政治後回し 延命 しがみつく岸田総理 

延命のためなら
何でもあり
税金バラマキ 政権維持

政治後回し 
総理 役職にしがみつく  



・・・ 政治家のいない国
 


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●自民党・派閥パーティー券問題が直撃 2024年岸田首相の政権運営は 1/1
自民党の派閥のパーティー券問題は岸田政権を直撃しています。岸田総理大臣はどう政権運営にあたるのか。江口記者のリポートです。
政治とカネの問題で、逆風が吹き荒れた12月。自民党内に「総辞職するのでは」といった声があることに岸田総理は、こう答えました。
岸田総理「今はそうした先のことを考えている、そういった余裕はないと」
総理自身は周辺に「自分が辞めて何か解決するのか。辞めて解決するならいつでも辞めてやる」と話すなど、まずは政治不信の払拭に全力をあげる考えです。
岸田総理「政治において結果を出すためにも、国民の信頼、そして政治の安定、これが何よりも重要だと」
政治とカネの問題にどう向き合うかは当面の最大の課題です。
ある閣僚経験者が「まずは岸田派を解散しないと何も始まらない」と述べるなど、党内には「派閥解消」にまで踏み込むべきとの意見もあり、総理の判断が注目されています。
また、1月に始まる通常国会では野党の厳しい追及を受けるのは避けられません。
立憲民主党・泉代表「自民党政権の延命を許さない。裏金政権の延命を許さない。派閥政治の延命を許さない」
ある立憲幹部は「通常国会は『パー券国会』になる。すでに岸田政権は崖っぷちだがさらに追い込む」と意気込んでいます。
今年は、衆議院解散・総選挙のタイミングをうかがいつつ、9月の自民党総裁選挙で再選を果たすことが最大の政治目標になるはずでした。
ただ、政治とカネの問題は大きな「足かせ」になっています。
政権発足以来、最も厳しい目が向けられている岸田総理。
総理として迎える3度目の年明けは困難な1年の幕開けになります。
●立民 小沢衆院議員 “野党間の連携深め政権交代目指すべき” 1/1
立憲民主党の小沢一郎衆議院議員は、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題について、自民党政権による思い上がりが招いたと批判したうえで、野党間の連携を深め政権交代を目指すべきだという考えを示しました。
立憲民主党の小沢一郎衆議院議員は1日、昼すぎ東京都内の自宅で新年会を開き、党所属の国会議員や地方議員らおよそ60人を前にあいさつしました。
この中で、小沢氏は自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題について「自民党政権でかつては考えられないような非常に幼稚でありえないような行為が、公然と当たり前のように続けられてきた。まさに権力の思い上がりだ」と批判しました。
そのうえで「本来なら岸田内閣を倒して自民党に下野を迫るような勢いを持たなければならないにも関わらず、立憲民主党からほとんど大きな声は上がらない。『日本維新の会は嫌いだ』などと言っていたのでは、いつまでも自民党の腐敗政治を許すことになり、立憲民主党が大きな心と目的を持ちほかの野党と協力を誓い合う年にしなくてはならない」と述べ、野党間の連携を深め、政権交代を目指すべきだという考えを示しました。
●裏金問題捜査で田崎史郎が「安倍政権時代なら法務省と官邸で内々に」 1/1
東京地検特捜部が松野博一・前官房長官、世耕弘成・前参院幹事長、西村康稔・前経済産業相、萩生田光一・自民党政調会長、高木毅・自民党国対委員長ら安倍派幹部への任意の事情聴取をおこなうなど、捜査が本格化している政治資金パーティ裏金問題。ある人物の発言がSNS上で注目を集めた。
それは、政治ジャーナリスト・田崎史郎氏が昨年12月16日放送『情報7daysニュースキャスター』で発したコメントだ。
「こういう事件の時は、法務省が官邸と内々に打ち合わせをして、黒を白にすることはないですけど、“このへんでね”という(妥協案の提示の)話が、行われるものなんですよ。安倍政権ではあったんです」
「それを岸田官邸は一切やってない。法務省の情報も東京地検特捜部の情報が全然、取れてないから分からない」
ようするに、安倍政権時は安倍官邸と法務省・検察が内々に“手打ち”していたが、岸田官邸はそれをやっていないから捜査情報を把握できていない、と田崎氏は言うのだ。
言わずもがな、検察は捜査権と公訴権を有する唯一の機関で、この国で閣僚クラスの大物政治家の汚職を摘発するのも実質的に検察だけだ。そのため検察は行政機関でありながらも政治からの中立性と独立性が求められる。しかし、安倍官邸は法務省を通じて検察の捜査に介入していた、というのである。
三権分立を踏みにじる安倍政権の横暴を、さも当然のことのように平然と語る政治ジャーナリスト……。これにはSNS上で田崎氏の倫理観を批判する意見が寄せられているが、問題は、安倍官邸が法務省と“手打ち”することで検察の捜査を歪めてきたという事実のほうだ。
あらためて振り返るまでもなく、安倍政権下では政治家絡みの告発がことごとく潰され、今回の裏金よりも悪質性が高いと思われるような事件でも検察は「不起訴」を連発してきた。田崎氏は「黒を白にすることはないですけど」などと言っていたが、まさに「黒を白にする」行為をしてきたのだ。
小渕優子の政治資金問題も、甘利明の1200万円賄賂疑惑も、なぜか不起訴に
その最たる例が、2014年に経産相だった小渕優子衆院議員や、法務相だった松島みどり衆院議員など、当時の安倍政権閣僚に次々と噴出した公選法違反疑惑だ。
小渕氏のほうは、選挙区内の有権者を含む女性支援者を集めて明治座を借りきって開催していた観劇会について、収支報告書では支出が収入を大きく上回る記載をしていることなどを「週刊新潮」(新潮社)がスクープ。その後も小渕氏の写真がラベルされたワインを有権者に配った疑惑なども持ち上がり、政治資金規正法違反や公選法違反(寄附行為)の疑いで告発された。一方、松島氏は似顔絵入りのうちわ(1本80円)を2万本作成し、自身の選挙区内のお祭りで無料配布していたことが発覚。公選法違反(寄附行為)の疑いで告発された。
だが、東京地検特捜部は2015年、小渕氏の元秘書が在宅起訴したが、小渕氏・松島氏ともに嫌疑不十分で不起訴処分に。とくに小渕氏の場合、東京地検特捜部が関係先を家宅捜査をする前にハードディスクを電気ドリルで破壊していたと報じられただけでなく、架空の資金移動や収支の過少記載によって裏金をつくり、その裏金で観劇会の費用などを補填。虚偽記載の総額は約3億2000万円にものぼっていた。いや、そもそも小渕氏の問題は、虚偽・不記載だけではなく有権者買収での立件も可能な事件だったのに、だ。
しかも、小渕氏が立件されないことを、かなり早い段階で安倍官邸は知っていたはずだ。小渕氏の問題では2014年10月20日に小渕氏が経産相を辞任し、30日には関係先の家宅捜査がおこなわれたが、小渕氏は自民党を離党することもなくこの年の12月におこなわれた総選挙に出馬したからだ。つまり、この時点から、安倍官邸と法務省・検察の一体化が疑われていたのである。
そして、安倍官邸と法務省・検察の一体化が露骨に浮かび上がったのが、2016年に発覚した、経済再生担当相だった甘利明氏の“1200万円賄賂疑惑”をめぐる一件だ。
この疑惑は2016年1月、千葉県の建設会社・薩摩興業の依頼で都市再生機構(UR)へ移転補償金の値上げを“口利き”した見返りに、甘利氏が少なくとも総額1200万円の現金や飲食接待の賄賂を受けとっていたと「週刊文春」(文藝春秋)がスクープ。薩摩興業の元総務担当者の告発によると、公設秘書ら2人に現金500万円、さらに甘利本人に50万円を2回、計100万円を手渡していたといい、「五十万円の入った封筒を取り出し、スーツの内ポケットにしまった」「甘利さんは『ありがとう』と言って、封筒を受け取りました」と証言。甘利事務所が現金を受け取ったことを証明する領収証や、甘利の公設秘書らがUR側に補償金アップの働きかけをする交渉を録音したテープなどの物証もあった。
この甘利氏の口利き、賄賂疑惑はあっせん利得処罰法違反はもちろん、刑法のあっせん収賄罪の対象にもなりうる案件だ。東京地検特捜部も2016年4月にURを家宅捜索、甘利氏の元秘書らを事情聴取するなど、明らかに立件を視野に動いていた。
ところが、それが2016年7月の参院選を前に事態は一転し、秘書を含め全員に「不起訴」の判断が下ってしまったのだ。
安倍官邸が検察・法務省に圧力をかけていたことを示す証拠文書も!「官邸も、法務省に何度も巻きを入れている」との記述
甘利事件の「不起訴」の裏には何があったのか。それは当時、法務省官房長で、2020年に賭け麻雀問題で東京高検検事長を辞任した黒川弘務氏の捜査介入だ。
当時、国会議員秘書初のあっせん利得法違反を立件すると意気込んで捜査をおこなっていた特捜部に対し、法務省官房長だった黒川氏は「権限に基づく影響力の行使がない」という理屈で突っ返し、現場が今度はあっせん収賄罪に切り替えて捜査しようとしたが、これも「あっせん利得法違反で告発されているんだから、勝手に容疑を変えるのは恣意的と映る」などと拒否。さらには秘書の立件すら潰してしまったのだという。実際、甘利氏の不起訴の方針が決まった後、現場の検事の間では「黒川にやられた」という台詞が飛び交ったという話もある。
この甘利事件を潰した論功行賞として、黒川氏は2016年9月に法務省事務方トップの事務次官に就任したのだが、じつは甘利氏が不起訴となった前後にも、告発を受けていた自民党の松村祥史参院議員による計3500万円の不記載、同じく自民党の島尻安伊子・元沖縄北方担当相の計1050万円の不記載の問題でも、検察は不起訴処分に。
さらに、同年11月には、国会でも問題となっていた下村博文・元文科相が自身の支援団体「博友会」を政治団体として届け出ずに年会費名目で政治資金を集めたり、同会からの寄付を会員からの寄付と偽ったりしたなどとして政治資金規正法違反の疑いで告発されていた問題が不起訴に。
さらに、検察・法務省の安倍政権に全面屈服していることをあからさまに証明したのが、森友学園事件だった。
森友事件では、公文書変造、虚偽公文書作成の疑いで財務省元理財局長の佐川宣寿氏らが刑事告発。また、国有地を8億円あまりも値引きし売却したことについても、近畿財務局と国土交通省大阪航空局の職員が背任容疑で告発された。しかし、大阪地検特捜部は2018年5月31日、告発された38人全員を不起訴とした。その4日後である6月4日、財務省はお手盛りの調査報告書を公表し、収束を図った。
しかも、この森友公文書改ざん事件では、官邸と財務省、法務省が完全にグルになって政治的決着をはかっていたことを示す証拠が存在する。国交省と財務省のやりとりが記録された内部文書に、法務省との交渉についても記されていたのだ。これは、2018年6月18日の参院決算委員会で日本共産党の辰巳孝太郎・参院議員が公表したものだが、文書にはこうした記述があった。
〈5/23の後、調査報告書をいつ出すかは、刑事処分がいつになるかに依存している。官邸も早くということで、法務省に何度も巻きを入れているが、刑事処分が5/25夜という話はなくなりそうで、翌週と思われる。〉
つまり、大阪地検が不起訴処分を発表する前に官邸はその結果を把握しており、官邸は検察が捜査結果を早く公表するよう法務省に圧力をかけていたというわけだ。まさに、田崎氏の発言どおり、法務省を通じた“手打ち”がおこなわれていたのである。
また、2017年には、安倍首相の友人がオーナーの加計学園の国家戦略特区指定をめぐり、安倍首相本人や総理府・官邸が文部科学省に圧力をかえていた問題が浮上したが、これも検察は動かなかった。2018年8月には下村・元文科相が加計学園の秘書室長から政治資金パーティ券の代金計200万円を受け取りながら収支報告書に記載しなかった問題も不起訴となっている。
安倍政権下で数々の不祥事を潰してきた黒川弘務・元東京高検検事長 安倍内閣は黒川の定年を勝手に延長
森友・加計問題という安倍首相が深く関与していた重大事が、ことごとく不起訴になる──。そうして黒川氏は2019年1月、ついに東京高検検事長に就任。2020年1月14日には「桜を見る会」問題で安倍首相自身が背任罪で告発されるが、同月31日に安倍政権は黒川氏を検事総長にすべく、検察庁法で定められた定年を閣議決定によって勝手に延長。同じ日、安倍首相の背任罪の告訴は不受理となった。
ご存知のとおり、黒川氏はその年の5月、記者との賭け麻雀問題を受けて辞表を提出し、安倍首相も9月に辞任した。だが、これで抑えつけられてきた検察による政界捜査が真っ当におこなわれるようになったわけではない。
実際、やはり安倍元首相本人が公選法違反や政治資金規正法違反容疑で告発された「桜を見る会」前夜祭問題でも、検察はハナからやる気なし。東京地検は2020年12月、安倍元首相の公設第1秘書だった配川博之氏を政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴。しかし、前夜祭の費用負担が公選法違反の寄附にあたるとして告発された件では容疑不十分で2度にわたって不起訴となった。一方、安倍氏は公職選挙法(選挙区内の寄附)違反容疑などで不起訴となり、その後、検察審査会から「不起訴不当」の議決を受けたが、2021年11月に再び不起訴処分(容疑不十分)とした。
だが、2022年に明らかにされた前夜祭の開催にかかわった秘書らの供述調書を読むと、当初から前夜祭の費用を事務所側が負担することの違法性を理解しており、確信犯で費用の補填と収支報告書への不記載を実行していたことが浮き彫りに。いかに捜査がお手盛りのものだったかを裏付けている。
さらに重要なのは、河井克行・元法相と河井案里氏が引き起こした2019年参院選の大規模買収事件だ。
河井事件は安倍首相が黒川氏の定年延長にこだわった理由とも言われたが、結果的に安倍首相が在任中の2020年6月に河井夫妻は逮捕され、克行氏は懲役3年の実刑判決、案里氏は懲役1年4カ月・執行猶予5年の有罪判決が確定した。だが、河井事件で東京地検特捜部は、元広島市議に対して最高検察庁が取り調べが不適正だったと認める供述誘導をおこなう一方、検察は買収の原資については捜査のメスを入れず、公判でも解明されることはなかった。
しかし、今年9月になって、中国新聞が2020年1月に検察当局が河井元法相の自宅を家宅捜索した際に発見されたメモの存在をスクープ。そのメモには、自民党本部から振り込まれた計1億5000万円を指す記述の下に、「+現金6700」「総理2800 すがっち500 幹事長3300 甘利100」と手書きで記されていたという。つまり、河井陣営に対しては自民党本部からの支出のほかに、安倍首相や菅官房長官、二階俊博幹事長らといった当時の政権幹部から「現金」で計6700万円が提供され、選挙買収の資金に充てられたのではないかと見られるのだ。
ところが、時の総理大臣をはじめとする政権幹部が資金提供していたことが疑われる物証まで掴んでいながら、河井元法相の公判でも検察はメモを証拠として提出することもなかった。安倍・菅・二階・甘利という政権幹部4人は買収罪や買収目的交付罪に該当する疑惑が浮上していたというのに、家宅捜索はおろか、聴取さえ実施されなかったというのだ。
安倍政権下や安倍氏の在命中は政治家の疑惑はまともに捜査されず 検察は今度こそ徹底的な捜査を!
このように、安倍政権下や安倍氏の在命中には「政治とカネ」をはじめとする政治家の疑惑に対して真っ当な捜査がおこなわれず、闇に葬られてきた。検察がいまになって安倍派に捜査のメスを入れるという政界捜査を本格化させたのも、安倍元首相が亡くなったことにくわえ、岸田政権の支持率がだだ下がりでレームダック化していることと無関係ではない。
権力の大きさによって捜査が左右されるようなことはあってはならないが、この自民党政権の約10年で溜まりに溜まった膿を吐き出すためにも、今回の裏金捜査は重要な意味をもつ。
安倍派の裏金問題は、安倍派の事務総長を務めていた松野・前官房長官、西村・前経済産業相、高木・前国対委員長に加え、世耕・前参院幹事長、萩生田・前政調会長ら、安倍派5人衆の不正がかなり濃厚になっているが、彼らはまさに、安倍政権の検察メディア支配を支え、自らも官僚やマスコミに圧力をかけ、支配する安倍首相とそっくりの独裁体質を持つ政治家連中だ。
一部の政治勢力によって行政が歪められ、権力の不正が横行するような政治の再来を防ぐためにも、検察は今回こそ徹底した捜査を行う必要があるし、国民も最後まで検察の動向を監視し続ける必要がある。

 

●政策活動費、使途公開義務化を 山口公明代表 1/2
公明党の山口那津男代表は2日、自民党派閥の政治資金問題を受け、使い道を明らかにする必要のない「政策活動費」の使途公開を法律上、義務化すべきだとの考えを示した。東京・池袋駅前で街頭演説し、「使い道が明らかにされず政党幹部に配られている。不透明な政治資金の流れの温床となっていると言わざるを得ない」と指摘した。
山口氏は、パーティー券購入者名などを政治資金収支報告書に記載する基準を現行の1回当たり「20万円超」から「5万円超」に引き下げる考えも重ねて強調。党でまとめる政治改革案について「今月のできるだけ早い時期に提案し、国会論議に反映させ合意形成をしたい」と述べた。
●キングメーカーの麻生氏が描く「岸田政権は3月訪米と予算成立で退陣」 1/2
今年は解散総選挙が行われる可能性が極めて高い。
解散権を行使するのは、国民から見放されて内閣支持率が1割台まで落ち込んだ岸田文雄首相ではない。新しい首相だ。
岸田首相は3月上旬の国賓待遇の訪米と、3月下旬の予算成立を花道に退陣し、緊急の自民党総裁選を経て茂木敏充幹事長を新首相に担いでただちに解散総選挙へーーこれがキングメーカーである麻生太郎副総裁の描くシナリオである。
内閣支持率が続落する岸田首相に解散総選挙を断行する力はない。来年秋の総裁選で再選を果たすのは困難だ。麻生・茂木・岸田の主流3派体制を維持するには、岸田政権から茂木政権への移行を円滑に進めたい。
最大の問題は、茂木氏が国民にも自民党員にも人気がないことだ。
ライバルは、非主流派の菅義偉前首相と二階俊博元幹事長が担ぐ石破茂元幹事長である。石破氏は世論調査の「次の首相」トップに返り咲いた。無派閥の菅氏や石破氏は世論の支持が頼みだ。
総裁任期満了に伴う来年秋の総裁選は党員も投票に参加し、石破氏に有利、茂木氏に不利となろう。
そこで岸田首相に任期途中で電撃辞任してもらい、緊急の総裁選に持ち込む必要が出てくる。
緊急の総裁選は党員が投票せず、国会議員と都道府県連代表だけで決める短期決戦となる。これなら派閥の多数派工作で茂木氏が優勢だ。
最大派閥の安倍派は、集団指導体制を主導してきた5人衆(萩生田光一、西村康稔、松野博一、世耕弘成、高木毅の5氏)が裏金事件で全員失脚し、壊滅的状況にある。主流3派が結束して茂木氏を担げば、指導者を失った有象無象は「勝ち馬に乗れ」と主流3派になびくだろう。
安倍・麻生・茂木・岸田・二階の5派閥が裏金事件で刑事告発されたのに、検察当局が強制捜査に踏み出したのは最大派閥の安倍派と非主流派の二階派だけである。この捜査はまさにキングメーカーの麻生氏の意向に沿った国策捜査なのだ。
岸田から茂木へーー。麻生氏のシナリオは着実に進んでいる。
4月28日には旧統一教会問題やセクハラ疑惑で批判を浴びるなかで急逝した細田博之前衆院議長の死去に伴う衆院補選が予定されている。公選法違反で年末に逮捕された柿沢未途衆院議員や裏金事件で強制捜査を受ける安倍派の議員らが議員辞職すれば、補選の数は増え、自民大逆風の選挙となる。せっかく茂木政権が誕生してもいきなり補選で惨敗すればたちまち失速してしまう。
これを避けるには、新政権誕生の「ご祝儀相場」の勢いで補選前に衆院を解散し、4月28日投開票の日程で総選挙を行うのが一番だ。
そのためには4月16日の補選告示前に解散する必要があり、日程を逆算すると、3月22日ごろには予算を成立させ、岸田首相が退陣表明して、ただちに自民党総裁選に入り、4月1日ごろには新総裁を選出しなければならない。新内閣が発足して4月12日ごろまでに解散すれば、間に合う。
最大の懸念材料は、岸田首相が3月の訪米と予算成立を花道に、素直に退陣してくれるかどうかである。
岸田 崖っぷちの抵抗
岸田首相は就任当初から宏池会(岸田派)の歴代首相の在任期間を気にしていた。
すでに大平正芳と宮沢喜一を抜き、歴代3位になった。1500日を超える創始者・池田勇人は別格として、今年2月には鈴木善幸を抜いて歴代2位に躍り出る。老舗派閥・宏池会の歴史に堂々と名を刻むことができる。首相退任後も派閥のドンとして影響力を残すことも可能だろう。
何としても2月は乗り切りたい。それが岸田首相の願いである。
岸田最側近の木原誠二前官房副長官(現幹事長代理)も「2月まで首相をやればもう十分でしょう」と周囲に漏らしている。
麻生氏は3月の訪米と予算成立を花道に退陣させるシナリオを描いたのも「2月さえ乗り切れば」という岸田首相の心中を察してのことだ。
とはいえ、岸田首相本人としては「2月」は最低条件でしかない。来年秋の総裁選で再選を果たすことは難しいとしても、「1日でも長く首相を続けたい」と思っている。支持率さえ回復すれば、あわよくば総裁再選を果たしたいとも願っている。
岸田首相は訪米時期をできればゴールデンウィークまで引き伸ばしたかった。バイデン大統領に国賓待遇で招待されたのは岸田首相である。訪米が終わるまで、麻生氏も強引に辞めさせるわけにはいかない。
だが、訪米時期をめぐる駆け引きは、麻生氏の勝利に終わったようだ。日米両政府は3月前半で調整しているとマスコミ数社が報じている。外務省など霞が関はすでに岸田政権は長くはないとみて、キングメーカーの麻生氏の顔色をみて動いているのだ。
そこで岸田首相は通常国会の召集時期で巻き返しに出た。召集日をできるだけ先送りすることで予算成立も遅らせ、4月解散総選挙の日程を間に合わなくさせる狙いだ。
麻生氏は1月22日召集を念頭に置いていたが、岸田首相は裏金捜査の行方を見極める必要があるとして1月26日に先送りすることを画策。年末時点では、読売新聞は「22日軸」、共同通信は「26日軸」と報じ、政権内部で攻防が続いていることをうかがわせた。
もうひとつ抵抗する材料は、裏金事件を受けた政治資金規正法の改正や脱派閥といった政治改革だ。
政治改革を担う新組織のトップに菅氏?
岸田首相は年明けのなるべく早い時期に、裏金事件で失われた政治への信頼を回復させるための新組織を立ち上げ、政治資金規正法の改正に加えて派閥政治を解消するための施策を検討すると表明している。
一方、麻生氏は安倍派壊滅によって主流3派の優位が確立したのだから「脱派閥」の流れが強まることは阻止したい。政治資金規正法の改正を骨抜きにしたいのは麻生氏に限らず自民党内の大勢だ。
自民党は、旧統一教会問題では茂木幹事長をトップとする「党改革実行本部」で対応策をまとめた。麻生氏は今回のこの組織を使って政治資金規正法の改正や脱派閥への取り組みを玉虫色にして「軟着陸」させたい考えだ。
これでは岸田首相は3月退陣へのレールに乗せられて着実に進んでいくことになる。
岸田首相としては政治改革議論を盛り上げ、内閣支持率を回復させ、3月退陣の流れを食い止めたいところだ。麻生・茂木ラインから主導権を取り戻す必要がある。
そこで浮上しているのは、新組織のトップに麻生氏の宿敵である菅義偉前首相を起用する案だ。非主流派で無派閥の菅氏と電撃的に手を結び、脱派閥の機運を一気に高め、麻生・茂木に対抗する構想である。
岸田首相が麻生・茂木に対抗して菅氏との連携を探るのは初めてではない。昨年9月の内閣改造・党役員人事でも茂木幹事長を更迭し、菅氏に近い森山裕氏や茂木派の次世代ホープである小渕優子氏を幹事長に抜擢する「主流派組み替え」を画策した。
土壇場で麻生氏に猛反対されて断念し、茂木幹事長を留任させたが、ここから岸田政権は坂道を転がり落ちたという後悔が岸田首相にはあろう。今回の政治改革はいまいちど菅氏との連携を探ろうというわけだ。
だが、昨年9月の人事で麻生氏に押し切られたのに、今回の政治改革で麻生氏を突き放すことが岸田首相に本当にできるのか。「麻生氏からの自立」は岸田政権にとってなかなか果たせぬ課題なのだ。
当面は焦点は、通常国会の召集日と政治改革を担う新組織の人事である。キングメーカーの麻生氏と岸田首相の水面下の駆け引きに注目だ。
●田中真紀子「有権者を愚弄するのもたいがいにしな」… 1/2
岸田文雄内閣の「オワコン」化が止まらない。パーティ券収入を巡る組織的な裏金づくり疑惑の直撃を受け、自公政権では麻生太郎内閣以来の内閣支持率10%台に入った。報道各社が毎月発表する支持率は元々じわじわ下げていたが、完全に底が抜けた形だ。過去、竹下登内閣や森喜朗内閣で記録した1ケタ台に沈むことも見えてきた――。
キングメーカー然としていた森氏は雲隠れ
今回の問題が表面化して以来、自民党最大派閥、清和政策研究会(安倍派)は機能不全に陥っている。「最低限、現職議員1人は挙げ(逮捕し)ないと終われない」(関係者)という状況の中、派関係者や所属議員が相次いで検察当局の任意聴取を受ける。連日の報道を受け、仕事納めを前にした年末の永田町では、5人衆と言われる派閥幹部をはじめ所属議員の離党も噂されるなど、混乱に拍車がかかっていた。ただ、森喜朗内閣以降、主流派としてカネと人事を握り続けた清和会に対し、蓄積した嫉妬は深い。党内からは「盛者必衰だよ。令和の平家物語だね」と冷ややかな声も上がる。
そんな中、同派に強い影響力を持ち、キングメーカー然としていた森氏は雲隠れを決め込んでいる。
2023年夏、背骨を圧迫骨折して車椅子での生活を余儀なくされた森氏だが、その後も陰に陽に存在感を示してきた。ある自民党関係者は「あの人の強さの源泉の1つはマスコミだよ。自分のストーリーで情報を流して局面を有利に進める。政治の世界はしゃべることが、力の源泉になるからね」と話す。
森氏が定期的に連載していた地元・石川県の北國新聞で、派閥領袖に意欲を見せていた下村博文元文科相が土下座で懇願したと明かし、さらにその際2000万円を持参したとのエピソードも文藝春秋誌上で語ってみせたことは記憶に新しい。下村氏側は全否定しているが、こうした「暴露」が安倍晋三元首相の死後に繰り広げられた派のトップを巡る暗闘に、少なくない影響を与えたことは明らかだ。この件に限らず、とにかく森氏は多くの媒体に直接、間接を問わず自らの発言を露出させ、思惑を反映させられる環境づくりに勤しんできた。
北國新聞での連載も突如終了「あの人は全て分かっている」
そんな森氏の発信が、ぱたりと止まったのだ。2023年12月初旬、西村康稔経済産業相、世耕弘成参院幹事長(いずれも当時)と都内のホテルで会食したが、「肉声」が漏れることはなかった。北國新聞での連載も突如、終了が発表された。今回の問題について「あの人は全て分かっている」とされる森氏だけに、沈黙は意味深長だ。
パーティ券問題では、検察の任意聴取が名目上の派閥トップである「座長」に就く塩谷立衆院議員にも及んだ。捜査は基本的に公訴時効である5年前までが対象となるものの、「近頃突然始まった問題でないことは明らか」(全国紙社会部記者)だけに、歴代の清和会トップ経験者の動きにも焦点が当たる。しかし、存命者は少ない。
安倍氏や細田博之元衆院議長、町村信孝元衆院議長は死去し、中川秀直元幹事長、谷川秀善元参院幹事長も町村氏と集団指導体制の一翼を担ったに過ぎない。小泉純一郎元総理とて、森氏が政権を担っていた際の「名代」だ。清和会関係者は「四半世紀近く派閥を牛耳ってきたのは森さんだ」とした上で「塩谷さんが『キックバックはあった』と自白じみた不用意な発言で検察を本気にさせた。痛い腹だからこそ、下手に目立って探られたくないんですよ」と声を潜める。
黙っていれば、嵐が過ぎ去ると
「黙っていれば、嵐が過ぎ去ると考えているんでしょ。森先生は野党にも顔が広いからね」。ある自民党現職国会議員はこう語り、嘆息する。確かに、森氏の影響力は清和会だけにとどまらない。森氏と同窓の早稲田大出身者を中心に多くの政界関係者が森氏のもとに通い、持ちつ持たれつの関係を築いてきた。
ある永田町関係者は野党議員による『森詣で』として「立憲民主党の安住淳・国対委員長や辻本清美参議院議員は目立っていた」と明かす。この関係者は「森さんの雲隠れには、計算があると思いますね」とも語る。「安住さんが国対を切り回せるようになったのは、森さんが口添えして自民党国対の森山裕衆院議員との良好な関係を築けたから。安住さんは森さんに大恩がある。だから、パー券問題で追及はしても、森さんまで関わるような攻め方はできない、と見ているのでしょう」と分析する。
清和会所属の宮澤博行前防衛副大臣が「派閥から、(キックバックを)収支報告書に記載しなくて良いと指示があった」と暴露した。指示の真偽確認はもちろん、政治とカネを巡っての膿を出し切る上で、森氏の証言は大きな意味を持つ。しかし、現役議員から森氏ら引退組への言及する動きはない。ベテラン秘書は「最終的には自分たちに跳ね返ってくるんだから、言うわけがないよ。触らぬ『森』に祟りなし、だ」と吐き捨てる。
火中の栗を誰も拾いに行かない自民党の薄情
党内最大派閥はグリップが効かず、漂流している。自派の将来に黄信号が灯っている状況で、とても岸田氏を支え、再浮上させる余力はない。「そもそも、事実確認前に政務官を含めて全員の首を斬るなんて無茶苦茶だ。心情的に俺はもう非主流派だよ」(清和会中堅)との声も上がる。
主流派の平成研究会(茂木派)や志公会(麻生派)も火中の栗を拾おうとしない。
茂木敏充幹事長は政権の窮地に静観を決め込む。「今総裁に手を上げても逆風が強すぎる、と思っている。もちろん意欲が消えたわけじゃない。でも、タイミングが悪すぎる」。茂木氏周辺はこう解説する。実際、茂木氏は今のところ、高市早苗経済安保相が勉強会を発足させたような政局じみた動きは見せない。政治資金規正法の改正をはじめ「官邸のオーダーに従って、粛々と仕事をこなす」(茂木氏周辺)中で、局面転換を待つ。もちろん、それは積極的というよりも、消極的な支持だ。そんな空気を察してか、岸田氏の出身母体、宏池会(岸田派)の関係者は「茂木さんは心ここにあらず、という感じが見え見え。(岸田)総理はもともと茂木さんを信用していないが、今回の件でさらにそれは強まっただろう」と語る。
志公会も、麻生氏が高木毅国対委員長の交代を巡る「好き嫌い人事」で岸田氏を振り回した。パーティ問題を巡り辞任した高木氏の後任には、紆余曲折があったが浜田靖一元防衛相の起用が決まった。ただ、浜田氏は就任の条件として御法川信英元国対委員長代理の再登板を求め、これに麻生氏が難色を示していたのだ。
ご意見番気どりの石破茂に「また始まった」の声
かつてパーティならぬ「パンティー問題」で世間をにぎわせた高木氏は、国対委員長としての仕事ぶりが酷評され「『高木不在』ということで『ノーパン国対』と揶揄されていた」(永田町関係者)ほどだった。そんな高木氏に代わって実務を裁いていたのが御法川氏だった。岸田政権としては、通常国会の野党対策は予算通過などを見通す上で極めて重要だ。国対経験が長い浜田氏と、実務能力が高い御法川氏のコンビは、岸田氏側にとっても渡りに船の提案だったが、麻生氏側の意向から、決定するまで時間を要した。
「御法川さんは、サトベン(佐藤勉元総務会長)さんの仲間だからね。麻生先生にとっては、凶状持ちなんだよ」。党関係者はこう話す。令和4年2月、御法川氏は佐藤氏に同調し、計4人で麻生派を退会した。それ以来、「派内でこの4氏に言及することはご法度だ」(志公会担当記者)という。永田町では、「麻生氏サイドとしては、一度ならず二度までも国対委員長代理という要職に就くのは認め難いという意向だ」などとの噂が飛び交っていた。あるベテラン国会議員は「麻生先生が実際に何を考えているかは別として、党の緊急事態に『私情で人事を曲げた』なんて噂がでるような振る舞いはするべきじゃないよね」とこぼす。
「小石河」の一角、石破茂元幹事長も、予算通過後の退陣に言及し、自身の総裁選出馬にも含みを持たせる発信を続ける。ただ、これについては「いつもの『ご意見番』気取りがまた始まったって感じですよ。正論を言うけれど、『じゃあ汗をかくか』ってなると引く。だから誰も付いてこない。本当に空気が読めない」(自民党中堅議員)などと、広がりを欠く。逆風とは言えないが、少なくとも支持、支援の動きではないことは確かだ。
「解党的な出直しが必要だ」などと語る残念OB
清和会が機能不全で、残る主流派2派も領袖は岸田氏ではなく、「自身の思惑ファースト」を隠さない。「とてもじゃないけれど、一致団結って雰囲気じゃないよね。『岸田総裁のために』なんて、うちの先生も含めて誰も言わないよ」(ベテラン秘書)と政権には強い逆風が吹く。
自民党がこうした混乱にある上に、森氏不在≠ナ注目が集まると考えたのか、おなじみの党OBがにわかに発信を強めている。山崎拓元副総裁、亀井静香元政調会長の2氏は12月下旬、都内で小泉氏と会食した。事前に政治記者に情報をリークし、思惑通り集まった記者団に対し、山崎・亀井両氏は「解党的な出直しが必要だ」などと得意げに語ってみせた。自民党の若手国会議員は「さも自分たちは無関係だなんて雰囲気で偉そうにしゃべっているけれど、あんたたちも共犯だろうと思うよ。あの辺の爺さんたちは注目されたいだけでしょ。許せない」と憤りを隠さない。
他にも、水を得た魚のように活気づく御仁がいる。田中眞紀子元外相だ。今春に復刊した父、田中角栄元首相の著書『日本列島改造論』の序文で「はぐらかしと居眠りを続ける日本政治に危機感を抱いている」とぶち上げていた眞紀子氏は12月初旬に議員会館で勉強会を開催した。
有権者を愚弄するのもたいがいにしなさいよ
往年の眞紀子節は健在でこの日「有権者を愚弄するのもたいがいにしなさいよ」「自民党は抜け穴を見つけて裏金作りを続けてきた」「黙っていられない」などと吼えた。パーティ券問題が注目を集める中だっただけに、煽り上げた発言は、一部メディアが嬉々として取り上げた。野党系では「火ぃ付けてこい」発言で知られる泉房穂・元兵庫県明石市長もSNS上などで盛んに発信し、同郷の西村氏や岸田政権への批判を強め、スポーツ紙を中心にX(旧ツイッター)への投稿などを取り上げている。
マスコミは朝日新聞から産経新聞に至るまで、パーティ券問題を連日1面トップで取り上げ続ける。永田町では例年、各社が総力を注ぎ込む「1月1日付け朝刊の1面トップ記事」に、政界の超ド級のスクープが踊るとの観測も流れていた。
こうした状況に自民党関係者は「終わりの終わりだよ。(支持率が)1ケタになるのは時間の問題だよ」とこぼす。身内から見捨てられ、身一つで全方位からの攻勢に立ち向かわざるをえない岸田氏。終末の日は近いか―。
●バイデン米大統領、地震対応で支援用意 日本と「深い友情の絆」 1/2
バイデン米大統領は、1日に発生した能登半島地震について、米国は必要な支援をする用意があると表明した。
1日発表した声明で「緊密な同盟国として、米国と日本は国民を結びつける深い友情の絆を有している。われわれの思いは、この困難な時期にある日本の人びとと共にある」と述べた。

 

●安倍元首相銃撃は数十年にわたり「蓄積された悲劇」の果てに起きた 1/3
安倍晋三は人生最後の日の朝、奈良にいた。
五重塔で知られる古寺と、神の使いの鹿で有名なこの地方都市にやってきた目的はいかにも事務的で、市内の主要駅に面した街路の広い交差点で、地元選出の国会議員の再選を訴える応援演説をするためだった。
安倍は2年前に首相を辞任していたが、日本の歴代首相で最長の在任記録を持つ彼の名前には非常に大きな重みがあった。その日は2022年7月8日だった。
詰めかけた群衆が撮影した写真を見ると、後ろになでつけられた髪、チャコールの眉、気さくな笑みで安倍本人とすぐ認識できる男性が午前11時30分頃、急ごしらえの演壇に上がり、片手でマイクを握る姿がうつっている。
その周囲を自民党支持者の集団が取り巻いていたが、安倍の後方に立つ男に気づく者は誰もいなかった。グレーのポロシャツにカーゴパンツ姿で、黒いストラップを肩にかけていた。男は他の群衆が拍手を送るなか、ただ立ち尽くしていた。
安倍の演説が始まって数分後、2度の大音響とともに上がった白煙が演説の言葉をかき消し、安倍は地面に崩れ落ちた。
SPがグレーのポロシャツの男に走り寄る。男の手には、長さ約40cmの金属パイプ2本を黒のビニールテープで束ねた手製の銃が握られていた。首を狙撃された安倍は、数時間以内に絶命する。
山上徹也(当時41)は身柄を確保され、引き金を引いてから30分も経たないうちに犯行を認めた。さらに、あまりに突飛すぎてにわかに信じがたい動機を口にした。
彼は安倍をムーニーズの名で知られるカルト教団、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の協力者とみなしていた。彼の母親が全財産を教会に寄付したため、山上とそのきょうだいは満足な食事ができないほど貧しく、人生を破壊されたという。
暴かれた「安倍政権の偽善」
2023年1月の朝日新聞の記事によれば、 真の標的は旧統一教会の最高幹部である韓鶴子(ハン・ハクチャ)で、安倍ではないと山上は警察で供述している。教団創設者・文鮮明(ムン・ソンミョン)の寡婦である韓に近づくことができなかったため、高名な政治家で祖父・岸信介の代から教団と深い関わりのある安倍を銃撃したという。
調査の結果、この山上の荒唐無稽な主張が事実だとわかり、奈良県警は動揺した。彼らは短い会議のあと、安倍と旧統一教会とのつながりは、少なくとも現時点では明かすべきではない大変にデリケートな事案と判断したようだ。
2日後の7月10日におこなわれる参議院選挙の結果にも影響を及ぼすかもしれない。県警関係者は、銃撃事件当日の夜に開いた記者会見で、山上が「恨みを持つ特定の団体と、安倍につながりがあると思い込んだ」ために襲撃を実行したとだけ述べた。報道陣が追及しても、彼らは沈黙を守った。
参院選後、旧統一教会は山上の母親が信者だったと公式に認めた。これにより旧統一教会が、政権与党・自民党を長らく支えてきたことが明らかになった。安倍をはじめ多くの自民党議員は、旧統一教会信者を選挙活動に動員してきたのだ。彼らは秘密兵器的な存在として、選挙活動を支援した。
2022年7月、タブロイド紙の日刊ゲンダイは、教団と関係のある国会議員100人以上のリストを明らかにした。同年9月上旬、自民党は379人の国会議員のほぼ半数と旧統一教会の関係について、選挙協力要請、会費の支出、教団行事への参加といった何らかの接点があったとする調査結果を公表した。
さらに朝日新聞の調査に対し、都道府県議会の議員290人と知事7人も教団およびその関連団体と接点があったと回答した。
旧統一教会との関係が疑われる政治家の数が増えるにつれて、ありふれた風景に隠れていたスキャンダルがあぶり出された。それは韓国の右派カルト教団が過去70年の大半、日本を支配してきた保守政党と密接なかかわりがあったという事実だ。
日本国民は憤慨した。旧統一教会が自民党の政治家を利用しようとしただけでなく、そこに腹立たしい「偽善」があったからだ。安倍は熱烈なナショナリストとして、日本の国際的地位の再興に力を注ぎ、自国の帝国主義的な過去を堂々と誇っていた。
だが安倍と彼の政党は、旧統一教会と秘密裏に選挙で協力関係を結んでいた。さらにそのカルト教団は、過去の戦争に対する日本人の罪悪感につけこんで信者を洗脳し、巨額の金を搾取していた。
安倍の死を巡り深まる分断
山上徹也の生い立ちと、自民党と旧統一教会との関係が広く知られるようになると、奇妙な逆転現象が起こった。日本国民は暗殺犯に同情し、凶弾に倒れた犠牲者に怒りを表明するようになったのだ。
日本のある週刊誌は、「山上ガールズ」と呼ばれるファンなど、彼の支援者について特集記事を組んだ。山上に差し入れを送る者も現れ、数千人が安倍の国葬に抗議した。山上を悲劇の英雄に見立てた長編映画が急遽制作され、全国で上映された。内閣支持率は下がり、旧統一教会との関係の説明が不充分だとして、辞任に追い込まれる閣僚もいた。
この暗殺事件は、安倍のレガシーをめぐる国民間の深い対立を露呈させた。安倍は国際社会における日本の影響力を回復させたと称える声がある一方、好戦的な過去へ逆戻りさせる危険人物だと非難する声もあった。
旧統一教会が安倍と自民党に与えた影響については、いまも論争の的だ。岸田政権は2022年11月、党に着せられた汚名をそそぐため、宗教法人法の「報告徴収・質問権」に基づき、教団への調査を開始した。
この調査は統一教会にとって致命的な打撃となる可能性があり、宗教法人格がはく奪されかねない。さらに米国を含む他国における教団の位置づけに関しても、この措置は波紋を投げかけるかもしれない。
教団指導者らが何の罪にも問われていない現状で、宗教団体が善よりも害をおよぼしていると判断する決定権は我々にあると、日本政府は主張しているからだ。
人生に絶望したひとりの男が犯行に走らなければ、すべては隠蔽されたままだったかもしれない。刑務所の独房で裁判を待つ山上にとって唯一の慰めは、「歴史上最も成功した暗殺者」のひとりになったという自負だけだろう。
安倍の死から1年以上が経過したいま、彼が殺されたのは錯乱した一匹狼による無差別な凶行というより、数十年間にわたり蓄積されていった果ての悲劇のように映る。
日韓が「アダム」と「エバ」になった理由
安倍晋三元首相の暗殺後、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)が依然として影響力を持っていることに多くの人が驚いた。米国でも日本でも、同教団の活動は下火になったと考えられていたからだ。
1980〜90年代にかけての教団は、不気味で全体主義的な体質、異様な合同結婚式、政治的な影響力を持つことへの露骨な執着で話題を集めた。文鮮明は米国で保守系新聞「ワシントン・タイムズ」を創刊したことでも知られる。
こうした教団の活動の屋台骨を支えていたのは、日本だった。旧統一教会の本部は韓国だが1970年代以降、多くの日本人が熱狂的な信者となり、活動資金の大半も日本から得ていたことに人々は驚かされた。
2017年に教団から追放された元幹部の桜井正上によれば、日本は「事実上、教団の資金源の“支柱”となっている」という。日本国内の旧統一教会の活動を取材するなかで話を聞いた人たち(旧統一教会の現・元信者、その家族、弁護士、ジャーナリスト、政治家、被害者支援団体の関係者など10人以上)のうち、桜井はただひとり、教団を嫌悪する人と崇拝する人双方の立場に共感を示す人物であるように思えた。
モーツァルトとシューベルトのピアノソナタが静かに流れる東京都内の喫茶店で会ったとき、彼はお辞儀をしながら両手で名刺を差し出す日本式の挨拶で私を出迎えた。
旧統一教会の冷酷な手口について話すとき、桜井の口調は重かったが、間違った教えの犠牲者と彼が考える信者について語る際は穏やかになった(彼は教団内で育った)。 ・・・
「祝福2世」との対面
日本で話を聞いた旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の信者はいずれも明るく、その率直さに驚いたが、彼らは違う世界に生きているという印象を受けた。
そのうちのひとりである小嶌希晶 (こじま・きあき)と名乗る20代の女性は、教団が「祝福2世」(合同結婚式で出会った信者の間に生まれた子供)と呼ぶ現役信者だ。
小嶌とは東京のオフィスビルの、商談向けに時間貸しされている家具付きの小部屋で会った。部屋には番号が振られてコードロックされ、長い廊下にドアがずらりと並ぶ様子は清潔な刑務所のようだった。
小嶌の母親も、山上の母親と同じく1億円を教団に献金したという。そのため貧しい子供時代を送り、質素な食事とお下がりを着て、大学進学の選択肢も限られていた。子供の頃の小嶌はごく一時期、自身の身の上に降りかかった窮乏を恨んだが、その後に受け入れたという。
旧統一教会が選んだ夫も受け入れた。夫はフィリピン人男性で、一度も会わないまま、2021年にオンライン上で結婚した(その後2人は実際に対面したが、相手はいまも日本に移住してはいない)。
新郎から3000キロ以上も離れた日本の教会でブライダルドレスを着て結婚式に臨んだ彼女は、身を乗り出してノートパソコンの画面越しに新郎とキスしようとしたと実演してみせた。その目には照れくささが浮かんでいるように思えた。
小嶌の口ぶりは、こうした結婚式が第三者には奇異に感じられるとわかっているかのようだった。それでも、「自分は教団のなかで育ち、教団に愛されていると感じている」と語る。 ・・・
安倍政権からの「大きな見返り」
旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)は、選挙で奇跡の勝利を呼び込んだ見返りに、どんな利益を得たのだろうか? それほど大きな見返りは、必要なかったのかもしれない。
同性婚や女性の権利、伝統的な家族形態など、教団にとっての重要な関心事に対する自民党の保守的な見解を信頼していたのだろう(文鮮明には同性愛嫌悪があった。かつて彼は同性愛者を「糞を食らう汚らわしい犬」と表現した)。
とはいえ安倍政権は教団に少なくともひとつ、大きな見返りを与えた。
2015年、日本政府は旧統一教会の名称変更を承認した。この決定は物議を醸し、長年教団を批判してきた人たちを憤慨させた。一方、教団にとって名称変更には大きな意味があった。
1990年代半ば以降、日本では旧統一教会という名称は「キズもの」だった。現在、旧統一教会は「世界平和統一家庭連合」という無害な看板に掛け替えて宣伝に励むが、教団関係者以外はおおかた旧名称を使用する。
文部科学省の事務次官を務めていた前川喜平は、名称変更が認められたことをいまだに腹に据えかねている。
彼の執務室に到着すると、41ページに及ぶ宗教法人法の資料を手渡された。前川は私に、旧統一教会側からの変更申請は、当時の文部科学大臣だった下村博文によってすみやかに認証されたと語る。 ・・・
●安倍派「崩壊」で暗雲 首相の旧宮家復帰プラン 1/3
岸田首相の肝いりで昨年11月から始まった自民党総裁直轄組織「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」(皇位継承懇談会)が早くも頓挫しそうである。安倍派裏金問題の嵐のなかで、12月15日に予定されていた2回目の会合が急きょ延期された。首相は、旧宮家の男系男子を現皇族の養子にできる旧宮家復帰プランの実現を明言していた。
しかし、支持率が10%台にまで落ちた「店じまい内閣」に国家の根幹に関わる皇室典範改正などできるはずもない。
昨年7月8日、「安倍晋三元総理の志を継承する集い」に岸田首相は出席し、「憲法改正」「皇位継承」などで安倍氏の思いを引き継ぐと大見えを切った。ここまで安倍派に媚(こ)びるのは、今年9月に任期が切れる自民党総裁再選のため保守層の支持が必要だからである。23年9月13日には安倍派5人衆の一人、萩生田光一氏を政調会長として続投させた。
その萩生田氏は『産経新聞』(同9月27日付)1面に掲載されたインタビューで、皇位継承問題について意欲を語っている。首相から政調会長続投を伝えられた際、「安定した皇位継承策の見直し作業を急がなければならないという問題意識」を伝えられたことを明らかにした。そして、皇位継承問題は「この1年、党でそれほど動きがなかった」が、憲法改正と併せ「この2つの問題にしっかり道筋をつけたい」と自らがリーダーシップをとって議論を進めていくと表明したのである。
約束は反故にしない
岸田首相は、保守派対策の手をさらに打った。昨年10月26日に発売された月刊誌『WiLL』12月号で、ジャーナリスト櫻井よしこ氏と対談し、「私は一昨年(2021年)の総裁選において、旧宮家の男系男子が皇籍に復帰する案も含め、女系天皇以外の方法を検討すべきだと主張しました。そのときの約束を反故(ほご)にすることはありません」と明言したのである。
政府の有識者会議が、旧宮家に連なる男系男子が現在の皇族の養子になり皇籍復帰できる案(旧宮家復帰案)を含んだ最終報告書をまとめたのは21年12月。直後には、自民、公明、日本維新の会などが党内議論を始めた。しかし、過去2年間、動きは事実上なかった。
櫻井氏は「岸田総理は皇位継承の問題に取り組んでくれるのか―。そんな疑心暗鬼が生じていました」と首相の姿勢に疑念があったと率直に指摘した。それに対し首相は「国民の皆さんも強い関心を抱いている。今後は見える形≠ナ議論を進めていきたい」と応じたのだ。保守系読者がほとんどの雑誌で、保守の論客に向かって、リップサービスをする首相。一昨年の「安倍国葬」以来、自民党最大派閥の支持をつなぎとめることが、首相の最大の再選戦略であった。
『毎日新聞』の伊藤智永・専門編集委員は、LGBT理解増進法成立や、性別変更の要件に関する最高裁違憲判決などジェンダー重視の近年の潮流に対する危機感が強い保守派にとって、「皇位の男系男子継承維持」が、保守的家族観のシンボルになっていると分析する(『週刊エコノミスト』23年11月21・28日合併号)。その通りであろう。
「皇位継承」を利用
ところで、昨年11月17日に初会合が開かれた「皇位継承懇談会」は、会長に麻生太郎副総裁、会長代理に茂木敏充幹事長、副会長に森山裕総務会長と小渕優子選対委員長、事務総長に萩生田政調会長(当時)、事務局長に木原誠二幹事長代理と重厚に布陣した。テーマがテーマだけに党内有力者を揃(そろ)えた。委員は全16人で、中曽根弘文氏、衛藤晟一氏、山谷えり子氏、有村治子氏(いずれも参院)ら保守派が目立つ。
キーマンは萩生田氏だと見られていた。ところが、安倍派の裏金疑惑が降ってわいた。萩生田氏は昨年末、自民党政調会長を辞任した。「皇位継承懇談会」事務総長がどうなるのかは分からないが、こちらも辞任が筋であろう。
そもそも、岸田内閣はすでに国民の信を失っている。毎日新聞社が昨年12月16、17の両日に実施した全国世論調査によれば、内閣支持率は16%。前月より5㌽も減っている。不支持率は79%もある。敗戦直後の1947年以来、最も高い不支持率だ。瓦解(がかい)前夜の内閣だと言っていい。
皇位継承と憲法改正は、国家の形を決める重要な課題である。有権者の2割弱しか支持していない弱体内閣が取り組むべき問題だとは思えない。皇位継承を自らの権力基盤の強化のために利用したツケが、現在の不支持率につながっていないだろうか。
それ以前に、自民党は、皇室典範改正が簡単にできると勘違いしているようだ。事務局長である木原幹事長代理は「論点はそんなに多岐にわたるものではない」と述べている(23年11月17日)。その時点では、今年(24年)の「早い時期」に結論を出すという声さえあった(『毎日新聞』23年11月18日)。
無理であろう。旧宮家皇族復帰案が具体的に見えるに従って、その問題点が徐々に明らかになると考えられるからだ。一例をあげれば、皇族に復帰する旧宮家の男系男子がどのような人物で、皇族となるに値するかどうか、どのように審査するのだろうか。男系で血統がつながってさえいれば、その人物が希望したとき、誰でも皇族になれるのだろうか。議論さえなされていない。論点が多岐でないとか、今年の早い時期に決めるとか、認識が甘すぎる。
そもそも世論が支持しているのは女性天皇案であって、旧宮家復帰案ではない。そのことを忘れて、政権維持のために旧宮家復帰案を利用した岸田内閣そのものが沈没寸前である。議論は早く進めたほうがいい。だが、岸田内閣にその資格はない。
国会でも動きがあった。額賀福志郎衆院議長は昨年12月19日、立憲民主、日本維新の会、公明、共産、国民民主の5党の幹部と面会し、皇位継承策に関する各党の意見集約を進めるよう要請した。自民党の体たらくを見た議長がイニシアチブを取った形である。通常国会で何らかの協議体ができるかもしれない。だが、立憲民主党は、旧宮家復帰には慎重である。議論が早期決着する道筋は見通せない。
●民間の立場から国政を観察すると腹立たしいことばかり 「政治への信頼」 1/3
2023年4月に大阪市長を退任し、政治の世界から引退した。橋下徹元市長らと「大阪維新の会」を立ち上げて13年、大阪から日本を変えるために、私たちは「身を切る改革」を掲げて、政治改革や公務員改革、行財政改革、教育改革に走り続けてきた。引退から8カ月たつが、「やるだけはやった」という思いは変わらない。
現在、民間の立場から国政を観察していると、腹立たしいことばかりだ。岸田文雄政権や国会議員の方々には、「初当選直後の『国家や国民に尽くしたい』という決意を思い出せ」「政治家としての矜持(きょうじ)を無くしたのか」「国民の常識に寄り添うべきだ」と思う。
自民党派閥のパーティー収入不記載事件では、言い訳ばかりが聞こえてくる。
選挙で何回も当選している国会議員が、政治資金収支報告書への不記載という違法行為について、「派閥の指示だった」「派閥から『話すな』と言われた」などと被害者のように振る舞っていた。恥ずかしいと思わないのか。
不記載や過少記載は、支持者から集めた浄財を、政治・選挙活動以外に使っているとしか考えられない。やましくないなら、収支報告書に堂々と書けるからだ。最大派閥・安倍派(清和政策研究会)では「裏金は5年間で5億円以上」と報じられている。国民の「政治への信頼」は地に落ちたと言っていい。
岸田首相は臨時国会閉会後の記者会見で、「国民の信頼回復のため火の玉となって先頭に立つ」と語っていたが、具体的な改革案は明かされなかった。国家リーダーは「国民に具体的な方針を伝えて、約束したことは困難があっても成し遂げる」ことが重要だ。
私は2つの提案をしたい。
第1は、「政治資金規正法の厳罰化」だ。収支報告書への不記載や過少記載が発覚した場合は「議員辞職」など、厳しくすべきだ。民間では、数万円の不正でも逮捕される。政治家だけ特別扱いするのは「法の下の平等」に反する。岸田首相は「閣法」として国会に提出すべきだ。
第2は、月額100万円支給されながら報告義務のない「調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)」の全面公開だ。この旧文通費こそ、国会議員に特権意識を植え付け、お金の感覚をマヒさせる元凶である。領収書を添付した使途公開とともに、余った分は国庫に返納すべきだ。
岸田首相は、議長を務めた5月の広島G7(先進7カ国)サミット直後の衆院解散を見送った。その後、LGBT法で岩盤保守層が離れ、自民党女性局のフランス研修中などで、党の「緩み」「たるみ」「おごり」が露呈した。
自民党パー券事件は、自民党不信や政治不信を加速させている。一部の内閣支持率は10%台の「退陣水域」に突入した。岸田首相の求心力は急速に失われつつある。
東京地検特捜部にも注文したい。「捜査対象が、岸田政権の主流派以外(安倍派と二階派=志帥会)に偏っている」という指摘がある。刑事告発は自民党5派閥が対象になっている。国民の検察不信を招かないためにも、バランスの取れた捜査を期待する。
さて、2025年大阪・関西万博の会場運営費について、日本国際博覧会協会が、当初想定していた809億円から約1・4倍の1160億円に増額する方針を示したことが批判を浴びている。
運営費の多くは人件費であり、私が市長時代に出た試算は5年前だ。安倍晋三政権時代であり、安倍首相は毎年、経済団体に「春闘の賃上げ」を要請していた。5年たち賃金は上がり、人件費と比例する運営費も上がっている。
賃金増加は悪いことではない。博覧会協会と政府、大阪府市が知恵を出し、増額を上回る収益を出せばいい。
産経新聞に先日、「万博会場で30言語対応の翻訳アプリ無料提供へ 国際会議での同時翻訳も」という独自記事が掲載されていた。世界の人々の「言葉の壁」を取り払うもので、新たなビジネスチャンスも期待できる。
2023年は「政治への信頼」が失われた1年だった。24年こそ「信頼回復の年」にしてほしい。永田町の常識が世間の非常識ではいけない。
●年収「2000万円超〜2500万円以下」の給与所得者は日本にどのくらいいるか 1/3
コロナ明けでますます働き方の多様化がすすむこんにち。ご自身のキャリアを見つめなおし、年収アップを目指す計画を立てている人も多いでしょう。
さて、一般のビジネスパーソンの「年収」。毎月の給料や、勤務先の決算期末などのタイミングで支払われる賞与をあわせて年間収入(年収)とするのが一般的な考え方でしょう。
では、その年収、どのくらいの金額をどのくらいの人が手にしているのでしょうか。
そして、私たちの年収は今後、上昇していく可能性はあるのでしょうか。過去から見てきて上昇してきたのでしょうか。
今回は、国税庁の開示資料をもとに、詳細を確認していきます。
年収2000万円超〜2500万円以下の人数と割合は
2023年9月に国税庁が公表した「令和4年分 民間給与実態調査統計」によると、2022年の給与所得者の総数は5077万6000人。
そのうち年収2000万円超〜2500万円以下の給与所得者の人数は13万1000人。これは全給与所得者のうちの0.3%に当たります。
また、全給与所得者の上位0.6%に含まれる年収レンジです。
日本の給与所得者の平均年収は今後、上昇していくのか
最近では、岸田新政権下では「賃金アップ」が話題となっています。
今後、私たちの賃金は上がっていくのでしょうか。過去8年の推移についても目を向けてみましょう。
平成26年(2014年)に平均年収が420万円であったものが、令和4年(2022年)に457万円ですから、8年で37万円上昇です。
8年間の中でも、令和2年(2020年)から令和4年(2022年)の2年間での平均年収が22万円上昇し、伸び率が大きくなりつつあることが伺えます。
まとめにかえて
ここまで、給与所得者全体における、一定の年収幅の比率についてみていきました。
今回取り上げた年収2000万超〜2500万円以下の給与所得者の人数は13万1000人。これは全給与所得者のうちの0.3%でした。
給与所得者全体の平均年収、そして過去の推移についても俯瞰しましたが、過去8年間での推移の中でも、直近3年間の年収の伸び率が高いことが伺えました。
今後、政府の政策としてどのようなアクションが出てくるでしょうか。注目していきたいところです。
●新NISA、始動 非課税枠拡充、「貯蓄から投資」後押し 1/3
株式や投資信託の売却や配当などで得た利益が一定の範囲内で非課税となる少額投資非課税制度(NISA)が1月1日、大幅に変わった。
非課税の運用期間が無期限となり、投資額の上限も大きく引き上げられ、投資に一段と有利な仕組みになる。新NISAで個人金融資産の「貯蓄から投資へ」の移行は進むのか。岸田政権が掲げる「資産所得倍増計画」の成否も懸かっている。
NISAは、専用口座で取引すれば利益に通常課される約20%の税が免除される制度で、2014年に始まった。新NISAは、長期の資産形成に向くとされる投信を購入できる「つみたて投資枠」と、個別株なども買える「成長投資枠」で構成。年間投資枠は従来の2〜3倍に広がり、両枠の併用もできる。1人が生涯利用できる上限額は1800万円(うち成長投資枠1200万円)に上る。
新NISA始動を控え、SBI証券や楽天証券では口座開設の動きが加速した。SBI証の総合口座数は9月末時点で前年同期に比べ2割超多い1106万件に達した。
日本株への資金流入も見込まれ、SMBC日興証券は新NISAの効果で年2兆円が日本株に向かうと試算する。同社の伊藤桂一チーフクオンツアナリストは「来年以降、日経平均株価の最高値更新などで個人投資家の評価が高まれば、流入額はさらに膨らむ」との見方を示す。
日本ではバブル経済崩壊後、デフレが長期化。お金の価値が相対的に上がるデフレ下では現預金で資産を保有する方が有利で、個人金融資産の過半を占めてきた。しかし、22年以降は物価高が続いており、この基調が定着すると現預金に偏る個人資産は目減りする。新NISAは個人の投資促進の起爆剤になる可能性がある。 
●長く続いた自民1強も政治とカネから支持率最低水準へ…2024年政治の構図 1/3
2024年は自民党・公明党が政権に復帰して12年を迎える。第2次安倍政権以降、長らく自民1強時代が続いているが、昨年末には派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題が事件に発展。内閣支持率は政権復帰以降の最低水準に陥り、政権維持を危ぶむ声もある。前回の政権交代から干支(えと)が一巡する今年。衆院解散・総選挙で国民の審判を仰ぐべきだとの指摘もあるが、政治の構図に変化は起こるのか?
旧民主党の政権交代は3年余で終焉
「従来、次の選挙でしっかり議席を伸ばし、その次に政権にチャレンジすると言っていたが、その考えを私は捨てている。次の選挙こそ、勝負だと考えている。国民の政治に対する不信感をみていても、今こそ立憲民主党が前に出て、政権を目指す。それが来年だ」
昨年12月28日。立民の岡田克也幹事長は、党の仕事納めのあいさつでこう強調した。
09年、旧民主党は衆院選で大勝し政権交代を実現した。しかし、米軍普天間飛行場の移設を巡る混乱やマニフェストに掲げた主要政策の頓挫などがあり、わずか3年余で下野。その後、旧民主の流れをくむ勢力は離合集散を繰り返し、与党に対抗する「大きな塊」とはなれず、政権批判の受け皿にもなりきれていない。
ただ、自民の政治資金を巡る事件が表面化したことを受け、旧民主の系譜を引く立民は、ここに来て政権奪還に向けて意気軒高だ。
野党連携、勝負をかけられるか?
民主党政権で厚労相を務めた立民の長妻昭政調会長は取材に「われわれが政権を取るということもあるが、カネに汚い政治を変える、今やらないともう永久に変えられないという意味で09年以来の絶好のチャンスだ」と語る。一方で「政権を担った時にちゃんと運営できるか、国民に懸念があるのは事実。民主党政権の反省点はいっぱいあり、そこをきちんと説明して実感を持ってもらう」とする。
その上で、「どの国でも与党の失敗がセットにならないと政権交代は起こらない」と指摘。1月下旬に召集が見込まれる通常国会で、自民に「政治とカネ」を巡る改革を迫り、共感する他の野党とも連携して「勝負をかけることで、展望は開ける」と力を込める。
対する自民党。先月の報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率はおおむね10%台半ば〜20%台半ば。共同通信の調査では、内閣支持率は22.3%で政権復帰後の過去最低を更新した。
こうした中、岸田文雄首相は「政治資金に関し、国民に疑念が広がっていることに深刻な危機感を感じなければならない」とし、年明け早期に党の信頼回復に向けた改革組織を設置すると表明。政治資金規正法改正の可能性にも言及した。
自民に逆風=野党の躍進、となっていない現実
ただ、自民に逆風が吹く状況ではあるが、野党の支持率も伸び悩む。先月の共同通信の調査では、政党支持率は自民が26%、次いで日本維新の会が12%、立民はそれに次ぐ9.3%だ。
野党時代も知る自民のベテラン議員は「政権復帰から12年もたつとおごりも出てくる。09年と似た状況だが、違うのは野党に期待感がないことだ」と指摘。「国民も民主党政権の失敗を受け、もう彼らには政権は任せられないとの思いだろう。今の自民は二度と野党になりたくないとの思いが強い。課題はたくさんあるが、最後は自浄作用が働き、まとまる」と強調する。
野党に政権奪還の術(すべ)はないのか。東北大大学院の河村和徳准教授(政治学)は「歴史的に見て政権交代が起こる時は地方で勝って国政へという流れがある。野党は世代交代を進めて新鮮さを打ち出し、地方選、特に首長選で勝って足腰を固めなければ盤石に政権交代はできない」と指摘。その上で「政治資金問題で今のシステムを変える有効な対策が示せなければさらに厳しくなる」とも語る。
●「自民でも共産でもない選択肢」はなぜ拡がらないのか… 1/3
自民党の支持率低迷に伴い、野党の「協力体制」が水面下で動いている。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「反自民で反共産の『ゆ党』の立場を取る維新や国民民主は遅かれ早かれ与党と野党のどちらの立場を明確に取るかを迫られるだろう。さもなくば党内での分裂は免れない」という――。
1強多弱から2大政治勢力へ
派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑で、自民党と岸田政権が急速に崩壊過程に入るなかで迎えた2024年は、野党陣営にも大きな変化を生んでいる。
野党第1党の立憲民主党が再び「野党の中核」の立ち位置を確立しつつあり、野党は予想を超えたレベルで、立憲のもとに結束を強めているのだ。昨年末の臨時国会終盤、立憲が提出した内閣不信任決議案に、同党と「野党第1党争い」をしてきた日本維新の会も、党首が与党への接近を繰り返してきた国民民主党も賛成し、全野党が「岸田政権NO」でまとまったのが象徴的だ。
敵失に負うものが大きいとはいえ、野党がこれほど大きな「構え」を築くことができたのは久しぶりだ。日本の政治は長く続いた「1強多弱」から「2大政治勢力による政権争い」へと、再びかじを切ろうとしている。
そしてこの状況下で、2024年前半にまず大きな変化を求められるのは、おそらく維新や国民民主などの「第三極」政党だ。彼らは否応なしに、与党・自民党と野党第1党・立憲民主党を中核とする二つの政治勢力のどちらにくみするかについて、何らかの答えを出すことを突きつけられるからだ。
共産、社民、れいわとの「大きな構え」
最初に、昨年末の立憲の「大きな構え」構築の動きを、簡単に振り返りたい。
立憲民主党はまず、2021年の前回衆院選で一定の選挙協力を行った共産、社民、れいわ新選組の各党と、市民連合を通じて次期衆院選に向けた共通政策に合意した(12月7日)。岡田克也幹事長は「自公政権の限界があらわになるなかで、野党が力を合わせて大きな政策転換を図っていきたい」と語った。
特筆すべきは、この共通政策の中に「消費減税」が盛り込まれなかったことだ。
消費減税は立憲にとって、自らの目指す社会像、すなわち「支え合いの社会への転換」との整合性が取りにくく、できれば強く主張したくない政策だ。しかし、他の野党(特にれいわ新選組)は常に消費減税を掲げることを強く求めており、立憲は調整に苦慮していた。
立憲は11月に発表した新しい経済政策に消費減税を明記せず「現行の軽減税率制度を廃止し、給付付き税額控除を導入する」と記述するにとどめた。立憲の姿勢に市民連合が配慮した形で共通政策がまとめられ、他党もこの政策に「乗る」形となった。
立憲はこれまで、共産党との連携を「立憲共産党」と罵倒されたり、他の野党との間に「消費減税」でくさびを打たれたりして、立ち位置に右往左往する局面もあった。しかしこの政策合意によって、どうやらこれらの「呪いの言葉」を乗り越えて、2021年当時の状態まで野党の連携の形を戻すことができたようだ(この経緯については、昨年12月31日公開の記事「政権交代の兆しが見えてきた…『自公政権はイヤ』の受け皿になれなかった野党勢力が変えるべきこと」をお読みいただきたい)。
維新と国民民主を野党陣営に引き戻した
驚いたのは、立憲がさらに、維新や国民民主をも野党陣営に「引き戻す」ことにも成功したことだ。
維新は21年衆院選で議席を伸ばして以降、立憲と野党第1党の立場を争っているし、国民民主は20年、立憲とのいわゆる「合流」を拒んだ議員で構成されており、玉木雄一郎代表は立憲の「逆張り」を狙うかのような言動を繰り返している。実際、臨時国会で成立した政府の2023年度補正予算案に、両党は野党でありながら賛成した。
二つの「ゆ党」の存在は、野党第1党の立憲に「指導力不足」というネガティブな評価を植え付ける要因となっており、立憲にとってはこれも頭の痛い問題だった。
ところが、自民党派閥の裏金問題が、この状況を劇的に変えた。
官房長官不信任案、内閣不信任案で見えた「大きな構え」
国民の関心が「立憲は内閣不信任決議案を出すのか」に向かうなか、立憲は松野博一官房長官(当時)への不信任案提出という「くせ球」を投げた(12月11日)。裏金疑惑への批判の高まりを受け、両党は松野氏の不信任案に賛成。それを見越したかのように、立憲は満を持して内閣不信任案を提出した。
松野氏の不信任案に賛成した維新と国民民主は、内閣不信任案にも賛成せざるを得なくなった。「立憲が提出した内閣不信任案に全野党が賛成する」という「大きな構え」が出来上がった。
立憲は、同じ国会で政府の補正予算案に賛成した二つの「ゆ党」を、最後に野党陣営に引き戻すことに成功したと言える。これらの動きを受け、報道各社の年末の世論調査では、自民党の支持率が急落する一方、立憲の支持率は目に見えて上昇した。野党全体に対する好評価の果実を、第1党の立憲が多く受け取った形だ。
自民党の延命を阻止するための「関係再構築」
臨時国会が閉会すると、立憲の泉健太代表は、記者会見(21日)で他の野党に向けこう訴えた。
「(野党が)『独立独歩でいきます』と言っていたら、自民党政権の延命を許してしまう。それは国民が望むことではない。自民党政権の延命を許さない、政治改革の政権をつくるんだと、各党に呼びかけていきたい」
発言は「維新、国民(民主)などと新政権目指す」と報じられ、党内には軽い動揺がみられた。過去に選挙協力の経験がある共産党などの野党と、「身を切る改革」をうたい、立憲とは目指す社会像が真逆の維新とでは、「協力」に対する党内の忌避感は大きく異なることをうかがわせた。
もっとも、泉氏の発言は、現時点で両党との連立を意図したものではないだろう。市民連合を介した政策合意によって、共産党や社民党など「目指す社会像が近い」野党との連携を再構築することに成功した立憲は、今度は「目指す社会像を共有できない」維新などの政党を、それでも野党陣営につなぎ止め、自民党の延命を阻止しなければならないのだ。
泉代表が他党の「一丁目一番地」の政策を列挙した理由
泉氏の会見で筆者が地味に注目したのは「(政策の)すべてをやるといったらものすごい時間がかかり、政策のすり合わせも大変になる」「(他党と)協定をつくるとか、合意文を作ることを考えているわけではない」などの発言だ。「他の野党と連立に向けた政策協議を行うつもりはない」ということだろう。
泉氏は、裏金問題を受けた政治資金規正法の改正に加え「文書通信費の全面公開」(維新)「トリガー条項(の凍結解除)」(国民民主党)など、各党の「一丁目一番地」である個別政策の名を、わざわざ列挙した。「これらの政策を立憲として実現する。だから自民党ではなく野党陣営についてほしい」ということだ。
泉氏は「立憲の旗のもと、他党に協力を求める」という建前を維持している。立憲が3年前の2020年、当時の枝野幸男代表が国民民主党に「合流」を求めた時のやり方を踏襲しているようにも見える。
立憲の「上から目線のメッセージ」の真意
ある意味「上から目線」ともみえる呼びかけに、維新や国民民主党が現時点で応じるとは考えにくい。維新の馬場氏も国民民主の玉木氏も、おそらく立憲を蹴り飛ばす。「立憲下げ」が大好きなメディアは「維新や国民民主にすり寄り、袖にされた立憲」と書き立てるかもしれない。
立憲はそんなことは織り込み済みだろう。それでも呼びかけるのは「いい加減『ゆ党』の立場をやめて、明確に野党陣営につくべきだ」という、両党に対する一種の警告だと思われる。あなた方が実現したい政策を立憲が全て実現すると言っているのに、それでも自民党にすり寄るのなら、自民党と「同じ穴のムジナ」と呼ばれることを覚悟すべきだと。
自民党の崩壊が進むにつれて「ゆ党」ではいられなくなる
大阪万博問題を抱える馬場氏も「非立憲」に凝り固まる玉木氏も、本音では2024年通常国会では、政府の予算案に賛成したいのかもしれない。だがそうなれば、両党は明確に「自民党の補完勢力」と位置付けられる。立憲との選挙協力は不可能になるだろう。
一方、すでに選挙区が埋まっている自民、公明両との選挙協力ができるはずもない。このままでは次期衆院選は、自民・公明の両党、立憲など野党4党、そして維新と国民のいわゆる「三つどもえ」の構図となる可能性が高い。
それで党内が持ちこたえるだろうか。維新の「勢い」に乗って当選したが、大阪万博にあまり強い思い入れのなさそうな、大阪以外を選挙区に持つ議員たちはどう考えるのか。国民民主で連合の支援を受け、立憲とともに戦いたい組織内議員たちは、この状況で戦うことをよしとするだろうか。
都合良く立場を使い分ける「ゆ党」の立場は、時がたち自民党の崩壊が進むにつれて、どんどん許されなくなる。やがて「与党か野党か」が厳しく問われることになるのは必定だ。小選挙区制中心の選挙制度とは、そういう性質のものだからだ。
「非自民・非共産」勢力は必ずまた失敗する
維新や国民がこの状況を打開するには、立憲民主党と国民民主党を分裂させて「非自民・非共産」勢力の結集を図り、新たな野党の「大きな塊」を作るしかないだろう。国民民主党を離党して、新党「教育無償化を実現する会」を結党した前原誠司氏が目指しているのは、おそらくこの形だ。6年前に自らが深くかかわった「希望の党騒動」の再現である。
だが、7年前に失敗したことが今回成功するとは、筆者にはとても思えない。
野党再編を成功させるには、主導する側に今の立憲を上回る求心力が必要だ。希望の党騒動の時の小池百合子東京都知事のような分かりやすい存在は、今回はいない。昨春ごろまでは勢いのあった維新も、大阪万博問題で陰りが見える。そもそも、立憲自身に分裂の芽がみられない以上、現時点での野党再編は絵に描いた餅に過ぎない。
維新、国民に迫る「分裂の危機」
維新と国民民主の両党は、立憲に「のみ込まれる」ことを覚悟で野党の立場を明確にできなければ、いずれ分裂の危機に陥る可能性がある。現に国民民主は一足早く「与党か野党か」のスタンスを突きつけられて分裂した。以前にも指摘したが、再分裂の可能性は否定できない。そして、その波は近い将来、維新をも襲うかもしれないのだ。
立憲の岡田克也幹事長は、昨年12月28日の記者会見で、次の衆院選で政権交代を目指す考えを明確にした。かつて同党が「次期衆院選で議席を伸ばし、政権交代は次の次の選挙で」と発信していたことについて「その考えは捨てている。立憲民主党が前に出て政権を目指す」と語った。立憲にとっても、時間をかけて野党を育てる悠長な考えが、もう許されない状況になったということだ。
状況が劇的に変動している今、問われているのは自民党だけではない。次の衆院選をどうやって「政権選択選挙」に持ち込むか、そして実際にどうやって自民党から政権を奪い、その後安定した政権運営につなげていくのか、野党各党の執行部、そして全ての所属議員が問われている。
彼らが今年、どんな政治的選択をするのか、興味深く見守りたい。
●岸田首相「自分がやめて問題解決するならいつでもやめる」 開き直り批判 1/3
昨年12月29日から年末年始の休暇に入った岸田文雄首相。30日夜には「ホテルニューオータニ」の「岡半」で裕子夫人、長男で元政務担当秘書官(6月に更迭)の翔太郎氏らと高級すき焼きに舌鼓を打った。
しかし、自民党派閥パーティーの巨額キックバック疑惑で東京地検特捜部が安倍派幹部を相次いで任意聴取、さらに議員の関係各所に家宅捜索が入るなかでの贅沢に、SNSでは多くの批判が寄せられた。
そうしたなか、「総理自身は周辺に『自分がやめて何か解決するのか。やめて解決するならいつでもやめてやる』と話した」と、1月1日に日テレNEWSが報じた。
「公職選挙法違反容疑で柿沢未途前法務副大臣が逮捕され、さらにキックバック疑惑で現役国会議員が逮捕されれば、政権には大ダメージです。そのため、自民党内に『首相は総辞職するのではないか』という声があがっており、それに対して、岸田首相が『(問題が)解決するならいつでもやめてやる』と語ったというのです。
年が明けた1月1日に能登半島で大地震が発生、翌2日には羽田空港で日本航空機と海上保安庁機が衝突炎上しました。
まずはこの対処に当たることになりますが、1月下旬から始まる通常国会前に、議員や事務所関係者などから逮捕者が出るとも言われ、しばらくは解散含みの展開が続きそうです。『2024年度の予算成立を条件に内閣総辞職するのではないか』ともささやかれています」(政治担当記者)
この「やめてやる」発言には、
《何なの?この開き直りは?》
《逆にあんたじゃなきゃ出来ないことって何よ? それに何も解決できないから不満が出ているんでしょ》
《少なくともこのまま続けるよりは別の人に任せた方がよくなる可能性もありますよね?》
《やめてくれたら、少なくても、日本人に対するいやがらせとしか思えない次々と繰り出す増税案、いつまでも一流国ぶって行う海外外遊の度のばらまき、元銀行員とは思えない頓珍漢な経済対策がなくなり、少しは経済好転しますよ》
など憤懣やるかたないコメントが殺到していた。
12月26日、岸田首相は都内の講演会で「国民の信頼あっての政治の安定であり、政治の安定あっての政策の推進であるということを、肝に銘じて対応していく」と語り、年頭の所感でも「先頭に立って国民の信頼回復に全力を尽くす決意だ」と述べているが、その「国民の信頼」が、いま大きく揺らいでいる。 

 

●「今こそ政権交代」「政策勝ち取る」 立民・国民代表が新年の決意 1/4
立憲民主党の泉健太代表と国民民主党の玉木雄一郎代表は4日、東京都内でそれぞれ年頭の記者会見を開いた。自民党派閥の政治資金規正法違反事件を受け、泉氏は「今こそ野党が立ち上がるべきだ。政権を早期に代える準備を進めたい」と述べ、次期衆院選で政権交代を目指す考えを示した。
泉氏は政治改革や教育無償化、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結解除などに触れ、「(野党が)共通政策で一致できれば選挙区調整も本格的に進む」と指摘。他党と協議を進めていく方針を訴えた。
玉木氏も「飛躍の年にしたい」と決意を表明。トリガー条項を巡る自民、公明両党との協議について「生活に密着した政策の実現を勝ち取りたい」と意欲を示した。
●公明、結党60年の岐路 「平和」原点回帰か 1/4
公明党は11月に結党60年を迎える。
党創立者の池田大作・創価学会名誉会長が昨年死去し、今後も党勢を維持できるかの岐路に立つ。自民党派閥の政治資金問題を受けた政治改革や、防衛装備品の輸出拡大といった党の原点に関わる課題にも直面。自民との関係に配慮しながらの難しいかじ取りが迫られる。
「今の政治の混乱をしっかり乗り切っていかなければならない」。山口那津男代表は2日、東京・JR池袋駅前で新春恒例の街頭演説に臨み、公明が政治改革をリードする決意を訴えた。「今、直ちに衆院解散をできる状況ではない」とも述べ、政治の信頼回復が急務との考えも示した。
公明は1964年11月に結党し、99年に自民との連立政権に参加。国政選の比例代表では2005年衆院選で過去最高の898万票を獲得したが、近年は支持母体・創価学会の高齢化による集票力低下が指摘される。22年参院選は618万票に落ち込んだ。党関係者は池田氏死去で「さらに得票数は減る」と危惧する。
政治資金問題で岸田政権の先行きに不透明感が増す中、次期衆院選の時期は公明執行部の「世代交代」にも影響しそうだ。今秋に代表任期満了を迎える山口氏の後継として有力視される石井啓一幹事長は衆院選小選挙区の候補。複数の党関係者は「夏までに解散がなければ山口氏は続投だ」とみている。
衆院選では議席増を目指して11の小選挙区に候補を擁立するが、昨年12月の党の情勢調査で支持率が下落する結果が出た。「自民と同一視されている」(党関係者)と危機感を強めており、公明は政治改革を最優先課題に位置付ける。
「清潔な政治」は結党以来の原点で、今月の通常国会召集までに改革案をまとめて存在感を発揮したい考えだ。山口氏は「政策活動費」の使途公開義務化を打ち出したが、自民の反発も予想される。公明幹部は「攻めと守りの両方が必要だ」とバランスに気を配る。
自公関係の新たな火種になっているのは、国際共同開発した防衛装備品の第三国への輸出可否の議論だ。自公実務者間で容認の方向性が出ていたが、公明執行部が昨年11月、慎重姿勢を鮮明にした。平和主義を掲げた池田氏の死去直後のため、原点回帰との見方もある。
政府・自民は2月末までに「容認」で結論をまとめたい考えだが、公明執行部は「完成品の輸出解禁という大転換なのに国民の理解が得られていない」と消極的。公明幹部は政府高官に「政府が期待する結論になるとは限らない」と警告した。
●自民に政治刷新本部 1/4
岸田文雄首相(自民党総裁)は4日、年頭記者会見を首相官邸で開き、自民派閥の政治資金規正法違反事件を踏まえ、総裁直属の機関として政治刷新本部(仮称)を来週立ち上げると表明した。
●能登半島地震 首相「被災者のなりわい支える息の長い取り組み求められる」 1/4
岸田首相は4日に首相官邸で行った年頭記者会見で、石川県能登地方を震源とする地震について、「避難の長期化も懸念される中、被災者の生活となりわいをしっかりと支えていく息の長い取り組みが求められる」と強調した。
●能登半島地震の予備費40億円に《やすっ!ケタが1つ、2つ足りない》批判の嵐 1/4
「命を守る観点から重要な被災72時間が経過する本日夕刻までに、総力を挙げて一人でも多くの方を救命・救助できるよう全力で取り組んでほしい」
首相官邸で4日午前に開かれた能登半島地震を受けた非常災害対策本部の会合。本部長の岸田文雄首相(66)はこう閣僚らに指示し、寒冷・避難所対策を強化するため、予算の予備費使用を来週9日にも閣議決定すると表明した。
最大震度7を観測した能登半島地震。生存率が急激に下がるとされる「発生から72時間」が迫り、予断を許さない状況が続いている。
岸田首相は会見で、必要物資を被災地の要望を待たずに送り込む「プッシュ型支援を一層強化する」と力を込めていたのだが、予備費の規模について問われると、2016年の熊本地震の23億円などを例に挙げつつ、「倍近く(40億円程度)になるのではないか」と説明した。
ウクライナ支援にはポンと6000億円だったが…
このニュースが4日昼に報じられると、怒りと動揺の声が広がったのがネットだ。
《やすっ!ケタが少なくとも1つ、2つ足りないと思うんは私だけ。にしても安いな》
《道路もめちゃくちゃ、建物は倒壊。焼野原のような街に使う予備費が40億円?たった》
予備費の使用を決める閣議決定はまだとはいえ、活用金額の少なさに驚きの投稿が相次いだらしい。
昨年12月に開かれたG7財務相・中央銀行総裁会合で、鈴木俊一財務相(70)は、ウクライナ支援に欧米諸国が消極姿勢に転じる中、45億ドル(約6000億円)を拠出する用意があると公表。SNS上では、この金額と今回の予備費の金額の差についての意見も。
《ウクライナにポンと6000億円。能登半島地震に苦しむ自国民にはショボい40億円》
《税金を納めていることが馬鹿らしくならんか。我々は誰のために増税されているのか》
岸田政権に対する逆風は依然として続いているようだ。
●渦中の議員は年末年始に地元で説明したのか?松野氏の地元に行ってみる 1/4
疑惑が一層深まる状況が続くなか、これまで沈黙を貫く渦中の議員たち。例年であれば地元に帰る年末年始、有権者に説明したのでしょうか。
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、東京地検特捜部が派閥事務所の家宅捜索を行ってから2週間あまり。
安倍派では、この年末にかけ、松野前官房長官のほか、過去5年間の派閥の実務を取り仕切ってきた事務総長経験者全員が任意の事情聴取を受けました。
岸田総理「強い危機感を持って、政治の信頼回復に努めなければと感じている」
政治改革に向けた新しい組織を自民党内に設置し、対応に乗り出す考えを示した岸田総理。
しかし、聴取を受けた議員からはそろって説明が行われていません。年末年始、地元の有権者にはどう説明したのでしょうか。
記者「千葉県市原市にある松野氏の選挙区の事務所の前です。中の明かりはなく、人の動きは確認できません」
千葉県市原市を選挙区とする松野氏。例年、正月には地元の神社で行事に参加していたようですが、今年はというと…
記者「私が到着して6時間ほどになりますが、今のところ松野氏の姿はありません」
結局、姿を現すことはありませんでした。
有権者「頭を下げて、悪いことは悪いこと。これからこうして今の名誉を回復しますので、という挨拶はあってもいいと思う。なのに一切ないですよね」
有権者への説明はないままなのでしょうか。
さらに、安倍派の議員側が、パーティー券収入の一部を「中抜き」した額が、過去5年間で少なくともおよそ8000万円あることが新たにわかりました。
派閥側から議員側にキックバックされ、政治資金収支報告書に記載されていなかったものを加えると、安倍派の裏金の総額は6億円近くにのぼることになります。
きょう仕事はじめとなった与野党の幹部からも裏金疑惑に関する言及が相次ぎました。
公明党 山口那津男代表「令和の政治改革元年と銘打って、いま、失われた政治への信頼、これを着実に取り戻していく」
立憲民主党 泉健太代表「自民党の岸田内閣に正当性はないということで、野党による政権を構成すべきだと。岸田政権を早期に変えていくということについて、我々としても準備を進めてまいりたいと思います」
今月下旬に召集予定の通常国会では「政治改革」が焦点の一つとなるなか、岸田総理はきょうの会見でどう言及するのでしょうか。
●長崎IRの崩壊「根っ子は全て同じ」 岸田政権に思う 1/4
我が国の転換期、天の「龍神」が怒っている
今年の干支の龍又は竜は、古来より「神」の世界の最高位を表すものである。世間は、かっ てないほど凄まじい昨年末からの新年である。
正に、天の神が世界とこの国の「偽善者達のとんでもない」行いに怒りを爆発させているかのようだ。世界はウクライナにイスラエル、この国では岸田政権下の体たらくーービッグモーター、ダイハツ、地震に津波、羽田の航空機事故ーー我が国と各組織の偽善者達、これら人間の行いが神の怒りをかい、上に強く戒められている。
「減点主義」がもたらした、人を育てない30年
筆者の予測通り、昨年末の12月27日、岸田政権はこの機に及んで、遅れていた「長崎IR」の政府承認をめぐり、表向きの理由を付けて、承認しないという結論を発表した。これは選挙の影響などを考慮した政治家たちの偽善的な結論である。
しかし、実際には、長崎IRの事実上の崩壊は、2022年9月に既に起こっていた。その際には、HISの澤田氏からハウステンボスが中国共産党習近平政権に近い中華系企業PAG社に売却され、同時に当時のハウステンボスの主要株主である九州福岡経済界の九州電力、西部ガス、JR九州なども株式譲渡を完了し、すべてが終了していた。
従って、長崎県の大石知事を筆頭にする各自治体関係者、さらには地元の九州福岡経済界の倉富九州経済連合会長なども含む支持者らによるこの「長崎IRの崩壊」に対するコメントは、非常に無知で偽善的な行動であると言える。
これらの関係者の発言は、異なる言葉で表現されていても、本質的には「同じことを言っている」ことが明らかで、自己保身のためのものであり、情熱や真剣さを感じられない。これは非常に浅薄なものだ。
岸田政権下で現在起こっている「表向き」の政治資金規正法違反に関連する発言、例えば「現在は検察の調査下で、その影響もあり差し控えます」とほぼ同じで偽善的なものであり、説明責任を果たそうという意志が感じられない。
近年の組織の指導者たちは、皆同じような傾向を示している。表向きは「神妙な姿勢」を保ち、残念などと心にもない表現をしているが、本音では自己保身考えている。これは非常に愚かしいことだ。彼らは「サラリーマン首相」や「サラリーマン議員」、「サラリーマン重役」に過ぎず、何事も成し遂げられないだろう。世界の笑いものである。
年末から年始にかけて組織関係者や偽善者たちが引き起こした問題の根本には、金融機関やマスメディアを含む、ここ30年間の国内の「病巣」が存在している。筆者はこれを「コンプライアンス・ガバナンス症候群」と名付け、組織の中でこれを言い訳にしている人々が日本中に広がっていることに警鐘を鳴らしている。
岸田首相を含む現政権下の政治家たちでは、例えば萩生田前政調会長や西村前経済産業大臣など一部の人々が、小細工や策略を考えているように見える。しかし、彼らはいわば「減点主義」の下で、小利口に育った人達であり、我が国の中心で舵取りをするなど出きるはずもない。
学校教育を含む全ての組織や人々は、評価の基準や仕組みを見直し、ここ30年の失敗を指摘する「減点主義」ではなく、人に対する「加点主義」に切り替えるべきだ。学業の成功だけを追求し、小さな失敗を過度に恐れる人々が組織の上にいる。しかし、失敗しないパーフェクトな人物などはどこにも居ない。「失敗は成功のもと」である。食品会社のCM「腕白でも良い。たくましく育って欲しい」のように大人になった者でないと、大きな事はできないだろう。今日ではこうしたCMはほとんど見られなくなった。
大阪中心の関西都市圏、後は福岡と東京の2大都市圏
連載の初めから、「東京都中心の関東都市圏」、「大阪市中心の関西都市圏」、そして「福岡市中心の北部九州都市圏」の3つの主要都市圏以外ではIR(統合型リゾート)は適さないと強く主張し、詳しく解説してきた(名古屋市中心の中部都市圏は文化的に異なるので除く)。
北海道苫小牧市や和歌山市、佐世保市にIRが求める規模の市場がないことは、誰でも理解できるだろう。さらに、安全保障上の懸念からも、中華系企業が所有・運営するハウステンボスが日米防衛にとって重要な位置を占める佐世保市にIRを誘致することは、誰が考えても無理だ。長崎県と佐世保市の関係者たちは、まだこの事実を理解していない。なんと愚かなことか。
最近、西日本新聞も「長崎IRは最初から無理だった」という筆者と同様の記事が掲載している。それならなぜ九州経済連合会の倉富会長やJR九州の石原元会長らがIR誘致に協力する行動に対して疑問を投げかけなかったのか。各マスメディアも各マスコミも忖度だらけの組織ではないか。
22年米国Bally's 記者発表
一昨年の3月、米国の老舗Bally's Corporation(米国ロードアイランド州、ニューヨーク証券取引所上場)は、福岡へのIR進出の可能性について、ホテルオークラ福岡に全国のマスメディアを招いて大々的な記者発表を行った。内容は現在でもネットで容易に確認できる(福岡 IR誘致促進委員会You Tube)。当時の在福岡米国領事館首席領事のジョン・テーラー氏の挨拶は非常に理解しやすく、一見の価値がある、
福岡市都市圏の市場規模は年間で来場者約460万人、売上額約2,500億円、税引き前利益約570億円を見込むとされている。対照的に、崩壊した長崎IRは年間の来場者数673万人(当初は840万人)、年間売上額2,716億円などとされていたが、これは「福岡IR」と比較しても驚くべき数字で、バラ色のとんでもない机上の計画だ。
まして「長崎IR」の中心施設であるカジノは、欧州の小規模業者であるカジノ・オーストリア・インターナショナルという、IR経験のない事業者が運営することが計画されていたにもかかわらずだ。 ・・・
● 立民 泉代表 “ほかの野党と協力し政権交代目指す” 1/4
立憲民主党の泉代表は自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、岸田内閣の正当性が失われているとして、次の衆議院選挙でほかの野党と協力して政権交代を目指す考えを示しました。
立憲民主党の泉代表はことし最初の記者会見で、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題について、「しっかりけじめをつけなければならない。裏金の認識がある議員は政界から一度、身をひくことが正しい選択で、岸田総理大臣の説明責任や任命責任も問わなければならない」と述べました。
そのうえで、「岸田内閣に正当性はなく、野党による政権をつくるため今こそ立ち上がるべきで、次の衆議院選挙で政権交代を目指す」と述べました。
また、ほかの野党との協力の在り方について、「政治改革を必ず行い、教育の無償化や『トリガー条項』の凍結解除など、国民生活に直結した優先事項で一致結束できれば選挙区調整も十分可能ではないか。虚心たん懐にそれぞれの思いを聞いて、新しい政権をつくる目標にまとめていくことが必要だ」と述べました。
立憲民主党の泉代表は記者会見で、「能登半島を中心に、まだ被害の全容が判明しておらず、救助が完全にできていない状況だ。一刻も早く人命の救助に向けて全力を尽くしてほしい。国レベルでは対応できない細かな物資が必要かもしれないので、党として、引き続き、現地のニーズに合わせて行動していきたい」と述べました。
●共産・志位氏「岸田政権は断崖絶壁」 解散総選挙に追い込む決意強調 1/4
共産党の志位委員長は4日、党の仕事始めにあたって記者団の取材に応じ、「岸田政権は、断崖絶壁まで追い詰められている状況だ」と述べた上で、「国民的な運動によって解散総選挙に追い込んでいくという攻勢的な戦いが必要だ」と決意を示した。
さらに志位氏は、「次の選挙はやはり自民党政治を倒していくということを大きな目標に掲げて私達も戦っていきたい。そのためには(他党との)共闘の再構築が必要になってくる」と指摘し、「(去年に)市民と野党の共闘で、共通政策を野党4党会派で確認するという一歩を踏み出しているので、そういうものも土台にしながら、一歩一歩進めていきたい」と他党との選挙連携に前向きな姿勢を示した。
これに先だって行われた党員への年始の挨拶では、自民党の派閥の政治資金問題について触れ、「徹底究明に全力を挙げる」と強調した。
●安倍派を潰して政権維持を図る岸田首相 1/4
東京地検特捜部による捜査が進む安倍派の裏金問題。政権の支持率は急落したが、岸田文雄・首相は今回の騒動を奇貨として、「数の力」で大きな影響力のあった安倍派議員を政権の要職から一掃。それによる政権維持を目論んでいる。だが、事はそう簡単に進むはずがない。通常国会を前に、恨みを募らせた安倍派の「死なばもろとも」作戦が迫っている──。
最大派閥の恨み骨髄
永田町は重苦しい新年を迎えた。
全国から動員した応援検事を含めて約100人の大捜査態勢を敷いた東京地検特捜部の裏金疑惑捜査はいよいよ大詰め、1月中に召集される通常国会開会までが政界捜査のタイムリミットとされる。自民党内は「何人の議員が逮捕されるのか」「大物議員の立件はあるか」と戦々恐々だ。
岸田首相はすでに「Xデー」に備えている。昨年末の人事で「女房役」の松野博一・前官房長官をはじめ安倍派の大臣、副大臣、自民党幹部を一掃し、“安倍派抜き政権”へと衣替えした。
だが、“派閥解体の危機”にある安倍派の議員たちは逆に結束を強め、首相の仕打ちに“憎悪”をたぎらせている。若手議員が語る。
「総理はうちの派閥の大臣を、有無を言わせず更迭しながら、二階派の大臣たちは派閥離脱でOK。そのくせ国民には『辞任は自発的なもの』とウソの説明をした。総理が安倍派というだけで一括りに罪人扱いしたせいで、我々は地元での風当たりがすごく厳しくなった。派内は怒り心頭だ」
閣僚経験者はこう言ってのけた。
「総理は安倍派から何人かを検察につき出して幕引きしたいのかもしれないが、これは岸田政権の終わりの始まりだ。最大派閥を排除して政権運営をやれるものならやってみればいい。政権が追い詰められようが倒れようが、我々は一切手を貸さない」
そんな安倍派の有力議員の1人が強く怒りの目を向けるのが岸田首相ら主流派による“政治資金スポンサー”への擦り寄りだ。
「こんな時に露骨な利権漁りをしてタダで済むと思っているのか」──。
特捜部が安倍派議員らへの事情聴取に乗り出していた昨年12月20日、岸田首相は国民が支払う医療費の積算根拠となる「診療報酬」の本体部分引き上げを決定した。
この診療報酬改定こそ、岸田首相の「カネ」に直結する最重要の政治課題だった。
安倍派が「露骨な利権漁り」と見ているものだ。
二階派を更迭しない理由
岸田首相は昨年末の安倍派の大臣更迭にあたっての記者会見で、わざわざ「診療報酬」の改定を挙げてこう意欲を示した。
「これから年末に向けて、予算、税制、診療報酬・介護報酬等の同時改定など国民の生活や国の基本政策に関わる重要な決定がめじろ押しで、まさに大詰めを迎えています。政府・与党として、国政に遅滞を来すことがないよう全力を挙げなければなりません」(昨年12月13日)
診療報酬引き上げは、自民党の「最大最強のスポンサー」と呼ばれる日本医師会が強く要求していた。
日本医師会の政治団体「日本医師連盟」は、2021年には都道府県の医師連盟からの寄附と前年からの繰り越し金をあわせて約22億円もの収入があり、自民党本部をはじめ各派閥、多くの議員に献金したり、パーティー券を購入している。さらに中央とは別に、都道府県ごとの医師会の政治連盟も地元の国会議員に資金提供を行なっている。
政治評論家の有馬晴海氏が語る。
「自民党と日本医師会は昔から切っても切れない関係です。国民が健康保険で病院にかかった時の医師の報酬は政府が決める公定価格で、診療報酬と呼ばれる。これが上がるか下がるかで医療機関の経営が左右される。そこで医師会は診療報酬を上げてもらうため自民党に医師会直系議員を送り込み、さらに党本部や自民党議員に広く献金、選挙の時には陣中見舞い(寄附)まで渡して医師会シンパの議員を増やしてきた」
岸田首相の安倍派排除人事によって、各派閥の大臣の数は裏金疑惑捜査で“無傷”だった麻生派が5人に増えたのをはじめ、茂木派3人、岸田派3人(首相を除く)と主流3派で過半数を占めたが、実は、医師会とのパイプが特に太いのが閣僚を増やした主流3派だ。
政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。
「自民党の派閥で伝統的に医師会に強かったのが保守本流の流れを汲む茂木派や岸田派、最近では麻生派です。保守傍流だった安倍派はもともと資金力が弱く、保守本流が有力スポンサーを持っていることに臍を噛んできた。だから医師会に食い込もうとしたが、安倍長期政権下でも、安倍派からは医師会に睨みが利く厚労大臣は出ていない」
第2次安倍政権以降の厚労大臣の顔触れを見ると、田村憲久氏(大臣2回。岸田派)、塩崎恭久氏(岸田派)、加藤勝信氏(3回。茂木派)、根本匠氏(岸田派)、後藤茂之氏(無派閥だが総裁選で岸田首相の推薦人)、現在の厚労相は武見敬三氏(麻生派)と岸田派が圧倒的に多い。
医師会応援団の自民党議員300人以上が参加する「国民医療を守る議員の会」の会長は茂木派の加藤氏、会長代理を岸田派の田村氏が務めている。
まさに主流3派の牙城と言っていい。
しかも、岸田首相は安倍派と同じく特捜部の強制捜査を受けた二階派に所属する小泉龍司・法相と自見英子・地方創生相の2人を派閥離脱だけで大臣にとどめたが、その自見氏は武見厚労相と並んで医師会の全面バックアップを受けて当選した「医師会直系議員」でもある。
「岸田総理は最大派閥の安倍派が捜査で身動き取れないのを好機と捉え、主流3派の主導で診療報酬改定を行ない、医師会利権を完全に手中に収めた。安倍派の大臣だけ切って、二階派の大臣を切らなかったのも、医師会に配慮して自見を大臣に残すためとしか考えられない」(安倍派関係者)
裏にあるのは医師会マネーの岸田首相への還流だ。
献金後に引き上げを決定
診療報酬の改定は2年ごとに行なわれるが、岸田首相は前回の改定時に日本医師会から巨額の献金を受けている。
2021年の改定では政府は当初、診療報酬を0.4%引き上げる方針だったが、医師会側はさらなる上乗せを要求して激しい陳情を展開した。
折しも自民党では菅義偉・前首相が退陣表明し、改定は次の首相の判断に委ねられることになった。同年9月29日に行なわれた自民党総裁選は事前の予想では岸田氏と河野太郎氏のどちらが勝つかわからない情勢だったが、決選投票で岸田氏が新総裁に選出され、総理就任が確定すると、日本医師連盟はその日のうちに岸田首相の資金管理団体「新政治経済研究会」にポンと1000万円を献金したのである。
タイミングから見ても、診療報酬改定を睨んだ“就任祝い”だったことは容易に想像できる。
日本医師連盟に献金について聞くと、「法律に従い適正な政治活動を行なっております」と答えた。
岸田事務所は「政治資金は法令に従い適正に処理し、その収支を報告している」と回答した。
法令に従うのは当たり前だ。だが、診療報酬改定の結果を見ると、献金の効果はてきめんだったことがわかる。
就任したばかりの岸田首相は医師会の要求通り診療報酬を上乗せして0.43%の引き上げを決定、「岸田裁定」と呼ばれた。この年の岸田首相への医師会関係団体からの献金総額は合計1400万円にのぼり、前年の250万円から5倍以上に急増した。
“こんなにおいしいのか”──首相がそう思ったとしても不思議ではない。
今回の診療報酬改定は前回以上に揉めた。医師会と財務省の大バトルとなったからだ。
日本医師会は、「医療従事者の賃上げが他の業界より低い」と診療報酬の引き上げを主張。
それに対して、財務省が全国の医院・クリニックなど診療所の2022年度の平均収益は1億8800万円と2020年度から2000万円増加し、利益剰余金も1900万円増えている──というデータを公表して「(診療報酬を上げなくても)賃上げはできる」と反論。政府の財政制度等審議会財政制度分科会も、「医療機関にコロナ補助金とコロナ特例診療報酬で2022年度だけで4兆円が支援された」と指摘して診療報酬はマイナス、とくに診療所の診療報酬を「5.5%程度引き下げる」との意見を政府に答申した。
危機感を強めた医師会側は自民党に猛烈なロビー活動を展開し、自民党では「国民医療を守る議員の会」が「診療報酬の大幅引き上げ」を決議。岸田派、茂木派の議員たちが岸田首相に申し入れ、最終的に医師会の要求通り「診療報酬本体部分」の引き上げで決着したのは前述の通りだ。日本医師会の松本吉郎・会長は「率直に評価をさせていただきたい」と歓迎した。
政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。
「診療報酬改定は揉めれば揉めるほど自民党にはおいしい。改定率はあらかじめ総理が決めているが、自民党議員は議連の決議や陳情を派手にやって『オレたちはこんなに貢献した』と医師会にアピールする。いわば政治パフォーマンスショーです。その貢献度合いが献金額に反映される」
前回の医師会巨額献金に味を占めた岸田首相が、今回は主流3派の有力議員たちに“どんどんアピールして献金を増やしてもらえ”と演技させたという指摘だ。
医師会利権に食い込みたくても検察捜査で身動きが取れなかった安倍派の幹部たちは指をくわえて見ているしかなかった。
疑惑を飛び火させる
自民党最大の資金源を握った岸田首相は、安倍派にさらなる追い討ちを掛けた。
岸田首相と麻生太郎・副総裁、茂木敏充・幹事長らは検察捜査で安倍派議員が立件された場合を想定し、“安倍派抜き”の党役員会で派閥活動の縮小など政治改革を議論する新組織立ち上げを“新年の初仕事”に掲げた。狙いは最大派閥・安倍派が立ち直れないように解体することにある。
「そこまでコケにするのか」と、安倍派は本気で逆襲の準備を始めた。
安倍派関係者が不気味な言い方をする。
「岸田がこっちを潰す気なら、こちらも遠慮はしない。野党は通常国会が始まれば、裏金問題で岸田政権を追及しようと手ぐすねひいて材料を集めている。
そこで野党をけしかけて岸田自身の医師会献金問題などもセットで追及させ、疑惑を主流3派にも飛び火させて大炎上させる。うちの派閥には安倍政権時代に身体検査のために集めた各派閥の議員のスキャンダル情報がある。材料ならいくらでも提供できる」
「死なばもろとも」と岸田首相を道づれにする暴露作戦に出るというのだ。
安倍派と主流3派の抗争激化で自民党内が分裂状態に陥り、国会が岸田追及一色となれば、2024年度予算案の審議が難航して年度内成立が難しくなり、岸田首相は追い込まれる。
そのさなかに地方組織からも“岸田おろし”が起きるという。安倍派が視野に置いているのは3月17日の自民党大会だ。
「党大会には全国から都道府県連幹部の地方議員が参加するが、その多くは安倍派が押さえている。県連幹部たちの会合で岸田批判を噴き出させ、党大会は大荒れになる。そうすれば岸田退陣への流れは決定的だ」(同前)
どちらが先に倒れるか、それとも共倒れか。
新年早々、岸田首相と最大派閥・安倍派の「自民党史上最も醜い足の引っ張り合い」のゴングが鳴った。
●山口代表「令和の政治改革元年 地に落ちた信頼の回復が次のステップ」 1/4
公明党は4日、「新年仕事始め式」を東京都内で開き、山口代表は「地に落ちた信頼を回復させる」などと新年の抱負を語った。
「新年仕事始め式」で挨拶した山口代表は、2023年から検察の捜査が続く自民党の派閥の政治資金を巡る問題をあげ「今、失われた政治への信頼を着実にとり戻していくために、令和の政治改革元年と銘打って、あるべき提案、あるべき姿を公明党として発信していきたい」と述べた。
その上で、「地に落ちた信頼を一歩一歩、回復させる軌道が描かれることこそが、次なるステージへのステップ」と強調した。
また、能登半島地震の被害者や被災者に、弔意とお見舞いの言葉を述べ、日航機の衝突事故については「現場の状況に冷静に対応した乗員、乗客の行動に敬意を表したい」と語った。 
●自民「政治刷新本部」顧問に菅前首相 派閥の政治資金パーティー問題受け 1/4
自民党の派閥の政治資金パーティー問題を受け、岸田首相は、来週「政治刷新本部」を発足させる。
その特別顧問に、菅前首相が就任することが明らかになった。
岸田首相「来週、自民党に総裁直属の機関として、『政治刷新本部(仮称)』を立ち上げることにいたします」
岸田首相は会見で、来週、自民党に政治刷新本部を立ち上げ、「1月中に中間とりまとめを行い、必要があれば関連法案を国会に提出する」と表明した。
複数の政府与党関係者によると、本部は、特別顧問に無派閥の菅前首相が就任し、党の執行部や外部の有識者も参加する。
菅氏は2023年末にも、党運営について「派閥を前提にした運営になっている」として、改革の必要性を訴えていた。
●岸田首相、地震対応で前面 初日に対策本部に格上げ 1/4
岸田文雄首相は4日の年頭記者会見で、能登半島地震に前面に立って対応していく考えを強調した。首相は1日の発災直後から救助活動や、要請を待たずに物資を送る「プッシュ型支援」の陣頭指揮にあたってきた。これまでも新型コロナウイルス禍やロシアのウクライナ侵略などに直面したが、政権の危機管理の力量が試される。
「今回の災害は令和に入って最大級だ。被災地の皆さんが再び平穏な生活を取り戻せるよう、私自身が先頭に立って努力していく。強い覚悟を感じている」。首相は会見でこう訴えた。
発災直後の1日時点では全容が分からず、政府内では防災担当相がトップを務める特定災害対策本部の対応で様子を見ようとの意見もあった。ただ、首相は「最悪の場合を考えるべきだ」として、初日のうちに自身がトップの非常災害対策本部への格上げを決めた。
事実、時間がたつにつれ、死者数は平成28年の熊本地震を上回る被害規模となりつつある。
首相は被災自治体の首長らと直接連絡を取り、自衛隊の増強などを判断。連日、記者団の取材に応じ、SNS(交流サイト)上にあふれた「偽情報」への注意喚起など、国民への発信にも努める。
ただ、課題は山積している。政府高官は「能登地方は山沿いに集落が点在しているが、そこにつながる道路が寸断されている。連絡がとれていない人が相当いる」と危機感をあらわにする。道路の復旧は徐々に進みつつあるが、なお支援物資の搬送は難航している。
東日本大震災では菅直人首相(当時)が発災直後に現地や東京電力に乗り込んで陣頭指揮の姿勢を示したが、逆に現場の混乱を招いた。岸田首相は現地入りの時期は慎重に見極める方針だ。今後は被災者の住居確保なども必要になる。
災害以外にも自民党派閥のパーティー収入不記載事件の対応なども迫られている。首相のリーダーシップが問われる。

 

●国民負担減の「救民内閣」を 次期衆院選、政権交代目指す―泉・前明石市長 1/5
前兵庫県明石市長で、退任後も積極的な発信を続ける泉房穂氏(60)は時事通信のインタビューに応じた。自民党派閥の政治資金規正法違反事件などで混乱する国政の現状について「転換が必要だ」と強調。国民の負担軽減を旗印とする「救民内閣」構想の下、新たな政治勢力を結集し、次期衆院選で政権交代を目指す考えを示した。
岸田文雄首相の政権運営について、泉氏は「政治が機能していない。官僚政治だ」と批判。「税金も社会保険料も上がり、国民がより苦しくなった結果、経済が回らなくなる悪循環が起きている」と指摘した。
所得に占める税金と社会保険料の割合を示す「国民負担率」にも触れ、「5割なのに生活が苦しいなんて、政治が間違っている以外に理由はない」と断じた。
その上で、次期衆院選について(1)消費税の軽減税率を5年間の期間限定で0%に引き下げる(2)医療、教育費を無償にする―ことを柱とする「救民内閣」構想を掲げ、与野党双方から賛同者を募る方針を表明。泉氏ら「国民の味方」と、自民党など「国民負担増を続ける古い方々」の一騎打ちの構図を作り出すと主張した。
ただ、自身が出馬する可能性に関しては「私は役者ではなくシナリオライターだ。脚本を書き、キャスティングをしたい」と否定した。
●岸田首相「国民から厳しい声」危機感強調 政治資金問題 1/5
岸田首相は自民党の年始の会合で、派閥の政治資金パーティー問題について「国民から厳しい声、疑念の目が注がれている」と危機感を強調しました。
岸田首相「多くの国民の皆さんから、厳しい声、そして疑念の目が注がれている。こうした時だからこそ政権与党の真価が問われる。我々議員一人ひとりの力量が問われると感じています」
また、岸田首相は「既に正月気分は吹っ飛んでいると思うが高い緊張感を持って気を引き締めて欲しい」と述べ信頼回復に取り組む考えを強調しました。
岸田首相は来週総裁直属の新たな組織「政治刷新本部」を立ち上げ、今月中に中間とりまとめを行います。
刷新本部の最高顧問には麻生副総裁に加え無派閥の菅前首相を起用する方針で、政治資金の透明化や「派閥のあり方」などについて議論します。
●岸田首相「正月気分は吹っ飛んだと思う」防災服姿で自民党仕事始め 1/5
自民党は5日、4年ぶりとなる仕事始めを党本部で開いた。岸田文雄首相(総裁)は、能登半島地震や羽田空港での衝突事故に触れた上で、党の派閥パーティーをめぐる政治資金問題に言及し「こうした時だからこそ政権与党の真価が問われ、我々1人1人の力量が問われる」と述べ、危機感を口にした。
元日以降官邸で能登半島地震の対応に当たっている首相は、防災服を着用しての党仕事始め出席となった。地震で亡くなった方への追悼の言葉、被災した方へのお見舞いの言葉を口にした上で「政権与党一体となり、震災対策に万全を期したい」と述べた。
その上で「年が明け震災が発生し、羽田空港における事故と困難が続いているが、そもそも昨年末から自民党の政治資金をめぐり多くの国民の皆さんから厳しい声、疑念の目を注がれている。それに加え経済、社会外交のあらゆる面において、我が国は本年大変な重要な年を迎える」と主張。「こうした時だからこそ、我々は国民の信頼を回復して政治の安定を確保し重要政策を進めていかないといけない」と口にした。
集まった党幹部や議員、職員に対し「すでに正月気分は吹っ飛んでいることかと思いますが、ぜひ高い緊張感を持ち気を引き締めてともに力を合わせ、未来を切り開いていこうではありませんか。ご協力を心からお願いしたい」と呼びかけた。
首相は4日の年頭会見で、政治資金問題に対応するため党内に自身が本部長を務める「政治刷新会議」を週明けに立ち上げる考えを示している。首相に続いてあいさつした茂木敏充幹事長は「運用面、制度面にわたる改革案、再発防止策を早急にとりまとめ実行することで、信頼回復に務めていきたい」と話した。
●これでは日本は国際的サプライチェーンから「外される」...不十分な脱炭素政策 1/5
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれた国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で日本の「気候変動イニシアティブ」のメンバー186団体が、2030年温室効果ガス排出削減目標と国際競争力の強化を同時に達成する「カーボンプライシング(排出する二酸化炭素に価格をつけ、企業に行動変容を迫る制度)提言」を発表した。
23年5月に成立した岸田政権の「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)」でカーボンプライシング導入の道筋が示された。しかし世界的に広がる炭素税や排出量取引制度に比べると日本の取り組みは不十分という。そこで東証プライム企業61社を含む140社と東京都など9自治体、37団体・NGO(非政府組織)が声を上げた。
GXは「グリーントランスフォーメーション」の略だ。岸田政権が示しているカーボンプライシング構想では、26年度に排出量取引制度を本格的に稼働させ、28年度に化石燃料の輸入事業者に対する賦課金制度を導入、33年度から発電事業者を対象に排出枠の有償割り当てを行う計画だ。
これに対して「気候変動イニシアティブ」の加藤茂夫共同代表は「現在示されている自主的な制度では削減効果が限定的で、導入も遅いため30年削減目標が未達に終わる懸念がある。自主的な制度参加ではコストを負担して排出削減に取り組む企業が参加しない企業に競争上劣後し、不利益を被る恐れがある」との懸念を示す。
日本はカーボンプライシング構想の強化を
さらに加藤氏は「不十分な炭素価格では日本の企業が炭素国境調整措置の対象となることや国際的なサプライチェーン・投資先から除外される恐れがある。世界では排出削減と再生可能エネルギーの導入が進んでおり、ビジネスの場として日本の魅力を向上させる制度が必要である」とカーボンプライシング構想の強化を求めている。
英誌エコノミスト(10月1日付電子版)は「いかに炭素価格が世界を支配しているか。世界の排出量の4分の1に適用され、その割合は急速に増加している」と指摘する。欧州連合(EU)の排出量取引制度(ETS)は「キャップ・アンド・トレード」の原則に基づき05年に導入された。温室効果ガスの排出量に上限(キャップ)を設定して取引する制度だ。
EU ETSの導入で、主な対象部門である発電・熱供給とエネルギー集約型産業で排出量は大幅に削減された。「多くの米政治家は炭素価格の導入が消費者の負担するコストを押し上げ、反動を引き起こすのではないかと懸念している。しかし驚くべきことに炭素価格は富める国にも貧しい国にも広がっている」と同誌は報告している。
二酸化炭素換算で年間6億2000万トンを排出する世界9位の排出大国インドネシアでも排出量取引制度を導入し、炭素市場を立ち上げる際、炭素取引のハブになる夢をぶち上げた。地元銀行は地熱エネルギー会社のクレジットを買い取った。23年初頭には世界の排出量の23%に炭素価格が適用された。10年のわずか5%から急拡大していると同誌は指摘する。
日本メーカーは再エネがないと輸出できなくなってしまう
国際通貨基金(IMF)によると、50カ国近い先進・新興市場が炭素価格制度を導入しており、さらに20カ国以上が導入を検討中だ。EUによる炭素国境調整メカニズムの移行期間が10月1日に始まった。炭素国境調整メカニズムはEU ETSに基づき域内の製造事業者に課されるのと同等の炭素価格をEU域外から輸入される対象製品に課す仕組みだ。
「カーボンプライシングにはドミノ効果がある。輸出国の政府にも国内企業が海外で関税を支払うのではなく自国で炭素価格を支払うインセンティブが働く。問題はドミノ倒しが十分に迅速に行われるかどうかだ。将来の政策立案者は気候変動の影響を最小限に抑えたいのであれば、対策をさらに強力なものにするしかない」(エコノミスト誌)
自然エネルギーを促進する日本の自然エネルギー財団(孫正義会長)シニアコーディネーター、高瀬香絵氏は「世界で戦っている製造業は日本国内の再エネがないと輸出できなくなってしまう恐れがある。その中で排出量の多い石炭を保とうとするインセンティブはいったいどこから来るのか。日本には浪費する時間もお金もない」と筆者に語る。
「2000年代、日本はエネルギー安全保障のため国内に石炭火力発電所をたくさん新設した。石炭火力を残すためアンモニア混焼という技術に莫大なお金を出している。それでは排出削減措置を講じたことにはならない。アンモニアや水素の100%燃焼にするのか。それより再エネの方が安上がりだ。移行ボンドを利用して再エネと脱石炭を進めるべきだ」
「政府は“伝統的な声”に耳を傾け過ぎ」
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は「排出削減措置が講じられていない(unabated)」の定義について「発電所から排出される二酸化炭素の90%以上を回収あるいはエネルギー供給から排出されるメタンの50〜80%を回収」と例示しており、高瀬氏は「日本独自の解釈は許されない。90%回収がスタンダードになる」と強調した。
第7次エネルギー基本計画が24年にも策定される。高瀬氏は「政府関係者にはこれまでの策定プロセスを見直し、基本政策分科会のメンバー選考を見える化することを求めたい。政府は“伝統的な声”に耳を傾け過ぎだ。ソニーやAGC(旧旭硝子)のような企業や気候イニシアティブに代表される新しい時代の声を聞くべきだ」と訴える。
ニッセイアセットマネジメントの大関洋社長は「私たちの株式ポートフォリオを見ると、わずか10%の企業が温室効果ガスの90%を排出している。10%の企業から投資を引き揚げれば90%の排出量を削減できる。これは容易な方法だが、全体としては排出削減につながらない」と語る。
大関社長によるとソニーや資生堂はネットゼロ(実質排出ゼロ)の目標を実現しているものの日本では多数派ではない。同社のポートフォリオで排出量の70%を占める世界の70社のうち43社が日本の企業。このうちネットゼロへの明確な戦略を立てているのはわずか3社だ。「なぜかと言えば、インセンティブを欠いているからだ」と解説する。
「欧州では再エネが普及しており、それを活用すれば対応できる。しかし日本では再エネの割合が極めて低い。そうした環境下でネットゼロを考えるのは難しい。政府が再エネのアクセルを踏まないと日本企業も立ち行かなくなる。米国企業も炭素税などの負担がかかれば、高排出の企業との取引を削らないと、重い負荷が財政にかかることになる」
「日本企業に世界からどうして(再エネに転換)できないのですかという圧力もかかってくる。グローバルにビシネスを展開する企業は政府に動いてもらわないと困るから仕方なく声を上げているのが実情だ」と大関社長は打ち明けた。気候イニシアティブは「25年を目処に実効性の高いカーボンプライシング制度を導入すべきだ」と提言している。
【気候イニシアティブが求める6原則】
(1)30年削減目標達成に向け25年を目処に実効性の高いカーボンプライシング制度を導入
(2)公平性担保のため一定の要件を満たす企業を一律に制度の対象に
(3)世界に比肩する水準で将来の炭素価格を明示(例えば30年130ドル/二酸化炭素トン)
(4)EUの炭素国境調整メカニズムなどの対象とならないよう国際的なルールに適合した制度に
(5)公正な評価のもと排出削減が困難な中小企業などをカーボンプライシング制度の収入で支援
(6)カーボンプライシングの立案・評価・更新の透明性を確保
●立民・泉代表「政府対応に一部遅れ」能登半島地震での激甚災害指定 1/5
立憲民主党の泉健太代表は5日、党本部で開いた仕事始めであいさつし、能登半島地震における岸田政権の対応が遅いとして、民主党政権時代の対応と比較しながら苦言を呈した。
泉氏は「元旦から地震、2日は羽田の航空機事故とさまざまなことが相次いでいる。緊張感をもって、国民の命と暮らしを守るために全力を尽くしたい」と述べた。
その上で、前身の民主党が政権を担っていた2011年3月に東日本大震災が起きたことに触れ「我々の中にも(当時政権で)活躍したメンバーが数多くいる」と述べ「東日本大震災の激甚災害指定は、発災の翌日に行った。また予備費の支出についても発災3日後に300億円を超える金額を決定している。そういった意味では、今現在、激甚災害指定が行われていないことや、(40億円の)予備費の執行が1月9日に予定されていることなど、政府の対応に一部、遅れがあるのではないかと考えている」と指摘。岸田政権の対応の鈍さを指摘した。
また「現地では被災者の救援のために多くの方に頑張っていただいているが、物資が一部の場所にかなり集積される状態になっている一方で、被災者まで届けられていないということも聞こえてきている。民間ヘリの活用も含めて、全力で被災者の方々に物資が届くよう(岸田政権に)求めていきたい」とも話した。
2024年について「まずは被災者支援に最優先に取り組みながら国民生活全般、賃上げ、経済再生にも取り組みたい」と述べ「4月は補欠選挙もあるので、それに向けても全力を尽くしたい。きたるべき総選挙においても勝利し、今の正当性のない腐敗政治を変えることにも向かっていきたい」と政治決戦への抱負も口にした。
仕事始めの冒頭には出席者全員で、能登半島地震の犠牲者に黙とうをささげた。
●野田元首相、ゾンビのように甦る自民党の派閥と世襲議員を断ち切るには 1/5
政治資金パーティーを巡る問題が連日報道されている。松野官房長官、世耕参議院幹事長、高木国会対策委員長、西村経済産業大臣、萩生田政務調査会長など、安倍派9人が辞任に至り、支持率が低かった岸田政権にはとどめの一撃といった感がある。
岸田首相はどこまで持つのか。これを機に、自民党の派閥政治は解体されるのか。政治資金改正法の抜け穴はどこまで解消されていくのか。1994年に政治改革関連法の審議に1年生議員として参加し、政治とカネの問題と戦うことが政治家としての出発点だったと語る、衆議院議員で元首相の野田佳彦氏に聞いた。
──1月20日に通常国会が始まるため、その前に特捜部は関係する議員を起訴する可能性があります。立憲民主党を中心に野党が衆議院の解散と岸田政権の退陣を求めていくことも予想されます。また、「衆議院解散選挙をすれば岸田おろしが始まるので、岸田さんは解散総選挙は望まない」という見方がある一方、自民党の石破茂さんは「来年度予算案が通ったら辞めますというのはありだ」とテレビ番組で述べました。通常国会が始まったら、どうなっていくと思われますか。
野田佳彦氏(以下、野田):1月20日に国会が始まるかどうかはまだ分かりません。特捜部の捜査の影響で、1週間ほど開会が遅れる可能性があります。足もとには様々な重要な政治課題がありますが、まずは政治を正さなければ日本は良くなりません。ですから、政治改革がテーマの国会になっていくと思います。
自民党が自浄作用を見せて、深い反省のもとに何らかの提案をしてくるかどうかが一つのポイントですが、それは難しいのではないかと考えています。
岸田さんにはトップとしての危機感が足りません。30年前のリクルート事件の時は、石破茂さんや岡田克也さん(当時 自民党)といった若手が怒り、改革の提言を出しましたが、そういった若手の提言は今の自民党の中から何も聞こえてきません。
こう考えると、自民党から提案を装ったものは出てくるかもしれませんが、抜本的な提案が出てくる可能性は低いと思います。我々野党こそが必要な法案を国会に提出しなければなりません。この点で、野党各党は共闘していける可能性は十分にあると思います。
多弱の野党がしっかりスクラムを組んで、自民党を追い詰めて法案をのませていく。もしその法案をのまないというのであれば、「岸田政権よ、国民に真意を問え」と、我々はさらに強く迫っていく考えです。この流れが、今年の前半の動きになるのではないでしょうか。
細田博之・衆議院議員が亡くなりましたが、現時点では、4月の補欠選挙は細田さんの地元でのみ行われる予定です。仮にもし今回の件で逮捕される議員が出てくれば(どれだけ逮捕者が出るかもにもよりますが)、解散の可否なども検討されていくと思います。
──30年前のリクルート事件の時に、自民党の若手が集まって「政治改革大綱」を作りました。しかし、今回はそのような動きを見せる若手議員が自民党にいない。なぜだと思われますか?
野田:政治家が劣化したのだと思います。あるいは、派閥単位で裏金作りをしているので、派閥に染まり「これはおかしい」と言える元気のある人がいないのかもしれません。極めて残念なことだと思います。
──政治資金パーティーを巡る問題で、安倍派や二階派は特に大きなダメージを受けたと思います。次の選挙では、こういった派閥に所属していることが大きなマイナスイメージになります。今後、自民党の派閥政治はどうなっていくと思われますか?
政治改革関連法に抜け穴ができた経緯
野田:50年前、福田赳夫先生の時にすでに「派閥解消」と言っていたのに、ずっと解消できないままにここまで来ています。
派閥の弊害を縮小しようという動きは昔からありました。政治改革大綱にも、政権入りした議員は派閥から抜けると書かれています。ところが、岸田総理自身がそれを守ってきませんでした。
今回も、派閥にいろいろ手直しを加えようとはするでしょうけれど、なんだかんだと言って、自民党の派閥というものはゾンビのように何度も復活してくるものです。これぞ「ザ・自民党」です。
──この状況では、派閥を縮小する動きは避けられないようにも思うのですが。
野田:今までどおりでは済まないでしょうね。しかし、やがては「派閥均衡で人事は行わなければならない」「派閥の推薦がある人がいい」などというところにまた戻っていくのではないでしょうか。ここはとことん、派閥解消に向けた議論が必要です。
──企業や団体から議員への献金は禁止されていますが、政党や支部への献金は認められています。野田さんは「企業・団体献金の禁止」を求めていくと語られていますが、これはつまり、政党や支部への献金を禁止していく必要があるということですか?
野田:そういうことです。1994年にできた政治改革関連法(政治改革四法)の中で、政党助成金を導入することになりました。そのことによって本当は、企業・団体献金を廃止していく方向でした。
ところが、抜け穴として政党と政党支部は受け皿になり得るという形にして存続させた。そして、事実上の企業・団体献金こそ、今日の政治資金パーティーです。これは献金です。これも含めて厳しく封じるべきだと思います。
──「企業・団体献金はダメだ」という議論はこれまで幾度もあったのに、どうして防げなかったのでしょうか?
野田:これは政党同士の土俵づくりなので、多数決で決めることではありません。すべての政党が賛同したほうがいい。ただ、全党に受け入れてもらおうと妥協する中で、抜け穴がすぽっと入ってきた。
ただ、今後もそんなことを許していたらきりがありません。国民の信頼は今、地に落ちています。
──政治資金規正法に、『何人も、公職の候補者の政治活動(選挙運動を除く)に関して寄附をしてはならない。前項の規定は、政党がする寄附については、適用しない(第二十一条の二)』という条文があることが問題だという見方があります。この条文を削る必要があると思われますか?
野田:企業・団体献金をスパっと禁止するためには、この条文はいらなくなると思います。ダメなものはダメ、分かりやすくやったほうがいい。抜け穴になりそうなものは作らない。穴を塞ぐということです。
世襲議員を生み出す政治資金の「相続」
──(政治資金パーティーの)パーティー券の購入は事実上の企業献金だと言われています。政治資金パーティーは、政府の予算編成にどの程度影響を与えてきたと思われますか?
野田:自民党にいたわけではないので、はっきりとしたことは分かりません。ただ、これは想像ですが、予算編成ばかりではなく、税制改正、法改正、規制緩和など様々なところに影響していたと思います。
多額の寄附をいただけば、その存在が頭に浮かぶ。頭に浮かぶから忖度する。その効果があると思うから、みなさんパーティー券を買うわけでしょう。企業は義理人情ではなく、経済合理性で動きますからね。効果がなければやりません。
──政治資金パーティーや、支部や政党への献金を禁止すれば、産業の硬直化も解消されていくと思いますか?
野田:そうです。歪みはなくなり、より公正なお金の使われ方になっていくと思います。
──立憲民主党は、国会議員が引退または死亡した時、政治団体や政治資金を配偶者や3親等内の親族に引き継ぐことを禁止する「政治資金世襲制限法案」を提出しました。これがどのような法案か教えてください。
野田:国会議員が亡くなった場合に、その議員の政治資金が残されます。政治資金はその議員の私物ではない。ところが、現状では、その資金を親族が非課税で相続できる。これこそ、世襲議員がたくさん出てくる一つの要因です。
世襲議員の方はたくさんいますが、数千万円単位でみなさん引き継いでいます。どんなに優秀な人が選挙に出たって、知名度で負けている。資金で負けている。これでは、新人が政治に入ることができません。大きな壁の一つがこの政治資金の相続にある。これは断ち切らないといけないし、それができれば、かなり景色は変わると思います。
昭恵さんが「晋和会」の代表になった意味
──安倍元首相が死去した後に、妻の昭恵さんが政治団体「晋和会」の代表を継ぎ、自民党支部など安倍氏の5つの関係政治団体から、計2億1470万円が寄附されていたことが報じられました。野田さんは、このことについてご自身の「かわら版」で言及されています。なぜ、政治団体「晋和会」は昭恵さんを代表に据えたのだと思われますか?
野田:安倍さんの死去に伴って、今年4月に山口4区で補欠選挙が行われました。この時に、ご夫人をそのポジションに据えると、後援会を動かしやすい、お金を使いやすいという判断があったのではないかと想像します。
ただ、閣議決定で、昭恵さんは私人になりました。その私人がいとも簡単に政治団体の代表になるのはやはりおかしい。
晋和会は普通の政治団体ではなく、政党支部のお金も集約している団体です。政党支部は公党の支部ですから党則があるはずです。民主的な手続きに沿って、誰を代表に選ぶのかというプロセスは明らかにしなければなりません。そのプロセスを県連であり、党本部が認める必要があります。
それにもかかわらず、夫人が代表になり、政治団体を晋和会に集約して、政治資金が億単位で相続された。しかも、非課税で。これはつまり、同じようなことが全国で起こっているということです。
※2019年11月、「桜を見る会」を巡り、政府は安倍昭恵さんを「公人ではなく私人」と閣議決定した。
──政治家の親族だと非課税で政治資金を引き継ぐことができる。これを問題視する声は以前からあったのですか?
野田:世襲を問題視する声はありましたが、世襲を作る問題の背景として、このような制度的な問題があることが明らかになってきたのは最近のことです。そこで、我々は「政治資金世襲制限法案」を提案しました。こんなことを続けているから、自民党の半分くらいが世襲議員になってしまうのです。
「安倍元首相の責任にするのはフェアではない」
──岸田政権は支持率を落としていますが、野党各党の支持率はもっと低い。政権交代を狙うには、野党が結集していくことが必要です。「教育の無償化」が、野党が合意できる政策テーマになると言われており、野田さんは先日テレビ番組で「選択的夫婦別姓制度などでも共闘していけるのではないか」と語りました。他にも、野党が結集する上で重要になる政策テーマはありますか?
野田:まさに「政治改革」です。まず、政治資金規正法を変える。世襲制限の項目を入れて企業・団体献金を廃止する。そして、政治資金を完全にデジタル管理してガラス張りにする。これは今後の改正で最も大切なことの一つです。
マイナンバーカードやインボイス制度で、国民を1円単位で税金逃れできないようにしておきながら、その体制を作ったほうが抜け道を自分たちに用意しているなどということは許されない。
こういったことを柱として、政治資金改正法を出すならば、あるいはそこに、日本維新の会が問題提起している「文書通信交通滞在費」や、私が安倍さんと約束したけれど、不十分な対応にとどまっている「議員の定数削減」など、いくつかの柱を加えてセットすれば、野党が共闘できる部分はいくつもあると思います。そうなると、迫力のある野党共闘になると思います。
これに加えて「教育無償化」も各党が賛成できると思います。しかし、とにかく基本は政治改革です。
──旧統一教会との関係や、今回の安倍派議員の政治資金収支報告書の未記載など、岸田首相は、かなり安倍さんの負の遺産に苦しめられているという印象を受けます。
野田:すべて亡くなった人の責任にしてしまうのはフェアではありません。安倍さんが生前「キックバックの未記載はダメだ」と言っていたという話が出ていますが、どうやらあれは事実のようです。
彼は派閥のトップになった時に、その実態を知り、「これは裏金になるので良くない」と周囲に注意していたようです。旧統一教会などに関しては、安倍さんの手法に問題があったと思いますが、この辺りはよく整理して見ないといけません。
「安倍さんの負の遺産」という見方をすると、まるで「岸田さんが可哀そう」という印象になってくる。しかし岸田さんは、政治改革大綱を守ってこなかった人です。安倍さんのせいにして片づける資格はありません。
安倍派を切った岸田首相の失敗
──政治資金パーティーを巡る問題が注目され始めた時に、岸田首相は清和会(安倍派)を9人交代させる意向を発表しました。キックバックの問題は安倍派以外でも行われていた可能性があるのに、全容を解明せず、まず安倍派を切るという判断をした。どう思われますか?
野田:失敗だったと思います。99人の最大派閥の心を離れさせる判断でした。もちろん、安倍派の問題は今回大きい。でも、キックバックを受けていない人もいるのに、全部まとめて同じ扱いをすれば不満が広がる。
私も短い間、政権運営を経験しましたけれど、政権運営とは、雪の中の坂道で雪だるまを押し上げていくようなものです。重たいし、冷たい。手を放す人が出てくれば、下に転がり、雪玉が大きくなってしまう。支え手をどんどん失えば、政策推進力は失われていきます。その局面に入ってきたと思います。
──野党が結集すると、総理経験を持つ野田さんはより重要な存在になっていくのではないかと想像します。何ができると思われますか?
野田:私は1993年の選挙で初当選して、1994年の政治改革関連法の審議に1年生議員としてかかわりました。このテーマは自分にとっては原点なのです。私は「政治屋ではなく政治家になりたい」と思ってきたし、「政治家以上に政治改革者になりたい」という意識を持って政治家になりました。ですから、あの頃の青い志が甦ってきています。
平成の政治改革には熱い気持ちで取り組んだし、達成感もあった。でも、振り返ると抜け穴だらけでした。令和の抜け穴のない政治改革をやり遂げたい。もう一回やり直すための仕事ならば、できることは何でもやらせていただきたいと思っています。 
●岸田総理、政治資金問題に「多くの国民から厳しい声や疑念の目」  1/5
岸田総理大臣は自民党の仕事始めで、能登半島地震や政治資金問題などにふれ「政権の真価が問われている」として、力を合わせて困難を乗り越えていきたいと呼びかけました。
「我々は国民の信頼を回復し、政治の安定を確保し、そして重要政策を進めていかなければなりません。こうしたときだからこそ、政権与党の真価が問われます」(岸田総理大臣)
自民党の派閥の政治資金問題について、岸田総理は「多くの国民から厳しい声や疑念の目を注がれている」と危機感を示しました。
茂木幹事長は、「改革案や再発防止策を早急に取りまとめ、実行することで信頼回復に努める」と強調しました。
岸田総理は来週、自民党に総裁直属の「政治刷新本部」を立ち上げる方針です。
●24年度予備費増額を指示 能登地震「切れ目なく対応」―岸田首相 1/5
岸田文雄首相は5日、首相官邸で鈴木俊一財務相と会談し、能登半島地震に対応するため、昨年末に閣議決定した2024年度予算案について、予備費を増額するよう指示した。首相はこの後、記者団に、当面は23年度予算の予備費で対応するとした上で、「復旧復興に至るまで切れ目のない対応が欠かせない。被災者が平穏な生活を取り戻せるよう、私が先頭に立って努力する」と語った。
●裏金「政権交代前夜の雰囲気」 自民・船田氏が危機感 1/5
自民党の船田元・衆院議員総会長は5日、自身のメールマガジンで、党派閥の政治資金パーティー裏金問題を巡り危機感を示した。「かつての政権交代前夜のような雰囲気になっており、一部議員の謝罪や辞職で済む状況にはない。われわれは解党的出直しを求められている」と訴えた。
岸田文雄首相が打ち出した派閥パーティー自粛などに触れ「小手先の改革では、国民の信頼を回復することは不可能だ」とも指摘した。
●与野党6党党首会談 能登半島地震受け岸田総理が協力を要請 1/5
能登半島地震を受け、与野党6党の党首が国会内で会談し、岸田総理は各党に今後の対応などについて、協力を要請しました。
国会では午後3時から与野党6党の党首が会談し、岸田総理は能登半島地震について「復興・復旧まで息の長い対応をしていかなければならない」などと訴え、各党党首に協力を要請しました。
岸田総理「災害対応に万全を期さなければならない。この点については与党・野党、立場に違いはないと信じています」
また、岸田総理は被災地支援などのため、今年度予算の予備費から47億4000万円を計上する方針や、来年度予算案の予備費の増額を検討していることなどを説明しています。
こうした与野党党首の会談はこれまで、東日本大震災や、新型コロナウイルスへの対応などの際に行われてきました。
立憲民主党 泉健太代表「『政府与野党震災対策協議会を設置し、今後も開催してほしい』という申し入れについては、『何らかの形で今後も続けたい』と総理の側から回答があった」
災害対応を誤れば内閣支持率の低下にも繋がることから、自民党幹部は「東日本大震災並みの危機感を持っている。当時、力を貸したわけだから、今回は野党にも力を貸してもらいたい」としています。
●“政治資金再発防止でキックバックせずを検討” 自民 幹事長 1/5
自民党の茂木幹事長は派閥の政治資金パーティーをめぐる問題の再発防止策として、パーティー券の販売ノルマを超えた収入を議員側にキックバックしないようにすることなどを、来週、立ち上げる「政治刷新本部」で検討する考えを示しました。
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、岸田総理大臣は来週、総裁直属の機関として「政治刷新本部」を立ち上げて、再発防止策や派閥のあり方などを検討する意向を示しています。
これについて、茂木幹事長は5日の記者会見で、「政治資金の透明性の確保を図っていくことは極めて重要であり、党としてさまざまな形で改革すべき点がある」と述べました。
そのうえで、再発防止策として
・派閥のパーティー券の購入は現金ではなく銀行振り込みとすることや
・販売ノルマを超えた収入を議員側にキックバックしないようにすること
・それに党が各派閥の収支を監査することなどを検討する考えを示しました。
また、各党との協議を踏まえて、政治資金規正法の改正や透明性を向上させる観点から、収支報告書を国に提出する前の段階で、党が独自に公表することも検討していく考えを示しました。
一方、派閥の在り方をめぐっては、「再発防止策などの改革案をまとめていく過程で検討していきたい」と述べました。
立民 泉代表「党としてどうけじめをつけるかが先」
立憲民主党の泉代表は記者団に対し、「裏金をつくった議員に対し、党としてどのようなけじめをつけるかが先ではないか。いくら会議体を作っても国民は納得しない。新しい組織も派閥を運営してきた人が入っていて、国民は期待していない。また、裏金は政治資金規正法を強化すればなくなる話ではなく、今の自民党に改正案を考える資格はない」と述べました。
維新 馬場代表「第三者機関にルールづくりを委ねることが大事」
日本維新の会の馬場代表は記者会見で「刷新本部には総理大臣経験がある麻生氏や菅氏が入ると側聞しているが、そういう人たちが自分たちでルールを決めることになればいろいろな問題が出てくるのではないか。自民党が抜本改革を行う姿勢を示すには第三者機関にルールづくりを委ねることがいちばん大事で、そこで決まったルールを必ず実行するという姿勢がなければ、地に落ちた国民の信頼は回復できない」と述べました。
公明 山口代表「『刷新』にふさわしい内容を期待」
公明党の山口代表は記者団に対し、自民党が来週立ち上げる「政治刷新本部」について、「『刷新』ということばを使って意気込みを示しているので、自浄能力を発揮する姿勢を国民に示していただきたい。必要に応じて公明党から意見を言うこともあるかもしれないが、国民の厳しい目がある中『刷新』にふさわしい内容をつくることを期待したい」と述べました。
共産 志位委員長「真相を明らかにすることが最優先」
共産党の志位委員長は記者会見で、「自民党は制度的な改善をする前にやることがある。誰がどれだけの裏金を得て、何に使ったのか明らかになっていない。真相をきちんと明らかにすることが最優先であり、それを抜きに『刷新』と言っても意味をなさない」と述べました。
国民 玉木代表「党の存亡をかけた真剣な議論を」
国民民主党の玉木代表は記者団に対し、「今回の派閥の裏金問題は政治に対する信頼を根底から揺るがすような問題で、抜本的な改革を自民党には求めたい。もし、なまはんかなものが出てくれば自民党自身が大きく信頼を失うことにもなる。党の存亡をかけた真剣な議論と結論を期待したい」と述べました。
●池田佳隆議員は相変わらず“雲隠れ”…自民党派閥の裏金問題 1/5
自民党派閥の裏金キックバック事件では、東京地検特捜部の強制捜査は、愛知県や岐阜県にも伸びました。議員事務所などの家宅捜索を受けた議員たちは、年始も公の場所に姿を見せていません。
2024年1月3日、愛知県春日井市で開かれた賀詞交歓会。
自民党愛知県連会長の丹羽秀樹衆院議員「我々政治家の信頼を失墜させるような大きな出来事、政治と金の問題が起きたのも事実であります。二度とこのようなことがないように、多くの皆さま方から信頼をいただけるような行動をとっていかなければならない」
例年であれば、万歳三唱などを行って華やかな雰囲気となるはずの会合です。
丹羽秀樹衆院議員「今までだったら同級生とかに、地域の行事なんかに出ると『よく来たな』なんて優しい言葉をかけていただいたんですけども。急にキックバックや裏金の問題とか、そういったことが話の第一番に出るようになってきましたので非常に悲しい」
暮れも押し迫った12月27日、東京地検特捜部の捜査は名古屋にも及びました。
安倍派からの4000万円を超えるキックバックを収支報告書に記載していなかった疑いが持たれている、愛知3区地盤の池田佳隆衆議院議員の事務所などが家宅捜索されました。
2日後には、岐阜県羽島市にある大野泰正参議院議員の事務所なども捜索を受けました。
任意の事情聴取に続き、裏金事件では議員個人として初めて強制捜査を受けた池田議員。去年12月から一向に公の場に姿を見せない「雲隠れ」の状態が続いています。
この年末年始も「年末年始の行事等への出席につきましては、主催者並びに関係者の皆様へのご迷惑をお掛けすることがないよう、自粛させていただくことと致しました」と関係者にFAXを送ったきりです。
これに対して、地元の支援者は…。
池田議員の支援者(12月27日)「秘書が応対せなダメ。分からんなりにも。だけどこういう形になったらもう終わり。『こんな政治家なの?』『秘書もそんなふう?』って長年やってきて」
池田議員の会計責任者を務める秘書の男性を直撃取材しましたが、問いかけに何も答えることはありませんでした。
池田議員と連絡が取れないのは、自民党愛知県連も同じです。
丹羽秀樹衆院議員「(池田議員)本人からまだ連絡はないというのが現状であります。我々政治家に対する国民の皆さま方の信頼が失墜したということは実感いたしております。国民の皆さま方から信頼されるような行動を、我々政治家一人一人がとっていかなければならない、そういう年だと思っております」
●政治資金パーティー巡り…安倍派最高顧問・衛藤議員「キックバック精査」 1/5
自民党の派閥の政治資金パーティーを巡る問題について、安倍派の最高顧問を務める衛藤征士郎衆議院議員がTOSの取材に応じました。
自身へのキックバックについては「精査している」と答えるにとどめています。
衛藤議員は5日、大分県竹田市で新年互礼会に出席。会場を離れる際にTOSの取材に応じ、「政治不信を起こしたことをお詫びする」と派閥の問題を謝罪しました。
また、キックバックについては次のように話しました。
衛藤征士郎議員「派閥の方から、これを政治資金規正法に基づく収支報告書にしっかり書き込みなさいということを指示しなかった。それが一番大きな問題だ。私(について)は今精査をしている」
一方、衛藤議員が代表を務める資金管理団体と政党支部は先月下旬、おととしの収支報告書の訂正を行いました。
派閥とは異なる政治団体からの寄付金あわせて310万円が記載漏れとなっていましたが、衛藤議員は自身は知らなかったということです。

 

