延命のためなら
何でもあり
税金バラマキ 政権維持
政治後回し
総理 役職にしがみつく
・・・ 政治家のいない国
1/1・1/2・1/3・1/4・1/5・1/6・1/7・1/8・1/9・1/10・・・1/11・1/12・1/13・1/14・1/15・1/16・1/17・1/18・1/19・1/20・・・1/21・1/22・1/23・1/24・1/25・1/26・1/27・1/28・1/29・1/30・1/31・・・ 2/1・2/2・2/3・2/4・2/5・2/6・2/7・2/8・2/9・2/10・・・2/11・2/12・2/13・2/14・2/15・2/16・2/17・2/18・2/19・2/20・・・2/21・2/22・2/23・2/24・2/25・2/26・2/27・2/28・2/29・・・ 3/1・3/2・3/3・3/4・3/5・3/6・3/7・3/8・3/9・3/10・・・3/11・3/12・3/13・3/14・3/15・3/16・3/17・3/18・3/19・3/20・・・3/21・3/22・3/23・3/24・3/25・3/26・3/27・3/28・3/29・3/30・3/31・・・ |
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●自民党・派閥パーティー券問題が直撃 2024年岸田首相の政権運営は 1/1
自民党の派閥のパーティー券問題は岸田政権を直撃しています。岸田総理大臣はどう政権運営にあたるのか。江口記者のリポートです。 政治とカネの問題で、逆風が吹き荒れた12月。自民党内に「総辞職するのでは」といった声があることに岸田総理は、こう答えました。 岸田総理「今はそうした先のことを考えている、そういった余裕はないと」 総理自身は周辺に「自分が辞めて何か解決するのか。辞めて解決するならいつでも辞めてやる」と話すなど、まずは政治不信の払拭に全力をあげる考えです。 岸田総理「政治において結果を出すためにも、国民の信頼、そして政治の安定、これが何よりも重要だと」 政治とカネの問題にどう向き合うかは当面の最大の課題です。 ある閣僚経験者が「まずは岸田派を解散しないと何も始まらない」と述べるなど、党内には「派閥解消」にまで踏み込むべきとの意見もあり、総理の判断が注目されています。 また、1月に始まる通常国会では野党の厳しい追及を受けるのは避けられません。 立憲民主党・泉代表「自民党政権の延命を許さない。裏金政権の延命を許さない。派閥政治の延命を許さない」 ある立憲幹部は「通常国会は『パー券国会』になる。すでに岸田政権は崖っぷちだがさらに追い込む」と意気込んでいます。 今年は、衆議院解散・総選挙のタイミングをうかがいつつ、9月の自民党総裁選挙で再選を果たすことが最大の政治目標になるはずでした。 ただ、政治とカネの問題は大きな「足かせ」になっています。 政権発足以来、最も厳しい目が向けられている岸田総理。 総理として迎える3度目の年明けは困難な1年の幕開けになります。 |
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●立民 小沢衆院議員 “野党間の連携深め政権交代目指すべき” 1/1
立憲民主党の小沢一郎衆議院議員は、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題について、自民党政権による思い上がりが招いたと批判したうえで、野党間の連携を深め政権交代を目指すべきだという考えを示しました。 立憲民主党の小沢一郎衆議院議員は1日、昼すぎ東京都内の自宅で新年会を開き、党所属の国会議員や地方議員らおよそ60人を前にあいさつしました。 この中で、小沢氏は自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題について「自民党政権でかつては考えられないような非常に幼稚でありえないような行為が、公然と当たり前のように続けられてきた。まさに権力の思い上がりだ」と批判しました。 そのうえで「本来なら岸田内閣を倒して自民党に下野を迫るような勢いを持たなければならないにも関わらず、立憲民主党からほとんど大きな声は上がらない。『日本維新の会は嫌いだ』などと言っていたのでは、いつまでも自民党の腐敗政治を許すことになり、立憲民主党が大きな心と目的を持ちほかの野党と協力を誓い合う年にしなくてはならない」と述べ、野党間の連携を深め、政権交代を目指すべきだという考えを示しました。 |
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●裏金問題捜査で田崎史郎が「安倍政権時代なら法務省と官邸で内々に」 1/1
東京地検特捜部が松野博一・前官房長官、世耕弘成・前参院幹事長、西村康稔・前経済産業相、萩生田光一・自民党政調会長、高木毅・自民党国対委員長ら安倍派幹部への任意の事情聴取をおこなうなど、捜査が本格化している政治資金パーティ裏金問題。ある人物の発言がSNS上で注目を集めた。 それは、政治ジャーナリスト・田崎史郎氏が昨年12月16日放送『情報7daysニュースキャスター』で発したコメントだ。 「こういう事件の時は、法務省が官邸と内々に打ち合わせをして、黒を白にすることはないですけど、“このへんでね”という(妥協案の提示の)話が、行われるものなんですよ。安倍政権ではあったんです」 「それを岸田官邸は一切やってない。法務省の情報も東京地検特捜部の情報が全然、取れてないから分からない」 ようするに、安倍政権時は安倍官邸と法務省・検察が内々に“手打ち”していたが、岸田官邸はそれをやっていないから捜査情報を把握できていない、と田崎氏は言うのだ。 言わずもがな、検察は捜査権と公訴権を有する唯一の機関で、この国で閣僚クラスの大物政治家の汚職を摘発するのも実質的に検察だけだ。そのため検察は行政機関でありながらも政治からの中立性と独立性が求められる。しかし、安倍官邸は法務省を通じて検察の捜査に介入していた、というのである。 三権分立を踏みにじる安倍政権の横暴を、さも当然のことのように平然と語る政治ジャーナリスト……。これにはSNS上で田崎氏の倫理観を批判する意見が寄せられているが、問題は、安倍官邸が法務省と“手打ち”することで検察の捜査を歪めてきたという事実のほうだ。 あらためて振り返るまでもなく、安倍政権下では政治家絡みの告発がことごとく潰され、今回の裏金よりも悪質性が高いと思われるような事件でも検察は「不起訴」を連発してきた。田崎氏は「黒を白にすることはないですけど」などと言っていたが、まさに「黒を白にする」行為をしてきたのだ。 ●小渕優子の政治資金問題も、甘利明の1200万円賄賂疑惑も、なぜか不起訴に その最たる例が、2014年に経産相だった小渕優子衆院議員や、法務相だった松島みどり衆院議員など、当時の安倍政権閣僚に次々と噴出した公選法違反疑惑だ。 小渕氏のほうは、選挙区内の有権者を含む女性支援者を集めて明治座を借りきって開催していた観劇会について、収支報告書では支出が収入を大きく上回る記載をしていることなどを「週刊新潮」(新潮社)がスクープ。その後も小渕氏の写真がラベルされたワインを有権者に配った疑惑なども持ち上がり、政治資金規正法違反や公選法違反(寄附行為)の疑いで告発された。一方、松島氏は似顔絵入りのうちわ(1本80円)を2万本作成し、自身の選挙区内のお祭りで無料配布していたことが発覚。公選法違反(寄附行為)の疑いで告発された。 だが、東京地検特捜部は2015年、小渕氏の元秘書が在宅起訴したが、小渕氏・松島氏ともに嫌疑不十分で不起訴処分に。とくに小渕氏の場合、東京地検特捜部が関係先を家宅捜査をする前にハードディスクを電気ドリルで破壊していたと報じられただけでなく、架空の資金移動や収支の過少記載によって裏金をつくり、その裏金で観劇会の費用などを補填。虚偽記載の総額は約3億2000万円にものぼっていた。いや、そもそも小渕氏の問題は、虚偽・不記載だけではなく有権者買収での立件も可能な事件だったのに、だ。 しかも、小渕氏が立件されないことを、かなり早い段階で安倍官邸は知っていたはずだ。小渕氏の問題では2014年10月20日に小渕氏が経産相を辞任し、30日には関係先の家宅捜査がおこなわれたが、小渕氏は自民党を離党することもなくこの年の12月におこなわれた総選挙に出馬したからだ。つまり、この時点から、安倍官邸と法務省・検察の一体化が疑われていたのである。 そして、安倍官邸と法務省・検察の一体化が露骨に浮かび上がったのが、2016年に発覚した、経済再生担当相だった甘利明氏の“1200万円賄賂疑惑”をめぐる一件だ。 この疑惑は2016年1月、千葉県の建設会社・薩摩興業の依頼で都市再生機構(UR)へ移転補償金の値上げを“口利き”した見返りに、甘利氏が少なくとも総額1200万円の現金や飲食接待の賄賂を受けとっていたと「週刊文春」(文藝春秋)がスクープ。薩摩興業の元総務担当者の告発によると、公設秘書ら2人に現金500万円、さらに甘利本人に50万円を2回、計100万円を手渡していたといい、「五十万円の入った封筒を取り出し、スーツの内ポケットにしまった」「甘利さんは『ありがとう』と言って、封筒を受け取りました」と証言。甘利事務所が現金を受け取ったことを証明する領収証や、甘利の公設秘書らがUR側に補償金アップの働きかけをする交渉を録音したテープなどの物証もあった。 この甘利氏の口利き、賄賂疑惑はあっせん利得処罰法違反はもちろん、刑法のあっせん収賄罪の対象にもなりうる案件だ。東京地検特捜部も2016年4月にURを家宅捜索、甘利氏の元秘書らを事情聴取するなど、明らかに立件を視野に動いていた。 ところが、それが2016年7月の参院選を前に事態は一転し、秘書を含め全員に「不起訴」の判断が下ってしまったのだ。 ●安倍官邸が検察・法務省に圧力をかけていたことを示す証拠文書も!「官邸も、法務省に何度も巻きを入れている」との記述 甘利事件の「不起訴」の裏には何があったのか。それは当時、法務省官房長で、2020年に賭け麻雀問題で東京高検検事長を辞任した黒川弘務氏の捜査介入だ。 当時、国会議員秘書初のあっせん利得法違反を立件すると意気込んで捜査をおこなっていた特捜部に対し、法務省官房長だった黒川氏は「権限に基づく影響力の行使がない」という理屈で突っ返し、現場が今度はあっせん収賄罪に切り替えて捜査しようとしたが、これも「あっせん利得法違反で告発されているんだから、勝手に容疑を変えるのは恣意的と映る」などと拒否。さらには秘書の立件すら潰してしまったのだという。実際、甘利氏の不起訴の方針が決まった後、現場の検事の間では「黒川にやられた」という台詞が飛び交ったという話もある。 この甘利事件を潰した論功行賞として、黒川氏は2016年9月に法務省事務方トップの事務次官に就任したのだが、じつは甘利氏が不起訴となった前後にも、告発を受けていた自民党の松村祥史参院議員による計3500万円の不記載、同じく自民党の島尻安伊子・元沖縄北方担当相の計1050万円の不記載の問題でも、検察は不起訴処分に。 さらに、同年11月には、国会でも問題となっていた下村博文・元文科相が自身の支援団体「博友会」を政治団体として届け出ずに年会費名目で政治資金を集めたり、同会からの寄付を会員からの寄付と偽ったりしたなどとして政治資金規正法違反の疑いで告発されていた問題が不起訴に。 さらに、検察・法務省の安倍政権に全面屈服していることをあからさまに証明したのが、森友学園事件だった。 森友事件では、公文書変造、虚偽公文書作成の疑いで財務省元理財局長の佐川宣寿氏らが刑事告発。また、国有地を8億円あまりも値引きし売却したことについても、近畿財務局と国土交通省大阪航空局の職員が背任容疑で告発された。しかし、大阪地検特捜部は2018年5月31日、告発された38人全員を不起訴とした。その4日後である6月4日、財務省はお手盛りの調査報告書を公表し、収束を図った。 しかも、この森友公文書改ざん事件では、官邸と財務省、法務省が完全にグルになって政治的決着をはかっていたことを示す証拠が存在する。国交省と財務省のやりとりが記録された内部文書に、法務省との交渉についても記されていたのだ。これは、2018年6月18日の参院決算委員会で日本共産党の辰巳孝太郎・参院議員が公表したものだが、文書にはこうした記述があった。 〈5/23の後、調査報告書をいつ出すかは、刑事処分がいつになるかに依存している。官邸も早くということで、法務省に何度も巻きを入れているが、刑事処分が5/25夜という話はなくなりそうで、翌週と思われる。〉 つまり、大阪地検が不起訴処分を発表する前に官邸はその結果を把握しており、官邸は検察が捜査結果を早く公表するよう法務省に圧力をかけていたというわけだ。まさに、田崎氏の発言どおり、法務省を通じた“手打ち”がおこなわれていたのである。 また、2017年には、安倍首相の友人がオーナーの加計学園の国家戦略特区指定をめぐり、安倍首相本人や総理府・官邸が文部科学省に圧力をかえていた問題が浮上したが、これも検察は動かなかった。2018年8月には下村・元文科相が加計学園の秘書室長から政治資金パーティ券の代金計200万円を受け取りながら収支報告書に記載しなかった問題も不起訴となっている。 ●安倍政権下で数々の不祥事を潰してきた黒川弘務・元東京高検検事長 安倍内閣は黒川の定年を勝手に延長 森友・加計問題という安倍首相が深く関与していた重大事が、ことごとく不起訴になる──。そうして黒川氏は2019年1月、ついに東京高検検事長に就任。2020年1月14日には「桜を見る会」問題で安倍首相自身が背任罪で告発されるが、同月31日に安倍政権は黒川氏を検事総長にすべく、検察庁法で定められた定年を閣議決定によって勝手に延長。同じ日、安倍首相の背任罪の告訴は不受理となった。 ご存知のとおり、黒川氏はその年の5月、記者との賭け麻雀問題を受けて辞表を提出し、安倍首相も9月に辞任した。だが、これで抑えつけられてきた検察による政界捜査が真っ当におこなわれるようになったわけではない。 実際、やはり安倍元首相本人が公選法違反や政治資金規正法違反容疑で告発された「桜を見る会」前夜祭問題でも、検察はハナからやる気なし。東京地検は2020年12月、安倍元首相の公設第1秘書だった配川博之氏を政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴。しかし、前夜祭の費用負担が公選法違反の寄附にあたるとして告発された件では容疑不十分で2度にわたって不起訴となった。一方、安倍氏は公職選挙法(選挙区内の寄附)違反容疑などで不起訴となり、その後、検察審査会から「不起訴不当」の議決を受けたが、2021年11月に再び不起訴処分(容疑不十分)とした。 だが、2022年に明らかにされた前夜祭の開催にかかわった秘書らの供述調書を読むと、当初から前夜祭の費用を事務所側が負担することの違法性を理解しており、確信犯で費用の補填と収支報告書への不記載を実行していたことが浮き彫りに。いかに捜査がお手盛りのものだったかを裏付けている。 さらに重要なのは、河井克行・元法相と河井案里氏が引き起こした2019年参院選の大規模買収事件だ。 河井事件は安倍首相が黒川氏の定年延長にこだわった理由とも言われたが、結果的に安倍首相が在任中の2020年6月に河井夫妻は逮捕され、克行氏は懲役3年の実刑判決、案里氏は懲役1年4カ月・執行猶予5年の有罪判決が確定した。だが、河井事件で東京地検特捜部は、元広島市議に対して最高検察庁が取り調べが不適正だったと認める供述誘導をおこなう一方、検察は買収の原資については捜査のメスを入れず、公判でも解明されることはなかった。 しかし、今年9月になって、中国新聞が2020年1月に検察当局が河井元法相の自宅を家宅捜索した際に発見されたメモの存在をスクープ。そのメモには、自民党本部から振り込まれた計1億5000万円を指す記述の下に、「+現金6700」「総理2800 すがっち500 幹事長3300 甘利100」と手書きで記されていたという。つまり、河井陣営に対しては自民党本部からの支出のほかに、安倍首相や菅官房長官、二階俊博幹事長らといった当時の政権幹部から「現金」で計6700万円が提供され、選挙買収の資金に充てられたのではないかと見られるのだ。 ところが、時の総理大臣をはじめとする政権幹部が資金提供していたことが疑われる物証まで掴んでいながら、河井元法相の公判でも検察はメモを証拠として提出することもなかった。安倍・菅・二階・甘利という政権幹部4人は買収罪や買収目的交付罪に該当する疑惑が浮上していたというのに、家宅捜索はおろか、聴取さえ実施されなかったというのだ。 ●安倍政権下や安倍氏の在命中は政治家の疑惑はまともに捜査されず 検察は今度こそ徹底的な捜査を! このように、安倍政権下や安倍氏の在命中には「政治とカネ」をはじめとする政治家の疑惑に対して真っ当な捜査がおこなわれず、闇に葬られてきた。検察がいまになって安倍派に捜査のメスを入れるという政界捜査を本格化させたのも、安倍元首相が亡くなったことにくわえ、岸田政権の支持率がだだ下がりでレームダック化していることと無関係ではない。 権力の大きさによって捜査が左右されるようなことはあってはならないが、この自民党政権の約10年で溜まりに溜まった膿を吐き出すためにも、今回の裏金捜査は重要な意味をもつ。 安倍派の裏金問題は、安倍派の事務総長を務めていた松野・前官房長官、西村・前経済産業相、高木・前国対委員長に加え、世耕・前参院幹事長、萩生田・前政調会長ら、安倍派5人衆の不正がかなり濃厚になっているが、彼らはまさに、安倍政権の検察メディア支配を支え、自らも官僚やマスコミに圧力をかけ、支配する安倍首相とそっくりの独裁体質を持つ政治家連中だ。 一部の政治勢力によって行政が歪められ、権力の不正が横行するような政治の再来を防ぐためにも、検察は今回こそ徹底した捜査を行う必要があるし、国民も最後まで検察の動向を監視し続ける必要がある。 |
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●政策活動費、使途公開義務化を 山口公明代表 1/2
公明党の山口那津男代表は2日、自民党派閥の政治資金問題を受け、使い道を明らかにする必要のない「政策活動費」の使途公開を法律上、義務化すべきだとの考えを示した。東京・池袋駅前で街頭演説し、「使い道が明らかにされず政党幹部に配られている。不透明な政治資金の流れの温床となっていると言わざるを得ない」と指摘した。 山口氏は、パーティー券購入者名などを政治資金収支報告書に記載する基準を現行の1回当たり「20万円超」から「5万円超」に引き下げる考えも重ねて強調。党でまとめる政治改革案について「今月のできるだけ早い時期に提案し、国会論議に反映させ合意形成をしたい」と述べた。 |
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●キングメーカーの麻生氏が描く「岸田政権は3月訪米と予算成立で退陣」 1/2
今年は解散総選挙が行われる可能性が極めて高い。 解散権を行使するのは、国民から見放されて内閣支持率が1割台まで落ち込んだ岸田文雄首相ではない。新しい首相だ。 岸田首相は3月上旬の国賓待遇の訪米と、3月下旬の予算成立を花道に退陣し、緊急の自民党総裁選を経て茂木敏充幹事長を新首相に担いでただちに解散総選挙へーーこれがキングメーカーである麻生太郎副総裁の描くシナリオである。 内閣支持率が続落する岸田首相に解散総選挙を断行する力はない。来年秋の総裁選で再選を果たすのは困難だ。麻生・茂木・岸田の主流3派体制を維持するには、岸田政権から茂木政権への移行を円滑に進めたい。 最大の問題は、茂木氏が国民にも自民党員にも人気がないことだ。 ライバルは、非主流派の菅義偉前首相と二階俊博元幹事長が担ぐ石破茂元幹事長である。石破氏は世論調査の「次の首相」トップに返り咲いた。無派閥の菅氏や石破氏は世論の支持が頼みだ。 総裁任期満了に伴う来年秋の総裁選は党員も投票に参加し、石破氏に有利、茂木氏に不利となろう。 そこで岸田首相に任期途中で電撃辞任してもらい、緊急の総裁選に持ち込む必要が出てくる。 緊急の総裁選は党員が投票せず、国会議員と都道府県連代表だけで決める短期決戦となる。これなら派閥の多数派工作で茂木氏が優勢だ。 最大派閥の安倍派は、集団指導体制を主導してきた5人衆(萩生田光一、西村康稔、松野博一、世耕弘成、高木毅の5氏)が裏金事件で全員失脚し、壊滅的状況にある。主流3派が結束して茂木氏を担げば、指導者を失った有象無象は「勝ち馬に乗れ」と主流3派になびくだろう。 安倍・麻生・茂木・岸田・二階の5派閥が裏金事件で刑事告発されたのに、検察当局が強制捜査に踏み出したのは最大派閥の安倍派と非主流派の二階派だけである。この捜査はまさにキングメーカーの麻生氏の意向に沿った国策捜査なのだ。 岸田から茂木へーー。麻生氏のシナリオは着実に進んでいる。 4月28日には旧統一教会問題やセクハラ疑惑で批判を浴びるなかで急逝した細田博之前衆院議長の死去に伴う衆院補選が予定されている。公選法違反で年末に逮捕された柿沢未途衆院議員や裏金事件で強制捜査を受ける安倍派の議員らが議員辞職すれば、補選の数は増え、自民大逆風の選挙となる。せっかく茂木政権が誕生してもいきなり補選で惨敗すればたちまち失速してしまう。 これを避けるには、新政権誕生の「ご祝儀相場」の勢いで補選前に衆院を解散し、4月28日投開票の日程で総選挙を行うのが一番だ。 そのためには4月16日の補選告示前に解散する必要があり、日程を逆算すると、3月22日ごろには予算を成立させ、岸田首相が退陣表明して、ただちに自民党総裁選に入り、4月1日ごろには新総裁を選出しなければならない。新内閣が発足して4月12日ごろまでに解散すれば、間に合う。 最大の懸念材料は、岸田首相が3月の訪米と予算成立を花道に、素直に退陣してくれるかどうかである。 ●岸田 崖っぷちの抵抗 岸田首相は就任当初から宏池会(岸田派)の歴代首相の在任期間を気にしていた。 すでに大平正芳と宮沢喜一を抜き、歴代3位になった。1500日を超える創始者・池田勇人は別格として、今年2月には鈴木善幸を抜いて歴代2位に躍り出る。老舗派閥・宏池会の歴史に堂々と名を刻むことができる。首相退任後も派閥のドンとして影響力を残すことも可能だろう。 何としても2月は乗り切りたい。それが岸田首相の願いである。 岸田最側近の木原誠二前官房副長官(現幹事長代理)も「2月まで首相をやればもう十分でしょう」と周囲に漏らしている。 麻生氏は3月の訪米と予算成立を花道に退陣させるシナリオを描いたのも「2月さえ乗り切れば」という岸田首相の心中を察してのことだ。 とはいえ、岸田首相本人としては「2月」は最低条件でしかない。来年秋の総裁選で再選を果たすことは難しいとしても、「1日でも長く首相を続けたい」と思っている。支持率さえ回復すれば、あわよくば総裁再選を果たしたいとも願っている。 岸田首相は訪米時期をできればゴールデンウィークまで引き伸ばしたかった。バイデン大統領に国賓待遇で招待されたのは岸田首相である。訪米が終わるまで、麻生氏も強引に辞めさせるわけにはいかない。 だが、訪米時期をめぐる駆け引きは、麻生氏の勝利に終わったようだ。日米両政府は3月前半で調整しているとマスコミ数社が報じている。外務省など霞が関はすでに岸田政権は長くはないとみて、キングメーカーの麻生氏の顔色をみて動いているのだ。 そこで岸田首相は通常国会の召集時期で巻き返しに出た。召集日をできるだけ先送りすることで予算成立も遅らせ、4月解散総選挙の日程を間に合わなくさせる狙いだ。 麻生氏は1月22日召集を念頭に置いていたが、岸田首相は裏金捜査の行方を見極める必要があるとして1月26日に先送りすることを画策。年末時点では、読売新聞は「22日軸」、共同通信は「26日軸」と報じ、政権内部で攻防が続いていることをうかがわせた。 もうひとつ抵抗する材料は、裏金事件を受けた政治資金規正法の改正や脱派閥といった政治改革だ。 ●政治改革を担う新組織のトップに菅氏? 岸田首相は年明けのなるべく早い時期に、裏金事件で失われた政治への信頼を回復させるための新組織を立ち上げ、政治資金規正法の改正に加えて派閥政治を解消するための施策を検討すると表明している。 一方、麻生氏は安倍派壊滅によって主流3派の優位が確立したのだから「脱派閥」の流れが強まることは阻止したい。政治資金規正法の改正を骨抜きにしたいのは麻生氏に限らず自民党内の大勢だ。 自民党は、旧統一教会問題では茂木幹事長をトップとする「党改革実行本部」で対応策をまとめた。麻生氏は今回のこの組織を使って政治資金規正法の改正や脱派閥への取り組みを玉虫色にして「軟着陸」させたい考えだ。 これでは岸田首相は3月退陣へのレールに乗せられて着実に進んでいくことになる。 岸田首相としては政治改革議論を盛り上げ、内閣支持率を回復させ、3月退陣の流れを食い止めたいところだ。麻生・茂木ラインから主導権を取り戻す必要がある。 そこで浮上しているのは、新組織のトップに麻生氏の宿敵である菅義偉前首相を起用する案だ。非主流派で無派閥の菅氏と電撃的に手を結び、脱派閥の機運を一気に高め、麻生・茂木に対抗する構想である。 岸田首相が麻生・茂木に対抗して菅氏との連携を探るのは初めてではない。昨年9月の内閣改造・党役員人事でも茂木幹事長を更迭し、菅氏に近い森山裕氏や茂木派の次世代ホープである小渕優子氏を幹事長に抜擢する「主流派組み替え」を画策した。 土壇場で麻生氏に猛反対されて断念し、茂木幹事長を留任させたが、ここから岸田政権は坂道を転がり落ちたという後悔が岸田首相にはあろう。今回の政治改革はいまいちど菅氏との連携を探ろうというわけだ。 だが、昨年9月の人事で麻生氏に押し切られたのに、今回の政治改革で麻生氏を突き放すことが岸田首相に本当にできるのか。「麻生氏からの自立」は岸田政権にとってなかなか果たせぬ課題なのだ。 当面は焦点は、通常国会の召集日と政治改革を担う新組織の人事である。キングメーカーの麻生氏と岸田首相の水面下の駆け引きに注目だ。 |
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●田中真紀子「有権者を愚弄するのもたいがいにしな」… 1/2
岸田文雄内閣の「オワコン」化が止まらない。パーティ券収入を巡る組織的な裏金づくり疑惑の直撃を受け、自公政権では麻生太郎内閣以来の内閣支持率10%台に入った。報道各社が毎月発表する支持率は元々じわじわ下げていたが、完全に底が抜けた形だ。過去、竹下登内閣や森喜朗内閣で記録した1ケタ台に沈むことも見えてきた――。 ●キングメーカー然としていた森氏は雲隠れ 今回の問題が表面化して以来、自民党最大派閥、清和政策研究会(安倍派)は機能不全に陥っている。「最低限、現職議員1人は挙げ(逮捕し)ないと終われない」(関係者)という状況の中、派関係者や所属議員が相次いで検察当局の任意聴取を受ける。連日の報道を受け、仕事納めを前にした年末の永田町では、5人衆と言われる派閥幹部をはじめ所属議員の離党も噂されるなど、混乱に拍車がかかっていた。ただ、森喜朗内閣以降、主流派としてカネと人事を握り続けた清和会に対し、蓄積した嫉妬は深い。党内からは「盛者必衰だよ。令和の平家物語だね」と冷ややかな声も上がる。 そんな中、同派に強い影響力を持ち、キングメーカー然としていた森氏は雲隠れを決め込んでいる。 2023年夏、背骨を圧迫骨折して車椅子での生活を余儀なくされた森氏だが、その後も陰に陽に存在感を示してきた。ある自民党関係者は「あの人の強さの源泉の1つはマスコミだよ。自分のストーリーで情報を流して局面を有利に進める。政治の世界はしゃべることが、力の源泉になるからね」と話す。 森氏が定期的に連載していた地元・石川県の北國新聞で、派閥領袖に意欲を見せていた下村博文元文科相が土下座で懇願したと明かし、さらにその際2000万円を持参したとのエピソードも文藝春秋誌上で語ってみせたことは記憶に新しい。下村氏側は全否定しているが、こうした「暴露」が安倍晋三元首相の死後に繰り広げられた派のトップを巡る暗闘に、少なくない影響を与えたことは明らかだ。この件に限らず、とにかく森氏は多くの媒体に直接、間接を問わず自らの発言を露出させ、思惑を反映させられる環境づくりに勤しんできた。 ●北國新聞での連載も突如終了「あの人は全て分かっている」 そんな森氏の発信が、ぱたりと止まったのだ。2023年12月初旬、西村康稔経済産業相、世耕弘成参院幹事長(いずれも当時)と都内のホテルで会食したが、「肉声」が漏れることはなかった。北國新聞での連載も突如、終了が発表された。今回の問題について「あの人は全て分かっている」とされる森氏だけに、沈黙は意味深長だ。 パーティ券問題では、検察の任意聴取が名目上の派閥トップである「座長」に就く塩谷立衆院議員にも及んだ。捜査は基本的に公訴時効である5年前までが対象となるものの、「近頃突然始まった問題でないことは明らか」(全国紙社会部記者)だけに、歴代の清和会トップ経験者の動きにも焦点が当たる。しかし、存命者は少ない。 安倍氏や細田博之元衆院議長、町村信孝元衆院議長は死去し、中川秀直元幹事長、谷川秀善元参院幹事長も町村氏と集団指導体制の一翼を担ったに過ぎない。小泉純一郎元総理とて、森氏が政権を担っていた際の「名代」だ。清和会関係者は「四半世紀近く派閥を牛耳ってきたのは森さんだ」とした上で「塩谷さんが『キックバックはあった』と自白じみた不用意な発言で検察を本気にさせた。痛い腹だからこそ、下手に目立って探られたくないんですよ」と声を潜める。 ●黙っていれば、嵐が過ぎ去ると 「黙っていれば、嵐が過ぎ去ると考えているんでしょ。森先生は野党にも顔が広いからね」。ある自民党現職国会議員はこう語り、嘆息する。確かに、森氏の影響力は清和会だけにとどまらない。森氏と同窓の早稲田大出身者を中心に多くの政界関係者が森氏のもとに通い、持ちつ持たれつの関係を築いてきた。 ある永田町関係者は野党議員による『森詣で』として「立憲民主党の安住淳・国対委員長や辻本清美参議院議員は目立っていた」と明かす。この関係者は「森さんの雲隠れには、計算があると思いますね」とも語る。「安住さんが国対を切り回せるようになったのは、森さんが口添えして自民党国対の森山裕衆院議員との良好な関係を築けたから。安住さんは森さんに大恩がある。だから、パー券問題で追及はしても、森さんまで関わるような攻め方はできない、と見ているのでしょう」と分析する。 清和会所属の宮澤博行前防衛副大臣が「派閥から、(キックバックを)収支報告書に記載しなくて良いと指示があった」と暴露した。指示の真偽確認はもちろん、政治とカネを巡っての膿を出し切る上で、森氏の証言は大きな意味を持つ。しかし、現役議員から森氏ら引退組への言及する動きはない。ベテラン秘書は「最終的には自分たちに跳ね返ってくるんだから、言うわけがないよ。触らぬ『森』に祟りなし、だ」と吐き捨てる。 ●火中の栗を誰も拾いに行かない自民党の薄情 党内最大派閥はグリップが効かず、漂流している。自派の将来に黄信号が灯っている状況で、とても岸田氏を支え、再浮上させる余力はない。「そもそも、事実確認前に政務官を含めて全員の首を斬るなんて無茶苦茶だ。心情的に俺はもう非主流派だよ」(清和会中堅)との声も上がる。 主流派の平成研究会(茂木派)や志公会(麻生派)も火中の栗を拾おうとしない。 茂木敏充幹事長は政権の窮地に静観を決め込む。「今総裁に手を上げても逆風が強すぎる、と思っている。もちろん意欲が消えたわけじゃない。でも、タイミングが悪すぎる」。茂木氏周辺はこう解説する。実際、茂木氏は今のところ、高市早苗経済安保相が勉強会を発足させたような政局じみた動きは見せない。政治資金規正法の改正をはじめ「官邸のオーダーに従って、粛々と仕事をこなす」(茂木氏周辺)中で、局面転換を待つ。もちろん、それは積極的というよりも、消極的な支持だ。そんな空気を察してか、岸田氏の出身母体、宏池会(岸田派)の関係者は「茂木さんは心ここにあらず、という感じが見え見え。(岸田)総理はもともと茂木さんを信用していないが、今回の件でさらにそれは強まっただろう」と語る。 志公会も、麻生氏が高木毅国対委員長の交代を巡る「好き嫌い人事」で岸田氏を振り回した。パーティ問題を巡り辞任した高木氏の後任には、紆余曲折があったが浜田靖一元防衛相の起用が決まった。ただ、浜田氏は就任の条件として御法川信英元国対委員長代理の再登板を求め、これに麻生氏が難色を示していたのだ。 ●ご意見番気どりの石破茂に「また始まった」の声 かつてパーティならぬ「パンティー問題」で世間をにぎわせた高木氏は、国対委員長としての仕事ぶりが酷評され「『高木不在』ということで『ノーパン国対』と揶揄されていた」(永田町関係者)ほどだった。そんな高木氏に代わって実務を裁いていたのが御法川氏だった。岸田政権としては、通常国会の野党対策は予算通過などを見通す上で極めて重要だ。国対経験が長い浜田氏と、実務能力が高い御法川氏のコンビは、岸田氏側にとっても渡りに船の提案だったが、麻生氏側の意向から、決定するまで時間を要した。 「御法川さんは、サトベン(佐藤勉元総務会長)さんの仲間だからね。麻生先生にとっては、凶状持ちなんだよ」。党関係者はこう話す。令和4年2月、御法川氏は佐藤氏に同調し、計4人で麻生派を退会した。それ以来、「派内でこの4氏に言及することはご法度だ」(志公会担当記者)という。永田町では、「麻生氏サイドとしては、一度ならず二度までも国対委員長代理という要職に就くのは認め難いという意向だ」などとの噂が飛び交っていた。あるベテラン国会議員は「麻生先生が実際に何を考えているかは別として、党の緊急事態に『私情で人事を曲げた』なんて噂がでるような振る舞いはするべきじゃないよね」とこぼす。 「小石河」の一角、石破茂元幹事長も、予算通過後の退陣に言及し、自身の総裁選出馬にも含みを持たせる発信を続ける。ただ、これについては「いつもの『ご意見番』気取りがまた始まったって感じですよ。正論を言うけれど、『じゃあ汗をかくか』ってなると引く。だから誰も付いてこない。本当に空気が読めない」(自民党中堅議員)などと、広がりを欠く。逆風とは言えないが、少なくとも支持、支援の動きではないことは確かだ。 ●「解党的な出直しが必要だ」などと語る残念OB 清和会が機能不全で、残る主流派2派も領袖は岸田氏ではなく、「自身の思惑ファースト」を隠さない。「とてもじゃないけれど、一致団結って雰囲気じゃないよね。『岸田総裁のために』なんて、うちの先生も含めて誰も言わないよ」(ベテラン秘書)と政権には強い逆風が吹く。 自民党がこうした混乱にある上に、森氏不在≠ナ注目が集まると考えたのか、おなじみの党OBがにわかに発信を強めている。山崎拓元副総裁、亀井静香元政調会長の2氏は12月下旬、都内で小泉氏と会食した。事前に政治記者に情報をリークし、思惑通り集まった記者団に対し、山崎・亀井両氏は「解党的な出直しが必要だ」などと得意げに語ってみせた。自民党の若手国会議員は「さも自分たちは無関係だなんて雰囲気で偉そうにしゃべっているけれど、あんたたちも共犯だろうと思うよ。あの辺の爺さんたちは注目されたいだけでしょ。許せない」と憤りを隠さない。 他にも、水を得た魚のように活気づく御仁がいる。田中眞紀子元外相だ。今春に復刊した父、田中角栄元首相の著書『日本列島改造論』の序文で「はぐらかしと居眠りを続ける日本政治に危機感を抱いている」とぶち上げていた眞紀子氏は12月初旬に議員会館で勉強会を開催した。 ●有権者を愚弄するのもたいがいにしなさいよ 往年の眞紀子節は健在でこの日「有権者を愚弄するのもたいがいにしなさいよ」「自民党は抜け穴を見つけて裏金作りを続けてきた」「黙っていられない」などと吼えた。パーティ券問題が注目を集める中だっただけに、煽り上げた発言は、一部メディアが嬉々として取り上げた。野党系では「火ぃ付けてこい」発言で知られる泉房穂・元兵庫県明石市長もSNS上などで盛んに発信し、同郷の西村氏や岸田政権への批判を強め、スポーツ紙を中心にX(旧ツイッター)への投稿などを取り上げている。 マスコミは朝日新聞から産経新聞に至るまで、パーティ券問題を連日1面トップで取り上げ続ける。永田町では例年、各社が総力を注ぎ込む「1月1日付け朝刊の1面トップ記事」に、政界の超ド級のスクープが踊るとの観測も流れていた。 こうした状況に自民党関係者は「終わりの終わりだよ。(支持率が)1ケタになるのは時間の問題だよ」とこぼす。身内から見捨てられ、身一つで全方位からの攻勢に立ち向かわざるをえない岸田氏。終末の日は近いか―。 |
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●バイデン米大統領、地震対応で支援用意 日本と「深い友情の絆」 1/2
バイデン米大統領は、1日に発生した能登半島地震について、米国は必要な支援をする用意があると表明した。 1日発表した声明で「緊密な同盟国として、米国と日本は国民を結びつける深い友情の絆を有している。われわれの思いは、この困難な時期にある日本の人びとと共にある」と述べた。 |
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●安倍元首相銃撃は数十年にわたり「蓄積された悲劇」の果てに起きた 1/3
安倍晋三は人生最後の日の朝、奈良にいた。 五重塔で知られる古寺と、神の使いの鹿で有名なこの地方都市にやってきた目的はいかにも事務的で、市内の主要駅に面した街路の広い交差点で、地元選出の国会議員の再選を訴える応援演説をするためだった。 安倍は2年前に首相を辞任していたが、日本の歴代首相で最長の在任記録を持つ彼の名前には非常に大きな重みがあった。その日は2022年7月8日だった。 詰めかけた群衆が撮影した写真を見ると、後ろになでつけられた髪、チャコールの眉、気さくな笑みで安倍本人とすぐ認識できる男性が午前11時30分頃、急ごしらえの演壇に上がり、片手でマイクを握る姿がうつっている。 その周囲を自民党支持者の集団が取り巻いていたが、安倍の後方に立つ男に気づく者は誰もいなかった。グレーのポロシャツにカーゴパンツ姿で、黒いストラップを肩にかけていた。男は他の群衆が拍手を送るなか、ただ立ち尽くしていた。 安倍の演説が始まって数分後、2度の大音響とともに上がった白煙が演説の言葉をかき消し、安倍は地面に崩れ落ちた。 SPがグレーのポロシャツの男に走り寄る。男の手には、長さ約40cmの金属パイプ2本を黒のビニールテープで束ねた手製の銃が握られていた。首を狙撃された安倍は、数時間以内に絶命する。 山上徹也(当時41)は身柄を確保され、引き金を引いてから30分も経たないうちに犯行を認めた。さらに、あまりに突飛すぎてにわかに信じがたい動機を口にした。 彼は安倍をムーニーズの名で知られるカルト教団、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の協力者とみなしていた。彼の母親が全財産を教会に寄付したため、山上とそのきょうだいは満足な食事ができないほど貧しく、人生を破壊されたという。 ●暴かれた「安倍政権の偽善」 2023年1月の朝日新聞の記事によれば、 真の標的は旧統一教会の最高幹部である韓鶴子(ハン・ハクチャ)で、安倍ではないと山上は警察で供述している。教団創設者・文鮮明(ムン・ソンミョン)の寡婦である韓に近づくことができなかったため、高名な政治家で祖父・岸信介の代から教団と深い関わりのある安倍を銃撃したという。 調査の結果、この山上の荒唐無稽な主張が事実だとわかり、奈良県警は動揺した。彼らは短い会議のあと、安倍と旧統一教会とのつながりは、少なくとも現時点では明かすべきではない大変にデリケートな事案と判断したようだ。 2日後の7月10日におこなわれる参議院選挙の結果にも影響を及ぼすかもしれない。県警関係者は、銃撃事件当日の夜に開いた記者会見で、山上が「恨みを持つ特定の団体と、安倍につながりがあると思い込んだ」ために襲撃を実行したとだけ述べた。報道陣が追及しても、彼らは沈黙を守った。 参院選後、旧統一教会は山上の母親が信者だったと公式に認めた。これにより旧統一教会が、政権与党・自民党を長らく支えてきたことが明らかになった。安倍をはじめ多くの自民党議員は、旧統一教会信者を選挙活動に動員してきたのだ。彼らは秘密兵器的な存在として、選挙活動を支援した。 2022年7月、タブロイド紙の日刊ゲンダイは、教団と関係のある国会議員100人以上のリストを明らかにした。同年9月上旬、自民党は379人の国会議員のほぼ半数と旧統一教会の関係について、選挙協力要請、会費の支出、教団行事への参加といった何らかの接点があったとする調査結果を公表した。 さらに朝日新聞の調査に対し、都道府県議会の議員290人と知事7人も教団およびその関連団体と接点があったと回答した。 旧統一教会との関係が疑われる政治家の数が増えるにつれて、ありふれた風景に隠れていたスキャンダルがあぶり出された。それは韓国の右派カルト教団が過去70年の大半、日本を支配してきた保守政党と密接なかかわりがあったという事実だ。 日本国民は憤慨した。旧統一教会が自民党の政治家を利用しようとしただけでなく、そこに腹立たしい「偽善」があったからだ。安倍は熱烈なナショナリストとして、日本の国際的地位の再興に力を注ぎ、自国の帝国主義的な過去を堂々と誇っていた。 だが安倍と彼の政党は、旧統一教会と秘密裏に選挙で協力関係を結んでいた。さらにそのカルト教団は、過去の戦争に対する日本人の罪悪感につけこんで信者を洗脳し、巨額の金を搾取していた。 ●安倍の死を巡り深まる分断 山上徹也の生い立ちと、自民党と旧統一教会との関係が広く知られるようになると、奇妙な逆転現象が起こった。日本国民は暗殺犯に同情し、凶弾に倒れた犠牲者に怒りを表明するようになったのだ。 日本のある週刊誌は、「山上ガールズ」と呼ばれるファンなど、彼の支援者について特集記事を組んだ。山上に差し入れを送る者も現れ、数千人が安倍の国葬に抗議した。山上を悲劇の英雄に見立てた長編映画が急遽制作され、全国で上映された。内閣支持率は下がり、旧統一教会との関係の説明が不充分だとして、辞任に追い込まれる閣僚もいた。 この暗殺事件は、安倍のレガシーをめぐる国民間の深い対立を露呈させた。安倍は国際社会における日本の影響力を回復させたと称える声がある一方、好戦的な過去へ逆戻りさせる危険人物だと非難する声もあった。 旧統一教会が安倍と自民党に与えた影響については、いまも論争の的だ。岸田政権は2022年11月、党に着せられた汚名をそそぐため、宗教法人法の「報告徴収・質問権」に基づき、教団への調査を開始した。 この調査は統一教会にとって致命的な打撃となる可能性があり、宗教法人格がはく奪されかねない。さらに米国を含む他国における教団の位置づけに関しても、この措置は波紋を投げかけるかもしれない。 教団指導者らが何の罪にも問われていない現状で、宗教団体が善よりも害をおよぼしていると判断する決定権は我々にあると、日本政府は主張しているからだ。 人生に絶望したひとりの男が犯行に走らなければ、すべては隠蔽されたままだったかもしれない。刑務所の独房で裁判を待つ山上にとって唯一の慰めは、「歴史上最も成功した暗殺者」のひとりになったという自負だけだろう。 安倍の死から1年以上が経過したいま、彼が殺されたのは錯乱した一匹狼による無差別な凶行というより、数十年間にわたり蓄積されていった果ての悲劇のように映る。 ●日韓が「アダム」と「エバ」になった理由 安倍晋三元首相の暗殺後、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)が依然として影響力を持っていることに多くの人が驚いた。米国でも日本でも、同教団の活動は下火になったと考えられていたからだ。 1980〜90年代にかけての教団は、不気味で全体主義的な体質、異様な合同結婚式、政治的な影響力を持つことへの露骨な執着で話題を集めた。文鮮明は米国で保守系新聞「ワシントン・タイムズ」を創刊したことでも知られる。 こうした教団の活動の屋台骨を支えていたのは、日本だった。旧統一教会の本部は韓国だが1970年代以降、多くの日本人が熱狂的な信者となり、活動資金の大半も日本から得ていたことに人々は驚かされた。 2017年に教団から追放された元幹部の桜井正上によれば、日本は「事実上、教団の資金源の“支柱”となっている」という。日本国内の旧統一教会の活動を取材するなかで話を聞いた人たち(旧統一教会の現・元信者、その家族、弁護士、ジャーナリスト、政治家、被害者支援団体の関係者など10人以上)のうち、桜井はただひとり、教団を嫌悪する人と崇拝する人双方の立場に共感を示す人物であるように思えた。 モーツァルトとシューベルトのピアノソナタが静かに流れる東京都内の喫茶店で会ったとき、彼はお辞儀をしながら両手で名刺を差し出す日本式の挨拶で私を出迎えた。 旧統一教会の冷酷な手口について話すとき、桜井の口調は重かったが、間違った教えの犠牲者と彼が考える信者について語る際は穏やかになった(彼は教団内で育った)。 ・・・ ●「祝福2世」との対面 日本で話を聞いた旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の信者はいずれも明るく、その率直さに驚いたが、彼らは違う世界に生きているという印象を受けた。 そのうちのひとりである小嶌希晶 (こじま・きあき)と名乗る20代の女性は、教団が「祝福2世」(合同結婚式で出会った信者の間に生まれた子供)と呼ぶ現役信者だ。 小嶌とは東京のオフィスビルの、商談向けに時間貸しされている家具付きの小部屋で会った。部屋には番号が振られてコードロックされ、長い廊下にドアがずらりと並ぶ様子は清潔な刑務所のようだった。 小嶌の母親も、山上の母親と同じく1億円を教団に献金したという。そのため貧しい子供時代を送り、質素な食事とお下がりを着て、大学進学の選択肢も限られていた。子供の頃の小嶌はごく一時期、自身の身の上に降りかかった窮乏を恨んだが、その後に受け入れたという。 旧統一教会が選んだ夫も受け入れた。夫はフィリピン人男性で、一度も会わないまま、2021年にオンライン上で結婚した(その後2人は実際に対面したが、相手はいまも日本に移住してはいない)。 新郎から3000キロ以上も離れた日本の教会でブライダルドレスを着て結婚式に臨んだ彼女は、身を乗り出してノートパソコンの画面越しに新郎とキスしようとしたと実演してみせた。その目には照れくささが浮かんでいるように思えた。 小嶌の口ぶりは、こうした結婚式が第三者には奇異に感じられるとわかっているかのようだった。それでも、「自分は教団のなかで育ち、教団に愛されていると感じている」と語る。 ・・・ ●安倍政権からの「大きな見返り」 旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)は、選挙で奇跡の勝利を呼び込んだ見返りに、どんな利益を得たのだろうか? それほど大きな見返りは、必要なかったのかもしれない。 同性婚や女性の権利、伝統的な家族形態など、教団にとっての重要な関心事に対する自民党の保守的な見解を信頼していたのだろう(文鮮明には同性愛嫌悪があった。かつて彼は同性愛者を「糞を食らう汚らわしい犬」と表現した)。 とはいえ安倍政権は教団に少なくともひとつ、大きな見返りを与えた。 2015年、日本政府は旧統一教会の名称変更を承認した。この決定は物議を醸し、長年教団を批判してきた人たちを憤慨させた。一方、教団にとって名称変更には大きな意味があった。 1990年代半ば以降、日本では旧統一教会という名称は「キズもの」だった。現在、旧統一教会は「世界平和統一家庭連合」という無害な看板に掛け替えて宣伝に励むが、教団関係者以外はおおかた旧名称を使用する。 文部科学省の事務次官を務めていた前川喜平は、名称変更が認められたことをいまだに腹に据えかねている。 彼の執務室に到着すると、41ページに及ぶ宗教法人法の資料を手渡された。前川は私に、旧統一教会側からの変更申請は、当時の文部科学大臣だった下村博文によってすみやかに認証されたと語る。 ・・・ |
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●安倍派「崩壊」で暗雲 首相の旧宮家復帰プラン 1/3
岸田首相の肝いりで昨年11月から始まった自民党総裁直轄組織「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」(皇位継承懇談会)が早くも頓挫しそうである。安倍派裏金問題の嵐のなかで、12月15日に予定されていた2回目の会合が急きょ延期された。首相は、旧宮家の男系男子を現皇族の養子にできる旧宮家復帰プランの実現を明言していた。 しかし、支持率が10%台にまで落ちた「店じまい内閣」に国家の根幹に関わる皇室典範改正などできるはずもない。 昨年7月8日、「安倍晋三元総理の志を継承する集い」に岸田首相は出席し、「憲法改正」「皇位継承」などで安倍氏の思いを引き継ぐと大見えを切った。ここまで安倍派に媚(こ)びるのは、今年9月に任期が切れる自民党総裁再選のため保守層の支持が必要だからである。23年9月13日には安倍派5人衆の一人、萩生田光一氏を政調会長として続投させた。 その萩生田氏は『産経新聞』(同9月27日付)1面に掲載されたインタビューで、皇位継承問題について意欲を語っている。首相から政調会長続投を伝えられた際、「安定した皇位継承策の見直し作業を急がなければならないという問題意識」を伝えられたことを明らかにした。そして、皇位継承問題は「この1年、党でそれほど動きがなかった」が、憲法改正と併せ「この2つの問題にしっかり道筋をつけたい」と自らがリーダーシップをとって議論を進めていくと表明したのである。 ●約束は反故にしない 岸田首相は、保守派対策の手をさらに打った。昨年10月26日に発売された月刊誌『WiLL』12月号で、ジャーナリスト櫻井よしこ氏と対談し、「私は一昨年(2021年)の総裁選において、旧宮家の男系男子が皇籍に復帰する案も含め、女系天皇以外の方法を検討すべきだと主張しました。そのときの約束を反故(ほご)にすることはありません」と明言したのである。 政府の有識者会議が、旧宮家に連なる男系男子が現在の皇族の養子になり皇籍復帰できる案(旧宮家復帰案)を含んだ最終報告書をまとめたのは21年12月。直後には、自民、公明、日本維新の会などが党内議論を始めた。しかし、過去2年間、動きは事実上なかった。 櫻井氏は「岸田総理は皇位継承の問題に取り組んでくれるのか―。そんな疑心暗鬼が生じていました」と首相の姿勢に疑念があったと率直に指摘した。それに対し首相は「国民の皆さんも強い関心を抱いている。今後は見える形≠ナ議論を進めていきたい」と応じたのだ。保守系読者がほとんどの雑誌で、保守の論客に向かって、リップサービスをする首相。一昨年の「安倍国葬」以来、自民党最大派閥の支持をつなぎとめることが、首相の最大の再選戦略であった。 『毎日新聞』の伊藤智永・専門編集委員は、LGBT理解増進法成立や、性別変更の要件に関する最高裁違憲判決などジェンダー重視の近年の潮流に対する危機感が強い保守派にとって、「皇位の男系男子継承維持」が、保守的家族観のシンボルになっていると分析する(『週刊エコノミスト』23年11月21・28日合併号)。その通りであろう。 ●「皇位継承」を利用 ところで、昨年11月17日に初会合が開かれた「皇位継承懇談会」は、会長に麻生太郎副総裁、会長代理に茂木敏充幹事長、副会長に森山裕総務会長と小渕優子選対委員長、事務総長に萩生田政調会長(当時)、事務局長に木原誠二幹事長代理と重厚に布陣した。テーマがテーマだけに党内有力者を揃(そろ)えた。委員は全16人で、中曽根弘文氏、衛藤晟一氏、山谷えり子氏、有村治子氏(いずれも参院)ら保守派が目立つ。 キーマンは萩生田氏だと見られていた。ところが、安倍派の裏金疑惑が降ってわいた。萩生田氏は昨年末、自民党政調会長を辞任した。「皇位継承懇談会」事務総長がどうなるのかは分からないが、こちらも辞任が筋であろう。 そもそも、岸田内閣はすでに国民の信を失っている。毎日新聞社が昨年12月16、17の両日に実施した全国世論調査によれば、内閣支持率は16%。前月より5㌽も減っている。不支持率は79%もある。敗戦直後の1947年以来、最も高い不支持率だ。瓦解(がかい)前夜の内閣だと言っていい。 皇位継承と憲法改正は、国家の形を決める重要な課題である。有権者の2割弱しか支持していない弱体内閣が取り組むべき問題だとは思えない。皇位継承を自らの権力基盤の強化のために利用したツケが、現在の不支持率につながっていないだろうか。 それ以前に、自民党は、皇室典範改正が簡単にできると勘違いしているようだ。事務局長である木原幹事長代理は「論点はそんなに多岐にわたるものではない」と述べている(23年11月17日)。その時点では、今年(24年)の「早い時期」に結論を出すという声さえあった(『毎日新聞』23年11月18日)。 無理であろう。旧宮家皇族復帰案が具体的に見えるに従って、その問題点が徐々に明らかになると考えられるからだ。一例をあげれば、皇族に復帰する旧宮家の男系男子がどのような人物で、皇族となるに値するかどうか、どのように審査するのだろうか。男系で血統がつながってさえいれば、その人物が希望したとき、誰でも皇族になれるのだろうか。議論さえなされていない。論点が多岐でないとか、今年の早い時期に決めるとか、認識が甘すぎる。 そもそも世論が支持しているのは女性天皇案であって、旧宮家復帰案ではない。そのことを忘れて、政権維持のために旧宮家復帰案を利用した岸田内閣そのものが沈没寸前である。議論は早く進めたほうがいい。だが、岸田内閣にその資格はない。 国会でも動きがあった。額賀福志郎衆院議長は昨年12月19日、立憲民主、日本維新の会、公明、共産、国民民主の5党の幹部と面会し、皇位継承策に関する各党の意見集約を進めるよう要請した。自民党の体たらくを見た議長がイニシアチブを取った形である。通常国会で何らかの協議体ができるかもしれない。だが、立憲民主党は、旧宮家復帰には慎重である。議論が早期決着する道筋は見通せない。 |
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●民間の立場から国政を観察すると腹立たしいことばかり 「政治への信頼」 1/3
2023年4月に大阪市長を退任し、政治の世界から引退した。橋下徹元市長らと「大阪維新の会」を立ち上げて13年、大阪から日本を変えるために、私たちは「身を切る改革」を掲げて、政治改革や公務員改革、行財政改革、教育改革に走り続けてきた。引退から8カ月たつが、「やるだけはやった」という思いは変わらない。 現在、民間の立場から国政を観察していると、腹立たしいことばかりだ。岸田文雄政権や国会議員の方々には、「初当選直後の『国家や国民に尽くしたい』という決意を思い出せ」「政治家としての矜持(きょうじ)を無くしたのか」「国民の常識に寄り添うべきだ」と思う。 自民党派閥のパーティー収入不記載事件では、言い訳ばかりが聞こえてくる。 選挙で何回も当選している国会議員が、政治資金収支報告書への不記載という違法行為について、「派閥の指示だった」「派閥から『話すな』と言われた」などと被害者のように振る舞っていた。恥ずかしいと思わないのか。 不記載や過少記載は、支持者から集めた浄財を、政治・選挙活動以外に使っているとしか考えられない。やましくないなら、収支報告書に堂々と書けるからだ。最大派閥・安倍派(清和政策研究会)では「裏金は5年間で5億円以上」と報じられている。国民の「政治への信頼」は地に落ちたと言っていい。 岸田首相は臨時国会閉会後の記者会見で、「国民の信頼回復のため火の玉となって先頭に立つ」と語っていたが、具体的な改革案は明かされなかった。国家リーダーは「国民に具体的な方針を伝えて、約束したことは困難があっても成し遂げる」ことが重要だ。 私は2つの提案をしたい。 第1は、「政治資金規正法の厳罰化」だ。収支報告書への不記載や過少記載が発覚した場合は「議員辞職」など、厳しくすべきだ。民間では、数万円の不正でも逮捕される。政治家だけ特別扱いするのは「法の下の平等」に反する。岸田首相は「閣法」として国会に提出すべきだ。 第2は、月額100万円支給されながら報告義務のない「調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)」の全面公開だ。この旧文通費こそ、国会議員に特権意識を植え付け、お金の感覚をマヒさせる元凶である。領収書を添付した使途公開とともに、余った分は国庫に返納すべきだ。 岸田首相は、議長を務めた5月の広島G7(先進7カ国)サミット直後の衆院解散を見送った。その後、LGBT法で岩盤保守層が離れ、自民党女性局のフランス研修中などで、党の「緩み」「たるみ」「おごり」が露呈した。 自民党パー券事件は、自民党不信や政治不信を加速させている。一部の内閣支持率は10%台の「退陣水域」に突入した。岸田首相の求心力は急速に失われつつある。 東京地検特捜部にも注文したい。「捜査対象が、岸田政権の主流派以外(安倍派と二階派=志帥会)に偏っている」という指摘がある。刑事告発は自民党5派閥が対象になっている。国民の検察不信を招かないためにも、バランスの取れた捜査を期待する。 さて、2025年大阪・関西万博の会場運営費について、日本国際博覧会協会が、当初想定していた809億円から約1・4倍の1160億円に増額する方針を示したことが批判を浴びている。 運営費の多くは人件費であり、私が市長時代に出た試算は5年前だ。安倍晋三政権時代であり、安倍首相は毎年、経済団体に「春闘の賃上げ」を要請していた。5年たち賃金は上がり、人件費と比例する運営費も上がっている。 賃金増加は悪いことではない。博覧会協会と政府、大阪府市が知恵を出し、増額を上回る収益を出せばいい。 産経新聞に先日、「万博会場で30言語対応の翻訳アプリ無料提供へ 国際会議での同時翻訳も」という独自記事が掲載されていた。世界の人々の「言葉の壁」を取り払うもので、新たなビジネスチャンスも期待できる。 2023年は「政治への信頼」が失われた1年だった。24年こそ「信頼回復の年」にしてほしい。永田町の常識が世間の非常識ではいけない。 |
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●年収「2000万円超〜2500万円以下」の給与所得者は日本にどのくらいいるか 1/3
コロナ明けでますます働き方の多様化がすすむこんにち。ご自身のキャリアを見つめなおし、年収アップを目指す計画を立てている人も多いでしょう。 さて、一般のビジネスパーソンの「年収」。毎月の給料や、勤務先の決算期末などのタイミングで支払われる賞与をあわせて年間収入(年収)とするのが一般的な考え方でしょう。 では、その年収、どのくらいの金額をどのくらいの人が手にしているのでしょうか。 そして、私たちの年収は今後、上昇していく可能性はあるのでしょうか。過去から見てきて上昇してきたのでしょうか。 今回は、国税庁の開示資料をもとに、詳細を確認していきます。 ●年収2000万円超〜2500万円以下の人数と割合は 2023年9月に国税庁が公表した「令和4年分 民間給与実態調査統計」によると、2022年の給与所得者の総数は5077万6000人。 そのうち年収2000万円超〜2500万円以下の給与所得者の人数は13万1000人。これは全給与所得者のうちの0.3%に当たります。 また、全給与所得者の上位0.6%に含まれる年収レンジです。 ●日本の給与所得者の平均年収は今後、上昇していくのか 最近では、岸田新政権下では「賃金アップ」が話題となっています。 今後、私たちの賃金は上がっていくのでしょうか。過去8年の推移についても目を向けてみましょう。 平成26年(2014年)に平均年収が420万円であったものが、令和4年(2022年)に457万円ですから、8年で37万円上昇です。 8年間の中でも、令和2年(2020年)から令和4年(2022年)の2年間での平均年収が22万円上昇し、伸び率が大きくなりつつあることが伺えます。 ●まとめにかえて ここまで、給与所得者全体における、一定の年収幅の比率についてみていきました。 今回取り上げた年収2000万超〜2500万円以下の給与所得者の人数は13万1000人。これは全給与所得者のうちの0.3%でした。 給与所得者全体の平均年収、そして過去の推移についても俯瞰しましたが、過去8年間での推移の中でも、直近3年間の年収の伸び率が高いことが伺えました。 今後、政府の政策としてどのようなアクションが出てくるでしょうか。注目していきたいところです。 |
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●新NISA、始動 非課税枠拡充、「貯蓄から投資」後押し 1/3
株式や投資信託の売却や配当などで得た利益が一定の範囲内で非課税となる少額投資非課税制度(NISA)が1月1日、大幅に変わった。 非課税の運用期間が無期限となり、投資額の上限も大きく引き上げられ、投資に一段と有利な仕組みになる。新NISAで個人金融資産の「貯蓄から投資へ」の移行は進むのか。岸田政権が掲げる「資産所得倍増計画」の成否も懸かっている。 NISAは、専用口座で取引すれば利益に通常課される約20%の税が免除される制度で、2014年に始まった。新NISAは、長期の資産形成に向くとされる投信を購入できる「つみたて投資枠」と、個別株なども買える「成長投資枠」で構成。年間投資枠は従来の2〜3倍に広がり、両枠の併用もできる。1人が生涯利用できる上限額は1800万円(うち成長投資枠1200万円)に上る。 新NISA始動を控え、SBI証券や楽天証券では口座開設の動きが加速した。SBI証の総合口座数は9月末時点で前年同期に比べ2割超多い1106万件に達した。 日本株への資金流入も見込まれ、SMBC日興証券は新NISAの効果で年2兆円が日本株に向かうと試算する。同社の伊藤桂一チーフクオンツアナリストは「来年以降、日経平均株価の最高値更新などで個人投資家の評価が高まれば、流入額はさらに膨らむ」との見方を示す。 日本ではバブル経済崩壊後、デフレが長期化。お金の価値が相対的に上がるデフレ下では現預金で資産を保有する方が有利で、個人金融資産の過半を占めてきた。しかし、22年以降は物価高が続いており、この基調が定着すると現預金に偏る個人資産は目減りする。新NISAは個人の投資促進の起爆剤になる可能性がある。 |
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●長く続いた自民1強も政治とカネから支持率最低水準へ…2024年政治の構図 1/3
2024年は自民党・公明党が政権に復帰して12年を迎える。第2次安倍政権以降、長らく自民1強時代が続いているが、昨年末には派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題が事件に発展。内閣支持率は政権復帰以降の最低水準に陥り、政権維持を危ぶむ声もある。前回の政権交代から干支(えと)が一巡する今年。衆院解散・総選挙で国民の審判を仰ぐべきだとの指摘もあるが、政治の構図に変化は起こるのか? |
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●旧民主党の政権交代は3年余で終焉
「従来、次の選挙でしっかり議席を伸ばし、その次に政権にチャレンジすると言っていたが、その考えを私は捨てている。次の選挙こそ、勝負だと考えている。国民の政治に対する不信感をみていても、今こそ立憲民主党が前に出て、政権を目指す。それが来年だ」 昨年12月28日。立民の岡田克也幹事長は、党の仕事納めのあいさつでこう強調した。 09年、旧民主党は衆院選で大勝し政権交代を実現した。しかし、米軍普天間飛行場の移設を巡る混乱やマニフェストに掲げた主要政策の頓挫などがあり、わずか3年余で下野。その後、旧民主の流れをくむ勢力は離合集散を繰り返し、与党に対抗する「大きな塊」とはなれず、政権批判の受け皿にもなりきれていない。 ただ、自民の政治資金を巡る事件が表面化したことを受け、旧民主の系譜を引く立民は、ここに来て政権奪還に向けて意気軒高だ。 |
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●野党連携、勝負をかけられるか?
