岸田内閣の支持率 過去最低更新中

岸田内閣の支持率 過去最低に 
政府・与党内「危険水域」

政権・政策  説明なし
民に伝わらない 理解されない  期待されない 
 ないないづくし

民をどこに連れて行くのですか ・・・ 

 


 
 
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●自民党県連が政治資金パーティ― 茂木幹事長 「岸田政権の支援」呼びかけ 11/5
自民党広島県連のパーティーに出席した茂木敏充幹事長は経済対策など「大きな課題を解決していくためには政治の安定が必要だ」として岸田政権への支援を呼びかけました。
自民党・茂木敏充幹事長「安全保障問題・少子化対策・経済を30年ぶりに新しい体質に変えていく・こういった大きな課題を解決していくためにはやはり政治の安定がなければできない」
自民党の茂木幹事長はこのように述べ、政府が閣議決定した経済対策を進め、「減税しなくても賃金が上がっていくような好循環に変えていきたい」と抱負を語りました。
自民党広島県連が主催する政治資金パーティーは5年ぶりに通常開催となり、県選出の国会議員を始め、茂木幹事長のほか、岸田政権を支える閣僚も出席し、地元の政財界からおよそ1200人が参加しました。
●橋下徹氏「岸田政権残念」とバッサリ 現役世代への強いメッセージ求める 11/5
大阪府知事や大阪市長を務めた弁護士の橋下徹氏(54)が5日、フジテレビ系「日曜報道 ザ・プライム」に出演し「物価高対策は賛成なんですけれども、岸田政権残念なのが、きちんとした物語、論理、ロジックができないと思う」と岸田文雄首相の推進する経済対策について真っ向から批判した。
国民全体にかかる家計負担について高額所得者も含んだ定額減税に対して、所得制限の是非について論議されているが、橋本氏は「経済の総論から言うと、物価が上がって物価高対策なんだ、と言っているのに、そこで景気対策的なことをやったら」と手振りで右上がりの上昇グラフをつくりながら「そらまた物価がどんどん上がっていくんじゃないですか?」と話した。
同じく生出演した新藤義孝経済再生相(65)は「そこは私も非常に注意していて、前提として、そういうことを言う人は『これはインフレの政策ですか?、デフレの政策ですか?』という。それはポイントだけの理論なんですよ」と話し「賃金が構造的に上がってくるよ、という世の中にしないと、いつまでたっても日本のGDPは上がらないし成長もしない。低成長のままとりあえず現状維持では将来がない」と説明した。
対して橋下氏は「政策をどうとるかは政治家の判断です。一国民としては、この状況で現役世代の可処分所得をとにかくあげて行くんだというメッセージと政策をしてもらいたい」と岸田政権の国民に対する強いリーダーシップの必要性を強調した。
●元NHK岩田明子氏「1強をはき違えている」根回しなし岸田首相 11/5
元NHK解説委員でジャーナリストの岩田明子氏は4日夜、ABEMAの「NewsBAR橋下」に生出演し、岸田文雄首相の政治姿勢に疑問を呈した。政策を決める際の議論や周囲への根回しが見られないとして「サプライズ好きみたいになっている」「『1強』というものをはき違えている」と解説した。
岩田氏は、ANN(テレビ朝日系)の世論調査で首相が打ち出した所得税や住民税の4万円の定額減税について56%が「評価しない」と答えたことについて、「減税と聞いたら国民は喜ぶだろうと思っているところが見透かされたのだと思う。そんなことよりも今、国がどうなっていて、自分は長期的にこういうことをやりたいのかを教えてくださいよ、減税、減税と言っていないでと。そういう数字だと思う」と指摘。大阪府知事や大阪市長を務めた弁護士の橋下徹氏に「世論の状況をじっと見て、そこに乗っかる政治家の感じがしたが、こことなると頑固なんですかね」と問われると「最初は聞く力からスタートしたが、だんだん聞くというところがなくなっていったような気がする」と指摘。防衛費増額や「異次元の少子化対策」などの肝いり政策を決める際も「財源をどうするかとか、トマホークを買いますよというところも、ディスカッションや説明をするプロセスがあまり見られなかった。総理のトップダウンで指導力を発揮していますというものが、増えてきた感じ」と話した。
「大きな議論が全くなくて、サプライズ好きみたいな感じになっている」とも指摘。その上で「(岸田首相は)1強というものをはき違えている」と指摘。自身が食い込んだ安倍晋三元首相の手法との違いに言及し「安倍さんが1強になったのは、根回しを徹底して党が納得したから『官邸の指示通りで』となっていた。そのプロセスを省いて、総理がいきなりトップダウンで落とすことが1強ではない」とも訴えた。
岸田首相が就任直後、大方の予想を覆す形で衆院解散・総選挙の日程を前倒しして行い勝利したことや、ウクライナ電撃訪問に触れ「これでいいんだと、サプライズ好きになってしまっている。驚くのは1回か2回でいいんですよ」とピシャリ。バーテンダー役のサバンナ高橋茂雄は「困ったもんやな。急に驚かすのにはめられても…」と苦笑いで応じていた。
●「100年に1度」の錯覚が生む財政赤字の膨張 11/5
一昨年末、NHK衛星放送が1982年の特集番組「85歳の執念」を再放送していた。第2次臨時調査会の土光敏夫会長の公私に迫ったドキュメンタリーだ。番組は「国の借金、国債発行残高82兆円。国家財政は今、破産の危機に瀕している」とのナレーションで始まる。それから40年余り。土光氏の執念もむなしく、国債発行残高は今や1,000兆円を超える。なぜ、こうなったのか──。
底流には、高齢人口の増加を背景とする社会保障費の増大がある。しかし、それだけではない。図表が示すのは「階段状に発散する」国債発行の姿だ。
日本では「100年に1度」と呼ばれる危機が起きる都度、大量の国債が発行され、収束後も十分に圧縮されないまま、次の危機を迎えてきた。この「100年に1度の危機」が、近年は10年に1度に満たない頻度で起きている。2008〜09年のリーマンショックは、当時の理論モデル上、100年に1度しか起きないリスクが顕在化したものといわれた。11年の東日本大震災は、国内観測史上、最大規模の地震だった。20年からの新型コロナは、世界の死者数が、感染症としてスペイン風邪以来、約100年ぶりといえる水準に達した。
個々の事象は100年に1度であっても、社会全体で見れば、しばしば起きる事象の一つだ。ならば、その理解と覚悟をもって、あらかじめ危機の想定を広げ、被害と支出を最小化する準備が必要である。そうは言っても、すべてのリスクと被害を予測するのは難しいため、まずは危機時の財政出動について、将来の国債償還の道筋を明確にした上で、是非を判断するのが肝心である。危機時にこそ、場当たり的な対応とならないよう、冷静な判断が求められる。それが政治の仕事である。
しかし現実は、「危機」という名のパニックの下、償還財源を問うことなく巨額の国債が発行されてきた。こうなると、収束後に財源議論を蒸し返すのは難しい。選挙が意識される政治の世界では、いったん上った階段を下りるのは至難の業だ。
今年度の新規国債発行額(当初予算)は10年代後半並みの約36兆円とされ、それ以上の削減は行われなかった。さらに今回の臨時国会で、大規模な経済対策が取りまとめられる見込みである。政府は税収増の一部を「国民に還元する」としており、人々の関心はもっぱら還元の方法に向かう。税収増を国債発行の減額に充てる考えは、ほとんど顧みられない。岸田文雄政権が来年度予算の目玉と位置付ける「異次元の少子化対策」も、財源議論は始まったばかりで心もとない。
このままでは、新型コロナという「危機」を経て、国債発行は次の階段を上ることになりかねない。「財政規律」は、すでに過去の言葉となってしまったのだろうか。
 
 
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●自民・梶山幹事長代行「経済対策の内容、国民に伝わっていない」 11/6
(報道各社の世論調査で、岸田政権の内閣支持率が過去最低を更新していることについて)世論調査については常に真摯(しんし)に受け止めなければならない。新たな総合経済対策についても、JNNの世論調査では「期待しない」が72%となっている。所得減税を含む経済対策の内容が十分に国民に伝わっていないことが、要因の一つだと思っている。
与党で連携し、政府とも提言を通じて議論を深めてきたが、世の中に対するアピールというか説明がまだまだ不足している。補正予算案の提出にあわせ、皆さんが実感できるような説明をしていかなければならない。
この経済対策は、経済構造の転換によって投資を拡大し、物価上昇を上回る賃上げを実現していくために必要だ。定額減税は物価高対策よりも、経済の好循環を実現する様々な施策の一つで、そうした点も国民に丁寧に説明していくことが必要だと思う。
自民党の支持率も、急上昇するような特効薬はない。常に国民政党としての原点を忘れることなく、国民の声に寄り添いながら、目の前の課題に一つずつ真摯に取り組んでいく。
●岸田内閣の支持率、JNN世論調査で過去最低に 政府・与党内「危険水域」 11/6
岸田内閣の支持率が30%を切ったことがJNNの世論調査でわかりました。調査の方法は異なりますが、2012年に自民党が政権復帰して以降、最も低い支持率となりました。
岸田内閣を支持できるという人は、29.1%で総理就任後、過去最低となりました。前回の調査から10.5ポイント下落していて、これは過去最大の下げ幅です。一方、支持できないという人は、10.6ポイント上昇し、68.4%で過去最高です。
政府が先週まとめた経済対策について「期待する」と答えた人は18%、「期待しない」と答えた人は72%でした。
経済対策には所得税と住民税、あわせて4万円の定額減税などを盛り込みましたが、この方針を「評価する」が26%、「評価しない」が64%でした。
また、「デフレに後戻りしないための一時的な措置」として、何が良いか聞いたところ、「消費税の減税」が最も多く41%でした。
各党の支持率はご覧のとおりです。
【政党支持率】 自民 26.2%(5.4↓) 立憲 5.1%(0.0→) 維新 5.2%(0.3↓)  公明 2.5%(0.1↑) 国民 1.4%(0.0→)  共産 2.9%(0.2↑)  れいわ 2.3%(1.1↑) 社民 0.3%(0.0→) 女子 0.1%(0.1↑)  参政 0.6%(0.1↓) その他 0.9%(0.4↓) 支持なし 49.2%(3.5↑)
松野博一官房長官「世論調査の数字に一喜一憂はしませんが、世論調査にあらわれた国民の皆様の声を真摯に受け止め、政府としての対応に生かしていくことが重要であると考えています」
調査方法は異なるものの、2012年の政権交代以降、最も低い支持率を記録したことに、政府・与党内では「危険水域だ」などと動揺が広がっています。
自民党議員からは「街頭でも『選挙目当ての減税か』と言われる」「岸田総理の説明力のなさに尽きる」などと、政権が掲げる所得税などの減税方針が一因だとする声が多く聞かれました。
●「場当たり対応、国民見透かす」 元側近・三ツ矢氏、岸田首相に苦言 11/6
自民党岸田派(宏池会)で事務総長代行を務めるなど、就任前の岸田文雄首相を支えた三ツ矢憲生元衆院議員は5日までに時事通信のインタビューに応じ、岸田政権について「表面的、場当たり主義だと国民に見透かされている。小手先のパフォーマンスを続ければ日本が行き詰まるだろう」と苦言を呈した。
主なやりとりは次の通り。
――政権発足から2年。どうみるか。
2021年の自民党総裁選で首相が言っていた「新しい資本主義」は当時から派内でも実体が不明だった。首相には漠としたアイデアがあるのだろうと思っていたが、結局分からないまま言葉だけ先行し、金融所得課税など当初掲げていた公約もいつの間にか消えた。
一方で、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や防衛費増額など、日本の従来の歩みの転換を閣議決定だけで決めるような荒っぽいこともしている。
――24年度の防衛増税を先送りする。
5年間で43兆円の防衛費を確保すると言っているが、具体的にどう財源を用意するかは何も決まっていない。防衛費は国民の生命財産に関わり、税で恒久財源を用意すべきだ。首相が自分自身で43兆円が必要だと判断したなら、その中身を説明し、国民に財源確保の理解を求め、説得しないといけない。
自民党は09年に野党へ転落した際、旧民主党政権の「子ども手当」について、「財源の裏付けもない選挙買収だ」と非難した。あれはどの口が言ったのかという気がする。
――異次元の少子化対策も財源が見えない。
中身を見れば「異次元」でも何でもない。経済的理由で結婚できない人が増え、子どもが減る根本原因を探らないといけない。非正規社員の若者が待遇面などで不安定な立場に置かれる現状を変えるため、労働法制の見直しに踏み込むべきだ。
――所得税減税の意図は。
支持率のためだろう。次期衆院選対策も考えているのだろうが、見え見えだ。経済対策として税制を考えるなら、企業の内部留保や個人金融資産の活用を真剣に考えるべきだ。首相がラッキーなのは党内に強力なライバルがいないことだ。野党もばらばらで、政権が低空飛行で続いていく可能性もある。しかし、国民にとっては不幸だろう。
首相は就任前からよく「自分は現実主義者だ」と言っていたが、実体は表面的な場当たり主義だったのではないか。それが国民に見透かされているように思える。小手先のパフォーマンスばかりでは日本が行き詰まる。本当に首相としてやりたいことがあるなら、真剣に向き合わなければだめだ。
●政府の経済対策・安心感にはつながらない 11/6
政府は17兆円規模の新たな経済対策を閣議決定した。定額減税と現金給付を組み合わせて、長引く物価高による国民の家計負担を緩和するのが柱の一つである。
減税は、扶養家族を含めて1人当たり所得税3万円と住民税1万円の計4万円を、本来の納税額から引く。景気回復に伴う税収増の「還元」という触れ込みだ。所得税と住民税の非課税世帯には、7万円を支給する。これらの予算規模は計5兆円に上る。
確かに、目先の負担感は多少和らぐかもしれない。しかし、視線をもう少し先に向けて考えたい。一時的な「ばらまき」が、果たして消費を喚起し、経済を好循環させる呼び水になるだろうか。
賃上げは物価上昇に追いつかず、世界情勢の不安定化で原料高などによるインフレ進行の懸念がぬぐえない。近い将来には防衛増税も控える。先行きへの安心感を欠いたままで、今回のような大盤振る舞いが効果を上げるかは疑わしい。
岸田首相がこだわった減税には、自民党内でも異論が噴出した。国民から「選挙対策」との批判が出ているのも当然だろう。物価対策は、困窮している人の支援に絞って行うべきである。
ガソリンや電気・都市ガス代を抑える補助金の延長も盛り込まれた。今年末で終了予定だったが、来春まで継続する。
光熱費の一律補助は、富裕層ほど恩恵を受ける傾向があり、国が取り組む脱炭素にも逆行する。化石燃料に対する補助とも言え、産業構造の転換を阻害する要因にもなろう。政府は早急に「出口」を示す必要がある。
ほかには、賃上げした中小企業への税制優遇や半導体の生産支援、宇宙分野の技術開発に取り組む企業や大学を後押しする基金の新設などがメニューに並ぶ。
経済対策の財源の多くは、借金である国債の発行で賄う方針だ。首相は先週の会見で「財政支出を平時のレベルに戻す方針は堅持する」と述べたが、説得力に欠ける。巨額事業を盛り込んだ結果、対策を裏付ける補正予算案の計上額は、新型コロナウイルス禍前の約3倍に膨らんだ。
借金体質の悪化は、将来世代に重いつけを回すことにもなりかねない。岸田政権は「異次元の少子化対策」を看板政策に掲げる。税収の増加分は財政健全化のため国債返還に回し、将来世代の負担を少しでも軽くすることに使うべきではないか。
財政立て直しを先送りし、「増税隠し」にも映る一連の対策が、国民の将来不安を深めている。その点を首相は自覚するべきだ。 
●身内も不支持の岸田内閣「自民より不人気」 「政権末期の症状」慢性化 11/6
岸田文雄内閣の支持率が共同通信の11月調査で28・3%(前月比4ポイント減)となとなり、発足以来最低を更新した。3割を切るのは直後の総選挙で自民党が下野した2009年の麻生太郎内閣以来という低水準だ。所得税減税などを盛り込み大々的に打ち出した経済対策は奏功せず、自民の政党支持率より内閣支持率が低い「政権末期の症状」(自民重鎮)が、人事ミスも絡んで慢性化しつつある。
10月にさかのぼるが、自民の支持率(34・7%)が「内閣のアレ(支持率=32・3%)」(自民重鎮)を逆転した。自民関係者によると党内には「論評禁止」の自粛ムードが漂ったという。「『党総裁が党支持者からも相手にされていない』との評判がはびこるのが恐ろしかったから」(自民幹部)とされる。
そして11月の自民支持率は34・1%で前月と横ばい。だが内閣の「アレ」は続落し、差がさらに開いた。「自分の党にすら応援されない総理大臣ってありなのか?」(経済官庁官僚)。共同通信の支持率が報じられた週明けの6日、永田町や霞が関には首相の存在意義をも問う声が広がった。
低迷の背景には人事のミスもある。関係者の話を総合すると、副大臣・政務官人事の際、法務副大臣は無派閥の星野剛士氏(衆院比例南関東)を内閣府副大臣から横滑りさせることで固まっていた。ところが星野氏が谷垣禎一元総裁のグループに顔を出していたことを理由に同グループ関係者が「この副大臣は無派閥ではなく自分たちの枠」と主張。発表前夜段階でグループ主要メンバーの柿沢未途氏との差し替えを持ち出し官邸は受け入れたという。
柿沢氏は東京都江東区長選を巡るトラブルの渦中。自民政調会長でもある萩生田光一都連会長は柿沢氏の政務三役起用構想に対し、区長選後の混乱を懸念し起用見送りを促した。萩生田氏は「それを無視され人事をいじられたことに怒り心頭」(側近)という。政府関係者は「単に支持率が低いという分析で済まされない。とうとう身内からも見捨てられ始めた」と危機感を募らす。
政務三役を巡っては柿沢氏に先立ち、文部科学政務官だった山田太郎氏が女性問題で辞任。共同通信の調査では両件について72・7%が「岸田首相に任命責任がある」と指摘しており、不評の経済政策同様に支持率を押し下げている。 
●岸田総理「厳粛に受け止め」 性同一性障害特例法 法改正の兆しか? 11/6
戸籍上の性別を変更する際に生殖能力をなくす手術を必要としている今の法律の規定について、最高裁が初めて「違憲」とする判断を示しましたが、岸田総理ら政権幹部が相次いで適切に対応する考えを示しました。
岸田総理「政府としても様々なご意見を踏まえ、与党の皆様とも十分にご相談をしながら適切に対応してまいる所存です」
総理官邸で開かれた政府・与党連絡会議で、岸田総理は最高裁が戸籍上の性別を変更する際に生殖能力をなくす手術を必要としている今の法律の規定について「違憲」と判断したことを受け、「厳粛に受け止める必要がある」と述べました。その上で与党と相談し、適切に対応する考えを改めて強調しました。
公明党 山口代表「見直しに向け速やかな検討が必要だ」
また、公明党の山口代表も記者団に対し、速やかに法改正していくことが望ましいと述べました。
性同一性障害特例法を改正する場合、新たな要件を設けるのか、違憲とされた部分をなくすだけにするのか、今後議論となりそうです。 
●岸田内閣支持率28.3%と過去最低を更新… 11/6
《増税メガネ、お手盛りメガネ、学歴コンプレックスメガネ…。あだ名は何でもいいから、早く交代してください》《この支持率がどこまで下がれば本人は辞める決断をするのか。それを知りたい》
共同通信社が11月3〜5日に実施した全国電話世論調査で、岸田内閣の支持率が28.3%と過去最低を更新したことに対し、ネット上では悲鳴交じりの声が広がった。
同調査では、政府が“肝いり政策”として掲げる「経済対策」に盛り込んだ1人当たり計4万円の所得税、住民税の定額減税などの受け止めについても聞いているのだが、「評価しない」との声が62.5%にも達し、内閣の不支持率は56.7%で前回調査(10月14〜15日実施)から4.2ポイントも上がって過去最高となった。
「令和の所得倍増」「聞く力」などを掲げて自民党総裁となり、総理に就任したものの、所得倍増どころか、いまや実質賃金は17カ月連続で前年同月割れ。「聞く力」も財務官僚に対しては発揮するが、国民の悲鳴は“ノイズ扱い”で一顧だにしない。
岸田内閣が発足した当時と比べて「円ドル相場」は、この2年間で111円から150円に急落。異次元緩和のアベノミクスによる影響があるとはいえ、日本をどんどん「貧しい国」に沈没させているという自覚も危機感もない。
これでは国民の多くが岸田首相に対して「リーダー失格」と思うのも当然だろう。
《ロシアとウクライナの戦争、イスラエルのガザ地上戦突入。あらゆる局面が転換期を迎え、国難のこの時の日本の首相が最低、最悪のヘボ男。これはマズイだろ》
《岸田さんは、つまり、何がしたいのだろうか。国民の生命、財産を本気で守ることなのか。総理大臣にいることなのか。平時ならとにかく、国難時にこの人は使い物にならない》
《岸田ノートは何が書いてあるのか。国民の声とか言っていたが、やはりパラパラ漫画か?いい加減、国民生活も世界の情勢もきちんと見て》
国民の怒りのマグマが、次期衆院選で爆発するのは間違いなさそうだ。
●岸田内閣の支持率、過去最低更新に自民・梶山氏「世の中への説明不足」 11/6
最新のJNNの世論調査で、岸田内閣の支持率が29.1%と就任後最低となったことについて、自民党の梶山幹事長代行は「経済対策について世の中に対する説明が不足をしている」と指摘しました。
自民党 梶山幹事長代行「(経済対策について)世の中に対するアピール、説明がまだまだ不足をしている。補正予算が出てくることに合わせて、しっかりと皆さんが実感して受け取れるような説明をしていかなければならない」
梶山氏は、岸田政権発足後、内閣支持率が初めて30%を切った最新のJNNの世論調査をめぐり、総合経済対策について「期待しない」が72%となったことに触れ、「世の中に対する説明が足りていない」と指摘しました。
調査方法は異なるものの、内閣支持率が30%を切るのは、2012年に自民党が政権に復帰して以降初めてです。
内閣支持率が低迷する中、梶山氏は、政府与党が今国会での成立を目指す補正予算案をめぐる審議などを通じて、「国民に対する説明をしっかりしなければならない」と強調しました。
 
 
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●岸田首相「減税」で政権崩壊か 「何をやりたいのかわからない」迷走 11/7
「何をやりたいのかわからない」。岸田政権に、身内の自民党内からさえ、そんな声がもれる。内閣支持率も急落し、政権の崩壊の可能性も高まってきた。
岸田文雄政権の迷走が止まらない。内閣改造で女性閣僚を5人起用して「女性重視」をアピールしたと思ったら、副大臣・政務官人事では女性がゼロ(その後、文部科学政務官の交代で女性を起用)。防衛費の大幅増額などで増税が控えている中、税収増の「還元」で所得減税を実施するという。物価高で将来不安が募る国民の間では政権不信が高まる。岸田首相には、自民党内からさえ「何をやりたいのかわからない」という疑問が出ている。支持率低下が続く中で、強引に衆院の解散・総選挙に突入して敗退するのか、それとも政策が行き詰まって立ち枯れるのか。このままだと、政権の崩壊は時間の問題となってきた。
日経新聞が10月27〜29日に実施した世論調査結果が政府・自民党に衝撃を与えた。内閣支持率が9月に比べて9ポイント下落して33%、不支持率は8ポイント増えて59%になったのだ。岸田首相が政権浮揚策として打ち出した「所得減税」については「適切だと思わない」が65%に上った。減税を表明した直後の支持率急落という事態に直面し、政権は最大のピンチに追い込まれている。
失われた信頼感
岸田内閣の不支持率は増え続けているが、その内訳を見ると、「岸田首相が信頼できない」をあげる人が多くなっている。とりわけ、6月の通常国会会期末に衆院の解散・総選挙が取りざたされ、結局は見送られたころから、「信頼できない」という反応が目立つようになった。
国会質疑や記者会見で解散・総選挙について問われた岸田首相が一瞬、にやけた表情を見せて「今は考えていない」とけむに巻く場面が続いた。多くの国民は、岸田氏について「まじめ」「誠実」といった印象を抱いていた。前々任の安倍晋三氏、前任の菅義偉氏と比べて、岸田氏は「ひ弱だが、強権とは縁遠い」とみられていた。ところが、現実の岸田氏は「解散権を弄んでいる」「実は権力志向」といった見方が強まってきた。岸田氏への信頼感が失われている中で、様々な施策を繰り出しても支持率は回復しないのは当然だ。
官邸の脆さを露呈
9月、岸田首相は内閣改造・自民党役員人事に着手した。小渕優子元経産相を党選挙対策委員長に抜擢。閣僚では上川陽子氏を外相に、加藤鮎子氏を少子化担当相にそれぞれ起用するなど女性5人を登用。評判は上々だった。だが、直後の副大臣(26人)・政務官(28人)の人事では計54人全員が男性で女性はゼロ。「女性軽視」が与野党から批判された。
この人事が明らかになった時、安倍政権の幹部だった政治家は、こう指摘した。「安倍政権だったら、菅官房長官、今井尚哉・首相秘書官(政務)、杉田和博官房副長官(事務)の誰かが気付いて安倍首相に人事の見直しをもとめていたはず。岸田政権にはそういう政権幹部がいない」
確かに岸田政権の松野博一官房長官、嶋田隆・首相秘書官(政務)、栗生俊一官房副長官(事務)が今回の副大臣・政務官人事で動いた形跡はない。岸田官邸の脆さを露呈する出来事だった。
10月に入ると、岸田首相は「経済対策」を打ち出す。当初は投資減税が柱だったが、次第に「税収増を国民に還元する」と所得減税に踏み出していく。突っ込みどころ満載だった。(1)景気回復下で減税すればインフレを加速する(2)税収増の主因は物価高であり、生産性が向上しているわけではない。財政赤字の削減に充てるべきだ(3)物価高に苦しむ低所得者支援には給付の方が即効性がある、などの指摘が与野党から相次いだ。10月半ばには、岸田政権の政策に好意的だった日経新聞が一連の対応を批判するベテラン記者のコラムを掲載。「『経済対策』を装う選挙対策」と指摘した。首相官邸の官僚たちは動揺した。
「増税メガネ」と言われ
それでも岸田首相は筋の悪い所得減税に突き進んだ。所得税を納めている人には所得税と住民税の計4万円の定額減税、住民税非課税世帯には7万円の給付をそれぞれ実施するという。政府部内でも「給付だけで十分なのに、所得減税に踏み出したのは岸田首相が『増税メガネ』といわれていることを気にしているのだろう」(財務省幹部)といった反応が出た。「増税メガネ」は、防衛増税や少子化対策のための負担増を予定している岸田首相に対し、ネット上で広がっている指摘だ。自民党幹部によると、所得減税は「増税メガネ」の印象を打ち消したいという岸田首相の強い意向の表れだという。「俺は増税だけではない。減税もできるんだ」というわけだ。 
●本音続出!街角景気にあふれる「国民の悲痛な叫び」 11/7
デフレ完全脱却のための経済対策──岸田文雄首相は先週2日、総合経済対策の決定を受けた会見で力説した。物価高対策など5本柱を掲げ、「所得の伸びが物価上昇を上回る状況を確実につくる」とも話したが、“国民の本当の声”は届いているのだろうか。
悲痛な訴えだ。
「3カ月前の6月1日から29日までの売り上げは2586万円であった。9月1日から29日までの売り上げは1814万円で、3カ月前の70.1%となる」
東京都のレストラン経営者は、そうコメントした。
“街角景気”として知られる景気ウオッチャー調査(内閣府、2023年9月調査)で、この経営者は景気の現状判断を「×」と回答。判断理由は「販売量の動き」で、その説明が冒頭の内容となっている。
「GDP(国内総生産)や消費者物価指数など経済指標はたくさんありますが、街角景気は数値だけでなく、国民の生の声であふれています。丹念に見ていくと、生活している人がいまの景気をどう判断しているかが、より深く理解できます」(株式評論家の倉多慎之助氏)
南関東でゴルフ場の経理担当をしている人は次のように回答している。
「新型コロナの感染により就業できない従業員が多く、元より要員不足のなかにさらに負担がかかる状況になっている。円安などの影響で価格が高騰する肥料薬剤の投下量も増え、水道光熱費の高騰も続いており、固定費の回収も容易ではない」
東京都の広告代理店経営者はこうコメントした。
「飲食店のスタッフ離れ、原油高騰に伴う価格変更による経営状態の悪化が激しい。直近で一番悪い」
「直近で一番悪い」
街角景気の9月現状判断DIは49.9(50が良い、悪いの分かれ目)だった。調査結果について、「景気は緩やかな回復基調が続いているものの、一服感が見られる」としているが、感じ方はさまざま。「直近で一番悪い」もあるのだ。
帝国データバンクの景気動向調査(9月)でも景気DIは前月比0.5ポイント減の44.4と2カ月連続で低下した。
国民の苦しい現実は、街角景気からまだまだ伝わってくる。
景気判断は5段階に分かれる。良い(◎)、やや良い(〇)、どちらとも言えない(□)、やや悪い()、悪い(×)だ。
と×の回答から、その声を拾ってみた。
シニアから10代、20代の若者まで利用するコンビニはどうか。
「朝、店に立ち寄る客が少し減っている。物価高による影響かと感じている」(南関東、経営者)
「明らかに客の購入点数が減少しており、購買力や購買意欲の低下がみられる」(四国、店長)
「おにぎりや弁当などの主食食品について、客が価格を気にしながら購入している。客単価も下がりつつある」(北海道、エリア担当)
「ついで買いが激減している」
「ついで買いや衝動買いが激減している。たばこのついでにコーヒーも購入するとか、喉が渇いたからお茶を購入するというような動きが見られない」(東北、店長)
大手チェーンの広報担当者はこう言う。
「人手不足の影響は大きいですね。アジアを中心とした外国人のアルバイトはまだ戻っていません。ギリギリの人数で店舗を回さなければならず、店舗オーナーは苦労しています」
「夜は週末以外、客が来ない」
(街角景気は「国民の生の声」/(C)日刊ゲンダイ)
百貨店やスーパーの街角景気はどうか。
「駅の利用客は多いものの、来客数は減少している」(南関東、百貨店企画宣伝担当)
「必要なものしか買っていないように見受けられる」(南関東、スーパー店員)
「特売日やポイント販売促進強化日は好調であるが、平常時、他社への買い回りが進んでいる」(四国、スーパー財務担当)
家電量販店やレストランなどからの嘆きも相次ぐ。
「冷蔵庫が75%、洗濯機80%、テレビ60%と、主要品目がことごとく前年割れしている」(北関東、家電量販店店員)
「性能より価格重視な商品選びをする人が増え、客単価が下がってきている」(四国、家電量販店店員)
「ランチタイムは、やはり1人ずつの客が増えてきており、夜に関してはほぼ週末以外は客が来ないような状態になっている」(南関東、一般レストラン経営者)
「飲食店への客の流れは新型コロナの感染拡大初期に匹敵するくらい悪い」(東海、酒類小売店経営者)
「売り上げが過去10年で最低」
(訪日客は戻ってきたが…(C)日刊ゲンダイ)
新型コロナが5類へ移行し、インバウンドも急増。土産物店など観光業のなかには、「個人予約は伸び悩んでいるが、企業研修やスポーツイベント、ツアーなどの団体予約は増加傾向」(北陸、都市型ホテル役員)とし、景気判断を「〇」とする回答もある。
だが一方で、政府が打ち出した経済対策では「絵に描いた餅」だと感じざるを得ない生の声がひっきりなしだ。
「海外旅行については、物価高、円安、燃油サーチャージ高騰の影響で旅行料金が大幅に上昇している。客は、コロナ禍前の価格水準をイメージしていることが多いため、見積もりを提出した時点で旅行を見送ることになる」(北海道、旅行代理店従業員)
「8月の新規求人数は、前年比33.2%減少、前月比11.6%減少となっている」(東北、職業安定所職員)
「何となく街に出てきて、世間話をして自分のストレスを解消しようという雰囲気の客がほとんどで、なかなか消費までには回らない」(北関東、衣料品専門店販売担当)
「5月から8月までの今期売り上げが、過去10年間で最低という衝撃の事実が判明した」(北関東、一般機械器具製造業の経営者)
「折り込みチラシが減少している」(東海、新聞販売店店主)
「中国の日本産水産物輸入禁止措置を受け、輸出売り上げが大幅に前年割れ」(北陸、食料品製造業の経営企画)
「物価の上昇が顕著となった前年以降、平均客単価が約50%に下がっている」(近畿、住関連専門店店長)
「インボイス制度への不安などから月末にもかかわらず夜の時間帯は暇である」(近畿、タクシー運転手)
「単価は変わらないが、来店周期が少し延びている」(近畿、美容室店員)
「9月は通常、来店客が増える業界だが、今年は例年より極端に来店客が少なかった」(中国、乗用車販売店店長)
物価高だけでなく、日中関係やインボイス制度、中古車販売ビッグモーター問題などによって生活が脅かされている。生半可な経済対策は期待薄。さらなる節約などで生活防衛するしかない。
●バラマキ策に騙されるな!ついに「花粉税」なる珍妙な増税案も? 11/7
政権発足以来、支持率の低迷にあえぐ岸田文雄首相が、“奇策”に出た。
「10月26日に行われた政府・与党の懇談会で、所得税などの減税策を表明しました。表向きは、税収の大幅な増加分を、物価の高騰に苦しむ国民に還元するとしています。だが、実際は、近い将来の衆院選を意識したバラマキ策=選挙対策の色合いが濃い。“増税メガネ”というイメージの払拭に躍起なんです」(全国紙政治部記者)
では、肝心な減税策は、どのようなものになるのか。
「来年6月から、子どもなどの扶養家族を含めて、1人あたり年間で合計4万円の所得税と住民税を減税。また、それらが課税されない低所得者世帯には、1世帯あたり7万円を給付します」(前同)
だが、経済アナリストの森永卓郎氏は、その効果について疑問を投げかける。
「総額で5兆円くらいのバラマキ策でしょうが、国民はそのまま貯蓄に回すだけで、日本経済へのプラス効果は、ほとんどありません」
さらにこの減税策の裏で、岸田政権は今後、数多くの増税を目論んでいるという。
まずは唐突に延期が発表された、所得税などの増税。
「防衛費増額の財源として、法人税、所得税、たばこ税を増税することが6月に決まっていました。当初は来年度から実施する予定でしたが、減税策との整合性が取れないとの批判が巻き起こり、慌てて延期を発表。ただ、防衛費の財源不足は深刻なため、近い将来、必ず実施される見通しです」(前出の政治部記者)
また、“花粉税”なる珍妙な増税案も。来年度から、1人あたり1000円が住民税に上乗せされる『森林環境税』が、それだ。
「10月7日、岸田首相は、花粉症の主要アレルゲンであるスギ人工林を伐採し、広葉樹に変更するなどの『初期集中対応パッケージ』をまとめると表明しました。国民病の花粉症と地球温暖化の対策を謳っていますが、実際は23年に終了する、住民税に上乗せされている『復興特別税』に変わる税源の確保です」(前同)
●岸田総理の「所得税減税案」、5つの疑問 11/7
突如浮上した、岸田総理の減税案。その中身を見ると、1回限り、ひとり4万円、実施は来年6月となんだかチグハグ! とはいえ、減税自体はわれわれも求めていたはず。何にいったいモヤモヤするのか、5つの軸で解きほぐしてみた!
所得税減税に反対65%の衝撃
岸田総理が10月7日に税収の還元案を発表して以来、メディアや政界内に波紋が広がっている。
その中身をおさらいすると、最も対象者が多いのが4万円の定額減税だ。ひとり当たり所得税3万円と住民税1万円の減税で、扶養家族も対象となるので、4人家族なら16万円となる。これに加えて低所得者向けの給付があり、具体的には住民税が非課税の世帯へ7万円を支給するという。
減税は来年6月以降、会社員であれば給料から天引きされている税金が減り、手取りが増える形。給付金は、12月13日まで続く臨時国会で補正予算を成立させた後、年内に支給するとしている。
手取りが増えるのはありがたい話だし、税金を国民に返すという言い分は筋が通ってる気もする。それなのに、どうもモヤモヤしてしまうのはなぜだろう? 実際、日経新聞とテレビ東京の世論調査では、この所得税減税に対して「適切ではない」と答えた国民が65%にも上っている。
この違和感の正体を探るべく、経済学者の飯田泰之氏に素朴な疑問をぶつけてみた。
【疑問1】なぜ今なの?
まずはタイミングの問題から。
「建前としては、物価高に対する生活支援だといいます。ところが実際には、支持率の回復を狙った施策だというのが本音でしょう。岸田政権の支持率は、複数の世論調査で3割を切るほどの危険水域に達しています。
加えて『増税メガネ』というポップなワードが流行し、総理はかなり気にしているそうです。イメージアップを急いだということでしょう」
弱小派閥を率いる岸田総理にとって、党内基盤の弱さは常に悩みの種。解散・総選挙を勝ち抜くことでこの弱みを克服し、長期政権につなげたい岸田総理にとって、支持率回復に打てる手は12月閉会となる臨時国会中に打っておきたいということなのだろう。
【疑問2】増税はどこに行った?
政権発足以来、あんなに増税と言ってきたのに、チグハグじゃないか?と思う向きもあるだろう。しかし飯田氏によると、実は岸田総理は「増税はしていない」のだという。
「就任当初から、岸田総理は安倍・菅ラインに比べて経済引き締め志向が強いと思われていました。そして就任以来、防衛費の増額や『異次元の少子化対策』の財源確保など、増税につながる話が多々出てきたことは確かです。
ただ、これらは今後財源を決める必要があるものの、現時点で岸田政権が増税を決定した事実はありません。経済分野では特に何もしていないというのが正確です。まあ、これはこれで問題なのですが」
【疑問3】有効性は?
続いて気になるのは、ひとり4万円の還元はあまりにもショボいという点だ。本当に生活支援の効果はあるのか?
「今回の減税と給付は上振れした税収を還元する名目で行なわれます。一般会計の税収は3年連続で過去最高を更新中で、それを国民に戻して苦しい家計を支えるという筋書きは悪くないんです。
ところが物価高は今現在の問題なのに、補正予算で財源を確保すれば速やかに行なえる給付でなく、わざわざ法改正が必要な減税を選択し、実施は来年の夏となる。これは非合理的としか言いようがありません」
実は生鮮食品以外の物価は落ち着きを取り戻している。つまり、来年には物価高が収束している可能性があるのだ。今やらないと意味がないことを、なぜ遅らせるのか?
「岸田総理は自らの増税イメージを気にして、9月に減税を口にしてしまいました。言った手前、減税でやらざるをえなくなったということではないかと思います。
減税も給付も政府がお金を使うことになるので、経済効果はあります。合計で5兆円規模と見込まれていますが、人々が一時的な収入から消費に回す分は1〜2割程度でしかありません。
さらに銀行にお金が振り込まれる給付に比べて、忘れた頃に給料の天引きが減る所得税減税はインパクトが小さい。景気浮揚の起爆剤にはなりえないでしょう」
【疑問4】高齢者へのバラマキでは?
低所得世帯への現金給付についても問題が指摘されている。というのも、対象となる住民税非課税世帯の8割は60歳以上なのだ。
「所得税や住民税の非課税世帯に減税の恩恵が及ばないことは確かです。物価高の打撃を強く受けている層への給付が必要なのは間違いありませんが、結果的に現役世代から得た税収を高齢者に回す側面が大きくなることも事実。
解散・総選挙を視野に入れた高齢者への人気取りと取られても仕方がないと思います」
収入=課税額に基づく給付では、低所得で困っている人と資産があり裕福な高齢者を区別する方法はない。ここは政府も悩みどころではあるだろう。資産への課税が後手に回っている現状のツケが回っているといえそうだ。
【疑問5】現金給付で良かったのでは?
4つの疑問を見てきた上で気になるのは、岸田総理は何をすれば良かったのかということだ。生活支援を目指すならシンプルに現金給付でいい気がする。
「今のところ、物価高は困りものと思われています。ただ、本来この状況は長年、政府と日本銀行が目指してきた姿でもある。今われわれが直面している物価上昇は、世界の先進国ではごくありふれたレベルなのです」
最近ではワイドショーが物品やサービスの値上げを報じなくなった。皆が物価上昇に慣れてきて、ニュースバリューがなくなっているのだ。物価は決して上がらないというデフレマインドが払拭されつつあるわけで、これはいい流れだと飯田氏は評価する。
「あとは賃金上昇がついてくれば、日本が20年にわたって目指してきた、経済成長をする土壌が整います。そのためには、政府が財政出動をして景気を持ち上げ、賃金上昇を後押しすることが重要です。
ちなみに、消費税減税を求める声もありますが、これは慎重になるべきです。というのも、消費税は裕福な引退世代から税金を取れる数少ない手段だからです。また、税率引き下げには時間もかかる。であれば給付のほうがより有効でしょう。
一回きり5兆円では明らかに力不足。国債発行による資金調達に問題がない現状なら、10兆〜15兆円程度は無理なく出せますから、今こそ政府が継続してお金を使うべきです」
今ならまだ間に合う。岸田総理よ、どうか"検討"を!
●岸田首相の所得減税策に、なぜ消費減税ではない? 11/7
岸田首相が4万円の定額減税などを目玉にする17兆円規模の経済対策を11月2日に発表した。岸田首相は「来年夏の段階で国民所得の伸びが物価上昇を上回る状態を確実に作りたい」と力を込めたが、SNSでは〈やっぱりズレてるなこの人〉〈今すぐ一律給付でいい〉〈なぜ消費減税をしないのか〉などと批判の声があがった。専門家からは「増税メガネのイメージ払しょくには不十分」という声が上がる。
「ネットでは増税メガネと呼ばれている。総理についた増税のイメージを気にして、それを払しょくしようとして今回減税に踏み込んだのか」
岸田首相は記者からこう問われると笑みを浮かべながら「様々な呼ばれかたをされてることは承知している。どんなふうに呼ばれても構わないと思っている」などと答えたが、減税に踏み込んだ理由までは言及しなかった。
今回の経済対策の目玉は、来年6月に予定する1人当たり計4万円(所得税3万円、住民税1万円)の定額減税と、低所得者世帯に対する年内での7万円の給付だ。
「岸田首相の増税イメージ払しょくのため」とも言われる経済対策だが、国民の生活を支えるものになっているのだろうか。
第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは、「所得減税まで踏み込んだのは思い切った印象。一定の物価上昇の負担軽減効果はある」と評価するが、「採点するなら60点。目的達成のためにはもっと良い方法があった」との見方を示す。
例えば、現在の消費者物価指数のインフレ率は3%程度の伸びだが、そのうちの2ポイント程度は食料品の値上げだといい、家計の負担を軽減することを最優先するならば、最も効果的な施策は食品類の消費税率を下げることだという。
「ピンポイントで食料品の消費税を下げるほうが経済合理性が高いでしょう。所得減税より消費減税のほうが経済効果も高く、GDPの押し上げ効果もより期待できます」(永濱さん)
岸田首相は11月1日の予算委員会でも「消費税は社会保障のための財源」として消費減税は考えていないとの考えを繰り返し述べていた。
この点について永濱さんはこう指摘する。
「消費税は社会保障財源として結びついているため減税できないという意見もありますが、消費税収のうち5兆円程度は政府債務の返済に回っていますので、この部分を時限措置で使えばいい。食料品の消費税率は8%の軽減税率が適応されていますが、これを0%に引き下げて失われる税収は4兆円程度です。社会保障財政に対する影響が少なく減税することができます」
記者会見後、X(旧ツイッター)のトレンドを見ると、「増税メガネ」といった言葉が入っていた。今回の減税策はイメージ払拭の効果がなかったのだろうか。
永濱さんの見立てはこうだ。
「一時的に減税をしても、賃金の上昇率が物価上昇率を上回るような状況が続けば、やはり増税するのではないかという不安が国民の心理に付きまとうでしょう。イメージ払拭を優先するのであれば、『防衛増税を撤回』とか、『自分の政権のあいだは消費税率を上げない』など打ち出したほうが有効だったと思います」
国民が経済対策の効果を実感できるのは来年6月。それまで岸田政権は存続しているのだろうか。
●所得増税先送り示唆 11/7
公明党税制調査会の西田実仁会長は7日、防衛費増額のための法人、所得、たばこ各税の増税方針に関し、岸田政権が取り組む所得減税と矛盾しないよう所得増税を先送りする考えを示唆した。
●減税不評の岸田首相、総選挙アピールできるか−リーディー 11/7
日本の首相が還付しようとしている税金を国民は「いらない」と言っている。
岸田文雄首相の支持率が主要な世論調査で最低を更新している。JNNの調査では、最新の総合経済対策発表直後で、支持率が11ポイント近く下がり29.1%となった。低支持率を以前克服したことがある岸田氏だが、懸念されるのは目玉政策である減税への反対だろう。
岸田氏は税収の伸びを国民に還元するため、所得税など4万円の定額減税を来年行い、住民税の非課税世帯に7万円を給付すると表明。しかし、JNNの世論調査ではこうした方針を64%が「評価しない」と答えた。エコノミストらはこの政策の経済効果は限定的で、税金の還元分は貯蓄に回されるとみている。
国民がタダでもらえるお金さえ欲しがらないのであれば、岸田氏にとって困った状況になるのは目に見えている。国民の反発は理解できる。岸田氏が自身のプランをうまく売り込むことができず、衆院解散・総選挙をにらんだ選挙対策との印象を国民に抱かせた。
一時的な減税は特にご都合主義的に感じられる。一部のインターネットユーザーに「増税メガネ」と呼ばれるようになった岸田氏は2日の記者会見で、「どんな風に呼ばれても構わない」が、どのように呼ばれようと「やるべきだと信じることをやるということだ」と語った。
ただ、そうした決意も支持率の押し上げにつながっていない。マイナンバーカードを巡り個人情報が誤ってひも付けされるなどのトラブルが相次いだ夏を経て、このところ岸田氏は防衛力強化の財源確保のためにもデフレ脱却を確実にすると訴え、経済を自身最大のテーマとして位置付けし直そうとしている。
先月始まった臨時国会での所信表明演説で、岸田氏は「『経済、経済、経済』、私は、何よりも経済に重点を置いていきます」と明言。
しかし、代表質問で自民党の世耕弘成参議院幹事長から岸田氏の「『決断』と『言葉』については、いくばくかの弱さを感じざるを得ません」と切り返され、減税政策で混乱を招いていると批判された。
実質賃金
海外から見れば、こうした状況は少し不可解かもしれない。日本の国内総生産(GDP)成長率は今年、主要7カ国(G7)で2番目に高くなると予想され、日本株は33年ぶりの高値を付けたばかりだ。
今年の春闘では賃上げ率が約30年ぶりの高水準となり、新型コロナウイルス禍が終わると外国人観光客が戻り、関連業界は潤っている。地政学的観点から見れば、日本の地位はかつてないほど高い。
だが、実質賃金は依然として低下しており、デフレで物価が下がることに慣れた国民にとって、ここ1年半ほどの物価高は受け入れ難い。岸田氏が外交で上げた多くの成果は国民に響かず、就任直後に掲げた経済政策「新しい資本主義」に人々は戸惑うばかりだ。
バイデン米大統領のように功績の評価を得ようともがく岸田氏は、一方でインフレといった自分ではどうしようもない問題でも非難を浴びている。
首相就任から2年が過ぎた岸田氏が直面しているのは、有権者との間で生じるおなじみの問題だ。政権発足当初に高い人気を誇る首相も、しばらくすると支持率が低下する。故安倍晋三氏は例外かもしれないが、同氏でさえその人気に大きなひずみが生じ、それに耐え長期政権を維持した。岸田氏にはそうした持久力があるようには見えない。
説明する力
ただ、これまでのところ岸田氏は運に恵まれている。野党はここ数十年で最も弱体化。総裁を務める自民党の党内でも岸田氏に対する組織的な抵抗はほとんどない。同氏がこれまで見舞われた危機は穏やかなもので、比較的クリーンな政治家と見られていることも有利に働いている。
たが、自民党内で岸田氏が弱いと見なされた場合、2024年9月に予定されている次の総裁選で機を見るに敏な対立候補と厳しい争いを強いられる可能性はある。そして、それに対処する最善の策は衆議院を解散し総選挙に打って出ることだ。 政権を失うという恐れは事実上なく、議席数を大きく減らすことさえなければ、党内の批判を封じ込めることが可能だ。
岸田氏がそうするためには、幾つかの課題がある。国内外の政治日程はぎっしりと詰まっており、25年までに行えばいい総選挙を急ぐ必要はないと国民が考える中で、総選挙の断行を正当化する説得力のある説明をしなければならない。
そして与党のトップとして国民により強くアピールするため、岸田氏は何かをしなければならない。少なくとも、不名誉ななあだ名より首相にふさわしい何かが必要になる。
●自民党幹部「岸田政権は鵺のような政権だ」… 11/7
2021年10月4日から発足した岸田政権。首相になる前から岸田文雄を取材し続けてきた記者を含む朝日新聞政治部が、その特性やクセ、官邸では誰が実質的な力を持っているのかなどに迫った。
鵺(ぬえ)のような政権
2021年12月12日、日曜日の首相公邸。上座についた首相の岸田文雄を秘書官たちが囲んだ。岸田はこの年の10月4日に首相に就任。初めて臨む衆院予算委員会を翌日に控えていた。焦点は、「10万円給付」だった。
子育て世帯を支援するため、児童手当の所得制限を超えた世帯をのぞき、18歳以下の子ども1人あたり10万円を給付する。過去最大の35兆円超に積み上がった補正予算などを使って、岸田政権が最初にぶち上げた現金給付策だ。
だが、新政権の「実績」を急ぐあまり、政策の意義も、制度設計もあいまいで、混乱の種になっていた。
年内に現金5万円を支給し、残り5万円分は翌年にクーポンとして渡す当初の案だと、事務作業にかかる費用が約1200億円に上ることが判明。地方自治体から「ニーズに合っていない」との批判も相次いだ。
12月8日、岸田は衆院代表質問への答弁で「全額現金給付」を容認した。それでも批判は収まらず、今度は分割給付に矛先が向いた。一問一答形式の予算委で岸田が集中砲火を浴びるのは目に見えていた。
混乱の最中の10日ごろ、財務省から岸田のもとに報告が入った。
自治体が年内に10万円を一括給付しても、後から国が5万円を補塡できる。岸田は言った。
「できるんだったらやればいいじゃん。自治体に迷惑かけるのはよくないしな」
そして12日。公邸では、自治体が現金一括給付をする際の条件が話し合われた。用意された資料には細かな条件が書き連ねられていた。
秘書官の一人がこぼした。
「これ、わかりにくいですね」
岸田は言った。
「そうだな。10万、年内、現金、一括、条件なし、でいこう」
政権の目玉政策は、あっさりとその姿を変えた。
受験生への対応「朝令暮改と言われようが……」
首相就任3カ月を迎えた22年1月4日、岸田は新年の伊勢参り後の記者会見で、自らの政権運営を誇った。
「一度物事を決めたとしても、状況が変化したならば、あるいは様々な議論が行われた結果を受けて、柔軟な対応をする。こういったことも躊躇してはならないと思っている」
しかし、「柔軟な対応」に伴う混乱は、「10万円給付」をめぐる方針転換ばかりではなかった。
混乱はその8日前にも起きていた。
年の瀬も押し迫った2021年12月27日、岸田は記者団を前に、切り出した。
「受験生の皆さんの間に不安が広がっている。こうした不安を重く受け止めて、私から別室受験を含め、できる限り受験機会を確保する方策について、昨日、文部科学相に検討を指示した」
新型コロナウイルスのオミクロン株感染者の濃厚接触者となった受験生への対応が問題になっていた。宿泊施設への滞在が求められている期間中は受験できず、追試験で対応するとの通知を文科省が12月24日に出し、批判が高まった。
岸田は文科省が決定したばかりの対応を覆すように指示したと述べ、「一両日中に具体的な方策を示せると考えている」と、むしろ胸を張った。
岸田が11月に出したオミクロン株の水際対策強化の指示をきっかけに、国土交通省が日本に到着する国際線の新規予約を12月末まで止めるよう航空会社に要請し、混乱した問題と構造は同じだ。
海外滞在の日本人が帰国できなくなる可能性が指摘されて批判が噴出すると、岸田は3日後に要請を撤回させた。官邸幹部は「みんな走りながらやっているからこうなる」と拙速さを認めた。
ワクチンの3回目接種でも、前倒し接種を求める声の高まりを受け、時期や対象など詳細を詰めきらぬまま前倒しを表明して地方自治体の混乱を招いた。
別の幹部は「軌道修正は当然だ。朝令暮改と言われようが妥当な判断だ」と話した。
自民党幹部「鵺みたいな政権だ」
このころ岸田が意識していたのは、自民党が政権に返り咲いた2012年以降、長期政権を築いた元首相の安倍晋三と前首相の菅義偉だ。両政権の行き過ぎた点や足らざる点を「反面教師」に自らの立ち位置を定めた。
安倍・菅政権下での「官邸主導」は、民主党政権の「決められない政治」を反面教師に、時に強引な対応で世論の反発を呼んだ。そして、コロナ対策の多くの局面で後手に回ったとの批判を浴び、急速に求心力を失って瓦解した。
それゆえ岸田は先手を打つことにこだわり、批判を受ければ、ためらうことなく方針を転じた。変わり身の早さを、自民党幹部はこう評した。
「鵺みたいな政権だ」
融通無碍を可能にしているのは、岸田自身のこだわりのなさだ。安倍や菅のように、自らが立てた旗を振って政策を推し進めようとはしない。党政調会長時代の岸田とともに仕事をした閣僚経験者は「受け身で、調整型。こだわりのなさから『無色』に映った」と振り返る。
だから時に野党の言い分も丸のみする。
内閣官房参与に任命した元自民党幹事長で盟友の石原伸晃が代表を務める政党支部が雇用調整助成金を受け取っていたことを問題視されると、わずか1週間でクビを切った。
高額な保管費用が批判された「アベノマスク」は、年度内に廃棄することを、自ら記者会見で発表した。結果的に争点を潰してしまうしたたかさに、野党からは「やりづらい」との声が漏れる。
「聞く力」を盾にした「安全運転」に、報道各社の世論調査は上向き傾向を示した。
12月の朝日新聞の調査では内閣支持率が49%で、10月の内閣発足直後の45%を上回った。首相官邸には、高揚感すら漂った。政権幹部は「もしかしたら長生きするかもしれない」と自信をのぞかせた。
ただ、柔軟さはもろ刃の剣でもある。羅針盤なき政策で不安定なかじ取りを重ねれば、政権は迷走するほかなく、そのツケは国民に及びかねない。そもそも求心力の源泉となる「旗」を持たない岸田には、遠心力が働きやすい。
安倍・菅両政権の中枢を務めたある議員は、岸田政権が内包する危うさに警鐘を鳴らした。
「一度決めたことが変わってしまうと、『首相の決定事項』という重さがなくなる。今後、国民に負担を求めるような厳しい政策に取り組むとき、ぐらつき、何も決められなくなるだろう」
見据えた「黄金の3年」
衆院選の勝利から1カ月後の2021年11月30日、自民党本部4階にある総裁執務室で、首相で総裁の岸田と副総裁の麻生太郎、幹事長の茂木敏充は参院選の投開票日を協議していた。
「参院側は、できるだけ早い方がいいと言っている」。
通常国会の召集日と参院選の日程を組み合わせた複数のシナリオを示した資料を手元に、岸田は述べた。
7月10日や17日、24日が投開票日候補だったが、事実上、10日を推した。17日だと若者の投票率が下がることが想定される3連休ということもあり、麻生は「今の自民党は若者の支持が強いですからねえ。投票率は森政権なら低いほうがいいが、いまは高いほうがいい」。
茂木は「公示日が沖縄慰霊の日(6月23日)と重なるので1日早めては」と述べ、政権が最重視する参院選の日程が固まっていった。
「官邸にいると情報が入ってこない」
歴代の自民党総裁は首相に就いてからは官邸にいることが多い。総裁執務室を活用する機会は少ないが、岸田は好んで足を運び、政権の重要課題を協議する。
2021年11月から12月に党本部に入ったのは13回。2020年の同じ時期に前首相の菅義偉が7回、19年に元首相の安倍晋三が1回だったのに比べて抜きんでている。
安倍・菅両政権では官邸の力が圧倒的で党の力が弱い「政高党低」と言われたが、ひずみも大きかった。
岸田自身も政調会長時代、党の意向が政府方針に反映されない場面があり、党内に不満がたまっていることを熟知している。総裁選では「政高党高」を打ち出していた。岸田は茂木とは直接会うだけでなく、週2回は電話で意思疎通を図った。
党を重視する事情は他にもある。
岸田は党内派閥「宏池会」の会長だが、勢力は党内5位(当時)。党主流派の支えがなければ、一気に政権を失う恐ろしさは、無派閥の菅が首相だった政権末期に目の当たりにしたばかりだ。
岸田は周囲に「官邸にいるとなかなか情報が入ってこない。意思疎通を図ることは大事だ」と話す。
党への配慮は欠かさない。「アジアで民主主義国のリーダーにならなきゃダメだ。そのために日本が(ボイコットを)言わなきゃ」
2021年12月23日、岸田は安倍から翌年の北京冬季五輪・パラリンピックを「外交ボイコット」するよう求められると、「近いうちに」と応じ、その翌日には政府関係者を派遣しない方針を表明した。
新型コロナウイルス対応で3回目のワクチンを医療従事者に接種してもらうことは前厚生労働相の田村憲久らが主導。「こども庁」の名称をめぐり党内や公明党から変更を求められると「こども家庭庁」に変えた。
かつての自民党政権のように党が強くなりすぎると、「権力の二重構造」や「透明性の確保」といった課題も再燃しかねないが、岸田に迷いはなかった。
見据えていたのは2022年夏の参院選。ここで勝利すれば、「黄金の3年」と呼ばれる国政選挙をしなくてもいい期間が手に入るとみられていた。
雇用保険料率の引き上げは先送りーー。当初予定していた引き上げ時期を春から秋に先送りすることが2021年12月末の予算編成の最中、急きょ決まった。これも党主導だった。
働き手や企業の負担が参院選直前に増えることを嫌った参院幹事長・世耕弘成の意向に官邸が即座に応じた。参院選に向けた不安材料を少しでも取り除くためだ。
通常国会では野党の反発を招く可能性がある法案は極力抑えた。首相周辺は「参院選まで、のらりくらりいく」と語った。
不満募らせる安倍氏、声を掛けた先は
2021年10月の衆院選では「絶対安定多数」の261議席を確保した。
党内への配慮の積み重ねもあって、永田町は表向き静かにみえるが、火種はあった。
最大派閥会長の安倍は、勢力が同数で第2位の派閥を率いる麻生や茂木ほどの処遇を受けているわけではなかった。
外交ボイコットも、早いタイミングで発すべきだと繰り返していたが、岸田はすぐに動かなかったため、不満を募らせていた。
菅周辺によると、その安倍はこの頃、菅に「早く派閥をつくったら?」と声をかけた。
安倍は岸田が同じ宏池会を源流とする麻生派や谷垣グループと一緒になる「大宏池会」構想を進めると警戒していたためだ。単純に足すと安倍派を上回る最大勢力となる。
菅に派閥をつくる考えはなかったが、政権中枢と距離ができている元幹事長の二階俊博が率いる二階派、前国会対策委員長(現選挙対策委員長)の森山裕率いる森山派などと連携する選択肢もあった。
与党が衆院選で勝っても次の参院選で負ければ、政権は暗礁に乗り上げる。過去に繰り返された歴史を意識しない与党政治家はいない。
菅に近いある議員は「参院選の結果次第で政局は大きく動くだろう」と語った。
●岸田さんの総合経済政策はホンモノである〜 11/7
岸田総理は大型の総合経済対策について発表した。総額17兆円台、物価高対策としての所得税と住民税の減税がおおきな話題になった。3.5兆円増えた税収分を定額減税で戻す形で、
・4万円の減税を受けるのは8600万人
・住民税非課税世帯1500万人には7万円
という国民への還元である。足元の物価高対策としては、ガソリン価格を平均175円程度に抑えるための補助金、電気・ガス料金の負担軽減措置も延長された。
「マイナンバー公金受取口座の普及にも役立つし10万円給付すればよいでしょ」という声も国民の中にはあったし、いきなり減税を言い出したことで「誤解」はされているが、話題になった部分以外は相変わらず着実な経済政策を行っている。
ニュースでは給付や減税のことばかりで、経済政策の本質を見誤らないことが重要である。
総合的な対策
皆さんが誤解してしまうのはその詳細が明らかにされない、明確にアピールできていないからである。基本認識は、「日本経済を熱量溢れる新しい経済ステージへと移行させるためのスタートダッシュを図るためのもの」(内閣府「デフレ完全脱却のための総合経済対策」より)であることを忘れてはいけない。そもそもの目的である。
当面は、物価対策であるが、中長期的な視点での政策である。特に、それは方針で明らかになっている。「足元の物価高から国民生活・事業活動を守る対策に万全を期す。併せて、賃上げの流れを地方・中堅・中小企業にも波及させ、賃上げ のモメンタムの維持・拡大を図る」のが第一方針であるのだ。
物価高対策は優先順位が高いものの、それだけでもない。とりあえず当面の物価高対策。そして賃上げということだ。詳細を見ていっても、多岐にわたることがわかる。
T.物価高から国民生活を守る <財政支出> 6.3 兆円
U.地方・中堅・中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長を実現する <財政支出> 3 兆円
V.成長力の強化・高度化に資する国内投資を促進する <財政支出> 4.7兆円
W.人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革を起動・推進する <財政支出> 1.6 兆円
X.国土強靱化、防災・減災など国民の安全・安心を確保する <財政支出>6.1 兆円程度
給付や減税ではない、全体感のある政策がそこにはある。
好循環ストーリー
岸田政権の基本的な認識は、潜在成長率をあげることであり、賃金上昇→購買力上昇→適度な物価上昇のサイクルであると明言している。これについてはまっとうな方向性だと考えられる。
特に、難しいのは賃上げである。これは政府だけで進められるようなものではない。一部の大手企業が賃上げを進めていて、賃上げに取り組んだ企業を奨励し、中小企業にも普及・促進していくということをどう設計するかは課題だろう。賃上げは国是であるが、なかなか企業が取り組むのも難しい。租税特別措置や各種補助金・助成金の給付を受ける企業は率先してもらいたいと思うのだが、なんとかしてインセンティブや行動をおこしてもらわないといけない。悩ましいところである。
また、物価上昇→賃上げ→成長へとつなげていく際に、もちろん日本銀行の動きも注目だ。金利の引き上げなどもみていかないといけないだろう。さらに言うと、エネルギーの価格高騰が今後も続く中、中東への石油の依存度は90%近くと、あのオイルショック時と比較しても高い。エネルギーをどうするか。岸田政権は危機感をもうちょっと明確に打ち出してもよいとは思う。
年GDP押上効果は1.2%
メディアの報道においては国民生活が大事なのでどうしても減税、給付の話ばかりになってしまうのはわかる。メディアも政治家も国民も自分にどれだけ得があるか、ばかりを追いかけているので余計に短期的、ミクロ的な視野に陥りがちであるので、全体感のある日本経済再生、ターンアラウンドの可能性を見定めて欲しいものだ。
総合経済対策による経済押し上げ効果は実質GDP換算で19兆円程度 、年成長率換算 1.2%程度と想定されている。その想定のEBPM(エビデンスに基づく政策立案)やエビデンスはおいておいても、効果も積算し経済政策全体を進めている岸田政権に期待したい。
●内閣支持率の下落に与党が危機感、各社世論調査…「青木の法則」が現実味 11/7
与党が内閣支持率の下落傾向に危機感を強めている。岸田首相が経済対策として打ち出した所得税などの減税が不評で、政権浮揚につながるどころか裏目に出ているためだ。政府・与党は説明を尽くして理解を得たい考えだが、政権運営には不透明感が増しつつある。
「経済対策ですぐに内閣支持率が上昇するものではないが、やるべきことは、はっきりしている」
自民党の茂木幹事長は6日の記者会見でこう述べ、減税や給付を盛り込んだ経済対策を丁寧に説明する姿勢を強調した。公明党の山口代表も同日、首相官邸で記者団に「経済対策は国民に意義や仕組みが十分に届いていない」と指摘した。
自民は街頭演説などで経済対策を分かりやすく説明するための資料の作成を検討しているという。
自民内では、青木幹雄・元官房長官が唱えたとされる「青木の法則」が現実味を帯びてささやかれ始めた。内閣支持率と与党第1党の支持率の合計が50%を切れば、政権は瓦解する――というものだ。
読売新聞の世論調査によると、最近では、政権末期の森内閣(内閣支持率8・6%、自民支持率22・5%)、麻生内閣(同22・2%、23・4%)、鳩山内閣(内閣支持率19%、民主党支持率20%)などがあてはまる。
報道各社の世論調査で内閣支持率の下落傾向は際立っている。所得税減税が取り沙汰され始めた後の10月13〜15日に読売新聞が実施した調査では、2021年10月の内閣発足以降最低となる34%となったほか、共同通信の調査(11月3〜5日)で28・3%となるなど、危険水域とされる2割台の調査も相次ぐ。
世論の厳しい目は自民党支持率にも表れ始めた。
自民党支持率は、読売新聞の調査では、第2次安倍内閣以降、おおむね40%前後で推移していたが、岸田政権発足時の43%から5月に38%、10月に30%と下落傾向にある。
今年の通常国会では、性的少数者(LGBT)理解増進法の成立を主導したことで保守層が離れたとされる。9月に洋上風力発電事業を巡る汚職事件で秋本真利衆院議員(自民を離党)が逮捕され、10月下旬に山田太郎・前文部科学政務官と柿沢未途・前法務副大臣が辞任するなど、相次ぐ不祥事が追い打ちをかけたとみられる。
閣僚経験者は「09年の政権交代前に雰囲気が似ている。立て直しができなければ次期衆院選に大きく影響する」と指摘した。
● 経済対策発表後も支持率低迷 奇妙なバランスで安定する岸田政権 11/7
政府は11月2日の閣議で、一人あたり4万円の定額減税や非課税世帯への7万円給付などを盛り込んだ事業規模37兆円超の経済対策を決定した。裏付けとなる補正予算案を20日にも提出し、月内の成立を目指す。定額減税は岸田文雄首相主導で決めたとされるが、狙いだった支持率回復どころかバラマキ批判で支持率はさらに低下。“岸田降ろし”につながりかねない事態となっている。
物価高対策には定額減税や給付金を導入
「賃上げと所得減税を合わせることで、国民所得の伸びが物価上昇を上回る状態を確実につくりたい」。岸田文雄首相は、経済対策決定後の記者会見でこう意気込んだ。
経済対策に盛り込んだ物価高対策の柱は、一人あたり所得税3万円、住民税1万円、あわせて年間4万円の定額減税だ。納税者本人と扶養者が対象で、例えば夫婦と子ども2人の家庭なら16万円の減税となる。減税の総額は3兆円台半ばとみており、2022年度までの2年間で所得税と住民税が3.5兆円上振れた分の還元と位置付けている。
政府は所得制限を設けずに2024年6月に減税を実施する方針だが、与党内では2000万円程度の所得制限を設けるべきとの声もあり、与党の税制調査会などで年末に詳細を決める。
一方、住民税の非課税世帯には、1世帯につき7万円の追加給付を決めた。すでに発表した物価高対策の3万円給付と合わせ、合計10万円の給付となる。所得税が非課税だったり、納税額が減税額未満で恩恵を受けきれなかったりする“隙間世帯”にも給付金を支給する。
また、ガソリンの価格上昇を抑える補助金や電気、ガスの料金を差し引く措置は、2024年4月まで延長する。物価高対策の財政支出の総額は6.3兆円を見込む。
賃上げ対策や国内投資の促進なども積極的に推進
賃上げ対策としては、従業員の賃金を積極的に引き上げた企業への税優遇や補助金を拡充するほか、主婦などの労働時間短縮の原因といわれる“年収の壁”への対策、リスキリング(学び直し)を支援するための給付金の拡充、高速道路の通勤帯割引の拡大などを盛り込んだ。賃上げ対策の総額は3兆円。
このほかにも国内投資の促進や国土強靭化などに7.7兆円程度を投じ、国と地方自治体、民間投資を含む事業規模は総額37.4兆円となる。当初予算で計上した予備費なども活用し、補正予算案の一般会計は13.1兆円程度となる見込みだ。政府は消費者物価を1%引き下げ、実質GDP(国内総生産)を1.2%押し上げる効果が見込めると説明している。
経済対策を講じてもつきまとう、強力な“増税”イメージ
経済対策は支持率低迷に悩む岸田政権にとって起死回生の一手になる……はずだった。岸田首相はSNSなどで「増税メガネ」と揶揄されているのを非常に気にしているとされ、自ら主導して定額減税を決定。与党の一部から批判を受けても撤回しなかったという。
しかし、共同通信社が11月3日から5日かけて実施した世論調査によると、定額減税や非課税世帯への給付について「評価しない」が62.5%にのぼり、「評価する」は32.0%にとどまった。経済対策を評価しない理由については「今後、増税が予定されているから」が40.4%と最多で、「経済対策より財政再建を優先すべきだ」が20.6%、「政権の人気取りだから」が19.3%で続いた。財政が厳しいなかでの減税や給付は一時しのぎの“バラマキ”だと国民は見透かしているのだ。
経済対策への批判が追い打ちとなり、内閣支持率は前回調査より4.0ポイント減の28.3%で過去最低を更新した。不支持率は4.2ポイント増の56.7%で過去最高。JNNが11月6日に発表した世論調査でも支持率は10.5ポイント減の29.1%で過去最低、不支持率は10.6ポイント増の68.4%で過去最高となった。7割近くの有権者が不支持を表明するのは異常事態といえる。
支持率低下でも奇妙なバランスで政権は安定
さらなる支持率低下で年内の解散はさらに遠のいたといえるが、与党内では不思議と“岸田降ろし”の風が吹いていない。自らが率いる第4派閥の岸田派に加え、最大派閥である安倍派や第2派閥の麻生派、第3派閥の茂木派が支える安定した政権基盤を構築できていることに加え、過去に総裁選を争った高市早苗経済安全保障担当相や河野太郎デジタル相らを閣内に封じ込めているからだ。
一時は茂木敏充幹事長がポスト岸田に公然と意欲を示していたが、先の内閣改造・自民党人事で同じ茂木派の小渕優子氏を党4役に取り込んだことを機にトーンダウンした。かつて谷垣禎一総裁を差し置いて石原伸晃幹事長(当時)が総裁選に挑んで“裏切り者”のレッテルを張られたことから、二の舞になるのを避けようとしているとの見方もある。
非主流派である石破茂元幹事長や二階俊博幹事長、菅義偉前首相らの動きも不透明だ。子育て対策や防衛費の増額に向けた増税議論が控えるなかで、火中の栗を拾いたくないとの狙いも透ける。ただ、2024年9月には首相の自民党総裁としての任期満了が控えており、総裁選が近づけば否が応でもポスト岸田争いは熱を帯びるだろう。
野党からも表向きな批判は聞こえるが、本格的な政権打倒への気迫は感じ取れない。野党第1党の立憲民主党が支持率で野党第2党の日本維新の会に遅れをとっており、野党内の連携協議への機運も高まっていないからだ。表向きは選挙を望んでいても、実際には今やっても勝てないのは明白。であればしばらくじっとして、自民党政権の自壊を待つのが得策というわけだ。
バラマキ経済対策でさらに支持率を落とした岸田政権。奇妙なバランスでどうにか安定感は保っている。 
●「5年で政権交代」発言に波紋 立民代表、支持離れ懸念 11/7
立憲民主党の泉健太代表による「5年で政権交代と考えている」との発言が党内で波紋を広げている。伸び悩む党勢を踏まえた現実的な目標との擁護論もあるものの、2度の政権交代に関わった小沢一郎衆院議員は「野党第1党が次の総選挙で政権を目指さないと言ったら、支持する国民はいない」と懸念を示した。
発言は4日の法政大の講演で飛び出した。来場者の「何年で本当に政権交代できるのか」との質問に対し、泉氏は「理想論は間違いなく次の総選挙で政権交代だが、候補者もいなければいけないし、勝てる状況をつくらないといけない」と回答。党勢回復には時間がかかるとの認識を示した。
●「増税メガネ」の破壊力「アベノマスク」なみ… 「岸田首相の電撃辞任」に備えも 11/7
岸田政権の支持率下落が止まらない。ジャーナリストの鮫島浩さんは「1人4万円の定額減税などを打ち出しているが、安倍元首相の『10万円の一律給付』に比べて、せこい、遅い、わかりにくい、不公平という批判を受けている。来年秋の自民党総裁選までは続きそうだが、その前に電撃辞任する可能性も捨てきれない」という――。
起死回生の減税が完全に裏目に出た
異例ずくめの所得税減税である。首相が「増税メガネ」という不名誉なあだ名を嫌って減税を打ち上げたことも、その減税が国民から総スカンを喰らって内閣支持率を押し下げたことも、前代未聞だ。
物価高が加速する中で断行した9月の内閣改造・自民党役員人事は不発に終わり内閣支持率は下落した。ネット上では岸田文雄首相を「増税メガネ」と揶揄する言説が左右双方から飛び交い、トレンド入りした。
首相自身が昨年末に防衛力強化の財源を確保する「防衛増税」(所得税、法人税、たばこ税)を表明したことや、財界から消費税増税を求める声が相次いだことから、岸田首相には増税イメージがすっかり定着していたのである。
岸田首相が起死回生の人気回復策として執着したのが所得税減税だった。
これが不人気に拍車をかけた。所得税減税を柱とする経済対策の骨格が固まった時点でANNが行った世論調査で、内閣支持率は政権発足以降最低の26.9%に急落。所得税減税を「評価しない」と答えた人は56%にのぼり、その理由として41%の人が「政権の人気取りだと思うから」と答えた。
自らの増税イメージを払拭するための減税、つまるところ「岸田首相による岸田首相のための減税」であることを世論は見透かしている。何をやっても嫌われるのが今の岸田首相だ。
自民党政権が左右双方からここまで見放されたのは、支持率が一桁まで落ち込んだ森喜朗首相や総選挙で大敗して自民党を下野させた麻生太郎首相以来だろう。
せこい、遅い、わかりにくい、不公平
所得税減税の中身も国民の怒りを燃え上がらせた。
まずは、せこい。減税実施は1年限り。しかもひとり4万円の定額減税だ。安倍政権がコロナ対策で現金10万円を全員に一律給付した特別定額給付金と比べて見劣りする感は否めない。
次に、遅い。減税が実施されるのは来年夏。国民は日々の物価高騰に直面している。半年以上も先の減税などあてにできない。安倍晋三首相が10万円の一律給付を記者会見で表明した2カ月後に給付率が5割を超えたのと雲泥の差だ。
そして、わかりにくい。納税額は所得や家族構成などによって千差万別。我が家がいくら減税されるのか、すぐに理解できる人のほうが少ないだろう。そもそも防衛財源を大幅に増やすために所得税の増税を表明しながら、物価高対策で減税を行うというのは支離滅裂だ。ひとり10万円の一律給付は簡潔明瞭だった。
最後に、不公平感が強い。住民税非課税世帯には7万円が給付される。働く人は納税額が4万円減るだけなのに、働いていない人は7万円を受け取れる。しかも非課税世帯の8割近くが60歳以上の高齢世帯だ。物価高に加えて社会保障費の負担が重くのしかかる現役世代が不公平感を募らせたのは無理もない。世代間対立を煽る結果となった。
増税メガネと呼ばれたくはないだけ
所得税減税を柱とする経済対策の規模は17兆円を超え、一般会計の歳出追加額は13.1兆円にのぼる。コロナ禍の「現金10万円の一律給付」に要した予算は12.9兆円。ほぼ同額だ。今回の経済対策に盛り込まれた所得税減税や企業減税などをやめれば「現金10万円の一律給付」の財源は十分に確保できる。
国民が納得する金額を、わかりやすく、平等に配ることは、今すぐに実現可能なのだ。
それなのに、なぜ、現金一律給付ではなく、減税なのか――。野党は国会でここに照準を絞って追及しているが、野党でなくても当然に浮かぶ疑問である。その答えは、首相自身が認めなくても、明白だ。「増税メガネと呼ばれたくはない」だけである。
首相のあだ名で思い出すのは「アベノマスク」だ。コロナ禍の行動制限で国民の不満が鬱積するなか、安倍首相は現金一律給付に加えて、一世帯に2枚の布マスク(アベノマスク)2億8700万枚の配布に踏み切った。
ところが、不織布マスクに比べて感染予防効果が疑問視されたうえ、全体の3割が配布されず保管費用がかさんだこともあり、「天下の愚策」として批判が噴出。異次元の金融緩和政策「アベノミクス」をもじって「アベノマスク」と揶揄されたのである。内閣支持率は落ち込み、安倍首相は体調不良を理由に退陣したのだった。
「アベノマスク」に匹敵する破壊力
安倍政権は衆参選挙に6連勝し、憲政史上最長の7年8カ月続いた。森友学園事件をはじめ「モリカケサクラ」と呼ばれた権力私物化スキャンダルや財務省による公文書改竄、国論を二分した安保法制、二度の消費税増税といった逆風を次々にかわしてきたが、コロナ禍は乗り切れなかったのである。
なかでも「アベノマスク」の汚名は安倍首相を追い詰めたに違いない。やや小さすぎる印象の布マスクを頑なに着用し続ける安倍首相の姿が私の脳裏には焼き付いている。
岸田首相の「増税メガネ」は「アベノマスク」に匹敵する破壊力を持っている。
岸田首相にとってメガネは自慢だった。色違いの同じメガネを数点買うほどのメガネ好きとして知られ、外相時代の2015年には「日本メガネベストドレッサー賞」を受賞してご満悦だった。ブルガリやカルティエ、グッチなど高級ブランドが並ぶ東京・渋谷の老舗眼鏡店に若い時から通い、首相就任後もしばしばメガネの修理に訪れている。
安倍氏は生前、「同期一番の男前は岸田文雄、一番頭がいいのは茂木敏充、そして性格が良いのが安倍晋三」と笑いを誘ったが、岸田首相にとって「男前」は政治家として重要なセールスポイントであり、メガネはオシャレのキーアイテムだった。
「増税メガネ」は政治を動かした
このあだ名を最初につけた人の意図は知る由もないが、ご自慢のメガネを揶揄されたのだから、野党やマスコミの「お行儀の良い追及」を遥かにしのぐダメージを岸田首相に与えたに違いない。首相は国会審議で「どんなふうに呼ばれても構わない」と平静を装ったが、自民党内からは「増税メガネを異常に気にしている」との声が相次いでいる。
日本維新の会の衆院選候補予定者が「増税メガネ」を批判するチラシを作成したことがテレビで報道され、「品性に欠ける」「メガネ着用者への差別」と批判されて「多くの方に不快な思いをさせ、軽率だった」と謝罪した。維新の音喜多駿政調会長も「(増税メガネを)軽い気持ちで使用してきた」として岸田首相に直接謝罪した。これを契機にマスコミにも「増税メガネ」の使用を躊躇する気配が漂っている。
だが、私は最高権力者が愛用する「メガネ」を揶揄して批判することは、政治風刺の文化として許されると思う。メガネ着用者は極めて多く、ファッションとしても定着していることを踏まえると、この政治風刺を差別一般として抑え込むことは権力批判を萎縮させるマイナス効果のほうが大きいのではないだろうか。
岸田首相が就任以降、「聞く力」「丁寧な説明」を連呼しながら防衛増税をいきなり打ち上げ、中小零細にとっては事実上の増税となるインボイス制度を強行するなど強権政治を推し進め、それに対する野党やマスコミの政権批判が迫力を欠くなかで、大衆が最高権力者に対抗する数少ない手段として「増税メガネ」の政治風刺ほど効果を発揮したものはない。
この汚名が世間に広まることがなければ、所得税減税が実現することもなかっただろう。「増税メガネ」は政治を動かしたのだ。
上から目線、自民党内でも孤立無援に
岸田首相は臨時国会の審議で、自民党の萩生田光一政調会長から「所得税も住民税も支払っていない国民に対してどうするのか」と問われ、「より困っている方に的確に給付を与える」と口を滑らせ、あわてて「給付を支給する」と言い直す場面があった。
ネット上では「上から目線」に批判が噴出したが、首相は「減税も給付もするというのに、なぜ国民に歓迎されないのか」と苛立っているとの見方が自民党内には広がっている。首相と国民の距離は開く一方だ。
岸田首相は9月の内閣改造人事で主流派の茂木幹事長の交代を画策した。麻生太郎副総裁に猛反対されて土壇場で断念したものの、麻生・茂木両氏ら主流派には首相への疑念が残った。一方、菅義偉前首相や二階俊博元幹事長ら非主流派は人事で干され、怒り心頭である。
最大派閥・安倍派は会長職を争う5人衆(萩生田政調会長、西村康稔経産相、松野博一官房長官、世耕弘成参院幹事長、高木毅国会対策委員長)は全員留任したため、中堅・若手にポストが回らず不満が募る。
頼れるのは最側近の木原・前官房副長官だけ…
最後の砦の岸田派も穏やかではない。ナンバー2の林芳正氏は親中派であることが米国のバイデン政権に疎まれ、9月の人事で外相を外された。さらに首相の従兄弟である宮沢洋一税調会長も、首相が独断専行的に所得税減税を進めたことに不満を募らせている。
岸田首相が耳を傾けるのは、最側近の木原誠二幹事長代理(前官房副長官)だけだ。英語が堪能な木原氏は米国のエマニュエル駐日大使と毎週のように接触し、バイデン政権の意向を岸田首相に伝えてきた。岸田首相にとって、菅氏や茂木氏らライバルが影響力を残す外務省を介さずに米国の意向を受け取る貴重な窓口なのである。
木原氏の妻が元夫の不審死事件の重要参考人として警視庁に事情聴取されながら捜査が不自然な形で打ち切られた疑惑に世論の批判が高まった後も、木原氏を要職にとどめたのは、木原氏なしでは政権運営が立ち行かなくなるからだ。岸田首相は9月の人事構想も木原氏とふたりで練り上げた。そして今回の所得税減税を木原氏の強い進言を受け入れたものと言われている。
いまや木原氏を除いて岸田首相を全力で支える勢力は自民党内にない。首相は党内で完全孤立の状態に陥ったのだ。
岸田首相の再選は「かなり困難」
それでも内閣支持率が堅調ならば、ただちに「岸田おろし」が起きることはなかろう。しかし人気回復策の減税カードを切っても支持率は続落。ウクライナに続いてイスラエル・パレスチナ問題でもバイデン政権への追従外交の実態が露呈したいま、今年春のキーウ電撃訪問やゼレンスキー大統領が来日した広島サミットで支持率を急回復させた「首脳外交マジック」の再現も難しそうである。内政でも外交でも手詰まりなのだ。
来年秋の自民党総裁選まで支持率が再浮上する気配はなく、総裁選前に解散総選挙を断行するのは難しいとの見方が自民党内では強まっている。再来年は夏に参院選が控え、秋に衆院の任期満了を迎える。来年秋は「選挙の顔」を決める総裁選になることは確実だ。
支持率低迷にあえぐ岸田首相が再選を果たすのはかなり困難になってきた。衆院任期満了を目前に総裁選不出馬に追い込まれた菅前首相と同じ道をたどる展開が十分に予想される。
他方、自民党内にポスト岸田の有力候補は見当たらず、ただちに「岸田おろし」が動き出すエネルギーは乏しい。茂木氏は岸田首相が総裁選に出馬する場合は支持すると表明しており、岸田勇退をじっと待つ戦略だ。
河野太郎デジタル相はマイナンバーカード問題で失速した。安倍派は5人衆が牽制しあい、総裁候補を絞り込めない。岸田政権が国民の支持を失って低迷したまま、来年秋までダラダラ続くシナリオが現時点では最も有力だ。
政権を放り出す急展開にも備えておくべきだ
ウクライナやパレスチナを巡る国際情勢は激しく動き、国内では物価高が止まらず貧富の格差が拡大して国民生活は危機に直面している。岸田首相は孤立感を深めながら政権トップに居座り、国民から総スカンを喰らっている状況だ。これで「国難」を乗り切ることができるのか。
最近の岸田首相で気になるのは、カメラの前で「不敵な笑み」を浮かべる場面が増えたことだ。ライバル不在で「岸田おろし」は起きないという強気からか、それとも四面楚歌(そか)で追い詰められていることを覆い隠すために余裕綽々の表情を必死に取り繕っているのか。
「男前」を何よりも重視する岸田首相である。何かの拍子にあっけなく政権を放り出す急展開にも備えておくべきだろう。
●岸田首相、事実上の「官製春闘」宣言 身内離れ、さらに悪化する気配 11/7
岸田文雄首相が6日の政府経済財政諮問会議で「来年の春闘に向けて先頭に立つ」と明言したことが波紋を広げている。事実上の「官製春闘宣言」だが、自民の強固な支援母体である企業経営者の離反を招く危険をはらむ。すでに内閣支持率が自民党支持率を下回る現象が慢性化している中で、「打つ手が裏目裏目。経済界など身内が見放し離れていく状態」(自民幹部)がさらに悪化する気配だ。
岸田首相の発言は経団連の十倉雅和会長が出席した場であった。「来年の春闘に向けて経済界に対して私が先頭に立って賃上げを働きかけていく」との内容。経団連関係者は「首相官邸で団交まがいの場面とは驚いた」と苦笑いだ。
6日夜に横浜市内であった県内経営者有志の懇親会でも話題となり、政府や首相への不信が漏れた。
「岸田総理がはちまきをして経営者と闘うというわけか」。横浜市内の中堅企業の社長はそう皮肉り「それなら自民党が率先して企業・団体献金を禁止し、その分を人件費に回せば納税で優遇するといった新たな法律をつくればよろしい」と注文を付けた。
政府関係者によると、首相は今月中に経済界や労働団体の代表者と意見交換する「政労使会議」を開く調整に入った。この中では賃上げに向けて、人件費上昇分や原材料費高騰分を製品やサービスの価格に上乗せする「価格転嫁」が議題となる見通し。「議論の中身が『物価高をさらにあおる』との批判対象になりかねない」(自民政調関係者)との懸念も広がる。
 11/8