●西村氏が還流継続主導か 事務総長時に方針決着 1/6
自民党の派閥のパーティー収入不記載事件で、安倍派(清和政策研究会)が一昨年夏にパーティー収入の一部を所属議員にキックバック(還流)する慣例の方針継続を決めた際、当時の派閥事務総長だった西村康稔前経済産業相が主導した可能性があることが5日、関係者への取材で分かった。西村氏は還流分の政治資金収支報告書への記載方法も提案しており、東京地検特捜部は西村氏の認識について慎重に調べているもようだ。
安倍派は所属議員に課したパーティー券の販売ノルマ超過分について、収支報告書に記載せず所属議員に還流する慣例を長年続けていた。
関係者によると、西村氏ら安倍派幹部は令和4年5月のパーティーに先立って協議。還流停止を決めて議員側に通達したが、議員側が反発。同年7月に安倍派会長だった安倍晋三元首相が死去した後、幹部らは同年8月中旬ごろにかけて再び協議し、一転して還流を継続する方針が決まった。
また西村氏は、還流分を安倍派と所属議員の双方の収支報告書に記載しない慣例を改め、還流された所属議員の関連団体の収支報告書に個人のパーティー収入として記載する方法も提案したという。
西村氏は3年10月、安倍派の実務を議員側で仕切る事務総長に就任。4年8月10日に発足した岸田文雄改造内閣で経済産業相に任命された。事務総長は同25日、高木毅前国対委員長に交代した。
関係者によると、高木氏は還流に関する同年8月の協議に参加しておらず、高木氏が事務総長に就任した時点で還流を継続する方針で決着。その後、安倍派はノルマ超過分を議員に還流し、翌5年に提出された安倍派の収支報告書には還流分が記載されなかった。
特捜部は西村氏ら幹部を任意で事情聴取。西村氏らは還流についての認識は認める一方、不記載については認識を否定しているとみられる。
西村氏は産経新聞の取材に対し、期日までに回答しなかった。
●安倍派2議員の立件へ パーティー収入不記載疑い 地検特捜部 1/6
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件で、清和政策研究会(安倍派)からパーティー券収入のノルマ超過分を受領しながら政治資金収支報告書に記載していない疑いが強まったとして、東京地検特捜部がいずれも安倍派所属の池田佳隆衆院議員(57)=比例東海=と、大野泰正参院議員(64)=岐阜選挙区=を政治資金規正法違反(不記載、虚偽記載)容疑で立件する方針を固めた模様だ。上級庁との協議を踏まえて最終判断するとみられる。関係者への取材で判明した。
不記載、虚偽記載の公訴時効(5年)にかからない池田、大野両氏の不記載額はそれぞれ4000万円超に上る見通し。安倍派では、ノルマ超過分のキックバック(還流)を派閥から受けながら収入として収支報告書に記載していない議員が数十人に上り、裏金の総額は5億円を超える可能性があるが、両氏の不記載額は最高規模となる。
安倍派には他にも数千万円規模の裏金化が疑われる議員がいるとされ、特捜部は立件対象を広げるか検討しているとみられる。
特捜部は2023年12月27〜29日に東京・永田町の国会議員会館にある両氏の事務所などを捜索した。同法の不記載、虚偽記載は会計責任者を処罰対象とするが、特捜部は両氏と会計責任者の共謀を立証できると判断した模様だ。
池田氏は20〜22年に派閥からの寄付計約3200万円を記載していなかったとして、自身の政治団体の収支報告書を訂正している。取材に、派閥から収支報告書に記載義務のない「政策活動費」として扱うよう説明があったと答えていた。大野氏は12月中旬の報道陣の取材に「しっかり精査する」と述べていた。
池田氏は日本青年会議所の会頭を務めた後、12年衆院選で愛知3区から出馬して初当選。現在4期目。大野氏は岐阜県議を経て13年の参院選で初当選し、現在2期目。
●田崎史郎氏、「ウェークアップ」で衆院解散を解説… 1/6
日本テレビ系「ウェークアップ」は6日、岸田文雄首相が4日の年頭記者会見で自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題を受け、総裁直属の「政治刷新本部」を来週発足させると表明したことを報じた。
スタジオでは今年の主な政治日程を紹介。司会の野村修也氏の「衆議院の解散はどうなりますか?」の問いにリモート出演した政治ジャーナリストの田崎史郎氏は「岸田さんの下での衆院解散は非常に難しい。できないんじゃないかと思ってます」と指摘した。
続けて「自民党内の空気は、内閣支持率低迷している、これは我慢しましょう、と。しかし、岸田さんが解散するのはやめてください、と。私たちが落ちてしまいますっていうことなんです」とし「だから、岸田さんが交代して新しい人になって新しい総理総裁が解散するパターンだと見ています」と解説していた。
●「原発3倍」賛同 再エネ加速こそ連携を 1/6
東京電力福島第1原発事故の災禍を経験した日本は加わるべきではなかったろう。津波が押し寄せた能登半島地震の光景を見て、改めてそう思わざるを得ない。
世界の原発の設備容量(発電能力)を2050年までに20年比で3倍に増やす宣言である。
先月の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の際に米国主導で打ち出され、日本を含む23カ国が賛同した。
気候変動対策の一環として、賛同国が協力するとしている。
岸田文雄政権は国内については想定していないとするが、次世代原子炉の開発や原発関連の輸出などにつなげたい思惑も透ける。
原発は安全性の問題のほか建設に時間を要し、喫緊の気候対策に役立たないと指摘される。高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分も多くの国は未解決だ。
日本には原発のリスクを世界に伝える責務もあるはずだ。原発推進ではなく、再生可能エネルギーの普及や化石燃料に頼る国の脱炭素化などの支援でこそ、国際的な連携を図っていくべきである。
宣言には原発稼働国のほか、ポーランド、ガーナといった建設計画段階の国も賛同した。
ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー安全保障の重要性が高まった。天候に左右されず、運転時に温室効果ガスを出さない原発が注目されている面はあろう。
だが福島事故後の安全規制強化で建設費は急増し、海外では1基当たり1兆円以上かかる事例もある。気候対策の本命である再エネ普及の妨げになりかねない。
国内外の環境団体が、誤った気候変動対策は真の対策を遅らせると訴えるのは当然である。
政府には原発産業を支援する狙いがうかがえる。特に小型モジュール炉(SMR)など岸田政権が推進する次世代炉の開発だ。
日立製作所は米ゼネラル・エレクトリック(GE)との合弁でSMRの開発に、三菱重工業などは高温ガス炉に取り組んでいる。
昨年11月には米国初のSMR建設計画が中止された。コスト増で採算が見込めないためという。
次世代炉にひそむリスクは未知数だ。岸田政権の前のめりの姿勢は危ういと言うほかない。
COP28では、世界の再エネの設備容量を30年までに3倍にする誓約も提起され、日本を含む116カ国が賛同した。
原発3倍の23カ国との大きな差が、世界の潮流を示していることを見誤ってはならない。
●野党3党首 政権構想を語る 共産党次期委員長は? 1/6
5日夜のBSフジ「プライムニュース」に野党3党の党首が相次いで出演し、自公連立にかわる政権構想などについて考えを述べた。
立憲民主党・泉代表「何でもかんでも全部やろうではなくて、必ず変えるという政策項目については、心あるメンバーで新しい政権を作れるのではないか」
立憲民主党の泉代表は、岸田政権に「正当性はない」として、特定の政策課題の実現を目指す「ミッション型内閣」の樹立を訴えた。
しかし、これに先立ち、日本維新の会の馬場代表は、憲法改正や安全保障分野の政策などで立憲の党内がまとまっていないとして、連立政権に難色を示した。
日本維新の会・馬場代表「泉さんが野党を結集させて野党政権を作るということであれば、まず自分の政党の中をまとめてください。わたしは宿題は立憲さんにあると思います」
一方、4年ぶりの党大会が1月に開かれる共産党は、委員長の交代の可能性が取り沙汰されているが、志位委員長は「大会で決めることなので勝手に言えない」と言及を避けた。
●「岸田おろし」だけじゃない。2024年は与野党党首の顔ぶれが一新か 1/6
能登半島地震が元日から発生し、波乱の幕開けとなった2024年。今年は年始から検察による自民党裏金問題の捜査が大詰めを迎え、岸田政権にとって多難の年となる。9月には自民党総裁選が予定されており、岸田文雄首相の去就が注目されているが、実は9月は他党でも代表が任期満了を迎える。党首の顔ぶれが一新する可能性もあるなかで、「岸田おろし」が加速するかどうかが焦点となりそうだ。
立憲・泉代表の任期も今年9月まで
「解散総選挙のタイミングによっては、代表を交代させるかどうか、かなり難しい選択を迫られることになる」
そう語るのは立憲民主党関係者だ。今年9月に予定されている自民党総裁選の陰に隠れて見落とされがちだが、立憲の泉健太代表も9月に任期満了を迎え、党の代表選が予定されている。
泉氏は次期衆院選で150議席を獲得するという目標を掲げており、達成できなかった場合は「代表を辞任する」と述べているが、「あまりにも高すぎる目標で達成はかなり困難」(立憲関係者)という見方が一般的になっている。
そのため、9月よりも先に衆議院が解散され、総選挙が実施された場合には、その後に泉氏が辞任をして、立憲では新代表を選ぶ代表選が行われる可能性が高い。
関係者が「難しい選択」と語るのは、9月までに衆議院が解散されず、総選挙が代表選よりも後の日程になった場合だ。衆議院議員の任期満了である2025年10月までに総選挙が控えるなか、立憲は9月の代表選で、代表を変えるかどうか選択を迫られることになる。
立憲内では「代表を変えても支持率が上がるわけではない、泉氏のもとで次期衆院選まで突き進むべきだ」という意見がある一方で、「泉体制のもとで立憲の支持率がなかなか上がらず、日本維新の会の台頭を許してしまった。衆院選を迎える前に代表を変えるべきだ」という主張も多い。
また、選挙日程との関係から、立憲関係者は「衆院選までの日程が短いなかで新しく代表になるのは、その政治家にとってもリスクになる。泉氏が150議席という大きすぎる目標を掲げてしまっただけに、選挙結果について代表が必要以上の責任を取らされる可能性もある」と解説する。
すでに次期代表選に向けて出馬の検討を始めている立憲議員は何人かいるが、最終的な決断は総選挙のタイミングしだいとなりそうだ。
公明は代表交代なら創価学会の意向が重要
9月に任期満了を迎えるのは、立憲の代表だけではない。
公明党の山口那津男代表もそのうちの1人だ。山口氏は15年間に渡って代表を務めており、2025年には参議院議員としての改選期を迎える。公明党の代表任期は2年間であるため、もし山口氏が代表を続投した場合は、来年の参院選で再選し、さらに追加で6年間の国会議員人生を歩むこととなる。
しかし、その山口氏もすでに71歳。参議院議員としてさらに任期を重ねるとなると、79歳ごろまで政治家をすることになるわけだが、公明党周辺からは「もう高齢で耳も聞こえにくくなっている。参議院議員としては今回の任期で終わりにすべきという声も多く、そのため今年9月の任期満了をもって代表を変える可能性が高い」という声が挙がっている。
公明党の代表を変えるとなると、重要になるのは創価学会の意向だ。公明党では党首を決める際に代表選という形はとっているものの、実際には複数の候補者が立候補して選挙が行われたことはなく、創価学会との調整を経て代表となる人物が選ばれ、1人だけが立候補して無投票で党首に選ばれることが習わしとなっている。
創価学会といえば、女性部(旧婦人部)が選挙期間中に積極的に電話掛けを行い、票田として機能している。そのため、女性部は学会内でも強い発言力を持っていることで知られているのだが、その女性部のお眼鏡にかなう、代表となる政治家がいるかも焦点だ。
山口氏は「なっちゃん」という愛称で知られている通り、女性部からの人気があるが、順当に考えれば次期代表の筆頭候補とみられる石井啓一幹事長には硬いイメージが先行している。
はたして「なっちゃん」に代わる政治家はいったい誰になるのか。池田大作名誉会長が亡き後の創価学会で調整が進められているとされている。
共産はイメージ刷新のため女性代表起用の可能性
そして共産党でも1月15日から始まる党大会で、志位和夫委員長が24年間にわたって維持してきた体制から、田村智子政策委員長に代表が交代する説が浮上してきている。
共産党では党首を党員による直接選挙で選ぶのではなく、中央委員会によって決定する民主集中制を取っている。これに対して昨年、党首を直接選挙で選ぶ「党首公選制」を求める主張が党内から相次いで出たが、その党員を共産党が除名処分としたことも話題となった。
党内の波紋を抑えるため厳しい対応を取ったかたちだが、志位委員長の体制が長く続き過ぎていることへの批判が党内からも出てしまった事態は無視できるものではない。そうしたイメージを刷新するために、女性の田村氏の代表起用に白羽の矢が立ったわけだ。
実際に共産党は昨年6月、参議院議員として活動してきた田村氏を次期衆院選に擁立して、衆議院議員に鞍替えさせることを決定。当時から「志位氏から田村氏に代表を交代する布石だ」(永田町関係者)と囁かれていた。共産党で初の女性代表が誕生するかどうかが注目されている。
このように、与野党各党で党首交代が取り沙汰されるなか、最も注目されるのが自民党総裁選だ。
支持率が10%台にまで低迷し、さらに裏金問題の捜査も待ち受けている「泣きっ面に蜂」状態の岸田首相だが、4月28日には細田博之前衆院議長が死去したことに伴う、衆院島根1区補選の実施が予定されている。
しかもこの4月補選、裏金問題を受けて辞職する議員が今後、続出した場合は、選挙の数が増えて「裏金補選」となってしまう可能性もある。そうなると、岸田政権や自民党にとっては厳しい選挙戦を強いられることになり、岸田首相のままで補選に臨むのかも含めて自民党では選択が迫られることになる。
そして、6月には通常国会の会期末、解散総選挙をするか否かを岸田首相が決断する、総裁選前の最後のタイミングがやってくる。この6月には所得税などの減税も行われるが、自民党総裁選で「岸田おろし」が本格化する前に、思い切って岸田首相が解散に打って出るのかが注目される。
さまざまな思惑のもとで与野党トップの顔ぶれが一新することになるかもしれない2024年。
ただ、いずれが党の顔になろうと、望まれるのは国民生活を豊かにするための議論であり、政治だ。くれぐれも国民を置いてけぼりにするような権力闘争に明け暮れることがないよう、政治家の方々には注意してもらいたい。
●岸田首相、被災地外への避難支援を表明 1/6
岸田首相は6日、官邸で開かれた能登半島地震非常災害対策本部会議で、「電気・水道などの全面復旧には時間を要する見込みだ」とした上で、「被災地外への避難先への移動を希望する方には、避難先を石川県と連携して用意するよう、きのう、指示した」と述べた。
その上で、「被災地外も含め、ホテル・旅館などの空き室を自治体で借り上げる『みなし避難所』を積極的に活用してほしい」と述べた。
また、「集団での避難生活の長期化もあり、疲労感やストレスが蓄積しているなど、悲痛な声が聞かれる」と指摘。
「各避難所への食料や水などの物資支援、仮設トイレの搬入、健康管理、Dマット(災害派遣医療チーム)の医師・看護師等による医療支援を行うとともに、パーティーションによるプライバシーの確保、ダンボールベッドの設置など避難所の環境改善にも一刻も早く取り組んでほしい」と指示した。
さらに岸田首相は、「災害復旧に必要な車両がいち早く到着し、支援物資を速やかに運搬するため、被災地につながる道路の交通量を減らすことが喫緊の課題だ」と強調。
「一部の区間の通行を災害復旧や救援物資輸送に関係する車両に特化するべく、道路交通法上の交通規制を石川県で調整している」とした上で、「国としても、石川県の措置を全力でバックアップしてほしい」と述べた。
●岐路に立つ政治 改革の骨抜きは許さない 1/6
政界は年明けから重苦しい空気に包まれている。自民党派閥による政治資金パーティーを舞台にした裏金事件は、東京地検特捜部による強制捜査が進む。
国会議員が特権を悪用して懐を肥やしていたことに対し、物価高にあえぐ国民の政治不信は沸点に達している。
政治資金の収入から支出までの流れを透明にすることが最大の政治課題だ。違反した場合の罰則も強化しなくてはならない。
自民党が裏金づくりの実態を明らかにすることが前提だ。派閥をどう見直すかも問われる。
一連の責任を負う岸田文雄首相は、9月末で自民党総裁の任期が切れる。政権運営は迷走し、内閣支持率は最低水準にまで落ち込んだ。岸田政権にとっては五里霧中の年となろう。
与野党挙げ法改正を
当面の焦点は、裏金事件で刑事責任が国会議員にまで及ぶかどうかだ。
特捜部は安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)を捜査しており、政治資金規正法違反(不記載など)の疑いで会計責任者を立件する見通しだ。
さらに裏金に関与した国会議員が罪に問われる事態になれば、政権への打撃は計り知れない。
捜査の行方にかかわらず、今月下旬に召集される通常国会では政治資金規正法の改正論議に多くの時間を費やすことになる。
1988年に発覚したリクルート事件などの反省から、政治資金に一定のたがをはめる改正を重ねたが、かねて欠陥が指摘される。
パーティー券収入は、20万円を超える購入者を政治資金収支報告書に記載しなければならない。これを小分けして処理すれば、公開されない裏金を容易につくることができる。「ザル法」と呼ばれるゆえんだ。
国会議員が自らを厳しく律する法改正ができるかどうか。ここで国民の不興を買うようでは、自民党は派閥どころか党が立ちゆかなくなると自覚すべきだ。
与野党を挙げて取り組む課題である。野党は連携して改正案をまとめ、与党を突き動かしてもらいたい。この機に、多額の資金を必要としない政治活動についても議論を深めたい。
与野党協議が難航することも予想される。行き詰まるようなら、政治改革を争点に国民の信を問う覚悟が必要だ。
政治の大きな転換点になり得る局面である。今度こそ骨抜き、抜け道を許してはならない。国民は各党の法改正案を注視し、政治改革に本気で取り組んでいるかどうかを見極めてほしい。
退陣論高まる可能性
岸田政権の命運は裏金事件の対応にかかっている。「事態を注視する」「信頼回復に努める」と繰り返すばかりでは、国民に危機意識は伝わらない。
4月には細田博之前衆院議長の死去に伴う島根1区補欠選挙がある。裏金事件で辞職者が出た場合は補選が増える可能性があり、自民は逆風を余儀なくされる。
岸田首相が「選挙の顔」では戦えないと、党内から不満が噴出すれば、2024年度予算が成立する春ごろに退陣圧力が高まることも考えられる。
首相は「国民の信頼あっての政治の安定、政治の安定あっての政策の推進だ」と語る。言葉とは裏腹に、信頼と安定を欠き、国民の痛みを伴う政策を先送りしているのが現状ではないか。
昨年末は、増額する防衛費や少子化対策の財源確保に道筋をつけられなかった。選挙を意識して国民負担を避け、増税前に減税をするちぐはぐな財政運営を繰り返してはならない。
一方で、岸田政権は殺傷能力のある兵器の輸出を解禁し、日本で生産する地対空誘導弾パトリオットを米国に提供することを年末に決めた。またも国会議論を経ず、与党内協議だけで安全保障政策を転換した。
国民を置き去りにする決定手法は認められない。これも今年の政治改革の論点と位置付けたい。
●迫る審判の機会 論議尽くせ 1/6
岸田文雄首相(自民党総裁)が政権を担って3度目の新年を迎えた。衆院議員の任期は残り2年足らずで、今年中の衆院解散・総選挙もあり得る。与野党は迫る審判に向け、日本の政治のあるべき姿について論議を尽くしてもらいたい。
本格論戦の場となる通常国会は今月下旬に開会見込みだ。会期は150日間で、解散の時期によっては、衆院選前で最後の国会になる可能性がある。優先して議論すべきは、最大震度7を観測した石川県の能登半島地震への対応になる。安否不明な住民らの捜索、救出に全力を挙げるのは当然だ。避難生活を強いられている被災者支援にも万全を期さなくてはならない。
国会は、そうした政府の取り組みを徹底検証し、足らざる所を補うよう促す必要がある。被災地の復旧、復興対策も審議の重要なテーマになろう。政府は、与野党党首会談で受ける提案などを踏まえ、最善の方策を取る姿勢が求められる。
政権の責務は、国民の「命と暮らし」を守ることに尽きる。岸田首相が衆院解散に踏み切った場合、今回の大地震で示される危機対応能力が問われると心すべきだ。
政治への信頼を失墜させた自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件への向き合い方も、岸田政権の命運に関わる。
安倍派はパーティー収入から6億円規模の裏金を捻出したとされ、東京地検特捜部は政権の枢要なポストにあった安倍派幹部などから事情聴取。通常国会までに、安倍派に加え、二階派の会計責任者らを政治資金規正法違反の疑いで刑事処分する方向だ。
首相は年頭の記者会見で党内に総裁直属の「政治刷新本部」を設置し、「国民の信頼を回復すべく党の体質刷新の取り組みを進める」と表明した。来週にも発足予定だ。最初の一歩は、関係議員が説明責任を果たすよう指導することだが、議員任せの態度に終始している。追及回避を狙った組織立ち上げであってはならない。
政策面で首相は憲法改正への意欲を強調したが、喫緊の課題ではあるまい。大地震対応などとともに、防衛力強化のための増税や、それと矛盾するかのような所得税などの定額減税の是非に関する再議論が先だろう。
4月には衆院島根1区補選が控える。裏金事件の捜査次第で議員辞職による補選数の拡大も考えられる。9月には、首相が再選を目指すとみられる自民党総裁選が予定されている。
首相がいつまで政権の座にあるか定かではないが、衆院選をはじめとする審判の機会に備え、国民も首相や与野党の主張を吟味するようにしたい。
●金正恩総書記が岸田首相に“異例”見舞い電報 能登半島地震 1/6
北朝鮮メディアは金正恩総書記が5日、能登半島地震を受けて岸田首相に見舞いの電報を送ったと報じた。
これは6日朝の労働新聞が伝えたもので、金総書記は電報を通じ「日本で不幸にも年初から地震で多くの人命被害と物的損失が発生したとの知らせに接した」として「深い同情と哀悼」を表明した。
そして、被災者が「一日も早く被害を解消し安定した生活を取り戻すことを願う」と伝えた。
韓国メディアは金総書記が日本の首相に電報を送った「前例は無い」とした上で、最高指導者として人道的な姿を強調する狙いがあるとしている。
また、日米韓が対北朝鮮で協力を拡大する中、日本に融和的な態度を示すことで3カ国の連携にくさびを打ち込む狙いがあるのではとの専門家の話も報じている。 

 

●30年後のいつか来た道 「政治改革」をやり直せるか 1/7
国会周辺にも白いものが舞った。東京23区は大雪注意報発令下だった。
94年1月29日未明、衆院内の一室は外気とは対照的な高揚感に包まれていた。当時の細川護熙首相と野党自民党の河野洋平総裁による「政治改革」合意の記者会見である。
リクルートに始まる金権事件の続発と底なしの政治不信。政界は塗炭の苦しみをなめ、身をよじりながら出した答えが、この合意だった。
30年後のいま、パーティー券裏金問題が広がり、永田町で再び政治改革の4文字が飛び交う。しかしそこに、かつてのような熱はまだない。
言葉だけで終わるのか、「第2の改革」が成就するのか。問われる年である。
派閥に手を突っ込め
かつて自民党が、政治とカネの問題の元凶として「解消」を決意したはずの派閥は、そのエネルギーを縮減させたとはいえ、なお健在だ。
当時は、旧田中派と、その流れをくむ竹下派が長く権勢を誇り、カネまみれの腐敗土壌を育む象徴的な存在と見なされた。
今回の裏金問題も、最大派閥によって長く続いた「安倍1強」支配のおごりや緩みと切り離して考えることはできない。
スキャンダルの背後に潜む構図は、30年の時を経ても相似形である。
衆院選挙制度の転換を核とする先の改革は、党執行部の権限強化をもたらしはしたが、内部統制のあり方については各党の自発性に委ねた。
いわば積み残しにしてきた古くて新しい課題を、これを機に改めて取り上げなければならない。
派閥、とりわけ権力派閥の振る舞いに手を突っ込まない限り、政治資金の透明化はおぼつかないというべきだろう。
資金問題だけでなく
30年前の改革実現に大きく寄与したとされるのは、与野党にまたがる当選1、2回の若手議員だった。
世論の逆風を肌で感じた彼らの危機感は尋常ではなく、各党幹部を激しく突き上げた。改革への慎重派や懐疑派が座る会議に押しかけ、文字通り肉弾戦を繰り広げる場面もあった。
まだ若手が比較的自由に物を言えた時代だったのだろう。それは皮肉にも、改革が諸悪の根源と見なした中選挙区制の効用だったかもしれない。同士打ちの激戦を自力で勝ち上がってきた議員には、「怖いものなし」とうそぶく者がいた。
小選挙区制の導入によって、首相と官邸、党執行部に権力が集中し、陣笠議員の比重はいよいよ軽くなった。選挙の度に生まれる「○○チルドレン」と呼ばれる新人は、おおむね従順でおとなしい。
若手に限らず、物言えば唇寒しの風潮も年を追って強まっている。
今回再浮上した政治改革論議をめぐり、風通しのいい党内論議がどれほど交わされるのか、心もとないといわざるをえない。
政治とカネが当座のテーマだとしても、改革を論じる機運がともかくも生じたのだとすれば、さらに幅広い論点への挑戦をためらうべきではない。
30年という節目にあたり、先の改革の功罪、あるいは不足と過剰といった点に着目した再検討は必須ではないか。
例えば、安倍元首相に典型を見る「強すぎる首相」という問題である。
その長期安定の見かけとは裏腹に、極めて短期志向の政権運営が際立った。任期を多く残して恣意(しい)的に衆院を解散し、その度に政策の看板を掛け替えた。
この間、国の借金や社会保障といった長期的な重要課題は閑却された。
岸田首相も先の通常国会でいたずらに解散風を吹かせ、「専権」をもてあそんだ。
首相の、正確には内閣の解散権をどう考えるか。これも古くから積み残され、先送りされてきた大問題である。
設計図作りの難しさ
先の改革は、「永久与党、万年野党」の55年体制を脱し、二大政党ないし勢力による政権交代のある政治をめざした。
冷戦終結や湾岸危機、バブル経済崩壊といった大状況のめまぐるしい変化に対応し、政治の決定力、実行力を手にしようとする試みであり、それは政治とカネへの取り組みと表裏一体の企図だった。
政権交代は確かに実現したが、全体としての展開はおよそ所期のもくろみとはかけ離れてしまった。
衆参両院のねじれは、決定力を欠く短命政権を立て続けに生み出した。二大政党、勢力への収斂(しゅうれん)は挫折の連続だったし、今後それが実現する兆しもまったく見えない。
国民の政治不信はますます深まり、無関心は広がり、選挙の投票率は下がり続ける。
多くの人間が関わる政治という営みは、描いた設計図通りにいくものではないという現実を思い知らされる。
改革を論じるなら、そのことを踏まえた上で重心の低い議論を進めてもらいたい。
●姥捨て楢山節考 1/7
映画「楢山節考」を再生してみた。山深い貧しい村の因習に従い、年老いた母親を背負って真冬の山奥に捨てに行く物語だ。映画では、白骨の散らばる山奥の岩陰に運ばれた老婆が、置き去りを躊躇する息子に早く行けと促す悲惨さが描かれる。
長野県の冠着山(かむりきやま)が俗称「姥捨(うばすて)山」と言われているのだが、実際には、そんな因習は無かったという。
姥捨て伝説は、各地にあるようだが、背中に負われた母親が、山道途中の枝を折ったり、白い灰を撒(ま)いたりして、息子の帰路の目印を残し、息子は親の愛の深さに堪(たま)らず、親捨てを止める。
あるいは、姥捨ては領主の命令だが、親を納屋に匿(かくま)っていたところ、領主に難題が持ち上がり、隠れていた老人の知識で解決し、領主が反省して姥捨て命令を廃止した―などと、姥捨て物語では、姥捨てを留(とど)まり、因習を否定しているようだ。
姥捨てや間引きはタブー
戦争中の集団疎開を扱ったドラマに、こんな話があった。疎開児童が増えたので村に食糧不足が起こり、老人たちが村はずれのお堂で自給自足の集団生活をする。それを子ども達が気付き、自分の食事を残して、おにぎりをお堂に届け、大人が反省して老人達を家に戻す。
口減らしは、その恩恵を受ける側にとっても残酷な行為なのだ。現実には、悲惨な状況もあったのかも知れないが、我が国の伝説や規範としては、姥捨てや間引きといった口減らしをタブーとしているのだ。
江戸時代、常陸国(現在の茨城県)南部に岡田寒泉という代官が就任した。彼は領内をくまなく見回ったところ、村々が疲弊していたので、貧困による幼児の間引きを防止するために「産児養育料」を支給し、凶作に備えて稗(ひえ)などの備蓄をさせるとともに、開墾事業の奨励、風紀の粛清など民生の安定に努め、小貝川の氾濫の際には素早く「お救い小屋」を建てて対応したという。
岡田寒泉は、松平定信の寛政の改革に関わった旗本であり、儒学者でもあったのだが、貧困の根幹を是正する統治政策を実践した人でもあった。
岸田政権の悪知恵政策
ところで、岸田政権の「異次元の少子化対策」では、財源の3分の1を、医療保険の掛け金から「支援」させるという。医療・介護保険は、必要な医療介護費用を算出し、保険制度の組合加入者が負担するわけだから、保険金に余裕はない。余裕があるとすれば、保険料を減額するのが筋だ。
その保険金を別の用途に回すとすれば、必要な医療・介護サービスを減らすことになる。学校給食費の納入金の一部を人気取り行事に流用して、給食の回数を減らすか食材の品質を落とすのと同じだ。要するに、「口減らし」だ。日本の老人は、子どものためと言われれば、少ない年金からでも、ひねり出すことは厭(いと)わない。
しかし、そのような、日本の老人の心情に付け込むような悪知恵政策は余りにも卑怯(ひきょう)だ。肝心の日本の子ども達は、子育て政策が老人の命を削る支援金で行われることを聞いたとき、喜ぶのだろうか?
●山口公明代表、進退「熟慮」 9月の任期満了で 1/7
公明党の山口那津男代表は7日のNHK番組で、9月に代表任期満了を迎えることを受けた自身の進退に関し、「次の大きな選挙との関係も含めて、党の力を最大限に発揮するにはどうしたらいいかという観点で熟慮していきたい」と述べた。自民党派閥の政治資金規正法違反事件によって次期衆院選の時期が見通せないことが念頭にあるとみられる。「世代交代は常に心掛けなければならないし、若い人材が育ちつつある」とも語った。
●岸田首相、解散「信頼回復後に考えたい」 震災、野党に協力呼び掛け 1/7
岸田文雄首相(自民党総裁)は7日放送のNHK番組で、衆院解散の時期について、「まずは信頼回復、次は政策の実現。今はそれに尽きる」としつつ、「それを行った上でその先については考えていきたい」と語った。9月の党総裁任期満了に伴う総裁選への再選出馬は、「重要な課題が山積している。そこから先の政治日程は今は考えていない」と述べた。収録は6日。
能登半島地震への対応や国会運営に関し「より多くの野党に協力していただく姿勢は今年も大事にしたい」と述べ、協力を働き掛けていく意向を表明。国民民主党の連立政権入りの可能性に関しては、「具体的にどの党と協力するか。場面場面でしっかり考えたい」と語った。
●安倍派池田衆院議員と秘書を東京地検が逮捕、党除名処分に−報道 1/7
自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーを巡る事件で、東京地検特捜部が7日、政治資金規正法違反の疑いで池田佳隆衆院議員(57)=比例東海=と秘書を逮捕したとNHKなど複数のメディアが報じた。岸田文雄首相は同日午後、逮捕を「承知している」と述べた。同問題では安倍派の現職国会議員が逮捕される事態に発展した。
東京地検と池田事務所に電話で連絡を試みたが、いずれも回答を得られなかった。
NHKによると、池田議員は会計責任者だった政策秘書の柿沼和宏容疑者(45)と共謀し、2022年までの5年間に安倍派から約4800万円のキックバックを受けたにもかかわらず、自らが代表を務める資金管理団体「池田黎明会」の収入として記載せず、政治資金収支報告書にうその記載をしていた。
岸田首相は非常災害対策本部会議後に記者団に、池田議員の逮捕について「承知している」とした上で、「自民党所属の国会議員が逮捕されたことは、大変遺憾なことで重く受け止めている」と述べた。さらに池田議員を「除名する方針とした。党として強い危機感を持って政治の信頼回復に努めなければならないと改めて強く考えている」と発言した。
共同通信によると、安倍派は池田議員の逮捕を受け、「関係者の皆さまに多大なご心配とご迷惑をおかけし、心よりおわび申し上げます」との談話を発表した。引き続き捜査に真摯(しんし)に協力するとしている。自民党にコメントを求める電話をしたが、つながらなかった。
岸田首相は、最大派閥である安倍派の幹部を要職に起用することで政権基盤の安定を図ってきた。裏金化の疑惑を受けて松野博一前官房長官を含む全員を交代させたが、内閣支持率は21年10月の政権発足後の最低を相次ぎ記録。安倍派現職議員の逮捕は岸田政権に影響を及ぼす可能性がある。
信頼回復への取り組みが求められる中、岸田首相は1月4日の年頭記者会見で、自民党内に総裁直属の政治刷新本部を設置すると発表。外部有識者も含めて政治資金の透明化に向けた議論を進め、1月中にも中間取りまとめを行う方針も示した。
特捜部は安倍派「5人衆」と呼ばれる松野氏、西村康取りまとめ稔氏、高木毅氏の歴代事務総長と萩生田光一氏、世耕弘成氏のほか、派閥の座長を務める塩谷立氏からも任意で事情を聴いたと国内メディアが報じていた。政治資金規正法上、収支報告書の作成・提出義務がある同派の会計責任者は還流分の不記載を認めており、特捜部は同法違反容疑での立件を検討していたという。
国内メディアが行った直近の世論調査によると、岸田内閣の支持率はいずれも10−20%台に落ち込み、大半で12年12月に自民党が政権復帰して以降の最低を更新。一連の問題を受けて岸田首相の責任や指導力を問う声が強まっている。自民党の不支持率も上昇しており、派閥の解消を求める声も多い。
●安倍派池田議員ら逮捕=4800万円虚偽記載か、政治資金規正法違反容疑 1/7
自民党の最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)の政治資金パーティー収入を巡る裏金事件で、東京地検特捜部は7日、政治資金収支報告書に約4800万円の虚偽記載をしたとする政治資金規正法違反容疑で、衆院議員の池田佳隆容疑者(57)=比例東海、当選4回=と、会計責任者で政策秘書の柿沼和宏容疑者(45)を逮捕した。特捜部は認否を明らかにしていない。
この事件で逮捕者が出るのは初めて。政界を揺るがす政治とカネの問題は、現職国会議員が逮捕される事態に発展した。
自民党は7日、池田容疑者を除名。清和政策研究会は「関係者の皆さまに多大なご心配とご迷惑をおかけし、心よりおわびする」などとするコメントを出した。
関係者によると、安倍派では派閥のパーティー券販売について所属議員の当選回数や役職によってノルマを設定。超過分の収入は議員側にキックバック(還流)し、派閥や議員側の収支報告書に記載せず裏金化していたとされる。
安倍派では還流の方法とは別に、10人以上の議員側がノルマ超過分を派閥に納めず裏金として中抜きしていた疑いもあり、時効にかからない2018〜22年の還流分と中抜き分を合わせると、派閥全体の裏金総額は6億円規模に膨らむ可能性がある。
池田容疑者の逮捕容疑は、柿沼容疑者と共謀し、資金管理団体の18〜22年分の収支報告書で派閥から還流を受けた計約4800万円を収入に含めず、過少に記載した疑い。
池田容疑者が還流を受けた金額は所属議員の中でも特に多いとされる。同容疑者側は昨年12月8日付で20〜22年分の収支報告書を訂正。安倍派からの寄付額が計約3200万円増えたほか、20年の収支報告書には収入の「前年からの繰越額」として約1600万円が追加された。
●長崎IRの崩壊「根っ子はすべて同じ」 岸田政権に思う 1/7
ネットプラットフォームは国際金融市場の集積地に併設
大阪、福岡、東京の各IRは近い将来、オンラインカジノ、オンラインゲーミング等の国際市場を開拓・展開するため、ネットプラットフォームを併設し、それらは急速に発展するものと思われる。
この現地でのネットプラットフォーム施設の併設は、世界でのネット国際金融における市場競争の「核」となる事業であり、どこの国・場所であれ必須である。そこにはビットコインなどに代表される仮想通貨が集積し、世界的にも巨大な金融市場が誕生し形成されることになる。近い将来、IRがもたらす売上や収益、税収などは現在の計画をはるかに上回るだろう。
我が国ではこれらはいまなおタブーであり関連の法整備は行われていないが、この世界のすう勢からはいずれの国も避けては通れず、我が国でも近年中に必ず実行されることとなるだろう。なお、福岡市は高島市長のもと行政と議会、経済界は「香港に代わる国際金融都市を目指す」ことをすでに公言している。
九州大学箱崎キャンパス跡地開発と福岡IRが連携されれば、「鬼に金棒」となる。JR九州と西鉄、市営地下鉄沿線で結ばれた利便性の高いエリアであり、福岡IRは高島市長が掲げる「福岡イースト&ウェストコースト」プロジェクトに適したすばらしい案件となり得る。
このように、ほかのプロジェクトを福岡都市圏で実現するうえでも、IR誘致開発は何よりもベストな選択だと断言できる。IR誘致に絡む世界の資金の巨額さは他に類を見ないものだ。
国際都市福岡の魅力と自然環境保護
海の中道海浜公園 イメージ 福岡IRの候補地は福岡都市圏、旧帝国陸軍航空隊「雁ノ巣飛行場」の跡地、戦後の米国陸海軍航空隊「キャンプハカタ」の跡地で、現在も米国文化と強いつながりを保つ土地である。
とくに国営の「海の中道海浜公園」にはそれらの名残が多く残っていて、福岡市民から親しまれる憩いの場であり、白い砂浜の続く長い海岸線はとくに美しい。一部は「玄海国定公園」となっていて、風光明媚で自然豊かな環境の国土交通省が所有管理する広大な国有地でもある(約540ha)。その分、長く続く海岸線の防風林、松の林と砂防柵などの保護管理に要する費用は莫大なもので、現況の水族館や市民プールなど夏場だけの入場・イベント収入では支出にまったく追いついていない。近年はこの国有地の民間利用を積極的に促し、その固定費を賄うための収入増を期待して、法制度改革が実施されている。
福岡市の中心地からは鉄道(JRと西鉄)で約35分、車(都市高速)でも約30分、博多港ベイサイドプレイスから福岡市営渡船でも約30分、このように交通インフラがすでに整備され、充実している点で国内唯一の候補地であるこの場所は、視察した米国企業をはじめ国際的にも高い評価を得ているという。
とくに、IR誘致開発の準備組織が自然環境保護活動の一環として、米国企業ならびに福岡市行政には、当該地隣接の博多湾「和白干潟の鳥獣保護を守る」の観点から、「ラムサール条約」への新規登録への地元保護団体との協力とその費用負担にも積極的に模索中だと聞く。
また、IR誘致開発の準備組織による自然環境保護活動の一環として、候補地に隣接する博多湾の和白干潟の鳥獣を保護するため、米国企業ならびに福岡市行政は「ラムサール条約」の新規登録について協力し費用を負担することを前向きに模索していると聞く。「環境保護」を口にするのは簡単がが、実際に実行するのは大変で、かつ巨額の費用を要する。IR開発・誘致のような高い付加価値と収益を産み出す事業だからこそのことだろう。また、世界および国内の富裕層による観光収入から賄えるということであり、優れた計画ではないか。
いよいよ福岡IRの出番が到来
IRは全国に3カ所、「長崎IR」の不認定により、残る2カ所は「福岡IR」「東京IR」で間違いないだろう。もし、米国の次期大統領にトランプ氏が返り咲くことにでもなれば、日米経済関係から確実に実行される。
今回の「長崎IRの崩壊」は、福岡財界が主体の九州経済連合会および若い経営者の集まりである福岡青年会議所は、長崎IRの関係組織への遠慮から、福岡IR誘致に積極的な動きはできなかった。しかし、彼らの本音は誰が考えてもIR誘致・開発に相応しいのは福岡都市圏というものだ。
現在、このニュースは世界的に広がっている。Bally'sに続いて著名な米国系IR事業者の福岡都市圏へのアプローチが早々に始まるだろう。これらは積極的な行動に出るものと推測される。言うまでもなく、中華系その他の同業者グループは間違いなく蚊帳の外だ。
とくに、過去、横浜や苫小牧、和歌山、長崎などへの進出の希望が断たれた米国系IR事業者は今後、現状では問題の多い「大阪IR」に比較して、既設のインフラが整っていて、人口など諸々の条件ですべてに引けを取らない当地「福岡IR」に集積することになるだろう。
乞うご期待だ。
●地震対応の予備費活用、迅速な対応と明確な説明を 1/7
新年早々、大変なことが起きてしまった。特に能登半島地震は被害の全容が判明していないが、復旧や生活支援のほとんどが政治の仕事。岸田政権には迅速な対応をお願いしたい。
国家予算には、震災対応など不測の事態に備える「予備費」というものがある。近年は新型コロナ禍の対応で積み増しされ、使い切れず余っていた。予備費は国会審議が不要で、閣議決定により出費できる。さらに岸田首相は今後の復旧・復興のために予備費を積み増す指示を出した。
昨年11月に発表した経済対策の中で現金給付と定額減税の時期を分けたり、減税を「税収増の還元」と理由付けしたりしたことは国民の支持を得られなかった。減税イメージを印象づけ、衆院解散・総選挙対策であることは見透かされた。旧統一教会との関係や政治資金パーティー裏金問題などは岸田首相自身の問題ではないが、内閣支持率が下げ止まらないのは都合のいい説明に終始する首相の姿勢にあるのではないか。
岸田首相はさまざまな課題に対策を講じ施策を打ち出してはきたが、結果にはなかなかつながっていない。すぐに成果が出るような政治的課題など一つもないことは分かっているが、国民からは理解されない。「異次元」とか「火の玉」などといった実態不明の抽象的な説明が、国民に意図を伝えられない一因ではないかと思われる。
予備費は迅速に対応できるという点で「便利な予算」ではあるが、国民の税金が原資でもある。閣議決定を経るとはいえ首相の思いの強さが活用の基準となるだけに、迅速な対応とともに明確な説明が必要だ。2024年は、岸田首相も説明に少し工夫を凝らしてはいかがだろうか。「増税メガネ」を国民目線の「国民メガネ」に替える必要がありそうだ。
●国民が知りたい「羽田事故」「志賀原発」に触れない岸田首相の年頭記者会見 1/7
岸田文雄首相が1月4日に官邸で開いた年頭の記者会見で、国民が最も知りたかったのは、11月1日に起きた能登半島地震で被害が出た志賀原発の状況2羽田空港で起きたJAL機と海保機の衝突事故の真相――だったと思う。
ところが、岸田首相はいずれも一切言及せず、そして官邸記者クラブに所属するマスコミ各社の政治部記者も誰一人質問しなかった。私は唖然とするしかなかった。
なぜこんなことが起きたのか?
首相の年頭記者会見は、伊勢神宮参拝後に現地で行うのが慣例だ。今年は能登半島地震が発生して伊勢参拝が延期され、首相官邸で開かれることになった。
岸田首相としては、能登半島地震の被災者支援と自民党安倍派などの裏金事件への対応をアピールし、1割台に低迷する内閣支持率を回復させ、政権与党内で強まる「3月訪米・予算成立を花道に退陣論」を押し戻す反転攻勢の起点となるはずだった。
岸田首相は地震発生後、対策本部会合が終わった後、連日、記者団の取材に応じている。このため、4日の年頭会見は地震よりも政治改革に軸足をおくことは、あらかじめ予想できた。
だが、1来週に自民党に「政治刷新本部」を立ち上げ、自らが本部長となる21月中には政治改革の中間的とりまとめを発表し、必要なら通行国会に関連法案(政治資金規正法改正案など)を提出するーーことを淡々と表明するだけで、具体的な中身はほとんどなかった。
能登半島地震についても目新しい発信はなく、被災者らの心に響く訴えもまったくなかったのである。
率直に言って、精彩を欠く記者会見だった。国民に向かって何かをアピールしようとする意気込みがまったく感じられなかったのである。
年明け早々、大地震と航空機事故というショッキングな出来事が相次ぎ、岸田首相は社会不安の高まりを痛感して、政権運営への自信を失ったのだろうかーー私はまずはそう感じた。
実際、日本テレビは元旦に「岸田首相が周辺に『自分がやめて何か解決するのか。やめて解決するならいつでもやめてやる』と話した」との内容を報じていた。かなり投げやりになってきたかもしれないと思ったのだ。
しかし、退陣論がささやかれる3月は、まだ先だ。岸田首相が一時的に投げやり気分になることはあっても、心は揺れ動き、結局のところ、支持率を何とか回復させることでギリギリまで続投の芽を残そうとするはずだと思い直した。
それにしても、せっかくの反転攻勢の好機である年頭記者会見に、これほど熱が入っていないのはなぜなのか。
実は記者から突っ込まれたくないテーマがあるため、簡潔に会見を打ち切ることを優先したのではないか。
そうだとすれば、そのテーマは、志賀原発か、羽田事故か。
志賀原発について、政府や北陸電力は地震発生直後に「異常なし」と発表していたが、その後、1外部電源を取り込む電気系統の一部が壊れた2水位が3メートル上昇し、防潮壁も傾いていた――などの被害が発生していたことを五月雨式に発表。まだ「伏せている事実」があるのではないかと疑念を招く事態に陥っている。
羽田事故は海保機の機長が管制の指示を取り違えた可能性がマスコミ報道で指摘されているが、それは国交省が公表した交信記録や国交省側のリークに基づくものだろう。海保機の機長の証言は食い違っているという。ここも未解明が部分が残る。
志賀原発にしろ、羽田事故にしろ、岸田首相にもとには国民が知らない情報があがっているはずだ。この日の記者会見で質問されたくない何かしらかの事情があり、その結果、岸田首相の発言は全体として勢いを欠き、記者会見も40分ほどで打ち切ることになったのではないかと想像したのである。
首相記者会見の最大の問題点は、質問者を官邸側の司会者が指名することにある。
官邸側は各記者にどんな質問をするのか事前に聞き取っている(これに応じない記者もいる)。官邸と記者クラブの馴れ合いだ。その聞き取りを踏まえ、今回は志賀原発と羽田事故を質問しそうな記者をあえて指名しなかったのだろう。
会見終了が告げられた後、フリーの犬飼淳記者が、原発関連の質問があると訴え、「再稼働をあきらめるべきではないか」と岸田首相に向かって叫んだが、首相は無言のまま立ち去った。
志賀原発に何の懸念もないのなら、首相の言葉ではっきりと国民に向かって語るべきだった。無言で立ち去る姿をみると、やはり志賀原発について触れられたくなかったのかと勘繰ってしまう。
いずれにせよ、情けないのは、官邸記者クラブ所属のマスコミ各社の政治記者たちだ。無言で立ち去る岸田首相に対し、なぜ、フリーの犬飼記者と一緒に抗議しなかったのか。
志賀原発や羽田事故について首相が一言も語らない年頭記者会見を容認した時点で、記者クラブの存在意義は失われたといっていい。
●派閥裏金問題で大荒れの自民党 “泥船”岸田政権の「ポスト岸田」は誰? 1/7
派閥の裏金問題で支持率が政権維持困難とされる20%前半まで落ち込んだ岸田内閣…。大荒れの自民党で「我こそは」と言うリーダーが居ないのはなぜか。そして“ポスト岸田”と言われる人物たちの現状は?
支持率24%、政権維持は黄色信号
66%という高い内閣支持率だった発足当初が想像できないほどの事態となっている昨今。2023年11月の世論調査では、相次ぐ政務三役の辞任に加え、所得税などの定額減税が「選挙対策にみえる」などと不評を買い、内閣支持率はついに24%と発足以来最低を更新した。
さらにその後、自民党最大派閥“安倍派”の裏金問題が明るみに出て岸田首相の自民党総裁としての責任が問われる事態となっている。大荒れの自民党では、2024年9月に自民党総裁選が予定されている。岸田首相は裏金問題を受け安倍派の閣僚を一掃する人事を行ったが、岸田首相に近い議員も「安倍派の応援がなければ総裁選には勝てない」と釘を刺す。
「我こそは」と言えないリーダーなき自民党
ではポスト岸田となりうる自民党議員は誰なのか。裏金問題のあまりの大きさに様子をうかがう議員が多いのが実情だ。
首相候補として名前が挙がるある議員は「誰が白で、誰が黒か、分からないうちは何も動き出せない」と周囲に吐露する。「我こそは自民党を立て直す」という議員が見当たらないのだ。過去の自民党であれば起こっていたであろう『岸田おろし』の動きが出てこない。
その理由は裏金問題の影響が未知数で捜査の着地点が見えないということもあるが、総裁選までまだ9か月ほどあること、衆議院議員の任期がまだ1年以上残っているという点も大きい。議員たちの危機意識が高まらず、『岸田おろし』が起こらないのだ。
では“ポスト岸田”の面々の現状はどうなっているのか。“将来の首相候補”と言われる議員は複数いるが、中でも“ポスト岸田”として名前が挙がる茂木幹事長、河野デジタル相、石破元幹事長、上川外相、加藤元官房長官、の5人について分析する。
進む道を決めきれない茂木幹事長
自民党の幹事長を務める茂木敏充氏。当選10回を誇る政策通で、党の政調会長のほか、経済産業大臣や外務大臣など重要ポストを歴任してきた。現在は党運営や資金面で絶大な権限を握る“幹事長”をつとめ、党内第3派閥“茂木派”の会長でもある。
将来、首相を目指す姿勢を常ににじませる茂木氏は、麻生副総裁とも良好な関係を築いている。一方で党内からはポスト岸田に同じ派閥の加藤元官房長官を推す声もあり、必ずしも足下が安定しているとは言い切れない。
さらに裏金問題について、茂木派ではほとんど問題がなかったため「茂木幹事長はどこか他人事だ」という批判まじりの声も聞こえる。また、本来、幹事長は首相を支えるポジションであるにもかかわらず、首相よりも先に政治資金規正法の改正について発信するなど、幹事長としての役割を超えていると指摘される行動も多い。
茂木氏がポスト岸田に名乗りをあげるためには、岸田首相を支え続け禅譲を狙うのか、どこかで別の路線に進むのか決断が必要になる。
“人気”を誇る河野デジタル相
国民的人気を誇り、歯に衣着せぬ発言や発信力で常に話題となる河野太郎氏も“ポスト岸田”の1人。これまで外相や防衛相などを務め、現在はデジタル相としてマイナンバーカードをめぐる一連の問題で陣頭指揮を執るなど、常に注目されているのが河野氏の強みだ。
前回の総裁選で岸田首相に敗れて以降、“仲間作り”にも力を入れている。毎週火曜日に勉強会を開催、政治家との会食も積極的に行っているという。さらに河野氏は、国民的人気が高い石破元幹事長、小泉元環境相とも近く3人の名前の頭文字を取った“小石河連合”の発信力は強力だ。
ただ実際に河野氏の“仲間作り”が結実してもポスト岸田に名乗りをあげるためには河野氏が所属する麻生派の麻生副総裁の意向が大きく関係してくる。麻生副総裁は「岸田政権を支える」というスタンスで、岸田首相が次の総裁選に出る場合は、河野氏の出馬を後押しする可能性は低い。
河野氏が“ポスト岸田”に近づくためには、派閥の領袖である麻生氏からの支持を得られるかが最大のポイントとなる。
世論調査“ナンバー1”の石破茂元幹事長
NNNと読売新聞が23年12月に行った世論調査で、ポスト岸田として20%という最も高い支持を集めたのが石破茂元幹事長だ。各社の世論調査でも人気が高い。安倍晋三元首相と一騎打ちでの総裁選を戦うなど、自民党内でも非主流派の顔として脚光を浴び続けていることから政府関係者からは「自民党が変わったと思われるためには石破氏しかいない」との声も出ている。
ただ、石破氏は裏金問題の発覚後、テレビ番組で岸田首相の責任の取り方について「予算が成立したら辞めますというのはあり」と、総辞職を迫るような発言をおこなった。こうした岸田政権を後ろから撃つような言動には、かつての石破派に所属した議員からも「いくら国民的な人気があっても党内に仲間がいない」「溺れかかっている人物を上から突いているようだ」など冷ややかな声が上がっている。
発信力は抜群の石破氏だが、党内に仲間を作るという長年の課題が重くのしかかっている。
初の女性候補と目される上川外相
2023年9月に行われた内閣改造以降、ポスト岸田として急浮上したのが上川陽子氏だ。法相を3回務め、2018年には、オウム真理教の麻原彰晃こと松本智津夫 元死刑囚の死刑執行命令書に署名をしたことも。「ミスをしない」「政策に強い」などの評判もあり、女性政治家としては首相の座に最も近い人物とされる。
上川氏は岸田首相が会長を務めていた“宏池会”に所属している。外相という重要ポストに上川氏を据えたことで、岸田首相が「次期首相候補」として経験を積ませようとしているのでは、との声も聞こえる。しかし、宏池会には、2023年12月、裏金問題で辞任した松野前官房長官の後任になった、林芳正氏がいる。林氏を飛び越えて上川氏を首相にする、という動きまでには至っていないのが現状だ。また、政策には強いが「政局観がない」など厳しい評価もある。
党内には「初の女性首相となれば自民党内からも誰も文句が言えない」など上川氏に期待する声もあるが、ポスト岸田となるためには「政局観」と「宏池会内の支持拡大」という2つの大きな壁がある。
ダークホース、加藤勝信元官房長官
菅政権で官房長官を務め、厚労相を3回も経験している加藤勝信氏もポスト岸田のダークホースとして名前があがる。加藤氏は党内に影響力を持つ菅前首相からの信頼が厚いうえに、二階派の事務総長である武田良太氏や安倍派の5人衆の1人、萩生田光一氏とも関係が良好で、各氏の名前の頭文字を取って「HKT+S」と呼ばれる会合を定期的に開いている。
加藤氏が首相候補として名乗りをあげた場合、菅氏が率いる菅グループ、二階派、萩生田氏に近い安倍派の一部議員など、「非主流派」の議員を中心に派閥横断的に集まるのではないかとみられている。
ただ、加藤氏は茂木幹事長が率いる“茂木派”に所属していて茂木氏がポスト岸田に名乗りをあげると、加藤氏も手を挙げるのは難しい。茂木派を飛び出してでもポスト岸田を目指すことがあるのか、加藤氏の動向からも目が離せない。
●岸田政権の課題 信頼回復急ぎ国難に対処せよ 1/7
政治資金の透明化をどう図るか
令和となって最大級の災害が発生し、内閣の危機管理能力が問われている。派閥の政治資金規正法違反事件で失墜した信頼の回復も急務だ。
岸田首相は自らが正念場にあることを自覚し、責務を果たさねばならない。
首相は年頭の記者会見で、能登半島で起きた地震を「国難」と呼び、「被災地に寄り添っていく」と述べた。生存者の救出は無論、物資の搬送、道路の復旧など様々な課題に、国は総力を挙げて取り組む必要がある。
問われる危機管理能力
政治資金規正法違反事件に関しては、自民党に総裁直属の「政治刷新本部」(仮称)を設置し、政治改革に取り組んで「党の体質を刷新する」と語った。
首相が、地震への対応でも政治とカネの問題でも「私自身が先頭に立つ」と述べて自らの指導力を強調したのは、それだけ政権運営が窮地に陥っていることの裏返しとも言えよう。
政治資金規正法違反事件を巡っては、パーティー収入の一部を裏金としていた疑いが出ている安倍派の幹部らが昨年末、東京地検特捜部の事情聴取を受けた。捜査の成り行きは、岸田政権の浮沈を左右しかねない。
首相は、今回の派閥のパーティー収入を巡る問題を徹底的に調査するとともに、党と一体となって改革を主導すべきだ。
政治資金規正法は、政治活動を国民が常に監視できるよう、政治資金の透明化を図り、公正さを保つことを目的としている。この趣旨を貫徹するための制度改正を実現することが重要だ。
現行法は、パーティー券購入者の記載義務を、1回につき20万円超の購入者に限っている。年間5万円超を公開の基準としている寄付行為と、基準を合わせる法改正は最低限必要だろう。
政治資金収支報告書をデジタル化して、有権者が点検しやすくするのも一案だ。
政治に一定のコストがかかるのはやむを得ない。企業・団体献金や政治資金パーティーをすべて禁じるべきだ、といった議論があるが、政治を汚いものと決めつけるかのような考え方では、民主主義が成り立たなくなってしまう。
先送りされた負担増
岸田内閣は発足から2年3か月が経過した。防衛力の強化や少子化対策など、これまで取り組んできた課題は時宜に 適 っている。
しかし、政策を実現するための財源措置などの具体策となると、先送りが目立つ。
政府は少子化対策の財源を確保するため、医療保険に上乗せして徴収する「支援金制度」の創設を決めたが、国民の負担額までは深掘りしなかった。
防衛力強化のための増税も、開始時期の決定を見送った。
政権に逆風が吹く中、負担増を伴う改革を進めるのは難しい、という判断なのだろうが、こうした姿勢が課題への取り組みに対する首相の本気度を疑わせ、支持率の低迷につながっている。
人口減少や少子化をどう反転させ、国力を維持するのか。悪化した安全保障環境への備えは万全か。課題を乗り越えるため、国民の理解を得ながら着実に施策を実行していく、という政治の役割を忘れてはならない。
衆院選に小選挙区比例代表並立制を導入した政治改革関連法や、政治資金に税金を投入することを定めた政党助成法は今年、成立から30年となる。
改革が目指した政党本位の選挙はある程度定着したが、 歪 みも浮き彫りになっている。派閥のパーティー券を巡る疑惑はその一つだが、問題はそれだけではない。
現行の選挙制度の下、司法は憲法の「法の下の平等」を投票価値の平等と読み替え、「1票の格差」の是正を重視するようになった。このため、小選挙区の区割りは頻繁な見直しが必要になった。
選挙制度改革の議論を
だが、地方の過疎化が進む中、格差是正だけを追求すれば、地方の議員定数は減り続け、都市部は増える一方となる。地方の民意は反映されにくくなり、有権者が代表に政治を託すという代議制民主主義が揺らぎかねない。
参院も同様の問題を抱えている。格差是正のため、「鳥取・島根」「徳島・高知」を合区したが、このまま都市部への人口流入が続けば、北陸などで新たな合区が必要になる、との指摘がある。
衆参両院とも、格差の是正を迫られ続ける現行制度が果たして妥当なのか。与野党は、根本から議論すべき時期に来ている。
●「防衛力強化」の是非が沖縄の争点に浮上へ〜「戦場化」への懸念を背景に 1/7
2022年末の安全保障関連3文書の改定を受けて、南西諸島の「防衛力強化」が急速に進む中、沖縄では自衛隊と「有事」への備えを巡る諸問題が、「辺野古」の次の争点として浮上しつつある。
一歩踏み出した知事
「子どもたちの未来が戦争の未来であってはならない。不穏な未来であってはならない」
2023年11月、那覇市の公園で開かれた「県民平和大集会」で、来賓として挨拶した沖縄県の玉城デニー知事は、慎重に言葉を選びながらも、「沖縄を再び戦場にさせない」という集会の趣旨にそったスピーチで、会場から大きな拍手と声援を受けた。
沖縄では長年、米軍基地や沖縄戦の記述を巡る教科書の問題などに抗議するため、政党や労組の主導で数万人規模の「県民大会」が繰り返し開かれてきた。
ただ今回の集会は「県民大会」とは異なり、市民団体や趣旨に賛同する個人が手づくりで準備したもので、参加者は主催者発表で1万人だった。
この規模の集会に知事が出席して挨拶するのは異例で、日米安保体制や自衛隊の存在を基本的に容認する玉城知事が、いわゆる「反撃能力」の保有を含む「防衛力強化」には批判的な姿勢で臨むことを、県民に強く印象づける形になった。
県民感情との“ズレ”広がる
ウクライナやパレスチナ自治区ガザ地区の惨状が伝えられるほど、沖縄ではせい惨な地上戦となった沖縄戦の記憶が呼び起こされ、県民の平和志向と反戦感情を強めている。
一方、東アジアの安全保障環境はいっそう厳しさを増しているとして、政府は沖縄県内の離島を中心に、ここ数年、自衛隊基地の新設や機能の強化を進める。
陸上自衛隊は2016年の与那国駐屯地、2019年の宮古島駐屯地に続き、2023年には石垣駐屯地を開設した。宮古島と石垣島には地対艦と地対空のミサイル部隊が配備され、当初は沿岸監視隊が中心だった与那国駐屯地にも今後、電子戦部隊とミサイル部隊を追加配備する方針だ。
防衛省は、「反撃能力」の保有に向けて現在開発している国産の「スタンド・オフ・ミサイル」を、予定より1年前倒しして、2025年度に配備する計画を公表した。具体的な配備先はまだ明らかにされていないが、やがて沖縄にも配備され、いわゆる「台湾有事」で攻撃目標にされるリスクが高まるのではないかとの懸念が、住民の間に広がっている。
離島自治体と県に温度差
一方、与那国町や石垣市など離島の自治体からは、ミサイルなどの攻撃から身を隠すシェルターの設置や、住民避難計画の詳細の確定を求める声のほか、有事の際の自衛隊や海上保安庁による使用に向け、空港や港湾の整備を国の支援で進める「特定重要拠点」への指定に期待する声も上がる。
こうした主に離島の自治体からの突き上げに対し、沖縄県は難しい立場に置かれている。
住民の安心や安全の確保は一義的な優先課題だとしても、「有事」に向けた備えの加速化が、かえって「有事」を呼び込むことにつながらないか、「国防」を名目としたインフラ整備が、健全な沖縄振興のあり方を変質させないか、といった行政としての懸念に加え、玉城県政の支持基盤が、防衛力強化だけでなく「有事」への備え全般に消極的な指向を持つことも、県の判断に影響しそうだ。
知事の求心力回復へ争点化も
米軍普天間基地の名護市辺野古への移設を巡る「代執行」訴訟で2023年12月に国が勝訴し、沖縄県が工事を止める手立てが乏しくなったことで、「辺野古移設反対」を最大の公約として掲げてきた玉城県政の求心力の低下が予想される。すでに対抗勢力からは、辞職や出直しの知事選を求める声も上がり始めた。
さらに2024年6月には現在与野党がきっ抗する県議会選挙が控えていて、玉城県政の「中間審判」的な意味合いも持つ。
そうした中、自衛隊と「有事」への備えを巡る諸問題で、政府と一線を画し、県民の平和志向に寄り添う方向へより踏み込むことで、玉城知事は県政継続の正当性をアピールすることができる。
2024年1月の台湾総統選挙を経た後の中台関係や、政府による「防衛力強化」の進め方次第では、「沖縄を再び戦場にさせない」というスローガンは今後、さらに県民的な広がりを見せるかもしれない。
玉城県政が、変化する状況の中でどのような路線を選択するのか、注目される。
●岸田総理いよいよ万事休すか… 政治記者の間で噂される「4人の首相候補」 1/7
透けて見える岸田総理の「自問自答」
筆者が勤務する在京ラジオ局では、毎年、年始に、政治ジャーナリストの後藤謙次氏が首相を相手に対談する1時間サイズの新春特別番組を放送している。
年末ぎりぎりに行う収録では、ときの首相に決まってリクエスト曲を尋ねているのだが、今回、岸田文雄首相が選んだ曲は、昨年のNHK大河ドラマ『どうする家康』のテーマ曲であった。
前回、岸田首相が「では、この曲をお願いします」と選んだのが、『鎌倉殿の13人』のテーマ曲。これも大河ドラマのテーマ曲であるため、無難なセレクションではある。
ただ、筆者には、鎌倉幕府初期と同様、権謀術数の渦巻く東京・永田町で、リーダーであり続けなければならない厳しさを、如実に表した選曲のように思えたものだ。
長年、ラジオ番組を制作してきた立場から言えば、ゲストが首相であれ、芸能人であれ、リクエストする楽曲には、その人の過去、現在、そして未来に対する思いが反映されることが多い。
たとえば、菅義偉氏が、首相や官房長官時代に選んだ『あゝ上野駅』という楽曲には、秋田から上京し、苦学を経て政治の世界に入り、首相まで上りつめた菅氏の思いが込められている。実際、菅氏自身、当時の特番内で、「これを聞くと原点を思い出すんですよ」と語っている。
その意味では、今回、1月2日に放送した特番で、岸田首相が『どうする家康』のテーマ曲を選んだ背景には、「政治資金問題での信頼回復」、「物価高を上回る賃上げの実現」、そして、「重要な選挙が相次ぐ国際社会の変化への備え」といった難題を前に、「どうする文雄?」と自問自答している姿があるように感じるのである。
ロッキード、リクルート事件も「辰年」に着手した
まさに、今年は、岸田政権にとって、上記の3つが大きなハードルとなる。加えて、1月1日に発生した能登半島地震への対応は、何をさておいても急がなければならない課題だ。
「こんな重い空気の事務所開き(仕事始め)は初めてだ。もう今年の漢字は、早くも、『揺』とか『震』で決まった感があるような大変な1年になる」(自民党無派閥衆議院議員)
自民党内では、こんな声が聞かれるが、当の岸田首相は、1月4日、首相官邸で行った年頭会見で、次のように述べた。その骨子を整理しておこう。
(1)能登半島地震への対応に万全を期す。被災者の生活と生業をしっかり支えていく。
(2)世界は重要な選挙が予定されているので、日本にとって今年は重要な年になる。今後10年を決める分かれ道の年になる。
(3)まず求められるのは政治の安定、信頼回復。私自身が先頭に立ち、自民党の体質を刷新していく。政治刷新本部(仮)を立ち上げ、外部有識者の参加も得て、透明性が高い形で進めていく。
(4)物価上昇を上回る賃上げの実現を推進していく。中小企業の賃上げにも全力で取り組む。
これらは、能登半島地震に関するコメントが増えただけで、1月1日に首相官邸が発表した岸田首相の「年頭所感」や、岸田首相がラジオの特番で語った内容と差異はない。ただ、いずれも「言うは易し、行うは難し」である。
とりわけ、東京地検特捜部が昨年のうちに歴代の安倍派事務総長に対する聴取を終えた政治資金パーティー券裏金事件は、1月26日とみられる通常国会召集までがヤマ場になる。「日本最強の捜査機関」と呼ばれる東京地検特捜部でも、年末年始を返上してまで捜査を進めることはほぼない。
年末まで、安倍派幹部への聴取を続け、数千万円のキックバックを受けたとされる池田佳隆衆議院議員と大野泰正参議院議員の関係先や自宅を家宅捜索したところに、伊藤文規部長率いる特捜部の「派閥の会計担当者を立件するだけでは済ませない」、「在宅起訴や略式起訴では終わらせない」という気概を感じる。
今年は辰年だ。思い起こせば、特捜部がロッキード、リクルート両事件で強制捜査に着手したのは、1976年と1988年で、いずれも辰年である。しかも今年は、政党助成法を含む政治改革関連法が成立してから30年の節目に当たる。
安倍派にまつわる捜査で言えば、一度、安倍元首相が派閥の会長に就任した2021年11月以降、悪しき慣習となってきたパーティー券収入キックバックの廃止を指示しながら、安倍元首相の死後、誰がその指示を撤回させたのか、その人物を突き止め、巨額のキックバックを得ていた議員らとともに、逮捕・起訴まで至ることを願うばかりである。
「裏金事件」は踏み込み不足
一方、「政治の信頼回復に努める」と繰り返す岸田首相は、と言えば、踏み込み不足の感が否めない。
これから始まる通常国会では、来年度予算をめぐる審議とともに、政治資金規正法などの改正案が焦点になる。
「政治資金パーティーをめぐるお金の透明性を高める、それと合わせて、政治に関わる様々な課題について、新しい組織の中で詰めていきたい」
ラジオの特番でこのように語った岸田首相。党内基盤が強くない岸田首相には言えるべくもないが、たとえば、「自民党総裁として派閥の解消を議論する」と述べる強さがあれば、いくらかでも内閣支持率の回復につながったのではないだろうか。
政治資金規正法などの改正は、泥棒に刑法を改正させるようなものだ。政治家が、自身の首を絞めるような大胆な改正に着手することは考えられない。
今現在は、能登半島地震や1月2日に起きた羽田空港での日航機と海保機の衝突事故に有権者の注目が集まっているが、この先、政治家が誰も逮捕されず、政治改革も不十分となれば、岸田政権はますます尻すぼみになっていくことだろう。
「3・6・9」危機が待ち受ける
今年は9月に自民党総裁選挙を控えている。もともと、総裁選挙がある年は、来年度予算案の採決を迎える3月、通常国会の会期末となる6月、そして、総裁選挙が実施される9月に政局となることが多い。
岸田首相の場合、能登半島地震が発生するまでは、自民党内で、
「予算の成立と引き換えに退陣もあり得るのでは?」
「その前に、麻生太郎副総裁あたりが、岸田首相に国賓としてアメリカを訪問させ花道を作るのでは?」
との見方があった。当面は、能登半島地震で被害を受けた地域への支援が最優先されるため、岸田首相の退陣につながりそうな動きは下火になるだろうが、永田町の一寸先は闇だ。
政治資金パーティー券裏金事件で、何人か自民党の現職国会議員が逮捕され議員辞職することになれば、4月28日に行われる衆議院島根1区補選(細田博之前衆議院議長の死去に伴う補欠選挙)に加え、複数の選挙区で補選が実施されることになり、その結果しだいで「岸田降ろし」に拍車がかかることも想定される。
では、政局となった場合、「ポスト岸田」は誰が最有力となるのだろうか。
政治記者の間で名前が挙がるのは、国民的に人気がある石破茂元幹事長や河野太郎デジタル担当相、保守層の票を集めやすい高市早苗経済安保担当相、そして、安定感があり語学も堪能な上川陽子外相といった面々である。
当然ながら安倍派は1回休みだ。かと言って、無派閥の誰かが推される可能性は低い。それほどまでに、政策集団と言いながら、実質はカネと権力でつながる派閥の力は強い。いくら国民に人気があり、保守層受けが良くても、安倍派、麻生派、茂木派、それに岸田派の主流4派が乗れる候補でないと総裁、総理にはなれない。
これは筆者の憶測の域を出ないが、岸田派の上川外相の可能性は残るとして、年齢で言えば40代から50代前半で閣僚経験もあって、いくつかの派閥が納得して推せるような人物が担ぎ出されることになるかもしれない。
もっとも、岸田首相は、安倍元首相らと比べ、あくが強くない分、反発を受けにくい。麻生副総裁ら重鎮が、「岸田でいい」となれば、再選される目もある。
政治が流動化している場合ではない日本
1月13日、台湾総統選挙が行われるのを皮切りに、11月5日のアメリカ大統領選挙まで、国際社会は選挙イヤーとなる。
台湾の立法府委員(国会議員)で民進党の郭国文氏は、先日、台北で筆者に、「中国の動きを考えれば、台湾総統選挙は日本に大きな影響を与える選挙になります。是非、関心を持っていただきたいです」と語っている。
選挙は、蔡英文総統の後継で中国とは距離を置く民進党・頼清徳氏と、中国寄りの国民党・候友宜氏のいずれかが勝つ可能性が高い。
筆者は、頼氏が勝てば、台湾は第2のウクライナになるリスクが高まり、候氏が勝てば、第2の香港と化す恐れがあるとみているが、どちらにしても日本への影響は避けられない。
アメリカ大統領選挙でも、トランプ前大統領が共和党の予備選挙や党員集会を勝ち抜き、本選でもバイデン大統領を破って返り咲いた場合、在韓米軍撤退やウクライナ支援停止に舵を切りかねない。そうなれば、国際社会の潮目が一気に変わってしまう。
そうなると、ほくそ笑むのは選挙がない中国や北朝鮮であり、大統領選挙はあってもプーチン一択しかないロシアである。
「どうする岸田文雄?」と自問自答している暇はない。大河ドラマ風に言えば、能登半島地震の被災地支援と政治改革を断行して『光る君』となれるのか、それとも表舞台から去るのか、注目の1年が幕を開けた。 
●岸田首相、能登半島地震「逐次投入」批判いとわず矢継ぎ早に対策 1/7
能登半島地震は8日で発生から1週間を迎える。1日の発災直後から岸田文雄首相が前面に立ち、一部野党による自衛隊の「逐次投入」との批判もいとわない姿勢で対応に当たった。ただ、道路の復旧など輸送面の課題は解消されておらず、被災者の避難生活の長期化が懸念される。今後も岸田政権の危機対応が問われる事態が続く。
「やるべきことは山積している。やれることはすべてやるとの姿勢で全力で進めてほしい」
首相は6日連続で開かれた7日の非常災害対策本部会議でこう訴え、救命救助、孤立状態の解消、水や電気などのライフライン確保や復旧を急ぐよう指示した。その後、記者団対し、今後の重点的な対応として、寒さ対策のための燃料や毛布などを確保していく考えを示した。
これに先立つ7日放送のNHK番組で首相は、これまでの対応について「まずは救命救助、並行して避難所物資などの支援に取り組んだ。今後、切れ目なく復興・復旧、生活、生業の再建に取り組む」と説明。9日には経費として令和5年度予算の予備費から47億4千万円の支出を閣議決定するなど対応を急ぐ。
自衛隊は1日夜から救命救助や生活支援、航空機による消防隊員、警察官を含む応援部隊の輸送支援、被害状況の情報収集などにあたった。2日には陸海空自による最大1万人規模の統合任務部隊を編成し、7日時点で約5900人を投入している。
自衛隊が小出しの「逐次投入」になっているとの批判もあるが、政府高官は「寸断された道を開き、人を増やしてやってきた。必要なところで必要な人員を投入している」と反論する。
道路の復旧を急ぐ一方で、渋滞解消のために自家用車の利用自粛を呼びかけ、必要な物資の輸送を進める。また、石川県による道路交通法に基づく交通規制を国として支援することも決めた。
首相は6日、避難生活の改善を図るため、避難所のプライバシー確保に加え、被災地外の宿泊施設を自治体が借り上げ避難所として活用するよう関係省庁に指示した。
今後に向け首相周辺は「日々新たに出てくる課題に一つ一つ対応していくしかない」と話している。
●岸田内閣の支持率27.1%で過去最低更新 不支持率も過去最高 JNN世論調査 1/7
岸田内閣の支持率が政権発足後過去最低だった先月の調査から、さらに1.8ポイント下落し、27.1%だったことが最新のJNNの世論調査でわかりました。不支持率も先月の調査から2.4ポイント上昇し、70.4%で過去最高となりました。
また、政党支持率では、自民党の支持が前月の調査から1.0ポイント上昇し、29.1%、日本維新の会は0.8ポイント下落し、4.8%、立憲民主党は0.3ポイント上昇し、5.5%でした。
●初の逮捕者、自民に衝撃 震災さなか、首相対応に追われる―派閥裏金事件 1/7
自民党安倍派などのパーティー収入を巡る政治資金規正法違反事件は同派の池田佳隆衆院議員が逮捕される事態となり、党内に衝撃が広がった。政権へのダメージを和らげるため、自民は池田議員を直ちに除名。岸田文雄首相(党総裁)は能登半島地震の対策会議をこなしつつ、対応に追われた。
「重く受け止めている。池田議員は除名する方針とした」。首相は7日、首相官邸での非常災害対策本部会議の後、防災服姿で記者団に自民の対応を説明。議員辞職を求める考えはないか問われたが、「とりあえず除名方針を確定した。党として決めている方針は以上だ」と語るにとどめた。
今回の事件での逮捕は初めて。岸田政権では昨年9月の秋本真利、同12月の柿沢未途両衆院議員=ともに自民離党=に続く逮捕者だ。党内には在宅捜査にとどまるとの見方もあっただけに、党幹部は「打撃は避けられない」と指摘。閣僚経験者の一人は「政権立て直しは難しい」と語った。
安倍派では池田議員と同様に数千万円規模の裏金化疑惑のある大野泰正参院議員の関係先も東京地検特捜部による家宅捜索を受けており、松野博一前官房長官ら「5人衆」をはじめとする派幹部・ベテランも任意で事情を聴かれた。二階派の二階俊博会長らが聴取されたことも分かっている。
待ったなしの震災対応に加え、首相は事件の展開にも備えなければならない状況だ。自民関係者は「捜査がどこまで広がるかが焦点だ」と戦々恐々。閣僚の一人は「ここまでくると派閥幹部立件も視野に入れなければいけない」と身構えた。公明党からは「大変なことになった。早く政治改革を打ち出した方がいい」(関係者)と自民に議論加速を促す声も出ている。
野党は勢いづいている。立憲民主党の泉健太代表は千葉県市川市で記者団に「由々しき事態だ」と指摘。「ここに至るまで首相が指導力を発揮してこなかったことも問題だ。除名も後追いだ」と批判し、裏金疑惑が浮上している全議員を早急に処分するよう求めた。
日本維新の会の音喜多駿政調会長はX(旧ツイッター)に「トカゲの尻尾切りで終わらせてはならない」と記し、検察当局は政治資金収支報告書の不記載・虚偽記載額の多寡にかかわらず立件すべきだと主張。共産党の小池晃書記局長は「国会には真相解明の責任がある。関係者の証人喚問は急務だ」と書き込んだ。
●裏金で初の逮捕 自民に衝撃 1/7
自民党安倍派などのパーティー収入を巡る政治資金規正法違反事件は同派の池田佳隆衆院議員が逮捕される事態となり、党内に衝撃が広がった。政権へのダメージを和らげるため、自民は池田議員を直ちに除名。岸田文雄首相(党総裁)は能登半島地震の対策会議をこなしつつ、対応に追われた。
「重く受け止めている。池田議員は除名する方針とした」。首相は7日、首相官邸での非常災害対策本部会議の後、防災服姿で記者団に自民の対応を説明。議員辞職を求める考えはないか問われたが、「とりあえず除名方針を確定した。党として決めている方針は以上だ」と語るにとどめた。
今回の事件での逮捕は初めて。岸田政権では昨年9月の秋本真利、同12月の柿沢未途両衆院議員=ともに自民離党=に続く逮捕者だ。党内には在宅捜査にとどまるとの見方もあっただけに、党幹部は「打撃は避けられない」と指摘。閣僚経験者の一人は「政権立て直しは難しい」と語った。
安倍派では池田議員と同様に数千万円規模の裏金化疑惑のある大野泰正参院議員の関係先も東京地検特捜部による家宅捜索を受けており、松野博一前官房長官ら「5人衆」をはじめとする派幹部・ベテランも任意で事情を聴かれた。二階派の二階俊博会長らが聴取されたことも分かっている。
待ったなしの震災対応に加え、首相は事件の展開にも備えなければならない状況だ。自民関係者は「捜査がどこまで広がるかが焦点だ」と戦々恐々。閣僚の一人は「ここまでくると派閥幹部立件も視野に入れなければいけない」と身構えた。公明党からは「大変なことになった。早く政治改革を打ち出した方がいい」(関係者)と自民に議論加速を促す声も出ている。
野党は勢いづいている。立憲民主党の泉健太代表は千葉県市川市で記者団に「由々しき事態だ」と指摘。「ここに至るまで首相が指導力を発揮してこなかったことも問題だ。除名も後追いだ」と批判し、裏金疑惑が浮上している全議員を早急に処分するよう求めた。
日本維新の会の音喜多駿政調会長はX(旧ツイッター)に「トカゲの尻尾切りで終わらせてはならない」と記し、検察当局は政治資金収支報告書の不記載・虚偽記載額の多寡にかかわらず立件すべきだと主張。共産党の小池晃書記局長は「国会には真相解明の責任がある。関係者の証人喚問は急務だ」と書き込んだ。
●安倍派池田衆院議員と秘書を東京地検が逮捕、党除名処分に−報道 1/7
自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーを巡る事件で、東京地検特捜部が7日、政治資金規正法違反の疑いで池田佳隆衆院議員(57)=比例東海=と秘書を逮捕したとNHKなど複数のメディアが報じた。岸田文雄首相は同日午後、逮捕を「承知している」と述べた。同問題では安倍派の現職国会議員が逮捕される事態に発展した。
NHKによると、池田議員は会計責任者だった政策秘書の柿沼和宏容疑者(45)と共謀し、2022年までの5年間に安倍派から約4800万円のキックバックを受けたにもかかわらず、自らが代表を務める資金管理団体「池田黎明会」の収入として記載せず、政治資金収支報告書にうその記載をしていた。
読売新聞8日付朝刊は、池田議員と同様に4000万円超に上る高額な還流を受けていた大野泰正参院議員(64)=岐阜選挙区=と谷川弥一衆院議員(82)=長崎3区=についても同法違反容疑で立件する方針を特捜部が固めたと報道。毎日新聞同日付朝刊は、両議員が容疑を認める意向を示していることが関係者の取材で判明したと伝えた。
ブルームバーグは東京地検と池田、大野、谷川各議員事務所に電話で連絡を試みたが、いずれも回答は得られなかった。
岸田首相は非常災害対策本部会議後に記者団に、池田議員の逮捕について「承知している」とした上で、「自民党所属の国会議員が逮捕されたことは、大変遺憾なことで重く受け止めている」と述べた。さらに池田議員を「除名する方針とした。党として強い危機感を持って政治の信頼回復に努めなければならないと改めて強く考えている」と発言した。
共同通信によると、安倍派は池田議員の逮捕を受け、「関係者の皆さまに多大なご心配とご迷惑をおかけし、心よりおわび申し上げます」との談話を発表した。引き続き捜査に真摯(しんし)に協力するとしている。自民党にコメントを求める電話をしたが、つながらなかった。
岸田首相は、最大派閥である安倍派の幹部を要職に起用することで政権基盤の安定を図ってきた。裏金化の疑惑を受けて松野博一前官房長官を含む全員を交代させたが、内閣支持率は21年10月の政権発足後の最低を相次ぎ記録。安倍派現職議員の逮捕は岸田政権に影響を及ぼす可能性がある。
信頼回復への取り組みが求められる中、岸田首相は1月4日の年頭記者会見で、自民党内に総裁直属の政治刷新本部を設置すると発表。外部有識者も含めて政治資金の透明化に向けた議論を進め、1月中にも中間取りまとめを行う方針も示した。
特捜部は安倍派「5人衆」と呼ばれる松野氏、西村康稔氏、高木毅氏の歴代事務総長と萩生田光一氏、世耕弘成氏のほか、派閥の座長を務める塩谷立氏からも任意で事情を聴いたと国内メディアが報じていた。政治資金規正法上、収支報告書の作成・提出義務がある同派の会計責任者は還流分の不記載を認めており、特捜部は同法違反容疑での立件を検討していたという。
国内メディアが行った直近の世論調査によると、岸田内閣の支持率はいずれも10−20%台に落ち込み、大半で12年12月に自民党が政権復帰して以降の最低を更新。一連の問題を受けて岸田首相の責任や指導力を問う声が強まっている。自民党の不支持率も上昇しており、派閥の解消を求める声も多い。

 

●能登半島地震の死者168人に 2次避難、降雪で一部延期 1/8
最大震度7を観測した能登半島地震は8日で発生から1週間となった。石川県内で午後2時までに168人の死亡が確認され、連絡の取れない安否不明者は323人。約400の避難所に約2万8千人が避難する。県は被災者を県内外のホテルや旅館などに移す「2次避難」を本格化させたが、行き先が決まるまでの一時滞在場所での受け入れを雪の影響で一部延期した。
死者は輪島市と珠洲市で各70人、穴水町18人、七尾市5人、志賀町と能登町が各2人、羽咋市1人。甚大な被害が出ている輪島市や珠洲市を中心に3300人以上が孤立状態にある。
インフラの復旧は進んでいない。石川県内で約1万8千戸が停電し、5万9千戸以上が断水している。滑走路が損傷した輪島市の能登空港は24日まで閉鎖される見通し。
被災地では雪が降り、8日午前8時時点で珠洲市13センチ、七尾市12センチ、輪島市9センチの積雪を記録。冷え込みも厳しく、朝の最低気温は七尾市で氷点下2・4度を観測した。
輪島市では地滑りの兆候などが見つかり新たに避難指示が出された。県は雨や度重なる地震で地盤が緩んでいるとして注意を呼びかけた。
避難所では低体温症などへの注意が必要となる。新型コロナウイルスの感染もみられ、断水や物資不足の中で感染防止を迫られている。一部自治体では、民間賃貸住宅を借り上げて無償で提供する「みなし仮設住宅」の受け付けが始まっている。
県も県内外の宿泊施設に被災者を移す2次避難の開始を見据え、一時滞在場所として金沢市の運動施設を確保。定員は約500人で8日から受け付けを開始した。ただ、降雪で道路状況が悪化した輪島市と珠洲市などの被災者については受け入れ延期を決めた。
●能登半島地震、石川県の死者168人に 安否不明者も大幅増 1/8
石川県は8日、能登半島地震の県内の死者が168人になったと発表した。
石川県の8日午後2時時点の集計では、安否不明者は323人。前日から大きく増えた。地震発生から1週間たった今も捜索活動が続いている。
ただ、被災地では悪天候が救助活動の妨げとなっている。大雨と雪による土砂崩れや建物倒壊への警戒が呼びかけられている。
死者の大半は、被害の大きかった輪島市(70人)と珠洲市(同)で確認されている。
死者は前日午後2時集計の128人から40人増えた。
安否不明者も前日同195人から大幅に増えた。輪島市が前日同86人から281人に急増。そのほか、8日午後2時時点で珠洲市(29人)、金沢市(5人)、津幡町(3人)などとなっている。
孤立状態の被災者も多数
マグニチュード7.6、最大震度7の地震は元日の夕方に発生。能登半島で多くの建物を倒壊させ、大規模な火災を引き起こした。
道路も甚大な被害を受け、石川県によると8日時点で、県内で3300人以上が孤立・要支援状態にある。緊急に開設された避難所で生活している人は約2万8000人に上っている。
安全上の理由などから自宅にとどまることができない被災者に対しては、自衛隊などが食料、水、毛布などの物資を届けている。
防衛省は7日、救援活動の支援のため自衛隊員約6000人を派遣したと発表した。
防衛省はまた、生存者発見に重要とされる「災害発生から72時間」が過ぎてはいるものの、救助を必要としている人がまだいると信じているとし、救出活動を続けるとした。
奇跡的な救出もみられる。珠洲市では地震発生からおよそ124時間たった6日夜、倒壊した住宅から90代の女性が救け出された。
被害が最も大きかった地域では、さらなる地震が続く中、警戒を続けるよう人々への呼びかけが行われている。
気象庁によると、1日から8日午後4時までに観測された震度1以上の地震は1221回に上っている。
日本は世界で最も地震活動が活発な国の一つ。能登地方では2020年末から活動が増えており、2023年末までの3年間で震度1以上の地震が506回観測されていた。
●能登半島地震1週間 被災地 積雪による建物倒壊 低体温症に注意 1/8
最大で震度7を観測した能登半島地震から8日で1週間ですが、能登地方ではいまだ活発な地震活動が続いています。
被害が大きかった能登半島では大雪のピークは過ぎましたが、相次ぐ地震で損傷を受けた建物では積雪の重みによる倒壊などに十分注意が必要です。
被災地では冷え込みが厳しく、ほとんど気温が上がらない見込みで、低体温症への対策も取るようにしてください。
大雪の影響、建物倒壊などの被害に注意を
能登半島地震で激しい揺れを観測した石川県をはじめ、北陸や新潟県では、上空の寒気の影響で局地的に雪が降りました。
石川県内の午後2時現在の積雪は珠洲市で12センチ、七尾市で10センチ、輪島市で8センチなどとなっています。
能登半島など北陸の大雪のピークは過ぎましたが、相次ぐ地震で損傷を受けた建物は積雪の重みで倒壊するおそれもあり、十分注意が必要です。
能登半島では地震の影響で各地で道路がひび割れたり陥没したりしていますが、路面が凍結しているところもあり、車を運転する際にはいっそうの注意をしてください。
雪はほぼやみ、晴れ間がのぞいているところもありますが、9日から10日にかけて能登半島などで再び雨が予想され、土砂災害やなだれなどには引き続き十分注意が必要です。
低体温症に注意を
避難生活の長期化や環境の悪化で健康への影響が懸念されている中、石川県では冷え込みが厳しくなっています。
8日朝の最低気温は七尾市でマイナス2.4度、輪島市でマイナス0.1度と氷点下の寒さとなりました。
日中も気温はほとんど上がらず、最高気温は、珠洲市と羽咋市、志賀町、宝達志水町で4度、輪島市と七尾市、穴水町、能登町、中能登町で3度などと予想されています。
過去の地震では避難生活の中で命を落とす災害関連死が多く発生しています。
低体温症に十分注意して、家族や周りに体調を崩している人がいないか声をかけあい、できるかぎり暖を取って定期的に体を動かすなど対策を心がけてください。
珠洲市中心部 雪は足首ほどの高さに
7日から断続的に雪が降り続けていた珠洲市では、8日朝、一面に雪が降り積もり、市の中心部では足首ほどの高さにまで達していました。
今回の地震で斜めに傾いた電柱や倒壊した建物の屋根にも厚く積もっています。
中心部の幹線道路はすでに除雪作業が行われていて、車がスピードを落としながら走行していますが、通りから入った住宅街の細い道路は除雪されていません。
ガソリンスタンドでは早朝から複数の車が給油のために並んで待つ中、従業員が雪かきをしている姿も見られました。
震度1以上の揺れ 1219回
能登地方やその周辺を震源とする地震活動は活発な状態が続き、震度1以上の揺れを観測した地震は、8日午後1時までに1219回にのぼっています。
気象庁は今後1か月程度は最大震度5強程度以上の揺れに注意するよう呼びかけています。
●「能登震災」から早や1週間/岸田官邸機能せず/林官房長官は報告待ち 1/8
支援遅れは「もはや人災」/「災害関連死」多発で支持率低下も
元日に能登地方を襲った能登半島地震は最大震度7を記録し、甚大な人的・物的被害をもたらした。その翌日には羽田空港の滑走路上で、被災地向けの支援物資を積んだ海上保安庁機と日航機が衝突し、海保職員5人の命が奪われる悲惨な事故も発生した。波乱の年明けを迎えた中で、岸田文雄首相のあまりにもお粗末な災害対応に批判の声が急速に高まっている。
自民党関係者は「政治資金パーティーをめぐる裏金問題で支持率が急低下した岸田政権にとって、今回の能登半島地震に正面から向き合えば、国民の支持を取り戻す機会にもなり得た」と指摘する。だが、震災から早や1週間が経過しても稚拙な対応ばかりが浮き彫りになり、災害ボランティアの受け付けすら整備できない有り様だ。被災地では「支援があまりにも遅すぎる」と政府に対する怒りが広がっている。「なぜ、ここまで災害対応が遅いのか。人命に ……
●能登半島地震、東日本大震災のような「復興増税」が出てくる余地はない 1/8
復興予算はどう調達されるのか
元日に能登半島地震、2日に羽田空港事故と2日続きで、激動の年を暗示するような事象が発生した。亡くなられた方々のご冥福を、心よりお祈りしたい。
さて、今年は1月台湾総統選、3月ロシア大統領選、4月韓国総選挙、6月欧州議会選挙、11月米国大統領選と世界中で政治が動く可能性がある。日本でも総選挙が行われるかもしれない。
その上で、能登半島地震の復興・復旧予算はどのように調達されるのか、東日本大震災の時のような増税につながる動きはないか、論じたい。
岸田首相が「予備費で40億円出す」と発言したところ、かつて東日本大震災では与党であったはずの野党の面々から「少なすぎる」と批判した。これは筆者も驚いた。
これは実務をやっていれば直ぐわかることだが、とりあえずの財政支出であり、全体の復興予算でない。当初段階では、人命救出が最優先であるために被害の全容を把握できない。被害の全容がわかるのは当分先であるので、現段階では復興予算を正確に見積もれない。
気象庁の震度データベースで1919年以降、震度7を記録したものを調べると、1923年9月1日関東大震災(当時首相は不在)、1995年1月17日阪神淡路大震災(当時村山富市首相)、2004年10月23日新潟県中越地震(当時小泉純一郎首相)、2011年3月11日東日本大震災(当時菅直人首相)、2016年4月14、16日熊本地震(当時安倍晋三首相)、2018年9月6日北海道胆振東部地震(当時安倍晋三首相)が起こっている。
今回の能登半島地震は震度7なので、これらと並ぶ大きな地震だ。これらの中で、阪神淡路大震災と東日本大震災の被害は群を抜いて甚大なものとして、今回の能登半島地震は熊本地震クラスと言えるだろう。
数千億円の予算規模に
熊本地震からの復興復旧で国の予算としては、2016年5月の1次補正で7780億円、8月の2次補正で4139億円(ただし予備費減額4100億円)、12月の3次補正で464億円(ただし予備費減額500億円)が計上されている。今回もおそらく数千億円程度だろう。
なお、1995年阪神淡路大震災のときも、2月に1兆223億円の補正予算が組まれている。2004年新潟県中越地震では、12月に1兆3618億円の災害対策費などの補正予算が組まれた。2018年北海道胆振東部地震では、他の豪雨災害などとともに10月に9356億円(地震への対応は1188億円)の補正予算が組まれた。
地震災害では、災害復旧事業としてまずは国の予備費が使われる。災害復旧事業とは、災害でこわれた道路や河川などの公共土木施設を復旧することだ。この作業は以下のように国ではなくまず都道府県で行われる。
まず、都道府県土木事務所の職員が現地を行き、また市町や地元の代表者などから報告された被害を確認する。市町の管理する道路や河川の被害については、それを管理している市町の職員がチェックしていく。
次にその被災した場所をどのように復旧するか、復旧にはどれくらいのカネが必要かを計算する。災害復旧事業は基本的に国の負担により行うものであるので、国に申請する。
地方自治体からの申請に対して、国の査定が行われる。査定は、国の防災関係の職員と予算関係の職員が一緒になって現地に行き、被害の状況や復旧の方法、復旧に必要な予算などを確認し行われる。地方自治体職員はそのときに被災した原因や復旧する方法を決めた理由などを説明する。その確認の結果、概ね復旧方法(工法)や復旧費用が決定されていく。
復興増税の余地はない
もちろん、予備費で賄えない場合には補正予算が組まれる。
熊本地震の時にも、こうした作業は1ヵ月間程度を要したので、今回も同じ程度の期間を要するだろう。今年度予算の予備費は5000億円、まだ4600億円残っているし、来年度予算の予備費も既に決まっている政府案では5000億円あるので、その範囲内になるだろう。まさに予見しがたい事態に対処するための予備費の対象になる。
もっとも、予備費を今回の能登半島地震で使ってしまう可能性もあるので、今年1月に開かれる通常国会に提出する来年度予算の予備費5000億円を1兆円に代えて提出するか、通常国会の冒頭で、今年度補正予算を予備費5000億円増で組んでおくなどの調整が必要だろう。
これまでも震度7クラスでは補正予算が1ヵ月程度後に組まれているので、後者のほうが望ましいが、いずれにしても、税収の上振れもあり、この程度の規模の補正予算では、とても復興増税なんて話が出てくる余地はないことは強調しておきたい。
自民、公明、立憲民主、日本維新の会、共産、国民民主の6党は5日の党首会談で、所属国会議員による能登半島地震の被災地視察について、当面自粛することを申し合わせた。
災害時に迷惑なのは、(1)目立ちたいだけの無能な政治家、(2)非常識なマスコミやYOUTUBER、(3)物見遊山な一般人だ。ところが、この時期にこうした常識を持ち合わせず、現地入りしたれいわ新選組の山本太郎代表もいた。
やってはいけない行動に出た者も
能登半島には志賀原発がある。2011年度以降、1号機、2号機とも発電を行っていないが、この原発をめぐり、火災が起きたというデマが氾濫した。よりによって、それを鳩山由紀夫元首相がポストした。
北陸電力の公表では、そうした事実はない。また、一部反原発活動家が、震災直後に志賀原発に問い合わせをしたが、こうした行動はやってはいけないものだ。
なお、北陸新幹線はすぐに普及したので、被災地の周辺のインフラが機能しているところもある。ただし、能登半島のいたるところの道路は寸断されたままだし、海岸線の変形により港湾も使えない状況だ。
次に羽田空港で起きた事故だ。これは何とも痛ましい事故である。羽田空港でJAL機と海保機が滑走路上で衝突したが、海保機は能登半島地震の救援物資輸送のためのフライトだった。
この事故で、海保機で5名が殉職したが、不幸中の幸いとして、JAL機の乗員乗客379人全員は無事緊急脱出できた。
空港管制と機長との交信はほぼ公開されており、事故直後から、JAL機には着陸許可が下りていたが、海保機が待機指示を待つのみだったのはすぐにわかった。
もっとも、これらの情報は公的なものでないので、交信記録以外の情報も含めて公的機関から公式情報が出てくるのは時間の問題だ。
岸田政権の対応はまずまず
ただし、海保機が滑走路に進入したときに警戒が出ていたはずだが、それを管制がなぜ見落としたのかなど、疑問点はまだ残っている。
いずれにしても、滑走路上の事故では十分な記録がなされているはずだから、それにそって事故の再発防止原因の究明が進むだろう。
いずれにしても、今年のスタートから前途多難であるが、岸田政権の対応はまずまずだ。1月の通常国会でしっかりとした補正予算を打ち出せれば、低下した政権支持率も反転する可能性もある。
●どうする立憲!? 自民“崩壊”の危機で野党第一党はどう闘うのか? 1/8
自民“崩壊”の危機の中、なぜ高まらない?野党第一党「立憲民主党」政権交代への期待の声。
自民党支持率が下がる中、上向くことがない「立憲」の支持率。2009年の政権交代の時と、今の野党第一党は何が違うのか?ポスト泉は誰なのか?立憲のイマを徹底解剖する。
「今こそ政治を変えるとき」なのに・・・上向かない立憲支持
「今こそ政治を変えるとき」
立憲民主党の顔・泉健太代表が力強く、候補者を募集するホームページでこう訴えている。しかし、最大の問題は当の立憲民主党に対する国民からの支持が高まらない点だ。
NNNと読売新聞の2023年12月の最新世論調査でも立憲の支持率は5%と伸び悩んでいる。さらに、2023年4月から11月までは野党第二党の日本維新の会に後塵を拝していた。
ある立憲幹部は「岸田内閣の支持率が下がっても、立憲への支持に繋がらない」と嘆いていた。なぜ、期待が高まらないのか?3つの視点から、立憲民主党の現在地と今後の展望を分析する。
【分析:その1】「野党分断」の1年だった2023年
2022年は、日本維新の会と国会で共闘するなど「野党協調」で成果が出た年だったが、23年は立憲が「与党との対決」だけでなく「野党との協力」にも悩み、「野党分断」の1年になってしまった。ポイントとなる2つの局面があった。
1つ目は、6月の内閣不信任決議案をめぐる対応だ。
立憲が対決姿勢を示すために提出に踏み切った一方で、維新・国民は反対にまわり、野党の足並みは崩れた。その背景には、通常国会の戦略をめぐり、立憲が日程闘争を含めた「全面対決路線」をとった事に対し、維新側が「昭和のやり方」などと批判したことがあった。ある立憲幹部は「野党がバラバラになったせいで、国会が与党ペースになってしまった」と振り返る。
2つ目は、臨時国会の補正予算案をめぐる態度だ。
秋以降、立憲は岸田内閣が打ち出した「所得減税」が不評だったことなどもあり、攻勢を強めた。維新との連携では、いわゆる“統一教会”の被害者救済をめぐる法律では「共闘」が進んだが、補正予算をめぐっては反対した立憲に対して、維新・国民は賛成にまわった。「野党分裂」になった形だ。ある立憲幹部は「野党が一致結束して、攻めきれなかった」と不満を漏らした。
【分析:その2】 2009年「政権交代」と今…違いは「受け皿」
自民党内では、今の危機的状況について「政権交代前の09年に似ている」と指摘する声が多く出ている。
2023年11月の世論調査では内閣支持率が24%になった。これは12年の政権復帰以来で最低の数字だ。2023年12月には自民党の支持率が28%となったが、30%を下回るのは麻生内閣以来14年ぶりだ。内閣と自民党の支持率が下がる中、09年との違いは野党第一党の支持率が上がらないことだ。
政権交代がおこった09年8月の「民主党」の政党支持率は32.1%。一方、最新(23年12月)世論調査での「立憲民主党」は5%。一番多いのは「支持政党なし」の48%で、他に野党で5%をこえる政党はない。
民主党時代に政務3役を経験したある立憲幹部は「あの頃の民主党には勢いがあった。今は野党の数が多く、立憲と維新が野党第一党争いをしている状態では、国民が求める受け皿になれていない」とこぼす。
【分析:その3】 ポスト泉は? 来年の代表選の行方
野党としての存在感があがらない立憲民主党。立憲の議員を取材する中でその原因としてよく出てくるのが、トップ泉代表への不満の声だ。
泉代表は就任から丸2年を迎えるが、党勢が拡大しない原因についてトップの「指導力不足」「発信力不足」を問う意見が少なくない。
“安定重視” 名前が挙がる重鎮2人
では、「ポスト泉」は誰なのか。取材でまず出る名前は重鎮2人、枝野幸男前代表と野田佳彦元首相だ。
枝野氏は旧・立憲民主党を立ち上げた「創業者」。知名度も高く、今年、「枝野ビジョン」の改定版を発表するなど存在感を示している。しかし、枝野氏は21年の衆院選で敗北し、代表を辞任した経緯がある。党内からは「共産党と関係が近いイメージから、他の野党との協力がしにくくなる」「時計の針が戻ってしまう」という厳しい意見も根強い。
一方、待望論が出ているのが元首相の野田佳彦氏。安倍元首相の追悼演説を契機に与野党から再評価する声が出ていて、ある立憲幹部は「野田氏は増税を成し遂げた首相であり、それは自民党にとっても一目置かれること。経験と人柄から、他の野党との関係もうまくやれる」と評価する。中堅・若手からも「野田氏が代表になって立憲を立て直してほしい」という声も少なくない。
“中堅躍進” 代表選を見据えるエース
中堅議員で名前があがる「ポスト泉」は誰か。
まずは、知名度も高く待望論が強いのは、前政調会長の小川淳也氏。密着したドキュメンタリー映画が話題となり、前回の代表選では泉代表とも争った。ある立憲幹部は「枝野、野田ではフレッシュ感がない。若くて、情熱があり、ビジョンを持つ小川氏しか次のリーダーはいない」と話している。この1年は目立つ存在ではなかったが「代表選に備えあえてじっとしていた1年だった」と立憲若手は分析する。
もう1人の有力候補は、同じく代表選で泉代表と争った西村智奈美氏。立憲が力を入れる、いわゆる“統一教会”問題対策の責任者を務め、救済法では与党側との交渉担当者として汗をかいた。西村氏を推す中堅議員は「彼女はかなり肝が据わっている」、別の立憲議員は「女性リーダーへの渇望感は高い」と、代表へ期待する声があがっている。
もちろん、泉代表自身も次の代表選では候補者の1人だ。ある中堅議員は「代表は次の衆院選で目標の150議席獲得を目指す」と意気込む。そして、「代表選までに解散総選挙がなければ、泉代表の続投だろう」(周辺)と“泉おろし”の動きを牽制する。
どうする立憲!? 次のカギは「政治改革国会」
2024年は立憲にとっても勝負の1年となる。1月下旬から始まるとみられる通常国会は、冒頭から「政治改革国会」になるとみられる。ここで、立憲が政府与党をどう追及し、政治改革に向けた姿勢をどこまで示せるかが問われている。
立憲は、すでに提出している法案をベースに、企業団体献金禁止や収支報告書のネット公開の義務化などを求める方針だ。ある立憲幹部は「企業団体献金禁止を自民党にのませるのは高いハードルがある。一方、小幅な改正に終われば『野党も保身に走った』と厳しく批判される。どこまで攻めるのか難しい」と頭を悩ませる。
「政治とカネ」で最大の危機を迎えている、岸田自民党。立憲民主党が「自民党のピンチ」を「チャンス」として引き寄せ、さらに、国民の支持に繋げることができるのか。立憲民主党にとっても大きな1年となりそうだ。
●若狭勝弁護士 自民裏金事件、池田議員の今後を推測 1/8
元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士が8日、フジテレビの情報番組「めざまし8」にVTR出演。自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーを巡る事件で東京地検特捜部が7日、政治資金規正法違反の疑いで衆院議員池田佳隆容疑者(57)=比例東海=と政策秘書の柿沼和宏容疑者(45)を逮捕したことに言及した。
岸田政権を揺るがす一連の事件で逮捕者が出るのは初めて。現職議員の逮捕に発展したことで、捜査は新たな局面を迎えた。特捜部は還流させた派閥側も調べ、裏金づくりの実態解明を本格化させる。
両容疑者の逮捕容疑は、共謀して2018〜22年、派閥から計4826万円の還流を受けたのに、その額を除いた虚偽の収入を資金管理団体「池田黎明会」の政治資金収支報告書に記入した疑い。安倍派の裏金は5年間で6億円近くに上る可能性があり、所属議員99人の中で池田容疑者側は高額だった。岸田文雄首相は「大変遺憾なことであり、重く受け止めている」と官邸で記者団に述べた。自民党は7日付で池田容疑者を除名処分にした。
若狭氏は、池田議員の起訴の可能性について「正式起訴で禁錮2年の求刑ではないか」と言い、「有罪なら執行猶予付き3年になる」と自身の見解を述べた。捜査のポイントとしては「還流金額が大きく、派閥内で誰がどのように関与しているかなど裏金システムに精通している可能性がある」とした。
●れいわ山本太郎氏「現場を見ろ 安心させろ」 能登地震の課題指摘、提案 1/8
5日に能登半島地震の被災地に入ったことを報告していた、れいわ新選組の山本太郎代表は8日までに、自身のX(旧ツイッター)を更新し、現地の深刻な実態や、国や石川県に対する要望を4つの投稿に分けて長文で投稿した。
与党や主要野党が、当面の間の所属国会議員の現地視察を見合わせる方針を示す中、山本氏は「現場を見ろ。安心させろ」という項目も記し、現地の現実を確認して支援体制を構築すべきとの認識を訴えた。
山本氏は、甚大な被害が報告されている能登町、珠洲市に入ったとし「当事者の声を約二日間に渡り、様々聞きとりした」と投稿。その中で、岸田文雄首相を含む国会議員の現地入りが見送られていることへの思いを、被災者に聞いたとして「『意味がわからないんですけど』『どうしてですか?』『ヘリで来れば良いじゃないですか』との意見が相次いだ」と指摘した。 「総理や政治家が役人からの報告やテキストだけでわかった気になり被災地のことを決めていくことへの不安感ではないだろうか。この極限状態を前に、現場を自分の眼で見ずに知らずに政治決定を行えるというなら、AIが代行すれば良いのではないか?」とも指摘。「AIなら裏金問題や一部の者だけへの忖度も、権力維持のことしか考えない振る舞いもしないだろう」と、自民党の政治資金問題のさなかにもある政権与党を皮肉るような記載もあった。
岸田首相に対して「目の前で困っているのは血の通った人間で、この国に生きる大切な宝だ。総理の被災地訪問の見合わせに対して、現場を直接見て、被災者の声を聞いて、しっかり取り組むと約束をして欲しい、との声が多かった。心配するな。国がちゃんとやる、と能登半島で約束をして、不安の中にいる能登の人々を安心させていただきたい」と提案。被災地の実態を自身で確認して、不安を払拭(ふっしょく)させる対応を取るよう、強く求めた。
投稿は「以下、総理(@kishida230)県知事(@hase3655)に提案する。特に県知事には政府に強く要求いただきたい」と、岸田首相と馳浩県知事のXアカウントを記した上で書き出されていた。「大幅増員のプッシュ型支援」「ニーズを聞きとるではなく、支援メニューを示せ」「いつまでに出来るかの見通しを示せ」「最悪の事態を想定しているか」など、複数のテーマに沿って実態報告と提案を記した。
●G7の主要国が指導力を失い、G20も機能しなくなった『Gゼロ状態』 1/8
なぜ世界で“リーダー不在”が広がっているのか
裏金問題などで国民の不支持は高まり、足元が揺らぐ岸田政権。しかし世界を見渡すと、アメリカ・バイデン政権やイギリス・スナク政権の支持率は低迷しており、G7の首脳たちも政権維持に汲々としている。
「確たるイデオロギーに基づいて国を司り、国際的なリーダーシップを発揮できる為政者は見当たらない」と指摘するのは経営コンサルタントの大前研一氏。いま、なぜ世界で“リーダー不在”が広がっているのか? 大前氏が解説する。
2024年の世界と日本はどうなるか? 残念ながら明るい展望は開けない。その理由は、リーダーシップのある指導者が世界にも日本にもいないことだ。
日本では、前号で指摘したように、岸田文雄首相が経済愚策を連発して内閣支持率が20%前後に落ち込んでいるにもかかわらず、それに代わる新リーダーは見当たらない。自民党の政治資金パーティー裏金問題もあって“日本丸”は羅針盤を失い、どこに向かっているのかわからない状況だ。
世界を見渡しても有力なリーダーはいない。
2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻に加え、2023年はイスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとの間でも戦闘が起きた。しかし、これを誰も止めることができない。国連は機能不全で存在意義がなくなっている。
従来なら“世界の警察官”を自任してきたアメリカがリーダーシップを発揮すべきである。ロシアのプーチン大統領の暴走にストップをかけ、ウクライナのゼレンスキー大統領を交渉のテーブルにつかせられるのはアメリカだけだろうが、実際は“武器商人”と化して火に油を注ぐだけだ。
イスラエル・パレスチナ問題も、1993年に当時のクリントン大統領の仲介によって、イスラエルのラビン首相とパレスチナ解放機構(PLO)のアラファト議長との間でパレスチナが国家を樹立してイスラエルとの「2国家共存」を目指す「オスロ合意」が成立したのだから、アメリカはイスラエルにパレスチナ国家の樹立を支援するよう求めて共存を実現しなければならない。しかし、どちらの戦争解決も、バイデン大統領の指導力では不可能だ。
国連も1947年に「2国家共存」を決議していながら、何も決められないでいる。パレスチナ自治区の紛争地域に国連軍を派遣するなど、やるべきことはたくさんあるはずだ。
ネット言論の拡大が影響?
いま世界は、アメリカの政治学者イアン・ブレマーが2011年に指摘した「Gゼロ」(G7の主要国が指導力を失い、G20も機能しなくなった国際社会)の状態が、ますます加速して混迷を深めている。
G7の首脳は岸田首相とバイデン大統領だけでなく、イギリスのスナク首相もドイツのショルツ首相もフランスのマクロン大統領も指導力のない小粒なリーダーで、政権維持に汲々としており、いずれも“次”はなさそうだ。むしろプーチン、習近平、北朝鮮の金正恩のような国際秩序を攪乱する独裁者がいるだけに、「Gゼロ」どころか「Gマイナス」とも呼ぶべき状態になっている。
なぜ、このような“リーダー不在”が世界的に広がっているのか? その疑問を解消する明確な理由はわからないが、もし大きな原因があるとすれば、ネットやSNSの影響だろう。
ネットメディアやSNSの発達に伴い、既存のマスメディアとは異なる言論・情報空間が拡大して世界中で人々は賢くなっているが、その人たちの不満や怒りを集約化して受け皿になれるだけの政治家や政党はどこの国にも存在しない。
また、情報の拡散・共有が容易になったため、人々はネットメディアやSNSに自分の意見を投稿することでストレスを発散し、その空間の中で早々と不満や怒りを収めるという“熱しやすく冷めやすい”状況になっている。まさに「人の噂も75日」だ。このため、人々の関心は短期間で次の問題に移るようになり、そのスピードに政治は全く対応できていない。
さらに、世界は情報だけでなく、ライフスタイルも共通化している。たとえば富裕層の人たちは、欧米諸国であれアジア諸国であれ、自分たちの生活を妨害されない限り、政治には「我関せず」だ。
だから、どこの国でも政治家は選挙対策で人口の大多数を占める中間所得層以下の人々を対象にしたバラ撒き政策ばかり打ち出しているわけだが、それは結局、右傾化と財務の悪化を伴うポピュリズム(大衆迎合主義)でしかない。
1989年の冷戦終結後は「イデオロギーの終焉」と言われたが、いまや世界のどこにも確たるイデオロギーに基づいて国を司り、国際的なリーダーシップを発揮できる為政者はいない。だから「Gゼロ」が加速しているわけで、それは今後も続くだろう。したがって我々は当面、自分たちの生活防衛に徹しなければならない、ということになる。
●「派閥とカネ」問題で問われる自浄能力 指導力の発揮が試される岸田首相 1/8
「防衛力の抜本的強化」や「次元の異なる少子化対策」など国家的な課題が山積する中、またしても「政治とカネ」「派閥とカネ」の問題が自民党を揺るがしている。国民の政治不信は頂点に達し、岸田政権の政治運営に赤信号が灯る。かといって野党に対する国民の失望も重なる。2024年はグローバル世界も先行き不透明で、企業や国民も必死に生き抜かねばならないときだけに、政治への怒りは強い。
「裏金」疑惑が直撃
自民党内に衝撃が走っている。党内の各派閥が例年開催している政治資金を集めるパーティーを巡り、収入を政治資金収支報告書に適切に記載していなかったとして、大学教授が告発したのだ。
政治資金規正法は政治活動が国民の不断の監視の下に行われるようにするため、政治資金に関する収支の公開と授受の規正を定めている。パーティー券については20万円を超えて購入した購入者・団体の名前や金額を収支報告書に記載しないといけない。
告発は購入者が支出を報告しているのに派閥側には収入の記載がないケースがあったとしている。2018年から21年までの収支報告書で総額約4000万円にのぼるとされる。
その内訳は、最大派閥の清和政策研究会(安倍派)が約1900万円だったほか、志帥会(二階派)約900万円▽平成研究会(茂木派)約600万円▽志公会(麻生派)約400万円▽宏池会(岸田派)約200万円─という。不適切な記載が常態化していたと受け止められても仕方ない。
自民党幹事長の茂木敏充はこうした状況を受け、それぞれの派閥の責任者に対し「収支報告書を適切に訂正すること。そして必要があれば説明し、再発防止に努めるように」と指示した。各派閥は相次いで報告書を訂正するなどの対応に追われた。
だが、それだけでは終わらなかった。安倍派が所属議員に課したパーティー券の販売ノルマを超えた分の収入を議員側にキックバックしていた疑惑が浮上した。収支報告書に記載されない「裏金」とされる。総額は約1億円に達するとみられ、東京地検特捜部は政治資金規正法違反(不記載・虚偽記載)容疑で調べているという。
自民党総裁で首相の岸田文雄は12月4日の党役員会で「政策グループ(派閥)の活動について、国民に疑念が持たれるとすれば遺憾であり、状況を把握しながら党としても対応を考えていく」と発言。茂木も役員会後の記者会見で「概要が把握できて問題点も明らかになってくれば、党として対応し、再発防止を図る取り組みを進めたい」と語った。
分裂する野党
自民党総務会長で近未来政治研究会(森山派)会長の森山裕は11月30日、岸田、茂木、副総裁の麻生太郎らと党本部で会談した後、派閥会合でこう語っていた。
「今後も色々な動きが続くと思う。今は自民党、岸田政権にとって極めて大事な時だ。一致団結して政権をしっかり支え、自民党の将来を間違いのない方向に持っていくことが大事だ」
岸田政権は物価高への対応で後手を踏み、政権浮揚の「切り札」として打ち出した所得税・住民税の定額減税も空振りに終わった。さらに、3人の副大臣・政務官の「辞任ドミノ」も起きた。森山の言葉通り、今度は「政治とカネ」の問題が自民党を直撃した。岸田にとって「弱り目に祟り目だ。政権運営に大きな痛手だ」(党中堅)といえる。
野党にとっては格好の「敵失」といえる。それにもかかわらず、岸田政権を厳しく追及し、追い込むだけの勢いはみられない。逆に野党間の足並みの乱れが露呈した。
立憲民主党などの野党は23年度補正予算案の国会審議で、自民党各派閥のパーティー券問題を巡り「毎年毎年、一定額が不記載になっている。組織的継続的と言わずして何と言うのか」などとただした。
それに対し、岸田は「報告を受けている範囲で『裏金』はなかった」といった答弁を繰り返し、議論が深まることはなかった。野党側の決定打を欠く、追及の甘さがあったといえる。
その結果、審議は混乱もなく淡々と進み、物価高対策を柱とした総額13兆円超の23年度補正予算は11月29日に成立した。採決では立憲民主党や共産党は反対したものの、日本維新の会と国民民主党は賛成に回り、野党が一枚岩でないことが鮮明になった。
日本維新の会は熱心に取り組む25年大阪・関西万博の会場建設費の一部が補正予算に盛り込まれていることから最終的に賛成に回った。国民民主党はガソリン税の一部を軽減する「トリガー条項」の凍結解除を与党と協議することを取り付けたためだった。
立憲民主党代表の泉健太は補正予算成立を受けて「万博、トリガーという弱みを握られて、予算に対し明確な意思表示ができなかった。大変残念だ」と語り、日本維新の会と国民民主党を牽制した。
さらに、岸田政権と対峙すべき野党勢力の溝が浮き彫りになる中で、国民民主党代表代行の前原誠司が党の方針に反発して離党届を提出した。そして、新党「教育無償化を実現する会」を結成することを表明。「非自民・非共産」勢力を結集させ、政権交代につなげる考えを明らかにした。
しかし、「前原新党」は同じ教育無償化を訴えてきた日本維新の会への合流を見据えた動きとされている。実際、前原は日本維新の会と事前に協議を重ねていたという。
国民民主党幹部は「仲間よりも他党と相談する。信念のない自分の就職活動だ」と批判した。今後、代表の玉木雄一郎らが自民党との連携を加速させるきっかけになりかねず、「前原新党は野党再編の起爆剤にはなりえない」との見方が支配的になっている。
野党勢力が分裂し、小政党化してしまっては、自民党との対立軸はぼやけてしまう。再結集が実現しなければ、政権交代などは絵に描いた餅に過ぎない。自民党が立ちすくむ中で永田町全体に閉塞感が漂っており、国民の政治不信が強まっていくことになる。
法改正の検討を
岸田はこれまで「政治の責任を果たすべく具体的な課題に向けて一つひとつ結果を出す」「先送りできない課題に臆することなくしっかり判断し、結果を出していく」などと訴えてきた。
岸田にとって、パーティー券問題が直撃した最大派閥・安倍派の影響力が弱まれば自分のやりたい政策を進めやすくなるだろう─。そんな見方も出ている。
だが、そう簡単ではない。多くの安倍派幹部が政権の主要ポストに就いているだけでなく、パーティー券問題が派閥単位の問題で収まらず、「党の体質だ」と冷ややかな視線がそそがれるからだ。
内閣支持率が過去最低にまで落ち込み、政権運営の「危険水域」とされる水準になっている一方で、自民党の支持率は比較的高い水準で推移してきた。それだけに、政党支持率まで急落することになれば、党総裁としての岸田の責任が問われることは必至だ。「遺憾だ」などと派閥任せの対応は許されない。
岸田は11月に入って、憲法改正や安定的な皇位継承など自民党を支える保守層が関心を寄せる課題に率先して取り組む姿勢をアピールしてきた。
臨時国会の答弁では、目標に掲げてきた「党総裁任期中の憲法改正実現」について、24年9月末の今任期中のことだと明言し、改憲論議を前進させる決意を打ち出した。政党支持率を意識して保守層をつなぎ留める狙いだとされる。
とはいえ、国民の支持を追い風にしなければ、「防衛力の抜本的強化」や「次元の異なる少子化対策」といった看板政策の遂行や、「デジタル行財政改革」などの大胆な改革断行はできない。特に国民投票で過半数の賛成が必要になる憲法改正は、そこに突き進むだけの「体力」と、国民の理解を得るための「信頼」は不可欠となる。
何度となく繰り返される「政治とカネ」の問題は、さかのぼれば自民党が下野し、「55年体制」が崩壊した1993年以前からあった。当時は選挙制度の変更や政党交付金の導入などの「平成の政治改革」につながった。
約30年が経ち、またしても「政治とカネ」「派閥とカネ」の問題の波紋が大きく広がった。与党内からは「抜け穴の多い政治資金規正法違反の罰則の強化をすべきだ」などの声が上がる。森山も5日の記者会見で「(政治資金規正法は)国民の皆さんに理解されるものでなければならない。その視点からの議論が必要だ」と述べ、法改正の可能性に言及した。
もっとも野党側にも危機感が募る。「自民党だけの問題ではない。政治不信の最たるものだ。政治家1人ひとりが真剣に考えないといけない」といった受け止めも広がる。
信なくば立たず
岸田は12月7日、首相官邸で記者団にこう語った。
「総理総裁の任にあるうちは派閥を離れるのが適切な対応であると考えた。私自身が先頭に立って、政治の信頼回復に向けて努力したい」
派閥パーティー開催を当面自粛することや、忘年会や新年会といった派閥の行事を自粛することを決めている。さらに、自身が率いる岸田派を離脱することで、中立的な立場で指導力を発揮しようと考えたようだ。
野党側は「自民党は徹底調査し、事実を明らかにしなければならない」(立憲民主党代表の泉健太)、「首相は自民党総裁でもある。責任は極めて重大」(共産党書記局長の小池晃)などと引き続き追及する構えだ。
だが、疑惑の徹底解明のためには、自民党との対立軸を明確に示すことができる強力な野党勢力の結束が必要となる。しかも、パーティー券問題が野党側に飛び火する可能性も否定できず、そうなれば国民の政治不信はピークに達する。
岸田は就任以来、最大の正念場を迎えている。国民の政治不信を払拭するため強力なリーダーシップを発揮すべきときといえる。
野党側は「自民党は徹底調査し、事実を明らかにしなければならない」(立憲民主党代表、泉健太)、「首相は自民党総裁でもある。責任は極めて重大」(共産党書記局長の小池晃)などと引き続き追及する構えだが、徹底解明のためには、自民党との対立軸を明確に示すことができる強力な野党勢力の結束が必要となる。
与野党とも、それができなければ、政治の自浄能力が発揮されず、永田町の閉塞感はますます強まることになる。
●物価上昇を上回る賃上げ実現へ “実感伴う成果を” 岸田首相 1/8
物価の上昇を上回る賃上げの実現に向け、岸田総理大臣は2024年、中小企業や国民の減税措置などの政策を集中的に進める方針で、国民の実感を伴う成果につなげたい考えです。
岸田政権が賃上げを最優先課題に位置づける中、連合の調査では、2023年の春闘での賃上げ率は平均で3.58%と、およそ30年ぶりの高水準となったものの、物価高騰を背景に実質賃金は依然、マイナスの状況が続いています。
岸田総理大臣は、2024年に物価の上昇を上回る賃上げを実現させたいとして
・春闘にかけて経済界への働きかけを強めるとともに
・従業員の給与を引き上げた中小企業の法人税を減税する「賃上げ税制」を拡充します。
また
・住民税の非課税世帯に7万円を給付するほか
・6月以降は所得税などの定額減税を行うなど
政策を集中的に進める方針です。
政府は、減税などの一連の政策効果を加えた来年度の所得の伸びは物価上昇率を上回るプラス3.8%になると試算しています。
岸田総理大臣は先月下旬、経済界の関係者を前に「改革努力が花開こうとしている。新たなステージのドアを開けられるよう政策を総動員していく」と述べていて、国民の実感を伴う成果につなげられるかが焦点となります。
●岸田首相 「解散は信頼回復後に考えたい」発言にあふれる絶望… 1/8
1月7日、岸田文雄首相は、『日曜討論』(NHK)に出演。政治とカネをめぐる問題について「率直にお詫びを申し上げなければならない。私自身が先頭に立って信頼回復に努めなければならない」と謝罪した。
また、衆院解散の時期について、「まずは信頼回復、次は政策の実現。いまはそれに尽きる」とする一方、「それをおこなった上でその先について考えていきたい」と語った。岸田首相の発言は、前日の6日に収録された。
「岸田首相は1月4日の年頭会見で、『政治刷新本部』を自民党内に立ち上げると表明しましたが、派閥について『政策集団』という表現で通し、『政策集団というのは、政策を研鑽し、若手を育成することを目的としていたはず』と語るなど、政治資金パーティーの禁止や派閥の解消には後ろ向きです。
1月7日、安倍派所属の衆院議員、池田佳隆容疑者の逮捕を受け、囲み会見に応じた岸田首相は、『大変遺憾なことであり、重く受け止めている』と語る一方、記者団から議員辞職を求めるかどうか問われると『とりあえず除名方針を確定した』と述べるにとどめています」(政治担当記者)
前兵庫県明石市長の泉房穂氏は1月7日、自身の「X」にこう書きこんだ。
《素朴な疑問だが、「大変“遺憾”」とのことだが、何が“遺憾”なんだろう。裏金を受け取っていたことが“遺憾”なら、金額の多い少ないにかかわらず、安倍派の90人に対しても、処分をすべきではないのだろうか。“トカゲのしっぽ切り”って言葉が思わず浮かんできてしまう・・・》
「岸田首相は1月4日の年頭会見後、『BSフジLIVE プライムニュース』に生出演し、ときおり笑顔を見せながら9月の総裁選の抱負を語りました。元旦に能登半島が地震に襲われ、救援もままならない状況で、『なぜいま生放送に出るのか』と大きな批判を集めました。
さらに翌5日には、経済3団体、連合、時事通信社の主催でおこなわれた3つの新年会に連続で出席。こちらも、地震で『非常事態宣言』が出るなかでふさわしい行動なのか、疑問の声が出ました。
1月6・7日、JNNが実施した世論調査では、岸田内閣の支持率は前月から1.8ポイント下落し、27.1%と過去最低を更新。岸田首相が立ち上げる『政治刷新本部』に『期待しない』が59%。自民党の派閥を今後どうすべきかについては、『解体すべき』が52%にのぼっており、信頼回復は遠い道のりとなっています」(同)
岸田首相が「解散は信頼回復後に考えたい」と発言したことに、SNSでは《信頼回復は無理でしょう》と、絶望感が広がっている。
《【悲報】信頼回復しないと「解散」しない!? まさに生き地獄》
《「解散は信頼回復後に考えたい」って、裏金事件で捕まったらサッサと除名処分にしてトカゲの尻尾切りする奴らに信頼回復出来るとでも思ってんのか!》
《岸田政権が続く限り信頼回復は到底無理でしょう。つまり衆院議員の任期が終わる2025年の秋まで解散しないつもりでしょうか?たとえ内閣支持率が一桁に下落しても?》
支持率下落で解散を打てない岸田首相と、「岸田下ろし」にも動けない自民党。そんな状況がこのまま続くとなれば、SNSで絶望があふれるのも当然だろう。
●世界競争力ランキング2023で過去最低となった日本 1/8
世界の主要な64カ国・地域を対象に「経済実績」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」の4項目を評価する指標をもとに発表される、世界競争力ランキングで2023年、日本は過去最低となる35位となった。なぜそこまで日本の競争力は落ちてしまったのか。
日本は64カ国中35位
IMD(国際経営開発研究所)が、世界64カ国を対象にした2023年の「世界競争力ランキング」を6月に発表した。日本は、昨年より1つ順位を下げ、過去最低の世界第35位になった。
ところが、このニュースはあまり話題になっていない。日本の地位が低いことには、もうニュースバリューがなくなってしまったのだろうか?
もちろん、これは日本人にとって愉快なニュースではない。知らないで済ませられるならばそうしたいと、日本人であれば誰もが考えるだろう。しかし、だからといって、このニュースに耳をふさいではならない。
アジア太平洋地域で日本より下位の国は、インド、フィリピン、モンゴルのみ
アジア太平洋地域での日本の競争力の凋落ぶりには、驚くばかりだ。ここでの日本の順位は、14カ国・地域中で第11位だ。
第1位は、シンガポール(世界第4位)。続いて、第2位が台湾(世界第6位)、第3位が香港(世界第7位)だ。そして、中国は第5位(世界第21位)、韓国は第7位(世界第28位)だ。
日本より上位にはほかに、マレーシア、タイ、インドネシアなどが並ぶ。日本より下位は、インド、フィリピン、モンゴルだけなのである!
1989年の第1回のランキングでは、日本は世界第1位だった。その後、低下はしたものの、96年までは5位以内を保っていた。しかし以降順位を下げ、2023年には過去最低の順位となったのだ。
「政府の効率性」と「ビジネスの効率性」が低い
このランキングは、ここまで見てきた総合指標以外に、次の4つの指標で評価が行われている。
「経済状況(国内経済、雇用動向、物価などのマクロ経済評価)」では、日本は世界第26位だ(前年は第20位)。
「政府の効率性(政府の政策が競争力に寄与している度合い)」は、2010年以降、第40位前後と低迷しているが、23年は第42位にまで低下した(前年は第39位)。
「インフラ(基礎的、技術的、科学的、人的資源が企業ニーズを満たしている度合い)」では、第23位(前年は第22位)だった。
「ビジネスの効率性」は、昨年の第51位から第47位に上昇したが、低い順位であることに変わりはない。
このことから、「政府の政策が適切でないためにビジネスの効率性が低下する。その結果、全体としての競争力が低下する」という状況に、日本が落ち込んでしまっていることが分かる。
政府の能力の低下が浮き彫りに
政府の政策が適切でなく、非効率的であることは、さまざまな面で指摘される。
マイナンバーカードをめぐる迷走ぶりを見ると、いまの日本政府は基本的なことが実行できていないことがよく分かる。今後、マイナ保険証に関してさらに大きな混乱が発生することが懸念される。
デジタル化が経済の効率化のために必要なことは明らかだ。しかし、それを実現するための基本的な制度を日本政府は整備することができていないのだ。
マイナ保険証のような技術的問題だけではない。政治的な政策判断の問題もある。少子化対策のように効果が疑わしい政策に多額の資金を投入しようとしている。しかも、そのための財源措置を行っていない。防衛費も増額するが、財源の手当てがされていない。
日本政府は迷走しているとしか言いようがない。
そして、このような無責任な政府に対して、野党が有効なチェック機能を果たしていない。日本の野党勢力は、2009年に政権を取って政権担当能力がないことを露呈してしまった。その後は批判勢力としてさえも機能していない。民主主義国家で、野党がこれだけ弱い国は、世界でも珍しい状況ではないだろうか?
どうしようもないことだと諦めてはいけない
我々の世代は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と世界から称賛された時代を経験した。そのため、日本がインドネシアやマレーシアに抜かれてしまったと聞けば、異常事態だと捉える。そして、早急に対処が必要だと考える。
しかし、いまの日本では、諦めムードが一般化してしまったようだ。本章の最初に述べたように、「世界競争力ランキング2023」のニュースは日本ではほとんど話題にならなかった。しかし、実はこれこそが、最も危険なことだ。
なぜなら、少子化対策を行っても、そして、それが仮に効果を発揮して出生率が上昇したとしても、日本の人口高齢化は、間違いなく進行するからである。
それによって、経済の効率性は低下せざるを得ない。その厳しい条件下で人々の雇用と生活を支え、社会保障制度を維持していくためには、生産性を引き上げ、日本の競争力を増強することがどうしても必要だ。したがって、決して諦めてはならない。いまの状況は当たり前のことではなく、何とかして克服しなければならないのだ。
実際、一度は衰退したにもかかわらず復活した国の例は、現代にもいくらでもある。その典型がアイルランドだ。アイルランドは製造業への転換に立ち後れ、1970年代頃までヨーロッパで最も貧しい国の一つだった。しかし、IT化に成功して、90年代以降、奇跡的な経済成長を実現した。2023年の世界競争力ランキングで、同国は世界第2位だ。
日本人の基礎学力は世界のトップクラス
日本人の能力がわずか30年間でこれほど急激に落ちてしまったはずはない。実際に、OECD(経済協力開発機構)が行っているPISAという小中学生を対象にした学力テストの結果を見ると、これが分かる。
直近の2018年調査では、数学的リテラシーは世界第6位、科学的リテラシーは第5位だった。読解力は前回から下がったものの、OECD平均得点を大きく上回っている。このように、日本人の基礎的な学力は、依然として世界トップクラスなのである。
日本人は、このように高い潜在的能力を持ちながら、それを発揮できない経済・社会環境に置かれてしまっているのだ。
言い換えれば、かつて強かった日本が凋落した原因は、1990年代の中頃以降に取られた政策の誤りにある。
1990年代の中頃以降、政策面で何が起きたかは明らかだ。円安政策を進めたのである。これによって、企業のイノベーション意欲が減退した。
企業がイノベーションの努力を怠ったために、日本人が能力を発揮する機会を失ってしまった。これこそが、日本経済衰退の基本的なメカニズムだ。
この意味で、いまの日本経済の状態は異常なのである。そして、政策のいかんによって変えられるものなのだ。
●「日本でMMTをやってもいいことは起きない」「アメリカではすでに失敗」 1/8
賃金は上がらないのに物価高が止まらない。経済学者の野口悠紀雄氏いわく、日本の円安・物価高は世界的な情勢の影響を受けているからだという。だがそれに対しての有効な策を日本政府が打てていないことも事実だという。
補正予算で国債発行額が増加するパターンが定着
2022年度第2次補正予算案における一般会計の追加歳出は28.9兆円。この約8割に当たる22.9兆円は国債の増発で賄う。つまり、財政支出の大部分は国債発行で賄われるわけだ。
新型コロナウイルスの感染拡大に対処するため、さまざまな財政措置がなされた。その結果、補正予算で巨額の国債発行を行うというパターンが定着してしまったように見える。
財務省「国債発行計画」によると、2020年度当初予算における国債発行額は32.6兆円だったが、第2次補正後で90.2兆円、第3次補正後には112.6兆円となった*1。100兆円超えは、初めてのことだ。
2021年度では、当初予算で43.6兆円。それが補正予算で22兆円増加され、65.7兆円となった。
こうした財政運営がなされた結果、国債残高は増加している。財務省の資料によると、普通国債*2の残高は、2015年度末には805兆円だったが、2020年度末には947兆円となった。2022年度末には、今回の追加で1042兆円になる。
こうした急激な国債残高増が深刻な問題を起こすことにはならないかと、誰でも心配になるだろう。
*1 財務省の国債発行予定額では、新規国債のほか、借換債を含めた国債発行額も示されている。本稿の「国債発行額」は、新規国債発行額を指す。
*2 建設国債や赤字国債など。財投債を含まない。
MMTは国債で財政支出をいくらでも賄えるというが……
MMT(Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)という考えがある。
これは、「政府が国債発行によって財源を調達しても、自国通貨建てであればインフレにならない限り、問題ではない」という主張だ。ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授などによって提唱された。
国債の市中消化を続ければ、国債発行額が増加するにつれ金利が上昇する。そして、国債発行には自然とブレーキがかかってしまう。
これを避けるためには、中央銀行が国債を買い上げる必要がある。すると今度は、貨幣供給量が増加し、物価が上昇して、ついにはインフレになる。
MMTの理論は、「いくら国債を発行してもインフレにならない」と主張しているのではない。「インフレにならない限りいくら国債を発行してもよい」と言っているのだ。つまり、最も重要な問題をはぐらかしているのである。
MMTは実際にインフレを引き起こした
いまのアメリカの状況を見ていると、多くの人がMMTに対して抱いていた危惧が、まさにそのとおりの形で現実に生じてしまったことが分かる。
新型コロナウイルスに対応するため財政支出を拡大したのは、日本に限ったことではない。アメリカでも大規模な財政支出拡大策が取られた。そして、大量の国債発行を容易にするために、金融緩和に踏み切ったのである。つまり、財政拡大と金融緩和を同時に、しかも大規模に行った。まさに、MMTが推奨する政策が実現したのである。
そのために、コロナからの回復が見通せる段階になって経済活動が復活すると、賃金が上昇し、それが引き金となってインフレを引き起こしてしまったのだ。
もちろん、現在のインフレは、これだけが原因ではない。2022年の2月以降、ロシアのウクライナ侵攻によって資源や農産物が値上がりしたことも、大きな原因だ。これによって、昨年の秋以降進行していた物価上昇が加速することになった。
日本ではインフレが起きなかった
それに対して、日本では2022年までは、ホームメイド・インフレは起きなかった。
日本でもこの数年間で財政支出が拡大した。そして同時に、金融緩和政策も継続されている。それにもかかわらずインフレが起きなかったのはなぜか?
もちろん、いま日本では物価が上がっている。ただし、少なくとも2022年までについては、国内の要因によって起きたものではない。第1には、アメリカのインフレのため、第2にはウクライナ戦争で資源価格が高騰したためだ。その結果、輸入物価が上がったからだ。つまり、日本で生じた物価上昇は、輸入されたインフレであって、直接の原因は、海外にある。
日本で大量の国債発行がインフレにつながらなかった理由は2つ考えられる。
第1は、財政支出が需要を増大させなかったことだ。コロナ対策で最大のものは定額給付金だったが、これは消費支出を増やさず、貯金を増やすだけの結果に終わった。
第2に、日本企業の生産性が向上しない状況が続いているため、拡大策を行っても賃金が上昇せず、需要が拡大しなかったことがある。
日本でMMTをやってよいことにはならない
日本でホームメイド・インフレが起きなかったからといって、MMTをやっていいということにはならない。
大量の国債発行を可能にするために、日本では、長期国債を大量に購入し続けているだけでなく、長期金利を人為的に抑えている。その結果、アメリカの金利引き上げによって、日米の金利差が著しく拡大した。このため、アメリカのインフレが日本に輸入されることになったのである。この意味において、国債の大量発行がインフレの原因になっていると考えることができる。
金利抑制策の悪影響は、それだけではない。長期金利は、経済の最も重要な価格の一つだ。これが抑圧されているために、金利が経済の実態を表さなくなり、その結果、資源配分が著しく歪められている。
財政規律がなくなってしまったのが、最大の問題だ。その結果、効果の疑わしい(その反面、公平性の観点から大きな問題を含む)人気取り補助策が、次々と行われている。
国債発行を増やすという悪循環が生じている。それだけではなく、経済全体の資源配分が歪められている。これは日本経済の長期的なパフォーマンスを劣化させることになるだろう。 
●岸田「海外バラマキ」に国民の怒り爆発! 戦略ゼロの外交で失われる未来 1/8
石炭火力温存でまたも「化石賞」を受賞
もちろん、岸田首相は「COP28」で演説した。そのために、ドバイに出かけたのだから当然だ。しかし、その演説はあまりに陳腐で、「日本の地球温暖化の取り組みはこれだけ進んでいます」ということを“口先”強調しただけだった。
それなのに、日本の多くのメディアは、『石炭火力発電所の新設せず COP28 岸田首相が表明 』(FNN)、『岸田首相 “対策ない石炭火力発電所の新規建設せず” COP28』(NHK)と、いかにも日本の取り組みが進展したかのように伝えた。
しかし、これは報道のトリックと言っていい。
岸田演説をちゃんと聞けば、日本は石炭火力発電所建設を止めるなどとは言っていない。止めるのはNHK報道にあるように「対策ない石炭火力発電所」だけであって、対策を施した(CO2排出の効率が低いとされる)発電所は建設するのだ。
世界の流れが、石炭火力の廃止に向かうなかで、日本は削減だけにとどめたため、今年のG7広島サミットでも各国から批判された。それなのに、今回もまた石炭火力温存を表明したのだ。
原発再稼働がままならず、再エネ転換も思うように進まないなか、エネルギー供給から見て石炭火力を温存しなければならない事情があるのはわかる。しかし、それでもなお「いずれ廃止する」と宣言しなければならない。
この毎回変わらない日本の態度に、環境NCO「CAN」はまたしても日本を「化石賞」に選出した。ただし、今回は、日本のほかに、ニュージーランドとアメリカも選ばれた。
ロス&ダメージ資金提供をケチるせこさ
なぜ、アメリカまで「化石賞」に選ばれたのか?
それは、今回のCOP28の大きなテーマである「ロス&ダメージ」のファンドの設立・運営に関して、拠出金があまりにも低くすぎたからだ。
まず、議長国であるUAEは1億ドル(約150億円)、ドイツも同額の拠出を約束した。英国は6000万ポンド(約112億円)を表明した。ところが、アメリカは1750万ドルにすぎなかったのである。
そして日本は?というと、なんと1000万ドル(約15億円)である。
すでに、岸田首相は総理就任直後に出席した2021年11月のCOP26で、途上国への気候変動対策支援に、今後5年間で最大100億ドル(約1兆5000億円)を拠出すると表明している。今回の1000万ドルがその一部なのかはわからない。しかし、もしそうなら、今回の額はあまりに低すぎる。
温暖化対策は、なによりも優先しなければならない、人類社会最大の課題だ。それが、エジブトやヨルダンのような2国間援助より低くていいわけがない。
首相就任以来、安倍政権時以上にバラマキ
岸田外交は、安倍バラマキ外交の踏襲である。それもそのはず、安倍政権時代に外相をしていたのだから、そうなって当然だ。しかも、安倍政権時代より、派手にバラまいているのだから呆れるしかない。
そのバラマキに戦略はなく、ただ世界にいい顔をしただけとしか思えない。
これまでの外交履歴からバラマキ状況を見て行くと、国内がコロナ禍に喘いでいるというのに、2021年の総理就任直後から海外向け援助が急増している。前記したCOP26での途上国援助のほかに、2021年10月13日にアフガニスタンに2億ドル(約300億円)の支援、2021年12月7日には途上国に向けに今後3年で28億ドル(約4200億円)以上の支援を表明している。
そして2022年、2023年と海外バラマキは度を越している。とくに、ウクライナ戦争が起こったことで、ウクライナに対していきなり55億ドル(8250億円)援助を皮切りに総額76億ドル(1兆1400億円)をこれまでつぎ込んできた。
●自民・麻生氏「信頼回復し政権担う」 1/8
自民党の麻生太郎副総裁は8日、福岡県直方市で講演し、派閥の政治資金問題を受けて党内に設置される政治刷新本部(仮称)の顧問に就任すると説明し、「皆さん方の信頼をきちんと回復して、引き続き政権党を担っていく」と強調した。「派閥の話であるとはいえ、党の中で起きた話でもある」と述べ、党として再発防止に取り組む考えを示した。
麻生氏は台湾海峡を巡る緊張が高まっているとも指摘。「戦争になった場合、台湾にいる日本人を救出せねばならない。それなりのしかるべき準備をしておかなければならない」と指摘した。
●上川外相「ウクライナに53億円」で比較される「能登地震支援47億円」 疑問 1/8
ウクライナを訪問中の上川陽子外務大臣が、首都・キーウで同国のクレバ外相と会談。NATO(北大西洋条約機構)の基金に日本円で約53億円を新たに拠出し、ウクライナに対無人航空機検知システムなどを供与することを発表した。さらに、ゼレンスキー大統領を表敬した際は「今後も、ウクライナとともにあるという日本の立場は決して揺るがない」と伝えた。
1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」に対し、政府が支出した金額は約47億円。SNSでは、この金額とウクライナ支援の金額を比較する意見があがっている。
《石川の被災地にはたった47億。なぜ同じ日本国内に生きる被災者の方々に対してそんなに冷たい対応ができるんだ‥》
《まだ日本国民の税金から出すの? 自国民への支援を優先しない日本政府は本当にどうなっている》
《今はウクライナに支援してる場合じゃないと思うんだけど。自国の方が大事でしょ?》
その多くは、「まずは自国の災害支援に取り組むべきでは」という、疑問の声だ。
「47億4000万円は初期の支出で、今後も支援は積み増していきます。しかし、政府の説明があまりにも下手なので、『47億円』という金額だけが一人歩きしてしまった印象があります。
それに、1月6日に岸田文雄首相が支出を了承しながら、正式決定するのは1月9日の閣議。あまりにのんびりしすぎと指摘されています。被災者を安心させるためにも、早い決断と実行が必要なのですが、岸田文雄政権はそれがまったくできていません」(政治担当記者)
これまでも岸田政権は、「ばらまきメガネ」と揶揄されるほど、海外への支援や援助を続けてきた。2023年はおもなものだけで、2月にはフィリピンに年間2000億円を超えるインフラや情報通信網整備資金の支援を表明、3月には、「グローバルサウス」と呼ばれるアジアやアフリカなどの新興国・途上国に、インフラ整備のため2030年までに官民で約11兆円を投じると発表。さらに5月には、ガーナに約735億円、12月にはイスラエルとイスラム組織ハマスの武力衝突で観光業に打撃を受けたエジプトに、最大約338億円の支援を表明した。
「こうしたことを背景に、『海外へばらまく金額で、どれほど被災者が楽になるか』といった国民感情が高まっています」(前出・政治担当記者)
海外支援も大事だが、まずは国内の被災者を安心させてほしい、と考える日本人が多いのも事実だ。
●「データ破壊は自民のお家芸」逮捕された池田議員「証拠隠滅」「ドリル優子」 1/8
自民党の「清和政策研究会」(安倍派)に所属する衆議院議員の池田佳隆容疑者(57)と政策秘書の柿沼和宏容疑者(45)が、2022年までの5年間に政治資金パーティのキックバック4800万円余りを政治資金収支報告書に記載しなかったとして、1月7日、政治資金規正法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。
「当初、自民党内では『逮捕されることはないだろう』という見方がほとんどでしたが、特捜部は身柄を取りました。金額の多さにくわえ、証拠隠滅や関係者との口裏合わせの可能性があったからです。
特捜部は昨年12月に池田議員の関係先を家宅捜索しましたが、その前に池田容疑者はパーティー券の販売先や参加者の名簿、キックバックの金額などを記録した資料の廃棄を秘書に命じていた疑いが出てきました。そのため、逮捕に踏み切りました」(事件担当記者)
そして、1月8日、NHKが「記録媒体が破壊」と報じたことを受け、SNSでは「ドリル優子」がトレンドワードになった。
「自民党の小渕優子選挙対策委員長が経産大臣だった2014年、政治資金問題が発覚しました。その際の家宅捜索を前に、事務所にあったパソコンのハードディスクがドリルのようなもので破壊されていたことから、SNSなどで『ドリル優子』というあだ名がつけられました。その後も、ネット上では、なにかにつけ『ドリル優子』の言葉が飛び交います」(同)
今回もそれが蒸し返された格好だ。「X」には、
《証拠隠滅と言うと忘れちゃならない小渕優子氏…かつて、政治資金規正法違反で世間に謝罪会見もしてないのに「誠意を持って説明させて頂いてきた」と説明責任を『もう済んだ事』にしてしまうドリル優子》
《データ破壊は自民党のお家芸! ドリル優子の二番煎じ!》
《データ破壊で証拠隠滅のおそれというのは 自民党の常套手段なのか?》
《『ドリル優子』ならぬ『ドリル池田』ってことですか?》
などと書き込まれ、お祭り状態になった。
「小渕議員にとってみればとんだ飛び火で、『もう、いい加減にしてくれ』という心境かもしれませんが、結局のところ、いまも繰り返し話題になるのは、本人が説明責任を果たしていないことが原因です。今後も、ずっと言われ続けることになるでしょう」(同)
国会議員に「説明責任」は馬の耳に念仏なのだろうか。