民主党政権で厚労相を務めた立民の長妻昭政調会長は取材に「われわれが政権を取るということもあるが、カネに汚い政治を変える、今やらないともう永久に変えられないという意味で09年以来の絶好のチャンスだ」と語る。一方で「政権を担った時にちゃんと運営できるか、国民に懸念があるのは事実。民主党政権の反省点はいっぱいあり、そこをきちんと説明して実感を持ってもらう」とする。 その上で、「どの国でも与党の失敗がセットにならないと政権交代は起こらない」と指摘。1月下旬に召集が見込まれる通常国会で、自民に「政治とカネ」を巡る改革を迫り、共感する他の野党とも連携して「勝負をかけることで、展望は開ける」と力を込める。 対する自民党。先月の報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率はおおむね10%台半ば〜20%台半ば。共同通信の調査では、内閣支持率は22.3%で政権復帰後の過去最低を更新した。 こうした中、岸田文雄首相は「政治資金に関し、国民に疑念が広がっていることに深刻な危機感を感じなければならない」とし、年明け早期に党の信頼回復に向けた改革組織を設置すると表明。政治資金規正法改正の可能性にも言及した。 |
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●自民に逆風=野党の躍進、となっていない現実
ただ、自民に逆風が吹く状況ではあるが、野党の支持率も伸び悩む。先月の共同通信の調査では、政党支持率は自民が26%、次いで日本維新の会が12%、立民はそれに次ぐ9.3%だ。 野党時代も知る自民のベテラン議員は「政権復帰から12年もたつとおごりも出てくる。09年と似た状況だが、違うのは野党に期待感がないことだ」と指摘。「国民も民主党政権の失敗を受け、もう彼らには政権は任せられないとの思いだろう。今の自民は二度と野党になりたくないとの思いが強い。課題はたくさんあるが、最後は自浄作用が働き、まとまる」と強調する。 野党に政権奪還の術(すべ)はないのか。東北大大学院の河村和徳准教授(政治学)は「歴史的に見て政権交代が起こる時は地方で勝って国政へという流れがある。野党は世代交代を進めて新鮮さを打ち出し、地方選、特に首長選で勝って足腰を固めなければ盤石に政権交代はできない」と指摘。その上で「政治資金問題で今のシステムを変える有効な対策が示せなければさらに厳しくなる」とも語る。 |
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●「自民でも共産でもない選択肢」はなぜ拡がらないのか… 1/3
自民党の支持率低迷に伴い、野党の「協力体制」が水面下で動いている。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「反自民で反共産の『ゆ党』の立場を取る維新や国民民主は遅かれ早かれ与党と野党のどちらの立場を明確に取るかを迫られるだろう。さもなくば党内での分裂は免れない」という――。 |
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●1強多弱から2大政治勢力へ
派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑で、自民党と岸田政権が急速に崩壊過程に入るなかで迎えた2024年は、野党陣営にも大きな変化を生んでいる。 野党第1党の立憲民主党が再び「野党の中核」の立ち位置を確立しつつあり、野党は予想を超えたレベルで、立憲のもとに結束を強めているのだ。昨年末の臨時国会終盤、立憲が提出した内閣不信任決議案に、同党と「野党第1党争い」をしてきた日本維新の会も、党首が与党への接近を繰り返してきた国民民主党も賛成し、全野党が「岸田政権NO」でまとまったのが象徴的だ。 敵失に負うものが大きいとはいえ、野党がこれほど大きな「構え」を築くことができたのは久しぶりだ。日本の政治は長く続いた「1強多弱」から「2大政治勢力による政権争い」へと、再びかじを切ろうとしている。 そしてこの状況下で、2024年前半にまず大きな変化を求められるのは、おそらく維新や国民民主などの「第三極」政党だ。彼らは否応なしに、与党・自民党と野党第1党・立憲民主党を中核とする二つの政治勢力のどちらにくみするかについて、何らかの答えを出すことを突きつけられるからだ。 |
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●共産、社民、れいわとの「大きな構え」
最初に、昨年末の立憲の「大きな構え」構築の動きを、簡単に振り返りたい。 立憲民主党はまず、2021年の前回衆院選で一定の選挙協力を行った共産、社民、れいわ新選組の各党と、市民連合を通じて次期衆院選に向けた共通政策に合意した(12月7日)。岡田克也幹事長は「自公政権の限界があらわになるなかで、野党が力を合わせて大きな政策転換を図っていきたい」と語った。 特筆すべきは、この共通政策の中に「消費減税」が盛り込まれなかったことだ。 消費減税は立憲にとって、自らの目指す社会像、すなわち「支え合いの社会への転換」との整合性が取りにくく、できれば強く主張したくない政策だ。しかし、他の野党(特にれいわ新選組)は常に消費減税を掲げることを強く求めており、立憲は調整に苦慮していた。 立憲は11月に発表した新しい経済政策に消費減税を明記せず「現行の軽減税率制度を廃止し、給付付き税額控除を導入する」と記述するにとどめた。立憲の姿勢に市民連合が配慮した形で共通政策がまとめられ、他党もこの政策に「乗る」形となった。 立憲はこれまで、共産党との連携を「立憲共産党」と罵倒されたり、他の野党との間に「消費減税」でくさびを打たれたりして、立ち位置に右往左往する局面もあった。しかしこの政策合意によって、どうやらこれらの「呪いの言葉」を乗り越えて、2021年当時の状態まで野党の連携の形を戻すことができたようだ(この経緯については、昨年12月31日公開の記事「政権交代の兆しが見えてきた…『自公政権はイヤ』の受け皿になれなかった野党勢力が変えるべきこと」をお読みいただきたい)。 |
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●維新と国民民主を野党陣営に引き戻した
驚いたのは、立憲がさらに、維新や国民民主をも野党陣営に「引き戻す」ことにも成功したことだ。 維新は21年衆院選で議席を伸ばして以降、立憲と野党第1党の立場を争っているし、国民民主は20年、立憲とのいわゆる「合流」を拒んだ議員で構成されており、玉木雄一郎代表は立憲の「逆張り」を狙うかのような言動を繰り返している。実際、臨時国会で成立した政府の2023年度補正予算案に、両党は野党でありながら賛成した。 二つの「ゆ党」の存在は、野党第1党の立憲に「指導力不足」というネガティブな評価を植え付ける要因となっており、立憲にとってはこれも頭の痛い問題だった。 ところが、自民党派閥の裏金問題が、この状況を劇的に変えた。 |
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●官房長官不信任案、内閣不信任案で見えた「大きな構え」
国民の関心が「立憲は内閣不信任決議案を出すのか」に向かうなか、立憲は松野博一官房長官(当時)への不信任案提出という「くせ球」を投げた(12月11日)。裏金疑惑への批判の高まりを受け、両党は松野氏の不信任案に賛成。それを見越したかのように、立憲は満を持して内閣不信任案を提出した。 松野氏の不信任案に賛成した維新と国民民主は、内閣不信任案にも賛成せざるを得なくなった。「立憲が提出した内閣不信任案に全野党が賛成する」という「大きな構え」が出来上がった。 立憲は、同じ国会で政府の補正予算案に賛成した二つの「ゆ党」を、最後に野党陣営に引き戻すことに成功したと言える。これらの動きを受け、報道各社の年末の世論調査では、自民党の支持率が急落する一方、立憲の支持率は目に見えて上昇した。野党全体に対する好評価の果実を、第1党の立憲が多く受け取った形だ。 |
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●自民党の延命を阻止するための「関係再構築」
臨時国会が閉会すると、立憲の泉健太代表は、記者会見(21日)で他の野党に向けこう訴えた。 「(野党が)『独立独歩でいきます』と言っていたら、自民党政権の延命を許してしまう。それは国民が望むことではない。自民党政権の延命を許さない、政治改革の政権をつくるんだと、各党に呼びかけていきたい」 発言は「維新、国民(民主)などと新政権目指す」と報じられ、党内には軽い動揺がみられた。過去に選挙協力の経験がある共産党などの野党と、「身を切る改革」をうたい、立憲とは目指す社会像が真逆の維新とでは、「協力」に対する党内の忌避感は大きく異なることをうかがわせた。 もっとも、泉氏の発言は、現時点で両党との連立を意図したものではないだろう。市民連合を介した政策合意によって、共産党や社民党など「目指す社会像が近い」野党との連携を再構築することに成功した立憲は、今度は「目指す社会像を共有できない」維新などの政党を、それでも野党陣営につなぎ止め、自民党の延命を阻止しなければならないのだ。 |
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●泉代表が他党の「一丁目一番地」の政策を列挙した理由
泉氏の会見で筆者が地味に注目したのは「(政策の)すべてをやるといったらものすごい時間がかかり、政策のすり合わせも大変になる」「(他党と)協定をつくるとか、合意文を作ることを考えているわけではない」などの発言だ。「他の野党と連立に向けた政策協議を行うつもりはない」ということだろう。 泉氏は、裏金問題を受けた政治資金規正法の改正に加え「文書通信費の全面公開」(維新)「トリガー条項(の凍結解除)」(国民民主党)など、各党の「一丁目一番地」である個別政策の名を、わざわざ列挙した。「これらの政策を立憲として実現する。だから自民党ではなく野党陣営についてほしい」ということだ。 泉氏は「立憲の旗のもと、他党に協力を求める」という建前を維持している。立憲が3年前の2020年、当時の枝野幸男代表が国民民主党に「合流」を求めた時のやり方を踏襲しているようにも見える。 |
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●立憲の「上から目線のメッセージ」の真意
ある意味「上から目線」ともみえる呼びかけに、維新や国民民主党が現時点で応じるとは考えにくい。維新の馬場氏も国民民主の玉木氏も、おそらく立憲を蹴り飛ばす。「立憲下げ」が大好きなメディアは「維新や国民民主にすり寄り、袖にされた立憲」と書き立てるかもしれない。 立憲はそんなことは織り込み済みだろう。それでも呼びかけるのは「いい加減『ゆ党』の立場をやめて、明確に野党陣営につくべきだ」という、両党に対する一種の警告だと思われる。あなた方が実現したい政策を立憲が全て実現すると言っているのに、それでも自民党にすり寄るのなら、自民党と「同じ穴のムジナ」と呼ばれることを覚悟すべきだと。 |
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●自民党の崩壊が進むにつれて「ゆ党」ではいられなくなる
大阪万博問題を抱える馬場氏も「非立憲」に凝り固まる玉木氏も、本音では2024年通常国会では、政府の予算案に賛成したいのかもしれない。だがそうなれば、両党は明確に「自民党の補完勢力」と位置付けられる。立憲との選挙協力は不可能になるだろう。 一方、すでに選挙区が埋まっている自民、公明両との選挙協力ができるはずもない。このままでは次期衆院選は、自民・公明の両党、立憲など野党4党、そして維新と国民のいわゆる「三つどもえ」の構図となる可能性が高い。 それで党内が持ちこたえるだろうか。維新の「勢い」に乗って当選したが、大阪万博にあまり強い思い入れのなさそうな、大阪以外を選挙区に持つ議員たちはどう考えるのか。国民民主で連合の支援を受け、立憲とともに戦いたい組織内議員たちは、この状況で戦うことをよしとするだろうか。 都合良く立場を使い分ける「ゆ党」の立場は、時がたち自民党の崩壊が進むにつれて、どんどん許されなくなる。やがて「与党か野党か」が厳しく問われることになるのは必定だ。小選挙区制中心の選挙制度とは、そういう性質のものだからだ。 |
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●「非自民・非共産」勢力は必ずまた失敗する
維新や国民がこの状況を打開するには、立憲民主党と国民民主党を分裂させて「非自民・非共産」勢力の結集を図り、新たな野党の「大きな塊」を作るしかないだろう。国民民主党を離党して、新党「教育無償化を実現する会」を結党した前原誠司氏が目指しているのは、おそらくこの形だ。6年前に自らが深くかかわった「希望の党騒動」の再現である。 だが、7年前に失敗したことが今回成功するとは、筆者にはとても思えない。 野党再編を成功させるには、主導する側に今の立憲を上回る求心力が必要だ。希望の党騒動の時の小池百合子東京都知事のような分かりやすい存在は、今回はいない。昨春ごろまでは勢いのあった維新も、大阪万博問題で陰りが見える。そもそも、立憲自身に分裂の芽がみられない以上、現時点での野党再編は絵に描いた餅に過ぎない。 |
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●維新、国民に迫る「分裂の危機」
維新と国民民主の両党は、立憲に「のみ込まれる」ことを覚悟で野党の立場を明確にできなければ、いずれ分裂の危機に陥る可能性がある。現に国民民主は一足早く「与党か野党か」のスタンスを突きつけられて分裂した。以前にも指摘したが、再分裂の可能性は否定できない。そして、その波は近い将来、維新をも襲うかもしれないのだ。 立憲の岡田克也幹事長は、昨年12月28日の記者会見で、次の衆院選で政権交代を目指す考えを明確にした。かつて同党が「次期衆院選で議席を伸ばし、政権交代は次の次の選挙で」と発信していたことについて「その考えは捨てている。立憲民主党が前に出て政権を目指す」と語った。立憲にとっても、時間をかけて野党を育てる悠長な考えが、もう許されない状況になったということだ。 状況が劇的に変動している今、問われているのは自民党だけではない。次の衆院選をどうやって「政権選択選挙」に持ち込むか、そして実際にどうやって自民党から政権を奪い、その後安定した政権運営につなげていくのか、野党各党の執行部、そして全ての所属議員が問われている。 彼らが今年、どんな政治的選択をするのか、興味深く見守りたい。 |
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●岸田首相「自分がやめて問題解決するならいつでもやめる」 開き直り批判 1/3
昨年12月29日から年末年始の休暇に入った岸田文雄首相。30日夜には「ホテルニューオータニ」の「岡半」で裕子夫人、長男で元政務担当秘書官(6月に更迭)の翔太郎氏らと高級すき焼きに舌鼓を打った。 しかし、自民党派閥パーティーの巨額キックバック疑惑で東京地検特捜部が安倍派幹部を相次いで任意聴取、さらに議員の関係各所に家宅捜索が入るなかでの贅沢に、SNSでは多くの批判が寄せられた。 そうしたなか、「総理自身は周辺に『自分がやめて何か解決するのか。やめて解決するならいつでもやめてやる』と話した」と、1月1日に日テレNEWSが報じた。 「公職選挙法違反容疑で柿沢未途前法務副大臣が逮捕され、さらにキックバック疑惑で現役国会議員が逮捕されれば、政権には大ダメージです。そのため、自民党内に『首相は総辞職するのではないか』という声があがっており、それに対して、岸田首相が『(問題が)解決するならいつでもやめてやる』と語ったというのです。 年が明けた1月1日に能登半島で大地震が発生、翌2日には羽田空港で日本航空機と海上保安庁機が衝突炎上しました。 まずはこの対処に当たることになりますが、1月下旬から始まる通常国会前に、議員や事務所関係者などから逮捕者が出るとも言われ、しばらくは解散含みの展開が続きそうです。『2024年度の予算成立を条件に内閣総辞職するのではないか』ともささやかれています」(政治担当記者) この「やめてやる」発言には、 《何なの?この開き直りは?》 《逆にあんたじゃなきゃ出来ないことって何よ? それに何も解決できないから不満が出ているんでしょ》 《少なくともこのまま続けるよりは別の人に任せた方がよくなる可能性もありますよね?》 《やめてくれたら、少なくても、日本人に対するいやがらせとしか思えない次々と繰り出す増税案、いつまでも一流国ぶって行う海外外遊の度のばらまき、元銀行員とは思えない頓珍漢な経済対策がなくなり、少しは経済好転しますよ》 など憤懣やるかたないコメントが殺到していた。 12月26日、岸田首相は都内の講演会で「国民の信頼あっての政治の安定であり、政治の安定あっての政策の推進であるということを、肝に銘じて対応していく」と語り、年頭の所感でも「先頭に立って国民の信頼回復に全力を尽くす決意だ」と述べているが、その「国民の信頼」が、いま大きく揺らいでいる。 |
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●「今こそ政権交代」「政策勝ち取る」 立民・国民代表が新年の決意 1/4
立憲民主党の泉健太代表と国民民主党の玉木雄一郎代表は4日、東京都内でそれぞれ年頭の記者会見を開いた。自民党派閥の政治資金規正法違反事件を受け、泉氏は「今こそ野党が立ち上がるべきだ。政権を早期に代える準備を進めたい」と述べ、次期衆院選で政権交代を目指す考えを示した。 泉氏は政治改革や教育無償化、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結解除などに触れ、「(野党が)共通政策で一致できれば選挙区調整も本格的に進む」と指摘。他党と協議を進めていく方針を訴えた。 玉木氏も「飛躍の年にしたい」と決意を表明。トリガー条項を巡る自民、公明両党との協議について「生活に密着した政策の実現を勝ち取りたい」と意欲を示した。 |
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●公明、結党60年の岐路 「平和」原点回帰か 1/4
公明党は11月に結党60年を迎える。 党創立者の池田大作・創価学会名誉会長が昨年死去し、今後も党勢を維持できるかの岐路に立つ。自民党派閥の政治資金問題を受けた政治改革や、防衛装備品の輸出拡大といった党の原点に関わる課題にも直面。自民との関係に配慮しながらの難しいかじ取りが迫られる。 「今の政治の混乱をしっかり乗り切っていかなければならない」。山口那津男代表は2日、東京・JR池袋駅前で新春恒例の街頭演説に臨み、公明が政治改革をリードする決意を訴えた。「今、直ちに衆院解散をできる状況ではない」とも述べ、政治の信頼回復が急務との考えも示した。 公明は1964年11月に結党し、99年に自民との連立政権に参加。国政選の比例代表では2005年衆院選で過去最高の898万票を獲得したが、近年は支持母体・創価学会の高齢化による集票力低下が指摘される。22年参院選は618万票に落ち込んだ。党関係者は池田氏死去で「さらに得票数は減る」と危惧する。 政治資金問題で岸田政権の先行きに不透明感が増す中、次期衆院選の時期は公明執行部の「世代交代」にも影響しそうだ。今秋に代表任期満了を迎える山口氏の後継として有力視される石井啓一幹事長は衆院選小選挙区の候補。複数の党関係者は「夏までに解散がなければ山口氏は続投だ」とみている。 衆院選では議席増を目指して11の小選挙区に候補を擁立するが、昨年12月の党の情勢調査で支持率が下落する結果が出た。「自民と同一視されている」(党関係者)と危機感を強めており、公明は政治改革を最優先課題に位置付ける。 「清潔な政治」は結党以来の原点で、今月の通常国会召集までに改革案をまとめて存在感を発揮したい考えだ。山口氏は「政策活動費」の使途公開義務化を打ち出したが、自民の反発も予想される。公明幹部は「攻めと守りの両方が必要だ」とバランスに気を配る。 自公関係の新たな火種になっているのは、国際共同開発した防衛装備品の第三国への輸出可否の議論だ。自公実務者間で容認の方向性が出ていたが、公明執行部が昨年11月、慎重姿勢を鮮明にした。平和主義を掲げた池田氏の死去直後のため、原点回帰との見方もある。 政府・自民は2月末までに「容認」で結論をまとめたい考えだが、公明執行部は「完成品の輸出解禁という大転換なのに国民の理解が得られていない」と消極的。公明幹部は政府高官に「政府が期待する結論になるとは限らない」と警告した。 |
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●自民に政治刷新本部 1/4
岸田文雄首相(自民党総裁)は4日、年頭記者会見を首相官邸で開き、自民派閥の政治資金規正法違反事件を踏まえ、総裁直属の機関として政治刷新本部(仮称)を来週立ち上げると表明した。 |
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●能登半島地震 首相「被災者のなりわい支える息の長い取り組み求められる」 1/4
岸田首相は4日に首相官邸で行った年頭記者会見で、石川県能登地方を震源とする地震について、「避難の長期化も懸念される中、被災者の生活となりわいをしっかりと支えていく息の長い取り組みが求められる」と強調した。 |
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●能登半島地震の予備費40億円に《やすっ!ケタが1つ、2つ足りない》批判の嵐 1/4
「命を守る観点から重要な被災72時間が経過する本日夕刻までに、総力を挙げて一人でも多くの方を救命・救助できるよう全力で取り組んでほしい」 首相官邸で4日午前に開かれた能登半島地震を受けた非常災害対策本部の会合。本部長の岸田文雄首相(66)はこう閣僚らに指示し、寒冷・避難所対策を強化するため、予算の予備費使用を来週9日にも閣議決定すると表明した。 最大震度7を観測した能登半島地震。生存率が急激に下がるとされる「発生から72時間」が迫り、予断を許さない状況が続いている。 岸田首相は会見で、必要物資を被災地の要望を待たずに送り込む「プッシュ型支援を一層強化する」と力を込めていたのだが、予備費の規模について問われると、2016年の熊本地震の23億円などを例に挙げつつ、「倍近く(40億円程度)になるのではないか」と説明した。 ●ウクライナ支援にはポンと6000億円だったが… このニュースが4日昼に報じられると、怒りと動揺の声が広がったのがネットだ。 《やすっ!ケタが少なくとも1つ、2つ足りないと思うんは私だけ。にしても安いな》 《道路もめちゃくちゃ、建物は倒壊。焼野原のような街に使う予備費が40億円?たった》 予備費の使用を決める閣議決定はまだとはいえ、活用金額の少なさに驚きの投稿が相次いだらしい。 昨年12月に開かれたG7財務相・中央銀行総裁会合で、鈴木俊一財務相(70)は、ウクライナ支援に欧米諸国が消極姿勢に転じる中、45億ドル(約6000億円)を拠出する用意があると公表。SNS上では、この金額と今回の予備費の金額の差についての意見も。 《ウクライナにポンと6000億円。能登半島地震に苦しむ自国民にはショボい40億円》 《税金を納めていることが馬鹿らしくならんか。我々は誰のために増税されているのか》 岸田政権に対する逆風は依然として続いているようだ。 |
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●渦中の議員は年末年始に地元で説明したのか?松野氏の地元に行ってみる 1/4
疑惑が一層深まる状況が続くなか、これまで沈黙を貫く渦中の議員たち。例年であれば地元に帰る年末年始、有権者に説明したのでしょうか。 自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、東京地検特捜部が派閥事務所の家宅捜索を行ってから2週間あまり。 安倍派では、この年末にかけ、松野前官房長官のほか、過去5年間の派閥の実務を取り仕切ってきた事務総長経験者全員が任意の事情聴取を受けました。 岸田総理「強い危機感を持って、政治の信頼回復に努めなければと感じている」 政治改革に向けた新しい組織を自民党内に設置し、対応に乗り出す考えを示した岸田総理。 しかし、聴取を受けた議員からはそろって説明が行われていません。年末年始、地元の有権者にはどう説明したのでしょうか。 記者「千葉県市原市にある松野氏の選挙区の事務所の前です。中の明かりはなく、人の動きは確認できません」 千葉県市原市を選挙区とする松野氏。例年、正月には地元の神社で行事に参加していたようですが、今年はというと… 記者「私が到着して6時間ほどになりますが、今のところ松野氏の姿はありません」 結局、姿を現すことはありませんでした。 有権者「頭を下げて、悪いことは悪いこと。これからこうして今の名誉を回復しますので、という挨拶はあってもいいと思う。なのに一切ないですよね」 有権者への説明はないままなのでしょうか。 さらに、安倍派の議員側が、パーティー券収入の一部を「中抜き」した額が、過去5年間で少なくともおよそ8000万円あることが新たにわかりました。 派閥側から議員側にキックバックされ、政治資金収支報告書に記載されていなかったものを加えると、安倍派の裏金の総額は6億円近くにのぼることになります。 きょう仕事はじめとなった与野党の幹部からも裏金疑惑に関する言及が相次ぎました。 公明党 山口那津男代表「令和の政治改革元年と銘打って、いま、失われた政治への信頼、これを着実に取り戻していく」 立憲民主党 泉健太代表「自民党の岸田内閣に正当性はないということで、野党による政権を構成すべきだと。岸田政権を早期に変えていくということについて、我々としても準備を進めてまいりたいと思います」 今月下旬に召集予定の通常国会では「政治改革」が焦点の一つとなるなか、岸田総理はきょうの会見でどう言及するのでしょうか。 |
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●長崎IRの崩壊「根っ子は全て同じ」 岸田政権に思う 1/4
●我が国の転換期、天の「龍神」が怒っている 今年の干支の龍又は竜は、古来より「神」の世界の最高位を表すものである。世間は、かっ てないほど凄まじい昨年末からの新年である。 正に、天の神が世界とこの国の「偽善者達のとんでもない」行いに怒りを爆発させているかのようだ。世界はウクライナにイスラエル、この国では岸田政権下の体たらくーービッグモーター、ダイハツ、地震に津波、羽田の航空機事故ーー我が国と各組織の偽善者達、これら人間の行いが神の怒りをかい、上に強く戒められている。 ●「減点主義」がもたらした、人を育てない30年 筆者の予測通り、昨年末の12月27日、岸田政権はこの機に及んで、遅れていた「長崎IR」の政府承認をめぐり、表向きの理由を付けて、承認しないという結論を発表した。これは選挙の影響などを考慮した政治家たちの偽善的な結論である。 しかし、実際には、長崎IRの事実上の崩壊は、2022年9月に既に起こっていた。その際には、HISの澤田氏からハウステンボスが中国共産党習近平政権に近い中華系企業PAG社に売却され、同時に当時のハウステンボスの主要株主である九州福岡経済界の九州電力、西部ガス、JR九州なども株式譲渡を完了し、すべてが終了していた。 従って、長崎県の大石知事を筆頭にする各自治体関係者、さらには地元の九州福岡経済界の倉富九州経済連合会長なども含む支持者らによるこの「長崎IRの崩壊」に対するコメントは、非常に無知で偽善的な行動であると言える。 これらの関係者の発言は、異なる言葉で表現されていても、本質的には「同じことを言っている」ことが明らかで、自己保身のためのものであり、情熱や真剣さを感じられない。これは非常に浅薄なものだ。 岸田政権下で現在起こっている「表向き」の政治資金規正法違反に関連する発言、例えば「現在は検察の調査下で、その影響もあり差し控えます」とほぼ同じで偽善的なものであり、説明責任を果たそうという意志が感じられない。 近年の組織の指導者たちは、皆同じような傾向を示している。表向きは「神妙な姿勢」を保ち、残念などと心にもない表現をしているが、本音では自己保身考えている。これは非常に愚かしいことだ。彼らは「サラリーマン首相」や「サラリーマン議員」、「サラリーマン重役」に過ぎず、何事も成し遂げられないだろう。世界の笑いものである。 年末から年始にかけて組織関係者や偽善者たちが引き起こした問題の根本には、金融機関やマスメディアを含む、ここ30年間の国内の「病巣」が存在している。筆者はこれを「コンプライアンス・ガバナンス症候群」と名付け、組織の中でこれを言い訳にしている人々が日本中に広がっていることに警鐘を鳴らしている。 岸田首相を含む現政権下の政治家たちでは、例えば萩生田前政調会長や西村前経済産業大臣など一部の人々が、小細工や策略を考えているように見える。しかし、彼らはいわば「減点主義」の下で、小利口に育った人達であり、我が国の中心で舵取りをするなど出きるはずもない。 学校教育を含む全ての組織や人々は、評価の基準や仕組みを見直し、ここ30年の失敗を指摘する「減点主義」ではなく、人に対する「加点主義」に切り替えるべきだ。学業の成功だけを追求し、小さな失敗を過度に恐れる人々が組織の上にいる。しかし、失敗しないパーフェクトな人物などはどこにも居ない。「失敗は成功のもと」である。食品会社のCM「腕白でも良い。たくましく育って欲しい」のように大人になった者でないと、大きな事はできないだろう。今日ではこうしたCMはほとんど見られなくなった。 ●大阪中心の関西都市圏、後は福岡と東京の2大都市圏 連載の初めから、「東京都中心の関東都市圏」、「大阪市中心の関西都市圏」、そして「福岡市中心の北部九州都市圏」の3つの主要都市圏以外ではIR(統合型リゾート)は適さないと強く主張し、詳しく解説してきた(名古屋市中心の中部都市圏は文化的に異なるので除く)。 北海道苫小牧市や和歌山市、佐世保市にIRが求める規模の市場がないことは、誰でも理解できるだろう。さらに、安全保障上の懸念からも、中華系企業が所有・運営するハウステンボスが日米防衛にとって重要な位置を占める佐世保市にIRを誘致することは、誰が考えても無理だ。長崎県と佐世保市の関係者たちは、まだこの事実を理解していない。なんと愚かなことか。 最近、西日本新聞も「長崎IRは最初から無理だった」という筆者と同様の記事が掲載している。それならなぜ九州経済連合会の倉富会長やJR九州の石原元会長らがIR誘致に協力する行動に対して疑問を投げかけなかったのか。各マスメディアも各マスコミも忖度だらけの組織ではないか。 ●22年米国Bally's 記者発表 一昨年の3月、米国の老舗Bally's Corporation(米国ロードアイランド州、ニューヨーク証券取引所上場)は、福岡へのIR進出の可能性について、ホテルオークラ福岡に全国のマスメディアを招いて大々的な記者発表を行った。内容は現在でもネットで容易に確認できる(福岡 IR誘致促進委員会You Tube)。当時の在福岡米国領事館首席領事のジョン・テーラー氏の挨拶は非常に理解しやすく、一見の価値がある、 福岡市都市圏の市場規模は年間で来場者約460万人、売上額約2,500億円、税引き前利益約570億円を見込むとされている。対照的に、崩壊した長崎IRは年間の来場者数673万人(当初は840万人)、年間売上額2,716億円などとされていたが、これは「福岡IR」と比較しても驚くべき数字で、バラ色のとんでもない机上の計画だ。 まして「長崎IR」の中心施設であるカジノは、欧州の小規模業者であるカジノ・オーストリア・インターナショナルという、IR経験のない事業者が運営することが計画されていたにもかかわらずだ。 ・・・ |
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● 立民 泉代表 “ほかの野党と協力し政権交代目指す” 1/4
立憲民主党の泉代表は自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、岸田内閣の正当性が失われているとして、次の衆議院選挙でほかの野党と協力して政権交代を目指す考えを示しました。 立憲民主党の泉代表はことし最初の記者会見で、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題について、「しっかりけじめをつけなければならない。裏金の認識がある議員は政界から一度、身をひくことが正しい選択で、岸田総理大臣の説明責任や任命責任も問わなければならない」と述べました。 そのうえで、「岸田内閣に正当性はなく、野党による政権をつくるため今こそ立ち上がるべきで、次の衆議院選挙で政権交代を目指す」と述べました。 また、ほかの野党との協力の在り方について、「政治改革を必ず行い、教育の無償化や『トリガー条項』の凍結解除など、国民生活に直結した優先事項で一致結束できれば選挙区調整も十分可能ではないか。虚心たん懐にそれぞれの思いを聞いて、新しい政権をつくる目標にまとめていくことが必要だ」と述べました。 立憲民主党の泉代表は記者会見で、「能登半島を中心に、まだ被害の全容が判明しておらず、救助が完全にできていない状況だ。一刻も早く人命の救助に向けて全力を尽くしてほしい。国レベルでは対応できない細かな物資が必要かもしれないので、党として、引き続き、現地のニーズに合わせて行動していきたい」と述べました。 |
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●共産・志位氏「岸田政権は断崖絶壁」 解散総選挙に追い込む決意強調 1/4
共産党の志位委員長は4日、党の仕事始めにあたって記者団の取材に応じ、「岸田政権は、断崖絶壁まで追い詰められている状況だ」と述べた上で、「国民的な運動によって解散総選挙に追い込んでいくという攻勢的な戦いが必要だ」と決意を示した。 さらに志位氏は、「次の選挙はやはり自民党政治を倒していくということを大きな目標に掲げて私達も戦っていきたい。そのためには(他党との)共闘の再構築が必要になってくる」と指摘し、「(去年に)市民と野党の共闘で、共通政策を野党4党会派で確認するという一歩を踏み出しているので、そういうものも土台にしながら、一歩一歩進めていきたい」と他党との選挙連携に前向きな姿勢を示した。 これに先だって行われた党員への年始の挨拶では、自民党の派閥の政治資金問題について触れ、「徹底究明に全力を挙げる」と強調した。 |
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●安倍派を潰して政権維持を図る岸田首相 1/4
東京地検特捜部による捜査が進む安倍派の裏金問題。政権の支持率は急落したが、岸田文雄・首相は今回の騒動を奇貨として、「数の力」で大きな影響力のあった安倍派議員を政権の要職から一掃。それによる政権維持を目論んでいる。だが、事はそう簡単に進むはずがない。通常国会を前に、恨みを募らせた安倍派の「死なばもろとも」作戦が迫っている──。 ●最大派閥の恨み骨髄 永田町は重苦しい新年を迎えた。 全国から動員した応援検事を含めて約100人の大捜査態勢を敷いた東京地検特捜部の裏金疑惑捜査はいよいよ大詰め、1月中に召集される通常国会開会までが政界捜査のタイムリミットとされる。自民党内は「何人の議員が逮捕されるのか」「大物議員の立件はあるか」と戦々恐々だ。 岸田首相はすでに「Xデー」に備えている。昨年末の人事で「女房役」の松野博一・前官房長官をはじめ安倍派の大臣、副大臣、自民党幹部を一掃し、“安倍派抜き政権”へと衣替えした。 だが、“派閥解体の危機”にある安倍派の議員たちは逆に結束を強め、首相の仕打ちに“憎悪”をたぎらせている。若手議員が語る。 「総理はうちの派閥の大臣を、有無を言わせず更迭しながら、二階派の大臣たちは派閥離脱でOK。そのくせ国民には『辞任は自発的なもの』とウソの説明をした。総理が安倍派というだけで一括りに罪人扱いしたせいで、我々は地元での風当たりがすごく厳しくなった。派内は怒り心頭だ」 閣僚経験者はこう言ってのけた。 「総理は安倍派から何人かを検察につき出して幕引きしたいのかもしれないが、これは岸田政権の終わりの始まりだ。最大派閥を排除して政権運営をやれるものならやってみればいい。政権が追い詰められようが倒れようが、我々は一切手を貸さない」 そんな安倍派の有力議員の1人が強く怒りの目を向けるのが岸田首相ら主流派による“政治資金スポンサー”への擦り寄りだ。 「こんな時に露骨な利権漁りをしてタダで済むと思っているのか」──。 特捜部が安倍派議員らへの事情聴取に乗り出していた昨年12月20日、岸田首相は国民が支払う医療費の積算根拠となる「診療報酬」の本体部分引き上げを決定した。 この診療報酬改定こそ、岸田首相の「カネ」に直結する最重要の政治課題だった。 安倍派が「露骨な利権漁り」と見ているものだ。 ●二階派を更迭しない理由 岸田首相は昨年末の安倍派の大臣更迭にあたっての記者会見で、わざわざ「診療報酬」の改定を挙げてこう意欲を示した。 「これから年末に向けて、予算、税制、診療報酬・介護報酬等の同時改定など国民の生活や国の基本政策に関わる重要な決定がめじろ押しで、まさに大詰めを迎えています。政府・与党として、国政に遅滞を来すことがないよう全力を挙げなければなりません」(昨年12月13日) 診療報酬引き上げは、自民党の「最大最強のスポンサー」と呼ばれる日本医師会が強く要求していた。 日本医師会の政治団体「日本医師連盟」は、2021年には都道府県の医師連盟からの寄附と前年からの繰り越し金をあわせて約22億円もの収入があり、自民党本部をはじめ各派閥、多くの議員に献金したり、パーティー券を購入している。さらに中央とは別に、都道府県ごとの医師会の政治連盟も地元の国会議員に資金提供を行なっている。 政治評論家の有馬晴海氏が語る。 「自民党と日本医師会は昔から切っても切れない関係です。国民が健康保険で病院にかかった時の医師の報酬は政府が決める公定価格で、診療報酬と呼ばれる。これが上がるか下がるかで医療機関の経営が左右される。そこで医師会は診療報酬を上げてもらうため自民党に医師会直系議員を送り込み、さらに党本部や自民党議員に広く献金、選挙の時には陣中見舞い(寄附)まで渡して医師会シンパの議員を増やしてきた」 岸田首相の安倍派排除人事によって、各派閥の大臣の数は裏金疑惑捜査で“無傷”だった麻生派が5人に増えたのをはじめ、茂木派3人、岸田派3人(首相を除く)と主流3派で過半数を占めたが、実は、医師会とのパイプが特に太いのが閣僚を増やした主流3派だ。 政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。 「自民党の派閥で伝統的に医師会に強かったのが保守本流の流れを汲む茂木派や岸田派、最近では麻生派です。保守傍流だった安倍派はもともと資金力が弱く、保守本流が有力スポンサーを持っていることに臍を噛んできた。だから医師会に食い込もうとしたが、安倍長期政権下でも、安倍派からは医師会に睨みが利く厚労大臣は出ていない」 第2次安倍政権以降の厚労大臣の顔触れを見ると、田村憲久氏(大臣2回。岸田派)、塩崎恭久氏(岸田派)、加藤勝信氏(3回。茂木派)、根本匠氏(岸田派)、後藤茂之氏(無派閥だが総裁選で岸田首相の推薦人)、現在の厚労相は武見敬三氏(麻生派)と岸田派が圧倒的に多い。 医師会応援団の自民党議員300人以上が参加する「国民医療を守る議員の会」の会長は茂木派の加藤氏、会長代理を岸田派の田村氏が務めている。 まさに主流3派の牙城と言っていい。 しかも、岸田首相は安倍派と同じく特捜部の強制捜査を受けた二階派に所属する小泉龍司・法相と自見英子・地方創生相の2人を派閥離脱だけで大臣にとどめたが、その自見氏は武見厚労相と並んで医師会の全面バックアップを受けて当選した「医師会直系議員」でもある。 「岸田総理は最大派閥の安倍派が捜査で身動き取れないのを好機と捉え、主流3派の主導で診療報酬改定を行ない、医師会利権を完全に手中に収めた。安倍派の大臣だけ切って、二階派の大臣を切らなかったのも、医師会に配慮して自見を大臣に残すためとしか考えられない」(安倍派関係者) 裏にあるのは医師会マネーの岸田首相への還流だ。 ●献金後に引き上げを決定 診療報酬の改定は2年ごとに行なわれるが、岸田首相は前回の改定時に日本医師会から巨額の献金を受けている。 2021年の改定では政府は当初、診療報酬を0.4%引き上げる方針だったが、医師会側はさらなる上乗せを要求して激しい陳情を展開した。 折しも自民党では菅義偉・前首相が退陣表明し、改定は次の首相の判断に委ねられることになった。同年9月29日に行なわれた自民党総裁選は事前の予想では岸田氏と河野太郎氏のどちらが勝つかわからない情勢だったが、決選投票で岸田氏が新総裁に選出され、総理就任が確定すると、日本医師連盟はその日のうちに岸田首相の資金管理団体「新政治経済研究会」にポンと1000万円を献金したのである。 タイミングから見ても、診療報酬改定を睨んだ“就任祝い”だったことは容易に想像できる。 日本医師連盟に献金について聞くと、「法律に従い適正な政治活動を行なっております」と答えた。 岸田事務所は「政治資金は法令に従い適正に処理し、その収支を報告している」と回答した。 法令に従うのは当たり前だ。だが、診療報酬改定の結果を見ると、献金の効果はてきめんだったことがわかる。 就任したばかりの岸田首相は医師会の要求通り診療報酬を上乗せして0.43%の引き上げを決定、「岸田裁定」と呼ばれた。この年の岸田首相への医師会関係団体からの献金総額は合計1400万円にのぼり、前年の250万円から5倍以上に急増した。 “こんなにおいしいのか”──首相がそう思ったとしても不思議ではない。 今回の診療報酬改定は前回以上に揉めた。医師会と財務省の大バトルとなったからだ。 日本医師会は、「医療従事者の賃上げが他の業界より低い」と診療報酬の引き上げを主張。 それに対して、財務省が全国の医院・クリニックなど診療所の2022年度の平均収益は1億8800万円と2020年度から2000万円増加し、利益剰余金も1900万円増えている──というデータを公表して「(診療報酬を上げなくても)賃上げはできる」と反論。政府の財政制度等審議会財政制度分科会も、「医療機関にコロナ補助金とコロナ特例診療報酬で2022年度だけで4兆円が支援された」と指摘して診療報酬はマイナス、とくに診療所の診療報酬を「5.5%程度引き下げる」との意見を政府に答申した。 危機感を強めた医師会側は自民党に猛烈なロビー活動を展開し、自民党では「国民医療を守る議員の会」が「診療報酬の大幅引き上げ」を決議。岸田派、茂木派の議員たちが岸田首相に申し入れ、最終的に医師会の要求通り「診療報酬本体部分」の引き上げで決着したのは前述の通りだ。日本医師会の松本吉郎・会長は「率直に評価をさせていただきたい」と歓迎した。 政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。 「診療報酬改定は揉めれば揉めるほど自民党にはおいしい。改定率はあらかじめ総理が決めているが、自民党議員は議連の決議や陳情を派手にやって『オレたちはこんなに貢献した』と医師会にアピールする。いわば政治パフォーマンスショーです。その貢献度合いが献金額に反映される」 前回の医師会巨額献金に味を占めた岸田首相が、今回は主流3派の有力議員たちに“どんどんアピールして献金を増やしてもらえ”と演技させたという指摘だ。 医師会利権に食い込みたくても検察捜査で身動きが取れなかった安倍派の幹部たちは指をくわえて見ているしかなかった。 ●疑惑を飛び火させる 自民党最大の資金源を握った岸田首相は、安倍派にさらなる追い討ちを掛けた。 岸田首相と麻生太郎・副総裁、茂木敏充・幹事長らは検察捜査で安倍派議員が立件された場合を想定し、“安倍派抜き”の党役員会で派閥活動の縮小など政治改革を議論する新組織立ち上げを“新年の初仕事”に掲げた。狙いは最大派閥・安倍派が立ち直れないように解体することにある。 「そこまでコケにするのか」と、安倍派は本気で逆襲の準備を始めた。 安倍派関係者が不気味な言い方をする。 「岸田がこっちを潰す気なら、こちらも遠慮はしない。野党は通常国会が始まれば、裏金問題で岸田政権を追及しようと手ぐすねひいて材料を集めている。 そこで野党をけしかけて岸田自身の医師会献金問題などもセットで追及させ、疑惑を主流3派にも飛び火させて大炎上させる。うちの派閥には安倍政権時代に身体検査のために集めた各派閥の議員のスキャンダル情報がある。材料ならいくらでも提供できる」 「死なばもろとも」と岸田首相を道づれにする暴露作戦に出るというのだ。 安倍派と主流3派の抗争激化で自民党内が分裂状態に陥り、国会が岸田追及一色となれば、2024年度予算案の審議が難航して年度内成立が難しくなり、岸田首相は追い込まれる。 そのさなかに地方組織からも“岸田おろし”が起きるという。安倍派が視野に置いているのは3月17日の自民党大会だ。 「党大会には全国から都道府県連幹部の地方議員が参加するが、その多くは安倍派が押さえている。県連幹部たちの会合で岸田批判を噴き出させ、党大会は大荒れになる。そうすれば岸田退陣への流れは決定的だ」(同前) どちらが先に倒れるか、それとも共倒れか。 新年早々、岸田首相と最大派閥・安倍派の「自民党史上最も醜い足の引っ張り合い」のゴングが鳴った。 |
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●山口代表「令和の政治改革元年 地に落ちた信頼の回復が次のステップ」 1/4
公明党は4日、「新年仕事始め式」を東京都内で開き、山口代表は「地に落ちた信頼を回復させる」などと新年の抱負を語った。 「新年仕事始め式」で挨拶した山口代表は、2023年から検察の捜査が続く自民党の派閥の政治資金を巡る問題をあげ「今、失われた政治への信頼を着実にとり戻していくために、令和の政治改革元年と銘打って、あるべき提案、あるべき姿を公明党として発信していきたい」と述べた。 その上で、「地に落ちた信頼を一歩一歩、回復させる軌道が描かれることこそが、次なるステージへのステップ」と強調した。 また、能登半島地震の被害者や被災者に、弔意とお見舞いの言葉を述べ、日航機の衝突事故については「現場の状況に冷静に対応した乗員、乗客の行動に敬意を表したい」と語った。 |
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●自民「政治刷新本部」顧問に菅前首相 派閥の政治資金パーティー問題受け 1/4
自民党の派閥の政治資金パーティー問題を受け、岸田首相は、来週「政治刷新本部」を発足させる。 その特別顧問に、菅前首相が就任することが明らかになった。 岸田首相「来週、自民党に総裁直属の機関として、『政治刷新本部(仮称)』を立ち上げることにいたします」 岸田首相は会見で、来週、自民党に政治刷新本部を立ち上げ、「1月中に中間とりまとめを行い、必要があれば関連法案を国会に提出する」と表明した。 複数の政府与党関係者によると、本部は、特別顧問に無派閥の菅前首相が就任し、党の執行部や外部の有識者も参加する。 菅氏は2023年末にも、党運営について「派閥を前提にした運営になっている」として、改革の必要性を訴えていた。 |
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●岸田首相、地震対応で前面 初日に対策本部に格上げ 1/4
岸田文雄首相は4日の年頭記者会見で、能登半島地震に前面に立って対応していく考えを強調した。首相は1日の発災直後から救助活動や、要請を待たずに物資を送る「プッシュ型支援」の陣頭指揮にあたってきた。これまでも新型コロナウイルス禍やロシアのウクライナ侵略などに直面したが、政権の危機管理の力量が試される。 「今回の災害は令和に入って最大級だ。被災地の皆さんが再び平穏な生活を取り戻せるよう、私自身が先頭に立って努力していく。強い覚悟を感じている」。首相は会見でこう訴えた。 発災直後の1日時点では全容が分からず、政府内では防災担当相がトップを務める特定災害対策本部の対応で様子を見ようとの意見もあった。ただ、首相は「最悪の場合を考えるべきだ」として、初日のうちに自身がトップの非常災害対策本部への格上げを決めた。 事実、時間がたつにつれ、死者数は平成28年の熊本地震を上回る被害規模となりつつある。 首相は被災自治体の首長らと直接連絡を取り、自衛隊の増強などを判断。連日、記者団の取材に応じ、SNS(交流サイト)上にあふれた「偽情報」への注意喚起など、国民への発信にも努める。 ただ、課題は山積している。政府高官は「能登地方は山沿いに集落が点在しているが、そこにつながる道路が寸断されている。連絡がとれていない人が相当いる」と危機感をあらわにする。道路の復旧は徐々に進みつつあるが、なお支援物資の搬送は難航している。 東日本大震災では菅直人首相(当時)が発災直後に現地や東京電力に乗り込んで陣頭指揮の姿勢を示したが、逆に現場の混乱を招いた。岸田首相は現地入りの時期は慎重に見極める方針だ。今後は被災者の住居確保なども必要になる。 災害以外にも自民党派閥のパーティー収入不記載事件の対応なども迫られている。首相のリーダーシップが問われる。 |
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●国民負担減の「救民内閣」を 次期衆院選、政権交代目指す―泉・前明石市長 1/5