 

●所得税減税は「1年」 公明と考えに開き―宮沢自民税調会長 11/8
自民党税制調査会の宮沢洋一会長は8日、報道各社のインタビューに応じ、岸田政権が取り組む所得税などの定額減税の期間について「当然、1年にならざるを得ない」との考えを改めて示した。公明党からは経済情勢を踏まえ、柔軟に対応すべきだとの声が出ており、年末の2024年度税制改正の議論で焦点となりそうだ。
定額減税は、岸田政権が打ち出した経済対策の目玉。24年6月に1人当たり所得税3万円と住民税1万円の計4万円を減税する。全体の減税規模は3兆円台半ばで、宮沢氏は「相当思い切った減税だ」と強調。所得制限に関しては「税制改正の議論でしっかり結論を出していく」と語った。
●「嫌われ」ぶりがますます如実に…岸田政権に「いずれ増税」の不信感 11/8
岸田文雄政権の国民世論からの「嫌われっぷり」が、ますます如実になっている。
共同通信が5日に公表した世論調査で、内閣支持率は前回比4ポイント減の28・3%まで下落し、過去最低を更新した。自民党政権で内閣支持率が30%を割り込むのは、2009年の麻生太郎政権末期以来だという。
岸田政権は「税収増の国民還元」「減税」を相次いで打ち出した。2日には所得税・住民税の定額減税や、低所得世帯への一律7万円の給付を含む17兆円規模の経済対策を発表したばかりだった。
その評価は悲惨なものだ。
今回の共同調査によると、減税や給付金支給を「評価しない」とする回答が62・5%を占めた。その理由は、40・4%が「今後、増税が予定されているから」だ。付け焼刃のバラマキ≠ヘ、もはや通用しないということだ。
それにしても国民の「岸田政権離れ」「自民党離れ」は著しい。10月22日の衆参補選で、参院徳島・高知選挙区で自民党は大敗した。
衆院長崎4区でも自民党の金子容三氏が初当選したが、薄氷の勝利だったようだ。投開票翌日の23日、西日本新聞がその内幕を報じている。
告示前、金子氏と、父で昨年、政界引退した原二郎氏の親子が福岡市を訪問した。面会相手は創価学会の重鎮。公明党の推薦をもらう代わりに、次期衆院選の比例代表での支援を約束したという。
公明党は告示日、金子氏へ推薦状を手渡した。投開票日当日の共同通信の出口調査によると、公明党支持層のうち91%が金子氏に投票したと答えた。これがなければ勝利は難しかったかもしれない。
衆参補選に続き、同29日に投開票された長崎・大村市長選も自民党を驚愕(きょうがく)させたはずだ。現職の園田博史氏が2万8434票を獲得して当選。自民党と公明党が推薦した北村貴寿氏は1万607票にとどまり、ほぼトリプルスコアの惨敗だ。
原因は、いろいろあるだろうが、いわゆる「公明票」が機動的に動かなかったのか。
10月15日投開票の東京都議補選(立川市選挙区)でも、前回の同市議選でトップ当選した自民党の木原宏氏が、立憲民主党の鈴木烈氏に91票差で敗れ、話題になった。だが大村市長選敗北の衝撃は、その比ではない。自公連立の意義、協力関係が、いよいよ危うくなっているのか。
自公連立のきしみは、岸田首相のガバナンス不全に要因があるとの指摘もある。いまだ「衆院解散・総選挙」への意欲を失っていないともされる岸田首相だが、解散権≠ナもチラつかせなければ、いよいよ引き締めを図れなくなっているということか。
●鬼の岸田政権に国民が怒り「詐欺的減税政策」に騙されてはいけない 11/8
自らの年収も30万円上がる閣僚らの賃上げ法案が提出されて話題を呼んだ岸田文雄総理大臣。そんな岸田総理は10月31日の参議院予算委員会で「減税などが1回で終われるよう経済を盛り上げていきたい」と、自身の考えを強調した。また、年末に向けて、扶養家族を含めて1人4万円の所得税などの減税と、住民税非課税世帯に1世帯あたり7万円の給付を行う方針を固めるなど、積極的に行動しようという意志も見える。だが、国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は「まるで減税とは言えないもの」と厳しく指摘する――。
岸田政権が検討している減税案は「詐欺的政策」
岸田首相の言葉遊びがあまりにも酷い。減税や増税という言葉を都合良く解釈し、減税でないものを減税とし、増税を他の文言に言い換えて分かりにくくする詐欺的手法が横行している。
岸田政権が検討している減税案は、当初議論されていた適用範囲を拡大し、納税者本人だけでなく扶養家族を含めて1人4万円程度(所得税3万円・住民税1万円)に落ち着きそうだ。
しかし、少し考えれば分かるが、このような減税は給付とほぼ変わらないものだ。本来であれば所得税減税は本人のみに適用されるべきものだ。直接的な納税者ではない扶養家族分まで含めた減税は、事実上現金をそのまま渡す給付に等しい。
当初、岸田首相が減税4万円、給付金7万円を区別することなくセットで述べたことで、国民からは給付金と比べて少なすぎるという不満が吹きあがった。そのため、選挙対策として、岸田政権は上述のような減税適用範囲の拡大を図ったものと思うが、結果として、減税とは言えないものを「減税」と呼ぶ詐欺的な政策となってしまった。
首相には「減税」と「給付」の概念の違いを理解する哲学がない
残念だが、岸田首相には「減税」と「給付」の概念の違いを理解する政治哲学がない。どちらの政策も「政府がお金を国民に還元する」という程度の認識しかないのだろう。そのため、「景気対策」としての減税または給付という話だけが横行しており、国民からは、「減税にどのような意義があるのか」や「なぜ給付単独ではいけないのか」などの様々な疑問が呈されている。
そもそも「減税」は納税していることが条件であるのに対し、「給付」は納税していることを条件としない、という決定的な違いがある。この前提条件の差は、国家としてどのような国民の在り方を重視しているのか、を明確に表現することに繋がる。
たとえば、所得税減税は所得を稼いでいる人を重視する、というメッセージとなる。そのため、国民は所得を増やすように努力を重ねるようになる。しかし、給付を増やせば、国民にはその逆のメッセージを送ることになる。つまり、所得を稼いで納税しないほうが“お得”ということになる。
理念なき政策は国民から支持されることはない
一見すると、扶養家族まで含めた1人4万円の減税は「減税政策」のように見えるが、実際には本来の減税すべき対象は所得を稼いでいる1名に過ぎない。残りの扶養家族分はただの「給付」である。岸田政権は税制に対する確固たる政治理念がないので、本来は同じ政策の中に詰め込むべきではない要素を抱っこ販売している。「増税メガネ」のレッテルを払しょくするために、岸田首相には見かけ上の減税額を嵩上げしたいという動機があり、事実上の給付を所得税減税のパッケージの中にねじ込んだだけとも言える。
だが、このような理念なき政策は国民から支持されることはない。実際、岸田首相がこの減税政策と呼ばれる政策を提示しても、同政権の内閣支持率は低下し続けている(扶養家族まで含めた減税政策は少子化対策のように見えなくもないが、少子化の原因は独身者の増加であって、既に結婚している家庭に対して現金を渡しても相対的に効果が高い政策とは言えないだろう)。
さらに、より根本的な問題としては、この減税が1年間の期間限定であり、その翌年度から「防衛増税」が始まることが閣議決定されていることにある。岸田政権は所得税増税に繋がる「減税+増税」の実質的なパッケージの政策のうち、その前者を先出しすることで「減税」であると嘯いているに過ぎない。少し儲けさせて後から大損させるまるで詐欺師のようなやり方だ。
●いま総選挙なら自民「40議席減」予測 岸田首相が年内解散を見据える事情 11/8
所得減税への支持が広がらず、内閣支持率が急落した岸田政権。逆風の中でも、年内に衆議院解散に踏み切る見方もある。一体なぜなのか。
岸田文雄首相が減税の先に見据えているのは衆院の解散・総選挙だ。自民党幹部によると、経済対策を盛り込んだ補正予算案が11月下旬に提出され、可決、成立直後に解散に踏み切れば、12月17日や24日投開票の日程も可能だという。
もっとも、自民党内では、この状況での解散は「無謀だ」という声が強まっている。内閣支持率は低迷し、自民党の支持率もじりじりと低下。10月22日に投開票された衆参の補欠選挙でも、参院の徳島・高知選挙区では自民党公認候補が野党系の元職に惨敗。衆院長崎4区では、自民党新顔が立憲民主党の前職に猛追された。山田太郎・文部科学政務官が、女性問題が発覚して辞任。柿沢未途・法務副大臣が地元の東京都江東区長選の候補者に有料ネット広告利用を提案したとして辞任という不祥事が相次ぎ、政権への逆風が続いている。
自民党本部の情勢調査では、いま総選挙となったら現有の263議席から40議席ほど減らすという情報もある。与党の公明党も、大阪府や兵庫県の現職に維新が対抗馬を擁立することから苦戦が予想されている。
与党惨敗なら岸田首相の退陣は避けられない。岸田首相が率いる自民党宏池会からも「イスラエル・ハマス戦争で国際情勢も不安定になっている。解散は急がずに、年明けの通常国会以降、9月の自民党総裁選までのタイミングで考えればよいのではないか」(閣僚経験者)といった意見が出始めている。
それでも岸田首相が年内解散をあきらめないのはなぜか。
まず、政権を取り巻く環境は年末以降、さらに悪くなるという判断がある。年末の来年度予算案の編成では、防衛増税の方向性を示すことになるほか、少子化対策の財源3.5兆円についても社会保険料の引き上げや医療費の削減方針などを固めなければならない。増税・負担増のオンパレードだ。2024年1月からの通常国会では、野党が増税批判を強めるほか、閣僚の不祥事などが表面化する可能性もある。
経済情勢も不安材料だ。アベノミクスの金融緩和が続き、日本はマイナス金利のままだ。欧米との金利差による円安が日本の物価高を招いている。日本の物価高を抑えるために日銀が金利引き上げに転じれば、景気は減速必至だ。
一方で、岸田首相が無理筋の経済対策を進めて政権浮揚を図り、解散のタイミングを狙うことには、別な事情もあるという見方が自民党内でささやかれている。ベテラン議員が語る。
「来年にかけて、自民党の政治とカネをめぐるスキャンダルが出るのではないか。解散・総選挙が遅れれば自民党へのダメージは深刻で、場合によっては政権を失いかねない。岸田氏はその事情を知っているから早めの解散を模索している。ただ口外できないので、その事情には触れず、経済対策で政権を浮揚して総選挙に臨もうとしている」
「減税」への批判を浴び続けて失速していくか、解散で一気に局面転換に出るか。岸田首相がどちらを選択しても政権崩壊につながりそうな政局である。
●最大7割補助でも“リスキリング支援”が不発な理由 転職ありきの制度に「ズレ」 11/8
「リスキリングに取り組もうと思っても、役に立つような政府の補助って全くないんですよ。なんなら転職までお勧めされるので、制度設計がちょっとズレているなと感じます」
都内のSaaSスタートアップに勤務するミキさん(仮名、35歳)は、そう話す。
岸田政権が「5年で1兆円」をリスキリング支援に当てると発言してから、はや1年が経過した。
この間に打ち出されたリスキリング関連の施策はいくつかあるが、一つの目玉は経済産業省が2023年6月から新しく開始した「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」だ。
2022年度補正予算では753億円と、決して少額ではない予算が充てられたがこの制度の認知度は低い。
リスキリングプログラムの受講料を最大7割、最大で56万円も補助する制度だが、認知が進んでいない理由の一つが「一定期間のリスキリングを受けた後で転職すること」を狙っていることだろう。
この支援事業では、今の会社で働き続けながらリスキリングに取り組みたいという人は、対象から除外されているのだ。
LINEヤフーの講座55万円が「20万円」に
LINEヤフーは2023年10月12日、未経験者からITエンジニアへの転職を支援する新たなリスキリングプログラム「LINEヤフーテックアカデミー」を開設した。
このプログラムの受講費用は税込55万円だが、条件を満たせばそのうち35万円が還元されるため、実質の負担は20万円に抑えられる(受講を終えた時点で25万円が支給され、転職して1年勤務している場合にはさらに10万円が支給される)。
ただこの補助の条件は「雇用主の変更に伴う転職を目指している方で、企業・会社と契約し働いている方が対象」と明記されている。
ヤフーは2022年にリスキリング事業に参入しており、第1回の開催時にはこの補助制度はなかった。それでも1期生は募集開始からの3日間で当初の定員100人を超える申し込みがあったため、定員を140人に拡大するほど注目された。
1期生のうち、転職を希望していた受講生の割合は38%だった。つまり6割を超える受講生は、転職を目的とはせずに、プログラミングを学んでいたことになる。転職を希望しない層にも、根強いプログラミング学習のニーズがあるといえる。
「最大56万円の負担軽減」をアピール
経産省の「リスキリングによるキャリアアップ支援事業」は、「在職者のキャリア相談、リスキリング、転職までを一体的に支援する」とする制度だ。
具体的には、転職支援を手掛ける事業者を経産省が「採択事業者」に認定し、補助金を支払う。
採択事業者の認定条件は、「1.キャリア相談、2.リスキリングの提供、3.転職支援、4.転職後のフォローアップ」の4段階を全て実施することとされている。
受講者はリスキリング講座の受講を修了した場合、40万円を上限に受講費用の2分の1の補助を受けられる。
また講座後に実際に転職し、その後1年間継続的な就業が確認できた場合には、16万円を上限に講座の受講料の5分の1が追加で補助される。そのため経産省は「受講者は最大56万円の経費負担を軽減できる」とうたっている。
補助金を受け取る認定業者は、公募で受け付けており、1次公募で51事業者、2次公募で36事業者が採択されており、今は3次公募受付が終了した段階だ。
採択事業者には、IT人材育成を手がける事業者に加え、主に人材派遣を手がける企業などが並ぶ。
政府が進める「三位一体の労働市場改革」とは
そもそも、なぜ政府は転職ありきの制度設計にしているのか?
その理由の一つが、岸田政権の「新しい資本主義実現会議」が打ち出す「三位一体の労働市場改革の指針」(5月16日)にみてとれる。
「三位一体の労働市場改革」が目指すのは、具体的には以下の施策だ。
・ 個人に対して時代が求めるスキルを修得するリスキリングを支援する
・ 企業に対しては求めるスキルを明確にした「ジョブ型賃金」の導入を促す
・ 学んだスキルと企業が求める職務をマッチングすることで、成長分野への労働移動の円滑化する
これらの結果、転職が促進され賃金が上がっていく仕組みを作ることを狙っており、今回の経産省のリスキリング支援事業についても、同様の狙いがある。
経産省「利益を上げにくいビジネスモデル」
2023年9月1日の「日経リスキリングサミット」に登壇した経済産業省経済産業政策局長・山下隆一氏は、同サミットの講演で「日本が成長するためには、個人が成長分野の新しい業務のためにスキルを獲得することと、成長分野への円滑な労働移動をこれ同時に進める必要がある」と述べ、リスキリング支援事業についてこう説明した。
「リスキリングと労働移動を同時に進めるための転職支援は、求人と求職者をマッチングするビジネスと比べると回転率が悪く、利益を上げにくいビジネスモデルになっている。リスキリングと労働移動の一体的な推進への支援に必要な最初の初期投資、システムの構築を支援することで持続的なものにしていこうと思っている」
また山下氏の講演では、以下のようなリスキリング成功例が紹介されていた。
・ キャリアアップやライフイベントに不安を抱える女性が、在宅企業が可能なIT業界やスタートアップに転職
・ コロナ禍の影響を受けたアパレル、ブライダル、飲食店などの従業員が、Web開発エンジニアとして事業会社へ転職
こうした例示からも経産省のリスキリング支援事業が「構造的な賃上げ」を目指していることが分かる。
「本質的なリスキリングとは言えない」と批判も
ただ今回のリスキリング支援事業が、あらゆるケースで賃上げにつながるのかどうかは疑問が残る。
経産省が参考として提示している「キャリアアップにつながるリスキリングのイメージ」では、リスキリングの内容が列挙されているが、その内容は多岐に渡り、かつレベルもさまざまだ。
IT分野の「データベーススペシャリスト」「オラクルマスター(ゴールド)」などの資格が示されている一方で、「フィナンシャルプランナー2級」や「ITパスポート」「PCスキル基礎+ビジネスマナー」まで例示されており、スキルを身につけて成長分野に転職するという目的に必ずしも合致しないように思えるものもある。
リスキリング関連事業の関係者は、こうした現状を「たった数カ月のリスキリングを通して転職できる職種は限られている。本質的なリスキリングとは言えない」と批判する。
「リスキリングをした結果、転職してしまうのであれば企業にとってリスキリングは悪という発想につながる。企業がリスキリングに消極的になってしまることを懸念している」(リスキリング事業関係者)
今回の経産省の支援事業について、こうした疑問に答えていくことが求められている。
新たな経済政策にも盛り込まれた「リスキリング」
もちろん政府のリスキリング補助は、経産省の「キャリアアップ支援事業」だけでない。
厚生労働省は年間40万円を上限に受講費用の50%を負担する「教育訓練給付金(専門実践教育訓練給付金)」や、社員を教育する事業者を支援する「人材開発支援助成金」制度もあるが、それぞれ受講できる講座の偏りがあったり、申請の負担が大きいという声もある。
一方で政府は11月2日の臨時閣議で、新たな経済政策「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を決定。75ページの資料のなかには、「リ・スキリング」という言葉が9回登場する。
具体的な施策としては、「在職中の非正規雇用労働者の支援の創出」や、「教育訓練給付の対象講座の拡大に向け、(中略)業界団体等に対し指定申請の呼びかけ・PRを強化」、「企業及び高等教育機関による共同講座の設置等を支援」など、さまざまな取組みが並ぶ。
政府が推進するリスキリング施策は本当に適切なものなのか。注視してチェックしていく必要があるだろう。
●「専門家に言わせておいて、世論を見て追従」政治的判断ができない岸田政権 11/8
岸田政権が発足してから2年が経つが、つきまとう評価は「首相として何がやりたいかわからない」「首相でいることだけが目的」といった後ろ向きなものが多いが、いったいなぜそのようなイメージがついたのか。
水際対策、狂った目算
「追い返せないか」
2021年11月26日、首相官邸幹部が「今夜も対象地域から1便入るようです」と伝えると岸田が言った。岸田はいら立っていた。
この日、WHO(世界保健機関)は南アフリカで報告されたコロナウイルスの変異株を「オミクロン株」と命名。日本政府は、南アフリカなど周辺6カ国を対象に水際対策の強化を発表したばかりだった。
岸田政権の発足から約2カ月。岸田の脳裏をかすめたのは、コロナ対応が「後手」に回り、政権運営が窮地に陥った安倍・菅政権の失敗だった。
2022年夏の参院選を安定政権の足がかりにしたい岸田にとって、まさに初めて迎える正念場だった。
「いや、全部だ」秘書官の提案に首を振った
自民党内の激しい政治抗争を経て岸田が首相の座を手にしたのは2021年10月4日。
コロナ対応を前面に掲げ、わずか10日余りで、「第6波」に向けた対策の大枠となる「全体像の骨格」を発表。感染力が「第5波」の2倍、3倍になるシナリオを想定したもので、「最悪の事態を想定した危機管理を行い、対策に万全を期す」と訴えた。
衆院選に勝利した後、11月12日には、骨格を具体化した「全体像」を打ち出す。病床の増床や「見える化」、検査の拡充、治療薬の確保などを盛り込んだ。
当時、菅前政権が注力したワクチン接種が進んだことなどから、感染は収まり、東京都の新規感染者数は、1日10人を下回る日もあった。
水際対策では11月8日、原則停止していた海外のビジネス関係者や技能実習生らの新規入国を認めるなど大幅に緩和。コロナ禍の「出口」も見えかけた空気感だったが、コロナ対応に注力したのは「政権安定のためにはコロナ対策を国民に示す必要がある」(内閣官房幹部)との思いがあったからだ。
急拡大するオミクロン株
しかし、「第6波」は突然襲いかかる。
2021年11月25日、南アフリカの保健当局が新たな変異株の出現を発表。官邸側は「首相のトップダウン」(官邸幹部)で、すぐに外務省などに水際対策強化を次々と指示した。変異株への対応を誤ると一気に求心力が低下しかねず、岸田は警戒感を強めていた。
翌26日には南アフリカやその周辺国など計6カ国に対する水際対策強化を表明。しかし、オミクロン株は、欧州やアジアで急速に拡大を続けていく。
日曜日の28日。岸田は官房長官の松野博一や首相秘書官らに電話などで相次いで連絡を取った。水際対策強化をどこまで広げるかーー。対象国が広すぎると、混乱や経済界からの反発が予想された。
一方で、小出しの対策では「後手」との批判を招きかねない。首相秘書官が「感染が広がっている地域を中心に対象を検討しましょうか」と話すと、岸田は首を振った。
「いや、(対象国は)全部だ」
岸田の判断は、外国人の全面的な新規入国停止。主要7カ国(G7)で最も厳しい対応だった。そこから秘書官らがほぼ徹夜で調整にあたり、岸田は翌29日、記者団に、年末までの「緊急避難的な予防措置」として、こう強調した。
「慎重の上にも慎重に対応すべきと考えて政権運営を行っている。岸田は慎重すぎるという批判は私がすべて負う覚悟だ」
日本国内初のオミクロン株の感染者が確認されたのはこの翌日だった。岸田の決断は好意的に受け止められ、その後の内閣支持率の上昇をもたらした。
官邸幹部は「うまくいっている」と自信を深めた。水際対策の強化も官邸幹部は当初、「1カ月もすれば状況は見えてくる」と楽観していた。
ところがこの目算はその後、狂い続ける。
そして、この時の岸田自身の「成功体験」が、世論を気にするあまり、ワクチン接種などの対応変更や出口戦略といった政治判断への足かせとなっていく。
繰り返された過ち
岸田政権にとって最大の誤算は、新型コロナワクチンの3回目接種の間隔だった。
「自治体が混乱している。原則は8カ月だということを丁寧に説明してほしい」
2021年11月26日、首相官邸の執務室。岸田は、ワクチン接種を担う厚生労働相の後藤茂之とワクチン担当相の堀内詔子から状況説明を受けると、迷いなくそう指示した。
その10日ほど前。2回目からの接種間隔について、厚生労働省は当時海外で主流だった8カ月を採用。ただし、状況次第で6カ月に前倒しできる「例外」をつけたことで、自治体から「準備が整わない」などと反発を招いていた。
「急所になる」聞き入れられなかった河野の助言
「聞く力」を掲げる岸田は、原則8カ月を徹底させることで問題を収めようとした。
接種前倒しによりワクチンの数量が不足する懸念があったことや、オミクロン株へのワクチンの効き目について科学的知見が出るのを待つ慎重さも、判断を後押しした。
ところが、2大臣との協議からわずか4日後のことだ。感染力の強いオミクロン株が国内で初確認されると、状況が一変する。
政府の水際対策を破って感染は瞬く間に広がり、3回目接種の「8カ月」からの短縮が、皮肉にも最大の焦点となっていく。
大阪府知事の吉村洋文はその日、府庁で記者団に「8カ月経たないと接種できないというルールは問題だ。感染が急拡大してからでは遅い」と、疑問を投げかけた。
もともと2021年10月の岸田政権発足前後は、感染状況の下火が続き、「第6波」に備えた病床確保策に比べると、3回目接種の優先度は低かった。
新政権の姿勢を苦い思いで眺めていたのが、菅前政権でワクチン担当相だった河野太郎だ。
「ワクチン接種の対応はちゃんとしておかないと、政権の急所になる」
2021年10月、河野は政権運営を担う岸田側近に助言したが、聞き入れられなかった。
むしろ、別の政府高官は「ワクチン担当は時限的なもの。来年の供給のめどさえつけばいい」と楽観していた。
その言葉通り、河野の後任には、初入閣で政治経験の浅い堀内が五輪相と兼任する形で就いた。大臣直轄のワクチンチームも縮小され、合同庁舎11階の大臣室近くにあった作業部屋は、別棟の地下1階へと移された。
オミクロン株の出現により政権のワクチン軽視は裏目に出て、12月以降、泥縄式に高齢者や現役世代の6カ月への短縮を迫られた。
新規感染者は年明けから爆発的に増え、2022年1月23日には初めて全国では5万人、東京では1万人をそれぞれ超えた。高齢者施設でのクラスターも目立ち始め、その後の死者数が増える要因となっていった。
「結局は何も学んでいなかった」
「なんで進まないの。もっと増やせないのか」
岸田のいら立つ声が官邸執務室に響き渡ったのは、年が明けた1月下旬だった。
居並ぶ官邸幹部は黙ってうつむくしかなかった。岸田の手元には3回目のワクチン接種の回数が記された資料。接種回数は前日から1万回しか増えておらず、想定したペースには遠く及ばなかった。
国会に目を転じると、与野党から3回目接種のスピードが上がらないことへの批判が強まっていた。圧力に押し切られる形で、岸田は菅前政権を踏襲するかのように「1日100万回接種」を宣言せざるを得なくなった。
岸田はようやくワクチンチームの強化を指示した。
人員を20人ほどに増やし、作業部屋も大臣室の近くに戻した。政府も自治体も、ワクチン接種加速に向けた態勢が整ったのは、2月に入ってから。それでも、2回目までと違うワクチンを打つ「交互接種」への不安などから、重症化リスクの高い高齢者への接種は思うように進まず、「第6波」が長引く要因となった。
ある政府関係者は、こうため息をついた。
「菅政権もワクチンに翻弄されたが、岸田政権は同じ過ちを繰り返しただけで、結局は何も学んでいなかった」
早い段階で3回目接種の前倒しに踏み切れず、リスクを取ることなく後手に回った岸田。その後の爆発的な感染拡大のなかで、専門家頼みの対応が際立っていった。
専門家追従、「もろ刃の剣」
日本で最初にオミクロン株の猛威に見舞われたのが、沖縄だった。
在日米軍基地由来とみられる感染がまたたく間に市中へ広がり、2022年1月7日に新規感染者数が初めて1千人を超えた。濃厚接触者となった医師や看護師が出勤できないという、これまでにない問題に直面していた。
翌8日、東京都内でも2021年9月以来となる1千人超えを記録し、社会機能が維持できなくなる恐れが現実味を帯びる。当時14日間とされていた濃厚接触者の待機期間の短縮は、政府にとって急務の課題だった。
専門家主導のアドバルーン
「エビデンス(科学的根拠)が欲しい。『えいや』では決められない」
1月中旬、岸田は口癖のように周囲に話し、ある「リスク」について悩みを深めていた。それは、「10日間への短縮で1%」「7日間で5%」とされる濃厚接触者の発症率だった。
オミクロン株は従来のデルタ株などに比べ、発症までの潜伏期間が短いことを根拠にしており、海外では5日間に短縮する動きも出ていた。
しかし、外国人の新規入国を原則禁止した水際対策を「G7で最も厳しい水準」と胸を張る岸田にとって、コロナ対策を緩める判断はためらわれた。
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家の有志は、7日間に短縮するよう迫り、厚労省幹部も「もう知見は出し切った。あとはリスクを許容するかどうかだ」と政治判断を待った。
「5%」のリスクを引き受けるのか――。14日、岸田が選んだのは、発症率が「1%」の10日間への短縮だった。
感染はすでに全国で爆発的に広がり、岸田の決断の5日後には、東京都など13都県に「まん延防止等重点措置」の適用を決めた。7日間への短縮は、もはや不可避にみえた。
それでも岸田は躊躇した。政権内では「政治判断は難しい」(官邸幹部)との見方が広がった。
ついに連立を組む公明党がしびれを切らして見直しを要求。政府は28日になってようやく7日間への短縮を発表した。専門家の提言から、2週間が過ぎようとしていた。
そんな岸田を専門家は、くみしやすい相手とみた。前首相の菅は専門家の意見を軽んじ、東京五輪の開催に突き進むなど、不協和音が生じた。
それに対し、岸田政権では専門家主導でアドバルーンを上げ、政府が世論の反応をみながら追随するというスタイルが確立した。
濃厚接触者の待機期間だけでなく、オミクロン株感染者の全員入院の見直しや、低リスクなら検査のみで受診せず自宅療養を可能とする措置など、従来のコロナ対策の根底を覆す転換を次々と進めた。
専門家追従のきっかけは2021年9月の自民党総裁選にあった。
激しい選挙戦の末に総裁に上りつめた岸田は、政権発足への準備を進めているさなか、いまの官邸中枢との間で「約束」を取り交わした。「専門家とはしっかり連携し、意見を尊重する」との基本原則だ。
菅前政権の反省から生まれたもので、その雰囲気を察してか、尾身は「岸田さんは話を聞いてくれる」「最終的には政治が判断すればいい」と、周囲に漏らすようになった。
ただ、蜜月にみえる政権と専門家との距離感は、誰が決めているのかを見えにくくする「もろ刃の剣」でもある。
社会機能の維持のため、対策を緩める過程で1月19日には尾身から「ステイホームなんて必要ない」との発言が飛び出し、大きな波紋を広げた。政府は慌てて火消しに走ったが、尾身のように岸田が大きな方向性を国民に示すことはなかった。
自ら方針転換のメッセージを打ち出すことは、反発のリスクをも引き受けることを意味する。専門家任せで、煮え切らない岸田の姿勢は、出口戦略を描ききれないまま、重点措置がドミノ倒しのように全国へと広がる一因となっていった。
●岸田首相が「国民の資産1100兆円」を「海外流出」させようとしている…黒幕 11/8
ついにメガネが曇って何も見えなくなったのか。国民の財産を守るのが政治家の仕事のはずが、岸田首相はまったく逆の手を打とうとしている。タチの悪いことに、本人はそのことに無自覚のようだ。
1100兆円の博打
ついに政権維持の危険水域である「支持率20%台」に突入した岸田内閣。外交では存在感を発揮できず、物価の上昇に反比例するように人気は急降下。このままでは、早期の退陣は免れない。
追い込まれた岸田文雄首相は、政権浮揚の最後の「賭け」に出ようとしている。恐るべきことにその賭け金は、日本国民の現預金1100兆円。しかも、どうやらこのギャンブル、負ける可能性が濃厚なのだ―。
10月20日から召集された臨時国会。その所信表明演説で岸田首相は「経済! 経済! 経済! 何よりも経済に重点を置く!」と、「経済」という言葉を連呼した。この演説の直前、岸田首相は側近らに、まるで何かに取りつかれたようにボソボソとつぶやいたという。
「知ってるだろ? 俺は元銀行員だよ。最近の総理の中では一番経済に精通してるんだ。国民だってそれをわかってるだろ。だから、俺が説明すれば、みんな理解してくれるはずだ……」
これまでは「外交の岸田」を自負してきたはずなのに、突然「俺の強みは経済」と転向した岸田首相。ひょっとすると、岸田さんの頭の中は「彼ら」に乗っ取られてしまったのではないか―首相周辺からはこんな声が聞こえてくる。
「彼ら」とはだれか
所信表明演説から遡ること1ヵ月。国連総会に出席するため9月19・21日にかけて訪米していた岸田首相。タイトな日程を縫うようにして最終日に向かったのは、ニューヨークにある5つ星ホテル「ザ・ピエール・ア・タージ」だ。この日、同ホテルでは米財界の大物が集うニューヨーク経済クラブ主催のパーティーが開かれていた。
ここに、岸田首相はゲストスピーカーとして招かれたのだ。それも、同クラブの長い歴史の中で、日本人としてはじめて、だ。
「かつてはチャーチルやゴルバチョフら主要国のトップが演説をした名門クラブですが、日本の宰相は、吉田茂さんでも安倍晋三さんでも立つ機会がなかった。そこに岸田さんが呼ばれた。岸田さんは金融界の大御所たちを前に、お得意の英語で、今後の岸田政権の金融政策について披露したのです」(官邸関係者)
安倍さんでさえ立てなかった国際金融の中心の舞台に、自分が立っている―岸田首相の高揚感は筆舌に尽くしがたいものがあったのだろう。帰国後も「金融の世界では俺の名前が轟いているってことだな」と自信満々だったという。
実はこの場所に、岸田首相が心酔する「金融集団」がいたことは、日本人にはあまり知られていない。
「ブラックロック」。運用資産総額約1400兆円と世界最高を誇る米資産運用会社の幹部だ。この金融集団こそ、首相周辺が懸念を示した「彼ら」だ。
「ブラックロックは世界約30ヵ国に展開する巨大金融企業です。米バイデン政権の国家経済会議委員長と財務副長官が同社の元幹部であることからもわかるように、世界の経済・金融政策にも多大な影響力を持っています」(経済ジャーナリストの磯山友幸氏)
●“増税メガネ”岸田総理に降りかかる「政治資金パーティー」過少申告問題 11/8
ぶち上げた「減税策」が不評すぎて、支持率が上向く様子もない岸田政権。さらに追い打ちをかけそうなのが、自民党内の各派閥の政治資金パーティーの問題だ。
計1946万円の不記載
11月2日、読売新聞が「自民5派閥 過少記載疑い 告発状提出 パーティー収入4000万円」という記事を掲載した。
記事では自民党派閥の政治団体である「清和政策研究会」など5つの政治団体が派閥の政治資金パーティーの収入を過少記載していたとしている。神戸学院大学の上脇博之教授が政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)容疑での告発状を東京地検に提出しており、それを受けての報道だった。
「きっかけは『しんぶん赤旗』の報道でした」とは、当の上脇教授。
「昨年、『しんぶん赤旗日曜版』が安倍派などの5派閥が20万円超のパーティー券を政治団体に購入してもらったにもかかわらず、各派の政治資金収支報告書に記載していない疑惑を報じたのです。政治資金規正法では政治資金パーティーの透明性を図るため、20万円を超えて購入した個人や団体について、収支報告書に購入者の明細を記載するよう義務付けています。これが記載されていないのですから、政治資金規正法上の『不記載』にあたる。昨年11月の時点で清和会(安倍派)については、2018年から20年までで計1946万円を記載していないとして、すでに告発状を提出しています」
上脇教授は、この報道をきっかけに断続的に東京地検に各派についての告発状を提出している。平成研究会(茂木派)は計620万円の不記載、岸田総理が会長を務める宏池会(岸田派)の政治団体である宏池政策研究会は212万円、志師会(二階派)は754万円、志公会(麻生派)は410万円の不記載が確認されたという。
不記載の問題は氷山の一角
「20万円を超えるパーティー券を販売していながら、記載せずに見落とすというのはありえません。今回の件が悪質なのは、1年だけでなく複数年、しかも複数の派閥にまたがって、不記載が行われていることです。今回はパーティー券を購入した政治団体の収支報告書をチェックし、20万円超の記載があるかどうかを確認の上、さらに派閥の報告書をチェックする形で、不記載の事実が分かりました。しかし、収支報告書の提出義務のない個人や企業に20万円を超えるパー券を販売していたとしたら、調べようがありません。ですから、この不記載の問題は氷山の一角と言えるのです」(同)
では、なぜこのような事態を招いてしまったのか。
「派閥では誰がどこにパー券を何枚売ったか、という情報を把握していないからですよ」と解説するのは、さる主要派閥に属するベテラン秘書である。
「派閥のパーティー券は所属する議員それぞれに販売枚数のノルマが課されています。概ね1事務所で数百万円分、派閥の幹部になれば1000万円を超えることもあります。それを支援者らに売って回るのですが、特定の企業や政治団体には複数の議員が“売り込み”をかけます。その団体に同じ派閥のA議員から10万円分、B議員から10万円分、C議員から10万円分を購入してもらうと、この団体は派閥のパー券を30万円分購入したことになる。ところが、派閥はその詳細までは知らないのです」
議員ごとの口座を作る
一体どういうことか。
「パー券を購入してもらった際、銀行口座に代金を振り込んでもらいます。その際の口座は派閥の口座ではなく、派閥の名前を冠した議員ごとの口座を作り、そこに振り込んでもらうのです。派閥の口座で振り込んでもらうと、最終的に、誰が売ったパー券なのかの判別ができませんから。しかし、差し当たって、派閥には売った額だけを報告し、誰がどこに売ったのか、という明細までは派閥事務局に報告するわけではない。そのため、複数の議員が同じ団体に購入してもらっても、派閥で把握できず、記載からも漏れてしまっている、というわけなんです」(同)
しかし、主要派閥の中には今回の一件で慌てた人たちもいた。
「ある派閥ではノルマを超えた分については、販売した事務所の収入になると取り決めていたところもあったようです。確かにそうしないと、派閥のパー券を売るモチベーションにつながらないですよね。すると本来売った額より少ない額のノルマ分だけを派閥に報告し、派閥は報告書にその額だけ記載することになる。そのため、この報道後、その派閥では慌てて、ノルマを超えた分のパー券代を確認し直したそうです。また、別の派閥では、ノルマを超えた分は一度派閥に納めて、その後、寄附という形で議員事務所に戻しています。しかし、そういう金の流れをしていないのであれば、事実上の裏金ですよね」(同)
裏金を作りやすい
再び、上脇教授が指摘する。
「今回の告発では岸田総理が会長を務める宏池会が他派閥に比べ、比較的少ない不記載額になっています。というのも、岸田総理の地元である広島県の選挙管理委員会では政治資金収支報告書をウェブで公開しておらず、調査できなかったからです。それがもし分かれば、より多い額の不記載を指摘できたかもしれません。また、各派が購入してもらったパー券の額よりも少ない額を報告書に記載していたら、その過少分は裏金になっている可能性もあります。政治資金パーティーは裏金を作りやすい温床になっていると言えるでしょう」
●「嫌われ」ぶりがますます如実に…岸田政権に「いずれ増税」の不信感 11/8
岸田文雄政権の国民世論からの「嫌われっぷり」が、ますます如実になっている。
共同通信が5日に公表した世論調査で、内閣支持率は前回比4ポイント減の28・3%まで下落し、過去最低を更新した。自民党政権で内閣支持率が30%を割り込むのは、2009年の麻生太郎政権末期以来だという。
岸田政権は「税収増の国民還元」「減税」を相次いで打ち出した。2日には所得税・住民税の定額減税や、低所得世帯への一律7万円の給付を含む17兆円規模の経済対策を発表したばかりだった。
その評価は悲惨なものだ。
今回の共同調査によると、減税や給付金支給を「評価しない」とする回答が62・5%を占めた。その理由は、40・4%が「今後、増税が予定されているから」だ。付け焼刃のバラマキ≠ヘ、もはや通用しないということだ。
それにしても国民の「岸田政権離れ」「自民党離れ」は著しい。10月22日の衆参補選で、参院徳島・高知選挙区で自民党は大敗した。
衆院長崎4区でも自民党の金子容三氏が初当選したが、薄氷の勝利だったようだ。投開票翌日の23日、西日本新聞がその内幕を報じている。
告示前、金子氏と、父で昨年、政界引退した原二郎氏の親子が福岡市を訪問した。面会相手は創価学会の重鎮。公明党の推薦をもらう代わりに、次期衆院選の比例代表での支援を約束したという。
公明党は告示日、金子氏へ推薦状を手渡した。投開票日当日の共同通信の出口調査によると、公明党支持層のうち91%が金子氏に投票したと答えた。これがなければ勝利は難しかったかもしれない。
衆参補選に続き、同29日に投開票された長崎・大村市長選も自民党を驚愕(きょうがく)させたはずだ。現職の園田博史氏が2万8434票を獲得して当選。自民党と公明党が推薦した北村貴寿氏は1万607票にとどまり、ほぼトリプルスコアの惨敗だ。
原因は、いろいろあるだろうが、いわゆる「公明票」が機動的に動かなかったのか。
10月15日投開票の東京都議補選(立川市選挙区)でも、前回の同市議選でトップ当選した自民党の木原宏氏が、立憲民主党の鈴木烈氏に91票差で敗れ、話題になった。だが大村市長選敗北の衝撃は、その比ではない。自公連立の意義、協力関係が、いよいよ危うくなっているのか。
自公連立のきしみは、岸田首相のガバナンス不全に要因があるとの指摘もある。いまだ「衆院解散・総選挙」への意欲を失っていないともされる岸田首相だが、解散権≠ナもチラつかせなければ、いよいよ引き締めを図れなくなっているということか。
●企業は儲かっても賃金が上がらない構造〜 家計はインフレ困窮 11/8
内閣支持率、政権発足後最低
岸田文雄内閣の支持率が政権発足以来最低に落ち込んでいる。日本経済新聞社とテレビ東京が10月27〜29日に実施した世論調査では、内閣支持率が33%で2021年10月の政権発足後最低。共同通信社が11月3〜5日に実施した全国電話世論調査でも28.3%と過去最低を更新。JNNの調査でも29.1%と3割を下回って最低となった。
支持率急落の原因ははっきりしている。政府が11月2日にまとめた総合経済対策が不評だったからだ。JNNの調査では、経済対策に「期待する」と答えた人はわずか18%。72%の人が「期待しない」と突き放した。「目玉」だったはずの所得税・住民税合わせて4万円の定額減税についても、「評価しない」が64%で、「評価する」は26%にとどまった。
それだけ多くの人たちが足下の「経済」に不安を抱いているということだろう。消費者物価の上昇率は9月には前年同月比2.8%で、上昇率が鈍化したという解説もあるが、実際には昨年9月もその1年前に比べて3.0%上がっているので、物価上昇が止まらないというのが生活者の実感だろう。しかもこれはエネルギーを含んだ総合指数の伸びで、実際にはガソリン代や電気・ガス代の抑制に巨額の国費が投じられた後の物価。エネルギーを除いた指数では前年同月比4.2%の上昇と1年前の1.8%の上昇からさらに拍車がかかっている。食料品は1年前に比べて9%も上昇している。
一方で給与は上がらない。賃金から物価上昇分を差し引いた実質賃金は2023年8月まで17カ月連続でマイナスとなっている。岸田首相は賃金は上昇し始めていると胸を張るが、まったく物価上昇に追いついていない。政府が影響力を持つ最低賃金にしても、今年は時給1004円と初めて全国平均で1000円を突破したが、上昇率は4.4%。年間の物価上昇率を3%としても実質は1.4%に留まり、安倍晋三内閣時代の2%台に及ばない。円安が進んでいることもあり、ドル建ての最低賃金はむしろ下落しており、外国人労働者の日本離れの引き金になっている。
最低賃金の引き上げくらい思い切りやってはと思うが、岸田首相の賃上げに対する本気度が疑われる。8月には最低賃金1500円を目指すと発言したが、実現の時期を「2030年半ばまでに」としたのには耳を疑った。そんな姿勢で物価上昇を上回る賃上げは実現しそうにない。
企業は空前の好決算
「家計」は物価上昇で困窮しているが、「企業」は空前の好決算に沸き、それに伴って「政府」は税収増で潤っている。物価が上昇していることで企業の売り上げが増えていることから、結果的に利益も納税額も増える結果になっている。売り上げが増えれば消費税収は増えるので当然と言えば当然だ。「企業」と「政府」はインフレが追い風になっている。
9月1日に財務省が発表した2022年度の法人企業統計によると、企業(金融業・保険業を除く全産業)の売上高は9.0%増加、当期純利益も18.1%増えた。新型コロナ前のピークである2018年の利益水準62兆円を大きく上回り74兆円に達している。
その利益を企業はしっかり抱え込んでいる。内部留保(利益剰余金)は過去最高を更新し続け、554兆円に達している。1年で7.4%も増えた。一方で、企業が払った人件費は3.8%の伸びにとどまっている。2019年度、2020年度と人件費は大きく減ったが、内部留保は一向に減ることなく増え続けた。内部留保は危機の時への蓄えだと言いながら、まったく取り崩されることなく増え続けている。
次の春闘での大幅利上げが無い限り
かつて麻生太郎氏が財務大臣だった時、法人税率の引き下げに対して、税率を下げても内部留保に回るだけでは意味がない、と苦言を呈していた。法人税率の引き下げによって、増えた利益が配当に回ったり、次なる投資へと使われることで、日本経済が活性化することが狙われたが、結果は思うように進まなかった。
配当こそ32兆円あまりと、新型コロナ前の2018年度の26兆円から大きく増えたが、利益の何%を配当に回したかを示す「配当性向」は42.2%から43.8%に僅かながら上がったに過ぎない。結果的には麻生氏の危惧する通りとなった。
2018年度から2022年度の間で、内部留保は463兆円から554兆円に19.8%も増えたが、人件費総額は208兆円から214兆円に2.8%増えただけにとどまっているのだ。
増え続ける内部留保に対して、課税すべきだという声が上がったことがある。財界は「二重課税だ」として強硬に反対した。内部留保は法人税を支払った後のお金なので、それにさらに課税するのはおかしい、というわけだ。また、貸借対照表の貸方にある利益剰余金の反対側、つまり借方は「建物や設備」などになっていて、「現金」が積まれているわけではない、という主張もある。
だが、ここまで会計上の剰余金が増えるのは異常だろう。企業がもっと利益を上げる資産に資金を回したり、財産である社員の待遇を引き上げることが重要ではないか。
果たして来年の春闘に向けてどれだけの賃上げを実現するのか。内部留保を積み上げている大企業を中心に思い切った賃上げが実現しないと、来年の自民党総裁選に向けて岸田内閣の支持率回復は望めないだろう。 
 11/9

 

●岸田首相、年内の衆院解散見送りを事実上表明…内閣支持率低迷 11/9
岸田首相(自民党総裁)は9日午前、年内の衆院解散・総選挙について、「まずは経済対策、先送りできない課題一つ一つに一意専心取り組んでいく。それ以外のことは考えていない」と述べ、見送る意向を事実上表明した。首相官邸で記者団の質問に答えた。
内閣支持率が低迷していることから、首相は当面、経済の立て直しに専念する。所得税などの減税について、評価が芳しくないことも考慮した。国民の信頼回復を図りつつ、来年9月の任期満了に伴う自民党総裁選の前に解散する機会を探る構えだが、支持率の低迷が続けば、総裁選に影響することも予想される。
政府は経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案について、20日に国会へ提出し、今月末の成立を目指す。その後は24年度予算の編成が本格化する見通しだ。
首相は11月末から、アラブ首長国連邦(UAE)で開かれる「国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)」への出席を検討している。12月16〜18日には日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の特別首脳会議が控えており、外交日程が立て込んでいることも踏まえたとみられる。
首相は9月に内閣改造を行って政権浮揚を図ったが、自民党は10月の衆参2補欠選挙で「1勝1敗」と苦戦を強いられた。10月下旬には、山田太郎・前文部科学政務官と柿沢未途・前法務副大臣が辞任に追い込まれるなど政務三役の不祥事が続いていた。  
●総理や閣僚らの“給料アップ”分は自主返納へ 岸田総理、年内解散見送り 11/9
岸田総理は、年内に解散総選挙を行うことを見送る方針を固めました。内閣支持率が過去最低を記録する中、自民党内からは「選挙は新しい顔で臨んだ方がいい」などの声もあがっています。
岸田総理「まずは経済対策、先送りできない課題一つ一つに、一意専心取り組んでまいります。それ以外のことは考えておりません」
けさ、記者団から解散総選挙について問われ、「まずは経済対策」と強調した岸田総理。早期の解散総選挙に打って出るタイミングを模索し続けていましたが、事実上「年内見送り」を表明した形となりました。
9月に行われた内閣改造で、岸田総理は政権浮揚をねらったものの、不発に終わりました。政府関係者によりますと、この頃にはすでに解散見送りの方向に気持ちが傾いていたといいます。
岸田総理(周囲に)「今は経済対策をやって、経済を好循環に乗せることのほうが大事だ」
そして、今週には与党幹部にもこうした考えを伝えたということです。
当面は経済対策に集中したいとする岸田総理ですが、ここに来て政権の不安定ぶりが目立つようになっています。
立憲民主党 山岸一生 衆院議員「上げるのは違うでしょう。今は政治家の給料を上げるのは違うでしょう」
きのう審議入りした国家公務員特別職の給与法改正案は、成立すれば岸田総理は年間で46万円、閣僚は年間32万円、それぞれ給与を増やす内容が盛り込まれていて、与野党から「国民の理解が得られない」などと批判を浴びました。
松野博一 官房長官「今回の給与増額分を全て国庫に返納する旨を申し合わせることといたします」
結局、松野官房長官はさきほど、総理や閣僚ら政務三役について、給与の増額分をすべて自主返納すると表明しました。
来年9月の自民党総裁選挙で再選を目指す岸田総理は、引き続き、総裁選前に解散に打って出るタイミングを模索する考えですが…。
自民党 武田良太 元総務大臣「支持率が低い状況での総裁選挙になれば、チャレンジャーのほうにアドバンテージが働きやすい傾向があるんじゃないかなと思います」
岸田内閣の支持率が過去最低を記録する中、いわゆる“非主流派”である二階派の武田元総務大臣は、総裁選で岸田総理以外の候補者が有利になる可能性に言及しました。
自民党内からはすでに「選挙は新しい顔で臨んだ方がいい」などの声も漏れていて、岸田総理の進む道のりは険しさを増しています。
●岸田“デタラメ”減税に身内も嫌気露わ…財務大臣の「原資はない」暴露 11/9
岸田首相の見え透いた人気取りが嫌気され、評判が最悪となっている所得税減税。政府は今月20日に予定する補正予算案の国会提出に向け準備を進めているが、とうとう政府内から「岸田発言」を否定するような動きが出てきた。これは何を意味するのか。いよいよ政権末期だ。
驚きの答弁だった。8日の衆院財務金融委員会。岸田首相は2022年度までの2年間で所得税と住民税の税収が合計3.5兆円増えたことを踏まえ「減税で還元する」と説明してきた。これについて、立憲民主党議員に問われた鈴木俊一財務相は、過去の税収増分は使用済みで、「政策的経費や国債の償還に既に充てられてきた」と答えたのだ。つまり、岸田首相が「還元」と主張するような原資はないと“暴露”したのである。
さらに鈴木大臣は、今回の減税策を実施すれば国債発行額が増えることも明言。つまり借金が膨らむということだ。だったらなぜ首相は「還元」などと言ったのかだが、これについて鈴木大臣は「財源論ではなく、国民に、どのような配慮をするかとの観点」と苦しい弁明だった。
岸田首相がこの1カ月以上こだわってきた「還元」を事実上、否定したわけで、閣内の、それも財務相がこうした答弁をするのは異例のことだ。
実は、8日の日経新聞朝刊に掲載された自民党の宮沢洋一税制調査会長のインタビューの見出しも〈所得減税「還元ではない」〉だった。宮沢氏は、所得減税について、〈「還元」といっても税収は全部使ったうえで国債を発行している。それは還元ではない〉と断言していた。
「財務省」「岸田派」2つの支柱がグラグラ
岸田政権は「財務省政権」と呼ばれるほどに、官邸を固める側近も政策面でのサポートも財務省やその出身者が中心になっている。鈴木大臣は麻生前財務相の派閥に所属し、宮沢氏は財務省OBのうえに岸田首相のいとこで岸田派幹部。そんな身内中の身内が岸田発言を否定とは、減税策があまりにデタラメすぎて、ついにサジを投げたということなのか。「財務省」「岸田派」という岸田政権の2つの支柱がグラついている。
「鈴木財務相、宮沢税調会長という2人がこうした発言をしたのは、『国民に還元なんていう“嘘”をついたら大変なことになりますよ』と財務省に言われたからでしょう。財務省も含め、岸田首相に呆れているということです。今の岸田政権は砂上の楼閣。国民の信頼も失い、ひと押しされたらすぐひっくり返る状態にまできています」(政治評論家・野上忠興氏)
自公のズレも露呈
連立を組む公明党も岸田首相との一蓮托生を避けようとしているのか、所得減税について「1年限りと今から決め打ちする必要はない」「所得制限は設けるべきではない」と主張し、自民党とのズレが目立つ。8日は世論の猛反発を招いている「閣僚の給与引き上げ法案」の凍結まで口にし始めた。
財務省、岸田派、そして公明党と身内が首相の足を引っ張る断末魔。もはや与党議員の大勢は「岸田首相、自分から辞めてくれ」と願っているのではないか。政権は内部から崩壊し始めた。
●岸田首相 年内解散見送り 支持率低迷・所得減税評価されず 11/9
岸田首相は、年内の衆議院解散・総選挙を見送る意向を表明した。
岸田首相「まずは経済対策、先送りできない課題1つ1つに一意専心、取り組んで参ります。それ以外のことは考えていません」
年内の解散も視野に入れていた岸田首相だが、内閣支持率の低迷に加え所得減税も評価されず、決断を迫られた形。
関係者によると、与党幹部にも経済対策などに専念する考えを伝えたという。
立憲民主党・泉代表「常に『場当たり的』ですね。では、今まで経済の立て直しに専念していなかったんですか」
日本維新の会・馬場代表「政務三役の不祥事やスキャンダルというものが、次から次へと出ている状況だ。国民に信を問える状況ではない」
こうした中、政権と距離を置く自民党の菅前首相や二階元幹事長らが9日夜、東京都内で会談した。
党内の情勢についても意見交換したものとみられる。
● 年内解散見送り表明、首相「経済対策に一意専心」 11/9
岸田首相(自民党総裁)は9日、年内の衆院解散・総選挙を見送ることを事実上表明した。「経済対策、先送りできない課題一つ一つに一意専心、取り組んでいく。それ以外のことは考えていない」と述べ、物価高などの対応に集中する考えを示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。
9月の内閣改造後、法務副大臣と文部科学政務官が辞任に追い込まれるなど、新体制では不祥事が相次いでいる。首相は物価高対策で所得税と住民税の定額減税を打ち出したが、国民の受け止めは厳しく、内閣支持率は低迷したままだ。
首相は来年9月の任期満了に伴う党総裁選での再選を目指し、解散戦略を練り直す。解散時期は来年度予算や税制関連法が成立する来年3月以降が有力となる。それまでの間、経済再生や賃上げに注力し、政権の立て直しを図る考えだ。
解散の見送りは、年末に向け、外交日程が続くことを考慮した面もあるとみられる。首相は11月末から、アラブ首長国連邦(UAE)で開かれる「国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)」への出席を検討している。12月16〜18日には、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の特別首脳会議が東京で開かれる予定だ。
●「しっかりしろ」「信念を強く持ってほしい」最近の総理に街の声… 11/9
岸田総理は、年内に解散総選挙を行うことを見送る方針を固めました。何をやっても裏目に出てしまう最近の岸田総理について、街の人は?
支持率急落で?解散は“見送り”
加藤シルビアキャスター:
年内の解散見送りということを固めた岸田総理ですが、まずは支持率の推移を見ていきたいと思います。
去年の8月には6割ほどあった支持率ですが、徐々に下がり、直近では29.1%と過去最低となっています。
さらに3月にはウクライナの訪問、5月にはG7広島サミットが行われ、少し支持率を持ち直した場面もありました。このとき“解散に含みを持たせる発言”があったということで、永田町には解散風が吹きました。
しかし、直近の支持率の影響か、岸田総理は年内の解散を見送る方針を固めたということです。
さらに今国会に政府が提出している給与アップ法案について、総理の給与やボーナスなど合わせて年間46万円増えるという法案ですが、これについて野党側から反発が相次いでいます。
今月1日には、日本維新の会の音喜多政調会長が「到底国民の理解は得られません」と発言。これに対し「不信を招かないよう努力を続けていきたい」と岸田総理は話していました。しかし、法案の見直し、取り下げなどについての言及はありませんでした。
8日は衆議院で審議入りしたこの法案、柚木議員は「本当に耳を疑ったどういう感覚をしているのか」と反発は相次いでいましたが、9日、松野官房長官は給与の増額分を全て国庫に返納すると表明しています。
総理の給与増街の声は?
加藤キャスター:
こうした最近の岸田総理について、街の声を聞きました。
「給与を上げるといったり返すといったり・・・信念を強く持ってほしい」
「軸がぶれている。国民のために力を注いでほしい」
「リーダーとしての信念があるのか?しっかりしろと背中をたたきたくなる」
このような声がありました。
ホラン千秋キャスター:
今、岸田総理の頭の中にはどんな思いが去来しているのでしょうか。
星浩コメンテーター:
政権浮揚をして解散をして、もう少し自前の政権を作りたい。
それから様々な政策をやるにも、強力な体制を作りたいという気持ちはあったのですが、この間やることなすこと全て裏目に出てますので、この状況で解散をしたらもう自民党は負けてしまって、場合によっては政権を失うということもありうるので、これはできないなという急ブレーキをかけたと。
次のチャンスを来年考えようかと少しクールダウンしているところじゃないですかね。
井上貴博キャスター:
“中継ぎ政権”なんて言われる中で、岸田さんがついて、年内解散ができなくなったことは痛手だと思いますが、来年について考えると、例えば6月の会期末でタイミングをどう図るのか、岸田さんがそのタイミングをどう図っているのか。
また自民党内で岸田さんおろしと言いますか、ポスト岸田さんだとすると誰なのか、そういう話が上がっているのかっていうことに関してはいかがですか。
星コメンテーター:
例えば昔の小泉さんとか、元々想定されていなかった人が急速に出てくるっていうことだってよくあるパターンですので、岸田さんが今の20%台の支持率だと、やはり別の人で選挙に臨みたいなというのは自民党の中で相当強まってきます。
そうなると、誰でもいいというわけにもいかないでしょうけど、それなりの人ならもうポスト岸田の有資格者ということになると思います。
井上キャスター:
来年あたり出てくるってことですね。
星コメンテーター:
むしろ早いんじゃないでしょうか。来年の春ぐらいにはもう出てくるでしょうね。
支持率狙いの「憲法改正」?
加藤キャスター:
支持率が低迷している中で、もう一つ、注目されている発言がこちらです。
岸田総理
「憲法改正を実現したいという思いはいささかも変わらない。任期中に最大限努力する」
と発言がありました。これにつきまして、星さんに聞きました。
星浩氏
「保守層狙いの発言。そもそも改憲派と思われていない。支持率アップにはつながらないのでは」
ということでした。
ホランキャスター:
星さん、この動きとスケジュール感について、本当にどれだけ実現可能なのか、するべきかどうかなどはいかがでしょうか。
星コメンテーター:
安倍政権のときは、安倍さんはどちらかというと保守派右派だったので、政権の調子が悪くなると右バネって言いますか、右エンジンをふかして民主党政権の批判をしてみたりして立て直してきました。岸田さんもその真似をして右エンジンを吹かすために憲法改正も考えているということですけど、岸田さんは元々あんまり憲法改正に熱心に取り組んできたとは誰も思っていないですので、右エンジンをふかそうとしても空ぶかし状態になってしまっていいて、なかなか党内からも求心力は回復していかないという状況だと思います。
井上キャスター:
そもそも改正するしないに関わらず議論が深まっていないので、それどころじゃないですよね。
星コメンテーター:
物価高や生活が苦しい中で、憲法改正どころじゃないというのは国民の意識でしょうね。 
 11/10

 