 

●能登半島地震で露呈した原発の「不都合な真実」 1/9
やはり原発はやめるべきだ。能登半島地震を見てそう思った方はどれくらいいるのだろうか。
「あの大地震でも志賀原発は事故を起こさなかった!」「やはり日本の原発は安全だ!」という原発推進論者の声も聞こえてきそうだが、そんな声に騙されてはいけない。
2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きるまで、日本では、「原発は安くて安全でクリーン」だという原発神話が存在した。事故でその神話が一旦崩壊した後、急速に発展する再生可能エネルギーとの比較からも、今では「原発は高い」「原発は汚い」という事実はかなり広く理解されるようになった。
しかし、「原発は危ない」という点については、少し状況が異なる。
福島第一原発の事故で原発の危険性を思い知らされ、「原発はいらない!」と強く思った多くの国民は、事故から12年を経て、あの想像を絶する原発事故の痛みと恐怖を忘れてしまったかのようだ。
原発推進論者が、「原発が動かないから電気料金が上がる」とか、(夏や冬のほんの一時期だけなのだが)「需給が逼迫して停電のリスクがある」とか叫ぶと、いとも簡単に、「それなら原発を動かしてもいいか」という反応を示すようになったのだ。
実は、今回の地震の結果を見るまでもなく、日本の原発は「危ないから」止めるべきだと考える十分な根拠がある。
私は、これを「原発の不都合な真実」と呼んでいる。意外と知らない人が多いのだが、今回の地震と併せて考えていただけば、理解が深まると思うので、この機会に一つだけその話を紹介したい。
「原発の不都合な真実」の中で、もっとも重要なのは、原発の耐震性に関する事実だ。
当たり前の話だが、原発の事故が起きても良いと考える人はほとんどいない。多くの人は、政府が、「世界最高水準の規制基準を満たしています」と言うのを聞いて、「福島の事故を経験しているのだから、さすがに動かして良いという原発は安全なものに決まっている」と信じているようだ。
日本の国土は世界のわずか0.25%しかないのに、2011年〜2020年でみると全世界のマグニチュード6.0以上の地震の17.9%が日本周辺で発生するという、世界で最も危険な地震大国だと言って良いだろう。その日本で世界最高水準の規制に適合していると聞けば、「原発は、ちょっとやそっとの地震ではびくともしない」と誰もが思っているだろう。
しかし、真実は全く違う。日本の原発は地震に極めて弱い。それをわかりやすく説明したのが、関西電力大飯原発を止めたことで有名な樋口英明元福井地裁裁判長だ。
私も樋口氏から直接話を聞いて知ったのだが、日本の原発は、民間のハウスメーカーが販売する耐震住宅よりもはるかに耐震性が低い。たとえば、三井ホーム、住友林業の耐震性は、各々最大約5100ガル(ガルは加速度の単位、大きいほど強い揺れを示す)、約3400ガルに耐える設計になっている。
一方、たとえば、四国電力の伊方原発の耐震基準は650ガル、高浜原発は700ガルと、日本の原発の耐震性は民間住宅の数分の1しかない。北陸電力志賀原発も建設当時は490ガル、その後600ガルに引き上げられ、現在は1000ガルということで安全審査を申請している。なぜ、耐震性が上がっているかというと、さすがに3桁では信用されないということで、いくつかのマイナーな耐震対策を施して耐震性がすごく上がったと説明しているのだ。
日本では2000年から20年までの間に、1000ガル以上の地震が17回、700ガル以上は30回起きていた。つまり、原発の耐震基準を超える地震はごく普通に起きるのである。ちなみに、日本で記録された最大加速度は2008年の岩手・宮城内陸地震の4022ガルである。2番目が2011年の東日本大震災の時の2933ガル。
この事実を知れば、原発の耐震性はこれらよりも強くして欲しいと思う。しかし、日本の原発の耐震基準の大半は1000ガル以下である(詳しくは、樋口氏の著書『私が原発を止めた理由』『南海トラフ巨大地震でも原発は大丈夫と言う人々』〈いずれも旬報社〉を参照のこと)。
このような事実を知る人が増えれば、そんなに危ない原発が動いていたのかと驚き、今すぐ止めてくれということになるだろう。
今回の能登半島地震の最大加速度は、原発のある石川県志賀町の観測点で、東日本大震災に匹敵する2828ガルだったことがわかった。1000ガル以上も計7地点で確認されている。
だが、たまたま運が良かったのかどうか、あるいは計測に異常があったのかもしれないが、北陸電力の発表を鵜呑みにすると、志賀原発1号機原子炉建屋地下2階で399.3ガルだったということだ(それ以外の観測点でどうだったのかはわからない)。近隣に比べて何故かずいぶん小さな揺れだったということになる。
1000ガルの基準地震動から見れば余裕というところなのだろうが、その割には、かなり深刻な被害が出たのが驚きだ。使用済み燃料プールの水が大量に溢れる、冷却ポンプが一時停止する、複数の変圧器付近で配管の破損による大量の油漏れがあり、その影響で外部電源の一部系統が使用不能になるなどかなりの異常が発生した。これらの結果、放射能が外部に漏れたかどうかが気になるところだが、当初、モニタリングポストでは放射能漏れは観測されていないと発表されて胸を撫で下ろした。だが、なぜか4日になって、原発の北15キロ以上離れたところにあるモニタリングポスト14カ所でデータが確認できていないことが発表された。他のモニターの値が信用できるのか、また、より近くのモニタリングポストで計測不能になっていたらどうなったのかということも不安材料となった。
これらの異常の他に何があったかはまだ明らかにされていない。特に、敷地内で建物や道路に亀裂が入ったり、隆起や陥没があったりしたかなどはすぐにわかりそうなものだが、発表があったのは5日になってから。それも、1号機の原子炉建屋付近や海側エリアなどで最大35センチの段差やコンクリートの沈下などがあったという程度の簡単な情報提供だけだった。道路に段差があれば、消防隊などの活動に支障が生じたりするので実は深刻は事態だが、そのようなことを連想させたくないのだろう。
そして、何よりも気になるのが、北陸電力や政府の情報の出し方である。地震の発生後最初に伝えられた「志賀町で最大震度7」という情報を聞いた私は、真っ先に、これは大変だと思った。志賀町といえば原発だ。それがどうなっているのか、住民はすぐに避難しなくて良いのかということが気になった。しかし、テレビを見ていても、出てくる話は、津波のことばかり。もちろん、それが最も重要な情報であることはわかる。それを繰り返し流すことは必要だ。
しかし、原発の状況についても、万一のことを考えれば、決して後回しで良いという話ではない。ところが、原発の状況について政府が具体的に触れたのは事故から2時間以上経過した後だった。林芳正官房長官が会見で、「現時点で異常なし」と木で鼻を括ったような発言をしたのだ。だが、記者の質問が飛ぶと、突然、変圧器で火災が発生と驚くような話をして、すでに消火と言い添えた。変圧器で火災なら重大事故なのではないかと心配になる。現に、外部電源が一部断たれたわけだから、「異常事態」であるのは疑いようがない(火災については、のちに北陸電力が否定したが、官房長官は訂正せずに放置した。この官房長官発言が原因で、原発で火災という情報が拡散して混乱を生じさせた。ちなみに、北陸電力は、爆発音と焦げ臭いにおいがしたことやスプリンクラーが作動して水浸しになったことは認めたが、それでも火災はなかったと主張している)。
では、原発で火災があったという前提で、「異常なし」と涼しげに語った林氏の意図はどこにあったのか。何か特別の意図があったのではないかとどうしても勘ぐりたくなる。
志賀原発については、元々その敷地内に活断層があるのではないかということがずっと疑われてきた。もし、今回の地震で「異常」があったということになれば、あらためて活断層への疑念が深まる。それがなくても、基準地震動の見直しとそれに基づく対策の実施が求められる可能性も出てくる。コストの問題もありまた再稼働までの時間が延びることも必至なので、それは北陸電力としてはどうしても避けたい。だから、「異常」はなかったと言いたくなる。
むしろ、今回の地震を奇貨として、これほど大きな地震でも「何の問題もなかった」と言えれば、いかに志賀原発が安全かを示していると言えるとさえ計算していたのではないか。そんな疑いをかけたくなる林氏の対応だった。
疑念はこれだけにとどまらない。政府にとって、実はもっと大事なことがある。それは東電柏崎刈羽原発の再稼働だ。
東電は事故後倒産寸前に陥り、福島事故の後始末も自力ではできなかった。このため、政府は巨額の出資で資金を注入し、東電を政府の「子会社」とした。その資金を回収するためには、政府保有の東電株を高く売らなければならない。だが、東電は経営が苦しく株価が低迷している。柏崎刈羽原発が動けば、発電コストが下がり、利益が大幅に増える。その結果株価が上がり、政府も資金回収できるというシナリオを実現するために、何としても原発を動かしたい。
しかし、志賀原発で、耐震性に問題があったとなれば、同じ日本海側の近県に立地する柏崎刈羽にも影響が及ぶ可能性がある。それだけは何としても避けたいというのが東電のみならず、政府の強い願いだ。特に、嶋田隆首相秘書官は、次期東電会長とまで言われた経済産業省の元事務次官でもある。柏崎刈羽再稼働は、官邸にとっても最優先課題となっていた。それに水を差すことなどありえないのだ。
こうした裏の理由により、志賀原発は、何が起きても「異常なし」で通すしかないのである。
能登半島地震で、深刻な原発事故が起きなかったことは不幸中の幸いだった。
しかし、今回の原発での異常事態や周辺地域の壮絶な被害状況を見れば、日本のような地震大国で原発を動かす、いや、保有するだけでもいかに大きなリスクになるのかがはっきりわかる。
3.11から12年経って、事故の記憶が風化し、脱原発どころか、原発新増設にまで踏み込む原発推進策に舵を切ろうとしていた日本にとって、これは天啓ではないのか。これだけのわかりやすい材料を与えられて、なお、金に目が眩んで原発推進の方針を撤回できないことなどありえないと信じたいところだ。
しかし、それは楽観的すぎるのかもしれない。
原発事故の被害を想像する能力を失い、驕りと強欲の塊となった日本が過ちに気づくには、原発事故を待つしかない――それこそが「不都合な真実」ということなのだろうか。
国民は、与えられたこの機会に真剣に考え直して、政府に対して「原発をやめろ」と迫るべきである。
●政治とカネの問題を令和の政治改革へ…岸田首相が推進すべき「アレ」とは 1/9
2024年も「アレは続く」と誓う「A.R.E. GOES ON」を掲げるプロ野球の阪神タイガースが、1985年以来となる日本一を果たした2023年日本シリーズの初戦開始前、ベンチ入り選手の輪の中でベテランの原口文仁選手が 檄 を飛ばした。
「アレのアレへ向けてスタートする。38年前、頂点に立った時、このメンバー、誰一人生まれていない。タイガースの歴史の中で価値ある試合に挑戦できる」
2023年日本シリーズで38年ぶりの日本一を決め、胴上げされる阪神・岡田彰布監督(2023年11月5日)
同じ時間では経験しなかった栄光に挑む若い世代の「声出し」の映像を見ると、30年以上前の政治改革を現職として経験していないとはいえ、自民党を揺るがす「政治とカネ」の問題に若手が大きな声を出さない現状が寂しくなる。
贈収賄での立件が相次いだ1989年のリクルート事件のさなかに、自民党は「政治改革大綱」を制定した。具体化に向けて設けられた政治改革推進本部の長には伊東正義・元外相、代理に後藤田正晴・元官房長官が就いた。長老が「改革の象徴」となって若手を鼓舞したことは、5年後に非自民・非共産の細川護煕政権で政治改革関連4法が成立する布石にもなった。
ボタンの掛け違いもあった。自民党職員として大綱に携わった政治アナリストの伊藤惇夫氏はBS日テレ「深層NEWS」で、「後藤田さんが『政治とカネ』の問題は中選挙区制での自民党候補同士のサービス合戦に起因するから、選挙制度を変えなければと言ってスタートした」と振り返っている。長老の一言で、本来は優先するか並行して進めるべきだった地方分権や政党法の制定が棚上げされ、選挙制度さえ変えれば政治は良くなるとの幻想を生んだ。
改革派を自任した若手、有識者、メディアも幻想に熱狂し、副作用が分かった時は既に熱は冷め、再改革の機運も起きなかった。
自民党派閥のパーティー券問題の焦点である政治資金規正法違反は、実害のない「形式犯」で、贈収賄のような「実質犯」と違う――。かつてはそんな理屈で、規正法違反での立件に「厳し過ぎる」という恨み節も出た。依然、その感覚は自民党に残っている。
「平成の政治改革」を経験した石破茂・元自民党幹事長が「大綱を読み直せ」と訴えるように、大綱には今の問題にも有効な理念や改革メニューが並ぶ。裏を返せば、制定から30年以上、多くの中身が先送りか骨抜きにされてきた。
90年代前半に若手から改革派が次々と出たのは、衆院選が中選挙区制で、党執行部に逆らって公認されなくても当選できたことが大きい。勝者1人の小選挙区は、そうはいかない。「伊東・後藤田」の役割を担う長老も見当たらない。
大綱の制定時には衆院初当選の前で、「平成の政治改革」でも目立たなかった岸田文雄首相が、今のピンチを、ずっと放置されてきた課題解決のチャンスと考えて「令和の政治改革」を進めれば、潮目は変わるかもしれない。「平成の政治改革」の推進者だった新任の渡海紀三朗政調会長の使い方も、カギになる。 ・・・
●国民民主、政権との距離に苦慮 協調路線、裏金事件で目算狂う 1/9
国民民主党が岸田政権との距離に苦慮している。玉木雄一郎代表が「対決より解決」を掲げ、政策実現のため協調してきたが、自民党派閥の政治資金規正法違反事件を受け、厳しく対峙(たいじ)せざるを得なくなったためだ。対決姿勢を鮮明にすれば、他の野党との違いは分かりにくくなり、埋没するジレンマも抱える。
「極めて深刻だ。国民民主は政策本位と言ってきたが、その前提は政治に対する信頼が確保されていることだ」。玉木氏は7日のNHK番組で、自民党の「政治とカネ」の問題を厳しく批判した。
昨年11月、国民民主はガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結解除に向けた自民、公明両党との3党協議を再開するため、2023年度補正予算に賛成した。だが、派閥の裏金疑惑で状況が一変。自民に強い逆風が吹く中、立憲民主党が提出した内閣不信任決議案に国民民主も賛同すると、公明は「前提が崩れた」(山口那津男代表)と反発し、いまだ3党の実務者協議は再開していない。
そもそも協調路線は小所帯の国民民主の存在感をアピールするための「奇策」(玉木氏)という側面が大きい。自民内では国民の連立政権入り構想も浮上していたが、立ち消えになった。玉木氏も7日の番組で「連立は選挙協力など乗り越えなければならないハードルがあるので、なかなか難しい」と語った。
玉木氏は今後も「是は是、非は非」として「政治とカネ」の追及とは別に政策協議を進める「二刀流」を目指す。ただ、国民民主内にも「与党側が本気で協議を進める気があるのか」と疑問の声が漏れる。立民、国民両党を支援する連合は、両党の連携強化を再三、促している。
国民幹部は「野党として裏金問題を批判しないわけにはいかないが、政策は与党と話さなければ実現しない。難しい」と頭を抱えた。
●イーロン・マスクとゴジラ、そして創価学会に学ぶこれから日本が目指すべき道 1/9
実績上げても岸田政権の支持率が上がらない理由
岸田政権の支持率が上がりません。昨年後半からジワジワと支持率を下げ続け、既に各種調査では、いわゆる青木の法則と呼ばれる危険水準(内閣支持率と自民党支持率の合計が50を割る水準)に達してしまっているものも出てきていますが、なかなか上がる要素が見当たらないのが現状です。
そんな中、追い打ちをかけるように、年始に能登半島を大震災が襲い、死者が3桁に達し、まだ増える様相です。羽田空港でも、関連して痛ましい事故が起こりました。海保機の方で尊い5名の命が奪われてしまいましたが、日航機の方は幸いにして死者は出ずに済みました。
特に震災の方は、初動の遅れということも批判されはじめており、政府批判も高まりつつあります。列島中が休んでいた元日の悲劇ということもあり(羽田空港の事故は1月2日)、やむを得ない面はありますが、一つの目安とされる72時間を過ぎて救出される人も出ていることから、もう少し早くがれきの下の方々の救助が何とかならなかったのか、とか、これからの避難生活の支援がもう少し手厚くできないのか、など、政権批判も強くなる傾向にあります。
震災対応はともかく、政権発足からの日本の数々の危機に際しては、政権に近い人からは、「意外とちゃんとやっていて、諸課題に向き合い、ひとつひとつ誠心誠意、対処している」という肯定的な評価が聞こえてきます。実際、安全保障関係の対応(安保三文書改訂や防衛費増)やCOP28への対応(措置がなされていない石炭火力発電所の新設はしないと表明)、少子化対策(「こども未来戦略方針」を策定。年間で新たに3.8兆円の予算を投じるということで、予算的には「異次元」とも言える)、要望が強かったライドシェア解禁も、今年4月から一部実施することも決めました。
他にもあります。物価や賃金の上昇をふまえたマクロ経済スライドの発動を決め年金の支給額を若干ながら引き上げました。また原発の再稼働を政治決断で決めたことにより、上昇していた電気料金にいくらかブレーキをかけることもできています。これらは岸田政権の“成果”と評価してしかるべきものです。
このように岸田総理は地道にいろいろやっているのですが、支持率が上がらないという状況です。
なぜ支持率上がらないのか。その理由を私なりに分析してみました。ポイントになるのは、中長期的に見た時の期待感ではないでしょうか。
岸田総理は小テストが得意な優等生タイプ
岸田政権は、何か課題が降ってきた時には「わかりました。対応します」と即応する能力は高いと言えます。目の前の問題についての、短期決戦的な対応は得意なのです。
例えるならば岸田総理は、授業の理解度を測るための毎週行われる小テストを得意とする優等生タイプです。
しかしその一方で、「実力が問われる全国模試や入試本番には不安が残る」というタイプでもあります。そこに、国民は、将来に「そこはかとない不安」を抱いているのです。端的に言えば、岸田総理は中長期的な課題への対応が弱いのです。
たとえば物価が上昇しているのに、利上げもできないので預金金利に期待することはできません。低金利ですから円安が極度に進み、国際的に見た購買力はガタ落ちです。国民は将来の生活に不安を覚えています。
日本のGDPは、円安の影響もありますが、人口が我が国の3分の2程度のドイツに抜かれて世界4位に転落する見込みです。国際的にも、アジアの中でも、日本の存在感はどんどん小さくなっています。
また、少子化や人口減少を改善すべく子ども未来戦略方針を打ち出し、先述のとおり予算はかなり増やしましたが、問題解決の切り札になりそうなインパクトは感じません。そのほかにも、労働力不足、エネルギーや食料の自給率など、中長期的な課題に対する効果的な手が打てているとは言えません。そこに国民は潜在的な不満を持っているから、支持率に結びつかないのだと思うのです。
岸田さんには酷な言い方になりますが、どんなに真面目に、サラリーマン的に目の前の課題に取り組んで小テストの点数を積み上げても、一発勝負の全国模試や入試本番で勝ち抜けるほどの実力はつかない。簡単な確認テストではなく、難問を解く力を付けるには、相当のパワーを使って爆発的に頑張らないといけないのです。中長期的な日本を取り巻く難題を解くには、かなりのエネルギーを使って思い切った勝負をしなければいけないということです。
聖人君子ではないイーロン・マスク
そういう中で私が昨年後半、個人的に印象に残った“作品”が2つありました。
ひとつは、イーロン・マスクの評伝『イーロン・マスク』(文藝春秋)です。
この本で活写されているのは、品行方正なベンチャー起業家ではなく、無茶で乱暴なチャレンジャーの姿です。マスクは、まるで何かに取りつかれたようにチャレンジを繰り返しているのです。
なにしろバイタリティがスゴイ。20代の後半でフィンテックのベンチャーを立ち上げるだけでも驚嘆するのに、その会社を売却した資金を元手にEVメーカーのテスラを立ち上げたり、宇宙開発企業スペースXを立ち上げたりしています。ツイッター(現在はX)の買収でも世界中をあっと言わせました。
これだけ大きなことを次から次へと成し遂げていくマスクの仕事ぶりは、「働き方改革」を叫ぶような世界とは正反対です。仕事ぶりはまさに「モーレツ」と呼ぶにふさわしいものです。さらに言えば、会社のマネジメントも決して上手じゃありません。内部はかなりガタガタしているのです。それでも大仕事をやり切ってしまうのがイーロン・マスクという人物なのです。そのスケールといい、仕事への集中力といい、今の日本ではそうそうお目にかかれないタイプと言えます。
もうひとつの心に残った“作品”は映画『ゴジラ−1.0』です。もちろんゴジラ自体は架空の存在ですが、舞台となっている戦後の日本をリアリティ豊かに描いています。単に戦後まもない時代の日本の風景を再現しているだけでなく、戦後の精神、メンタリティーをもよく描いています。つまり、アメリカに負けて悔しい思いを抱えながらも、戦争で亡くなった人の分まで生き残った自分たちが頑張らなきゃいけないんだという使命感を持って生きる人々の逞しさです。映画を観て、まずそこに感じ入ってしまいました。
この両作品を通じて、個々の人間が秘めているパワーの偉大さを強く感じました。だれしも不安や危機意識を持っているものですが、結局それを乗り越えるのに必要なのは、それぞれの人間の頑張りだということです。そして、人にはそれだけのパワーがあるのです。
ところがいつしか私たちは、「ワーカホリックみたいに働くのは間違っている。無理をしない。ワーク・ライフ・バランスが何より大事だ」という考え方に過度に浸りすぎてしまい、何かにひたむきに打ち込むとか、自力で困難を乗り切るといった姿勢まで失ってしまったのではないでしょうか。
もっと言えば、「寄らば大樹」的に、ついつい国や自治体に頼ろうとする思考が強くなってしまったように感じます。しかし、国や自治体が「面倒を見てあげますよ、安心してください」と言っても、今は全く安心できる状況ではありません。国や自治体に余裕がないからです。
そういう意味では私は、日本の政治は限界に来てしまっているのではないかと考えています。政治家が「政策でこの困難を解決していきますので、国に任せてください、安心してください」と言えば言うほど、それが国民には虚しく響いてしまう。国民自身も、自力で困難を乗り越えようという気持ちが薄く、政治に対する不満ばかりが高まっていく。日本は、こんな「政治無理ゲー時代」に入っているのではないでしょうか。
なぜ創価学会は強いのか
昨年11月、創価学会の名誉会長である池田大作さんが亡くなりました。私は特に創価学会員でもありませんし、公明党の政策に共感しているわけでもないのですが、創価学会と公明党の組織的な強さには学ばなくてはならない点があると思っています。よく知られているように公明党は創価学会を支持母体として作られた政党です。
創価学会は日蓮大聖人の教えを信仰する法華経系の仏教団体ですが、宗教団体という側面のほかに、特に高度成長期に地方から都市へ出てきた労働者たちの不安に寄り添い、互いに助け合おうという互助会的な社会運動としての顔も持っていました。まずはそうした活動があり、それが人々の心を惹きつけた。そういう活動を続ける中でぶつかった課題を乗り越えるために、法改正や行政への働きかけが必要だと思い至った創価学会が政党を持った。社会変革運動がベースにあっての政党なので、だから創価学会員は公明党を熱心に応援する。それが公明党が選挙に非常に強くなった理由だと思うのです。
目指す方向は全く違いますが、日本共産党も設立の経緯はそういう流れだったと言えます。共産主義革命を理想とする人々がいて、それを実現するための政党としての日本共産党ができたわけです。だから共産党の支持者は今も熱心に応援しています。ただ「共産主義革命が必要だ」と考える人が日本では減少してきたので、それがそのまま現在の日本共産党の党勢に現れていると言えます。
公明党の退潮も、池田大作氏の不在も相まって顕著になってきていますが、社会運動としてのエネルギーの衰退が大きな要因と言えます。ただ、公明党も共産党も、主義主張は全く異なりますが、社会運動がベースにあり、そうしたプラットフォームの上のあくまでアプリケーションとして政党が乗っかっているという点では共通のものを感じます。であるが故に、長続きし、一定の強固な基盤があると言えます。
それに対して、最近の政党はどうでしょうか。
バブルが崩壊し日本が苦境に陥ってから、およそ10年おきくらいで「新党ブーム」を伴うような政治の激変が起こってきました。細川護熙さんを党首とする日本新党のブーム、新党ではありませんが、小泉純一郎さんの「自民党をぶっ壊す」ブーム(清和会の伸長)、さらに鳩山由紀夫さんらの民主党ブームです。そのほかにも、みんなの党や日本維新の会など、数多くの政党が誕生し、たびたび政治のうねりを作ってきました。
しかし、こうした「新党」を中心とするブームに、国民はもう飽き飽きしているのだと思います。新党の人たちは「政治で現代社会の課題を何とかします、そのために政権をとります、投票をよろしくお願いします」と選挙の時に頭を下げますが、有権者の方は「多くの議席を獲得したり、さらには政権交代を実現させたりしても結局あまり変わらなかったじゃないか」「これからも変わらんよ」と思っているのです。
既存の政党が「われわれに任せてください」と言っても、国民には全く響かない。新党が出てきても、国民は過去の数々の「尻すぼみの歴史」を見てきているだけに、期待することもできない。今はそういう時代になってしまっているのです。
そうであれば、創価学会と公明党の歴史で見たように、政治運動以前の社会運動が大事なのではないかと思うのです。
「政治家にさせてください」が先ではない
歴史に残るような偉大な宗教家は、地方に赴き、現地の人たちの声を聞き、教えを説き、そして信奉者を増やしていきました。それがだんだんと大きな組織になっていったわけです。
それに対して現代の政治家は、地域の支持者や社会運動の団体から押し上げられるというよりも、まずは「自分が政治家になりたい」という人ばかりです。選挙の時には「国会に送り出してもらえれば政権交代を実現します」「この政策を実現するためには国会での議席が必要です。なんとか投票をお願いします」と言い、当選したら当選したで、「政治にはカネがかかります。個人献金をお願いします」「パーティー券を買ってください」と言う。地域の集団や社会運動の団体から推された人とはそこが決定的に違うのです。
宗教を核にした社会運動を起こせと言っているわけではありません。共産主義革命を起こせと言っているのでも、もちろんありません。新たな社会運動をベースに、政党を作って政権交代を考えて行く、といったアプローチが求められているということです。
地域発の革命
その場合の社会運動の候補ですが、私は地域発の革命というのが一つの切り口になると思います。
各地で、国や自治体任せにするのではなく、地域ごとに経済的に自立しようとひたむきに頑張っている人たちの集団を形成するのです。高度集権国家から、分散型の国家に転換していく。地域で一番足りていないのは「食い扶持」なので、各地ごとに起業や第二創業、食い扶持づくりを促進し、いわば経済的な「独立国」の集合体に日本をしていく。
そうした取り組みのうねり自体が一種の社会運動ですし、さらにそこで政治の力が必要ということで、その社会運動を基礎にして政党を作っていけばいい。そうすることでしか、政治の再生はできないのだと思います。
そして地域の自立の核になるのは、やはり企業だと思います。私のこの考え方は、サン=シモン主義に近いものです。サン=シモン主義とは、フランスの社会主義思想家サン=シモンが提唱した考え方で、その要旨をざっくり要約すれば「産業資本家が困っている人を助けるべきだ、社会を救っていくのが産業資本家の責務だ」というものです。それをマルクスやエンゲルスは「空想的社会主義」と呼んで批判しましたが、私に言わせれば、マルクスやエンゲルスのような、国家が統制する計画経済で社会を豊かにしていく、という考えのほうがむしろ空想的です。
ともかく、地域ごとにベンチャー企業を育成したり、あるいは都心から企業の本社を誘致したりして、企業を核として地域ごとに経済的に自立できる社会を作り、その地域で発生した課題の解決のために必要ならば、そこで政党を立ち上げていく――といった方向に舵を切らないと、日本は緩やかな衰退への坂道を転がっていくしかないように思います。これこそが私が提唱する「シン日本列島改造計画」です。(〈「勢いを失ったいまの日本に必要な「シン・日本列島改造」〉2023.1.20)
個人個人ももっと仕事や地域の活動に真摯に取り組み、そして地域ごとに経済的に自立する。そういう社会を作らなければならない。その社会運動をベースに、新しい政党が生まれる。そんな時代の転換点に私たちは立っているのだと思うのです。2024年のスタートにあたって、そんなことを感じました。
●「イスラエルの戦争」を煽るばかりで本当にいいのか…「アメリカの論理」問題点 1/9
ロシア・ウクライナ戦争に続き、イスラエル・ハマス戦争の被害が深刻化している。評論家の八幡和郎さんは「岸田政権は、ロシアやハマスを一方的に『悪』とするアメリカに無批判に追従している。しかしアメリカの『正義の戦争』がこれまでに多くの悲劇を生んできたことを忘れてはいけない」という――。
米民主党政権に追従する岸田首相
岸田政権は、首脳会談やサミットなどでのふるまいは安定しているものの、ウクライナやパレスチナ問題で、米国の硬直的な外交姿勢に追従しているのはよろしくない。増税や政治とカネといった内政問題に注目が集まり、岸田外交には建設的な批判がなされていないように思う。
2024年は米国大統領選挙の年だ。トランプ大統領の時代には大規模な戦争は起きず、安倍外交は世界秩序の守護神的な評価を獲得し、日本の国益もよく守られていた。
ところが、2020年に新型コロナ禍が世界を席巻し、2021年にアフガニスタンから米軍などが撤退、2022年にロシアによるウクライナ侵攻、2023年にはパレスチナ自治区ガザ地区で紛争が勃発し、バイデン政権はその場しのぎの外交で悲劇を拡大させている。
それを止められない岸田政権にも落胆するが、所属派閥の宏池会は米国民主党にもともと近いから予想の範囲ともいえる。
アメリカの論理は決して万能ではない
しかし、安倍元首相の主体的な外交手腕を支持してきた保守派に、「岸田政権はアメリカ支持が足らない」と批判している人が多いのは不可解だ。彼らは、WGIP(War Guilt Information Program=日本人に戦争贖罪意識を植え込む戦略)から日本人は脱却すべきと言ってきたのにおかしな話だ。
いまこそ、米国の論理が万能でないことを警告するとともに、先の戦争について、米国の硬直的な姿勢にも問題があったことを想起させ、一方的に批判されてきた日本が一定の名誉回復をするチャンスであるにもかかわらず、だ。
中道リベラルの人々が無批判なのもおかしい。欧米以外の多く国は、ロシアに対する強硬策一辺倒に疑問をもっているし、日本にとって隣国ロシアとの関係が悪化することは平和への危機に直結する。また、イスラエルの暴虐に対して積極的な抗議をしているのは、米国のことなら何でも気に入らない過激な左派ばかりだ。
今回は、米国外交のどこが間違っているのか、日本はどう対処すべきかを論じたいと思う。
イスラエル首相はハマスと戦前の日本を同一視
世界は2年近く続くロシア・ウクライナ戦争にうんざりしているし、民間人を巻き添えにガザへの軍事侵攻を続けるイスラエルに批判的だ。一方、米国は「先に攻撃したロシアやハマスは殲滅されても仕方ない」という立場を崩さない。
これは、満州事変や真珠湾攻撃がけしからんとして、日本に無理難題を要求して戦争終結を遅らせたうえ、広島と長崎に原爆を落とし、ソ連の参戦を促し、占領下で憲法まで変えさせたのと重なる。
イスラエルのネタニヤフ首相も「米国が第2次世界大戦の真珠湾攻撃の後で停戦に応じなかったのと同様に、ハマスの奇襲攻撃を受けたイスラエルが戦闘停止に応じることはない」「ハマスに乗っ取られたパレスチナのより良い生活を望むなら、ハマスを破壊せよ。第2次世界大戦中の日本やドイツのように、有害な政権を排除しなければならない」と発言している。
安倍元首相は再登板時に、「戦後レジームの見直し」を唱えていたため、欧米は第2次世界大戦戦勝国がよってたつ歴史観に敵対する「歴史修正主義」ではないかと危惧した。しかし安倍元首相は、日清・日露戦争まで否定されたくない、日本が一方的に悪かったのではない、アメリカも原爆や戦後処理など行きすぎもあったと考える一方、歴史修正主義という批判を避けたいという意識を健全に持っていた。
また、インドを価値観同盟の仲間に入れることを提案し、プーチン大統領と信頼関係を築いただけでなく、イラン訪問や米国抜きのTPP発足、EUとの経済連携協定(EPA)などを実現した。
ロシアやハマスは全面的に「悪」なのか
安倍元首相であれば現在の状況でもう少し柔軟な外交を展開しただろうが、岸田外交は、アメリカに対して独自性を示さず、気前のいいATM的存在になってしまっている。
しかし、「ロシアやハマスは悪」として、ウクライナとイスラエルを支持する米国の論理を鵜呑みにしていいのだろうか。
〈「パレスチナとイスラエル、結局どっちが悪いの?」日本人が答えを出しにくい“世界の難問”を考える〉で整理したように、パレスチナの望ましい未来は、イスラエルがパレスチナの人々の権利を侵害したことを認め、その被害を償う意思を明確にしたうえで、パレスチナ人に有利な形で二国家共存体制を構築することしかない。
欧米人は長くユダヤ人を迫害し、ナチスによるホロコーストを防げなかった贖罪感から、パレスチナの人々の正当な権利を軽視しすぎだ。2000年前にユダヤ人の国があったからといって、勝手に建国することが正当なはずがない。
イスラエルの黒歴史が許されることはない
ユダヤ人による入植は平和裡でなかったし、イスラエル建国はテロの結果でもある。一方、国連決議でイスラエル国家の存在は認められたし、オスロ合意でパレスチナも二国家共存を容認したのだから、イスラエルの自衛権は否定できない。
ただ、現状が肯定されても、過去の黒歴史が許されるわけでない。欧州系の人々が、北米やオーストラリアにいることや、彼らの国家が存立することは合法だが、そのことが、先住民に対する暴虐の過去を許すものではないのと同じだ。
ハマスのテロは、容認されないが、反撃は被害に見合った規模と国際法で許された手段に限られるべきだ。イスラエルがそれ以上の軍事作戦を展開しているようであれば、国際社会は毅然として批判しなくてはいけない。
欧米はロシアの未来像を持ち合わせてない
ロシアのウクライナ侵攻は国際法違反だが、2004年のオレンジ革命では選挙で選ばれた親露政権転覆を米国が支援したし、ウクライナにNATOやEU加盟の夢をちらつかせて混乱を煽ったのも戦争の原因だ。法的にはロシアが悪いが、真珠湾攻撃したから日本がすべて悪かったという日本人にとって不愉快な歴史観と同じ理屈だ。
欧米がロシア周辺地域でいかなる国際秩序を目指しているのか理解しがたい。この地域で、地元勢力と西欧勢力が結んでロシアと対立する十字軍的試みは、800年も繰り返されてきた。ロシアはNATOやEUから排除するが、ほぼ同じ民族のウクライナは入れるというのは理不尽だし、核保有国のロシアを解体することは世界の安定を危機にさらす。
アメリカが支援するイスラエルやウクライナが、民主主義を体現しているかも疑わしい。イスラエルはアラブ系住民を差別し、ウクライナはロシア語話者を不利に扱ってきた。ネタニヤフ政権は司法の独立を否定しようとして厳しい反発を受けており、ウクライナは世界で最も汚職が横行し、腐敗している国の一つだ。
パレスチナの2006年総選挙で勝利したのはイスラム原理主義組織ハマスだったのに、欧米やイスラエルがファタハ(パレスチナ解放機構の主流派政党)を支持して政権に居座らせている。
日露関係が悪化する大きすぎるリスク
プーチンは、一応まともな選挙で選ばれ国民に支持されているし、ソ連解体のときには、ウクライナのほうが一人あたりのGDPが多かったのに、現在ではロシアの3分の1と逆転した。5200万人いたウクライナの人口は約30年間で4100万人に減り、今回の戦争で数百万人が逃げ出した。もしEUに加盟したとしたら半分も残るか疑わしい。
ソ連とロシアを同一視して、第2次世界大戦で不可侵条約を侵犯したとか、北方領土を不法占拠したというが、スターリンはジョージア人、北方領土問題の主役だったフルシチョフはウクライナ共産党のトップ出身、ブレジネフはウクライナ生まれでドニエプル川流域の軍事産業を基盤としていた。シベリア抑留はウクライナでも行われたし、北方領土の多数派住民はウクライナ系だ。
ウクライナは、中国に空母を売り、北朝鮮にミサイル技術を輸出した疑惑が報道されるなど(在日大使館は疑惑を否定)、日本に友好的とはいえなかったし、2023年のG7広島サミットではゼレンスキー大統領が原爆の悲劇をウクライナの現状と同等だと矮小化した。
一方、日本にとってロシアは隣国だ。経済協力の可能性、北方領土交渉、漁業、アイヌ、対北朝鮮・韓国・中国でロシアが相手方についたときの面倒を考えると、ロシアとの関係悪化がもたらすマイナスは計り知れない。
軍事侵攻を機に、大飢饉が「大虐殺」に
ウクライナやイスラエルの主張には、日本が困るものも多い。近代国家は同系統の民族を統一していくことで発展してきた。ウクライナは、ロシア革命前に独立国であったことがない。ロシアとの縁切りが唯一の正義なら、独立国だった沖縄はどうなるのか。無条件に欧米の論理に与することは、中国の沖縄への干渉を正当化しかねない。
ウクライナ開戦後に歴史認識が変更されたことも問題だ。1930年代にソ連の一員だったウクライナでは「ホロドモール」という大飢饉が起き、数百万人が餓死した。その原因は農業政策の混乱だった。
このホロドモールについて、ロシア南部やカザフスタンでも同様に犠牲者が出ていることなどから、これまでは欧米でもウクライナ人へのジェノサイド(大量虐殺)とするのは適当でないと考えられてきたにもかかわらず、ロシアの軍事侵攻を機に、欧米の一部でジェノサイドと認定されるようになった。これは、戦前の日本が悪意でやったわけでないことまで批判された経緯とよく似ていている。
アメリカの行為を日本が肯定する必要はない
たしかに日本軍が真珠湾攻撃を行ったことは事実であるから、それについて妙な弁解をしないほうがいいだろう。ルーズベルト米大統領が攻撃を事前に知っていたとしても理由にならない。日中戦争についても同様だ。中国側にも批判されるべきことは多いが、相対的には日本が悪い。
しかし、原爆を落とし、東京大空襲のような無差別攻撃をし、ソ連に不可侵条約を反故にさせただけでなく、戦後は根本的な体制変革を強制し、自分たちの国際法違反は棚に上げて東京裁判を押しつける米国の行為を、日本人が積極的に肯定する必要はない。
米国は、相手が降伏しない限り、自分たちの何十倍もの死者が相手方に出ても平気で戦争を続ける。太平洋戦争における日本の軍人・軍属民の死者は約230万人で米国は10万人、イラク戦争でも米軍死者の100倍の犠牲を出した。イスラエルもテロで死んだ自国民の何十倍ものパレスチナ人を殺している。
アメリカの「正義」の戦争で混乱が広まった
「正義」を掲げた戦争によって、かえって混乱が広まっても結果論で片付ける。日本との和平条件をつり上げたことの結果が、南北朝鮮の分断であり、中国の共産化だったが、米国は自分の責任だと認めない。平和は維持が容易なバランスの取れた勢力均衡のもとでこそ可能なのだ。
ウクライナに対する支援が、中国や北朝鮮の野望を挫くという人もいる。しかし、台湾や韓国の人は、アメリカや日本におだてられて、同じ民族で戦う羽目になることを恐れている。
この1月13日には台湾総統選挙と総選挙が、4月10日には韓国の総選挙が行われる。台湾総統選挙は野党分裂にもかかわらず、対中強硬路線を続けようとする与党・民進党と中国との緊張緩和を掲げる野党・国民党が接戦を繰り広げており、議会選挙は台湾も韓国もどちらも野党優勢となっている。
日本の保守強硬派のアジア認識は、偏っていて危うい。台湾の政治家も企業も、安全のために中国にパイプを持っていることは常識だと思うが、知らない人が多いのだろうか。
無条件な追従も敵対も馬鹿げている
逆に韓国は、尹錫悦大統領が対日改善に取り組んでいるのに、日本の保守派は応援しない。それどころか、松川るい参院議員のように対韓関係改善に熱心な議員は保守派から批判されて、「エッフェル塔写真」を発端にしたフランス研修問題が彼らに針小棒大に攻撃されて炎上した。
対中国でも、やみくもに敵対しては互いに損をするだけだ。バブル崩壊後の日本経済を、輸出、安い消費財などの輸入による生活防衛、観光客によるインバウンド需要などで支えてきたのは中国との関係だ。
外交は押したり引いたりしながら進めるもので、無条件の追従も敵対も馬鹿げている。日米同盟が外交の主軸であるから、基本的には欧米との共同歩調はやむを得ないが、ウクライナやパレスチナについては積極的に平和のために仲介の労もとるべきだろう。
イラク戦争で米国一辺倒だった小泉外交
しかし、日本にとってメリットがない話には、一番後ろでついて行けば十分だ。イラク戦争でブッシュ大統領(当時)の暴走を後押しした小泉首相の判断は、とりあえず日米関係を好転させてその場しのぎにはなったが、世界での評判を落としたし、愚行に協力してくれたからといって米国民に感謝されるはずもない。
同じ立場だった英国のブレア首相(当時)はそのために歴史的評価を落としたが、日本人が小泉氏を糾弾しないのはおかしいことだ。
岸田首相は、安倍氏がそうであったように、米国大統領から助言を求められ、影響力を与えられてこそ「外交の岸田」たりうる。
また、与野党の政治家もマスコミも、20年後に次の世代の人々に胸を張って説明できる発言をしてほしいと思う。
●正念場の岸田政権 震災対応と政治改革に力尽くせ 1/9
岸田文雄政権が正念場を迎えている。政治への信頼回復とデフレ脱却に加え、能登半島地震への対応といった先送りできない試練が続く。難航する安否確認や生活支援の現状は政権の危機管理能力が問われかねない。政治資金問題をめぐっては安倍派議員が逮捕され、政治改革への難路が想定される。賃上げの成果で支持率が浮揚するかは予断を許さない。まずは目の前の震災対応に「一意専心」(岸田首相)で取り組んでほしい。
元日に発生した能登半島地震の被災地は、現在も安否を確認できない住民が多数おり、断水や停電、道路の寸断などが被災者を苦しめる。岸田政権は、被災者の要請を待たずに行うプッシュ型支援をさらに加速してもらいたい。9日にも2023年度予算から47億円の予備費拠出を閣議決定する予定だ。飲食や燃料の支給など、差し迫った課題への対応を急いでほしい。
政府は能登半島地震を激甚災害に指定し、災害復旧に向けた国の費用負担を増やす方針だ。被災者の生活を支える支援パッケージもまとめる。岸田首相は24年度予算の予備費増額も財務相に指示した。捜査救助活動を第一に、長期化が想定される復旧への歩みを確実に進めたい。
被災地で厳しい生活が続く中、自民党の現職の安倍派議員が7日、政治資金規正法違反の疑いで逮捕された。組織ぐるみの可能性がある同党の「裏金」疑惑の全容を解明し、政治改革を進めなければ、政権の行方さえ危うい局面を迎えた。党内に新設する政治刷新本部(仮称)に有識者も参加し、再発防止と派閥のあり方を議論する。月内にまとめる中間案は実効性を担保できる内容なのか注視したい。
4月には衆院の細田博之前議長の死去に伴う補欠選挙が行われる。東京地検特捜部の捜査次第では議員辞職による選挙区の増加も想定され、自民党の派閥政治が厳しく問われる。秋の自民党総裁選も混沌としてくる。デフレ脱却で支持率回復を狙う岸田政権だが、震災で始まった24年は政権にとって試練の年となる。震災対応も政治改革も着実に歩みを進めてほしい。
●20代支持率が「50%→10%」に急落…岸田政権によって「若者の自民党離れ」 1/9
若者層の支持政党に変化が生じている。ライターの平河エリさんは「若者の自民党支持率が急落している。岸田政権は安倍、菅時代の貯金を食いつぶしたようだ」という――。
「ジリ貧」の岸田政権と自民党の支持率
岸田政権が、低支持率にあえいでいる。
毎日新聞の世論調査(12月16〜17日)では16%、時事通信(12月8〜11日)では17.1%と、複数の世論調査で10%台の支持率となり、多くの政治関係者に衝撃を与えた。
同じくして、自民党の支持率も低下している。朝日新聞世論調査(12月16〜17日)では支持率23%と、自民党の政権復帰後最低の支持率を更新するなど、少なくとも2012年からの自民党政権では最も定位の水準にあることは間違いないだろう。
原因は一つではない。岸田内閣自体の支持率はジリ貧で、2022年末から低下傾向にあった。春先から夏にかけて、ウクライナ訪問などの外交成果により一定持ち直したものの、そこから再び内政に目が向いたことで再び低下トレンドに入っていた。それに加えて、今般の自民党における派閥の不祥事により、ついに自民党にまで火がついた格好だ。
「岸田おろし」で総選挙に突入か
自民党は内閣支持率が落ち込むと「○○おろし」という形で看板の架替えを行い、「ご祝儀相場」が残っている間に解散総選挙を打ってしのぐ、という戦略を取る。
典型的なのは、まさに岸田内閣だろう。支持率低下にあえぎ、衆参の補選や横浜市長選で破れた菅義偉前首相は総裁選に出馬することを阻まれ、退陣を表明。就任と同時に岸田文雄新首相は解散を宣言し、議席こそ減らしたものの、絶対安定多数を確保するなど事実上勝利した。
このような状況を踏まえると、岸田首相で総選挙に突入する可能性は低いと見るのが永田町のコンセンサスだ。しかし、今回に関しては、前回の菅義偉内閣とは異なり、自民党自体の支持率が大きく低下するトレンドに入っている。つまり、自民党自体の比例得票数などにも影響する可能性は否めない。
また、仮に総裁選を行うとしても、安倍派・二階派が動けない以上、岸田派・麻生派・茂木派など、岸田政権を支えた派閥が主導して総裁選びが進むことになる。新総理の人選によっては、刷新感は薄れることになるだろう。
安倍、菅時代の貯金を使い切った岸田政権
岸田政権の支持率低下の特徴は何か。一つは、若年層の支持を急速に失っていることだ。
安倍政権時、メディアでは盛んに「若者の保守化」が唱えられていた。選挙の出口調査でも、10代20代の支持率は底堅いことが示されていた。
初期の岸田政権も、例外ではなかった。2021年の解散時には「なぜ若者は自民党に投票するのか?」という記事が掲載されている。
これによれば、自民党に投票する割合が最も高かったのは10代であり、続いて20代と、若年層による自民党の指示が底堅かったことが顕著だ。NHKの出口調査によれば、最盛期の2017年には20代投票者の50%が、比例で自由民主党に票を投じていた。
岸田政権の支持率が低下し始めて以降の世論調査では、全く異なる結果が出ている。例えば、時事通信が10月に実施した世論調査では、岸田内閣の支持率は26.3%であるが、そのうち29歳以下の有権者は10.3%と、極めて低い数値となっている。60歳代、70歳以上は30%を超えているのと対象的である。
安倍政権・菅政権においては、支持率が上下するものの、概ね若年層からの支持が底堅かった。岸田政権は、その貯金を失い、若年層の支持を失った結果、支持率の底が抜けていったと言える。
これらのことを考えると、「若者の保守化」というよりも、単に安倍晋三元総理が個人としての人気が高かったことと、野党第1党である民主・民進・立憲の忌避感が高かっただけであり、根本的な「岩盤支持層」は高齢層であったことがわかる。
与野党の第1党はどちらも、世論調査では高齢層の支持を中心としていると言えるだろう。
自民党の次に人気な国民民主党
では、新興政党はどうか。「若年層人気」という観点で、興味深い世論調査がある。
12月のNHK世論調査では、世代別の支持率がグラフとして公表されたが、国民民主党が39歳以下の支持率で自民党についで2番目の支持率となったことが話題になった。
国民民主党は党首である玉木代表が積極的にYouTubeなどでの発信を行っており、ネットを通じた知名度の向上に一役買っていると言えるだろう。
世論調査と実際の得票の「差」
年代や普段接しているメディアによって、政党支持は大きく変わる。
JX通信/選挙ドットコムの調査では、ネット調査と電話調査それぞれの数字を発表している。2023年12月の電話調査では、自民党の支持率は23.9%だが、ネット調査では9.3%だった。立憲民主党の支持率も、電話調査では11.6%だが、ネット調査では2.2%と、大きな乖離がある。
ネット調査は主に50代以下の層が多く、電話調査は高齢者層が主だ。精度の面では、自ら回答するネット調査にはややバイアスがかかる可能性があるが、ネット世代の意識を理解する上では重要である。
近年、国政選挙などでは、立憲民主党の獲得議席数が情勢予測より下回る傾向が続いており、他方で国民民主党は情勢予測では厳しい結果が出るものの、それを上回る結果を出すことが多い。
電話調査などを中心にした情勢報道で拾いきれる民意と、実際の得票の間の乖離が、拡大していると見るべきなのではないだろうか。
働き盛りを押さえる維新、捉えられない立憲
とはいえ、「若年層」の中にも大きな差がある。NHK調査では「39歳以下」となっている(39歳は「若年」ではないだろう)が、10代、20代、30代のそれぞれで支持傾向は異なるし、当然ながら1年経てば年代層も入れ替わっていくため、傾向は流動的に変わるからだ。
比較のために、2022年7月の共同通信の調査を見てみよう。
立憲民主党は50代以下の層からの支持が薄いが、特に低いのは30代と40代で、「働き盛り」の層からの支持が低いことがわかる。逆に10代からの支持は比較的高い。
2021年の朝日新聞による衆院選の出口調査でも、10代の17%が投票したと答えたのに対して、30代は14%と低い傾向だ。
日本維新の会は30代から50代までの働き盛り・壮年層の支持が厚いことがわかるが、10代、20代の支持は比較すると低い傾向にある。朝日の出口調査でも、40代が17%に対して10代が8%となっている。
国民民主党は、年代が下がるほど支持が高まる傾向にあり、特に10代と20代の支持が厚い。
テレビを中心として、(特に関西圏における吉村洋文知事、橋下徹元代表などの露出で)知名度を上げた維新と、YouTubeなどのネットを中心として知名度を伸ばしてきた玉木代表の違いが出ているとも言え、興味深い。
若者支持率では維新と肩を並べるれいわ
さて、通常であればこのような原稿は、次のように続くことが多い。
「立憲民主党は高齢者の支持に偏っており、政策的に若者の支持を得られていない。批判ばかりという印象が強く、何かを変えてくれるというイメージを与えられていない。ネット上の極端な意見の有権者ばかりの声を聞くのではなく、もっと若年層のリアルな声を聞き、政策に反映させない限り、永久に与党に勝つことはできない」と、このような具合である。
政治記事を積極的に読む方なら一度は耳にしたことがある意見ではないか。
上記のような意見は正しいのだろうか。これを考えてみたい。
年代別の支持率は、政策的な正当性を補強する論拠として使われることがある。とりわけ、野党第1党である立憲民主党(あるいはその前身の民主・民進)に対する批判的文脈を補強するデータとして使われることが多い。そして、その対比になるのは、自民党であったり、国民民主党であったりする。では、それ以外の政党を見ていこう。
ここまで触れていないが、れいわ新選組は各種調査で40代以下の支持が厚い。先程のNHKによる年代別調査でも、詳しい数字は公表されていないものの、20代では維新と同程度の支持を獲得していた。
YouTubeの登録者数はれいわがダントツ、次いで参政党
れいわ新選組のYouTube公式チャンネル登録者数は28.3万人と、他党と比較しても際立って高い。自民党が13万人であり、国民・玉木代表の個人チャンネルでも13.8万人であることを考えれば、その2倍以上となる(肉薄しているのは22.5万人の登録者を誇る参政党くらいか)。
ネットでの発信力が若年層の認知度・支持率に大きく貢献しているのではないか。
れいわ新選組に次いで、23万人のYouTube登録者数がいる参政党も見逃せない。参院選の若年層を分析した記事では「参政党に投票した人を年代別に見ると18、19歳では6.9%、20代は5.9%、30代では4.8%と若い世代ほど支持を広げていました」との記述がある。参政党はYouTubeだけではなくTikTokなどでも支持を広げ、テレビではほぼ主張が取り上げられないにもかかわらず、一定の支持率を得たわけだ。
このように見ていくと、政策的な方向性より「どのようなメディアを見ているか」という点のほうが、政党支持に大きく影響しているのではないか。
前述のような「批判ばかり」というようなイメージも、テレビ的、あえて言うならワイドショー的な価値観で、そのようなネガティブな認知すら持っていない若年層も少なくない。
なぜ政策のないガーシーが30万票も集められたのか
すでに「なつかしニュース」のようになってしまったが、昨年参議院選挙に出馬したガーシーのYouTube登録者はおおよそ120万人だった。個人名での得票は28万票の得票である。これをどう捉えるか。
ガーシーの10倍以上の登録者がいるYouTuberやインフルエンサーは複数存在する。彼らが出馬したとして、10倍の得票、つまり200万〜300万票が獲得できるのか。そう簡単にはいかないだろうが、考えてみる価値はあるだろう。
政策的な方向性がほとんどなく出馬したガーシーが30万近い得票を獲得できたことを考えれば、「政党」や「政治家」としての体裁を整え、拒否感を消す工夫をすれば、既成政党に対抗しうる台風の目となる可能性は十分にあるのではないか。
これまでの時代も全国比例には多数のタレント候補者が立候補してきた、アントニオ猪木氏のように政党を立ち上げたケースも存在する。
時代が異なるのは、個人の人気がメディアでの影響力に直結するということだ。
ネットを足掛かりに党勢を拡大するミニ政党
かつては、いくらテレビで人気の有名人でも、その人気はテレビなどの規制メディアを通じてしか発揮できなかった。つまり、「政治家」という枠にハマったとき、その力は大きく制限されてしまうわけだ。
しかし、インフルエンサーは違う。彼らは自ら発信できるメディアを持ち、支持する人にタイムリーに主張を届ける力を持つ。そして、公選法による規制を除けば、メディアのように横並びになることなく、かなり自由に活動することができる。
重要なポイントは、1年経つごとに新聞・テレビなどのマスメディアの影響力は落ち、インターネット、あるいはSNSの影響力は上がっていくということだ。
当たり前だが、今の10代は10年経てば20代になる。10年後の60代は今の50代である。今の50代のSNS利用頻度を考えれば、高齢層を含めてインターネットが唯一有権者にリーチする手段になってもおかしくない。
すでに、参政党やNHK党など、ネット発の政党が参議院の比例得票により議席を獲得し、国会で足がかりを作っている。
これが加速していけば、党首の影響力を中心とするミニ政党の全体的な得票が底上げされ、既成政党が圧迫されていくことになる。
自民、立憲は「語りかける力」がない
ここまで書くと、「有権者は政策など見ていない」というようなシニカルな意見の記事だと誤解されるかもしれない。
しかし、国民民主党・玉木代表や、れいわ新選組・山本太郎代表は、ネット上でも繰り返し政策を説明し、直接有権者に語りかけている。イメージや認知度だけではなく、政策が浸透していることが、ネット世代の底堅い支持になっているのではないか。
自民党の支持率低下、そして立憲民主党のネットでの支持の弱さも、政策をどうこうという以前に「語りかける力」のなさが見抜かれている、とも言える。
これからの選挙においては、有権者に直接語りかける力と発信力、両方が求められるのではないか。
ポイントは、自民党や立憲民主党は党首が頻繁に変わる上に、党内にさまざまな意見がある総合政党であるということだ。このような点は、党首イコール政党である政党に比べて大きなディスアドバンテージになる。
自民党は政府与党としてのアドバンテージがあるが、立憲民主党は腰を据えて、長期目線で代表の発信力強化に取り組む必要があるのではないか。首のすげ替えでメディアが取り上げてくれる時代は終わったとも言える。
環境変化に適応した政党だけが生き残っていく
ネット発の政党は「ミニ政党」といった規模であり、まだまだ国会において大きな影響力を持つには至っていない。この傾向が拡大していけば、ネット発の政党が大きなムーブメントとなり、政局を動かしていく日は遠くないだろう。
比例代表や基礎自治体など、数%の得票率でも議席が獲得できる選挙と違い、原則50%近くの得票が求められる日本の小選挙区制や都道府県議会の下で、どの程度まで勢力を伸ばせるかはわからないが、10年スパンで考えれば大きな変化が起きることは見えている。
ミニ政党がさまざまな方面から拡大していけば、極端な意見をそれぞれが言い合うだけの、対話を欠いた議会になる可能性は少なくない。しかし、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一、生き残るのは変化できる者である」というダーウィンの言葉通り、環境に適応したものだけが生き残っていくのではないか。
未来を予測するのは難しいが、年代別の政党支持率は、明日の議会の姿を示している、と言える。
●自民の「政治刷新本部」、11日初会合へ 小泉元環境相も参加か 1/9
自民党は派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題をふまえ、岸田文雄首相(党総裁)の直轄で党内に設ける「政治刷新本部」の初会合を11日に開く方向で最終調整に入った。政権幹部が明らかにした。
メンバーは茂木敏充幹事長や森山裕総務会長、小渕優子選挙対策委員長ら「党7役」や、首相側近の木原誠二幹事長代理が中核となる予定。青年局長経験者も加える方向で、小泉進次郎元環境相や小倉将信前こども政策担当相らを念頭に検討している。最高顧問には首相経験者の麻生太郎副総裁と菅義偉氏が就任。首相周辺は「挙党態勢で臨むための人事だ」と話す。
刷新本部には外部有識者も参加。政権幹部によると、1月下旬に開会予定の通常国会までに中間取りまとめをする方向だという。首相は年頭の記者会見で「必要があれば関連法案を提出する」としており、政治資金規正法の改正まで踏み込むかが焦点となる。
自民党の最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)が政治資金パーティー収入の一部を裏金化したとされる事件では、東京地検特捜部が7日に同派所属の衆院議員・池田佳隆容疑者らを政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で逮捕するなど、捜査が続いている。
首相は「中間とりまとめでそれなりの形にしたい」と周囲に意気込みを示すが、政権幹部は「議論は捜査の状況を見ながら」。さらに派閥の存在自体に否定的な最高顧問の菅前首相がどう出るかなど、議論の先行きは見通せない。
●岸田政権、秋までの退陣不可避か 自民「選挙の顔」刷新で政権維持図る 1/9
自民党安倍派を中心とする政治資金パーティー収入の裏金化疑惑が、岸田政権を直撃。支持率低下が止まらず、2024年は首相退陣が避けられそうにない情勢だ。
底なしの支持率急落にあえぐ岸田文雄首相は、1988年のリクルート事件以来とも言われる疑獄事件の直撃を受けた。昨年12月、自民党最大派閥・安倍派を中心に政治資金パーティー収入の一部を裏金化していたとされる事件が表面化。世論の政治不信は頂点に達し、岸田首相は今年9月の党総裁任期切れまでの退陣が避けられそうにない情勢だ。自民党は次期衆院選で苦戦必至とみて、「選挙の顔」となる首相を交代、速やかに衆院を解散して政権維持を図る展開が予想される。ただ、元日に発生した能登半島地震の影響で解散時期が制約されるとみられ、政局の行方は不透明感を増している。
「安倍派一掃」で支柱失う
疑惑が表面化したのは昨年11月下旬だ。安倍派が政治資金パーティー収入を所属議員に還流させ、組織的に裏金化していた疑いが持たれている。政治資金規正法上、収支報告書の不記載・虚偽記載罪の時効にかからない2018〜22年の5年間で、裏金の総額は6億円規模に上るとされる。
とりわけ、松野博一官房長官や西村康稔経済産業相、自民党の萩生田光一政調会長ら政権中枢を占める安倍派幹部が1000万〜数百万円を裏金として受けていた疑いが明らかとなり、岸田首相はこれら幹部の更迭に追い込まれた。臨時国会閉幕後の12月14日、同党の高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長を加えた安倍派のいわゆる「5人衆」を政権中枢から一掃。同派の副大臣5人も全員交代させた。
安倍派を政権の支柱として頼りにしてきた首相にとっては、計り知れない打撃となった。この日公表された時事通信の世論調査で、岸田内閣の支持率は初めて2割を切り、17.1%に落ち込んだ。排除される形になった同派は反発を強め、他派閥も含めて党内に首相を支えようという空気は乏しい。岸田政権は「もはや立て直しは不可能」(自民党ベテラン)という見方が広がっている。
行き詰まる政権運営
疑惑が表面化する以前から、岸田政権は行き詰まりつつあった。首相が政務秘書官に起用した長男の不適切な行動や、健康保険証の廃止を前提とするマイナンバー制度の混乱が批判を招き、支持率は昨年5月の38.2%をピークに急落。起死回生を狙った9月の内閣改造・自民党役員人事は不発に終わり、首相肝いりの1人当たり4万円の定額減税は既定方針の防衛増税との矛盾は否めず、「政権浮揚狙い」と見透かされ、民心の「岸田離れ」が鮮明になった。
疑惑が発覚した後の対応もお粗末だった。違法行為の疑いをかけられた松野官房長官が記者会見や国会で、一切の説明を拒んでいる様子が連日のように報じられた。ほかの安倍派の閣僚や党幹部も、悪びれもせず「職務を全うする」と言い放った。岸田首相は松野氏ら安倍派幹部を交代させるまで1週間近くにわたってこうした状況を放置し、人々の政治不信をどれだけ助長したか分からない。この人事に当たっては「国民の信頼回復のため火の玉となって自民党の先頭に立つ」などと大仰な言葉を口にしたものの、具体策は示さないままだ。年明けになってようやく、再発防止策を検討する新しい党組織として「政治刷新本部」(仮称)を設置し、1月中に中間とりまとめを行う考えを示した程度で、スピード感も指導力もうかがえない。
裏金疑惑は安倍派にとどまらず、東京地検特捜部の今後の捜査でどこまで波及するのか見通せない。12月の人事は「急場しのぎ」と言え、1月下旬とも見込まれる通常国会召集まで新体制が無傷でいられる保証はない。通常国会で2024年度予算案審議が始まれば、首相は引き続き野党の追及のやり玉に挙げられる。自民党の派閥政治に起因した今回の不祥事に説得力のある対応策を示せなければ、政権は立ち往生しかねない。
待ち受ける「政治改革国会」
大きな課題となるのが、政治資金の透明性を高めるための政治資金規正法の改正と、自民党の派閥の在り方見直しを含む政治倫理の確立だ。だが、過去の例を見ても、自民党は政治改革の諸課題に後ろ向きだ。リクルート事件を踏まえ、1991年の通常国会で最大の焦点となった政治改革関連3法案は、その柱となった小選挙区比例代表並立制の導入に党内の反対が根強く、廃案に追い込まれた。現行の小選挙区制に道筋が付いたのは自民党の野党時代だ。
派閥は弊害がクローズアップされるたびに解消が叫ばれ、歴代首相のほとんどが形式的にせよ派閥を離脱して距離を置いてきた。だが、岸田首相は就任以来、こうした慣例を無視。岸田派会長にとどまっただけでなく、派閥の例会にもたびたび顔を出していた。今回の疑惑発覚を受け、派閥離脱を表明したが、遅きに失したと言うほかない。
その首相が、疑惑追及と政治改革が焦点となる通常国会で派閥の弊害除去を唱えたところで、誰が耳を貸すだろうか。自民党に政治資金規正法改正案の内容を検討させようとしても、指導力を発揮しようがないだろう。自民党ベテランは「首相は信用をなくしてしまっている」と言い切る。もはや「岸田首相の下では選挙は戦えない」というのが党内の大勢だ。「ポスト岸田」有力候補の一人と目される石破茂元幹事長は、2024年度予算成立直後の首相退陣を唱えている。
だが、自民党の体質そのものが問われている局面だけに、首相を代えたところで信頼回復は容易ではない。世論の理解を得るには、政治資金規正法の改正は避けて通れないとみられるが、実効性のある改革に向けた党内合意の形成は難航必至だ。どうにか改正案の提出にこぎ着けたとしても、審議は予算成立後の後半国会以降に持ち越される。「ポスト岸田」をうかがう候補は、うかつに岸田降ろしに動けば火中の栗を拾うことになりかねない。むしろ満身創痍(そうい)の岸田政権に委ねた方が得策との打算が働きそうだ。
当面の政治日程
   1月下旬  通常国会召集
   3月下旬? 2023年度予算成立
   6月13日   G7サミット(イタリア、15日まで)
   6月20日   東京都知事選告示(7月7日投開票)
   6月下旬? 通常国会会期末
   9月      自民党総裁任期満了
次の節目は、6月の通常国会会期末だ。国会が閉幕するのに合わせて首相が退陣を表明し、秋の自民党総裁選を前倒し実施する案も取り沙汰される。同13日にイタリアで開幕する先進7カ国首脳会議(G7サミット)を政権の総仕上げとする、いわゆる「サミット花道論」に通じる。ただ、東京都知事選が同20日告示、7月7日投開票の日程で行われることが決まっている。自民党は総裁選を国のトップリーダー選びとして大々的にアピールするのが常で、同じく注目度の高い都知事選との同時実施で世論の関心が分散するのを嫌う可能性がある。
政局の行方を読みづらくしているのが、能登半島を中心に日本海側を襲った大地震だ。甚大な被害を受けた石川県では3万人を超える住民が避難生活を強いられている。早期の衆院解散が困難になっただけでなく、自民党内での岸田降ろしの動きや、国会での予算案審議を妨げるような野党の戦術は、震災復旧・復興そっちのけの政争と受け取られれば世論の厳しい批判を免れない。こうした状況は、図らずも岸田政権の延命に手を貸すかもしれない。
総裁再選出馬は困難か
総裁選は前倒しがなければ、9月末の任期満了に伴い、秋に実施される。岸田首相は21年秋の菅義偉首相と同様、再選出馬はできずに退陣する公算が大きい。新総裁選びで各派閥は前面には立てず、候補者も石破氏や小泉進次郎元環境相ら無派閥議員や、麻生派所属ながら派閥横断的な支持を集めてきた河野太郎デジタル相ら、知名度が高い議員の争いが軸になりそうだ。
新総裁が選出されれば速やかに臨時国会を召集、首相指名選挙を経て新内閣発足の運びとなる。新政権は鮮度が落ちないうちに衆院を解散、公明党と合わせて過半数の維持を目指す流れになるとみられる。自民党にとっては逆風、公明党も組織力の低下が顕著で、厳しい選挙戦となるのは避けられない。
一方で、野党陣営に対しても期待が高まっているわけではない。立憲民主党は党勢立て直しの手掛かりがつかめず、日本維新の会も不祥事続きで一時の勢いは失われた。しかも、両党は政策も体質も「水と油」。小選挙区での候補者一本化は議論すら行われておらず、各地で競合して非自民票を食い合い、自民党を利する展開が繰り返されるとみられる。
ちなみに衆院議員の任期満了は25年10月。法的には来年への先送りも可能だ。ただ、来年の夏には参院選が控えており、年内の衆院解散を逃すと、来年はほぼ必然的に衆参同日選となる。東京都議選も同じ夏に予定され、都議会を重視する公明党が同時期の衆院選に強硬に反対するのは確実だ。自民党にとっても、衆参で一気に議席を減らしかねないダブル選はリスクが大きく、党関係者は「ダブルは絶対にない」と断言する。
自民党は今回の疑惑の広がりに危機感を強めながらも、野党の低迷を踏まえ、議席は減らしても政権を追われることはないと高をくくっている節がある。同党ベテランは「野党がだらしないから自民党に緊張感がない」と認める。自民党に真摯(しんし)な反省がない以上、今年の政治の一大テーマとなる政治改革は掛け声倒れに終わる可能性が高く、同党に向けられる世論の視線は一段と厳しさを増すに違いない。
●2023年の東京都内物価指数 3.0%上昇 41年ぶりの伸び率 1/9
総務省が9日発表した、2023年平均の東京都区部の生鮮食品を除く消費者物価指数は前年比3.0%上昇し、伸び率は22年の2.2%から拡大した。1982年以来41年ぶりの大きさ。
原材料やエネルギー価格の高騰を受け、食品などの値上がりが広がったことが上昇幅を押し上げた。
一方、12月の東京都区部の生鮮食品を除く消費者物価指数は、前年同月比2.1%上昇し106.1だった。
28カ月連続のプラスとなったが、11月の2.3%より伸びは鈍化した。
「食料」のうち、プリンが39.5%、鶏卵が22.7%、それぞれ増加し、「生鮮食品を除く食料」全体では6.0%の伸びとなったが、11月の6.4%から上げ幅は縮小した。
また、電気代が21.7%、ガス代が21.4%、いずれも低下したことも全体の上昇幅を抑える要因となった。
東京都区部の消費者物価指数は全国に先駆けて発表され、先行指標とされている。
●能登半島地震 予備費から47.4億円の緊急対応を閣議決定 1/9
政府は、能登半島地震の被災者を支援する緊急対応として今年度予算の予備費から47.4億円を活用することを閣議決定した。
岸田首相は9日開かれた、非常災害対策本部会議で閣僚らに対し「プッシュ型支援を加速させるため迅速に執行し、被災地の状況改善にあてるように」と指示した。
また、岸田首相は、避難生活が長引く中、避難所で、生活環境や衛生環境の悪化が顕著になってきている問題点を指摘し、病気の方やお年寄り、妊婦など特に配慮が必要な方を最優先に、二次避難を優先すべき避難所について確認するように指示した。 
●経団連の十倉会長、議員逮捕「非常に遺憾」 実効ある対策を 1/9
経団連の十倉雅和会長は9日の記者会見で、自民党の政治資金規正法違反事件で、池田佳隆衆院議員が逮捕されたことについて「非常に遺憾に思う。政治の責任において実効ある対策が必要だ」と指摘した。岸田文雄首相をトップとする同党の政治刷新本部での議論などを通じ、政治への信頼回復に努めるよう求めた。
●問われる政治の覚悟 1/9
ことしの日本の政治は、能登半島地震への対応で国民の命と暮らしを守ること。そして、政治とカネをめぐる問題で、国民の信頼を取り戻す道筋をつけることができるのかという課題に直面しています。ことし問われる政治の覚悟について考えます。
能登半島地震対応
岸田総理大臣は、年明け、二つの課題に先頭に立って取り組む考えを強調しました。
最優先の課題は、能登半島地震への対応です。記者会見で、「令和に入り最大級の災害で、被災地、被災者に寄り添い、努力しなければならない」と述べました。
被災地は厳しい寒さによって低体温症などで、避難生活の中で命を落とす災害関連死が強く懸念されています。被害の全容をつかみ、必要な支援を迅速に届け、被災者の命を守らなければなりません。
また、家や仕事を失った被災者の生活の再建や地場産業など被災地の再生に向けた息の長い支援も必要です。
さらに、被災した地域は、人口減少と高齢化が進み、行政や地域の支えあいにも限界があります。こうした地域で災害への備えをどう進めるのかも考えていなかなければなりません。
岸田総理は、与野党の党首と会談し、「災害対応に万全を期す点で、与野党の立場に違いはない」と述べたうえで、新年度予算案について、内容を変更して予備費を増額する方針を伝え、早期成立に協力を要請しました。
国民の命と暮らしを守ること、国民の安心・安全、将来に対する不安を取り除くこと。これは政治本来の役割です。その役割を果たす覚悟が、いま、与野党を超えて求められていると思います。
政治資金問題
もう一つ岸田総理が先頭に立つとしたのが、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題です。「国民の政治への信頼を回復すべく、自民党の体質を刷新する取り組みを進めていく」と強調しました。そして、総裁直属の「政治刷新本部」を発足させ、政治資金の透明性の拡大や派閥のあり方に関するルール作りを進める方針で、今月中に中間的な取りまとめを行い、必要に応じて関連法案を国会に提出する考えを示しました。
事態の深刻さ
私は、今回、これまでの政治とカネをめぐる問題とは違った深刻さがあるとみています。
まず、問題の広がりです。政治資金規正法違反の疑いで池田佳隆(いけだ・よしたか)衆議院議員が逮捕される事態になっていることに加えて、最大派閥の安倍派と二階派が捜査対象になり、不適切な資金の処理があったとされる派閥や国会議員、議員側の政治団体の数が多く、その額も億の単位という多額に上っています。
これに対して、自民党、各派閥からは、捜査中であることなどを理由に、実態について十分な説明は果たされてはいません。
さらに指摘しておきたいのは、自民党内で、この問題に対する具体的な行動が目立っていないことです。30年あまり前、リクルート事件の際には、議員が勉強会を作って改革案を提言したり、若手議員が改革を断行するよう執行部を突き上げたりもしました。事件の捜査状況を見極めたいという面もあるのかもしれませんが、今回、議員の多くが口をつぐむ背景に、不適切な資金の処理が日常化し、疑問を感じなかったうしろめたさ。世話になった派閥や有力者にはモノが言えないというような配慮があるのだとすれば、自民党の党運営が派閥依存の体質になっている深刻な事態を浮き彫りにしているともいえます。
派閥をどう考える
派閥は自民党の正式な機関ではありません。
リーダーを総裁に押し上げようとするグループという性格に加えて、政府や党、国会の人事は、派閥の意向も踏まえて、調整やポストの割り振りが行われてきました。また、選挙の支援や若手議員の指導、有望な新人を発掘する役割も果たしてきました。さらに、政策や政権構想を取りまとめ、党の方針やトップの政局に対する考え方など情報を共有する場でもあります。
しかし、議員が派閥のために資金を集め、派閥から資金の提供を受ける。それが議員を囲い込む原動力となっているのではないかと批判されてきました。
リクルート事件の後、平成元年に取りまとめられた自民党の「政治改革大綱」では、「政治倫理」「政治資金」「選挙制度」「国会」という柱とともに「党改革」の最終的な目標として、「派閥の解消」を打ち出し、派閥の弊害を取り除くとしています。
党の体質を刷新するというのであれば、政治刷新本部で、派閥の解消を含めた議論が行われるのかどうかが、焦点になりそうです。
党の主導権を得るために、人のつながりでグループができることは否定できない側面はあります。岸田総理は「派閥のあり方に関するルールを作る」という考えを示し、派閥の存在を必ずしも否定はしてはいません。派閥の存在を認めるのであれば、派閥がなぜ必要なのか、派閥のどこに問題があり、何を改めるのか、自民党、そして各派閥のリーダーが自らの言葉で国民に明確に説明すべきではないでしょうか。
国会での議論は
では、国会で各党は、実態解明と再発防止に向けた取り組みをどう進めるべきか考えます。衆参両院には、▽議員が法令などに違反し、政治的道義的責任があるかどうかを審査し、勧告を行う「政治倫理審査会」があります。▽政治倫理の確立と公職選挙法改正に関する特別委員会は、政治資金規正法の改正案を取り扱います。しかし、多くの場合は、衆参の予算委員会が、実態解明と再発防止の方向性を議論する場となってきました。
ただ、今月召集される通常国会で議論が始まる予算委員会では、能登半島地震への対応や新年度予算案に盛り込まれた物価高対策、賃上げ、少子化対策、防衛力の強化とその財源、外交・安全保障の基本方針など議論すべき重要課題が山積しています。
こうした課題の議論をおろそかにしてはなりません。予算委員会だけでなく、政治倫理審査会や特別委員会を並行して開くなど、議論の場を仕分けて、重要政策の議論も十分にできる工夫を与野党に求めたいと思います。
政治資金規正法は
再発防止を考えるうえで、ポイントとなるのが政治資金規正法を見直すかどうかです。論点は、すでに明確になっています。政治資金パーティーについては、現在、1回20万円以下ならば購入した人や金額を収支報告書に記載する義務はありません。この公開基準を引き下げるかどうか。
罰則の強化をめぐっては、立憲民主党、与党の公明党などからは、政治資金規正法に会計責任者だけでなく国会議員も処罰の対象とする連座制の導入。国民民主党からは、政治資金で問題があった政党の政党助成金を減額する措置を検討すべきだという意見が出ています。日本維新の会と共産党は、企業団体献金を禁止すべきだとしています。
政治資金をめぐっては、さらに課題もあります。政党助成金の制度があることを踏まえ、新たなに独立した機関を設け、政治資金をチェックすべきだという意見もあります。これは、政治資金の問題解決を政党や政治家に委ねてよいかという論点になります。
政党によって、政治資金の集め方や党の財政基盤は大きく異なります。また、政治資金そのものを集めにくくするような規制や制限を強めることで、金持ちや資産家でなければ政治家になれないような事態は望ましくないという指摘もあり、合意形成は容易ではありません。しかし、政治とカネをめぐる問題が後を絶たず、事件の捜査によって是正されることが繰り返され、政治の対応が先送りされれば、国民の不信は解消されません。
まとめ
能登半島地震への対応に万全を期し、内外の重要課題に十分な議論を行いながら、与野党が、今月召集される通常国会で政治とカネをめぐる問題で実効性のある答えを出し、国民に説明を尽くし理解を得られるか、政治に、これをやり遂げる強い覚悟があるかどうかが問われています。
●地震からの復旧・復興へ予備費を1兆円に倍増 16日にも閣議決定 1/9
政府は、能登半島地震からの復旧・復興に対応するため、新年度予算案に盛り込まれた予備費について、現状の5千億円から1兆円に倍増させる方向で検討に入った。16日にも閣議決定する。複数の政権幹部が明らかにした。
予算案は12月22日に閣議決定し、1月下旬に開会予定の通常国会に提出予定だった。短期間で修正し、再び閣議決定をし直すのは異例の対応。岸田文雄首相が5日、鈴木俊一財務相に積み増しを指示していた。
能登半島地震に対応するための財源について、政府は今年度予算の予備費約4600億円を順次、活用していく方針。9日には、被災地からの要請を待たない「プッシュ型支援」の財源として、この予備費のうち47億4千万円の支出を閣議決定。水や食料、乳幼児用粉ミルク、ストーブや毛布、衣類などの物資を購入し支援に充てる。
避難生活や生活再建支援の長期化も予想されるなか、年度が替わるタイミングでも切れ目なく対応するため、政府は予備費の積み増しを検討してきた。2016年の熊本地震では補正予算で7千億円以上を積み増したことや、今回の地震以外にも予測できない事態に備えておく必要性を考慮した。

 

●日本は「痛切な謝罪」をしたと主張する韓国国情院長候補 1/10
チョ・テヨン国家情報院長候補は9日、昨年3月の日本政府による「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」との発言は歴史問題に対する謝罪を含んでいると述べた。
チョ候補はこの日、野党「共に民主党」のユン・ゴニョン議員による「日本の植民地時代の強制動員と慰安婦の問題に関して、日本政府の正式な謝罪が必要だと考えるか」との質問に対する書面答弁書で、「日本は韓国側による強制動員賠償解決策の発表時に『金大中(キム・デジュン)-小渕共同宣言を含む歴代内閣の歴史認識の継承』を明示的に表明した。これは『過去の出来事に対する痛切な反省と心からの謝罪』を意味すると評価している」と述べた。
昨年3月6日に尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、日帝強占期の強制動員被害者に対する賠償問題の解決策として、韓国の財団を通じて賠償金(判決金)を支給する「第三者弁済案」を公式発表した。これに対し日本側は、謝罪ではなく岸田文雄首相が「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」と述べる程度にとどまっている。
第三者弁済案は、日本製鉄や三菱重工などの日本の加害企業の賠償参加を強制していないため、屈辱的だとの批判にさらされた。チョ候補は、「第三者弁済案」は「国家レベルで韓国国民の痛みを引き受けるとともに、高まった国格にふさわしい姿勢で主導的な解決に取り組もうとした結果」だと述べた。
ユン・ゴニョン議員は「韓日関係において屈辱的な態度を取り続けてきた尹錫悦政権の素顔がチョ・テヨン国情院長候補の答弁でもあらわになっている。加害者は謝罪もしていないのに、被害者である韓国の政府が謝罪を受けたと主張するのは、強制動員の被害者にさらに苦痛を与える行為」だと述べた。
●自民・麻生副総裁、米政権高官と会談 日米韓関係の重要性を確認 1/10
訪米中の自民党の麻生太郎副総裁は現地時間の9日、ワシントンで、カート・キャンベル米国家安全保障会議(NSC)インド太平洋調整官と会談した。中国や北朝鮮など東アジア情勢を念頭に日米韓3カ国の連携が重要だという認識で一致した。
キャンベル氏はバイデン米政権のアジア政策の司令塔役を務めている。昨年11月、米国務省のナンバー2に相当する次の国務副長官に指名され、「知日派」としても知られている。
同席者によると、両氏は約40分間にわたり会談。キャンベル氏が、昨年8月にワシントン郊外の大統領専用山荘「キャンプデービッド」で行われた日米韓首脳会談を「成果」だと振り返ると、麻生氏も3カ国の連携を「今までの土台の上に発展させていくことが大事だ」と応じたという。中国や台湾を巡る情勢についても意見交換した。
両氏はまた、今春の岸田文雄首相の国賓待遇での米国公式訪問についても議論し、日米同盟をさらに発展させるため、岸田首相の訪米成功が重要だという認識で一致した。
●能登半島地震の衝撃に便乗するのでは…改憲、増税、原発再稼働 1/10
能登半島を襲った大地震・津波により、2024年の幕開けは衝撃で覆われた。もちろん、引き続き被災者に応える最大限の災害対応は必要だが、だからといって、震災以外の疑惑・問題を覆い隠したり、災害に便乗した動きを見過ごすことはできない。政治とカネ、改憲、復興名目の増税、原発再稼働…「ショック・ドクトリン」にどう対応すべきか。
「この後も地震関係の公務がございますので、(質問は)あと2問とさせていただきます」
4日午後4時半から行われた岸田文雄首相の年頭記者会見。能登半島地震や「政治とカネ」問題などについて答えたが、内閣広報官はこう言って会見を幕引きした。当時の首相の動静を確認すると、確かにその後に15分程度、災害対応に当たる官房長官らと面談を行っている。しかし、テレビ出演のため官邸を出発する午後7時半ごろまで特に予定は入っていない。
テレビで語る岸田首相に批判相次ぐ
「今、テレビ出てる場合じゃないでしょ」。安否不明者の捜索や救助活動が進む最中の出演に加え、災害対応以外の党総裁選の再選に向けた展望などを語る岸田氏の姿にネット上で批判が相次いだ。さらに5日には、経済3団体や連合など三つの新年互礼会をはしごしてあいさつしたことへも疑問視する声が上がった。
同じ日には、立憲民主党の泉健太代表が熊本地震と比べ、自衛隊の活動が小規模になっていることに関し、「自衛隊が逐次投入になっており、あまりに遅く小規模だ」と批判した。
震災で政権の潮目が変わった?
ただ、こうした批判があっても、民放・TBS系列のJNNが6、7両日行った世論調査では、政府の対応が迅速に行われていると「思う」と答えた人は57%に上った。ほんの十日前には、政治資金パーティー裏金事件など「政治とカネ」問題で大揺れに見舞われていた岸田政権。共同通信の世論調査で22.3%まで下がり、2009年に自民党が下野する直前の14%台に近づきつつあった。震災で、いきなり潮目が変わったのか。
政治ジャーナリストの泉宏氏は「大きな事件事故は内閣支持率にプラスに働く。ずっと総理が前面に出て存在をアピールできるから」と話す。
だが、「岸田氏はそれを全く生かしていない。続けざまに新年会に出たり、テレビで話さなくてもよいことを話している」とも。年頭会見で岸田氏は「政治刷新本部(仮称)」を自民党内に設置するとした。しかし、派閥そのものが問題視される中、麻生太郎副総裁を同本部最高顧問に据える方針だ。「派閥解消なんてできっこない。麻生氏は派閥のボス。本気度を全く感じない」(泉氏)
「政治とカネ」トーンダウンも
7日には、池田佳隆衆院議員らが逮捕された。他の議員の捜査が大詰めとも伝えられ、本来、「政治とカネ」問題の報道や議論は今ごろピークを迎えたはずだが、報道量も世の関心も地震に集中する中で、トーンダウンの感もある。
さらに、通常国会が開会すれば、国会議員には国会会期中の不逮捕特権があり、例外的に逮捕する場合でも逮捕許諾請求が必要となるため、東京地検特捜部の捜査が進展しなくなる可能性もある。
元特捜部検事の高井康行弁護士は「これから安倍派の事務総長らを逮捕するとなると、通常国会に食い込む可能性が高い。逮捕許諾請求は証拠の中身を見せなくてはならず、検察にとってはハードルが高い」と話す。こうして結果的に、「政治とカネ」問題は抜本的改革なしで終幕する恐れもある。
「緊急事態条項」で、頭をもたげる改憲論議
一方、こうした大災害などで頭をもたげるのが、「緊急事態条項を盛り込め」といった改憲主張だ。
4日の年頭会見でも、岸田首相は「総裁任期中に改正を実現したい思いに変わりはなく、議論を前進させるべく最大限努力をしたい。今年は条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速していく」と強調。昨年12月の衆院憲法審査会で自民党は、緊急事態時の国会議員任期延長や衆院解散禁止などの改憲条文案を作成するための作業機関を今年1月召集の通常国会で設置するよう提案している。
同党の改憲4項目では、大災害時に移動の自由など個人の権利を制限する緊急事態条項などが、自衛隊の明記とともに盛り込まれている。愛媛大の井口秀作教授(憲法学)は「緊急事態条項は東日本大震災の経験もあって話題になったが、今回の地震もいい事例とされてしまう危険がある」と指摘する。
「例えば、選挙の公示日前日に今回のような地震があったら、として議員の任期延長案を押し通すかもしれない。だが、よく考えれば、今回の地震でも選挙が難しくなるのは恐らく能登周辺だけ。全ての国会議員の任期延長が果たして必要なのか、など大災害時だからこそ冷静にみないといけない」と話す。
震災が増税のきっかけになる恐れ
「増税メガネ」の異名を持つ岸田首相なだけに、震災にかこつけて増税を図る可能性もある。実際、東日本大震災では復興特別税が導入された。だが、このうち復興特別所得税は事実上、恒久増税化されている。
「借金だらけの財政で、こんなに災害が起きているのに、災害が起きてから補正予算で対応するなど、いつも泣きっ面に蜂の状態に陥る。今回も国債を発行することになれば、結局その償還のための増税が必要となろう」と指摘するのは法政大の小黒一正教授(財政学)だ。
「こういう事後対応にならないために事前に対応をしておかなければならない」とし、例えば、震災を受けた地震保険の支払いに、大地震に備えて政府が再保険をかける「地震再保険特別会計」を挙げる。そして「復興財源の事前積立会計など、増税前にあらかじめ整備しておくべきことは多くあり、増税はそれをしてこなかったツケに過ぎない」と話す。
原発「異常なし」きっかけに再稼働進める可能性
原発推進を掲げる岸田政権だけに、大地震でも一応は「異常なし」となったことを奇貨として、北陸の原発再稼働を進める可能性もある。震源に近い北陸電力志賀原発(石川県)と昨年12月に原子力規制委員会が運転禁止命令を解除したばかりの東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)だ。
国際環境NGO「FoE Japan」の満田夏花事務局長は「多くの道路が寸断された。地震と原発事故が重なった場合、避難できなくなるだろう。各原発の避難計画の現実性も問われる。志賀原発周辺のモニタリングポストも計測不能になった。柏崎刈羽原発も含め地震想定が過小評価されていないかなど検証するべきだ」と話す。
大災害や大事件などの衝撃にかこつけて、別のことを前に進めるショック・ドクトリン。満田氏は「災害時は緊急事態を掲げて政府に都合よい政策を強権的に通す傾向がある。『政府を批判するとは何ごとか』といった言論への抑圧に影響されやすくなる」と説く。
国学院大の吉見俊哉教授(社会学)は「能登は日本の開発主義から切り離され、全く別の価値観で再生しようと探ってきた全国でも類いまれな地域だ。中世の文化が根付く文化的に大変奥深い場所だ」とした上で、こう語る。「能登の豊かさを改めて感じられれば、危機に乗じた『ショック・ドクトリン』などに構っていられない。強行すれば私たちの大切な可能性をつぶしかねない」と話す。
デスクメモ
新型コロナがまだ「新型肺炎」と称されていたころ、国会論戦の焦点は安倍晋三元首相の「桜を見る会」問題だった。しかし、ほどなく国内でも感染が広まり、「緊急事態宣言」が出るに至って、追及は沙汰やみに。まさにショック・ドクトリン。その再演を見過ごすことはできない。
●安倍派国会議員が年頭会見 杉田水脈氏 江島潔氏 1/10
自民党安倍派(清和政策研究会)所属の江島潔氏(参院山口)と岸信千世氏(衆院山口2区)が9日、山口県庁でそれぞれ年頭の記者会見をした。派閥の政治資金パーティー収入の裏金事件を巡り、江島氏は東京事務所の会計責任者の秘書1人が東京地検特捜部の任意聴取を受けたと明らかにした。
江島氏は、パーティー券の販売ノルマ超過分のキックバック(還流)や政治資金収支報告書への不記載の有無について「検察による捜査が進行中なので詳細については報告できる立場にない」と説明。安倍派では参院選がある年に改選対象の議員側に対し、販売ノルマ分と超過分の全額を還流させ、選挙資金に充てられた疑いが浮上している点についても「捜査中の案件で、しかるべき時期に報告する」とした。
岸氏は「議員活動はまだ半年。そもそもパーティー券のノルマ、販売実績が一切ない」とし、自身の問題はないとの認識を示した。父の岸信夫元防衛相の時期も含めた事務所関係者への特捜部の聴取については「聞いていない」と話した。
安倍派所属の杉田水脈(みお)氏(比例中国)も9日に県庁で記者会見を予定していた。しかし、直前に「次の行事のため10分間しか応じられない」と説明があったため報道側が応じず、後日開催の方向となった。
●中国が日本抜き自動車輸出トップ、背景にロシアの「助力」―米メディア 1/10
香港メディアの香港01は9日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの記事を引用し、中国が日本を抜いて世界最大の自動車輸出国になった背景にはロシアの「助力」があったと指摘した。
中国自動車工業協会は昨年の中国の自動車輸出台数が526万台だったと推計。日本については430万台と推計しており、世界最大の自動車輸出国になったとみている。
ウォール・ストリート・ジャーナルの記事は、「中国はすでに電気自動車(EV)で世界をリードする存在ではあるが、従来の化石燃料車が成長の推進力になった」と分析。特にロシアで需要が急増していることを挙げた。
記事によると、中国乗用車市場情報連席会(乗連会)は「ロシア・ウクライナ戦争が始まってから中国メーカーは西側メーカーが撤退したことでロシアにできた空席を埋めた」と指摘。中国の2022年のロシアへの自動車輸出は16万台だったが、23年はその5倍以上に上ったと推定されている。
記事は「ロシアやメキシコなどの国ではこうした自動車(化石燃料車)の需要が依然として強い」と指摘している。
●「日本を抜いて世界最大の自動車輸出国に」 中国自動車工業協会 1/10
中国が昨年、日本を抜いて世界最大の自動車輸出国になったとみられる。
9日(現地時間)、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、中国自動車工業協会(CAAM)は昨年中国が526万台の自動車を輸出したという推定値を発表した。
日本では昨年11月の時点で約400万台の自動車を輸出したという統計が出ている。まだ発表されていない12月の輸出値を含んでも中国の昨年自動車輸出が日本より100万台近く多いというのがCAAMの説明だ。
中国が最大自動車輸出国になった理由について、ウクライナ戦争の余波で国際社会から経済制裁を受けているロシア市場を独占したためという分析が出ている。
2022年2月ロシアのウクライナ侵攻以降、西側の制裁と現地に進出した西側自動車企業などの撤退でできた空席を中国が埋めたということだ。中国は2022年ロシアに合計16万台の自動車を輸出したが、昨年は5倍を超える80万代以上を輸出したと推定される。中国自動車企業のうち、特に「奇瑞汽車(Chery Automobile)はロシア市場で急速な成長を遂げた。
同社は昨年90万代以上を外国市場に販売したことが分かった。中国最大の民営自動車グループ「吉利汽車(Geely Automobile)」もロシアに対する輸出が大幅に増加したという。
電気自動車(EV)分野の成長も中国の輸出の伸びを後押しした要因に挙げられている。中国EV大手の比亜迪(BYD)は米国のテスラを抜いて世界最大のEVメーカーになった。
中国でEVを作った後に外国へ輸出する多国籍企業も少なくない。フォード自動車は昨年中国で生産して外国に輸出する物量を10万台に増やした。フォルクスワーゲンは今年中国で傘下ブランド「クプラ(CUPRA)」のEV6万台を生産して欧州へ輸出する計画だ。
●日本がパレスチナとウクライナで取るべき立場 1/10
新年にあたり、岸田内閣がウクライナやパレスチナについて、あまりにも米国べったりの外交しかしないことはまことに腹立たしい。
かつて小泉内閣は、のちにアメリカの愚行だったと批判されるイラク戦争について、ブッシュ大統領をあおり立てた。
さしあたって日米関係は良くなったが、長期的にみて日本がアメリカの良き友であることを示せたとは思わない。それと同じことをしている。
ウクライナについては、日本にとってウクライナに味方するメリットは何もない。欧米と違ってイスラエルの人々に贖罪等する必要ないし、そもそも、ユダヤ人への贖罪を自分たちでなくパレスチナの人々の払うコストでやるべきでない。
ロシアのウクライナ侵攻もハマスのテロも100%間違いだが、そもそも彼らを追い込んだのはアメリカでありイスラエルだから、自衛といってもほどほどのところで留めるべきだ。
岸田内閣の対米追従も行きすぎだが、日本ではリベラルな人々までもアメリカに追随しすぎである。
そして保守派は、例外はあるが、ウクライナ紛争やガザ紛争で、かなり熱心にウクライナやイスラエル、そしてその背後にいるアメリカを支持している。
日頃から、WGIP(War Guilt Information Program=日本人に戦争贖罪意識を植え込む戦略)から日本人は脱却できていないといって、世界から歴史修正主義といわれそうな主張をする人たちが、世界でもっとも無条件にアメリカに支援された戦争を支持しているのだからおかしなことだ。
それどころか、バイデン政権ですらイスラエルに厳しく自制を促しているのに、そうした必要も無いと言わんばかりだ。
私が思うに、世界はウクライナ戦争にうんざりしているし、イスラエルには相当に批判的だ。いまこそ、アメリカの日本に対する戦争中の悪行に少し反省を求めるチャンスでないかと思うのである。
アメリカは、ウクライナへの軍事侵攻とかハマスのテロとかは、けしからんから、ロシアやハマスはとことん殲滅されても仕方ないという。だが、これは、満州事変や真珠湾攻撃がけしからんから、日本に無理難題を要求したり、原爆を落としたり、ソ連の参戦を促したり、占領して憲法まで変えさせたのと重なるところがある。
そのあたりを、プレジデント・オンラインの記事にまとめたので、詳しくはそちらを読んで頂ければと思う。
逆に韓国は、尹錫悦大統領が対日改善に取り組んでいるのに、日本の保守派は応援しない。それどころか、松川るい参院議員のように対韓関係改善に熱心な議員は保守派から批判されて、「エッフェル塔写真」を発端にしたフランス研修問題が彼らに針小棒大に攻撃されて炎上した。
対中国でも、やみくもに敵対しては互いに損をするだけだ。バブル崩壊後の日本経済を、輸出、安い消費財などの輸入による生活防衛、観光客によるインバウンド需要などで支えてきたのは中国との関係だ。
外交は押したり引いたりしながら進めるもので、無条件の追従も敵対も馬鹿げている。日米同盟が外交の主軸であるから、基本的には欧米との共同歩調はやむを得ないが、ウクライナやパレスチナについては積極的に平和のために仲介の労もとるべきだろう。 
●法律違反の政党は交付金減額 政治改革で論点整理―国民民主 1/10
国民民主党は10日、政治改革・行政改革推進本部の会合を国会内で開き、自民党派閥の政治資金規正法違反事件を受けた政治改革の論点を整理した。国会議員が公職選挙法や政治資金規正法などに違反した場合、所属政党への政党交付金を減額するための政党助成法改正などが柱。来週にも正式に改革案を取りまとめ、通常国会での議論に臨む。
政治資金収支報告書の記載や提出に責任を負う者として、現行の会計責任者の他に政治団体の代表者(政治家)も加える政治資金規正法改正や、政治資金問題に関する調査や提言を行う第三者機関の国会への設置も盛り込んだ。
政策活動費を含めた政治資金の透明化を図るための銀行振り込みの義務付けや収支報告書のデジタル化に向けた議論も続ける。会合後、玉木雄一郎代表は記者団に「他の野党や公明党、自民党と早急に協議を開始することが重要だ」と語った。
●安倍派議員逮捕 不正の全容解明を急げ 1/10
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題は、現職国会議員の逮捕に発展した。派閥ぐるみの事件の全容解明が急がれる。
東京地検特捜部が、政治資金規正法違反(虚偽記入)の容疑で、最大派閥の安倍派の池田佳隆衆院議員を逮捕した。2018〜22年、派閥から約4800万円の還流を受けたにもかかわらず、政策秘書と共謀し、資金管理団体の収支報告書に載せなかった疑いが持たれている。
特捜部は「形式犯」ともされてきた規正法違反での逮捕に踏み切った理由について、「罪証隠滅の恐れが大きい」と説明した。関連のデータを廃棄し、事務所関係者同士のLINE(ライン)のやりとりを削除したという。
裏金疑惑が表面化して以降、池田容疑者は雲隠れし、自ら説明していない。渦中にあって証拠隠しに動いていたとすれば極めて悪質であり、言語道断だ。
安倍派の裏金は時効にかからない直近5年間で6億円近くに上る可能性がある。ノルマを超えたパーティー券の販売収入を所属議員に還流し、派閥側と議員側の双方の報告書に記載しない慣行が続いていたとされる。議員が派閥に納めず手元にプールする手口もあったという。
100人近くいる安倍派議員の大半が同じ構図で還流を受けたとみられる。中でも池田容疑者は高額だった。明るみに出た当初は報告書に記載不要な「政策活動費」と認識していたとし、報告書の訂正で済ませようとしていた。
国民の疑惑を招くことなく、公明正大に収受を行うとする規正法の理念をないがしろにする態度には、あきれるほかない。
特捜部は、歴代の事務総長を含む安倍派幹部や二階派会長の二階俊博元幹事長も任意で事情聴取した。裏金の額が大きい安倍派の大野泰正参院議員、谷川弥一衆院議員の立件も検討しているというが、金額の多寡で線引きすることなく捜査を徹底し、派閥が主導したカネの流れを究明すべきだ。
自民党は池田容疑者を除名処分とした。近く新設の「政治刷新本部」の初会合を開くが、党組織として実態を調査し、説明責任を果たすのが先ではないか。
岸田文雄政権が発足して2年余りで、自民議員の逮捕や起訴は4人目である。今回の逮捕を受けても首相は「大変遺憾であり、重く受け止めている」と決まり文句を繰り返すだけだった。これでは政治への信頼回復などありえない。
●自民党の政治資金問題 「なぜ裏金にするのか 書けない金だからですよ」 1/10
「小泉チルドレン」でもあった元衆院議員の杉村太蔵氏(44)は10日、テレビ朝日系「大下容子ワイドスクランブル」で、自民党安倍派のパーティーをめぐる政治資金事件に言及した。
同派に所属し、政治資金規正法違反で逮捕された衆院議員の池田佳隆容疑者(57=7日に自民党を除名)がキックバックを受けた4800万円あまりが「裏金」となる中、その使用目的が論議の的になっている。
杉村氏は「今、キックバックの話があるじゃないですか」とした上で「企業や団体に派閥のパーティー券を売りました。そこから議員個人にいったらダメだけど、派閥の政治団体から議員の政治団体への寄付は、政治的にさておき、法的には問題ない」という、一般では分かりにくい構造について説明した。
さらに「要するに(収支報告書に)書けばいいということ。これ、何で書いてないか、って言ったら、裏金ですよね」と語り「その裏金、って何でそんなに裏金にする必要があるの? って、言ったら書けない金だからですよ。(議員の)地元で飲み食いに使っていたとして、仮に、地元の有権者におごっていたら、これ、アウトですから」と両手を広げながら声を張り上げた。
その上で「あれ、何で自民党、って選挙強いの? あれ、パーティーやって裏金つくってバラまいていたの? って。そういう不信感があるから、岸田さんは徹底的にリーダーシップを発揮して改革しないと大変ですよ、というのがボクの考えです」と締めくくった。

 

●死人に口なし!自民党安倍派の還流処置は「会長マター」 1/11
自民党安倍派の裏金事件で、派閥の実務を取り仕切る事務総長だった複数の幹部が、東京地検特捜部の聴取に対し、政治資金パーティー収入のノルマ超過分のキックバック処理は、派閥の会計責任者である事務局長から会長に直接報告される「会長マターだった」と供述しているという。11日の毎日新聞が報じた。
安倍派の会長は2018年から21年11月までは、昨年11月に死去した細田前衆院議長、それ以降は22年7月に銃撃事件で死去するまで安倍元首相が務めていた。
同紙は、事務総長を務めた下村、松野、西村、高木の4氏のうち誰が死者に責任をなすりつけるような供述をしているかは明らかにしていないが、全員、収支報告書への不記載について事務局長との共謀を否定しているという。
まさに「死人に口なし」で、醜悪としか言いようがない。
●岸田首相、「鈍感力」で逃げ切りか…パーティー裏金は「安倍派の問題」 1/11
「派閥の罪」をどう問うか
自民党最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)の池田佳隆衆議院議員(57)を派閥からキックバック(還流)された4826万円の政治資金を収支報告書に記載していなかったとして逮捕した東京地検特捜部は、ほぼ同額の不記載が明らかな大野泰正参院議員(64)と谷川弥一衆院議員(82)を政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で立件する方針を固めている。
次の焦点は「ノルマ以上の還流分」を池田容疑者ら所属議員に還流させていた「派閥の罪」をどう問うかである。既に、これまでの捜査で安倍派事務局長の松本淳一朗氏が会計責任者として「不記載処理」の事実を認めており立件は可能だ。
だが、事務責任者に過ぎない松本氏が時効にかからない範囲の5年間で6億円近くを裏ガネとし、それを実績(ノルマ以上)に応じて議員に還流させる処理を、派閥幹部の政治家に報告せず、単独で行なうことなどありえない。
「本丸」は、「派閥ぐるみの裏ガネ化」というシステムを継続し、事務方にその運用を指示していた政治家である。直接の担当は事務局を統括する事務総長だ。この5年は、下村博文元文科相、松野博一前官房長官、西村康稔前経済産業相、高木毅前国会対策委員長といった派閥幹部で回してきた。
特捜部は歴代事務総長に加え、座長の塩谷立元文科相や松野、西村、高木の3氏とともに「安倍派5人衆」と呼ばれる実力者の萩生田光一前党政調会長、世耕弘成前党参院幹事長らを参考人聴取しているが、いずれも不記載への関与を否定しているという。
松本氏ら事務方の証言だけでなく、政治資金規正法上の職務権限のない政治家の罪を問うには、会計責任者に指示したことを示すメモやメールなどの電子データが必要で、共謀共同正犯に問うためのハードルは高い。
首相の危機感は薄い
だが、検察が問おうとしているのは「派閥の罪」であり、その派閥を企業献金を禁じた法規制の抜け穴をつく形の政治資金パーティーで連綿と維持させてきた「自民党の罪」である。
スピード違反の取り締まりのように、「5000万円内外」といった検察が“勝手”に定めた基準に添って、末端の政治家だけを立件したのでは意味がない。
しかし「場合によっては安倍派議員止まり」という情報でも得ているのか、岸田文雄首相の危機感は薄い。
1月5日の党役員会後、立ち上げを表明した「政治刷新本部」について記者団に問われ、「党一丸となって取り組む。こうした組織を通じて我が党の信頼回復に努めなければならない」と述べたが、陣容も方針も信頼回復にはほど遠い内容だった。
メンバーは茂木敏充幹事長、森山裕総務会長、小渕優子選挙対策委員長ら党7役や首相側近の木原誠二幹事長代理が中核となり、最高顧問に麻生太郎副総裁、菅義偉前首相が就任する。
茂木、森山、麻生はいずれも派閥の長で、小渕氏はかつて秘書らが政治資金規正法違反に問われた過去があり、証拠のハードディスクにドリルで穴を開けたことから今も「ドリル優子」と揶揄される。
「刷新」などできるのか
木原氏は「夫人が前夫の死に絡んだのではないか」とする報道の際、「政治力を利用して事件潰しを行なったのではないか」という疑惑を指摘されながら取材にいっさい応じることなく、説明責任を果たさなかった。
「リクルート事件並み」と称される今回の派閥パーティー券事件だが、リクルート事件は「政治とカネ」の厳しい批判を引き起こし、89年に自民党は「派閥解消」の必要性を訴える「政治改革大綱」をまとめた。そのうえで政治改革に取り組み、94年1月、政治改革関連4法を成立させた。
小選挙区制と政党交付金制度の導入が柱だったが、結局、自民党は政治家が代表を務める政党支部への献金を許容し、なかでも政治資金パーティーは20万円以下の購入については記載する必要がなかった。
政治家と献金者の双方に使い勝手がよく、政治資金規正法の抜け穴となり、その“歪み”が今回の事件につながった。
派閥解消を成し得なかったばかりか、「カネのかかる政治」を除去する名目だった小選挙区制も金権政治の土壌を変えるに至らず、「国民ひとりあたり250円」を拠出する政党交付金は、政治と企業・団体との癒着を断つのが目的だったのに、政党支部での献金受け取りや政治資金パーティーによって、税金と企業献金の二重取りを許すことになった。
岸田首相は、政治改革の骨抜きやその結果生まれた今回の事件を真摯に受け止めてはいない。派閥会長が顔を並べ、過去の事件で説明責任を果たさなかったメンバーで、どのような「刷新」ができるというのか。
党全体が抱える問題
現時点での対応策が、「政治資金パーティー券の売り上げの振り込み」や「パーティー収入の党による監査」というのだから政治資金パーティーの存続が前提条件で、この人に「政治の在り方」を変える気などない。
派閥パーティー事件で国民が改めて感じたのは、政治家の身勝手な政治資金利用だった。中小零細業者は経費を細かく制限され、領収書なき支出は1円だって認められず、しかも昨年導入のインボイスで面倒な帳簿作成を余儀なくされた。
政治家は金額によって領収書なしの「秘匿」を認められ、しかも一切の使途を問われない「政策活動費」なるブラックボックスもある。政治資金規正法に連座制はなく、会計責任者の罪で終る例が少なくなかった。
企業なら代表がカネ絡みの不祥事の責任を取るのは当然のこと。政治家のように「政治にはカネがかかる」と税金と献金の二重取りをして野放図に使いながら、「不記載は知らなかった」が通るはずもない。
伊藤文規特捜部長は、昨年4月の就任会見で「正直者が馬鹿を見る社会をなくしたいという気持ちから検事になった。社会に潜む不公平、不公正な犯罪を摘発したい」と述べた。その言や良し――。
派閥パーティー券事件が安倍派中心の摘発となったのは、「安倍一強」の驕りから派生したものだけに無理はなかったが、「従」の立場で安倍派とともに家宅捜索を受けた二階派を含め、自民党全体が抱える「政治とカネ」にまつわる問題であることは明らかだ。
特捜捜査はなべてそうだが、限られた陣容から一罰百戒にならざるを得ず、検察捜査を報道で補完するマスメディアとともに、摘発後の自浄作用を期待する。
「鈍感力」で逃げ切り
岸田首相は、臨時国会閉会翌日の昨年12月14日、安倍派の松野官房長官を含む4閣僚と副大臣5人を交代させた。その後、萩生田、世耕の両氏も退任し、岸田政権から安倍派は一掃された。
最大派閥の枷が取れて岸田氏の血色はよくなり、発言にも余裕が出てきた。「派閥パーティー事件は安倍派の事件」という認識なのである。
1月26日とされる通常国会開会までにメドを付けるという検察捜査は大詰めを迎えている。池田容疑者ら3議員と、安倍派、二階派の会計責任者の立件は間違いないが、前述のように最後に残るのは、派閥と議員の双方が不記載という意味で悪質な安倍派で事務局長に指示を出した政治家を突き止め「派閥の罪」にできるかどうかである。
それを経て開会する国会では、政治資金規正法改正を含め、政治資金の在り方が問われる。検察は「社会に潜む不公正」の一端を明かして道筋はつけた。だが、岸田氏は安倍派排除のうえで派閥を温存する「鈍感力」で逃げ切りを果たそうとしている。野党もメディアも逃してはなるまい。
●実質的“派閥オーナー”森喜朗元首相逮捕!? 特捜部が一網打尽 1/11
石川県能登地方を震源とする最大震度7を観測した地震と、東京・羽田空港で日本航空と海上保安庁の航空機同士が衝突した事故は、今年が波乱の年になることを予感させるのに十分な出来事となった。
自民党最大派閥の安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑はすっかりかすんでしまったが、被災地の石川を地盤にしていたのが安倍派の実質的オーナーである森喜朗元首相とあっては、何やら因縁を感じずにはいられない。
「地震が起きた瞬間、真っ先に頭に浮かんだのは森元首相です。森氏の子飼いで安倍派だった馳浩元衆院議員が石川県知事を務めていることからも分かるように、石川は清和会の牙城です。東京地検特捜部の捜査ばかりが注目されるのを忌み嫌った森氏が地震を招いたと言うのは不謹慎ですが、どうしても結び付けて考えてしまいます」
そう語るのは全国紙政治部デスクだ。地震が発生した1月1日。東日本大震災以来の大津波警報が発令され、輪島市の観光名所「輪島朝市」周辺では大規模な火災が発生するなど、国民に与えた衝撃は大きかった。
この日、産経新聞は朝刊1面トップで、安倍派の政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部が派閥の元会長である森氏の関与の有無について確認を進めていることが分かった、というスクープ記事を掲載した。
見出しは「東京地検 森元首相の関与有無解明へ」。同記事によると、特捜部から任意の事情聴取を受けた議員が、安倍派パーティー券収入の還流分の使い道を聴かれた際、使途先について「森氏が含まれていなかったか確認された」と話しているという。この議員は森氏への資金提供について否定したらしい。
使途先に含まれていようがいまいが、キックバックの仕組みを構築したのは森氏といわれ、永田町でも森氏が裏金疑惑に関わっていたのは、公然の秘密になっているという。安倍派議員の秘書はこう明かす。
「裏金に森氏が関わっていないなんてことはあり得ません。パーティー券の販売ノルマ超過分を議員にキックバックし、派閥の政治資金収支報告書にも議員の報告書にも記載しない手口は20年以上前から行われていた。20年以上前といえば森氏が会長のときですよ」
裏金関与≠実態解明!
森氏は20年以上前の1998年に清和会の会長に就任。00年の首相就任時に小泉純一郎元首相に会長の座を譲ったが、01年に小泉氏が首相となり派閥を離脱したため会長に復帰し、町村信孝元衆院議長に代わる06年まで務めた。つまり、先の秘書が話すように森氏が知らないわけがないのである。
そのためか、ネット上では《自民党の金権体質の権化と言ってもいい森喜朗までたどり着ければ大したもん》《この人に関しては五輪絡みのあれやこれやも深く追及して欲しい》、《新年早々幸先がいいねぇ! 検察頑張れ!》《老後は塀のなかへ》などのコメントが書き込まれたほど。
また、永田町では「特捜の本丸は森氏」と逮捕説までささやかれており、「サメの脳みそ、ノミの心臓」と揶揄された森氏はさぞや落ち着かなかったに違いない。地震が起きるまでは…。
岸田文雄首相は1月4日に行った年頭の記者会見で、党総裁直属の「政治刷新本部」の発足を表明したが、メディアの反応はあまりよくなく、地震で膨れ上がる死者数の話や、生存率が大幅に下がるとされる発生72時間経過後の奇跡の救出の話、航空機衝突事故の続報などにジャックされた。
特捜部のターゲットにされ戦々恐々としていた森氏は、この動きにホッと胸をなで下ろしたことだろう。
もっとも、裏金疑惑の話題がしぼんだかのように見えるのは、メディア上での話。
司法担当記者によれば、「特捜は地震があったからといって捜査を中断するわけもなく、通常国会の開会が予定されている今月26日までに捜査を終結させるべく、粛々と調べを進めている」という。また「森氏に対し任意聴取する可能性は大いにある」(同)というから、ホッとしている暇はないのだ。
一方、政治資金をめぐる話題が減ったことである意味救われたように見えるのが、一連の裏金問題などで退陣必至といわれていた岸田首相である。
政治資金収支報告書の過少記載が問題になっても、首相は各派に期限を区切って調査をさせることもせず、実態解明は何も進まないまま。そんな指導力のない首相を国民は見放しつつあり、それが内閣の低支持率につながっている。
もはや解散するだけの体力もなく、3月に24年度予算が成立した暁には、退陣するとの見方が強かった。だが、今後、能登半島の復旧に向けた取り組みも進めなければならず、退陣している場合ではないとの声が自民党内でも出始めている。指導力を発揮する機会が到来したとも言えるのである。
1月7日、東京地検特捜部は派閥(安倍派)から約4800万円のキックバックを受け、政治資金収支報告書に虚偽の記載をしたとして、安倍派の池田佳隆衆院議員と会計責任者の2人を政治資金規正法違反容疑で逮捕した。
地震をめぐる権力者たちの悲喜こもごも。その行方から、しばらく目が離せない状況が続きそうだ。
●大迷惑!紙棒読みするだけ岸田首相の「被災地、観光旅行」を止めさせよ 1/11
岸田首相は13日にも被災地入りをするという。被災地では急ピッチでのインフラ整備が進む中での総理視察に、重い負担がのしかかることは間違いない。作家で元プレジデント編集長の小倉健一氏が解説する――。
突然の「内閣総理大臣の岸田文雄です」に唖然
1日に1度、政府、石川県、被災自治体が集まり、ウェブ会議で、連絡や調整や要望を伝える大事な会議が開かれている。災害対策本部会議だ。1月11日で第18回を迎える。1月1日夕方に発災した能登半島地震から、毎日、発災直後は1日に2度、開催されてきた。
Youtubeで一般に公開されているので、被災地の現状を知るのに非常に役に立つ。驚いたのは、1月9日の第16回災害対策本部会議だ。能登町の町長が、災害状況を伝えていると、突然、発言を遮り、「総理大臣が(ウェブ)会議に入ってきた」として、能登町の発言(動画では45分過ぎ)をストップ。どれだけ緊急を要する発言が始まるのかと思っていたところ、こんな話をしはじめた。
「内閣総理大臣の岸田文雄です。えー、本日は、石川県の、えー、災害対策本部会議に、参加する機会をいただきまして、誠にありがとうございます。えー、お亡くなりになられた方々に、心から、えー、哀悼の誠をお評させていただきますとともに、 えー、被災された全ての、ま、方々に、お見舞いを申し上げさせていただきたいと存じます 。えー、決して諦めることなく、え、救助活動が、ま、続けられて、えー、おりますが、あー、石川県内で・・・」
今週末、総理の被災地視察を調整中
全文を引用するのはやめておくが、この後、延々と、当たり障りのないメモをひたすら読み上げていく場面が続く。その模様は動画でも確認できる。
岸田首相によるダラダラと要領の得ない発言が続き、最後に「えー、常に皆さんと共に、心を同じくして、そして、 被災者、被災地の皆さんに寄り添った、対応に、全力、で、えー、取り組んでいく、全力を尽くしていく、 この覚悟を改めて申し上げさせていただきまして、私からのご挨拶とさせていただきます。どうか皆さん、今後ともよろしくお願いいたします」と、ようやく大演説が終わる。
当日(1月9日)の総理日程をみても、前後には官邸や閣僚とのミーティングがあるだけで、緊急を要するものはまるでない。原稿を読み上げるだけのことで、被災地の発言を強引に中断させる意味がよくわからない。
そして、この日に、岸田首相は、石川県へ「被災地視察」を伝えた模様だ。1月10日のNHKニュースにはこうある。
「能登半島地震を受けた政府の対応をめぐり、岸田総理大臣は、適切な支援を着実に進めていく上で被災地の実情を直接把握したいとして、早ければ今週13日にも現地を視察する方向で検討しています」
「ただ、天候や自治体の受け入れ態勢など状況しだいでは、翌14日以降にずらすことも想定していて、慎重に見極めた上で最終判断を行う方針」
「視察では、自衛隊機で現地に赴き避難所や支援物資の集積所を訪れるほか、石川県の馳知事をはじめ自治体関係者と意見を交わす案などが協議されていて、政府は日程とあわせて詰めの調整を続けています」
「ぜひきてほしい」態度を豹変させた馳知事
この報道を受けて、石川県の馳浩知事は、記者会見(1月9日)で、記者に「岸田首相が13日、被災地入りと調整という報道があります。知事への報告は来ていますか」と問われ、知事は「昨日連絡が来ました。私と石垣副知事が同行します。これまで私も正直、もうずっと被災地行ってみたい気持ちはありますが、私自身は、 発災以来ずっとこの県庁に住んでおります。知事室で24時間対応をし、さまざまな情報を踏まえて、決済をし、古賀篤防災担当副大臣と政府側との調整もし、 時には直接大臣や知事の皆さんとやり取りをするというミッションをしております。13日に岸田総理が来られた際に現地入りしたい」と述べている。
つまり、現地の知事ですら被災地入りをしていない状況で岸田首相がやってくるということ、被災地視察は現場の要望ではなく、岸田首相側の要望ということがわかる。
翌、1月10日の第17回災害対策本部会議では、馳知事は「総理におかれましては、ぜひ現地を視察していただきたいと思っておりまして。え、天候の様子も見てですね。 週末にはお願いしたいと思っております」と、態度を変えている。向こうがやってくることに、戸惑いもあったのだろうが、昨日の会議では、多額の復興予算を岸田首相に要望したばかりとあっては、機嫌を損ねないようにということだろう。被災地の苦労がよくわかる、態度の急変である。
総理視察のため、被災地で「掃除」を実施
一般に、総理大臣が官邸を離れ、地方を視察する際には、首相秘書官、SPのほか、関係省庁の担当者など数十人単位の人間が随行する。現地でも警備担当者、案内を担当する自治体の幹部など100人規模で動員されるのが普通だ。たった20分の視察だとしても、現場の側で準備にどれほど時間が必要かは、少し考えたらわかるのではないか。
被災地の視察も同様だ。大規模な震災発生直後はまず、人命救助と被災者救済が最優先に決まっている。自衛隊のヘリコプターにしても、総理大臣を乗せるよりも、孤立した地域の人々を救出したり、緊急救援物資を届けたりするために使うべきだということは誰でもわかる。現地の警察は被害状況把握につとめるべきで、総理のための警備に人員を割く余裕などあるわけがない。
被災地の救助、支援業務にあたる関係者は、こう語る。
「総理視察が現時点で有力視されている輪島市では、震災による火災での消失地域で、1月10日、警察消防による一斉捜索が行われました。官邸からの指示です。唐突な指示だったので、現場に戸惑いが広がりました。火災での消失地域に、生存者や生活支援を求める人などいません。いつかはやらなければならないでしょうが、今、やるべきことなのか。総理が現地入りする前に、メディアへの見せ場を綺麗にしておく掃除作業だとすれば残念です」
危機管理のプロ・飯島勲を起用せよ
危機においては、官邸に情報を一元化し、課題に優先順位をつけ、衆知を集めて指示を出す。そして、トップは大局を見据え、国民にビジョンを示す。これが日本のリーダーである岸田首相の今やるべき、仕事なのである。
これでは、総理視察ではない。ただ見に行くだけの「観光旅行」である。間違ったことを言わないためには原稿を棒読みするだけいいのだろうが、それが被災民の心を和らげることはないだろう。
自分の延命ばかりが気になっているのだろうが、被災地の負担を考えたことはないのだろうか。道路インフラがある程度復旧され、復興計画がまとまった段階で十分だ。視察をみて、被災地へさらなる支援を発表する段取りを組むなど、官邸も、岸田首相の低支持率に頭を悩ましているのなら、もう少し頭を使うべきだろう。
政治家は将来の大きな災害を想定して防災の方針を指示し、官僚はその指示に従いながら、突発的な災害に迅速に対応する。想定外の災害が起きたときには、同じ悲劇を繰り返さないように準備する。例えば、伊豆半島などは、能登半島と同じことが起きるのではないかと噂されている。現時点で、大規模な被災シミュレーションを実施しておくべきだ。
官邸には、飯島勲氏という日本史上最強の危機管理のプロがいたはずだが、岸田首相はなぜ積極的に活用しないのだろう。有事には有事の、プロフェッショナルに知見を求めるべきだ。
●焦る岸田首相、夜10時に「当日消費期限切れおにぎり」到着…お粗末舞台裏 1/11
元日に日本を襲った能登地震に対する政府対応が混乱を来している。官邸や防衛省の関係者、被災現場の声に耳を傾けると、岸田文雄首相が率いる官邸の拙い司令塔ぶりが浮き彫りとなった。
能登地震の被災住民から受けた 「現場写真」を含む情報提供
1月1日夕方、能登半島を大きな地震が襲った。筆者は、実家(実家の墓)が金沢市内にあり、石川県には浅からぬ縁を持っている。石川県は、北部の能登と南部の加賀で成り立っている。金沢市があるのは加賀で、幸いにして親戚や友人、知人で大きな被害を受けた人はいなかった。
また、金沢は1月6日の段階で、「完全に日常に戻ったとまではいかないまでも、普通に生活している」という情報を知り、1月7日に金沢へ入った。行ってみると、たしかにそこには普通の生活が存在していた。加賀にある旅亭懐石「のとや」の公式ホームページにはこんなことが記されている。
「旅亭懐石のとやですが、能登震源地から遠いこともあり、幸いにも現状大きな被害はございません。余震も全く感じることもなく、通常通り営業しております」
「被災を受けなかった私達こそ、今できることを頑張ろう、経済を回し、石川県全体を元気にしようと考えました」
被災地の近くまで行けたことで、被災者と直接話をすることができた。今回、筆者が被災した住民から受けた情報提供(写真を含む)も踏まえて、本稿を書く。
今、「不要不急」の人間(政治家、ボランティアなど)が被災地に入ることに大きな批判が巻き起こっている。それは単純に被災地で道路インフラがズタズタになってしまっていて、慢性的に渋滞してしまっているためだ。
金沢から能登へと向かうケースは、被災者であっても緊急を要さない場合、高速道路を使わずに一般道路を使うよう指示が出ている。道路にはヒビが入っており、たとえ一度は修復したものでも、余震が続いていてヒビがまた大きくなっていることがよくある。そのため、夜や雪道では相当に慎重な運転が求められている。
さらに、能登半島北部では村落や集落の孤立化が激しい。土砂崩れや陥没で道路の寸断が相次いでいるためだ。生活に不可欠な飲料水や物資が尽きかけた場所も多い。津波被害に大雪まで加わり、被災者の疲労は日に日に限界へと近づいている。
岸田首相率いる官邸の 調整機能欠如とむちゃ振りで大混乱
そこへ、岸田文雄首相率いる官邸の「プッシュ型支援」がやって来る。
「プッシュ型支援」とは、災害などの緊急時に、支援が必要とされる地域や人々に対して、その人々の要求を待たずに積極的に支援物資やサービスを提供するアプローチのことを指す。この方法は、支援の迅速化や効率化を目的としている。ただし場合によっては、実際のニーズと合わない支援が行われるリスクもあり、プッシュ型支援を行う際は、事前の情報収集や地域の状況把握が非常に重要となる。
「支持率が低迷する岸田首相は、何とか挽回のチャンスを得たいと焦っているようです。内閣府、自衛隊や警察の対応が思い通りにいかないと感じた官邸は、自治体のトップと岸田首相との『ホットライン』で得た情報を、『そのまま』『最優先で』『実行』するよう指示が飛んでいます」(防衛省関係者)
震災直後の自治体トップは冷静さを欠いていることがあり、これまでの震災の経験を踏まえた判断が官邸には求められるのだが、それを岸田首相はあえてしなかった。
「プッシュ型支援においても、内閣府が主体となって行う政府支援、経済産業省独自の支援、防衛省独自の支援が総合調整されないままに始まり、ニーズ取りも個別、物資の選定や輸送も個別で大混乱してしまった」(同)
「多少の混乱があるのは仕方ない面がありますが、被災地から『輸送された当日までしか消費期限がない大量のおにぎりが運ばれてきた』と抗議がありました。また、誰がまとめたか分からない出どころ不明の孤立者リストが出回り、これを『しらみつぶしにチェックしろ』という指示が飛んだのです。とにかく問題の根本は、岸田首相と自治体のトップとの直電話、ホットラインです。ホットラインを受けた岸田首相は『とにかく全力で何とかしろ』という指示を飛ばすのみ。冷静な判断力を失ってしまった」(同)
自衛隊が現場で得た実際の状況に関する情報や、緊急を要している行動の観点からはかけ離れた指示が最高司令官である岸田首相本人から飛んでくるのである。「現地の声を聞く、寄り添う総理」をアピールしたいのは分かるが、現地へマイクロマネジメントを仕掛けては混乱するだけであろう。
「混乱を極めたのは、官邸からの『被災地のニーズを確認するための御用聞き部隊を編成しろ』というむちゃ振りでした。そんなことに余力を割けるようなタイミングではなく、物資を支給する部隊が、配る際に住民からニーズをくみ取ればよかった。バックヤードで、混乱しがちな現場を落ち着かせる役目が本来、官邸には求められたはずです。しかし、官邸は混乱ばかりを招いてしまった」(同)
指揮系統がパニックに陥った結果 「消費期限切れ直前おにぎり」到着
また、現地の自衛隊が頑張れば頑張るほどに、官邸は怒りのボルテージを上げていったという。
それは、能登半島中部で、自衛隊による給食支援が始まった、1月4日昼のことだ。当時のことについて、防衛省・自衛隊(災害対策)のX(旧Twitter)アカウントは次のようにポストしている。
「#統合任務部隊 (#中部方面後方支援隊)は #輪島市 三井公民館において #給食支援 活動を1月4日昼から開始しました。自衛隊は引き続き、被災者の皆様のニーズに可能な限り応えられるよう全力を期して参ります #災害派遣 #石川県 #令和6年能登半島地震」(1月4日16時57分)
この迅速な対応が称賛されるかと思いきや、官邸の反応は違った。
「何で他の地域で支援が始まっていないんだ!今日中に始めろ!と激しい怒りの指示が飛びました」(官邸関係者)
誰もが急いで給食支援を行いたいのである。準備ができたところから開始したわけで、他の部隊がサボっているわけでも何でもない。小さな成功を称賛してこそ、現場は奮い立つのだ。
そして、怒りでパニックになった指揮系統によってこうしたことが重なり、先の防衛省関係者のコメントにあった「輸送された当日までしか消費期限がない大量のおにぎりが運ばれてきた」という事件につながっていく。
事実、1月6日に開催された「第13回災害対策本部員会議」(動画では30分過ぎに当該コメント)では石川県能登町の町長が次のように発言している。
「数々のご支援ありがとうございます。次から次と支援の方が能登町に訪れまして、たくさんのご意見をいただきながら勉強をさせて頂きながら対策を進めているところです。被害状況につきましては今日ようやく調査の指示を出したところです」
「これまでの支援を頂いて、ものすごく助かっていますが、昨日(1月5日午後)10時過ぎにおにぎり等の支援が到着しました。そのおにぎりの消費期限を見ますと1月5日であった。5日の晩に届いたおにぎりの消費期限が5日でありました。これを次の日になって被災者へお届けするのはいかがなものかと思いまして非常に悩みました。ぜひ、消費期限の少し長いものとか、できるだけ早い段階での物資の輸送をお願いしたい。文句を言っているわけではなくて、こういう事実があったということをご認識いただければと思っています」
司令塔の混乱ぶりをうかがわせるエピソードであろう。
「現場での被災者のための行動」と「総理、官邸による実績アピールのための行動」が乖離(かいり)し、総理のトップダウンによる災害対応は、被災者のためではなく、自身と政権のためでしかなくなっている。情けない限りだ。
●元徴用工訴訟の原告側、日立造船の「供託金」差し押さえ申請…勝訴確定 1/11
韓国の元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟で、昨年末に日立造船に対する勝訴が確定した原告側が10日、裁判所に預けられている同社の「供託金」の差し押さえを申請した。原告側が本紙に明らかにした。
韓国大法院(最高裁)は日立造船に5000万ウォン(約550万円)の損害賠償を原告の韓国人男性1人に支払うよう命じている。原告側が供託金を手にすれば日本企業に実害が及び、請求権問題が「完全かつ最終的に解決」したとする1965年の日韓請求権・経済協力協定に反することになる。
日立造船などによると同社は2審で敗訴した直後の2019年1月、「韓国内資産の強制執行を防ぐため」として6000万ウォン(約660万円)を裁判所に供託した。今回の原告側の申請は、この供託金を賠償金として差し押さえるための手続きだ。
18年の大法院判決で敗訴が確定した新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業の賠償金相当額を原告に支払うため、韓国政府傘下の財団が裁判所に預けようとしている供託金とは異なる。裁判所の判断には数か月かかる見込みという。
●子どもが3人いても「大学無償化」の対象にならない!?  1/11
2023年12月22日政府は「こども未来戦略」を閣議決定しました。この政策は、若年人口が急激に減少する2030年代に入る前に少子化が進む状況を転換させることを目指し、特に若者子育て世代の所得向上に焦点を当てています。
「こども未来戦略」では、具体的な施策として出産などにかかる経済的負担の軽減や児童手当拡充などが挙げられており、高等教育費の負担軽減の対象拡大も計画されています。しかし、この大学の授業料支援には不公平という声が多く上がっています。なぜ今回の大学無償化が批判されているのかを調査してみました。
不人気の理由は多子世帯が対象となる不公平感
今回の大学無償化に関する施策の中心は2025年度からの措置となりますが、実は現在も授業料免除などの支援は存在しています。
現行の制度では、国公立大学では約54万円、私立大学で約70万円(入学金は国公立約28万円、私立約26万円)を上限として授業料の支援が行われています。これが世帯収入によって全額支援、2/3支援、1/3支援など割合が変わります。
今回の閣議決定で発表されている支援では、所得制限が撤廃されていますが、その条件は多子世帯、具体的には扶養される子どもが3人以上の世帯が対象となっています。多子世帯でなくても今までと比較して損をするわけではありませんが、「あの家庭の子どもは全額支援対象になるのに、うちの子は対象にならない」という事象が発生することになります。
また、扶養される子どもが3人以上の世帯が対象となるため、第3子の大学入学時に第1子がすでに就職して扶養から外れている場合、第3子は対象となりません。子どもが3人いるから全員、大学授業料が免除されるわけではないということに注意しなくてはなりません。
そんなに短い期間で家族を増やすなんて経済的にできないと考える人が多いことでしょう。対象となる基準を満たすことが難しいという点が、この制度が批判されている大きな理由のようです。
大学の学費は国公立およそ200万円、私立400万円
文部科学省が公表している「国公私立大学の授業料等の推移」によれば、(学部等によっても異なると思いますが)年間の授業料は国立大学が53万5800円、公立大学53万6191円、私立大学95万9205円となっています。
大学生活を4年間と仮定すれば、授業料は国公立でおよそ200万円、私立では400万円程度となり、これ以外に入学金や仕送りなどを含めれば、さらに必要な金額は大きくなります。
この金額が子どもの人数によって変わってくるのであれば、子どもが2人の家庭などは不満を感じてしまうかもしれませんね。この大学無償化に限らず、条件(例えば世帯収入や子どもの人数など)を満たした場合にだけ受けられる支援というのは、不公平感が発生するために批判されることが多いように感じます。
扶養控除は減額も。子どもに関する支援は要チェック
冒頭で紹介したとおり、こども未来戦略では出産などにかかる経済的負担の軽減や児童手当拡充、金銭的な支援以外にも男性育休取得推進やひとり親などの子どもへの学習支援など様々な対策が講じられています。
一方で、16〜18歳までの扶養控除については、現行の所得税38万円、住民税33万円から、所得税25万円、住民税12万円に減額され、実質的な増税となります。
岸田政権は「異次元の少子化対策」を看板政策として掲げており、今後も子ども関連の税制改正などが行われる可能性は高そうです。現在子育て中の世代や、今後子育てを始める若い世代は、子育て関連の政策動向を注視しておくのが良いかもしれません。
●海外や軍事に湯水のように金を使うなら、同じだけ防災にも予算をつけろ 1/11
元日に北陸を襲った未曽有の大地震。その爪痕は予想を超えて深く、さらに追い打ちをかけるように降り積もる雪に救助は困難を極めている。
避難所の生活も万全ではなく、災害関連死が増加することが危ぶまれる。
それにしても政府の対応、とくに岸田総理を見ていると、無性に腹が立ってくるのはなぜだろう。
「初動の遅れ」を指摘する声もあるが、自衛隊派遣などは決して遅れてはいないという見方もある。
まず能登半島という特殊な地形。半島の入り口部分が狭まり道路が少ない。この道が寸断され車両が進めない。空路は能登空港に亀裂が走り着陸できない。では船はというと、接岸部分も隆起したりしていて、何よりも波が高く危険であった。
重機をホバークラフトで運んだのは4日。これも1日には準備されていたが、広島(呉にしかないらしい)から出発し、別の場所で重機を積んで最速で駆けつけた。自衛隊、警察、消防は本当によく頑張ってくれている。
だがそれにしても官邸は当初災害の規模を過小に評価していたのではないか。発生してすぐ日没だったということもあるが、2日の朝になって慌て出した印象がある。
能登が陸の孤島になり情報が入ってこない。津波警報が解除されるのが遅かったなど理由はあるだろう。しかしそれにしても東日本大震災の時のあの民主党政権のようなガムシャラさ必死さが感じられない。
4日に岸田総理は作業服を着て記者会見し、地震関連の発言の後、あろうことか憲法改正を語った。それ今言うことか。しかも、最後に質問できなかったフリーの記者犬飼淳氏(彼は総理会見に参加して1年3カ月一度も当てられていない)の原発に対する質問に完全スルー。薄笑いさえ浮かべて立ち去った。原稿以外に全く自分の言葉を持たないのだ。
しかもそれだけ急いで行った先はテレビ局、地震についても語ったが、その後は総裁選について笑顔で話している。
新年会のハシゴしている場合か
さらに次の日には新年会のハシゴ。ここにも作業服で出席。いや現場行かないんなら着なくていいだろ。しかもその作業服に来賓の赤い花をつけるというトンチンカンな格好。着させられるまま、つけられるまま。少しは自分で考えたらどうか。新年会はビデオ挨拶で済ませるとかの配慮はないのか。
災害が起こるたびに「想定外」と言うが、いまだに避難所の雑魚寝は昔のまま。海外や軍事に湯水のように金を使うなら、同じだけ防災にも予算をつけろ。大災害は毎年起こっているではないか。すぐに防災省をつくって、防衛費ぐらい金をつぎ込め。
「起こってから」ではない。「起こる前」にやれ。次は南海トラフが来るぞ。
●能登半島地震で問う、20年後に消滅する地域に多額の税金を投入すべきか 1/11
2024年の幕開け早々、能登半島北端の輪島市、珠洲市周辺を襲った巨大地震。山がちな半島特有の地形や寸断された隘路に悩まされていましたが、ホバークラフトが投入されるなどして、ようやく被災地に暮らしていけるだけの物資が輸送できるようになってきました。
大型の余震や豪雪などの悪天候もあり得る中で、ギリギリの人命救助や輸送作戦も行われています。石川県の皆さんだけでなく、応援に入られた各都道府県消防・防災ご担当者や防衛省・自衛隊、海上保安庁および電力会社や通信会社、医療関係者ほか各民間の皆さんのご努力には本当に感謝に堪えません。
総理の岸田文雄さんも、巨大地震発生の報が入るや発生1分後には対策室を設置。5分後には関係部門への指示出しを行うなど、きちんと初動の対策に力点を置き、状況把握や人命救助、物資輸送に尽力されました。
石川県知事の馳浩さんや副知事・西垣淳子さん以下、地元も不眠不休に近い激務にて対応を進めています。その結果、良い意味で、国と県・自治体および各省庁・民間の連携が取れたのではないかと思います。
余震も予想される中、気を緩めることなくご安全に対処を続けていただければと願っております。
災害関連死を含め、住民278人が犠牲になった2016年熊本地震では1万を超える自衛隊員が展開していました。それを踏まえ、一部のマスコミは自衛隊投入の規模や時期に関して岸田政権を批判する言動が見られます。
ただ、熊本にはもともと自衛隊基地や駐屯地がある土地柄です。また前述の通り、山がちな能登半島の場合、道路が寸断され、海面が隆起して港湾が使えなければ、陸路も海路もそう簡単には使えず、部隊を大規模に展開する平地も少ないという事情から、同時に大人数を投入することが困難であった事情は斟酌されるべきではないかと思います。
また、岸田政権に対する批判として、閣議決定で暫定的に出せる金額に過ぎない40億円前後の災害対策費が過少であるとの指摘もありました。ただ、これは国会審議を経る前に、政権の一存で出せる金額がまずは40億円であるというだけです。
2023年度(令和5年度)の予備費は4580億円ほど残っており、今月開催される通常国会で補正予算が順当に組まれれば、2月上旬には予備費を使い切るまでに充分な予算が投下できるようになるでしょう。現状では、岸田文雄さんは1兆円を超える復興予算を組むとされており、なかなか強烈なものがございます。
議論の仔細は大濱崎卓真さんが別で記事を書かれておりますので、そちらをご参照ください。
岸田政権によるここまでの激甚災害の対応を振り返ると、各省庁、石川県と関係事業者、医療関係者の活動を潤滑に進められるようセンター役に徹して、とてもうまく初動の災害対応は乗り切ることができたのではないかと思います。
他方で、石川県知事の馳浩さんが副知事の西垣さんと調整したうえで、奥能登の病院を一つにまとめる大胆な医療改革を元旦の新聞でぶち上げた夕方に、地震が起きたのはすごいタイミングでした。
ここでもし現地医療を支える珠洲総合病院や輪島総合病院、宇出津総合病院、穴水総合病院がなかったら、と思うと肝が冷える気がいたします。
もっとも、金沢大学など地元の医局もカツカツで回っている面もある中、この4病院は基幹病院としてはびっくりするほど不採算なので、能登半島地震の復興予算でこの辺の医療提供体制をどう扱うかという線引きを最初に決めておかないと本当に地雷だと思っています。そのぐらい、僻地での医療は大変なことなのだという思いを新たにしています。
今後は岸田文雄さんの現地入りと併せ、1月下旬に開幕する通常国会の前半では、1兆円規模と見られる能登半島地震の復興メニューに向けた政策議論が始まるのではないでしょうか。
さて、ネットでも米山隆一さんや飯田泰之さんら論客が復興のあり方について議論が重ねられていますが、目下問題になるであろう問題は掲題した「25年後には確実になくなっているであろう、珠洲市や輪島市などにある限界集落に復興予算をどこまでつぎ込むのか」です。
放っておいたらなくなる集落まで復興の対象とすべきなのか?
先に、この議論でよくある誤解を先に指摘しておくと、例えば、人口1万2000人あまりの珠洲市は高齢化率、つまり65歳以上人口(老年人口)の割合は51%を超えており、社会保障・人口問題研究所の推計では2040年時点の人口はおよそ7000人にまで減る可能性が示唆されています。激甚災害もあったことで、おそらくこの推計以上に人口減少は進むものと見られます。
これはあくまで市全体の人口推移であり、限界集落、超限界集落の高齢化率はほぼ100%。一部推計では完全有業者率(自ら何らかの業を営み生計を立てていて年金など何の政府補助も受けていない人)も、5%を切っていると見られます。
超限界集落した地域では、地域経済を支える存在は年金や生活保護などの政府扶助が主体とならざるを得ず、地域の文化を継承する次世代の住民もそう多くは見当たらないのが現状です。
問題は、例えば岸田政権が原案のまま1兆円ほどの能登半島地震の復興・再建プランを可決したとして、このような放っておいたらなくなる集落までも復興の対象とするべきなのかという議論が出てくる点です。
ここには、憲法第22条で国民に認められた居住、移転・職業選択の自由と、同25条のすべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利、および同13条で定められた国民の幸福追求権・生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利との整合性を考えなければなりません。
理想論で言うならば、国民は住みたいところに住み、地域には長年にわたって育まれてきた土着の文化もありますので、そこに住む人がいる限り、可能な限り支援するべきだという議論はどうしても出ます。これはこれで正論と言えます。
他方で、国の財源に限りがある中で、そもそも人口が減少し、将来にわたって地域や集落の維持が困難である地域の復興にどこまで国費を投入するのかという点は議論が避けられない問題でもあります。
飯田泰之さんの指摘にもあるように、誤解が多く、総論賛成各論反対になりやすい論点であり、かつ画一的な被災集落の解体と移住を強要するものと誤解されてしまっている面もありますが、単に地域の人口を強制的に剥がしてきて都市部に集住させるという政策というわけではない点は、議論の前提として理解しておかなければなりません。
国土交通省や総務省などが検討を進めているコンパクトシティなど、自治体ごとに策定する都市政策と、これらの政策は別物であることも理解しておく必要があります。
「今回の復興では、人口が減り、地震前から維持が困難になっていた集落では、復興ではなく移住を選択する事をきちんと組織的に行う(促す)べきだ」と米山隆一さん問題提起したように、国民の権利選択の結果、勤労人口が過疎地域での就業を放棄して都市部に移り、猛烈な人口減少と高齢化が進んでいるのは間違いのないことです。持続可能性が絶望的な地域や集落に公費を入れて復興させる必要があるのかということは、議論しなければならない点の一つです。
もう一つは、これらの人口減少の事実をきちんと受け止めたうえで、国家が政策として人口減少による日本社会全体の縮退をどうコントロールするのかという話にもつながっていきます。
能登半島地震が問う冷徹な現実
熊本地震においても、復興不能な人口規模の地域は事実上の集落の解体が行われました。7700億円とも言われた復興予算も、それなりの割合が未執行(計画には盛り込まれたが、現地でのマンパワーや高齢化した住民のニーズに見合わず計画実施が見送られた)になっています。
さらに、地域の産業をどう復興させるかという論点もあります。
例えば、輪島市は日本でも大変重要な文化財でもある輪島塗の産地ですが、これらの産業を維持するために、政府が被災した事業者などに対して特融の制度を定めても、借り手の側がそのまま廃業してしまうリスクさえも存在します。
制度融資をいくら拡充しても、すでに借り手である事業者が高齢化している以上、仮に無利子無担保であったとしても、3年ないし5年の融資期間の先に自身で事業を担っているのかという点で確かなことは何も言えないからです。
結果的に、40代、50代の事業者のみが挙手をする形にならざるを得ず、文化を文字通り支えている70代以上の職人は廃業するか、他の事業者のもとで働くしかなくなるでしょう。
そもそも、輪島市や富山県氷見市も含め、日本海側の各地域に一定の人口が維持されてきた背景には、日本海側が長く我が国の海運の大動脈であり続けたという歴史的背景があります。
ただ、能登半島北端も、日本海側の海運の衰退とともに繁栄の理由を失って産業的な優位性を失い、結果として過疎化が進みました。いくら輪島塗が日本を代表する文化的事業であっても担い手を失いかねない現実に直面するわけです。
日本の“名宰相”とも謳われる田中角栄は、「山間部の60戸しかない集落では、病人が出たら戸板で運ばなければならない。そういう人たちのために12億円かけてでもトンネルをつくることが政治の役割だ」と喝破しました。
ただ、2C1Pacific氏も記載しているように、1億人の人口のうち高齢化率が1割程度であった70年代の日本と現在とでは、住民が求める生活の水準がそもそも異なります。
地域の電化率だけでなく、上水道やネットインフラはもちろんのこと、救急や産科小児科を持つ相応に設備のある基幹病院や子どもでも通うことのできる学校など、子育て環境がなければ地域で子どもを産み育てることができません。
その病院も含めた子育て環境も、厳しくなる人口減少と財政の問題から、石川県では奥能登の医療集約を進めようとしていたことは冒頭に述べた通りです。住民が安心して子どもを産める環境でなければ地域人口など増えるはずもないのですが、人口全体が減少してしまうとこれらの都市機能を維持することができません。
子育て世帯は勤労世帯ですので、結果的に子育て環境とよりよい仕事を求めて都市部に出ていくのもまた当然の帰結です。
このように、我が国の人口減少は画一的に起きていることではありません。子育てが可能で、地域で次の世代を育てることのできる地域以外は人口ボリュームを維持できず、生活機能と職場が失われ、衰退に拍車がかかるということです。
そういう地域に残るのは、どこに暮らしていても一定額の支給が得られる年金生活者と生活保護世帯、および市役所町役場などの公的部門だけです。
そういう生産性を失った地域が、今回の大地震のような激甚災害を受けて損害を被ったとして、その復興で災害の前の生活を取り戻すような公費を投じることが、どこまでならば妥当なのか、冷静に議論しなければならないでしょう。
これからの日本に必要な衰退のコントロール
必要なことは、どこまで縮小すれば、住民の努力である程度の自活ができるレベルまで地域が集約できるのかというブループリントをつくることです。
これらの災害対応で岸田政権をが打ち出す1兆円あまりの復興費用は、とりもなおさず税金であり、地域医療や年金という観点からすれば社会保障費そのものです。
災害復興が進んでも、地元の事業者が潰れて働き口がなくなれば、必然的に年金のみが収入の生活になる高齢者や生活保護を受けざるを得ない世帯が増えます。これらの財源は、日本の勤労世帯の社会保険料です。
地元の採算・生産性が回復する「良い復興」が進まなければ、国民の社会保険料負担はますます重くなるし、発行される国債が一層多額になり納税者負担となることを忘れてはいけません。
勤労世帯の社会保険料負担が重くなり、重税感が国民に広まっているにもかかわらず、こういった生産性が乏しく、自活が難しい地域の復興予算を充分に出すべきだという話が併存してしまうのは、国民の適正負担の観点から見ても公平性を欠くうえに、そもそも矛盾しています。
地震のような、誰のせいでもない災害に遭ってしまうことは、地域住民の責任ではなく仕方ないことなのだとしても、その復興がある程度、自力でできない限り、いつまでも公費で地域丸ごと被災者を助け続けることはできないということです。
もちろん、このような議論が行き過ぎれば人口減少の地方は姥捨て山なのかとか、今後激増が予想される未婚で貧困の高齢者に対する安易な安楽死議論のような極論もどんどん出てきてしまうことでしょう。
必要なことは、先にも述べた通り、人口減少で地方社会・経済の衰退は誰かが何をしようとも押しとどめることはできないのだから、せめて勤労世帯も高齢者も、あるいは都市生活者も地方在住も共倒れにならないように、衰退をきちんとコントロールしながら最善の経済縮小・撤退戦を日本経済は政策的に図っていかなければならないということに他なりません。
おそらくは、輪島市を中心に能登半島北部は自活できない自治体を集約して自治体再編をしましょうという議論も出ることでしょう。公費の投入も必要だ、復興も頑張ろうという話になることは間違いありません。
しかしながら、何をどこまで救うのか、これらの災害復興をトリガーにして、時計の針がもっと進むことになってしまう地方救済のモデルケースとして、ゆくゆくは日本全国にある、5万人に満たない地域の再々編も想定しておかなければ、何か地震や豪雨のような激甚災害があるごとに希少な国民の資源が投入され続けることになりかねません。
「何が、どこまで救済されるべきか」という線引きは、人口減少下の社会保障や災害復興政策では非常に重要になると思いますし、発生が予見される南海トラフ地震で、首都圏や東海地方などが重大な災害に巻き込まれた場合にも参考にしておく必要があろうかと感じます。
●麻生氏「派閥の解消はあり得ない」 菅氏「派閥は解消すべき」 政治刷新本部 1/11
政治刷新本部の今後の議論と課題について、自民党本部前から長田記者の報告です。
岸田政権の命運を左右するとも言える政治刷新本部の議論はきょう、キックオフを迎えましたが、「派閥の解消や派閥パーティーの禁止には踏み込めない」との見方が多く、自民党が国民の信頼を回復できるかは不透明です。
政治刷新本部では主に3つの論点を話し合います。
1つは派閥パーティー収支の透明性を向上させるための「党内のルール作り」です。具体的には、パーティー券購入は全て銀行振り込みにする、販売額に応じた各議員への還元の禁止などが検討課題としてあげられています。
2つ目は「政治資金規正法の改正など必要な法整備の在り方」について。
そして3つ目が「今後の派閥の在り方」についてです。最高顧問を務める麻生氏が「派閥の解消はあり得ない」との意見に対し、菅氏は「派閥は解消すべき」との立場で、協議は難航する情勢です。
岸田総理は周辺に「すぐに結論が出る話ではない。幅広い議論を戦わせれば良い」と語っています。
また、党関係者への取材で、派閥は「政策を研鑽する場であるべき」として議員個人へのお金の配布は自粛し、「人事の際には派閥からの推薦リストの提出などは行わない」ことを党のガバナンスコードに明記する案も検討されることが分かりました。
議論は始まったばかりですが、党内からは早くも「刷新する前に裏金疑惑の真相究明が先」などの意見が出ていて、国民の信頼回復に向けた結論を導き出せるのか、自民党は正念場を迎えています。
●岸田首相「自民変わらねばならぬ」 政治刷新本部が初会合 1/11
自民党は11日、派閥の政治資金パーティー収入を巡る裏金事件を受け、政治改革や再発防止の方策を検討する「政治刷新本部」の初会合を党本部で開いた。本部長の岸田文雄首相(党総裁)は「国民の信頼を回復し、日本の民主主義を守るためには自民党自ら変わらなければならない」と表明。無派閥の菅義偉前首相らは派閥解消を求めた。月内の中間取りまとめを目指す。
安倍派還流、裏金目的で考案か 20年以上前から存在―パーティー収入事件
首相は事件に触れ、「政策集団(派閥)、そして党の政治資金を巡って国民の厳しい目、疑念の目が注がれている。状況は極めて深刻だという強い危機感の下、一致結束してこの事態に対応していかなければならない」と強調した。
茂木敏充幹事長は政治資金規正法などの改正について「各党とも真摯(しんし)な議論を重ね、結論を得る努力が必要だ。政治資金の透明性、より厳格な責任体制の確立に向け、必要な法整備を検討していきたい」と語った。
刷新本部のメンバーは38人で、麻生太郎副総裁と菅氏が最高顧問、茂木氏ら党役員が本部長代行・代理に就任。小泉進次郎元環境相ら青年局長・女性局長経験者も加わった。
●中国の台湾への軍事圧力…衝突回避に日米等を通じ対話の必要性訴える 1/11
自民党の麻生副総裁は10日、訪問中のアメリカ・ワシントンで講演し、台湾への軍事的圧力を強める中国について、「性急な台湾の軍事統一は、国際秩序を混乱させるだけだ」と指摘し、衝突回避に向けた日米などによる対話の必要性を訴えた。
麻生副総裁は、シンクタンクが主催する会合で演説し台湾問題について「国際秩序の安定のため、大国としての責任をとるよう、中国を説得しなければならない」と呼びかけた。
その上で「中国が性急な台湾の軍事統一を選択することは、自国の都合で国際秩序を混乱させるだけだ」と指摘し「一つの中国という原則と、軍事力行使の間には、大きな距離があるはずだ」と述べ日米やASEAN=東南アジア諸国連合の枠組みなどを通じて中国との対話継続の必要性を訴えた。
麻生副総裁は、またTPP=環太平洋経済連携協定のアメリカの復帰を求めるとともに「韓国も参加すれば、安全保障と経済が表裏一体となり、地域の安定と繁栄がさらに強化される」との考えを示した。 
●前途多難な2024年 岸田首相は「聞かない力」と「鋼のメンタル」のみ… 1/11
2024年が明けて早々、激烈な震災や重大な事故が相次いでいる。前途多難な様相だが、昨年末に発覚した自民党派閥のパーティー収入不記載事件を受け、「政治とカネ」の問題もさらに深刻化しそうだ。
まず、混迷する政局で焦点になるのは、4月28日だ。昨年亡くなった細田博之元衆院議長の島根1区のほか、衆参両院で出た欠員の補選が行われる。
岸田文雄内閣の支持率は「危険水域」で低迷しており、岸田首相を「選挙の顔」とすることを不安視する声は高まっている。補選をきっかけに、「岸田降ろし」が起きるとの見方も出ている。
ただ、岸田首相を引きずり降ろして、代わりに誰を立てるのか。任期途中で自民党総裁が欠けたとして、「党大会に代わる両院議員総会」で後継を選んでも、「主流派の傀儡(かいらい)」というイメージは拭えないだろう。
そもそも、パー券事件は派閥の問題だ。一切の「負のイメージ」を払拭するなら、党員党友も参加するフルスペックの党大会を開き、派閥の力学と無関係の新総裁を選ぶべきだ。新たなリーダーは、国民に一定以上の浸透度があり、国難に対応できる人物が求められる。必然的に、候補も絞られる。
日本の先行きが前途多難な大きな理由の1つに、岸田首相の「ジョー・バイデン米政権頼み」もある。岸田首相は日米関係を妄信しているかもしれないが、11月の大統領選でバイデン氏が再選される保証はない。
「民主党政権から共和党政権になれば、米国のウクライナ政策は180度変わる」と言われる。日本は後始末を押し付けられるかもしれない。
日本は、昨年12月に開かれたG7(先進7カ国)財務相・中央銀行総裁会議で、ウクライナに対する45億ドル(約6500億円)もの追加支援を表明した。枯渇する米国のウクライナ支援予算を補う目的とみられても仕方ない。
自公与党が衆参多数を握っている以上、岸田首相はいくら低支持率でも、内閣総辞職か衆院解散をしない限り、9月の自民党総裁選までは続投できる。岸田首相が「聞く力」を持っているなら、身を引くこともあり得るが、現状は「聞かない力」と「鋼のメンタル」を感じるばかりだ。
その強靱な精神力で、自民党内の反発を押し切って「派閥解消」でも断行すれば、国民の支持は少しは回復するかもしれない。
ただ、「宏池会愛」にあふれた岸田首相には、そんな発想は微塵もないだろう。そうこうするうちに、日本はますます世界から取り残されかねない。
●岸田首相、地震の被災者に「最大20万円貸します」であふれる憤激 1/11
能登半島地震が発生してから10日が過ぎた。石川県によると、1月10日午後2時の時点で、県内で206人の死亡が確認されたという。また、安否がわからない37人の氏名や年齢などを公表、情報の提供を求めている。
余震は続き、ライフラインの復旧も数カ月かかると言われるなかで、心配されるのが被災者の生活再建だ。そのためには生活資金の確保が欠かせない。
厚生労働省は10日までに、低所得者世帯などに生活費を貸し付ける「緊急小口資金」の対象に、特例として能登半島地震の被災世帯を加えることを決定した。
厚労省のホームページによると、貸付金額は原則10万円以内だが、「世帯員の中に死亡者がいる」「世帯員に要介護者がいる」「世帯員が4人以上」「重傷者、妊産婦、学齢児童がいる」などの場合は20万円以内になるという。所得要件などはない。
「返済は、据え置き期間1年の経過後2年以内なので最長3年となりますが、厚労省によると『猶予などにも柔軟に対応しますのでご相談ください。利子はつきません』とのことです。
当面の生活費として助かるのは間違いありませんが、被災して避難する状況では手続きもままならないはずです。申込書を直接、市区町村社会福祉協議会に出すのですが、役所も混乱しているでしょうから、使い勝手がいいとも思えません」(経済担当記者)
「X」には
《住むところも失い家族も失い20万貸付って岸田政権と厚生労働省は鬼か》
《被災地では仕事も無いし働く事も不可能 借金だなんて悪魔の所業だ》
《こんな酷い政府聞いたことないぞ》
などのコメントが寄せられている。ニュースサイトのコメント欄にも、
《返済しなければいけない貸し付けだから、生活の目途が立たない中で、安易には借りられないと躊躇する人もいるはず。この緊急小口資金は、大半の被災者に利用されない気がする》
《海外にあんなに義援金配ってるのに 国内にはたった20万のしかも貸付? この物価高に何を考えたらこの金額が出るのですか? もう少し検討してあげてください》
など、その少なすぎる金額に批判が集まっていた。
「被災地の現状や課題などを把握することが重要だ」と意気込んでいた岸田首相の姿勢のあらわれが「20万貸付」だとしたら、被災者にあまりにも冷たすぎる。
●「初動が遅すぎ」「逐次投入」と自衛隊の災害派遣に批判殺到 1/11
「後手後手」、「逐次投入」──能登半島地震に災害派遣されている自衛隊や岸田政権に対し、批判が殺到している。例えば秋田県の佐竹敬久知事は1月9日、自衛隊の派遣規模について「少し後手後手だ」と指摘した。
時事通信の記事によると佐竹知事は、自衛隊の投入は「最初から1万人」が必要だったと発言。「われわれ東日本大震災を経験した者として、非常に歯がゆい状況だ」と強く問題視した。
発言の背景として、被災地の深刻な状況があるのは言うまでもない。朝日新聞DIGITALが1月8日に配信した「『初動を甘く見た』首相批判も 能登地震1週間、被害の全容つかめず」の記事では、《いまだに被害の全容が見えない》と指摘。翌9日には多くのメディアが石川県内の死者が200人を超えたことを報じた。
能登半島地震では、地震の大きさを示すマグニチュードは最大で7・6を記録した。気象庁によると、関東大震災(1923年)のマグニチュードは7・9、阪神・淡路大震災(1995年)は7・3、そして東日本大震災(2011年)は9・0。能登半島で数千年に一度の頻度で発生する巨大な地震だと専門家は指摘している。担当記者が言う。
「国もマスコミも、今後の方針を見定める上で、2016年に発生した熊本地震を参考にしているようです。マグニチュードが7・3と近似しており、熊本地震では死者276人、負傷者2809人の被害が出ました。SNSなどネット上では『熊本地震を超えるような死者が出てほしくない』と祈るような内容の投稿が相当な数に上ります」
立憲・泉代表の批判
もっと早く、もっと多くの自衛隊員を被災地に派遣すべきではなかったのか──Xでも激しい議論が起きている。熊本地震との比較も論争に影響を与えているようだ。
「東京新聞は1月6日、自衛隊の災害出動に関する記事を配信しました。そこに掲載されていた表がXで大きな注目を集めています。熊本地震と能登半島地震で、災害派遣された自衛隊員の人数を比較したものです。これによると、熊本地震は2日目で2000人に対し、能登地震では1000人。5日目に熊本は2万4000人に達したのに対し、能登は5000人に留まっています」(同・記者)
佐竹知事も、「最初1000人、2000人、今では6000人」と苦言を呈している。ただし、Xで論争が巻き起こったのは、立憲民主党の泉健太代表の発言がきっかけだったようだ。1月5日に国会内で記者団の質問に答え、「自衛隊が逐次投入になっており、遅い」と岸田政権を批判したのだ。
翌6日、この批判に木原稔防衛相が「自衛隊の災害派遣について一部、逐次投入であるとか、初動が遅いといった指摘がある。私から少し詳しく説明をしたい」と記者団に呼びかけたことも注目を集めた。
木原防衛相の反論
毎日新聞(電子版)が7日に配信した「自衛隊派遣、増員が容易でない背景 能登半島地震と熊本地震の差」という記事は、Xで自衛隊の“逐次投入”に理解を示す層から「ちゃんとした記事」「しっかりした取材」と評価されている。この記事に木原防衛相の説明が紹介されている。引用させていただく。
《木原氏は、半島では陸路が限られるため、「道路の復旧状況や現地での受け入れ態勢の段階などを見ながら人数を増やしていった」と説明。自衛隊では活動可能なエリアの拡大に応じて人員を増強する手法をとっており、主に平野部が被災した熊本地震とは条件が異なるとの認識を示した》
一方、冒頭で紹介した朝日新聞DIGITALの記事では、《防衛省内からは「初動を甘く見た」との声も漏れ、かつて官邸で災害対応にあたったある省の幹部は「政治主導のパワーを感じない」と話す》との声を伝えた。
こうなると、“逐次投入”の批判も決して間違っていないことになる。Xでも「初動も遅く後手後手」「明らかに初動の自衛隊派遣が少な過ぎ」との意見は多い。
「Xの投稿内容を見ると、大きく分けて3つの論調があるようです。1つは『岸田政権も自衛隊も駄目』の完全否定、2つ目は『自衛隊は頑張っているが、岸田政権の初動は間違っていた』と官邸を批判するものです。そして3つ目は『岸田政権も自衛隊も最善を尽くしている』と国の対応に理解を示すものです。依然として激しい議論が起きており、どれが優勢というのは言えない状況です」(同・記者)
ロシア軍と同じ過ち
では実際のところはどうなのか。自衛隊関係者に取材を依頼すると、「能登半島の地理的条件から、むしろ“逐次投入”こそ最善の対応だったと思います」と言う。
「被災地では甚大な被害が出ています。『自衛隊は何をやっているんだ』という声が上がるのも仕方ありません。とはいえ、自衛隊が災害派遣で力を発揮できるのは、何より“自己完結”が可能だからです。食事、トイレ、寝る場所などを自分たちで確保できるのが最大の強みです。そのためには補給路の整備が必要です。補給が不完全なのに、いたずらに人員だけを投入し、それこそ現地の貴重な救援物資を自衛隊員が消費するようになっては本末転倒です」
自衛隊は救援物資を被災地に運ぶだけでなく、自分たちが必要とする物品を運ぶためにも補給路を確保しなければならない。そこに立ちはだかるのが能登半島の地理的条件だという。
「能登半島は北、東、西の3方向を海に囲まれています。陸路は南から北進するしかなく、しかも道路網に相当な被害が出ました。徒歩で救援物資を運んだ隊員も少なくなく、崖をよじ登る姿もテレビで報じられました。こんな状況で部隊を大量に投入すると、ウクライナ戦争の緒戦でロシア軍が大渋滞を引きおこしたのと同じことが生じたでしょう。消防や警察車両の通行を妨げた可能性もありました。海路も海岸線が津波の被害を受けたため、揚陸が困難だったようです。空路はヘリがフル稼働しましたが、悪天候の影響もありましたし、何よりトラックに比べると輸送量に限界があります」(同・関係者)
熊本との比較は問題
補給路が構築できないうちは、むしろ“逐次投入”のほうが合理的だという。
「そもそも逐次投入は、戦術の概念です。兵力を小出しにすると、敵軍に各個撃破されてしまいます。これを戒める用語であり、今回は災害派遣なのですから能登半島で戦闘を行うわけではありません。自衛隊は1月1日の時点で、8500人から1万人の隊員を待機させました。現地の状況を踏まえ、地元自治体のニーズを丁寧にヒアリングし、小出しに派遣人員を積み上げました。こうして被災地に悪影響を及ぼすリスクを減らしたのです」(同・関係者)
また熊本地震との比較も「フェアな観点ではない」と自衛隊関係者は指摘する。熊本市には陸上自衛隊の第8師団が駐屯しているからだ。
「言ってみれば、第8師団の“庭先”が被災地になったようなものです。師団本部は物品も資材も備蓄していますし、熊本県内は平野も多く、様々な道路が使えました。能登半島のように補給路を構築する必要はなく、本部から迅速に救援物資を届けることができたのです。また第8師団の人員は6100人で、隊員も被災者だったという点は考慮する必要がありますが、これだけの人数が最初から被災地にいたというのは大きいでしょう。金沢市には第14普通科連隊が駐屯していますが、こちらは1200人です」(同・関係者)
赤旗の批判
Xでは「水を食料をヘリで早く届けられないのか」といった疑問の声も多い。「空中から救援物資や医療品を投下できなかったのか」、「米軍ならヘリを強行着陸させたのではないか」など、様々な意見が飛び交っている。
「空中から水や薬などの救援物資を投下することは、技術的には可能です。ただ現地の担当者は、車や住宅に当たった場合の破損を懸念したかもしれません。まして人を直撃してケガを負わせたら大問題です。地元自治体も空中投下までは依頼しなかったと思います。また米軍と自衛隊のパイロットで技能が違うということもなく、重要なのは受け入れの環境でしょう。ヘリが運んできた物資を受け取るのは自衛隊員が理想的です。被災者に任せるのは危険だと言わざるを得ません。やはり陸路を確保し、ヘリ受け入れの隊員が常駐できるようになってからヘリ空輸を活発化させるのが最も安全な方法なのです」(同・関係者)
1月7日、陸上自衛隊の第1空挺団は千葉県の習志野演習場で「降下訓練始め」を行った。Xでは「今実施しなくても良いのではないか」、「支援物資積んで被災地に向かって欲しかった」と批判の投稿が相次いだ。
日本共産党の機関紙・しんぶん赤旗(電子版)は1月10日、コラム「きょうの潮流」でこの問題を取り上げ、《救援物資を積めるであろうヘリから降りてきたのは、銃を持った自衛隊員…。違和感を覚えたのは筆者だけでしょうか》と批判した。
自衛隊の“世界一のノウハウ”
「第1空挺団も批判は分かっていたと思います。アメリカやイギリス、カナダなど8ヵ国の軍も参加しましたので、中止は難しかったのかもしれません。ただ一般に公開したということは重要で、これは実施しても問題はないと判断したからでしょう。つまり被災地から応援の要請がなかったと考えられます。もし被災地でヘリも人員も足りていないのなら、降下訓練始めは中止されたか、規模を縮小したはずです」(同・関係者)
Xには「第1空挺団の隊員に薬や水を持たせ、被災地にパラシュート降下させればよかった」という意見も散見される。これも技術的には可能だが、隊員が孤立してしまう可能性がある。やはり“自己完結”が不可能となり、隊員が被災者になってしまう。
「率直に打ち明けると、熊本地震で自衛隊員の派遣人員が万単位になって以降、仕事のない隊員が目立ったのは事実です。また自衛隊は災害派遣が専門ではありません。災害派遣されると訓練が行えないため、軍隊としての練度は確実に落ちます。自衛隊は国防が最も重要な役目ですので、バランスを保ちながら適切な人員を被災地に送ります。そして自衛隊は東日本大震災を筆頭に様々な震災を経験してきました。災害派遣に関しては世界一のノウハウを持っています。そう簡単にミスを犯すはずもなく、今回の批判は的外れのものが多いと言わざるを得ないのです」(同・関係者)