前兵庫県明石市長で、退任後も積極的な発信を続ける泉房穂氏(60)は時事通信のインタビューに応じた。自民党派閥の政治資金規正法違反事件などで混乱する国政の現状について「転換が必要だ」と強調。国民の負担軽減を旗印とする「救民内閣」構想の下、新たな政治勢力を結集し、次期衆院選で政権交代を目指す考えを示した。 岸田文雄首相の政権運営について、泉氏は「政治が機能していない。官僚政治だ」と批判。「税金も社会保険料も上がり、国民がより苦しくなった結果、経済が回らなくなる悪循環が起きている」と指摘した。 所得に占める税金と社会保険料の割合を示す「国民負担率」にも触れ、「5割なのに生活が苦しいなんて、政治が間違っている以外に理由はない」と断じた。 その上で、次期衆院選について(1)消費税の軽減税率を5年間の期間限定で0%に引き下げる(2)医療、教育費を無償にする―ことを柱とする「救民内閣」構想を掲げ、与野党双方から賛同者を募る方針を表明。泉氏ら「国民の味方」と、自民党など「国民負担増を続ける古い方々」の一騎打ちの構図を作り出すと主張した。 ただ、自身が出馬する可能性に関しては「私は役者ではなくシナリオライターだ。脚本を書き、キャスティングをしたい」と否定した。 |
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●岸田首相「国民から厳しい声」危機感強調 政治資金問題 1/5
岸田首相は自民党の年始の会合で、派閥の政治資金パーティー問題について「国民から厳しい声、疑念の目が注がれている」と危機感を強調しました。 岸田首相「多くの国民の皆さんから、厳しい声、そして疑念の目が注がれている。こうした時だからこそ政権与党の真価が問われる。我々議員一人ひとりの力量が問われると感じています」 また、岸田首相は「既に正月気分は吹っ飛んでいると思うが高い緊張感を持って気を引き締めて欲しい」と述べ信頼回復に取り組む考えを強調しました。 岸田首相は来週総裁直属の新たな組織「政治刷新本部」を立ち上げ、今月中に中間とりまとめを行います。 刷新本部の最高顧問には麻生副総裁に加え無派閥の菅前首相を起用する方針で、政治資金の透明化や「派閥のあり方」などについて議論します。 |
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●岸田首相「正月気分は吹っ飛んだと思う」防災服姿で自民党仕事始め 1/5
自民党は5日、4年ぶりとなる仕事始めを党本部で開いた。岸田文雄首相(総裁)は、能登半島地震や羽田空港での衝突事故に触れた上で、党の派閥パーティーをめぐる政治資金問題に言及し「こうした時だからこそ政権与党の真価が問われ、我々1人1人の力量が問われる」と述べ、危機感を口にした。 元日以降官邸で能登半島地震の対応に当たっている首相は、防災服を着用しての党仕事始め出席となった。地震で亡くなった方への追悼の言葉、被災した方へのお見舞いの言葉を口にした上で「政権与党一体となり、震災対策に万全を期したい」と述べた。 その上で「年が明け震災が発生し、羽田空港における事故と困難が続いているが、そもそも昨年末から自民党の政治資金をめぐり多くの国民の皆さんから厳しい声、疑念の目を注がれている。それに加え経済、社会外交のあらゆる面において、我が国は本年大変な重要な年を迎える」と主張。「こうした時だからこそ、我々は国民の信頼を回復して政治の安定を確保し重要政策を進めていかないといけない」と口にした。 集まった党幹部や議員、職員に対し「すでに正月気分は吹っ飛んでいることかと思いますが、ぜひ高い緊張感を持ち気を引き締めてともに力を合わせ、未来を切り開いていこうではありませんか。ご協力を心からお願いしたい」と呼びかけた。 首相は4日の年頭会見で、政治資金問題に対応するため党内に自身が本部長を務める「政治刷新会議」を週明けに立ち上げる考えを示している。首相に続いてあいさつした茂木敏充幹事長は「運用面、制度面にわたる改革案、再発防止策を早急にとりまとめ実行することで、信頼回復に務めていきたい」と話した。 |
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●これでは日本は国際的サプライチェーンから「外される」...不十分な脱炭素政策 1/5
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれた国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で日本の「気候変動イニシアティブ」のメンバー186団体が、2030年温室効果ガス排出削減目標と国際競争力の強化を同時に達成する「カーボンプライシング(排出する二酸化炭素に価格をつけ、企業に行動変容を迫る制度)提言」を発表した。 23年5月に成立した岸田政権の「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)」でカーボンプライシング導入の道筋が示された。しかし世界的に広がる炭素税や排出量取引制度に比べると日本の取り組みは不十分という。そこで東証プライム企業61社を含む140社と東京都など9自治体、37団体・NGO(非政府組織)が声を上げた。 GXは「グリーントランスフォーメーション」の略だ。岸田政権が示しているカーボンプライシング構想では、26年度に排出量取引制度を本格的に稼働させ、28年度に化石燃料の輸入事業者に対する賦課金制度を導入、33年度から発電事業者を対象に排出枠の有償割り当てを行う計画だ。 これに対して「気候変動イニシアティブ」の加藤茂夫共同代表は「現在示されている自主的な制度では削減効果が限定的で、導入も遅いため30年削減目標が未達に終わる懸念がある。自主的な制度参加ではコストを負担して排出削減に取り組む企業が参加しない企業に競争上劣後し、不利益を被る恐れがある」との懸念を示す。 ●日本はカーボンプライシング構想の強化を さらに加藤氏は「不十分な炭素価格では日本の企業が炭素国境調整措置の対象となることや国際的なサプライチェーン・投資先から除外される恐れがある。世界では排出削減と再生可能エネルギーの導入が進んでおり、ビジネスの場として日本の魅力を向上させる制度が必要である」とカーボンプライシング構想の強化を求めている。 英誌エコノミスト(10月1日付電子版)は「いかに炭素価格が世界を支配しているか。世界の排出量の4分の1に適用され、その割合は急速に増加している」と指摘する。欧州連合(EU)の排出量取引制度(ETS)は「キャップ・アンド・トレード」の原則に基づき05年に導入された。温室効果ガスの排出量に上限(キャップ)を設定して取引する制度だ。 EU ETSの導入で、主な対象部門である発電・熱供給とエネルギー集約型産業で排出量は大幅に削減された。「多くの米政治家は炭素価格の導入が消費者の負担するコストを押し上げ、反動を引き起こすのではないかと懸念している。しかし驚くべきことに炭素価格は富める国にも貧しい国にも広がっている」と同誌は報告している。 二酸化炭素換算で年間6億2000万トンを排出する世界9位の排出大国インドネシアでも排出量取引制度を導入し、炭素市場を立ち上げる際、炭素取引のハブになる夢をぶち上げた。地元銀行は地熱エネルギー会社のクレジットを買い取った。23年初頭には世界の排出量の23%に炭素価格が適用された。10年のわずか5%から急拡大していると同誌は指摘する。 ●日本メーカーは再エネがないと輸出できなくなってしまう 国際通貨基金(IMF)によると、50カ国近い先進・新興市場が炭素価格制度を導入しており、さらに20カ国以上が導入を検討中だ。EUによる炭素国境調整メカニズムの移行期間が10月1日に始まった。炭素国境調整メカニズムはEU ETSに基づき域内の製造事業者に課されるのと同等の炭素価格をEU域外から輸入される対象製品に課す仕組みだ。 「カーボンプライシングにはドミノ効果がある。輸出国の政府にも国内企業が海外で関税を支払うのではなく自国で炭素価格を支払うインセンティブが働く。問題はドミノ倒しが十分に迅速に行われるかどうかだ。将来の政策立案者は気候変動の影響を最小限に抑えたいのであれば、対策をさらに強力なものにするしかない」(エコノミスト誌) 自然エネルギーを促進する日本の自然エネルギー財団(孫正義会長)シニアコーディネーター、高瀬香絵氏は「世界で戦っている製造業は日本国内の再エネがないと輸出できなくなってしまう恐れがある。その中で排出量の多い石炭を保とうとするインセンティブはいったいどこから来るのか。日本には浪費する時間もお金もない」と筆者に語る。 「2000年代、日本はエネルギー安全保障のため国内に石炭火力発電所をたくさん新設した。石炭火力を残すためアンモニア混焼という技術に莫大なお金を出している。それでは排出削減措置を講じたことにはならない。アンモニアや水素の100%燃焼にするのか。それより再エネの方が安上がりだ。移行ボンドを利用して再エネと脱石炭を進めるべきだ」 ●「政府は“伝統的な声”に耳を傾け過ぎ」 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は「排出削減措置が講じられていない(unabated)」の定義について「発電所から排出される二酸化炭素の90%以上を回収あるいはエネルギー供給から排出されるメタンの50〜80%を回収」と例示しており、高瀬氏は「日本独自の解釈は許されない。90%回収がスタンダードになる」と強調した。 第7次エネルギー基本計画が24年にも策定される。高瀬氏は「政府関係者にはこれまでの策定プロセスを見直し、基本政策分科会のメンバー選考を見える化することを求めたい。政府は“伝統的な声”に耳を傾け過ぎだ。ソニーやAGC(旧旭硝子)のような企業や気候イニシアティブに代表される新しい時代の声を聞くべきだ」と訴える。 ニッセイアセットマネジメントの大関洋社長は「私たちの株式ポートフォリオを見ると、わずか10%の企業が温室効果ガスの90%を排出している。10%の企業から投資を引き揚げれば90%の排出量を削減できる。これは容易な方法だが、全体としては排出削減につながらない」と語る。 大関社長によるとソニーや資生堂はネットゼロ(実質排出ゼロ)の目標を実現しているものの日本では多数派ではない。同社のポートフォリオで排出量の70%を占める世界の70社のうち43社が日本の企業。このうちネットゼロへの明確な戦略を立てているのはわずか3社だ。「なぜかと言えば、インセンティブを欠いているからだ」と解説する。 「欧州では再エネが普及しており、それを活用すれば対応できる。しかし日本では再エネの割合が極めて低い。そうした環境下でネットゼロを考えるのは難しい。政府が再エネのアクセルを踏まないと日本企業も立ち行かなくなる。米国企業も炭素税などの負担がかかれば、高排出の企業との取引を削らないと、重い負荷が財政にかかることになる」 「日本企業に世界からどうして(再エネに転換)できないのですかという圧力もかかってくる。グローバルにビシネスを展開する企業は政府に動いてもらわないと困るから仕方なく声を上げているのが実情だ」と大関社長は打ち明けた。気候イニシアティブは「25年を目処に実効性の高いカーボンプライシング制度を導入すべきだ」と提言している。 【気候イニシアティブが求める6原則】 (1)30年削減目標達成に向け25年を目処に実効性の高いカーボンプライシング制度を導入 (2)公平性担保のため一定の要件を満たす企業を一律に制度の対象に (3)世界に比肩する水準で将来の炭素価格を明示(例えば30年130ドル/二酸化炭素トン) (4)EUの炭素国境調整メカニズムなどの対象とならないよう国際的なルールに適合した制度に (5)公正な評価のもと排出削減が困難な中小企業などをカーボンプライシング制度の収入で支援 (6)カーボンプライシングの立案・評価・更新の透明性を確保 |
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●立民・泉代表「政府対応に一部遅れ」能登半島地震での激甚災害指定 1/5
立憲民主党の泉健太代表は5日、党本部で開いた仕事始めであいさつし、能登半島地震における岸田政権の対応が遅いとして、民主党政権時代の対応と比較しながら苦言を呈した。 泉氏は「元旦から地震、2日は羽田の航空機事故とさまざまなことが相次いでいる。緊張感をもって、国民の命と暮らしを守るために全力を尽くしたい」と述べた。 その上で、前身の民主党が政権を担っていた2011年3月に東日本大震災が起きたことに触れ「我々の中にも(当時政権で)活躍したメンバーが数多くいる」と述べ「東日本大震災の激甚災害指定は、発災の翌日に行った。また予備費の支出についても発災3日後に300億円を超える金額を決定している。そういった意味では、今現在、激甚災害指定が行われていないことや、(40億円の)予備費の執行が1月9日に予定されていることなど、政府の対応に一部、遅れがあるのではないかと考えている」と指摘。岸田政権の対応の鈍さを指摘した。 また「現地では被災者の救援のために多くの方に頑張っていただいているが、物資が一部の場所にかなり集積される状態になっている一方で、被災者まで届けられていないということも聞こえてきている。民間ヘリの活用も含めて、全力で被災者の方々に物資が届くよう(岸田政権に)求めていきたい」とも話した。 2024年について「まずは被災者支援に最優先に取り組みながら国民生活全般、賃上げ、経済再生にも取り組みたい」と述べ「4月は補欠選挙もあるので、それに向けても全力を尽くしたい。きたるべき総選挙においても勝利し、今の正当性のない腐敗政治を変えることにも向かっていきたい」と政治決戦への抱負も口にした。 仕事始めの冒頭には出席者全員で、能登半島地震の犠牲者に黙とうをささげた。 |
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●野田元首相、ゾンビのように甦る自民党の派閥と世襲議員を断ち切るには 1/5
政治資金パーティーを巡る問題が連日報道されている。松野官房長官、世耕参議院幹事長、高木国会対策委員長、西村経済産業大臣、萩生田政務調査会長など、安倍派9人が辞任に至り、支持率が低かった岸田政権にはとどめの一撃といった感がある。 岸田首相はどこまで持つのか。これを機に、自民党の派閥政治は解体されるのか。政治資金改正法の抜け穴はどこまで解消されていくのか。1994年に政治改革関連法の審議に1年生議員として参加し、政治とカネの問題と戦うことが政治家としての出発点だったと語る、衆議院議員で元首相の野田佳彦氏に聞いた。 ──1月20日に通常国会が始まるため、その前に特捜部は関係する議員を起訴する可能性があります。立憲民主党を中心に野党が衆議院の解散と岸田政権の退陣を求めていくことも予想されます。また、「衆議院解散選挙をすれば岸田おろしが始まるので、岸田さんは解散総選挙は望まない」という見方がある一方、自民党の石破茂さんは「来年度予算案が通ったら辞めますというのはありだ」とテレビ番組で述べました。通常国会が始まったら、どうなっていくと思われますか。 野田佳彦氏(以下、野田):1月20日に国会が始まるかどうかはまだ分かりません。特捜部の捜査の影響で、1週間ほど開会が遅れる可能性があります。足もとには様々な重要な政治課題がありますが、まずは政治を正さなければ日本は良くなりません。ですから、政治改革がテーマの国会になっていくと思います。 自民党が自浄作用を見せて、深い反省のもとに何らかの提案をしてくるかどうかが一つのポイントですが、それは難しいのではないかと考えています。 岸田さんにはトップとしての危機感が足りません。30年前のリクルート事件の時は、石破茂さんや岡田克也さん(当時 自民党)といった若手が怒り、改革の提言を出しましたが、そういった若手の提言は今の自民党の中から何も聞こえてきません。 こう考えると、自民党から提案を装ったものは出てくるかもしれませんが、抜本的な提案が出てくる可能性は低いと思います。我々野党こそが必要な法案を国会に提出しなければなりません。この点で、野党各党は共闘していける可能性は十分にあると思います。 多弱の野党がしっかりスクラムを組んで、自民党を追い詰めて法案をのませていく。もしその法案をのまないというのであれば、「岸田政権よ、国民に真意を問え」と、我々はさらに強く迫っていく考えです。この流れが、今年の前半の動きになるのではないでしょうか。 細田博之・衆議院議員が亡くなりましたが、現時点では、4月の補欠選挙は細田さんの地元でのみ行われる予定です。仮にもし今回の件で逮捕される議員が出てくれば(どれだけ逮捕者が出るかもにもよりますが)、解散の可否なども検討されていくと思います。 ──30年前のリクルート事件の時に、自民党の若手が集まって「政治改革大綱」を作りました。しかし、今回はそのような動きを見せる若手議員が自民党にいない。なぜだと思われますか? 野田:政治家が劣化したのだと思います。あるいは、派閥単位で裏金作りをしているので、派閥に染まり「これはおかしい」と言える元気のある人がいないのかもしれません。極めて残念なことだと思います。 ──政治資金パーティーを巡る問題で、安倍派や二階派は特に大きなダメージを受けたと思います。次の選挙では、こういった派閥に所属していることが大きなマイナスイメージになります。今後、自民党の派閥政治はどうなっていくと思われますか? ●政治改革関連法に抜け穴ができた経緯 野田:50年前、福田赳夫先生の時にすでに「派閥解消」と言っていたのに、ずっと解消できないままにここまで来ています。 派閥の弊害を縮小しようという動きは昔からありました。政治改革大綱にも、政権入りした議員は派閥から抜けると書かれています。ところが、岸田総理自身がそれを守ってきませんでした。 今回も、派閥にいろいろ手直しを加えようとはするでしょうけれど、なんだかんだと言って、自民党の派閥というものはゾンビのように何度も復活してくるものです。これぞ「ザ・自民党」です。 ──この状況では、派閥を縮小する動きは避けられないようにも思うのですが。 野田:今までどおりでは済まないでしょうね。しかし、やがては「派閥均衡で人事は行わなければならない」「派閥の推薦がある人がいい」などというところにまた戻っていくのではないでしょうか。ここはとことん、派閥解消に向けた議論が必要です。 ──企業や団体から議員への献金は禁止されていますが、政党や支部への献金は認められています。野田さんは「企業・団体献金の禁止」を求めていくと語られていますが、これはつまり、政党や支部への献金を禁止していく必要があるということですか? 野田:そういうことです。1994年にできた政治改革関連法(政治改革四法)の中で、政党助成金を導入することになりました。そのことによって本当は、企業・団体献金を廃止していく方向でした。 ところが、抜け穴として政党と政党支部は受け皿になり得るという形にして存続させた。そして、事実上の企業・団体献金こそ、今日の政治資金パーティーです。これは献金です。これも含めて厳しく封じるべきだと思います。 ──「企業・団体献金はダメだ」という議論はこれまで幾度もあったのに、どうして防げなかったのでしょうか? 野田:これは政党同士の土俵づくりなので、多数決で決めることではありません。すべての政党が賛同したほうがいい。ただ、全党に受け入れてもらおうと妥協する中で、抜け穴がすぽっと入ってきた。 ただ、今後もそんなことを許していたらきりがありません。国民の信頼は今、地に落ちています。 ──政治資金規正法に、『何人も、公職の候補者の政治活動(選挙運動を除く)に関して寄附をしてはならない。前項の規定は、政党がする寄附については、適用しない(第二十一条の二)』という条文があることが問題だという見方があります。この条文を削る必要があると思われますか? 野田:企業・団体献金をスパっと禁止するためには、この条文はいらなくなると思います。ダメなものはダメ、分かりやすくやったほうがいい。抜け穴になりそうなものは作らない。穴を塞ぐということです。 ●世襲議員を生み出す政治資金の「相続」 ──(政治資金パーティーの)パーティー券の購入は事実上の企業献金だと言われています。政治資金パーティーは、政府の予算編成にどの程度影響を与えてきたと思われますか? 野田:自民党にいたわけではないので、はっきりとしたことは分かりません。ただ、これは想像ですが、予算編成ばかりではなく、税制改正、法改正、規制緩和など様々なところに影響していたと思います。 多額の寄附をいただけば、その存在が頭に浮かぶ。頭に浮かぶから忖度する。その効果があると思うから、みなさんパーティー券を買うわけでしょう。企業は義理人情ではなく、経済合理性で動きますからね。効果がなければやりません。 ──政治資金パーティーや、支部や政党への献金を禁止すれば、産業の硬直化も解消されていくと思いますか? 野田:そうです。歪みはなくなり、より公正なお金の使われ方になっていくと思います。 ──立憲民主党は、国会議員が引退または死亡した時、政治団体や政治資金を配偶者や3親等内の親族に引き継ぐことを禁止する「政治資金世襲制限法案」を提出しました。これがどのような法案か教えてください。 野田:国会議員が亡くなった場合に、その議員の政治資金が残されます。政治資金はその議員の私物ではない。ところが、現状では、その資金を親族が非課税で相続できる。これこそ、世襲議員がたくさん出てくる一つの要因です。 世襲議員の方はたくさんいますが、数千万円単位でみなさん引き継いでいます。どんなに優秀な人が選挙に出たって、知名度で負けている。資金で負けている。これでは、新人が政治に入ることができません。大きな壁の一つがこの政治資金の相続にある。これは断ち切らないといけないし、それができれば、かなり景色は変わると思います。 ●昭恵さんが「晋和会」の代表になった意味 ──安倍元首相が死去した後に、妻の昭恵さんが政治団体「晋和会」の代表を継ぎ、自民党支部など安倍氏の5つの関係政治団体から、計2億1470万円が寄附されていたことが報じられました。野田さんは、このことについてご自身の「かわら版」で言及されています。なぜ、政治団体「晋和会」は昭恵さんを代表に据えたのだと思われますか? 野田:安倍さんの死去に伴って、今年4月に山口4区で補欠選挙が行われました。この時に、ご夫人をそのポジションに据えると、後援会を動かしやすい、お金を使いやすいという判断があったのではないかと想像します。 ただ、閣議決定で、昭恵さんは私人になりました。その私人がいとも簡単に政治団体の代表になるのはやはりおかしい。 晋和会は普通の政治団体ではなく、政党支部のお金も集約している団体です。政党支部は公党の支部ですから党則があるはずです。民主的な手続きに沿って、誰を代表に選ぶのかというプロセスは明らかにしなければなりません。そのプロセスを県連であり、党本部が認める必要があります。 それにもかかわらず、夫人が代表になり、政治団体を晋和会に集約して、政治資金が億単位で相続された。しかも、非課税で。これはつまり、同じようなことが全国で起こっているということです。 ※2019年11月、「桜を見る会」を巡り、政府は安倍昭恵さんを「公人ではなく私人」と閣議決定した。 ──政治家の親族だと非課税で政治資金を引き継ぐことができる。これを問題視する声は以前からあったのですか? 野田:世襲を問題視する声はありましたが、世襲を作る問題の背景として、このような制度的な問題があることが明らかになってきたのは最近のことです。そこで、我々は「政治資金世襲制限法案」を提案しました。こんなことを続けているから、自民党の半分くらいが世襲議員になってしまうのです。 ●「安倍元首相の責任にするのはフェアではない」 ──岸田政権は支持率を落としていますが、野党各党の支持率はもっと低い。政権交代を狙うには、野党が結集していくことが必要です。「教育の無償化」が、野党が合意できる政策テーマになると言われており、野田さんは先日テレビ番組で「選択的夫婦別姓制度などでも共闘していけるのではないか」と語りました。他にも、野党が結集する上で重要になる政策テーマはありますか? 野田:まさに「政治改革」です。まず、政治資金規正法を変える。世襲制限の項目を入れて企業・団体献金を廃止する。そして、政治資金を完全にデジタル管理してガラス張りにする。これは今後の改正で最も大切なことの一つです。 マイナンバーカードやインボイス制度で、国民を1円単位で税金逃れできないようにしておきながら、その体制を作ったほうが抜け道を自分たちに用意しているなどということは許されない。 こういったことを柱として、政治資金改正法を出すならば、あるいはそこに、日本維新の会が問題提起している「文書通信交通滞在費」や、私が安倍さんと約束したけれど、不十分な対応にとどまっている「議員の定数削減」など、いくつかの柱を加えてセットすれば、野党が共闘できる部分はいくつもあると思います。そうなると、迫力のある野党共闘になると思います。 これに加えて「教育無償化」も各党が賛成できると思います。しかし、とにかく基本は政治改革です。 ──旧統一教会との関係や、今回の安倍派議員の政治資金収支報告書の未記載など、岸田首相は、かなり安倍さんの負の遺産に苦しめられているという印象を受けます。 野田:すべて亡くなった人の責任にしてしまうのはフェアではありません。安倍さんが生前「キックバックの未記載はダメだ」と言っていたという話が出ていますが、どうやらあれは事実のようです。 彼は派閥のトップになった時に、その実態を知り、「これは裏金になるので良くない」と周囲に注意していたようです。旧統一教会などに関しては、安倍さんの手法に問題があったと思いますが、この辺りはよく整理して見ないといけません。 「安倍さんの負の遺産」という見方をすると、まるで「岸田さんが可哀そう」という印象になってくる。しかし岸田さんは、政治改革大綱を守ってこなかった人です。安倍さんのせいにして片づける資格はありません。 ●安倍派を切った岸田首相の失敗 ──政治資金パーティーを巡る問題が注目され始めた時に、岸田首相は清和会(安倍派)を9人交代させる意向を発表しました。キックバックの問題は安倍派以外でも行われていた可能性があるのに、全容を解明せず、まず安倍派を切るという判断をした。どう思われますか? 野田:失敗だったと思います。99人の最大派閥の心を離れさせる判断でした。もちろん、安倍派の問題は今回大きい。でも、キックバックを受けていない人もいるのに、全部まとめて同じ扱いをすれば不満が広がる。 私も短い間、政権運営を経験しましたけれど、政権運営とは、雪の中の坂道で雪だるまを押し上げていくようなものです。重たいし、冷たい。手を放す人が出てくれば、下に転がり、雪玉が大きくなってしまう。支え手をどんどん失えば、政策推進力は失われていきます。その局面に入ってきたと思います。 ──野党が結集すると、総理経験を持つ野田さんはより重要な存在になっていくのではないかと想像します。何ができると思われますか? 野田:私は1993年の選挙で初当選して、1994年の政治改革関連法の審議に1年生議員としてかかわりました。このテーマは自分にとっては原点なのです。私は「政治屋ではなく政治家になりたい」と思ってきたし、「政治家以上に政治改革者になりたい」という意識を持って政治家になりました。ですから、あの頃の青い志が甦ってきています。 平成の政治改革には熱い気持ちで取り組んだし、達成感もあった。でも、振り返ると抜け穴だらけでした。令和の抜け穴のない政治改革をやり遂げたい。もう一回やり直すための仕事ならば、できることは何でもやらせていただきたいと思っています。 |
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●岸田総理、政治資金問題に「多くの国民から厳しい声や疑念の目」 1/5
岸田総理大臣は自民党の仕事始めで、能登半島地震や政治資金問題などにふれ「政権の真価が問われている」として、力を合わせて困難を乗り越えていきたいと呼びかけました。 「我々は国民の信頼を回復し、政治の安定を確保し、そして重要政策を進めていかなければなりません。こうしたときだからこそ、政権与党の真価が問われます」(岸田総理大臣) 自民党の派閥の政治資金問題について、岸田総理は「多くの国民から厳しい声や疑念の目を注がれている」と危機感を示しました。 茂木幹事長は、「改革案や再発防止策を早急に取りまとめ、実行することで信頼回復に努める」と強調しました。 岸田総理は来週、自民党に総裁直属の「政治刷新本部」を立ち上げる方針です。 |
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●24年度予備費増額を指示 能登地震「切れ目なく対応」―岸田首相 1/5
岸田文雄首相は5日、首相官邸で鈴木俊一財務相と会談し、能登半島地震に対応するため、昨年末に閣議決定した2024年度予算案について、予備費を増額するよう指示した。首相はこの後、記者団に、当面は23年度予算の予備費で対応するとした上で、「復旧復興に至るまで切れ目のない対応が欠かせない。被災者が平穏な生活を取り戻せるよう、私が先頭に立って努力する」と語った。 |
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●裏金「政権交代前夜の雰囲気」 自民・船田氏が危機感 1/5
自民党の船田元・衆院議員総会長は5日、自身のメールマガジンで、党派閥の政治資金パーティー裏金問題を巡り危機感を示した。「かつての政権交代前夜のような雰囲気になっており、一部議員の謝罪や辞職で済む状況にはない。われわれは解党的出直しを求められている」と訴えた。 岸田文雄首相が打ち出した派閥パーティー自粛などに触れ「小手先の改革では、国民の信頼を回復することは不可能だ」とも指摘した。 |
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●与野党6党党首会談 能登半島地震受け岸田総理が協力を要請 1/5
能登半島地震を受け、与野党6党の党首が国会内で会談し、岸田総理は各党に今後の対応などについて、協力を要請しました。 国会では午後3時から与野党6党の党首が会談し、岸田総理は能登半島地震について「復興・復旧まで息の長い対応をしていかなければならない」などと訴え、各党党首に協力を要請しました。 岸田総理「災害対応に万全を期さなければならない。この点については与党・野党、立場に違いはないと信じています」 また、岸田総理は被災地支援などのため、今年度予算の予備費から47億4000万円を計上する方針や、来年度予算案の予備費の増額を検討していることなどを説明しています。 こうした与野党党首の会談はこれまで、東日本大震災や、新型コロナウイルスへの対応などの際に行われてきました。 立憲民主党 泉健太代表「『政府与野党震災対策協議会を設置し、今後も開催してほしい』という申し入れについては、『何らかの形で今後も続けたい』と総理の側から回答があった」 災害対応を誤れば内閣支持率の低下にも繋がることから、自民党幹部は「東日本大震災並みの危機感を持っている。当時、力を貸したわけだから、今回は野党にも力を貸してもらいたい」としています。 |
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●“政治資金再発防止でキックバックせずを検討” 自民 幹事長 1/5
自民党の茂木幹事長は派閥の政治資金パーティーをめぐる問題の再発防止策として、パーティー券の販売ノルマを超えた収入を議員側にキックバックしないようにすることなどを、来週、立ち上げる「政治刷新本部」で検討する考えを示しました。 自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、岸田総理大臣は来週、総裁直属の機関として「政治刷新本部」を立ち上げて、再発防止策や派閥のあり方などを検討する意向を示しています。 これについて、茂木幹事長は5日の記者会見で、「政治資金の透明性の確保を図っていくことは極めて重要であり、党としてさまざまな形で改革すべき点がある」と述べました。 そのうえで、再発防止策として ・派閥のパーティー券の購入は現金ではなく銀行振り込みとすることや ・販売ノルマを超えた収入を議員側にキックバックしないようにすること ・それに党が各派閥の収支を監査することなどを検討する考えを示しました。 また、各党との協議を踏まえて、政治資金規正法の改正や透明性を向上させる観点から、収支報告書を国に提出する前の段階で、党が独自に公表することも検討していく考えを示しました。 一方、派閥の在り方をめぐっては、「再発防止策などの改革案をまとめていく過程で検討していきたい」と述べました。 ●立民 泉代表「党としてどうけじめをつけるかが先」 立憲民主党の泉代表は記者団に対し、「裏金をつくった議員に対し、党としてどのようなけじめをつけるかが先ではないか。いくら会議体を作っても国民は納得しない。新しい組織も派閥を運営してきた人が入っていて、国民は期待していない。また、裏金は政治資金規正法を強化すればなくなる話ではなく、今の自民党に改正案を考える資格はない」と述べました。 ●維新 馬場代表「第三者機関にルールづくりを委ねることが大事」 日本維新の会の馬場代表は記者会見で「刷新本部には総理大臣経験がある麻生氏や菅氏が入ると側聞しているが、そういう人たちが自分たちでルールを決めることになればいろいろな問題が出てくるのではないか。自民党が抜本改革を行う姿勢を示すには第三者機関にルールづくりを委ねることがいちばん大事で、そこで決まったルールを必ず実行するという姿勢がなければ、地に落ちた国民の信頼は回復できない」と述べました。 ●公明 山口代表「『刷新』にふさわしい内容を期待」 公明党の山口代表は記者団に対し、自民党が来週立ち上げる「政治刷新本部」について、「『刷新』ということばを使って意気込みを示しているので、自浄能力を発揮する姿勢を国民に示していただきたい。必要に応じて公明党から意見を言うこともあるかもしれないが、国民の厳しい目がある中『刷新』にふさわしい内容をつくることを期待したい」と述べました。 ●共産 志位委員長「真相を明らかにすることが最優先」 共産党の志位委員長は記者会見で、「自民党は制度的な改善をする前にやることがある。誰がどれだけの裏金を得て、何に使ったのか明らかになっていない。真相をきちんと明らかにすることが最優先であり、それを抜きに『刷新』と言っても意味をなさない」と述べました。 ●国民 玉木代表「党の存亡をかけた真剣な議論を」 国民民主党の玉木代表は記者団に対し、「今回の派閥の裏金問題は政治に対する信頼を根底から揺るがすような問題で、抜本的な改革を自民党には求めたい。もし、なまはんかなものが出てくれば自民党自身が大きく信頼を失うことにもなる。党の存亡をかけた真剣な議論と結論を期待したい」と述べました。 |
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●池田佳隆議員は相変わらず“雲隠れ”…自民党派閥の裏金問題 1/5
自民党派閥の裏金キックバック事件では、東京地検特捜部の強制捜査は、愛知県や岐阜県にも伸びました。議員事務所などの家宅捜索を受けた議員たちは、年始も公の場所に姿を見せていません。 2024年1月3日、愛知県春日井市で開かれた賀詞交歓会。 自民党愛知県連会長の丹羽秀樹衆院議員「我々政治家の信頼を失墜させるような大きな出来事、政治と金の問題が起きたのも事実であります。二度とこのようなことがないように、多くの皆さま方から信頼をいただけるような行動をとっていかなければならない」 例年であれば、万歳三唱などを行って華やかな雰囲気となるはずの会合です。 丹羽秀樹衆院議員「今までだったら同級生とかに、地域の行事なんかに出ると『よく来たな』なんて優しい言葉をかけていただいたんですけども。急にキックバックや裏金の問題とか、そういったことが話の第一番に出るようになってきましたので非常に悲しい」 暮れも押し迫った12月27日、東京地検特捜部の捜査は名古屋にも及びました。 安倍派からの4000万円を超えるキックバックを収支報告書に記載していなかった疑いが持たれている、愛知3区地盤の池田佳隆衆議院議員の事務所などが家宅捜索されました。 2日後には、岐阜県羽島市にある大野泰正参議院議員の事務所なども捜索を受けました。 任意の事情聴取に続き、裏金事件では議員個人として初めて強制捜査を受けた池田議員。去年12月から一向に公の場に姿を見せない「雲隠れ」の状態が続いています。 この年末年始も「年末年始の行事等への出席につきましては、主催者並びに関係者の皆様へのご迷惑をお掛けすることがないよう、自粛させていただくことと致しました」と関係者にFAXを送ったきりです。 これに対して、地元の支援者は…。 池田議員の支援者(12月27日)「秘書が応対せなダメ。分からんなりにも。だけどこういう形になったらもう終わり。『こんな政治家なの?』『秘書もそんなふう?』って長年やってきて」 池田議員の会計責任者を務める秘書の男性を直撃取材しましたが、問いかけに何も答えることはありませんでした。 池田議員と連絡が取れないのは、自民党愛知県連も同じです。 丹羽秀樹衆院議員「(池田議員)本人からまだ連絡はないというのが現状であります。我々政治家に対する国民の皆さま方の信頼が失墜したということは実感いたしております。国民の皆さま方から信頼されるような行動を、我々政治家一人一人がとっていかなければならない、そういう年だと思っております」 |
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●政治資金パーティー巡り…安倍派最高顧問・衛藤議員「キックバック精査」 1/5
自民党の派閥の政治資金パーティーを巡る問題について、安倍派の最高顧問を務める衛藤征士郎衆議院議員がTOSの取材に応じました。 自身へのキックバックについては「精査している」と答えるにとどめています。 衛藤議員は5日、大分県竹田市で新年互礼会に出席。会場を離れる際にTOSの取材に応じ、「政治不信を起こしたことをお詫びする」と派閥の問題を謝罪しました。 また、キックバックについては次のように話しました。 衛藤征士郎議員「派閥の方から、これを政治資金規正法に基づく収支報告書にしっかり書き込みなさいということを指示しなかった。それが一番大きな問題だ。私(について)は今精査をしている」 一方、衛藤議員が代表を務める資金管理団体と政党支部は先月下旬、おととしの収支報告書の訂正を行いました。 派閥とは異なる政治団体からの寄付金あわせて310万円が記載漏れとなっていましたが、衛藤議員は自身は知らなかったということです。 |
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●西村氏が還流継続主導か 事務総長時に方針決着 1/6
自民党の派閥のパーティー収入不記載事件で、安倍派(清和政策研究会)が一昨年夏にパーティー収入の一部を所属議員にキックバック(還流)する慣例の方針継続を決めた際、当時の派閥事務総長だった西村康稔前経済産業相が主導した可能性があることが5日、関係者への取材で分かった。西村氏は還流分の政治資金収支報告書への記載方法も提案しており、東京地検特捜部は西村氏の認識について慎重に調べているもようだ。 安倍派は所属議員に課したパーティー券の販売ノルマ超過分について、収支報告書に記載せず所属議員に還流する慣例を長年続けていた。 関係者によると、西村氏ら安倍派幹部は令和4年5月のパーティーに先立って協議。還流停止を決めて議員側に通達したが、議員側が反発。同年7月に安倍派会長だった安倍晋三元首相が死去した後、幹部らは同年8月中旬ごろにかけて再び協議し、一転して還流を継続する方針が決まった。 また西村氏は、還流分を安倍派と所属議員の双方の収支報告書に記載しない慣例を改め、還流された所属議員の関連団体の収支報告書に個人のパーティー収入として記載する方法も提案したという。 西村氏は3年10月、安倍派の実務を議員側で仕切る事務総長に就任。4年8月10日に発足した岸田文雄改造内閣で経済産業相に任命された。事務総長は同25日、高木毅前国対委員長に交代した。 関係者によると、高木氏は還流に関する同年8月の協議に参加しておらず、高木氏が事務総長に就任した時点で還流を継続する方針で決着。その後、安倍派はノルマ超過分を議員に還流し、翌5年に提出された安倍派の収支報告書には還流分が記載されなかった。 特捜部は西村氏ら幹部を任意で事情聴取。西村氏らは還流についての認識は認める一方、不記載については認識を否定しているとみられる。 西村氏は産経新聞の取材に対し、期日までに回答しなかった。 |
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●安倍派2議員の立件へ パーティー収入不記載疑い 地検特捜部 1/6
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件で、清和政策研究会(安倍派)からパーティー券収入のノルマ超過分を受領しながら政治資金収支報告書に記載していない疑いが強まったとして、東京地検特捜部がいずれも安倍派所属の池田佳隆衆院議員(57)=比例東海=と、大野泰正参院議員(64)=岐阜選挙区=を政治資金規正法違反(不記載、虚偽記載)容疑で立件する方針を固めた模様だ。上級庁との協議を踏まえて最終判断するとみられる。関係者への取材で判明した。 不記載、虚偽記載の公訴時効(5年)にかからない池田、大野両氏の不記載額はそれぞれ4000万円超に上る見通し。安倍派では、ノルマ超過分のキックバック(還流)を派閥から受けながら収入として収支報告書に記載していない議員が数十人に上り、裏金の総額は5億円を超える可能性があるが、両氏の不記載額は最高規模となる。 安倍派には他にも数千万円規模の裏金化が疑われる議員がいるとされ、特捜部は立件対象を広げるか検討しているとみられる。 特捜部は2023年12月27〜29日に東京・永田町の国会議員会館にある両氏の事務所などを捜索した。同法の不記載、虚偽記載は会計責任者を処罰対象とするが、特捜部は両氏と会計責任者の共謀を立証できると判断した模様だ。 池田氏は20〜22年に派閥からの寄付計約3200万円を記載していなかったとして、自身の政治団体の収支報告書を訂正している。取材に、派閥から収支報告書に記載義務のない「政策活動費」として扱うよう説明があったと答えていた。大野氏は12月中旬の報道陣の取材に「しっかり精査する」と述べていた。 池田氏は日本青年会議所の会頭を務めた後、12年衆院選で愛知3区から出馬して初当選。現在4期目。大野氏は岐阜県議を経て13年の参院選で初当選し、現在2期目。 |
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●田崎史郎氏、「ウェークアップ」で衆院解散を解説… 1/6
日本テレビ系「ウェークアップ」は6日、岸田文雄首相が4日の年頭記者会見で自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題を受け、総裁直属の「政治刷新本部」を来週発足させると表明したことを報じた。 スタジオでは今年の主な政治日程を紹介。司会の野村修也氏の「衆議院の解散はどうなりますか?」の問いにリモート出演した政治ジャーナリストの田崎史郎氏は「岸田さんの下での衆院解散は非常に難しい。できないんじゃないかと思ってます」と指摘した。 続けて「自民党内の空気は、内閣支持率低迷している、これは我慢しましょう、と。しかし、岸田さんが解散するのはやめてください、と。私たちが落ちてしまいますっていうことなんです」とし「だから、岸田さんが交代して新しい人になって新しい総理総裁が解散するパターンだと見ています」と解説していた。 |
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●「原発3倍」賛同 再エネ加速こそ連携を 1/6
東京電力福島第1原発事故の災禍を経験した日本は加わるべきではなかったろう。津波が押し寄せた能登半島地震の光景を見て、改めてそう思わざるを得ない。 世界の原発の設備容量(発電能力)を2050年までに20年比で3倍に増やす宣言である。 先月の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の際に米国主導で打ち出され、日本を含む23カ国が賛同した。 気候変動対策の一環として、賛同国が協力するとしている。 岸田文雄政権は国内については想定していないとするが、次世代原子炉の開発や原発関連の輸出などにつなげたい思惑も透ける。 原発は安全性の問題のほか建設に時間を要し、喫緊の気候対策に役立たないと指摘される。高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分も多くの国は未解決だ。 日本には原発のリスクを世界に伝える責務もあるはずだ。原発推進ではなく、再生可能エネルギーの普及や化石燃料に頼る国の脱炭素化などの支援でこそ、国際的な連携を図っていくべきである。 宣言には原発稼働国のほか、ポーランド、ガーナといった建設計画段階の国も賛同した。 ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー安全保障の重要性が高まった。天候に左右されず、運転時に温室効果ガスを出さない原発が注目されている面はあろう。 だが福島事故後の安全規制強化で建設費は急増し、海外では1基当たり1兆円以上かかる事例もある。気候対策の本命である再エネ普及の妨げになりかねない。 国内外の環境団体が、誤った気候変動対策は真の対策を遅らせると訴えるのは当然である。 政府には原発産業を支援する狙いがうかがえる。特に小型モジュール炉(SMR)など岸田政権が推進する次世代炉の開発だ。 日立製作所は米ゼネラル・エレクトリック(GE)との合弁でSMRの開発に、三菱重工業などは高温ガス炉に取り組んでいる。 昨年11月には米国初のSMR建設計画が中止された。コスト増で採算が見込めないためという。 次世代炉にひそむリスクは未知数だ。岸田政権の前のめりの姿勢は危ういと言うほかない。 COP28では、世界の再エネの設備容量を30年までに3倍にする誓約も提起され、日本を含む116カ国が賛同した。 原発3倍の23カ国との大きな差が、世界の潮流を示していることを見誤ってはならない。 |
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●野党3党首 政権構想を語る 共産党次期委員長は? 1/6
5日夜のBSフジ「プライムニュース」に野党3党の党首が相次いで出演し、自公連立にかわる政権構想などについて考えを述べた。 立憲民主党・泉代表「何でもかんでも全部やろうではなくて、必ず変えるという政策項目については、心あるメンバーで新しい政権を作れるのではないか」 立憲民主党の泉代表は、岸田政権に「正当性はない」として、特定の政策課題の実現を目指す「ミッション型内閣」の樹立を訴えた。 しかし、これに先立ち、日本維新の会の馬場代表は、憲法改正や安全保障分野の政策などで立憲の党内がまとまっていないとして、連立政権に難色を示した。 日本維新の会・馬場代表「泉さんが野党を結集させて野党政権を作るということであれば、まず自分の政党の中をまとめてください。わたしは宿題は立憲さんにあると思います」 一方、4年ぶりの党大会が1月に開かれる共産党は、委員長の交代の可能性が取り沙汰されているが、志位委員長は「大会で決めることなので勝手に言えない」と言及を避けた。 |
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●「岸田おろし」だけじゃない。2024年は与野党党首の顔ぶれが一新か 1/6