●「先憂後楽」岸田首相に欠ける資質 「道半ば」でも給与は上げる 11/10
お客様から預かったクルマにわざと傷をつけて修理代金を増やしていた、と問題となったビッグモーター(BM)。そんな違法行為を知りながら、他社に先駆けてBMとの保険契約を再開した損保ジャパン。契約再開を主導したのは社長だった白川儀一氏とわかり、社長を辞任。これにて一件落着かと思われたが、終わらなかった。金融庁は損保ジャパンの親会社SONPOホールディングスに立ち入り検査に踏み切った。
「親会社の責任」が焦点となっている。なぜか? SONPOホールディングスの櫻井謙吾グループCEO兼取締役兼代表執行役会長のワンマン体制に問題の根源がある、と金融庁は疑っている。ワンマンぶりの表れが「飛び抜けて高い」とされる櫻井氏の報酬だ。損保業界首位の東京海上HD小宮暁社長の報酬が1億7000万円程度であるのに、業界3位のトップ櫻井氏は4億7000万円(2023年度)。この「不釣り合いぶり」が業界で話題になっていた。
白川社長は親会社の意向に沿ってBMに甘い決定としたのではないか。櫻井ワンマン体制は4億7000万円の報酬に値する立派な経営をしていたのか、金融庁の検査の注目が集まっている。
燃え広がる前に手を打つ「自主返納」
そんな時、国会で問題にされているのが「首相の給与」。年額4015万円を4061万円に引き上げることが妥当か、が議論されている。SONPOホールディングス櫻井会長の10分の1にも満たない給与でわが国の総理は働いている。政治家の報酬とはなんだろうと、と考えさせられる課題でもある。
首相の給与は「二層構造」になっている。国会議員としての歳費・年2187万8000円(月額129万4000円+期末手当635万円)。これに首相という職務に対する報酬1928万円が上乗せされ、現行の給与は4015万円。だが満額が支給されているか、というとそうではない。様々なことで自主返納が繰り返され、実額は2811万円というのが現状だ。
「法改正で増額となっても実際の取り分は2843万円だけ」というのが首相側の言い分だ。責任の重さを考えると、決して高額とは言えないだろう。その一方で、首相の報酬は国民の税金で賄われる。国民の暮らしぶりとかけ離れた報酬というわけにはいかない。労使交渉のない政治の世界だ。
そこで、よりどころになるのは公務員給与についての人事院勧告である。
人事院は8月、一般の国家公務員に対する給与引き上げを勧告した。これに併せ高級官僚である「国家公務員特別職(審議官以上)」の給与も上げようというのが今回の給与改正法案だ。ところが「なんでいま首相の給与を上げるのか」という声がわき上がり、野党は「暮らしの悪化に国民が苦しんでいる時、首相や閣僚が自分たちの給与を増やすことに理解が得られるのか」と批判する。
地元の区長選で現金を配り公選法違反が疑われている柿沢未途法務副大臣、女性と不適切な交際が明らかになった山田太郎文部科学政務官。任命したばかり政務三役に不祥事が続き、政権への信頼は揺らいでいる。支持率が下降する中で、「お手盛り賃上げ」は岸田内閣への不信をますます強めかねない、との配慮から、首相官邸は「増額分は自主返納」を打ち出した。世間を騒がせる話題は燃え広がる前に手を打つ、という対応である。しかしまたいつもの「自主返納」である。返納すれば文句はないだろ、という対応である。
暮らしの崩壊、現実に不満抱く国民
今の臨時国会で政府は17兆円という巨額の経済対策を予算化した。「所得税減税」として1人当たり4万円を税から差し引く。納税していない低所得者に対しては1世帯ごと7万円を給付する。そのほか、ガソリン価格の高騰を抑えるため石油元売業者に補助金を出すなど「上昇する物価への対応策」に巨額のカネを使う。
ことほどさように、政府が今取り組んでいるのは「物価対策」だ。賃金が少しばかり上がっても物価上昇に追いつかない。実質賃金は18か月連続してマイナス。賃金を上げることが政治にとって重要な課題になっている。最低賃金や公務員給与の引き上げはそんな文脈から行われてきた。「特別職給与も増額」も、この流れに沿っているように見えるが、大間違いだ。
高級官僚や閣僚級政治家・首相は「お上=この国の支配者」と人々は見ている。自分たちが苦しい時、なぜ支配者がお手盛りで給与を膨らますのか、と複雑な思いになる。「4000万円ももらっていません」「これまでも自主返納してきました」「今回も自主返納します」と言っても、怒りは収まらないだろう。
非正規で十分な給与が得られないから、夜はバイトする、食料品の値上がりで1日2食にした、こどもの給食費が払えない――などという暮らしの崩壊が始まっている。労働組合の連合が発表する春闘の賃上げ率は大企業の数字で、中小企業の賃上げは定率にとどまっている。強い者だけ給与が上がる、という現実に不満を抱く人にとって「返納するからいいじゃない」「首相の給与は決して高くない」と言われても納得いかないだろう。
世間常識がわからないのが岸田首相最大の欠陥
「先憂後楽(せんゆうこうらく)」という言葉がある。「世の中に先んじて事態を憂い、皆が安心きるようになった後に楽しむ」という指導者の心得を説いたものだ。
物価を上回る賃金が政治課題だ。それには物価を抑える政策が欠かせない。インフレの主要因である円安に歯止めをかけることが必要だ。そして賃上げ。不当に引き下げられた労働分配率を拡大する。大企業には、たまった内部留保を吐き出させる。中小企業の賃上げは、系列を通じた搾取(さくしゅ)をやめさせ、正当な対価を払わせる「下請け構造の是正」が急がれる。円安を誘導する「内外金利差の拡大」の是正には、日銀の政策金利を引き上げることも課題だろう。
首相が激務であることはほとんどの人は知っている。求められているのは、忙しそうにすることでなく、働いた成果だ。「特別職の賃金改定」は、賃金上昇が物価を上回ったことを見届けてから「おかげさまで」と行えばいい。
政策の未達はいつも「道半ば」と言い訳されてきた。道半ばでも給与だけは上げる、というのは理屈が通らない。「聞く耳」はあっても理解する神経がないのでは困る。世間常識がわからないことが岸田首相最大の欠陥ではないか。
●きょう午後閣議決定の補正予算案、経済対策への本気度は? 11/10
きょう午後閣議決定の政府の補正予算案。経済対策の裏付けとなるもので、関係費は一般会計で13兆円を超えます。
「国民に還元する」
「物価高対策を重視する」
岸田総理が声高にアピールしてきた経済対策ですが、補正予算案からはその本気度は伝わってきません。
岸田総理[2日]
「この政権は何よりも物価高対策、そして経済対策を重視しているとの決意を申し上げました」
先週、経済対策で“何よりも物価高対策”を重視すると強調した岸田総理。
その裏付けとなる補正予算案の13.1兆円の内訳を見てみると、岸田総理が“何よりも重視”と強調する物価高対策は2.7兆円で、最も大きな割合を占めるのは国土強靭化で4.3兆円です。
国民が物価高にあえぐなか税収が増えた分を還元するとしながら、一番国民が困っている物価高対策より、結局いつもと同じ公共事業などに、より多くを割り当てることになります。
物価が上がるなか、負担増に苦しむ国民の方を向いたお金の使い方なのか。総理がどれだけ物価高対策を重視しているか伝わってこない補正予算と言わざるを得ません。
●「ばら撒きメガネ」岸田首相が海外ばかり経済支援する理由は? 11/10
インボイス制度をはじめ様々な増税策を実施・検討していることから、岸田文雄首相をSNSで「増税メガネ」と揶揄されている。また、海外に積極的な経済支援を実施していることから、「バラマキメガネ」と呼ぶ声も少なくない。
実際、ASEANに2兆8000億円の投資したり、アフリカに3年間で4兆円の支援を実施したりなど、大胆かつ積極的な海外支援が岸田政権では目立っている。岸田首相がなぜ海外への経済支援を繰り返すのか。経済的に困窮している人が少なくない昨今、今すぐに講ずべき政策などを経済アナリストで『「国の借金は問題ない」って本当ですか?〜森永先生!経済ど素人の私に、MMTの基本を教えてください。』(技術評論社)の著者・森永康平氏の意見を聞いた。
軍事力や資源がないからこその一手
故安倍晋三氏が首相の時から、フィリピンに5年間で1兆円規模の支援実施を決めたりなど、国外への経済支援は数多く実施されてきた。そもそも、日本が発展途上国に対して経済支援することの妥当性について聞くと、「国際社会における日本という立場から考えれば、それなりの合理性や正当性はあると考えます。かつては日本も被援助国であり、相互扶助という観点を忘れてはいけません」と一定の理解を示す。
「特に国際社会が平和になり、情勢が安定することは日本にとっても国益となります。軍事力や資源があれば、交渉を有利に進めたり、外交カードにできますが、日本にはどちらもありません。ですが、発展途上国に対する支援を実施して国際的な格差を是正できれば、争いが生じる可能性を低下させ、軍事力の影響力を抑えられます。
そして、その立役者が日本であれば、国際的な存在感も高まり、外交において有利に交渉を進められるでしょう。要するに外交をうまく進めるためのカードとして、海外援助の重要性は他国以上に高いのです」
「日本だけバラ撒いている」ワケではない
ちなみに日本以外の先進国でも発展途上国に向けた支援策は講じられているのか。
「開発援助委員会(DAC)30か国のODA(政府開発援助)を実績支出純額(ネット)でみてみると、 2021年の約1850億ドル(確定値)から、2022年は約2060億ドル(暫定値)に増加しています。『日本だけが海外にお金をバラ撒いている』という評価は誤りです」
とはいえ、岸田政権になって以降、経済支援が活発になっている印象を受ける。その背景について森永氏は「コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻、世界的な食料・エネルギー価格の高騰、イスラム過激派によるテロ、地球温暖化、難民の増加など、経済支援をする理由が増えたことが大きいです」と回答した。
「国内の経済政策があまりにもお粗末」だから…
国際情勢が揺れ動くタイミングで岸田内閣が発足されたため、「岸田首相は海外へのバラマキを続けている」というイメージが根付いてしまったのかもしれない。実際、森永氏も「国際的な観点からすれば、非難するような話でもないと思います」と話す。
ただ、「海外への経済支援に批判が殺到するのは、国内における経済政策があまりにもお粗末だからでしょう」と「バラマキメガネ」と首相が揶揄されている背景を口にして、日本経済を立て直すために必要な政策を提案する。
「一番シンプルなのは消費減税です。少なくとも現在も軽減税率の対象となっている食品などをより減税したり、もっと言えば一時的に食品だけは消費税を廃止しても良いと考えています。また、社会保険料の減免を実施すれば、現役世代の負担を減らすことが可能です。少子化対策につなげることができるため、検討する必要があります」
現在、租税負担率と社会保障負担率を合計した “国民負担率”は46.8%と非常に高い。働いても給料の半分を税金などに取られている現状であり、減税や社会保険料の減免などによって生活が安定する国民は多いだろう。早急に検討してほしい策と言って良い。
消費税の減税が遅々として進まないのは…
消費税減税を求める国民は以前から少なくなかったが、政府は消費税は減税どころか増税する方向で検討しがちである。なぜ前向きに議論されないのか。
消費税減税のハードルとして、「『政府は収入の範囲内で財政政策をすべきである』という考えの“財政均衡主義”に陥っているため、基本的に歳出は税収の範囲に収めたがっています。そのため、何かをする時は『必ずどこかを削るか』『税率を高めたり、新たな税を創設したりなどして税収を増やそう』という方向になるのです」と説明。
「知識と行動力を備えた政治家」を国会に送り込むには…
それでは政府が財政均衡主義を脱するために、私達ができることは何なのか。
「民主主義国家なので、国民としてできることは、正しい経済政策を実現できるだけの知識と行動力を備えた政治家を国会に送り込む必要があります。しかし、現状は多くの国民が投票に行きもしません。加えて、『誰に投票すべきなのか』を自らの頭で考えられている人ばかりとは言えません。とにかく国民も経済について知識を身につけなければいけないと思います」
次の大きな選挙は2025年の衆議院選挙が予定されている。一人ひとりの有権者が自分の頭でしっかりと考えたうえで票を投じることこそが、今の苦しい生活を脱するために不可欠な要素。たかが一票と思わず、その重みを大切に扱いたいところだ。
●年内解散できなかった岸田政権の運命はもう風前の灯火なのかもしれない 11/10
解散「しない」でなく「できない」
岸田文雄首相は9日、「経済対策に取り組む。それ以外のことは考えていない」と述べて年内解散しないことを明らかにした。だが「しない」ではなく「できない」であることを誰もが知っている。
岸田氏が解散を「できない」のはこれで2度目だ。前回は通常国会終盤の6月。その時は筆者の元に旧知の官僚から、「明日解散。投票日は7/23」というガセ情報が寄せられたくらいだったから、状況はかなり緊迫していたと思う。
しかし今回は1週間前に、ある野党幹部から「まだクリスマス選挙(12/24投票)の線が消えてないんだよな」と半信半疑の様子で言われたくらいで、永田町はずっと静かだった。
と言うか1人の首相が解散風を吹かせた後に、「やっぱりしません」とわざわざ宣言することを短期間に2度もやったというのはあまり記憶にない。これはあまりカッコいい話ではない。
これで岸田氏のリーダーシップにかげりが出るのは当然だろう。評判の悪い所得税減税については引き続き批判されるし、本来やらないといけない防衛力強化のための増税や、少子化対策の財源としての社会保険料の引き上げの議論などは、袋叩きにされて支持率がさらに下がってしまうので、進まなくなるのではないか。
岸田政権はドツボにはまっている
それにしても首相の後見人である麻生太郎自民党副総裁の義弟、鈴木俊一財務相の「税収増分はすでに使っている」発言や、首相のいとこ、宮沢洋一税調会長の「所得減税は当然一年限り」という発言はなぜ出てくるのか。
2人とも正しいことを言っているのだが、このタイミングで「身内」がわざわざ言わなくてもいい。特に宮沢氏の「当然一年限り」というワードは「反岸田」の人たちにとって実に癇に障ると思う。いくら正しいことを言っても政権がコケたらどうしようもないのに。
首相や閣僚の給与が上がる問題も、公務員の賃上げのために必要なのだからやるべき話なのだが、なぜ先に「私たちは返納します」と言わないのか。首相の年収が46万円上がったら何も知らない人は怒るし、野党やメディアは大喜びで突っ込んでくるくらいわかりそうなものだ。
笑ってしまったのは税金を担当する財務省の副大臣が「仕事が忙しくて税金を滞納していました」という話だ。これは悪い冗談かと思った。しかも辞任は否定した(10日現在)。これはヤバい。
つまり岸田政権は今やドツボにはまっている。何をやっても支持率は上がらない。逆に何か少しでも国民の気に障ることをやると支持率は下がる。野党もメディアもそれを待っている。
先行きは全く読めない
岸田氏が今後やるであろうことは、賃上げへの努力を続ける、ガソリン、電気代への補助金など家庭へのバラマキも盛大にやる。でも増税や社会保険料の値上げはできないし、歳出削減も必ず文句言う人がいるのでできない、つまり国債をひたすら出し続けるしかない。
そうやって来年9月の自民党総裁選までに支持率が上がって解散するチャンスをじっと待つのだ。6月に所得減税が実施され、支持率が上がれば解散という声もある。
幸い日本経済は上向きだ。インバウンドが戻りGDPギャップもプラスに転じたことで、これから供給側を強くすれば経済はさらに良くなる。株も高く、税収も今後数年は上振れるらしい。物価高も少し落ち着き始めた。来春には実質賃金がプラスになるとの予想もあり、そうなれば国民の気分はずいぶん変わるだろう。
だが岸田氏にもう解散する力は残ってないと思う。選挙の顔になるのはもう無理だからだ。あとはいかにポスト岸田を決めるかだ。しかし最有力とみられる茂木敏充幹事長は「令和の明智光秀にはならない」と述べ、不出馬を示唆している。
他の河野太郎、高市早苗、石破茂氏らは議員票を集めるのに苦労している。岸田氏がレームダックになりつつあるのに次を決められない。これでは先行きが読めない。
このままでは総裁選は岸田氏再選となるかもしれない。そのまま任期満了まで行って岸田氏かあるいは誰か弱い首相が衆参ダブル選挙をやり、もし与党が過半数割れになったら日本維新の会や国民民主党に連立入りしてもらう、先行きについては今のところそれくらいしか思いつかないのだ。
●補正で財政投融資8860億円追加、供給網強化へ金融支援=政府筋 11/10
政府は、2023年度の財政投融資計画を見直し、新たに8860億円を追加する方針を固めた。半導体など重要物資の供給力強化や先進的な物流施設の建設を視野に、政府系金融機関を通じた金融支援を拡充する。複数の政府筋が明らかにした。
年度当初の財投計画は16兆2687億円だった。今回の改定で計画額は17兆1547億円となる。23年度補正予算案の閣議決定と併せてきょう発表する。
岸田政権が重要課題に掲げる国内投資の促進では、重要物資の供給力強化や先進的物流施設・データセンター建設のほか、再生可能エネルギー供給に向けた送電網整備に、日本政策投資銀行を通じて1500億円の資金供給を行う。
グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国からの重要資源確保に向けては、日本企業の供給網を強化するため、国際協力銀行を通じた3000億円の金融支援を追加する。
併せて途上国との連携を促進するため、インフラ輸出に対する4060億円の円借款を行う方針だ。
●岸田首相の補正予算案に込めた狙い デフレ脱却「レガシーになる」 11/10
岸田文雄首相は定額減税や低所得世帯への給付が柱の経済対策の裏付けとなる令和5年度補正予算案を臨時国会で早期成立させ、最重要課題に位置付ける「デフレからの脱却」の達成を目指す。首相は、バブル崩壊以降30年続くデフレからの脱却が「レガシー(政治的遺産)」となることを強く意識しており、当面は解散カードも封印して経済に注力する構えだ。
「来年は賃上げをどんどん盛り上げていくつもりだが(ウクライナ情勢など)外的要因で物価高は続くので消費に回らない可能性がある。デフレに後戻りしないために思い切った対策が必要だ」
首相は補正予算案の閣議決定にあたり、周囲にそう語った。
デフレ脱却の兆候を示すのは、首相の旗振りで機運が高まった賃上げだ。今年の春闘では約30年ぶりの水準となる3・58%の賃上げが実現した。
一方で物価高に収束の気配はなく、来年以降に賃上げが軌道に乗っても消費は後退しかねない。そこで家計を下支えし、消費を促すための複合的な手当てとして用意した策が定額減税や給付だ。首相は「賃上げや減税、さらにNISA(少額投資非課税制度)の拡充などで一気に消費につなげる」と語る。
ここに来て、首相は年内の衆院解散を見送る方針も固めた。政権内には「国民に『解散のための減税ではないか』と思われ、経済対策そのものが不評を買っている」(高官)という危機感がある。解散という最強カードを当面封印したのは、経済最優先で国民生活の向上に注力する姿を見せるためでもある。
減税などを打ち出す過程では「首相が何をしたいのか全く伝わらない」(自民党の世耕弘成参院幹事長)と身内からも厳しい評価が出た。岸田政権は令和3年10月の発足以降、防衛力の抜本強化や原発再稼働など、歴代政権が積み残した懸案を片づけてきたが、その反動で「脱力状態になってしまった」(政府関係者)との指摘もある。
ただ、首相は周辺に「減税したいんじゃない。デフレから脱却したいんだ。それはすごいレガシーになる」と語る。自らの手でデフレ脱却を導くためにも政権基盤の立て直しは急務となる。
●神田副大臣進退で政権苦慮=立民代表「補正審議は不可能」 11/10
税金滞納が発覚した自民党の神田憲次財務副大臣の扱いに岸田政権が苦慮している。不祥事で政務三役の辞任が相次ぐ中、さらなる「辞任ドミノ」は避けたいのが本音。攻勢を強める立憲民主党は、続投したままでは経済対策などを巡る国会審議に影響しかねないと警告しており、岸田文雄首相の判断が焦点となっている。
神田氏は自身が代表を務める会社が保有する土地・建物について、固定資産税の滞納により過去4回、差し押さえを受けたことを認めた。10日の衆院内閣委員会で立民の本庄知史氏から詳細な説明を求められた神田氏は「精査している」と繰り返した。進退に関し「言及を控えたい」と述べ、歯切れの悪い答弁に終始した。
10月下旬には山田太郎氏(自民)が不倫問題で、柿沢未途氏(同)は公職選挙法違反の疑いのある事件に絡み、それぞれ文部科学政務官と法務副大臣を辞任。内閣支持率が低迷する首相にとって「3人目の辞任」となれば打撃は必至だ。
松野博一官房長官は10日の記者会見で「財務副大臣の自覚を持ち説明を尽くしてもらいたい」と推移を見守る考えを示した。自民幹部は神田氏について「首相官邸は『法には触れていない』と線引きしており、辞任はない」と語った。
新たな「追及カード」を手にした野党は勢いづく。立民の泉健太代表は10日の会見で、神田氏の即時辞任を要求。応じなければ、政府が今国会成立を目指す2023年度補正予算案の審議は「不可能だ」と明言した。安住淳国対委員長は「なぜ『適材適所』なのか首相に聞きたい」と、首相の任命責任を問う考えを表明。国民民主党の榛葉賀津也幹事長も「早く辞めた方がいい」と断じた。 
●『モーニングショー』呆れてものが言えない…4回繰り返し「バカなの?」 11/10
自民党・神田憲次財務副大臣の会社が、過去に税金を滞納し、差し押さえを受けていた問題が発覚し、翌10日放送の「羽鳥慎一 モーニングショー」でもこの話題について取り上げたという。
コメンテーターでタレントの長嶋一茂は「呆れてものが言えないとはこのことで、どうなってんですかね」と口火を切ると、岸田文雄総理の任命責任について言及。身辺調査の甘さを指摘し、「みんな納税している中、財務副大臣でしょ? 税理士。どうなってんのかな」と疑問の声をあげていたとのこと。
その後、テレビ朝日元社員でコメンテーターの玉川徹氏が、4回の滞納について「1回は忘れるってことあるかもしれないけど、その後、何度も電話があって差し押さえされて、お金払ってまた差し押さえされてって、4回繰り返しているんでしょ? 全部それが“忘れた”だったら国会議員としても資質を疑いますよ」と批判していたといい、さらに11月8日には鈴木俊一財務大臣が、過去の税収増分はすでに使用済みと答弁したことに触れて、「減税は余ったから返しますって話だったのが、じつはそうじゃなくて、借金して減税しますって話でしょ?」と指摘し、「悪い冗談としか思えなくて、むしろ呆れて笑ってしまうというか、お笑い岸田内閣って感じになってる」とコメントすると、出演者からは「なんなんだ」「なんなんだろう」「なんなんだ」とツッコミの声が上がっていたという。
これに一茂は「バカなの?」と直球発言。「バカなの?ってことでしょ、だって。入ってくるお金の計算ができていないって話でしょ」と切り捨てていたという。
「一茂さんの『バカなの?』というツッコミにはネット上でも話題となり、『一茂にバカ呼ばわりされる岸田内閣』『岸田にバカって…その通り』などと賛同の声が続々。確かに税収増の3.5兆円を還元すると大風呂敷を敷いたものの、じつは政策的経費などで使い切っていたことが発覚。減税のための国債発行となると、ますます国の借金は増える一方で、近い将来の大増税につながることは必至。一茂さんが『バカなの?』と批判するのも理解できます」(メディア誌ライター)
岸田政権の支持率の浮上は望めそうにないと「アサ芸ビズ」が報じている。
●「ポスト岸田」有力候補、政治のプロが分析 高市氏・萩生田氏・茂木氏… 11/10
岸田文雄首相が「年内の衆院解散見送り」の意向を固めたことで、自民党内で首相の求心力低下が懸念されている。何度も解散の機会を逃したことで「決断できないリーダー」というイメージが定着し、内閣支持率の下落を含めて「選挙の顔」への不信が高まりかねないのだ。政権浮揚策が相次いで不発となるなか、政局は今後、「岸田離れ」「岸田降ろし」に発展していくのか。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増すなか、日本の国力を高めて、平和と安定を維持できるリーダーは誰なのか。永田町を知り尽くした政治のプロに、「ポスト岸田」を分析してもらった。
「まずは経済対策、先送りできない課題一つ一つに一意専心取り組む。それ以外のことは考えていない」
岸田首相は9日朝、官邸で報道各社のインタビューに応じ、こう語った。その後、自民党の麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長ら幹部5人と党本部で会談し、「解散するなど、ひと言も言っていない」といい、経済対策に注力する考えを伝えた。
自民党ベテラン議員は「岸田首相は、常に解散のタイミングを模索していたが、自ら機会を見送り、四面楚歌(そか)になった。政権は『レームダック(死に体)化』してきた」とあきれた。
報道各社の世論調査で、岸田内閣は「危険水域」とされる支持率30%以下を6社が記録している。国民の「岸田離れ」は明白だ。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「自民党内で『岸田首相の顔≠ナは選挙を戦えない』との声が強まっている。こうした流れが『岸田降ろし』につながるのは確実だ。次期総裁に求められるのは『選挙に勝てる顔』だ」と強調する。
あくまで、岸田首相が次期総裁選出馬を見送るとして、「ポスト岸田」の顔ぶれ、構図はどうか。
鈴木氏「岩盤保守層の動向も重要」
鈴木氏は「まず、前回の総裁選で敗れた高市早苗経済安保相は『保守派の顔』として名乗りをあげる。河野太郎デジタル相も出るだろう。国民の知名度が高く、一部に待望論≠ェある石破茂元幹事長を加えた3氏が争う構図が予想される。勝敗のポイントは、選挙の強さに加え、岸田政権の官僚主導政治を、安倍晋三、菅義偉両政権が進めた政治主導に引き戻せるか。また、岸田政権で離れた岩盤保守層の動向も重要だ」という。
安倍イズム継承するのは誰だ
岸田政権は、岸田首相の岸田派と、麻生太郎党副総裁の麻生派、茂木敏充幹事長の茂木派が主流3派だ。これに対し、菅前首相のグループと、二階俊博元幹事長の二階派が反主流派。その中間が、安倍元首相の率いた最大派閥の安倍派とされる。
茂木氏や、岸田派の林芳正前外相、安倍派の萩生田光一政調会長と西村康稔経産相の動きも注目だ。
政治評論家の有馬晴海氏も「『ポスト岸田』の条件は『選挙で勝てるか』だ。自民党はガラリと雰囲気を変えなければ選挙は勝てない。上川陽子外相は安定感があり、仕事も優秀だ。『女性初の首相』なら、新味が出る。『自民党の救世主』として推す声がある。一方で、岸田政権を支えてきたのは、麻生、茂木両氏だ。党内の政治力学を踏まえれば年齢的にも、順番的にも茂木氏だろう」と語る。
ただ、日本は国内外で難局に直面している。旧来の政治力学で、この逆風を突破できるのか。識者が求める「ポスト岸田」の条件は何か。
国際政治に詳しい福井県立大学の島田洋一名誉教授は「国益を第一に『地球儀を俯瞰する外交』を確立した安倍氏の外交路線を取り戻さねばならない。安倍氏が育てた萩生田氏、高市氏に絞られてくる。覇権を強める中国への対処は急務だ。日本人拉致問題の解決に応じず、核・ミサイル開発を進める北朝鮮も危機的だ。ロシアも加えた三国は連携して日本への圧力を強めている。日米安保を強化するため、米国保守派との連携がカギとなる。安倍氏は、それを重視していた。次期首相は、普遍的価値観で一致する各国保守派とも足並みをそろえることが必要だ」と語った。
物価高や負担増にあえぐ国内経済対策の観点からはどうか。
経済学者で上武大学の田中秀臣教授は「主流派の茂木氏が現実的だが、茂木政権ではアベノミクス継承はさらに薄れ、財務省に近い経済政策が採用されかねない。『岸田政権の再来』のような政権になる。保守派では、西村氏は海外人脈が太く国際感覚にあふれ、資源外交、経済安全保障などで責任を果たせそうだ。高市氏は、安倍氏の精神を純粋に受け継ぎ、保守派の期待も高い。萩生田氏の経済政策も問題ないだろう」と分析した。
「ポスト岸田」の動きは本格化するのか。
前出の有馬氏は「衆院選の大敗北など、よほどの失態や、辞職でない限り、首相・総裁を強引に交代させるのは難しい。ただし、『政界の一寸先は闇』だ。岸田首相の周囲から公然と反旗を翻す雰囲気が出てきており、油断のならない情勢だ」と語った。
●赤字国債6.3兆円増発=補正予算、財政悪化一段と―10日閣議決定 11/10
政府は10日、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」の裏付けとなる2023年度補正予算案を閣議決定する。一般会計の歳出総額は13兆1992億円に上り、このうち7割近くに当たる8兆8750億円を新規国債(借金)の追加発行で賄う。歳入不足を穴埋めするための「赤字国債」が6兆3650億円含まれており、財政に対する信認を低下させる可能性もある。
政府は補正予算案を20日に臨時国会に提出し、月内の成立を目指す。
補正予算案の歳出総額のうち、経済対策に関わる経費は13兆1272億円。物価高に苦しむ家計支援策として、低所得の住民税非課税世帯に7万円を給付するための1兆592億円が含まれる。一方、所得税・住民税を1人当たり計4万円減税する総額3兆円台半ばの定額減税は、補正予算案には含まれていない。減税の詳細な設計は年末にかけて与党税制調査会などで調整する。
歳入には財源として、23年度の税収の上振れ分1710億円、税外収入の上振れ分7621億円をそれぞれ計上。同年度当初予算に新型コロナ対策やウクライナ情勢対応などで計上した計5兆円の予備費のうち、2.5兆円を減額して財源の一部に充てる。大部分は国債で補う計画だ。
国債発行の内訳は、幅広い用途に充当できる赤字国債6.3兆円のほか、インフラなど公共事業費に充てる「建設国債」が2兆5100億円。赤字国債と建設国債を合わせた23年度の新規国債発行総額は44兆4980億円となり、歳入全体に占める国債の割合は34.9%と、依然として借金頼みの状況が続く。
●金利を上げるわけにも、下げるわけにもいかず「苦しい立場」の植田総裁 11/10
ジャーナリストの佐々木俊尚が11月9日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。衆議院財務金融委員会での日銀・植田総裁の発言について解説した。
日銀・植田総裁、「物価見通しに誤りがあったことは認めざるを得ない」と発言
日本銀行の植田総裁は11月8日の衆議院財務金融委員会で、物価上昇率の見通しを繰り返し上方修正していることについて、「見通しに誤りがあったことは認めざるを得ない」と話した。一方、賃金と物価の好循環による物価の押し上げがまだ弱いという部分は「あまり大きく外していない」と強調。こうした見方に基づいて金融政策を行ってきたことに「大きな誤りはなかった」と語った。
飯田) 立憲民主党・階猛議員の質問に対する答弁です。
物価高の原因はウクライナ情勢からのエネルギー・食料の高騰と円安
佐々木) 植田総裁は、物価高の原因が2つあると説明していて、1つはウクライナ侵攻から始まるエネルギーや食料の高騰です。
飯田) ウクライナ情勢の影響。
佐々木) 輸入するものの値段が上がり、それを価格転嫁する、いわゆるコスト高によるコストプッシュインフレの影響です。もう1つは、「賃金を上げると物価も上がる」、「物価が上がると賃金も上がる」という2つの力があるのだけれど、まだ後者があまりうまくいっていない。前者に関しては、ウクライナ侵攻が落ち着つけばエネルギー・食料の値段も少し下がるので「収まっていくだろう」というのが、当初の見通しだったと思います。しかし、それがまったく下がっていない。
飯田) 物価が下がらない。
佐々木) おそらく最大の理由はウクライナ侵攻というよりも、円安が続いているからです。なぜ、こんなに円安が続くのかと言うと、アメリカの長期金利が5%くらいまで上がりっぱなしになっているからです。
ここまで円安が続くとは予想していなかった
佐々木) アメリカやヨーロッパはとても景気がよく、賃上げも進んでいます。その結果、金利を上げないとインフレが収まらない状況になっているので、金利を上げている。この状況が1年ぐらい続いているのです。そうすると、日本だけ金利が低いので、円がどんどん売られていく……ということで円安が続いています。おそらく日銀は、円安がここまで続くと予想していなかったのではないでしょうか。
飯田) 当初は「今年(2023年)の春先、夏前ぐらいにはアメリカが利下げに転じるのではないか」と言われていましたが、どんどんうしろに倒れてきている。
佐々木) 長期金利が5%ですからね。日本だと昭和の時代の金利です。いまは1%未満ですが、昔は銀行口座の金利が5%くらいでした。1億円ぐらい預けておけば、年間500万円ずつ入ってくるから、「宝くじで1億円当たれば一生食っていける」と言われていた時代もありました。アメリカはそのぐらいの金利になっているわけです。
飯田) 5%。
佐々木) 金利が高すぎてクレジットカードの支払いができなくなる人が増えていて、企業の倒産も相次いでいます。最近だと、米シェアオフィス大手「WeWork」が経営破綻しました。オフィス自体がコロナ禍で儲からなくなってきたところに加え、金利の支払いが大変なので破綻してしまった。
金利を上げるわけにも、下げるわけにも維持するわけにもいかず、苦しい立場の日銀
佐々木) かなり激しい状況になっています。金利を上げすぎて、アメリカ経済が一旦失速する可能性もあるわけです。それはそれで別のハレーションが起きてしまう。少なくとも現状の金利が続いている限り、特に日本では、日銀はこれ以上の利上げはしないでしょう。とりあえず長期金利の上限を1%までは認めるという状況であり、金利を上げることはない。金利を上げてしまうと、また日本経済が失速しかねないですから。
飯田) そうですよね。
佐々木) だからと言って、これを維持すると円安が続いてしまう。日銀としては金利を上げるわけにもいかず、下げるわけにもいかず、維持するわけにもいかない。非常に苦しい状況だと思います。
飯田) 政府の政策待ちという感じですが、その部分はどうですか?
佐々木) 賃上げがどうして進まないのかと言うと、当初の見通しとしては、物価が上がれば最初はコストプッシュインフレになるけれど、「上がっても仕方ない」という物価許容度が高まる。そうなれば、それに合わせて「賃上げもしようという話になるはずだ」というのが、当時の日銀の政策見通しだったと思います。しかし、なかなか賃上げが進まない。ユニクロが初任給を30万円にしたように、一部では上がっているのですが、なぜ賃上げが進まないのかをもう少し考えなくてはいけないですよね。
賃金を上げられる企業と上げられない企業で二極化している
飯田) 一方で植田総裁は、賃上げと物価上昇に関し、衆議院の財務金融委員会のなかで「物価と賃金の好循環が少しずつ起きている」という認識を示しました。
佐々木) 大企業を中心に賃金が上がっているところもありますが、建設や物流関係などはコストが強すぎて、価格転嫁してしまったら終わりなので、賃金を上げる余裕がないのです。コロナ禍にK字型回復と言われましたが、いまは賃金(の上昇)がK字になっており、上げられないところと上がるところで二極化しているのが1つの問題だと思います。
転職市場が流動化しない日本
佐々木) もう1つは転職の問題があります。日本はこれまで終身雇用、年功序列で、基本的に転職しない社会でした。「正社員の待遇を安定させる」という意味ではよかったけれど、一方で転職しなければ賃金が上がらないではないですか。日本人は真面目なので、安い給料でも文句を言わず、一生懸命働きます。だから、わざわざ「賃金を上げよう」というモチベーションが経営者にあるかと言うと、よほどいい人でなくては、そう思わないですよね。
飯田) 転職しなければそうなりますね。
佐々木) 例えば、いまは人手不足になりつつあり、中途採用で人を雇わなくてはいけない。「この給料だと、前の給料より下がるので行きません」となれば、賃金を上げざるを得なくなり、転職市場が活発になります。構造的に賃金が上がりやすくなるわけです。
転職希望者が増加 〜転職市場が流動化すれば、賃上げしやすくなる
佐々木) 日本はまだその部分が弱い。ただ、以前に比べれば転職は増えており、ある調査によると転職希望者がここ10年で2割増え、今年は1000万人超えが予想されるそうです。実際に転職する人も300万人以上いて、増えています。昔は「悪いことをして転職せざるを得なくなったから給料が下がる」というようなイメージが強かったのですが、いまは転職すると、約4割の人の年収がアップしているそうです。
飯田) そうなのですね。
佐々木) 年収を増やすために転職する人が増えています。欧米のように「転職を繰り返すことによってキャリアアップしていく」という方向に、日本社会も進みつつあるのです。しかし、全体がそうなっているわけではありません。転職が当たり前になって、転職市場が流動化すれば賃上げしやすくなり、日銀や政府の望む方向に進みやすくなると思いますが、まだ道半ばですね。
1回だけの減税であれば消費にはつながらない
飯田) いままでのデフレ、コストカット至上主義のような状況から一気に流動化してしまうと、底辺への賃下げ競争のようになってしまう部分があった。「いや、雇用流動化と言いましても」と……。
佐々木) 平成における30年の不況の間は、「正社員の身分を守らないと、みんな貧しくなるだけだから」と言われていたわけです。
飯田) 一方、正社員の待遇は維持されるけれど、入り口で門前払いされてしまった非正規労働者たちは、底辺の競争を強いられてしまった。
佐々木) しかし、令和に入ったこの5年ぐらいの間に、日本経済も見通しが明るくなってきています。実際、「投資の神様」と言われるウォーレン・バフェット氏は、日本の総合商社に積極的に投資している。日本株は割安感があるので、世界的に金融市場で注目されている部分もあるわけです。成長のポテンシャルが高いという見方が強くなり、株価も上がっています。この状況であれば、正社員でなくても「別の会社に行って賃上げを狙える」という期待感が高まる。つまり、いちばん大事なのはマインドだと思うのです。
飯田) マインド。
佐々木) 「正社員の身分にしがみつかなければ給料が下がる」と思うか、「転職すれば給料が上がる」と期待できるかどうかです。消費も同じです。岸田さんが2024年に「4万円減税する」と言っているけれど、今後も減税が続くと思えば、もっとお金を使おうかと考えます。しかし、「1回だけです。これ以上は減税しないし、消費減税もありません」と言われると、「将来どうなるかわからないからお金を貯めなければ」と考え、使わないわけです。
飯田) そうですよね。
佐々木) 「将来に対する期待感が持てるか」がいちばん大きいのではないでしょうか。昭和のころは「いまより豊かになっていく」とみんなが思い込んでいました。いまよりも金銭的には貧しかったと思います。でもその期待感があったから、みんな消費していたのです。
飯田) 期待感で消費することによって、経済が回っていくわけですね。
佐々木) しかし、みんなが守りに入ったデフレの30年は、「持っているお金を守らなくては」と思うので、誰もお金を使わず、ますます経済が冷え込むという悪循環でした。
岸田総理「税収増加分を国民に還元する」に対してなぜ、財務大臣が「税収増分は使用済み」と言うのか
佐々木) 岸田政権の問題はそこだと思います。期待感がなさすぎる。
飯田) 打ち出し方の問題でしょうか?
佐々木) 国内総生産(GDP)が増え、税収が過去最高になったことから、岸田総理が臨時国会の所信表明演説で「税収増加分を国民に還元します」と言いました。それなのに、そのあと鈴木財務大臣が「過去の税収増分は使用済みで還元する原資はない」と言っている。ああいうことを言うからマインドがまた冷え込むわけです。
飯田) 酷い梯子外しですよね。
佐々木) 税収が増えたのだから、みんな「これから還元してくれるのかな」と期待していたのに、なぜ財務大臣が「そんなものはない」とわざわざ言うのか。
飯田) 呼応するように税調会長も、「減税は1年ぽっきりです」と平気で言い放つ。
佐々木) マインドの問題を、岸田さんのみならず閣僚の人たち、あるいは自民党政権そのものがあまり理解していない感じがします。なぜあのようなことを言うのか。理解できていないのか、それとも財務省に何か言われているのか……。その辺りはよくわかりません。
飯田) ここで岸田さんが「いや、減税するのだ」と言ってくれれば、支持率も上がると思うのですが。
佐々木) 言ってくれればいいのですけれどね。 
●デフレ完全脱却、13兆1992億円=物価高に対応、賃上げ加速―政府 11/10
政府は10日午後、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」の裏付けとなる2023年度補正予算案を持ち回り閣議で決定した。一般会計総額は13兆1992億円。国民生活を圧迫する物価高への対応とともに企業の賃上げや国内投資の促進へ、補助金給付や基金上積みなど政策を総動員。コロナ禍から回復途上にある経済を下支えする。
積極的な支出で支持率低迷が続く政権の浮揚につなげる思惑も透けるが、借金頼みの財政は厳しさを増す。政府は20日に補正予算案を臨時国会に提出し、月内の成立を目指す。
歳出のうち経済対策費は13兆1272億円。分野別には(1)物価高への対応(2兆7363億円)(2)持続的賃上げや地方の成長(1兆3303億円)(3)半導体や宇宙開発など成長力強化・国内投資促進(3兆4375億円)(4)人口減少対策と社会変革推進(1兆3403億円)(5)国民の安全・安心確保(4兆2827億円)―を投じる。
歳入(財源)は予算額の7割近い8兆8750億円を新規国債(借金)発行で賄う。23年度の税収の上振れ分はわずか1710億円。同年度当初予算に新型コロナ対策やウクライナ情勢対応などで計上した計5兆円の予備費も2.5兆円を減額し財源の一部に充てる。
物価高対策では、低所得の住民税非課税世帯に7万円を給付するため1兆592億円を計上。24年4月末まで期限延長を決めた電気やガス、ガソリン代の負担軽減策にも7948億円を充てる。中堅・中小企業の賃上げ環境整備などが5991億円。経済安全保障上、重要な半導体関連支援策は特別会計や基金活用を含め2兆円規模となる。
補正予算と当初予算を合わせた23年度の歳出総額は歴代4位の127兆5804億円まで膨張。24年度当初予算には、物価高対策の目玉として所得税・住民税を1人当たり計4万円減税する総額3兆円台半ばの定額減税も加わる。鈴木俊一財務相は閣議決定後、記者会見で「減税をすればその分、国債の発行が必要になる」と語り、厳しい財政運営が続くとの見通しを示した。
●岸田首相は「国内だけでなくASEAN諸国からも見透かされている」 11/10
なかなか支持率が上向かない岸田首相。先週末の調査ではむしろ、さらに下がってしまった。自身も自負する「外交の岸田」で面目躍如と行きたいところなのだろうが、そのことを「見透かされている」と厳しい指摘をするのは、東アジア情勢に詳しい、飯田和郎・元RKB解説委員長だ。
「見透かされている」総合経済対策
先週から今週にかけての岸田首相を振り返ってみよう。11月2日の記者会見で、総合経済対策を発表した後外遊に出発し、フィリピン、マレーシアそれぞれで首脳会談に臨んだ。私はこの内政と外交。共通しているキーワードは「見透かされている」ではないか? と思う。
まず、外遊前の総合経済対策だが、その中身は国民一人4万円の定額減税、住民税の非課税世帯への7万円給付などで規模は17兆円だ。岸田首相が「国民に還元する」という根拠である税の自然増収は、財務省が以前に試算した税収見積もりからの上振れしたから、というものに過ぎない。
実態は、巨額の財政赤字を出していることこそ問題だ。財源の多くは国債の発行、すなわち国の債務(借金)に頼る。国債残高は1千兆円を超え、先進国で最悪の水準だ。金利も上がっており、国債の利払い費に影響が及ぶ。その場しのぎで子や孫の世代に、負担を背負わせて本当にいいのだろうか。
岸田首相には、防衛増税など、増税イメージがある。だから「総選挙や内閣支持率を意識して人気取りに走った。そして減税に踏み切ったのだろう」と言われる。そんな腹の中を、与党内でも「見透かしている」と指摘されている。
さらに、外遊で訪問した相手国(フィリピン、マレーシア)から、窮地の岸田政権は「見透かされている」。首相の視線の先にある中国からも「見透かされている」。私は、そういうふうに受け取っている。
「ASEANに向けて一歩踏み出した」という歴史的意義
今年は日本とASEANが交流を開始して50周年だ。その節目を記念して12月、東京にASEANの10か国首脳を招待して特別首脳会議を開く。岸田首相のフィリピン、マレーシア訪問も、その事前準備とされている。
上川外務大臣も別途、ASEAN加盟国のベトナム、タイなどを回って来た。ただ、岸田首相のフィリピン、マレーシア歴訪は、ASEAN特別首脳会議への準備とは違う意味合いが濃い。特にフィリピンだ。
岸田首相は、フィリピンに対し、軍事用の沿岸監視レーダーの供与を決めた。日本政府は今年4月、同志国(=同じ志を持つ国)の軍を支援する枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」を創設した。
これを初めて適用した相手がフィリピンであり、この枠組みで初めて供与するのが、この監視レーダーだ。約6億円という額は防衛装備品としてはびっくりする額ではないが、「ASEANに向けて一歩踏み出した」という歴史的意義を考えたい。
アメリカと連携をしつつ、覇権主義的な動きを強める中国への包囲網構築を図る――。そんな狙いに思える。「第一列島線」ということばを聞いたことがあるだろうか。中国が描く軍事防衛ラインのことで、東シナ海、南シナ海をぐるっと囲む形になっている。沖縄県の尖閣諸島もこの中に含んでいる。
中国はこの第一列島線の中にある島々を、東シナ海海域で日本と、南シナ海海域でフィリピンと争っている。そういう情勢の中で、日本とフィリピンが共に向き合う相手・中国への包囲網を形成しようとなる。
日本とフィリピンの関係は「準同盟国ランク」
日本は半世紀前のASEANとの交流スタートを含め、途上国への支援は非軍事部門が中心だった。だから、フィリピンへの偵察レーダー供与は、これまでの路線から大きく転換するものだ。また今回、自衛隊とフィリピン軍がスムーズに往来し合えるようにする協定(「円滑化協定」)の締結に向けた話し合いにも入ることが決まった。
日本とフィリピンの関係は、「準同盟国ランクに上がった」という指摘もある。死者が1万人を超えだパレスチナの混乱や泥沼のウクライナ紛争などで、国際ニュースはそちらへ目が行きがちだが、このレーダー供与も大ニュースだと思う。
日本はアメリカと同盟関係にある。一方のフィリピンもアメリカと同盟国の関係。そのアメリカも、この海域における中国の海洋進出「力による一方的な現状変更の試み」を強く警戒している。
「アメリカを頂点に、三角形をつくる。日本とフィリピンが準同盟として、アメリカの安保政策を下から支える」――。そんな構図が見えてくる。フィリピンは、南シナ海で中国と対峙することもあって、マルコス大統領がアメリカに接近。その延長線上に日本との協力も進めているように思える。
ASEANは岸田首相の窮地を見透かしている
ただし、懸念も生まれてくる。私が指摘したいのは、南シナ海における、これら国々の領有権争いに日本も巻き込まれる危険性だ。日本が一歩踏み出す、すなわち軍事的な関与を深めることによって。中国はそう見做すだろう。
ASEANの国々は、したたかだ。アメリカや日本と接近する一方で、中国は大切な貿易相手国、また自分の国へ投資をしてくれる相手国でもある。中国を敬遠して日本にだけ肩入れしない。ASEAN10か国もそれぞれ国情が違い、中国との距離も違う。共通しているのは、アメリカを選ぶのか、中国を選ぶのか、という二者択一を嫌うことだ。
さらには、日本の国内政治もよく観察している。岸田政権が弱体化して、自分たちASEANとの国々との外交で得点を稼ごうとしているのもわかっている。それが「ASEANは岸田首相の窮地を、見透かしている」と私が指摘している点だ。
フィリピンも防衛装備品だけでなく、最大の援助供与国であり、前のめりになっている日本を、うまく利用・活用しているようにも見える。
山ほど懸案事項がある日中で話し合う場を
ではいま、日本の外交で必要なことはなんだろうか? やはり、中国との対話をもっと進めてほしい。アメリカは中国と対峙しながら、このところ、対話が一気に進んでいる。米中間の高官レベル協議が活発化している。核を含む大量破壊兵器の問題、地球温暖化対策などなど多くの分野に及ぶ。
日本はどうだろうか? アメリカ・サンフランシスコでのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議の場で、岸田首相と習近平主席は個別に会談するのか、その会談は突っ込んだ話し合いになるのか、形だけのものなのか――。日中2国間でも山ほど懸案事項があるのに、しっかり話し合う場をつくってほしい。
仲のいい周辺国や相手の付き合いは大事だが、安保協力への急速な傾斜は中国を刺激し、地域の不安定化を招く危険性もある。パワーゲームに巻き込まれてはいけない。
●「異次元の少子化対策」医療保険上乗せ徴収案に怒りの声 11/10
「岸田ビジョン 分断から協調へ」の著書がある岸田文雄首相だが、岸田政権によって国民の分断がますます広がりつつある。政府は9日、少子化対策の財源となる「支援金制度」について議論する初めて会議を開き、負担能力に応じて医療保険料に上乗せして徴収する案を提示。支援金は妊娠・出産期から0〜2歳の支援策にまず充当するという。
加藤こども相は「新しい分かち合いの仕組み」と説明
政府案によると、子育て世帯は給付が拠出を大きく上回る一方、それ以外の人は負担が増える。加藤鮎子こども政策担当相は「この新しい分かち合いの仕組みである支援金制度をどのように伝えていくか」と述べたが、国民の納得を得るのは容易ではなさそうだ。
9日は「#子育て世帯以外」がトレンド入り。《つまり我が家みたいな子供がいない世代への『子無し増税』。子育てしてないんだから金払えよってことだよね。何の為に働いてるのだろう。負担ばかり》《国は独身世帯には厳しいですねー。全部しわ寄せがくるようにしている。日本国全体で子供のためにとか言いながらこのように負担を強いる》と怒りの声が上がった。
もっとも、子育て世帯の全てが今回の政府案を歓迎しているかといえば、それも違う。《子育て世帯は異次元ではなく、継続可能な対策を求めていると思います。個人的には、保育園・子ども園・幼稚園の給食費及び教材費の無償化、小中学校の給食費・教材費の無償化をお願いしたいです》と、唐突な医療保険料への上乗せ案に戸惑う声も目立った。
立憲民主党の小沢一郎衆院議員は9日、自身の事務所名義のX(旧ツイッター)を更新。政府の医療保険料への上乗せ案について、「予想通り、むしり取ったものをまたばら撒くだけ。異次元どころか低次元の少子化対策。逆に負担が増えて子どもが減る悪循環。無駄が増え、効果も薄い。総理はこれのどこが異次元か説明を」と投稿した。
●支持率急落!年内解散見送り!「ポスト岸田」はこれだ! 11/10
岸田政権支持率急落!年内解散見送り!二階派参謀、政局のプロ武田良太元総務大臣がズバリ斬ります。
今回の「年内解散見送り」情報を漏らしたのが「岸田おろし」なら、「言語道断!!」と熱く語り、「ポスト岸田」をめぐっては、支持率低下の中なら総裁選は「チャレンジャーが有利だ」と鋭く読み解きます。
緊迫の事態の中、熱い語りを是非ご覧ください。
亀井静香氏の元秘書を務め…「小選挙区が政治家の本質を変えた」
――ご覧の映像は2005年の衆院選当時のものです。武田さんは、亀井先生の秘書をなさっていたわけですけれども。何か印象に残る思い出はございますか。
武田良太 元総務大臣: (2005年衆院総選挙は)郵政選挙ですね。亀井さんが国民新党を立ち上げられて、地元の庄原市でやった、熱狂した選挙でしたね。
――もちろん勝ったわけですよね?
武田良太 元総務大臣: ホリエモン(堀江 貴文さん)ですよ、相手が。
――あのときですか。何とも迫力ありますけど昔の自民党にはこういう迫力のある政治家がゴロゴロいたんですね。最近はどうですか?二階元幹事長はそういう伝統を残す迫力のある政治家ですが。
武田良太 元総務大臣: 小選挙区制度という選挙制度が、政治家それぞれの価値観と体質を変えたっていうのは、これはもう否めないところだと思います。やはり同じ政党の者同士が同じ選挙区で戦う。本当の権力のぶつかり合い、こういったものがなくなった時代の政治家の価値観と政治手法というのは、過去のそれと比べて全然違いがありますね。
「減税すれば国民の支持を得られるという簡単なものではない」
――内閣支持率ですが、直近11月4日5日のTBS系列JNNの世論調査で支持率が10.5ポイントも落ちて29.1%。政権奪還以来最低の数字。不支持も7割近くいるわけですね。この急落を武田さんはどうご覧になりますか。
武田良太 元総務大臣: よく支持率を見て一喜一憂するなとは言うんですけども、やはりこの原因というものはちょっと真剣に考えていかなくちゃならんと私も思っています。スポットで見たときの原因究明と、流れで見たときの原因究明とではまた違ってくると思うんですけども、やはり経済政策を発表した後の下落ということに関しては、政策面でももうちょっと考え直していかなくちゃならない部分もあるんではないかなと思いますね。
減税というのは過去の橋本内閣のときも経験しましたけども、減税すれば国民の支持を得られるという簡単なものではないと思いますし、やはり今回の支持率下落に関しては、それぞれの国会議員が地元に帰って、有権者の声に耳を澄ましてね、原因を究明するってことが一番、私は大事だと思いますね。
自民党が責任を果たしていない状況での『岸田おろし』は言語道断
――11月9日の朝刊では、「年内解散見送り」の記事が一紙だけじゃなくて、二紙に出てるんですよね、朝日と読売と。しかも一面の頭ですよね。普通だったらやっぱり相当確度がなければね、ここには持ってこないであろうと。つまり、総理に近い人が、これを漏らしたということですよね?ここが最大の残されたチャンスだったはずが、こういう形で潰れたと。これはどういうふうにご覧になります?
武田良太 元総務大臣: いろんな思惑が絡んでくるのが政局ですからね。片方から見てそれを断定するということは、これは非常に危険なことになると思うんですけれども、やはりこれはメディアを通じて国会議員ないしは、国民の広く多くの方々に「こういったことを伝えた方がいいんではないか」と思った人の思惑だったと思うんですけども。
必ずしも総理自身がこれを伝えたかったかというところの確証はつかめないわけだから、今私がどうこう言うことはないんですけど。ただ先ほど言いましたように、国会日程が非常にタイト、そして重要な政策案件も山積みになっているという中で、やはり「審議に支障を与えるような状況というものは作っちゃならん」という考えが働いたんじゃないかなというふうに、私は一方で思いますね。
――マイナス面の方が大きいわけで、これをもって『岸田おろし』じゃないかと指摘する人もいるわけですよ。
武田良太 元総務大臣: 今まだ十分なる経済対策を果たしてない、国民に対して自民党が責任を十分に果たしてない状況でね『岸田おろし』なんてことは、これは言語道断だと私は思いますね。
――もしそんなことをやる人がいたら?
武田良太 元総務大臣: ちょっと考えなきゃ駄目ですね。
総裁選は「国民的な注目集まる催し」 党の力をアピールせよ
――そして(来年9月の)総裁選に関して岸田総理自身、この間の内閣改造では再選目指して各派バランスを取った起用という形にしているわけで。(総裁選を)頭の真ん中に置いて岸田総理は動いているということですけれども、この総裁選はどういうような意味合いを持つと思われますか?
武田良太 元総務大臣: それについても、そこまでの政治状況によって図式は変わると思いますね。ただ20人の推薦人を集めれば出馬できるわけですから、毎回、自民党の総裁選というのは非常に国民的な注目も集まる一つの催しになってるわけだから、やはり自民党の国会議員として「我こそは」と思う人が、この場を借りて自民党の力というものをアピールするというのは重要なことだと思いますよね。
――地方票を含めてフルな形でやるべきか?ややもすると緊急の場合、両院議員総会とかいう話にもなりますけど。
武田良太 元総務大臣: なかなか今の時代よっぽどのことがない限りね、国民が緊急事態というふうなことをしっかり認めてくださる状況でないと、そのことは使えないと思うんですよね。今から来年、年が明けて、各地方選挙とかもありますし、またいろいろな評価というかね、政権に対する、それも変わってくると思うんでね。柔軟に対応していかなくちゃいかんと思いますね。
支持率急落で『ポスト岸田』は「チャレンジャーにアドバンテージ」
――支持率急落の中で、注目されているのが「ポスト岸田」。支持率上位を見ていくと共通するのは「数の背景を持ってない方」なんですよね。この顔ぶれをどうご覧になりますか?
武田良太 元総務大臣: この支持率っていうのもね、総裁選挙直前になったり、入ったときのラインナップでまた変わってきますので。これは慎重に見極めていかないといかんと思いますね。ただやはり大統領制じゃないんで、議院内閣制なんで、当然、こうした国民の支持率というものも重要な参考にはしていきながらも、やはり党内の支持というものをやはりいかに集めるかということが一番のポイントになってきますので。
――ここに至るまで解散がなければ、この総裁選というのは前回の総裁選と意味合いが変わってくるわけであって、それをどういうふうにご覧になっていますか?
武田良太 元総務大臣: 前回の総裁選挙は、やはり菅さんが直前に辞意を表明されたということで、我々もちょっとポカンとしたとこあったんですよね。積極的に次の総裁選挙に総力を挙げて臨むモチベーションっていうかね、マインドになかなかなれないっていうか。これは私も閣僚をしてましたし、二階さんも幹事長としてね、中心で支えておられましたので、その総理が辞意を表明されたということを受けた直後の総裁選挙にはね、ちょっと空虚感というのがあったというのは否めないんですけども。
けれども、政権が急に弱く支持率が下がったりしたときの後の総裁選挙っていうことは、新たなる候補者にアドバンテージが出やすいことってあると思いますよね。しかも前回の選挙は、もう直後に任期満了を迎えてましたんでね。もう選挙がもうすぐだというところで、ここでも選択する意識っていうか、変わってくると思うので。今回は2年間残ってるというところで、前回とその政治状況が日程的なものが違いますので一概には言えませんけども、今からの状況を見極めていかなくちゃならんと思います。
――つまりチャレンジャーの方に、有利になる。
武田良太 元総務大臣: そうですね、やっぱり支持率が低い状況での総裁選挙になれば、チャレンジャーの方にアドバンテージが働きやすい傾向になるんじゃないかなと思いますよね。
『評価しない』が6割…「今の状況を突破する経済政策になっていない」
――今回の経済対策は、残念なことに「評価しない」が6割。まず理由に「今後増税が予定されている」というのは、実際そうですよね。防衛増税と異次元の少子化対策のために社会保険料を上げるとされていて、その中での減税、これが理解してもらえてないと。これをどうご覧になりますか?
武田良太 元総務大臣: 私の耳に届くのは、やはりこの今の状況を突破する経済政策にはなっていないというか、所得税減税されるのは来年の6月という日程が決まってますし、そういったところが国民の今の生活とはちょっと距離があったんじゃないかなと。「今後増税が予定されている」ということ。今一番大事なことは、もうちょっと日本の社会保障の中でも老後の安心を作り上げていくことが大事じゃないかと思うんですよ。
老後はしっかりと安心したものになるんであるならば、やはり貯蓄から消費に回す額も増えるであろうし、その分やっぱり可処分所得が選択して増えていくと思うんですよね。老後に不安を感じていく限りにおいては、やはり自分の身は、自分の老後は守らなきゃいけないということで、やはりなかなか経済消費には結びついていかない。ですからそのためには、ただどうやって社会保障費を維持していくかとなれば、これは性別にも所得にも職業にも住む地域によっても変わりがない共通の問題ですので、こういったことは広くお互いに税で負担していこうと。それは自分たちの将来に対する貯蓄じゃないかという形をしっかり明確に持っていくことがね、私は何よりも今から経済対策になってくると思うんですよね。
岸田総理は「思い切ったカラーやビジョンを示すことが大事」
――武田さんに聞いておきたいのは、この解散の使い方ですよね、ギリギリで判断するとかで(岸田総理)自ら風をバーっと上げて結局それを消す。要はその解散っていうのを求心力の道具にしてるんじゃないかっていう見方が出ちゃう。それはどうご覧になりますか?
武田良太 元総務大臣: そう見られるっていうのは非常に残念な、我々自民党としては残念なことになるんですけども、とにかく明確なるビジョンと旗をきちんとあげることが大事だと思いますよ。こういった岸田内閣が上げる政策によって、あなたの生活はどう変わるんだ、日本の社会はどう変わるんだっていうところをねやっぱりやっていかんと、このまま支持率って上がらないんじゃないかなっていう予感はしますね。岸田総理も思い切ったカラーをね、今から少子化で高齢化社会を迎えて、全ての構造、社会構造変わっていくわけですから、思い切った新たなる次の時代のビジョンをね、示すことが大事だと思います。
●苦難の3党首、衆院選にらみ対峙 自民・岸田、立民・泉、維新・馬場各氏 11/10
岸田文雄首相は、模索していた年内衆院解散の断念に追い込まれた。一方、立憲民主党の泉健太代表は次期衆院選に向けた発言から、野党第1党の党首としての資質が党内で問われ、馬場伸幸代表率いる日本維新の会も、所属議員の相次ぐ不祥事などから、勢いに陰りが見える。自民、立民、維新の与野党3党首は衆院選をにらみ、苦難を抱えながら対峙している。
   減税不評、封じられた解散権―首相
読売、朝日の両紙が9日付朝刊トップで、「年内解散、見送り」と報じると、首相は同日午前、首相官邸で記者団に「まずは経済対策。先送りできない課題に一意専心取り組む以外のことは考えていない」と述べ、報道内容を事実上認めた。
首相は9月に内閣改造を断行し、過去最多と並ぶ女性5人を閣僚に起用して刷新感を演出。10月には世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令を東京地裁に請求するなど、衆院解散の環境整備に努めた。しかし、報道各社の世論調査で、内閣支持率は上向かなかった。
こうした状況を踏まえ、首相は税収増の国民への「還元」を唐突に表明。物価高対策として、党内の慎重論を押し切り、1人4万円の所得・住民税減税を打ち出したが、逆に多くの有権者に「選挙目当て」などと不興を買い、支持率は軒並み、発足以来の最低を更新した。
首相は来年9月の党総裁選で再選を果たし、長期政権に道を開くことを目指している。それまでに、衆院選で勝利し、無風で総裁選を乗り切ることを基本としつつ、解散せずに総裁選を迎えても、党内各派の支持で再選を果たす「二つの再選戦略」を描いているとされる。首相が9月の内閣改造で、各派に配慮し、11人を初入閣させたのも、解散せずに総裁選に臨む展開も意識してのことだ。
確かに、先に閣議決定した総合経済対策を財源面で裏付ける2023年度補正予算案の成立が、早くても今月下旬となることや、年末の24年度予算編成を控え、外交日程が詰まっていることなどから、年内の解散が日程的に極めて厳しかった面はある。
とはいえ、自身の判断で所得減税を打ち出した結果、内閣支持率の一層の低下を招いたことで、党内で首相への不満が広がり、求心力を低下させた。本来、首相の解散権は、党内を引き締め、野党の抵抗を排除して国会を乗り切る上で、最も強力なカード。それを封印してでも、党内の不満に配慮し、足元を固めざるを得なかったのが実情だ。
衆院の自民党の勢力は263議席で、過半数(233)を大きく上回っている。そして、この逆風下で解散すれば、「現有議席の維持はとても期待できず、どの程度議席が減るか読めない」。多くの自民党議員の見方は、一致する。支持率が低迷し続ける限り、解散は事実上、切れないカードでもある。
二つの再選戦略、破綻が現実味
時事通信社の10月調査(6〜9日実施)で、岸田内閣の支持率は26.3%、不支持率は46.3%。報道各社の調査は、支持が30%前後で、不支持が支持の2倍近い点で共通だ。首相は年明け以降も、解散のタイミングを探ると見られ、想定される時期は(1)24年度予算案成立後の来年3月末から4月初め(2)通常国会会期末の来年6月―の二つ。
しかし、(1)のケースは、通常国会に新たに提出する法案や継続審査の法案が廃案となる(2)は、東京都知事選と重なることで関心が高まり、首都圏を中心に投票率が上昇。無党派層の支持が低い自民党に不利に働くことが想定される。いずれのケースも、解散するには大きな障害がある。
そもそも、首相がどのタイミングで解散するにしても、支持率が一定程度回復していることが大前提。しかし、党内では、来年夏までの政治日程を見る限り、「支持率の回復につながりそうな材料がない」(中堅)との声が多い。
支持率が低迷した状況で、首相が解散を打とうとする可能性は否定できないが、党内の激しい抵抗に遭うのは必至。解散できずに退陣という展開もあり得よう。実際、菅義偉前首相は再選を目指し、総裁選直前の解散を模索したが、党内の抵抗で封じられ、不出馬に追い込まれている。
首相は、物価高が落ち着き、春闘で大幅な賃上げが実現することで、有権者の政権への評価が上向くことに期待し(1)を当面は狙うとみられる。これを逃せば、来年6月に減税が実施され、痛税感が和らぐことを前提に、(2)に期待をかけるだろう。
一方、支持率が回復せず、解散もできないまま総裁選となれば、1年超以内にある衆院選(衆院議員の任期満了は25年10月末)や同年夏の参院選の「顔選び」の場となる。首相が各派の支持を取り付けても、党内で「岸田首相では選挙を戦えない」との声が広がれば、派閥の引き締めは利きそうにない。
さらに、国会議員票と比重が同じ党員投票で、首相の対抗馬に多くの票が集まることも考えられる。首相の再選は全く見通せないのが実情。二つの再選戦略の破綻が現実味を帯び始めたと言えるゆえんだ。首相に批判的な議員からは「これ以上支持率が下がったら、そもそも総裁選まで政権が維持できるかも分からない」との声も漏れる。首相には、苦難の政権運営が続くことになるだろう。
「5年で政権交代」―立民・泉代表
講演する立憲民主党の泉健太代表=4日、東京都千代田区
「次の総選挙で基盤を築いて、5年で政権交代を目指す」。立民の泉代表は4日、都内の法政大学での講演で、次々回の衆院選で政権交代を目指す考えを明らかにした。その理由として、前回衆院選で政権奪取への基盤となる150議席を取れておらず、党の再生には「手順」が必要と指摘した。
これに対し、小沢一郎氏は7日、自身を中心とするグループ「一清会」の会合後、記者団に「野党第1党が『次の総選挙で政権を目指さない』と言えば、ますます支持者は離れる」と批判。政権交代が常に頭にないのなら「(政治家を)辞めた方がいい」と断じた。
岡田克也幹事長は同日の記者会見で「1回の選挙で政権交代を実現するのは難しい。150議席が現実的で分かりやすい」と、泉氏を擁護した。
確かに、立民の党勢や小選挙区での候補者擁立状況を考慮すれば、次の衆院選での政権交代は非現実的。そうであっても、それを、心の中にとどめておくのと、代表として口にするのとでは全く違う。
たとえば、ボクシングのタイトルマッチで、挑戦者が試合前に「チャンピオンにはパンチ力、テクニックともに劣る。今回は何とか善戦し、次にタイトル奪取を目指す」と言ったら、観客は興ざめするに違いない。泉代表の発言は、軽率のそしりを免れないだろう。
泉代表は自身のX(旧ツイッター)で、次回衆院選で政権交代を目指す考えについて「理想論はまちがいなくそうだ」としつつ、「候補者がいて、一人ひとりが勝てるような状況も作らなくてはいけない」と、自身への批判に反論した。
   低下する求心力、厳しい150議席
立民は昨年7月の参院選で、6議席減の敗北を喫し、今年4月の衆参5補選でも、支援した無所属候補を含め、擁立した4選挙区で全敗した。しかし、泉代表は続投し、5月に、次期衆院選で150議席を得られなければ代表辞任を表明し、退路を断った。
当時、立民の有力議員は「続投を決断したからには、代表としての覚悟が問われる。次の衆院選で野党第1党の維持ではなく、政権交代を目指すくらいの気概がないとだめだ。分かっていると思うが…」と周囲に漏らしていた。泉代表の発言は、沁み付いた野党体質の表れに思え、有力議員の不安が的中した形だ。
「5年で政権交代」発言により、泉氏の代表としての資質が問われ、求心力がさらに低下したのは間違いない。立民は首相が出席する衆参予算委員会での補正予算案の審議で、所得減税を含めた経済対策や財源が明確でない少子化対策、副大臣・政務官の相次ぐ不祥事、会場建設費が当初見積もりの2倍近くにまで増えた大阪・関西万博の問題などで、政権を追及する方針だ。
論戦を通じて、政権に打撃を与えることができても、低迷する党の支持率が上向くとは限らない。各社の調査で、立民の支持率は、維新を下回ったままだ。
また、小選挙区の候補者選定も遅れ気味で、約160人にとどまっている。本来なら、不人気の岸田首相を相手に、衆院選を戦った方が有利。しかし、現状のまま解散に追い込めたとしても、自身の進退がかかる150議席の確保は容易ではないだろう。もし、議席数で維新に負け、野党第2党に転落すれば、党の存続すら見通せなくなる。
どのタイミングで解散に追い込むのが、党や自身にとって最も有利か? 内憂外患の苦しい状況に置かれた泉代表は、衆院選を意識しながら引き続き、首相と対決する。
相次ぐ不祥事、勢いに陰り―維新
4月の統一地方選で、地方議員数を1.7倍に増やし、衆院和歌山1区補選で、公認候補が勝利するなど、躍進した維新。馬場代表は次期衆院選で野党第1党になり、10年以内での政権獲得を目標に掲げる。大阪府以外の小選挙区でも議席を得て、大阪・関西の党から、「全国政党」への脱皮が課題だ。また、野党第1党を目指す手前、「立民以上の候補者を小選挙区に立てる」(幹部)方針だ。既に、約150人の候補者を決めた。
一方で、統一地方選以降、所属議員の不祥事が相次ぎ、勢いに陰りも見え始めた。5月に大阪府議団代表の大阪市議へのセクハラが判明し、除名。9月には藤田文武幹事長が、寄付60万円を政治資金収支報告書に記載しておらず、陳謝。池下卓衆院議員が兼職届を出さずに、市議2人を公設秘書に採用していたことも明らかになった。
このほかにも不祥事が幾つかあり、党のイメージを低下させ、勢いに水を差しつつあるようだ。時事通信社の世論調査で、統一地方選直後の5月に5.9%あった同党の支持率は、10月に3.9%まで下落した。立民を上回ってはいるものの、躍進した4月当時ほどの勢いがないことがうかがわれる。
こうした中、維新の人気に、さらに影響を与えそうなのが、万博の建設費増の問題だ。特に、木造建築物「大屋根(リング)」に350億円が費やされることに、ネットなどで批判が出始めている。
万博は、松井一郎大阪府知事、橋下徹大阪市長時代に招致した。国の事業とはいえ、維新を象徴するビッグイベントで、建設費の増大は、党の看板である「身を切る改革」に逆行しているように見える。「大屋根」は、万博終了後に取り壊されることになっており、効率性も問題視されている。
維新共同代表の吉村洋文大阪府知事は9日の記者会見で、「大屋根」について「参加する150カ国の価値観や多様性が一つの輪になってつながるという、万博の理念に根差したものだ」と述べ、建設の妥当性を強調した。「大屋根」を含めて、建設費増への批判が高まれば、維新には痛手となるだろう。
「当初計画にはなかった。リングだけで350億円かかるようになった」。立民の杉尾秀哉氏は先月31日の参院予算委員会で、建設の見直しを求めた。同党がこの問題を取り上げるのは、岸田政権と維新の両方にダメージを与える狙いもあるだろう。
首相が年内解散を断念したことについて、馬場代表は9日の記者会見で「時間がたつほど、(候補者の)擁立が進む」と述べ、歓迎した。とはいえ、基盤がない地域で有能な候補者を発掘するのが課題だ。
万博の問題で立民などの攻勢を受けつつ、どう勢いを維持し、衆院選を迎えるか? 「第三極」維新の馬場代表は不安を抱えつつ、岸田首相や立民の泉代表との対決が続く。
解散、来年秋が本命?
岸田首相の総裁任期が切れる来年9月は、衆院議員の任期満了の1年超前。総裁選は、政権政党による政策論争の場となり、世間の注目を集めるのは確実だ。仮に岸田首相が解散できぬまま出馬し、再選を果たせば、いわゆる「追い込まれ解散」を避けるためにも、直後の解散が最も有力な選択肢。
新総裁の誕生の場合は、これまでの例から「ご祝儀相場」が期待でき、岸田内閣より高い支持率で新政権が発足することが予想される。そして、直後に解散しなければ、1年の間に、政権が失速する展開があるかもしれない。菅前首相が「実績作り」を優先し、就任直後の解散を見送った後、コロナ禍などで有権者の支持を急速に失い、総裁選不出馬に追い込まれたのが好例だ、
「岸田首相が再選されるかどうかに関係なく、総裁選で盛り上げた後、解散するのが自民党にとってベスト」。ある閣僚経験者は、こう指摘する。年明け以降も岸田内閣の支持率が低迷し続ければ、「秋の解散が最有力」との見方が、党内で広がるだろう。
●首相、改憲で自衛隊明記に意欲 「違憲論争に終止符を打つ」 11/10
岸田文雄首相は10日、国会内で開かれた憲法改正に関する学生イベントに出席し、憲法9条への自衛隊明記に意欲を示した。「国民の命や暮らしを守るために必要不可欠な自衛隊を明確に位置付けることは、違憲論争に終止符を打ち、国の姿勢を示すために大切な課題だ」と強調した。
9条への自衛隊明記は安倍晋三元首相が議論を主導した経緯がある。内閣支持率が低迷する中、保守層の関心が高い改憲に取り組む姿勢をアピールした形だ。
首相はイベントで「世界が大きく変化する中、憲法が今の時代に合っているかどうか議論し続けていく姿勢は大事だ」と指摘した。
 11/11

 

