻勢が止められたというよりも、下記の要因が複合して転移した、あるいは転移せざるを得なかったと考えられる。 ウクライナ軍が防勢に転移したことは、長期戦を戦うため、また次の反転攻勢のために、賢明な判断であった。 (1) ロシア軍の防御ライン、特に防御の障害処理の困難さ ロシア軍の防御ラインは、広大なライン全域に3線に設置されていた。 障害だけが設置されているのであれば、その処理は戦車ドーザーや障害処理爆薬を使えば、多くの損害を出さずに処理できる。 だが、その位置に防御部隊の火力(航空火力・火砲砲弾・対戦車ミサイルなど)が向けられていた。 障害処理のために停止し、処理している時に部隊が攻撃されて、撃破されてしまう。そのため、大変な壁となった。特に航空攻撃の影響は大きかったようだ。 (2) ロシア地上軍大量兵力投入と犠牲を厭わない攻勢 東部や北部の戦線で、ロシア地上軍が多くの兵力を投入して攻勢を開始した。 ウラジーミル・プーチン大統領から強い命令を受けて、特別軍事作戦の当初の目標、「ドネツク人民共和国(ドネツク州)とルガンスク人民共和国(ルハンスク州)の要請に応えて、特別軍事作戦を実施する」を実現することを目指しているようだ。 それも、兵士・兵器の犠牲を厭わない突入を実施させている。 (3) ロシア軍の組織的な戦闘で高まってきた戦う意識 ハルキウやへルソンでの戦いでは、ウクライナが攻撃すれば、抵抗せずに後退してしまっていた。 ところが、現在は防御陣地も3線にわたって構築し、障害、対戦車火力、火砲火力および航空火力を組織化して戦うようになった。ロシア軍は攻撃されたからといって、すぐに後退することも少なくなった。 戦争開始から時間の経過とともに、ロシア軍の中に戦う意思も生まれてきているのも事実のようだ。 (4) ロシア空軍による地上作戦支援の強化 ロシア空軍は2022年の5月から、都市攻撃から地上軍の支援攻撃(近接航空支援)に作戦を変更した。 それは、ウクライナ軍の6月反転攻勢の前からであった。ロシア空軍戦闘機の爆撃は、ウクライナ軍の防空ミサイルの外から実施しているので、その戦闘機を撃墜できない。 ウクライナ軍にとっては、ロシアの戦闘機になすすべがほとんどないのだ。「F-16」戦闘機が供与されて、長射程空対空ミサイルでロシア軍機を撃墜する方法がある。 12月25日に一度、長射程防空ミサイル(おそらくパトリオットミサイル)を前線に近づけたのか、あるいは「Su-30」×2機(1機は分析中)、「Su-34」×2機がウクライナの防空ミサイル圏内に入ったためか、撃墜できた。 だが、その後は再び警戒され、防空ミサイルの射程内には絶対に入らなくなったために、撃墜できなくなった。 (5) ロシアのミサイルによるウクライナ国内の軍事施設等への攻撃 ロシア軍爆撃機から発射される巡航ミサイルや弾道ミサイル、地上発射の弾道ミサイル攻撃によって、都市や軍事施設が攻撃された。 多数弾による飽和攻撃によって、ウクライナ軍の防空ミサイルによる撃墜率が低下している。 ウクライナ軍の軍事施設も詳細は不明だが、破壊されていると考えてよいだろう。 (6) ロシア軍の無人機攻撃の増加 ロシアの無人機は2023年2月に枯渇してしまうのではないかという英国の予想があった。 しかし、ロシアはその後すぐにイランの自爆型無人機を導入した。これらの無人機は、都市と地上部隊の攻撃に使用されている。 それらは99%がイラン製であり、無人機攻撃数は著しく増加している。ウクライナは、この自爆型無人機を撃墜しており、その率は80%に達している。 (7)ウクライナの戦闘能力を低下させている弾薬不足 ウクライナの弾薬消費量が米欧の弾薬製造量に追いついていない。 ウクライナの報道官の発表では、ウクライナに供与するとしていた弾薬量を提供できない、あるいは契約した時期までに間に合わないという。 どれほど不足しているのかという実態は分からないが、攻勢作戦を継続することに、最も大きな影響を与えたとされている。 アウディウカで無謀な突撃を阻止できないのは、弾薬が不足しているためなのだろう。 ●2.ウクライナ軍の戦いぶり 地上戦で注目されているのは、ウクライナの反転攻勢が膠着していること、また東部・北部戦線でのロシア地上軍の兵士の命をないがしろにした猛攻でウクライナ軍の陣地の一部が占拠されていることである。 また、ウクライナはロシアに攻撃されて現在の接触線を守り切れないのではないか、という見方も出てきている。 ウクライナ軍の戦いぶりについて、改めて注目して分析する。 (1)ドネツク州の東部戦線やハルキウ州やルハンシク州の北部戦線でのロシア地上軍の攻勢では、大量の兵員を投入し、兵士の命を無視して突撃させている。 その攻撃は3か月間続いているが、今でもアウディウカの要塞は陥落していない。 プーチン大統領としては、ドネツク州の全域を占拠したいはずなのだが、その手前のアウディウカの戦いで止まっている。ウクライナ軍はロシア軍の猛攻を凌いでいるのだ。 (2)ウクライナ軍海兵部隊の徒歩兵は、舟艇を使ってドニプロ川を渡河し、敵岸に今なおとりついている。 ロシア軍の攻撃を受けても、その地を放棄することなく残って戦っている。この地があることによって、へルソンへの渡河作戦の足掛かりを保持しているのだ。 そして、へルソンからクリミア半島への攻撃と占拠の可能性を残している。 (3)黒海艦隊司令部はクリミア半島にあるセバストポリ港にあった。 海軍の戦いでは、ウクライナ軍は、無人艇・無人機・巡航ミサイルでクリミア半島の海空軍基地やエネルギーインフラを叩いている。 潜水艦を含む多くの軍艦が破壊された。その結果、ロシア黒海艦隊主力は、クリミア半島のセバストポリ港を離れ、ロシア国内のノボロシクス港まで撤退している。 そして現在も、ウクライナの無人艇が自由に活動することにより、ロシア黒海艦隊の軍艦は、クリミア半島の東域の黒海に進出ができなくなっている。 (4)ウクライナは、ロシアの無謀な攻撃を撃退して、多くの兵員・兵器を殺傷・破壊している。 ロシアは2023年10月から、東部・北部の戦線で無謀な攻撃を実施した。それにより、甚大な損失を出している。 特に、侵攻開始時期から見ると、2023年11月と12月には、最も大きな損失が出ている。 兵士の損失は、直接ロシア軍の兵力不足となり、士気を大きく落とす。 このような戦い方をこれから先、継続することは難しいだろう。ロシア大統領選挙までは、あと1回できるかどうかであろう。 ●3.ロシアの兵器生産能力の欠如 (1)多くの兵器損失を補うための増産は難しい ロシアは、いったん廃止または縮小した軍事工場を再び稼働させて、生産を増やそうとしている。 しかし、いったん生産ラインを止め、廃止したものを簡単に元に戻すことはできない。 製造する機械がなくなっていたり、あるいはその機械に必要な部品が不足したりしていれば、まず生産機器から作り直さなければならない。そう簡単ではないので多くの期間が必要になる。 ロシアは、戦争を開始する時に、多くの損失を想定してはいなかった。 短期決戦であり、損失が出ても、現有装備だけで十分だと考えていただろう。そのため、生産力を著しく増加させることはできてはいない。 ロシアが今、戦車・歩兵戦闘車・火砲を補充しているのは、保管してあったもので、保存状態がいいものから改修している可能性が高い。 その際に、部品の共食いを行っていると考えられる。 プーチン大統領がはっぱをかけて増産することを命令しているが、ロシア地上軍の兵器が急速に増加しているわけではなく、欠品の補充数量は少ないようだ。 歩兵突撃を多用しているのは、兵器が少なくなってきているからだと見てよいだろう。 さらに、ロシアが発射する自爆型無人機は、2023年5月以降、99%がイラン製である。ロシア製は1%にも満たない。 現在、ロシアは北朝鮮の砲弾やミサイルを使用している。これも自国生産では十分な兵器を製造できないからと見てよい。 (2)途中で落下するミサイル、誤爆を誘発する爆弾が散見される ウクライナ空軍発表をみていると、ロシアのミサイルが攻撃の途中でウクライナに達せずにロシア領土に落下しているという。 最近、この情報が散見されるようになった。また、まれにロシア軍機が爆弾を友軍地点に落とすという情報もある。 パイロットの技能の低下ともいわれているが、急ピッチで製造した爆弾や他国から調達した爆弾に欠陥があると考えられる。 ●4.ウクライナの攻勢を成功させる展望 ウクライナは、攻勢作戦をいったん終息させて防勢行動に移っている。 これから再び攻勢に移るのは、非常に難しいことだ。今後、防勢から攻勢に再び転じて、クリミア半島を占領することは可能なのか。 ロシア軍は大量の兵器を保有していたが、多くの損失を出してしまい、それを十分に補充できる能力はない。 一方、ウクライナは、もともと保有兵器は少なかったが、米欧の兵器供与を受けて戦力をアップしてきた。それでも、それらが損失し、ウクライナ軍の大きな痛手になっている。 ザポリージャ州の南部戦線では、攻勢時に獲得した地域はいまだ奪還されてはいない。 へルソン州の西部戦線では、ドニプロ川を渡った部隊がロシア軍に追い落とされずに残っている。 橋頭堡を作る準備はできていると評価してよい。 5個海兵旅団が、渡河作戦の準備をしていたはずだ。その戦力はすべてではないが、大部分が残っているだろう。渡河作戦は、実行が可能だ。 渡河作戦と航空攻撃 ロシア軍は、渡河したウクライナ軍を完全に追い出したかったはずだ。ロシア軍は、できる限り、追い出すために努力したはずだ。 意志はあったが、実行はできなかった。これが、ロシア軍の今の限界なのである。 防勢転移から攻勢に転移し、ウクライナ軍海兵旅団が渡河するのは、ウクライナにF-16戦闘機が供与されて、実際に作戦ができるようになってからだ。 ウクライナの作戦に、ロシアは航空攻撃を主体に反撃に出る。そのほか自爆型無人機攻撃、ミサイル攻撃、砲撃を行ってくるだろう。 ウクライナのF-16は、まず妨害してくるロシア戦闘機を空対空ミサイルで撃墜する。そして、渡河を妨害してくる地上軍を航空攻撃で撃破する。 ロシアもウクライナも、無人機攻撃とミサイル攻撃を行うだろう。 反転攻勢を始めてから、ロシア戦闘機にかなり痛めつけられた。F-16が戦えば、その妨害のほとんどがなくなるだろう。 ウクライナ軍渡河作戦を妨害するロシア戦力を撃退できるかどうかが、ウクライナの攻勢を成功させるカギとなる。 |
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●国連、戦争で荒廃したウクライナと難民支援に42億ドルを要請 1/15
ジェネーブ:国連とそのパートナーは15日、ウクライナでの戦争で荒廃した地域社会とウクライナ難民を支援するため、2024年は42億ドルの資金援助を拠出するよう訴えた。 「戦争の最前線にあるコミュニティでは、何十万人もの子どもたちが恐怖におびえ、心に傷を負い、基本的なニーズを奪われている」と国連事務次長(人道問題担当兼緊急援助調整官)のマーティン・グリフィス氏は述べた。 「この事実だけでも、ウクライナにより多くの人道支援を提供するために、あらゆる手段を講じなければならないはずだ」 国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、ロシアの全面侵攻により、今年はウクライナ人口の40%にあたる1460万人以上が人道支援を必要とする。 OCHAによると、支援を必要としている人々のうち330万人以上が、ロシアに占領された地域を含む、ウクライナの東部と南部の前線地域に住んでおり、その地域へのアクセスは依然として「著しく妨げられている」という。 このアピールの一環として、OCHAは、2024年に人道支援を切実に必要としている850万人を支援するために31億ドルを要求している。国連難民高等弁務官事務所は、230万人のウクライナ難民とその受け入れコミュニティを支援するために11億ドルを求めている。 2022年2月に開始されたロシアの侵攻により、約630万人が海外への非難を余儀なくされている。OCHAによると、約100万人の子どもを含む400万人が国内で避難生活を強いられている。 「受け入れ国は、難民の保護を継続し、難民を社会に受け入れているが、脆弱な難民の多くは依然として支援を必要としている」と国連難民高等弁務官事務所のフィリッポ・グランディ氏は述べた。 「亡命先で生活が成り立たないからといって、帰国を迫られるようなことがあってはならない」 |
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●スイスとウクライナ、和平案巡るダボス協議に参加訴え 1/15
ウクライナの和平について話し合う「平和の公式」国際会議の第4回会合が、世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)に先立つ14日、スイスのダボスで開かれた。80を超える国・国際機関が参加したが、具体的な合意には至らなかった。ロシアや中国は参加を見送ったが、スイスのイグナツィオ・カシス外相は、これらの国々が関与することの重要性を訴えた。 ウクライナ政府の高官らは、協議は「オープンで建設的」だったとし「包括的で公正かつ永続的な和平」を達成するための重要な原則について、参加国が同じ認識を持つことができたと述べた。 会議ではウクライナが「平和の公式」を提示し、80を超える国と国際機関の安全保障担当高官らが和平への道筋について議論した。ウクライナのアンドリー・イェルマーク大統領府長官は会合後の記者会見で、同案が多くの国々に支持される「共同案」になることを期待していると語った。 「平和の公式」は10項目から成る和平案で、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が2022年11月に提唱した。同案について、これまでにコペンハーゲン、サウジアラビアのジッダ、マルタで国際会合が行われた。 第4回会合の共同議長を務めたスイスのカシス外相は、「地球の運命を左右する」事態において話し合いに代わるものはないと訴え、「約2年にわたる戦争を経て、ウクライナの人々は緊急に平和を必要としている。ウクライナがこの戦争を終わらせるために、私たちはできる限りのことをしなければならない」と語った。 会議の開催にあたり厳重な警備体制が敷かれた。ダボス上空は今月12日から飛行禁止となり、ダボスの中心地は警察や軍による警備が強化された。50人を超える報道関係者に対しては開始直前に記者会見の場所を知らせるという徹底ぶりだった。 ウクライナは、15日に始まるダボス会議に合わせ第4回会議を共催するようスイスに呼び掛けていた。WEF創設者のクラウス・シュワブ氏とヒルダ夫人はカシス氏とともに記者会見の最前列に座り、主要な外交関係者が集まる場としてのWEFの重要性を印象付けた。 ●和平案に対する国際的な圧力 会議では、和平案の6〜10項目に掲げられた「敵対行為の停止」と「ロシア軍の撤退」、「正義の回復」、「環境破壊行為(エコサイド)対策」、「エスカレーションの防止」、「戦争終結の確認」を中心に話し合われた。 ウクライナのユリア・スビリデンコ第1副首相兼経済相は、「ロシアはウクライナ人だけでなく、世界中の人々を標的にしている」と述べた。 食料安全保障や人道的問題についても話し合われた。スビリデンコ氏は「ロシアが土地や貯蔵施設を破壊し、輸送を妨害している」ため小麦の価格が高騰し、現在3億人以上が供給不安を抱えていると訴えた。 今回の会議には、支援の中心となっている米国や欧州諸国に加え、ブラジル、インド、サウジアラビア、アルゼンチン、南アフリカからも参加があった。イェルマーク氏とカシス氏は、前回よりも多くの国・機関の参加が得られたことは、協議の成功を裏付けるものだとした。 カシス氏によれば、ロシアとの接触を促進し「この戦争から抜け出す創造的な方法を見つける」ためには、これらの国々の参加が非常に重要だという。ウクライナは現在、南アメリカとアフリカでの二国間会議の開催を計画している。 ロシアへの働きかけが最も期待される中国は、2回連続で参加を見送った。イェルマーク氏は、中国がキーウでの大使会談やジッダでの会議には出席したことに触れ、「中国は重要で影響力のある国。中国を関与させる方法を探す」と述べた。ダボス会議には中国から李強首相が出席する。ゼレンスキー氏が李氏と会談するかどうかについては明らかになっていない。 ●ロシアなくして和平なし カシス氏は14日、戦争終結に向けた交渉は長い道のりになるとの認識を示し、「何らかの形でロシアをこのプロセスに関与させる必要がある。ロシアの関与なしでの平和はありえない」と述べた。 ロイターの報道他のサイトへによると、ロシアは「平和の公式」について、ロシアの関与なしに和平を見出そうとする、不合理なプロセスだと主張している。 そうした反応についてカシス氏は、会談の目的はロシアを満足させることではなく、10項目の和平案について国家間の共通認識を作り「いつ、どのようにロシアを関与させることができるか」を見極めることだと明言した。 ●無駄にできない時間 ウクライナの一部では依然として激しい戦闘が続いている。カシス氏はそうした中でも和平に向けた準備を進めることの重要性を訴えた。 同氏は「毎日、ウクライナでは何十人もの民間人が亡くなっている。我々に待つ権利はない」と述べ、状況が許す限り「準備を整えなければならない」と強調した。会議は「時が来たときに、ロシアとのプロセスを開始できるようにする」ためだとした。 イェルマーク氏は会議後、首脳級の第1回平和サミットの準備を進められる可能性があると発言したが、開催期間については明言しなかった。 今回の会議は、西側諸国の「支援疲れ」が懸念される中での開催となった。さらなる資金と武器供与なしに、ウクライナはロシアからの攻撃から身を守ることができるのか、見通しは不確かだ。 ●スイスの役割 今回の会議は、2022年2月にロシアがウクライナ侵攻を開始して以来、スイスが主催した2回目のウクライナに関する国際会議となった。 スイスは2022年7月、ティチーノ州ルガーノでウクライナの復興支援を議論する国際会議を開催。40超の国と欧州投資銀行や経済協力開発機構(OECD)などの国際機関が参加し、汚職との戦い、民主的価値観への約束、透明性のある政府、基本的権利の保障など7つの原則が盛り込まれたルガーノ宣言に署名した。 カシス氏は、ダボスで「平和の公式」会議を共催できた要因として、スイスの「平和構築の長い伝統」を強調した。 スイスは、核の安全、食料安全保障、戦争の終結など、いわゆる平和の公式を扱う3つの作業部会にも参加している。このほかウクライナに対し、約4億フランの人道支援を行っている。このうち約1億フランは地雷除去活動に充てられる。 またスイスは、ウクライナに対し2026年までに少なくとも15億フランを支援する方針を明らかにしている。スイスは中立政策により、紛争当事者に武器を提供することはできない。 昨年12月、スイス連邦政府は制裁措置の一環として、77億フランのロシア資産を凍結したと発表した。 |
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●ダボス会議開催 ゼレンスキー大統領が演説へ 1/15
世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)が15日、スイス東部のダボスで開催される。19日まで。各国の首脳60人以上が出席し、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢、人工知能(AI)の規制などについて協議する。 年次総会には、ウクライナのゼレンスキー大統領が参加。16日に演説を行う予定で、同国への支援継続を訴えるとみられる。ブリンケン米国務長官や中国の李強首相、マクロン仏大統領らも出席する予定。 年次総会の開催に先立ち、ゼレンスキー氏が提げる領土回復や戦争犯罪の処罰など10項目の和平案「平和のフォーミュラ(公式)」について話し合う4回目の国際会合がダボスで行われた。80カ国以上の国・機関の代表が出席した。 参加国は回を重ねるごとに増え、出席したウクライナのイエルマーク大統領府長官は「光栄に感じる」と評価。「(参加国は)この欧州の紛争が、全人類にとっての課題であることを理解している」と述べた。ウクライナは、和平案への国際的支持を広げ、ロシアへの外交圧力を強めたい考えとみられる。 欧州メディアによると、和平案を拒否する立場をとっているロシアは会合に招待されなかった。ロシアとの協力を強化する中国はウクライナの招待を受け入れず、代表を送らなかった。 イエルマーク氏は14日、「ロシアとの戦争終結に向けた協議に中国が関与する必要がある」と強調した。 李氏はロイター通信などに対し、年次総会の期間中ゼレンスキー氏と面会するかどうかは「様子を見る」との発言にとどめている。 |
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●米テキサス州、天然ガス供給不足の恐れ 設備凍結で 1/15
米国の天然ガス生産量は14日、気温低下により各地の生産設備が凍結し、11カ月ぶり低水準を記録した。一方で暖房や発電用のガス需要は過去最高を記録する勢いで増加している。 テキサス州の電気信頼性評議会(ERCOT)は、16日の電力需要は昨年夏に記録した過去最高を更新すると予想。15日と16日は電力供給が不足する恐れがあるとの見方を示した。 ERCOTは14日、現地時間15日午前6時から10時の間に節電をするよう呼びかけ、州政府に各施設の電力使用を減らすよう求めた。 LSEGが集計したデータによると、今週に入ってからの米国のガス供給量は過去1年超で最大の落ち込みを記録している。8─14日に供給量は日量約96億立方フィート減少し、14日には11カ月ぶり低水準の986億立方フィートを記録する見通し。 |
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●健康不安説のベトナム最高指導者、国会に出席 1/15
健康不安説が浮上していたベトナムの最高指導者グエン・フー・チョン共産党書記長(79)が15日、国会に出席した。 チョン氏は今月、同国を訪問したインドネシアのジョコ大統領やラオスのソンサイ首相との会談が公式予定に記載されず、健康不安説が流れていた。 国営メディアは15日、ウェブサイトでチョン氏の国会出席を強調。他の指導者とともに微笑む姿や議場に立つ姿を写した写真を掲載した。 ロイターの記者によると、チョン氏は議長の開会演説の直後、側近の助けを借りて議場を後にした。 チョン氏は2011年以降、共産党一党支配のベトナムで最高指導者である書記長を務めている。 |
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●ウクライナ提唱の和平案を話し合う協議 議長声明を見送り 1/15
ウクライナが提唱する和平案について欧米や新興国などが話し合うためスイスのダボスで14日開かれた協議では、議長声明の発表が見送られ、背景には、ロシアとの関係も重視する国々の強い反対があったことがわかりました。多くの関係国の同意を得ながら、和平に向けた道筋を探る難しさが改めて浮き彫りになりました。 スイスのダボスでは14日、ロシア軍の撤退や領土の回復など、ウクライナが提唱する10項目の和平案について話し合う4回目の協議が開かれました。 G7=主要7か国や、グローバル・サウスと呼ばれる新興国の高官などが参加し、ウクライナ側は、80を超える国と国際機関が参加し、大きな成果が得られたとしています。 ただ、議論の成果をまとめた議長声明の発表は見送られ、外交筋によりますと、その背景には、ロシアとの関係も重視するブラジルやインド、サウジアラビアの高官が強く反対したことがあったということです。 結局、メディア向けの声明が発表されましたが、すべての参加国の意見が反映されているわけではないとも記されていて、反対する国々への配慮もうかがえます。 ロシアによる軍事侵攻が始まって2月で2年となる中、欧米や新興国などは、この協議の枠組みで和平のあり方をめぐり議論を始めていますが、多くの関係国の同意を得ながら、その道筋を探る難しさが改めて浮き彫りになりました。 ●ロシア “ロシア抜きの協議は意味がない” 軍事侵攻の継続強調 スイスのダボスで開かれた、ウクライナが提唱する和平案について話し合う協議について、ロシア大統領府のペスコフ報道官は15日、記者団に対し、「これは本質的に議論のための議論だ。成果の達成を目標としていない。われわれが参加していないからだ」と述べ、ロシア抜きで行われた協議は意味がないとけん制しました。 そのうえで、「ロシアは平和的な解決を望んでいるが、欧米側、ウクライナ側が消極的なので不可能な状況だ。目標を達成するために特別軍事作戦を継続する」と述べ、ウクライナ側が停戦交渉を拒否していると一方的に主張し、軍事侵攻を続ける姿勢を強調しました。 |
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●ロシア印首脳が電話会談、ウクライナや両国の選挙巡り協議=大統領府 1/16
ロシアのプーチン大統領は15日、インドのモディ首相と電話会談し、ウクライナ情勢を巡り協議した。さらに今年のインド総選挙およびロシア大統領選での互いの健闘を祈った。クレムリン(大統領府)が発表した。 クレムリンのウェブサイトに掲載された声明によると、両首脳は「互恵的な二国間関係の一段の強化に関心を表明」した。 ロシアのウクライナ侵攻以降、インドは時折ロシアの軍事作戦を批判し、米国を含む西側諸国との関係を継続しつつも、ロシアとの友好関係を維持している。 |
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●ウクライナ、中東に米国内戦?2024年の世界を左右する「3つ戦争」 1/16
1日に能登半島地震、2日にはJAL機炎上事故と、波乱の幕開けとなった2024年。海外に目を移せば、ウクライナや中東で上がる戦火は収まる気配もありません。かような2024年の「リスク」を考察しているのは、ジャーナリストの高野孟さん。今年の世界を大きく左右するであろう「3つの戦争」を解説しています。 米国の国際情勢分析家イアン・ブレマー=ユーラシアグループ代表が毎年初に発表する「今年の10大リスク」は正月の楽しみの1つで、もちろん本誌の見方とは一致するところもあればしないところもあるが、その両方を含め大いに知的な刺激を与えてくれる。 ●「アメリカ対アメリカ」の域に達しつつある米国内の対立 ブレマーの「2024年10大リスク」のNo.1は「米国の敵は米国」──すなわち米国内の対立が極端なところにまで進み、政治制度が前例のないほどの機能不全に陥る中での大統領選が世界80億人の運命を左右することこそ、今年の最大の問題であるというにある。これは、本誌が前号でこの大統領選を「史上最悪の『悪魔の選択』」と呼び、その根本原因を「ポスト覇権という世界的なトレンドに適応することが出来ず、従ってそのトレンドの中で自分がどのような地位と役割を占めればいいのか分からなくなってしまった『アイデンティティ喪失状態』に陥っていること」と説明したのと、結論において一致する。 そこへ話を持っていくブレマーのレトリックが面白くて、「3つの戦争が世界情勢を左右する。ロシア対ウクライナは3年目、イスラエル対ハマスは3カ月目に入った。そして米国対米国の争いは、今にも勃発しそうだ」(「はじめに」)と言う。つまり、米国内の対立はすでに米国が米国を敵とする「戦争」の域に達しつつあるという訳である。 ●米国の政治システムの機能不全は先進工業民主主義国の中で最もひどく……そして今年はそれがさらに悪化するだろう。大統領選は、米国の政治的分裂を悪化させ、過去150年間経験したことのないほど米国の民主主義が脅かされ、国際社会における信頼性を損なうだろう。 ●2大政党の大統領候補は、いずれも大統領に不適格だ。トランプ元大統領は、自由で公正な選挙の結果を覆そうとしたことなど何十件もの重罪で訴追を受けている。バイデン大統領は2期目終了時に86歳になる。米国人の大多数は、どちらも国のリーダーにはしたくないと考えている。 ●トランプが勝てば、広範な暴力が現実のリスクとなり、米国の民主主義の終焉を招くことになろう。また、投資先としての米国の長期的な安定性、金融面での約束の信頼性、海外パートナーとの約束の信頼性、グローバルな安全保障秩序の要としての役割の持続性についても、根源的な疑問が生じ始めるだろう……。 ここで「150年間経験したことのない」と言うのは、リンカーン暗殺で終わった南北戦争以来、という意味なのだろうか。だとすると、民主主義の本家を自慢してきた米国は、もう一度内戦を戦わなければならないほどの民主主義の壊れ方に直面しているということになる。それにしても不思議なのは、誰が見てもそんな馬鹿馬鹿しい結果にしかならないことが分かりきっている大統領選の構図を取り除いて、別のものに置き換える力がこの国のどこにも残っていないというのはどうしてかという問いに、ブレマーも答えていないことである。 ●「分割」から逃れられないウクライナ さて、他の2つの戦争はどうなるだろうか。ブレマーの今年のリスクNo.3は「ウクライナ分割」である。 ●ウクライナは今年、事実上分割される。ウクライナと西側諸国にとっては受け入れがたい結果だが、現実となるだろう。少なくとも、ロシアは現在占領しているクリミア半島、ドネツク、ルガンスク、ザポロジエ、ヘルソンの各州(ウクライナ領土の約18%)の支配権を維持し、支配領域が変わらないまま防衛戦になっていくだろう。 ●ロシアは現在、戦場での主導権を握っており、物的にも優位に立っている。ウクライナが人員の問題を解決し、兵器生産を増やし、現実的な軍事戦略を早急に立てなければ、早ければ来年にも戦争に「敗北」する可能性がある。 ●ウクライナが分割されれば、国際舞台における米国の信頼も損なわれる。バイデンは選挙の年にウクライナ問題での政治的敗者となり、その分だけトランプが有利になる……。 ゼレンスキーが昨年6月に開始した「反転攻勢」は失敗に終わり、クリミアはもちろん東部のロシア系住民が多数を占める地方の領土的奪回はすでに困難になった。そうなってしまうのは、(ブレマーはそれについて何も言っていないが、私に言わせれば)単に戦場での現在の力関係の問題ではなく、ウクライナ戦争の政治的本質ゆえである。 本誌が繰り返し指摘してきたように、2014年以来のキーフ政府と東部諸州の内戦は、フランスとドイツも後見人として加わった国際的な協約としての「ミンスク合意」に従って、ウクライナが東部のロシア系住民に一定の自治権を付与する制度改革を実行することを怠ったことから始まったもので、だからと言ってロシアがそれに武力介入したのは戦術的に誤りだとは思うけれども、結局のところ問題は、どうしたら東部のロシア系住民の自治権=生存権を保証できるかに帰着せざるを得ない。 これは、仮にゼレンスキーの反転構成が成功して彼が東部の領土を奪還したとしても同じことで、彼はやはり憲法を改正し法律を整備して東部に一定の自治権を付与して融和を図る以外にない。だったら最初からそうしていれば、内戦が激化し、ついに我慢し切れなくなったプーチンの介入を招くこともなかったのである。政治的に妥当性のない軍事作戦ほど成功の見込みが少ないものはない。 ●ガザの戦火は中東全体に拡大するのか ブレマーの今年のリスクNo.2は「瀬戸際に立つ中東」である。 ●今のところ戦争はガザに封じ込められているが、火薬は乾いており、現在のガザでの戦闘は、2024年に拡大する紛争の第1段階に過ぎない可能性が高い。 ●イスラエルのネタニヤフ首相には、ガザ作戦を継続したり、北部でヒズボラ攻撃の作戦を開始したりする理由がある。失脚や刑務所行きを避けるためだ。 ●米軍はほぼ間違いなくイスラエルの活動を支援し、イランはヒズボラを支援するだろう。エスカレートのスパイラルは、イスラエル・米国とイランの間の影の戦争を実際の戦争に変える可能性がある。 ●武装組織フーシもまた、エスカレート路線を追求している。フーシがこの路線を続ければ、イエメン国内の基地が攻撃される可能性が高まり、米国とその同盟国がより直接的に戦争に巻き込まれることになる……。 このような負の連鎖を食い止めるには、そもそものイスラエルとパレスチナの2国家共存の道筋に立ち返るしか方法がないが、ネタニヤフには全くその気がなく、そのためユダヤ人に対する暴力が世界中で蔓延するだろう。 こうして「3つの戦争」は相互に絡みながら、2024年の見通しをますます暗いものへと追いやっていくだろう。 ちなみに、他のリスクは次の通り。 No.4 AIのガバナンス欠如 No.5 ならず者国家の枢軸 No.6 回復しない中国 No.7 重要鉱物の争奪戦 No.8 インフレによる経済的逆風 No.9 エルニーニョ再来 No.10 分断化が進む米国でビジネス展開する企業のリスク |
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●ハイブリッド戦に包含 ウクライナによるモスクワ系正教会非合法化法案 1/16
ウクライナ最高議会でモスクワ総主教系ウクライナ正教会(UOC―MP)の活動を非合法化する法案が昨年10月、第1読会を通過した。これに対し、信教の自由を巡り国外から批判が出始めており、ロシア側もUOC「迫害」を盛んに訴える。ロシア・ウクライナのハイブリッド戦争に正教会が深く組み込まれている。 モスクワ総主教庁は信教の自由に関わる国連人権高等弁務官事務所の見解をウクライナ政府批判のためにしばしば援用してきた。一方、UOC―MP系のウェブサイトUOJ(正教会ジャーナリスト同盟)によれば、ウクライナ議会内では11月下旬、議員51人がUOC―MP非合法化法案の法的適合性に関し、欧州評議会ベネチア委員会(国際法、憲法専門家、裁判官などで構成)に意見を求めるようステファンチュク議長に要求した。 |
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●ウクライナ軍のM2歩兵戦闘車ペア、ロシア最高の戦車T-90を撃破 1/16
米国製のM2ブラッドレー歩兵戦闘車は、いうまでもなく戦車ではない。主に戦場での歩兵の輸送を用途とした車両である。 だが、乗員に相当な技量があり、少しばかりの運も手伝えば、30t、11人乗りで砲塔に25mm機関砲とTOW対戦車ミサイル、側面に爆発反応装甲を備えたM2は、ロシア軍最高の戦車に対して互角以上の戦いができる。 この短時間の激しい戦闘は、ウクライナ軍のドローン(無人機)によって撮影されていた。アウジーイウカ周辺ではこの3カ月、4万人の大兵力を投入して攻略をめざすロシア軍と、1万人規模のウクライナ軍守備隊の間で、こうした激戦が何百回と交わされている。 12日にオンラインで共有された映像では、2両のM2が1両のT-90と交戦する。理論上は、M2はたとえ2両がかりでも、51t、3人乗りで125mm滑空砲や数百mmの厚さの複合装甲を備えたT-90と互角に戦えるとは考えられない。 だが、第47旅団のM2の乗員たちは7カ月にわたって戦闘を続ける(その過程でM2を少なくとも31両失った)なかで、いまやM2の世界一の使い手になったのかもしれない。その腕前はもはや本家・米陸軍の乗員すらしのぐかもしれない。 この戦闘では、まずT-90が射撃するが外している。その後はM2コンビが機動でも射撃でも圧倒する。1両目がT-90に機関砲で25mm弾を浴びせ、駆け抜けていく。次に2両目が反対側から疾走してきて、1両目が去った場所あたりまで行き、至近距離からT-90に25mm弾を注ぐ。 M2の機関砲は毎分200発のペース、毎秒1100mの初速で0.45kg弾を発射する。高精度の光学照準器と正確な射撃統制装置と組み合わされたこの機関砲は、残酷なまでに効果的だ。 アウジーイウカ周辺では以前、ウクライナ軍の1両のM2が、わずか30秒の間にロシア軍のMT-LB装甲牽引車3両を立て続けに攻撃し、おそらくすべて撃破している。 T-90はMT-LBよりもはるかに防護力が高いものの、関係なかった。M2の容赦ない射撃によってT-90の操縦士と車長は死亡したとみられる。戦車のほうもひどく損傷し、制御不能に陥る。 砲塔を回転させながら、T-90は木にぶつかって止まる。「ロシア兵の技術と訓練はあまりにお粗末」だとパーペチュアは嘲っている。 米議会でロシア寄りの共和党員らが滞らせているバイデン政権の610億ドル(約8兆8000億円)の対ウクライナ追加支援予算が承認されれば、一部はM2の追加供与に充てられるはずだ。 M2はロシアとウクライナの戦争で最も有効な兵器の1つになっている。追加予算が執行されれば、ウクライナ軍はそれを大量に手にすることができるだろう。 |
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●地域紛争が主要議題に=ダボス会議開幕 1/16
世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)が15日、スイス東部ダボスで開幕した。米国のブリンケン国務長官やウクライナのゼレンスキー大統領ら政財界のリーダーが出席。ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の悪化など地政学的な緊張が高まる中、地域紛争が主要議題の一つとなる見通し。 今会合のテーマは「信頼の再構築」。大国間の対立が激化し、武力紛争で世界の秩序がさらに不安定化する恐れがある中で、「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の役割が注目される。気候変動対策や食料危機なども話し合われる見込みで、連携に向けた信頼構築が喫緊の課題だ。 |
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● ダボス会議 始まる ウクライナ侵攻・中東情勢の危機収束へ議論 1/16
世界の政財界のリーダーが集まる通称「ダボス会議」がスイスで始まりました。ウクライナ侵攻に加え、ことしは中東情勢に関するセッションが設けられ、危機の収束に何が必要なのか議論が行われる見通しです。 通称「ダボス会議」として知られる世界経済フォーラムの年次総会は15日、スイス東部の山あいの町ダボスで始まりました。 ことしは120の国と地域からあわせて2800人余りの政財界のリーダーたちが参加し、不透明な世界情勢を踏まえ「信頼の再構築」を全体テーマに議論を交わします。 16日はウクライナのゼレンスキー大統領が演説し、支援の継続を訴えるとみられるほか、アメリカのサリバン大統領補佐官や中国の李強首相などのスピーチも予定され、その発言の内容が注目されます。 会期中はウクライナ侵攻に加え、中東情勢に関するセッションも設けられます。 イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くなか、17日には仲介役のカタールを含む中東各地の閣僚らが参加して「紛争の出口」を議題に危機の収束に何が必要か議論を行う見通しです。 また、最終日の19日にはヨーロッパ中央銀行のラガルド総裁など中銀トップらが参加し、根強いインフレや各国で進められてきた利上げが世界経済に及ぼす影響についても意見が交わされます。 |
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●モルドバ、ロシアからの市民権申請急増で対応困難に 1/16
旧ソ連モルドバの当局は15日、ロシアからの市民権取得申請が急増しており、対応が困難になっていると明らかにした。 モルドバの市民権に関する事務手続きを担当する機関は政府に対し、市民権申請を審査する期間を現行の20日から6カ月に延長するよう要請した。 当局は、ロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学情勢により、モルドバの市民権を取得しようとする人が増えたと説明した。 当局によると、市民権申請者の70%はロシア人、20%はウクライナ人となっている。ただ申請者の人数は明らかにしなかった。 欧州寄りのモルドバ政府は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を非難している。 |
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●ウクライナ軍、ロシアの偵察機と司令機を破壊 1/16
ウクライナ軍は15日、アゾフ海域でロシアのベリエフA−50偵察機とイリューシンIl−22空中指揮機を破壊したと発表した。どのような攻撃によるものかは明らかにしなかった。 アゾフ海はウクライナの支配地域からおよそ100キロ離れている。ロシア国防省はコメントを発表していない。 その後、ロシアの軍事ブログは、傷ついたIl−22の尾翼部分の画像を掲載し、乗組員を「真の英雄」と称賛した。 ウクライナ空軍の報道官はこの画像を再投稿し、同機はロシア南部のアナパに不時着したようだが、炎上したため修理不可能だと述べた。また、A−50はウクライナにとって優先ターゲットだったとした。 |
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●露朝の連携 武器協力は世界の危機深める 1/16
北朝鮮によるロシアへの武器供与で、ウクライナ情勢がロシアに有利に傾くことになれば、欧米の「支援疲れ」を一層拡大させ、世界の危機をさらに深めることになる。 露朝の軍事協力に、国際社会は 毅然 と対処する必要がある。 米政府は、北朝鮮がロシアに数十発の弾道ミサイルと発射装置を供与したと発表した。ロシアは昨年末から年明けにかけて、そのミサイルをウクライナへの攻撃に使用し、ハルキウ州やザポリージャ州に着弾させたという。 今回の弾道ミサイルのほかにも、ロシアは昨年以降、北朝鮮から砲弾などの供与を受けている。ウクライナ侵略の長期化で、武器が枯渇しているのだろう。 核、ミサイル開発を続ける北朝鮮との武器取引は、国連安全保障理事会の決議で禁じられており、安保理常任理事国のロシアは、これに賛成した経緯がある。 そのロシアが決議を破り、北朝鮮から武器を調達してウクライナ侵略に使用するとは言語道断だ。ロシアには、国際の平和と安全に責任を負う常任理事国としての資格がないと言わざるを得ない。 米欧日など約50の国と機関が共同声明を出し、露朝の軍事協力を非難したのは当然だ。 先週、この問題を討議した安保理で、米欧日は「北朝鮮のミサイルがウクライナの重要なインフラを破壊している」と非難した。これに対し、ロシアは北朝鮮からの武器供与を「米国による間違った情報だ」と反発した。 安保理が機能不全に陥っている以上、米欧日は、露朝の軍事協力の停止を求める決議案の国連総会への提出を検討すべきだ。総会決議に拘束力はないが、多数の国連加盟国がそろう場で国際世論を喚起していく意味は小さくない。 米国では与野党の対立で、ウクライナへの追加支援が滞っている。欧州でも、ウクライナ支援よりも物価高騰への対応を優先するよう求める声が強まっている。 米欧の指導者には、国際秩序を守る意義を粘り強く説き、軍事支援を続けてもらいたい。日本も、防衛に限った装備などを可能な範囲で支援していきたい。 露朝の軍事協力は、欧州だけの問題ではない。北朝鮮は武器供与の見返りとして、ロシアに戦闘機の供与を求めている模様だ。 北朝鮮が、現在保有している戦闘機を新型に更新すれば、アジアの脅威となる。政府は北朝鮮の能力を見極めるとともに、米韓との安保協力を深めねばならない。 |
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●オースティン米国防長官が退院、自宅療養に 大統領に未報告で批判 1/16
米国防総省は15日、オースティン国防長官が同日にワシントン近郊のウォルター・リード軍医療センターから退院したと発表した。体調は順調に回復しているといい、オースティン氏は「自宅療養を続けながら職務を遂行し、一刻も早く完全に回復して国防総省に戻りたい」とする声明を出した。 オースティン氏は今月1日、前月22日に受けた前立腺がんの手術で合併症を発症して秘密裏に入院した。しかし、バイデン大統領には4日まで入院が知らされておらず、がんの手術や合併症の状況も9日に初めて報告された。 中東やウクライナ情勢が緊迫する中、国防トップの健康状態を米軍の最高司令官である大統領が把握していなかったため、議会から批判の声が上がっていた。バイデン氏はオースティン氏が報告しなかったことは「判断の誤り」との認識を示している。 |
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●トランプ氏が指名争い初戦勝利 米大統領選 共和党アイオワ州党員集会 1/16
11月の米大統領選に向けた野党共和党の候補指名争いの初戦となるアイオワ州の党員集会が15日夜(日本時間16日午前)、州内約1600カ所以上の会場で開かれた。米主要メディアによると、返り咲きを狙うトランプ前大統領(77)が勝利を確実にした。 ロシアによるウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザ情勢を巡る対応、移民対策、経済政策などを争点に、本選に向けた戦いが始まった。 米紙ニューヨーク・タイムズの日本時間16日正午現在の集計によると、得票率はトランプ氏が52.8%、デサンティス・フロリダ州知事(45)が20.0%、ヘイリー元国連大使(51)が約18.7%。トランプ氏は岩盤支持層に加え、白人の比率が高く保守的なアイオワ州の有権者に幅広く浸透。2位以下の候補を引き離した。 アイオワ州の党員集会は序盤の選挙戦に大きな影響を与えるため、各候補は精力的に同州入りして支持を訴えてきた。AP通信によると、トランプ氏は1月だけでテレビ広告や郵便物の送付などに約1千万ドル(約14億4千万円)の資金を投入。猛追が伝えられるヘイリー氏も同1500万ドル以上(約21億6千万円)を費やしたとされる。 共和党の指名争いは一時、10人以上の候補が乱立したが、トランプ氏が議会襲撃事件などでの起訴を逆手に劇場型の選挙戦を展開して党内支持率で独走。ペンス前副大統領ら複数の候補がアイオワ州の党員集会の前に撤退した。主要候補はトランプ氏、ヘイリー氏、デサンティス氏の3人に絞り込まれた。 共和党候補を選ぶ党員集会・予備選は1〜2月に東部ニューハンプシャー州、南部サウスカロライナ州などでも行われ、3月5日に10州以上で集中的に行われるスーパーチューズデーでヤマ場を迎える。 民主党は、再選を目指すバイデン大統領(81)以外の有力候補がおらず、バイデン氏の党候補指名が確実視されている。 ●全米注目の初戦地アイオワ 過去に波乱も 米大統領選のスタートを飾るアイオワ州の党員集会は、多くの国内外メディアが報じる全米注目の一戦だ。過去にはアイオワを制した候補が勢いに乗って大統領選に勝利した歴史もあり、米国の真ん中に位置する農業州が4年に1度、脚光を浴びる舞台でもある。 1972年以降、大統領選最初の党員集会はアイオワで開催されてきた。民主党の第39代大統領カーター氏や第44代のオバマ氏はアイオワでの勝利で弾みをつけた。 初戦に向け、各陣営は多大な資金と運動員を投じる。ただ、アイオワ州での結果が必ずしも候補指名に結び付かないことも多い。2020年の前回は、民主党のバイデン大統領がアイオワをはじめ序盤州で連敗したが、第4戦の南部サウスカロライナ州予備選で初勝利して最終的に指名にこぎ着けた。民主党は今回、党候補選びの初戦を2月3日のサウスカロライナ州に変更する。 人口推計約320万人で白人の比率が高く保守的とされるアイオワ州は、米国有数のトウモロコシ生産地。養豚も「人より豚の数が多い」と言われるほど盛ん。1959年の伊勢湾台風などで山梨県の養豚が被害を受けた際、アイオワが豚を贈って支援した。映画「フィールド・オブ・ドリームス」や「マディソン郡の橋」の舞台にもなった。 |
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●中国の国有銀が対ロ制限措置を強化、米の二次制裁承認で−関係者 1/16
中国の国有銀行はロシア顧客の資金調達に対する制限を強化する。ウクライナ軍事侵攻を続けるプーチン政権の取り組みに手を貸す海外の金融機関を対象とした二次制裁を米国が承認したことを受けた措置。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。 関係者によれば、少なくとも2行がここ数週間に国境を越えた取引に照準を定め、ロシアビジネスの見直しを指示した。非公表の情報だとして匿名を条件に述べた。銀行は制裁リストに載っている顧客との関係を断ち、通貨や取引場所にかかわらず、ロシアの軍事産業への金融サービスの提供を停止するという。 関係者によれば、金融機関は顧客に対するデューデリジェンスを強化し、事業登録、承認された受益者、最終的な管理者がロシア出身かどうかのチェックを行う。この審査は、ロシアでビジネスを行っている、あるいは第三国を通じて重要な品目をロシアに輸出しているロシア人以外の顧客にも拡大される予定だという。 ロシアのウクライナ侵攻が米国を含む国々からの制裁を引き起こした後、中国の国有銀行は少なくとも2022年序盤から制限を設けていた。米財務省は先月、ロシアが戦争に必要な装備を調達するための取引を促進する銀行に対して二次制裁を行うと発表し、プーチン大統領に対する金融面での戦いを拡大した。 中国の国家金融監督管理総局にコメントを求めたが、現時点で返答はない。 |
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●ロシア南部都市が非常事態宣言、ウクライナ無人機攻撃で子ども2人負傷 1/16
ロシア南部の都市ボロネジ市のクステニン市長は16日、ウクライナによるドローン(無人機)攻撃で建物数棟が損壊し、子ども2人が負傷したことを受け非常事態を宣言した。 ボロネジ市はウクライナ国境から約250キロの場所にあり、人口100万人。 ロシア国防省は、ウクライナと国境を接するボロネジ州上空で夜間にドローン5機を破壊し、他に3機を撃墜したと発表。隣接するベルゴロド州でもドローン4機を迎撃したと述べた。 負傷したのは6歳の少年と10歳前後の少女。少年の母によると、現地時間午前2時30分ごろからドローン攻撃を受け、アパートの窓が吹き飛んだという。 ウクライナ側から今のところコメントは出ていない。 ロシアメディアによると、同市近郊にはロシアの空軍基地があり、スホイ34戦闘爆撃機が配備されている。ロシアはウクライナ空爆に同機を投入している。 |
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●トランプ氏 初戦アイオワで圧勝 米大統領選 共和党指名争い 1/16
アメリカ大統領選挙に向けた、共和党の候補者レースの初戦となるアイオワ州の党員投票が15日に行われ、トランプ前大統領が圧勝した。 トランプ前大統領「国民はアメリカを再び偉大な国にすることを望んでいる」 トランプ氏は、アイオワ州で行われた党員集会の結果で、2位以下の候補を大きく引き離して圧勝した。 勝利宣言では、バイデン大統領について、「インフレを招き、不法移民の流入で治安を悪化させている」と指摘して、「わが国の歴史上、最悪の大統領だ」と痛烈に批判し、大統領への返り咲きに強い意欲を示した。 一方で、注目されていた2位争いは、劣勢が伝えられていたフロリダ州のデサンティス知事が、ヘイリー元国連大使を抑えて踏みとどまった。 共和党の候補者レースの第2戦は、23日に東部・ニューハンプシャー州で予備選が行われる。 |
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●ロシアではいま決して語られない、プーチン大統領の人生と足跡 1/17
●プロローグ/プーチン新大統領誕生の背景 ソ連邦は今から102年前の12月30日に誕生しました。 1917年の「2月革命」(旧暦)で帝政ロシアが崩壊し、ケレンスキー内閣樹立。その年の「十月革命」(新暦11月8日)によりケレンスキー内閣が倒れ、レーニンを首班とするソビエト政権が誕生しました。 その後ロシアは赤軍と白軍に分かれた内戦状態となり、ソビエト連邦は1922年12月30日に成立。そのソ連邦は1991年12月25日に解体され、ロシア共和国は新生ロシア連邦として誕生しました。 ゆえに、今年はソ連邦誕生102周年、ソ連邦崩壊・新生ロシア連邦誕生33周年になります。 「強いロシア」を標榜する、KGB(ソ連国家保安委員会)出身のV.プーチン大統領(現71歳)は、2005年4月25日に発表した大統領就任第2期2回目の大統領年次教書の中で、「ソ連邦崩壊は20世紀の地政学的惨事である」と述べています。 プーチン大統領にとりソ連邦崩壊は20世紀最大の惨事でした。 「強いロシア」を目指す本人の頭の中には偉大なるソ連邦復活の野望が蘇っていたことでしょう。 プーチン大統領がなぜウクライナ全面侵攻に踏み切ったのかよく議論されていますが、筆者の理解は以下の通りです。 ウクライナ侵攻は本人の世界観(妄想)を実現する一つの過程であり、2014年3月のクリミア併合同様、ウクライナの首都キエフ(現キーウ)は簡単に制圧可能と考えていたと筆者は推測します。 侵攻開始数日後には首都キエフ陥落。ウクライナのゼレンスキー大統領は海外逃亡、ロシア軍はウクライナ市民に歓呼の声で迎えられ、親露派ヤヌコービッチ元大統領を首班とする傀儡政権が樹立されるはずでした。 その証拠にロシア国営ノーヴォスチ通信は侵攻開始2日後、キエフ制圧の予定稿を間違って世界に発信してしまいました。 NATO(北大西洋条約機構)東進を阻止すべくウクライナに侵攻したのに、逆にフィンランドとスウェーデンのNATO加盟の動きを誘発し、結果としてNATO東進を促進。 これはプーチン大統領の戦略的失敗と言えましょう。 戦争泥沼化によりプーチン大統領は国内マスコミ統制強化と実質「戦時経済」への移行を余儀なくされ、露マスコミ報道は大本営発表であふれることになりました。 筆者は、プーチン大統領の軍事的勝利はロシアの戦略的敗北を意味するものであり、その先に待っているものはプーチン王朝の弱体化にほかならないと考えます。 では、ロシアになぜプーチン大統領は誕生したのでしょうか? 「強いロシア」を渇望するロシアの民衆がプーチンKGB予備役大佐に夢を託したのでしょうか? 筆者の結論を先に書きます。いいえ、違います。 「弱いロシア」を実現したB.エリツィン・ロシア連邦初代大統領は2期目に入るとますます国民の支持を失い、2000年6月に予定されていた次期大統領選挙では露共産党勝利が視野に入ってきました。 共産党政権になって困るのは、ソ連邦の国家資産を搾取して大金持ちになった新興財閥(オリガルヒ)。 その彼らが白羽の矢を立てた人物こそ、当時無名のプーチンKGB予備役大佐でした。 プーチン大統領はいかにして大統領となり、なぜ大統領職に固執し、独裁者の途を歩んでいるのでしょうか。 本稿では、最初の奥様リュドミーラ・プーチナが語る夫像を通じ、プーチン大統領誕生の軌跡と、知られざるプーチン人物像に言及したいと思います。 ●第1部:2油種週次油価動静(2021年1月〜24年1月) 最初に、2021年1月から24年1月初旬までの代表的2油種の週次油価推移を概観します。 ロシア(露)の代表的油種ウラル原油は、西シベリア産軽質・スウィート原油(硫黄分0.5%以下)と南部ヴォルガ流域の重質・サワー原油(同1%以上)のブレンド原油で、中質・サワー原油です。 一方、日本が2022年5月まで輸入していた露産原油3種類(S−1ソーコル原油/S−2サハリン・ブレンド/シベリア産ESPO原油)はすべて軽質・スウィート原油にて、日本はウラル原油を輸入していません。 油価は2021年初頭より22年2月まで上昇基調でしたが、ウラル原油はロシア軍のウクライナ侵攻後下落開始。 ウラル原油以外の油種は侵攻後乱高下を経て、6月まで上昇。その後乱高下を経て、ウラル原油は直近2か月間でバレル$20(露黒海沿岸ノヴォロシースク港出荷FOB)下落。 2024年1月2〜5日の週次油価は$59.5/bbl(前週比▲$1.0)となり、欧米が設定した上限油価FOB $60を割り込みました。(bbl=バレル、1バレルは約159リットル、FOB=本船渡し) 北海ブレントとウラル原油の値差はロシア軍のウクライナ侵攻後、一時期最大バレル$40の大幅値差となりましたが、最近は値差$17で推移。 しかし、原油性状の品質差による正常値差はバレル$2〜3程度ですから、依然としてロシア産原油のバナナの叩き売りが続いており、これが対露経済制裁の効果と言えます。 この超安値ウラル原油を輸入し、自国で精製して石油製品(主に軽油)を欧州に国際価格で輸出して、“濡れ手に粟”の状態がインドです。 最近ではパキスタンや中東諸国などもこのバナナの叩き売り原油を輸入開始。ウラル原油の新規市場出現によりウラル原油の需要が拡大結果、油価が上昇した次第です。 一方、中国が輸入している原油はウラル原油ではなく、長期契約に基づくシベリア産ESPO原油(軽質・スウィート)ですが、やはりバナナの叩き売り状態になっています(一部、海上輸送によるスポット玉あり)。 2023年のウラル原油平均油価は$63.0になり、昨年の露国家予算案想定油価$70.1を割り込みました。 直近の油価下落に鑑み、2024年通期のウラル原油はさらに下落必至と筆者は予測します。 ●第2部:2油種(北海ブレント・露ウラル原油)月次油価動静(2021年1月〜23年12月) 次に、2油種の月次油価推移を確認します(出所:北海ブレントは米EIA/ウラル原油は露財務省統計資料)。 油価を確認すればすぐ分かることですが、ウクライナ侵攻後、露ウラル原油は下落しています。 日系マスコミでは「ウクライナ侵攻後油価上昇したので、ロシアの石油収入は拡大した」との報道も流れていました。 ロシアの石油輸出金額が増えたのは事実ですが、ウラル原油の油価は下落しているのです。 ではなぜロシアの石油輸出収入が増えたのかと申せば、前年比油価水準自体が底上げしたからです。 ロシア軍がウクライナに侵攻開始した2022年2月度の露ウラル原油(FOB)はバレル$92.2でした。以後23年3月までウラル原油の油価は下落、2023年通期の平均油価は$63.0になりました。 ●第3部:ロシア国庫税収概観 ロシア経済は「油上の楼閣経済」にて、油価(ウラル原油)依存型経済構造です。このウラル原油の油価が国家予算案策定の基礎になっており、国庫歳入はウラル原油の油価と正の相関関係にあります。 下記グラフをご覧ください。ロシア国庫税収は油価(ウラル原油)に依存していることが一目瞭然です。 なお、この場合の石油・ガス関連税収とは2018年までは炭化水素資源採取税(石油・ガス鉱区にかかる税金)と輸出関税のみでした(註:天然ガスは気体としてのPLガスのみ/液化天然ガスLNGは関税ゼロ)。 2019年からは露国内石油精製業者に賦課される税収も加わりましたが、補助金対象にもなっており、現在でも石油・ガス関連税収の太宗は炭化水素資源採取税です。 露財務省は毎月、石油・ガス関連税収と非石油・ガス関連月次税収を発表しています。 露プーチン大統領は2000年5月にロシアの新大統領に就任したので、ここでは2000年から2023年までの油価と国家予算案実績と今年2024年国庫予算案を概観したいと思います。 プーチン新大統領誕生当時、露国家予算案に占める石油・ガス関連税収は約2割でした。 ところが、プーチン大統領就任後、油価は徐々に上昇開始。ウラル原油がバレル$100を超えた2011年から数年間は、露国家予算案に占める石油・ガス関連税収は上記2種類の税金のみで50%を超えていました。 2022年の国家予算案想定油価はバレル$62.2(石油・ガス関連税収シェア38.1%)、実績$76.1(同41.6%)。2023年は予算案想定油価$70.1(同34.2%)に対し、実績$63.0(同30.3%)になりました。 今年2024年の露ウラル原油は政府予想油価$71.3ですが、税収基準は$60に設定されました。 油価が$60以上になると歳入増収分は露国民福祉基金に組み入れられることになりますが、現行油価(ウラル原油)は$60前後ゆえ、国民福祉基金に組み入れる余裕はないと予測します。 付言すれば、天然ガス輸出の場合、PLガス輸出はFOB輸出金額の50%が輸出関税(2022年までは30%)、LNG(液化天然ガス)輸出は関税ゼロです(PL=パイプライン)。 ●第4部:ロシア国家予算案概観 4−1. 2022年〜23ロシア国家予算案実績と24年予算案概観: 2022〜23年の期首予算案と実績、および24年予算案概要は以下の通りです。 2022年の期首国家予算案は1.33兆ルーブルの黒字案でした。期首想定油価バレル$62.2に対し実績$76.1ですから、本来ならば期首黒字案以上の大幅黒字になるはずが実績は大幅赤字となりました。 露財務省は2021年までは各支出項目の経費を明記していました。しかし22年1月から支出総額のみで、支出細目は白紙となり、何にいくら支出されたのか詳細不明です。 実質戦争経済に移行したので、支出細目は非開示になったものと筆者は推測します。 4−2. ロシア国家予算案遂行状況概観 (2023年): 露財務省は1月11日、2023年露国家予算案遂行状況を以下の通り発表。予算案想定油価$70.1に対し、ウラル原油平均油価は$63.0になりました(現在1米ドル約90ルーブル、1ルーブル約1.6円)。 (註:2023年1〜11月度までは「国家購入」の数字が明記されており、5.55兆ルーブルが計上されていましたが、今年1月11日に発表された予算遂行状況では「国家購入」の項目自体、削除されました。「国家購入」とは何か、何を購入したのか非開示ですが、恐らく軍需産業への発注・支払いではないかと推測されます) ●第5部:露連邦エリツィン初代大統領誕生と退場 5−1. B.エリツィン政権の誕生: ソビエト政権の凋落と落日は1970年代に始まります。ブレジネフ政権末期にはソ連経済は重傷となり、回復・復活の見込み薄となりました。 ソ連邦崩壊に関しては多くの要因が指摘されていますが、ソ連邦崩壊の底流は長期にわたる油価低迷です。 M.ゴルバチョフ政権が1985年春に誕生した時、彼はその実態を知り驚愕。体制内改革を唱えたゆえんですが、古い機構の中に新しい思想は定着せず、ペレストロイカは失敗。 ソ連邦は1991年8月19〜21日のクーデター未遂事件を経て、露(エリツィン)・ベラルーシ・ウクライナは同年12月8日、CIS(独立国家共同体)条約に調印。12月25日にゴルバチョフ大統領は辞任発表。 この日、クレムリンではソ連国旗が降ろされロシア国旗が掲揚され、核のボタンがゴルバチョフ・ソ連邦初代大統領からエリツィン露共和国大統領に渡され、ソ連邦は解体されました(法的消滅は翌26日)。 1990年代前半のエリツィン政権下、経済の自由化と国営企業の民営化が開始されました。 当時のエリツィン政権は権力基盤が弱く、ロシアに民主主義萌芽を夢見た西側諸国の一時の熱狂は次第に冷めて行く一方、ソ連邦崩壊後の民営化により巨万の富みを蓄えたオリガルヒ(新興財閥)は、共産党政権復活の影に怯えていました。 1996年6月の露大統領選挙における事前の世論調査では、エリツィン候補の予想得票率は1桁台。ジュガノフ共産党党首の圧勝が予想され、オリガルヒの背筋に戦慄が走りました。 共産党政権誕生に危機感を抱いた新興財閥は1996年1月、スイスのダボスで開催された世界経済会議にて焦る政権側とエリツィン支持の陰謀を協議。 オリガルヒは総額5億ドルともいわれる選挙資金を投入。同年6月の大統領選挙ではエリツィン35%、ジュガノフ32%となり、舞台は決選投票へ。 エリツィン氏は3位となったレベジ将軍を政権側に取り込み、翌7月の決戦投票を乗り切りました。 5−2. エリツィン政権の崩壊: 2期目の大統領選挙をオリガルヒの選挙資金で乗り切ったエリツィン政権は、新興財閥とマフィアが跳梁跋扈する傀儡政権になりました。 エリツィン政権下、露国家の対外債務は増大の一歩を辿り、貧富の差が拡大。ゆえに、エリツィン大統領の任期満了に伴う次期大統領選挙(2000年6月)ではエリツィン側に勝ち目なく、露下院第一党たる共産党が有力となり、再び新興財閥に戦慄が走りました。 エリツィン大統領は1999年の大晦日、早期辞任を発表。 露憲法に従い、プーチン首相が大統領代行に就任。ヴォローシン大統領府長官は、傀儡政権としてプーチン首相を大統領後継候補に指名。 エリツィン大統領側はプーチンを後継者に指名する条件として一つの密約を交わしています。 否、それを条件に後継に指名したという方が正鵠を射ています。密約の内容は下記2点: 1 大統領の家族に手をつけないこと(←大統領代行として最初に署名した大統領令)。 2 少なくとも1年間は大幅な人事異動をしないこと。 エリツィン大統領は、ゴルバチョフ初代ソ連邦大統領が自分に対して要求し、自分が拒否したその同じ条件をプーチンに強要。もちろん、プーチンは断る術もなく、妥協がすべてに優先した次第。 担ぐ神輿は、軽ければ軽いほど良い神輿。 オリガルヒ側にとり、モスクワに政権基盤のない無名のプーチン氏は操り人形として最適任者でした。 しかし、運命とは皮肉なもの。結果論ではありますが、後顧の憂いなく、軽い神輿を選んだはずの新興財閥がその直後に臍を噛むことになろうとは、この時点では誰も予想だにできませんでした。 ●第6部:露連邦プーチン大統領誕生の軌跡 6−1. V.プーチン新大統領誕生 (2000年5月): 後世の歴史家は、2000年3月26日をロシアの重要な転換点と位置付けることでしょう。この日、標準時から夏時間への移行と共に、ロシアは新しい時代に突入しました。 本来ならば2000年6月に予定されていた大統領選挙は、エリツィン大統領の1999年大晦日の電撃辞任により翌年3月の繰り上げ選挙になりました。 ここまではエリツィン大統領を操るオリガルヒ(新興財閥)の台本通りの動きであり、選挙準備の整わない野党候補を横目に、プーチン大統領代行は53%を獲得して当選。 大統領選挙後の5月7日、ロシア連邦2代目大統領に就任したプーチン新大統領は就任演説にて強いロシアを標榜。以後、エリツィン時代の新興財閥から一線を画し、独自路線を歩み出すことになりました。 6−2. 露大統領選挙/プーチン大統領候補選挙結果: プーチン大統領は過去4回大統領候補として出馬しましたので、本稿ではプーチン候補が出馬した過去4回の露大統領選挙結果を概観します。ご参考までに、過去4回の大統領選挙結果は以下の通りです。 上記グラフをご覧になればお分かりの通り、プーチン候補最初の選挙は当選に必要な最低得票率50%すれすれの辛勝となり、大統領の椅子を巡り2位の共産党ジュガノフ候補と競い合いました。 第1回選挙の辛勝はプーチン大統領のトラウマになり、2024年3月17日(投票日15〜17日)の大統領選挙では、過去一度も達成したことのない70%以上の投票率と80%以上の得票率を目指しています。 今回の選挙は当選するか・しないかではありません。当選確実ですが、問題は絶対得票率です。 ロシア憲法では本来、大統領職は2期までと明記されていました。しかし2023年1月のカザフ政変(後継者によるナザルバエフ前大統領一家追放事件)に驚愕したプーチン大統領は、死ぬまで大統領職に居座ることを決意。 憲法を改定し、理論的にはあと12年間(6年間×2期)大統領職に居座ることを可能としました。 プーチン王朝継続には、圧倒的多数のロシア国民の支持を得て5期目の大統領に就任する大義名分が必要になり、これが80%以上の得票率を目指すゆえんです。 6−3. プーチン首相代行誕生の背景: 1999年当時、病弱のエリツィン大統領はこのままでは職務遂行不可能となることを、エリツィン周辺の新興財閥は見抜いていました。 エリツィン氏に倒れられて困るのはエリツィン周辺で財を成したオリガルヒ。当時、彼らが一番危惧していたことは共産党政権の復活でした。 共産党政権が復活すれば、「民営化」という錦の御旗のもと、営々と国から搾取してきた国家資産を再度共産党に接収される恐れがありました。 ステパーシン首相(当時)は大物で、オリガルヒの言いなりにならない。ゆえに、唯々諾々とオリガルヒの手足になる操り人形が焦眉の急となり、大統領府という名の伏魔殿の深奥にて大物は解任して、無名の操り人形を首相に任命。エリツィン後継者に指名することが決定しました。 そこで選ばれたのが当時無名のプーチン予備役大佐。 元上司たるA.チュバイスの引きで首都に移住、大統領総務局にてボロジン総務局長の部下となったプーチン氏に白羽の矢が立ち、彼を連邦保安庁長官から首相代行に大抜擢。 この時、西側の反応は予想通り、“Putin, who?”。1999年8月9日のことでした。 日系マスコミはPutinの正しい読み方が分からず、「プーチン」と「プチン」、2つの異なる名前が日系各紙に載りました。 6−4. プーチン首相代行誕生/露内外マスコミの反応: ではここで参考までに、1999年8月9日プーチン首相代行誕生当時の露マスコミ反応を列挙したいと思います。当時の露マスコミも下記の通り、一様に否定的反応でした。 これもプーチン新大統領のトラウマになり、大統領就任後、マスコミ弾圧に乗り出す契機となりました。 プーチン首相が2000年5月大統領就任後、プーチン本人の人物像に関する記事はマスコミに登場しなくなり、プーチン大統領の個人情報や家族情報が載るとそのマスコミが閉鎖される事例も出てきました。 換言すれば、プーチン新大統領就任前は露マスコミにはまだ報道の自由が存在していたということです。 1『モスクワ・ニュース』(1999年8月10日付け): 「“皇帝”(エリツィン大統領の側近は彼をそう呼んでいる)は、後継者を発表した。その人の名はブラジーミル・プーチン。・・・プーチンが大統領選挙で当選するという考えは、エリツィン大統領の政治的妄想の産物であろう。大統領選挙まであと1年あるが、テレビの視聴者も彼の顔をほとんど知らない。彼に大統領の椅子を望むことは、政治的には大きなリスクである」 2 『モスクワ・コムソモレッツ』 (1999年8月10日付け): 「高齢のエリツィン大統領は未来の後継者を任命した。ただし、プーチン自身がこの決定を歓迎しているのかどうかは疑問。・・・もしエリツィンのお気に召さなければ、それは辞任の前触れを意味することがクレムリンでは慣習となった」 3『コモソモルスカヤ・プラウダ』(1999年8月10日付け): 「プーチンはカリスマ性あるリーダーとは言い難い。大統領への途は茨の道」 4 『文学新聞』 (1999年8月11日付け): 「民主主義国家たるロシアの大統領が連邦保安局長官を自分の後継者に指名した。社会にとり何たる侮辱。今回のエリツィン大統領の行為は決して評価できない」 6−5. プーチン大統領の人物像/家族: プーチン大統領を一番よく知る人は誰でしょうか? それはプーチンの一番近くにいた奥様です。 本稿では、プーチン一家をご紹介します。最初の奥様はリュドミラ(リューダ)・アレクサンドロヴナ・プーチナさん。子供は娘2人、マリアとカーチャ。全員ドイツ語堪能。子供は日本語も学んでいます。 リューダさんは、カリーニングラード(旧ドイツ領ケーニッヒスベルク)生まれのカリーニングラード育ち。 労働者の家庭に生まれ、同市の工業専門学校卒業後ソビエト・アエロフロート航空に就職、国内便のキャビンアテンダントになりました。 トランジットでレニングラードに立ち寄ったリューダさんは1981年、友人に誘われて、当時有名なエンターテイナーであったアルカジ・ライキン氏のショーを見に行くと、劇場の入口で一人の風采の上がらない男が彼女たちを待っていました。 友人は彼を彼女に紹介。その男は、「ヴァロージャ」と自己紹介。のちにリューダさんは、「彼は風采の上がらない、街で通りかかっても目に入らないほど平凡なタイプ」と第一印象を述懐しています。 人は見かけによらぬもの。その風采の上がらぬ男には、何と当時婚約者がいました。既に結婚式の日取りまで決まっていたが、当時24歳の金髪・碧眼・美貌のリューダさんに一目惚れ。 以降ストーカーとなり、あとはお決まりの電話攻勢。風采の上がらないヴァロージャはリューダさんに、自分は「犯罪捜査官」と身分を偽り、後々までリューダさんはそれを信じていました。 その3年後の1983年、ヴァロージャはリューダさんに唐突に語り始めた。「僕と一緒にいてもつまらないだろう。朴訥、不器用、不作法。生命の危険性もあるし・・・」。 それを聞いたリューダさんは、「この人は私と別れたがっているのだ。そろそろ潮時だ、別れよう」と思った由。 しかし、それが何とプロポーズの言葉であり、その年2人は結婚。貧しい2人は住居が持てず、夫の親の家に同居することになりました。 6−6. プーチン大統領の人物像/プーチンKGB少佐、東独赴任(1985〜1990年): V.プーチン氏は1975年、レニングラード大学法学部卒業後、KGB第1総局第4課(西欧担当)に入局。KGBには計9局あり、第1総局(現SVR/対外諜報庁)は対外諜報専門部局です。 1985年、プーチンKGB少佐に新しい指令が下り、東独ドレスデンの管理官として家族で赴任。プーチンKGB少佐は1980年代後半の5年間ドレスデンに勤務、駐在中に中佐に昇進。 1987年11月21日、「ドイツ(東独)・ソ連邦友好黄金勲章」を授与されました。 東独の生活は家族にとり天国であり、彼はのちに「ドレスデン駐在時代が一番幸福であった」と述懐しています。 1989年に「ベルリンの壁」が崩壊。翌年の東西ドイツ統一後東独勤務が困難となり、一家は1990年、レニングラードに帰任後退職。KGB大佐として予備役編入。 その後、レニングラード大学にて学生の監視、サプチャク市長の側近としてサンクトペテルブルク副市長などを務めました。 さてここに、現在のプーチン大統領を理解する一つのカギが潜んでいます。 東西ドイツ分裂時代、筆者は何度も東ベルリンを訪問しました。ソ連大使館は当時の東ベルリンの一等地に居を構えており、優秀なソ連邦の官僚は東ベルリンに派遣・勤務。二流・三流官僚がドレスデンのような地方都市に派遣されていました。 プーチン氏がドレスデンに派遣された事実は、彼がKGB内部では優秀とは見なされていなかったことの証左と言えましょう。 6−7. プーチン大統領の人物像(2000年当時): プーチン首相兼大統領代行は2000年3月26日の大統領選挙で辛勝。同年5月、新大統領に就任(当時47歳)。 プーチン首相の大統領就任後、プーチン氏の人物像に関する記事はマスコミに登場しなくなり、プーチン大統領の個人情報や家族情報が載ると、そのマスコミが閉鎖される事例も出てきました(前述)。 しかし、2000年初頭の大統領選挙中は、プーチン候補に関する記事が数多く掲載されていたのです。 当時ロシア駐在中の筆者はそのような記事を収集・分析していたので、今回は関連記事を一つご紹介したいと思います。現在のロシアでは掲載不可能な記事ですが、当時は堂々と新聞に掲載されていました。 その意味では、今となっては貴重な情報と言えるのかもしれません。 モスクワの週刊新聞紙『ベルシア』2000年第2号はプーチン特集を組んでいました。 一面トップ記事として、東独シュタージ(秘密警察)の制服を着たプーチン少佐の写真を掲載。ドイツ語のフラクトゥーラ(飾り文字)で“Das ist Putin”(これがプーチンだ)と大書されています。 プーチン氏は1998年7月に連邦保安庁長官として、ジェルジンスキー広場に建つ古巣のルビアンカのKGB建物に戻りました。 KGB幹部を前にしての第一声は、「生まれ故郷の懐かしい両親の家に戻ってきたようだ」。これが、プーチン長官開口一番の心情吐露でした。 プーチン首相は2000年3月の大統領選挙で当選。生粋のKGB機関員の大統領就任はソ連・ロシアの歴史上初めてのことになりました。 L.ブレジネフ書記長亡き後、Yu.アンドローポフKGB議長が書記長に就任しましたが、彼は元々外交官です。 1956年のハンガリー動乱の際、当時の駐ハンガリー・ソ連大使がアンドローポフ氏であり、ソ連軍(ワルシャワ条約軍)の介入を要請。 アンドローポフ書記長就任にあたり、イメージ・アップのため、西側諸国に対し「彼は英語が得意であり、こよなくジャズを愛する」という偽人物像を流したのもKGBです。 プーチン新大統領就任にあたり、「彼は信頼がおけ、首尾一貫しており、決断力がある。勤務以外ではゲーテとシラーをこよなく愛する、筋金入りの愛国者」との人物像が流れました。 この人物像を流した人物こそ、東独シュタージのプーチン相棒M.ヴァルニッヒ氏。彼はのちに、ノルト・ストリーム2社の社長を務めていました(会長は元ドイツ首相のG.シュレーダー)。 ●エピローグ/プーチン大統領の人物像/プーチン大統領を理解するカギ プーチン大統領の現行任期は2024年5月7日までです。この日、ロシアには新大統領が誕生します。 筆者は前号(2023年11月JBpress寄稿「戦争経済に突入したロシアの行方は哀れ、中国の資源植民地に」)にて、「プーチン後継はプーチン」と断定。そして、その通りになりました。 世の中、欺瞞と驚きに満ちています。 風采の上がらない、街で通りかかっても目に入らないほど平凡な男性はKGBの凡庸な職員で、中佐止まりでした。 その人物が大国の大統領になり、国防軍の最高司令官に就任。劣等感の塊が国軍最高司令官となり、優越感に浸って権力を揮っているのが現在の姿と言えましょうか。 現在のプーチン大統領を理解するカギ。それは、意外とこの劣等感かもしれません。 ロシアはプーチン大統領の所有物ではありません。ロシア悠久の歴史の中でプーチン氏は一為政者にすぎませんが、その一為政者がロシアの歴史に汚点を残す独裁者となりました。 ウクライナ戦争が膠着状態となり、長引けば長引くほどロシア経済は疲弊するでしょう。 人治国家プーチン王朝の近未来は、実は我々が思っている以上に脆弱なのかもしれません。 |
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●プーチン大統領 北朝鮮の外相と会談 北朝鮮訪問も調整か 1/17
ロシアのプーチン大統領はモスクワを訪れている北朝鮮のチェ・ソニ外相と会談しました。プーチン大統領の北朝鮮訪問に向けた調整も行われているとみられていて、ロシアと北朝鮮はともに対立するアメリカなどを念頭に協力を拡大しています。 ロシアのプーチン大統領は16日、モスクワを訪れている北朝鮮のチェ・ソニ外相とクレムリンで会談し、ロシア側からはラブロフ外相やウシャコフ大統領補佐官が同席しました。 これに先立ち、チェ外相はラブロフ外相と会談し、両外相は、軍事や経済分野を念頭に協力を進めていく考えを示していました。 ロシアの国営テレビは、プーチン大統領が笑顔でチェ外相を出迎える様子を伝え、ロシア大統領府は、チェ外相らが今回の外相会談の結果をプーチン大統領に報告したと発表しましたが、詳細は明らかにしていません。 一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官は16日「プーチン大統領は北朝鮮へ招待されており、適切な時期に応じることになるだろう」と述べていて、プーチン大統領の北朝鮮訪問に向けた調整も行われているものとみられます。 ロシアはウクライナへの侵攻で、北朝鮮から供与された弾道ミサイルを使っているなどとも指摘され、両国は、ともに対立するアメリカなどを念頭に協力を拡大しています。 ●林官房長官「引き続き情報収集や分析を」 林官房長官は午前の記者会見で「ロ朝関係を含め、北朝鮮をめぐる情勢については平素から重大な関心を持って情報収集や分析に努めている。引き続き関連情報の収集や分析を行うとともに、関連する国連の安保理決議の完全な履行に向けてアメリカや韓国をはじめとする国際社会と緊密に連携していく考えだ」と述べました。 |
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●北朝鮮外相、プーチン氏と会談 訪朝「間違いなく応じる」 ロシア報道官 1/17
ロシアを公式訪問している北朝鮮の崔善姫外相は16日、モスクワのクレムリン(大統領府)でプーチン大統領と会談した。 崔氏はこれに先立ち、ラブロフ外相と会ってロ朝関係強化で一致しており、プーチン氏にその内容を報告した。 ロシア大統領府の発表では触れていないが、金正恩朝鮮労働党総書記の招待によるプーチン氏訪朝についても話し合われたもようだ。タス通信によると、ペスコフ大統領報道官は「都合の良い時期に間違いなく招待に応じる」と説明した。 |
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●「戦利品は放棄せず」 プーチン氏、占領地返還を否定 1/17
ウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン大統領は16日、ウクライナとの停戦交渉について「(侵攻開始後の)過去1年半で獲得した戦利品をわれわれに放棄させようとする試みは不可能だ。そのことをウクライナも欧米諸国も理解している」と述べ、仮に交渉が始まっても占領地域の返還は協議対象にしないとの考えを改めて示した。同日出席した露各地の自治体の首長らとの会合で発言した。 プーチン氏はまた、ウクライナのゼレンスキー政権が法令でロシアとの交渉を禁止しているとし、「交渉したくないのであればそれでいい。だが、ウクライナ軍の反攻は失敗し、主導権は完全に露軍に移った。このままではウクライナは取り返しのつかない深刻な打撃を受けるだろうが、それは彼らの責任だ」とも述べた。ウクライナに抗戦を断念するよう威圧した形だ。 停戦交渉を巡っては、プーチン氏は1日にも「われわれは紛争をできるだけ早く終わらせることを望んでいるが、ロシアの条件に沿う限りでだ」と指摘。ウクライナがロシアの要求を受け入れることが必要だとする認識を示していた。 一方、プーチン氏は16日、モスクワを訪問中の北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外相と面会し、同日行われた崔氏とラブロフ露外相の会談の結果について報告を受けた。ペスコフ露大統領報道官が発表した。会談で両外相は両国の結束を確認。プーチン氏の将来的な訪朝についても調整したとみられている。 |
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●「プーチン氏に敗北を」 ゼレンスキー大統領が演説 1/17
ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は16日、スイス東部ダボスで開催中の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で演説し「プーチン(ロシア大統領)を敗北させなければならない」と述べ、ウクライナへの協力を訴えた。「侵略者への圧力を減らせば、戦争を長引かせることになる」と主張し、国際社会が結束して支援するよう呼びかけた。 ゼレンスキー氏は同日、ウクライナが加盟を目指す北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長とダボスで会談。ロシアのミサイル、無人機攻撃が激化する中、防空態勢強化の必要性を訴えた。ブリンケン米国務長官、企業関係者らとも会談した。 ゼレンスキー氏は15日にはスイスのアムヘルト大統領と会談した。共同記者会見で、自らが提唱する和平案「平和の公式」を話し合う首脳級の「世界平和サミット」をスイスで開く準備を始めると述べた。日程や形式、参加国は明らかにせず曲折が予想される。 |
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●ロシアで人民元取引が急増、脱ドル化戦略でシェア首位に=地元紙 1/17
16日付のロシア紙コメルサントによると、モスクワ証券取引所(MOEX.MM), opens new tabで2023年に取引された中国人民元の総額は前年比3倍超に急増した。外貨取引全体に占めるシェアが約42%に拡大してドルの39.5%を超え、首位に立った。 ウクライナ侵攻に伴う西側の対ロシア金融制裁に直面したプーチン政権は、脱ドル化戦略を推し進め、中国との関係を一層強化。中国へのエネルギー供給が増加するとともに、中国からの輸入も自動車からスマートフォンまで幅広い分野で膨らみ、人民元取引の増加につながった。 同取引所での人民元の取引高はルーブル換算で34兆1500億ルーブル(3915億ドル)。前年のシェアは13%にとどまっていた。 ドルは32兆4900億ルーブル。前年は49兆9000億ルーブルでシェアが63%超だった。 |
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●ロシアへの納税4千億円 維新・松沢氏、JTの同国撤退求め署名活動開始 1/17
日本維新の会の松沢成文氏(参院神奈川選挙区)は16日、国会内で記者会見を開き、日本たばこ産業(JT)に対しロシア事業からの撤退を求め、オンラインで賛同署名活動を始めたと発表した。 JTは政府が筆頭株主で、同社の100%子会社はロシアのたばこ市場で35%のシェアを占め首位。ロシアへの納税額(2020年度)は約4千億円に達するという。 松沢氏は「ウクライナ侵攻を続けるロシアの利益になっている」と国会質疑で政府に指摘してきたとし、「利敵行為を見て見ぬふりはできない。ロシアへの経済制裁をしっかりとしたものにしたい」と訴えた。署名サイト「チェンジ・ドット・オーグ」では約460筆が寄せられており、まずは千筆を目指すとしている。 |
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●ウクライナ、戦争継続なら国家存続に打撃=プーチン氏 1/17
ロシアのプーチン大統領は16日、戦争が続けばウクライナは国家として「回復不可能な打撃」を受ける可能性があるとし、ロシアが得たものを手放すよう迫られる事態にはならないとの考えを示した。 ウクライナを巡ってはスイスが前日、ウクライナのゼレンスキー大統領の要請を受け、「世界平和サミット」を開催することに合意したと発表した。 もっと見る プーチン氏は西側諸国とウクライナが協議している「いわゆる和平の方式」と「法外な要求」は拒否するとし、「(ロシアと)交渉したくない場合はしなくても構わない。ウクライナの反転攻勢は失敗しただけでなく、主導権は完全にロシア軍が握っている。このままではウクライナは国家として取り返しのつかない深刻な打撃を受ける可能性がある」と述べた。 その上で、西側諸国が語る和平は「過去1年半でロシアが得たものを手放すよう仕向ける試み」との考えを示し、「こうしたことは誰もが不可能だと理解している」と述べた。 プーチン氏の発言はテレビ放映された。 ロシアは現在、ウクライナの領土の17.5%を支配。ウクライナが反転攻勢で目立った戦果を上げらない中、プーチン氏の戦争の行方を巡る発言はここ数カ月で一段と自信に満ちた攻撃的なものになっている。 |
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●ウクライナ大統領、ダボス会議で演説 対ロシア戦争の「凍結」に警鐘鳴らす 1/17
ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、スイス・ダボスで開かれている世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で各国の代表者らを前に演説し、ロシアによるウクライナでの戦争を「凍結」させてはならないと訴えた。 2年近く前にロシアがウクライナへ全面侵攻して以降、ゼレンスキー氏が対面での演説をダボス会議で行うのは初めて。同氏はウクライナが当初の予想に反し、ロシア軍を長期にわたって撃退してきたと強調。同盟国は「戦場での進展」に向け、「何が必要とされているかを理解している」と指摘した。ウクライナ軍の戦果はもう何カ月にもわたって乏しい状況が続いているとしている。 英語での演説の冒頭、ゼレンスキー氏は聴衆の多くが尋ねたいと考える複数の質問について承知していると述べた。答えにくいそれらの質問は「戦争はいつ終結するのか? 第3次世界大戦は起こるのか? 今はプーチン(ロシア大統領)と交渉すべき時なのではないか?」といった内容だろうとした。 その上で「どんなものであれ、凍った対立はいずれ再燃する」と警告。ロシアが2014年以降、「東部ドンバス地方での戦争を凍結する複数の試み」の後で改めて侵攻に踏み切ったことを引き合いに出し、現状はウクライナにより多くの兵器が供与されてこそ「公正かつ安定的な」和平がもたらされると述べた。 また、ウクライナへの兵器の供与で戦争が激化するとの西側の懸念が、ロシアにとって有利に働いているとも指摘した。この認識ほど両者の連携を阻害するものはないとし、実際に新型の兵器が到着してからも戦争が激化することはなかったと言い添えた。 ゼレンスキー氏の前には北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長が演説し、継続的なウクライナ支援だけがロシアのプーチン大統領の屈服を促すことになるとの見解を示した。 |
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●「ロシアへの圧力弱めれば戦争長引く」ゼレンスキー大統領 1/17
ウクライナのゼレンスキー大統領は、スイスで開かれている「ダボス会議」で演説し、「ロシアへの圧力を弱めることは戦争を長引かせることになる」と述べ、各国に支援の継続を訴えました。 ウクライナ ゼレンスキー大統領「彼(プーチン氏)は変わらない。私たちは変わらなくてはならない」 「ダボス会議」で演説したゼレンスキー大統領は、ロシアのミサイルには西側諸国の部品が使用されていると指摘し「ロシアへの圧力を弱めることは戦争を長引かせることになる」と話しました。 そのうえで、「プーチン氏や他の侵略者の狂気に負けないよう、私たち全員が変わらなければならない」と述べ、ロシアへの制裁強化やウクライナへの支援継続の重要性を訴えました。 |
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●NY外為、一時1ドル=147円台前半に下落…金融引き締めが長期化観測 1/17
16日のニューヨーク外国為替市場で、対ドルの円相場は一時、1ドル=147円台前半に下落した。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めが長期化するとの観測が強まり、昨年12月上旬以来、約1か月ぶりの円安水準となった。 FRB高官が16日の講演で、利下げは慎重に進めるべきとの方針を示した。FRBの利下げには時間がかかるとの見方が強まり、米長期金利が上昇した。日米の金利差拡大を見込んだ円売り・ドル買いが優勢となっている。 |
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●上川外相 トルコ大統領らと会談 ウクライナ復興など連携で一致 1/17
上川外務大臣は訪問先のトルコでエルドアン大統領らと会談し、ウクライナの復興やパレスチナのガザ地区の人道状況改善に向けて緊密に連携していくことで一致しました。 上川外務大臣は、日本時間の17日未明、トルコの首都アンカラで、エルドアン大統領やフィダン外相と会談しました。 この中で上川大臣は「ウクライナ情勢や中東情勢など国際社会の諸課題についてトルコが果たす役割は重要だ」と指摘しました。 そのうえで、ロシアによる侵攻が続くウクライナの復旧・復興に向けて協力していくことや、パレスチナのガザ地区の人道状況改善や事態の早期沈静化に向け緊密に連携していくことで一致しました。 また、ことしは日本とトルコの外交関係樹立から100年となることを踏まえ、EPA=経済連携協定の早期妥結を目指して協議を続けるとともに、エネルギー分野の協力などで関係を発展させていくことを確認しました。 一方、エルドアン大統領からは能登半島地震に対してお見舞いのことばが伝えられ、上川大臣は謝意を示しました。 |
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●ウクライナ、米国の失敗の影 1/17
中東でイスラエルとの同盟を最優先視する米国は、トルコや湾岸諸国に対し対ロ制裁に加わるべき理由を説得力をもって示すことができなかった。ガザ地区でジェノサイドに準ずるイスラエルの蛮行が続いているにもかかわらず、全く変わらない米国の親イスラエル偏向外交は、プーチンと中国が中東を含む「グローバルサウス」の民意を簡単に獲得できる環境を作った。 1950〜1953年の朝鮮戦争のように、現在のウクライナ戦争の性格も複合的だ。朝鮮戦争は本来、内戦ともいえる分断国家の武力対立だったが、国際戦争、すなわち中国・ソ連ブロックと米国中心の西側ブロック間の対決に飛び火した。一方、ウクライナ戦争は当初、過去の帝国を復元しようとするプーチンの帝国主義的侵略から始まった。しかし、プーチン大統領の速戦即決計画が失敗に終わり、米国とその同盟国も関与することになり、この戦争もベラルーシや北朝鮮、イランなどの支援を受けるロシアとNATO(北大西洋条約機構)間の国際戦、すなわち間接的には米ロ戦争の姿も同時に帯びるようになった。 朝鮮戦争と比較を続けるならば、今回の米ロ間接戦で米国は約70年前と比べると、はるかに圧倒的な力の優位を保有している。軍備支出だけを見ても、米国の軍事予算はロシアより10倍ほど多い。米国製兵器の威力、例えば米国製の大砲の射程距離がロシアのそれより長いという点は、ロシアの軍人たちも認める。にもかかわらず、昨年ウクライナの戦場で米国ははるかに弱いロシアを相手に、意味のある勝利は何一つ収めることができなかった。ロシアが占領したウクライナ領土の割合(約18%)は減るどころか、むしろやや増えた。 米国が間接参戦に乗り出した目標である「ロシア軍を弱体化させること」も、やはり思い通りにはならなかった。戦線が膠着した陣地戦になってしまったロシア・ウクライナ戦争の現場で、現在のウクライナ軍より5倍多い砲弾を毎日使用するロシアの軍隊が弱体化したとみなすことはできないだろう。2022年2月24日以降、超大国の米国から1000億ドル相当の、歴史的に破格的な規模の支援を受けたウクライナが、米国ほどの財力や軍事技術を保有できないロシアに勝てず、守勢に追い込まれる理由は果たして何だろうか? 戦争の勝敗は様々なレベルで決まる。戦場における戦術・戦略などは最も基礎的なレベルだ。ところが、戦場で勝つためには、補給に支えられなければならない。すなわち、軍事物資の増産など「生産戦争」で勝たなければならない。また、戦争に必要な物資を調達し続けるためには交易を持続しなければならないため、相手国を外交・交易の次元で孤立させることに成功してこそ、戦争勝利の可能性も大きくなる。そして自国はもちろん、第3国の国民、ひいては戦争相手国の国民にまで説得力のある戦争目標などに関する「ストーリー」を提示してこそ、世論戦に勝ち、相手国の民意を乱し、その政権の立場を弱めることができる。 この4つのレベルで、これまでウクライナ側で決定権を行使してきたのは米国だった。そして、この4つのレベルで米国がこれまで見せたのは、主に惨憺たる失敗だけだった。 戦場での戦略・戦術について言えば、ウクライナの戦勢がまだ多少有利だった2022年末、ウクライナ軍は南部地域奪還、そしてクリミア半島への進撃計画をペンタゴン(米国防総省)に提出したという点から言及しなければならない。まだ南部でロシアの防衛線が構築されていなかったその時点で、米国製の優秀な兵器で武装した当時は士気が高かったウクライナ軍は、もしかしたらプーチンに歴史教科書に後々まで残る完敗を与えることができたかもしれない。しかし、米中対立など様々な面で緊張が高まった時局にプーチン大統領をあまり窮地に追い込んではならないと判断したペンタゴンは、この計画を受け入れなかった。上位のパートナーである米国のこのような意中の前で、ウクライナは仕方なく北部地域の奪還に焦点を合わせ、昨年夏になって南部地域奪還のための「大反撃」を試みたが、すでに構築されたロシアの防衛線に阻まれ大きな損害だけを被った。プーチン大統領と妥協の余地を残そうとする米国の一貫性のない態度は、結局ウクライナ兵士の莫大な犠牲を無意味にしてしまった。 その犠牲をさらに大きくしたのは、大砲の威力に依存する陣地戦の状況で、最も重要な戦争物資となった砲弾などの増産に米国が失敗し続けた点だ。1年に約150万発の砲弾を生産し、さらにベラルーシや北朝鮮から砲弾を輸入できるロシアに同等に対抗するためには、ウクライナもこの程度の砲弾が必要だ。ところが今、米国が1年に生産できる砲弾数は33万6千発に過ぎず、ヨーロッパ全体の砲弾生産能力もやはりその程度以上にならない。ロシアは依然として国営企業であるソ連時代の砲弾製作所を保有しているが、ウクライナ戦争が1〜2年後に終われば砲弾需要が急減すると見通している欧米圏の民営軍需会社は簡単に砲弾増産に投資できない。「利潤」を最優先に考慮しなければならない新自由主義的資本主義は、このように戦時状況でプーチン式国家資本主義に勝てずにいるのだ。 戦争で勝つためには、兵器製造に必要な部品や機械を中国や湾岸地域の国あるいはトルコなどを通じて輸入しているロシアの貿易網を遮断しなければならなかった。ところが、準同盟の中ロ関係はともかくとしても、中東でイスラエルとの同盟を最優先視する米国は、トルコや湾岸諸国に対ロ制裁に加わるべき理由を説得力をもって提示できなかった。ガザ地区でジェノサイドに準ずるイスラエルの蛮行が続いているにもかかわらず、全く変わらない米国の親イスラエル偏向外交は、プーチンと中国が中東を含む「グローバルサウス」の民意を簡単に獲得できる環境を作った。その上、独裁者プーチンが破壊したロシアの民主主義の回復ではなく、ロシアの「国力弱体化」を戦争の目標として公然と提示した米国によって、ロシアの一部の西方シンパである中産層までが戦時状況でプーチンを条件付きで支持するようになった。 プーチンの侵略に対抗するウクライナ民衆の想像を絶する犠牲にもかかわらず、米国に対するウクライナの軍事的従属、戦時状況での新自由主義的経済の限界、そして米国の近視眼的な国家主義的アプローチと世界体制周辺部での米国の影響力の衰落は、ウクライナで米国が失敗した原因となった。このすべての状況が、私たちが結局他山の石にしなければならない教訓だ。 |
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●米軍 「フーシ派」支配地域を再び空爆 イエメンの反政府組織 1/17
アメリカ軍が、イエメンの反政府組織フーシ派の支配地域を再び空爆した。 アメリカ軍は16日午前、フーシ派の支配地域で発射準備中だった弾道ミサイル4発に向けて攻撃し、破壊したとしている。 その9時間後には、フーシ派の支配地域から紅海に向けて対艦弾道ミサイルが発射され、貨物船に命中したという。 ホワイトハウスのカービー調整官は、「われわれは戦争をしたいわけではない。これを拡大するつもりはない」と説明しているが、アメリカによるフーシ派の拠点への空爆は3度目で、双方によるさらなる報復が続く可能性がある。 |
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●現状は「積極防衛」、ロシア消耗狙うとウクライナ司令官 1/17
ウクライナ軍の地上部隊は、1000キロにおよぶ前線東部の防衛に何よりもまず集中しているが、攻撃面の戦力としても考慮の外に置くべきではない――。 ウクライナのシルスキー陸軍司令官(58)は先週末、ロイターのインタビューに答え、戦況が変化し、ウクライナ側が大躍進できる望みが薄れた現実を明確にした。同氏はウクライナ軍司令官ナンバー2。その態度は冷静沈着で、メッセージにあいまいさはない。 当初はウクライナによる夏の反転攻勢が大いに期待されていたが、ロシアの防御態勢はほとんど崩れなかった。ウクライナ側は一部地域で初期に数キロ前進するにとどまり、その後ロシア軍が他の地域で押し返した。 「われわれの目標は変わらない。われわれの拠点を維持し、敵に最大限の損害を与えて消耗させることだ」とシルスキー氏は語った。 戦闘服に身を包み、東部ハリコフ州の非公開の場所で慎重に語るシルスキー氏。侵攻2年目に入るのを控え、ロシアは主導権を握ろうと目論んでいると話す。 シルスキー氏によると、ロシアは東部戦線沿いの多方面に圧力をかけており、人員と物資を大きく失いながらも、工業地帯であるドンバス地域の完全な支配権奪取を目指している。 ロシアはまた、南部ヘルソンおよびザポロジエ地域で失った陣地を取り戻したい意向だという。 ウクライナ軍側は、小規模な反撃を仕掛ける「積極的防衛」(シルスキー氏)を行っている。主導権奪回に向けて攻撃の機会を見計らうことで、敵に気を張り詰めさせる戦術だ。 両軍とも、弾薬と人員を節約するために交戦は小規模になっているとシルスキー氏は付け加えた。つまりロシア側も状況に対応し、損失を食い止めることを学んだようだ。 「大隊レベルの攻勢は非常に珍しい」とシルスキーは言い、ドローンの使用拡大によって戦術の変更を余儀なくされたと語った。 ウクライナは、望ましいレベルの攻撃を維持するのに十分な弾薬が無いとして、西側同盟国に追加的な供給を求めている。 ●狡猾で勇敢 シルスキー氏は2014年以来、ロシア軍と戦う部隊を指揮し、「ユキヒョウ」の呼称を得た。部隊はウクライナ東部で、ユキヒョウの「狩りに似た戦術」を使って戦った、とシルスキー氏は説明。「この動物は非常に注意深く、狡猾で勇敢だ」と言う。 シルスキー氏は22年9月、ハルキウ地方の大部分を奪還するため電光石火の反攻作戦を指揮し、ロシア軍を退却に追い込んだことで、その名声に磨きをかけた。 この作戦はウクライナの強み、特に要塞化された陣地を迂回して敵陣深くまで攻め込むことができる軽快な部隊を生かしたものだった。 しかし、シルスキー氏の指揮官としての実績は、完璧ではない。23年初頭、同氏はウクライナ東部の都市バフムトの防衛を指揮したが、双方の兵士数千人が死亡したとみられており、今回の戦争で最も死者の多い戦闘となった。 バフムトは廃墟と化し、最終的にロシアに奪われた。こうした都市のために、これほど多くの死傷者を出して戦う価値があったのかと疑問を呈する軍事アナリストもいた。シルスキー氏は、民間軍事会社ワグネルを無力化することで、ウクライナはこの地におけるロシア側の戦闘行動を阻害したと主張している。 シルスキー氏は、ロシアは今でも同氏を脅威と考えており、その証拠に複数回にわたって暗殺未遂があったと指摘。「われわれはロケット攻撃には慣れている」と語った。 ウクライナが戦争に勝ちたければテクノロジーが主要な役割を果たすという点で、シルスキーはザルジニー総司令官と意見を同じくする。大砲や塹壕戦では大きな進展がないためだ。 シルスキー氏は、この1年で電子戦が激化したと説明。ドローンやその他の誘導兵器の普及により、ジャミング(レーダー波などの妨害)の機会が増えたと言う。 ウクライナ軍が優位に立つためには、一度に複数の周波数で動作する高度なキットをより大量に必要とする。 しかし、22年秋にウクライナが行ったように「人為的優位性」(シルスキー氏)を作り出すことで、前進するチャンスはまだあるという。 「何があろうと、守備の堅い地域とそうでない地域は存在する」とシルスキー氏。重要なのは、最も脆弱な地点に、最適なタイミングで兵力を集中させることであり、この原則は「妥当性を失っていない」と語った。 |
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●NATO、「戦闘の変革」必要 実効性重視を=軍事委員長 1/17
北大西洋条約機構(NATO)のバウアー軍事委員長は17日、加盟国の政府・民間部門に対し、戦争を含め、いつ何が起きてもおかしくない時代に備えるよう呼びかけた。 バウアー氏はブリュッセルで2日間の日程で始まった国防相会合の冒頭、「NATOの戦闘に変革が必要だ」と発言。 これまでは、あらゆるものが豊富に存在し、全てが予見可能・管理可能で、効率性を重視した時代だったが、ロシアのウクライナ侵攻以降は「いつ何が起きてもおかしくない時代、予期せぬ事態を想定しなければならない時代、完全な実効性を発揮するため実効性を重視しなければならない時代」に合わせて考え方を改める必要があると述べた。 同氏はNATOが今後もウクライナを支援すると表明。「ウクライナは今後ずっとわれわれの支援を受けられる。この戦争の結果が世界の運命を左右するからだ」と述べた。 ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、西側諸国によるウクライナ支援へのためらいや戦闘激化を巡る懸念によって戦争が長引く恐れがあると警告した。 |
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●経済フォーラムで語る紛争 ゼレンスキー大統領が悲痛な訴え 1/17
毎年1月に世界各国の首脳や企業トップらが雪深いスイスのリゾート地に集まり、世界を取り巻く様々な課題について議論する世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)が、今年も15日から始まった。 ●ゼレンスキー氏の疲労感や焦燥感…戦争長期化で関心低下、米欧諸国の「支援疲れ」 世界「経済」フォーラムながら、実質的な初日となった16日に最も注目を集めたのは、ロシアの侵略を受けるウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の登場だ。昨年はオンラインでの参加だった。 会場内で、午後からのスピーチを前に、数台のテレビカメラに囲まれながら歩くゼレンスキー氏に出くわした。黒いトレーナーにカーキ色のズボンという「戦時大統領」のスタイルを貫いてはいるものの、疲労感や焦燥感を隠そうと力を振り絞っている様子というのが第一印象だった。ゼレンスキー氏の数分後、米国のジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官も通り過ぎた。 疲労感や焦燥感の原因となっているのは、戦争の長期化による関心の低下、そして米欧諸国の「支援疲れ」とみてよいだろう。スピーチの会場となった会議施設のメインホールは満員になったが、前日の時点では、米国などの参加者から「ゼレンスキーが来るんですか。いつ会議に登場するんですか?」という声を聞いたのも事実だ。当日になって、報道陣が集まっている様子などを見て足を運んだ参加者もいたのではないかと思う。 ●世界の関心はイスラエルとハマスの戦闘に…中東関係のセッションは満員 傾向に拍車をかけているのは、昨年10月に始まったパレスチナ自治区でのイスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘だ。石油の生産地である中東全体を巻き込んで緊張が激しくなれば、世界経済への影響は避けられない。ちょうど会議直前には、戦闘開始以降、商船が多く通る紅海で無人機攻撃などを繰り返してきたイエメンの反政府勢力「フーシ」の拠点に対し、米国と英国が攻撃を実施した。企業幹部や経済分野の研究者らが多く集まるダボス会議では、中東諸国の要人のスピーチや、地域の動向に関するセッションが満員となっている。 「戦争を凍結しても、いずれは再燃する」と、停戦をかたくなに拒み、支援継続を呼びかけたゼレンスキー氏のスピーチは、世界の目を呼び戻そうとする悲痛な訴えとして響いた。WEFのボルゲ・ブレンデ総裁から「我々は何ができるか」と問いかけられ、「強い経済を作るために投資をしてほしい。国外にいるウクライナの人々が戻ってくるためには雇用が必要だ」と返したのは、経済の文脈で語るのが最も聞き手に響くとの判断も働いたのだろう。 ゼレンスキー氏はこの日、会議に参加するブリンケン米国務長官とサリバン氏や、欧州連合(EU)のウルズラ・フォンデアライエン委員長らと会談して支援継続を訴えている。企業幹部らとも直接面会して、投資を呼びかけた。 ●「私たちはどうしたらよいのか」ウクライナ市民にも焦り広がる 会場につながる目抜き通りで、多くの政府や企業のパビリオンが並んでいる中に、ウクライナの財団が設けている「ウクライナ・ハウス」という所がある。16日に開かれたトークイベントでは、軍で活動したウクライナ人女性たちが登壇した。その中の一人が、「武器を送ってほしい。そうすれば、世界とつながっていると感じられる」と国際的な支援に触れると、聞いていた別のウクライナ人女性からは、「外国人は皆聞き飽きてしまっている状況で、私たちはどうしたらよいのか」という声が上がった。国際的な関心の低下が自分たちをより苦しい状況に追い込みかねないとの焦りは、ゼレンスキー氏だけではなく、ウクライナの市民にも広がっている。 偶然、2022年9月にキーウを取材した際に知り合った、現地の女性から携帯にメッセージが届いた。ダボスでウクライナ関連の取材もしていると伝えると、「Thank you(ありがとう)」のあとに、「!」がいくつも並んだメッセージが返ってきた。 ● ダボス会議は、5日間で200以上のセッションが開かれるほか、会場周辺では参加者らが主催する関連イベントも行われます。紛争や社会の分断の深まり、自然災害の激甚化など、悲観的にさせられる出来事が世界を覆う中で、リーダーたちはどのような議論を展開するのでしょうか。日本メディアの代表の一人として、会議に参加する機会を得た記者が、日頃取材に携わっている国際情勢や、デジタル技術の活用を中心にリポートします。 |
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●巡航ミサイルウクライナ追加供与 仏マクロン大統領が表明 1/17
フランスのマクロン大統領は16日に記者会見し、ウクライナに巡航ミサイル「スカルプ」約40発を数週間以内に追加供与すると表明した。2月にウクライナを訪問し、安全保障協力に関する2国間協定を締結するとも述べた。ロイター通信が報じた。 スカルプは射程が250キロ超で、フランスはこれまで約50発を供与した。ウクライナ軍はスカルプで戦果を上げている。 ウクライナとの2国間協定は、日本など先進7カ国(G7)を含む約30カ国が検討している。今月12日、英国が他国に先駆けて締結した。 |
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●プーチン大統領「ロシアに主導権」ウクライナも徹底抗戦を強調 1/18
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ侵攻を巡る状況についてロシア側に主導権があると主張し、ウクライナのゼレンスキー大統領も徹底抗戦の姿勢を改めて強調しました。来月で侵攻が始まって2年となりますが、戦闘のさらなる長期化は避けられない見通しです。 ウクライナ空軍が15日、南部のアゾフ海上空でロシア軍のA50早期警戒管制機を撃墜したと発表したことについて、イギリス国防省は、A50は、ロシアの偵察能力にとって非常に重要で、ロシアは、航空機の作戦区域を限定することを再考せざるを得なくなるだろうと分析しています。 一方、地上での戦闘もこう着状態にあると見られ、欧米からの支援が停滞するウクライナ軍は弾薬不足に直面しています。 ロイター通信は、東部ドネツク州のバフムト近郊にいる部隊の兵士が「前線を動かすにはもっと多くの弾薬や兵士、兵器が必要だ」と訴える声を伝えています。 ロシアのプーチン大統領は16日、「ロシア軍の手に完全に主導権があることは明らかだ」と主張した一方、ウクライナのゼレンスキー大統領も、スイスで行われている世界経済フォーラムの年次総会、通称「ダボス会議」で「戦争は、公正で安定した平和で終わらせなければならない」と述べ、ロシアを敗北に追い込むまで戦う姿勢を強調しました。 双方ともに一歩も譲らない構えで、来月で侵攻が始まって2年となりますが、戦闘のさらなる長期化は避けられない見通しです。 |
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●北朝鮮“ロシアと緊密に協力” 外相とプーチン大統領会談で 1/18
北朝鮮は、チェ・ソニ外相とプーチン大統領の会談内容について、双方が緊密に協力していく立場を再確認したと発表しました。また、チェ外相は朝鮮半島情勢をめぐり、ロシア側と積極的に共同で行動していくことで一致したとしています。 北朝鮮は、17日までの日程でロシアを訪問したチェ・ソニ外相がプーチン大統領と16日に行った会談内容について、17日夜、国営テレビを通じて発表しました。 それによりますと、チェ外相はキム・ジョンウン(金正恩)総書記からの「温かいあいさつ」をプーチン大統領に伝え、プーチン大統領からはキム総書記への新年のあいさつが伝えられたということです。 そのうえで、伝統的な両国の親善関係で新たな全盛期を開くとともに、緊密に協力していく立場を再確認したとしています。 一方、キム総書記が招待している、プーチン大統領の北朝鮮訪問についての言及はありません。 またチェ外相とラブロフ外相との会談では、経済や文化などの分野で協力事業を進めるため、担当機関どうしの戦術的協力の強化についても議論したということです。 そして、朝鮮半島と北東アジア情勢をめぐって、積極的に共同で行動していくことで一致したとしていて、安全保障協力を深める日米韓3か国への対抗を念頭に、連携を一段と強化していく姿勢を強調しています。 |
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●ロシア中西部で大規模デモ 警官隊が鎮圧 活動家の解放要求 1/18
ロシア中西部に位置するバシコルトスタン共和国で、拘束された活動家の解放を求めたデモが大規模化し、治安部隊が参加者を警棒で叩くなどして鎮圧する事態になっています。 デモは15日、バシコルトスタン共和国で拘束された活動家の解放を求めて裁判所前で始まりました。 独立系メディアなどによりますと、デモの参加者は日々、増えていき、マイナス30℃の気温のなか、最大1万人が参加したということです。 治安部隊は17日、閃光手りゅう弾を使用したり、警棒でデモ参加者らを叩いたりして鎮圧しました。 また、デモを報じているSNSのニュースチャンネルが閉鎖されました。 デモは当初、ウクライナへの侵攻とは直接関係がないとみられていましたが、17日になって反プーチン運動と関連付ける動きが表面化してきました。 プーチン大統領のスピーチライターだった政治評論家のアッバス・ガリアモフ氏は17日、地元住民だとする女性の映像を公開しました。 女性はウクライナで戦っている兵士に対して「あなたがプーチン大統領1人の野望のために戦っている間に住民は警棒で殴られている」と語り、地元を守るために戦場から帰還するように呼び掛けました。 独立系メディアによりますと、鎮圧にはロシアで最も訓練されている特殊部隊の一つとされる「グロム」が加わったということです。 2カ月後に控えた大統領選挙を意識して、ロシア当局がデモを強硬に鎮圧しようとしているという指摘が出ています。 |
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●疲弊が進むウクライナ経済、二大スポンサー米国・EU次第で停戦も視野 1/18
・ロシアとの戦争を「総力戦」で臨んでいるウクライナだが、財政赤字が5割拡大するなど経済の疲弊は進んでいる。 ・ウクライナの戦後復興支援に鑑みれば、国際機関や欧米が供与したウクライナ向けローンの大半を放棄しなければならないのではないか。 ・納めた税金が、ウクライナの戦争や戦時経済体制の運営のために使われる欧米の納税者の忍耐もいつまで持つか。今年の米大統領選がターニングポイントとなって、戦争は停戦に向かうかもしれない。 ウクライナの実質GDP(国内総生産)は、2023年4-6月期に前年比19.5%増と6四半期ぶりにプラス成長に復した(図表1)。しかしこの動きは、2022年に実質GDPが約3割も減少したことの反動増に過ぎず、翌2023年7-9月期の実質GDPは前年比9.3%に成長率が低下しており、10-12月期にはさらなる低下が予想される。 他方で、ウクライナの消費者物価も、2022年10-12月期の前年比26.6%をピークに上昇率が低下に転じ、直近2023年10-12月期は5.1%まで上昇が落ち着いている。ただ、これもいわゆるベース効果に伴うディスインフレに過ぎず、このことをウクライナのマクロ経済が安定を取り戻していることの証左として評価することはできない。 【図表1 ウクライナの実質GDPと消費者物価】 そもそもウクライナは、ロシアとの戦争を文字通りの「総力戦」で臨んでいる。ロシアの場合、ウクライナとの戦争で戦時経済体制への移行が進んでいるが、ウクライナはそれ以上に本格的な戦時経済体制へと既に移行している。そうした事実を踏まえたうえで、ウクライナのGDPや消費者物価の動きを冷静に評価する必要がある。 急速な戦時経済化は、財政赤字の急増にも表れている。 次ページの図表2にあるように、財務省の発表によれば、同国の2023年の財政赤字は1兆3300億フリヴニャ(約350億米ドル)となり、前年の8472億フリヴニャから5割増加した模様だ。歳入は2兆6700億フリヴニャで、うち税収は1兆6600億フリヴニャ、一方で歳出は4兆フリヴニャ超だった。 ●着実に低下するウクライナ財政の持続可能性 【図表2 ウクライナの財政赤字】 歳出増の主因が軍事費にあることに疑いの余地はない。 2022年2月24日、ロシアに軍事侵攻を仕掛けられたことを受けて、ロシアとウクライナは交戦状態に入った。当初、ウクライナがすぐに敗北すると予想されていたが、今に至るまで、ウクライナはロシア相手に善戦している。一方で、その善戦による戦争の継続が、歳出の急増につながっている。 総力戦となれば、戦争の遂行を最優先に、経済のシステムを組み替えていく必要がある。そのカギを握るのは財政だ。現在、ウクライナの財政は、国際金融機関や欧米からの借り入れによって支えられている。その結果、同国の対外債務は2023年11月時点で前年比40.8%増となる896億米ドルに達するまで積み上がった(図表3)。 今後もウクライナが戦争を持続するためには、国際金融機関や欧米からの借り入れを増やしていく必要がある。一方で、国際金融機関や欧米は、ウクライナの戦後復興支援に鑑みれば、この間に貸し出したローンのかなりの部分をリスケジュールする必要がある。恐らく、供与したローンの大半を放棄せざるを得ないのではないだろうか。 【図表3 ウクライナ政府の債務状況】 つまり、ロシアとの戦争が長期化すればするほど、国際金融機関や欧米は、返済される当てがないローンの供与を増やさざるを得なくなるわけだ。その最終的な負担は、各国の納税者に帰する。欧米の納税者の立場に立てば、納めた税金がウクライナの戦争や戦時経済体制の運営のために使われていることになる。 ●米欧で萎え始めたウクライナ支援の機運 したがって、米国ではバイデン大統領の率いる与党民主党がウクライナ支援に積極的となる一方で、財政タカ派の野党共和党がウクライナ支援に反対するのは当然の帰結だ。米国の政治家は米国の納税者を代表する立場であるから、米国民の血税をウクライナのために際限なく使うことはできないという共和党の立場には、一理ある。 その米国では、今年11月に大統領選が行われる。これがウクライナ支援の完全なターニングポイントになるだろう。ここで政権および上下両院を民主党が制しでもしない限り、米国が積極的なウクライナ支援を続ける展開は望みにくい。仮に共和党が政権を奪取した場合は、米国のウクライナ支援は急激に萎むのではないだろうか。 米国の大統領選の結果がどうなるかは分からないが、メガトレンドとしては、米国のウクライナ支援は減額方向にある。一方の欧州連合(EU)はウクライナに対して潤沢な財政支援を継続しようと試みているが、綻びが広がっていることも事実である。そのため、米大統領選の結果次第では、EUの支援スタンスにも変化が生じよう。 今のところ、EUの中でウクライナへの財政支援に対して反対の立場を公にしているのは、親露派のハンガリーだけである。同国の反対により、昨年12月のEU首脳会議では、ウクライナへの追加支援は見送りになった。EUのシャルル・ミシェル大統領は年明けの合意を目指しているが、ハンガリーが妥協に転じるか定かではない。 歴史的な経緯からウクライナに親近感を抱くポーランドのような国は例外として、概してEU各国の国民の間では、ウクライナに対する関心も薄らいでいるようだ。むしろ、ウクライナと近い国々では、同国産の安価な穀物の流入を巡って関係が緊張してさえいる。またスロバキアのように、ウクライナへの支援を見直す国も出始めた。 こうした環境の下では、仮に米国がウクライナ支援の大幅に削減したとして、EUだけでウクライナを支え続けることなど、まず不可能だろう。EUは今後も、表向きはウクライナに対する手厚い支援のスタンスを堅持するはずだが、米大統領選の動きいかんでは、そのスタンスを大きく修正せざるを得なくなるはずだ。 ●スポンサー離れが停戦のターニングポイントに 米国とEUという二大スポンサーが離れれば、ウクライナは戦時経済体制を運営することが困難となる。それを回避したいのがウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領であるし、それを狙っているのがロシアのウラジーミル・プーチン大統領と言えよう。いずれにせよ、欧米が永遠にウクライナを支援し続けることはあり得ない。 今年の2月24日で、ロシアとウクライナの戦争は3年目に突入する。ロシア国民もだが、ウクライナ国民の疲労こそ相当なものだろう。そもそも、ウクライナの戦時経済体制は、欧米からの財政支援がなければ持続しえない。こうした状況に鑑みれば、今年の米大統領選がターニングポイントとなって、戦争は停戦に向かうかもしれない。 |
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●62%対88%、明暗を分けるゼレンスキーとウクライナ軍 1/18
ロシアとの戦争が続くなか、ウクライナでゼレンスキー大統領への支持が揺らいでいる。 国内でのゼレンスキーの支持率は2022年末時点では84%。だが、キーウ(キエフ)国際社会学研究所(KIIS)が昨年11月末〜12月上旬、成人1031人を対象に行った世論調査では62%に低下した。 一方、ウクライナ軍の支持率は96%で、ワレリー・ザルジニー総司令官を信頼する人の割合は88%。 ザルジニーは昨年11月、対ロシア戦は「膠着状態」だと発言したが、直後にゼレンスキーがその見解を否定し、両者の確執が取り沙汰された。 それでも「大統領は国民の圧倒的信頼を保持している」と、同研究所は指摘する。 ●84% 2022年末時点のウクライナ国内でのゼレンスキーの支持率 ●62% 昨年末時点でのゼレンスキーの支持率 ●88% 昨年末時点でのザルジニー総司令官の信頼度 |
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●世界的課題が山積、ガザ情勢に「胸が張り裂ける」米国務長官 1/18
ブリンケン米国務長官は17日、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で、パレスチナ自治区ガザやウクライナでの戦闘、台湾を巡る緊張など、自身のキャリアにおいてこれ以上の世界的な課題に直面した時期は考えられないと語った。 ガザ情勢については「人々の苦しみに胸が張り裂ける」とし、「何をすべきかが問われている」と述べた。状況の解決に必要なものは「人々が望むものを与え、イスラエルと連携して効果を発揮する」統治機構を備えたパレスチナ国家の樹立との認識を示した。 中東諸国からは、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘をどのように終結させるかを巡る議論に米国が参加することを望む声を耳にしているとし、「米国とのパートナーシップにはこれまで以上に大きなプレミアムがある」と語った。 ロシアの侵攻が続くウクライナで近く停戦が実現する見通しがあるかという質問に対しては、米国は常に停戦の可能性にオープンとしつつも、停戦の実現については否定的な見方を示した。 また、中国の李強首相が16日の講演で、中国経済はビジネスに開かれており、海外企業にとっての投資の可能性を強調したことを受け、ブリンケン長官は米国がビジネスに関し中国政府と「非常に直接的かつ明確に」対応しているとし、米中間に相違はあるものの協力すべき分野もあると述べた。 13日に実施された台湾総統選以降高まっている緊張については、台湾海峡の重要性を強調した上で、台湾は世界で極めて重要な役割を担っているという認識を示した。 |
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●「戦闘能力の変革必要」 NATO国防相会合で軍事委員長 1/18
北大西洋条約機構(NATO)の国防相会合が17日、ブリュッセルで始まった。2日間の日程。NATOのバウアー軍事委員長は、ロシアのウクライナ侵攻以降、世界が予測不可能な時代へと移り変わったと指摘し、NATOについても「戦闘能力の変革が必要だ」と訴えた。 バウアー氏は会合の冒頭で「ルールに基づく国際秩序が大きな圧力にさらされ、私たちはここ数十年で最も危険な世界に直面している」と警告し、NATOの防衛力を強化していく方針を示した。ロシアの侵攻を受けるウクライナを支えることが「民主主義を守る」ための戦いであることも改めて強調した。 ロシアによる侵攻が長期化するなか、ウクライナはNATOを軸とする欧米諸国に継続的な支援を求めている。主要7カ国(G7)は昨年7月、ウクライナへの長期支援を約束した国際的な枠組みを定めた共同宣言を発表した。英国のスナク首相は今月12日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問し、この枠組みに基づき初めてウクライナと2国間の安全保障協定を締結した。フランスのマクロン大統領も2月にウクライナを訪れ、同様の2国間協定を締結する考えを示している。 |
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●ロシア ウクライナに軍事侵攻 1/18
●ロシア イランと新条約締結へ 無人機などの攻撃強化か ウクライナ空軍は18日、ロシア軍がイラン製の自爆型無人機33機で攻撃し、22機は迎撃したと発表しました。 また東部ハルキウ州ではミサイル攻撃も行われたとしていて、ロシア軍は連日、ミサイルと無人機を組み合わせた攻撃を続けています。 これに対し、ウクライナのカミシン戦略産業相は17日、自国で保有するソビエト製の兵器と欧米が供与したミサイルなどを組み合わせた防空システムで、イラン製無人機の迎撃に初めて成功したと発表しました。 この兵器は、怪物の「フランケンシュタイン」と地対空ミサイルを意味する「SAM」をあわせて「フランケンSAM」とも呼ばれ、ウクライナ軍は兵器や資金不足に直面する中、防空システムの強化を急いでいるものとみられます。 こうしたなか、ロシア外務省のザハロワ報道官は17日、記者会見で「ロシアとイランの新たな条約の承認が最終段階にある。国際情勢が変化する中、両国の関係はかつてなく高まっている」と述べ、イランとの包括的な戦略関係の強化に向けた新たな条約締結について最終調整が行われていると明らかにしました。 ロシアのプーチン大統領は12月、イランのライシ大統領をモスクワに招いて会談し、1月15日も両国の外務・防衛のトップがそれぞれ電話会談して結束を確認しています。 ロシアはイランから無人機だけでなく、弾道ミサイルの獲得を目指しているとされるほか、イラン側はロシアから戦闘機の購入を進めるなど軍事協力を加速させていて、欧米や、イランと対立する中東各国は一段と警戒を強めています。 ●ロシア・ウクライナ 双方一歩も譲らぬ主張 ロシアのプーチン大統領は16日、「ロシア軍の手に完全に主導権があることは明らかだ」と主張しました。 一方、ウクライナのゼレンスキー大統領も、スイスで行われている世界経済フォーラムの年次総会、通称「ダボス会議」で、「戦争は、公正で安定した平和で終わらせなければならない」と述べ、ロシアを敗北に追い込むまで戦う姿勢を強調しました。 双方ともに一歩も譲らない構えで、2月で侵攻が始まって2年となりますが、戦闘のさらなる長期化は避けられない見通しです。 ●英国防省 “ロシアは航空機作戦区域限定再考せざるをえない” ウクライナ空軍が15日に南部のアゾフ海上空でロシア軍のA50早期警戒管制機を撃墜したと発表したことについて、イギリス国防省は、A50はロシアの偵察能力にとって非常に重要で、ロシアは航空機の作戦区域を限定することを再考せざるをえなくなるだろうと分析しています。 ●ウクライナ軍 弾薬不足に直面か 地上での戦闘もこう着状態にあるとみられ、欧米からの支援が停滞するウクライナ軍は弾薬不足に直面しています。 ロイター通信は、東部ドネツク州のバフムト近郊にいる部隊の兵士が「前線を動かすにはもっと多くの弾薬や兵士、兵器が必要だ」と訴える声を伝えています。 |
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●プーチン氏、イラン大統領と新条約調印へ 戦略的関係を強化 1/19
ロシア外務省は17日、プーチン大統領とイランのライシ大統領が近く新たな二国間条約に調印すると明らかにした。両国は政治・貿易・軍事面で関係を強化しており、米国とイスラエルの懸念材料となっている。 プーチン氏は先月、ロシア大統領府(クレムリン)で5時間にわたりライシ氏と会談した。 ロシア外務省のザハロワ報道官は17日、新条約は両国間の戦略的パートナーシップを調整し、関係全体を網羅すると説明。「現在の条約調印以来、国際的な文脈が変化し、両国関係は前例のない進展を見せている」と述べた。 その上で、新条約調印は今後大統領間で連絡が取られた際、いずれかのタイミングで行われると述べた。 大統領府は11月、ロシアとイランは「軍事技術面を含めた」関係を構築していると明らかにしたが、イランがロシアへの弾道ミサイル提供を検討している可能性があるとする米政府の指摘にコメントを控えた。 |
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●ロシア イランと新条約締結の最終調整 軍事協力に欧米など警戒 1/18
ロシア軍はイラン製の無人機でウクライナ各地への攻撃を続けています。ロシア外務省は、イランとの間で新たな条約締結に向けて最終調整が行われていると明らかにし、両国の軍事協力に対し欧米などは警戒を強めています。 ウクライナ空軍は18日、ロシア軍がイラン製の自爆型無人機33機で攻撃し、22機は迎撃したと発表しました。 また東部ハルキウ州ではミサイル攻撃も行われたとしていて、ロシア軍は連日、ミサイルと無人機を組み合わせた攻撃を続けています。 これに対し、ウクライナのカミシン戦略産業相は17日、自国で保有するソビエト製の兵器と欧米が供与したミサイルなどを組み合わせた防空システムで、イラン製無人機の迎撃に初めて成功したと発表しました。 この兵器は、怪物の「フランケンシュタイン」と地対空ミサイルを意味する「SAM」を合わせて「フランケンSAM」とも呼ばれ、ウクライナ軍は兵器や資金不足に直面する中、防空システムの強化を急いでいるものとみられます。 こうした中、ロシア外務省のザハロワ報道官は17日、記者会見で「ロシアとイランの新たな条約の承認が最終段階にある。国際情勢が変化する中、両国の関係はかつてなく高まっている」と述べ、イランとの包括的な戦略関係の強化に向けた新たな条約締結について最終調整が行われていると明らかにしました。 ロシアのプーチン大統領は先月イランのライシ大統領をモスクワに招いて会談し、今月15日も両国の外務・防衛のトップがそれぞれ電話会談して結束を確認しています。 ロシアはイランから無人機だけでなく、弾道ミサイルの獲得を目指しているとされるほか、イラン側はロシアから戦闘機の購入を進めるなど軍事協力を加速させていて、欧米や、イランと対立する中東各国は一段と警戒を強めています。 |
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●ロシアの凍結資産、ウクライナ再建に回すよう主張 ゼレンスキー大統領 1/18
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は16日、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダヴォス会議)で演説し、各国の銀行が凍結しているロシア資産の一部をウクライナ再建に回すよう訴えた。 主要7カ国(G7)は、2020年にロシア資産を凍結して以降の資産の値上がり分と利子のみについて、ウクライナに引き渡すことを検討している。 しかしゼレンスキー氏は、全資産が使われるべきだとBBCの取材で主張。「世界に3000億ドルあるなら、なぜそれを使わないのか」と訴えた。 一方、欧州各国の中央銀行は、金融機関にとっての安全な資金避難先としての地位を損なうことを懸念しているとみられる。 ロシア資産引き渡しについては、米英政府が熱心に支持しているのに対し、欧州各国の中央銀行は、国際金融の安定を損ないかねない微妙な法的前例をつくるとして、はるかに懐疑的だ。仮に認めれば、他の国々が安全に避難させたい資金を西側諸国に預けることをためらうことになりうる。 凍結したロシア資産の大部分を保有しているのが、欧州準備金の決済システムの役割を担っているベルギーだ。同国はすでに、いくつかのファンドに課金し、ウクライナに20億ユーロを調達している。積極派からは、凍結資産が3600億ドル近くに上ることや、現在の高金利を考慮すれば、数百億ドル規模の資金を調達できるとの声も出ている。 ●「再建のために使うべき」 ゼレンスキー氏は、スイス・ダヴォスで開かれているダヴォス会議の会場でBBCの取材に応じ、ウクライナでの戦争のコストを西側諸国の納税者に負担させるべきではないと話した。 「凍結されたロシア資産は3000億ドルある。ロシアはウクライナを破壊した。(中略)ロシア資産が3000億ドルあるなら、ロシアのミサイルによって破壊されたものの再建のために、それを直接使うべきだ。(中略)なぜ各国は支援の方法を考えなくてはならないのか。(中略)世界に3000億ドルあるなら、なぜそれを使わないのか」 ゼレンスキー氏はダヴォス会議で、米金融大手JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)や米投資会社ブラックストーンのスティーヴン・シュワルツマンCEOなど、米ウォール街の大物らと会談した。 英銀行スタンダード・チャータードのビル・ウィンターズCEOは、ロシアの凍結資産が生み出す利益を差し押さえることについて、中央銀行や通貨の「兵器化」が懸念されている状況では、世界の金融界は「複雑」な反応を示すだろうと、BBCに述べた。 「正しいことをするために価値があるという意見もあるかもしれない。私たちの多くは、人として、それが正しいことだと同意するだろう。だが、中央銀行には懸念を抱く権利があると思う」 「長期的には、米ドルが中心的な役割を担っていることから、米ドルの効果的な兵器化について私たちは気をつけなければならない。制裁措置を通して、すでにかなり兵器化されている。これ(凍結資産の利用)はそれをさらに拡大するだろう」 ゼレンスキー氏はダヴォス会議の演説で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が領土にしか関心がないことを、西側の一部は否定していると主張。また、ウクライナはヨーロッパを防衛しており、さらなる支援が必要だと訴えた。 |
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●ロシア外相、米国との水面下での接触認める 「昨年、考えを伝えた」 1/18
ロシアのラブロフ外相は18日、外国メディアも参加した記者会見で、ウクライナ侵攻で停止している米国との協議について「米欧が、ロシアの安全保障と利益を損なう悪意ある路線を撤回することが絶対の条件だ」と主張し、昨年12月、こうした考えを米国側に文書で伝えたと明らかにした。 侵攻後、米国とロシアの協議は、偶発的な軍事衝突の回避が目的のもの以外はほぼ止まっているが、水面下での接触が続いていたことを認めたことになる。 ただ、ラブロフ氏は対話再開について「国際的な安全保障や戦略的な安定と切り離せない」とも強調。ロシアが侵攻前から強硬に主張している北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大の停止などを指すとみられるが、米国がロシア側に譲歩するのは現時点では難しい。 米ロの協議については、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が昨年12月、ロシアのプーチン大統領が、領土の維持を前提として停戦に前向きな姿勢を水面下で示しており、第三国を通じて米国にも伝えられていると報道していた。 |
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●韓米日高官がソウルで会談、ロシアとの武器取引で北朝鮮を非難 1/18
韓国、米国、日本の核問題担当高官が18日にソウルで会談し、最近のミサイル実験、ロシアとの武器取引、敵対的な発言の増加について北朝鮮を非難した。 米国のジュン・パク北朝鮮担当高官は冒頭、ロシアへの武器移転、北朝鮮の人々に対する人権侵害で協調行動が必要だと指摘。北朝鮮から特に韓国への敵対的なコメントが最近増えていることにも深い懸念を抱いていると述べた。 日本外務省の鯰博行アジア大洋州局長は、北朝鮮による弾道ミサイル発射を非難したほか、ロシアが北朝鮮に武器の見返りとして何を提供するのか、綿密に監視する必要があると述べた。 |
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●ロシア南西部で活動家の解放求めるデモ拡大、群衆数千人と警察が衝突… 1/18
ロイター通信などによると、ロシア南西部のバシコルトスタン共和国の町で17日、有罪判決が出た活動家の解放を求めるデモ活動が拡大し、数千人の群衆と警察が衝突した。逮捕者が出ているとみられる。ロシアのウクライナ侵略開始以降、集会に関する当局の規制は厳しくなり、大規模な抗議行動が起きるのは異例だ。 衝突が起きたのは、モスクワの東方約1400キロ・メートルの町バイマク。裁判所が地元の活動家フェイル・アルシノフ氏に民族憎悪を扇動した罪で禁錮4年の判決を言い渡した後、抗議する群衆が裁判所を取り囲んだ。SNSの映像では、催涙ガスから逃げる人々や出動した警察が群衆を警棒で殴る様子を捉えている。 国の捜査当局は刑事事件として捜査を始めたと発表した。プーチン大統領は3月の大統領選で通算5選が確実視されているが、国民の不満が高まるのを警戒している模様だ。 |
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●ロシア、軍事部品3兆円輸入 昨年、中国やトルコ経由 1/18
ウクライナ侵攻で欧米から厳しい経済制裁を受けるロシアが昨年1〜10月、222億ドル(約3兆2800億円)を超す軍事転用可能な機械部品を輸入していたことが18日までに分かった。ウクライナのシンクタンクと米国の研究者が共同調査し、報告書を公表した。約3割が日本を含む西側企業の生産で、大半が中国やトルコを経由してロシアに流れていた。 機械部品は集積回路(IC)や通信機器、センサーなどで、無人機やミサイル、装甲車の製造に使用できる。ロシアが欧米の制裁をかいくぐる形で調達している実態が浮き彫りになった。 |
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●動けないウクライナ軍、兵力不足に厳しい冬が追い打ち 1/18
ロイターは16日、ウクライナ東部バフムト近郊に展開するウクライナ軍を取材した。兵士らは弾薬や武器、人員不足に加え、冬の厳しい寒さによってロシア軍の進軍を防ぐのがより困難になっていると話す。 最前線に近いウクライナ東部バフムト周辺では、凍てつく冬も敵だ。兵士のミハイロさんは、それがロシア軍の攻撃に対し防御態勢に切り替えた理由の1つであると語った。「悪天候でいいことは何ひとつない。ドローンを飛ばすのも難しくなる。偵察活動は最低限の規模となり、主に歩兵が肉眼で確認できるものに頼ることになる」 ウクライナ軍はこうした問題に加え、弾薬や武器の不足、そして兵士の不足が攻撃能力を低下させているという。供与された西側兵器も、厳しい気象条件によっては苦戦を強いられると話す。 ウクライナの反攻作戦は昨年、占領された東部と南部で、ロシアの厳重な防衛線を突破することはできなかった。ロシアの全面侵攻からまもなく2年を迎える。ウクライナは、より多くの大砲を供給するよう支援国に求めている。 兵士のパブロさんは、現時点では敵の進撃を食い止めているだけだと話す。「前進するためには、前線を動かすためには、弾薬も必要だし兵力ももっと必要だし、武器も必要だ。それが手に入らないなら、我々はどこにも動けない。我々に資源がないことを敵が理解すれば、簡単に圧力をかけられる。他国が我々を支援して、弾薬や人員、武器を提供してくれればわれわれは成功するだろう。現時点でわれわれは弾薬が不足しているので、あまり撃てない。1日に5発だとか10発だとか20発もの砲弾を撃つことはこのところずっとない」 米国と欧州連合(EU)はそれぞれ、内部の政治的な対立によって数カ月にわたってウクライナに対する軍事・財政面の支援パッケージが保留されたままになっている。ウクライナは、最終的にこれらが実現することを期待している。 ウクライナ陸軍の司令官は、東部・南部の戦線ともに人員や弾薬の節約のため、反攻作戦は小規模な戦闘にとどまっていると述べた。 |
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●「プーチン大統領は臆病者」批判…軍事ブロガーに懲役4年11カ月求刑 1/19
ロシアのプーチン大統領を「臆病者」と称するなど批判文を作成した疑惑で裁判にかけられたロシアの有名軍事ブロガーに検察が懲役4年11カ月を求刑した。 18日(現地時間)、インテルファクス通信によると、ロシア検察は極端主義を扇動した容疑で起訴された民族主義派の軍事ブロガー、イーゴリ・ギルキン氏に懲役4年11カ月を求刑した。また、3年間インターネットなど通信網でウェブサイトを管理する権利も剥奪してほしいと裁判所に求めた。 「ストレロフ」という仮名で知られるギルキン氏はソーシャルメディアでプーチン大統領を「愚か者」「臆病者」などと呼んで批判する書き込みを掲載していたが、昨年7月極端主義活動扇動の疑いで逮捕され起訴された。 連邦保安局(FSB)大佐出身のギルキン氏は2014年、ロシアがウクライナのクリミア半島を合併する際に大きな功績を残し、その後ウクライナ東部地域で親ロシア反軍を組織したことに貢献した人物だ。 その後、軍事ブロガーとして活動したギルキン氏は、ロシアのウクライナ「特別軍事作戦」を支持しながらも、プーチン大統領と軍首脳部がより積極的に攻勢に出なければならないとし、公開的に批判の声をあげてきた。 ギルキン氏は昨年11月、「クレムリンの計画を妨害する可能性がある」と述べ、3月大統領選への出馬の意思を明らかにした。 |
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●プーチン大統領は高騰する卵の価格を抑えようと躍起 1/19
・卵やその他の日常的な食料品の価格が高騰するなど、ロシアのプーチン大統領はインフレと戦っている。 ・街には旧ソ連時代を彷彿とさせる行列ができ、人々は食料品を大量に備蓄しようとしている。 ・これを受け、ロシア政府は輸入関税を引き下げ、アゼルバイジャンやトルコから卵を購入している。 ウクライナとの戦争が続く中、ロシアのプーチン大統領は卵の価格高騰を抑えるというもう1つの戦いに挑んでいる。 ロシア政府はインフレに拍車をかけ、旧ソ連時代を彷彿とさせるスーパーの長蛇の列を引き起こしている日常的な食料品の価格高騰を抑えようと躍起になっている。 中でも「卵」はロシアが直面する経済的な混乱を象徴していて、ロシア国家統計庁(Rosstat)のデータによると、その価格は2023年11月までの1年間で42%上がった。 あまりに高価なため、地域によっては店が卵をばら売りするようになり、Telegraphによると、1個20ルーブル(約33円)することもあるという。バナナやオレンジ、トマトといったその他の日常的な食料品の価格もここ1年で高騰している。深刻な労働力不足やエネルギー価格の高騰、ルーブルの下落などが影響している。 2022年2月にウクライナに侵攻して以来、外国企業の撤退や西側諸国による制裁にもかかわらず、ロシア経済は底堅く推移している。2023年7〜9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比で5.5%増と、2022年からの落ち込みを取り戻した。失業率は記録的な低水準となっている。 ただ、2024年3月に予定されている大統領選に向けて準備を進めるプーチン大統領にとって、食料品価格の高騰は"頭痛の種"となっている。 ●旧ソ連時代を彷彿とさせる「行列」 キエフ・ポストによると、12月にテレグラムに投稿された動画は、ウクライナとの国境から25マイル(約40キロ)ほど北に位置するベルゴロドのスーパーで10個入りの卵が100円前後で売られていて、何百人というロシア人が雪の中、行列に並ぶ様子を捉えている。 他にも、ウクライナのアントン・ヘラシチェンコ(Anton Gerashchenko)内相顧問がX(旧Twitter)に投稿した動画は、モスクワから500マイルほど南東に位置するサラトフで何百人もの人々が卵を買いだめしようとしている様子を捉えている。 1991年よりも前に生まれたロシア人にとってスーパーの長蛇の列は、度重なる深刻な食料不足の影響で大行列や買いだめが常態化していた旧ソ連時代の記憶を呼び起こすかもしれない。 ●政府の対応 ロシア中央銀行は12月、インフレに対応すべく政策金利を16%に引き上げた。インフレ率は依然として、中銀目標の4%から大きく乖離している。 しかし、ロシア政府は卵の価格を抑えるために具体的な政策も打ち出している。 12月には卵の輸入関税を一時的に撤廃し、隣国のアゼルバイジャンとトルコからの輸入を開始した —— ただ、当局は先週、トルコから輸入した卵の20%以上が鳥インフルエンザに感染している可能性が高いと警告した。 一方、プーチン大統領は年末の国民との直接対話のイベントで、卵や鶏肉価格の高騰に対する年金生活者からの不満の声を受け、国民に対して珍しく謝罪する場面もあった。 「申し訳ないがこれは政府の失敗だ。近い将来、この状況を正すことを約束する」とプーチン大統領は発言したとロイターは伝えている。 3月に大統領選を控えたプーチン大統領が示した驚くべき"遺憾の意"は、大統領が卵の価格危機をどれほど深刻に受け止めているかを表している。 |
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●北朝鮮外相、プーチン大統領に会って帰国…「露朝偵察衛星協力を協議か」 1/19
ロシアを訪れた北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外相が公式訪問を終えて19日、平壌(ピョンヤン)に帰国したと、朝鮮中央通信が報じた。 14日にモスクワに到着した崔外相は、プーチン大統領、アレクサンドル・ノヴァク副首相、セルゲイ・ラブロフ外相に会う日程などを消化し、18日にモスクワを発った。 崔外相は16日昼にラブロフ外相と会談し、同日午後にクレムリン宮でプーチン大統領を表敬訪問して露朝外相会談の結果を報告したとロシア大統領府が17日、明らかにした。 ロシア大統領府は面談内容を公開していないが、当時、崔外相の随行員が「宇宙技術分野参観対象目録」と書かれた書類を持っていた点から見て、偵察衛星協力方案などを議論したものと推定される。 プーチン大統領は昨年9月、ロシアで開かれた露朝首脳会談で、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の招待を受けた。プーチン大統領は金正日(キム・ジョンイル)政権時代の2000年7月に北朝鮮を訪問したことがある。 |
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●ロシア政府、英国との漁業協定破棄承認 1956年締結 1/19
ロシア政府は18日、旧ソ連時代の1956年に英国と結んだ漁業協定を破棄する案を承認したと発表した。 同協定は英国の漁船がタラなどの漁業資源が豊富なバレンツ海周辺で操業することを認めるもの。 ロシア紙イズベスチヤによると、英国がロシア経済にダメージを与えようとしていることへの対応。協定の破棄には議会とプーチン大統領の承認が必要になる。 |
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●冷戦後最大の演習実施へ 9万人規模、ロシアの攻撃想定―NATO 1/19
北大西洋条約機構(NATO)は18日、来週から5月まで、約9万人の兵士が参加する大規模な軍事演習「ステッドファスト・ディフェンダー(不動の守護者)」を実施すると発表した。冷戦中の1988年に12万人以上が動員された「リフォージャー演習」以降で最大規模。 今回の演習には、全加盟31カ国と加盟手続き中のスウェーデンが参加。DPA通信によると、加盟国がロシアから攻撃を受け、NATO全体への攻撃と見なして即応する想定で行われる。カボリ欧州連合軍最高司令官は「部隊が北米から大西洋を横断して欧州・大西洋地域(の防衛)を強化する能力を実際に示す」と説明した。 |
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●ロシア・ウクライナ戦争、大きく動いていない=NATO高官 1/19
北大西洋条約機構(NATO)のロブ・バウアー軍事委員長は18日、ロシアとウクライナの戦争は現在、「大きく動いていない」状態にあると述べた。 また「どちらか一方に奇跡が起きることを期待すべきではない」とした。 最近のロシアによる攻撃については「破壊的だが、軍事的に効果的ではない」とした。 |
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●ロシア外相「欧米がロシアに配慮した解決策を望んでいない」 1/19
ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのラブロフ外相は「欧米がロシアの懸念に配慮した解決策を望んでいない」と述べ不満を示しました。一方、ショイグ国防相は軍需工場を視察してミサイルの生産を強化するよう指示しました。 ロシアのラブロフ外相は18日、首都モスクワで外国メディアも招いて会見し、ウクライナへの支援を続ける欧米について「ロシアの正当な懸念に配慮した解決策を望んでいない」と述べ不満を示しました。 そして、このような状況の中では、アメリカとの核軍縮を含む戦略的安定の対話は「不可能だ」と述べました。 また、ウクライナへの軍事侵攻が、3月のロシアの大統領選挙に与える影響について、ロシアの人々は団結し、欧米による制裁にも関わらず産業が成長しているとして「よい影響を与えている」と述べました。 一方、ショイグ国防相は、18日、モスクワ州にあるミサイルの製造工場を視察しました。 この中でショイグ国防相は、射程を伸ばした新しいミサイルの生産を強化するよう指示し「そのようなミサイルを十分に保有することが重要だ」と強調しました。 ロシアはウクライナ侵攻の長期化を見据え、ことしの国家予算のおよそ3割を国防費にあてるなどして、兵器の生産能力を強化しています。 |
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●2024年世界経済成長率は2.4%、3年連続の鈍化、国連と世界銀行の見通し 1/19
国連経済社会局(UN DESA)は1月4日に「世界経済状況・予測」を、世界銀行は1月9日に「世界経済見通し」〔プレスリリース〕をそれぞれ発表した。2023年の世界経済成長率(実質GDP伸び率)は、UN DESAが2.7%、世界銀行は2.6%としたが、2024年については双方ともに2.4%と予測し、2022年以降3年連続で前年と比べて鈍化した。前回見通しとの比較では、UN DESAが0.4ポイント(前回:2023年5月)、世界銀行が0.5ポイント(前回:2023年6月)の上方修正となった。 UN DESAは、2023年は「最悪のシナリオを回避した」とした。他方で、新型コロナウイルス禍以前の3%成長を下回る低成長が続くと予想する。労働市場は欧米で回復基調を示すものの、大半の国・地域で賃金上昇がインフレを相殺できていないと指摘。また、UN DESAは、途上国で2023年に食料不安を経験した人口を2億3,800万人(前年比2,160万人増)と推計している。 世界銀行は、好調な米国経済を主因に、世界同時不況のリスクが後退した点について、1年前と比較して好転した指標だと評価したが、2024年末までの5年間の経済成長率は「過去30年で最も低い」とした。長引く金融引き締めや、停滞する世界貿易と投資の影響を指摘した。2023年の世界の財・サービス貿易の伸び率を0.2%増と推計し、2009年と2020年の世界的な不況を除き、過去50年で最低とした。 UN DESAの報告書を基に国・地域別の経済成長率をみると、先進国では、米国(2024年のGDP成長率見通し:1.4%)が「深刻な下方リスクに直面する」とした。家計貯蓄の縮小や高金利、労働市場の軟化を受けて、これまで成長を支えた個人消費が弱まり、投資も低迷するとみている。EU(1.2%)も課題を抱え、インフレ緩和や賃金上昇を通じた個人消費の改善で回復基調にあるとする一方、緊縮財政や金融支援策の終了が成長を押し下げるとした。 新興国では、中国(4.7%)経済は2023年下半期に「峠を越えた」とするものの、不動産部門が依然として弱く、国外需要の低迷も伴い、緩やかな成長が予想される。東アジア(4.6%)は引き続き堅調な個人消費を見込み、観光業などサービス輸出も回復しているが、世界全体の需要減が地域の成長源の財輸出を押し下げる見通し。インド(6.2%)は主要経済で最も急速な成長を続けていると指摘。国内需要が力強く、製造業とサービス業の成長も底堅いとしている。 世界銀行は今後の見通しについて「(2024年からの)2年間の見通しは暗い」と予測する。下振れリスクが優勢とし、中東情勢やウクライナ紛争などの地政学リスクに対し、「対立が激化すれば、エネルギー価格の高騰を招き、世界の経済活動やインフレに大きな影響を与え得る」と指摘した。2025年の世界経済成長率は、UN DESA、世界銀行ともに2024年よりわずかに回復し、2.7%と予測している。 |
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●駐日ロシア大使にノズドレフ氏 プーチン大統領が任命 1/19
ロシアのプーチン大統領は19日、同国外務省で日本などを担当するアジア第3局長のニコライ・ノズドレフ氏を新たな駐日大使に任命する大統領令に署名した。政府の公式サイトで公表された。 ノズドレフ氏は1994年にモスクワ国際関係大を卒業後に外務省入りし、2010〜15年に在オーストラリア大使館参事官。15〜18年にアジア第3局次長を務め、18年2月に同局長となった。日本語に堪能。東京の在日ロシア大使館では、ガルージン前大使(現外務次官)が22年11月に離任後、後任の大使が着任せず空席となっていた。 日本の武藤顕駐ロシア大使は昨年12月に着任していた。 |
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●ウクライナがロシアに無人機攻撃 プーチン大統領の別荘の上空飛行も 1/19
ウクライナ軍はおよそ1000キロメートル離れたロシア領内の石油施設に無人機攻撃を実施したと発表しました。うち1機はプーチン大統領の別荘の上空を飛行したということです。 ウクライナメディアは18日、ウクライナの国防省情報総局がロシアの第2の都市、サンクトペテルブルクの石油貯蔵施設を無人機で攻撃したと報じました。 そのうち1機は、ロシアのプーチン大統領が所有するとされる別荘の上空を飛行したということです。 ウクライナのカミシン戦略産業相は、攻撃を認めたうえで「我々は、サンクトペテルブルクまで飛行する物を作ることができる。無人機は1250キロメートル飛行した」と述べ、長距離の標的もウクライナ軍の射程内にあることを誇示しました。 一方、ロシア国防省は18日、「モスクワ近郊とサンクトペテルブルクがあるレニングラード州の上空で、無人機2機を迎撃した」と述べ、攻撃は失敗したと主張しました。 |
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●プーチン大統領の娘が異例のメディア出演...無神経な発言に批判の声 1/19
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の娘であるマリヤ・ボロンツォワが、2023年12月にインタビューに応じていたことが分かった。プーチンの家族がメディアに出るのは、きわめて異例のこと。「最も価値があるのは命」などの発言をめぐり、ネット上では多くの批判の声が飛び交っている。 ボロンツォワは2023年12月16日に、医療系の非営利団体「Medtech」のインタビューに応じ、世界的な医療の進歩や文学、音楽芸術への関心について42分間にわたって語った。 彼女がインタビューに出演することは、ロシアの人気ソーシャルメディア「フコンタクテ」で大々的に宣伝されたものの、ユーチューブ上で公開された動画の視聴回数は、1月12日の時点で1万回に達していなかった。 長年公の場に姿を見せて来なかったボロンツォワはインタビューの中で、ロシアは「経済中心の社会」ではなく「人間中心の社会」であり、「最も価値があるのは人間の命だ」と語った。彼女がプーチンの娘だという紹介はなく、会話の中にも出てくることはなかった。 ボロンツォワは、プーチンと2013年に離婚した最初の妻リュドミラ・シュクレブネワの間に生まれた二人の娘のうちの一人だ。ボロンツォワも妹のカテリーナ・チホノワも、それぞれ子どもがいる。プーチンが二人を自分の娘だと公に認めたことはなく、ロシア政府も二人の生活に関する詳しい情報は一切公表して来なかった。ボロンツォワがロシアによるウクライナ侵攻について公にコメントしたことはない。 ●「前線に送られた兵士の命は」など批判的なコメント 複数のX(旧ツイッター)ユーザーは、今回のインタビューでボロンツォワがロシア社会における人間の命の価値について発言したことに注目。父親であるプーチンが、もう2年近く続いているウクライナでの戦争に対して強硬姿勢を貫いているなか、偽善的な発言だと示唆した。 英BBCのジャーナリストであるフランシス・スカーは12日、「彼女の父親の『部分動員』によってバフムトやマリインカの前線に派遣された人々は、彼女の意見に賛同するだろうか」とXに投稿した。 ロシア、ベラルーシやウクライナの外交政策を取材しているジャーナリストのニコラ・ミコビッチは11日に、「私たちにとって最も価値あるものは人間の命だ――プーチンの娘であるマリヤ・ボロンツォワの発言」と投稿。「もちろんそうだ。特に厳重に要塞化されたウクライナ軍の拠点に突入させられたロシア軍の兵士たちの命が」と書き込んだ。 ●インタビュアーは過去にモスクワ市長の下で勤務 米当局者らは2023年12月、2022年2月24日のウクライナ侵攻から始まった今回の戦争におけるロシア軍の死傷者は31万5000人にのぼっているとの推定を明らかにした。これは戦争が始まる前のロシア軍の要員の87%に相当する数だ。プーチンは2022年9月に部分動員令を発令し、30万人の予備役を招集している。 ウクライナの市民団体によれば、2023年11月までに確認されたウクライナ軍の死者は2万4500人に達した。米ニューヨーク・タイムズ紙は2023年8月に、複数の米当局者(匿名)の話として、ウクライナの総死者数は7万人近くに達していると報じていた。 今回ボロンツォワにインタビューを行ったのは、非営利団体「Medtech」モスクワ支部のCEOを務めるビヤチェスラフ・シュレニンだ。ロシア語の独立系メディア「Agentstvo」によれば、シュレニンは2013年から2017年までモスクワ市長事務所で働いていた。同事務所での最終職位は第一副首席補佐官だった。 |
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●「ウクライナ危機」表記を修正 1/19
ウクライナメディア「ウクラインスカ・プラウダ」は19日、ロイター通信がロシアによるウクライナ侵攻をウェブサイトで「ウクライナ危機」と表記していたとして修正を求めたと明らかにした。「ウクライナ危機」の表現はロシアの公人や主要メディアが侵攻を正当化するために多用しているプロパガンダだと訴えた。 ロシアのプーチン大統領は侵攻を「ウクライナ危機」と表現してきた。ロシアとは関連がないウクライナの国内問題と印象付ける狙いがあるとみられる。 ウクラインスカ・プラウダによると、問題となったのはニュースを分類する項目の表記。ロイターは指摘を受け「ウクライナとロシアの戦争」に改めた。 |
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●「町の再建」か「戦争の勝利」か、復興の順序巡り割れるウクライナ 1/19
ウクライナ東部のトロスティアネツは、戦後の大規模な復興に必要な技術と経験を蓄積することを目的に、国家予算を充てて町を再建する試験的なプロジェクトの実施都市に選ばれた。市長は、町に活気を取り戻したいとして中央広場や交通ターミナルの再建を始めた。しかしこうした復興事業に対し、「何よりもまず勝利」だとして反対する声も上がっている。 取材で訪れた際、トロスティアネツでは交通ターミナル再建のため、ショベルカーが忙しく土砂やがれきの撤去を進めていた。 トロスティアネツは、ロシアとの国境から32キロほどしか離れておらず、およそ2年前の戦闘で大きな被害を受けた。 ユーリイ・ボヴァ市長は町が活気を取り戻さなければ、何百万人ものウクライナ人が祖国の復興を果たすことなく海外に永住してしまうのではないかと危惧する。また国民は日々、破壊を目の当たりにすることで、心に傷を負っている、とも述べた。 トロスティアネツ ボヴァ市長「今日、私たちは帰還すべきすべての人々のために戦っている。帰還し、ここで未来を築く必要のあるすべての子どもたちのために。わが軍の兵士たちは、この人たちのために戦っている。抽象的な目的のためではなく、彼らのため、そしてこの国の未来のために。しかし人口のない国、あるいは活動的な人口が海外に移住し、高齢の女性だけが残された国を想像することは不可能だ。そんなことはあり得ない。だから私たちは今日やらなければならないし、わが町の事例こそが、おそらく人々を呼び戻すきっかけになるだろう」 しかし戦争は一向に収まる気配がない。そして誰もが復興を優先すべきだと考えているわけではない。 近くの町オフチルカに住むアントニーナ・ドミトリチェンコさんは、人々はウクライナ軍を支援するために、ギリギリまで節約していると話す。「何よりもまず勝利」と彼女は言う。 オフチルカのパブロ・クズメンコ市長は、トロスティアネツの再建方法を公然と批判している。 オフチルカ クズメンコ市長「トロスティアネツが選ばれたのは嬉しかった。しかし、再建されるのは人々の住宅や重要なインフラ施設であり、中央広場や道路ではないと思っていた。広場とその美しさは、戦争の後からでも十分に再建可能だ」 近隣の町同士の見解の相違は、戦時中の財政支出に対して、ウクライナ国民の意見が分かれていることを反映している。当局に対し、道路や公共スペースの美化にかける予算を凍結し、その資金を軍事費に拠出するよう求める草の根運動が広がりを見せている。 こうした動きを背景に、南部オデーサの当局は昨年末、予定していた道路の補修やスタジアムの改修などは戦時下に「認められるものではない」として、合計約13億4000万円の入札を取り消した。 |
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●中国首相、ゼレンスキー大統領と会談拒否か ダボス会議閉幕 1/19
スイス東部のダボスで開催中の世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)が19日、閉幕した。ロシアによるウクライナ侵略後、初めて対面出席したゼレンスキー大統領はロシアとの協力を強化する中国に対し、和平案の協議への参加を要求。和平に向けた議論の進展が期待されたが、ゼレンスキー氏と中国の李強首相の会談は実現しなかった。中国側が拒絶したとの見方もあり、世界経済に影を落とす侵略の終結が見通せない状況だ。 ●2つの戦乱終結の糸口を 15日に開幕したダボス会議は地政学リスクが主要議題となった。ゼレンスキー氏や李氏のほか、ブリンケン米国務長官、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長らが集結。ウクライナ侵略や、イスラム原理主義組織ハマスとイスラエルの戦闘などについて討議した。 ロシアが2022年2月に開始したウクライナ侵略は高インフレを引き起こした。さらに、エネルギーの重要な供給源である中東地域で戦闘が拡大すれば「世界的な景気後退につながる恐れもある」(米ブルームバーグ通信)。欧州経済の専門家は「首脳らはダボス会議で世界経済を揺るがす2つの戦乱を終わらせる糸口を模索した」とみる。 ●EUの後押しも 会議開幕に先立ち、ウクライナ侵略の終結に向けた道筋を話し合う国際会合が14日にダボスで開催。80カ国以上の国・機関代表が出席した。ゼレンスキー氏は15日、同氏が掲げる領土回復や戦争犯罪の処罰など10項目の和平案「平和のフォーミュラ(公式)」を協議する首脳級の「世界平和サミット」の開催をスイスと準備する方針を表明した。 だが、軍事転用が可能な物品をロシアに供与していると指摘される中国は国際会合を欠席。ウクライナのイエルマーク大統領府長官は「戦争終結への協議に中国が関与する必要がある」と訴えた。ウクライナには協議参加を通して中露関係を弱めたい思惑もある。 ゼレンスキー氏はダボス会議の期間中、和平交渉の参加を求めるために李氏と会談しようとしたとみられる。EUも会談の実現を後押ししたもようだが、米政府高官は米政治サイトのポリティコに「中国はウクライナの面会要請を拒否した」と明かした。ロシアが中国にウクライナとの外交的な接触を避けるよう求めたとの情報もある。 ●「建設的な役割」 中国の習近平政権はウクライナ問題に関し「建設的な役割を果たす」としつつも、一定の距離を保って深入りを避けようとしている。協力を深めるロシアや対立が続く米国の動向も見極めているとされる。 中国外務省の毛寧(もう・ねい)報道官は16日の記者会見で、李氏とゼレンスキー氏の会談について問われると「中国は一貫してウクライナを含む関係各方面と意思疎通を保っている」などと述べ、直接的な言及は避けた。李氏は同日のダボス会議での基調講演で、ウクライナ問題について一切触れなかった。 ダボス会議ではパレスチナでの戦闘の停戦や終戦に向けた協議も行われた。カタールのムハンマド首相兼外相は16日、イスラエルがパレスチナとの「2国家共存」に取り組む必要性を指摘。ブリンケン氏も17日、中東諸国から戦闘終結に向けた議論に米国が参加することを望む声が寄せられているとし「何をすべきかが問われている」と述べた。 |
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●ナゴルノ・カラバフ紛争の基層に根ざす「マトリョーシカ・ナショナリズム」 1/19
1月1日、アルメニア系勢力の「共和国」が解体されナゴルノ・カラバフ紛争は幕引きを迎えた。30年以上続いた紛争の出発点を、アゼルバイジャン人とアルメニア人の対立を抑える「重石」だったソ連の崩壊に見る議論は数多い。だが、米マイアミ大学准教授のクリスタ・ゴフは著書『Nested Nationalism』の中で、対立の萌芽をさらに1930年代にまで遡って探している。一つのナショナリズムの内部に別のナショナリズムが入る「入れ子構造」を持ったソ連の「マトリョーシカ・ナショナリズム」は、ナゴルノ・カラバフの歴史にも色濃く影を落としている。 ウクライナとガザでの戦争に世界が振り回された2023年は、ナゴルノ・カラバフ紛争が大きく動いた年でもあった。アゼルバイジャン領内でアルメニア人が多数を占めるこの地域で、支配や帰属を巡って30年あまり続いてきたこの紛争は、前者2つの戦争の大立ち回りの陰であまり注目されないまま、アゼルバイジャンの軍事的勝利に終わった。 ナゴルノ・カラバフは、1990年代の第1次紛争で勝利したアルメニア側が長年、周辺も含めて広範囲に支配していた。アゼルバイジャンはその相当部分を、2020年の第2次紛争で取り戻し、残る領土の奪還を目指して23年9月に新たに攻撃を始めた。軍事面で劣勢のアルメニア側はわずか1日で降伏し、十数万人の住民のほぼ全員が難民となってアルメニア本土に逃れた。「民族浄化」と見なされかねない結末である。 この紛争では、これまでも虐殺や住民の追放、戦争犯罪行為がたびたび指摘されてきた。なぜ対立はこれほど激しくなったのか。両者が憎み合うのはなぜか。 |
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●「親しみ感じる」中国12.7% ロシア4.1% 過去最低 内閣府調査 1/19
外交に関する内閣府の世論調査で、中国に「親しみを感じる」と答えた人は12.7%、ロシアに「親しみを感じる」と答えた人は4.1%で、ともに過去最低となりました。 内閣府は外交に関する国民の意識を把握するため、去年9月から10月にかけて全国の18歳以上の3000人を対象に郵送で世論調査を行い、55%にあたる1649人から回答を得ました。 それによりますと、中国に「親しみを感じる」と答えた人は12.7%で、前回より5.1ポイント下がりました。 令和2年から調査手法が変更されたため、単純に比較はできないものの、質問が設けられた昭和53年以降、最も低くなっています。 外務省の担当者は「中国との間にはさまざまな懸案があり、日本産水産物の輸入停止措置などが影響したと考えられる」としています。 また、ロシアに「親しみを感じる」と答えた人は4.1%で、ウクライナへの軍事侵攻が続く中、こちらも過去最低となりました。 一方、アメリカに「親しみを感じる」と答えた人はほぼ横ばいの87.4%、韓国に「親しみを感じる」と答えた人は、前回の調査より6.9ポイント上がり、52.8%でした。 |
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●なぜ米ウクライナ支援は停滞しているか? 1/19
ロシアと戦うウクライナに対しアメリカからの巨額の軍事支援が滞っています。いったいなぜでしょうか?橋解説委員とお伝えします。 Q1) けさのイラスト、バイデン大統領が武器や弾薬を詰め込んだ箱をウクライナに届けようとしている? A1) バイデン大統領は、ウクライナに対する支援として、614億ドル=日本円で9兆円規模の追加予算を議会に要求しています。従来の予算はすでに先月で底をつき、ロシアによる攻勢に、ウクライナがどこまで持ちこたえられるかをバイデン政権は強く懸念しています。 Q2) アメリカ議会はウクライナ支援に反対なのですか? A2) 議会下院で多数派を占める共和党のジョンソン下院議長は、「不法移民対策が最優先だ」として、追加予算の承認を先延ばししています。共和党議員全員が支援に反対しているわけではなく、予算の優先順位が問題だと言うのです。 アメリカ南部のメキシコとの国境で確認された不法移民は、去年9月までの1年間で250万人と過去最多を記録しました。とりわけ“国境の壁”を建設したトランプ前大統領が、政権復帰をめざすのにつれて、まるで駆け込みのように、国境を許可なく越えてくる人が増え、先月も1日あたり平均で7,000人に上っています。 このため、他国の防衛を支援する前に“アメリカ国内の国境対策の強化を急ぐべきだ”とする意見が高まっているのです。 Q3) では国境対策を強化した上で、ウクライナ支援も行えば良いのではないですか? A3) それはそうなのですが、民主・共和両党は、今年度予算の歳出総額では合意しましたが、個別の項目は審議が紛糾し、当面のつなぎ予算も、今週末と再来週末で期限を迎えます。このため議会は、政府機関の閉鎖を回避しようと、つなぎ予算の期限を3月上旬まで延長する案を審議し、このつなぎ予算には含まれないウクライナ支援は、いわば後回しになっています。 ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから来月で2年になります。最大の支援国アメリカは、選挙が近づくのにつれて、両党の政治的なかけ引きが激しくなり、支援の停滞は、さらに長引く可能性もありそうです。 |
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●関係改善の糸口? プーチン氏、駐日ロシア大使を任命 約1年空席 1/20
ロシアのプーチン大統領は19日、新しい駐日大使として外務省アジア第3局長のニコライ・ノズドレフ氏を任命した。駐日大使のポストは、現外務次官のガルージン前大使が2022年11月に離任して以降、空席になっていた。 露外務省によると、ノズドレフ氏は1994年にモスクワ国際関係大学を卒業後、外務省に入省。日本語が堪能としている。在オーストラリア大使館の公使参事官などを歴任し、18年2月から日本などを担当するアジア第3局長を務めていた。 ロシアはウクライナで続けている「特別軍事作戦」を巡り、日本が欧米と足並みをそろえて対露経済制裁を科していることに反発し、日本を「非友好国」に指定。平和条約締結交渉の中断を表明し、北方領土でのビザなし交流に関する合意を一方的に破棄するなど、両国関係は著しく悪化している。 在露日本大使館では、武藤顕大使が23年12月に着任したばかり。両国の大使が同時期に着任することになり、関係改善に向けた糸口を探る動きにつながる可能性もある。 |
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●北方領土・国後島の空港、整備加速 プーチン氏、往来増狙い開発主導 1/20