能登半島地震が元日から発生し、波乱の幕開けとなった2024年。今年は年始から検察による自民党裏金問題の捜査が大詰めを迎え、岸田政権にとって多難の年となる。9月には自民党総裁選が予定されており、岸田文雄首相の去就が注目されているが、実は9月は他党でも代表が任期満了を迎える。党首の顔ぶれが一新する可能性もあるなかで、「岸田おろし」が加速するかどうかが焦点となりそうだ。 ●立憲・泉代表の任期も今年9月まで 「解散総選挙のタイミングによっては、代表を交代させるかどうか、かなり難しい選択を迫られることになる」 そう語るのは立憲民主党関係者だ。今年9月に予定されている自民党総裁選の陰に隠れて見落とされがちだが、立憲の泉健太代表も9月に任期満了を迎え、党の代表選が予定されている。 泉氏は次期衆院選で150議席を獲得するという目標を掲げており、達成できなかった場合は「代表を辞任する」と述べているが、「あまりにも高すぎる目標で達成はかなり困難」(立憲関係者)という見方が一般的になっている。 そのため、9月よりも先に衆議院が解散され、総選挙が実施された場合には、その後に泉氏が辞任をして、立憲では新代表を選ぶ代表選が行われる可能性が高い。 関係者が「難しい選択」と語るのは、9月までに衆議院が解散されず、総選挙が代表選よりも後の日程になった場合だ。衆議院議員の任期満了である2025年10月までに総選挙が控えるなか、立憲は9月の代表選で、代表を変えるかどうか選択を迫られることになる。 立憲内では「代表を変えても支持率が上がるわけではない、泉氏のもとで次期衆院選まで突き進むべきだ」という意見がある一方で、「泉体制のもとで立憲の支持率がなかなか上がらず、日本維新の会の台頭を許してしまった。衆院選を迎える前に代表を変えるべきだ」という主張も多い。 また、選挙日程との関係から、立憲関係者は「衆院選までの日程が短いなかで新しく代表になるのは、その政治家にとってもリスクになる。泉氏が150議席という大きすぎる目標を掲げてしまっただけに、選挙結果について代表が必要以上の責任を取らされる可能性もある」と解説する。 すでに次期代表選に向けて出馬の検討を始めている立憲議員は何人かいるが、最終的な決断は総選挙のタイミングしだいとなりそうだ。 ●公明は代表交代なら創価学会の意向が重要 9月に任期満了を迎えるのは、立憲の代表だけではない。 公明党の山口那津男代表もそのうちの1人だ。山口氏は15年間に渡って代表を務めており、2025年には参議院議員としての改選期を迎える。公明党の代表任期は2年間であるため、もし山口氏が代表を続投した場合は、来年の参院選で再選し、さらに追加で6年間の国会議員人生を歩むこととなる。 しかし、その山口氏もすでに71歳。参議院議員としてさらに任期を重ねるとなると、79歳ごろまで政治家をすることになるわけだが、公明党周辺からは「もう高齢で耳も聞こえにくくなっている。参議院議員としては今回の任期で終わりにすべきという声も多く、そのため今年9月の任期満了をもって代表を変える可能性が高い」という声が挙がっている。 公明党の代表を変えるとなると、重要になるのは創価学会の意向だ。公明党では党首を決める際に代表選という形はとっているものの、実際には複数の候補者が立候補して選挙が行われたことはなく、創価学会との調整を経て代表となる人物が選ばれ、1人だけが立候補して無投票で党首に選ばれることが習わしとなっている。 創価学会といえば、女性部(旧婦人部)が選挙期間中に積極的に電話掛けを行い、票田として機能している。そのため、女性部は学会内でも強い発言力を持っていることで知られているのだが、その女性部のお眼鏡にかなう、代表となる政治家がいるかも焦点だ。 山口氏は「なっちゃん」という愛称で知られている通り、女性部からの人気があるが、順当に考えれば次期代表の筆頭候補とみられる石井啓一幹事長には硬いイメージが先行している。 はたして「なっちゃん」に代わる政治家はいったい誰になるのか。池田大作名誉会長が亡き後の創価学会で調整が進められているとされている。 ●共産はイメージ刷新のため女性代表起用の可能性 そして共産党でも1月15日から始まる党大会で、志位和夫委員長が24年間にわたって維持してきた体制から、田村智子政策委員長に代表が交代する説が浮上してきている。 共産党では党首を党員による直接選挙で選ぶのではなく、中央委員会によって決定する民主集中制を取っている。これに対して昨年、党首を直接選挙で選ぶ「党首公選制」を求める主張が党内から相次いで出たが、その党員を共産党が除名処分としたことも話題となった。 党内の波紋を抑えるため厳しい対応を取ったかたちだが、志位委員長の体制が長く続き過ぎていることへの批判が党内からも出てしまった事態は無視できるものではない。そうしたイメージを刷新するために、女性の田村氏の代表起用に白羽の矢が立ったわけだ。 実際に共産党は昨年6月、参議院議員として活動してきた田村氏を次期衆院選に擁立して、衆議院議員に鞍替えさせることを決定。当時から「志位氏から田村氏に代表を交代する布石だ」(永田町関係者)と囁かれていた。共産党で初の女性代表が誕生するかどうかが注目されている。 このように、与野党各党で党首交代が取り沙汰されるなか、最も注目されるのが自民党総裁選だ。 支持率が10%台にまで低迷し、さらに裏金問題の捜査も待ち受けている「泣きっ面に蜂」状態の岸田首相だが、4月28日には細田博之前衆院議長が死去したことに伴う、衆院島根1区補選の実施が予定されている。 しかもこの4月補選、裏金問題を受けて辞職する議員が今後、続出した場合は、選挙の数が増えて「裏金補選」となってしまう可能性もある。そうなると、岸田政権や自民党にとっては厳しい選挙戦を強いられることになり、岸田首相のままで補選に臨むのかも含めて自民党では選択が迫られることになる。 そして、6月には通常国会の会期末、解散総選挙をするか否かを岸田首相が決断する、総裁選前の最後のタイミングがやってくる。この6月には所得税などの減税も行われるが、自民党総裁選で「岸田おろし」が本格化する前に、思い切って岸田首相が解散に打って出るのかが注目される。 さまざまな思惑のもとで与野党トップの顔ぶれが一新することになるかもしれない2024年。 ただ、いずれが党の顔になろうと、望まれるのは国民生活を豊かにするための議論であり、政治だ。くれぐれも国民を置いてけぼりにするような権力闘争に明け暮れることがないよう、政治家の方々には注意してもらいたい。 |
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●岸田首相、被災地外への避難支援を表明 1/6
岸田首相は6日、官邸で開かれた能登半島地震非常災害対策本部会議で、「電気・水道などの全面復旧には時間を要する見込みだ」とした上で、「被災地外への避難先への移動を希望する方には、避難先を石川県と連携して用意するよう、きのう、指示した」と述べた。 その上で、「被災地外も含め、ホテル・旅館などの空き室を自治体で借り上げる『みなし避難所』を積極的に活用してほしい」と述べた。 また、「集団での避難生活の長期化もあり、疲労感やストレスが蓄積しているなど、悲痛な声が聞かれる」と指摘。 「各避難所への食料や水などの物資支援、仮設トイレの搬入、健康管理、Dマット(災害派遣医療チーム)の医師・看護師等による医療支援を行うとともに、パーティーションによるプライバシーの確保、ダンボールベッドの設置など避難所の環境改善にも一刻も早く取り組んでほしい」と指示した。 さらに岸田首相は、「災害復旧に必要な車両がいち早く到着し、支援物資を速やかに運搬するため、被災地につながる道路の交通量を減らすことが喫緊の課題だ」と強調。 「一部の区間の通行を災害復旧や救援物資輸送に関係する車両に特化するべく、道路交通法上の交通規制を石川県で調整している」とした上で、「国としても、石川県の措置を全力でバックアップしてほしい」と述べた。 |
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●岐路に立つ政治 改革の骨抜きは許さない 1/6
政界は年明けから重苦しい空気に包まれている。自民党派閥による政治資金パーティーを舞台にした裏金事件は、東京地検特捜部による強制捜査が進む。 国会議員が特権を悪用して懐を肥やしていたことに対し、物価高にあえぐ国民の政治不信は沸点に達している。 政治資金の収入から支出までの流れを透明にすることが最大の政治課題だ。違反した場合の罰則も強化しなくてはならない。 自民党が裏金づくりの実態を明らかにすることが前提だ。派閥をどう見直すかも問われる。 一連の責任を負う岸田文雄首相は、9月末で自民党総裁の任期が切れる。政権運営は迷走し、内閣支持率は最低水準にまで落ち込んだ。岸田政権にとっては五里霧中の年となろう。 ●与野党挙げ法改正を 当面の焦点は、裏金事件で刑事責任が国会議員にまで及ぶかどうかだ。 特捜部は安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)を捜査しており、政治資金規正法違反(不記載など)の疑いで会計責任者を立件する見通しだ。 さらに裏金に関与した国会議員が罪に問われる事態になれば、政権への打撃は計り知れない。 捜査の行方にかかわらず、今月下旬に召集される通常国会では政治資金規正法の改正論議に多くの時間を費やすことになる。 1988年に発覚したリクルート事件などの反省から、政治資金に一定のたがをはめる改正を重ねたが、かねて欠陥が指摘される。 パーティー券収入は、20万円を超える購入者を政治資金収支報告書に記載しなければならない。これを小分けして処理すれば、公開されない裏金を容易につくることができる。「ザル法」と呼ばれるゆえんだ。 国会議員が自らを厳しく律する法改正ができるかどうか。ここで国民の不興を買うようでは、自民党は派閥どころか党が立ちゆかなくなると自覚すべきだ。 与野党を挙げて取り組む課題である。野党は連携して改正案をまとめ、与党を突き動かしてもらいたい。この機に、多額の資金を必要としない政治活動についても議論を深めたい。 与野党協議が難航することも予想される。行き詰まるようなら、政治改革を争点に国民の信を問う覚悟が必要だ。 政治の大きな転換点になり得る局面である。今度こそ骨抜き、抜け道を許してはならない。国民は各党の法改正案を注視し、政治改革に本気で取り組んでいるかどうかを見極めてほしい。 ●退陣論高まる可能性 岸田政権の命運は裏金事件の対応にかかっている。「事態を注視する」「信頼回復に努める」と繰り返すばかりでは、国民に危機意識は伝わらない。 4月には細田博之前衆院議長の死去に伴う島根1区補欠選挙がある。裏金事件で辞職者が出た場合は補選が増える可能性があり、自民は逆風を余儀なくされる。 岸田首相が「選挙の顔」では戦えないと、党内から不満が噴出すれば、2024年度予算が成立する春ごろに退陣圧力が高まることも考えられる。 首相は「国民の信頼あっての政治の安定、政治の安定あっての政策の推進だ」と語る。言葉とは裏腹に、信頼と安定を欠き、国民の痛みを伴う政策を先送りしているのが現状ではないか。 昨年末は、増額する防衛費や少子化対策の財源確保に道筋をつけられなかった。選挙を意識して国民負担を避け、増税前に減税をするちぐはぐな財政運営を繰り返してはならない。 一方で、岸田政権は殺傷能力のある兵器の輸出を解禁し、日本で生産する地対空誘導弾パトリオットを米国に提供することを年末に決めた。またも国会議論を経ず、与党内協議だけで安全保障政策を転換した。 国民を置き去りにする決定手法は認められない。これも今年の政治改革の論点と位置付けたい。 |
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●迫る審判の機会 論議尽くせ 1/6
岸田文雄首相(自民党総裁)が政権を担って3度目の新年を迎えた。衆院議員の任期は残り2年足らずで、今年中の衆院解散・総選挙もあり得る。与野党は迫る審判に向け、日本の政治のあるべき姿について論議を尽くしてもらいたい。 本格論戦の場となる通常国会は今月下旬に開会見込みだ。会期は150日間で、解散の時期によっては、衆院選前で最後の国会になる可能性がある。優先して議論すべきは、最大震度7を観測した石川県の能登半島地震への対応になる。安否不明な住民らの捜索、救出に全力を挙げるのは当然だ。避難生活を強いられている被災者支援にも万全を期さなくてはならない。 国会は、そうした政府の取り組みを徹底検証し、足らざる所を補うよう促す必要がある。被災地の復旧、復興対策も審議の重要なテーマになろう。政府は、与野党党首会談で受ける提案などを踏まえ、最善の方策を取る姿勢が求められる。 政権の責務は、国民の「命と暮らし」を守ることに尽きる。岸田首相が衆院解散に踏み切った場合、今回の大地震で示される危機対応能力が問われると心すべきだ。 政治への信頼を失墜させた自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件への向き合い方も、岸田政権の命運に関わる。 安倍派はパーティー収入から6億円規模の裏金を捻出したとされ、東京地検特捜部は政権の枢要なポストにあった安倍派幹部などから事情聴取。通常国会までに、安倍派に加え、二階派の会計責任者らを政治資金規正法違反の疑いで刑事処分する方向だ。 首相は年頭の記者会見で党内に総裁直属の「政治刷新本部」を設置し、「国民の信頼を回復すべく党の体質刷新の取り組みを進める」と表明した。来週にも発足予定だ。最初の一歩は、関係議員が説明責任を果たすよう指導することだが、議員任せの態度に終始している。追及回避を狙った組織立ち上げであってはならない。 政策面で首相は憲法改正への意欲を強調したが、喫緊の課題ではあるまい。大地震対応などとともに、防衛力強化のための増税や、それと矛盾するかのような所得税などの定額減税の是非に関する再議論が先だろう。 4月には衆院島根1区補選が控える。裏金事件の捜査次第で議員辞職による補選数の拡大も考えられる。9月には、首相が再選を目指すとみられる自民党総裁選が予定されている。 首相がいつまで政権の座にあるか定かではないが、衆院選をはじめとする審判の機会に備え、国民も首相や与野党の主張を吟味するようにしたい。 |
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●金正恩総書記が岸田首相に“異例”見舞い電報 能登半島地震 1/6
北朝鮮メディアは金正恩総書記が5日、能登半島地震を受けて岸田首相に見舞いの電報を送ったと報じた。 これは6日朝の労働新聞が伝えたもので、金総書記は電報を通じ「日本で不幸にも年初から地震で多くの人命被害と物的損失が発生したとの知らせに接した」として「深い同情と哀悼」を表明した。 そして、被災者が「一日も早く被害を解消し安定した生活を取り戻すことを願う」と伝えた。 韓国メディアは金総書記が日本の首相に電報を送った「前例は無い」とした上で、最高指導者として人道的な姿を強調する狙いがあるとしている。 また、日米韓が対北朝鮮で協力を拡大する中、日本に融和的な態度を示すことで3カ国の連携にくさびを打ち込む狙いがあるのではとの専門家の話も報じている。 |
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●30年後のいつか来た道 「政治改革」をやり直せるか 1/7
国会周辺にも白いものが舞った。東京23区は大雪注意報発令下だった。 94年1月29日未明、衆院内の一室は外気とは対照的な高揚感に包まれていた。当時の細川護熙首相と野党自民党の河野洋平総裁による「政治改革」合意の記者会見である。 リクルートに始まる金権事件の続発と底なしの政治不信。政界は塗炭の苦しみをなめ、身をよじりながら出した答えが、この合意だった。 30年後のいま、パーティー券裏金問題が広がり、永田町で再び政治改革の4文字が飛び交う。しかしそこに、かつてのような熱はまだない。 言葉だけで終わるのか、「第2の改革」が成就するのか。問われる年である。 ●派閥に手を突っ込め かつて自民党が、政治とカネの問題の元凶として「解消」を決意したはずの派閥は、そのエネルギーを縮減させたとはいえ、なお健在だ。 当時は、旧田中派と、その流れをくむ竹下派が長く権勢を誇り、カネまみれの腐敗土壌を育む象徴的な存在と見なされた。 今回の裏金問題も、最大派閥によって長く続いた「安倍1強」支配のおごりや緩みと切り離して考えることはできない。 スキャンダルの背後に潜む構図は、30年の時を経ても相似形である。 衆院選挙制度の転換を核とする先の改革は、党執行部の権限強化をもたらしはしたが、内部統制のあり方については各党の自発性に委ねた。 いわば積み残しにしてきた古くて新しい課題を、これを機に改めて取り上げなければならない。 派閥、とりわけ権力派閥の振る舞いに手を突っ込まない限り、政治資金の透明化はおぼつかないというべきだろう。 ●資金問題だけでなく 30年前の改革実現に大きく寄与したとされるのは、与野党にまたがる当選1、2回の若手議員だった。 世論の逆風を肌で感じた彼らの危機感は尋常ではなく、各党幹部を激しく突き上げた。改革への慎重派や懐疑派が座る会議に押しかけ、文字通り肉弾戦を繰り広げる場面もあった。 まだ若手が比較的自由に物を言えた時代だったのだろう。それは皮肉にも、改革が諸悪の根源と見なした中選挙区制の効用だったかもしれない。同士打ちの激戦を自力で勝ち上がってきた議員には、「怖いものなし」とうそぶく者がいた。 小選挙区制の導入によって、首相と官邸、党執行部に権力が集中し、陣笠議員の比重はいよいよ軽くなった。選挙の度に生まれる「○○チルドレン」と呼ばれる新人は、おおむね従順でおとなしい。 若手に限らず、物言えば唇寒しの風潮も年を追って強まっている。 今回再浮上した政治改革論議をめぐり、風通しのいい党内論議がどれほど交わされるのか、心もとないといわざるをえない。 政治とカネが当座のテーマだとしても、改革を論じる機運がともかくも生じたのだとすれば、さらに幅広い論点への挑戦をためらうべきではない。 30年という節目にあたり、先の改革の功罪、あるいは不足と過剰といった点に着目した再検討は必須ではないか。 例えば、安倍元首相に典型を見る「強すぎる首相」という問題である。 その長期安定の見かけとは裏腹に、極めて短期志向の政権運営が際立った。任期を多く残して恣意(しい)的に衆院を解散し、その度に政策の看板を掛け替えた。 この間、国の借金や社会保障といった長期的な重要課題は閑却された。 岸田首相も先の通常国会でいたずらに解散風を吹かせ、「専権」をもてあそんだ。 首相の、正確には内閣の解散権をどう考えるか。これも古くから積み残され、先送りされてきた大問題である。 ●設計図作りの難しさ 先の改革は、「永久与党、万年野党」の55年体制を脱し、二大政党ないし勢力による政権交代のある政治をめざした。 冷戦終結や湾岸危機、バブル経済崩壊といった大状況のめまぐるしい変化に対応し、政治の決定力、実行力を手にしようとする試みであり、それは政治とカネへの取り組みと表裏一体の企図だった。 政権交代は確かに実現したが、全体としての展開はおよそ所期のもくろみとはかけ離れてしまった。 衆参両院のねじれは、決定力を欠く短命政権を立て続けに生み出した。二大政党、勢力への収斂(しゅうれん)は挫折の連続だったし、今後それが実現する兆しもまったく見えない。 国民の政治不信はますます深まり、無関心は広がり、選挙の投票率は下がり続ける。 多くの人間が関わる政治という営みは、描いた設計図通りにいくものではないという現実を思い知らされる。 改革を論じるなら、そのことを踏まえた上で重心の低い議論を進めてもらいたい。 |
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●姥捨て楢山節考 1/7
映画「楢山節考」を再生してみた。山深い貧しい村の因習に従い、年老いた母親を背負って真冬の山奥に捨てに行く物語だ。映画では、白骨の散らばる山奥の岩陰に運ばれた老婆が、置き去りを躊躇する息子に早く行けと促す悲惨さが描かれる。 長野県の冠着山(かむりきやま)が俗称「姥捨(うばすて)山」と言われているのだが、実際には、そんな因習は無かったという。 姥捨て伝説は、各地にあるようだが、背中に負われた母親が、山道途中の枝を折ったり、白い灰を撒(ま)いたりして、息子の帰路の目印を残し、息子は親の愛の深さに堪(たま)らず、親捨てを止める。 あるいは、姥捨ては領主の命令だが、親を納屋に匿(かくま)っていたところ、領主に難題が持ち上がり、隠れていた老人の知識で解決し、領主が反省して姥捨て命令を廃止した―などと、姥捨て物語では、姥捨てを留(とど)まり、因習を否定しているようだ。 ●姥捨てや間引きはタブー 戦争中の集団疎開を扱ったドラマに、こんな話があった。疎開児童が増えたので村に食糧不足が起こり、老人たちが村はずれのお堂で自給自足の集団生活をする。それを子ども達が気付き、自分の食事を残して、おにぎりをお堂に届け、大人が反省して老人達を家に戻す。 口減らしは、その恩恵を受ける側にとっても残酷な行為なのだ。現実には、悲惨な状況もあったのかも知れないが、我が国の伝説や規範としては、姥捨てや間引きといった口減らしをタブーとしているのだ。 江戸時代、常陸国(現在の茨城県)南部に岡田寒泉という代官が就任した。彼は領内をくまなく見回ったところ、村々が疲弊していたので、貧困による幼児の間引きを防止するために「産児養育料」を支給し、凶作に備えて稗(ひえ)などの備蓄をさせるとともに、開墾事業の奨励、風紀の粛清など民生の安定に努め、小貝川の氾濫の際には素早く「お救い小屋」を建てて対応したという。 岡田寒泉は、松平定信の寛政の改革に関わった旗本であり、儒学者でもあったのだが、貧困の根幹を是正する統治政策を実践した人でもあった。 ●岸田政権の悪知恵政策 ところで、岸田政権の「異次元の少子化対策」では、財源の3分の1を、医療保険の掛け金から「支援」させるという。医療・介護保険は、必要な医療介護費用を算出し、保険制度の組合加入者が負担するわけだから、保険金に余裕はない。余裕があるとすれば、保険料を減額するのが筋だ。 その保険金を別の用途に回すとすれば、必要な医療・介護サービスを減らすことになる。学校給食費の納入金の一部を人気取り行事に流用して、給食の回数を減らすか食材の品質を落とすのと同じだ。要するに、「口減らし」だ。日本の老人は、子どものためと言われれば、少ない年金からでも、ひねり出すことは厭(いと)わない。 しかし、そのような、日本の老人の心情に付け込むような悪知恵政策は余りにも卑怯(ひきょう)だ。肝心の日本の子ども達は、子育て政策が老人の命を削る支援金で行われることを聞いたとき、喜ぶのだろうか? |
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●山口公明代表、進退「熟慮」 9月の任期満了で 1/7
公明党の山口那津男代表は7日のNHK番組で、9月に代表任期満了を迎えることを受けた自身の進退に関し、「次の大きな選挙との関係も含めて、党の力を最大限に発揮するにはどうしたらいいかという観点で熟慮していきたい」と述べた。自民党派閥の政治資金規正法違反事件によって次期衆院選の時期が見通せないことが念頭にあるとみられる。「世代交代は常に心掛けなければならないし、若い人材が育ちつつある」とも語った。 |
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●岸田首相、解散「信頼回復後に考えたい」 震災、野党に協力呼び掛け 1/7
岸田文雄首相(自民党総裁)は7日放送のNHK番組で、衆院解散の時期について、「まずは信頼回復、次は政策の実現。今はそれに尽きる」としつつ、「それを行った上でその先については考えていきたい」と語った。9月の党総裁任期満了に伴う総裁選への再選出馬は、「重要な課題が山積している。そこから先の政治日程は今は考えていない」と述べた。収録は6日。 能登半島地震への対応や国会運営に関し「より多くの野党に協力していただく姿勢は今年も大事にしたい」と述べ、協力を働き掛けていく意向を表明。国民民主党の連立政権入りの可能性に関しては、「具体的にどの党と協力するか。場面場面でしっかり考えたい」と語った。 |
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●安倍派池田衆院議員と秘書を東京地検が逮捕、党除名処分に−報道 1/7
自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーを巡る事件で、東京地検特捜部が7日、政治資金規正法違反の疑いで池田佳隆衆院議員(57)=比例東海=と秘書を逮捕したとNHKなど複数のメディアが報じた。岸田文雄首相は同日午後、逮捕を「承知している」と述べた。同問題では安倍派の現職国会議員が逮捕される事態に発展した。 東京地検と池田事務所に電話で連絡を試みたが、いずれも回答を得られなかった。 NHKによると、池田議員は会計責任者だった政策秘書の柿沼和宏容疑者(45)と共謀し、2022年までの5年間に安倍派から約4800万円のキックバックを受けたにもかかわらず、自らが代表を務める資金管理団体「池田黎明会」の収入として記載せず、政治資金収支報告書にうその記載をしていた。 岸田首相は非常災害対策本部会議後に記者団に、池田議員の逮捕について「承知している」とした上で、「自民党所属の国会議員が逮捕されたことは、大変遺憾なことで重く受け止めている」と述べた。さらに池田議員を「除名する方針とした。党として強い危機感を持って政治の信頼回復に努めなければならないと改めて強く考えている」と発言した。 共同通信によると、安倍派は池田議員の逮捕を受け、「関係者の皆さまに多大なご心配とご迷惑をおかけし、心よりおわび申し上げます」との談話を発表した。引き続き捜査に真摯(しんし)に協力するとしている。自民党にコメントを求める電話をしたが、つながらなかった。 岸田首相は、最大派閥である安倍派の幹部を要職に起用することで政権基盤の安定を図ってきた。裏金化の疑惑を受けて松野博一前官房長官を含む全員を交代させたが、内閣支持率は21年10月の政権発足後の最低を相次ぎ記録。安倍派現職議員の逮捕は岸田政権に影響を及ぼす可能性がある。 信頼回復への取り組みが求められる中、岸田首相は1月4日の年頭記者会見で、自民党内に総裁直属の政治刷新本部を設置すると発表。外部有識者も含めて政治資金の透明化に向けた議論を進め、1月中にも中間取りまとめを行う方針も示した。 特捜部は安倍派「5人衆」と呼ばれる松野氏、西村康取りまとめ稔氏、高木毅氏の歴代事務総長と萩生田光一氏、世耕弘成氏のほか、派閥の座長を務める塩谷立氏からも任意で事情を聴いたと国内メディアが報じていた。政治資金規正法上、収支報告書の作成・提出義務がある同派の会計責任者は還流分の不記載を認めており、特捜部は同法違反容疑での立件を検討していたという。 国内メディアが行った直近の世論調査によると、岸田内閣の支持率はいずれも10−20%台に落ち込み、大半で12年12月に自民党が政権復帰して以降の最低を更新。一連の問題を受けて岸田首相の責任や指導力を問う声が強まっている。自民党の不支持率も上昇しており、派閥の解消を求める声も多い。 |
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●安倍派池田議員ら逮捕=4800万円虚偽記載か、政治資金規正法違反容疑 1/7
自民党の最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)の政治資金パーティー収入を巡る裏金事件で、東京地検特捜部は7日、政治資金収支報告書に約4800万円の虚偽記載をしたとする政治資金規正法違反容疑で、衆院議員の池田佳隆容疑者(57)=比例東海、当選4回=と、会計責任者で政策秘書の柿沼和宏容疑者(45)を逮捕した。特捜部は認否を明らかにしていない。 この事件で逮捕者が出るのは初めて。政界を揺るがす政治とカネの問題は、現職国会議員が逮捕される事態に発展した。 自民党は7日、池田容疑者を除名。清和政策研究会は「関係者の皆さまに多大なご心配とご迷惑をおかけし、心よりおわびする」などとするコメントを出した。 関係者によると、安倍派では派閥のパーティー券販売について所属議員の当選回数や役職によってノルマを設定。超過分の収入は議員側にキックバック(還流)し、派閥や議員側の収支報告書に記載せず裏金化していたとされる。 安倍派では還流の方法とは別に、10人以上の議員側がノルマ超過分を派閥に納めず裏金として中抜きしていた疑いもあり、時効にかからない2018〜22年の還流分と中抜き分を合わせると、派閥全体の裏金総額は6億円規模に膨らむ可能性がある。 池田容疑者の逮捕容疑は、柿沼容疑者と共謀し、資金管理団体の18〜22年分の収支報告書で派閥から還流を受けた計約4800万円を収入に含めず、過少に記載した疑い。 池田容疑者が還流を受けた金額は所属議員の中でも特に多いとされる。同容疑者側は昨年12月8日付で20〜22年分の収支報告書を訂正。安倍派からの寄付額が計約3200万円増えたほか、20年の収支報告書には収入の「前年からの繰越額」として約1600万円が追加された。 |
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●長崎IRの崩壊「根っ子はすべて同じ」 岸田政権に思う 1/7
●ネットプラットフォームは国際金融市場の集積地に併設 大阪、福岡、東京の各IRは近い将来、オンラインカジノ、オンラインゲーミング等の国際市場を開拓・展開するため、ネットプラットフォームを併設し、それらは急速に発展するものと思われる。 この現地でのネットプラットフォーム施設の併設は、世界でのネット国際金融における市場競争の「核」となる事業であり、どこの国・場所であれ必須である。そこにはビットコインなどに代表される仮想通貨が集積し、世界的にも巨大な金融市場が誕生し形成されることになる。近い将来、IRがもたらす売上や収益、税収などは現在の計画をはるかに上回るだろう。 我が国ではこれらはいまなおタブーであり関連の法整備は行われていないが、この世界のすう勢からはいずれの国も避けては通れず、我が国でも近年中に必ず実行されることとなるだろう。なお、福岡市は高島市長のもと行政と議会、経済界は「香港に代わる国際金融都市を目指す」ことをすでに公言している。 九州大学箱崎キャンパス跡地開発と福岡IRが連携されれば、「鬼に金棒」となる。JR九州と西鉄、市営地下鉄沿線で結ばれた利便性の高いエリアであり、福岡IRは高島市長が掲げる「福岡イースト&ウェストコースト」プロジェクトに適したすばらしい案件となり得る。 このように、ほかのプロジェクトを福岡都市圏で実現するうえでも、IR誘致開発は何よりもベストな選択だと断言できる。IR誘致に絡む世界の資金の巨額さは他に類を見ないものだ。 ●国際都市福岡の魅力と自然環境保護 海の中道海浜公園 イメージ 福岡IRの候補地は福岡都市圏、旧帝国陸軍航空隊「雁ノ巣飛行場」の跡地、戦後の米国陸海軍航空隊「キャンプハカタ」の跡地で、現在も米国文化と強いつながりを保つ土地である。 とくに国営の「海の中道海浜公園」にはそれらの名残が多く残っていて、福岡市民から親しまれる憩いの場であり、白い砂浜の続く長い海岸線はとくに美しい。一部は「玄海国定公園」となっていて、風光明媚で自然豊かな環境の国土交通省が所有管理する広大な国有地でもある(約540ha)。その分、長く続く海岸線の防風林、松の林と砂防柵などの保護管理に要する費用は莫大なもので、現況の水族館や市民プールなど夏場だけの入場・イベント収入では支出にまったく追いついていない。近年はこの国有地の民間利用を積極的に促し、その固定費を賄うための収入増を期待して、法制度改革が実施されている。 福岡市の中心地からは鉄道(JRと西鉄)で約35分、車(都市高速)でも約30分、博多港ベイサイドプレイスから福岡市営渡船でも約30分、このように交通インフラがすでに整備され、充実している点で国内唯一の候補地であるこの場所は、視察した米国企業をはじめ国際的にも高い評価を得ているという。 とくに、IR誘致開発の準備組織が自然環境保護活動の一環として、米国企業ならびに福岡市行政には、当該地隣接の博多湾「和白干潟の鳥獣保護を守る」の観点から、「ラムサール条約」への新規登録への地元保護団体との協力とその費用負担にも積極的に模索中だと聞く。 また、IR誘致開発の準備組織による自然環境保護活動の一環として、候補地に隣接する博多湾の和白干潟の鳥獣を保護するため、米国企業ならびに福岡市行政は「ラムサール条約」の新規登録について協力し費用を負担することを前向きに模索していると聞く。「環境保護」を口にするのは簡単がが、実際に実行するのは大変で、かつ巨額の費用を要する。IR開発・誘致のような高い付加価値と収益を産み出す事業だからこそのことだろう。また、世界および国内の富裕層による観光収入から賄えるということであり、優れた計画ではないか。 ●いよいよ福岡IRの出番が到来 IRは全国に3カ所、「長崎IR」の不認定により、残る2カ所は「福岡IR」「東京IR」で間違いないだろう。もし、米国の次期大統領にトランプ氏が返り咲くことにでもなれば、日米経済関係から確実に実行される。 今回の「長崎IRの崩壊」は、福岡財界が主体の九州経済連合会および若い経営者の集まりである福岡青年会議所は、長崎IRの関係組織への遠慮から、福岡IR誘致に積極的な動きはできなかった。しかし、彼らの本音は誰が考えてもIR誘致・開発に相応しいのは福岡都市圏というものだ。 現在、このニュースは世界的に広がっている。Bally'sに続いて著名な米国系IR事業者の福岡都市圏へのアプローチが早々に始まるだろう。これらは積極的な行動に出るものと推測される。言うまでもなく、中華系その他の同業者グループは間違いなく蚊帳の外だ。 とくに、過去、横浜や苫小牧、和歌山、長崎などへの進出の希望が断たれた米国系IR事業者は今後、現状では問題の多い「大阪IR」に比較して、既設のインフラが整っていて、人口など諸々の条件ですべてに引けを取らない当地「福岡IR」に集積することになるだろう。 乞うご期待だ。 |
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●地震対応の予備費活用、迅速な対応と明確な説明を 1/7
新年早々、大変なことが起きてしまった。特に能登半島地震は被害の全容が判明していないが、復旧や生活支援のほとんどが政治の仕事。岸田政権には迅速な対応をお願いしたい。 国家予算には、震災対応など不測の事態に備える「予備費」というものがある。近年は新型コロナ禍の対応で積み増しされ、使い切れず余っていた。予備費は国会審議が不要で、閣議決定により出費できる。さらに岸田首相は今後の復旧・復興のために予備費を積み増す指示を出した。 昨年11月に発表した経済対策の中で現金給付と定額減税の時期を分けたり、減税を「税収増の還元」と理由付けしたりしたことは国民の支持を得られなかった。減税イメージを印象づけ、衆院解散・総選挙対策であることは見透かされた。旧統一教会との関係や政治資金パーティー裏金問題などは岸田首相自身の問題ではないが、内閣支持率が下げ止まらないのは都合のいい説明に終始する首相の姿勢にあるのではないか。 岸田首相はさまざまな課題に対策を講じ施策を打ち出してはきたが、結果にはなかなかつながっていない。すぐに成果が出るような政治的課題など一つもないことは分かっているが、国民からは理解されない。「異次元」とか「火の玉」などといった実態不明の抽象的な説明が、国民に意図を伝えられない一因ではないかと思われる。 予備費は迅速に対応できるという点で「便利な予算」ではあるが、国民の税金が原資でもある。閣議決定を経るとはいえ首相の思いの強さが活用の基準となるだけに、迅速な対応とともに明確な説明が必要だ。2024年は、岸田首相も説明に少し工夫を凝らしてはいかがだろうか。「増税メガネ」を国民目線の「国民メガネ」に替える必要がありそうだ。 |
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●国民が知りたい「羽田事故」「志賀原発」に触れない岸田首相の年頭記者会見 1/7
岸田文雄首相が1月4日に官邸で開いた年頭の記者会見で、国民が最も知りたかったのは、11月1日に起きた能登半島地震で被害が出た志賀原発の状況2羽田空港で起きたJAL機と海保機の衝突事故の真相――だったと思う。 ところが、岸田首相はいずれも一切言及せず、そして官邸記者クラブに所属するマスコミ各社の政治部記者も誰一人質問しなかった。私は唖然とするしかなかった。 なぜこんなことが起きたのか? 首相の年頭記者会見は、伊勢神宮参拝後に現地で行うのが慣例だ。今年は能登半島地震が発生して伊勢参拝が延期され、首相官邸で開かれることになった。 岸田首相としては、能登半島地震の被災者支援と自民党安倍派などの裏金事件への対応をアピールし、1割台に低迷する内閣支持率を回復させ、政権与党内で強まる「3月訪米・予算成立を花道に退陣論」を押し戻す反転攻勢の起点となるはずだった。 岸田首相は地震発生後、対策本部会合が終わった後、連日、記者団の取材に応じている。このため、4日の年頭会見は地震よりも政治改革に軸足をおくことは、あらかじめ予想できた。 だが、1来週に自民党に「政治刷新本部」を立ち上げ、自らが本部長となる21月中には政治改革の中間的とりまとめを発表し、必要なら通行国会に関連法案(政治資金規正法改正案など)を提出するーーことを淡々と表明するだけで、具体的な中身はほとんどなかった。 能登半島地震についても目新しい発信はなく、被災者らの心に響く訴えもまったくなかったのである。 率直に言って、精彩を欠く記者会見だった。国民に向かって何かをアピールしようとする意気込みがまったく感じられなかったのである。 年明け早々、大地震と航空機事故というショッキングな出来事が相次ぎ、岸田首相は社会不安の高まりを痛感して、政権運営への自信を失ったのだろうかーー私はまずはそう感じた。 実際、日本テレビは元旦に「岸田首相が周辺に『自分がやめて何か解決するのか。やめて解決するならいつでもやめてやる』と話した」との内容を報じていた。かなり投げやりになってきたかもしれないと思ったのだ。 しかし、退陣論がささやかれる3月は、まだ先だ。岸田首相が一時的に投げやり気分になることはあっても、心は揺れ動き、結局のところ、支持率を何とか回復させることでギリギリまで続投の芽を残そうとするはずだと思い直した。 それにしても、せっかくの反転攻勢の好機である年頭記者会見に、これほど熱が入っていないのはなぜなのか。 実は記者から突っ込まれたくないテーマがあるため、簡潔に会見を打ち切ることを優先したのではないか。 そうだとすれば、そのテーマは、志賀原発か、羽田事故か。 志賀原発について、政府や北陸電力は地震発生直後に「異常なし」と発表していたが、その後、1外部電源を取り込む電気系統の一部が壊れた2水位が3メートル上昇し、防潮壁も傾いていた――などの被害が発生していたことを五月雨式に発表。まだ「伏せている事実」があるのではないかと疑念を招く事態に陥っている。 羽田事故は海保機の機長が管制の指示を取り違えた可能性がマスコミ報道で指摘されているが、それは国交省が公表した交信記録や国交省側のリークに基づくものだろう。海保機の機長の証言は食い違っているという。ここも未解明が部分が残る。 志賀原発にしろ、羽田事故にしろ、岸田首相にもとには国民が知らない情報があがっているはずだ。この日の記者会見で質問されたくない何かしらかの事情があり、その結果、岸田首相の発言は全体として勢いを欠き、記者会見も40分ほどで打ち切ることになったのではないかと想像したのである。 首相記者会見の最大の問題点は、質問者を官邸側の司会者が指名することにある。 官邸側は各記者にどんな質問をするのか事前に聞き取っている(これに応じない記者もいる)。官邸と記者クラブの馴れ合いだ。その聞き取りを踏まえ、今回は志賀原発と羽田事故を質問しそうな記者をあえて指名しなかったのだろう。 会見終了が告げられた後、フリーの犬飼淳記者が、原発関連の質問があると訴え、「再稼働をあきらめるべきではないか」と岸田首相に向かって叫んだが、首相は無言のまま立ち去った。 志賀原発に何の懸念もないのなら、首相の言葉ではっきりと国民に向かって語るべきだった。無言で立ち去る姿をみると、やはり志賀原発について触れられたくなかったのかと勘繰ってしまう。 いずれにせよ、情けないのは、官邸記者クラブ所属のマスコミ各社の政治記者たちだ。無言で立ち去る岸田首相に対し、なぜ、フリーの犬飼記者と一緒に抗議しなかったのか。 志賀原発や羽田事故について首相が一言も語らない年頭記者会見を容認した時点で、記者クラブの存在意義は失われたといっていい。 |
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●派閥裏金問題で大荒れの自民党 “泥船”岸田政権の「ポスト岸田」は誰? 1/7
派閥の裏金問題で支持率が政権維持困難とされる20%前半まで落ち込んだ岸田内閣…。大荒れの自民党で「我こそは」と言うリーダーが居ないのはなぜか。そして“ポスト岸田”と言われる人物たちの現状は? ●支持率24%、政権維持は黄色信号 66%という高い内閣支持率だった発足当初が想像できないほどの事態となっている昨今。2023年11月の世論調査では、相次ぐ政務三役の辞任に加え、所得税などの定額減税が「選挙対策にみえる」などと不評を買い、内閣支持率はついに24%と発足以来最低を更新した。 さらにその後、自民党最大派閥“安倍派”の裏金問題が明るみに出て岸田首相の自民党総裁としての責任が問われる事態となっている。大荒れの自民党では、2024年9月に自民党総裁選が予定されている。岸田首相は裏金問題を受け安倍派の閣僚を一掃する人事を行ったが、岸田首相に近い議員も「安倍派の応援がなければ総裁選には勝てない」と釘を刺す。 ●「我こそは」と言えないリーダーなき自民党 ではポスト岸田となりうる自民党議員は誰なのか。裏金問題のあまりの大きさに様子をうかがう議員が多いのが実情だ。 首相候補として名前が挙がるある議員は「誰が白で、誰が黒か、分からないうちは何も動き出せない」と周囲に吐露する。「我こそは自民党を立て直す」という議員が見当たらないのだ。過去の自民党であれば起こっていたであろう『岸田おろし』の動きが出てこない。 その理由は裏金問題の影響が未知数で捜査の着地点が見えないということもあるが、総裁選までまだ9か月ほどあること、衆議院議員の任期がまだ1年以上残っているという点も大きい。議員たちの危機意識が高まらず、『岸田おろし』が起こらないのだ。 では“ポスト岸田”の面々の現状はどうなっているのか。“将来の首相候補”と言われる議員は複数いるが、中でも“ポスト岸田”として名前が挙がる茂木幹事長、河野デジタル相、石破元幹事長、上川外相、加藤元官房長官、の5人について分析する。 ●進む道を決めきれない茂木幹事長 自民党の幹事長を務める茂木敏充氏。当選10回を誇る政策通で、党の政調会長のほか、経済産業大臣や外務大臣など重要ポストを歴任してきた。現在は党運営や資金面で絶大な権限を握る“幹事長”をつとめ、党内第3派閥“茂木派”の会長でもある。 将来、首相を目指す姿勢を常ににじませる茂木氏は、麻生副総裁とも良好な関係を築いている。一方で党内からはポスト岸田に同じ派閥の加藤元官房長官を推す声もあり、必ずしも足下が安定しているとは言い切れない。 さらに裏金問題について、茂木派ではほとんど問題がなかったため「茂木幹事長はどこか他人事だ」という批判まじりの声も聞こえる。また、本来、幹事長は首相を支えるポジションであるにもかかわらず、首相よりも先に政治資金規正法の改正について発信するなど、幹事長としての役割を超えていると指摘される行動も多い。 茂木氏がポスト岸田に名乗りをあげるためには、岸田首相を支え続け禅譲を狙うのか、どこかで別の路線に進むのか決断が必要になる。 ●“人気”を誇る河野デジタル相 国民的人気を誇り、歯に衣着せぬ発言や発信力で常に話題となる河野太郎氏も“ポスト岸田”の1人。これまで外相や防衛相などを務め、現在はデジタル相としてマイナンバーカードをめぐる一連の問題で陣頭指揮を執るなど、常に注目されているのが河野氏の強みだ。 前回の総裁選で岸田首相に敗れて以降、“仲間作り”にも力を入れている。毎週火曜日に勉強会を開催、政治家との会食も積極的に行っているという。さらに河野氏は、国民的人気が高い石破元幹事長、小泉元環境相とも近く3人の名前の頭文字を取った“小石河連合”の発信力は強力だ。 ただ実際に河野氏の“仲間作り”が結実してもポスト岸田に名乗りをあげるためには河野氏が所属する麻生派の麻生副総裁の意向が大きく関係してくる。麻生副総裁は「岸田政権を支える」というスタンスで、岸田首相が次の総裁選に出る場合は、河野氏の出馬を後押しする可能性は低い。 河野氏が“ポスト岸田”に近づくためには、派閥の領袖である麻生氏からの支持を得られるかが最大のポイントとなる。 ●世論調査“ナンバー1”の石破茂元幹事長 NNNと読売新聞が23年12月に行った世論調査で、ポスト岸田として20%という最も高い支持を集めたのが石破茂元幹事長だ。各社の世論調査でも人気が高い。安倍晋三元首相と一騎打ちでの総裁選を戦うなど、自民党内でも非主流派の顔として脚光を浴び続けていることから政府関係者からは「自民党が変わったと思われるためには石破氏しかいない」との声も出ている。 ただ、石破氏は裏金問題の発覚後、テレビ番組で岸田首相の責任の取り方について「予算が成立したら辞めますというのはあり」と、総辞職を迫るような発言をおこなった。こうした岸田政権を後ろから撃つような言動には、かつての石破派に所属した議員からも「いくら国民的な人気があっても党内に仲間がいない」「溺れかかっている人物を上から突いているようだ」など冷ややかな声が上がっている。 発信力は抜群の石破氏だが、党内に仲間を作るという長年の課題が重くのしかかっている。 ●初の女性候補と目される上川外相 2023年9月に行われた内閣改造以降、ポスト岸田として急浮上したのが上川陽子氏だ。法相を3回務め、2018年には、オウム真理教の麻原彰晃こと松本智津夫 元死刑囚の死刑執行命令書に署名をしたことも。「ミスをしない」「政策に強い」などの評判もあり、女性政治家としては首相の座に最も近い人物とされる。 上川氏は岸田首相が会長を務めていた“宏池会”に所属している。外相という重要ポストに上川氏を据えたことで、岸田首相が「次期首相候補」として経験を積ませようとしているのでは、との声も聞こえる。しかし、宏池会には、2023年12月、裏金問題で辞任した松野前官房長官の後任になった、林芳正氏がいる。林氏を飛び越えて上川氏を首相にする、という動きまでには至っていないのが現状だ。また、政策には強いが「政局観がない」など厳しい評価もある。 党内には「初の女性首相となれば自民党内からも誰も文句が言えない」など上川氏に期待する声もあるが、ポスト岸田となるためには「政局観」と「宏池会内の支持拡大」という2つの大きな壁がある。 ●ダークホース、加藤勝信元官房長官 菅政権で官房長官を務め、厚労相を3回も経験している加藤勝信氏もポスト岸田のダークホースとして名前があがる。加藤氏は党内に影響力を持つ菅前首相からの信頼が厚いうえに、二階派の事務総長である武田良太氏や安倍派の5人衆の1人、萩生田光一氏とも関係が良好で、各氏の名前の頭文字を取って「HKT+S」と呼ばれる会合を定期的に開いている。 加藤氏が首相候補として名乗りをあげた場合、菅氏が率いる菅グループ、二階派、萩生田氏に近い安倍派の一部議員など、「非主流派」の議員を中心に派閥横断的に集まるのではないかとみられている。 ただ、加藤氏は茂木幹事長が率いる“茂木派”に所属していて茂木氏がポスト岸田に名乗りをあげると、加藤氏も手を挙げるのは難しい。茂木派を飛び出してでもポスト岸田を目指すことがあるのか、加藤氏の動向からも目が離せない。 |
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●岸田政権の課題 信頼回復急ぎ国難に対処せよ 1/7
●政治資金の透明化をどう図るか 令和となって最大級の災害が発生し、内閣の危機管理能力が問われている。派閥の政治資金規正法違反事件で失墜した信頼の回復も急務だ。 岸田首相は自らが正念場にあることを自覚し、責務を果たさねばならない。 首相は年頭の記者会見で、能登半島で起きた地震を「国難」と呼び、「被災地に寄り添っていく」と述べた。生存者の救出は無論、物資の搬送、道路の復旧など様々な課題に、国は総力を挙げて取り組む必要がある。 ●問われる危機管理能力 政治資金規正法違反事件に関しては、自民党に総裁直属の「政治刷新本部」(仮称)を設置し、政治改革に取り組んで「党の体質を刷新する」と語った。 首相が、地震への対応でも政治とカネの問題でも「私自身が先頭に立つ」と述べて自らの指導力を強調したのは、それだけ政権運営が窮地に陥っていることの裏返しとも言えよう。 政治資金規正法違反事件を巡っては、パーティー収入の一部を裏金としていた疑いが出ている安倍派の幹部らが昨年末、東京地検特捜部の事情聴取を受けた。捜査の成り行きは、岸田政権の浮沈を左右しかねない。 首相は、今回の派閥のパーティー収入を巡る問題を徹底的に調査するとともに、党と一体となって改革を主導すべきだ。 政治資金規正法は、政治活動を国民が常に監視できるよう、政治資金の透明化を図り、公正さを保つことを目的としている。この趣旨を貫徹するための制度改正を実現することが重要だ。 現行法は、パーティー券購入者の記載義務を、1回につき20万円超の購入者に限っている。年間5万円超を公開の基準としている寄付行為と、基準を合わせる法改正は最低限必要だろう。 政治資金収支報告書をデジタル化して、有権者が点検しやすくするのも一案だ。 政治に一定のコストがかかるのはやむを得ない。企業・団体献金や政治資金パーティーをすべて禁じるべきだ、といった議論があるが、政治を汚いものと決めつけるかのような考え方では、民主主義が成り立たなくなってしまう。 ●先送りされた負担増 岸田内閣は発足から2年3か月が経過した。防衛力の強化や少子化対策など、これまで取り組んできた課題は時宜に 適 っている。 しかし、政策を実現するための財源措置などの具体策となると、先送りが目立つ。 政府は少子化対策の財源を確保するため、医療保険に上乗せして徴収する「支援金制度」の創設を決めたが、国民の負担額までは深掘りしなかった。 防衛力強化のための増税も、開始時期の決定を見送った。 政権に逆風が吹く中、負担増を伴う改革を進めるのは難しい、という判断なのだろうが、こうした姿勢が課題への取り組みに対する首相の本気度を疑わせ、支持率の低迷につながっている。 人口減少や少子化をどう反転させ、国力を維持するのか。悪化した安全保障環境への備えは万全か。課題を乗り越えるため、国民の理解を得ながら着実に施策を実行していく、という政治の役割を忘れてはならない。 衆院選に小選挙区比例代表並立制を導入した政治改革関連法や、政治資金に税金を投入することを定めた政党助成法は今年、成立から30年となる。 改革が目指した政党本位の選挙はある程度定着したが、 歪 みも浮き彫りになっている。派閥のパーティー券を巡る疑惑はその一つだが、問題はそれだけではない。 現行の選挙制度の下、司法は憲法の「法の下の平等」を投票価値の平等と読み替え、「1票の格差」の是正を重視するようになった。このため、小選挙区の区割りは頻繁な見直しが必要になった。 ●選挙制度改革の議論を だが、地方の過疎化が進む中、格差是正だけを追求すれば、地方の議員定数は減り続け、都市部は増える一方となる。地方の民意は反映されにくくなり、有権者が代表に政治を託すという代議制民主主義が揺らぎかねない。 参院も同様の問題を抱えている。格差是正のため、「鳥取・島根」「徳島・高知」を合区したが、このまま都市部への人口流入が続けば、北陸などで新たな合区が必要になる、との指摘がある。 衆参両院とも、格差の是正を迫られ続ける現行制度が果たして妥当なのか。与野党は、根本から議論すべき時期に来ている。 |