●政務三役の不祥事 これが「適材適所」なのか 11/11
岸田文雄首相が言う「適材適所」とは一体何なのか。実態がかけ離れ過ぎている。
9月に発足した第2次岸田再改造内閣で、政務三役の不祥事が止まらない。先月下旬、女性問題で山田太郎文部科学政務官が辞任した5日後に公選法違反事件に関与したとして柿沢未途法務副大臣が辞任した。さらに今週になって神田憲次財務副大臣の税金滞納問題が発覚している。いずれも自民党に所属する。
法秩序の維持を担う法務省の副大臣が選挙の不正に絡んだ事実は深刻だ。柿沢氏は地盤とする東京都江東区で4月にあった区長選で、木村弥生区長への投票を呼びかける有料のインターネット広告を掲載するよう陣営に提案した。選挙期間中にユーチューブで約38万回再生されている。
公選法は選挙運動で候補者名を挙げ、有料でのネット広告を出すことを禁じている。東京地検特捜部が公選法違反の疑いで強制捜査に踏み切り、木村氏の辞職表明にまで発展した。主導した柿沢氏は、違法性の認識がなかったという。民主主義の根幹に関わる選挙のルールを知らなかったのなら法務副大臣の適任者とは到底言えない。議員としての適性さえ疑われよう。
週刊文春で滞納を報じられた神田氏は、自身が代表取締役の会社が保有する土地・建物の固定資産税を滞納して4回にわたり差し押さえを受けた事実を認めた。税理士の資格を持ちながら税理士に義務付けられた研修も受講していなかった。これで所得税減税や防衛増税といった重要政策に携わる財務省の副大臣が務まるのか甚だ疑問である。
不祥事の連鎖は、昨秋の臨時国会以降に4人の閣僚が相次いで交代した「辞任ドミノ」と状況が似ている。内閣改造から2カ月もたたずに足元がぐらついていると言えよう。それでも、首相から危機感は伝わってこない。
柿沢氏が辞任した当日の参院予算委員会で、首相は「必要に応じて政治家としての説明責任を果たすべきだ」と人ごとのように答弁した。その柿沢氏は野党の参院予算委への出席要求に応じず、記者団の質問にも答えていない。
事態の重大さを考えれば、任命権者の首相が本人に説明させることもできるはずだ。自身の任命責任を問われるたびに「重く受け止める」と決まり文句を繰り返しても国民には響くまい。
政務三役の起用を巡っては、スキャンダルの有無を確認する「身体検査」が十分に機能していないと自民党内にも指摘がある。先の内閣改造では首相が来秋の自民党総裁選での再選を重視して派閥のバランスや意向に配慮したとされる。こうした内向きな姿勢が不信を招く事態の遠因になった面は否めない。
直近の共同通信の世論調査では内閣支持率が初めて30%を割り込み「危険水域」に入った。首相は国民の厳しい視線を強く自覚すべきだ。
●年内の衆院解散断念 11/11
岸田文雄首相が、年内の衆院解散・総選挙を断念する意向を固めた。国会は、物価高騰を受けた経済対策を裏付ける2023年度補正予算案など十分な審議が求められる課題を抱えている。衆院の解散で国政に空白期間をつくる余裕はない。
首相の判断は妥当だが、内閣支持率が低迷する中、政権の座を揺るがしかねない衆院選の断行は得策でないとの考えがあったことは想像に難くない。政権延命を目的に解散時期を探るような姿勢は「岸田政治」への不信感を増幅するだけだ。
6月の通常国会最終盤の会見で、衆院解散の可能性について首相は「会期末の情勢をよく見極めたい」と表明。解散権行使を示唆したと受け取られることを承知した上での発言で、野党の抵抗を抑え最重要視した防衛財源確保法の会期内成立に持ち込んだ。このときも内閣支持率がマイナンバーを巡るトラブル拡大で頭打ちになり、衆院選には不安を感じていたはずだ。
今の臨時国会では、補正予算案の取り扱いが焦点だった。補正を提出せず経済対策だけまとめて国会冒頭、提出しても成立前―の衆院解散があり得るとの観測が与野党にあったからだ。首相が9月末に補正提出の意向を示し、10月に入ってから今国会で成立を目指すと明言したことで早期解散論は沈静化した。
さらに年明け以降の解散になったのは、首相が補正成立とともに所得税と住民税減税に関わる税制改正論議を優先させる必要性を感じたためであろう。13兆円超の補正予算案の中身には異論があるが、経済や国際情勢、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を巡り論戦を交わす時間が確保されたのは評価していい。
しかし、何より首相の判断に影響したのは、内閣支持率の下落ではなかったか。共同通信の直近の世論調査で内閣支持率は28・3%と、12年の自民党の政権復帰以降で最低を記録した。
政府は首相の主導によって課税世帯で1人当たり4万円の減税、非課税世帯で7万円の給付を打ち出した。にもかかわらず世論調査では「評価しない」との回答が60%を超え、内閣支持率に直結したとみられる。
これでは来年秋の自民党総裁選での再選を狙い、衆院選に打って出るわけにはいかないだろう。そうした思惑も国民に見透かされていると、首相は自戒しなくてはならない。
衆院の解散は、首相の「専権事項」とされる。だが、選挙を経た議員の身分を一斉に奪う解散権の行使は慎重であるべきだ。岸田首相は「保身」を図るより、国民の疑問に丁寧に答え、政治への信頼を回復していく必要がある。
●鬼の岸田首相はよまやの年収30万超アップに「返せばいいんだろ!」 11/11
物価高で国民が厳しい生活を強いられている中、「経済、経済、経済」と認識を改めて減税方針を打ち出した岸田文雄首相。総合経済対策の1人あたり4万円の減税や低所得者世帯への10万円支援は生活を支える上で「大きな額」と強調する。ただ、食料品を中心に生活必需品の価格が上昇を続ける今、「月に3333円」のレベルでは負担軽減効果は限定的との見方が広がる。
その一方で、首相は自らの給与を「月額6000円」、閣僚らは「月額4000円」をアップさせる法案を臨時国会に提出しており、国民感覚とのズレは一向に埋まらないままだ。
経済アナリストの佐藤健太氏は「物価高で国民が苦しんでいる中、岸田首相はちゃっかり自分の給料を年間30万円超もアップさせた。しかし一方で、国民の減税額は4万円と微々たるものだ。やはり首相は自分のことしか考えていないのではないか」とぶった斬るーー。
岸田首相はスーパーを視察し、持ち前の「聞く力」を披露したつもりが…国民とのズレは広がっている
「首相になる前は息子と過ごしていた。男所帯で鍋物をつくるとき、肉や野菜をスーパーによく買いに行った。比較しやすいので野菜や肉を中心に見たが、たしかに高くなっている」。岸田首相は10月16日、東京・江東区のスーパーマーケットを視察し、従業員から価格が高騰している現場の状況を聞いて回った。
ネット上で「増税メガネ」と評されていることを気にしているという首相は、自らが特長にあげる「聞く力」を発揮したつもりなのだろう。だが、自身が語る通り「首相になる前」と言えば2021年10月以前であり、物価上昇が止まらない首相就任後のことは分からないらしい。激務やセキュリティ上の問題などで「現場」を知る機会が減ったとはいえ、その感覚のズレが政策上にも現れているように見える。
岸田首相が信頼する自民党の麻生太郎副総裁は首相在任中の2008年10月、国会でカップ麺の価格を問われた際、「最初に出た時、えらく安かったと思いますが、今は400円くらいします?」と答弁して失笑されたことがある。首相就任後の岸田氏が麻生氏と似たような感覚を持っているのか否かは知らないが、物価上昇局面における増税プラン打ち出しなどを見ていると国民とのズレは日増しに広がっているのではないか。
あれだけ増税推しだった岸田首相が、なぜいま減税に踏み切ったのか
首相は昨年末、防衛費大幅増に伴う増税プランを決定した。財源確保のために法人税、所得税、タバコ税を増税するというものだ。当時、岸田氏が強調したのは防衛力を強化するための財源が足りず、やむなく増税に踏み込むというものであったはずだ。だが、あれから1年も経たずに今度は「税収増を国民に還元する」と言い出した。自らが決めた防衛増税の実施時期は先送りしつつ、「異次元」とまでうたった少子化対策の財源確保策が見つからない中でのことだ。
首相は10月30日の衆院予算委員会で「減税は経済政策としてデフレからの脱却を完成させるためにどうしても必要だ。防衛力の強化も経済や賃金、物価などに最大限配慮した上で実施の時期を決めるもので、両者は矛盾するものではない」と述べている。だが、歳出削減などを徹底しても不足するから増税するとしていたにもかかわらず、内閣支持率が下落すると国民の歓心を買うために減税するというのでは政権の信頼性が問われる。少なくとも税収増になる見通しを誤っていたか、あるいは把握しながら国民にさらなる負担を強いるつもりだったということになるのではないか。
国民が物価高と上がらない賃金で苦しむ中、岸田首相は30万円超、閣僚は25万円超も給与アップ
国民感覚とのズレは臨時国会に提出された法案からも見て取れる。突如として「賃上げ」を連呼し始めた時から不思議な感じを持っていたが、実は今国会に首相を含めた閣僚など特別職国家公務員の給与を上げる法案が提出されているのだ。この法案は人事院勧告に基づく一般職の国家公務員の給与引き上げに合わせたものだが、実施されれば首相は月額6000円アップの201万6000円、閣僚は147万円(月額4000円増)、副大臣は141万円(同)、大臣政務官は120万3000円(同)になる。ボーナスも0.1カ月分増額され、首相の年収は30万円超、閣僚は25万円超もアップすることになる。
国税庁の「民間給与実態統計調査」(2022年)によれば、我が国の給与所得者の平均給与は前年比11万9000円増の458万円だ。ただ、厚生労働省が10月6日発表した8月の毎月勤労統計調査(速報)を見れば、物価を考慮した実質賃金は前年同月比2.5%減で17カ月連続のマイナスとなっている。首相や閣僚、国会議員には様々な「議員特権」があるものの、一般の国民は物価高騰という厳しい逆風に遭っている。
その後首相は増額分の返納を表明した。が、国民から批判さえなければ平然ともらっていたであろう。国のトップとしてセンス、器の大きさに疑問が残る。
減税は「1回限り」とする岸田首相。1回だけで本当に景気は良くなるのか
さて、首相は所得税と住民税を合わせて1人あたり合計4万円の減税方針を打ち出したものの、その規模で本当に国民生活を守ることができるのか懐疑的な見方が広がる。さらに定額減税の実施時期は2024年6月と8カ月も先だ。「明日は今日よりも良くなる」などと首相は述べているが、今日の厳しい生活に頭を抱える国民からは遅すぎるとの批判は尽きない。
岸田氏は「来年は賃上げにとって大変重要なタイミングを迎える。賃上げを実現し、デフレに後戻りさせないために国民への還元、減税を考えている」と述べ、定額減税は「生活を支え、可処分所得を増やす意味はある」と強調する。
ただ、実質賃金が1年半もマイナスが続いているにもかかわらず、岸田首相は10月31日の参院予算委員会で「1回で終われるよう経済を盛り上げていきたい」と語り、減税期間は「1年」限りとの見方を示す。さすがに与党内には、公明党の山口那津男代表をはじめ「物価高が続くならば1回で終わりにならない」との意見が根強いが、なぜか首相にはこうした国民の切実な声が届いていないようだ。
「増税メガネ」を気にして減税しても、支持率は政権発足以来最低の26.9%まで下落。岸田政権はもう終わりだ
ANNの世論調査(10月28、29日実施)によると、岸田内閣の支持率は6カ月連続で下落し、政権発足以来最低の26.9%となった。定額減税の検討に関しては「評価しない」が半数を超え、「政権の人気取りだと思うから」と答えた人が41%に上っている。また、日経新聞とテレビ東京の調査(10月27〜29日)でも支持率は前月から9ポイント減となり、過去最低の33%に下落。不支持率は8ポイント増の59%に達した。
自民党の伊吹文明元衆院議長は「増税メガネと言われたことを(首相が)気にしているらしい」と明かしているが、増税と減税というアクセルとブレーキを同時に踏むような矛盾を国民が気づかないわけがないだろう。加えて、自分たちは身を切るのではなく、むしろ国会での法案成立を受けて年収がアップする。こうした訳の分からない姿勢だからこそ、内閣支持率が下落していることを首相は知るべきではないか。
首相は10月30日の自民党役員会で「現金を一律給付する手法は、国難とも言える事態に限る」と述べている。岸田氏が「国難」をどのように定義づけているのかは分からないが、物価高騰に国民があえぐタイミングで自分たちの年収をアップさせる法案を着々と提出する感覚は理解に苦しむ。
「政権の人気取り」のつもりが、「政権の命取り」に繋がるかもしれない―。首相には来年夏の自民党総裁選で再選を果たしたいとの思いが強いのかもしれないが、庶民感覚を失った宰相に強い危機感を抱く自民党議員が日増しに増えていることだけは忘れない方が良いだろう。
●国費4.3兆円を埋蔵金に 補正予算案 膨れ上がる基金残高は16.6兆円に 11/11
政府は10日、2023年度の一般会計補正予算案を閣議決定した。補正予算案には、各府省庁が所管する基金向けに、特別会計分などを含めて約4兆3000億円が計上された。基金への補正予算支出はコロナ禍を契機に急増したまま、歯止めが利かない状況となっている。残高は22年度末にコロナ禍前の6〜7倍となる16兆6000億円にまで肥大化。財政法上の「緊要な予算の追加」のために編成される補正予算を使い国費を「埋蔵金化」する手法に、野党からは疑問の声が上がる。
歳出を「平時に戻す」と掲げていた
基金向けの補正予算額は19年度以前は数千億円だったが、コロナ禍が始まった20年度は約10兆7000億円、21年度に約5兆2000億円、22年度に約10兆1000億円を充てた。政府は今年6月に閣議決定した骨太方針で、コロナ禍が収束しつつあるとして「歳出を平時に戻し、緊急時の財政支出を必要以上に長期化・恒常化させないよう取り組む」と掲げていた。
だが、今回の補正予算案でも31基金に計約4兆3000億円が積み上げられた。うち過半を占めるのが経済産業省所管の基金。半導体の生産施設の整備費を助成する「特定半導体基金」(6322億円)など半導体関連が目立った。
「さまざまな批判がある」と松野博一官房長官
松野博一官房長官は10日の記者会見で、「さまざまな批判があることも踏まえ、各省庁で適正な執行管理が行われることが重要だ」と述べた。
立憲民主党の長妻昭政調会長は、取材に「今回も各府省庁が安易に予算要求したため、常軌を逸した額が計上された」と批判。「基金に予算が投じられた後は国会のチェックが行き届きにくくなるため、基金は原則禁止し、設ける場合も要件を厳格化すべきだ」と話した。
●補正予算、岸田政権で累計80兆円 安倍政権超え間近 借金は1000兆円 11/11
政府は10日、経済対策を裏付ける2023年度の一般会計補正予算案を閣議決定し、歳出(支出)総額は13兆1992億円となった。岸田政権として約2年で計4回の補正予算の累計額は80兆8118億円に達し、7年余で計13回編成した安倍政権の91兆7050億円に迫る。コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻といった危機が大型編成の理由とはいえ、物価抑制や景気への効果は明確ではなく、借金だけが確実に増える構図となっている。(市川千晴)
補正予算は予算の膨張を防ぐため、財政法で「特に緊要となった経費の支出」に本来限定されている。
だが、新型コロナウイルスが流行した20年以降、補正の規模が一気に膨らむ中で、緊急性が乏しい事業も紛れ込む。今回は低所得世帯への給付金で1兆592億円、電気とガス、ガソリンの価格抑制に7948億円が柱の事業として計上される一方、公共事業関係2兆2000億円、宇宙戦略基金3000億円なども入った。
「補正予算は確保しやすい上に…」
ある与党議員は「当初予算は査定が厳しいが、補正予算は確保しやすい上に、国会の審議時間も短い」と明かし、補正予算が規模ありきで、ばらまきの手段になっていることを認める。
岸田政権が6月に閣議決定した「骨太の方針」では、予算を「平時に戻す」と明記されたが、今回の補正予算はそれにほど遠い。仮に、次回の編成が今回と同規模になれば、岸田政権の累計額は安倍政権を超す。
「予算の効果を検証し、情報公開の仕組みを」
補正の財源は7割近くを国債に依存。国債の発行残高はすでに1000兆円を超え、補正が財政悪化に拍車をかける。経済対策の柱となる所得税(1人3万円)と住民税(1人1万円)の減税は来年6月の実施。今回の補正ではなく、12月の24年度当初予算編成で手当てされるが、借金で穴埋めされる公算が大きい。
第一生命経済研究所の星野卓也氏は、宇宙関連事業などは「緊急性が要件の補正ではなく、当初予算で計画的に財源を確保することが望ましい」と指摘。その上で「政府は補正を含めた予算の効果を検証し、分かりやすい情報公開の仕組みを整えるべきだ」と話した。
●減らしてほしい負担 3位医療保険料、2位所得税を抑えた圧倒的1位は? 11/11
止まらない物価の上昇。今年9月の実質賃金は、前年同月比2.4%減少し18カ月連続でマイナスとなった。
直近の物価高だけでなく、長年続く社会保険料の増加も重荷となっている。総務省の家計調査によると、二人以上勤労世帯の’00年における社会保険料の負担は48,019円だった一方、‘22年の社会保険料負担は67,175円と39%増加した。実収入も増えてはいるものの、税や保険料などの負担増によって増加の実感は得にくくなっているとみられる。
租税負担率と社会保障負担率を示す令和5年度の国民負担率は、46.8%となる見込みで、これは’00年の35.6%から10%以上増加した数字。そのうえ、現在「異次元の少子化対策」の財源として、社会保険料率の上乗せが検討されており、今後社会保険料負担はさらに増す可能性さえある。
そんななか岸田文雄首相(66)は、来年6月に1人当たり4万円の定額減税を行う方針を示した。しかし、世間の反応は芳しくない様子だ。では、庶民はいったいどの負担を減らしてほしいと感じているのか? そこで、身近な国税である所得税、相続税、贈与税、消費税、酒税、たばこ税、ガソリン税と社会保険料である年金保険料、医療保険料、介護保険料のうちどの負担を最も減らしてほしいかを、20代以上の1000人を対象に調査した。
3位に選ばれたのは医療保険料。高齢化や医療の高度化によって保険組合の支出が増えるなか、保険料負担も増加してきた。会社員は基本給に残業代や通勤手当などの諸手当を含めた支給額(額面給与)のおおむね8〜10%を会社と折半して負担する。東京都の協会けんぽに加入する会社員の場合、額面給与が月40万円だとすると20500円が引かれる。
自営業者が加入する国民健康保険は特に財政状況が厳しく、’24年度からは年間保険料の上限を2万円引き上げて106万円とすることが発表された。また、後期高齢者医療制度の年間保険料も’24、’25年度にかけて全体平均で約5,200円引き上げられる。
調査では、現在医療サービスを受けていない人からの不公平感のほか、保険料の高さを嘆く声が聞こえてきた。
「他の税金は控除後の金額に税率を掛けているが、健康保険料は控除前の金額に税率を掛けているので、高すぎる」(埼玉県・自営業・50代)
「月々の給与から引かれるのが痛い」(埼玉県・会社員・20代)
「ほとんど医療費を使ってないので、利用者の負担割合を増やしてほしい」(広島県・専業主婦・60代)
「退職して全額負担しているので健康保険料の負担が一番重く感じる」(大阪府・無職・70歳以上)
「国民健康保険料の負担が、年収の1割を占めているから」(大阪府・パート・50代)
第2位に選ばれたのは所得税。課税対象額の増加に応じて、一定金額を超えた部分のみにより高い税率を課す「超過累進税率」が取り入れられている。来年6月には、所得税3万円の減税が行われる予定だ。
収入の高い層からの所得税負担の削減を求める声のほか、所得税に限らず社会保険料なども含めた多額が給与から控除され、手取り金額が少なくなることを嘆く声が多数見られた。
「最も税率が高い上に使い道がわからないので」(東京都・会社勤務、管理職・40代)
「手取りが少なくなりすぎている」(大阪府・公務員・20代)
「年金生活なので、所得税が少ないことがベスト消費税は購入を控えることで負担を減らしたい」(千葉県・無職・70歳以上)
「稼いでもザルのように抜けていっては労働意欲がなくなる」(兵庫県・公務員・60代)
「物価高騰で生活費の割合が増えた」(兵庫県・医師等医療系専門職・50代)
「賃上げしても、所得税と年金、健康保険で消える」(埼玉県・医師等医療系専門職・30代)
第1位に選ばれたのは消費税。得票数で、2位の所得税に2倍以上の差をつけた。社会保障の財源にするという名目で、’19年に税率8%から10%に引き上げられた。物価が上がるとともに負担が増えることから、今もっとも疎まれている税だろう。しかし、岸田首相は11月1日の参院予算委員会で「そもそも(消費税を)引き下げるということは考えておりません」ときっぱり断言している。
ふだんの買い物を楽にしてほしいとの声ほか、減税の実感が大きい事や、平等に減税されるという意見があがっていた。また、消費税をなくすことでお金のある人はより消費行動をとり経済をまわしてくれるのではないかという期待も寄せられた。
「レシートを見た時高くてびっくりするときがあり、なるべく買わないように我慢しようと思うことが多くなった」(岩手県・20代・会社員)
「誰でも減税するからです。貧困層対策にもなるからです」(埼玉県・パート・30代)
「物価高騰で家計が悲鳴を上げている」(神奈川県・専業主婦・60代)
「逆進性が高いうえに、個人消費を落ち込ませている主因だから」(千葉県・会社員・40代)
「減税が実感できるから」(兵庫県・会社員・40代)
「あらゆるモノやサービスが物価高で余計に高くなり、家計を圧迫していて困っているから」(埼玉県・専業主婦・70歳以上)
「誰もが払うものなので公平性がある」(京都府・パート・50代)
「みんなが平等に減税になるようにしてほしい。ただ低所得者にばら撒けばいいわけではないし、小さい子供がいる世代や母子家庭ばかりが優遇されるのもおかしい。みんな苦しいのは同じ」(神奈川県・専業主婦・40代)
【岸田政権に減らしてほしい負担ランキング 1〜5位】
1位:消費税 479票
2位:所得税 200票
3位:医療保険料(国民健康保険、健康保険などの保険料) 79票
4位:ガソリン税 74票
5位:年金保険料(国民年金、厚生年金などの保険料) 61票
【岸田政権に減らしてほしい負担 全順位】
1位:消費税 479票
「レシートを見た時高くてびっくりするときがあり、なるべく買わないように我慢しようと思うことが多くなった」(岩手県・20代・会社員)
「誰でも減税するからです。貧困層対策にもなるからです」(埼玉県・パート・30代)
「物価高騰で家計が悲鳴を上げている」(神奈川県・専業主婦・60代)
2位:所得税 200票
「手取りが少なくなりすぎている」(大阪府・公務員・20代)
「年金生活なので、所得税が少ないことがベスト消費税は購入を控えることで負担を減らしたい」(千葉県・無職・70歳以上)
「稼いでもザルのように抜けていっては労働意欲がなくなる」(兵庫県・公務員・60代)
3位:医療保険料(国民健康保険、健康保険などの保険料) 79票
「他の税金は控除後の金額に税率を掛けているが、健康保険料は控除前の金額に税率を掛けているので、高すぎる」(埼玉県・自営業・50代)
「月々の給与から引かれるのが痛い」(埼玉県・会社員・20代)
「ほとんど医療費を使ってないので、利用者の負担割合を増やしてほしい」(広島県・専業主婦・60代)
4位:ガソリン税 74票
「税金に税金を上乗せして払うのはおかしい」(長野県・会社員・20代)
「生活に直結していて、現状高すぎるから」(千葉県・専業主婦・30代)
「国際情勢等によりガソリン代が高騰している上に二重に課税されているから」(岡山県・専業主婦・40代)
5位:年金保険料(国民年金、厚生年金などの保険料) 61票
「年金の将来は受けとる額が減っていき自分で老後の資金は工面するほうが確実だと感じる。いま所得税減税して赤字国債の返済はいったいどこまで先延ばしにするのか疑問」(大分県・パート・50代)
「支払った分に足りるリターンを将来得られる確証がないので」(神奈川県・会社員(管理職)・50代)
「支払う割に将来もらえる額が減ることが予想されるので割に合わない」(東京都・派遣社員・30代)
6位:介護保険料 51票
「年金から差引かれるのは非常に負担に感じる」(北海道・無職・70代)
「年金から介護保険料が引かれて、生活費に影響を及ぼすことが多い」(山口県・無職・70代)
「年金支給額に対して、高すぎるから」(岡山県・無職・60代)
7位:相続税 23票
「所得税とかの基本税は今の国の財政から考えて減税すべきじゃない」(兵庫県・50代)
「なぜ、両親が蓄えた資産を相続するのに、多くの相続税を支払う必要があるのか??とくに10年ほど前に非課税対象額が6割になったこと、納得がいかない」(千葉県・無職・60代)
8位:たばこ税 16票
「タバコの値段がどんどん上がっていくから」(愛知県・派遣社員・40代)
「値上がり幅が半端ないから」(福島県・会社員・40代)
9位:贈与税 10票
10位:酒税 7票
●自民党幹部が嘆きの告白「追い込まれ解散」すら難しくなった「哀れな末路」 11/11
11月9日、マスコミ各社は「岸田文雄総理が年内の衆院解散・総選挙を見送る意向を固めた」ことを一斉に報じた。ただし、解散するか否かは総理の「専権事項」であり、永田町には「解散時期についての総理のウソだけは許される」との不文律も存在する。したがって、岸田総理が解散見送りを口にしたからといって、年内解散が100%ないとは言い切れない。
しかし、国民から「増税クソメガネ」と揶揄され、支持率が続落している現実を考えると、解散カードを切りうる状況にないのは明らかだ。事実、政権内や自民党内でも「年内解散などできるわけがない」との声が圧倒的多数を占めている。
ならば岸田総理は、いつになれば「伝家の宝刀」を抜くことができるのか。この点について、総理に近い岸田派の有力議員は、苦渋に満ちた表情で次のように話す。
「岸田さんは年明けに召集される通常国会で、2024年度予算が成立した後の来年4月から、自民党総裁の任期が満了する来年9月までのおよそ半年間のいずれかの時期に、解散に打って出たいと考えているようです。しかし、来年9月までに事態が好転する可能性は極めて低い。結局、解散カードを切れない状況がズルズルと続いたあげく、総裁任期満了直前での『追い込まれ解散』ということになっていくでしょう」
だが自民党内からは、その「追い込まれ解散」すら難しい、との声も聞こえてくる。
「岸田総理が最悪とされる『追い込まれ解散』を選択すれば、自民党内で猛烈な『岸田降ろし』が勃発するのは確実です。そうなれば政権も党内も大混乱に陥り、解散どころの話ではなくなる。最終的には、過去の例に倣って『総裁任期の満了とともに総理・総裁を退任』ということになる」(自民党執行部幹部)
解散カードを封じられての強制退任。岸田総理にとって、これほど哀れな末路はない。
●岸田さんに今辞めてもらっては困る “バラバラ野党”が与党を追い詰める? 11/11
先日行われたANN世論調査では、岸田内閣の支持率が政権発足以来最低の26.9%を記録。そして、事実上の与野党対決となった10月の衆参補欠選挙でも、野党候補が1勝1敗となり、「野党がまとまれば与党に勝てる」という結果となった。
支持率が低迷する岸田政権を野党は今後も一致結束して追い詰められるのか? 野党事情をテレビ朝日政治部の村上祐子記者に聞いた。
――野党が存在感を示せていないのはなぜか?
一言で表すと、バラバラだからだ。“バラバラ”の要因は共産党に対する各党のスタンスの違いにある。
まず野党第一党の立憲民主党は、前回の衆院選で安全保障政策などが異なる共産と政権枠組みの合意まで結んで臨んだものの、与党からは「立憲共産党」と揶揄されて結果的に議席を減らした。その後、代表に就いた泉健太氏は一旦共産との連携を白紙にしたところ党内からの猛反発が起きた。というのも、共産党と選挙協力しなければ勝てない選挙基盤の弱い立憲議員が一定数いるからだ。その後やむなく方針を転換し、野党の一本化を目指すという二転三転があった。
続いて日本維新の会は次の衆院選ではすべての小選挙区に独自の候補を擁立予定。つまり、他の野党と連携せずに自分たちだけで闘うスタンスを表明している。
そして国民民主党。最近は政権に連立入りするのではという話もくすぶるが、そもそも国民民主は共産党と距離を置いている。元々立憲と国民民主に分かれる前はどちらも「民主党」だったが、共産党との距離をめぐって当初から党内で意見が分かれていた。国民民主としては、共産党と選挙協力する政党とは一緒にやれないというスタンスを明確にしている。
このように共産党をめぐる立ち位置の違いが表面化しているが、そのせいでまとまって政権に立ち向かえない状況になっている。
――10月22日に長崎と徳島高知での衆参補欠選挙は事実上の与野党対決となり、野党候補が1勝1敗となった。この結果を野党はどう見ているのか?
1勝とはいえ勝ちは勝ち。立憲としては間を空けずに各党に呼びかけたかったが、きっかけがなく頭を悩ませていた時に10月20日から臨時国会が始まった。通常、与党も野党も新執行部が発足すると、国会での「挨拶回り」といって、各党に挨拶して回る慣例がある。このセレモニーを利用して、立憲は各党に接触を図った。執行部自体は変わらない状態でのあいさつ回りは極めて異例だが、ある幹部は「選挙に向けて連携を呼び掛けるためには『渡りに船だった』」と話す。あくまで「ご挨拶」という形で各党に接触し、「臨時国会頑張りましょう」「次の選挙に向けて連携しましょう」と声をかけた。
――その挨拶回りが思わぬ波紋を呼んだそうだが。
共産党が思いのほか挨拶回りに大きく反応した。挨拶回りを「党首会談」と捉え、各党への「次の選挙に向けて力を合わせましょう」といった呼びかけを、「次期衆院選挙での連携確認」と赤旗新聞の一面で大々的に報じたのだ。これに共産党と距離を置く国民民主がさらに反発し、翌日に控えていた立憲からの挨拶回りを拒否。SNS上で党首どうしが応酬するというカオスな状態になっている。本来、言いたいことがあれば党首同士が会って話すものだが、お互いが会見やSNSで相手を批判していること自体が、今のバラバラぶりを露呈している。
――そんなバラバラな状態の中、次の衆院選に向けて各党は準備を進めているのか?
少なくとも維新は独自候補を立てる方針のため、野党が連携する枠組みには入らない。次に、立憲と共産。共産党としては、速やかに政策のすり合わせをしたうえで具体的な選挙区調整に入りたいものの、立憲の泉代表は明言を避けている。現在は約50の選挙区で両党の候補者が競合していて、野党の議席を伸ばすためには本音では協力したい。今後は、表立った形ではアピールせず、協力できる選挙区でそれぞれが協力するという「ステルス戦略」が落としどころだと言われていて、実際に東京では30ある選挙区で候補者を一本化することが内々に決まる見通し。
実際に候補者調整の話し合いをしているのは国民民主だが、立憲が共産に近づくほど立憲と距離を置くので、野党全体での選挙区調整はかなり難航が予想される。国民民主の玉木代表は「政策を脇において『選挙を一緒にやれば何とかなる』という考え方には立たない」「立憲がだんだん近づきにくい存在になってきた」とけん制している。
――立憲はかなり苦労しているようだが。
共産と連携すれば国民民主が逃げる一方、共産と協力しなければ勝てない議員もいる。各党との接触の場も、あくまで臨時国会召集に伴う「挨拶回り」という建て付けにした。さらに、使う言葉にもこだわった。ある幹部によると、キラーワードは「連携」。他党を刺激しないように、「協力」「共闘」というワードを使わずに「連携」が多用されている。
泉代表は決して「野党共闘」「選挙協力」という言葉は使わず、「各党との連携」「野党議席の最大化に向けて力合わせに取り組む」と述べていて、共産党にも「協力」「共闘」という言葉は使わないで欲しいと伝えていた。共産としては、むしろ「野党共闘」という言葉を積極的に使用してきたが、立憲の意図をくみ取って「連携」という言葉を使って「あげて」いる。ただ、志位委員長は「立憲と連携することで将来的な選挙区調整も想定している」と述べているため、あくまでも選挙区調整をやることにこだわっている。
――年内解散が見送られた中、野党の選挙に対する思惑は?
衆議院議員の任期は10月30日で折り返しを迎えたので、いつ選挙があっても対応できるように準備を本格化させる必要がある。そんな中、ある中堅議員は「早く解散して欲しい」と漏らす。「支持率が低迷する中で解散すれば、政権交代は起きなくても自民党の議席を過半数割れに追い込めるので、岸田さんに今辞めてもらっては困る」「むしろ支持率が少し上がって、岸田さんが解散してくれた方が与党の議席を減らせるからありがたい」と述べている。一回の選挙で政権交代できないことを見越して、まずは自民党を過半数割れに追い込み、岸田総理を「生かさず殺さず」でじわじわ追い込みたい考え。
別の野党議員は「本当は維新と選挙協力したい」とぼやく。立憲と維新の議席を足すと137議席。まだまだ政権交代には程遠いがかなりの議席を上積みすることが出来る。ただ、そうなると憲法改正など見解が違うイシューで立憲が歩み寄らないと難しいので、実現性は低い。
――ここまで支持率が下がっても与党が強いのは野党が一枚岩になれないから、ということに尽きるようだが。
野党の内輪もめは昔から繰り返されてきた。かつての民主党が「民進党」「希望の党」「立憲民主党」「国民民主党」と党名を変えたりくっついたり離れたりしてきた歴史がある。今も昔も野党に求められているのは、まとまること。考え方の異なる政党が選挙のためにどこまでお互いが譲歩できるかで、今後の命運が決まることになる。
●内閣支持率"相当な危険水域" 11/11
JNNが行った最新の世論調査で岸田内閣の支持率が先月の調査から10ポイント以上、下落。政権発足後、初めて30%を切り、過去最低となった。
11月2日に経済対策をとりまとめた直後の調査なだけに永田町では「相当な危険水域」だと衝撃が走っている。なぜ支持率はここまで急落したのか。
「経済対策」取りまとめ直後に「29.1%」政権交代後最低に
11月4日、5日に実施したJNN世論調査で岸田内閣を「支持する」と答えた人は前回の調査から10.5ポイント下落し、29.1%と過去最大の下落で、政権発足後過去最低となった。「支持できない」という人も68.4%で過去最高だった。
JNN世論調査は2018年10月から調査方法を変更したため単純に比較できないが、30%を切ったのは、2012年12月に自民党が政権に復帰して以降、最低である。
例えば、第2次安倍内閣の最低支持率は、コロナ禍の35.4%(20年8月調査)、菅前内閣は、政権末期の21年8月の32.6%だった(翌9月に退陣表明)。ともにコロナ政策で評価を落としたことが主な要因だった。
最近30%を切った例は、2012年11月の民主党・野田政権の末期で25.2%、自民党政権では世界金融危機の対応などで支持を落とした2008年12月の麻生内閣(23.9%)まで遡る。今回はおよそ15年ぶりの低水準となった。
不評を買った経済対策「期待しない」72% 橋本政権の「減税」のときは?
今回永田町でこの調査が驚きを持って受け止められた理由は、11月2日に政府がまとめた「経済対策」の直後の調査での急落だったことだ。
岸田総理は、今回の経済対策に「デフレに後戻りしないための一時的な措置」として、所得税3万円と住民税1万円、あわせて4万円の定額減税などを盛り込んだが、これを「評価しない」人が6割以上にのぼり、「経済対策」全体を「期待しない」人は7割以上に及んだ。
とくに、所得税などの「減税政策」をめぐっては、「自民党支持層」でも半数以上が評価していない。
年齢別ではとくに40〜60代の男性の7割以上、50代男性は8割以上が評価していない。
歴代政権を振り返ってみると、同じように減税政策を行ったのは橋本龍太郎総理だ。アジア通貨危機や山一証券の破綻が起きた1997年末に2兆円の特別減税を表明し、翌1998年2月から特別減税をスピード実施している。その直後の、3月のJNN世論調査ではこれまで下降傾向だった内閣支持率が一時的に上昇している(2月36.7%→3月39.1%)。ただその後、減税の恒久化を巡って橋本総理の発言がぶれ、98年の参院選で惨敗し、退陣に追い込まれた。
今回、岸田総理の「減税」対策が最初から不評を買っている理由として、取材をしていて感じるのは、再来年(以降)に防衛費や少子化対策で国民負担が増えることが分かっていて、来年は「減税」することの“ちぐはぐ感”をしっかり説明できていないように感じる。さらに住民税非課税世帯に対しては「現金給付」をするという、減税と給付の混在がよりわかりにくくしている。
岸田総理は将来の国民負担について「社会保障改革を進めることで、実質的な国民負担の増加にならないよう検討する。今回の所得税減税と矛盾するものではない」と繰り返し強調しているが、額面通り受け取られていないようだ。
ある自民党幹部は「選挙目当ての減税だと裏読みされている。今は何は何をやっても全部が裏目に出る」と語る。別の自民党中堅議員は「やっていることは悪くないが、地元に帰っても選挙目当てのバラマキだと見透かされている。総理の熱意が伝わっていない、ひとえに総理の説明の仕方の問題だ」と嘆いた。
1か月で10ポイント以上の下落 過去には30ポイント近くの“大暴落”も
支持率が30%を切ったと同時に、永田町に衝撃が走ったのは、1か月の間に10ポイント以上支持率が下落したことだった。
再び過去の政権を振り返ってみると、内閣支持率が前の月と比べ10ポイント以上急落することは、一内閣で、平均で1〜2回はある。
2000年以降のJNN世論調査を分析すると、森喜朗総理が2000年5月に「日本は天皇を中心としている神の国」と発言し、前の月と比べ15ポイント以上下落した。
平成以来最大の「落ち幅」でいうと、小泉純一郎総理が2002年1月29日、当時人気絶頂だった田中真紀子外務大臣を更迭し、翌2月の調査で28パーセント下落したこともあった。
ただ、この表をみると、支持率急落の要因の多くは、自らの失言、身内の不祥事などが多く、政府の政策(しかも今回は減税)が不評を買うケースでの下落は珍しいことがわかる。
必要とされる経済対策は?「消費減税」が41%で最多
今回の経済対策について、岸田総理は「デフレ完全脱却のための総合経済対策」と名付け、「デフレから脱却し経済を成長経路に乗せる」ことを最優先にすると11月2日の記者会見で強調した。その「デフレに後戻りしないための一時的措置」の目玉が今回、所得税などの減税だったわけだが、その評価が良くない。
では望ましい経済対策とはなにか。JNNは今回、国民が求める「デフレに後戻りしないための一時的措置」で何が良いかを聞いた。選択肢はこれ以外でも複数あるとおもうが、予算委員会での野党の主張を総合すると、おおむね以下の5点に集約される。
結果は、「消費税の減税」がもっとも多く41%だが、岸田総理は「いまは考えていない」と繰り返し述べている。
その際、総理が毎回持ち出す常套句は「かつて社会保障と税の一体改革の議論で決まったこと」という答弁だ。2012年の野田内閣下において民主党、自民党、公明党の三党間において取り決められた合意、つまり消費税の税収は「年金、医療、介護、少子化対策」の社会保障4経費に充てるということを当時の与野党合意で決まったことだから、覆すことはできないと強調する。これにより旧民主党系の財政規律派の口を封じている。
ただ一方で、将来の消費税引き下げについては「全く今から否定するものではない」と含みも残している。
支持率「危険水域」でも“岸田おろし”の動きなし
6月に亡くなった青木幹雄元官房長官は、内閣支持率と与党第一党の政党支持率を足した数字が「50」を切れば政権が倒れるという「青木の法則」を提唱したとされる。今回のJNN世論調査で照らし合わせれば、内閣支持率「29.1」、自民支持率「26.2」で「55.3」となるので、まだ大丈夫とみるべきか、危険水域とみるべきか。いずれにせよ、この“危険水域”でも「岸田おろし」は起きそうもない。自民党の世耕弘成参院幹事長が「物価高に対応して何をやろうとしているのか、世の中に全く伝わらなかった」などと代表質問で公然と反旗を翻したが、このような身内からの反発は、広がりに欠いている。
その理由は、衆目一致する「ポスト岸田」が不在なこと、野党がまとまりに欠いていること、衆院選挙まで時間がある、ことなどだろう。この点、総裁選と衆院選挙まで時間がなかった菅前総理とは事情が異なる。
今回の世論調査の結果をみても「岸田総理にいつまで続けて欲しいか」との問いに対し、半数以上(自民党支持層では6割以上)が「来年9月の総裁任期まで」と答え、「すぐに交代して欲しい」と答えた人は全体で28%、自民支持層では15%だった。
8月にも同じ調査をしたが、「すぐに交代して欲しい」はこの3か月で微増(+5%)だった。おそらく有権者も、なかなか次の総理像を描けていないのが現実だろう。
一方、「次の総理にふさわしい人」も大きな変動はない。小泉進次郎元環境大臣、石破茂元幹事長、河野デジタル大臣の3人の“常連”は3か月前の調査と比較しても、誤差の範囲でそんなに数字に変わりない。
ただ3か月まえの調査では「その他議員」を答えた人が全体の3%だったのに対し、今回は16%に上昇していて、「次の総理」も群雄割拠の状態といえる。「それだけ自民党議員は層が厚い」と主張する人もいるが、あくまで野党と比較であって、有力な“ポスト岸田”がいないのが、与野党関係者の大方の見方だ。
このまま岸田内閣の支持率が続落するのか、まだ予断を許さないが「今は先送り出来ない課題に、一意専心取り組む」この総理の決意通り、国民が求める物価高対策やデフレ脱却、賃上げなど、結果を出さない限り支持率回復は見込めない。
●借金依存、遠のく正常化 「緊急性」に疑念―補正予算 11/11
政府は10日、総合経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案を閣議決定した。一般会計の総額は13兆1992億円。このうち、7割近い8兆8750億円を新規国債(借金)の追加発行で賄い、23年度末の普通国債発行残高は1075兆7000億円に膨らむ。物価高に苦しむ家計や企業を支援して「デフレ完全脱却」への糸口にする考えだが、緊急性の疑わしい支出も目立つ。コロナ禍で膨らんだ歳出構造の正常化は一段と遠のいている。
財政法は「特に緊要となった経費の支出」について補正予算の編成を認めている。今回の目玉は、低所得世帯に対する7万円給付などの物価高対策だが、巨額の公共事業費や工場・事業所の省エネ支援策のように来年度予算で手当てしても差し支えなさそうな事業が目に付く。
岸田政権は、予算を年度内に使い切る「単年度主義」の弊害を是正する手段として基金を活用する方針を掲げ、今回の補正では新設する4基金を含め、計31基金に約4兆円を投じる。ただ、基金の事業は運営が外部に委託されて国会のチェックが行き届きにくいため、無駄遣いの温床になりかねないとの批判もある。
コロナ禍を脱して経済活動が正常化に向かう中、巨額の補正予算が本当に必要なのか疑問符も付く。今回は、総額70兆円を超えた20年度の規模よりは小さいが、東日本大震災やリーマン・ショック後に匹敵する。
日本経済の潜在的な供給力と実際の需要の差を表す「需給ギャップ」は今年4〜6月期にプラスに転じ、景気の足かせとなっていた「需要不足」は解消されつつある。巨額補正に加え、1人当たり4万円の所得・住民税減税などで需要を過度に刺激すれば、物価高を助長するリスクもある。
●年内解散断念 国民を甘く見る限りは 11/11
「減税解散」不発―。きのうの紙面にこんな見出しが躍った。
政権浮揚を狙い、岸田文雄首相が打ち出した減税策は「選挙目当て」と見抜かれ、国民の強い反発を買った。
支持率は危険水域とされる20%台に落ち込んでいる。解散はできなかったのが実情だろう。
岸田内閣は、その減税を柱とした経済対策を裏付ける13兆1992億円の補正予算案を閣議決定した。歳入に充てる税収の増加分は1710億円にとどまる。
首相は所得税と住民税で1人4万円を差し引くとする。2020年度から3兆5千億円ほど増えた税収を「国民に直接還元する」と説いている。
国会で鈴木俊一財務相は、この増収分は使用済みで残っていないと明らかにした。税収が見積もりを上回れば、政策経費や国債(借金)の返済に回して当然だ。借金の残高が1千兆円を超える国の財政に、実質的な剰余金などもとより存在しない。
首相は「賃上げが物価高に追いついていないための一時的な措置だ」と主張する。防衛財源となる年1兆円強の増税は先送りし、減税との矛盾を取り繕う。
補正予算案には燃油・電気・ガス代の補助金、半導体支援の基金積み増し、防衛装備品の取得費や施設整備費といった規模の大きな項目が並ぶ。
歳入の7割近い8兆8千億円余は借金で賄う。放埒(ほうらつ)な財政運営で健全化は遠のくばかりだ。
コロナ禍に続く物価高で暮らしぶりは苦しくなっている。にわかに減税を言い出したところで国民がなびくはずもない。どこまで税と社会保険料の負担は膨らむのか、むしろ不透明感が増す。
防衛費の大幅増額、原発の利用促進、マイナンバーにしても、首相は与党の意見に偏重した政策判断を繰り返してきた。
「まずは経済を立て直す」「政策は順番が大切」と会見で述べた一方、国会では追及をはぐらかしている。丁寧に持説を語り、国民の理解を得て、信頼の土台から築き直していくほかない。
首相は来秋の自民党総裁選前後に解散時期を探るという。全衆院議員を失職させる「解散権」の行使は、予算案が否決された時や重要政策の変更があった場合に限るというのが通説だ。
国民の支持あっての総裁再選だろう。保身に躍起になって解散権をもてあそび、政策を利用する姿勢を正さなければ、先に政権の体力は尽きるに違いない。
●神田副大臣の進退に政権苦慮 11/11
税金滞納が発覚した自民党の神田憲次財務副大臣の扱いに岸田政権が苦慮している。不祥事で政務三役の辞任が相次ぐ中、さらなる「辞任ドミノ」は避けたいのが本音。攻勢を強める立憲民主党は、続投したままでは経済対策などを巡る国会審議に影響しかねないと警告しており、岸田文雄首相の判断が焦点となっている。
神田氏は自身が代表を務める会社が保有する土地・建物について、固定資産税の滞納により過去4回、差し押さえを受けたことを認めた。10日の衆院内閣委員会で立民の本庄知史氏から詳細な説明を求められた神田氏は「精査している」と繰り返した。進退に関し「言及を控えたい」と述べ、歯切れの悪い答弁に終始した。
10月下旬には山田太郎氏(自民)が不倫問題で、柿沢未途氏(同)は公職選挙法違反の疑いのある事件に絡み、それぞれ文部科学政務官と法務副大臣を辞任。内閣支持率が低迷する首相にとって「3人目の辞任」となれば打撃は必至だ。
松野博一官房長官は10日の記者会見で「財務副大臣の自覚を持ち説明を尽くしてもらいたい」と推移を見守る考えを示した。自民幹部は神田氏について「首相官邸は『法には触れていない』と線引きしており、辞任はない」と語った。
新たな「追及カード」を手にした野党は勢いづく。立民の泉健太代表は10日の会見で、神田氏の即時辞任を要求。応じなければ、政府が今国会成立を目指す2023年度補正予算案の審議は「不可能だ」と明言した。安住淳国対委員長は「なぜ『適材適所』なのか首相に聞きたい」と、首相の任命責任を問う考えを表明。国民民主党の榛葉賀津也幹事長も「早く辞めた方がいい」と断じた。
●岸田首相の国家観で大丈夫か 11/11
真っ先に岸田首相の責任を問わなければならない。日本の学校教育レベルの低さは何だ。これは一教師の怠慢とか不注意で済まされることではない。家に出入りの看護師さんが、「台湾」の存在を知らなかったのだ。
台湾と言えば小学校か中学校の地理というより社会科で出て来る問題である。日中問題を勉強すれば、必ず出て来る。地図を開けば日本の南の島国として必ず出て来る。全小学生が台湾の存在と日本との歴史を知らないことは、教育現場は勿論、総理大臣の責任でもある。
日本人が台湾を意識しながら、何となく話題にしにくかったのは“台湾”の持つ政治的な意味だろう。日本人は昔から台湾が好きだった。今もなお深い愛着がある。台湾の難事には立ち合いたい。その気持ちを表現することが難しかった。
その表現しにくい関係を、「台湾有事は日本有事だ」と一言で表現したのが安倍晋三元総理である。これほど日台の地政学的位置と日本人の心を正確に語ったのは安倍氏だけだ。これ以外に日台関係をうまく表現する言葉はない。
台湾は「化外の地」と言われて、主人のいない島国だった。そこで日清戦争の勝利を機に下関条約によって日本に割譲された。以来50年経って日本が第二次大戦で敗北すると中華民国の一部とされた。しかしその帰属に台湾人の誰も承諾していない。残っているのは50年間日本領だったという事実である。
当初は中華民国に帰属すべきという論もあったが、世論は民主化し、陳水扁総統の頃から、中国帰属反対が強くなった。来年1月の総統選に向けて中国系が野党連合を企てているようだが、歴史的に台湾外からの干渉は逆効果の場合が多い。
中国の習近平主席は「台湾を獲る」と公言し、その時期を2027年と宣言している。それに対して日米両国は周辺国を話し合いに巻き込んで、中国包囲網を築こうとしている。
最近、日本は集団的自衛権も視野に戦闘機を使った日豪共同訓練を本格化させる。これは一方で自衛隊の活動範囲を際限なく広げ、憲法が禁じる海外での武力行使の道を開く恐れがある。岸田氏にとって「憲法改正」が喫緊の事態ではないか。
最近、世論調査をやるたびに岸田内閣の支持率が下がっているのは、減税だ、増税だという税のやり取りよりも、国家の土台は大丈夫かということではないのか。
日本は最近の日豪との接触に加えて2016年、英国空軍の最新戦闘機「ユーロファイター・タイフーン」と航自の「F-15とF-2」とのガーディアン・ノース16を行った。さらに22年、ドイツがユーロファイターを日本へ、23年にはインドがスホイ30を日本へ、さらにフランスが航空自衛隊にラファールを派遣した。いずれも初の派遣で、ロシア・ウクライナ戦争をきっかけに始まったものだ。対ロシア組織は既に出来上がっており、同様に対パレスチナ戦略も形成されつつある。 
●岸田首相の“形だけ”な皇位継承策…「このままでは皇室がなくなる」 11/11
秋にはめずらしく、東京の都心が24.9度を記録した11月2日、天皇陛下と雅子さまが主催される秋の園遊会が開かれた。園遊会では、両陛下は招待者と交流される前に、首相など三権の長から挨拶を受ける慣例がある。今回も、岸田文雄首相夫妻を先頭に、両陛下への挨拶が行われた。
「じつは、丘を下りられる直前に、雅子さまのご表情に、ほんの一瞬厳しさが滲んだようにお見受けしました。やはり、岸田総理が自民党に設置した“新機関”に対して、失望感を抱かれていらっしゃるのでしょうか……」(宮内庁関係者)
10月下旬、自民党は安定的な皇位継承策などを検討するため、党内に“総裁直轄の新組織”を立ち上げる方針を打ち出した。
「この“総裁直轄の新組織”は、自民党則79条に定められた特別な機関を指します。『こども・若者』輝く未来創造本部などがこの機関にあたり、時の自民党総裁が、重点的に力を入れたい政策立案を進めるために立ち上げることができます。自民党内には、昨年1月に『皇室問題等についての懇談会』が麻生太郎副総裁を座長として立ち上がっていましたが、初会合以降は一度も会合は開かれず、議論は進まない“休眠状態”でした。臨時国会が開会したタイミングに、岸田首相が“新組織”の立ち上げを表明したことは、まるで皇室典範の改正に向けて熱意を燃やしているように映ります。しかし実際は、首相の姿勢を評価しない声のほうが党内では多いのです。“新組織”の事務局の陣容もこれから固めていくようですし、何よりも“いつまでに何を決める”といった具体的なスケジュールが決まっていません。また、『懇談会』の座長だった麻生氏がトップに就きますが、麻生氏を巡っては“次期衆院選へ出馬せず引退する”という見方が広がっています。近く引退するかもしれない人物をトップに就けたところに、“岸田首相の本気度はきわめて疑わしい”という声は少なくないのです」(政治部記者)
“保守派”からの支持を固める狙いが
まるで“欺瞞”のような岸田首相の姿勢だが、なぜ今国会で皇位継承問題についての議論を加速すると打ち出したのか。現在、自民党が議論を進める“前提”としているのが、2021年に政府の有識者会議が取りまとめ、国会に対して提出された報告書だ。
前出の宮内庁関係者は、「報告書では、戦後に皇室を離脱した旧宮家に連なる男系男子を養子に迎える案、女性皇族が結婚後も身分を保持できる“女性宮家の創設”という案が示され、国会で議論されるはずでした。しかし岸田政権の旧統一教会問題や物価高対策への迷走ぶりにより、岸田総理や自民党に対して世論の風向きは厳しく、とても着手できる状況ではなかったのです。皇室が直面している課題に対して、岸田総理が関心を持っているという話は聞いたことがありません。最近になって所信表明演説や委員会での答弁で発言しているのは、皇室の問題に関心が強い党内保守派の政治家と有権者へのアピールにすぎないと思います。岸田総理による“皇室利用”と批判されても仕方がないでしょう」
政府と自民党が前提としている有識者会議の報告書の内容で議論が進むことに警鐘を鳴らすのは、元最高裁判事の園部逸夫さんだ。園部さんは、2005年に“女性・女系天皇を認める”という提言を行った、小泉政権時に設置された政府有識者会議の座長代理も務めている。
「このままでは皇室がなくなります」と語り、こう続ける。
「現在の制度では、天皇陛下、秋篠宮さまに続く皇位継承資格者は、悠仁さまお一人です。しかし将来、悠仁さまが結婚されても、男子がお生まれになるかはわかりません。皇統を維持するためには、女性・女系天皇を認めることを否定できないのに、政治家は誰も言い出さないのです。また女性皇族は結婚によって皇室を離れなくてはならず、皇位や宮家当主も女系による継承が認められない制度のままでは、皇族数の減少に歯止めがかかりません。本来、悠仁さまご誕生後も、皇室の安定のために何が必要なのか、議論を止めるべきではありませんでした。歴代内閣や国会がその責任を放棄してきたために、皇室の危機は深まり続けています」
そして雅子さまにとっては、岸田政権の怠慢によって、愛子さまの自主的な意思に基づく将来を決められない状況が長引くことにほかならない。
「岸田総理は、いわば“形だけ”の新組織を立ち上げ、皇室が直面している問題を先延ばしにしようとしています。今後、愛子さまが結婚を決められ、皇籍を離脱することになったときに、皇室の存続が危機に瀕している状況に変化がなければ、愛子さまのご選択に対して政治家から異議を唱える動きが生まれないとは言い切れません。そうなったときも雅子さまは、愛子さまのご意思に寄り添い、全力で守られようとお気持ちを固めていらっしゃるのでしょう」(前出・宮内庁関係者)
晴れやかな園遊会で、一瞬見せられたご表情には、“愛子を守る”という雅子さまの決断が秘められていたからだったのか。
●支持率低迷で解散見送り、年末ジャンボ増税へ…国民だまし打ち 11/11
みんかぶプレミアム特集「税金下げろ、規制をなくせ」第1回は早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏がぶった切る。渡瀬氏は「日本人は世襲の貴族政治家の奴隷ではない。全国の納税者は今こそ「全ての増税に反対」の声を上げるべきだ」と主張する。増税がもたらす影響をほとんど説明しない政治に、怒り散らすーー。
衆議院解散見送りの本当の意味…いよいよ増税の詳細が決まる
岸田首相が衆議院解散総選挙を見送り方針を固めたという。したがって、年末の与党税調や政府審議会の議論を経て、岸田政権において防衛増税及び少子化対策財源の詳細が決定する見通しとなった。
ただし、当然だが、岸田首相は年内の解散総選挙を見送るのであれば、新たな増税を確定させるべきではない。民主主義の基本的な原則は「代表無くして課税なし」である。選挙で選ばれた国会議員であっても、直近の国政選挙で国民に信を問うた増税以外のものを安易に国民に課すべきではない。そんなことは中学生でも分かっていることだ。
一方、今年年末の税制を巡るドタバタの中で「所得減税は選挙の大義になる」と一部の自民党議員が主張していたが、政権が減税する場合に選挙は不要だ。減税の是非について増税よりも大議論になっている国会議員に違和感を覚えざるを得ず、民主主義の基本的な約束事すら忘れてしまった現在の政治の在り方に愕然とする。
国民に対するだまし討ちを選挙無しで実施
岸田政権が選挙を経ずに決定した看板増税政策は「防衛増税」である。防衛増税は昨年の参議院議員選挙後に突如として打ち出されたものであり、岸田政権が国政選挙で明確に打ち出し、国民の審判を受けた政策ではない。岸田政権が閣議決定で、所得税、法人税、たばこ税の大増税を決めただけであり、国民側は防衛増税に対する賛否を示す機会は一度も与えられてこなかった。
所得税は国民生活に直接的に影響を与えることになる。たとえ復興所得税の増税期間を延長するというテクニカルな内容であったとしても、それが中長期に渡って国民生活に影響を与えることは間違いない。また、岸田政権が恩着せがましく、所得税定額減税を1年間実施したとしても、2年目以降は既に増税が内定している現状では、その減税の効果も限定的なものとなる。岸田内閣や財務省が「減税に効果なし」と結論し、更なる「所得税大増税」に踏み切ろうとしていることは明らかだ。国民に対するだまし討ちを選挙無しで実施しようとすることは極めて不誠実である。
法人税の本質は株主や労働者に対する課税だ
政権与党内には所得税増税を一旦切り離して、法人税とたばこ税の増税に先行して踏み切ろうとする意見もあるようだ。
一見すると、法人税は大企業に対する課税のように見えるため、庶民からの反発は少ないように思える。しかし、法人税の本質は株主や労働者に対する課税である。今や個人株主が1500万人を超えた日本、そして、多くの人々が確定拠出型年金で退職後の人生設計をしている現状において、大企業に課税することは庶民投資家層に対する課税となる。
また、結果として、法人税増税は労働者給与に転嫁されるという調査・研究も存在しており、実は大企業に課す税金は働く人の負担を間接的に増加させている。したがって、法人税増税を実行する場合でも、その意味をしっかりと説明した上で、その是非を問うべきであろう。法人税増税の議論が単なるルサンチマンや担税力の話題に終始することは間違いだ。
さらに、多くの国民から嫌われている「たばこ」増税についても、やはりその増税内容を選挙によって審判を受けるべきである。
●岸田首相「四面楚歌」の経済対策、問われる政権の正統性 批判一色 11/11
岸田文雄政権が2日、閣議決定した、「減税」を含む総額17兆円余の経済対策に対する評判がすこぶる悪い。
批判する理由は論者によってまちまちだ。
全国紙各紙は翌3日、軒並み批判的な社説を掲げた。その内容は、1経済は好転しており、経済対策で需要を刺激すべき局面ではない2わが国の財政は悪化しており、これ以上の国債発行は抑制すべきだ3所得税(に限らず)減税は効果が薄い―といった、財政健全派的な立場からの主張だった。
だが、これが多数意見とは必ずしも言えない。むしろ、積極財政の考え方からすれば、こうした考え方こそが長年、デフレ脱却を阻んできたと異を唱えるかもしれない。
では、積極財政派は今回の経済対策をどう見るのか。全国紙が批判するほどの財政支出を決定したにもかかわらず、「対策の時期が遅い」「規模が小さい」「消費税減税が含まれていない」など、これまた批判の大合唱だ。
政策論ではなく、岸田首相の発言や姿勢への批判も少なくない。
「減税は選挙目当てのバラマキ」「首相は財務省の言いなり」「リーダーシップが見えない」などが代表的なものだ。これとて、「一方的な決めつけだ」「リーダーシップがないどころか、独断専行し過ぎる」との異論もあり、論者によってバラバラだ。
いずれにしても、批判一色であることに変わりはない。まさに「四面楚歌」の状況と言っていいのではないか。
「信なくば立たず」という言葉がある。「信」がなければ、どのような政策を打ち出しても、国民の理解を得ることは難しい。今回の経済対策も同様だ。どんなに政策の妥当性を説明しようと、「信」がなければ国民の耳には届かない。
要するに、問われているのは、対策そのものではなく、岸田政権の「正統性」、すなわち、政権が国民の「信」に立脚しているかどうかということではないか。岸田首相はその自覚を持つ必要がある。
筆者は、岸田首相が「先送りできない」とする課題に取り組むのであれば、衆院解散・総選挙で国民の信を問うのが「憲政の常道」ではないかと指摘してきた。そろそろ、国民の信を問うことなしに、岸田政権が存続することが難しくなってきているように思える。
このままいけば、支持率のさらなる低下は避けられず、政権内の求心力低下もさらに加速するだろう。それが一層の支持率低下を招く負の連鎖に陥ることは避けられない。
「解散なし」が確定すれば、徐々に「岸田おろし」が顕在化していくと考えていたが、世論の反応からすると、そのスピードは予想よりも早いと見た方がよいのかもしれない。
●小渕優子選対委員長「岸田政権は日本の課題に向き合っている」… 11/11
自民党の小渕優子選挙対策委員長は11日、神戸市内で開かれた党兵庫県連の会合であいさつし、「なかなか(内閣)支持率が上がらない状況だが、岸田政権は日本が積み残してきた少子化、防衛力強化、日米同盟の深化、日韓関係(などの課題)に逃げることなく向き合っている」と理解を求めた。
岸田首相が年内の衆院解散・総選挙を見送ったことに関連して、「事実だけ申し上げれば、衆院任期が2年を過ぎた。いつ解散があってもおかしくない。我々は常在戦場にいる」と強調した。 
 11/12

 

●「一発アウト」税金滞納の神田財務副大臣を切れない岸田首相 11/12
二度あることは三度あるー。ちょうど1年前、岸田政権の閣僚の「辞任ドミノ」が起き始めた時、永田町でささやかれていたフレーズだ。このフレーズを1年ぶりに、再び耳にする事態になるとは思わなかった。「辞任ドミノ」の悪夢が、1年ぶりに岸田文雄首相にのしかかろうとしている。
思えば昨年の「辞任ドミノ」は大臣が中心だった。8月の内閣改造後、旧統一教会との関係をめぐり国会で野党の追及を受けていた山際大志郎・経済再生担当相が、岸田文雄首相が更迭をずっと否定する中で結局、更迭されたのに端を発し、死刑執行をめぐる失言をした葉梨康弘法相が続き、さらに「政治とカネ」が取りざたされた寺田稔総務相も辞任。1カ月もたたない間に3人の閣僚が相次いで職を追われる(事実上の更迭)事態にになった。岸田首相の求心力は一気に低下し、内閣支持率も下落。年末にはやはり「政治とカネ」が指摘され続けた秋葉賢也復興相も事実上の更迭され「辞任ドミノ」が年の瀬まで4人続く、なんとも締まりのない年末になった。
一方、今年も9月の内閣改造で起用された山田太郎文科政務官が10月26日に不倫問題で、柿沢未途法務副大臣が地元の東京・江東区長選をめぐる公選法違反事件への関与で同31日に、相次いで辞任。スピードは昨年のドミノよりも速い。さらにここにきて、税理士資格を持つ神田憲次財務副大臣が、自身が代表取締役を務める会社が保有する土地・建物の固定資産税を滞納し、4回も差し押さえを受けたことを「週刊文春」の報道を受けて認め、辞任は不可避との見方が強まっている。
取材した野党議員は「2人ではまだドミノといえないが、3人なら立派なドミノ。でも神田副大臣の辞任のタイミングが意外に遅い。切って『ドミノ』と言われたくないから、岸田総理がもし神田副大臣を守ろうとしているなら論外だ」と、批判する。別の政界関係者は、昨年の「閣僚辞任ドミノ」より、今年の政務三役の辞任&辞任危機のほうが、より深刻だと指摘する。「文科政務官が女性問題で、法務副大臣が公選法違反事件への関与で、辞任した。いずれも担当分野での問題発生だ。神田氏は、税理士資格を持つ財務副大臣なのに、よりによって税を滞納。その前に辞めた2人よりさらに悪質だ。普通の感覚なら『一発アウト』なのだが」。
政権浮揚を狙って行った内閣改造で起用された政務三役が、浮揚どころか政権の足を引っ張るパターンが、岸田内閣では定着してしまった。辞任ドミノは、何か明確な理由があって起きるものではない。今回は不倫報道の山田氏の辞任が発端だが、柿沢氏の問題がそれに関連して起きたわけではなく、神田氏の問題も同様。昨年も、山際氏の後に辞任した葉梨氏は想定外の失言が理由で、そこにかねて政治資金の問題がくすぶっていた寺田氏、秋葉氏が続く形になった。
「一寸先は闇」といわれる永田町では、悪い方向にいく時は、想像もしないような悪い方向に流れが進んでしまうこともある。そんな悪循環にはまってしまっている今の岸田政権は、「政治とカネ」をめぐる閣僚の辞任や交代が5人続き、途中挟んだ参院選の惨敗もあって退陣に追い込まれた第1次安倍政権の流れと、似ている様に感じる。当時も、5人のうちの1人は失言が理由の辞任だった。
増税イメージがついて回り、分かりにくい減税政策や国民への説明力不足での岸田首相は、模索してきた年内の衆院解散・総選挙を見送る方針だといわれている。もし第1次安倍政権のように日程が決まった大きな選挙があった場合、厳しい結果になった可能性だって否定できない。
与党関係者からも「今の政権は、増税イメージや減税政策、神田氏の税金滞納など、お金がらみの問題が多すぎる。これでは今、選挙ができる環境にない」との声を聞いた。政権には、加藤鮎子こども政策担当相や武見敬三厚労相ら「政治とカネ」が指摘されている閣僚がいる。政務三役に新たなスキャンダルが出ないとも限らない。
「ポスト岸田」の不在や野党の脅威感のなさなどで、ピンチになってもなんとなく乗り切ってきた岸田首相だが、「二度あることは三度ある」の辞任ドミノが2年連続で起きようとしている「珍事」(野党関係者)に直面。これまでとは比べものにならないピンチであることは確かだ。
●解散断念の「首相の誤算」は有権者にとっては朗報 11/12
世論調査は6割が反対
岸田首相は年内の衆院解散を見送ることにしました。主要新聞は「首相の誤算」とか「支持率低迷で追い込まれた」などと書いています。首相にとっては誤算であっても、物価高対策としては無益な定額減税、選挙目当ての浪費とみて、6割が解散に反対(世論調査)していた有権者にとっては「勝利であり、朗報」であると思います。
日本の政治ジャーナリズムは、権力者の政治戦略、舞台裏の駆け引きなどの「政局記事」で多くが占められ、有権者の目からみたら「進行中の政治がどのような意味を持つのか」は二の次になっている。そのこともあって読者は新聞からどんどん離れていっている。目覚めてほしい。
各紙とも世論調査を定期的、精力的に行っているのに、それを政治記事のあり方に生かしていない。解散見送りは「世論の勝利、有権者にとって朗報」と書く新聞が一紙くらいあってほしい。
舞台裏情報では「自民党が5-9月頃、極秘に続けた情勢調査の結果は毎回『ほぼ現状維持』と上々の手ごたえだった。このため首相は年内解散を視野に入れ、次々と政権のてこ入れ策を繰り出した。切り札として所得税と住民税の定額減税を打ちだした」(読売新聞)そうです。「政局記事」から脱皮できない日本の政治ジャーナリズムの一例です。
本当は「極秘」ではないのに、「極秘」と称して新聞に漏らし、解散ムードを高めることにメディアを使ったのだと思います。広島サミット、旧統一教会の解散命令請求、定額減税・経済対策などのたびに、解散風が煽られ、岸田首相は本気で解散のタイミングを図っていたのは事実でしょう。
権力維持のために、首相らが煽る解散風を批判する主要紙は見当たらず、首相らとの共同作業を続けたのです。それが日本の政治ジャーナリズムの特性です。解散カードを使う首相の政治手法に対する批判、首相の解散権に対する疑問などを正面きって、問題提起をしてほしかった。
それにしても内閣支持率が下落を続ける不人気ぶりをみて、日経新聞は10月下旬には「年内解散の日程は窮屈。12月10日の投開票は無理」と見切りをつけた情勢展望記事を書いています。
そうした読みをしていたので、首相の解散見送り表明(11月9日)を受けた翌日朝刊では日経は1面では扱わず、3面肩で「解散断念、支持率低下、経済優先」という解説雑報で処理しました。他紙のように大騒ぎをせず、醒めた目で政局を観察したのです。これが正解でしょう。
朝日新聞は「解散カードを失った影響は大きい。政権運営で主導権をとるため、解散をちらつかせて与野党議員を浮足立たせるなど、首相はカードの力を積極的に利用してきた」と。そこまで指摘するのなら、政治部長か編集員が署名入りで「首相は解散権を誤用している。解散すべきではない」と、政局記事と連動して、記事を掲載すべきでした。それができない。
読売新聞は「首相に対する世論の反応は冷たく、支持率回復に結びつかなかった。国家財政が窮迫する中での減税は『人気取りにすぎないと見透かされた』(自民党閣僚経験者)ことが大きいとみられる」と。
そうした指摘を閣僚経験者の裏声ではなく、責任を負って記者自身の筆でなぜ書かないのか。政権批判を閣僚経験者の裏声(匿名)で報道しておけば、政権、官邸などから批判を受けないで済むからでしょう。政治ジャーナリズムの常套手段です。お茶を濁すの類でしょう。
世論調査によると、「物価高による家計の負担を感じていますか」の問いに「多いに感じる49%、多少は感じる37%」(読売、10月16日)で、86%が物価高に不満を持っています。ついでにいうと「多少は感じる」の「多少」の語感はよくない。「ある程度」が正しいのです。
さらに衆院の解散・総選挙については「来年度以降に行う33%、再来年秋の任期満了まで行う必要がない31%」が首相の思惑に反対なのです。首相のいう「車座の対話政治」が本心なら、世論の動きをみて、4年間の議員任期を全うする選択こそすべきなのです。
選挙をやるたびに、財政面からあの手この手の政策を打ち出し、財政状態が悪化する。しかも首相は「税収増を還元する」と胸を張りました。実際には税収は伸び悩んでおり、鈴木財務相が「減税すればその分、国債の発行が必要になる」と白状するありさまです。
さらに納税者全員に一律4万円(所得制限なし)、低所得層(課税最低限以下)の世帯には7万円の給付金を支給するといいます。低所得層向けにはいいにしても、定額減税までしたら、需要が増え、物価押し上げ要因なる。物価高対策費が物価を押し上げる。経済理論家はそういっています。
個人が持つ金融資産は22年に2023兆円で史上最高を更新しました。2020年は1870兆円でした。個人の現預金は22年は1100兆円、20年は1030兆円でした、3年で80兆円も増えています。そうした世帯向も定額減税の対象とすると、高所得層の場合は、国債がかれらの貯蓄に回るだけです。
岸田政権の経済政策の混乱ぶりは目に余ります。一方、異次元金融緩和の軌道修正が小出しの繰り返しで、大規模緩和が長期化するとみられて、相場は1ドル=151円まで値下がりしています。外国ファンドが低金利の日本で資金を調達して、外貨で運用すればボロ儲けできる。
ドル建てでみた日本の経済力は低下の一途です。GDPの国際ランキングでは、ドイツに抜かれて4位に転落です。26年には現在6位のインドが日本を抜いて5位に浮上する見通しです。政府、日銀が円安政策をとってきたため、輸入物価が上昇し、国際比較したGDPは下落する。
解散などを念頭に置かず、4年の任期満了を全うする方向に気持ちを切り替えたほうが、内閣支持率は上がるかもしれません。あわせて政治ジャーナリズムも目覚めてほしいのです。
●年内解散見送り 国民向き政策に専心を 11/12
先の通常国会中を含め、衆院解散の機会を探ってきた岸田首相が、年内は見送りの意向を固めた。内閣改造や所得減税を含む経済対策を打ち出しても、支持率は回復せず、日程的にも厳しい状況に追い込まれた末の判断だ。自業自得というほかない。
解散権は「首相の専権事項」「伝家の宝刀」などと言われ、時の首相が「今なら勝てる」というタイミングを選んで、恣意(しい)的に運用しているのが実態だ。
現在の衆院議員の任期は、先月ようやく2年の折り返し点に達したばかりである。また、与党は衆参両院で野党を大きく上回る議席を確保している。それでも首相がこの間、解散の時機をうかがってきたのは、来年秋の自民党総裁選の前に衆院選で勝利し、再選を確実にしたいという思惑からだろう。
しかし、解散を視野に入れた布石は、ことごとく裏目に出ている。
9月の内閣改造では、過去最多に並ぶ5人の女性閣僚の任命をアピールしたが、旧態依然の派閥順送り人事も際立ち、政権浮揚にはほど遠かった。当初女性の起用がゼロだった副大臣・政務官人事のほころびも隠せず、すでに2人が辞任したほか、神田憲次財務副大臣の税金滞納が明らかになっている。
経済対策の柱として、首相が主導した所得・住民税の定額減税も、必要性や効果が疑問視され、国民の受け止めは冷ややかだ。ただでさえ国の財政が借金頼みのうえ、防衛費の大幅増や少子化対策の財源を賄うための負担増も控えるとあっては無理もない。
結局のところ、首相の判断の起点が、国民ではなく、総裁再選という自身の権力維持にあると見透かされていることが、政権発足以来最低水準に落ち込んだ支持率が、なかなか反転しない根本にあるのではないか。
社説は、恣意的な解散権の運用の弊害を指摘し、内閣が重要政策の転換をめざす場合などを除き、衆院議員は任期を全うし、腰を据えて活動するのが筋だと主張してきた。
首相は年明け以降、総裁選前の解散の機会を、引き続き探り続けるのだろう。首相があおった「解散風」で国会審議が形骸化した、先の通常国会のような事態が繰り返されてはならない。
首相はこのところ、諸課題に取り組む姿勢として「一意専心」を繰り返している。その言葉通り、策を弄(ろう)するのではなく、国民のことを第一に考え、地道に取り組んでいく先にしか、道は開けないと心得るべきだ。
●松川るい議員のフランス研修巡る外務省公電 11/12
“エッフェル姉さん”松川るい氏の外務省公電入手!フランス研修の衝撃事実
所得税減税の評判がすこぶる悪く、岸田文雄首相が「減税」を連呼しても「増税メガネ」と酷評される政権は、政務三役が2人続けて辞任する事態に直面し、断末魔の様相を呈している。
そんな中、本誌は世間からひんしゅくを買った7月の自民党女性局のパリ視察をめぐり、松川るい前女性局長(52)が外相に提出した便宜供与の依頼書と外務省の公電を入手した。そこに書かれた恥も外聞もなく便宜供与を求める姿は、まさに自民党の体たらくを象徴しているのだ。
「内閣支持率と与党第1党支持率の和が50%を切ると、政権は倒れるか政権運営が厳しくなる」
これは6月に死去した自民党の青木幹雄元参院議員会長が唱えていた「青木の法則」だが、ここにきて報道各社の内閣支持率は軒並み発足以来最低を記録。毎日新聞と時事通信の調査では、2つの支持率を足したその青木率≠ェついに50%を切ってしまった。
しかも、そんな状況下で山田太郎参院議員が不倫問題で文部科学政務官を辞任。さらに柿沢未途衆院議員が、4月の東京都江東区長選で当選した木村弥生区長陣営に、公職選挙法で禁じられる有料インターネット広告を出すよう指南したとして、法務副大臣を辞任した。
木村氏の関係先に東京地検特捜部が家宅捜索に入り、木村氏が辞職を表明したのは周知の事実だが、柿沢氏には区長選前に区議に現金を配った疑惑まで浮上しているのだ。
全国紙社会部記者が言う。
「柿沢氏は『これまでも陣中見舞いとして現金を配ったことがある』と話しているようですが、果たしてその説明が通用するかどうか。特捜部は、重大な関心をもって現金配布の捜査を進めているのです」
アリバイ作りのためか…
加えて、自民党女性局のパリ視察をめぐる問題は、ネット上でいまだにくすぶり続けている。
「エッフェル姉さん」との異名がすっかり定着してしまった松川氏は、地元・大阪で清掃活動をしている様子をX(旧ツイッター)にアップしたところ、「報告書はまだか?」「必死ですね」などの批判や嫌味が相次いだほど。もっとも、本人によると、報告書はすでに党側に提出済みのようで、ブログでも「フランスの『3歳からの幼児教育の義務教育化』の経緯と成果と我が国への示唆」とのタイトルで、視察報告らしきものを公表しているのである。
「ただ、このブログ記事にしても批判が多い。わざわざパリに行かなくても日本で文献を見て書ける内容で、パリ視察への批判をかわすためのアリバイ作りにしか見えないからです。おまけに、そのアップした報告記事について『全く報道頂いていません』と不満まで書き連ねていて、プライド高き東大法学部卒、外務省出身のエリートらしい傲慢ぶりが見て取れるのです」(全国紙政治部記者)
そんな松川氏だけに、海外視察の際に外務省が議員に便宜供与を図るのは当然と思っていたに違いない。
公電には「大至急」の文字!
本誌が入手した松川氏の林芳正外相(当時)宛ての「便宜供与方依頼の件」と書かれた文書には、「貴省の特段のご高配を賜りますようお願い申し上げます」と書かれている。具体的には、在仏日本大使館員または総領事館員の同行/通訳の手配/現地空港における出入国・関税手続きの簡素化/現地情勢に関する事前ブリーフィングと資料の提供などを求めていた。
しかも、視察先の希望はすべて「パリ」となっており、これでは初めからパリ以外に足を運ぶ気はなかったと言われても仕方がない。視察は松川氏のほか、今井絵理子前女性局長代理、広瀬めぐみ同局次長、地方議員ら総勢38人で、7月下旬に行われた。
ちなみに、松川氏から便宜依頼の文書が出されたのは7月14日で、外務省はその1週間後の21日に、在仏日本大使へ依頼内容を公電で伝えている。依頼からなぜ1週間も放置されたのかは不明だが、この公電には「大至急」と書かれており、外務省の慌てぶりが窺えるのだ。
また、公電によると視察日程は7月24〜28日までだが、松川氏の滞在期間はなぜか同23〜27日となっていた。前乗りした上で1日早く帰国するスケジュールが組まれていたことになるが、この日程は松川氏の他にもう1人いて、その人物の名前が黒塗りされている。そのため、小学生になる松川氏の娘ではないかとみられているという。
全国紙政治部デスクがこう語る。
「親子で前乗りしてパリを満喫した上、視察は他のメンバーより短く済ませて帰国しようとの魂胆だったのではないかとの声もある。もしもそうなら、国と国民をなめきった行いとも言えるでしょう」
その松川氏は9月の自民党役員人事で女性局長から外れ、無役になるかと思いきや、副幹事長に就任した。こんな甘々体質では自民党は今後、どんどん支持を失っていくことだろう。
岸田首相は11月2日に行った記者会見で「増税メガネ」と呼ばれていることについて質問され、こう答えた。
「どんなふうに呼ばれても構わない。どんな呼ばれ方をしようともやるべきだと信じることをやるということだ」
もはや事ここに至っては、開き直るしかないようで、岸田内閣は崖っぷちに立たされていると言える。
まさに、ああ無情とはこのことだ。
●青梅市長選、現職敗れる 多摩の選挙で自民系候補が3連敗「政権へ不信」 11/12
強固な保守地盤とされてきた東京都青梅市の市長選で、3選を目指した無所属現職の浜中啓一さん(71)=自民、公明推薦=が、無所属新人で元市議の大勢待利明さん(48)=国民民主、都民ファーストの会推薦=に敗れた。東京・多摩地域の選挙で自民系候補は9月の立川市長選、10月の都議補選立川市選挙区に続く3連敗。地元の自民関係者からは、内閣支持率の下落が続く岸田政権への恨み節も聞かれた。
「不徳の致すところ」
大勢待さんの当選が確実になると、浜中さんは12日夜、青梅市の事務所で敗戦の弁を語った。「私の不徳の致すところ。みなさん一丸となって戦った結果。私も皆さんの期待にこたえるよう一生懸命努力したつもりだったが、まだまだ力が足りなかった。私自身への高齢批判が一番風当たりがきついと思った」
しかし、支援した自民市議の1人はこう語った。「本人は『高齢批判で負けた』と言っているが、自民への風当たりの強さをまともに受けたのは明らか。公明党にもがっつり応援してもらったのに、自民が不甲斐ないせいで負けた。政権への不信感がそのまま結果に表れたし、票差に影響してしまった」と肩を落とした。
得票数は、大勢待さん2万6042票に対し、浜中さんは 1万7152票。8000票以上の大差での敗戦だった。
萩生田政調会長らてこ入れも…
自民にとって危機感を抱いて臨んだ選挙だった。2カ月前の立川市長選は、推薦した元自民都議の新人が元立憲民主都議の新人に僅差で敗北。東京での公明との選挙協力解消と協力復活の流れが尾を引いていた。続く都議補選立川選挙区では、公認した新人が、小池百合子都知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」公認の新人に大差を付けられるなどして落選した。都県境を挟んだ近隣の埼玉県所沢市の市長選でも、4選を目指した自民、公明推薦の現職が落選し、地殻変動は続いた。
浜中さん陣営には選挙期間中、萩生田光一政調会長や自見英子万博相、今井絵理子参院国対副委員長らが応援入りし、てこ入れを図った。一方、国民民主と都民ファの推薦を受けた大勢待利明さん陣営に、小池知事の姿はなかった。「それでも勝てなかった」と別の市議はショックを隠せない。
風向きの悪さは感じていた。「電話作戦をしても有権者の反応はいまひとつ。組織の動きもまとまっていなかった」と振り返り、先行きを案じた。「この流れをどうしたら止められるのか。政権運営に影響しなければいいのだが」
●「なし」ばかりが続き、今や四面楚歌 支持率急落になすすべ「なし」! 11/12
内閣支持率10ポイント減の衝撃!
岸田政権には、いったいいくつの「なし」が続くのだろうか。11月6日に公表されたJNNの世論調査では、内閣支持率は前回比10.5ポイント減の29.1%まで下落した。不支持率は10.6ポイント増の68.4%で、いずれも過去最悪の数値を記録。「国民の人気なし、支持なし」が伺える。
その大きな原因は11月2日に発表された、生活困窮家庭に対する1世帯7万円の追加支援と課税世帯に対して1人あたり4万円の減税を行うことを盛り込んだ経済対策だろう。通常なら支持率アップに寄与するはずの施策に対して、実に64%が「評価しない」と答えたからだ。
この“減税政策”について岸田首相は、10月23日の所信表明で「国民の努力によってもたらされた成長による増収の増加分の一部を、公正かつ適正に還元する」としてアピールした。あてにしているのは最近の税収の上振れ傾向で、たとえば2022年度の税収は71.1兆円を超え、当初の見通しより6兆円ほど多かった。
岸田首相の減税案に閣内と党内、財務省まで“造反”か?
しかし鈴木俊一財務大臣はこの“税収の上振れ”について、11月8日の衆院財務金融委員会で「政策的経費や国債償還に充てられてきた」と述べ、「減税の財源なし」と明言した。さらに自民党の宮澤洋一税制調査会長も、7日付けの日経新聞で岸田首相が主張する「税収増の還元」を否定した。閣内と党内から「なし」が出たわけだ。しかも宮澤氏は岸田首相の従兄でもある。
だが減税施策は岸田首相の独断ではないと見るべきだろう。留意すべきは岸田首相の“懐刀”と言われる木原誠二前官房副長官が9月19日に出演した動画で、「減税やりゃいいんだよ」と発言したことだ。木原氏は同月13日の内閣改造でその職を外れたが、岸田首相に先んじた発言が注目された。
また木原氏は9月13日に官房副長官を解任されて以降も、頻繁に官邸に出入りしていた。日経新聞が10月25日に、「改造後、茂木・麻生両氏に次ぐ7回」と報道したほどだ。
これらを考えると、岸田首相の減税案は木原氏が関与していた可能性は高く、その背後に財務省の影が垣間見えるが、結果的に財務省が岸田内閣を見放したことになるだろう。
諦めムード漂う?
さすがにこれではやりきれないということだろう。岸田首相が11月9日、記者団に対して「まずは経済対策、先送りできない課題ひとつひとつに一意専心取り組んでいく。それ以外のことは考えない」と述べ、年内の衆院解散総選挙を見送る意向を事実上表明した。岸田首相は2024年9月に予定される自民党総裁選に勝ち抜くため、その前に衆院選を行いたいという意向だが、高支持率が見込まれた広島サミット直後の6月には麻生太郎元首相らに阻止されたことがある。その後、内閣支持率は下落の一途で、とうとう2012年に自民党が政権を奪還して以来の数字にまで悪化した。岸田首相のその言葉には、首相の専断事項である解散権を行使できないもどかいさとともに、他になすすべがない総理大臣の孤独さえ漂っている。
そして、水面下では密かに“岸田降ろし”が始まっているようだ。岸田首相が「解散諦め発言」をした9日夜、“非主流派”の菅義偉前首相や二階俊博元幹事長、森山裕総務会長らが都内で会食し、意見交換したのだ。二階氏の「備忘録役」と言われる林幹雄元幹事長代理や二階派事務総長の武田良太元総務大臣も同席した。
もっとも武田氏はこの日、インターネット番組に出演して「十分な経済対策を果たしていない状況で、岸田降ろしなんて言語同断」と述べたが、このままでは来年の総裁選で「挑戦者に有利になりやすい」と“岸田政権の終焉”の可能性についても言及した。
イチかバチか。それとも……
内閣の低支持率が続く限り、岸田政権の出口が見えない状況だが、このまま年を越しても状況が好転する要素がない。唯一の頼みは「野党の政党支持率がおしなべて低いこと」だが、岸田首相としては総裁選前に衆院解散に打って出て、求心力を回復したいところだろう。
しかしそれには、その前に党内で岸田降ろしが加速化する危険性もあり、自分で自分の首を絞めることにもなりかねない。野党から「検討使」と揶揄された岸田首相だが、政権の今後も「検討」するに終始するのだろうか。何も生み出さない「検討」の結果、「なし」が増えるばかりの岸田政権だが、国民にとって「将来の展望なし」という事態になるのなら、その前にさっさとご退場願いたい。
●介護人材の不足 抜本的な処遇改善が急務だ 11/12
介護サービスを支える人材の不足が続いている。少子高齢化のさらなる加速を見据えた担い手確保が急がれる。
国の推計によると、団塊の世代が全員75歳以上となる2025年には介護職員が約243万人必要となるが、現状のままでは約32万人足りないという。
在宅サービスを担う訪問介護の現場では、深刻な人材不足に直面している。
全国の市区町村にある社会福祉協議会が運営する訪問介護事業所のうち、過去5年間に少なくとも218カ所が休廃止されたことが共同通信の調査で判明した。約13%の減少で、23年度は1302カ所となっている。京都府は7・4%減、滋賀県は24%減だった。
休廃止の要因は訪問介護員(ヘルパー)の高齢化や人材不足、事業の収支悪化という。公的な存在といえる社協が事業を止めれば、訪問介護の空白地域が広がることが懸念される。
介護労働安定センターの22年度調査で、不足と感じている職種を全国の事業所に聞いたところ、ヘルパーが8割を超えた。施設内の介護職員が約7割、看護職員が5割近くという結果だった。
ヘルパーの4人に1人は65歳以上で他職種より高齢者の割合が高く、労働条件の悩みとして従業員の多くが「人手が足りない」「仕事内容の割に賃金が低い」を挙げた。
訪問介護は、住み慣れた地域で長く暮らすため、国が進める「地域包括ケア」の核となるサービスである。その現場が青息吐息の運営では、介護保険制度が空洞化しかねない。
政府は今月まとめた総合経済対策で、介護職員らの賃金を月6千円程度引き上げる方針を固めた。看護助手や障害福祉サービス事業所の職員も含める方向で、早ければ来年2月からの開始を見込む。
新型コロナウイルス対応で21年にも9千円相当を引き上げたが、その後の物価高もあり、賃上げが広がる他産業との格差が指摘されていた。
介護職の給与水準は依然として全産業平均より月7万円近く低く、人材確保につながる改善はおぼつかない。
事業所運営の基盤となる介護報酬は3年に1度の改定を来年度に控えている。
国は職員の処遇改善と介護ロボットの導入により負担軽減を図るとしているが、思い切ったてこ入れが必要だろう。
岸田政権が重点を置く少子化対策の財源確保策では社会保障費の歳出改革が焦点とされる。
負担と給付の両面から制度の見直し議論が本格化するが、苦境にある介護現場をさらに追いつめてはなるまい。
地域のニーズに応え、持続可能な介護環境を担う人材確保に向けて、賃金をはじめ抜本的な処遇改善を図る必要があろう。 
 11/13