 

●能登半島地震、死者215人に 降り続く雨で捜索難航 1/12
能登半島地震から12日目を迎えた。
これまでに石川県で亡くなった人は215人、安否がわからない人は38人。
安否不明者が集中している石川・輪島市では雨が降る中、一斉捜索が続いている。
輪島市の朝市通りから、FNN取材団・高橋耕平記者が中継でお伝えする。
地震直後の火災でおよそ200棟が消失した朝市通りでは、一斉捜索が4日目を迎えた。
朝から雨が断続的に降る中、警察や消防、自衛隊およそ200人による懸命の捜索活動が続いている。
捜索隊は12日午前9時ごろから、焼け跡に広がった家具やがれきを手作業で取り除きながら、安否不明者の手がかりを探す作業を行っている。
ただ、降り続く雨により、水分を吸い込み重くなったがれきが捜索の行く手を阻んでいる。
輪島朝市・冨水長毅組合長「このあと、いったいどうなっていくのかなと。生活の糧(であった店)も実際こういった形で、できるような状況ではありませんので、不安だという状況です」
一方、輪島市では、学校再開のめどが立たず、市内の中学生およそ400人の一時的な集団避難を検討している。
希望者は、石川県南部の白山市で授業を受けられるようにするという。
●能登地震発生時に「危機管理のトップが入院、不在」が呼ぶ不審と憶測 1/12
いずれも警察キャリア出身
石川県能登地方を震源とする地震への対応をめぐって、村田隆内閣危機管理監が入院中を理由に一時官邸に出勤していなかったことが震災の翌日に報じられた。1月3日には復帰し、岸田文雄首相との会議をこなしているとはいえ、この入院が憶測を呼んでいる。
内閣危機管理監は文字通り危機管理を統率する立場として、1998年から内閣官房に置かれた官職である。過去9人の危機管理監はいずれも警察キャリア出身で7人が警視総監、2人が警察庁警備局長の経験者だ。
「安倍・菅政権で長らく内閣官房副長官を務めた杉田和博氏も警察庁警備局長と内閣情報官を経て、危機管理監を務めました。警備のプロが任命されると言って間違いないでしょう」と、社会部デスク。
2022年1月から危機管理監に就任した現職の村田氏。その経歴を少しおさらいしておこう。
入庁は1984年。大阪府警刑事部長、沖縄県警本部長、警察庁警備局警備企画課長、警視庁刑事部長、警察庁長官官房総括審議官、大阪府警本部長、警察庁警備局長を歴任して退官。フィンランド大使を務めた後、危機管理監となった。
警備局長からフィンランド大使
「村田氏は警視総監の目もないわけではなく、本人も当然望んでいたようですが、警備局長で退官となりました。ちなみに警備局長の先代は松本光弘氏ですが、その後、警察庁長官官房長→警察庁次長→警察庁長官を務め、後任の大石吉彦氏は警視総監となっています。さらに国会対応を担う総括審議官の前任の沖田芳樹氏と後任の斉藤実氏はいずれも警視総監を務めました」(同)
警視総監や警察庁長官とはいかなかったものの、当時の長官で今も警察の人事をコントロールする栗生俊一内閣官房副長官の差配でフィンランド大使のポストが用意されたとのことだ。こうした差配は村田氏に限ったことではない。
「警察OBからは“フィンランド大使はなかなかの厚遇。栗生氏も気を遣ったのだろう”と言われていましたね」(同)
警察キャリアの場合、他の省庁よりもさらに綿密に「キャリア・プラン」が検討されるのだという。
「民間企業において警察の息のかかったポストは本当に多く、ほとんどが“玉突き”人事。ですから退官がまだまだ先の段階でも、どの企業に誰を再就職させるかといったことは、誰を 警察内のポストに就けるかということと同等に検討されることになります」(同)
映画館に行けない
話を震災発生時の村田氏に戻そう。
「今回の地震がなければ、正月早々に村田氏が入院していることは明らかにならなかったことでしょう。危機管理監は官邸から徒歩すぐにある官舎に住み、何か問題が発生すればただちに官邸にはせ参じる決まりになっているので、通常の行動範囲もかなり狭まります。常に携帯を手放せず、電波が入りづらい場所に立ち入ることは難しい。“映画館に行けないのが悩みでした”と現職時代を振り返った人もいましたね」(同)
危機管理を統率するにあたっては持ち場を離れることは難しいということで、人間ドックなどを着任前に念入りに済ませて長期入院などの可能性を取り除いておくことも努めなのだという。
「それでもこのタイミングで入院ということですから、かなり重篤な病気なのではないかと、情報が駆け巡ったのは事実です。が、入院が判明した翌日の3日には村田氏は出勤し、岸田首相らとの会議に出席しています」(同)
コロナかインフルエンザ説
もちろんこうした立場の人間の健康情報や動向は一種の機密にあたるのかもしれない。しかし元日にわざわざ入院していることを不審に思われるのは仕方がないところだろう。
「コロナかインフルエンザに罹患していたのではないかという話もありました。が、“それで入院するというのはかなり重篤なわけで、そう簡単に職場復帰できるものかなあ”との声がありました。さらに、“入院が報じられてすぐに出てくるってことは、そもそも入院していなかったのでは?”といった指摘もありましたね。以前に地方で飲酒してケガをしたこともあったそうで、それに似たようなことではないかとの見方もありましたが、なかなかハッキリとしていません」(同)
村田氏の不在時は、官房副長官補が代理として任務を遂行し、対応に支障はなかったとされているが……。
「しかし、危機管理のトップが不在でも回る組織なら、そもそもそのポストは要らないのではといったツッコミは各方面から出てきているようです。村田氏も就任から2年が経過しました。現在の小島裕史警視総監が近々交代と噂されており、そこで小島氏が危機管理監に就く可能性が出てきましたね」(同)
●災害の度に湧いてくる人々 1/12
被害状況と政府の対応
石川県能登半島で起きた地震から10日が経過し、徐々に能登半島全域の状況が判明し始めた。
能登半島全域に広がる高齢者を中心とした集落に向かうには、限られた道路を使わなければならないが、半島をぐるりと回る道路はあちこちで寸断されていて、地震の規模の大きさを物語っている。
幹線道路については地元業者を中心に道路の啓開作業が進み、また。復旧が間に合わない僻地については、自衛隊員が歩いて支援物資を担いで現場に向かう等、現場の状況が徐々に明らかになってきた。
消防、警察、自衛隊、周辺自治体、災害対策基本法の中で指定業者になっている企業は、自治体の要請を待たずプッシュ型で支援物資を大量に現場や自治体施設に送り込んでいる。
政府の対応が遅いとか、復興に向けて予算措置を行うのに対応が遅いと批判するSNSアカウントが見受けられるが、そもそも、災害時の政府決定は、発災時に遡って適用されるので、決定が少々、遅くてもあまり関係はない。
これまで、政府は、147億円の支援を閣議決定し、2復興・復旧の予算をこれまでプールしてあった予備費5,000億円から1兆円に倍増を閣議決定(予定)とした。
加えて、3初動で1,000人出動させた自衛隊員を直後に2,000人に増強、更に日を経ずして4,000人態勢に増強した。
よく東日本大震災や熊本地震を引き合いに出す人がいるが、そもそも、各地の災害を比べることがナンセンス。
状況はそれぞれの災害毎に全く違う。
今回の能登半島地震の場合、被災地へのアクセスが極端に難しい。まず、被災地にたどり着くための道路が壊れている。つまり道を作るところから始めなければいけない。それでは間に合わないから、自衛隊は荷物を担いで徒歩で被災地を目指している。
また、これまでの大規模災害に基づいて整備が進んだ災害対策基本法に基づき、自治体は発災時より、基本的な自治体の動きをマニュアルに頼ることになる。当然、マニュアルだけでは災害対策が困難であることは勿論だが、何をすべきか?は日本の自治体は手順が決まっている。そして何より最優先は、被災者の非難と、生き埋めになってる人の早期の救出だ。
海外からレスキュー隊派遣の申し出について、日本政府は断ったとの間違った情報が流布されたことも、注意が必要で、能登半島の被災地へのアクセスが難しい状況で海外のレスキューを受け入れたとしても対応が難しいことも容易に想像が出来る。また海外のレスキューが入ってきたとしてもそれをどう振り分けるか?という問題もある。
次に、よく言われるのが、地上からのアクセスが難しいなら、ヘリを使って空から向かえば良いではないか?との議論も聞かれる。
自衛隊は発災当初から被災地に向かう準備を行い、当然だがヘリによる救援物資の搬送、救援隊の派遣も行ってきたが、前述の通り、能登半島という地理的条件が空からのアクセスを難しくさせている。
救助に使うヘリやある程度の人数を運ぶヘリは相応の大きさを持ち、離着陸にも相応の面積と飛行技術を必要とする。力も強く、そのダウンウォッシュ(ローターが発生させる吹き下ろしの風)は、近くに軽四輪を置いていればひっくり返るくらいのパワーがある。そのようなパワーのあるヘリを被災している場所で使うのは、二次災害の危険性が極めて高い。
地震によって地盤は緩み、建物は余震の度に倒壊の危険に晒されている。
そのような状況で救助ヘリを飛ばすことは、何重もの危険性を伴う。軽はずみにヘリを飛ばせば良いというものではない。
自治体も自衛隊も、飛ばせるものならとっくに飛ばしている。飛ばさないのではなく、飛ばせないのだ。どうして子供でも分かるようなことを批判するのか、理解に苦しむ。
政府対応の違いについて
大災害が発生した時、自治体の対応や政府の対応が槍玉に挙げられるが、今回の「令和6年能登半島地震」でも同様のことが起きた。そして、批判するのは決まって野党よりの考えや野党支持者なのだ。いずれも政府対応を批判したがる。曰く、自民党は頼りにならないとか、金権政治で腐敗しきっている自民党には、日本の統治を任せられないという論旨だ。
ここで考えなければならないのは、先の東日本大震災の時と比較するとよく分かるのだが、自称原発の専門家である菅直人元総理が発災直後に福島第一原発も含め被災地を見に出かけたことが、大変なバッシングを受けた。そして、その批判な政府内からも聞こえてくるものだった。当時、経済産業副大臣が菅直人元総理の取り乱した様子を克明に述懐している。
未曾有の大災害が起きているのだから、誰だって取り乱すようなことはあるだろう。だが当時、問題になったのは、総理大臣が取り乱したことが問題なのだ。
当時の政府も今の岸田政権も、現場の刻々と変化する状況に対応すべく全力を尽くしたのは否定しない。否定しないが、肝心の中心がブレブレだった状況に最も危機感を持っていたのが、政府内の人々だったことは忘れてはいけない。
今更ながら、当時の旧民主党政権は今の岸田政権以上によくやったという声を聞く。
政府なのだから、その時に全力を尽くすのは当たり前であり、出来ることを最大限やり尽くすのは当然だ。
仮に当時の民主党政権が優秀だと言うなら、どうして民主党は下野したのだろう?それは国民が民主党に対して不信感を抱いたからではないか?
なんとかしてくれると政権を託したにも関わらず、国民の期待を見事に裏切ってしまったから、政権の座を追われたのではないか?
色々あってもやっぱり自民党に頼るしかないと、国民が判断したからではないのか?
これは歴史の事実であり、今の岸田政権と比較したい気持ちは分からないでもないが、東日本大震災当時を知る一人として思うのは、今が立憲民主党政権でなくて本当に良かったという感想以上のものはないと言うことだ。正直言って、立憲民主党政権だったらと思うと、背筋が凍るような思いがする。
それは東日本大震災を見てきたからだ。
今は度重なる大規模災害を通じて、災害対策基本法の中身が醸成されてきており、発災した自治体も政府も、即時対応が出来る素地が整っている。東日本大震災を通じて各種の災害対策特措法も充実してきている。それが全てとは言わないが、しかし、法に則り迅速な対応がやりやすくなったことは事実だ。
今回の「令和6年能登半島地震」のような大災害が起きた時、現場の状況が報じられることで、苛々することももどかしい思いをすることもあるだろうが、我々がまず冷静に見つめなければいけないのは、自治体と政府の対応を法律に則り分析することにあるだろう。
●岸田首相「最適な避難先を選定できるように」二次避難希望者への対応指示 1/12
岸田首相は12日、能登半島地震に関する政府非常災害対策本部で、二次避難者へのきめ細かい対応を指示した。
岸田首相は自身も昨夜、二次避難の検討促進を呼びかけたことを踏まえ「二次避難が必要な方といっても、様々な事情があることを忘れてはならない。例えば二次避難先でも施設による介護サービスや障害福祉サービスを必要とする方、安心して乳児幼児を育てるための環境が必要な方、これまで支え合ってきたご家族やご近所の方と共に避難することを希望される方もいる」と指摘した。
その上で「政府としても多様なニーズにきめ細かに対応すべく、旅館・ホテルのほか医療機関、高齢者施設、福祉避難所を含め、必要十分な数の二次避難先を確保している。高齢者が乗り降りしやすいタクシーや車椅子、ストレッチャーを積載できるタクシーを含めさまざまな移動手段の用意をしている」と強調し、準備の取り組みが被災者に伝わり、最適な二次避難先が選定できるよう、関係省庁に指示した。
また、岸田首相は、応急的な住まいの確保に努める方針を示した上で、仮設住宅についても「本日から輪島氏と珠洲市で、週明けから穴水町と能登町で建設に着手する」と述べ、「希望者に一日でも早く移っていただけるよう取り組みを進めてください」と指示した。  
●日本の「ウクライナ支援」のカネは一体何に使われているのか… 1/12
膨らむ「ウクライナ支援」
ウクライナを訪問した上川陽子外相が1月7日、ロシアのドローン攻撃に対処するため、北大西洋条約機構(NATO)の信託基金に約54億円を拠出する方針を表明した。だがこれは、ごく一部にすぎない。いずれ、米国の肩代わりに巨額の支援を迫られるのではないか。
日本がNATOに資金を拠出するのは、直接的な軍事支援を避けるためだ。苦戦を強いられているウクライナとすれば、喉から手が出るほど軍事支援が欲しいところだろう。原則として、武器輸出を厳しく規制している日本の建前との整合性に配慮した「苦肉の策」と言える。
この金額については、能登半島地震の発生と時期が重なったために、SNSでは「能登半島よりウクライナか」という声も出た。岸田文雄内閣は能登半島地震に約47億円を支出したが、これが「ウクライナ支援より小さい」というのだ。それも理解できなくはないが、岸田政権の「地震対応に対する不満の表れ」とみるべきだろう。
ウクライナ支援はこの先、大きく膨らむ公算が高い。
米国が共和党の反対で、追加のウクライナ支援にメドが立たない一方、日本は2月19日に東京で「日ウクライナ経済復興推進会議」を開いて、日本企業の参加も募ったうえで、大規模支援を打ち出す方向だ。
米国のジョー・バイデン政権は昨年10月、議会に対して614億ドル(約8兆8400億円)のウクライナ支援を含む総額1060億ドル(約15兆2640億円)の予算承認を求めた。だが、共和党は国内の国境警備強化を求めて反対し、承認される見通しが立っていない。
欧州でも、支援疲れが目立っている。たとえば、ポーランドは昨年9月、武器弾薬を追加提供しない方針を表明した。ハンガリーも、総額500億ユーロ(約7兆8500億円)に上る欧州連合(EU)のウクライナ支援に反対した。
それぞれの金額に注目してもらいたいが、米国の約9兆円、EUの約8兆円に比べて、上川外相が表明した54億円は桁違いに少ないのが、すぐ分かるだろう。ウクライナが必要としている金額は、数十億とか数千億円といった程度の話ではない。
軍事支援も求められる日本
キール世界経済研究所によれば、これまでの昨年10月までの支援総額でも、軍事、人道、金融の3分野を合わせた総額で最大の供与国は、EUで848億ユーロ(13兆3000億円)に上っている。次が、米国の714億ユーロ(11兆2000億円)だ。日本は68億ユーロ(約1兆670億円)にすぎない。
逆に言えば、米国と欧州の支援が止まってしまえば、ウクライナは、たちまち戦争を続けられなくなるのだ。だからこそ、日本への期待が高まっている。
金額だけではない。日本は軍事支援も求められている。
岸田政権は昨年12月に防衛装備移転3原則と、その運用指針を見直した。この見直しで、これまで認められなかった防衛装備品をライセンス元の国に輸出できるようになった。同時に、日本の事前同意があれば、第3国への輸出も可能になった。
岸田内閣は実際、見直しと同時に、地上配備型の迎撃ミサイルPAC3のライセンス元である米国への輸出を決めている。
事前同意と言えば、あたかも日本が厳密に審査する印象だが、運用指針によれば「我が国の事前同意に基づき第3国移転するに当たっては、当該移転先、またはその政府による当該第3国移転先に対する適正な管理の確認をもって、我が国の適正な管理を確保することも可能とする」と記されている。
つまり、最初に輸出した先がきちんと管理していれば、それで良しとする仕組みである。
これは将来、ウクライナに武器輸出する事態を想定しているようにも見える。米欧の支援先細りと2月の支援会議開催を視野に入れた見直しなのだ。そうでなければ、国会が閉じた年末の慌ただしい時期に、ドタバタと閣議決定した理由を理解しにくい。
そもそも「ウクライナの復興支援」という枠組みも分かりにくい。いま激しい戦争を繰り広げている当事国になぜ、いまから復興支援なのか。仮に発電所を建設したところで、そこをロシアに攻撃されれば、一発で破壊されてしまうだろう。
誤解のないように言うが、私は軍事支援を含めて、ウクライナを支援するのに反対ではない。むしろ、賛成だ。だが、支援するなら、目的と中身をきちんと国民に説明すべきだ。戦争当事国への支援なのだから、これは当然ではないか。
岸田政権は防衛装備移転3原則の見直しをはじめ、なにかコソコソとやっている印象がある。2月の会議も「復興支援」という名の下に、実質的にはどんな軍事支援をするのか、と心配になる。米国が、日本にそれを求めているに違いないからだ。
ウクライナが必要としているカネの使われ方
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は1月1日、英エコノミスト誌のインタビューに応じて、米国に大砲やミサイル、防空設備などを生産するライセンスを供与するよう求めた。軍事支援が止まる事態を見越して「ライセンスを与えてくれれば、自分たちで作る」という「プランB」を表明したのだ。
大統領は昨年秋から、このアイデアを口にしていたが、いよいよ「米国がもう支援してくれそうにない」と見極めて、カネがかからないライセンス要請に支援の中身を切り替えてきた。米国も新年から、慌ただしく動いている。ジェイク・サリバン米大統領補佐官は1月8日、米国の軍需産業トップたちと新たな支援について協議した。
こうした流れを見れば、ウクライナが必要としているカネが何に使われるのか、容易に想像できる。ウクライナは最新の武器を自前で生産するために、軍事工場を作ろうとしている。そんな工場は、必ずしもウクライナ国内に設置されるとは限らない。
カナダのメディア、ユーラジアン・タイムズは1月6日、ウクライナ政府元顧問の「ロシアの攻撃を避けるために、ウクライナと米欧企業のジョイントベンチャーは、ウクライナの国外、できれば、近くのNATO同盟国に工場を設置すべきだ」という提案を紹介した。「ロシアには、NATO同盟国を攻撃する覚悟はない」という見立てである。
日本がカネを出せば…
いずれにせよ、議論はここまで進んでいる。
日本の支援も、以上の展開と無関係ではありえない。カネに色は付いていない。日本がカネを出せば、巡り巡って軍事工場の建設に使われる可能性が高い。ゼレンスキー政権は国内のエネルギー復旧などを日本に任せて、その分の資金を自前の軍事力強化に使うだろう。
世界がウクライナとイスラエルで2つの戦争に突入した時代に、日本の支援は日本自身の平和と安定、繁栄に直結する。近い将来、中国が台湾に侵攻する可能性もある。日本がウクライナに、どれほど支援するのか。それは何に使われるのか。そして、なにより日本自身の守りはどうするのか。
岸田政権は全体像を示す必要がある。
●支持率16%の瀕死内閣…早くも「復興利権集団」と中抜き政治家の影! 1/12
2023年12月の毎日新聞世論調査では内閣支持率が16% と、各メディアで発足以来最低を更新し続けている岸田文雄内閣。国際政治アナリストで日本の税制にも詳しい渡瀬裕哉氏は「岸田政権は今こそ復興減税すべきときだ」と説く――。
復興増税で懸念すべきは利権に群がる政治家・役人たち
2024年1月1日、能登半島を中心に襲った大地震は多大な被害を同地域にもたらした。現在も余震が続いており、一瞬たりとも気を抜くことができない状況が継続している。
官民問わず、災害の救済及びインフラ復旧に向けた取り組みを実施しており、彼らの懸命な努力を行う姿には素直に頭が下がる。
1月5日、岸田首相は2023年度予備費残4600億円及び2024年度予備費5000億円を能登半島地震への対応に支出する方針を示した。災害規模は現状ではまだ確定していないものの、1兆円近い予算投入を早々に決定したことについては一定の評価はできる。一方、野党の一部には2024年予算ではなく、1〜3月で新たな補正予算を組むべきとする主張もあり、被災支援の財源については一定の議論が残っている。
ただし、いずれの場合においても、早晩、政治家、役人、その関係者が復旧・復興に絡めた公金支出に利権を求めて群がることになるだろう。そのような光景は東日本大震災時にも見られたことだ。
岸田政権は内閣支持率も低下し、その支持基盤が揺らいでいる状態だ。そのため、弱い内閣総理大臣に対して、ここぞとばかりに利権集団が集(たか)ることは容易に想像がつく。
財務省が復興増税の中抜きを狙っているか
また、岸田政権は昨年末に突如として打ち出した所得税定額減税によって、予算策定を牛耳る財務省との関係には亀裂が入っている。
したがって、岸田政権が今月に始まる通常国会での質疑を乗り切るために、様々なバラマキ財源の支出と引き換えに、財務省と妥協した「復興増税」の拡大・延長を新たに秘密裏に妥協する可能性もゼロではない。岸田首相は上述の予備費支出の他、追加で4月以降に補正予算を組むことを示唆しており、その線も十分にあり得る話だ。
当初の復旧作業にはインフラ投資予算は必要ではあるものの、その後の復興過程において、腐敗者たちによる中抜きを可能な限り防止していくことが望まれる。
岸田政権は今こそ復興減税せよ。減税なら中抜きはできない
岸田政権に対する様々な勢力による利権づくりに釘を刺すことは極めて重要だ。そこで、復興に群がる利権争いの勃発に先駆けて、岸田首相には早々に「復興減税」を宣言することを求めたい。
もちろん、既存の被災者に対する政策パッケージの中にも、国税や地方税の減免は政策のラインナップとして存在している。しかし、従来までの減税政策は既存の無数に存在する政策の一つに過ぎず、そして煩雑かつ複雑な内容である。現場の行政職員の負担も大きく、速やかな被災の認定すら難しいだろう。
その他の既存の省庁の政策に紐づけられた被災対策は、その過程における中間コストもかかりすぎることも問題だ。納税者は東日本大震災の復興予算の中抜き・流用事例を覚えている者も少なくなく、既存の政策パッケージに伴う腐敗にはセンシティブだ。
そのため、当初の救済・復旧のための予算を消化した後、被災地の復興政策に関して、地方税減免(住民税や固定資産税など)を簡素化・大規模化・長期化することを求めたい。
復興減税を石川県全体に適用すれば、奇跡の復興が起きる可能性も
復興減税をどのような基準と範囲で復興減税の対象とするか、は議論があるだろう。しかし、厳密な被災認定は、煩雑さ・複雑さはスピード感を削ぐとともにコストも増加させるだけだ。
仮に、被災地域として認定された地域に対して、特例措置として面的に減税することにすれば、その手続きは大規模かつシンプルな政策実行が可能である。
同地域全体の住民を復興減税の対象とすることで、直接的に被災者の生活コスト削減にもつながり、減税による経済効果によって地域経済は従来以上に強靭なものとなる。
たとえば、石川県の県民税総額は約1780億円(2021年度決算カード)であり、予備費の一部を回すことで、最大で複数年間の県民税を無税にすることも余裕だ。周辺県に関してもその被災度合いに応じて、県民税を大幅に引き下げることができるだろう。さらに、基礎自治体の住民税に関しても支援規模次第では大規模な減税が可能だ。
東日本大震災時に徴収された復興増税総額を復興減税として東北の被災県に投入した場合、その県民税を10年近く減税することも可能であったはずだ。仮にそのような政策を実行した場合、現在の東北地方にはヒト・モノ・カネが流入しており、既に見間違えるほどの大都市が生まれて、奇跡の復興を遂げていたことは想像に難くない。
減価償却の扱いを100%即時償却とすれば、石川県で新たな産業が勃興することもあるかもしれない
もちろん全ての地方税を減税することは非現実かもしれないが、税制はそれほど様々な主体の投資判断に影響を与える重要な要素なのだ。多少、不正のような動きも出るだろうが、そのような取り締まりこそ事後的処理として時間をかけて罰すれば良い。
さらに、地方税の復興減税を断行した上で、更に被災地域における設備投資に対して、減価償却の扱いを100%即時償却とすることを特例として認めることも併せて提案したい。
100%即時償却の導入によってほぼ確実に同地域において積極的な設備投資が起きることになる。石川県は元々機械工業が盛んな地域であるため、このような減価償却の特例を認めることで、新たな産業クラスターが強力に勃興する可能性もある。その場合、同地域は日本経済をけん引する地域に一気に生まれ変わるだろう。
東京のゼネコンやコンサルに抜かれるようなスキームではない、被災地に対する直接的な支援を実施することが重要だ。まして、その食い散らかしを復興増税で面倒を見るような過ちがもう一度繰り返されることがあっては断じてならない。
政治家、役人、その関係者によって、被災からの復興におかしな利権が組み込まれる前に、岸田首相は同地域において誰もが等しく利用することができる「復興減税」を断行するべきだ。
●経常黒字、1兆9000億円 11月として過去最大 10カ月連続の黒字 1/12
財務省が発表した国際収支統計によると、日本が貿易や投資でどれだけ稼いだかを示す11月の経常収支は1兆9256億円の黒字だった。
黒字は10カ月連続で、黒字額は前の年の同じ月と比べて1533億円増え、比較可能な1985年以降、11月としては過去最大となった。
エネルギー価格の下落などで、貿易赤字が縮小しているうえに、サービス収支が247億円の黒字と、4カ月ぶりに赤字から転換した。
海外での投資の利子や海外子会社から受け取る配当金などの第1次所得収支の黒字額は、前の年の同じ月より7392億円減ったものの、2兆8949億円と、11月として過去2番目の高い水準となっている。 
●岸田文雄は首相失格 時代が政治家を選ぶ 1/12
元日は能登で震災が起こり、翌2日、羽田空港で旅客機と輸送機が衝突し炎上。ただならぬ時代を予感させる新年の始まり。政界では、松も明けぬうちに国会議員が裏金作りで逮捕された。
地球は地殻変動が活動期に入ったらしい。日本の政治も長期政権が自己崩壊を始めた。どうやら、明日は昨日の延長線上に描けない。時代が求める政治家の資質も変わってきた。
空想の世界ではない別次元の事態
気象庁のデータを見ると「大きな地震」は毎年のように起きている。2000年10月鳥取県西部(マグニチュード7•3)、03年9月十勝沖(M7)、04年10月新潟中越沖(M6•8)、07年3月能登半島(M 6•9)、7月新潟中越沖(M6•8)、08年6月岩手宮城内陸(M7•2)、11年3月東日本大震災(M9)、12年12月三陸沖(M7•3)、13年10月福島沖(M7・1)、15年7月小笠原諸島西方沖(M8•1)、16年4月熊本(M7•3)、16年11月福島沖(M7•4)、18年6月北海道胆振東部(M6•8)、21年2月 福島県沖(M7•3)、22年3月 福島沖(M7・4)、24年1月能登半島。
地震は起こると「想定外の事態」となるが、こうして見ると「今年もどこかで起こる」と考えたほうがいいのではないか。
社会的な破壊力は、起きた場所によって決まる。火山の噴火も同様だ。近年起きた噴火は、以下の通り。
1986年伊豆大島、1990年雲仙岳、2000年3月有珠山、6月三宅島、2004年十勝岳、11年霧島山新燃岳、2014年草津白根山、2014年御嶽山、2015年口永良部島。九州では桜島や阿蘇山がしばしば噴火している。首都近辺では箱根で小規模な噴火が起き、富士大噴火の予兆ではないか、と心配する人もいる。
富士山は大きな噴火を何度も繰り返して今の姿になった。1707年、宝永地震の49日後に始まった宝永大噴火は、江戸市中まで大量の火山灰を降下させた。川崎で5センチほど積もったとの記録があり、いまこれだけの火山灰が降ったら交通や通信は壊滅的打撃を受け、首都機能麻痺(まひ)の恐れがある。
心配してもキリがない、と思われる人がほとんどだろうが、富士大噴火や南海トラフ地震は、いつか起きる。その時、明治維新や敗戦に匹敵する大混乱が起き、政治も経済も別次元に突入するだろう。そんな事態が空想の世界でなく、見えてきたような気がする。
天変地異に対応できない政治の乱れ
昔から「世が乱れると天変地異が起こる」と言われ、天の采配で権力の交代が起こる、とされてきた。天災は驕(おごる)権力者に対し、天が与える懲罰という考えだ。見方を変えれば、世が乱れている(政治が機能していない)と天災に的確な対応ができず、時の権力は力を失う、ということかもしれない。
能登半島地震への岸田政権の対応は「天変地異に対応できない政治の乱れ」が露呈したといえよう。
元日に震災が起きたのに記者会見で国民の前に現れたのは4日。その日の夜にはBSフジテレビに生出演し、政治評論家の田崎史郎氏らと秋の総裁選に向けた政局談義である。呑気(のんき)なものである。被災地では崩壊した家屋に押し潰された人が救済を待っているというのに。道路が寸断され、孤立した集落の被害状況さえ把握できない。生死を分ける被災後72時間を過ぎても到着さえできない地域があちこちあり、一刻も早く救援を、という現地からの声は首相の耳に入らなかったのか。事の重大性への認識や人命への配慮が決定的に欠けていたため、初動が遅れた。後手後手の対応で、救えたはずの命さえ救えなかった。
象徴的な動きは自衛隊出動の遅れだ。東京新聞(1月6日付)によると
「防衛省は地震発生翌日の2日、陸海空自衛隊の指揮系統を一元化した統合任務部隊を1万人規模で編成した。ただ実際に現地で活動するのは2日の段階で約1000人、3日は約2000人、5日も約5000人にとどまっている。発災から5日目で約2万4000人が活動していた熊本地震と比べて規模が小さく見える」。5日経って熊本地震の5分の1は少なすぎる。
防衛日報デジタルによると「東日本大震災では、発生当日に約8400人の自衛隊員が派遣され、2日後の13日には5万人超、1週間後の18日には10万人超の隊員が派遣された」という。
2日の段階で能登半島の道路は土砂で埋まり、陸路の救済は困難と判断された。救援は海と空からしかない、という判断だった。
孤立した集落への救援物資の投下や、重傷者の輸送はヘリコプターに頼るしかない。ヘリを一番たくさん持っているのは自衛隊である。中でも陸上自衛隊第一空挺団は落下傘降下やヘリからロープ1本で地上に降り立つことができる精強部隊だ。ホームページにこうある。
「陸上自衛隊の中でも超精鋭の集団『第一空挺団』。 航空機からパラシュートで降下し、任務を行う、日本唯一の落下傘部隊です。 活躍の舞台は、車両が到達できない場所での救助活動など。 東日本大震災や台風などの自然災害においても、難しい救助活動にあたっています」
活動の舞台は車両が到達できない場所。まさにこの部隊が速やかに投入されたと思った。ところが、第一空挺団には「出動命令」は出されなかった。精強部隊は何をしていたのか。7日に行われる「訓練事始め」の準備に忙しかったのである。訓練事始めは「消防の出初め式」みたいなもので、見物人を集めて日頃の訓練の成果を披露する新年恒例の行事である。自衛隊の広報活動として重要な任務で、今年は米軍や英国軍など同志国の部隊も参加して「離島の奪還」を想定した訓練を披露した。つまり「災害出動」より「恒例行事」を優先したのだ。
決断できなかった首相
1年前から綿密に準備をしてきた晴れの舞台を成功裡(り)に催したい。米英豪の部隊に参加していただいている。一緒に離島奪還の訓練をすることは中国への威嚇(いかく)になる。準備万端整っている、中止するわけにはいかない――。現場にはそんな事情があったのだろう。
だが、訓練出初め式と被災地救援とどちらが大事か。今しなければならないのはどちらか。極めて初歩的な判断を防衛省は誤った。防衛省の責任ではない。自衛隊の最高統括者は首相だ。
方向が決まると突き進むのが「軍人」。その行動が市民社会のルールと合致しているか判断するのが政治家だ。「文民統制」はそのためにある。「被災地に行ってくれ。出初め式は後にしよう」と言えば、それで決まりだった。この程度の決断ができなかった岸田文雄は首相失格である。
木原稔防衛相が第一空挺団に被災地支援を命じたのは9日である。この間に孤立集落で何人が犠牲になったのか。やっと「車両の到達できない場所での救援活動」が始まる。
危機に力を発揮する人材不在
危機に立つと人の地金が現れる。臆病な人は、目を瞑(つむ)り、耳を塞(ふさ)いでしまう。忙しいと、大事なことは後回しにして、目先のことに没頭する。一種の逃避だ。
岸田さんに頭の中は、自民党の裏金問題だろう。捜査の行方が気になる。党としてどう対応すればいいのか。政治刷新本部は、誰に任すか。
寒さと不安の中で救出を待つ現地の人々への思いはどれほどあるのだろうか。支持率が下がっている今こそ、自分を捨てて被災者に寄り添う姿勢を思い切り見せることが大事ではないだろうか。仮に周りが振り付けても、首相に本気がなければ、臭い芝居に終わるだけだろう。
誰とでも仲良しで、当たり障りのないボンボンのような政治家に首相が務まる時代ではない。自民党はサル山のボス猿選びで首相が決まる「平時の政党」だった。予定調和の時代はそれでよかった。明日は、昨日の続きではなく、「想定外」が日常的に起こる乱世が始まった。時代が政治リーダーを選ぶ。危機に力を発揮する人材はどこにいるのか。
●林氏ら4閣僚の資産公開 派閥裏金事件で就任 1/12
政府は12日、自民党安倍派の政治資金パーティー収入を巡る裏金事件で同派の閣僚が全員交代したことに伴って就任した林芳正官房長官ら4閣僚の資産を公開した。
公開されたのは昨年12月14日の就任時の土地・建物(固定資産税課税標準額)、普通・当座預金を除く預貯金、有価証券など。生計を共にする家族分を含めた総資産は、松本剛明総務相1219万円、坂本哲志農林水産相4959万円、斎藤健経済産業相189万円、林氏1億4780万円だった。
●NTT法巡り通信3社と泥沼対立!米GAFAM対抗「グループ大結集」構想の試練 1/12
週刊ダイヤモンドの特集は「デジタル貧国の覇者 NTT帝国の野望」です。かつて時価総額世界一を誇ったNTTは、復権を掛けたグループ再編の真最中。そこに突如浮上したのが、およそ40年前に制定されたNTT法の廃止論です。NTTは「昭和の呪縛」から脱却する千載一遇のチャンスを掴もうとしている一方で、競合のKDDI、ソフトバンク、楽天グループは激しく反発しています。業界で完全孤立するNTTは、通信領域に侵攻する米GAFAMに対抗できるビジネスモデルを打ち立てて復活を果たすことはできるのでしょうか。
NTT vs 競合3社の泥沼対立! 「NTT法廃止」の奇襲で業界は大混乱
2025年をめどに必要な措置を講じ次第、NTT法を廃止する――。23年12月5日、自民党がまとめた提言で通信業界に激震が走っている。
1985年の旧日本電信電話公社(電電公社)の民営化に合わせて制定されたNTT法とは何か。政府が3分の1以上の株式を保有する義務や外国人就任が禁止されている他、研究成果の普及促進と日本全国にあまねく電話を普及させるという「2つの責務」や、取締役の選任に総務省の認可が必要になるなど、長くNTTの経営を縛る「足かせ」(幹部)になっていた。
NTTにとって自民党の提言は千載一遇のチャンスである。だが、KDDI、ソフトバンク、楽天グループの携帯電話会社楽天モバイルの競合3社は「NTT法廃止」に反対だ。全国のケーブルテレビ会社など総勢181社で結束して徹底抗戦の姿勢を鮮明にしており、日本の通信業界は「NTTとそれ以外」に完全に分断された。
今後のNTT廃止論をめぐる攻防は、総務省の情報通信審議会(総務相の諮問機関)の通信政策特別会合(有識者会議)の場で本格化する見通しだ。
すでに12月22日の有識者会議が示した第一次報告書案では、速やかに実施すべき事項として、研究成果の開示義務の撤廃と外国人役員規制の緩和を盛り込んだ。
今後、「電話」を対象にしたユニバーサルサービスをブロードバンド時代に対応させる議論のほか、NTT東西の業務範囲や外資規制なども対象に激しい議論が続くことになる。
折しもNTTは大規模なグループ改革を推進中だ。
NTT会長の澤田純氏は18年に社長に就任すると、禁断の組織再編に次々と着手。海外事業を統合する新会社の設立、不動産事業・電力事業の再編に続き、20年にはNTTドコモの完全子会社化を完了させた。
澤田氏が乗り出した改革は、22年に社長に就任した島田氏が引き継いで、NTTデータ(現NTTデータグループ)の下で海外事業の再編・統合を強力に進行中だ。そうした改革の中で、突如浮上したNTT法の廃止論だった。
実は、NTT法廃止を仕掛けた自民党の狙いは、国の資産を継承し、かつて時価総額世界一を誇ったNTTの復権だ。
NTTはとうの昔に世界の時価総額ランキング上位をGAFAMと呼ばれる米巨大IT企業に明け渡している。その上、GAFAMが通信領域に続々と参入してNTTの牙城に侵攻している状態だ。
米中対立が激化して地政学リスクが高まる中、NTTが巻き返しの一手として打ち出しているのが、次世代通信基盤「IOWN」である。電子技術に比べて小エネルギーの光技術を活用し、通信や電子デバイスの世界で「ゲームチェンジ」を起こそうとしている。
もっともNTTのグローバル展開はデータセンター事業で頭角を現している程度で、まだまだ存在感は薄い。
NTTは、グループ再編を貫徹するとともに、NTT法廃止の騒動で泥仕合を繰り広げる「通信ムラ」から脱却して、世界で戦えるビジネスモデルを生み出せるかという瀬戸際に立っている。
ダイヤモンドの総力取材で「NTT帝国の野望」に迫る
実は、NTT法をめぐってKDDIら競合が反発し、通信業界が真っ二つに分断する背景には、NTTの組織再編にまつわる長い歴史があるのです。
NTTは電電公社が85年に民営化して発足した特殊会社。当時の政府の狙いは通信事業への競争導入で、民営化の当初から課題になっていたのがNTTの「巨大性」と「独占性」でした。
当時の郵政省(現総務省)の審議会は「NTT分割・分割を提言。これに対して、当時のNTTは「国際競争力が低下する懸念」を訴えて反対。政府与党を巻き込む大論争になりましたが、その議論は民営化から14年でようやく決着します。
それが99年に発足した持ち株会社体制でした。NTT持ち株の下でNTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズに再編成され、ドコモとデータを含むNTTグループが誕生しました。
これによりNTTは資本関係の分離を回避してグループの一体性を維持したものの、当時から政府内部でも「持ち株会社方式での再編成は競争促進の趣旨とは異なる」との意見が根強く、分割賛成派と反対派の間を取った微妙な決着だったのは事実です。
以来、KDDIやソフトバンクをはじめとする競合は、「NTTの一体化」に警戒し続けてきましたが、その均衡を破ったのが18年に社長に就任した澤田会長と、その後を継いだ島田社長です。
20年に完了したドコモの完全民営化もKDDIら競合の激しい反発を受けたのは必然と言えましたが、澤田・島田政権によるグループ再編は今なお強力に進行中です。
そして、通信業界を大混乱に陥れた「NTT法廃止」の提言の取りまとめを主導したのは、岸田政権の経済安全保障政策や半導体戦略に強い影響力を持つ自民党前幹事長の甘利明氏です。
本号では、NTT法を巡って通信業界が分断するに至った水面下の動きを徹底取材しました。立役者の甘利氏に直撃すると共に、NTT法廃止反対の急先鋒に立つソフトバンクの宮川潤一社長のインタビューも掲載しています。
さらには、「大NTT」復活に向けたNTTグループ再編の行方を占うとともに、ドコモ完全子会社から3年が経過した内部の迷走や、33万人のグループを構成する巨大官僚組織の内部にも深層取材で切り込んでいます。
●丸川元五輪担当大臣を直撃 安倍派で複数の閣僚経験者が「中抜き」か 1/12
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件で、安倍派の丸川珠代元オリンピック担当大臣側がおよそ700万円の「中抜き」をしていたことが分かりました。記者の取材に丸川氏は…
記者「丸川さんすみません、TBSテレビなんですけど。政治資金の件について、受け止めよろしいでしょうか?」
記者の質問に一瞬振り向いた自民党の丸川珠代元オリンピック担当大臣。
丸川氏は政治資金問題で揺れる最大派閥・安倍派に所属する議員です。
安倍派は政治資金パーティーの収入の一部のキックバックや、議員側が派閥に納めない「中抜き」がおこなわれ、過去5年間で総額6億円近くが裏金化された疑いがもたれています。
その後の関係者への取材で、「中抜き」は事務総長も務めた下村元文科大臣側におよそ500万円、丸川元オリンピック担当大臣側にもおよそ700万円あることが新たに分かりました。
中抜きはあったのか、丸川氏は…
「(Q.丸川さんご自身はキックバックや裏金、中抜きはあったんでしょうか?)・・・」
JNNの取材に応じず、その場をあとにした丸川氏。JNNは改めて、下村氏、丸川氏側に書面で取材を申し込みましたが、期限までに回答はありませんでした。
こうした中、安倍派では『派閥』と『所属する議員』の収支報告書を近く訂正する方針であることが分かりました。
記者「岸田総理がこれから党幹部らとの面会に臨みます」
きょうも茂木幹事長ら党幹部と相次ぎ会談した岸田総理。裏金事件を受け、新設した「政治刷新本部」での議論の進め方など意見を交わしました。
岸田総理 (周囲に)「政策集団が残るのであれば、派閥というものはやめてもいいんじゃないか」
岸田総理はきのう、派閥から人事権と集金機能を切り離した「政策集団」という形にできないか、検討する考えを周囲に漏らしたということです。
一方、野党は…
立憲民主党 泉健太 代表「(派閥が)巨額の金を集めて裏金の温床になっているということであれば、それは解体すべきですよ。今ある組織を何となく衣替えをするぐらいではですね、私は根本解決にはならない」
自民党内からは政治刷新本部で“国民が納得する結論を得られなければ政権交代にも繋がりかねない”と懸念する声も上がります。
自民党 石破茂 元幹事長「自浄能力というのか、それ無かったんだねと、そうすると頼りないけど、野党にでもやらせてみましょうか、みたいな人が増える可能性は私は結構高いと思っている」
自民党はどう改革していけるのか、正念場を迎えています。
●自民「政治刷新本部」脱派閥と容認派、早々に真っ二つ 始める前から終わり 1/12
自民党安倍派(清和政策研究会)を中心としたパーティー券裏金事件を巡る対策立案のため岸田文雄首相(同党総裁)が立ち上げた政治刷新本部が、開始早々から「脱派閥」と「派閥容認」の2派に真っ二つの状態となっている。
最高顧問で無派閥の菅義偉前首相(衆院2区)が11日の初会合で「派閥を解消しないと国民の信頼を得られない」と明言したことがきっかけ。「無派閥は少数で、孤立無援になる」との首相周辺の楽観論を覆し党内外で「派閥無用論」が広がり始めている。
同本部メンバーの国会議員38人のうち10人が安倍派。無派閥は、批判を受けて自派会長を一時的に下りた岸田首相を含め同数の10人だ。安倍派をはじめとした派閥議員が多数を占めていることで「容認派優勢」の見方があった。しかし、世論の逆風が強いこともあって「会合でも容易に意見表明ができない」(派閥所属のメンバー)状態に陥っているようだ。
もともと安倍派が多数を占めたメンバー構成に党内からは「始める前から終わっている」(閣僚経験者)との批判も相次ぐ。同本部関係者は「青年局や女性局役員経験者からの人選でたまたま安倍派が重なった」と釈明。しかし、学校になぞらえた「校則を守っていない生徒に校則を作らせようとしている」(同)といった疑念が渦巻いている。

 

●自民党への国民の厳しい視線 「見誤ると政権の維持自体が困難」 1/13
自民党の石破茂元幹事長(66)は13日までに自身のブログを更新し、パーティーをめぐり政治資金問題に発展したことを受けて党内に設置された「政治刷新本部」をめぐり、現在の形の派閥について厳しい意見を投げかけた。
石破氏は、党改革を話し合う組織を昨年のうちに設置するよう総務会などで訴えてきたが、執行部は動かなかった。一方、11日に初会合が行われた刷新本部のメンバーには選ばれず、「石破氏抜き」となった顔ぶれについては、野党からも「茶番」(立憲民主党の長妻昭政調会長)との指摘が出ている。
石破氏は「昨日党本部に、総裁を長とし、40名近くの議員で構成される『政治刷新本部』が発足し、議論が開始されたと報道されています」と、報道をもとに言及。「派閥のパーティ券収入の『裏金化』問題は、派閥による自己解明がなされない以上、検察の捜査に委ねる他はありませんが、『政治刷新』と銘打つからには国民の多くが共感・納得する結論を得なければなりませんし、その中核に『派閥の存在』があることは論を俟ちません」と、指摘した。
「政策グループは政策研究や各種選挙の支援等、党本部ではカバーしきれない分野を補う機能を持つべき」としながらも「単なるポストと資金の配分機能に特化しているとすれば、国民のニーズとの乖離は明らかです」とも指摘。1988年に起きたリクルート事件を踏まえ自民党がまとめた「政治改革大綱」が、ほぼ機能しないままここまで来たことを踏まえ「『政治改革大綱』の理念は、二大政党制を前提として、政党の機能を強化するという方向性でした。今回もこの理念を踏襲するのであれば、ポストと資金配分の機能につき、一定の基準のもとに党に一本化することを考えることになるのでしょう」と私見を記した。
また、昨年末、地元(衆院鳥取1区)を回った感触に触れ「永田町の感覚とは大きな差があることを実感します。これは鳥取県のみならず、全国的な現象であるはずで、これを見誤ると政権の維持自体が困難になるように思われます。この現状を決して甘く見てはなりません」と述べ、岸田政権と自民党に向けられた有権者の視線の厳しさを認識すべきとの考えを、あらためて示した。
●「裏金派閥を解消しろ」菅義偉の主張に公明党がエールで「倒閣運動」が起きる 1/13
こうなった以上、派閥は解消しなければならない――。
自民党派閥の裏金事件をめぐる政治刷新本部の初会合を受けて、菅義偉前首相はズバリ言い放った。これに公明党からの「エール」が湧き起こり、岸田文雄首相の思惑が崩れつつある。世論の「派閥解消」の流れが強まれば、2024年度の予算成立後に「菅暫定内閣」に政局が一気に傾く可能性が出てきたのだ。
麻生太郎副総裁、菅前首相を政治刷新本部の最高顧問に据えたものの、派閥については継続議論に。政治資金規正法の罰則強化などで「お茶を濁す」ということが、岸田首相の考え方で、なにやら怪しい雰囲気になってきた。
公明党の山口那津男代表は1月11日に初会合が開催されたことを受け、次のように述べている。
「首相経験者で最高顧問として菅義偉前総理、麻生太郎元総理も入っている。無派閥でも総裁になられたという点で、菅前総理の意見も大いに党内論議の中で生かされていくべきだ」
岸田政権の後見人である麻生副総裁と、政権と距離を置く菅前首相を最高顧問に据える布陣。首相の狙いは「反岸田」も取り込むことで、党全体で政治資金の問題について議論した形をとることだ。すなわち菅氏の言う「派閥解消」は党内コンセンサスを得ることが難しいため、菅氏を立てる形をとりながら、麻生氏に軍配が上がるようにし、政権基盤を安定させることにある。
だが「公明党のエール」の影響もあり、自民党内で無派閥議員を中心に、「派閥解消」の意見が声高に叫ばれ始めた。自民党国会議員でない限り、派閥が「ミニ政党」の役割を果たし、各省庁との折衝、選挙での応援など、様々なメリットがあることは理解できない。
世間的には派閥は「金権政治」の温床であり、解消されるべきだとの意見は圧倒的に強い。派閥が存続するなら「国民一人あたり250円を負担する政党交付金は必要ない」との意見もSNS上にはある。ちなみに自民党には、140億円近い政党交付金が助成される予定だ。
連立を組むパートナーであり、菅氏と近い公明党が「派閥解消」を応援するなら、党内でも派閥解消の火は広がっていく。ましてや世間の後押しもある。小泉進次郎氏、三原じゅん子氏など、目立つ国会議員は菅氏側近であり、声はますます大きくなるだろう。
「派閥解消が大きな論点になり、菅氏陣営が優勢になれば、派閥解消論と岸田政権倒閣運動がセットになる可能性は十分にある」と全国紙政治部デスクは話す。
これだけの裏金スキャンダルが発覚した今、国民は自民党の「改革の本気度」をじっくりと監視している。
●「50代にリスキリングはいらない!」森永卓郎氏が断言、岸田政権の思惑 1/13
2023年12月22日に決まった2024年度予算案で、岸田政権が計2000億円を投じ、特に力を入れているのが、「リスキリング」支援の拡充だ。
リスキリングとは、ビジネスの変化や革新に対応するため、新たな知識やスキルを習得すること(パソナHPより)。大分県内の量販店に勤める三谷さん(54・仮名)は、かつて2度のリスキリング講習(公共職業訓練)を受けたことがあるという。
「当時勤めていた印刷会社が激務で、資格を取ってよりよい環境で働きたいと考え、第二種電気工事士の講習を受けることにしたんです。でも、途中で別業界の仕事が見つかり、やる気がなくなって……。講習後の資格試験には落ちてしまいました」
その後、三谷さんは介護職員初任者研修に挑戦した。
「今度は無事に資格を取得し、知的障害者の介護施設に就職したんですが、『適性がない』と、3カ月で解雇されたのです。“人生逆転”はかなわず、毎月7、8万円の給付金を半年間もらっていたのに、なんの成果も出せませんでした」
そう反省する三谷さんだが、岸田政権は今回、デジタル・グリーンなどの成長分野に未経験の高齢者を受け入れた場合、事業主に最大90万円を支給するという。
「冷静に考えたら、今までほとんどパソコンを使えなかった中高年が、半年勉強したくらいで、IT技術者になれるはずがないわけですよ」
そう憤るのは、経済アナリストの森永卓郎氏(66)だ。
「リスキリングは、中高年の雇用に対する企業の責任放棄です。これまで、日本は終身雇用のなかで、企業が中高年に職業能力の転換教育をしてきました。それが今回、中高年を切りたい会社側に、政府がお墨つきを与えたんです」
会社から放り出されても、中高年向けの求人は、高度な技能が不要な非正規社員の募集が大半だ。
「だから、いちばんいいのはミスをせずに“休まず・遅れず・働かず”で、会社にしがみつくことです。中高年が根本から職種を変えることなんかできるはずがないのに、あたかもできるかのようにメディアが宣伝してるんです」
その名も「NIKKEIリスキリング」というメディアを持つ日本経済新聞は、2023年8月に「リスキリング時代」という特集を連載し、2024年度予算案も「個人の学び直し支援拡充」と評価している。だが、経済評論家の鈴木貴博氏(61)は、全国民が学び直すべきだという風潮に懐疑的だ。
「企業が社員に、専門性の違う技術を身につけさせるには、30代がタイムリミットでしょう。50代に『リスキリングできないと会社に残れない』と言っても、頑張っても身につかず、“地獄”になってしまいかねません」
鈴木氏は、42歳のときに米国公認会計士試験に挑戦した。当時、本業としていた経営戦略コンサルタントと近い分野だったが、資格取得には苦労したという。
「最終的には合格したものの、20代で別の資格を取ったときと比べて、学習能力が低下していることに愕然としました。コンサルと会計士は、たとえば監査プロセスでも、アプローチの仕方がまったく異なります。近い領域だったぶん、それまで身につけた思考をいったん捨てる『アンラーニング』に苦労しました」
リスキリングで成功するのはほんのひと握りだ。
「役職定年になれば、たいてい人財価値や、給与は大きく下がります。私の友人で、メガバンクの支店長まで勤め上げ、資格を取って税理士事務所に転職した男がいますが、私の周囲では数少ない成功事例です。彼は新しいことを勉強し、新規の顧客を自分で取ってくる能力が並外れているから、それができたのだと思います。多くの人にとっては、そこで高望みをしたり、資格取得を目指すなどの無理は、したりしないほうがいいと思います」
なぜなら、政府の意気込みとは裏腹に、会社が50代以降のサラリーマンに求めるリスキリングは、それほど高いものではないからだ。
「若い世代が当たり前にできているスマホなどの活用スキルをきちんと身につけて、これまで部下にやらせていたことを、自分で調べて解決できるようになれば十分ではないでしょうか。2022年から高校の必修科目になった『情報I』の教科書を専門書店で買うのもいいかもしれません」
2015年、野村総合研究所と英オックスフォード大学が発表した共同研究結果は、世間に衝撃を与えた。
2025〜2035年には、日本の労働人口の約49%が就いている職業が、人工知能やロボットが進化し、代替することが可能だという推計結果が得られたというのだ。
だが、焦って新たなスキルを習得する必要はない。
『お金の賢い減らし方』(光文社新書)が9刷とヒット中の経済コラムニスト・大江英樹氏は、新卒で入社した証券会社を定年退職し、一度は再雇用に応じて働き始めた。しかし、「つまらないから」と半年で辞め、起業した経験を持つ。
「サラリーマンは、『自分には特別な能力はない』と考えている人が多いでしょう。しかし現実には、ひとつの部署で10年も仕事を続けていれば、世間から見ると十分にその道のプロです。私は50代を通して、『確定拠出年金』の仕事をしていました。すぐに収益が上がる部署ではなく、“窓際族”だったといっていいでしょう。しかしその10年間が、定年後の資産運用についての執筆や講演をおこなうという、現在の仕事に繋がっているわけです」
では、これまで培ったスキルを生かせるのなら、リスキリングは不要なのか。
「まったく必要ないとは言い切れません。定年後に始めたい仕事があって、そのために身につけておくべきスキルがあれば、やるべきです。私の場合は、サラリーマン時代にはまったくわからなかった帳簿上のお金の動きを把握するスキルが身につきました。しかしそれは、自分がやりたいことのために必要なことで、嫌々ではなく楽しんで習得したものです」
一方、好きでもないスキルを無理に磨く必要はない。
「私は証券会社に入社して以来、長らく地方支店で個人営業の仕事をしてきましたが、あまり好きな仕事ではありませんでした。そのため起業した当初は、営業はエージェントにまかせていました。その後はダイレクトに依頼が来ることが増え、現在も営業はせずに済んでいます」
やりたくない資格やデジタル技術の取得――。そんなリスキリングは、50代にはいらないのだ。
●「小出し」批判の自衛隊派遣…ちぐはぐな災害対応続ける岸田政権 1/13
能登半島地震発生から15日で2週間。岸田文雄首相が「総力を挙げる」とした政府の対応が問われている。家屋倒壊による生き埋め多発で「時間との闘い」となる中、自衛隊や消防は適切に派遣されたのか。司令塔である首相官邸の危機対応は十分だったのか。交通網寸断で陸の孤島となった半島での救助作戦も検証が求められている。
「総力を挙げて」と首相は言うけれど
「総力を挙げて一人でも多くの方を救命、救助できるよう全力で取り組んでほしい」。生存率が急激に下がる「発生72時間」を目前にした4日午前、岸田文雄首相は非常災害対策本部の会議で閣僚らに指示した。
だが、その要を担うはずの自衛隊の派遣を巡っては批判が噴出している。時事通信によると、秋田県の佐竹敬久知事は9日、「対応が少し後手後手だ」と批判。2日目に1000人、3日目に2000人、5日目に5000人と派遣規模を段階的に増やしていることについて「最初から1万人規模の投入が必要だった」「東日本大震災を経験したものとして非常にはがゆい」と訴えた。
部隊を小出し、旧日本軍に例えられ
熊本地震(2016年)では3日目に1万4000人余を投入しており、この違いも批判に拍車をかけた。立憲民主党の泉健太代表は、ガダルカナル島の戦いで部隊を小出しにして敗退を続けた旧日本軍になぞらえ、「逐次投入になっており、遅い」と指摘した。
7日には、陸上自衛隊第1空挺(くうてい)団が千葉・習志野演習場で米英など計8カ国でヘリなどを使う「降下訓練始め」を行い、SNSなどで「こんな時に行わなくても」などと批判を受けた。航空自衛隊は埼玉・入間基地で20日に予定されていた航空祭を、災害派遣活動を理由に中止している。
こんな時に陸自幕僚副長ら靖国集団参拝も判明
陸自を巡っては、小林弘樹陸上幕僚副長(陸将)ら数十人が9日、靖国神社に集団参拝していたことも判明。宗教の礼拝所を部隊で参拝することを禁じた事務次官通達に違反している可能性があるとして、防衛省は調査を始めた。災害対応とは直接関係ないかもしれないが、「総力」を挙げている最中のはずだけにきまりが悪い。
「逐次投入」批判について政府側は、能登半島全体が被災して道路が寸断されるなど陸の孤島となった点を示し、「道路の復旧状況など見ながら受け入れ人数を増やしていった」(木原稔防衛相)と反論する。
東日本大震災では3日目で10万人体制
阪神大震災の対応に当たった陸上自衛隊の冨澤暉(ひかる)・元陸上幕僚長も「災害対応は隊員を送り込んで終わりではない。どこに宿泊するか、水や電源など補給は確保できるか、現地の状況が確認できなければ、二次災害の可能性もあり、大量動員はできない」と理解を示す。元陸自レンジャー隊員で災害出動の経験もある井筒高雄氏も「能登半島はもともと交通アクセスが限られている上、被災で余計にルートの確保が難しくなった。初日に1万人を突っ込むことはできないだろう」と述べる。
一方、防衛ジャーナリストの半田滋氏は「情報収集が先決なのは事実だが、今回は発生直後からヘリが現地に飛んでいた。なぜこんなに人員の増強がモタモタしているのか。後手に回っている」と指摘。岸田首相が現在も被災地に入っていない対応も疑問視。「東日本大震災の時は安全保障政策が弱点と言われていた民主党政権で、それもあってか2日目に5万人、3日目には10万人体制とした。熊本地震も安倍晋三首相のトップダウンが見えた。今回は岸田首相をはじめとする政治家の危機感が感じられない」
「5日の晩に届いたおにぎりの消費期限が5日だった」
「支援をいただいて本当に助かっているが、5日の晩に届いたおにぎりの消費期限が5日だった。これを次の日に被災者に届けるのはいかがなものかと思い非常に悩んだ。ぜひ、消費期限の少し長いものとか、できるだけ早い段階での物資の輸送をお願いしたい」
6日に開かれた石川県の災害対策本部員会議で、大森凡世・能登町長は、混乱する現地の様子をこう訴えた。
「司令塔として機能していない首相官邸」
被災地のニーズを把握し、「プッシュ型」で積極的に支援するとしている首相官邸。だが、政府関係者や被災地を取材する経済ジャーナリスト小倉健一氏は「岸田首相が政府内や地元との調整なく、現場を無視してトップダウンで対応を決めているため、混乱を来している。官邸の司令塔としての役割が機能していない」と指摘する。
小倉氏によると、出所不明の孤立者リストのチェックや、被災地のニーズを把握する「御用聞き部隊」編成などの指示もあったという。「首相は低迷する内閣支持率を何とか持ち直そうとするのに一生懸命。被災者のためではなく、自分や政権のために行動する姿が透ける」
当の岸田首相は「私自身が陣頭指揮を執る」として、地震発生後、連日政府の非常災害対策本部会議に出席。防災服姿で記者会見などにも臨んでいる。
5日には経済団体の新年会に参加
一方、5日には経済団体の新年会に参加。「震災対応に万全を期すため、政府総力を挙げて取り組んでいる」と述べつつ、賃上げや投資、株価の上昇に言及した。
地震対応の遅れも指摘される中だったが、官邸内の雰囲気はどうだったのか。ある自民党関係者は「当初から官邸はピリピリしている。首相はやれることは全力でやるという姿勢だ」と解説。ある官邸関係者も「緊張感を持って、淡々といろんな対応を考えている」と説明する。
半島という特殊な地域、危機管理甘く
だが、政治ジャーナリストの泉宏氏は「半島という特殊な地域での危機管理の認識が甘く、やるべきことが遅きに失している。官邸の危機管理体制が穴だらけであることを国民に印象付けてしまった」と指摘。「政府は危機管理体制を検証し、可及的速やかに『半島有事』の対応策を示すべきだ」と語る。
今回は、消防も発災直後から被災地での救助、救急活動を実施。総務省消防庁の災害対策本部の発表(消防のみの集計)では、12日発表の最新の救助人数は計359人、搬送人数は計1818人。
能登半島での地震「最悪の想定されていなかった」
そもそも「陸の孤島」である能登半島での備えは十分だったのか。神戸大の室崎益輝名誉教授(防災計画)は「能登半島で三つの断層が同時に動く地震が起こる最悪の想定が認識されていなかった」と指摘する。
半島や山岳部で救助隊がすぐ到着できない地域は他にもある。「本来は発生直後から大量の人員を派遣しないといけないが、直後には深刻な被害状況がつかめず、初動が遅れたことは問題だ。避難所での資材の備蓄なども想定が十分ではなく、阪神大震災や東日本大震災などの教訓が学ばれていなかった」として、こう戒める。
「国も地方自治体も油断があったのかもしれないが、陸の孤島で大災害が起きた際の対応が今後問われる」
デスクメモ
阪神大震災直後、市役所の隅で毛布をかぶり、ぼうぜんとしていた消防隊員が忘れられない。現在は消防も警察も自衛隊も応援態勢が整い、救助機材も充実。だが、今回は交通の途絶に年始や降雪の悪条件も加わっている。現場の人々を支える上層部の判断がこれまで以上に問われる。 
●岸田政権、台湾の平和と安定重視 中国動向念頭 1/13
岸田政権は、13日の台湾総統選で与党、民主進歩党(民進党)の頼清徳副総統が勝利した結果を踏まえ、台湾海峡の平和と安定の重要性を引き続き重視する方針だ。背景には、頼氏を独立派と見なす中国が軍事的圧力を強めかねないとの懸念がある。日台非政府間の実務関係を維持し、先端半導体分野などで協力と交流を深めていく。
上川陽子外相は頼氏勝利を受け祝意を表する談話を発表。日本と台湾は基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有しているとして「極めて重要なパートナーであり、大切な友人だ」と強調した。
頼氏は2022年7月、銃撃事件で死去した安倍晋三元首相の葬儀に参列。能登半島地震の発生直後に支援を表明しており、日本はさらなる関係発展を狙う。一方、台湾統一を目指す中国が頼氏への警戒感を強めるのは必至だ。
米下院議長が22年8月に訪台後、中国は台湾周辺で大規模軍事演習を行い、日本の排他的経済水域(EEZ)に弾道ミサイル5発を落下させた。軍備増強を続ける中国の動向が、日本の安全保障に影響するとの見方が広がっている。
●道路デコボコ液状化被害 地盤が横方向に最大3m移動か 能登半島地震 1/13
石川県の内灘町では、液状化にともなって地盤が横方向に最大3mほどずれ動く「側方流動」が起きていたことが明らかになった。
1月1日に、最大震度7を観測した内灘町で撮られた防犯カメラの映像では、大きな揺れのあと、アスファルトの道路に亀裂が入り、いたるところから大量の泥水があふれ出していた。
地震の強い揺れで、土壌の結びつきが弱くなり、砂や水が噴き出す「液状化」とみられる。
内灘町では、傾いて倒れた電柱や、盛り上がり割れたアスファルトが確認できた。
町では、道路も波打つように凸凹ができ、かろうじて車が通れる状態。
1月6日から8日にかけて、現地を調査した東京電機大学の安田進名誉教授は、次のように指摘する。
東京電機大学(地盤工学)・安田進名誉教授「道路も1mくらい盛り上がっていたり、普通の液状化の被害と全然違う。液状化にともなって『側方流動』が起きた」
「側方流動」は、液状化にともない、傾斜に沿って地盤が横方向に動く現象のこと。
安田氏は地割れの大きさなどから、地盤の移動距離が3m前後に及んだと推定している。
東京電機大学(地盤工学)・安田進名誉教授「内灘町には砂丘がある。加えて(土地が)少し傾いているから、液状化するとズルズルと流れ出してくる」
そのうえで、今後、国や自治体の支援が必要と指摘する。
東京電機大学(地盤工学)・安田進名誉教授「(傾いた家の)中で生活していると、目まいがしたり、吐き気がしたり。自治体とか国と一緒に(なって)再建が必要」
●政治刷新本部の安倍派9議員側、還流やプールで数百万〜数十万円裏金化 1/13
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件で、岸田首相(党総裁)が設置した「政治刷新本部」に「清和政策研究会」(安倍派)から加わった9人の国会議員側が、派閥からのキックバック(還流)などによりパーティー収入の一部を政治資金収支報告書に記載していない疑いのあることがわかった。同本部は派閥のあり方や政治資金の透明性を高める方策を検討するために設置され、メンバー38人のうち安倍派所属議員は10人。
同派では2022年までの5年間に約100人の議員側が還流やプールにより総額5億7000万円超を裏金化した疑いがあり、うち約80人は現在の所属議員であることが判明している。
関係者によると、同派のメンバー10人のうち、本部長代理の岡田直樹・前地方創生相、副本部長の野上浩太郎・元農相と、幹事の佐々木紀、上野通子、太田房江、松川るい、吉川有美、事務局次長の藤原崇、高橋はるみの7氏は、5年間で数百万〜数十万円を関連政治団体の収支報告書に記載しなかった疑いがあるという。
東京地検特捜部は同派の会計責任者を政治資金規正法違反で立件する方針。派閥幹部の関与の有無について詰めの捜査を進めており、近く最終判断する見通し。
●政治資金巡り発足「政治刷新本部」 安倍派10人中9人不記載か 1/13
自民党の政治資金を巡る事件を受けて発足した「政治刷新本部」を巡り、参加する安倍派の議員10人のうち9人が、記載のないキックバックなどを受けていたとみられることが分かりました。
安倍派ではパーティー券の収入が議員側にキックバックされ、収支報告書に記載されていない疑いがあり、自民党は再発防止に向けて「政治刷新本部」を発足させています。
その後の関係者への取材で、刷新本部に参加している安倍派の議員10人のうち、岡田直樹前地方創生担当大臣、野上浩太郎元農林水産大臣ら9人が、記載のないキックバックなどを受けていたとみられることが分かりました。
おととしまでの5年間で、多い議員で数百万円に上るということです。
岸田総理大臣は、この9人を変えずに議論する考えを示しました。
岸田総理大臣「自民党が一致結束して、信頼回復のための議論を行うにあたって、特定の人間を排除するというような排除の論理は適切ではない」
●パー券裏金疑惑で安倍派幹部立件見送り報道に「検察仕事しろ」怒り噴出 1/13
自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、ノルマを超過したパーティー券の売り上げを派閥の政治資金収支報告書に記載しなかったとして政治資金規正法違反容疑で任意聴取された最大派閥・安倍派(清和政策研究会)の歴代事務総長ら幹部議員について、東京地検特捜部が立件を断念する方向で調整していると13日、複数のメディアが報じた。
ネット上では、これまで「検察がんばれ」などの激励の言葉で捜査の行方を見守ってきたが、一転し「検察仕事しろ」「東京地検手を抜くな」などの関連ワードがトレンド入りし、「この国は法治国家じゃなかったのか? 一体いつから犯罪放置国家になったんだ?」などの憤りがあふれた。
さらに「納税の義務」がトレンド入り。度重なる裏金疑惑報道に怒りを募らせる市民は「政治家が税金払わなくて良いということは納税の義務が無いということ。ということは日本国民ではないということ。日本国民でないなら政治家であってはいけないよね」「国民には納税の義務があります。怠れば督促状、差し押さえなど問答無用に晒されます。では政治家の皆さんは一体何と言う民なのですか?」などの怒りが噴出。
このほかにも「東京地検特捜部が納税の義務を無視しました。納税せず脱税でも逮捕されないようです。まさか、一般国民だけ逮捕するなんてありえないよね」「国民の義務? 同じ上級『国民』が脱税してるんだからいいよね?」など強烈な皮肉まじりの厳しい声が飛びかった。

 

●岸田首相「今月中に1000億円以上の予備費の使用を決定」初の被災地視察 1/14
岸田首相は14日、能登半島地震の被災地を視察した後、石川・金沢市で記者団の取材に対し、1月中に1000億円以上の予備費の使用を決定との方針を表明した。
地震発生後、初めて被災地入りした岸田首相は、輪島市と珠洲市で避難所を視察したほか、現地で活動する自衛隊員などを激励。
また、石川県庁で馳浩知事らと意見交換した上で、記者団の取材に応じた。
この中で岸田首相は、「避難所を視察し厳しい避難生活の状況を確認した。家屋倒壊、市街地の火災跡、大規模な土砂崩れ、凄まじい地震の爪痕を目の当たりにするとともに、被災者から大変な苦労をされているという声、不安の声を直接、聞いた」と説明し、「被害の甚大さを実感した」と述べた。
その上で、「被災者のためにできることは全てやるとの決意のもとで、現下の震災対応、被災者の生活と生業の再建支援に全力で、取り組んでいく」と強調した。
そして、今年度予算で残っている予備費について、1月中に「1000億円を上回る規模」で使用についての決定を行うことを明らかにした。
予備費の使用決定は、9日に続く「第2弾」との位置づけ。
●安倍派の萩生田氏「おわび」自身の責任は言及せず 八王子市長選で 1/14
自民党安倍派で「5人衆」と呼ばれる有力幹部の萩生田光一・前政調会長は14日、選挙地盤の東京都八王子市で同日告示された市長選の候補者の出陣式に出席し、「政治資金パーティーの会計処理をめぐって政治不信を招くことになり、大変なご心配をおかけしていることを改めておわび申し上げたい」と述べた。派閥による裏金作りの詳細や、自らの責任には言及しなかった。
萩生田氏は自民党総裁の岸田文雄首相による政権中枢からの安倍派の一掃方針を受けて、昨年末、党三役の政調会長を辞任した。自らもパーティー収入の一部について裏金としてキックバック(還流)を受けた疑惑があり、東京地検特捜部が任意で事情聴取したことが関係者への取材でわかっている。
茂木敏充幹事長も出陣式に出席し、「国民に疑念が広がっていることを深刻に受け止め、反省しなければいけない」と述べ、「(自民の)総裁直属機関の(政治)刷新本部のもとで、再発防止策をとっていく」と語った。
刷新本部をめぐっては、安倍派からメンバー入りした10人のうち9人がパーティー収入の一部を裏金にしていた疑いがあり、同本部の正当性が問われる事態となっている。
●派閥の政治資金パーティーめぐる事件で塩崎議員「自浄能力問われている」 1/14
自民党・安倍派の塩崎彰久衆議院議員が、14日、地元の愛媛県松山市内で支援者集会を開き、派閥の政治資金パーティーをめぐる事件を受け「自民党の自浄能力が問われている」と述べました。
塩崎議員は、支援者らを招いた「新春の集い」で、能登半島地震の募金活動を行っていた際に「こんな時に自民党は何をやっているんだ」など厳しい声を掛けられる場面があったと振り返り、派閥の政治資金パーティーをめぐる事件について「党の自浄能力が問われている」と述べました。
この問題をめぐりあいテレビが先月、愛媛県選出の自民党・安倍派の国会議員3人に行ったアンケート調査に対して、塩崎議員は、政治資金について「適正に処理し、報告している」と回答していて、また、自身のSNSでも「私はキックバックなど、そういったものをいただいたことはございません」と明言しています。
塩崎議員は、14日の集会でも「私自身は今回一切キックバックを頂いておりません」と改めて強調。その上で「私個人がどうこうという、そういう次元の話ではもう既にないと思っている」と述べ、支援者に対し「地域でも厳しい声にさらされていることについて、本当に申し訳なく、心からお詫び申し上げたい」と謝罪しました。
また、集会で祝辞を述べた愛媛県選出で自民党安倍派の山本順三参議院議員は、派閥の政治資金パーティーをめぐる事件に触れ、「派閥というのは、どの分野でもありますよね。それを否定するというよりも、その派閥を解消する意味はどこにあるのか、何をすべきなのか、従来の従来の古い政治家ではなく、新しい政治家がリーダーシップを取って頑張って頂きたい」「皆さんの信頼を取り戻すためには、若い塩崎さんを中心として、新しい発想での改革を進めていかなければならない」と呼び掛けました。
山本議員は、派閥側からのキックバックについて問う、あいテレビのアンケート調査に対して「刑事告発されている件なので、慎重に事実関係を調査・確認し、適切に対応する」回答しています。
●自民党パーティー券捜査に「終結へ」報道 検察の“忖度”に集まる批判 1/14
通常国会召集日の1月26日が迫るなか、東京地検特捜部の「派閥パーティー裏金・キックバック事件」の捜査は、終結を視野に入れ始めたようだ。
これまでに、自民党「清和政策研究会」(安倍派)に所属していた衆議院議員の池田佳隆容疑者(57)と政策秘書の柿沼和宏容疑者(45)が、2022年までの5年間に、政治資金パーティーのキックバック4800万円あまりを政治資金収支報告書に記載しなかったとして、1月7日に政治資金規正法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕されている。
今後、新たな逮捕者が出るのかが焦点になっていたが、共同通信は1月12日に《安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)の会計責任者を立件する方針を固めたことが分かった》《受領した裏金が高額とされる同派の大野泰正参院議員(岐阜選挙区)、谷川弥一衆院議員(長崎3区)の立件に向け、詰めの捜査を進めている》と報じたのみで、身柄拘束となる逮捕者は出ないようである。
その背景について、日本経済新聞は1月14日に《(安倍派の)幹部らはパーティー収入を議員へ還流させる仕組みについて「報告を受ける立場にない」と説明。会計責任者との共謀を問うにはハードルがあり、幹部らの立件は見送られる公算が大きい》と報じている。
「今回の巨額裏金事件では国民の怒りが大きく、特捜部への期待も高まっていましたが、安倍派の事務総長経験者や『5人衆』と呼ばれる幹部たちの逮捕・立件には及びそうもありません。池田議員の場合は、金の出し入れを細かく指示したり、証拠隠滅の疑いもあったりしたことから逮捕になりましたが、ほかの議員は不記載への関与が少なかったということです。大野議員と谷川議員は、金額が4000万円超と突出しているので立件ということになりそうです」(事件担当記者)
検察への批判は高まっている。SNSには《安倍派5人衆 立件見送りって?? 会計責任者が独断で裏金作る訳ないでしょ!》《検察仕事しろ!! 検察忖度するな!検察全員逮捕しろ!!》《東京地検特捜部って、もう存在価値なくない? 弱い者は捕まえて、強い者には忖度して捕まえない》《検察特捜部ほんといらんわ。税金無駄遣いしてるだけで結果的には自民党と同じ。もう解散して》《デキレースだったのか?! 期待が大きかっただけに失望です》などの声が圧倒的だった。
泉房穂前明石市長も、自身のXに《『特捜部は、客観的な証拠が乏しく、共謀を問うのは難しいとみている』とのことだが、一般国民が相手だと、たとえ客観的な証拠が乏しくても、状況証拠の積み重ねで、あたりまえのように共謀を問うて立件もしている。特捜部よ、国民を騙すようなウソをついてはいけない・・・》と憤懣を書き込んでいる。
一方、今回も会計責任者になった秘書が、詰め腹を切らされている。「秘書が会計責任者になるのは『親分のためなら私が泥をかぶります』という、昔からの慣習。ボスである議員から頼まれたら断れませんから。特別手当? そんなもの、ありませんよ」と、ある秘書経験者は苦笑する。
こうして「秘書がやった」と逃れることが常態化している現状に、公明党は、会計責任者が有罪になったら議員失職する「連座制」の導入を検討しているが、橋下徹元大阪市長は《連座制という面倒くさいことをせずに、政治家が会計責任者になればいいだけ。これだけで永田町がシャキッとする》と自身のXで訴えている。自浄作用を期待したいところだが……。
●宮沢博行前防衛副大臣側が3年間で110万円余派閥に納入せず 1/14
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐり、安倍派に所属する複数の議員側が販売ノルマを超えて集めた分のパーティー収入を、派閥側に納入していないケースが確認された問題で、宮沢博行前防衛副大臣側が、おととしまでの3年間で110万円あまりを納入せず、手元に残していたことが関係者への取材でわかりました。
自民党の安倍派「清和政策研究会」では、複数の所属議員側が、販売ノルマを超えて集めた分のパーティー収入を、派閥側に納入していないケースがあることが明らかになっています。
この問題をめぐり、宮沢前防衛副大臣側が、おととしまでの3年間であわせて114万円を派閥側に納入せず、手元に残していたことが関係者への取材でわかりました。
宮沢前防衛副大臣は12月、国会内で記者団に対し、販売ノルマを超えて集めた分のキックバックを派閥から受けたことを認めていましたが、関係者によりますと、キックバックを受けたのは、2020年とよくとしの2年間であわせて18万円だったということです。
手元に残した分とキックバック分をあわせた132万円は、宮沢前防衛副大臣が代表を務める資金管理団体「宮柱会」の収支報告書に記載されておらず、関係者によりますと、宮沢前防衛副大臣側は全額を安倍派からの寄付として訂正する方向で派閥との調整を進めているということです。
宮沢前防衛副大臣は、NHKの取材に対し、事実関係を認めた上で、「ほかの議員からの情報収集で、派閥からのキックバックの手続きを省略する形で、ノルマ分だけ納めて手元に残すやり方があると聞き、そのやり方にのっとった。収支報告書に記載しなくていいといわれていたが、まずいなという感じはしていた。手元に残した分もキックバックと同じ形で訂正する予定だ」と述べました。
その上で、裏金化された資金を何に使ったのかについては、「政治的な活動として懇親会などに使ったと認識しているが、もう少し精査させていただきたい」と述べました。
●安倍派幹部らの立件見送り検討 政治資金巡り特捜部 1/14
自民党の派閥の政治資金を巡る事件で、東京地検特捜部が安倍派の幹部らの立件を見送る方向で検討しているとみられることが分かりました。
安倍派では、パーティー券の販売ノルマを超えた収入が所属議員側にキックバックされ、派閥の収支報告書に記載されていない疑いがあります。
その後の関係者への取材で、特捜部が安倍派の幹部らの立件を見送る方向で検討しているとみられることが分かりました。
幹部らは任意聴取に対し、キックバックの不記載について「派閥の会長と会計責任者で決めていた」と説明し、自らの関与を否定していたということです。
特捜部は会計責任者について、在宅での立件に向けて詰めの捜査をしているとみられます。
●輪島市の「朝市通り」で大規模捜索続く 能登半島地震から13日目 1/14
能登半島地震から13日目。石川・輪島市の朝市通りでは、安否不明者の大規模捜索が続いている。
地震後の火災でおよそ200棟が焼失した輪島市の朝市通りでは、13日も雪が降る中、行方不明者の手がかりを探す一斉捜索が行われた。
輪島朝市組合・中道肇理事「行方不明の方を捜すような形は、そのまま続けてほしいと思います。輪島の朝市という灯を消さないように何とかできないものか」
当初、捜索の予定は13日までだったが、14日以降も続けるという。
石川県内の死者は220人、安否不明者は26人となっている。
一方、大学入学共通テストが全国で始まり、石川県では、地震で被災した受験生などおよそ5,200人が試験に臨んでいる。
受験生「地震は不安だったんですけど、それをみんな乗り越えて一緒に頑張って勉強してきたので」
いまだに2万人余りが避難生活を続ける中、避難所となっている学校の再開の見通しが立っていない。
被災地では、中学生を県南部へ一時的に集団避難させる方向で、輪島市では、生徒およそ400人のうち250人の保護者が同意し、珠洲市と能登町でも検討されている。
●「米台連携」継続歓迎 日本政府、中国の動き懸念―台湾総統選・民進党勝利 1/14
台湾総統選で民進党の頼清徳副総統が勝利したことを受け、日本政府や自民党内では13日、従来の米台連携路線が続くとみて歓迎の声が上がった。国民党などが政権を奪取した場合、中国に対する姿勢で日米との足並みが乱れる懸念があったためだ。一方で、中国が台湾への圧力を強めるとして警戒感も広がった。
上川陽子外相は13日、「台湾は基本的価値を共有する極めて重要なパートナーだ。協力と交流の深化を図る」とした上で「台湾を巡る問題が対話により平和的に解決されることを期待する」との談話を出した。
政府は総統選について「結果次第で東アジア情勢に与える影響は相当大きい」(首相官邸幹部)と注目。岸田文雄首相は2024年の重要な海外選挙の一つに挙げ、「これからの10年を決める分かれ道になる」と繰り返し強調してきた。
頼氏は親日的な立場で知られ、たびたび来日している。22年7月には安倍晋三元首相の葬儀に参列。日台関係に関わる自民の閣僚経験者は取材に「台湾との絆がますます強固になる」と述べた。
「一つの中国」を掲げる中国の立場に配慮する政府だが、基本的に「親中」とされる国民党の政権復帰は避けたかったのが本音だ。蔡英文政権の対中政策継承を掲げた頼氏の姿勢には好感が広がっており、自民ベテランは「価値観が共通する日米との連携を通じ、中国の行動を抑える路線を取るだろう」と語った。
自民党は昨年8月に麻生太郎副総裁が台湾を訪れて会談するなど頼氏との関係を深めてきた。この1年余り、萩生田光一前政調会長らも相次いで訪台。今後も関係強化を図る考えだ。
民進党政権の継続に関しては、台湾海峡情勢の一段の悪化を危ぶむ声も上がる。蔡政権下で軍事的圧力を強めてきた中国について、日本政府関係者は「軍事活動の範囲を広げるだろう。緊張を高める動きに出るかもしれない」と予想した。
台湾有事への対処に関し、麻生氏は10日、「日本政府は存立危機事態と判断する可能性がある」と述べ、安全保障関連法に基づく集団的自衛権の行使に言及した。政府はこれまで以上に情勢変化に神経をとがらせることになりそうだ。
首相は就任以来、米国をはじめ各国首脳と「台湾海峡の平和と安定の重要性」を確認。台湾統一の野心を隠さない習近平政権をけん制してきた。引き続き国際社会に同調を呼び掛ける方針だ。
●岸田首相は被災地を視察すべきだが、国会議員は視察してはいけない!? 1/14
国会議員が能登半島地震の被災地を視察することの是非をめぐって論争が続いている。れいわ新選組の山本太郎代表が過去の被災地支援で親交を深めたNPOと連携して能登半島に入ったことが発端だ。日本維新の会の音喜多駿参院議員が山本代表を「迷惑系国会議員!」と批判し、賛否両論が沸騰した。
さらに、自民、公明、立憲、維新、国民、共産の与野党6党首が「被災地視察の自粛」を申し合わせたことへも賛否両論が相次いでいる。
そもそも国会議員の「視察」は、党職員や秘書を同伴させ、地元自治体の職員らを呼びつけるかたちで行うものであるという印象が広く根付いている。だからこそ、「被災直後の大変な時期に視察に行くなんて」「政治家の自己アピールのために被災地支援を邪魔するな」という議論が出てくるのだろう。
このように形骸化した国会議員の視察のあり方は根本的に改めなければならない。
しかし、山本代表には何度も被災地支援を重ねてきた実績があり、従来の「国会議員の視察」と同列に論じるべきではない。まずは現地に入ってともに体を動かし、被災した人々や支援する人々に寄り添い、励ますことに第一の目的がある。そのうえで国会議員として現地の空気を肌で感じ、問題点を把握し、国会質問や政府への提言につなげるという「本来あるべき視察」といっていい。
実際に現地では山本代表の訪問を歓迎する声が多いようだ。実情を無視した山本批判が政界やマスコミ界から飛び出していることには呆れるほかない。
そのうえに「国会議員は視察すべきではないが、首相や知事は視察していい」という言説まで飛び交っている現状にも私は驚愕した。
行政は不都合な事実を隠す。それを監視するのが野党やジャーナリズムの大きな役割だ。
今回の震災でも、志賀原発をめぐって当初発表とは異なる内容が次々に明らかになり、不信感が高まっている。災害支援の遅れも指摘されているが、実態がなかなか伝わってこない。
行政が隠蔽したり伏せたりする「不都合な事実」を知るには、野党やジャーナリストが現地に入り、自分の目で直視し、自分の耳で被災者から話を聞くほかない。
それなのに野党党首が与党党首の視察自粛で合意するのは責任放棄ではないか。内閣支持率の低迷にあえぐ岸田首相や地震が発生した元旦に都内にいた馳浩・石川県知事が率いる行政当局の発表を鵜呑みにし、国会質問や政府への提言などできるのか。
戦争や大震災・大事件の時は、従来に増して、国民の基本的人権が侵害される恐れが高まる。そういう時こそ野党やジャーナリズムは行政の発表を鵜呑みにすることなく、自ら現地調査に入り、行政が公正に行われるように監視する役割が求められる。
私はX (旧ツイッター)では政治家や著名人ら「強者」以外の批判は避けるようにしているが、さすがに「議会政治」が専門と公表して「25歳からの国会」という入門書を出している平河エリ氏の以下の投稿には異議を唱える必要性を感じて投稿したところ、大きな反響があった。
論争が続く中、さらに呆れたのは、立憲の泉健太代表の発信だ。
泉代表は「被災地支援の自粛」で合意した当事者である。ところが、岸田首相の被災地視察が決まると「総理は行っていいですよって我々は言ってます。総理まで行くなとは言っていません」と記者会見で発言。「災害の対策を指揮する中心人物ですから、空からの視察であれ、降り立てるところに降り立つということはできるわけですから、総理が躊躇する必要はないと考えています。避難所に行って、避難所の現状を確かめてくるのは極めて大事。1日も早く行っていただきたい」とまで言ってのけたのだ。
国会議員と違って首相は視察していいーーこれは、先述した平河エリ氏とまったく同じ認識である。
これでは野党第一党に政権監視の役割は期待できない。自公政権との対決姿勢が強まらないのも、政権交代の機運が高まらないのもうなづける。
立憲の国会議員たちは、泉代表の認識を是とするのか。野党としての存在意義そのものが問われている。
●裏金廃止に池田容疑者“反対” 自民・安倍派幹部にキックバック継続を要求 1/14
自民党・安倍派の政治資金パーティー収入の一部が裏金化された事件で、衆院議員の池田佳隆容疑者(57)が、キックバックの廃止が一度決まったあとに、派閥の幹部に継続するよう要求していたことがわかった。
池田佳隆容疑者(57)は会計責任者と共謀し、2022年までの5年間で、派閥からのキックバックおよそ4,800万円を収支報告書に記載せず、うその収入を記した疑いが持たれている。
安倍派では2022年、キックバックを取りやめる方針が決まったが、池田容疑者が、幹部にキックバックを継続するよう要求していたことがわかった。
その後、幹部らが協議し、廃止の方針が撤回されることになったという。
東京地検特捜部は、事務総長ら幹部からもキックバック継続の経緯についてくわしく聞いていて、早ければ来週にも告発された議員らとあわせて刑事処分を判断するものとみられる。
●韓国・釜山市が能登半島地震に10万ドル支援=韓国ネットは賛否 1/14
2024年1月12日、韓国・釜山日報は「M7.6の強い地震で数百名の死者が発生した日本に、釜山市が10万ドル(約1450万円)を支援する」と報じた。
釜山市は1976年に下関市と姉妹友好都市提携を結んで以来、福岡市と姉妹都市、大阪市と友好協力都市、長崎県と友好交流提携を結び、日本との交流を続けてきた。「地震による被害が早期に収拾され日本国民が平穏な日常を取り戻すことを願い、人道的支援が必要だと判断し救援金を送ることを決めた」と説明している。
市はこれまでにも、08年の中国・四川大地震に1億ウォン、13年のフィリピン台風に10万ドル、16年のエクアドル地震に5万ドル、20年の中国新型コロナに救援品、22年フィリピン台風とウクライナ戦争に各10万ドル、23年のトルコ・シリア地震に10万ドルを支援している。
パク・ヒョンジュン市長は「予想外の地震で被害を受けた犠牲者と遺族に哀悼の意を伝えるとともに、被災地の住民が一日も早く平穏な日常を取り戻すことを願います」とコメントしている。
この記事に、韓国のネットユーザーからは「いいことをしたよ。残酷な地震被害を受けた日本。これからは互いに助け合っていくべきだ」「ひとごとではない。近隣国の地震。周りが支援すべきだ」「両国関係にとってプラスになるといいいね」などの声が寄せられている。
一方で、「釜山にも暮らしに困っている人はいるのに」「釜山市はお金が有り余ってるのか?」「税金の無駄遣いだ」といった否定的なコメントも見られた。 
●内閣支持率が27%に回復も、能登半島地震の岸田首相の指導力に不満の声 1/14
共同通信社が13、14両日に実施した全国電話世論調査によると、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を踏まえ、政治資金規正法の厳格化や厳罰化などの法改正が「必要だ」は86・6%に上った。能登半島地震を巡り、岸田文雄首相が指導力を「十分に発揮しているとは思わない」が61・6%。地震の政府対応に関し「どちらかといえば」を含め「迅速だった」が54・6%、「遅かった」が43・8%だった。
内閣支持率は27・3%となり、岸田内閣として最低だった前回調査(昨年12月16、17両日)の22・3%を5・0ポイント上回ったが、3回連続の20%台。不支持率は前回調査から7・9ポイント減少したものの57・5%と高い水準で、首相は依然として厳しい政権運営が続きそうだ。
自民派閥について「解消するべきだ」と「どちらかといえば解消するべきだ」は合わせて80・2%に達した。裏金事件を受け政治刷新本部を新設した自民の再発防止の対応について「期待しない」は75・1%で「期待する」は22・4%にとどまった。
春闘での物価上昇を上回る賃上げは「実現しない」が85・0%に対し「実現する」は11・4%で、悲観的な見方が大勢を占めた。首相の在任期間に関し「できるだけ早く辞めてほしい」は33・4%、「9月の党総裁任期まで続けてほしい」49・7%、「次の総裁選で再選し、続けてほしい」12・2%だった。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、代執行に基づき工事に着手した政府の姿勢を「支持しない」が53・3%で「支持する」37・2%を上回った。
政党支持率は自民党33・3%(前回26・0%)、立憲民主党8・1%(9・3%)、日本維新の会8・8%(12・0%)、公明党4・4%(3・0%)、共産党3・9%(3・3%)、国民民主党4・4%(5・9%)、教育無償化を実現する会0・6%(1・8%)、れいわ新選組3・3%(3・2%)、社民党0・9%(1・3%)、みんなでつくる党0・3%(0・3%)、参政党1・3%(1・4%)。「支持する政党はない」とした無党派層は28・2%(29・1%)だった。
●岸田首相が能登半島地震の被災地入り 自衛隊員らを激励 避難所を視察へ 1/14
岸田首相は14日、能登半島地震で大きな被害を受けた石川・輪島市に到着し、安否不明者の捜索などに従事する自衛隊員らを激励した。
岸田首相の被災地入りは、地震発生後、初めて。
午前10時半過ぎ、航空自衛隊の輪島分屯基地にヘリコプターで到着し、現地で活動する自衛隊・警察・消防などの隊員らと面会した。
岸田首相は隊員らに対し、「令和の時代に入って最大級ともいわれる災害の発災時から現場に駆けつけ、救命・救助活動に全力であたってもらった」として、「心からの敬意と感謝」を伝えた。
その上で、「引き続き安否不明な方々の安全を願う家族の願いを受け止めて、安否不明者の捜索にあたってほしい」と述べた。
また、「過酷な環境の中でがんばってもらっている」と労い、「自身が被災された方々も多くいると思う」と気遣った。
そして、「厳しい環境だが、引き続き多くの被災者に寄り添い、心を通わせ、不安や将来への希望に応えてほしいと心からお願いする」と述べ、隊員一人一人の手をとった。
岸田首相は、この後、輪島市と珠洲市の避難所を視察するほか、金沢市では、馳知事ら自治体の関係者と、今後の対応などについて意見交換する予定。
岸田首相としては、視察を通じて現地のニーズを把握し、復旧・復興に向けた被災者支援の政策に反映させたい考え。
●安倍派の刷新本部メンバー、10人中9人が週内にも資金収支報告書を修正へ 1/14
自民党安倍派(清和政策研究会)を中心としたパーティー券裏金事件を受けて、岸田文雄首相(同党総裁)が党内に設置した政治刷新本部の安倍派メンバー10人のうち9人が、週内にも政治資金収支報告書の内容の修正を行う見通しであることが14日、同党関係者の話で分かった。同事件収拾のための対応という。  
刷新本部への安倍派議員の参加には党内外から批判が高まっていた。メンバー全38議員の中で無派閥と同数の10人を占めている上にそのうち9人までもが事件に連座した形となり、本部長を務め人選を行った首相の責任が問われる。求心力の低下も必至だ。
首相は「特定の人間を排除するのは適切ではない」(13日の取材対応)とメンバー更迭や入れ替えを否定し、党内からは「正気なのか」(幹部)と絶句も漏れた。「風紀を乱している生徒を風紀委員に起用」「校則を守れない人に校則をつくらせる」と冗談まじりだった党内批判も「泥棒に防犯策の指南を受けるようなものだ」(閣僚経験者)と厳しさを増すばかりだ。

 

●安倍派幹部立件見送りの検討に玉川徹氏「国民と検察で、かい離がある」 1/15
コメンテーターの玉川徹氏が15日、「モーニングショー」に出演した。
番組では自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件で、東京地検特捜部が安倍派の幹部らの立件の見送りを検討していることを取り上げた。大野泰正参院議員(約5000万円)、逮捕された池田佳隆衆院議員(4826万円)、谷川弥一衆院議員(約4000万円)、世耕弘成前参院幹事長(1000万円超)、松野博一前官房長官(1000万円超)、高木毅前国対委員長(1000万円超)、安倍派座長の塩谷立氏(数百万円)、萩生田光一前政調会長(数百万円)、西村康稔前経産大臣(約100万円)らがキックバック不記載の疑惑が持たれている。
玉川氏は「国民が感じてる部分と検察でかい離があると僕は思います。すでに1人逮捕されてるわけです。大野議員、谷川議員に関しては立件を視野に入れて進めているという報道もあります。1000万円超のキックバックを受けている中に幹部が入ってる。これを立件できない理由が、金額での線引きになるのかもしれないですけど。これは納得できないと思う」と指摘した。
続けて「検察はちゃんと会見して理由を言えと。例えば『4000万円以上はやりました。それ以下はやりませんでした』って一体なんだ。国民から検察に対して言っていいと思う。我々の感覚からすれば1000万円も4000万円も高額です。それを勝手に4000万円で線を引くということであれば、これは検察は信用できない。そのために検察審査会があるから、そっちだという話に進んでいくと思います」と憤った。
●安倍派8000万円裏金キックバック問題、誰が一番悪いのか… 1/15
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件は、最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)の現職議員が逮捕されるという新たな局面に突入した。裏金事件を捜査する東京地検特捜部は安倍派が議員側にパーティー券収入の一部をキックバック(還流)していた経緯やカネの流れを調べているが、注目されるのは誰が“本丸”なのかだ。
自民党内に「やはりロックオンされているのは事務総長経験者ではないか」との見方が広がる中、政界事情に通じる経済アナリストの佐藤健太氏は「安倍晋三元首相が派閥会長時代、幹部たちとキックバックの取りやめを協議していた点が最大のポイントになる」と見る。
ついに安倍派池田議員逮捕。二階派へも強制捜査が行われた
99人の国会議員を抱える自民党最大派閥の安倍派は、岸田文雄首相の女房役である松野博一官房長官や西村康稔経済産業相(ともに辞任)を含め、大半の議員側が派閥からキックバックを受けながら政治資金収支報告書に記載していなかった疑いが持たれている。松野、西村両氏に加え、鈴木淳司総務相や宮下一郎農林水産相、さらに同派の副大臣5人らが事実上更迭され、派閥幹部の萩生田光一政調会長や高木毅国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長が辞任した。
東京地検特捜部は12月19日に安倍派と「志帥会」(二階派)の事務所などへの強制捜査に入り、年末には3日連続で議員本人の関係先を家宅捜索。年明けの1月7日には、2022年までの5年間に約4800万円のキックバックを受けていた安倍派の池田佳隆衆院議員が政治資金規正法の疑いで逮捕された。
誰が4000万円超えのキックバックを受けていた本丸なのか
特捜部は高額のキックバックを受けながら不記載、虚偽記載だった議員らを対象に立件の可否を見極めているが、現職議員が政治資金規正法違反の疑いで逮捕されるという異例の事態に突入する中、自民党内で注目されているのは「誰が“本丸”なのか」という点だ。所属議員の大半がキックバックを受けていたとはいえ、その額は数十万円から4000万円超までと差がある。
ニュースやワイドショーでは、検察出身のコメンテーターが「どこかで立件するか否かの線引きせざるを得ない」などと解説しているが、仮に不記載・虚偽記載の多少が基準になるのであれば、立件されるのは「高額受領者」に限定されることになるのだろう。
安倍元首相の番記者だった岩田明子氏「安倍さんはキックバックをやめさせようとしていた」
ただ、その線引きとは別に2つの疑問点が残る。1つ目は、「誰がキックバックすることを指示・決定していたのか」ということだ。これまでのマスコミ報道で興味深いのは、安倍元首相が派閥会長時代の2022年春、政治資金パーティー券のノルマ超過分を議員にキックバックすることを疑問視し、安倍氏が中止を提案していたと報道されていることだ。安倍元首相に「最も食い込んだ記者」として知られる元NHK解説委員でジャーナリストの岩田明子氏は2023年12月13日の「ABEMA Prime」で取材結果をこのように披露している。
「安倍氏が2021年11月に派閥会長に就任後、2022年2月に『そういえばお金はどうなっているんだ』と会計責任者を呼んで報告を受け、初めてキックバックを知ったようだ。『このような方法は問題だ。ただちに直せ』と叱責した。4月に改めて『あの件はやめたんだろうな』と事務総長らにくぎを刺した。その2カ月後に安倍氏が亡くなり、話がうやむやになった」
同様の報道は他のメディアでもみられており、それが事実ならば少なくとも安倍派においてはキックバックのシステムが幹部間で共有されていた可能性が高い。毎日新聞の報道などによれば、この時に安倍氏は事務総長だった西村前経産相ら派閥幹部、会計責任者の職員と対応を協議していたとされる。安倍氏からはキックバックについて「不透明だからやめるべきだ」との趣旨が伝えられたという。
毎日新聞は、安倍氏と協議した可能性がある幹部5人と会計責任者に経緯を書面で尋ねており、安倍派座長の塩谷立元文部科学相と会計責任者は「事実関係を確認しています」などと回答。西村、松野、世耕の3氏や事務総長経験者の下村博文元文科相からは回答が得られなかったとしている。
会計責任者と安倍派幹部の共謀があったのかどうかがポイント
ここでポイントになるのは、会計責任者との「共謀」が認められるか否かだ。岩田氏や毎日新聞の“取材”が事実であれば、安倍氏は「問題」「不透明」と少なくとも認識していたことになる。ただ、派閥幹部は一度中止と決めたものの、所属議員から異論が相次いだため撤回。2022年はキックバックを継続することが確認されたとされている。
安倍派は2022年7月に安倍氏が死去し、その後は後継を決めることができず会長ポストが空席になっている。実質的に運営を取り仕切るのは、座長の塩谷氏に加えて西村、松野、高木、萩生田、世耕各氏の「5人衆」だ。報道されている協議に参加した「派閥幹部」にそれらの人物が入っていたのであれば、最大派閥の幹部たちは安倍氏の認識を共有していたことになる。
岩田氏の取材結果に基づく“証言”は、今後の捜査の最大のポイントと言えるだろう。ただ、会計責任者との「共謀」に関しては幹部による指示や了承を立証するハードルがある。すでに会計責任者を立件する方針を固めている特捜部は、西村氏や下村氏ら派閥幹部から再度の事情聴取を要請。キックバックの中止を一転させた際の協議内容などを詳しく調べる方針だ。
8000万円の裏金は安倍派の誰の手に渡っているのか
もう1つの疑問点は、所属議員がノルマ超過分の収入を派閥に納めることなく裏金化していた疑いが報じられていることだ。朝日新聞は元日に「所属議員が販売ノルマを超えて集めた収入を派閥に納めずに手元で裏金にした疑いがある総額が、直近5年間で少なくとも約8000万円に上ることが関係者への取材でわかった」と報道。こうした「中抜き」は十数人の議員で1千数百万円〜数十万円が確認された、と報じている。
この報道が事実であれば、所属議員が派閥の方針に基づいて裏金化していたのか否かが問われる。運用の取り決めがあったのならば、それは誰が指示していたのかということだ。さらにNHKは昨年12月25日、安倍派では参院選の年は改選参院議員に「全額キックバック」していたと報じた。改選を迎える参院議員はパーティー券の販売ノルマを設けず、集めた収入を全額キックバックしていたとみられている。少なくとも参院選があった2019年と2022年に開いたパーティーについては、こうした運用があったというのだ。報道通りならば、組織的に行われていた疑いが高まる。
ある政府関係者「特捜部の真の狙いは所属議員へのキックバック以外にある」
安倍派では直近5年間に5億円超の裏金化が指摘されているが、「中抜き」や「全額キックバック」をすべて含めれば、その総額はさらに膨らむだろう。キックバックは20年以上前から続いてきたとの見方がある。それを考えれば、時効の壁はあるにせよ、最初に決定・指示した人物の問題が問われるべきだ。
だが、少なくとも安倍氏が2022年春の時点で「問題」「不透明」と提起しながら、派閥幹部が中止方針から一転したというのであれば、キックバックを受けていた所属議員だけでなく、幹部の責任は決して軽くはないだろう。こうした点に特捜部は強い関心を寄せているもようだ。
「マスコミは『キックバック』という言葉ばかり使っているけど、そもそも特捜部は使っていない。その意味がわかる日が来るのではないか」。ある政府関係者は、特捜部の真の狙いは所属議員へのキックバック以外にあると声を潜める。1月下旬に通常国会の召集が迫る中、特捜部は“本丸”にたどり着くことができるのか。その答えはまもなく出る。
●安倍派の複数幹部、キックバックは「派閥会長が決定する案件」… 1/15
自民党派閥「清和政策研究会」(安倍派)を巡る政治資金規正法違反事件で、複数の同派幹部が東京地検特捜部の任意の事情聴取に対し、政治資金パーティー収入の所属議員側へのキックバック(還流)は「派閥会長が決定する案件だった」と供述していることがわかった。同派の政治資金収支報告書を作成・提出した会計責任者は還流分の不記載を認めているが、幹部らは「収支報告書には関わっていない」とし、会計責任者との共謀を否定したという。
同派では2018〜22年、パーティー収入のノルマ超過分を議員側に還流するなどして総額5億7000万円超を裏金化した疑いがある。この間、会長を務めたのは細田博之・前衆院議長(23年11月に死去)、安倍晋三・元首相の2人で、派閥実務を取り仕切る事務総長経験者は下村博文・元文部科学相(69)、松野博一・前官房長官(61)、西村康稔・前経済産業相(61)、高木毅・前党国会対策委員長(67)の4人。
関係者によると、事務総長経験者を含めた複数の幹部は特捜部の聴取に対し、還流について「会長と会計責任者がやりとりする案件だった」などと説明し、不記載に関する会計責任者との共謀を否定したという。
22年分については、還流を廃止する方針を示していた安倍氏が同年7月の銃撃事件で死去した後、事務総長の西村氏や会長代理の下村氏、塩谷立・元文部科学相(73)らによる協議の結果、還流が継続されたことが判明している。3氏らは同年分についても不記載への関与を否定したとみられる。
特捜部は週内にも幹部への聴取を終え、上級庁と協議して刑事処分を決める見通し。
●安倍派の裏金事件はやはり国策捜査だった!派閥幹部は立件見送り〜 1/15
自民党安倍派の裏金事件を捜査している東京地検特捜部が安倍派5人衆(萩生田光一前政調会長、西村康稔前経産相、松野博一前官房長官、世耕弘成前参院幹事長、高木毅前国対委員長)ら派閥幹部を立件しない方針を固めたと報じられ、検察当局への批判が高まっている。
特捜部はこれまで萩生田氏の舎弟として知られる池田佳隆衆院議員を逮捕したのに加え、大野泰正参院議員と谷川弥一衆院議員を立件する方針を固めている。いずれも裏金を受け取った金額が4000万円を超えたことが立件の決め手となったとされる。大野・谷川両氏は容疑を認めているものの、池田氏は容疑を否認して証拠隠滅に動いたとして逮捕に踏み切った。
しかし、安倍派で裏金を受け取った議員は約90人にのぼるとされる。4000万円以下でも違法行為であることに変わりはなく、そこで線引きする合理的理由はない。時間がかかっても、全員立件を目指すのが筋だ。
一方、裏金をキックバックした派閥で立件されるのは、会計責任者の派閥職員に限られるという。派閥会長だった細田博之前衆院議長と安倍晋三元首相はいずれも他界しており、焦点は過去5年間に事務総長を務めた下村博文氏、松野氏、西村氏、高木氏の4人の関与に絞られていたが、いずれも会計責任者との共謀を否認したことから立件を見送るのだという。
これでは世論はとても納得しない。これまでマスコミに捜査状況を大々的にマスコミにリークして世論を煽りながら、結局は尻すぼみに終わるとしたら、検事総長は記者会見して納得のいく説明をすべきであろう。
私は今回の検察捜査は「国策捜査」だとして当初からさほど期待していなかった。
今回の裏金事件はそもそも、しんぶん赤旗がスクープし、大学教授が刑事告発したことがスタートだったが、その対象は安倍派だけではなく、麻生派、茂木派、岸田派、二階派の5派閥だった。
ところが、検察当局が強制捜査したのは、リーダー不在で落ち目の安倍派と、反主流派の二階派だけで、岸田政権の主流派である麻生・茂木・岸田の3派は強制捜査を免れたのである。
この時点で、今回の検察捜査が、今年の自民党総裁選をにらんで安倍派と二階派を狙い撃ちする国策捜査である疑いは濃厚だった。内閣支持率が低迷して今年春にも退陣する可能性がある岸田首相ではなく、キングメーカーである麻生太郎副総裁の意向に沿った捜査だったと思われる。
すでに5人衆全員が更迭・失脚したため、安倍派を壊滅させる政治的目的は達成された。これ以上捜査が拡大すれば、自民党自体がますます危機に追い込まれ、主流3派にも批判が向く。麻生氏とすれば、このあたりが捜査の潮時であり、検察当局もそれに歩調をあわせたということだろう。
検察を「正義の味方」と持ち上げる論調があるが、それは大間違いだ。検察は「正義の味方」でも「国民の味方」でもなく、「時の権力者の味方」である。検察首脳たちにとって大切なのは、自分たちの人事と検察組織の防衛であり、時の権力者と激突することは絶対に避けるのだ。
そのため、時の権力者の意向を裏ルートで受け止め、時の権力者が許す範囲(もしくは期待する範囲)で捜査を進めるのである。それを「国策捜査」というわけだ。
私たち有権者が検察を「正義の味方」と持ち上げる限り、彼らはこれからも「時の権力者」の手先として働き続ける。中途半端な捜査終結を絶対に許してはいけない。
●岸田首相 やっと被災地初訪問も不満の声続々 1/15
「対応が遅い」「もう少し早く…」「信用できない」
岸田文雄首相が14日、能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県の被災地に初めて入った。避難所で厳しい暮らしを強いられている被災者の声に膝詰めで耳を傾けたが、発生14日目の駆け足の訪問には、冷ややかな視線も向けられた。
約550人が滞在する輪島市立輪島中に1日から身を寄せる井上美紀さん(75)は、一部の教室などを回って30分程度で視察を切り上げた首相の背中を見つめ「対応が遅い。体育館で皆を大声で励ましたりしてくれれば、心持ちも違うのに」と不満がった。
約310人が避難する珠洲市立緑丘中。炊き出しに励んでいた災害支援団体の井上陽平代表(34)は、首相のねぎらいの言葉に謝意を示しつつ「これほど深刻な状況だ。もう少し早く来ることができたのではないか」と首をかしげた。
自民党の政治資金パーティーを巡る事件が頭をよぎった被災者も。輪島中にいた女性(76)は「裏金問題があるから“何とかします”と言われても信用できない」とため息をもらした。
《支持率27・3%》共同通信社が13、14の両日に実施した全国電話世論調査で、岸田内閣の支持率は27・3%となり、最低だった前回調査(昨年12月16、17両日)の22・3%を5・0ポイント上回った。しかし、3回連続で20%台。不支持率は前回調査から7・9ポイント減少したものの57・5%と高水準で、厳しい政権運営が続きそうだ。
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を踏まえ、政治資金規正法の厳罰化などの法改正が「必要だ」は86・6%。派閥について「解消するべきだ」と「どちらかといえば解消するべきだ」は合わせて80・2%に達し、自民の再発防止の対応について「期待しない」は75・1%だった。能登半島地震を巡る岸田文雄首相の指導力について「十分に発揮しているとは思わない」が61・6%だった。  
●2023年負債1,000万円未満の倒産495件 3年ぶりに増加も、低水準にとどまる 1/15
2023年(1-12月)「負債1,000万円未満」倒産状況
2023年の負債1,000万円未満の企業倒産は、495件(前年比20.7%増)で、3年ぶりに前年を上回った。負債1,000万円以上の倒産が増勢を強まるなか、同1,000万円未満の倒産も増加した。
コロナ禍で痛手を受けた小・零細企業の倒産が2020年は630件と急増したが、その後のコロナ関連支援で急激に減少をたどった。しかし、支援策の終了・縮小とともに、事業規模を問わず過剰債務に陥り、経営に行き詰まる企業の多いことを示している。
産業別では、サービス業他が229件(前年比20.5%増)で、負債1,000万円未満の倒産の4割超(構成比46.2%)を占め、突出している。サービス業他の業種では、食堂,レストラン(21件)、経営コンサルタント業(16件)、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所(14件)、酒場,ビヤホール(10件)など、小資本で開業可能な業種が多い。
原因別では、最多が販売不振の366件(前年比33.0%増、構成比73.9%)。資本金別では、1千万円未満(個人企業他を含む)が463件(同19.6%増、同93.5%)と9割強を占めた。
形態別では、破産が480件(同18.8%増、同96.9%)と大半を占めている。
負債1,000万円未満の倒産は、小・零細企業がほとんどを占める。経営資源が限られているため、業績が低迷すると経営再建は容易ではなく、破産による債務整理を選択するケースが多い。
コロナ禍から経済活動は本格的に再開しているが、ウクライナ情勢や円安などに伴う物価高騰、人手不足、人材確保のための人件費上昇など、さまざまなコストアップが収益を圧迫している。
さらに、ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)の返済開始など、資金負担は増している。
政府は、金融機関に企業の再生支援に取り組むことを求めているが、負債1,000万円未満の企業は小・零細企業が中心で、支援が行き届かないケースが少なくない。また、金融機関も人的リソースに限界を抱えている。このため、支援の網からこぼれた企業にも再生ファンド等を含め、官民一体の支援整備が求められる。
※本調査は、2023年(1-12月)に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。
2023年の倒産495件、3年ぶりに前年を上回る
2023年の負債1,000万円未満の倒産は495件(前年比20.7%増)で、3年ぶりに前年を上回った。
2023年は3月、4月を除く10カ月間、前年同月を上回り、増勢が鮮明となった。
また、ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)の返済が本格化する中、物価高や人材確保のための人件費上昇などのコストアップで、企業の資金負担は増大している。
小・零細企業では、こうした資金負担を吸収するだけの収益力は乏しく、今後も小規模倒産が増勢をたどる可能性は高い。
【産業別】最多がサービス業他の229件、構成比は4割を超える
産業別は、10産業のうち、建設業と金融・保険業を除く、8産業で前年を上回った。
最多がサービス業他の229件(前年比20.5%増)で、3年ぶりに前年を上回った。構成比は46.2%(前年46.3%)と半数近くを占めた。
このほか、不動産が14件(前年比27.2%増)が2年連続、運輸業が19件(同137.5%増)で2年ぶり、農・林・漁・鉱業8件(同33.3%増)と製造業21件(同5.0%増)、卸売業40件(同53.8%増)、情報通信業23件(同15.0%増)が3年ぶり、小売業が64件(同42.2%増)で5年ぶりに、それぞれ前年を上回った。
一方、建設業は75件(同7.4%減)で2年ぶり、金融・保険業が2件(同33.3%減)で4年ぶりに、それぞれ前年を下回った。
業種別では、食堂,レストランが21件(前年13件)、経営コンサルタント業が16件(同10件)、
あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所が14件(同5件)、一般貨物自動車運送業が10件(同3件)、バー,キャバレー,ナイトクラブ(同6件)と自動車一般整備業(同2件)が各7件、貨物軽自動車運送業(同3件)と無店舗小売業(同4件)が各6件などで、前年を上回った。
【形態別】破産が9割を超える
形態別は、最多が「破産」の480件(前年比18.8%増)で、構成比は96.9%(前年98.5%)。
2023年の破産は、月次構成比は1月、2月、5月、6月、7月、9月、10月、11月の8カ月で100.0%だった。負債1,000万円未満の倒産は、小・零細企業がほとんどで資金的・人的な制約から自力で経営再建への取り組みは難しく、消滅型の破産を選択している。
「特別清算」は5件(前年比400.0%増)で、2年ぶりに前年を上回った。
再建型の「民事再生法」は4件(同33.3%増)で、3年ぶりに前年を上回った。「会社更生法」は、2009年以降の15年間では発生がなかった。
「取引停止処分」は6件(同200.0%増)で、5年ぶりに前年を上回った。
【原因別】販売不振が約7割
原因別は、最多が「販売不振」の366件(前年比33.0%増)で、3年ぶりに前年を上回った。構成比は73.9%(前年67.0%)だった。
このほか、「他社倒産の余波」が42件(前年比5.0%増)で2年連続、代表者の病気や死亡を含む「その他」が25件(同8.6%増)で2年ぶりに、それぞれ前年を上回った。
一方、「事業上の失敗」31件(同8.8%減)と「運転資金の欠乏」7件(同41.6%減)が2年ぶり、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が17件(同10.5%減)で2年連続で、それぞれ前年を下回った。
負債1,000万円未満の倒産は、小・零細企業が多く、資金余力も乏しいだけに、販売不振から抜け出すことはなかなか難しい。
【資本金別】1千万円未満が9割超
資本金別は、1千万円未満が463件(前年比19.6%増)で、3年ぶりに前年を上回った。構成比は93.5%(前年94.3%)で、0.8ポイント低下した。
内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が183件(前年比18.8%増)、「個人企業他」が155件(同19.2%増)、「1百万円未満」が78件(同18.1%増)、「5百万円以上1千万円未満」が47件(同27.0%増)だった。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」が32件(同39.1%増)で、3年ぶりに前年を上回った。
一方、「5千万円以上1億円未満」が2年連続、「1億円以上」が4年連続で、それぞれ発生がなかった。
●岸田首相の麻生氏、菅氏の政治刷新本部最高顧問起用は「取り込みと演出」 1/15
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏(65)が15日、カンテレの情報番組「旬感LIVEとれたてっ!」に出演。自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーを巡る事件について言及した。
事件を巡っては、衆院議員の池田佳隆容疑者(57)が逮捕された。18年からの5年間で計約4800万円のキックバックを受け、裏金にしていたとされる。
安倍派の複数の幹部は東京地検特捜部に対し、議員へのキックバックは「派閥会長と会計責任者で決定した」と供述していることが明らかになった。
鈴木氏は「よろしくない表現かもしれないが、『死人に口なし』って言葉がありますよね。今回の事件は全部、亡くなった安倍さんや細田さんにおっかぶせるんですか? っていうね。これは国民が納得しない」とバッサリ。続けて「幹部たちも今いろいろ報じられているけど、自分たちの口で誰ひとり説明していないんですよ。死んだ人のせいは世論が許さない。政治家として一番やっちゃいかんこと」と切り捨てた。
鈴木氏は、東京地検特捜部が池田容疑者ら多額のキックバックを受けていた議員を足掛かりに、派閥の組織ぐるみの責任を問えるかどうかが焦点とし、「政治資金規正法では会計責任者は事務方の人がいて、その人の責任になるが、その事務方の人が5億も6億ものお金を自由になんてできない。派閥の政治家が共謀なり指示していたんだろう」。
歴代事務総長を務めた下村博文元文科相、松野博一前官房長官、西村康稔前経産相、高木毅前国対委員長の4人をリストアップし、「もし立件されるんであれば、この中で2人かな」。コメンテーターのハイヒールリンゴから「どの2人ですか?」と聞かれると、「まだ捜査中なんで言えないんだけれども、有名とかじゃなくて、それまでの仕組みを触ったことがある。仕組みを触った人は証拠が残っていて、そういう人が2人くらいいる」と明かした。
事件を受け、自民党は岸田文雄首相を本部長とする政治刷新本部を立ち上げた。最高顧問には派閥解消には否定的とみられる麻生太郎氏と、無派閥の菅義偉氏が就いており、意見が割れることも予想されている。
鈴木氏は岸田首相が2人を起用したことについて「取り込みと演出」だと指摘。「岸田政権は窮地に立たされているから、2人のキングメーカーに『よろしくお願いします』と取り込みたい。言葉は悪いけどこびを売ってる。2人が激突してまとまるかって話だけど、賛成と反対をガンガン言い合うと議論が盛り上がっているように見える。そうやって、最後に岸田さんがやってきて『私が決めました』っていう演出をする」と解説した。
その上で「自分たちのことを自分たちで決められるわけないんだから。そういう意味で私はこのメンバーを懐疑的に思っている」と切り捨てていた。
● 岸田内閣支持率「支持」26%「支持しない」56% NHK世論調査 1/15
NHKの世論調査によりますと、岸田内閣を「支持する」と答えた人は、去年12月の調査より3ポイント上がって26%だったのに対し、「支持しない」と答えた人は2ポイント下がって56%でした。
NHKは、1月12日から3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかける「RDD」という方法で世論調査を行いました。
調査の対象となったのは2429人で、50%にあたる1212人から回答を得ました。
岸田内閣を「支持する」と答えた人は去年12月の調査より3ポイント上がって26%だったのに対し、「支持しない」と答えた人は2ポイント下がって56%でした。
支持する理由では、「他の内閣より良さそうだから」が47%、「支持する政党の内閣だから」が25%、「人柄が信頼できるから」が16%などとなりました。
支持しない理由では、「政策に期待が持てないから」が45%、「実行力がないから」が29%、「人柄が信頼できないから」が11%などとなりました。
能登半島地震への政府のこれまでの対応を評価するかどうか尋ねたところ、「大いに評価する」が6%、「ある程度評価する」が49%、「あまり評価しない」が31%、「まったく評価しない」が9%でした。
能登半島地震では、最大震度7を観測し、いまも地震活動が続いています。
地震に対する備えをしているかどうか聞きました。
「十分している」が4%、「ある程度している」が40%、「あまりしていない」が42%、「まったくしていない」が13%でした。
派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、自民党は、政治刷新本部を立ち上げて、再発防止策などの検討を始めました。
これが国民の信頼回復につながると思うか尋ねました。
「つながる」が13%、「つながらない」が78%でした。
今回の問題を受けて政治資金規正法を改正し、ルールを厳しくする必要があると思うかどうかについては、「必要がある」が83%、「必要はない」が9%でした。
自民党の派閥のあり方についても尋ねました。
「今のままでよい」が5%、「存続させても改革すべき」が40%、「解消すべき」が49%でした。
岸田内閣がことし最も力を入れて取り組むべき課題を尋ねました。
「賃上げ・経済対策」が31%、「社会保障」が17%、「災害対策」が16%、「政治改革」が13%、「外交・安全保障」が11%、「憲法改正」が4%となっています。
●岸田内閣支持率、震災対応で5ポイント上昇も…指導力「十分に発揮しているとは思わない」が61・6% 共同通信社調査 1/15
共同通信社が13、14両日に実施した全国電話世論調査によると、内閣支持率は27・3%となり、岸田文雄内閣として最低だった前回調査(昨年12月16、17両日)の22・3%を5・0ポイント上回った。不支持率は57・5%と前回調査から7・9ポイント減少した。
政党別でも自民党の支持率が33・3%と前回の26・0%から7・3ポイント回復した。
石川県で最大震度7を観測した能登半島地震の政府対応に関する質問では「迅速だった」(12・3%)、「どちらかといえば迅速だった」(42・3%)の合計が約54%と、「どちらかといえば遅かった」(25・0%)、「遅かった」(18・8%)の合計約43%を上回った。
大きな災害が発生した際、内閣支持率は上昇する傾向があるといわれる。2011年3月の東日本大震災発生当時も、同月26、27日に実施された共同通信の世論調査で、菅直人内閣の支持率は28・3%と、同年2月の前回調査から8・4ポイント上昇した。
一方、岸田首相が地震への対応で十分に指導力を発揮しているかについては「十分に発揮していると思う」は31・5%にとどまり、「十分に発揮しているとは思わない」が61・6%にのぼった。
元日の地震発生以来、岸田首相は連日のように報道陣の取材を受け発信を続けてきた。14日には石川県の被災地を視察、珠洲市の避難所では被災者に声をかけ「遠慮なくアドバイスしてほしい」と寄り添う姿勢を見せた。「私自身が先頭に立って生活再建支援に全力で取り組む」と決意を示すが、現状では有権者には十分響いていないようだ。
●一体なぜ?安倍派幹部“立件見送り”検討 1/15
自民党派閥の裏金事件で、安倍派の幹部らについて罪に問われない方向で検討がされているといいます。一体なぜなのでしょうか。
「起訴されたら議員辞める」
安倍派から約4000万円のキックバックを受け、収支報告書に記載していない疑いがある谷川弥一衆議院議員(82)。
自民党 安倍派 谷川弥一衆院議員「頭悪いね。言ってるじゃないの」
疑惑について説明せずに記者に逆ギレしたかと思えば、議場で居眠りしているような姿も。その谷川議員はこれまでに複数回、東京地検特捜部から任意の聴取を受けていますが、15日に地元の自民党長崎県連の会長を突然、辞任しました。
自民党 長崎県連 前田哲也幹事長「捜査がですね、終盤に向かってきたというなかでの判断だと思っております」
谷川議員はANNの取材に対して「近く最後の聴取があるので、そこで起訴されたら議員は辞める」とも話しています。
関係者によりますと、特捜部は谷川議員の立件に向けて詰めの捜査をしているとみられます。
安倍派幹部“立件見送り”検討
その一方、安倍派の幹部らについては立件を見送る方向で検討しているとみられることが、この週末に判明。
自民党ベテラン議員(麻生派)「証拠不十分ということだったんだな。検察が諦めたのなら仕方ない。『大山鳴動して鼠(ねずみ)二、三匹』だったということだ」
50代の人「おかしいよね、どう考えてもね。ほとんどの幹部が裏金やってたわけでしょ」
70代の人「ちょっとね、疑問を感じますよね。立件できないということになれば、やっぱり国民も納得しないんじゃないですかね」
キックバックは“会長マター”か
関係者によりますと、安倍派幹部らは特捜部の任意聴取に対してキックバックの不記載については「派閥の会長と会計責任者で決めていた」と説明し、関与を否定。不記載の指示についても共謀が認められないとみられます。
捜査対象となっている、おととしまでの5年間に安倍派の会長を務めていたのは細田前衆議院議長と安倍元総理大臣です。キックバックは派閥の会長マターだったのか、ある自民党議員はこう話しています。
自民党ベテラン議員(茂木派)「亡くなっている会長に責任をなすり付けるなんて、あってはならないことだと思う。会長マターでも前段に必ず幹部でも話し合いはしているはずだ。検察が立件を見送るのなら、その理由を説明しないと国民が納得できない」
キックバック“廃止検討”も撤回
複数の自民党関係者によりますと、安倍派に復帰した安倍元総理は当時、事務総長だった西村前経済産業大臣とキックバックをやめる方針を決めたといいます。おととしの4月ごろのことでした。その約3カ月後、銃撃事件が起きて安倍元総理が亡くなります。
キックバック廃止については一部の議員側から反発を受けたことから安倍派幹部らが協議した結果、撤回されたといいます。時期は安倍元総理が亡くなった翌月の8月ごろ。この8月に事務総長は西村前大臣から高木前国対委員長に交代していました。
幹部らの立件見送り検討について街で聞くと…。
70代の人「修正申告するとかで逃げるというのはひどいよね。国民はすぐ罰則を受けるわけだから。権力には検察も弱いのかなと、うたぐるというか、そう思うね」
●茂木幹事長10億円、二階氏は5年で50億円!使途公開不要「政策活動費」 1/15
自民党の政治資金パーティーをめぐる事件で1月7日、池田佳隆衆院議員が逮捕された。2018年から2022年にかけて、所属していた安倍派から約4800万円のキックバックを受けていたにもかかわらず、収支報告書に記載しなかった疑いがもたれている。
池田容疑者はキックバックについて「政策活動費だと認識して受け取った」としているが、この「政策活動費」に注目が集まりつつある。
「政策活動費とは、政党から政治家個人に支出される政治資金です。このお金については使途の公表義務がないため、『抜け穴』『裏金の温床』とも指摘されてきました」(週刊誌記者)
1月13日の「朝日新聞デジタル」が、この政策活動費について報じている。その額は2022年の1年間で約16億4000万円で、そのうち14億1630万円が自民党だったとしている。
受取額がもっとも多かったのは、自民党の茂木敏充幹事長で、党から計9億7150万円を1年で受け取っていたというから驚きだ。
また、二階俊博氏は、幹事長をつとめた約5年の間に約47億7000万円を受け取ったとしている。
これに対しSNSでは
《「使途報告する必要がない」この時点で政治資金規正法がクソ過ぎる》
《ほぼ自民党やん うちらってなんでこんな奴らに税金払わないといけないの?》
《自民党にこそインボイス制度を導入した方がいいんじゃないですか?》
など、憤りやあきれる声があふれている。
この政策活動費を以前から疑問視してきたのが、元大阪府知事・大阪市長の橋下徹氏だ。橋下氏は13日、ABEMAの『NewsBAR橋下』に出演し、「政治資金を確定申告の対象にすればいいんですよ」と提言。「国民のみなさんと同じように、確定申告の対象になって国税庁の監視を受けます――というような野党が出てきたら、簡単に政権交代すると思う」と、持論を展開した。
「自民と連立を組む公明党は、政策活動費の使途公開の義務化を訴えています。また、日本維新の会は14日、『政治とカネ』の問題の改革を検討する会議を近日中に立ち上げると発表。これまで、政策活動費の使途公開について後ろ向きだった維新ですが、一転して推進に転じるのでは、と注目を集めています」(前出・週刊誌記者)
「ブラックボックス」への批判は、さらに強まりそうだ。
●自民党政治刷新本部に参加 野上元農水相ら9人 キックバック収入を裏金化 1/15
政治資金を巡る事件を受け自民党内に設けられた政治刷新本部に参加する県選出で安倍派の野上浩太郎参議院議員などが派閥からキックバックされた政治資金パーティー収入の一部を裏金化していた可能性があることがわかりました。
自民党は派閥の政治資金をめぐる事件を受け、派閥のありかたなどについて議論する政治刷新本部を設置しました。
本部は、岸田総理のほか、合わせて38人で構成されていて、このうち安倍派は最も多く、県選出で元農林水産大臣の野上浩太郎参院院議員ら10人が起用されました。
その後の関係者への取材で、この10人のうち野上議員を含む9人が、派閥側から収支報告書に記載のないキックバックを受けたり、ノルマ超過分を派閥側に納めず自分の収入にしていたとみられることがわかりました。
金額は2022年までの5年間で、それぞれ数十万円から数百万円とみられます。
また、複数の関係者によりますと、安倍派が今週にもパーティー収入や議員へのキックバックを収支報告書に記載、訂正する方向で調整に入ったということです。
また、これにあわせて多くの安倍派議員が収支報告書を訂正するとみられています。野上議員側は取材に対し「コメントできる段階ではない」と答えました。東京地検特捜部は今週後半にも派閥側や各議員側の刑事処分について判断するとみられます。
●杉田水脈議員 人権侵犯の認定 “説明の機会なく遺憾で理不尽” 1/15
自民党の杉田水脈衆議院議員は、15日、山口市で行われた新年の記者会見で、過去のブログなどでの投稿が去年、人権侵犯と認定されたことについて、自身の言い分を説明する機会が与えられず、遺憾で理不尽だと主張しました。
自民党の杉田水脈衆議院議員は、平成28年2月、みずからのブログやSNSに国連の女性差別撤廃委員会に参加したときのことについて「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場」とか「存在だけで日本国の恥さらし」などと投稿し、去年、札幌法務局と大阪法務局からそれぞれ人権侵犯と認定されました。
認定後、初めて記者会見に臨んだ杉田氏は、異議の申し立てはしないとした一方「私がどういうつもりでブログを書いたかなどの事情聴取が一切無く、その機会が設けられなかったことは誠に遺憾で、少し理不尽だ」と主張しました。
そして、杉田氏は投稿について「当時、委員会で大勢の活動家に囲まれ罵声を浴びせられた直後で、私がそのような感想を抱いたことはしかたがなかった。アイヌの方々を侮辱するつもりも差別するつもりも一切なかった」と説明しました。
杉田氏は一連の投稿は削除し、国会の場で謝罪済みだとした一方、自身の投稿で傷ついた人がいるかどうかは「わからない」とし、「もしもあのブログを読んでどなたも傷ついていないのであれば、謝罪をする必要はないと思っている」と述べました。
また、平成22年にアイヌ政策に関する支援事業で公金の不適切な執行があった関係団体に支援が続いていることについて、杉田氏は去年11月、SNSで「このようなことをした団体が解散もせず、いまだに補助金を受給できていることが不思議です」と投稿していました。
これについて、記者団から「裏金を作った自民党が解散もせず、今後も政党交付金を受け取ることはおかしいと思わないのか」と問われたのに対し、杉田氏は「アイヌの問題と自民党の問題はあまりにもかけ離れていて、一緒に論じることはできない。ダブルスタンダードと言っていただいて結構だ」と述べました。
このほか、杉田氏は安倍派に所属していることから、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、派閥からキックバックを受けていたかなどと問われたのに対し「派閥が刑事告発を受けていて、今の時点では回答は差し控えたい」と述べました。
その上で、東京地検特捜部から任意で事情を聴かれたのかと問われたのに対し「否定も肯定もしない。しかるべき時にはしっかりと説明させていただけるのではないかと思っている」と述べました。