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●「防衛力強化」の是非が沖縄の争点に浮上へ〜「戦場化」への懸念を背景に 1/7
2022年末の安全保障関連3文書の改定を受けて、南西諸島の「防衛力強化」が急速に進む中、沖縄では自衛隊と「有事」への備えを巡る諸問題が、「辺野古」の次の争点として浮上しつつある。 ●一歩踏み出した知事 「子どもたちの未来が戦争の未来であってはならない。不穏な未来であってはならない」 2023年11月、那覇市の公園で開かれた「県民平和大集会」で、来賓として挨拶した沖縄県の玉城デニー知事は、慎重に言葉を選びながらも、「沖縄を再び戦場にさせない」という集会の趣旨にそったスピーチで、会場から大きな拍手と声援を受けた。 沖縄では長年、米軍基地や沖縄戦の記述を巡る教科書の問題などに抗議するため、政党や労組の主導で数万人規模の「県民大会」が繰り返し開かれてきた。 ただ今回の集会は「県民大会」とは異なり、市民団体や趣旨に賛同する個人が手づくりで準備したもので、参加者は主催者発表で1万人だった。 この規模の集会に知事が出席して挨拶するのは異例で、日米安保体制や自衛隊の存在を基本的に容認する玉城知事が、いわゆる「反撃能力」の保有を含む「防衛力強化」には批判的な姿勢で臨むことを、県民に強く印象づける形になった。 ●県民感情との“ズレ”広がる ウクライナやパレスチナ自治区ガザ地区の惨状が伝えられるほど、沖縄ではせい惨な地上戦となった沖縄戦の記憶が呼び起こされ、県民の平和志向と反戦感情を強めている。 一方、東アジアの安全保障環境はいっそう厳しさを増しているとして、政府は沖縄県内の離島を中心に、ここ数年、自衛隊基地の新設や機能の強化を進める。 陸上自衛隊は2016年の与那国駐屯地、2019年の宮古島駐屯地に続き、2023年には石垣駐屯地を開設した。宮古島と石垣島には地対艦と地対空のミサイル部隊が配備され、当初は沿岸監視隊が中心だった与那国駐屯地にも今後、電子戦部隊とミサイル部隊を追加配備する方針だ。 防衛省は、「反撃能力」の保有に向けて現在開発している国産の「スタンド・オフ・ミサイル」を、予定より1年前倒しして、2025年度に配備する計画を公表した。具体的な配備先はまだ明らかにされていないが、やがて沖縄にも配備され、いわゆる「台湾有事」で攻撃目標にされるリスクが高まるのではないかとの懸念が、住民の間に広がっている。 ●離島自治体と県に温度差 一方、与那国町や石垣市など離島の自治体からは、ミサイルなどの攻撃から身を隠すシェルターの設置や、住民避難計画の詳細の確定を求める声のほか、有事の際の自衛隊や海上保安庁による使用に向け、空港や港湾の整備を国の支援で進める「特定重要拠点」への指定に期待する声も上がる。 こうした主に離島の自治体からの突き上げに対し、沖縄県は難しい立場に置かれている。 住民の安心や安全の確保は一義的な優先課題だとしても、「有事」に向けた備えの加速化が、かえって「有事」を呼び込むことにつながらないか、「国防」を名目としたインフラ整備が、健全な沖縄振興のあり方を変質させないか、といった行政としての懸念に加え、玉城県政の支持基盤が、防衛力強化だけでなく「有事」への備え全般に消極的な指向を持つことも、県の判断に影響しそうだ。 ●知事の求心力回復へ争点化も 米軍普天間基地の名護市辺野古への移設を巡る「代執行」訴訟で2023年12月に国が勝訴し、沖縄県が工事を止める手立てが乏しくなったことで、「辺野古移設反対」を最大の公約として掲げてきた玉城県政の求心力の低下が予想される。すでに対抗勢力からは、辞職や出直しの知事選を求める声も上がり始めた。 さらに2024年6月には現在与野党がきっ抗する県議会選挙が控えていて、玉城県政の「中間審判」的な意味合いも持つ。 そうした中、自衛隊と「有事」への備えを巡る諸問題で、政府と一線を画し、県民の平和志向に寄り添う方向へより踏み込むことで、玉城知事は県政継続の正当性をアピールすることができる。 2024年1月の台湾総統選挙を経た後の中台関係や、政府による「防衛力強化」の進め方次第では、「沖縄を再び戦場にさせない」というスローガンは今後、さらに県民的な広がりを見せるかもしれない。 玉城県政が、変化する状況の中でどのような路線を選択するのか、注目される。 |
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●岸田総理いよいよ万事休すか… 政治記者の間で噂される「4人の首相候補」 1/7
●透けて見える岸田総理の「自問自答」 筆者が勤務する在京ラジオ局では、毎年、年始に、政治ジャーナリストの後藤謙次氏が首相を相手に対談する1時間サイズの新春特別番組を放送している。 年末ぎりぎりに行う収録では、ときの首相に決まってリクエスト曲を尋ねているのだが、今回、岸田文雄首相が選んだ曲は、昨年のNHK大河ドラマ『どうする家康』のテーマ曲であった。 前回、岸田首相が「では、この曲をお願いします」と選んだのが、『鎌倉殿の13人』のテーマ曲。これも大河ドラマのテーマ曲であるため、無難なセレクションではある。 ただ、筆者には、鎌倉幕府初期と同様、権謀術数の渦巻く東京・永田町で、リーダーであり続けなければならない厳しさを、如実に表した選曲のように思えたものだ。 長年、ラジオ番組を制作してきた立場から言えば、ゲストが首相であれ、芸能人であれ、リクエストする楽曲には、その人の過去、現在、そして未来に対する思いが反映されることが多い。 たとえば、菅義偉氏が、首相や官房長官時代に選んだ『あゝ上野駅』という楽曲には、秋田から上京し、苦学を経て政治の世界に入り、首相まで上りつめた菅氏の思いが込められている。実際、菅氏自身、当時の特番内で、「これを聞くと原点を思い出すんですよ」と語っている。 その意味では、今回、1月2日に放送した特番で、岸田首相が『どうする家康』のテーマ曲を選んだ背景には、「政治資金問題での信頼回復」、「物価高を上回る賃上げの実現」、そして、「重要な選挙が相次ぐ国際社会の変化への備え」といった難題を前に、「どうする文雄?」と自問自答している姿があるように感じるのである。 ●ロッキード、リクルート事件も「辰年」に着手した まさに、今年は、岸田政権にとって、上記の3つが大きなハードルとなる。加えて、1月1日に発生した能登半島地震への対応は、何をさておいても急がなければならない課題だ。 「こんな重い空気の事務所開き(仕事始め)は初めてだ。もう今年の漢字は、早くも、『揺』とか『震』で決まった感があるような大変な1年になる」(自民党無派閥衆議院議員) 自民党内では、こんな声が聞かれるが、当の岸田首相は、1月4日、首相官邸で行った年頭会見で、次のように述べた。その骨子を整理しておこう。 (1)能登半島地震への対応に万全を期す。被災者の生活と生業をしっかり支えていく。 (2)世界は重要な選挙が予定されているので、日本にとって今年は重要な年になる。今後10年を決める分かれ道の年になる。 (3)まず求められるのは政治の安定、信頼回復。私自身が先頭に立ち、自民党の体質を刷新していく。政治刷新本部(仮)を立ち上げ、外部有識者の参加も得て、透明性が高い形で進めていく。 (4)物価上昇を上回る賃上げの実現を推進していく。中小企業の賃上げにも全力で取り組む。 これらは、能登半島地震に関するコメントが増えただけで、1月1日に首相官邸が発表した岸田首相の「年頭所感」や、岸田首相がラジオの特番で語った内容と差異はない。ただ、いずれも「言うは易し、行うは難し」である。 とりわけ、東京地検特捜部が昨年のうちに歴代の安倍派事務総長に対する聴取を終えた政治資金パーティー券裏金事件は、1月26日とみられる通常国会召集までがヤマ場になる。「日本最強の捜査機関」と呼ばれる東京地検特捜部でも、年末年始を返上してまで捜査を進めることはほぼない。 年末まで、安倍派幹部への聴取を続け、数千万円のキックバックを受けたとされる池田佳隆衆議院議員と大野泰正参議院議員の関係先や自宅を家宅捜索したところに、伊藤文規部長率いる特捜部の「派閥の会計担当者を立件するだけでは済ませない」、「在宅起訴や略式起訴では終わらせない」という気概を感じる。 今年は辰年だ。思い起こせば、特捜部がロッキード、リクルート両事件で強制捜査に着手したのは、1976年と1988年で、いずれも辰年である。しかも今年は、政党助成法を含む政治改革関連法が成立してから30年の節目に当たる。 安倍派にまつわる捜査で言えば、一度、安倍元首相が派閥の会長に就任した2021年11月以降、悪しき慣習となってきたパーティー券収入キックバックの廃止を指示しながら、安倍元首相の死後、誰がその指示を撤回させたのか、その人物を突き止め、巨額のキックバックを得ていた議員らとともに、逮捕・起訴まで至ることを願うばかりである。 ●「裏金事件」は踏み込み不足 一方、「政治の信頼回復に努める」と繰り返す岸田首相は、と言えば、踏み込み不足の感が否めない。 これから始まる通常国会では、来年度予算をめぐる審議とともに、政治資金規正法などの改正案が焦点になる。 「政治資金パーティーをめぐるお金の透明性を高める、それと合わせて、政治に関わる様々な課題について、新しい組織の中で詰めていきたい」 ラジオの特番でこのように語った岸田首相。党内基盤が強くない岸田首相には言えるべくもないが、たとえば、「自民党総裁として派閥の解消を議論する」と述べる強さがあれば、いくらかでも内閣支持率の回復につながったのではないだろうか。 政治資金規正法などの改正は、泥棒に刑法を改正させるようなものだ。政治家が、自身の首を絞めるような大胆な改正に着手することは考えられない。 今現在は、能登半島地震や1月2日に起きた羽田空港での日航機と海保機の衝突事故に有権者の注目が集まっているが、この先、政治家が誰も逮捕されず、政治改革も不十分となれば、岸田政権はますます尻すぼみになっていくことだろう。 ●「3・6・9」危機が待ち受ける 今年は9月に自民党総裁選挙を控えている。もともと、総裁選挙がある年は、来年度予算案の採決を迎える3月、通常国会の会期末となる6月、そして、総裁選挙が実施される9月に政局となることが多い。 岸田首相の場合、能登半島地震が発生するまでは、自民党内で、 「予算の成立と引き換えに退陣もあり得るのでは?」 「その前に、麻生太郎副総裁あたりが、岸田首相に国賓としてアメリカを訪問させ花道を作るのでは?」 との見方があった。当面は、能登半島地震で被害を受けた地域への支援が最優先されるため、岸田首相の退陣につながりそうな動きは下火になるだろうが、永田町の一寸先は闇だ。 政治資金パーティー券裏金事件で、何人か自民党の現職国会議員が逮捕され議員辞職することになれば、4月28日に行われる衆議院島根1区補選(細田博之前衆議院議長の死去に伴う補欠選挙)に加え、複数の選挙区で補選が実施されることになり、その結果しだいで「岸田降ろし」に拍車がかかることも想定される。 では、政局となった場合、「ポスト岸田」は誰が最有力となるのだろうか。 政治記者の間で名前が挙がるのは、国民的に人気がある石破茂元幹事長や河野太郎デジタル担当相、保守層の票を集めやすい高市早苗経済安保担当相、そして、安定感があり語学も堪能な上川陽子外相といった面々である。 当然ながら安倍派は1回休みだ。かと言って、無派閥の誰かが推される可能性は低い。それほどまでに、政策集団と言いながら、実質はカネと権力でつながる派閥の力は強い。いくら国民に人気があり、保守層受けが良くても、安倍派、麻生派、茂木派、それに岸田派の主流4派が乗れる候補でないと総裁、総理にはなれない。 これは筆者の憶測の域を出ないが、岸田派の上川外相の可能性は残るとして、年齢で言えば40代から50代前半で閣僚経験もあって、いくつかの派閥が納得して推せるような人物が担ぎ出されることになるかもしれない。 もっとも、岸田首相は、安倍元首相らと比べ、あくが強くない分、反発を受けにくい。麻生副総裁ら重鎮が、「岸田でいい」となれば、再選される目もある。 ●政治が流動化している場合ではない日本 1月13日、台湾総統選挙が行われるのを皮切りに、11月5日のアメリカ大統領選挙まで、国際社会は選挙イヤーとなる。 台湾の立法府委員(国会議員)で民進党の郭国文氏は、先日、台北で筆者に、「中国の動きを考えれば、台湾総統選挙は日本に大きな影響を与える選挙になります。是非、関心を持っていただきたいです」と語っている。 選挙は、蔡英文総統の後継で中国とは距離を置く民進党・頼清徳氏と、中国寄りの国民党・候友宜氏のいずれかが勝つ可能性が高い。 筆者は、頼氏が勝てば、台湾は第2のウクライナになるリスクが高まり、候氏が勝てば、第2の香港と化す恐れがあるとみているが、どちらにしても日本への影響は避けられない。 アメリカ大統領選挙でも、トランプ前大統領が共和党の予備選挙や党員集会を勝ち抜き、本選でもバイデン大統領を破って返り咲いた場合、在韓米軍撤退やウクライナ支援停止に舵を切りかねない。そうなれば、国際社会の潮目が一気に変わってしまう。 そうなると、ほくそ笑むのは選挙がない中国や北朝鮮であり、大統領選挙はあってもプーチン一択しかないロシアである。 「どうする岸田文雄?」と自問自答している暇はない。大河ドラマ風に言えば、能登半島地震の被災地支援と政治改革を断行して『光る君』となれるのか、それとも表舞台から去るのか、注目の1年が幕を開けた。 |
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●岸田首相、能登半島地震「逐次投入」批判いとわず矢継ぎ早に対策 1/7
能登半島地震は8日で発生から1週間を迎える。1日の発災直後から岸田文雄首相が前面に立ち、一部野党による自衛隊の「逐次投入」との批判もいとわない姿勢で対応に当たった。ただ、道路の復旧など輸送面の課題は解消されておらず、被災者の避難生活の長期化が懸念される。今後も岸田政権の危機対応が問われる事態が続く。 「やるべきことは山積している。やれることはすべてやるとの姿勢で全力で進めてほしい」 首相は6日連続で開かれた7日の非常災害対策本部会議でこう訴え、救命救助、孤立状態の解消、水や電気などのライフライン確保や復旧を急ぐよう指示した。その後、記者団対し、今後の重点的な対応として、寒さ対策のための燃料や毛布などを確保していく考えを示した。 これに先立つ7日放送のNHK番組で首相は、これまでの対応について「まずは救命救助、並行して避難所物資などの支援に取り組んだ。今後、切れ目なく復興・復旧、生活、生業の再建に取り組む」と説明。9日には経費として令和5年度予算の予備費から47億4千万円の支出を閣議決定するなど対応を急ぐ。 自衛隊は1日夜から救命救助や生活支援、航空機による消防隊員、警察官を含む応援部隊の輸送支援、被害状況の情報収集などにあたった。2日には陸海空自による最大1万人規模の統合任務部隊を編成し、7日時点で約5900人を投入している。 自衛隊が小出しの「逐次投入」になっているとの批判もあるが、政府高官は「寸断された道を開き、人を増やしてやってきた。必要なところで必要な人員を投入している」と反論する。 道路の復旧を急ぐ一方で、渋滞解消のために自家用車の利用自粛を呼びかけ、必要な物資の輸送を進める。また、石川県による道路交通法に基づく交通規制を国として支援することも決めた。 首相は6日、避難生活の改善を図るため、避難所のプライバシー確保に加え、被災地外の宿泊施設を自治体が借り上げ避難所として活用するよう関係省庁に指示した。 今後に向け首相周辺は「日々新たに出てくる課題に一つ一つ対応していくしかない」と話している。 |
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●岸田内閣の支持率27.1%で過去最低更新 不支持率も過去最高 JNN世論調査 1/7
岸田内閣の支持率が政権発足後過去最低だった先月の調査から、さらに1.8ポイント下落し、27.1%だったことが最新のJNNの世論調査でわかりました。不支持率も先月の調査から2.4ポイント上昇し、70.4%で過去最高となりました。 また、政党支持率では、自民党の支持が前月の調査から1.0ポイント上昇し、29.1%、日本維新の会は0.8ポイント下落し、4.8%、立憲民主党は0.3ポイント上昇し、5.5%でした。 |
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●初の逮捕者、自民に衝撃 震災さなか、首相対応に追われる―派閥裏金事件 1/7
自民党安倍派などのパーティー収入を巡る政治資金規正法違反事件は同派の池田佳隆衆院議員が逮捕される事態となり、党内に衝撃が広がった。政権へのダメージを和らげるため、自民は池田議員を直ちに除名。岸田文雄首相(党総裁)は能登半島地震の対策会議をこなしつつ、対応に追われた。 「重く受け止めている。池田議員は除名する方針とした」。首相は7日、首相官邸での非常災害対策本部会議の後、防災服姿で記者団に自民の対応を説明。議員辞職を求める考えはないか問われたが、「とりあえず除名方針を確定した。党として決めている方針は以上だ」と語るにとどめた。 今回の事件での逮捕は初めて。岸田政権では昨年9月の秋本真利、同12月の柿沢未途両衆院議員=ともに自民離党=に続く逮捕者だ。党内には在宅捜査にとどまるとの見方もあっただけに、党幹部は「打撃は避けられない」と指摘。閣僚経験者の一人は「政権立て直しは難しい」と語った。 安倍派では池田議員と同様に数千万円規模の裏金化疑惑のある大野泰正参院議員の関係先も東京地検特捜部による家宅捜索を受けており、松野博一前官房長官ら「5人衆」をはじめとする派幹部・ベテランも任意で事情を聴かれた。二階派の二階俊博会長らが聴取されたことも分かっている。 待ったなしの震災対応に加え、首相は事件の展開にも備えなければならない状況だ。自民関係者は「捜査がどこまで広がるかが焦点だ」と戦々恐々。閣僚の一人は「ここまでくると派閥幹部立件も視野に入れなければいけない」と身構えた。公明党からは「大変なことになった。早く政治改革を打ち出した方がいい」(関係者)と自民に議論加速を促す声も出ている。 野党は勢いづいている。立憲民主党の泉健太代表は千葉県市川市で記者団に「由々しき事態だ」と指摘。「ここに至るまで首相が指導力を発揮してこなかったことも問題だ。除名も後追いだ」と批判し、裏金疑惑が浮上している全議員を早急に処分するよう求めた。 日本維新の会の音喜多駿政調会長はX(旧ツイッター)に「トカゲの尻尾切りで終わらせてはならない」と記し、検察当局は政治資金収支報告書の不記載・虚偽記載額の多寡にかかわらず立件すべきだと主張。共産党の小池晃書記局長は「国会には真相解明の責任がある。関係者の証人喚問は急務だ」と書き込んだ。 |
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●裏金で初の逮捕 自民に衝撃 1/7
自民党安倍派などのパーティー収入を巡る政治資金規正法違反事件は同派の池田佳隆衆院議員が逮捕される事態となり、党内に衝撃が広がった。政権へのダメージを和らげるため、自民は池田議員を直ちに除名。岸田文雄首相(党総裁)は能登半島地震の対策会議をこなしつつ、対応に追われた。 「重く受け止めている。池田議員は除名する方針とした」。首相は7日、首相官邸での非常災害対策本部会議の後、防災服姿で記者団に自民の対応を説明。議員辞職を求める考えはないか問われたが、「とりあえず除名方針を確定した。党として決めている方針は以上だ」と語るにとどめた。 今回の事件での逮捕は初めて。岸田政権では昨年9月の秋本真利、同12月の柿沢未途両衆院議員=ともに自民離党=に続く逮捕者だ。党内には在宅捜査にとどまるとの見方もあっただけに、党幹部は「打撃は避けられない」と指摘。閣僚経験者の一人は「政権立て直しは難しい」と語った。 安倍派では池田議員と同様に数千万円規模の裏金化疑惑のある大野泰正参院議員の関係先も東京地検特捜部による家宅捜索を受けており、松野博一前官房長官ら「5人衆」をはじめとする派幹部・ベテランも任意で事情を聴かれた。二階派の二階俊博会長らが聴取されたことも分かっている。 待ったなしの震災対応に加え、首相は事件の展開にも備えなければならない状況だ。自民関係者は「捜査がどこまで広がるかが焦点だ」と戦々恐々。閣僚の一人は「ここまでくると派閥幹部立件も視野に入れなければいけない」と身構えた。公明党からは「大変なことになった。早く政治改革を打ち出した方がいい」(関係者)と自民に議論加速を促す声も出ている。 野党は勢いづいている。立憲民主党の泉健太代表は千葉県市川市で記者団に「由々しき事態だ」と指摘。「ここに至るまで首相が指導力を発揮してこなかったことも問題だ。除名も後追いだ」と批判し、裏金疑惑が浮上している全議員を早急に処分するよう求めた。 日本維新の会の音喜多駿政調会長はX(旧ツイッター)に「トカゲの尻尾切りで終わらせてはならない」と記し、検察当局は政治資金収支報告書の不記載・虚偽記載額の多寡にかかわらず立件すべきだと主張。共産党の小池晃書記局長は「国会には真相解明の責任がある。関係者の証人喚問は急務だ」と書き込んだ。 |
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●安倍派池田衆院議員と秘書を東京地検が逮捕、党除名処分に−報道 1/7
自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーを巡る事件で、東京地検特捜部が7日、政治資金規正法違反の疑いで池田佳隆衆院議員(57)=比例東海=と秘書を逮捕したとNHKなど複数のメディアが報じた。岸田文雄首相は同日午後、逮捕を「承知している」と述べた。同問題では安倍派の現職国会議員が逮捕される事態に発展した。 NHKによると、池田議員は会計責任者だった政策秘書の柿沼和宏容疑者(45)と共謀し、2022年までの5年間に安倍派から約4800万円のキックバックを受けたにもかかわらず、自らが代表を務める資金管理団体「池田黎明会」の収入として記載せず、政治資金収支報告書にうその記載をしていた。 読売新聞8日付朝刊は、池田議員と同様に4000万円超に上る高額な還流を受けていた大野泰正参院議員(64)=岐阜選挙区=と谷川弥一衆院議員(82)=長崎3区=についても同法違反容疑で立件する方針を特捜部が固めたと報道。毎日新聞同日付朝刊は、両議員が容疑を認める意向を示していることが関係者の取材で判明したと伝えた。 ブルームバーグは東京地検と池田、大野、谷川各議員事務所に電話で連絡を試みたが、いずれも回答は得られなかった。 岸田首相は非常災害対策本部会議後に記者団に、池田議員の逮捕について「承知している」とした上で、「自民党所属の国会議員が逮捕されたことは、大変遺憾なことで重く受け止めている」と述べた。さらに池田議員を「除名する方針とした。党として強い危機感を持って政治の信頼回復に努めなければならないと改めて強く考えている」と発言した。 共同通信によると、安倍派は池田議員の逮捕を受け、「関係者の皆さまに多大なご心配とご迷惑をおかけし、心よりおわび申し上げます」との談話を発表した。引き続き捜査に真摯(しんし)に協力するとしている。自民党にコメントを求める電話をしたが、つながらなかった。 岸田首相は、最大派閥である安倍派の幹部を要職に起用することで政権基盤の安定を図ってきた。裏金化の疑惑を受けて松野博一前官房長官を含む全員を交代させたが、内閣支持率は21年10月の政権発足後の最低を相次ぎ記録。安倍派現職議員の逮捕は岸田政権に影響を及ぼす可能性がある。 信頼回復への取り組みが求められる中、岸田首相は1月4日の年頭記者会見で、自民党内に総裁直属の政治刷新本部を設置すると発表。外部有識者も含めて政治資金の透明化に向けた議論を進め、1月中にも中間取りまとめを行う方針も示した。 特捜部は安倍派「5人衆」と呼ばれる松野氏、西村康稔氏、高木毅氏の歴代事務総長と萩生田光一氏、世耕弘成氏のほか、派閥の座長を務める塩谷立氏からも任意で事情を聴いたと国内メディアが報じていた。政治資金規正法上、収支報告書の作成・提出義務がある同派の会計責任者は還流分の不記載を認めており、特捜部は同法違反容疑での立件を検討していたという。 国内メディアが行った直近の世論調査によると、岸田内閣の支持率はいずれも10−20%台に落ち込み、大半で12年12月に自民党が政権復帰して以降の最低を更新。一連の問題を受けて岸田首相の責任や指導力を問う声が強まっている。自民党の不支持率も上昇しており、派閥の解消を求める声も多い。 |
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●能登半島地震の死者168人に 2次避難、降雪で一部延期 1/8
最大震度7を観測した能登半島地震は8日で発生から1週間となった。石川県内で午後2時までに168人の死亡が確認され、連絡の取れない安否不明者は323人。約400の避難所に約2万8千人が避難する。県は被災者を県内外のホテルや旅館などに移す「2次避難」を本格化させたが、行き先が決まるまでの一時滞在場所での受け入れを雪の影響で一部延期した。 死者は輪島市と珠洲市で各70人、穴水町18人、七尾市5人、志賀町と能登町が各2人、羽咋市1人。甚大な被害が出ている輪島市や珠洲市を中心に3300人以上が孤立状態にある。 インフラの復旧は進んでいない。石川県内で約1万8千戸が停電し、5万9千戸以上が断水している。滑走路が損傷した輪島市の能登空港は24日まで閉鎖される見通し。 被災地では雪が降り、8日午前8時時点で珠洲市13センチ、七尾市12センチ、輪島市9センチの積雪を記録。冷え込みも厳しく、朝の最低気温は七尾市で氷点下2・4度を観測した。 輪島市では地滑りの兆候などが見つかり新たに避難指示が出された。県は雨や度重なる地震で地盤が緩んでいるとして注意を呼びかけた。 避難所では低体温症などへの注意が必要となる。新型コロナウイルスの感染もみられ、断水や物資不足の中で感染防止を迫られている。一部自治体では、民間賃貸住宅を借り上げて無償で提供する「みなし仮設住宅」の受け付けが始まっている。 県も県内外の宿泊施設に被災者を移す2次避難の開始を見据え、一時滞在場所として金沢市の運動施設を確保。定員は約500人で8日から受け付けを開始した。ただ、降雪で道路状況が悪化した輪島市と珠洲市などの被災者については受け入れ延期を決めた。 |
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●能登半島地震、石川県の死者168人に 安否不明者も大幅増 1/8
石川県は8日、能登半島地震の県内の死者が168人になったと発表した。 石川県の8日午後2時時点の集計では、安否不明者は323人。前日から大きく増えた。地震発生から1週間たった今も捜索活動が続いている。 ただ、被災地では悪天候が救助活動の妨げとなっている。大雨と雪による土砂崩れや建物倒壊への警戒が呼びかけられている。 死者の大半は、被害の大きかった輪島市(70人)と珠洲市(同)で確認されている。 死者は前日午後2時集計の128人から40人増えた。 安否不明者も前日同195人から大幅に増えた。輪島市が前日同86人から281人に急増。そのほか、8日午後2時時点で珠洲市(29人)、金沢市(5人)、津幡町(3人)などとなっている。 ●孤立状態の被災者も多数 マグニチュード7.6、最大震度7の地震は元日の夕方に発生。能登半島で多くの建物を倒壊させ、大規模な火災を引き起こした。 道路も甚大な被害を受け、石川県によると8日時点で、県内で3300人以上が孤立・要支援状態にある。緊急に開設された避難所で生活している人は約2万8000人に上っている。 安全上の理由などから自宅にとどまることができない被災者に対しては、自衛隊などが食料、水、毛布などの物資を届けている。 防衛省は7日、救援活動の支援のため自衛隊員約6000人を派遣したと発表した。 防衛省はまた、生存者発見に重要とされる「災害発生から72時間」が過ぎてはいるものの、救助を必要としている人がまだいると信じているとし、救出活動を続けるとした。 奇跡的な救出もみられる。珠洲市では地震発生からおよそ124時間たった6日夜、倒壊した住宅から90代の女性が救け出された。 被害が最も大きかった地域では、さらなる地震が続く中、警戒を続けるよう人々への呼びかけが行われている。 気象庁によると、1日から8日午後4時までに観測された震度1以上の地震は1221回に上っている。 日本は世界で最も地震活動が活発な国の一つ。能登地方では2020年末から活動が増えており、2023年末までの3年間で震度1以上の地震が506回観測されていた。 |
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●能登半島地震1週間 被災地 積雪による建物倒壊 低体温症に注意 1/8
最大で震度7を観測した能登半島地震から8日で1週間ですが、能登地方ではいまだ活発な地震活動が続いています。 被害が大きかった能登半島では大雪のピークは過ぎましたが、相次ぐ地震で損傷を受けた建物では積雪の重みによる倒壊などに十分注意が必要です。 被災地では冷え込みが厳しく、ほとんど気温が上がらない見込みで、低体温症への対策も取るようにしてください。 ●大雪の影響、建物倒壊などの被害に注意を 能登半島地震で激しい揺れを観測した石川県をはじめ、北陸や新潟県では、上空の寒気の影響で局地的に雪が降りました。 石川県内の午後2時現在の積雪は珠洲市で12センチ、七尾市で10センチ、輪島市で8センチなどとなっています。 能登半島など北陸の大雪のピークは過ぎましたが、相次ぐ地震で損傷を受けた建物は積雪の重みで倒壊するおそれもあり、十分注意が必要です。 能登半島では地震の影響で各地で道路がひび割れたり陥没したりしていますが、路面が凍結しているところもあり、車を運転する際にはいっそうの注意をしてください。 雪はほぼやみ、晴れ間がのぞいているところもありますが、9日から10日にかけて能登半島などで再び雨が予想され、土砂災害やなだれなどには引き続き十分注意が必要です。 ●低体温症に注意を 避難生活の長期化や環境の悪化で健康への影響が懸念されている中、石川県では冷え込みが厳しくなっています。 8日朝の最低気温は七尾市でマイナス2.4度、輪島市でマイナス0.1度と氷点下の寒さとなりました。 日中も気温はほとんど上がらず、最高気温は、珠洲市と羽咋市、志賀町、宝達志水町で4度、輪島市と七尾市、穴水町、能登町、中能登町で3度などと予想されています。 過去の地震では避難生活の中で命を落とす災害関連死が多く発生しています。 低体温症に十分注意して、家族や周りに体調を崩している人がいないか声をかけあい、できるかぎり暖を取って定期的に体を動かすなど対策を心がけてください。 ●珠洲市中心部 雪は足首ほどの高さに 7日から断続的に雪が降り続けていた珠洲市では、8日朝、一面に雪が降り積もり、市の中心部では足首ほどの高さにまで達していました。 今回の地震で斜めに傾いた電柱や倒壊した建物の屋根にも厚く積もっています。 中心部の幹線道路はすでに除雪作業が行われていて、車がスピードを落としながら走行していますが、通りから入った住宅街の細い道路は除雪されていません。 ガソリンスタンドでは早朝から複数の車が給油のために並んで待つ中、従業員が雪かきをしている姿も見られました。 ●震度1以上の揺れ 1219回 能登地方やその周辺を震源とする地震活動は活発な状態が続き、震度1以上の揺れを観測した地震は、8日午後1時までに1219回にのぼっています。 気象庁は今後1か月程度は最大震度5強程度以上の揺れに注意するよう呼びかけています。 |
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●「能登震災」から早や1週間/岸田官邸機能せず/林官房長官は報告待ち 1/8 支援遅れは「もはや人災」/「災害関連死」多発で支持率低下も 元日に能登地方を襲った能登半島地震は最大震度7を記録し、甚大な人的・物的被害をもたらした。その翌日には羽田空港の滑走路上で、被災地向けの支援物資を積んだ海上保安庁機と日航機が衝突し、海保職員5人の命が奪われる悲惨な事故も発生した。波乱の年明けを迎えた中で、岸田文雄首相のあまりにもお粗末な災害対応に批判の声が急速に高まっている。 自民党関係者は「政治資金パーティーをめぐる裏金問題で支持率が急低下した岸田政権にとって、今回の能登半島地震に正面から向き合えば、国民の支持を取り戻す機会にもなり得た」と指摘する。だが、震災から早や1週間が経過しても稚拙な対応ばかりが浮き彫りになり、災害ボランティアの受け付けすら整備できない有り様だ。被災地では「支援があまりにも遅すぎる」と政府に対する怒りが広がっている。「なぜ、ここまで災害対応が遅いのか。人命に …… |
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●能登半島地震、東日本大震災のような「復興増税」が出てくる余地はない 1/8
●復興予算はどう調達されるのか 元日に能登半島地震、2日に羽田空港事故と2日続きで、激動の年を暗示するような事象が発生した。亡くなられた方々のご冥福を、心よりお祈りしたい。 さて、今年は1月台湾総統選、3月ロシア大統領選、4月韓国総選挙、6月欧州議会選挙、11月米国大統領選と世界中で政治が動く可能性がある。日本でも総選挙が行われるかもしれない。 その上で、能登半島地震の復興・復旧予算はどのように調達されるのか、東日本大震災の時のような増税につながる動きはないか、論じたい。 岸田首相が「予備費で40億円出す」と発言したところ、かつて東日本大震災では与党であったはずの野党の面々から「少なすぎる」と批判した。これは筆者も驚いた。 これは実務をやっていれば直ぐわかることだが、とりあえずの財政支出であり、全体の復興予算でない。当初段階では、人命救出が最優先であるために被害の全容を把握できない。被害の全容がわかるのは当分先であるので、現段階では復興予算を正確に見積もれない。 気象庁の震度データベースで1919年以降、震度7を記録したものを調べると、1923年9月1日関東大震災(当時首相は不在)、1995年1月17日阪神淡路大震災(当時村山富市首相)、2004年10月23日新潟県中越地震(当時小泉純一郎首相)、2011年3月11日東日本大震災(当時菅直人首相)、2016年4月14、16日熊本地震(当時安倍晋三首相)、2018年9月6日北海道胆振東部地震(当時安倍晋三首相)が起こっている。 今回の能登半島地震は震度7なので、これらと並ぶ大きな地震だ。これらの中で、阪神淡路大震災と東日本大震災の被害は群を抜いて甚大なものとして、今回の能登半島地震は熊本地震クラスと言えるだろう。 ●数千億円の予算規模に 熊本地震からの復興復旧で国の予算としては、2016年5月の1次補正で7780億円、8月の2次補正で4139億円(ただし予備費減額4100億円)、12月の3次補正で464億円(ただし予備費減額500億円)が計上されている。今回もおそらく数千億円程度だろう。 なお、1995年阪神淡路大震災のときも、2月に1兆223億円の補正予算が組まれている。2004年新潟県中越地震では、12月に1兆3618億円の災害対策費などの補正予算が組まれた。2018年北海道胆振東部地震では、他の豪雨災害などとともに10月に9356億円(地震への対応は1188億円)の補正予算が組まれた。 地震災害では、災害復旧事業としてまずは国の予備費が使われる。災害復旧事業とは、災害でこわれた道路や河川などの公共土木施設を復旧することだ。この作業は以下のように国ではなくまず都道府県で行われる。 まず、都道府県土木事務所の職員が現地を行き、また市町や地元の代表者などから報告された被害を確認する。市町の管理する道路や河川の被害については、それを管理している市町の職員がチェックしていく。 次にその被災した場所をどのように復旧するか、復旧にはどれくらいのカネが必要かを計算する。災害復旧事業は基本的に国の負担により行うものであるので、国に申請する。 地方自治体からの申請に対して、国の査定が行われる。査定は、国の防災関係の職員と予算関係の職員が一緒になって現地に行き、被害の状況や復旧の方法、復旧に必要な予算などを確認し行われる。地方自治体職員はそのときに被災した原因や復旧する方法を決めた理由などを説明する。その確認の結果、概ね復旧方法(工法)や復旧費用が決定されていく。 ●復興増税の余地はない もちろん、予備費で賄えない場合には補正予算が組まれる。 熊本地震の時にも、こうした作業は1ヵ月間程度を要したので、今回も同じ程度の期間を要するだろう。今年度予算の予備費は5000億円、まだ4600億円残っているし、来年度予算の予備費も既に決まっている政府案では5000億円あるので、その範囲内になるだろう。まさに予見しがたい事態に対処するための予備費の対象になる。 もっとも、予備費を今回の能登半島地震で使ってしまう可能性もあるので、今年1月に開かれる通常国会に提出する来年度予算の予備費5000億円を1兆円に代えて提出するか、通常国会の冒頭で、今年度補正予算を予備費5000億円増で組んでおくなどの調整が必要だろう。 これまでも震度7クラスでは補正予算が1ヵ月程度後に組まれているので、後者のほうが望ましいが、いずれにしても、税収の上振れもあり、この程度の規模の補正予算では、とても復興増税なんて話が出てくる余地はないことは強調しておきたい。 自民、公明、立憲民主、日本維新の会、共産、国民民主の6党は5日の党首会談で、所属国会議員による能登半島地震の被災地視察について、当面自粛することを申し合わせた。 災害時に迷惑なのは、(1)目立ちたいだけの無能な政治家、(2)非常識なマスコミやYOUTUBER、(3)物見遊山な一般人だ。ところが、この時期にこうした常識を持ち合わせず、現地入りしたれいわ新選組の山本太郎代表もいた。 ●やってはいけない行動に出た者も 能登半島には志賀原発がある。2011年度以降、1号機、2号機とも発電を行っていないが、この原発をめぐり、火災が起きたというデマが氾濫した。よりによって、それを鳩山由紀夫元首相がポストした。 北陸電力の公表では、そうした事実はない。また、一部反原発活動家が、震災直後に志賀原発に問い合わせをしたが、こうした行動はやってはいけないものだ。 なお、北陸新幹線はすぐに普及したので、被災地の周辺のインフラが機能しているところもある。ただし、能登半島のいたるところの道路は寸断されたままだし、海岸線の変形により港湾も使えない状況だ。 次に羽田空港で起きた事故だ。これは何とも痛ましい事故である。羽田空港でJAL機と海保機が滑走路上で衝突したが、海保機は能登半島地震の救援物資輸送のためのフライトだった。 この事故で、海保機で5名が殉職したが、不幸中の幸いとして、JAL機の乗員乗客379人全員は無事緊急脱出できた。 空港管制と機長との交信はほぼ公開されており、事故直後から、JAL機には着陸許可が下りていたが、海保機が待機指示を待つのみだったのはすぐにわかった。 もっとも、これらの情報は公的なものでないので、交信記録以外の情報も含めて公的機関から公式情報が出てくるのは時間の問題だ。 ●岸田政権の対応はまずまず ただし、海保機が滑走路に進入したときに警戒が出ていたはずだが、それを管制がなぜ見落としたのかなど、疑問点はまだ残っている。 いずれにしても、滑走路上の事故では十分な記録がなされているはずだから、それにそって事故の再発防止原因の究明が進むだろう。 いずれにしても、今年のスタートから前途多難であるが、岸田政権の対応はまずまずだ。1月の通常国会でしっかりとした補正予算を打ち出せれば、低下した政権支持率も反転する可能性もある。 |
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●どうする立憲!? 自民“崩壊”の危機で野党第一党はどう闘うのか? 1/8
自民“崩壊”の危機の中、なぜ高まらない?野党第一党「立憲民主党」政権交代への期待の声。 自民党支持率が下がる中、上向くことがない「立憲」の支持率。2009年の政権交代の時と、今の野党第一党は何が違うのか?ポスト泉は誰なのか?立憲のイマを徹底解剖する。 ●「今こそ政治を変えるとき」なのに・・・上向かない立憲支持 「今こそ政治を変えるとき」 立憲民主党の顔・泉健太代表が力強く、候補者を募集するホームページでこう訴えている。しかし、最大の問題は当の立憲民主党に対する国民からの支持が高まらない点だ。 NNNと読売新聞の2023年12月の最新世論調査でも立憲の支持率は5%と伸び悩んでいる。さらに、2023年4月から11月までは野党第二党の日本維新の会に後塵を拝していた。 ある立憲幹部は「岸田内閣の支持率が下がっても、立憲への支持に繋がらない」と嘆いていた。なぜ、期待が高まらないのか?3つの視点から、立憲民主党の現在地と今後の展望を分析する。 ●【分析:その1】「野党分断」の1年だった2023年 2022年は、日本維新の会と国会で共闘するなど「野党協調」で成果が出た年だったが、23年は立憲が「与党との対決」だけでなく「野党との協力」にも悩み、「野党分断」の1年になってしまった。ポイントとなる2つの局面があった。 1つ目は、6月の内閣不信任決議案をめぐる対応だ。 立憲が対決姿勢を示すために提出に踏み切った一方で、維新・国民は反対にまわり、野党の足並みは崩れた。その背景には、通常国会の戦略をめぐり、立憲が日程闘争を含めた「全面対決路線」をとった事に対し、維新側が「昭和のやり方」などと批判したことがあった。ある立憲幹部は「野党がバラバラになったせいで、国会が与党ペースになってしまった」と振り返る。 2つ目は、臨時国会の補正予算案をめぐる態度だ。 秋以降、立憲は岸田内閣が打ち出した「所得減税」が不評だったことなどもあり、攻勢を強めた。維新との連携では、いわゆる“統一教会”の被害者救済をめぐる法律では「共闘」が進んだが、補正予算をめぐっては反対した立憲に対して、維新・国民は賛成にまわった。「野党分裂」になった形だ。ある立憲幹部は「野党が一致結束して、攻めきれなかった」と不満を漏らした。 ●【分析:その2】 2009年「政権交代」と今…違いは「受け皿」 自民党内では、今の危機的状況について「政権交代前の09年に似ている」と指摘する声が多く出ている。 2023年11月の世論調査では内閣支持率が24%になった。これは12年の政権復帰以来で最低の数字だ。2023年12月には自民党の支持率が28%となったが、30%を下回るのは麻生内閣以来14年ぶりだ。内閣と自民党の支持率が下がる中、09年との違いは野党第一党の支持率が上がらないことだ。 政権交代がおこった09年8月の「民主党」の政党支持率は32.1%。一方、最新(23年12月)世論調査での「立憲民主党」は5%。一番多いのは「支持政党なし」の48%で、他に野党で5%をこえる政党はない。 民主党時代に政務3役を経験したある立憲幹部は「あの頃の民主党には勢いがあった。今は野党の数が多く、立憲と維新が野党第一党争いをしている状態では、国民が求める受け皿になれていない」とこぼす。 ●【分析:その3】 ポスト泉は? 来年の代表選の行方 野党としての存在感があがらない立憲民主党。立憲の議員を取材する中でその原因としてよく出てくるのが、トップ泉代表への不満の声だ。 泉代表は就任から丸2年を迎えるが、党勢が拡大しない原因についてトップの「指導力不足」「発信力不足」を問う意見が少なくない。 ●“安定重視” 名前が挙がる重鎮2人 では、「ポスト泉」は誰なのか。取材でまず出る名前は重鎮2人、枝野幸男前代表と野田佳彦元首相だ。 枝野氏は旧・立憲民主党を立ち上げた「創業者」。知名度も高く、今年、「枝野ビジョン」の改定版を発表するなど存在感を示している。しかし、枝野氏は21年の衆院選で敗北し、代表を辞任した経緯がある。党内からは「共産党と関係が近いイメージから、他の野党との協力がしにくくなる」「時計の針が戻ってしまう」という厳しい意見も根強い。 一方、待望論が出ているのが元首相の野田佳彦氏。安倍元首相の追悼演説を契機に与野党から再評価する声が出ていて、ある立憲幹部は「野田氏は増税を成し遂げた首相であり、それは自民党にとっても一目置かれること。経験と人柄から、他の野党との関係もうまくやれる」と評価する。中堅・若手からも「野田氏が代表になって立憲を立て直してほしい」という声も少なくない。 ●“中堅躍進” 代表選を見据えるエース 中堅議員で名前があがる「ポスト泉」は誰か。 まずは、知名度も高く待望論が強いのは、前政調会長の小川淳也氏。密着したドキュメンタリー映画が話題となり、前回の代表選では泉代表とも争った。ある立憲幹部は「枝野、野田ではフレッシュ感がない。若くて、情熱があり、ビジョンを持つ小川氏しか次のリーダーはいない」と話している。この1年は目立つ存在ではなかったが「代表選に備えあえてじっとしていた1年だった」と立憲若手は分析する。 もう1人の有力候補は、同じく代表選で泉代表と争った西村智奈美氏。立憲が力を入れる、いわゆる“統一教会”問題対策の責任者を務め、救済法では与党側との交渉担当者として汗をかいた。西村氏を推す中堅議員は「彼女はかなり肝が据わっている」、別の立憲議員は「女性リーダーへの渇望感は高い」と、代表へ期待する声があがっている。 もちろん、泉代表自身も次の代表選では候補者の1人だ。ある中堅議員は「代表は次の衆院選で目標の150議席獲得を目指す」と意気込む。そして、「代表選までに解散総選挙がなければ、泉代表の続投だろう」(周辺)と“泉おろし”の動きを牽制する。 ●どうする立憲!? 次のカギは「政治改革国会」 2024年は立憲にとっても勝負の1年となる。1月下旬から始まるとみられる通常国会は、冒頭から「政治改革国会」になるとみられる。ここで、立憲が政府与党をどう追及し、政治改革に向けた姿勢をどこまで示せるかが問われている。 立憲は、すでに提出している法案をベースに、企業団体献金禁止や収支報告書のネット公開の義務化などを求める方針だ。ある立憲幹部は「企業団体献金禁止を自民党にのませるのは高いハードルがある。一方、小幅な改正に終われば『野党も保身に走った』と厳しく批判される。どこまで攻めるのか難しい」と頭を悩ませる。 「政治とカネ」で最大の危機を迎えている、岸田自民党。立憲民主党が「自民党のピンチ」を「チャンス」として引き寄せ、さらに、国民の支持に繋げることができるのか。立憲民主党にとっても大きな1年となりそうだ。 |
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●若狭勝弁護士 自民裏金事件、池田議員の今後を推測 1/8
元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士が8日、フジテレビの情報番組「めざまし8」にVTR出演。自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーを巡る事件で東京地検特捜部が7日、政治資金規正法違反の疑いで衆院議員池田佳隆容疑者(57)=比例東海=と政策秘書の柿沼和宏容疑者(45)を逮捕したことに言及した。 岸田政権を揺るがす一連の事件で逮捕者が出るのは初めて。現職議員の逮捕に発展したことで、捜査は新たな局面を迎えた。特捜部は還流させた派閥側も調べ、裏金づくりの実態解明を本格化させる。 両容疑者の逮捕容疑は、共謀して2018〜22年、派閥から計4826万円の還流を受けたのに、その額を除いた虚偽の収入を資金管理団体「池田黎明会」の政治資金収支報告書に記入した疑い。安倍派の裏金は5年間で6億円近くに上る可能性があり、所属議員99人の中で池田容疑者側は高額だった。岸田文雄首相は「大変遺憾なことであり、重く受け止めている」と官邸で記者団に述べた。自民党は7日付で池田容疑者を除名処分にした。 若狭氏は、池田議員の起訴の可能性について「正式起訴で禁錮2年の求刑ではないか」と言い、「有罪なら執行猶予付き3年になる」と自身の見解を述べた。捜査のポイントとしては「還流金額が大きく、派閥内で誰がどのように関与しているかなど裏金システムに精通している可能性がある」とした。 |
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●れいわ山本太郎氏「現場を見ろ 安心させろ」 能登地震の課題指摘、提案 1/8
5日に能登半島地震の被災地に入ったことを報告していた、れいわ新選組の山本太郎代表は8日までに、自身のX(旧ツイッター)を更新し、現地の深刻な実態や、国や石川県に対する要望を4つの投稿に分けて長文で投稿した。 与党や主要野党が、当面の間の所属国会議員の現地視察を見合わせる方針を示す中、山本氏は「現場を見ろ。安心させろ」という項目も記し、現地の現実を確認して支援体制を構築すべきとの認識を訴えた。 山本氏は、甚大な被害が報告されている能登町、珠洲市に入ったとし「当事者の声を約二日間に渡り、様々聞きとりした」と投稿。その中で、岸田文雄首相を含む国会議員の現地入りが見送られていることへの思いを、被災者に聞いたとして「『意味がわからないんですけど』『どうしてですか?』『ヘリで来れば良いじゃないですか』との意見が相次いだ」と指摘した。 「総理や政治家が役人からの報告やテキストだけでわかった気になり被災地のことを決めていくことへの不安感ではないだろうか。この極限状態を前に、現場を自分の眼で見ずに知らずに政治決定を行えるというなら、AIが代行すれば良いのではないか?」とも指摘。「AIなら裏金問題や一部の者だけへの忖度も、権力維持のことしか考えない振る舞いもしないだろう」と、自民党の政治資金問題のさなかにもある政権与党を皮肉るような記載もあった。 岸田首相に対して「目の前で困っているのは血の通った人間で、この国に生きる大切な宝だ。総理の被災地訪問の見合わせに対して、現場を直接見て、被災者の声を聞いて、しっかり取り組むと約束をして欲しい、との声が多かった。心配するな。国がちゃんとやる、と能登半島で約束をして、不安の中にいる能登の人々を安心させていただきたい」と提案。被災地の実態を自身で確認して、不安を払拭(ふっしょく)させる対応を取るよう、強く求めた。 投稿は「以下、総理(@kishida230)県知事(@hase3655)に提案する。特に県知事には政府に強く要求いただきたい」と、岸田首相と馳浩県知事のXアカウントを記した上で書き出されていた。「大幅増員のプッシュ型支援」「ニーズを聞きとるではなく、支援メニューを示せ」「いつまでに出来るかの見通しを示せ」「最悪の事態を想定しているか」など、複数のテーマに沿って実態報告と提案を記した。 |