 

●岸田政権に激震! また地方選敗北、岸田首相「選挙の顔」失格か 11/13
岸田文雄政権が、地方選挙で深刻な痛手を受けた。12日に投開票された福島県議選では自民党が単独過半数を割り込み、堅い保守地盤とされる東京・青梅市長選でも自公推薦の現職候補が大敗を喫したのだ。自民党は先月の宮城県議選でも、公明党との合計で過半数割れしている。報道各社の複数の世論調査で、内閣支持率が30%以下の「危険水域」に突入するなか、岸田首相を「選挙の顔」として戦うことへの危機感がさらに高まっている。政権浮揚策が次々に不発となるなか、岸田首相は、過去の税金滞納を認めた神田憲次財務副大臣の進退問題でも結論を先送りして、納税者の怒りを買っていた。「岸田不信」「岸田降ろし」が加速しかねない状況だ。
「政権への不信、怒りが突き付けられている。党幹部は焦りを感じていないのか。認識が甘いのではないか」
自民党ベテラン議員は険しい表情で語る。週末の地方選挙は厳しい結果が相次いだ。
東京・青梅市長選では、自民、公明両党が推薦し3選を目指した現職の浜中啓一氏が、国民民主党、都民ファーストの会の推す新人、大勢待(おおせまち)利明氏に、大差で敗れた。
自民党は、9月の立川市長選、10月の埼玉県所沢市長選に続く市長選での敗北だ。10月の都議補選立川市選挙区でも自民党候補が落選しており、青梅には今回、萩生田光一政調会長ら幹部が続々と現地入りする組織戦を展開したが、実らなかった。
自公の選挙協力では今年、公明党が衆院選の選挙区調整に不満を表明し一時、東京での決別≠宣言した。この後遺症を指摘する声もあるが、都の自民党関係者は「自公協力は機能した。岸田政権、自民党への批判が、最大の逆風になった」と明言する。
同じ12日投開票の福島県議選でも、自民党は過半数を割り込む痛恨の敗北となった。9月の岩手県知事選で支援した候補が敗北し、10月の宮城県議選では公明党との合計で過半数割れしていた。
ただ、与党ベテランは「雪崩的に負けないのは、野党の足踏みに助けられているからだ」とも指摘する。
福島県議選では、野党陣営も立憲民主党の泉健太代表らが駆け付ける力の入れようだったが、立憲民主党、共産党は1議席ずつ減らすお付き合い≠セった。「世論は自民党だけでなく、リベラル野党にも期待していない」(前出のベテラン議員)と言えるのだ。
岸田内閣は、経済対策や所得税減税などの政策が不評で、手詰まり感が漂う。各世論調査では、支持率が軒並み30%以下に下落して発足以来最低を更新している。
不祥事の続発も危機的だ。
直近でも、神田財務副大臣が、自身が代表取締役の会社が保有する土地・建物の固定資産税を常習的に滞納していたことが明らかになった。
第2次岸田再改造内閣は9月に発足したばかりだが、すでに山田太郎文科政務官、柿沢未途法務副大臣が不祥事で辞任している。「適材適所」と断言した岸田首相の面目は潰され、窮状に追い打ちをかけている。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「自民党は、地方選挙で苦杯をなめ続けている。政策が評価されず、内閣支持率と自民党の支持がともに下落している。自民党の強みは、全国津々浦々に地方組織を持つことだが、ここから、『岸田首相の顔では選挙に勝てない』と悲鳴が上がっている。今後も地方選挙が続くが、当事者の危機感は相当なものだ。衆院の解散・総選挙は地方組織が屋台骨となるだけに、安易な解散は許容されない。岸田政権は、発足当初から危機管理が欠如し、人事の決断も遅い。今後『岸田降ろし』の流れは強まっていくだろう」と語った。
●福島県議選、宮城に続き自民党過半数割れ 地方に見限られた自民の惨状 11/13
10月22日に投開票された宮城県議会選挙で、公明党と合わせても議会の過半数を維持できなかった自民党。そのショックがまだ残る11月12日、福島県議会選挙がおこなわれた。
自民党は現職28人、新人5人の33人を擁立したが、4人が落選。議席を改選前の31から29に減らして、単独過半数を維持することができなかった。宮城県議会選挙に続く敗北となった。
「どちらの選挙も、投票直前の世論調査で内閣支持率・政党支持率が悪くなっていたので、陣営は厳しい戦いを覚悟していました。両選挙ともベテラン議員の落選と苦戦が目立ちましたね。古い自民党体質に嫌気がさした有権者も多かったようです。自民党内には『これだけの議席減で済んだのは、健闘したほうだ』という声さえあります」(政治担当記者)
国政選挙では「地方組織の足腰の強さが勝敗を左右する」といわれる。その「足腰」になるのは地方議員だ。その人数が少なくなるというのは、自民党にとっても大きな痛手である。
「そういったこともあり、今回の結果は福島出身の国会議員にとっては深刻だと思います」と自民党関係者。それは、国民と議員がつながるツールのひとつであるX(旧Twitter)を見ても想像できる。おもだった福島出身の国会議員が、選挙結果に触れていないのだ。
“ヒゲの隊長”こと佐藤正久参議院議員(全国比例)のXには、13日の朝《おはようございます。今日も国会の院内一番乗り、国対の仕事故、平日はこんな感じ。毎週、いろいろな動きがありますが、今日も委員会運営に尽力いたします。今日も一歩、一歩》の文章とともに、登院表示板のランプを灯した写真が載っていた。前後に選挙結果のコメントはなかった。
ブライダル業界への補助金事業で不透明さが指摘され、SNSで「ブライダルまさこ」とあだ名をつけられた森まさこ参院議員も福島県出身。この騒動が影響して「応援お断り」かと思ったら、選挙期間中は各候補の応援に駆けつけ、マイクを握り、演説をしていたようで、その姿をいくつもXにアップしている。しかし、選挙結果を受けた書き込みは見当たらなかった。
厚生労働大臣、復興大臣などを歴任した重鎮の根本匠衆院議員(福島新2区)も、同じく選挙結果についてはスルーしていた。
「議員の落胆と危機感がうかがえます。しかも最近は、これまで自民党の“牙城”と呼ばれてきた地域でも負けることが多くなり、市長選や町長選で『現職で自民党公認』の候補が苦杯をなめることもありますから、地方で自民党の支持組織が瓦解していることがわかります。衆院の解散総選挙を考えると、衆院議員は憂鬱になるのではないでしょうか」(政治ジャーナリスト)
内閣支持率とともに、地方組織の結束も危険水域に入っているようだ。
●神田財務副大臣が辞任 税金滞納、岸田政権に打撃 11/13
過去の税金滞納を認めた神田憲次財務副大臣が鈴木俊一財務相に辞表を提出した。政府は持ち回り閣議で辞任を正式決定した。複数の政府関係者が13日、明らかにした。岸田文雄首相は続投させれば国会審議に影響すると判断したとみられる。9月の内閣改造から約2カ月で政務三役3人が辞任することとなり、政権への打撃は必至だ。
立憲民主党の泉健太代表は神田氏の辞任について「当然だが遅過ぎる。首相の任命責任が問われる」と記者団に述べた。
神田氏は10日の衆院内閣委員会で、自身の税金滞納問題を巡り野党から進退への考え方を問われ「私の立場についての言及は控えたい」と述べた。9日は辞任しない意向を示していた。
松野博一官房長官は13日午前の記者会見で「政治家としての責任において、引き続きしっかりと説明責任を果たすことが重要だ」と述べるにとどめていた。
税理士でもある神田氏は衆院愛知5区選出で当選4回。自民党安倍派に所属し、内閣府政務官などを歴任していた。
●岸田首相、神田副大臣を更迭 今国会3人目、政権に打撃 11/13
政府は13日の持ち回り閣議で、過去の税金滞納が発覚した自民党の神田憲次財務副大臣(60)=衆院愛知5区=の辞任を決めた。岸田文雄首相による事実上の更迭で、政務三役の交代は今国会3人目。内閣支持率が政権発足後の最低水準に低迷する首相にはさらなる打撃となる。後任は同党の赤沢亮正政調会長代理を充てる方針だ。
神田氏の国会答弁などによると、自身が代表取締役を務める会社が固定資産税の滞納を繰り返し、同社所有のビルが過去4回差し押さえを受けた。
政府は当初、神田氏に説明責任を果たすよう促しつつ世論の反応を見極める考えだった。だが、与党内でも辞任論が強まり、来週から2023年度補正予算案を審議する衆参予算委員会が行われることから、更迭はやむを得ないと判断した。
●内閣支持率 “危険水域”過去最低27.8% 経済対策「評価しない」66.6% 11/13
FNNがこの週末に実施した世論調査で、岸田内閣の支持率は、政権発足以来、はじめて3割を割り込み、27.8%となった。
岸田内閣の支持率は、7.8ポイント急落し27.8%で支持率は、10月に続いて最低を記録するとともに「危険水域」とも言われる20%台に初めて落ち込んだ。
「支持しない」は68.8%に上った。
11月、岸田首相が発表した物価高への対応を盛り込んだ経済対策は「評価する」が27.2%、「評価しない」は66.6%だった。
経済対策を評価しない理由については「今後、増税が予定されている」が39.9%と最も多く、「政権の人気取りだから」が20.6%だった。
岸田首相は、所得税などの減税と今後の賃上げで、2024年夏には所得の伸びが物価の上昇を上回る状況を目指すとしているが、7割が「期待しない」と答えた。
岸田政権は、経済対策で減税を行うことに伴い、防衛増税を2024年度は見送り、2027年度に向け段階的に行うことを表明していることについては「評価する」が42.4%、「評価しない」は51.2%だった。
また、岸田内閣では、9月の内閣改造以来、柿沢法務副大臣ら、政務三役2人が辞任したが、任命権者としての岸田首相の責任について「大きい」「やや大きい」との答えがあわせて7割に上った。
政府は、特別職の公務員の給料を引き上げる法案が成立すると、岸田首相の給料が年間46万円アップすることから成立後、国に増額分を返納する方針を表明している。
この姿勢を「評価する」は51.6%、「評価しない」は45.6%で評価が分かれた。
また、次の首相にふさわしい人について、岸田首相は10月の調査では7.8%で4番目だったが、2.8%に急落して6番目に下がった。
●岸田内閣支持率27% 過去最低 経済対策「評価せず」が66% 11/13
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が11、12両日に実施した合同世論調査で、岸田文雄内閣の支持率は前回調査(10月14、15両日)比で7・8ポイント減の27・8%となり、令和3年10月の第1次政権発足後最低を2カ月連続で更新した。不支持率は過去最高の68・8%(前回比9・2ポイント増)だった。
物価高対応のために政府が決定した約17兆円規模の経済対策への評価を尋ねたところ、「評価しない」が66・6%で、「評価する」の27・2%を大きく上回った。評価しない理由は「今後、増税が予定されているから」(39・9%)が最も多く、「政権の人気取りだから」(20・6%)▽「経済対策より財政再建を優先すべきだから」(17・3%)−と続いた。
首相が、来年夏の段階で賃上げと所得税減税を合わせ、所得の伸びが物価上昇を上回る状態をつくると表明したことへの評価では、実現に「期待しない」の71・0%に対し、「期待する」は27・0%。5年度補正予算案が一般会計で約13兆円規模となることに関し、国の財政状況への認識を尋ねたところ、「大いに不安」「やや不安」は計88・7%だった。防衛力強化のための防衛増税について来年度は行わず、9年度に向けて段階的に行う方針は「評価しない」(51・2%)が「評価する」(42・4%)を上回った。
東京都江東区長選を巡る公職選挙法違反事件で柿沢未途前法務副大臣が辞任したことに関し、任命権者である首相の責任が「大きい」「やや大きい」の回答は合計で70・6%となった。
今国会で成立予定である特別職の国家公務員の年収を引き上げる給与法改正案で、政府が首相と政務三役は増額分を国庫に返納する方針を示したことについては「評価する」(51・6%)が「評価しない」(45・6%)を上回った。
会場建設費が最大2350億円に上振れする見通しとなっている2025年大阪・関西万博の開催の是非を聞いたところ、「費用を削減して開催」(56・7%)が最も多く、「開催中止」が26・9%、「このまま開催」が15・2%だった。
●神田財務副大臣が辞任 後任は赤澤亮正 元内閣府副大臣で調整 11/13
過去に税金を滞納していた神田財務副大臣の更迭を受けて、政府は後任に、自民党の赤澤亮正 元内閣府副大臣を起用する方向で調整を進めています。
税理士資格を持つ神田財務副大臣は、週刊誌報道を受けて自身が代表取締役を務める会社の土地や建物が税金の滞納により4度差し押さえを受けたことを国会で明らかにし陳謝しました。
これに対し野党からは辞任を求める声が相次ぎ、与党からも国会審議への影響を懸念する見方が出ていました。
こうした中、岸田総理大臣は国会審議を停滞させてはならないとして、神田副大臣を更迭する意向を固め、神田副大臣は辞表を提出しました。
そして、政府は13日昼ごろ持ち回りで閣議を開き、神田副大臣の辞任を決めました。
これを受けて政府は、後任の財務副大臣に、自民党の赤澤亮正 元内閣府副大臣を起用する方向で調整を進めています。
赤澤氏は衆議院鳥取2区選出の当選6回で、62歳。国土交通省の企画官などを経て、平成17年の衆議院選挙で初当選し、これまでに内閣府副大臣や国土交通政務官などを歴任しました。
岸田内閣では先月、法務副大臣と文部科学政務官が相次いで辞任していて、神田氏が辞めたことで、今の国会で3人の政務三役が交代することになりました。
   政府・与野党の反応
立民 泉代表「任命責任も問われる」
立憲民主党の泉代表は記者団に対し「辞任は当然だが、遅すぎる。不注意では済まされず、議員も辞職すべきだ。相次ぐ政務三役の辞任は異常事態で、全く適材適所ではなく、岸田総理大臣の任命責任も問われる。政権基盤の弱体化を嫌がったことが、辞任の遅れにつながったのではないか。保身や政局を優先し、国民を見ていないことが明らかになった」と述べました。
その上で「補正予算案の審議に入る前に、なぜここまで更迭が遅れたのか、就任以前にどのような検査をしてきたのか、岸田総理大臣はみずから語るべきだ。審議の中でも、しっかり説明をしてもらわなければならない」と述べました。
維新 藤田幹事長「辞任は当然 遅すぎる」
日本維新の会の藤田幹事長はNHKの取材に対し「国民に納税をお願いする立場の財務副大臣が、税金の滞納や差し押さえを繰り返していたのは、国民の信頼を著しく逸する行為で、信じられないことだ。辞任は当然のことで遅すぎるくらいだ」と述べました。
国民 玉木代表「適材適所はもう崩れた」
国民民主党の玉木代表は記者団に対し「財務省の副大臣が税金を滞納し、差し押さえまで受けていたのであれば、税務行政をつかさどる資格はなく、辞任は当然で、判断が遅いと言わざるをえない。政務三役の相次ぐ辞任で、適材適所はもう崩れた。落ち着いて建設的な議論ができる環境を、政府・与党の責任で整えてもらいたい」と述べました。
共産 小池書記局長「岸田政権のずさんな政権運営の象徴」
共産党の小池書記局長は記者団に対し「辞任は当然だが、事態が明らかになってから、ここまで引き延ばした岸田総理大臣の責任は重大だ。単なる税の滞納ではなく、差し押さえまで受けている人物を財務省の副大臣に据えてきたのは、根本的に任命責任が問われる。岸田政権のずさんな政権運営の象徴と言えるのではないか。退陣を求めていきたい」と述べました。
●岸田政権に有権者の怒り爆発!青梅市長選、福島県議選…地方でボロ負け 11/13
迷走続きの岸田政権への「怒り」が次々と伝播だ。各地の地方選で自民の推薦候補が相次いで大敗を喫している。
任期満了に伴う東京都青梅市長選が12日、投開票。自公推薦の現職・浜中啓一氏(71)が、一騎打ちとなった元市議で新人の大勢待利明氏(48=国民民主・都ファ推薦)に敗れ、3選を逃した。
青梅市は都内でも自民の支持基盤が厚い地域。浜中陣営には萩生田光一政調会長や自見英子万博相らが応援入りするも、開票結果は大勢待氏の2万6042票に対し、1万7152票と実に約9000票差の惨敗だ。浜中陣営の敗戦の弁から政権への恨み節は聞かれなかったが、「減税詐欺」による支持率低迷や政務三役の度重なる不祥事などが直撃したのは間違いない。
これ以上、地方選で負けが込むと…
自民は9月の立川市、10月の埼玉県所沢市に続き、近隣の市長選で推薦候補が3連敗。立川市では2議席を争った10月の都議補選でも立憲民主の候補らに敗北し、改選前の議席を失っていた。
12日は福島県議選(定数58)も投開票され、最大会派の自民候補3人が落選し、改選前31議席から2つ減らし、単独過半数を割り込んだ。開票確定時点では2015年以来8年ぶり。10月の宮城県議選は公明との合計でも過半数割れし、東日本大震災により統一地方選と別日程となった東北の県議選で連敗だ。
自民は9月の岩手県知事選でも支援候補が敗れ、今回は小渕優子選対委員長らが応援に駆け付けるなど力を入れたが、「負の連鎖」は断ち切れなかった。これ以上、地方選で負けが込むと、岸田政権はいよいよ持たない。
●岸田首相 「介護離職」防止に向け両立支援の加速指示 11/13
岸田首相は13日、政府の「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」で挨拶し、「認知症になっても働き続けたい、地域に貢献したいという希望を叶える場所が身近にあることは重要だ。地域社会や仲間とのつながりを維持できる居場所を全国に広げる必要がある」と指摘した。
その上で、介護離職を防ぐため、「仕事と介護の両立支援制度の周知とあわせ、働く家族の方が制度を利用しやすい環境を整備することが喫緊の課題だ」として、来年の通常国会への法案提出に向け、仕事と介護の両立支援制度の仕組み作りの結論を早急にまとめるよう要請した。
会議では今後、認知症の人や家族が安心して暮らせる社会の実現に向け、年内に有識者の意見を取りまとめた上で、基本計画を策定する。
●経済政策「しっかり説明する必要ある」と菅前首相チクリも… 11/13
「まさか俺の出番だと思っているんじゃあ」「安倍元首相のように再登板ありかも、と考えているのでは」
岸田政権の内閣支持率が2割台と低迷する中、与野党内から“ポスト岸田”として一部で名前がささやかれているのが、自民党の菅義偉前首相(74)だ。菅氏は9日に二階俊博元幹事長(84)や森山裕総務会長(78)らと会食し、一部メディアでは「内閣支持率の低迷を受け、岸田文雄首相(66)の政権運営や衆院解散の時期などが話題になったとみられる」などと報じられたばかり。
12日のフジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」にも出演し、岸田首相が打ち出した経済対策に対する国民の理解が得られていないことに対し、「しっかり説明をする必要があると思う」と指摘していた。
菅氏といえば、自身も政権発足当初こそ「パンケーキ総理」「ガースー」などと持ち上げられ、順調な滑り出しを見せていたものの、次第に強権的な政治姿勢が問題視され、さらに新型コロナ対策への遅れなどから今の岸田政権のように支持率が急落。結局、総理大臣の在職日数が、わずか384日という短命政権に終わった。
自民党総裁選「次の総裁」にふさわしい政治家の上位に名前なし
それだけに、菅氏が再び「総理のイス」を狙う気持ちが芽生えたとしても不思議ではないが、SNSでは菅氏の「再登板」に批判的な意見が少なくないようだ。
《「しっかり説明をする必要」って(笑)。おまいう。学術会議の問題は?自分の息子と広告代理店、総務官僚の関係は?あなたが一番説明しなかったヒト》
《国民のために働く内閣なんて、当たり前のこと言いながら、国民に対して何も説明しなかったのが菅さん。ワンチャン総理あり、なんて冗談じゃない》
《岸田首相は安倍・菅政治を継承すると言っていた。つまり、今の岸田政権の姿は菅前政権と同じということ。自分も説明していなかったって、ようやく菅さんも気づいたかな》
共同通信社が行った世論調査で、来年9月に予定される自民党総裁選で「次の総裁」にふさわしい政治家として上位に名前が挙がらなかった菅氏だが……。
●打つ手なし…財務省の「ハシゴ外し」で支持率回復どころか「党内分裂」へ 11/13
想定よりも「不評」だった
JNNが11月4,5日実施した世論調査によれば、岸田内閣の支持率が先10月の調査から10.5ポイント下落し。政権発足後、初めて30%を切り、29.1%と過去最低となった。11月2日に政府がまとめた経済対策の直後の調査であったが、今回の経済対策について、期待するが18%、期待しないが72%だった。 先週の本コラム〈岸田首相の「減税を含む経済政策」はまったく不十分だ…データで検証してみると〉で、今回の経済対策を不十分と書いたが、予想以上の不評なので驚いた。
その後、政府与党内からも驚きの発言がでてきた。減税に関する宮沢自民党税調会長の発言「国民への還元ではない」や鈴木財務相の発言「税収増分は使用済み」発言だ。その意図や背景は何か。今後の岸田政権の経済運営についての影響はどうか。7日、宮沢氏は経済紙のインタビューで、岸田首相が「税収増の還元」としたことについて「『還元』とはいっても税収は全部使ったうえで、国債を発行している。それは還元ではない。」と発言した。8日の衆議院財政金融委員会で、鈴木財務相は、還元策の税収増をついて「すでに使っている」と答弁した。 この両者の発言は完全に連動している。しかも、2日の閣議決定では、「過去2年間で所得税・個人住民税の税収が3.5兆円増加する中で、国民負担率の高止まりが続いてきたことも踏まえ、この税収増を納税者である国民に分かりやすく『税』の形で直接還元することとし、令和6年度税制改正として本年末に成案を得て、3兆円台半ばの規模で所得税・個人住民税の定額減税を実施する」 と書かれていたが、これを一週間もたたずにひっくり返した。
そもそも、2日に閣議決定された経済対策が奇妙だ。国の財政支出は17兆円、そのうち今臨時国会で13兆円、残り4兆円は来年通常国会回しとなっている。要するに、年末に行われるのは給付金など13兆円、来年6月以降に実施されるのは所得税減税4兆円。本コラムで指摘してきたように、全部を今臨時国会で処理すればいいものを、来年度予算回しになっているのがおかしい。
「減税回避」が露骨に出てきた
なお、細かい文章上のことだが、「この税収増」とあるのは、「この税収増相当分」と書くべきであったのに、そうしなかったのは不可解だ。いずれにしても、経済対策を今臨時国会分と来年度予算分に分割する芸当ができ、さらに閣議決定分の詳細を書けるのは、財務省であるので、今回の宮沢発言や鈴木発言の裏には当然財務省が控えていると考えたほうがいい。そもそも過去2年度分の上振れ税収は既に決算処理で国債償還と他の政策経費で使われている。しかし、政治的なレトリックとして、余分にとりすぎた税収を国民還元するのか、いいだろう。もっとも、本コラムでは、そうした政治レトリックではなく、本年度の税収上振れや外為特会評価益を含めて50兆円程度の財源を示しており、過去2年度分の数字はわずかなので本コラムの議論では影響ない。しかし、閣議決定した今回のものをどうするのか。宮沢発言や鈴木発言は、財務省の減税回避が露骨に出てきたものとみえる。重要なのは、岸田首相の政治的な「ハシゴ外し」ているように見えることで、ある意味岸田政権の倒閣運動にもつながる動きになるかもしれない。いずれにしても、宮沢発言や鈴木発言のように所得税減税が国債発行につながるのかどうか。今年度の税収上振れや外為特会評価益などを活用すれば、その心配無用だが、これからの国会で大いに与野党で論戦を闘わせてもらいたい。別に国債発行してもいい。宮沢氏がインタビューで「減税をして好循環が生まれることで将来の所得税収や消費税収、法人税収に影響を与える可能性はある」としているがそのとおりだ。
「支持率回復」の逆転はあるのか
支持率の低下や所得税減税でのハシゴ外しなどもあり、年内解散を見送った岸田首相だが、今後、支持率回復など逆転の手段はあるのか。結論からいえば、これはかなり難しい。現状は年内解散を見送ったというよりも、既に解散権が封じられていると言った方がいいだろう。解散権を封じられた首相にパワーはないので、党内政局の動きになる可能性もある。実際、所得税減税について岸田首相は財務省からハシゴを外されていると書いたが、来年度予算回しにされた所得税減税が実施されない可能性すらある。本年度の税収上振れや外為特会での評価益などで財源は十分にあるのだが、宮沢自民党税調会長や鈴木財務大臣は所得税減税をするのであれば国債発行が必要としている。これを真に受けて国債発行するくらいなら所得税減税は不要という世論が出てくるのを財務省は待っているのであろう。 さらにここにきて、岸田政権には災難が降りかかっている。
8日、週刊文春が報じた神田憲次財務副大臣の度重なる税金滞納だ。
余裕のない岸田政権
9日、参院財政金融委員会で、2013年以降、固定資産税を滞納して計4回の差し押さえを受けたことを認めて陳謝した。「税金の滞納により市税事務所から差し押さえを受けたことがあるのは事実だ。深く反省している」と述べた。納期までに正しく税金を納めないとどうなるか。所定の期日までに支払わなかった場合、税務署から督促状が送られてくる。未納の税金に対する延滞税も含めた額が督促対象となる。督促があっても、なお支払わなかった場合は財産差し押さえなどの滞納処分を受けることがある。税務署によって財産調査が行われ、差し押さえ対象となるのは不動産や預貯金、生命保険などが一般的。差し押さえられた財産は自ら売買することができなくなり、競売にかけられ未払分に充当されることになる。督促や滞納は、税金を払う意思があるので、脱税とは違う。世の中には、結構ズボラな人は多いので、督促や滞納処分は結構多い。ただし、それらは税務当局は当然知っているが守秘義務があるので、今回のように世間の目に触れることはまずない。政権が弱くなると、弱り目に祟り目というか、不祥事情報がでて、悪循環になってくる。今の岸田政権はそうした事態に陥っているのかもしれない。税務当局は、神田氏の滞納状況を知っていたはずで、こんな人が自分達の上に来ることが我慢できなかったので、反発分子があえてリークしたという見方もあり得る。もちろんこれは邪推である。これから岸田政権が行うことは悉く批判されるだろう。折しも、9日こども家庭庁は少子化対策の財源に充当するため創設する、「支援金」制度について、支援金は負担能力に応じ、公的医療保険の保険料に上乗せして徴収するほか案を提示した。税でもなく保険料でもないので、財界や労働界からも総スカンになってものなので、批判されてしかるべきだが、悪いときに悪いことは重なるという典型例だ。もう少し政権に力があれば、こうした案はもっと政権内で練られるが、今はそうした余裕は岸田政権にはないのだろう。そうした政府与党の体たらくは、自民党内部からの崩壊を招くきっかけになる可能性もゼロではない。その萌芽が、自民党参院議員青山繁晴氏の総裁選出馬宣言である。実際問題として選挙人20名の確保は難しいが、何が起こるかはわからない。さらに、自民党内実力者の水面下の動きもある。いずれにしても、財務省のハシゴ外しは自民党内のマグマを動かし、政局の誘発するかもしれない。 
 11/14

 

●岸田首相、財務副大臣辞任を陳謝 公明党・山口代表に 11/14
岸田文雄首相は14日、首相官邸で公明党の山口那津男代表と会談した。財務副大臣を辞任した神田憲次氏を巡り「ご迷惑をかけて大変申し訳ない。体制を立て直してしっかり取り組んでいく」と陳謝した。山口氏が会談後の記者会見で明かした。
山口氏は会談で「国会の始まった矢先にこうした事態が続いたことは誠に遺憾だ。引き締めてやってもらいたい」と答えた。「与党として政府・与党の政権運営に襟を正して臨みたい」とも強調した。
神田氏は固定資産税を滞納していたとの指摘を受け、13日に辞任した。政務三役を巡っては、文部科学政務官だった山田太郎氏が10月26日に、法務副大臣だった柿沢未途氏が31日に辞めている。
●「誰もやりたくないから岸田総理続投」の可能性も…来年の「解散タイミング」 11/14
年内の解散総選挙を見送る方針を固め、先週、自民党幹部らに対し経済対策に集中する考えを伝えたという岸田総理大臣。
ここまでの道のりは“逆風”続きだった。最近では、自身を含む「特別職」の国家公務員の給与を引き上げる法案を巡り批判を受け、10月には1人4万円の減税などの方針を打ち出すも自民党内からも「何をしたいのか分からない」と異例の苦言を呈された。
さらには相次ぐ政務官・副大臣の辞任。神田財務副大臣を巡っては、自身が代表取締役を務める会社が税金を滞納し、13日に辞任した。
そんな苦しい政権運営の最中にいる岸田政権の解散タイミングと来年の政局について、東京工業大学の西田亮介准教授と考えた。
まず、年内解散が見送られたことについて、西田准教授は「内閣支持率も極めて低い状態が続いている。解散に打って出ると想定以上に自民党が負けるかもしれない。そのリスクを許容できなかったのではないか」と述べた。
続いて、5月の広島サミットの後、支持率が上昇したにもかかわらず「秋解散が本命」と見られていた要因については「欲が出たのではないか」との見方を示す。
「閣僚級会合は一年中開かれているが、春から秋にかけてはスケジュールがぽっかり空いていた。この間に解散・選挙があるのではと思われていた。広島サミットの後、自民党の支持率は上がっていたが、日本維新の会も統一地方選挙などで議席を伸ばすなど人気が高かった。そのため、岸田政権は『もう少し後の方がいいのでは』と判断。そしていざ秋になり、維新の支持率が下がったにもかかわらず解散できなかったのかもしれない」
相次ぐ政務官・副大臣の “辞任ドミノ”の影響については「影響はある。事前のスキャンダルの予想は難しく、岸田政権は相当追い込まれている」と述べた。
来年の解散のタイミングについて西田准教授は「最終的には岸田総理にしかわからない」としながらも「予算の審議の最中に解散に踏み切ると『来年度の予算の審議をほったらかして選挙にかまけているのか?』と批判されるため、通常国会後の時期が有力だ。ただし、夏の解散には、『9月の総裁選の前に負けたらどうするのか?』という懸念に加えて、“体力的な厳しさ”を理由に嫌がられる傾向がある」と分析した。
また、「総裁選の前に解散できない可能性」については「あり得る。とはいえ、対抗馬はあまりおらず、出てきても岸田政権からの引き継ぎは貧乏くじ。内閣支持率は低く、難しい運営を余儀なくされる。『誰もやりたくないから岸田総理続投』の可能性もある」と推測を口にした。
逆風が続く岸田総理の「求心力」と「今後」については「落ちている。そもそも岸田派は少数派閥であり、筆頭派閥の安倍派などの顔も立てなければいけない。そうした舵取りをしながら、自民党全体を勝たせることで党勢を回復し、尚且つ岸田政権を維持させる、そんな解を模索しているのだろうが、果たして見つかるのか」と述べた。
●岸田首相、15日訪米 政府発表、APEC出席へ 11/14
政府は14日、岸田文雄首相がアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するため、15〜19日の日程で米サンフランシスコを訪問すると発表した。政府関係者によると、16日にも中国の習近平国家主席との首脳会談を調整。バイデン米大統領との会談も検討している。
15〜17日のAPEC首脳会議では自由で開かれた貿易・投資の推進やデジタル技術、気候変動対策などが議題となる予定で、松野博一官房長官は記者会見で「重要課題について積極的に議論をけん引する」と説明した。
16日には14カ国が参加する「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」首脳会合に臨み、「持続可能で包摂的な経済成長の実現に向けた日本の立場」(松野氏)を発信する。17日には韓国の尹錫悦大統領と共に、スタンフォード大での先端科学技術に関する討論会に参加。尹氏との個別会談も調整している。
●岸田政権また「辞任ドミノ」 立て直し困難との声も 11/14
岸田文雄首相が、税金滞納を繰り返した神田憲次財務副大臣を事実上更迭した。政務三役の退場はこの3週間足らずで3人目。「辞任ドミノ」が再び現実となった形だ。首相の判断が後手に回ったことで政権の傷口は拡大。自民党内から立て直しは困難との声も出始めた。
「国民におわびする。一層緊張感を持って職責を果たし、国民の信頼回復につなげる」。首相は13日夕、首相官邸で記者団にこう強調した。
首相は、9月発足の第2次岸田再改造内閣について「適材適所」と胸を張ってきた。しかし、先月20日に臨時国会を召集して以降、同26日に山田太郎文部科学政務官(当時)、同31日に柿沢未途法務副大臣(同)が辞任。閣僚4人が辞任した昨年の「悪夢」を繰り返している。
一連の辞任理由はそれぞれ、山田氏が女性問題、柿沢氏が選挙違反事件への関与、神田氏が税金滞納だった。党関係者は「最も不適切な人材を最も不適切なポストに就けていたと批判されても反論できない」と頭を抱える。
今回、首相の「判断の遅れ」(党関係者)も政権批判を増幅させる要因となった。山田、柿沢両氏は問題発覚の当日に処分した首相だが、神田氏の税金滞納が8日に報じられても即座に動かなかった。
党幹部は「首相官邸が『3人目の辞任』を嫌った。最終的に税金を納めて違法性は解消された、との理屈で流れを変えようとした」と明かす。
政権幹部によると、首相は13日午前の段階でも判断に迷っていた。野党が2023年度補正予算案の審議拒否をちらつかせる中、自民党側は「国会の厳しい空気」(幹部)を官邸側に報告。首相が更迭方針を伝えたのは正午近くだった。
党重鎮は「判断が遅過ぎた。さっさと切るべきだった」と吐き捨てるように語った。
自民党は12日投開票の福島県議選で過半数を割り込み、現職を推薦した東京都青梅市長選で敗北。党内からは次期衆院選に向けて不安の声が広がりつつある。落選中の前衆院議員は「党の顔を代えた方がいい」と本音を隠さなかった。
●「岸田降ろし」の影 経済回復する前に緊縮財務省のやり口=@11/14
「岸田降ろし」が話題である。岸田文雄首相は、経済対策の原資として「税収増の還元」を強調してきた。だが、鈴木俊一財務相や宮沢洋一自民党税調会長らは「国債償還などに使ってしまい、税収増分はもうない」と否定した。嘉悦大学教授の高橋洋一氏が指摘するように、これは「財務省の減税潰し」かもしれない。内閣支持率が相変わらず低迷しているので、財務省主導の「岸田降ろし」につながることもありうる。
経済が十分に回復する前に財政を緊縮させるのが、財務省のやり口である。ある国会議員が「景気回復してしまうと(税収が増えるため)増税できない」という発言をしたことがある。
おそらくこれは財務省の本音でもある。いままでも一部の官僚とそのポチ政治家≠スちによって、日本経済は何度も打ち砕かれてきた。今回こそはこの悪いパターンを避けなければいけない。だが、そもそもの岸田政権の経済対策が、財務省の緊縮病に打ち勝っているかが問題になる。
世間の増税メガネ#癆サを背景に、岸田首相は「税収増の還元」を掲げて、意欲的な景気対策を行うと表明した。日本の実体経済は、いまだ油断するとデフレ経済に戻るほど、内需が弱いままである。だから岸田首相が経済対策で「デフレ完全脱却」を打ち出したのはスジがいい。
また補正予算の規模は、来年度実施予定の所得減税を抜かすと約13兆円だ。日本経済全体のおカネ不足は最低でも10兆円はあると見込まれる。その意味で総額はなんとか合格点だ。
ただしおカネを増やす効果が低いものが具体策に並ぶ。賃上げ支援などその典型だろう。見掛け倒しの金額が並んでいる可能性が大きい。要するに、しょぼいのだ。ただし、この景気対策さえも否定しようというのが今の財務省であることを忘れてはいけない。
現在の日本経済の問題は、消費の低迷にあることは間違いない。そこでは消費を増やす経済対策が必要になる。つまり消費税の減税がベストだ。ところが、岸田首相は消費減税を断固否定している。社会保障の安定財源だとか、「消費減税してしまうと高所得者に有利になる」という珍妙な理屈に染まっているのだろう。
だが増税メガネ≠ニの批判を回避するために減税はしたい。その結果、生み出されたのが来年夏の所得減税だ。どう考えても遅いし、金額も少ない。さらに「異次元の少子化対策」などで将来の負担増をちらつかせている。1年だけ減税されてハイそうですか、と国民が消費を増やすわけもない。
財務省の「岸田降ろし」に対抗するには、国民を味方につける必要があるが、いまの「しょぼい、遅い、すぐに負担増」では、国民の支持を得るのは難しい。
●補正予算案はデタラメ 7割は借金で賄い、経済対策は10兆円のムダ遣い 11/14
支持率低迷から年内解散の断念に追い込まれた岸田首相。「まずは経済対策、先送りできない課題一つ一つに一意専心、取り組んでいく」と強がっているが、肝心の総合経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案はデタラメの極みだ。ほとんど借金で賄うのに、緊急性が疑われる事業のオンパレード。ムダな予算は実に10兆円に上る。
岸田政権は10日、補正予算案を閣議決定。一般会計の総額13兆1992億円のうち、7割近い8兆8750億円を新規国債の追加発行で賄う。「税収増の還元」の掛け声とは裏腹に財源は借金頼み。23年度末の普通国債の発行残高は1075兆7000億円に膨らむ。
経済対策の趣旨である「物価高対策」に投じるのは2兆4807億円。全体の2割にも満たない。ちなみに、来年6月の実施を目指す「定額減税」は含まれていない。財政法は災害や景気対策など「特に緊要な支出」にのみ補正予算の編成を認めているが、目につくのは来年度予算で手当てしても差し支えのない事業ばかり。「防災・減災、国土強靱化対策」などを名目にした公共事業費も、計2.2兆円と巨額だ。
半導体やAIなどの国内投資促進策は2兆9308億円。具体策として想定するのは、台湾の半導体製造大手「TSMC」や先端半導体企業「ラピダス」への補助金などで、ロコツな大企業優遇策である。
さらに、補正では「宇宙戦略」など4つの基金を新設。既存の27基金への予算も積み増し、計4.3兆円を振り向ける。基金は予算を年度内に使い切る単年度主義の例外と位置づけられ、事業運営は外部に委託される。国会のチェックが行き届きにくいブラックボックスは、ムダ遣いの温床となっている。
実際、22年度末時点で基金事業は180を超え、残高は計約16.6兆円に膨らみ、使われないまま、ムダに積み残されている。政府は11〜12日に国の事業を公開で検証する「秋の行政事業レビュー」を実施。基金事業に関し、河野行改担当相は「今あるすべての基金について、横串を通した点検、見直しをやっていきたい」と息巻いたが、ならばなぜ、閣議決定で基金の新設に反対しなかったのか。支離滅裂である。
経済対策に名を借りたデタラメ事業
そのクセ、河野が所管するマイナンバーカード関連事業には計1786億円を計上。不人気の「マイナ保険証の利用促進・環境整備」に887億円を費やし、うち217億円は利用増の医療機関にバラまくニンジン作戦である。
一方、介護職員の報酬アップに投じるのは581億円。給与の増額は月平均6000円にとどまり、賃上げよりもマイナ保険証の普及を優先と言わんばかりだ。
「ここ数年、各省庁とも『経済対策』を口実に不要不急な事業を補正予算に潜り込ませる悪癖が常態化。大半はムダと言っていい。防衛費にも『安全保障環境の変化への対応』と称して補正として過去最大8130億円を計上。敵基地攻撃能力の保有につながるスタンド・オフ・ミサイルの整備費に1523億円などを盛り込んでいます。経済対策でなく、まるで軍需産業対策。国民生活に背を向けた補正で、本来なら物価高対策に絞り込み、もっと予算を振り向けるべきです」(立正大法制研究所特別研究員・浦野広明氏=税法)
経済対策に名を借りたデタラメ事業はキリがなく、ムダな予算はザッと10兆円に達する。岸田首相の「還元詐欺」に国民はもっと怒った方がいい。
●「尖閣諸島に中国が海上ブイ」 女性閣僚2人の激突と「ポスト岸田」バトル 11/14
沖縄県尖閣諸島周辺の排他的経済水域(EEZ)に中国が設置したブイについて、岸田政権で閣内不一致が起きている。上川陽子外相は国連海洋法条約など国際法に関連規定がないとして、撤去に慎重姿勢を示したのに対し、高市早苗経済安全保障担当相は「日本が撤去しても違法ではない」との見解を示したからだ。
高市氏は10月28日、自身のYouTube番組で、中国の海上ブイについて「本来なら(日本が)撤去すべき」とし「放置はできない」と強調した。11月3日夕にはXへの投稿で「(中国のブイ設置は)『国連海洋法条約』違反ですが、同条約には『撤去』に関する規定がなく、今も外務省が中国に撤去を要請中。規定がないなら日本が撤去しても違法ではないと思うが…」と発信した。
「この2人の意見対立は、ブイをめぐる対応だけでない。『ポスト岸田』も絡んでいる」と明かすのは、さる閣僚経験者だ。
高市氏は2021年の自民党総裁選で、岸田文雄総理と争った。10月3日のBSフジ「プライムニュース」に出演した際、来年9月の自民党総裁選について、担当相として「セキュリティー・クリアランス(安全保障上の機密を扱う人の適格性評価)を仕上げさせていただいた後に」と前置きした上で「また戦わせていただく」と述べ、事実上の立候補表明を行っている。
一方の上川氏は岸田派の一員として政権を支える立場だが、岸田総理の支持率がこのまま低迷を続け、総裁選出馬断念に追い込まれた場合には、後継候補に名乗り出るのではないか、との観測が出ている。上川氏を外相に起用することは、岸田総理の後ろ盾である麻生太郎副総裁も推していた。
2021年の総裁選では、安倍晋三元総理が高市氏を支援したが、安倍氏が暗殺された後、高市氏を取り巻く状況は厳しくなった。対して上川氏は麻生氏だけでなく、岸田総理とは距離を置く菅義偉前総理とも関係が良好であり、いったん出馬に踏み切れば、一気に「女性初の宰相」という流れができるかもしれない。先の閣僚経験者は、「高市氏としてもブイ撤去を主張することで、中国に配慮する上川氏との立場の違いをアピールする意味合いがあったのだろう」
岸田総理の求心力が急激に低下する中で、「ポスト岸田」に向けた女性政治家たちの動きが活発化しそうである。
●税収増「すでに使っている」鈴木財務相と自民税調会長発言の裏…倒閣運動 11/14
岸田文雄首相が打ち出した所得税と住民税の減税をめぐり、自民党内からの発言が波紋を広げている。その意図や背景は何か。今後の岸田政権の経済運営に影響は出るだろうか。
自民党税調会長の宮沢洋一氏は7日、経済紙のインタビューで、岸田首相が「税収増の還元」としたことについて「『還元』とはいっても税収は全部使ったうえで、国債を発行している。それは還元ではない」と発言した。8日の衆議院財務金融委員会で、鈴木俊一財務相は、税収増について「すでに使っている」と答弁した。
この両者の発言は完全に連動している。しかも、2日の閣議決定では《過去2年間で所得税・個人住民税の税収が3・5兆円増加する中で、国民負担率の高止まりが続いてきたことも踏まえ、この税収増を納税者である国民に分かりやすく「税」の形で直接還元することとし、令和6年度税制改正として本年末に成案を得て、3兆円台半ばの規模で所得税・個人住民税の定額減税を実施する》と書かれていたが、これを1週間もたたずにひっくり返した。
そもそも2日に閣議決定された経済対策が奇妙だった。国の財政支出は17兆円で、そのうち今臨時国会で13兆円、残り4兆円は来年の通常国会回しとなっている。要するに、年末に行われるのは給付金など13兆円、来年6月以降に実施されるのは所得税などの減税4兆円ということだ。本コラムで指摘してきたように、全部を今臨時国会で処理すればいいものを、来年度予算回しになっているのがおかしい。
経済対策を今臨時国会分と来年度予算分に分割する芸当ができるのは財務省なので、今回の宮沢発言や鈴木発言の裏には財務省が控えていると考えるのは自然だろう。
過去2年度分の上振れ税収は既に決算処理で国債償還とほかの政策経費で使われているといっても、政治的なレトリックとして、「余分に取りすぎた税収を国民還元する」というのは認められるだろう。もっとも、本コラムでは、本年度の税収上振れや外国為替資金特別会計の評価益を含めて50兆円程度の財源があると指摘している。その観点では過去2年度分の数字はわずかな額であり、本コラムの議論には影響しない。
それにしても、閣議決定したものをどうするのか。宮沢発言や鈴木発言は、財務省の「減税回避」の姿勢が露骨に出てきたものとみられる。重要なのは、政治的に岸田首相のハシゴ外しをしているようにみえることで、ある意味、倒閣運動にもつながることになるかもしれない。
宮沢発言や鈴木発言のように所得税減税が国債発行につながるのかどうか。今年度の税収上振れや外為特会評価益などを活用すれば、その心配は無用だが、国会で与野党が大いに論戦を闘わせてもらいたい。
その結果、別に国債発行してもいいのだ。宮沢氏がインタビューで「減税をして好循環が生まれることで将来の所得税収や消費税収、法人税収に影響を与える可能性はある」と述べているが、そのとおりだ。
●岸田政権は終わりの始まり? 11/14
もはや岸田政権は終わりの始まりなのだろうか?
臨時国会の中身は、本会議における総理の所信演説の中身を踏襲し、政府は岸田総理がぶち上げた減税策の中身を説明することに奔走しているようだ。
ただ野党の追求姿勢が弱腰なのも頷ける理由がある。
岸田政権の支持率は下降の一途だが、実は野党の支持率も目覚ましく上昇しているとは言えない。
保守層の中で鳴り物入りで立党した日本保守党も、その中身において今の自民党を二分するような中身とは言えない。創価学会は統一教会の宗教法人格取り消し問題を受けてか、目立った発言を控えているように見える。
野党はこの機に、予算委員会等の場で、創価学会の傀儡政党である公明党に対して統一教会問題を追求すればいいと思うのだが、そんな根性も見当たらない。
安倍政権下においてあれだけ打倒安倍晋三に執着した立憲民主党も、今は鳴りを顰めている。岸田政権では政権内部の不祥事が相次ぎ、今こそ岸田政権の総辞職に追い込めばいいと思うのだが、肝心の立憲民主党の支持率も一向に伸び悩んでいる。
また、一貫性が無いのは立憲民主党も同様で、本来、弱者を救済するという謳い文句であったはずの立憲民主党が、財政規律を重視して、脱「消費税減税」に舵を切ったという報道が流れた。
立憲民主党は公称野党第一党ということになっているが、その野党第一党が庶民の声を無視して、財務省のプロパガンダに汚染されていることを露呈してしまった形だ。
立憲民主党には期待してはいけない
仮に解散風が吹いたとしても、今の立憲民主党が政権を奪取できる可能性は限りなくゼロに近いのだが、少なくとも野党共闘の方向性だけは示す必要があっただろう。そこには、不可能であったとしてもワンイシューを掲げて有権者に分かりやすい選挙戦を掲げるべきなのだ。政権内の不祥事追求はあくまで戦略の一つであり、政権を奪った後に何をするのか?について、明確なビジョンを持っている必要があるだろう。その点で、日本共産党との共闘は、悪手意外の何ものでもない。
元々、日本人は子供の頃から左派メディアを信奉し学校教育等によって左翼思想に染まった、ごく限られた人たち以外、共産主義には嫌悪感がある。立憲民主党は自分たちの支持者が連合だけだと思っているかもしれないが、一般の人でも、少なからず、立憲民主に期待する声はある。その僅かな声すら無視して、日本共産党と共闘するなど、有権者の意識が見えていない表れだろう。
そして、減税策の旗を下すなど、財務省のレクチャーに抗しきれない経済や財政の問題に立ち向かえない弱さを露呈している。これでは支持率は上がらない。
そんな中、岸田総理は年内解散はしないという意向を示したという報道が流れた。
Abemaニュースによると、伸び悩む支持率と、閣僚の不祥事によって、年内解散を諦めたということらしい。
本来、秋の解散を念頭に置いていた岸田総理は、腰折れしてしまった形になった。当然、衆院選の結果如何で党内の岸田下ろしの風が吹くことに抗しきれず、衆院選で惨敗を喫すれば総裁辞任、内閣総退陣の最悪の結果が見えてくることに危機感を感じたのだろう。
では、次の解散のタイミングとは、いつになるのだろうか?
●自民支持層も「岸田離れ」内閣支持率 27・8%危険信号=@11/14
岸田文雄内閣にまた、厳しい現状が突き付けられた。産経新聞・FNN(フジニュースネットワーク)と、NHKが13日、それぞれ公表した世論調査で、内閣支持率は発足以来、最低を記録した。自民党支持層の内閣支持率も急落しており、政権運営は、さらに厳しさを増しそうだ。減税方針が目玉の経済対策が不評だったうえ、政権内の不祥事が相次いでいる。岸田首相は立て直しを図れるのか。
衝撃の内閣支持率は別表の通り。ともに、政権維持の「危険水域」とされる30%以下に沈み込んだ。NHK調査では、自民党が2012年12月に政権を奪還してからの歴代内閣でも、最低水準に落ち込んだ。
岸田首相周辺は「報道各社の調査が一斉に下落したのは危険信号≠セ。特に、自民党支持層が『岸田離れ』を加速させているのが危うい。支持率下落の底が抜けたように感じる」と焦りをにじませた。
確かに、産経・FNN調査では、自民党支持層の内閣支持率が、前月比9・1ポイント減の64・5%と急落している。
岩盤保守層をはじめ、各方面から批判が強かったLGBT法が成立した6月でも、自民党支持層の内閣支持率は78・6%だっただけに、「岸田離れ」が如実になった。
政策の評価も低い。
産経・FNN調査では、17兆円規模の経済対策について、「評価しない」が66・2%に達した。評価しない理由は、「今後、増税が予定されているから」が39・9%で最多になっている。
NHK調査でも、所得税・住民税の減税方針を「あまり評価しない」「まったく評価しない」がおよそ6割を占めた。評価しない理由は、「選挙対策に見えるから」が38・4%と最も多く、厳しい政治不信が浮き彫りになった。
政治評論家の有馬晴海氏は「政権浮揚するプラス材料がない。税金滞納問題が浮上した神田憲次財務副大臣が辞任したが、政務三役が不祥事で短期間で3人も辞めた。世論の評価はいよいよ厳しくなり、支持率はさらに落ちる可能性がある。支持率下落の幅が大きいのは、二転三転した減税方針などに対する不信感だ。世論が岸田政権に感じていた『違和感』が、より具体化している」と指摘した。
●内閣の物価高対策「7割以上評価しない」 少子化対策「6割以上期待しない」 11/14
岸田内閣の政策について世論調査が行われました。「物価高対策」については、7割以上が「評価しない」と答えました。
調査は長野県世論調査協会が、10月5日から31日に県内に住む18歳以上の1200人を対象に行い、693人から回答を得ました。
このうち物価高への対応について、「評価する」は15.9%、「評価しない」は72.1%。
明確に評価しないと答えた人が4割を超え、不満の大きさを示しました。
岸田内閣が掲げる「異次元の少子化対策」については、「期待する」「ある程度期待する」が26.4%。
一方、「期待しない」「あまり期待しない」が65.3%で3分の2近くにのぼり、看板政策への期待が十分高まっていないことがわかりました。
岸田内閣の支持率は「支持しない」が62.8%で「支持する」の36.2%を大きく上回りました。
●内閣支持最低 政務三役辞任 減税論議の行方は 11/14
岸田内閣の支持率下落が止まらない。岸田首相は年内の衆議院解散を見送り物価高などへの対応に集中するとしているが、政務三役の辞任が相次いでいる。不透明感が漂う政治の現状と今後について考える。
内閣支持率急落
11月の内閣支持率は10月より7ポイント下がって29%。「支持しない」は8ポイント上がって52%だった。不支持が支持を上回るのは5か月連続。内閣発足時から20ポイント下げ、最も低くなった。支持率が内閣の「危険水域」とされる20%台になったのは菅内閣末期の2021年8月以来で、自民党が政権復帰後最低の数字に並んだ。
支持が低迷しているのは内閣だけでない。
自民党の11月の支持率は37.7%。10月より増えはしたが、政権発足時からは4ポイント弱減らしている。また特に支持する政党はない「無党派層」を7か月連続で下回った。
年内解散見送り
岸田首相が年内の衆議院解散を見送ったのは、今は選挙を有利に戦える環境にないと判断したためだろう。岸田首相は9日、衆院解散について記者団から問われ「まずは経済対策。先送りできない課題に一つ一つ取り組んでいく。それ以外のことは考えていない」と答え、これまで付け加えてきた「今は」「現在は」というフレーズは消えた。
選挙で勝つには所属する政党の支持を固めたうえで、無党派層の支持を少しでも拡げるのが鉄則だ。しかし11月、与党支持層の内閣支持が53%にとどまり、「無党派層」の支持は「野党支持層」と同じ12%にまで落ち込んだ。それだけに今回の発言は「解散を見送った」というよりむしろ、「解散したくても、当面できなくなった」「解散権が事実上封じられた」と解釈する向きも政界では少なくない。
今年に入り「解散風」を利用して与党内の求心力を維持し、時にはけん制もしてきた岸田首相だが、内閣支持率が自民党の支持を9ポイント近くも下回ったことで今後党側の意向をこれまで以上に配慮を迫られるなど力関係に変化が生じ、さらに苦しい立場に追い込まれる可能性も否定できない。
減税と給付
支持低下の要因はいくつか考えられるが、先に打ち出した経済対策や、所得税などの減税と給付に対する国民の冷めた評価が大きく影響したのは間違いない。一連の経済対策を通じて岸田首相は来年夏には、所得の伸びが物価上昇を上回る状態にしたいとしているが、これに「期待しない」という人は「あまり」「まったく」あわせて65%。一方「期待する」は「大いに」「ある程度」あわせて30%。また政府は所得税などを1人あたり4万円減税し、住民税非課税世帯には7万円を給付する方針だが、これを「評価しない」という人はあわせて59%。一方「評価する」は36%だったことからも明らかだ。「経済対策」は全ての世代の6割以上が、「減税と給付」は30代以上の過半数が、期待や評価していない。このため岸田内閣を「支持しない理由」として「政策に期待が持てない」という人は11月57%と、2か月連続で5割を超える結果となった。
減税と給付、評価が低い理由は何が考えられるのか。その点について聞いたところ「選挙対策に見えるから」が最も多く38%、次いで「物価高対策にならないから」は30%、「国の財政状況が不安だから」は24%、「実施時期が遅いから」は4%だった。
選挙対策と受け取られているのは、岸田首相が減税の検討を与党側に指示したのが10月の衆参補欠選挙直前で、早期の解散総選挙の観測もくすぶる時期と重なった点が大きく影響しているとみられる。政府は防衛費について今年度から5年間で43兆円程度確保しその財源の一部を法人税、たばこ税とともに、所得税の増税で賄うとしてきた。こうした将来の増税と今回の減税は「矛盾しない」と岸田首相は説明しているが、「納得できない」は67%に上り、「納得できる」は19%にすぎない。与党支持層でも「納得できない」は57%、無党派層では76%だった。賛否両論がある中、防衛増税を決めた去年暮れから1年も経たないうちに減税の方針が示されたことに国民の多くが唐突感を覚え、これまでの説明との整合性に疑問を感じている。岸田首相は、こうした声を真摯に受け止め、もし事実と異なるというのであれば国会できちんと説明すべきではないか。
また「物価高対策にならない」「実施時期が遅い」があわせて3割余りを占めたのは、減税実施には法改正が必要で開始は早くても来年6月と、給付に比べて即効性に欠けるためだ。また岸田首相は減税を「1回で終えられるよう経済を盛り上げていきたい」と述べているが、1回では多くが貯蓄に回り効果が薄いという指摘や、消費拡大には消費税の減税の方が有効だという見方もある。さらに国債の発行残高が1000兆円を超え、4人に1人が財政状況に不安を感じる中で、岸田首相が「税収増の一部を国民に還元する」と述べる一方、鈴木財務相は「過去の税収の増加分は政策や国債の償還などですでに支出しており、減税を行えばその分、国債の発行額が増える」と答弁したことも国民にはわかりにくい。
制度の詳細は与党の税制調査会で年末にかけて議論されるが、自民党内にはその効果を疑問視する見方もある。また富裕層も対象に含めるのか。また実施は1回きりか、それとも物価高が続いた場合に期間を延長するのかなど、自民・公明両党で意見が分かれる点も少なくない。さらに当初首相周辺のみで検討が進められたことへの不満や、支持率低下を招いた責任を問う声もくすぶっており、議論は紆余曲折も予想される。
政治の行方は
政治の今後の行方は物価と賃金の動向に大きく左右されるとみられるが、ここにきて波乱要因となりつつあるのが内閣改造から1か月余りの間に、政務三役が様々な理由で相次いで辞任に追い込まれていることだ。10月の山田文部科学政務官、柿沢法務副大臣に続き、13日には過去に税金の滞納を繰り返した神田財務副大臣が辞任したことで、来週からの補正予算案の審議、さらには政権運営への影響は避けられそうにない。
岸田首相は先の内閣改造を「適材適所」とする一方、「国民におわびしなければならない」とも述べている。ただ岸田首相に「任命責任がある」という人は「大いに」「ある程度」あわせて67%と、「ない」の26%に大きく差をつけている。去年秋にも初入閣の閣僚4人の相次ぐ辞任が支持低迷のきっかけともなっただけに、一連の問題が政治の先行きをさらに不透明にする可能性も否定できない。
●税収増による還元策が「偽装減税」と批判高まる 11/14
政府は11月2日、物価高に対応する総合経済対策を閣議決定した。目玉となる減税と給付措置は計5兆円超の規模で、1人あたり年4万円の定額減税に3.5兆円、住民税非課税世帯などへの給付に1兆円超を充てる方針だ。
岸田文雄首相は「増税メガネ」との揶揄を払拭するかのように、税収増を国民に還元するとして減税措置を打ち出したが、報道各社の世論調査で内閣支持率は過去最低水準のままだ。国会でも野党から「偽装減税」などと批判が強まっており、局面打開は見通せない。
国会審議でめったに答弁しない鈴木俊一財務相が、10月30日の衆院予算委員会で、立憲民主党の逢坂誠二代表代行の質問に応じた。
逢坂氏が防衛費増額に伴う財源確保のための増税と今回の減税措置の整合性を巡り、「歳出改革は財源になり得るのか」と質すと、鈴木氏は「社会保障費を高齢化の枠内に抑える」として数字を列挙して説明した。
これに対し、逢坂氏は「何を言っているのか全くわからない」と斬って捨てた上、「本来伸びるであろう予算を抑え込むから財源だと言っている。詭弁だ」とたたみかけた。鈴木氏は首相を援護射撃するどころか、野党からさらに突っ込まれる展開になってしまった。
減税を巡る政府の発信力不足が首相への逆風になっているにもかかわらず、平時と同じ説明を続ける鈴木氏の姿勢は政権運営の足かせになっている可能性がある。自民党内からは「税は政局だ。首相や財務相が説明できなければ、『岸田政権は財務省の言いなり』という印象が強まるだけだ」(閣僚経験者)と肩を落とす。
●「還元」の矛盾が露呈した 11/14
政府は、物価高に対応した経済対策の裏付けとなる総額13兆1992億円の2023年度補正予算案を決定した。
岸田文雄首相は閣議や臨時国会で、「成長の果実である税収増を国民に適切に還元する」と述べていた。ところが予算案の財源をみると、首相が掲げた税収の増加分は1710億円にとどまった。全体の7割近くの約8・8兆円を国債発行に頼っている。
経済対策の目玉である所得税と住民税の減税は24年6月実施なので今回は計上されていないが、さらに5兆円規模の財源が必要となる。鈴木俊一財務相は国会答弁で、これまでの税収増加分は国債の償還などに充てたため残っていないと述べた。これから税収が数兆円も増えるとは考えにくい。
財源の国債頼みが繰り返されそうだ。首相の言う「還元」のために、新たな借金に頼る矛盾が露呈したと言わざるを得ない。借金の山をこれ以上高く積み上げ、財政規律を緩ませてまで減税を講じるほど厳しい経済状況なのか。臨時国会の論戦を通じて、与野党は厳しく見極める必要がある。
補正予算案の内容で見逃せないのが、さまざまな政策課題についての基金に4・3兆円を投じる点だ。半導体支援など既存の27の基金に積み増すほか、宇宙戦略など新たに四つの基金を設ける。
基金は中長期的な政策推進に充てるため複数年度にわたり予算を積み立てる。新型コロナ禍で相次いで新設された結果、その数は180を超え、残高は16兆円を上回る。
国会などのチェックが利きにくい上、成果目標がなく費用対効果が不明瞭だったり、実務を民間に丸投げしたりといった例も少なくない。そもそも政策遂行に必要なら、補正ではなく当初予算段階から手当てするのが筋だろう。
現状のまま基金に巨額の予算を投じることが、賢明な支出とは言い難い。基金制度そのものについて見直しを考える必要がある。
内閣支持率の低迷が続き、首相は年内の衆院解散を断念した。今回の補正予算案で内閣支持率を向上させて総選挙を勝ち抜き、さらには来年の自民党総裁選を有利に戦う思惑があったとされる。
防衛増税など将来の負担増を打ち出す一方で税収増を還元するとしたちぐはぐさが、国民の支持を得られないのは当然だ。
しかも税収増自体が実態の乏しい内容とあっては、首相の発言に対する国民の不信はいっそう募る。首相は改めて真摯な姿勢で政権運営に当たらねばならない。
●所得税減税の方針めぐり 地方が政府に補てん求める 11/14
所得税減税の方針をめぐり、全国知事会が地方交付税の減収につながる懸念を示し、政府に穴埋めを求めた。
政府主催の全国知事会議で岸田首相は、所得減税を含む経済対策について「速やかな執行に都道府県の協力が不可欠だ」と述べた。
一方、知事会側は、減税により所得税収を原資としている地方交付税が減ることへの懸念を表明した。
全国知事会長・村井宮城県知事「地方交付税の減収となるため、大変懸念をしております。国において、この補てんをぜひともお願いしたい」
岸田首相は、「地方の財政運営に支障が生じないよう、年末に向けて関係省庁で協議し、適切に対応する」と応じた。
●日本の半導体は復活するのか〜鍵を握るTSMCとラピダス 11/14
中国の経済・軍事の急激な台頭に伴い、東アジアの安全保障体制は一気に不安定化した。危機感を抱いたアメリカは、中国の急成長を抑止するため、様々な対交策を打ち出している。生産・流通(貿易)・金融の主要な経済分野を巡る対立ばかりか、軍事分野での相互不信に基づく緊張状態が相乗されている。GDP で世界第 1 位と第 2 位の経済力を有する米中が経済・軍事両分野で厳しく緊張している状態が、国際政治経済を俄かに不安定化させる原因となっている。さらにロシア・ウクライナ戦争など世界各地で頻発している軍事紛争、EU への難民の流入と加盟国内の右傾化、同盟国間の対立など、米中関係の緊張がその解決を一層困難にしている。この状態を一般的に「米中新冷戦」と呼んでいる。
中でも半導体はデジタル経済が拡大する中、その重要性はますます高まっている。2020年には新型コロナウィルスの蔓延による半導体工場の操業停止などにより、全世界的な半導体不足があらゆる産業に大きなダメージを与えた。ここで安全保障上の懸念材料となったのが台湾だ。台湾は、世界トップレベルの半導体製造企業TSMCを擁し、世界の半導体の約60%、最先端のロジック半導体の90%以上を製造している(ロジック半導体とは、世界最先端の通信機器やコンピュータの頭脳の役割を担う主要部品で、人口知能の主導権争いにおいても重要な役割)。この台湾を中国が政治的経済的にコントロールするようなことがあれば、中国は世界で最も重要な製品の支配権を握ることになるだろう。アメリカは、同盟国やパートナー国との緊密な関係を活用して、半導体のサプライチェーンのレジリエンスを高め、台湾と協力して軍事力と経済力を強化する必要に迫られている。
我が国はどう対応していくべきなのだろうか。ここで日本の経済安全保障について簡単におさらいしてみよう。
日本の経済安全保障
日本政府は、国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、安全保障を確保するためには、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大しているとの観点に立ち、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するため、「経済安全保障」を政策の主要な柱とすることを決定している。
日本の経済安全保障の目的は、第一に「戦略的自律性の確保」であり、第二に「戦略的不可欠性の獲得」である。「戦略的自律性の確保」とは、国民の生活や社会経済活動の維持に不可欠な基盤を強化するためのサプライチェーンの確保のことであり、例を挙げれば、コロナ禍におけるマスクや人工呼吸器の確保などがある。「戦略的不可欠性の獲得」とは、我が国の産業の存在が国際社会にとって不可欠であるような分野を戦略的に拡大することであり、例を挙げれば、半導体の復興、AI、量子コンピュータなど重要技術の発展と流出防止などがある。
そして政府は、2022年5月、経済安全保障推進法を成立させて、(1)重要物資の安定的な供給の確保、(2)基幹インフラ役務の安定的な提供の確保、(3)先端的な重要技術の開発支援、(4)特許出願の非公開という4つの制度を創設した。この中で半導体は、「国民の生活や社会経済活動の維持に不可欠な重要物資」であると同時に「我が国の産業の存在が国際社会にとって不可欠であるような分野」として取り上げられ、極めて重要な役割を持つ。
経済産業省の半導体産業復興戦略
1980年代、半導体は日本の代表的な産業の1つであり、世界シェアの50.3%を占めていたが、今では10%程度のシェアに低下している。その原因について経済産業省は次のように分析している。
   日米貿易摩擦によるメモリー敗戦
1980年代、世界を席巻した日の丸半導体メーカーは、日米半導体協定による貿易規制が強まる中で衰退。その後、1990年代、半導体の中心が、メモリー(DRAM)から、ロジック(CPU)へと変わる潮流をとらえられず。
   設計と製造の水平分離の失敗
1990年代後半以降、ロジックの設計・製造が垂直統合型から、オープンなアーキテクチャ(ARM)を用いたファブレス企業/ファウンドリー企業の水平分離型の新潮流へ。しかしながら、日の丸半導体メーカーは電機・情報通信機器の親会社が競争力を失う中で、半導体製造部門の切り出し・統合が難航。
   デジタル産業化の遅れ
21世紀に入り、PC、インターネット、スマホ、データセンタの普及など、世界的にデジタル市場が進展する中で、国内のデジタル投資が遅れ、半導体の顧客となる国内デジタル市場が低迷。必要な半導体の国内設計体制を整えられず、現状、先端半導体は海外からの輸入に依存。
   日の丸自前主義の陥穽(かんせい)
1990年代後半以降、多額の研究開発・技術開発予算を投じてきたものの、日の丸自前主義に陥り、供給側(設計・製造・装置・素材)の担い手はもとより、需要側(デジタル産業)も含め世界とつながるオープンイノベーションのエコシステム(欧州Imec、米国Albany)や国際アライアンスを築けず。
   国内企業の投資縮小と韓台中の国家的企業育成
バブル経済崩壊後の平成の長期不況により将来に向けた思い切った投資ができず、国内企業のビジネスが縮小。 一方で、韓国・台湾・中国は、研究開発のみならず、大規模な補助金・減税等で長期に亘って国内企業の設備投資・支援して育成。
こうした日本の半導体産業の現状を踏まえて、経済産業省は、「半導体は、デジタル社会を支える重要基盤・安全保障に直結する戦略技術として死活的に重要であり、経済安全保障の観点から、国家として整備すべき重要半導体の種類を見定めた上で、必要な半導体工場の新設・改修を国家事業として主体的に進めることが重要である」と認識し、具体的には、「先端半導体を国内で開発・製造できるよう、海外の先端ファウンドリーの誘致を通じた日本企業との共同開発・生産や、メモリ・センサー・パワー等を含めた半導体の供給力を高めるための我が国半導体工場の刷新等について、他国に匹敵する大胆な支援措置が必要」との基本方針を決定した。
この基本方針に基づいて、台湾のファウンドリーTSMCの誘致とラピダスの新設が具体化した。
   図1 半導体の製造工程のイメージ
半導体製造工程は主に設計、前工程、後工程、販売に分かれる。ファウンドリーとは、半導体委託製造会社のことで、設計と販売を除いて半導体集積回路の生産を専門に行う企業・工場を言う。
台湾積体電路製造(TSMC)の誘致と半導体委託製造会社「ラピダス」の新設
   (1)台湾積体電路製造(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company、略称TSMC)
熊本県菊陽町の工業団地「セミコンテクノパーク」に近接する約21.3haの敷地に日本最大級の半導体工場が建設されている。スマートフォン、車載用ロジック半導体(22/28nmと12/16nmプロセス)を、12インチウエハ換算で月産5.5万枚を生産する計画で、初回出荷は2024年12月を予定する。このプロジェクトには、ソニー・セミコンダクタ・ソリューションズ(SSS)とデンソーが参入しており、投資額は1兆1,000億円(うち日本政府は4000億円を補助)に上る。
工場の建設は鹿島建設が受注し、他にも関連企業約80社(素材、化学製品、ガス供給など)の施設が建設されている。従業員用の賃貸住宅700〜800世帯などが続々と新設されており、周辺はにわかに不動産バブルの状況となっている。また工事車両の往来により道路渋滞が発生しており、工場完成後も通勤による渋滞が予想されるため、複数の道路整備が計画されている。
熊本県の雇用は、TSMCの1,700人〜3,000人を含み関連会社計7,500人が見込まれており、熊本大学では、2022年に半導体分野で新しいセンターを設置するなど人材育成に力が入れられている。こうした一連の経済効果は10年間で4兆2,900億円と推計される。
   (2)半導体委託製造会社ラピダス
トヨタ自動車、NTT、ソニーグループ、ソフトバンク、NEC、デンソー、キオクシア、三菱UFJ銀行の8社が計73億円を出資して、半導体委託製造会社ラピダス(Rapidus、本社東京)を北海道千歳市に新設する。ラピダスはラテン語で「速い」を意味する。経済産業省は、補助金2600億円を支給して支援して、米国IBMと手を組み2nmの次世代半導体の国産化を目指す。
研究開発を含めて5兆円規模の投資が見込まれており、千歳市周辺に関連産業の集積も進む可能性が高い。さらに経産省は「技術研究組合最先端半導体技術センター(Leading-edge Semiconductor Technology Center、略称LSTC)」を設立し、産業技術総合研究所や理化学研究所、東大などが共同参画。海外研究機関・企業との共同研究プロジェクトを組成し、ラピダスが目指す次世代半導体の量産化技術に応用させていく予定だ。
半導体産業を復興させるためには
TSMCの誘致とラピダスの新設は、日本が半導体産業の復興を目指すための「はじめの一歩」でしかない。東京エレクトロンなど世界的な半導体製造装置メーカーが揃っている日本だが、外国のファウンドリーに左右される現状では、その地位が不安定化する恐れがある。まずは国内に大規模なファウンドリーを設置して半導体製造装置産業や大学、産総研などとのエコシステムを構築する。加えて、国際的な民主主義国の連帯による半導体サプライチェーンを作って、世界的に需要と供給のバランスを図る必要がある。また将来のIoT社会を視野に入れれば、ラピダスが開発しようとしている線幅2ナノレベルの最高水準の半導体は完全自動運転の実現などに必須である。さらにメモリーやセンサー、パワー半導体など、ロジック半導体以外の多様な半導体の生産力を確保する。そして、今でも国際的に大きな影響力を持つ半導体製造装置や素材関連の日本企業の強みを伸ばすため、研究開発や設備投資を一層強化するべきだ。最後に忘れてならないのは人材育成だ。JEITA(電子情報技術産業協会)は「半導体業界の未来のためには若手人材の採用が急務だ」とし、キオクシア、マイクロン メモリー ジャパン、三菱電機、ヌヴォトン テクノロジージャパン、ルネサス エレクトロニクス、ソニー、東芝、ロームの主要8社で、10年間で4万人の半導体人材が必要だと説明している。
   図2 素材・製造装置産業等と連携した先端半導体製造プロセス
日本の1製造装置・素材産業の強み、2地政学的な立地優位性、3デジタル投資促進をテコに、戦略的不可欠性を獲得する観点から、日本に強みのある製造装置・素材のチョークポイント技術を磨くために、海外の先端ファウンドリーとの共同開発を推進する。さらに、先端ロジック半導体の量産化に向けたファウンドリーの国内立地を図る。具体的には、先ず先端半導体製造プロセスの1前工程(微細化ビヨンド2nm)、2後工程(実装3Dパッケージ)で、我が国の素材・製造装置産業、産総研等と連携した技術開発を順次開始。さらに、こうした開発拠点をベースに、将来の本格的な量産工場立地を目指す。
一方、安全保障に目を向ければ、米中新冷戦の行きつく先にあるとされる「台湾有事」の問題がある。台湾は中国が自国の領土と主張しており、2027年までに軍事的に併合する可能性が高いと指摘されている。台湾が世界的な半導体供給地であることから、台湾有事は世界の半導体供給に壊滅的打撃を与えるおそれがある。日本が台湾のTSMCを誘致して半導体生産を維持することは日本の半導体需要に応えるだけではなく、台湾のリスクを分散して世界の半導体の安定供給に貢献することにもなるのだ。 
 11/15