 

● 谷川弥一衆院議員、自民党長崎県連会長を辞任…裏金疑惑 1/16
自民党長崎県連は15日、同党派閥「清和政策研究会」(安倍派)の政治資金規正法違反事件に関連し、4000万円超のキックバック(還流)を受けながら収支報告書に記載していなかった疑いがある谷川弥一衆院議員(82)(長崎3区)から県連会長辞任の申し出があり、承認したと発表した。
県庁で記者会見した前田哲也幹事長(県議)によると、谷川氏から同日申し出があった。谷川氏は県連を通じて「国民、県民、自民党員の皆様にご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げる。捜査中のため詳細をお話しできないが、責任を取って会長の職を辞任する」とコメントした。
●キックバック廃止の方針撤回が「一連の事件で大事なポイント」裏金事件 1/16
元衆院議員で元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士が16日、フジテレビ系「めざまし8」に出演。自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーを巡る事件についてコメントした。
番組では安倍派の幹部が東京地検特捜部の事情聴取に対し、キックバックの処理を「会長案件」と説明していることや「キックバック廃止」を提起した安倍晋三元首相の死後、廃止の方針を撤回されたことなどが伝えられた。
若狭氏は「少なくとも会長案件っていう話は私も自民党の派閥に入っていたことがあるので、会長の権限っていうものを知っている立場からすると、こういう派閥にとって非常に大事なパーティー裏金キックバックとかいうことについてはやっぱり会長案件だなっていうのは思うんですよ」と話し「だからまんざらみんな口裏合わせしてうそをついたっていうわけでは私はないと思う」とコメントした。
一方で「次に話を出てくると思いますけど1回『派閥』『パーティー券』『裏金』っていう制度、システムを撤回した、中止したと。それを再開したと話として出ると思うんですけど、そっちに特捜部は光を当てて、この話が出てきた際には、これはいけると相当思ったと思います」と指摘。「私もやっぱりこれで特捜部はいけるなと思ったんですよね。だから、会長案件というよりも、次の話。撤回、そして再回という方が極めて今回の一連の事件においてというのは大事なポイントだと思います」と強調した。
●規正法改正は 派閥解消は 信頼回復険しく 1/16
能登半島地震は発生から2週間が経ったものの、いまだに孤立状態になったままの集落もある。一方自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる問題に国民の不信感は高まっている。
今年初めてのNHK世論調査から分かったことは、地震への政府の対応を評価する声の一方で一定の批判もあること。また自民党の派閥に引き続き厳しい視線が注がれていて1月の支持率は内閣・党ともに低迷している。
能登半島地震
【政府対応の評価】
能登半島の被災地への支援では1万6700人余りが避難所で過ごす中、体調を崩すなどして亡くなる「災害関連死」をいかに防ぐかが課題となっている。岸田首相は14日、現地を視察し、2次避難に向けた支援や仮設住宅の整備に全力を挙げる考えを示した。
政府の元日からの対応、国民にはどう映っているのだろうか。能登半島地震への政府のこれまでの対応を「評価する」という人は「大いに」「ある程度」あわせて55%。「評価しない」は「あまり」「まったく」あわせて40%だった。避難所には支援物資も届き始めているが、依然厳しい生活を強いられている。さらに生活再建に向け、住まいの確保やコミュニティーの維持、働く場の確保、教育環境の改善なども待ったなしだ。また野党側からは政府の初動が遅いなどといった批判も出ている。今は被災者への支援を最優先に、ただ状況を見ながら今回の対応の検証も必要になりそうだ。
【地震への備え】
私たち一人ひとりの備えも大事だ。地震に対する備えを「している」という人は「十分」「ある程度」あわせて43%。「していない」は「あまり」「まったく」あわせて55%だった。
ただ地域差もうかがえ、「北海道・東北」で「している」人は56%なのに対し、「九州」は31%にとどまる。西に行けば行くほど備えを「している」人が少なくなる傾向にある。被災後も自宅で過ごし自力で生活できるよう、また冬の避難に備えた防寒対策も大事になる。
自民派閥資金問題
【政治資金の透明化】
去年から続く自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で先週初めての逮捕者が出た。岸田首相は「自民党自らが変わらなければならない」として、党内で再発防止策などの議論を急いでいる。また公明党や野党各党からも意見が相次いでいる。
議論で急ぐべきは「政治資金の透明性」の徹底だ。事件の温床となったパーティー券について、購入者などを収支報告書に記載するよう義務つける公開基準を現在の「20万円超」から引き下げるのは必須だろう。また会計責任者だけでなく議員本人も法的な責任が問われる連座制の導入や違反行為のあった議員のいる政党への交付金の減額。さらに踏み込んで企業団体献金を禁止すべきだという意見も野党からあり、自民党の対応が焦点となる。
今回政治資金規正法を改正し、ルールを厳しくする必要があると思うかどうか聞いたところ「必要がある」は83%と圧倒的だった。一方で自民党が再発防止策などを検討しても国民の信頼回復に「つながらない」という人は78%に上ることからも信頼回復の道は険しそうだ。そもそもどんなに規定を見直しても、法律を作った議員本人が守らなければ、まさに「絵に描いた餅」に過ぎない。規正法が制定されたのは戦後まもなくの1948年。その後「政治とカネ」の事件が起きるたびに改正が繰り返されてきたが抜け道が多く「ザル法」などと揶揄されてもきた。来週から始まる通常国会で実効性ある再発防止策をまとめることができるか。とりわけ自民党はそれを守り抜く意志と覚悟があるのか。国民が注視していることを忘れるべきでない。
【自民派閥のあり方】
自民党が議論を始めたもうひとつが、「派閥のあり方に関するルールつくり」だ。岸田首相の意図や議論の方向性は判然としないが、岸田首相自身派閥の存続を否定せず、「政策を議論し、若手を育成する場」などとむしろその必要性を強調している。一方で派閥同士が衆議院の同じ選挙区で候補者の擁立を競い合っていた中選挙区時代と異なり、現在は小選挙区制のもと党の候補者は原則1人。公認権を握る党執行部の力が相対的に増した。このため現在、派閥に所属しない議員は80人近くと最大派閥の安倍派に次ぐ規模だ。今回、自民党の派閥のあり方についてどう思うか聞いたところ、「解消すべき」は49%。自民支持層でも37%が「解消すべき」とした。一方で存続を前提に「改革すべき」も40%に上ったが、「いまのままでよい」は5%にすぎなかった。
今回の不適切な会計処理は派閥が主導したとされるだけに、今後の議論の最大の焦点は派閥解消の是非だ。仮に解消しないとしても、パーティーなどを通じて資金を集め、派閥議員に配るやり方を続けるのかどうか。また人事の際派閥単位でポストを調整したり、要求したりするのを今後も認めるのかどうか。そもそもかつて自民党自ら決めた閣僚や党幹部に就任したら派閥を離脱するというルールの扱いをどうするか。周りの懸念をよそに、岸田首相は去年12月まで派閥の会長を務めてきたほか、今も執行部の多くは派閥幹部で占めている。
こうした点について、今回あいまいな形で終わらせたら国民は納得しないだろう。また議論の行方次第では党内抗争に発展する可能性もある。
内閣・自民支持ともに低迷
【内閣支持率】
内閣支持率は去年12月より3ポイント上がったものの26%。「支持しない」は56%。内閣の「危険水域」とされる30%割れは3か月連続だ。
【今の支持政党】
支持が低迷しているのは自民党も同様だ。自民党の支持率は30.9%。これに対し無党派層は45%と増加傾向にあり、岸田内閣になって最も高い数字だ。その差は14.1ポイントまで広がるなど、国民の政治不信の高まりがうかがえる。一方野党側は立憲民主党が5.3%と各党10%に満たない状態で、自民党に代わる政権の受け皿にはなり得ていない。
今年の政治は
政治の行方を考える。岸田内閣が今年、最も取り組むべきテーマを聞いたところ「賃上げ・経済対策」が最も多く31%。次いで「社会保障」「災害対策」などの順となった。ただ物価上昇を上回る所得の伸びを「期待しない」人は63%に上り、今年の景気は「変わらない」も63%と慎重な見方が大半だ。将来に対する不安を取り除き、日々の安心・安全を確かなものにしてほしいという国民の切実な願いにどう応え、解決策を見出すことができるのか。
各党・各議員が問われる一年となる。
●「まるで集団万引した人間に万引防止策考えさせるよう」 政治刷新本部 1/16
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で党内に設置された政治刷新本部。メンバーの複数の安倍派議員に政治資金収支報告書の不記載が判明し、批判が相次いでいる。そもそも裏金の規模が突出する安倍派から最多の10人を起用。幹部に麻生派会長の麻生太郎副総裁らが就き、派閥解消や抜本解決を求める声とはかけ離れている。本気度に疑問符が付く顔ぶれの狙いは何なのか。
渦中の安倍派から10人…首相「排除適切でない」
「特定の人間を排除する『排除の論理』は適切ではない」
政治刷新本部に名を連ねる安倍派議員に裏金疑惑が浮上した13日、岸田文雄首相は記者団に対し、議員の交代を否定した。
「排除の論理」は鳩山由紀夫氏らが1996年、旧民主党を結成する際、新党さきがけのベテラン武村正義氏らの入党を拒否したことを指して用いられ、流行語に。2017年には、小池百合子東京都知事が自身が代表の新党への他党からの合流について一部議員を「排除します」と発言。新党は急失速した。
ネガティブな意味で長年使われてきた言葉を否定することで、人事の正当性を主張した首相。だが、組織的な裏金づくりが疑われる安倍派の議員がメンバーに入ることには、当初から「裏金の世話になっている人が集まっているなら、国民の満足する改革案は出せない」(立憲民主党の泉健太代表)などと批判があった。
若手、青年局、女性局を重視したと言う割に
人選に当たっては「執行部を中心に若手、青年局、女性局など党を挙げ」(首相)たとされるが、ふたを開けると、本部役員38人のうち28人が派閥所属議員。最大派閥の安倍派が最多の10人で、同じく渦中の二階派も2人入った。派閥のバランスに配慮した従来型の人選に見える。
安倍派の10人は、共に参院当選4回で閣僚経験があるベテランの岡田直樹・前沖縄北方担当相(61)、野上浩太郎元農相(56)以外、党女性局長や青年局長を務めるなどした中堅・若手らが中心。大阪府知事を務めた太田房江氏(72)、北海道知事だった高橋はるみ氏(70)は自治体首長としてのキャリアはあるが、国会議員としてはそれぞれ参院で当選2回と、1回。自民党女性局のフランス研修中にエッフェル塔をまねたポーズで写真撮影して批判を浴びた松川るい氏(52)も参院で当選2回だ。
10人の中で目を引くのは、参院当選3回の上野通子氏(65)。裏金疑惑を巡って昨年12月14日、松野博一官房長官や萩生田光一政調会長ら政権の要職から安倍派議員が一掃された際に、首相補佐官を辞任した。1カ月もたたないうちに、改革する立場で復帰していたことになる。
10人の中からも裏金疑惑…「排除が適切」の声
そして今回、この10議員のうち複数に裏金疑惑が浮上。今月下旬とされる通常国会の開会が近づく中、折からの批判はさらに強まっている。
15日午後、東京・新橋駅前。政治刷新本部の話を聞くと「刷新されるべきなのはこの人たちでは」(20代の男性会社員)などと首をかしげる声が多かった。東京都世田谷区のアルバイトの女性(43)は「岸田さんは『排除は不適切』と言いますが、この場合は『排除が適切』なんじゃないですか。(刷新本部がどんな結論を出しても)この段階で信用するのは難しい」と話した。
派閥の「ボス」がにらみ
政治刷新本部の初会合は11日に自民党本部で開催。岸田首相は「国民の信頼を回復するため、日本の民主主義を守るため、党自らが変わらなければならない」と訴えた。16日に党所属議員全員が参加する会合を開くほか、17日には法律や会計の専門家など外部の有識者を招いて議論。月内の中間取りまとめに向けて意見集約を図るという。
ただ、派閥の政治資金パーティーが舞台となった裏金事件にもかかわらず、刷新本部の最高顧問には、麻生派を率いる麻生太郎副総裁が就いたほか、茂木派会長の茂木敏充幹事長が本部長代行となった。森山派会長の森山裕総務会長もメンバーに入る。
そもそも計38人のメンバーには、裏金疑惑がある安倍派の議員を含め、若手・中堅議員が多い。党として事実解明をしない上、派閥の「ボス」の面前で客観的かつ抜本的な議論ができるのか疑わしい体制となっている。菅義偉前首相や小泉進次郎元環境相ら無派閥も幹部に名を連ねて「派閥解消」を訴えるが、派閥存続を唱える茂木氏らとの間で意見集約は難航しそうだ。
本気なら第三者の起用が必須
再発防止策にどこまで踏み込むかも不透明。岸田首相は4日の会見で、党による派閥パーティー収支の監査や、資金の流れが分かるように収入の原則振り込み化などの案を挙げた。しかし▽第三者機関による政治資金の監査▽パーティー券購入団体・個人の公開基準を現行の「20万円超」から引き下げ▽政治家の責任も問う「連座制」の導入—といった野党などの主張に比べて甘さが際立つ。
組織不祥事を巡る「第三者委員会報告書」を評価する活動を行っている青山学院大の八田進二名誉教授(会計学)は、刷新本部の体制について「疑惑のある安倍派議員もおり、集団万引した人間に万引防止策を考えさせるようなものだ。身内のお手盛りで、客観性・公正性を担保できる会議体ではない」と指摘し、第三者の起用が必須と説く。
「本気で信頼に値する改革案を出したいなら、自民党の派閥とは関係のない第三者の独立メンバーに委ねないといけない。それができない岸田首相のリーダーシップと危機感のなさが一番の問題ではないか」
「小手先どころか小指の先の対応」
政治アナリストの伊藤惇夫氏は、刷新本部が一定の結論をとりまとめるまで実質2週間ほどという期間の短さに疑問を呈する。自民党がリクルート事件発覚を受けて、1989年に政治倫理の確立や政治資金の規制などを誓った「政治改革大綱」をまとめた際、自民党スタッフとして関わった伊藤氏は言う。
「当時は1年生議員が声を上げ、党独自で実態解明を進めて問題点を洗い出し、4カ月をかけて大綱を練り上げた。中身は今見ると問題点もあるとはいえ、今回は党として調査もせずに2週間で結論を出す。そんなものが、改革に値する内容になるとは思えない。小手先どころか小指の先の対応で終わるのでは」
選挙で根本から変えるしかない
なぜ本気度を疑わせる体制にしたのか。全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士は「誰が見ても問題のあるメンバーを入れて自民党内で政治決着を図る狙いが見え見えで、国民はしらける。能登半島地震もあり、原因を追及せずに問題が風化するのを待っているかのようだ」といぶかり、こう続ける。
「どうせ政治なんか当てにならないと、投票から遠のけば、一部の支持者だけの政治となり、民主主義の危機だ。今回の事件は、パーティー券のお金が、仮に賄賂に使われても分からないという根の深い問題だ。根本から変えるには、やはり選挙しかない。落選への危機感がないから、自民党も本気で対応しない。変えるぞ、という緊張感の中で、政治資金の問題も透明化に向けて前進するはずだ」
デスクメモ
「刷新されるべきなのはこの人たちでは」と街の声。言われてみれば「刷新」がよく使われるのは選挙だ。多選の現職と対決する候補が「市政の刷新」や「県政の刷新」を訴えるのが典型的。「国政の刷新」という言い方はなぜか少ないが、有権者は言葉の意味を正確にとらえている。
●地方議員がタカってくるから裏金が必要?4月の「補選」次第で政権崩壊… 1/16
派閥の裏金問題で、ついに現職議員が逮捕された。安倍派幹部の立件見送りが報じられているが、そうした中、次に逮捕される政治家は誰か。そして、安倍派幹部の姑息で悪質な手口とは。匿名だから明かせる国会議員の本性を、議員秘書たちが赤裸々に語りあった。
裏金の使い道
若手D 支部を通して地方議員の政治団体に寄付できるはずですが? 
ベテランA 政治資金ではなく、地方議員が小遣いとして使えるカネを寄越せと言ってきているわけだから、タチが悪いんです。こっちも裏金を作っておかなければいけない。最初の選挙で数百万円かかったが、その後もなにかにつけてタカってくるのが、保守地盤の強い地域の自民党地方議員の特徴です。このタカり体質は、今でも各地で残っていると思います。
中堅C また、派閥の幹部クラスだと、パー券をたくさん売って、派閥内で存在感を見せつける必要があったという点も指摘できます。ノルマ未達の後輩議員に少し融通してあげたり、キックバックされた裏金で子分たちと懇親会を行ったり。おカネはいくらあっても困りませんから。
中堅B 銀座のクラブや高級飲食店での飲み食いの代金を政治資金収支報告書に載せると、「こんないい店に行っているのか」と支持者や他の議員からやっかみを買いかねません。収支報告書には載せたくない支払いなどに裏金を当てていたケースも多いはずです。
若手D 政治資金収支報告書の訂正で、こうした実態が明るみに出れば、自民党の信用回復はさらに遠のきますね。
岸田総理の「鈍感力」
ベテランA 岸田政権の支持率は過去最低を更新し、まだまだ下がりそうですが、岸田総理自身は辞める気はまったくないそうです。
周辺に「自分が辞めて解決するならいつでも辞めてやる」と話したと報じられましたが、まさにこれが岸田総理の鈍感力。菅(義偉)前総理は、精神的に追い込まれてみるみる顔色が悪くなり、最後は総裁選不出馬に追い込まれましたが、岸田総理はああはならない。自ら辞める可能性はまずありません。
中堅B たしかに、能登半島地震の被害対応で「岸田おろし」の動きは見えなくなりました。裏金問題で内閣改造に追い込まれた昨年末には、3月の訪米と予算成立を花道に辞任するなどと言われましたが、それはなくなりそうです。
ベテランA たしかに民主党政権時代の菅直人元総理が外国人献金問題で辞任寸前だったのに、東日本大震災が発生し、政権の寿命が半年延びたケースもありました。
山場になる補欠選挙
中堅C しかし先送りになるだけで、「岸田おろし」は4月28日投開票の補欠選挙の結果次第でしょう。今のところ細田博之前衆院議長の死去に伴う島根1区だけですが、裏金問題などで3月15日までに議員が辞職すれば、同日の補選の数が増える。谷川氏の旧長崎3区や大野氏の参院岐阜選挙区、先に公選法違反の疑いで逮捕された柿沢未途前法務副大臣の東京15区などでも補選が行われる可能性があります。
若手D 先ほど名前の挙がった西村先生や高木先生、世耕先生まで起訴されたら、補選はそれだけでは済みませんね……。
ベテランA 自民党への風当たりは相当強いですし、この補選で全敗するようなことになれば、反主流派や非主流派の間で「岸田総理ではもう戦えない」ということなる。最後は麻生(太郎)副総裁がはしごを外して、茂木(敏充)幹事長も同調する形で、6月の所得税などの定額減税を花道に、総裁選出馬断念に追い込まれるでしょう。
茂木幹事長のギラつき
中堅B 新総裁は誰になりますかね。石破(茂)元幹事長は裏金問題で後ろから鉄砲を撃つような発言が党内の顰蹙を買っていて、支持を集められるか微妙です。
中堅C まずは順当に茂木先生なのでは? 周辺に聞くと、ギラつき方が尋常ではないようです。
ベテランA 自民党支持率が極端に下がると、上川(陽子)外相が浮上するでしょう。7〜8月に上川もしくは茂木新総理が誕生して、ご祝儀相場の勢いで秋口に解散する可能性もあります。
中堅B うちの先生(安倍派)は、いっそ清和研を解体してほしいとぼやいていますよ。自分から抜けると後で何を言われるかわからないし、安倍派所属のままだと選挙では必ず不利になる。このままでは落選すると、危機感が半端ではありません。同じように考えている先生も多いはずです。
若手D 岸田総理は新しく「政治刷新本部」を設置し、最高顧問に麻生副総裁と菅前総理を置きました。一方は派閥会長で、一方は無派閥。議論がまとまるはずがありません。しかもすでに派閥や政治資金パーティーの存続が前提になっていて、これで「政治とカネ」の問題が解消されるとは有権者は思わないはずです。国会が始まると、野党から集中砲火を浴び、支持率はますます下がる。
ベテランA だからといって、政治資金パーティーの禁止や派閥解消となると、若手議員の懐を直撃して、選挙活動もままならなくなります。
中堅C 裏金問題の着地点がどうなるのか。いずれにせよ、私たち議員秘書にとっても激動の1年になりそうですね。
●岸田政権の行方 1/16
昨年12月、大手メディアの世論調査で岸田内閣の支持率が軒並み20%台へ低下した。年末になり自民党派閥のパーティー券売上高還流問題が深刻化、内閣、自民党共に世論の目は厳しさを増しているだろう。国政選挙の近い時期であれば、岸田文雄首相は窮地に追い込まれていたと推測される。しかしながら、自民党内で「岸田降ろし」の動きは加速していないようだ。理由は、1)次の国政選挙まで最大で1年半の猶予があること、2)自民党主流派閥の安倍派、麻生派、茂木派、岸田派にとり一致して担げるリーダーが岸田首相の他に見出し難いこと、3)世論調査を見ると野党の支持も盛り上がっているわけではないこと・・・の3点と見られる。パーティー券問題に関する東京地検特捜部の捜査は通常国会の召集前がタイムリミットだろう。岸田首相は、令和6年能登半島震災へ対応しつつ、国会開会後の衆参両院での審議を乗り切り、3月と見られる訪米を支持率底入れの転換点とする意向ではないか。また、4月28日の国政補選が重要な意味を持つだろう。
支持率は下落傾向
昨年12月に実施された大手メディアの世論調査で、岸田内閣の支持率は軒並み20%台へ落ち込んだ。最も厳しい毎日新聞は16%、平均でも21.8%と20%割れ寸前になっている。年末に自民党の派閥によるパーティー券売上高の還流問題が深刻化、7日には安倍派の池田佳隆衆議院議員が東京地検特捜部に逮捕された。1月の世論調査は、岸田政権にとってより厳しい結果となる可能性が強い。
内閣支持率20%台は危険ゾーン
NHKの調査によれば、直近10代の政権の退陣時の内閣支持率は平均27.1%だ。任期満了で円満に退任した小泉純一郎首相を除くと24.4%であり、足下、岸田内閣の支持率は既に危険ゾーンとなっている。ただし、今のところ自民党内に「岸田降ろし」の目立つ動きはないようだ。衆議院の任期満了は2025年10月で、解散がない限り、年内に大型の国政選挙が予定されていないことが理由の1つだろう。
主流4派が結束なら岸田政権の継続も
自民党内の力学を考えた場合、所属議員98名を擁する最大派閥の安倍派がパーティー券問題で苦境に陥った。これは、同党総裁である岸田首相にとっても打撃だが、党内における安倍派の影響力低下は、同首相にとって必ずしも悪いシナリオではない。さらに、今、岸田首相を引きずり降ろしても、次の首相・自民党総裁が同じ逆風に晒されるのは必至だ。従って、岸田降ろしは起こっていないのだろう。
石破、小泉、河野3氏は国民の人気はあるが・・・
12月の世論調査では、4社が「次の自民党総裁(朝日新聞は次の首相)にふさわしい政治家」との質問を設けた。結果はいずれも石破茂元自民党幹事長がトップ、小泉進次郎元環境相が2位、河野太郎デジタル改革担当相が3位だ。もっとも、石破、小泉両氏は実質的に無派閥で、河野大臣も所属する麻生派の支持を得るのは難しい。総裁選は派閥の力が大きいとすれば、岸田首相には明確な対抗馬がいないのである。
自民党が野党を大きく引き離す
昨年12月の段階で、報道大手5社の世論調査を集計すると、自民党の支持率は25.5%だった。一方、野党側は、立憲民主党が8.1%、日本維新の会が7.6%であり、自民党との差が大きく縮小したわけではない。目先に国政選挙がなく、且つ野党の支持率が低迷していることで、自民党には時間を稼ぐ余裕があるのだろう今年9月には自民党総裁選があるため、それまでは岸田首相を支えるとの考えが同党内の大勢ではないか。
政権交代の鍵は野党の支持率
2009年8月30日の総選挙で自民党が下野した際には、参議院選挙において民主党が圧勝した2007年7月の時点で、同党の支持率は20.5%に達していた。一方、足下、自民党の支持率は29.5%、野党第一党の立憲民主党の支持率は7.4%、まだ20%ポイント以上の開きがある。具体的な政策を挙げて自民党を追い込んだ感のないことが、野党側の支持率が上がらない理由なのではないか。
通常国会会期中の1〜5月はほとんど解散のチャンスがない
自民党が結党された1955年以降、解散は22回あった。このうち、通常国会会期中となる1〜5月のケースは3回しかない。政権の置かれた現状から今年前半に解散があるとは考え難く、岸田首相は自民党総裁選後に解散を先送りする意向を固めたのではないか。結果として、次の総選挙は2025年7月の参議院選挙と同日になる可能性が高まった。過去2回の同日選は、何れも自民党が圧勝したからだ。
前半の注目は4月28日の国政補選
岸田首相にとり喫緊の課題は令和6年能登半島地震への対応、そして国会開会後は衆議院予算委員会での質疑だろう。さらに、4月28日には国会議員の補選が行われる。仮にパーティー券問題で辞職や失職する国会議員がいれば、当該の選挙区が補選の対象となる可能性は否定できない。この補選で十分な結果を残すことこそ、岸田首相が自民党総裁選で再選される必須要件になるのではないか。
岸田政権の行方・まとめ
岸田首相は、3月中に国賓として訪米、日本の内閣総理大臣で2度目となる連邦議会上下院合同会議でのスピーチに臨む方向で調整中のようだ。こうした外交実績を背景に、4月28日の国政補選で成果を残すことが、同首相の再選戦略の骨格を為すだろう。経済政策は、財政中心のばら撒き型となり、構造改革には踏み込まない可能性が強い。低支持率に喘ぐ「弱い内閣」である以上、国論を二分し、自民党内に亀裂を生じさせるような政策を解散前に実行へ移すことは困難なのではないか。
●台湾総統選で与党勝利も、中国の「武力行使はあり得ない」理由 1/16
台湾総統選挙は1月13日に投開票され、与党・民主進歩党(民進党)の頼清徳氏が勝利した。
しかし、勝因は野党分裂に乗じた「漁夫の利」。民進党は立法院(国会に相当)では過半数割れし、少数与党という不安定政権になる。
一方、アメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席は、2023年11月の首脳会談で台湾問題の「一時休戦」を黙約しており(後述)、米中双方とも緊張激化は望んでいない。
中国は頼氏を「台湾独立」路線と非難していることから、武力行使の可能性を指摘する声もあるが、軍事的威嚇を強めることはあっても武力行使の選択肢はなく、日米両国が煽ってきた「台湾有事」も遠のく、というのが筆者の見立てだ。
「チャイナ・バイアス」
台湾海峡の緊張が高まる中、日米両政府とメディアは中国が台湾に武力侵攻すると煽ってきた。
しかし、それは中国の主張と論理への正確な理解を欠いている。
中国問題になると「チャイナ・バイアス(対中偏見)」のスイッチが入り、誤解がボタンを掛け違えるように台湾有事のリアリティを増幅させてきた経緯を忘れてはならない。
台湾問題に対する中国の認識と国際環境を整理すれば、中国が武力行使をしない理屈と、台湾有事が切迫していない現状が見えてくる。
まとめれば次のようになる。
台湾への武力行使は、日米両国との武力衝突を覚悟する必要があるだけでなく、世界と中国の経済を危機的状況に陥らせ、共産党支配を崩壊させかねない。中国にとって最もリスクの高い「自殺行為」であり、仮に軍事力でアメリカを上回った場合でも選択したくないシナリオだ。
しかし、頼氏の政策を「台湾独立」路線と断定してしまうと、台湾に武力行使しなければならなくなる。2005年に成立した「反国家分裂法」に規定された武力行使の条件に当たるからだ。
もし武力行使しなければ、共産党と中国軍は台湾統一という「歴史的任務」を放棄したことになる。
中国の台湾政策を主管する国務院台湾事務弁公室は1月10日、頼氏が前日に開いた記者会見で蔡英文(現総統)路線の継承を表明したことについて、すなわち「独立路線」だと批判した。
ここで注意しなければならないのは、台湾事務弁公室の表現に「“蔡英文路線”就是“台独”路線」と爪括弧(ダブル引用符)が付けられたこと。
多くのメディアは「中国は民進党を独立派とみなしている」と伝えるが、それは誤りだ。爪括弧は特別な意味を示した時に使用されることが多く、今回のケースで言えば、中国側が頼氏の政策をまだ「独立」とは認定していないことを示している。
中国にとって台湾統一は、建国100年を迎える2049年に「中華民族の偉大な復興」を成し遂げるため実現すべき息の長い任務だ。
台湾との社会・経済基盤を融合させ、それを基礎に平和統一を完成させるのが習氏の基本政策。中国はそのような既定路線を、頼政権の発足後も粛々と進めていくはずだ。
バチカンと断交も
では、頼氏に対し中国はどのような対応に出るのだろう。
南太平洋の島しょ国ナウルは1月15日、台湾と断交し中国を承認すると発表した。総統選の2日後というこのタイミングは、頼氏の当選に向けて中国が準備した外交揺さぶりだろう。
これで台湾と外交関係があるのは過去最少の12カ国となる。台湾の外交的孤立を印象付け、「一つの中国」の正しさを内外に示す狙いと思われる。
筆者と親しい中国の台湾問題専門家は、中国の次なる外交攻勢として、国交のある中で唯一ヨーロッパのバチカン(ローマ教皇庁)と断交する可能性も高いとみる。バチカン側も中国との国交樹立に意欲を見せている模様だ。
そのような外交的対応に加え、軍事的対応も予想される。
新政権と日米両国の対応を見ながら、アメリカが武器輸出や高官往来を再開するなら、台湾海峡での軍事演習を再開する。これまでなかった新たな演習によって統一への決意を示し、台湾民衆には新政権が反統一路線であることを理解させる狙いを込める。
さらに、頼氏の現状維持路線を「独台(すでに独立した国家との認識)」として批判、攻撃する。非軍事的な圧力や経済制裁に加え、サイバー攻撃など威嚇手段は他にもあり、それらの手法をより効率的に使う。
外部からは「中国の強硬姿勢で緊張が高まる」ように見えるが、むしろ内外にそう見せるのが目的だ。
米権威も「武力行使ない」と
アメリカと台湾の民間窓口「米国在台湾協会(AIT)」のリチャード・ブッシュ元会長も、中国は武力行使しないという見方をシンクタンクに寄稿している。
同氏は1997年から2002年までAIT会長を務め、アメリカで最も権威ある台湾ウォッチャーでもある。
ブッシュ氏は寄稿で、中国が武力行使に出ない理由として以下を挙げた。
1 頼氏は蔡氏の「現状維持」路線を追随する姿勢を示している
2 北京は武力行使が危険な行動であることを認識し、人民解放軍も「まだ準備ができていない」
3 非軍事的な圧力や恐喝など台湾を威圧する手段が他にもあり、それらの手法が徐々に効果を上げている
米中「一時休戦」の実情
バイデン氏と習氏が11月の首脳会談で台湾問題の「一時休戦」を黙約した、と冒頭で書いたが、ここでもう少し詳しく説明しよう。
バイデン政権が一時休戦を求める理由は、ロシア・ウクライナ戦争、イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突に加え、中国との衝突という「三正面作戦」に対応できないからだ。
中東情勢は、米英軍がイエメンの反政府武装組織フーシ派の複数の拠点を爆撃し、ガザ地区の戦線が「点」から「面」に拡大。バイデン氏にとっては11月の大統領選挙まで対中休戦を維持するのがベターな選択だろう。
経済がなかなか好転しない中国にとっても、経済を中心に内政に集中したいのが本音。
首脳会談では、衝突回避の具体的措置として、米中国防当局間のハイレベル会合の再開などで合意した。それに基づき、米軍制服組トップのブラウン統合参謀本部議長と中国軍の劉振立統合参謀部参謀長は2023年12月21日、オンライン協議を行った。台湾海峡での偶発的な軍事衝突を予防する狙いだ。
劉建超・共産党中央対外連絡部長が台湾総統選の投票日前日に当たる1月12日に訪米し、ブリンケン国務長官と会談して「関係安定の推進」を確認してみせたのもそれを裏付ける。劉氏は王毅外相の後任になる可能性がある。
バイデン政権はこの一時休戦を維持するため、頼氏率いる次期政権が中国を挑発するのを抑えねばならない。その役割を台湾側で担うのが、副総統に就任する蕭美琴・前駐米代表だ。
蕭氏は蔡総統と親密だが、頼氏との関係は良くない。バイデン政権には従順な対応をしている。
バイデン政権は岸田氏に台湾関与を求めるが…
一時休戦と言っても、バイデン政権は台湾問題を放置するわけではなく、台湾への関与を同盟国である日本に代行させようとしている。
頼氏は安倍晋三元首相が銃弾に倒れた直後、安倍夫人の要請で来日して安倍家を訪れ弔問、葬儀にも参列した。日本政府は本来なら台湾副総統の訪日は受け入れないが、この時は私人訪問として弔問だけを認める「特例」として受け入れた。
頼氏もこの訪日を意識して「親日」総統のイメージを押し出し、対日関係の強化を図るに違いない。
一方、自民党派閥の政治資金パーティー問題の処理に追われる岸田氏は、台湾問題への関与を麻生太郎・自民党副総裁に委ねるだろう。
麻生氏は8月に現職の副総裁として初めて台湾を訪問。台北市内で講演し、台湾有事を念頭に「戦う覚悟」が求められていると発言するなど、親台湾派で知られる。この時を含め、同氏は対中挑発の発言が目立ち、中国側を苛立たせてきた。
台湾関与を麻生氏に委ねれば、日中関係の改善にも悪影響を及ぼし、岸田氏が意欲を抱く日中首脳交流の再開にも支障をきたす可能性がある。
中国側は2023年末にも日本人旅行者へのビザなし渡航を認める予定だったが、東南アジアやヨーロッパ諸国に認める中、日本だけ延期された。台湾関与を強めれば、日中関係改善の障害になる隘路(あいろ)に直面しているのだ。
超低支持率に悩む岸田氏は、4月とも言われる国賓待遇での訪米を支持回復の最大のカードとしており、実現すればバイデン氏に台湾関与の強化を約束するに違いない。それを花道に退陣するとの観測も出始めている。
だが、4月には米大統領選挙が走り出しており、内向きな岸田氏の国賓招待の再検討を求める声が出て、訪米が中止になる可能性も否定できない。
米中一時休戦という決定的な情勢変化の中で、岸田政権は台湾問題への関与代行という損な役回りを演じさせられることになる。
●EVが追い風 中国の自動車輸出が初めて日本を抜いて世界一に 1/16
中国の自動車輸出台数が2023年に初めて日本を追い抜き、世界一が確実な情勢になっている。中国自動車工業協会の発表で明らかになった。それによると2023年の中国からの自動車輸出台数は前年比57.9%増の約491万台と過去最高を記録した。一方、日本は同年11月までの累積輸出台数が399万台と100万台近い差がついていることから、追いつけない見通しだ。
中国車輸出増の原動力となったEV
中国車の輸出が好調な理由には、ウクライナ侵攻の経済制裁で西側諸国の新車が販売できなくなったロシア向けの輸出増もあるが、電気自動車(EV)の成長が大きい。
再生エネルギー情報サイトのクリーンテクニカによると、2023年1〜11月のEV販売台数で中国の比亜迪(BYD)は255万6504台。米テスラの161万3465台を大きく引き離し、初めて世界一のEVメーカーとなるのは確実だ。
中国では景気停滞に伴いEV市場の成長が鈍化したことから、内需から輸出へシフトする動きが強まっている。EVの普及が進むEUでのEVシェアは、金額ベースで2019年から2022年までの3年間で0.4%から3.7%に上昇した。2023年にはBYDの躍進もあり、さらに存在感を高めているはずだ。
かつて中国製EVは低価格車が中心だったが、現在では500万円を超える中・高級EVも生産・販売している。蔚来汽車(NIO)のように約80万元(約1630万円)の超高級EVを発売しているメーカーも。1980年代に大衆車から中・高級車とシフトして世界一になった日本と同様のやり方で、中国車がキャッチアップしたことになる。
日本車は燃費が良く、排ガスがクリーンなエンジンで欧米車を凌駕(りょうが)したが、中国車はEVだった。両国とも、環境対応で自動車業界の主導権を握った。
EVの内需拡大が輸出を増やすカギ
国内需要で量産体制を整えてから、輸出に振り向けるのが自動車産業の「成功パターン」だ。輸出で存在感を示すには、EVの内需を高める必要がある。中国国内での2023年のEV販売シェアは約25%に達した。
日本は国内メーカーのEV投入が遅れており、2.2%と10分の1未満。しかも、国内で販売されたEVの約4割が日本規格の軽自動車「サクラ」で、国際競争力がない。しばらくは日本製EVの輸出が増加する可能性は低いだろう。
EVの内需が高まっているのは中国だけではない。EU主要国でも2023年の新車販売に占めるEVのシェアは30%程度に上昇しており、内需が好調なことから欧州のEV量産体制は整いつつある。これに伴いEUからのEV輸出も、さらに増えるとみられる。
2023年にはドイツのメルセデス・ベンツやBMWなどが2万2890台のEVを日本に輸出した。日本国内でのEV販売に占める輸入車のシェアは25.8%に達しており、高価格帯のモデルが多い。
幸いなことに円安もあり、日本車メーカーの業績は好調を持続している。日本車メーカーは豊富な資金力を活かして海外のEVメーカーを買収し、生産規模の拡大と開発時間の短縮を実現する必要がありそうだ。日本が逸(いち)早く自動車輸出世界一の座を取り戻すには、M&Aしか方法はないだろう。
●超える’24 危機下の日本外交 国際秩序の再生へ行動を 1/16
世界各地で武力紛争が発生し、大国同士の対立も深刻化している。さらなる混迷を避けるためにどんな役割を果たせるのか。日本の外交力が試される1年となる。
国際情勢はかつてないほど厳しい。ロシアによるウクライナ侵攻と、パレスチナ自治区ガザ地区での軍事衝突は出口が見えないままだ。中国を「唯一の競争相手」と位置付ける米国は、二つの紛争への対応で力をそがれている。
11月には米大統領選がある。バイデン政権は同盟国、友好国と連携することで「力による一方的な現状変更」の抑止を目指してきた。「米国第一主義」を掲げるトランプ前大統領が返り咲けば、その路線は行き詰まる恐れがある。
高まる米国追従リスク
米中対立が長期化する中、東アジアの平和と安定を確保することが日本にとってますます重要になっている。
日本は長年、米主導の国際秩序と自由貿易の恩恵を享受してきた。秩序が崩れ、岸田文雄首相が言う「強い国が弱い国を軍事的・経済的に威圧する弱肉強食の世界」になれば、これまでのような繁栄は続けられなくなってしまう。
米国のように強大な軍事力を持たず、経済面でも国内総生産(GDP)でドイツに抜かれ、世界4位に転落する見通しだ。影響力は相対的に低下しているが、持てる力を総動員し、世界の安定に寄与することが求められている。
まず取り組まなければいけないのが、国際ルールに対する信頼の回復だ。
日本を含む主要7カ国(G7)は、国連安全保障理事会の常任理事国ロシアによるウクライナへの侵攻を、「法の支配」への挑戦だと非難してきた。一方で欧米諸国は、ガザ地区攻撃を続けるイスラエルには及び腰で、グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国から「二重基準」との反発を受けている。
法の支配を確かなものとするには、発言力を増すグローバルサウスとの連携が欠かせない。欧米諸国の姿勢に対する新興国・途上国の反感を理解しつつ、自国の安全や経済成長には国際秩序の安定が大前提だと伝え続けなければならない。国際協調の要である国連の機能強化にも尽力すべきだ。
米国が「内向き志向」を強める事態にも備えなければならない。東アジアへの関与継続を強く促すとともに、価値観を共有する韓国やオーストラリア、欧州、インドなどと連携し、安全保障関係の重層化を図る必要がある。東南アジア諸国連合(ASEAN)との協力も極めて重要だ。
こうした取り組みを進めながら、中国との対話を重ねるべきだ。首脳間、閣僚間で定期的に意見交換し、中国自身も既存のルールや国際秩序から利益を得ている面があると指摘し続ける必要がある。
中国との対話が重要だ
米中両国と深い結び付きを持つ日本にとって最悪のシナリオは、両国の対立が軍事衝突を招き、それに巻き込まれることだ。緊張の高まりを防ぐためにも、経済安全保障上の米国の懸念に配慮しつつ、日中の共通利益を追求していく努力が求められる。
冷戦初期、大国同士の対立緩和に向け、日本が主体的に行動すべきだと訴え続けた政治家がいた。今年生誕140年を迎える石橋湛山元首相だ。
1956年に首相に就くと「自主独立の平和外交」を唱え、米国と緊密に連携しつつ追従は避け、中国との関係強化に取り組む方針を打ち出した。退任後は国益と世界の平和を両立するため「日中米ソ平和同盟」を提案し、各国が共存する以外に「日本の生きる道は見いだし得ない」と訴えた。
理想を掲げ、それを実現する現実的な手段をとことんまで探り続けた。大国同士の衝突回避という難題に取り組まなければならない今の日本にこそ、そうした大胆な発想が必要ではないか。
岸田首相は「新時代リアリズム外交」を打ち出してきた。だが、未来を見据える大局的な視点は乏しく、状況の変化への対応に終始してきたように見える。
激動の時代に追求すべきなのは、力にものを言わせる強国本位の安定ではない。大小問わず全ての国が平等に扱われ、安全が保たれる世界に向けた取り組みだ。
その理想に少しずつでも近付いていくため、主体的な外交を全力で展開することこそ、平和国家としての日本の使命のはずだ。 
●「岸田政権は鬼か」能登地震被災者への20万円「特例貸付」1週間後 1/16
能登半島地震の発生から、2週間が過ぎた。石川県は1月15日までに死亡者222人、安否不明者22人と発表している。
「救助活動をおこないながら、次のステップである復旧と復興を視野に入れる段階になりました。政府は被災地支援のため、予備費から47億4000万円を支出することを決め、第2弾として、1000億円を上回る規模の支援を表明、さらに『予備費を5000億円から1兆円に倍増する』とも明言しました」(政治担当記者)
とはいえ、発生からすでに2週間が経ち、実際に「いつ、支援が始まるのか」がわからない。ジャーナリストの池上彰氏も15日放送の『大下容子ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系)で「スピード感を持ってほしいですね」と苦言を呈したように、岸田政権の対応の遅さは目にあまる。
その最たるものが、厚生労働省が都道府県知事に通達した「緊急小口資金の特例貸付」である。緊急を要して、一時的に生計の維持が困難になった低所得者世帯などに生活費を貸しつける制度を、特例として能登半島地震の被災世帯を加えることを決定したのが、発生から1週間以上経った1月9日のことだった。
この制度、貸付金額は原則10万円以内だが『世帯員の中に死亡者がいる』『世帯員に要介護者がいる』『世帯員が四人以上』『重傷者、妊産婦、学齢児童がいる』などの場合は20万円以内になり、所得要件などはない。ただし、貸付なので返済義務がある。据え置き期間1年の経過後2年以内なので、3年で返済しなければならない。
厚労省は「事情により猶予措置はあります」というが、これに世論が猛反発。SNSには《住むところも失い家族も失い20万貸付って岸田政権と厚生労働省は鬼か》《こんな酷い政府聞いたことないぞ》と、怨嗟のコメントが寄せられた。
さらに国民感情を逆なでしたのが、1月14日に被災地入りした岸田文雄首相が「被災世帯へ緊急小口資金の特例貸付を、1週間後をめどに速やかに受付を開始する」という発言である。
「地方自治体が受付窓口になるのですが、その自治体が被災して混乱しています。そのため、ある程度の準備期間が必要になるのはわかりますが、地震から3週間経っての『受付』というのは、いくらなんでも遅すぎます。このあと、支給されるまでどのくらいの日数が必要になるのでしょうか。生活資金がまったくない被災者がほとんどです。政府の対応は冷たすぎます」(週刊誌記者)
SNSにも《貸付けって悪魔》《厳しいなこれ。一年や二年で生活が安定するとは思えないんだが》と、岸田政権に対する怒りであふれていた。「被災者に寄り添う」という岸田首相の言葉を、みな信じることができない。
●裏金疑惑が岸田政権を直撃 経済再生や防衛力強化に影響 1/16
自民党安倍派の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑が岸田文雄政権を直撃している。岸田首相は、自身もキックバックが指摘されている松野博一官房長官の更迭に加え、閣僚・副大臣・政務官や党幹部から安倍派をほぼ一掃する大胆な策に出た。事実上の「内閣改造」で国民の信頼回復を図る考えだが、最大派閥・安倍派抜きの政権運営は不安定さを増すことが確実だ。
政治の空白は国民にとって肝心なことを目立たなくさせる。経済再生を後押しするはずの2024年度予算案の編成は、政治騒動の煽りでかすんだ。24年の通常国会では、国民の評判があまり良くないとはいえ、1人当たり4万円の定額減税を同年6月から実施するための関連法改正も待っているが、もはや話題に上ることが少ない。
ほかにも少子化対策や防衛力強化の財源問題など課題山積だが、政権が安定しなければ、どんな政策も理解されにくい。終わりの見える政権には、その実行力に疑問符がつくからだ。
とはいえ、岸田政権の後に果たしてどのような政権が誕生するのか。自民党の首相であれば、これまでの延長線上で疑惑の追及を受け続けることになるだろう。連続7年8カ月務めた安倍晋三元首相以前の、毎年トップが変わるような事態が生じかねない。
不安定な政権が続くことは外交でも日本の不利益になり得ることは、過去の経験則でもいえる。日本の顔が毎年変われば、まともな外交は機能しない。
ウクライナやパレスチナの悲惨な情勢はいまだ終息せず、24年は1月の台湾総統選、3月のロシア大統領選、4月の韓国総選挙、そして11月の米大統領選と大きな選挙が相次ぐ。軍備増強を続ける中国、核・ミサイル開発で挑発する北朝鮮は相変わらず脅威となっている。
内外に不確実な状況が続く中、日本のカジ取りをどう進めていくか大事な時。今はデフレ脱却の道筋が見え始めた時だけに、政治の果たすべき役割は重いものがある。
日本再生のビジョンを構築できず、政争に明け暮れていては国民のためにならない。与野党の責任はそれぞれに重い。
●派閥解消しないと「党がもたない」の声…意見集約できるのか 1/16
自民党は、全ての所属議員が参加できる形で「政治刷新本部」を開き、政治資金や派閥のあり方について議論しました。
――政権幹部から「派閥を解消しないと自民党がもたない」との声が上がっているということで、それだけ危機感が高まっているということですね?
そう言えると思います。
この政権幹部は以前の取材には「派閥の解消は難しい」と答えていたんです。
自民党に対する厳しい、冷ややかな世論を受け「派閥を解消せざるを得ない」と認識を改めたようでした。
また岸田総理は前回に引き続き、16日も最後まで出席し、全ての発言に耳を傾けました。岸田総理は17日に行われる有識者からのヒアリングにも出席する意向でこうした姿勢からは総理の本気度もうかがえます。
――肝心の岸田総理は派閥の解消についてどんな考えなんでしょうか?
岸田総理の周辺に取材したところ、総理本人は「派閥からカネと人事の機能をなくし、政策集団にするしかない」との考えを示しているということです。
今後は派閥の解消に慎重な麻生副総裁や森山総務会長らとの間でどう調整を図るかが最大のポイントとなります。
――麻生さんのような有力者が慎重な中で、意見を集約できるんでしょうか?
無派閥の議員の多くは派閥解消を訴えていますが、16日の会議でも派閥に所属している議員からは「派閥を解消しても問題解決にならない」という意見が出たほか、あるベテラン議員は「派閥による政策議論、若手育成といった役割は別におかしくない」などと話していて、調整が難しいことは事実です。
そのため、来週を目指している、議論の中間とりまとめでは、あまり踏み込まず、その後、何段階かに分けて改革案を打ち出すことも検討されています。
●石原氏「刑事事件にならない」 安倍派キックバック疑惑議員の刷新本部入りに 1/16
元衆院議員の石原伸晃氏が16日、日本テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」に出演。自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーを巡る事件についてコメントした。
自民党は裏金事件を受けて新設された自民党の「政治刷新本部」を新設。38人のメンバーの中で安倍派は最多の10人。その内9人がパーティー収入の一部を裏金にした疑いがあることについて、石原氏は「その人たちが仮にお金をプールしていたら何のためにプールをしていたか。そしてどういう仕組みで誰が指示して『お前それプールしとけよ』って言ったやつが必ずいるわけですよ。それが誰なのか明らかに刷新本部で言う責任があるね。だって他の派閥関係ないんだから」と話した。
司会のフリーアナウンサー宮根誠司から「キックバックの疑惑ある人たちは入れてはいけないんじゃないんですか」と聞かれ、石原氏は「それは排除の理論になる。この人たちは当事者なんだから、自分たちがその資格ないと思うんだったら、入れるんじゃないってう世論があるんですけど『あなたどうですか』って聞いたらいい。『いやいや私は私の経験を生かしてよくしたいんです』って言う人がいるかもしれない。いなかったいないで。逃げているようなやつはやめたらいい」と強調した。
宮根は「キックバックしたお金はどこに行ったんですかって、この人らはしゃべるべきなんですね」と質問。「だってみなさん、なににどうしたんだって不思議に思いません? 私は不思議に思う」と答えた。パックンことタレントのパトリック・ハーランに「そうするならば調査対象にすればいいんじゃないですか? 調査する側に据え付ける必要はない」と問われると「いやいや、そういうことをやる機関は警察、検察ですけど、この人たちは刑事事件になるような人たちじゃないから入っているわけ。この人たちの責任において政治家のなんだから。『こういうことを事務総長から言われた。事務局長から言われた。で、取ってあってまだここにあります。これ実は会合時に使っちゃいました』とか、少なくともそれは明らかに。刷新会のメンバーにもなったんだから。ならなかったらそれはご自身の意志だけど引き受けたわけでしょ総理から」と話した。
●裏金自民党 卑劣7人衆が「全責任は死人に」まんまと口裏合わせの逃げ 1/16
自民党の諸派閥を舞台とした政治資金パーティーをめぐる「裏金事件」で、5年間で6億円近い裏金作りに手を染めていたとされる安倍派(清和政策研究会)の複数の大幹部が東京地検特捜部の任意の事情聴取に対し、「派閥議員への還流(キックバック)は、派閥の会長が決定する案件だった」と供述していることが明らかになった。
捜査情報を総合すると、「会長案件」との姑息な言い訳を口にしているのは松野博一前官房長官、西村康稔前経済産業相、萩生田光一前政調会長、高木毅前国対委員長、世耕弘成前参院幹事長の「安倍派5人衆」のほか、塩谷立元文部科学相、下村博文元文部科学相という7人の面々。このうち松野、西村、高木、下村の4氏は、安倍派の実務を取り仕切る事務総長経験者でもある。
言うまでもなく、この間に安倍派の会長を務めた細田博之前衆院議長と安倍晋三元総理は、すでに死去している。全国紙司法担当記者が指摘する。
「7人の面々は特捜部の聴取に口を揃えて『派閥の会長と会計責任者がやりとりする案件だった』『自分は政治資金報告書の作成や提出に関わっていない』などと説明していると聞いています。これでは会長と会計責任者に全ての責任を負わせての言い逃れであり、まさに『死人に口なし』の卑劣な口裏合わせと言うべきものでしょう」
しかも特捜部は、7人の面々と会計責任者の「共謀」の立証を諦め、7人については立件を見送る方針を固めたというのだ。この報道が事実なら、大山鳴動の一連の事件は安倍派と二階派(志帥会)の会計責任者2人と、裏金の額が4000万円を超えるとされる池田佳隆衆院議員、大野泰正参院議員、谷川弥一衆院議員の3人を起訴して一件落着、ということにもなりかねない。司法担当記者が続ける。
「残念ながら『大山鳴動して鼠ウン匹』の公算は高い。今回の事件の告発人が再告発を行い、検察審査会で再審査される道も残されていますが、いずれにせよ国民世論は安倍派幹部らの逃げ切りを許さないでしょう。仮に司法で裁かれなかったとしても、今月下旬に始まる通常国会は大荒れに荒れ、自民党は泥沼の局面を迎えることになるはずです」
天網恢恢疎にして漏らさず。この期に及んでの逃げ得など、絶対に許されないのだ。
●能登半島地震の甚大な津波被害が明らかに 特徴的な海底地形など影響 1/16
元日に発生した能登半島地震では、震源に近い沿岸部を中心に北海道から九州にかけ、広範囲で大小の津波が観測された。地震発生後しばらく分からなかった甚大な津波被害の実態も研究者の現地調査や解析などで明らかになってきた。
日本海側では過去にも津波被害が発生している。沿岸部に到達するまでの時間が短いのが特徴で、今回も石川県珠洲市には遡上高(陸地をはい上がった高さ)が3メートル以上の津波が推定約1分で到達したことが東北大学災害科学国際研究所(災害研)の解析で判明した。特徴的な海底地形などが津波の複雑な伝わり方に影響したという。研究者は短時間で襲う津波避難の難しさと避難方法の再検討を訴えている。
半島の「海脚」を回り込んで襲来
気象庁は1日午後4時10分ごろの地震発生後間もなく、東日本大震災以来初めての大津波警報を能登地方に、山形県、兵庫県などに津波警報を、北海道、佐賀県などに津波注意報を発表した。現行の特別警報の区分制度ができてから初めての大津波警報だった。
林芳正官房長官は15日午後の記者会見で石川県の珠洲市、能登町、志賀町の浸水面積は約190ヘクタールに上ると述べた。例えば野球場のグラウンドは1ヘクタール前後とされ、今回広い範囲が津波被害を受けたことが明らかになった。
各地で大小津波を観測し、石川県輪島市の輪島港では午後4時21分に1.2メートルを観測したが、その後はデータが入らなくなった。珠洲市の観測地点では地震直後からデータが得られていない。同市の地盤の隆起が関係して観測不能になったとみられている。
海に面した珠洲市の鵜飼地区には漁港がある。現地からの報道によると、鵜飼川の河口付近では津波が低い堤防を越えて浸水し、川沿いの道路に漁船なども乗り上げた。東日本大震災の後にも沿岸部各地で見られた被害の大きさを示す光景だ。
東北大学災害研の越村俊一教授は、同研究所のほか、金沢大学、北陸先端科学技術大学院大学、金沢工業大学の研究者と「現地調査先遣隊」を結成し、4日に珠洲市に入った。そして同市の津波遡上高は3メートルを超え、沿岸部の建物は2.5メートル以上浸水していたことを確認した。
越村教授らは津波伝播のシミュレーション分析を実施した。その結果、能登半島の先端を回り込んできた津波が珠洲市に到達して大きな被害を与えたことが分かった。到達までの間「飯田海脚」に影響されて津波が拡大した可能性があるという。飯田海脚とは能登半島の北東部から東側に張り出す水深300メートルよりも浅い海底の台地。つまり能登半島から富山湾までの特徴的な海底地形が今回の津波伝播を複雑にしたという説明だ。
断層が沿岸部に近かったため第一波の到達早く
災害研の今村文彦教授らは、今回動いたとされる全長100キロを大きく超える断層のデータなどを基にシミュレーション分析した。
その結果、地震発生から約1分で珠洲市や輪島市沿岸に津波が到達したとみられることが分かった。石川県七尾市には約2分後、富山市にも約5分後に到達した可能性があるという。能登半島の東側の海底断層付近で津波が発生し、珠洲市方向と新潟県上越市の方向の2方向に津波が伝わったことも明らかになった。
今回の津波の特徴は、動いた断層が沿岸部に近かったため第一波の到達が早かったことだという。1.2メートル以上とされた輪島港の観測地点以外ではより高い津波が襲っていたとみられ、実際に現地調査で3メートルを超える遡上高が確認されている。
今村教授によると、地震発生から約2時間後にはロシア側の大陸や朝鮮半島に20センチ程度の津波が到達し、その後2時間で日本海沿岸部に戻ってきた。津波は高さこそ次第に低くなったが24時間以上継続。津波注意報も長く出されたままだったのはこうした現象があったためだという。
富山市にも短時間で津波が到達したとみられることについて今村教授は、富山湾の水深が深く、急勾配の海底地形や海底谷が多く、海底で地滑りが起きて大地震とは別の新たな津波が発生した可能性があると指摘している。
避難タワー設置などは喫緊の対策
今村教授は、今回の津波被害により船が沿岸部に流され、車が流された光景は東日本大震災の甚大被害を想起させるという。東日本大震災では高さ10メートルを超えるどす黒い大津波が多くの尊い命を奪った。恐ろしいことに最悪で32万人を超える犠牲者が出るとの試算もある南海トラフ巨大地震も、2018年時点で「30年以内に70〜80%の確率で起きる」と予測されている。
今回の能登半島地震に伴う津波は沿岸部にあっという間に到達した。今村教授は「日本海の地震で今回のように津波を伴うケースはこれまで頻度が低かったが、今後も起こると考えた方がいい」と警鐘を鳴らす。そして「地形や海底地形の解析や海底地滑りによる津波想定も必要だ」と指摘。「今回の津波の被害や分析結果で得られた教訓をこれから津波対策に生かさなければならない」と強調している。
ただ、今回のように津波到達までの時間が短い場合の避難は容易ではない。南海トラフ巨大地震では想定震源から近い東海地域などは特に短時間で大津波が到達するとみられ、避難対策の再検討が必要だという。今村教授は喫緊の具体的対策として、沿岸地域に緊急の避難タワーや避難ビルを設置することや重要施設の高台移転などを挙げている。

 

●能登半島地震の震源域 半島の北東断層ずれ動かず “注意を” 1/17
今回の能登半島地震で、震源域の断層の動きを専門家が分析した結果、能登半島の北東にある断層がほとんどずれ動いていなかったことが分かりました。専門家はこの断層で規模の大きな地震が発生すると新潟県の沿岸に津波が押し寄せるおそれもあるとして注意を呼びかけています。
政府の地震調査委員会によりますと、今回の地震の震源域は、能登半島の西から北東にかけてのおよそ150キロの範囲におよび、これまでに確認されている複数の活断層が関係している可能性が高いなどとしています。
東京大学地震研究所の佐竹健治教授は、各地で観測された津波の波形から、震源域の断層がどう動いたか分析しました。
その結果、能登半島の北側の沿岸に沿ったエリアと、隣り合う断層がそれぞれ大きくずれ動いた一方、最も北東側の沖合の断層はほとんど動いていなかったことが分かりました。
この領域では、今月9日にマグニチュード6.1の地震が発生していますが、新たにマグニチュード7クラスの地震が起きた場合、佐渡を含む新潟県の沿岸に高さ3メートル程度の津波が押し寄せるおそれがあると指摘しています。
佐竹教授は「能登半島でも地震活動が続くと思われるが、震源域が広いので周辺でも日頃から備えを確認してほしい。日本海で津波が起きると到達時間が短いので注意が必要だ」と話しています。
●玉川徹氏 自民の巨額裏金事件で「脱税の問題はどうなるの?」 1/17
元テレビ朝日社員の玉川徹氏が17日、コメンテーターを務める同局「羽鳥慎一モーニングショー」に出演。自民党が16日に派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けて設置した政治刷新本部の全体会合を開き、党改革に向けた全党議論を実施したことに言及した。
派閥の政治資金が問われている事態を踏まえ、無派閥議員を中心に派閥を解消すべきだとの意見が相次いだ。一方、役割を肯定的に捉える主張も上がり、賛否は割れた。政治資金の透明化や厳罰化を求める意見も出た。
党によると、党所属議員約380人のうち150人前後が出席。50人以上が発言し、会合は3時間にわたった。本部長を務める岸田文雄首相は冒頭「国民の信頼を回復するため、日本の民主主義を守るために自民党は変わらなければならない」と述べた。
玉川氏は「自民党の動きもそうなんだけれども、キックバックの責任の話はどこいっちゃったんだろうなと。今後の話ばっかりして、今はキックバックの問題があったからこそ、こういう話になっている。そっちの責任の話はどうなったんだろうなというのがあります」と指摘。「明らかにしろっていう話もそうなんだけれども、今議論されている中で見落とされていると思うのが、近々、収支報告書を修正するという話がありますが、収支報告書を修正してチャンチャンですかって僕は凄く思うんですよ」と話した。
そして、「今、僕は確定申告をやろうということで一生懸命にやっていて面倒くさいんですよ。で、これ脱税の問題はどこにいきましたって話なんですよ。というのは、政治資金だからこそ税の問題が問われないんですよ」と言いつつ、「しかし、今回、安倍派の方から政治資金収支報告書に記載しなくていいという話を受けて記載してないということですよね。つまり政治資金じゃないということです。ということは、そのキックバックのお金というのは課税所得なはず。課税所得のはずなのに、それを修正申告すると、あれは政治資金でしたっていう話にするってことで、脱税の話がなくなっちゃうんですよね。これおかしくないですか?」と問い掛け、「われわれ、例えば1000万円の所得を申告しなかったら、確実にやられますよ。税金を払えという話が来ますよ。だけど、これ政治資金だから脱税の話になりませんよってしようとしているんですよ。それでいいのか」と問題提起した。
これについて、政治ジャーナリストの田崎史郎氏は「この後、不起訴にするかというところの問題点とは別に、自民党独自でこの問題にどうけじめをつけるのか。対策などは刷新本部でやっていますよ。それはそれとしてやってもらって、リクルート事件の時は、株をもらった人はそれを全部寄付しなさいと。そして、役職停止にしたんですよ。そういう措置は自民党として必要なのでは。自民党のけじめが求められるようになると思います」と自身の見解を述べていた。
●萩生田光一氏が「お膝元選挙」でアノ手コノ手の悪あがき… 1/17
波乱を呼びそうだ。
21日投開票の東京・八王子市長選挙は、自民党派閥パーティーの裏金事件が直撃。地元選出で安倍派の萩生田光一前政調会長が焦りまくっている。萩生田氏自身、販売ノルマ超過分のキックバック数百万円を収支報告書に記載せず裏金化したとみられる張本人。厳しい民意が支援候補に飛び火しかねないからだ。
選挙の構図は、萩生田氏が支援する自公推薦の元都庁職員・初宿和夫氏(59)、小池都知事が特別顧問を務める「都民ファーストの会」の元都議で、立憲や共産などの支持を受ける滝田泰彦氏(41)、元都ファ都議の両角穣氏(61)による事実上の三つ巴。
保守系の支持層が厚い八王子は「萩生田帝国」といわれているが“帝国崩壊”の危機にビビる本人は、あの手この手で策を弄しているようだ。
「昨年秋の時点では、初宿さんと滝田さんの一騎打ちになるとみられていたが、12月中旬に両角さんが出馬表明。これに先立ち、萩生田さんサイドが両角さん側に『出るな』と圧力をかけたそうです。両角さんは八王子市議時代に自民会派に所属していたこともあり、保守層から受けがいい。12年の市長選では『みんなの党』推薦で出馬し、6万票以上を獲得。自民推薦候補に詰め寄った。両角さんに保守票を食われかねないため、萩生田さんは焦っているといいます」(地元関係者)
“自分隠し”にも必死
“女帝”を取り込むためにも手を打っている。
「滝田さんを水面下で支える都ファの都議たちは、小池知事を応援に引っ張り出したい。ところが、知事本人は昨年末の江東区長選で子飼い候補を自公が推薦したバーターで、八王子市長選では『都ファの応援をしない』との密約をしたのではともっぱら。実際、応援入りの予定はなく、萩生田さんと握ったとみられています」(都政関係者)
告示日の14日に初宿氏はX(旧ツイッター)で「必勝」と記された小池知事の為書きの写真を紹介。〈小池都知事からのエールに感激です!〉と“女帝取り込み”をアピールしている。
さらに、萩生田氏本人は“自分隠し”にも必死だ。
「初宿さんの出陣式で、萩生田さんは裏金事件について『おわび申し上げます』などとサラッと話した後、聴衆に紛れてジッとしていた。『自分が表に出るとマイナス』と分かっているようです」(地元関係者=前出)
ある政党の情勢調査によると「初宿、滝田が横一線。両角が猛追」という争いになっているもようだ。“帝国崩壊”なら、次期衆院選で萩生田氏のクビは危うい……。
●谷川弥一衆院議員がキックバックされた現金を返還意向 1/17
自民党の派閥の政治資金パーティー裏金問題で多額のキックバックを受け収支報告書に記載しなかった疑惑が持たれている長崎3区の谷川弥一衆院議員(82)がキックバックされた現金を返還する意向であることがわかりました。
谷川衆院議員はおととし(2022年)までの5年間に4000万円以上のキックバックを受け、収支報告書に記載していなかった疑いがもたれ、東京地検特捜部の調べを受けています。
NCCの取材に対し谷川議員は不記載を認めていて「近く特捜部の最後の聴取がある。そこで立件されれば議員も辞職する」と話しています。
特捜部は週内にも谷川議員の聴取を終結すると見られ、谷川議員はその後、地元で会見を開く意向です。また4000万円を超えると言われるキックバックされた現金も「5年以内のものは明細も含めすべて保管している。支出した人に意向を聞き、返還を希望する人には返すつもりだ」と話しています。
谷川議員は現在7期目。衆議院の小選挙区の区割り変更で次の選挙から比例九州ブロックから出馬する予定でした。谷川議員が議員辞職した場合、4月28日に補欠選挙が旧長崎3区で実施されます。
●田崎氏 自民党批判に“反論”「内閣支持率は5P、政党支持率は7P回復」 1/17
政治ジャーナリストの田崎史郎氏が17日、テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」に出演。自民党批判に“反論”する場面があった。
番組では、自民党派閥の裏金事件について議論。自民党が16日に派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けて設置した政治刷新本部の全体会合を開き、党改革に向けた全党議論を実施、派閥の政治資金が問われている事態を踏まえ、無派閥議員を中心に派閥を解消すべきだとの意見が相次いだ一方、役割を肯定的に捉える主張も上がり、賛否は割れた。政治資金の透明化や厳罰化を求める意見も出たことなどを伝えた。
フリージャーナリストの浜田敬子氏は「35年前に派閥の弊害は言語化されていて、でもゾンビのように派閥は、何度も解消しようという議論はあったけれどもよみがえって、今日に至っている。ということを考えると、自民党に改革は無理だということですよね、分かったことは」と指摘した。
この意見に田崎氏は「そう思われる方はいるでしょうね」としつつ、「ただ直近の共同通信の世論調査だと、内閣支持支持率が5ポイント回復。自民党の政党支持率は7ポイント増えている」と説明。浜田氏の「それは震災の影響が大きいと思う。岸田さんが現地行くとか、こういった震災が起きた時は、どちらかというと政権側の支持率が上がるのは、いつも起きること」には、田崎氏は「野党の支持率は減っているんですよ」と“反論”した。
●「裏金無罪」絶対許すな!黒い政治家を徹底断罪しないと腐敗根絶できない 1/17
裏金疑惑がある安倍派9人が「政治刷新本部」のメンバーに
自民党の最大派閥である安倍派を中心とする裏金問題が発覚し、岸田文雄首相は1月10日、再発防止に向けた新しい組織「政治刷新本部」を自民党内に発足させた。
5億円を超える裏金があるとされる事件で政権幹部を担った人物が次々と捜査を受けている事態において、12月上旬には炎上していた案件に対して、何を悠長なことをやっているのかと怒りを感じた国民も多いのではないだろうか。とりあえず早急に組織だけは立ち上げておいて、中身は後から考えればいいだろうに。岸田首相の支持率が低い理由も分かる気がする。
その上、政治刷新本部のメンバーの正当性にも早速、疑問の声が上がっている。メンバー38人の中で、疑惑の渦中にある安倍派が最多の10人を数え、しかもそのうち9人に裏金疑惑があるからだ。さらに、フランス・パリへの自称「研修旅行」で「エッフェル姉さん」とやゆされて大炎上した、松川るい氏までその名を連ねており、大いに物議を醸している。
日本を含めて民主主義の下では、国民が政治家の決定に影響を与えることができる。しかし、政治家の決定がいつも国民の意向を反映していると感じる人は少ないだろう。
日本政治の腐敗を感じるのは今回の裏金キックバック問題だけではない。「ブライダルまさこ」と大炎上した自民党の森まさこ議員がぶち上げた、「少子化・インバウンド対策」だという「外国人が日本で挙げる結婚式の補助金」。過疎地域にそびえる立派過ぎる役所。前述のエッフェル姉さんご一行による自民党女性局の自称「研修旅行」など…。国民の目が届く範囲だけでもこれだけの腐敗が進んでいるのだから、国会議員全体ではどれぐらいの規模になるのか想像もつかない。
政治とカネを巡る問題が常に起き続けている現状を見ると、やはり権力は腐るものなのだなあと感じざるを得ない。では、どうすれば、抜本的な改革ができるだろうか。
政治資金の透明性を高めても「全くダメ」な理由とは?
いま、日本では「政治資金の透明性を高めよ」という議論が沸騰している。そこで先行研究を調べてみると、透明性を高めるだけでは全くダメだという結論にぶち当たった。
今回は、2018年に学術雑誌「Journal of Public Economic Theory」に掲載された「透明性は政治腐敗を減らすか?(Does transparency reduce political corruption?)」をひもといてみよう。この論文は発表後、すでに19以上の学術論文に引用されている。政治腐敗研究では有名な論文だ。
内容を簡単にいえば、以下の通りだ。
透明性を高めることが政治腐敗を減らす解決策だとよく言われている。しかし、この論文はそれに異議を唱えている。「たしかに透明性を高めることで腐敗は減少するかもしれないが、実際には腐敗に使われる賄賂の金額が増える可能性があるということ」だという。
「透明性が低いシステムでは、市民が政治家に影響を与える動機付けがあまりない。その結果、腐敗者は政治家に影響を与えるためにそれほど努力する必要がない。腐敗は広がるが、賄賂の額は低いのだ。一方、透明性が向上すると市民は力を得るので、腐敗者の影響に対してより積極的に立ち向かう。しかし、腐敗者も反撃し、賄賂の額が増える」
「透明性を高めることが悪い政策だと言っているわけではない。透明性が高まれば、政治家がより効率的な行動を取らざるを得なくなるので、期待される厚生が増加する。ただ、透明性の向上は、政治家の権力の影の価値をも高める。腐敗者はその権力に影響を与えるために、これまで以上に多くの賄賂を支払う準備ができているので、期待される賄賂は増加する」
簡単に言えば、政治家がどんなお金の流れで収入を得て、どんな政策決定をしているかが国民に分かるようになると、不正をしようとする人たちは奮起してさらに頑張ってしまうということだ。当然ながら、裏金キックバックの問題において、国会内でおそらく透明性を高める議論や法改正が行われるだろう。しかし、それだけでは不十分であり、むしろ汚職を広げる可能性があるということになる。
政治とカネの透明性を高めても 完全な情報を把握するのは難しい
どうしてこのようなことが起きてしまうかというと、結局のところ、政治家についての完全な情報を国民は得ることができないためだ。
例えば、実際に起きている話としては、政治家が乗っている運転手付きのリムジンが、実はタクシー会社のもので、その会社の取締役に政治家のきょうだいが就任している、といったものがある。その政治家のきょうだいのための社用車であるが、きょうだいが自由に使ってよいことから実態上は政治家事務所の車となっている。わざわざ秘書の車の名義まで確認するメディアはほとんどない。
また、ある会社が業務委託として契約した人物を、政治家事務所に「無報酬のボランティアスタッフ」として送り込んでいるケースもある。その人物が正社員の場合もあるが、その場合はフルタイムで政治家事務所で働いていることと整合性が取りにくい。一方、業務委託なら簡単な報告を日々するだけで問題は起きないようだ。
政治家のカネの一部分を透明にしたところで、いたちごっことなって腐敗がなくなっているのかどうかが分からないというのが、私の実感だ。むしろ狡猾(こうかつ)な世襲政治家がどんどん有利になっていくリスクが高い。
「競争効果」と「効率効果」で政治の腐敗を根絶する
では、現状の腐敗を根本からなくすためには、どうすべきなのか。その答えは、この論文にも登場する「競争効果」と「効率効果」にある。
まず、競争効果を利用することについてだ。
例えば、ある企業が政治家にお金を払って特定の政策を実行してもらおうとする。これが汚職だ。企業はその政策が自分たちに利益をもたらすから、政治家に影響を与えようとするわけだ。
一方で、私たち国民の側も政治家の行動に影響を与えたいと思っているが、私たちの目的は公共の利益を守ることだ。
ここで競争効果が登場する。それは国民が「企業の提供する金銭的な価値と同等かそれ以上の影響力」を政治家に与えないと、汚職が起こる可能性があるということだ。つまり、私たち国民が政治家に対して襟を正す十分な動機を提供しなければ、政治家はお金を払う一部団体の方へと引き寄せられていってしまうことになる。
今回の裏金問題でいえば、こうした裏金問題を起こした連中を完膚なきまでに、評判から名誉から何から何までたたき落として後悔させるしかない。そうすれば、2度と裏金問題を起こそうと思わないだろう。
次に、効率効果だ。効率効果とは、国民と企業のどちらが政治家に対して魅力的な報酬を与えられるかによって、政治家の政策が左右される現象のことだ。例えば、政治家が、ムダとしか考えられない補助金を出さないことを公約し、それが実行されたときに国民が投票や支持を約束することができれば、政治家は「効率的な」政策を採用しやすくなるということだ。
米国では、ほとんどの共和党議員が「任期中のあらゆる増税に反対する」という署名を行っているが、実際、この過酷な約束を実行すると、政策効果のない補助金などに支給する財源などなくなってしまう。しかし、共和党議員がこの署名をすると、選挙で保守系団体の強力なネットワークによる支持が得られ、選挙で優位になることは有名な話だ。
その結果、ムダな政策の原資も腐敗も絶たれていく。日本でもこうした政党が生まれることを期待しよう。
さて、今回の話をもう一度整理すると、以下のような結論に至るのではないか。
(1)透明性は高い方がいいが、政治資金の透明性を高めても腐敗はなくならない
(2)不正や腐敗には、厳しい姿勢で徹底的に臨む。やってしまったことを政治家に激しく後悔させる。今回は関係ないが、これからやりかねない政治家たちを震え上がらせる必要はある
(3)補助金や規制など腐敗を生む政策を原則しない、させない社会風土をつくっていく
この三つで、日本は腐敗政治から立ち直ることができるだろう。
●政府の少子化対策は「異次元」でも本質的でもない 1/17
政府の少子化対策は抜本的解決を期待できる範囲・レベルのものではなく、しかもこの視野の狭さは確信犯的だ。真に求められているのは、特に女性たちが安心して早めに結婚と子育てに踏み切ることができる社会構造だ。
日本政府のいわゆる「少子化対策」の中身と規模感、そして裏付けとなる財源の見込みを見ると、残念ながら抜本的に解決する覚悟が見受けられるものではない。「異次元」というにはあまりに小出しで、あまりに偏っているのだ。
岸田政権が打ち出した少子化対策は、1経済的支援、2サービス充実、3育休強化の3本柱で成り立っている。1はあくまで子育てへの経済的負担を軽くしてあげようという支援なので、これらはすべて「既に子育てに入っている人たちの今の困り事を解決してあげよう」という発想からの施策でしかない。
これで可能なのは、既に子どもを一人育てていて「もう十分」と考えてしまいがちな夫婦に「(先々の経済的余裕に自信が持てるようになれば)二人目の子どもを産み育てるのも悪くないな」と思ってもらう可能性を高めるくらいのことだ。やらないよりはずっといいが、「これで少子化対策はバッチリ」みたいなドヤ顔をされることは止めて欲しい。
この3本柱には、「未婚・晩婚化」と「晩産化」への対策という最も本質的な少子化対策視点が欠けている。すなわち、(1)経済的な不安が大きいため、(結婚したくても)結婚に踏み切れない人たちに「思い切って結婚しちゃおう!」と踏ん切らせる、(2)(結婚はしたけど)「自分のキャリア等を考えると、子どもを産み育てることを躊躇し先送りしてしまう」若い奥さんに安心して子どもを産む気になってもらう、という視点だ。
ではこの「視点の偏り」は、政府関係者および与党幹部がうっかり見落としていたためだろうか。そんなはずはない。政権の中枢にある政治家には中央官僚や学者をはじめとした様々なブレーン、つまり頭脳集団がついている。彼らが見逃すはずがない。つまり岸田政権の少子化対策が「既存子育て集団にだけ焦点を当てている」構図は、かなり確信犯的なのだ。
多分、長年にわたって何やかやと少子化対策をやってきたつもりの(しかもカネで解決することしか発想できない)中央官僚と与党政治家諸氏からすれば、上記の(1)と(2)の課題は(必要性は分かっていても)あまりに根が深くて、「打つ手なし」という認識なのだろう。
さすがに政治的には白旗を挙げることはできないので、既存子育て層にだけ焦点を当てて「やっている感」を出せばいい、と考えたのではないか。つまり「(本当は違うけど名称だけは)異次元の少子化対策」というのは一種のアリバイ工作なのだと解釈できる。
では本当に、真の少子化対策は「打つ手なし」なのだろうか。そんなことはないはずだ。少子化というのは、政治家・中央官僚たちがそこまでの危機感を持たずに安易に問題を先送りし続けた結果に過ぎないのではないか。
この問題解決のためにはまず、様々な政策研究集団や社会問題研究家たちが既に実施している分析に基づいて、「日本がなぜこれほどの少子化社会になってしまったのか?」という構造的要因から振り返ってみるべきだろう。
ずばり、若い世代、特に女性に対し経済的に不利な立場を押し付けてきた、高齢男性による同質的意思決定で固められたアンフェアな社会構造への、女性たちの無言だが怒りを秘めた抵抗が「未婚・晩婚化と晩産化による少子化」という形で出てきているように小生には思われる。
特に女性に対し補助的役割や非正規雇用という理不尽な役回りを押し付け、経済的に苦しい立場に追いやった結果、しかし高等教育を受けた現代女性は(昔の女性たちのような)すぐに「結婚に逃げる」方策はなかなか採らなかった。(上の世代から連綿と引き継がれてきた)男性側の「俺が養ってやるのだから妻は言うことを聞くべきだ」という鼻持ちならない優越意識がまだまだ消えていないことを敏感に感じていたためだ。
特に東京のような大都会で就職した女性たちはぎりぎりまで独身を謳歌した上で、またはキャリア上の機会を追求した上で、でもせめて一度は妊娠・出産したいので、「これ以上先延ばしできない」段階になってようやく結婚するという「精一杯の抵抗」を男性優位社会に対し行使してきたのだ。その結果、彼女たちの結婚年齢と出産年齢は軒並み上がり、一人の子どもを生んで育てるだけで「打ち止め」という状況を多く生じさせたのだ。
しかし彼女たち個々人の抵抗は総体としてはむしろ自分たちに跳ね返って、自らの首を絞める結果になりつつある。現役世代が高齢世代を支えるという年金や介護保険の構造のため、少子化が進むにつれて支える層が少なくなり、若い世代ほど一人当たりの負担は重くなる。
その一方で、彼女たちが本来抗議の意思をぶつけたかった対象である、今の社会構造を固定化させた元凶である高齢男性の元リーダーたちはとっくに引退しており、悠々自適の老齢期を過ごしているか、既に鬼籍に入っているため、少子化が幾ら進展しようと痛くも痒くもない。何とも皮肉な構図だ。
平成不況期を通じてしわ寄せは女性だけでなく結婚適齢期の男性全般にも及んだ。男性も女性も実質賃金が長いこと抑えられてきた結果、そもそも双方の収入を合わせても、子育てできる貯金もなかなか貯まらない、それだけの居住空間を確保することもできない。そんな経済的に見通しの立たない若いカップルが増えており、特に東京などの大都市に多い。そりゃあ子育てどころか結婚にも踏み切れないのも当然だ。
そして何とか結婚に至ったとしても、夫が家事・育児を分担する姿勢を見せない、または夫の職場が分担を許さない環境にあれば、ワンオペ育児を強要させられることを想像した妻が、子どもを持つことを躊躇するのは理の当然だ。
結局、本質的に少子化トレンドを反転させるためには、1若い世代の収入を上げること、とりわけ東京に集まる/留まる必要がないよう地方で若者が世帯を持てるだけの収入を得られる仕事を増やすこと、そして2夫婦が家事・育児をフェアに分担するよう、若い男性の意識とその職場の制度・運用を変えさせること、という極めて当たり前のことを着実に進めるしかないのだ。
確かに、そうした課題には中央の政治・官庁の幹部たちは思った成果を出せていない。だからこそ彼らは「もう打つ手なし」という認識に至っているのだろう。しかしそれは安易な責任放棄というものだし、本当に知恵を絞って思い切った策を採ってきたかというと極めて怪しい。手をこまぬいてきただけでなく非正規雇用の拡大などの悪手を繰り返してきた、過去の政治家と官僚の責任は重大である
三村明夫氏や増田寛也氏ら有識者のグループが「人口ビジョン2100」で提言するように、人口減少に歯止めを掛けるべく、官民挙げて対策に取り組む必要があるのは明らかだ。覚悟を決めて相当抜本的な対策に取り組まないと今の出生率トレンドを反転させることは容易ではないし、2030年までが最後のチャンスだろう。政治的なアリバイ作りにかまけている暇はこの国にはないのだ。
まずは若者たちを苦しめてきた、(一部の政商の言いなりになって安直に拡大してきた)非正規労働の対象・条件をもう一度強く規制し、安易な人件費抑制の手段にさせないことから、国の変革への覚悟を見せるべきだろう。
付け加えるなら、出生数推計の母数となる「出産適齢期にあたる若い女性の人口」が既に大幅に減った現在、単に彼女たちを早めに結婚に踏み切らせて子どもを生む気になってもらうだけでは、今の少子化トレンドに歯止めを掛けるにはもう遅いことも我々国民は理解すべきだ。したがって同時に実施すべきは移民政策であり、外国人居住者を大幅に増やす方策である。このための議論も避けてはならない。
●能登半島地震の復興・復旧に補正予算を組まず予備費で対応… 1/17
政府は16日、能登半島地震の復旧・復興に備え、2024年度予算案の予備費を1兆円に倍増する変更を閣議決定した。被災地には財政支援が不可欠だが、予備費の増額のみで補正予算を編成しないのは異例。新型コロナ禍を契機に国会の議決を経ずに閣議だけで使い道を決められる予備費が急拡大し、政府の「便利な財布」が常態化している。
過去は1〜2カ月で「補正予算」をスピード成立
能登地震の復旧・復興に向け、政府は予備費で対応する。23年度予算分は既に47億円の支出を決め、4600億円超が残る。さらに、これから審議が始まる24年度予算案で昨年12月の閣議決定から5000億円を積み増して倍増させる。新年度の予備費は物価高と賃上げ対策に限定した1兆円と合わせて計2兆円に上り、一般会計総額は計112兆5717億円となる。実際に使えるのは国会で予算成立後の4月以降だ。
過去の地震災害では、今回とは違って予備費と補正予算が併用されてきた。能登半島地震と同じ1月に発生した1995年の阪神大震災では約1カ月で最初の補正予算が編成され、2月28日の国会でスピード成立した。能登地震より死者数の少ない北海道地震(2018年)や新潟県中越地震(04年)でも1〜2カ月で補正予算が組まれた。
使い道を災害対応に限定せず
補正予算を組まない対応について、財務省幹部は「当面の支出は23年度予備費の残り4600億円で足りる感触だ」と説明する。その上で、7000億円の予備費を含む補正予算を編成した16年の熊本地震よりも被害が大きくなっても対応できるよう、新年度予算案で5000億円増やした。
熊本地震の際の予備費は使い道を災害対応に限っていたが、今回増額されたのは使途が限定されていない一般予備費。「特定の目的にすると対応の柔軟性が損なわれる」(財務省幹部)というのが理由だが、災害以外のことに使用される余地もある。
「政権が便利に使う常とう手段になっている」
例年は5000億円だった予備費は、20年のコロナ禍以降、一時は10兆円ほどまで急拡大した。財政に詳しい大和証券の末広徹氏は「コロナ禍以降、予備費のたがが外れ、政権が便利に使うための常とう手段になっている」と指摘。「年度内の支出が足りるなら、新年度に補正予算を組むか能登地震の対応に限った予備費にするべきだ」と話している。
予備費 / 災害や経済危機といった不測の事態に備え、事前に使い道を決めずに予算計上する費用。使途を限定しない一般予備費が5000億円規模で計上されてきた。コロナ禍に感染対応に限った巨額予備費が設けられるようになり、物価高対策や賃上げ促進などにまで別枠計上が広がっている。
●自民裏金疑惑 安倍派幹部立件見送りも、ほくそ笑む岸田首相… 1/17
「邪魔者は排除できた」「二階さんにも恩を売った」「支持率も少しだけアップ…」
「検察は巨悪を眠らせるな」「検察仕事しろ」1月中旬、X(旧ツイッター)にはこんな書き込みが溢れた。多くが「日本最強の捜査機関」の異名を持つ東京地検特捜部への怨嗟の声だ。「リクルート事件」以来ともいわれる一大疑獄事件となった自民党の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑だが、最終的に安倍派(清和政策研究会)の幹部の立件を見送る方針が伝えられ、世間の怒りが沸騰している。
「岸田さんは最も邪魔だった勢力を排除することができた」
「岸田さんの思い通りの展開なんじゃないですか」
こう苦笑いするのは、政界事情に精通する与党のあるベテラン秘書である。
「今回の事件が『岸田政権を揺るがす』という人もいますが、とんでもない。岸田さんは政権を運営する上で最も邪魔だった勢力を排除することができた。厄介払いができたというのは、言うまでもなく、安倍派のことです」
総勢99人が所属する自民党最大派閥の安倍派は、岸田首相にとって政権運営のカギを握る勢力だった。実際に「数は力」とばかりに同派は政権発足当初から影響力を発揮。安倍晋三元首相亡き後は結束力に陰りが見えたものの、閣僚や党役員の顔ぶれを見れば、首相ですらその存在を無視できないのは一目瞭然だった。
象徴的だったのは、「五人衆」と呼ばれた安倍派幹部の処遇だ。
岸田首相は2021年10月の第1次政権を皮切りに、2021年11月、2022年8月、2023年9月とこれまでに3度組閣しているが、松野博一氏は一貫して官房長官を務め続けた。西村康稔氏は要職の経産大臣を務め、萩生田光一氏は党内で各政策を議論する部会をまとめる政調会長の任に。世耕弘成、高木毅両氏もそれぞれ参院幹事長、選対委員長といずれも重要なポストを割り当てられていた。
だが、そんな彼らのキャリアが暗転したのが、件の「政治資金」を巡る疑惑だった。
「『特捜部が派閥のカネを洗っている』という噂が永田町に一気に広がったのが昨年11月末ごろ。当初から安倍派の金額が突出しているといわれていましたが、捜査対象になっている具体的な名前が出回り出したのは12月に入ってからでした」(全国紙政治部記者)
派閥から課されるパーティー券の販売ノルマの超過分を、議員側に戻す資金の環流が「キックバック」として報じられ、党全体に危機感が広がった。パーティー券購入者のうち、個人は5万円、団体は20万円以下の購入者は無記名とすることが可能になるなど、政治資金規正法の不透明な実態が明らかになったからだ。
「早くカタがついて欲しいというのが正直なところだよ」
特捜部の捜査リストに名前が上がらず、今回の問題では、比較的ダメージが小さいとみられている茂木敏充幹事長率いる茂木派(平成研究会)の中でも危機感は広がっていた。
「うちの場合、日歯連事件で政治資金では痛い目に遭っているから、派閥へのカネの『入り』と『出』については、きっちりと収支報告書に記載するようにしていた。パーティーのノルマ超過分の戻しは派閥からの寄付という形で処理していたが、それもキックバックといわれるとはなはだイメージが悪い。早くカタがついて欲しいというのが正直なところだよ」と声を潜めるのは、同派のある中堅議員だ。
日歯連事件とは2004年に発覚した疑獄事件。日本歯科医師連盟での汚職事件に端を発し、橋本龍太郎元首相ら平成研の幹部に日本歯科医師会側から1億円がヤミ献金として流れていたことが発覚し、会長の橋本氏の辞任に発展するなど、同派は壊滅的な打撃を受けた。
当時と同じように政権への逆風が強まるなか、岸田首相は昨年12月14日に松野氏をはじめとする安倍派の4閣僚を交代させる人事を断行し、局面打開を図った。このころには特捜部の捜査の狙いが徐々に明らかになってきていた。
「安倍派で危ないのは10人、と具体的な数字も出るようになった。内訳は安倍派の事務総長経験者に加えて、不記載のキックバックが4000万円以上の高額になる議員だ、と一斉に情報が回りました。同じタイミングで浮上したのが、『不記載を認めないと身柄を取られることもあり得る』という噂。いま思えば特定の議員への警告の意味合いも込めて検察がリークした情報だった気もしますが…」(前出の政治部記者)
衆院議員の池田佳隆容疑者(57)の周辺が騒がしくなったのもこのころだ。特捜部は1月7日、池田容疑者らを政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで逮捕。キックバックを受けた資金に関する証拠隠滅を図るなど悪あがきを続けた末に、在宅起訴が通例とされるなかで「異例」ともいえる身柄拘束に至ったのである。
9月の総裁選も乗り切って長期政権を築くのでは
一方、岸田首相は、民衆の中で高まる政権への批判の声を受け、政治資金制度の見直しを図るための党内組織「政治刷新本部」を立ち上げる意向を表明した。しかし、メンバーとなった安倍派の所属議員10人のうち9人に「不記載」が発覚するなど政治不信の払拭には至っていない。政権は、じりじりと追い詰められているようにも映るが、前出のベテラン秘書は異なる見方を示す。
「これまでの流れは、岸田さんのプラン通りにほぼ進んでいるのだろうと思います。思惑通りに安倍派を排除したし、二階(俊博元幹事長)さんも抑え込んだ。というのも、安倍派とともに捜査対象になっているとされる二階派では、安倍派のような資金環流は行われず、派閥内で資金をプールし、そのほとんどを二階さんが握っていたといわれているからです。特捜部は二階さんを所得税法違反の線で狙っていたようですが、どうやら捜査は本丸にまでは及ばなさそうです。
官邸と特捜部が捜査の落としどころについて擦り合わせているとすれば、二階さんに恩を売った形です。菅(義偉元首相)さんが、派閥解消を訴えて目立っていますが、政権をひっくり返すほどの大きなうねりは起こせていないし、安倍派も壊滅して自分の地位を脅かすようなライバルは当面出てくる気配はない。この調子なら9月の総裁選も乗り切って、長期政権を築くのではないかと見ています」
この見立てを裏付けるように、NHKが1月12〜14日に行った最新の世論調査では岸田内閣の支持率が昨年12月から3ポイント上昇し26%。共同通信の13、14日の調査でも昨年12月から5ポイント上がって27.3%だった。
相変わらずの低空飛行ではあるが、SNSで広がる「岸田離れ」とは真逆の民意が示された形だ。意外とも思える狡猾さでのらりくらりと政権運営を続ける岸田首相。ただ、その視線の先に国民がいないことだけは確かだ。 
●岸田首相、政労使会議の月内開催調整 春闘の賃上げ呼び掛け 1/17
岸田文雄首相は17日の政府・与党連絡会議で、政府と労働界、経済界の代表による「政労使会議」の開催を調整していると明らかにした。
首相周辺によると月内に開く方向。春闘を見据え、「物価上昇を超える賃上げ」を呼び掛ける。6月には定額減税を実施する予定で、支持率が低迷する中、政権浮揚につなげたい狙いもあるとみられる。
政労使会議は昨年3月と11月に続き、岸田政権で3回目。連合は春闘で昨年を上回る「5%以上」の賃上げを要求する方針を掲げている。
連絡会議で、首相は「官民が連携し、賃金が上がり可処分所得が増える状況を今夏には確実につくる。国民の実感を積み重ね、社会全体の意識を変えていく」と強調。医療、介護、障害者福祉の団体に対し、近く賃上げを要請する意向も示した。
●首相が政労使会議開催の意向 「物価目標上回る賃上げ」に意欲 1/17
岸田文雄首相は17日、首相官邸で開かれた政府与党連絡会議で、今年の春闘に向けて政府と経済界、労働界の代表が協議する政労使の会議の開催を調整していることを明らかにした。首相は「足元の物価高から国民生活を守り、物価上昇を上回る賃上げを必ず達成しなければならない」と意欲を示した。
前回は2023年11月に開いており、岸田政権発足後では3回目となる。首相は賃上げを最優先課題に挙げており、経済界に改めて春闘で積極的な賃上げに応じるよう促すとみられる。首相は「賃金が上がり可処分所得が増える状況を夏には確実につくり、国民の実感を積み重ねて社会全体の意識を変える」と強調した。
●第7次エネ基で自死しないために NDCとの断絶を 1/17
パリ協定では2025年に35年以降の数値目標についてのNDC(温室効果ガス削減の国別目標)を提出することとなっている。今年の年明けから、日本政府はエネルギー基本計画の見直しに着手することになっており、それと整合性のあるNDCを提出する、というのが今の行政の考えのようだ。
だが、これは危険極まりない。NDCに関する国際交渉での相場は跳ね上がっているからだ。温暖化防止国際会議・COP28では、35年に世界全体で60%削減(19年比)という数字が打ち出された。EUでは欧州委員会が1990年比で90%削減という無謀な法案をこの春に提出しようとしている。
どちらも産業、なかんずくエネルギー多消費産業に対する死刑宣告に等しい。
すでに2030年目標に向けての現在の政策すら、ドイツでは産業の大脱出(エクソダス)を引き起こしている。ドイツ最大手の化学企業BASFは中国へ100億ユーロ投資して工場を建設する。日本の大手鉄鋼会社もインドで高炉を建設する一方で、米国の鉄鋼会社を2兆円かけて買収すると報じられている。産業、なかんずくエネルギー集約産業は、CO2規制がむやみに強化されつつあるEUや日本から逃げ出している。政府が水素技術開発の補助金などを出したところで引き留めることは出来ない。これは企業判断としてはやむを得ず、ある意味合理的かもしれない。だが国家としては、存亡にかかわる致命的な失敗だ。
温暖化政策が政権支持率に影響 主要国の動向は
ここ数年間、EUでも米国でも左派リベラル的な政策を推進する政権が続いてきた。だがここにきて、まず野放図な移民の受け入れで国民の不満が爆発した。国民に負担を強いる脱炭素の推進も、それに次いで不満の火種になっている。EUでは国政選挙のたびに右派が勝つようになっており、今夏の欧州議会選挙でも右派が躍進するだろう。米国は今年末に共和党の大統領が誕生すれば、トランプであれ誰であれ、パリ協定から離脱し、グリーンディール(脱炭素のこと)を止め、ESG(環境・社会・統治)に反対する。
COP28では、グローバルサウスもロシアも、G7(主要7カ国)の偽善に満ちた「50年脱炭素」のお説教などに従わないことが改めて鮮明になった。グローバルサウスがG7に唯々諾々と従わないのはこの問題だけではない。対ロシア経済制裁でも、イスラエルとハマスの戦争においてもそうだ。
米国バイデン政権、ドイツの信号機連立政権(社会党、緑の党、自由党)のいずれも、支持率が低迷している。国民に支持されない中、国際交渉については行政府が担当しているので、左派リベラルの支持基盤を喜ばすために、これら政権はますますグリーンな方向に先鋭化している。
だが、米国は共和党が大統領選に勝てばグリーン路線は全て180度転換する。
EUはこのままではネットゼロ(脱炭素)による自死に至るであろう。だが今年にも政治の右傾化が進み、やがてネットゼロ目標は放棄されるだろう。
日本はやはり支持率の低い岸田政権の下、脱炭素の制度化が着々と進んでいる。慣性のついてしまった行政府は巨大な船のように方向転換が効かない。今後、その一貫として「野心的な」NDCが設定され、35年の国のCO2数値目標が無謀な数値にピン止めされ、それを各部門に割り当てた「積み上げ」計算をして第7次エネルギー基本計画を策定するとなると、一体どうなるか。
エネルギーコストは高騰し、企業のエクソダスには歯止めが掛からなくなり、日本経済は沈没する。
そのときには日本は中国の影響力を避ける術が無くなる。中国は日本の中立化を狙うだろう。中国は、それをただの中立に留めるのではなく、新中国的な中立化――日本のフィンランド化――を図るだろう。つまり日本は中国の属国になる。そこでは自由、民主といった我々が大事にしている価値が著しく制限される。これは事実上の日本の死である。
安保と経済いかに守るか 第7次エネ基に書くべきこと
日本を取り巻く地政学状況は深刻だ。エネルギー自死を避けるため、第7次エネルギー基本計画においては、安全保障と経済を重点とするほかない。経済が重要なのは、それが総合的な国力の基盤であり、国の安全保障に直結するからでもある。
基本計画に書くべきは以下の項目だ。
1 原子力の最大限の活用
再稼働はもちろん、新増設、SMR(小型モジュール炉)の導入、輸出などに踏み込み、原子力についてはリスクゼロを追い求めるのを止めるべきだ。原子力を利用しないことによるエネルギー安全保障上のリスクおよび経済上の不利益の方が大きい。化石燃料は輸入依存であるし、再エネは不安定で高価だからだ。核融合の実証も進めるべきだ。
2 エネルギーコストの低減
脱炭素に伴うエネルギーコスト増は国力を毀損し安全保障を損なう。エネルギーコスト、とりわけ電力コストについては低減すべく明確に数値でコミットするべきだ。政府による光熱費補助などではなく、根本的な低コスト化を計るべきである。それには、原子力の活用に加え、再生可能エネルギーの大量導入を止めることや、化石燃料の安定調達を図ることだ。米国共和党のデサンティスはガソリン価格をガロンあたり2ドルに下げることを大統領候補選の公約の柱としている。見習うべきだ。
3 化石燃料の安定調達
日本のエネルギー供給の柱は今なお化石燃料である。現行の第6次エネルギー基本計画では供給量の見通しが少なすぎて、燃料の調達や利用の妨げになってきた。この愚を避け、石油・石炭・ガスのいずれについても世界各地に多様化された供給源からの安定した調達を実現すべく、政府はコミットすべきだ。
4 化石燃料代替技術の技術開発
再エネや電気自動車、水素・アンモニア、メタネーションなどの合成燃料については、今なおコストが高いため、そのコストを低減する技術開発に注力し、結果として世界全体で普及させることを目指すべきだ。コストの下がる見込みが無いと判明した技術開発プログラムは中断して基礎研究に戻す。これら技術の国内での導入量拡大については、2のエネルギーコストの低減に寄与する限りにおいて行うべきだ。
以上の計画を進めた場合、うまく行けば、原子力が最大限導入され、電力コストが安価になり、EVやヒートポンプなどの電気利用技術も技術開発によって安価になる。結果、需要部門の電化も進み、日本のCO2は大幅に削減される。
そのような試算をしてもよいが、それはエネルギー基本計画の一部にすべきではない。独立した複数の機関があれこれ試算すればよい。米国はそのようになっている。エネルギー基本計画の一部とすると、そのNDCとの整合性を取るような圧力が働き、計画内のあらゆる数値が「数値目標」として運用されることになり、化石燃料の調達と利用に支障をきたすなど、安全保障と経済を損なう懸念があるからだ。
NDC自体は首相の意思としての国家の数値目標を掲げ、上記1、4などの政策を列挙しておけばよい。NDCとは普通はその程度のものである。エネルギー基本計画で数値を細かく積み上げてそれをNDCにする国など、日本以外にはどこにもない。
●細田博之前衆院議長後継の錦織氏が自民から立候補表明 衆院島根1区 1/17
「逆風の中でも立候補するなら自民しかない」
「細田氏の功績は総合的に考慮されるべきだ」
元財務省中国財務局長の錦織功政氏(54)=松江市在住=が17日、松江市内で記者会見し、細田博之前衆院議長の死去に伴う衆院島根1区補選に、自民党公認で立候補することを表明した。
岸田政権の支持率低迷や派閥の政治資金パーティーの裏金事件などを巡り、自民に逆風が吹く中で細田氏の後継として立候補することについて「経験と人材が豊かな自民以外ないと考えていた。数々の政治的、社会的な困難に立ち向かってきた政党で自己研鑽に努めていきたい」と述べた。
裏金事件に関しては「今後議論が進む中で法改正が必要ならば改正すべきだ。法令に基づいて政治資金を扱うのは当たり前のこと。国民が疑念を抱かないよう良識に従い、政治資金を公明正大に扱っていくことが大切だ」と強調した。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係性やセクハラ疑惑などを残したまま死去した細田氏については「厳しくも温かいご指導をいただいた。昨今、さまざまな報道がある一方、数々の功績もある。政治家の功績は総合的に考慮されるものだ。もう少し長く生きてくだされば、自身でしっかりと説明を果たしたはずだ」と話した。
高齢者の雇用や女性活躍の推進、東京一極集中の是正などに注力すると訴え、エネルギー自給の観点から中国電力島根原発(松江市鹿島町片句)を含む国の原子力政策を進める必要があるとの考えを示した。
錦織氏は松江市出身。松江北高校、早稲田大政治経済学部を卒業し、1993年に旧大蔵省(現財務省)に入省した。復興庁統括官付参事官、財務省大臣官房地方課長などを歴任。2022年6月から同省中国財務局長を務め、23年12月19日付で退職した。県連の候補者公募に名乗りを上げ、16日に県連幹部と国会議員らでつくる選挙対策委員会が候補者に選んだ。
補選はこのほか、立憲民主党元職で党県連代表の亀井亜紀子氏(58)、共産党新人で党県常任委員の村穂江利子氏(55)が立候補を予定。日本維新の会が候補者擁立を目指している。補選は衆院解散・総選挙がなければ4月16日告示、28日投開票となる。
●丸山和也弁護士 パーティー券裏金問題に「ヤクザの上納金みたいなもの」 1/17
自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題で、政治家への関心が高まる昨今。東京地検特捜部の捜索などを受け、岸田政権が大きく揺れている。
『行列のできる法律相談所』などに出演し、2007年に自民党の公認を得て参議院議員になった丸山和也弁護士(77歳)は、現在の政界をどう眺めているのか。最近では、あの関西弁でズバズバと発言する“丸山節”を聞かなくなっているような……。丸山弁護士が、「日本一高いビル」麻布台ヒルズの向かいにある「丸山総合法律事務所」でロングインタビューに応じた。
私が政治家を辞めたことを、知らない人もいるかもしれませんね。2007年から2期12年参議院議員を務め、2019年の選挙での苦杯を境に、そのまま政界からは身を引きました。
もともと、3期目の2019年の参院選に出馬する気はありませんでした。ところが、7月の選挙の3カ月前になって、先輩議員から「もう1回出ないと駄目だ」としつこく説得されてしまい、そこで心に迷いが生じました。そして、街中での評判も悪くないと感じ、出馬することにしたんです。しかし、その決断は決して強いものでなく、今になって思うと間違っていました。自分の認識の甘さがありました。
そのうえに不運が重なりました。2019年5月に日本維新の会の丸山穂高議員(当時)が北方領土に絡んだとんでもない問題発言(「戦争で取られた領土は戦争で取り戻せ」的発言)をして、約2カ月間毎日のようにテレビ、新聞、その他メディアが丸山議員批判を繰り広げました。また、国会では丸山議員の辞職勧告から、最後には前代未聞の糾弾決議まで可決されたのです。
そうしたら、彼と私を混同した人が大勢いて、ウチの事務所に「選挙に出るな!」とか「議員を辞めろ」などというクレームの電話やファクス、メールがたくさん来ました。丸山穂高と丸山和也は党も年齢もまったく違っているのに、「丸山議員」バッシングとしては同じになってしまっていました。私の方がはるかに知名度が上だったので、丸山といえば私となったんです。選挙は騒動直後の7月でしたので、この超ド級の風評被害には参りました。
「政治の世界には向いていなかった」
私は政治の世界は向いていませんでしたね。2007年に自民党公認で出馬したのは、塩爺(しおじい)こと塩川正十郎さんに「一回だけでよいから、やってくれませんかね」と乗せられたからでした。しかし、政治の世界は自由が利きません。例えば、議会で採決の際、私個人の意見とは違っても、自民党議員として賛成、または反対を示さなくてはいけない。どうしても党の方針に従えないときは、退席するのが精一杯でした。
実際、消費税に関する法案で、当時、野党だった自民党が与党の民主党を追い詰めようと、これまで主張してきた考えと反対のことを言い出し、与党案に反対しようとしたことがありました。このとき私は、いくら自民党の方針とはいえ、筋が通らないと思い、採決は棄権(退席)しました。衆議院では小泉進次郎君1人が同じ行動を取ったようでしたが。
でも、後で党の幹部に呼びつけられて、「なんで退席したんだ!」「今度そんなことをしたら自民党を辞めてもらうことになる」と責められました。私は人生哲学として、“自由”と“尊厳”が一番大事だと思っていますから、いくら議員であっても党利、党略のために信念が蔑ろにされることは本当に苦しかった。それでも議員の間、せめて貫いたのは、ポスト欲しさに魂を売り渡さない、という信念でした。だから、政治の世界では不器用で、「出世」とは無縁でした(笑)。
だからほんと、政治の世界は人間としての真実を貫こうとすると、実にくだらんですよ。いい加減すぎます。今、取り沙汰されているパーティー券収入の裏金問題だって、ずーっと昔からあったらしいですね。ヤクザの上納金みたいなもんです。安倍派もピンキリだけど、キックバックについてある駆け出し議員に聞いたら、「僕なんて数万円なんですけど……」ってボヤいていましたよ(笑)。ただ、それでも、そういう政治の世界にいる議員が集団として国を動かしているのも事実です。
敵は同じ党内の利権団体候補
一言いうと、僕のような参議院全国比例の候補者は、90%が組織団体の代表者として立候補しているんです。たとえば郵便局(郵政)、医師会、農協、自衛隊、看護協会、土木団体、歯科医師会などがバックにいて、候補者の面倒を全部見て、金集めも票集めもするんです。彼らには何十万、何百万という構成員が背後にいるうえ、全国で金集めしています。だから上位の票を集めるのは郵政と農協が支援する候補、と相場が決まっています。
ところが、私の場合はまったく何の組織もバックにない、ただの弁護士で、「俺は丸山だ」と単身で呼ぶだけで全国を相手に闘うんですよ。そして、同じ自民党内の全国比例代表候補者同士で票の取り合いするんです。そのうえで、得た票数の多い順に当選する仕組みなんです。だから、敵は同じ党内の同じ比例代表候補者、それも先程言った組織、団体の候補者なんです。
自分は刀一本で、向こうは戦車に機関銃みたいなもんなんですよ。同じルールの選挙とは言えないのが実情です。まあ、こんな刀一本で、組織にも金にも一切頼らず、2回もよく当選したのはあっぱれなんですよ(笑)。ほかに誰かやれましたか? ・・・

 

●「小池百合子首相」待望論、実現する可能性あるか 1/18
岸田文雄首相が、自民派閥パーティーをめぐる巨額裏金事件などでの政権危機に苦闘していることを受け、年明けの永田町では「ポスト岸田」候補の品定めがかまびすしい。その中で、一部でささやかれている小池百合子東京都知事の「首相待望論」も格好の話題となっている。
2016年7月の都知事当選後も、ことあるごとに初の女性首相候補に名前が挙がり、自らも意欲をちらつかせてきたのが小池氏。年末年始の記者会見でも、半年後に迫る都知事選出馬について「思わせぶり」(周辺)に明言を避けているからだ。
衆院解散の時期とも絡んで中央政界が注目する都知事選については、東京都選管が昨年11月末に「6月20日告示―7月7日投開票」との日程を決定した。ほぼ想定通りの日程だが、東京地検特捜部の裏金事件捜査との絡みで通常国会召集日が1月26日に決まったことで、中央政界では「衆院選との同日選は日程上困難」(自民選対)との見方が広がる。
会期末解散は「日程的にありえない」?
というのも、首相の解散断行は「会期末の野党による内閣不信任決議案提出」が“政治的条件”となるが、想定される提出時期は6月21日前後。その場合の衆院選投票日は、「公職選挙法上7月14日以降」(総務省)となり、選挙期間中に都知事選投開票という「政治的にありえない日程」(同)になってしまうためだ。
しかも、裏金事件に加えて能登半島地震への岸田首相の対応にも「後手批判」が付きまとい、年明けに底打ち傾向となった内閣支持率もなお低迷状態が続き、与党内では「通常国会での解散など不可能」(閣僚経験者)との声が支配的だ。
もちろん首相サイドは「解散は首相の専権事項。いつでも断行できる」(官邸筋)と強調するが、自民首脳の間でも「羽交い絞めしてでも止める」との声が少なくない。このため党内では「首相は9月末の総裁選前に解散できないまま退陣し、後継者が『選挙の顔』となる」(長老)との見方が広がる。
小池氏は「ポスト岸田」の“超大穴”
これを受け、「ポスト岸田」については「総裁選実施なら『本命・茂木敏充幹事長―対抗・高市早苗経済安保相―穴・石破茂元幹事長』、話し合い一本化なら上川陽子外相」との見立てがもっぱらだ。
ただ、“超大穴”として小池氏の名前も挙がっている。同氏は1992年参議院選での中央政界デビュー以来、常に日の当たる政治家人生を歩み、防衛相、自民党3役(総務会長)、総裁選出馬、そして都知事もすべて「女性初」。だからこそ「最終目標は初の女性首相」とみる向きが多く、2021年5月に死んだ愛犬「そう」ちゃんは小池氏自身が「総理を意識して付けた名前」といわれる。
そうした中、小池氏の支持母体である地域政党「都民ファーストの会」は、昨年12月の江東区長選を筆頭に、その前後の都内の各種地方選で連戦連勝だ。これも踏まえ、都民ファ内部から「小池さんは次期衆院選での国政復帰を狙っている」との声が漏れてくる。
小池氏は都知事就任翌年の2017年9月の衆院選に際し、都知事のまま「希望の党」を立ち上げて政権交代に挑んだが、いわゆる「排除発言」で挫折した。ただ、都民ファ幹部は「あのとき都知事を辞めて出馬していれば、結果は違ったはず」と述懐し、今夏の都知事選の出馬を見送り、次期衆院選での中央政界復帰の可能性にも言及する。
その小池氏は、年末年始の記者会見などでも、都知事選出馬について言及を避けている。都知事選日程決定後の記者会見で記者団から「小池都政の現状と、次期知事選出馬の可能性」を問われた際も「現状も何も、今やるべきことをしっかり取り組む、これが、私の責任だと思っている」と表情も変えずに素っ気なくかわした。
このため、その後の年末年始の定例会見でも記者団の間では「知事選出馬を問う質問はタブー視されている」(大手新聞の担当記者)のが実情で、「そのこと自体が、小池氏国政復帰との噂を広げる要因」(政治アナリスト)となっている。
小池氏の本心はどこにあるのか
ただ、小池氏を知る政界関係者は「そういう噂を流すのが小池氏の常套手段。年齢(71歳)からも本音は都知事3選しかない」(元都庁幹部)と明言する。確かに都知事選をめぐっては、小池氏サイドと自民党との連携が進む一方、野党にも有力候補擁立の動きがなく、小池氏の前回知事選(366万票、得票率約6割)以上の記録的圧勝確実との見方が多いからだ。
こうした状況から、多くの政界ウォッチャーも「小池氏の本心は、7月の都知事選圧勝でさらに立場を強化し、次期衆院選での自公敗北で政権交代・政界再編の機運が高まれば、都民ファを率いてそれに乗る戦略」と読み解く。
ただ、その大前提となる「ポスト岸田」の行方は、「春以降の政局展開次第で大きく変わる」(自民長老)との声も多い。ここにきて各種世論調査で支持率がわずかながら上昇し始め、来年度予算案も能登半島地震対応のための予備費増額などの修正が加えられたことで、野党も年度内成立に協力せざるをえない状況となりつつあるからだ。
このため、岸田首相サイドには「一時浮上した予算成立花道論はほぼ消えた。このままやるべきことをやり続けて支持率がさらに回復すれば、総裁選前の衆院解散も可能になるし、解散しなくても総裁再選はありえる」(岸田派幹部)との強気の声も出始めている。
「衆参同日選」視野に、まず都知事選圧勝狙い
その一方で、自民幹部の間では「岸田首相は『政治改革』に一定のメドをつけ、解散しないまま総裁選前に退陣表明したほうが影響力を残せる」(無派閥有力議員)と指摘する向きも多い。
その場合、誰が選挙の顔となるかを予測するのはまだ難しく、「結局、誰がなっても2025年7月の衆参同日選になだれ込むのでは」との見方も広がる。だからこそ小池氏は「衆院選出馬か都知事選圧勝の2つの選択肢を天秤にかけ、都知事選ぎりぎりまで政局展開を見極める構え」(側近)とみられているのだ。
そうした中、小池氏にとってのベストシナリオは「まず都知事選に圧勝し、そのうえで都民ファを率いて次期衆院選での政界再編・政権交代のリーダー役となり、状況次第で首相の座もうかがう」(同)とされる。しかし、中央政界の現状と今後の展開を想定する限り、「小池氏の思惑通りの状況となるかは極めて不透明」(自民長老)というのが実態だ。
●政治資金もデジタル化を ダボス会議で河野氏 1/18
河野太郎デジタル相は17日、スイス東部ダボスで開催中の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)のイベントで自民党の政治資金パーティー収入の裏金化事件に言及し、透明性を高めるために政治資金をデジタル化すべきだと訴えた。
「透明性を通じた信頼構築」と題したパネル討論に登壇した河野氏は「大きな政治スキャンダルが起きている日本の政治家が、こういうテーマの討論に参加しているのを冗談だと思う人もいる」と述べ、会場の笑いを誘った。
●学習能力ゼロ。原発という「過去最大の災害関連死要因」を動かす無能政府 1/18
能登半島地震でも多数が犠牲に。災害関連死という人災
最大震度7を観測した今回の「能登半島地震」に関する日々の報道の中で、何よりも胸が痛むのは、報道のたびに増えて行く死者数です。そんな中、5日前の1月13日には次のような報道がありました。
石川県は13日、午前9時現在の死者数が215人のまま前日から変わらず、うち災害関連死は1人減って13人になったと発表した。
死者が1人でも減ったのなら…と、あたしは一瞬、喜びそうになったのですが、記事を読み進めると、次のように書かれていました。
県によると、災害関連死が減ったのは輪島市。地震による建物倒壊などで亡くなる直接死と確認されたためという。
亡くなったと思った人が生きていたのではなく、災害関連死だと思われていた人が直接死だった、ということでした。この災害関連死ですが、国の基本的な定義としては「災害による直接の被害ではなく、避難途中や避難後に死亡した者の死因について、災害との因果関係が認められるもの」ということになっています。つまり、地震や津波などの災害で直接亡くなった「直接死」とは違い、災害では一命をとりとめたものの、その後の避難生活によるストレスや持病の悪化、エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)などで亡くなった人のことを指します。
この災害関連死という概念は、1995年の「阪神・淡路大震災」を機に生まれました。「阪神・淡路大震災」の死者数は6,434人ですが、このうち約14%に当たる921人が災害関連死として国に認定されています。災害関連死として国に認定されると、亡くなった人が生計を維持する人なら500万円、その他の人は250万円の災害弔慰金が遺族に支給されます。
しかし、災害関連死の認定は各市町村に委ねられており、統一的な基準がないため、地域によって認定にバラつきがあります。たとえば、同じ震災で同じような亡くなり方をしたのに、A町の避難所にいた人は認定され、B町の避難所にいた人は認定されなかった、というケースもあるのです。そのため、全国では認定されなかった人の遺族が、国に認定を求めて裁判を起こしている事例が少なくありません。
この災害関連死が注目されたのは、2004年10月に発生した「新潟県中越地震」でした。地震による直接死が16人だったのに対して、その後に亡くなった災害関連死が、直接死の3倍を超える52人に及んだからです。この52人の主な死因は、避難生活のストレスによる心筋梗塞や脳梗塞、長期の車中泊によるエコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)、また、エンジンを掛けたままの車中泊による一酸化炭素中毒で亡くなった人もいました。
さらには、避難所から仮設住宅に移ることができても、失職や孤立化というストレスによって持病を悪化させたり、心筋梗塞や脳梗塞を発症させて死亡するケースが相次ぎました。
こうした状況に対して、長岡市は「これでは埒(らち)が明かない」として「震災から半年以上が過ぎた場合は災害関連死ではないと推定する」という、いわゆる「長岡基準」を定めました。そのため、半年を過ぎて亡くなった人たちの遺族が、国に対して「災害関連死を認めてほしい」という裁判を次々と起こしたのです。
接死の4倍もの命が災害関連死で奪われた熊本地震
この「長岡基準」は、2011年3月の「東日本大震災」でも、多くの市町村が参考にしました。しかし「東日本大震災」は被害の規模も避難の実態も「新潟県中越地震」とは大きく異なっていたため、震災から半年を過ぎたケースでも、各自治体は個々の状況を踏まえて認定審査をしていると言います。
ここで、「東日本大震災」で最も被害の大きかった東北3県の直接死と災害関連死の人数を見てみましょう。これは復興庁の調査による最新のデータ、2023年3月のものですが、左が直接死、右が災害関連死の人数です。
岩手県 4,675人 470人
宮城県 9,544人 931人
福島県 1,614人 2,337人
これを見れば一目瞭然ですが、岩手県と宮城県の災害関連死が直接死の1割程度なのに対して、福島県だけは直接死より災害関連死のほうが遥かに多いのです。その原因は、今さら説明する必要もありませんが、福島第1原発事故なのです。こうした災害関連死は、避難生活が長期化すれば増加すると言われていますが、それでは、同じく復興庁の2023年3月のデータから、現在の避難者数を見てみましょう。
岩手県 895人
宮城県 1,924人
福島県 27,394人
こちらも一目瞭然ですね。原発事故という人災によって故郷を追われ、震災から13年経った今も自分の家に帰れない人たちが、福島県には2万7,000人以上もいるのです。ひとくちに13年と言っても、震災当時に小学1年生だった子どもたちは、今年で20歳になるのです。そして、この突出した福島県の避難者数は、そのまま災害関連死の人数に反映されているのです。
さらには、これは書くことを躊躇(ためら)うほど悲しい事実ですが、この2,337人という福島県の災害関連死のうち、少なくとも150人以上は「自死」なのです。原発事故によって故郷を奪われ、仕事を奪われ、生活を奪われ、生きる希望を失った多くの人たちが、自らの命を絶ったのです。
福島県のある酪農家は、牛小屋の壁にペンキで東京電力と政府への恨みを書き殴り、牛小屋の中で首を吊りました。死後2週間も経ってから仮設住宅で遺体が発見された高齢女性は、1人用のコタツの上に当時の安倍政権への恨みが書かれた遺書が残されていました。
災害関連死を考える上では、原発事故が原因の福島県は特例なので、自然災害のみのケースに戻しますが、特に極端な例が、2016年4月に発生した「熊本地震」です。「熊本地震」では、地震による直接死は50人ですが、その後、直接死の4倍を超える218人が災害関連死で亡くなっているのです。この地震では、18万人を超える住民が避難し、県内に約900カ所の避難所が開設されましたが、必要数の仮設住宅が整備されるまで、最長で7カ月以上の避難生活が続きました。
複数の病院や高齢者施設も被災したため、多くの高齢者を避難・転院させなければならず、その移動中に死亡した高齢者が少なくとも27人。また、プライバシーのない避難所を嫌い、避難所の周囲に停めたマイカーで車中泊していた被災者のうち、エコノミークラス症候群で亡くなった人が少なくとも33人と報告されています。しかし、これは一部調査の結果なので、実際には、さらに多くの人たちが同様の原因で亡くなっていると思われます。
震災以外でも、2015年9月の「関東・東北豪雨」では、死者21人のうち約60%に当たる13人が災害関連死と認定されました。また、2019年5月に発生した「令和元年房総半島台風」では、何と死者13人のうち、ほぼ全員と言っても過言ではない12人が災害関連死と認定されています。これらはすべて、当事の安倍政権の対応の遅れが原因と指摘されています。
昆虫並みの学習能力も持ち合わせていない政府の愚行
今回の「能登半島地震」の震災関連死は、現時点で13人と報告されています。しかし、3万人近い人たちが避難している上、被害状況から見ても避難生活の長期化は避けられません。今後、災害関連死をどれだけ最小限に抑えられるかは、すべて政府の対応に委ねられているのです。
これは政府もマスコミも分かっているようで、今ラジオを聴いていると、NHKも民放も震災関連のニュースを報じるたびに「車中泊をしている人はエコノミークラス症候群にならないように、定期的に車から降りて脚の屈伸運動などをしてください」という注意を補足しています。あたしの知る限り、こうした放送は初めてですが、たぶん「熊本地震」から学習したのでしょう。
しかし、そうであれば、どうして政府は「活断層だらけの日本で原発を推進することは極めて危険であり、最大の地震対策は全国の原発をできるだけ早期に廃炉にすること」だと学習しないのでしょうか?原発事故も災害関連死と同じ「人災」なのに、そして、その原発事故が災害関連死を増加させている最大の原因なのに、どうして政府は福島第1原発の収束も待たずに、半世紀以上も前に設計された福島第1原発と同じ旧型の欠陥原発、新潟県の柏崎刈羽原発を再稼働させようとしているのでしょうか?
それも、世界最大の柏崎刈羽原発は、複数の活断層に囲まれた場所に立地しているのに…。これは完全に、昆虫並みの学習能力も持ち合わせていない人たちによる最悪の愚行だと思います。
●労働組合は所得格差を縮める政策で強化をめざす国々 賃金上がらない日本 1/18
労働組合は時代遅れーーそんな認識が世界で変わりつつある。労働組合自身の奮闘に加えて、各国で政策的な見直しがすすめられているからだ。1980年代に新自由主義的政策による民営化の旗がふられ、行き過ぎた資本主義で生まれた格差に直面し、回帰ともいえるような動きが出始めている。
アメリカの経済学者が労組を再評価「経済成長育む」
労使関係に詳しい法政大の山田久教授は「ローレンス・サマーズのような主流派の経済学者が労組を再評価するとは」と驚く。
サマーズはハーバード大教授で、米クリントン政権で財務長官を務めた。自由貿易を重んじ金融業界の規制緩和を進め、2008年のリーマン・ショックにつながったとの批判もある。
そのサマーズが2020年の共同論文で「各先進国が(より安い労働力を見いだす)グローバリゼーションや技術革新による影響を受けたが、米国のように労組の組織率がより低下した国の方が、(もうけを人件費に回す)労働分配率が下がり、所得の不平等が広がっている」と指摘。背景には「労組の力をそぐ政策や株主の利益に偏重する経営」があるとした。
市場経済を重視し、労組に厳しいとされてきた米国の政策の現場でも変化が起きている。米財務省は昨夏、「労働組合と中間層」と題した報告書を初めて出し、労組回帰を印象付けたといわれた。
その著者の1人、ローラ・ファイブソン・ミクロ経済担当次官補代理は、米経済政策研究所による昨秋の講演会で「労組を強化し、組織率を高めることは、幅広い経済成長とレジリエンスを育む」と強調した。
報告書は、労組の組織率が低下する中で、大企業のCEOと一般従業員の報酬比がこの56年で20倍になり、不平等が広がっていると指摘。労組があれば組合員の賃金が10〜15%引き上げられ、人種や性別による格差を抑える可能性があると指摘した。
バイデン政権では、労働者が団結しやすくするための団結権保護法や、地方公務員に団体交渉権を広げる公共部門交渉自由化法の立法の検討などを進めている。
ドイツでも強化の動き「適切な解決見いだせる存在」
ドイツでも2014年に労働協約が組合員以外に広く適用されるよう条件を緩和。組合費の税制優遇など労組を強化する政策提案がでている。
ドイツが労組を重視するのは、独立行政法人労働政策研究・研修機構の山本陽大主任研究員によれば「団体交渉や労働協約により労働条件などを決めてきた伝統のあるドイツでは、DXなどで雇用の在り方が大きく変化するなかでも、労働組合こそが使用者団体との交渉・妥協を通じて適切・妥当な解決を見出すことのできる存在として捉えられている」という。
各国がこうした政策に取り組む背景には、働き手の手元に賃金が十分にあれば、個人消費が活性化し、経済発展につながるという考え方がある。それに加え、欧米では政権交代がしばしばおこり、政権をとった中道左派が労組の強い支持を受けている面がある。
山田教授は「賃上げは企業に任せていても十分に進まない。労組支援のような働き手の内発的な動きを強めることが重要だ」と説明する。
日本の「新しい資本主義」には労組が不在
日本でも法律上は労組に強い権限が与えられている。産業別組合がうまく機能すれば、業界の横の連携をいかしながら同業他社の交渉を圧力にしながら、交渉する環境を整えやすい仕組みになっている。
岸田政権は賃上げを重視し、分厚い中間層の形成をめざす「新しい資本主義」を打ち出した。ただその中に労組は担い手としては登場していない。
昨秋に新設した賃金・雇用担当首相補佐官に、労組の組織内議員だった矢田稚子氏を迎えたが、「政局的な分断の動き」と警戒する連合幹部も多かった。
どんな政策の支援がありうるか。連合総研と連合でつくる「労働組合の未来」研究会は、労働組合法の解釈の見直しを提起する。
同法7条に基づき、組合活動は組合費で就業時間外にやることとされ、行政機関もこれ以外は不当労働行為だと解釈してきた。賃金が発生しない形で、組合員による組合費だけでおこなわれることが組合の独立性を高めるとの考えからだ。
だが組織率の低下で、組合費が減る中で、韓国では法改正し、労組の専従者が組合費で手当てしなくても生活できるよう就業時間に組合活動することを認めるようになった。
連合総研の中村天江主幹研究員は、組合員への調査結果からも、日本でも共働き家庭が増える中で「男女ともに組合活動をおこなうための時間的な負担感は高くなっている」とみる。非正規で働く場合も、仕事以外に組合活動の時間を割いたり、組合費を払ったりするのが難しく、参加しづらい環境にある人もいるという。
このため、中村さんは「労組を必要とする幅広い働き手が参加しやすくするためにも、従来の労組のあり方からの変化が求められる。労組の財政に対する援助や、集団的な労使関係を有効に機能させるための法律の解釈・運用の見直しや法改正の検討が必要だ」と話す。
日本でも欧米各国と同じように、1980年代以降に民営化がすすみ、その後には不安定な雇用が増え、格差が広がってきた。さらに日本ではこの30年、賃金も上がらなかった。
日本も、社会の均衡を保つために労組の社会的機能を再評価して強化するよう政策のかじを切る米国やドイツのように、労組が活動を広げやすくするためには何が必要かを考え、議論を深める時に来ている。
●首相、コメント避ける 岸田派の収支不記載報道 1/18
岸田文雄首相は18日、東京地検特捜部が政治資金パーティーに関する収支を収支報告書に記載していなかったとして自民党岸田派の元会計責任者を立件する方針を固めたとの一部報道について、「捜査はまだ行われている。今の段階で何か申し上げるのは控えなければならない」と言及を避けた。
岸田派が同日、収支報告を修正するとの報告を受けたことも明らかにし、「事務処理上の疎漏だ。それ以上のことは承知していない」と述べた。首相官邸で記者団の取材に答えた。 
●岸田首相大ピンチ 岸田派・二階派も「不記載」疑惑 1/18
自民党の政治資金を巡る事件で、岸田首相が窮地に追い込まれている。東京地検特捜部は、岸田派でも収支報告書の不記載があったとして、19日にも元会計責任者を立件する方向で検討していることが分かった。
「政治とカネ」を巡る問題が、自ら会長を務めていた派閥にも及ぶことになった岸田首相。収支報告書への不記載の背景として「ミスの積み重ね」だとしているが、このような説明で国民は納得できるのか?
関西テレビ 神崎報道デスク:今回、岸田首相がトップを務めていた派閥から、会計責任者が立件されるということで、永田町では『流れが変わってきた』という話が出てきています。これは岸田首相本人の責任問題になるということで、次の通常国会は乗り越えられない、もう岸田政権はもたないんじゃないかという話も出てきています。
自民党の政治資金問題 今後の捜査は?
今後の捜査の方向性について
・18日に明らかになった岸田派の不記載について、東京地検特捜部は元会計責任者を立件する方針
・安倍派は、すでに池田衆議院議員が逮捕されたが、特捜部は派閥幹部については不起訴とし、一方で会計責任者と一部議員を立件する方針
・二階派は、派閥のトップである二階会長の事務所が3000万円を中抜きするなど裏金化していたことが分かっている。特捜部は二階派の会計責任者と二階元幹事長の秘書を立件する方針
一連の問題において、派閥の幹部クラスの議員の立件は見送られる方針となっている。会計責任者との共謀を問うことは、かなりハードルが高いのだろうか?
菊地幸夫弁護士:今の政治資金規正法は、国会議員の資金管理団体の会計責任者が収支報告書に記載する義務がある。議員にはその義務はない前提です。ですから会計責任者が立件されるんです。議員の立件というのは、議員と会計責任者の示し合い、話し合い、合意があったことが必要になります。裁判で有罪とするためには、議員と会計責任者の連絡についてある程度証拠を出せないとなりません。そこが否認されていて、立証にたどりつかなかったんでしょう。
「連座制」導入すべきという議員も
法律を見直すべきだという声が議員の間からも上がっている。立憲民主党の岡田克也幹事長は収支報告書に虚偽記載などがあった場合、会計責任者だけではなく、議員も処罰対象にすべきだとしている。
政治家にも立候補の制限などが科される「連座制」を導入すべきだとする国会議員の声もあるということだが、自民党幹部は連座制について「議論を経て方向性を見出していくことになる」としている。
「ザル法」と言われてきた政治資金規正法は見直されるのか
政治資金規正法には適用されていない連座制だが、連座制を導入することによって、事件の再発を防ぐことはできるのだろうか?
菊地幸夫弁護士:少しは効果があると思います。今だと議員は『会計責任者がやったことで、私は知りません。全然連絡を受けてません』となる。それで今回、首脳陣の立件には届かなかったわけです。連座制が適用されると、議員にも責任が及んで、公民権停止で立候補できないというペナルティーがありますから、少しは会計がクリアになると思います。ただ連座制どうこうではなくて、自分の資金管理団体のお金をちゃんと報告する義務があるのは当然で、会計責任者ではなく議員自身が記載義務者になればいいだけのことだと思います。
抜け穴が多く「ザル法」だと言われてきた政治資金規正法だが、厳しい見直しが行われるのか、しっかり見ていきたい。
●自民党支持率、時事通信調査で過去最低14%台 岸田首相の内閣支持率上昇 1/18
時事通信が18日、大手メディアで唯一の個別面接方式で12〜15日に実施した世論調査の結果を発表。自民党支持率が前月比3.7ポイント減の14.6%となり、1960年の調査開始以降で、野党だった期間をのぞくと最低になったと報じた(政権担当時の最低は2009年7月の麻生政権下の15.1%)。内閣支持率は1.5ポイント増の18.6%だった。
自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる事件が影響しているとみられ、ネット上では「自民党支持率より内閣支持率が高いこともあるんだ?」「自民党支持率14%台とは驚愕!」「麻生内閣時を下回る」「国民の怒りが止まらないのは当たり前」などの声のほか、「自民党支持率が落ちて選挙で落選するのは当選回数の少ない未来を担うまだまだ正直な中堅や若手議員。今こそ自民党の中堅、若手が旗を振り下剋上を起こすべきだと思うんだけど…無理なのかなぁ」との提言も寄せられた。
●岸田文雄首相「岸田派解散を検討」報道、有権者らさまざまな声 1/18
自民党派閥のパーティー券収入をめぐる事件で、岸田派(宏池会)の元会計責任者が立件される方向で検討が進んでいると報じられた18日午後7時すぎになり、岸田文雄首相が昨年12月まで会長を務めていた岸田派の政治団体である「宏池政策研究会」を解散すると、NHKをはじめ複数のメディアが報じた。
ネット上では「岸田派解散検討の速報のせいで、(ニュース7で)大相撲飛ばし…」などの声があがった。
このほかにも、「岸田首相の大英断、内閣支持率上昇間違いなし」「どうせ検討止まりやろ」「証拠隠滅?」「派閥を解消したからといって、過去の不正が許されるわけではない」「解散は良いけど、ポケットに無い無いした金は、ちゃんと納税してや」「解散したからといって何がどうなるの?」「宏池会の解散って実現したら結構な歴史的イベントじゃないですか」「ついでに衆院も解散して信を問え」「ついでに自民党の解散しませんか?」など、さまざまな声が渦巻いた。
●岸田文雄首相「岸田派解散を検討」報道、国民は意見まっぷたつ 1/18
岸田文雄首相が18日、自身が会長を務めていた岸田派(宏池会)について「解散することを検討している」と表明したと報道各社が一斉に報道。これを受けてネット上では、名門派閥の解散決意を「英断」と受け止める一方、「いつもの検討では」と懐疑的に捉える声も目立った。
岸田首相は自民党派閥の裏金パーティーを巡る事件に関連し、岸田派解散への考えを問う記者団に首相官邸で返答。「政治の信頼回復に資するものであるならば、そうしたことも考えなければならないと思っている」と語った。
吉田茂の直系の弟子・池田勇人が旗揚げした宏池会は、岸田首相を含め、大平正芳、宮沢喜一ら首相5人を輩出した保守本流の名門派閥。昨年12月まで岸田首相が会長を務めていた。
報道を受け、X(旧ツイッター)などには、「すばらしい行動力」「これはすごいことかもしれない。全部派閥は廃止になる。岸田の英断だ」「ド派手なことやるな」と称賛する意見の一方、「あくまで検討」「お得意のめくらましか?」「話をすりかえるな」「一瞬内閣解散に見えた…残念」「自民党解散が妥当ではないのか」「昔も派閥解散させて名前変えて復活したよな?」などと怒りや批判、懐疑的な声も目立った。
国民民主党の玉木雄一郎代表はXで、「伝統ある自らの派閥を解散することは思い切った決断」と言及。「岸田派の議員が別の派閥に移ったり、より大きな派閥の形成(例えば大宏池会)につながるだけに終わる可能性もある」と、他派閥の解散が今後の鍵を握るとの考えを示した。
岸田派を巡っては18日、収支報告書にパーティー収入を記載しなかった疑いで、派閥の元会計責任者が立件される見込みと一部で報道。岸田首相は「事務的なミスの積み重ねと報告を受けた」と述べ、批判の声が挙がった。
立憲民主党の小沢一郎衆院議員は、事務所名義のXで「岸田派も同じことをしていたのがバレちゃったから、ひとまず無くしちゃえと。それでこれまでの全てを闇に葬るつもり」と解散検討の背景を批判的に解釈。「引き続き説明する気はさらさらない。選挙向けの印象操作。必要なのは全容解明。岸田総理は逃げてはいけない」とつづった。
●自民派閥「解消を」56.3% 刷新本部、7割期待せず 時事世論調査 1/18
時事通信が12〜15日に実施した1月の世論調査で、自民党が派閥を解消すべきだと思うかを尋ねたところ「思う」が56.3%で半数を超えた。
「思わない」は15.4%にとどまり、「どちらとも言えない・分からない」は28.3%だった。
支持政党別で見ると、自民支持層でも「思う」が50.6%と過半数で、「思わない」は27.6%。「思う」と答えたのは、立憲民主党支持層で71.4%、日本維新の会支持層で82.2%、公明党支持層で64.9%だった。
自民派閥の政治資金パーティー収入を巡る裏金事件を受け、岸田文雄首相が設置した政治刷新本部に期待するかを尋ねた設問では「期待しない」が68.3%を占めた。「期待する」は12.6%、「どちらとも言えない・分からない」は19.1%だった。
自民支持層でも「期待しない」と答えた人が58.6%に上った。他党の支持層でも「期待しない」が「期待する」を上回っており、刷新本部を国民が冷ややかに見ていることがうかがえた。
●政治刷新本部は自民党支持層からも不評だった!政治資金問題 1/18
2024年1月17日に公開されたテーマは……最新!自民党裏金疑惑 政治刷新本部どう思う?
ゲストにJX通信社代表の米重克洋氏をお招きし、自民党政治刷新本部に関する意識調査の結果について語っていただきました。
政治刷新本部新設で政治資金問題は解決するのか?
【このトピックのポイント】
・自民党新設の政治刷新本部に疑惑のある安倍派議員の役員入りで不信感
・自民党支持層でも政治刷新本部への期待感は薄い
・納得感のある解決策を打ち出せなければ後々の選挙に影響する可能性も
自民党 政治刷新本部を新設も役員に疑惑の安倍派議員が複数
自民党は党内派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件を受けて、「政治刷新本部」を新設しました。しかし、役員に選ばれた複数の安倍派議員にパーティー券収入の一部を裏金にしていた疑いがあることが判明し、注目を集めています。
この人選について米重氏は、岸田総理がこれまで行ってきた派閥に配慮した人事の延長にあるものとし、実効性を持たせるために各勢力をバランスよく配置する必要性を感じてのものではないかとコメント。
一方で、政治資金問題の解決策としては「どこまで実効性があるのか、という疑問符が付くような人選になってしまっていることは否めない」と指摘しました。
また、政治刷新本部のメンバーについては最高顧問に麻生太郎氏、本部長代行に茂木敏充氏、本部長代理に森山裕氏といった派閥の領袖が名を連ね、「ブラックジョーク」といった声も上がっています。
米重氏は派閥の集合体である自民党において、決めごとに実効性を持たせるために派閥の実力者が議論のメンバーにいることは理解できるとしつつ、国民目線では派閥の問題の解決策を派閥の人間が議論することは不自然に見えると語りました。
派閥解消を訴える菅義偉氏を麻生氏と同じ最高顧問に据えることで自民党なりにバランスをとっていると見ることもできますが「結構微妙なところ」と米重氏。「自民党支持層もあまりピンと来ていない人選なんじゃないかという気はします」とコメントしました。
自民党の政治刷新本部 どう思う?
今回設置された自民党の「政治刷新本部」について、意識調査を行いました。
「政治資金問題の再発防止や信頼回復に有効な取り組みが行われると思いますか?」という問いに対し半数以上が「行われるとは思わない」と回答。「行われると思う」は1割以下に留まりました。
米重氏によると、この回答は自民党支持層に絞ってもほぼ同様の結果になるとのこと。政治刷新本部が機能すると考えているのは自民党支持層でも少数に限られるようです。
MC千葉佳織「自民党支持層も変わらないっていうのは、なかなか捉え方が厳しいですね」
政治刷新本部が有効な解決策を打ち出すことができず、さらに逮捕者が増えたり通常国会で激しい追及を受けたりすれば、政治資金問題がより注目され「自民党の支持率に下押し圧力が働く可能性がある」と米重氏。
「政治を託すのに信頼できる政治勢力だと支持層からも思われていない状態を放置すると、それは後々ダメージとして聞いてくる可能性が高い」とコメントし、今回の調査結果が「岸田内閣の命運に大きくかかわるもの」との見方を示しました。
MC千葉「もし派閥がなくなったら支持率に関係すると思いますか?」
米重氏「すぐ支持率がポッと上がるみたいな話ではないと思います」
米重氏は小泉政権時の郵政解散を挙げ、自民党内の対決構図ができればストーリーはイメージできるとしつつ、「岸田内閣はそういうことをしないだろう」とコメント。
しかし、派閥がなくなり政策集団になるだけでは、国民も問題解決を実感することはできないのではないかと続けました。
最後に、米重氏は政治刷新本部での議論や取り組みの行方について「本気で変わらないと、戦わないとまずいと、自民党内の方々が思うような状況になるかどうかというところだと思いますね」と締めくくりました。
●野上参議院議員「しかるべき時に説明責任果たす」と繰り返す 1/18
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件で、派閥のキックバックを収支報告書に記載していなかった疑いが持たれている富山県選出で安倍派の参議院議員で国会対策委員長の野上浩太郎氏は18日、国会内で取材に対し「しかるべき時期に説明責任を果たす」とこれまでの説明を繰り返しました。以下は記者とのやりとり(抜粋)です。
記者:国対委員長としては、安倍派の議員の方が委員長をつとめる委員会について、今後の審議の在り方として適当だと考えていますか。
野上浩太郎 参議院議員:それはまずは、やはりそれぞれが説明責任を果たしていくということが重要だというふうに思います。
記者:安倍派の政治金問題をめぐっては所属の議員が強制捜査を受けていて、あす(19日)議員総会が開かれます。こうした現状についてどのように受けとめていますか。
野上浩太郎 参議院議員:議員総会が19日に開かれるという案内は正式にきていない状況です。
記者:一連の現状についての受け止めは。
野上浩太郎 参議院議員:やはり、この件に関連して大きな政治不信を招いておりますことを心からお詫びを申し上げたいと思っております。それぞれが今捜査中の案件ですが、しかるべきときにしかるべき説明責任を果たしていかねばならないというふうに思います。
記者:国対委員長として個別に記者会見などを開いて説明に臨む考えはありますか。
野上浩太郎 参議院議員:これもですね、いま捜査中の案件でございますので、私自身もしかるべき時期に説明責任を果たしたいというふうに思っております。
●能登半島地震の広範囲隆起 映像分析した専門家「驚きの結果」 1/18
能登半島地震では、石川県輪島市や珠洲市の広い範囲で地盤が隆起していることが分かっています。NHKのヘリコプターで撮影した映像からも、半島の北側では海底が露出した地形が見渡すかぎり続いている様子が確認され、専門家は「今回の地震の規模の大きさを示す驚きの結果だ」と指摘しています。
専門家による「令和6年能登半島地震変動地形調査グループ」の調査によりますと、今回の地震で能登半島の北側では、東西およそ90キロの範囲で陸域がおよそ4.4平方キロメートル海側に拡大したことが分かっています。
地震活動に伴う地形の変化などを研究している産業技術総合研究所 地質調査総合センターの宍倉正展グループ長は、17日にNHKのヘリコプターが輪島市北側の海岸線を撮影した映像を分析しました。
それによりますと、輪島市渋田町や町野町付近では、ふだんは海中や海面上わずかに顔を出す大きな岩、岩礁がむき出しになっていたり、砂浜が拡大しているのが確認できました。
宍倉さんは「岩礁は通常、海面すれすれのところで作られる地形だが、今は完全に露出している。また、砂浜にある崖のような地形は、波に浸食されて作られるので、地震前は波がここまで打ちつけていた証拠といえ、今回の隆起で干上がった部分だ」と指摘しました。
また、映像からは、東の珠洲市の方向へ5キロ以上にわたって同じような地形が続いていたことも確認され、能登半島の北側では、さらに隆起した地形が広がっているとみられるということです。
このほか、映像では確認できなかったものの、能登半島の内陸でも局所的に地盤の隆起や変動が起きている可能性があるということです。
宍倉さんは「広範囲の隆起は地震の規模の大きさを示している。能登半島で過去に隆起があったことは地形の調査で認識はしていたものの、この現代に起こるのかと非常に驚きを感じた」と述べました。
過去の地震によって地盤が隆起した場所は、能登半島以外にもあるとしたうえで「南海トラフ沿いでも、静岡県の御前崎や和歌山県の潮岬、高知県の足摺岬や室戸岬の周辺は、地震で大きく隆起するおそれがある。地震で地盤の変動が起こることも認識しておく必要がある」と指摘しました。