ロシア政府は17日、北方領土・国後島のメンデレーエフ空港を整備し、濃霧による欠航が常態化している現状を2025年までに改善する方針を明らかにした。悪天候下でも航空機の正確な着陸を誘導する装置を導入する予定で、国後島との人・モノの往来が大幅に増える可能性がある。3月に大統領選を控える中、プーチン大統領が地元の要望に応じて指示した形で、実効支配する島の開発を主導する姿勢を鮮明にした。 国後島唯一の空の玄関口となる同空港を巡っては、同島の旅行業経営者が11日に極東ハバロフスクで開かれたプーチン氏との会合で「観光ピーク期の欠航率が45%に上る」と窮状を直訴した。これを受けてプーチン氏が17日に開いた政府の会合で、サベリエフ運輸相が対応策を説明。25年までに着陸用の「照明・信号装置を設置する」とし、「困難な気象条件でも受け入れが可能になる」と語った。 同空港は島南部に旧日本軍が建設し、約2千メートルの1本の滑走路がある。施設の劣化で06〜07年に約3カ月間閉鎖された後、滑走路の修繕などを経て利用を再開。12年には夜間の離着陸を可能にする発光信号装置が設置された。現在はロシアのオーロラ航空がサハリン州の州都ユジノサハリンスクと1日1往復の定期便を運航している。 ただ、最も利用客が多い夏場に濃霧が頻繁に発生する上、滑走路の近くに山があり視界不良で衝突の危険がある。17年に同州のコジェミャコ知事(当時)が改善に向け整備する方針を示していたが、昨年6月には5日間連続で欠航。択捉島のヤースヌイ空港と比べても航空会社が早期に運航をとりやめるケースが目立ち、関係者から不満の声が出ていた。 ロシアでは22年2月のウクライナ侵攻後、対ロ制裁の影響で国内観光の需要が伸び、北方領土への訪問客も増加。サベリエフ氏によると、23年のメンデレーエフ空港の利用客数は22年比8%増の5万7500人に上った。空路の運航が安定すれば、さらに観光客などの往来の増加が予想されるほか、国内外からの投資拡大につながる可能性もある。日本政府は北方領土の返還を求めているが、ロシアによる整備が加速する恐れがある。 |
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●ロシア中部で大規模なデモ ウクライナへの軍事侵攻以降まれ 1/20
ロシア中部のバシコルトスタン共和国で、地元の著名な活動家に実刑判決が言い渡され、これに抗議する支持者らが相次いで大規模なデモを行い、拘束者も出ています。 ウクライナへの軍事侵攻以降、ロシアで大規模なデモが行われるのはまれで、大統領選挙が3月に行われるのを前に、政権は国内の安定維持に神経をとがらせています。 ロシア中部のバシコルトスタン共和国の中心都市ウファで、19日、実刑判決を受けた活動家の支持者およそ1500人が中心部の広場に集まり、抗議デモを行いました。 地元当局は、抗議デモを厳しく取り締まると警告していて、地元メディアによりますとおよそ10人が治安部隊に拘束されました。 活動家はこの地域に多い少数民族バシキール人の男性で、文化や環境保護への取り組みが地元の人の支持を集めていましたが、今月17日、民族的な憎悪をあおったとして禁錮4年の判決を言い渡されました。 デモは今週に入って3度目で、実刑判決が下された17日には数千人規模に膨れ上がり、治安部隊との衝突も起きました。 ウクライナへの軍事侵攻が始まって以降、ロシアでは市民による抗議活動への取り締まりが強化され、大規模なデモが行われるのはまれです。 一連の抗議デモについてロシア大統領府のペスコフ報道官は19日、「大規模な暴動ではない」と述べ、地域の問題だと指摘しました。 プーチン大統領が通算5回目の当選を目指す大統領選挙が3月に行われるのを前に、政権は国内の安定維持に神経をとがらせています。 |
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●ベラルーシの「軍事ドクトリン」核戦力も誇示した内容に改訂 1/20
ロシアと同盟関係にあるベラルーシは、改訂中の新たな安全保障の基本原則の中にロシアからベラルーシ国内に配備されたとする戦術核兵器を抑止力だとする要素が盛り込まれるという認識を示し、ウクライナ情勢を巡って対立する欧米諸国へのけん制を強めています。 ロシアと同盟関係にあり、NATO=北大西洋条約機構の国とも隣接するベラルーシでは、安全保障の基本原則である「軍事ドクトリン」の改訂が進められています。 これについて、ベラルーシのフレニン国防相は19日、記者団に対し「新たな軍事ドクトリンは軍事危機のレベルに応じて国家が講じる適切なものだ」と述べウクライナ情勢などを巡ってNATOとの対立が深まる中で、必要な措置だと強調しました。 そのうえで「ベラルーシへの戦術核兵器の配備は、潜在的な敵国からの武力侵略を防ぐため、抑止力として重要な要素となる」と述べ、戦術核兵器の配備を抑止力だとする要素が盛り込まれるという認識を示しました。 ロシアのプーチン大統領は去年3月、ベラルーシにロシアの戦術核兵器を配備すると表明してその後、核兵器の運搬が進められてきたとされ、先月ベラルーシのルカシェンコ大統領は核兵器はすでに国内に配備されたと主張していました。 ベラルーシとしては核戦力も誇示した軍事ドクトリンに改訂することで、ロシアとともに対立するNATOへのけん制を強めるねらいです。 |
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●新たな危機の火種。韓国を敵国と見なし、プーチンと手を組んだ北朝鮮 1/20
開戦から3年が経とうとするウクライナ戦争に、終わりの見えないガザ紛争。そんな中にあって、北朝鮮は韓国を「第一の敵国」と定めロシアに急接近する姿勢をより鮮明にしています。2024年、国際社会はどのような事態に見舞われてしまうのでしょうか。元国連紛争調停官の島田さんが、北朝鮮の軍事的台頭が世界に及ぼす影響を解説。さらにガザ紛争の長期化で利を得るのはプーチン大統領だとした上で、パレスチナに和平をもたらす解決策を考察しています。 ●世界は戦いのドミノに陥ってしまうのか。北朝鮮の軍事的台頭で混乱化する国際社会 「北朝鮮の外交・安全保障政策における方針転換は、北朝鮮が戦争やむなしとのモードに入ったと受け取るべきか」 このような問いが海外メディアでの討論中に出てきました。 とてもセンセーショナルでショッキングな内容ではありますが、正直申し上げて私は答えを持ち合わせていません。 今週に入って北朝鮮のチェ・ソンヒ外相がモスクワを訪問し、クレムリンでプーチン大統領が直接会談するという非常に稀な厚遇をしたことと、相次ぐ弾道ミサイル発射実験の実施、そして金正恩氏自身が発言した「(これまでの融和・統一路線を破棄し)韓国を敵国と見なす」という内容はいろいろな憶測と懸念を生じさせます。 「またお馴染みの瀬戸際外交じゃないのか」という意見も多く聞かれますが、今回の状況が通常と異なるのは 【外交・安全保障面で背後にしっかりとロシアがついていること】 【ロシアの高度な軍事技術、特にミサイル技術が北朝鮮に提供されたと思われ、これからもそれが強化されると思われること】 【国連をはじめとする国際社会において、ロシアとくっつくことで北朝鮮の孤立が解消されることが期待できること】 などといった複数の特徴の存在です。 本当に韓国に対して戦争を仕掛けるか否かという問いは極端なものであると考えますが、ただ仮に北朝鮮優位の形で南北統一が実現したとしても、金王朝の権威の弱化は必須であると分析できるため、金王朝の基盤の堅持と強化が最大の使命に位置付けている金正恩氏とその一族にとっては、あえて統一の道を断ち、独自路線を引くことがベターと判断したのだと考えます。 実際に戦争に至るかどうかは分かりませんが、アメリカ大統領選挙でトランプ大統領の復活の可能性があると言われていることから、その結果が判明するまでは仕掛けてこないと見ています。 ただ、ロシアと北朝鮮の接近と、北朝鮮の態度の硬化は国際社会にとっては無視できない重大な懸念を生じさせます。 北朝鮮の飛躍的に伸びる弾道ミサイル技術と飛距離、核弾頭の小型化に関する技術革新、そしてロシアの手助けを得ていると思われるHCV(極超音速滑空兵器)の開発などは、もうこれまでのように口先だけの脅しで済ませることは出来ず、北朝鮮発の有事に備えて真剣な監視体制の構築と運用が急がれることになります。 そしてそれは日米韓の北東アジア地域に留まらず、世界がICBMの射程距離に入ると思われることから、欧州各国にとっても無視できない自国・地域の安全保障問題として扱われることになります。 即時に北朝鮮が戦争を仕掛ける可能性は低いと考えますが、北朝鮮が軍事的な国際プレイヤーとして台頭してくることになると、国際社会は、現在進行形のロシア・ウクライナ間の戦争と、一向に出口の見えないイスラエル・ハマスの戦争へのアクティブな対応の必要性に加え、広域アジアで高まる軍事的な緊張(米中台間の南シナ海周辺と朝鮮半島情勢などの北東アジア周辺)にも対応を迫られる【三正面の作戦実行】を迫られることになります。 ●ガザ紛争と北朝鮮の軍事台頭の割を食うウクライナ しかし、“国際社会”に実質的に三正面の作戦実行を行う余裕はないと思われ、その割を喰うことになる最前線がウクライナでしょう。 ロシアによるウクライナ侵攻からもうすぐ3年が経過しますが、ウクライナによる反転攻勢は遅々として進まず、欧米諸国とその仲間たちの対ウクライナ支援疲れが顕著になりだしたところに、イスラエル・ハマスの戦争が勃発し、イスラエル軍によるガザでのパレスチナ人への無差別攻撃による犠牲の拡大への対応と周辺国への波及・拡大を防ぐためのあらゆる努力が優先されることになり、ウクライナへの軍事・経済支援は滞っています。 アメリカ政府の対ウクライナ支援のための資金はすでに枯渇し、新たな予算が担保される可能性は低いと思われると同時に、ウクライナ支援の是非がアメリカ国内の政争の具にされることで、より状況が悪化していると思われます。バイデン大統領からゼレンスキー大統領への口約束も実現のめどは立っていないのが実情です。 そしてこれまでの“ウクライナ領からのロシアの完全排除を目指すウクライナへの支援”の方針を見直し、すでに確保した領土を守ることに徹するべきだという姿勢に移行する方針と言われています。 欧州各国については、英国のスナク首相が2兆5,000億円規模の追加支援をウクライナに約束しましたが、こちらもまた議会での承認をまだ得ておらず実現の可否は未定ですし、フォンデアライエン委員長(欧州委員長)やマクロン大統領などは「ロシア・ウクライナ戦争の停戦実現のために外交努力を強化する」と発言するものの、具体的な軍事支援の拡充と継続といったような先立つものはなく、それは日本からG7議長国を引き継いだイタリア政府の方針(クロセット国防相)にも引き継がれています。 2023年6月からウクライナが行っている反転攻勢は失敗との見方が強く、戦闘が泥沼化する中で、巨額の援助と膨大な量の軍事支援が功を奏さず、かつ供与された兵器管理がずさんであることが明らかになったゼレンスキー大統領とウクライナ政府と距離を置き、このままゼレンスキー政権がロシアとの停戦協議の実施を拒み続ける場合には、支援の継続は不可能ではないかとの見方が強まっているようです。 そのような動きと雰囲気を敏感に感じ取っているのか、12月あたりからプーチン大統領の発言の中に“停戦に向けた交渉に臨む用意がある”という内容が含まれるようになってきており、「戦争を長引かせているのはウクライナ」というような風潮を、ウクライナの後ろ盾となっている欧米諸国とその仲間たちの国内で高めようとしているように見えます。 とはいえ、注意しないといけないのは、その発言と同時に「“on Russia’s terms”(ロシアが提示する条件の下ならば)』というBig IFが付けられていることです。 ロシアの提示する条件をウクライナはもちろん、なかなか欧米諸国とその仲間たちも受け入れることはないと考えますが、このような偽の前向きな発言を提示しておくことで、ウクライナ国内と欧米諸国とその仲間たちの国内で、反ゼレンスキーの波風を立てようとする心理戦の狙いが透けて見えてくるのは要注意でしょう。 プーチン大統領とロシア政府の狙いは、【ゼレンスキー大統領の排除と親ロシア政権の樹立】、そして【NATOに代表される欧米の影響力と軍事的プレゼンスの“ロシアの勢力圏からの排除”】さらには【すでに“一方的に”編入したウクライナ東南部4州のロシアへの帰属を認めさせることと、クリミア半島の支配の固定化】があると思われます。 ●懸念される「ウクライナの存亡に関わる事態」への発展 最初の2つについては、実現は難航が予想されるものの、3つ目に関しては、早期停戦と一旦ウクライナ支援をリセットしたいと考える欧米諸国とその仲間たちが水面下でウクライナに受け入れを考慮するように迫っていると思われます。 ゼレンスキー大統領とその政権にとってはその受け入れは、ゼレンスキー政権の基盤の崩壊につながることから受け入れることは到底できないという判断をするかと思いますが、それで欧米からの支援がなくなり、ウクライナが強大なロシアの前で孤立するような事態に陥ってしまうと、【戦闘がロシア・ウクライナ国境を超える恐れ】が出てきて、それはウクライナの存亡に関わる事態に発展する公算が高くなります。 ロシアはウクライナ軍による自国への攻撃を国家安全保障上の“脅威”と定義し、自衛権を発動してウクライナへの大規模一斉攻撃を正当化することになるでしょう。ロシアはいろいろなところでちょっかいを出していますが、戦争をしているのは対ウクライナの一正面だけですので、一気にウクライナに止めを刺しに来るか、じわじわといたぶるのかは分かりませんが、対ウクライナEnd gameの発動に繋がることになります。 ちなみにウクライナがロシアに対して攻撃を仕掛けるような事態が生まれ、そしてロシアが自衛権を発動してしまうと、欧米社会とその仲間たちも、国連などの国際社会も、直接的な戦争の拡大による安全保障上のリスクに加え、政治・外交面で大きなジレンマに直面することになります。 昨年10月7日にハマスがイスラエルに対して一斉テロ攻撃を加えたことに対するイスラエル軍の報復を“正当な自衛権の発動”と当初、擁護してしまったことで、“ウクライナに攻め込まれた”とロシアが主張して自衛権を発動し、対ウクライナ攻撃を全土に広めることを正当化してしまった場合、自制は促すことが出来ても、道義上、非難できなくなる状況に陥る可能性が高まることです。 そもそもウクライナに侵攻したロシアが悪いのは言うまでもないことですが、ウクライナに侵攻された場合、ロシアとしては“当然”自衛権を発動する権利を主張し、実際に発動して一斉にウクライナ全土への大規模報復を行うというかたちになると考えますが、ロシアによる攻撃が、これまでの半ば無差別とも思われる攻撃とは一線を画して軍事ターゲットへのピンポイントかつ確実な攻撃として実施されるような事態が来た場合、なかなか非難しづらい状況が生まれてしまいかねません。 もちろん、イスラエルによる“過剰な自衛権の行使”(EUのボレル上級外交代表など)のように、ロシアがウクライナ市民に対して無差別な“報復”攻撃に及んだ場合には再びロシアに対する重大なバックラッシュが待っていますが、いろいろと非難され、国際社会における孤立を深めても、いまでも国連安全保障理事会の常任理事国の座は維持し、あらゆる国際案件をかき回す力を発揮するロシアが突如引き下がることはないでしょう。 それに対ロ非難が何らかの形で湧き起ったら、先ほどの北朝鮮が引き起こす地域の安全保障に対する挑戦を発動させるべく、北朝鮮を焚きつけて、国際社会の緊急対応の目と注意をアジアに向けて、その間にウクライナを終わらせるという手段を取るかもしれませんし、中東に中国と共に影響力を発揮して(特にイラン)、イスラエルへのちょっかいをかけさせるという手段を取るかもしれません。 ロシアに思いのままにさせないためには、まず北朝鮮の暴発を抑止し、かつガザにおける衝突をいち早く終わらせることが大事ですが、それはそれでかなり難航しそうな感じです。 ●ガザでの凄惨な戦いの炎が周辺国に飛び火する可能性も ダボス会議に参加し、イスラエルとハマスの間の仲介を行っているカタールのムハンマド首相兼外務大臣が言うように「イスラエルが2国家共存に取り組まない限り解決は望めない。今、国際社会は人質交換のための戦闘休止を議論の中心に据えているが、それでは根本的な問題は解決せず、また同じようなことが起きて、結果、パレスチナの地で大量殺戮が行われることになるだろう。国際社会はイスラエルとパレスチナの2国家が共存するというより大きく根本的な問題を無視してはならない」というのが、“解決”の鍵だと考えます。 「じゃあ、そうすればいいじゃないか」と言われるかもしれませんが、それが容易でないことは、これまでの複雑に絡み合ったイスラエルとパレスチナの間での交渉の進捗の遅さと何度も破られる約束を見れば分かるかと思います。 そして今回はメンツを完全につぶされたネタニエフ首相の政治的な意図も絡んでおり、純粋な自衛権の発動に留まらず、これまで彼の中で溜まっていたハマスやパレスチナ自治政府への不信感と、これを機にイスラエル周辺地域の安全保障・治安環境をリセットしようという意図が見え隠れしているのが気になります。 これまでイラン革命防衛隊に支援されたヒズボラやイエメンのフーシー派がイスラエルに攻撃を仕掛けていますが、それらはイスラエルへの示威行為に留まり、非常に綿密に計算された攻撃であると見ていますが、もしネタニエフ首相が自国の抑止力を再構築するために隣国のヒズボラを追い込むことを選び、レバノンやシリアへの攻撃を行うことを選択したら(自身の政治生命の延命と復権のたに)、ガザでの凄惨な戦いの炎はレバノンやシリアに飛び火することもあり得ます。 しかし、誰もパレスチナ自治区のガザを越えてこのイスラエルとハマスの紛争が拡大することを望むプレイヤーは(ハマスを除けば)存在せず、それはイスラエルの後ろ盾であるアメリカ政府も、ハマスを称え、ヒズボラやフーシー派を支援するイラン政府も、公式・非公式に紛争の拡大を望まないことを確認済みです。 サウジアラビア王国やヨルダン、UAE、カタール、エジプトなどの市民は「アラブ同胞の連帯」を掲げ、それぞれの政府に積極的にパレスチナ側につくように要請していますが、政府はすでにこれまでに進められてきたイスラエルとの国交正常化が提供する経済的な利益と最先端技術へのアクセス(特に海水の淡水化技術)といった実利の確保が自国経済の命運を握ることから、国民の手前、proパレスチナの口先での介入は行っても、戦争が収まった後のイスラエルとの協調に重点を置いて、戦闘からは距離を置いているため、イスラエルからの直接的な攻撃が、仮に誤爆であっても、自国に“継続的に”及ばない限りは、結局何もしないことを選択するものと、これまでいろいろな利害関係者や調停グループの専門家などと話ししてみて、そう私は理解しました。 ネタニエフ首相とその周辺は、もしかしたらよからぬ別の意図があって戦闘を長期化させているかもしれませんが、ガザでの紛争が継続し、長期化しても誰も得することはなく、逆に国際的な安全保障環境と体制の一層の不安定化を進めてしまうだけですので、国際社会はかなり強い決意をもってガザでの戦闘を止めさせる協調行動を取る必要があります。 そして停戦・戦闘停止が成立した場合、もちろん人質の一刻も早い解放を実現することは当たり前ですが、これまでに何度も議論され、架空の合意ができては破棄されてきた“2国家解決”(オリジナルは1967年の第3次中東戦争後の占領地からのイスラエル軍の撤退)を見直すことも必須ではないかと考えます。 ●イスラエルとハマスの紛争長期化で利を得るプーチン パレスチナ人はこれまでに国家樹立を目指して戦ってきましたが、実現せずに今の中東におけるパワーバランスが出来上がって固定化しているため、現状に鑑みて、実現性のある解決、それもイスラエルが受け入れられる解決策を探す必要があります。 ネタニエフ首相はガザの統治について言及していますが、イスラエルによる再占領は、国際法に反し、同盟国で後ろ盾のアメリカが受け入れることはないでしょうし、アブラハム合意で国交正常化を図ったアラブ諸国の反発を招くことになり、さらなる混乱と悲劇を招く可能性が高まります。 解決策の根本となる諸条件がいくつかあります。 まず、ガザ地区はパレスチナ人によって統治されなくてはなりませんが、自治政府はそれには向いていませんし、ハマスによる統治への参加はイスラエルが受け入れ不可能なので、別の体制が必要になると考えます。そしてそこにはエジプトやヨルダンなどの周辺国や、サウジアラビア王国やUAE、カタールなどが、ガザの復興とサービスの拡充のために関与する必要があるかと思います。 次にすでにユダヤ人が入植しているヨルダン川西岸地区から、ユダヤ人を追い出すことは考えないことも現実的な解決策かと考えます。そうすることで新たな争いをイスラエルとパレスチナの間に生じさせる種を減らすことが可能になります。 そしていろいろな解決策、特にパレスチナ人の独自国家に繋がる解決策を模索するためには、大前提として、これまでイスラエルを盲目的に支えてきたアメリカ政府が「このようなことはもうたくさんだ。イスラエルによる国際法違反と考えられる企てを今後はサポートしない」と宣言し、イスラエルによるパレスチナ支配の終結を決意し、国際的に宣言することが必要でしょう。そして、これまでアメリカがイスラエルのために拒否権を発動してきた慣例も終結させ、国連安全保障理事会の場で停戦決議を採択して、イスラエルを従わせるように舞台を用意することが必要だと考えます。 そして余計なお世話ではありますが、イスラエル社会は総じて極めて民主的な構造であり、国際的にイスラエルを孤立させ、イスラエル人の人質の生命を犠牲にし、ガザの民間人を殺戮する決定を推し進める自国の姿を容認しないとする有権者が増えてきていると言われていることから、国益と自身の生活の安定、そして何よりも安心のために、現状を一刻も早く変えようとすることも必要かと思います。 そして欧米とその仲間たち、国際社会、イスラエル、アラブ諸国が協調して、これまでに話し合われてきた2国家解決ではなく、パレスチナという新しい国を作る提案を話し合うことで、現実的な解決をもたらし、これまで長年続いてきたnever endingな戦闘と苦痛に終止符を打つことに繋がるのではないかと考えます。 もし迅速にイスラエルとハマスの戦いを収めることが出来なければ、その影響はウクライナにも及び、北朝鮮によからぬことを考えさせ、そして他地域で眠っているか見逃されてきている数々の紛争の種が一気に芽吹き、解決不可能な混乱が私たちに訪れることに繋がるかもしれません。 そうなった場合、利益を得るのはロシアであり、その統治者プーチン大統領であり、そして大多数を占める傍観者という望まざる国際情勢が具現化することになります。 イスラエルとハマスの戦いも、ロシアとウクライナの戦いも、現時点では長期化することが予想され、解決のための策も手詰まり状態です。 解決には多層に絡み合う様々な利害と現実を丁寧に解き、皆が許容しうる現実的な解決策を編み出してくることが必要になりますが、微力ながらそのお手伝いを、仲間たちと共に、させていただきたいと思います。 |
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●「ウクライナ敗戦」を世界大戦へ拡大させるな 1/20
2023年末からロシアによる、ウクライナの主要都市へのミサイル攻撃が激しさを増している。毎日のようにロシアからミサイルが発射されている。それも、超音速からドローンまで多種多様である。 しかし、不思議なことに都市の住民の建物をことごとく破壊したという話はあまり聞かない。ロシアは住宅への直接攻撃を避けているのだ。 一方、ウクライナのドローン攻撃も2023年12月30日にあった。ウクライナの北の国境から30キロメートル先にある都市ベルゴロドへの攻撃だ。このドローンは軍事施設やインフレを狙ったものではなく、町の広場を狙ったものであった。市民の犠牲者も出た。 ●目立つロシア軍の冷静さ しかし、ロシアはこれに対して、報復攻撃として住宅への攻撃はできるかぎり避けている。ひたすら軍事施設とインフラ攻撃を繰り返している。それはなぜか。 ここで理解しておかねばならないのは、ロシア軍の冷静さである。あたかも何年も前に計画された行動にしたがって沈着に行動しているようだ。ある意味、報復をするような感情の起伏があってもいい。しかし、それを持たない極めて冷徹な反応は、恐るべしというべきかもしれない。 これについてスイス陸軍の元大佐であるジャック・ボー(Jacques Baud)は『戦争と平和の狭間のウクライナ』(Ukraine entre Guerre et Paix, Max Milo, 2023)の中で、このロシア軍の冷静な行動について分析している。 ロシアは周到に作戦を立てて行動しているという。1つひとつの軍事行動が全体の行動と、そしてその後の戦略としっかりと結びついているというのだ。これをハイブリッド戦略というようだ。 例えば2022年の開戦当初、ロシア軍はキエフ(キーウ)の北、ハリコフ(ハルキウ)の近郊など、大きな軍事作戦を展開した。しかし、同年9月にはすべて撤退し、ドンバスからザポロージャ(ザポリージャ)とヘルソンのドニエプル川左岸地域に軍を引き、国境線を固めた。 この戦いをウクライナは勝利だと喧伝したのだが、ボーによるとそうではないという。 それはロシアの行動が最初から、ウクライナの東のロシア人地域を占領するという計画であったからである。キエフやハリコフ近郊への攻撃は、あくまでも陽動作戦であったというわけだ。 キエフは6万人以上の精鋭部隊で固められている。そのほかの都市も同じだ。こうした軍が東へ投入されると、当時のロシア軍の兵力15万人程度では目的が貫徹できない。だから、ウクライナ全土に攻撃をかけて、ウクライナ軍の東部への投入を避けたというものだ。 ●アフガン紛争での教訓 ロシアは、ソビエト時代のアフガニスタン攻撃で痛い目に遭っている。それは、アメリカが北爆や中東での戦争で繰り返したように、絨毯爆撃を行い、多くの市民を殺戮し、アフガン人の反感を買い、それ以降の戦線で相次ぐゲリラ攻撃で守勢にたたされ、敗北したという苦い経験だ。 こうした経験からロシアは、市民への直接攻撃は避け、攻撃目標は当面のみならず、背後にある銃後のインフラ設備にターゲットを絞っているという。インフラとは、軍事施設、飛行場、迎撃システム、レーダーなどの情報施設、橋や道路や鉄道などの兵站設備である。 確かにイスラエルのガザ攻撃を見ても(もちろんガザからのイスラエルの攻撃を見ても)、市民への攻撃は国際法違反というだけでなく、人々の憎悪をかきたて、復讐の連鎖を生み出す。破壊されることによる見かけの打撃は大きいが、こうした攻撃は末代までの怨念を生み出す。 インフラ攻撃は、ボクシングのボディブローに似ている。間接的ではあるが、次第次第に相手を消耗させ相手の動きがとまる。考え方によっては、残酷な攻撃だ。真綿でじわじわと締め付ける方法だ。 最終的に根をあげたところで勝利する作戦ともいえる。こうしたロシアの攻撃は、ゲラシモフ将軍の理論から来ているという。 通称「ゲラシモフ・ドクトリン」と呼ばれる作戦は、まさにこの消耗戦である。西側の軍隊はこれまで比較的軍事的に弱い地域と戦争をしてきたこと、また西側から見て殺戮もやむなしという人種的偏見をもっていた地域が対象だったこともあり、直接攻撃を展開してもいた。 それが可能だったのは、相手の抵抗が少なかったからである。しかし、近代的軍をもっていて、軍備においてさほど差がない国同士では、周到な作戦と、相手の兵力を削ぐという作戦をしないと、大量の死者を出すことになる。 ゲラシモフという名は、2023年10月にウクライナのゼレンスキー大統領と停戦交渉に入ったのではないかという噂や、最近の攻撃で戦死したのではないかとウクライナ筋の情報で噂されるロシア軍のナンバー2である。 ●作戦要綱「ゲラシモフ・ドクトリン」 ゲラシモフは、「ゲラシモフ・ドクトリン」という作戦要綱を2013年に発表している。これは2006年に『ミリタリー・レビュー』に翻訳されていて、ネットで誰でも読める。そこでこう述べている。 〈戦争のルールそのものが変わった。政治や戦略的目標を完遂する非軍事的手段の役割が増大し、多くの場合、その効果において武器の力の威力を、凌駕しているのである。適用される紛争の方法の焦点が、政治、経済、情報、人事、そのほかの非軍事的手段―人々の抗議のポテンシャルと歩調を合わせて適用される―を広く使うという方向へシフトしたのである〉(24ページ)。 まさにこれは、クラウゼヴィッツの『戦争論』の有名な定義、「戦争は政治の延長である」という言葉を体現したもので、とりわけ新しいものではない。しかも、こうした戦略がどこから生まれたかというと、1991年のアメリカの湾岸戦争からだというから、むしろ戦略のヒントはアメリカから来ているといえる。 情報技術の進展で、戦争の遂行は極めて間断のない決定を強いられる時代になっていて、そのためには前線での戦闘以上に、中央司令部での広範な戦略が重要になっているという。 だから前線の戦闘能力もさることながら、そこに至る中央の戦略の持つ意味が大きい。そして、戦争に勝利するには、非対称的に「敵の利点を徹底的に無力化」することだという。 まさにその無力化ということが、インフラ設備への徹底攻撃だということになる。そしてそれを遂行するために、AIを使った科学戦略があげられている。AI技術の導入という点で、ロボットによる戦争遂行や宇宙戦争という問題もゲラシモフはあげている。 しかし、それ以上に重要なことは経済と外交であろう。ゲラシモフは軍人らしく、この問題にはほとんど触れていない。 ただ、軍事力だけではないハイブリッド戦争の遂行は、まさにこの経済と政治、とりわけ外交にかかっているともいえる。経済と政治、この点におけるロシアのこの2年間の行動は、これまでの戦争のときとかなり異なっている。 ●ロシア外交の奮闘ぶり NATO(北大西洋条約機構)諸国の経済封鎖による圧力を避けるために、ロシアの外交活動には目覚ましいものがあった。ロシアのラブロフ外相が世界中あちこちと飛び回り、NATOに敵対的な国家を自らの陣営に引きずり込んだ。 なおかつ国際貿易をドルやユーロによらない決済制度に変えることで経済的制裁を回避し、友好国とりわけBRICS体制を強化することで「孤立したロシア」というイメージを払拭していった。 NATO諸国が得意とするところは軍事力だけではなく、その経済力と政治力にあったのだが、ロシアはその1つ経済制裁と経済封鎖を、友好国を拡大することで切り抜けている。また「国際的価値基準」という名の西側の政治を、「多様な価値観」という発想で切り抜けようとしている。 戦争がアジア・アフリカの反NATO勢力の支持を得ることで展開されれば、ウクライナ戦争は欧米対反欧米という対立の戦争となる。当然、ウクライナの局地的戦争という枠を越えてしまう。ゲラシモフ・ドクトリンの気になるところがそこにある。 戦争の当面の目的はウクライナにあるとしても、それはウクライナに勝利するためにNATO勢力と真っ向から対抗することを意味しているからだ。ゲラシモフ・ドクトリンがNATOにとって脅威である理由は、まさにここだ。 要するに、このドクトリンから言えることは、ウクライナ戦争は、ロシアにとってもまたNATOにとっても、もはや東欧の局地的戦争ではなくなっているということである。それがこの戦争を長引かせている原因でもある。 そしてこの戦争は、NATOと対抗する紛争地域への導火線となり、対立する両陣営が一触即発で第3次世界大戦まで至る不気味な可能性を秘めていることである。 ウクライナへの攻撃は、前線での戦争だけでなく、ウクライナ全土のインフラ設備の破壊であった。それはウクライナ経済を壊滅状態に今追い込んでいる。 ●NATOが苦しむブーメラン効果 またウクライナに武器や援助を与えたNATO諸国も、その結果自らが行った経済制裁や援助のブーメラン現象を受け、経済的に息切れを起こし景気の衰退が生まれている。それがNATO諸国の不安をいっそうかきたて、ロシアへの脅威を増幅させているともいえる。 そして、それがますます停戦を困難にさせ、戦争を迷走経路に導き、引くに引かれぬ戦いの場となっている。前出のジャック・ボーは、先の書物でウクライナとロシアのプロパガンダの違いを指摘している。 ウクライナは虚偽の情報を流し、ロシアは不利な情報を隠す。ともにプロパガンダだが、内容は異なる。もっぱらウクライナの情報に従っているNATO諸国は、この情報によってこの戦争に簡単に勝利できるものだと支援を強化したが、それが真実ではなかったことで、大混乱に陥っているというわけだ。 戦争中の日本のように、うその情報が出てくると、それを払拭するのは簡単ではない。ロシアの残虐性や非道性への非難が拡大するだけで、戦況や相手の意図がわからなくなる。 ロシアはロシアで、情報が入らないことで、相手の言い分が入ってこない。国民はいたずらに勝利に向かって愛国心を燃やすだけである。 要するに、停戦を生み出す理解がお互いに得られなくなっているのだ。戦争が終われば、両国民さらには世界が、この戦争の現実をしっかりと知ることになるだろう。だが、今のところプロパガンダに振り回され、敵意をむき出しにして、終わるところを知らない。 ウクライナに限っていえば、戦争の決着はすでについているといえる。後は、第3次世界大戦という愚かな戦争へ至らないための政治的決着をどうするかが残っているだけなのだ。 |
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●ダボス会議が閉幕 世界経済の見通しや地政学的リスクなど議論 1/20
世界の政財界のリーダーが集まる通称「ダボス会議」は19日、中央銀行などのトップが参加して地政学的なリスクが世界経済に与える影響などについて議論が行われ、閉幕しました。 世界経済フォーラムの年次総会、「ダボス会議」はスイスで15日から開かれ、世界の政財界のリーダーなどおよそ2800人が参加して「信頼の再構築」をテーマに多くの議論が交わされました。 19日、中央銀行や国際機関のトップなどが参加し、最後のセッションとして世界経済の見通しが議論されました。 この中で、ヨーロッパ中央銀行のラガルド総裁は正常化と非正常化というキーワードをあげたうえで正常化の例として世界的にインフレが低下していることをあげました。 一方で、非正常化の道としてユーロ圏を含め世界的に「消費が明らかに以前ほど力強くない」と指摘しました。 また、WTO=世界貿易機関のオコンジョイウェアラ事務局長はことしは去年と比べ貿易量の大幅な回復が見込まれるとしたものの、「紅海における地政学的な対立という問題を抱えている。また、世界各地で行われる選挙が何をもたらすかわからない」と述べ、不確実性がもたらす世界経済への影響に懸念を示しました。 ドイツのリントナー財務相は「アメリカのトランプ前大統領のことがかなり議題になった。2期目の可能性に備えて準備をする必要がある」としつつ、自国に魅力があればどの政権であろうと関係なく協力が可能だとも指摘しました。 ●テーマは「信頼の再構築」 ことしのダボス会議のテーマは「信頼の再構築」。ロシアによるウクライナ侵攻に加え、中東情勢という2つの「戦争」に世界が直面するなかで開かれました。 ウクライナ情勢をめぐっては、最大の支援国アメリカで軍事支援の継続に必要な緊急予算が議会で承認されず、欧米側に「支援疲れ」も指摘されています。ウクライナのゼレンスキー大統領は直接会場に乗り込み、支援継続を訴えました。 一方、中東情勢は混迷が一段と深まっています。ダボス会議の最中もイスラエル軍によるガザ地区での地上作戦は間断なく続けられていました。ダボス会議に参加したイスラエルのヘルツォグ大統領は「国際社会に対し、イスラエルを支持し、大量虐殺だという主張を拒否するよう呼びかける」と述べました。 一方、パレスチナ銀行の会長で、ガザ地区出身のシャワ氏は「イスラエルによる空爆で、多くの従業員とその家族を失った。ガザ地区の破壊と死に胸が張り裂けそうだ」とNHKのインタビューで述べ苦しい胸の内を語りました。 中東情勢をめぐっては、イランの支援を受けるイエメンの反政府勢力フーシ派が紅海を航行する船舶への攻撃を繰り返し、アメリカ軍との間で攻撃の応酬が続いています。 ジョンズ・ホプキンス大学のナスル教授は「今後5年以内に、イスラエルとイランが直接対決する可能性が数段高まった」と述べ、今回のイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が、アメリカやイランを巻き込んで中東各地に紛争を拡大させる危機感を示しました。 途上国で開発支援にあたるUNDP=国連開発計画のトップ、シュタイナー総裁は「各国の財政緊縮策などによって他人の世話をする前に、自分の世話をする必要があるという意識が高まっている。私たちは、国際関係が対立を引き起こす道具となってしまう時代に生きている」とNHKのインタビューで述べ、ことしは新たな危機に備える必要があると警戒感を示しました。 |
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●中国 ロシアからの天然ガス輸入 前年比60%増 経済関係強化が鮮明に 1/20
去年、中国がロシアから輸入した天然ガスが前年比60%増と急速に拡大したことがわかりました。 中国の税関総署の発表によりますと、2023年に中国がロシアから輸入した天然ガスは前の年と比べておよそ60%増え、およそ64億ドルとなりました。 原油は4%増のおよそ606億ドルで、中国がロシアを経済的に下支えしていることが改めて鮮明になった格好です。去年1年間のロシアとの貿易額も26.3%増と大幅なプラスとなっています。 習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は去年10月の会談で、食糧やエネルギー、サプライチェーンなどの分野で関係を強化する方針で一致しており、経済的結びつきがさらに強化されることが予想されます。 |
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●「夫、息子を帰せ」 動員兵の妻や母がプーチン氏に抗議 1/20
ウクライナ侵攻で前線などに送られた動員兵の妻や母らが20日、早期の復員を求めてロシア各地で抗議活動をした。 モスクワでは、3月のロシア大統領選に向けたプーチン大統領の選対本部を訪れ、「動員兵はいつ帰れるのか」と訴えた。 モスクワ中心部の赤の広場近くでは同日、約10人が赤いカーネーションを持って集まり、第2次世界大戦の旧ソ連兵を慰霊する「無名戦士の墓」に献花した。 テレグラムチャンネル「プーチ・ダモイ」(ロシア語で「家路」)が呼びかけ、参加者はシンボルの白のスカーフを頭に巻いた。 その後、プーチン氏の選対本部を訪問。プーチン氏への要望書に「動員兵はいつ帰れるのか」などと書いて提出した。 |
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●ロシアの2大都市に無人機到達 ウクライナ射程5割増、応酬激化 1/20
ロシアの侵攻を受けるウクライナが特別作戦として発射した同国製無人機がロシア第2の都市、北西部サンクトペテルブルクに到達した。航続距離は5割以上伸び、既に攻撃した首都モスクワに次いで射程に入った。ロシアはイラン製シャヘドを改良してウクライナ各地への攻撃を続けており、無人機攻撃の応酬が激化している。 ウクライナ国防省情報総局は18日、サンクトペテルブルクの石油ターミナルに無人機攻撃を実施した。無人機は迎撃されたとみられ、施設に破片が落下し火災が発生。ウクライナ当局者は共同通信に「特別作戦が成功した」と説明し、同市やその周辺の軍事施設が攻撃範囲にあると認めた。 |
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●“プーチン大統領 早い時期に北朝鮮訪問を表明” 北朝鮮が発表 1/21
北朝鮮は、プーチン大統領が北朝鮮を早い時期に訪問する用意があると表明したと発表しました。プーチン大統領が実際に訪朝すれば、24年ぶりで、北朝鮮は朝鮮半島情勢をめぐりロシアと緊密に協力していくと強調しています。 21日付けの北朝鮮の朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は、チェ・ソニ外相が今月15日から3日間の公式日程でロシアを訪れて、プーチン大統領と行った会談内容について伝えました。 このなかで、プーチン大統領は、キム・ジョンウン(金正恩)総書記からの北朝鮮訪問の招待に感謝の意を示した上で、早い時期に訪朝する用意があると表明したということです。 プーチン大統領が、実際に北朝鮮を訪問すれば2000年にロシアの国家元首として初めて訪問して以来、24年ぶりになります。 「労働新聞」では「わが国は最も親しい友人を、誠心誠意を尽くして迎える準備ができている」と強調しています。 一方、会談では朝鮮半島情勢について意見が交わされ、双方は「アメリカとその同盟勢力の挑発的行為が地域の平和に否定的な影響を及ぼしている」と憂慮を示し、緊密に協力していくことで合意したとしています。 北朝鮮はアメリカなどに対抗するため、ロシアとの連携をさらに強化していく姿勢を強調しています。 |
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●ロシア動員兵の妻ら帰還訴え プーチン氏選対本部訪れ 1/21
ウクライナ侵攻のためロシア軍に動員された兵士の妻らが20日、3月の大統領選で通算5選を目指すプーチン大統領の選挙対策本部を訪れ、帰還を求める請願書を出した。独立系メディア「バージヌイエ・イストリイ」が伝えた。 帰還要求運動「プーチ・ダモイ(家路)」で中心的役割を担うマリア・アンドレーエワさんはモスクワの選対本部で、動員解除の法令にプーチン氏が署名するよう要求。夫が動員された後、幼い娘の言語発達が止まったと窮状を訴えた。 妻らは20日、クレムリン(大統領府)近くで第2次大戦の戦死者をまつった「無名戦士の墓」に献花した。拘束された人はいなかった。 |
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●ロシア・プーチン大統領…大統領選に出馬で「権力固定化の懸念」強まる 1/21
●スターリン以来最長の任期をさらに伸ばすか? 2023年12月8日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が次期大統領選への立候補を表明しました。選挙は2024年3月15日から3月17日にかけて実施され、当選者は5月初旬に就任する予定です。プーチン氏は一次政権で2期、現政権で2期に渡り大統領を務めており、今回再選すれば5期目に突入します。 ウクライナとの戦争により国家財政に大きな打撃を与え、また人道的な観点から国外から厳しい批判を浴びているプーチン氏ですが、国民から支持の支持は依然として強いままです。ロシアの独立系世論調査財団(FOM)が12月7日に発表した世論調査によると、ロシア国民の約70%がプーチンはもう1期出馬するべきだと考えており、さらに15%は現職こそ辞すべきとしたものの政府の要職に就くことを求めています。プーチン氏が政治の表舞台から完全に去ることを求めている人はわずか8%でした。 現時点ですでにヨシフ・スターリン後のロシアで最も長く国家元首の座を占めているプーチン氏がさらに任期を伸ばす可能性が高く、権力が固定化されることへの懸念が高まっています。 ●出馬に先立ち、メディア規制を強化 そうした懸念を裏付けるのが、プーチン氏が11月に承認した、メディアの報道に関する新たな制限です。 カタールを拠点とするメディア「Al Jazeera」によると、中央選挙委員会の会合の報道は登録されたメディア機関に限定され、フリーランスや独立系のジャーナリストを排除する可能性があります。また、軍基地や戒厳令が敷かれた地域での委員会の行動に関しても、地域および軍当局からの事前の承認なしに報道することができなくなります。 さらに、2022年3月から閲覧が禁止されているFacebookやInstagramなどのWebサイトやサービスについても、閲覧妨害と違反罰則の強化が行われます。現在は、VPNサービスを利用して閲覧国を変更すれば利用できている状況ですが、それすらもブロックされる計画です。 これらの制限により、政府や軍部への反対意見を封じ込めることができるため、大統領選挙で有利に戦うためにこのタイミングで承認されたのではとの見方が濃厚です。 |
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●バルト三国 ロシアやベラルーシとの国境沿いに防衛施設構築へ 1/21
バルト三国はロシアやベラルーシとの国境沿いに防衛施設の構築を共同で進めていくことを明らかにし、ウクライナへの侵攻を続けるロシアへの警戒を強めています。 バルト三国のエストニア、ラトビア、リトアニアの国防相は19日、ロシアとベラルーシとの国境沿いに今後、数年間かけて防衛施設の構築を共同で進めていくことを明らかにしました。 エストニアの地元メディアによりますと、具体的には自国とロシアとの国境沿いのおよそ600か所に砲撃などに耐えられるコンクリート製の陣地などを建設する計画だと伝えています。 エストニアのペフクル国防相は声明で、「ウクライナでのロシアの戦争は、装備や弾薬だけでなく、物理的な防御が重要だということを示した」と指摘しています。 バルト三国は、今月、訪問したウクライナのゼレンスキー大統領に対しても軍事支援の継続を約束していて、ウクライナに侵攻したロシアや同盟関係にあるベラルーシからの脅威に警戒を強めています。 一方、ロシアではプーチン大統領の側近としても知られるボロジン下院議長が20日、ロシア軍の活動についてうその情報を拡散させたり、ロシアの安全を損なう活動を呼びかけたりする行為を行った場合、資産を没収する法案を作成し、22日に議会下院に提出すると明らかにしました。 ボロジン議長は「ロシアを破壊しようとしたり、裏切るものは罰をうけ、国に与えた損害はみずからの資産で償わねばならない」と主張しています。 ことし3月に大統領選挙を控えるなか、プーチン政権側は国内の情報統制を一段と強めています。 |
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●ウクライナ軍、ロシア軍車両を次々撃破 アウジーイウカ北方の村 1/21
ウクライナ東部ドネツク州アウジーイウカのすぐ北に位置するステポべ村は、小さなレースコースのような道路に囲まれている。 ロシアがウクライナで続ける1年11カ月にわたる戦争で、ここ最近起きた中では最も劇的な小競り合いの数々を捉えた映像をよく見てほしい。その多くは、この道路に沿って行われている。ロシア軍は、この道路を経由して戦車や戦闘車両をステポべに投入し、ウクライナ軍の待ち伏せを受けている。 2両の米国製M2ブラッドレー歩兵戦闘車がロシア軍のT-90戦車1両と相見え、機関砲で25mm弾を浴びせてT-90を撃破。その際、M2はこの道路を前後に行ったり来たりし、T-90の照準をかわした。 別の戦闘では、M2が最北の東西に走る道路に沿って進撃し、ウクライナ軍第109領土防衛旅団が動けなくしたばかりのロシア軍のBMP歩兵戦闘車3両を爆破した。重量30トンのM2が重量16トンのBMPに重さ450gある25mm徹甲弾を浴びせると、「くらえ!」と領土防衛旅団の兵士が叫んだ。 昨年10月以来、数区画ほどしかないこの場所で来る日も来る日も激戦が繰り広げられている様は、この戦争の状況を物語っている。ロシア軍は攻撃をかけているが、ほとんど前進できていない。言い換えると、戦いは陣地戦になっている。 陣地戦は、防衛に有利な場所を手にした側が優位に立つが、完全に一方的な戦いというわけではない。少なくとも1両のM2が、爆破されたロシア軍のBMPの残骸でほぼ埋め尽くされたステポべの北端の「車両の墓場」で撃破された。ウクライナ軍のT-64戦車もどうやらM2をけん引しようとしていた最中に被弾したようだ。 だが、ステポべとアウジーイウカでは、ウクライナ軍よりもロシア軍の方が装備と兵士を多く失っている。独立系オープンソースインテリジェンス(OSINT)サイト「オリックス」のアナリストによると、昨年10月中旬以降、ロシア軍はこの地域で少なくとも488の戦車や戦闘車両、りゅう弾砲、トラック、その他の重装備を失ったか放棄したという。 これに対し、ウクライナ軍の損失は37だ。もし兵士の犠牲が装備の損失に比例するとすれば(そうでないと信じる理由はない)、ステポべとアウジーイウカではウクライナ兵1人が死亡するごとに、13人のロシア兵が死亡していることになる。 |
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●ロシア一気に劣勢へ? 「早期警戒管制機」撃墜の深刻な影響 1/21 ●史上初のAWACS撃墜例か ロシアによるウクライナ侵略戦争が長期化するなか、2024年1月14日、今後の航空戦に影響を与えるであろう重大な出来事が起きました。ウクライナ軍が、ロシア空軍の早期警戒管制機(AEW&C)であるA-50「メインステイ」を撃墜したと公式に発表したのです。 A-50は機体上部に大型のレーダードームを搭載し、空飛ぶ航空戦司令部として機能します。別名「空中警戒管制機(AWACS)」とも呼ばれ、価格は約400〜500億円と高価です。ロシア空軍には9機しかなく、そのうちの1機が失われたことになります。 早期警戒管制機は航空戦の趨勢を左右しかねない重要な機体です。最大で400〜600kmのレーダー視程を有し、敵の攻撃が及ばない戦線の後方でパトロールしながら航空戦を指揮します。これまで早期警戒管制機が攻撃を受けた事例はなく、今回が史上初めての被撃墜となりました。 本来、困難であるはずの後方に存在する早期警戒管制機に対する攻撃を、ウクライナ軍がどのようにして成功させるに至ったのかは現在のところ不明です。一説によると、ロシア空軍の同士討ちという可能性もあるとか。いずれにせよ、ロシア空軍にとっては海軍の黒海艦隊旗艦「モスクワ」沈没に匹敵する開戦以来の大失態といえるでしょう。 ●これ以上A-50を失えないロシア空軍 今回のA-50被撃墜が、この戦争にすぐさま影響を与えるとは考えにくいですが、ウクライナ周辺の低空域における航空優勢、いわゆる制空権の掌握においてロシア側が不利になる可能性は多分にあります。 早期警戒管制機が持つ最大の役割の1つは「地球の丸み」を克服することです。地上に配置された防空レーダーは、水平線(地平線)より下に存在する、すなわちその向こうに位置する航空機の探知ができません。これは海面(地面)の影になってしまうからです。 この影響は意外と大きく、たとえば人間の頭と同じ高さに置かれたレーダーアンテナは、わずか5kmで水平線の下の領域、すなわち探知不能エリアができてしまいます。 早期警戒管制機は高い位置から見下ろすことによって、この問題を解決できます。たとえば高度1万mを飛行すれば水平線の位置を378km先へ追いやることができます。つまり、ロシア側はウクライナ本土の低空をもっぱらA-50の監視に頼っていると言えるでしょう。 ロシア空軍はこれ以上のA-50の損失を防ぐために、今後は同機をより戦線後方へと下げてパトロールさせるでしょう。仮に現在より100km後方に下げたとすると、ロシア側は100km分の低空監視網を失うことになります。 ●間もなく実戦投入か? ウクライナのF-16 また、監視だけでなく、攻撃能力も低下します。ロシア空軍は最大射程400kmの高性能地対空ミサイルS-400を保有しており、ウクライナの空の大半を攻撃範囲に収めています。 しかし、S-400は自前の射撃用レーダーでは、前述した地球の丸みに関する問題から低空を飛ぶ航空機を照準することができず、ミサイルの最大性能を発揮するためにはA-50のレーダー支援が必須です。よってA-50を後方に下げたら、その分S-400がカバーできる範囲も減ると考えられます。 2024年春にはウクライナ空軍へF-16「ファイティングファルコン」戦闘機の配備が始まりますが、A-50の後退はF-16の性能を発揮する上で有利になります。F-16は空戦能力だけでなく、対地攻撃や地対空ミサイルの破壊能力にも優れているので、もしF-16による作戦が自由に行えるようになった場合、地上戦へ影響を与えることも十分に考えられるでしょう。 また、低空を飛翔し接近する巡航ミサイルはこれまでにおいてもロシア海軍司令部や潜水艦を撃破するなど戦果を上げていますが、ロシア側はその迎撃も一層困難となる可能性も考えられます。 ロシア側はS-400とA-50の組み合わせでF-16を封殺するつもりだったようですが、A-50を前進させると再び撃墜されるリスクを負うことになります。ちなみに、F-16は射程100km以上あるAIM-120D「アムラーム」空対空ミサイルを使用可能で、これもA-50にとって脅威となります。 いずれにせよロシア空軍はまもなく控えるF-16の実戦投入にそなえ、何らかの手段を用意しなくてはならないでしょう。たとえばA-50の代わりにMiG-31やSu-35といった大型戦闘機にレーダー監視をさせるという方法などが考えられます。 |
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●グローバル経済の時代が今年で終焉も。民主主義と権威主義の戦い 1/21
「選挙イヤー」と言われる2024年(令和6年)が幕開けし、先陣を切る形で台湾で総統選挙が行われ、欧米との関係を維持・強化する姿勢の頼清徳(らいせいとく)さんが勝利した。 このニュースは、日本人にとっていいニュースに見えたかもしれない。しかし「選挙イヤー」は始まったばかりだ。本番はこれかららしい。 各国で行われる選挙は、民主主義と権威主義の戦いの様相を呈している。それらの結果次第では、これまでの世界の秩序が大きく変わってしまう可能性もあると専門家は指摘する。日本の若者の暮らしも全く無関係ではない。 そこで今回、立て続けにこれから届く選挙関連のニュースをどのように解釈し、ウォッチすればいいのか、国際政治に詳しい専門家の和田大樹さんに教えてもらった。 和田さんは、国際安全保障、国際テロリズム、経済安全保障などを専門家で、Strategic Intelligence代表取締役社長CEO、日本カウンターインテリジェンス協会理事、ノンマドファクトリー社外顧問、清和大学講師、岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員など数々の職務を兼任する。 ●台湾は、民主主義と権威主義の戦いの最前線 2024年(令和6年)が始まった。今年は台湾、ロシア、インド、インドネシア、米国などで選挙が行われる。正に「選挙イヤー」だ。それらの選挙結果の行方次第で、民主主義と権威主義の戦いは大きな岐路を迎えるだろう。 まず、台湾では、次の指導者を選ぶ総統選挙が1月半ばに行われた。欧米との関係を重視する現総統の蔡英文(さいえいぶん)氏の後継者が勝利した。今後4年間は、台湾と中国との関係が冷え込む可能性が高い。 中国は、軍事的、経済的威圧を台湾に対して仕掛けてきたが、今後もそれが継続されるだろう。 現在の蔡英文(さいえいぶん)政権は、自由や民主主義を重視し、欧米との関係を維持・強化して中国に屈しない姿勢に徹している。台湾は、引き続き、民主主義と権威主義の戦いの最前線となるだろう。 ●権威主義陣営の勢いを抑えられない世界 台湾の結果だけを見れば、民主主義の側の勝利となったがその先は、予断を許さない。 3月には、大統領選挙がロシアで行われる。この選挙は、プーチン政権の延長を承認するイベントに過ぎない。プーチン大統領は今年、ウクライナでの攻勢をいっそう強化する可能性がある。 選挙の行われる3月で、ウクライナ侵攻から早くも3年目に入る。これまでは、欧米諸国からの軍事支援もあり、ウクライナ軍が優勢だったが、その勢いにも昨今は陰りが見え始め、ロシアに有利な軍事環境が到来している。 米国を中心とした欧米諸国では、ウクライナへの支援疲れも顕著になってきている。プーチン大統領は、そこをチャンスに軍事的優勢を勝ち取りたいところだ。 ただ、ロシアによる軍事的優勢は同時に、権威主義陣営の勢いを民主主義陣営が抑えられない事実を意味する。日本など自由民主主義陣営にとってもウクライナ情勢は決して対岸の火事ではない。 ●トランプ勝利は、民主主義陣営の分断を意味する 民主主義と権威主義の戦いで最大のポイントは、米大統領選挙の行方だ。なぜ最大なのか。民主主義と権威主義の戦いの中、民主主義陣営の中で大きな分断が発生する恐れがあるからだ。 この選挙で、トランプ勝利・バイデン敗北というシナリオが現実となれば、民主主義陣営内部の分断が生まれ、中国やロシアなど権威主義国家が勢いを助長する可能性がある。 筆者周辺の専門家の間でも、トランプ勝利のシナリオが想定されている。 NATO(北大西洋条約機構)からの脱退の示唆、ウクライナ支援の停止、欧州との関係悪化、米中貿易戦争のさらなる激化、日本や韓国など同盟国への軍事的負担増など、トランプ勝利によって、世界に大きな影響をもたらすさまざまな変化が予測されている。 ●物価高どころでは済まない恐れも 欧米や日本など先進国の影響力が相対的に低下し、中国およびロシアなど現状打破を求める国家、ならびにアジア、アフリカおよび中南米といったグローバルサウスの国々の影響力が高まる世界において、民主主義と権威主義の戦いは岐路を迎えようとしている。 これからの社会で活躍する皆さんには、企業のビジネス環境にとって最適だったグローバル経済の時代が終焉(しゅうえん)に向かい、対立国や対立陣営との貿易摩擦(関税引き上げや輸出入規制など)が起こりやすい分断の世界へ移行しつつあると理解してほしい。 民主主義と権威主義の戦いの1つであるウクライナ戦争を例に見ても、ロシアに進出していた日本企業の多くが戦争によって撤退した。マクドナルドやスターバックスなど誰もが知る米国企業も同じだ。 こういったケースは今後も、民主主義と権威主義の戦いの中で起こる可能性がある。そういった世界の潮流の変化を日々把握する習慣を身につければ、所属する企業や自分の暮らしに発生するリスクを最小化できる。 民主主義と権威主義の戦いが岐路を迎える年になると理解し、世界の潮流の変化に敏感になってほしい。 |
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●ロシア中銀、インフレ抑制で政策金利16%に 鶏卵高騰も 1/22
ロシア中央銀行がインフレ対応で政策金利の引き上げを続けている。2023年12月15日に開いた金融政策決定会合で政策金利を1%引き上げて年16%にすることを決めた。利上げは5会合連続。欧米の制裁などで鶏卵など生活に身近なもので価格上昇の動きが目立っている。 プーチン大統領が12月14日にモスクワで開催した国民との直接対話で、ロシア国内で生鮮食品の「卵」が23年に入り4割高騰していることへの質問が上がった。プーチン氏は「政府の仕事の失敗だ。対応を進めており、状況は間違いなく改善するだろう」と政府の対応の遅れを釈明した。 ロシアメディアなどによると、欧米の対ロ制裁に伴って飼料の調達コストが上昇していることが価格上昇につながった。 生鮮食品に限らず、ロシア国内では足元でインフレ基調が再燃している。ロシア中銀によると、23年12月のインフレ率は7.4%だった。中銀は23年の年間インフレ率を7.0〜7.5%と予想していた。 ロシア中銀のナビウリナ総裁は12月15日の声明で、物価上昇への対応のため「(政策金利の)高い水準が長期間続くことが必要だ」と述べた。現状の金利水準を当面の間継続し、目標とするインフレ率4%に徐々に引き下げる考えとみられる。 ロシア中銀は12月の声明で、特に製造業で労働力不足が深刻になっており、供給面での制約につながっていると指摘した。 ウクライナで続ける「特別軍事作戦」が影響しているようだ。ロシア軍は兵士を志願した「契約軍人」を増やしており、死傷者が拡大しているとされるウクライナとの戦闘地域への兵士の増員を進めているもよう。 プーチン氏は国民との直接対話で、ウクライナ軍との戦闘地域には「61万7000人の兵士がいる」とも述べ、ロシア軍の兵力は不足していないと強調した。ウクライナの南部・東部について「歴史的にロシアの領土だ」とも述べ、今後も侵攻を続ける姿勢を改めて示した。 兵士の増員を優先して進めているため、国内の働き手の不足にも影響しているとみられる。 ロシアでは24年3月に大統領選が実施される。プーチン氏は昨年12月に出馬を表明し、無所属での立候補に向けた準備を進めている。 プーチン氏は選挙に向けて内政の安定を強調しており、欧米諸国が制裁を続ける中でもロシア経済は成長していると説明。昨年12月には23年の国内総生産(GDP)は3.5%増になるとの見通しを示した。 大統領選は他に有力候補が出馬表明しておらずプーチン氏の当選が確実視されている。独立系メディアはロシア大統領府が80%以上の得票率を目標にしていると伝えており、国民の支持をどの程度得られるかが焦点になる。 |
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●中国の原油輸入、ロシアが最大相手国に…天然ガスの輸入額も6割増 1/22
中国が2023年にロシアから輸入した原油が、22年比で3・5%増の606億ドル(約9兆円)となった。ウクライナ侵略が始まる前の21年比で約5割増加しており、ウクライナ侵略で制裁を受けるロシア経済を中国が下支えしている構図が一段と明確になった。 中国税関当局の発表資料によると、サウジアラビアからの原油輸入額は22年比17・1%減の538億ドルと落ち込み、ロシアがサウジアラビアを抜き、中国にとって最大の原油の輸入相手国となった。原油の全輸入額に占めるロシアの割合は17・9%で、22年から1・9ポイント上昇した。ロシアからの天然ガスの輸入額も約6割増の64億ドルとなった。 23年のロシアから中国への全体の輸入額は前年比12・7%増の1291億ドルで、原油が半分弱を占めた。一方、中国からロシアへの輸出額は46・9%増の1109億ドルで、ガソリン車などが急増した。 輸出入を合わせた中露間の年間貿易総額は26・3%増の2401億ドルと過去最高を更新した。習近平国家主席とプーチン大統領は、年間貿易総額を24年までに2000億ドルに拡大する目標で合意しており、1年前倒しで達成した。 |
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●ゼレンスキー氏「トランプ氏をキーウに招待」 1/22
ウクライナのゼレンスキー大統領が米大統領選の共和党候補指名争いで独走するトランプ前大統領に向けて「ウクライナのキーウ(キエフ)にご招待します」と呼びかけた。英テレビが21日までにインタビューを放送した。 トランプ氏が大統領に返り咲けば24時間以内に戦争を終わらせられると主張していることを踏まえ、現実的な和平案があるなら聞かせてほしいと注文を付けた。 AP通信によると、ゼレンスキー氏はトランプ氏がウクライナなどの意向を聞かずに独断で和平案を推し進める可能性を指摘。ウクライナが望まない形で終戦につながりかねないと警戒感を示した。 英メディアによると、トランプ氏はこれまで和平案について「話してしまえば、交渉材料を失ってしまう」として詳細を明らかにしていない。 ゼレンスキー氏は昨年もキーウ訪問を促したが、トランプ氏が受け入れず実現しなかった。 トランプ氏は2022年2月の侵攻開始直前、ロシアのプーチン大統領を「天才」と持ち上げた。自身が大統領であり続けていれば戦争は起きていなかったとも主張している。 |
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●「ロシアは月3万人を新たに徴兵している」ウクライナ情報機関の幹部が証言 1/22
・「ロシアは毎月3万人の新たな兵士を採用している」とウクライナの情報機関の幹部が語った。 ・戦争研究所によると、ロシアは前線での損失を補うために新規に兵士を採用しているという。 ・「ロシア軍はウクライナで日常的な作戦レベルのローテーションを実施できる」と戦争研究所は述べた。 ウクライナ国防省情報総局の幹部が2024年1月15日に語ったところによると、「ロシアはウクライナの『肉挽き器(meat grinder)』に投入された兵士の補充をするために毎月3万人の新兵を採用している」という。 ウクライナ国防省情報総局のバディム・スキビツキー(Vadym Skibitsky)副局長によると、この人数は1日あたりに換算すると約1000人から1100人になるという。 シンクタンクの戦争研究所(Institute for the Study of War:ISW)は、スキビツキーの発言は「ロシア軍がウクライナで日常的な作戦レベルのローテーションを実施できるというISWの評価と一致する」としている。 「肉挽き器(meat grinder)」という言葉は、もともとウクライナのドネツィク州にあるバフムトやアウディーイウカのような戦略的都市をめぐる激しい戦いなど、ロシア兵の死傷者の多い戦況を指していた。しかし、戦争が長引くにつれ、アナリストたちは前線の他の部分においても、ロシアの攻撃に同様の類似点があると見ている。 2023年10月、アメリカはロシアが血なまぐさい「人海戦術」を復活させたと発表した。人海戦術とは、準備も訓練も不十分な部隊をしばしば適切な装備もないまま、大量に戦場に投入することだ。 「ロシア人が軍隊に入隊する動機は主に給料だ。特に賃金が低かったり、仕事がまったくないような危機的状況にある地域では、人は軍隊に入りたいと考える」とスキビツキーは2024年1月15日、RBCウクライナ(RBC-Ukraine)に語った。 「毎月3万人の新兵は前線での損失を補充するには十分だが、ロシアは『より戦略的な予備軍を作る』ために、『より大規模な動員を宣言する』必要があるだろう」 RBCウクライナによると、「プーチン大統領は敢えてそんなことをするだろうか?」と彼は付け加えた。 「選挙前には考えにくい。そして選挙後は…いずれ分かることだろう。しかし、ロシアで動員を行うためのすべての条件はいつでも整う」 戦争に加えて、プーチン大統領はロシア国内からの増大する脅威に直面している。それは愛する人の帰還を願う兵士の妻や母親だ。 彼らの反発は非常に強く、ロシアの連邦保安局の職員は、抗議する妻のいる兵士を尋問するほどで、さらにワシントン・ポスト(The Washington Post)が報道したところによると、軍の幹部らは、妻が引き下がらなければ兵士を前線に送ると脅したという。 ワシントン・ポストによると「あなた方のやり方は非常に汚い」と兵士の帰還を願うメッセージがテレグラム・チャンネル(Telegram channel)に投稿されたという。 「あなた方は親族に圧力をかけることで、我々の怒りを鎮めようとしている」 |
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●“ロシアの支配拠点で市民25人死亡”ウクライナへの批判強める 1/22
ロシア北西部の港にあるガス会社の施設で起きた火災について、ウクライナのメディアは、ウクライナの治安機関が行った無人機攻撃だったと伝えました。また、ウクライナ東部ドネツク州では、ロシア側が支配する拠点で、ウクライナ軍の攻撃で市民25人が死亡したとして、ロシア側はウクライナへの非難を強めています。 ロシア北西部レニングラード州の知事は21日、バルト海に面した港にあるロシアの大手民間ガス会社「ノバテク」のターミナルで火災が起きたと明らかにし、地元メディアは2機の無人機が攻撃したと報じました。 ウクライナのメディアは、情報筋の話としてウクライナ保安庁が行った無人機攻撃で、ロシア軍に供給される燃料を標的にしたものだったと伝えました。 また、ウクライナの東部ドネツク州の親ロシア派の代表、プシリン氏は21日、ロシア側が支配する州都ドネツクでウクライナ軍の攻撃で市民25人が死亡し、20人がけがをしたと発表しました。 ロシア外務省は声明で「欧米から供与された兵器が使われた。すべての国や国際機関がこのテロ攻撃を非難するよう訴える」として非難を強めています。 一方、ロシア軍もミサイルと無人機による攻撃をウクライナ各地で行っていて、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は20日「ウクライナの防空網を突破し、圧力をかけるため、ロシア軍はミサイルと無人機を組み合わせた攻撃を続けていく可能性がある」と分析しています。 |
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●黒海艦隊の哨戒艇撃沈が新たに判明 ウクライナ海軍、年末に無人艇で攻撃 1/22
ウクライナ海軍が昨年12月下旬、ロシア黒海艦隊のステンカ級哨戒艇を撃沈していたことが明らかになった。伝えられるところでは、ロシアの占領下にあるウクライナ南部クリミア半島セバストポリのフラフスカヤ(グラフスカヤ)湾で、爆薬を積んだ1艇または複数の水上ドローン(無人艇)が排水量200トン級の「タラントゥル」を攻撃し、破壊したとのことだ。 撃沈は襲撃から数週間たってウクライナのパルチザンによって確認され、衛星画像でも裏づけられた。冷戦時代にさかのぼる古い哨戒艇であるタラントゥルは、ウクライナ軍が運用不能にした黒海艦隊艦艇の長いリストに新たに追加された。 ロシアがウクライナで拡大して23カ月になる戦争の激しい戦闘で、黒海艦隊はウクライナ軍の無人艇やドローン(無人機)、地上発射ロケット、空中発射ミサイルによって、巡洋艦1隻、大型揚陸艦4隻、潜水艦1隻、補給艦1隻、コルベット艦や哨戒艇、揚陸艇数隻などを失っている。 損失は、戦争拡大前に黒海艦隊が保有していた艦艇のおよそ5分の1に及ぶ。 しかも、沈没した大型艦は補充できない。黒海への唯一の入り口であるボスポラス海峡はトルコが管理し、慣例として戦時中は外国の軍艦通過を認めないからだ。 いずれにせよ、黒海艦隊が補強しようとする場合は、ロシア海軍のほかの地域艦隊から艦艇を回してもらう必要があるだろう。ロシアの艦艇建造産業はソ連崩壊後の1990年代に凋落し、今日にいたるまで回復していない。 世界の主要な海軍の大半は、保有する艦艇の総トン数という重要な指標に基づくと着実に拡大しているが、世界3位の規模をもつロシア海軍は縮小を免れるのがやっとの状態だ。 ロシア海軍が保有する艦艇の2023年末時点の総トン数は215万2000トン(米海軍のおよそ3分の1)で、前年比の増加は6300トンにとどまった。フリゲート艦やコルベット艦、掃海艇、潜水艦艇の新造によって1万7700トン増やすはずだったが、ウクライナ側の攻撃によって黒海艦隊の艦艇を1万1400トン失った結果だ。 タラントゥル分を含めれば、失ったトン数はさらに200トンほど膨らむ。 黒海艦隊にとってとりわけ屈辱的なのは、戦争拡大前の時点で大型艦がたった1隻しかなかったウクライナ海軍との海戦に負けていることだ。 ウクライナ海軍はこの大型艦(フリゲート艦「ヘチマン・サハイダチニー」)も、2022年2月にロシアの全面侵攻が始まった直後に自沈させている。こうしてウクライナ海軍は、空軍や地上軍(陸軍)の大きな支援を受けつつドローンやミサイルで戦う新しいタイプの海軍になった。 ドローンやミサイルは有効でもある。ウクライナ側は昨年後半、黒海艦隊に対する攻撃を強化し、たいていは空中発射ミサイルによって揚陸艦2隻、潜水艦1隻、コルベット艦1隻、退役した掃海艇1隻を破壊した。タラントゥルに対する無人艇攻撃は、3カ月にわたる激しい対艦作戦のハイライトだった。 この作戦はロシア側の後退で終わった。黒海艦隊はクリミアからだけでなく、ロシア南部のノボロシスクからも大半の艦艇を引き揚げた。 ウクライナ側は黒海艦隊の2割を破壊し、残りをさらに東へと追いやることで、黒海西部の支配権を取り戻し、そこを南北に通るきわめて重要な穀物輸送回廊を確保した。 とはいえ、それで終わらせるつもりはない。ウクライナ海軍のオレクシー・ネイジュパパ司令官(海軍中将)は執務室の壁に、黒海艦隊の全艦艇の一覧を掲示している。 ウクライナ軍が艦艇を沈めるたびに、ネイジュパパはその艦艇の絵柄を赤く塗りつぶす。「いずれ、ここにあるすべてが赤く染まることでしょう」と地元メディアのウクラインスカ・プラウダに最近語っている。 |
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●西側諸国、ロシア資産没収なら最低2880億ドル損失 国営通信が試算 1/22
国営ロシア通信(RIA)は21日、西側諸国がロシアの資産を没収してウクライナ復興に充当し、ロシアが報復に動いた場合、西側が失う資産と投資の規模は少なくとも2880億ドルに上るとの試算結果を伝えた。 ロシアのウクライナ侵攻を受け、米国やその同盟諸国はロシアの中央銀行および財務省との取引を禁止するとともに、西側にあったロシア政府の資産およそ3000億ドルを凍結した。 さらに米国と英国の当局者はここ数カ月、ベルギーや他の欧州の都市で凍結されたロシア資産を没収し、戦争で被害を受けたウクライナの復興支援に投じるための作業に動いている。 3人の関係者は2023年12月28日ロイターに、今年2月に行われる主要7カ国(G7)首脳会議でロシア資産没収を可能にする新たな法理論を協議する見通しだと明かした。 一方ロシアは、西側が強硬措置を進めれば、ロシア側にも没収できる米国と欧州諸国の資産のリストがあると警告している。 RIAが引用したデータによると、欧州連合(EU)とG7諸国、オーストラリア、スイスからのロシア向け直接投資額は22年末時点で2880億ドル。G7では英国が最大の対ロシア投資を行っており、21年末にロシア国内にあった資産は189億ドルだった。 22年末段階では、米国が96億ドル、日本が46億ドル、カナダが29億ドルのロシア関連資産を保有していた。 |
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●共産党、大統領選で存在感 戦争協力、政権に「従順」― 1/22
ロシア革命を率いた旧ソ連最初の指導者レーニンが死去して21日で100年を迎えた。ソ連崩壊前に共産党一党独裁は消え、後継のロシア共産党は現在、政権に従順な最大の「体制内野党」に甘んじている。ただ、政権与党「統一ロシア」などの支持を受けたプーチン大統領の圧勝が確実視される今年3月の大統領選で独自候補を擁立するなど、一定の組織力と存在感を残している。 ●次点に警戒心 「永久保存」処置が施されて1世紀となる遺体が安置されている、モスクワ「赤の広場」のレーニン廟(びょう)。共産党は節目の21日に献花を実施。これに先立つ声明で「レーニンの思想は不滅」「大義は生き続ける」と訴えた。 党は今でこそプーチン政権を支え、ウクライナ侵攻は「勝つか負けるか」(ジュガーノフ委員長)が重要だと戦争協力している。しかし、1990年代は下院第1党としてエリツィン政権を脅かし、96年大統領選はジュガーノフ氏が次点の大接戦となった。 今回出馬したハリトノフ下院極東・北極圏発展委員長は、2004年大統領選で次点の候補。昨年12月の党大会で「少なくとも2位を目指す」と述べる一方、プーチン氏に勝つ意気込みかどうかをメディアに問われると「何とも言えない」と言葉を濁した。 共産党はおおむね従順とはいえ、18年に年金改革反対の論陣を張るなど、いつ政権に歯向かうかは分からない。無所属候補として超党派で臨むプーチン氏の圧勝が予想される次期大統領選での得票数は、党勢を示す指標となる。独立系メディアは最近、選挙のコントロールを画策する政権が、2位の座を共産党ではなく極右・自由民主党の候補に与えたい意向と報道。共産党への警戒心が残ることをうかがわせた。 ●プーチン氏からは低評価 「ロシア1000年の歴史で最も傑出した政治家・国家指導者の一人」。現地メディアは没後100年に際し、レーニンをこう描写した。政府系の世論調査でも「レーニンについて知らない」という回答は2%にすぎず、世代や党派を超えて評価されている。 プーチン氏の祖父は、レーニンが最晩年に過ごしたモスクワ郊外の別荘で料理人を務めていたとされる。プーチン氏とレーニンのつながりを示す逸話が語られるのは、ロシア国民の「レーニン人気」を反映してのことだ。 だが、欧米諸国から「ソ連復活をもくろんでいる」と指摘されることもあるプーチン氏自身のレーニンへの評価は低い。22年のウクライナ侵攻直前の演説では「レーニンがウクライナをつくった」と主張した。ウクライナは旧ロシア帝国の一部だったが、旧ソ連内で共和国の地位を得て、崩壊によって独立したという歴史観を展開。「ロシア固有の領土」だとして侵攻を正当化した経緯がある。 |
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●北朝鮮、対ロ最大の兵器供給国 ウクライナ国防省の局長 1/22
ウクライナ国防省のブダノフ情報総局長は21日までに、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューに応じ、北朝鮮が現在、ウクライナに侵攻するロシアへの最大の兵器供給国になっているとの考えを示した。 ブダノフ氏は、ロシアはウクライナで自らの生産能力を超えて兵器や砲弾を消費しているとして、他国からの兵器調達を探っていると指摘。「北朝鮮の支援がなければ、(ロシアにとって)破滅的な状況になっていただろう」と語った。 ロシアと北朝鮮は最近、軍事面で協力を深めており、ロシアは北朝鮮から送られた砲弾や短距離弾道ミサイルをウクライナ侵攻で使用しているとされる。 |
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●親露派トップ「ウクライナの攻撃で28人死亡」 露軍、東部集落を新たに制圧 1/22
ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ東部ドネツク州の主要部を実効支配する親露派武装勢力トップ、プシリン氏は21日、州都ドネツク市の市場などがウクライナ軍の砲撃を受け、合わせて民間人28人が死亡、30人が負傷したと交流サイト(SNS)で主張した。 ロシアは昨年12月29日、ウクライナ各地に過去最大規模のミサイル攻撃を実施。首都キーウ(キエフ)などで50人以上が死亡した。ウクライナは報復として露西部ベルゴロドに砲撃を行い、ロシア側によると25人が死亡した。双方はその後も互いの都市への攻撃を繰り返しており、両国が発表した民間人の死者数は昨年末以降だけで既に計100人を超えている。 前線の戦況を巡り、露国防省は今月21日、ウクライナ東部ハリコフ州の集落クラフマリノエを制圧したと主張した。ウクライナメディアによると、同国軍も同集落からの撤退を認めた一方、人員損失を避けるための撤退で戦局の大勢に影響はないとの見方を示した。 クラフマリノエは露軍が制圧を狙うハリコフ州の要衝クピャンスクから南東約30キロに位置しており、2022年秋にウクライナ軍が露軍から奪還していた。 露軍は昨年秋ごろから東部で攻勢を強化。12月にはドネツク州の激戦地マリインカの制圧を発表し、今月18日にも同州の集落ベショーロエを制圧したと主張した。戦局は全体的に膠着(こうちゃく)状態にあるものの、戦力で勝る露軍が徐々に優勢になりつつあるとの観測が強い。 |
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●ロシア兵器に“日本製部品”どこから?「兵器生産力が回復している」 1/22
ウクライナのキーウ経済大学研究所が、西側諸国のロシア制裁に関する調査資料を公開。ロシアは兵器の部品の調達などが厳しくなっていると思いきや、生産能力を持ち直していることが強調されています。 ●生産能力は2023年にほぼ回復? ウクライナのキーウ経済大学研究所(KSE)は2024年1月11日、2023年におけるロシアの軍需部品などに関する生産や輸入状況についてまとめた資料を公開しました。西側諸国のロシア制裁に関しての計画や勧告を行っている国際グループ、ヤーマック・マクフォールと共同で調査したものです。 資料によると、西側諸国及びウクライナの友好国による制裁にもかかわらず、ロシアは軍事産業にとって重要と思われる部品を220億ドル以上、輸入したことが明らかとなっています。 これまでウクライナの戦場で、破壊または鹵獲した兵器には、約2800点の外国製部品が使われていたとのことで、これらの製造を担当した企業を調査中だといいます。西側企業の部品は、ロシア軍のヘリコプター、装甲車両、電子線装置のほか、極超音速ミサイル「キンジャール」や、イランの自爆ドローン「シャヘド」のロシア版である「ゲラン2」にも使用されているなど、ウクライナのインフラ攻撃に大きな影響を与えているそうです。 KSEはロシアの軍需備品輸入に関して、2022年2月侵攻開始直後には急速に落ちたものの、「2023年にはほぼ完全に回復している」と見解を述べています。 ●実は日本の製品も使われている!? 調査した兵器に使われていた約2800点の外国製部品のうち、72%はアメリカに拠点を置く企業からもたらされており、スイスが6%、日本が5%と続きます。ロシアと関係が深いとされている中国からの部品は、意外にも4%程度しか使用されていなかったとのことです。 ロシアは欧米や日本などの外国製部品を、経済制裁の抜け穴を利用し、中国、香港、トルコなどの代理店を通じて入手しているようです。調査によると、2023年1月から10月までの軍需部品の輸入のほぼ半分が、こうした生産企業から第三国経由でもたらされているようです。 また報告書では、工作機械の動作をコンピュータで自動化する、CNC工作機の輸入状態について特に注目しています。 CNC工作機2023年1月〜10月の輸入額は2億9200万ドルとのことで、これは制裁前と比べ33%も増加しているとのことです。輸入した製品を生産している企業の国別では、ドイツ(42.3%)、韓国(20.7%)、台湾(19.5%)、アメリカ(7.1%)、日本(6.9%)と、こちらも西側の企業が多くなっています。 CNCは、兵器外板や航空機、ミサイル、ドローンなどの各部品を製造するに欠かせない機械ということで、資料ではこの分野の機械に関しての制裁も強く訴えています。 |
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●ロシア大統領選、反プーチン候補に5万超の署名 寒空に2時間の行列 1/22
ウクライナ侵攻への反対を訴えて今年3月のロシア大統領選挙への立候補を目指して署名集めをしているボリス・ナジェージュジン氏が21日、必要数の半分超となる5万以上の署名を集めたとSNSのテレグラムで明らかにした。プーチン大統領の当選が確実な状況で、政府の弾圧も激しいが、「反戦の声を上げたい」という声が広がっている。 ナジェージュジン氏は中道右派の政党「市民イニシアチブ」で候補者に選ばれており、正式な立候補には10万人の署名を1月末までに集める必要がある。 「我々は半分の道のりを到達し、5万4740の署名を集めた。1週間前に不可能に思えたことで、素晴らしい」と喜びつつ、「活動を弱めてはいけない」と檄(げき)を飛ばした。 週末、ロシア各地の選挙対策事務所では、署名に訪れた支持者で行列ができた。モスクワでは零下6度の寒空の下、「反戦」の姿勢を支持する若者を中心に多くの市民が行列に2時間並んで署名をした。 ただ、10万人分の署名を集めても、選挙管理委員会の審査で、名前や住所などに間違いが見つかれば無効になる。選対のスタッフも支持者の身分証明書を見てデータを確認するなど、慎重に作業を進めていた。 |
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●ドネツクのマーケットに砲弾 27人が死亡 25人が重軽傷 1/22
ドネツク、ウクライナ、1月22日 (AP) ― ロシアが一部を占領しているウクライナ東部ドネツク州に対する砲撃で、州都ドネツク郊外のマーケットが被弾し、少なくとも27人が死亡、子ども2人を含む25人が重軽傷を負った。ロシアが一方的に独立を宣言した「ドネツク人民共和国」のプシリン首長が明らかにした。 ドネツクのマーケットを直撃した砲弾は、同市の真西に位置するクラホヘとクラスノホリフカから発射されたものだとプシリン首長指摘しているが、この砲撃についてウクライナはコメントしておらず、AP通信はロシア側の声明を独自に検証できていない。 ほぼ2年におよぶ戦争で、この冬は全長約1500キロにおよぶ戦線にこれといった動きはなく、ロシア、ウクライナともに長距離砲による砲撃戦に終始している。 |
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●台湾総統戦、まさに「米中の代理戦争」 「民主主義」と「権威主義」の戦い 1/22
2024年の選挙イヤーの幕開けで、台湾で総統選挙が行われた。その結果、蔡英文政権で副総統を務める頼清徳氏が選挙戦で勝利し、今後4年間は緊張感漂う中台関係が続くことになりそうだ。今後も中国による軍事的挑発や経済的威圧、サイバー攻撃や偽情報の流布など台湾への圧力が繰り返されるだろう。 しかし、今回の選挙で筆者が強く感じたのは、その注目度である。台湾では4年ごとに総統選挙が行われるが、今回の諸外国の注目度はこれまでよりはるかに高かった。日本でも米国でもその動向は頻繁に取り上げられ、そこには「今後の世界の行方を左右する総統選挙」のイメージが強く滲み出ていた。では、なぜそのようなイメージが強くなったのか。 当然のことだが、台湾の総統選挙は台湾国内のイベントであり、諸外国が介入する問題ではない。しかし、近年の台湾は「民主主義」と「権威主義」の戦いの最前線にあるという事実を我々は忘れてはならない。 今回の総統選挙で最大の焦点となったのは、米国寄りの指導者と中国寄りの指導者のどちらが勝利するかであった。結果論、米国寄りの指導者が勝利したわけだが、米国としては台湾への防衛協力を続け、台湾を中国による太平洋進出を抑える防波堤として機能させておきたいので、米国との関係を重視する頼氏が当選したことに安堵している。 一方、中国としては独立勢力と位置づける民進党政権がさらに4年間続くことになったことに強い不満を覚えている。中国の習政権は台湾統一を強く掲げているが、では統一すればそれで終わりかいったらそうではない。中国には海洋進出を強化し、いずれは西太平洋で影響力を拡大させるという野望がある。台湾統一はその出発点にすぎず、台湾を支配下に置けば、台湾軍を中国軍に組み入れ、台湾を太平洋進出に向けての最前線基地にすることは間違いない。台湾が中国軍の出発拠点となれば、同地域の安全保障バランスは大きく変わることになる。 これが米国が台湾を強く後押しする核心だ。これまで太平洋秩序で覇権を握ってきた米国からすると、その現状打破を目指す中国の存在は大きな脅威となる。米中の軍事力の拮抗が顕著になる中、米国は今後も防波堤としての台湾への支援を継続するだろう。 要は、今回の総統選挙は米中の代理戦争という意味も含んでいるのだ。そして、これは同時に民主主義陣営と権威主義陣営のどちらが勝つのかという問題でもあり、そこはウクライナ情勢と全く同じだ。バイデン政権が批判が強まる中でもウクライナ支援を継続するのは、ウクライナ情勢で権威主義国家ロシアに民主主義陣営が負けてはならないという危機感からだ。今日、ウクライナと台湾は両陣営にとっての戦いの場となっている。 |
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●プーチン大統領のバルト三国への強気発言は、NATOとの「将来的エスカレーション」の土台作りか 1/23