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●G7の主要国が指導力を失い、G20も機能しなくなった『Gゼロ状態』 1/8 なぜ世界で“リーダー不在”が広がっているのか 裏金問題などで国民の不支持は高まり、足元が揺らぐ岸田政権。しかし世界を見渡すと、アメリカ・バイデン政権やイギリス・スナク政権の支持率は低迷しており、G7の首脳たちも政権維持に汲々としている。 「確たるイデオロギーに基づいて国を司り、国際的なリーダーシップを発揮できる為政者は見当たらない」と指摘するのは経営コンサルタントの大前研一氏。いま、なぜ世界で“リーダー不在”が広がっているのか? 大前氏が解説する。 2024年の世界と日本はどうなるか? 残念ながら明るい展望は開けない。その理由は、リーダーシップのある指導者が世界にも日本にもいないことだ。 日本では、前号で指摘したように、岸田文雄首相が経済愚策を連発して内閣支持率が20%前後に落ち込んでいるにもかかわらず、それに代わる新リーダーは見当たらない。自民党の政治資金パーティー裏金問題もあって“日本丸”は羅針盤を失い、どこに向かっているのかわからない状況だ。 世界を見渡しても有力なリーダーはいない。 2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻に加え、2023年はイスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとの間でも戦闘が起きた。しかし、これを誰も止めることができない。国連は機能不全で存在意義がなくなっている。 従来なら“世界の警察官”を自任してきたアメリカがリーダーシップを発揮すべきである。ロシアのプーチン大統領の暴走にストップをかけ、ウクライナのゼレンスキー大統領を交渉のテーブルにつかせられるのはアメリカだけだろうが、実際は“武器商人”と化して火に油を注ぐだけだ。 イスラエル・パレスチナ問題も、1993年に当時のクリントン大統領の仲介によって、イスラエルのラビン首相とパレスチナ解放機構(PLO)のアラファト議長との間でパレスチナが国家を樹立してイスラエルとの「2国家共存」を目指す「オスロ合意」が成立したのだから、アメリカはイスラエルにパレスチナ国家の樹立を支援するよう求めて共存を実現しなければならない。しかし、どちらの戦争解決も、バイデン大統領の指導力では不可能だ。 国連も1947年に「2国家共存」を決議していながら、何も決められないでいる。パレスチナ自治区の紛争地域に国連軍を派遣するなど、やるべきことはたくさんあるはずだ。 ●ネット言論の拡大が影響? いま世界は、アメリカの政治学者イアン・ブレマーが2011年に指摘した「Gゼロ」(G7の主要国が指導力を失い、G20も機能しなくなった国際社会)の状態が、ますます加速して混迷を深めている。 G7の首脳は岸田首相とバイデン大統領だけでなく、イギリスのスナク首相もドイツのショルツ首相もフランスのマクロン大統領も指導力のない小粒なリーダーで、政権維持に汲々としており、いずれも“次”はなさそうだ。むしろプーチン、習近平、北朝鮮の金正恩のような国際秩序を攪乱する独裁者がいるだけに、「Gゼロ」どころか「Gマイナス」とも呼ぶべき状態になっている。 なぜ、このような“リーダー不在”が世界的に広がっているのか? その疑問を解消する明確な理由はわからないが、もし大きな原因があるとすれば、ネットやSNSの影響だろう。 ネットメディアやSNSの発達に伴い、既存のマスメディアとは異なる言論・情報空間が拡大して世界中で人々は賢くなっているが、その人たちの不満や怒りを集約化して受け皿になれるだけの政治家や政党はどこの国にも存在しない。 また、情報の拡散・共有が容易になったため、人々はネットメディアやSNSに自分の意見を投稿することでストレスを発散し、その空間の中で早々と不満や怒りを収めるという“熱しやすく冷めやすい”状況になっている。まさに「人の噂も75日」だ。このため、人々の関心は短期間で次の問題に移るようになり、そのスピードに政治は全く対応できていない。 さらに、世界は情報だけでなく、ライフスタイルも共通化している。たとえば富裕層の人たちは、欧米諸国であれアジア諸国であれ、自分たちの生活を妨害されない限り、政治には「我関せず」だ。 だから、どこの国でも政治家は選挙対策で人口の大多数を占める中間所得層以下の人々を対象にしたバラ撒き政策ばかり打ち出しているわけだが、それは結局、右傾化と財務の悪化を伴うポピュリズム(大衆迎合主義)でしかない。 1989年の冷戦終結後は「イデオロギーの終焉」と言われたが、いまや世界のどこにも確たるイデオロギーに基づいて国を司り、国際的なリーダーシップを発揮できる為政者はいない。だから「Gゼロ」が加速しているわけで、それは今後も続くだろう。したがって我々は当面、自分たちの生活防衛に徹しなければならない、ということになる。 |
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●「派閥とカネ」問題で問われる自浄能力 指導力の発揮が試される岸田首相 1/8
「防衛力の抜本的強化」や「次元の異なる少子化対策」など国家的な課題が山積する中、またしても「政治とカネ」「派閥とカネ」の問題が自民党を揺るがしている。国民の政治不信は頂点に達し、岸田政権の政治運営に赤信号が灯る。かといって野党に対する国民の失望も重なる。2024年はグローバル世界も先行き不透明で、企業や国民も必死に生き抜かねばならないときだけに、政治への怒りは強い。 ●「裏金」疑惑が直撃 自民党内に衝撃が走っている。党内の各派閥が例年開催している政治資金を集めるパーティーを巡り、収入を政治資金収支報告書に適切に記載していなかったとして、大学教授が告発したのだ。 政治資金規正法は政治活動が国民の不断の監視の下に行われるようにするため、政治資金に関する収支の公開と授受の規正を定めている。パーティー券については20万円を超えて購入した購入者・団体の名前や金額を収支報告書に記載しないといけない。 告発は購入者が支出を報告しているのに派閥側には収入の記載がないケースがあったとしている。2018年から21年までの収支報告書で総額約4000万円にのぼるとされる。 その内訳は、最大派閥の清和政策研究会(安倍派)が約1900万円だったほか、志帥会(二階派)約900万円▽平成研究会(茂木派)約600万円▽志公会(麻生派)約400万円▽宏池会(岸田派)約200万円─という。不適切な記載が常態化していたと受け止められても仕方ない。 自民党幹事長の茂木敏充はこうした状況を受け、それぞれの派閥の責任者に対し「収支報告書を適切に訂正すること。そして必要があれば説明し、再発防止に努めるように」と指示した。各派閥は相次いで報告書を訂正するなどの対応に追われた。 だが、それだけでは終わらなかった。安倍派が所属議員に課したパーティー券の販売ノルマを超えた分の収入を議員側にキックバックしていた疑惑が浮上した。収支報告書に記載されない「裏金」とされる。総額は約1億円に達するとみられ、東京地検特捜部は政治資金規正法違反(不記載・虚偽記載)容疑で調べているという。 自民党総裁で首相の岸田文雄は12月4日の党役員会で「政策グループ(派閥)の活動について、国民に疑念が持たれるとすれば遺憾であり、状況を把握しながら党としても対応を考えていく」と発言。茂木も役員会後の記者会見で「概要が把握できて問題点も明らかになってくれば、党として対応し、再発防止を図る取り組みを進めたい」と語った。 ●分裂する野党 自民党総務会長で近未来政治研究会(森山派)会長の森山裕は11月30日、岸田、茂木、副総裁の麻生太郎らと党本部で会談した後、派閥会合でこう語っていた。 「今後も色々な動きが続くと思う。今は自民党、岸田政権にとって極めて大事な時だ。一致団結して政権をしっかり支え、自民党の将来を間違いのない方向に持っていくことが大事だ」 岸田政権は物価高への対応で後手を踏み、政権浮揚の「切り札」として打ち出した所得税・住民税の定額減税も空振りに終わった。さらに、3人の副大臣・政務官の「辞任ドミノ」も起きた。森山の言葉通り、今度は「政治とカネ」の問題が自民党を直撃した。岸田にとって「弱り目に祟り目だ。政権運営に大きな痛手だ」(党中堅)といえる。 野党にとっては格好の「敵失」といえる。それにもかかわらず、岸田政権を厳しく追及し、追い込むだけの勢いはみられない。逆に野党間の足並みの乱れが露呈した。 立憲民主党などの野党は23年度補正予算案の国会審議で、自民党各派閥のパーティー券問題を巡り「毎年毎年、一定額が不記載になっている。組織的継続的と言わずして何と言うのか」などとただした。 それに対し、岸田は「報告を受けている範囲で『裏金』はなかった」といった答弁を繰り返し、議論が深まることはなかった。野党側の決定打を欠く、追及の甘さがあったといえる。 その結果、審議は混乱もなく淡々と進み、物価高対策を柱とした総額13兆円超の23年度補正予算は11月29日に成立した。採決では立憲民主党や共産党は反対したものの、日本維新の会と国民民主党は賛成に回り、野党が一枚岩でないことが鮮明になった。 日本維新の会は熱心に取り組む25年大阪・関西万博の会場建設費の一部が補正予算に盛り込まれていることから最終的に賛成に回った。国民民主党はガソリン税の一部を軽減する「トリガー条項」の凍結解除を与党と協議することを取り付けたためだった。 立憲民主党代表の泉健太は補正予算成立を受けて「万博、トリガーという弱みを握られて、予算に対し明確な意思表示ができなかった。大変残念だ」と語り、日本維新の会と国民民主党を牽制した。 さらに、岸田政権と対峙すべき野党勢力の溝が浮き彫りになる中で、国民民主党代表代行の前原誠司が党の方針に反発して離党届を提出した。そして、新党「教育無償化を実現する会」を結成することを表明。「非自民・非共産」勢力を結集させ、政権交代につなげる考えを明らかにした。 しかし、「前原新党」は同じ教育無償化を訴えてきた日本維新の会への合流を見据えた動きとされている。実際、前原は日本維新の会と事前に協議を重ねていたという。 国民民主党幹部は「仲間よりも他党と相談する。信念のない自分の就職活動だ」と批判した。今後、代表の玉木雄一郎らが自民党との連携を加速させるきっかけになりかねず、「前原新党は野党再編の起爆剤にはなりえない」との見方が支配的になっている。 野党勢力が分裂し、小政党化してしまっては、自民党との対立軸はぼやけてしまう。再結集が実現しなければ、政権交代などは絵に描いた餅に過ぎない。自民党が立ちすくむ中で永田町全体に閉塞感が漂っており、国民の政治不信が強まっていくことになる。 ●法改正の検討を 岸田はこれまで「政治の責任を果たすべく具体的な課題に向けて一つひとつ結果を出す」「先送りできない課題に臆することなくしっかり判断し、結果を出していく」などと訴えてきた。 岸田にとって、パーティー券問題が直撃した最大派閥・安倍派の影響力が弱まれば自分のやりたい政策を進めやすくなるだろう─。そんな見方も出ている。 だが、そう簡単ではない。多くの安倍派幹部が政権の主要ポストに就いているだけでなく、パーティー券問題が派閥単位の問題で収まらず、「党の体質だ」と冷ややかな視線がそそがれるからだ。 内閣支持率が過去最低にまで落ち込み、政権運営の「危険水域」とされる水準になっている一方で、自民党の支持率は比較的高い水準で推移してきた。それだけに、政党支持率まで急落することになれば、党総裁としての岸田の責任が問われることは必至だ。「遺憾だ」などと派閥任せの対応は許されない。 岸田は11月に入って、憲法改正や安定的な皇位継承など自民党を支える保守層が関心を寄せる課題に率先して取り組む姿勢をアピールしてきた。 臨時国会の答弁では、目標に掲げてきた「党総裁任期中の憲法改正実現」について、24年9月末の今任期中のことだと明言し、改憲論議を前進させる決意を打ち出した。政党支持率を意識して保守層をつなぎ留める狙いだとされる。 とはいえ、国民の支持を追い風にしなければ、「防衛力の抜本的強化」や「次元の異なる少子化対策」といった看板政策の遂行や、「デジタル行財政改革」などの大胆な改革断行はできない。特に国民投票で過半数の賛成が必要になる憲法改正は、そこに突き進むだけの「体力」と、国民の理解を得るための「信頼」は不可欠となる。 何度となく繰り返される「政治とカネ」の問題は、さかのぼれば自民党が下野し、「55年体制」が崩壊した1993年以前からあった。当時は選挙制度の変更や政党交付金の導入などの「平成の政治改革」につながった。 約30年が経ち、またしても「政治とカネ」「派閥とカネ」の問題の波紋が大きく広がった。与党内からは「抜け穴の多い政治資金規正法違反の罰則の強化をすべきだ」などの声が上がる。森山も5日の記者会見で「(政治資金規正法は)国民の皆さんに理解されるものでなければならない。その視点からの議論が必要だ」と述べ、法改正の可能性に言及した。 もっとも野党側にも危機感が募る。「自民党だけの問題ではない。政治不信の最たるものだ。政治家1人ひとりが真剣に考えないといけない」といった受け止めも広がる。 ●信なくば立たず 岸田は12月7日、首相官邸で記者団にこう語った。 「総理総裁の任にあるうちは派閥を離れるのが適切な対応であると考えた。私自身が先頭に立って、政治の信頼回復に向けて努力したい」 派閥パーティー開催を当面自粛することや、忘年会や新年会といった派閥の行事を自粛することを決めている。さらに、自身が率いる岸田派を離脱することで、中立的な立場で指導力を発揮しようと考えたようだ。 野党側は「自民党は徹底調査し、事実を明らかにしなければならない」(立憲民主党代表の泉健太)、「首相は自民党総裁でもある。責任は極めて重大」(共産党書記局長の小池晃)などと引き続き追及する構えだ。 だが、疑惑の徹底解明のためには、自民党との対立軸を明確に示すことができる強力な野党勢力の結束が必要となる。しかも、パーティー券問題が野党側に飛び火する可能性も否定できず、そうなれば国民の政治不信はピークに達する。 岸田は就任以来、最大の正念場を迎えている。国民の政治不信を払拭するため強力なリーダーシップを発揮すべきときといえる。 野党側は「自民党は徹底調査し、事実を明らかにしなければならない」(立憲民主党代表、泉健太)、「首相は自民党総裁でもある。責任は極めて重大」(共産党書記局長の小池晃)などと引き続き追及する構えだが、徹底解明のためには、自民党との対立軸を明確に示すことができる強力な野党勢力の結束が必要となる。 与野党とも、それができなければ、政治の自浄能力が発揮されず、永田町の閉塞感はますます強まることになる。 |
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●物価上昇を上回る賃上げ実現へ “実感伴う成果を” 岸田首相 1/8
物価の上昇を上回る賃上げの実現に向け、岸田総理大臣は2024年、中小企業や国民の減税措置などの政策を集中的に進める方針で、国民の実感を伴う成果につなげたい考えです。 岸田政権が賃上げを最優先課題に位置づける中、連合の調査では、2023年の春闘での賃上げ率は平均で3.58%と、およそ30年ぶりの高水準となったものの、物価高騰を背景に実質賃金は依然、マイナスの状況が続いています。 岸田総理大臣は、2024年に物価の上昇を上回る賃上げを実現させたいとして ・春闘にかけて経済界への働きかけを強めるとともに ・従業員の給与を引き上げた中小企業の法人税を減税する「賃上げ税制」を拡充します。 また ・住民税の非課税世帯に7万円を給付するほか ・6月以降は所得税などの定額減税を行うなど 政策を集中的に進める方針です。 政府は、減税などの一連の政策効果を加えた来年度の所得の伸びは物価上昇率を上回るプラス3.8%になると試算しています。 岸田総理大臣は先月下旬、経済界の関係者を前に「改革努力が花開こうとしている。新たなステージのドアを開けられるよう政策を総動員していく」と述べていて、国民の実感を伴う成果につなげられるかが焦点となります。 |
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●岸田首相 「解散は信頼回復後に考えたい」発言にあふれる絶望… 1/8
1月7日、岸田文雄首相は、『日曜討論』(NHK)に出演。政治とカネをめぐる問題について「率直にお詫びを申し上げなければならない。私自身が先頭に立って信頼回復に努めなければならない」と謝罪した。 また、衆院解散の時期について、「まずは信頼回復、次は政策の実現。いまはそれに尽きる」とする一方、「それをおこなった上でその先について考えていきたい」と語った。岸田首相の発言は、前日の6日に収録された。 「岸田首相は1月4日の年頭会見で、『政治刷新本部』を自民党内に立ち上げると表明しましたが、派閥について『政策集団』という表現で通し、『政策集団というのは、政策を研鑽し、若手を育成することを目的としていたはず』と語るなど、政治資金パーティーの禁止や派閥の解消には後ろ向きです。 1月7日、安倍派所属の衆院議員、池田佳隆容疑者の逮捕を受け、囲み会見に応じた岸田首相は、『大変遺憾なことであり、重く受け止めている』と語る一方、記者団から議員辞職を求めるかどうか問われると『とりあえず除名方針を確定した』と述べるにとどめています」(政治担当記者) 前兵庫県明石市長の泉房穂氏は1月7日、自身の「X」にこう書きこんだ。 《素朴な疑問だが、「大変“遺憾”」とのことだが、何が“遺憾”なんだろう。裏金を受け取っていたことが“遺憾”なら、金額の多い少ないにかかわらず、安倍派の90人に対しても、処分をすべきではないのだろうか。“トカゲのしっぽ切り”って言葉が思わず浮かんできてしまう・・・》 「岸田首相は1月4日の年頭会見後、『BSフジLIVE プライムニュース』に生出演し、ときおり笑顔を見せながら9月の総裁選の抱負を語りました。元旦に能登半島が地震に襲われ、救援もままならない状況で、『なぜいま生放送に出るのか』と大きな批判を集めました。 さらに翌5日には、経済3団体、連合、時事通信社の主催でおこなわれた3つの新年会に連続で出席。こちらも、地震で『非常事態宣言』が出るなかでふさわしい行動なのか、疑問の声が出ました。 1月6・7日、JNNが実施した世論調査では、岸田内閣の支持率は前月から1.8ポイント下落し、27.1%と過去最低を更新。岸田首相が立ち上げる『政治刷新本部』に『期待しない』が59%。自民党の派閥を今後どうすべきかについては、『解体すべき』が52%にのぼっており、信頼回復は遠い道のりとなっています」(同) 岸田首相が「解散は信頼回復後に考えたい」と発言したことに、SNSでは《信頼回復は無理でしょう》と、絶望感が広がっている。 《【悲報】信頼回復しないと「解散」しない!? まさに生き地獄》 《「解散は信頼回復後に考えたい」って、裏金事件で捕まったらサッサと除名処分にしてトカゲの尻尾切りする奴らに信頼回復出来るとでも思ってんのか!》 《岸田政権が続く限り信頼回復は到底無理でしょう。つまり衆院議員の任期が終わる2025年の秋まで解散しないつもりでしょうか?たとえ内閣支持率が一桁に下落しても?》 支持率下落で解散を打てない岸田首相と、「岸田下ろし」にも動けない自民党。そんな状況がこのまま続くとなれば、SNSで絶望があふれるのも当然だろう。 |
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●世界競争力ランキング2023で過去最低となった日本 1/8
世界の主要な64カ国・地域を対象に「経済実績」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」の4項目を評価する指標をもとに発表される、世界競争力ランキングで2023年、日本は過去最低となる35位となった。なぜそこまで日本の競争力は落ちてしまったのか。 ●日本は64カ国中35位 IMD(国際経営開発研究所)が、世界64カ国を対象にした2023年の「世界競争力ランキング」を6月に発表した。日本は、昨年より1つ順位を下げ、過去最低の世界第35位になった。 ところが、このニュースはあまり話題になっていない。日本の地位が低いことには、もうニュースバリューがなくなってしまったのだろうか? もちろん、これは日本人にとって愉快なニュースではない。知らないで済ませられるならばそうしたいと、日本人であれば誰もが考えるだろう。しかし、だからといって、このニュースに耳をふさいではならない。 ●アジア太平洋地域で日本より下位の国は、インド、フィリピン、モンゴルのみ アジア太平洋地域での日本の競争力の凋落ぶりには、驚くばかりだ。ここでの日本の順位は、14カ国・地域中で第11位だ。 第1位は、シンガポール(世界第4位)。続いて、第2位が台湾(世界第6位)、第3位が香港(世界第7位)だ。そして、中国は第5位(世界第21位)、韓国は第7位(世界第28位)だ。 日本より上位にはほかに、マレーシア、タイ、インドネシアなどが並ぶ。日本より下位は、インド、フィリピン、モンゴルだけなのである! 1989年の第1回のランキングでは、日本は世界第1位だった。その後、低下はしたものの、96年までは5位以内を保っていた。しかし以降順位を下げ、2023年には過去最低の順位となったのだ。 ●「政府の効率性」と「ビジネスの効率性」が低い このランキングは、ここまで見てきた総合指標以外に、次の4つの指標で評価が行われている。 「経済状況(国内経済、雇用動向、物価などのマクロ経済評価)」では、日本は世界第26位だ(前年は第20位)。 「政府の効率性(政府の政策が競争力に寄与している度合い)」は、2010年以降、第40位前後と低迷しているが、23年は第42位にまで低下した(前年は第39位)。 「インフラ(基礎的、技術的、科学的、人的資源が企業ニーズを満たしている度合い)」では、第23位(前年は第22位)だった。 「ビジネスの効率性」は、昨年の第51位から第47位に上昇したが、低い順位であることに変わりはない。 このことから、「政府の政策が適切でないためにビジネスの効率性が低下する。その結果、全体としての競争力が低下する」という状況に、日本が落ち込んでしまっていることが分かる。 ●政府の能力の低下が浮き彫りに 政府の政策が適切でなく、非効率的であることは、さまざまな面で指摘される。 マイナンバーカードをめぐる迷走ぶりを見ると、いまの日本政府は基本的なことが実行できていないことがよく分かる。今後、マイナ保険証に関してさらに大きな混乱が発生することが懸念される。 デジタル化が経済の効率化のために必要なことは明らかだ。しかし、それを実現するための基本的な制度を日本政府は整備することができていないのだ。 マイナ保険証のような技術的問題だけではない。政治的な政策判断の問題もある。少子化対策のように効果が疑わしい政策に多額の資金を投入しようとしている。しかも、そのための財源措置を行っていない。防衛費も増額するが、財源の手当てがされていない。 日本政府は迷走しているとしか言いようがない。 そして、このような無責任な政府に対して、野党が有効なチェック機能を果たしていない。日本の野党勢力は、2009年に政権を取って政権担当能力がないことを露呈してしまった。その後は批判勢力としてさえも機能していない。民主主義国家で、野党がこれだけ弱い国は、世界でも珍しい状況ではないだろうか? ●どうしようもないことだと諦めてはいけない 我々の世代は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と世界から称賛された時代を経験した。そのため、日本がインドネシアやマレーシアに抜かれてしまったと聞けば、異常事態だと捉える。そして、早急に対処が必要だと考える。 しかし、いまの日本では、諦めムードが一般化してしまったようだ。本章の最初に述べたように、「世界競争力ランキング2023」のニュースは日本ではほとんど話題にならなかった。しかし、実はこれこそが、最も危険なことだ。 なぜなら、少子化対策を行っても、そして、それが仮に効果を発揮して出生率が上昇したとしても、日本の人口高齢化は、間違いなく進行するからである。 それによって、経済の効率性は低下せざるを得ない。その厳しい条件下で人々の雇用と生活を支え、社会保障制度を維持していくためには、生産性を引き上げ、日本の競争力を増強することがどうしても必要だ。したがって、決して諦めてはならない。いまの状況は当たり前のことではなく、何とかして克服しなければならないのだ。 実際、一度は衰退したにもかかわらず復活した国の例は、現代にもいくらでもある。その典型がアイルランドだ。アイルランドは製造業への転換に立ち後れ、1970年代頃までヨーロッパで最も貧しい国の一つだった。しかし、IT化に成功して、90年代以降、奇跡的な経済成長を実現した。2023年の世界競争力ランキングで、同国は世界第2位だ。 ●日本人の基礎学力は世界のトップクラス 日本人の能力がわずか30年間でこれほど急激に落ちてしまったはずはない。実際に、OECD(経済協力開発機構)が行っているPISAという小中学生を対象にした学力テストの結果を見ると、これが分かる。 直近の2018年調査では、数学的リテラシーは世界第6位、科学的リテラシーは第5位だった。読解力は前回から下がったものの、OECD平均得点を大きく上回っている。このように、日本人の基礎的な学力は、依然として世界トップクラスなのである。 日本人は、このように高い潜在的能力を持ちながら、それを発揮できない経済・社会環境に置かれてしまっているのだ。 言い換えれば、かつて強かった日本が凋落した原因は、1990年代の中頃以降に取られた政策の誤りにある。 1990年代の中頃以降、政策面で何が起きたかは明らかだ。円安政策を進めたのである。これによって、企業のイノベーション意欲が減退した。 企業がイノベーションの努力を怠ったために、日本人が能力を発揮する機会を失ってしまった。これこそが、日本経済衰退の基本的なメカニズムだ。 この意味で、いまの日本経済の状態は異常なのである。そして、政策のいかんによって変えられるものなのだ。 |
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●「日本でMMTをやってもいいことは起きない」「アメリカではすでに失敗」 1/8
賃金は上がらないのに物価高が止まらない。経済学者の野口悠紀雄氏いわく、日本の円安・物価高は世界的な情勢の影響を受けているからだという。だがそれに対しての有効な策を日本政府が打てていないことも事実だという。 ●補正予算で国債発行額が増加するパターンが定着 2022年度第2次補正予算案における一般会計の追加歳出は28.9兆円。この約8割に当たる22.9兆円は国債の増発で賄う。つまり、財政支出の大部分は国債発行で賄われるわけだ。 新型コロナウイルスの感染拡大に対処するため、さまざまな財政措置がなされた。その結果、補正予算で巨額の国債発行を行うというパターンが定着してしまったように見える。 財務省「国債発行計画」によると、2020年度当初予算における国債発行額は32.6兆円だったが、第2次補正後で90.2兆円、第3次補正後には112.6兆円となった*1。100兆円超えは、初めてのことだ。 2021年度では、当初予算で43.6兆円。それが補正予算で22兆円増加され、65.7兆円となった。 こうした財政運営がなされた結果、国債残高は増加している。財務省の資料によると、普通国債*2の残高は、2015年度末には805兆円だったが、2020年度末には947兆円となった。2022年度末には、今回の追加で1042兆円になる。 こうした急激な国債残高増が深刻な問題を起こすことにはならないかと、誰でも心配になるだろう。 *1 財務省の国債発行予定額では、新規国債のほか、借換債を含めた国債発行額も示されている。本稿の「国債発行額」は、新規国債発行額を指す。 *2 建設国債や赤字国債など。財投債を含まない。 ●MMTは国債で財政支出をいくらでも賄えるというが…… MMT(Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)という考えがある。 これは、「政府が国債発行によって財源を調達しても、自国通貨建てであればインフレにならない限り、問題ではない」という主張だ。ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授などによって提唱された。 国債の市中消化を続ければ、国債発行額が増加するにつれ金利が上昇する。そして、国債発行には自然とブレーキがかかってしまう。 これを避けるためには、中央銀行が国債を買い上げる必要がある。すると今度は、貨幣供給量が増加し、物価が上昇して、ついにはインフレになる。 MMTの理論は、「いくら国債を発行してもインフレにならない」と主張しているのではない。「インフレにならない限りいくら国債を発行してもよい」と言っているのだ。つまり、最も重要な問題をはぐらかしているのである。 ●MMTは実際にインフレを引き起こした いまのアメリカの状況を見ていると、多くの人がMMTに対して抱いていた危惧が、まさにそのとおりの形で現実に生じてしまったことが分かる。 新型コロナウイルスに対応するため財政支出を拡大したのは、日本に限ったことではない。アメリカでも大規模な財政支出拡大策が取られた。そして、大量の国債発行を容易にするために、金融緩和に踏み切ったのである。つまり、財政拡大と金融緩和を同時に、しかも大規模に行った。まさに、MMTが推奨する政策が実現したのである。 そのために、コロナからの回復が見通せる段階になって経済活動が復活すると、賃金が上昇し、それが引き金となってインフレを引き起こしてしまったのだ。 もちろん、現在のインフレは、これだけが原因ではない。2022年の2月以降、ロシアのウクライナ侵攻によって資源や農産物が値上がりしたことも、大きな原因だ。これによって、昨年の秋以降進行していた物価上昇が加速することになった。 ●日本ではインフレが起きなかった それに対して、日本では2022年までは、ホームメイド・インフレは起きなかった。 日本でもこの数年間で財政支出が拡大した。そして同時に、金融緩和政策も継続されている。それにもかかわらずインフレが起きなかったのはなぜか? もちろん、いま日本では物価が上がっている。ただし、少なくとも2022年までについては、国内の要因によって起きたものではない。第1には、アメリカのインフレのため、第2にはウクライナ戦争で資源価格が高騰したためだ。その結果、輸入物価が上がったからだ。つまり、日本で生じた物価上昇は、輸入されたインフレであって、直接の原因は、海外にある。 日本で大量の国債発行がインフレにつながらなかった理由は2つ考えられる。 第1は、財政支出が需要を増大させなかったことだ。コロナ対策で最大のものは定額給付金だったが、これは消費支出を増やさず、貯金を増やすだけの結果に終わった。 第2に、日本企業の生産性が向上しない状況が続いているため、拡大策を行っても賃金が上昇せず、需要が拡大しなかったことがある。 ●日本でMMTをやってよいことにはならない 日本でホームメイド・インフレが起きなかったからといって、MMTをやっていいということにはならない。 大量の国債発行を可能にするために、日本では、長期国債を大量に購入し続けているだけでなく、長期金利を人為的に抑えている。その結果、アメリカの金利引き上げによって、日米の金利差が著しく拡大した。このため、アメリカのインフレが日本に輸入されることになったのである。この意味において、国債の大量発行がインフレの原因になっていると考えることができる。 金利抑制策の悪影響は、それだけではない。長期金利は、経済の最も重要な価格の一つだ。これが抑圧されているために、金利が経済の実態を表さなくなり、その結果、資源配分が著しく歪められている。 財政規律がなくなってしまったのが、最大の問題だ。その結果、効果の疑わしい(その反面、公平性の観点から大きな問題を含む)人気取り補助策が、次々と行われている。 国債発行を増やすという悪循環が生じている。それだけではなく、経済全体の資源配分が歪められている。これは日本経済の長期的なパフォーマンスを劣化させることになるだろう。 |
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●岸田「海外バラマキ」に国民の怒り爆発! 戦略ゼロの外交で失われる未来 1/8
●石炭火力温存でまたも「化石賞」を受賞 もちろん、岸田首相は「COP28」で演説した。そのために、ドバイに出かけたのだから当然だ。しかし、その演説はあまりに陳腐で、「日本の地球温暖化の取り組みはこれだけ進んでいます」ということを“口先”強調しただけだった。 それなのに、日本の多くのメディアは、『石炭火力発電所の新設せず COP28 岸田首相が表明 』(FNN)、『岸田首相 “対策ない石炭火力発電所の新規建設せず” COP28』(NHK)と、いかにも日本の取り組みが進展したかのように伝えた。 しかし、これは報道のトリックと言っていい。 岸田演説をちゃんと聞けば、日本は石炭火力発電所建設を止めるなどとは言っていない。止めるのはNHK報道にあるように「対策ない石炭火力発電所」だけであって、対策を施した(CO2排出の効率が低いとされる)発電所は建設するのだ。 世界の流れが、石炭火力の廃止に向かうなかで、日本は削減だけにとどめたため、今年のG7広島サミットでも各国から批判された。それなのに、今回もまた石炭火力温存を表明したのだ。 原発再稼働がままならず、再エネ転換も思うように進まないなか、エネルギー供給から見て石炭火力を温存しなければならない事情があるのはわかる。しかし、それでもなお「いずれ廃止する」と宣言しなければならない。 この毎回変わらない日本の態度に、環境NCO「CAN」はまたしても日本を「化石賞」に選出した。ただし、今回は、日本のほかに、ニュージーランドとアメリカも選ばれた。 ●ロス&ダメージ資金提供をケチるせこさ なぜ、アメリカまで「化石賞」に選ばれたのか? それは、今回のCOP28の大きなテーマである「ロス&ダメージ」のファンドの設立・運営に関して、拠出金があまりにも低くすぎたからだ。 まず、議長国であるUAEは1億ドル(約150億円)、ドイツも同額の拠出を約束した。英国は6000万ポンド(約112億円)を表明した。ところが、アメリカは1750万ドルにすぎなかったのである。 そして日本は?というと、なんと1000万ドル(約15億円)である。 すでに、岸田首相は総理就任直後に出席した2021年11月のCOP26で、途上国への気候変動対策支援に、今後5年間で最大100億ドル(約1兆5000億円)を拠出すると表明している。今回の1000万ドルがその一部なのかはわからない。しかし、もしそうなら、今回の額はあまりに低すぎる。 温暖化対策は、なによりも優先しなければならない、人類社会最大の課題だ。それが、エジブトやヨルダンのような2国間援助より低くていいわけがない。 ●首相就任以来、安倍政権時以上にバラマキ 岸田外交は、安倍バラマキ外交の踏襲である。それもそのはず、安倍政権時代に外相をしていたのだから、そうなって当然だ。しかも、安倍政権時代より、派手にバラまいているのだから呆れるしかない。 そのバラマキに戦略はなく、ただ世界にいい顔をしただけとしか思えない。 これまでの外交履歴からバラマキ状況を見て行くと、国内がコロナ禍に喘いでいるというのに、2021年の総理就任直後から海外向け援助が急増している。前記したCOP26での途上国援助のほかに、2021年10月13日にアフガニスタンに2億ドル(約300億円)の支援、2021年12月7日には途上国に向けに今後3年で28億ドル(約4200億円)以上の支援を表明している。 そして2022年、2023年と海外バラマキは度を越している。とくに、ウクライナ戦争が起こったことで、ウクライナに対していきなり55億ドル(8250億円)援助を皮切りに総額76億ドル(1兆1400億円)をこれまでつぎ込んできた。 |
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●自民・麻生氏「信頼回復し政権担う」 1/8
自民党の麻生太郎副総裁は8日、福岡県直方市で講演し、派閥の政治資金問題を受けて党内に設置される政治刷新本部(仮称)の顧問に就任すると説明し、「皆さん方の信頼をきちんと回復して、引き続き政権党を担っていく」と強調した。「派閥の話であるとはいえ、党の中で起きた話でもある」と述べ、党として再発防止に取り組む考えを示した。 麻生氏は台湾海峡を巡る緊張が高まっているとも指摘。「戦争になった場合、台湾にいる日本人を救出せねばならない。それなりのしかるべき準備をしておかなければならない」と指摘した。 |
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●上川外相「ウクライナに53億円」で比較される「能登地震支援47億円」 疑問 1/8
ウクライナを訪問中の上川陽子外務大臣が、首都・キーウで同国のクレバ外相と会談。NATO(北大西洋条約機構)の基金に日本円で約53億円を新たに拠出し、ウクライナに対無人航空機検知システムなどを供与することを発表した。さらに、ゼレンスキー大統領を表敬した際は「今後も、ウクライナとともにあるという日本の立場は決して揺るがない」と伝えた。 1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」に対し、政府が支出した金額は約47億円。SNSでは、この金額とウクライナ支援の金額を比較する意見があがっている。 《石川の被災地にはたった47億。なぜ同じ日本国内に生きる被災者の方々に対してそんなに冷たい対応ができるんだ‥》 《まだ日本国民の税金から出すの? 自国民への支援を優先しない日本政府は本当にどうなっている》 《今はウクライナに支援してる場合じゃないと思うんだけど。自国の方が大事でしょ?》 その多くは、「まずは自国の災害支援に取り組むべきでは」という、疑問の声だ。 「47億4000万円は初期の支出で、今後も支援は積み増していきます。しかし、政府の説明があまりにも下手なので、『47億円』という金額だけが一人歩きしてしまった印象があります。 それに、1月6日に岸田文雄首相が支出を了承しながら、正式決定するのは1月9日の閣議。あまりにのんびりしすぎと指摘されています。被災者を安心させるためにも、早い決断と実行が必要なのですが、岸田文雄政権はそれがまったくできていません」(政治担当記者) これまでも岸田政権は、「ばらまきメガネ」と揶揄されるほど、海外への支援や援助を続けてきた。2023年はおもなものだけで、2月にはフィリピンに年間2000億円を超えるインフラや情報通信網整備資金の支援を表明、3月には、「グローバルサウス」と呼ばれるアジアやアフリカなどの新興国・途上国に、インフラ整備のため2030年までに官民で約11兆円を投じると発表。さらに5月には、ガーナに約735億円、12月にはイスラエルとイスラム組織ハマスの武力衝突で観光業に打撃を受けたエジプトに、最大約338億円の支援を表明した。 「こうしたことを背景に、『海外へばらまく金額で、どれほど被災者が楽になるか』といった国民感情が高まっています」(前出・政治担当記者) 海外支援も大事だが、まずは国内の被災者を安心させてほしい、と考える日本人が多いのも事実だ。 |
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●「データ破壊は自民のお家芸」逮捕された池田議員「証拠隠滅」「ドリル優子」 1/8
自民党の「清和政策研究会」(安倍派)に所属する衆議院議員の池田佳隆容疑者(57)と政策秘書の柿沼和宏容疑者(45)が、2022年までの5年間に政治資金パーティのキックバック4800万円余りを政治資金収支報告書に記載しなかったとして、1月7日、政治資金規正法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。 「当初、自民党内では『逮捕されることはないだろう』という見方がほとんどでしたが、特捜部は身柄を取りました。金額の多さにくわえ、証拠隠滅や関係者との口裏合わせの可能性があったからです。 特捜部は昨年12月に池田議員の関係先を家宅捜索しましたが、その前に池田容疑者はパーティー券の販売先や参加者の名簿、キックバックの金額などを記録した資料の廃棄を秘書に命じていた疑いが出てきました。そのため、逮捕に踏み切りました」(事件担当記者) そして、1月8日、NHKが「記録媒体が破壊」と報じたことを受け、SNSでは「ドリル優子」がトレンドワードになった。 「自民党の小渕優子選挙対策委員長が経産大臣だった2014年、政治資金問題が発覚しました。その際の家宅捜索を前に、事務所にあったパソコンのハードディスクがドリルのようなもので破壊されていたことから、SNSなどで『ドリル優子』というあだ名がつけられました。その後も、ネット上では、なにかにつけ『ドリル優子』の言葉が飛び交います」(同) 今回もそれが蒸し返された格好だ。「X」には、 《証拠隠滅と言うと忘れちゃならない小渕優子氏…かつて、政治資金規正法違反で世間に謝罪会見もしてないのに「誠意を持って説明させて頂いてきた」と説明責任を『もう済んだ事』にしてしまうドリル優子》 《データ破壊は自民党のお家芸! ドリル優子の二番煎じ!》 《データ破壊で証拠隠滅のおそれというのは 自民党の常套手段なのか?》 《『ドリル優子』ならぬ『ドリル池田』ってことですか?》 などと書き込まれ、お祭り状態になった。 「小渕議員にとってみればとんだ飛び火で、『もう、いい加減にしてくれ』という心境かもしれませんが、結局のところ、いまも繰り返し話題になるのは、本人が説明責任を果たしていないことが原因です。今後も、ずっと言われ続けることになるでしょう」(同) 国会議員に「説明責任」は馬の耳に念仏なのだろうか。 |
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●能登半島地震で露呈した原発の「不都合な真実」 1/9
やはり原発はやめるべきだ。能登半島地震を見てそう思った方はどれくらいいるのだろうか。 「あの大地震でも志賀原発は事故を起こさなかった!」「やはり日本の原発は安全だ!」という原発推進論者の声も聞こえてきそうだが、そんな声に騙されてはいけない。 2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きるまで、日本では、「原発は安くて安全でクリーン」だという原発神話が存在した。事故でその神話が一旦崩壊した後、急速に発展する再生可能エネルギーとの比較からも、今では「原発は高い」「原発は汚い」という事実はかなり広く理解されるようになった。 しかし、「原発は危ない」という点については、少し状況が異なる。 福島第一原発の事故で原発の危険性を思い知らされ、「原発はいらない!」と強く思った多くの国民は、事故から12年を経て、あの想像を絶する原発事故の痛みと恐怖を忘れてしまったかのようだ。 原発推進論者が、「原発が動かないから電気料金が上がる」とか、(夏や冬のほんの一時期だけなのだが)「需給が逼迫して停電のリスクがある」とか叫ぶと、いとも簡単に、「それなら原発を動かしてもいいか」という反応を示すようになったのだ。 実は、今回の地震の結果を見るまでもなく、日本の原発は「危ないから」止めるべきだと考える十分な根拠がある。 私は、これを「原発の不都合な真実」と呼んでいる。意外と知らない人が多いのだが、今回の地震と併せて考えていただけば、理解が深まると思うので、この機会に一つだけその話を紹介したい。 「原発の不都合な真実」の中で、もっとも重要なのは、原発の耐震性に関する事実だ。 当たり前の話だが、原発の事故が起きても良いと考える人はほとんどいない。多くの人は、政府が、「世界最高水準の規制基準を満たしています」と言うのを聞いて、「福島の事故を経験しているのだから、さすがに動かして良いという原発は安全なものに決まっている」と信じているようだ。 日本の国土は世界のわずか0.25%しかないのに、2011年〜2020年でみると全世界のマグニチュード6.0以上の地震の17.9%が日本周辺で発生するという、世界で最も危険な地震大国だと言って良いだろう。その日本で世界最高水準の規制に適合していると聞けば、「原発は、ちょっとやそっとの地震ではびくともしない」と誰もが思っているだろう。 しかし、真実は全く違う。日本の原発は地震に極めて弱い。それをわかりやすく説明したのが、関西電力大飯原発を止めたことで有名な樋口英明元福井地裁裁判長だ。 私も樋口氏から直接話を聞いて知ったのだが、日本の原発は、民間のハウスメーカーが販売する耐震住宅よりもはるかに耐震性が低い。たとえば、三井ホーム、住友林業の耐震性は、各々最大約5100ガル(ガルは加速度の単位、大きいほど強い揺れを示す)、約3400ガルに耐える設計になっている。 一方、たとえば、四国電力の伊方原発の耐震基準は650ガル、高浜原発は700ガルと、日本の原発の耐震性は民間住宅の数分の1しかない。北陸電力志賀原発も建設当時は490ガル、その後600ガルに引き上げられ、現在は1000ガルということで安全審査を申請している。なぜ、耐震性が上がっているかというと、さすがに3桁では信用されないということで、いくつかのマイナーな耐震対策を施して耐震性がすごく上がったと説明しているのだ。 日本では2000年から20年までの間に、1000ガル以上の地震が17回、700ガル以上は30回起きていた。つまり、原発の耐震基準を超える地震はごく普通に起きるのである。ちなみに、日本で記録された最大加速度は2008年の岩手・宮城内陸地震の4022ガルである。2番目が2011年の東日本大震災の時の2933ガル。 この事実を知れば、原発の耐震性はこれらよりも強くして欲しいと思う。しかし、日本の原発の耐震基準の大半は1000ガル以下である(詳しくは、樋口氏の著書『私が原発を止めた理由』『南海トラフ巨大地震でも原発は大丈夫と言う人々』〈いずれも旬報社〉を参照のこと)。 このような事実を知る人が増えれば、そんなに危ない原発が動いていたのかと驚き、今すぐ止めてくれということになるだろう。 今回の能登半島地震の最大加速度は、原発のある石川県志賀町の観測点で、東日本大震災に匹敵する2828ガルだったことがわかった。1000ガル以上も計7地点で確認されている。 だが、たまたま運が良かったのかどうか、あるいは計測に異常があったのかもしれないが、北陸電力の発表を鵜呑みにすると、志賀原発1号機原子炉建屋地下2階で399.3ガルだったということだ(それ以外の観測点でどうだったのかはわからない)。近隣に比べて何故かずいぶん小さな揺れだったということになる。 1000ガルの基準地震動から見れば余裕というところなのだろうが、その割には、かなり深刻な被害が出たのが驚きだ。使用済み燃料プールの水が大量に溢れる、冷却ポンプが一時停止する、複数の変圧器付近で配管の破損による大量の油漏れがあり、その影響で外部電源の一部系統が使用不能になるなどかなりの異常が発生した。これらの結果、放射能が外部に漏れたかどうかが気になるところだが、当初、モニタリングポストでは放射能漏れは観測されていないと発表されて胸を撫で下ろした。だが、なぜか4日になって、原発の北15キロ以上離れたところにあるモニタリングポスト14カ所でデータが確認できていないことが発表された。他のモニターの値が信用できるのか、また、より近くのモニタリングポストで計測不能になっていたらどうなったのかということも不安材料となった。 これらの異常の他に何があったかはまだ明らかにされていない。特に、敷地内で建物や道路に亀裂が入ったり、隆起や陥没があったりしたかなどはすぐにわかりそうなものだが、発表があったのは5日になってから。それも、1号機の原子炉建屋付近や海側エリアなどで最大35センチの段差やコンクリートの沈下などがあったという程度の簡単な情報提供だけだった。道路に段差があれば、消防隊などの活動に支障が生じたりするので実は深刻は事態だが、そのようなことを連想させたくないのだろう。 そして、何よりも気になるのが、北陸電力や政府の情報の出し方である。地震の発生後最初に伝えられた「志賀町で最大震度7」という情報を聞いた私は、真っ先に、これは大変だと思った。志賀町といえば原発だ。それがどうなっているのか、住民はすぐに避難しなくて良いのかということが気になった。しかし、テレビを見ていても、出てくる話は、津波のことばかり。もちろん、それが最も重要な情報であることはわかる。それを繰り返し流すことは必要だ。 しかし、原発の状況についても、万一のことを考えれば、決して後回しで良いという話ではない。ところが、原発の状況について政府が具体的に触れたのは事故から2時間以上経過した後だった。林芳正官房長官が会見で、「現時点で異常なし」と木で鼻を括ったような発言をしたのだ。だが、記者の質問が飛ぶと、突然、変圧器で火災が発生と驚くような話をして、すでに消火と言い添えた。変圧器で火災なら重大事故なのではないかと心配になる。現に、外部電源が一部断たれたわけだから、「異常事態」であるのは疑いようがない(火災については、のちに北陸電力が否定したが、官房長官は訂正せずに放置した。この官房長官発言が原因で、原発で火災という情報が拡散して混乱を生じさせた。ちなみに、北陸電力は、爆発音と焦げ臭いにおいがしたことやスプリンクラーが作動して水浸しになったことは認めたが、それでも火災はなかったと主張している)。 では、原発で火災があったという前提で、「異常なし」と涼しげに語った林氏の意図はどこにあったのか。何か特別の意図があったのではないかとどうしても勘ぐりたくなる。 志賀原発については、元々その敷地内に活断層があるのではないかということがずっと疑われてきた。もし、今回の地震で「異常」があったということになれば、あらためて活断層への疑念が深まる。それがなくても、基準地震動の見直しとそれに基づく対策の実施が求められる可能性も出てくる。コストの問題もありまた再稼働までの時間が延びることも必至なので、それは北陸電力としてはどうしても避けたい。だから、「異常」はなかったと言いたくなる。 むしろ、今回の地震を奇貨として、これほど大きな地震でも「何の問題もなかった」と言えれば、いかに志賀原発が安全かを示していると言えるとさえ計算していたのではないか。そんな疑いをかけたくなる林氏の対応だった。 疑念はこれだけにとどまらない。政府にとって、実はもっと大事なことがある。それは東電柏崎刈羽原発の再稼働だ。 東電は事故後倒産寸前に陥り、福島事故の後始末も自力ではできなかった。このため、政府は巨額の出資で資金を注入し、東電を政府の「子会社」とした。その資金を回収するためには、政府保有の東電株を高く売らなければならない。だが、東電は経営が苦しく株価が低迷している。柏崎刈羽原発が動けば、発電コストが下がり、利益が大幅に増える。その結果株価が上がり、政府も資金回収できるというシナリオを実現するために、何としても原発を動かしたい。 しかし、志賀原発で、耐震性に問題があったとなれば、同じ日本海側の近県に立地する柏崎刈羽にも影響が及ぶ可能性がある。それだけは何としても避けたいというのが東電のみならず、政府の強い願いだ。特に、嶋田隆首相秘書官は、次期東電会長とまで言われた経済産業省の元事務次官でもある。柏崎刈羽再稼働は、官邸にとっても最優先課題となっていた。それに水を差すことなどありえないのだ。 こうした裏の理由により、志賀原発は、何が起きても「異常なし」で通すしかないのである。 能登半島地震で、深刻な原発事故が起きなかったことは不幸中の幸いだった。 しかし、今回の原発での異常事態や周辺地域の壮絶な被害状況を見れば、日本のような地震大国で原発を動かす、いや、保有するだけでもいかに大きなリスクになるのかがはっきりわかる。 3.11から12年経って、事故の記憶が風化し、脱原発どころか、原発新増設にまで踏み込む原発推進策に舵を切ろうとしていた日本にとって、これは天啓ではないのか。これだけのわかりやすい材料を与えられて、なお、金に目が眩んで原発推進の方針を撤回できないことなどありえないと信じたいところだ。 しかし、それは楽観的すぎるのかもしれない。 原発事故の被害を想像する能力を失い、驕りと強欲の塊となった日本が過ちに気づくには、原発事故を待つしかない――それこそが「不都合な真実」ということなのだろうか。 国民は、与えられたこの機会に真剣に考え直して、政府に対して「原発をやめろ」と迫るべきである。 |