 

●さえない内需、GDP下押し補えず デフレ脱却「宣言には距離」 11/15
日本経済を支える内需がさえない。2023年7―9月期実質国内総生産(GDP)は外需の下押し要因も重なり、成長率が3・四半期ぶりのマイナスに転じた。「デフレ完全脱却」を掲げて経済の立て直しを急ぐ岸田政権が、デフレ脱却を宣言できる環境とするには依然として距離がありそうだ。
けん引役不在の日本経済
7―9月期のGDPは物価変動の影響を除く実質で前期比0.5%減、年率換算で2.1%のマイナス成長となった。外需がけん引した4―6月期の高成長から一転して外需がマイナス寄与となり、内需も振るわなかった。
内需はコロナ禍からの回復の足取りが鈍い。内閣府によると、GDP全体では21年10―12月期にコロナ前のピーク(19年10―12月期)を上回ったが、個人消費は14年1―3月期(約310兆円)になお届いていない。
内需を両輪で支える企業の設備投資も、これまで最大だった19年7―9月期(約93兆円)に達しておらず、「景気が緩やかに回復しているという判断そのものに変化はないものの、けん引役不在の状況は否めない」と、政府関係者の1人は語る。
総務省が7日発表した9月の家計調査によると、2人以上の世帯の実質消費支出は前年比2.8%減となり、マイナスが7カ月続いた。家計では物価高の影響から足踏みが目立つ。
不透明感漂う原油動向
先行き10―12月期の実質GDPは「自動車の挽回生産やインバウンド(訪日外国人)需要の回復に支えられ、プラス成長に復帰する」(日本総研の後藤俊平研究員)との見方が多い。
もっとも欧米で金融引き締めの影響が強まれば輸出が伸び悩み、引き続き外需がマイナス寄与となる懸念は拭えない。暗雲漂う中国経済にも期待できず、内需でどこまで支えきれるかが焦点となる。
原油価格の不安定な動きもリスク要因となる。イスラエル・ハマスの衝突で軒並み原油先物価格が急騰したが、足元では一転して安い。オイルマネーの縮減が「アラブの春」と呼ばれる民主化運動に発展した過去もあり、泥沼化すれば、原油価格は再び騰勢を強める展開も予想される。
今のところはプラスを予想しているとはいえ、「原油価格が直近ピーク(1バレル=130ドル)まで上昇した場合、個人消費を年率で0.2%ポイント下押ししかねない」(前出の後藤氏)との懸念が残る。
来年半ば以降の判断か
GDPの公表に先立ち、政府は、所得税減税を含む17兆円台前半の経済対策を打った。経済押し上げ効果を実質GDP換算で19兆円程度と想定し、デフレからの完全脱却をうたう。別の政府関係者は「デフレ脱却の千載一遇のチャンス」と強調し、脱却宣言にこぎ着ければ政治的成果としてレガシーになる、としている。
とはいえ、デフレ脱却の4条件のうち、23年4―6月期に3年9カ月ぶりのプラスに転じたGDPギャップは今回、再びマイナスになることが予想され、先行きもゼロ近傍で推移する見通しだ。デフレに逆戻りする危うい状態からは脱しきれていない。
市場には「実質賃金のマイナスが続く現状では、好循環実現をアピールしにくく、来春のデフレ脱却宣言は難しいと政府が判断する可能性がある」(みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介・主席エコノミスト)との見方がある。
早くても24年6月の所得税減税で可処分所得が引き上げられ、実質賃金のプラスが視野に入る「来年半ば以降の判断となる可能性が相応に高い」と、前出の酒井氏は言う。 
●岸田首相 三宅防衛政務官のセクハラ報道受け「より適切に説明を」と指示 11/15
岸田首相は15日、三宅伸吾防衛政務官が、10年前に事務所スタッフにセクハラを行っていたと報じられたことについて記者団から問われ、「本人から防衛大臣に対して報告が行われたと承知している。防衛省・自衛隊においては現在、木原防衛大臣のもとであらゆるハラスメントを根絶すべく組織を挙げて取り組んでいるところだ。こうした状況を受けて、防衛大臣を補佐する立場にある大臣政務官に対する報道については、より適切に説明が行われるべきである旨を私の方から指示を出しているところだ」と述べた。
三宅防衛政務官は文春オンラインで、2013年に当時、自らの事務所スタッフだった女性に対し、カラオケ店の個室で体をまさぐったり、服を脱がそうとしたり、無理矢理キスをするなどセクハラ行為を行ったと報じられた。
これを受けて三宅政務官は15日、報道内容について「全く身に覚えがない」と否定した上で、16日にも文春に抗議文を送る意向を示した。ただ詳細を尋ねる記者団に対して「改めて機会を見て説明させていただく」と述べるにとどめ、詳しい説明は避けた。
●親中リベラルではダメ!高市早苗氏が決起、現職閣僚の異例の勉強会発足 11/15
政界有数の保守政治家である高市早苗経済安全保障相が15日、自民党内に勉強会を発足させる。現職閣僚としては異例の動きで、来年秋の総裁選に向けて党内の支持基盤を固める意向とみられる。内閣支持率の急落に直面する岸田文雄政権だが、リベラル・親中色の強まりを嫌気する「岩盤保守層」の離反が加速したとの観測もある。「女性初の宰相」としても期待される高市氏の動向が注目を集めそうだ。
勉強会の名称は「『日本のチカラ』研究会」で、高市氏自身が会長に就く見通しだ。15日に初会合を開き、初回は日本大学危機管理学部教授の小谷賢氏から「インテリジェンス」のレクチャーを受ける。小谷氏は、防衛省防衛研究所主任研究官、英国王立統合軍防衛安保問題研究所客員研究員などを歴任したスペシャリストだ。
同会は今後、月に数回のペースで会合を開く予定というが、狙いはどこにあるのか。
ベテラン議員は「岸田政権で、自民党は『保守層』の支持を失った。保守派が一致結束しなければならない危機だ」と語る。
最近の世論調査では、自民党支持層の内閣支持率が急落している。中でも、LGBT法の拙速な法制化や、中国が、沖縄県・尖閣諸島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内に無断で設置した「海洋ブイ」について、毅然(きぜん)とした対応を取れない外交姿勢などが、岩盤保守層の反発を招いているとされる。
中堅議員は「自民党を支えてきた岩盤保守層の支持を取り戻すには、保守派の政治家が主導権≠取り、党をリードする姿をみせるしかない。『ポスト岸田』が親中リベラルでは、二度と保守層の支持は戻ってこない」という。高市氏は旗頭というわけだ。
その先には、次期総裁選もある。
2021年の総裁選で、安倍晋三元首相は高市氏を推した。岸田首相に敗れたが、高市氏自身は、総理・総裁に強い意欲を示し続けている。
今後、「ポスト岸田」の動きが加速するのか。
政治評論家の有馬晴海氏は「岸田首相の『次』は具体化しておらず、『運動』としての広がりはない。目的をつくって塊を形成するのは重要で、早く手を挙げた高市氏に支持が集まる可能性がある。一方で、高市氏は無派閥で直系の『親分』『子分』がいない。どれだけ支持が広がるかは不透明だ」と語った。
●年内解散断念に追い込まれた要因 岸田首相に「瞬時の決断力」欠如 1/15
岸田文雄首相(自民党総裁)が、年内の衆院解散・総選挙を見送る方針を固めたという報道が先週、続いた。首相自身は、解散するもしないも言わないのが永田町の常識であり、岸田首相も明言はしていない。だが、自民党内も「年内解散断念」という空気に包まれている。
直近の報道各社の世論調査では、内閣支持率が「過去最低」という結果が相次いでいた。この情勢を受け、党内には「解散させたくない」という有力者の存在もあり、岸田首相は追い込まれて、現在の状況に至った感が強い。
ここまでジリ貧となった要因は、岸田首相が重要局面で「瞬時の決断」を下せなかったことにあるのではないか。
その典型例は、6月の「解散騒動」だ。5月19〜21日に広島県で開かれたG7(先進7カ国)首脳会議の直後、衆院解散がささやかれた時期があった。岸田首相自身が6月13日、「諸般の情勢を総合して判断する」と笑みを浮かべて解散風をあおるような発言をしたものの、わずか2日後に「今国会での解散は考えておりません」と述べ、自ら火消しを行った。
首相にとって「伝家の宝刀」である解散権。「刀の鞘に手をかけた以上抜ききらないと、その後は思うようにいかなくなる。いわんや、解散権を弄んだ場合をや」。理屈では説明のつかぬ「魔の法則」のようなものがあると永田町では語り継がれている。
6月に解散を決めきれなかったことがつまずきとなり、岸田政権はその後、坂を転げ落ちるように支持率が低迷していく。
支持率回復を期したであろう、人事や政策も功を奏しなかった。
岸田首相は9月に内閣改造を行ったが、山田太郎参院議員が女性問題で文科政務官、柿沢未途衆院議員が公職選挙法違反事件に絡んで法務副大臣を辞任した。神田憲次財務副大臣が代表取締役を務める会社が保有する土地・建物について、固定資産税の滞納で差し押さえを受けていたことも明らかになり、13日に辞任が決まった。自民党の5派閥に対する政治資金規正法違反容疑での告発も懸念材料だ。
一方、政策では「税収増などを国民に適切に還元する」として打ち出した経済対策も、批判を浴びている。岸田首相が描く全体像が一向に見えず、対応が場当たり的に変化したように見えたことが不評の要因と思われるが、その過程でも、首相の決断力の欠如が垣間見えた。
最高権力者は、毎分というレベルで「瞬時の決断」を求められる。安倍晋三元首相は、政策の全体像や解散戦略を事前に練りに練っていたため、一度決めたら揺るがず、突き抜けた。岸田首相は、しっかりとした政策パッケージを示しておらず、全体像を描いていないことが、今回の経済対策策定における決断の揺れにつながっているのではないか。
自民党内では、年内解散断念を受けた有力者の動きが活発化している。
10日には、岸田首相が麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長と東京都内のホテルの中華料理店で会食し、その前日には、菅義偉前首相が二階俊博元幹事長、森山裕総務会長らと都内の日本料理店で会食を行った。
注目は、岸田首相が反転攻勢に出られるのか、逆に「ポスト岸田」に向けた動きが強まるのかという点だ。激しさを増すであろう自民党内の駆け引きから、目が離せない状況となってきた。
 11/16

 

●菅義偉前首相、岸田政権に苦言「説明が足りない」 11/16
菅義偉前首相(74)が15日、ABEMA「Abema Prime(アベプラ)」(月〜金曜後9・00)に生出演し、岸田文雄首相の政権運営について苦言を呈する場面があった。
番組の進行役を務めるテレビ朝日の平石直之アナウンサーから「岸田さんが今苦労されているところもあって、おっしゃりにくいかもしれませんが、どんなふうに見てらっしゃいますか?」と聞かれると、「おっしゃりにくいですが」とスタジオの笑いを誘った菅前首相。
総理時代にやり残したことを聞かれると少子化対策を挙げ、「準備はしたが途中で退陣したので」。そして岸田首相が掲げる“異次元の少子化対策”について「そこに集中してやることが必要。軸を作ったら方向性がきちっと進んでいくまでしっかりやっていく必要がある」と語った。
そして経済政策について「今回の所得税の減税のように国民の皆さんになかなか届かないというのは、やはりきちっと説明していく必要があると思う。説明が足りない」と岸田政権に苦言も。
自身は官房長官として安倍政権を支えたが岸田首相にはそのような側近がいないのでは?と聞かれると「そんなことはないですよ。しっかりした人たちが付いていると思います」とした。
また、自身の首相再登板の可能性について問われると「私はもうやることはない」と改めて否定。「官房長官7年8カ月、総理1年でしたけど、その期間は緊張の連続だった。もう1度というのはなかなか難しい」と話した。
●消費低迷で景気腰折れ懸念 7〜9月期GDP、3期ぶりマイナス成長の急変 11/16
景気回復に急ブレーキだ。内閣府が発表した2023年7〜9月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、物価変動を除く実質で前期比0・5%減、年率換算は2・1%減とマイナス成長だった。食品価格の上昇などで家計の節約志向は強く、GDPの5割超を占める個人消費が減少した。岸田文雄首相は所得税・住民税の減税と来年の賃上げを強調するが、国民の生活と日本の景気を守ることができるのか。
年率換算の成長率は1〜3月期と4〜6月期はそれぞれ3・7%増、4・5%増と高水準だっただけに、景気の急変ぶりが際立っている。
7〜9月期の実質GDPの内訳を見ると、個人消費は前期比0・04%減だった。GDPへの寄与度は「内需」がマイナス0・4ポイント。GDPが減少した理由のほとんどを、個人消費、設備投資、住宅投資、公共投資など「内需」の不振で説明できる。
政府は年内にも住民税の非課税世帯に7万円の給付を始める。来年6月には4万円の所得税減税を行う予定だ。
岸田首相は15日、来年の春闘で今年を上回る賃上げを経済界に要請した。大企業は賃上げに積極的だが、中小企業にも波及するのか。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は「中小、零細企業の経営者の立場からすると、いったん賃金を上げると、その後、簡単に下げることはできないので、賃上げに慎重になるのは当然だ。緊急経済対策では可処分所得の低い人ほど恩恵を受ける消費税を下げるべきだ。岸田政権は『減税』という言葉でごまかしたかったのだろうが、庶民は『結局は増税になる』と見抜いている」と指摘した。
●内閣支持21.3%、最低更新 自民も下落19%―時事世論調査 11/16
時事通信が10〜13日に実施した11月の世論調査によると、岸田内閣の支持率は前月比5.0ポイント減の21.3%だった。岸田政権で過去最低だった前月をさらに下回り、2012年12月の自民党政権復帰後に実施した調査でも最低となった。不支持率は同7.0ポイント増の53.3%で岸田政権として最も高くなった。
内閣支持率が政権維持の「危険水域」とされる2割台となるのは4カ月連続。自民党の政党支持率は19.1%で、政権復帰以来最低だった前月からさらに1.9ポイント減らした。総合経済対策に盛り込まれた定額減税への厳しい評価や、自民所属の政務三役の相次ぐ辞任が影響した可能性がある。
岸田文雄首相が打ち出した所得税・住民税の計4万円減税に対しては「評価しない」が51.0%と半数を超え、「評価する」は23.5%。住民税が課税されない低所得世帯への7万円給付は「評価しない」44.4%で、「評価する」は33.4%だった。
10月26日に山田太郎氏が文部科学政務官を、同31日に柿沢未途氏が法務副大臣を辞任した。首相の任命責任について「重い」と答えた人は57.5%に上り、「重くない」は14.7%にとどまった。調査最終日の今月13日には神田憲次氏も財務副大臣を辞任した。
内閣を支持する理由(複数回答)は、多い順に「他に適当な人がいない」9.8%、「首相を信頼する」3.8%、「印象が良い」3.5%など。支持しない理由(同)は、「期待が持てない」(31.8%)、「政策がだめ」(27.3%)、「首相を信頼できない」(20.0%)の順だった。
政党支持率は自民に続き、日本維新の会4.6%(前月比0.7ポイント増)、公明党4.1%(同1.0ポイント増)、立憲民主党2.7%(同0.4ポイント減)の順。以下、れいわ新選組1.6%、共産党1.1%、国民民主党0.9%、社民党と参政党がいずれも0.5%、みんなでつくる党(旧政治家女子48党)0.1%。「支持政党なし」は62.5%だった。
消費減税「賛成」6割 「反対」は2割
時事通信が10〜13日に実施した11月の世論調査で消費税減税の賛否を尋ねたところ、「賛成」が57.7%、「反対」が22.3%だった。「どちらとも言えない・分からない」は20.0%。
支持政党別では、自民党支持層で賛成48.2%、反対33.9%。賛成は立憲民主党支持層で71.0%、日本維新の会支持層で58.5%。反対はいずれも22.6%だった。ほぼ全ての政党で賛成が反対を上回った。
万博開催「不要」55.9% 「必要」は2割
時事通信が10〜13日に実施した11月の世論調査で、会場建設費が膨らんでいる2025年大阪・関西万博の開催の必要性を尋ねたところ、「必要ない」が55.9%だった。「必要だ」は20.3%、「どちらとも言えない・分からない」は23.8%。
支持政党別にみると、自民党支持層では「必要だ」23.9%、「必要ない」49.5%。関西地域を支持基盤とする日本維新の会支持層では「必要だ」34.0%、「必要ない」47.2%だった。立憲民主党や公明党支持層では「必要だ」は2割に満たず、「必要」が「不要」を上回った政党はなかった。
万博の会場建設費は当初1250億円とされていたが、物価高騰などを背景に2回にわたり増額され、約1.9倍の最大2350億円になっている。
●岸田内閣醜聞ラッシュが止まらない!三宅伸吾防衛政務官に性加害疑惑 11/16
文科政務官、法務副大臣、財務副大臣と辞任ドミノが続く岸田内閣の政務三役にまた醜聞だ。こんどは防衛政務官のセクハラ疑惑が報じられた。
16日発売の「週刊文春」で、三宅伸吾防衛政務官の議員会館事務所で働いていた女性スタッフ(A子さん)がセクハラ被害を告発している。
「女の子はみんな人魚に…」
被害を受けたのは、三宅氏が参院議員に初当選した2013年のこと。事務所の人間関係に悩んでいたA子さんが相談メールを送ると、食事に誘われ、西麻布のフランス料理店を指定された。食事後、三宅氏はA子さんを連れて看板のないカラオケ店に移動。大きな水槽が置かれた個室に入るなり、「ここに来ると、女の子はみんな人魚になるんだよ」と囁き、A子さんにキスをせがんだという。
「そのまま体をまさぐられ、服を脱がされかけました」とA子さんは証言。三宅氏と顔を合わせるのが怖くなり、事務所を退職したというのだ。
事実ならセクハラどころか卑劣な性加害というべき事案で、いったい何人の女性を人魚にしてきたのかという疑念を抱かざるを得ないが、三宅事務所は文春の取材に対して「(セクハラは)事実ではない」と否定。15日報道陣のぶら下がり取材に応じた三宅氏も「全く身に覚えがない」と話した。代理人を通じて文春に抗議文を送るという。
元日経新聞記者の三宅氏は、13年に参院香川選挙区から初出馬して当選。現在2期目で、派閥には所属していない。公式HPを見ると、プロフィルに「趣味 カラオケ」とある。
「官邸は、とりあえず三宅本人に説明させるスタンスで、様子見の構えですね。仮にセクハラが事実だったとしても、10年前の話で現在進行形ではないから逃げ切れると判断したのだろう。だが、第2、第3の被害者やセクハラの証拠音声が出てきたらアウトだ。4人目の辞任ドミノになれば、政権へのダメージは計り知れないよ」(自民党の閣僚経験者)
5人目、6人目も時間の問題
11日に航空自衛隊の観閲式で訓示を行った岸田首相は、「あらゆるハラスメントを一切許容しない組織環境を作り上げ、ハラスメントを根絶」と綱紀粛正を求めたばかり。自衛隊でセクハラなどの不祥事が相次ぐ中、防衛政務官に性加害疑惑ではシャレにならない。身に覚えがないならなおさら、三宅氏は説明責任を尽くす必要があるだろう。
「続報の可能性を考えると、三宅さんも下手なことは言えない。厳しい立場だと思います。もっとも、永田町では早くも三宅さんの“次”の政務三役が話題になっている。某省の副大臣が何かやらかして雑誌メディアに追いかけられているとか、パワハラ疑惑じゃないかという噂も流れています。9月の内閣改造で、官邸サイドは副大臣・政務官人事は派閥の推薦をそのまま受け入れ、ロクに“身体検査”も行われなかった。スキャンダルが続出するのは当然という気もします。5人目、6人目が出てくるのは時間の問題でしょう」(官邸関係者)
岸田首相が各派閥に配慮したのは、来年の自民党総裁選で支えてもらうためだ。再選戦略を重視した人事に足をすくわれ、支持率下落が止まらない。政務三役の醜聞ラッシュは、自分の再選しか頭にない岸田首相の自業自得だ。
●3年目の岸田内閣、世論調査から見えた「若者がどんどん離れていく」理由 11/16
岸田内閣が発足から3年目に入った。参院選で大勝した2022年7月までは5〜6割台に上っていた高い支持率も、23年10月に実施した読売新聞社の最新の全国世論調査では、政権発足以降で最低の34%まで下落した。支持率低迷の背景を探ると、政策に希望を持てない若年層の存在が浮かび上がる。参院選で自民党が大勝し、支持率が高まった政権の絶頂期に若者離れはすでに始まっていた。
最新の調査は10月13〜15日に電話方式で実施した。内閣支持率が3割台になるのは7月以降、4か月連続になる。岸田内閣の2年間の実績を評価する人は「大いに」の4%と「多少は」の40%を合わせて44%。評価しない人は「あまり」の36%と「全く」の17%を合わせて53%と半数を超えた。岸田首相は9月から10月にかけて、内閣改造や経済対策の方針表明、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令請求などを相次いで打ち出したが、支持率回復にはつながっていない。
22年7月の参院選以降、浮き沈みが顕著に
この2年間の支持率は、安倍元首相銃撃事件と参院選があった22年7月を境に、安定期と不安定期に大別される。
2021年10月の内閣発足後、22年7月までの安定期には、多少の増減はあるものの5〜6割の高い支持率を維持した。就任直後の衆院選は圧勝。新型コロナウイルス対応では、安倍、菅両内閣とは異なり、目立った失策もなかった。22年2月のロシアによるウクライナ侵略でも、政府対応への評価は高く、支持率は安定した。
政権発足から半年たった22年4月の内閣支持率は59%。読売新聞社が定例の世論調査を開始した1978年3月より後に発足した大平内閣以降の歴代内閣で比較すると、半年間にわたって5割以上を維持し続けたのは、岸田内閣以外では細川内閣、小泉内閣、第2次安倍内閣の3内閣だけだ。当時の読売新聞は「岸田内閣の安定感は異例と言える」(22年4月4日付朝刊)と報じた。
安倍氏国葬・マイナカードなどマイナス要因に
G7サミットの成果は内閣支持率を押し上げたが……。左からショルツ独首相、バイデン米大統領、岸田首相、ウクライナのゼレンスキー大統領、マクロン仏大統領(5月21日、広島市南区で)
この年の7月8日、安倍元首相が参院選の街頭演説中に銃撃されて死亡し、2日後の参院選で自民党は大勝する。直後の調査では、内閣支持率は発足以降2番目に高い65%となったが、その後は安定感が失われ、浮き沈みを繰り返す。
安倍氏の銃撃で発覚した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への対応や、開催で賛否が分かれた安倍氏の国葬をきっかけに、支持率に陰りが見え始めた。閣僚などの不祥事、物価高もマイナス要因となり、22年11月には36%にまで低下したが、年明け以降は回復基調に転じた。
23年5月に広島市で開催された先進7か国首脳会議(G7サミット)を前に、日韓首脳会談や首相のウクライナ電撃訪問といった外交成果がプラス材料となり、支持率はゆるやかに上昇。サミット開催の5月には政権発足時と同レベルの56%に達し、衆院解散も取りざたされた。しかし、直後にマイナンバーカードをめぐるトラブルや首相の長男を巡る問題が発覚すると、再び下落に転じ、10月には過去最低を更新するに至った。
第2次以降の安倍内閣で支持率が最も低かったのは、森友学園や加計学園を巡る問題で大きな批判を浴びて東京都議選で自民党が大敗した17年7月の36%。退陣表明直前の20年8月でも37%を保っていた。現在の岸田内閣の支持率はそれを下回る状況が続いており、政権は2度目の危機の最中にある。
若年層、絶頂期にすでに離反傾向
支持が失われた背景を、(1)発足当初の2021年10月、(2)絶頂期の22年7月、(3)過去最低を更新した23年10月の三つの調査データから考えてみよう。
まずは発足時。内閣支持率(全体56%)を年代別にみると、18〜39歳の若年層で62%、40〜59歳の中年層で54%、60歳以上の高齢層で53%となり、若年層の支持が最も高かった。
しかし、絶頂期の22年7月調査(全体65%)にはすでに、年代別の支持に変化が見られる。中年層が9ポイント増の63%、高齢層に至っては21ポイント増の74%へと支持率が高まったのとは裏腹に、62%だった若者の支持率は8ポイント減の54%に低下した。中高齢層の支持が全体の支持率を押し上げる一方、年代別の支持の構造は「若高老低」から「若低老高」に切り替わっていたことが分かる。
過去最低となった23年10月調査(全体34%)でも、この「若低老高」の傾向は変わっていない。若年層が26%、中年層が29%、高齢層が43%と、全体的に目減りしながらも、引き続き高齢層が内閣支持率を下支えする構造となっている。
早稲田大学の遠藤晶久教授(投票行動論)は、「伝統的な自民党政権は、高齢層の支持が強いのが特徴だった。若年層の支持率が高かった時期の岸田内閣は、第2次以降の安倍内閣とその後継の菅内閣と同様の支持構造だったが、現在は安倍内閣以前の支持構造に回帰している」と指摘。その要因については、「安倍政権は『改革的』というイメージが若者の中にあったが、岸田政権にはそのようなイメージがもたれておらず、『自民は支持しないけど安倍さんは支持』といったパターンが減ったのではないか」と分析している。
少子化対策・物価高対策…軒並み低い評価
支持が上向かない要因として考えられるのが、内政面を中心とした政策への低い評価だ。
内閣改造直後の今年9月調査では、「岸田内閣に優先して取り組んでほしい課題」(複数回答)で、「景気や雇用」87%、「物価高対策」86%などが上位を占めていた。
しかし、10月調査で岸田内閣の「取り組みを評価するもの」を複数回答で聞いたところ、「少子化対策」が30%、「景気や雇用」が24%、「物価高対策」は17%と内政面で首相が力を入れる政策の評価はいずれも低かった(トップは「福島第一原発の処理水と風評被害対策」の51%)。
政府が検討している経済対策に「期待できる」とした人はわずか21%。「期待できる」は若年層では19%と1割台だ。自民党支持層で38%、内閣支持層ですら43%と半数を下回った。内閣を支持しない人に、その理由を聞くと、「政策に期待できない」(全体で42%)は若年層では61%に達した。中年層の45%、高齢層の23%と比べて極端に高く、失望の強さがうかがえる。
増税への拒否感、若年層でも顕著
SNSではこの秋「増税メガネ」というフレーズが流行した。政府が防衛費増額の財源で増税を打ち出したことや、政府税制調査会の中間答申を巡り、通勤手当への課税など「サラリーマン増税」が報道で取りざたされたことに端を発したものだった。増税への拒否感は、若年層の支持離れの要因の一つになっている可能性がある。
読売新聞社が今年7〜8月に早稲田大学と共同で実施した郵送方式の世論調査では、防衛力強化のための財源として、増税することの賛否を「賛成」「どちらかといえば賛成」「どちらかといえば反対」「反対」の4段階で聞いている。
賛否と内閣支持率の関係をみると、増税にもっとも強い拒否反応を示した「反対」の人の内閣支持率が21%だったのに対し、不支持率は71%に達した。全体は支持が37%、不支持が54%だった。若年層に限って見ると、支持は10%で不支持は81%。増税への拒否感が内閣支持に与えた影響は他の年代より強かった。少子化対策の負担増に関する設問でも同じ傾向だった。
政府は11月2日に決定した経済対策で、来年6月に約9000万人を対象に1人あたり4万円の定額減税を行うことを盛り込んだ。記者会見で岸田首相は「来年夏の段階で賃上げと所得税減税を合わせ、国民所得の伸びが物価上昇を上回る状態を作りたい。あらゆる政策を総動員し、国民の可処分所得を拡大する」と述べ、増税イメージの打ち消しを図ったが、世論の評価は冷ややかなままだ。
高齢層の支持も盤石にあらず
衆院の解散総選挙はいつ?(2021年に行われた衆院選の開票作業、東京都新宿区で)
低迷する岸田政権の支持率を下支えしている高齢層の支持は必ずしも盤石ではない。この2年間の推移をみると、ウクライナ問題への対応が注目を集めた22年春、サミット前の23年春には他の年代より支持の上昇幅が高くなる傾向がある一方で、22年秋の旧統一教会問題やマイナンバー問題などに揺れた時期の下落局面では他の年代よりも落ち込みが激しかった。高齢層では政治ニュースが支持動向に敏感に反映される傾向が見て取れる。今後、深刻な不祥事などが発覚した場合、内閣の足元が一層危うくなる可能性もある。
衆院議員の任期は10月末で2年の折り返し地点を越えた。年内解散は見送られたが、解散総選挙の時期が取りざたされている。内閣支持率が低迷する中、基盤となる自民党の政党支持率も低下傾向にある。首相の自民党総裁としての任期は来年9月末まで。不人気な状況が続く中、自身の再選に向けた戦略をどう描くのか。まずは経済対策で着実な成果を上げることがカギとなりそうだ。
●「ポスト岸田」政局が加速、高市早苗氏の勉強会初会合 真の「保守政治」 11/16
政界有数の保守政治家である高市早苗経済安全保障相が自民党内に発足させた勉強会「『日本のチカラ』研究会」が15日、国会内で初会合を開いた。岸田文雄政権の内閣支持率が急落し、自民党を支えた「岩盤保守層」の離反が指摘されるなか、党内外の保守派や保守層を糾合できるのか。高市氏は来年秋の総裁選出馬へ意欲的で党内基盤を固める狙いがあるとみられ、今回の動きが「ポスト岸田」の動きを加速させる可能性がある。
「メッチャ勉強した。良い会になりましたよ」
初会合を終えた高市氏は、報道陣に笑顔でこう答えた。
非公開で外部の有識者を招き、サイバーセキュリティー対策などのレクチャーを受けた。出席者によると、高市氏は「さっそくお話を聞こう」と短くあいさつし、熱心に耳を傾けていたという。
真の「保守政治」復権へ
会合には、いずれも安倍派の山田宏参院議員や杉田水脈衆院議員、有村治子参院議員(麻生派)らを含め、派閥横断的に13人が参加した。今後は議員連盟とし、毎月、定期的に会合を開く方針だ。
高市氏ら出席者は「あくまで勉強会」と強調したが、額面通り受け止める向きは少ない。総裁選に向け「仲間づくりを急ぐ必要がある」(中堅議員)とみられているのだ。
関係者によると、入会者は数十人で、総裁選立候補に必要な推薦人数の20人を超えるという。この日の出席者に岸田首相率いる宏池会の議員はおらず「会合にはピリピリした雰囲気もあった」という。
リベラル・親中色の強い岸田政権だけに、保守の代表格で、「女性初の宰相」とも期待される高市氏には警戒感がある。総裁選まで1年を切るなか、現職閣僚としては異例の勉強会発足に「政局」を見て取っているのだ。
高市氏自身も、次期総裁選について「戦わせていただく」と言明している。2021年の前回は、無派閥ながら安倍晋三元首相が後ろ盾となり、国会議員票で善戦した。
勉強会や議員連盟は政局を動かすテコになる。菅義偉政権末期には、安倍氏らが「半導体戦略推進議員連盟」を設立し、政権の重圧となった。
一方で今月、小泉進次郎元環境相が、タクシー不足に対応する「ライドシェア」の超党派勉強会を発足させた。岸田政権に距離を置く菅氏がぶち上げた政策テーマだ。その菅氏は、進次郎氏を評価しており、勉強会は「総裁選へののろし」との観測もある。
高市氏の動きは政局につながり、支持は広がるのか。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「『ポスト岸田』につながる政局が動き始めた。支持率低迷で地方選挙は苦戦が続き『岸田首相では厳しい』との声が上がっている。次期総裁の条件は第一に『選挙で勝てる顔』だ。そして、自民党支持の3割を担う『岩盤保守を呼び戻す』こともカギになる。安倍氏の急逝で、保守はさまよった。岸田政権は迷走し、保守層が業を煮やした。百田尚樹氏の日本保守党設立は、そうした動きの一つだ。自民党の中で保守を代表するのは高市氏に他ならない。高市氏が出馬すれば自民党を離れた保守層が戻ってくる。ただ、高市氏の前途は簡単ではない。国民的知名度では高市氏を上回る候補≠烽「る。誰が主導権を握るか、混戦と仕掛け合いが続く」と語った。
●高市早苗氏の勉強会初会合はお寒かった…参加者13人 11/16
岸田内閣の一員でありながら、「ポスト岸田」に意欲をみなぎらせている高市経済安保担当相が自民党内に自身が主宰する勉強会を立ち上げた。来秋の党総裁選の足がかりとし、党内基盤を固める狙いだ。
ところが、15日の初会合は閑古鳥。本人を含め、衆参13議員しか参加しなかった。推薦人20人には及ばない。寂しい船出は行き先を暗示しているようだ。
取材NGのセコイ狙い
高市勉強会の名称は「『日本のチカラ』研究会」。月に1〜2回ペースで開催し、国力強化に向けた具体的な施策を議論すると力強いが、衆院議員会館で開かれた初会合はクローズド。
取材はNGだった。
「撮影を許可すれば、顔ぶれや人数がすぐに拡散してしまう。こぢんまりしていれば総裁選なんて無理なんだよという評価が固まるし、メンツが割れれば各派閥の締め付けも厳しくなる。それじゃ都合が悪いということなんでしょう。高市さんは初出馬した前回2021年総裁選で、岸田首相に次ぐ国会議員票を集めたと大きな顔をしていますが、首相を圧勝させたくない安倍元首相が当て馬として担いだに過ぎないんだから」(自民中堅議員)
なぜこの時期に初会合なのか
総裁選をめぐり、高市大臣が報道番組で「また戦わせていただきます」と宣戦布告してから1カ月あまり。松下政経塾の先輩の山田宏参院議員が仲間づくり勉強会の事務局長を務め、札幌法務局などに人権侵犯認定されてもヘイト発言を繰り返している杉田水脈衆院議員や、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)とベッタリの有村治子参院議員が参加。
いずれも、高市大臣同様に岩盤保守層を意識しているウヨ系面々だ。前回、推薦人に名を連ねていた参加者は山田氏のほか、小野田紀美元防衛政務官ら計4人のみ。全体の半数近くが中座していたが、終了後の高市大臣は「面白かった〜っ」と充実感をふりまきながら去って行った。
それにしても、なぜこの時期に初会合なのか。内閣支持率は政権発足後最低水準に落ち込み、防衛政務官のセクハラ疑惑で辞任ドミノはまだ続きかねない勢い。水に落ちた犬を打つのは信義にもとるともっぱらだ。
「総裁選から逆算し、政権の求心力が低下し始めたところに仕掛けようとはしていたものの、ここまでガタつくタイミングに重なるとは本人も周辺も想定外だったようです」(自民関係者)
ポスト岸田をさらに遠ざけた。
●自民 派閥会合 “政策実現に向けて結束すべき” 11/16
政務三役の辞任が相次ぐ中、自民党の派閥の会合では今年度の補正予算案の成立など、政策実現に向けて結束していくべきだといった意見が出されました。
麻生派の麻生副総裁は「3人の辞任は甚だ遺憾だが、こうした時は懸念や不安を口にせず、一人一人が襟を正して真摯(しんし)に精励するのが一番大事だ。補正予算案の審議など責任政党として大事な場面であり、気を引き締めてほしい」と述べました。
森山派の森山総務会長は「内閣と党の支持率が少し下降気味だが、一喜一憂せず協力すべきだ。補正予算案の成立をできるだけ急ぐのが今は一番大事であり、政策実現のための努力に徹したい」と述べました。
岸田派の林・前外務大臣は「後半戦の国会は『波高し』という状況だ。一致団結して岸田総理大臣を支え、総裁派閥としてまとまって行動したい」と述べました。
一方、安倍派の塩谷・元文部科学大臣は記者団に対し「不祥事が相次ぎ誠に残念だ。閣僚人事のあと副大臣と政務官の人事はバタバタと決まるが、適材適所にするためにもう少し時間をかけたほうがよい」と述べました。  
●自民党が直面「淘汰の季節」10年以上続いた春が過ぎ去り…国民の「評価」 11/16
国会議員は、「選良」とも呼ばれる。「選ばれた優れた人」という意味だ。だが、実際の選挙では、必ずしも「能力的にも人格的にも優れた人」が選び出されるとは限らない。大臣や副大臣、政務官など、役職の任命もそうだ。
第二次岸田文雄再改造内閣で辞任ドミノが起きている。
文科政務官だった山田太郎氏は、若い女性との不適切な関係を週刊誌に報じられて辞任した。法務副大臣だった柿沢未途氏も、木村弥生江東区長(15日付の辞職を表明)陣営が選挙期間中、有料広告をネット配信した公職選挙法違反事件に絡み、辞任した。
さらに、神田憲次財務副大臣にも不祥事だ。税金未納により、4度にわたって自社ビルを差し押さえられたことを週刊誌に暴露され、本人もその事実を認め、辞任した。
神田氏は、9日の参院財政金融委員会で「議員の職務が多忙になる中で、(納税を督促する)郵便物を見るのが遅れた」と弁明したが、釈明としては厳しいものがある。
秘書へのパワハラも指摘されている。神田氏の国会事務所、さらに地元事務所からも秘書が身を引き、「神田事務所には秘書がゼロ」の状態になった時期もあったという。
来客対応も印象的だった。議員会館の神田事務所には、「ノート」が置いてあり、来客は事務所に来た「日時」と「用件」を書き込むよう求められた。これだけ情報管理に厳格なのに、重要な納税の期限は見逃したということか。
国会で野党から厳しく追及された神田氏は「職責を全うしたい」と財務副大臣の辞任を否定した。さらに、内閣改造で「適材適所」と胸を張った岸田首相は、進退の結論を先送りし、さらに国民の怒りを買ってしまった。
税理士資格を持ちながら4度も税を滞納する人物に、財務副大臣は適任だったのか。政治家としての責任をどう考えるのか。ジリ貧の内閣支持率であえぐ岸田内閣の足を、さらに引っ張る形となった。
2012年に民主党から政権を奪還して以来、自民党は10年以上、一強体制を維持し、「わが世の春」を謳歌(おうか)してきた。
だが、世論調査が示す数字は、「春」が過ぎ去ったことを示している。いよいよ「淘汰(とうた)の冬」が始まった様相だ。その厳寒の中で生き残れるのは「本物の選良」のみに違いない。
神田氏も12年の衆院選で初当選した。早晩、「国民の信」は問われる。神田氏に限らず、「春」の恩恵を享受した自民党議員たちは、どのような成果≠残したのか、厳しく問われることになる。
●鳩山由紀夫氏、岸田首相を猛批判「この内閣はどこまで落ちるのか」 11/16
鳩山由紀夫元首相が16日、X(旧ツイッター)を更新。不祥事が相次ぐ岸田政権について「任命責任も当然」と指摘した。
内閣改造から約2カ月で政務官と副大臣の計3人辞める「辞任ドミノ」となり、自民党参院議員の三宅伸吾防衛政務官も、10年前に事務所スタッフだった女性にセクハラ行為を行ったとする内容の記事が「文春オンライン」に報じられた。
鳩山氏は「この内閣はどこまで落ちるのか」と言及。「他人に教育指導する文部科学政務官が不倫疑惑で辞め、法の番人の法務副大臣が公職選挙法違反の疑いで辞め、財政を預かる財務副大臣が税金滞納で辞め、今度は元々セクハラで揺れていた防衛省の政務官がセクハラ疑惑に晒され逃げられまい。こうなれば任命責任も当然だ」と指摘した。
岸田文雄首相は、政務三役の人事について「適材適所」を繰り返してきたが、10月26日に山田太郎文部科学政務官が女性問題で辞任。同31日には東京都江東区長側の公選法違反事件に絡んで柿沢未途法務副大臣が辞めた。今月13日には、過去の税金滞納を認めた神田憲次財務副大臣を事実上更迭した。内閣支持率は政権発足以来初めて3割をきり過去最低の”危険水域”となっている。
●岸田内閣の支持率、時事通信報道で21.3%まで下落 11/16
時事通信社は16日、11月の世論調査(11―13日)の結果を速報し、岸田内閣の支持率は前月比5ポイント下落し2012年の自民党政権復帰後最低となる21.3%、不支持率は7ポイント増の53.3%になったと報じた。自民党の政党支持率も19%台に落ち込んだ。
大手メディアでは唯一の個別面接方式での調査結果に、ジャーナリスト出身の保坂展人世田谷区長は自身のX(旧ツイッター)で「『青木率』(内閣支持率と政党支持率の合計が50を割ると政権運営が厳しくなるとされる青木幹雄元官房長官の経験則)も大きく割っている。まるで日が短くなるように支持率が落ちている」と感想を語った。
ネット上では「まだ、こんなにあるの? 衝撃的」「内閣支持率が過去最低だろうが選挙は自民党が勝ちます。何故なら政治無関心不参加層という実質支持層が日本の大半を占めてるからです」など、さまざまな感想が寄せられた。
 11/17

 