ロシアのプーチン大統領はNATO加盟国であるラトビア、エストニア、リトアニアに対して"怒り"を示し始めた。 その主張は、ロシアがウクライナに侵攻する前のプーチン大統領の発言に恐ろしいほど酷似している。 バルト三国に対するロシアの新たな主張は、「将来的なエスカレーション」の土台を作るものだとISWは指摘している。 ロシアのプーチン大統領はバルト三国に対する主張を強めていて、東のNATO加盟国との「将来的なエスカレーション」の土台を作るものだと、アメリカのワシントンD.C.を拠点とするシンクタンクの戦争研究所(ISW)は指摘している。 ISWによると、プーチン大統領は1月16日、ラトビアをはじめとするバルト三国がロシア系民族を国外へと「追放している」と主張した。 これはラトビアの移民法の"変更" ── 永住者としてラトビアで暮らすロシア人に対し、同国に留まることを望むならラトビア語の試験に合格することを求めている ── に言及したものだ。新しい規則に基づいて在留許可を更新していないとして、12月にはおよそ1200人のロシア人が国外退去の対象となった。 ロシア国営通信社RIAノーボスチによると、「これらは我が国の安全保障に直結する非常に深刻な問題だ」とプーチン大統領は語った。 プーチン大統領の主張は「バルト三国に対する将来的なエスカレーションのために情報条件を設定しようとするクレムリンの長年にわたる試みを著しく拡大させた」もので、「NATOを弱体化させるというより大きな試みの一環だろう」とISWは指摘している。 ISWによると、ロシアがバルト三国をすぐにでも攻撃する兆候はまだ見つかっていない。ただ、プーチン大統領が「『同胞』を守るという名目の下、将来的にロシアが国外で攻撃的な行動を取る」ための下地を作っている可能性があると警鐘を鳴らしている。 プーチン大統領はウクライナについても、一方的な軍事侵攻を開始する前に同様の主張をしていた。 ロシアが主張した侵攻の理由の1つは、ドンバスで親ロシア派の武装勢力と戦う中で、ウクライナがロシア民族に対する「大量虐殺(ジェノサイド)」を行っているというものだった(ただ、その主張を裏付ける証拠はない)。 バルト三国同様、ウクライナも旧ソ連の一部だった。プーチン大統領はこうした国々の「主権を矮小化」する一方で、「ロシアの主権を拡大解釈」しているとISWは指摘している。 ただ、ウクライナとは違って、バルト三国 ── エストニア、ラトビア、リトアニア ── はいずれもNATO加盟国だ。 ISWによると、バルト三国の主権を弱め、ロシア人を"いじめている"とレッテルを貼ることは、NATOを弱体化させるというプーチン大統領の最終目標に合致するという。 プーチン大統領がウクライナに侵攻した目的は、大統領が表明したようなNATOによる攻撃からロシアを守ることではなく、NATOを不安定化させることだと、ISWは2023年10月の時点で評価していた。 |
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●北朝鮮とロシアの関係に中国が激怒していた! 1/23
世界的なコロナ禍が収束する中、北朝鮮の動向に関心が持たれている。ミサイル発射など軍事面での行動が目を引くが、実は自国と海外との往来をいつ解放するのかにも注目が高まっている。2020年1月にコロナの拡大を防ぐため中朝国境を封鎖して以来、正式に解除されていないためだ。貿易など細々とした対外関係は行われているが、そのような中、「本格開放のシグナル?」とも思える動きが見えた。 2024年1月12日、ロシアの旅行会社が「北朝鮮へのスキーツアーを実施する」と、アメリカ政府系ラジオの自由アジア放送(RFA)が伝えた。 観光目的での北朝鮮訪問が実現すれば2020年1月22日、新型コロナウイルスの感染拡大防止を理由に北朝鮮が一切の入国を停止した後で初めてのこととなる。 この報道を契機に、中国の旅行会社からは「なぜロシアからなのか。信じられない」との落胆の声が聞こえてくる。 ●中国の旅行社が落胆する理由 翌1月13日、アメリカ・CNNは、2023年12月に北朝鮮を訪問したロシアのオレグ・コジェミャコ沿海地方知事との会談で、北朝鮮当局と観光ツアーの再開が議題となった可能性があると伝えている。 ロシアの旅行会社が主催するツアーは、2024年2月9日にロシア沿海州のウラジオストクから空路で平壌へ入る計画のようだ。現時点では70人の参加が確定しているという。 旅行日程は、3泊4日で費用は1人750ドル(約11万円)。ツアーの目玉は、北朝鮮東部・元山に近い馬息嶺(マシンリョン)スキー場でのスキー観光となるようだ。 前述のRFAは、ロシアメディアの情報として「観光の本格再開は4月とされ、今回2月実施のスキーツアーは試験的なプレ実施との位置づけだ」とも伝えている。 こうした一連の報道を見ると、北朝鮮旅行は現在ロシアがイニシアティブを取っているように思える。だが、外国人訪朝者の95%強を占めてきた北朝鮮の「お得意様」中国はどうなっているのか。 今回、中国が後れを取ったのは、中国政府が北朝鮮への人的往来を無期限延期するという、実質的な「制裁」を課していたことが関係筋の証言で浮かび上がってきた。 実は2023年9月25日、日本のNHKや朝日新聞をはじめとする日本メディアが、「北朝鮮が9月25日から外国人の入国を許可。国営中国中央テレビ(CCTV)が伝える」と大きく報じていた。 しかし、その後も中国から北朝鮮への出入国は正常化されるどころか、北朝鮮から中国への人的往来もコロナ禍前の水準ほどに戻ったとの情報は確認できない。 ●延び延びにされてきた北朝鮮入国 中朝国境の遼寧省・丹東にある国営旅行会社の社長は、「北朝鮮の最高指導者のロシア訪問が、中国政府が人的往来を止めたきっかけ」と打ち明ける。 すなわち、2023年9月12日からの北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記がロシア極東訪問してプーチン大統領との首脳会談を行ったことが、中国の習近平国家主席の逆鱗に触れ、結果として制裁を課したということだ。 この国営旅行会社は、中国人向け北朝鮮旅行手配では最大手となる。国営企業なので丹東駅から平壌駅までの国際列車の乗車券も優先的に取得できるなど、北朝鮮に関する旅行業界での力は絶大なものを持つ。 また、これまで北朝鮮の旅行業を「自分がリードしてきた」という自負も強い。だからこそ、今回の再開1号ツアーがロシアに取られたことは、さぞかしがっかりさせられたことだろう。 では、2020年に北朝鮮が国境を閉鎖して以降、中朝国境ではどのような動きを見せてきたのか。とくに2023年1月以降の動きを振り返ってみたい。 2023年1月8日、中国・吉林省の琿春と北朝鮮の羅先特別市のイミグレーション圏河口岸(出入国審査場)の封鎖が解除された。そして、車両や人的往来を限定再開させた。 行けるのは羅先のみと限定されており、平壌など他の都市へ移動は制限されたままだ。また、観光客も実質的に通過することができない。 その後、国境付近は穏やかだったが、再びここが注目を集めたのは2023年8月16日に丹東との国境の封鎖が解除され、北朝鮮のテコンドー選手団が国際大会に参加するために中国へ入国した時だ。平壌からの入国者は3年半ぶりだった。 ●2023年下半期から徐々に増えてきたが… 2023年8月末には丹東からの国際列車に加え、北京や瀋陽からの北朝鮮国営・高麗航空が限定的に運行が再開され、コロナ禍で帰国できなかった北朝鮮人外交官や労働者などの帰国が確認されている。 そして9月16日、中国・杭州で開催されたアジア大会へ参加する選手や関係者など約200人が中国へ入国している。 また8月末からは中国当局が拘束していた脱北者の強制送還が始まった。10月9日には脱北者600人を一斉に送還し、これまで約2600人が北朝鮮へ強制送還されたと、韓国メディアの報道がある。 このように、間欠的に、かつゆっくりと中朝国境の人的往来が正常化されるような動きがあった。 とくに2023年8月中旬、北京の北朝鮮大使館は、関係する貿易・旅行関係者向けに「9月24日前後から人的往来を再開する」と通知を出した。通知を読むと、中朝が合意した内容だと読み取れる内容だった。 筆者は、この北朝鮮大使館から通知があったことを関係筋から聞いていたので「9月25日、北朝鮮が外国人の入国許可」の報道には驚くことはなかった。強いて言えば、中国人以外の外国人向けの観光業も同時に再開させるとの直前情報に驚いたくらいだ。 実は当初、中国の関係筋から聞いていたのは、以下のような内容だった。 まず先行して中国人を、それも観光目的ではなく、出張者などから往来を再開させ、中国人の北朝鮮旅行は中国で最大の連休期間となる10月1日の国慶節(建国記念日)あたりから再開させる。日本人を含むその他の外国人は、早くて10月末から再開させるのではないか、というものだった。 ●往来を「無期限延期」にした理由 かなりハイペースのスケジュールに感じられたため、「観光再開は予想以上に早い。それだけ、北朝鮮の経済状況が悪いのだろう」と受け取っていた。 ところが、前述したように、9月25日に中国メディアが報じたのにもかかわらず、その後は「人的往来が再開した」との報道がパタリと途絶えてしまった。 中国メディアが伝えた情報は、本来のテレビによる報道ではなく、インターネット上での記事だったようだが、その後に削除されたようで今ではその報道を確認できていない。 いったん中国メディアが報じたのにもかかわらず、結局実行されなかった大きな理由は、前述の丹東の国営旅行会社社長が明かしたように、中国政府が金正恩・プーチン会談に激怒し、9月25日に人的往来再開で中朝合意していた約束を中国政府が一方的に反故にし、無期限延期にしたことだろう。 反故にしたタイミングが直前すぎたことも、結局は誤報の原因となった可能性もありそうだ。 ただ、米中対立が深まる中、北朝鮮と中国、ロシアは緩やかな連帯が深まっているとされている情勢なのに、中国政府はなぜ北朝鮮がロシアへ接近したことにそこまで反発したのか。 中国とロシアの関係はよい――。日本にいると中国はロシアに近く、現在のウクライナ戦争についても、中国はロシアよりだとみている日本人は多いと思う。 中国国内では、地元のSNS「微博(ウェイボー)」などで見られるコメントを見ると、ロシア支持のコメントが圧倒的に多い。ウクライナを支持し、戦争そのものへの批判は大部分が削除されていると思われる。これは中国当局による情報統制の一環だろう。 ●日本人が思うほど関係は強くない 実は、中ロ関係は日本人が思う以上に薄っぺらで脆弱な関係だ。中ロ朝の3カ国とも、自分たちの権威主義体制維持を脅かすアメリカに反対するという1点で、しかも細くつながっているだけだ。 互いの利己的な国益のために、水面下ではそうとうなつばぜり合いが繰り返されており、蜜月関係とはとうてい言えるような関係ではない。 2024年1月13日に行われた台湾の総統選挙の結果もあり、中国の関心は台湾に集中しているような情勢ではある。しかし、中国の現実的な狙いは「台湾統一」ではなく、ロシア極東の再併合なのではないのかと思えるフシがある。 実際に、そう指摘する声がロシアと国境を接する吉林省の実業家や旅行業関係者などからもしばしば出されている。 現在の吉林省を含む旧満州、すなわち東北3省の人たちは、現在のウラジオストクを含むロシア沿海地方、アムール州、ユダヤ自治州、ザバイカリエ地方などを「外東北」(日本では外満州)と呼び、ウラジオストクを旧名の「海参崴」と呼び続ける人がいる。 それは、「外満州はロシアと結ばされた不平等条約によってロシア帝国に奪われた土地」と認識している人が少なくないからだ。 世界史の教科書をひもとくと、1858年のアイグン条約と1860年の北京条約で本来保有していた広大な領地がロシアへ割譲されている。 もちろん、習近平政権は一度も「奪われた外東北を奪還する」などと口にしたことはない。だが、吉林省在住の中国人たちに話を聞くと、そんな清朝時代の最大領土を取り戻すという「中国の夢」が見え隠れするのだ。 中国政府としては武力を用いず、かつ国際社会との摩擦も最小限に抑えてかつての領土を併合したい。そのためにロシアの国力低下を虎視眈々と待っているのだという声も、実は少なくはない。 ●中国が抱く「沿海州再併合」 中国は、ロシアがウクライナに勝とうが負けようが中国の国益になるようなポジションで動いている。ウクライナ戦争では、仮にロシアが勝利しても、国力や国際的な信用、プレゼンスも大幅低下することは避けられない。敗北すれば、ロシア領土が複数に分割される、などの話も飛び交っている。 前者であれば、疲弊したロシアに対し外満州を金で割譲することを持ちかける。後者であれば、分割された領土に対し歴史的な経緯を主張したり、高麗人(朝鮮半島からロシア沿海地方へ移住した朝鮮民族)を中国の少数民族朝鮮族の同胞だと定義し、少数民族保護などの名目で再併合するシナリオも考えられる。 こうしてみると、中国はロシアがどちらに転んでも自分たちに利益となるような態度をとっているといえる。 しかも、中国による「極東再併合」は、今に始まったことではない。すでに10年以上前から、吉林省の実業家を中心にロシア沿海地方の農地を買収し、中国人を移住させる大規模耕作地を増やしてきた。この件は日本のメディアでも報じられたことがある。 コロナ禍で一時的に中ロ間の人的往来は止まっていたが、2023年1月8日に陸路の中ロ国境封鎖が解除された。 しかし、人的往来が停止している間も中ロの貨物輸送は増えており、ロシア政府系通信社のスプートニク中国語版は2023年1月12日、ロシア・マハリノと中国・琿春間の鉄道による貨物量が2022年には約350万トンとなり、前年比22%増を記録していると伝えた。 さらに、ロシア産石炭の輸出が急増しており、そのため、検問所を24時間体制にし、貨物列車も1日5本を増便させたと伝えている。 ●ロシア沿海州が中国の租借地化 中国人実業家によると、今では農地だけではなく、鉱山や港などの長期使用権なども獲得していると胸を張る。まるで、ロシア沿海州が中国の租借地状態になりつつあるようだ。 中国共産党の一党支配という国家体制上、こうした沿海州へ進出する中国人たちの背後には、中国政府の意向が働いていることは容易に想像がつく。 そんな中国政府が着々と狙っているエリアに、金正恩総書記がコロナ後、初の外国訪問として訪れた。だから、習近平国家主席がへそを曲げたという想像もつく。しかも、金総書記は2019年にも同じロシア沿海州を訪問し、プーチン大統領と初めての首脳会談をおこなった。 ロシア側からみても、中国の極東再併合の狙いを認識しており、そうした中国を牽制するために、2度も金総書記をロシア沿海州へ厚遇してまで招き首脳会談を開催した可能性がなくもない。 そして北朝鮮は、中ロ間の間隙を利用するかのようにロシアへ接近して、武器を供与し、その見返りとしてミサイル技術をロシアから獲得。さらには、ロシアへ北朝鮮への観光ツアー再開を打診した――。 こうしてみると、中ロ関係を悪化させることが北朝鮮の国益だといわんばかりに動いているようにも見えてくる。 北朝鮮に激怒し、へそを曲げた状態とされる中国は、今後どのような動きを見せるだろうか。 1つは、中国政府が今後も態度を硬化させて、中国を経由する外国人をも含めた人的往来の再開を無期限延期したままにする。 あるいは、振り上げた拳をそのままにして、拳を振り上げなかったことにし、ロシアがやっているようなことに合わせて人的往来、つまり、北朝鮮観光をあっさりと「許可」して再開させる可能性も十分にある。 ●もう1つの「中国の夢」 それは、中国も国内経済が悪く、国民に対するガス抜きを行うことが不可欠となっているためだ。 中国政府にとって台湾問題は自国の求心力を高める重要な問題だ。 また極東再併合は、清朝最大領土を奪還する「中国の夢」にも矛盾することもない。台湾問題と比較し、獲得できる資源とリスクを天秤にかけると、どちらに本腰を入れるべき夢なのか。 万が一、ウクライナ戦争の行方次第でロシアが崩壊・分割されるような事態になれば、中国はどさくさに紛れて清朝が領土とみなしたこともないサハリンさえも取りに動くだろう。これは決して筆者の空想ではない。実際にこんな話題が、すでに東北3省の中国人実業家たちからはささやかれているのが現状だ。 |
●「北朝鮮はロシア最大の武器供給国…プーチン氏の影武者しばしば目撃」 1/23
ウクライナの情報機関トップが北朝鮮をロシアの最大の武器供給国だと名指しし、北朝鮮の助けがなかったとすればロシアはもっと大きな困難に陥っていただろうと明らかにした。 英紙フィナンシャル・タイムズは21日、ウクライナ国防省のブダノウ情報総局長とのインタビューを公開した。 ブダノウ総局長は「ロシアが生産能力より多い武器と軍需品を消費しており、品質維持が困難となっている。これがロシアが外国から武器を求める理由」と話した。 彼は現在北朝鮮がロシアの最大の武器供給国だとしながら「北朝鮮が相当な量の砲弾を供給したおかげでロシアは少し息をつなぐことができた。北朝鮮の助けがなかったとすればロシアは厳しい状況を迎えただろう」と付け加えた。 これに先立ち英国のシャップス国防相も北朝鮮がロシアに武器を供給したのと関連し、Xを通じて「世界はロシアに背を向け、プーチンは違法な侵略を継続するために北朝鮮と手を組む屈辱を甘受しなければならなかった」と明らかにすることもした。 ●「プーチンの影武者しばしば目撃」…ブダノウ氏、ウクライナで人気 この日のインタビューでブダノウ総局長はロシアの民間軍事会社ワグネルグループが解体されたという報道に対し「ワグネルは存在する」と一蹴し、設立者プリゴジン氏の死に対しても「中途半端に結論を出さない」と言及した。 ロシアは昨年8月にプリゴジン氏が飛行機墜落事故で死亡し、彼のDNAを確認したと明らかにしたが、彼の遺体は公開されていないと同紙は付け加えた。 ブダノウ総局長はまた、放送でロシアのプーチン大統領の影武者をしばしば見たと主張した。 彼は自身の分析官がプーチンの耳たぶ、眉毛の間隔など顔付きを研究していると明らかにしながら「それほど難しくはない」とした。 ブダノウ総局長は以前に、プーチン大統領ががんを患ったと主張したこともある。 2020年に任命されたブダノウ総局長は2022年10月のクリミア半島大橋爆発の背後とロシアが名指しした人物であり、ウクライナでは彼の姿をロシアの軍事装備が爆発する姿とともにシェアするインターネットミームが存在するほど人気がある。 彼はこれまで10回にわたり暗殺を試みられて生き残ったが、昨年11月には妻が毒殺未遂の被害を受けている。 |
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●プーチンと習近平を利するヤバすぎる事態に…「トランプ復活」で世界が「悪夢」 1/23
●他の候補を圧倒 先週水曜日(1月15日)、激震が西側世界のリーダーたちの間を走った。米国の大統領選びの初戦となる中西部アイオワ州の共和党予備選挙で、トランプ前大統領が得票率51%と他の候補を圧倒したとのニュースが駆け巡り、あの大統領の復権が現実味を増したからである。 トランプ氏が西側の最大国家・米国の大統領に返り咲けば、ウクライナはロシアとの戦争遂行に支障を来たしかねない。そればかりか、もたつきながらも前進し始めた気候変動対策が再び白紙に戻され、高関税が横行して世界の貿易と経済がシュリンクするリスクも大きい。 トランプ再任の障害として、同氏がいくつもの訴訟に直面しており、足もとをすくわれる可能性を指摘する声はある。中でも、トランプ氏が2021年1月の米議会占拠事件で暴動を煽ったとされる問題は、同氏の大統領選への出馬資格の剝奪に繋がるものとして注目されている。しかし、米連邦最高裁にこの問題の迅速かつ大胆な裁きを期待することは難しそうだ。 結果として、米大統領選は、トランプ氏と民主党の現職大統領バイデン氏の一騎打ちになる可能性が強い。そして、わずかながら、バイデン氏は支持率で後れをとっている。まさに世界は今、また、あの異端の大統領に振り回されかねない窮地に立たされている。 トランプ氏が初戦で大勝を収めたというニュースは、今月15日から始まったダボス会議(世界の政財界人を集めて毎年1月に開く世界経済フォーラムの年次総会)でも話題の的だった。ウクライナ戦争や中東で相次ぐ深刻な紛争、そして生成AI活用などが今年の焦点とされていたが、トランプ氏がそうしたテーマを脇に追いやったというのである。 例えば、米政治専門メディア・ポリティコによると、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、トランプ氏への辛らつな評価を口にした。フランスのテレビ・インタビューで同氏復活の可能性を問われ、「歴史から教訓を得るとすれば、彼が最初の4年間の任期をどのように運営したかを見ればよい。それは明らかな脅威だ」「関税、NATOへの対応、気候変動への取り組みの3つをとっても、悉く米国とヨーロッパの利害は一致しなかった」と深刻な懸念を表明したのである。西側の国際機関のトップが、ここまで率直に米国大統領候補に疑問を呈することは異例である。 ポリティコは、ラガルド氏だけではなく、英国のジェレミー・ハント最高財務官もダボスで、「(保護主義への回帰を始めれば)深刻な誤りになる」と、トランプ氏の復権への警告を発したと報じている。 ラガルド氏やハント氏が懸念するように、トランプ氏が米国大統領の座に返り咲けば、問題は、移民政策の厳格化のような米国の内政マターにとどまらない。世界の軍事・安全保障問題や気候変動対策、通商・経済などの問題で看過できない状況が生じ得る。 最も懸念されるのは、ウクライナに侵略戦争を仕掛けたロシアのプーチン大統領や、台湾の武力統一を選択肢のひとつとしている中国の習近平・首席を利する結果になりかねないことだ。 今回の大統領選挙でトランプ氏の最大のライバルになっている民主党のバイデン大統領は、在任中、同盟国との連携を重視。トランプ氏が破壊した欧州連合(EU)との関係改善に努め、日本を含む主要7カ国(G7)の結束の再構築に努めてきた。ウクライナへの軍事・経済支援を主導して、西側としてロシアの侵略戦争に対抗してきたことは、その象徴だ。以って、台湾への野心を燃やす中国をけん制してきた側面も見逃せない。 しかし、トランプ氏が米大統領の座を取り戻せば、1期目と同様か、それ以上の強硬さで「米国第一主義」を実践するだろう。EUと北太平洋条約機構(NATO)の加盟国や日本に対し、ウクライナ支援の肩代わりを迫る一方で、米国がウクライナ支援を縮小することは既定路線とされている。 トランプ氏自身は、米国の輸出拡大に繋がる台湾への武器売却には積極的な態度を見せるかもしれない。が、1月13日の台湾の総統選挙に勝利して、民進党・蔡英文氏の後を継ぐことになった頼清徳・政権は、同時に行われた議会に相当する立法院の選挙で過半数を失った。このため、国民党や民衆党の反対にさらされ、米国からの武器購入を円滑に進められない懸念がある。 ●「米国第一主義」の回帰 こうした状況は、中国が野心を膨らませ、台湾海峡で偶発的な衝突が起きるリスクを高めかねない。日本は、日本本土の米軍や自衛隊基地への中国の攻撃に備えざるを得ない窮地に立つことになる。 気候変動対策で、トランプ氏が1期目にどういう振る舞いをしたかは、記憶に新しい。大統領に就任した途端、気温上昇を抑える国際的な目標のパリ協定から離脱、異常気象対策を形骸化させた“前科”があるのだ。 気候変動対策は、依然として、実効性を担保するための罰則規定がないなど不十分な内容だ。とはいえ、トランプ氏が復権すれば、国際社会が過去数年かけて積み上げてきた実績が崩壊しかねない。 トランプ氏に立ち止まる気配はない。バイデン政権の看板政策である電気自動車(EV)への移行を促す規制撤廃を公言する一方で、石油、天然ガスといった化石燃料の大幅増産へ向けて投資再開を促す方針も掲げている。 経済、通商、貿易政策も「米国第一主義」と言う保護主義への回帰・拡大を目指すものになる。 トランプ氏はすでに昨年8月、米メディアに「(外国企業が)米国で製品を販売する場合、自動的に、例えば10%の税金を払うべきだ」と言い放っている。自身の支持者に多い製造業の労働者の人気を獲得しようという意図は明らかだ。 しかし、こうした関税は、報復合戦を招き、双方でインフレを招く懸念がある。思慮不足は明らかだ。さらに言えば、様々な物品の国際的なサプライチェーンに壊滅的な打撃を与えて、トランプ氏の意図に反して、雇用を減らし、経済を減速させるリスクもある。 加えて、トランプ氏が中国いじめを目論んでいる。「中国の最恵国待遇(MFN)を撤廃する。世界中で米国の国家安全保障上の利益を損なっているからだ」と言うのである。不動産不況からの回復の遅れが目立つ中国経済にダメージを与えるだけでなく、形骸化が目立つ世界貿易機関(WTO)の自由貿易体制を揺るがす暴挙になりかねない。 トランプ氏は、世界の軍事・安全保障や経済、通商、貿易、気候変動対策などに対する脅威となりかねない候補者だが、共和党の大統領候補選びでのトランプ氏のリードは圧倒的だ。 トランプ氏が初戦のアイオワ州で見せた51%の得票は、2位のフロリダ州デサンティス知事の21.2%、3位のヘイリー国連大使の19.1%を圧倒するものだった。 共和党はこの後、米国時間の今日(23日)に第2戦となるニューハンプシャー州の予備選挙を予定している。この州の予備選の焦点は、アイオワで3位にとどまったものの、共和党内では穏健派に位置するヘイリー元国連大使の巻き返しがあるのかだ。 ●トランプに待ったをかける要因 ニューハンプシャー州は穏健派が比較的多い土地柄で、ヘイリー氏は同州知事のスヌヌ氏から推薦を取り付けているほか、ライバルと目されていたクリスティー前ニュージャージー州知事が撤退する幸運にも恵まれている。ただし、情勢は甘くないし、ニューハンプシャー州での巻き返しに失敗すれば、その時点で、選挙戦の継続が難しくなりかねない。アイオワで2位につけたデサンティスは22日、撤退を表明した。 こうした中で、トランプ氏に待ったをかける要因として、司法の役割に注目する向きがある。 以前にも本コラムで指摘したが、トランプ氏は、自身の不動産ビジネスなどでの事業記録の改ざんをめぐる34件の重罪の疑いや、金融詐欺の疑いで提訴されているからだ。 これらの訴訟の中でも、特に深刻とみられているのが、トランプ氏が2021年1月の議会占拠事件で暴動を煽ったとされていることに関連した訴訟である。民主党支持者らの訴えを受け、コロラド州の最高裁は昨年末、「トランプ氏は宣誓した米国憲法の順守を怠っており、再び公職に就くことは許されない。したがって、大統領選挙に出馬する資格がない」との判決をくだした。同じ問題で、民主党所属のメーン州のベローズ州務長官も、トランプ氏の出馬資格を剝奪すると発表した。これらに対し、トランプ氏側が無効として提訴しており、連邦最高裁はこうした判決や判断の是非を審理している最中なのだ。 だが、連邦最高裁がトランプ氏に大統領選への出馬資格を取り消すような判決や判断を今回の大統領選挙の期間中に降すとの見方は説得力を欠いている。というのは、連邦最高裁の顔触れがトランプ氏の大統領時代に任命された3人を含めて共和党の党派色が強いことだけが理由ではない。むしろ、これほど高度な政治判断は、司法の判断にそぐわないという理由から、連邦最高裁が選挙期間中の判断を嫌うと読む方が自然なのである。 そして、この脈絡で考えると、トランプ氏は他の裁判でも選挙期間中に有罪判決を受けて刑務所に収監され、大統領選からの撤退に追い込まれる可能性はかなり小さいと見るべきだろう。 結局のところ、トランプ氏が共和党の大統領候補の座を射止め、本戦は、民主党のバイデン大統領との一騎打ちになる可能性が高い。冷静に見れば、この2人はいずれも高齢であり、最後まで両者に健康リスクが残るものの、現在のところ一騎打ちのシナリオは動かないのだ。 では、一騎打ちの軍配はどちらに下るだろうか。 まず、選挙資金だ。バイデン大統領の選挙陣営と民主党全国委員会によると、バイデン陣営は2023年10〜12月期に前期比約37%増の9700万ドルという巨額の選挙資金を集めたと発表している。この結果、23年末時点の選挙資金は1億1700万ドルと民主党候補として過去最大に達しているという。 ●バイデンは資金準備でリード これに対し、トランプ陣営の集めた選挙資金は、23年7〜9月の段階で約4550万ドルにとどまっていたという。 バイデン陣営は資金準備で1歩リードしている格好だ。 次に、政策面である。本来ならば、外交、安全保障面だけでなく、米国の有権者の関心の高い内政、経済面で、バイデン大統領の実績が高く評価されてもおかしくないはずだ。 バイデン氏は、新型コロナウイルス危機の中で大統領に就任し、家計への直接給付を含む1兆9000億ドルの景気刺激策を実施した。この中には、1兆ドルを投じて道路、橋、鉄道といった老朽インフラの刷新と高速通信網の整備に取り組んだ「インフラ投資雇用法」や半導体産業を支援する「CHIPS法」、脱炭素の取り組みに補助金を出す「インフレ抑制法」などが含まれ、雇用を創出し、景気の後退を免れてきた。これらの政策では多くの共和党支持者も恩恵を受けたはずだ。これから効果が出て来る施策もあるだろう。 しかし、高インフレに見舞われて消費者物価指数(CPI)が高騰した時期があり、家計、特に貧困層にとってはバイデン氏の政策に恩恵を感じるよりも、実質所得が減少して生活が窮乏したと実感している人が多いことも想像に難くない。こうしたことに強い不満を持つ労働者層の多くが、トランプ氏の支持基盤なのだ。バイデン氏が任期中に、社会の分断を修復して、十分に格差を解消できなかったことが、トランプ氏にとっての追い風になっている。 トランプ大統領のスキャンダルは今なお、とどまるところを知らない。1月4日、米下院民主党は、トランプ氏が大統領在任中にファミリービジネスを通して、外国政府から780万ドル(約11億円)以上を受け取っていたと結論付ける調査報告書を公表した。 最大の資金の出し手は、約557万ドルに達した中国だ。在米中国大使館、中国工商銀行、海南航空などが名を連ねている。これに、サウジアラビアの約62万ドル、カタールの約47万ドル、クウェートの約30万ドル、インドの約28万ドルなどが続いている。 普通ならば、こうした資金の授受は大きな問題になるところだが、トランプ氏の場合は、支持者が民主党の仕掛けた謀略だと受け止めてしまい、選挙に響く兆候もない。 直近(1月20日)の米政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の世論調査によると、トランプ氏は46.6%と2.0ポイントの僅差ながら44.6%のバイデン氏をリードしている。 選挙のたびに勝者が変わって趨勢を決めることで有名な7つの激戦州(スイングステート)を対象にした同サイトの調査をみると、トランプ氏の優勢はさらに鮮明だ。ウィスコンシン州で両者の支持率が45.80%で並んでいる以外は、ペンシルバニア、ネバダ、ジョージア、アリゾナ、ミシガンの6州でトランプ氏の支持率がバイデン氏のそれを上回っているのだ。 このまま行けば、世界は再び、トランプ氏に振り回されることになりかねない。 |
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●「再建」か「戦争勝利」か、復興の順序巡り割れるウクライナ 1/23
ウクライナ北東部トロスティアネツ市では、重機が排煙を上げながら、鉄道の駅とバス停の間にたまった土砂やがれきを除去している。新たに構想された交通ハブへのルートを確保するためだ。 約2年前にロシア軍との戦闘により大きなダメージを受けたトロスティアネツは、国費を投じた試験的なプログラムによる復興対象地6カ所の1つに指定された。将来、はるかに広範囲にわたる戦後復興を進めるために必要なスキルや経験を培うのがプログラムの目的だ。 ユーリ・ボーバ市長は、街に活気を取り戻すためには一刻の猶予もない、と語る。急がなければ、復興の担い手となり得る何百万人ものウクライナ国民が、欧州各国に永住してしまう。 ロシアとの国境からわずか30キロメートルしか離れていないトロスティアネツの街で、ボーバ市長はロイターに対し「ここに戻るべき全ての人々のために汗をかいている。この街に戻り、ここで未来を築かなければならない、全ての子どもたちのためだ」と語った。 市長は荒廃した街について、「毎日この光景を見ていると、精神的にトラウマになるだろう」と語る。「何もかも再建する必要がある。手始めはカフェ、図書館、工場、図書館、病院だ」 ウクライナ政府当局者も、復興は急務であるというシグナルを出している。復興には数千億ドルの費用が必要となり、病院や発電所、鉄道といった重要なインフラの復旧は何よりも急を要する。 だが戦火が収まる気配は見えない。反攻が大きな成果を上げられず、資金不足のウクライナは、新たなロシア側の攻撃に対して守勢に回っている。またロシア政府は、前線から遠く離れた人口密集地に対する大規模空爆作戦を再開している。 トロスティアネツから南へわずか20キロの位置にあるアフトゥイルカ市も、やはり戦争初期にロシアの激しい爆撃によりダメージを負った。パブロ・クズメンコ市長は、今のウクライナには同市の広場の再建というぜいたくは許されないと見ている。 アフトゥイルカ市当局は、かつて市役所だったがれきを目抜き通りから撤去したが、完了には時間を要した。通り沿いの破壊された百貨店はまだ修復していない。とはいえ、主として国際的な支援のおかげで、大半の学校は修理されて窓や屋根も新しくなり、防空壕も設置された。 クズメンコ市長はトロスティアネツ市の復興計画を公然と批判しており、住宅や重要インフラの応急修理にまず集中すべきだとして、リソース不足を嘆いている。それ以外に余裕資金があれば軍事に回すべきだとしている。 クズメンコ市長は「再建すべきものはたくさんある」とロイターに語った。「広場やあれこれの装飾といったものは、戦争が終わってから着手すればいい」 アフトゥイルカ市在住のアントニナ・ドミトリチェンコさん(65)は、市役所の残骸の近くに立ち、市長の意見に同意する。「まず必要なのは勝利。復興はそれからだ」 隣り合う都市の意見対立には、ウクライナ全土で展開されている、戦時下での費用支出に関する幅広い議論が反映されている。特に目につくのは、街路や公共スペースの整備といった不要不急のプロジェクトを棚上げして軍事を優先すべきだと主張する草の根の抗議行動が広がっていることだ。 ●「戦争に勝つために必要なのは経済力」 オデーサ州当局が2023年10─12月に総額900万ドル(約13億3000万円)以上に及ぶ入札を中止したことにも、こうした対立の兆候が現れている。中止の理由は、道路の補修やスタジアムの改修、ソフトウエアなどへの投資は戦時下では「受け入れがたい」というものだった。 ロンドンのシンクタンク英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のオリシア・ルトセビッチ氏は、こうした論争の中で、復興のあり方、さらには戦争に適応した経済はどうあるべきかについて、政府の戦略を明快に発信していくことの必要性が浮き彫りになっている、と指摘する。 ルトセビッチ氏は、ウクライナ当局は収益を生み出す成長機会を復活させ、それによって同国の経済的なポテンシャルを開花させることを急がなければならないと主張する。それがロシアに対する勝利につながり、人々の帰還を促し、恒久的に国を離れようとする人が増えるのを食い止めることになると同氏は言う。 「軍事力があれば個々の戦闘には勝てる。だが戦争全体に勝つために必要なのは経済力だ。経済力も、同じ方程式の1要素だ」とルトセビッチ氏は説明する。 ルトセビッチ氏によれば、たとえば比較的安全な西部の都市リビウにもっと学校を建設するのは理にかなっている。他地域での戦闘により多くのウクライナ国民が同市に避難しており、学校があればそこにとどまり、戦時経済に貢献することになるからだ。 「それが復興というものだ。こじゃれた遊び場や新しい動物園を作るという話にはならないかもしれないが」とルトセビッチ氏。「ウクライナがこの戦争をどう耐え抜くかという、もっと大きな戦略にふさわしい種類のプロジェクトでなければならない」 ウクライナ復興を担当する当局者の1人、ムスタファ・ナイエム氏は、トロスティアネツのようにひどく破壊された街をよみがえらせるには、政治的にかなりの豪腕が必要になるだろうと認める。 ウクライナ復興インフラ開発庁の長官を務めるナイエム氏はロイターの取材に対し、「この国は、これまでにコミュニティーを丸ごと再建したことはない」と語った。「私たちにはそういう経験はない」 ウクライナ政府がそれぞれ異なる課題を持つ6つの復興プロジェクトを採用し、主として押収したロシア系資産を原資とする国費を投じることにした理由もそこにある。デニス・シュミハリ首相は昨年4月にプロジェクトを発表した際、その狙いは、対象となる場所を以前よりも良い場所に全面的に変身させることにあると述べた。 あるプロジェクトでは1つの村をゼロから再建するが、別のプロジェクトでは多数の住宅を補修する。一方、モンデリーズ(MDLZ.O)のチョコレート工場があるトロスティアネツでは、経済生活の再開を促すことを視野に入れつつ、複数の中核プロジェクトに注力している。 数世代前にさかのぼる不動産の法的所有権を確認するという往々にして骨の折れる作業から、集合住宅が並んでいた地区全体の都市計画見直し、新たなエネルギー網の構築に至るまで、必要とされるスキルは多岐にわたる。 ●「図書館のリニューアルではない」 シュミハリ首相は昨年10月、すでに復興資金のうち16億ドル以上を配分したと述べた。復興インフラ開発庁の広報担当者によれば、昨年は約8600万ドルの予算が試験的プロジェクトのために割り当てられたが、2024年度の予算はまだ決まっていないという。 世界銀行では、ウクライナ復興には全体として今後の10年間で4000億ドル以上を要すると試算している。 だがナイエム氏は、昨年6月に起きたカホフカ水力発電所のダム決壊に触れ、戦争が続いているため長期的な計画が難しくなっていると述べた。同ダムの惨事により、復興インフラ開発庁ではウクライナ南東部において不可欠な上水道網をほんの数カ月で急いで構築する必要に迫られ、時間もリソースも奪われてしまった。 ナイエム氏によれば、当局者が現時点で計画できるのは「復興に向けたインフラ」だという。つまり、基準や手続きをしっかりと定め、チームを構築し、国際的なパートナーとの関係を育むことだ。 「いずれ、多少なりとも詳細な計画を立てる余裕ができるときに備えて、最大限、そういう部分を育てている」とナイエム氏は言う。「それは必ずしも、我が国が戦争に勝利した後ではないかもしれない」 ナイエム氏は、クズメンコ市長のような批判に対して試験的プロジェクトを擁護し、再建しているのは不必要なものではなく、人々が必要としている住宅やサービスだけだと指摘。また、軍の移動やウクライナ国内の取引を容易にするための戦略的な道路建設や、行政関係の建物も優先対象とすべきだと語る。「図書館や博物館のリニューアルとは違う」 トロスティアネツでの復興計画では、集合住宅2棟、医療施設3カ所、鉄道の駅、広場、近隣のビル1カ所、市街を貫く目抜き通りをよみがえらせることになっている。 一方、市内の主力病院の新たな病棟の再建には、国際支援機関からの資金が活用された。 「私たちの街は侵攻前よりも良い場所になり、敵を落胆させることになると信じている」と語るのは、ナタリア・アンドロソバさん(60)。アンドロソバさんをはじめ、トロスティアネツの地元住民の多くは、ボーバ市長がリーダーシップを発揮し、国の財源を引っ張ってきたことを高く評価している。 トロスティアネツ市以外に試験的プロジェクトの対象となっているのは、首都キーウに近いボロディアンカとモシュン、北部のヤヒドネ、東部のチュルクニ、南部のポサド・ポクロフスケの5カ所だ。 3週間にわたる激しい砲撃にもかかわらずロシア軍の攻撃に耐えたアフトゥイルカ市は、戦火の傷跡は残るものの、活気にあふれている。家族たちは公園を気ままに行き交い、人気レストランの1つでは何かを祝うパーティーが行われている。 だが、重要ないし緊急のニーズ以上に、平時の感覚を切望する声もある。ヤロスラフ・ビビクさん(19)は、侵攻前にこの街に満ちていたような文化的で若々しい空気を取り戻すために、当局がもっと努力してくれないかと願っていると話す。 「ここ数カ月はろくに外出もしなかった」とビビクさんは言う。「今のこの街は少しも面白くないから」 |
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●ウクライナのドローン攻撃、ロシアの主要石油輸出ルートを脅かす 1/23
ロシアのウクライナ侵攻で、新たな戦線が開かれた。ドローンがロシアのバルト海沿岸の施設を攻撃したと伝えられ、同国西部の港からの石油輸出に弱点があることが浮かび上がった。 ウクライナのドローンが先週、初めて国境から約1000キロ離れたロシアのレニングラード州に到達した。このドローンは民間が保有する石油ターミナルの上空で撃墜され、施設に損害を及ぼすことはなかったとロシア当局は発表した。 だが、事情を知る当局者によると、21日にあった2回目のドローン攻撃はいっそう破壊的だった。ロシア西部のウスチルガ港が攻撃を受け、ロシア軍に燃料を供給するノバテクのガス・コンデンセート工場で火災が発生、閉鎖に追い込まれたと同当局者が匿名を条件に語った。攻撃はウクライナ情報機関が組織したものだという。 攻撃を受けた施設はまた、ロシアの最も重要な石油輸出ターミナルの一部にも近い。ウクライナでの戦争が再びエネルギーインフラを標的とした消耗戦の局面に入る中で、今回の攻撃は石油市場の観測筋らを不安にさせている。 25年に及ぶキャリアのうち10年をロシア石油会社の幹部として過ごした業界のベテラン、セルゲイ・ワクレンコ氏は「攻撃が定期的にあったりドローン攻撃が激化したりすれば、バルト海の港の操業は乱れ、輸出量の減少に至る可能性がある」と指摘。そうなる場合、「ロシアがとれる実行可能な選択肢は多くない」と述べた。 歳入の約3割をエネルギー業界から得ているロシアにとって、安定した石油輸出の維持は死活的に重要だ。オイルマネーは丸2年が近づくウクライナでの戦争の費用を助けているほか、3月の大統領選を前にした国内の支出も賄っている。 バルト海からの石油輸出に深刻な混乱が生じれば、影響は世界中に及ぶだろう。ロシアは石油生産で世界上位3位に入り、昨年は中国に対して最大の石油供給国だった。紅海で商船が攻撃を受ける中で、原油市場ではすでに警戒感が高まっている。 コンサルティング会社ライスタッド・エナジーのシニア石油市場アナリスト、ビクトル・クリロフ氏は「バルト海の石油輸出が停止すれば、大型の衝撃になる」と語った。 業界データを基にしたブルームバーグの試算によると、ロシア国営企業トランスネフチが運営するバルト海の2つの主要石油ターミナル、ウスチルガとプリモルスクは昨年1月から11月までの平均で日量150万バレルを輸出し、ロシアの海上原油輸出全体の40%強を占めた。これに加え、ウスチルガからはカザフスタン産原油の一部も輸出されている。 ロシアが数十カ国に輸出する代表的な油種のウラル原油は、75%余りがこの2つの石油ターミナルから輸出されていると、データ分析会社ケプラーが指摘。攻撃を受けて、この規模の量を別の港に振り向けるのはロシアの石油会社にとってほぼ不可能だろうと、複数のアナリストが述べた。 |
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●ポーランドとウクライナ、政治的摩擦の早期解決を確約 1/23
ポーランドとウクライナの両首脳は22日、同盟関係の妨げとなっていた政治的摩擦について取り組んだ上で防衛面での協力を強化すると確約した。 首相として初めてウクライナを訪問したポーランドのトゥスク首相は、ゼレンスキー大統領に友好のメッセージを伝えた上で、ポーランドのトラック運転手による抗議行動を巡り、双方が「共通の理解に達した」と指摘。共同記者会見で「ポーランドは、ウクライナがロシアとの戦争で勝利する可能性を高めるためにあらゆることを行う」と述べた。 ポーランドはウクライナにとって重要な同盟国であり、ロシアに対する西側の財政的・軍事的支援を求めていたが、トラック運転手らがウクライナとの国境検問所に通じる複数の道路を封鎖し、ウクライナ経済にダメージを与えたため、ここ数カ月で関係が悪化。 その後、トラック運転手らは先週、抗議活動を3月1日まで中断することで合意。トラック運転手らは抗議活動で、ウクライナのトラック運転手による欧州連合(EU)への自由なアクセスを取り消すよう求めていた。 ゼレンスキー大統領は「このような事態を招いた理由の深さを理解しているが、何よりもまず、国民の前に立ちはだかる脅威の深さに注意喚起する」とし、この問題に対するポーランドの取り組みを歓迎するとした。 ウクライナのシュミハリ首相はトゥスク首相との別の会見で、両政府間の関係の「リセット」を宣言し、協力強化に向けて定期的に会合を開催すると表明。ウクライナはポーランドの経済的利益を損なうことを避けるために「最大限の努力」を注ぐ一方、ポーランドがウクライナの農民や生産者に対する制限を解除することも期待しているとした。 トゥスク首相は「ポーランドの農民や生産者に利益をもたらし、ウクライナ側にとって安全な解決策が見つかると確信している」とした。 ゼレンスキー大統領とトゥスク首相はまた、両国間の武器共同生産計画を歓迎。ゼレンスキー大統領は短文投稿サイトのX(旧ツイッター)で「ウクライナが必要とする、より大規模な武器購入を目的とした新しい形の協力」について協議したと述べた。ただ詳細は明らかにしなかった。 トゥスク首相は「われわれはポーランドとウクライナの企業に投資し、ポーランド、ウクライナ、そして欧州全体の防衛力の利益のために製造・機能させるつもりだ」と言及。「これは双方にとって非常に有益なビジネスとなる」とした。 |
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●米英首脳、中東・ウクライナ情勢巡り協議=ホワイトハウス 1/23
米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は、バイデン米大統領が22日にスナク英首相と会談し、紅海やパレスチナ自治区ガザ、ウクライナを巡り協議したと述べた。 ワシントンで記者団に対し「両首脳は紅海で何が起きているのか、イエメンの親イラン武装組織フーシ派の能力を破壊・低下させるための国際的な多国間アプローチ継続の必要性について協議した」と指摘。 また、民間人の犠牲者数を減らしガザへの人道支援を拡大する必要性のほか、ウクライナへの追加資金と支援が緊急的に必要なことについても話し合ったという。 |
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●国連安保理 緊急会合でロシア外相 欧米のウクライナ支援を非難 1/23
国連の安全保障理事会では22日、ウクライナ情勢をめぐる緊急会合が開かれ、ロシアからはラブロフ外相が出席しました。 この中でラブロフ外相は、ウクライナ東部ドネツク州のロシア側が支配する地域で21日、市民27人が死亡したことについてウクライナ軍による攻撃だとしたうえで欧米から供与された兵器が使われたと主張しました。 そして「戦場での失敗にもかかわらず、欧米の支援者たちは、ウクライナに無意味な軍事的対決を続けるよう仕向けている」と主張し、欧米によるウクライナへの軍事支援を非難しました。 ラブロフ外相はみずからの発言後、およそ10分だけ議場に残り、中国の国連大使の発言が終わると退席しました。 このあと、アメリカのウッド国連次席大使は「ウクライナの自衛のための正当な支援が、ロシアの侵略戦争を長引かせていると主張するのは最上級の皮肉だ。この戦争を長引かせているのは、ウクライナを消滅させ、ウクライナ国民を服従させようとするプーチン大統領の一貫した追求だ」と非難し、ロシア軍の即時撤退を改めて求めました。 このほか欧米各国や日本や韓国などからは、ロシアが北朝鮮から供与された弾道ミサイルをウクライナに対して使ったのは安保理決議に違反すると非難する意見も相次ぎました。 |
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●ウクライナ大統領、二重国籍容認を提案 ロシア移住者の権利保護も 1/23
ウクライナのゼレンスキー大統領は22日、ロシアによる侵攻に関して海外にいるウクライナ人の支援に謝意を示し、憲法を改正して二重国籍を認める法案を議会に提出すると表明した。 また、ロシアに住む約400万人のウクライナ民族の権利とアイデンティティーを保護する大統領令を発動した。 ウクライナの憲法は国民の二重国籍を認めておらず、同国から海外に移住するとウクライナのパスポートを持つことができない。 ゼレンスキー氏は法案について、ロシアを念頭に「侵略国」の市民権を得ている場合を除き「世界中の全てのウクライナ民族とその子孫がウクライナの市民権を得られるようになる」と述べた。 憲法改正には議会と憲法裁判所の承認が必要。 大統領令はロシアに居住するウクライナ民族に対する犯罪の文書化や関連する偽情報に対抗する取り組み、アイデンティティー保護への行動計画が必要と定めた。 |
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●ロシア大統領選「反戦」候補者への支持広がる 「プーチン氏致命的間違い」 1/23
プーチン大統領が再選を目指す3月のロシア大統領選に向け、反戦を訴える唯一の候補者への支持が広がっています。これまでに10万人の支持者の署名を集めたとし、正式な出馬を目指しています。 通算5期目を目指すプーチン大統領の選挙対策本部は22日、正式な出馬に向け支持者らの署名を中央選挙管理委員会に提出しました。無所属候補は30万人分の署名が必要とされ、プーチン氏の選挙対策本部は10倍の300万人以上の署名が集まったとしています。 プーチン氏の再選が確実視される中、候補者の中で唯一、ウクライナ侵攻に反対するナジェージュジン元下院議員への支持がここにきて急速に広がっています。 ナジェージュジン元下院議員「プーチン大統領は致命的な間違いを犯した。それは特別軍事作戦を始めたことだ」 改革派政党「市民イニシアチブ」が擁立したナジェージュジン氏は下院に議席を持たない政党の候補者として今月末までに10万人分の署名が必要とされ、モスクワ市内などの事務所には連日、支持者らが署名に訪れています。 支持者「唯一、この国で禁止されている言葉(=平和)に賛同している候補者に投票したいので署名に来ました」「(出馬すれば)少なくとも真実を語る言葉がゾンビ化したロシアの人々に届きます」「1パーセントでも希望があるのなら、それを信じるべきです」 ナジェージュジン氏は23日、SNSを通じてこれまでに10万人の署名が集まったと明らかにしましたが、条件として定められた人数を満たしていない地域があるとして、引き続き15万人を目標に署名を集めるとしています。 ただ、たとえ条件を満たしたとしても中央選管に署名内容に不備があると判断され、無効にされる可能性もあるとして、ナジェージュジン氏の陣営は慎重に作業を進めているとしています。 |
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●プーチン氏の訪朝、3月の大統領選後に ロシア報道官 1/23
ロシアのペスコフ大統領報道官は23日、プーチン大統領の北朝鮮訪問は3月15〜17日に投票が予定されているロシア大統領選挙の後になるとの考えを示した。ロシアメディアが報じた。 ペスコフ氏は訪朝について、3月の大統領選よりも「先の予定になる」と述べた。北朝鮮の朝鮮中央通信は今月、プーチン氏が北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外相の訪ロ時に早期訪朝に向けた意欲を示したと報じていた。 プーチン氏は金正恩(キム・ジョンウン)総書記と2023年9月にロシア極東で首脳会談を開いた。金正恩氏は会談時にプーチン氏を北朝鮮に招待していた。 ペスコフ氏はプーチン氏が大統領選前にトルコを訪問する可能性も示唆した。 プーチン氏はロシア大統領選に23年12月に出馬を表明している。同氏以外では「体制内野党」から複数名の候補者が出馬を表明し、独立系の候補者が立候補に必要な署名集めを進めている。 |
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●プーチンは20万人を追加招集し「春の攻勢」を準備か…NATO高官警告 1/23
グラント・シャップス英国防相は21日の英BBC放送で「国防費は増えており、国内総生産(GDP)の2%を優に超えている。目標の2.5%は経済状況が許せば達成される」と述べた。国防費を3%に増強しない限り、ナチスドイツの指導者アドルフ・ヒトラーを止められなかった1930年代を繰り返す恐れがあるとの元陸軍トップの警告に答えた。 シャップス国防相はこれに先立つ15日、ロンドンのランカスター・ハウスで「平和の配当の時代は終わった。5年以内にロシアや中国、イラン、北朝鮮を含む複数の脅威に直面する恐れがある。今年は間違いなく分岐点になる。ウクライナにとっては国家の命運が決まる年になるかもしれない」と演説した。 「平和の配当」とは緊張時には国防を最大化すべきだが、平和時には最小化できるという考え方だ。過去に戦争を抑止した核兵器による「相互確証破壊」戦略をイラン革命防衛隊や北朝鮮に当てはめても戦争を止めることはできないとシャップス国防相は指摘する。西側と敵対するロシア、イラン、北朝鮮の「ならず者国家の枢軸」と中国はより緊密な関係にある。 理想主義の時代は冷徹な現実主義の時代に変わった。ウクライナへの25億ポンドの追加支援策に続き、英国は今年前半、陸海空軍の2万人を欧州に派遣し、北大西洋条約機構(NATO)とスウェーデンの大規模演習に参加する。クイーン・エリザベス級の空母やステルス多用途戦闘機F-35B、護衛艦からなる空母打撃群も加わる。 ●ドイツ連邦軍の秘密シナリオ「同盟防衛2025」 ドイツの大衆紙ビルト(電子版16日付)は独国防省の機密文書をもとにロシアと西側との間に早ければ来年に起こり得る「戦争のシナリオ」を独自ネタとして報じている。それによると、ドイツ軍の秘密シナリオ「同盟防衛2025」は今年2月から始まっている。ロシアは新たな動員で20万人を追加招集する。 ウラジーミル・プーチン露大統領は「春の攻勢」を開始する。西側のウクライナ支援は弱まり、ロシア軍は6月までにウクライナ軍を後退させる。7月にはロシアはNATOに加盟するバルト三国にサイバー攻撃を仕掛け、ロシア系住民を扇動する。9月、ロシア西部とベラルーシで5万人の大規模演習「ザパド2024」を始める。 10月、ロシアはNATOの攻撃が差し迫っているというデタラメの口実で軍隊と中距離ミサイルを飛び地のカリーニングラードに移動させる。クレムリンの狙いはベラルーシとカリーニングラード間のスヴァウキ・ギャップだ。米大統領選で生じる空白を突いて12月にスヴァウキ・ギャップで「国境紛争」と「多数の死者を伴う暴動」を引き起こす。 来年 1 月の NATO特別会合でポーランドとバルト三国がロシアからの脅威増大を報告。ロシアは 3 月にベラルーシに追加部隊を移動させ、駐留規模は7万人以上に膨れ上がる。NATOは5月にスヴァウキ・ギャップへのロシアの攻撃を抑止するための措置を決定し、ドイツ軍の3万人を含む計30万人を配備するというシナリオだ。 ●「スウェーデンで戦争が起こる恐れがある」 伝統の中立政策を捨て、NATO加盟に舵を切ったスウェーデンのカール・オスカー・ボーリン民間防衛相は7日、「国民と国防」年次全国会議で「約210年間、国民にとって平和は不動のものだという考えはごく身近にある。しかし、この結論に安住することは危険だ」と演説した。スウェーデンにとって最後の戦争は1814年、隣国ノルウェーとの間で起きた。 「赤裸々に言わせてもらおう。スウェーデンで戦争が起こる恐れがある。恐怖に訴えることが第一の目的ではない。現状認識に訴えることが目的だ。もし戦争が起こったら、あなたはどうする。プーチンは2014年にすべてのウクライナ人を目覚めさせたことを理解せずに、22年2月に本格侵攻し、ウクライナ社会全体の統合された力に直面した」 ボーリン民間防衛相は「社会の復元力には現状認識が必要だ」と強調する。時間が最も貴重な資源だ。防災当局の幹部なら、戦争組織を構築し、どの活動を続けるのか決めなければならない。身を守るための安全や代替指揮地へのアクセスは確保されているのか。自主的な防衛組織と協定を結んでいるのか。今すぐに行動を起こすよう同民間防衛相は呼びかける。 地方自治体の委員なら、戦争組織、避難所、緊急給水計画、医療・福祉施設用の暖房・電気の供給を確保する必要がある。従業員なら職場の戦争組織における役割を雇用主に確認する必要がある。個人も各家庭で備えなければならない。「世界は第二次大戦後かつてないほど大きなリスクに直面している」とボーリン民間防衛相は語った。 ●NATOと加盟国の国防計画がこれほど密接に結びついたことはない NATOのロブ・バウアー軍事委員長は17、18の両日、ブリュッセルで開かれた国防相会合で「ルールに基づく国際秩序が大きな圧力にさらされている今、政治的意思と軍事的能力を一致させる重要性はいくら強調してもしすぎることはない。力の地殻変動が起きているのだ。その結果、私たちはここ数十年で最も危険な世界に直面している」と強調した。 「NATOは集団防衛の新時代に突入した。10億の国民と31カ国(間もなく32カ国に)の安全以上に自由と民主主義を守っている。NATOと加盟各国の国防計画がこれほど密接に結びついたことはかつてなかった。同盟国は現在、新しい国防計画の実行可能性を最大化するために積極的に取り組んでいる。NATOの戦争遂行能力の変革が必要だ」 「平和を望むなら戦争に備えよ。備えと抑止力を最大化することは紛争の発生する可能性を最小化する。ロシアの最近の攻撃は壊滅的だが、軍事的には有効ではない。ウクライナ側には実質的な軍事的成功が見られる。30万人以上の死傷者がロシア側に出た。昨年、世界は過度に楽観的だったかもしれないが、今年は悲観的になり過ぎないことが重要だ」 「私たちの社会では紛争や戦争で活動できるのは軍隊だけではないということが理解されていない。好むと好まざるとにかかわらず、社会全体が巻き込まれる。産業基盤もだ。国民も自分たちが解決策の一部であることを理解する必要がある。今後20年何も起きないわけではない。平和であることが当たり前ではないことを認識しなければならない」と釘を刺した。 |
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●NATO、11億ユーロの砲弾調達契約調印 一部ウクライナ向け 1/23
北大西洋条約機構(NATO)は23日、11億ユーロ(12億ドル)の155ミリ砲弾調達契約に調印した。砲弾の一部はウクライナに供給される。 ストルテンベルグNATO事務総長は調印式の後、記者団に「ウクライナの戦争は弾薬の戦いになっている」と述べた。 ウクライナのウメロフ国防相は先週、ロシアの侵攻開始から約2年となり、ウクライナ軍で砲弾不足が深刻な問題になっていると述べていた。 今回の契約は、一部加盟国に代わってNATOが締結した。NATO当局者によると、調達国はベルギー、リトアニア、スペイン。これらの国は、そのままウクライナに供与したり、自国の備蓄とする。 調達規模は22万発程度で初回の納入は2025年末の予定という。 |
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● ウクライナ首都攻撃、21人負傷=国境近いハリコフで5人死亡 1/23
ウクライナのメディアによると、首都キーウ(キエフ)の複数の地区に23日朝、ロシア軍のミサイル攻撃があり、集合住宅で崩落や火災が起きるなどして子供を含む少なくとも21人が負傷した。ウクライナ空軍はミサイル41発が飛来し、うち21発を迎撃したと発表した。 ロシア軍の攻撃は、第2の都市である北東部ハリコフにもあり、5人が死亡、子供を含む約50人が負傷した。ハリコフは東・南部4州のように占領されていないが、ロシア西部ベルゴロドまで国境を挟んで直線距離で約70キロと近く、両国軍がにらみ合う「前線」に位置している。 このほか東部ドニエプロペトロフスク州パブログラードも攻撃され、2人が死傷した。 |
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●スロバキア首相、戦争終結には「ロシアへの領土割譲必要」 ウクライナ反発 1/23
昨秋就任したスロバキアのフィツォ首相がウクライナ戦争終結のためにはロシアに領土を割譲する必要があると述べたことに対し、ウクライナが反発を示している。 ウクライナ外務省のニコレンコ報道官はフェイスブックに、「領土の一体性に関して譲歩はあり得ない。ウクライナであれスロバキアであれ、どの国にとってもそれは同じだ」と書き込んだ。 さらに「率直に言おう。もしウクライナの安全を確保できなければ、スロバキアも欧州全体も安全ではなくなる」と述べた。 フィツォ氏は国内ラジオとの先週のインタビューで、こうした考え方に真っ向から挑戦していた。ウクライナの領土保全は欧州連合(EU)における同氏の大半のパートナーの中核となる立場でもある。 フィツォ氏はインタビューで「ウクライナは何を期待しているのか。ドンバスやルハンスクからロシアが撤退することか、それともクリミア半島からの撤退か。全く非現実的だ。そんなことは誰にでも分かる」とも述べた。 ドンバスとルハンスクはウクライナ東部の領土。ロシアは2014年にウクライナ東部の一部を実効支配し、22年の全面侵攻後はここを起点に領土奪取を進めてきた。クリミア半島も14年に奪取・併合された。 ロシア寄りとの見方が多いフィツォ氏は、ウクライナへのさらなる軍事支援を阻止するとの公約を掲げ、昨年10月の選挙で勝利した。今回のラジオインタビューではウクライナについて、親ロシア派のヤヌコビッチ大統領(当時)を失脚させた14年以降、「米国の完全な支配下」にあるとの見方を示した。 フィツォ氏は欧州連合(EU)内ではハンガリーのオルバン首相と共同歩調を取り、ウクライナのEUや北大西洋条約機構(NATO)への加盟を阻止する考えを公言している。 |
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●ロシア軍がキーウなどにミサイル攻撃 65人死傷…攻撃の応酬 1/23
ロシア軍が23日、ウクライナの首都キーウなどにミサイル攻撃を行い、少なくとも子ども5人を含む65人が死傷した。死傷者はさらに増える可能性がある。 ウクライナ当局は23日、首都キーウや北東部ハルキウがロシア軍のミサイル攻撃を受けたと発表した。 キーウは民間のアパートが空爆を受け、20人が負傷。またハルキウでは、ガスのパイプラインが攻撃を受けて炎上したほか、病気の子どもの療養所や民間の住宅が被害を受けて3人が死亡、40人が負傷したという。 東部ドニプロも空爆を受け、2人が死傷した。 ウクライナ当局は、41発のミサイル攻撃を受け、このうち21発を迎撃したと発表。ロシア軍の相次ぐ大規模攻撃で、ウクライナ軍の迎撃率の低下が懸念されているが、当局は「すべての敵のミサイルが目標に到達したわけではないことが重要」と述べた。 軍事侵攻をめぐっては、ウクライナ軍が21日、ロシアが実効支配するウクライナ東部ドネツクの市場を砲撃し、少なくとも27人が死亡した。 ウクライナ侵攻から2年の節目を前に、攻撃の応酬が続いている。 |
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●ウクライナ首都攻撃、21人負傷 国境近いハリコフで5人死亡 1/23
ウクライナのメディアによると、首都キーウ(キエフ)の複数の地区に23日朝、ロシア軍のミサイル攻撃があり、集合住宅で崩落や火災が起きるなどして子供を含む少なくとも21人が負傷した。ウクライナ空軍はミサイル41発が飛来し、うち21発を迎撃したと発表した。 ガス施設炎上、ドローン攻撃か ウクライナから1000キロ―ロシア北西部 ロシア軍の攻撃は、第2の都市である北東部ハリコフにもあり、5人が死亡、子供を含む約50人が負傷した。ハリコフは東・南部4州のように占領されていないが、ロシア西部ベルゴロドまで国境を挟んで直線距離で約70キロと近く、両国軍がにらみ合う「前線」に位置している。 このほか東部ドニエプロペトロフスク州パブログラードも攻撃され、2人が死傷した。 |
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● ウクライナの港からの12月の農産物輸出 軍事侵攻後で最大に 1/23
ロシアによる軍事侵攻で制限されていたウクライナの港からの農産物の輸出について、イギリス国防省は、12月の輸出量が侵攻後、最大になったとの分析を発表しました。黒海を通じた貿易の拡大への道をひらく象徴的な出来事だと指摘しています。 ウクライナは世界有数の穀物輸出国ですが、2年近く前に、ロシアによる軍事侵攻が始まってからは、黒海を通じた輸出ルートが制限され、世界的な食料供給にも影響が出ています。 これについてイギリス国防省は22日、ウクライナの港から12月に輸出された農産物が、侵攻開始以降、最も多くなったとの分析を発表しました。 輸出ルートにあたる黒海の西側部分で、ウクライナ側がミサイルによる防衛などを強化し、ロシアの黒海艦隊に十分活動させなかったことが背景にあるとしています。 そのうえで、「輸出航路の確保は、ウクライナの輸出による歳入だけでなく、黒海における貿易拡大に道をひらく象徴的な出来事で、長期的にも極めて重要だ」と指摘しています。 一方、ロシア軍は攻撃の手を緩めておらず、23日には首都キーウや東部ハルキウなどにミサイル攻撃などを行い、クリメンコ内相によりますと、これまでに5人が死亡したということです。 また、キーウのクリチコ市長は、子どもを含む20人がけがをしたほか、住宅や建物にも被害が出ているとしていて、ウクライナの主要都市を狙った攻撃が相次いでいます。 ●キーウ市内でも大きな音が10回以上 ロシア軍による攻撃では、NHKの取材班が滞在するキーウ市内のホテルでも、現地時間23日午前7時すぎ、日本時間23日午後2時すぎに「ドーン」という大きな音が10回以上聞こえました。 時折、振動も感じられ、その影響で、駐車していた車の防犯システムも誤作動し、通りではアラームが鳴り響いていました。 取材班が退避する途中には、ミサイルを迎撃しようと、ウクライナ軍が空に向けて何かを発射している様子も窓から見えました。 |
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●プーチン大統領の北朝鮮訪問 3月の大統領選後の見通し示す 報道官 1/24
ロシアのプーチン大統領の北朝鮮訪問について、3月の大統領選後になるとの見通しを大統領報道官が示しました。 ロシアメディア「SHOT」は23日、ペスコフ大統領報道官がプーチン大統領の北朝鮮訪問について、3月17日に実施される大統領選の前には行われないとの見方を示したと伝えました。 同じく取り沙汰されているトルコ訪問については、大統領選前に行われる可能性があるとしています。 北朝鮮の国営メディアは21日、プーチン氏がロシアを訪問した北朝鮮の崔善姫外相と会談した際、「北朝鮮を早い時期に訪問する用意」を表明したと報じています。 |
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● ロシア軍事侵攻 開始から700日 キーウなどに大規模な攻撃続く 1/24
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから24日で700日となります。ウクライナではミサイルなどを使ったロシア軍の大規模な攻撃が続き、23日は首都キーウなどで多数の死傷者が出ました。 ウクライナ軍は23日、ロシア軍がウクライナ各地に巡航ミサイルや弾道ミサイルなど合わせて41発のミサイルで攻撃を仕掛け、このうち21発を撃墜したと発表しました。 ゼレンスキー大統領は、この攻撃で首都キーウや第2の都市ハルキウなどで合わせて6人が死亡し、子どもを含む70人以上がけがをしたと明らかにしました。 このうちハルキウでは、変電所やガスパイプラインに被害があり、厳しい寒さの中、市内の一部地域で停電が起きているほか、暖房も使えなくなっているということです。 この攻撃についてロシア国防省は「ミサイルや砲弾などを生産するウクライナの軍需工場に対して一斉攻撃を行い、すべての目標を破壊した」と主張しました。 こうした中、アメリカの有力紙「ニューヨーク・タイムズ」は22日、ロシア軍がウクライナで使用した北朝鮮のミサイルについて、比較的最近、製造されたもので、性能は、ロシア製のものと変わらないとするアメリカ政府関係者などの分析を伝えました。 また、これまでに北朝鮮から提供されたミサイルは50発以下にとどまるものの、今後、増加するとみられるということで、ロシア側の攻勢が強まることが懸念されています。 |
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●米財務長官、ウクライナ首相に財政支援の予算確保を確約 1/24
イエレン米財務長官は23日、ウクライナのシュミハリ首相とテレビ会議方式で会談を行い、118億ドルの対ウクライナ支援のための予算をバイデン政権は確保すると確約した。 財務省は声明で「ウクライナに対する財政支援は戦場での成功と直接的に関連している」とし、「ウクライナに財政支援を行うことは、ウクライナが戦争に勝利し、米国の国家安全保障上の利益を世界的に高めることにつながる」とした。 |
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●ロシア軍は受刑者らによる「突撃部隊」編成、人的犠牲をいとわず… 1/24
ロシアがウクライナ侵略を開始してから24日で1年11か月となる。露軍は受刑者らによる「突撃部隊」を編成し、人的犠牲をいとわずに突破を図る戦術への傾斜を強めており、ウクライナ軍は防衛主体に切り替えた。米欧のウクライナへの軍事支援は停滞しており、人命軽視の露軍にウクライナが苦戦を強いられる展開が当面、続きそうだ。 ●受刑者ら「突撃」、1日400人兵士喪失の推計も ●ゾンビ 露軍は昨年秋から攻撃を強化している東部ドネツク州アウディーイウカを巡る戦闘に、突撃部隊を繰り返し投入している。露軍が1日平均300〜400人の兵員を失っているとの推計もある。 露軍の進軍を阻止する防衛拠点アウディーイウカを死守するウクライナ兵は、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに対し、露軍の戦いぶりを「我々には弾薬が十分になく露軍には人間がたくさんいる」と評した。 英王立防衛安全保障研究所(RUSI)などの分析によると、突撃部隊は2〜5人ごとに次々とウクライナ陣地に突っ込んでウクライナに撃退させる。ウクライナの陣形を把握し後方から重火器などで破壊するための「捨て駒」だ。味方の戦車など戦闘車両による援護は期待できない。 決して後退は許されないとされる。後方で監視し銃撃も辞さない「阻止部隊」を配備しているとの証言が相次いでいる。倒されても倒されても波状攻撃を仕掛けてくる様子は「ゾンビ」とも表現される。 ●勧誘 ウクライナ侵略では、露民間軍事会社「ワグネル」が2022年秋頃から突撃部隊を使っていた。ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏が露国内の刑務所を回って受刑者を勧誘した。半年間の契約期間を満了して生還すれば、刑務所から釈放する触れ込みで、約5万人を勧誘したとされる。ワグネルの突撃部隊は昨年5月のドネツク州バフムト制圧に一役買った。 昨年6月のプリゴジン氏による反乱を機に、受刑者の勧誘と突撃部隊の編成は露国防省が主導するようになった。部隊は「ストームZ」や「ストームV」と呼ばれ、軍紀違反の兵士も「懲罰」の一環で配属される場合があるという。 戦闘訓練をほとんど受けずに最前線に放り込まれるのが特徴だ。ロイター通信によると、バフムトで戦ったある部隊は120人の隊員のほとんどが死傷し、無事だったのはわずか15人だった。米紙ワシントン・ポストによると、侵略を開始した22年2月に約42万人いた露国内の受刑者は、昨年10月には約26万人まで減ったという。 受刑者の動員は、政権にとっては、正規軍の兵士や一般国民と異なり批判を受けにくい利点もある。 ●ウクライナ人も 戦場への受刑者投入自体は必ずしも珍しくないが、旧ソ連の独裁者スターリンは第2次世界大戦の独ソ戦で、犯罪者や懲罰対象の兵士で部隊を編成して戦場に大量投入し、阻止部隊に監視させていた。プーチン露大統領がスターリンの手法を踏襲したものとみられる。 ウクライナ国防省情報総局などは、露軍が南部ヘルソン、ザポリージャ両州などの占領地域でウクライナ人を動員し、ウクライナ軍との戦闘に参加させていると指摘している。ウクライナ人を「弾よけ」として最前線に配備している事例もあるとみられている。 戦争犯罪を規定するジュネーブ条約では、占領地での住民の徴兵を禁じている。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは住民を拘束して従軍を強制している事例もあると指摘し、「戦争犯罪だ」と非難している。 ●ウクライナ戦術 米欧型 ウクライナ軍は、兵員の生命を最優先する北大西洋条約機構(NATO)型の戦い方を重視しており、露軍との違いを強調している。 ウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官は昨年11月の英誌エコノミストのインタビューで「封建国家で最も安価な資源は人命だが、我々にとっては、最もかけがえのないのは国民だ」と述べ、露軍の手法を批判した。「他の国ならば、これほどの犠牲が出れば戦争は止まったはずだ」とも語り、プーチン露政権の人命軽視は想定以上だったことを認めた。 ウクライナもロシアと同様、旧ソ連構成国の一角だが、NATOへの加盟が悲願で、2014年にロシアが南部クリミアを一方的に併合して以降、軍隊機構のNATO型への移行を加速させている。ザルジニー氏ら幹部世代はソ連式の教育を受けたものの、ウクライナ軍の若手兵士の多くはNATO加盟国で訓練を受けており、意識改革も進んでいるとみられる。 ウクライナ軍が昨年6月に南・東部で始めた反転攻勢では、露軍の地雷原突破を図る作業を、歩兵部隊の突撃ではなく、少数の工兵チームに担わせた。 ただ、ロシアは人口約1億4000万人でウクライナの3倍以上だ。消耗戦になれば、人口規模が大きいロシアに分がある。 ウクライナでは兵員補充のため、犯罪歴がある人の動員を可能にする案が取りざたされており、今後、受刑者の動員強化にかじを切る可能性もある。 ●プーチン氏 領土拡張重視…岩田清文氏 元陸上幕僚長 ロシアのプーチン大統領は死者数を減らすことより、「領土拡張」に価値を置いている。おびただしい数の戦死者が出ても、ロシア軍は歩兵を突撃させる戦い方を継続している。ウクライナ軍が苦しんでいるのも、露軍の用兵が常識を超えているためだ。 露軍は元々、ミサイルやりゅう弾砲などの火力で敵の陣地を徹底的に破壊した上で、装甲車両が主体の「機械化部隊」が突っ込んでいく戦術で臨んでいた。しかし、ウクライナ侵略では既にミサイルや装甲車両の多くが撃破され、兵士や将校も失った。受刑者らで小規模な部隊を作って波状攻撃を仕掛けているのは、このためだ。 ロシアは兵器や車両などの増産を急いでいるが、兵士の訓練には時間がかかる。露軍が以前の状態に戻るまでは、今と同じような戦い方を続けるだろう。ロシアでは3月に大統領選を控えており、露軍は「戦果」がほしいプーチン氏から、政治的要求を突きつけられているはずだ。 気温が氷点下20度に達する厳冬期が過ぎて、暖かくなる5月頃になれば、露軍はさらに兵士と装備を前線に送り込み、攻勢を強めるかもしれない。 |
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●ロシア軍攻撃、死者18人に ウクライナ大統領 1/24
ウクライナのゼレンスキー大統領は23日夜の国民向け演説で、首都キーウ(キエフ)などを狙ったロシア軍による同日の攻撃で、死者が18人、負傷者が130人に上ったことを明らかにした。崩落した集合住宅のがれき撤去が進み、確認された犠牲者数が増えたとみられる。 |
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●露ミサイル攻撃で18人死亡 ゼレンスキー氏、報復示唆 1/24
ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、同国各地を標的とした同日のロシア軍の大規模ミサイル攻撃により、少なくとも18人が死亡、130人が負傷したと明らかにした。東部ハリコフでは救助活動が続いており、死傷者数はさらに増える恐れがあるという。 ゼレンスキー氏は「典型的なテロリストだ」とロシアを非難。「ウクライナには十分な長距離戦の能力があることをロシアに知らせよう」と報復を示唆した。 ゼレンスキー氏や地元当局によると、露軍はこの攻撃で、約40発のミサイルを発射。一部が着弾し、139の一般住宅などに被害が出た。ハリコフでは高層住宅が崩落するなどし、21歳の女性や8歳の女児が死亡した。 昨年末の露軍の大規模なミサイル攻撃以降、双方は互いの都市への報復攻撃を繰り返しており、双方の死者数は昨年末以降だけで計100人を超えている。 |
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●ロシア軍、ウクライナ各地に大規模なミサイル攻撃 7人死亡 1/24
ウクライナ各地にロシア軍の大規模なミサイル攻撃があり、これまでに7人が死亡、70人以上がけがをしました。 ウクライナ当局によりますと、23日未明に首都キーウや東部ハルキウなどにロシア軍によるミサイル攻撃があり、7人が死亡し、子どもを含む70人以上がけがをしました。 こうしたなか、イギリスの研究機関が1月2日にハルキウに着弾したミサイルの残骸を調べたところ、部品にハングルが記載されていたことなどから「ミサイルは北朝鮮製」との分析結果を公表しました。 ウクライナ国防省情報総局のブダノフ局長も、北朝鮮がロシアの最大の武器供給国との認識を示し、「北朝鮮の助けがなければロシア軍の状況は壊滅的になっていただろう」としています。 |
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●イタリア、G7議長国としてウクライナ全面支援を継続の意向=関係筋 1/24
今年の主要7カ国(G7)議長国を務めるイタリアが、ロシアに侵攻されたウクライナに対してG7として全面的な支援を続ける意向を示していることが分かった。ウクライナでの戦闘でロシアが優勢になっているとの観測や、西側諸国に支援疲れがあるとの見方に対抗する。情報に詳しい関係者が匿名で語った。 関係者によると、6月13─15日にイタリア南東部プーリア州で開催されるG7首脳会議(サミット)では中東紛争、食料安全保障、気候変動、アフリカ開発、中国との関わり、人工知能(AI)などが主要議題になる予定。 過去2回のサミットと同じように、ウクライナでの戦闘も主要な検討事項となる見込みだ。 関係者は「われわれはウクライナのストーリーを変えなければならない」と述べ、ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵攻以来、財政的、軍事的、外交的影響力を著しく失っていると主張した。 G7は今年、3月13─15日に開かれる産業、技術、デジタル化に関する会合をはじめ20の閣僚級会合を予定している。 |
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●スウェーデン NATO加盟に向け大きく前進 トルコ議会が承認 1/24
トルコの議会はスウェーデンのNATO(北大西洋条約機構)への加盟を23日、承認しました。NATO加盟国のうち、これまでトルコとハンガリーが承認を終えていませんでしたが、スウェーデンの加盟に向けて大きく前進したかたちです。 ロシアと国境を接するフィンランドと隣国のスウェーデンは、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、おととし5月、NATOへの加盟をそろって申請しました。 このうちフィンランドは去年4月に加盟が実現しましたが、スウェーデンについてはトルコとハンガリーが承認を終えていませんでした。 特にトルコは、自国からの分離独立を掲げるクルド人武装組織のメンバーなどをスウェーデンが支援していると主張して、承認に向けた動きは長く停滞していました。 対策が講じられたとしてトルコ政府も前向きな姿勢に転じ、23日、トルコ議会では審議が行われました。 出席した与党の議員からは「スウェーデンの加盟はトルコの利益に一致する」などの声も上がり、その後、採決が行われ、賛成多数でスウェーデンのNATO加盟を承認しました。加盟に向けて大きく前進したかたちです。 残るハンガリーもスウェーデン側と交渉する意向を示しています。 一方、NATOの拡大に強く反対するロシアは反発することが予想されます。 スウェーデンの首相府は23日、SNSに「きょうわれわれはNATOの一員に1歩近づいた。スウェーデンのNATO加盟をトルコ議会が支持したことを前向きに受け止めている」と投稿し、スウェーデンの加盟にかたくなな姿勢を示してきたトルコの承認を歓迎しました。 |
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●ウクライナ砲弾不足が深刻 ロシア軍の1割か 1/24
米CNNテレビは23日、ウクライナ軍の砲弾不足が深刻化し、侵攻を続けるロシア軍との戦闘で不利な状態だと報じた。指揮官の一人は、ロシア軍とウクライナ軍が保有する砲弾の差は「10対1」だと話した。 防衛を続ける東部ドネツク州アブデーフカの近くでは砲弾不足により、昨年の大規模反攻時と比べて発射数が半減。やむを得ず、爆発しない種類の砲弾を打ち込んだこともあったという。 23日はロシア軍がウクライナ各地にミサイル攻撃を仕掛けた。東部ハリコフで8歳の女児を含む8人が死亡した。ウクライナメディアによると、変電所などの電力関係設備なども損壊し、大規模停電が発生した。 |
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●EUのロシア中銀資産没収、可能性低い 法的リスク警戒=関係筋 1/24
欧州連合(EU)がウクライナ侵攻を受けて凍結したロシア中央銀行の資産を没収する可能性は低いと、EU当局者が明らかにした。 日米欧などは制裁の一環としてロシア中銀の資産約3000億ドルを凍結した。約2000億ドルは主にベルギーの決済機関ユーロクリアに保管されている。 バイデン米大統領は議会に610億ドルのウクライナ追加支援を要請しているが、共和党が反対している。EUもウクライナへの500億ユーロ(543億6000万ドル)規模の支援についてハンガリーの反対で合意できずにいる。 ロシアの資産を没収してウクライナに提供すれば、ウクライナ向け資金調達を巡り欧米諸国への圧力は和らぐが、EU当局者は法的リスクが高すぎると考えているという。 EU当局者は匿名を条件に「ロシア資産の没収はあり得ない。EU加盟国の間でこの件に関する合意はない」と述べた。 ルクセンブルクのベッテル外相はロイターとのインタビューで「仮にウクライナへの数十億ドル供与を政治的に決めたとして、半年後にウクライナへの引き渡しは認められないとの法的判断が下されたとしたら誰が支払うことになるのか」と述べ、資産差し押さえに慎重な見方を示した。 |
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●ロシア軍用機が墜落 “捕虜のウクライナ兵など74人搭乗” 1/24
ロシア国防省は、ウクライナと国境を接しているロシア西部のベルゴロド州で、捕虜となっていたウクライナ軍の兵士など合わせて74人が乗っていたロシア軍の軍用機が墜落し、全員が死亡したと発表しました。ロシア国防省は、ウクライナ側がミサイルで撃墜したとしています。 ロシア国防省は24日、ウクライナ側との捕虜交換のためにモスクワ近郊の空軍基地を出発したロシア軍の軍用機が、ウクライナと国境を接している西部のベルゴロド州で墜落したと発表しました。 墜落したのは、イリューシン76型輸送機で、捕虜となっていたウクライナ軍の兵士65人のほかロシア軍の乗員など9人の合わせて74人が乗っていたとした上で「全員が死亡した」と明らかにしました。 ロシア国防省は「ウクライナ東部ハルキウ州からウクライナ軍が発射した対空ミサイルで破壊された」として、ウクライナ軍がベルゴロド州と隣接するウクライナ側の州から2発のミサイルを発射し、撃墜したとしています。 国防省の発表に先立ち、ロシア議会下院のボロジン議長やカルタポロフ国防委員長も「ミサイルで撃墜された」と相次いで発言していてロシア側は、欧米からウクライナ側に供与された対空ミサイルで撃墜されたと主張しています。 ロシア大統領府のペスコフ報道官は「これから調査する」と述べ、ロシア軍は現地に調査団を派遣するとみられます。 |
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●ゼレンスキー氏、露軍輸送機墜落で国際調査を要求 1/25
ウクライナ軍捕虜65人を含む計74人が搭乗するロシアの軍用輸送機IL76がウクライナ軍のミサイル攻撃で墜落し、搭乗していた全員が死亡したと露国防省が主張した問題で、ウクライナのゼレンスキー大統領は24日夜、「明確な事実を確定する必要がある」とし、軍高官らに報告を求めたことを明らかにした。また、「墜落は露領内で起きた」とし、国際的な調査の実施を求める考えも示した。 IL76の墜落は24日午前、ウクライナと国境を接する露西部ベルゴロド州で発生。露国防省は、同日午後に予定されていた捕虜交換のためにIL76がウクライナ軍捕虜を国境地帯に移送中だったと主張した。 ウクライナ国防省情報総局は24日午後、捕虜交換が同日予定されていたことを認めた一方、「ロシアとは捕虜の安全を確保するとの合意があったが、ベルゴロド州上空の安全を確保するようロシアから通知されていなかった」と指摘。捕虜の移送手段や経路もロシアから知らされておらず、捕虜が実際にIL76に乗っていたかどうかも把握できていないとした。ウクライナ軍がIL76にミサイル攻撃を行ったかどうかに関しては言及しなかった。 |
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●解氷とともに開かれる黄金航路…北極に力を注ぐロシア・中国 1/25