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●政治とカネの問題を令和の政治改革へ…岸田首相が推進すべき「アレ」とは 1/9
2024年も「アレは続く」と誓う「A.R.E. GOES ON」を掲げるプロ野球の阪神タイガースが、1985年以来となる日本一を果たした2023年日本シリーズの初戦開始前、ベンチ入り選手の輪の中でベテランの原口文仁選手が 檄 を飛ばした。 「アレのアレへ向けてスタートする。38年前、頂点に立った時、このメンバー、誰一人生まれていない。タイガースの歴史の中で価値ある試合に挑戦できる」 2023年日本シリーズで38年ぶりの日本一を決め、胴上げされる阪神・岡田彰布監督(2023年11月5日) 同じ時間では経験しなかった栄光に挑む若い世代の「声出し」の映像を見ると、30年以上前の政治改革を現職として経験していないとはいえ、自民党を揺るがす「政治とカネ」の問題に若手が大きな声を出さない現状が寂しくなる。 贈収賄での立件が相次いだ1989年のリクルート事件のさなかに、自民党は「政治改革大綱」を制定した。具体化に向けて設けられた政治改革推進本部の長には伊東正義・元外相、代理に後藤田正晴・元官房長官が就いた。長老が「改革の象徴」となって若手を鼓舞したことは、5年後に非自民・非共産の細川護煕政権で政治改革関連4法が成立する布石にもなった。 ボタンの掛け違いもあった。自民党職員として大綱に携わった政治アナリストの伊藤惇夫氏はBS日テレ「深層NEWS」で、「後藤田さんが『政治とカネ』の問題は中選挙区制での自民党候補同士のサービス合戦に起因するから、選挙制度を変えなければと言ってスタートした」と振り返っている。長老の一言で、本来は優先するか並行して進めるべきだった地方分権や政党法の制定が棚上げされ、選挙制度さえ変えれば政治は良くなるとの幻想を生んだ。 改革派を自任した若手、有識者、メディアも幻想に熱狂し、副作用が分かった時は既に熱は冷め、再改革の機運も起きなかった。 自民党派閥のパーティー券問題の焦点である政治資金規正法違反は、実害のない「形式犯」で、贈収賄のような「実質犯」と違う――。かつてはそんな理屈で、規正法違反での立件に「厳し過ぎる」という恨み節も出た。依然、その感覚は自民党に残っている。 「平成の政治改革」を経験した石破茂・元自民党幹事長が「大綱を読み直せ」と訴えるように、大綱には今の問題にも有効な理念や改革メニューが並ぶ。裏を返せば、制定から30年以上、多くの中身が先送りか骨抜きにされてきた。 90年代前半に若手から改革派が次々と出たのは、衆院選が中選挙区制で、党執行部に逆らって公認されなくても当選できたことが大きい。勝者1人の小選挙区は、そうはいかない。「伊東・後藤田」の役割を担う長老も見当たらない。 大綱の制定時には衆院初当選の前で、「平成の政治改革」でも目立たなかった岸田文雄首相が、今のピンチを、ずっと放置されてきた課題解決のチャンスと考えて「令和の政治改革」を進めれば、潮目は変わるかもしれない。「平成の政治改革」の推進者だった新任の渡海紀三朗政調会長の使い方も、カギになる。 ・・・ |
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●国民民主、政権との距離に苦慮 協調路線、裏金事件で目算狂う 1/9
国民民主党が岸田政権との距離に苦慮している。玉木雄一郎代表が「対決より解決」を掲げ、政策実現のため協調してきたが、自民党派閥の政治資金規正法違反事件を受け、厳しく対峙(たいじ)せざるを得なくなったためだ。対決姿勢を鮮明にすれば、他の野党との違いは分かりにくくなり、埋没するジレンマも抱える。 「極めて深刻だ。国民民主は政策本位と言ってきたが、その前提は政治に対する信頼が確保されていることだ」。玉木氏は7日のNHK番組で、自民党の「政治とカネ」の問題を厳しく批判した。 昨年11月、国民民主はガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結解除に向けた自民、公明両党との3党協議を再開するため、2023年度補正予算に賛成した。だが、派閥の裏金疑惑で状況が一変。自民に強い逆風が吹く中、立憲民主党が提出した内閣不信任決議案に国民民主も賛同すると、公明は「前提が崩れた」(山口那津男代表)と反発し、いまだ3党の実務者協議は再開していない。 そもそも協調路線は小所帯の国民民主の存在感をアピールするための「奇策」(玉木氏)という側面が大きい。自民内では国民の連立政権入り構想も浮上していたが、立ち消えになった。玉木氏も7日の番組で「連立は選挙協力など乗り越えなければならないハードルがあるので、なかなか難しい」と語った。 玉木氏は今後も「是は是、非は非」として「政治とカネ」の追及とは別に政策協議を進める「二刀流」を目指す。ただ、国民民主内にも「与党側が本気で協議を進める気があるのか」と疑問の声が漏れる。立民、国民両党を支援する連合は、両党の連携強化を再三、促している。 国民幹部は「野党として裏金問題を批判しないわけにはいかないが、政策は与党と話さなければ実現しない。難しい」と頭を抱えた。 |
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●イーロン・マスクとゴジラ、そして創価学会に学ぶこれから日本が目指すべき道 1/9
●実績上げても岸田政権の支持率が上がらない理由 岸田政権の支持率が上がりません。昨年後半からジワジワと支持率を下げ続け、既に各種調査では、いわゆる青木の法則と呼ばれる危険水準(内閣支持率と自民党支持率の合計が50を割る水準)に達してしまっているものも出てきていますが、なかなか上がる要素が見当たらないのが現状です。 そんな中、追い打ちをかけるように、年始に能登半島を大震災が襲い、死者が3桁に達し、まだ増える様相です。羽田空港でも、関連して痛ましい事故が起こりました。海保機の方で尊い5名の命が奪われてしまいましたが、日航機の方は幸いにして死者は出ずに済みました。 特に震災の方は、初動の遅れということも批判されはじめており、政府批判も高まりつつあります。列島中が休んでいた元日の悲劇ということもあり(羽田空港の事故は1月2日)、やむを得ない面はありますが、一つの目安とされる72時間を過ぎて救出される人も出ていることから、もう少し早くがれきの下の方々の救助が何とかならなかったのか、とか、これからの避難生活の支援がもう少し手厚くできないのか、など、政権批判も強くなる傾向にあります。 震災対応はともかく、政権発足からの日本の数々の危機に際しては、政権に近い人からは、「意外とちゃんとやっていて、諸課題に向き合い、ひとつひとつ誠心誠意、対処している」という肯定的な評価が聞こえてきます。実際、安全保障関係の対応(安保三文書改訂や防衛費増)やCOP28への対応(措置がなされていない石炭火力発電所の新設はしないと表明)、少子化対策(「こども未来戦略方針」を策定。年間で新たに3.8兆円の予算を投じるということで、予算的には「異次元」とも言える)、要望が強かったライドシェア解禁も、今年4月から一部実施することも決めました。 他にもあります。物価や賃金の上昇をふまえたマクロ経済スライドの発動を決め年金の支給額を若干ながら引き上げました。また原発の再稼働を政治決断で決めたことにより、上昇していた電気料金にいくらかブレーキをかけることもできています。これらは岸田政権の“成果”と評価してしかるべきものです。 このように岸田総理は地道にいろいろやっているのですが、支持率が上がらないという状況です。 なぜ支持率上がらないのか。その理由を私なりに分析してみました。ポイントになるのは、中長期的に見た時の期待感ではないでしょうか。 ●岸田総理は小テストが得意な優等生タイプ 岸田政権は、何か課題が降ってきた時には「わかりました。対応します」と即応する能力は高いと言えます。目の前の問題についての、短期決戦的な対応は得意なのです。 例えるならば岸田総理は、授業の理解度を測るための毎週行われる小テストを得意とする優等生タイプです。 しかしその一方で、「実力が問われる全国模試や入試本番には不安が残る」というタイプでもあります。そこに、国民は、将来に「そこはかとない不安」を抱いているのです。端的に言えば、岸田総理は中長期的な課題への対応が弱いのです。 たとえば物価が上昇しているのに、利上げもできないので預金金利に期待することはできません。低金利ですから円安が極度に進み、国際的に見た購買力はガタ落ちです。国民は将来の生活に不安を覚えています。 日本のGDPは、円安の影響もありますが、人口が我が国の3分の2程度のドイツに抜かれて世界4位に転落する見込みです。国際的にも、アジアの中でも、日本の存在感はどんどん小さくなっています。 また、少子化や人口減少を改善すべく子ども未来戦略方針を打ち出し、先述のとおり予算はかなり増やしましたが、問題解決の切り札になりそうなインパクトは感じません。そのほかにも、労働力不足、エネルギーや食料の自給率など、中長期的な課題に対する効果的な手が打てているとは言えません。そこに国民は潜在的な不満を持っているから、支持率に結びつかないのだと思うのです。 岸田さんには酷な言い方になりますが、どんなに真面目に、サラリーマン的に目の前の課題に取り組んで小テストの点数を積み上げても、一発勝負の全国模試や入試本番で勝ち抜けるほどの実力はつかない。簡単な確認テストではなく、難問を解く力を付けるには、相当のパワーを使って爆発的に頑張らないといけないのです。中長期的な日本を取り巻く難題を解くには、かなりのエネルギーを使って思い切った勝負をしなければいけないということです。 ●聖人君子ではないイーロン・マスク そういう中で私が昨年後半、個人的に印象に残った“作品”が2つありました。 ひとつは、イーロン・マスクの評伝『イーロン・マスク』(文藝春秋)です。 この本で活写されているのは、品行方正なベンチャー起業家ではなく、無茶で乱暴なチャレンジャーの姿です。マスクは、まるで何かに取りつかれたようにチャレンジを繰り返しているのです。 なにしろバイタリティがスゴイ。20代の後半でフィンテックのベンチャーを立ち上げるだけでも驚嘆するのに、その会社を売却した資金を元手にEVメーカーのテスラを立ち上げたり、宇宙開発企業スペースXを立ち上げたりしています。ツイッター(現在はX)の買収でも世界中をあっと言わせました。 これだけ大きなことを次から次へと成し遂げていくマスクの仕事ぶりは、「働き方改革」を叫ぶような世界とは正反対です。仕事ぶりはまさに「モーレツ」と呼ぶにふさわしいものです。さらに言えば、会社のマネジメントも決して上手じゃありません。内部はかなりガタガタしているのです。それでも大仕事をやり切ってしまうのがイーロン・マスクという人物なのです。そのスケールといい、仕事への集中力といい、今の日本ではそうそうお目にかかれないタイプと言えます。 もうひとつの心に残った“作品”は映画『ゴジラ−1.0』です。もちろんゴジラ自体は架空の存在ですが、舞台となっている戦後の日本をリアリティ豊かに描いています。単に戦後まもない時代の日本の風景を再現しているだけでなく、戦後の精神、メンタリティーをもよく描いています。つまり、アメリカに負けて悔しい思いを抱えながらも、戦争で亡くなった人の分まで生き残った自分たちが頑張らなきゃいけないんだという使命感を持って生きる人々の逞しさです。映画を観て、まずそこに感じ入ってしまいました。 この両作品を通じて、個々の人間が秘めているパワーの偉大さを強く感じました。だれしも不安や危機意識を持っているものですが、結局それを乗り越えるのに必要なのは、それぞれの人間の頑張りだということです。そして、人にはそれだけのパワーがあるのです。 ところがいつしか私たちは、「ワーカホリックみたいに働くのは間違っている。無理をしない。ワーク・ライフ・バランスが何より大事だ」という考え方に過度に浸りすぎてしまい、何かにひたむきに打ち込むとか、自力で困難を乗り切るといった姿勢まで失ってしまったのではないでしょうか。 もっと言えば、「寄らば大樹」的に、ついつい国や自治体に頼ろうとする思考が強くなってしまったように感じます。しかし、国や自治体が「面倒を見てあげますよ、安心してください」と言っても、今は全く安心できる状況ではありません。国や自治体に余裕がないからです。 そういう意味では私は、日本の政治は限界に来てしまっているのではないかと考えています。政治家が「政策でこの困難を解決していきますので、国に任せてください、安心してください」と言えば言うほど、それが国民には虚しく響いてしまう。国民自身も、自力で困難を乗り越えようという気持ちが薄く、政治に対する不満ばかりが高まっていく。日本は、こんな「政治無理ゲー時代」に入っているのではないでしょうか。 ●なぜ創価学会は強いのか 昨年11月、創価学会の名誉会長である池田大作さんが亡くなりました。私は特に創価学会員でもありませんし、公明党の政策に共感しているわけでもないのですが、創価学会と公明党の組織的な強さには学ばなくてはならない点があると思っています。よく知られているように公明党は創価学会を支持母体として作られた政党です。 創価学会は日蓮大聖人の教えを信仰する法華経系の仏教団体ですが、宗教団体という側面のほかに、特に高度成長期に地方から都市へ出てきた労働者たちの不安に寄り添い、互いに助け合おうという互助会的な社会運動としての顔も持っていました。まずはそうした活動があり、それが人々の心を惹きつけた。そういう活動を続ける中でぶつかった課題を乗り越えるために、法改正や行政への働きかけが必要だと思い至った創価学会が政党を持った。社会変革運動がベースにあっての政党なので、だから創価学会員は公明党を熱心に応援する。それが公明党が選挙に非常に強くなった理由だと思うのです。 目指す方向は全く違いますが、日本共産党も設立の経緯はそういう流れだったと言えます。共産主義革命を理想とする人々がいて、それを実現するための政党としての日本共産党ができたわけです。だから共産党の支持者は今も熱心に応援しています。ただ「共産主義革命が必要だ」と考える人が日本では減少してきたので、それがそのまま現在の日本共産党の党勢に現れていると言えます。 公明党の退潮も、池田大作氏の不在も相まって顕著になってきていますが、社会運動としてのエネルギーの衰退が大きな要因と言えます。ただ、公明党も共産党も、主義主張は全く異なりますが、社会運動がベースにあり、そうしたプラットフォームの上のあくまでアプリケーションとして政党が乗っかっているという点では共通のものを感じます。であるが故に、長続きし、一定の強固な基盤があると言えます。 それに対して、最近の政党はどうでしょうか。 バブルが崩壊し日本が苦境に陥ってから、およそ10年おきくらいで「新党ブーム」を伴うような政治の激変が起こってきました。細川護熙さんを党首とする日本新党のブーム、新党ではありませんが、小泉純一郎さんの「自民党をぶっ壊す」ブーム(清和会の伸長)、さらに鳩山由紀夫さんらの民主党ブームです。そのほかにも、みんなの党や日本維新の会など、数多くの政党が誕生し、たびたび政治のうねりを作ってきました。 しかし、こうした「新党」を中心とするブームに、国民はもう飽き飽きしているのだと思います。新党の人たちは「政治で現代社会の課題を何とかします、そのために政権をとります、投票をよろしくお願いします」と選挙の時に頭を下げますが、有権者の方は「多くの議席を獲得したり、さらには政権交代を実現させたりしても結局あまり変わらなかったじゃないか」「これからも変わらんよ」と思っているのです。 既存の政党が「われわれに任せてください」と言っても、国民には全く響かない。新党が出てきても、国民は過去の数々の「尻すぼみの歴史」を見てきているだけに、期待することもできない。今はそういう時代になってしまっているのです。 そうであれば、創価学会と公明党の歴史で見たように、政治運動以前の社会運動が大事なのではないかと思うのです。 ●「政治家にさせてください」が先ではない 歴史に残るような偉大な宗教家は、地方に赴き、現地の人たちの声を聞き、教えを説き、そして信奉者を増やしていきました。それがだんだんと大きな組織になっていったわけです。 それに対して現代の政治家は、地域の支持者や社会運動の団体から押し上げられるというよりも、まずは「自分が政治家になりたい」という人ばかりです。選挙の時には「国会に送り出してもらえれば政権交代を実現します」「この政策を実現するためには国会での議席が必要です。なんとか投票をお願いします」と言い、当選したら当選したで、「政治にはカネがかかります。個人献金をお願いします」「パーティー券を買ってください」と言う。地域の集団や社会運動の団体から推された人とはそこが決定的に違うのです。 宗教を核にした社会運動を起こせと言っているわけではありません。共産主義革命を起こせと言っているのでも、もちろんありません。新たな社会運動をベースに、政党を作って政権交代を考えて行く、といったアプローチが求められているということです。 ●地域発の革命 その場合の社会運動の候補ですが、私は地域発の革命というのが一つの切り口になると思います。 各地で、国や自治体任せにするのではなく、地域ごとに経済的に自立しようとひたむきに頑張っている人たちの集団を形成するのです。高度集権国家から、分散型の国家に転換していく。地域で一番足りていないのは「食い扶持」なので、各地ごとに起業や第二創業、食い扶持づくりを促進し、いわば経済的な「独立国」の集合体に日本をしていく。 そうした取り組みのうねり自体が一種の社会運動ですし、さらにそこで政治の力が必要ということで、その社会運動を基礎にして政党を作っていけばいい。そうすることでしか、政治の再生はできないのだと思います。 そして地域の自立の核になるのは、やはり企業だと思います。私のこの考え方は、サン=シモン主義に近いものです。サン=シモン主義とは、フランスの社会主義思想家サン=シモンが提唱した考え方で、その要旨をざっくり要約すれば「産業資本家が困っている人を助けるべきだ、社会を救っていくのが産業資本家の責務だ」というものです。それをマルクスやエンゲルスは「空想的社会主義」と呼んで批判しましたが、私に言わせれば、マルクスやエンゲルスのような、国家が統制する計画経済で社会を豊かにしていく、という考えのほうがむしろ空想的です。 ともかく、地域ごとにベンチャー企業を育成したり、あるいは都心から企業の本社を誘致したりして、企業を核として地域ごとに経済的に自立できる社会を作り、その地域で発生した課題の解決のために必要ならば、そこで政党を立ち上げていく――といった方向に舵を切らないと、日本は緩やかな衰退への坂道を転がっていくしかないように思います。これこそが私が提唱する「シン日本列島改造計画」です。(〈「勢いを失ったいまの日本に必要な「シン・日本列島改造」〉2023.1.20) 個人個人ももっと仕事や地域の活動に真摯に取り組み、そして地域ごとに経済的に自立する。そういう社会を作らなければならない。その社会運動をベースに、新しい政党が生まれる。そんな時代の転換点に私たちは立っているのだと思うのです。2024年のスタートにあたって、そんなことを感じました。 |
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●「イスラエルの戦争」を煽るばかりで本当にいいのか…「アメリカの論理」問題点 1/9
ロシア・ウクライナ戦争に続き、イスラエル・ハマス戦争の被害が深刻化している。評論家の八幡和郎さんは「岸田政権は、ロシアやハマスを一方的に『悪』とするアメリカに無批判に追従している。しかしアメリカの『正義の戦争』がこれまでに多くの悲劇を生んできたことを忘れてはいけない」という――。 ●米民主党政権に追従する岸田首相 岸田政権は、首脳会談やサミットなどでのふるまいは安定しているものの、ウクライナやパレスチナ問題で、米国の硬直的な外交姿勢に追従しているのはよろしくない。増税や政治とカネといった内政問題に注目が集まり、岸田外交には建設的な批判がなされていないように思う。 2024年は米国大統領選挙の年だ。トランプ大統領の時代には大規模な戦争は起きず、安倍外交は世界秩序の守護神的な評価を獲得し、日本の国益もよく守られていた。 ところが、2020年に新型コロナ禍が世界を席巻し、2021年にアフガニスタンから米軍などが撤退、2022年にロシアによるウクライナ侵攻、2023年にはパレスチナ自治区ガザ地区で紛争が勃発し、バイデン政権はその場しのぎの外交で悲劇を拡大させている。 それを止められない岸田政権にも落胆するが、所属派閥の宏池会は米国民主党にもともと近いから予想の範囲ともいえる。 ●アメリカの論理は決して万能ではない しかし、安倍元首相の主体的な外交手腕を支持してきた保守派に、「岸田政権はアメリカ支持が足らない」と批判している人が多いのは不可解だ。彼らは、WGIP(War Guilt Information Program=日本人に戦争贖罪意識を植え込む戦略)から日本人は脱却すべきと言ってきたのにおかしな話だ。 いまこそ、米国の論理が万能でないことを警告するとともに、先の戦争について、米国の硬直的な姿勢にも問題があったことを想起させ、一方的に批判されてきた日本が一定の名誉回復をするチャンスであるにもかかわらず、だ。 中道リベラルの人々が無批判なのもおかしい。欧米以外の多く国は、ロシアに対する強硬策一辺倒に疑問をもっているし、日本にとって隣国ロシアとの関係が悪化することは平和への危機に直結する。また、イスラエルの暴虐に対して積極的な抗議をしているのは、米国のことなら何でも気に入らない過激な左派ばかりだ。 今回は、米国外交のどこが間違っているのか、日本はどう対処すべきかを論じたいと思う。 ●イスラエル首相はハマスと戦前の日本を同一視 世界は2年近く続くロシア・ウクライナ戦争にうんざりしているし、民間人を巻き添えにガザへの軍事侵攻を続けるイスラエルに批判的だ。一方、米国は「先に攻撃したロシアやハマスは殲滅されても仕方ない」という立場を崩さない。 これは、満州事変や真珠湾攻撃がけしからんとして、日本に無理難題を要求して戦争終結を遅らせたうえ、広島と長崎に原爆を落とし、ソ連の参戦を促し、占領下で憲法まで変えさせたのと重なる。 イスラエルのネタニヤフ首相も「米国が第2次世界大戦の真珠湾攻撃の後で停戦に応じなかったのと同様に、ハマスの奇襲攻撃を受けたイスラエルが戦闘停止に応じることはない」「ハマスに乗っ取られたパレスチナのより良い生活を望むなら、ハマスを破壊せよ。第2次世界大戦中の日本やドイツのように、有害な政権を排除しなければならない」と発言している。 安倍元首相は再登板時に、「戦後レジームの見直し」を唱えていたため、欧米は第2次世界大戦戦勝国がよってたつ歴史観に敵対する「歴史修正主義」ではないかと危惧した。しかし安倍元首相は、日清・日露戦争まで否定されたくない、日本が一方的に悪かったのではない、アメリカも原爆や戦後処理など行きすぎもあったと考える一方、歴史修正主義という批判を避けたいという意識を健全に持っていた。 また、インドを価値観同盟の仲間に入れることを提案し、プーチン大統領と信頼関係を築いただけでなく、イラン訪問や米国抜きのTPP発足、EUとの経済連携協定(EPA)などを実現した。 ●ロシアやハマスは全面的に「悪」なのか 安倍元首相であれば現在の状況でもう少し柔軟な外交を展開しただろうが、岸田外交は、アメリカに対して独自性を示さず、気前のいいATM的存在になってしまっている。 しかし、「ロシアやハマスは悪」として、ウクライナとイスラエルを支持する米国の論理を鵜呑みにしていいのだろうか。 〈「パレスチナとイスラエル、結局どっちが悪いの?」日本人が答えを出しにくい“世界の難問”を考える〉で整理したように、パレスチナの望ましい未来は、イスラエルがパレスチナの人々の権利を侵害したことを認め、その被害を償う意思を明確にしたうえで、パレスチナ人に有利な形で二国家共存体制を構築することしかない。 欧米人は長くユダヤ人を迫害し、ナチスによるホロコーストを防げなかった贖罪感から、パレスチナの人々の正当な権利を軽視しすぎだ。2000年前にユダヤ人の国があったからといって、勝手に建国することが正当なはずがない。 ●イスラエルの黒歴史が許されることはない ユダヤ人による入植は平和裡でなかったし、イスラエル建国はテロの結果でもある。一方、国連決議でイスラエル国家の存在は認められたし、オスロ合意でパレスチナも二国家共存を容認したのだから、イスラエルの自衛権は否定できない。 ただ、現状が肯定されても、過去の黒歴史が許されるわけでない。欧州系の人々が、北米やオーストラリアにいることや、彼らの国家が存立することは合法だが、そのことが、先住民に対する暴虐の過去を許すものではないのと同じだ。 ハマスのテロは、容認されないが、反撃は被害に見合った規模と国際法で許された手段に限られるべきだ。イスラエルがそれ以上の軍事作戦を展開しているようであれば、国際社会は毅然として批判しなくてはいけない。 ●欧米はロシアの未来像を持ち合わせてない ロシアのウクライナ侵攻は国際法違反だが、2004年のオレンジ革命では選挙で選ばれた親露政権転覆を米国が支援したし、ウクライナにNATOやEU加盟の夢をちらつかせて混乱を煽ったのも戦争の原因だ。法的にはロシアが悪いが、真珠湾攻撃したから日本がすべて悪かったという日本人にとって不愉快な歴史観と同じ理屈だ。 欧米がロシア周辺地域でいかなる国際秩序を目指しているのか理解しがたい。この地域で、地元勢力と西欧勢力が結んでロシアと対立する十字軍的試みは、800年も繰り返されてきた。ロシアはNATOやEUから排除するが、ほぼ同じ民族のウクライナは入れるというのは理不尽だし、核保有国のロシアを解体することは世界の安定を危機にさらす。 アメリカが支援するイスラエルやウクライナが、民主主義を体現しているかも疑わしい。イスラエルはアラブ系住民を差別し、ウクライナはロシア語話者を不利に扱ってきた。ネタニヤフ政権は司法の独立を否定しようとして厳しい反発を受けており、ウクライナは世界で最も汚職が横行し、腐敗している国の一つだ。 パレスチナの2006年総選挙で勝利したのはイスラム原理主義組織ハマスだったのに、欧米やイスラエルがファタハ(パレスチナ解放機構の主流派政党)を支持して政権に居座らせている。 ●日露関係が悪化する大きすぎるリスク プーチンは、一応まともな選挙で選ばれ国民に支持されているし、ソ連解体のときには、ウクライナのほうが一人あたりのGDPが多かったのに、現在ではロシアの3分の1と逆転した。5200万人いたウクライナの人口は約30年間で4100万人に減り、今回の戦争で数百万人が逃げ出した。もしEUに加盟したとしたら半分も残るか疑わしい。 ソ連とロシアを同一視して、第2次世界大戦で不可侵条約を侵犯したとか、北方領土を不法占拠したというが、スターリンはジョージア人、北方領土問題の主役だったフルシチョフはウクライナ共産党のトップ出身、ブレジネフはウクライナ生まれでドニエプル川流域の軍事産業を基盤としていた。シベリア抑留はウクライナでも行われたし、北方領土の多数派住民はウクライナ系だ。 ウクライナは、中国に空母を売り、北朝鮮にミサイル技術を輸出した疑惑が報道されるなど(在日大使館は疑惑を否定)、日本に友好的とはいえなかったし、2023年のG7広島サミットではゼレンスキー大統領が原爆の悲劇をウクライナの現状と同等だと矮小化した。 一方、日本にとってロシアは隣国だ。経済協力の可能性、北方領土交渉、漁業、アイヌ、対北朝鮮・韓国・中国でロシアが相手方についたときの面倒を考えると、ロシアとの関係悪化がもたらすマイナスは計り知れない。 ●軍事侵攻を機に、大飢饉が「大虐殺」に ウクライナやイスラエルの主張には、日本が困るものも多い。近代国家は同系統の民族を統一していくことで発展してきた。ウクライナは、ロシア革命前に独立国であったことがない。ロシアとの縁切りが唯一の正義なら、独立国だった沖縄はどうなるのか。無条件に欧米の論理に与することは、中国の沖縄への干渉を正当化しかねない。 ウクライナ開戦後に歴史認識が変更されたことも問題だ。1930年代にソ連の一員だったウクライナでは「ホロドモール」という大飢饉が起き、数百万人が餓死した。その原因は農業政策の混乱だった。 このホロドモールについて、ロシア南部やカザフスタンでも同様に犠牲者が出ていることなどから、これまでは欧米でもウクライナ人へのジェノサイド(大量虐殺)とするのは適当でないと考えられてきたにもかかわらず、ロシアの軍事侵攻を機に、欧米の一部でジェノサイドと認定されるようになった。これは、戦前の日本が悪意でやったわけでないことまで批判された経緯とよく似ていている。 ●アメリカの行為を日本が肯定する必要はない たしかに日本軍が真珠湾攻撃を行ったことは事実であるから、それについて妙な弁解をしないほうがいいだろう。ルーズベルト米大統領が攻撃を事前に知っていたとしても理由にならない。日中戦争についても同様だ。中国側にも批判されるべきことは多いが、相対的には日本が悪い。 しかし、原爆を落とし、東京大空襲のような無差別攻撃をし、ソ連に不可侵条約を反故にさせただけでなく、戦後は根本的な体制変革を強制し、自分たちの国際法違反は棚に上げて東京裁判を押しつける米国の行為を、日本人が積極的に肯定する必要はない。 米国は、相手が降伏しない限り、自分たちの何十倍もの死者が相手方に出ても平気で戦争を続ける。太平洋戦争における日本の軍人・軍属民の死者は約230万人で米国は10万人、イラク戦争でも米軍死者の100倍の犠牲を出した。イスラエルもテロで死んだ自国民の何十倍ものパレスチナ人を殺している。 ●アメリカの「正義」の戦争で混乱が広まった 「正義」を掲げた戦争によって、かえって混乱が広まっても結果論で片付ける。日本との和平条件をつり上げたことの結果が、南北朝鮮の分断であり、中国の共産化だったが、米国は自分の責任だと認めない。平和は維持が容易なバランスの取れた勢力均衡のもとでこそ可能なのだ。 ウクライナに対する支援が、中国や北朝鮮の野望を挫くという人もいる。しかし、台湾や韓国の人は、アメリカや日本におだてられて、同じ民族で戦う羽目になることを恐れている。 この1月13日には台湾総統選挙と総選挙が、4月10日には韓国の総選挙が行われる。台湾総統選挙は野党分裂にもかかわらず、対中強硬路線を続けようとする与党・民進党と中国との緊張緩和を掲げる野党・国民党が接戦を繰り広げており、議会選挙は台湾も韓国もどちらも野党優勢となっている。 日本の保守強硬派のアジア認識は、偏っていて危うい。台湾の政治家も企業も、安全のために中国にパイプを持っていることは常識だと思うが、知らない人が多いのだろうか。 ●無条件な追従も敵対も馬鹿げている 逆に韓国は、尹錫悦大統領が対日改善に取り組んでいるのに、日本の保守派は応援しない。それどころか、松川るい参院議員のように対韓関係改善に熱心な議員は保守派から批判されて、「エッフェル塔写真」を発端にしたフランス研修問題が彼らに針小棒大に攻撃されて炎上した。 対中国でも、やみくもに敵対しては互いに損をするだけだ。バブル崩壊後の日本経済を、輸出、安い消費財などの輸入による生活防衛、観光客によるインバウンド需要などで支えてきたのは中国との関係だ。 外交は押したり引いたりしながら進めるもので、無条件の追従も敵対も馬鹿げている。日米同盟が外交の主軸であるから、基本的には欧米との共同歩調はやむを得ないが、ウクライナやパレスチナについては積極的に平和のために仲介の労もとるべきだろう。 ●イラク戦争で米国一辺倒だった小泉外交 しかし、日本にとってメリットがない話には、一番後ろでついて行けば十分だ。イラク戦争でブッシュ大統領(当時)の暴走を後押しした小泉首相の判断は、とりあえず日米関係を好転させてその場しのぎにはなったが、世界での評判を落としたし、愚行に協力してくれたからといって米国民に感謝されるはずもない。 同じ立場だった英国のブレア首相(当時)はそのために歴史的評価を落としたが、日本人が小泉氏を糾弾しないのはおかしいことだ。 岸田首相は、安倍氏がそうであったように、米国大統領から助言を求められ、影響力を与えられてこそ「外交の岸田」たりうる。 また、与野党の政治家もマスコミも、20年後に次の世代の人々に胸を張って説明できる発言をしてほしいと思う。 |
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●正念場の岸田政権 震災対応と政治改革に力尽くせ 1/9
岸田文雄政権が正念場を迎えている。政治への信頼回復とデフレ脱却に加え、能登半島地震への対応といった先送りできない試練が続く。難航する安否確認や生活支援の現状は政権の危機管理能力が問われかねない。政治資金問題をめぐっては安倍派議員が逮捕され、政治改革への難路が想定される。賃上げの成果で支持率が浮揚するかは予断を許さない。まずは目の前の震災対応に「一意専心」(岸田首相)で取り組んでほしい。 元日に発生した能登半島地震の被災地は、現在も安否を確認できない住民が多数おり、断水や停電、道路の寸断などが被災者を苦しめる。岸田政権は、被災者の要請を待たずに行うプッシュ型支援をさらに加速してもらいたい。9日にも2023年度予算から47億円の予備費拠出を閣議決定する予定だ。飲食や燃料の支給など、差し迫った課題への対応を急いでほしい。 政府は能登半島地震を激甚災害に指定し、災害復旧に向けた国の費用負担を増やす方針だ。被災者の生活を支える支援パッケージもまとめる。岸田首相は24年度予算の予備費増額も財務相に指示した。捜査救助活動を第一に、長期化が想定される復旧への歩みを確実に進めたい。 被災地で厳しい生活が続く中、自民党の現職の安倍派議員が7日、政治資金規正法違反の疑いで逮捕された。組織ぐるみの可能性がある同党の「裏金」疑惑の全容を解明し、政治改革を進めなければ、政権の行方さえ危うい局面を迎えた。党内に新設する政治刷新本部(仮称)に有識者も参加し、再発防止と派閥のあり方を議論する。月内にまとめる中間案は実効性を担保できる内容なのか注視したい。 4月には衆院の細田博之前議長の死去に伴う補欠選挙が行われる。東京地検特捜部の捜査次第では議員辞職による選挙区の増加も想定され、自民党の派閥政治が厳しく問われる。秋の自民党総裁選も混沌としてくる。デフレ脱却で支持率回復を狙う岸田政権だが、震災で始まった24年は政権にとって試練の年となる。震災対応も政治改革も着実に歩みを進めてほしい。 |
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●20代支持率が「50%→10%」に急落…岸田政権によって「若者の自民党離れ」 1/9
若者層の支持政党に変化が生じている。ライターの平河エリさんは「若者の自民党支持率が急落している。岸田政権は安倍、菅時代の貯金を食いつぶしたようだ」という――。 ●「ジリ貧」の岸田政権と自民党の支持率 岸田政権が、低支持率にあえいでいる。 毎日新聞の世論調査(12月16〜17日)では16%、時事通信(12月8〜11日)では17.1%と、複数の世論調査で10%台の支持率となり、多くの政治関係者に衝撃を与えた。 同じくして、自民党の支持率も低下している。朝日新聞世論調査(12月16〜17日)では支持率23%と、自民党の政権復帰後最低の支持率を更新するなど、少なくとも2012年からの自民党政権では最も定位の水準にあることは間違いないだろう。 原因は一つではない。岸田内閣自体の支持率はジリ貧で、2022年末から低下傾向にあった。春先から夏にかけて、ウクライナ訪問などの外交成果により一定持ち直したものの、そこから再び内政に目が向いたことで再び低下トレンドに入っていた。それに加えて、今般の自民党における派閥の不祥事により、ついに自民党にまで火がついた格好だ。 ●「岸田おろし」で総選挙に突入か 自民党は内閣支持率が落ち込むと「○○おろし」という形で看板の架替えを行い、「ご祝儀相場」が残っている間に解散総選挙を打ってしのぐ、という戦略を取る。 典型的なのは、まさに岸田内閣だろう。支持率低下にあえぎ、衆参の補選や横浜市長選で破れた菅義偉前首相は総裁選に出馬することを阻まれ、退陣を表明。就任と同時に岸田文雄新首相は解散を宣言し、議席こそ減らしたものの、絶対安定多数を確保するなど事実上勝利した。 このような状況を踏まえると、岸田首相で総選挙に突入する可能性は低いと見るのが永田町のコンセンサスだ。しかし、今回に関しては、前回の菅義偉内閣とは異なり、自民党自体の支持率が大きく低下するトレンドに入っている。つまり、自民党自体の比例得票数などにも影響する可能性は否めない。 また、仮に総裁選を行うとしても、安倍派・二階派が動けない以上、岸田派・麻生派・茂木派など、岸田政権を支えた派閥が主導して総裁選びが進むことになる。新総理の人選によっては、刷新感は薄れることになるだろう。 ●安倍、菅時代の貯金を使い切った岸田政権 岸田政権の支持率低下の特徴は何か。一つは、若年層の支持を急速に失っていることだ。 安倍政権時、メディアでは盛んに「若者の保守化」が唱えられていた。選挙の出口調査でも、10代20代の支持率は底堅いことが示されていた。 初期の岸田政権も、例外ではなかった。2021年の解散時には「なぜ若者は自民党に投票するのか?」という記事が掲載されている。 これによれば、自民党に投票する割合が最も高かったのは10代であり、続いて20代と、若年層による自民党の指示が底堅かったことが顕著だ。NHKの出口調査によれば、最盛期の2017年には20代投票者の50%が、比例で自由民主党に票を投じていた。 岸田政権の支持率が低下し始めて以降の世論調査では、全く異なる結果が出ている。例えば、時事通信が10月に実施した世論調査では、岸田内閣の支持率は26.3%であるが、そのうち29歳以下の有権者は10.3%と、極めて低い数値となっている。60歳代、70歳以上は30%を超えているのと対象的である。 安倍政権・菅政権においては、支持率が上下するものの、概ね若年層からの支持が底堅かった。岸田政権は、その貯金を失い、若年層の支持を失った結果、支持率の底が抜けていったと言える。 これらのことを考えると、「若者の保守化」というよりも、単に安倍晋三元総理が個人としての人気が高かったことと、野党第1党である民主・民進・立憲の忌避感が高かっただけであり、根本的な「岩盤支持層」は高齢層であったことがわかる。 与野党の第1党はどちらも、世論調査では高齢層の支持を中心としていると言えるだろう。 ●自民党の次に人気な国民民主党 では、新興政党はどうか。「若年層人気」という観点で、興味深い世論調査がある。 12月のNHK世論調査では、世代別の支持率がグラフとして公表されたが、国民民主党が39歳以下の支持率で自民党についで2番目の支持率となったことが話題になった。 国民民主党は党首である玉木代表が積極的にYouTubeなどでの発信を行っており、ネットを通じた知名度の向上に一役買っていると言えるだろう。 ●世論調査と実際の得票の「差」 年代や普段接しているメディアによって、政党支持は大きく変わる。 JX通信/選挙ドットコムの調査では、ネット調査と電話調査それぞれの数字を発表している。2023年12月の電話調査では、自民党の支持率は23.9%だが、ネット調査では9.3%だった。立憲民主党の支持率も、電話調査では11.6%だが、ネット調査では2.2%と、大きな乖離がある。 ネット調査は主に50代以下の層が多く、電話調査は高齢者層が主だ。精度の面では、自ら回答するネット調査にはややバイアスがかかる可能性があるが、ネット世代の意識を理解する上では重要である。 近年、国政選挙などでは、立憲民主党の獲得議席数が情勢予測より下回る傾向が続いており、他方で国民民主党は情勢予測では厳しい結果が出るものの、それを上回る結果を出すことが多い。 電話調査などを中心にした情勢報道で拾いきれる民意と、実際の得票の間の乖離が、拡大していると見るべきなのではないだろうか。 ●働き盛りを押さえる維新、捉えられない立憲 とはいえ、「若年層」の中にも大きな差がある。NHK調査では「39歳以下」となっている(39歳は「若年」ではないだろう)が、10代、20代、30代のそれぞれで支持傾向は異なるし、当然ながら1年経てば年代層も入れ替わっていくため、傾向は流動的に変わるからだ。 比較のために、2022年7月の共同通信の調査を見てみよう。 立憲民主党は50代以下の層からの支持が薄いが、特に低いのは30代と40代で、「働き盛り」の層からの支持が低いことがわかる。逆に10代からの支持は比較的高い。 2021年の朝日新聞による衆院選の出口調査でも、10代の17%が投票したと答えたのに対して、30代は14%と低い傾向だ。 日本維新の会は30代から50代までの働き盛り・壮年層の支持が厚いことがわかるが、10代、20代の支持は比較すると低い傾向にある。朝日の出口調査でも、40代が17%に対して10代が8%となっている。 国民民主党は、年代が下がるほど支持が高まる傾向にあり、特に10代と20代の支持が厚い。 テレビを中心として、(特に関西圏における吉村洋文知事、橋下徹元代表などの露出で)知名度を上げた維新と、YouTubeなどのネットを中心として知名度を伸ばしてきた玉木代表の違いが出ているとも言え、興味深い。 ●若者支持率では維新と肩を並べるれいわ さて、通常であればこのような原稿は、次のように続くことが多い。 「立憲民主党は高齢者の支持に偏っており、政策的に若者の支持を得られていない。批判ばかりという印象が強く、何かを変えてくれるというイメージを与えられていない。ネット上の極端な意見の有権者ばかりの声を聞くのではなく、もっと若年層のリアルな声を聞き、政策に反映させない限り、永久に与党に勝つことはできない」と、このような具合である。 政治記事を積極的に読む方なら一度は耳にしたことがある意見ではないか。 上記のような意見は正しいのだろうか。これを考えてみたい。 年代別の支持率は、政策的な正当性を補強する論拠として使われることがある。とりわけ、野党第1党である立憲民主党(あるいはその前身の民主・民進)に対する批判的文脈を補強するデータとして使われることが多い。そして、その対比になるのは、自民党であったり、国民民主党であったりする。では、それ以外の政党を見ていこう。 ここまで触れていないが、れいわ新選組は各種調査で40代以下の支持が厚い。先程のNHKによる年代別調査でも、詳しい数字は公表されていないものの、20代では維新と同程度の支持を獲得していた。 ●YouTubeの登録者数はれいわがダントツ、次いで参政党 れいわ新選組のYouTube公式チャンネル登録者数は28.3万人と、他党と比較しても際立って高い。自民党が13万人であり、国民・玉木代表の個人チャンネルでも13.8万人であることを考えれば、その2倍以上となる(肉薄しているのは22.5万人の登録者を誇る参政党くらいか)。 ネットでの発信力が若年層の認知度・支持率に大きく貢献しているのではないか。 れいわ新選組に次いで、23万人のYouTube登録者数がいる参政党も見逃せない。参院選の若年層を分析した記事では「参政党に投票した人を年代別に見ると18、19歳では6.9%、20代は5.9%、30代では4.8%と若い世代ほど支持を広げていました」との記述がある。参政党はYouTubeだけではなくTikTokなどでも支持を広げ、テレビではほぼ主張が取り上げられないにもかかわらず、一定の支持率を得たわけだ。 このように見ていくと、政策的な方向性より「どのようなメディアを見ているか」という点のほうが、政党支持に大きく影響しているのではないか。 前述のような「批判ばかり」というようなイメージも、テレビ的、あえて言うならワイドショー的な価値観で、そのようなネガティブな認知すら持っていない若年層も少なくない。 ●なぜ政策のないガーシーが30万票も集められたのか すでに「なつかしニュース」のようになってしまったが、昨年参議院選挙に出馬したガーシーのYouTube登録者はおおよそ120万人だった。個人名での得票は28万票の得票である。これをどう捉えるか。 ガーシーの10倍以上の登録者がいるYouTuberやインフルエンサーは複数存在する。彼らが出馬したとして、10倍の得票、つまり200万〜300万票が獲得できるのか。そう簡単にはいかないだろうが、考えてみる価値はあるだろう。 政策的な方向性がほとんどなく出馬したガーシーが30万近い得票を獲得できたことを考えれば、「政党」や「政治家」としての体裁を整え、拒否感を消す工夫をすれば、既成政党に対抗しうる台風の目となる可能性は十分にあるのではないか。 これまでの時代も全国比例には多数のタレント候補者が立候補してきた、アントニオ猪木氏のように政党を立ち上げたケースも存在する。 時代が異なるのは、個人の人気がメディアでの影響力に直結するということだ。 ●ネットを足掛かりに党勢を拡大するミニ政党 かつては、いくらテレビで人気の有名人でも、その人気はテレビなどの規制メディアを通じてしか発揮できなかった。つまり、「政治家」という枠にハマったとき、その力は大きく制限されてしまうわけだ。 しかし、インフルエンサーは違う。彼らは自ら発信できるメディアを持ち、支持する人にタイムリーに主張を届ける力を持つ。そして、公選法による規制を除けば、メディアのように横並びになることなく、かなり自由に活動することができる。 重要なポイントは、1年経つごとに新聞・テレビなどのマスメディアの影響力は落ち、インターネット、あるいはSNSの影響力は上がっていくということだ。 当たり前だが、今の10代は10年経てば20代になる。10年後の60代は今の50代である。今の50代のSNS利用頻度を考えれば、高齢層を含めてインターネットが唯一有権者にリーチする手段になってもおかしくない。 すでに、参政党やNHK党など、ネット発の政党が参議院の比例得票により議席を獲得し、国会で足がかりを作っている。 これが加速していけば、党首の影響力を中心とするミニ政党の全体的な得票が底上げされ、既成政党が圧迫されていくことになる。 ●自民、立憲は「語りかける力」がない ここまで書くと、「有権者は政策など見ていない」というようなシニカルな意見の記事だと誤解されるかもしれない。 しかし、国民民主党・玉木代表や、れいわ新選組・山本太郎代表は、ネット上でも繰り返し政策を説明し、直接有権者に語りかけている。イメージや認知度だけではなく、政策が浸透していることが、ネット世代の底堅い支持になっているのではないか。 自民党の支持率低下、そして立憲民主党のネットでの支持の弱さも、政策をどうこうという以前に「語りかける力」のなさが見抜かれている、とも言える。 これからの選挙においては、有権者に直接語りかける力と発信力、両方が求められるのではないか。 ポイントは、自民党や立憲民主党は党首が頻繁に変わる上に、党内にさまざまな意見がある総合政党であるということだ。このような点は、党首イコール政党である政党に比べて大きなディスアドバンテージになる。 自民党は政府与党としてのアドバンテージがあるが、立憲民主党は腰を据えて、長期目線で代表の発信力強化に取り組む必要があるのではないか。首のすげ替えでメディアが取り上げてくれる時代は終わったとも言える。 ●環境変化に適応した政党だけが生き残っていく ネット発の政党は「ミニ政党」といった規模であり、まだまだ国会において大きな影響力を持つには至っていない。この傾向が拡大していけば、ネット発の政党が大きなムーブメントとなり、政局を動かしていく日は遠くないだろう。 比例代表や基礎自治体など、数%の得票率でも議席が獲得できる選挙と違い、原則50%近くの得票が求められる日本の小選挙区制や都道府県議会の下で、どの程度まで勢力を伸ばせるかはわからないが、10年スパンで考えれば大きな変化が起きることは見えている。 ミニ政党がさまざまな方面から拡大していけば、極端な意見をそれぞれが言い合うだけの、対話を欠いた議会になる可能性は少なくない。しかし、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一、生き残るのは変化できる者である」というダーウィンの言葉通り、環境に適応したものだけが生き残っていくのではないか。 未来を予測するのは難しいが、年代別の政党支持率は、明日の議会の姿を示している、と言える。 |