●高市氏「勉強会の狙いは国力の深掘り」入会者は45人 “党内基盤作り”か 11/17
高市経済安全保障担当相は17日、自身が主催する勉強会の狙いについて、「国家安全保障戦略の中の、国力の各要素を深掘りする」と説明した。
高市氏が主催する「『日本のチカラ』研究会」は、15日に初会合を行い、呼びかけ人の山田宏副幹事長のほか、有村元行革相、杉田水脈議員ら13人の自民党の国会議員が参加した。
高市氏は17日の記者会見で、この勉強会の狙いについて「岸田内閣が閣議決定した国家安全保障戦略の中の、国力の各要素を深掘りする」と説明した上で、「勉強の成果の内容によって、各所管大臣に申し入れをすることも可能だ」と強調した。
また、勉強会の入会者が、現時点で45人いることを明らかにした上で、「自民党の政調会の中での議論に役立ててもうらうことを想定している」と述べた。
この勉強会をめぐっては、来年秋の総裁選挙を見据えた動きとみられていて、派閥に属さない高市氏にとって、党内基盤作りにしたい狙いとみらているが、現職の閣僚の勉強会立ち上げは、異例の動きで、岸田内閣の支持率が低迷している中、党内に波紋を呼んでいる。
●安倍晋三元首相亡き後の日本政治は混乱に陥っている 11/17
岸田首相は「サザエさん」を見ているか
「サザエさん症候群」という言葉があるらしい。「サザエさん」(日曜pm6:30放送)の時間の頃になると、翌日の月曜に会社や学校に行くのがイヤで、憂鬱になることなのだそうだが、岸田文雄首相も最近は「サザエさん」を見ながら暗い気持ちになっているかもしれない。
なぜなら月曜には大体どこかのメディアが新しい世論調査の結果を発表するのだが、ここのところ毎週のように内閣支持率が「発足以来の最低記録」を更新し続けているからだ。
そして今週もFNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞の調査で8ポイントダウンの28%、NHKが7ポイントダウンの29%で、いずれも「発足以来の最低記録」、かつ「政権維持の危険水域」である30%を割り込んだ。
何をやっても裏目に出て、支持率が上がる気がしない。なぜここまで人気がないのか。
日本保守党への期待
一方で、作家の百田尚樹氏らが立ち上げた日本保守党の大阪での街宣の熱狂ぶりには驚いた。想定以上の人が集まったため危険であるとして、警察の要請で中止になったのだが、画面で見ているとすごい数の人が集まっているのに、ほとんどの人が静かに百田氏の演説を待っていた。
人々が「政治の変化」を熱望する一つの理由は岸田政権への不満だ。
日本保守党の結党宣言には「LGBT理解増進法にみられる祖国への無理解によって、日本の文化や国柄、ナショナル・アイデンティティが内側から壊されかかっています」とある。
このLGBT法の成立を境に岩盤保守層が自民支持から離れた、だから支持率が低迷している、とよく言われるのだが、実は離れただけではない。彼らは岸田政権の敵に回ってしまった。
今回の「減税騒動」では、当初多くの保守派論客が減税を求めたのだが、岸田首相が打ち出した所得減税には満足せずに批判を繰り返し、これがネット上で「増税メガネ」という悪口につながり、保守派でない人達にも広がった。保守派が火をつけた「減税騒動」は今や岸田政権を倒せという国民的なムーブメントにもなりかねない勢いになっている。
権力の空白による政治の混乱は拡大する
安倍晋三元首相が暗殺されて1年4カ月がたった。安倍氏が日本政治の中に持っていた強大な権力が突然なくなり、そこは空白のままだ。ぽっかりと穴があいたようになっている。そして権力に空白ができると必ず政治的混乱が訪れる。
安倍氏は生前、保守層の自民離れに危機感を持ち、一昨年の自民党総裁選では高市早苗氏を推して、党内の政策論争の軸を左寄りから真ん中から右に戻す役割を果たした。リベラルな河野太郎氏が脱原発や女系天皇論を封印したのは安倍氏ら党内保守派への配慮だったと言われている。
しかし安倍氏の死後、岸田政権の政策の軸は左に触れ、保守層は敵になってしまった。
ここまで書いたところで時事通信の世論調査の結果が入ってきた。内閣支持率が5ポイント減の21%というのも、20%を切りそうですごいが、それより驚いたのは自民党の支持率が19.1%に落ち込んでいるのに、野党第一党の立憲民主党も2.7%に下がっていることだ。そして支持政党なしが60%を超えている。空白は権力だけでなく政党支持にも及んでいる。
権力の空白を誰が取るのか、そして支持先を失った有権者がどこに向かうのか、今は見当もつかない。いずれにしてもしばらく政治の混乱は続くのだろう。
●麻生か、茂木か、萩生田か...岸田「年内解散なし」をリークした“真犯人” 11/17
これまで何度も永田町に吹きすさび、そのたび議員たちが右往左往させられてきた解散風。しかし今月9日、首相が年内の解散を見送ったとの新聞報道がなされました。いったい誰が、どのような狙いを持ってこの情報をリークしたのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、その出所を考察。さらに窮地に立たされた岸田首相の今後の行く末を推測しています。
官邸発の情報ではない。誰が衆院「年内解散なし」をリークしたのか
内閣支持率が危険水域に入り、自民党内ではポスト岸田をにらんだ動きがはじまったようだ。
11月9日早朝、朝日新聞、読売新聞の報じたニュースが、それを感じさせる。岸田首相が年内の衆院解散を見送るという内容。むろん、岸田首相がそのように表明したのではない。誰かがリークしたのだ。
その「誰か」だが、両社の記者とも同じ人物から聞いたと考えるのが自然だ。朝日は「政権幹部が明らかにした」と書いた。読売は「与党幹部」である。
これでわかるのは、官邸から出た情報ではないということだ。官房長官や官房副長官なら「政府高官」、岸田首相の秘書官なら「首相周辺」などとするだろう。
読売は、「与党幹部」が岸田首相から聞いた内容について、次のように書いている。
「首相は、複数の与党幹部に対し、経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案の早期成立や経済対策の実施に「集中したい」との考えを伝えた。」
与党といっても、公明党ではなく、自民党幹部ということだろう。首相が直接会ってそんな話をする相手といえば、ごく限られてくる。麻生副総裁、茂木幹事長、森山総務会長、萩生田政調会長…。彼らなら朝日のように「政権幹部」と言っておかしくない。そのうちの誰かが、自民党を担当する平河クラブの記者にリークしたと考えられる。
ここからは、筆者の“勘”になるが、ずばり言って茂木幹事長ではないだろうか。衆院解散のタイミングは彼の利害にかかわると思うからである。
岸田首相を支え続けると相変わらず茂木氏は言う。幹事長としての表向きはそうせざるを得ない。だが、年齢も岸田首相より上の68歳に達し、岸田政権がレームダック化したといわれる今が、総理をめざすラストチャンスかもしれないのだ。来年の総裁選への出馬を問われると決まって茂木氏の口から飛び出す「令和の明智光秀にはならない」という言葉じたいが、じつにキナ臭い。
ともあれ、自民党幹事長がオフレコで「年内の解散はない」という趣旨の話をしたとすれば、それを聞いた記者が記事にしない手はない。9日の朝日、読売の朝刊に掲載されるや、その日のうちに主要メディアがこぞって後追いしたことからも、情報源の“重量感”が伝わってくる。
実際には、予算案の成立や経済対策に集中したいとだけ岸田首相は語ったのだろう。それを聞いた自民党幹部が「年内解散はない」と解釈するのは当然のことといえる。しかし、岸田首相も、さっそくメディアに漏れるとは想像していなかったにちがいない。
記事を読んで、岸田首相はリークした人物を想像し、してやられたと歯がみしたのではないだろうか。年内の解散はないからゆっくりしてくださいとなったとたん、首相の求心力はゆるむ。解散する気はなくとも、反乱を抑え込む「解散権」は持っておきたい。伝家の宝刀を奪い取られたようなものである。
政権支持率の低下に色めき立つ「ポスト岸田」を狙う面々
記事の出た10月9日の午前9時40分、公邸から官邸に到着した岸田首相は、待ち受けていた内閣記者会のメンバーに取り囲まれ、衆院解散に関する質問にこう
答えた。
「まずは経済対策、先送りできない課題一つ一つに一意専心取り組む。それ以外のことは考えていない」
報道を肯定することもできないし、否定したらしたで、またぞろ首相自ら「解散風」を煽っているなどと批判されかねない。とどのつまり「経済対策に集中」と言うほかなく、それを「年内解散はない」という記事に仕立て上げられて、既成事実化する。
岸田首相は記者の取材に応じた後、自民党本部に向かい、午前11時から約50分間、麻生副総裁、茂木幹事長、森山総務会長、萩生田政調会長、小渕選対委員長が居並ぶ会議に出席した。
そのさい、岸田首相はこう話したという。「解散するなど、ひと言も言っていない」
つい、口からこぼれ出た愚痴だったのか、“犯人捜し”のため探りを入れる目的があったのか。これに対する一座の反応は伝えられていないが、さぞかし気まずい空気が漂っていたことだろう。
岸田首相は来年秋の総裁選で再選されることを念願としている。そのためには、内閣支持率が高くなったタイミングで衆院を解散し、総選挙で圧勝して「岸田降ろし」を封じるのが近道であり、事実、岸田首相はその好機をうかがってきた。
今年5月のG7広島サミットは政権浮上のきっかけとなるはずだったが、案に相違して、それから支持率は低下の一途をたどり、いまやメディア各社の調査で軒並み30%を割っている。
こうした状況に、「ポスト岸田」を狙う面々が色めき立つのは当然のことである。だが如何せん、強力な候補者が見あたらないのも事実だ。「次の首相」世論調査で人気の高い河野太郎デジタル相はマイナ問題で失速ぎみだし、石破茂氏は党内基盤が弱すぎる。萩生田政調会長は所属する安倍派がまとまらず、統一教会問題がらみの悪イメージも払しょくできていない。
茂木幹事長も頭脳明晰のわりに、国民的人気はさっぱりで、党内の人望もパッとしない。とはいえ、麻生副総裁の後ろ盾があり、党内基盤という点では他のライバルをしのぐ。今度こそ自分が、と思っているはずだ。8月の党役員人事で幹事長に留任、総裁選への出馬意欲をいったん封印したものの、岸田首相とともに泥船で沈むのは御免だろう。いずれかの時点で、岸田首相に反旗を翻し、総裁選に打って出るチャンスを狙うのではないか。
そんな茂木氏にとって最悪のシナリオは、悪材料が積み重なって追い込まれた岸田首相が、一か八かの勝負に出て解散・総選挙を決行するケースだ。
いくら支持率が低下したといっても、対する野党は相変わらず弱いままである。大きく議席を減らすにせよ、自公で過半数の233議席(現有294)を超える可能性は十分ある。そうなると、岸田首相は国民の信任を得たと強引な解釈で党の重鎮らを説得し、総裁選を切り抜けるかもしれないのだ。
自分が置かれた状況を誰よりもよくわかっているはずの首相
今回、「年内の解散」を封じ込まれて、岸田首相の自由度はかなり狭まった。もちろん、来年1月召集の通常国会冒頭での解散もありうるが、それだと3月末までに来年度予算を成立させるためには、窮屈な国会日程となってしまう。4月以降では、通常国会会期末の6月解散が視野に入るが、これを逃せば総裁選前の解散はきわめて難しい。
支持率の急回復も考えにくい。なにしろ政権のイメージはいまや最悪だ。所得減税をするという甘い政策さえ、国民にそっぽを向かれる始末だし、政務三役の辞任ドミノ症候群も再発した。
税理士でありながら固定資産税を滞納して4回も差し押さえを食らった神田憲次衆院議員を、こともあろうに徴税の大元締めである財務省の副大臣に起用したというのは、タチの悪いブラックジョークとしか思えない。官邸の“身体検査”に問題はあるのだろうが、つまるところ任命権者である岸田首相の目が節穴だということになる。
岸田首相は先の内閣改造・党役員人事で、各派閥から出てくる要望を最大限受け入れて、党内の足場を固めたつもりだった。これにより、解散を見送っても総裁選を乗り切れると踏んでいたのではないか。
しかし、このままズルズルいけば、「選挙の顔」として不適格の烙印を押され、岸田首相を引きずり降ろす動きが出てくるのは避けられそうもない。前の総理、菅義偉氏の場合も、総裁選間近のタイミングで衆院解散をもくろんだが、党内からの圧力で阻止され、急速に求心力を失って退陣した。
岸田首相は党人事の刷新を旗印に「菅降ろし」の先頭に立ち、政権を奪った当人である。それだけに、いま自分が置かれた状況を誰よりもよくわかっているはずだ。うすら笑いを浮かべ落ち着き払っているように見せているのは、内心の乱れを覆い隠すためなのかもしれない。
●中小企業は人手不足、大企業はリストラ…なぜサラリーマンは悲惨なのか? 11/17
日本は「人手不足」と「人余り」が同居
日本は、少子高齢化の人口減少が進み、「人手不足」ということが盛んに叫ばれています。しかし、それは「低賃金・ブルーワーカー」の労働者が不足していることとイコールにすぎません。
日本中が、いっせいに人手不足なのかといえば、まだまだそこには至っていないのです。
現に大企業では、40代・50代のホワイトカラー職があり余っており、すさまじいまでのリストラと称する「首切り」が続いているからです。
2021年に上場企業では、84社が希望退職者の募集を行いました。過去10年間の上場企業の退職者数の推移を見ても、毎年平均すると9,700人余が希望退職(早期退職)しています。ほぼ毎年1万人近くが、定年退職を待つことなく、途中で上場企業から退職しているのです。
それもそのはずで、帝国データバンクによる2023年3月時点の企業動向調査によれば、有効求人倍率そのものが、事務系職業においては0.51しかありません。
人手不足が深刻なのは、サービス業(生活支援・介護含む)の2.98、保安6.58、輸送・機械運転2.15、建設・採掘5.16といった業種であり、これらの有効求人倍率の高さをみると一目瞭然なのです。
要するに、人手不足といわれる職業は、ブルーワーカー職で、夜勤があったりする現場仕事が多いわけです。
こうした現場作業での最低賃金の全国平均もようやく時給が1,000円台に乗り、巷では経済学の教科書通りの賃金アップも始まっています。
賃金が上がらない国にしてきたのが自公政権
しかし、外国人技能実習生などの受け入れをやめていれば、もっと時給も上がるはずなのです。
自公政権は、さらに新制度で外国人労働者の受け入れをスタートさせる予定で、岸田政権は一方で「賃上げ」と言いながら、やっていることは日本人労働者の賃金水準を下げる方向にすぎず、アベコベなのです。
消費税率アップで購買力を低下させ、円安に導いても国内空洞化で、輸出数量の増大に結び付かず、デフレ脱却もできなかった安倍政権のアベノミクスと同様の「アベコベノミクス」という逆効果の弊害を招いただけだったのと同じ構図です。
自民党政権は、毎年20数億円程度の政治献金を恵んでくれる大企業には、「派遣」という名の非正規雇用導入で賃下げに貢献し、消費税率アップによって輸出大企業への消費税還付金を毎年6兆円にも増やしてあげています。
たったの20数億円の大企業からの献金で2,500倍の6兆円ものリターンをプレゼントされているのが輸出大企業なのです。経団連が消費税をもっと上げろ――というゆえんです。
おまけに税率をアップしてきた消費税収入の7割強が、過去の法人税率の引き下げと所得税率の累進緩和で消えています。
そのうえ、大企業は30.62%の法人税実効税率に対して、数々の特例減税措置の恩恵を受け、実質20%前後の法人税実効税率にしかすぎません。
黒字の中小企業がまともな法人税の実効税率を払っているのに、大企業は税金を大幅に負けてもらってきているのです。
こんな不公平この上ない政治を行ってきたのが、自公政権でした。
そのくせ、岸田自民党政権は国民向けには「所得倍増(後から資産・所得倍増と修正)」だの、「異次元の少子化対策」だのと大風呂敷を拡げ、「大軍拡」に舵を切りながら「賃上げ」だの、「減税」だの、「マイナンバーカードの健康保険証紐づけ」などと、何をやりたいのか、さっぱりわからない、ほとほと呆れるばかりの無責任な政権運営で支持率を下げまくっているわけです。
「賃下げ」と「賃上げ」のアベコベの迷走政策が続く、日本の未来図は、ますます閉塞感に覆われるばかりなのです。
したがって、こんな日本で勤め人(サラリーマン)を続けていても、政府や大企業に搾取されるばかりでしょう。貴重な自分の人生を豊かにするためにも、大いなる発想の転換が必要な時代ともいえるのです。
搾取されるばかりのサラリーマンの身分では一生「金持ち」にはなれない
さて、世の中には「お金持ち」と呼ばれる純資産が1億円以上にのぼる人たちが、数%の割合で存在します。
こうした「お金持ち」になるには、どんな方法が考えられるのでしょうか。一般的には、次のような方法があるといわれます。
・金持ちの親から莫大な「遺産」を受け継ぐ
・金持ちの子息や令嬢と結婚して、裕福な一族に加わる
・医師や弁護士などのエリート資格で稼ぎ富裕層に連なる
・外資系金融エリートなどの高額報酬の仕事に就き蓄財する
・会社員の本業以外に効率のよい副業で稼ぎ蓄財する
・株式や不動産への投資で成功し、富裕層に連なる
・起業に成功して富裕層に連なる
・スポーツや芸能、エンタメ作品制作など特殊技能で儲ける
・画期的発明での特許収入で儲ける
ざっと以上でしょうか。いずれのパターンも、搾取される立場でない人であることが窺えます。
しかし、金持ちや富裕層になるための方法を、こうして並べて見ただけでも、どれも簡単そうではないのです。よほどのチャンスと僥倖に恵まれないと、こういうケースに連なることは難しいのです。
富裕層というのは、年収(フロー)で見るのではなく、金融商品や不動産などの純資産(借金を除いた資産)を、少なくとも1億円以上保有しているのが、基準値になっています。
最低のステータスでも、純資産1億円なのです。
こうした純資産を蓄えるには、フローの収入がほとんど生活費で消えてしまうような搾取されるばかりのサラリーマン人生では、到底不可能なのです。
いったん、潤沢な純資産を築けば、その純資産が、毎年インカムゲイン(純資産が生み出す収益)をもたらしてくれ、純資産が増え続けていくイメージ……となるのが富裕層です。
一時的に、たまたま年収が1,000万、2,000万円あるといったフローで見ただけでは、到底お金持ちとはいえないのです。せめて、1億円以上の永続的な資産を借金無しで保有していなければなりません。
ここまでで、最もはっきりしているのは、生涯サラリーマンの身分のままでは、一生かかっても、こうした富裕層の仲間入りはできそうにない――ということなのです。
サラリーマンの生涯収入は少なすぎる
なぜなら、大卒男性サラリーマンの生涯収入の平均値は、概ね2億5,000万円前後です。
しかし、そこから税金や社会保障費などを支払うと、7割程度の手取りになるので、定年退職までの現役の期間で、1億6,000〜1億7,000万円が実質収入となるのです。
これで生活費や住宅ローン、教育費などを40年間賄ったとすると、余剰で投資や貯蓄に回せる金額はとてつもなく小さくなるでしょう。
生涯(40年間)の手取り収入が1億6,000〜1億7,000万円というのでは、1年あたりでは、せいぜい400万円程度の収入にしかならないわけですから、それも当然なのです。
ようやく住宅ローンの返済が終わって、老後に老朽化したマイホームなどがあれば、それが老後の純資産のすべてといってもよいくらいなのです。これでは貧困老後は必定でしょう。
あるいは、夫婦揃って人口規模の大きな自治体の公務員になり、世帯年収1,000万円以上のパワーカップルであれば、定年後には金融資産などが膨らんで、多少裕福な老後になれるかもしれませんが、こういうケースもまた、そうそう多くはないでしょう。
つまり、サラリーマンは「生かさず殺さず」という残酷な人生といえないこともないのです。これでは、人生100年時代といわれても、65歳以降の老後の人生設計が心配になるのも無理はないのです。
労働者は「労働力」をお金に代えるだけという哀しい現実
フランスの新進気鋭の経済学者トマ・ピケティが2013年に著した世界的ベストセラー「21世紀の資本」で喝破した通り、資本主義社会は「r>g」の不等式が支配しているからです。
すなわち「r」が資本収益率(純資産の成長率)であり、「g」の国民所得の成長率(GDP)よりも、つねに「大きい」からなのです。
「r=g」となるなら、資本の収益率も国民所得の成長率も同じですから、国民所得に占める労働所得の分配率も一定になって、問題はありません。
しかし、現実は「r>g」なので、格差も大きくなり、不平等が広がるのです。貧富の差は拡大し、資本家はますます資本を増やし、労働者はカツカツの生活と人生を強いられます。
自らの労働力を売るだけのサラリーマンでは、現役時代を終えて老後になると、収入がなくなるわけなので、当然と言えば当然の結末なのです。
ゆえにサラリーマンのままでは、一生裕福にはなれず、資本を転がす資本家の人のほうが裕福になりやすい――というわけです。
「いい学校を出て」「いい会社に入る」と「幸せで安定的な人生が手に入る」というセオリーが、いかに幻想かがわかるでしょう。
小規模事業の「大廃業時代」ゆえに面白い人生の選択肢が登場
ところで、前述した、いくつかの「お金持ちになれるコース」では、いずれもが難しいコースになりますが、実はこれらの方法以外にも、近年お金持ちになれる道が、新しく生まれてきているのです。
それが「小規模な黒字事業の事業継承」です。
なぜなら、今や日本中の「中小零細事業が大廃業時代」を迎えようとしているからなのです。もうお気づきでしょうが、「M&A」というのが近年ものすごく活発に行われるようになっているのです。
「M&A」とは「買収・合併」のことですが、かつては大きな企業同士のモノと考えられていましたが、近年は大きく様相を異にしています。なんと、今までは企業同士のM&Aを指したのが、近年はサラリーマンという個人の立場でもM&Aに乗り出す人が増えているからなのです。
その理由は、意外に少ない金額で事業そのものを買えることが注目されているからです。当然ですが、300万〜500万円といった、極めて少ない金額で事業そのものが買えるのは、事業規模が小さいからに他なりません。
一生サラリーマンのままでは老後資金に不安があるのと、ましてや40代〜50代になると、役職定年や給料減額が視野に入ってきます。こうしたことを考えると、定年までにひと稼ぎして老後資金を確保したい思いと、自分の実力を発揮できる経営者の立場に憧れる人も少なくないわけです。
そうした人たちが、「個人M&A」に乗り出して、事業経営者になる人が増えている――といった現状があるのです。
M&Aの仲介企業も急成長
それに伴いM&Aの仲介企業も繁盛しています。
この方法は、ゼロからスタートする「独立開業」といった起業とは明らかに異なります。黒字事業をそのまま継承できる――というのが魅力であり、これが個人によるM&Aへと背中を押す理由になっているのです。
資本を投じて、ゼロから事業を起こすのとは異なり、黒字事業の継承なので、リスクが限定的なのが、最大の強みといってよいでしょう。
ゼロからお客さんを作って稼いでいくのと、最初からお客さんのいる事業をそのまま継承できる――のでは、雲泥の違いがあるからです。
現在は、国や地方自治体までもが、中小企業の事業継承支援に乗り出しています。その理由は、今が零細・中小企業の大廃業時代になっているからなのです。
日本の雇用労働者の99.7%が中小企業に勤めているのですから、日本社会における雇用の維持は重要です。
ただし、過去20年で100万件以上の事業者が減ってきたのは、従業員数が20名未満の零細・小規模企業が中心なのです。これらは法人でない個人経営が半数あまりも占めています。
零細な小規模事業者が減少しているのは、経営者の健康不安や高齢化によるもの。経営者も、黒字の事業ならば、何とか継続させたいものの、従業員も高齢化していると、従業員の中から手を上げて事業を継承してくれる人もいないわけです。
そのため、自分の事業をM&A斡旋会社に託すケースが増えてきたのです。また、M&Aマッチングサイトも増え、サラリーマン個人でもM&Aがしやすくなっているのが現状です。
多種多様な事業が売り出されている
M&Aの仲介サイトを覗いてみると、小規模ビジネスの多種多様な事業が売り出されています。
物販店、飲食店、アクセサリー工房、不動産店舗、通販サイト、塾、医院、工場…など実にさまざまな業種があります。
数百万円から数億円する事業など、まさに百花繚乱なのです。
M&A成立までの流れとは?
では、ここでM&A成立までの流れを見ておきましょう。
まずは、どんな業種が自分の適性に合っているかで事業を絞り込みます。次いで、選んだ事業の詳細を調べます。そして相手方との売買交渉です。秘密保持契約を結んでから、事業内容について細かくチェックします。
事業譲渡の方向性が見えてきたら、まずは基本合意契約を交わし、デューデリジェンス(リスクチェック)を法務面、労務面、借入金の有無や買掛金、売掛金など詳細にチェックしていきます。
そして、問題なければ譲渡契約成立となります。法人なら、譲渡成立後にただちに法人登記などを書き換えます。
うまく事業継承する方法とは?
ところで、サラリーマンが、いきなり事業経営者になるわけですが、うまく経営ができるのでしょうか。
問題が多いのは、従業員との関係がうまく取れるかどうかといわれます。
小規模事業経営者の場合、経営者の個性が魅力となって、従業員を引っ張ってきた面が強く、サラリーマン上がりの人がいきなり新しい経営者になると、従業員は当惑することが少なくないからです。
現場の仕事を回してくれているのは従業員なので、コミュニケーションがうまく取れないと、従業員に去られてしまい、事業が空っぽになるということさえあるのです。
また、取引先との関係も、従前の経営者との関係が深いので、新しい関係性構築までは時間もかかります。
そうした意味でも、事業を成功させやすいのは、いきなり新経営者として事業を引き継ぐよりも、最初は「弟子入りする」つもりで半年なり1年間、今までの経営者の下で従業員として働かせてもらうことがよい――といわれています。
周囲の従業員や取引先との人間関係構築には時間をかけたほうがよいからです。
小規模事業者はどんどん減っていく日本社会
経済産業省の調査では、2025年までに70歳に到達する小規模事業経営者は30.6万人、75歳に到達する経営者は6.3万人です。
これらの経営者の事業継承がうまくいかないと、2025年までに660万人の雇用が奪われ、22兆円のGDPが消失するとさえ予測されているのです。
コロナ禍で売り上げが激減してしまった事業も多く、日本の小規模事業経営者が消えていくスピードは、さらに速まるかもしれません。
一生涯サラリーマンでは、金持ちになりにくいのが現実です。
実力のある人にはチャンス到来の時代なのかもしれません。
皆様も、自分の人生をより豊かなものにするべく、こうした個人M&Aについて、考えてみるのもよいのではないでしょうか。
若い人であるほど、チャンスは大きい――と言えるでしょう。また、年配の人でも、実人生の豊富な経験をチャンスに変えるという意味での「個人M&A」なら魅力的でしょう。
読者の皆様は、一度ぜひ、M&Aのマッチングサイトを覗いて見ることをおすすめします。そこには、夢の広がる事業が群れを成して存在しているからなのです。
●「影の財務次官」が書いた“増税クギ刺し” 財務省が岸田首相と与党を牽制 11/17
「過去2年分の税収増を国民に還元する」──。ドヤ顔で所得税の定率減税を打ち出した岸田文雄・首相が“身内”から冷や水を浴びせられた。
「『還元』といっても税収は全部使ったうえで国債を発行している。それは還元ではない」
減税策をまとめる責任者の宮沢洋一・自民党税調会長がそう言えば、鈴木俊一・財務相も国会答弁で、「過去の税収増は、政策的経費や国債の償還に既に充てられてきた。減税をするとなると、国債の発行をしなければならない」と言い放った。
宮沢氏は言わずと知れた首相の従兄弟で財務官僚OB、鈴木氏は首相の後見人である麻生太郎・前財務相(現・自民党副総裁)の義弟である。
財務省とパイプが太い岸田ファミリーと麻生ファミリーが声を揃えて首相に異論を唱え、しかも、そのタイミングで神田憲次・財務副大臣が税金滞納問題で辞任し、政権には大打撃となった。
「総理が減税を掲げた途端に、財務副大臣が税金滞納なんてせっかくの還元をぶち壊しにするようなものだ」(自民党議員)
政界では「ついに財務省が首相を見限った」「減税潰しに動き出した」という見方が強まっている。ジャーナリストの長谷川幸洋氏(元東京・中日新聞論説副主幹)の指摘だ。
「所得税減税については11月2日の経済対策の閣議決定に、〈税収増を納税者である国民に分かりやすく「税」の形で直接還元する〉と書かれている。書いたのは財務官僚です。それを財務大臣が国会答弁で否定した。大臣答弁を書いたのも財務官僚ですから、背後から弓を射かけたようなものです。岸田首相は人気取りのつもりで減税を掲げたのに国民の評判は最悪、財務省はこれまで首相を支えてきたが、もう政権の先行きは見えたと見切りをつけたわけです。
そもそも国税庁が数年前に把握していたはずの税金滞納が、“身体検査”を通過して財務副大臣に就任した直後に明るみに出たことにも何らかの思惑を感じます」
“見せかけ減税”オペレーション
そもそも首相に「減税」をそそのかしたのは財務省だ。今年7月の官邸人事で財務省は首相と同じ開成高校出身の一松旬氏(主計局主計官・総務課)を首相秘書官に就任させた。
「一松氏は東大法学部を経て1995年に入省。エリート揃いの財務省でも『10年に1人の逸材』とされ、将来の次官候補との呼び声が高い。主計官時代は岸田政権の看板政策である異次元の少子化対策や防衛費増額を手がけたから、次は官邸で防衛財源や少子化対策財源の増税スキームをつくるために首相秘書官に送り込まれた」(財務省OB)
いわば“増税請負人”としての起用だった。
ところが、官邸に来たものの、内閣支持率はみるみる低下し、岸田首相は「増税クソメガネ」と批判されて、とても増税を言い出せる状況ではなくなった。
支持率急落は財務省にとっても誤算だった。増税路線を敷くには、まずは支持率を上向かせなければならない。
「原点に戻ってこれからは経済、経済、経済でいこう」
首相が周辺にそう言いだしたのは、一松氏が秘書官になって1か月ほど経った今年8月、原発処理水の放出方針を決定するために福島を視察した時だったという。
そこから官邸では「支持率回復」のための“見せかけ減税”のオペレーションがスタートした。官邸官僚の1人が明かす。
「税収増の還元というのは財務省の新川浩嗣・主計局長のアイデアだ。財務省はいったん税収増分を1年限りの減税などで還元したうえで、コロナ対策で肥大化した財政を引き締めることを考えた。
減税で支持率が上向けば、その後、『財源は使い果たした』と増税に向けた環境も整う。還元の具体策の話は、最初は総理と側近の木原誠二・前官房副長官で進めていたが、9月の内閣改造で木原氏が官邸から去った後は、総理お気に入りの一松秘書官を中心に新川主計局長、青木孝徳・主税局長ら財務省ラインが定額減税をまとめた。実際には、今回の経済対策の原案も補正予算案の骨格も、一松氏がほとんど睡眠を取らずに1人で書き上げた」
いまや官邸で財政運営を仕切る一松氏は「影の財務次官」とも呼ばれる。
与党全体への見せしめ
とはいえ、財務省にとって「定額減税」は増税環境を整えるための国民への撒き餌にすぎない。だから税収増で財源が余っていると思われては困る。そこで岸田首相を操って軌道修正させていく。
本誌は一松氏が書き上げたとされる『令和5年度一般会計補正予算(第1号)フレーム』と題する文書を入手した。右肩に「計数精査中・厳秘」と印字され、内容は予算規模13.2兆円、財源は税収が1710億円で、大半は国債発行で賄われる。
一松氏は高校の先輩である岸田首相に「減税で支持率回復」を吹き込んでおきながら、補正予算の草案には財務省の至上命令である「減税の財源はない」と、矛盾する内容を埋め込んだのである。(財務省広報室は「財務省が作成・公表する個別の資料の作成に係る具体的な経緯等につきましては、今後の円滑な業務に影響を及ぼす恐れもあり、詳らかにすることは差し控えさせていただければと存じます」と回答)
一松氏に対する“学歴コンプレックス”もあったのだろうか、首相はそれに従うしかなかった(岸田首相は東大受験に2度失敗して早大に進学)。財務省OBが語る。
「宮沢さんや鈴木大臣が税収増はすでに使ったと強調した第一の狙いは、与党に対する牽制です。総理は定額減税を1年間に限定する方針だが、自民党や公明党からは2年以上続けるべきという声が強まっており、減税を何年も続けられたら、増税ができない。財務省は与党議員に『税収増はあんたたちがバラ撒いてしまっただろう』と牽制し、岸田首相にも与党の言い分に引きずられないように強くクギをさした」
タイミングが“絶妙”だった神田財務副大臣の税金滞納辞任も、財務省にとっては政権にダメージを与えただけでなく、“言うことに従わなければこうなるぞ”という与党議員全体への見せしめになったと捉えられる。
岸田政権が弱体化することは、財務官僚にとってはむしろ都合がいい。
総理が人気取りの減税をしたくても、選挙対策のバラ撒きも、予算と税制を握る財務省の協力がなければ実現できない。政権基盤が弱い総理のほうが、総理の座を維持するために財務省により深く依存するようになるから操りやすいのだ。
「岸田首相が見せかけ減税の後、財務省の言うとおりに増税するなら協力するが、従わなければいつでも切り捨てる。たとえ政権が潰れても、増税路線だけ敷いてもらえばいい。財務省はこれまでもそうやって総理を使い捨てにしてきた」(同前)
いまや岸田首相の生殺与奪の権は完全に財務省に握られている。
●岸田政権は失速するのか?  11/17
岸田内閣の支持率低下に歯止めが掛からない。経済対策の柱とした所得税減税は逆効果になった。岸田文雄首相にとって、来年9月の自民党総裁選までの解散が難しくなった可能性も強い。ただし、自民党内で「岸田降ろし」が盛り上がらない一因は、同首相に替わる有力なリーダーの候補が不在だからではないか。岸田首相は改憲などを前面に指導力の回復を目指すと見られる。
難しくなった総裁選前の解散
11月に入り、共同通信、NHKが実施した世論調査において、岸田内閣の支持率は30%を割り、政権発足以来の最低水準となった。経済対策の一環とした所得税減税は、むしろ厳しい批判に晒されている。「物価高から国民生活を守る」として給付金、所得税減税を決めながら、経済対策の正式名称は『デフレ完全脱却のための総合経済対策』だ。この分かり難さが、有権者の支持を得られない背景だろう。
加えて、内閣総理大臣や閣僚など公務員特別職の報酬引き上げ法案を敢えて臨時国会に提出したこと、9月13日の内閣改造で任命した山田太郎文部政務官、柿沢未途法務政務官、神田憲次財務副大臣を相次いで実質的に更迭せざるを得なくなったことが、政権を苦境に追い込んでいる。
自民党が結党された1955年11月以降、解散は21回あったが、そのうち12回は秋の臨時国会が開かれる9、10、11月に集中していた。12月〜翌年5月までの半年間、解散が4回に止まるのは、予算編成及び通常国会での予算、重要法案審議が続く時期だからだろう。
岸田首相は年内の解散を見送る意向を固めたと報じられている。過去の例から見れば、次の解散のチャンスは来年の通常国会会期末となる6月だ。そこで国民に信を問わなければ、自民党総裁選が行われる9月までに岸田首相主導で衆議院を解散するのは難しいと考えられる。
リスク要因は政治
共同通信の世論調査によれば、「次の自民党総裁に誰がふさわしいか」との設問に関し、石破茂元自民党幹事長との回答が20.2%、河野太郎デジタル担当相14.2%、小泉進次郎元環境相14.1%、高市早苗経済安全保障担当相10.0%の順だった。これら上位4名に茂木敏充自民党幹事長を加えた5名が、現時点で岸田首相のライバル候補と言えるかもしれない。
一方、岸田首相を支える自民党主流派は、安倍、麻生、茂木、岸田の4派閥に谷垣グループであり、数的には国会議員269名、自民党所属国会議員の70.8%に達する。総裁選では、一般党員票を集めて1回目の投票で2位以内に残っても、国会議員と47都道府県連のみで争われる決選投票は、派閥の力が結果を大きく左右するだろう。安倍派や麻生派の支持を得られなければ、総裁選で勝つことは難しい。
河野氏は麻生派の所属だが、同派の支持をすんなり得られる状況ではないようだ。また、石破、小泉、高市3氏の場合は無派閥であり、推薦人の国会議員20名確保に苦労する可能性が強い。
そうしたなか、岸田後継に最も近い位置にいるのは茂木幹事長ではないか。2025年7月に参議院選挙があり、同年10月には衆議院の任期満了だ。来年9月までに解散がなければ、自民党総裁選は同党にとり「選挙の顔」を選ぶイベントになる。内閣の支持率が低迷、岸田首相が自ら総裁選への出馬を見送る場合、主流派が一致して推せる候補として同幹事長が浮上する可能性がある。
もっとも、現在の派閥のバランスから考えると、岸田首相の続投が消えたわけではないだろう。同首相は、党内を固めるため、今後、改憲など自民党の積年の課題に取り組む姿勢を見せることも考えられる。一方、世論を二分するような経済構造の改革策に踏み込むことは難しいだろう。
●デフレ「完全脱却」、政府の強い決意示す言葉=井林内閣府副大臣 11/17
内閣府の井林辰憲副大臣は17日、「デフレ脱却」と、岸田政権が掲げる「デフレ完全脱却」の違いについて、完全脱却との言葉を用いることで「デフレからの脱却だけでなく、30年ぶりに新たな経済ステージへの移行を実現するという政府の強い決意を示している」と説明した。
衆議院財務金融委員会で道下大樹委員(立憲)の質問に答えた。
井林副大臣は、デフレ脱却の定義について「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないこと」とあらためて言及した。現状では賃金の上昇が物価高に追いついておらず、消費は力強さを欠く状況だとし、「これを放置すれば再びデフレに戻りかねず、現時点ではデフレから脱却したとは言えない」と指摘した。
その上で、総合経済対策を進めることで日本経済を一段高い成長経路に乗せ、「賃金と物価の好循環のもと、消費と投資が力強く拡大する熱量あふれる新たなステージへの移行を実現したい」と語った。 
●政権交代はあり得ないのだから、岸田首相は居座るべきだ… 11/17
岸田内閣の支持率が下落を続けている。八幡和郎さんは「早くも『岸田おろし』を望む声があるが、日本の首相はあまりに早く交代しすぎだ。主要国の大統領や首相の平均在任期間は5〜10年であり、岸田首相もそれくらいの長期政権を前提に、骨太な政策を進めるべきだ」という——。
日本の首相はコロコロ交代しすぎている
岸田首相の在任期間が、10月で2年に達したのを機に、「もう交替したら」という声が高まっている。だが、日本の首相の任期は、世界各国の大統領や首相、国内の知事や社長たちと比べて異常に短い。
日本は戦後78年間で35人の首相が誕生した。とりわけ、1993年〜2012年は20年足らずの間に延べ14人と、目まぐるしく首相が交代した。2012年以降は、第2〜4次安倍内閣が約8年間続いたものの、菅義偉首相は約1年で岸田首相にバトンタッチした。
かつて、「首相が短命」といえばイタリアが有名だったが、最近では日本の代名詞となりつつある。このことは特に、外交の世界で日本の信頼性を著しく傷つけている。
本記事では、主要国の制度や首脳と比較し、どうして日本では短いのか原因を探ってみたいと思う。
「並み以上」のアメリカ大統領は2期8年
主要国のリーダーの選ばれ方と任期を見ると、大統領直接選挙を実施しているのが、アメリカ(各州で選挙人を選ぶという変則的な形)、フランス、ロシア、韓国だ。
アメリカは4年任期で、戦後に憲法を改正して連続3選を禁止にした。戦後、選挙で選ばれた大統領のなかでは、アイゼンハワー、レーガン、クリントン、ブッシュ(子)、オバマの5人が2期目を最後まで務めている。再選に失敗したのが、カーター、ブッシュ(父)、トランプの3人だ。
ニクソンは再選されたが、ウォーターゲート事件で失脚し、ケネディは最初の任期の後半に殺害された。副大統領から昇格したなかでは、トルーマン、ジョンソンは再選に成功し、フォードは失敗した。
普通に選ばれて2期目に挑戦した場合だけみれば、6勝3敗なので、並み以上なら2期8年が標準ということになる。
フランスは、ド・ゴールが2期目から直接選挙で選ばれるようになった。当初は任期7年、再選制限なしだったが、現在では任期5年、3選禁止である。第五共和制になってからの8人の大統領のうち、ド・ゴール、ミッテラン、シラク、マクロンが再選、ジスカール・デスタン、サルコジが再選に失敗し、オランドは立候補しなかった(ポンピドゥーは1期目任期途中で死去)。アメリカほどでないが、再選されて計10年務めることが基本だ。
プーチン大統領は「最長6期」に布石
ロシアも3選禁止で、当初4年だった任期が6年に延長された。エリツィンが再選されたものの任期途中で辞任し、大統領代行から2期務めたのがプーチンだ。他の人を挟めば再び大統領になることができるため、2008年にメドベージェフに譲って自らは首相に就任し、4年後の2012年に復帰した。
本来ならば、プーチンは2024年に任期満了を迎えるはずだったが、2020年の法改正で、任期上限を「通算2期」とする一方、大統領経験者の任期数をゼロとみなすことが決まった。この結果、来年の選挙にも立候補することができ、再選されればさらに2期、83歳となる2036年まで大統領にとどまることが可能になった。
韓国は、任期は5年で再選できない。1988年に第六共和国となり、盧泰愚が大統領となってから現在の尹錫悦に至るまで8人の大統領が当選している。そのうち、朴槿恵は4年足らずで職務停止になったが、ほかは任期を満了している(盧武鉉は途中、2カ月ほど職務停止)。
イギリスの「名首相」は10年務めている
国会の多数派が首相を出す議院内閣制は、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、インドがその代表だ(形式的には投票でなく国王や大統領が任命するところも多い)。
英国では任期5年だが、途中で解散されることが多い。終戦直前の総選挙で労働党が勝利して以来、労働党2期、保守党3期、労働党2期、保守党1期、労働党2期、保守党4期、労働党3期、保守党が4期目となっている。
総選挙で敗北したときに首相が交代するほか、長期政権になると任期半ばあたりで交代して次の総選挙に備える。戦後の首相は延べ18人(ウィルソンが返り咲き)で平均在任期間は、4.3年だ。
最近ではトラスがわずか49日の在任期間で退任し、イギリス史上最短となったが、サッチャーとブレアが10年余り、マクミラン、ウィルソン、メージャー、キャメロンが5年以上だから、普通は4〜5年、評判が良ければ10年というあたりである。
ドイツの外交力強化は長い首相在任の成果
ドイツでは、下院の任期が4年で、総選挙で敗れるか、高齢で引退したり死去したりしない限り、首相が途中で辞任することはない。ただ、比例代表制であるので、任期途中で連立の組み替えがあることがある。
戦後の首相はわずか9人で、平均で10年足らず。アデナウアーが14年、コールが16年、メルケルも16年である。ブラントは5年足らずで死去し、それを引き継いだシュミットは8年も首相の座にあった。戦敗国として不利な立場にあったドイツが外交で上手に立ち回れているのは、この政権の安定性が大きいと思う。
イタリアは、比例代表制のために政権交代が多かった。一時は選挙制度を改正して二大勢力に収斂されたが、また、もとの木阿弥。それでもかつてよりは安定しているし、政党人抜きの実務者内閣なども登場して、かえって評判が良かったりする。
1946年の共和国発足以来、現在のメローニ首相は31人目であるから、平均2.5年である。ファンファーニが5回、アンドレオッティとベルルスコーニが3回、ほかに6人が2回就任しているから、政権自体はもっと短いスパンで交代していることになる。
カナダもインドも「平均寿命」は5年前後
戦後のカナダの首相は13人で、現在のジャスティン・トルドー首相の父親のピエール・トルドーが2度政権を担っているから、政権の平均寿命は5年半である。
インドは初代のネルーから数えて現在のモディが14人目だが、うち2人が2回務めているので、政権の平均寿命は5年足らずである。国民会議派と人民党系で政権交代が比較的円滑だ。
中国は一党独裁国家であり、毛沢東が20年余支配したあと、ケ小平がいわば闇将軍のような存在だったのでややこしい。ケ小平、江沢民、胡錦濤が10年ずつくらい支配し、習近平も同じかと思っていたが、規約を改正して「2期10年」制限を撤廃した。今年3月から3期目に入り、さらに権力に留まる見通しで、独裁化が心配だ。
これまでは、だいたい10年という長さがひとつのめどになっているのは、安定性と行き過ぎた長期政権の弊害除去とのバランスがほどよいところで、それが中国経済の大発展をもたらしたといえるのに心配だ。
一方、日本の首相は、戦後78年間で延べ37人に上る(吉田茂と安倍晋三は再登板)。政権の平均寿命は平均2.1年で、極端に短い。
これでは、外交上の信用もさることながら、国内でも大きな改革はできない。新しい政策を提案し、法律を成立させ、細則を決めて予算化し実行するには、3〜4年はかかるものだし、官僚にとってもすぐに交代する首相は怖くもなんともなく、官邸主導など無理である。
岸田首相は「早く辞めてほしい」「総裁任期まで」
毎日新聞が9月に行った世論調査で、在任期間2年を迎える岸田文雄首相について、いつまで首相を続けてほしいか尋ねたところ、「早く辞めてほしい」が51%、「来年9月の自民党総裁選任期まで」が25%、「できるだけ長く」は12%だった。
同様の問いで8月に行われたJNNの調査では、それぞれ、23%、57%、14%だったが、いずれにしても、来年の自民党総裁選挙の岸田再選を支持する人は、回答なしを除いて計算すると、15%以下にとどまる。
また、7月には親戚である宮沢喜一氏の在任期間を超えたとか、来年2月には鈴木善幸氏を超えて、戦後トップ10入りするという記事も出ている。これまでの総理のなかでとくに評判がいいわけではないので、そろそろ辞めろといわんばかりである。
だが、全国47都道府県のトップである知事はどうだろうか。1947年に公選で選ばれるようになってから71年が経過しているが、総計で約340人が務め、だいたい10年間、つまり、2期ないし3期が平均的な在任期間だ。
日本の首相が短命になってしまった理由
東証第一部上場企業の社長は、平均7.1年(会社四季報をベースにした東京経済大学の柳瀬典由ゼミの学生たちの計算)だそうだ。
こうした数字と比較して、どうして首相だけが、そんな頻繁に交替してしまうのか理解に苦しむ。
その理由のひとつは、中選挙区制の時代に派閥が異常に強くなり、その思惑によって短期で派閥の領袖(りょうしゅう)が総理となる慣習が残っているためである。
それから、与党と野党の関係も影響していると言えるだろう。55年体制で自民党・社会党の二大政党が成立し、その後も、だいたい自民党が与党で左派的な野党が第二党という状態が続いているのだが、与野党の最大の対立は憲法改正の是非である。
そのため与野党の攻防戦は、自民党とその連立勢力が国会で3分の2を制するかどうかが焦点となる。立憲民主党は口では「政権交代」と言うが、自民党以外の政党は改憲を阻止することを目標にしていて、政権を取ることはそもそも狙っていない。
「強い野党」の不在が、政権を傲慢にさせている
有権者も同じだ。過去記事でも指摘したように、野党の支持率は合計で15%ほどしかなく、国政選挙で30%以上の得票をしたとしても、投票の過半は、政権交代を希望してのものでない。
海外の事例を見ても分かるように、主要国の大統領や首相の平均の在任期間は5〜10年。日本のように、任期途中で与党内から辞任要求が高まるのは稀であり、長期政権になって連続登板が禁止されていたり、次の選挙は新首相で臨むほうがいいと判断したら交替するだけである。
政府が傲慢(ごうまん)にならないようにさせる抑止力は、政権を奪取するかもしれない野党の存在が大きい。その意味で、現在の日本の自民党永久政権というのは、民主主義の利点を発揮しにくい体制である。だからこそ、国民の意思とはかけ離れた政策ばかりが実行され、自民党の派閥の都合で政権がコロコロと変わってしまうのだ。
日本の首相も5〜10年は務めたほうがいい
いつまでも憲法改正問題を引っ張るのは、国益を損ねることにつながる。ほどほどのところで片付けて、二大政治勢力が10年〜20年ごとに政権交代するという状態が、日本にとって好ましいのではないか。少なくとも、首相は主要国のように5〜10年は務めたほうがいい。
岸田内閣の支持率は減っているが、数字ほど深刻に受け止める必要はない。支持率低下に怯え、人気取りのような中途半端な政策を打ち出しているのが、むしろ逆効果になっている。
安倍晋三元首相の場合は、30%といわれる保守層を固めて党内から崩されないようにしてから落ち着いた政策運営ができ、選挙を打つタイミングでは中道リベラルにすり寄った。だからこそ、歴代最長となる8年8カ月、首相であり続けた。
岸田首相は、安倍路線の基本を維持する姿勢を示し、憲法改正や皇位継承問題は安倍氏との約束だからしっかり取り組むと明言して総裁選に臨めばいい。ただし、経済政策は生き物だから、最晩年の安倍氏が言っていたことに囚われていてはダメだ。
一方、公明党との関係や無党派層は確保しておいたほうが賢明だ。保守派の離反は放っておけばいい。保守派は岸田内閣を支持しなくても、自民党候補への投票はやめないし、離党する国会議員などほとんどいるはずない。岸田首相は、自ら辞めると言わない限り、来年の秋は再選だというくらいの余裕をもったほうが右顧左眄(うこさべん)しない国政ができるだろう。  
 11/18

 

●岸田首相、支持率低迷「謙虚に受け止めたい」 訪問先の米国で会見 11/18
岸田文雄首相は17日午後(日本時間18日午前)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議のため訪問中の米サンフランシスコで記者会見し、報道各社の世論調査で政権への支持率が低迷している現状について「謙虚に受け止めたい」と述べた。
首相は総合経済対策の柱に掲げている所得税の減税方針について問われ、「デフレに後戻りさせないための一時的な措置として、定額減税によって、国民の可処分所得を下支えする取り組みを進めていく」と説明した。
一方で、経済対策の打ち出しが支持率回復につながっていないことについて「(世論)調査の結果や指摘は謙虚に受け止めたい」とした上で、「(臨時国会の)審議で丁寧に説明するとともに、経済対策の裏付けとなる(今年度)補正予算の成立に全力で取り組みたい」と述べた。
また、訪米中に臨んだ中国の習近平(シーチンピン)国家主席との首脳会談で、習氏が東京電力福島第一原発の処理水を「核汚染水」と表現したことに対し、首相は「科学的な分析と事実に基づく冷静な判断、建設的な態度を促していきたい」と述べた。首脳会談で首相は、中国による日本産水産物の全面禁輸の即時撤廃を要求。打開策は見いだされなかったが、両首脳は処理水問題について対話で解決を図ることで一致した。
●自民党から離れる岩盤保守層 圧倒的人気の日本保守党 11/18
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が11、12日に実施した世論調査で、岸田文雄内閣の支持率は10月の前回調査から7・8ポイント下落し、27・8%となった。
JNNが11月4、5日に実施した世論調査では前回から10・5ポイント下落して29・1%、NHKが10〜12日に実施した世論調査でも7ポイント下落し、29%となった。いずれも同じような結果で、岸田政権はかなり危険水域になっている。
昨年7月の参院選は、安倍晋三元首相の非業の死もあり、岸田政権は勝利し、2025年まで国政選挙がない「黄金の3年間」といわれた。
今年5月までは、岸田政権には先進7カ国(G7)広島サミットの成功という目標もあり、やりたいことがよく分かった。しかし、サミット後、何をやりたいのかさっぱり分からない。
岸田首相は、やりたいことは何かと問われて「人事」と答えたことがあるくらいで、結局どんな政策をやりたいのか見えにくいが、サミット後はその感が特に強い。
年内の衆院解散を事実上見送るというが、実際には支持率の低下で解散権が縛られている。解散権のない首相は党内掌握も厳しい状況で、求心力は既にない。
もし今の段階で解散を言い出したら、あっという間に党内で「岸田降ろし」の動きが出てくるだろう。既に事実上、岸田首相はレームダック(死に体)に陥っているとの見方もできる。
となると、岸田首相は「やぶれかぶれ解散」に出るか、来年秋の自民党総裁選までしのぐしか選択肢は残されていない。どちらにしても、党内政局を引き起こす要因になる。
今月11日には日本保守党が大阪・梅田で街宣活動を行い、主催者も警察も予想できなかったほどの多くの聴衆を集めるなど圧倒的な人気を呼んだ。
岩盤保守層が自民党支持から離れていくのは我慢ならない保守系自民党議員には危機感が強い。
その萌芽(ほうが)が、自民党の青山繁晴参院議員の「総裁選出馬宣言」である。実際問題として推薦人20人の確保は難しいかもしれないが、何が起こるかは分からない。
さらに15日には、高市早苗経済安全保障担当相が自ら主宰する勉強会「『日本のチカラ』研究会」を立ち上げた。高市氏は前回の総裁選に立候補しており、推薦人20人の確保はそれほどハードルは高くない。
関係者は「あくまで純粋な経済安全保障などの勉強会」というものの、政治的には絶妙なタイミングであり、額面通りには受け取れない。ここにきて、自民党内実力者の水面下の動きもあるらしい。
山田太郎文科政務官、柿沢未途法務副大臣、神田憲次財務副大臣がそれぞれ不祥事で辞任した。さらに三宅伸吾防衛政務官のスキャンダルも報じられたが、三宅氏は否定しているという。
いずれにしても、岸田政権はボロボロだ。ある自民党関係者は、年末までもつのだろうかと心配していた。
●岸田首相、池田大作氏死去に「深い悲しみ」 追悼コメントを投稿 11/18
岸田首相は18日、創価学会の池田大作名誉会長が死去したことを受け、自身のX(旧ツイッター)に「池田大作氏の御逝去の報に接し、深い悲しみにたえません。池田氏は、国内外で、平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました。ここに謹んで御冥福をお祈りするとともに、御遺族の方々および御関係の方々に対し衷心より哀悼の意を表します。内閣総理大臣 岸田文雄」と投稿した。
創価学会は、自民党が連立政権を組む公明党の支持母体にあたる。
●岸田首相の追悼メッセージに「政教分離どこいった?」SNSが大いにざわつく 11/18
創価学会の池田大作名誉会長が死去したことを受け、岸田文雄首相は18日、X(旧ツイッター)で「歴史に大きな足跡を残されました」などと哀悼のメッセージを発信した。創価学会は公明党の支持母体として知られていることもかさなり「政教分離どこいった?」と、SNSが大いにざわついている。
岸田首相はXに「池田大作氏の御逝去の報に接し、深い悲しみにたえません。池田氏は、国内外で、平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました」と投稿。「ここに謹んで御冥福をお祈りするとともに、御遺族の方々および御関係の方々に対し衷心より哀悼の意を表します。内閣総理大臣 岸田文雄」と記し、首相の立場としてメッセージを発信した。
●柿沢前法務副大臣“年内逮捕”へ!? 萩生田氏との遺恨の“江東区長選” 11/18
岸田政権は不倫、選挙戦での現ナマ乱舞、悪質な税金滞納と不祥事の火薬庫≠ニ化しているが、その統率力の無さは、今に始まったことではないようだ。実は、江東区長選をめぐる柿沢未途衆院議員の現金配布騒動の裏に、自民党を二分する遺恨≠ェ渦巻いていたのである。
4月に行われた東京都江東区長選をめぐる公職選挙法違反事件で、木村弥生前区長を支援した自民党衆院議員・柿沢未途前法務副大臣の「年内逮捕説」が、永田町を駆け巡っている。
東京地検特捜部は、柿沢氏側が区長選前に区議らに現金を配っていたことを突き止めており、「Xデーが近い」とみられているのだ。過熱した区長選の裏で一体、何が起きていたのか――。
区長室など木村氏の関係先に家宅捜索が入ったのは10月24日。このとき、自民党幹部は、区長選が行われてから約半年も経っていたことに、妙な違和感を覚えたという。同幹部は当時こう語っていた。
「特捜の狙いが区長のはずはない。これは萩生田光一政調会長による柿沢潰しだ。慎重に捜査を進めたから、ガサ入れが半年も後になったのだろう。萩生田サイドは、特捜部への情報提供に勤しんでいたのでないか」
案の定と言うべきか、その後、柿沢氏をめぐるニュースが世間を騒がせたが、事件の契機となった選挙中の違法な有料ネット広告の掲載は、柿沢氏の勧めによるものだった。
また、柿沢氏は10人以上の区議に1万円〜数十万円の提供を申し出ており、受領した区議がいたことも分かっている。この現金に区長選での投票依頼や選挙運動の謝礼の意味合いが含まれていれば、買収容疑で逮捕される公算が高いのだ。
萩生田氏は煮え湯を飲まされた!?
もっとも田舎ならまだしもメディアの注目度も高い東京の区長選がここまで過熱した理由は、裏に醜いつばぜり合い≠ェ渦巻いていたからだとみられている。
自民党関係者が言う。
「この区議選で自民党都連が組織を挙げて支援した候補は、4月に死去した山崎孝明元区長の長男で元都議の一輝氏。都連会長の萩生田氏は懸命に彼を支え、柿沢氏にも支援を働きかけたが、柿沢氏はあいまいな態度を取り続け、木村氏を支援して当選に導いた。メンツを潰された萩生田氏は『許せない!』と怒りをあらわにしていたが、もともと2人には過去に遺恨があったのです」
柿沢氏は今でこそ自民党議員だが、以前は民主党、みんなの党、維新の党、希望の党などを渡り歩いてきた政界渡り鳥=Bそのため、自民党内の評判はいまだ芳しくないが、遺恨が生じたのは自民党に入党する前の無所属時代だった。
「当時、柿沢氏は衆院東京15区(江東区)で、自民党の秋元司元衆院議員とシーソーゲームを繰り返していたが、その秋元氏が2019年にカジノを含む統合型リゾート事業をめぐる汚職事件で東京地検に逮捕された。これを好機とみた柿沢氏は21年10月の衆院選に、入党含みの自民公認で出馬する意向を同党に打診したのです」(全国紙政治部記者)
ところが、当時、自民党都連の総務会長をしていた萩生田氏らがこれに反発。別の人物を擁立したものの結局調整がつかず、共に2人は推薦を受けて無所属で戦うことに。その熾烈な選挙戦で当選をもぎ取ったのが、柿沢氏だったのだ。
「このときの柿沢氏の勝因は父、柿沢弘治元外相の地盤が強固だったこと。また、自民の推薦も効力を発揮したが、これが得られたのは谷垣禎一元自民党総裁が柿沢氏の母校・麻布高校の先輩で、谷垣グループの代表世話人で選対委員長だった遠藤利明衆院議員が承諾したから。柿沢氏に煮え湯を飲まされた萩生田氏は、怒り心頭だったのです」(同)
要は、この際に柿沢氏と萩生田氏の間には決定的な軋轢が生じ、その遺恨試合≠ェ今回の江東区長選だったというわけなのだ。
岸田政権の危機にも…
ただ、水面下で現金が飛び交うほど過熱した要因には、同区長選が分裂選挙だったという側面もある。柿沢氏と萩生田氏だけでなく、自民党の保守とリベラルが二手に分かれ、激しい選挙戦を繰り広げたことが火に油を注いだとみられているのだ。
「山崎一輝氏を支援した萩生田氏は故安倍晋三元首相の最側近だが、『安倍チルドレン』でもある都連会長代行の丸川珠代参院議員も応援に回り、出陣式では『自民推薦で戦うのは山崎氏1人』と絶叫したほど。この一輝氏陣営の保守系議員の布陣に対し、木村氏側は柿沢氏のほかに野田聖子元総務相、稲田朋美元防衛相が支援に回ったのです」(前出・自民党関係者)
ちなみに、野田氏は共産党機関紙『赤旗』のインタビュー記事に登場したこともある古賀誠元幹事長の寵愛を受けてきたリベラル系議員。一方、稲田氏は安倍派に属し、安倍元首相から「自民党のジャンヌ・ダルク」と評されたが、同氏の死後はリベラルに転向したのか、国会で成立したLGBT理解増進法の旗振り役として活躍。今や萩生田氏や丸川氏が所属する安倍派内では、裏切り者扱いだ。そのためか、両派の激突は告示前から「保守分裂で大激戦」と評判だったのだ。
政治部デスクが言う。
「柿沢氏と萩生田氏が対峙した江東区長選は、遺恨含みの安倍派vsリベラル派という代理戦争に発展したが、これが柿沢氏を違法行為へと走らせた可能性も高い。特捜の捜査が同氏に向けられた裏に萩生田氏が絡んでいるかは不明なものの、萩生田氏がほくそ笑んでいるのは事実だろう。木村氏の辞任で再び12月10日に投開票される江東区長選も、候補を担ぐ萩生田氏の独断場になる可能性が高いのです」
ただ、柿沢氏が逮捕されれば、岸田政権は万事休す。いよいよ、断末魔の悲鳴が聞こえてきそうだ。
●APEC終了 中国・韓国・アメリカとの首脳会談で成果も求められる政権基盤 11/18
APEC=アジア太平洋経済協力会議に出席していた岸田総理は、すべての日程を終えて帰国の途につきました。同行していた政治部官邸キャップ・川西記者の報告です。
「こんなに詰め込んだ日程を文句ひとつ言わずこなしている」。同行筋も驚く中、岸田総理は精力的に中国、韓国、アメリカなどの首脳と会談しました。
韓国の尹錫悦大統領との間では、各分野における協力関係をさらに深めることで一致し、その後、脱炭素燃料の供給網を共同で創設すると表明しました。
また、当初5分間の予定だった日米首脳会談も15分間行い、来年早期に国賓待遇で公式訪問するよう招待を受けました。
岸田総理(日本時間きのう午後)「戦略的互恵関係を包括的に推進していくこと、これを再確認いたしました」
中国の習近平国家主席との間で確認されたのは、2006年以降日中関係を定義づけてきたこの「戦略的互恵関係」という言葉です。
最近は使われていなかったこの言葉が復活したことについて政府関係者は、「将来を見据え、いったん関係をリセットするという中国側の意思ではないか」と解説しています。
いずれも来年以降の各国との関係改善・強化に向け一歩前進と言えますが、外交を推し進めるにはしっかりとした政権基盤が必要で、結局は内政面での成果が求められることになります。
●岸田総理「デフレ脱却の千載一遇のチャンス」 補正予算案に意欲 11/18
週明け20日から始まる2023年度補正予算案の審議について岸田総理大臣は「デフレ脱却の千載一遇のチャンスをつかみとる」として成立に向けて全力で取り組む考えを強調しました。
「デフレ脱却の千載一遇のチャンスをつかみ取って物価上昇を上回る、持続的で構造的な賃上げが行われる経済の実現に向けて、政府一丸となって取り組んでいきたい」(岸田総理大臣)
岸田総理は、訪問先のアメリカ・サンフランシスコでスタートアップ企業らと会談し、「昨今の著しい変化の流れをつかみ、力にしていく決意をこの地で新たにした」と述べました。
帰国後は、20日に新たな経済対策の裏付けとなる補正予算案を閣議決定し、国会での審議が始まります。
所得税などの減税をめぐり各社の世論調査で厳しい評価がされていることについて岸田総理は「謙虚に受け止める」としました。そのうえで、さらなる賃上げまでの一時的な措置として定額減税の必要性を改めて強調しました。
●岸田首相「定額減税は一時的措置」 “愚策”に集まる批判「アピールだけ」 11/18
アジア太平洋経済協力(APEC)会議に出席するため、米サンフランシスコを訪れている岸田文雄首相。中国の習近平国家主席と首脳会談をおこない、福島第1原発の処理水の海洋放出に伴う日本産水産物の輸入停止措置撤廃を求めるなど「成果づくり」を狙っている。
「内閣支持率が20%前半ですから、焦りもあるはずです。首相就任以来、『外交の岸田』を自認していますし、支持率が上がったG7広島サミットの『成功体験』があるので、その再来を目論んでいるのでしょう」(政治担当記者)
そうしたなか、岸田首相は会見で、所得税と住民税の定額減税について言及。「デフレに後戻りさせないための一時的な措置だ」と語った。
「これまでも、自民党の宮沢洋一税制調査会長が『1年がきわめて常識的だろう』と語っていたので、既定路線ではあるのですが、野党はもちろん、与党内からも『1年限りでは効果が期待できない』『国民が負担減を実感しにくい』と、評判が悪いものでした。さらに、時事通信の世論調査でも、51%の有権者が所得税・住民税減税に期待していないという結果が出ました。
しかも『税収の増加分を還元する』と言いながら、その増加分は、国債の償還などですでに支出していて、スッカラカン。さらに国債を発行して賄うことになるという赤っ恥の事態になりました」(経済担当記者)
「米櫃が空っぽ」(野党議員秘書)なら「1回だけ」にならざるをえない。国民もいまさらながらあきれている。「一時的な措置」を報じたニュースサイトのコメント欄には《減税したぞアピールだけだね。おまけに一時的にしょぼいから効果は薄い》《デフレ脱却もしていないのにたった一回の減税で後戻りしない? デフレ脱却してから言って下さい》《デフレに戻さないためだったら1年ではなく数年実施されるべきではないでしょうか。企業の賃上げ任せではダメですよ》などの批判が殺到している。《一時的な措置で終わるように賃金を上げると言ってましたね。実際賃金はすぐに上がりましたね、税金が原資である議員や公務員の給料は》と、嫌味の声も多くあった。
「国民からは『選挙目当ての減税』と見透かされ、永田町でも『愚策』とこき下ろされていますが、岸田首相は『2024年の春闘で企業が大幅な賃上げをして、経済の好循環を達成する』と青写真を描いています。しかし、それが達成できなかったら一気に政局になるでしょう」(前出・政治担当記者)
愚策の上に無策では、国民が不幸になるばかりだ。
●野党転落前夜?麻生政権末期に近づく 岸田内閣、止まらぬ支持率低下 11/18
政権復帰後初の20%割れ―自民
時事通信社の11月世論調査で、岸田文雄内閣の支持率は21.3%(前月比5.0ポイント減)、自民党の支持率は19.1%(同1.9ポイント減)で、いずれも岸田政権発足以来の最低を更新した。特に、自民党の支持率が20%を切ったのは、2012年12月の政権復帰後、初めて。岸田政権に対する有権者の厳しい評価は、衆院選惨敗で野党に転落した麻生太郎政権末期に近づきつつあることが、調査結果から読み取れる。(時事通信解説委員長 高橋正光)
調査は10〜13日に、全国18歳以上の2000人を対象に個別面接方式で実施。有効回収率は57.2%。それによると、岸田内閣の不支持率は53.3%(同7.0ポイント増)、「わからない」が25.5%(同1.9ポイント減)。世代別の支持率を見ると、「18歳〜29歳」で若干持ち直したが、それ以外の世代では全て減少。50歳代以下の世代はいずれも2割に届かず、60歳代も22.0%(同10.4ポイント減)と大きく落ち込んだ。不支持率は全世代で上昇した。
性別では、男性の支持率は21.8%(同8.1ポイント減)、不支持率は56.2%(同9.3ポイント増)。女性の支持率は20.7%(同1.8ポイント減)、不支持率は50.3%(同4.6ポイント増)。男性の支持が大幅に低下した結果、男女がほぼ同水準となった。
自民支持層の内閣支持も50.0%(同10.7ポイント減)と大きく減り、「支持政党なし」(無党派層)の内閣支持も13.9%(同3.2ポイント減)で、低下した。
一方、自民党支持(19.1%)の性別では、男性22.5%(同2.3ポイント減)、女性15.5%(同1.5ポイント減)。女性の支持が低い。世代別では、50歳代以下は全て2割に届かず、15%前後。60歳代が20.1%、70歳以上が28.4%。このうち、60歳代は、前月比9.9ポイント減で、内閣支持率と同様に大幅に下落した。
「民主主義の危機」菅政権より進む
今回の結果を、菅義偉前首相が党総裁選への不出馬を表明する直前の菅内閣(21年8月調査)、衆院選を控えた麻生内閣(09年7月調査)とそれぞれ比べると、菅内閣よりはるかに厳しく、麻生内閣に迫りつつあることが分かる。それによると、菅内閣の支持率は29.0%、不支持率は48.3%。自民党支持率は23.7%で、同党支持層の内閣支持率は59.4%だった。
政界では、内閣支持率と自民党支持率を足した数字が50%を切ると、政権維持に早晩行き詰まる、との説(青木の法則)が広く知られる。菅政権は1回も「青木の法則」を下回ることがないまま、退陣に追い込まれた。岸田政権は、「青木の法則」から約10%も割り込んでおり、政権運営がはるかに厳しい状況にあると言える。
岸田首相は21年9月の党総裁選で、当時の菅政権を「国民の声が自民党に届いていない。民主主義の危機」と断じ、厳しく批判した。調査結果は、岸田政権で「民主主義の危機」が、菅政権より進んだことを示している。
自民支持層の内閣支持、麻生政権と同水準
一方、麻生内閣の支持率は16.3%(不支持64.2%)、自民党の支持率は15.1%。「青木の法則」から、2割近く割り込んでいる。また、自民支持層の内閣支持率は48.0%、無党派層では11.1%。内閣、自民党の支持率とも、麻生内閣より若干高いが、自民支持層、無党派層の内閣支持率は、麻生内閣時の水準に迫りつつある。今後、内閣、自民党の支持率低下に歯止めがかからなければ、政権交代前夜の麻生内閣の様相を呈することになろう。
もっとも、岸田内閣と麻生内閣で、決定的に異なる点が一つある。それは、野党の支持率だ。岸田内閣の支持率低下が進んでも、野党の支持率は低迷したまま。これに対し、麻生内閣当時、野党第1党・民主党の支持率は18.6%で、自民党を上回っていた。政権批判票の受け皿ができていたことが、直後の衆院選で自民党の惨敗、野党転落につながった。
今回11月の世論調査での、自民党以外の支持率は、維新4.6%(前月比0.7ポイント増)、公明4.1%(同1.0ポイント増)、立憲民主2.7%(同0.4ポイント減)の順。これに、れいわ新選組の1.6%(同0.5ポイント増)が続き、共産(1.1%)と国民民主(0.9%)を上回った。「支持政党なし」は62.5%(同1.4ポイント増)。
政党支持率は、「自民1強」「他弱野党」の状態。自民支持から離れた有権者は、既成野党には向かわず、野党全体で支持の分散化が進みつつあることがうかがえる。岸田首相は年内の衆院解散を断念し、経済対策の実行に全力を挙げる考えだ。
こうした状況を踏まえ、次期衆院選を占うと、カギを握りそうなのは、野党側の候補者調整と無党派層の動向。岸田首相が現状で解散しても、小選挙区で野党の候補者が乱立し、投票率(前回21年10月は55.93%、自民が惨敗した09年8月は69.28%)が上がらなければ、自民党の議席(262、過半数は233)は、それほど減らないかもしれない。
●〈内閣支持率21.3%〉過去最低を更新で“岸田おろし”が加速 11/18
岸田文雄首相が発表した17兆円規模の大型経済対策の目玉は所得税と住民税の減税だが、国民にその恩恵が届くのは来年6月と遅く、その評判は徹底的に悪い。さらに副大臣や政務官の不祥事、辞任が相次ぎ、国民からの信頼はいまや地に落ちている。こうしたなか、「岸田おろし」を思わせる動きが自民党内で徐々に出始めた。
裏目の経済対策と閣僚の「自民ドミノ」で崖っぷちの岸田内閣
岸田政権の支持率低下が止まらない。
時事通信社が11月16日に発表した世論調査の結果=内閣支持率21.3%。は、2012年に自民党が政権に復帰して以降、歴代内閣で過去最低の数字となった。
同社が10月に実施した前回調査時の支持率26.3%ですら岸田政権で最低の数字で、政権を維持するには「危険水域」と言われていた。にもかかわらず、そこからさらに5ポイントも下げたことは永田町でも驚きを以って受け止められている。
永田町関係者からは「岸田政権の支持率は下げ止まらず、このまま2割を切るのではないか」との声も。
支持率が暴落している背景には、岸田首相が打ち出した経済対策が国民生活と乖離しており裏目に出ていることが挙げられる。
17兆円規模にも及ぶ経済対策では、岸田首相が「増税メガネ」のニックネーム払拭にこだわるあまり、来年6月になってようやく恩恵が届く所得税や住民税の4万円減税が目玉となっている。
そのなかで、内閣府が15日に発表した7〜9月期の国内総生産(GDP)は年率換算で2.1%減となり、3期ぶりのマイナス成長に。
これは物価高によって個人消費が伸び悩んでいるためだろう。岸田首相のズレた減税策よりも、年内に恩恵が届く給付金などのほうが必要とされていることが浮き彫りになった。
それに加えて、9月に発足した新内閣の政務官や副大臣の不祥事も相次いでいる。
山田太郎文科政務官は20代女性との不倫関係が報じられ、辞任。柿沢未途法務副大臣は4月の江東区長選で違法な有料ネット広告を勧めたほか、選挙前に複数の区議に現金を配っていたことも発覚。神田憲次財務副大臣も税金滞納を繰り返していたことが問題となり、次々と“更迭”された。
きわめつけは15日、三宅伸吾防衛政務官が事務所の女性スタッフに、体を触ったりキスをしたりする性加害を行った疑惑を週刊文春が報道。本人は「まったく身に覚えがない」と否定しているが、岸田政権の新たな火種となっている。
これら以外にも、永田町内では次に狙われる自民党議員の名前が出回っており、不祥事の連鎖は尽きそうにない状況で、あらためて岸田人事の「不適材不適所」ぶりが露わになっているといえるだろう。
存在感を増しつつある菅義偉前首相
そんななか、自民党内では「岸田おろし」につながるような動きも出始めている。
15日には経済安全保障大臣の高市早苗衆院議員が、国力増強をテーマにした勉強会「『日本のチカラ』研究会」を発足し、初会合を開いた。
現職の閣僚が自身主宰の勉強会を立ち上げるのは異例で、来年9月に想定されている自民党総裁選で岸田首相に対抗する狙いがあると見られている。
しかし、この初会合に集まった国会議員はたった13人。総理総裁を目指す政治家としての求心力の弱さが浮き彫りになってしまった。
もともと高市氏は党内の名門派閥である清和会に所属していたが、当時は町村派だった2011年、翌年の総裁選で派閥会長の町村信孝氏ではなく、安倍晋三氏を応援するために派閥を離脱。
その後は無派閥で活動を続けているが、過去の経緯から清和会(現在の安倍派)とは溝がある。
これまで、その間を取り持っていたのが安倍晋三元首相であったわけだが、安倍氏が銃撃事件で亡くなって以降は後ろ盾を失い、今回の初会合ではそれが如実に表れたといえるだろう。
一方でメディアへの露出が増えて存在感を増しつつあるのが菅義偉前首相だ。
12日に出演した「日曜報道 THE PRIME」(フジテレビ系)では、インバウンド政策として江戸城再建計画が取り上げられ、「推進するためにはひとつの大きな方向性と世論をつくらないといけない」と語ったことが話題に。
また、15日に出演したインターネット番組「ABEMA Prime」では、岸田首相の経済対策について「国民になかなか届いていないのは、きちんと説明をする必要がある」と苦言を呈した。
番組で菅氏は自身の首相再登板については「ない」ときっぱり否定し、小泉進次郎元環境大臣について「(総理総裁の)道を歩んでいくようになると思う」と持ち上げたが、永田町では「来年の総裁選政局に絡んでいこうとしている意欲の表れだ」と囁かれている。
近づく総裁選で問われる自民党議員の姿勢
こうした「岸田おろし」の前触れとも取れる動きは今後大きくなっていくのか。それを占うのが安倍派の動向だ。
現在の岸田政権は、首相自ら率いる岸田派、茂木敏充幹事長が率いる茂木派、麻生太郎副総裁が率いる麻生派の三派連合によって成り立っている。
これらを突き崩し得るのは99人を抱える党内最大派閥である安倍派だが、その肝心の安倍派は安倍氏に代わる次のリーダーを決められず、未だに「安倍派」として集団指導体制を敷いており、派閥としての意思決定力は鈍い。
現在の中途半端な状態を脱却するためには、派閥としての方向性をしっかりと決める必要があるが、自民党関係者は「99人の大所帯を持つ安倍派が無理に方向性を決めようとしてしまえば、意見が割れて派閥が分裂してしまう可能性がある。そのため総裁選への対応は慎重にならざるをえない」と解説する。
しばらく安倍派は「岸田おろし」の動きについても静観の状態が続きそうだ。
しかし、来年9月に想定される自民党総裁選は着実に近づいてきている。総裁選に向けて「岸田おろし」の動きがこれから大きくなっていけば、衆議院の解散戦略にも影響を与えることになるだろう。
もし、岸田首相が総裁選前に解散を決断するとすれば、タイミングは来年1月の通常国会冒頭か、来年6月の国会終盤に絞られてきているが、いずれにせよ、選択の猶予はそれほど残されていない。
そして、判断を急かすかのように、報道各社の世論調査では支持率が下がり続けている。
このまま漫然と岸田政権を続けて、悠長に政局を見極めている場合なのか。自民党議員ひとりひとりの姿勢が世論から問われている。
●支持率急降下中!岸田首相が狙う起死回生...悪評嘖々の総合経済対策 11/18
岸田支持率急降下
岸田文雄政権は11月10日、経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案13.1兆円を閣議決定した。
岸田首相が低迷する内閣支持率打破のため起死回生とばかりに投じた事業規模37.4兆円の総合経済対策の目玉である所得税減税と給付金そのものが悪評嘖々である。
最新の産経新聞とフジテレビ(FNN)の合同世論調査(11月11〜12日実施)の内閣支持率は前回比7.8P減の27.8%、不支持率が同9.2P増の68.8%である。
そして衝撃的だったのはNHK調査(同10〜12日)の数字である。支持率7P減の29%、不支持率8P増の52%。何とNHK調査も支持率が30%を下回ったのだ。先週末までの各社調査に追い打ちをかける支持率急降下となった。
すなわち、TBS(JNN。同4〜5日):支持率10.5P減の29.1%、不支持率10.6P増の68.4%、共同通信(3〜5日):支持率4P減の28.3%、不支持率4.2P増の56.7%である。支持率が「30%」を切ったのは時事通信(10月6〜9日)26.3%、毎日新聞(同14〜15日)25%、朝日新聞(14〜15日)29%、テレビ朝日(ANN。28〜29日)26.9%に加えて8社となった。
因って、読売新聞(10月13〜15日):支持率前回比1P減の34%、不支持率1P減の49%、日本経済新聞(同27〜29日):支持率9P減の33%、不支持率8P増の59%―の2社だけが支持率「30%」を上回る。
こうして岸田内閣支持率の相場観は、29%(NHK)%+28.3%(共同)+29%(朝日)÷3=28.8%と言える。このトレンドは恐らく所得税・住民税減税が実施される来年6月頃まで続くと見ていい。
だが本稿では、国民の関心がなかなか向かわない総合経済対策の具体策を公正に評価したい。筆者が注目したのは、経済対策の前提となる基本的な考え方「経済産業政策の新機軸」である。
国内で不評の経済対策
「産業政策」と言えば、1980年代末から90年代初頭に対日貿易赤字解消を求めたブッシュ(父)米政権の通商代表部(USTR)主導で始まった日米構造協議(SII)を想起する。全ては日本の「政・官・民癒着のトライアングル」に起因すると「日本異質」論が噴出し、その後の90年代後半のクリントン政権下で展開された日本叩き(ジャパン・バッシング)のトリガー(引き金)となった。
しかし、時代は大きく変わった。今や米国も官は民を邪魔しないことに徹する新自由主義的政策でもない、社会・経済課題解決に向けて、官も民も一歩前に出て、あらゆる政策を総動員する新たな産業政策をその枠組みにまで遡って検討する必要があるという理解に至った。要するに、政府が積極的に介入することで民間投資・イノベーションを促すことの効果を認めているのだ。
事実がそれを証明している。経済産業省が経済産業政策の新機軸を打ち出したのは2年前の2021年11月。そして今年の9月、同省の西川和見官房参事官(経済安全保障担当)が訪米し、ホワイトハウスで米国家安全保障会議(NSC)のタルン・チャブラ技術・安全保障担当上級部長と経済安全保障問題について協議した。その際に日米の産業政策連携を提案されたというのだ。まさに隔世の感がある。
兆しはあった。バイデン大統領が22年8月に署名・成立したインフレ削減法(総額4330億ドル=約58.5兆円)には気候変動対策からEV(電気自動車)税額控除に国内(北米)組立要件、水素製造装置税額控除に実勢賃金・CO2排出基準要件まで盛り込まれていた。
その後の今年6月に発表した「国内発明・国内製造(invent it here, make it here)」政策も言わば産業政策である。こうした流れは今夏以降、欧州連合(EU)主要国のドイツの成長機会法制定やフランスのEV補助金制度の変更などに継承されている。
日本の先駆的な経済産業政策はミッション志向の社会・経済課題の解決を目指して進められてきたのだ。それは、GX(グリーントランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)を核とする8分野での国内投資拡大のための官民連携であり、その具体策がきちんと総合経済対策に盛り込まれている。
岸田首相は米サンフランシスコで15〜17日に開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席後の17日、同地シリコンバレーのスタンフォード大学で行われた討論会でも10年間に20兆円の国費を投じ、150兆円の官民投資を集める意向を改めて発言した。国内で不評の経済対策をシリコンバレーの投資家や起業家はどう評価するのだろうか。
●政務三役「辞任ドミノ」スキャンダル続発でも岸田総理が「俺の責任ではない」 11/18
10月下旬からわずか3週間足らずで、3人の副大臣・政務官の「辞任ドミノ」が発生した岸田政権。その影響で、内閣支持率は下がりっぱなしだ。閣僚・政務三役のスキャンダルはまだまだ続きそうな気配だが、当の岸田文雄総理自身は「俺の責任じゃないから」とアッサリしているという。神田憲次衆院議員を財務副大臣から更迭した際は「安倍派は俺の責任を問えないな」と漏らしたというエピソードが永田町を駆け巡っている。
岸田総理はAPEC(アジア太平洋経済協力会議)出席のため、5日間の日程で11月16日から訪米中。「外交の岸田」で支持率回復を目指そうと、生き生きしている。全国紙政治部デスクが言う。
「9月に発足した第2次改造内閣は、各派閥の考えを最重要視した内閣です。岸田総理周辺では『身体検査は各派閥の仕事。野党はともかく、党内で問題にすれば信義違反だ』との声があります。だから外交に集中できるのでしょう」
副大臣・政務官の人事は、各派閥の代表として幹事長室に陣取る数名の副幹事長が、派閥の意向を調整しながら決める。総理は関与せず、官房長官、副長官と政務の秘書官らが連絡役となり、チェックする。今回はこの機能が働かず、そこに岸田政権の責任はあるが「それくらいは各派閥でやってくれ」というのが、岸田総理の言い分というわけだ。
日本維新の会を離党した鈴木宗男参院議員は11月14日、自身のブログでこう書いている。
〈内閣の一員が辞めるとよく「総理の任命責任」という言葉が出てくるが…副大臣、大臣政務官人事は…派閥からの推薦を受け、希望するポストを調整し、決定していくのが流れである。任命責任というなら推薦した派閥の長に責任があることになる〉
鈴木氏の意見は永田町の常識だが、各派閥は世論に迎合し、政権批判をする。岸田総理は文句のひとつも言いたいところだろう。
辞任した神田氏は安倍派で、もちろん安倍派が推薦した。神田氏を副大臣にした実質上の責任者、松野博一官房長官も安倍派で、ダブルチェックをスリ抜けた醜聞の責任はどこにあるかということだ。安倍派は100人を誇る自民党最大派閥だが、筋を通せば一連の辞任ドミノで岸田おろしには動けない。
「安倍派が動かなければ、総理の座から引きずり降ろされることもない。それが総理の精神安定剤になっているのでは」(前出・政治部デスク)
国民がまるで支持しなくとも全く問題はない、ということなのだろう。  
●池田氏死去、外国メディアも速報=「ゴルバチョフ氏らと交流」 11/18
創価学会の池田大作名誉会長の死去について、外国メディアも18日、速報で伝えた。公明党の結成や、故ゴルバチョフ元ソ連大統領ら著名政治家との交流などを報じ、影響力を指摘した。
AFP通信は「日本で最も大きく、政治的影響力がある」宗教団体の一つを率いたと強調。「国際交流に力を注ぎ、ゴルバチョフ氏らと会談した」と報じた。ロイター通信は、信者として英俳優オーランド・ブルームさんや元サッカーイタリア代表ロベルト・バッジョ氏らを紹介した。
●創価学会の池田大作名誉会長を与野党が追悼 「平和」「中国との親善」 11/18
創価学会の池田大作名誉会長が死去したことを受け、与野党各党が追悼のコメントを発表した。
自民党の茂木幹事長は「池田大作名誉会長の御逝去の報に接し、深い悲しみにたえません。池田先生は、永年に亘り国際平和の推進、文化、教育の振興などに大きく貢献され、歴史に大きな足跡を残されました。ここに謹んで御冥福をお祈りするとともに、御遺族および関係の皆様に衷心より哀悼の意を表します」とコメントした。
岸田首相も党総裁として「池田名誉会長は、国内外で、平和、文化、教育の推進など幅広い分野で極めて重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました」などと綴った哀悼のコメントを投稿し、自身のX(旧ツイッター)にも内閣総理大臣名で投稿した。
立憲民主党の泉代表は「心より哀悼の意を表します。池田大作名誉会長は、長年にわたり創価学会において卓越した指導力を発揮され、日本の平和運動、福祉の推進、そして中国をはじめ世界各国との友好親善に力を尽くしてこられました。ここに、生前のご功績に深く敬意を表し、謹んでお悔やみを申し上げます」とコメントした。
●「物価高で税収増、得するのは政府だけ」 田村秀男特別記者が講演 11/18
静岡県産経会は18日、本紙の田村秀男特別記者による講演会「日本再生のチャンス!! 岸田政権は活かせるか?」を浜松市地域情報センター(浜松市中区)で開いた。
田村氏は、ロシアのウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化、米中摩擦などを例に挙げ、「世界では覇権争いが激化し、消耗戦が続いている」と指摘。そうした中で、多額の日本マネーが米国や、米国経由で中国に投資されているほか、日本の円や国債が売られる傾向にあるとした。
足元の円安については、「物価高となり、(消費税などの)税収が増える。この状況下で得をしているのは日本政府だけだ。国民は苦しんでいる」と強調した。
その上で、「円安メリットを生かして資金を国内投資に循環させ、難局を日本再生のチャンスに変えていくべきだ」などと訴えた。
●「言いにくいこと言う政治を」 自民・森山総務会長 11/18
自民党の森山裕総務会長は18日、岸田内閣の支持率低迷に関し、「国民の信頼を取り戻し、やるべきことをしっかりやる。言いにくいことも言って理解してもらう。そういう政治を進めていくことが大事だ」と述べた。
福岡県粕屋町で開かれた同党衆院議員の会合で講演した。 
●自民5派閥の団体 約4000万収入不記載で告発 特捜部が任意聴取 11/18
自民党の5つの派閥の政治団体が政治資金パーティーに20万円を超える支出をした団体の名前など、合わせておよそ4000万円分を収支報告書に記載していなかったとして告発状が提出され、東京地検特捜部が5つの派閥の団体の担当者に任意の事情聴取を要請し、聴取を進めていることが関係者への取材でわかりました。
自民党の5つの派閥の政治団体、「清和政策研究会」、「志帥会」、「平成研究会」、「志公会」、「宏池政策研究会」をめぐっては、おととしまでの4年間の収支報告書にそれぞれが主催した政治資金パーティーに20万円を超える支出をした団体の名前や金額など合わせておよそ4000万円分を記載していなかったとして、大学教授が5つの派閥の会計責任者らに対する政治資金規正法違反の疑いでの告発状を東京地方検察庁に提出しています。
この問題で東京地検特捜部が5つの派閥の政治団体の担当者に任意の事情聴取を要請し、聴取を進めていることが関係者への取材でわかりました。
政治資金規正法は1回のパーティーで20万円を超える支出をした団体や個人について、名前や金額を収支報告書に記載することを義務づけていますが、
告発状では
・「清和政策研究会」がおよそ1900万円分、
・「志帥会」がおよそ900万円分、
・「平成研究会」がおよそ600万円分、
・「志公会」がおよそ400万円分
・「宏池政策研究会」がおよそ200万円分の
パーティー券収入を記載していなかったとしています。
特捜部は収支報告書が作成された経緯や派閥の政治資金パーティーをめぐる資金の流れなどについて調べを進めるものとみられます。
●岸田首相、政権運営いばらの道 外交日程終え再び内政局面へ 11/18
米国を訪問していた岸田文雄首相は17日(日本時間18日)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議などの一連の外交日程を終え、帰国の途に就いた。20日からは令和5年度補正予算案の国会審議が始まり、再び内政の局面となる。ただ、所得税減税を含む経済対策に関する国民の理解は浸透せず、内閣支持率は低迷。政務三役3人の「辞任ドミノ」の余波も収まっておらず、政権運営は年末にかけていばらの道が続く。
外遊のハイライトは中国の習近平国家主席との1年ぶりの首脳会談だった。首相は帰国に際しての記者会見で「建設的かつ安定的な日中関係の構築という大きな方向性を確認した」と成果を強調し「引き続き活発な首脳外交を行い、日本の平和と安全を守り、国際社会を協調に導くため尽力したい」と意欲を語った。
一方、内政では厳しい現実に直面している。経済対策として思い切った減税を打ち出したものの、世間の反応は芳しくない。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の11月の世論調査での内閣支持率は27・8%で、「危険水域」とされる3割未満となった。
支持率低下に関し、首相は会見で「調査結果や指摘は謙虚に受け止めたい」と表明。所得税減税や賃上げなど、最重要課題とするデフレ脱却の取り組みについて「国会でも丁寧に説明し、補正予算成立に全力で取り組んでいきたい」と語った。
新たな火種も浮上している。最大2350億円に上振れする見通しとなった2025年大阪・関西万博の会場建設費問題だ。補正予算案にも増額分などが盛り込まれており、立憲民主党などは予算審議で追及していく構えだ。
政務三役3人は、それぞれの所管事項をめぐる不祥事で辞任しており、「適材適所」と説明してきた首相の任命責任も問われる。
辞任後も不祥事は幕引きに至っておらず、自民党の柿沢未途元法務副大臣に関する公職選挙法違反事件では、16日に同氏事務所へ家宅捜索が入った。他の政務三役らにもスキャンダルが報じられており、政権に対する国民の目はさらに厳しさを増す可能性がある。
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●2024年「壊滅的な巨大地震が世界で最も裕福な場所を襲う」不吉すぎる予言 11/19
“世界で最も富裕な場所”で壊滅的な大地震が起きる――。現代のノストラダムスが語る「2024年予言」が不吉すぎる内容だ。
2024年、アメリカで大地震と大停電か
現代のノストラダムスとも呼ばれているイギリスの霊能力者、クレイグ・ハミルトン・パーカー氏は、自身のYouTubeチャンネル「Coffee with Craig」に投稿した動画「2024 World Psychic Predictions」の中で来年に起きることについて語っている。パーカー氏によれば“世界で最も富裕な場所”に大きな影響を与えるイベントが発生するという。
2時間半ほどの動画の序盤でパーカー氏は世界情勢の大きな動きについての話にしばらく時間を費やし、ロシアと中国がますます接近しそこには北朝鮮も加わり、国際政治におけるアメリカの影響力が低下することについて憂慮している。アメリカが失墜していく中、インドの影響力が日増しに強まってくるという。
国際的なプレゼンスの減衰だけではない。2024年にアメリカは“実害”も受けるという。
「私がもうひとつ予想しているのは、アメリカでの電力不足と停電です。 特にカリフォルニアとテキサスで大規模な停電を目撃しました。テキサスには石油が豊富にあり、カリフォルニアには石油が大量にあります」(パーカー氏)
もちろんアメリカ本土でエネルギー危機が起こるわけではなく、甚大な自然災害などで大規模停電が発生することになるという。そしてその場所は米カリフォルニアなど“世界で最も富裕な場所”の1つで起きるというのだ。
「インフラ被害か何かのようなものだとも考えられます。おそらく気象現象やハリケーンなどによって損傷する可能性があります。これは単にケーブルが切れただけでは済まずに修復するのが非常に難しいものです」(パーカー氏)
発電所や石油精製工場などが重大な被害を被るのだろうか。
「エネルギーを生産するインフラの一部が停止します。もしかしたらとんでもない被害になるでょうか。そのようなレベルでインフラの一部に問題が発生します」(パーカー氏)
さらに不吉なことにパーカー氏は2024年にはアメリカで大地震がいくつか起こることを予想している。そしてこの大地震によってもインフラ施設が甚大な被害を受けるという。
来年の2024年はアメリカにとっての“厄年”になるのだろうか。「アメリカがくしゃみをすると日本が風邪をひく」ということなら日本への影響も無視できないだろう。そしてパーカー氏は日本のオンラインゲームサーバーが大規模なサイバー攻撃を受けるとの発言も行っている。
長時間に及ぶ言及の中で、ヨーロッパでは極右勢力のさらなる台頭や、プーチン大統領の死とロシア初の女性大統領が誕生する可能性、さらには中国の台湾進攻にも触れているパーカー氏だが、一方でAI(人工知能)の活用による医療技術の画期的な進歩などのポジティブな見通しについてもコメントしている。
2024年の3月と6月に暗号通貨危機!?
この「2024年予言」に先立つ今年9月、パーカー氏は2024年の仮想通貨の動向についての見通しも語っている。
「2024 Crypto Warning」と題された動画でパーカー氏はキャッシュレス社会とテクノロジーへの依存の増大は、企業の支配、プライバシーの喪失、財政破綻、ディストピア社会の可能性などの重大なリスクを招くことを警告している。
パーカー氏はインターネットの電源が切られる可能性と、インターネットにアクセスできなくなる可能性について不安を表明し、暗号通貨にまで影響を及ぼす何か大きな出来事が2024年に2度起きると語っている。これはつまり暗号通貨の暴落やあるいは消失を暗示しているということだろう。
その大きな出来事が起きる時期は2024年の3月と6月であるという。この出来事は中国の経済崩壊を端緒に発生するということだ。また太陽黒点の影響で人工衛星が機能しなくなることも“システムダウン”の原因として考えられるという。
インターネットの潜在的な脆弱性とそれが引き起こす可能性のある損害は、重大な財政破綻につながる可能性があるとパーカー氏は警鐘を鳴らす。
日本でもここのところ大手銀行やクレジットカード決済のシステム障害が起きているが、今後さらに大規模の障害が起きる可能性は払拭できないだろう。
アメリカでの大地震に暗号通貨危機と、パーカー氏によれば2024年はかなりの試練に見舞われることになる。あと少しで否応なくやってくる新年に向けてさまざま準備と覚悟が求められているとも言えそうだ。
●岸田首相、APEC「貢献」誇示 米韓と蜜月、外交継続に意欲―尽きぬ内憂 11/19
岸田文雄首相は17日(日本時間18日)、米サンフランシスコ訪問を終えた。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の議論に「貢献」したと成果を誇示し、「岸田外交」の継続に意欲を示した。ただ、政権基盤は揺らいでおり、週明け以降も2023年度補正予算案の審議など厳しい局面が続く。
「ロシアのウクライナ侵略が持続可能な発展を揺るがすと主張し、議長声明に盛り込まれた」。首相は17日の内外記者会見でこう強調。公正な投資環境確保や人工知能(AI)活用の環境整備も唱え、関連文書に反映されたと訴えた。その上で年内の外交日程に触れ、「引き続き活発な首脳外交を行い、国際社会を協調に導く」と表明した。
米国のバイデン大統領、韓国の尹錫悦大統領との「蜜月」関係のアピールにも余念がなかった。今年4回目となった16日の日米首脳会談では、中国の軍事的威圧や中東、ウクライナ情勢を巡り緊密な連携を確認。来年の早い時期に公式訪問するよう招待を受けた。異例の国賓待遇となることに関し、日米外交筋は「バイデン氏は首相に好印象を持っている」と語る。
尹氏との同日の会談は、関係正常化で合意した今年3月以降の約8カ月間で実に7回目。これについて首相は翌17日に共に参加したスタンフォード大の討論会で「新記録だ」と誇り、「共通点はおいしい食事とお酒が好きということだ」と親密さの理由を述べた。
首相が訪米の成果を強調したのは、「内憂」が尽きないためだ。起死回生を狙った所得税の定額減税が不評で、政務三役の不祥事も続出。補正審議で野党は厳しく追及する方針だ。内閣支持率は各種世論調査で軒並み政権発足後の最低値を記録。地方選挙でも自民党の負けが込み、求心力は急速に低下している。
16日の日中首脳会談では溝を埋められなかった。首相は日本産水産物禁輸の即時撤廃を要求。習近平国家主席は東京電力福島第1原発の処理水を「核汚染水」と表現した。対話で解決を図ることでは一致したが、首相は内外会見で禁輸解除について「具体的な時期は言えない」と答えざるを得なかった。スパイ容疑で拘束された邦人の解放も実現しなかった。
年内の外交案件としては、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)や東南アジア諸国連合(ASEAN)との特別首脳会議が残っている。だが、自民幹部は「外交で支持率はそれほど上がらない」と断言。閣僚経験者は「目の前の課題にこつこつ取り組むしかない」と語った。
●岸田首相 会見「国際社会を協調に導くため 首脳外交に尽力」 11/19
岸田総理大臣は、アメリカで記者会見し、今回の一連の訪問について、日中首脳会談で大局的な観点から建設的な対話を行ったなどと振り返った上で、国際社会を協調に導くため、今後も首脳外交に力を尽くす考えを示しました。
この中で岸田総理大臣は、APEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議について「国内で重視している政策も念頭に、日本の考え方を発信し、議論に積極的に貢献した」と述べました。
そして、公正で透明性のある貿易・投資環境の確保や脱炭素社会の実現に向けた日本の貢献を明確にしたほか、ロシアのウクライナ侵攻や核の威嚇などを認めない立場を示し、議長国のアメリカが発出した声明でも共有されたと説明しました。
またアメリカのバイデン大統領との日米首脳会談について、中東情勢やウクライナ情勢、それにインド太平洋地域の諸課題がある中、同盟国としていっそうの連携を確認したとして「大変有意義だった」と述べました。
その上で1年ぶりとなった中国の習近平国家主席との日中首脳会談について「およそ65分間にわたり、大局的な観点から率直かつ建設的なやりとりを行った。日中間にはさまざまな協力の可能性と課題や懸案がある中、日中平和友好条約の締結45年の節目にあたり『建設的かつ安定的な日中関係』の構築という大きな方向性を確認した」と述べました。
また日本産水産物の輸入停止措置の即時撤廃を求めたことなどに触れ「諸懸案についてもしっかりと提起した」と述べ、今回の一連の外交成果を強調しました。
そしてことしのG7=主要7か国の議長国として各国の議論をけん引してきたとした上で「来月は日本とASEAN=東南アジア諸国連合との特別首脳会議も開催する。国際情勢が混とんとする難局において、引き続き活発な首脳外交を行い、日本の平和と安全を守り、国際社会を協調に導くために尽力していく」と訴えました。
処理水や水産物輸入停止をめぐる対話は
岸田総理大臣は記者会見で、習近平国家主席が福島第一原発の処理水を「核汚染水」と言及したとされていることに関して「首脳会談における相手方の発言や具体的なやり取りについてコメントは控える。処理水の科学的な分析と事実にもとづく理解は国際的にも幅広く共有されていると認識している」と述べました。
また、日本産水産物の輸入停止措置をめぐる日中両国の対話について「専門家のレベルで科学に立脚した議論を行っていくことになる。あらゆる機会を捉えて規制の即時撤廃を強く働きかけていく。科学的分析と事実に基づく冷静な判断、建設的な態度を促していきたい」と述べました。
日本産水産物の輸入停止措置の撤廃に向けた見通しについては、「率直に申し上げて輸入規制の解除の時期を予断できる状況ではない。政府としては国内需要の拡大、輸出先の多様化、水産関係事業者の支援などすでに用意したおよそ1000億円の基金を活用し、全力で影響の緩和につとめていく」と述べました。
一連の日程を終えて帰国
岸田総理大臣は19日午前0時10分すぎ、政府専用機で羽田空港に到着しました。
岸田総理大臣は20日、国会で審議入りする新たな経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案の審議に臨むことにしています。
●ホリエモン“政権内支持率”「下がらない」 岸田首相は「細かくやってる」 11/19
実業家のホリエモンこと堀江貴文氏(51)が19日放送のTBS「サンデージャポン」に生出演。岸田文雄首相について語った。
支持率低下、内閣の“辞任ドミノ”が起きる中、出演者の元衆院議員でタレントの杉村太蔵は「政策を大胆に改革するんじゃなくて、今ある制度を微調整して、なんとか国民の負担を下げようと。なのでわかりづらい。でも、誰がやってもこうやらざるを得ない状況なんじゃないかなって思う政策をやってる」と評した。
堀江氏も共感。「太蔵くんが言っている通り、ちゃんと細かくはやってるし。やることはやってる。微調整って意味で、過去にあった制度をうまく改革して。若手の政治家が“こういうことやりたいんです”って言ったら、ちゃんと見て。いいなと思ったらやってる。支持率下がってもそれは世間の支持率。政権内では支持率下がらない。意外と使えるなってみんな思ってる」と述べた。
「何が足りないのかって言ったら、国民に対するアピールが足りない。発信力がない」と指摘した。
●いずれ中国がしれっと取り下げる「処理水問題」 11/19
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が11月17日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日中首脳会談について解説した。
日中首脳会談、「戦略的互恵関係」を確認
アジア太平洋経済協力会議(APEC)出席のため、米サンフランシスコを訪れた岸田総理大臣と中国の習近平国家主席との首脳会談が、11月17日に行われた。経済が苦しいのだからもっと下手に出るべき中国だが、そうはしない。
宮家)中国は焦らすのです。「俺は偉いのだぞ」とね。
飯田)そういうものですか。ずっと「調整中」とされていましたが。
宮家)本当は経済が苦しいわけだから、アメリカと日本が投資を続けてくれないと困るのです。その意味で中国は、もっと下手に出るべきだと思いますが、そこは違う。
2006年に安倍元総理が訪中して打ち出した概念「戦略的互恵関係」
宮家)産経新聞で連載している私のコラム「宮家邦彦のWorld Watch」では「ありえない7つ」と書きましたが、そのうちの1つが、「処理水問題の批判をやめないだろう」ということです。大きな流れで言うと、1972年に共同声明が出て、今までに4つの文書ができた。2006年に安倍さんが1回目の首相を務めた際は、中国に行き「戦略的互恵関係」をつくりました。この戦略的互恵関係は、「中身がないところ」がいいのです。
飯田)中身がないところがいいのですか?
宮家)何だかよくわからないところがいいわけです。歴史や領土などややこしいものが入ってなく、そういう意味では「いい文書」だった。ところが、そのあと政権が代わり、2013年に安倍首相はまた中国へ行くわけです。当時、安倍さんは戦略的互恵関係に帰りたかったのですが、その間に尖閣問題が起きたでしょう。それで中国側は、いわゆる戦略的互恵関係の合意に加え、新たに領土問題や靖国問題を持ち込もうとしてきた。それでこじれて以来、大きな日中首脳レベルの会合で文書がまとまったことはほとんどないと思います。
中国とは「対話を続けること」が大事
宮家)そういう経緯があるので、これから劇的に日中関係がよくなるかと言えば、それは難しいと思います。中国側にそんな気はないのだから、あまり期待値を高めても仕方がない。不愉快ですが、彼らにとって今はアメリカとの関係がいちばん大事なのです。
飯田)中国にとって。
宮家)アメリカとの関係が上手くいけば、日本など何とでもなると思っているかも知れない。しかし、日米の絆は強いです。彼らもそれがわかっているから、何とか日米を分断しようとするのですが、我々はがっちりスクラムを組んでいればなかなか離せません。そうなれば、下手に出てもおかしくないのだけれど、いまの中国にはそれができないのです。そんなことをしたら、「日本相手になぜそんなに弱腰なのだ」と言われてしまうので。
飯田)中国国内で。
宮家)そうかも知れません。いろいろな理由があるでしょう。あまり期待を高めてはいけないけれど、決裂されても困るので、アメリカと同じように日本も中国との対話は続けなくてはいけません。
飯田)対話を続けることが大事。
宮家)我々の原理原則を譲歩する気はないけれど、中国と不必要な衝突や誤算に基づく紛争、戦闘が起こってはいけないので、そうならないように中国と対話し、お互いの立ち位置なり言い分を理解し合う。お互いに同意はしませんが、理解し合って、何とか地域の安定を図ることが大事だと思います。
これ以上の関係悪化を止める
飯田)お互いに「違いがあることを認める」ということですか?
宮家)戦略的互恵関係とはそういうことなのです。「お互いに言い合っているけれど、関係は大事だ」と考え、対話は続ける。「戦略的」という良い言葉と「互恵」という良い言葉をつないだら、「良いもの」ができたわけです。
飯田)何だかいいぞと。
宮家)そこに戻るには、相当時間が掛かるでしょう。とにかく、これ以上の関係悪化は止めなくてはいけません。
中国がしれっと取り下げることになる処理水問題
飯田)処理水について、中国側は核汚染水と呼んでいます。
宮家)これを言い出した時点で実は勝負あったわけです。日本には国際原子力機関(IAEA)が科学的なお墨付きを出していますから。我々も放水は突然進めたわけではなく、時間を掛け、タンクが限界になっても、いろいろ根回しを行って、ようやくここまできた。それに言いがかりをつけるというのは、中国が値段をつり上げようとしているとしか思えません。
飯田)値段をつり上げる。
宮家)交渉し、値段を上げて、「値引きしますよ」と言って下げるのだけれど、よく見れば「もとと同じ値段ではないか!」という、中国のいつものやり方です。処理水については、中国はそのうちしれっとと取り下げることになると思います。ただ、今回行うわけではないでしょう。また、これ以外にも日本人の拘束など、いろいろ問題があるわけですが、中国側の「処理水」に関する言い方によっては、もしかしたら将来の日中関係の方向性が見えてくるかも知れません。例えば「科学的に一緒にモニタリングしましょう」といった言い方をするなら、少し態度が変わる可能性はもある。「やはり中国は日本との関係を改善したいのだな」という考えが見えてくるかも知れません。
飯田)そのシグナルを受け取った中国国内の税関など、そういうところも少し変わるかも知れないですか?
宮家)でも、当分は無理でしょうね。
●ふざけるな!国会議員もボーナス18万7600円増…岸田政権”異常な末路” 11/19
「特別職の職員の給与に関する法律」は、14日衆院本会議で可決された。参院に送られ可決されれば、総理大臣や大臣の報酬があがる。実質賃金のマイナスが続く日本で国民の給料が上がらない中での法案に批判が殺到。岸田首相は増額分を国庫に返納すること表明した。しかし、この法案は国会議員の報酬も増えることになる、その額、年間18万7630円。ルポ作家の日野百草氏が取材した――。
何が適材適所だ。ただのに皮肉にしかなってない
「国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐ」
これは、財務省のホームページに大きく謳われているメッセージである。
その財務省、日本の経済活動の予算と税を司る「国の金庫番」とされる財務省の財務副大臣、神田憲次議員が過去、4回にわたり固定資産税などの税金を滞納、税務署からの差し押さえを4回も受けながら今年2023年9月、財務副大臣に就任した。
そのわずか2ヶ月後、これら税金滞納の発覚によりスピード辞任。事実上の更迭とも報じられている。
ちなみに神田議員、なんと税理士の資格を持っている。つまり、税金についてよく知る人物、とみなして問題ないだろう。実際に財務副大臣就任直後の会見でも「20年以上にわたって地元愛知県で税理士をやっておりました」(就任記者会見、9月19日)と語っている。
その時点では、任命権者である岸田文雄首相が日ごろから口にする「適材適所」ということか。内閣改造の際にも岸田首相は「人事については適材適所、どうあるべきなのかで考えていきたい」(2023年8月10日)と語っている。
しかしその「適材適所」、今年だけでも息子である岸田翔太郎政務担当首相秘書官、山田太郎文部科学政務官、柿沢未途法務副大臣、そして今回の神田議員と「適材適所」で選んだはずが不祥事や批判によって辞任、を繰り返している。
税理士資格保持者で税金滞納や差し押さえを繰り返していたとは…
神田議員は中京大学文学部、中京大学大学院法学研究科(修士)、愛知学院大学大学院商学研究科(修士)を経て税理士登録、2012年に初当選を果たしている。これまでも経歴を活かして財政・金融・証券関係団体委員会委員長や内閣府大臣政務官、決算行政監視委員会理事を歴任してきた。
こうした経歴、ましてや税理士資格保持者で税金滞納や差し押さえを繰り返していたとは。ましてや財務副大臣の打診を承諾している。
先の9月19日の就任記者会見では「20年以上にわたって地元愛知県で税理士をやっておりました」「税理士として、長年中小企業の実情を見てまいりました」と自己紹介の後、神田議員はこのように述べている。
「構造的な賃上げの実現、官民連携による投資の拡大、子ども・子育て政策の抜本的な強化を含めた新しい資本主義の実現の加速、防衛力の抜本的な強化を始めとした、我が国を取り巻く環境変化への対応とそれを裏付ける安定財源の確保、これらに取り組んでまいりたい」
「防衛力の強化、それから少子化対策をはじめとして、現在抱える様々な政策課題、骨太方針2023に基づきまして必要な対応はしっかり行いつつ、その上で歳入歳出両面の改革を進めることで行ってまいりたい。経済成長の実現と財政健全化の目標の達成、この目標に向けて努力していくことが大事だというふうに考えております」
「職務が忙しかった」「事務所スタッフに任せていた」の言い訳
いまとなっては、だが、故意かどうかはともかくとして、結果的にこれだけの滞納と差し押さえを繰り返していたにも関わらず、なぜ、よりにもよって財務省の財務副大臣など引き受けてしまったのか。
11月14日、神田議員は財務副大臣辞任後の会見でこう述べている。
「税金を一時滞納してしまったこと、これはですね、断腸の思いですし、お詫びを申し上げなきゃならないと感じております」
しかし、議員辞職に関しては、「反省の上に立って、一議員の立場から精進」と否定した。
また滞納を繰り返した理由については、「職務が忙しかった」「事務所スタッフに任せていた」と釈明している。
国民から増税やバラマキを指摘されて人気がまったく上がらない、そこに不祥事
身内である自民党内からも、森山裕総務会長から「異常な状態」という声が上がった。そもそも発覚の時点で筆者の知る与党関係者からは「とっととクビにしろ」と憤る声も聞いている。財務省の財務副大臣で税理士資格持ちが滞納と差し押さえを繰り返していたというのは確かに「異常な状態」だろう。
自民党系の地方議員はこう語る。
「岸田首相の支持率は20%台、国民から増税やバラマキを指摘されて人気がまったく上がらない、そこに不祥事、まして税金を扱う国税庁(外局)を持つ財務省の副大臣が滞納やら差し押さえなんて」
党内関係者からは「それが故意かわからない、だから岸田首相は様子を見たのでは」という意見もある。
「でも税理士さんですよね、さすがに身内でもかばいきれないどころか早く辞めてくれ、ですよ」
身内である森山総務会長の言う通り「異常な状態」
自民党内には「岸田首相の更迭判断が遅すぎる」という苦言もある。元革新系のベテラン議員の話。
「任命して2ヶ月で3人目の辞任を出したくなかったのだろう。さすがに任命責任は問われかねない」
かねてよりSNSを中心に国民は岸田首相を増税メガネ、ばら撒きメガネと揶揄してきたが、あまりの見る目のなさに「メガネが曇ってる」とまた辛辣な声が飛び交っている。
増税と物価高、インボイス制度の開始と一般国民の可処分所得は減り続けている。5公5民どころか6公4民ともされるこの国の税負担にサラリーマンも自営業者も苦しみ続けている。それでもみな納税し続けている。にもかかわらず財務省の副大臣が「これ」である。
そして自分の「賃上げ」だけは成功した?神田議員
ましてや減税に否定的と多くの国民から不評を買い続ける財務省、自賠責保険をユーザーである一般国民から約6000億円も借りておきながら長年返済を無視、ようやく返済し始めても微々たる返済額で完済は来世紀以降までかかるとされて総スカンになったことも記憶に新しい。2024年度から国民1人につき1000円徴収される「森林環境税」も廃止となる復興特別税のすり替えであり、意地でも減税したくない財務省の思惑では、という複数の識者の声もある。
さらに、この「異常な状態」 にもかかわらず、同日11月14日には岸田首相を始めとする閣僚らの給与アップの法案が衆議院本会議で可決した。実のところ、これに連動して国会議員のボーナスもアップする。もちろん神田議員のボーナスもアップする。先の財務副大臣就任時の「賃上げの実現」について、自分の賃上げは奇しくも実現しした格好となってしまった。
岸田内閣、身内である森山総務会長の言う通り「異常な状態」 と言わざるをえない。「国民が、明日は今日より良くなると信じられる時代を実現する」という所信表明演説の言葉、この「異常な状態」を前に、国民は本当に信じてくれるのだろうか。
●岸田総理、大誤算…いよいよ「二階」元幹事長が動きだした! 11/19
朝起きたら状況が一変していた。「総理、解散は見送るのですか!?」。私はそんなこと言ってない。いったい誰が……。しかし、もう打てる手がない。―身内が放った火で、岸田の城は燃えている。
前編記事『岸田総理の「味方」だったはずの「財務省」がまさかの裏切り…! 「年内解散」「所得税減税」を封じた「すべての黒幕」の名前』からつづく。
「徹底的にやるぞ」
言うまでもなく、その小石河連合の背後には、非主流派の大親分が控える。菅義偉前総理と二階俊博元幹事長だ。
2人は9日、森山裕総務会長をまじえ、銀座の日本料理店「川端」で会食した。二階最側近の林幹雄元経済産業大臣、二階派事務総長の武田良太元総務大臣も同席した。
会のさなか、興が乗った二階は手のひらをひっくり返す素振りを見せながら、こう呟いたという。
「徹底的にやるぞ」
二階派関係者が言う。
「政局が動き出したら一気にやり切らないとダメだという意味です。二階さんは安倍さんが辞任を表明した際も、その瞬間から動き出して、菅さんにすぐに総理になる意思を確認し、一気に周りを固めて総裁選を前にして勝負を決めてしまった」
しかし、菅を毛嫌いする麻生にとって、菅や二階の復権は許しがたいことだ。
菅の天下になるくらいなら…
財務官僚にとっても菅は天敵である。霞が関の人事を握り、官僚を脅して従わせる─その手法で菅は、官房長官在任時から絶大な力を振るってきた。
「小泉、河野、石破に加えて菅さんが裏で仕切る政権となれば、また財務省も官邸にひれ伏すハメになる。彼らも菅だけは御免だと思っているのです」(立憲民主党中堅議員)
死に体の岸田が来年、解散を仕掛けて大敗でもすれば、自民党内で「政権交代」が起こる。菅の天下になるくらいなら、いっそ先手を打って、首をすげ替えてしまえ─。利害の一致した麻生と財務省が、岸田に引導を渡そうとしている、と見る議員も少なくない。
総裁が任期途中で退く場合の臨時総裁選は、党員・党友投票がないため、派閥の多数派工作で勝負を決めることができる。
「次の総理をリリーフで選び、その勢いのまま総裁選前に解散選挙を打って勝つ、と麻生と財務省は考えているのだろう。次の総理に実績を積ませるためにも、岸田の退陣は早ければ早いほうがいい。年内がベストだ」(自民党関係者)
「オレは最後に天下をとってみせる」
この状況を一人ほくそ笑んで眺めている男がいる。茂木敏充幹事長だ。
「今回の岸田総理の解散見送りの一連の流れには、茂木幹事長も一枚噛んでいます。朝日や読売新聞に『解散見送り』と書かせたのは茂木幹事長といわれているのです。岸田総理が退陣となれば、麻生氏は、自分を総理に指名すると踏んでいるわけです」(前出とは別の全国紙政治部記者)
茂木は雑誌のインタビューや講演で「明智光秀は好きではない」と語ってきた。表向きは「岸田を裏切るつもりはない」と恭順の意を示しているように見える。しかし、その真意は「光秀と違い、オレは最後に天下をとってみせる」という野心に他ならない。
岸田退陣のカウントダウンが始まった。その足元はすでに燃え盛っている。
●IPEF首脳声明 残る「貿易」も交渉加速を 11/19
日米韓など14カ国が参加する「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」で、新たに2つの交渉分野が実質的な妥結に至った。
米国でバイデン米大統領や岸田文雄首相らが首脳会合を開き、これに先立つ閣僚会合の結果を受けて妥結を確認する首脳声明を発出した。
新たな2分野は、脱炭素などの「クリーン経済」と汚職や腐敗を防ぐ「公正な経済」だ。5月には重要物資などのサプライチェーン(供給網)分野でも合意しており、これで交渉4分野のうち3つで成果を出した。
残る貿易分野で歩み寄れなかったのは残念だが、交渉開始から1年余りで合意を積み重ねたことは評価できる。各分野とも実効性の高い協力関係を確立できるよう、具体化に向けた国内手続きなどを急いでほしい。
IPEFは、地域覇権を追求する中国への対抗軸にしようとバイデン米政権が提唱した枠組みだ。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を離脱した米国にとって、この地域への関与を再び強める意義は大きい。
日本にとってもその成果は中国の経済的威圧に対峙(たいじ)する布石となる。岸田政権は残りの交渉にも全力を尽くすべきだ。
クリーン経済分野では、脱炭素化に向けた投資を促す基金を設置し、日米などが資金を拠出する。公正な経済は、マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金対策での協力などだ。
IPEFには関税交渉が含まれず、新興国側には関税撤廃による対米輸出の拡大という恩恵がない。逆に先進国側から労働における人権保護などを求められることに反発もある。その中で新興国を引き付けるには、先進国からの投資を増やすことが有効だ。新たな合意でその流れをより確実にしたい。
残りの貿易分野はデジタル経済のルール作りなどで調整がつかなかった。国境を超えたデータ流通で、ほかならぬ米国にも自国対応を優先させたい事情がある。それが合意への推進力を落とした面もあろうが、迅速に一致点を見いだしてほしい。
中国はIPEF参加国でもあるシンガポールやニュージーランドなどとデジタル貿易関連の協定で手を結ぼうとしている。そうした中でIPEF交渉を停滞させるわけにはいかない。米国はもちろん、日本もその点を厳しく認識すべきである。
●首相と木原氏、一対一目立つ面会 パイプ役果たしていないと指摘も 11/19
9月の内閣改造・自民党役員人事後、岸田文雄首相と自民党の木原誠二幹事長代理が面会を重ねている。自民幹部では4番目に多く、とりわけ「一対一」が目立つ。官房副長官退任後も最側近として「首相の右腕」(周辺)を務めていることが数字の上でも裏付けられた形だ。ただ内閣支持率は上向かず、官邸と自民のパイプ役を果たしていないとの指摘もある。
第2次岸田再改造内閣が発足した9月13日から11月13日まで約2カ月間の共同通信の首相動静によると、自民幹部の中で面会が多いのは茂木敏充幹事長16回、麻生太郎副総裁15回、萩生田光一政調会長10回、木原氏9回と続いた。
●「次の総裁」石破氏が首位 2位河野氏、首相は5位 1/19
共同通信社の世論調査で、来年9月に予定される自民党総裁選で次の総裁に誰がふさわしいか聞いたところ、石破茂元幹事長が20.2%でトップになった。河野太郎デジタル相が14.2%、小泉進次郎元環境相が14.1%、高市早苗経済安全保障担当相が10.0%で続いた。岸田文雄首相は5.7%で5位にとどまった。
8月実施の調査に入っていなかった小渕優子選対委員長が今回加わったため単純比較はできないが、首相は4.5ポイント減り、順位も4位から下がった。
自民党支持層に限ると、小泉氏が17.3%でトップ。河野氏が16.6%、石破氏が15.8%で、順位が入れ替わった。
●首相帰国、物価高対策に全力 相次ぐ辞任、立て直し課題 11/19
岸田文雄首相は19日未明、APEC首脳会議など米国での外交日程を終え、羽田空港に帰国した。20日から経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案の国会審議に臨む。所得税と住民税の定額減税や低所得世帯への給付について理解を求めるなど物価高対策に全力を注ぎ、月内の成立を図る。不祥事で政務三役の辞任が続き、揺らぐ政権の立て直しが課題だ。
首相は「デフレからの完全脱却」を掲げ、賃上げと減税を2本柱に据える。サンフランシスコで開いた記者会見で、賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を強化すると表明。「デフレ脱却の千載一遇のチャンスをつかみ取り、物価上昇を上回る持続的な賃上げに政府一丸で取り組む」と強調した。
補正予算案には所得税と住民税が非課税の低所得世帯に各7万円を給付する費用1兆592億円を計上した。成立後、速やかに手続きを進め、年内の給付開始を目指す。
一方で政権を取り巻く環境は厳しさを増している。共同通信が11月3〜5日に実施した世論調査で、内閣支持率は28.3%と過去最低を更新した。
●高市氏が自民党総裁選へ勉強会旗揚げ〜第三極で参戦 11/19
自民党の高市早苗経済安保相が来年の総裁選を視野に自ら主宰する勉強会「『日本のチカラ』研究会」を発足させた。水曜日を定例日とし、月1回か2回のペースで会合を開くという。現職閣僚が総裁選出馬を見据えて勉強会を立ち上げるのは、岸田内閣の求心力低下を象徴する現象だ。
高市氏は無派閥ながら安倍晋三元首相の強い支持を受けて前回総裁選に出馬し、岸田文雄首相や河野太郎デジタル相と闘った。安倍氏が他界して唯一の後ろ盾を失った後、安倍支持層には根強い人気があるものの、自民党内では孤立しつつあり、来年の総裁選に出馬できるか見通せない状況だ。
勉強会の旗揚げには、党内右派を中心に政治基盤を整備し、総裁選出馬に必要な推進人を確保する狙いがある。
内閣支持率が続落して岸田政権が危険水域に入るなか、非主流派の菅義偉前首相は河野太郎デジタル担当相、小泉進次郎元環境相、石破茂元幹事長との連携を強めている。二階俊博元幹事長や森山裕総務会長も菅氏と連携することが見込まれている。
これに対し、岸田首相は支持率急落で総裁選出馬そのものに黄信号が灯っている。岸田首相の後ろ盾である麻生太郎副総裁は、首相が再選を断念した場合は来春にも電撃辞任させ、臨時総裁選に茂木敏充幹事長を担いで主流派体制の維持を図るだろう。
いずれにせよ、「麻生・茂木・岸田の主流3派vs菅・二階・河野・小泉・石破の非主流派」の対決構図となる可能性が極めて高い。
高市氏は第三極の立場といえる。総裁選に勝利することは難しくても、キャスティングボードを握ることで次期政権でも要職にとどまり、一定の発言力を得る狙いだ。
高市氏にとっての誤算は、安倍氏が他界した後の最大派閥・安倍派が高市氏を受け入れず、5人衆(萩生田光一政調会長、西村康稔経産相、松野博一官房長官、世耕弘成参院幹事長、高木毅国対委員長)の集団指導体制に入ったことだ。5人衆には、そもそも安倍氏が前回総裁選で無派閥の高市氏を支持したことへの不満があり、高市氏との関係は冷え込んでいる。
一方、5人衆は後継会長の座をめぐって激しく牽制し合っており、岸田首相が電撃辞任してポスト岸田を争う総裁選に突入した場合は、誰を担ぐかをめぐって派閥分裂に発展する可能性がある。その場合、安倍氏に近かった右派の一部が高市氏支援に回ることが期待できるだろう。安倍派が総裁選を機に分裂する可能性もあり、その場合は安倍派の一部を吸収するかたちで「高市派」が誕生する展開もありえる。
また、作家の百田尚樹氏や名古屋市長の河村たかし氏が立ち上げた日本保守党の動きも注目だ。安倍支持層をはじめ右派での期待感が高まっている。この支持層は高市支持層とも重なるため、高市氏に日本保守党入りや連携を期待する向きもある。
高市氏はただちに自民党を離れるつもりはないだろうが、次の総裁選に敗れて干されることがあれば、日本保守党入りもひとつの選択肢として浮上してくるだろう。裏を返せば、日本保守党との連携をちらつかせながら、自民党内での発言力をキープしていくとみられる。
麻生・茂木氏は連合と関係を強化し、菅氏は維新との関係を強化し、高市氏は日本保守党との関係を強化する。野党を巻き込みながら自民党内政局が激しさを増していくことになりそうだ。  
●高市早苗氏が勉強会への批判にXで反論3連投「意味が分からん」 11/19
自民党の高市早苗経済安全保障相は19日、自身のX(旧ツイッター)を更新し、15日に初会合を行った勉強会に対する批判が出ていることに反論する投稿を、3連投した。
岸田文雄首相を閣内で支える閣僚の立場ながら勉強会を立ち上げた背景には、来年秋の自民党総裁選出馬をにらんだ「仲間集め」との見方があり、批判が出る要因となっている。これに高市氏は「現職閣僚が担務外の政策を同僚議員と一緒に勉強する事の何が悪いのか、意味が分からん」などと主張した。
高市氏は「議員連盟『日本のチカラ』研究会に参加した事で、散々叩かれています。岸田内閣の政策に反対する会合ならともかく、岸田内閣で閣議決定した『国家安全保障戦略』に記された理念を掘り下げる事を目的とした議員連盟です」とし、勉強会ではなく「議員連盟」だと主張。続く投稿では「過去に、森内閣の支持率が一桁台になった時、『首班指名選挙の本会議で国民の皆様の代わりに森総理のお名前を書いた限り、与党議員には支持率が1%になっても支える義務がある』と発言し、大バッシングを受けましたが、それは今でも私の矜持です。岸田総理をお支えするべく、懸命に働いています」として、岸田首相を支えていると強調した。
さらに「先輩政治家のお通夜に出かけるギリギリの時間帯に純粋に勉強をしに来られた議員の氏名や派閥名を晒して政局扱いにした一部記者にも憤慨しましたが、テレビ番組で政府与党の批判をしたり、本会議場で総理の批判をされた方々に、まるで私が謀反を起こしたかの様な発言をして頂きたくはありません」とも投稿。「本会議場で総理の批判をされた方々」は、先月末の参院代表質問で岸田首相への苦言や疑問を連発した自民党の世耕弘成参院幹事長を念頭に置いたものとみられる。世耕氏は17日の会見で、現職閣僚の立場で勉強会を立ち上げた高市氏に疑問を呈していた。
高市氏は17日の閣議後会見で、勉強会の入会者は45人と明かした。自民党総裁選に出馬する際は20人の推薦人が必要となっている。
●総額4000万円・自民党、派閥パーティ収入不記載 11/19
自民党とカネの問題は、まさに「底なし」の様相である。
2023年9月、岸田文雄首相が代表を務める自民党広島県第1選挙区支部が、2021年に自民党柔道整復師連盟支部からの寄付金10万円を政治資金収支報告書に記載していなかったことや、自身の政党支部から500万円の寄付を受けた日付、自身の後援会と資金管理団体で650万円をやりとりした日付などが間違っていたケースが、計9件あったことが発覚した。さらに11月18日には、自民党の5つの派閥の政治団体が、政治資金パーティに20万円を超える支出をした団体の名前など、合わせておよそ4000万円分を収支報告書に記載していなかったとして、大学教授らが東京地検に告発状を提出、受理されたことが報じられた。
「政治資金規正法は、1回のパーティで20万円を超える支出をした団体や個人について、名前や金額を収支報告書に記載することを義務づけていますが、2021年までの4年間で『清和政策研究会』が約1900万円分、『志帥会』が約900万円分、『平成研究会』約600万円分、『志公会』が約400万円分、『宏池政策研究会』が約200万円分の記載漏れがありました」(政治担当記者)
11月19日放送の『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ系)に、自民党岸田派(弘池政策研究会)で座長を務める林芳正前外務大臣が出演。「指摘を受けたのであればしっかりと確認して適切に対応すべきだ。また、そうしていると報告を受けている」と語った。
またも明らかになったパーティ収入の問題に、ニュースサイトのコメント欄には《政治家のお金にまつわる疑惑や不信、不公平をほとんどの国民は感じている》《そもそも適切に管理、報告されなければいけないものを、事後発覚したものを、「適切に」って感覚が、本当にわからない》など厳しい意見が多かった。
また、実業家のひろゆき氏も自身のX(旧Twitter)で、報道を引用しながら
《総理大臣や閣僚の給料を上げて、税金から出る政党助成金でフランス旅行をして、4000万円の脱税をしても、政治家になれば無罪です。 企業が収入4000万円を申告しなかったら普通にアウトですけどね》
と指摘している。国民の政治不信は深まるばかりだ。
●自民5派閥の団体を計約4000万円分の収入不記載で告発 11/18
自民党の5つの派閥の政治団体が政治資金パーティーに20万円を超える支出をした団体の名前などあわせておよそ4000万円分を収支報告書に記載していなかったとして告発状が提出され、東京地検特捜部が5つの派閥の団体の担当者に任意の事情聴取を要請し、聴取を進めていることが関係者への取材でわかりました。
自民党の5つの派閥の政治団体、「清和政策研究会」、「志帥会」「平成研究会」、「志公会」、「宏池政策研究会」をめぐっては、おととしまでの4年間の収支報告書にそれぞれが主催した政治資金パーティーに20万円を超える支出をした団体の名前や金額などあわせておよそ4000万円分を記載していなかったとして、大学教授が5つの派閥の会計責任者らに対する政治資金規正法違反の疑いでの告発状を東京地方検察庁に提出しています。
この問題で東京地検特捜部が5つの派閥の政治団体の担当者に任意の事情聴取を要請し、聴取を進めていることが関係者への取材でわかりました。
政治資金規正法は1回のパーティーで、20万円を超える支出をした団体や個人について名前や金額を収支報告書に記載することを義務づけていますが、告発状では「清和政策研究会」がおよそ1900万円分、「志帥会」がおよそ900万円分、「平成研究会」がおよそ600万円分、「志公会」がおよそ400万円分「宏池政策研究会」がおよそ200万円分のパーティー券収入を記載していなかったとしています。
特捜部は収支報告書が作成された経緯や派閥の政治資金パーティーをめぐる資金の流れなどについて調べを進めるものとみられます。
 11/20