「氷河が溶け、北極でロシアと中国が新たな脅威として浮上している」 米国のCNNは先月20日、全人類の心配事である「気象災害」による北極の解氷を、特にロシアと中国がポジティブな視線で眺めていると皮肉った。同放送は「(ノルウェーの)トロムソ港から数百マイル離れたロシアのコラ半島にはロシア北部艦隊がある。数隻の弾道ミサイル潜水艦と巡洋艦や駆逐艦、哨戒艦をはじめ、兵力、飛行場、その他の軍事資産が北大西洋条約機構(NATO)の国境近くに密集している」と報じた。氷河が溶けて移動が自由になった北極海を通じて、ロシアが最近NATO加入によって自国を敵に回した北欧諸国(フィンランドは昨年4月に追加加入、スウェーデンは加入手続き進めている)の安全保障に脅威を加える恐れがあるという点を懸念したのだ。さらに、現在進行中のガザ戦争で地中海とインド洋を直接つなぐ紅海航路の軍事的緊張感が高まっていることから、アジア-ヨーロッパ、北米-ヨーロッパのどちらにも自由に移動できる北極航路が新たな「氷上のシルクロード」として注目されている。 北極を挟んで大型輸送船の移動が可能な北極海航路(NSR)のうち、北米とヨーロッパをつなぐ北西航路(NWP)とアジアとヨーロッパをつなぐ北東航路(NEP)のかなりの地域が、ロシアが所有権を主張する地域に含まれている。特に韓国など極東から欧州に向かう航路の場合、北東航路(1万5千キロメートル)はスエズ運河経路(2万キロ)よりはるかに短い。 北極圏の辞書的定義は、北緯66.3°以上の海と陸地を意味する。ここは長い間、雪と氷に覆われた「凍土」だった。だが、地球の他の地域で続く激しい対立が影響を及ぼさない、いわゆる「北極例外主義」が適用された地域でもあった。この巨大な氷の地は、軍事大国がこの地域を経て他の大陸を行き来できないようにする戦略的緩衝地帯の役割を果たしてきた。米地質調査所によると、北極圏には世界の未開発天然ガスの30%、石油の13%が眠っている。北極に領土を持つロシア、カナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、米国の8カ国は、1996年に「北極評議会」を作り、この資源を平和的かつ持続可能に共同開発するために力を合わせているかのように見えた。 北極開発に本格的に動き始めたのはロシアだった。ウラジーミル・プーチン大統領は2013年、「2020年までのロシア連邦の北極圏開発と安全保障戦略」などを発表し、積極的な北極開発に乗り出した。ロシアのこのような動きが最近さらに浮き彫りになっているのは、気候温暖化で北極の解氷が本格的に進むとともに、ウクライナ戦争で西欧との対立が先鋭化したためだ。 北極開発と関連して最も目を引くのは、北極航路の商業的利用だ。北極の氷河はここ10年ごとに13%の割合で消えており、早ければ2040年に氷のない夏が来る可能性があるとみられている。ロシアは2022年8月に「2035年までの北極航路開発計画」を発表し、2035年にはこの海を通じた運送量を現在の4倍の2億7千万トンに引き上げる計画を打ち出している。 米ハーバード大学ベルファー・センターは「ウクライナ戦争後、ロシアに加えられた西側の制裁と多くの外国企業の撤退で、ロシアの北極プロジェクトの稼動が遅れるだろう」と予想しながらも、「ヨーロッパで被った損失を取り戻すために、北極を通じてアジア市場に輸出を拡大する可能性が高い」と見通しを示した。 さらにロシアは、同航路を北極圏で生産したエネルギーの輸出に積極的に活用しうる。ロシアは北極圏で全体天然ガス生産量の83%、石油17%を生産している。ロシアの国内総生産(GDP)の約20%がここから生まれる。ロシアは2018年から北極圏のヤマル半島で生産した天然ガスを、この航路を通じて中国に輸出している。 最近の情勢変化とあいまって懸念を高めているのは、北極海の軍事利用の可能性だ。15年ほど後には北極海の氷河が溶け、この海で太平洋や大西洋のように通常の軍事活動が可能になるとみられる。米国シンクタンクのジャーマン・マーシャル財団(GMF)は昨年8月の報告書で「北極は今や強大国間の競争を管理し、透明性、予測可能性の強化と信頼構築措置が必要な地域」だと強調した。 実際、ウクライナ戦争後、北欧諸国は北極を軍事的に活用するロシアに少なからぬ安全保障上の脅威を感じている。ブルームバーグ通信は「北極の石油とガスプロジェクトがロシアの戦争資金を支えており、ウクライナを攻撃する爆撃機が北極基地から離陸することもある」と指摘した。米国の外交専門誌「ディプロマット」は先月20日、「ロシアが(フィンランドと国境を接する)北極海岸のコラ半島に、艦隊や相当数の核兵器、ミサイル施設、飛行場、レーダー基地を配置した」とし、「近隣のノヴァヤ・ゼムリャ諸島とゼムリャ・アレクサンドラ島からロシア太平洋艦隊の本拠地であるウラジオストク港につながる地域にここ10年間にわたり旧ソ連の老朽化した軍事施設を改造して新しい基地を建設し、極超音速ミサイルから核魚雷ドローンに至る新しい兵器の試験場を拡張している」と説明した。ロシアは現在も、原子力砕氷船を含め、全世界の砕氷船の半分近い50隻以上を運営し、北極で最強の戦力を維持している。 米国に対抗してロシアと戦略的協力を強化している中国も、北極に大きな関心を示している。中国国務院は2018年に発表した「中国の北極戦略白書」で、中国が地理的に北極圏に最も近い大陸国家の一つである「北極近接国家」であり、「重要な利害当事国」だという立場を示した。中国は同白書で「北東、北西、中央航路で構成された北極航路は、地球温暖化の結果、国際貿易の重要な運送路になる可能性が高い」とし、「(中国『一帯一路』の北極版計画である)『氷上シルクロード』を構築することを望んでいる」と明らかにした。さらに2021年に始まった第14回5カ年計画には「北極の実務協議に関与し氷上シルクロードを建設する」と明記した。中ロは2017年7月の首脳会談で、北極航路開発のための協力を約束した後、これを実行してきた。しかし、中国はロシアのように北極を軍事利用しようとする動きは見せていない。 米国も最近急変した北極の戦略的意味をよく理解している。米国は2022年10月に新たな「北極戦略」を公開し、この地域を巡る「戦略的競争が激しくなっている」として、同盟国と共に国際法とルールに基づいた秩序を維持する方針を示した。さらに中国については「北極に対する影響力を確保するための対応を強化している」とし、「米国は効果的に競争しながらも緊張を管理する立場」を取るという覚悟を明らかにした。米国の科学雑誌「サイエンティフィック・アメリカン」は3日、「氷河が急速に溶けている北極で、ロシアと中国がさらに攻撃的な態度を取っており、ペンタゴン(米国防総省)に赤信号が灯った」とし、「米国が北極政策と訓練を建て直している」と説明した。米国は北極圏に本土防衛のための重要な戦略地域であるアラスカという領土を保有している。北極の氷河がなければ、米国とロシアの間には直通の高速道路が開通することになる。ウォールストリート・ジャーナル紙は5日、「冷戦後、米国は北極で存在感が大きく低下した一方、ロシアと中国などは経済・軍事的資源を投資している」とし、「ロシア本土はアラスカ西海岸から60マイル(97キロメートル)も離れていない」と指摘した。 さらに、米国と北欧諸国の安全保障協力が強化されている。先月5日、スウェーデンを皮切りにフィンランド(18日)、デンマーク(19日)が米国と多年間の防衛協力協定(DCA)を結んだ。特にロシアと1300キロメートルを超える国境に接するフィンランドは、北極の氷河がなければわずか1千キロメートルの距離にあるノヴァヤ・ゼムリャ諸島でロシア艦隊と直面することになる。3日後の22日には、バルト3国が米国と既存の防衛協定を更新した。米国はこの協定を通じて、有事の際、この3カ国の軍事基地を活用することができる。 |
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●「第3次世界大戦」が現実味?ロシアとの「全面戦争」に備え始めたドイツ 1/25
・ロシアがウクライナとの戦線を拡大し、2025年にも北大西洋条約機構(NATO)との「全面戦争」に突入する――。そんな最悪のシナリオをドイツ国防相が想定していると独大衆紙がスクープした。 ・英国やスウェーデンの防衛関連閣僚も、ロシアとの戦争を想定した備えを訴えるスピーチをするなど、さながら「第3次世界大戦」が近づいているかのような物々しさだ。 ・米国では社会の分断による「内戦」勃発に備えた動きが出ているほか、台湾では中国との軍事衝突に備えた「民兵」育成の動きもある。日本人にとって必要な備えとは? ドイツの大衆紙ビルトは1月16日、ドイツ連邦軍が早ければ2025年にもロシアと北大西洋条約機構(NATO)との間で武力紛争が起きることを想定し、準備を進めていると独占で報じた。独国防省の機密文書のリークと見られる。プーチン大統領がウクライナ侵攻から戦線を拡大させ、2月中にも状況がエスカレートし、数万単位の独軍兵が戦場に送られることを想定しているという。 欧米の主要メディアもビルトの報道を追随。各紙のまとめによると、ドイツの想定ではロシアがまず、隣国ベラルーシ、およびロシア最西端であり飛び地のカリーニングラードで兵士を増員。この脅威に対してNATOが東欧に派兵し、地域の緊張がより高まるという。 ちなみに、カリーニングラードは欧州に最も近いロシア領で、西側は長い間、ロシアが既に同地に核兵器搭載可能なミサイルを配備したと指摘してきた。ここでの核兵器の配備は、西ヨーロッパの広い範囲が射程圏内に入ることを意味する。 ドイツはさらに、次のようなシナリオを想定しているという。 ロシアは2月に20万に及ぶ新兵を動員し、6月までにウクライナとの戦線で大幅に前進。その後、7月にはバルト3国にハイブリッド戦を仕掛け、サイバー攻撃によって、地域のロシア語を主とする少数派が不当に標的になっているとの偽情報を流す。そのことによる暴力的な行為が横行し、同地域でのロシアの介入を正当化させる。 11月の米大統領選後の移行期間の隙をついて、「偽の国境紛争や暴動」をでっち上げ、ベラルーシとカリーニングラードを結ぶ回廊を制圧せざるを得ないと主張する。2025年1月、ロシアはNATOがプーチン大統領の転覆を目論んでいるとし、同年3月にはNATOとロシアがバルカン半島で全面衝突する――。 独国防省はビルトに対し、文書に記された詳細についてコメントせず、「様々なシナリオを検討することは、特に通常の訓練において、日常の軍事業務である」と述べている。 来年にも大規模な戦闘に発展するというビルト報道への欧米の反響は大きく、米ニューヨーク・ポストや英indy100などは「ロシアによる第3次世界大戦開始に備えるドイツ」などという見出しを掲げている。これを受けてか、独ピストリウス国防相は19日、独日刊紙のターゲス・シュピーゲルとのインタビューで、現状ではロシアによるNATOへの攻撃の可能性は低いとしながらも、同国の専門家の見立てではこの5〜8年の間に起きる可能性があると発言している。 ●市民にロシアとの戦争への備えを訴えるスウェーデン 欧州では今年に入ってから、ロシアなどとの戦争が現実味を帯び、戦闘に備えるようにとの各国の政府高官などによる発言が相次いでいる。今年総選挙が予想されている英国でも15日、シャップス国防相が演説で、この5年でロシアや中国、イラン、北朝鮮との紛争の危険が高まるだろうと発言し、各国による国防支出増大の必然性を力説した。 中でも、一昨年NATOへの加盟申請を行ったスウェーデンでは、今月7日にボーリン民間防衛相が、今後スウェーデンでの戦争勃発の可能性を明言したことが、衝撃を持って受け止められた。ボーリン氏は民間人に対しても単刀直入に「来る戦闘に迅速に備えよ」という趣旨の発言を行なったからだ。 同氏は演説の初めに、210年もの間平和を享受してきたスウェーデンでは、戦争やテロなどの脅威がどこか別の場所で起きていると考える「精神的な防衛メカニズム」が働いていると指摘。 その上で、現在、世界は第2次世界大戦以来最大の危機に瀕しているとし、祖国防衛は国民全ての問題であり、それぞれの分野で対策を講じる義務を負うと主張した。 同氏の発言は「行動を起こさないことは許されない」とまで踏み込んでいる。様々な分野の人々に、備えるべき具体例も示した。例えば、一個人であるならば「家庭の備えに責任を持っているか。自主防衛組織に参加する時間について考えたことがあるか。ないのなら、動くべきだ!」などと、強く促している。 ボーリン氏の演説は不適切だとの批判もある一方で、スウェーデン軍最高司令官のビューデン将軍も同じ場で同意の発言を行なっている。ビューデン氏は人々が事の重大性を鑑み、精神的に備える必要性を訴えた。 フランス24は、この発言を受けたスウェーデンの市民が、燃料や水タンクなどの非常用品を買いに走る様や、防空壕へのオンライン地図、また戦争に備えるための小冊子へのウェブアクセスが激増した様子などを伝えている。非常用キットに商機を見出した企業もあるという。 英ガーディアン紙は、スウェーデンで来年兵役に召集される予定の18歳の女性への取材を行なっている。10万人のうち1割程度は徴兵されることになるという。これまでは志願兵のみであったものが、兵士の不足から当局は昨年、方針転換を余儀なくされた。同紙はこの中で、クリステション首相の、スウェーデンの安全を確実にするのは市民であり「市民権とは(単なる)渡航証明書のことではない」という発言を引用している。 ●米国では市民が内戦に備えサバイバル訓練 戦争の脅威を身近に感じているのは、プーチン大統領の狂気に翻弄されている欧州だけではないようだ。米ニューヨーク・タイムズは19日の特集で、一般市民が実践に備える模様を詳報している。 ある週末、カリフォルニア州に集った一般人が、米空軍士官に訓練を行なってきたエキスパートからサバイバル術を伝授されていた。森の中で敵に見つからないよう、周囲に溶け込む訓練に参加したのは9人。費用はおよそ800ドルという。米国では昨今、世界大戦はもとより、米国内での内戦が起きる不安から、こうしたサバイバル・コースや、軍事シミュレーションが人気を博しているという。内戦関連の著書も多数出版され、同様のドラマなども企画されている。 米国では3年前、トランプ前大統領が落選した大統領選挙の結果を受け、多数の暴徒による連邦議会襲撃という前代未聞の事件が起きた。同前大統領が選出された2016年の大統領選あたりから、米国内でのリベラルと保守派の分断は、ますます激しくなっている。 この記事に登場する市民の参加理由は様々だが、やはり内戦などの不測の事態に備えたいという思いがあるのだという。紛争が報道のことだけではなく、自身の目前に迫り来るのは「もはや時間の問題」と感じる参加者の言葉が印象に残った。 大戦の火種は欧米のみならず、アジアにもある。今月13日に行われた台湾の総統選挙では、自治権を主張する与党・民進党が勝利した。中国の習近平国家主席は選挙に先駆けた昨年末、国民に向けた新年のテレビ演説で「祖国の統一は歴史の必然」などと述べ、民進党を牽制していた。 ●台湾では富豪が私的に「民兵」養成 中台の緊張は今に始まったことではないが、たびたび軍事力を誇示して台湾統一に野望を燃やす中国に備えるため、台湾では有事に備える市民が増加しているのだという。豪ABCニュースが今月初めに伝えた。 台北を拠点とするクマ・アカデミーでは、市民が緊急事態と避難の準備、応急処置などに加え、偽情報への対処法や、現代における戦争の基礎知識を学べるという。1年半ほど前、このアカデミーに、台湾の半導体メーカーを有する富豪の曹興誠(ロバート・ツァオ)氏が多額の資金援助を約束した。この間、民間防衛のコース受講者が急増したという。興味深いのは、受講者の多くが女性や若い夫婦だといい、中国による侵攻や封鎖が起きた場合に、子どもたちに戦闘に直面して欲しくないという思いがあるのだという。 曹氏はこのアカデミーに加え、その他の組織を通じて民間の戦士部隊を300万人育成するとしている。投じた資産は10億台湾ドルに上るという。 豪ABCニュースが取材した民間人受講者は、徴兵時の経験が不十分だったとして、このコースに参加したと語った。新生児を抱えるこの男性は、襲撃があった場合に子どもとどう避難すれば良いのかなどの不安を覚え、受講を決めたのだという。 コロナ禍を生き抜いた世界は今、各地を巻き込む戦争という不測の事態に備え、どの大陸でも一人ひとりが、現実と直面せざるを得ない局面を迎えているようだ。 最後にお断りしておきたいが、筆者は通常は殊更に「世界大戦の危険」などと煽り立て、不安を広めるような論調は本意ではない。しかしそんな筆者ですら、昨秋勃発した中東での紛争に最近米英が直接参加し始めた状況などを鑑みると、今後広域を巻き込んだ大規模な紛争が勃発しかねない、差し迫った危険を想定せざるを得ない。 年始の能登半島における震災や、直後に起きた日航機と海保機の衝突事故などによって、SNS上では不安になるようなニュースの遮断を奨励するポストを多数見かけた。SNSが人々のメンタルに及ぼす悪影響を考えれば、それも当然の意見だと重々承知しているし、同意でもある。 だが、欧州各国の政府関係者が指摘しているように、今後紛争など不測の事態が間近に迫る危険は、もはや日本でも想定しなければならない現実なのではないだろうか。その時になってパニックに陥るよりも、スウェーデンで指摘されているように有事に「精神的に備える」という必然性は、すでに避けられない気がしている。 非常用キットを買い求めることなどよりも、まずは世界でどんな紛争が起き、またこれから起きかねないのか。自身にはどのような影響を及ぼしかねないのか。冷静に、正しい知識の備蓄を始めるということも、精神的な備えにつながるように感じている。 |
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●北朝鮮関係「活発に発展」=ロシア外相 1/25
ロシアのラブロフ外相は24日、軍事協力を深める北朝鮮との関係について「順調であり、非常に活発に発展している」との認識を示した。ニューヨークの国連本部での記者会見で語った。 プーチン大統領の訪朝に関しては「招待は受けているが、日程はクレムリン(大統領府)が決める」と述べるにとどめた。実現すれば2000年以来、プーチン氏にとって2回目となる。 |
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●ロシア軍輸送機が墜落、捕虜ら74人搭乗 ウクライナが撃墜と非難 1/25
ロシア国防省は、捕虜のウクライナ兵士65人を乗せた軍輸送機が24日、ウクライナ国境近くで墜落したと明らかにした。捕虜交換のため輸送中で、ウクライナによる意図的なミサイルによる撃墜としている。 墜落したのはイリューシン(IL)76で、ウクライナ人捕虜のほか乗員6人と警護員3人の計74人が搭乗していたという。地元当局によると全員死亡した。 ウクライナは状況について完全に明らかにするよう求め、撃墜したしたことを直接的には認めなかった。 ウクライナのゼレンスキー大統領は演説で「ロシアがウクライナの捕虜の命、彼らの愛する人々の感情、われわれの社会の感情をもてあそんでいることは明らかだ」と述べた。 ただ、ウクライナ軍は墜落からかなりの時間が経過した後、ウクライナを攻撃するためのミサイルを搭載していると疑われるロシア軍用輸送機に対する攻撃を継続すると表明。 対話アプリ「テレブラム」への投稿で、ウクライナ軍はベルゴロドに到着するロシア軍の輸送機が増えていると認識しているとし、これはハリコフや他の都市に対するロシア軍のミサイル攻撃と関連していると指摘した。 ●ロシア「野蛮な行為」とウクライナを非難 ロシア国防省は、ウクライナ指導部側は自軍兵士が捕虜交換でベルゴロド飛行場に軍用輸送機で輸送されることを知っていたと指摘。「これまでの合意に基づき、捕虜交換はこの日の午後にロシアとウクライナの国境にあるコロチロフカ検問所で行われることになっていた。こうしたテロ行為によってウクライナの指導者は素顔をさらけ出し、自国民の命を軽視した」と主張した。 同省はまた、航空機が墜落した時刻に2発のウクライナ製ミサイルの発射がレーダーで検知されていたと発表した。 ロシアのラブロフ外相は軍機墜落を受け、国連安全保障理事会の緊急会合を開催するよう要請した。 もっと見る 国連のフランス報道官は会合が25日午後5時(日本時間26日午前7時)に開催されると述べた。 ロシア国営メディアは、墜落機に搭乗していたとする65人のウクライナ兵の氏名と生年月日を公表。ロイターは公表された氏名などの一覧表の真偽を確認できていない。 退役軍人で国防省と密接な関係があるロシア議会のアンドレイ・カルタポロフ議員はテレビインタビューで、「捕虜交換を妨害するために意図的に行われた」とウクライナを非難。米国製かドイツ製のミサイル3発が撃墜したと述べた。 ●ウクライナ、空域の安全確保知らされずと主張 ウクライナ軍情報当局は24日、テレグラムで、ウクライナが捕虜輸送中のロシア軍機を撃墜したとのロシア側の主張は「ウクライナにおける状況を不安定化し、わが国に対する国際的支援を弱めるために計画された行動である可能性がある」と指摘。墜落したロシア軍輸送機に誰が乗っていたかについて信頼できる情報はないとした。 また、捕虜交換は確かに計画されており、ウクライナは全ての条件を満たしたが、捕虜を輸送する飛行機の機数やそのルートについてはロシアから知らされておらず、「同時にこれまで繰り返し行われてきたように、一定期間にベルゴロド地域の空域の安全を確保する必要性については、ウクライナ側に知らされていなかった」とした。 ベルゴロド州は昨年12月のミサイル攻撃で25人が死亡するなど、ここ数カ月ウクライナから頻繁に攻撃を受けている。 |
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● ロシア南西部で輸送機墜落、ウクライナ人捕虜含む74人死亡… 1/25
ロシア国防省は24日、露南西部ベルゴロド州で露軍輸送機「IL(イリューシン)76」が墜落し、ウクライナ人の捕虜65人を含む搭乗していた計74人全員が死亡したと発表した。露側はウクライナ軍がミサイルで撃墜したと主張した。捕虜交換のための移送中だったとし、ウクライナ側を非難した。 同省は、ウクライナ軍がウクライナ東部ハルキウ州から対空ミサイルを発射して撃墜したと主張した。IL76には、ロシア人の乗員6人と露軍兵士3人も乗っていたという。 セルゲイ・ラブロフ露外相は米ニューヨークの国連本部で記者会見し、輸送機墜落について、「ウクライナのテロ攻撃だ」と非難した。ロシアの要請を受け、国連安全保障理事会の緊急会合が25日に開かれる予定だ。 ウクライナのニュースサイト「ウクライナ・プラウダ」は当初、IL76が地対空ミサイル「S300」を輸送中だったと報じたが、その後、記事を削除した。ウクライナ側は24日に捕虜交換を行う予定だったことは認めたが、25日未明時点で、露軍輸送機の墜落への関与について肯定も否定もしていない。 ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は24日深夜、SNSで事故の全容解明を求めた上で、「ウクライナ人捕虜の命や彼らを愛する人の感情をもてあそんでいる」と露側を非難した。 |
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●ロシア、安保理緊急会合を要請 ウクライナ捕虜搭乗機墜落受け 1/25
ロシアは、西部ベルゴロド州で捕虜のウクライナ兵士らを乗せたロシア軍の大型輸送機が墜落したことを受け、24日に国連安全保障理事会の緊急会合を開催するよう要請した。ロシアのラブロフ外相が明らかにした。 ラブロフ外相によると、ロシアは安保理緊急会合を米東部時間午後3時に開催するよう要請した。 ロシア国防省はこの日、ウクライナ捕虜65人を乗せた軍輸送機がウクライナ国境近くで墜落したと明らかにした。捕虜交換のため輸送中で、ウクライナによる意図的なミサイルによる撃墜としている。 ラブロフ外相は、ロシア機撃墜はウクライナによる犯罪行為と非難。ウクライナが安保理会合でロシア機墜落の経緯を説明するよう求めると述べた。 |
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●米が低濃縮ウラン増産へ…日英仏加と協力、供給網の脱ロシア狙う 1/25
米エネルギー省で原子力政策を統括するキャサリン・ハフ次官補は、原子力発電所で燃料に使う低濃縮ウランの生産体制を増強する方針を本紙に明らかにした。一昨年2月のウクライナ侵略以降、対立するロシアへの依存を減らし、日英仏加と協力して、脱ロシアの国際的な供給網構築を目指すと説明した。 米国の電力の2割は原子力発電が賄う。現在、自前で賄える低濃縮ウランは3割程度で、約2割をロシアに頼る。 ハフ氏によると、約22億ドル(約3200億円)の予算を投じ、米企業の設備増強を支援する。近く、支援対象の企業を公募する。 天然ウランは、核分裂反応を起こす種類のウランの割合を高める「濃縮」などの工程を経て、低濃縮ウランになる。露国営企業「ロスアトム」は濃縮で5割近い世界市場でのシェア(占有率)を持つ。 日米英仏加は昨年12月、低濃縮ウランの脱ロシアに向け、「今後3年間、官民で42億ドル(約6100億円)以上の投資を目指す」と共同宣言を発表していたが、主導した米国が過半を投資することになる。 米露は1993年、核不拡散のためロシアの核兵器用の高濃縮ウランを低濃縮ウランに作り直し、米側が購入することで合意。安い製品の輸入を続け、米国の核燃料産業は衰退した。 天然ウランの産地は世界的に分布し、米政府や米議会では、濃縮などの能力を増強して依存を解消するべきだとの声が強まっていた。 日本のロシア依存は低いとされる。日本政府は宣言への対応として、日本原燃がウラン濃縮工場(青森県)の能力を6倍に増やす計画を後押しする。 ハフ氏は「ロシアはエネルギーを他国への『兵器』として使うことをためらわない。供給源として信頼できず、安定した国際供給網が必要だ」と強調した。 |
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●プーチン批判の強硬派元司令官に禁錮4年 「過激な行為を扇動した」 1/25
ウクライナ東部の親ロシア派の元司令官で、現在はロシアで強硬派の軍事評論家として知られるイーゴリ・ギルキン氏(通称ストレルコフ氏)に対し、モスクワの裁判所は25日、「過激な行為を扇動した」として禁錮4年の有罪判決を言い渡した。インタファクス通信が伝えた。同氏の弁護士は、判決を不服として控訴するとしている。 裁判所の外にはギルキン氏の支持者が集まって支援のプラカードを掲げた。ロシアの独立系メディアによると、3人の支持者が警察に拘束されたという。 ギルキン氏は昨年7月に拘束され、裁判は同12月から非公開で行われていた。ロシアメディアによると、「クリミアでの降伏の可能性」と「軍人への支払い」に関するSNSの投稿が罪に問われたという。判決は、ギルキン氏がSNSを投稿するなどインターネットを使うことも禁じた。 ギルキン氏は侵攻を支持する一方、占領地からの撤退などロシア軍の失態をめぐって政権や国防省を批判。さらに「国のトップに23年間、大半の国民をだましたクズがいた」などとSNSに投稿。2000年から権力を握るプーチン大統領にも矛先を向けた。 |
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●反プーチン派の「出馬実現を」 ウクライナ侵攻反対の候補者への署名に大行列 1/25
プーチン氏の勝利が確実な3月のロシア大統領選。対立する人々は、立候補すらできていない。 しかし...。 雪がちらつく首都・モスクワにできた大行列。反対側の歩道から、道路をまたいで続いている。 反プーチン政権軍事侵攻反対を掲げてロシアの大統領選に立候補したナデジディン氏の事務所の前には、支持を表明しようと、署名のために多くの人が並んでいる。 元ロシア下院議員のボリス・ナデジディン氏。大統領選に出馬するには10万の署名が必要だが、可能性が残る人物の中でただ1人、ウクライナへの侵攻に反対している。 署名するまで極寒の中、2時間待ち。ボランティアが配る温かい飲み物を頼りに並び続ける。 それでも人々の列は絶えない。 署名に訪れた人(19)「戦争に反対です。ウクライナには友人がたくさんいます」 署名に訪れた人(86)「すべてのデモが禁止されていて、投票しか意思表示できません」 こうした動きは、厳しい寒さが続くシベリアの事務所でも。いてつく空気の中、行列ができている。 10万の署名はすでに集まっていたが、書類の不備などで4割程度が無効に。 そのため、目標を15万人分に再設定。日本時間25日午後に達成されたが、署名集めはまだ続いている。 はたして、有効と認められて立候補できるのか。署名の提出期限は31日。 |
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●要衝アウディーイウカでロシア軍が突破口 「掘り崩し戦術」で市内へ進攻 1/25
ロシア軍はこの数カ月、ウクライナ東部ドネツク州の要衝アウディーイウカ(旧アフディフカ)に猛攻をかけてきた。ここを落とせば一気に戦局が有利になるからだが、ウクライナ側の守りは堅く、前線は膠着状態にあった。だがここに来て、この都市の南側で大きな進展があったと、ロシアの軍事ブロガーが勝報を伝えている。【デービッド・ブレナン】 ロシア軍はアウディーイウカ南部の住宅地を攻撃し、「突破口を開いた」と、「リバル」をはじめとする複数のロシアの軍事ブロガーがテレグラムのチャンネルで伝えた。本誌の調査ではこの情報を確認できず、現在ロシア国防省にメールで問い合わせ中だ。 ここ数カ月アウディーイウカ北部では、ロシア軍とウクライナ軍が激しい攻防戦を展開してきた。北部にはヨーロッパ最大規模のコークス工場群が並び、その掌握がロシアの狙いとみられていたが、難攻不落の巨大な工場群が立ちはだかる北部より、小さな家々が立ち並ぶ南部のほうが攻略しやすいとみて、ロシアは一転南部に兵力を集中、ウクライナの防衛戦を突破したと、リバルは伝えている。 ●瓦礫の山を手に入れる ロシア軍は既にアウディーイウカ市内に進み、ウクライナ軍と激しい市街戦を展開していると、テレグラムのもう一人の主要な軍事ブロガー「サーティーンス」は述べている。それによれば、ロシア軍が用いたのは文字どおりの「掘り崩し戦術」で、市外からウクライナ軍の陣地の下までトンネルを掘り、中に爆発物を敷き詰めて遠隔操作で爆破した、というのである。 いずれのチャンネルも、両軍はアウディーイウカ南部のレクリエーションセンター「ツァルスカヤ・オホタ」近くで激しい戦闘を行い、「わが軍はここを掌握した後、周辺地域に進撃を続けている」と述べている。 ウクライナ側の軍事ブロガーも同様の分析をしている。 「アウディーイウカ北部はAKHZ(コークス工場群)で守られているが、南部は平屋や二階建ての住宅が立ち並び、砲撃に弱い」と、X(旧ツイッター)のアカウント「タタリガミUA」(UAはウクライナの国名コード)の管理人は指摘した。「ロシア軍はこの地域を奪えなければ、砲撃で消し去り、歩兵隊を送り込んで、瓦礫の山を手に入れるだろう」 ●「わずかな戦術的前進」 ただ、ウクライナ軍参謀本部はロシア軍の突入を認めていない。1月23日にテレグラムに投稿した更新情報でも、ロシア軍は絶えず「アウディーイウカ包囲を試み」ているが、わが軍は「引き続き敵を抑え込んで」いると述べている。 「わが軍の兵士たちは強固な防衛力で敵を撃退し、甚大な損失を与えている。過去24時間に防衛部隊はステポボイとアウディーイウカ周辺で10回、さらに近くのペルボマイスキーとネベルスキーで7回、敵の攻撃を跳ね返した」 米シンクタンク・戦争研究所(ISW)は、アウディーイウカ周辺の「陣取り戦」では、ここ数日ロシア軍の「集中的な攻撃で、わずかな戦術的前進」があったと分析している。 「1月23日に公開された位置情報を示す映像から、ロシア軍は(アウディーイウカ北西の)ステポベ西部に進んだとみられる」と、ISWは指摘した。 2022年2月末に本格的なウクライナ侵攻を開始して以来、いや、クリミアを併合し、ウクライナ東部に侵攻した2014年以来、ロシア軍は一貫してアウディーイウカ陥落に執念を燃やしてきた。親ロ派の分離独立主義者が支配するドネツク市と隣接しているこの都市は、ウクライナにとっては死守すべき要衝、ロシアにとっては何としても奪取すべき拠点だからだ。 ●バフムト陥落と同じやり方 ロシアにここを奪われれば、ウクライナは前線のロシア側に大きく食い込んだ凸部を失うことになる。ロシア軍はそれを突破口に、約70キロ北の、ウクライナ側が支配するドネツク地域の行政の中心地となっているクラマトルスクを目指すだろう。 ウクライナ議会の外交委員長を務めるオレクサンドル・メレシュコ議員は昨年10月、本誌に対し、ロシア軍が多大な人的損失も厭わず、最終的に陥落させたバフムトを引き合いに出し、アウディーイウカでも「あれと同じことを繰り返すだろう」と予告した。ロシアは「多くの人命が犠牲になることを厭わない」と。 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、今年3月の「大統領選を控え、前線での『成功』を何としても国民にアピールしたいと思っている」と、メレシュコは語る。「それが独裁者のやり方だ」 |
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●ロシアのプーチン大統領、バルトの飛び地訪問=北欧NATO加盟後で初 1/26
ロシアのプーチン大統領は25日、バルト海に面する最西端の飛び地カリーニングラード州を訪問し、地元知事と会談した。自身の通算5選が確実視される3月の大統領選に向けた「行脚」の一環。今月10日に最東端のチュコト自治管区も訪れている。 同州はポーランドとリトアニアに挟まれており、政府専用機は北大西洋条約機構(NATO)に加盟する両国領空を避け、バルト海上空を飛行した。NATOは24日、冷戦終結後で最大規模とされる約9万人参加の軍事演習「ステッドファスト・ディフェンダー(不動の守護者)」を開始。プーチン氏の同州訪問には、NATOにひるまない姿勢を示す狙いもあったもようだ。 |
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● プーチン政権を批判 強硬派に禁錮4年の判決 ロシア裁判所 1/26
ロシアの裁判所は、ウクライナへの軍事侵攻を巡りプーチン政権を批判してきた強硬派で親ロシア派の武装勢力の元幹部に対し、過激な活動を呼びかけた罪で禁錮4年の判決を言い渡しました。 ロシアの首都モスクワの裁判所は25日、ウクライナへの軍事侵攻を巡りプーチン政権の対応を批判してきたイーゴリ・ギルキン被告に対し過激な活動を呼びかけた罪で禁錮4年の判決を言い渡しました。 ギルキン被告の弁護士は、控訴するとしています。 ギルキン被告はウクライナへの軍事侵攻を強く支持してきた強硬派で、戦況がこう着する中、プーチン政権やロシア国防省などの批判をインターネット上で展開していました。 また、プーチン大統領についても「臆病で凡庸」などと批判したことから、プーチン政権は反政権の動きに警戒を強めていたとみられ、去年7月にギルキン被告は当局に拘束されていました。 ギルキン被告は、10年前の2014年にはウクライナ東部で親ロシア派の武装勢力の軍事部門を率いていて、この年の7月、オランダ発のマレーシア航空機が撃墜され乗客乗員298人が死亡した事件に関与したとして、おととしにはオランダの裁判所から被告不在のままで終身刑の判決を言い渡されています。 |
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●軍事ブロガー殺害の女性に禁錮27年 ロシア裁判所 1/26
ロシア西部サンクトペテルブルクのカフェで昨年4月にウクライナでの戦争を支持するブロガーが爆殺された事件で、ロシアの裁判所は25日、ダリヤ・トレポワ被告に禁錮27年の判決を言い渡した。 殺害されたウラドレン・タタルスキー氏はロシアで最も歯に衣(きぬ)着せぬ発言をする超国家主義の軍事ブロガーの一人で、戦争を熱烈に支持し、時に戦場でのロシアの失態を批判することで知られていた。 タタルスキー氏が殺害された時、現場のカフェでは戦争支持団体によるイベントが開催されていた。 ロシア国営タス通信は当時、爆発装置が隠された像をタタルスキー氏に手渡したとして、トレポワ被告がすぐに逮捕されたと報じた。 トレポワ被告の夫、ドミトリー・リロフ氏は同国の独立系メディアに、妻ははめられたと確信していると述べた。 タタルスキー氏はウクライナでの戦争を支持し、SNS「テレグラム」で分析やコメントを発信することで人気を得た。そうした投稿の大半は、ウクライナに対してより厳しい姿勢を取るよう主張するものだった。 ロシア国営通信のベスチによると、タタルスキー氏の本名はマキシム・フォミンで、ロシアの作家ビクトル・ペレービン氏の小説「ジェネレーション〈P〉」の登場人物にちなんだ名前で2019年にテレグラムにチャンネルを開設した。タタルスキー氏はその後、本を数冊執筆した。それ以前には、14年にウクライナ東部ドンバス地方でロシア軍側で戦った。 |
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●トランプ氏帰ってくる…「いんちきジョー」の尻馬に乗る岸田政権は対応できない 1/26
「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン(アメリカを再び偉大に)」 このフレーズとともに、ドナルド・トランプ前米大統領が帰ってくる―。11月に行われる米大統領選に向けた共和党の指名候補争いで、初戦のアイオワ州に続き、23日、ニューハンプシャー州での予備選を制したトランプ氏が、同党の候補となる見通しがほぼ確実となったのだ。 ニューハンプシャー州で敗れたニッキー・ヘイリー元国連大使は選挙戦続行を表明したが、今後、トランプ氏に勝つ見込みはゼロと言っていい。インド系女性であり、州知事と国連大使を歴任。経歴からすると、新たな大統領像にぴったりのヘイリー氏だが、劣勢の理由は何か。筆者の旧知の共和党関係者は言う。 「ヘイリーは、RINO(Republican in Name Only=名ばかり共和党)だと言われているからね。多くの共和党員は彼女を、大メディアに持ち上げられ、大企業やウォール街がスポンサーについている人であり、『米国人のための米国』を取り戻す政治家ではないとの評価を下している」 日本のネットスラングでいうところの「エセ保守」のような存在というわけか。 こうした事情もあってか、トランプ氏が、ヘイリー氏をランニングメイト(副大統領候補)に指名する可能性も薄いとみられている。 従来の見方なら、マイノリティー(インド系)の女性というヘイリー氏こそ、トランプ氏の「弱点」を補うに格好な人材と思われそうだが、いまや米国の保守は、そうした表面的な「つじつま合わせ」をひどく嫌うのだという。 一方、ヘイリー氏は2月24日の南部サウスカロライナ州(SC)での予備選挙まではレースを降りないともみられている。SCは彼女の出身地で、知事を務めた地でもある。 ここまでは闘いたいとの思いだろうが、むしろ多くの共和党員が期待するのは、そのサウスカロライナで、トランプ氏がヘイリー氏を完膚なきまでにたたき潰すシーンだという。あと1カ月、「トランプ、ヘイリーの攻防」をじっくり見ていくことにしよう。 共和党が政権を取り返すことは本来、日本にとって喜ぶべきことだ。歴史的に見て、共和党政権時の方が日本に平穏な日々が訪れやすい。日米開戦時の大統領が誰で、原爆投下をした大統領が誰だったかを考えればそれは明らかだし、20世紀終わりのクリントン政権による日本企業いじめのひどさは、われわれ世代には記憶に新しい。 そして、トランプ政権時の安倍晋三元首相との日米蜜月はさらに記憶に新しい。とりわけ、北朝鮮による日本人拉致問題へのトランプ氏の真摯(しんし)な関与は、私たちの胸を打った。 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長(当時)との米朝首脳会談を仕掛けたマイク・ポンペオ前国務長官が23日、東京で語った通り、トランプ再選こそが「より平和で豊かな世界に戻る最良のチャンス」なのだろうと首肯(しゅこう=納得し、賛成すること)する。 外交面のみならず、筆者がトランプ氏に期待するのは「エネルギーと産業政策の転換」だ。 「私がホワイトハウスに戻ったら、いんちきジョー(バイデン大統領)による『電気自動車(EV)オシ』を終わらせる」と明言する氏の公約が実現されれば、日本の基幹産業である自動車産業には強い追い風となる。 良いこと尽くめとおぼしき「トランプ再来」。これを日本の好機とするのに一つ、大きな障害がある。 「安倍不在」である。トランプ政権との蜜月を企画・演出・主演した安倍氏の不在は、間違いなく日本の大きな弱点となる。 「いんちきジョー」の尻馬に乗って、日本に不要なLGBT法をつくらせ、電気自動車オシを一層進める岸田自民党では到底、歯が立つまい。「名ばかり保守」どころか、ウルトラリベラルとしか思えない自公政権では、トランプ氏に鼻で笑われかねない。 「日本を再び偉大に」するために、「トランプのカウンターパート」を生むことが日本国民の急務である。 |
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●プーチン氏、ウクライナ巡る交渉にオープンと米国に示唆−関係者 1/26
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナでの戦争を終結させるための協議に米国が応じる用意があるか瀬踏みしている。 ロシア政府に近い関係者2人によると、プーチン氏は間接的な経路を通じて、将来のウクライナの安全保障に関する取り決めも含め、話し合いにオープンだと米国に示唆した。 米当局者はそうした提案は把握しておらず、プーチン氏が戦争終結に向けた方策を真剣に検討している様子は確認できないと述べた。 ロシアが協議に前向きだと示唆することで、たとえそれが不誠実なものであったとしても、ウクライナの同盟国の間に分断の種をまき、ウクライナ政府を孤立させる恐れがある。ロシアの完全撤退を盛り込んだ和平案への支持確保を目指すウクライナのゼレンスキー大統領の取り組みを損なうことにもなりかねない。 部外秘の情報だとして匿名を条件に語ったその関係者によると、ロシアの意向は先月、仲介者を通じて米高官に伝えられた。プーチン氏はウクライナに中立の立場を維持するよう求める要求を撤回し、最終的には北大西洋条約機構(NATO)加盟への反対取り下げについても前向きに検討するかもしれない、と関係者は述べた。 ロシア大統領府のペスコフ報道官はブルームバーク・ニュースの質問に対して「プーチン大統領はかねて、ウクライナに関する交渉に前向きであることを表明してきた」と述べた。 一方、米国家安全保障会議(NSC)のワトソン報道官は、指摘されているようなロシア政府の立場の変化については把握していないと説明。「ロシアと交渉するかどうか、するならいつ、どのように行うかを決めるのはウクライナだ」と述べた。 |
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●ロシアの兵器、大半は欧米製半導体を搭載−制裁すり抜け業者が転売か 1/26
ウクライナで戦争を続けるロシアのプーチン大統領が軍事技術を入手できなくなるよう、ロシアへの半導体輸出には制限が設けられているが、同国は昨年、10億ドル(約1476億円)余りに相当する最先端の半導体を欧米から輸入した。 ブルームバーグが入手したロシア税関の機密データによると、2023年1−9月に輸入された半導体と集積回路の半分以上が米国と欧州の企業によって製造されたものだった。 その中にはインテルやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ、アナログ・デバイセズのほか、欧州ブランドのインフィニオン・テクノロジーズやSTマイクロエレクトロニクス、NXPセミコンダクターズが含まれている。これらの企業が制裁法に違反したとの示唆はない。データはどの企業がロシアに技術を輸出したのか、どこから出荷されたのか、いつ製品が製造されたのかを示していない。 各社は制裁要件を完全に順守しており、戦争が始まった際にロシアでのビジネスを停止し、順守を監視するためのプロセスやポリシーを導入したとしている。また関係当局との連携を含め、製品の不正な横流し対策に取り組んでいるという。 2022年2月のウクライナ侵攻以来繰り返されてきた対ロシア制裁措置にもかかわらず、米国と欧州連合(EU)がロシアへの技術供給を遮断する難しさが浮き彫りになった。こうした貿易のおかげで、ロシアは戦車やミサイルなどの兵器を製造し続け、ウクライナの都市に恐怖の雨を降らせることができている。 制限された技術の大部分は中国やトルコ、アラブ首長国連邦(UAE)を含む第三国からの再輸出を通じてロシアに入っている。米国とEUはこうしたルートの遮断に取り組んでおり、ウクライナの戦場で使われるロシア製兵器に搭載する、あるいはその製造に必要とされる二重用途品や先端技術品の優先リストに重点を置いている。 半導体販売の大部分は販売業者が担っており、そこから複数のベンダーを経由する。メーカーは必ずしもこうした企業に販売した後の製品の行き先を追跡する必要はないが、特定の軍事用半導体の中には書面での証跡を残さなければならないものもある。 税関のデータによると、ロシアは昨年1−9月に17億ドル相当の半導体を輸入している。このうち12億ドル相当を20社が製造。残り5億ドル相当を欧州や米国の小規模メーカーが製造した。 インテルのアルテラやAMDのザイリンクスといった傘下ブランドを含めると、ランキングはインテルとアナログ・デバイセズ、AMDがリードしている。このリストに含まれる欧米企業の2023年売上高は、合計で数百億ドルに上る。 少数の中国メーカーと台湾のリアルテック・セミコンダクターも上位20社に入っており、ロシアは後者の製品を約1700万ドル相当輸入している。リアルテックがロシアに直接チップを輸出した形跡はないし、その製品がロシアに渡ったことも承知していない。 ブルームバーグが過去に報じたところによると、優先度の高い品目の貿易額は昨年後半に若干減少しており、米国とEU、主要7カ国(G7)による対ロ制裁の取り組みが成果を上げ始めている可能性を示唆している。 ウクライナのキーウ経済大学は今月、ロシアが昨年1月から10月までに輸入した戦場装備品の額は87億7000万ドルに相当し、制裁前と比べわずか10%減少したと報告した。より広義の重要防衛産業部品の輸入額は222億3000万ドルに達したという。 「キーウや他の都市を毎日のように襲う兵器には、外国製部品が使われ続けている」と報告は指摘した。 インテルは「適用されるすべての輸出規制と制裁措置に従っている」と述べ、顧客や販売業者との契約でも規制に従うよう求めているという。AMDの広報担当者は製品販売後の違法な経路での流通を防止し、是正する」プログラムを運営していると主張。 テキサス・インスツルメンツはロシアへの製品出荷はいかなる形でも「違法であり、許可していない」と述べた。アナログ・デバイセズは戦争が始まった時点で、ロシアとベラルーシ、ウクライナの占領地域での事業を停止したと説明。 インフィニオンやSTマイクロエレクトロニクス、マイクロチップ・テクノロジーも広報担当者や社長のコメントを通じて規制の順守を表明し、違法な出荷を防ぐ取り組みについて説明した。マーベル・テクノロジーも販売業者や顧客に対ロシア再輸出を禁じているとした上で、「販売業者の顧客の中には、当社やその販売業者が知り得ず、関知も制御も不可能な企業に製品を転売する者がいる可能性はある」と述べた。 NXPは過去に、すべての輸出規制と制裁法を順守していると述べている。MACOMテクノロジー・ソリューションズとリアルテックにコメントを求めたが返答は得られていない。 |
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●ウクライナ捕虜輸送機の墜落、ロシア側は事前に警告と主張 1/26
捕虜のウクライナ兵士を乗せたロシア軍輸送機の墜落を巡り、ロシアの議員は25日、ウクライナ軍の情報機関は情報機関は同機が撃墜された空域に入る15分前に警告を受けていたと述べた。この主張は、同機の飛行について何も知らされていなかったとするウクライナ軍情報部の声明と矛盾する。ウクライナのゼレンスキー大統領は、墜落について国際的な調査を求めるとともに、ロシアが「捕虜の命を弄んでいる」と非難した。 ロシアのアンドレイ・カルタポロフ上院議員は25日、次のように述べた。「近代的な通信システムであれば、この情報を受信した時点で、特定の地域に命令が送信され、すべてが通常通り行われるはずだった。しかしそうならなかった。それどころか攻撃命令が出され、もう二度と故郷に帰ることのないわれわれの乗組員と兵士たちを乗せた機体は撃墜されたのだ。つまりウクライナ政権の手は、兵士と将校の血で濡れているのだ。」 ロシア政府は、ウクライナがロシアのベルゴロド地方でイリューシンIl-76を撃墜し、乗っていた74人全員が死亡したと非難している。そのうち65人は、捕虜交換に向かっていたウクライナ兵だったという。 今回の出来事は、ウクライナ侵攻に関連してロシアの国際的に承認された領内で発生した事案としては、最も多くの犠牲者を出した。 カルタポロフ議員の主張は、同機の飛行について何も知らされていなかったとするウクライナ軍情報部の声明と矛盾する。ウクライナは撃墜を肯定も否定もしていないが、国際的な調査を求めている。ロシアは、ウクライナの「テロ行為」だと非難している。 ウクライナのゼレンスキー大統領は25日、何が起きたのか明らかにする必要があると述べた。 ウクライナ ゼレンスキー大統領「ロシアが、ウクライナ人捕虜の生命や家族の気持ち、我が国社会の感情を弄んでいることは明らかだ。墜落事故がロシア領内で発生したことを考慮すると、可能な限りすべての事実を明らかにする必要がある」 墜落現場に入れるのはロシア当局だけだ。ロシア国営タス通信は、当局者の話としてウクライナとの国境に近い墜落現場でミサイルとみられる破片を発見したと伝えた。またブラックボックスが回収され、調査のためモスクワに持ち込まれるという。 まもなく丸2年を迎えるウクライナ戦争では、双方の主張が食い違うことは日常茶飯事だ。 |
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●軍用機墜落で非難の応酬 ウクライナ「ロシアに全責任」―国連安保理 1/26
国連安保理は25日、ロシア西部ベルゴロド州で24日にロシア軍輸送機が墜落したことを受けて緊急会合を開いた。ロシアはウクライナによる「計画的犯罪」だと批判し、ウクライナが強く反発した。 ロシアは、輸送機には捕虜交換に向かうウクライナ軍人65人が乗っていたと指摘。ウクライナ軍が輸送機を撃墜し、捕虜全員が死亡したと説明し、「ウクライナ指導部は飛行ルートを知っていた」と根拠を示さず主張した。 これに対しウクライナは、「移送手段や周辺空域の安全確保の必要性を知らされていなかった」と強調。その上で、全ての責任は、捕虜や民間人を「人間の盾」にしているロシアにあると非難した。撃墜したかについては触れず、調査を進めると述べるにとどめた。 |
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●ロシアが国内の原発警備強化 ウクライナによる攻撃警戒か 1/26
ロシアが国内の原子力発電所の警戒を強めています。 ウクライナによるロシア本土への攻撃が強化される中、ロシア当局は西部に位置するクルスク原発周辺の立ち入りを禁止する措置を講じたとコメルサント紙が報じました。数日以内に正式に決定されるとしています。周辺への立ち入りが禁止されるほか、安全設備の改修なども行われるとみられます。この措置は特別軍事作戦が続いている間、行われるということです。 ロシアは去年10月にこの原発の核廃棄物貯蔵施設にウクライナのドローンが衝突し、壁が損傷したと批判しています。 ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、「ウクライナには長距離で反撃する能力があることをロシアに知らしめる」と述べるなど、長距離ミサイルなどでロシア領内などへの反撃を行う考えを示していて、原子力発電所への攻撃も想定されています。 |
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●ウクライナがれき処理協力 日本政府、災害のノウハウ活用 1/26
ロシアの軍事侵攻が続くウクライナへの復興支援として、日本政府が戦闘で破壊された建物のがれき処理の技術協力を検討していることが26日、分かった。地震や水害による災害廃棄物の処理で蓄積された日本のノウハウを活用する。2月19日に日本で開く「日ウクライナ経済復興推進会議」で打ち出す支援策に盛り込む方向で調整している。 日本は災害廃棄物を仮置き場に集めて一時保管し、種類に応じて分別、再利用するサイクルが定着している。東日本大震災では約3千万トンの災害ごみが発生し、コンクリート片や津波で運ばれた土砂を海岸堤防の復旧で土台に使うなどして8割以上を再利用。約3年で処理を終えた。 |
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●ロシア改革派、必要分の署名確保 大統領選、侵攻反対の元下院議員 1/27
3月のロシア大統領選に向け改革派政党「市民イニシアチブ」が擁立したナデジディン元下院議員は26日、下院議席を持たない党からの立候補に必要な10万人を上回る約20万人の署名を集めたと発表した。同氏はウクライナ侵攻に反対の立場。 ナデジディン氏は不備のない10万5千人の署名を提出する方針。ロシア通信に対し、期限の31日に提出すると述べた。中央選挙管理委員会が10万人の署名を有効と認めれば立候補できる。 大統領選は現職プーチン大統領の通算5選が確実視される。無所属で立候補するプーチン氏の陣営は22日に30万人余りの署名を提出。選管は26日、有効性の検証を終えたとした。 |
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●プーチン大統領 ロシア軍用機 “ウクライナによって撃墜” 1/27
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ人の捕虜を乗せたとされるロシア軍の軍用機の墜落について「明らかに彼らがやった」と述べ、ウクライナの防空システムによって撃墜されたと主張しました。一方、ウクライナ側は国際的な調査の実施を求めています。 ロシア国防省は24日、西部のベルゴロド州で、ロシア軍の軍用機がウクライナ側の攻撃で撃墜され、捕虜となっていたウクライナ軍の兵士65人など、搭乗していた全員が死亡したと発表しています。 軍用機の撃墜について、ロシアのプーチン大統領は26日、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクで開かれた学生らとの会合で言及し「故意なのか、過失なのかはわからないが、明らかに彼らがやった」と述べウクライナの防空システムによって撃墜されたと主張しました。 また、プーチン大統領は、ウクライナ側から発射されたミサイルは2発で、アメリカ製かフランス製のものである可能性が高いとして、ロシアの当局による捜査結果が2、3日のうちに明らかになるだろうという見通しを示しました。 一方、ウクライナ側は墜落への関与については明言しておらず、国際的な調査の実施を求めています。 |
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●ロシアは本当にNATOを攻撃するのか、元陸将が読む高度な心理戦 1/27
昨年末ごろから、にわかに北大西洋条約機構(NATO)側から、ロシアとの衝突を懸念する声が上がり始めた。ドイツのピストリウス国防相は、今月19日に独紙「ターゲスシュピーゲル」が報じたインタビューで、ロシアのプーチン大統領が10年以内に北大西洋条約機構(NATO)加盟国を攻撃する可能性があるとの考えを示した。昨年11月にはドイツ外交問題評議会(DGAP)が、ロシアがウクライナとの戦争終結後に軍備を再整備するまでに6〜10年しかかからない可能性があるとして、NATO側の対応を促す論文を掲載した。英BBCによれば、スウェーデンのカール・オスカル・ボーリン民間防衛相は1月7日の防衛会議で、「スウェーデンで戦争が起こるかもしれない」と語った。 ウクライナによる反転攻勢が具体的な成果を得られず、ロシアとの間で停戦が徐々に現実味を増しているという認識のもと、NATO関係者に「次は我々が狙われる番だ」という懸念や、「最悪の事態に備えなければならない」という安全保障の鉄則を守る考えが、こうした動きの背景にあるのかもしれない。陸上自衛隊東北方面総監を務め、軍事力に心理戦や情報戦などを絡めるハイブリッド戦争に詳しい松村五郎元陸将は、こうした背景に加えて、「ロシアによる情報戦がNATO側の発言を生み出している」と指摘する。 松村氏の指摘通り、ロシアは2022年2月のウクライナ侵攻後から、NATOの介入を避けるため、「NATOが参戦すれば、核を使う」といった脅しを繰り返してきた。最近でも、23年12月に米国との防衛協力協定に相次いで署名したフィンランド、デンマーク、スウェーデンに対し、ロシア側が反発のコメントを発表。フィンランドとの国境線近くの軍備を増強する動きもみせている。松村氏は「ロシアはNATO・西側諸国による支援の先細りが続けば、ウクライナに勝利できると考えています。支援を思いとどまらせるために、NATO諸国を激しく牽制しているのでしょう」と語る。 そして、松村氏は「このような状況が続くと、冷戦時代に、お互いに軍事力を強化するエスカレーション現象が続いたように、NATO側もロシアによる攻撃を警戒せざるを得ず、互いに軍備を増強するスパイラルに入っていく危険性があります」と懸念する。 欧州連合(EU)は昨年12月、ウクライナに対して、24年から27年にかけて500億ユーロ(約8兆400億円)を支援する計画を先送りした。加盟国のハンガリーが反対したためだ。米国も共和党の反対により、ウクライナへの追加支援の見通しが立たない状況に追い込まれている。このため、ウクライナ軍は兵器や弾薬の不足に悩まされている。 松村氏によれば、特に戦闘正面での榴弾砲(曲射砲)の弾丸不足が深刻だという。現在、戦闘正面ではロシアが1日1万発以上を確保しているのに対し、ウクライナは1日5千発程度にとどまっているという未確認情報もあるという。砲身が焼き付かない範囲での最大発射速度は1分に2発程度で、5分間で10発を発射する計算だ。松村氏は「実際に戦闘が起きている地域に500門の榴弾砲が展開していると仮定した場合、1日に5千発しかなければ、各砲門あたり1日5分間しか射撃できない計算になります」と指摘する。榴弾砲は、地雷原を処理したり、味方が敵陣地に突入したりする際に、敵軍を塹壕にくぎ付けにするためなどに使われる。陣地を突破して進んでいくために不可欠なため、「補給さえ可能なら、突破正面では各砲門あたり1日100発近く欲しいところ」(松村氏)だという。 ロシアは現在、領土的野心を隠さないウクライナ東部4州のうち、ほぼ全域を占領できたのはルハンスク州だけにとどまっている。松村氏はロシアの思惑について「州の全域を併合するとは明言していないザポリージャとヘルソン両州はともかく、少なくとも親ロ派が2014年以来『ドネツク人民共和国』の領域だと主張してきたドネツク州全域を占領しない限り、停戦には応じられないでしょう」と語る。NATO内に「ロシアとの全面戦争」を懸念する声が広がれば、NATOの防衛力強化を求める声が上がるだろうが、その一方で、ウクライナへの支援に及び腰になる国が、ハンガリーのほかにも出てくるかもしれない。そうなれば、ドネツク州を占領するために必死になっているロシアにとって好都合な結果が生まれる。 松村氏は、プーチン大統領はさらにウクライナの「非ナチス化・非武装化」も掲げているため、仮に停戦が実現しても、ゼレンスキー政権の打倒とウクライナのNATO加盟阻止に全力を挙げるだろうとも予測する。ただ、「ロシアがNATOに対する攻撃の構想を持っているとは思えません」とも語る。「プーチン大統領はNATOと戦争になれば、ロシアは勝てないと思っているはずです。そのため、ウクライナ侵攻へのNATOの介入を防ごうと必死になって情報戦などを展開しているのです」という。「最悪の事態に備える必要はありますが、粛々と準備すれば良いと思います。声高に、ロシアが攻めてくると叫び続けると、逆にロシアが仕掛ける情報戦の思うつぼになりかねません」 現在のNATOとロシアによるやり取りは、台湾を巡って中国と相対する日本や米国にとっても参考になるだろう。 |
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●プーチン氏、「ウクライナ軍が撃墜」と輸送機墜落に初言及 1/27
ウクライナ軍捕虜を移送中だったとされるロシアの軍用輸送機IL76が墜落した問題で、プーチン露大統領は26日、「故意か過失かは分からないが、彼らがそれをやったことは明らかだ」とし、ウクライナ軍が防空ミサイルでIL76を撃墜したとの認識を示した。露軍の防空ミサイルには友軍機への誤射を防ぐ機能が備わっているとし、露軍による「同士討ち」はありえないとも主張した。 露北西部サンクトペテルブルクで行われた国内行事での発言。IL76が墜落した理由は特定されておらず、露軍の同士討ちが起きた可能性もあるとするウクライナ側の主張に反論した形だ。プーチン氏が墜落に公の場で言及したのは初めて。 一方、露捜査当局は26日、ウクライナ軍捕虜が墜落したIL76に乗り込む際の様子を撮影したとする動画を公開した。ただ、動画は遠方から撮影されている上、撮影日時や場所も明らかになっておらず、真偽は不明。 墜落は24日、露西部ベルゴロド州で発生。露国防省は、同日予定された捕虜交換のためIL76がウクライナ軍捕虜65人を移送中だったが、ウクライナ軍のミサイル攻撃で墜落し、搭乗していた乗員や捕虜ら計74人全員が死亡したと主張した。 ウクライナ側は、捕虜が実際に搭乗していたかや、ウクライナ軍が攻撃したかどうかは確認できていないとしている。 |
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●ロシア軍機「ウクライナが撃墜」、故意か過失か不明=プーチン氏 1/27
ロシアのプーチン大統領は26日、ロシア西部ベルゴロド州で24日に墜落したロシア軍の大型輸送機について、同機はウクライナの防空システムによって撃墜されたと述べ、故意か過失かは分からないとしながらも、犯罪に値するとの考えを示した。 プーチン氏はテレビ放映されたコメントで「意図的だったのか過失だったのかは分からないが、彼らが実施したことに疑いはない」とし、「過失と故意のいずれであっても犯罪だ」と述べた。 また、同機に向けて発射されたミサイルは米国製かフランス製の可能性が高いと指摘。数日以内に確認できるとの見方を示した。 プーチン氏がこの件について発言するのは初めて。ロシア連邦捜査委員会はこれに先立ち、墜落現場でウクライナの身分証明書のほか、タトゥー(入れ墨)が入った遺体の一部が回収されたと明らかにしている。 ロシア軍の大型輸送機「イリューシン76」は24日にロシア西部ベルゴロド郊外に墜落。ロシアは捕虜のウクライナ兵士65人のほか、乗員6人と警護員3人の計74人が搭乗していたとしている。 ウクライナはこれまでのところ、同機の撃墜を巡り肯定も否定もしておらず、搭乗者などを巡るロシアの説明に異議を表明。ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問はこの日のプーチン大統領の発言について「典型的な偽情報」だとした。 |
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●プーチンは「ヒトラーの失敗」を繰り返している…2人の独裁者に共通する史実 1/27
2022年2月、ロシア軍はウクライナ・キーウ近郊のアントノフ国際空港を急襲占領した。しかし、空挺部隊は地上軍の救援を受けられず潰滅した。現代史家の大木毅さんは「生煮えの状態で強行され、失敗に終わった空挺作戦の例は戦史に少なくない。世界の軍事筋を驚かせたドイツ軍のクレタ島作戦も、同じような結末だった」という。大木さんの新著『勝敗の構造 第二次大戦を決した用兵思想の激突』から、両軍の共通点を紹介する――。 ●エリートがそろう空挺部隊を使いこなせない 空挺作戦には華やかな印象がある。 しかしながら、長駆敵陣を衝くというその本質ゆえに、 空挺作戦にはおのずから危険がつきまとう。空からの奇襲によって目標を占領したとしても、敵が動揺から立ち直って反撃に出てきた場合、空挺部隊がそれらを維持するのはきわめて困難だ。 空挺部隊は、物質的には重装備を持たない軽歩兵にすぎないからである。そうして敵中に孤立するかたちになった空挺部隊のところに、味方の地上部隊が駆けつけることができればともかく、救援に失敗すれば大損害は必至となる。 二〇二二年、ウクライナ侵攻の際に、首都キーウの空港を急襲占領したロシア軍空挺部隊が、後続の空輸部隊、あるいは進撃してくる地上軍の救援を受けることなく潰滅した事例は記憶に新しいところであろう。 加えて、空挺作戦には、しばしば作戦・戦術次元のリスクがともなう。開戦劈頭の奇襲・強襲は措くとして、空挺部隊が投入されるタイミングは、敵軍が敗走し、追撃戦の段階に移ったときということが多い。 かような状態ならば、敵の混乱に乗じて、通常ならば設定しにくい目標に空挺作戦を行なうことも可能となるし、降下後の「空挺堡」(空挺部隊が降下後に制圧している地域。「橋頭堡」の空挺部隊版と考えてもらってよい)への地上部隊の連結も容易となる。 ●ロシア軍とドイツ軍の共通点 だが、そうしたテンポの速い作戦は、往々にして拙速になる。予定目標の偵察や所在の敵戦力の推定も充分ではないし、投入される部隊の作戦準備に万全を期すことも難しい。 にもかかわらず、空挺部隊の指揮官、もしくは空挺部隊を有する司令官は、敢えて空からの急襲を実行したがる。逆説的なことだが、そうした追撃戦においては、巧遅を選べば、その間に地上部隊が設定された目標を占領してしまい、空挺部隊の出番がなくなってしまうがゆえである。 かかる焦りから、生煮えの状態で強行され、失敗に終わった空挺作戦の例は戦史に少なくない。空挺作戦を成功させるには、さまざまなハードルを乗り越えねばならないのだ。それゆえ、青天の霹靂のごとく要地を奇襲できるという戦略的利点に魅せられ、人的・物的資源の最良の部分を投じて空挺部隊を編成しながら、使いこなせずに終わるということさえある。 実は、空挺・空輸部隊が初めて独力で目標を占領し、世界の軍事筋を驚かせたドイツ軍のクレタ島作戦も、かくのごとき矛盾を抱えていた。しかもそれは、作戦の指揮を執ったクルト・シュトゥデントという歴史的個性によって、拡大されていたのである。ここでは、そのような戦略・作戦次元の問題に注目しながら、クレタ島の戦いを検討していくことにしよう。 ●「世界初の空挺作戦」が失敗に終わったワケ 一九四一年四月、ナチス・ドイツは、ユーゴスラヴィアとギリシアに対する戦争を開始した。強大な空軍の支援のもと、装甲部隊を先陣に立てて攻め入ったドイツ軍に、小国ユーゴスラヴィアとギリシアの軍隊、さらには、彼らを支援したイギリス軍も太刀打ちできず、なだれを打って敗走した。 ユーゴスラヴィアは約十日で制圧され、四月十七日に降伏する。ギリシア本土も二十日ほどで占領され、ギリシア政府は南のクレタ島に逃れる。 この電撃的な勝利を、切歯扼腕の思いで注視していた将軍がいる。ドイツ空軍のクルト・シュトゥデント航空兵大将、「降下猟兵(ファルシルムイェーガー)」部隊の創始者として知られた人物だ。 第二次世界大戦がはじまるや、シュトゥデントはその降下猟兵を率い、ノルウェーやオランダへの侵攻に際して空挺作戦を敢行、大きな戦果を上げた。いわば、降下猟兵のボスともいうべき存在である。 ドイツがバルカンに介入した時点では、第一一空挺軍団長に補せられていたシュトゥデントは、かかる経歴から、また、自らが拠って立つ降下猟兵という新兵科の利害を守るためにも、その存在意義を示さなければならないと考えていた。 これまでのような小部隊による奇襲にとどまらず、空挺部隊には戦略・作戦次元でも決定的な威力があることを証明するのだ、と。 ●ヒトラーはクレタ島攻略に積極的ではなかった シュトゥデントはギリシア侵攻において空挺作戦を実行すべしと強硬に主張した。 実際、サロニカ付近やコリント運河の橋梁などで、小規模な作戦は実施されたのだけれども、この程度では空挺部隊の真価が発揮されたとはいえない。しかも、一部の攻撃は失敗していた。シュトゥデントは、直属上官である第四航空軍司令官アレクサンダー・レーア航空兵大将(五月三日、上級大将に進級)に、空挺作戦の計画を矢継ぎ早に提案した。 エーゲ海中部のキクラデス諸島のうち、一つ、もしくは複数の島を占領するのはどうか。キプロス島やクレタ島は、空挺作戦の目標にするだけの価値があるのではないか? シュトゥデントのたびたびの要請を受けたレーアは、一九四一年四月十五日、ドイツ空軍総司令官ヘルマン・ゲーリング国家元帥(「元帥」の上に特設された階級)に空挺部隊によるクレタ島攻略の計画案を提出した。 ゲーリングはクレタ島空挺作戦を支持した。ゲーリングはヒトラーのもとに、シュトゥデントと空軍参謀総長ハンス・イェショネク航空兵大将を派遣し、計画の説明に当たらせることにした。 四月二十一日、総統に面会したシュトゥデントは熱弁を振るった。ヒトラーは必ずしもクレタ島攻略に積極的ではなかったが、シュトゥデントに説得され、作戦実行を許可した。おそらくは、イギリス軍のクレタ島保持を許していれば、その航空基地から、ドイツの戦争継続にとって不可欠のプロエシュチ油田(ルーマニア)が爆撃されると危惧したのが決め手となったのではないかと推測される。ただしヒトラーは、準備期間が短くなるけれども、五月中旬には作戦を発動せよと条件を付けていた。 一九四一年四月二十五日、総統指令第二八号が下令される。 「東地中海における対英航空戦遂行の基地として、クレタ島占領を準備すべし(『メルクーア』作戦)」(Hitlers Weisungen für die Kriegführung 1939-1945, herausgegeben von Walther Hubatsch.)。 ●待ち構えていたイギリス軍 一九四一年五月二十日早朝、クレタ島西部の空は、鉄十字の国籍マークを付けた航空機の大群がとどろかす爆音に包まれていた。午前七時十五分、リヒトホーフェンの爆撃機編隊がハニアならびにマレメ付近に対する攻撃を開始し、イギリス軍の高射砲陣地を沈黙させる。 この爆撃遂行中に、島の沖合で曳航してきたJu―52輸送機から切り離された、グライダー五十三機が突進し、マレメ飛行場の西に強行着陸する。グライダーから飛び出してきたのは、空挺突撃連隊第一大隊隷下の二個中隊だった。 続いて、同連隊の第二、第三、第四大隊が落下傘降下にかかる。空挺突撃連隊を主体とする西部集団が第一波攻撃隊として、最初にクレタ島に殺到したのだ。 しかし――着地直後、それどころか、落下傘降下中の宙に揺れているときから、彼らは激烈な銃火にさらされた。降下空域の地上にあったニュージーランド第五歩兵旅団は、圧倒的な光景に動じることもなく、堅固な陣地から降下猟兵たちに防御射撃を浴びせてきたのである。 多くの将兵が空中で戦死、もしくは負傷した。作戦初日にマレメ飛行場を奪取し、空輸により増援を運び込むという任務を果たすことは不可能になった。西部集団は、飛行場外縁部にたどりついたものの、イギリス軍の抵抗をくじくことはできず、攻撃中止を強いられる。 ●目標を一つも奪取できないドイツ軍 「奇襲」されたのはイギリス軍ではなく、降下猟兵の側であることはあきらかだった。ドイツ軍はそうとは知らぬまま、自分たちにはない重装備を持ち、数も多く、しかも防御陣地の有利を生かした敵を攻撃していたのである。 西部集団の第一波についていうなら、最初に降下した二千人弱はおよそ一万二千人の敵に対していた。これでは、彼ら、先陣を切った降下猟兵の半数ほどがたちまち死傷したというのも無理はあるまい。 イギリス軍は、傍受した無線暗号通信を解読していたのに加えて、ギリシア本土に大量の輸送機が集結しているとの情報を得ており、ドイツ軍は必ずや空挺作戦を実行するものと判断していた。 それを受けて、クレタ島防衛軍の司令官、第一次世界大戦で英軍最年少の将官というレコードをつくったこともある、ニュージーランドのバーナード・フレイバーグ少将は、三カ所の飛行場を中心に強固な陣地を築いていたのだ。 その兵力も、ドイツ軍の予想をはるかに上回るものだった。ニュージーランド第二師団を基幹として、オーストラリア軍やギリシア軍の部隊を加え、およそ四万二千人の将兵を有するまでになっていたのである。 結局、「メルクーア」作戦初日に投入された第七空挺師団の諸部隊は、ただの一つも目標を奪取できず、流血を重ねるばかりだったのである。 ●戦術的成功に救われる だが、シュトゥデントは幸運なファクターに恵まれていた。 一つには、戦闘初日の成功にもかかわらず、イギリス軍が、航空優勢を得たドイツ空軍が縦横無尽に繰り広げる爆撃に動揺しはじめていたことがある。また、通信手段が充分でなかったため、クレタ島防衛軍の司令官フレイバーグは麾下部隊の現状を正確に把握できず、ドイツ軍の圧力を実際以上に大きなものに感じていたことも、シュトゥデントにとって有利に作用した。 もう一つは、現場の降下猟兵が恐るべき消耗に耐えながら、なお戦意を失っていなかったことであった。とくに、いわゆる瞰制地点、マレメ飛行場を見下ろす一〇七高地における成功が大きい。五月二十日には何一つ良いことがなかったようではあったが、この日の夜に空挺突撃連隊はからくも一〇七高地の頂上を奪取していたのだ。 この攻撃を指揮した突撃班の指揮官は、こう述懐している。「われわれにとっては幸いなことにニュージーランド兵は逆襲してこなかった。もし、そうなっていたら、弾薬がなくなっていたから、石と小型ナイフで守るしかなかったろう」(カーユス・ベッカー『攻撃高度4000』)。 まさしく「幸いなこと」ではあった。イギリス軍が一〇七高地を取り返すチャンスは、この二十日から二十一日にかけての夜しかなかったのである。一夜明けて日の出を迎えれば、ドイツ側は航空支援を得られるから、奪還はきわめて困難になるのだった。 事実、マレメ飛行場を制圧できる一〇七高地をドイツ軍が押さえたことは、クレタ島の戦いの分水嶺になっていく。戦術的成功が、作戦次元の失敗をカバーした、珍しい例といえる。 ●クレタ島占領は実現したけれど… 二十一日早朝、数機のJu―52輸送機がマレメの西方で着陸態勢に入った。むろん、イギリス軍の射撃を浴びるのは必至であるが、パイロットたちは意に介していない。彼らは、マレメ飛行場攻略のために必要な弾薬を、何としても降下猟兵に届けよとの厳命を受けているのだった。 続いて、急降下爆撃機の支援を受けた降下猟兵が一〇七高地を完全占領する。これで、マレメ飛行場を多正面から攻撃する態勢がととのった。午後四時、飛行場をめぐる戦闘のただ中に、第五山岳師団からの増援部隊を乗せたJu―52が飛来する。これらは対空砲火をかいくぐって、着陸を強行した。機内から吐き出された山岳猟兵の応援を得て、降下猟兵は午後五時にマレメ飛行場を奪取したのである。 その夜、イギリス軍は反撃に出て、飛行場近くまで迫ったが、夜明けとともにドイツ空軍の攻撃を受けて、撃退されてしまう。 潮目は変わり、戦運はドイツ側にまわってきた。 もっとも、二十一日の夜から翌日の朝にかけて、海上から護送船団によってクレタ島に増援の山岳猟兵部隊を送り込む試みがなされたけれど、いずれも英海軍によって撃退された。ドイツ軍は空を制してはいたものの、海上はまだイギリス軍のものだったのだ。それゆえ、ドイツ側は、いよいよ航空機による増援・補給に頼らざるを得なくなった。 ここまでみてきたように、「メルクーア」作戦は必ずしも、経空攻撃だけでクレタ島を占領することを企図していたわけではない。だが、こうした状況に追い込まれたためにそうするしかなくなったのである。 ●精鋭部隊3000人が犠牲に…ドイツ軍が支払った大きな代償 作戦目標のクレタ島を占領したという点では、「メルクーア」作戦は成功したといえる。 だが、ドイツ軍が同島を戦略的に活用することはついになかった。「メルクーア」作戦終了から三週間後の六月二十二日、ドイツがソ連に侵攻したためである。東地中海のイギリス軍の海上交通、あるいは北アフリカの連合軍拠点に脅威を与えるはずだったドイツ空軍の主力はロシアに投入されてしまい、クレタ島の航空基地や港湾は二次的な重要性しか持たなくなってしまった。 にもかかわらず――この島を得るために、ドイツ軍が支払った代償はきわめて大きかった。志願兵を集めて猛訓練をほどこしたエリート、降下猟兵のおよそ三千名が戦死、もしくは行方不明となったのだ。 あまりの損害の大きさに驚いたヒトラーが、以後大規模な空挺作戦は実施しないと決定したのも当然であろう。シュトゥデント自身の言葉を借りれば、「クレタ島は、ドイツ空挺部隊の墓場」だったのである(前掲『空挺作戦』)。以後、ドイツ降下猟兵は、優良な歩兵部隊としてしか使われなくなった。 かかる凄惨な結果は、空挺作戦が宿命的に持つ危険性が極大化されたかたちで現出したものとみることもできよう。さりながら、シュトゥデントの指揮官としての能力不足が、その危険を増幅させたことも否定できないように思われる。 |
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●「プーチン大統領、米国にウクライナ終戦を非公式打診」 1/27
ロシアのプーチン大統領が非公式チャンネルを通じて、米国政府がウクライナ戦争の終戦に向けた対話をする用意があるかを打診した、という主張があった。 ブルームバーグ通信は25日(現地時間)、ロシア大統領府と近い複数の人物を引用し、プーチン大統領が先月、仲介人を通して米政府当局者に関連の議論をすることができるという意思を表明した、と報じた。 ブルームバーグによると、匿名を求めたこの人物らは、プーチン大統領がウクライナの中立国化を放棄する案を考慮する用意があることを示唆したと伝えた。また、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟反対も撤回する可能性があるが、ロシア軍が占領したウクライナ領土に対するロシアの統制権は認めるべきだと強調した。2022年2月にウクライナを侵攻したロシア軍は現在、ウクライナ領土の18%を占領している。 ロシア大統領府のペスコフ報道官は26日の記者会見で、ウクライナのNATO加盟反対撤回の可能性など水面下交渉報道に関する記者の質問に対し「間違った報道だ。全く事実でない」と強く否認した。米政府当局者も全面的に否認した。米国家安全保障会議(NSC)のワトソン報道官は「ロシアの立場に変化があることを知らない」とし「ロシアとの交渉、いつ、どうするかはウクライナの決定にかかっている」と述べた。 ロシア政府が休戦メッセージを送ったという報道は今回が初めてではない。先月、米ニューヨークタイムズ(NYT)はロシアの元官僚を引用し、ロシア側が昨年9月から複数の外交チャンネルを通じて休戦交渉に関心があるという信号を送ったと報じた。 |
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●ドイツで「首相交代」求める声高まる 1/27
ドイツで戦後初めて3政党のショルツ連立政権が2021年12月に発足した時、政治信条も政策も180度異なる政党の政権は寄せ集め集団に過ぎず、政権維持は難しいだろうと受け取られた。ショルツ政権は社会民主党(SPD)、環境保護政党「緑の党」、それにリベラル派政党「自由民主党」(FDP)の3党から成る。 政権発足当初は新型コロナウイルス対策が新政権の主要課題で、ワクチン接種のおかげでパンデミックは次第に収束していった。その束の間、ロシアのプーチン大統領が2022年2月、ウクライナの軍事侵攻を始めた。欧州大陸で戦後初のウクライナ戦争はこれまで経済発展に重点を置いてきた欧州諸国はその対策にアタフタとなった。ショルツ首相は危機に直面し、「時代の転換」(Zeitenwende)というキャッチフレーズを掲げ欧米の同盟国と連携をとって対応してきた。そして昨年10月7日はパレスチナ自治区ガザ区を実効支配していたイスラム過激派テロ組織ハマスがイスラエルを奇襲して1200人余りのユダヤ人を虐殺するという事態が生じ、ドイツを始め欧州諸国はその対応に乗り出し、中東戦争の拡散防止に腐心してきた。ショルツ連立政権は想定外の外交、安保情勢に直面し、対応に苦戦したが、なんとか試練を乗り越えた。 一方、国内ではウクライナ戦争の影響もあってエネルギー価格の急騰、物価の高騰などで国民の生活は厳しくなっていった。国民経済もマイナス成長が続き、リセッションに陥り、国民の間でも政権への不満が高まっていった。与党3党の間で政治信条、政策の違いなどが表面化して、政権内の対立、意見の相違などがメディアでも報じられてきた。メディアの世論調査によると、政権与党の3党に支持率は急減し、3党を合わせても支持率は30%をようやく超える状況となっていた(安保・外交では国民の支持率を上げることは難しいことが改めて実証された)。 それに反し、野党第一党の「キリスト教民主同盟」(CDU)は支持率31%でトップを走り、極右政党「ドイツのために選択肢」(AfD)は22%と支持率を上げていった。特に、AfDは旧東独では30%を超える支持率を得ている。ポツダムでの極右関係者の会合が開催され、強制移民政策が話し会われたことが明らかになると、AfDへの批判の声は高まったが、支持率には大きく響いていない。 そのような中、ショルツ首相のSPDの支持率は13%と急落し、14%の「緑の党」にも抜かれて与党第2党の地位に甘んじていることが明らかになったのだ。そしてベルリンから突然、「ショルツ首相は退陣、後継者にピストリウス国防相」といった情報が流れてきた。ドイツやオーストリアのメディアは一斉に大きく報じた。 オーストリアの日刊紙クリアは26日、4面国際面の1ページを使い、「ショルツ自身の変わる時」という見出しを付け、「ドイツの政権でショルツ首相ほど愛されない首相はいない」と報じ、SPD内でも首相の交代を求めるが流れている、「ドイツ国民の64%が首相の交代を願い、その後継者にピストリウス国防相の名前を挙げている」というのだ。ただし、国防相が首相になったとしても、SPDは3%しか支持率を伸ばせないだろうという。肝心の後継者と名指された国防相自身「首相になる考えはない」と噂を否定している。 ショルツ首相が先日、ベルリンで開催中のハンドボール欧州選手権を応援するために会場に入ると、ブーイングの声が上がり、罵声が飛んできたという。首相の行く先々で歓迎ではなく、批判の声が飛び交うのだ。クリア紙は「首相は侮辱されても行動せず、座って、良くなることを希望して待っている。典型的なショルツ氏の反応だ」と論じている。SPD関係者も「首相は語らなければならない時、沈黙し、動かなければならない時、固まって動かない」と受け取っている。 首相への批判はどの政権でもあった。メルケル政権時代、移民・難民が殺到した時(2015、16年)、「メルケル、出ていけ」という声が聞かれたし、シュレーダー氏も首相時代(1998年〜2005年)にSPD系労働組合から罵声を受けた。しかし、ショルツ首相は政権を担当してまだ2年だ。16年間の首相の座にいたメルケル前首相や7年間のシュレーダー氏とは比較できない。 今年はドイツでは6月に欧州議会選を控え、秋には旧東独の3州(ザクセン州、チューリンゲン州、ブランデンブルク州)で州議会選が待っている。「首相を変えるのならば今しかない」といった危機感がSPD関係者内にあるのかもしれない。 |
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●トランプ前大統領に8330万ドルの損賠命令、性的暴行したコラムニストへ 1/27
ニューヨーク・マンハッタンの連邦地裁で26日、ドナルド・トランプ前大統領が在任中の2019年にコラムニスト、E・ジーン・キャロル氏を中傷しその名誉を毀損(きそん)したことについて、計8330万ドル(約123億4000万円)の損害賠償を支払うよう、陪審団が評決を下した。連邦地裁は昨年5月にすでに、前大統領が1990年代にキャロル氏を性的に暴行したと認定していた。 連邦民事訴訟において陪審団が命じた損害賠償額は、補償のための1830万ドルと懲罰的賠償額6500万ドルの合計。補償的損害賠償は、前大統領がキャロル氏を中傷し、名誉を傷つけ、精神的苦痛を与えたことに対するもの。懲罰的賠償額は、トランプ前大統領が今後もキャロル氏を中傷・攻撃し続けるのを阻止することを意図してのもの。 男性7人と女性2人からなる陪審団は、3時間弱の評議で今回の評決に至った。 キャロル氏は評決を受けて、「これは、打ちのめされても立ち上がるすべての女性にとって素晴らしい勝利だ。同時に、女性をいじめて押さえつけようとしたすべての横暴な者にとって、巨大な敗北だ」と声明で述べた。 キャロル氏を支えたロバータ・キャプラン弁護士は声明で、「本日の評決は、この国では法律が全員に適用されることを示した。相手が金持ちだろうと有名人だろうと、大統領経験者だろうと」と述べた。 トランプ前大統領は、この裁判を「魔女狩り」と呼び、評決は「まったくばかげている!」とコメント。必ず控訴すると強調している。 連邦地裁のルイス・キャプラン裁判長はこの裁判であらかじめ、陪審団に対し審理の難しい性質を念頭に、お互いで話し合う際にも本名を使わないよう助言していた(キャプラン判事は、ロベルタ・キャプラン弁護士とは親類ではない)。 この日の結審にあたっても、裁判長は陪審団に、それぞれ自分の経験を話すことは自由だが、この裁判の陪審員だったことは公表しない方が良いと思うと忠告した。 トランプ前大統領は繰り返し、自分は何の問題行動もしていないと強調し、キャロル氏とは会ったこともないと主張している。 しかし評決後に、自分のソーシャルメディアで評決を非難した際、キャロル氏への直接的な攻撃は避けていた。 「どちらの評決にもまったく同意しない」と前大統領は書き、「私と共和党に集中してバイデンが支持した魔女狩りについて、控訴する」、「この国の司法制度は、たがが外れていて、政治的な武器として使われている。連中は修正第1条の権利をぜんぶ取り上げた。これはアメリカじゃない!」などと主張した。 昨年の民事裁判でマンハッタンの連邦地裁はすでに、前大統領が1990年代にニューヨーク市内のデパートの試着室で、雑誌コラムニストのキャロル氏を性的に暴行したと認定していた。 その裁判の陪審団も、前大統領がキャロル氏の証言をうそだと中傷したことについて名誉毀損だと認め、約500万ドルの損害賠償の支払いを命じていた。 26日に結審した今回の名誉毀損訴訟は、前大統領が2019年にした別の発言に関するもの。 この日の評決の読み上げより先に、前大統領は法廷を後にしていた。その直前には、担当のアリナ・ハバ弁護士に対して裁判長が、不規則発言を注意していた。 発言をやめるよう裁判長に指示された後も話し続けたハバ弁護士に対し、キャプラン裁判長は「あなたはあと少しで収監される、その瀬戸際にいる。いいから座りなさい」と命じていた。 これより先に裁判長はすでに、法廷内で前大統領が「これはやらせだ」「魔女狩りだ」などつぶやいたことを問題視し、続くようなら退廷を命じると警告していた。 キャロル氏の弁護団はこの日の最終陳述で、前大統領がキャロル氏に対する性的暴行を否定し続けたことで、キャロル氏の名誉は著しく傷つけられたと主張。「この裁判は、ドナルド・トランプに罰を与えるためのものでもあります(中略)ここでついに彼に、そうしたまねをやめさせるための裁判です」と述べていた。 弁護団は裁判中、前大統領の発言をきっかけに、キャロル氏は大勢から殺害や強姦を脅され、オンラインでひどく中傷されるようになったと主張していた。 これに対して前大統領側は、キャロル氏への脅迫は前大統領の責任ではないとして、原告側の主張は「穴だらけ」なのでトランプ氏がこれ以上の損害賠償を払う必要はないと主張していた。 トランプ前大統領はこの民事訴訟とは別に、4件の刑事事件で計91件の不法行為について起訴されている。アメリカで大統領経験者が、刑事被告人となるのは史上初めて。 それに対して前大統領は一貫して、自分に対する数々の訴訟はジョー・バイデン大統領とその仲間が指揮しているものだと主張している。 今年11月の大統領選に向けて、野党・共和党の候補選びではトランプ前大統領が優勢となっており、民主党候補になる見通しのバイデン大統領と、4年前に続いて再び対決する可能性が高い。 米ジョン・ジェイ・刑事司法カレッジのドミトリー・シャクネヴィッチ教授はBBCに、少額の賠償額では前大統領による中傷をやめさせることができないと、キャロル氏の弁護団は陪審団を説得したのだと説明した。 「陪審団は要するに、この金持ちは(中傷を)やめようとしないので、やめさせるには(経済的な)痛みを与えるしかないのだと言っている」と教授は話し、今回の賠償額は「非常に大きい額だ」と述べた。 米リッチモンド大学のキャロル・トバイアス教授(法学)はBBCに対して、「トランプ氏は裁判長と陪審員と、相手側の弁護団、そして特に原告のキャロル氏に、敬意を欠いた態度をとり続けた」ことが、原告の主張を裏付ける結果となり、「高額の損害賠償額が適切で、相応」だと陪審団が判断する理由になったかもしれないと指摘した。 |