 

●被害状況 19日 石川県で232人死亡 22人が安否不明 1/19
石川県によりますと県内であわせて232人の死亡が確認されているということです。
また、重軽傷者は県内全体で1061人にのぼっています。
石川県 232人の死亡確認(19日午後2時)
石川県によりますと県内で死亡が確認された人の数は19日午後2時の時点で、232人となっています。
市と町ごとにみますと珠洲市で99人、輪島市で98人、穴水町で20人、能登町で7人、七尾市で5人、志賀町で2人、羽咋市で1人となっています。
このうち、「災害関連死」の疑いは、珠洲市で6人、能登町で5人、輪島市で3人のあわせて14人となっています。
内閣府によると、「災害関連死」は、地震の揺れや津波などによる直接的な被害で亡くなるのではなく、その後の避難生活などで病気などが悪化したり体調を崩したりして、命が失われるケースを言います。
また、重軽傷者は、県内全体で1061人にのぼっています。
寒い避難所対策・車中泊 低体温症とエコノミークラス症候群予防
安否不明者22人(19日午後2時)
石川県は、19日午後2時の時点で、家族や親族などからの情報をもとに、自治体を通じてまとめた安否が分かっていない人、あわせて22人の名前、住所、性別、年齢を公表しました。
自治体ごとの内訳は、輪島市が18人、珠洲市が4人です。
年齢は、36歳から97歳となっています。
県は、この中には、転居などで連絡が取れないものの無事だった人が含まれている可能性があるとして、広く情報の提供を求めています。
避難者 359か所で1万3934人(19日午後2時)
石川県によりますと、県内の市や町が設ける避難所に避難している人は、19日午後2時の時点で、359か所で1万3934人となっています。
自治体別にみると、金沢市が9か所で341人、七尾市が26か所で1499人、小松市が1か所で4人、輪島市が128か所で4797人、珠洲市が45か所で2335人、羽咋市が2か所で93人、かほく市が2か所で20人、白山市が3か所で393人、能美市が2か所で17人、野々市市が2か所で97人、津幡町が1か所で28人、内灘町が3か所で115人、志賀町が37か所で1010人、宝達志水町が1か所で24人、中能登町が2か所で44人、穴水町が39か所で1656人、能登町が56か所で1461人となっています。
県は、被災者を対象に旅館やホテルなど、「2次避難所」への受け入れを進めています。
金沢市や加賀市などにある旅館やホテル、あわせて84か所の2次避難所には、2075人が避難しているほか、被災者を一時的に受け入れる「1.5次避難所」である金沢市の「いしかわ総合スポーツセンター」と「石川県産業展示館」、それに小松市の「小松市総合体育館」には、あわせて305人が避難しています。
住宅被害 少なくとも2万9896棟に(19日午後2時)
石川県によりますと、19日午後2時時点で県内では能登地方を中心に少なくとも2万9896棟の住宅で被害が確認されたということです。
自治体別にみますと、金沢市で全壊、半壊、一部破損があわせて3034棟、七尾市で全壊、半壊、一部破損があわせて7949棟、小松市で、半壊が20棟、一部破損が1268棟、加賀市で全壊が5棟、半壊が17棟、一部破損が889棟、羽咋市で全壊、半壊、一部破損があわせて1465棟、かほく市で全壊、半壊、一部破損があわせて869棟、白山市で一部破損が108棟、能美市で半壊が1棟、一部破損が364棟、野々市市で一部破損が15棟、川北町で一部破損が3棟、津幡町で全壊、半壊、一部破損があわせて922棟、内灘町で全壊、半壊、一部破損があわせて1212棟、志賀町で全壊、半壊、一部破損があわせて3443棟、床上浸水が6棟、床下浸水が5棟、宝達志水町で全壊、半壊、一部破損があわせて606棟、中能登町では全壊、半壊、一部破損があわせて1695棟、穴水町では全壊、半壊、一部破損があわせて1000棟、能登町ではで、全壊、半壊、一部破損があわせて5000棟となっています。
輪島市と▽珠洲市では多数の住宅に被害が出ていて、詳しい状況は把握できていないとしていますが珠洲市については、泉谷市長が18日、オンラインの会議で政府と意見を交わした際、住宅の被害について、市内のおよそ6000世帯のうち全壊が5割にのぼるという見通しを示しています。
停電 約7500戸(19日午後2時)
北陸電力送配電によりますと今回の地震の影響で、石川県の能登地方では19日午後2時の時点でおよそ7800戸が停電しています。
自治体別では、輪島市でおよそ4800戸、珠洲市でおよそ2300戸、能登町でおよそ340戸、穴水町でおよそ80戸、志賀町でおよそ20戸、七尾市でおよそ10戸となっています。
8市町 約4万9990戸で断水続く(19日午後2時)
石川県によりますと、19日午後2時の時点で、8つの市と町のあわせておよそ4万9990戸で、断水が続いているということです。
【ほぼ全域で断水】
輪島市のおよそ1万戸、珠洲市のおよそ4800戸、穴水町のおよそ3200戸、能登町のおよそ5900戸、七尾市のおよそ1万7800戸、志賀町のおよそ7000戸
【一部の地域で断水】
羽咋市のおよそ440戸、内灘町のおよそ850戸
●復旧工事を国などが代行へ 能登半島地震を「非常災害」に指定 政府 1/19
政府は19日午前の閣議で、能登半島地震を「非常災害」に指定しました。自治体が管理する漁港、海岸、港湾などの復旧工事を国や県が代行できることになり、早期の復興を目指します。
岸田総理 「今回の地震を大規模災害復興法に基づく、非常災害に指定する政令を閣議決定いたしました。権限代行を通じた実行面の支援についても環境が整いました」
岸田総理大臣はインフラの復旧とともに、倒壊した家屋の解体・撤去や仮設住宅の建設の加速化に向けて、全力を尽くすよう関係閣僚に指示しました。
また、能登地方の経済を支える農林水産業や伝統産業、観光業などへの支援も急ぐように指示しました。
●政府 能登半島地震を「非常災害」に指定を決定 1/19
今回の能登半島地震について、政府は、港湾などのインフラの復旧工事を、国が代行できるようにするため、大規模災害復興法に基づく「非常災害」に指定することを決定しました。
大規模災害復興法は、東日本大震災を受けて2013年に作られた法律で「非常災害」として指定されると、被災した自治体からの要請に基づき、港湾や道路などのインフラの復旧工事を国や都道府県が代行できるようになります。
今回の能登半島地震について、政府は、石川県内の漁港で地盤が隆起して海底が露出し、漁船が出港できなくなった地域があるなど、被害の甚大さを踏まえ、19日の閣議で「非常災害」に指定することを決定しました。
指定は2016年の熊本地震、2019年の台風19号、2020年7月の九州などで、大きな被害をもたらした一連の豪雨災害に次いで4例目です。
指定の決定のあと、岸田総理大臣は政府の対策本部で「すでに今回の災害を激甚災害に指定するなど、財政面での措置を講じているが、権限代行を通じた実行面での支援も環境が整った。引き続きインフラの復旧に全力を尽くしてもらいたい」と述べました。
●安倍派・藤原崇衆院議員、5年間で14万円還流 自民パー券問題 1/19
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件で、藤原崇衆院議員(岩手3区)が、所属する清和政策研究会(安倍派)から5年間で14万円のキックバック(還流)を受けていたことが明らかになった。政治資金収支報告書で本人からの寄付としていた収入名目の一部を派閥名に訂正する。
藤原氏の事務所によると、藤原氏は2018〜22年、派閥側に支出として記載されていない還流分を、自身が代表を務める自民党岩手県第3選挙区支部の報告書に、本人からの寄付などとして記載していた。報告書の保存期間の3年分に当たる10万円を同研究会からの寄付に訂正する。
藤原氏側が同研究会から還流分の処理を改めたいと連絡を受け、協議したという。
藤原氏は自民党の青年局長、政治刷新本部事務局次長を務めている。
●岸田派解散に根回しなし 安倍派は解散の方向 1/19
安倍派と二階派は19日午後に派閥の総会を開き、幹部が今後の対応などを説明します。派閥の解散まで踏み込むのかが焦点です。
岸田総理は、派閥の解散は信頼回復のためだと改めて強調し、他の派閥については「申し上げる立場にない」と言及を避けました。
岸田総理大臣「信頼を回復するために、政策集団のルールについては考えていかなければならない」
ただ、派閥の解散について岸田総理から他の派閥への根回しは一切なく、ある派閥の領袖(りょうしゅう)は「足並みをそろえなくてはいけないなかで、自分だけが格好良いことを言って抜け駆けだ」などと不快感を示しています。
一方、安倍派の塩谷座長は、19日午後6時からの臨時総会でノルマを超えたキックバックについて「若手や中堅の政治活動を助成する趣旨から始まったが、足を引っ張る結果となってしまった」などと謝罪します。
安倍派の若手らは、幹部への不満を募らせていて連日会合を開いています。
総会の前に塩谷座長に対して派閥の解散を申し入れる考えです。
幹部は「若手にとって一番良い方法を取るべきだ」と話していて、安倍派は解散する方向です。
解散に慎重な他の派閥の対応が問われることになります。
●谷川議員は記者に「頭悪いね」、政治家一族の大野議員 その経歴は 1/19
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件で、派閥から資金のキックバック(還流)を受けた清和政策研究会(安倍派)の2議員(いずれも離党)が在宅で立件された。2人はどんな議員なのか。
政治資金規正法違反で在宅起訴された大野泰正(やすただ)参院議員(64)は、1955年の保守合同による自民党結党を主導し、初代副総裁を務めた大野伴睦(ばんぼく)氏を祖父に持つ。父も元運輸相、母も元参院議員という政治家一族だ。
伴睦氏は東海道新幹線の岐阜羽島駅を誘致したとの評価もあり、駅前には伴睦夫妻の銅像が建つ。地元の岐阜県羽島市議によると、かつては「大野支持者にあらずんば羽島市民にあらず」と言われるほどだったという。
大野議員自身は小学校から大学まで首都圏の慶応系列の学校に通っていたが、県議を3期務めた後は大野家の知名度を生かし、参院選で2回の当選を果たした。
同法違反で略式起訴された谷川弥一衆院議員(82)は長崎県の五島列島出身。71年に建設会社を創業し、87年から県議に。5期の間に「谷川派」と呼ばれる強固なネットワークを県政界に築いた。2003年に衆院長崎3区から出馬し初当選。7期務め、農水政務官や副文部科学相を歴任した。
国会などでの振る舞いはたびたび話題になった。16年11月の衆院内閣委員会では質問後に「時間が余っているので」と突然、般若心経を唱えた。今回の裏金疑惑が浮上後、長崎市で記者団の取材に応じた際には、質問を重ねる記者に「頭悪いね」と言い放った。
地元のベテラン県議は「親分肌で仕事もできるが、政治を商売に使うところがある」と評する。
事務所関係者によると、谷川議員は10年ほど前に別の国会議員からキックバックの仕組みを耳にしたとみられ、派閥のパーティー券販売に精を出すようになった。自身が創業した建設会社社員に販売枚数を割り当て、社員を通じて下請け企業などに売っていたという。関係者は「みんな付き合いで買っていた。東京のパーティーに実際に行く人はほとんどいなかったのではないか」と話した。
●長崎3区の谷川弥一議員 略式起訴 自民党を離党 議員辞職へ 1/19
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、東京地検特捜部は、衆議院長崎3区選出の谷川弥一議員を政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で略式起訴しました。
谷川議員は自民党を離党し、議員辞職する意向を固めました。
略式起訴されたのは、谷川弥一衆議院議員と谷川議員の娘の三宅浩子秘書(47)です。
特捜部によりますと、谷川議員は三宅秘書と共謀し、おととしまでの5年間に安倍派から4355万円のキックバックを受けたにもかかわらず、みずからが代表を務める資金管理団体の収入として記載していなかったとして、政治資金規正法違反の虚偽記載の罪に問われています。
特捜部に対し、谷川議員は虚偽記載を認めているということです。
略式起訴を受けて谷川議員は19日、自民党を離党しました。
そして、議員辞職する意向を固め、週明けにも衆議院に議員辞職願を提出することにしています。
谷川議員は五島市出身の82歳。
みずから創業した「谷川建設」の社長を務めたあと、県議会議員を5期務めました。
そして、平成15年の衆議院選挙で、虎島和夫元防衛庁長官の後継者として長崎3区から立候補して初当選を果たしました。
その後、当選を続けて現在は7期目で、これまでに農林水産政務官や文部科学副大臣、それに衆議院の文部科学委員長などを歴任しました。
大村市にある谷川弥一議員の事務所では、午前中から事務所や後援会の関係者数人が出入りをしていました。
そして、午後2時ごろ、事務所の責任者を務める男性が事務所から出てきましたが、記者の問いかけに対して、「何も話せない」と述べて足早にあとにしました。
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題について、谷川弥一議員は先月10日、長崎市で報道陣の取材に応じました。
谷川議員は持参したコメントを読み上げる形で、「清和政策研究会のパーティー券の問題については刑事告発を受けている案件でもあり、事実関係を慎重に調査・確認をして、適切に対応してまいりたい。今後、事態が進展し、問題点や課題が明らかになってくれば、再発防止の取り組みなどを進めていく必要があると考えている」と述べました。
一方で、自身の進退やパーティー券の販売の実態などについては、「いまは答えられない」との回答を繰り返しました。
さらに、記者から、「派閥の中でキックバックがあったか」と問われると、谷川議員は「何を言ってもいまのとおり。頭悪いね、言ってるじゃない。質問してもこれ以上言わないって言ってるじゃない。わからない」と述べました。
そして、今月15日、谷川議員は「一身上の都合」として県連の会長を辞任しました。
谷川議員は県連を通じて、「このたびの事件に際し、皆さまにご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げる。現時点では捜査中のため詳細をお話しすることができないが、責任をとって会長の職を辞任させていただく」とコメントしました。
●裏金事件、自民・大野泰正議員ってどんな人? 祖父は「自民結党の立役者」 1/19
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件では、大野泰正(やすただ)参院議員(64)=岐阜選挙区、当選2回=も19日、政治資金規正法違反の疑いで立件された。
逮捕された池田佳隆衆院議員とともに派閥から多額のキックバック(還流)を受けていたとされる大野氏とは、どんな人物なのか。
キックバック多額議員の一人
安倍派では、パーティー券の販売ノルマ超過分を政治資金収支報告書の収入に記載せず議員側に還流。支出にも記載せず、受領した議員側も収入として書いていなかった疑いが持たれている。
大野氏は池田氏と並ぶ高額受領者で、時効がかからない2018年以降の5年間で5000万円超の還流を受け、裏金にしていたとみられる。
大野氏は昨年12月7日付で、資金管理団体「泰士会」の2022年分の収支報告書を訂正し、22年に3回実施された「大野泰正政経フォーラム開催事業」の収入を計450万円減額した。
東京地検特捜部は昨年12月28日と29日、大野氏の国会議員事務所など関係先を捜索していた。
安倍元首相とは祖父同士が因縁の関係
安倍派を率いた安倍晋三元首相とは、祖父同士が因縁の関係にある。
大野氏の祖父は、1955年の自民結党の立役者で、初代副総裁を務めた故大野伴睦(ばんぼく)元衆院議長。
祖父の伴睦氏は、安倍元首相の祖父、岸信介元首相と派閥抗争を繰り広げたことで知られる。日米安全保障条約の改定のため、岸元首相が「次の首相は大野氏に譲る」と政権禅譲を約束しながら、後に反故にしたのは有名な逸話だ。
大野氏の両親も元国会議員という政治家一家。父の明氏は運輸相、その後を継いだ母つや子氏も法務政務官を務めた。
大野氏は、慶応大法学部を卒業後、全日空に入社。両親の公設秘書を経て、岐阜県議を3期務めた後、2013年に参院議員に初当選した。安倍内閣で2016年に国土交通政務官を経験するなど、運輸関連の役職が目立つ。昨年10月からは参院内閣委員長を務めている。
父との対話通じ政治家志す
大野氏は、過去の本紙取材に、学生時代、野球やアイスホッケーに夢中だったとし、「次男だったから気楽に遊び回っていた」と話していた。
地方分権の推進が持論。若い頃、理想論を振りかざすと、父の明氏にたしなめられたという。時にぶつかりながら会話を重ね、「政治は人が生きることを支えて国を元気にするもの」と肌で感じてきたことが、政治家を志した原点だと明かしている。
●大野泰正・谷川弥一両議員が自民党離党 安倍派パーティー裏金事件で立件 1/19
自民党・安倍派の大野泰正参院議員と谷川弥一衆院議員は19日、派閥からパーティー収入の高額なキックバックを受けた事件で立件されたことを受け、自民党を離党した。
党本部に離党届を提出し、受理され、党紀委員会でも了承された。
大野・谷川両議員は会計責任者と共謀し、政治資金パーティーをめぐって派閥からキックバックを受けた収入を議員側の収支報告書に記載せずウソの金額を記した罪に問われ、東京地検特捜部は、大野議員を裁判を求める在宅起訴とし、谷川議員については、罰金刑を求める略式起訴とした。
●安倍派・二階派の会計責任者 岸田派の元会計責任者を立件 1/19
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、東京地検特捜部は、政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で、安倍派と二階派の会計責任者を在宅起訴し、岸田派の元会計責任者を略式起訴しました。
また、安倍派から5000万円を超えるキックバックを受けたとされる大野泰正参議院議員を在宅起訴し、谷川弥一衆議院議員らを略式起訴しました。
一方、安倍派の幹部7人や二階元幹事長など、派閥の幹部については、会計責任者との共謀は認められないとして、立件しない判断をしました。
派閥側で在宅起訴されたのは、
安倍派「清和政策研究会」の会計責任者、松本淳一郎被告(76)と 二階派「志帥会」の会計責任者、永井等被告(69)で、略式起訴されたのは、岸田派「宏池政策研究会」の佐々木和男 元会計責任者(80)です。
東京地検特捜部によりますと、おととしまでの5年間で、安倍派の松本会計責任者は、合わせて6億7503万円、二階派の永井会計責任者は、合わせて2億6460万円のパーティー収入などを、派閥の政治資金収支報告書に収入として記載していなかったなどとして、また、岸田派の佐々木元会計責任者は、2020年までの3年間で合わせて3059万円のパーティー収入などを、派閥の政治資金収支報告書に収入として記載していなかったとして、それぞれ、政治資金規正法違反の虚偽記載の罪に問われています。
一方、特捜部は、安倍派の幹部7人や二階元幹事長など、派閥の幹部からも任意で事情を聴いてきましたが、いずれも、派閥の会計責任者との共謀は認められないとして立件しない判断をしました。
議員側で在宅起訴されたのは、安倍派に所属する参議院議員の大野泰正被告(64)と 秘書の岩田佳子被告(60)で、略式起訴されたのは、安倍派に所属する谷川弥一衆議院議員(82)と 谷川議員の娘の三宅浩子秘書(47)
二階俊博元幹事長の事務所の梅澤修一秘書(55)です。
特捜部によりますと、大野議員は、岩田秘書と共謀し、おととしまでの5年間に、安倍派から5154万円のキックバックを受けたにもかかわらず、みずからが代表を務める資金管理団体の収入として記載していなかったとして、谷川議員は、三宅秘書と共謀し、おととしまでの5年間に、安倍派から4355万円のキックバックを受けたにもかかわらず、みずからが代表を務める資金管理団体の収入として記載していなかったとして、それぞれ政治資金規正法違反の虚偽記載の罪に問われています。
また、梅澤秘書は、おととしまでの5年間で、3526万円のパーティー収入を二階派に納入せず、二階元幹事長の資金管理団体の収支報告書に、派閥側からの収入として記載していなかったとして、政治資金規正法違反の虚偽記載の罪に問われています。
関係者によりますと、特捜部に対し、大野議員は関与を否定していますが、3つの派閥の会計責任者や谷川議員、梅澤秘書は、いずれも虚偽記載を認めているということです。
また、特捜部は1月7日に、4800万円余りのキックバックを受けたとみられる衆議院議員の池田佳隆容疑者(57)と政策秘書を逮捕していて、勾留期限の1月26日までに刑事処分を判断する見通しです。
安倍派 元閣僚「政治不信を引き起こしおわび」
安倍派の閣僚経験者の1人は、NHKの取材に対し「政治不信を引き起こしたことを、安倍派の一員として大変申し訳なく思っており、心よりおわび申し上げる。一連の問題を深く反省し、信頼回復に向けて努力していきたい」と述べました。
自民 元閣僚「厳しい局面続くことは変わらず」
自民党の閣僚経験者は、NHKの取材に対し「結局、派閥幹部の立件がなく世論は納得するだろうか。今後、検察審査会に審査の申し立てが行われる可能性もあり、自民党にとって厳しい局面が続くことには変わりはない」と述べました。
●「世襲議員」の存在が政治不信を招く 選挙制度の見直しが必要だ 1/19
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件は、繰り返される「政治とカネ」の問題の根深さを浮き彫りにした。リクルート事件に端を発した平成の政治改革から約30年。当時の改革に足りなかったものは何か。問題の根絶には何が必要か。各界の識者らに聞いた。
選挙が「個人戦」になってしまっている
―今回の問題で、国会議員個人が多額の政治資金を集めて活動している状況が浮き彫りになった。
「多額の政治資金を必要とする原因は、今の選挙制度が『個人戦』になっていることにある。30年前の政治改革で、衆院の選挙制度を中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変えた際のテーマは『政党本位・政策本位』だった。議員(候補者)個人の資金力が影響しない選挙制度を目指したはずだったが、徹底できなかった」
―なぜ選挙が個人戦になったのか。
「小選挙区で負けた候補者が比例復活するには、同じ政党内で惜敗率を争わなければならず、参院や地方議員選挙では党内競争につながる中選挙区制がそのまま残った。完全な政党本位にはならなかった」
制度見直しは、政治が変わる大きなシグナルに
―選挙制度の見直しは必要か。
「必要だ。政治が変わる大きなシグナルになる」
―政治不信が続くとどうなるのか。
「自分たちが選んでいる人を信頼できなければ、独裁者を生みかねない。議会制民主主義の根本が揺らぎ、非常に危ない」
―何が政治不信を招いているのか。
「最大の要因は、世襲議員の存在だと思う。3代目、4代目が首相や閣僚を務めることで(一般市民が)『自分たちは議員になれるはずがない』という感覚を持ってしまっている。これは非常にまずい。親の遺産も政治団体を経由させることで相続税なしで受け継ぐことができ、『地盤・看板・カバン』が簡単にそろう。世襲政治家は圧倒的に有利で、親の選挙区からの立候補を禁じるなどの見直しが必要だ」
企業献金は禁止、個人からに切り替えるべき
―政治資金制度の見直しは。
「改革が不徹底に終わったのは政治資金も同じだ。企業や団体からの献金はばっさり禁止し、個人からの献金に切り替えるべきだ。パーティー券も個人しか買えないようにすれば良い。米国では、支持者がおしゃれをして党大会に出かける。個人で献金を出すから政治に関心をもつ。企業や団体から献金を集める仕組みが続けば、個人にアプローチするようにならないのではないか」
―自民党内からは「制度より意識を変えることが先だ」という声も聞く。
「意識を変えるには、まずは制度を変えることが重要だ。地方では議員のなり手不足が深刻で、すでに政治が崩壊している。もし小手先の改革に留まれば、日本は沈没する」
―派閥の存廃は。
「政策集団としての派閥はあってもよいが、金の流れを完全に明らかにする必要がある。アナログ時代の発想をやめ、現金の収受を禁止し、金融機関を通せば1円からすべて記録しデータ化することができる。われわれの研究費の支出も、すべてオンラインで処理され分かるようになっている」

衆院選挙制度改革 / 1988年に発覚したリクルート事件など「政治とカネ」を巡る一連の事件を受け、政治に金のかかる原因は同一政党の候補が争う中選挙区制度にあるとされた。89年に発足した第8次選挙制度審議会(首相の諮問機関)は90年、小選挙区比例代表並立制を柱とする改革案を答申。94年の法改正で同制度の採用が決まり、小選挙区300人、比例代表200人とした(現在は小選挙区289人、比例代表176人)。政党に小選挙区候補者の届け出などを認め、政党本位の制度を目指した。
●蓮舫議員「実態解明、徹底した説明が先」自民党岸田派解散検討を痛烈批判 1/19
立憲民主党の蓮舫参院議員が18日、自身のX(旧ツイッター)に新規投稿。岸田文雄首相が自民党岸田派(宏池会)の解散を検討していると報じられたことを受け、「実態解明、徹底した説明が先」などと批判した。
岸田首相はこの日夜、岸田派解散について「検討している。政治の信頼回復に資するなら考えなければならない」と語った。岸田首相は裏金事件を受けて昨年12月に離脱するまで同派会長を務めていた。
報道を受けて、蓮舫議員は「派閥解散の前に実態解明、徹底した説明が先でしょう」と指摘。さらに「しかも、党の政治刷新本部にも諮らずに自身の派閥だけ、ですか」と憤った。
フォロワーらからは「諸々の責任や批判を有耶無耶にするため、と感じてしまいます。『もう無い派閥の話だ』って」「会長も辞めて、自分だけ抜け駆け感半端ない」「解散しても誰も納得しないし、信頼回復なんて、100%無理」など厳しい声が届いている。
●政治資金パーティー問題 岸田派に飛び火 改革の足元揺らぐ 1/19
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件が岸田派に飛び火した。派の元会計責任者が刑事責任を問われる展開に、岸田文雄首相は岸田派の解散へ率先してかじを切る。だが野党の怒りがやむ気配はなく、首相に辞任を迫る。国民の信頼回復へ「火の玉になる」と宣言し、改革の旗を振る首相。その足元が揺らぎつつある。
「事務的なミスの積み重ねだと報告を受けている」
18日午前、官邸。首相は、岸田派の元会計責任者が政治資金規正法違反(虚偽記入)の疑いで立件されるとの報道を受け、記者団から自身の責任を問われると、淡々と言い放った。この時は反省の弁は一切なかった。
一転
首相が「事務処理上の疎漏」と釈明した背景には「パーティー収入を組織的に還流して裏金化していた安倍派とは違う」(岸田派幹部)との強烈な意識があった。昨年末、東京地検特捜部の捜査対象になっていることが表面化した際も、幹部は「事件化されないよ」と高をくくっていた。
風向きが変わったのは18日午後。首相は官邸に岸田派幹部をひそかに呼び込み「政治の信頼を回復するため、岸田派を解散しようと思う」と伝達。幹部の一人は「お任せします」と返した。
人ごとのようにも見えた午前の対応から一転、「首相自身、最も愛着を持っていた伝統派閥」(自民筋)の解散になぜ動いたのか。この幹部は党内で高まる派閥解消論に触れ「隗(かい)より始めよ、と判断したのだろう」と読み解く。
大なた
これまで安倍派の裏金事件を念頭に「党の体質刷新の取り組みを進める」「民主主義を守るため、党自らが変わらなければならない」とハッパをかけてきた首相。身内が立件される事態に、他派閥からは「ブーメランのように返ってきた」と皮肉る声も上がる。
ただ党内には「裏金は、あくまで安倍派の問題だ」とする議員も少なくなかった。それだけに岸田派も巻き込まれる流れに、自民若手は「全党的な問題となった。首相は逆に、遠慮なく改革の大なたを振るえるはずだ」と指摘する。
自民内では目下、派閥の存廃と議員本人への罰則強化が一大論点になりつつある。安倍派でも解散論が浮上したものの、他派閥が続くかどうかは分からない。自民重鎮は「議員に連帯責任を負わせる連座制は、やむなしだろう」と語る。
矢面
野党は、負い目を抱えた首相への攻勢を強める。立憲民主党の泉健太代表は「岸田派のトップは首相じゃないか。もう首相の資格はない。辞任すべきだ」と批判。長妻昭政調会長は、首相が本部長を務める自民党政治刷新本部の議論に言及し「茶番だ。民主主義を壊した張本人に民主主義を守るなんて言われたくない」と指弾した。
26日には通常国会が召集され、29日には裏金事件を受けた衆参予算委員会集中審議が開かれる。岸田派解散に踏み込むとはいえ、首相自身が矢面に立たされるのは必至だ。自民幹部は「相当紛糾するだろう。波乱の国会開幕だ」と早くも身構える。
当の首相。捨て身に映る岸田派解散の決断をたたえる周辺に対し、自らに言い聞かせるように力説した。「これをやらないと政権はじり貧になるんだ」
立件「線引き」 慎重に検討  自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件は、安倍派(清和政策研究会)など3派の会計責任者が19日に立件されるなど、一つの節目を迎える。捜査の端緒は、パーティー収入を過少に記載していたことを訴える刑事告発だったが、その後、還流による裏金づくりが発覚。還流や不記載は広く党内に浸透していたとみられるが、手口や金額に差があることから、検察当局は立件の「線引き」を慎重に検討した。
東京地検特捜部による捜査の端緒は、2022年11月以降に断続的に出された大学教授の刑事告発だった。当初は「単純ミス」という見方もあったが、任意提出されたパーティー券の販売記録や通帳を捜査する中で裏金疑惑が浮かび上がった。
安倍派では、派閥側の収支、議員側の収入全てに還流分が記載されず、議員側が派閥に納めずプールしていた分も含め、裏金の総額は6億円規模になる可能性がある。二階派(志帥会)でも、会長の二階俊博元幹事長ら複数の議員が同様にプールしていたとみられる。特捜部は年末から年始にかけ、両派の事務所などを家宅捜索したほか、中枢幹部を含む複数の議員を任意聴取した。
岸田派(宏池会)では、どの議員が売ったか分からないパーティー収入を元会計責任者が収支報告書から除外していたとされる。悪質性という点では最も軽いと判断されているもようだ。
裏金の額にも幅がある。最も高額とされているのが安倍派、大野泰正参院議員の5千万円超だ。池田佳隆容疑者=自民除名=の逮捕容疑は、還流された4826万円を除いた虚偽の収入を資金管理団体の政治資金収支報告書に記入した疑いだった。
●大きな節目を迎えた自民裏金事件 解説 1/19
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件が大きな節目を迎えました。
東京地検特捜部は19日、最大派閥の安倍派の会計責任者と、二階派と岸田文雄首相が会長を務めた岸田派の元会計責任者を政治資金規正法違反の疑いで立件しました。
自身の出身派閥にも飛び火したことで、18日には岸田首相の口から「岸田派の解散を検討する」との発言まで飛び出しました。
どんな事件?
安倍派などでは、派閥の政治資金パーティーで、パーティー券収入の一部を政治資金収支報告書に記載していなかった疑いが持たれている。
きっかけは、2022年11月の「しんぶん赤旗」の報道だった。2018年〜2020年に安倍派など5派閥の政治団体が、政治資金パーティーの収入計約2500万円を政治資金収支報告書に記載していなかったと報じた。
報道を受け、神戸学院大の上脇博之教授が、2018〜2021年の4年間を調べ直し、自民5派閥の政治団体において計約4000万円の不記載があったとして東京地検に告発していた。
2023年11月に入り、東京地検特捜部が派閥の担当者らを任意で事情聴取していることが明るみに出た。
どのようにして裏金に?
安倍派や二階派では、派閥の政治資金パーティーに関して、当選回数や閣僚経験に応じて所属議員に販売ノルマを設けているという。ある自民党関係者は「ノルマ以上の券を売ると議員個人の収入になる」(自民関係者)と証言する。
安倍派では、ノルマを越えた分のパーティー券収入を所属議員に還流(キックバック)しながら政治団体の収支報告書に記載せず、議員側が裏金化していたとされる。
所属議員側がパーティー券の販売ノルマ超過分を派閥に納めず、手元にプールしていたケースもあったとされる。
裏金は何に使った?
収支報告書に記載せず、裏金にしていた資金は何に使ったのか。誰もが抱く疑問については、いまだに明らかになっていない。
というのも、これまで疑惑が取り沙汰されている議員や派閥は、一度も公の場で説明をしていないからだ。
ある自民党議員の秘書は「ノルマは50枚(100万円)で、ノルマを超えた分が振り込まれました。後援会活動費として使っています」と明かす。
自民党のベテラン衆院議員の元秘書は「秘書の人件費や地元の会合の会費などお金がかかるのは確か。当選回数が少ないほど広報にも費用がかかる」と話す。
これに対し、立正大の金子勝名誉教授(憲法)は「自民党の論理で『政治には金がかかる』『選挙には金がかかる』という言葉を無条件に信じていいのか。私設秘書を雇ったり、買収で金を配る選挙をやったりするからではないか」と批判している。
政治資金パーティーとは?
政治家や政治団体が、パーティー券を売って政治資金を集めるのが主な目的。自民党では政治家や派閥の大きな収入源になっている。政治資金規正法は収入から経費を差し引いた残額を政治活動に充てることを認めている。
自民党の各派閥は、年1回政治資金パーティーを開くのが通例で、1枚2万円が相場とされるパーティー券を団体や企業などに販売することが最大の収入源だ。
自民党派閥の場合、1回で1億円以上を集めるケースもある。
裏金事件、何が問題なの?
政治資金のルールを定めた政治資金規制法は、派閥も政治家個人の団体と同じく政治団体で、秘書や党職員が務めることの多い会計責任者に収支報告書の提出義務を課している。
議員本人も不記載や虚偽記入について指示するなど具体的に把握していれば、会計責任者と共謀したとして罪に問われる。
パーティー券の場合は、20万円を超えて購入した個人や団体の名前や金額を収支報告書に記載するよう義務付けている。
虚偽記入や不記載には、5年以下の禁錮または100万円以下の罰金が科せられる。刑が確定すれば原則5年間、公民権が停止され選挙に立候補できなくなる。
緩いパーティー券の規制
一連の裏金事件で、「ザル法」と指摘される政治資金規正法の問題があぶり出された。
寄付の場合、5万円を超えると収支報告書に記載義務がある。寄付に比べて氏名等の公開基準が緩いパーティー券収入は政治資金集めの抜け道になると指摘されてきた。
安倍派の場合、2022年分の収支報告書で見ると、パーティー収入9480万円のうち、購入者の名前が記載されたのは、41の企業・団体で、購入額全体の23%(2218万円)にとどまる。ある自民議員秘書は「ブラックボックスどころかブラックホール。誰にどれだけパーティー券を売ったか分からない」と実情を語る。
2023年1月には、薗浦健太郎元自民党衆院議員が、自身の政治団体でパーティーの収入を実際より少なく記載していたとして政治規制法違反に問われ、罰金刑が確定している。
なぜ安倍派が…
派閥の中でも、収支報告書への不記載の額が多いとされているのが、最大派閥の安倍派だ。
所属議員99人の大半が還流を受けていたとされ、裏金は直近5年間で6億円規模になる可能性がある。
2023年11月に入って、安倍派の座長を務める元文部科学相の塩谷立氏と、安部派の有力者「5人組」にも裏金疑惑が持ち上がった。
5人組は、当時、松野博一氏が官房長官、西村康稔氏が経済産業相、高木毅氏が党国対委員長、世耕弘成氏が党参院幹事長、萩生田光一氏が政調会長と、いずれも内閣や党の要職にあっただけに、自民党内に激震が走った。
岸田首相は12月14日、安倍派の松野博一官房長官、西村康稔経済産業相ら4閣僚を交代させた。萩生田光一政調会長、高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長も党役員の辞表を出。安倍派の有力者「5人組」を政権の要職から一掃した格好となった。
安部派の正式名称は「清和政策研究会」。「清廉な政治は人民を穏やかにする」という意味の「政清人和」が由来だという。
東京地検特捜部の捜査は?
東京地検特捜部は2023年12月19日、自民党安倍派と二階派を家宅捜索した。
安倍派では、派閥から4000万円を超えるキックバックを受けていた高額受領議員もおり、同じく特捜部の捜索を受けた。
12月27日には4000万円超の還流を受けたとされる池田佳隆衆院議員の関係先を捜索。28、29日には還流分が5000万円超とされる大野泰正参院議員を捜索した。
今年に入ると、一連の事件は現職の衆院議員の逮捕に発展した。
特捜部は1月7日、4800万円を裏金にしたとして、池田氏を逮捕した。一連の事件で初の逮捕者だった。
政治資金規正法では、会計責任者に収支報告書の提出義務を課している。ただし、派閥幹部や議員本人も不記載や虚偽記入について指示するなど具体的に把握していれば、会計責任者と共謀したとして罪に問われる。
一連の裏金事件において、収支報告書に記載しないことについて、派閥幹部から会計責任者に指示があったのか。あったとしたら、どのような指示だったのか。こうした点も捜査の重要なポイントだった。
安倍派では、「5人組」ら派閥幹部の関与も取り沙汰されていたが、報道によると、特捜部は立件を見送る方針を固めているという。
事件を受け自民党は…
自民党は、派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、岸田首相を本部長とする政治刷新本部を設置。再発防止や派閥のあり方を見直すため、1月中にも中間とりまとめを行うとしている。
刷新本部設置に当たり、岸田首相は「国民の信頼回復のために火の玉となって自民党の先頭に立ち、取り組む」との決意を語っていた。
しかし、刷新本部のメンバーに入った複数の安倍派議員にも裏金疑惑が浮上。岸田首相の本気度に疑念の目が向けられている。
1月16日の第2回会合では、出席議員から「派閥を全廃すべきだ」という厳しい意見も出た。
岸田首相にも飛び火
事件後、「国民の信頼回復」をたびたび口にしていた岸田首相だが、自身が会長を務めていた岸田派にも飛び火した。
1月18日になって、東京地検特捜部が政治資金規制法違反の疑いで、岸田首相が会長を務めていた岸田派の元会計責任者を立件する方針を固めたとの報道が流れた。
岸田派は同日、2020〜22年分の3年間で、計3000万円の不記載があったとして収支報告書を訂正。岸田首相は、不記載について「事務的なミスの積み重ね」と釈明していたが、夜になって突然、岸田派の「解散検討」を表明した。
●不可解な能登地震の予算対応 来年度の予備費倍増というが… 1/19
岸田文雄政権は、能登半島地震の対策として来年度予算の予備費を倍増させるという。なぜ今年度ではなく、来年度なのだろうか。
政府は、能登半島地震からの復旧・復興に対応するため、新年度予算案に盛り込まれた予備費について、現状の5000億円から1兆円に倍増させる。
気象庁の震度データベースなどで1919年以降、震度7クラスを記録したものを調べると、23年9月1日に関東大震災(当時首相は不在)、95年1月17日の阪神淡路大震災(村山富市首相)、2004年10月23日の新潟県中越地震(小泉純一郎首相)、11年3月11日の東日本大震災(菅直人首相)、16年4月14、16日熊本地震(安倍晋三首相)、2018年9月6日北海道胆振東部地震(安倍晋三首相)が起こっている。
財政制度が同じ戦後でみると、1995年阪神淡路大震災のとき1兆223億円の補正予算が2月24日閣議決定、28日国会で成立した。
2004年新潟県中越地震では、1兆3618億円の災害対策費などの補正予算が12月20日に閣議決定し、05年2月1日に国会で成立した。
11年の東日本大震災では、4兆153億円の補正予算が4月22日に閣議決定され、5月2日に国会で成立した。
16年の熊本地震では、7780億円の補正予算が5月13日に閣議決定され、17日に国会で成立した。
18年の北海道胆振東部地震では、他の豪雨災害などとともに9356億円(地震への対応は1188億円)の補正予算が10月15日に閣議決定され、11月7日に国会で成立した。
こうした前例をみると、震災発生後1カ月少しで災害対策費などの名目で補正予算が作られている。
岸田政権では、来年度予算の予備費で対応するらしいが、そもそも予備費とは「予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる」(憲法第87条第1項)ので、既に発生した災害を対象とするのはおかしい。
もし、3月末までの23年度内における地震、豪雪被害のように「予見し難い」ことに備えるなら、来年度ではなく23年度補正予算で対応すべきだろう。
24年度予算の成立は3月末だ。それまで新たな自然災害が起きない保証は誰もできない。例えば、再び震度7クラスの地震がどこかで発生したら、目も当てられないことになる。23年度補正予算をやらない理由は前例から見ても筆者にはさっぱり分からない。
23年度補正予算を2月初めに国会に提出し成立させて国民を安心させるべきではないか。石川県の馳浩知事も早期の補正予算を希望している。自民党関係者に話をしたら、「動いていないとおかしい」と言っていた。
国会日程が既に浮上している中、補正予算の話が表に出てこないのは不思議だ。国民を安心させるのが政治の役割ではないのか。
●岸田総理、午後に麻生副総裁ら党幹部と会談へ 岸田派解消について説明か 1/19
自民党の派閥の政治資金問題をめぐり、岸田総理が岸田派の解散を表明する中、きょう午後、麻生副総裁ら党幹部と相次いで会談することが分かりました。
関係者によりますと、岸田総理は午後、自民党の麻生副総裁のほか、茂木幹事長、渡海政調会長ら党幹部と相次いで会談する予定だということです。
岸田派を解散する経緯や、党内に設置した政治刷新本部の今後の議論について協議するものとみられます。
麻生副総裁と茂木幹事長はともに派閥のトップを務め、岸田政権を中枢で支えてきましたが、派閥の解散には慎重な姿勢です。
岸田総理は麻生氏らに相談することなく派閥の解散を表明した上で、「他の派閥のありようについて、何か申し上げる立場にはない」としていますが、麻生氏らの理解を得るのは難しい情勢です。
●岸田派解散を明言 1/19
岸田文雄首相(自民党総裁)は19日、岸田派(宏池会)の元会計責任者が政治資金規正法違反容疑で立件される見通しとなったことを受けて、「政治の信頼回復のために宏池会を解散する」と明言した。 
●安倍元首相が踏み込んだ「核の議論」はどこへ行ったのか 1/19
安倍晋三元首相は、日本の指導者として戦後初めて「核兵器の議論」に踏み込んだ勇気ある宰相だった。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が隣国ウクライナを蹂躙(じゅうりん)し、核兵器使用の恫喝(どうかつ)を行い、隣国の中国は核兵器の大軍拡の最中であり、北朝鮮も核武装を果たした。核の議論を始めるときである。
戦後日本の宰相たちは、60年安保騒動と岸信介首相の退陣後、安保論議を忌避し始めた。いつしか軽武装・経済成長の永続こそが、吉田茂元首相が敷いた路線であるという「都市伝説」が生まれ、米国が提供する安全保障にただ乗りすることが保守本流であるかのような歪(ゆが)んだ意識が生まれた。
戦後、安全保障上の最大の問題は、常に「核兵器の問題」であった。米国の核兵器を必死で模倣したソ連のスターリン、米国の後を追った英国、そして最後は、フランスと中国が核兵器開発に成功した。これら戦勝5カ国は、国連安全保障理事会の常任理事国であり、これ以上の核拡散を止めるべく、核兵器不拡散条約(NPT)体制が生まれた。その後、インド、パキスタン、北朝鮮、そして、イスラエルが核兵器を保有している。
冷戦中、西ドイツは焦った。米英仏が核兵器を保有している中で、NATO(北大西洋条約機構)の最前線で同族の東ドイツと銃を向け合う西ドイツは、欧州戦線が火を噴けば、核兵器で消滅するのは東西ドイツであり、その後、ドイツのいない欧州の平和が復活すると恐怖した。
西ドイツの執念は「NATO核の誕生」となって実を結んだ。ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギーの空軍は、核の応酬になればNATOが管理する米軍の核兵器を搭載して出撃する。
日本にも、米軍は核兵器配備を打診しようとしている。すでに米軍政下の沖縄には戦術核兵器が配備されていた。米兵と核兵器の前方展開は、米国にとって、その同盟国が死活的利益であることを示す。
しかし、日本は、広島、長崎の原爆投下、第5福竜丸のビキニ環礁での被ばく事件もあって、反核感情が強く出ていた。
佐藤栄作氏は首相当時、「沖縄の核抜き返還」を訴え、「非核三原則」を唱えてノーベル平和賞を獲得した。ただ、「ソ連の核攻撃から日本をどう守るか」という議論は欠落していた。
現在、日米間では拡大核抑止協議が開催されているが、国民には一切の開示がない。政府、自民党は「中朝露の核兵器から日本をどう守るのか」を、国民に対して誠実に語るべきである。日米同盟の核抑止はどう機能するのか、それは中国を抑止するに十分なのか。リアリズムに目覚めた国民は、政府の誠実な説明を待っている。
●岸田派解散で政権流動化、主流3派崩れるか 麻生・茂木派反発 1/19
岸田文雄首相(自民党総裁)が岸田派(宏池会)解散を突如打ち出し、二階派(志帥会)と安倍派(清和政策研究会)も後に続いたことで、政権の構図が流動化し始めた。屋台骨の麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長は大派閥の領袖で、両氏周辺は首相に激しく反発した。岸田、麻生、茂木の「主流3派」が首相を支える構図は崩れそうだ。脱派閥論者で非主流派の菅義偉前首相や菅氏に近い無派閥議員は首相の決断を評価しており、今後の連携に発展するのか注目される。
18日夜の首相の解散表明は麻生、茂木両氏にとって寝耳に水だった。麻生氏は、事件はあくまで安倍派などの政治資金処理の問題ととらえ、麻生派(志公会)は存続させたい意向とされる。麻生派の閣僚経験者は「人気取りのパフォーマンス。立件されていない派閥まで解散しろというのは本質的ではない」と批判した。
茂木氏も派閥の力を足掛かりにいずれ首相の座を目指す考えだった。茂木氏は19日、不満げな表情も周囲に見せたが、記者団には茂木派(平成研究会)解散の是非に関し、「(党政治刷新本部の)中間取りまとめを念頭にグループ(派閥)の仲間ともよく相談していきたい」と淡々と語った。
刷新本部は派閥の見直しに関し、来週の中間取りまとめに向けて議論の最中にあり、政治団体の解散は賛否が二分している。茂木派幹部は「首相が先に方向性を決めるなら議論する意味がない。いつもの思い付きだ」と酷評した。
首相は政権初期から重要な意思決定の際、まず麻生、茂木両氏に相談した。ただ最近はもともとは非主流派だった森山裕総務会長、無派閥の渡海紀三朗政調会長らも含めた党幹部6人に重要案件の協議の枠組みを広げた。加えて今回の岸田派解消を巡る混乱で、政権の構図は変容しそうだ。渡海氏は周囲に「首相の決断は政治改革の流れを一気に早める」と評価した。
菅氏も周囲に「派閥を解消しないと収まらない」と語る。無派閥の石破茂元幹事長の側近の赤沢亮正財務副大臣は19日、「無派閥情報交換会」初会合で「(首相の)相当な覚悟、本気が見えた。敬意を払いたい」と述べた。
森山氏率いる森山派(近未来政治研究会)は19日昼に緊急参集し、中間取りまとめで示される方針に沿って対応することを確認した。政治資金収支報告書への過少記載で告発されていない森山派が解散を決断すれば流れが決定的となる可能性がある。一方で岸田派や安倍派などの消滅で終われば、首相は党内で孤立しかねない。
●岸田総理、午後に麻生副総裁ら党幹部と会談へ 岸田派解消について説明か 1/19
自民党の派閥の政治資金問題をめぐり、岸田総理が岸田派の解散を表明する中、きょう午後、麻生副総裁ら党幹部と相次いで会談することが分かりました。
関係者によりますと、岸田総理は午後、自民党の麻生副総裁のほか、茂木幹事長、渡海政調会長ら党幹部と相次いで会談する予定だということです。
岸田派を解散する経緯や、党内に設置した政治刷新本部の今後の議論について協議するものとみられます。
麻生副総裁と茂木幹事長はともに派閥のトップを務め、岸田政権を中枢で支えてきましたが、派閥の解散には慎重な姿勢です。
岸田総理は麻生氏らに相談することなく派閥の解散を表明した上で、「他の派閥のありようについて、何か申し上げる立場にはない」としていますが、麻生氏らの理解を得るのは難しい情勢です。
●赤沢財務副大臣ら自民無派閥議員が初会合…岸田派改散方針を評価 1/19
自民党の無派閥の中堅・若手議員によるグループ「無派閥情報交換会」が19日、国会内で初会合を開き、政治資金の透明性確保や派閥のあり方などについて意見を交わした。
初会合には10人が出席した。グループの発起人を務める赤沢亮正財務副大臣は会合で、岸田首相(党総裁)が岸田派を解散する方針を決めたことについて、「相当な覚悟が見えた。敬意を払いたい」と語った。
●「派閥解消」加速で持ち上がる「石破茂首相」誕生の現実味 “派閥力学” 1/19
1月18日に、岸田文雄首相が表明した「宏池政策研究会(岸田派)」の解散検討表明。これに、自民党内が大揺れだ。
「自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題で、宏池会が約3000万円を派閥の政治資金収支報告書に記載しなかったことから、19日に宏池会の元会計責任者が略式起訴されました。前日の18日昼すぎ、起訴が濃厚になることを知った岸田首相が『政治の信頼回復のため』として、同派の解散に言及したのです。しかし、他派閥のありようについては『何か申し上げる立場にない』とも述べています」(政治担当記者)
今後、派閥はどうなるのか。自民党議員秘書は「派閥解消の流れが加速するのではないでしょうか。派閥維持を唱えれば『守旧派』のレッテルが貼られて、悪者扱いされそうです」という。一方、政治アナリストの伊藤惇夫氏は「派閥は解消されたように見えても『勉強会』などに形を変えて、維持・結束することがあります。どこまで解体されるのか、見極めが必要です」と指摘する。
派閥がなくなることにより大きな影響が出そうなのが、2024年9月に予定されている自民党総裁選である。
「派閥の力の源泉のひとつが、派閥から総理総裁を輩出することです。派内が分裂して一本化しないこともありますが、定石では派閥のトップが候補者になり、一致団結します。しかし派閥がなくなれば、この“縛り”がなくなるので、各議員はフリーハンド、自由意志で投票するようになります。そうすると、世論調査や地元有権者の意見などを無視できなくなるので、“どんでん返し”が起きる可能性は高くなります」(自民党関係者)
その“恩恵”をもっとも受けると見られているのが、石破茂元党幹事長だという。たしかに、石破氏は世論調査でつねに「次の総理大臣候補」のトップになっている。そのため、これまで4回挑戦した総裁選では、党員党友による地方票ではトップになることはあったものの、派閥単位の応援が得られず、国会議員票が伸びずに苦杯をなめていた。
自民党議員からは「後輩の面倒見が良くない」「一緒に飲んでも政策論ばかりでおもしろくない」などの評価はあるが、派閥がなくなることにより“悲願”が達成するかもしれない。伊藤氏は「自民党がどこまで追い詰められているか次第でしょう」という。
「自民党が、政権から転がり落ちるほど危機的な状況であれば、石破氏に限らず国民的人気が高い候補者を選ぶことも考えられます。そうでなければ、派閥がなくなっても残る“派閥力学”のようなものが働き、従来のような総裁選になると思います」
派閥解散は、ポスト岸田にも大きな影響を及ぼしそうだ。
●メジャー・ダルビッシュ有投手 5000万円を能登半島地震義援金として寄付 1/19
メジャーリーグ・パドレスのダルビッシュ有投手が、能登半島地震の義援金として5000万円を寄付しました。
19日、ダルビッシュ有投手の弟・賢太さんが大阪府の吉村知事に目録を手渡しました。
賢太さん「よろしくお願いします」
大阪府 吉村洋文知事「ありがとうございます」
ダルビッシュ投手は大阪府羽曳野市出身で、先週、家族を通じて市に相談し、「大阪府義援金」への5000万円の寄付が決まったということです。
目録を受け取った吉村知事は「全額、被災地にお気持ちと一緒に届けます」と話しました。
ダルビッシュ投手は「全ての被災者の方に心よりお見舞い申し上げます。1日も早い復旧、復興を心から願っています」とコメントしています。
ダルビッシュ投手は2011年の東日本大震災の際にも、5000万円を被災地に寄付しています。
●萩生田氏は“わきまえない男” 安倍派幹部「立件断念」で裏金を演説ネタに 1/19
「東京地検に連れていかれることはございません」──裏金捜査をネタに「つかみはOK」だ。自民党の派閥パーティー裏金捜査を巡り、刑事告発された安倍派幹部7人全員の「立件断念」報道を受け、萩生田前政調会長が堂々と勝利宣言。支援者に軽口を叩き、悦に入っても、まだまだ「無罪放免」とはいかない。
萩生田氏の地元・八王子市は現在、市長選の真っ最中だ。21日の投開票に向け、萩生田氏は自公推薦の元都庁職員・初宿和夫氏(59)を猛プッシュ。萩生田氏の大放言は16日夜、初宿陣営が寺の集会所で開いた個人演説会で飛び出した。
応援弁士として「政治資金問題で地元の皆さまにご心配をかけて申し訳ない」と自ら裏金ネタを前振り。「しっかり襟を正して、やり直していく」と決意を語ったが、神妙な顔つきはここまで。
「そうは言ってもワイドショーを見ていると、だんだん私の写真が(疑惑議員の)真ん中に寄ってきて」
悪びれもせず言ってのけ、会場の笑いを誘うとニンマリ。「『大丈夫か』と街の中でみんなが話していたのだろうと思いますが、そういう問題ではなくて『修正をきちんとする』ということになっております」と、東京地検特捜部との「手打ち」までにおわせ、冒頭のように断言したのだ。
現場を取材したジャーナリストの横田一氏が言う。
「萩生田氏の支援者30〜40人が参加した『ミニ集会』の雰囲気でした。身内だらけで気を許したとはいえ、反省ゼロです」
捜査対象者にここまで軽口を叩かれるとは特捜部もナメられたものだが、「今週に入り、安倍派幹部が次々と検察が作成した供述調書に署名しているようです」とは政界関係者だ。萩生田氏も「一件落着」と安堵しているのだろう。目下の懸念の地元市長選でも心強い援軍が現れた。小池都知事が19日、初宿氏の応援演説に駆け付ける。
「対立候補で立憲や共産などが支持する滝田泰彦氏(41)は、小池知事が特別顧問を務める『都民ファーストの会』の元都議。小池知事の裏切りは、昨年の江東区長選で子飼い候補を自公に推薦してもらったバーターともっぱら。自民党都連会長の萩生田さんが裏で糸を引いたとも言われています」(都政関係者)
政敵だった“女帝”と握り、萩生田氏は「勝ったも同然」と思っているかも知れないが、裏金事件の逆風は収まっていない。不起訴になっても検察審査会の「市民感覚」による判断が待ち受け、加えて萩生田氏は他の幹部とは立場が大いに異なる。
都連会長として新たに政治告発された身
自民党都連でも政治資金パーティー収入の不記載が発覚。今月2日には都連会長の萩生田氏ら3人が、政治資金規正法違反容疑(不記載など)で東京地検に刑事告発された。都連の手口は安倍派とソックリで、告発した神戸学院大教授の上脇博之氏は〈大胆な不記載は代表者抜きに行えるものではない〉と告発状で萩生田氏と会計責任者らとの共謀の可能性を指摘。
つまり、萩生田氏だけは立件の判断が、まだ残っているのだ。
「安倍派内では裏金の使途として先輩議員への上納疑惑がくすぶっている。唯一、逮捕された衆院議員の池田佳隆容疑者は萩生田氏の弟分。彼の供述内容から、より大きな事件に発展する可能性もあり得ます」(横田一氏)
自分の立場をわきまえれば、萩生田氏は笑っている場合ではない。
●「キックバック再開」関与を否定 安倍派の現・前事務総長 派閥パーティー 1/19
自民党安倍派の高木毅事務総長と前事務総長の西村康稔前経済産業相は19日の記者会見で、同派による政治資金パーティー収入のキックバック(還流)再開への関与を否定した。
パーティー収入裏金化事件では、同派が2022年に還流廃止を決めた後、再開した経緯が焦点となっていた。
高木氏は「私は関わっていない」と明言。西村氏も「還付(還流)や政治資金収支報告書への不記載を指示したり了承したりしたことはない」と述べた。西村氏は事務総長在任中の22年4月ごろ、当時派閥会長だった安倍晋三元首相から「還付はやめよう」と聞いたことを明らかにした。
西村氏は21年10月から事務総長を務め、高木氏が22年8月に引き継いだ。 
●森喜朗元首相の意向は否定…安倍派幹部会見、キックバックの説明避ける 1/18
自民党安倍派(清和政策研究会)は19日、政治資金パーティー裏金事件を受けて派閥を解散する方針を決めた。
同日夜、塩谷立座長と高木毅事務総長が党本部で記者会見し、「清和研を解消するということを決定した」と述べた。
会見前の臨時議員総会に出席した60人超のうち、発言した20人のほとんどが解散を主張したという。会合では、18日に岸田文雄首相が岸田派の解散に踏み込んだ話題はほとんどなかったというが、塩谷氏は岸田派の解散について「影響があったと思う。あれで加速化したと思う」と述べ、岸田派の動向が影響したことを認めた。
1979年(昭54)に前身の清和会が立ち上がってからの歴史を持つ清和研の解散について「閉じるのは断腸の思いだが、また新たなスタートをするためには区切りとしてけじめをつけないといけない」と述べた。
一方、キックバックがいつから始まったかについては「分からない」と述べ、2022年に1度廃止を決めた後、所属議員の抗議を受けて復活させたと報じられていることについても、「今後裁判があるのでお話は控えたい」と明言を避けた。キックバックについては「若い人に活動費として還付するということはプラスになる仕組みと認識していた。これまで不記載できたというのは事件で初めて知った」と述べた。不記載となった還付金については「税務申告はまったくしていないと理解している」と述べた。
派閥トップとして、今回の問題について詳細に説明するのは、昨年12月19日の派閥事務所への強制捜査後、今回が初めて。キックバックが始まった時期や経緯、本当に「会長案件」だったのか、1度ストップをかけようとしたのは安倍晋三元首相だったのかなど、具体的な説明を求める質問が相次いだが、塩谷氏は「今も捜査が続いており裁判も続く」として、具体的な説明は避け続けた。
一方で、キックバックが森喜朗元首相の会長時代に始まった可能性や森氏の意向があったのかとの問いには、塩谷氏は「全くありません」と明確に否定した。
●自民党安倍派 派閥解散の方針を決定 政治資金めぐる事件で 1/19
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件を受けて、「清和政策研究会」=安倍派は派閥の解散を決めたと発表しました。
安倍派は19日夜、党本部で座長を務める塩谷 元文部科学大臣や「5人衆」と呼ばれる有力議員で、事務総長の高木 前国会対策委員長、常任幹事会のメンバーの松野 前官房長官らが出席しておよそ1時間半、議員総会を開き、派閥を解散する方針を決めました。
このあと、塩谷氏と高木氏が記者会見し、塩谷氏は「長年にわたる事務的なミスリードにより、議員の所属事務所に誤った処理をさせたことに対して幹部としておわびする。あたかも違法な支出のために裏金づくりをしたと報道されていることに対し、議員たちは心を痛めているが、決して不正な使い方をしたわけではないと思う」と述べました。
その上で、「清和政策研究会の総会を開き、今回の経緯について説明をする中で、われわれ幹部の責任のとり方や派閥の今後について十分に意見をいただき、結果的に清和政策研究会を解消することを決定した。発言したほとんどの議員が派閥解消を主張した」と述べました。
そして、「誠に残念で断腸の思いだ。しかし、国民に対して政治の信頼を大きく失った責任などを考えたとき、派閥を解散することが再スタートになるのではないかという多くの意見があった。区切りとして、けじめをつけなければならない」と強調しました。
また、議員へのキックバックについては「いつ、どういう形で始まったかはまったく分かっていない。収支報告書への不記載もまったく知らなかった。派閥内で具体的に問題にしたことも一切なかった」と述べました。
このほか、塩谷氏と高木氏はみずからの議員辞職や離党については否定しました。
世耕 前参議院幹事長「約1540万円バック 心からおわび」
自民党安倍派の「5人衆」と呼ばれる有力議員で、常任幹事会のメンバーの世耕・前参議院幹事長は記者会見で、2018年からの4年間でおよそ1540万円のキックバックを受けて政治資金収支報告書に記載していなかったと明らかにしました。
その上で、「政治資金の管理については秘書に任せきりの状況となっていた。長らく把握できなかったことについて、私の管理監督が不十分であったという指摘は否定できない。国民の皆様の政治不信を招き、関係者に多大なご迷惑をおかけしていることを心からおわびを申し上げたい」と陳謝しました。
高木 前国会対策委員長がコメント「心よりおわび」
安倍派の「5人衆」と呼ばれる有力議員で、事務総長を務める高木・前国会対策委員長は「国民に多大な政治不信を招き多大なご迷惑とご心配をおかけし心よりおわび申し上げる。
今後、できる限り速やかに収支報告書を訂正すべく関係者と相談していく。報告書の記載は適切になされていると考えていたが、結果としてこのような事態になってしまったことは猛省し、再発防止を徹底していく」というコメントを出しました。
西村 前経産相 「長年の慣行 私たちは関与することはなかった
安倍派の「5人衆」と呼ばれる有力議員で、元事務総長の西村・前経済産業大臣は記者会見で、「国民の政治への信頼を損ない、政治不信を招いたことを幹部の1人として深くおわび申し上げたい」と陳謝しました。
その上で、派閥側から議員側へのパーティー収入のキックバックについて、「歴代会長と事務局長との間で、長年、慣行的に行われ、私たちは関与することはなかった。収支報告書に記載がないことも今回の問題が表面化するまで知らなかった」と釈明しました。
また、2022年までの5年間で100万円のキックバックを受けていたことを明らかにした上で、裏金などの目的ではなかったと説明しました。
その上で、「私が還付や収支報告書への不記載を指示したり了承したりしたことはない。おととし8月に経済産業大臣に就任して以降、この話について幹部と話したことはない」と述べました。
一方、記者団から、今回の件を受けて総理大臣を目指す考えに変わりはないか問われ、「いまはしっかり誠実に説明責任を果たすことで頭がいっぱいなので、その後のことはまったく考えていない」と述べました。
下村 元政調会長「国民の不信増長 派閥解散は当然」
安倍派の下村元政務調査会長は記者団に対し、「多くの同志の議員がいるが、国民の大きな失望とともに、不信を増長させた責任をとらなければならない。派閥の解散は当然で、きょう、決めるべきだと私も話をした。国民の信頼を回復できるよう、派閥を解散して終わりではなく、私自身も説明責任を果たしていきたい」と述べました。
柴山 元文部科学相「残念だがやむをえない」
安倍派の柴山元文部科学大臣は記者団に対し、「解散は非常に残念だが、やむをえない。私自身も『解散はやむをえない』と発言した。きょう、派閥の存続を訴えた議員は皆無だったと思う。政治のあり方を抜本的に改めなければならず、私自身も含めてしっかりと肝に銘じたい」と述べました。
宮下 前農林水産相「『解散すべし』が圧倒的」
安倍派の宮下前農林水産大臣は記者団に対し、「解散が決まったことは大変残念だが、いたしかたない。多くの議員が『解散すべし』と発言し、反対意見はなかった。検察による捜査も踏まえたうえで、『解散すべし』という意見が圧倒的になったのだと思う」と述べました。
衛藤征士郎 元衆議院副議長「もっと早く説明すべきだった」
安倍派の最高顧問を務める衛藤征士郎 元衆議院副議長は記者団に対し、「解散は当然だ。ほぼ全員が解散すべしという意見だった。まず解散して、国民に政治不信を引き起こしたことに心からおわびと反省をし、政治の信頼を取り戻すために出直そうということだ」と述べました。
また、「今夜の会合では派閥幹部から『大変責任を感じている』とおわびがあったが、もっと早く事実を説明し、対応しておくべきだった。派閥からの資金の還流を知らない議員もいるし、それに対する説明が全くないまま、きょうを迎えたので、みんな大変、困っている」と指摘しました。
福田達夫 元総務会長「政治不信つくった けじめをつける」
安倍派の福田達夫 元総務会長は記者団に対し、「解散は最低限の判断で、国民に大きな政治不信をつくったことのけじめをつけるということだ。政治は国民の信頼がなければ動けないという原点に戻った上で新しいものをつくっていく」と述べました。
また、記者団から「清和政策研究会」を立ち上げた祖父の福田赳夫 元総理大臣の墓前にどう報告するかと問われ、「墓前に報告するまでもない。たぶん見ている」と述べました。
宮沢博行 前防衛副大臣「解散は当然のこと」
パーティー券収入のキックバックについて、かつて、派閥から「収支報告書に記載しなくてもよい」と指示があったことを明らかにしていた安倍派の宮沢博行・前防衛副大臣は記者団に対し、「派閥の解散は国民のみなさんへのけじめとして必要で、当然のことだと思っている。国民のみなさんに改めておわび申し上げる」と述べました。
また、総会での議論について、「還流が始まったことへの説明はほとんどなく、『慣行だった』という言い方だった。幹部に対して、『経緯について、自分の口で話すことが国民に対する説明責任ではないか』と申し上げた」と述べました。
杉田水脈 衆院議員「非常に悲しく寂しいような気持ち」
安倍派の杉田水脈 衆議院議員は「当選以来、お世話になった派閥なので、解散と聞くと非常に悲しく寂しいような気持ちだが、国民が不信を抱いてしまっている以上、信頼回復に向けて、まずはゼロからやり直すという意味で、これがいちばんではないか」と述べました。
その上で、自身についても、派閥からパーティー券収入のキックバックを受け、政治資金収支報告書に記載していなかった可能性があるとして、派閥側での確認が終わり次第、説明する考えを示しました。
菅家一郎 衆院議員「幹部は責任持って対応すべき」
安倍派の菅家一郎衆議院議員は記者団に対し、「派閥を解散するというけじめをつけることは、国民の信頼を失ったことへの対応として分かりやすい。ただ、解散することによって責任を放棄するのではなく、今後、収支報告書の訂正などに幹部はしっかりと責任を持って対応すべきだという意見も出た」と述べました。
野上 参院国対委員長「大きな政治不信を招き心からおわび」
自民党安倍派の事務総長代理を務める野上 参議院国会対策委員長は記者団に対し、自らの事務所が2019年からの3年間で100万円分のキックバックを受け、政治資金収支報告書に記載していなかったことを明らかにした上で、「大きな政治不信を招き申し訳なく、心からおわび申し上げる」と述べました。
その上で、今後も参議院国会対策委員長を続ける考えか問われたのに対し、「役職については関係者としっかり協議していきたい」と述べました。
橋本 元五輪相「政治不信を招いたこと深く反省」
自民党の橋本聖子元オリンピック・パラリンピック担当大臣は記者団に対し、「政治不信を招いたことを深く反省している。派閥を解散したからと言って終わりではないので、しっかりと改革の方針を打ち出していかなければならない」と述べました。
その上で、自らの事務所が派閥から2057万円のキックバックを受けとったとした上で、「非常に反省しなければいけない。説明責任をひとつひとつ果たしながら、政治活動を続けていく中で、しっかりと責任を取っていきたい」と述べました。

 

●能登半島地震 石川県の住宅被害が3万戸を上回る 1/20
能登半島地震による石川県の住宅の被害は、20日午後2時の時点で3万1659戸と初めて3万戸を上回りました。
石川県の調べによりますと、住宅被害は前の日に比べて1800戸余り増えました。
これまで被害が大きい輪島市と珠洲市で損傷した家屋を把握できていないため多数としていましたが、20日に初めて輪島市が870戸の被害を発表しました。
まだ珠洲市で住宅被害の数を把握していないことや輪島市でも全容の把握が済んでいないことから、住宅被害の件数はまだまだ増えることが予想されます。
●石川県 能登半島地震の死者名を新たに公表 遺族同意の10人 1/20
石川県は、能登半島地震で亡くなった方のうち、遺族の同意が得られた10人の氏名や年齢などを20日新たに公表しました。
内訳は珠洲市が5人、金沢市が3人、輪島市と能登町がそれぞれ1人で、男性が7人、女性が3人です。
年代別で見ると10代未満が1人、20代が1人、40代が1人、60代が1人、70代が3人、80代が2人、90代が1人で、死因はいずれも家屋倒壊でした。
石川県内では20日午後2時の時点で、232人の死亡が確認されていて、このうち氏名などが公表されたのは今回で合わせて103人となりました。
103人の死因の内訳は家屋倒壊が91人、土砂災害が8人、津波が1人、非公表が3人となっています。
県はほかの亡くなった方についても、遺族の同意が得られれば、随時、公表するとしています。
●能登半島地震 被災地の広い範囲で雨 土砂災害に十分注意を 1/20
最大震度7を観測した能登半島地震の被災地では広い範囲で雨が降る見込みです。揺れの強かった地域では地震で地盤が緩んでいるため、少ない雨でも土砂災害が発生するおそれがあり十分注意してください。
気象庁によりますと、21日にかけて、前線を伴った低気圧が発達しながら本州の南岸を東寄りに進み、前線や低気圧に向かって湿った空気が流れ込む見込みです。
このため、西日本から東日本の太平洋側を中心に、21日にかけて大気の状態が非常に不安定になり、局地的に雷を伴って激しい雨が降るほか、関東甲信の山沿いを中心に、20日夜から大雪になるおそれがあります。
能登半島地震の被災地でも広い範囲で雨となり、その後も雨や雪の降る日が続く見込みです。地震の影響で地盤が緩んでいるところがあるため、少しの雨でも土砂災害に十分注意が必要です。
また、日中もあまり気温が上がらず、午前11時までの最高気温は輪島市で8度、珠洲市で7度、金沢市で6.1度などとなっています。
避難生活の長期化で体調を崩す人が相次ぎ、「災害関連死」の疑いで亡くなった人も確認されています。引き続き、低体温症に注意して、家族や周りに体調を崩している人がいないか声をかけあい、毛布などで体を暖めたり定期的に体を動かしたりするなど、体温が下がらないよう対策を心がけてください。
地震活動も引き続き活発
また、気象庁によりますと、能登地方やその周辺を震源とする地震は徐々に減少しているものの、地震活動が活発な状態が続いています。
19日も石川県で震度4の揺れを観測する地震があり、20日午前8時までに震度1以上の揺れを観測した地震は1475回に上っています。
気象庁は今後2、3週間ほどは最大震度5強程度か、それ以上の揺れに注意するよう呼びかけています。
●裏金事件の処分 国民は到底納得できない 1/20
組織的な裏金づくりが疑われながら、ほとんどの国会議員が不問になった。国民は到底納得できないだろう。
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で東京地検特捜部はきのう、政治資金規正法違反の罪で関係者を一斉に処分した。パーティー券の販売ノルマ超過分を議員にキックバック(還流)して裏金にしたとされる安倍派をはじめ、二階派、岸田派の会計責任者らと、安倍派の議員2人を立件した。
政界を揺るがす事件の捜査は一つの区切りを迎えることになる。だが、疑念が拭えたとは言えない。
違和感を禁じ得ないのは、安倍派の実力者「5人組」ら幹部議員が立件されなかったことだ。実務を取り仕切る事務総長経験者らもいるが、特捜部の任意聴取に対し、還流分が政治資金収支報告書に記載されなかったことは「知らなかった」と説明したとされる。特捜部も共謀を認めるのは困難と判断した。
最大派閥の安倍派では裏金づくりが長年の慣習で、所属議員99人の大半が還流を受けたとされる。直近5年間で裏金は6億円規模に上る可能性がある。組織ぐるみだったのは疑いようがあるまい。さらに2022年4月には、安倍晋三元首相の意向で還流の取りやめが決まり、同7月の安倍氏の死去後に幹部らが協議して、取りやめの方針を撤回する経緯をたどっている。
こうした内情に精通するはずの幹部が十分に説明していない。そもそも幹部でありながら「知らなかった」との説明には、大きな疑問がある。
安倍派幹部らの立件が見送られた背景には、政治資金規正法の構造的な問題もあろう。規正法では罰則の対象を会計責任者と定めている。政治家が罰金以上の刑を受けると公民権が停止されてダメージが大きいため、議員を立件するには具体的な指示や了承を立証する必要があって、ハードルが高いとされる。
それでも元東京地検特捜部長が「金を使っているのは議員なのに罰則の対象は事務方だけなのはおかしい」と指摘するのは理にかなった考えだと言えよう。事件を受けて与野党は議員も連帯責任を負う「連座制」の導入など罰則強化を検討している。事務方に責任を押し付ける「トカゲのしっぽ切り」のような仕組みは直ちに改める必要がある。
刑事処分が出たとはいえ、安倍派では複数の幹部らが派閥から1千万円超を受領したとされている。参院選がある年には改選対象の議員に販売ノルマ分と超過分を合わせた全額を還流して裏金にしていたとみられる。疑惑を抱えた議員は国民に説明を尽くさねばならない。
自民党は主体的に実態解明に取り組むことが求められる。なぜ裏金が必要だったのか、何に使ったのか―。自らで全容を明らかにしない限り、失った信頼は取り戻せないと自覚すべきである。
●岸田総理、「万事休す」と見せかけて…岸田派解散で「逆襲」が始まりそう 1/20
名門派閥の終わり
岸田文雄首相は1月19日、自身が会長を務めた宏池会の解散を宣言した。派閥事務所も廃止するため、故・池田勇人首相によって1957年に設立され、4人の首相を輩出した保守本流の名門派閥は、その歴史に幕を閉じることになる。
一昨年11月のしんぶん赤旗の報道をきっかけに、自民党派閥のパーティー券をめぐる一連の問題は、自民党の全ての派閥に広がった。最大派閥である清和会では、4000万円以上もの高額のキックバックを受けた3名の議員のうち、1月7日には池田佳隆衆院議員(自民党を除名)が逮捕され、19日には大野泰正参院議員が在宅起訴、谷川弥一衆院議員が略式起訴された。谷川氏に至っては、議員辞職を仄めかしている。
もっとも東京地検特捜部はさらに上層部を狙い、「5人衆」と呼ばれる清和会の幹部にも迫ろうとしたが、会計責任者の責任を規定する政治資金規正法では因果関係の立証は困難なために、やむなく断念したようだ。
なお6億円の裏金が発覚した清和会の会計責任者と2億円の裏金が発覚した志帥会の元会計責任者は在宅起訴、3000万円の裏金が発覚した宏池会の元会計責任者は略式起訴された。志帥会会長の二階俊博元幹事長の秘書も、3000万円の裏金問題で立件されている。
結果的には大山鳴動して鼠一匹という印象だが、岸田首相はなぜいま、宏池会の解散を決意したのか。それを解くキーワードは、岸田首相が繰り返して口にする「信頼回復」だろう。
まさかの支持率回復
新年に入り、岸田内閣の支持率が上昇している。共同通信の調査によれば、前回比5ポイント増の27.3%となり、NHKの調査でも26%と、前回比3ポイント増えている。個別面接方式で行われるため、よりきめ細かな数字が出るとの定評がある時事通信の調査でも、内閣支持率は18.6%と、前回から1.5ポイント増加した。しかもいずれの調査でも、不支持率は減少している。
だがこれらをもって、「岸田内閣の支持率が下げ止まった」と即断するわけにはいかない。
理由はこれら調査の数字には、1月1日に発生した能登半島地震の影響が見られるからだ。一般的に危機の際には、政権の支持率は上昇しやすい傾向にあるようだ。たとえば2011年3月に発生した東日本大震災を境にして、NHKによる調査を見ると、当時の菅直人内閣の支持率は2月には21%だったが、4月には27%、5月には28%と上昇している(震災が発生した3月のデータはない)。
しかしすでに始まっていた「菅降ろし」は止めることができなかった。西岡武夫参院議長(当時)が5月に読売新聞に菅首相の退陣を求めて寄稿し、与党・民主党内からも菅政権への不信任の動きが活発化。7月の内閣支持率は16%まで下落し、菅首相は8月27日に退陣することを表明した。
政権の延命を望む岸田首相なら、これと同じ轍は踏みたくないと思うはずだ。だが政治刷新本部を結成してみたものの、前述の時事通信での世論調査では68.3%が「期待しない」と回答。自民党支持層でも58.6%が「否定的」という結果が出ている。
何をやってもダメならば、いっそ派閥を解消した方がいいと岸田首相は決意したのではないか。ちなみに昨年12月13日の総理会見で、筆者の「派閥を解消すべきでは」との質問に対し、岸田首相は「自民党に対して、政治に対して、様々な厳しい声があることは承知している。
そうした声に応えて、自民党の信頼回復に務めなければならない」と述べたが、「事実の確認、説明のプロセスが求められると思っている」と明確な回答を避けている。
肉を斬らせて骨を断つ
それから1か月余りを経て、岸田首相が宏池会解散を決意したのは、9月の総裁選に向けて自らを引き下ろそうという勢力を牽制する意味もあったのではないか。
実際に党内では2024年度本予算が成立後、岸田内閣が総辞職して次期政権と交代すべしとの声が出ていた。「岸田総裁では、自民党は衆院選は戦えない」というのが彼らの主張だが、岸田首相が自ら辞任するはずがないし、そもそも自民党には総裁を辞任させる規定が存在しないのだ。
要するに岸田首相は総裁任期が満了する9月までその地位に居座ることができるが、問題はその後だ。もし権力を維持し続けたいのなら、自分の側近を後継者に据えるという策もある。森喜朗元首相はそのために、総裁選での地方票の比重を重くし、2001年4月の小泉純一郎首相のドラマティックな誕生に一役買ったのだ。
だが岸田首相にはそのような考えはなく、自ら続投することしか頭にないのではないか。昨年12月に宏池会を離脱すると宣言したが、岸田首相が事実上の宏池会のトップであることに変わりはない。そして派閥への批判が強い中で宏池会を解散すれば、他派閥も解体せざるをえなくなる。
人事とカネを握る派閥がなくなれば、党への権力集中がいっそう進む。自民党の総裁でもある総理大臣は、外部の声を聴くことなく自由に人事を行える。
「総理になったら、人事をやりたい」と述べた岸田首相は、ある意味で権力の真髄を熟知しているといえる。その権力のために先人たちが育て上げ、自らを育んだ宏池会ですら解消しようという岸田首相は、歴代最高にしたたかさと非情さを兼ね備えた総理大臣ではないだろうか。
●なぜ裏金問題が続出しても自民党は支持されるのか…立憲に足りないもの 1/20
NHKが1月15日に更新した世論調査によると内閣支持率は先月よりも3ポイントアップの26%。一方、不支持率は2ポイント下がって56%だった。昨年12月に発覚した自民党派閥が政治資金パーティー収入の一部を裏金化していたことが、連日メディアで報じられたことで大幅な支持率下落が予想されていたが、結果的には信頼回復に向かっている。「今年の野党が果たすべき責任は大きい」と期待はされるものの、国民からイマイチ支持されない立憲民主党に“足りない”要素を政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏が指摘する。
2つの選挙は「自民の強さ」と「立憲の弱さ」を証明したのか?
世論調査の結果を見ると「自民党は依然として強い」というよりは、「野党第一党である立憲民主党が頼りない」という見方ができる。立憲は支持率5.3%となかなか二桁台に乗らない渋い状況が続いており、2023年12月に東京都で実施された江東区長選、武蔵野市長選では、いずれも立憲が推薦した候補者は自民党推薦の候補者に負けている。
とりわけ武蔵野市長選は昨年12月24日に行われ、裏金問題に伴う自民党バッシングがヒートアップ中で、立憲側からすれば、いわば“ボーナスステージ”だった。わずか339票差の接戦だったとはいえ、千載一遇のチャンスを逃したことを鑑みると、立憲の期待感の低さを感じずにはいられない。なぜ与党の問題が止まらないにもかかわらず立憲は支持を集められないのだろうか。
永田町で長年取材活動をしているジャーナリストの鈴木哲夫氏にその理由を聞いた。
まず江東区長選、武蔵野市長選での立憲の敗戦について、「東京都は小池百合子都知事の存在感が強い特殊な地域です。この2つの選挙結果から単純に『立憲が負けた』と決めつけてはいけません」と釘を刺す。
「江東区長選では与党の推薦を受けて元東京都政策担当部長の大久保朋果氏が出馬しましたが、都民ファーストの会も一緒に推薦しています。都ファは自民党の“天敵”だった小池知事が創設した政党であったのに、これまでは相容れなかった自民党と手を組むという異常事態が起きました。
都ファ所属の都議からその裏側を聞くと、江東区長選に向けて元都議擁立の準備などを進めていたようですが、幹部会で小池知事から『自公と一緒にやる』『大久保氏は都庁女性幹部として頑張って働いてきたいい候補であり、自公と手を組むくらい別にいいではないか』と突如言われたそうです。当然『自民党とは一線を画すべき』と反対の声もあったそうですが、知事の声は天の声。結局は与党と都ファが手を組む構図が決まりました」
江東区長選では“自民色”を消して“小池色”を前面に押し出して大久保氏が勝利した。ただ、武蔵野市長選では同様の動きは見られなかったが、鈴木氏は「都ファから候補者を出さずに“自公と野党がそれぞれ推薦する候補者の一騎打ち”という状況を作り、間接的に自公に協力しました」と語った。
自民党と都民ファーストは今後も共闘?
そもそも、小池知事が自公と組んだ背景は何なのか。鈴木氏は「前出都議によると『2024年7月に行われる知事選を見据えているのかもしれません。小池知事が出馬するかはまだ明らかになっていません。しかし、出馬とすれば自民党と協調路線にして対立候補擁立を出さないようにしてもらう狙いがあるのではと話しています』と口にしていました」という。
「しばらくは自民党と都ファの協力は続くかもしれません。そのほうが自民党にとって好都合なので。というのも、自民党東京都連の衆議院議員は『岸田政権の影響によって2023年9月の立川市長選、10月の立川都議補選、11月の青梅市長選、と自民党は3連敗しました。東京都における自民党の組織力をこれ以上弱体化させないため、小池知事とは今後も協力関係をとっていくかもしれない』と話していました」
都ファという新たな“仲間”を加えたことにより、自民党の巻き返しは加速しそうではあるが、鈴木氏は「武蔵野市長選は僅差の勝利であり、やはり自民党の逆風は依然として強いと思います」という。
   立憲が消費税減税に後ろ向きなワケ
次に立憲について聞くと、鈴木氏は「少しずつですが支持率は挽回してきています」と答え、より一層信頼を集めるために必要なこととして「与党が絶対にできない政策を立てればいい。例えば、消費税減税。自民党は財務省や厚労省など霞が関と親密なため、消費税減税は絶対できません」と説明。
時事通信が2023年11月に発表した世論調査によると「消費税減税に賛成」(57.7%)という回答は5割を上回るなど、消費税減税を求める国民は多い。ただ、立憲の泉健太代表は2023年11月下旬、都内の講演に出席した際に消費税減税について「選挙の政策はその時の経済状況を見て判断する」と発言するなど、後ろ向きな姿勢を見せている。
自民党には打ち出せず、国民が望む消費税減税を掲げない手はないように思える。しかし、現実には消費税減税を前面に押し出さない背景があり、「ある立憲のベテラン議員は『泉代表は党内の重鎮である野田佳彦元総理や岡田克也氏などに気を遣っている。野田氏らは財務省にも近く消費税は触るべきではないと考えているため、泉代表はその決断ができない』と言っていました」という。立憲も自民党と同じで、官僚に配慮するあまり、国民が望む政策を推進できないようだ。
カギはメディアを味方につけられるか
泉代表としても言いたいことも言えずに苦慮しているのだろう。それでも、野党第一党の代表としてリーダーシップを発揮してほしいところだが、2023年11月に法政大学で公演した際に「5 年で政権交代を考えている」と口にしている。この発言に落胆した人は少なくない。
なにかと後ろ向きな発言が目立つ背景として、「『5 年で政権交代を考えている』と発言した後に『前回(2021年)の総選挙で僕らが150議席を獲っていれば、次は当然政権交代と言いたい。もう一回再生していくには手順が必要。そういう意味で5年。次の総選挙でしっかりと基盤を築いて、ホップ、ステップで(政権を)獲れる。そういうものを目指している』と続けています。
前後までしっかりチェックすると『参院選も段階的に考えている』という、ある意味で筋が通っている内容でした。とはいえ、それを取り上げる際には、メディアは必ずこの『5年』を切り取り、『次の選挙では政権を獲る気はないのか』と書かれます。本人も気を付けていたため、前後でちゃんと説明していたと思うのですが、それでも切り取られました。この『5 年で政権交代を考えている』という発言の報じられ方からもわかる通り、立憲としては“コミ戦(コミュニケーション戦略)”が必要であり、党内でコミ戦部隊をしっかり作っていかなければいけません」
「今年の野党が果たすべき責任は大きい」
先月、元外相の田中真紀子氏は YouTube チャンネル『たかまつななチャンネル』に出演した際、政治の健全化のために「嫌でも野党に投票するしかない」と話していた。とはいえ、立憲の支持率は一桁台。政権交代するために必要な戦略は何なのか。
「政権交代と聞くと『政策もバラバラな野党が上手く共闘できるのか?』という疑問が浮上します。ただ、政権交代が起きた1993年では、8党派からなる細川連立政権が誕生しましたが、当然8党派の政策が全て一致するのは無理です。しかし、最も大きな“非自民党”のただ一点では一致しました。『一度長く続いた支配を終わらせて自民党にお灸を据えよう』という意識が広がって政権が変わりました。今回もそれで行くべきです」
政権交代で立憲が足りないもの
最後に政権交代を目指すうえで立憲に足りていない要素を聞くと「したたかさ以外にありません」とキッパリ。
「1993年に政権を奪取された自民党は翌年、対立が目立っていた自民党・社会党・新党さきがけと手を組み、“自社さ連立政権”という考えられない組み合わせで政権復帰しました。自社さ連立政権では、自民党は議員数が一番多かったのですが、社会党の村山富市氏を総理として担いで裏方で支える、という“したたかさ”を見せました。野党は立憲の議員数が一番多く、野党結集のためにかつての自民党同様に立憲がバックヤードに回り、他の野党を前に出してまとめる“したたか戦法”があってもいいかもしれません」
続けて、「政治に大きな2つの勢力が緊張感を持って対立することで初めて、権力は国民の声を丁寧に聞きます。今年の野党が果たすべき責任は大きい」と語気を強めた。裏金問題が発覚した幹部議員の立件が見送られるなど、もはや政治の歪みは禁じ得ない。もう一度お灸を据えるためにも野党、とりわけ野党第一党の立憲は例年以上に存在感を見せなければいけない。
●自民党3派閥が「解散」 安倍派「心よりおわび」 涙する二階派議員も 1/20
自民党の3つの派閥に対し一斉に刑事処分が出された“裏金事件”。岸田派、二階派に続き、19日夜、最大派閥「安倍派」の“解散”も決まりました。派閥の解散を受け声を上げ、涙する議員も…。
19日夜、自民党・安倍派の緊急議員総会が開かれました。
自民党・安倍派 塩谷座長「心より深くおわびを申し上げる次第でございます」
裏金事件で逮捕者も出した安倍派。どのようなけじめをつけるのでしょうか。
自民党・安倍派 宮沢博行議員(先月13日)「大丈夫かなとは思いました。しゃべるな! しゃべるな! これですよ」
そこには、派閥から収支報告書に記載しないよう指示を受けたなどと暴露した宮沢博行議員の姿もありました。総会が終わり、出てくると…
自民党・安倍派 宮沢博行議員「国民のみなさんのけじめとして、これは必要当然のことだと思っています。自分たちで腹を切って、そして介錯がある。それでいいのではないでしょうか」
安倍派が出した結論は、約100人が所属する自民党最大派閥の解散です。
自民党・安倍派 塩谷座長「結果的に清和研(安倍派)を解消すると決定させていただきました」
その“引き金”となった派閥のパーティー券をめぐる裏金事件。収支報告書への約5100万円の不記載で「在宅起訴」された大野泰正議員が19日夕方、カメラの前に現れました。
自民党・安倍派 大野泰正議員「経理面につきましては、全て事務所スタッフに任せておりました。私としましては、検察との間の意見の相違がございますので、裁判においてしっかりと自らの主張をしてまいりたいと思います。やましいことはございませんので」
自民党を離党しましたが、議員辞職は否定しました。
もう1人、議員で立件されたのが谷川弥一衆院議員です。不記載額は約4300万円に上ります。
自民党・安倍派 谷川弥一衆院議員(先月10日)「だから、今言った通りって言ってるでしょ、今言った通りって」
「略式起訴」された谷川弥一議員は自民党を離党し、議員辞職する意向も固めています。
谷川弥一議員のコメント「国民の皆様ならびに長崎県民の皆様に深くおわび申し上げます」
東京地検特捜部は、大野議員と秘書の岩田佳子氏を「在宅起訴」。谷川議員と秘書の三宅浩子氏を「略式起訴」としました。
そして、収支報告書に記載のないパーティー券収入の総額が約6億7000万円の安倍派の会計責任者を「在宅起訴」。不記載の額が約2億6000万円の二階派の会計責任者も「在宅起訴」。
一方、不記載の額が約3000万円の岸田派の元会計責任者は「略式起訴」。また、議員側では、二階派の二階元幹事長の秘書についても「略式起訴」しました。
一方で、事務総長経験者など安倍派幹部7人の立件は見送りました。
自民党・安倍派 塩谷座長「不記載という状況も我々、全く知りませんでした。派内で具体的に問題にしたことも一切ありませんでした」
――責任を明確にした方がいいと思うが?
自民党・安倍派 塩谷座長「今ここでお約束することはできません。今後検討していきたい」

岸田首相(18日)「宏池会(岸田派)を解散することを検討しております」
岸田首相が口火を切った“派閥の解散”。二階元幹事長の秘書が「略式起訴」された二階派でも解散を決定しました。
――解消後も政策の研さんの場で集まったりは?
二階俊博元幹事長「まあ、人は自然と集まってくるものですから、『派閥解消だからあっち行け』そんなこと言えないわね」
決定後、聞こえてきたのは、涙を流す二階派議員の声です。
自民党・二階派 宮内秀樹議員「まあね、でもねやっぱり、信頼を回復させるための大きな判断を二階会長がやったということですから」
6つの派閥のうち、3つが解散を決めた自民党の今後はどうなるのでしょうか。
日本テレビ 与党担当キャップ・前野全範記者「裏金の使い道などについて詳しい説明が求められる局面ですが、各派閥が解散するかどうかに論点がずれ始めています」
「麻生副総裁も茂木幹事長も派閥の解消には慎重な立場で、麻生派と茂木派の議員からは岸田首相の解散表明に反発する声が相次いでいます」
「岸田政権はこれまで、岸田首相、麻生副総裁、茂木幹事長の3人が中心の『三頭政治』で動いてきましたがパワーバランスが崩れ、政権が不安定化する危険性もあります」
派閥の解散で政治の信頼は取り戻せるのでしょうか。
●岸田首相の「派閥解散」は“偽装”の疑いあり 自身の「派閥離脱宣言」もウソ 1/20
「政治の信頼回復のために、宏池会(岸田派)を解散するということを申し上げた」──1月19日午前、岸田首相の「岸田派解散」宣言で自民党に衝撃が走った。続いて二階派、安倍派も解散を決定し、「派閥解体ドミノ」が始まったからだ。
この日は東京地検特捜部が自民党の裏金捜査の刑事処分を決定し、安倍派の3人の議員(池田佳隆・代議士は逮捕、谷川弥一・代議士は略式起訴、大野泰正・参院議員は在宅起訴)に加えて、二階派の会計責任者、岸田派の元会計責任者らが起訴された。首相はその刑事処分の発表前に、自ら岸田派解散を宣言するという博打に出たのだ。岸田派関係者が語る。
「岸田総理は特捜部の裏金捜査は安倍派、二階派止まりだろうと楽観視していたから、17日に岸田派も立件対象だとわかって大慌てになった。そこで岸田派の幹部10人ほどを官邸の裏口から呼び入れ、御前会議で有無を言わせず派閥解散を決めると、それを自ら発表することで政権へのダメージを最小限に食い止めようと考えたようだ」
岸田派ナンバーツーの座長を務める林芳正・官房長官は、会見で「首相の宏池会への思いの強さは私も重々承知していた。その上での首相の判断なので重く受け止めた」と語った。
だが、首相の発言は何かおかしい。
岸田首相は裏金問題が発覚した昨年12月7日、「総理・総裁の任にあるうちは派閥を離れるのが適切な対応だと考え決断した」と語って岸田派会長を辞任するとともに派閥を離脱したはずだ。かわって根本匠・元厚労相が同派のトップ(会長代行)に就任している。
派閥を抜けたはずの岸田首相が「派閥解散」を表明するのは筋が通らない。自民党の無派閥議員はこう不信感を募らせている。
「二階派は臨時総会を開いて会長の二階俊博・幹事長が会見で解散を発表し、安倍派も議員総会で解散を決めてトップの塩谷立・座長が発表した。それなのに岸田派だけは派閥の総会も開かずに派を抜けたはずの岸田首相が幹部たちと相談して解散を決め、トップの根本会長代行ではなく、”外部の人”のはずの首相が発表した。これでは首相自ら派閥離脱は見せかけだったと認めたも同然だ。
派閥の幹部たちを官邸に呼びつけたやり方も、まさに派閥会長そのもの。岸田派幹部たちも、首相の派閥離脱は見せかけで今も岸田首相が会長だと思っているから受け入れたのだろう」
はからずしも、岸田首相は「岸田派解散」宣言をしたことで自身の「派閥離脱」が偽装だったことを露呈したといえる。
過去にも”偽装解散“の歴史があった
その岸田派が総会を開くのは1月23日の予定だ。派閥総会での手続きも踏まずに首相が解散を言うのは民主的でさえない。「おやじ(派閥会長)が白だと言えば、黒でも白というのが派閥だ」(金丸信・元自民党副総裁の言葉)という派閥の論理そのものではないか。
しかも、岸田首相は同派の解散を表明したぶら下がり会見で、「他の派閥のありようについて何か申し上げる立場にない」とも語った。岸田派のことは自分で決められても、他派閥の決定には関与できないという言い分そのものが、自分が現在も「岸田派会長」だという認識を持っていることを示している。
「派閥離脱したとウソをついた総理が、いまさら岸田派を解散すると大見得を切ったところで、国民は信用しないのではないか」(前出・無派閥議員)と足元を見られるのは当然なのだ。
実際、自民党には危機に陥って派閥を”偽装解散”した過去がある。
リクルート事件、東京佐川急便事件で政治不信が高まり、自民党が総選挙に敗北して野党に転落した1994年11月、時の河野洋平総裁は自民党改革の目玉として「派閥解散」を決め、各派閥は事務所を閉鎖して看板を下ろした。だが、すぐに各派閥とも名称を変えて「政策集団」という名目で元通りに復活した経緯がある。
岸田首相は裏金事件を受けて設置した自民党政治刷新会議では、無派閥議員から「派閥解散」論があがっても”無視”を決め込んでいたが、いざ、特捜部の捜査が岸田派に及ぶと、政権と自分の保身のために派閥解散へと態度を豹変させた。
派閥離脱の時と同じく、首相の岸田派解散宣言などその場しのぎの”偽装解散”にすぎないことが透けて見える。
●岸田政権の能登半島地震における明らかな初動遅れ…劣化した災害対応 1/20
元日に発生した能登半島地震から20日間が経過した。政府の初動に誤りはなかったのか。2011年の東日本大地震、2016年に起きた熊本地震との比較を通して、安倍政権よりも劣化している岸田政権の災害対応の実態について、フリー記者・犬飼淳氏が指摘する。
能登半島地震の初動遅れ
1月1日16時10分に発生した能登半島地震が震度7であり、マグニチュード7.6であることは発生直後に気象庁が速報で発表していた。さらに、最大加速度が2828galであることは、当日22時45分(地震発生の約8時間半後)に防災科研が公表している。以下に記載した、直近20年間に日本で発生した他の震度7の地震4件と比べても、その地震規模の大きさは一目瞭然である。
【直近20年間に日本で発生した他の震度7の地震5件】
・新潟県中越地震(2004年):震度7、マグニチュード6.8、1750gal、津波なし、死者68人
・東日本大震災(2011年):震度7、マグニチュード9.0、2933gal、津波9.3m以上、死者19,729人
・熊本地震(2016年):震度7、マグニチュード7.3、1579gal、津波なし、死者273人
・北海道胆振東部地震(2018年):震度7、マグニチュード6.7、1796gal、津波なし、死者43人
・能登半島地震(2024年):震度7、マグニチュード7.6、2828gal、津波4m以上、死者232人(1月19日時点)
能登半島地震はマグニチュードも最大加速度も東日本大震災に次ぐ数値で、特に最大加速度は東日本大震災(2933gal)に匹敵する2828gal。さらに、東日本大震災と同様に津波もあった。政府は想定される被害の大きさに遅くとも地震当日の夜には気付けたはずだが、災害対応は極めて遅かった。
こうした批判に対して、「被害が甚大な能登半島北部への交通ルートが限定されていた」という地理的条件を理由に初動遅れを擁護する声がある。そこで本記事では能登半島地震、発災直後の「官邸の動き」に焦点を当て、初動の遅れについて検証する。
まず、地震発生1〜2日目に、初手誤りといえる動きを複数確認できる。
1月1日17時30分(地震発生の1時間20分後)に「特定」災害対策本部を設置。一見すると素早い設置に見えるが、この対策本部の種類に大きな問題がある。
対策本部設置の問題点とは
特定災害対策本部というのは、位置付けとしては非常災害対策本部よりも軽い災害時に設置するもので、総理は基本的に参加すらしない。つまり、この時点で政府は能登半島地震の被害を軽く見ていたことの証左といえる。(*過去の非常災害対策本部および特定災害対策本部等の設置状況は内閣府 防災情報参照)
現に、当日20時0分〜20時33分に防災担当大臣(自民党・松村祥史 参議院議員)を本部長とする第1回会議を開催したものの、岸田文雄総理は不参加。そして、この特定災害対策本部の開催はわずか1回でその役割を終えた。22時40分(地震発生6時間30分後)、より重大な災害向けの「非常」災害対策本部の設置をようやく決定したからだ。
これがまず、岸田政権の初手誤りを象徴する出来事といえる。
一方、直近20年で特に被害が大きかった2つの大地震では、いずれも迅速に非常災害対策本部以上の位置付けの本部が設置されていた。
・東日本大震災(2011年):地震発生28分後に緊急災害対策本部を設置
・熊本地震(2016年):地震発生44分後に非常災害対策本部を設置
(*緊急災害対策本部は非常災害対策本部よりさらに重い災害時に設置する位置付け。設置されたのは東日本大震災の1回のみ)
しかも、能登半島地震では非常災害対策本部の第1回会議が開催されたのは一夜明けて翌2日の9時23分から。設置決定から実に10時間43分の空白が生まれており、岸田政権のスピード感のなさを象徴している。こうした1〜2日目の初動がいかに遅かったかは、同じ自民党である第2次安倍政権時代の熊本地震と比べても明らかだ。
同地震は2016年4月14日21時26分(本震は約28時間後)に発生すると、当日22時10分(地震発生の44分後)に非常災害対策本部を設置。そのまま間髪を入れず23時21分(本部設置の1時間11分後)に第1回会議を開催。安倍晋三総理(当時)が本部長のため、当然ながら安倍総理も自ら参加。設置決定は同じ22時台なのに、翌朝に第1回会議を開催した能登半島地震とは大違いだ。
安倍政権、民主党政権との初動比較
その後、「72時間の壁」までの同本部の実施間隔も実に対照的だ。能登半島地震では第1回から継続して1日1回ペース。毎日午前10時前後に実施し、わずか20分程度で終了。一方、熊本地震では1日複数回の開催や、30分以上の開催も珍しくなかった。
また、熊本の本震発生時(4月16日1時25分)は土曜深夜だったにもかかわらず、午前5時10分(本震発生の3時間45分後)に第4回会議を実施。このように姿勢の違いが顕著なため、地震発生72時間後までの開催回数には2倍超(熊本地震:8回、能登半島地震:3回)の差がついた。
さらに、能登半島地震では「72時間の壁」を過ぎた後、岸田総理は地震と無関係なイベントに立て続けに参加し始める。筆者も参加した1月4日の年頭記者会見を「地震関連の公務」を理由にわずか43分間で打ち切った後、20時0分〜20時48分(首相会見より長い48分間)までBSフジテレビの報道番組に出演。翌5日には都内ホテルで3件(経済3団体、連合、時事通信)の新年会に出席。
岸田総理の振る舞いは、もはや被災地に関心がないようにさえ見える。ちなみに熊本地震の際に安倍総理は地震発生後5日間の期間でここまで地震と無関係なイベントには参加していない。つまり、同じ自民党政権ではあっても、現在の岸田政権による劣化や棄民政策は8年前より確実に悪化しているといえる。
ちなみに、一連の比較で熊本地震における安倍政権の対応は実にまともに見えたわけだが、その安倍政権も2年後(2018年7月)の西日本豪雨でいわゆる「空白の66時間」と呼ばれた初動の遅れを見せ、被害を拡大させている。安倍政権も決して災害対応に優れていたわけではなく、今回の能登半島地震に対する岸田政権の対応があまりに酷いから、振り返れば相対的にまともに見えているに過ぎない。
岸田総理は、安倍総理が「勤勉で真面目」に見えるほど「怠惰で不真面目」であることが浮き彫りになった。さらに言えば、「枝野寝ろ」というハッシュタグができるほど不眠不休で東日本大震災(2011年)の対応をした民主党政権とは次元が違い過ぎて、もはや横並びの時系列比較すら不可能な状況にある。
●岸田派解散、中北教授「自己保身」…細谷教授「政権の存続を優先」 1/20
中央大の中北浩爾教授、慶応大の細谷雄一教授、日大の岩井奉信名誉教授が19日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、岸田首相が表明した自民党岸田派の解散方針について議論した。
中北氏は「政権運営のための自己保身でしかない」と批判。細谷氏は「岸田派を犠牲にし、岸田政権の存続を優先した」と分析し、岩井氏は「派閥を解散すると言った方が(内閣)支持率は上がる」と指摘した。 
●自民・萩生田氏「信頼回復へ努力」 1/20
自民党の萩生田光一前政調会長は20日、地元の東京都八王子市で街頭演説し、所属する安倍派の政治資金規正法違反事件について「政治不信を招く事態となった。改めておわび申し上げたい」と謝罪した。同時に「しっかり襟を正し、信頼回復に向け、仕事をもって評価していただける努力をしていく」と述べた。
●天災と人災の直撃を受けた岸田文雄政権だったが…驚きの「支持率上昇」 1/20
支持率上昇の「なぜ」
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けない」――という言葉がある。この言葉を想い起こしたのは、直近のメディア世論調査の結果に接した時のことだ。
先ず、共同通信調査(1月13〜14日実施)。内閣支持率が前回比5.0ポイント増の27.3%、不支持率は7.9P 減の57.5%。NHK調査(12〜14日)は内閣支持率3P増の26%、不支持率2P減の56%。そして時事通信調査(12〜15日)が内閣支持率1.5P 増の18.6%、不支持率4.2P減の54%。依然として3社調査ともに不支持率が支持率を大幅に上回る。
次は政党別支持率のうち自民党と野党第1党・立憲民主党の支持率の比較である。共同通信:自民党前回比7.3P増の33.3%、立憲民主党同1.2P減の 8.1%。NHK:自民1.4P増の30.9%、立民2.1P 減の5.3%。時事通信:自民3.7P減の14.6%、立民0.9P減の3.5%。
数値に目を凝らすと驚くばかりだ。内閣支持率は共同、NHKともに20%台後半に上昇し、低い数値が出る傾向の時事も僅かながら上昇に転じた。さらに自民支持率は共同とNHKが30%をクリア、立民支持率は下落した。共同調査で自民支持率は立民のほぼ4倍、NHK調査が約6倍の差に拡大したのだ。
元日のマグニチュード7.6の能登半島地震と2日の羽田空港での日本航空(JAL)機衝突といった天災と人災の直撃を受けた岸田文雄政権。加えて、昨年末来の東京地検特捜部による自民党安倍派の政治資金パーティーを巡る政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)事件捜査で「政治とカネ」問題が連日連夜、テレビのワイドショーでも報じられてきたのに、この数値は一体どう理解すればよいのか。
その解はある。そう、立憲民主党を始めとする野党の岸田政権・自民党追及が有権者一人ひとりの心に響かなかったのだ。西側諸国のウクライナ支援疲れならぬ、野党の相も変わらぬ同じパターンの政権批判に疲れてしまったのではないか。野党の責任大である。
岸田首相批判のなかでよく耳にする言葉に「ブレる岸田」がある。捻くれた言いようだが、「ブレ、ブレ続けることにブレない岸田」とも言いうる。換言すれば、「鈍感力」になるだろうがこれまた「肝が太い(据わっている)」とも言える。
決して「めげない人」
要は、めげることを知らない岸田氏が9月の自民党総裁任期満了まで政権を維持する可能性が高いということである。筆者はこれまでに、岸田氏が4月頃に「派閥解体」を掲げて衆院解散に打って出る可能性を含め、自民党内からの「岸田降ろし」による政権瓦解の確率は殆ど無きに等しいと述べてきた。
すなわち、岸田政権の先行き見立てでは少数派であり続けた。そして「岸田に甘い」との指摘も受けた。だが、岸田氏の政権維持意欲に関わる小さなファクトを拾いながら、それをジクソーパズルのように埋めていくと見えて来る光景から、同氏の胸中を推し量ってきたつもりだ。その結果、岸田氏は決して「めげない人」に行き着いたのである。
では、具体的に何なのか。第1に、岸田政権個々の単発の政策は決して間違っていないということだ。確かに「新しい資本主義」というキャッチフレーズは意味不明である。しかし、「コストカット型経済からの脱却」はよく吟味すれば理解できるし、「賃上げを全てに優先する」も論を俟たず全く正しい。
事実、3月の春闘で賃上げ目標の4%もリアリティを帯びつつあり、名目経済成長率も昨年末の政府発表「24年度経済見通し」で示した3%達成も可能である。日本銀行の物価目標2%も政府の潜在成長率目標1%も同様である。この「4・3・2・1」を目指した上にベースアップ3%が視野に入ったからこそ、たとえ瞬間風速とはいえ東京証券取引所の日経平均株価が3万6000円超と成ったのだ。
岸田政権の鳴り物入りだった総合経済対策が国民に浸透しなかったのは、突然降って湧いた所得税定額減税が悪評芬々だったからだ。国民は賢明である。それは世論調査が証明している。所得税減税を「評価しない」と回答した人はその理由に「減税の次に増税が控えている」「将来の国家財政が心配だ」を挙げている(共同通信調査)。
問題は、「聞く力」ではなく一にかかって岸田氏の「説明力」と「発信力」である。それが問われる場は、1月26日召集の第213回通常国会の衆参院予算委員会における「政治とカネ」に関する集中審議(29日)、首相施政方針演説など政府四演説(30日)、各党代表質問(31〜2月2日)だ。続く5日からの衆院予算委員会が正念場である。
そこで岸田氏が自分の言葉できちんと説明し発信できれば、当分間、政権賞味期限を心配する必要が無くなるはずだ。果たして如何に。
●“キックバックの指示があったとしても、議員は守る” 「政治とカネ」の実態 1/20
自民党の裏金問題では、現役議員が相次いで起訴され、派閥解散の動きにもつながりました。特捜部の聴取を受けた安倍派幹部の会計責任者が取材に応じ、政治とカネの実態を語りました。
安倍派幹部の会計責任者が語る実態
今回の裏金事件で、東京地検特捜部の聴取を受けたという人物がいる。安倍派幹部の事務所で、会計責任者を務めてきた男性だ。聴取の冒頭、検察側から“黙秘権”の説明を受けたという。
安倍派幹部 会計責任者「『答えにくいことがあるなら、別に答えなくて構いません。それで(罪に)問われることはありません』そんな言い方だったと思います」
派閥から押収したとみられるデータをもとに、検察庁の庁舎や、ホテルの一室で、複数回にわたり、調べが行われたと話す。
安倍派幹部 会計責任者「よく調べているというか、全部、データを持ってるんだなと」
村瀬健介キャスター「例えばどういったデータ?」
安倍派幹部 会計責任者「入出金記録ですね。多分、通帳を押さえてるんだと思います。そこから全部見てるんじゃないですかね」
村瀬キャスター「金の出入りは全部知られている?」
安倍派幹部 会計責任者「みたいですね」
特捜部は19日、安倍派、二階派、岸田派の3つの派閥の会計責任者らを立件。
裏金として、高額のキックバックを受け取った議員側では、安倍派の池田佳隆 衆院議員に続き、大野泰正 参院議員、谷川弥一 衆院議員を立件した。
一方、安倍派「5人衆」と呼ばれる幹部や、事務総長経験者ら7人のうち複数の幹部が、特捜部の聴取に対し、キックバックについて自身の関わりを否定する説明をしたという。
「キックバックは会長案件だった…」
――派閥の会計責任者は“自らの判断で行った”と?
安倍派幹部 会計責任者「そう言わなきゃしょうがないだろうと。自分がその立場だったら、そう言うと思いますよ。間違いなく」
――たとえ議員から指示があったとしても?
安倍派幹部 会計責任者「あったとしても」
――議員は守るという?
安倍派幹部 会計責任者「守るということですね。やっぱり、この世界はそうでなきゃいけないだろうし。政治家の、政治団体の会計責任者をやるということは、そういうこともあるということです、最初から」
20年以上にわたり、続けられていたというキックバックの慣習。
派閥では、安倍元総理が会長だった2022年5月のパーティーを前に、キックバックを廃止する方針が決まったという。
――取りやめのお知らせは来た?
安倍派幹部 会計責任者「連絡もらいましたね。“今年は戻し(キックバック)は無いから”って。毎週、(派閥の)総会やってるじゃないですか。あの時に多分、発表があったんじゃないですかね」
しかし、派閥の議員からの反発を受け、その後もキックバックは、継続されることに。
――これをひっくり返す判断は誰が?
安倍派幹部 会計責任者「分からないですね。復活したこと自体も、実を言うと知らなかったぐらいの話なので。ただ、ひとつだけ言えるのは、ずっと続いていたことを止めるというのは、やっぱり安倍先生ぐらいの強権が無いと、無理だと思います。ただ、それを以前(キックバックを継続する)に戻すというのは、比較的簡単ではないかと」
特捜部は今回、会計責任者のみならず、議員との“共謀”を立証しようとしてきた。
男性は、キックバック分を記載するかどうか、最初の判断を、会計責任者だけですることは考えられないと話す。
安倍派幹部 会計責任者「(報告書に)載せないということに関しては、政治家が決めることだろうと。これは多分、会計責任者・秘書というよりは、先生方(議員ら)の問題だと思うんですけどね」
――秘書が決めるような話ではない?
安倍派幹部 会計責任者「ではないと思いますね」
「大野氏起訴は“尻尾切り”」
議員側で最高額の約5150万円の裏金があったとして、在宅起訴となったのは、大野泰正 参院議員だ。
19日、会見を開き、争う姿勢を示した。
大野議員「全て事務所スタッフに任せておりました。ですから、私が収支報告書に関与したことはございません」
大野議員の地元・岐阜県羽島市を訪ねると…
街の人「(大野議員は)おじいちゃんと比べると格段の差がありますから。政治家一家として、普通の政治家とちがいます?」
街の人「どうにもならへんやん!昭和の時代の政治家はみんな、国民の為に尽くしたけど、今の2代目3代目のおぼっちゃんは東京育ちなので…自分のお金のためにやっているだけだ」
大野議員は、父は元労働大臣、母も元参院議員という政治家一家に生まれた。祖父の大野伴睦氏は、自民党副総裁や衆議院議長を務め、「政治は義理と人情だ」という名言も残した。
当初、計画がなかった東海道新幹線「岐阜羽島駅」の開業にこぎつけ、“田んぼの中の政治駅”と騒がれたことも。今も、岐阜羽島駅の前には、大野伴睦氏の銅像が立っている。
18日、大野議員の後援会の元責任者が取材に応じた。議員が起訴されたことに、こう憤る。
大野議員の後援会の元責任者「“トカゲの尻尾切り”は、僕は許されないと思います」
元責任者によると、大野議員は、岐阜県議の頃から、“カネにはクリーン”だったという。
大野議員の後援会の元責任者「選挙違反になることは細かいことまで全てチェックし、派手な服を着ない、派手な車に乗るわけじゃない。本当に慎ましい生活をしながら、コツコツと上にあがられた人です」
5000万円を超える裏金疑惑について、こう断言する。
大野議員の後援会の元責任者「選挙の時に、あまりにも大きなお金がかかることが、そもそもの原因だと思います。上からの指示があって、それに従わざるを得なかったと僕は思っています。自ら率先して、キックバックを、不正に収支報告書に載せないような人ではないと僕は信じています」
谷川氏支援者「もうこれで終わり」
一方、議員本人の責任が大きいと語るのが、略式起訴された谷川弥一 議員の後援会長、島信行さんだ。
谷川やいち後援会 島信行 会長「谷川に対する支持は、もうなくなってると思います、後援会としてはですね。(後援会で)谷川さんも、もうこれで終わりだねと。我々も、もう今後は応援しないよっていうようなことは、いくつも聞いてますからね。私自身も、これを機にですね、今後、政治家との付き合いというのは一切やめようというように、もう決意しております」
去年12月、地元で取材に応じた谷川議員は…
――会派の中でそういったことがあった?
谷川議員「頭悪いね。言っているじゃないの。質問しても、これ以上、今日は言いませんって、言ってるじゃない?わからない?」
谷川やいち後援会 島信行会長「呆れたと言ったら失礼なんですけどね、我々に対しても、経緯をやっぱり説明して欲しいなと、本当に心底そう思ってます。そういうことがですね、今まで20年間支えてきた後援会のみんなに対する、ひとつの礼儀かなと」
実は、島さんは去年12月から、“誹謗中傷”を受けているのだという。
届いたハガキの文面「谷川議員の裏金問題は、貴方たち後援会が組織的に行ってきた事です。貴方の行動、振る舞いが一番「ガン」になっている。貴方も谷川議員から貰っていませんか?」
谷川やいち後援会 島信行 会長「私までね、地域振興を阻害している、ひとつの大きな“ガン”である、なんて言われてね、私は地域のために一生懸命、一生懸命あらゆることで努力してきたなと思ってるのにね。逆に我々も、ひとつの被害者だなと、このようにも思ってますね」
かつて谷川議員の政治団体に寄附をしていたこともあった、会社経営者の三宅敏彦さん。
谷川氏の元支援者 三宅敏彦さん「なんでそんな馬鹿なことをしたのかというのが本音ですね」
特に憤るのは、議員たちが支援者から金を集めながら、キックバックを報告していなかったことだ。
谷川氏の元支援者 三宅敏彦さん「コロナで売り上げがダウンしてですね、赤字が続いたんですけど、やっと回復してきて、やっと税金が払えるようになったなっていう、そういう気持ちなんですよね。我々みたいな零細企業から、1円でも取るっていうぐらい、もう本当に厳しくされますから。国を司ってる人たちが、本当は見本を見せていかないといけないんじゃないですかね」
●稲田朋美氏、還流82万円を不記載… 1/20
自民党派閥の政治資金規正法違反事件に関連し、稲田朋美・党幹事長代理(安倍派)の資金管理団体が、2021〜22年に派閥からキックバック(還流)を受けた82万円を政治資金収支報告書に記載していなかったことがわかった。
派閥のパーティー券収入114万円も派閥に納めないまま口座で保管していた。
稲田氏側によると、事務所の担当者が21年に2万円、22年に80万円の還流分を受け取り、パーティー券の管理口座に入金するなどした。
稲田氏側はパーティー券の販売ノルマ450万円を常態的に達成できず、不足分を持ち出していた。しかし、21〜22年は新型コロナウイルス禍でノルマが230万円に引き下げられ、ノルマ超過分など114万円を同じ口座で保管していたという。計196万円は口座などに残ったままだとしている。
稲田氏は読売新聞の取材に文書で回答し、「口座の存在を把握していなかった。80万円は(安倍派の)会長不在の状況で権限なく渡されたもので、114万円は派閥へ支払われるべき売り上げだ。196万円を派閥に返還する。政治資金を扱う緊張感が欠けていたことを深く反省しています」とした。
●麻生・茂木氏は岸田首相に「派閥続ける」 森山派は「中間報告」踏まえ判断 1/20
自民党派閥パーティー収入不記載事件を受けた派閥解散の可否を巡り、麻生派(志公会)と茂木派(平成研究会)の会長をそれぞれ務める麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長が、岸田文雄首相(党総裁)に対し、派閥を存続させたいとの意向を伝達したことが20日、分かった。複数の党幹部や党関係者が明らかにした。
関係者によると、麻生、茂木両氏は19日、首相と個別に党本部で会談した際に意向を伝えた。首相は各派閥が判断すべきだとの考えを示した。
麻生氏は、事件は安倍派(清和政策研究会)などの政治資金処理の問題ととらえ、派閥には人材育成などの存在意義があるとの認識に立つ。茂木氏は、派閥の力を足掛かりに将来的に首相の座を目指す構えとみられる。
一方、自民の森山裕総務会長は20日、会長を務める森山派(近未来政治研究会)について、党が25日にも決定する政治刷新本部の中間報告を踏まえ、派閥の存廃を判断する考えを示した。鹿児島県霧島市で記者団に「党で議論が始まっており、その経過も見ながら決めたい」と説明した。
不記載事件を巡っては、関係者が立件された安倍派、岸田派(宏池会)、二階派(志帥会)が既に解散を決めた。自民6派閥で唯一、不記載問題で告発されていない森山派が解散を決断した場合、解散に否定的な麻生、茂木両派の動向にも影響を与えそうだ。
●116万円分還流、不適切処理 安倍派・長峯議員 1/20
自民党安倍派(清和政策研究会)の長峯誠参院議員(宮崎選挙区)は20日、宮崎市内で記者会見し、2018〜22年の政治資金パーティーでノルマを超過した計116万円のキックバック(還流)を受け、政治資金収支報告書に適切な記載をしていなかったと発表した。自民党派閥の裏金問題を巡り東京地検特捜部から自身が任意聴取を受けたとも明らかにした。
代表を務める資金管理団体の政治資金収支報告書のうち、パーティー券のノルマを超過した96万円分が不記載だった。22年に受領した20万円分は本来寄付と記載する必要があるが、派閥からの指示でパーティー収入として計上していた。

 