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●自民の「政治刷新本部」、11日初会合へ 小泉元環境相も参加か 1/9
自民党は派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題をふまえ、岸田文雄首相(党総裁)の直轄で党内に設ける「政治刷新本部」の初会合を11日に開く方向で最終調整に入った。政権幹部が明らかにした。 メンバーは茂木敏充幹事長や森山裕総務会長、小渕優子選挙対策委員長ら「党7役」や、首相側近の木原誠二幹事長代理が中核となる予定。青年局長経験者も加える方向で、小泉進次郎元環境相や小倉将信前こども政策担当相らを念頭に検討している。最高顧問には首相経験者の麻生太郎副総裁と菅義偉氏が就任。首相周辺は「挙党態勢で臨むための人事だ」と話す。 刷新本部には外部有識者も参加。政権幹部によると、1月下旬に開会予定の通常国会までに中間取りまとめをする方向だという。首相は年頭の記者会見で「必要があれば関連法案を提出する」としており、政治資金規正法の改正まで踏み込むかが焦点となる。 自民党の最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)が政治資金パーティー収入の一部を裏金化したとされる事件では、東京地検特捜部が7日に同派所属の衆院議員・池田佳隆容疑者らを政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で逮捕するなど、捜査が続いている。 首相は「中間とりまとめでそれなりの形にしたい」と周囲に意気込みを示すが、政権幹部は「議論は捜査の状況を見ながら」。さらに派閥の存在自体に否定的な最高顧問の菅前首相がどう出るかなど、議論の先行きは見通せない。 |
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●岸田政権、秋までの退陣不可避か 自民「選挙の顔」刷新で政権維持図る 1/9
自民党安倍派を中心とする政治資金パーティー収入の裏金化疑惑が、岸田政権を直撃。支持率低下が止まらず、2024年は首相退陣が避けられそうにない情勢だ。 底なしの支持率急落にあえぐ岸田文雄首相は、1988年のリクルート事件以来とも言われる疑獄事件の直撃を受けた。昨年12月、自民党最大派閥・安倍派を中心に政治資金パーティー収入の一部を裏金化していたとされる事件が表面化。世論の政治不信は頂点に達し、岸田首相は今年9月の党総裁任期切れまでの退陣が避けられそうにない情勢だ。自民党は次期衆院選で苦戦必至とみて、「選挙の顔」となる首相を交代、速やかに衆院を解散して政権維持を図る展開が予想される。ただ、元日に発生した能登半島地震の影響で解散時期が制約されるとみられ、政局の行方は不透明感を増している。 ●「安倍派一掃」で支柱失う 疑惑が表面化したのは昨年11月下旬だ。安倍派が政治資金パーティー収入を所属議員に還流させ、組織的に裏金化していた疑いが持たれている。政治資金規正法上、収支報告書の不記載・虚偽記載罪の時効にかからない2018〜22年の5年間で、裏金の総額は6億円規模に上るとされる。 とりわけ、松野博一官房長官や西村康稔経済産業相、自民党の萩生田光一政調会長ら政権中枢を占める安倍派幹部が1000万〜数百万円を裏金として受けていた疑いが明らかとなり、岸田首相はこれら幹部の更迭に追い込まれた。臨時国会閉幕後の12月14日、同党の高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長を加えた安倍派のいわゆる「5人衆」を政権中枢から一掃。同派の副大臣5人も全員交代させた。 安倍派を政権の支柱として頼りにしてきた首相にとっては、計り知れない打撃となった。この日公表された時事通信の世論調査で、岸田内閣の支持率は初めて2割を切り、17.1%に落ち込んだ。排除される形になった同派は反発を強め、他派閥も含めて党内に首相を支えようという空気は乏しい。岸田政権は「もはや立て直しは不可能」(自民党ベテラン)という見方が広がっている。 ●行き詰まる政権運営 疑惑が表面化する以前から、岸田政権は行き詰まりつつあった。首相が政務秘書官に起用した長男の不適切な行動や、健康保険証の廃止を前提とするマイナンバー制度の混乱が批判を招き、支持率は昨年5月の38.2%をピークに急落。起死回生を狙った9月の内閣改造・自民党役員人事は不発に終わり、首相肝いりの1人当たり4万円の定額減税は既定方針の防衛増税との矛盾は否めず、「政権浮揚狙い」と見透かされ、民心の「岸田離れ」が鮮明になった。 疑惑が発覚した後の対応もお粗末だった。違法行為の疑いをかけられた松野官房長官が記者会見や国会で、一切の説明を拒んでいる様子が連日のように報じられた。ほかの安倍派の閣僚や党幹部も、悪びれもせず「職務を全うする」と言い放った。岸田首相は松野氏ら安倍派幹部を交代させるまで1週間近くにわたってこうした状況を放置し、人々の政治不信をどれだけ助長したか分からない。この人事に当たっては「国民の信頼回復のため火の玉となって自民党の先頭に立つ」などと大仰な言葉を口にしたものの、具体策は示さないままだ。年明けになってようやく、再発防止策を検討する新しい党組織として「政治刷新本部」(仮称)を設置し、1月中に中間とりまとめを行う考えを示した程度で、スピード感も指導力もうかがえない。 裏金疑惑は安倍派にとどまらず、東京地検特捜部の今後の捜査でどこまで波及するのか見通せない。12月の人事は「急場しのぎ」と言え、1月下旬とも見込まれる通常国会召集まで新体制が無傷でいられる保証はない。通常国会で2024年度予算案審議が始まれば、首相は引き続き野党の追及のやり玉に挙げられる。自民党の派閥政治に起因した今回の不祥事に説得力のある対応策を示せなければ、政権は立ち往生しかねない。 ●待ち受ける「政治改革国会」 大きな課題となるのが、政治資金の透明性を高めるための政治資金規正法の改正と、自民党の派閥の在り方見直しを含む政治倫理の確立だ。だが、過去の例を見ても、自民党は政治改革の諸課題に後ろ向きだ。リクルート事件を踏まえ、1991年の通常国会で最大の焦点となった政治改革関連3法案は、その柱となった小選挙区比例代表並立制の導入に党内の反対が根強く、廃案に追い込まれた。現行の小選挙区制に道筋が付いたのは自民党の野党時代だ。 派閥は弊害がクローズアップされるたびに解消が叫ばれ、歴代首相のほとんどが形式的にせよ派閥を離脱して距離を置いてきた。だが、岸田首相は就任以来、こうした慣例を無視。岸田派会長にとどまっただけでなく、派閥の例会にもたびたび顔を出していた。今回の疑惑発覚を受け、派閥離脱を表明したが、遅きに失したと言うほかない。 その首相が、疑惑追及と政治改革が焦点となる通常国会で派閥の弊害除去を唱えたところで、誰が耳を貸すだろうか。自民党に政治資金規正法改正案の内容を検討させようとしても、指導力を発揮しようがないだろう。自民党ベテランは「首相は信用をなくしてしまっている」と言い切る。もはや「岸田首相の下では選挙は戦えない」というのが党内の大勢だ。「ポスト岸田」有力候補の一人と目される石破茂元幹事長は、2024年度予算成立直後の首相退陣を唱えている。 だが、自民党の体質そのものが問われている局面だけに、首相を代えたところで信頼回復は容易ではない。世論の理解を得るには、政治資金規正法の改正は避けて通れないとみられるが、実効性のある改革に向けた党内合意の形成は難航必至だ。どうにか改正案の提出にこぎ着けたとしても、審議は予算成立後の後半国会以降に持ち越される。「ポスト岸田」をうかがう候補は、うかつに岸田降ろしに動けば火中の栗を拾うことになりかねない。むしろ満身創痍(そうい)の岸田政権に委ねた方が得策との打算が働きそうだ。 ●当面の政治日程 1月下旬 通常国会召集 3月下旬? 2023年度予算成立 6月13日 G7サミット(イタリア、15日まで) 6月20日 東京都知事選告示(7月7日投開票) 6月下旬? 通常国会会期末 9月 自民党総裁任期満了 次の節目は、6月の通常国会会期末だ。国会が閉幕するのに合わせて首相が退陣を表明し、秋の自民党総裁選を前倒し実施する案も取り沙汰される。同13日にイタリアで開幕する先進7カ国首脳会議(G7サミット)を政権の総仕上げとする、いわゆる「サミット花道論」に通じる。ただ、東京都知事選が同20日告示、7月7日投開票の日程で行われることが決まっている。自民党は総裁選を国のトップリーダー選びとして大々的にアピールするのが常で、同じく注目度の高い都知事選との同時実施で世論の関心が分散するのを嫌う可能性がある。 政局の行方を読みづらくしているのが、能登半島を中心に日本海側を襲った大地震だ。甚大な被害を受けた石川県では3万人を超える住民が避難生活を強いられている。早期の衆院解散が困難になっただけでなく、自民党内での岸田降ろしの動きや、国会での予算案審議を妨げるような野党の戦術は、震災復旧・復興そっちのけの政争と受け取られれば世論の厳しい批判を免れない。こうした状況は、図らずも岸田政権の延命に手を貸すかもしれない。 ●総裁再選出馬は困難か 総裁選は前倒しがなければ、9月末の任期満了に伴い、秋に実施される。岸田首相は21年秋の菅義偉首相と同様、再選出馬はできずに退陣する公算が大きい。新総裁選びで各派閥は前面には立てず、候補者も石破氏や小泉進次郎元環境相ら無派閥議員や、麻生派所属ながら派閥横断的な支持を集めてきた河野太郎デジタル相ら、知名度が高い議員の争いが軸になりそうだ。 新総裁が選出されれば速やかに臨時国会を召集、首相指名選挙を経て新内閣発足の運びとなる。新政権は鮮度が落ちないうちに衆院を解散、公明党と合わせて過半数の維持を目指す流れになるとみられる。自民党にとっては逆風、公明党も組織力の低下が顕著で、厳しい選挙戦となるのは避けられない。 一方で、野党陣営に対しても期待が高まっているわけではない。立憲民主党は党勢立て直しの手掛かりがつかめず、日本維新の会も不祥事続きで一時の勢いは失われた。しかも、両党は政策も体質も「水と油」。小選挙区での候補者一本化は議論すら行われておらず、各地で競合して非自民票を食い合い、自民党を利する展開が繰り返されるとみられる。 ちなみに衆院議員の任期満了は25年10月。法的には来年への先送りも可能だ。ただ、来年の夏には参院選が控えており、年内の衆院解散を逃すと、来年はほぼ必然的に衆参同日選となる。東京都議選も同じ夏に予定され、都議会を重視する公明党が同時期の衆院選に強硬に反対するのは確実だ。自民党にとっても、衆参で一気に議席を減らしかねないダブル選はリスクが大きく、党関係者は「ダブルは絶対にない」と断言する。 自民党は今回の疑惑の広がりに危機感を強めながらも、野党の低迷を踏まえ、議席は減らしても政権を追われることはないと高をくくっている節がある。同党ベテランは「野党がだらしないから自民党に緊張感がない」と認める。自民党に真摯(しんし)な反省がない以上、今年の政治の一大テーマとなる政治改革は掛け声倒れに終わる可能性が高く、同党に向けられる世論の視線は一段と厳しさを増すに違いない。 |
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●2023年の東京都内物価指数 3.0%上昇 41年ぶりの伸び率 1/9
総務省が9日発表した、2023年平均の東京都区部の生鮮食品を除く消費者物価指数は前年比3.0%上昇し、伸び率は22年の2.2%から拡大した。1982年以来41年ぶりの大きさ。 原材料やエネルギー価格の高騰を受け、食品などの値上がりが広がったことが上昇幅を押し上げた。 一方、12月の東京都区部の生鮮食品を除く消費者物価指数は、前年同月比2.1%上昇し106.1だった。 28カ月連続のプラスとなったが、11月の2.3%より伸びは鈍化した。 「食料」のうち、プリンが39.5%、鶏卵が22.7%、それぞれ増加し、「生鮮食品を除く食料」全体では6.0%の伸びとなったが、11月の6.4%から上げ幅は縮小した。 また、電気代が21.7%、ガス代が21.4%、いずれも低下したことも全体の上昇幅を抑える要因となった。 東京都区部の消費者物価指数は全国に先駆けて発表され、先行指標とされている。 |
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●能登半島地震 予備費から47.4億円の緊急対応を閣議決定 1/9
政府は、能登半島地震の被災者を支援する緊急対応として今年度予算の予備費から47.4億円を活用することを閣議決定した。 岸田首相は9日開かれた、非常災害対策本部会議で閣僚らに対し「プッシュ型支援を加速させるため迅速に執行し、被災地の状況改善にあてるように」と指示した。 また、岸田首相は、避難生活が長引く中、避難所で、生活環境や衛生環境の悪化が顕著になってきている問題点を指摘し、病気の方やお年寄り、妊婦など特に配慮が必要な方を最優先に、二次避難を優先すべき避難所について確認するように指示した。 |
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●経団連の十倉会長、議員逮捕「非常に遺憾」 実効ある対策を 1/9
経団連の十倉雅和会長は9日の記者会見で、自民党の政治資金規正法違反事件で、池田佳隆衆院議員が逮捕されたことについて「非常に遺憾に思う。政治の責任において実効ある対策が必要だ」と指摘した。岸田文雄首相をトップとする同党の政治刷新本部での議論などを通じ、政治への信頼回復に努めるよう求めた。 |
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●問われる政治の覚悟 1/9
ことしの日本の政治は、能登半島地震への対応で国民の命と暮らしを守ること。そして、政治とカネをめぐる問題で、国民の信頼を取り戻す道筋をつけることができるのかという課題に直面しています。ことし問われる政治の覚悟について考えます。 ●能登半島地震対応 岸田総理大臣は、年明け、二つの課題に先頭に立って取り組む考えを強調しました。 最優先の課題は、能登半島地震への対応です。記者会見で、「令和に入り最大級の災害で、被災地、被災者に寄り添い、努力しなければならない」と述べました。 被災地は厳しい寒さによって低体温症などで、避難生活の中で命を落とす災害関連死が強く懸念されています。被害の全容をつかみ、必要な支援を迅速に届け、被災者の命を守らなければなりません。 また、家や仕事を失った被災者の生活の再建や地場産業など被災地の再生に向けた息の長い支援も必要です。 さらに、被災した地域は、人口減少と高齢化が進み、行政や地域の支えあいにも限界があります。こうした地域で災害への備えをどう進めるのかも考えていなかなければなりません。 岸田総理は、与野党の党首と会談し、「災害対応に万全を期す点で、与野党の立場に違いはない」と述べたうえで、新年度予算案について、内容を変更して予備費を増額する方針を伝え、早期成立に協力を要請しました。 国民の命と暮らしを守ること、国民の安心・安全、将来に対する不安を取り除くこと。これは政治本来の役割です。その役割を果たす覚悟が、いま、与野党を超えて求められていると思います。 ●政治資金問題 もう一つ岸田総理が先頭に立つとしたのが、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題です。「国民の政治への信頼を回復すべく、自民党の体質を刷新する取り組みを進めていく」と強調しました。そして、総裁直属の「政治刷新本部」を発足させ、政治資金の透明性の拡大や派閥のあり方に関するルール作りを進める方針で、今月中に中間的な取りまとめを行い、必要に応じて関連法案を国会に提出する考えを示しました。 ●事態の深刻さ 私は、今回、これまでの政治とカネをめぐる問題とは違った深刻さがあるとみています。 まず、問題の広がりです。政治資金規正法違反の疑いで池田佳隆(いけだ・よしたか)衆議院議員が逮捕される事態になっていることに加えて、最大派閥の安倍派と二階派が捜査対象になり、不適切な資金の処理があったとされる派閥や国会議員、議員側の政治団体の数が多く、その額も億の単位という多額に上っています。 これに対して、自民党、各派閥からは、捜査中であることなどを理由に、実態について十分な説明は果たされてはいません。 さらに指摘しておきたいのは、自民党内で、この問題に対する具体的な行動が目立っていないことです。30年あまり前、リクルート事件の際には、議員が勉強会を作って改革案を提言したり、若手議員が改革を断行するよう執行部を突き上げたりもしました。事件の捜査状況を見極めたいという面もあるのかもしれませんが、今回、議員の多くが口をつぐむ背景に、不適切な資金の処理が日常化し、疑問を感じなかったうしろめたさ。世話になった派閥や有力者にはモノが言えないというような配慮があるのだとすれば、自民党の党運営が派閥依存の体質になっている深刻な事態を浮き彫りにしているともいえます。 ●派閥をどう考える 派閥は自民党の正式な機関ではありません。 リーダーを総裁に押し上げようとするグループという性格に加えて、政府や党、国会の人事は、派閥の意向も踏まえて、調整やポストの割り振りが行われてきました。また、選挙の支援や若手議員の指導、有望な新人を発掘する役割も果たしてきました。さらに、政策や政権構想を取りまとめ、党の方針やトップの政局に対する考え方など情報を共有する場でもあります。 しかし、議員が派閥のために資金を集め、派閥から資金の提供を受ける。それが議員を囲い込む原動力となっているのではないかと批判されてきました。 リクルート事件の後、平成元年に取りまとめられた自民党の「政治改革大綱」では、「政治倫理」「政治資金」「選挙制度」「国会」という柱とともに「党改革」の最終的な目標として、「派閥の解消」を打ち出し、派閥の弊害を取り除くとしています。 党の体質を刷新するというのであれば、政治刷新本部で、派閥の解消を含めた議論が行われるのかどうかが、焦点になりそうです。 党の主導権を得るために、人のつながりでグループができることは否定できない側面はあります。岸田総理は「派閥のあり方に関するルールを作る」という考えを示し、派閥の存在を必ずしも否定はしてはいません。派閥の存在を認めるのであれば、派閥がなぜ必要なのか、派閥のどこに問題があり、何を改めるのか、自民党、そして各派閥のリーダーが自らの言葉で国民に明確に説明すべきではないでしょうか。 ●国会での議論は では、国会で各党は、実態解明と再発防止に向けた取り組みをどう進めるべきか考えます。衆参両院には、▽議員が法令などに違反し、政治的道義的責任があるかどうかを審査し、勧告を行う「政治倫理審査会」があります。▽政治倫理の確立と公職選挙法改正に関する特別委員会は、政治資金規正法の改正案を取り扱います。しかし、多くの場合は、衆参の予算委員会が、実態解明と再発防止の方向性を議論する場となってきました。 ただ、今月召集される通常国会で議論が始まる予算委員会では、能登半島地震への対応や新年度予算案に盛り込まれた物価高対策、賃上げ、少子化対策、防衛力の強化とその財源、外交・安全保障の基本方針など議論すべき重要課題が山積しています。 こうした課題の議論をおろそかにしてはなりません。予算委員会だけでなく、政治倫理審査会や特別委員会を並行して開くなど、議論の場を仕分けて、重要政策の議論も十分にできる工夫を与野党に求めたいと思います。 ●政治資金規正法は 再発防止を考えるうえで、ポイントとなるのが政治資金規正法を見直すかどうかです。論点は、すでに明確になっています。政治資金パーティーについては、現在、1回20万円以下ならば購入した人や金額を収支報告書に記載する義務はありません。この公開基準を引き下げるかどうか。 罰則の強化をめぐっては、立憲民主党、与党の公明党などからは、政治資金規正法に会計責任者だけでなく国会議員も処罰の対象とする連座制の導入。国民民主党からは、政治資金で問題があった政党の政党助成金を減額する措置を検討すべきだという意見が出ています。日本維新の会と共産党は、企業団体献金を禁止すべきだとしています。 政治資金をめぐっては、さらに課題もあります。政党助成金の制度があることを踏まえ、新たなに独立した機関を設け、政治資金をチェックすべきだという意見もあります。これは、政治資金の問題解決を政党や政治家に委ねてよいかという論点になります。 政党によって、政治資金の集め方や党の財政基盤は大きく異なります。また、政治資金そのものを集めにくくするような規制や制限を強めることで、金持ちや資産家でなければ政治家になれないような事態は望ましくないという指摘もあり、合意形成は容易ではありません。しかし、政治とカネをめぐる問題が後を絶たず、事件の捜査によって是正されることが繰り返され、政治の対応が先送りされれば、国民の不信は解消されません。 ●まとめ 能登半島地震への対応に万全を期し、内外の重要課題に十分な議論を行いながら、与野党が、今月召集される通常国会で政治とカネをめぐる問題で実効性のある答えを出し、国民に説明を尽くし理解を得られるか、政治に、これをやり遂げる強い覚悟があるかどうかが問われています。 |
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●地震からの復旧・復興へ予備費を1兆円に倍増 16日にも閣議決定 1/9
政府は、能登半島地震からの復旧・復興に対応するため、新年度予算案に盛り込まれた予備費について、現状の5千億円から1兆円に倍増させる方向で検討に入った。16日にも閣議決定する。複数の政権幹部が明らかにした。 予算案は12月22日に閣議決定し、1月下旬に開会予定の通常国会に提出予定だった。短期間で修正し、再び閣議決定をし直すのは異例の対応。岸田文雄首相が5日、鈴木俊一財務相に積み増しを指示していた。 能登半島地震に対応するための財源について、政府は今年度予算の予備費約4600億円を順次、活用していく方針。9日には、被災地からの要請を待たない「プッシュ型支援」の財源として、この予備費のうち47億4千万円の支出を閣議決定。水や食料、乳幼児用粉ミルク、ストーブや毛布、衣類などの物資を購入し支援に充てる。 避難生活や生活再建支援の長期化も予想されるなか、年度が替わるタイミングでも切れ目なく対応するため、政府は予備費の積み増しを検討してきた。2016年の熊本地震では補正予算で7千億円以上を積み増したことや、今回の地震以外にも予測できない事態に備えておく必要性を考慮した。 |
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●日本は「痛切な謝罪」をしたと主張する韓国国情院長候補 1/10
チョ・テヨン国家情報院長候補は9日、昨年3月の日本政府による「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」との発言は歴史問題に対する謝罪を含んでいると述べた。 チョ候補はこの日、野党「共に民主党」のユン・ゴニョン議員による「日本の植民地時代の強制動員と慰安婦の問題に関して、日本政府の正式な謝罪が必要だと考えるか」との質問に対する書面答弁書で、「日本は韓国側による強制動員賠償解決策の発表時に『金大中(キム・デジュン)-小渕共同宣言を含む歴代内閣の歴史認識の継承』を明示的に表明した。これは『過去の出来事に対する痛切な反省と心からの謝罪』を意味すると評価している」と述べた。 昨年3月6日に尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、日帝強占期の強制動員被害者に対する賠償問題の解決策として、韓国の財団を通じて賠償金(判決金)を支給する「第三者弁済案」を公式発表した。これに対し日本側は、謝罪ではなく岸田文雄首相が「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」と述べる程度にとどまっている。 第三者弁済案は、日本製鉄や三菱重工などの日本の加害企業の賠償参加を強制していないため、屈辱的だとの批判にさらされた。チョ候補は、「第三者弁済案」は「国家レベルで韓国国民の痛みを引き受けるとともに、高まった国格にふさわしい姿勢で主導的な解決に取り組もうとした結果」だと述べた。 ユン・ゴニョン議員は「韓日関係において屈辱的な態度を取り続けてきた尹錫悦政権の素顔がチョ・テヨン国情院長候補の答弁でもあらわになっている。加害者は謝罪もしていないのに、被害者である韓国の政府が謝罪を受けたと主張するのは、強制動員の被害者にさらに苦痛を与える行為」だと述べた。 |
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●自民・麻生副総裁、米政権高官と会談 日米韓関係の重要性を確認 1/10
訪米中の自民党の麻生太郎副総裁は現地時間の9日、ワシントンで、カート・キャンベル米国家安全保障会議(NSC)インド太平洋調整官と会談した。中国や北朝鮮など東アジア情勢を念頭に日米韓3カ国の連携が重要だという認識で一致した。 キャンベル氏はバイデン米政権のアジア政策の司令塔役を務めている。昨年11月、米国務省のナンバー2に相当する次の国務副長官に指名され、「知日派」としても知られている。 同席者によると、両氏は約40分間にわたり会談。キャンベル氏が、昨年8月にワシントン郊外の大統領専用山荘「キャンプデービッド」で行われた日米韓首脳会談を「成果」だと振り返ると、麻生氏も3カ国の連携を「今までの土台の上に発展させていくことが大事だ」と応じたという。中国や台湾を巡る情勢についても意見交換した。 両氏はまた、今春の岸田文雄首相の国賓待遇での米国公式訪問についても議論し、日米同盟をさらに発展させるため、岸田首相の訪米成功が重要だという認識で一致した。 |
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●能登半島地震の衝撃に便乗するのでは…改憲、増税、原発再稼働 1/10
能登半島を襲った大地震・津波により、2024年の幕開けは衝撃で覆われた。もちろん、引き続き被災者に応える最大限の災害対応は必要だが、だからといって、震災以外の疑惑・問題を覆い隠したり、災害に便乗した動きを見過ごすことはできない。政治とカネ、改憲、復興名目の増税、原発再稼働…「ショック・ドクトリン」にどう対応すべきか。 「この後も地震関係の公務がございますので、(質問は)あと2問とさせていただきます」 4日午後4時半から行われた岸田文雄首相の年頭記者会見。能登半島地震や「政治とカネ」問題などについて答えたが、内閣広報官はこう言って会見を幕引きした。当時の首相の動静を確認すると、確かにその後に15分程度、災害対応に当たる官房長官らと面談を行っている。しかし、テレビ出演のため官邸を出発する午後7時半ごろまで特に予定は入っていない。 ●テレビで語る岸田首相に批判相次ぐ 「今、テレビ出てる場合じゃないでしょ」。安否不明者の捜索や救助活動が進む最中の出演に加え、災害対応以外の党総裁選の再選に向けた展望などを語る岸田氏の姿にネット上で批判が相次いだ。さらに5日には、経済3団体や連合など三つの新年互礼会をはしごしてあいさつしたことへも疑問視する声が上がった。 同じ日には、立憲民主党の泉健太代表が熊本地震と比べ、自衛隊の活動が小規模になっていることに関し、「自衛隊が逐次投入になっており、あまりに遅く小規模だ」と批判した。 ●震災で政権の潮目が変わった? ただ、こうした批判があっても、民放・TBS系列のJNNが6、7両日行った世論調査では、政府の対応が迅速に行われていると「思う」と答えた人は57%に上った。ほんの十日前には、政治資金パーティー裏金事件など「政治とカネ」問題で大揺れに見舞われていた岸田政権。共同通信の世論調査で22.3%まで下がり、2009年に自民党が下野する直前の14%台に近づきつつあった。震災で、いきなり潮目が変わったのか。 政治ジャーナリストの泉宏氏は「大きな事件事故は内閣支持率にプラスに働く。ずっと総理が前面に出て存在をアピールできるから」と話す。 だが、「岸田氏はそれを全く生かしていない。続けざまに新年会に出たり、テレビで話さなくてもよいことを話している」とも。年頭会見で岸田氏は「政治刷新本部(仮称)」を自民党内に設置するとした。しかし、派閥そのものが問題視される中、麻生太郎副総裁を同本部最高顧問に据える方針だ。「派閥解消なんてできっこない。麻生氏は派閥のボス。本気度を全く感じない」(泉氏) ●「政治とカネ」トーンダウンも 7日には、池田佳隆衆院議員らが逮捕された。他の議員の捜査が大詰めとも伝えられ、本来、「政治とカネ」問題の報道や議論は今ごろピークを迎えたはずだが、報道量も世の関心も地震に集中する中で、トーンダウンの感もある。 さらに、通常国会が開会すれば、国会議員には国会会期中の不逮捕特権があり、例外的に逮捕する場合でも逮捕許諾請求が必要となるため、東京地検特捜部の捜査が進展しなくなる可能性もある。 元特捜部検事の高井康行弁護士は「これから安倍派の事務総長らを逮捕するとなると、通常国会に食い込む可能性が高い。逮捕許諾請求は証拠の中身を見せなくてはならず、検察にとってはハードルが高い」と話す。こうして結果的に、「政治とカネ」問題は抜本的改革なしで終幕する恐れもある。 ●「緊急事態条項」で、頭をもたげる改憲論議 一方、こうした大災害などで頭をもたげるのが、「緊急事態条項を盛り込め」といった改憲主張だ。 4日の年頭会見でも、岸田首相は「総裁任期中に改正を実現したい思いに変わりはなく、議論を前進させるべく最大限努力をしたい。今年は条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速していく」と強調。昨年12月の衆院憲法審査会で自民党は、緊急事態時の国会議員任期延長や衆院解散禁止などの改憲条文案を作成するための作業機関を今年1月召集の通常国会で設置するよう提案している。 同党の改憲4項目では、大災害時に移動の自由など個人の権利を制限する緊急事態条項などが、自衛隊の明記とともに盛り込まれている。愛媛大の井口秀作教授(憲法学)は「緊急事態条項は東日本大震災の経験もあって話題になったが、今回の地震もいい事例とされてしまう危険がある」と指摘する。 「例えば、選挙の公示日前日に今回のような地震があったら、として議員の任期延長案を押し通すかもしれない。だが、よく考えれば、今回の地震でも選挙が難しくなるのは恐らく能登周辺だけ。全ての国会議員の任期延長が果たして必要なのか、など大災害時だからこそ冷静にみないといけない」と話す。 ●震災が増税のきっかけになる恐れ 「増税メガネ」の異名を持つ岸田首相なだけに、震災にかこつけて増税を図る可能性もある。実際、東日本大震災では復興特別税が導入された。だが、このうち復興特別所得税は事実上、恒久増税化されている。 「借金だらけの財政で、こんなに災害が起きているのに、災害が起きてから補正予算で対応するなど、いつも泣きっ面に蜂の状態に陥る。今回も国債を発行することになれば、結局その償還のための増税が必要となろう」と指摘するのは法政大の小黒一正教授(財政学)だ。 「こういう事後対応にならないために事前に対応をしておかなければならない」とし、例えば、震災を受けた地震保険の支払いに、大地震に備えて政府が再保険をかける「地震再保険特別会計」を挙げる。そして「復興財源の事前積立会計など、増税前にあらかじめ整備しておくべきことは多くあり、増税はそれをしてこなかったツケに過ぎない」と話す。 ●原発「異常なし」きっかけに再稼働進める可能性 原発推進を掲げる岸田政権だけに、大地震でも一応は「異常なし」となったことを奇貨として、北陸の原発再稼働を進める可能性もある。震源に近い北陸電力志賀原発(石川県)と昨年12月に原子力規制委員会が運転禁止命令を解除したばかりの東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)だ。 国際環境NGO「FoE Japan」の満田夏花事務局長は「多くの道路が寸断された。地震と原発事故が重なった場合、避難できなくなるだろう。各原発の避難計画の現実性も問われる。志賀原発周辺のモニタリングポストも計測不能になった。柏崎刈羽原発も含め地震想定が過小評価されていないかなど検証するべきだ」と話す。 大災害や大事件などの衝撃にかこつけて、別のことを前に進めるショック・ドクトリン。満田氏は「災害時は緊急事態を掲げて政府に都合よい政策を強権的に通す傾向がある。『政府を批判するとは何ごとか』といった言論への抑圧に影響されやすくなる」と説く。 国学院大の吉見俊哉教授(社会学)は「能登は日本の開発主義から切り離され、全く別の価値観で再生しようと探ってきた全国でも類いまれな地域だ。中世の文化が根付く文化的に大変奥深い場所だ」とした上で、こう語る。「能登の豊かさを改めて感じられれば、危機に乗じた『ショック・ドクトリン』などに構っていられない。強行すれば私たちの大切な可能性をつぶしかねない」と話す。 ●デスクメモ 新型コロナがまだ「新型肺炎」と称されていたころ、国会論戦の焦点は安倍晋三元首相の「桜を見る会」問題だった。しかし、ほどなく国内でも感染が広まり、「緊急事態宣言」が出るに至って、追及は沙汰やみに。まさにショック・ドクトリン。その再演を見過ごすことはできない。 |
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●安倍派国会議員が年頭会見 杉田水脈氏 江島潔氏 1/10
自民党安倍派(清和政策研究会)所属の江島潔氏(参院山口)と岸信千世氏(衆院山口2区)が9日、山口県庁でそれぞれ年頭の記者会見をした。派閥の政治資金パーティー収入の裏金事件を巡り、江島氏は東京事務所の会計責任者の秘書1人が東京地検特捜部の任意聴取を受けたと明らかにした。 江島氏は、パーティー券の販売ノルマ超過分のキックバック(還流)や政治資金収支報告書への不記載の有無について「検察による捜査が進行中なので詳細については報告できる立場にない」と説明。安倍派では参院選がある年に改選対象の議員側に対し、販売ノルマ分と超過分の全額を還流させ、選挙資金に充てられた疑いが浮上している点についても「捜査中の案件で、しかるべき時期に報告する」とした。 岸氏は「議員活動はまだ半年。そもそもパーティー券のノルマ、販売実績が一切ない」とし、自身の問題はないとの認識を示した。父の岸信夫元防衛相の時期も含めた事務所関係者への特捜部の聴取については「聞いていない」と話した。 安倍派所属の杉田水脈(みお)氏(比例中国)も9日に県庁で記者会見を予定していた。しかし、直前に「次の行事のため10分間しか応じられない」と説明があったため報道側が応じず、後日開催の方向となった。 |
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●中国が日本抜き自動車輸出トップ、背景にロシアの「助力」―米メディア 1/10
香港メディアの香港01は9日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの記事を引用し、中国が日本を抜いて世界最大の自動車輸出国になった背景にはロシアの「助力」があったと指摘した。 中国自動車工業協会は昨年の中国の自動車輸出台数が526万台だったと推計。日本については430万台と推計しており、世界最大の自動車輸出国になったとみている。 ウォール・ストリート・ジャーナルの記事は、「中国はすでに電気自動車(EV)で世界をリードする存在ではあるが、従来の化石燃料車が成長の推進力になった」と分析。特にロシアで需要が急増していることを挙げた。 記事によると、中国乗用車市場情報連席会(乗連会)は「ロシア・ウクライナ戦争が始まってから中国メーカーは西側メーカーが撤退したことでロシアにできた空席を埋めた」と指摘。中国の2022年のロシアへの自動車輸出は16万台だったが、23年はその5倍以上に上ったと推定されている。 記事は「ロシアやメキシコなどの国ではこうした自動車(化石燃料車)の需要が依然として強い」と指摘している。 |
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●「日本を抜いて世界最大の自動車輸出国に」 中国自動車工業協会 1/10
中国が昨年、日本を抜いて世界最大の自動車輸出国になったとみられる。 9日(現地時間)、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、中国自動車工業協会(CAAM)は昨年中国が526万台の自動車を輸出したという推定値を発表した。 日本では昨年11月の時点で約400万台の自動車を輸出したという統計が出ている。まだ発表されていない12月の輸出値を含んでも中国の昨年自動車輸出が日本より100万台近く多いというのがCAAMの説明だ。 中国が最大自動車輸出国になった理由について、ウクライナ戦争の余波で国際社会から経済制裁を受けているロシア市場を独占したためという分析が出ている。 2022年2月ロシアのウクライナ侵攻以降、西側の制裁と現地に進出した西側自動車企業などの撤退でできた空席を中国が埋めたということだ。中国は2022年ロシアに合計16万台の自動車を輸出したが、昨年は5倍を超える80万代以上を輸出したと推定される。中国自動車企業のうち、特に「奇瑞汽車(Chery Automobile)はロシア市場で急速な成長を遂げた。 同社は昨年90万代以上を外国市場に販売したことが分かった。中国最大の民営自動車グループ「吉利汽車(Geely Automobile)」もロシアに対する輸出が大幅に増加したという。 電気自動車(EV)分野の成長も中国の輸出の伸びを後押しした要因に挙げられている。中国EV大手の比亜迪(BYD)は米国のテスラを抜いて世界最大のEVメーカーになった。 中国でEVを作った後に外国へ輸出する多国籍企業も少なくない。フォード自動車は昨年中国で生産して外国に輸出する物量を10万台に増やした。フォルクスワーゲンは今年中国で傘下ブランド「クプラ(CUPRA)」のEV6万台を生産して欧州へ輸出する計画だ。 |
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●日本がパレスチナとウクライナで取るべき立場 1/10
新年にあたり、岸田内閣がウクライナやパレスチナについて、あまりにも米国べったりの外交しかしないことはまことに腹立たしい。 かつて小泉内閣は、のちにアメリカの愚行だったと批判されるイラク戦争について、ブッシュ大統領をあおり立てた。 さしあたって日米関係は良くなったが、長期的にみて日本がアメリカの良き友であることを示せたとは思わない。それと同じことをしている。 ウクライナについては、日本にとってウクライナに味方するメリットは何もない。欧米と違ってイスラエルの人々に贖罪等する必要ないし、そもそも、ユダヤ人への贖罪を自分たちでなくパレスチナの人々の払うコストでやるべきでない。 ロシアのウクライナ侵攻もハマスのテロも100%間違いだが、そもそも彼らを追い込んだのはアメリカでありイスラエルだから、自衛といってもほどほどのところで留めるべきだ。 岸田内閣の対米追従も行きすぎだが、日本ではリベラルな人々までもアメリカに追随しすぎである。 そして保守派は、例外はあるが、ウクライナ紛争やガザ紛争で、かなり熱心にウクライナやイスラエル、そしてその背後にいるアメリカを支持している。 日頃から、WGIP(War Guilt Information Program=日本人に戦争贖罪意識を植え込む戦略)から日本人は脱却できていないといって、世界から歴史修正主義といわれそうな主張をする人たちが、世界でもっとも無条件にアメリカに支援された戦争を支持しているのだからおかしなことだ。 それどころか、バイデン政権ですらイスラエルに厳しく自制を促しているのに、そうした必要も無いと言わんばかりだ。 私が思うに、世界はウクライナ戦争にうんざりしているし、イスラエルには相当に批判的だ。いまこそ、アメリカの日本に対する戦争中の悪行に少し反省を求めるチャンスでないかと思うのである。 アメリカは、ウクライナへの軍事侵攻とかハマスのテロとかは、けしからんから、ロシアやハマスはとことん殲滅されても仕方ないという。だが、これは、満州事変や真珠湾攻撃がけしからんから、日本に無理難題を要求したり、原爆を落としたり、ソ連の参戦を促したり、占領して憲法まで変えさせたのと重なるところがある。 そのあたりを、プレジデント・オンラインの記事にまとめたので、詳しくはそちらを読んで頂ければと思う。 逆に韓国は、尹錫悦大統領が対日改善に取り組んでいるのに、日本の保守派は応援しない。それどころか、松川るい参院議員のように対韓関係改善に熱心な議員は保守派から批判されて、「エッフェル塔写真」を発端にしたフランス研修問題が彼らに針小棒大に攻撃されて炎上した。 対中国でも、やみくもに敵対しては互いに損をするだけだ。バブル崩壊後の日本経済を、輸出、安い消費財などの輸入による生活防衛、観光客によるインバウンド需要などで支えてきたのは中国との関係だ。 外交は押したり引いたりしながら進めるもので、無条件の追従も敵対も馬鹿げている。日米同盟が外交の主軸であるから、基本的には欧米との共同歩調はやむを得ないが、ウクライナやパレスチナについては積極的に平和のために仲介の労もとるべきだろう。 |
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●法律違反の政党は交付金減額 政治改革で論点整理―国民民主 1/10
国民民主党は10日、政治改革・行政改革推進本部の会合を国会内で開き、自民党派閥の政治資金規正法違反事件を受けた政治改革の論点を整理した。国会議員が公職選挙法や政治資金規正法などに違反した場合、所属政党への政党交付金を減額するための政党助成法改正などが柱。来週にも正式に改革案を取りまとめ、通常国会での議論に臨む。 政治資金収支報告書の記載や提出に責任を負う者として、現行の会計責任者の他に政治団体の代表者(政治家)も加える政治資金規正法改正や、政治資金問題に関する調査や提言を行う第三者機関の国会への設置も盛り込んだ。 政策活動費を含めた政治資金の透明化を図るための銀行振り込みの義務付けや収支報告書のデジタル化に向けた議論も続ける。会合後、玉木雄一郎代表は記者団に「他の野党や公明党、自民党と早急に協議を開始することが重要だ」と語った。 |
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●安倍派議員逮捕 不正の全容解明を急げ 1/10
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題は、現職国会議員の逮捕に発展した。派閥ぐるみの事件の全容解明が急がれる。 東京地検特捜部が、政治資金規正法違反(虚偽記入)の容疑で、最大派閥の安倍派の池田佳隆衆院議員を逮捕した。2018〜22年、派閥から約4800万円の還流を受けたにもかかわらず、政策秘書と共謀し、資金管理団体の収支報告書に載せなかった疑いが持たれている。 特捜部は「形式犯」ともされてきた規正法違反での逮捕に踏み切った理由について、「罪証隠滅の恐れが大きい」と説明した。関連のデータを廃棄し、事務所関係者同士のLINE(ライン)のやりとりを削除したという。 裏金疑惑が表面化して以降、池田容疑者は雲隠れし、自ら説明していない。渦中にあって証拠隠しに動いていたとすれば極めて悪質であり、言語道断だ。 安倍派の裏金は時効にかからない直近5年間で6億円近くに上る可能性がある。ノルマを超えたパーティー券の販売収入を所属議員に還流し、派閥側と議員側の双方の報告書に記載しない慣行が続いていたとされる。議員が派閥に納めず手元にプールする手口もあったという。 100人近くいる安倍派議員の大半が同じ構図で還流を受けたとみられる。中でも池田容疑者は高額だった。明るみに出た当初は報告書に記載不要な「政策活動費」と認識していたとし、報告書の訂正で済ませようとしていた。 国民の疑惑を招くことなく、公明正大に収受を行うとする規正法の理念をないがしろにする態度には、あきれるほかない。 特捜部は、歴代の事務総長を含む安倍派幹部や二階派会長の二階俊博元幹事長も任意で事情聴取した。裏金の額が大きい安倍派の大野泰正参院議員、谷川弥一衆院議員の立件も検討しているというが、金額の多寡で線引きすることなく捜査を徹底し、派閥が主導したカネの流れを究明すべきだ。 自民党は池田容疑者を除名処分とした。近く新設の「政治刷新本部」の初会合を開くが、党組織として実態を調査し、説明責任を果たすのが先ではないか。 岸田文雄政権が発足して2年余りで、自民議員の逮捕や起訴は4人目である。今回の逮捕を受けても首相は「大変遺憾であり、重く受け止めている」と決まり文句を繰り返すだけだった。これでは政治への信頼回復などありえない。 |
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●自民党の政治資金問題 「なぜ裏金にするのか 書けない金だからですよ」 1/10
「小泉チルドレン」でもあった元衆院議員の杉村太蔵氏(44)は10日、テレビ朝日系「大下容子ワイドスクランブル」で、自民党安倍派のパーティーをめぐる政治資金事件に言及した。 同派に所属し、政治資金規正法違反で逮捕された衆院議員の池田佳隆容疑者(57=7日に自民党を除名)がキックバックを受けた4800万円あまりが「裏金」となる中、その使用目的が論議の的になっている。 杉村氏は「今、キックバックの話があるじゃないですか」とした上で「企業や団体に派閥のパーティー券を売りました。そこから議員個人にいったらダメだけど、派閥の政治団体から議員の政治団体への寄付は、政治的にさておき、法的には問題ない」という、一般では分かりにくい構造について説明した。 さらに「要するに(収支報告書に)書けばいいということ。これ、何で書いてないか、って言ったら、裏金ですよね」と語り「その裏金、って何でそんなに裏金にする必要があるの? って、言ったら書けない金だからですよ。(議員の)地元で飲み食いに使っていたとして、仮に、地元の有権者におごっていたら、これ、アウトですから」と両手を広げながら声を張り上げた。 その上で「あれ、何で自民党、って選挙強いの? あれ、パーティーやって裏金つくってバラまいていたの? って。そういう不信感があるから、岸田さんは徹底的にリーダーシップを発揮して改革しないと大変ですよ、というのがボクの考えです」と締めくくった。 |
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●死人に口なし!自民党安倍派の還流処置は「会長マター」 1/11
自民党安倍派の裏金事件で、派閥の実務を取り仕切る事務総長だった複数の幹部が、東京地検特捜部の聴取に対し、政治資金パーティー収入のノルマ超過分のキックバック処理は、派閥の会計責任者である事務局長から会長に直接報告される「会長マターだった」と供述しているという。11日の毎日新聞が報じた。 安倍派の会長は2018年から21年11月までは、昨年11月に死去した細田前衆院議長、それ以降は22年7月に銃撃事件で死去するまで安倍元首相が務めていた。 同紙は、事務総長を務めた下村、松野、西村、高木の4氏のうち誰が死者に責任をなすりつけるような供述をしているかは明らかにしていないが、全員、収支報告書への不記載について事務局長との共謀を否定しているという。 まさに「死人に口なし」で、醜悪としか言いようがない。 |