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●北朝鮮は10年ぶり高成長か、兵器取引で経済好転−金氏に戦争回避促す 1/27
ここ数週間に北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記から好戦的な発言が相次ぎ、同国が戦争を準備しているのではないかとの臆測が浮上している。 だが、金氏には戦争突入を回避する新たな理由が少なくとも一つある。目立たないながらも北朝鮮経済は改善しつつあり、経済成長のペースは約10年ぶりの高水準に届こうとしている。 国際的な制裁で長らく孤立していた北朝鮮経済を活性化させたのは、プーチン大統領のウクライナ侵攻を支えるための弾道ミサイルや砲弾、その他軍用品の売却だ。 これにより金氏には今後数年にわたって西側からの関与を拒否できる余裕が生まれているかもしれないが、戦争など劇的な措置に打って出なければならない圧力も後退している。 北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議の韓国首席代表を務めた千英宇氏は「核の使用や戦争は体制の終わりを意味すると、金正恩氏はよく分かっている」と述べた。 BMIの欧州カントリーリスク責任者で、北朝鮮を追い続けている数少ないエコノミストの一人であるアンウィタ・バス氏によると、対中国貿易の増加も相まって北朝鮮の国内総生産(GDP)は今年0.5%拡大する可能性がある。そうなれば、核開発を巡り北朝鮮への国連の制裁が強化された2016年以降で最大の成長となる。 この規模の成長では、北朝鮮が新型コロナウイルス対策の制限で国境を閉ざした数年間に失った成長を取り戻すことはできないが、バス氏は自身の予測が韓国中央銀行のデータに一部基づいていると説明した。韓国中銀のデータは、北朝鮮の防衛セクターを完全には計算に入れていない。 「北朝鮮製兵器に対する需要増加で、同業界の売り上げは確実に上がるだろう」とバス氏は指摘し、同国の人口の半分程度が防衛業界と何らかの関係のある職に就いているとの試算もあると語った。 |
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●ロシアとウクライナ、相手側の責任主張 輸送機墜落問題 1/27
捕虜となっていたウクライナ兵を乗せたとされるロシア軍の輸送機が墜落した問題をめぐり、ロシアとウクライナは26日も、相手側の責任だとする主張を繰り広げました。 24日、ベルゴロド州でロシア軍の輸送機が墜落した件をめぐっては、ロシア側はウクライナによる撃墜だとして、「乗っていたウクライナ軍の捕虜65人を含む74人が死亡した」と発表する一方、ウクライナ側は捕虜が乗っていたかどうかは確認中だと主張しています。 ロシア捜査委員会は26日、新たな調査結果とする情報をSNSに投稿し、犠牲者の遺体の一部に、ウクライナの治安組織「アゾフ連隊」の戦闘員が施す特徴的な入れ墨がみられたとして、映像を公開しました。また、レーダーの情報などから、輸送機を狙った地対空ミサイルはウクライナ・ハルキウ州の村にあったとして、“ウクライナが撃墜した”との主張を展開しました。 これに対し、ウクライナ軍の報道官は26日、ウクライナメディア「ウニアン」の取材に答え、「墜落がウクライナ軍によるものかは確認できていない」と述べました。ロシアが捕虜交換について国際赤十字に伝えていなかったことや、搭乗予定だったロシア政府関係者2人が最終的に乗らなかったことなどの点を挙げ、「情報が隠ぺいされている」との見方を示しました。この墜落をめぐっては、ウクライナ側が国際的な調査を求めています。 |
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●ロシア主力戦車を「一瞬で灰燼に帰す」ウクライナ軍ドローン攻撃 1/27
ウクライナ南部と東部の約965キロにわたる戦線での戦闘で、損失が拡大しているロシア。1月23日には、東部ドネツク地方での激しい戦闘で、ロシア軍の主力戦車T-72B3が破壊される様子を捉えた動画が、ウクライナの第10軍団によって撮影された。ドローン攻撃によってロシア軍戦車が大爆発を起こし、一瞬で粉々に砕け散る瞬間の動画は、SNSを通じて拡散されている。 ウクライナ第10軍団が「朝の挨拶」と称したこの攻撃は、FPV(一人称視点)ドローンを使って行われた。オープンソース・インテリジェンス(公開情報を分析して諜報活動を行うこと)の専門サイト「オシント・テニクカル」はX(旧Twitter)で、この攻撃により「壊滅的な弾薬の爆発」を引き起こしたと説明した。 ウクライナ国防省もXでこの映像を公開し、ロシアの戦車が「FPVドローンの攻撃を受け、一瞬にして灰じんに帰した」と述べた。 オシント・テニクカルによれば、この映像はドネツク州で撮影されたものだ。同州は2014年以降、ロシアとウクライナとの紛争の中心地となっており、2022年2月にロシアによる本格的な侵攻が始まってからは激しい戦闘が繰り広げられている。 第10軍団が現在活動している正確な位置は明らかにされていない。しかし、ウクライナ中部ポルタバに本部を置くこの部隊は、同国が昨夏に実施し、失敗に終わった南東部での反転攻勢に参加し、ザポリージャ州とドネツク州で戦ったことが知られている。 ●ウクライナ軍は春に向けて挽回の準備を進める ウクライナ軍は、昨夏の作戦の失敗を受けて、「積極的防衛」に転じている。弾薬が不足し、欧米諸国からの支援は停滞し、ロシア軍が疲弊している兆候もない中、冬から春先にかけて挽回する準備をしている。 対するロシア軍は、冬に入ってからも新たな領土を目指して前進している。ドネツク州の要衝アウディーイウカ(旧アフディフカ)を孤立させ、占領しようとしている一方、破壊されたバフムト周辺では漸進的な前進を続けている。 ロシア軍の死傷者は多数に上っているとみられる。英国防省は先月、高い消耗率が続いていることは、「2022年9月の予備役の『部分動員』以来、ロシア軍が劣化し、質より量の大衆軍に移行していることを示唆している」と指摘した。 ●ロシア軍の死傷者はすでに37万人超か ウクライナは1月24日、新たにロシア軍兵士840人を「排除」したとXで発表。2022年2月以降のロシア軍の死傷者は、37万8660人に達したとしている。 また、新たには破壊した戦車が13両(ロシアによる侵攻以来、計6227両)、装甲戦闘車両が31両(同1万1579両)、大砲が61門(同9008門)だと明らかにした。 ロシア政治アナリストでフレッチャー法外交大学院の客員研究員パベル・ルジンは、ロシア軍は戦場で粘り強さを見せているが、「2022年2月以降、致命的な戦略的惨事に陥っている」と本誌に語り、その結果、「何十年にもわたって弱体化するだろう」と指摘している。 |
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●「米中は衝突防ぐ必要ある」と米高官 1/27
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、中国の王毅外相との会談で「米中は競争関係にあるが、対立や衝突に発展するのを防ぐ必要がある」と強調した。 |
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●レニングラード解放80年で献花=ロ大統領、ウクライナ継戦訴え 1/28
ロシアのプーチン大統領は27日、第2次大戦でナチス・ドイツに包囲されたレニングラード(現サンクトペテルブルク市)の完全解放から80年を迎え、市郊外に新たに完成した犠牲者の追悼施設に献花した。大統領府が発表した。 献花したのは「ナチスのジェノサイド(集団虐殺)被害に遭ったソ連市民」の追悼施設。プーチン政権は、ウクライナのゼレンスキー政権を「ナチス」と一方的に決め付け、侵攻の口実にした経緯があり、作戦継続を国民に訴える意味合いもありそうだ。式典には、侵攻に協力しているベラルーシのルカシェンコ大統領も同席した。 |
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●ロシア、ウクライナ侵攻を正当化 レニングラード解放80年 1/28
第2次大戦でナチス・ドイツに包囲されたソ連のレニングラード(現サンクトペテルブルク)の解放から80年となった27日、プーチン大統領はロシア北西部レニングラード州での慰霊碑落成式で演説し、ウクライナの政権が「ヒトラーの共犯者であるナチス親衛隊を称賛している」と述べ、侵攻を正当化した。 プーチン氏はウクライナ政権を「ネオナチ」と繰り返し主張してきた。演説で「欧州の多くの国が『ロシア嫌悪』の国策を推進している」と批判した。 式典にはベラルーシのルカシェンコ大統領が参列した。 レニングラードは1941年9月から包囲されて補給路を断たれ、44年1月の解放までに60万人以上とされる死者が出た。 |
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●プーチン大統領 第2次大戦の激戦地でウクライナ侵攻継続を強調 1/28
ロシアのプーチン大統領は、第2次世界大戦でナチス・ドイツとの激戦地となったサンクトペテルブルクの近郊を訪れ、一方的にウクライナをナチズムに重ねて進めてきた軍事侵攻を継続する姿勢を改めて強調しました。 かつてレニングラードと呼ばれたロシア第2の都市サンクトペテルブルクは、第2次世界大戦中、ナチス・ドイツにおよそ900日間包囲され、数十万人の犠牲が出た激戦地で、ソビエト軍が一帯を解放したとされる日から80年となった27日、各地で記念行事が行われました。 プーチン大統領は戦没者の墓地に花を供えたあと、新たに設けられた慰霊碑を訪れあいさつしました。 この中でプーチン大統領は、ソビエト軍の功績をたたえるとともにウクライナに触れ「われわれは、ナチズムを食い止め、完全に根絶するためあらゆることをする」と述べ、一方的にウクライナをナチズムに重ねて進めてきた軍事侵攻を継続する姿勢を改めて強調しました。 一連の日程の途中からはロシアと同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領も合流し、あいさつの中で、両国が共有する大戦の歴史に触れるなど、ロシアと連携していく姿勢を印象づけました。 プーチン政権は、第2次世界大戦でソビエトが多くの犠牲を出しながらも勝利したことを強調し、各地で記念行事を大々的に行っていて、国民の愛国心に訴えながら軍事侵攻を継続する姿勢に理解を求めるねらいがあるとみられます。 |
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●韓国 対ウクライナ支援警告のロシアに「今後の動向が重要」 1/28
ロシアが韓国の対ウクライナ支援に関して「無謀な行動」のせいで韓ロ関係が崩壊しかねないと警告したことに対し、韓国の外交部当局者は28日、「今後のロシアの関連動向が非常に重要だと警告する」と述べた。 ロシア外務省のザハロワ報道官は26日の記者会見で、韓国の国防トップが対ウクライナ軍事支援の必要性に言及したとして、「友好的だったロシアとの関係を崩壊させかねない無謀な行動について韓国政府に警告する」と述べた。 韓国の申源G(シン・ウォンシク)国防部長官はメディアのインタビューで、韓国政府の対ウクライナ支援が人道主義的・財政的な支援に制限されていることについて「個人的には全面支援が必要だと考えているが、政府の政策を支持する」と述べていた。 外交部当局者は「政府はウクライナに殺傷兵器を支援しないとの立場を堅持している」と強調。そのうえで「最近のロ朝間の軍事協力の動向と韓国の安全保障に及ぼす影響を綿密に注視している」と述べた。 |
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●米、ウクライナ戦略転換 領土奪還よりも侵攻抑止に注力 1/28
27日付米紙ワシントン・ポストは、バイデン米政権がウクライナ支援を巡り、ロシアが占領した領土の奪還よりも、新たな侵攻を抑止することに注力する戦略を策定していると報じた。ウクライナによる昨年の反転攻勢で期待した戦果を得られなかったことで方針を転換した。長期的な戦力強化や、経済基盤の立て直しに重点を置く。 バイデン政権は今春、10年先までを見据えた支援策を公表する。11月の米大統領選でウクライナ支援に否定的な共和党のトランプ前大統領が再選される可能性も見据え、米国の支援を将来も保証する狙いもある。 ウクライナ軍は昨年6月に反転攻勢に出たが不本意な結果に終わった。 |
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●ドイツ首相、ネオナチの台頭を警告 アウシュヴィッツ解放から79年 1/28
ドイツのオラフ・ショルツ首相は「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」にあたる27日、台頭する極右過激派への懸念を表明した。 ショルツ首相は、「ネオナチとその闇のネットワーク」に警戒し、人種差別や反ユダヤ主義と戦うよう国民に呼びかけた。 ナチス・ドイツのアウシュヴィッツ強制収容所が旧ソ連軍によって解放されてから79年を記念するショルツ氏の演説は、事前に収録されたもの。その中でショルツ氏は、「ネオナチとその闇のネットワークについて常時、新しい報告がある。それと同時に、右派のポピュリストが台頭し、恐怖をあおり、憎悪をまき散らしている」と語った。 「しかし、このような事態は、ただ受け入れるしかないような、そんなものではない」と首相は力説し、極右勢力に対抗し、ドイツの民主主義を守るために立ち上がるよう、ドイツ国民に呼びかけた。 「我が国はいま立ち上がっている。何百万人もの市民が、民主主義、そして互いへの敬意と思いやりを支持し、街頭に繰り出している。結局のところ、それこそが大事だからだ。民主主義者の結束こそ、民主主義を強くする。今まさにそうしているように、公の場で自信を持ってそれを示するのは、気分がいいことだ」 ショルツ首相はまた、急進右翼政党「祖国」(旧ドイツ国家民主党)への資金提供を削減する画期的な裁判所の判断を歓迎した。 ドイツの憲法裁判所は24日、「祖国」について、ドイツの政党が合法的に受けている国家からの資金提供や税制上の優遇措置をこれ以上受けられないようにすべきだとの判断を下した。 ドイツが党活動を禁止することなく、国からの財政支援を打ち切るケースは、今回が初めて。 ドイツでは極右に反対する抗議行動が相次いで起きており、デュッセルドルフでは27日、数千人がデモ行進に参加した。 これは、難民排斥を掲げる極右野党「ドイツのための選択肢(AfD)」の幹部が外国にルーツを持つ市民の強制送還をめぐる話し合いに加わったとの報道を受けてのもの。 ドイツは現在、複数の極右政党の党活動を禁止するかどうかの議論を進めている。 デモ参加者たちは、24日の裁判所の判断が、国内で2番目の支持を集めるAfDの支持率上昇に対処するための前例になることを期待している。 AfDの支持率は、全国的には20%強で2位だが、今年中に重要な地方選挙が行われる東部3州では30%をわずかに上回り1位となっている。 |
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●来月9日に米独首脳会談、ウクライナ支援再確認へ=ホワイトハウス 1/28
米ホワイトハウスは27日、バイデン大統領が2月9日にドイツのショルツ首相とワシントンで会談すると発表した。ウクライナへの強力な支援を再確認するとしている。 米独首脳は、中東における緊張激化を防ぐ取り組み、イスラエルの自衛権に対する揺るぎない支持、パレスチナ自治区ガザでの人道支援の強化と市民の保護についても話し合う見通し。 ドイツ政府からコメントは出ていない。 |
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●米独首脳、2月9日に会談へ 中東、ウクライナ情勢協議 1/28
米ホワイトハウスは27日、ドイツのショルツ首相が訪米し、2月9日に首脳会談を行うと発表した。ロシアによるウクライナ侵攻や、パレスチナ自治区ガザの情勢を協議。7月に米ワシントンで開催する北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に向けた調整も行う。 ジャンピエール大統領報道官は声明で「両首脳はウクライナの国土と国民の防衛に対する確固たる支持を再確認する。中東情勢悪化を防ぐ努力、イスラエルの自衛権に対する揺るぎない支持、ガザでの救命支援と民間人の保護強化の必要性について話し合う」とした。 |
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●ウクライナ国防省高官、軍需企業幹部と59億円横領 砲弾調達巡り 1/28
ロシアの侵攻を受けるウクライナの情報機関・保安局(SBU)は27日、砲弾の調達を巡り、国防省高官と軍需企業幹部による総額約15億フリブナ(約59億円)の横領が発覚したと発表した。同国では汚職体質の改善が長年の課題で、政府が対策強化を進めている。汚職の継続は、欧米による支援の支障となる懸念がある。 SBUの発表によると、国防省と軍需企業「リビウ工廠(こうしょう)」は侵攻開始から半年後の2022年8月、砲弾10万発の調達契約を締結。だが、砲弾が納入されないまま購入費は国防省から前払いされ、一部は国外の軍需企業に送金された。事件に関与したとして、政府当局は国防省と同社の在職者を含む計5人に対し、法的手続きの第1段階となる通知を出した。うち1人は出国しようとして拘束された。 ウクライナでは中央・地方両政府の汚職体質がソ連崩壊による独立以来の問題で、欧州連合(EU)は汚職対策強化を同国の加盟条件に挙げる。昨年12月のEU首脳会議では、ロシア寄りの立場をとるハンガリーのオルバン首相が「ウクライナは汚職対策などの基準を満たしていない」として、加盟交渉開始に反対した。欧米のウクライナ支援の障害にもなっている。 ウクライナ政府当局は汚職取り締まりを強化し、政府高官の解職が相次ぐ。昨年8月には、徴兵逃れの希望者から賄賂を受け取って国外脱出を支援した疑いで、州徴兵事務所の責任者である軍事委員が全州で解任された。軍関連で相次ぐ汚職から、同9月にレズニコフ国防相が解任された。 ゼレンスキー大統領は昨年8月、汚職関連で112件の刑事手続きが進められていると明らかにした。国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」は、腐敗の少なさを示す22年の「腐敗認識指数」(昨年1月発表)で、ウクライナを180カ国・地域中116位と位置付けた。 |
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●前線でロシア軍の攻勢続く ウクライナ軍報道官らが報告 1/28
ウクライナ軍報道官らによると、同国各地の前線で最近、ロシア軍が攻勢をさらに強めている。 特に、ウクライナ東部ハルキウ州とルハンスク州の境界沿いで激しい戦闘が続いている。 ウクライナ軍は先日、ハルキウ州クロフマルネから防衛部隊を撤収させ、より有利な高台に移したと発表した。 ウクライナの陸軍参謀本部はフェイスブックへの投稿を通し、クロフマルネの北西と南方の集落でロシア軍から13回の攻撃を受け、対戦したと報告した。 この地区の戦闘について、陸上部隊司令部の報道官は国内テレビに「敵軍は大量の砲撃に集中して前進を図っている」と述べた。 集落は南北に走るオスキル川の近くに位置する。6カ月間に及ぶロシア軍の占領を経て、2022年夏にウクライナ軍が解放していた。 また、ちょうど1年前にロシア軍による冬季攻撃の舞台となった東部ドネツク州バフムート周辺でも、ウクライナ軍部隊が攻撃にさらされている。 同市の南西には、ウクライナ軍が反攻作戦で昨年9月に奪還した二つの集落がある。その周辺の状況について、現地の軍曹は「敵軍が部隊を集結させている。連日攻撃を仕掛けてくる」と述べた。ロシア軍が持つドローン(無人機)には暗視装置搭載型も含まれ、ウクライナ側よりはるかに数が多いという。 ウクライナ軍は昨夏、南部ザポリージャ州でも反攻作戦を実行し、ロシアとクリミア半島を結ぶ陸路の寸断を目指してオリキウから南へ進軍したものの、わずか20キロで断念していた。 軍報道官によると、ロシア軍は同州でも現在、領土の奪還を図っている。同報道官は、ロシア軍が2日連続で1日に50件の戦闘を仕掛けるなど、全方角で攻勢を強めていると報告した。 |
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●軍需協力や侵攻現状を協議 プーチン氏、ベラルーシ大統領と 1/29
ロシアのプーチン大統領は28日、ベラルーシのルカシェンコ大統領とロシア北西部サンクトペテルブルクで会談した。軍需産業分野での協力やロシアが続けるウクライナ侵攻の現状などを協議した。タス通信が伝えた。 両首脳は会談に先立ち、ロシアのボストーク南極観測基地の新しい越冬施設稼働式にオンラインで参加した。 ルカシェンコ氏は、第2次大戦中にソ連に侵攻したナチス・ドイツ軍に2年以上包囲され、空爆や飢餓で多数の市民が死亡したレニングラード(現サンクトペテルブルク)解放80年を記念した27日の行事にもプーチン氏と共に出席。欧米と対立を深めるロシアを支持する姿勢を改めて示した。 |
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●プーチン大統領 侵攻継続の姿勢 ベラルーシと対欧米で連携強化へ 1/29
ロシアのプーチン大統領は第2次世界大戦のナチス・ドイツとの激戦地を訪れ、「ナチズムを根絶する」などと、ウクライナ侵攻を一方的に正当化し継続する姿勢を改めて示しました。 プーチン大統領は27日、第2次世界大戦中にナチス・ドイツに包囲された旧レニングラード、いまのサンクトペテルブルクの解放80年に合わせ新たに建てられた慰霊碑を訪れました。 プーチン氏は式典での演説で、ウクライナ政権は「ヒトラーの共犯者たちやナチス親衛隊を称賛している」と一方的に主張したうえで、「我々はナチズムを食い止め、完全に根絶するためにあらゆることをする」と述べ、ウクライナ侵攻を継続する姿勢を改めて示しました。 式典には同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領も出席。両首脳は28日に会談を行い、両国の結びつきが一層強まっていると強調しました。 29日にはロシアとベラルーシによる「連合国家」のさらなる統合に向けた会議も行われるとして、ウクライナ侵攻などで対立を深める欧米への対抗で連携を強めていく狙いがあるとみられます。 |
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●対ロシア強硬派で決選投票へ フィンランド大統領選 1/29
フィンランドで28日、昨年4月の北大西洋条約機構(NATO)加盟後初となる大統領選が実施された。即日開票の結果、いずれも対ロ強硬で、得票率トップの与党第1党の国民連合、アレクサンデル・ストゥブ元首相(55)と、2位の緑の党、ペッカ・ハービスト前外相(65)が2月11日の決選投票に進むことが決まった。いずれの候補も当選に必要な過半数の得票に届かなかった。 フィンランドはロシアと約1300キロの国境を接する。ロシアによるウクライナ侵攻開始後に軍事的中立から路線転換し、NATOに加盟した。 |
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●ロシア大統領選 唯一の“反戦”候補「戦争終結が私の課題」集会に支持者も 1/29
3月のロシア大統領選挙に向けウクライナ侵攻反対を掲げて立候補を目指す候補が28日、モスクワで集会を開き、反戦を支持する市民が集まりました。 会場は、非常にわかりにくいイベントホールに設定されました。この場所は28日の朝まで秘密になっていました。 大統領選の候補予定者の中で唯一、ウクライナ侵攻反対を掲げるナジェージュジン氏の集会には、およそ250人が集まりました。 集会の参加者「戦争には反対。私は外交と交渉を望む」「私は同じ考えを持つ人とともにいたい。ここにいる人たちとはほぼ同じ考え(反戦)を持っていると思う」 ナジェージュジン氏「人が死ぬのは良くない。戦争を始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しい。終わらせるのが、私の大統領一期目の課題だ」 ナジェージュジン氏は、正式に立候補するために必要な署名を31日に提出する予定で、これが認められれば、反戦を求める声の受け皿になる可能性があります。 |
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●ウクライナ侵攻、世界大戦に発展も ゼレンスキー氏が支援訴え 1/29
ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、ウクライナでの戦闘が第三次世界大戦に発展する恐れがあると述べ、西側諸国に支援を求めた。 ドイツの公共放送ARDとのインタビューで、「ショルツ首相はこのリスクを認識しているようだ」と述べ、ロシアが北大西洋条約機構(NATO)加盟国を攻撃すれば「第三次世界大戦の始まり」になると訴えた。 ドイツが巡航ミサイル「タウルス」のウクライナ供与を計画していないことに失望しているかとの質問には、「ウクライナへの最初の侵攻の際にドイツが果たすべきだった役割」を果たしていないことにのみ失望していると答えた。 ロシアによるウクライナ侵攻の前段となった2014年のクリミア編入にも言及し、西側の鈍い反応はドイツだけの問題でなく、欧米の指導者の問題だと述べた。 |
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●昨年の韓国自動車輸出好調…276万台で8年ぶり最多 1/29
昨年韓国の自動車メーカーの輸出量が8年ぶりの最多を記録した。北米と欧州市場を中心に輸出が大きく膨らんだことがわかった。 韓国自動車モビリティ産業協会(KAMA)が28日に明らかにしたところによると、韓国自動車メーカー6社(現代自動車、起亜、韓国GM、KGモビリティ、ルノーコリア、タタ大宇)が昨年196カ国に輸出した自動車台数は276万3499台と集計された。2022年に197カ国に輸出した230万333台より20.1%増加した数値だ。韓国の自動車メーカーが年間270万台以上を輸出したのは2015年の297万4114台から8年ぶりだ。 地域別に見ると、北米が154万9164台で最も多かった。次いで欧州連合(EU)が43万5631台、中東が21万9530台、オセアニアが18万7118台の順だ。単一国別では米国が130万5991台で最多を記録した。次いでカナダが21万8721台、オーストラリアが16万9205台、英国が8万7064台の順となった。 主要貿易相手国である中国は2571台、日本は1506台で3000台も売れなかった。日本はトヨタを筆頭とした自国ブランドの販売比率が高く、中国は現地自動車メーカーの技術力が向上し韓国の自動車メーカーが有利な位置を先取りするのが難しくなったためだ。ウクライナと戦争中のロシアに輸出した自動車もやはり前年比94.3%急減の808台にとどまった。 輸出額も過去最高を記録した。16日に産業通商資源部が発表した昨年の自動車輸出額は709億ドル(約10兆円)で、2022年に記録した最大輸出額の541億ドルを30%以上上回った。産業通商資源部はエコカー輸出が増え、輸出単価が上昇したと説明した。 KAMA関係者は「今年も昨年と同水準の輸出の流れが続くだろう」としながら275万台を輸出すると予想した。 保守的な見通しも出ている。現代経済研究院のチュ・ウォン研究室長は「最大の米国市場の消費心理が期待ほど早く回復しないと予想する。昨年ほど自動車輸出は良くないだろう」と予想した。続けて「今年は収益性を中心に目標を保守的にとらえなければならない」と付け加えた。 |
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●中国に米大統領補佐官「ロシアと密着する北朝鮮に中国が影響力行使を」 1/29
北朝鮮の軍事行動の可能性に対する警告音が相次いで聞こえる中、米国のジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が、中国の王毅外相(共産党中央外事弁公室主任)と会談し、北朝鮮に対する中国の影響力の行使を求めた。 ホワイトハウスは、タイのバンコクで26〜27日に会ったサリバン補佐官と王外相が、ウクライナ戦争や中東、台湾、北朝鮮、南シナ海、ミャンマーなどグローバル及び地域的安全保障問題について、「率直かつ実質的で、建設的な」議論をしたと、27日に明らかにした。 米政府高官は会談に関する電話ブリーフィングで、米国は北朝鮮のミサイル発射について「深く懸念している」と明らかにした。また「ロシアとの関係を強化するミスター・キム(金正恩国務委員長)の意図について深く懸念している」とし、「中国の北朝鮮に対する影響力を考慮し、このような問題を直接提起した」と明らかにした。朝ロは9月の首脳会談前後に急速に密着しており、米国はウクライナとの戦争で、北朝鮮がロシアを支援し砲弾とミサイルを供給していると明らかにした。 同高官は「最近、中国が北朝鮮に影響力を建設的に行使しておらず、ロシアは北朝鮮に対する影響力を拡大している」と語った。また「だが、中国は明らかに影響力を維持しており、我々は中国が北朝鮮を再び非核化の道へと導くために影響力を行使すべきだという期待を持っている」と述べた。さらに、平壌(ピョンヤン)を訪問した中国の孫衛東外務次官が北京に戻ってきたら、米国が外交チャンネルを通じて接触する予定だと明らかにした。孫外務次官は26日、10日前にモスクワでロシアのウラジーミル・プーチン大統領などに面会して帰国した北朝鮮のチェ・ソンヒ外務相と面会した。 これまで米国は、中国が北朝鮮の国連安保理決議違反を制止しないとして、不満をあらわにしてきた。今回は、平壌を訪問した中国の外務次官との接触計画まで明らかにし、北朝鮮に対する積極的な影響力行使を求めた。孫外務次官は平壌で朝中関係について協議し、朝ロ関係の動向を把握した可能性がある。 ホワイトハウスは、昨年3回会談したサリバン補佐官と王外相の今回の会談は、同年11月の米中首脳会談で合意した軍事チャンネルをはじめとする意思疎通ラインの維持と「競争の責任ある管理」のためのものだと説明した。今月13日、台湾総統選で独立志向の民進党の頼清徳候補が当選した後に開かれた今回の会談では、いつものように台湾問題も重要議案として取り上げられた。ホワイトハウスはサリバン補佐官が「台湾海峡の平和と安定維持の重要性を強調した」と伝えた。米政府高官は、サリバン補佐官が台湾独立を支持しないとして「一つの中国」の原則を再確認する一方、どちらか一方による現状変更に反対するという立場を再度明らかにしたと伝えた。 同高官はまた、サリバン補佐官は親イラン勢力のイエメンのフ―シ派が紅海で船舶を攻撃することを、中国が「イランに対する実質的影響力を使用」し、中止させるよう求めたと語った。 ホワイトハウスは、サリバン補佐官と王外相が2日間にわたる12時間の会談で、首脳会談の合意どおり、今春に人工知能(AI)の危険性を減らすための対話チャンネルを設ける問題についても話し合ったと明らかにした。また、米中は首脳会談の合意にともない、今月30日に中国産の麻薬性鎮痛剤の原料であるフェンタニル問題を解決するための作業部会を発足させることにした。 |
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●ハマスのテロに国連機関職員が関与か?日本政府が資金拠出停止… 1/29
国連機関の職員が、2023年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエルの奇襲に関与した疑惑を受け、日本政府も資金拠出の一時停止を発表した。 国連のグテーレス事務総長は、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の職員12人が、ハマスのテロ攻撃に関与した疑惑で、9人が解雇されたほか、1人がすでに死亡、残り2人の身元を特定中だとしている。 これを受け、各国で資金拠出を停止する動きが相次ぎ、外務省も28日、UNRWAへの資金拠出を一時停止すると発表した。 日本は、UNRWAに対し2022年におよそ3,000万ドルを拠出するなど、世界で6番目に多く支援をしている。 |
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●WP「米国、ウクライナ支援戦略転換を検討…領土奪還から防衛戦に」 1/29
米国政府がウクライナ支援戦略の目標を「領土奪還」から「防衛戦支援」に転換する計画という外信報道が出てきた。ウクライナ戦争が3年目に入り込み長期的消耗戦になると予想されることからこれに伴う戦略変化だとみられる。 ワシントン・ポストは26日、米国政府関係者の話として米国務省がこうした方向で「ウクライナ支援10年計画」を構想していると報道した。ある高位当局者によると、米政府はひとまずウクライナが戦場で現状を維持できるようにすることを目標にするものの、今年末までに戦闘力を強化し戦場で別の軌道に乗れるようにする計画という。 米国務省はこうした新しい戦略を今春発表する予定という。具体的には「戦闘」「戦略構築」「復興」「改革」の4段階で、すべての支援は現在議会で係留中の610億ドル(約9兆円)規模のウクライナ支援案が通過されることを前提とする。 まず戦闘部門では砲弾やドローン支援とともに、より多くの防空システムを構築する必要があるだけにこれを中心に支援案が組まれるものとみられる。戦略構築部門ではウクライナの陸海空に対する安全保障を約束し防衛産業を育成する内容が盛り込まれると予想される。このほか鉄鋼や農業など主要産業の回復、防空強化案、腐敗根絶案など社会全分野にわたって復興・改革できる案も幅広く盛り込まれるというのが同紙の報道だ。 ある高位当局者は同紙に「米国が手をこまねいているという意味ではない。小都市などで領土収復の試みがあるものでミサイル発射なども続くだろう」と説明した。 米国の戦略変化はこれまでウクライナが大々的な支援を受けロシアが占領した東部・南部地域を収復しようとしたのに、明確な成果を上げられていないことに伴った「修正」との分析が出ている。全方向への攻撃をこれ以上持続できないということに意見が集まったということだ。 ウクライナもやはりこうした現実を受け入れる雰囲気だと同紙は説明した。ウクライナのゼレンスキー大統領は「単純防衛が計画ではない」と話しているが、実際には米国の支援が以前と同じではない状況で以前のように攻勢的に出るのが難しいということをわかっているという意味だ。 ウクライナ国内の雰囲気も混乱している。ロイター通信は27日、ウクライナ保安局(SBU)が砲弾購入契約と関連して約15億フリブニャ(約57億円)を横領した容疑で元国防省高官ら5人の立件を告知したと報道した。 米国の戦略変更に対し懸念を示す声もあるが、結局戦争を終わらせるには「交渉」が必要だということで政府高位当局者の意見が集まっているとワシントン・ポストは伝えた。 一方、ロシアのプーチン大統領は27日にサンクトペテルブルクで開かれた第2次世界大戦記念館除幕式で「多くの欧州の国で『ロシア嫌悪』が国の政策として推進されている」と主張した。「いまロシアが向き合っている侵略状況は1945年にナチズムは敗北したが根絶されてはいなかったという傍証」としながらだ。 プーチン大統領は現在ウクライナ政府をナチス反逆者の後裔と規定し、これをウクライナ侵攻の名分のひとつとして掲げている。28日は第2次大戦当時にソ連軍がナチスドイツ軍を撃退しレニングラード(現サンクトペテルブルク)を解放した日だ。 同紙は「プーチンはトランプ前大統領が当選する場合、ウクライナに対する支援を撤回する可能性を念頭に置いている。終戦に向けた対話に真摯な関心を持たないだろう」と分析した。 |
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●北朝鮮 潜水艦発射巡航ミサイル 発射実験 日本海上で28日 1/29
北朝鮮は、キム・ジョンウン(金正恩)総書記の立ち会いのもとで、28日に日本海上で潜水艦発射巡航ミサイルの発射実験を行ったと29日朝に発表しました。 29日付けの北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、潜水艦から発射する新型の戦略巡航ミサイル「プルファサル」の発射実験が28日、行われたと伝えました。 実験にはキム・ジョンウン総書記が立ち会い、ミサイルは日本海上を飛行して目標の島に命中したとしています。 実際にミサイルが潜水艦から発射されたかどうかは明らかにしていません。 公開された画像では、ミサイルが白い煙をあげて海上を飛行する様子が写され、飛行時間は2時間余りだったとしています。 キム総書記は、実験の結果に満足した上で、海軍の核武装化を実現し、核抑止力の多様化を進めるように指示したということです。 韓国軍は28日、北朝鮮が東部シンポ(新浦)付近の海上から巡航ミサイル数発を発射したとしていて、北朝鮮の29日朝の発表は、これを指すものとみられます。 また「労働新聞」は、キム総書記が原子力潜水艦の建造事業を確認し、建造に関連した協議を行ったと伝えています。 北朝鮮は先週も新型の戦略巡航ミサイル「プルファサル」の発射実験を行ったと発表したばかりで、戦術核弾頭の搭載を想定した巡航ミサイルの開発を進めています。 |
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●ウクライナ軍総兵力88万人 大統領が言及 1/29
ウクライナのゼレンスキー大統領は、現在のウクライナ軍の総兵力は88万人だと明らかにした。29日に公開されたドイツ公共放送ARDのインタビューで述べた。ロシアのプーチン大統領は昨年12月の大規模記者会見で、ウクライナの戦闘地域に「61万7000人が展開している」と述べていた。 ウクライナの海軍司令官は29日までに、欧米が供与する武器を使ってロシア領内を攻撃することが認められれば、早期に戦争に勝利できるとの認識を示した。英スカイニューズ・テレビが27日報じたインタビューで「必要な戦闘力や敵のインフラ破壊能力を手にできれば、それだけ早く勝てる」と語った。 欧米はロシアとの戦闘拡大を懸念し、供与した武器をロシア領内に使わないよう求めてきた。ウクライナが昨年6月に開始した反転攻勢は膠着し、東部ではロシア軍が優位との見方も出ている。 |
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●プーチン氏「圧勝」へ運動加速 4日間で14行事、新年初日から始動 1/30
ロシアのプーチン大統領が3月の大統領選での「圧勝」に向けた選挙運動を加速させている。年明けの1月1日に早速始動し、ロシア各地を精力的に訪問。イベント出席などで自身を最大限に露出し、ウクライナ侵攻の正当性とロシアの発展を訴えている。ただ、再選が既定路線とは言え、ロシア有力メディアの報道はプーチン氏に極端に偏り、他候補との「不公平」な状況も鮮明だ。 「敵(ウクライナ)の占領地で起こったのは集団殺害であり、彼ら(ウクライナと米欧)が始めた戦争を止めようとしているのだ」 プーチン氏は26日、サンクトペテルブルクで、ウクライナ侵攻に参加した学生らとの懇談でこう述べ、侵攻の正当性を強調した。プーチン氏はその後の知事らとの会議で、「戦地に行った学生らが、将来の国のエリートになるべきだ」とたたえた。さらに28日にかけては、原子力砕氷船の建造開始や、ナチス・ドイツによる犠牲者の慰霊碑建立の式典などに参加。25日のカリーニングラード訪問を含めれば、4日間で計14の行事をこなした。 プーチン氏は、3月の大統領選に向け、侵攻に参加する兵士に新年初日から会うなど、異例の態勢で臨んでいる。大統領としての公務だが、選挙を意識した動きなのは明らかだ。 |
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●ウクライナ軍総司令官、解任報道 大統領と摩擦続く 政府は情報否定 1/30
複数のウクライナメディアは29日、消息筋の話として、同国軍のザルジニー総司令官の解任が決定されたと報じた。一方、ウクライナ国防省は同日、「それは真実ではない」と交流サイト(SNS)に投稿し、同氏の解任を事実上否定。ウクライナメディア「ウクラインスカヤ・プラウダ」も同国のニキフォロフ大統領報道官がザルジニー氏の解任を否定したと伝えた。 ザルジニー氏を巡ってはこれまでも、ロシアとの戦争の方針などを巡ってウクライナのゼレンスキー大統領との見解の相違がたびたび指摘されてきた。 |
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●プーチン氏大統領候補者に登録 「反戦」掲げるナジェージュジン氏は支持拡大 1/30
ロシアの中央選挙管理委員会が3月の大統領選挙の候補者としてプーチン大統領を登録しました。 ロシアの中央選挙管理委員会は29日、プーチン氏が提出した30万人以上の署名を有効だと判断し、プーチン氏を全会一致で「無所属」候補として登録しました。 ウクライナでの特別軍事作戦を継続するうえで、選挙を通じて強い国民の支持を得ていると示したい考えです。 政党から立候補する場合は、署名の提出は不要で、共産党や自由民主党などからすでに3人が登録されています。 プーチン氏は4人目の候補者となります。 一方、「反戦」を掲げる元下院議員のナジェージュジン氏が候補者として登録されるかに注目が集まっています。 ナジェージュジン氏は、ウクライナへの侵攻を「プーチンの致命的な失敗」だと指摘し停戦交渉を呼び掛けています。 各地で署名を希望するロシア人の長蛇の列ができるなど急激に支持を広げていて、期限の31日までに必要とされる10万件以上の署名を提出する予定です。 独立系メディアはロシア大統領府は「反戦」ムードの広がりを警戒し、署名の不備を理由にナジェージュジン氏の登録を拒否するよう干渉する方針だと報じています。 ナジェージュジン氏はすでに20万件以上の署名を集めていて、不備のない署名を厳選して手続きを行う方針ですが、登録が拒否された場合も、署名者たちに抗議集会の開催を呼び掛けるなどしてプーチン政権と対峙していく構えです。 |
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●ロシア プーチン大統領 3月の大統領選挙 候補者に正式登録 1/30
ことし3月に行われるロシアの大統領選挙をめぐり、中央選挙管理委員会はプーチン大統領が必要な有権者の署名を集めたとして大統領選挙の候補者に正式に登録しました。プーチン氏の陣営は国民からの広い支持をアピールし、公式に選挙活動を開始するとしています。 ことし3月に行われるロシアの大統領選挙をめぐり、プーチン大統領は先月、立候補する意向を表明し、無所属の立場から立候補を目指して正式な候補者登録に向けた署名活動を行っていました。 プーチン氏の陣営は今月22日、立候補に必要な30万人以上の有権者の署名を提出し、これをうけて中央選挙管理委員会は29日、プーチン氏を候補者に正式登録しました。 プーチン氏の陣営は、実際には必要な署名数の10倍以上を集めたとして国民からの広い支持をアピールし、公式に選挙活動を開始するとしています。 大統領選挙にはこれまでにプーチン氏のほか、「ロシア共産党」のハリトノフ下院議員や「ロシア自由民主党」のスルツキー党首などあわせて4人の候補者が正式に登録されていますが、通算で5期目となるプーチン氏の当選が確実視されています。 また、選挙には、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり、プーチン大統領の対応を批判するボリス・ナデジディン元下院議員が立候補する意向を表明して正式登録に向けた署名活動を行っていて、その動向が注目されています。 |
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●バイデンの存在薄くなる3年目のウクライナ戦争 1/30
●ゼレンスキーがアメリカに激怒した理由 日本ではあまり注目されなかったが、2024年1月16日、スイス東部ダボスで開催されていた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、ウクライナのゼレンスキー大統領が行った演説が国際的に大きな波紋を呼んだ。これまでにない強い調子でアメリカのバイデン政権を真っ向から批判したからだ。 キーワードは「エスカレーション」だ。それは、侵攻前も侵攻後もアメリカがつねにウクライナに言って来たのは、ロシアとの間で「エスカレーションを引き起こすな」という同じメッセージだった。 2022年11月、ロシアのミサイルを迎撃しようとしたウクライナ側の防空ミサイルとみられるものが逸れてポーランドに着弾した際も、アメリカ政府は関与していないウクライナに対し、「エスカレーションを引き起こすな」とお門違いの注意をしてきたという。 ゼレンスキー氏はアメリカからの、この「エスカレーションさせるな」発言について「プーチンに対し『あなたが勝ちますよ』と言っているようなものだ」と非難した。 では、なぜゼレンスキー氏がダボス会議という大舞台で、最大の軍事支援国であるバイデン政権に対しこれほどの非難をしたのか。 キーウの軍事筋によると、この背景には、ダボスでのバイデン政権からのある密かな提案がウクライナ側を激怒させたことがある。アメリカ政府高官がウクライナ側に対し、東部、南部の領土奪還を当面断念し、クリミア半島奪還に目標を絞れ、と言ってきたという。これにゼレンスキー氏が激怒したのだ。 ウクライナからすれば、2023年6月に開始した大規模反攻作戦が不発に終わった最大の要因は、アメリカがエスカレーション回避論でウクライナを押さえつける一方で、F16戦闘機など必要な武器を供与しなかったことだ。 キーウの希望通り、供与が実現していれば、2023年末までに全占領地を奪還できていたはずだ、との怒りが充満していた。 ダボスでのアメリカからの戦略変更提案が、これまで2年間溜まっていたバイデン政権への不満のガスに火をつけたようだ。 筆者は反攻開始以来、アメリカ政府とウクライナ側の間で続いていた反攻戦略をめぐる対立について、「ウクライナが奪還作戦実行で感じた『手応え』」などで伝えてきた。 東部ドンバス地方や南部ザポリージャ州、ヘルソン州で反攻作戦を続けているウクライナ軍に、南部に集中するようアメリカ軍が求めたのに対し、ウクライナ軍は東部奪還の失敗につながると一貫して拒否してきた経緯がある。 ●アメリカの戦略を疑い始めたウクライナ 実際問題として、ロシア軍はこの間、プーチン氏が厳命していた東部ドンバス地方の完全制圧のため猛攻を続けている。ウクライナ軍がこれを跳ね返すことができたのは、東部で十分な兵力を維持してきたためだとの自負がある。逆に言えば、アメリカによる戦略提案への懐疑があるのだ。 しかし、今回バイデン政権が打診してきたクリミア集中案は、キーウ側に対し、東部のみならず、南部の領土奪還作戦の延期を迫るものだった。これによって、ゼレンスキー政権のバイデン政権への不信感が一層深まった。 不信感を深めさせる材料はこれ以外にもあった。これまでウクライナの防衛支援をめぐる関係国会合で決まり、アメリカ国防総省が行うはずだった支援がホワイトハウスの意向で断念させられていた事実が漏れてきたからだ。 ウクライナの立場に寄り添う姿勢が目立っていたオースチン国防長官が長射程の地対地ミサイル「ATACMS」(エイタクムス)を供与するという提案を、ホワイトハウスが却下していたという。 先述の軍事筋は、こうした動きについて「アメリカ政権には統一された司令部は存在しない。自分たちの戦争とは思っていない」と指摘した。さらに「そろそろ戦争をやめたらどうか、とキーウに言ってくる準備を始めたのだろう」とも見る。 アメリカ有力メディアの中には、アメリカ側の新戦略案として、2024年は領土防衛に徹し、占領地奪還の攻勢に転じるのは2025年にすべきとの案があることを報じている。ホワイトハウスがウクライナ側に圧力を掛けるために意図的にリークしたのだろう。 しかし、2024年11月のアメリカ大統領選でバイデン氏再選が危ぶまれている状況で、2025年に攻勢に転じるとの戦略をウクライナに提示したとしても、真剣に受け入れられるはずはない。むしろウクライナには無責任な提案と映る。 なぜなら2025年1月にホワイトハウスの主になるのは、プーチン氏と良好な個人的関係があるとされるトランプ氏との見方が根強いからだ。 バイデン政権は約610億ドル(約9兆円)のウクライナ支援を含む緊急予算案の承認を議会に求めているが、共和党の反対で審議は難航している。共和党の背後にはトランプ氏の存在があるとも言われている。 ●欧州「自分たちでやるしかない」 そんなアメリカに冷ややかな視線を向け始めたのはウクライナだけではない。欧州も同様だ。 トランプ政権が再登場した場合、北大西洋条約機構(NATO)脱退の可能性を懸念している欧州では、ウクライナ対応を含めた今後の欧州全体の安全保障に関して、アメリカがもはや頼りにならないので自分たちでやるしかない、との機運が高まっている。 この動きを象徴するのが、イギリスによるウクライナとの2国間の安保協定の締結だ。各国がウクライナとの間で2国間の安保協定を締結する大方針自体は2023年7月のリトアニアのビリニュスで行われたNATO首脳会議で決まっていた。 この首脳会議では、ウクライナのNATO加盟に向けた明確なメッセージが出せなかったため、ウクライナ側の不満をなだめる代替策として、2国間の安保協定締結が決まっていた。 2024年1月、この安保協定の第1号として、キーウを訪問して調印したのがイギリスのスナク首相だ。ウクライナの安全保障に10年間コミットすることをうたったこの協定の肝は、将来ウクライナと停戦したロシアが停戦を破って、再び侵攻してきた場合の軍事支援を確約したことだ。 今後、ウクライナがロシアとの間で停戦交渉をするかどうかはわからない。しかし、この保障により、ウクライナは後顧の憂いなく、何らかの形でロシアとの停戦協定を結ぶ、という選択肢を確保することになる。 この2国間協定の交渉はドイツ、フランスとも行っている。仮にドイツとフランスも追随した場合、ウクライナの安全保障に与える意義は大きい。 NATOに未加盟のウクライナを支援するうえでの現在の法的根拠は、侵攻が国連憲章違反であるという1点のみだ。この2国間の安保協定体制が各国に広がれば、ウクライナを守る国際的条約体制がNATO加盟までの間とりあえずできることになる。 今回の安保協定の締結により、イギリスは欧州でウクライナ支援での明確なリーダーとなった。ワシントンと電話で協議することが多かったウクライナ政府高官が、今はロンドンに電話して相談するケースが目立って増えている。 ここで問題は、現時点ではウクライナにとって最大の支援国であるアメリカの動向だ。バイデン政権は2023年末までの段階でキーウとの間で安保協定の交渉を終える予定だったが、軍事筋によると、中断してしまったという。 ●欧州安保でのアメリカへの不安 こうした事象が指し示すことは何か。それは、欧州安保の保障者としてのアメリカの地位および信用度の低下である。 そのため欧州では、2国間安保協定以外にも「自らの平和は自らの手で守る」という覚悟を示す行動が広がっている。象徴的なのが2024年1月末にバルト3国やポーランドを主な舞台として始まった冷戦終結以来で最大規模といえる軍事演習だ。 ロシア軍による侵攻を想定したもので、9万人規模の部隊が参加する。NATO演習である以上、アメリカ軍部隊も参加するが、想定といい、演習場所といい、極めてリアルであり、従来の演習以上の危機感が伝わってくる。 2024年に入り、欧州各国の軍部からはロシアによる欧州攻撃の可能性を警告する発言が相次いでいる。ドイツのピストリウス国防相は、ウクライナ戦争がバルトなどに広がる可能性を指摘した。 イギリス軍高官も、現在のウクライナ情勢が第1次世界大戦やナチス・ドイツによる欧州侵攻の前夜に似ていると指摘。イギリス軍の兵力を倍増する必要性に言及した。 しかし、バルト3国やポーランドはウクライナと異なり、NATO加盟国である。NATO条約第5条には、加盟国の1つに対する攻撃は全加盟国への攻撃とみなす、とある。この条項を踏まえ、これまではロシアがアメリカとの直接の開戦を恐れて、バルト3国などを攻撃する事態はありえないとみられていた。 しかし、アメリカの支援を受けたウクライナの反攻をロシアが力で食い止めたことを受け、欧州の認識は大きく変わった。自国の軍事力に自信を持ったプーチン氏がNATO加盟国であるバルト3国でさえも侵攻の対象にするとの懸念が出始めたのだ。 トランプ政権再登場の可能性があるアメリカが、今後バルトが攻撃されても、ロシアとの戦争で自国の安全まで犠牲にする形で本当に守ってくれるのか、確信を持てなくなったからだ。 一方でウクライナにとって、2024年における最大の目標は何か。軍事面ではゼレンスキー政権が、バイデン政権の慎重姿勢をよそに改めて攻勢を掛ける可能性が相当ある。春には地上作戦開始に不可欠だったF16部隊がウクライナに到着する可能性があるからだ。 F16があれば、制空権を獲得し、南部などで地上作戦を開始できるようになる。目立った戦果を示すことで、ウクライナ軍の反攻能力を国際的に示すと同時に、ウクライナへの軍事支援継続に対する支持論を米議会でも高める政治的効果を狙うのではないか。 外交面でゼレンスキー政権の最大の目標は、2024年7月のワシントンでのNATO首脳会議で、ウクライナとの間でNATO加盟交渉に入ることが決まることだ。 ●ウクライナNATO加盟で米欧で論争も 2023年12月、欧州連合(EU)は、ブリュッセルで開いた首脳会議でウクライナの加盟交渉開始で合意し、EU加盟というウクライナの悲願実現へ道を開いたばかり。キーウとしては、NATOとの間でも加盟交渉開始にこぎつけ、正式な西側のメンバー入りを大きく前進させることを目指している。 このワシントンでの首脳会議で、バルト3国や北欧は交渉入りを支持するとみられる。一方でアメリカは反対すると予想されている。ウクライナへの寄り添い方をめぐり、米欧間で論争が起きる可能性も否定できない。 ロシアと北朝鮮との軍事協力の拡大も大きな懸念要素として急浮上してきている。先述のダボス会議では、侵攻をめぐりウクライナを支援する欧州諸国と、中立的姿勢を保つグローバルサウス(新興・途上国)の国々との間で、本音ベースでの議論も始まった。 このように2024年は単にウクライナ戦争のみならず、欧州安保や国際秩序全体をめぐる分岐点となる1年になりそうだ。2023年は先進7カ国(G7)議長国だった日本も、2国間の安保協定の締結も含め、引き続き積極的に関与しなければならない。 |
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●ハンガリー、承認に向け譲歩か EUのウクライナ支援 1/30
ハンガリーは29日、これまで拒んできた欧州連合(EU)のウクライナに対する500億ユーロ(約8兆円)の支援案の承認に前向きな姿勢を示した。EUは2月1日の緊急首脳会議でこの支援案の合意を目指しており、ほかの加盟国からの圧力が高まるなか、ハンガリーが譲歩に転じた可能性がある。 一方、ハンガリーのシーヤールトー外相は29日、ウクライナ西部ウジホロドを訪れ、同国のクレバ外相と会談した。両国は関係改善に向け首脳会談の開催を目指す方針で一致した。 ハンガリーのオルバン政権はロシアのプーチン政権と近いとされる。ロシアによるウクライナ侵攻後、ウクライナを支援するEUの足並みを乱してきた。昨年12月のEU首脳会議では500億ユーロ(4年間)のウクライナ支援を含む予算の見直しに反対。議決には全会一致が必要なため棚上げになった。 支援案は2月1日のEU首脳会議で再び協議されるが、オルバン首相の側近は29日、X(ツイッター)で、EUに対し27日に妥協案を示したことを明かした。そのうえでハンガリーは「ウクライナのためにEU予算を使うことに前向きだ」と表明した。 英紙フィナンシャル・タイムズは28日、ハンガリーが首脳会議で承認を拒んだ場合の報復措置が記されたEUの内部文書について報じた。文書には、ハンガリーに対するEU予算支出を長期的に停止する方針を公表することなどで市場の動揺や通貨の下落を誘い、同国経済に打撃を与える案がまとめられていた。 EU高官は「報じられた文書は加盟国間の実際の議論や計画を反映したものではない」としているが、EU内ではロシア寄りの姿勢を崩さないハンガリーへの強硬姿勢を求める声が強まっているとみられる。 EUの欧州議会は18日、昨年12月の首脳会議でウクライナへの支援案を拒んだハンガリーに対し「EUの戦略的利益を侵害する」などと批判する決議を採択。加盟国で構成する欧州理事会に対し、EU条約第7条に定められた加盟国の投票権停止の適用について判断するよう求めている。 |
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●ロシアのタンカーが流氷に囲まれ航行不能 早朝から救助活動再開 1/30
29日午前3時40分ごろ、ロシア籍のタンカー「オストロフ サハリン」が、北海道・枝幸沖約24キロの領海外で流氷に囲まれて航行不能になっていると、第1管区海上保安部に通報がありました。 通報を受け、29日午前8時に羅臼海上保安署から砕氷できる巡視船「てしお」がタンカーの救助に向かいましたが、途中で日没となり活動を休止していました。 稚内海上保安部によりますと「てしお」は、30日午前7時ごろにタンカーから約70キロ地点で活動を再開し、救助に向かっています。 また、ロシア籍のタンカーの船主がロシア側にも救助を求めていて、サハリン州コルサコフからも砕氷船が向かっているということです。 |
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●“ガス欠状態”のウクライナ軍、M109自走榴弾砲の弾薬は「発煙弾のみ」 1/30
●前線に広がる砲弾不足 [ロンドン発]「この冬、ウクライナ軍は目に見えて“ガス欠状態”に陥っている。最近の報道ではウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムート郊外に配備されたM109 155mm自走榴弾砲A6(パラディン)砲の弾薬は発煙弾のみだ。私たちが最後に現地に赴いた昨年11月当時、砲弾不足は前線全体に広がっていたが、状況は悪化の一途をたどっている」――。 米国の戦略・国防・外交に関する分析と討論のオンライン・プラットフォーム「ウォー・オン・ザ・ロックス」に、ウクライナ戦争に詳しい米超党派シンクタンク「カーネギー国際平和基金」のマイケル・コフマン、ダラ・マシコット両上級研究員、外交政策研究所のロブ・リー上級研究員という気鋭の3人が共同で寄稿(1月26日付)している。 満を持して昨年6月に始まったウクライナ軍の反攻は完全に不発に終わり、長期的に見た場合、現状維持も難しい状況だ。国内軍需産業を動員し、戦線の一部で主導権を奪い返したロシアは今年、人的にも、物的にも優位に立つ。一方、ウクライナは西側からの弾薬供給が著しく減少したため、戦線全体が極度の砲弾不足に陥っている。 今年11月の米大統領選でドナルド・トランプ前大統領が返り咲き、西側の支援が大幅に減った場合、ウクライナは疲弊し、弱者の立場でウラジーミル・プーチン露大統領との「停戦交渉」に応じざるを得なくなる。 しかしロシア軍も攻撃には敵の3倍超の兵力が必要という「攻撃3倍の法則」に阻まれ突破口を開けず、東部ドンバスも掌握できない膠着状態が続く。 ●ロシアの国防費はGDPの6%、「実際には8%」との観測も コフマン氏らは「暗い現実にもかかわらず、西側の十分かつ適切な支援があれば、ウクライナは戦闘力を回復し、来年には優位性を取り戻せる可能性がある。この1年を賢明に使い、根本的な問題に対処し、反攻が不発に終わった教訓に学べば、ウクライナ軍にはまだロシア軍を撃退するチャンスは残されている」と望みをつなぐ。 ロシア経済は夥しい財政出動で昨年3%成長の世界経済を上回る3.5%成長を達成できるとロシア政府は胸を張る。原油価格が1バレル=80ドル前後なら「中国のガソリンスタンド」と蔑まれてもプーチンはびくともしない。戦争資金の捻出、国民生活の維持、マクロ経済の安定を達成できる。それが資源国の強みであり、プーチンとアドルフ・ヒトラーとの違いだ。 カーネギー・ロシア・ユーラシア・センターのアレクサンドラ・プロコペンコ非常勤研究員は米国際政治経済ジャーナル「フォーリン・アフェアーズ」に寄稿(1月8日付)し、ロシアの経済成長の3分の1以上がウクライナ戦争によってもたらされ、国防関連産業は2桁成長していると分析している。 ロシアは今年、国防費を昨年の6兆4000億ルーブル(約10兆6000億円)から10兆8000億ルーブル(約17兆8000億円)に増強する。国内総生産(GDP)の6%で、実際は8%に達している可能性があるとプロコペンコ非常勤研究員は指摘する。旧ソ連がアフガニスタンに侵攻した際、国防費はGDPの18%に達し、ソ連崩壊の一因となった。 ●32万1000人の死傷者を出したロシア軍 ある西側政府高官は英紙デイリー・テレグラフ(1月26日付)に「われわれはロシアがウクライナ戦争にGDPの40%を費やしているというシナリオの中にいる」と証言している。 ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は昨年12月、「1530両の新型戦車、改良型戦車と2518両の歩兵戦闘車と装甲兵員輸送車が陸軍に提供された」と報告している。 ロシアがウクライナに侵攻した2022年2月以降、戦車、歩兵戦闘車、装甲兵員輸送車の生産台数はそれぞれ560%、360%、350%も増加した。西側政府高官は米紙ニューヨーク・タイムズ(昨年9月13日付)にロシアは年間200万発の砲弾を製造する勢いだと証言している。西側情報機関の当初見積もりの2倍、欧州の弾薬生産量(現在30万発)の7倍近くだ。 2700万人の死者を出しながら大祖国戦争を戦った旧ソ連最高指導者ヨシフ・スターリンは大砲を「戦争の神」と呼んだ。ロシア製の武器弾薬は西側に比べ劣悪でも、第一次大戦並みの塹壕戦では量は質を凌駕する。ロシア軍はウクライナ戦争で32万1000人の死傷者(英BBC放送)を出しているが、大祖国戦争に比べると“かすり傷”程度なのかもしれない。 ロシアはウクライナの防空システムを破るため「ならず者国家の枢軸」を形成する北朝鮮、イランから弾道ミサイルやカミカゼドローン(自爆型無人航空機)を調達する。西側の制裁で精密誘導兵器の製造に使われる先端技術には厳しい貿易管理措置がとられているが、ロシアのエネルギーが喉から手が出るほどほしい第三国を経由した抜け道はいくらでもある。 ●ウクライナ軍も堅牢な防御帯構築を 「ロシアの優位性は今年から来年にかけて強まり始めるだろう」(コフマン氏ら) そのためウクライナ軍は約1000キロメートルの前線にロシア軍に劣らぬ堅牢な防御帯を構築することが必須だ。地下壕やトンネルを含むより強固な防御帯は、大砲や滑空弾におけるロシアの優位性を削減する。 ウクライナ軍は西側から多種多様な装備を受け取っており、大砲だけでも14種類ある。戦車もドイツ製レオパルト、英国製チャレンジャー、米国製M1エイブラムス、さまざまな歩兵戦闘車両、耐地雷・伏撃防護車両(MRAP)があり、ロジスティクスとメンテナンスは「悪夢のよう」(同)という。3Dプリンターを使った修理技術を導入する必要がある。 ウクライナ議会は45万〜50万人を動員する提案を拒否した。ウクライナは18〜60歳の男性の出国を禁止しているが、何万人もの徴集兵が不法に国境を越えたり、偽造書類を使って海外に出国したりしている。「ウクライナ軍の平均年齢が40歳代にまで上昇し続ければ、攻撃作戦を行うのに苦労するだろう」(コフマン氏ら) ウクライナは西側と協力し、訓練プログラムを拡大、ドローンや電子戦システムの生産を大幅に増やさなければならない。ウクライナは西側の情報支援によって向上した長距離攻撃能力を活用し、はるか後方のロシアの軍基地や重要インフラを標的にできる。欧州連合(EU)加盟国は今年末までに少なくとも年間130万発の砲弾を生産できる能力を獲得する見通しだ。 ●「停戦交渉」という罠 米メディア、ブルームバーグ(1月25日付)はクレムリンに近い2人の話として、プーチンが間接的なチャンネルを通じて米国に接近し、ウクライナの安全保障に関する取り決めを含め話し合いに応じる用意があることをほのめかしていると報じた。支援疲れが濃い米欧にプーチンは「停戦交渉」という罠を仕掛けている。 ニューヨーク・タイムズ紙(昨年12月23日付)もクレムリンに近い元ロシア政府高官2人とプーチンの特使からメッセージを受け取った米国政府や国際機関高官の話として、プーチンが昨年9月以降、仲介者を通じ、現在の前線に沿って戦闘を凍結する停戦に前向きだとほのめかしていると報じている。 「永世大統領」を目指すプーチンは今年3月、大統領選を迎える。ロシアの独立系世論調査機関レバダセンターによると、プーチン支持率は85%と衰えることを知らない。「特別軍事作戦」を支持する世論も74%と高く、回答者の大半は、作戦は成功裏に遂行されていると信じている。しかし停戦交渉を支持する人も増えており、昨年11月には57%に達した。 ほとんどのロシア人はプーチンが大統領であり続けることを望んでいる。プーチンがウクライナとの敵対行為の終結を宣言した場合、大多数の国民は支持する用意があるが、その条件として占領地を維持することが挙げられている。 「交渉」と「停戦」はプーチンにとって力を蓄え、態勢を立て直す絶好の機会となる。 ●英陸軍参謀総長「『市民軍』を創設する必要がある」 人口も、兵員も、武器弾薬もウクライナを凌駕するロシアに時間は有利に働く。「返り咲いたら24時間以内にウクライナ戦争を解決する」と豪語するトランプ氏が野党・共和党予備選で連勝し「第2次トランプ政権」の悪夢が現実味を増す。そんな中、欧州の閣僚、軍幹部、北大西洋条約機構(NATO)高官から対ロシア戦争への備えを呼びかける発言が相次ぐ。 パトリック・サンダース英陸軍参謀総長は24日、「英国が紛争に巻き込まれる場合に備え、市民を訓練して装備を整え『市民軍』を創設する必要がある。3年以内に正規軍、予備役、有事の際に呼び戻す元軍人の戦略的予備役を含む12万人規模の陸軍を持つべきだ」と訴えた。英陸軍の規模は1950年の70万人から激減、今後2年以内に7万人を下回る恐れがある。 グラント・シャップス英国防相は15日、「平和の配当の時代は終わった。5年以内にロシアや中国、イラン、北朝鮮を含む複数の脅威に直面する恐れがある」と演説。ノルウェー軍トップのエイリク・クリストファーセン大将は「ノルウェーは3年以内に起こりうるロシアとの戦争に備え、国防支出を拡大する必要がある」と警告した。 ボリス・ピストリウス独国防相は「5〜8年の間にプーチンがNATOの同盟国を攻撃する可能性がある」と指摘。ドイツ軍の2万人増員を図るため外国人採用も検討する。独国防省は来年にもロシアと西側が対峙するシナリオを描く。スウェーデンのカール・オスカー・ボーリン民間防衛相は「わが国で戦争が起こる恐れがある」と市民や社会に備えを呼びかける。 NATOのロブ・バウアー軍事委員長は「好むと好まざるとにかかわらず、社会全体が戦争や紛争に巻き込まれる。国民も自分たちが解決策の一部であることを理解しなければならない。今後20年何も起きないわけではない。平和は当たり前ではなくなった」と釘を刺した。欧州はウクライナ支援と国防費の拡大(最低でもGDPの2%)を実現することが不可欠だ。 |
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●上川外相 外交演説 “法の支配や人間の尊厳守られる世界に” 1/30
上川外務大臣は、衆議院本会議で外交演説を行い、ロシアによるウクライナ侵攻などを踏まえ、「法の支配」や「人間の尊厳」が守られる世界を実現するための外交を推進していくと訴えました。 演説の冒頭、上川外務大臣は「ロシアによるウクライナ侵略によって国際秩序が重大な挑戦にさらされている」と指摘しました。 そのうえで「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、『人間の尊厳』が守られる安全・安心な世界を実現するための外交を推進していく」と訴えました。 そして、今月、ウクライナを訪問したことに触れ「力による一方的な現状変更を決して認めてはならない」として、ロシアへの制裁とウクライナ支援を強力に進めるとともに、2月、東京で開催する日ウクライナ経済復興推進会議に向けて調整を加速する考えを示しました。 中東情勢については、パレスチナのガザ地区の人道状況の改善に取り組むとともに、イスラエルとパレスチナ国家が共存する「2国家解決」の実現に向け、積極的に貢献していく方針を示しました。 また、日米同盟は外交・安全保障の基軸だとして、抑止力と対処力の一層の強化に取り組むとしています。さらに「自由で開かれたインド太平洋=FOIP」の実現を最優先課題の1つに掲げ、同盟国や同志国などと連携し、協力を広げるとしています。 一方、中国との関係では「戦略的互恵関係」を包括的に推進するとともに、建設的かつ安定的な関係を双方の努力で構築することが重要だとしています。 また、台湾海峡の平和と安定も重要だと指摘しています。 核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対しては、ロシアとの軍事協力に深刻な懸念を示しつつ、日米韓3か国をはじめ、国際社会で緊密に連携して対応していくとしています。 このほか、紛争の予防や和平に女性が主体的に参画することが重要だとする「WPS」の取り組みを推進していく考えも示しました。 |
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●米、武器輸出額が過去最高 35兆円、前年度比16%増 1/30
米国務省は29日、2023会計年度(22年10月〜23年9月)に承認した外国政府への武器輸出総額が前年度比約16%増の約2384億ドル(約35兆円)に上ったと発表した。ロイター通信によると、過去最高。同盟国などがロシアの侵攻を受けるウクライナへ提供した武器を米国から補充する動きを強めたことなどが影響した。 米国の武器輸出は、米政府が窓口となる「対外有償軍事援助(FMS)」と、外国政府と米企業が直接やりとりする商業販売の二つの方法に主に分かれている。 国務省によると、FMSは前年度比55.9%増の約809億ドル。日本へのE2D早期警戒機の売却などが含まれる。 |
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●無人機活用で戦闘優位に ゼレンスキー大統領 1/30
ウクライナのゼレンスキー大統領は29日の声明で、ロシアとの戦闘では無人機を活用した作戦で優位に立つ必要があるとの考えを示した。「無人機で成功を収めれば、より多くの兵士の命が救われることになる」と強調した。ウクライナ侵攻の前線では無人機による偵察や攻撃の成否が、戦局を左右する鍵となっている。 ゼレンスキー氏は昨年12月、無人機の生産能力を強化して今年には100万機を製造する方針を表明していた。 今月29日公開のドイツ公共放送ARDのインタビューでは、米議会でウクライナ軍事支援の予算審議が停滞していることに関し、「与野党の大部分は支持している」と述べた。 |
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●ハンガリーとウクライナ、EU首脳会議控え「建設的」協議 1/30
ウクライナを訪問中のハンガリーのシーヤールトー外相は29日、同国のクレバ外相やイエルマーク大統領府長官らと会談した。両国はウクライナのハンガリー系住民の権利を巡る問題で協力することで合意した。 シーヤールトー氏は会談後に「ハンガリーとウクライナの信頼関係の回復に向けて、心強い一歩が踏み出された。ただ、まだ長い道のりがあり、多くの作業が必要だ」と述べた。 ハンガリーは、ウクライナのハンガリー系住民が母国語を使う権利などを侵害されていると主張しいる。クレバ氏は、会談は率直で建設的なものだったと評価し、この問題に関する特別委員会を設置することで合意したと説明した。 2月1日の欧州連合(EU)首脳会議では、500億ユーロのウクライナ支援について協議する。ハンガリーは12月のEU首脳会議で唯一ウクライナ支援に反対した。 外相会談では、支援策に対するハンガリーの姿勢に変化はなかったと見られる。シーヤールトー氏は、これは二国間の問題ではなく、EUで議論される問題だと述べた。 |
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●岸田首相 “ウクライナ経済復興推進会議成功へ万全の準備を” 1/30
ウクライナ政府の関係者を2月東京に招いて開く「日・ウクライナ経済復興推進会議」を前に、岸田総理大臣は日本の貢献を国際社会に示す重要な機会になるとして、成功に向けて準備に万全を期すよう関係省庁に指示しました。 ロシアによる侵攻が続くウクライナを強力に支援していくため、日本政府は2月19日に現地から政府関係者を東京に招いて「日・ウクライナ経済復興推進会議」を開く予定で、これを前に30日、総理大臣官邸で関係省庁による準備会合が開かれました。 この中で、岸田総理大臣は「会議は日本の貢献を改めて国際社会に力強く示す重要な機会だ。ウクライナの復興需要はばく大で、日本の戦後復興や震災復興の経験のほか、企業の技術や知見に対する期待は大きい」と述べました。 そのうえで「官民が一体となり、オールジャパンで支援していくことが重要だ」と述べ、企業や経済団体とも連携しながら成功に向けて、準備に万全を期すよう指示しました。 また会合では、日本がウクライナを支援する国際的な意義などをより多くの国民に知ってもらう必要もあるとして、周知や広報活動を強化していくことを確認しました。 |
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●ハンガリーとウクライナが早期首脳会議で一致 外相会談、関係修復を模索 1/30
ハンガリーのシーヤールトー外相は29日、ロシアに侵略されたウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問し、同国のクレバ外相やイエルマーク大統領府長官らと会談した。イエルマーク氏によると会談では、ハンガリーのオルバン首相とウクライナのゼレンスキー大統領との首脳会談を可能な限り早期に実現させる方向で両国が一致した。 会談では、ウクライナ国内のハンガリー系少数民族の権利保護に向けた委員会を設置することでも合意した。ハンガリー政府は少数民族が母語の使用を制限され、ウクライナ語教育を強制されているなどと主張し、ウクライナ政府に対応を求めていた。 会談では、親露姿勢をとるハンガリーのオルバン政権が、欧州連合(EU)による500億ユーロ(約8兆円)規模のウクライナ支援を含む予算見直しに反対している問題に関しても話し合われたとみられる。 |
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●ロシアがベラルーシに核を配備した意図と狙い 国際情勢を意識か 1/30
ウォールストリート・ジャーナルが1月7日付けで‘Putin Sends Nukes to Belarus’(プーチンがベラルーシに核を配備)と題する社説を掲載している。概要は次の通り。 ベラルーシのルカシェンコ大統領が先月(2023年12月)明らかにしたところによれば、ロシアはベラルーシへの戦術核兵器の配備を完了した。 米国の政府関係者はこの核の移転に関する情報につき口を閉ざしており、ルカシェンコによるブラフの可能性もある。しかし、サリバン国家安全保障担当大統領補佐官は、昨年6月にプーチン大統領は「ベラルーシへの戦術核兵器の配備に向けた措置」を取り始めたと述べており、同7月に国防情報局(DIA)はプーチンのベラルーシへの核配備を「疑う理由はない」と述べた旨CNNは報じている。 ロシアがウクライナへの全面侵略を開始して間もなく、ベラルーシは非核を定めた憲法第18条の規定を削除する憲法改正を行った。ベラルーシによれば戦術核兵器を扱うための訓練がロシアによって行われた。2023年夏、ルカシェンコは、ロシアによる核兵器の移転が開始されており、ベラルーシのスホイ機に核兵器が搭載された、と述べた。 米国科学者連盟(FAS)の分析によれば、リトアニア国境から40キロメートルしか離れておらずベラルーシ空軍がSu-25攻撃機を配備している唯一の航空団が所在するリダ空軍基地が、ロシアによる新たな「核共有」の最もありそうな候補地である。 ルカシェンコによる核配備完了の発言は、ロシアが西側への脅しを強めている中でなされた。プーチンは最近、北大西洋条約機構(NATO)がフィンランドを同盟に「引きずり込んだ」ので、フィンランドとの間で、問題が生ずるだろうと述べた。その後、ロシアは、フィンランド国境において、移民を武器として送り込んだ。 11月には、ロシアの安全保障会議のメドベージェフ副議長は、ポーランドは「敵」であり、国家を失うこととなりかねないと述べた。ロシアはNATO領域に近いウクライナへの攻撃を継続している。 ロシアはベラルーシの軍事的統合を進めている。ロシアはS-400地対空ミサイル・システム、イスカンデル短距離ミサイルをベラルーシに配備している。プーチンによる挑発的なベラルーシへの核の移転は、ウクライナにおいて何が問われているかを再度明らかにするものである。 ● 上記の社説は、ベラルーシのルカシェンコ大統領が昨年12月26日に配備完了を記者会見で述べたことを踏まえて、ウクライナ侵略後のロシアの動きの一つであるベラルーシへの核配備について述べたものである。 各種報道に基づき、本件についてのこれまでの動きを時系列で整理すると次の通りとなる。 ・2022年2月24日 ロシアのウクライナ侵略開始 ・2022年2月27日 ベラルーシ、国民投票で「非核地帯となり、中立国となる」を定めた憲法の規定の削除を可決 ・その後 ロシアからベラルーシへ核搭載可能なイスカンデル短距離ミサイルの供与、ベラルーシ空軍機を核搭載可能に改修 ・2023年3月25日 プーチン大統領がベラルーシに戦術核を配備することとした旨表明 ・2023年5月25日 ロシアからベラルーシへの核配備についての協定に両国が調印(ロシアが管理と使用判断の権限を持つ) ・2023年6月中旬 貯蔵施設の整備などの受け入れ準備が完了し、配備開始 ・2023年10月 配備完了、実戦運用が可能な状況となる(12月にその旨が明らかとされた) 上記の社説はロシアの意図・狙いについてあまり明確に述べていないが、いくつかの可能性が考えられる。(1)フィンランド、スウェーデンのNATO加盟の動き、ポーランドをはじめとする隣接国での軍備増強など(ロシアから見ての)安全保障環境の悪化に備える。(2)ウクライナの戦況を見据えて核のオプションを増やす。(3)今後、いずれかの段階であり得る西側との交渉におけるバーゲニング・チップとする、といったことである。 上記の三つの意図・狙いは相互排他的なものではなく、おそらくそのすべてを視野に入れたものであろうが、(1)の要素が一番重要だったのではないかと考えられる。また、当然のことながら、「米国が欧州のNATO同盟国に核兵器を配備しているのだから、ロシアが同盟国のベラルーシに核兵器を配備して何が悪い」という考えもベースにあったであろう(実際に、米国が欧州のNATO同盟国との間で行っている「核共有」(核貯蔵)と同様の運用が想定されているようである)。 ●核の拡散となってしまうのか ソ連が15カ国に分裂した際、ベラルーシは、ウクライナ、カザフスタンとともに、ソ連の核兵器が領土内に残されていた国の一つとなり、その非核化が大きな課題となったが、三カ国の中でも、どの国よりも、ロシアに協力的に行動し、核兵器をロシアに返送し、非核化を受け入れた。1990年7月のベラルーシ最高会議において、「主権宣言」が採択された際、「非核地帯となり、中立国となる」ことを目標とすることが規定され、その趣旨が94年に採択された新憲法にも規定された(2022年に削除されたのはこの規定)。 今回の措置は、ロシアが保有、管理する核兵器がベラルーシに配備されるという形をとっているので、ベラルーシ自身の非核化とは異なった次元のものである。核兵器不拡散条約(NPT)は非核兵器国が核を受領、製造、取得してはいけない旨規定しているが、この配備自体がベラルーシのNPT上の義務違反となるわけではない。 一方、非核化を進めた1990年代との相違、同じく非核化を行いロシアの侵略を受けたウクライナとの相違が浮かび上がる状況となっている。また、これは「核兵器復権の時代」を示唆するもう一つの事例であり、核の拡散傾向を助長する動きであることも否定できない。 ルカシェンコは、1994年以来ベラルーシの大統領の座にあるが、2020年8月の大統領選挙以来、プーチンへの依存を強めているとみられている。ベラルーシに配備された核兵器の運用は基本的にプーチンの判断でなされると考えられる。 なお、当面、ロシアは核兵器使用を考慮しなければならないほど追い詰められた状況にあるわけではないだろう。 |
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●「日本、勇気あれば切腹を」…プーチン最側近のぞっとする警告 1/31
ロシアのプーチン大統領の最側近メドベージェフ国家安全保障会議副議長が日本に向けてぞっとする警告メッセージを送った。 メドベージェフ副議長は30日、自身のX(旧ツイッター)で岸田文雄首相の施政演説に言及した。 岸田首相は施政演説の外交関連部分で「日ロ関係は厳しい状況にあるが、わが国としては領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持する」という従来の立場を改めて強調した。 これに対しメドベージェフ氏は「北方領土に対する日本人の感情など知ったことではない。これらは紛争地域でなくロシア」とし、過去の日本の武士の写真を掲載した。そして「悲しむサムライは切腹という伝統的なやり方で人生を終わらせることができる。もちろん勇気があればだが」と刺激的な投稿をした。 メドベージェフ氏はこの掲示物で、日本のクリル諸島(北方領土と千島列島)領有権主張を黙殺すると同時に、米国と友好的な関係を継続する日本を皮肉った。また「(日本は米国が原爆を投下した)広島と長崎を完全に忘れて米国と『フレンチキス』をすることをはるかに好むのが明らか」と書いた。 |
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●プーチン氏6年年間の給与収入1億円超 中央選管に収入資産報告 1/31
ロシア中央選挙管理委員会は30日、今年3月の大統領選候補者として正式登録された現職プーチン大統領の最近6年間の収入やその他の資産報告を公開した。2017〜22年の収入は大統領としての給与など約6760万ルーブル(約1億1100万円)だった。 銀行預金も計約5440万ルーブルあり、双方を合わせると約1億2200万ルーブルになる。 ほかに自動車3台や、出身地の北西部サンクトペテルブルクに77平方メートルのアパートと18平方メートルの駐車場を保有していると報告されている。 プーチン氏の選挙対策本部の広報担当者はコメルサント紙に対し「資産の額は大統領職の収入に見合ったものだと思う」とコメントした。 大統領選ではプーチン氏のほかに共産党のハリトノフ下院議員ら3人が候補者として正式登録され、同様の資産報告を提出している。 |
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●プーチン大統領、早期に北朝鮮訪問を表明 1/31
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、1月16日にロシアで北朝鮮の崔善姫外務大臣と会った際、平壌を「早期に」訪問する意欲を表明したと、北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は1月21日に報じた。 実現すれば、ロシアの大統領による20年以上ぶりの北朝鮮訪問となる。 ロシア政府のドミトリー・ペスコフ報道官は1月22日、ロシア政府は、金氏から招待を受けての北朝鮮訪問が「近い将来に」行なわれることを望むが、日付はまだ決まっていないと述べた。 |
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●飛行機か船でしか行けない、隠されたプーチンのもう1つの豪邸が初公開 1/31