● 地震被害の珠洲市と能登町 中学生約140人 金沢市に集団避難 1/21
能登半島地震で被害を受けた石川県珠洲市と能登町に住む中学生およそ140人の集団での避難が、21日行われました。
珠洲市と能登町では、すべての中学校が22日には再開する予定ですが、金沢市での集団での避難を希望した生徒は21日に移動しました。
このうち、珠洲市内の集合場所となっている珠洲市民図書館には、スーツケースなどの大きな荷物を持った生徒たちが家族とともに集まりました。
3年生の竹中遙空さんは「受験勉強をするために避難することを決めました。残りの日は少ししかないので、一日一日を大事に過ごしたいと思います」と話していました。
母親の喜美さんは「家族のことを心配して避難するか迷っていたので、送り出すことにしました。友達も一緒に避難するので、みんなで協力して乗り越えてほしいです」と話していました。
生徒たちは午前10時すぎ、2台のバスに分乗して金沢市の医王山スポーツセンターに向けて出発しました。
そして、バスは午後2時ごろから順次、施設に到着し、生徒たちは雨の中、荷物を降ろして生活の拠点となる施設に入りました。
21日は、合わせて142人が避難したということです。
石川県教育委員会生涯学習課の新谷貴晴さんは「悩みや不安が出てくることも考えられるので、生徒たちの様子をしっかりと見ながら、カウンセリングや心のケアをしていきます。生徒の皆さんには、安全安心に過ごしてほしい」と話していました。
珠洲市と能登町の教育委員会によりますと、集団避難の期間は2か月ほどを見込んでいるということです。
また、避難先には授業を行う教員に加えて生徒たちの心のケアに対応するため、養護教諭も派遣するということです。
●「大きな政治不信 申し訳なく…」野上議員100万円キックバック不記載認める 1/21
政治とカネをめぐる問題です。自民党の政治資金パーティーの裏金事件で、派閥からのキックバックを収支報告書に記載していなかった富山県選出の2人の国会議員が19日、初めて取材に応じました。
このうち野上浩太郎参議院議員はキックバックが2019年からの2021年までの3年間で100万円あったと明らかにしました。(以下、記者とのやりとり)
野上浩太郎 参議院議員「まずはこの度、政治不信を招いたこと心よりお詫び申し上げます。私の事務所についてでありますが、私自身はいわゆる還流についてこれはないと認識していましたが事務所で慎重に精査をしたところ、平成30年から令和4年までの5年間のうち、3年間で超過分があり、収支報告書に記載していないことが判明した。具体的な内訳は平成30年は超過分はない。令和元年は2枚分、4万円が超過し返金されていた。令和2年は特殊なので後程、説明します」
野上議員「令和3年は2枚分、4万円が超過して返金されていた。令和4年は返金はなかった。それで令和2年についてはコロナ禍の年で当初予定していたパーティーが5月から9月に延期となり、割り当ても当初の110枚から55枚に引き下げ。事務所内で引き下げが認識されておらず、パーティー開催直前の時期まで、今回55枚を超えて101枚まで、46枚を超過て販売したとのことであります。その結果、この年だけ超過分が突出したということです。その超過分46枚のうち、返金されたものは直接口座に振り込まれたのは32万円。現金として手元に残っていたのは14枚分となります。これらは使用せず、事務所に残ってあった。以上、記載されていなかった額は令和元年が4万円、令和2年が92万円、令和3年が4万円であります」
野上議員「わたくし自身、全く認識していなかったのですが、今般、慎重に精査を致しました結果、わたくしの事務所においてこのような状況に発生したことは深く反省し、心からお詫び申し上げます。誠に申し訳ありませんでした。大きな政治不信を招いたことについても誠に申し訳なく思っています。今後、政治改革を前進させ、政治の信頼回復に向けて尽くしてまいりたいと思います」
還流の仕組みは承知していなかった…
記者:還流分の使途についてこれはそのまま事務所に残してあったということですか。
野上議員「使わずに残してあった」
記者:キックバックの仕組みについて知っていたのですか。
野上議員「私自身はその還流の仕組みは承知していなかった」
記者:安倍派が派閥として解散したことについてはいかがですか。
野上議員「安倍派の総会が行われ、塩谷座長から冒頭、これまでの経緯が説明されて、派閥の件で国民の皆様に政治不信を招いたことへの謝罪、派閥のミスリードで収支報告書に記載しないでいいとの処理をさせてしまったことをお詫びがあったところ。この会で安倍派については解散すべきであるとという意見が多く出され、最終的には全員の総意で解散することになった」
記者:野上議員自身も安倍派は解散すべきという考えですか?
野上議員「私もそう思っています」
記者:派閥の在り方、考え方についてはいかがですか。
野上議員「派閥にはいろんな機能があるといわれてきて、人事の部分、資金の部分、あるいは人材育成や政策の立案、ただ、このような形になったことで派閥の在り方は抜本的に議論すべきで、私は派閥は解消する方向に議論すべきだと思います」
●「金融正常化」 しなければ沈んでいく、異常な円安にも終止符を打てる 1/21
金融の正常化は円安にストップをかけ、企業の収益に悪影響を与えるので、実現が遅れてきた。しかし、過剰な金融緩和の継続によって、日本経済の生産性が著しく低下した。ここからの脱却は、焦眉の課題だ。昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。
2024年最大の課題は金融政策正常化
今年の金融政策の最大の課題は、金融の正常化の実現だ。ここで、金融の正常化とは、第1にマイナスの政策金利から脱却すること。第2にイールドカーブコントロール(YCC)を廃止し、長期金利の水準を市場の実勢に任せることだ。
1つ目について、コロナ禍で多くの国が政策金利をマイナスにしたが、その状態からは脱却した。**いま先進国の中でマイナス金利から抜け出せないのは、日本だけで、2つ目についていえば、もともと中央銀行の金融政策は、短期金利である政策金利を操作することであり、長期金利は市場の実勢に委ねるのが、伝統的な方法だ。市場で形成される金利体系に無理矢理に介入しようとする日本の金融政策は、下記のようにさまざまな問題を引き起こしている。
これまでの異常な金融緩和政策は、短期的な要請だけに動かされたものであり、低金利、円安、補助金漬けの経済をもたらし、その結果、日本経済の生産性が低下した。
生産性を低下させた理由は、次のとおりだ。
金利が低ければ収益性の低い投資が行われる。また、財政資金の調達が容易になるので、必要性の疑わしい財政支出がなされる。その結果、資源の無駄遣いが生じ、長期的に見た日本経済のパフォーマンスに負の影響を及ぼす。これは、「財政・金融政策の近視眼化」と言ってもよい現象だ。
また、日本の金利が世界的に見て(特にアメリカの金利に比べて)低すぎることは、過度の円安をもたらし、物価の上昇や、日本の国際的地位の急速な下落などさまざまな問題をもたらした。
こうした状況からは、一刻も早く脱却する必要がある。従って、マイナス金利とYCCからの脱却は、一刻も早く実現すべき課題だった。とくに、日銀総裁が交代した2023年の早い時期に、それが行われるべきだった。ところが、実際には、長期金利の上限見直しがなされただけで、上のような意味での金融正常化は、いまに至るも、行われていない。
金融正常化すれば、異常な円安から脱却できる可能性
2024年には、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)による金利の引き上げが終わり、場合によっては引き下げの過程に入る。これに加えて日本が長期金利の抑制策をやめれば、日米間の金利差が縮小する。
この結果、これまで数年間にわたって続いてきた異常な円安が終わる可能性がある。場合によっては、急激な円高に転じる可能性もある。
これは、上に述べた意味での円安の弊害をなくす意味で、日本経済の長期的パフォーマンスにとって望ましいことだ。しかし、短期的には多くの問題をもたらす。とりわけ、企業の収益に対して、大きなマイナスの影響があるだろう。
それを恐れて、金融正常化が遅れる可能性がある。しかし、円安による企業利益の増加は、数字上のものにすぎず、生産活動の拡大を伴うものではないことに注意が必要だ。 
金利が上昇すれば、国債による財政資金調達は、より困難になる(2024年度予算において、国債の利払い費の想定金利は、2023年度の1.1%から1.9%に引き上げられる)。
これは一般には予算編成を困難にするという意味で望ましくないことだと考えられている。しかし、2023年12月24日の本欄で述べたように、この数年間税収が順調に増加したために、財政規律が弛緩している。また、財政資金が潤沢なうちに基金として積み上げておき、後で自由に使おうという動きも広まった。こうした動きにチェックをかけることが必要だ。
金融の正常化は、経済の長期的なパフォーマンスを向上させるために、短期的には経済に負のショックを与える政策である。
短期的な効果は、前項で述べたようなものであり、はっきりと予測できるものが多いので、抵抗が大きい。
日本経済が衰退した基本的な原因は、このような短期的効果だけが考慮され、過度の金融緩和が長期的な経済の生産性に与える負の影響を無視されてきたことである。そうした政策が20年、30年の長きにわたって続いたために、日本経済はここまで弱体化したのだ。
しかし、政治資金問題などで弱体化した岸田政権が、果たして経済界を説得して金融正常化を支えられるかどうか、疑問だ。本格的な金融正常化は、現在の日本の政治状況の下では極めて困難な課題だと考えざるをえない。
もし、短期的な利害が優先されて金融正常化がさらに引き伸ばされれば、日本経済の衰退は決定的なものになってしまうだろう。日本は極限まで弱体化し、立ち直せなくなってしまう。日本は、いまその瀬戸際に立っていると考えなければならない。
こうした状況下で何よりも必要なのは、なぜ金融の正常化が必要なのかを、日銀が国民にわかりやすく説明することだ。
日銀債務超過問題をどう処理するか? 
なお、日銀は、これまでの金融緩和の過程で大量の国債を購入し続けた。その結果、国庫短期証券を除く国債・財投債の日銀の保有比率は、2023年9月末で53.86%という異常な事態になっている(2023年7―9月期の資金循環統計による)。
この状態で長期金利が上昇すれば、巨額の国債評価損が発生する。実際、2023年4〜9月期決算では、日銀が保有する国債の含み損は9月末時点で10兆5000億円となっている。
この問題は多分に名目上のものであり、日銀の業務運営に実質的な影響を及ぼすものではないのだが、放置しておけるものでもない。経済に攪乱的な影響が及ばぬよう、慎重な対処が必要だ。
なお、金融正常化として、以上では、金利の問題を中心にして論じた。もう一つ重要なのは、日銀が巨額のETFを保有しているという事実である。このような政策は、中央銀行としては、きわめて異例のものであり、OECDの対日政策審査で強い批判の対象となった。ETFの購入を停止し、残高を減らす(できれば、すべて売却する)ことが必要だ。
●企業・団体献金を禁止することが「新しい資本主義」 1/21
岸田派が解散するらしいです。
総理の素晴らしい決断だと思いますが、さらに岸田政権に提案したいことがあります。それは企業・団体献金を禁止すべきということです。
政治献金をできる存在として、政党・政治団体・政治家個人と個人、企業・団体と様々なアクターがいます。その中で、政党・政治団体への企業・団体からの寄付です。企業や労働組合は政党や政治資金団体に寄付が行えるのですが、その部分をと言うことです。もちろん、企業・団体に政治家の後援会なども含めます。
また、企業・団体献金の抜け穴になる可能性のあるケースも廃止すべきです。それは個人献金です。中でも、政府の公共事業を受注している、補助金・助成金をもらっている会社・団体の経営者・代表、そして組織メンバーからの個人献金は廃止しても禁止すきだと思うからです。
禁止すべき理由
企業・団体献金はその額、なんと24億円。禁止すべき理由の第一は、一部の企業・業界団体の政治的な影響力が政治に反映されやすくなっているからです。言い方は悪いですが、政治への影響力を買う行為と言っても過言ではありません。政党交付金ができたため、もともと廃止されるはずでしたが、結局残ってしまいました。
理由の第二に、企業の経営にマイナス、日本経済にもマイナスの影響を与えてしまいます。企業も献金やパーティー券購入など余計な出費を求められます。一部の企業・業界団体の政治的な影響力が政治に反映されやすくなると、経済政策が歪みます。
日本で力を持った既得権益の意見が通り、産業構造が進まず、失われた30年の経済停滞、伸びない賃金の根源的な問題と言えるかもしれません。経済的な力を持った企業・団体の影響力が低下し、是正され、政策重視の経済政策になる可能性が生まれるわけです。
企業・団体献金の額
では、実態を見ていきましょう。自由民主党への政治献金を取りまとめる一般財団法人国民政治協会という政治資金団体についてみていきましょう。
このように、医師連盟、自動車の業界団体、電機関係の業界団体、鉄鋼関係の業界団体は多額の献金をしております。個別企業については四季報オンラインで明らかなように、住友化学、トヨタ自動車、日立製作所、キヤノン、野村HD・・・・など日本の名だたる企業が名を連ねています。
圧倒的な影響力を持ちすぎ?例えば、日本医師会
例えば日本医師会。日本医師会の政治的影響力は、政治献金、人材・コネクションなど様々でありますが、やはり他と比較して突出していることは確かです。筆者はよく議員さんなどに連絡しますが、あまり相手にしてくれない議員もいます。医師会の関係者を通じて連絡したらあら不思議・・・・ってことになったら、それはそれで不公平ですよね?
いろいろ批判的に書きましたが、企業・団体の方々や政治家さんが悪いのではないのです。政治のルールやシステムが悪いのです。
企業経営者や団体代表の方の中には、立派な方もたくさんおられます。真の意味で「寄付だ」「何も期待しない」という行動をとられる方もいるでしょう。そのような「お金は出しても口は出さない」という人は、中にはいるかもしれませんが、そういった人は少数でしょう。世の中、ギブアンドテイク、何かしらの無形・有形の見返りを求めてしまうのが人間というものです。
他方、政治家さんもスポンサー企業・団体のいうことを聞かざるを得なくなることも多かったと思います。国民のための政治をやりたいのに、選挙の時に応援してくれる人たちのために配慮や関心を寄せなくてはいけない事態。それは、理想を求める政治家にとっても面白くはないことでしょう。
企業・団体献金が日本の経済政策に与えた過剰な影響力を考えると、そろそろ見直すべきだと思います。「新しい資本主義」は、企業・団体の影響力を排除することが前提になるのではないでしょうか。岸田政権に期待しましょう!
●自民支持率最低、党内に衝撃 「裏金」影響、下野直前下回る 1/21
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件を受け、同党の支持率が急落している。
時事通信の1月の世論調査では、野党時代を除いて1960年の調査開始以来最低の14.6%。有権者の厳しい視線が岸田内閣だけでなく党にも向いている状況が鮮明になり、衝撃が広がっている。
「数字は実態を表している。地元を回っていても信頼感の低下を感じる」。現職閣僚の一人は自民支持率の落ち込みについて、こう危機感をあらわにした。事件は、東京地検特捜部に関係者が立件された安倍、岸田、二階の3派が解散を決め、党を揺るがす事態に発展している。
昨年1月から10月まで、自民支持率は同調査で21〜24%台を推移していた。この間、内閣支持率は1月の26.5%から5月に38.2%へ回復し、10月には再び26.3%へ落ちており、党支持率は比較的安定していたと言える。
ところが、各派のパーティー収入問題が報じられだした11月を境に下落傾向が顕著になる。同月に19.1%と2割を切り、12月は18.3%。年をまたいでさらに3.7ポイントも下がった。内閣支持率は12月17.1%、1月18.6%と低迷しており、これが党に飛び火した格好だ。
自民政権下で党支持率1割台はそれほど多くない。リクルート事件が火を噴いていた88〜89年当時も2割を割り込むことはなく、初のケースは自社さ連立の村山富市政権だった95年6月。その後、橋本龍太郎、森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三(第1次)、福田康夫、麻生太郎各政権下で1割台に落ちている。
これまでの最低値は麻生内閣時の2009年7月の15.1%。この翌月の衆院選で惨敗し、野党に転落しているが、今回はこれを下回った。
現時点で立憲民主党や日本維新の会の支持率はおおむね3〜4%台で伸びていない一方、「支持政党なし」の無党派層は今年1月の調査で前月比4.3ポイント増の66.8%となった。政権批判の「受け皿」ができれば、自民は一段と苦しくなる。
岸田文雄首相(党総裁)は19日、事件を陳謝した上で「再発防止に向け、政治刷新本部の議論を進めていきたい」と記者団に語った。だが、野党の攻勢も予想される中、ベテラン議員は「この状況で上向くわけがない」と顔を曇らせた。
●政治家も経済界も「賃上げ」を叫ぶばかりで現実は実質マイナス、なぜなのか 1/21
厚生労働省が1月10日に発表した、2023年11月の「毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)」によると、物価を考慮した1人あたりの実質賃金は前年同月比3.0%減でした。実質賃金は、20カ月連続でマイナスになっています。
安倍政権、菅政権、岸田政権、いずれも賃金上昇の必要性を強く訴えてきましたが、企業の反応は「暖簾に腕押し」という感じで、賃金上昇には結びつきませんでした。
最近になって、急激な物価上昇により賃金上昇圧力も強くなり、企業でも賃上げの動きが見られるようになってきましたが、物価上昇のスピードには追いつかず、実質賃金は依然として低いままです。日本ではなぜ実質賃金が上がらないのでしょうか。
企業の利益剰余金は11年連続で増加
アベノミクスでは、異次元の金融緩和によって市場にマネーを供給して、潤沢な資金を元に景気回復するシナリオを描きました。結果として投資マネーが増え、株価は上がり、低金利政策により円安が進行し、輸出企業を中心に最高益を出すなど一定の効果がありました。
経済の理論からすると、企業の利益が増えれば賃金が上がり、消費も増え、物価が上がることになりますが、実際には企業は儲かっても従業員の賃金を上げず、内部留保を続けたため景気の好循環には至らず、デフレが続きました。
結局、アベノミクスで恩恵が得られたのは、企業と株の保有者だけでした。企業献金を受け取り、富裕層と強い繋がりがある自民党総裁としては、十分満足の得られる結果だったのかもしれません。
その後の菅政権は、最低賃金を全国平均で28円引き上げましたが、約1年と短期間だったため、大きな賃上げには繋がりませんでした。岸田政権は、「新しい資本主義」と題して、1構造的賃上げの実現、2国内投資の活性化、3デジタル社会への移行、の3つを掲げています。
賃上げの具体的政策としては、リスキリングによる能力向上や成長分野への労働移動の円滑化が掲げられていますが、これもすぐに賃上げの効果が出るものではありません。
岸田首相は、経済3団体共催の「2024年新年会」で、「この令和6年は極めて重要な1年となります」と述べ、賃上げについても後戻りさせないようあらゆる手だてを尽くすと決意を示し、経済界に対し強い賃上げへの協力を要請しました。
これを受け、経団連の十倉雅和会長は、「日本経済がデフレからの完全脱却を果たすうえで、非常に重要な勝負の年である。実現に向けては、『成長と分配の好循環』を確かなものとする必要がある。千載一遇のチャンスを逃すことのないよう、構造的な賃金引上げの実現や、全世代型社会保障制度改革に全力で取り組んでいく」と意欲を示しています。
政府も経団連も賃上げについて強い決意を述べているように思われますが、どこまで本気なのかはわかりません。十倉会長の年頭挨拶を遡って見ても、前年の2023年、前々年の2022年の年頭の挨拶でも賃上げの重要性について述べているからです。つまり、年頭挨拶での賃上げの決意表明は恒例行事のようになっているということです。
実際、賃上げの決意表明にもかかわらず2022年も2023年も実質賃金は低いままです。それに対し、財務省の「法人企業統計」(令和4年度)」によると、企業が蓄えた内部留保に当たる「利益剰余金」は、前年度比7.4%増の554兆7777億円でした。利益剰余金の額は、11年連続で増加を続けており、過去最高を更新しています。
つまり、企業経営者は、表面上は賃上げすると言いつつ、相変わらず内部留保を増やし続け、わずかばかりの名目賃金を上げて、実質賃金は依然として低いままという状態なのです。
賃金が上がりにくい「非正規雇用」が4割近くを占めている
日本の賃金を押し下げる要因として非正規労働者の賃金が低いことがあります。厚生労働省の資料「『非正規雇用』の現状と課題」によると、非正規雇用の割合は、2022年度で36.9%になっています 。約4割の人が非正規労働者ということです。この4割の人の賃金が低いため賃金の平均値が低くなっています。また、安い非正規労働者がいることで、正規労働者の賃金も上がりづらいという構造になっています。
非正規雇用は、多様な働き方という点では良い面もあるものの、賃金に関しては極めて不利な状況におかれています。有期雇用社員の多くは1年契約で、更新されるかは企業次第なので、賃上げの交渉などできる状況にはありません。そのため、正規社員と同等の労働をしても、正規社員に比べ低い賃金に設定されています。
現行法に「同一労働同一賃金」の規定はありますが、罰則規定がないため、法律が遵守されていないのが実態です。法律を改正し、労働基準法にも明記し、罰則を設けるなどして規制を強化していくことが必要だと思います。
パート社員についても、「106万円の壁」や「130万円の壁」によって、収入を増やそうと思っても増やせない制度になっています。そのため、わざとシフトを減らすなどして収入を抑えている人がたくさんいます。これも賃金を押し下げている要因の一つです。
政府は、「年収の壁・支援強化パッケージ」という措置で年収の壁の緩和を図ろうとしていますが、時限的な措置であり、一時的なものに過ぎません。この点についても、抜本的な法律の見直しが必要だと言えます。
ストライキをしない労働組合、消極的な労働者側の動き
企業が賃金を上げようとするのは、賃金を上げなければ従業員が辞めてしまう、あるいは現在の賃金水準では人を採用できないという状況が発生した場合です。経営者からすれば、コストはできるだけ安い方が良いわけで、人件費というのは固定費として大きなウエイトを占めるので、経営者が給与をできるだけ低く抑えたいと考えることは当然のことです。
「利益が出ているのに、従業員に還元しないのはけしからん」という意見を言う人もいますが、従業員から「給料を上げろ」と主張もしないで自動的に給与が上がると考える方がおかしいと言えます。もちろん、従業員から積極的な賃上げの要求がなくても従業員のモチベーションを上げるために経営戦略的に給与を上げることはあるかもしれませんが、それはレアなケースと言えます。
アメリカは、高い給与水準 を維持していますが、賃上げのためのストライキをたくさんしています。ストライキをしても賃上げに応じなければ、従業員らは会社を辞めてしまいます。そのため、企業は賃上げに応じざるを得ないわけです。賃上げを自分たちの力で勝ち取っているわけです。
賃上げの要求をしたり、ストライキをしたりすることは大変な労力を要します。しかし、それをやらなければ残念ながら賃金は上がりません。今の組合はストライキもせず、実効性のない組織だと思われているので、組合への加入率が年々下がっています。賃上げの機運が高まっている今こそ組合が積極的に動く時です。
日本最大の労働組合の全国組織「連合」は、2023年春闘で「30年ぶりの高水準となる賃上げを実現した」と胸を張っていますが、実質賃金が低いままでは何の意味もありません。実質賃金が上がる水準まで強く賃上げを要求することが必要です。自民党と仲良くすることも結構ですが、それならもっと与党に働きかけをして政治を動かしていくべきです。
日銀の動きに注目
現在の日本の物価上昇は、世界的な物価上昇の影響を受けており、円安によりさらに負担が増えているという状況にあります。実質賃金は物価を考慮するため、物価の上昇が抑えられれば、実質賃金は上がりやすくなります。
日銀は、春闘での賃上げの状況を見極めた上で、金融緩和を解除するかどうかを判断するので、春闘の結果が出るまではどうなるかわかりませんが、もし金融緩和が解除されて円高になれば、コスト上昇による物価高は緩和されます。幸い、名目賃金は上昇傾向にあることから、円高が進めば、実質賃金の上昇につながるかもしれません。
まとめ:組合を中心として、積極的な活動を行うことが重要
実質賃金の上昇のためには、物価という外的要因の影響があるので、それを見越して賃上げをしていく必要があります。企業経営者はなるべくコストを抑制したいと考えるのが自然であり、政府の動きも期待できません。
結局、実質賃金を上げられるかどうかは自分たち次第であり、自分たちで動くかどうかにかかってきます。今は、急激な物価上昇があるため、賃上げを求めやすい環境になっています。この機会を逃せば、賃上げを要求することは難しくなります。
組合が中心となって、積極的な活動を行っていくことが重要であり、各所でそのような動きが見られるようになれば、企業経営者も重い腰を上げざるを得なくなります。春闘に向け大事な時期になってきますので、実質賃金の上昇に向けて頑張ってもらいたいと思います。
●岸田首相、政治資金規正法改正に意欲 1/21
岸田文雄首相(自民党総裁)は21日放送のBSテレ東番組で、派閥の政治資金規正法違反事件を踏まえ、26日召集の通常国会を念頭に同法改正を急ぐ考えを示した。「政治の信頼回復なく、政策の推進はあり得ない。最優先課題として取り組まなければならない」と強調した。番組は16日に収録された。
9月の総裁任期切れに伴う総裁選への再選出馬や、衆院解散・総選挙の時期に関しては「信頼回復と先送りできない課題に全力で取り組む。それ以外のことは考えていない」と述べるにとどめた。
●突然の派閥解散表明に…岸田派の田村氏「首相から事前に連絡があった」 1/21
自民党の岸田派に所属する田村政調会長代行と、立憲民主党の長妻政調会長が22日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」に出演。岸田首相が表明した岸田派解散について田村氏は、首相から事前に連絡があったことを明かしたうえで、「非常に強い意志のあらわれだった」と強調。「これからの自民党の姿勢を見て頂きたいという思いだったのだろう」と説明した。一方、長妻氏は自民党の派閥解散の動きについて、「裏金と関係ない話で、完全な論点ずらし」と批判。さらに、「(派閥が)本当に解散することはあり得ないと思う」と述べた。また、番組コメンテーターの橋下徹氏は、「岸田頑張れ、みたいな、新しい政治を作ってくれ、みたいな雰囲気になるところを国民はしっかり見なきゃいけない」と指摘した。以下、番組での主なやり取り。
安宅晃樹情報キャスター(フジテレビアナウンサー): 田村氏は岸田派所属だが、今回のこの決定について、岸田首相から事前に話はあったか?
田村憲久氏(自民党・政調会長代行/岸田派・副会長): (岸田首相が発表する)寸前に連絡があった。非常に強い意志のあらわれだったと思う。今自民党がこういう状況で、色んな改革案を出しても、今の状態では多分、国民が耳を貸してくれないという判断の中で、自らこのような形で派閥の解散を宣言することによって、それで許されるとは思わないが、まずは、これからの自民党の姿勢を見て頂きたいという、そういうような思いだったんだろうと思う。
安宅キャスター: 岸田首相からは、相談ではなく事前に報告という形であったのか?
田村氏: 相談というか、報告というか、それはもう「阿吽の呼吸」だったというふうに思う。
梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー): 岸田首相の岸田派解散という決断を長妻氏はどう評価するか。
長妻昭氏(立憲民主党・政調会長): これは完全に論点ずらしだ。裏金と関係ない話だ。なぜなら、自民党の県連パーティーでも裏金疑惑がある。あるいは、薗浦健太郎氏という自民党の元議員は、個人のパーティーで裏金を作っていたわけで、論点ずらしに成功したと岸田首相が思っているとしたら、私は国民そんな甘くないと思うし、しかも、今の報道も含めて、自民党の中の反応も含めて、本当に(派閥を)解散するという前提で議論が起こっているようだが、私は本当に解散するなんていうことは、ありえないというふうに思う。福田達夫議員が早速、反省の上に新しい集団を作っていくことが重要だということで、おじいさんの福田赳夫さんが清和会(安倍派)を作った方なので、結局派閥が分裂して、新しい派閥になるということなので、あんまりそれを大きな論点として、マスコミや党が取り上げると全く裏金の話がどっかに行ってしまうような、目くらまし作戦じゃないか。いずれにしても30年前に自民党が政治改革大綱で、自民党自らが派閥はなくすいうのを30年前に決めておいて、30年間それを破ってきたので、きちんとケジメをつけてほしい。
梅津キャスター: 今の意見を聞いて、田村氏はどう思うか?
田村氏: 自民党のいわゆる派閥っていうものの要件が、実は暗黙の中にあって、一つは政治団体であること、つまり、お金が集められるということ。それから、事務所を持っているということ。もう一つは、木曜日の昼間12時に総会を開くこと。(派閥の)掛け持ちをさせないっていうこと。その上で、党の方に登録というか報告することになってる。この4つが派閥の要件になっているが、政治を、お金を集めるというもの、つまり政治団体というものをどう考えるのか、というところ。それから、掛け持ちをさせないっていう。今、福田達夫氏が言われているような、色んなグループっていうのは、多分自民党だけじゃなくて、色んなところにあると思う。問題は掛け持ちをするかしないか、っていうところなので、その掛け持ちをさせるのか、しないのかによってだいぶ変わってくると思う。ただ、何よりも、大きな集団をまとめるためには、そういう派閥のようなところがあった方が意思の決定、形成をしやすい。これがなくなった時に、みんなの合意を得ようと思うとかなり苦労がある。これは党の総裁を決めるだけじゃなく、意思を決定するにもかなりの手間をかけていかなきゃならないという中でのいろんな判断になっていくのだろう。
松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員): (派閥を)掛け持ちさせないっていう意味で、毎週木曜日に昼に各派閥が集会を開いて、そこで一箇所しか行けないっていう構図になっていたが、これも今後変わってくるのか?
田村氏: 今言った派閥の要件というもの、派閥というものを解消していくんだとすれば、また、今あるグループが形を変えていくんだとすれば、そういうようなお金を集める機能だとか、掛け持ちさせないというような機能、こういうものをどう見ていくかというところが、焦点になってくると思う。
梅津キャスター: 視聴者投票の結果が出た。岸田派の解散表明について岸田首相の判断にあなたは?という質問に対して評価するという方が26%、評価しないという方が62%、どちらとも言えないという方が12%、この結果をどう見るか。
橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事): 視聴者がよく理解していると思うが、ただ、(他の)世論調査を見るとね、岸田政権の支持率、上がっている。自民党の支持率はあんまり下がってない。むしろ野党の支持率が伸びずに下がってるところもある。長妻氏が言われた通り、今回のこの派閥の問題は論点ずらしだ。政治とカネの問題から全然違うところに行ってしまって、これはやはり、自民党ってしたたかなのか何なのか、意図しているのかどうかわからないが、これから岸田首相と麻生副総裁が派閥の解消をめぐって大バトル(をやる可能性がある)っていうことで、メディアが一斉に報じると思う。なんとなく岸田頑張れみたいな。新しい政治を作ってくれ、みたいな雰囲気になるところを、国民はしっかり見なきゃいけないと思う。だから、野党は、これからのメディアの報道に負けないぐらいの改革案を出して、(自民党内の)バトルというのはインパクトが大きいので、これを上回るだけの改革案を出してもらいたい。気になるのは、主要な野党、特に立憲民主と維新の方が、どうも政治とカネの問題についてはインパクトが弱いというか。今やっとメディアも報じてくるようになったが、政策活動費っていうものすごい“大きな闇金”がある。収支報告書への記載不要、領収書も不要、精算も不要、納税も不要、ものすごい裏金を主要野党である立憲民主党も維新の会もこれを使っている。維新の会などは、身を切る改革とか、日本を大改革すると言いながら、政策活動費の使途公開については、まだ後ろ向き。立憲民主党も今議論しているということだが、廃止でいいのではないか。
長妻氏: ちょっと(橋下氏に)誤解があるが、我々は(政策活動費は)廃止だ。我々も去年からこの政策活動費はやっていない、使っていない。それで、今後も政策活動費は廃止するということで我々は決めていきたい。政策活動費がなくても、きちっと政治活動はできるということなので、これは廃止をするということだ。
松山キャスター: 逆に自民党の田村氏にも聞きたいが、政策活動費、つまり党から各議員へのお金ってことになるが、この使途を明らかにするっていう議論がずっとある。これはどういうふうに取り組んでいくのか。
田村氏: これも党の中で議論していかなきゃいけないだろう。今日は政治改革に対して党を代表して出てないんで個人的な意見になるが、個人的には、昔の文通費(旧文書通信交通滞在費)。これなんかをもう(使途を)開示していった方がいいと思う。
橋下氏: 田村氏には是非党を引っ張ってもらいたい。
松山キャスター: 結局、派閥解散をしたとしても、何らかの形で似たようなものがすぐ戻るんじゃないかというふうに思ってる人も多いと思う。1994年の政治改革の後も半年ぐらいでだいたい政策集団ということで同じようなものが戻ってきたという経緯があるが、ここはどういうふうにしていくか。
田村氏: 先ほど申し上げたみたいに、政治団体であるだとか、つまりお金の問題だとか、他に掛け持ちを許さないだとか、そういうところをどう見るかっていうのは実態になってくると思う。それと、今回、岸田首相が自らの宏池会の解消というものを言ったのは、支持率というよりは、国民の皆様に対する覚悟。つまり今自民党が何言っても聞いてもらえない。だから、まずは聞くだけは聞いてくださいと。中身見て判断してくださいという、その覚悟を示したのだろう。私は宏池会に入って4ヶ月で入ったばかりなので、あの岸田首相も私に対して「あなた入ったばかりで申し訳ないけど」という話をしていたが、そこは岸田首相の覚悟というものを私も感じたので(派閥解消に)賛同した。
●岸田首相、捨て身の派閥解消 反転攻勢狙い、危うさも 麻生・茂木派が反発 1/21
岸田文雄首相が自民党岸田派(宏池会)解散という賭けに出た。派閥の政治資金パーティー収入裏金化事件で内閣支持率がどん底状態から抜け出せない中、1957年から続く名門派閥の解体で捨て身の反転攻勢を図る。首相を支えてきた第2、3派閥の麻生派と茂木派からは首相の独断に「徹底対決だ」と不満が高まっており、政権基盤が揺らぐ危うさをはらむ。
主流派に事前に伝えず
「『隗(かい)より始めよ』だ」。昨年12月まで約11年率いてきた岸田派の解散について、首相は19日、面会した党青年局メンバーにこう強調した。解散表明に先立ち、首相は18日、同派座長の林芳正官房長官に方針を伝達。所属する官房副長官や閣僚経験者にも短時間で根回しを済ませた。国民世論に派閥への批判が強まる中、首相周辺は「岸田派が率先しなければならない」と語った。
首相は以前から周囲に「派閥はやめてもいいのではないか」と漏らし、岸田派解散を腹案として温めてきた。同派の元会計責任者の立件方針が18日に報じられたことも背中を押したとみられる。
党内には動揺が広がり続けている。首相は麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長ら政権中枢の幹部に自身の決断を事前に伝えなかった。党政治刷新本部で派閥存廃が焦点となっている最中に「抜け駆け」した格好となったことに関し、党関係者は「派閥解消に抵抗があり、自ら打ち出した」との見方を示した。
首相の狙い通り、安倍派、二階派は19日に解散を決めた。安倍派からは「乗り遅れたらイメージが悪い」(ベテラン)、「岸田派に追随せざるを得ない」(閣僚経験者)との声が相次いだ。首相は記者団に「その派閥で判断されたことだ」と述べるにとどめた。
菅前首相は評価
一方、麻生派と茂木派は東京地検特捜部の立件対象にならず、派閥を維持する姿勢を崩していない。首相の意向に、麻生派幹部は「皆で横断歩道を渡ろうというのか」、茂木派幹部も「解散するいわれはない」と猛反発。森山派も様子見の構えで、「派閥全廃」へ進むかは不透明だ。
首相は党総裁とはいえ、党から独立した組織である他派閥への指揮権はない。強引とも言える手法に、政権を支えてきた麻生、茂木両氏が反抗し、3人の距離が急速に広がる可能性もある。
首相としては両氏の不興も想定し、菅義偉前首相の取り込みを図ったとの見方もある。関係者によると、菅氏は首相に「派閥解消まで行かないと世論は納得しない」と主張しており、首相の今回の決断を評価しているという。
「岸田降ろしに発展」
自民は政治資金規正法の改正に向け、政治団体の会計責任者だけでなく政治家にも責任が及ぶ連座制導入など罰則強化を打ち出す方針だ。政権が裏金事件で瀬戸際に立たされる中、党関係者は「首相は派閥解消と連座制で突破口を開こうとしている」と指摘。自民執行部の一人は「支持率も上がり、求心力も戻る」と期待した。
ただ党内では、安倍派幹部らの「不起訴処分」を受けて検察審査会の手続きが始まるとの見方は強く、影響が長期化する可能性がある。
かつて宏池会会長を務め、今も一定の影響力を保つ古賀誠元幹事長は関係者に「どうしようもない」と不満を漏らした。首相周辺からは「『岸田降ろし』に発展するのではないか」と不安視する声が出ている。
●岸田派解散、所属議員は 小林氏「自らけじめ」寺田氏「誠に残念」 1/21
岸田文雄首相が解散を表明した「宏池政策研究会」(岸田派、46人)。派閥の政治資金パーティーをめぐる事件に厳しい視線が注がれる中、同派に所属する広島県内選出の議員は釈明を行った。有権者からは、根本的な政治改革を求める声があがった。
「有権者は不信感を抱いている。国会議員としておわびを申し上げたい」
岸田派に所属する小林史明衆院議員(40)は地元の福山市に戻った20日、報道機関の取材に応じた。派閥の政治資金問題について謝罪したうえで、「派閥解散に賛同している。改革を進めるにあたって、自らけじめをつけて、新たなスタートを切る」と語った。
支持者からも「民間ではお金をきっちり処理しなくてはならないのに、なぜ政治団体は不透明なことが許されるのか」という怒りの声が届いているという。
小林氏は、岸田首相(党総裁)が立ち上げた政治刷新本部の事務局長代理を務めている。「政治資金規正法に違反した場合の厳罰化や、政治家本人が責任を取る仕組みなどについて議論になる」と語った。
3月に福山市内で計画している個人の政治資金パーティーについては、「うちの事務所は法律を守っている。活動費用を銀行口座で管理をして、透明化をはかっている」として、予定通り開催するという。
宏池政策研究会は宏池会と呼ばれ、竹原市出身の元首相・池田勇人氏(1899〜1965)らが1957年に結成した。保守本流の系譜にあり、ハト派で経済重視の政策志向で知られる。県選出議員からは、宮沢喜一氏(1919〜2007)も会長を務めて首相となるなど、広島と同派の縁は深い。
岸田政権下で総務相に起用された寺田稔衆院議員(65)の妻は、池田元首相の孫にあたる。
寺田氏は「政治改革はすすめなければならないが、私の地元発の歴史と伝統ある政策集団宏池会が解散の方向であることは誠に残念。志を同じくする同志メンバーと政策の研鑽(けんさん)はつづけていきたい」とのコメントを19日に出した。
有権者は何を思うのか。広島市中区八丁堀にある岸田首相の事務所近くで聞いた。
広島市中区の無職男性(78)は、「資金問題を起こしたからには、解散もやむを得ない。根本的に政治を改革してくれる政治家が出てくることを期待したい」。安佐南区の公務員の60代男性も「けじめをつけて(宏池会は)解散すべきだ。岸田首相には指導力を発揮して欲しい」と話した。
中区の自営業男性(64)は、派閥の解散を選択したことは良い判断だったとしつつも、「またすぐ同じような集団は作られるだろう」と話した。
●国民から「大ブーイング」の岸田総理、ここにきて「逆襲」がついにはじまった 1/21
「宏池会の解散」言及に激震
言うまでもなく、2024年は国際的に選挙イヤーだ。民進党の頼清徳(らい・せいとく)氏が勝利した台湾総統選挙を皮切りに、11月にはアメリカ大統領選挙が控える。その間に日本の政治も動く。
選挙は、誰が勝つかによって方向性が変化するリスクを伴う。選挙がない中国や北朝鮮、大統領選挙はあってもプーチン一択のロシアはそのままだとしても、日本、アメリカ、台湾といった民主主義国家や地域は、結果によって大きく揺らぐ危険性が多分にある。
この先、自民党総裁選挙が予定される9月にかけて大荒れになるのが日本の政治だ。2024年1月18日夜7時、岸田文雄首相が報道陣の質問に答えた。
「(岸田派=宏池会の)解散についても検討しております。政治の信頼回復に資するものであるならば、そうしたことも考えなければならない。このように思っています」
出身派閥であり、岸田首相が生まれた1957年に創設され、故・池田勇人氏以降、5人もの首相を輩出してきた名門・宏池会の解散に言及したのだ。
その顔は、苦渋の決断をしたというよりも、むしろ「してやったり」という表情で、「これで政治とカネの問題にけじめをつけ、どうにか通常国会を乗り切れる」という安堵感すら感じられた。
ただ、この発言で自民党には激震が走った。馬政治資金パーティー裏金事件で矢面に立たされている安倍派(清和政策研究会)や二階派(志帥会)も派閥の解散へと舵を切らざるを得なくなった。
「安倍派は解散すべき。私が介錯する」(安倍派・宮沢博行衆議院議員)
「悪しき慣習を引きずった派閥は解消すべき」(二階派・中曽根康隆衆議院議員)
確かに、岸田首相が岸田派の解散に言及した2日前の1月16日、自民党本部9階で開かれた「政治刷新本部」の会合では、中堅若手議員からこのような声が上がったが、自民党内には、「無派閥の菅義偉前首相だって当時の細田派(現・安倍派)や二階派の力で首相になれた」「派閥をなくしてもすぐに同じようなグループができる」といった声も根強い。
自民党無派閥のある議員は、次のように解説する。
「麻生先生(麻生太郎副総裁)らの反発は当然あり、派閥を維持したい議員からの怒りは岸田さんに向けられるでしょう。
それでも、岸田さんがまず先鞭をつける形で派閥の解散に言及したのは、『政治刷新本部』が近くとりまとめられる中間報告が、『派閥の政治資金パーティー禁止』程度だと国民の理解は得られない。つまり、総裁選挙での再選戦略も描けなくなる、という危機感があるからだと思いますよ」
これは言うなれば「岸田の乱」だ。根回しはあったにせよ、総理総裁というトップが起こしたクーデターとも言える。
現在は、能登半島地震での被災地復興を優先させる観点から、表立って「岸田降ろし」の声は聞かれない。
しかし、「岸田の乱」を契機に派閥解消ドミノが生じたことで、かえって自民党内の求心力を低下させる可能性もある。これに、時事通信社が発表した1月の内閣支持率(14.6%)のような想像を超える低支持率が続けば、日本の政治は、春以降、一気に流動化することになる。
加えて言えば、今回の事件の本質を「派閥の解散」にすり替えるのは正しくない。問題は、派閥の是非などではなく、岸田首相の下、政治資金の透明化と違反した場合の罰則の明確化が実現するかどうかである。
くっきり色分けされた台湾総統選挙
中国の動きに影響を与える台湾の政治情勢も危うい。
1月12日夜、つまり総統選挙の投開票日前夜、筆者は、国民党・候友宜(こう・ゆうぎ)氏と民進党・頼清徳氏の最後の大集会を取材するため、台北車站(台北駅)からMRT(地下鉄)で5つ離れた「板橋」という駅に向かった。
候氏は、新北市板橋区にある第一運動廣場、頼氏は第二運動廣場と、駅を挟んで同時刻に大規模な決起集会を行うからである。
翌日、敗れることになった候氏の集会は、60代から70代の高齢者の支持者が目立った。また、台湾の旗である「青天白日旗」のほか、「〇〇里」と書かれたプラカードや企業・団体名が入った幟が目に付く。聞けば「動員されたから来た」と言う。日本の自民党のように地域や組織を利用した選挙を徹底してきた結果だろう。
一方、勝利することになった民進党・頼清徳氏の集会は、台湾民衆党の柯文哲氏の集会ほどではないが、若い世代が圧倒的に多い。ただ、台湾の旗はあまり振られていなかった。
台湾の旗が、長らく「国父」と呼ばれた孫文の三民主義(民族の独立、民権の伸長、民生の安定)に由来し、旗の大部分を占める「赤色」が民族の独立を意味するからだろうか。
周りにいた支持者に、職業などを聞くと、半導体トップのTSMC(台灣積體電路)の社員こそいなかったものの、中華電信やデルタ電子(台達電子)といった有力企業の社員やITエンジニアなどが多かった。
蔡英文政権8年で脱原発や性的マイノリティー政策を進めてきた結果、一般労働者のための政党が、エリート集団の政党へと衣替えしてしまったような印象を持った。
中国によって「ゆでガエル」化する台湾
国民党=高齢者政党、民進党=高学歴で高収入のエリート向け政党となると、大多数を占める一般有権者の受け皿がなくなる。
今回、頼清徳氏が約559万票、候友宜氏が約467万票の獲得にとどまったのに対し、組織力で劣る柯文哲氏は約370万票も獲得し、同時に行われた立法院選挙でも議席を伸ばした。
これは、3人の候補者が勝つために、「政治改革」、「賃上げ」、「住宅費高騰の抑制」、それに「少子化対策」など公約のアイテムを増やし、その違いが鮮明ではなかったこと、そして肝心の対中国に関しては、受け皿を失った有権者の多くが「現状維持なら誰でもいいよね」という感覚になってしまったことが背景にあるように感じている。
台湾の民意が行き所を失えば、中国の習近平指導部はつけ込みやすくなる。中国は今、習近平総書記が2023年12月31日のテレビ演説で、総書記就任以降、初めて「企業は苦境に立たされ、就職が厳しく日々の暮らしに困る人もいる」と、国内経済の苦境を認めたように、台湾を軍事侵攻できるような状況にはない。
ただ、立法院選挙で過半数を失った頼清徳次期総統は苦境に立たされる。有権者の関心も台湾内部の問題に注がれている。習近平総書記としては、むしろ好機である。「一気に統一」は無理でも、緩やかに変化を加えて台湾を「ゆでガエル」化できるからだ。
今後は、総書記として4選がかかる2027年秋を視野に、立法院選挙で第1党となった国民党との「国共合作」で、中国への投資を促しながら、他方で台湾産品の輸入を規制するといったアメとムチ政策で台湾の民心を揺さぶっていくことだろう。
アメリカはトランプ恐怖政治かバイデン老齢政治か
最後はアメリカだ。アメリカは日本や台湾以上に危ない。81歳の民主党・バイデン大統領と77歳の前職、共和党・トランプ氏の間で争われる可能性が高いアメリカ大統領選挙は、「Make a better choice」(よりマシな方を選択する)もできない惨状と言っていい。
バイデン氏が勝てば、86歳まで大統領を続けられるのか不安がつきまとう。トランプ氏が勝てば、また独り善がりの恐怖政治が再現されてしまう。
特に、4つの事件、91もの罪で起訴されているトランプ氏にとっては、2021年1月に起きたアメリカ議会襲撃事件を扇動した問題が一番重く、憲法修正第14条3項で規定する「政府への反乱関係者の公職就任禁止に該当する」との理由で、出馬資格があるのかどうかがカギになる。
ここまでの司法判断は、コロラド州では「資格なし」、ミシガン州やミネソタ州では「資格あり」と判断が分かれている。今後は、2月8日、連邦最高裁での口頭弁論から始まる審理の結果を待つしかない。
ただ、「資格あり」となった場合、トランプ氏は、共和党候補者の中で早々に勝利を確定させ、バイデン大統領との本選でも勝つ可能性は十分ある。
事実、日本の外務省が、すでに「もしトラ対策」(「もしもトランプ氏が勝利したら」対策)に着手し、1月9日、自民党の麻生太郎副総裁が訪米し、名門・ロックフェラー家を仲介役にトランプ氏側と接触を図ったのは、トランプ氏再登板後の劇的変化を見定めるためにほかならない。
トランプ氏が返り咲けば、「輸入品に関税10%」、「在韓米軍の撤退」、「ウクライナへの支援停止」、「イスラエル擁護」など、自国第一主義の政治を推し進め、日本に対しても安全保障を材料に取引を迫るに相違ない。
アメリカ国内でも、批判勢力に対する報復政治も繰り返し、アメリカ社会の分断は一段と深刻化することになるだろう。そうなれば、中国や北朝鮮、それにロシアの思うつぼだ。
日米台での新しいスター誕生への期待
このように、民主主義国家や地域の政治が厳しい局面に立たされている2024年だが、わずかに光明もある。それは新しいスター候補の登場である。
台湾では、副総統になる蕭美琴(しょう・びきん)氏だ。神戸生まれで、台湾人の父とアメリカ人の母を持つ52歳の女性だ。駐アメリカ大使とも言えるポストを経験し、「彼女からの電話に出ないアメリカの議員はいない」と言われるほどだ。
何より演説がうまい。筆者は、1月11日と12日、2日連続で彼女の演説を耳にしたが、穏やかな口調から一転して強く「勇気を見せよう! 進歩を見せよう!」と訴えかける姿には、聴衆を感動させる力がある。言わば「台湾版のヒラリー・クリントン」である。
アメリカにも期待の星は存在する。共和党のニッキー・ヘイリー元国連大使である。1月20日で52歳。蕭美琴氏とほぼ同年代で、両親はインドからの移民だ。
ヘイリー氏は、共和党候補者選びの初戦、アイオワ州の党員集会で得票率19%と3位に甘んじた。しかし、1年前、大統領選挙への出馬を表明した時点での彼女への支持率は2%にすぎなかった。
それを10倍近くまで押し上げたのは、地道に訴えを続けた彼女自身の努力と、それに共鳴した共和党穏健派の若い世代の支持である。
アイオワでも若い世代が住むストリー郡などでは、トランプ氏と接戦を演じている。この先、穏健派が多く住み、共和党員以外でも投票できるニューハンプシャー州予備選挙や、彼女が38歳で知事を務めたサウスカロライナ州予備選挙などで勝てば、スター誕生への期待は高まる。
日本の政界にも有望株がいる。ラジオ番組を通じて親しくさせていただいている元衆議院議員の金子恵美氏が「うちの夫(宮崎謙介氏)よりカッコ良かった」と語る小林鷹之前経済安保担当相だ。
東大卒、ハーバード大学大学院を修了という学歴、財務官僚や外交官の経験もさることながら、186センチと上背があり49歳という年齢も魅力だ。
二階派所属だが、高市早苗経済安保相が、大臣就任時、「小林さんに続けてほしかった」と述べたほどの実力者で、自民党内で「ポスト岸田派?」と聞けば、石破茂元幹事長らの名前以上に、「コバホーク(小林鷹之が「鷹」をもじったXアカウント名)もいいんじゃない?」といった声も聞かれる。
日本をはじめ関係各国の政治事情はどこもお寒い限りだが、雪解けを待つように、新しい人材が芽吹き始めていることも事実だ。そこも注目していただけたらと思う。 
●岸博幸氏「政権守るために派閥解散か」岸田首相の対応批判 1/21
元内閣官房参与の岸博幸氏(61)が21日、TBS「サンデージャポン」に出演した。
自民党の裏金問題に関連して、岸田文雄首相(66)が岸田派の解散を明かしてから“ドミノ倒し”現象のように安倍派、二階派が次々に派閥解散を表明したことに言及。
岸田首相が派閥解散に言及したことには違和感をぬぐえないとして「今回、岸田総理、大ばくちは打ったけれども、パフォーマンスだよな、と」と切り捨て「みなさん、意外と忘れがちなんですが、岸田総理は1カ月前、昨年12月に派閥を離脱したんですよ。派閥を離脱した方が、派閥の解散を決められるのか」「(当時は)派閥離脱、って何じゃ、ってなったんですね。そういう方が、派閥離脱しているのに解散、っていったら、なんちゃって解散」と、首相の論理破綻ぶりについて説明。「加えて、問題は(解散表明)会見のとき、記者さんから『他の派閥、どうするんですか』と質問されて『他の派閥のありようついて申し上げる立場にない』と答えたこと。ということは、全部の派閥について解消するわけではない。そもそも、あなた自民党総裁ですよね? 本気になれば、自民党の派閥全部解消できますよね?」と述べた。
岸氏は「それをやっていないということは、麻生派、茂木派と、問題の起きていない派閥への配慮をしている。検察が安倍派だけ立件しようとしていたと思っていたら、岸田派も立件。責任を問われる前に自分の(所属していた)派閥を解散する。ある意味、自分の政権を守るために派閥をとりあえず解散した」と、岸田首相の岸田派解散表明に至る時系列と首相の思惑を推測しながら解説した。
その上で、新たな問題点として「でも(解散した)派閥も、政策研究会とか名前を替えられるわけですよ。だからほとぼりが冷めたら戻る可能性は十分ある」と指摘。“ゾンビ”のように復活する可能性に触れながら、警鐘を鳴らした。
●石川県 馳知事 安倍派から819万円キックバック 報告書不記載 1/21
石川県の馳知事は、国会議員を務めていたおととしまでの5年間に、所属していた自民党の安倍派から合わせて819万円のキックバックを受け、政治資金収支報告書に記載していなかったことを明らかにし、陳謝しました。
馳知事は21日、石川県庁で記者団に対し、国会議員を務めていた際、所属する自民党の安倍派から政治資金パーティーの収入のキックバックを受けていたことを明らかにしました。
金額は、2018年からおととしまでの5年間で819万円で、全額を政治資金収支報告書に記載していなかったとしています。
今月11日に安倍派の座長を務める塩谷元文部科学大臣から直接連絡を受け、国会議員時代の秘書にも確認して判明したということです。
キックバックを受けた819万円の一部は旅費や通信費といった事務所経費に使ったとしていて、この秘書からは「派閥から政治資金収支報告書に記載しなくてもいいと聞き、それに従い処理した」と説明を受けたということです。
馳知事は「政治資金規正法にのっとって適切に処理されるべきものだ。私の監督不行き届きであり、おわび申し上げます」と陳謝しました。
馳知事は、政治資金パーティーをめぐる問題が明るみになったあとの先月、記者団の取材に対し「政治資金規正法に基づいて処理されているという認識だ」と述べ、自身は適正に行っていたと説明していました。
●高木毅氏(自民・安倍派事務総長)還流再開協議への関与をHPで否定 1/21
自民党の政治資金パーティーをめぐる問題で、キックバック再開協議への関与が指摘されていた安倍派の事務総長高木毅議員は関与を自身のホームページで否定しました。
高木氏は自身のホームページで「私を含めた幹部が協議して復活を決定した旨の一部報道がされていますが、
私はそのような協議に関わったことすらありません」と掲載しています。
所属する安倍派に関しては2022年夏にキックバック廃止方針が撤回された経緯が注目されていて、同じ頃に事務総長になった高木氏の関与が取り沙汰されていました。今月19日に派閥解散を決めた安倍派の議員総会後の記者会見でも、高木氏は「私は関わっていない」と否定しました。
高木氏は今週末に地元福井県内の自民党関係者に「迷惑をおかけして申し訳ない」旨の電話連絡していることが
同県内複数の関係者証言で分かりました。21日時点で地元説明会の予定は決まっていません。
●能登半島地震「2次避難」進まず依然16% 避難者は全体で1万5千人あまり 1/21
能登半島地震でホテルや旅館などの宿泊施設に設けられた「2次避難所」にいる人が21日時点で2607人になったことが、石川県のまとめで分かった。避難者全体1万5656人の16%にとどまっている。災害関連死の増加も懸念される中、自治体は2次避難するよう呼びかけている。宿泊施設が被災地から遠く、インフラ復旧の遅れで地元に戻れる時期も見通せないため、思うように進んでいないとみられる。
22日で発生から3週間。県は体育館など「1次避難所」への被災者の集中を解消するため、2次避難を求めている。1次避難所と、2次避難前の一時的な受け入れ先である「1・5次避難所」を合わせた避難者は21日時点で約1万3千人。

 

 

●能登半島地震3週間 活発な地震活動続く 23日から大雪の見込み 1/22
最大震度7を観測した能登半島地震の発生から22日で3週間です。今月1日以降、地震の回数は減っているものの、体に揺れを感じる地震は1500回近くにのぼるなど、依然活発な地震活動が続いていて、気象庁は今後2週間ほどは、最大震度5強程度か、それ以上の地震に注意するよう呼びかけています。
一方、23日から冬型の気圧配置が強まり、西日本から北日本の日本海側を中心に、被災地でも大雪となる見込みで、交通への影響などに十分注意が必要です。
気象庁によりますと、能登地方やその周辺を震源とする地震の回数は徐々に減少しているものの、依然、地震活動が活発な状態が続いています。
震度1以上の揺れを観測した地震は、22日午前8時までに1487回にのぼり、気象庁は今後2週間ほどは最大震度5強程度か、それ以上の揺れに注意するよう呼びかけています。
23日〜25日大雪のおそれ
また、23日から上空に、この冬1番の強い寒気が流れ込んで冬型の気圧配置が強まるため、25日ごろにかけて、西日本から北日本の日本海側の山沿いや山地を中心に大雪となる見込みで、平地でも大雪のおそれがあります。
24日昼までの24時間に降る雪の量はいずれも多いところで、新潟県で70センチから100センチ、北陸と東北で60センチから80センチ、東海と近畿、中国地方で50センチから70センチ、関東甲信で40センチから60センチ、北海道で20センチから40センチ、四国と九州で10センチから20センチと予想されています。
また、25日昼までの24時間では、新潟県で70センチから90センチ、北陸と東北で60センチから80センチ、近畿で50センチから70センチ、中国地方と東海で40センチから60センチ、関東甲信と北海道で30センチから50センチ、四国と九州北部で5センチから10センチ、九州南部で1センチから5センチの雪が降る見込みです。
北陸では、海上を中心に雪を伴った強い風が吹き、大しけになる見込みで、気象庁は積雪や路面の凍結による交通への影響や高波に十分注意するとともに、なだれや着雪、強風などに注意するよう呼びかけています。
能登半島地震で損傷を受けている建物は、雪の重みで倒壊するおそれがあり注意が必要です。
また、被災地では、避難生活の長期化で体調を崩す人が相次ぎ、「災害関連死」の疑いで亡くなった人も確認されています。
家族や周りに体調を崩している人がいないか声をかけあうようにしてください。
林官房長官「被災地の支援 きめ細かく対応」
林官房長官は午前の記者会見で「長引く避難生活で被災者の心身の疲労は蓄積しており、個々の被災者の状況やニーズに応じたきめ細かな対応が必要になっている。政府としては、物資の支援を継続するほか、現地に派遣されている専門家によって、衛生管理や避難所での健康管理に万全を期していきたい」と述べました。
そのうえで「2次避難が必要な方にもさまざまな事情があり、多様なニーズにきめ細かく対応をすべく、旅館やホテルに加え、医療機関や高齢者施設など必要十分な数の避難先を確保している。希望や条件を踏まえた最適な避難先が選定されるよう被災自治体をバックアップしていきたい」と述べました。
●岸田首相「何もしなければ自民党は終わり」…69年の派閥政治、最後の試験台 1/22
「何もしなけりゃ自民党は終わりだ」
岸田文雄首相は自身が率いる自民党内の岸田派(宏池会、46人)の解散を発表する前日である18日、周囲にこう決心を語っていたという。党内派閥の裏金問題で世論が悪化する状況で「派閥解散」という強硬姿勢を取らざるを得ないという判断だった。
岸田派に続き所属議員が96人の最大派閥安倍派と38人の議員が所属する二階派が19日に解散を宣言して日本政治勢力図に大きな変化が予想されている。1955年創党以来、自民党内の政策集団であり、「党内部の党」として機能してきた派閥が存廃の岐路に立った。所属議員数それぞれ2位と3位の麻生派(56人)と茂木派(53人)、その他の少数派閥である森山派(8人)が残っているが、自民党全体議員374人のうち70%は無派閥議員になる。
日本メディアは派閥解散宣言を岸田首相の政治的賭けと評価した。昨年秋以降、下降を続ける政権支持率は年末に危険水準と呼ばれる10%台まで急落した。もっと深刻なのは自民党の支持率だ。時事通信の1月調査で岸田政権支持率は18.6%で、昨年12月(17.1%)に比べて小幅で上昇したが自民党の支持率はさらに低い14.6%だった。60年調査開始以来、最低数値だ。
昨年末、東京地検特捜部の捜査を通じて明らかになった自民党の政治資金スキャンダルは、安倍派と二階派、岸田派が政治資金集めのためのパーティー券の収益金の一部を帳簿に記載せずに議員にキックバックし、裏金化していた事件だ。捜査が現職議員の拘束にまで及び「派閥解体」に対する世論も高まった。解散した岸田派は1957年に結成されて「宏池会」という名称で党内リベラル系名門派閥の歴史を継いできた。
首相は勝負の賭けに出たがメディアの評価は慎重だ。まず岸田氏が首相になるために協力してきた麻生派と茂木派が強く反発している。首相が問題解決のために「政治刷新本部」を作っても、その他の派閥と何の議論もせずに独断的に決定を下したという批判だ。麻生派を率いる麻生太郎自民党副総裁は「問題は派閥ではなく、政治資金の取扱方法」としながら派閥を存続する意向を岸田首相に伝達したという。
自民党は88年大型贈収賄事件「リクルート事件」以降も「派閥解体」を宣言したことがある。だが、その後は「政策研究会」という名称で議員の集まりが再び結成され、結局現在の派閥として復活した前例がある。
●萩生田光一氏、キックバックは5年で2728万円…報告書に記載せず 1/22
自民党安倍派の萩生田光一・前政調会長は22日、国会内で記者会見し、同派の政治資金パーティーを巡り、自身の資金管理団体が2018〜22年の5年間で、パーティー券販売のノルマ超過分として派閥からキックバック(還流)を受けた計2728万円を政治資金収支報告書に記載していなかったと明らかにした。
●最大の判断材料は「賃上げ」…“大規模緩和”維持の見方が優勢 日銀 1/22
日銀は22日から2日間、金融政策決定会合を開く。市場では、「“マイナス金利政策”を含めた今の大規模緩和は維持される」との見方が優勢。
会合では、賃金と物価が共に上昇する「好循環」が実現する見通しについて議論する。
判断の最大の材料となるのは「賃上げ」だが、大企業の一部で賃上げ方針の表明が相次ぐ一方、中小では慎重な姿勢を示す企業もあり、ばらつきが見られる。
能登半島地震の経済への影響が不透明なこともあり、市場関係者の間では、「今の金融緩和策の維持を決める」との見方が多くなっている。
フジテレビ・智田裕一解説副委員長「日銀の判断のポイントになる賃上げへの気運は高まってきているが、春闘を前にデータはまだ十分にそろっていないのが現状。判断材料のもう1つは、賃上げ分をモノやサービスの価格に上乗せして値上げできる環境が整うかどうかで、日銀がマイナス金利解除などの政策変更に踏み出すのは、4月以降になるとの観測が強まっている。今回の会合は、物価・賃金の好循環達成に向けた今の時点での進ちょく度合いについて、どういう議論が交わされるのかが焦点になりそう」
●世間は「政治資金の話は興味あって憤っている」派閥解散には「何それ?」 1/22
俳優石原良純(62)が22日、テレビ朝日系の「羽鳥慎一モーニングショー」に出演した。
裏金疑惑で揺れる自民党が“政治と金”にまつわる問題で主要3派閥の解散にまで発展した。20〜21日で実施したANN世論調査(全国18歳以上男女2013人対象)では内閣支持率が「支持しない」が61.3%(先月比0.9ポイント増)、「支持する」は20.4%(同0.9ポイント減)となった。「自民党の派閥を解体すべきと思う」に関しては「思う」が69%、「思わない」は17%となった。
石原は「派閥解散が焦点になるって言っていた段階が先週金曜(19日)で岸田総理が(岸田派解散で)先手を打った。僕なんかはけっこう衝撃的だった。ただ、支持率は横ばいだと、それだけ政治不信というものがまん延しているというか、みなさんの意思なんだろうし」とコメントした。
さらに「僕、金曜あたりからいろんな人と話をしている中で、政治資金の話にはすごく興味もあって憤っているんだけども『派閥解散、何それ?』『だから、いつもやってんじゃないの?』『またまた、繰り返しでしょ?』って言って興味がないんですよね」と語った。
その上で「一般の人たちは政治家と違っている。政治家は派閥が解散すると大変じゃないですか。その辺は本当に意識が違うんだろうな」と述べた。
●6割が「岸田派解散」を評価 内閣支持率27.6%に 5.1ポイント回復も… 1/22
FNNがこの週末に実施した世論調査で、岸田内閣の支持率は27.6%だった。
岸田首相が、岸田派の解散を表明したことを6割が「評価」した。
岸田内閣の支持率は27.6%で、5.1ポイント回復したが、内閣の「危険水域」といわれる3割を3カ月連続で割り込んだ。
岸田首相が岸田派の解散を表明したことは、「大いに」と「ある程度」をあわせて6割超が「評価」した。
ほかの自民党の派閥については、「すべて解散するべき」が43.2%、「それぞれ判断すれば良い」が47.4%、「解散の必要はない」が6.9%だった。
政治と金をめぐる問題の再発防止について、自民党「政治刷新本部」に「期待する」は28.3%、「期待しない」は69.5%だった。
また、政治改革のために最も必要な措置について、最も多かったのは「政策活動費の使い道の公開」で36%、続いて「収支報告書へのうその記載で国会議員の責任を問う連座制などの罰則強化」が34.9%、「派閥の政治資金パーティー禁止」が10.5%だった。
政治資金規正法の改正については、「必要だ」との答えが9割を超えた。
こうした中、政治改革の実現について、岸田首相に「期待する」は37.4%、「期待しない」は61.7%だった。
岸田首相にいつまで首相を続けてほしいかについては、「すぐに交代」が18.5%、「3月末前後の2024年度予算成立まで」が23.8%、「国会が終わる予定の6月ごろまで」が16.8%で、最も多かったのは「9月の総裁任期まで」の29.3%だった。
能登半島地震への政府の対応については、「迅速だった」が「ある程度」も含め5割を超え、震災の支援・復旧について、岸田首相がリーダーシップを「発揮している」は40.6%、「発揮していない」は56.7%だった。
●内閣支持率は低迷続く、3派閥解散でも「危険水域」−世論調査 1/22
岸田文雄内閣の支持率は、先週末に実施された報道各社の世論調査でいずれも政権運営に影響が出る30%以下の「危険水域」に落ち込んだままだ。政治資金規正法違反で立件された安倍、岸田、二階の3派が解散する方針を表明したが、政治不信を払しょくできていない。
内閣支持率は朝日新聞が前回12月調査と同じ23%、読売新聞が同月の25%からほぼ横ばいの24%、ANNが同月より0.9ポイント減の20.4%だった。産経新聞とFNNの合同世論調査では同月より5.1ポイント増え、27.6%だった。
朝日調査では首相が岸田派の解散を決めたことについては61%が「評価する」と回答したが、自民党の派閥が解散しても政治の信頼回復に「つながらない」とした人は72%だった。
自民党は22日も岸田首相が出席して政治刷新本部の会合を開く。3派の事件を受けた再発防止策や派閥のあり方などについて月内に中間取りまとめを行うが、読売調査では同本部に「期待できる」は17%にとどまっており、信頼を回復できるかどうかは不透明だ。
林芳正官房長官は22日午前の記者会見で、派閥や自民党の活動に政治資金の観点から厳しい目が向けられているとした上で、「国民から疑念を持たれるような事態を招いているということは遺憾だ」と語った。
派閥の存廃を巡っては、麻生、茂木、森山の3派の動向が焦点となる。読売新聞は20日、3派は同本部での議論や世論の情勢なども見極めて最終的に判断する方針だとみられると報じた。
茂木敏充幹事長は21日、NHKの討論番組で、自身が会長を務める茂木派の対応について「派閥の存続というものを前提としない」と述べた。読売によると、麻生太郎副総裁は首相に対して麻生派を解散する意向がないことを伝えているという。
自民党支持率も低下傾向に
内閣支持率に加え、自民党の政党支持率も低下傾向にある。時事通信が12日から15日にかけて実施した調査で前月比3.7ポイント減の14.6%となり、1960年6月の調査開始以降で、野党時代を除き最低を記録した。これまでは2009年7月の麻生政権下の15.1%で翌月の衆院選で自民党は大敗し、政権交代に至った。ただ、野党の支持率は日本維新の会が3.8%、立憲民主党が3.5%にとどまり、他の党はいずれも2%以下だった。
読売の調査では自民党支持率は前回を3ポイント下回る25%で12年に自民党が政権復帰して以降、最低を更新した。朝日は24%(前回23%)だった。
●自民、派閥からの人事推薦とパーティー開催禁止へ 裏金事件受け 1/22
自民党は、政治資金パーティーを巡る裏金事件を受け、党政治刷新本部でまとめる中間報告に、内閣改造・党役員人事の際の派閥による推薦と、政治資金パーティー開催の禁止を盛り込む方針を固めた。政府・自民関係者が21日明らかにした。岸田文雄首相は、存続方針を示している麻生派など既存の派閥に加え、今後結成が想定される政策グループなども新たなルールの対象とすることで、派閥の実質的な解消を進めたい考えだ。
刷新本部は、26日の通常国会召集の前に中間取りまとめを公表する方針で、25日の党総務会で改革案の了承を得る日程を想定している。政権幹部は「カネやポストに派閥が介入することはあってはならない。国民の疑念を招かない状況を作っていく」と語った。
内閣改造・党役員人事を巡っては、各派閥の意向や規模に応じた人事が慣例化している。岸田政権下の内閣改造でも各派閥の領袖(りょうしゅう)が、衆院当選5回、参院当選3回以上の「入閣待機組」を中心に要望を首相に伝達。副大臣、政務官については、各派閥の事務総長らが、各派の中堅・若手の要望を聴取した上でリストを作成し、官房長官が中心となってポストの調整が行われてきた。改革案では、派閥推薦に基づく人事を禁止し、党に設置する新たな「人事局」を通じて調整する案が浮上している。
政治資金パーティーは派閥の収入の約8割を占める。これを原資に所属議員に「氷代」「餅代」と呼ばれる資金を支給し、議員の政治活動を金銭面でも支援してきたが、今回の事件では派閥の政治資金パーティーが裏金作りに使われた。自民は改革案にパーティー禁止を盛り込む方針で、実現すれば派閥の求心力、影響力は低下するとみられる。
自民6派閥を巡っては、岸田派、二階派、安倍派が解散を決定。一方、第2派閥の麻生派(56人)は、会長の麻生太郎副総裁が存続の意向を首相に伝え、第3派閥の茂木派(53人)、第6派閥の森山派(8人)は今後、派内で対応を検討する考えだ。首相は、各派閥に存廃の判断を任せる意向で、周辺に「派閥を解消するか、しないかは関係ない。全員が新たなルールに従って活動していく」と語った。
一方、与野党幹部は21日のNHK番組で「政治とカネ」を巡る問題を議論した。自民の茂木敏充幹事長は、派閥のパーティーに関して「このまま続けましょうということにはならない」と指摘。再発防止に向けた政治資金規正法の罰則強化にも触れ「きちんと政治家が責任を持つような制度を作っていかなければいけない」と法改正に前向きな考えを示した。
立憲民主党の岡田克也幹事長は、政党から政治家個人に寄付される政治資金「政策活動費」について「何に使うかが全く明らかにならない、非常に不透明なものだ」と述べ、禁止すべきだと主張。茂木氏は「もし、政党の政治資金について使途を考える、公開するということであれば、政党助成金も含めて議論すべきだ」と述べた。
●清和会(安倍派)創始者の孫・福田達夫氏のあまりに不用意な発言〜 1/22
自民党の最大派閥として20年以上にわたって君臨してきた清和会(安倍派)が解散を決めたとたん、清和会創始者の福田赳夫元首相の孫である福田達夫衆院議員(元総務会長)が「反省の上に新しい集団をつくっていくことが大事だ」と党本部で記者団に述べた。
派閥解散は名ばかりで、結局は新しい派閥に姿かたちを変えて存続していくだけだという印象が広がり、ネット上では福田発言に批判が殺到した。
清和会にはもともと福田系と安倍系がある。福田氏は当選4回の中堅議員だが、福田系本流であり、清和会の次世代ホープと目されてきた。
岸田政権発足当初は総務会長に異例の抜擢をされ、次は重要閣僚への起用も取り沙汰されたが、旧統一教会問題で「何が問題かよくわからない」と発言して批判を浴び、2022年8月の人事で党4役から外れた。
派閥会長の座を争っていた安倍派5人衆(萩生田光一、西村康稔、世耕弘成、松野博一、高木毅の5氏)が裏金事件で全員更迭されて失脚し、安倍派が解散に追い込まれたことで、中堅若手には次世代ホープの福田氏を軸に再結集を目指す動きが確かにある。しかし、当事者の福田氏が早々と「新しい集団」に言及したことは、派閥解散は「偽装」であるという印象を強く与えた。
あまりに間の悪い発言としかいいようがない。旧統一教会問題に続いて、再び「失言」で転んだ格好だ。
実際、自民党は1989年のリクルート事件で派閥解消を打ち出したが、派閥は存続してきた歴史がある。自民党が野党に転落していた1994年には派閥解消が強く打ち出され、清和会は「旧三塚派」、宏池会は「旧宮沢派」という呼称で報道された時期もあった。しかし、自民党が政権復帰した後はじわじわと派閥は復活し、現在に至っている。
総裁の座を選挙で争う以上、総理総裁を目指す実力者が中堅若手のカネや人事や選挙を支援する代わりに総裁選で支持を受ける集団(派閥)を形成することは自然な流れだ。中選挙区時代は自民党内の派閥同士の熾烈な戦いが続いたものの、小選挙区制度が導入された後は、派閥の力は弱かった。それでも総裁選の時期になると派閥の締め付けは強まった。
今回の派閥解散の動きは、第四派閥を率いてきた岸田首相が、第二派閥を率いる麻生太郎副総裁や第三派閥を率いる茂木敏充幹事長にいつまでも主導権を奪われることを打開するため、岸田派が裏金事件で立件されたことを機に派閥解散を打ち出し、派閥解消を旗印に自らの求心力を回復させることを狙ったともいえる。
これにより麻生・茂木・岸田の主流3派体制は崩れ、自民党内の権力闘争は熾烈を極めるが、岸田退陣ー総裁選の過程で派閥が再編され、党内勢力図が塗り替えられることはあっても、派閥そのものが完全消滅することはありえないだろう。
福田発言はそのような永田町の常識をそのまま口にしてしまったに過ぎないが、派閥解消を打ち上げて自民党の統制回復を目指すシナリオに早くも水をさす格好となった。
最大派閥・安倍派の約100人全員が福田氏のもとで再結集するのは難しい。
安倍系の一部は総裁選で右寄りの主張が重なる高市早苗経済安保担当相の支持に回り、高市派結成につながる可能性もある。
5人衆のうち、松野氏や高木氏が政治基盤を回復するのは困難だろう。森喜朗元首相が寵愛した萩生田氏は復権を目指すが、地元選挙区(東京都八王子市)は決して磐石ではない。総裁選出馬に意欲を示していた西村氏も安倍派事務総長として裏金捜査の渦中に身置いたのは痛手だ。世耕氏は参院議員の立場を利用し、参院安倍派のメンバーを束ねて影響力維持を狙うが、当面は表舞台に戻れそうにはない。
安倍派は次の総裁選で四分五裂する可能性が極めて高い。「清和会」の看板は福田氏が預かり、いずれ復活する可能性は残るが、20年以上にわたって自民党内に君臨してきた清和会の威光はすっかり陰ることになる。
●自民党派閥の解散 問題の本質すり替えるな 1/22
「急場しのぎ」の感は否めない。岸田文雄首相が打ち出した自民党岸田派の解散方針である。党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で、東京地検特捜部が政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪で岸田派の元会計責任者を略式起訴する方針を固めた際、突如表明した。
岸田首相は「政治の信頼回復のため」と説明したが、捜査機関の摘発を受け、批判をかわすために派閥解散を決めたのなら安直だ。「無派閥ならクリーン」となるわけではあるまい。
首相は昨年12月まで岸田派会長を務めていたが、政治資金問題を踏まえて岸田派離脱を宣言した。そもそも同派の解散を決められる立場なのか疑問だ。派閥という存在に問題があるのであれば、党総裁として全ての派閥解散を主導すべきである。
岸田首相の表明を受け、安倍、二階両派も解散を決めた。ともに岸田派と同様、東京地検特捜部に関係者が刑事処分された。一方、麻生派は領袖(りょうしゅう)の麻生太郎党副総裁が解散しない意向を首相に伝えた。茂木敏充党幹事長が率いる茂木派と、森山派は情勢を注視する構えを見せている。
麻生、茂木両氏は岸田政権を支えてきた屋台骨である。だが、今回の派閥解散の意向表明で首相から事前の根回しはなかったという。首相と両者の間に溝が生じ、今後の政権運営に影響を及ぼすことも想定されよう。
今回の事件は派閥主催の政治資金パーティーで、所属議員がパーティー券の販売ノルマ超過分を派閥から還流を受けたのに政治資金収支報告書に記載しなかったり、派閥の会計責任者が収入を適正に記していなかったりしたことなどが摘発の対象となった。
巨額の政治資金を集める派閥が舞台となったが、問題の本質は不透明な「政治とカネ」の関係である。還流分を収支報告書に記載せず裏金化した目的は何なのか。金の流れや使い道はどうなっていたのか。悪弊を断ち切るには実情の把握が欠かせない。
派閥を解消してしまったら、これまでの経緯や問題点などを誰が責任を持って解明し、説明するのか。その辺りの道筋をあいまいにしてはならない。再発防止に向けた議論を派閥の在り方という一点のみにすり替えることなく、背景を含めた全体像を明らかにする必要があろう。
自民党はこれまでも「政治とカネ」の問題が起こるたび、派閥の解消を議論してきた。リクルート事件を受け、1989年に策定した政治改革大綱では派閥パーティーの開催自粛、党幹部や閣僚の在任中の派閥離脱を明記していた。だが今では形骸化し、実効性を伴っていない。
「政治とカネ」の見直しは、政治資金規正法をどこまで抜本改正できるかが最大のポイントだろう。収支の透明性向上と罰則強化の具体策を打ち出さなければならない。
●岸田内閣支持率は再び最低の24%、政治刷新本部に「期待できない」75%… 1/22
読売新聞社は19〜21日、全国世論調査を実施した。岸田内閣の支持率は2012年の自民党の政権復帰後最低だった昨年11月の調査と同じ24%で、昨年12月の前回調査の25%からほぼ横ばいだった。内閣不支持率は61%(前回63%)。自民党派閥による政治資金規正法違反事件を巡り、政治不信は高まっており、支持率低迷が続いている。
岸田首相が岸田派を解散する方針を表明したことについて、「評価する」は60%で、「評価しない」の29%を上回った。ただ、自民党が設置した政治刷新本部に「期待できる」は17%にとどまり、「期待できない」が75%に上った。一連の問題に関し、各派閥の幹部らが国民に十分説明しているかについて「思わない」が92%で、「思う」は3%だった。
政党支持率は、自民党が25%(前回28%)で、政権復帰以降最低を更新。立憲民主党が5%(同5%)、日本維新の会が5%(同5%)など。無党派層は48%(同48%)だった。
●岸田内閣支持率 政権発足後最低20.4% 1/22
岸田内閣の支持率が政権発足以降最低の20.4%になったことがANNの世論調査で明らかになりました。
ANNは20日、21日に世論調査を行いました。
岸田内閣を「支持する」と答えた人は先月より0.9ポイント減り20.4%で、政権発足以降最低となりました。
「支持しない」は61.3%でした。
政治資金を巡る問題で自民党の政治刷新本部の対策が再発防止に「つながる」と答えた人は16%で、「つながらない」が7割を超えました。
一方、自民党の派閥を解体するべきだと思う人はおよそ7割で、政治資金規正法を改正して会計責任者らが有罪になれば議員も失職する「連座制」を導入する必要があると答えた人は74%でした。
また、岸田派の元会計責任者が立件されたことについて、岸田総理大臣に「責任がある」と答えた人が9割を超えました。
●核禁条約3年と日本 「核なき世界」の入り口に 1/22
核兵器禁止条約がきょう発効から3年を迎えた。人間として核兵器を禁じる―。核の悲惨を身をもって訴えた被爆者の証言に基づく立脚点に賛同は広がり、批准は70カ国・地域に達した。
日本政府は依然、条約に背を向けたままだ。「核なき世界」を掲げながら米国の「核の傘」の下に身を置き、その依存度を強めている。矛盾を抱える被爆国は国際社会で、核廃絶論議における存在感や影響力の低下が懸念される。
ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領は核使用の脅しに加え、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を撤回。パレスチナ自治区ガザの戦闘でイスラエルの閣僚は核攻撃が「選択肢の一つ」と述べた。今、核リスクが冷戦以降で最も高まっている。
片や、昨年5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)は核軍縮に関する「広島ビジョン」で、核には核で対抗する核抑止力の必要性を認めてしまった。核兵器を持てる国、守られる国と、地球上からなくしたい国・市民との溝は深まるばかりだ。
そもそも核兵器が存在する限り、さまざまなリスクがつきまとう。敵対する国の指導者の暴走に加え、偶発的な事故やミスが人類を危機に陥れる引き金を引きかねない。自国中心の考えを改めさせる手だてが今こそ必要だ。
こうした中、昨年あった第2回締約国会議は政治宣言で核抑止論を否定し、「軍縮を阻害している」と指摘した。核保有国と依存国に脱却を迫るため、核兵器の非人道性はどんなものか、科学的証拠に基づく報告書を示すと決めた。核実験などの被害者救済や環境回復に向けた国際的な信託基金の設立を目指す。
多様な論点からの取り組みに敬意を表したい。広島・長崎が蓄積した知見やノウハウを生かせる局面でもある。しかしながら会議が設置した科学諮問グループの委員に、長崎の被爆者で医師の朝長万左男氏が落選した。日本政府の姿勢と無関係ではなかろう。
条約発効3年に合わせ、広島・長崎を訪問した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))のメリッサ・パーク事務局長は、日本政府への期待と警告を示した。
広島での講演でパーク氏は岸田文雄首相が「核なき世界を目指す上での出口」と唱える条約の位置づけを否定。「入り口でなくてはならない」と強調した。廃絶への道筋は厳しさを増すが、よりどころとしての条約の意義はより重たくなったといえよう。
その上で「核の傘と決別し、条約に加わる責務がある」と迫り、少なくとも2025年の第3回締約国会議へオブザーバー参加するよう求めた。被爆者と、条約の下に集う国々や若者たちをこれ以上、失望させてはならない。
政府は非保有国や廃絶を目指す市民社会との関係を構築し直し、核「傘下国」から条約「参加国」へかじを切るときだ。被爆地は核被害を受けた他国の人々との連携や被爆の実態の発信をさらに進め、政府への圧力を強めたい。 
●政労使、持続的賃上げ確認 岸田首相「昨年上回る水準を」 1/22
政府は22日、今週スタートする2024年春闘に向け、政府、労働界、経済界代表による「政労使会議」を首相官邸で開き、持続的な賃上げ実現の重要性を確認した。
岸田文雄首相は「昨年を上回る水準の賃上げ」を要請。達成には中小企業の賃上げがカギを握ることを踏まえ、労務費の価格転嫁対策に「全力で取り組む」と表明した。
会議には首相のほか、経団連の十倉雅和会長、連合の芳野友子会長らが出席した。終了後、記者団の取材に応じた十倉氏は「価格転嫁がなかなか進まない日本社会の風習を直すことを確認した」と述べた。芳野氏は「(高水準だった)23年春闘以上の成果を連合として出していくことが役割の一つだ」と強調した。
政労使の代表が賃上げに関し一堂に会し議論するのは昨年11月以来で、岸田政権下では3回目となる。安倍政権下でも複数回にわたり行われたが、春闘がスタートする1月の開催は異例だ。
●泉房穂氏、派閥解散めぐる岸田首相の“一石四鳥”指摘 1/22
政治ジャーナリスト田崎史郎氏(73)と元明石市長の泉房穂氏(60)が22日、テレビ朝日系の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」に出演した。派閥解散を表明した岸田文雄首相と派閥存続を訴える麻生太郎氏との攻防について、それぞれの意見をぶつけあった。
岸田文雄首相が18日に岸田派の解散検討を会見で表明してから、安倍派、二階派も派閥解散を決定。麻生派と茂木派は派閥存続の方針を貫く見通しとなっている。田崎氏の取材によると、18日に派閥解散を表明した岸田首相に麻生太郎氏は電話で抗議したことで一時は険悪な雰囲気になっていたという。
さらに田崎氏によると、21日には都内で岸田氏は麻生氏と会食をして関係を修復していたという。
この自民党の一連の流れについて泉氏は「田崎さんとはスタンスが違うかも知れませんが、(派閥解散を表明した)岸田さんの決断を聞いたときに”一石四鳥”だなと思いました」と話し「1つは、決断力を示すことで支持率の低下を防ぐ。2つ目は、論点を企業団体の献金廃止という金の問題ではなく派閥の是非論や弊害論にもっていけば“本丸(政権)”は守れる」とした。
さらに泉氏はマシンガントークで「3つ目は、(派閥解散を)自分から先に言えば、安倍派や二階派を解散に追い込める。まさに政敵をやっつけられる。4つ目は、次の選挙のあとに、もともとご一緒の麻生派と合併するんじゃないかなと思われる。勝手ながら想像してしまいました」と続けた。
それを聞いていた田崎氏は「まあ、勝手な解釈ですね」とリアクション。
また、派閥解散を表明して「岸田の乱」とも言われたが、田崎氏が番組で明かした、岸田首相と麻生氏とのケンカ別れのような電話会談から、関係修復したとされる都内会食までの流れについて泉氏は疑念を抱いていた。「質問したい。田崎さんがお詳しいとは思うけど、ホンマにそうなのかな、と。舞台裏とか(テレビ画面で)タイトルつけてはるけど、テレビで舞台裏こうでしたなんて起こるんだろうか」と指摘した。
さらに泉氏は「振り返ると2005年のときに小泉総理は森元総理と会談してけんか別れをしたことにして、芝居を打って郵政(民営化)解散(の後の衆院選)で圧勝して。あれは2人で仕込んだ芝居だった」などと冷えたピザのチーズとアルコール飲料の空き缶を持ちながら囲み取材を受けた森氏のことを語った。
続けて泉氏が「今回、まさかその再来じゃないでしょうね、ってことを田崎さんに聞きたいですね」と話し終えた直後、田崎氏は「それも勝手な解釈ですね」と返した。
●世論調査 岸田首相の任期「9月まで」が最多 支持率微増も厳しい政権運営 1/22
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査で、岸田文雄首相(自民党総裁)にいつまで首相を続けてほしいか尋ねたところ、「9月の党総裁任期まで」が29・3%で最も多かった。「9月以降も続けてほしい」は9・2%にとどまる一方、「すぐに交代してほしい」が18・5%に上った。
他の回答は「3月末前後の来年度予算が成立するまで」が23・8%、「国会が終わる予定の6月ごろまで」が16・8%、「分からない・言えない」が2・4%だった。
支持政党別では、自民支持層は「9月の党総裁任期まで」が45・9%で最多。「9月以降も続けてほしい」の回答は2番目に多かったが、18・8%と大きく差が開いた。連立を組む公明党支持層も「9月の党総裁任期まで」が最多の36・8%で、「国会が終わる予定の6月ごろまで」が28・3%と続いた。「9月以降も」は9・7%だった。
一方、次の首相に一番ふさわしい人物を尋ねたところ、石破茂元自民幹事長が20・3%(前回調査比2・1ポイント増)で最多。小泉進次郎元環境相15・0(同1・0ポイント減)%、河野太郎デジタル相9・2%(同2・7ポイント減)と続いた。自民支持層に限ると、石破氏20・7%、小泉氏17・2%、菅義偉前首相9・5%、河野氏9・1%−の順番だった。
●自民・萩生田前政調会長“5年間で2700万円超を不記載”明らかに 1/22
自民党・安倍派の幹部・萩生田前政調会長は、キックバックの不記載が5年間で2,700万円余りだったと明らかにした。
自民党・萩生田前政調会長「心よりおわび申し上げたいと思います」
会見で萩生田氏は、2018年から5年分の収支報告書に派閥のパーティー収入のキックバック、あわせて2,728万円を記載していなかったと明かした。
事務所の会計はスタッフに任せて把握しておらず、キックバック分はスタッフが引き出しに保管し、会合費などに使っていたとしている。

 

●石川県 能登半島地震の死者名を新たに公表 遺族同意の7人 1/23
石川県は、能登半島地震で亡くなった方のうち、遺族の同意が得られた7人の氏名や年齢などを23日、新たに公表しました。
内訳は珠洲市が5人、輪島市と金沢市がそれぞれ1人で、女性が4人、男性が3人です。
年代別で見ると60代が1人、70代が4人、80代と90代がそれぞれ1人で、死因はいずれも家屋倒壊でした。
石川県内では23日午後2時の時点で、233人の死亡が確認されていて、このうち氏名などが公表されたのは今回で合わせて121人となりました。
121人の死因の内訳は家屋倒壊が107人、土砂災害が8人、災害関連死の疑いが2人、津波が1人、非公表が3人となっています。
県はほかの亡くなった方についても、遺族の同意が得られれば、随時、公表するとしています。
●能登半島地震から3週間 地震の回数減も依然活発 大雪にも注意 1/23
最大震度7を観測した能登半島地震の発生から、1月22日で3週間です。1月1日以降、地震の回数は減っているものの、体に揺れを感じる地震は1500回近くに上るなど、依然活発な地震活動が続いていて、気象庁は今後1週間ほどは最大震度5強程度かそれ以上の地震に注意するよう呼びかけています。一方、23日から冬型の気圧配置が強まり、日本海側を中心に被災地でも大雪となる見込みで、交通への影響などに十分注意が必要です。
震度1以上の地震 22日午後4時までに1489回
気象庁によりますと、能登地方やその周辺を震源とする地震の回数は徐々に減少しているものの、依然、地震活動が活発な状態が続いています。
震度1以上の揺れを観測した地震は22日午後4時までに1489回に上り、気象庁は今後1週間ほどは最大震度5強程度かそれ以上の地震に注意するよう呼びかけています。
23日〜25日ごろ 被災地など大雪のおそれ
また、23日から上空にこの冬一番の強い寒気が流れ込んで冬型の気圧配置が強まるため、25日ごろにかけて西日本から北日本の日本海側の山沿いや山地を中心に大雪となる見込みで、ふだん雪の少ない東海や近畿、九州などの平地でも大雪のおそれがあります。
北陸や北日本では、海上を中心に雪を伴った強い風が吹き、大しけになる見込みで、気象庁は交通への影響や高波に十分注意するとともに、なだれや着雪に注意するよう呼びかけています。
能登半島地震で損傷を受けている建物は、雪の重みで倒壊するおそれがあり注意が必要です。
被災地は23日以降再び冷え込み 低体温症に注意
気象庁によりますと、能登半島地震の被災地にはこの冬一番の強い寒気が流れ込み、23日から気温が大幅に下がる見込みです。
金沢市の最低気温は、23日が2度と予想されていますが、24日と25日はマイナス1度と平年を下回り、その後も1度〜2度と厳しい冷え込みが続くと予想されています。
日中も気温が上がらず、23日は4度、24日は2度、25日は3度などと、平年を2度〜4度ほど下回る見込みです。
能登地方でも寒さが一段と厳しくなる見込みで、低体温症に一層注意が必要です。
避難生活の長期化で体調を崩す人が相次ぎ、「災害関連死」の疑いで亡くなった人も確認されています。引き続き、低体温症に注意して、家族や周りに体調を崩している人がいないか声をかけあい、毛布などで体を暖めたり、定期的に体を動かしたりするなど、体温が下がらないよう対策を心がけてください。
一方、気象庁が22日に発表した「高温に関する早期天候情報」によりますと、1月28日ごろからは寒気の影響を受けにくくなり、被災地をはじめ北陸では気温がかなり高くなると予想されています。寒暖差が大きくなるため体調管理に注意してください。
●能登半島地震 斎藤経産相「停電は一部除き概ね今月中に復旧見通し」 1/23
斎藤経済産業相は23日、能登半島地震による停電は、今月中にも概ね復旧するとの見通しを示した。
今月1日に発生した能登半島地震により、石川県内では一時3万軒を超える停電が発生し、北陸電力は他の大手電力からの応援を受け復旧作業を進めていた。
斎藤経産相は閣議後の会見で、石川県内で発生している停電について、土砂崩れ等により、復旧作業のための立ち入りが困難な箇所や、地震、津波、火災により配電設備や建物が甚大な被害を受けた地区の一部を除き、今月中に概ね復旧する見通しを示した。
北陸電力によると、23日正午時点で、輪島市や珠洲市を中心に約5100戸で停電が続いていて、斎藤経産相は「立ち入りが困難な箇所についても、道路状況などの改善に応じて、順次復旧作業を進める」と強調した。
●茂木氏「組織の解散ですべての問題解決しない」派閥解消に慎重姿勢を強調 1/23
自民党の茂木幹事長は23日の記者会見で、派閥の解消が政治の信頼回復や今回の政治資金問題の解決につながるかを問われ、派閥の解散ですべての問題が解決するわけではないと強調した。
茂木氏は会見で「今回は政策グループの政治資金パーティーをめぐり不適切な会計処理が行われたことが問題の発端となっていて、まず当事者がこの問題に真摯に向き合って明確な説明責任を果たしていくことが重要だ」と指摘した。
その上で、「政治責任のあり方も国民の信頼に大きく関わってくる。少なくとも問題が起きた組織を解散をすればすべての問題が解決するということではないと考えている」との認識を示した。
●安倍派 堀井巌参院議員 876万円キックバック不記載訂正へ 1/23
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐり、安倍派に所属する堀井巌参議院議員はおととし(2022年)までの5年間で、派閥からあわせて876万円のキックバックを受け、政治資金収支報告書に記載していなかったことを明らかにしました。
堀井氏は近く政治資金収支報告書を訂正するとしています。
堀井氏は23日、県庁で会見し、自身が代表を務める「自由民主党奈良県参議院選挙区第一支部」で、おととしまでの5年間に所属する安倍派「清和政策研究会」からの収入、あわせて876万円を政治資金収支報告書に記載していなかったことを明らかにしました。
収入は、パーティー券の販売収入のうち、ノルマを超えた分をキックバックとして受け取ったもので、東京事務所の政策秘書が管理し、派閥からの指示で記載しなかったと説明しました。
受け取った876万円は、現金のまま金庫に保管し、使用していないということです。
また、平成26年から29年分についてもキックバックを受けていたとし、保管している現金の総額は1000万円以上とみられるということです。
これらの現金について、堀井氏は先月(12月)、秘書から説明を受けるまで存在を知らなかったとし、堀井氏は近く政治資金収支報告書を訂正するとしています。
堀井氏は「政治資金の不適切な取り扱いにより政治不信を招き、深くおわび申しあげる。今後は法にのっとり、適切に対応し、信頼回復に努める」と述べました。
●塩谷・元文部科学相“230万円余不記載”地元市議などに説明 1/23
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐり、安倍派の座長を務める塩谷・元文部科学大臣が、おととしまでの5年間で派閥から230万円あまりのキックバックを受け、政治資金収支報告書に記載していなかったことを、地元の市議会議員などに説明していたことがわかりました。
関係者によりますと、塩谷氏は21日、地元の市議会議員や県議会議員を集めて浜松市内で会合を開き、この中で安倍派の政治資金パーティーをめぐる問題について、「これまで説明できず申し訳なかった」と謝罪したということです。
その上で、販売ノルマを超えて集めたパーティー券収入について、おととしまでの5年間で、派閥からあわせて234万円のキックバックを受け、政治資金収支報告書に記載していなかったことを明らかにしたということです。
関係者によりますと塩谷氏は近く、収支報告書を訂正する方向で調整を進めていて、一連の問題について記者会見を開いて説明する考えだということです。
●谷川弥一氏…キックバックの金は飲食費、多額の金で「力付けたかった」 1/23
自民党安倍派の政治資金パーティー収入を巡る事件を受け、議員辞職願を提出した谷川弥一衆院議員(82)(長崎3区、政治資金規正法違反で略式起訴)は22日、長崎県大村市内で記者会見を開いた。「すべて私の責任。深くおわび申し上げます」と陳謝した一方、派閥から不記載とするよう指示があったのかについては「言えない」と繰り返した。
「このような事態に至ったことは認識に甘さがあった。国民の皆様に深くおわびする」。会見の冒頭、谷川氏は頭を下げ、東京地検特捜部の調べに対し、容疑を認めていることを明らかにした。
会見では、派閥からキックバック(還流)された金の使途についての質問が集中した。谷川氏は「人間関係づくりのため」として飲食費などに使っていたことを認め、多額の金を集めた理由については「力を付けたかった。長崎県の課題を解決するためだったが、勘違いしていた」と述べた。
ただ、自身よりも当選回数が少ない議員が閣僚になる中、自らは「大臣になれない」との思いを強くしたと説明。直近の5年分は飲食費などに使うのを控え、多くは保管していたとした。
また、今回の不記載について派閥から指示があったのかについては「派閥のことは一切言わない。私が悪い」「迷惑をかけたくない」などとして明かさなかった。
このほか、会見では、問題発覚後の昨年12月、報道陣に対し、「頭悪いね」と発言したことにも触れ、「配慮が足りなかった。撤回します」と語った。
●自民派閥幹部の説明「不十分」 山口公明代表 1/23
公明党の山口那津男代表は23日の記者会見で、自民党派閥の政治資金規正法違反事件を受けた安倍派幹部らの対応について「説明責任を果たす努力をすべきだ。どう再発防止をしなければいけないか、その出発点が必ずしも十分ではない」と指摘した。
自民党が政治改革に関する中間取りまとめの骨子で派閥の存続を事実上認めたことに関しては、「自民党自身がしっかり国民の批判や期待に応えられるように議論を尽くしていくべきだ」と述べた。
●「岸田派解散」の後は「6月解散」に望みを託す 次のポイントは4月28日 1/23
総裁選前に選挙
岸田文雄首相が18日、自ら率いてきた宏池会(岸田派)の解散を表明したことで、永田町は上を下への騒ぎとなった。三頭政治として政権運営を共にしてきた麻生太郎自民党副総裁、茂木敏充幹事長にも事前に相談することがなかったため、2人との決別宣言ともなったといえるだろう。今回の思い切った決断に至る岸田首相の心のうちと、その後に見据えているという6月解散についてお伝えする。
「岸田首相が派閥解消を発表する少し前、16日とか17日くらいから、6月解散という言葉が出始めてはいました。ただ、それはあくまでも10日に立ち上げられた政治刷新本部で検討されている中身が漏れてきていたことに関連しています。そこでちょっとしたサプライズを演出することで低空飛行を続ける内閣支持率上昇のきっかけにし、予算委員会を乗り切って4月前半予定の訪米を成功させ、賃上げが期待以上となって……という好循環を想定した結果の6月解散説でした」と、政治部デスク。
昨年にもあった6月解散説
自民党総裁選は9月に予定されているが、その前に解散に打って出て勝利し、総裁選を無投票で乗り越えたい算段だ。岸田内閣の支持率は一部の調査では10%台に落ち込んでいる。
「月に3ポイントずつくらい回復していけば、通常国会が閉じられる6月ごろには40%程度で推移しているという希望的観測ですが、“現時点でそれは難しいんじゃないか”といった声が圧倒的で、まともに取り合っている人はほぼいなかったですね」(同)
振り返ってみると、2023年6月にも解散説が出て、それなりに現実味を帯びていたが、岸田首相は決断しなかった。あるいはできなかったのかもしれないが。
「ウクライナ電撃訪問や日韓首脳会談、G7広島サミットを議長国として取り仕切るといった外交面でポイントを重ねていましたね。岸田首相がそれらを成果として世間に信を問うことを検討していたのは事実のようですが、仮にそれに勝利して政権運営を継続していたとしても、今回の検察の捜査がなかったかというと、そういうことでもないでしょう」(同)
政治の信頼回復のために
話を今回の派閥解散に戻そう。今のところ、安倍派と二階派は解散、麻生派と茂木派は派閥解消せず、と対応が二分している。
「岸田首相は今回の政治刷新本部での議論が自身の政権を維持するための最後のチャンスと見て、大きな勝負に出てきたということになります。派閥解消の理由を“政治の信頼回復のために”と説明していましたが、政治改革やそれに関連する言葉が国民受けするキラーワードだということを認識した上での発言だったと思います。派閥解消に同調しなければ、旧態依然の勢力として国民から総スカンを食うとの見立てもあったのかもしれません」(同)
一方で、別のデスクはこんな見方をする。
「今回の検察の捜査では、安倍派、岸田派、二階派の会計責任者らが起訴されましたが、立証の高いハードルに阻まれ、安倍派幹部らは訴追を免れました。これについて世間は概ね“物足りない”と反応しているように感じています」
権力闘争をサバイブできるのか
「岸田首相はそういった世間の声にも敏感でしょうし、ある意味で検察から“政治改革への期待”というメッセージを受け取ったものと理解して、派閥解消に打って出たのかもしれません。首相は原理主義者や堅物キャラとされてきましたが、それを見せつけた格好ですね」(同)
今後、岸田首相は自民党内での権力闘争をサバイブできるのか。
「ハードルがあり過ぎますが(笑)、4月28日の補欠選挙がポイントでしょう。細田博之前衆院議長の死去を受けた衆院島根1区、今回の捜査で略式起訴された谷川弥一衆院議員の辞職を受けた長崎3区の補選は確定で、そこでの勝ち方・負け方いかんによっては岸田おろしに発展しかねないでしょう」(同)
岸田首相としては、麻生、茂木の両氏を抵抗勢力と見立て、世間の支持に期待する狙いも見え隠れするが、
「今回の派閥解消表明は相当なサプライズではあるものの、そもそも岸田首相が国民にあまり支持されていない中で、どれくらい支持率に寄与するのか疑問視する声は大きいですね」(同)
これまで以上に綱渡りの政権運営を強いられることになりそうだ。
●最高値が見えてきた日本株の独歩高は、一体いつまで続くのか? 1/23
日経平均株価は、1月19日に終値で3万5963円まで上昇、平成バブル崩壊直後の1990年2月以来の高値を更新した(17日にはザラ場で3万6239円まで上昇)。またTOPIX(東証株価指数)も、昨年の最高値を同様に更新している。2024年は1月19日までの上昇率で比較すると、米欧株が若干の上昇で推移している中で、日本株(日経平均)は約5〜6%程度も上昇率で凌駕している。
岸田政権の震災対応は「教科書どおり」で一定の評価
昨年2023年に起きた日本株高の要因としては、東京証券取引所によるPBR(株価純資産倍率)改善指針や、2024年からの新NISA(少額投資非課税制度)開始による資金流入、さらにはインフレ定着を伴う経済正常化への期待など、が挙げられる。2024年もこれらの要因が、引き続き日本の株高を支えていると見られる。
また、日本は年初早々能登半島地震に見舞われた。依然日常生活を取り戻せない多くの被災者の方々にとって深刻な問題だが、日本企業の生産活動などへの影響は限定的と見られる。震災などの有事においては、これに対処する政府の対応がより重要になる。
これに関連して思い出されるのが、2011年の東日本大震災後の、民主党政権(当時)の対応だ。震災復興の歳出とともに、復興増税策定が同時並行で進んだ。深刻なデフレの中で、インフラへの投資などであれば迅速な国債発行が正当化されるが、この対応が経済正常化を一段と遅らせたのではないか。
これを教訓にした自民党政権は、2013年の金融緩和への「レジーム転換」で脱デフレと経済正常化に強い意思を持って取り組んだ。2020年のコロナ禍対応でも、増税なしに大規模な財政支出を繰り出した。また2024年は所得税減税が予定されている中で、岸田政権では、復興を理由に増税が検討される気配は今のところ見られず、これまでのところ災害・有事に対して「教科書どおり」の対応が行われていると言える。
また、年初の大規模地震発生をうけて、為替市場でドル円相場が一時的に1ドル=143円台へ2円程度円安に動いた。
災害などの有事が為替市場にどのように影響するかは、明確な理屈があるわけではない。東日本大震災発生時に大幅な円高が起きた際には、日本企業による対外資産売却が要因とされた。だが実際には、大震災に対して政策対応が十分行われず、経済の停滞が長引いて、デフレが強まるとの連想が働き、これが円高をもたらした側面も大きかっただろう。
現在の円安は「日銀の機動的対応への期待」の証拠
経済の下振れが起きれば、中央銀行が金融緩和を繰り出すので、通貨安要因になる。今回は有事発生をうけて、2024年に予想される日本銀行のマイナス金利解除が遅れるとの思惑が、円安の一因になった。
元々1月22〜23日に開催される金融政策決定会合を機に、日銀が政策変更に踏み出すとの金融市場の思惑が早計だったことの反動がでている側面もある。だが、有事に対して日銀の対応は機動的に変わるという期待で円安が進んでいることは、経済失政が目立った2011年時と現在は異なっていることを意味する。
そして、円安によって日本株が他国の市場より大幅な好成績をおさめている構図は2023年に明確だったが、これは2024年も変わっていない。震災後の対応が教科書通りに行われ円安が進んだことが、年初からの日本株の独歩高の最大の要因だろうと筆者は考えている。
では、このまま日本株の上昇は続くのだろうか。1989年の平成バブル期ル期に記録した3万8915円という史上最高値が近づきつつあることで、「日本株市場もかなりバブルになっている」、と感じられる方が多いかもしれない。
だが、日本以外のほとんどの主要先進国では、株価指数は景気回復の度に最高値を更新している。過去30年もの期間に株価が高値を更新していない日本が例外であり、ようやく普通の国に戻りつつあるということである。
1990年以降の停滞から抜け出し、日本の名目GDPが1990年以降のレンジ(500兆円〜550兆円)から抜け出し、2023年にはっきりと超えたことでもそれは証明されている。
インフレ定着をともなう経済正常化が進んでいるからこそ、いわゆる「企業の稼ぐ力」が強まった。上場企業の利益も最高水準まで増えているのだから、バブル期の1989年まで株価が戻るのは正当化できる。またPER(株価収益率)などで見ても、1990年前のバブル期よりかなり低く、株価は割高とは言えない。長期的に見れば、今の水準の株高についても、「上がりすぎ」と警戒する必要はないだろう。
ただ、短期的な日本株の独歩高にはやや警戒すべきかもしれない。今回と同様に日本株が、米欧株を大きく上回った局面としては、直近では2023年4〜6月が思い出される。
当時は、就任直後の植田和男日銀総裁が慎重な対応を行う一方で、FRB(連邦準備制度理事会)が追加利上げを模索していた中で、為替市場で1ドル=130円前後から145円付近まで円安が進んだ。
このときとは違って、2024年は日米の金融政策をとりまく環境が変わっている。まず、日銀による1月日銀金融政策決定会合後のマイナス金利解除への思惑は後退した。だが、春闘賃上げの状況を踏まえ、4月会合では、日銀によるマイナス金利解除が行われると見られる。
一方で、アメリカ経済は底堅い中で、インフレ指標の下振れが明確である。FRBによる3月利下げ期待が強まる中、高官からは早期利下げ期待をいさめるような声も聞かれる。
それでも、最近のインフレの下振れを踏まえると、今後FRBのインフレ見通しが変わってもおかしくない。FRBが利下げに動く中で、過去2年弱続いたドル高円安の修正が起きると見られる中で、2023年4〜6月期のように大幅な円安が進む可能性は高くない。このため、年初から続く日本株の独歩高は長期化しないのではないか。
●「ポスト岸田」林芳正官房長官、地元山口3区に「内憂」あり 1/23
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、林芳正官房長官(山口3区)は政権中枢で難しい役回りを担う。一方で、将来的に首相を目指すと公言してきた「ポスト岸田」の一人として、地元山口では負けられない戦いを控える。3カ月後の美祢市長選である。
岸田文雄首相が岸田派(宏池会)解散を決意し、新聞各紙に「岸田派解散へ」の見出しが躍った19日、同派ナンバー2の座長でもある林氏の地元関係者に動揺が走った。次の衆院選で立候補を予定する新山口3区内にある出身地、下関市の支援者は本音を漏らす。
「総理は派閥解消に踏み込むことで、よりどころの麻生派と茂木派を敵に回すのではないか。場合によっては林の芽を摘まれるかも…」
岸田政権の支持率が低迷する中、美祢市では緊張感が強まっている。市長選(4月14日告示、21日投開票)は、林氏に近い現職に前職が挑む一騎打ちの様相だ。
今月9日、現職篠田洋司氏(60)は記者会見し、再選を期して無所属での立候補を表明した。リーフレットには林氏の応援メッセージ。自民党員の篠田氏は「特に林先生にはいろんな面でお力添えをいただいている」と良好な関係を強調した。
対する前職西岡晃氏(50)は昨年12月22日の記者会見で、無所属で立つ意向を示した。前回2020年4月の市長選で落選した後、自民党から党費の振込用紙が届かなくなり、党籍が消滅したという。「多分放り出されたんじゃないかな」
自民党山口県連は今月11日、篠田氏の党推薦を決定した。市内3支部のうち推薦願いを提出したのは1支部だけだった。
県連は「他の2支部にも推薦手続きを進めると伝え、異論はなかった」と説明するが、ある支部の党員は「地元の市長選に政党が出てこなくていい」と不快感を示す。党関係者によると、昨年11月下旬に林氏の後援会関係者が2支部の幹部を集めた場で現職への協力を呼びかけたという。「強引に現職推薦を固めようとして失敗した。長門のように荒れそうだ」
次の衆院選で区割り変更に伴い新3区に入る長門市はこれまで、下関市とともに、22年7月に死去した安倍晋三元首相が当選を重ねた4区だった。昨年11月の市長選は安倍氏と懇意だった現職ではなく入党1カ月の新人に党推薦が決まり、複数の支部党員が反発。新人と全面支援する林氏の2連ポスターが市内に張られ、林家とは中選挙区時代からのライバル関係だった安倍家の支援者の感情を逆なでした。
長門市で林氏が支持した新人が敗れただけに県連幹部は次の美祢市長選の重要性を強調する。「大事な戦い。人口は2万人余と少ないが、新3区の真ん中に位置するだけに市長選の結果は全域に影響する」
林氏に近い支援者からは警戒の声も漏れる。「昭恵さんが前職の後ろに付いているのでは」。安倍氏の妻昭恵さんは「安倍後継」の吉田真次氏(山口4区)の後援会長を務め、安倍氏から引き継いだ政治資金もある。20日には下関市で吉田氏の後援会発足式を開いた。
中選挙区時代、美祢市でも安倍氏の父安倍晋太郎元外相と林氏の父林義郎元蔵相が票を奪い合った。安倍氏を長年支えた元秘書2人の出身地でもあって縁は深く、「旧安倍派」が潜在する。
党関係者は市長選への昭恵さんの関与を否定した上でこう言う。「林派が神経質になるのも分かる。選挙の恨みは子や孫の代まで続く。林の名前が前に出過ぎるとまたミソがつくかもしれない」
●岸田派が総会で解散を正式決定 最古の派閥が66年の歴史に幕 1/23
自民党の岸田派(宏池会)は23日午後、国会近くの派閥事務所で総会を開き、派の解散を正式に決定した。
会の冒頭に、座長を務める林官房長官の「現在、政治資金パーティーをめぐる問題に端を発し政策集団に対して国民の皆様から大変厳しい目が注がれている。こうした中で宏池会幹部で相談の上、政治の信頼回復を図る観点から、大変重い決断になるが、けじめをつける意味で宏池会を解散する方針にさせていただいた」
「政治改革の議論を前に進めるためにも何卒ご理解いただけると幸いです。自民党で最も伝統ある政策集団であり、66年の歴史を持つ宏池会の幕を閉じることは、私自身も国会議員として28年お世話になってきた宏池会がなくなることに、率直に言って様々な思いが胸に去来している。ただすべては政治の信頼回復のため。何卒皆様のご理解をよろしくお願いします」とのメッセージが代読された。
岸田派の事務総長を務める根本元復興相は「総理から直接相談を受け、政治への信頼を回復するために派閥を解散・解消すると。私はそのときに総理の刷新本部長として、自民党総裁としての覚悟を感じたので了解させていただいた」と語った。
その後、出席議員の意見交換が行われた末、宏池会の解散を正式に決定した。
前会長で派閥を離脱中の岸田首相は出席せず、同じ時間に都内のホテルで麻生副総裁、茂木幹事長、林官房長官と昼食をとりながら会談した。
岸田派をめぐっては、岸田首相が18日に政治資金パーティー問題のけじめと国民の信頼回復のためとして解散の意向を表明し、岸田派幹部と個別に会談して方針を伝えていた。
宏池会は1957年に池田勇人元首相が設立した派閥で、今の自民党の派閥の中で最も長い歴史を誇る。池田氏のほか、大平正芳氏、鈴木善幸氏、宮沢喜一氏を総理大臣として輩出し、岸田首相は5人目の総理経験者となっていた。
1994年末には、自民党の政権転落後の改革として派閥解消が掲げられたのを受け、いったん解散していたが、翌年中には事実上復活し、その後正式に派閥として再始動した。
宮沢政権以降は、加藤紘一氏や堀内光雄氏、古賀誠氏が会長を務めた。また、かつては河野洋平元総裁や麻生太郎副総裁も所属していたが、加藤氏の会長就任に伴い宏池会を退会し、河野グループを立ち上げ、現在の麻生派に発展した。谷垣禎一元総裁もかつて所属していて、岸田派と麻生派と谷垣グループを合流させる「大宏池会構想」がたびたび浮上してきたが、実現することはないまま、宏池会は66年あまりの歴史に幕を下ろした。
●麻生氏、茂木氏は「真っ青…」岸田派解散 党内での好き勝手な振る舞い=@1/23
「岸田派に続いて二階派、そして安倍派まで解散を決定するに至り、今まで岸田政権の下で派閥政治の恩恵を思いのまま享受してきた麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長は、真っ青といったところだろう。それにしても岸田文雄首相は、随分としたたかな人物だ。これほどまでに思い切ったことをやる人とは、思わなかった」
自民党の有力国会議員がこう言う。
先週18日、岸田首相は、突如として自身が率いてきた岸田派を解散する方針であることを表明した。
そしてこの流れを受けて、自民党内最大派閥の安倍派、さらには二階派も解散することを決定したのである。
岸田首相が、前述したようなかなり思い切った決断をするキッカケとなったとされるのが、今月16日に全ての自民党所属議員を参加可能とした「政治刷新本部」が開いた会合だった。
その席上、完全無派閥の石川昭政議員が、裏金問題の原因は派閥にあるとした上で、岸田本部長(首相)にこう迫ったのである。
「まず『隗より始めよ』で岸田派から解消してほしい」
その石川議員がその時の様子についてこう語る。
「私は岸田首相の目をじっと見据えながら、そう言いました。岸田首相も視線をそらすことなく、見返していましたね。あの会合で岸田派の解散まで口にしたのは、私だけだった。私の発言で岸田首相が派閥解散を決断したとは思いませんが、岸田首相の決断に少しでも影響を与えたならば、発言したかいがあった」
裏金問題の刑事事件化をキッカケにする形で、ここへ来て一気に派閥解消の流れが加速している自民党だが、実は問題発覚以前から自民党内では一部の派閥の好き勝手な振る舞いに不満が高まっていたのだという。
「好き勝手振る舞っていたのは、麻生派と茂木派ですよ。政務三役人事や党役員人事をこの2つの派閥が好き勝手に決め、有力ポストを皆持っていく。適材適所もへったくれもない。なんでこの人が、というような能力もない、専門知識もない人が麻生派や茂木派というだけで、どんどん登用されていく。残ったポストを、やりたければどうぞと言わんばかりに、非主流派や無派閥に回してくるんです」(非主流派に所属する有力議員)
こうしたこともあって、自民党内では麻生氏や茂木氏に対する不満が爆発寸前だったという。
「そうした状況を岸田首相も内心では、苦々しく思っていたことは間違いない。そうした意味で今回の岸田派の解散は、岸田首相なりの麻生氏や茂木氏に対する意趣返しですよ」(岸田派幹部)
つまり岸田派解散は、岸田首相にとって麻生派と茂木派を切り捨てるという意味を持ってくるというのだ。
果たして今後、麻生氏と茂木氏がどのような動きを見せてくるのか、岸田首相のもくろみはうまくいくのか、要注目と言えるだろう。
●自民岸田派が解散決定 林氏「けじめつける」 1/23
自民党岸田派(宏池会)は23日、東京都内で臨時会合を開き、派の解散を正式に決めた。根本匠事務総長が経緯を説明し、了承された。座長の林芳正官房長官は会合にメッセージを寄せ、「政治の信頼回復を図る観点から、けじめをつける意味で、宏池会を解散する方針とした」と表明した。
根本氏は、昨年12月まで同派会長を務めた岸田文雄首相(党総裁)から事前に相談を受けたと説明。「党総裁としての覚悟を感じたので了解した」と語った。
岸田派は元会計責任者が2018〜20年分の政治資金収支報告書に計約3000万円の収入を記載していなかったとして略式起訴された。
●「バイデンさんに見捨てられたくない」岸田首相開き直り“派閥解消宣言” 1/23
1月18日、永田町に激震が走った。パーティー券問題の渦中のなか、岸田首相が突如、岸田派の解散を記者会見で公言した。その真意につき、さまざまな憶測が流れる中、背景にはアメリカとの外交があったとの指摘もなされている。
岸田文雄首相の国賓待遇による訪米は4月に先送り
政治改革に背水の陣で挑む覚悟を示したとも報道された今回の派閥解消について、政治部記者はこう語る。
「ぶら下りでも薄ら笑いを浮かべながら宏池会(岸田派)解散について言及する岸田首相を見て、記者はみな『この人はヤバイ』と囁きあっていました。つまり岸田氏は首相を続けるためには手段を選ばない人だ、というところが如実に見えたのです。独断で派閥解散を強行した理由は、派閥解消で支持率を上げて解散総選挙に持っていき、続投の道を拓こうという見方が有力です」
開き直りにも見える岸田首相のの派閥解散宣言。その背景には、東京地検が安倍派だけではなく、岸田派の元会計責任者を立件したことで岸田氏に批判が集中する可能性が高くなったことも理由のひとつにあげられるだろう。
岸田首相は「事務処理上の疎漏であると承知しているが、私自身、在任中から今日までそれ以上のことは承知してない」と強調したが、いかにも苦しい言い訳だった。パーティー券捜査が岸田派までに及んだことで支持率がさらに減少することは目に見えており、追い詰められていたのだ。
だが、岸田首相が焦る理由はもう1つ別にあったとも。岸田氏が派閥解散の意向を表明した日には、もう1つ重要なニュースが報道されていた。
18日、共同通信など各報道機関が、「日米両政府が岸田文雄首相の国賓待遇による訪米を4月に先送りし、首相とバイデン大統領の首脳会談を、4月10日を軸に実施する方向で調整していることがわかった」と報じたのだ。理由は「バイデン氏が3月7日に一般教書演説をする日程が決まり、会談が難しくなった」とされた。
岸田氏の訪米については昨秋から浮上しており、岸田首相がバイデン大統領から国賓待遇での招待を受け、米議会で演説を行うなどのプランが練られてきた。岸田首相にとって最大の後ろ盾の1つがバイデン大統領であるところは衆目の一致するところ。
バイデン大統領は、岸田氏が組んできたきた米国のメリットにもなる防衛費のGDP比2%への増額などを高く評価し、バイデン政権として広島サミットの開催や、ウクライナ電撃訪問などの岸田外交を強く後押ししてきた。もし、岸田首相の国賓級待遇での訪米が実現すれば、2015年の安倍晋三元首相以来、9年ぶり。“外交の岸田”を自認する首相にとって、国賓待遇での招待、そして米議会での演説は岸田政権のハイライトになるはずのイベントだった。
ところが――。
「岸田首相は年始の会見で3月6日の国賓訪米日程を発表して、意気揚々とアメリカに旅立つつもりだったのですが、会見での発表にバイデン政権が『待った』をかけたのです」(外務省担当記者)
トランプから「人を見る目がない老いぼれ」と罵倒されかねない
どういうことかというと、昨年末に自民党派閥の政治資金問題が噴出し、「岸田政権はもたないのでは」との観測が米政府側でも議論されるようになったのだ。岸田首相を国賓として呼んで議会演説をさせたとしても、その後すぐに退陣となれば、大統領選を控えるバイデンにとってはとんだ赤っ恥となり、トランプから「人を見る目がない老いぼれ」と罵倒されかねない事態となる。つまりバイデンは岸田首相を見限りはじめた、というのだ。
こうしたアメリカの動きに岸田首相は焦ったのだろう。そこで、1月に政治刷新本部を発足させ応急処置を試みたものの、逆風は収まらない。それどころか岸田派まで捜査の手が及ぶことがわかり、さらに追い込まれることになった。
同時にアメリカから訪米の延期が正式に通告されたのである。パー券疑惑批判が続く限り政権はもたない、政権が死に体のままではバイデンに見放される、という二重苦のなかで、急転直下、窮余の策として出たのが「岸田派解散」という一手だったのだ。
「これまで派閥均衡政治を続けてきた岸田首相が、なりふり構わず一人で決めたのが岸田派解散だったのです。これを受けて安倍派、二会派も続けて解散を発表した。この派閥解散という一手は、各派閥が謀議を重ねて”岸田降ろし”を画策する動きをしばらく封じることが出来るという効用もある。
どんな手を使ってでも政権を維持し、バイデンに岸田政権はこれからも続くということを見せたい。さもなくば国賓待遇での訪米は実現しない…開き直りの独断専行にはこうした背景があるのではないかと見られています」(前出・政治部記者)
4月または6月解散か?
岸田首相の「派閥解散」を受けて、早速、永田町では岸田首相が解散総選挙を打つという「解散風」が吹き始めている。岸田首相はこれまでも「解散」を上手く使ってきた政治家として知られている。まず2021年、自民党総裁選を経て岸田氏は、首相に就任してわずか10日後に解散を打っており、この就任から10日での解散は戦後最短記録だった。
「首相就任後、解散は少なくとも6週間は空ける」という慣例を覆して解散を強行したインパクトはいまでも強く残っている。昨年、岸田首相が思わせぶりな発言を来り返し「解散風」を政権維持に利用できたのも、”岸田解散読めない”というイメージが残っていたからに他ならない。そしていま、「派閥解散」政局が始まり、再び解散風が吹き始めたのだ。
「いま永田町では4月解散説、またはG7後の6月解散説が流れています。岸田首相周辺からは『派閥解消を実行しなければ国民から見放される』という声も出て意気軒昂ですが、しょせんは自民党内の話で“コップの中の嵐(狭い世界での内輪もめの意)”でしかない。
国民にとっては関係のない話でもあるので、どこまで支持率アップに繋がるかは不透明。岸田首相にとっては乾坤一擲の大勝負ですが、どこかズレているという声もあがっています」(前出・政治部記者)
岸田首相の訪米は3月から延期され4月で再調整される見込みだが、政治部記者は「4月訪米実現も五分五分ではないか」と指摘する。なぜかといえば、まず4月は日本で衆院補欠選挙があり、その選挙結果によっては再び岸田政権批判が高まる懸念がある。
一方で米国大統領選も3月のスーパーチューズデーを皮切りに本格化していく。11月5日の大統領選投票日までは、どう転ぶかわからない岸田政権に手を差し伸べることは控えたいというのがバイデン側の本音だろう。
もし4月訪米が再延期となったとき、岸田首相はバイデンに見放されたということを意味する。窮余の一策は、はたして吉と出るのか凶と出るのか――。 
●政治資金事件 自民派閥 いったい何が? 1/23
政界を大きく揺るがしている自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件。「そもそも」論から深まる疑惑、捜査の最新情報、それに岸田総理の突然の「岸田派解散」検討表明で急速に動く政局まで、徹底解説します。一連の取材では、生々しく問題の実態を語る証言も入手しました。いったい何が起きているのでしょうか?
Q.岸田総理は18日夜、「岸田派の解散」検討を表明した。狙いと自民党内の受け止めは?
A.岸田総理としては、60年以上の歴史を持つ派閥をみずから解散するという、いわば乾坤一擲(けんこんいってき)の一手を打ち出すことで、党内の議論をリードし、国民の政治不信の払拭につなげたい狙いがあるとみられます。
ある政府関係者は、こう明かします。
「岸田総理は『派閥が潰れても自民党は残す』と語っていた」(政府関係者)
一方、突然とも言える表明に、党内には大きな波紋が広がっています。
党の「政治刷新本部」では、派閥のあり方をめぐり議論が交わされている最中で、戸惑いの声が聞かれます。
「いままでの議論は何だったのか」(自民党内)
「事前に相談がなかった」(岸田派以外の党幹部)
今後の政権運営に禍根を残すという見方も出ています。
そして、その後、安倍派、岸田派、二階派の3つの派閥は解散することになりました。
Q.捜査の最新状況は?
A.19日午後、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、安倍派と二階派について、東京地検特捜部は、おととしまでの5年間で、安倍派の会計責任者は合わせて6億7503万円、二階派の会計責任者は合わせて2億6460万円のパーティー収入などを派閥の政治資金収支報告書に収入として記載していなかったなどとして、政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で両派の会計責任者を在宅起訴しました。
また特捜部は、安倍派や二階派だけではなく、岸田派「宏池政策研究会」についても、元会計責任者は、2020年までの3年間で、合わせて3059万円のパーティー収入などを派閥の政治資金収支報告書に収入として記載していなかったとして、罰金刑を求める略式起訴をしました。
一方、特捜部は松野 前官房長官ら安倍派の幹部7人や、二階派の会長を務める二階 元幹事長など派閥の幹部からも任意で事情を聴いてきましたが、いずれも派閥の会計責任者との共謀は認められないとして、立件しない判断をしました。
ただ、二階 元幹事長の事務所がおととしまでの5年間で3000万円を超えるパーティー収入を派閥側に納入せず、元幹事長の資金管理団体の収支報告書に派閥側からの収入として記載していなかったとして、特捜部は二階 元幹事長の秘書を略式起訴しました。
Q.一方で安倍派の池田佳隆衆議院議員は逮捕された。なぜか?
A.東京地検特捜部は、池田議員を逮捕した理由について「具体的な罪証隠滅のおそれが認められたため」と説明しました。
特捜部は、1月7日、安倍派に所属する池田佳隆衆議院議員が政策秘書と共謀し、おととし=2022年までの5年間に安倍派から4800万円余りのキックバックを受けたにもかかわらず、みずからが代表を務める資金管理団体の収入として記載せず、政治資金収支報告書にうその記載をしたとして、政治資金規正法違反の疑いで逮捕しました。
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、初の逮捕者となりました。
実は、特捜部が先月=12月、池田議員の関係先を捜索した際、関係先にあったデータを保存する記録媒体が壊されていたというんです。
特捜部の調べに対し池田議員の一部の秘書が、「議員本人から証拠隠滅を指示された」という趣旨の説明をしていることもわかりました。
関係者によりますと、記録媒体には、工具のようなもので壊された跡があったほか、事務所関係者でやりとりした携帯電話の一部のメッセージなども消去されていたということです。
特捜部は、池田議員について、「会計責任者を務めている秘書との共謀共同正犯を認定できる証拠がある」としています。
一方、池田議員の資金管理団体は、2022年までの3年間に、記載していない安倍派からの寄付があわせておよそ3200万円あったとして、政治資金収支報告書を12月8日付けで訂正しています。
Q.ほかの安倍派議員の捜査はどうか?
A.特捜部は、多額のキックバックを議員側の資金管理団体の収支報告書に記載していなかったとして、19日、5000万円を超えるキックバックを受けたとされる大野泰正 参議院議員を政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で在宅起訴し、4000万円を超えるキックバックを受けたとされる谷川弥一 衆議院議員を略式起訴しました。
在宅起訴された大野参議院議員は自民党を離党しました。
略式起訴され自民党を離党した谷川衆議院議員は22日、議員辞職願を提出しました。
記者会見した谷川議員は「自身の認識の甘さがあったと深く反省している。おわび申し上げます」と謝罪しました。
関係者によりますと、特捜部の任意の事情聴取に対し、大野議員は関与を否定していますが、谷川議員は虚偽記載を認めているということです。
Q.そもそも、今回の「政治資金」をめぐる問題のきっかけは?
A.こちらをご覧ください。
告発状の提出内容。▽「清和政策研究会」がおよそ1900万円分、▽「志帥会」がおよそ900万円分、▽「平成研究会」がおよそ600万円分、▽「志公会」がおよそ400万円分▽「宏池政策研究会」がおよそ200万円分のパーティー券収入を記載していなかったとしています。
自民党の5つの派閥は2021年までの4年間にあわせておよそ4000万円分の政治資金パーティーの収入を政治資金収支報告書に適切に記載していなかったとして、大学教授が告発状を提出し、各派閥は対応に追われる事態となったんです。(総額など告発内容は2023年11月18日時点)
Q.なぜ政治資金パーティーなどの収入をめぐって問題が相次ぐのか?
A.私たちは取材を進めました。まず、こちらを説明します。
政治資金を集めるために行われる「政治資金パーティー」。
参加者は、一口2万円程度のパーティー券を購入。何口も買うケースも少なくありません。
数千人規模になることもあり、多いときで数億円のカネが集まります。
法律で認められた集金の手段ですが、特定の団体などとの癒着を防ぐため、次のような決まりがあります。
法律内容。特定の団体などとの癒着を防ぐため、同じ人や団体から1回のパーティーで20万円を超える支払いを受けた場合、名前などを収支報告書に記載しなければなりません。
しかし今回、派閥の政治資金パーティーの収入をめぐって、適切に記載されていないケースが相次いで明らかになったのです。
Q.一体なぜなのか?
A.自民党の派閥のパーティー券を毎年購入してきたという業界団体の関係者の証言を得ました。
「業界としてみれば、何かあったときにいろいろお願い事をすることもあるだろうと。もしもの時のためというか、『保険』じゃないけどかけておくみたいな」
各派閥のパーティーが開かれる時期になると、男性のもとにはパーティー券の購入を求める依頼が次々に舞い込むといいます。
「いろんなところから『お願いします』って電話がかかってくるわけですよ。(全然知らない人からも?)すごい数が来ます。本当に」
男性の証言から、不記載につながる要因の一端が見えてきました。
団体は、同じ派閥の複数の議員から同じパーティー券の購入を別々に依頼されることも少なくないといいます。
団体はパーティー券を議員ごとに購入。
その多くは、派閥側には記載義務のない、20万円以下だったということです。
ただ、元は同じパーティー。同じ団体からの支払い金額の合計が20万円を超えていれば、派閥側には記載の義務があるにもかかわらず、この団体のケースでは、記載されていなかったのです。
「正直なところびっくりしました。当然、正直に適正に報告はされているんだろうと思って、漏れているものがあるなんて思いもよらなかった」
Q.パーティー券を販売する側の事情はどうなのか?
A.自民党の関係者は、パーティー券を販売する側の事情について、こう明かしました。
「それぞれの議員が、どこに(パーティー券を)売っていてるかっていうのは分かりませんし、議員同士も、自分たちの大切な支援者をほかにあんまり言いたくないという心理も間違いなく働くんですね。結果として記載義務の必要があるものを記載できなかったというケースがあると思います」
Q.どういう事情かは分かってきましたが、今回の問題をどう考えたらいいのか?
A.政治資金の問題に詳しい専門家に聞きました。(インタビューは2023年11月下旬)
「もしパーティーに関する不記載が故意に、あるいは組織的に行われたということになれば、政治資金収支公開制度の根幹を失わせるといったような非常に重大な問題だと言わざるをえない。やはり、こういうことがないようなチェックやコントロールの仕組みというのを今後考えていく必要があろうかと思います」
Q.きちんと記載がされていなければ、不透明な金のやりとりや癒着が起きても、外からチェックすることはできなくなってしまうということか?
A.政治資金パーティーの収入の不記載について、さらに取材を進め、あることがわかってきました。自民党の関係者の1人は取材に対し、こう話しました。
「パーティー券の販売にはノルマがあり、ノルマを超えた分の収入は慣習として議員側に派閥からキックバックされていた」(自民党の関係者)
Q.「キックバック」とは、具体的にはどういうことか?
A.自民党の最大派閥、安倍派「清和政策研究会」の政治資金パーティーに関して、わかったのがこちらです。
複数の関係者によりますと、安倍派は、所属議員の役職や当選回数などに応じてパーティー券の販売ノルマを設定していました。
そして、所属する議員がパーティー券の販売ノルマを超えて集めた分の収入を、議員側にキックバックし、派閥の収支報告書にパーティーの収入や議員側への支出として記載していなかった疑いがあります。
議員側にキックバックされた資金の総額は、2022年までの5年間でおよそ5億円に上るとみられます。
そして安倍派は、議員ごとのノルマ額、実際に集めた金額、議員側にキックバックした金額を記したリストを作成していたということです。
安倍派の所属議員のうち、複数の議員が、2022年までの5年間に1000万円を超えるキックバックを受けていたとみられています。
安倍派は、パーティー券の収入を専用の口座などで管理していたということで、口座への入金額と、安倍派の政治資金収支報告書に実際に記載されているパーティー収入の総額には食い違いがあり、議員側の政治団体もキックバックされた資金を収入として記載していない疑いがあるということです。
Q.安倍派でのキックバック、徐々に実態が明らかになってきましたね?
A.安倍派の所属議員の元秘書が取材に応じ、派閥のパーティー収入をめぐるキックバックの実態を生々しく証言しました。
「政治の世界に秘書として入って1年目から、キックバックというものがあると先輩秘書や派閥の事務局などから聞いていた。当たり前のように感じていたので、事務所の中でも悪いという認識はなかったと思う」
そして、元秘書は「年末が近づくと派閥の幹部から議員の事務所に連絡があり、本人が議員会館や派閥の事務所に出向いて幹部と面会していた。面会を終えた議員の胸ポケットには封筒が入っていて『先生、その胸ポケットのやつって、何かの資料ですか』と聞くと、『これは派閥からのキックバックだよ』と言っていた。封筒の中身を見たことはないが、現金以外には考えられない」と証言しました。
「キックバックを受けた分は本来、政治資金収支報告書に記載すべきだと思うが、派閥から『記載しないでください』と明確な指示があったので、一切記載していなかった。派閥の事務局に『これは裏金なのではないか。記載しないとやばくないか』と聞いたところ、『なので、逆に記載しないでください。記載してしまえば、裏金ではなくなってしまいます』と言われた」
Q.裏金化された資金は、いったい何に使われているのか?
A.事務所費の不足分やパーティー券の販売ノルマを達成できなかった分の穴埋めなど、永田町関係者から様々なケースの証言が出る中、自民党で議員活動への支援や選挙対策に携わっていた関係者が取材に応じ、実態を明かしました。
この関係者は「政治には金がかかるというが、どこにかかるかというと、大きくは、選挙と議員を支える秘書をどれだけ多く雇っていくかにかかっている」と話しました。
このうち秘書については「公設秘書以外は私設秘書として雇わなければならない。支援組織がある党はそこから送り込むことができるが、自民党は昔からよく『自分党』と言われるように組織があるようでないので、お金も人も自分で集めてこないといけない」と話しました。
さらに、こうした事情は選挙でも同じだとしたうえで「選挙で宣伝車を走らせる場合、ドライバーとウグイス嬢を雇用しなければならないが、いずれも適性のある人がそれほど多くないため争奪戦になり、甘くはない。さらに、永田町では陣中見舞いということばを使うが、自分の子分となる選挙区内の地方議員に金を配るので、それも相当な額になる。裏金がなければ、じゃあその金はどこから捻出するのかという形になる」と証言しました。
そして「裏金というのはどんな形にも使える自由な金なので、それを人件費に使おうと、銀座のクラブでの飲み食いに使おうと、選挙に使おうと、自由にその財布から出せる。裏金がなければ何もできない。今回の事件を受けて政治資金規正法を厳しくしてもいたちごっこだと思う」と指摘しました。
そして、みずからも選挙対策を通じて裏金に関わってきたことを反省しているとしたうえで「自民党にお願いしたいのは、政治とカネの問題や裏金づくりについて正直に有権者に謝罪することだ。このような使途不明の金は作りませんと宣言し、立党以来のうみをこの機にすべて出してほしい」と語りました。
Q.キックバックについて、連日、安倍派幹部の名前が挙がりましたね?
A.そうですね。
去年12月8日、事態が動きました。
安倍派幹部で官房長官を担っていた松野氏側が、2022年までの5年間で1000万円を超えるキックバックを受けていたことが関係者への取材で明らかになりました。
松野氏側の政治団体は、政治資金収支報告書に収入として記載していない疑いがあるというのです。
松野氏は、国会の質疑や記者会見で「みずからの政治団体の政治資金は適正に対応してきた」と述べる一方、具体的な説明は避けてきました。
そして14日、辞表を提出した松野氏は官房長官として最後の記者会見に臨み「政治資金について、さまざまな指摘がなされ、結果として国民の政治に対する信頼が揺らいでおり、国政に遅滞を生じさせないよう職を辞することにした。責任を感じている」と述べました。
そして、さらに深刻な事態が…。
松野氏のほか、いずれも安倍派幹部で、事務総長を務める高木国会対策委員長(当時)や世耕参議院幹事長(当時)など、10人以上の議員側が、2022年までの5年間で1000万円を超えるキックバックを受け、政治資金収支報告書に収入として記載していない疑いがあることがわかったのです。
さらに、安倍派の座長を務める塩谷元文部科学大臣や萩生田政務調査会長(当時)、経済産業大臣を担っていた西村氏など、派閥の幹部6人を含む安倍派の大半の所属議員側が、パーティー収入の一部についてキックバックを受けていたとみられることが関係者への取材でわかりました。
関係者によりますと、議員側の政治団体は、いずれも政治資金収支報告書に収入として記載していなかったとみられていますが、キックバックの金額は議員によって大きな差があるということです。
Q.派閥の「事務総長」とは、どういう役割なのか?
A.自民党の派閥の「事務総長」は、各派閥に1人ずつ置かれ、閣僚や党幹部の経験者などベテラン議員が務めるのが慣例です。
派閥の運営を切り盛りする役割を担い、トップの会長とともに人事などの要望を行うほか、各派閥の事務総長が集まって情報交換を行うこともあります。
安倍派の事務総長は◇2022年8月から高木氏が務めています。前任は西村氏で2021年10月から2022年8月まで、さらにその前は、松野氏が2019年9月から2021年10月まで務めました。
Q.ほかの安倍派の議員の反応で注目は?
A.事態の深刻さを示唆する発言も飛び出しました。
安倍派で、防衛副大臣を担っていた宮澤氏は12月13日、記者団に対し、2022年までの3年間にあわせて140万円を政治資金収支報告書に記載していなかったことを明らかにし、「おわびしたい」と陳謝しました。
その上で「派閥の方からかつて政治資金収支報告書に記載しなくてもよいという指示があった。『大丈夫かな』とは思ったが、長年やっているのなら適法なのかと推測せざるを得ず、指示に従った」と述べました。
また今回の問題が発覚して以降「派閥から『しゃべるな』という指示もあった」と述べました。
Q.キックバック、ほかの派閥は?
A.二階派「志帥会」も、所属議員がパーティー券の販売ノルマを超えて集めた分を派閥の収支報告書に収入として記載していなかったとみられることが12月上旬、明らかになりました。
ノルマを超えた分は議員側にキックバックされ、所属議員ごとのパーティー券の販売ノルマや議員側にキックバックした金額などを記したリストを作成していたとみられます。
こうしたリストをもとに、パーティー収入の運用を組織的に管理していた疑いがあります。
ただ、安倍派とは違って▽キックバックした分は派閥の収支報告書に議員側への支出としては記載されていて▽議員側の政治団体も収入として記載していたとみられるということです。
また、岸田総理が会長を務めていた岸田派「宏池政策研究会」でも、派閥が実際に集めた収入より少ない金額が収支報告書に記載されていたとみられることが、関係者への取材で12月中旬、明らかになりました。
ただ、収支報告書に記載されていなかったとみられる収入の規模は、安倍派や二階派と比べ、少ないということでした。
岸田派も所属議員がパーティー券の販売ノルマを超えて集めた分の収入を議員側にキックバックしていましたが、その分は派閥側の収支報告書に収入や支出として記載していたとみられています。  
Q.捜査当局は、どう動いたのか?
東京地検特捜部は12月19日、政治資金規正法違反の疑いで強制捜査に乗り出し、安倍派「清和政策研究会」と二階派「志帥会」の事務所を捜索しました。
この時点で、安倍派の議員側にキックバックされ裏金化した資金の総額は2022年までの5年間で、およそ5億円に上り、二階派でも派閥の収支報告書に記載されていないパーティー収入の総額が5年間で1億円を超えるとみられるということがわかりました。
安倍派と二階派では、派閥側の指示のもとでパーティー収入の一部を収支報告書に記載しない運用が組織的に行われていた疑いがあり、特捜部は、派閥の幹部や議員の認識など詳しい経緯について実態解明を進めたとみられます。
Q.派閥側を強制捜査した狙いは?
A.特捜部が強制捜査に踏み切ったのは、パーティー収入を裏金化する運用が、いつから、誰が主導して行われたのか、その指揮系統の解明のため、事務所などを捜索して関係資料を押収することが欠かせないと考えたからだとみられます。
今回の事件は、捜査の対象が複数の派閥にわたっているうえ、派閥側と、キックバックを受けていた議員側の政治団体、それぞれに収支報告書の記載義務を負う会計責任者と、国会議員がいるなど、捜査の対象となる関係者が多いのが特徴です。
このため、特捜部は全国から応援の検事を集めて捜査態勢を拡充していて、臨時国会閉会後のこのタイミングで強制捜査に踏み切りました。
その後、12月27日には、安倍派の池田佳隆衆議院議員の事務所、翌28日には、安倍派からおよそ5000万円のキックバックを受けていたとみられる大野泰正参議院議員の事務所など、関係先を捜索しました。
Q.一連の強制捜査に、政府・与党内からはどういう反応が?
「特定の政策集団のみならず、党全体、政権にとっても非常に深刻な事態になった。とにかく政策の遅滞を避けるべく取り組みを進めていくしかない」(政府高官)
特に、組織的関与も指摘される安倍派は、次のような声も出るほどでした。
「派閥存続の危機に直面している」(安倍派内)
強制捜査に関連して12月19日、安倍派は「多大なるご迷惑とご心配をおかけし、政治の信頼を損ねることとなり、心よりおわび申し上げる。重大に受け止め、捜査には最大限協力し、真摯に対応していく」というコメントを出しました。
また、12月19日、派閥の事務所の捜索を受けて、自民党二階派の会長を務める二階元幹事長は「多くの関係者にご心配とご迷惑をおかけしていることを心よりおわび申し上げる。捜査当局からの要請には真摯に協力し、事案の解決に向けて努力していく」というコメントを出しました。
Q.その後、実態解明はどう進んできたのか?
国会議員のうち、参議院議員の任期は6年で、3年ごとに半数が改選されますが、安倍派では、少なくとも参議院選挙があった2019年と2022年に開いたパーティーについては、改選となる参議院議員にパーティー券の販売ノルマを設けず、集めた収入を全額キックバックしていたことが関係者への取材でわかりました。
一方、衆議院議員は解散があり、選挙の時期が不規則なため、こうした運用は行われていなかったということです。
安倍派では、2019年に改選を迎えた参議院議員側は、こうした運用によって、収支報告書に収入として記載していない金額が膨らんだとみられるということです。
また、新たな疑惑も明らかになりました。
安倍派と二階派に所属するそれぞれ複数の議員側が、販売ノルマを超えて集めた分のパーティー収入を、そもそも派閥側に納入していないケースがあることが関係者への取材でわかったんです。
こうしたパーティー収入は、派閥側や議員側の政治資金収支報告書に収入として記載されていない疑いがあり、収支報告書に記載されていないパーティー収入の総額はさらに膨らむ可能性があるというのです。
そして、安倍派では、その総額が、おととしまでの5年間でおよそ1億円に上るとみられることが関係者への取材で新たにわかりました。
こうしたパーティー収入は、派閥側や議員側の政治資金収支報告書に記載されていない疑いがあるということです。
関係者によりますと、こうした議員側の中には派閥の幹部らも含まれていて、1000万円を超えるパーティー収入を派閥側に納入していないケースもあるということです。
安倍派では大半の所属議員側にパーティー収入の一部がキックバックされ、収支報告書に記載されていない資金の総額が去年までの5年間で、およそ5億円に上るとみられることがすでに明らかになっていて、安倍派で裏金化した資金の総額は、合わせて6億円規模に膨らむ疑いがあるということになりました。
また二階派では、販売ノルマを超えて集めた分のパーティー収入を、そもそも派閥側に納入していないケースの総額が、おととしまでの5年間でおよそ1億円に上るとみられることが関係者への取材で分かりました。
二階派の会長を務める二階・元幹事長の事務所や、事務総長を務めた経験がある平沢・元復興大臣の事務所も、パーティー収入の一部を派閥側に納入していなかったとみられるということです。
二階派では、所属議員側にキックバックされ、収支報告書に記載されていないパーティー収入の総額が、おととしまでの5年間で1億円あまりに上るとみられることがすでに明らかになっていて、派閥の収支報告書に記載されていない資金の総額は、2億円を超える疑いがあるということになります。
この問題をめぐって、二階派「志帥会」は、おととしまでの3年間に記載していないパーティー収入が1億3600万円あまりあったなどとして政治資金収支報告書を訂正しました。
また、派閥の会長を務める二階 元幹事長など国会議員と元国会議員あわせて7人の側への派閥からの寄付、あわせて6533万円も書き加えられました。
記事の冒頭でも記しましたが、この事件で特捜部は、政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で、1月19日に、安倍派と二階派の会計責任者について在宅起訴しました。
また、岸田総理が会長を務めていた岸田派でも、2020年までの3年間でおよそ3000万円の収入を派閥の政治資金収支報告書に記載していなかった疑いがあり、捜査を進めてきました。
岸田派の当時の会計責任者については罰金刑を求める略式起訴をしました。
関係者によりますと、岸田派の当時の会計責任者は特捜部の任意の事情聴取に対し、パーティー収入の一部を収支報告書に記載していなかったことを認めているということです。
そして、岸田派「宏池政策研究会」は、おととしまでの3年分の政治資金収支報告書を訂正しました。
このうち2020年には記載していないパーティー収入が896万円あったなどとしています。
岸田派は1月18日、「記載漏れは当時の会計担当者の帳簿作成上の転記ミスや会計知識の過誤などによって生じたもので、いわゆるノルマ超過分の還付を収支報告書から除外するなどの不適正な処理を意図したものではなく、事務処理上の疎漏によるものだ。深くおわびし、再発しないよう、今後は外部による監督を含め十分な管理体制を整備していく」というコメントを出しました。
Q.特捜部は、派閥の幹部らから任意で事情を聴いてきたが?
A.東京地検特捜部は、安倍派と二階派の事務所を捜索のあと、松野 前官房長官、高木 前国会対策委員長、世耕 前参議院幹事長、塩谷 元文部科学大臣、萩生田 前政務調査会長の安倍派の幹部5人から任意で事情を聴いてきました。
その後の関係者への取材で、松野 前官房長官ら幹部5人が、特捜部の事情聴取に対し、いずれも、派閥の政治資金収支報告書の不記載への関与を否定する趣旨の説明をし、「ノルマを超えた金額が議員側に還付されていることは知っていたが、パーティー収入の一部が派閥側の収支報告書に記載されていないことは知らなかった」などと話していることがわかりました。
一方、安倍派の会計責任者は収支報告書への不記載を認め、「収支報告書に記載しなければならないことはわかっていた」などと説明しているということです。
そして特捜部は、派閥の運営を取りしきる事務総長を務めた経験がある西村 前経済産業大臣や下村 元政務調査会長からも任意で事情を聴きました。
また特捜部が、二階派の会長を務める二階 元幹事長からも任意で事情を聴いたことが関係者への取材でわかりました。
特捜部は派閥の政治資金収支報告書にパーティー収入の一部が記載されなかった詳しい経緯などについて確認したものとみられます。    
Q.派閥の幹部やキックバックを受けていた議員の認識がどうだったかは、大きな注目点となったが?
A.捜査では、派閥の幹部、そしてキックバックを受け取っていた議員側が、収支報告書の記載内容をどの程度把握していたのか、そのやり取りの解明が最大の焦点になりました。
政治資金規正法は、パーティーなどの収入や支出を、主催した派閥などの政治団体が収支報告書に記載することを義務づけていますが、記載義務については、その団体の会計責任者やそれを補佐する人を対象にしています。
収支報告書の不記載や虚偽記載を具体的に指示するなど、積極的に関与して「共謀」した事実が認められた場合には、政治家本人も罪に問われることになりますが、そうしたケースは多くはありません。
政治家本人の立件には、一定のハードルがあるといえると思います。
この記事の冒頭でもお伝えしましたが、東京地検特捜部は松野 前官房長官ら安倍派の幹部7人や、二階派の会長を務める二階 元幹事長など派閥の幹部からも任意で事情を聴いてきましたが、いずれも派閥の会計責任者との共謀は認められないとして、立件しない判断をしました。
関係者によりますと、安倍派でパーティー収入の一部を裏金化する運用は、20年ほど前から続いていたとされていますが、おととし2022年のパーティーの前に、会長を務めていた安倍元総理大臣が「現金のやりとりは疑念を招く」などとして取りやめを提案し、派閥の幹部らで協議したということです。
しかし池田議員ら高額のキックバックを受けていた一部の議員から反対の声が上がったため、幹部らが再び協議し、運用が続いた経緯があることがわかっています。
特捜部は、派閥の運営を取りしきる事務総長経験者や「5人衆」と呼ばれる幹部7人から任意で事情を聴き、こうした経緯などついて確認を進めてきました。
しかし、幹部らはいずれも虚偽記載への関与を否定し「キックバックは知っていたが、派閥の収支報告書に記載されていないことは知らなかった」などと説明したということです。
また、会計責任者は「派閥の会長には、各議員のノルマやキックバックの金額を相談していたが、収支報告書の記載については会長や幹部らに相談していない」と説明しているということです。
特捜部は二階元幹事長からも認識について確認したということですが、いずれも会計責任者との共謀は認められないと判断したものとみられます。
一方、安倍派の所属議員側について特捜部は、1月7日、4800万円余りのキックバックを受けたとみられる衆議院議員の池田佳隆容疑者らを証拠隠滅のおそれがあるとして逮捕しましたが、19日、新たに、多額のキックバックを議員側の政治団体の収支報告書に記載していなかったとして、5000万円を超えるキックバックを受けたとされる大野泰正参議院議員を政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で在宅起訴し、4000万円を超えるキックバックを受けたとされる谷川弥一衆議院議員を略式起訴しました。
安倍派では大半の所属議員側が裏金のキックバックを受けていましたが、中でも特に高額だったのが池田議員、大野議員、谷川議員でした。
特捜部の判断の基準の1つになったとみられるのが金額です。
かつては「1億円」の不記載や虚偽記載が検察の立件ラインとされてきましたが、その基準は下がってきていて、実際に、おととしには、薗浦元衆議院議員がパーティー収入など4000万円を超える虚偽記載などの罪で略式起訴されたほか、2020年には「桜を見る会」をめぐる問題で、安倍元総理大臣の秘書がおよそ3000万円の収支を記載しなかったとして略式起訴されました。
今回、3人の議員はいずれも4000万円を超える裏金のキックバックを受けていたとされ、略式起訴された岸田派の元会計責任者や二階・元幹事長の秘書の虚偽記載の金額は3000万円余りでした。
特捜部は、過去の事件との公平性などを考慮し、3000万円を一定の基準にして今回の刑事処分を判断したものとみられます。
Q・19日以降、安倍派「5人衆」はどう発言?
A.安倍派の萩生田 前政務調査会長は22日、記者会見し、パーティー券の販売ノルマを超えて集めた収入など2700万円余りを政治資金収支報告書に記載していなかったことを明らかにして陳謝しました。
そして、これまでに支出したおよそ955万円の使いみちについては、国会議員や外国の要人、マスコミ関係者などとの会合費や、海外に出張した際の活動費だと説明しました。
萩生田氏は「派閥事務局から収入・支出ともに記載を禁じられていた。会計に関することは詳細まで把握していなかったが、積極的に把握と指導に努めるべきだった。大変反省している」と述べました。
世耕 前参議院幹事長は19日、記者会見で、2018年からの4年間でおよそ1540万円のキックバックを受けて政治資金収支報告書に記載していなかったと明らかにし、「政治資金の管理については秘書に任せきりの状況となっていた」と陳謝しました。
安倍派事務総長の高木 前国会対策委員長はコメントを発表し、おととしまでの5年間で派閥から1019万円のキックバックを受け、政治資金収支報告書に記載していなかったと明らかにしました。
元事務総長の松野 前官房長官はコメントを発表し、平成30年から5年間で、自身の資金管理団体において、派閥からの寄付あわせて1051万円分が不記載になっていると明らかにしました。
元事務総長の西村 前経済産業大臣は19日、記者会見で、派閥側から議員側へのパーティー収入のキックバックについて「歴代会長と事務局長との間で、長年、慣行的に行われ、私たちは関与することはなかった」と釈明しました。
また、2022年までの5年間で100万円のキックバックを受けていたことを明らかにした上で、裏金などの目的ではなかったと説明しました。
Q.今回の問題では、12月、官房長官ら安倍派の4閣僚が交代という異例の事態となった。人事をどう見たか?
A.12月14日の人事は、何よりも安定性を重視したと言えますが、体制を立て直すのは、そう簡単ではないと思います。
そして、必ずしも政権側が思い描いたとおりに人事が進んだとは言えません。
政府内では当初、安倍派の政務三役全員を代える案もありましたが、安倍派から強い反発の声があがりました。
「一連の問題に関与していない若手まで代えるのはおかしい」(安倍派内)
結果として安倍派の4閣僚・5副大臣は全員交代の一方、政務官の交代は1人となり、岸田総理は「一人一人の意向や事情を勘案した上で判断をした」と説明しました。
岸田総理には、政治資金問題に厳格に臨む姿勢を示したい思いの一方、最大派閥の安倍派とは対立を避けたいという判断もあったとみられます。
Q.4閣僚の交代人事、より具体的には?
A.閣僚の人事では、岸田総理は12月14日、松野官房長官や西村経済産業大臣ら安倍派の4人の閣僚を交代させ、後任に▽岸田派の林官房長官▽無派閥の齋藤経済産業大臣▽麻生派の松本総務大臣▽森山派の坂本農林水産大臣を起用しました。
この人事で、4人いた安倍派の閣僚が1人もいなくなりました。
新閣僚は、いずれも安倍派以外の派閥か派閥に所属していない閣僚経験者で、うち3人は、9月の内閣改造で閣外に出たあと、わずか3か月で呼び戻された形です。
閣僚として記者会見や国会審議をこなし、不祥事などを抱えていないと確認できていることもポイントで、政府関係者はこう話しています。
「即戦力で選んだという、ひとことに尽きる」(政府関係者)
Q.ほかの人事はどうなったのか?
A.自民党では、萩生田政務調査会長、高木国会対策委員長、世耕参議院幹事長も辞表を提出し、安倍派の「5人衆」と呼ばれる有力議員がいずれも閣僚や党幹部の役職を退きました。
安倍派の幹部が政権中枢から外れ、政府からすると窓口役がいなくなった形です。
ある政権幹部は政府・自民党内の調整が難しくなるのではないかと不安をのぞかせていました。
そして12月22日、党幹部の後任人事では、政務調査会長に渡海 元文部科学大臣を起用。
また、国会対策委員長には、浜田 前防衛大臣が起用されました。
岸田総理としては、安倍派の4人の閣僚らを交代させたのに続き、党の要職にいずれも無派閥のベテラン議員を起用して体制の立て直しを図り、2024年の通常国会に臨みたい考えです。
Q.人事以外に、岸田総理はどう対応?
岸田総理は12月6日、記者団に対し、「まずは政策集団のパーティーは、党として信頼回復に向けての取り組みを明らかにするまでは開催を自粛すること、年末年始の派閥の行事についても自粛することを確認した」と述べました。
さらに、7日、岸田総理は、総理大臣と党総裁の間は、より中立的な立場で国民の信頼回復に努めたいとして、みずからが会長を務めていた岸田派「宏池会」を離脱しました。
そして岸田総理は13日夜、記者会見を行い、14日に人事を行う意向を表明。
その際には、こう発言していました。
「国民から疑念を持たれるような事態を招いていることは極めて遺憾だ。国民の信頼なくして政治の安定はありえない。政治の信頼回復に向けて自民党の体質を一新すべく先頭に立って戦っていく」
「政治改革を求める国民の厳しい声に真摯に耳を傾けて、党所属の議員とひざ詰めの議論を集中的に進めていく」
「国政に遅滞を来すことがないよう全力を挙げなければならない。速やかに人事を行うことが適切だと判断した。国民の信頼回復のため『火の玉』となって自民党の先頭に立って取り組んでいく」
そして、年が明けて、自民党は、派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、再発防止策や派閥のあり方などを議論するため「政治刷新本部」を設置し、1月11日、初会合を開きました。
冒頭、本部長の岸田総理大臣は「国民の厳しい目、疑念の目が注がれており、自民党をめぐる現在の状況は極めて深刻という強い危機感のもと、一致結束して事態に対応していかなければならない」と述べました。
その上で「私自身、最優先、最重点の課題として取り組みたい。信頼回復のため、日本の民主主義を守るためには自民党がみずから変わらなければならない」と述べ、党改革に全力で取り組む決意を示しました。
自民党の「政治刷新本部」は38人で構成。
岸田総理大臣が本部長を務め、麻生副総裁と菅前総理大臣の総理大臣経験者2人が最高顧問に就きました。
派閥ごとの内訳は、最大派閥の安倍派が10人で、麻生派が3人、茂木派が7人、岸田派が5人、二階派が2人、森山派が1人となっています。無派閥は派閥を離脱した岸田総理大臣を含め10人です。
中間的な取りまとめに向けては、政治資金の透明性を高めるため政治資金規正法を改正し、◇収支報告書にパーティー券の購入者を記載しなければならない金額を引き下げることや、◇虚偽記載があった場合の罰則強化も打ち出したいとしています。
そして岸田総理は、党内で無派閥の菅前総理大臣らが派閥の解消を主張する一方、人材育成などの観点から解消に否定的な意見も根強くある状況を踏まえ、派閥の役割や機能などについて丁寧に意見集約を進めていく構えでした。
Q.そうした中で、岸田総理が18日夜、「岸田派の解散」検討を突然、表明したということか?
A.そうですね。
岸田総理は記者団に、こう述べました。
「宏池会=岸田派の解散についても検討している。政治の信頼回復に資するものであるならば、そうしたことも考えなければならない」
岸田総理は、みずからが会長を務めていた岸田派を解散する意向です。
また、ほかの派閥にも同様に解散を求める考えはあるか問われたのに対し、「とりあえず、われわれとして信頼回復のためにどうあるべきか考えている」と述べました。
そして岸田派は、23日午後、岸田総理の意向を踏まえ解散することを正式に決めました。
Q.一方で野党側のこれまでの対応は?
A.国会会期末の12月13日、立憲民主党は、岸田内閣に対する不信任決議案を衆議院に提出しました。
決議案では「国民の内閣に対する信頼は完全に失墜した。岸田内閣は国民の声を聞く力も政策を決定し遂行する能力もない。国政の停滞は許されず、内閣はただちに総辞職すべきだ」としています。
岸田内閣に対する不信任決議案について、野党各党の国会対策委員長らが会談。
立憲民主党が賛同を呼びかけ、日本維新の会、共産党、国民民主党、れいわ新選組、社民党と、無所属の議員でつくる会派「有志の会」は決議案に賛成する考えを示しました。
このあと衆議院本会議で採決が行われ、決議案は自民・公明両党などの反対多数で否決されました。
野党側は、立憲民主党、日本維新の会、共産党、国民民主党、れいわ新選組などが賛成しました。
野党側は、岸田総理大臣や、安倍派と二階派の幹部らにも説明責任を果たすよう引き続き求め、通常国会で厳しく追及する方針です。
また、立憲民主党は1月18日、「政治改革実行本部」を開き、政治資金収支報告書に虚偽記載などがあった場合、会計責任者だけでなく議員本人も処罰の対象にするとともに、収支報告書にパーティー券の購入者を記載しなければならない金額を「20万円を超える」から「5万円を超える」に引き下げるなどとした政治資金規正法の改正を目指す方針を確認しました。
泉代表は21日、派閥からキックバックを受け、収支報告書に記載していなかった議員の証人喚問を引き続き求めていく考えを示しました。
「数千万円の裏金がありながら、今になって公表して何食わぬ顔で過ごしている議員もおり、自民党の裏金体質を絶対許してはならない。国民の声を高めてルール違反の議員を国会から一掃することが必要だ」
「自民党自身が事実上何もせず、派閥の解体に話をすり替えようとしているのはけしからん話だ。すべての裏金議員は議員を辞めるとともに、岸田派でも3000万円の不記載が分かったわけだから岸田総理大臣は辞任に値する」
Q.岸田政権は、このまま持ちこたえられるのか?
A.東京地検特捜部による強制捜査が政権へのさらなる打撃となるのは間違いありません。
今後の政権運営の道のりは非常に険しいと思います。
強制捜査より前のことですが、12月13日、岸田総理は、記者会見で声を詰まらせる様子が何度かみられました。
政府関係者は総理の思いがこもっていたと話していましたが、裏を返せば危機感のあらわれとも言えると思います。
一連の政治資金をめぐる問題も背景に、12月のNHKの世論調査では、内閣支持率が2012年の政権復帰以降、最低となりました。
最新の1月は、12月の調査より3ポイント上がって26%でしたが、低迷は続いています。
永田町で取材をしていますと「政権はいつまで持つのか」という話題を耳にするようになりました。
一方で、自民党内には「疑惑の目は党全体に向けられ、岸田総理を引きずり降ろしたところで、事態は改善しない」との声もあります。
野党側は「岸田政権の正当性は失われ、すでに機能も停止している」と批判を強めていて、検察による捜査の行方もみながら、2024年1月26日に召集される通常国会で攻勢をかけていく構えです。
Q.派閥の是非をめぐる議論は、どうなっていくのか?
A.検察から強制捜査を受けた安倍派や二階派については、岸田総理の「岸田派の解散」発言もあり、それぞれの派閥内から、解散せざるを得ないという声が相次ぎました。
「岸田総理が完全に流れを作った」(安倍派・二階派の各派閥内)
そして19日午後、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件を受けて「志帥会」=二階派の会長を務める二階・元幹事長は記者会見し、派閥を解散する意向を表明しました。
さらに最大派閥の安倍派も19日午後、議員総会を開き、派閥を解散する方針を決めました。
その一方で、党内第2派閥の麻生派や第3派閥の茂木派では、不快感を示す議員が相次ぎました。
「適切に対応していた派閥まで解散する必要はない」(麻生派・茂木派の各派閥内)
岸田政権は、岸田派に加えて、麻生副総裁や茂木幹事長といった、ともに派閥を率いてきた幹部が政権中枢を担い、複数の派閥によって支えられてきました。
麻生氏や茂木氏は、派閥の解消に慎重な考えだとみられていたことから、今後の政権運営に影響が及ぶことも予想されました。
そして、麻生派を率いる麻生副総裁は現時点では派閥を解散するつもりはないと岸田総理大臣に伝えました。
麻生氏は21日夜、都内のホテルで岸田総理と会談し、刷新本部での今後の議論の進め方などをめぐって意見を交わしています。
また、派閥を解散するかどうかが注目されていた茂木派は、会長の茂木幹事長が存続させる意向を固め、関係者に伝えました。
森山派は、25日にも取りまとめを行う方針の、自民党「政治刷新本部」の「中間的な取りまとめ」の内容や、世論の動向などを踏まえ、対応を判断する方針です。
派閥のあり方については、「政治刷新本部」で議論が行われています。
明らかになった中間とりまとめの案では、派閥について「カネと人事から完全に決別する」として、政治資金パーティーの開催を禁止するとともに事務所を閉鎖するなどとしています。
一方、政治資金の透明化に向けて与野党双方からは、収支報告書のデジタル化や、外部監査の義務づけ、それにパーティー券の購入者の名前などを収支報告書に記載しなければならない金額の引き下げや、悪質な会計処理があった場合、政治家も責任を負う制度の導入などが論点として挙がっていて、今後検討が進められる見通しです。
●自民派閥解散めぐり…岸田首相と麻生副総裁「手打ち」の裏の利害と打算 1/23
唐突に宏池会(岸田派)解散を打ち出した「岸田の乱」で注目されたのが、派閥存続を主張する麻生副総裁と岸田首相の関係悪化だ。岸田政権はここまで、麻生派、茂木派、岸田派の主流3派が土台となり、麻生氏が岸田氏の後見役かつ相談相手になってきた。裏金問題が火を噴いた昨年12月には3日連続で会談。安倍派閣僚一掃後の後任人事も麻生氏が仕切ったと囁かれるほどに頼ってきた。
ところが、今回の派閥解散については、事前に相談せず、麻生氏は寝耳に水。報道によれば、18日夜の岸田氏の解散発言直後、麻生氏は岸田氏に電話し、「私は派閥をやめませんから」と伝え、岸田氏は「うちの派に問題がある。麻生派は麻生派で」と応じたという。さらに、麻生氏は周囲に「岸田はもう総裁選には出ないんだな」と話したらしい。
翌19日に2人は党本部で向き合い、麻生氏はあらためて派閥存続の意向を岸田氏に伝えた。そして21日の日曜夜、2人は都内のホテルで2時間の会食。岸田氏の呼びかけで行われ、麻生氏に相談することなく宏池会解散を表明したことを陳謝したという。
「手打ちしたな、と思いましたよ。岸田首相が麻生さんと2人だけで一献。選んだ場所が『山里』ですからね」と言うのはベテランの政界関係者。ホテルオークラの日本料理店「山里」は過去に政界の重要局面で実力者が密議をこらした場所。昼間に茂木幹事長を含めた3人で会談する際も使われ、岸田氏・麻生氏2人だけの夜の会談でも使われている。
「派閥解散宣言に麻生さんが激怒したのは間違いない。岸田首相が初めて自分の意に沿わないことをやったわけだから。しかし、だからといって『岸田降ろし』をしても麻生さんにプラスはない。結局、今後の政局を考えたら、今まで通り2人が手を組んだ方が権力を掌握し続けられる。そんな利害の一致があったのだろう」(前出の政界関係者)
狐と狸の化かし合い
自民党の政治刷新本部が22日までにまとめた原案では、「いわゆる派閥の解消」をうたうものの、政策集団としてのグループ存続は容認。派閥の全面廃止には踏み込んでいない。岸田氏も刷新本部の役員会で、他派閥の今後については個別の判断に委ねると強調したという。前夜の「手打ち」の結果だろう。
もっとも、岸田氏と麻生氏の信頼関係“復活”かというとそうでもない。
「岸田首相は自分が総裁、つまりトップだという強烈な自負がある。それは副総裁の麻生さんに対してもです。宏池会解散で麻生、茂木両氏をアッと言わせてやろう、という気持ちはあっただろう。麻生さんも自分をコケにした岸田首相を苦々しく思っているはずです」(前出の政界関係者)
狐と狸の化かし合い。利害と打算にまみれている。
●自民・小泉進次郎氏「派閥からの決別、議員一人ひとりが」 1/23
自民党・小泉進次郎氏発言
(自民党政治刷新本部が議論してきた政治改革の中間取りまとめ案について)派閥から人事と金を切り離したという決断がいかに自民党の運営にとって大きいことか。派閥を残すという判断をするところがあったとしても、人事と金が切り離されるため、力を十分に発揮できない。
派閥は解消されても政策集団だとかグループだとか看板のかけかえで残ることになってはあまり意味がない、という声があることに対しては、地道な説明が必要だ。
(刷新本部長を務める)岸田文雄総裁からも「今日(の中間取りまとめ)は通過点だ」という話があった。今回明記したことを具体的に進めていけるかどうか、自民党の議員一人ひとりが見ていかなければいけない。(具体化が)出来なかった時は、今も既に信頼が失われている部分が大きいが、さらにその信頼を失うことになる。
●派閥解消巡り溝深く 事件関与の処分感情強し 政権与党の土台に亀裂 1/23
派閥のパーティー収入不記載事件を受けた自民党改革の中間取りまとめ案が事実上了承された。ただ、派閥の全面解消に踏み込まなかった内容を巡っては評価が分かれ、「中途半端」「分かりにくい」などと批判される余地を残した。事件への関与が疑われた幹部らの処分を求める声も相次いでおり、政権与党の土台は亀裂が生じている。
「派閥ありきの党から完全に脱却する。派閥からお金と人事の機能を切り離し、いわゆる派閥を解消する」。岸田文雄首相(自民総裁)は23日に開かれた党政治刷新本部の会合後、記者団にこう強調した。解散を決めていない麻生派(志公会)、茂木派(平成研究会)、森山派(近未来政治研究会)についても「党の新たなルールに従ってもらう。派閥ではなくなる」と語った。
もっとも、事件の温床となった派閥は政治資金規正法上、政策研究目的の政治団体との位置付けだが、中間取りまとめ案は政策集団の名目での存続は容認している。
無派閥議員の受け止めはさまざまだ。小泉進次郎元環境相は一定の評価を示し、記者団に「派閥の権力の源泉である人事と金から完全に決別というのは非常に重い」と述べた。菅義偉前首相は党内で派閥存廃の判断が分かれたことについて「党としてやはり方向性は一体であった方が国民から理解される」と言及。石破茂元幹事長は「派閥の数が減るだけだと何が変わるのかよく分からない」と答えた。
党幹部の一人は「全ての派閥が一度、完全に解散するのが一番分かりやすい」と指摘。その上で玉虫色の結論となったことに関して「(事件と直接的な関わりがなかった)派閥が『俺たちは関係ねぇ』と言うのも分かる」と語った。
一方、党内議論では事件が直撃した安倍派(清和政策研究会)の有力者「5人衆」らの処分を求める声が根強い。
茂木敏充幹事長は23日の記者会見で「刑事責任とは別に政治責任があるという意見がある。政治責任の在り方についても結論を得ていく必要がある」と述べた。
●政権の要・麻生氏との亀裂懸念 「岸田派解散」がもたらす暗雲 1/23
自民党政治刷新本部は、派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件を受けて、党改革の中間とりまとめ案を事実上了承した。政治資金については法改正の内容を明記せず、派閥解散も政策集団への「衣替え」にとどまる可能性がある。26日の通常国会召集前に取り急ぎまとめた格好で、抜本改革にはほど遠い内容となった。
中間とりまとめ案で、派閥のあり方については、全廃には踏み込まなかった。
「俺たちは変わるんだという姿を見せないと駄目なんだ。若手議員たちは『自民党は何も変わらない』と地元でたたかれ続けている。どうやって次の選挙を戦うかも見えない」
岸田文雄首相は周辺に、珍しく声を荒らげつつ、岸田派解散を突然表明した理由について、こう説明した。
「派閥がカネやポストに介入することはあってはならない。全員が刷新本部で決める新たなルールに従ってやっていくんだ」とも述べ、派閥の解散そのものより、人事や政治資金に介入させないことを重視する考えを示した。
首相がいらだつのは、こうした党改革を進めるためリーダーシップを発揮しつつ、政権基盤を担ってきた麻生太郎副総裁が会長を務める麻生派、茂木敏充幹事長が率いる茂木派との「3派連合」を維持することは容易ではないためだ。
首相は21日、東京都内のホテルの日本料理店で、麻生氏と約2時間にわたり会食した。首相の意向で日曜夜に急きょ会食が設定されたのは、岸田派解散について、麻生氏に理解を求める必要があったからだ。
麻生氏は岸田派解散表明直後の18日夜、首相に電話し「立件された者がいないのに派閥を解散するのは理屈が立たない。派閥はやめない」と語り、麻生派は解散しない意向を伝えた。首相は麻生氏に根回しをしておらず、両者の亀裂が懸念された。
首相にとって麻生氏は政権の要だ。2回目の挑戦だった2021年の党総裁選での勝利は、麻生氏から支援を取り付け、茂木派を含む3派連合による多数派を形成したことで実現した。
それでも、首相が麻生氏の反発が必至の岸田派解散に踏み切ったのは、政権運営が行き詰まっているためだ。報道各社の世論調査で内閣支持率は低迷しており、裏金事件でさらに打撃を受けた。岸田派の元会計責任者も立件され、背水の陣の首相にとって派閥解散は、危機を乗り切るための苦肉の策だった。ただ、全派閥に解散を強制せず「各派閥の判断」にとどめたのは、麻生氏への配慮ともいえる。
麻生派内には自派の数の力を借りて総裁選に勝利した首相が、率先して派閥解散を打ち上げたことへの憤りが渦巻く。「誰のお陰で首相になれたと思っているのか」(閣僚経験者)、「最近は大事なことほど相談してこない」(派閥ベテラン)などと不信感は高まっている。
首相は麻生派、茂木派との関係について周囲に「これからも当然連携する」と語るが、先行きは見通せない。茂木派も現状では派閥解散に慎重とされ、麻生派と足並みをそろえるとみられる。
首相は23日の刷新本部の会合で「政治改革には終わりがない。これからもさまざまな議論を続けていかなければならない」と述べ、同本部で選挙制度のあり方などの議論を続ける意向を示した。
裏金事件を受けて「党改革の旗振り役」の姿を示し続けたい首相。これに対し「守旧派」として世論の厳しい目にさらされながらも、派閥を解散せず、派内の結束を高めていく意向の麻生氏。異なる道を歩み始めた首相と麻生氏の溝はさらに深まるリスクをはらんでいる。