このドローン映像は、ロシアの反政府派によってイギリスで運営されているシンクタンク「ドシエ・センター」が、自らのユーチューブ・チャンネルで公開したものだ。映像には、ロシア北西部に位置するカレリア共和国の、フィンランドとの国境近くにある豪華な邸宅の姿が捉えられている。ドシエ・センターでは、この邸宅はプーチンが所有するものだと主張している。 ●見つからない場所 プーチンは、公式・非公式を含めて、ほかにも多くの不動産を保有している。公式の邸宅としては、モスクワ郊外のノボ・オガリョボにある大統領官邸や、黒海沿岸の保養地ソチにある夏用の別邸「ボチャロフ・ルチェイ」などがある。クレムリン自体も、プーチンの官邸として記載されているが、実際には居住していない。 アメリカ財務省外国資産管理局(OFAC)によると、プーチンは、これらの官邸とは別に、ロシアのノブゴロド州に、「バルダイ」と呼ばれる邸宅を保有しているという。また、現在ロシア国内の刑務所に収監されている反体制活動家のアレクセイ・ナワリヌイは2021年、大統領が「プーチンの宮殿」と呼ばれる邸宅を黒海沿岸に保有していると暴露した。しかし、プーチンはこの10億ドル(約1470億円)の「宮殿」の保有を否定したとBBCは報道している。 カレリア州の大邸宅については、今回新たなドローン映像が浮上するまで、未確認の写真が多少出回る程度であり、その姿が公の場で紹介されることはほとんどなかった。それは、ラドガ湖畔のマリアラフティ湾という、この邸宅がある場所が、たどり着くのが難しいところであるという理由からだ。ドシエ・センターによれば、この地所は、船か飛行機で行く以外の交通手段が存在しないという。 ドシエ・センターの動画につけられていたナレーションの説明によると、湖の湾に面したこの地所には、約4メートルの滝があるという。なお、この邸宅は、フィンランドとの国境から約29キロの距離にある。フィンランドは、2023年に北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、ロシアとは現在、非友好的な関係にある。 動画ナレーターによれば、この邸宅には、「フェンス、有刺鉄線、24時間体制の警備」などの防犯設備が設けられている。3つある母屋の建物のうち1つの裏には、大規模な盛り土がされた箇所があり、これは防空システムを設置するために用いられている可能性もあると、ドシエ・センターでは説明している。 ソーシャルメディアに親ウクライナのメッセージを頻繁に投稿しているユルゲン・ナウディットは1月29日、ドシエ・センターによるこの動画をX(旧ツイッター)で共有した。 広さ約650ヘクタールに及ぶこの地所は、本来は国立公園の敷地であるはずだが、プーチンのために確保されたと、ドシエ・センターのレポートは述べている。 「大統領はここで、くつろいだ気分で過ごしているのは間違いない」。ドジエ・センターの動画で、ナレーターはそう述べる。「プーチンの訪問時には、地元の警備隊は、FSO(ロシア連邦警護庁、ロシア版のシークレットサービス)の係官に置き換えられ、出入り口は封鎖され、近隣の島々も立ち入り禁止となる」 それ以外にも、この地所には、醸造所、ティールーム、2基のヘリパッドとヨット用の埠頭などが設けられているほか、マスの養殖場があり、牛肉生産用に牛が飼われているという。 ドシエ・センターによると、この地所の書面上の所有者は、ロシアのあるビジネスマンが経営する複数の企業だという。この人物は、「大統領の余暇活動」を取りしきる「ネットワーク」を運営しており、「大統領が持つ不動産すべてを管理している」とのことだ。 |
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●ウクライナ軍が3倍返し、1両失うごとにロシア軍は3両損失 1/31
ウクライナ軍の昨年夏の攻勢は多くの損失をともなうものだった。ウクライナの南部と東部の3つの軸に沿ってそれぞれ16kmほど前進する際、ウクライナ軍の旅団は数千人の経験豊かな兵士と、保有するものの中で最高ランクの装甲車両を数百両失った。 だが、特筆すべき点として、過去の例に反してウクライナ軍はロシア軍にほぼ同等の損失を与えた。開けた土地で敵の陣地を攻撃する場合、攻撃側は防衛側の数倍の損失を被ると歴史家は考えている。 ウクライナ軍が昨年夏に被ったのと同じだけの損失をロシア軍に与えたことは注目に値する。驚きという点では劣るが、同じように注目すべきは、ウクライナ軍の旅団が攻撃を中止し、人員補充のあったロシア軍の連隊に勢いが流れた昨年秋から起こったことだ。 ロシア軍は冬の攻勢でウクライナ軍の3倍近い重装備を失い、おそらく少なくとも3倍の兵士を失っている。そしてこれまでのところロシア軍は、過去の例にならうように攻撃側は典型的な大きな損失を出し、引き換えに少ない陣地を得ている。もっと少ない損失でウクライナ軍が昨年夏に獲得した陣地を下回る。 数字は嘘をつかない。東部アウジーイウカと南部クリンキの周辺で繰り広げられている主に陣地戦の戦闘では、ロシアの野戦軍は月に500両を超える戦車や戦闘車両、りゅう弾砲、トラックを失っている。ウクライナ軍側の損失はというと200両以下だ。 車両損失の証拠を得るためにソーシャルメディアをチェックしている独立系オープンソースインテリジェンス(OSINT)サイト「オリックス」のアナリストによると、ロシア軍は昨年12月25日から1月25日までの間に562両の車両を失ったという。一方、ウクライナ側の損失は196両で、3対1の比率でウクライナの方が損失は少ない。 機動防御を続けることができれば「来年までに両軍の装備の数は同じになる」 それどころか、ロシア軍の冬の攻勢が4カ月目に突入する中、この比率はさらに偏りつつある。OSINTアナリストのアンドルー・パーぺチュアが確認した最近の1日の損失数は状況を表している。パーぺチュアは1月25日に、ウクライナ側で戦車1両を含む車両3両の破壊、それから戦車3両を含む車両10両の損傷または放棄があったと指摘した。 同日、ロシア側では3両の戦車を含む車両27両の破壊、そして2両の戦車を含む車両17両の損傷または放棄があったという。これはおよそ4対1の比率で、ウクライナの方が有利だ。 ロシア軍の兵士は、容赦なく攻撃を仕かける中で問題を抱えているとわかっている。一方のウクライナ軍は柔軟な機動防御を維持している。あるロシア人の従軍記者は「ウクライナ軍の今年の戦術は我々の装備と人員に最大限の打撃を与え、防御に徹し、次の陣地に退却することだ」とソーシャルメディアに投稿した。この投稿を翻訳したものをユーザーネームwartranslatedがXで紹介した。 ウクライナ軍の旅団が機動防御を続けることができれば「来年までに両軍の装備の数は同じになる」とこの従軍記者は予想している。つまり、ロシアの長期にわたる兵士と装備の上での2対1の優位性は低下する。 注目すべきは、ロシア軍は大砲の弾薬で10対1と圧倒的に優位に立っていながら、ウクライナ軍がロシア軍に大きな損失を与えていることだ。ロシア軍のこの優位性は、米連邦議会下院のロシア寄りの共和党議員らが610億ドル(約9兆円)のウクライナへの軍事支援案の承認を拒んだことによるものだ。 同盟国からの持続的な支援があれば、ウクライナ軍は自軍が受けるよりずっと多くの損失をロシア軍に与え、今年か来年に戦場で勢いを取り戻す環境を整えられる可能性がある。 |
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●ゼレンスキー大統領、国民からの信頼厚い軍総司令官を解任か… 1/31
英紙フィナンシャル・タイムズと英BBCロシア語版などは30日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、軍制服組トップのワレリー・ザルジニー総司令官に別なポストを提示し、総司令官を解任する方針を直接伝達したと報じた。両氏はこれまでも不協和音が伝えられてきた。ザルジニー氏は代替ポストへの転出を拒否したとされており、曲折する可能性がある。 報道によると、ゼレンスキー氏は29日、ルステム・ウメロフ国防相を交えてザルジニー氏と会談し、解任する方針を伝えた。国防関連の顧問などへの就任を打診したという。ザルジニー氏の解任について、大統領府や国防省は発表していない。解任に伴う大統領令も出していない。 後任には、国防省のキリロ・ブダノフ情報総局長やオレクサンドル・シルスキー陸軍司令官らが取りざたされているが、いずれも固辞しているという。 ザルジニー氏は2021年7月に軍総司令官に就任し、翌22年2月に始まったロシアのウクライナ侵略への抵抗を指揮してきた。昨年12月の世論調査では、ザルジニー氏を信頼するとの回答が88%で、ゼレンスキー氏(62%)を上回るなど人気が高い。 |
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●ウクライナ穀物輸出量“黒海防衛強化でほぼ軍事侵攻前水準に” 1/31
ロシアによる軍事侵攻で深刻な影響が続いてきたウクライナ産の穀物などの輸出は輸送路の黒海での防衛が強化された結果、軍事侵攻前の水準まで回復しつつあるとウクライナの業界団体が明らかにしました。 世界有数の穀物輸出国として知られるウクライナからの穀物輸出は、ロシアによる軍事侵攻後、黒海を通じたルートが制限され、世界の食料供給にも深刻な影響を与えてきました。 軍事侵攻の開始から2月で2年となるのを前に30日、業界団体の「ウクライナ穀物協会」が首都キーウで会見し、去年12月の穀物などの輸出量がおよそ598万トンにのぼったと明らかにしました。 これは、去年7月にロシアが黒海を通じた輸出をめぐる合意の履行を停止して以降、最も多く、輸出量全体では軍事侵攻前の水準まで回復しつつあるということです。 その背景についてウクライナ穀物協会は、輸出ルートにあたる黒海の西側での防衛が強化されたことなどをあげています。 一方、ウクライナから輸出される穀物などのおよそ40%は紅海を経由してアジアに輸出されているということで、イエメンの反政府勢力フーシ派が紅海などで船舶への攻撃を繰り返していることから、今後の安定的な輸出には懸念もあるとしています。 会見に同席したソリスキー農業食料相は「紅海での問題が影響し今月の輸出量は減るだろう。ほかの国と同様、事態が収束するのを待ちたい」と話していました。 |
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●ロシア“ミサイル増産”強調 ウクライナはEUの巨額支援焦点に 1/31
ウクライナへの侵攻を続けるロシアのショイグ国防相は30日、ミサイル工場を視察し、生産を加速させる姿勢を強調しました。一方、ウクライナのクレバ外相はハンガリーの外相と会談し、EU=ヨーロッパ連合からの巨額の支援につなげられるかが焦点となります。 ロシアのショイグ国防相は30日、中部にある巡航ミサイルや地対空ミサイルシステムなどの工場を視察しました。 一部のミサイルは製造数を去年よりも倍増する計画だとしています。 ショイグ国防相は視察後、「新たな設備が導入され、生産量は大幅に増加している。ことしの計画の完全な達成を期待している」と述べ、兵器の生産を加速させる姿勢を強調しました。 ロシアの兵器生産をめぐっては、イギリス国防省が29日、「主力戦車をひと月に100両以上製造できる可能性がある」と指摘しました。 戦場で失った分を埋め合わせる生産能力があるとして、ウクライナ東部でロシアが進めている攻撃が当面は続くという見方を示しています。 一方、ウクライナのクレバ外相は29日、隣国ハンガリーのシーヤールトー外相と会談し、関係改善に向けて首脳会談を目指す方針で一致しました。 EUはウクライナへの4年間で500億ユーロ、日本円でおよそ8兆円規模の資金支援について去年12月、ハンガリーの反対により合意できず、2月1日の首脳会議で改めて協議することになっています。 アメリカでウクライナ支援の継続に必要な緊急予算が承認される見通しが立たない中、ウクライナとしてはハンガリーとの関係改善を図り、EUからの巨額の支援につなげられるかが焦点となっています。 ●仏マクロン大統領「ヨーロッパ各国は支援継続すべき」 フランスのマクロン大統領は30日、訪問先のスウェーデンで記者会見し、今後、アメリカがウクライナへの軍事支援の停止や削減を決定した場合でも、ヨーロッパ各国は結束してウクライナへの支援を継続すべきだと訴えました。 フランスのマクロン大統領は30日、訪問先のスウェーデンの首都ストックホルムで記者会見しました。 この中で、マクロン大統領は、ウクライナへの軍事支援をめぐって、最大の支援国となってきたアメリカで、支援の継続に必要な緊急予算が議会で承認されていないことなどに関連し、「アメリカは、われわれの側に立ち続けてくれることを願っている」と述べました。 その上で「アメリカが支援の停止や削減を選択をしたとしても、現状に影響を与えることがあってはならない」と指摘し、今後のアメリカの対応にかかわらず、ヨーロッパ各国は結束してウクライナへの支援を継続すべきだと訴えました。 また、続く軍関係者へのスピーチで、マクロン大統領はウクライナに供与する兵器の生産について「われわれが、より迅速に生産するための多くの努力をしても、ロシアの努力に比べれば、規模も速度も適切ではない」と述べ、ヨーロッパ各国が全力で取り組むべきだという認識を示しました。 このほか、スウェーデンのNATO=北大西洋条約機構への加盟については「全面的な支持を改めて表明したい」と述べました。 |
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●今年の世界成長率3.1% IMF 世界経済見通しを上方修正 1/31
IMF=国際通貨基金は、最新の世界経済見通しを公表し、アメリカや新興国の経済が予想以上に堅調だとして、今年の世界全体の成長率の見通しを3.1%に引き上げました。 IMFは30日、最新の世界経済見通しを公表し、今年の世界全体の実質経済成長率を3.1%として、前回の去年10月時点の予測から0.2ポイント引き上げました。 世界的に物価上昇の勢いが鈍化し、アメリカや新興国の経済が予想以上に堅調なためで、アメリカと中国の成長率もそれぞれ上方修正されました。 IMFは、世界経済が景気後退を避けながら物価上昇率を抑える「軟着陸」に向かっているという見方を示しています。 リスク要因としては、中東やウクライナ情勢の影響によるエネルギー・食料価格の上昇や、不動産不況による中国経済の減速などを挙げました。 一方、日本は新型コロナからの消費の回復などが一巡したとして、今年の成長率は0.1ポイント下方修正されて0.9%にとどまるとの見通しでした。 |
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●JT ロシアに4000億円納税する「世界最大の戦争支援企業」 1/31
参議院議員の松沢成文氏(日本維新の会)が、1月16日に参議院議員会館で記者会見を開いて、日本たばこ産業(JT)のロシア事業継続を厳しく批判した。 2022年2月にロシアがウクライナに軍事侵攻すると、アメリカ、欧州、日本などがロシアへの経済制裁に踏み切り、各国の企業がロシアから撤退を始めた。日本の企業もトヨタ、ソニー、任天堂、ユニクロ(ファーストリテイリング)......と大手企業が次々と撤退したが、JTは、今もロシアで事業を続けて莫大な利益を生んでいるからだ。 JTは90年代後半以降、海外企業の大型M&Aを続けてたばこ事業の海外売上高比率は6割を超えたが、中でもロシア事業は大きく成長した。JTのたばこ事業を担うJTインターナショナル(JTI)のたばこ販売数量は、フィリップモリス・インターナショナル(PMI)、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)に次ぐ世界3位だが、ロシア市場ではシェア36・6%を占め(22年度)、最大のタバコメーカーになっている。 |
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●中国 製造業の景況感 景気判断の節目「50」 4か月連続下回る 1/31
中国の1月の製造業の景況感を示す指数は、先月から0.2ポイント改善したものの、景気判断の節目となる「50」を4か月連続で下回りました。不動産市場の低迷の長期化などを背景に国内需要の停滞が続いていることが主な要因です。 中国の国家統計局が製造業3200社を対象に調査した今月の製造業PMI=購買担当者景況感指数は49.2となりました。 先月から0.2ポイント改善しましたが、景気のよしあしを判断する節目となる「50」を4か月連続で下回りました。これは、不動産市場の低迷の長期化や厳しい雇用情勢を背景に国内需要の停滞が続いていることが主な要因です。 企業の規模別では、大企業が50.4、中規模な企業は48.9、小規模な企業は47.2となっていて、中小企業で、節目の「50」を下回る状況が続いています。 一方、サービス業などの非製造業の景況感指数は先月から0.3ポイント改善して50.7となりました。 中国では29日、香港の裁判所が不動産大手の「恒大グループ」に清算命令を出し、その影響が懸念されていて、企業の間で景気に対する慎重な見方がさらに強まることも予想されます。 |
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●仏 環境規制など反対の農家 パリへの高速道路封鎖 流通に懸念 1/31
フランスではEU=ヨーロッパ連合の環境規制などに反対する農家が首都パリに向かう高速道路の封鎖に踏み切り、流通の混乱への懸念が出ています。農家による抗議活動はヨーロッパ各地でも起きていて、ことし行われるEUの議会選挙でも農業政策が争点の1つとなりそうです。 フランスではインフレや燃料費の高騰などを背景に、EUが域内の農家に求める環境規制が厳しすぎると、全国の農家らが訴えていて、主要な幹線道路を農業用トラクターで封鎖する抗議活動が相次いでいます。 29日には、全国の農家の組合で作る団体らがパリに向かう近郊の高速道路、8か所で封鎖に踏み切り、このうち、パリから北に10キロほど離れた高速道路では、トラクターおよそ50台が封鎖に加わりました。 参加した農家の男性は「EUによる規制が多く、コストがかかりすぎて、域外の商品などに勝てない。これでは農業を続けることはできない」と話していました。 今回の抗議活動をめぐっては、アタル首相が26日、燃料税の増税延期などの措置を発表しましたが、事態の収束には至らず、流通の混乱への懸念が出ています。 ヨーロッパでは、ドイツやオランダなどでもEUや自国の農業政策に不満を持つ農家による抗議活動が相次いでいます。 ことし6月に行われるEUの議会選挙でも農業政策が争点の1つとなる見通しで、極右や右派の政党がこうした不満を取り込み、支持を広げる可能性も指摘されています。 ●農家の抗議活動相次ぐ 要因は ヨーロッパ各国では、EU=ヨーロッパ連合による環境規制や、自国の農業政策に不満を持つ農家による抗議活動が相次いでいます。 その要因の1つが、EUが2019年に発表した、気候変動や生物多様性に配慮しながら経済成長を目指す行程表「欧州グリーンディール」です。 この中で、農業分野において、2030年までに農薬の使用を半減させることや、肥料の使用を削減すること、2030年までに全農地の25%を有機農業とすることなどを定めています。 これに加えてEUは、去年から農地の一定の割合を休耕地とし、作付けを行わないことなども定めています。 こうしたEUの規制によって、ヨーロッパの農家からは、単位面積あたりの収量が減るなどとして、不満が出ていました。 こうした不満に加え、フランスでは、燃料費の高騰が続く中で、農業用ディーゼル燃料に対する減税措置の打ち切りへの反発から、抗議の動きが全国に広がりました。 またヨーロッパでは、ロシアによる軍事侵攻で黒海から輸出できなくなったウクライナ産の安価な農産物の流入などもあり、同様の不満の声がフランス以外のヨーロッパの国の農家からも上がり、ドイツやベルギー、ポーランドなどでも農家による抗議デモが相次いでいます。 |
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●最新状況 「ロシア軍は町を破壊し尽くしている」反転攻勢のいま 1/31
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってまもなく2年。ウクライナでは東部や南部の要衝をめぐり、激戦が続いています。 「ロシアはアウディーイウカを破壊し尽くしている」 東部の要衝、アウディーイウカを防衛するウクライナ軍の前線部隊「第110独立機械化旅団」の報道官のことばです。 去年(2023年)6月から始まったウクライナ軍の反転攻勢はどうなっているのか? 前線部隊や激戦地の市長へのインタビューからその現在地を探ります。 ●去年6月から始まった反転攻勢 ウクライナ軍の反転攻勢が始まったのは2023年6月。 ゼレンスキー大統領「ウクライナでは、反転攻勢と防御の軍事行動が行われている」 この2日前の6月8日に、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」はホームページで戦況の分析を公開。この中で「ウクライナ軍は反転攻勢の一環として、少なくとも前線の3つの地域で作戦を行った」と指摘。8日までに、東部ドネツク州のバフムト周辺やドネツク州の西部のほか、南部ザポリージャ州の西部でもウクライナ軍が攻撃に打って出たという分析を明らかにしました。 ロシア側に占領された領土の奪還を目指すウクライナ軍。防御に徹するロシア軍。各地で双方による激しい戦闘が繰り広げられてきました。 ●「反転攻勢」停滞の指摘も 秋以降は、ロシア軍が東部のドネツク州などで攻勢を強め始めました。ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、イギリスの経済誌「エコノミスト」(11月1日付)の中で、戦況について「第1次世界大戦と同じように、こう着状態に陥る段階に達している」という認識を示しました。 さらに、12月にはゼレンスキー大統領が反転攻勢についてAP通信のインタビューで「早く結果を出したかったが、望んだ結果が得られなかった」と述べるなど、その停滞が伝えられています。 ●東部戦線でウクライナ軍が苦戦も 激戦が続いているとされているのが東部の戦線です。特にドネツク州のアウディーイウカやマリインカ近郊、バフムト、それにハルキウ州のクピヤンシクなどの前線でロシア軍の攻撃が続いているとされています。 その一つ、アウディーイウカは東部ドネツク州の中央部に位置する人口3万余りの小さな町です。すでに多くの住民が避難しています。ウクライナ軍にとっては重要な補給拠点ですが、ロシア軍はこの町を取り囲むように占領地域を広げていて、ドネツク州全域の掌握を目指す上での「突破口」として重視しています。 複数のウクライナメディアによりますと、ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、今のままではアウディーイウカは2、3か月以内に占領されるおそれがあるという認識を示しました。さらに、隣に位置するマリインカという町では、ロシアの制圧によってウクライナ軍の部隊が郊外に撤退したことも認め、苦戦が明らかになっています。 ●「インフラは100%破壊された…」市長が語る アウディ―イウカはいったいどうなっているのでしょうか。戦時下の現在、市の軍政にも携わっている市長が取材に応じました。 壊滅的な被害を受けている町。ビタリー・バラバシュ市長は、特に電力の供給源となっていたコークス工場が空爆で破壊されたことが厳しい惨状を招いていると訴えます。 バラバシュ市長「ロシア軍は町を包囲しようと差し迫っていて、周辺で激しい戦闘が続いています。インフラは100%破壊されたと断言できますし、住宅など建物の破壊率も100%に近づいています。市内には電気もガスも共有されず、明かりも暖房もありません」 「もとの人口は3万3000でしたが、今ではその4%、1300人ほどしか残っていません。残った住民は地下室で過ごし、ストーブで薪を焚いてしのいでいますが、敵はストーブの煙がどこから出ているのかを見て、空爆を行うことまでします。さらに、市内には飲み水もなく、汲み上げた井戸水を沸かして飲むしかないのですが、その井戸水を運ぶ道中でも、常に銃撃を受けていて、水の供給は難しいのです」 ●前線の戦闘で何が?人的損失を顧みないロシア軍 なぜ、ロシア軍が攻撃を強め、ウクライナ軍が守勢に回る事態となっているのか。 アウディーイウカでロシア軍と激戦を繰り広げている、ウクライナ軍の前線部隊「第110独立機械化旅団」のアントン・コツコン報道官に話を聞きました。 コツコン報道官が指摘したのが、ロシア側の攻撃の大きな変化です。ウクライナ軍は戦闘の長期化で兵員の確保が課題となっている一方で、ロシア軍はこれまで以上に戦闘機や砲弾などを増やして、大量の兵士を投入してきているといいます。損失を顧みない、いわば「人海戦術」をとってきているのです。 コツコン報道官「ロシア軍は信じられないほどたくさんの兵士を投げるように投入し、攻撃が始まった10月10日から1か月だけで、1万人の自軍の兵士を犠牲にしたほどです。また、攻撃には歩兵部隊だけでなく、戦車やロケット砲、航空隊など多くの部隊が関わっていて、これら全てが毎日ノンストップで動いています」 ●激しい空爆、航空戦力の差が… さらに航空戦力の差が大きいとも指摘します。ロシア軍は航空機による空爆で、町のインフラそのものを破壊しつくす戦術に舵を切っているといいます。 コツコン報道官「ロシア軍は爆弾を投下する航空機を使って常に活動しています。空爆は精密兵器ではないのですが、非常に強力かつ大規模に町を破壊してしまいます。市の産業の中心となっていたコークス工場は空爆によって深刻に破壊されました。被害を受けずに残っている住宅は1軒もなく、ロシアはアウディーイウカを破壊し尽くしているのです」 ●砲弾不足に直面 さらに、ここにきて、砲弾などの数に大きな差が出ていることも作用しているといいます。緊迫するイスラエルとパレスチナ情勢などのあおりをうけてアメリカなど欧米諸国からの軍事支援が滞り、ウクライナは武器不足に陥っています。 アメリカメディアは、アメリカがウクライナに供与する砲弾の量が、イスラエル軍とイスラム組織ハマスによる一連の衝突が始まった2023年10月以降、その前と比べて減っていると伝えているほか、砲弾が尽きかけている最前線の現状を報告しています。 また、アメリカ議会では軍事支援の継続に必要な緊急予算がいまだ承認されず、今後の支援の先行きはさらに不透明な状況です。 一方で、アメリカのホワイトハウスやイギリスの国防省は、ロシアが北朝鮮から大量の砲弾を受け取っていると指摘しています。 前出のバラバシュ市長は、厳しい戦いを迫られている現状をこう吐露します。 バラバシュ市長「正確な数字では言えませんが、ロシア側の砲弾のほうが間違いなく何倍も多いです。私たちの砲弾は不足していて、確実に供給が減っています。砲弾が不足しているので、われわれの兵士は狙撃手のように1人1人を狙うような細かい作業をしているのです。砲弾や装備、ミサイル、それに戦闘機の数が多ければ、戦いで有利になります。とにかく多ければ多いほどです。もしロシア人をここで止めることができなければ、彼らは暴走していくでしょう。だからこそ、全世界がわれわれを助けなければならないと思います。これは、文明的な世界全体に対する戦争でもあるのです」 ●厳しい冬の戦闘、極限状態に… ロシアによるウクライナの軍事侵攻開始からまもなく2年。ウクライナ軍は、またもや文字通り、厳しい冬を迎えています。戦闘の長期化によって最前線で戦う兵士たちの疲労は極まっていると、報道官は指摘します。 コツコン報道官「戦争が2年近く続く中で、特に歩兵は疲労を感じています。寒さや雨、そして雪の中で、民間人の生活ではおそらく一度も経験したことのないような極限状態に置かれているのです。ただ、兵士たちは前線で戦う意味を理解しているので、士気で疲れを克服しています」 ●「家族を、国を守る」その一心が支えに 圧倒的な物量の差に欧米の支援疲れへの懸念。それでも戦い続けるウクライナ軍の兵士たちを支えるのは何か。 コツコン報道官「ウクライナには、この戦争の影響を受けていない人は1人もいません。誰かが戦争に巻き込まれ、誰かは直接戦い、誰かの親族が戦い、誰かの妹が外国に逃げ、誰かの家族が殺され、誰かが負傷しています。兵士たちの士気が高いのは家族を守っているからです。また、出身地が一時的にロシアに占領されている人もいて、自分の土地のために直接戦っているのです。ロシア軍を止めなければ、追い返さなければ、ロシア軍は前進し続けてしまうことも分かっています。戦うモチベーションは探さなくても、そこにあるのです。そして、そのモチベーションこそが兵士を塹壕に立たせ、ロシア軍の攻撃を退け、撃破し、より多くのリスクを冒す力を与えてくれます。この戦いは相手を全員殺したときに終わるのです」 ●取材後記 欧米からの軍事支援の継続が必須だとする、ゼレンスキー大統領。2024年1月12日にイギリスのスナク首相と会談し、安全保障の協定を締結して、およそ4600億円規模の追加の軍事支援にこぎ着けました。 さらに、ルーマニアなど各国とも安全保障をめぐる交渉が始まっているとも明らかにするなど、積極的な動きを見せています。裏を返せば、反転攻勢の停滞、欧米側の「支援疲れ」が指摘されるなかで、2国間の交渉や協定によって支援を要請しなければならないウクライナの苦しい立場を映しているようにもみえます。 「広く現状を知ってもらい、ウクライナに関心を持ち続けてもらいたい」 コツコン報道官がインタビューの最後に口にした言葉は、極限状態で一進一退の攻防を続ける最前線の部隊からの切実な願いだと感じました。 |
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●ロシアがウクライナ東部アブデーフカの一部制圧とプーチン氏 進軍継続表明 2/1
ロシアのプーチン大統領は1月31日、激戦地となっているウクライナ東部ドネツク州アブデーフカの一部をロシア軍が制圧したと述べた。ウクライナ軍と対峙(たいじ)している防衛線付近の安全確保が重要だとし、東部・南部4州の実効支配地域をウクライナ軍の長距離攻撃から守るために進軍を続ける構えを示した。 プーチン氏はモスクワで、3月に行われる大統領選の選挙運動員らとの会合に出席した。ドネツク州のロシア側支配地域「ドネツク人民共和国」の中心都市ドネツクへの攻撃拠点になっているアブデーフカの制圧は「最優先課題の一つだ」と述べた。 1月24日にロシア西部ベルゴロド州で起きたロシア軍輸送機イリューシン76の墜落については、米国が供与した地対空ミサイルシステム「パトリオット」での撃墜を「確認した」と説明した。 |
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●「マンション1軒ある」というプーチン氏だが…「滝付きの超豪華別荘」暴露登場 2/1
大統領選挙を控えたロシアのプーチン大統領が候補登録のために所得と財産を申告した。過去6年間で約1億1000万円の収入があり、小型アパートとロシア産自動車を所有していると明らかにした。だが、モナコの倍の面積を持つ別荘を所有しているという暴露が追加で登場するなど、隠し資産に対する疑惑が大きくなっている。一方、米国中央情報局(CIA)の局長はロシア内部でウクライナ戦争に対する不満からCIAに協力しようとする者が増加しているという趣旨の発言をした。 ●「公式給与は14万ドル(約2060万円)」 30日(現地時間)、インターファクス通信やモスクワタイムズなどによると、ロシア中央選挙管理委員会は3月15〜17日に行われるロシア大統領選を控えてプーチン大統領が申告した2017〜2022年の所得内訳分を公開した。ロシア大統領候補は選挙年度以前の6年間の所得と財産情報を公開することになっている。 プーチン大統領はこの期間、所得が6759万1875ルーブル(約1億1044万円)と申告した。給与・預金・軍人年金・不動産などが主な収入源だ。報道によると、プーチン大統領はサンクトペテルブルクに小型(77平方メートル)マンション1軒と18平方メートルの大きさの車庫1軒を所有している。1960年型ガズM21と1965年型ガズM21、2009年型ラダニバなどロシア製乗用車3台と1987年に生産されたキャンピングトレーラー1台も申告した。 また、計10の銀行口座に5441万6604ルーブルとサンクトペテルブルクPJSC銀行の株式230株(1株280.49ルーブル)も保有していると明らかにした。モスクワの153平方メートル規模のマンション1軒とサンクトペテルブルクの18平方メートル規模の駐車場を無制限に利用する権利も持っている。 ●フィンランド近隣、黒海沿岸、ソチに資産か しかし実際プーチン大統領には隠し財産が複数あるという報道が相次いだ。ロシア高位層の不正腐敗を主に暴露してきた調査報道機関「Dossier Center」は、フィンランドの国境に近いロシア北西部カレリアにプーチン大統領の秘密の別荘があるとし、航空撮影動画をYouTubeなどを通して前日公開した。 同メディアによれば動作センサーや鉄条網、監視カメラで24時間監視されている同地は現代式住宅3軒、ヘリパッド2つ、複数のヨットハーバー、マス養殖場、牛肉生産のための牛牧場、個人の滝などで構成されている。メディアはこの滝は国立公園の一部だが外部の人の接近は徹底的に遮断されているとも指摘した。この別荘の敷地の全体面積は4平方キロメートルに達する。韓国汝矣島(ヨイド)面積(2.9平方キロメートル)の約1.4倍、モナコ公国(2平方キロメートル)の2倍に該当する。 近隣住民はプーチン大統領が少なくとも年に一度はここを訪れると伝えた。10年前、プーチン大統領のライバルだった人物が作ったと言われるこのエリアは、金融家のユーリ・コワルチュク氏が管理する資産ポートフォリオの一つという説明も付け加えた。 米国メディア「ビジネスインサイダー」はこの報道を引用して「プーチンは年間14万ドルの公式給与と比較的平凡な官邸マンションを有しているが、スーパーヨットや黒海沿岸の広大な宮殿を含む多様な高価資産が複雑な金融構造を通じてつながっている」とした。米誌「ニューズウィーク」もソチの夏の別荘などがプーチン大統領の所有だといわれると言及した。 これに先立ってロシア野党圏運動家アレクセイ・ナワリヌイ氏が設立した反腐敗財団(FBK)は、2021年プーチン大統領が黒海に面したロシア南部のクラスノダール地方のリゾート都市ゲレンジークに10億ドルの超豪華邸宅を実所有していると暴露したことがある。 過去、プーチン大統領の資産が2000億ドル以上あるという主張も提起されたことがある。一時ロシア最大の外国人投資家であったビル・ブラウダー氏は2017年の米国上院法司委員会でプーチン大統領の資産規模を2000億ドル水準と推算していると証言した。 国際調査ジャーナリスト協会(ICIJ)が2016年に公開した報告書にもプーチン大統領の友人の1人が域外の会社を通じて最初20億ドルを振込んだことが明らかになるなど家族や友人と関連している資産が多い。 世界最高の富豪であるイーロン・マスク氏は2022年3月ビジネスインサイダーの親会社であるアクセル・シュプリンガー社のマティアス・デップナー最高経営責任者(CEO)と行ったインタビューで、「プーチンは私よりはるかに金を持っていると考える」と主張していた。当時マスク氏の財産は2600億ドルだった。 一方、CIAのバーンズ局長はこの日公開された米外交専門紙「フォーリン・アフェアーズ」の寄稿文で「戦争に対する不満は国家宣伝と弾圧の厚い表面下にあったロシア指導部とロシア国民をむしばみ続けている」とし「このような不満の流れはCIAに一世一代の採用機会を作っている。われわれはそれを浪費しない」と書いた。ウクライナ戦争の長期化により、ロシア内部で米国情報機関に協力しようとする人々が増えているという趣旨の発言だ。 バーンズ局長は「プーチンの抑圧的統治力が近い将来弱まる様子はないが、ウクライナでの戦争は彼の国内権力を静かに腐食させている」とし「傭兵指導者エフゲニー・プリゴジンが起こした短期間の反乱は、プーチンの注意深く整えられた統制イメージの後ろに隠れている逆機能の一部を垣間見せてくれた。(中略)プーチン戦争の核心である嘘と軍事的誤判断、ロシア政治システムの核心である腐敗に対するプリゴジンの辛らつな批判はすぐには消えないだろう」と繰り返し強調した。 ニューヨーク・タイムズ(NYT)はこのようなバーンズ局長の寄稿文を基に「ウクライナ戦争がプーチンを弱くしているとCIA局長が書いた」とこの日伝えた。 NYTはそれとあわせてCIAがロシア政府と軍要人を誘い込むための動画を相次いで公開していることを取り上げた。実際、先週公開されたロシア語の動画「私がCIAに連絡した理由:祖国のために」などは追跡が難しいダークウェブを通じてロシアの内部情報を米国に渡すように督励している。ロシア政府の腐敗に対する怒りに訴えるビデオもある。米国政府はこのような誘い込み作戦の成果を明らかにしてはいないが、効果がないならこれほど頻繁に動画を制作しなかっただろうというのが関係者の説明だ。 |
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●ロシア軍輸送機「パトリオットで撃墜」 プーチン氏主張 2/1
ロシアのプーチン大統領は31日、西部ベルゴロド州で24日に起きた空軍輸送機の墜落は、ウクライナ軍による撃墜であることは「証明済み」で、米国製の地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」が使われたと述べた。ロシア側は、輸送機はウクライナ人捕虜65人を乗せていたと主張している。 ウクライナ側は墜落当日に捕虜交換が予定されていたことは認めつつ、墜落原因に関する言及は回避。「国際調査」を訴えていたが、現在は立場をトーンダウンさせている。プーチン氏はこうした経緯を指摘した上で「われわれこそ国際調査を求める」と語った。 同氏はまた「(ウクライナによる)撃墜が偶発的なものだったとしても、犯罪であることには変わりない」と強調。ただ、ウクライナとの捕虜交換は今後も続ける立場を示した。 |
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●ウクライナ侵攻反対の候補者がロシア大統領選挙立候補認めるよう要請… 2/1
3月に行われるロシア大統領選に反プーチンを掲げる候補が、立候補に必要な10万人分の署名を提出した。 大統領選挙で唯一、ウクライナ侵攻に反対を唱えて立候補を目指すナデジディン氏は、1月31日、モスクワの中央選挙管理委員会を訪れ、25箱に入った有権者の署名10万5,000人分を提出した。 ロシア全土75地域で署名活動を行い、およそ20万人分を集めたが、このうち、有効と認められる可能性が高い10万5,000人分を提出したという。 署名を提出後に報道陣の取材に応じたナデジディン氏は、自身の署名活動を「ロシア大統領選挙の歴史の中で、人々が実際に行列を作って署名をした初めてのケースだ」と胸を張り、「私が何十万人もの人々に支持されていることを疑う者はいない」と述べ、選挙管理委員会に立候補を認めるよう強く求めた。 大統領選をめぐっては、反戦を掲げた女性が書類の不備を理由に申請を受理されず、立候補が認められなかった。 選挙管理委員会は、政党推薦の3人とプーチン氏をすでに立候補者として登録していて、ナデジディン氏を含む自己推薦の候補者3人の登録を認めるかどうかは、提出された署名を確認して10日以内に判断する。 全員の登録が認められれば、大統領選には7人が立候補することになる。 次期大統領が決まるのは、3月17日。 |
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●砲弾数、ロシアの4分の1 ウクライナ高官「深刻な不足」 2/1
ウクライナのポドリャク大統領府顧問は31日までに、ウクライナ軍の1日当たりの砲弾使用数について、東部戦線で攻勢を強めるロシア軍の4分の1程度だとの分析を明らかにした。ロシアが北朝鮮から大量の砲弾提供を受けたのに対し、ウクライナは西側諸国による支援の遅れが「深刻な砲弾不足」につながっているという。首都キーウ(キエフ)で時事通信の単独インタビューに応じた。 ポドリャク氏によると、ロシア軍の砲弾使用数はピーク時で1日当たり3万5000〜5万発だったが、侵攻が長引くにつれ同3000〜5000発に減少。最近、再び同8000〜1万2000発に増加した。 一方、ウクライナ軍の現在の砲弾使用数は同2000〜3000発で、「物量で圧倒されている」という。実際、ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州アウディイウカやその周辺に戦力を集中させ、徐々にウクライナ軍を押し込んでいる。 ポドリャク氏は、北朝鮮がロシアに砲弾100万発以上や地雷、弾道ミサイルを提供したとし、「北朝鮮の武器供与はロシアを大いに助けている」との見方を示した。その上で「ロシアと北朝鮮、イランによるテロ国家連合は、明らかに武器や軍事技術を融通し合うという合意を結んでいる」と指摘。北朝鮮に武器提供を求めたのは、ロシアの軍需産業が逼迫(ひっぱく)している証拠だとも語った。 また、ウクライナ軍が砲弾不足を補うには、ロシアの後方補給拠点を爆撃できる長距離ミサイルと、ロシアの航空優勢を覆す戦闘機、砲弾の代わりに対戦車攻撃に使えるドローンが必要だと強調。「ロシアを打倒しない限り、北朝鮮やイランは攻撃的行動をエスカレートさせ、紛争が世界各地に飛び火する」として、西側諸国に迅速な対ウクライナ支援を求めた。 |
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●ウクライナ砲弾供与、目標の半分 2/1
欧州連合(EU)は31日、ウクライナに対する3月までの1年間の砲弾供与が、目標の半分強の52万4000発にとどまるとの見通しを示した。ボレル外交安全保障上級代表が会見で表明した。 |
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●ロシアとウクライナ、大規模な捕虜交換 軍輸送機墜落後初 2/1
ロシアとウクライナは1月31日、捕虜を交換したと発表した。同24日に捕虜のウクライナ兵士を乗せたロシア軍輸送機がウクライナに撃墜されたとロシアが発表してから初の捕虜交換となる。 ウクライナのゼレンスキー大統領は、兵士207人が帰国したと明らかにした。一方、ロシア国防省は兵士195人が空路モスクワに移送され、治療とリハビリを受けると発表した。 ゼレンスキー氏は、207人のうち約半分はロシアのウクライナ侵攻後間もなくロシア軍に包囲されたウクライナ南部のマリウポリで防衛にあたった兵士だと説明した。 ロシアによる侵攻が始まって約2年となるが、ゼレンスキー氏によると、これまでに50回の捕虜交換が行われ、ウクライナに帰国した兵士は3035人にのぼるという。「捕虜となった兵士全員を帰国させるために全力を尽くす」としている。 今回の捕虜交換は、1月24日にロシア軍の大型輸送機「IL(イリューシン)76」がウクライナと国境を接するロシア西部ベルゴロド州に墜落してから初めて。この事故をめぐっては、ロシアは同機が捕虜のウクライナ兵65人を輸送中で、全員死亡したと主張。一方、ウクライナは同機はウクライナを攻撃するのに使われるミサイルを運んでいたと指摘し、主張は大きく食い違っている。 両国とも捕虜交換が予定されていたことは認めている。ウクライナ国防省情報総局のユーソフ報道官はCNNに、墜落現場から近くの安置所に運ばれた遺体は5体のみであることを示す情報があると明らかにし、その数は輸送機の乗員数と一致すると指摘した。 ロシアはウクライナ兵士が死亡したとの主張を裏付ける映像などの視認できる証拠を示していない。 |
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●ウクライナ支援でバイデン「奥の手」 ギリシャなどから三角スキームで武器送る 2/1
「三角取引」。この言葉をよく覚えておいてほしい。米国のジョー・バイデン大統領はこの方式によってウクライナに武器を届け始めている。 最初はエクアドル。そして今、ギリシャとそれを進めている。 三角取引とは要するに、突き出し方式で第三国に武器を融通するスキームだ。ある国が相手国に代金を支払うか武器を供与し、それによって相手国から第三国に武器を供与できるようにする。 ウクライナへの武器支援で、この方式のパイオニアはドイツである。ドイツ語で「Ringtausch」(「循環取引」といった意味)と呼ばれるこのスキームを通じて、ドイツはウクライナに武器を送り出してきた。主だったものを挙げれば次のようなものがある。 ・チェコ:ドイツはチェコにドイツ製レオパルト2戦車(14両)と工兵車両(1両)を提供し、チェコはウクライナに旧ソ連製T-72戦車(数十両の可能性)を譲渡 ・ギリシャ:ドイツはギリシャにドイツ製マルダー歩兵戦闘車(40両)を提供し、ギリシャはウクライナに旧ソ連製BMP-1歩兵戦闘車(40両)を譲渡 ・スロバキア:ドイツはスロバキアにドイツ製レオパルト2A4戦車(15両)を提供し、スロバキアはウクライナにBMP-1(40両)を譲渡 ・スロベニア:ドイツはスロベニアに軍用大型トラック(45台)を提供し、スロベニアはウクライナにスロベニア製M-55S戦車(28両)を譲渡 古い武器の在庫が膨らんでいる米国は、いずれドイツを抜いて三角取引の最大のブローカーになる可能性がある。それには十分すぎるほどの理由がある。米議会でこの4カ月、極端派のマイク・ジョンソン下院議長率いるロシア寄りの一部共和党議員が、ウクライナの戦争努力を支援する米政府の610億ドル(約8兆9000億円)の新たな支援予算を妨害し続けているからだ。 バイデンと部下のアントニー・ブリンケン国務長官は知恵を絞った。そして、おそらくドイツを手本に、議会の制約を受けない、大統領のもつ広範な軍事援助に関する権限を行使して、ウクライナ以外の国に武器を供与し、その国からウクライナに武器を譲渡してもらう取り組みに乗り出した。 1月上旬、エクアドルのダニエル・ノボア大統領は、米国から2億ドル(約290億円)相当の新しい武器を受け取る代わりに「スクラップ」兵器を米国に譲渡するとラジオ局のインタビューで明らかにした。 そして、この「スクラップ」は米国からウクライナに譲渡される。一部は1月下旬、アントノフAn-124大型輸送機でエクアドルから国外に運ばれたようだ。 エクアドルがウクライナに間接的に供与した武器が何だったのか、推測することはできる。9K33オサー地対空ミサイルシステムだ。レーダーと、射程およそ10kmのミサイルの4連装発射機を組み合わせた旧ソ連製防空車両で、エクアドルは何年か前、当のウクライナから10基取得していた。 オサーは世界最高峰の防空兵器というわけではないものの、シンプルで信頼性が高い。ウクライナ軍の第1129対空ミサイル連隊にも、近代的な英国製ストーマー装甲車と並んでオサーが配備されている。 第1129連隊でオサーとストーマーは互いに補完する関係にあるという。同連隊の兵士は「オサーはシンプルで、目標をより早く見つけることができる」半面、アクティブレーダーを使うため「探知されるのもより早い」と語っている。つまり、応射にさらされる危険があるということだ。 ウクライナは2022年2月にロシアが戦争を拡大した時点で、オサーを100基程度保有していた可能性があるが、OSINT(オープンソース・インテリジェンス)グループのOryx(オリックス)によると、うち少なくとも16基をロシア軍による攻撃で失っている。エクアドルからの譲渡に先立って、ウクライナはポーランドから余剰分のオサーを入手している。 エクアドルからの返還分によって、ウクライナ軍のオサーは戦争拡大前の数に回復するかもしれない。とはいえ、ミサイルの発射機と合わせてミサイルがセットで供与されるのだとしたら、そちらのほうが発射機本体以上に重要だろう。ウクライナ軍はロシア軍のドローン(無人機)や巡航ミサイル、ヘリコプター、その他の軍用機を迎撃するために、短距離ミサイルを何千発と費やしている。 エクアドルに続いて、ホワイトハウスはより規模の大きい三角取引をギリシャと始めた。 ギリシャのカティメリニ紙やその他のメディアによれば、バイデン政権はギリシャに、マリンプロテクター級哨戒艇3隻やC-130H輸送機2機、P-3哨戒機用のアリソンT56ターボプロップエンジン10基、M2ブラッドレー歩兵戦闘車60両、複数の輸送用トラックを供与した。 米政府はこれらと引き換えに、ギリシャがウクライナにさらに多くの武器を渡すことを求めている。「わが国は、ギリシャがウクライナに譲渡または売却できる防衛装備に引き続き関心をもっている」とブリンケンは表明している。ギリシャ政府はすでに、ウクライナに譲渡する古い武器を手当てしたとも伝えられる。 エクアドルの場合と同様に、ギリシャから三角取引でウクライナに送られる武器にも防空装備が含まれる可能性がある。旧ソ連で開発されたS-300地対空ミサイルシステムや9K330トール短距離地対空ミサイル、オサー、米国製ホーク中距離地対空ミサイルシステムだ。 三角スキームを通じた米国からの間接的な対ウクライナ支援が必要なのは、昨年10月以降、米議会共和党が、ウクライナに対する直接の追加軍事援助はおそらく決して承認しないという姿勢を明確にしたからだ。 共和党議員は、ドナルド・トランプ前大統領がウクライナに向ける個人的な憎悪と、権威主義のロシアに寄せるやはり個人的な好感に歩調を合わせている。 これらロシア寄りの議員たちは法案は妨害できても、米国がパートナー国向けの武器に資金を融通したり(編集注:対外軍事融資=FMF=と呼ばれるプログラムのこと)、米国の軍事ニーズを超えて余剰となったと大統領に認定された武器を譲渡したりできる、バイデンの大統領としての法的権限の行使は阻めない。 後者の余剰防衛装備品(EDA)に関する権限はとくに強力である。法律ではEDAの枠組みで移転できる武器の上限額は年間5億ドル(約730億円)に制限されているが、大統領が余剰武器に割り当てる金銭的な価値に関する規定はない。その価値はゼロ、つまり無償供与になる場合もあるのだ。受け取る側の国にとって主な問題は、輸送費については米国が負担することが認められていない点だ。 ウクライナ支援法案のメリットは、米国が製造できる、もしくは他国から購入できるほぼすべての武器を、ウクライナに供与できる基金を創設できる点ところにある。 バイデンが既存の融資権限とりわけEDAの権限に頼る場合、選択肢は少なくなる。今のところバイデンは、ウクライナ軍が使い慣れている旧ソ連式の武器をもっと入手できるように、三角取引向けに資金を融通したり、余剰武器を譲渡したりすることに最も熱心に取り組んでいる。 とはいえ、共和党が頑なな態度を崩さない限り、バイデンはさらに創意を発揮するだろう。ウクライナ、もしくは別のどこかの国が輸送費を負担すれば、バイデンはEDAをウクライナに直接譲渡することすらできるのだ。 |
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●ウクライナ支援、早期承認を 議会に要請、「安保への投資」―米財務長官 2/1
イエレン米財務長官は31日、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援について、「慈善事業ではない。米国や欧州の安全保障やルールに基づいた国際秩序への投資だ」と強調した。米議会に対し、追加支援を盛り込んだ補正予算の早期承認を改めて要請した。 欧州連合(EU)欧州委員会のベステアー上級副委員長らとの会談で語った。 イエレン氏は「われわれの支援は、戦場での成功と切っても切れない関係だ。ウクライナが弾薬を使い果たす前に、資金が枯渇することは許されない」と話し、支援の重要性を訴えた。 |
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●ウクライナ政権・軍トップの間に溝 ロシア大統領府 2/1
ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は1月31日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がワレリー・ザルジニー軍総司令官に辞任を迫っているとの観測が浮上していることについて、政権・軍双方のトップ同士の対立を示すものだとの認識を示した。 ウクライナのメディアは今週、ロシアによるウクライナ侵攻が2022年に始まる前から軍トップを務めてきたザルジニー総司令官の解任にゼレンスキー氏が踏み切る見通しだと報じた。 後任としてウクライナ国防省情報総局(GUR)のキリロ・ブダノフ局長の名前も取り沙汰されている。 ザルジニー氏が昨年、英誌エコノミストに掲載されたインタビュー記事で、戦況はこう着状態に陥っていると発言したのを受け、ゼレンスキー氏との間に溝ができているのではないかとの見方が広がっていた。 ペスコフ報道官はモスクワで記者団に対し、ザルジニー氏の解任観測について、ウクライナの文民、軍双方のトップの間の「溝が広がっている」ことを示していると指摘。その背景には「反転攻勢の失敗と前線における緒問題があるのは明らかだ」と述べた。 さらに、「ロシアの特別軍事作戦は戦果を上げ続けており、(ウクライナ側の)分裂はこれからも拡大するだろう」と語った。 |
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●ウクライナ、動員人数巡り対立か 米紙報道、軍総司令官交代で 2/1
ウクライナのゼレンスキー大統領が国民的人気の高いザルジニー軍総司令官の交代を準備しているとの報道に関し、米紙ワシントン・ポスト電子版は1月31日、背景に動員人数を巡る激しい意見対立があったと報じた。事情を知る関係者の話とした。 同紙によると、29日に両氏が話し合った際、ザルジニー氏が今年は50万人近い動員をすべきだと提案。ゼレンスキー氏は軍服、銃、訓練施設の不足や勧誘の課題を理由に現実的でないと返答した。ザルジニー氏は「ロシアが動員する人数に対抗しなくてはいけない」と反論したという。 |
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●ロシア、ウクライナ東部の一部制圧 支配地域拡大の構え 2/1
ロシアのプーチン大統領は1月31日、侵攻したウクライナで激戦地となっている東部ドネツク州アブデーフカの一部をロシア軍が制圧したと述べた。ウクライナ軍と対峙する防衛線付近の安全確保が重要だとし、一方的に併合を宣言した東部・南部4州の実効支配地域をウクライナ軍の長距離攻撃から守るために進軍を続ける構えを示した。 ロシアは、ほぼ全域を支配下に置いた東部ルガンスク州以外の3州でも全域制圧を目指すほか、ロシア西部ベルゴロド州への攻撃を防ぐため、国境を接するウクライナ東部ハリコフ州への攻勢を強めるとみられる。 一方でウクライナ国防省情報総局は1日、クリミア半島西部でロシア黒海艦隊のミサイル艇「イワノベツ」を撃沈したと表明した。無人艇のようなものが艦艇に近づき爆発する映像も公開した。 ロシア国防省は1日、ベルゴロド州に4機、南部ボロネジ州に2機の無人機攻撃があったと発表した。 プーチン氏は31日にモスクワで、3月に行われる大統領選の選挙運動員らと会合。ドネツク州のロシア側支配地域「ドネツク人民共和国」の中心都市ドネツクへの攻撃拠点になっているアブデーフカの制圧は「最優先課題の一つだ」と述べた。 |
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●EU ウに8兆円支援実施で合意 2/1
欧州連合(EU)は1日、ブリュッセルで臨時首脳会議を開き、ウクライナに対する4年間で500億ユーロ(約8兆円)の追加支援に全会一致で合意した。EUのミシェル大統領がX(旧ツイッター)で明らかにした。ロシアに融和的で追加支援に難色を示していたハンガリーも賛成に回った。 ミシェル氏は今回の合意を通じて「EUはウクライナ支援でリーダーシップを発揮し、責任を負っている」と強調した。ウクライナのゼレンスキー大統領はXで、EUの支援継続で「ウクライナの経済と財政がより安定する」と歓迎した。 首脳会議に先立ち、ミシェル氏とハンガリーのオルバン首相、独仏伊首脳らが協議した。公表された採択文書には今回の支援に関し、毎年討議を行うことや、「必要であれば2年後に見直す」方針も明記された。ハンガリーは1年ごとに判断する「妥協案」をEU側に示しており、これが落としどころになったもようだ。 |
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●ウクライナ軍の砲弾不足が深刻化、ロシアの1/3以下に…米欧の追加支援滞り 2/1
米ブルームバーグ通信は1月31日、ロシアの侵略を受けているウクライナ軍が前線で使う砲弾量が1日2000発以下に減り、露軍の3分の1以下になっていると報じた。米国や欧州連合(EU)の追加支援が滞る中、ウクライナ軍の砲弾不足が深刻化している。 ウクライナのルステム・ウメロフ国防相が今週、EU各国に送った書簡で明らかにした。ウメロフ氏は戦線が1500キロ・メートルと長いことを指摘し、「多くの場合は、砲弾が多い側が勝つものだ」として、迅速な支援を訴えた。ウクライナ軍は月20万発の砲弾が必要になると訴えている。露軍は月40万発の規模で砲弾を確保しつつあるという。 一方、ロイター通信によると、EUのジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表(外相)は1月31日、今年3月までにウクライナに供与できる砲弾は約50万発で、目標としていた100万発を達成できないと明らかにした。今年末には、年140万発を生産できる態勢が整う見通しという。 |
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●反政府活動家ナワリヌイ氏がプーチン氏への反対票投じるよう国民に呼びかけ 2/2
プーチン政権と対立して逮捕され服役しているロシアの反政府活動家ナワリヌイ氏は1日、プーチン氏が通算5選を目指す3月の大統領選で、投票日の正午に投票所に出向いてプーチン氏への反対票を投じるよう国民に呼びかけた。 ナワリヌイ氏は通信アプリへの投稿で、この方法なら完全に合法的な手段でプーチン氏への反対の多さを示すことができると主張。政権側は妨害できないと指摘した。 大統領選の投票は3月15〜17日の3日間。 ナワリヌイ氏は過去の経済事件で拘束・収監されたほか、昨年8月には過激派団体を創設したとして懲役19年を言い渡され9月に確定。昨年12月、モスクワ東方ウラジーミル州の収監先から北極圏にある北部ヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所に移送されたことが判明した。 |
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●出馬なるか “反プーチン”ナデジディン氏が署名提出 2/2
反プーチン・反ウクライナ侵攻を掲げるナデジディン氏が、ロシア大統領選立候補に必要な10万5000人分の署名を中央選挙管理委員会に提出した。立候補の可否については、10日以内に選挙管理委員会の判断が下される。 ●ナデジディン氏の署名集まる ロシア大統領選が3月に迫る中、モスクワの中央選挙管理委員会に、軍事侵攻反対を掲げるボリス・ナデジディン氏が到着した。 反プーチン、反ウクライナ侵攻を掲げる、唯一の立候補予定者だ。 この日は、出馬に必要な10万人分の署名の提出期限当日。自分で持ち込みに来たのだ。 次々に検査機を通り抜けていく、署名が入った箱。どんどん積み上げられ、その数は25個。 ナデジディン氏は署名活動の結果に自信をのぞかせ、「ロシア大統領選の歴史の中で、実際に人々が行列を作って署名した初めてのケースです」とコメント。 その言葉通り、ロシア全土75の地域で行われた署名活動では大行列ができていた。 ●10日以内に選挙管理委員会が判断 集まった数は、約20万人分にのぼる。このうち有効とされる可能性が高い、10万5000人分を提出したという。 すでに政党推薦の3人とプーチン氏は立候補者として登録済み。 署名が有効と認められ、立候補できるのか。10日以内に選挙管理委員会の判断が下される。 |
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●「5選挑戦」プーチン大統領、選挙運動員に「ウクライナで軍事的利益を死守」 2/2
「5選」に挑戦するロシアのプーチン大統領が来月の大統領選挙を控えて選挙運動員に会い、ウクライナ戦争で軍事的利益を確保するという立場を見せた。 1日(現地時間)のAP通信によると、プーチン大統領は前日、選挙運動員に会った席で「ロシアは軍事的手段を動員しながらも国益を守らなければいけない。会議が行われる間にもロシア軍はウクライナ東部のアウディイウカで新しい利益を得た」と述べた。 続いて「我々は国家の発展とすべての方面で独立と主権を強化するうえで、かなり難しく重要な時期を送っている」とし「常に存在する汚れた泡が少しずつ洗い流されている」と主張した。 プーチン大統領は「戦線を後回しにしなければいけない。ウクライナ当局が平和な都市を砲撃するために西側が供給する長距離砲から安全なわが領土を広げなければいけない」とし「重要な人口密集地から敵を追い出すなどそのようなことをしてきた」と強調した。そして「これはそこで命をかけて戦う軍人の主な動機だ。祖国を守ってわが国民を守るためのことだ」と述べた。 プーチン大統領は統一ロシア党出身で2012年に離党し、今回の大統領選に無所属で出馬する。ロシア大統領選は来月15−17日に行われる。ロシアはウクライナから奪ったドネツク・ルハンシク(ルガンスク)・ヘルソン・ザポロジエ州も選挙区に含めた。2014年に強制合併したクリミア半島でも選挙を行う。 |
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●戦争の設計が変わった、ウクライナ軍総司令官が寄稿 2/2
第2次世界大戦が終わって80年近くたつ。それでも、戦争の戦略観を定義づけるレガシー(遺産)は今日まで続いている。 航空、ミサイル技術、宇宙基盤の資産などでめざましい進展があった一方、勝利の概念は変わっていない。敵を壊滅させ、領土を確保または解放することだ。 それでも、それぞれの戦争には独自性がある。 そして軍司令官にとって、各戦争がどう形成されるか、その違いを早めに理解することほど難しい課題はない。それが私の見解だ。 その一つ目の要因は、技術の進歩だ。それは兵器や装備の発展を決定づけるものとなる。 二つ目は国内外の政治状況と経済環境だ。 勝利は独自性のある戦略を必要とし、独自性のある論理に従って実現する。 この戦争の中心的な推進力となってきたのは、無人兵器システムの発展であることは周知のとおりだ。 こうしたシステムは息をのむペースで増え、その適用範囲はさらに広がりを見せている。 極めて重要なのは、こうした無人システム――ドローンを含む――や他のタイプの先進兵器が、ウクライナが陣地戦に引きずり込まれるのを回避するために最良の方法を提供しているという点だ。陣地戦で我々に優位性はない。 こうした技術の習熟は重要である一方、それだけが現在の戦略に影響を与えているわけではない。 我々は重要なパートナー国からの軍事支援の縮小と戦わなければならない。こうした国々は内政に緊張を抱える状態にある。 我々のパートナー国のミサイルや防空迎撃兵器、大砲の弾薬の備蓄は尽きつつある。ウクライナでの激しい戦闘行為が原因だが、世界的な推進装薬の不足も要因となっている。 ロシアは中東情勢の展開が国際社会の注意をそらしていると気づいていて、他の場所でもさらなる紛争を引き起こそうとするかもしれない。 国際社会が科した制裁の枠組みが弱いため、ロシアは一定の国との協力関係を維持しながら、我々に消耗戦を仕掛けるための軍産複合体を展開することが依然可能な状態にある。 我々は、敵が人的資源の動員で極めて有利なことを認識しなければならない。ウクライナの国家機構が不人気な手段を使わずに、軍の人員レベルを引き上げることができない状況とは対照的であり、我々はこの点も認識する必要がある。 最後に、我々は自国の規制枠組みの欠陥と、防衛産業の部分的な独占状態で、身動きがとれなくなっている。こうした状況が弾薬などの生産のボトルネックを生み、供給面でパートナー国への依存度をさらに高める要因となっている。 我々の戦闘経験、特に2022年以降のものは他にはない唯一のものだが、それでも勝利に向けて常に新しい方法、新しい能力を探さなければならない。それが敵に対する優位性を確保する上で手助けとなる。 恐らく、現時点で最も優先度が高いのは(比較的)安価で、高い効果を発揮する最新の無人機や他の技術的手段といった兵器全般の習熟だ。 既にそうした資産のおかげで、司令官は戦場の状況をリアルタイムに、昼夜や天候を問わず監視できる状況となっている。 だが、それだけではない。 そうした資産はリアルタイムの諜報(ちょうほう)も可能にしている。これにより24時間、絶え間なく砲撃の調整ができ、標的の敵が前線にいても奥地にいても、精密に攻撃できるようになる。 要するに、これは戦場における作戦の大規模な再設計にほかならない。同時に、時代遅れの型にはまった思考を捨て去ることも意味する。 新しい作戦にはデジタル分野での創造性、電磁環境の管理、攻撃用ドローンとサイバー資産の統合運用が含まれるかもしれない。 そうした作戦は単一の概念や計画のもと、連携して実行される。 重要な点として、目標は焦点となっている戦闘だけとは限らない。 敵の経済力を減退させたり、孤立や疲弊させることも目標となり得る。 攻撃作戦には心理的な目標が含まれることもある。 ただ、そうした点を踏まえたとしても、しばらくの間は戦場の状況の改善が優先項目であり続けるだろう。 そしてそこでは、技術が伝統に対して疑いようのない優位性を誇ることになる。 こうした資産の遠隔制御は、危険な状況に置かれる兵士を減らし、人的損失のレベルを下げることにつながる。 戦闘任務における重い資材への依存度も減らし(完全にはなくならないが)、全体的な戦闘行為の実行を減らす機会ももたらす。 さらに、重要なインフラ施設や通信拠点に対し、高価なミサイルや有人航空機を使うことなく大規模な奇襲攻撃を仕掛けられる可能性も開く。 さらなる利点については、時間がたつにつれ明らかになるだろう。ただ、当然ながら敵もそうした作戦から身を守り、主導権を回復する方法を常に模索している。 従って、防衛システムも常に改善が必要となる。敵による新技術の利用を想定した対抗手段も同様だ。 我々の軍が抱える課題を甘く見ることはできない。 それは技術的な再武装を実現する、完全に新しい国家システムの創造だ。 現時点でのあらゆる事項を考慮すると、そうしたシステムの構築は5カ月でできると我々は考えている。 我々のパートナーも同意見だ。 この期間は、適切な組織構造の構築、陣地への補充と装備支給、訓練と支援の実施、支援インフラと兵たんの構築、軍事ドクトリン(基本原則)の枠組みの開発に使われる。 結論として、2024年、我々は三つの分野に注力する。 我々の軍にハイテク資産を供給するシステムを作ること。 資産の制約やその展開方法を念頭に入れた、訓練や戦争行為に対する新しい考え方の導入。 新しい戦闘能力の可能な限り早い習熟。 我々は敵を排除し、国家としての存立を確保するための能力を既に持っている。 我々の目標はチャンスをつかむことに置く必要がある。最新の戦闘能力を最大限に積み上げ、より少ない資源で敵に最大の被害を与えることだ。それが侵略を止め、ウクライナを将来も侵略から守ることにつながる。 [バレリー・ザルジニー氏は2021年からウクライナ軍総司令官を務める。この記事は予想される同氏解任の発表前に書かれた。] |
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●中国、ウクライナの「戦争支援企業」リストに警告=関係筋 2/2
中国がウクライナに対し、中国企業を「戦争支援企業」に指定したことで2国間関係が損なわれる可能性があると伝えていたことが分かった。事情に詳しいウクライナ高官2人が匿名を条件にロイターに明らかにした。 中国の駐キーウ大使がウクライナ政府高官と先月会談した際に伝達したという。 ウクライナは中国企業14社を含む世界48社を「国際的な戦争支援企業」としてリストアップしており、その企業活動が間接的にロシアの戦争を支援していると見なしている。 高官の1人によると、中国側はウクライナに対して何らかの条件を設定したのではなく、単にリストについての見解を表明しただけだという。 一方、別の高官は中国がこの問題を中国のウクライナ産穀物購入に結びつける可能性を示唆した。 ブラックリストは掲載企業に法的な影響を及ぼさないものの、ロシアの主な収入源である石油やガスなどの分野における中国とロシア企業の協力関係を問題視。中国エネルギー大手を取り上げている。 リストに載っている企業は中国が最も多く、次いで米国が8社、フランスとドイツが各4社となっている。 |
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●ウクライナ国防省「ロシア黒海艦隊のミサイル艇撃沈」…水上無人艇が体当たり 2/2
ウクライナ国防省情報総局は1日、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミア周辺で、露軍黒海艦隊のミサイル艇「イワノベツ」を撃沈したと発表した。水上無人艇が体当たりした結果、イワノベツが爆発する様子だとする動画も合わせて公開した。 発表によると、ウクライナ軍は1月31日夜から2月1日未明にかけ、クリミア西部に位置し、黒海につながるドヌズラフ湖周辺で警戒活動中のイワノベツに無人艇による攻撃を加えた。 発表は、イワノベツについて「移動が不可能な損傷を受けて船尾側に転覆し、沈没した」と説明。露側の損害額が約6000万〜7000万ドル(約88億〜103億円)に上ると主張した。 英BBCロシア語版によると、露側は1日夜の時点で攻撃についてコメントしていない。ウクライナ軍は、黒海艦隊の弱体化を狙い、無人艇などで艦船や基地への攻撃を続けている。 |
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●ウクライナ、ロシア軍ミサイル艇を撃沈と発表 黒海 2/2
ウクライナ軍は1日、ロシア占領下のクリミア半島の海湾で特別作戦を実施し、ロシア黒海艦隊のミサイル艇を破壊したと発表した。 ウクライナ軍情報当局によると、ロシアの小型軍艦「イワノヴェツ」は夜間の攻撃で「船体に直撃」を受け、沈没したという。 同当局は、直撃と大爆発の瞬間だとする映像を公開した。映っている船のマストや大型レーダーなどは、ロシアが保有するミサイル艇の特徴と一致している。 ロシア当局はこの件についてコメントしていない。 ロシアの軍事ブロガーは通信アプリのテレグラムに、船はドローン(無人機)による攻撃を3回受けて沈んだと書いた。 ウクライナ国防省情報総局は、特殊部隊「グループ13」の兵士らが、海軍基地のあるクリミア半島西側の海湾、ドヌズラフ湖で船を破壊したとテレグラムで発表。 「ロシア船(イワノヴェツ)は船体を繰り返し直撃され、損傷して動けなくなった。船尾に傾き沈没した」と説明した。 また、ロシアの捜索救助活動は失敗に終わったと主張。同船は6000万〜7000万ドル(約88億〜102億円)の価値があるとした。 ウクライナ外務省のオレクサンドル・シェルバ氏は、「午前3時45分に最初の攻撃があり、午前4時には乗組員全員が避難した。この船が助かる可能性はまったくなかった」とBBCに説明。「見事な」攻撃だったとした。 ウクライナはロシアとの戦争で、黒海とその周辺において一連の成功を収めてきた。艦隊は有していないものの、ロシアの軍艦を損傷・破壊してきた。 ロシアによるウクライナ侵攻の開始2カ月後の2022年4月には、ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」を損傷させ、最終的には撃沈させた。ウクライナはミサイルで攻撃したとみられている。 昨年9月には、クリミア・セヴァストポリのロシア黒海艦隊の司令部をミサイル攻撃した。その後の衛星画像は、ロシア海軍が黒海艦隊の多くをクリミアからロシアの黒海港ノヴォロシースク港に移動させたことを示していた。 昨年12月には、クリミアのフェオドシヤ港で大型揚陸艦「ノヴォチェルカッスク」を破壊したと発表した。ロシアも同艦の損傷を認めた。 |
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●EU ウクライナ追加支援 4年間で8兆円規模 ハンガリーも含め合意 2/2
EU=ヨーロッパ連合は、ロシアによる侵攻が続くウクライナへの8兆円規模の財政支援について、反対していたハンガリーも含めて全加盟国で合意しました。 EU フォンデアライエン委員長「4年間で500億ユーロの支援は、残忍な軍事侵攻開始から2年になるのを前に、プーチン大統領に対して非常に強いメッセージを送るものです」 EUは1日、臨時首脳会議を開き、ウクライナへの4年間で500億ユーロ、日本円でおよそ8兆円規模の資金援助に27の全ての加盟国で合意しました。反対し続けていたハンガリーのオルバン首相とは会議を前に、EUのミシェル大統領やフランス、ドイツの首脳らが協議し、説得したとみられます。 合意文書には「資金の使い方について毎年討議を行い、必要であれば、2年後に見直すこと」などが盛り込まれました。 こうしたなか、ウクライナ兵捕虜を乗せたロシア軍輸送機の墜落をめぐって、ロシア連邦捜査委員会は1日、「ウクライナ軍がアメリカ製の地対空ミサイルシステム『パトリオット』で撃墜した」とする調査結果を発表しました。 調査結果では、現場で見つかったミサイルの破片とされる映像が公開されたほか、捕虜のウクライナ兵65人を含む死者全員の身元が確認されたとしています。 一方、ウクライナ国防省は1日、ロシアが一方的に併合した南部クリミア沖の海上で、ロシア軍の艦艇をドローン=無人機で攻撃し、撃沈したとする映像を公開しました。ウクライナ側は今週、クリミアのロシア軍基地などにも攻撃を行ったと主張していました。 |
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●EU、ウクライナ支援パッケージを承認 7.9兆円相当 2/2
欧州連合(EU)の加盟27カ国は1日、ウクライナに対する500億ユーロ(約7兆9500億円)相当の支援パッケージを承認した。これまで、ハンガリーが反対していた。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は新たな支援を歓迎。同国の経済と財政の安定につながると述べた。 ウクライナ経済省によると、支援の第1弾は3月に届けられるという。 昨年12月のEU首脳会議(サミット)では、ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相が支援策に拒否権を発動し、否決されていた。今回も、ハンガリーが支援を阻止するのではないかとの懸念が広がっていた。 オルバン首相は、EUの中では最もロシアのウラジミール・プーチン大統領に近い。オルバン氏は先に、ウクライナに対するEUの政策を再考させたいと述べ、向こう4年にわたってウクライナに資金を提供することに疑問を呈していた。 欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「この支援が、アメリカが同じことをするきっかけになると思う」と述べた。アメリカでも昨年末、連邦議会が対ウクライナ支援策を否決し、協議が滞っている。 ●短時間の承認に驚きも EUの支援の承認は、今回のサミットが始まってから2時間以内に発表された。オルバン氏と他のEU首脳とのあつれきで協議が長引くと思われていただけに、早急な決定に驚きの声も上がった。 ただし、EUの支援は前線ではなく、後方で生活する人々向けだ。 ウクライナは国家予算を戦争につぎ込んでいる一方で、年金や公務員給与などの支払いも続けなければならない。EUが支援を承認しなかった場合、こうした支払いが遅れるとの警告も出ていた。 ウクライナが友好国に支援継続を求めるなかでも、国民生活を可能な限り円滑に維持することは、戦争への支持を維持するために不可欠だ。 新たな協定には、資金パッケージについて1年ごとに話し合うことと、「必要であれば」2年後に見直すオプションが含まれている。このオプションは、欧州理事会の裁量にゆだねられている。 オルバン氏は、この協定について毎年投票を行うよう求めていた。これは、支援が毎年、ハンガリーの拒否権の脅威にさらされる可能性があった。 ●武器供給についても協議 協定ではまた、ウクライナを支援する前提条件として、ウクライナが「少数民族に属する人々の権利」を支持することが挙げられている。これは、ウクライナにおけるハンガリー系少数民族に対するオルバン氏の長年の懸念に言及している可能性がある。 サミットではウクライナへの武器供給についても協議された。 EUは今週初め、3月までに送るとしていた弾薬100万発のうち52%しか届けられていないと認めた。欧州理事会のシャルル・ミシェル議長は1日、EUはウクライナが「自国と自国の未来」を守るために必要な装備を確実に入手できるようにする決意があると述べた。 ゼレンスキー氏はEU首脳に向けたビデオ演説で、EUは「その言葉が重要であり、その約束が欧州全体の利益に寄与すると証明した」と述べた。 また、米国の援助が議会によって阻止されていることに言及し、今回の発表が「大西洋を越えて(中略)国際ルールに基づく世界秩序が、あらゆる挑戦に耐えるというシグナルを送るだろう」と話した。 「欧州はその団結力によって、世界情勢の基調を定めている」と、ゼレンスキー氏は付け加えた。 EUは昨年12月のサミットで、ウクライナの加盟交渉を開始することに合意している。ハンガリーのオルバン首相は、この時は拒否権を発動せず、採決の際に一時的に会議場から退出した。 |
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●「質より量だ」ウクライナ 大砲・砲弾の迅速供与を訴え 2/2
ウクライナの情報機関トップがCNNのインタビューに応じ、不足する大砲や砲弾について迅速な供与を訴えました。また、ロシア国内の重要インフラへの攻撃強化を示唆しました。 CNNによりますと、国防省情報総局のブダノフ局長は「援助が本当に必要だ」と述べ、これまでの戦闘による消耗を補うためりゅう弾砲を初めとする、大砲の数を急ぎ増やす必要があると語りました。砲弾についても「戦争で最も決定的な要因のひとつだ」、「質より量だ」として、北朝鮮から供給を受けるロシアに比べ大幅に不足している現状を訴えました。 また、ロシア国内へのドローン攻撃について関与は認めないものの、「全ての重要インフラ、軍事インフラが対象に含まれると信じている」として攻撃が拡大する可能性を示唆しました。そして、燃える施設などを見ることにより「ロシア国民は戦争の本当の姿を知る」と述べました。 一方、ゼレンスキー大統領がザルジニー軍総司令官を解任し、ブダノフ氏を後任に充てるとの報道ついては否定しました。 |
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●中国に関する国際金融界は嘘と欺瞞だらけ デフレ不況・マイナス成長も… 2/2
国際金融界というのは、中国に関する限りは虚偽と欺瞞(ぎまん)だらけである。 昨年の中国経済は本欄前週で報じたようにデフレ不況、マイナス成長に陥った。ところが西側の銀行、証券の国際金融資本は5・2%のプラス成長とする北京当局発表に疑義をはさまない。さりとて真実から目をそらしていては、金融機関としての信用を失ってしまう。固より、中国市場が縮小し、衰退し続けるのは国際金融資本にとっては重大な打撃になる。そこで、どうやって中国の経済危機を緩和し、再浮上させられるか、秘策を練る。国際金融資本のアナリストたちは中国が依然として巨大な成長市場だと喧伝(けんでん)する習近平政権のお先棒を担ぐのだ。 図らずもだろうが、この思惑が最近あらわになった。1月26日付ブルームバーグ電は「中国は低迷する経済と株式市場を回復させるために、円に対する人民元安を狙うべきだと、シティグループが提案した」と報じた。米シティグループ・グローバル・マーケッツのアジア取引戦略責任者はブルームバーグテレビジョンで、「もし中国が現在の水準より8%から12%安い1元=18―19円にすることを目指せば、(中略)中国はリフレ、日本はデフレとなり、皆がハッピーになれる」と論じたという。 グラフは人民元の対円、ドル相場の推移である。元は円とドルの双方に対してウクライナ戦争勃発の2022年2月までは上昇を続けたが、同3月以降はドルに対しては下落プロセスに入ったものの、円に対しては1元=20円前後の高水準で推移するようになった。2021年末には不動産市況下落が本格化し、ウクライナ戦争開始後からはロシアに加担する習政権が西側の金融制裁を食らうとの恐れが生じた。不動産バブル崩壊と政治的リスクの双方が重なった結果、外国の対中証券投資が急減し、続いて製造業の対中直接投資減にもつながった。 |
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●OPECプラス、常に石油市場支える用意=ロシア副首相 2/2
ロシアのノバク副首相は1日、石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟産油国で構成する「OPECプラス」について、中東情勢やその他の要因で対処が必要な際には「いつ何時でも」石油市場を支える態勢が整っていると述べた。 OPECプラスの合同閣僚監視委員会(JMMC)後のテレビ放送で語った。会合では現行の生産方針を維持することを確認した。 関係者2人によると、現在実施している自主減産を延長するかどうかは3月の会合で決めるという。 OPECプラスは、1─3月期に日量計220万バレルの減産を実施することで合意している。 ノバク氏は中東情勢の緊迫化や紅海での商船攻撃について触れ、「市場のバランスを取ることを目指した協調行動を調整する決定がいつでもできるよう、現在の状況を注視し続けることは極めて大切だ」と語った。「現在、市場は中東情勢に大きく左右されている」と指摘したものの、全体的には世界の市場は安定しているとの見方を示した。 |
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●正午の反対投票呼びかけ 大統領選でナワリヌイ氏 2/2
プーチン政権と対立して逮捕され服役しているロシアの反政府活動家ナワリヌイ氏は1日、プーチン氏が通算5選を目指す3月の大統領選で、投票日の正午に投票所に出向いてプーチン氏への反対票を投じるよう国民に呼びかけた。 ナワリヌイ氏は通信アプリへの投稿で、この方法なら完全に合法的な手段でプーチン氏への反対の多さを示すことができると主張。政権側は妨害できないと指摘した。 大統領選の投票は3月15〜17日の3日間。 ナワリヌイ氏は過去の経済事件で拘束・収監されたほか、昨年8月には過激派団体を創設したとして懲役19年を言い渡され9月に確定した。 |
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●「単なるガス抜き」扱いされていたはずが予想外の人気─ 2/2
落選確定の“プーチンの対抗馬”ナデジディンが出馬することの意義 ●突然浮上した地味な政治家 3月15日から17日にかけておこなわれるロシアの大統領選挙。選挙とは名ばかりで、プーチン本人と体制を支持する候補しか参加せず、ウラジーミル・プーチン大統領が勝利するようになっているという見方が強い。プーチン政権を批判してきた陣営や候補は、これまでの選挙でも立候補前に投獄されたり、手続き上の不備を理由に立候補を取り消されたりしてきた。今回の選挙でも、平和主義を掲げて名乗りをあげたエカテリーナ・ドンツォワの出馬が認められなかった。 しかし、ウクライナへの侵攻に異議を唱えるもう一人の候補が、立候補手続きの完了までこぎつけたとして話題になっている。それは、元下院議員のボリス・ナデジディンだ。そのマニフェストでは、プーチンが「特別軍事作戦(ウクライナへの侵攻)を開始するという致命的な間違いを犯した」と述べられている。 ナデジディンは、現在投獄されているアレクセイ・ナワリヌイや、暗殺されたボリス・ネムツォフのように、政権にとって脅威となったカリスマ的な批判者ではなかった。 英紙「ガーディアン」によると、彼は国営テレビに出演してウクライナへの侵攻について批判的な発言をすることを許された稀な人物だったが、それだけに「ロシアにも競争があるという虚構を維持する、形だけの反対派」ではないかと思われていたようだ。これは彼が過去に、いまもプーチンの側近を務めるセルゲイ・キリエンコなどのもとで働いていたという事情もあるだろう。ナデジディンについて尋ねられた大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、「我々はナデジディンを競争相手とはみなしていない」と余裕の構えだった。 しかし、仮に見かけ上だけでも「反戦派」として立候補が認められる可能性がある唯一の人物となったナデジディンのもとには、予想外の幅広い支持が集まっている。獄中のナワリヌイやその支持者、出馬を拒否されたドンツォワ陣営のほか、亡命したミハイル・ホドルコフスキー、徴兵された家族を家に返してほしいと訴える兵士の妻や母からなるグループなどが、ナデジディン支持を表明した。選挙への立候補には有権者10万人以上による署名が必要だが、ロシア全土で、人々が署名のために何時間も並ぶ様子も話題となった。 ●可能性は「絶望的」だが… ナデジディンの立候補が正式に認められるか自体もまだ不明だ。ロシアの独立系メディア「メドゥーザ」によると、はじめは政権や体制派に黙殺されていたナデジディンだが、予想外の人気が出たせいか、にわかに国営テレビなどで声高に批判されるようになった。そのため、当局が何らかの理由をつけて立候補手続きを取り消す可能性は大いにある。メドゥーザの取材を受けた支持者らも、ナデジディンが選挙に参加できるかどうかについて、まったく楽観視していない。 それでは、仮に立候補が認められた場合はどうなるのか。ロシアの政治アナリスト、ドミトリー・オレシキンはドイツメディア「ドイチェ・ヴェレ」に対し、ナデジディンの得票率が5%程度にとどまった場合は、むしろ政権にとって都合の良い演出になってしまうと述べる。だが同時に、何事もなければ10〜15%の票を集めることができるだろうと予測する。 ナデジディン支持者の大部分も、勝てる可能性がとても低いことは理解している。しかし、もし5%を超える得票率を獲得できれば、「ロシア国民がウクライナ戦争に賛成して固く団結しているという立派なイメージに泥を塗ることになる」ため、反体制派にとってはイデオロギー面での勝利となり、プーチンの政権運営に一定の影響を及ぼすのではないかと考えられている。 |
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●ウクライナ戦争、ロシア崩壊のカウントダウンか…少数民族が独立運動を活発化 2/2