 

●石川県内 半数余が「自主避難所」中長期的な医療支援など課題 1/24
能登半島地震の発生から3週間余りがたつ中、石川県内では、いまも1万人余りが避難所で生活を続けていますが、被災した13の市と町にある300か所余りの避難所のうち、自治体ではなく、地域の人たちがみずから運営する「自主避難所」が、半数余りにのぼることが、県への取材で分かりました。「自主避難所」は、公的な支援などが行き届きにくく、中長期的な医療支援の態勢に懸念があり、どのように支えていくのかも課題となっています。
災害時に、各自治体は災害対策基本法に基づいて、建物の耐久性や立地条件などをもとに、学校などの公共施設を「指定避難所」として指定し、自治体の職員を派遣して運営にあたっています。
一方、山間地で避難が難しかったり、指定避難所に人が殺到して入れなかったりした場合などに、地域の人たちが「自主避難所」を設けて運営するケースもありますが、災害の発生直後、行政が場所を把握できないうえ、自治体の職員が派遣されないことが多く、公的な支援などが行き届かないことが問題となっています。
今回の地震では、1月21日の時点で、被災した13の市と町に合わせて327か所の避難所が開設されていましたが、このうち半数以上にあたる175か所が「自主避難所」だったことが県への取材で分かりました。
特に輪島市では、1月11日の時点で、167か所の避難所のうち8割を超える134か所が「自主避難所」で、中には山間地の電気が通じていない農業用ハウスなどが「自主避難所」になっているケースもありました。
NHKがこうした「自主避難所」に取材したところ、災害の発生後、しばらくの間は、
食料品や飲料水などの支援物資が全く届かなかったり、衛生状態が極端に悪化して、新型コロナなどの感染症がまん延したりしている事例が、複数確認されました。
現在は支援物資が届くようになってきているものの、一時、インフルエンザの感染者が10人以上出た場所があるなど、中長期的な医療支援の態勢に懸念もあり、こうした「自主避難所」をどのように支えていくのかも課題となっています。
「自主避難所」にも適切な支援を
内閣府によりますと「自主避難所」は、災害時に自治体が開設する「指定避難所」や支援が必要な人たちのための「福祉避難所」などと異なり、災害対策基本法などで位置づけられていません。
能登半島地震の被災地では避難者数が非常に多いことから、住民たちが自主的に集まって避難所として運営されるようになったとみられますが、「指定避難所」などと異なり食料や飲料水、毛布など避難生活に必要な物資の備蓄が十分でなく、自治体などからの支援が行き届かないおそれがあります。
内閣府では「自主避難所」も災害救助法で国が費用負担する避難所になるとして、県や自治体に対し適切な支援を行うよう呼びかけています。
専門家 “行政は自主避難者の状況や事情くみ取る努力必要”
防災心理学が専門で兵庫県立大学の木村玲欧教授は、自主避難所について、「今回の災害でも、山がちなところなど交通の便の悪さや、体調が悪いなどの理由で自主的に避難している人がたくさんいるが、さまざまな事情があるので、いたずらに集約ができるわけではない。自主避難している人たちの状況や、何を必要としているのかなどは行政からは見えにくいので、今後もローラー作戦などで、事情を細かくくみ取り続ける努力が必要になってくる」と指摘しています。
そのうえで、「健康への影響などを考えると、中長期的には自主避難所にとどまり続けることは難しいので、いずれは仮設住宅などに移動することが必要となってくる。行政には、被災者の方々と対話を続けながら今後の道筋を示していく必要が出てくる」と訴えています。
●「法律違反を犯した議員に国会議員の資格はない。全員、議会から追放すべき」 1/24
安倍派の裏金問題では、同派幹部たちが「(キックバックは)会長案件だった」と責任転嫁し、逃げ切りを図ろうとしている。特捜部も「幹部の立件見送りを検討」と報じられた。“大山鳴動してネズミ2〜3匹”では政治腐敗はなくならない。自民党大物OBが、政治家の“劣化”に怒りの声をあげた。
「政治資金収支報告書に書くと法律で決まっているのに、平気で法律違反を犯した議員に国会議員の資格はない。全員、議会から追放すべきだ」
そう声をあげるのは自民党総務会長や自治大臣、通産大臣を歴任し、現在も同党東京都連最高顧問を務める深谷隆司氏だ。88歳の大物OBの「喝」は痛烈だ。
「岸田(文雄)総理は政治刷新本部をつくって政治改革だなんだと言っているが、そうじゃないだろう。今回の問題は、派閥のパーティー収入は政治資金収支報告書に書くと決められているのに、それを書かずに裏金にしていた。明確な法律違反だ。こんなチンケなやり方で金を手にしようとするなど天下国家を語る政治家のすることではない。私はTOKYO自民党政経塾の塾長を2018年務めていて、政治家志望の人たちに『君たちが政治家を志望するなら、国のために身命を賭する覚悟を持て』と教えてきた。国のために命を投げ出す覚悟と、安倍派の議員のみみっちく金を掠め取る姿は相容れない。長年、国家のために命をかけてきた政治家として、こんなケチ臭いことをやって政治不信を招くなどガマンができない。政治家が法律や制度に違反するのであれば、国会議員でいる資格はない。そんなヤツはどんどん摘発して議会から追放すべきなんです」
法律を破った責任を取れ
キックバックを受けた安倍派の議員たちは、「政治資金収支報告書に記載しないように派閥から指示された」と釈明し、収支報告書の訂正で責任を回避しようとしている。深谷氏はそうした姿勢を一刀両断にする。(以下、「 」内はすべて深谷氏)
「派閥のトップの立場からすれば、(キックバックの金額を派閥の収支報告書に記載すると)A議員にいくら、B議員にいくら渡したという差がわかってしまう。だから隠そうということになる。受け取る議員のほうも、派閥に言われて、それは好都合だと自分の報告書に載せない。しかし、『派閥に言われたから』というのは言い逃れにすぎない。法律で記載しなければならないと決まっているのに、法律より派閥の指示を優先したということだ。当然、その責任は政治家自身が負わなければならない。この事件が発覚して、慌てて政治資金収支報告書を訂正した者もいるというじゃないか。5000万円近いキックバックをもらったうえに証拠隠滅を図った池田佳隆が逮捕されたが、少なくともあと2〜3人は立件されるだろう。でも、その他の議員たちも、事件が発覚し、世間でこれだけ騒がれてから収支報告書を書き直して誤魔化そうなんてまともな政治家のやることとは思えない」
深谷氏は1972年総選挙で初当選。自民党では河野一郎派を皮切りに、その流れを汲む中曽根派、渡辺派、山崎派に所属し、山崎派では会長に次ぐ顧問として派を支えた。2012年に引退。派閥政治の裏表を熟知する政治家だ。
「昔は派閥からのキックバックなんて考えられなかったね。自民党の派閥は、会長を総理総裁にする目的で集まった。派閥の会長は、天下を取るために大勢の議員を集めなければならない。当時は今のように政治献金の規制が厳しくなかったから、派閥の会長は多額の献金を集める力を持っていて、会長と有力な幹部たちが資金を集めて若手の資金の面倒を見た。だが、規制が厳しくなると、やむなくパーティーを開くようになった。山崎派時代は顧問という会長に次ぐ立場で派閥の資金を支えた。1枚2万円の派閥パーティーのチケットを500枚くらい引き受け、それとは別に自分でもパーティーを開いて、毎年2000万円くらい派閥に納めていた。それでも、その頃は、パーティーでは2万円の会費にふさわしい料理や酒を出せ、少なくとも、会が終わった時に食べ切れずに料理が残るくらいにしろ、と指示していた。支援者に喜んでもらうことで地盤が固まる。それがだんだん利益優先になり、今では飲食なしで2万円を取るパーティーも多い。これでは支持の拡大など望めない単なる金集めです。そのうえ、派閥のメンバー全員にパーティー券を売らせるようになり、ノルマを超えた分をキックバックするみたいなことが始まった。ノルマ以上に売った分をコソコソ自分のものにする“中抜き”とかみみっちいことが横行しているという。本当に政治家が小さくなったなと」
刷新本部は「議論のすり替え」
岸田首相は岸田派の解散を検討し、「政治刷新本部」でも、政治資金規正法の改正や派閥解消の議論が出ている。深谷氏は、それは問題のすり替えだと指摘する。
「リクルート事件の後、政治改革の基本ができた。規制も強化した。しかし、それが平気で破られるのは政治家の劣化が原因だと思う。決められた制度、法律を守れていないのはなぜかを反省し、謝罪するのが先でしょう。二番煎じの改革議論で問題をすり替えるべきではない。派閥解消論も出ているが、そもそも派閥の役割は、トップが多くの議員の意見を聞いて、政策を議論し、天下取りを目指すことにある。若手議員にとっても、自分の政策を直接国政に反映するのは難しいから、政策集団の中で提案することで国会に出してもらうわけです。それは悪いことではない。決してキックバックするための組織ではなかった。それが金を集めるための集団となっているという悪循環を断ち切らないといけない」
岸田政権はいまや風前の灯火。自民党の危機を乗り切り、国民の信頼を取り戻せる次のリーダーは現われるのか。
「世論調査では小泉進次郎、石破茂、河野太郎のいわゆる小石河連合の人気が高いようだが、3人ともまだまだ総理のタマじゃない。石破さんは党内野党の立場で物を言うけれど、党内の支持はない。進次郎さんも、賑やかなパフォーマンスは得意だけど、何をしたいのかよくわからない。お父さんの小泉純一郎氏に『50歳まで(総裁選に)立ってはならない』と言われているそうだが、親が出てくるようじゃまだまだ一人前とは言えない。河野さんは、若手で政策調査会のメンバーだった時、各部会長から上がってくる政策に、先輩でも構わずヒステリックに批判していた。岸田さんの他に総裁を任せられる候補がいないこともまた、自民党の窮状を表わしていると思います」
自民党の議員たちに、88歳の長老の箴言を“聞く力”は残っているのか。
●裏金事件「安倍派5人衆」責任追及の声高まるも…自民執行部「検討」どまり 1/24
さすがに自民党内でも、裏金事件で立件を免れた安倍派幹部「5人衆」への風当たりが強まっている。5人衆は東京地検特捜部の捜査が一段落した19日以降、派閥から還流された金額を相次いで公表。釈明しているが、裏金づくりの経緯や関与など踏み込んだ説明はゼロ。秘書に責任を転嫁する発言を重ね、離党や議員辞職も否定している。
党内からは「何らかの責任をとることが必要だ」という声が強まり、23日の政治刷新本部でも「党として処分すべきだ」など追及の声が相次いだ。中間とりまとめ案には前日の骨子段階にはなかった「政治責任に結論」との文言が盛り込まれ、安倍派幹部の説明と処分を求める党内の意見が反映された。
しかし、党執行部は自発的な対応を促すのみ。具体的な動きのない場合の処分は「検討」どまり。岸田首相は刷新本部の会合後、5人組を処分する考えを記者団に問われ、「政治責任のあり方については、党としても対応を考える」と語るにとどめた。
●自民・高木氏、5年で1019万円の還流 「記載漏れ」使途明言せず 1/24
自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、清和政策研究会(安倍派)事務総長の高木毅・前国対委員長(衆院福井2区)は、裏金のキックバック(還流)が2018〜22年の5年間で1019万円にのぼっていたと、自身のホームページで明らかにした。政治資金収支報告書の「記載漏れ」との認識を示しており、報告書を訂正する方針だ。
裏金の還流は、高木氏が代表を務める資金管理団体「21世紀政策研究会」で受けていたという。使途は「全て政治活動費として政治資金収支報告書に記載できる性質のもの」「不正な支出はない」とした。具体的な使途は明らかにしていない。
高木氏の弁明について、裏金問題を告発した神戸学院大の上脇博之教授は「収入を記載していない時点で裏金であり、悪質だ。論点をずらして説明をごまかしている。この説明だけで済ませることはできない」と話した。
安倍派は19日に総会を開き、解散を決めた。その後の記者会見で高木氏は自らの議員辞職を否定した。地元の自民党関係者の間にも、高木氏に説明責任を果たすよう求める声が出ているが、自民党県連は「今後の検討」としている。
●末松予算委員長が還流分不記載で辞任表明 岸田首相は陳謝 1/24
自民党の安倍派に所属していた末松信介参院予算委員長は24日、派閥のパーティー券収入のキックバック分不記載があったことを認め、予算委員長の辞任を表明した。
末松氏は「パーティー券問題、政治資金収支報告書のことで、大変大きな政治不信を招いていることを、清和会(安倍派)元議員の1人として、政治家の1人として、深く詫びを申し上げます」と述べた。
24日の予算委員会では、立憲民主党の杉尾議員が末松氏の辞任表明について「極めて遺憾であり重大な問題と言わざるを得ない」と述べ、岸田首相に事態の受け止めと、他の委員長ポストの扱いについて質した。
これに対し、岸田首相は「政治資金をめぐる問題で政策集団、自民党に対して厳しい目が国民から注がれていることを深刻に受け止め、強い危機感を感じるとともに、国民の皆様方にお詫びを申し上げなければならないと感じている」と陳謝した。その上で、委員長人事については「委員会の運営に影響が出ることを重く受け止めなければならないが、他の委員会についてどうするかは国会関係者等とも相談して対応すべき課題だ」と述べた。
●西村前経産相「精進する」連発 還付金受領、地元で釈明 1/24
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題で、安倍派から還付金100万円を受け取っていた西村康稔前経済産業相は24日、地元の兵庫県明石市で駅頭に立った。国民の政治不信を招いたと「深くおわび」するビラを配布。自身の責任には触れず、記者団には「精進する」と連発した。
午前6時半ごろから2時間弱、JR西明石駅でビラを配った。還付金は裏金ではないとしたほか、還付や政治資金収支報告書への不記載に関する指示も否定。秘書の判断だったとして「目が行き届かなかったことは反省」すると記した。
西村氏は、厳しい冷え込みに「寒さが心にもしみる。この思いを真摯に受け止めて精進する」と語った。
●西村康稔氏「裏金一切ない」ビラ配り 大物の反発…“岸田の乱”尻すぼみ 1/24
安倍派5人衆の1人で、事務総長も務めた西村康稔前経済産業大臣が「裏金は一切ありません」と書かれたビラを地元で配っていました。
「お騒がせしました」気温3℃のなか…ビラ配布
23日午前6時半ごろ、まだ日が昇りきらない兵庫県・明石駅でビラ配りをしていたのは、西村前経産大臣です。
西村前経産大臣「おはようございます、西村康稔です。お騒がせ致しました」
気温3.6℃のなか、通行人にビラを配り続けます。足早に過ぎ去る人もいれば、温かく迎える人もいました。さらに、大臣経験者の辻立ちにびっくりする人もいました。
西村氏「キックバックは還付金」正当性を主張
気になるのは、配られていた白い紙の中身です。
政治資金パーティー問題について、キックバックを「還付金」と呼び、釈明しているビラには「皆様へ 説明責任を果たし、初心に戻り、これまで以上に精進してまいります」「裏金は一切ありません」と書かれていました。
派閥側から受け取った100万円について、検察は立件を見送っています。19日に開いた会見で、西村氏は「私は秘書に対して常々『ノルマ分を売ればいい』と伝えていた。これら清和会からの還付金について、私自身は把握をしていない」と述べ、自ら正当性を主張しました。
そして23日、突然始めたビラ配りの理由について、西村氏は「政治不信につながる、招いたことを反省しながら、初心に戻って、もう一度しっかり頑張りたいと訴えさせて頂きました」と述べました。
大臣経験者のビラ配りに、地元の人は「今回、お金のことがあるので、大臣というか、西村さんはもっとやれる人なんで、こんなことでつまづいてほしくはないという気持ち」と話しました。
一方で、街の人からは「説明責任がある時にはしなかったくせに、自分たちが起訴されないと分かると、言い訳を言うのは見苦しい」「一般的にはみっともない、かっこよくないと思う」という声も聞かれました。
“岸田の乱”専門家が指摘「総理の戦略ミス」
西村氏がビラ配りを始めてから、およそ12時間後。
岸田文雄総理大臣「派閥ありきの自民党から、完全に脱却をいたします」
自民党の政治刷新本部が進めている中間とりまとめ案が23日、示されました。派閥が金や人事と決別することは明記されましたが、派閥の全面解消は盛り込まれませんでした。さらに、政策などが近い議員が集まる政策集団は存続を認める内容となっています。
麻生派や茂木派などは「政策集団」として認める内容に対し、次のような声が聞かれました。
岸田派 小野寺五典衆院議員「(政治団体として)解散というような話も意見出ていましたけど、それもほとんど何も記載されていないので、後ろ向きのような印象をみんな持ったと思います」無所属 石破茂元幹事長
「全廃ではないと、残るのもあるということであれば、派閥の数が減るだけということになる。そうすると、何が変わるのかよく分からない」
突如、解散を表明し、勝負に出た“岸田の乱”。
23日、宏池会は解散を決め、66年の歴史に幕を下ろしました。
政治ジャーナリスト・細川隆三氏は「岸田総理の戦略ミスがあった」と指摘します。
細川氏「党内世論、それから国民世論、そういったものをよく見て派閥を解散した方がいいんだという、どこでその切り札を切るかというタイミング、これが非常に大事だったと思うが、それを早く切りすぎてしまった」
「もしかしたら、岸田総理は自分が先陣を切って、そういう意思を示すことで、そういう(派閥解消の)空気を作ろうとしたのかもしれない。麻生副総裁や茂木幹事長からしたら『我々はちゃんとやっている。なぜ解散しなきゃいけないんだ』。だから、結果的に失敗だったと思う」
●自民派閥「解消」も、政策集団としての存続は容認−政治刷新本部 1/24
自民党の政治刷新本部は、23日の会合で提示した中間取りまとめ案に政策集団(派閥)の政治資金パーティーを全面的に禁止すると明記した。「派閥の解消」にも触れたが、政策集団としての存続は容認する内容となっている。ブルームバーグが関係者から文書を入手した。
岸田文雄首相は会合後、同本部の案について「派閥から資金と人事を切り離す。そのことによっていわゆる派閥を解消し、真の政策集団になってもらう」と記者団に説明した。解散を表明していない麻生、茂木、森山の各派についても新たにルールに従ってもらうとして、「いわゆる派閥ではなくなる」との認識を示した。
中間とりまとめ案は「派閥の解消と党のガバナンス強化」を柱の一つに掲げた。派閥について「本来の政策集団に生まれ変わらねばならない」として夏季や冬季に行っていた所属議員への資金提供を廃止するほか、派閥単位での人事の働き掛けを行わないこととした。岸田首相によると、本部の会合で同案の扱いについて一任されたという。近く開く総務会で正式決定する。
政治資金規正法違反で立件された安倍、岸田、二階の3派が解散する方針を先週表明したが、その後の世論調査でも内閣支持率は20%台の「危険水域」に落ち込んだままだ。岸田首相は今回の案で「いわゆる派閥はなくし、派閥ありきの自民党から完全に脱却する」とも述べたが、麻生派などが「政策集団」と称して存続することに国民の理解を得られるかどうかは不透明だ。
自民党内からも疑問を投げ掛ける声が出ている。石破茂元幹事長は派閥の扱いについて「残るのもあるということであれば派閥の数が減るだけということになる。そうすると何が変わるのかよく分からない」と指摘。船田元衆院議員も「純粋な政策集団に変えていくということだが、看板の付け替えのように思われるのが一番だめだ」と語った。
一方、同本部の最高顧問で派閥の解消を求めてきた菅義偉前首相は「これからが大事だと思う。これに基づいて行動できるかどうか」だと記者団に語った。石破、船田両氏はANN、菅氏はNHKが発言場面をそれぞれ放映した。
読売新聞が19日から21日に行った世論調査で、派閥を「解散するべきだ」と回答した人は61%で、「現状のままでよい」は4%、「改革した上で存続させるべきだ」は31%だった。
残る3派のうち、森山派は解散する方向で検討に入ったと共同通信が24日報じた。
●自浄能力に「期待しない」が7割以上 派閥については、6割が「解消すべきだ」 1/24
毎日の報道で食傷気味になりつつある「派閥」の問題。社会調査研究センター(SSRC・さいたま市)の調査によると、政治資金パーティーをめぐる事件について、自民党の自浄能力に「期待しない」との回答が74%に上り、「期待する」は15%にとどまった。自民党の派閥については「解消すべきだ」が63%を占めた。
1月21日にスマホを対象とした「dサーベイ」で実施した全国世論調査。能登半島地震で大きな被害の出ている石川県を対象地域から外して実施。全国の18歳以上の約6500万人から無作為に抽出した2052人が回答した。
岸田首相が岸田派の解散検討を表明したことについては「評価する」が45%で、「評価しない」の32%を上回った。多額のパーティー券収入を裏金化していた安倍派については「解散すべきだ」が74%に上り、「解散する必要はない」は10%にとどまる。岸田内閣の支持率は19%で、昨年11月以降2割を切る厳しい状況が続いている。不支持率は70%だった。
●裏金おとがめなしの安倍派5人組、言い訳と開き直りと沈黙 1/24
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、安倍派(清和政策研究会)の幹部「5人組」が政治資金規正法違反による立件を免れた19日以降、派閥から還流された金額などを公表し、釈明している。国民の政治不信を招いたことを陳謝する一方で、「秘書が報告しなかった」などと責任を転嫁するような発言を重ね、離党や議員辞職もしない意向を示す。党内からは安倍派幹部の処分を求める声が広がっている。
2728万円キックバック「詳細まで把握してなかった」
5人組は、岸田政権で政府や党の要職を担った萩生田光一前政調会長、世耕弘成前参院幹事長、松野博一前官房長官、高木毅前国対委員長、西村康稔前経済産業相。安倍晋三元首相の死去後、5人が中心となり派閥を運営してきた。
萩生田氏は2018年以降の5年間で2728万円の還流を受け、政治資金収支報告書に記載していなかった。元会計責任者が略式起訴された岸田派の不記載額約3000万円に迫る水準だ。22日の記者会見で「(スタッフから)おおむねの報告を聞く程度で、詳細まで把握していなかった」と釈明。還流分の不正使用もなかったと強調した。
「秘書の判断」「私は起訴の対象にならなかった」
世耕氏や西村氏も19日の会見で還流を知らなかったと説明。「秘書の判断」(西村氏)と、会計担当者に責任をなすりつけるような姿勢に終始。議員辞職の考えを問われ、世耕氏は「私は起訴の対象にならなかった」と開き直った。
不起訴が決まってからHPで「訂正する」
松野氏と高木氏は記者会見の場での説明を避けている。官房長官在職中、会見で裏金の認識を問われても「政府の立場」を理由に回答を拒み続けた松野氏は、不起訴となった19日、自身のホームページで、不記載の経緯と政治資金収支報告書を速やかに訂正する考えなどを表明しただけ。会見はいまだに開いていない。
安倍派が解散を決めた19日、現職の事務総長として会見に臨んだ高木氏は、自身の還流分などについては答えず。22日に記載漏れが1019万円だったと明らかにし、「いわゆる『裏金』と指摘されるような不正な支出はなかった」とのコメントを出しただけだ。
「党として処分すべきだ」が相次いだが
23日に自民党本部で開かれた政治刷新本部では、出席者から「党として処分すべきだ」などの声が相次いだ。岸田文雄首相(党総裁)は会合後、5人組や刑事責任を問われた議員を処分する考えがあるかを記者団に問われ「政治責任のあり方については党として結論を得ていきたい」と述べるにとどめた。
●岸田首相の頼みは「経済」…実質賃金プラスをしくじれば「6月退陣」に現実味 1/24
支持率が過去最低更新ラッシュの低迷する岸田政権。裏金問題を巡り、起死回生で打ち出した派閥解消も麻生派と茂木派が存続の方向で、“ハーフ&ハーフ”になってしまった。朝日新聞の世論調査(20、21日実施)では、派閥解散が「信頼回復につながらない」は72%に上った。
何をやってもうまくいかない中、頼みにするのが経済だ。
岸田首相は22日の「政労使会議」で労使の代表らに「昨年を上回る賃上げをお願いする」と訴えた。
「実質賃金は20カ月連続マイナスが続いていますが、株高、大幅な賃上げ、インフレの鈍化などの好材料がある。岸田首相は今年中に実質賃金をプラスに転じさせ、何とか政権を延命させたいと考えているようです」(霞が関関係者)
22日の日経平均終値は前週末比583円高の3万6546円で、終値としては約34年ぶりに3万6000円台に乗せた。内閣支持率の低迷に反比例し、株価はうなぎ上り。今年に入ってからの上げ幅はすでに3000円超だ。株価だけを見れば、日本経済の見通しは明るく見える。
春闘も大企業からは景気のいい声が聞こえる。今年の春闘賃上げ率(資本金10億円以上かつ従業員1000人以上の労働組合のある企業364社)の民間予測平均は3.85%。昨年の3.60%を上回る見通しだ。
インフレも鈍化傾向だ。12月の全国消費者物価指数は生鮮食品を除く総合指数が前年同月比で2.3%の上昇となり、2カ月連続、伸び率は縮小している。
中小の賃上げ苦戦としつこいインフレ
これなら実質賃金プラスに手が届きそうな感じがするが、現実は甘くない。
「大企業は今春闘も昨年に続き、高水準の賃上げを実現するでしょう。しかし、中小企業は苦しい。人手確保のため、昨年は無理して賃金アップしたが、今年は難しいとの声をよく聞きます」(経済ジャーナリスト・井上学氏)
城南信用金庫と東京新聞のアンケート(都内と神奈川県内の城南信金と取引がある中小企業832社に聞き取り)によると、約35%が「賃上げの予定なし」と回答。「予定あり」の27%を上回った。賃上げしない理由として6割近くが「賃上げの原資がない」だった。
インフレの収束も怪しい。消費者物価指数は2%台に落ち着いたように見えるが、カラクリがある。昨年12月は電気代がマイナス0.87%、ガス代がマイナス0.26%と、上昇率を大きく押し下げていたからだ。
「電気代とガス代の大幅なマイナスは、政府の補助金が大きく影響しています。今年5月まで延長されましたが、その後、打ち切られれば、前年比の物価上昇率は押し上げられることになるでしょう」(総務省物価統計室)
厚労省の毎月勤労統計によると、昨年11月の実質賃金(速報値)は3.0%減と深刻だ。今年の春闘を経ても、賃金上昇がインフレ率に遠く及ばない事態が続けば、賃上げ結果が反映される6月の岸田退陣が現実味を帯びる。
●「派閥解消」腰砕け 岸田首相、麻生氏押し切れず―自民党 1/24
自民党が23日に示した政治改革に関する中間取りまとめ案は、派閥の解散には踏み込まなかった。岸田文雄首相(党総裁)は岸田派の解散を決めたが、追随したのは政治資金パーティーを巡る事件で立件された安倍、二階両派のみ。首相の指導力に疑問符が付くのは必至で、政権運営の険しさは増しそうだ。
首相は23日の党政治刷新本部で、岸田派解散について「政治改革の先頭に立って議論を進めていかなければならない。その立場を考えた時にけじめは付けなければならない」と述べ、理解を求めた。
改革案は「派閥の解消」を掲げ「本来の政策集団に生まれ変わる。お金と人事から完全に決別する」とうたったが、派閥全廃には踏み込まなかった。首相は先んじて岸田派解消を打ち出したが、党全体には広げられなかった形で、党内からは「方向性は一体の方が国民から理解される」(菅義偉前首相)と不満の声が漏れる。
派閥解散の明記が見送られ、党内の評価はさまざまだ。派閥の政治資金パーティーを禁止し、「氷代」「餅代」と呼ばれる所属議員への還元を廃止。人事での働き掛けなども禁じたため、中堅議員は「派閥の機能は失われるも同然だ。もう力は残らない」との見方を示す。一方、岸田派の小野寺五典元防衛相は記者団に「後ろ向きな印象だ」と指摘。刷新本部でも「『本来の政策集団』とは何か」との疑問の声が相次いだ。
金銭・人事面でメスを入れたが、党総裁選では今後も動向を左右する可能性がある。閣僚経験者は「総裁選はグループ単位で動く。人事でも、推薦名簿をやめて電話で伝えればいい」と、早くも「骨抜き」に言及。党関係者も「数年たてば元に戻る」と口にした。
野党からは中間とりまとめ案への批判が相次いだ。立憲民主党の岡田克也幹事長は記者会見で「パフォーマンスだ」と断じ、「腰の引けた案だ」と糾弾。国民民主党の玉木雄一郎代表も「中途半端で再発防止につながるのか」と疑問を呈した。野党は通常国会で、首相の姿勢を厳しくただす構えだ。
こうした中、首相の政権基盤には不透明感が漂い始めている。派閥解消を巡り、政権を共に動かしてきた麻生氏、茂木敏充幹事長との間で姿勢の違いがあらわになった。麻生派中堅は「『岸田の乱』は不発だ」と酷評した。
首相は麻生、茂木、森山3派について、記者団に「新たなルールに従ってもらう。派閥ではなくなる」と述べたが、両氏にも配慮し「派閥解散」を見送ったとみられ、麻生派の一人は「ぎりぎりの落としどころだ」と評した。
しかし、自民党は世論の厳しい視線を受けており、党関係者は「存続した派閥の議員は批判を受けるだろう」と選挙に影響しかねないと懸念を示した。
●政治不信に直面する自民党 改革断行への覚悟≠ェ求められる岸田首相 1/24
自民党各派閥の政治資金パーティーを巡る「政治とカネ」問題は底なしの様相だ。強制捜査も始まり、永田町に激震が走った。2024年の展望は一気に視界不良となり、その影響は、国民生活にとって重要な税制などの政策決定にも及ぶ。日本のリーダーである首相・岸田文雄は、経済再生や国際的な紛争など、待ったなしの懸案に立ち向かうためにも、小手先に終わらない政治改革を今度こそ断行できるか。岸田の覚悟が問われる局面だ。
火の玉になる
「国民の信頼回復のために火の玉となって、自民党の先頭に立つ」。臨時国会が閉会した23年12月13日夜、記者会見した岸田は改革への決意を強調した。だが、その表情に冴えはなく、心理的に追い詰められている様子がありありと見えた。
決意のほどはともかく、具体的な踏み込みには乏しかった。今後の改革について問われた岸田は「事実を確認し、適切な対応を取る」と述べた。国会閉会後に本格化する捜査の行方を踏まえなければ、具体策や期限を考えにくいのは確かだったが、与野党から言及が出ていた政治資金規正法の改正についても「議論になることはありうる」と言葉を濁した。テレビで会見を見ていた与党関係者は「これじゃ火の玉じゃなくて、火だるまになるかもしれない」と力なくつぶやいた。
同時に岸田は閣僚人事を行う考えを表明した。国会が閉じ、野党の追及が一段落した直後の人事は異例だ。翌14日、内閣の番頭役だった官房長官・松野博一をはじめ、東京地検特捜部が狙いを定める安倍派の閣僚4人を更迭した。
これはその前週から、安倍派の政治資金パーティーを巡って「派閥から多額のキックバックを受けていた」との報道が先行し、松野らが極めて厳しい立場に置かれてしまったためだ。特捜部はメディアにリークする形で政権側に本気度を見せつけ、本格捜査への流れを作ろうとしたのだろう。温厚で仕事の手堅い松野に対しては、官邸スタッフの間に同情する声もあったが、流れには逆らえなかった。
安倍派で集団指導体制を敷いていた「5人衆」、つまり松野と党政調会長・萩生田光一、経済産業相の西村康稔、参院幹事長の世耕弘成、党国対委員長の高木毅は、軒並み辞任か更迭に追い込まれ、全員が特捜部の事情聴取を受けた。
岸田は、閣僚だけでなく政務三役から安倍派を一掃することも視野に入れていた。しかし、国会議員99人を擁する最大派閥を要職から完全に排除すれば、安倍派の暴発を招くだけでなく、党の人材払底にもつながりかねない。
「安倍派一掃」案が報じられると、萩生田は「若い人たちの芽まで摘まないで欲しい」と再考を求めたといい、結局は岸田もこの案を見送った。
問題の発生当初、岸田は対応を派閥任せにするかのような発言を繰り返していた。12月上旬に「各派閥のパーティー自粛」「自身の岸田派会長退任」を打ち出したものの、「対応が遅い」とさらに批判を浴びた。
だからこそ、安倍派一掃という思い切った措置に踏み切れば挽回の余地があった。ところが、一掃案が漏れた上に「数人の辞任・補充」にとどまったことで、またも中途半端な対応という印象を与えてしまった。
松野の後任は、無派閥の元防衛相・浜田靖一や安倍派以外の閣僚経験者らに次々と断られ、岸田派の重鎮・林芳正が火中の栗を拾うことになった。岸田派にもキックバック疑惑が浮上する中、林は「私はパーティー券収入の還流は受けていない」と話した。他派閥からは「万一、林さんに政治とカネの問題が出てきたら、岸田政権は本当に終わりだ」との声が漏れた。
深まる混乱
今回の政治資金問題は、本来あるべき政策決定と、今後の政局展望という2つの面で大きな混乱を招いている。
まず政局を巡っては、岸田が模索してきた衆院解散・総選挙の選択肢がさらに狭まった。安倍派5人衆のキックバック疑惑が浮上して以降、永田町では「もう岸田さんは解散できないね」という会話が半ばあいさつ代わりになっている。
それどころか、今後の解散シナリオとして語られてきた24年1月の通常国会冒頭、24年度予算成立後の3〜4月、通常国会会期末の6月などが「内閣総辞職のタイミングにもなり得る」という新たな想定が加わった。疑惑を巡って議員辞職があった場合は、24年春の補選も分水嶺になり得る。
23年12月13日、解散や自民党総裁選への対応を問われた岸田は「今は、そうした先のことを考えている余裕はない」と本心を吐露した。さらに「(政治改革などの)課題に全力で取り組む、それに尽きるんだという強い覚悟を示すことが重要だ」と続けた。この言葉を真摯に実行に移すことこそ、崖っぷちに立つ岸田が国民の信頼を取り戻す唯一の道であろう。
次に、政策決定の迷走である。象徴的だったのは、閣僚人事と同じ12月14日に決定された与党税制改正大綱だ。
岸田は22年末、防衛力強化の財源として法人税、復興特別所得税、たばこ税を増税して1兆円を確保する方針を決めている。ただし、増税の開始は「2024年以降の適切な時期」とぼかしてきた。定額減税との整合性を取るため、岸田や萩生田は24年からの実施はしないと明言したが、岸田は「開始時期だけは今回決めてしまいたい」と考えていた。
しかし、政治資金問題が政権を直撃し、岸田は方針転換を余儀なくされた。もともと党内の積極財政派は増税に消極的だった上に、「政治家はパーティーで儲けて、国民には痛みを強いるのか」という世論の反発も恐れたのだ。「今年(23年末に)決めることは、今の政治状況からして難しい」。党税調会長・宮沢洋一は先送りを表明した。
22年末に改定された国家安全保障戦略などの安保3文書に基づき、増税は27年度には実施されている必要がある。前回の税制改正大綱は「複数年かけて増税する」との方針も示している。このため25年までには開始時期を決めなければならないが、その間に党内から「防衛費は増税より国債で賄うべきだ」との主張が再燃しかねない。
ただし、日本の領土・領海・領空を守るための防衛力強化は、現在の「政治とカネ」とは全く別の重要課題である。政権は目の前の批判から逃避するのではなく、正面から国民に説明を重ね、負担増への理解を求めるのが筋だ。岸田と自民党には今後、その覚悟を問われる場面が必ず訪れるだろう。
野党の漂流
自民党税調の頭越しに岸田が表明した定額減税(1人あたり所得税3万円、住民税1万円の計4万円)は、24年6月からの実施が決まった。岸田は公平さを欠くとみて所得制限には慎重だったが、党側の要求により、物価高の影響が少ない年収2000万円超の高所得者は対象外とされた。
「国会議員も恩恵を受けるのか、と批判されないための予防策」と省庁関係者は解説する。政治資金問題を受けた党側の焦りは強く、岸田もそれを抑えられなかった。
野党にとっては、この状況は本来、千載一遇のチャンスである。政治改革の道筋を先に示し、岸田に「信を問え」と迫れる局面だ。にもかかわらず、臨時国会の最終盤、野党の連携は相変わらずちぐはぐだった。
野党第1党の立憲民主党は、内閣不信任案の提出に慎重な意見が強かった。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者を救済する特例法案の成立が危うくなること、そして「国会会期延長や衆院解散があれば、特捜部の捜査が遅れかねない」という理屈である。執行部の及び腰に、ある立憲議員は「いま不信任を出さず、いつ出すのか。世論も必ずついてくるのに」と不満を漏らした。
逆に、日本維新の会は、立憲に対して内閣不信任案の提出を要求した。「夏になれば盆踊りをするように、会期末になれば不信任案を出す」と、かつて代表・馬場伸幸は立憲を冷笑していたが、それを一転させた背景には、世論の高まりに加え、野党陣営を束ねる立場にないことからくる「軽さ」もうかがわせた。
立憲代表・泉健太の判断で、内閣不信任案は臨時国会の最終日に提出され、野党は軒並み賛成した(与党の反対で否決)が、内情はお粗末だった。
混乱は国民民主党にも及んだ。自民、公明、国民民主3党は、ガソリン税の一部を軽減する「トリガー条項」の凍結解除について協議してきたが、国民民主が不信任案に賛成したため、与党は税制改正大綱にトリガー条項に関する記述を見送った。
国民民主代表・玉木雄一郎は、凍結解除の実現に政治生命を賭けると公言してきたが、12月15日に記者団から問われると「不信任賛成に瑕疵はない」「悪いのは与党だ」と言い張った。そもそも与党は凍結解除に消極的で、「自公国」の枠組みも変わらざるを得まい。
「大綱」の価値
政治資金問題で自民がパニックに陥り、野党も勢力を結集できない現状は、国民にとって不幸というほかない。自民の非主流派や公明党からは、岸田に対して政治改革を求める声が強まる。公明幹事長・石井啓一は「次期通常国会は政治改革国会の色合いが強くなる」との見通しを示した。政治資金規正法の改正は焦点の一つだが、現在の惨状を見ればそれだけで済むはずもない。
そして、リクルート事件後の1989年5月に自民党が機関決定した「政治改革大綱」が、改めて政界の注目を集めている。大綱からは、30年以上を経た今にそのまま通じる危機感が読み取れる。
「政治資金は庶民感覚からかけはなれるほど肥大化し、本来の政策活動に要する資金さえ、国民から理解されない」
「派閥中心の党運営が続くならば、(自民)党が真の意味での近代政党、国民政党へ脱皮することは不可能である」
岸田は年明け、党総裁直属の政治刷新本部を設置すると表明した。自民党は、半ば忘れかけていた政治不信からの脱却という難題に今度こそ挑まなければならない。岸田は旗振り役として強いリーダーシップを示すときだ。野党も改革に積極的に参加することが求められる。
一方で与野党は、目下の物価高など、日本が直面する諸課題の解決にも並行して取り組む必要がある。24年の元旦には能登半島を震源とする大地震が発災し、被災者支援は急務だ。政治家たちが己の保身に汲々としている場合ではない。
●自民支持率最低14.6%! 鬼の岸田政権に残された道は「減税」のみ… 1/24
時事通信の1月の世論調査では、自民党の支持率は、野党時代を除いて1960年の調査開始以来最低の14.6%となった。岸田首相は国民からの信頼回復にむけて、派閥解散の意向を出したが、それに対して麻生太郎や茂木敏光が難色を示している。国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は「支持率を一気に回復する方法はある」と語るーー。
派閥解消に向けて難色示す麻生と茂木
岸田首相の突然の宏池会(岸田派)解散宣言によって、自民党に大激震が走っている。旧安倍派(清和会)、二階派(志帥会)の解散も決定し、残る派閥は麻生派(志公会)、茂木派(平成研)、森山派(近未来研)のみとなった。
報道によると、岸田首相の派閥解散意向に対して、麻生太郎・志公会会長、茂木敏光・平成研会長は難色を示していると言う。それもそのはずで、岸田派・麻生派・茂木派の三頭政治体制で、岸田派は人数が最も少ない脆弱な派閥でしかない。そして、現状では仇敵である安倍派を事実上機能不全に陥れ、麻生・茂木両氏は我が世の春を謳歌してきた人々だ。したがって、彼らが首を縦に振るはずがなく、岸田首相を支えてきた党内三頭政治体制は事実上崩壊したと言えるだろう。
孤立した岸田首相が頼るものは、国民からの声、しかない。岸田首相は前回の自民党総裁選時に「聞く力」を強調してきた。
あえてメディアからの袋叩きになる確実な悪手を選択した岸田
しかし、自民党の派閥政治においては、岸田首相は党内第四派閥に過ぎない岸田派の領袖に過ぎず、国民の声が聞こえてもそれを実行する力は無かった。そのため、昨年の内閣改造においても、閣僚人事や党幹部人事は各派閥の勢力均衡を図ることが精一杯で、副大臣・政務官には身体検査が甘い政治家たちを各派の意向に従って入れざるを得なかった。
その結果が相次ぐ副大臣や政務官のスキャンダルであった。不倫で政務官を辞任した山田太郎文部科学政務官を皮切りに、柿沢・神田副大臣2名がスキャンダルで逮捕や更迭された。党幹部人事では茂木派の内部事情に配慮し、選挙=スキャンダルの印象が拭えない小渕優子選対本部長人事の承認など、あえてメディアからの袋叩きになる確実な悪手を選択させられていた。
このような派閥政治に配慮した政治を実行し続けたことで、岸田首相の支持率は低迷の一途を辿ることになった。起死回生を狙った所得税定額減税も、財務省の影響が強い岸田派、麻生派、茂木派ら有力者の影響力が強い状態では、たった1年間の腰砕け、中途半端な内容にならざるを得なかった。
最大の危機であり最大のチャンスが生まれている
しかし、岸田首相が派閥解消を宣言したことで状況は大きく変化した。岸田首相を党内で支えた派閥は消滅し、今や自民党内からは総理官邸は孤立無援の状態となった。だが、自民党内を見渡しても、岸田首相に代わる首相代替案としての有力案は存在していない。この状況は岸田首相にとっては、最大の危機であり最大のチャンスが生まれていると言える。
岸田首相が政治と官僚が癒着した古い政治を破壊する「日本のトランプ」になれば、岸田首相には政権延命の可能性が生まれてくる。旧来までの因習を全て破壊し、国民とダイレクトに繋がる政治を実現するのだ。
そして、都合が良いことに、岸田首相が一発で支持率を回復する方法が存在している。
その方法とは「消費税減税」である。各種世論調査では国民が求める経済対策として「消費税減税」の声は常に大きい。
増税派の意見を聞かなくてもよくなった
しかし、その消費税減税を求める国民の声は、財務省に近い岸田派・麻生派・茂木派の派閥政治によって黙殺されてきた。また、旧安倍派も自派閥の元ボスが引き上げた消費税率をもう一度下げることに本気で同意するはずがないものだった。しかし、岸田首相はもはやそれらの党内有力者の声に耳を貸す必要はない。
岸田首相はおよそ全ての派閥を敵に回すことで、国民からの声「消費税減税」に応えられる立場を手に入れた。自民党内の派閥の領袖たちに阿ることなく、昨年末の所得税減税騒ぎで対立した財務省の意向も無視し、日本国の首相として初めて国民に真摯に向き合う千載一遇の機会が訪れている。
消費税減税は、現在短期的な物価高(コストプッシュのインフレ)に対応し、消費主導の緩やかな物価上昇・賃金上昇(デマンドプルのインフレ)に経済環境を変えていくために最適な手段である。2023年11月、柳ヶ瀬裕文参議院議員(日本維新の会)の参議院財務金融委員会での質疑に対して、財務省でさえ短期的には「消費税減税は物価を押し下げる」と当たり前の答弁をしている。
「首相公選制」が事実上導入される
中国の景気減速が鮮明になりつつあり、米国もFRBの利上げの影響で経済の屋台骨が腰砕けするか分からない状況の中、消費税減税という経済対策に予め踏み切ることは、先見の明を持つ英断となる可能性が高い。
派閥解消の結果によって、今年9月に予定されている自民党総裁選挙の形も大きく変わることになるだろう。権力の在り方そのものが変わるのだ。
昨年末から岸田首相の辞職は、来年度予算成立&バイデン面会という花道論が有力とされてきていた。そして、その後継は茂木氏、上川氏、河野氏などの名前が挙がっていた。しかし、これは全て派閥の論理による見立てであって、派閥が解消されるなら事情は全く異なるものとなる。
派閥解消が意味することは、自民党によって「首相公選制」が事実上導入されるということだ。内閣支持率が低迷する岸田首相が続投して長期政権を築くには、実はこの道を選ぶしかなかった。
9月の自民党総裁選挙で勝利する者とは…
だからこそ、岸田首相は派閥を解消した上で、国民からの声に応える政策を実行することが重要なのだ。
9月の自民党総裁選挙で勝利する者は、国民からカリスマ的な支持を得る政策を掲げた人物となる。従来までの派閥の金やポストの論理は無くなり、現職国会議員らは自分が生き残るために最も適した候補者を選ばざるを得なくなる。さらに党員投票の影響力も増すことは間違いない。
そして、その政策こそ「消費税減税」の英断である。自民党の首相が消費税減税政策を採用することで、野党はその存在意義の大半を失い、総選挙においても自民党が圧勝することになる。
岸田首相は国民の声を聴く、という公約を果たすべきだ。消費税減税に踏み切れば、岸田首相は日本史に残る大宰相となるだろう。
●「派閥解消」でマスコミ迎合の弱いリーダーが生まれる 国家の命運より保身 1/24
岸田文雄首相が出身派閥の岸田派(宏池会)の解散を表明した。同じく、派閥パーティー収入の不記載事件で関係者が立件された二階派(志帥会)と安倍派(清和政策研究会)も解散を決めた。不記載事件とは無関係という麻生派(志公会)は解散に慎重で、茂木派(平成研究会)と森山派(近未来政治研究会)は様子見といったところだ。
だが、「派閥解消の流れ」は、もはやでき上がったと言ってよい。麻生派など3派閥も早晩、解散か事実上の活動停止に追い込まれるだろう。マスコミ世論から、「政治刷新に不真面目な守旧派」のレッテルを貼られるからだ。
今回、岸田首相は乾坤一擲の大勝負に出た。マスコミ世論を味方に付け、派閥を解散して個々の議員をバラバラにし、直接統制を行おうとしている。派閥という緩衝材をなくした個々の議員は、小選挙区制も手伝って首相ら党執行部の言いなりにならざるを得ない。
もちろんこれは、9月の党総裁選での再選をにらんでのことだ。ライバルを擁立する議員の結束を阻止することができる。
派閥解散の流れは、岸田政権を支えてきた麻生派会長の麻生太郎副総裁と、茂木派会長の茂木敏充幹事長への根回しも一切なく独断でつくられた。麻生氏は激怒し、岸田首相は後に陳謝したというが、後の祭りだ。
派閥解消は執行部には都合がよいが、執行部内で対立が生じたことになる。ただ、現在のところ、マスコミ世論は岸田首相の方に付くはずだ。派閥を失った個々の議員も、マスコミ世論に反することはできないだろう。
党の政治刷新本部も「今後、内閣改造・党人事で派閥の推薦を受けない」との方向性を示した。岸田首相はまもなく自民党国会議員の大半を直接統制できることになる。力の源泉は、派閥を嫌悪するマスコミ世論の支持だ。
だが、これは望ましい統治形態ではない。マスコミ世論に見識があるわけではなく、意見はコロコロ変わる。政治はそれに左右される。
今現在の支持がいつまで続くか分からず、明日には別の政治家が支持を受けるかもしれない。派閥の解消は「不安定なポピュリズム政治」を生み出すことになるのだ。新たに支持を受けた政治家が、岸田首相よりましな政治家であるとも限らない。
11月の米大統領選挙の結果次第では「台湾有事」の可能性が高まると指摘される。日本も人ごとではなく、大きな打撃を受ける。今、日本に求められているのは、それらを想定して準備と対策を行うことだ。そして、それを指揮する「賢明で強い指導者」であり、それを支える「強い政治基盤」だ。
派閥解消はそれを阻害し、マスコミ世論に迎合せざるを得ない弱いリーダーを生み出す。岸田首相は「国家の命運」よりも、「自らの保身」を優先したのか。 
●震災・デフレ脱却「正念場」 首相、施政方針演説の原案判明 1/24
岸田文雄首相が30日の通常国会で行う施政方針演説の原案が判明した。能登半島地震、デフレ完全脱却、国際情勢への対応を挙げ「内外ともに正念場を迎えている」と位置付けた。物価高を上回る所得の実現を強調する。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、政治資金の透明化を図って政治の信頼を回復する決意を示す。震災対応で被災者支援策を着実に実行するため、自らをトップとする「能登復興本部」を新設すると表明する。複数の政府関係者が24日明らかにした。
「経済、経済、経済」と連呼した昨年10月の所信表明演説に触れ「思いは変わっていない。岸田政権の最大の使命だ」と言及。デフレ完全脱却は「高齢化による国民負担率上昇の抑制につながり、財政健全化にも寄与する」と意義を唱える。
医療、福祉分野や公共サービス、中小企業、パート・非正規労働者の賃上げを実現するとした。
裏金事件を巡り、自民派閥のパーティー禁止や外部監査導入、銀行振り込みの徹底化により、透明化向上を訴える方向だ。
●「派閥パーティー」全面禁止は抜け穴だらけ 政党支部・幹部の“裏金の温床” 1/24
自民党の政治刷新本部(本部長・岸田首相)が23日、中間とりまとめ案を大筋で了承。派閥について「お金と人事から完全に決別する」とうたいながら、派閥存続が大前提の腰砕け。とりわけ、裏金づくりの温床となった政治資金パーティーの開催は、抜け穴だらけである。
あくまで「全面禁止」の対象は派閥単位のパーティーのみ。2022年分の政治資金収支報告書によると、解散する3派閥を含め、自民6派閥のパーティー収入は計9億2323万円。一方、共同通信の集計だと、国会議員の資金管理団体と関係する政党支部が開いた「特定パーティー」(1回1000万円以上を集金)の収入は少なくとも計52億円で、うち9割超を自民党議員が占めた。
派閥の開催禁止で途絶える自民党のパーティー収入は全体の約6分の1に過ぎず、8割以上の収入はがっちりキープ。喜ぶのはパー券販売のきついノルマから逃れられる派閥の議員くらいだ。
派閥の領袖にとっても、パーティーは大きな収入源。岸田首相は22年だけで1億5509万円をカキ集めた。いくら派閥単位の開催を禁じても、その実態が派閥の幹部クラスが開くパーティーに移行すれば、集金システムは温存される。ノルマ解放の議員たちも、ぬか喜びとなりかねない。
規制が強まるほどアングラ化
裏金事件を刑事告発した神戸学院大教授の上脇博之氏が指摘する。
「収支報告書をつぶさに調べると、パッと見は政治家関連の団体でなくとも、特定の政治家のパーティー開催だけを目的に設立された政治団体も、すでに散見されます。刷新本部は中間報告案に、会計責任者が逮捕・起訴された場合、その団体の代表を務める国会議員の処分を明記しましたが、議員に責任が及ばないよう代表の名義貸しが横行しかねません。それこそ無数の『ダミー団体』だらけになれば、資金の流れが今以上に不透明になる懸念もあります」
22年には薗浦健太郎・元自民党衆院議員が不記載額4900万円の政治資金規正法違反の罪で略式起訴。端緒は、上脇氏が収支報告書に収入の記載のない薗浦氏の「闇パーティー」を告発したことだった。裏金事件の捜査中には、西村前経産相の「架空パーティー」問題が週刊文春で取り沙汰された。「闇」や「架空」がはびこる悪の組織は、規制が強まるほどアングラ化していくのが世の常だ。
「萩生田前政調会長が会長を務める自民党都連も、パーティー収入の不記載が判明し、告発済みです。裏金づくりは都道府県連単位に及ぶ可能性があるのに、手つかずのまま。政治資金パーティーそのものを全て禁止しなければ裏金づくりは途絶えません」(上脇博之氏)
パーティー大好きの自民党議員がカネを欲しがる限り、裏金の温床は残り続ける。
●「エッフェル姉さん」キックバック不記載明かす 他の安倍派議員も続々告白 1/24
裏金事件を受け、25日にも自民党が刷新案を取りまとめる予定の中、安倍派の議員から相次いだのは“裏金”の告白。
23日、記者に囲まれたのは、2023年、エッフェル塔をバックに撮影した写真が批判を集めた、安倍派の松川るい参院議員。
2023年12月、記者に「ご自身としてはやましいことはないか?」と質問されると、「わたしですか? まったくありません」と疑惑を否定していた。
しかし一転して、1月23日には、「わたしの事務所にも、204万円の記載をすべき資金が残っていたことがわかりました」と述べ、派閥から受けたキックバックを収支報告書に記載していなかったことを明かし、陳謝した。
松川参院議員「私自身、こうしたことを一切知らないまま、事務所の管理に任せきっていたことについては、監督責任を感じています」
松川議員自身は「知らなかった」と強調。
裏金を明らかにしたのは、ほかにも...。
自民党 安倍派・山本順三参院議員「還付金(キックバック)の総額は58万円」
自民党 安倍派・井原巧衆院議員「“宙に浮いた資金”168万円」
両議員も、裏金があったことを明かしたうえで、不記載分は使用していないと説明した。
一方、24日の国会。
26日の通常国会召集に先立ち、集中審議が行われた。
岸田首相「わが党として、あらためて襟を正さなければいけない。真剣に受け止めなければいけない」
裏金事件をめぐる野党からの追及に、険しい表情で答えた岸田首相。
派閥の解消を表明したものの、裏金をめぐる新たな事実が次々と明らかになっている。
●蓮舫議員 エッフェル姉さんこと自民・松川るい議員らを痛烈批判 1/24
立憲民主党の蓮舫参議院議員が24日、自身のX(旧ツイッター)を更新。自民党安倍派の裏金を巡り、キックバックの204万円が収支報告書に不記載だったと報じられた「エッフェル姉さん」こと松川るい参院議員を痛烈に批判した。
蓮舫氏は、派閥からキックバックされた204万円が松川氏の事務所から見つかり「私自身、こうしたことを一切知らないまま事務所の管理に任せきっていた」として謝罪したというFNNのネットニュースを引用。記事では、同派の山本順三参院議員「還付金(キックバック)の総額は58万円」、井原巧衆院議員「”宙に浮いた資金”168万円」とも報じている。
蓮舫氏は投稿で、「『私自身知らなかった』『宙に浮いたカネ』『還付金があった』ちょっと何言ってるのか」とバッサリ。「政治とカネと自民党。とても国民の税金を扱える人たちではないでしょう」と断じた。
フォロワーからは「おっしゃる通り」「私利私欲の皆さまは退場で」「お金の扱い方が緩過ぎる。国家予算なんて、任せられません」「管理監督責任、問えるようにしてほしい」「これは所得隠しの疑いがありませんか? 徹底的に追及願います」などとコメントが寄せられた。
●堀井学衆院議員 約2000万円のキックバック不記載と説明 1/24
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐり、安倍派に所属する堀井学衆議院議員が派閥から5年間でおよそ2000万円のキックバックを受け、政治資金収支報告書に記載していなかったと、地元の道議会議員に説明していたことがわかりました。
関係者によりますと、衆議院比例代表北海道ブロック選出の堀井学前内閣府副大臣は、23日、苫小牧市内で地元の複数の道議に対して、安倍派の政治資金パーティーをめぐる問題について説明したということです。
この中で堀井氏は、販売ノルマを超えて集めたパーティー券収入について、おととしまでの5年間で、派閥からあわせておよそ2000万円のキックバックを受け、政治資金収支報告書に記載していなかったことを明らかにしたということです。
また、事務所の運営は秘書にまかせており、みずからの指示ではないが監督不行き届きだったとしたうえで、議員辞職や離党の考えはないと話したということです。
事務所によりますと、堀井氏は、今月27日に登別市で記者会見を行うほか、支援者に向けた説明会も開催し、一連の問題の経緯や今後の対応などについて説明する予定だということです。

 

●「今まで前例がほとんどない」 震源断層と別の断層が“連動”か 能登半島地震 1/25
能登半島地震をめぐり、震源となった断層のほかに約20キロ離れた内陸の断層もほぼ同時に動いていたことがわかりました。
「そんなに遠くの断層まで動くことは本当に考えてもいなかったことで、今まで前例がほとんどない。これはかなり新しい発見とも言える」(名古屋大学・鈴木康弘教授)
能登半島地震で震源となった断層とほぼ同時に動いたとされるのは、約20キロ離れた「富来川南岸断層」です。同じ直下型地震の阪神淡路大震災で考えると、震源近くの神戸市東灘区とJR新大阪駅ほど離れた断層が「連動」して動いたことになります。
日本活断層学会の会長で名古屋大学の鈴木教授らが現地調査したところ、この断層でも約3キロにわたって最大50センチ程度の隆起と数十センチの横ずれが確認されました。数十センチの隆起でも断層の上では家屋が大きく損傷し、木造の家は倒壊していたということです。
鈴木教授は、数十キロ離れ独立した断層でも「連動」する可能性が出てきたとして、活断層への備えを再検討する必要があると訴えています。
●能登半島地震は海底活断層が動いて津波か 相模湾や全国でもリスク 1/25
「海底活断層」をご存じでしょうか。文字通り海底にある活断層で、陸地に近いものが動くと、短い時間で津波が沿岸部に到達する恐れがあります。今回の能登半島地震でも動いた可能性が高いと指摘されている海底活断層。専門家は各地に存在し、同じようなリスクがあると指摘しています。
1分以内に津波到達か
1月1日午後4時10分ごろに発生した能登半島地震。午後4時22分には能登地方に大津波警報が発表されました。北海道から九州にかけての日本海沿岸を中心に津波が観測され、石川県珠洲市では、地震発生からおおむね1分以内に津波が沿岸に到達していたとみられることが専門家の分析でわかっています。
「海底活断層」が動いたか
今回の地震で、国の地震調査委員会は、沿岸の海底の活断層が動いた可能性が高いとしています。東京大学地震研究所の佐竹健治教授が、各地で観測された津波の波形から、震源域の断層の動きを分析しました。数字で動きを表しています。黒い点線のある能登半島の北東側の沖合の断層がほとんど動いていなかった一方で、能登半島の沿岸に沿ったエリアと、隣り合う断層がそれぞれ大きく動いていることが分かります。
海底活断層の実態把握は困難
陸上の活断層では、実地調査や国による危険度の評価が進んでいます。しかし、海底の活断層については陸上に比べて調査が困難です。日本海側では国の主導による調査が進められたものの、首都圏を含めて全容は明らかになっていません。
首都圏にも海底活断層のリスク
津波災害に詳しい関東学院大学の福谷陽准教授は、ほかの研究者と一緒に、地震の5日後から被災地に入って被害を調査しました。海底活断層は各地にあり、首都圏にも今回の地震と同様のリスクがあると指摘しています。
その場所の1つが神奈川県の相模湾です。上の図は3年前に産業技術総合研究所が出した調査結果です。緑の部分が陸地、紫や赤の実線が海底の活断層を示しています。沿岸部に近い海域に活断層があることが分かります。
津波の到達早くなるおそれ
福谷准教授は逗子市や鎌倉市に近い海底活断層「逗子沖断層」が動いた場合の、津波のシミュレーションを行いました。赤い場所は1メートルほどの高い津波を示します。地震発生から3分ほどで、鎌倉市や逗子市に高い波が到達しました。県の想定する巨大地震で、高い津波が鎌倉市に到達するのは発生から10分後です。
それよりも大幅に早くなる可能性があることが分かりました。
関東学院大学 福谷陽准教授「陸に近い海域の活断層が動くと、強い振動がおそってきます。数分後に比較的高い津波が来るかもしれません。津波の到達時間がすごく早くなるので、住民の避難を考えると注目していかなければならないリスクだと考えています。」
研究の進展を被害想定検討に
神奈川県は来年春をめどに、地震の被害想定の見直し作業を行っています。
海底活断層についても、詳細な実態やリスクに関する研究を注意深く見守り、被害想定の検討に生かしていきたいとしています。
神奈川県危機管理防災課 能戸一憲課長「さまざまな地震を想定していますが、海底の活断層については詳細になっているものが少ないと思います。今回の能登半島地震を受けて、新たな知見が加わるかも含めて、専門家の意見を聞きながら進めていきたいと思います。」
●見え透いたウソがまかり通る政治家たちに我々の未来を託せるか! 1/25
大山鳴動して鼠一匹(いや三匹か)。自民党裏金問題は43人不起訴という結果。変わるのかと期待した検察は以前のまま、あっけない幕引きとなった。
こんな茶番が許されていいのか。安倍派だけの問題ではない。自民党全体で20年にもわたって行われていて、キックバックのことは皆知っていた。ところがそれが不記載であったことだけ知らないなんて、誰が信じるか。
安倍派幹部の7人の会計責任者がお互いつながることなく、しかもボスに報告なしに何千万の裏金を勝手につくるなんてそんな偶然あるわけないだろう。
西村康稔「還付金があることを把握していなかった」
世耕弘成「秘書が報告していなかった」
2022年に安倍さんがキックバックを廃止しようとした時、西村氏は聞いているはずだ。知らないわけない。
こんな見え透いたウソをつく人間に我々のこれからの未来を託せるはずがない。
萩生田氏は八王子の支持者の前で「『修正をきちんとする』ということになっておりますので」とまるで検察とそれで話がついたような口ぶり。3000万ギリギリの2728万の還流を帳簿修正でおとがめなしだ。だいたいなぜ3000万以下はセーフなのだ。庶民は85円のオニギリ一つ万引して逮捕され、コンビニで110円のコーヒーを注文して190円のカフェラテを入れて逮捕されるのに。あまりにも酷すぎる。
ひょっとしたら萩生田氏を助けるために検察は3000万で線を引いたのではないか。統一教会問題でもそうだが、この人は一体何に守られているのか。
パー券ノルマで売らせて、キックバックで甘い汁吸わせ、捕まる時はトカゲの尻尾切りで秘書を差し出す。
まるで反社と同じ。自民党は犯罪集団ではないか。
ある意味略式起訴された谷川議員は正直だった。「金は飲み食いに使った」。人間関係のためと言うが彼にはそれが政治活動だった。「大臣になるために汗を流した(パー券を売った)」。大臣は能力ではなく金でなるものだった。
見るからに能力のなさそうな、国会で寝まくっている谷川氏こそ、自民党の本質を体現する人間である。
●政治の信頼取り戻せるか 1/25
通常国会があす召集される。
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で国民の政治不信はかつてないほど高まっている。重要政策の決定で国民的議論を省き、課題への場当たり的な対応も目立つ岸田政権にはこれまでも厳しい目が向けられてきたが、その不信の度合いは底を抜けた感すらある。
信頼されない政治がつくった予算や政策は求心力を欠く。それは国民にとっても不幸なことだ。信頼回復が強く求められる局面であり、国会の論戦、法案審議をそのための場にしなければならない。
最大のテーマはやはり、政治資金の扱いを中心とした政治改革になる。事件を受けて自民は、政治刷新本部の中間報告として改革案を示した。岸田文雄首相はそれを踏まえて取り組みを進める考えだ。
しかし、裏金づくりの経緯やその使途など実態は不透明なままだ。説明責任は果たされておらず、立件されなかった派閥幹部議員らも政治責任は免れない。これらを問うことなしに信頼回復はありえない。
資金の透明化、不正の再発防止に向けては、政治資金規正法の改正が焦点となる。自民方針はまだ具体性を欠き、野党は独自案を掲げる。
政党への企業・団体献金、議員が連帯責任を負う連座制などが個別ポイントになるが、重要なのは国民の納得感だ。小手先だと見透かされる対応に終われば逆効果になろう。
能登半島地震の被災地支援も大きな課題になる。政府は支援策をパッケージとしてまとめた。時間の経過とともに被災地の状況やニーズは変わる。スピード感、機動的な対応が欠かせない。半島地形の特殊性や寒さ対策など防災上の新たな課題も浮かんだ。教訓として今後につながる議論も求められる。
2024年度予算案は、一般会計の歳出が過去2番目の規模の112兆円台となった。新型コロナ禍から平時への回帰は進まず、借金頼みの財政が続く。防衛費も歳入の裏付けがないまま規模が膨らむ。財政運営の基本認識が問われる。重点化した賃上げ促進策も吟味が必要だ。
政府は昨年末、防衛装備品の輸出ルールを定めた防衛装備移転三原則の改定を決め、殺傷能力のある武器の輸出へ道を開いた。反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有、原発回帰に続いて、国会の議論を経ない重要政策の転換がまた繰り返された。
国際紛争を助長する懸念が否めず当然、今国会の論点になるが、本来なら決定前に議論するべきだ。国会軽視の姿勢が目に余る。
安全保障政策、エネルギー政策、異次元を掲げる少子化対策などで、積み残されたままの疑問はなお多い。国民の代表が集まる場で正面から向き合うべきだ。
昨年末、派閥裏金を巡って政権幹部らは「答弁を差し控える」を連発し、国民のひんしゅくを買った。政治は説明するのが仕事だろう。都合の悪いことは答えなくてよいとの考えが政権や与党に根付いているのなら、意識を改める必要がある。
●自民党の派閥 弊害断つなら全廃が筋だ 1/25
自民党を本気で刷新したいなら、全ての派閥を解散すべきではないか。中途半端な改革はかえって国民の反発を買うだけだ。
政治資金パーティーを巡る裏金事件を受け、自民党政治刷新本部は党改革の中間報告案を公表した。派閥については、政治資金と人事の差配機能をなくし、政策集団の名で存続することを容認した。
これでは「派閥」の看板のかけ替えに過ぎない。党総裁である岸田文雄首相の指導力に疑問を抱かざるを得ない。
所属議員や会計責任者らが刑事責任を問われた安倍派、二階派、岸田派は解散する。森山派はきょうにも結論を出すようだ。それぞれ政治団体の解散手続きをして、事務所を閉鎖することになる。
一方、裏金事件に関わりのない麻生派と茂木派は存続する見通しだ。
岸田政権は両派閥に支えられ、政権を維持してきた。存続を認めたのは、首相の唐突な「岸田派解散宣言」に不満を持つ派閥会長の麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長への配慮にほかならない。
解散せずに政治資金規正法に基づく政治団体として存続すれば、政策集団を名乗っても資金を扱う機能は保てる。こうした「抜け穴」を残したままでは、首相がいくら唱えてもカネのやりとりを断つことはできないだろう。
今回の事件は、特に安倍派の長年にわたる組織的裏金づくりをあぶり出した。政治資金パーティー収入の一部を所属議員に配り、議員は当たり前に受け取っていた。
事件の反省から、刷新本部は政策集団による政治資金パーティーを禁止し、所属議員に「餅代」や「氷代」の名目で配っていたカネも廃止する方針を示してはいる。
だが国民は派閥改革の実効力に疑いの目を向けている。仕方あるまい。1970年代のロッキード事件以来、派閥解消を掲げるたびに有名無実となっているからだ。
リクルート事件を受けた89年の政治改革大綱では「派閥の弊害除去と解消への決意」を示し、派閥によるパーティー自粛の徹底を求めた。
野党転落後の94年にも派閥解消を宣言した。実際に事務所の看板を下ろしたが、翌年になると次々に活動を再開した。今回も「時間がたてば復活する」と党内から冷めた声が漏れる。
多数の議員がいれば、おのずとグループはできる。民主的に権力を握るには多数派を形成する必要もある。
同じ政治理念や政策を持つ議員が集い、研さんを重ねることを否定はしない。政策集団が文字通りの機能を発揮すれば国民は評価する。
それができずに、幾度も問題を起こしたのが自民党の派閥ではないか。その弊害は、首相をはじめ党の国会議員がよく分かっているはずだ。
派閥改革案は、刷新本部が最終報告をまとめるまでに見直した方が良い。
●「宏池会解散」で支持率上がると思ったが…やはり岸田首相で選挙は無理 1/25
先週木曜(18日)、岸田文雄首相が「宏池会(岸田派)解散」を宣言した夜、筆者は永田町で「事情通」氏と会っていると、彼のスマホが何度も鳴った。聞くと、若い記者たちからで、「ホントに解散するのか」という問い合わせだという。
若い記者は知らなかったのかもしれないが、自民党の派閥は1989年のリクルート事件を発端に行われた政治改革で、どこもいったん解散したものの、名前を変えて政策集団として復活している。だから、「解散しても、どうせまた復活するんだよな」という話で、その夜は盛り上がった。
別れ際に「事情通」氏は「岸田さんはちょっと乱暴なことをしたけど、支持率は上がるかもしれない。でも選挙はできないよ」と言っていた。
週が明けて出た世論調査の内閣支持率は、FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞が前月に比べて5ポイント上がったが、読売新聞は1ポイント減、朝日新聞は横ばいだった。3社をならすと、少なくとも「支持率回復」とまでは言えない。
1週間前の調査では、NHKが3ポイント、共同通信が5ポイント上昇し、内閣支持率は上向いているように見えた。能登半島地震における岸田政権の初動は悪くなく、自衛隊員の懸命な救援活動の映像が流れて、政権への信頼感、期待感が高まったのかと思っていた。
昨年からの流れを見ると、岸田政権の支持率は所得税減税など複合的な要因でじりじり下がり、暮れの「裏金」問題で信頼が地に落ちてしまった。だが、年明けの地震対応で盛り返し、「乾坤一擲」の岸田派解散で支持率の回復を狙ったが、有権者には見透かされてしまい、低迷したまま、ということだろうか。
調査で、政治改革に「必要なもの」として、「政策活動費の使途公開」「連座制などの罰則強化」の2つが、いずれもほぼ35%と関心が高い。これに対し、「派閥の解消」は8%に過ぎない。つまり国民は派閥には関心がなく、それより透明性や罰則の強化を望んでいる。つまり岸田首相はポイントを外している。
岸田首相にとって「いい話」もある。
まず、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長には「ダマ」で(=黙って)派閥解散を打ち出したので、2人は怒っているはずだが「岸田おろし」の動きはない。それは2人が本人も含めて強力な後継候補を持たないからだ。
第2に、調査で野党の政党支持率が上がっていない。FNN・産経では立憲民主党が2ポイント下がっているという数字まである。つまり、今解散すると、議席数は減っても与党過半数は確保できるのだろう。
ただ、「事情通」氏が言うように岸田首相に解散はもう無理だと思う。議席が減ることが分かっている解散というのは打てない。選挙の顔を変えるしかないのだ。 
●“安倍派幹部”処分 「中間とりまとめ」自民党議員の評価 党内意見割れる 1/25
25日、自民党・政治刷新本部の「中間とりまとめ」が正式に決定されました。党内では、どのような評価がなされたのでしょうか。また、安倍派幹部の処分はどうなるのか、などについて、日本テレビ・政治部の平本典昭 官邸キャップが解説します。
自民党・政治刷新本部「中間とりまとめ」の評価 点数は58点?
藤井貴彦キャスター「自民党の派閥から人事、カネの機能をなくすという“中間とりまとめ”が25日、正式に決まりましたが、ずばり、評価としては何点なのでしょうか?」
日本テレビ 政治部・官邸キャップ 平本典昭「はい、ずばり『58点』をつけます。この点数、どうやってつけたかといいますと…自民党議員17人に聞いたその平均値ということで、1つの目安と位置づけたいと思います。具体的な意見を紹介します」
・1人目 100点「派閥の問題の本質、人事とカネを封じた」
・2人目 60点「半分以上の派閥が解散した。ただ大事なのは、今後『実効性』を持たせることができるか?」
・3人目 0点「派閥という病巣が残った。また、再発のおそれがある」
「実態解明」まだまだ…課題山積の岸田政権
藤井キャスター「25日は、あくまで『中間とりまとめ』ということですが、次の焦点は、どこになるのでしょうか?」
平本官邸キャップ「そうなんです。まだ中間とりまとめなので、“最終”も残っています。政治資金をめぐる問題には、岸田政権が取り組むべき課題がまだまだたくさんあります。
今回は、『再発防止』の観点から『政治資金の透明化』、そして、主に『派閥のありかた』について議論が集中しました。
ただ、過去に起きたことの『実態解明』はまだまだです。裏金を何に使ったのか、議員の説明も足りていません」
“安倍派幹部”の処分どうなる?
平本官邸キャップ「そして、次の焦点は、“けじめ”をつけるための『処分』です。
あるベテラン議員は、今回の中間とりまとめに『0点』をつけました。理由は『派閥をどうするかより、ルール違反した人の処分が大事だけれども、何も決まっていないからだ』と指摘しています」
藤井キャスター「その処分というのは、どうなっていくのでしょうか?」
平本官邸キャップ「自民党は、党の規律を乱した人やルール違反した人について、これまで『党紀委員会』を開いて、処分を決めてきました。
焦点となっているのは、安倍派幹部の塩谷座長、“安倍派5人衆”と呼ばれる松野前官房長官、西村前経産相、現在の高木事務総長らのメンバーの処分です」
処分は8段階 茂木幹事長…安倍派幹部自ら政治責任の判断求める
平本官邸キャップ「処分は、8段階あります。一番重い処分が『除名』、2つ目が『離党勧告』、さらに、選挙で公認しない、などとなっています。
直近では、政治資金をめぐる事件で逮捕された池田議員は『除名処分』になっています。また、3年前、コロナ禍で銀座のクラブに行っていた議員は『離党勧告』処分を受けました。そして2年前、安倍元首相を“国賊”と侮辱する発言をしたとして、村上誠一郎議員は1年間の『(党の)役職停止』処分を受けました。
今回、8段階で、どの処分になるかということについて、ある閣僚経験者は、『コロナ禍でのクラブ遊びと(“裏金”と)、どっちが悪いのか。最低でも離党勧告処分が必要だ』というふうに言っています。
刷新本部では、さらに重い『除名』処分にすべき、という声もありました。
ただ、安倍派幹部だけを厳しい処分にすれば、『党内のさらなる分断を生む』という意見もあります。また、安倍派議員からは、『軽い処分にすべき』という意見もあります」
難しい処分  政権の“本気度”バロメーターに…
平本官邸キャップ「安倍派との対立が深まれば、『岸田首相は安倍派からの恨みを買い、総裁選では絶対に応援されない。将来に禍根を残す』といった意見もあります。
また、25日、茂木幹事長が、安倍派幹部に対して、自ら政治責任を判断するよう求めたこともわかっています」
藤井キャスター「その判断を議員自らがするのか、それとも、党が処分を決めるのか。いったい誰が、どんな処分を下すかというのは難しい判断だと思いますが、どうなのでしょうか?」
平本官邸キャップ「難しいですが、難しいからこそ、まさに自民党の『自浄作用』が問われるのだと思います。
岸田執行部は『国民の信頼を回復する』と言っていますから、その意志の“本気度”が、今回の処分のバロメーターになると思います」
●岸田首相「結果で政治責任果たす」 1/25
岸田文雄首相は25日、自民党岸田派の政治資金規正法違反事件を受けた自身の責任について、「党の政治刷新本部長として結果を導くことを通じて政治責任を果たしていきたい」と述べた。

 

●能登半島地震 『行動を起こした者だけが世の中を変えられる』 1/26
2024年1月5日に能登町にある松波中学校で活動していました看護師です。
避難者のほとんどは高齢者でした。避難所である体育館に身を寄せ合い生活をする避難者の方々。また、ご自身も被災されている中、避難所運営に携わられているスタッフの方々、そして校長先生。
私が活動地へ入った時は、医療ニーズについて把握を進めている状況で、介護が必要な方も多く、慣れない体育館での生活で転倒される方や、お手洗いの水も流せず不衛生な環境となり、飲水制限をしてしまい脱水となる方が多く見られました。
医療ニーズの把握と並行し、お手洗いの衛生状態の改善や、医療ニーズの高い方の観察ができるよう、また転倒を減らせるようにと区画整備を提案しました。
避難者の方々も避難所運営スタッフの方々にも徐々に疲労が伺える状態でしたが、区画整備は、医療ニーズの観点からも、転倒予防や生活のしやすさといった観点からも必要と考え、ジャパンハートより避難所へ提案させていただきました。
これまで経験のない避難生活を強いられ不安やストレスを抱える避難者や運営スタッフの方々。まずは、ここでともに過ごす避難者や運営スタッフの方々の声に耳を傾け、医療ニーズの把握のみでなく、対話をすることにも意識を向けていました。結果として、対話に重きをおいたことで、避難者のご家族の状況や生活背景なども聴くことができ、今後の長期的な支援において必要な情報を得ることにもつながりました。
このように関係性を構築しながら、区画整備の準備を進め、当日避難所にいる皆様にご協力を依頼し、また避難者さんの希望も聴取し、全員で区画整備を終えました。終えた時には避難者の方々もスタッフも、皆様から『やってよかった』と言っていただくことができました。
自らが行動し、よい結果を得られましたが、こういった活動の時に、ジャパンハート創設者である吉岡秀人医師の『行動を起こした者だけが世の中を変えられる』という言葉を思い出します。1人の考え、行動のみでは変えていくことは困難ですが、ともに過ごす方々と対話をし、時間を共有し、そこに私にできることをさせていただくことで、少しずつ物事が変わっていくという経験をさせていただきました。
学びの場である学校が機能を失ったり、住み慣れた故郷を離れる決断を強いられたり、今後も場所や形が変わっても支援が必要な状況が続きます。できることを最大限に、これからも携わっていけたらと思っています。
●元自民 安倍派 池田佳隆議員らを政治資金規正法違反の罪で起訴 1/26
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、東京地検特捜部は、安倍派からおととしまでの5年間に4800万円余りのキックバックを受けたにもかかわらず、資金管理団体の政治資金収支報告書に寄付として記載しなかったとして池田佳隆衆議院議員(57)と政策秘書を政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で起訴しました。
起訴されたのは、安倍派に所属していた衆議院議員で、自民党を除名された池田佳隆被告(57)と、会計責任者を務めている政策秘書の柿沼和宏被告(45)です。
東京地検特捜部によりますと、池田議員らは、おととしまでの5年間に安倍派「清和政策研究会」から4826万円のキックバックを受けたにもかかわらず、みずからが代表を務める資金管理団体の政治資金収支報告書に寄付として記載しなかったとして、政治資金規正法違反の虚偽記載の罪に問われています。
関係者によりますと、特捜部の調べに対し、2人はいずれも黙秘しているということです。
特捜部は、先月、池田議員の事務所など複数の関係先を捜索しましたが、関係者によりますと、特捜部の調べに対し池田議員の別の秘書が「議員の指示で事務所のパソコンをドライバーなどの工具で壊した」などと話していて、池田議員の指示で証拠隠滅を図った疑いがあるということです。
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐり、特捜部はすでに安倍派、二階派、岸田派の会計責任者や元会計責任者、それに国会議員など合わせて8人を政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で立件していて、一連の事件で起訴されたり略式起訴されたりしたのはこれで10人となりました。
一方、特捜部は、池田議員側にキックバックした分を派閥の政治資金収支報告書に支出として記載しなかったとして告発されていた安倍派の幹部ら8人については、嫌疑なしで不起訴にしたことを明らかにしました。
●“ドライバー池田”こと池田佳隆容疑者の呆れた二枚舌 1/26
《小渕優子さんにドリルを借りればよかったのに…》
SNS上ではこんな皮肉の投稿もある。自民党の派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で、最大派閥「安倍派」(清和政策研究会)から5年間で計4826万円のキックバックを受けたにもかかわらず、政治資金収支報告書に記載していなかったとして東京地検特捜部に政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで逮捕された池田佳隆容疑者(57・自民党を除名)。
特捜部は勾留期限の26日にも同違反で逮捕された政策秘書の柿沼和宏容疑者(45)とともに起訴する方針だが、ネット上で話題となったのが、特捜部の調べに対し、柿沼容疑者とは別の秘書が「池田議員の指示で事務所のパソコンをドライバーなどの工具で壊した」などと話している、と報じられたことだ。
過去の自民党をめぐる政治資金の事件では、小渕優子選対委員長(50)の事務所が検察の家宅捜索を受けた際、パソコンのハードディスクがドリルで破壊されていたことが判明。露骨な証拠隠滅として怒りの声が上がったが、池田容疑者についても、ネット上では《ドリルの次はドライバーか》《国民を愚弄している。厳罰処分にしてほしい》との声が続出した。
常に公の利益を尊重できる人に子供たちを育てていかなければならないと主張していたが…
せっせと裏金づくりに励み、バレそうなると姿を隠し、証拠隠滅まで図っていた池田容疑者だが、社団法人日本青年会議所会頭時代に参考人とて出席した2006年6月の衆院「教育基本法に関する特別委員会」では、こう言っていた。
「自分さえよければそれでいいとするせつな主義が横行し、どんな手段であろうと金を稼いだ者が賞賛される、勝ち組と称される、そんな拝金主義の価値観が、市場原理主義、経済至上主義を推し進めるもとで肯定されてきているように思われてなりません」
「今の日本人は、自分の人生のことだけを考えて、先祖のことも、親のことも、地域社会のことも、国家のことも自分たちには関係ない、また、そういった考えがあたかも正しいことであるかのような風潮が社会でまかり通っています。(略)常に公の利益を尊重できる人に子供たちを育てていかなければならない、私は考えます」
国会議員となった後の2016年11月の衆院文部科学委員会でも、教育の在り方について持論を展開し、気炎をあげていた。
「広い意味での主権者教育とは、日本人としての自覚と責任、品格を持って生きていくこと、その生きざま自体を大人が子供たちにしっかりと伝えることにほかならないのではないでしょうか。大人は、善悪の判断などの道徳的価値(略)などを子供たちにしっかり教え込むことに決して躊躇してはならないと思います。主権者として、我が国を治めることの難しさから決して逃げることなく、考え抜き、判断したり選択したりする自覚と責任を持たせることの重要性も言うまでもありません」
違法、脱法行為に手を染めた上、ドライバーで証拠隠滅まで図っていた疑いが浮上した池田容疑者。大事にしていた教育の在り方、道徳的価値感とは一体、何だったのか。
●自民、政治改革で混迷 安倍派処分でも対立 1/26
自民党が政治改革を巡り混迷を深めている。25日に決定した中間取りまとめでは、派閥がカネと人事から「完全に決別する」と打ち出したが「派閥全廃」は見送った。派閥の存廃で足並みが乱れ、麻生、茂木両派からは岸田文雄首相(党総裁)への反発が広がる。安倍派幹部の責任についても同派側と執行部が対立している。
中間取りまとめには「あるべき政治責任についても結論を得る」と明記。首相は25日、岸田派も政治資金規正法違反事件で立件対象になったことの責任について、「党全体の信頼回復に向け、政治刷新本部長としてしっかり努力し、議論をリードして結果を導く」などと述べるにとどめた。首相官邸で記者団の質問に答えた。
首相は「派閥全廃」を視野に、各派に先んじて岸田派解散を決断。党関係者によると「吉と出るか凶と出るか」と漏らしていた。安倍派と二階派が追随し、25日には森山派と、派閥に準じた谷垣グループも解散を決定。「解散ドミノ」について、首相は親しいベテラン議員に歓迎する考えを示した。
一方、麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長はそれぞれが率いる麻生派と茂木派を存続させる方針で、首相の思惑は外れた格好だ。両派には「守旧派のように見られる」(若手)と、派閥解散を主導した首相への不満が高まっている。
麻生氏は首相に「好きなようにやる」と不快感を露骨に伝えた。首相と茂木氏は24日夜に会食を調整していたが、見送りとなった。政権中枢の3人に溝が生まれたのは明らかだ。首相は政治改革で、党役員と閣僚が「派閥離脱」する案も探ったが、周辺から「(麻生氏らとの)関係がさらに悪化する」との忠告を受けて断念した。
安倍派と党執行部にも亀裂が生じている。執行部は同派幹部に政治責任を自ら取るよう促した。応じない場合は「党の役職停止」「離党勧告」といった処分に踏み切る案も浮上する。これに対し派幹部は「党全体の問題だ」と反発。派関係者も「岸田、二階両派も立件された」と首相らへの不満を示した。
森山裕総務会長は記者会見で、安倍派の閣僚らが昨年12月に一斉に辞任したことに触れ、「派閥としての責任は果たしているのではないか」と述べ、沈静化を図った。
岸田派解散について、報道各社の世論調査では評価する声が多い一方、内閣支持率の回復にはつながらなかった。25日の党臨時総務会では中間取りまとめに「派閥を残すことに他ならない」との異論が出て、首相が説得に追われた。
党内6派閥のうち2派閥が存続する方向で、党幹部の一人は「選挙で国民からどう思われるか」と懸念。党の混乱について「党分裂につながったリクルート事件のように、悪い入り口にならなければいいが」と案じた。
●「秘書がやった」と言えば政治家は罪を許される…検察と自民党の異常な関係 1/26
自民党派閥の裏金問題で、東京地検特捜部は安倍派に所属していた池田佳隆衆院議員を政治資金規正法違反の疑いで逮捕し、ほか議員2人を在宅起訴、略式起訴した。ジャーナリストの鮫島浩さんは「検察は大物政治家を誰も逮捕・起訴せず、捜査を打ち切る可能性が高い。検察は正義の味方でも、国民の味方でもない。時の最高権力者の味方なのだ」という――。
裏金問題で逮捕されたのは「無名の中堅議員」だけ
自民党安倍派の約90人が裏金を受け取っていたのに、蓋を開けてみると、国会議員で逮捕されたのはたったひとり、在宅または略式で起訴されたのはふたり、いずれも全国的には無名の中堅議員だった。そのほかに刑事責任を問われたのは政治家の秘書や派閥の職員ばかり。
マスコミが昨年末から大々的に報じてきた東京地検特捜部による裏金捜査は、司直による世直しを求める国民の期待を煽りに煽った挙げ句、大物政治家は誰ひとり逮捕・起訴されることなく拍子抜けに終わった。
自民党に20年以上にわたって君臨してきた最大派閥・安倍派は解散に追い込まれ、今回の裏金事件が自民党内の勢力地図を塗り替えた政局的インパクトは極めて大きい。一方で、政治資金を裏金化する不正行為の浄化は「トカゲの尻尾切り」で終わり、巨悪を裁く刑事司法は本来の役割を果たすことができなかった。
検察捜査はなぜこんな結末を迎えたのか。検察当局は自民党に飛び交う「裏金」を大掃除して政治腐敗を一掃するつもりなどハナからなかったと私はみている。
麻生派、茂木派は立件を免れる
裏金疑惑を最初にスクープしたのは「しんぶん赤旗」だった。これを受けて上脇博之・神戸学院大教授が自民党の主要5派閥(安倍、麻生、茂木、岸田、二階の各派)を刑事告発し、東京地検特捜部はこれを受理した。
ところが、特捜部が強制捜査(家宅捜索)に踏み切ったのは安倍派と二階派だけだった。土壇場で岸田派も立件対象に急遽加え、3派の会計責任者らを起訴したのである。
強制捜査の対象をなぜ、安倍派と二階派に絞ったのか。最後に岸田派まで立件したのはなぜか。検察当局はその理由を説明しないし、マスコミも追及しない。
日本の司法制度は法律要件を満たした場合に必ず起訴しなければならない「起訴法定主義」ではなく、起訴するかどうかを検察の裁量に委ねる「起訴便宜主義」を採用している。ここに「検察捜査の闇」が潜んでいる。
なぜ安倍、二階、岸田の3派だけが立件され、麻生、茂木の2派は立件を免れたのか――。このナゾを解くには、岸田政権の権力構造を理解する必要がある。
裏金問題が「しょぼい結末」を迎えた要因
第4派閥の会長だった岸田文雄氏は、2021年の自民党総裁選で第2派閥を率いる麻生太郎氏に担がれて勝利し、第100代首相に就任した。第3派閥の茂木派を加え、岸田総裁―麻生副総裁―茂木敏充幹事長が自民党中枢ラインを占める「三頭政治」で統治してきた。
しかし、麻生・茂木・岸田の主流3派だけでは自民党内の過半数に達しない。最大派閥・安倍派は安倍晋三元首相が銃撃されて急逝した後、「5人衆」と呼ばれる派閥幹部の集団指導体制となっていた。
そこで、5人衆の萩生田光一氏を政調会長に、西村康稔氏を経済産業相に、松野博一氏を官房長官に、世耕弘成氏を参院幹事長に、高木毅氏を国会対策委員長に起用し、主流派に取り込んだ。一方で、第5派閥の二階俊博元幹事長や無派閥議員を束ねる菅義偉前首相を干し上げてきたのである。
岸田首相は政権の「生みの親」である麻生氏に頭が上がらず、いわば傀儡政権だった。最大派閥を率いる安倍氏が他界した後、麻生氏は従前に増して突出したキングメーカーとして振る舞うようになり、重要な政治決定の際は岸田首相を自民党本部へ呼びつけた。
さらには茂木氏をポスト岸田の一番手として重用し、岸田・麻生会談に同席させ、「三頭政治」で岸田政権を思うままに操ってきたのである。
「三頭政治」に生まれつつある亀裂
岸田首相は在任期間が長期化するにつれ、不満を募らせた。特に首相の座を脅かす存在として茂木氏への警戒感を強め、麻生氏主導の「三頭政治」から脱却を探り始めた。
昨年9月の内閣改造・党役員人事では茂木氏を幹事長から外し、後継に小渕優子氏(現選挙対策委員長)や森山裕氏(現総務会長)の起用を画策したが、土壇場で麻生氏に猛反対されて断念し、茂木氏を渋々留任させた。麻生氏から初めて自立を試みたが、失敗したのだ。
岸田首相はあきらめなかった。その後、財務相を長く務めた麻生氏の反対を振り切って所得税減税を強行し、両者の関係は軋んだ。
内閣支持率の続落を受け、麻生氏は今年9月の自民党総裁選で岸田再選を後押しする戦略を転換し、今春の予算成立と訪米を花道に岸田首相を退陣させ、緊急の総裁選で茂木氏を擁立して主流3派体制を維持したまま政権を移行させる構想を探り始めた。
麻生氏の最大の政敵は、今は非主流派に転落している菅氏だ。菅氏はマスコミの世論調査で「次の首相」トップに返り咲いた無派閥の石破茂元幹事長を総裁選に担ぎ出し、安倍派や二階派を取り込んで、麻生氏ら主流3派に対抗する戦略を描いてきた。
岸田首相が総裁任期満了の9月まで続投すれば、一般党員も投票する形式で総裁選が行われ、世論の人気も党内の支持もパッとしない茂木氏では石破氏にかないそうにない。他方、総裁が任期途中に辞任した場合の緊急の総裁選は、一般党員が参加せず、国会議員と都道府県連代表による投票となる。それなら派閥主導の多数派工作で茂木氏を勝利に導くことが可能だ――。麻生氏が岸田首相に3月退陣を促すのは、そうした事情からだった。
検察の「菅ぎらい」
東京地検特捜部が安倍派と二階派を狙い撃ちした強制捜査に踏み切ったのは、総裁選に向けて麻生氏と菅氏の水面下の攻防が激化する真っただ中だった。安倍派と二階派に大打撃を与えて麻生氏が率いる主流3派体制の優位を決定づける政治的効果は絶大だった。菅氏は不利な情勢に追い込まれた。
検察当局が最も恐れているのは、菅氏の復権である。検察は安倍政権時代、菅官房長官に検察人事に介入され、水面下で暗闘を繰り広げた。菅氏は森友学園や加計学園、桜を見る会など安倍官邸を直撃したスキャンダルで検察捜査を阻む「官邸の守護神」と呼ばれた黒川弘務検事長(当時)を重用して検事総長にねじ込もうとした。
最後は黒川氏が産経新聞や朝日新聞の司法記者らと賭け麻雀を繰り返していたことが発覚して失脚し、検察勝利に終わる異例の展開をたどったが、その後も検察は菅氏への警戒感を強め、河井克行元法相ら菅側近への捜査を繰り返し、さらには菅氏ら安倍官邸が主導した東京五輪招致をめぐる汚職事件も手掛け、菅氏を牽制し続けた。
検察は「正義の味方」でも「国民の味方」でもない
麻生氏と検察当局は「アンチ菅」で利害を共有してきたのである。安倍派と二階派を狙い撃ちした特捜部の裏金捜査は、総裁選をにらんだ麻生氏の意向に沿う「国策捜査」の色彩が極めて濃い。
検察は「正義の味方」でも「国民の味方」でもない。自分たちの人事や組織防衛を最優先して権力中枢の意向に沿う官僚組織である。「時の最高権力者」の味方なのだ。そして現在の政界の最高権力者は、内閣支持率が一桁台まで落ち込んでいつ退陣に追い込まれるかわからない岸田首相ではない。唯一のキングメーカーとして君臨する麻生氏だ。
麻生氏の政治目的は「安倍派壊滅」による総裁選の勝利であり、安倍派5人衆をはじめ派閥幹部たちが逮捕・起訴されることではない。むしろギリギリのところで安倍派幹部たちの政治生命を守って貸しをつくり、麻生氏ら主流3派に屈服させればそれで良かった。
立件されるのは中堅議員と派閥職員にとどめ、安倍派幹部たちは政治的ダメージを受けつつ刑事責任は免れるという検察捜査の結末は、麻生氏の政治目的にピッタリ重なった。
裏金捜査と総裁選をにらんだ党内闘争の密接な関係
検察捜査で当初から「扱い」があいまいだったのは、岸田派である。安倍派や二階派と違って家宅捜索の対象から外れたものの、特捜部は岸田派も捜査対象であることをマスコミにリークし、「宙ぶらりん」の状況に置いた。
岸田派は刑事告発された裏金額では麻生派や茂木派よりも少なく、永田町でも主流3派で岸田派だけが捜査対象に加わっていることは大きなナゾとして語られてきたのである。
私は、この背景に3月退陣をめぐる岸田首相と麻生氏の熾烈(しれつ)な駆け引きがあったとみている。岸田首相は予算成立と訪米を花道に退陣し、茂木氏へ政権を譲る麻生構想に強く反発したのだろう。
東京地検特捜部が土壇場で岸田派を立件対象に追加したのは、岸田首相に対して「引導」を渡す麻生氏の意向に沿ったものと理解すれば大きなナゾが解けてくる。この裏金捜査は今年の総裁選をにらんだ党内闘争と密接に絡んでいるのだ。
岸田派関係者によると、岸田首相は検察当局から岸田派立件の方針を直前まで知らされないなかったという。検察当局から「時の最高権力者」とみなされていないことの証しであろう。岸田首相は検察当局の背景に麻生氏の影を感じ取ったに違いない。
反撃の一手として放ったのが、岸田派の解散だった。立件された安倍派と二階派に歩調をあわせて岸田派を解散し、検察捜査では無傷の麻生派と茂木派にも解散を迫る捨て身の逆襲である。主流3派体制の打破を目指して派閥解消を訴えてきた菅氏の戦略に乗ったのだ。
「派閥解散組」と「派閥維持組」の派閥争いに
麻生氏は激怒した。麻生氏は茂木氏とともに岸田首相に対し、自分たちは派閥解散には応じない意向を伝えた。岸田首相は麻生氏と会食して取り繕ったが、主流3派体制は崩壊したといえる。安倍派、岸田派、二階派、菅氏ら「派閥解散組」vs麻生派、茂木派の「派閥維持派」の新たな対決構図が浮上した。
派閥解散の連鎖で追い込まれた麻生氏と茂木氏は、安倍派幹部たちに自発的離党を迫る構えをみせ、応じない場合は離党を勧告する強硬手段を検討し始めた。安倍派叩きで派閥解消から世論の関心を逸らす逆襲に出たのだ。
検察の国策捜査は政治腐敗を一掃することはなく、自民党の党内抗争を激化させる結果を招いた。岸田首相は岸田派解散で主流3派体制に終止符を打ったものの、激怒する麻生氏と完全決別する覚悟はなく、麻生派と茂木派の存続は容認した。麻生氏と菅氏を天秤にかけて1日でも長く政権に居座る戦略に転じたといっていい。
能登半島地震や物価高、ウクライナやパレスチナなど国際情勢への対応が急務な時に政局は混迷を深めるばかりである。
民主党政権には強気だったのに…
日本社会には検察当局に対する失望と不信が充満している。1992年の東京佐川急便事件以来の現象だ。
当時、東京地検特捜部は政治資金規正法違反に問われた最大派閥会長の金丸信氏に上申書を提出させ、事情聴取もしないで罰金20万円の略式命令で決着させた。これに憤怒した男が検察庁合同庁舎前で「検察庁に正義はあるのか」と叫び、ペンキの入った小瓶を投げつけ、検察庁の表札が黄色く染まった。検察史に刻まれた屈辱の事件である。
裏金捜査が腰砕けに終わった理由について、マスコミはザル法と呼ばれる政治資金規正法の限界を声高に指摘している。この法律は政治家たちが「抜け道」をあちこちに忍ばせたザル法であり、政治資金規正法の改正が急務なのはそのとおりであろう。
しかしそれが検察の免罪符になるとは私には思えない。なぜなら検察はこれまで相当ハードルが高いとされる数々の事件の強制捜査に踏み切り、強引に起訴してきたからだ。
民主党が自民党から政権を奪取した前後に小沢一郎氏(当時は民主党幹事長)を狙い撃ちした陸山会事件はその象徴である。特捜部は小沢氏の元秘書である国会議員と公設秘書を政治資金規正法違反(虚偽記載)で逮捕し、小沢氏は幹事長辞任に追い込まれ失脚。民主党政権は「小沢vs反小沢」の党内抗争に突入して混迷を深め3年余で幕を閉じた。この検察捜査が自民党の政権復帰をアシストしたのは間違いない。
ところが肝心の事件では、特捜部による捜査報告書の虚偽作成など強引な捜査手法が発覚。小沢氏本人は強制起訴されたが、無罪となった。内政外交の大転換を狙った小沢氏主導の民主党政権を倒す「国策捜査」の印象を強く残す結果に終わったのである。
弱腰の印象は拭えない
こればかりではない。日産会長だったカルロス・ゴーン氏の事件(ゴーン氏は起訴・保釈後に国外逃亡)や厚生労働省局長だった村木厚子氏(のちに事務次官)を逮捕・起訴した冤罪(えんざい)事件(村木氏は無罪)をはじめ、検察の強引な捜査手法に国内外から批判が噴出した事例は枚挙にいとまがない。
菅氏側近だった河井元法相の選挙買収事件でも、現金を受領した広島市議(当時)らに「不起訴にする」と示唆して「現金は買収目的だった」と認めさせる供述誘導の実態が発覚したばかりだ。
今回の裏金事件は、検察が強引な捜査を進めた過去の事件と比して、あまりに弱腰だった印象は拭えない。本気で大物政治家を立件する覚悟があったのなら、裏金を渡した派閥側の刑事責任を会計責任者の派閥職員ひとりに押し付ける結末にはならなかったであろう。
安倍氏が政治資金パーティーの売り上げノルマ超過分を還流させてきた慣行の廃止を提案して急逝した後、事務総長だった西村氏をはじめ安倍派幹部たちがどのような経緯で還流を継続させることになったのか。真実を徹底究明するには、まずは西村氏ら派閥幹部全員を一斉に家宅捜索し、場合によっては逮捕に踏み切る選択肢もあったはずだ。
それをハナから放棄したことは、この国策捜査の目的がそもそも政治腐敗を一掃することではなく、今年の総裁選に向けて安倍派に壊滅的なダメージを与えることにあったことを物語っている。
検察は「時の最高権力者の味方」でいいのか
自民党の内情に詳しい関係者によると、検事総長ら検察当局は自民党との窓口を常に確保し、「時の最高権力者」の意向を確認しながら捜査を進めてきた。
リクルート事件が発覚した1988年、検察当局は当時の竹下内閣の閣僚の一人を通じて竹下登首相に捜査の展望を逐一報告していた。竹下氏は検察当局のターゲットは中曽根康弘元首相やその周辺であり、自らに捜査は及ばないことを認識して自信を持って政局判断を下していたという。
小泉政権下で検察当局は小泉純一郎首相と直接やりとりしていた。小泉氏の政敵であった野中広務氏や鈴木宗男氏の強制捜査にはいつでも踏み切れると伝え、小泉首相は「法に基づいて厳正に対処するように」と応じていたという。今回の裏金事件の窓口は、キングメーカーの麻生氏であった可能性が極めて高い。
検察は「正義の味方」ではない。「時の最高権力者の味方」である。検察のリークを垂れ流し、検察の描く捜査ストーリーを流布するマスコミの検察報道は、検察の世論誘導に加担しているだけではなく、「時の最高権力者」にも加勢していることを、検察担当の社会部記者たちは自覚しているだろうか。
検察のリークを大々的に垂れ流すマスコミ報道が安倍派を壊滅に追い込んだものの、派閥幹部は誰一人として刑事責任を問われずに終わった一連の顚末(てんまつ)は、検察捜査のあり方にとどまらず、検察報道の歪みも問いただしていることを指摘しておきたい。
●「自民党は砂漠のよう」と久米晃・自民党元事務局長 派閥は崩壊寸前 1/26
自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件は政界を揺るがし、有権者の政治不信が高まっている。政治改革は進むのか。久米晃・自民党元事務局長に聞いた。
――自民党の「政治刷新本部」(本部長・岸田文雄総裁)が1月25日、政治改革の「中間とりまとめ」を決定しました。
これから国会で、与野党の提案をたたき台に議論が進められることになりますが、ポイントはカネの収支を明示すること、35年前の政治改革大綱の原点に立ち返ること、です。
――岸田さんは1週間前の18日夜、「宏池政策研究会」(岸田派、46人)の「解散を検討している」といきなり言い出しました。
あの「派閥解散」は唐突でした。最初聞いたときは私もへえっと思ったけど、有権者はあまり反応せず、自民党内に反発を招いただけに終わった。直後の朝日新聞調査で内閣支持率は最低の23%で変化なし、各社とも支持率はほとんど変わらなかった。岸田さんも誤算だったんじゃないか。
よく考えると、何で派閥の会長を辞めた岸田さんが、派閥の解消を言えるんですか。しかも当時は、党の刷新本部で議論している最中だった。その結論をミスリードした。
――どこでずれたのか。
有権者が望んでいるのは派閥の解消じゃなくて、おカネの話でしょ。人が3人集まればグループはできる。どこの会社でもグループはできるが、限度、節度がある。その節度を失ったところに今回の問題があった。
裏金の問題は、35年前のリクルート事件後に作った「政治改革大綱」を守っていれば起こり得なかったことです。これが、だんだんと形骸化してきた。
あの安倍(晋三)さんでも清和会を離脱していた。岸田さんは首相になっても、派閥を抜けなかった。この問題が起きた後で会長を辞めた。その後で「派閥解散します」と言っても説得力はない。
――一方で、現実の派閥の実態を見ると、安倍派は分裂直前、「派閥存続」を主張する麻生派には後継者が見えない。
安倍派としてまとまることはもはやありません。どこの組織でも見られることですが、トップが代われば分裂が起こりやすい。強いリーダーのあとは、なおさらです。5人組でもまとまらなかったわけだから、分解しかない。3分裂かな。
世代交代、派閥再編は早まる。統制がとれない戦になるのではないか。
麻生、茂木両派が仮に「偽装解散」しても、そのとたんに元に戻れなくなりますよ。だって麻生(太郎)さんとこは、ナンバー2が見当たらない。茂木派も、店を閉めたとたんに、おそらく参院は別グループを作るだろうし。軸になる人間がいないから再結集は難しくなるだろう。かろうじて宏池会だけは、形の上での後継者とされる林芳正官房長官がいて、何人か固まりが残るかもしれないが、基本的に分解でしょう。
人材が出てこない。自民党は砂漠のようです。
――「安倍一強」が崩れ、他の派閥も混乱すれば、党内には自由にモノが言える空気が広がるんじゃないですか?
今度の裏金問題の混乱のなかで、党内から改革の声が上がらなかったのは致命的です。リクルート事件の時は、当選1回の石破茂とか渡海紀三朗(現政調会長)とか、改革を求める声があがった。35年経っても顔ぶれが同じとは情けない。
――当時、私も記者として、改革派若手議員を追いかけていました。ただ、遅まきながら、無派閥議員の情報交換会が事件の再発防止策などを話しています。
あれは石破元幹事長や菅(義偉)前首相の色がついていると言われる議員たちで、「石破別動隊」なんて言われています。刷新本部は党役員ばかりだし。
台湾海峡のリスクや地震の対策など、今後いろいろな危機が表面化してくることを考えれば、強いリーダーが必要ですよね。
古くは明治維新や昭和の敗戦の後には、偉大なリーダーが輩出した。三角大福中が登場したのは、時代の危機感の裏返し、民衆の期待感があったからでしょう。最近は無気力ばかりが目立って、危機感が見えない。
小選挙区制下では、党の締め付けばかり強くなったと言われるけど、当選1〜2回の若い人たちの中に有望株が数人いる。大政翼賛会のような空気の中から出てきた小泉チルドレン、安倍チルドレンには、あまり見当たらない。
――焦点の「政治改革」の議論はどう展開しますかね。
今回の問題の本質は、おカネなんですよ。その処理さえきちんとしておけば、世の中が大騒ぎすることもなかった。
政治資金規正法をめぐっては、政治家は必ず「抜け道」を見つけようとする。でも、ある意味でカネは必要なんですよ。抜け道がなくなったらみんな干上がっちゃう。東京都世田谷区を地元にしている人と北海道を地元にしている人では、カネのかかり方が全然違う。都市部はパー券を買ってくれる会社があるけれど、田舎に行ったらめったにない。けど、田舎の方がカネはかかる。これを完全に締めると立ち行かなくなる。地方で事務所を閉鎖する政治家も出てきた。
政党交付金だけじゃ事務所が回らないのも事実だ。ポイントはきちんと収支を明らかにすること。志公会(麻生派)や平成研(茂木派)は収支を書いていた。明示すれば、何の問題もなかった。
――パーティー収入を「中抜き」しても立件されない政治家に、「民間企業なら一発アウト」とある商社マンはあきれ返っていた。
そう。なんで国会議員ばかり逃れてるのか、おれたちは1円単位まで領収書をとってるのに、と。こうした怒りはしばらくおさまらない、選挙は当面できません。
岸田首相はこの先も、支持率回復は難しそう。一方で、「岸田おろし」の声も党内から上がりそうもない。総裁任期の9月が近づくと、新しい顔で選挙を戦いたい、という空気になるでしょう。
日本最大の危機は、実は、人材不足だと思う。
――新総裁はだれに?
どの議員も、尻に火が付くどころか、カチカチ山のタヌキみたいに背中に火が広がっている状態。だったら新しい総裁で戦わざるを得ないわけだから、岸田さんは引きずり降ろされた菅さんと同じ運命になるのかな。新しい顔は、世論調査では石破さんや河野太郎さんの名前が出るけれど、我こそはと名乗り出る人はいないのか。
――「バラバラ野党」も岸田首相を助けている格好ですね。
取り急ぎ結束して自民党を倒すのか、それとも他に目標があるのか。野党が選挙のたびにばらばらに候補を出してくる目的が、さっぱりわからない。
とくに先日の党大会で党首が初めての女性になった共産党は、路線を変更する大きなチャンスだったのに。
共産党の大転換のひとつは、(憲法違反だとして拒否している)政党交付金をもらうことだ、と共産党の知り合いにも話したことがあるんですよ。委員長が代わって転換した党の姿をアピールできる。だけどそこまでの準備はなかったみたいですね。
――志位和夫委員長も2015年には小沢一郎さん(現・立憲)と野党共闘で存在感を示したが。
共産党は、候補擁立を見送るだけで、個別の選挙区ではかなりの力を発揮することを、その後の選挙では証明した。野党は与党に対抗するのが存在意義。それがばらばらだったら与党を利するだけ。野党が自己主張して個別に候補者を立て続ければ、自民党は大喜びですよ。国民は不幸ですよね。緊張感があれば自民は襟を正すでしょ。それが長い間なかったから、こういうこと(裏金事件)になったわけ。自民党も人材不足だけど、野党はもっとひどい。
●「岸田派解散」の後は「6月解散」に望みを託す岸田首相 ポイントは4月28日 1/26
総裁選前に選挙
岸田文雄首相が18日、自ら率いてきた宏池会(岸田派)の解散を表明したことで、永田町は上を下への騒ぎとなった。三頭政治として政権運営を共にしてきた麻生太郎自民党副総裁、茂木敏充幹事長にも事前に相談することがなかったため、2人との決別宣言ともなったといえるだろう。今回の思い切った決断に至る岸田首相の心のうちと、その後に見据えているという6月解散についてお伝えする。
「岸田首相が派閥解消を発表する少し前、16日とか17日くらいから、6月解散という言葉が出始めてはいました。ただ、それはあくまでも10日に立ち上げられた政治刷新本部で検討されている中身が漏れてきていたことに関連しています。そこでちょっとしたサプライズを演出することで低空飛行を続ける内閣支持率上昇のきっかけにし、予算委員会を乗り切って4月前半予定の訪米を成功させ、賃上げが期待以上となって……という好循環を想定した結果の6月解散説でした」と、政治部デスク。
昨年にもあった6月解散説
自民党総裁選は9月に予定されているが、その前に解散に打って出て勝利し、総裁選を無投票で乗り越えたい算段だ。岸田内閣の支持率は一部の調査では10%台に落ち込んでいる。
「月に3ポイントずつくらい回復していけば、通常国会が閉じられる6月ごろには40%程度で推移しているという希望的観測ですが、“現時点でそれは難しいんじゃないか”といった声が圧倒的で、まともに取り合っている人はほぼいなかったですね」(同)
振り返ってみると、2023年6月にも解散説が出て、それなりに現実味を帯びていたが、岸田首相は決断しなかった。あるいはできなかったのかもしれないが。
「ウクライナ電撃訪問や日韓首脳会談、G7広島サミットを議長国として取り仕切るといった外交面でポイントを重ねていましたね。岸田首相がそれらを成果として世間に信を問うことを検討していたのは事実のようですが、仮にそれに勝利して政権運営を継続していたとしても、今回の検察の捜査がなかったかというと、そういうことでもないでしょう」(同)
政治の信頼回復のために
話を今回の派閥解散に戻そう。今のところ、安倍派と二階派は解散、麻生派と茂木派は派閥解消せず、と対応が二分している。
「岸田首相は今回の政治刷新本部での議論が自身の政権を維持するための最後のチャンスと見て、大きな勝負に出てきたということになります。派閥解消の理由を“政治の信頼回復のために”と説明していましたが、政治改革やそれに関連する言葉が国民受けするキラーワードだということを認識した上での発言だったと思います。派閥解消に同調しなければ、旧態依然の勢力として国民から総スカンを食うとの見立てもあったのかもしれません」(同)
一方で、別のデスクはこんな見方をする。
「今回の検察の捜査では、安倍派、岸田派、二階派の会計責任者らが起訴されましたが、立証の高いハードルに阻まれ、安倍派幹部らは訴追を免れました。これについて世間は概ね“物足りない”と反応しているように感じています」
権力闘争をサバイブできるのか
「岸田首相はそういった世間の声にも敏感でしょうし、ある意味で検察から“政治改革への期待”というメッセージを受け取ったものと理解して、派閥解消に打って出たのかもしれません。首相は原理主義者や堅物キャラとされてきましたが、それを見せつけた格好ですね」(同)
今後、岸田首相は自民党内での権力闘争をサバイブできるのか。
「ハードルがあり過ぎますが(笑)、4月28日の補欠選挙がポイントでしょう。細田博之前衆院議長の死去を受けた衆院島根1区、今回の捜査で略式起訴された谷川弥一衆院議員の辞職を受けた長崎3区の補選は確定で、そこでの勝ち方・負け方いかんによっては岸田おろしに発展しかねないでしょう」(同)
岸田首相としては、麻生、茂木の両氏を抵抗勢力と見立て、世間の支持に期待する狙いも見え隠れするが、
「今回の派閥解消表明は相当なサプライズではあるものの、そもそも岸田首相が国民にあまり支持されていない中で、どれくらい支持率に寄与するのか疑問視する声は大きいですね」(同)
これまで以上に綱渡りの政権運営を強いられることになりそうだ。
何をやっても起死回生とならない岸田首相の現状については、【関連記事】〈官邸にいるのにわざわざ防災服を着ていた岸田首相 新年会でもそのまま挨拶…かつて「わざとらしい」と言って防災服を拒否した首相がいた〉でもお伝えしている。
●岸田首相がまたぞろ画策する「衆院解散」のカード…最優先は総裁選再選、1/26
内閣支持率が最低を更新し続ける中、派閥の裏金事件で逮捕者まで出して絶体絶命。いつ倒れてもおかしくないと見られていた岸田政権が、なぜか息を吹き返している。岸田首相が近く解散・総選挙に打って出るという観測まで流れ始めた。
裏金事件をきっかけに岸田首相が立ち上げた政治刷新本部が25日、中間取りまとめを発表。政治資金パーティーの禁止や、組閣や党人事で派閥の推薦を認めないこと、夏冬に所属議員に配っていた「氷代」「餅代」などの手当廃止などが盛り込まれる。
岸田首相は「派閥からカネと人事の機能を切り離し、純粋な『政策集団』にする」と言うのだが、派閥全廃には踏み込まない玉虫決着になった。
「派閥存続派の麻生副総裁、茂木幹事長に配慮した形です。ただ、岸田派、二階派、安倍派に続き森山派も解散の意向ですから、かたくなに派閥を守ろうとする麻生派と茂木派は、国民からは守旧派に見られて分が悪い。それも岸田さんの狙いかもしれません」(自民党無派閥議員)
国民受けすると思えば、伝統ある宏池会(岸田派)を解散してでも延命をはかる男だ。麻生氏と茂木氏を悪役に仕立て、自分は改革派を気取って世論の支持を得られればいい。そこで、出てくるのが「解散カード」だ。
長期政権をもくろむ岸田首相は、秋の総裁選で再選されることを最優先に考えている。そのためには総裁選の前に解散・総選挙を断行し、勝利が必要。
「小選挙区制で公認権を持つ党本部の力が強くなりましたが、カネも人事も派閥を介さず一元化されれば、総裁の権限はますます強化されます。これまで派閥の親分を立てていた議員も、今後は総裁の顔色をうかがうようになる。総理総裁に気に入られることが入閣の最短ルートになるため、岸田降ろしの動きも封じられるでしょう。予算成立後の春、もしくは通常国会が会期末を迎える6月に総理が解散・総選挙を断行するという見方が急速に広がっています」(自民党閣僚経験者)
4月28日に行われる複数の補選で自民党は苦戦が予想されている。裏金事件で略式起訴された谷川弥一衆院議員の辞職に伴って行われる衆院長崎3区は候補を立てず不戦敗が濃厚だ。
本命は会期末の6月解散
補選の日程に合わせて解散・総選挙を断行すれば負けが目立たない上、新区割りで行われる総選挙は野党の準備が間に合わず、相対的に自民党の勝ち目が見込めるという計算だ。
もっとも、4月10日前後に岸田首相が楽しみにしている国賓待遇の訪米が予定されているから、本命は会期末の6月解散の方だろう。国賓訪米で「外交の岸田」をアピールし、春闘の賃上げや6月に実施される所得税の定額減税を成果に解散・総選挙になだれ込むシナリオが囁かれている。
逆風でもともとの期待値が低いから、自公で過半数を維持できれば、総裁選で岸田再選の可能性は十分あるというのだ。多くの派閥が解散し、麻生派と茂木派も実質的に派閥の機能を持たなくなれば、総裁選に有力候補を擁立することは難しく、無投票再選もあり得るという。
伝家の宝刀を実際に抜かなくても、解散権をチラつかせるだけで求心力を高めることができるというメリットもある。
「岸田首相は昨年、解散権を弄んだとさんざん批判されたのに、また同じ手が通用するでしょうか。それに、支持率低迷の最大の要因は、裏金でも派閥でもなく首相の不人気です。総裁選再選は簡単な話ではないですよ」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)
調子に乗って再選を夢見ていられるのも今だけか。
●派閥解散で浮上する衆院解散・総選挙、続投を目指して消費税減税の可能性 1/26
・岸田首相が派閥解散を宣言したことで、長期政権を目指して衆院解散に踏み切る可能性が出てきた。
・メインシナリオは9月の自民党総裁選までの政権継続だが、秋の総裁選で続投が難しいと判断すれば、一か八かの衆院解散もあり得る情勢だ。
・仮に首相が衆院解散に踏み切るとすれば、所得税・住民税の減税が実施される6月か。あわせて、消費税減税も視野に入る。
昨年12月16日に寄稿した拙稿「絞られる次期首相の条件、「ポスト岸田」の一番手は初の女性首相か」では、秋の自民党総裁公選で想定される首相候補を提示したほか、秋まで総辞職も衆院解散もなく、岸田政権が継続しやすいとのシナリオを提示した。
「ポスト岸田」候補については、女性を含めて派閥色が薄い候補が有力との見方に変わりない。だが、宏池会解散など、このところ岸田首相がみせている大胆な決断を踏まえると、首相が長期政権を目指して衆院解散に踏み切るリスクシナリオを考える必要が出てきた。
経済政策にも影響があろう。岸田首相は続投を目指して大胆な政策に踏み切る可能性がある。消費税減税を検討する可能性も念頭に置いた方がよいだろう。
【歴史的な自民党の派閥解散・党改革】
   主要派閥解散
政治資金問題を機に、自民党は歴史的な変化を迎えている。昨年末の時点では安倍派(清和政策研究会)の影響力低下がメインテーマであったが、今年に入り、派閥自体の在り方が大きく変わろうとしている。
まずは派閥解散だ。1月18日、岸田首相は自らが率いてきた岸田派(宏池会)の解散を宣言した。翌19日に派閥の元会計責任者が政治資金規正法違反で略式起訴されるのに先立って決断した格好だ。
安倍派および二階派(志帥会)の会計責任者らも19日に立件され、同日に両派とも解散を決定した。なお、安倍派については、取り沙汰されていた幹部の立件こそ免れたものの、大野参院議員、谷川衆院議員らが立件された。
今般、政治資金規正法違反を問われていない3派閥のうち、麻生派(志公会)、茂木派(平成研究会)は存続するものの、森山派(近未来政治研究会)は25日に解散を決定した。
6派閥のうち2派閥のみ存続となれば、自民党の国会議員に占める派閥所属の議員は3割弱にとどまることになる。
次に、政治刷新本部で議論されている党改革も、派閥の在り方を大きく変えるだろう。
派閥の解消で影響力が高まるのは誰か?
   党改革
各紙報道によれば、1月23日に提示された中間とりまとめ案では、派閥を「お金や人事のための集団」とみられても致し方ない状況にあると位置付け、「本来の政策集団に生まれ変わらなければならない」と宣言した。
資金面では、派閥の政治資金パーティーを全面的に禁止するのみならず、季節ごとに派閥から所属議員へ活動資金を配る、いわゆる「餅代」や「氷代」を廃止する方針だ。
人事面でも、内閣改造や党役員人事の際に、派閥からの推薦や派閥との協議を認めない。岸田首相は、存続する派閥に対して「新たなルールに従ってもらう。いわゆる派閥ではなくなる」と述べている。
   派閥解散、党改革の影響は?
派閥解散、および党改革の影響により、自民党は大きく変わることになりそうだ。中間とりまとめ案で派閥が「お金や人事のための集団」と指摘されたように、議員は資金面や人事面でメリットを得られるために派閥に所属していた側面がある。党改革により、派閥に所属するメリットが大きく減じられる。
今後、政策本位でいくつかのグループができるだろう。存続する派閥も、いわゆる派閥ではなくなり、「本来の政策集団」に近づくことになりそうだ。
資金面や人事面で派閥(およびその領袖)の影響力が低下するということは、相対的に総理・総裁の影響力が強まることを意味する。
1990年代の衆院における中選挙区制から小選挙区制への移行や、2000年代以降の官邸機能強化により、総理・総裁の影響力は長らく強化される傾向にあるが、今般の派閥解散・党改革で一段とその傾向が強まるだろう。
秋の総裁選まで岸田政権が続く可能性が高い
【政治日程シナリオ再考】
   メインシナリオは秋の総裁公選まで政権継続
今年の日本政治は、秋の総裁公選を控え、衆院解散もしくは総辞職があるのか否かが焦点となる。このうち総辞職については、内閣支持率こそ低迷しているが、昨年末以来の政治情勢を踏まえると、可能性が低いだろう。
最大の理由は、自民党内で「岸田おろし」のような権力闘争、政局を仕掛けづらくなったこと、そしてそれを仕掛けるような派閥がなくなったことである。岸田首相が自ら退陣を選ぶ可能性はほぼなくなったと考えてよいだろう。
メインシナリオとしては、秋の総裁公選までの岸田政権継続を予想する。
3年の総裁任期満了に伴い実施される総裁公選は、国会議員のみならず党員党友が投票権を有する。翌2025年に参議院議員通常選挙や衆議院議員任期満了を控えているため、自民党にとって2つの国政選挙の「顔」として誰が相応しいかを選ぶ総裁選になる。
内閣支持率が大幅に上昇、昨年来の低下を挽回すれば岸田総裁が再選される可能性がある。対して、低迷したままであれば新しい総裁が選ばれるだろう。
岸田続投で浮上するリスクシナリオ
   衆院解散をリスクシナリオとして考える必要
リスクシナリオとして、岸田首相による総裁公選前の衆院解散を考える必要があろう。
内閣支持率は危険水域にあるものの、岸田首相は依然として長期政権を目指しているようにみえる。昨年末には、政治資金問題を機に安倍派の主要メンバーを内閣および党役員から排除、安倍派の影響力低下を図った。
また、今年に入ると、既述の通り、これまでかなり強いこだわりを見せていた宏池会をあっさりと解散した。派閥よりも自民党の改革を優先したといえるが、自らの支持率向上や政権維持への強い意欲があってこその決断であろう。
岸田首相があくまでも長期政権を目指し、かつ秋の総裁公選で続投が難しいと判断すれば、一か八かで衆院解散に踏み切る可能性がある。
内閣支持率が低迷した状況下での衆院解散・総選挙は、与党過半数割れにつながりかねないため、通常は選択されない。だが、現在は野党が分裂している。仮に与党が敗北しても、連立政権のパートナーを組み替えて自民党が与党としての地位を維持するという選択肢がある。
仮に岸田首相が衆院解散に踏み切るとすれば、当初予算の成立や国賓としての訪米を終えた後の4〜6月期であろう。
4月28日に予定される衆議院の補欠選挙のタイミングで総選挙を実施する案が取り沙汰されているが、現時点では補選は小規模にとどまりそうだ。補選に負けても政局にはなりづらい。所得税・住民税の減税が実施される6月に、衆院解散・総選挙となる可能性が高いだろう。
展開次第であり得る消費税減税
【経済政策への影響は?】
   財政には大きく影響
政治情勢が経済政策に与える影響はどうか。自民党有力者の経済政策スタンスは多様だ。ただ、金融政策については、誰が首相になっても、当面影響しないだろう。
2024年に任期満了を迎える日本銀行の政策委員はおらず、現行の体制が続く。4月にも日本銀行が物価目標を達成する確度が高まったと判断し、金融政策運営の正常化を開始すると予想する。
一方、財政政策は首相次第だ。2025年度にはプライマリーバランス黒字化の財政健全化目標の期限を迎える。2024年中に財政健全化目標期限を先延ばしするのか、目標自体をどうするのかを決断する必要があろう。
なお、岸田首相は、財政健全化と分配の両方を目指すスタンスだが、続投を目指して分配重視へ大胆に舵を切る可能性がある。消費税減税を検討する可能性も念頭に置いた方がよいだろう。
●4月10日に日米首脳会談 岸田首相が国賓訪問、安倍氏以来9年ぶり 1/26
岸田文雄首相の訪米について、日米両政府は4月10日にワシントンでバイデン米大統領との首脳会談を行う日程を固めた。複数の関係者が明らかにした。首相はバイデン氏から国賓待遇での公式訪問の招待を受けていた。日本の首相の国賓級待遇での訪米は2015年の安倍晋三元首相以来、9年ぶり。
首相は米国で晩餐(ばんさん)会に出席するほか、米議会での演説も検討している。両政府は近く日程を発表する方針。3月の訪米を模索したが、日本側は新年度予算案の国会審議、米側では大統領選の日程があることなどから、再調整していた。
●岸田政権支持率過去最低14.6%の衝撃…”財務省のドンが派閥解体に激怒 1/26
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件を受けて、岸田派に続き、最大派閥の安倍派や二階派も解散することになった。安倍派と二階派の会計責任者は在宅起訴、岸田派の元会計責任者は略式起訴されるという異例の事態だ。
他にも、政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で谷川弥一 衆議院議員が略式起訴され、自民党を離党し、議員辞職することになった。大野泰正参議院議員が在宅起訴され、離党している。
それもあってか国民の政治不信は、頂点に達している。時事通信が実施した1月の世論調査で自民党の政党支持率は14.6%で、1960年6月の調査開始以降で、野党だった期間を除き最低を記録したという。
元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏は「自身が派閥から離脱した後で『派閥解散』を言い出す岸田首相は信用ならない」と非難するーー。
各派閥トップに根回しなく派閥を解散させた岸田首相に麻生太郎は激怒
茂木敏充自民党幹事長は、安倍派幹部の政治責任を求める声が(1月22日開催の政治刷新本部において)複数あったとして「政治責任のあり方も国民の信頼に大きく関わる」(1月23日)と何らかの処分の必要性を匂わせている。
岸田文雄首相は「国民の政治に対する信頼を損ねるもので、極めて遺憾だ。自民党総裁としておわびしたい」と述べている。しかし、残る麻生派や茂木派、それに森山派は「適切に対応していた派閥まで解散する必要はない」として、派閥を存続させる意向を示している。
岸田首相が岸田派の解散を表明したのが1月18日。その夜に、麻生太郎自民党副総裁が岸田首相へ携帯電話をかけた。
「首相の携帯電話を鳴らした麻生・党副総裁の声は硬かった。/自民党内の派閥解散などについて/『こちらは逮捕も起訴もありませんから、派閥を続けますよ』/麻生氏は自ら率いる麻生派が今回、立件対象とならなかったことに触れ、こう強調した。首相は『うちの派に問題があり、けじめをつけます。麻生派は麻生派で』と応じ、異論は差しはさまなかった。/首相は派閥解散を巡り、他派閥の領袖(りょうしゅう、トップのこと) への根回しはしなかった。茂木派会長の茂木幹事長はこの日、麻生氏と連絡を取った後、『こんな大事なことを相談なしにやるなんて」と周辺に不信感をあらわにした』/(自民党)中堅議員は、主流派の麻生、茂木両派から反発が出ていることに懸念を示した。『円滑な党運営のためにも、首相はせめて麻生さんには事前に了解を取った方がよかった』」(読売新聞、1月20日)
麻生氏との隙間風に恐れ慄いたのであろう。1月21日に、首相は「手打ち」の会を東京・虎ノ門のホテル「The Okura Tokyo」にある日本料理店「山里」で開催した。その場では、岸田首相が麻生氏に事前に連絡をしないで「派閥を解散したこと」についてお詫びがあったのだという。
麻生太郎はなぜ、永田町政治のキーマンであり続けるのか。安倍晋三が語っていた麻生太郎の影響力の正体
この一連の動きをみていると、日本のトップであるはずの岸田首相と麻生氏のどちらが偉いのかがよくわからなくなってしまうが、やはりそれほどまでに永田町政治における麻生氏の影響力は強いということだ。
麻生氏の「強さ」は、元首相というよりも第二次安倍政権において、中核的な役割を担ってきたからだとする論が強い。安倍元首相の著書『安倍晋三 回顧録』にも、長期政権を支えたのが、麻生氏であったことがわかる記述がある。
「麻生さん、高村さん、菅さん。この人たちを抜きに長期政権は築けませんでした。麻生さんとは、人間的に肌が合うんですよ。お互い政治の世界で育ったという環境も影響しているのでしょう。首相時代は、漢字が読めないとかさんざん批判されましたが、ものすごい教養人です。歴史に造詣が深く、読んでいるのも漫画だけではないのだけど、自分を悪い人間のように見せようとするのです。あれは、もったいないですよ。自然に振る舞えばいいのに。彼は毛筆で手紙を書くじゃないですか。あんな政治家ってもう最後ですよね」
「(安倍政権では菅官房長官と麻生財務大臣の二人をずっと代えなかったことについて見解を問われて)2人は安倍政権の大黒柱です。中曽根(康弘)内閣を参考にしたのです。中曽根総理は、安倍晋太郎外相、竹下登蔵相を4年近く代えなかった。安定した長期政権を築く上では、柱は代えない方がいいということでしょう。特に麻生さんについては、ある程度、年輪を重ねた政治家が閣内にいてくれた方が助かります。財務省を統率するという点でも、非常に大きかったです」
安倍元首相は、麻生氏を「財務省」を抑えるために使っていたようだが、政治の世界、行政の世界に強い影響力を持つ「財務省」を長期間にわたって抑えてきたということが、麻生氏の影響力をより強いものにしていったのだ。
「派閥」をやめて「政策集団」に看板をすげかえるという。単なる言葉遊びではないか
裏金問題で、麻生氏でなくても国民が疑念を抱いているのが、今回の「派閥の解散」で、政治は何も変わらないのではないかということだ。安倍派が解散を決めた次の瞬間には、自民党安倍派の福田達夫元総務会長が安倍派の解散を受けて「反省の上に新しい集団をつくっていくことが大事だ」「派閥ではなく、新しいガバナンスの形」として新たな”集団”をつくる考えを示した。何か大きな決断をしたかのように振る舞う岸田首相だが、結局のところ、派閥のパーティを自粛することと何も変わらないことになる。
自民党の政治刷新本部は23日の全体会合で、麻生・茂木・森山3派について「派閥」としての存続は許さないとしたものの、「政策集団」としての存続は容認したという。「派閥」ではなく「政策集団」になるとは、ただの言葉遊びではないか。政治刷新本部の本部長も務める岸田首相は記者団に「派閥ありきの自民党から完全に脱却する。派閥から資金と人事を遮断する」と強調したというが、安倍派裏金問題で政治不信・自民党不信が極端に募っている今の国民に、岸田首相のこの主張が受け入れられるとは到底思えない。
むしろ、実態は何も変わらないのに、あたかも変わるかの如く振る舞い、反省したふりをはじめた岸田派、安倍派、二階派の面々よりも、麻生氏の行動は「胆力」があると考えられる。永田町(政治用語、政治記事)における「胆力」とは、政治家が、世論受けの悪い行動を自らの政治信条のもとに、果敢に挑む精神力、実行力のことを指す。麻生氏の「胆力」はやはり大きなものであろう。そうした「胆力」の積み重ねが、官僚や政治家たちの信頼を集め、それが麻生氏の大きな影響力になっている。
岸田首相は4月までに退陣せよ
「『私は派閥をやめませんから』。この電話で初めて首相から『岸田派解散』の意向を聞いた麻生氏は、自らの派閥は存続させる考えを伝えた。『茂木もやめないと思いますよ』。そう語って電話を切った麻生氏は、その茂木敏充幹事長に電話をかけた。/『岸田派の解散を聞いていたか』と問うた麻生氏に、茂木氏は『知りませんでした』。茂木氏も、自ら率いる茂木派の解散を考えてはいなかった。『お互い、これから矢面に立つことになるな』。麻生氏は茂木氏に、そう語りかけた」(朝日新聞、1月20日)
今回も、茂木氏とともに、世論受けの悪い行動にでたが、はっきりいって、インチキをしているのは、岸田首相である。そもそも、岸田首相は、昨年に岸田派の会長を辞め、その際に、派閥を離脱している。離脱とは、一般的な感覚では、全く関係がなくなっているということであり、派閥に関係のない人が、派閥の解散を決断するというのは茶番でしかない。都合が悪くなると、秘書のせいにして、自らは関係がないと主張をはじめるのに、離脱した派閥を解散する権限を持っているというのだから、政治家の何を信用すればいいのかわからなくなる。
「麻生太郎さんってそんなに力があるんですか?」とテレビ番組(1月22日放送のTOKYO MX「激論サミット」)で問われ、「力があるというか、それだけの人が従うというのを見ると、そういう魅力があるんじゃないですか?」と石破茂元幹事長は返答している。
麻生氏と比べて、問題解決能力が極端に低く、胆力もない岸田首相は、能登半島地震の復興にめどがついた段階(4月の衆議院補選前まで)で、退陣すべきだろう。
●能登地震支援の予備費、1553億円を閣議決定 政府、旅行支援など 1/26
政府は26日、能登半島地震の被災者への支援策「被災者の生活となりわい支援のためのパッケージ」に使う予備費1553億円を閣議決定した。中小・小規模事業者への補助や旅行支援策「北陸応援割」の導入などにあてる。
支援パッケージは「生活の再建」「なりわいの再建」「災害復旧等」の3本柱。主な支援策では中小・小規模事業者が工場などを復旧する際の補助金として石川県内で15億円、新潟、富山、福井各県では3億円を上限に費用の最大4分の3を支給する。これとは別に、輪島塗など伝統工芸品産業の災害支援枠も設ける。旅行支援策は1人1泊2万円を上限に宿泊費の半額を補助。石川、福井、富山、新潟の4県で3〜4月に実施する。
必要な経費は、国会の審議なく使える予備費の23年度の残額から出す。岸田政権はすでに今月9日、被災地への物資支援として47・4億円の支出を閣議決定していた。今回の決定で残額は約3千億円となる。
●幕を開ける国会論戦 野党の追及に岸田首相は何を国民に語るか 1/26
政治資金規正法違反で与党、自民党が大荒れのなか、ことし最初のビッグ政治イベント、通常国会が1月26日に召集される。 
岸田文雄内閣は、熾烈な野党の追及をかわし、論戦を乗り切りことができるか。当面の焦点は与野党が総力をあげて展開する衆参の予算委員会だ。ここで審議がストップすれば、首相がクビを差し出し、それと引き換えに予算案を通すという最悪の事態もあり得よう。 
過去、さまざまなドラマを生んだ国会論戦。今回は内閣の命運がかかるだけに、例年にもまして緊迫した展開になりそうだ。
外れた「派閥解消」による批判打ち消し
政治資金規正法違反をめぐり、安倍、二階派だけでなく岸田派も立件されたことにもっとも驚いたのは、岸田首相その人かも知れない。首相は、裏金疑惑があり不記載の額が巨額にのぼる両派とは異なり、自派のケースは単なる手続きミスと甘く考えていた節があるという(読売新聞)。  
東京地検にしてみれば、情状はそれとしても、岸田派だけを「おとがめなし」にはできなかったろう。
首相は、来年度予算を早期に成立させて能登半島地震の復興を急ぎ、通常国会を乗り切って反転攻勢つなげたいと目論んでいたようだ。それだけに、岸田派立件は大きな打撃だった。 
みずから率先して派閥解散を宣言したのも、思惑がはずれたことによる動揺の表れ、機先を制して批判をかわすという目論見だろう。 
派閥解消については、各メディアで報じられているので繰り返すのは避けるが、自民党では過去にも同様の決断をしたものの、その後、なし崩しに派閥復活を繰り返してきた経緯がある。それだけに、今回の3派の解散が、自民党派閥の将来にわたる解消につながると考える人は皆無に等しいだろう。
事実、1月23日にとりまとめられた自民党の刷新案は、「政策集団」としての派閥の存続を認めている。できないことをできるといわないだけ、むしろ正直≠ニいうべきかもしれない。
激しい野党の追及で過去には総辞職も
通常国会の論戦では、こうした問題で野党が舌鋒鋭く政府を追及してくると予想される。
1月24日、前哨戦ともいうべき予算委員会審議が衆参両院で行われ、今回の政治資金規正法違反事件に絡んで末松信介参院予算委員長(安倍派)が急遽辞任した問題が事前通告なしでとりあげられ、国会論戦の前途が楽観できないことをうかがわせた。
この日のテーマが能登半島地震復興であったことから、本格的な追及には至らなかったが、本番ではこうはいかない。ここで想起するのは、1989年のリクルート事件をめぐる竹下登内閣の総辞職だ。 
リクルート社から未公開株を受けとった閣僚らが前年から辞任。関係者らの逮捕が相次ぐ中で召集された通常国会は荒れに荒れた。
証人喚問問題などをめぐって、審議はたびたびストップ、予算成立の見通しが立たなくなったため、竹下登首相が4月末、退陣を表明。「政府の最高責任者として、国民の信頼を取り戻すために自ら身を引く決意を固めた