間もなく2年を迎えるウクライナ戦争では連日犠牲者が出続けている。そんな中で、ウクライナとロシア内少数民族が連携する可能性が出てきた。 昨年11月8日、欧州議会庁舎内で行われた国際会議で、100年以上前、ロシア南部に実在した「北コーカサス山岳共和国連邦」の復興宣言がなされたのだ。ちなみに、山岳共和国連邦領土の西端は、海峡を挟んでウクライナが奪還を図るクリミア半島につながる。 クリミア半島でウクライナが圧倒的優勢に立った場合、独立に向けての動きが活発化するだろう。 そうなると、21世紀のロシア革命的な歴史的大事件に発展する可能性もなきにしもあらずだ。ロシア少数民族の視点から、その背景と展望を探る。 ●零下30度のロシアでクライナ侵略以降、最大規模のデモ 1月17日、ロシアのウラル山脈南部に位置するバシコルトスタン共和国で、1万人規模の大規模デモが起き、機動隊と衝突が起きて逮捕者が出ている。 CNNなどの報道によると、地元少数民族バシキール人のフェイル・アルシーノフ氏が民族的憎悪の扇動した罪で有罪判決を受けた。これに抗議する群衆が集まり、大規模デモとなったのだ。ロシアではウクライナ全面侵略開始以降、デモは禁止されている。今回のデモも無許可だから、警察は捜査を開始。今後、逮捕者が増える可能性がある。 このバシコルトスタン共和国には、もちろんロシア人も住んでいるが、地元の少数民族バシキール人(主にイスラム教徒)やタタール人などが住んでいる。 今回の大規模抗議デモのきっかけは、ウクライナ戦争や動員にストレートに反対する目的ではなかった。しかし、次第にウクライナ戦争やプーチン政権批判に傾いていった。その背景には、ウクライナ戦争に駆り出されて戦死を強いられている少数民族の存在があり、今後は何かのきっかけで爆発する可能性を示した。 ●ロシアはウクライナ戦争で自国内少数民族を大量抹殺 いま、ロシアでは“自国内民族浄化”が進んでいる。 ロシア連邦は83の共和国と州などに分かれており、登録されている民族は180以上。これだけの民族が存在するのは、広大なロシアの領土が、帝政ロシア時代に戦争によってさまざまな民族を征服して獲得された結果である。 アメリカの情報機関によれば、昨年12月時点でウクライナ戦争におけるロシア軍死傷者は31万5000人。戦死者数と負傷者数の内訳は明らかにされていない。ウクライナ当局による発表でも、これに近い数値だ。ロシア兵の戦死者は、ロシア人でなく帝国時代に征服された少数民族の占める割合が高い。 モスクワやサンクトペテルブルグなどの大都市出身者に大量の戦死者が出れば、ロシア国民に大きな動揺が起こり、弾圧しても反戦運動が起きる可能性がある。そうなれば戦争遂行の妨げになるため、少数民族を盾にしてロシア人や大都市出身者を守る意味合いもあるのだろう。 しかし、その実態を見るにつれ、単にロシア人を守るだけでなく、ロシアはウクライナ戦争を利用して国内の少数民族抹殺を推進しているのではないかとすら思えてくる。 ●ブリヤート共和国出身者はモスクワ出身者の33倍の戦死率 ロシアの独立系メディア「メディアゾーナ」は、出身地域別にロシア軍兵士の戦死統計を掲載し続けている。刑務所の実態、司法、警察などに関係する人権状況を調査報道することが多いメディアで、BBCなどとも協力して、戦死者の独自データを集めている。 この調査では、アメリカやウクライナの政府機関発表より犠牲者数が少ない。2022年2月24日のロシア軍による全面侵攻以降、2023年12月27日までの地域別の戦死者を見てみよう。 1月17日に大規模デモが発生したバシコルトコスタン出身の戦死者とモスクワ市出身者の戦死者を比べてみた。 〇バシコルトコスタン 戦死1304人(人口約405万人) 〇モスクワ市 戦死423人(人口約1261万人) 人口比では、少数民族を多数抱えるバシコルトスタン出身者は、モスクワ出身者より約9.6倍もの戦死者を出している計算になる。 同じように同じように見ていくと、シベリアにありモンゴルに隣接するブリヤート共和国(仏教が主流の共和国)は、モスクワ出身者より実に32.6倍の戦死率。ブリヤート共和国の人口は約98万人。ブリヤート人はロシア連邦全体で45万人程度しかいないので、戦死が続出するいまの状況が長引けば、民族存亡の危機につながる。 北コーカサスのダゲスタン共和国はどうか。ここは一昨年9月、既存の兵員では人員を確保できなくなったプーチン政権が、30万人の動員をかけたとき、ストレートに動員に反対する街頭デモが起き、多数が警察に拘束されたところだ。そのダゲスタン共和国も、モスクワ市出身者より7.6倍も高い戦死率なのである。 以上は、2022年2月24日から2023年12月27日までを均して計算したものだが、特定時期をとりあげれば、モスクワ市よりブリヤートの方が人口比で40倍以上も戦死者を出していたこともあった。 これは、民族別の戦死ではなく、あくまでも出身地域別の戦死者だ。モスクワにも少数民族は住んでいるし、それぞれの少数民族共和国にはロシア人も住んでいるからだが、辺境地域や少数民族地域の戦死が集中しているのは歴然たる事実だ。 ●民族の牢獄……ロシア内部から動きが 前述のように膨大な数の民族が、ロシアに武力併合されて数百年間も差別され屈従を強いられてきた。差別されている人たちが、戦争が起きると最前線に送られ戦死を強いられる。ソ連時代から指摘されている「民族の牢獄」に他ならない。 1月17日のバシコルトスタンにおける大規模デモを見れば、何かのきっかけで大きな運動に発展する可能性がある。 そして、現実に少数民族たちの独立を求める運動がある。つまり、牢獄から自由の身になりたいという人々が、少数だが確実に声を上げ始めているのだ。民族を問わずプーチン政権の戦争に抗する反体制派たちによるパルチザンが激増しているという情報もある。加えて現在、戦線で抵抗を続けるウクライナ人。 つまり、ウクライナ、ロシア少数民族、ロシア反体制派、の三者が、結果的にせよ連動するかたちが作られかけている。その流れに結集する人たちは「ロシア連邦解体のカウントダウンが始まった」と言う。 180以上もの民族が住むロシア連邦内で、いま注目したいのは「ロシア後の自由な民族フォーラム」である。 このフォーラムは、ウクライナ人のオレグ・マガレツキー氏らが2022年に創立したもので、少数民族たちが自分たちのおかれた状況確認し、ロシアの脱帝国主義化・ロシアの脱植民地化を目指す枠組みである。 ●「民族の牢獄」の解体を求めてロシアの少数民族たちが来日 昨年8月1日、東京永田町の衆議員会館大会議室において「第7回ポストロシア自由な民族フォーラム」が開催された。翌2日には都内のほかの場所で主としてオンラインによる会議が行われた。ロシアの反体制派、ウクライナ人活動家、ロシア少数民族たちが集まって、ロシア連邦解体(もしくはゆるやかな連邦)や独立へ向けての決意を語った意義は大きい。 彼らが主張するロシアの「脱帝国主義化」「脱植民地化」が表す「脱」という表現だが、プーチン政権がウクライナ侵略の目的として掲げるウクライナの「非」ナチ化、「非」軍事化に対抗しているのではないだろうか。 創設者マガレツキー氏に2人が呼応して、このフォーラムを推進してきた。ひとりは、2014年のクリミア併合にただひとり反対したロシアの元国会議員イリヤ・ポリョマノフ氏(ウクライナで亡命中)。ウクライナ側で戦うロシア国民などで結成された「ロシア自由軍団」の政治部門幹部だ。ロシア自由軍団は、数度にわたり越境してロシア内に侵入し戦闘を行っている。 二人目は、チェチェン亡命政府のアフメド・ザカーエフ首相である。ソ連崩壊後の民族弾圧で最大の被害を受けているのがチェチェン人である。 1994年末から2009年に至る二度のチェチェン戦争で、人口のおよそ20%が殺されているほどの殺戮だ。このチェチェン戦争こそ、現在進行中のウクライナ戦争の原点といえるだろう。帝政ロシア、ソビエト連邦、現在のロシア連邦をとおして少数民族は抑圧されてきた。これを指してロシアは「民族の牢獄」と呼ばれてもいる。 その被害者である少数民族、ロシア反体制派、現在闘いの最中にあるウクライナ人の三者が一同に会し、その枠組みを継続させている意義は大きい。 なお、ザカーエフ亡命政府首相は日本政府がビザを発給しなかったため、亡命政府のイナル・シェリプ外相が来日し会議に出席した。 ●ロシア連邦解体のカウントダウンか それにしても「ポストロシアの自由な民族フォーラム」のようなイベントが日本で開催されるとは、ウクライナ戦争以前では考えられなかった。 ロシア自由軍団政治部門幹部のポリョマノフ氏の発言は象徴的だ。「プーチンがウクライナの全面侵略を開始したことで、ロシア連邦崩壊のカウントダウンが始まった」と明言したのである。 他の出席者からも「ロシア連邦崩壊」という表現が何度も出ていた。ウクライナ戦争で、モスクワ出身者より30倍以上も多くの戦死を強いられている(ロシアの独立系メディア「メディアゾーナ」の調査を基に人口比で換算)。ブリヤート共和国出身者も会議に参加した。 ブリヤート共和国の出身で「ブリヤート独立運動」のマリーヤ・ハンハラーエヴァ代表がこう訴えた。 「私たちの民族は、ロシア帝国下で数々の苦渋を強いられてきた。生まれたときからロシア人と差別され、資源は中央政権にもっていかれ地元にはひどい環境破壊がもたらされた」 そのあげく、ウクライナ戦争ではロシア兵として前線に駆り出されて大量の戦死を強いられ、ロシア連邦全体で約45万人しかいないブリヤート人は民族存亡の危機に立たされているのだ。ブリヤートでは、帝政時代に6回も蜂起があったが制圧された歴史がある。 今年1月17日に、全面侵攻以後最大のデモが起きたバシコルトスタン共和国出身のルスラン・ガバーソフ氏(バシキール国民政治センター代表)は、ロシアに対して強い不信感を現した。 「ロシアは伝統的な帝国そのもの。我々バシキール人は、何百年もの間自由を求めて戦ってきたが、そのつど制圧されてきた。世界は何もしてこなかった。 それは、世界がロシアにこのまま存続してもらいたいと思っているからである。しかしウクライナで虐殺を行ったことで、ロシアは自身がモンスターであることを示し、世界はそれを理解した。ロシアは周辺民族を支配下に置きたいという野望をもっており、仮にプーチンが失脚してもロシア国家そのものは変わらない」 このように非常に厳しい見方を示している。 ●ロシア南部コーカサスに火がつくのか このロシア後の自由な民族フォーラムは、2022年5月にワルシャワで第1回が開かれ、東京は第7回。その後も各地で回を重ね、情報収集・分析・発言を通して各民族が独立を目指す姿勢を継続させている。 ウクライナ、ロシア反体制派、ロシア少数民族が連携した枠組みが継続されていること自体に意義があるだろう。 ただ、フォーラムに加盟している人々は、主に海外に亡命した人たちだ。ロシア国内でこのような活動をするのは、今のところ極めて困難だ。したがって、ロシア内に実際に住む少数民族の人たちがどう考え何を思っているかがポイントだ。 そして、ロシア内部に実際に住む少数民族の人々と、外部の亡命者たちが今後どのように連携していくかが課題となるだろう。 こうした状況で、独立に向けて最も先へ進んでいるのが、ダゲスタンやチェチェンなどを含む北コーカサス地方である。 2023年11月8日、ブリュッセルの欧州議会庁舎内で重要な国際会議が行われた。関係者に聞いてみると、北コーカサスを巡る壮大な構想があることがわかった。 構想実現に向けて具体的な動きが進展すれば、歴史的事件となるはずである。 目下の焦点は、ロシア南部の北コーカサス地方だろう。ロシアに併合されているクリミア半島の奪還作戦でウクライナが勝利もしくは圧倒的優勢に立った場合、北コーカサスで独立運動が再燃する可能性が出てきた。そうなれば、ロシア全体の問題になる。 ●106年ぶり 北コーカサス民族連合共和国(山岳共和国)復活宣言 2023年11月8日、北コーカサスをルーツとする人々の子孫や亡命者たちが世界中からベルギーにある欧州議会庁舎に集まり「第3回北コーカサス人民会議」を開催した。 第2回は北コーカサス現地で1917年の開催だから、実に106年ぶりとなる。ロシア革命最中の1917年、この地の少数民族たちが集まり共和国設立を宣言。翌1918年には北コーカサス民族連合共和国(通称・山岳共和国)の独立宣言をした。 周辺諸国も独立を承認し、数年間は実際に独立していたのだ。が、やがてソビエト連邦に組み込まれ、この山岳共和国が消滅させられた。 この地域は数十もの少数民族が住み、イスラム教徒が主流だが、キリスト教徒も住む。山岳共和国のコンセプトは「山岳民」を共通のアイデンティティにしており、宗教や民族を超えようとした意図がうかがえる。 想定されている領域は、カスピ海から黒海に至る地域。ロシア連邦内のダゲスタン共和国、チェチェン共和国、イングーシ共和国、カバルジノ・バルカル共和国、カラチャイ・チェルケス共和国の各共和国に加え、かつて存在したチェルケス王国の領域(ロシア・クラスのダル地方の一部)も含む。 つまり、黒海に面するノヴォロシスク市も含む。ここにはロシアの海軍基地があり、ウクライナに脅威を与えている。ノヴォロシスクの先は、ケル地海峡を隔ててウクライナのクリミア半島だ。 ブリュッセルでの会議は、その「北コーカサス人民国家復興会議」を設置し、次の責任者が選ばれた。 〇議長(将来の大統領)イヤド・ヨガル(チェルケス人実業家=アメリカ国籍) 〇副議長 アデル・バシクゥイ(チェルケス人作家) 〇副議長 シャミーリ・アルバーコフ(イングーシ代表) 〇軍事委員会議長(将来の国防相)アフメド・ザカーエフ(チェチェン亡命政府首相) 〇政治評議会議長イナル・シェリプ(チェチェン亡命政府外相) ●数百年の怨念 ロシアvs.コーカサス ロシアの広大な領土は、戦争で他民族を征服した結果だが、もっとも果敢にロシアに抵抗したのがコーカサス諸民族である。ロシアに征服される最終段階で約半世紀続いたコーカサス戦争(1817〜1864)では、チェチェンの人口は半減し、その西方に住むチェルケス人は、虐殺と国外追放で7割から9割が失われたという被害を被っている。 そのチェルケス人の子孫が独立委員会議長に就任したのは、象徴的だ。 しかし今回、ロシア革命後に実在した独立国家「山岳共和国」復興構想が始動した背景として、1994年12月〜2009年4月のチェチェン戦争を見なければならない。19世紀のコーカサス戦争の再燃だった。 だが、この時はチェチェンだけが突出してロシアと戦い、徹底的な虐殺で人口の20%、侵攻直前は推定100万人だったから、20万人もの市民が殺されたのである。 虐殺と破壊の後は、ロシアの傀儡アフメド・カドゥイロフ首長が実験を握り、共和国内で恐怖政治を行っている。独立派は母国を追い出され、世界に50万人、そのうちヨーロッパに30万人のチェチェン人が亡命しているとみられる。 ウクライナ戦争で、いち早くロシア軍の先兵となり侵略に参加しているカドゥイロフ部隊が前線に出たのは、最初の3週間ほど。あとは後方に退き、パフォーマンスだけをネットで流している状況だ。 反対に、チェチェン独立派は義勇軍を結成。ロシアがクリミアを併合し、ウクライナ東部のルハンシク・ドネチクに軍事介入した2014年から、10年間ウクライナ側で戦っている。その数は1000人を超えている。赤ん坊から老人、男女すべてでヨーロッパに30万人、全世界で50万人しかいないチェチェン移民のうち1000人が義勇軍に参加しているのは驚異的な数字だ。 ●ウクライナに“北コーカサス軍”結成 2022年、チェチェン部隊はウクライナ軍と協定を結んだ。ロシアにより解体させられていたチェチェン軍が実質的に再建されたといっていい。ただし、ウクライナに少なくとも4つあるチェチェン部隊が、すべて正式にウクライナ国防省と協定を結んでいるわけでない。 関係者によると、現在は一つの軍事組織に統合する作業が進められている。さらに、チェチェン人以外の北コーカサス諸民族もウクライナの外国人義勇軍に参加しており、彼らとも組織的統合をはかる予定だという。 そうなると、ウクライナ内に北コーカサス統一の武装組織が誕生することになり、これが実質的に、独立を想定した“北コーカサス民族連合軍”として発展していく。 ●クリミア半島でのウクライナ優性で大きく動く 「北コーカサス民族連邦」独立委員会が想定しているのは、ウクライナが戦争に勝利、とくにクリミア半島で勝利した場合、独立運動を本格化させること。 ウクライナが勝利にまでに至らなくても、優勢(とくにクリミア)が一定期間維持されれば、事態が大きく進展するだろう。 その場合、クリミア半島から「北コーカサス軍」が北コーカサスに侵入することも想定内にあるのだ。クリミアと北コーカサス(ロシア本土)を隔てるケルチ海峡は、クリミア大橋で結ばれている。 北コーカサス民族連合構想の企画者たちは、これにより、ロシアの黒海へのルートを塞ぐことを想定している。 現実には、北コーカサスに構えるロシアの傀儡チェチェン武装勢力「カドゥイロフ部隊」も控えているし、黒海を望むノヴォロシスク基地をロシアが明け渡すはずもない。 現時点では「構想」の段階にあり、目論見通りに進む保証はどこにもない。だが、各民族の様々な人々がこの構想に関わり、着々と準備を進めていることは事実だ。 独立委員会が結成された11月8日の会議では、世界各国からの代表や欧州議会議員なども参加し、民主主義を基盤とし西側と協調していく姿勢を示している。 106年前の「山岳共和国」独立も、その数年前まではロシア帝国からの独立が実現できるなどと、多くの人は考えていなかったであろう。 ロシアの少数民族とウクライナの抵抗が連携することを前提とした「北コーカサス民族連合構想」は、ロシア全体をも動かす契機になるかもしれない。 クリミアと北コーカサスはつながっている。 |
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●ウクライナの子供奪還急務 露が「同化」進める ラトビアで国際会議 2/2
ロシアに連れ去られたウクライナの子供の奪還などを話し合う国際会議が1日までの2日間、バルト三国ラトビアの首都リガで開かれた。ウクライナのオレナ・ゼレンスキー大統領夫人が出席して各国に協力を要請。ロシアはウクライナや日米欧などの非難にもかかわらず、再教育や養子縁組などを通じて子供の「ロシア人化」を進めているとされ、対処は急を要している。 国際会議はウクライナとラトビア両政府が共催。欧米諸国の代表や国際法などの専門家らが出席した。 オレナ夫人は1日の演説で「(ジュネーブ条約などの)国際人道法は紛争下での子供の強制移送を戦争犯罪だと規定している」と指摘。子供の奪還に向けた仕組みづくりやロシアとの仲介支援を各国に求めた。その上で「どれほどの労力がかかろうとも、連れ去られた全ての子供のために戦う」と強調した。 ウクライナ政府によると、侵略開始後にロシアへの連れ去りが確認された子供は少なくとも1万9546人。実際にはさらに多いのが確実だという。一方、帰還が実現したのは388人にとどまる。国際刑事裁判所(ICC)は昨年、子供連れ去りを巡り、戦争犯罪の疑いでロシアのプーチン大統領と子供の権利問題を担当するマリヤ・リボワベロワ大統領全権代表に逮捕状を出した。 ロシア側は子供の連れ去りに関し、紛争地域からの「保護」だと正当化。子供のうち約1500人は露支配地域の孤児院などの施設にいた子供で、他の大多数は両親らに従って避難してきたと主張している。 だが、ラトビア政府や欧米メディアなどによると、子供がロシアへの入国審査時に両親から引き離されて単独で入国させられたり、支配地域のウクライナ人の両親らには「短期休暇」と説明して子供を露国内の施設に連れてきた上で、紛争地域に戻すのは危険だと、そのままとどまらせたりした事例も確認されている。 米エール大の昨年2月の調査報告は、ロシアがウクライナの子供6千人超を各地の43施設に入所させ、再教育したり、養子縁組させたりし、一部では軍事教練を実施していることが判明したと指摘。「国際人道法違反だ」と批判した。 ロシアは侵攻後、支配地域の住民やウクライナの孤児らに対する露国籍の付与手続きを簡素化しており、実際にウクライナの子供に露国籍を付与した事例も伝えられている。 |
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●中露国境地帯で観光・貿易が活発化、過去最高35兆円規模に… 2/2
ウクライナへの侵略を続けるロシアと中国の貿易総額が昨年、過去最高の約2400億ドル(約35兆円)に達した。中露の国境地帯では物資や人の往来が活発化しており、両国は国交樹立75年にあたる今年、経済交流をさらに強化する構えだ。 黒竜江省黒河と露極東ブラゴベシチェンスクを結ぶ黒竜江大橋では1月上旬、ロシアへの輸出手続きを待つ真新しい中国製トラックが100台以上並んでいた。侵略後、海外自動車メーカーの撤退に伴いロシアで需要が高まっているためだ。 アムール川(中国名・黒竜江)にかかる橋は2022年6月、米欧などがロシアへの経済制裁を行う中で開通した。ロシアを下支えする輸送ルートの一つで、中露の蜜月を象徴する。 実際、中国税関当局によると、昨年の中露の貿易総額は過去最高の約2400億ドルだった。両国は今年までに貿易総額を2000億ドルとすることで19年に一致しており、前倒しで実現した。 黒河の中心部は、買い物や食事を楽しむロシア人観光客でにぎわう。昨年9月には、コロナ禍で中断していた団体観光客のビザなし観光が再開した。地元の飲食店経営女性は「対露関係が良くなるほど、我々は経済的に潤う」と話した。 中国東北部の遼寧省瀋陽では1月、中露の合同商談会で、インフラ建設などで総額136億元(約2720億円)の事業契約が結ばれた。今月末には瀋陽とモスクワを結ぶ航空便が就航することも決まった。 習近平 国家主席とロシアのミハイル・ミシュスチン首相が昨年末の会談で確認した、経済分野での協力強化の方針に沿った動きだ。 ロシア経済を孤立化させたい米欧は、中露の接近に懸念を深めている。米政府の海外向け放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は「中国は国際制裁の最大の抜け穴だ」と指摘している。 |
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●スエズ運河ルートを回避!フーシ派の船舶攻撃 世界の物流混乱 2/2
炎が吹き上がる石油タンカー。イスラム組織ハマスとの連帯を掲げるイエメンの反政府勢力フーシ派による攻撃を受けたものです。紅海とその周辺での船舶攻撃が止まりません。その影響で多くの船舶がアフリカの喜望峰を回るルートに迂回することを余儀なくされ、日本を含む世界の物流や経済に影響が及び始めています。ガザ地区での戦争が世界の人々の暮らしにダメージを与えつつあります。 ●喜望峰に船舶集中 アフリカ南端に位置する喜望峰。15世紀、航海者のバルトロメウ・ディアスによって発見された岬で、強風が吹き荒れることから「嵐の岬」と言われていましたが、この沖合を通過してインドへの航路が発見され、「良い希望の岬」という名前に改名されたといわれています。現地を訪れると、ふだんより多くの貨物船やコンテナ船が行き交っていることが確認できました。ヨーロッパとアジアを結ぶ最短ルートである紅海での攻撃が相次ぎ、迂回する船舶が後を絶たないのです。 ●紅海周辺で攻撃相次ぐ 2024年1月26日には紅海周辺、アデン湾で石油タンカーがハマスとの連帯を掲げるフーシ派によるミサイル攻撃を受けました。イギリス企業が運航するタンカーは右舷の貨物タンク1基で火災が発生したといいます。2023年11月以降のフーシ派による商船攻撃で最大規模のものとなったとアメリカのメディア、ブルームバーグは伝えています。アメリカ国防総省は、船舶に対する攻撃は30回を超えたと説明。(1月22日時点)フーシ派の勢力をそぐため、アメリカ軍とイギリス軍が繰り返し攻撃していますが、事態は収まっていません。 ●ガザの戦争が運賃上昇に アフリカの喜望峰経由に迂回した船舶は燃料消費が増え、輸送コストが上昇。コンテナ船の運賃が急激に値上がりしています。40フィートのコンテナ1個あたりの運賃は、1月25日の時点で3964ドルで、軍事衝突が始まる直前の2023年10月5日時点と比べて2点8倍になっています。ガザ地区での激しい戦闘が起点となり、海上輸送という動脈を傷つけ、運賃上昇を通じて世界経済に影響を与え始めているのです。 ●ドイツのメーカー 減産迫られる 紅海周辺の混乱は遠く離れたドイツ企業の生産活動に影響を及ぼし始めていました。ドイツ西部ラインラント・プファルツ州にある食洗機の洗剤などを製造するメーカーを訪れたところ、経営者は困った表情を浮かべていました。船舶の迂回によって中国や台湾から調達している主要な原材料のクエン酸三ナトリウムなどの到着が通常より2週間ほど遅れるようになったというのです。こうした原材料はヨーロッパでは調達が難しく、重量もあるため航空貨物での輸送に切り替えることも容易ではなく、倉庫にある原材料は底をつきかけています。倉庫にはふだんであれば50トンは保管されているクエン酸三ナトリウムが10トンを下回っていて(1月25日時点)、物流の混乱の影響の大きさがうかがえました。会社は1月24日から取引先に対して出荷量の減少や出荷時期を遅らせる調整を始めています。今後の原材料の調達の見通し次第では、3交代のシフトを2交代に変更して生産を減らす可能性もあるとしています。この会社は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で今回と同じように中国からの原材料の調達が滞る事態を経験しました。しかし、感染が下火となった今、再び同じ問題に直面するとはまったく想定していなかったということです。 洗剤などの製造メーカー「ゲヘム」マルティナ・ナイスウォンガー社長「今回の危機は予想していませんでした。2月は厳しい状況になると覚悟しています。原材料が予定どおりに届くことはないでしょう。これからの生産量は、本当に原材料が届くか、そして、どのくらいの量が届くかによって決まります」 ●日系食品メーカー 値上げの可能性も イギリスでは日系企業も影響を受けています。日本などからカレーやマヨネーズ、コメといった食品を輸入して日本食レストランや小売店に販売するロンドンにある日系の大手食品輸入会社を訪ねました。出荷場所などによって変わるとしているものの、海上運賃はふだんと比べて2倍から5倍に上昇しているといいます。そして事態が長期化した場合は商品の値上げを迫られる可能性があると指摘しました。 大手食品輸入会社 冨永美貴 サプライチェーンマネージャー「長期化した場合には、調達ルートの見直しが必要になります。また、運賃が上昇しているため、今後、コストの見直しなどが必要になってくるかもしれません」 イギリスの複数の食品輸入会社から聞き取りを行っている「JETRO」=日本貿易振興機構は企業が新規のビジネスを広げにくくなっていると分析します。 JETROロンドン事務所 林伸光 農業・食品部長「海上輸送が混乱している中、食品輸入会社は今、取り引きしている顧客の注文に確実に対応しようとしています。このため新規の顧客開拓ができないという声を聞きます」 ●小売り大手も影響を懸念 また、ヨーロッパでは小売り業への影響の広がりが懸念される事態となっています。スウェーデン発祥の家具大手「イケア」は「一部の製品に遅れが生じ、入手が困難になる可能性がある」と明らかにしているほか、イギリスの衣料品メーカー「ネクスト」は、「スエズ運河を通行できない状況が続けば、ことしの初めには在庫の配送が遅れる可能性が高い。これが長期間続けば売り上げに影響を与える」と懸念を示しました。さらに、イギリスの大手スーパー「セインズベリーズ」はワインや電気機器などについて、在庫を保つために仕入れの順序を慎重に検討していて、重要な問題だとして政府とも定期的に連絡を取り合っていると明らかにしています。 ●紅海経由でもコスト増加 影響は紅海・スエズ運河を経由するルートによって繁栄してきたイタリアの街にもあらわれていました。イタリア北東部、地中海に面するトリエステ港です。アジアとヨーロッパ東部を結ぶ物流の拠点として知られています。トリエステを拠点に荷主の依頼を受けて船舶の手配を行うステファノ・ビジンティンさんに話を聞きました。ビジンティンさんは、紅海とスエズ運河を経由して航行を続けた場合でも、貨物の運送コストは大幅に上がっているといいます。 その理由は ・危険が高まっているとして保険料が値上がりしていること ・海運会社は攻撃されるリスクを抑えるため、船舶をサウジアラビアのジッダなどの港に立ち寄らせて、より小さく、海運会社の名前などを表示していない船に貨物を積み替えていて、その分の費用が上乗せされること さらにビジンティンさんは、物流の乱れの影響で、2月半ばころまでは空のコンテナが不足するという新たな問題も出てくると指摘します。 船舶の手配を行うステファノ・ビジンティン氏「商業的には大惨事です。航行の安全を保つ必要があります。残念ながらコストはさらに上がる可能性があります」 ●地中海の港がスルーされる? トリエステ港の関係者がさらに懸念しているのは、事態が長引いた場合の影響です。中国などから到着した貨物はトリエステ港で荷揚げされたあと、列車やトラックでイタリアのほか、ハンガリーなどヨーロッパ東部の国に運ばれています。紅海での攻撃が続き、アフリカの喜望峰を回る航路が定着した場合、貨物船は地中海を通らずにオランダのロッテルダムやドイツのハンブルクなど北海の港に向かうようになる可能性があると、トリエステをはじめイタリアの港の関係者は見ています。海上でも、さらに陸上でも、モノの流れが変わり、イタリアが不利な状況におかれることを懸念しているのです。 イタリア港湾協会 ジャンピエリ会長「アフリカを回るルートが定着すれば、イタリアの港の仕事が落ち込むことは明らかです。地中海の競争力が落ちればEUにとっても問題です。この危機が長引けば、経済的な影響が大きくなります」 ●スエズ運河の航行は71%減 アメリカの物流調査会社「プロジェクト44」によりますと、1月26日時点で、推計で362隻が危険を避けようとアフリカの喜望峰を回るルートに変更したといいます。また、スエズ運河を通る船の数は1月21日から1月27日の週で、12月中旬と比べて1日あたり71%余り減少しているということです。 ●フーシ派 “商船攻撃は続ける” 今後、フーシ派の攻撃はどうなるのか。フーシ派のアベド・トール報道官が1月29日、NHKのオンラインインタビューに応じました。トール報道官はアメリカとイギリスがイエメンへの攻撃を行い戦争状態にあるとして、紅海などで行っている船舶への攻撃の正当性を主張しました。そしてイスラエルのハマスへの攻撃停止が実現するまでは同じような船舶攻撃を続けると強調しています。 フーシ派 アベド・トール報道官「われわれはこれまで間違った標的を攻撃したことはなく、海上輸送になんら影響を与えていません。アメリカこそが海上輸送に悪影響を与えているのです。イスラエルがガザ地区への攻撃を止めればわれわれの攻撃も終わります」 ●専門家「まったく見通し立たず」 今後の見通しについて、日本の専門家に話を聞きました。 日本海事センター 後藤洋政研究員「アジアから欧州の運賃が特に上がっています。また、航空貨物など、ほかの輸送モードを使うという対応をとった場合も追加的なコストがかかることになります。いつ、紅海で安全に船舶が航行できるようになるのかは今のところまったく見通しが立っていない状況です。紅海での航行が再開されるとしても、すでにルートを変えて対応している海運会社がまた、スエズ運河経由に船舶を戻すとなると、一定の期間かかることが想定されます」 ●ガザ地区の惨事 わがこととして すでに日本でも一部の食品の輸入が滞っていることが判明しています。日本などからの部品の輸送に影響が出たことで自動車メーカーのスズキはハンガリーにある自動車工場の稼働を一時、停止しました。ガザ地区ではきょうもイスラエル軍による空爆や地上部隊による攻撃が続けられ、多くの人の命が失われています。憎しみが連鎖し、武力による応酬が中東の広い範囲に広がって、それが海上輸送を通じて世界の経済をゆさぶり始めているのです。ガザ地区の戦争は決して遠くの場所の出来事ではないと痛感しました。 |
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●“反戦候補”提出の署名に「死者の名前」ロシア中央選管主張 2/3
「ウクライナ侵攻反対」を掲げ、3月のロシア大統領選挙への出馬を目指す元下院議員が提出した署名をめぐり、ロシアの中央選挙管理委員会は死者の名前が含まれていると主張しました。出馬が認められない可能性もあります。 ロシアメディアによりますと、中央選挙管理委員会は2日、元下院議員のナジェージュジン氏が提出した署名に、すでに死亡した数十人の名前が含まれているとし、「ナジェージュジン氏も一部関与している疑いがある」と主張しました。 中央選管は5日にナジェージュジン氏から事情を聴いたうえで候補者として登録するかどうか決定し、7日に発表するとしています。 ナジェージュジン氏は2日、自身のSNSに署名に訪れた人たちの画像とともに「彼らが生きているのは明らかだ」と投稿。選管側の主張に反論しています。 「ウクライナ侵攻反対」を掲げるナジェージュジン氏をめぐっては、反戦ムードの広がりを警戒する政権側の意向を受け、候補者登録が認められない可能性も指摘されていますが、JNNの単独インタビューに対しナジェージュジン氏は「認められなければ裁判に訴える」と語っています。 |
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●ウクライナが軍総司令官解任を米に伝達 米メディア報道 2/3
アメリカメディアは、ウクライナ政府が軍総司令官の解任をホワイトハウスに伝えたと報じた。 ロシアとウクライナメディアは2日、アメリカのワシントンポストを引用して「ウクライナ当局が軍のザルジニー総司令官の解任決定をホワイトハウスに通知した」と伝えた。 「(ホワイトハウスは)決定に対して支持も反対もせず、大統領の選択と認めた」としている。 ザルジニー氏の解任報道をめぐっては、イギリスのフィナンシャルタイムズが1月30日、「ザルジニー氏は新たに国防顧問の職が提示されて拒否したが、ゼレンスキー大統領がザルジニー氏の解任を明言した」と報じていた。 ウクライナメディアは、ゼレンスキー大統領はザルジニー氏解任に関する文書にサインしておらず、発表の時期も不透明としている。 軍事侵攻開始からまもなく2年となり、戦況が膠着(こうちゃく)する中、ゼレンスキー大統領とザルジニー氏は兵士の動員などをめぐり、意見の対立が取り沙汰されていた。 国民からの人気が高いザルジニー氏が解任されれば、ゼレンスキー大統領の支持が下がる可能性もある。 |
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●プーチン大統領「兵器 何倍も増産」侵攻継続の姿勢 改めて示す 2/3
ロシアのプーチン大統領は軍需産業が集まる都市を訪れ、大量の兵器を投入してウクライナへの侵攻を続ける姿勢を改めて示しました。 一方、ウクライナ側はロシアが支配する南部クリミアの飛行場への攻撃で航空機に損害を与えたとしていて、クリミア周辺への攻撃を強めているとみられます。 ロシアのプーチン大統領は2日、首都モスクワの南にある軍需産業が集まる都市トゥーラで演説し「ロシアの軍需産業の仕事は現在3交代制で休みのない、膨大なものとなっている。年間でみると何倍も増産している」と述べ、大量の兵器を投入してウクライナへの侵攻を続ける姿勢を改めて示しました。 また、ロシアのショイグ国防相は国防省の会議で「ロシア軍はすべての前線で戦略的な主導権を維持している。われわれの部隊は前進し、掌握地域を拡大している」と述べて、戦闘を優位に進めていると強調しました。 一方、ウクライナ空軍のイグナト報道官は2日、地元メディアに先月31日に行ったとされるクリミアの飛行場に対する攻撃について「飛行場には航空機が少なくとも3機あり、確実に損害を与えた」と述べ、ロシア軍に打撃を与えたと強調しました。 また、ウクライナ国防省情報総局のブダノフ局長は、クリミア西部で撃沈したと1日に発表したロシア軍のミサイル艇についてメディアの取材に対し「6隻の無人艇による体当たり攻撃で、ミサイル艇は傾いて沈没した」と述べました。 ウクライナメディアは、黒海艦隊が保有する同型の3隻のうちの1隻だったとして「ロシアにとって重大な損失だ」などと伝えていて、東部の戦況がこう着する中、ウクライナはクリミア周辺への攻撃を強めているとみられます。 |
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●ウクライナ海でのドローン映像で明らかになったロシア軍艦沈没の「罠」 2/3
ウクライナが公開した刺激的なビデオ映像で、水曜夜に併合したクリミア半島付近での秘密作戦中にキエフ軍がロシア軍艦に仕掛けた「罠」が明らかになったと地元メディアが報じた。 ウクライナ国防省 夜の写真を投稿しました 伝えられるところによると、6機の海軍無人機がミサイルを搭載したロシア軍艦を攻撃した瞬間を示している イワノヴェッツ ドノスラフ湖の港にて。 ウクライナ軍諜報機関長官キリロ・ブダノフ中将は、同船は6機のMAGURA V5ドローンの攻撃を受け「黒海の底に飛ばされた」と語った。 キエフ政府は、この作戦はウクライナ特殊部隊第13グループの兵士らによって実行されたと発表した。 この2分間の映像はさまざまな場所から撮影されたものとみられ、ウクライナが攻撃に複数のMAGURAドローンを使用したことを示唆している。 1月31日から2月1日までの作戦中、第13特殊部隊グループは建物の破壊を計画し、実行した。 イワノヴェッツ ブダノフ氏はドヌズラフ湖の襲撃中に同誌に語った。 「特定された船の破壊中に、船体は海軍無人機による 6 回の直撃を受けました。損傷の結果、船は後方に向きを変え、沈没しました。予備データによると、敵の捜索救助活動は行われました。」海軍力は失敗した。 ウクライナが開発した無人機「MAGURA V5」は長さ5.5メートル、幅1.5メートルで、さまざまな任務を遂行できると地元メディアが報じた。 これらの任務には、監視、偵察、パトロール、捜索救助、地雷対策、海上警備および戦闘任務が含まれます。 ニューズウィーク キエフはビデオの信頼性やキエフの主張を独自に検証できず、電子メールでロシア国防省にコメントを求めた。 ウクライナは、2014年にクリミア併合というロシアのプーチン大統領の決定を覆そうとした黒海艦隊を標的にした。この地域は、ウクライナ南部におけるロシア軍の中央物流拠点として機能している。 「全長56メートルの船は、黒海地域のオクニフカ村近くのドヌズラフ湖の入り口から9キロ離れた罠の中で発見された」と、ロシアの安全保障からの内部情報を持っていると主張するVChK-OGPUアウトレットは述べた。 木曜日、軍は攻撃を報告した。 イワノヴェッツ。 ロシア従軍記者、ブロガー、テレグラムチャンネル「ヴォエンコール・コテノクZ」を運営するアナリスト、ユーリ・コテノク氏は、海軍の無人機3機が船を攻撃したと指摘した。 ウクライナのニュースウェブサイト「censer.Net」の編集長ユーリ・ブトゥーソフ氏は、地元新聞社NV.uaが掲載した論説記事の中で、キエフの同船破壊戦略の概要を述べた。 同氏は、ロシア諜報機関はドローンを探知できず、少なくとも5機が船への攻撃に使用されたと述べた。 2023年12月18日、黒海を哨戒中のウクライナ海軍艦艇にスティンガー対空兵器を搭載したウクライナ兵士。映像では、キエフ軍がロシア軍艦のために用意した罠が明らかに… 「ビデオから判断すると、少なくとも5機の海軍無人機のグループが…発見されることなく黒海のロシア黒海艦隊基地に侵入した。」 [Lake] ブトゥーソフ氏は、ドヌズラフ氏と無人機がミサイル艇を連続攻撃したが、ミサイル艇は明らかに戦闘哨戒を行って基地を守っていたと述べた。 同氏は、船の乗組員がドローンの接近に気づき、回避しようとした可能性が高いと付け加えた。 しかし、彼らには脱出するのに十分な時間がなく、ロシア軍は海軍の無人機が小型で速度が小さかったため、至近距離で破壊することができなかった。 「グループ 13 の指揮官たちの適切に選択された攻撃戦術は印象的でした。最初の無人機が右側からボートの船尾に衝突し、プロペラを無効にしました。ボートは全速力に達することができませんでしたが、停止しませんでした。次に 2 番目の無人機がボートの船尾に衝突し、プロペラを停止させました。」ドローンもプロペラに衝突したが、左側からの2度の衝突でボートは確実な移動と操縦を奪われた。 その攻撃の後、船は「首尾よく排除された」と彼は書いた。 同氏はさらに、「3機目のドローンはモスキートミサイル発射装置の下にある構造物の中央に命中し、左側に大きな穴が開いた」と付け加えた。 「このドローンのビデオクリップは表示されなかったが、攻撃の結果は4台目のドローンのカメラから表示され、オペレーターが同じ場所にいた3台目のドローンから穴に直接カメラを向けた。」 ブトゥーソフ氏は、4機目の無人機の爆発は軍艦にとって「致命的」だったと述べ、「文字通り粉々に砕け、乗組員には逃げるチャンスがほとんどなかった」と付け加えた。 「ウクライナ軍兵士、国防省主要情報総局第13グループの指揮官およびオペレーターが達成した目覚ましい成功は、作戦の高レベルの偵察、計画、準備および管理を証明した」とブトゥーソフ氏は付け加えた。 ロシアの独立ニュースサイト「インサイダー」は金曜日、プーチン大統領が2022年2月24日にウクライナへの全面侵攻を開始して以来、少なくとも26隻のロシア船がウクライナ軍の攻撃を受けたと報じた。 |
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●欧米の政府関係者800人以上、自国のイスラエル・ガザ戦争対応を批判 2/3
アメリカや欧州の政府で働く公務員800人以上が、イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区での戦いに対する自国政府の政策は「深刻な国際法違反」に相当する恐れがあると警告する文書に署名した。 BBCが入手した「大西洋を超える声明」の文書に署名した公務員たちは、自分たちの政府が「今世紀最悪の壊滅的な人道上の破局」に加担する事態になりかねないものの、自分たちの専門的な意見は度外視されたと批判している。 文書には、アメリカと欧州連合(EU)の当局者のほか、イギリス、フランス、ドイツを含む欧州11カ国の公務員が署名している。 イスラエルを支える主な西側諸国の政府内で、ガザ情勢への自国の対応について、相当な異論があることが、あらためて浮き彫りになった。 アメリカ政府の国家安全保障政策分野で25年以上の経験を持つ当局者も、この文書に署名。自分たちの懸念を何度繰り返しても「捨て置かれる事態が続いている」と、BBCに話した。 「あの地域と現場の力学を理解する人たちの声は、聞き入れられていない」と、この官僚は話した。 「これまでと本当に何が違うかというと、自分たちは問題を阻止できていないというのではなく、自分たちは積極的に問題に加担している。これは自分が記憶する限り、これまでと根本的に全く異なる状態だ」と、匿名を条件に取材に応じたこの官僚は話した。 ●「限界のない」イスラエルの軍事作戦 欧米で800人以上の政府関係者が署名した文書はさらに、イスラエルがガザ地区で展開する軍事行動には「何の限界もない」とイスラエル自ら示していると指摘。 その行動の結果、「民間人の死は防げたはずが、何万人もの民間人が死亡している。(中略)援助物資の搬入を意図的に阻止することで、大勢の民間人を飢餓と緩慢な死の危機にさらしている」と批判している。 「国際法の深刻な違反、戦争犯罪、そして民族浄化や大量虐殺にさえ、我々の政府の政策が加担しているリスクが高い」とも、官僚たちは指摘している。 この文書に署名、あるいは支持した人たちの名前は公表されていない。BBCも名前の一覧は確認していないが、その半数近くが少なくとも10年は政府で働いている経験者だと説明を受けている。 かつてアルジェリアとシリアでアメリカ大使を務め、現在は引退しているロバート・フォード氏はBBCに、複数の政府で働き、自国政府の方針に反対する公務員たちがこれほどの規模でまとまって声を上げるのは、前例のないことだと話した。 「過去40年にわたり外交政策を見てきた経験からしても、かつてないことだ」と、フォード元大使は言う。 フォード元大使は先例として、2003年3月に始まったイラク戦争をめぐり、開戦の根拠として入手した情報に欠陥があるのではないかと、当時のアメリカ政府内に懸念が募っていたケースを挙げる。ただし、当時と今回の違いは、今の政府の対応に批判的な当局者が沈黙を守らなかったことだとも、元大使は言う。 「(当時のアメリカ政府内には)本当はそうではないと実態を知り、自分たちの解釈に都合よく機密情報を取捨選択して政策を決めている、戦後について何も計画していないと知っている人たちがいたが、誰もそれを公言しなかった。それが深刻な問題につながった」と、元大使は説明する。 「ガザ戦争の問題はあまりに深刻で、その余波はあまりに深刻なので、(今の各国政府内には)その懸念を公表せざるを得ないと強く思う当局者たちがいたのだ」 ●公務員の不満高まる 800人以上の公務員が署名したこの文書は、自分たちの政府が現在、「実際には無条件に、何の説明責任も求めないまま」イスラエルを軍事的、政治的あるいは外交的に支え続けるのは、パレスチナ人の命を引き続き危険にさらすだけでなく、イスラム組織ハマスに拉致された人質の命をも危険にさらし、かつイスラエル自身の安全保障や地域の安定性をも、危険にさらしていると批判している。 「イスラエルの軍事作戦は、(アメリカへの同時多発攻撃)9/11以来積み上げられてきた、重要な対テロ知見をいっさい無視している(中略)作戦はハマス打倒というイスラエルの目標に貢献せず、むしろハマスやヒズボラやその他の敵対勢力の魅力を強化している」とも、文書は指摘する。 署名した当局者たちは、専門家としての自分たちの懸念は政府内で表明してきたものの、「政治的およびイデオロギー的な理由から、覆されてきた」とも書いている。 この文書を支持するイギリス政府高官はBBCに対して、公務員の間の「不満が高まっている」と話した。 この政府高官は、今月26日に国連の国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルに対し、パレスチナ自治区ガザ地区でのジェノサイド(集団虐殺)を防ぐためにあらゆる対策を講じるよう、暫定的に命じたことの、余波に言及した。 南アフリカ政府が提訴したことによるICJ判断を、「この国の外相が『有益でない』と一蹴したことは、(法や規範に基づく国際社会の)秩序を脅かすものだ」と、イギリス政府高官は述べた。 「イスラエル政府が批判されると、その内容についてこの国の閣僚が、しっかりした証拠に基づいた適切な法的助言を得ないまま、批判を一蹴するような発言をしてきた。我々の現在の方針は、イギリスの国益にとっても、中東地域や国際秩序にとっても、最善とは思えない」と、匿名を条件に取材に応じたイギリス高官は話した。 今回の声明についてイギリス外務省は、ガザでの戦闘ができるだけ速やかに終わってもらいたいと考えているとコメントした。 「外務大臣が言うように、イスラエルは国際人道法の範囲内で行動すると約束しており、そうする能力もある。しかし、ガザの民間人に対する影響を私たちは深く憂慮している」と、外務省報道官は述べた。 欧州委員会は、声明の内容を「検討」すると述べた。BBCは、米国務省にもコメントを求めている。 公務員800人以上の声明は、イスラエルの軍事作戦はガザで前例のない生命・財産の破壊を引き起こしているが、ハマスの脅威を取り除く実現可能な戦略はないように見えるし、イスラエルの安全を長期的に保障するための政治的な解決策もないように見えると指摘している。 その上で声明は、「イスラエルの作戦の後ろには、戦略的で、かつ正当性を弁護できる論拠があるかのように、国民に向けて主張し続けるのをやめる」よう、アメリカと欧州諸国の政府に呼びかけている。 ●イスラエルは反論続ける イスラエル側はこうした批判に、反論を続けている。今回の声明を受けて、在ロンドンのイスラエル大使館は、自分たちは国際法に従っていると述べた。 さらに、「イスラエルは引き続き、戦争犯罪だけでなく人道に対する罪を繰り返し、大量虐殺を続けるテロ組織に対して、行動をとり続ける」と主張した。 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はこれまで、人質の解放実現にはハマスに対する総力戦を続けるしか方法がないとしている。イスラエル国防軍は、ハマスが使用する地下インフラの相当部分を破壊したとしている。それには、指揮や武器保管の拠点、人質収容の拠点なども含まれるという。 イスラエル軍は1月29日の時点で、「(ガザ南部)ハンユニス全域の地上と地下で、2000人以上のテロリストを排除した」と述べている。 イスラエルはこれまで繰り返し、民間人を標的にしていないと主張。ハマスが民間インフラの中や周辺に潜伏しているのだと繰り返している。 昨年10月7日に戦闘が始まって以来、ガザでは2万6750人以上のパレスチナ人がイスラエル軍に殺され、少なくとも6万5000人が負傷したと、ハマス運営の保健省は発表している。ガザ地区は2007年以来、ハマスが実効支配し、イスラエルとエジプトが封鎖を続けている。 イスラエル側は、10月7日以来、ガザで死亡したうち9000人はハマス戦闘員だと主張するが、裏付けとなる証拠は提示していない。イスラエル軍によると、ハマスのイスラエル奇襲では1200人以上が殺され、さらにその後、負傷のため100人が死亡した。250人以上がハマスに拉致され、ガザへと連行された。 アメリカ政府は、「あまりに多くのパレスチナ人がガザで殺されている」と繰り返す一方、イスラエルは10月7日の事態が「二度と起きない」ようにする権利があるともしている。 |
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●ウクライナ戦争「ロシアが勝利」すればグローバリズム拡大に歯止め 2/3 ナショナリズム復興と文明固有の価値観を再認識 西欧文明は、ルネサンス以降、科学技術を中核として、主に軍事面で旧文明を圧倒し、それらを植民地化し、世界的な文明の先進地域として君臨してきた。 しかし、新たな多極化の波は、これら旧文明圏の再興をもたらすことになるであろう。 西欧文明の優位性の中核となってきた科学技術文明ですら、先端半導体の生産基地の多くが東アジアに集中していることなど、その優位性を失いつつある兆候が見られる。 欧米への非西欧系の移民の大量流入も深刻化している。欧米白人の少子化が進む一方で、有色人種の人口比率が増大している。 このことは、欧米社会全体のキリスト教とギリシャ・ローマ文明を基軸とする文明的同質性やアイデンティティーを長期的に変質させることになるであろう。 欧米の軍事的な優位性も揺らいでいる。20年以上に及んだ対テロ戦争は、2021年8月の米軍のアフガンからの一方的撤退により終わった。ウクライナ戦争でも、NATO(北大西洋条約機構)が支援してきたウクライナの敗色が濃くなっている。 金融面でも、欧米の金融制裁の対象になりかねないドル建て金融資産からの脱却の動きが、グローバルサウスと称される非欧米圏で強まっている。 価値観にも変化がみられる。欧米諸国が「人類普遍の価値観」として掲げてきた、フランス革命以来の「人権」「自由」「平等」「民主」といった政治的道徳的な価値観を、西欧列強に植民地化されてきた非西欧諸国が、全面的に受容しているわけではない。 例えば、イスラム教世界では、主権は万能の唯一神にあるという神権思想に基づく政治体制が正しいとされる場合もある。イランはこのような思想に基づくイスラム共和制をとっている。 ウクライナ戦争は、価値観の戦いとみると、NATO加盟を望む親欧米派のウォロディミル・ゼレンスキー政権と、ナショナリズムに立つウラジーミル・プーチン政権との戦いである。 プーチン大統領は、ソ連崩壊後ロシアの資源利権を支配した欧米資本のオリガルヒ(新興財閥)を追い出し、ロシアの手に取り戻した。彼は、ロシアの伝統的価値観や信仰を守ることを主張している。 他方、ゼレンスキー政権を支援している、米国左翼グローバリストたちは、各国固有の国柄、既存の家族、宗教・道徳・文化を否定し、世界の人々を無国籍のアイデンティティーのない均質な大衆に仕立て、一部のエリートが支配する世界を築くことを目指している。共産主義もキャンセルカルチャー(=特定の人物・団体の言動を問題視し、集中的批判などによって表舞台から排除しようとする動き)もその一種と言える。 ウクライナ戦争でロシアが勝利するとすれば、フランス革命以来のグローバリズムの世界的拡大に歯止めがかかることになる。ナショナリズムの復興と各文明固有の価値観の再認識が、今後の世界的潮流となるであろう。 |
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●ロシア、米国のイラク、シリア報復空爆を非難 2/3
ロシア外務省は3日、ヨルダンの米軍施設で米兵3人が死亡した無人機攻撃への報復として米軍が実施したイラク、シリア両国内への空爆を「主権国家に対する許されない侵略行為」だと非難する声明を発表した。 声明は、攻撃が中東地域での紛争をたきつける目的で行われたことは明らかだと主張。「米国は中東での問題解決を追求せず、対立継続を望んでいる」と批判し、国連安全保障理事会の緊急会合開催を求めると表明した。 |
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●ロシア大統領選「反戦」候補を親プーチン派が一斉に中傷…「ナチスの候補だ」 2/3
ロシア大統領選(3月15〜17日投票)で、ウクライナ侵略への反対を訴え立候補を目指すボリス・ナデジディン氏(60)に対し、露国営メディアやプーチン大統領を支持する著名人らが一斉に中傷や非難を始めた。中央選管は署名の不備も指摘している。プーチン政権側が想定以上のナデジディン氏への支持拡大を警戒しているとみられる。 ナデジディン氏は1月31日、候補者登録に必要な10万人超の署名を選管に提出した。選管は署名の有効性を検証し、今月7日までに出馬の可否を公表する見通しだ。 国営メディアは、通算5選が確実視されるプーチン氏の活動を逐一報じる一方で、ナデジディン氏をほぼ無視してきたが、ここに来て態度を一変させた。独立系メディア「ノーバヤ・ガゼータ欧州」によると、国営テレビ「第1チャンネル」や「ロシア1」などはナデジディン氏の署名の不備や、各地で署名に集まった行列には、雇われた「サクラ」がいたとも報じた。 選管幹部も2日、署名には死亡した人の名前があったと公表し、不備を指摘した。ナデジディン氏は自らのSNSで、露各地に出来た行列の写真を投稿し、指摘を否定した。 プーチン氏に近い国営テレビの著名な司会者ウラジーミル・ソロビヨフ氏は自らの番組で、ナデジディン氏について、ウクライナの情報機関の支援を得て署名を集めた「ウクライナのナチスの候補だ」などと、根拠を示さず一方的に主張している。 プーチン政権が反戦世論の盛り上がりを避けるため、選管に出馬を認めないように圧力をかける可能性がある。一方、独立系メディア「メドゥーザ」は、出馬を認めた上で圧勝を演出する方が政権にメリットがあるとの識者の分析を紹介した。「大統領府は完全に得票集計もコントロールできる」というのも理由だという。 |
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●軍事動員された夫の帰還訴え ロシアで妻たちが活動 2/3
ロシア大統領府があるモスクワのクレムリン脇で3日、ウクライナ侵攻に動員された夫を持つ女性たちが、夫の早期帰還を訴える活動を行った。赤い花束を手にした女性たちは正午に、第2次大戦で戦死した兵士をまつる「無名戦士の墓」前に集合し、順番に花を手向けた。 この日は、第2の都市サンクトペテルブルクや極東ウラジオストクなど全国から約50人が集まったという。 リーダー格でモスクワ在住のマリヤ・アンドレーエワさん(34)は「私たちの夫は既に500日も前線に留め置かれている。普通の市民にとっては精神的負担が大きすぎる」と早期帰還を要求。夫の帰還が実現するまで活動を続けると語った。 |
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●ウクライナ復興会議に200社超 政府、渡航制限の例外措置も 2/3
日本政府が今月19日に東京で開く「日ウクライナ経済復興推進会議」に、両国から各100前後、計200社超の企業が参加する見通しであることが分かった。政府はウクライナへの渡航制限の例外措置を含め、事業展開を促す環境整備を進める方向。複数の関係者が3日、明らかにした。 会議にはゼレンスキー大統領がビデオメッセージを寄せる見通し。日本はエネルギー供給や農業、インフラ整備などを中心に官民一体でウクライナの復旧・復興を進めたい考えだ。会議では岸田首相が復興支援を巡る政府方針を表明し、首脳や閣僚らの討議をそれぞれ開催。エネルギーやインフラなど、業界ごとに両国企業同士の討議も行う。ウクライナのシュミハリ首相が対面で出席し、ロシアとの戦闘が続くウクライナ国内の状況や具体的な要望を伝える見通し。 日本の経済界の一部からは、政府がウクライナ全土に出している危険レベル最高度の退避勧告が「投資の足かせになっている」との声がある。政府内では危険レベルを維持したまま限定的に渡航を認める案が検討されている。 |
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●プーチン氏の思惑、増えるウクライナ侵攻反対の署名 米国に停戦示唆!? 2/4
金融情報の配信などを手がける米国ブルームバーグが先月26日に報じたところによると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ侵攻の終結に向けた話し合いの用意があることを米国に示唆したという。 プーチン大統領は、米国に対するウクライナへの中立維持の要求を撤回するほか、NATO(北大西洋条約機構)加盟反対の取り下げも検討する可能性があるとしている。米国のNSA(国家安全保障会議)のワトソン報道官は、「指摘されているようなロシアの変化については把握していない」と語っている。 プーチン大統領はこのまま進めてもラチが明かないと思ったのだろう。すでにウクライナの国土の約18%を獲ったものの、そこから先は膠着して、両軍とも攻めあぐねている。今後も戦力を損耗するだけでロクなことはない。だから、ここで停戦交渉するというのも悪くないと考えても不思議ではない。 一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアが2014年に占領、併合したクリミア半島のウクライナ領を戻せと主張している。こちらは非現実的な要求だ。だから敵対するウクライナに停戦を持ちかけるのではなく、援助疲れをしている米国に持ちかけた…というのは、あながち的外れではないのかもしれない。 プーチン大統領の落としどころに挙げられた「ウクライナのNATO加盟に反対しない」というのは、すでに隣のフィンランドとスウェーデンまでNATO加盟が決定的になったいま、ウクライナのNATO入りはあまり大きな事案ではないと悟ったのだろう。 ウクライナという国は、放っておくと汚職などどうしようもない政府になりがちなところもある。そのときに倒す方がラクだと踏んだのか。現在のようなロシアに攻撃されて愛国心から国威発揚しているウクライナというのは、やっぱり手ごわい。「自然に堕ちる≠フを待つのも悪くない」と一歩引いてみたとすれば、プーチン大統領も少し賢くなったということか。 プーチン氏がこんな気持ちになっているのは、お膝元でいろんな動きが出ていることもある。3月に行われるロシア大統領選をめぐり、ロシアのボリス・ナジェージュジン元下院議員が、立候補に必要な10万人の署名が集まったことを明らかにした。 プーチン氏の再選が確実視される中、ナジェージュジン元議員は候補者の中で唯一、ウクライナ侵攻に反対を表明していて、モスクワ市内などの事務所には連日、支持者などが署名に訪れているという。署名するのに極寒の中、2時間も待つほどの盛況とも。 これまでプーチン氏は政敵を消すためにいろいろなことをしてきた。この10万人の署名についても、不備があったなどとしてイチャモンをつけるかもしれないが…。 プーチン政権を批判する急先鋒として知られる反体制派の指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏は、極寒の北極圏の過酷な環境の刑務所に収監されていることが判明。先月21日には同氏を支援するデモが、豪州やドイツ、ロシアなどで開かれた。彼らは「プーチンなきロシアを」を掲げていた。 こんな状況の中、さすがのプーチン氏も大統領選で圧倒的な支持というのはないのかもしれない。最近のプーチン氏は、やることがどうもうまくいっていないと感じられる。それで態度にも変化がみえてきている。 こういう風に、明らかにウクライナ戦にも反対という人が出てきたということは、今までなかったこと。どう展開をするのか。3月までみていきたいと思う。そういう意味では、このブルームバーグの記事はかなり重要だ。 |
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●ロシア側地域に砲撃、20人死亡 ルガンスク、米供与兵器で 2/4
ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ東部ルガンスク州リシチャンスクの喫茶店に3日、ウクライナ軍の砲撃があり、ロシア非常事態省は市民ら20人が死亡し、少なくとも10人が負傷したと明らかにした。タス通信などが報じた。 ロシア連邦捜査委員会は、米国が供与した高機動ロケット砲システム「ハイマース」が使われたとの見方を示した。 同州のロシア側行政府「ルガンスク人民共和国」トップのパセチニク氏は、約40人が店にいた可能性を指摘。死傷者は増える恐れがある。 |
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●ウクライナ侵攻に動員のロシア軍兵士の妻たち 早期帰還訴える 2/4
ロシアの首都モスクワでウクライナ侵攻に動員された兵士の妻たちが集まり、早期の帰還を訴えました。取材していた記者などが治安当局に一時拘束され、プーチン政権としては、来月の大統領選挙を前に、ウクライナ侵攻に反対する世論が広がることに神経をとがらせているとみられます。 モスクワ中心部のクレムリンの前では3日、おととし9月下旬に予備役の動員が開始されてから500日となるのに合わせて、戦地に派遣されたロシア兵の妻たちが集まりました。 集まった数十人の参加者は、第2次世界大戦の戦死者を慰霊する「無名戦士の墓」に花を供えるなどして早期帰還を訴えました。 ロシアの人権団体によりますと、現場で取材していた国内外のメディアの記者など20人以上が治安当局に一時拘束されたということで、プーチン政権としては、来月の大統領選挙を前に、ウクライナ侵攻に反対する世論が広がることに神経をとがらせているとみられます。 一方、ウクライナ陸軍は、東部ハルキウ州のクピヤンシク方面の前線をシルスキー司令官が視察したと発表し「前線の全域で激しい戦闘が行われている」として、攻撃を強めるロシア軍から周辺地域を防衛するための戦力を再配置したとしています。 また、ウクライナ大統領府は、ロシアが支配する南部クリミアでこのほどロシア軍のミサイル艇を撃沈した功績で、国防省情報総局のメンバーがゼレンスキー大統領から表彰を受けたと明らかにし、戦況がこう着する中、士気の向上につなげるねらいがありそうです。 |
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● 動員兵の帰還求め妻らがデモ、記者一時拘束 ロシア 2/4
ロシア・モスクワで3日、ウクライナ侵攻に動員された兵士の妻らが夫の帰還を求めて行ったデモを取材していた約20人の報道関係者が、警察に一時拘束された。AFP通信の記者も警察署に連行されたが、数時間後には解放された。 動員兵の妻らはここ数週間にわたり、毎週末、大統領府(クレムリン)の壁の前で抗議活動を行っている。当局は反政府的な抗議活動を厳しく取り締まっているが、兵士の妻らはこれまでのところ処罰されていない。妻らを拘束すれば反発が一段と拡大する恐れがあると懸念しているとみられる。 この日はモスクワ中心部の赤の広場の外で、抗議活動を取材していた内外の報道関係者(全員男性)が拘束された。拡散された動画には、報道関係者であることを示す黄色いベストを着た記者らが警察車両に乗せられる様子が捉えられている。 ウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナでの戦闘に従事する兵士は61万7000人で、うち24万4000人が動員兵だとしている。 |
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●ロシア占領地からの報道に反発 独公共放送にウクライナ 2/4
ドイツ公共放送ZDFのモスクワ特派員の記者が1月下旬、ロシア占領下のウクライナ南部マリウポリにロシア領内から入って取材し、現地の様子を報じた。記者は「ロシアの占領を認めるということではない。戦争を両サイドから報道することが重要だ」と伝えたが、ウクライナ外務省報道官は2日、同国の同意を得ておらず法律違反だと反発。「現実の歪曲はジャーナリズムではない」と批判し、ZDFに正式な説明を要求した。 ZDFは1月30日の声明で「記者はロシアが多額の資金を使っていかに街の正常化と再建を印象付けているかを説明した」と主張した。 |
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●ウクライナ・ルハンスク州のパン屋に砲撃 28人死亡 ロシアが実効支配… 2/4
ロシアが一方的に併合したウクライナ東部ルハンスク州のパン屋に3日、砲撃があり、現地当局はこれまでに28人が死亡したと明らかにした。 ロシアメディアなどによると、ロシアが実効支配するウクライナ東部ルハンスク州リシチャンスクのパン屋が3日、ウクライナ軍の砲撃を受けた。 ルハンスク当局はこれまでに市民28人が死亡、10人が負傷したと発表した。 ロシア外務省のザハロワ報道官は、「攻撃では西側の武器が使われた」と非難する声明を出した。 パン屋は2階建てで、砲撃を受けた当時は週末の客でにぎわっていたという。 |
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●BRICS加盟に34カ国が関心表明、今年はロシアが議長国 2/4
日米欧の主要7カ国(G7)に対抗して中国とロシアが主導する新興5カ国(BRICS)の一員である南アフリカのパンドール国際関係相は4日までに、BRICS加入への関心を伝えてきた国は34カ国に達すると述べた。 記者団に明らかにしたが、具体的な国名には触れなかった。輪番制となっているBRICSの議長国は今年、ロシアが務めており、加盟申請を受け付ける最初の国ともなる。 BRICSは2011年以降、中ロにブラジル、インドと南アによる組織として活動。数週間前には加盟国の拡大が初めて実現し、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピアとエジプトが正式に加わった。 BRICSの推進力の中心は中国とされ、米国が強い影響力を持つG7による不公平な国際秩序の構築に挑戦するための組織との見方もある。ウクライナ侵略で西側諸国からの経済的かつ外交的な締め出しを受けるロシアにとって加盟に関心を示す諸国の存在は孤立を避け得る好材料ともなる。 年次のBRICS首脳会議は今年10月にロシア南西部のカザン市での開催が予定されている。南アのヨハネスブルクで昨年開かれた首脳会議ではプーチン氏はオンライン上の参加にとどまっていた。ウクライナ侵略で戦争犯罪の容疑に問われ、国際刑事裁判所が逮捕状を出したことが背景にあった。 |
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●抗議活動続く露バシコルトスタン 2/5
旧ソ連の後継ロシア連邦は広大な多民族国家である。そのうちの一つ、バシコルトスタン共和国は、東はウラル山脈、西はボルガ川の間に位置する。2020年の国勢調査によれば、人口400万人を超えるロシアで最も人口の多い民族共和国である。 そこには、人口の31・5%を先住民族のキプチャク・チュルク系民族であるバシキール人が住んでおり、ロシア人とボルガ・タタール人がそれぞれ人口の37・5%と24・5%を占める。同共和国は、ロシア最大の工業地帯の一つで、製造業が盛んなほか、国内でも有数の豊富な天然資源が埋蔵されている。 ●抗議者が勝利した前例 バシコルトスタンには、環境や先住民族の権利問題を巡る抗議活動の長い歴史がある。最も注目されたのは、この地域のイシンベイスキー地区にある山クシェタウを守るための20年の抗議行動であった。クシェタウでの抗議活動は、バシキール・ソーダ社(BSK)による石灰岩採掘計画に反対するため、一般市民、環境保護活動家、バシキール民族の活動家らが団結したものだった。数千人の抗議者とBSKの警備請負業者や機動隊との数日間にわたる睨(にら)み合いは、抗議者の勝利に終わり、クシェタウは自然保護地域の地位を獲得した。 22年には、バシコルトスタン南東部のベイマクスキーとアブゼリロフスキーでの金採掘事業に対し、住民が新たな抗議活動を開始した。抗議者たちは、このプロジェクトは、人気のある自然の名所を破壊し、淡水の供給や地元の農業に害を及ぼす恐れがある、と非難した。 そして今年1月、バシコルトスタンでは、クレムリンが約2年前にウクライナに侵攻して以来、ロシアで見られた最大規模の街頭抗議デモの震源地となった。そこでは、先住民族バシキール人権利活動家の逮捕がきっかけとなって、ウクライナ侵攻以来、ロシアで最大規模の街頭デモが発生した。独立系有力英字紙「モスクワ・タイムズ」は1月19日、「ロシアのバシコルトスタン共和国で投獄された活動家支援のため数百人が新たに抗議行動に参加」と題する解説記事を配信した。 15日と17日には、数千人の人々がベイマクの町の裁判所の前に集まり、「民族間の憎悪を扇動した」罪で4年間の流刑を言い渡された著名なバシキール人活動家ファイル・アルシノフに対する支持を表明した。伝えられるところによると、機動隊は17日、群衆を解散させるため発煙筒、催涙ガス、警棒を使用し、少なくとも40人が負傷し、6人の抗議者が投獄された。さらに18日には少なくとも8人の抗議参加者が逮捕された。 37歳のアルシノフはバシコルトスタンで15年以上にわたる活動家で、地域の主権とバシキール先住民の政治的・言語的権利を擁護する発言をしてきた。アルシノフは20年5月にロシア政府によって非合法化されたバシキール民族組織「バシェコルト」の会長を務めるなど、幾つかのバシキール民族組織や運動のメンバーである。彼は、バシキール民族組織以外では、クシェタウ抗議運動に参加し、中心的な調整役を担ったことで知られるようになった。 23年4月、アルシノフはベイマクスキー地区での違法採掘に対する抗議行動に参加し、彼に対する刑事事件の基になる演説を行った。当局は、アルシノフがカフカスや中央アジアからの移民労働者たちを「否定的に評価」し、演説の中で彼らを「黒人」と呼んだことで、彼らの「人間としての尊厳」を「侵害」したと主張した。親政府勢力はまた、アルシノフが民族主義的なレトリックを用い、バシキール人以外の全ての人を共和国から追放するよう呼び掛けていると非難した。アルシノフはこの非難を否定し、自分のスピーチは政府系の言語専門家によって彼の祖国語であるバシキール語から「重大な誤訳」されたものだ、と述べた。 ●多民族国家の悩みの種 プーチン政権が任命したバシコルトスタンの首長であるハビロフは、アルシノフを鉱山抗議運動の「指導者」と呼び、「地元住民に過激な活動を公然と呼び掛けている」と非難した。クレムリンにとって、多民族国家の悩みの種は尽きないようだ。 |
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●ウクライナ情勢と日本 露の「やり得」にするな 2/5
ロシアによるウクライナ全面侵攻から間もなく3年目に突入する。ロシアは攻勢が目立つものの決定打を欠く一方、ウクライナは支援が細る中でもどうにか持ちこたえられそうであることから、戦争の4年目突入もあり得る状況だと、東京大学の小泉悠准教授と本紙の斎藤勉論説委員が今後の見通しを語った。米国からのウクライナ支援は当面途絶えるかもしれないが、日本が代わりに防衛装備品を供与する方法はあると両氏は論じる。この戦争を外交で止めることはできない以上、軍事的に支援するしかないのだ。 戦争に伴い戒厳令下にあるウクライナでは今年予定されていた大統領選も延期となったが、意外にも民主主義は機能しており、かつゼレンスキー政権は安定していると神戸学院大学の岡部芳彦教授が分析。本紙外信部の遠藤良介次長は戦場に「通勤」するウクライナ軍兵士の様子や同国の継戦能力について報告する。一方でロシアの経済、特に軍需産業の詳細について北海道大学の服部倫卓教授が解説、昨年1年間で1530両もの戦車が生産≠ウれたカラクリを明かす。なお斎藤、岡部、遠藤の3氏はロシアから入国禁止処分を受けている。 同志社大学の兼原信克特別客員教授は露宇戦争を通して、台湾有事の際に米国は核大国を前に萎縮し、中国のほうが米日台より有利になることが見えてきたとして、日本は総力を挙げて安全保障政策を実施せねばならないと訴える。 日本の安全保障のあり方を憂え、憲法改正の必要性を長年にわたり主張してきた田久保忠衛杏林大学名誉教授が去る1月、90歳で逝去した。 |
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●ウクライナ東部のロシア占領地で攻撃、28人死亡 2/5
ロシアが占拠するウクライナ東部ルハンスク州リシチャンスクで3日、建物が攻撃されて少なくとも28人が死亡した。ロシアが設立させた自称「ルガンスク人民共和国」のトップが4日に明らかにした。 ルガンスク人民共和国トップのレオニード・パセチニク氏はテレグラムに掲載した声明の中で、ウクライナが3日にパン屋のある建物を攻撃し、救急隊ががれきの下から10人を救助したと述べた。 パセチニク氏は、犠牲者をしのんで4日をルガンスク人民共和国の服喪の日とすると宣言した。 ウクライナ国防省は今回の攻撃についてコメントしていない。 リシチャンスクは2022年7月に陥落してロシア軍に制圧された。 ウクライナ軍は地上攻勢が停滞する中で、ロシア軍とロシア占領地域に対する攻撃を強めている。 |
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●ウクライナ大統領、軍司令官など複数高官の交代検討 2/5
ウクライナのゼレンスキー大統領は4日に放送されたインタビューで、軍司令官を含む複数の高官の交代を検討していると明らかにした。 ゼレンスキー氏は、ロシアとの戦闘指揮を巡って対立してきたザルジニー軍総司令官を近く解任するとみられている。 ゼレンスキー氏はイタリア国営放送RAIのインタビューでザルジニー氏について聞かれ、「ウクライナを率いるべき人物の問題だ」と指摘。「リセットが必要だ。軍部だけでなく、複数の国家指導者の交代について話している」と語った。 また「勝利したいのであれば、全員が同じ方向に進む必要がある。弱気にならず、正しいポジティブなエネルギーを持たなければならない」と述べた。 ザルジニー氏は昨年11月、西側メディアに対し、ロシアとの戦争が消耗戦という新たな段階に入ったと述べ、ゼレンスキー氏から非難を浴びた。 |
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●軍総司令官の解任検討認める ゼレンスキー大統領 2/5
ウクライナのゼレンスキー大統領は、4日放送の国営イタリア放送協会(RAI)のインタビューで、ザルジニー軍総司令官の解任を検討していることを認めた。「単に一人の話ではなく、国を指導する方向性に関わることだ」と述べ、軍だけでなく、複数の高官の交代を考えていると明らかにした。 サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は4日放送のCBSテレビの番組で、「人事はウクライナ政府の問題」だとして介入しない方針を示した。ゼレンスキー氏の判断を尊重する考えを強調した。 ロシアによる侵攻のさなかに国民の信頼が厚いザルジニー氏を解任すれば、国内の結束が揺らぐ懸念が浮上している。米政府はウクライナへの軍事支援をけん引してきたが、この問題からは距離を置く姿勢を明確にした。 サリバン氏は、政府高官の人事については「明らかにウクライナの主権であり、ゼレンスキー氏の権利だ」と指摘。「特定の決断には巻き込まれない」との米政府の方針をウクライナ政府に直接伝えてきたと説明した。 |
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●苦悩するドイツ、危機迎えるショルツ政権に突如「神風」が吹くも… 2/5
ドイツでは、極右政党が伸張したり、それに反対する市民のデモが広がったり、農民が補助金削減に反対してトラクターを繰り出して抗議活動を行ったり、社会に混乱が拡大している。 ●AfDの勢力拡張 ドイツでは、2013年に発足した極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が勢いを増している。移民排斥などの過激な主張を展開しているが、昨年6月にはチューリンゲン州のゾンネベルク郡でドイツ初のAfDの郡長が生まれた。次いで7月には、ザクセン・アンハルト州ラグーン・エスニッツの町長選でAfDの候補が当選した。12月にもザクセン州ピルナでAfDの市長が誕生した。 これらの自治体は、いずれも旧東ドイツにあり、旧西ドイツよりも貧しく、住民の不満が高く、それがAfDの支持につながったようである。アメリカで繁栄から取り残された地域の貧しい白人の労働者が、トランプを支持した状況に似ている。 AfDは、地方自治体で行政の長のポストを獲得したのみならず、地方議会の選挙でも躍進している。10月には、旧西ドイツのヘッセン州とバイエルン州で勢力を拡大した。 最近の世論調査では、野党CDU/CSU(キリスト教民主・社会同盟)に次ぐ第二党に躍り出て、ショルツ首相与党のSPD(社会民主党)は第3位に甘んじている。それだけ、ショルツ政権の人気がないということである。難民の急増、インフレの高進が原因である。 ●農民の反乱 今のショルツ政権は、SPD、緑の党、FDP(自由民主党)の連立政権である。中道左派のSPDに加えて、環境保護政党の緑の党がメンバーであるために、地球温暖化対策に熱心である。 そこで、原発を廃止し、再生可能エネルギーに切り替えた。これまでは、安価なロシア産天然ガスを輸入し、それがドイツ経済を支えてきた。しかし、ウクライナ戦争のためにロシア依存を止めざるをえなくなり、電気代をはじめエネルギー価格の高騰を招いた。 政府はエネルギー政策の一環として、農業用ディーゼル燃料の税控除廃止など補助金の削減を決めたのである。それでなくても、インフレで生活が苦しくなっている農民が怒って、12月になってベルリンをはじめ各地で道路をトラクターで塞ぐなどして抗議活動に出たのである。その政府批判に乗じて、AfDが勢力を拡大している。農民の中には、あからさまにAfD支持を表明する者もいる。 政府は、1月4日には補助金削減計画の一部を修正したが、農民はそれでは不十分として抗議活動を続けている。政府の施策に不満を持つ多くの国民は農民を支持している。 ●突然のAfD攻撃 こうして苦境に立たされたショルツ政権であるが、突然、AfDへの逆風が吹き始めた。それは、1月10日のことで、テレビが、「ワイデル共同党首などAfDの政治家がポツダムのホテルで秘密会合を開き、移民・難民をドイツから追い出す計画を立案した」と報じたからである。最大200万人を追放する計画だという。 これは、ナチスによるユダヤ人迫害を連想させるものであり、国民の間に一気に批判が高まり、「民主主義を守れ」、「ナチスの再来はごめんだ」といったスローガンを掲げて、反AfDのデモがドイツ各地で繰り広げられている。 ショルツ政権にとっては神風が吹いたようなものだが、政府による世論工作としてでっち上げられた話題であるという説もある。真相は不明だが、この件もドイツ社会の混乱を深めている。 1月8日には、旧東独の社会主義政党の流れをくむ左派で人気政治家のザーラ・ヴァーゲンクネヒトが新党BSW(ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟)を立ち上げた。左派ポピュリストであり、反移民でもあり、AfDと競合する。 6月には欧州議会選挙、今秋には旧東独のザクセン、チューリンゲン、ブランデンブルクで州議会選挙が行われる。EUの主軸であるドイツの政治動向は世界に大きな影響を与える。 日本はドイツにGDPで抜かれ、4位に転落したが、それは、GDPがドル表示であり、ドイツのインフレ、円安の影響だ。GDP3位などというのは、ドイツでは話題にならないくらいに、国内政治が深刻なのである。 |
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●米上院、移民対策で与野党合意 ウクライナ支援で前進 1/5
米上院の民主、共和両党は4日、メキシコとの国境を越えて流入する移民対策に関する与野党合意案をまとめ、公表した。下院で過半数を握る野党共和党は、移民対策をウクライナ支援よりも優先するよう要求してきた経緯があり、両党が対外支援と移民対策の両方を盛り込んだ法案を協議していた。 合意案は、ウクライナやイスラエルに対する追加支援とセットで、米政府のウクライナ支援の再開に向けて前進となる。予算総額はホワイトハウスの要求額を上回る約1180億ドル(約17兆5000億円)に上る。ただ、ジョンソン下院議長(共和党)は反対を表明しており、下院通過のめどは立っていない。 |
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●米上院、与野党で合意 ウクライナ支援・移民対策 2/5
米上院の民主、共和両党は4日、ウクライナ支援と移民対策を盛り込んだ法案の内容で合意し、公表した。予算総額は約1183億ドル(約17兆6000億円)に上り、ホワイトハウスの要求額を上回った。ただ、下院で過半数を握る野党共和党の保守強硬派がウクライナ支援に反発する中、成立するかは依然不透明だ。 米政府のウクライナ支援は昨年末で底を突き、議会による追加予算の承認が必要となっている。共和党はウクライナ支援よりも移民対策が優先だと主張し、両党による協議が行われていた。今回の合意を受け、支援再開に向けて一歩前進した。 しかし、11月の大統領選を前に、争点となる移民対策でバイデン大統領(民主党)に得点を稼がせたくないトランプ前大統領(共和党)は、与野党合意案に反対を呼び掛けている。ジョンソン下院議長(共和党)も「下院に届き次第、廃案となる」と呼応しており、下院通過のめどは立っていない。 合意案は、メキシコとの国境を越えて流入する移民が増加した場合に、大統領に国境を一時閉鎖する権限を与えるのが柱。移民申請の資格の厳格化なども盛り込み、「過去数十年で最も厳しい移民改革」(米政府高官)となる。 このほか、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援に約600億ドル(約8兆9000億円)、パレスチナのイスラム組織ハマスとの戦闘が続くイスラエルへの支援に約141億ドル(約2兆1000億円)を計上した。 |
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●ロシアの「エースドローン操縦士」殺害を機にウクライナは南部で攻勢に転じる 1/5
ウクライナ海兵隊は同国南部ヘルソン州を流れる広大なドニプロ川の左岸(東岸)に位置するクリンキに幅の狭い橋頭堡(きょうとうほ)を築き、なんとか持ちこたえている。そこでの戦いの大部分はドローン(無人機)によるものだ。 ロシア軍、ウクライナ軍双方とも、1人称視点(FPV)の小型ドローンで互いを監視し、攻撃しており、空がFPVで埋め尽くされる日もある。 そのため、1月中旬にウクライナ軍のドローンチームが「モーゼ」を意味する「モイセイ」というコールサイン(無線会話で使われるニックネーム)を持つロシア軍のエースドローン操縦士の居場所を割り出して殺害したのは大きな出来事だった。 モイセイの殺害でクリンキでの戦いの勢いが変わった。「モイセイのグループが無力化された後、敵は何の問題もなく集落内を徘徊している」と、あるロシア人の従軍記者はSNSで不満を語っている。 ウクライナ軍の第35独立海兵旅団の部隊は昨年10月中旬にドニプロ川を渡った。それから数カ月間、橋頭堡を拡大するのに苦労した。 確かに、自軍の大砲とドローンが右岸から海兵部隊を援護し、ほぼ毎日ロシア軍の反撃を跳ね返していた。だが、海兵部隊は攻撃を成功させられるほど橋頭堡を十分拡大することができなかった。 モイセイがその主な原因だった。モイセイはクリンキの前線からわずか約150m西にある2階建ての家から、約900gの爆薬を搭載したFPVドローンを飛ばし、ウクライナ軍の兵士が補給と橋頭堡の補強で頼っていた小型ボートや水陸両用トラクターを容赦無く追い回した。 モイセイとその仲間は、ウクライナ軍のボートを31隻攻撃し、400人近いウクライナ兵を死傷させたという。この「ボート大虐殺」はクリンキにいる一部の海兵を絶望に追いやり、米紙ニューヨーク・タイムズなどのメディアは悲観的に報じた。同紙は昨年12月、クリンキの戦いを「自殺任務」とするウクライナ海兵の言葉を記事の中で引用した。 モイセイを見つけ出して殺害することが、ドニプロ川右岸にいるウクライナ軍のドローン操縦士たちの最優先任務となった。そして、どうやら1月上旬にその任務を全うした。 ウクライナ軍のドローンは、モイセイのチームがクリンキの隠れ家からドローンを飛ばしているのを突き止めた。そしてFPVをその隠れ家に突っ込ませて爆破した。「モイセイへのささやかな贈り物」と「バル」というコールサインのウクライナ軍のドローン操縦士は皮肉った。 モイセイを排除しても、クリンキとその周辺におけるロシア軍のドローン攻撃の脅威はなくなっていない。だが、モイセイを始末したことで脅威は減った。これまでよりも多くのウクライナ軍のボートが急にドニプロ川を渡るようになった。 補強と補給を受けたクリンキにいる第35旅団の部隊は攻撃に転じた。300mほど西に前進し、皮肉にもモイセイが死亡した建物に到達したと伝えられている。 クリンキでの戦いは「自殺任務」ではない。ヘルソンに展開するロシア軍にとってはほぼ消耗戦となってしまった。 クリンキでウクライナ軍を駆逐しようとしては失敗を繰り返し、ロシア軍は少なくとも157両の戦車や戦闘車両、りゅう弾砲、そしておそらく数千人の兵士を失った。一方で、ロシア軍が破壊できたウクライナ軍の兵器(主に大砲)はわずか24で、おそらく数百人の海兵とボートの乗員が死傷した。 だが、ここでの戦いが完全に陣地戦で、双方とも地歩を固めていないというわけではない。クリンキで最も危険な存在だったロシア軍のエースドローン操縦士を殺害してから、ウクライナ軍は勢いを得て前進している。 |
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●侵攻 |