 

●「政治団体が適切に対応」自民5派閥パーティー収入4000万円未記載告発 11/20
自民党の5つの派閥の政治団体が、政治資金パーティーの収入およそ4000万円分を収支報告書に記載していなかったとして告発されている問題で、岸田首相は20日、首相官邸で記者団に対し、一般論とした上で、「政治資金の収支報告等において指摘があるならば、それぞれの政治団体において、責任を持って点検し、適切に対応するべきものである」と述べた。
さらに、「それぞれの政治団体において対応しているものであると考える」と強調した。
自民党の清和政策研究会(安倍派)、志帥会(二階派)、平成研究会(茂木派)、志公会(麻生派)、宏池政策研究会(岸田は)は、2021年までの4年間の収支報告書に、主催した政治資金パーティーの収入のうち、およそ4000万円分を記載していなかったとして、派閥の会計責任者らに対する告発状が提出されている。
関係者によると、東京地検特捜部は、5つの派閥の担当者や関係者から任意で事情を聴いているという。
●日米株価が再逆転する「世界インフレ時代」突入へ 11/20
「世界は『大乱の時代』に入った」と主張するのは、国際投資アナリストの大原浩氏だ。1990年前後の日本のバブル崩壊、ベルリンの壁崩壊、旧ソ連崩壊以来、30年以上続いた「低インフレ(デフレ)・低金利(資金過剰)」時代が終焉(しゅうえん)し、今後30年間はインフレの時代が来ると指摘する。
「現在の(急激な)インフレは一時的現象だ」と「デフレ脳」から脱却できていない意見も見かけるが、明らかに世界は「インフレの時代」へと突入している。
その証拠は、昨年2月24日から続くロシアのウクライナ侵攻や、今年10月7日に始まったイスラエルとガザの戦闘だ。戦争は「軍事費」と「(生産設備などの)破壊による供給の縮小」の2つの側面で、大きなインフレ要因だ。この「地政学リスク」が台湾など他の地域に拡大することも現実味を帯びている。
それだけではない。日本の合計特殊出生率は「1・26」で、少子高齢化が進んでいるが、一人っ子政策を続けてきた中国は、同国メディアのデータによると「1・09」だ。韓国は「0・78」と深刻な状況だ。
世界的に見ても人口増加は頭打ち傾向であり、物やサービスを供給する「生産年齢人口」は減少に向かっているといえる。それに対して高齢者ら非生産年齢人口はそれほど減らない。
したがって、供給が減り、需要が増えることで生じるインフレは少なくともこれから30年の世界を考えるうえで大前提となる。そして、インフレが「安定した世界秩序」を破壊すると考える。
米ソ両大国の対立による「冷たい戦争」が続いたが、ソ連が崩壊した1991年以降は、「米国の一極支配」が続いた。その間、世界は低インフレ・低金利の安定した時代を経験した。
日本はその恩恵をほとんど生かせなかった。日本の製造業は生産効率が高いがゆえに、物やサービスが売れないデフレ時代における生産調整が難しかった。また、物価が下がるので次々と新製品を買い替えることができるデフレ時代には、長く使える良いものを目指す「日本品質」は大きな武器にならなかった。
インフレ時代には全てが逆転する。物やサービスの供給が不足するのであるから、日本の生産性の高さや「日本品質」が強力な武器になる。それに対して、低インフレ・低金利の恩恵を受けてきた大半の国々は苦境に立たされる。特に、低金利で大量に供給される資金で「マネーゲーム」を続けてきた米国のバブル崩壊は近いと考える。
1989年の世界の株式時価総額ランキングでは、トップのNTTを始め、日本の都市銀行(メガバンクの源流)が上位を独占していた。現在アップルを筆頭に米国企業が上位を独占している姿は既視感がある。
米テスラの時価総額はトヨタ自動車を大きく上回っているが、それほど遠くない将来に両者の関係は逆転してもおかしくない。同様に、日経平均株価とダウ工業株30種平均の「ポイント数」が逆転することもあり得る。
もちろん、米国をはじめとする世界経済の混乱は日本にもおよび、一時的な連れ安もあるだろう。ITを中心としたベンチャーバブルに踊った日本企業も淘汰(とうた)されるかもしれない。さらには、岸田文雄政権の体たらくを見て、日本の政治や年金、保険、財政に不安を感じる人もいるだろう。
しかし、それでも「優良な日本企業」は困難を乗り越えて発展していくと思う。筆者だけではなく、投資家で世界的な富豪のウォーレン・バフェット氏やその相棒のチャーリー・マンガー氏も「優良な日本企業」を信頼している。
●「こういうの言えばいいんですよ」 岸田政権が抱える3つの爆弾を静める 11/20
11月20日の「おはよう寺ちゃん」では、月曜コメンテーターで経済評論家の上念司さんと番組パーソナリティーの寺島尚正アナウンサーが、岸田政権を巡る「政治とカネ」の3つの問題について意見を交わした。
恒久措置をやんなきゃダメです!
政府は今日、新たな経済対策を裏付ける2023年度補正予算案を国会に提出する。低空飛行が続く岸田政権の浮揚を懸けた経済対策に関して、明日、明後日には岸田文雄首相と全閣僚が出席する基本的質疑が行われる。自民党5派閥のパーティー収入の過少記載問題、柿沢未途前法務副大臣を巡る公選法違反(買収)疑惑、東京五輪招致に関する馳浩石川県知事の内閣官房機密費流用発言と、「政治とカネ」の3点セットで野党から集中砲火を浴びるのは必至だ。
「こう、スポーツニッポンに出ています。」(寺島アナ)
自民党5派閥のパーティー収入過少記載問題については、東京地検特捜部が各派閥の担当者から任意で事情を聞いていることが、おととい関係者の取材で分かった。告発状によると、5つの団体の会計責任者らは、平成30年から令和3年の政治資金収支報告書で、東京都内の政治団体などに販売したパーティー券の収入を記載しないなどして収入を合わせて4000万円少なく記入したとしている。
「これは上念さんどうとらえますか?」(寺島アナ)
「読売新聞の世論調査でもだいぶ支持率が低下して20%台ということで、読売基準で見た青木率は、もう60%切ってるんですよ。そうすると内から外から岸田降ろしの圧力がかかってくるということでまさに弱り目に祟り目と。これは自ら“ババ” を引きに行っちゃいましたね。あんな出来もしない減税なんて口走って期待値を上げて、自らその期待を裏切るようなことをやって。だから甘く考えてたんでしょうね。一時減税でもなんでも減税って名前が付いたものをやればマスコミがそれを減税だと報道して、国民はそれで喜ぶと。そんな“毛ばり”をぶら下げても国民は賢くて「いやこれ減税してもまたどうせ上げるんでしょ」ってみんな思ってるので、やっぱ恒久措置をやんなきゃダメですよ。そういう意味で言うと、新NISA は恒久投資減税ですよ。そういうの言えばいいんですよ。」 (上念氏)
●ビートたけし、国民年金「月6万円、めまいがして倒れた」 11/20
ビートたけし(76)が、11月19日放送の『ビートたけしのTVタックル』で、日本の年金制度について語った。
たけしは「オレ、国民年金って(通知書を)びーっとはがしてみたけど、1カ月に6万円だったもん。めまいがして倒れた。(会社員などが加入する)厚生年金とか、ないからね、結局」と告白。だが、パトリック・ハーランから「多くの国民は、たけしさんに(年金は)給付しなくてもいいと思っている」とツッコミを入れられた。
また、たけしは「リタイア」について「欧米はとくに、いかに若くしてリタイアするかで仕事をして、あとは悠々自適で、ゴルフをやったりして、マイアミかなんかに住むのが夢だもんね」と指摘。さらに「オレはずっと言ってるのは、リタイアしたときには、なに(か新しいことを始めようと)したってどうせ(どうすればいいか)わからないんだから、現役のときに『辞めたら、これがやりたい』というのを早めに作っとかなきゃだめだよ」と話していた。
年金について語ったたけしにSNSではさまざまな意見が寄せられた。
《(年金心配しなくても)たけしさん、生活できる収入あるでしょうが(笑)。》
《どうせ年金給付されないんだから安楽死整備してくれ》
《年金についてTVタックルで話してるけど、物価高に対して年金の額の価値ってめちゃくちゃ下がってる気がするし、それなら年金分をNISAとかで自分で入れられる制度を作って欲しいな》
「たけしさんは、11月12日放送の同番組では、岸田政権が『困窮世帯への7万円給付』『課税世帯への4万円減税』を打ち出したことにコメントしていました。
『はたして、国の経済対策によって我々の生活は、いまより豊かになるのだろうか』というナレーションに対し、たけしさんが『(豊かに)なるわけねえよな。4万円じゃあな』とダメ出し。
また、共演する大竹まことさんは『俺はいま、年金6万5000円もらってるけど、電気代にも足りません。俺たちが若いときに払った年金は、俺たちのために使ってないんだよ』と苦言を呈していました」(芸能ライター)
たけしが納得できる生活をするには、後期高齢者となってもまだまだ仕事をし続けなければならないということか。
●岸田首相による「増税メガネへの過剰反応」の深刻さ… 11/20
岸田内閣は11月2日、所得税・住民税を減税し、低所得世帯へ給付を行う経済対策を閣議決定した。
防衛費増額に伴う法人税や所得税の増税が控える中、岸田文雄首相が逆行するように映る減税に踏み切った背景を、自民党の有力者の一人である遠藤利明前総務会長はこう指摘する。「『増税メガネ』と言われることに少し過剰反応している」。確かに、交流サイト(SNS)などでは首相を増税メガネと呼んでやゆする声が絶えない。
自民党関係者はこうした「増税イメージ」の広がりに危機感を募らせている。過去に税金を巡る批判が退陣につながった政権は少なくないからだ。「税は鬼門だ。批判が高まれば命取りになる」
岸田首相の現状はどうなのか。専門家は「迷走している」と指摘し、厳しい見方を示す。「税で国民の不信を買ってしまうと深刻だ。挽回のハードルは高い」(共同通信=中田良太)
「増税メガネ」の由来
「どんなふうに呼ばれても構わない。やるべきだと信じることをやる」。首相は11月2日の経済対策決定後、記者会見で増税メガネという自身の「あだ名」について問われ、こう強調した。時折笑みを浮かべて熱弁を振るう姿は、自分に言い聞かせているように見えた。
そもそも首相は、なぜこんなあだ名を付けられたのだろうか。
きっかけは「サラリーマン増税」と言われている。岸田政権は6月に決定した経済財政運営の指針「骨太方針」に、同じ会社に長く勤めるほど退職金への課税が優遇される現行制度を「見直す」と明記。首相の諮問機関である政府税制調査会は、中期答申で退職金課税に関する検討を求めた。
さらに、この答申が現在は一定額が非課税となる通勤手当に触れていたことで、課税されるのではないかとの警戒感がインターネット上で広がった。首相は「全く考えていない」と火消しに追われた。
防衛増税の方針なども相まって「増税批判」が強まる中、首相は10月26日、所得税減税などを来年6月に実施すると表明した。翌27日の衆院予算委員会で、来年度からの防衛増税開始を見送る考えも示した。
消費税で憂き目に遭った自民党政権
首相が「過剰反応」するのも無理はない。税負担増加を巡る国民の批判は、しばしば自民党政権に大ダメージを与えてきた。国民にとって最も身近な税金の一つである消費税は、その最たる例と言える。
憂き目に遭った一人に、首相が会長を務める党内派閥「宏池会」の先輩で、1978〜1980年に政権を担った大平正芳元首相がいる。
オイルショックなどによる国の財政状況悪化を踏まえ、自民党は1978年、税率5%を課す「一般消費税」を1980年から新設する方針を決めた。大平内閣は1979年1月に導入準備の実施を閣議決定した。
世論の反発は強く、大平首相は10月に行われた衆院選の期間中に撤回を表明した。だが自民党の獲得議席は当時の定数の過半数に届かなかった。衆院選の不振は党内対立を増幅させ、1980年5月に再度衆院を解散すると、大平首相は衆院選公示後の6月12日に急死した。
1982〜1987年に約5年間の長期政権を築いた中曽根康弘元首相も痛い目を見た。
1986年の衆参同日選で「国民が反対する大型間接税と称するものはやらない」などと遊説で発言し、圧勝した。だが1987年2月、消費税に類似する「売上税」の創設を盛り込んだ税制改革関連法案を国会に提出。これに反発が集中し、3月の参院岩手選挙区補欠選挙で自民党候補は社会党候補に敗れた。国会は大荒れとなり、売上税は廃案に追い込まれた。
消費税を導入したのは竹下登元首相だ。1989年4月に税率3%でスタートしたが、国民の厳しい目にさらされた。リクルート事件による政権批判も重なり、竹下内閣は6月に総辞職した。
翌7月、後継の宇野宗佑首相の下で臨んだ参院選は、獲得議席が改選前69議席からほぼ半減の36議席に落ち込む大敗に終わった。責任を取って宇野首相は退陣。首相在任はわずか69日だった。
「消費増税」はたびたび政権を苦しめた
消費税が打撃となったのは自民党政権だけではない。
1993年に非自民連立政権を樹立した細川護熙元首相は、唐突に掲げた「国民福祉税」構想があだとなった。
これは税率3%の消費税に代わり7%の「国民福祉税」を導入するとの内容だった。在任中の1994年2月に突然発表すると、連立与党内でも批判が殺到し、結局1週間足らずで白紙撤回。自身の借入金問題なども影響し、求心力が低下した細川首相は4月に辞意を表明した。
民主党政権は、消費税増税で党が分裂した。2012年3月に野田佳彦内閣は税率を8%、10%と段階的に引き上げることを盛り込んだ「社会保障と税の一体改革関連法案」を国会に提出。野党だった自民党、公明党との3党合意を経て、8月に成立した。
法案に反発した小沢一郎氏らは民主党を離れ、造反者も出た。11月に野田首相が衆院を解散すると、12月の衆院選で民主党は政権から転落した。
減税も退陣の要因に
減税や給付を打ち出した政権が国民に支持されてきたかと言えば、必ずしもそうではない。退陣の要因になった例はある。
1996年〜1998年に政権を担った橋本龍太郎政権は、1998年7月の参院選前に所得税と住民税の減税を打ち出した。橋本首相は当初、この減税を「恒久減税」とする意欲を見せていた。だが、その後発言がぶれ、政権内の迷走も目立った。
結局、参院選は改選前の60議席を大きく下回る44議席獲得にとどまり、橋本首相は投開票の翌日に退陣を表明した。
2007年〜2008年の福田康夫政権は、所得税・住民税の定額減税を単年度限りで行う総合経済対策を策定した。だが後を継いだ麻生太郎首相は1人当たり1万2千円(65歳以上と18歳以下は2万円)の「定額給付金」に転換。野党から「ばらまきだ」と批判された上、高額所得者の受け取りなどに関する麻生首相の発言が迷走を重ねたことから、国民に広がっていた政権不信に拍車がかかった。2009年衆院選で自民党は民主党に政権を奪われた。
「首相はこれ以上ぶれてはいけない」
過去を振り返れば、冒頭の自民党関係者の言葉通り、税は鬼門と言える。対応を誤った政権は、退陣や選挙大敗といった散々な目に遭ってきた。
岸田首相を取り巻く状況は厳しさを増している。11月2日に決まった経済対策を巡っては、共同通信が直後の11月3〜5日に実施した世論調査で62・5%が「評価しない」と回答。岸田内閣の支持率は前回調査(10月14、15日)から4・0ポイント下がり、政権発足以来最低の28・3%に落ち込んでしまった。
専門家は今回の減税判断をどう見ているのか。東京大の内山融教授(日本政治・比較政治)は、増税イメージが広がった後に唐突に打ち出した感があり「政権運営がダッチロールのような状態になっている」と指摘する。「迷走を国民に印象付けてしまった」
その上で「税を巡る行動のぶれは、信頼喪失に直結する。防衛増税に関する説明不足や、マイナンバーカード問題などで募った国民の不信感が助長された」と分析。神田憲次財務副大臣の税金滞納による辞任を問題視し「税関連で政務三役の不祥事まで起こった。国民は岸田政権に呆れているだろう」と批判した。
首相がこの状況から浮上するにはどうしたら良いのか。内山教授は険しい表情で語った。「少なくとも首相はこれ以上、税に関する行動がぶれてはいけない。信頼回復はかなり難しいだろう。一気に支持を取り戻す良案は思い付かない。外交などで成果を重ね、支持を広げていくしかないのではないか」
●岸田内閣の支持率、軒並み20%台に下落 各社世論調査 11/20
岸田文雄内閣の支持率が報道各社の11月の世論調査で軒並み20%台に下がり、2021年10月の政権発足以降で最低水準となった。所得税減税や低所得者向けの現金給付を含む総合経済対策への低評価や相次いだ政務三役の辞任が影響した。
読売新聞が17〜19日に調査した内閣支持率は前回から10ポイント下落し、政権発足後で最低の24%となった。2割台は初めて。不支持率は62%と前回より13ポイント上昇した。
朝日新聞が18〜19日に実施した調査は、内閣支持率が25%だった。前回調査から4ポイント下がった。不支持率は65%で最高だった。
読売と朝日の調査は政府が経済対策に盛り込んだ所得税減税と現金給付を「評価しない」がいずれも6割を超えた。「評価する」は2割台にとどまった。
他の報道機関も傾向は同じだ。10〜12日のNHKによる調査は内閣支持率が前回より7ポイント低い29%と、政権発足以来、初めて30%を下回った。11〜12日に実施した産経新聞の世論調査も岸田政権下で過去最低の27%だった。
読売新聞によると自民党の政党支持率は28%と前回より2ポイント下がった。故青木幹雄元官房長官はかつて、内閣支持率と与党第1党の政党支持率を足した数字が50を下回ると政権運営が危うくなると指摘した。読売と朝日はこの数字がいずれも52となっている。
臨時国会の開会から1カ月足らずで政務三役が3人相次いで辞任したことも政権のダメージにつながったとみられる。読売で「政権運営にどの程度影響があるか」の回答で「大いに影響がある」と「ある程度影響がある」は合計68%を占めた。
10月26日に文部科学政務官だった山田太郎氏が女性との不適切な関係を報じられて辞任した。5日後の31日には柿沢未途氏が東京都江東区長側の公職選挙法違反を巡り法務副大臣を辞めた。3人目は税金滞納問題を抱える神田憲次財務副大臣で、岸田首相が11月13日に事実上更迭した。
●内閣支持率、20%台で自民政権復帰後で最低−朝日、読売、毎日調査 11/20
岸田文雄内閣の支持率は、先週末に実施された朝日、読売、毎日の主要各紙の世論調査でいずれも20%台となり、2012年12月に自民党が政権復帰して以来の最低を更新した。国会での今年度補正予算案の審議を控え、政権運営は厳しさを増す。
内閣支持率は読売新聞が前回10月調査から10ポイント低下の24%となったほか、毎日が21%、朝日が25%だった。毎日は調査方法が異なるため単純比較はできないとした上で、旧民主党・菅直人政権末期の2011年8月に記録した15%以来の低い水準という。
政界では内閣支持率が30%を割り込むと政権運営に影響が出る「危険水域」に入ったとみなされる。アジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて約1年ぶりの日中首脳会談も実現させた岸田首相だったが、支持の回復にはつながらなかった。来年秋の自民党総裁選まで1年を切る中、下落傾向に歯止めがかけられなければ、党内で「ポスト岸田」に向けた動きが活発化する可能性がある。 
松野博一官房長官は会見で、「国民の声を真摯(しんし)に受け止め、政府としての対応に生かしていくことが重要だ」と述べた。支持率低下の一因とみられる3人の副大臣・政務官が辞任した問題については「重く受け止め、一層の緊張感を持って職務に当たっていく」と語った。
経済対策への評価低く
国会では20日午後に鈴木俊一財務相の財政演説が行われ、今年度補正予算案の審議が始まる。ただ、定額減税などを盛り込んだ経済対策に関しては読売の調査で「評価しない」が66%、「評価する」は23%にとどまり、こうした不満が支持率下落に拍車をかけたと同紙は分析している。
鈴木財務相は同日の閣議後会見で、世論調査では「大変厳しい数字が出ているなというのが率直な思い」と述べた。その上で、「一喜一憂することなく、先送りできない課題にしっかり対応していくのが総理の基本的な考えだ」と語った。国民には減税を含む経済対策の意義や狙いが十分伝わっておらず、国会審議を通じてしっかり説明するとした。
西村康稔経済産業相も会見で、経済政策について「多くの皆さんに理解、支持いただく方が望ましい。内容をこれからも丁寧に説明をし、予算をうまく活用していただけるように取り組んでいきたい」と述べた。
●岸田内閣支持率24% 最低を更新「かなり追い込まれ手の打ちようがない」 11/20
NNNと読売新聞が行った世論調査で、岸田内閣の支持率が24%と、政権発足以来、最低を更新しました。中継です。
支持率は前の月より10ポイント急落しました。ある政府関係者は「政権はかなり追い込まれていて、手の打ちようがない」と政権運営の厳しい状況を語っています。
支持率低下の原因について、別の首相周辺は「“人事”と“減税”だ」と分析しました。相次ぐ政務三役の辞任に加え、所得税などの定額減税が「選挙対策に見える」などと不評を買い、支持率低下につながったと分析しています。別の首相周辺は「しばらく耐えるしかない」と述べています。
一方、自民党内では、ある閣僚経験者は「年内で“岸田おろし”が始まってもおかしくない。支持率が10%台まで落ちたら耐えられない」と政権運営を不安視しています。
こうした中、20日から補正予算案の審議がスタートします。
立憲民主党・安住国対委員長「一過性の支持率の下落ではなくて、下がった支持率が定着したということも言えるのかなと思っています」
野党側は新たに浮上した、自民党の派閥の政治団体が政治資金パーティーの収入を過少記載したとされる問題を巡り、追及を強める構えです。
一方、立憲民主党のある議員は「支持率の低さは麻生政権末期と同じだが、立憲民主党の支持率も上がってこない」と野党側への支持が伸びない苦しさも指摘しています。
●減税など補正予算案審議へ 派閥の“政治とカネ”に危機感 11/20
国会では20日午後から、今年度補正予算案の審議が始まります。所得税減税などの経済対策や政治とカネなどを巡り、論戦となります。
岸田内閣の支持率が軒並み政権発足後最低の20%台に落ち込むなか、野党は追及を強める方針です。
立憲民主党 安住国対委員長「小手先の所得税減税を行って、それが選挙目当てで見透かされてるわけだから、私はこういう補正予算案は撤回すべきだと思っています」
鈴木財務大臣「今回の経済対策の意義、そして狙い、これが心に響かないというんでしょうか。そういう状況になっている」
岸田総理としては「30年続いたデフレから脱却する千載一遇のチャンスだ」として理解を求めたい考えです。
ただ週末、政権だけでなく自民党全体を揺るがしかねない「政治とカネ」の問題が表面化しました。
政治資金パーティーの収入を過少に記載したとの告発を受け、東京地検特捜部が自民党の主要5派閥の担当者から任意で事情を聴いています。
自民党のベテラン議員は「これは氷山の一角に過ぎない」と各議員への広がりを懸念しています。
自民党内の危機感は高まっていて「さらに風当たりが強まる」「機能不全が続くだろう」などの声が漏れてきます。
●補正予算案審議入り 正念場の岸田政権 11/20
政府の新たな経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案が、11月20日、国会で審議入りします。
Q)岸田総理大臣が土俵際まで押し込まれていますね。
A)NHKの11月の世論調査で、岸田内閣の支持率は、発足以降、最も低い29%。
「危険水域」とも指摘される20%台まで落ち込みました。
岸田総理大臣にとっては、状況の打開が課題で、国会審議では、2つの「説明責任」がカギを握っています。
Q)それは何ですか。
A)1つは、過去に税金を滞納していた財務副大臣をはじめ、3人の副大臣と政務官が不祥事で相次いで辞任したことについて、任命責任の説明を十分に果たせるかです。
野党側は「全く適材適所でなかった」と批判し、追及を強める構えで、与党内からも「極めて異常な状態」という指摘が出ています。
国民が納得できる説明を行い、信頼回復につなげられるかが問われています。
Q)もう1つの「説明責任」とは何ですか。
A)減税と給付が柱の経済対策の必要性や効果についてです。
岸田総理大臣は、2024年の夏に所得の伸びが物価上昇を上回る状態をつくるために必要な対策だと強調します。
ただ、「国民に還元する」とした税収の増加分については、鈴木財務大臣が「すでに支出していて、減税を行えば、国債の発行額が増える」という認識を示し、ちぐはぐな印象も受けます。
野党側からは「事実と違うので、『還元』の発言を修正すべきだ」という批判が出ています。
「防衛力強化や少子化対策などの財源確保も必要なのに、なぜ今、減税なのか」という国民の疑問も完全には解消されていないのが実態です。
岸田総理大臣は、年内の衆議院の解散を見送りました。
国会審議で説明を尽くし、支持を回復させ、解散に打って出るタイミングをうかがいつつ、2024年秋の自民党総裁選挙での再選につなげたいのが本音だと思います。
態勢の立て直しに向けて、今が正念場と言えそうです。
●日経平均がバブル後の最高値更新 一時3万3800円台 33年ぶり高値水準 11/20
日経平均株価が取引時間中として、バブル後、33年ぶりの最高値を更新。
週明けの東京株式市場は、取引開始直後、売りが優勢だったが、堅調な決算を受け、買い注文が広がった。
平均株価は一時3万3,800円台をつけ、取引時間中としてバブル後の最高値を更新し、33年ぶりの高値水準となった。
市場関係者からは、「アメリカで長期金利が低下し、主要な株価指数が上昇していることも安心感につながっている」との声も聞かれる。
20日の東京株式市場の日経平均株価、午前の終値は、先週末17日に比べ、22円79銭安い、3万3,562円41銭、TOPIX(東証株価指数)は、2,383.67だった。
●財源の3分の2は借金、基金に4兆円 今年度補正予算案を国会に提出 11/20
政府は20日、物価高への対策などを盛り込んだ今年度補正予算案を開会中の臨時国会に提出した。一般会計の歳出は13兆1992億円で、歳入の67%を国債(借金)でまかなう。21日から始まる衆参の予算委員会で、補正予算の是非を問う与野党の論戦が交わされる見込みだ。
補正予算案には、住民税非課税世帯向けの1世帯あたり7万円の給付に1兆592億円、今の価格抑制策を来年4月まで延長するガソリン、電気・ガス代の補助に7948億円を使う。全体の約3分の1にあたる4・3兆円を基金に充てて、半導体メーカーの支援や宇宙開発などに使う。減税規模3兆円台半ばを想定する来年6月に実施する1人4万円の定額減税(所得税と住民税)の財源は、補正予算には含まれていない。
減税や現金給付は、世論の評価が高くはない。岸田政権にとっては、相次ぐ副大臣・政務官の辞任もあって支持率が低迷する厳しい環境下での予算審議となる。
●「定額減税」で「住宅ローン減税」が“大幅減額”も “制度設計”焦点に 11/20
政府が実施する定額減税をめぐり、今の仕組みのままだと「住宅ローン減税」などの利用者に影響が出る可能性があることがわかった。
今後の制度設計が焦点になる。
定額減税では、1人あたり所得税で3万円など、あわせて4万円が減税される。
一方、住宅ローン減税は、ローンを組んだ購入者が減税してもらえる仕組み。
年収650万円の4人世帯の試算では、本来の所得税がおよそ14万円で、14万円のローン減税を受ける場合、全額が還付され戻ってくるが、先に定額減税が実施されると所得税額は2万円に減って、還付される税額も2万円にとどまり、想定していた効果が十分得られないと感じるケースが出てくる可能性がある。
また、「ふるさと納税」でも減税分が減ったり、自己負担分が増える可能性が指摘されていて、制度設計の行方が焦点になる。
●内閣支持率低迷 松野官房長官「真摯に受け止める」 11/20
毎日新聞が18、19の両日実施した全国世論調査で岸田内閣の支持率が政権発足後最低の21%となるなど最近の世論調査で支持率が低迷していることについて、松野博一官房長官は20日の記者会見で「世論調査の数字に一喜一憂はしない」としたうえで「世論調査に表れた国民の声を真摯(しんし)に受けとめ政府としての対応に生かしていくことが重要」と述べた。
また不祥事を受けて副大臣や政務官の辞任が相次いだことについて「一連の辞任を重く受け止め一層の緊張感を持って、職務にあたっていく」と発言。「引き続き政府の取り組みを丁寧に説明するとともに、先送りできない課題に一つ一つ結果を出していけるよう全力で取り組んでいく」と述べた。
●「国民に尊敬されない総理」は「単独過半数割れが見えてきた」と焦ってる 11/20
表向き平静を装っているが
世論調査をするたびに内閣支持率が下がる岸田政権。政務3役が不祥事絡みで相次いで交代し、保守系の牙城とされた首長選でまさかの敗北と逆風が続き、いよいよ「このまま選挙をすれば自民党は単独過半数割れする」との声が上がり始めた。
「11月12日に投票が行われた東京・青梅市長選は自公が推薦する現職と国民民主と都民ファーストが推薦する新人とがぶつかり、現職が破れました。選挙中からもしかしたら厳しい結果が出るかもしれないとささやかれていましたが、本当にそうなってしまって関係者は一様にショックを受けています」と、政治部デスク。
「岸田文雄首相や側近らは表向き平静を装っているようですが、本心では焦りまくっているはずです。青梅市は東京25区に組み込まれていますが、ここは自民が民主に政権を明け渡すことになった2009年の衆院選でも自民候補が対立候補にダブルスコアで勝利しています。そんな保守系の牙城での敗北は想定外で、自公の関係者は慌てて敗因分析をしていましたが、なかなか深刻なようですね」(同)
脚本家でも書けないシナリオ
「2009年の政権交代の頃までは、国民の間で“自民に失望した、民主に一度やらせてみたい”といった雰囲気が醸成されていたことがありました。が、今は自公政権への失望はあっても民主や他の野党にやらせてみたいという空気はありません。それだけに敗因分析が難しいようです」(同)
表向きには、政務3役が不祥事絡みで相次いで交代したということがあるのだろう。
「それぞれが各々の担務に絡んだスキャンダルでしたから悩ましい事態です。特に神田憲次財務副大臣の場合は、税理士資格を持ちながら代表取締役を務める会社が税金を9度も滞納し、土地や建物の差し押さえは4度にわたり、立て替えてくれていた知人に返金されていないとの報道もありました。“脚本家でも書けないシナリオだよなぁ”とボヤいている閣僚経験者がいましたね(笑)」(同)
そんな中、自民党内からは「このまま選挙をすれば自民党は単独過半数割れする」との声が上がり始めたという。
国民からの尊敬
「自民党の衆院勢力は現在262。イメージ的に290くらいあると思っている人も割といるのではないでしょうか? 過半数は233なので30議席減らすと単独過半数割れとなります。公明は現在32議席で、こちらも支持率が低下傾向であるのに加えて支持母体・創価学会の池田大作名誉会長が死去したことが何より大きく、今後の選挙では苦戦を強いられる可能性が高い。仮に25議席程度とすると、自公合わせても常任委員会の全てで委員長を出したうえで過半数の委員を確保できる絶対安定多数(261)を確保できない可能性があります」(同)
それが現実となれば岸田首相の退陣は避けられないわけだが、自民党内ではそうならないための「選挙の顔」選びがうごめき始めてもいる。
「このまま解散できない状況が続けば、来年9月の自民党総裁選で総裁に選ばれた人が次の衆院選を戦うことになりそうです。それまではまだ時間もあるので、岸田政権の方に支持の揺り戻しが起こる可能性はもちろんあります。ただ、永田町関係者との会話の中でよく出てくる話として、“岸田首相が国民から支持されていないという以上に国民から尊敬されていないのでは?”というものがあるんです」(同)
「あなたは今の総理大臣を尊敬していますか?」……そういう項目が世論調査に組み込まれているなら、国民からの評価の低さがよりクリアになってしまうのではないかという指摘だ。もちろん歴代首相とて、万人に尊敬されていたとは言えないのだが、岸田総理の場合、熱い支持者のようなものが見えづらいという点は否めない。かの麻生太郎首相(当時)ですら、一部には熱烈なファンを抱えていたのだ。
裏返せば、目に見えている数字以上に岸田政権は国民から支持されていないということになるのだろう。
●維新代表、補正予算案を批判 11/20
日本維新の会の馬場伸幸代表は20日の党会合で、2023年度補正予算案について、「非常に受けが悪く、(内閣)支持率もだだ下がりだ」と批判した。予算案審議に関しては「スキャンダルを追及したり、揚げ足を取ったりするのではなく、政権与党ならどうするかの観点で議論を挑んでほしい」と強調した。
●岸田政権の「レームダック化」が止まらない...!支持率低下、首相の末路 11/20
「危険水域」をたどる岸田政権
各種の世論調査で内閣支持率が低下している。地方選挙でも敗北が目立つなか、党内にポスト岸田をめぐる動きが出てくるのか。
最近の世論調査は以下の通りだ。
共同通信が11月3〜5日に実施した世論調査では岸田内閣の支持率は先10月から4.0ポイント下落し28.3%となった。JNNが11月4、5日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月から10.5ポイント下落し29.1%となった。
FNNが11、12日に実施した世論調査では内閣支持率は先10月から7.8ポイント下落し27.8%となった。NHKが10〜12日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月から7ポイント下落し29%であった。
時事通信が10〜13日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月から5.0ポイント下落し21.3%、毎日新聞が18,19日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月より4ポイント低下し21%となった。
また、読売新聞が17〜19日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月より10ポイント低下し24%となった。
いずれも、内閣支持率30%割れと同じような結果となり、岸田政権はかなり危険水域になっている。
ちなみに、内閣支持率と自民党支持率を合算した数字は「青木率」として知られ、かつては青木率が50%を割ると内閣は倒れるとされていた。
NHKの調査では下図のとおりだが、まだ自民党支持率が高いので、それほどの危険水域でないが、自民党支持率が下がるとさらに不味いだろう。一部の世論調査ではその兆候もある。
財務省がハシゴを外した
昨年7月の参院選は、安倍晋三元首相の非業の死をうけた「弔い選挙」の様相もあり、岸田政権は勝利し、2025年まで国政選挙はない「黄金の3年間」といわれた。
今年5月の広島サミットまでは岸田政権は「サミット成功」と明確な目標もあり、やりたいことが外からもよく分かった。しかし、サミット後、今となっては何をやりたいのかさっぱりわからない。
岸田首相は、やりたいことは何かと問われて「人事」と答えたことがあるくらいで、結局どんな政策をやりたいのか見えにくい人だが、サミット後はその感が特に強い。
何か手当たり次第に発言しているみたいだ。増税メガネといわれると、かなり気にしているようで、とうとう経済対策で「減税」を口に出すようになった。
その方向性はいいのだが、それまで財務省のいいなりだったために唐突感があった。そして前回の本コラム〈岸田首相、打つ手なし…!財務省の「ハシゴ外し」で支持率回復どころか「党内分裂」へ〉で指摘したように、やはり財務省にしてやられた。
この状況について、先週土曜日の大阪朝日放送「正義のミカタ」で、「自我が芽生えたので、財務省がハシゴを外した」と表現したら、一同大いに納得したようだ。
岸田首相は年内解散なしと宣言してみたものの、支持率低下で解散権が縛られている状況だ。解散権のない首相は党内掌握に厳しい状況で、求心力は既にない。
レームダック化した岸田首相
もし今の段階で解散を言い出したら、あっという間に党内で岸田下ろしが出てくるだろう。既に事実上岸田首相はレームダック(死に体)に陥っている。
となると、岸田首相は「やぶれかぶれ解散」か、来年9月の自民党総裁選までに耐え凌ぐしか、選択肢は残されていない。
どちらにしても、党内政局をひき起こす要因になる。
今月11日に大阪梅田での街宣活動で、主催者も警察も予想できなかった人数を集めた日本保守党が圧倒的な人気を呼んだ。
その点、岩盤保守層が自民党支持から離れていくのは我慢ならない保守系自民党議員には危機感が強い。
その萌芽が、10日の自民党参院議員青山繁晴氏の総裁選出馬宣言である。実際問題として選挙人20名の確保は難しいが、何が起こるかはわからない。
さらに、15日、高市早苗経済安全保障担当相が自ら主宰する勉強会「日本のチカラ研究会」を立ち上げた。高市氏は前回の総裁選に立候補しており、選挙人20名の確保のハードルはそれほど高くない。
関係者はあくまで「純粋な経済安全保障などの勉強会」ととするものの、政治的には絶妙なタイミングであり、その額面取りには受け取れない。
ここにきて、自民党内実力者の水面下の動きもあるらしい。菅義偉前首相は、15日インターネット番組に出演し、政府が来年6月にも実施する所得税減税について、「国民になかなか届いていない。説明も足りない」と述べた。
日中首脳会談もダメダメ
遡ること3週間前に山田太郎文科政務官、2週間前に柿沢未途法務副大臣、1週間前に神田憲次財務副大臣が相次いで不祥事で辞任した。3週連続で週刊誌報道がきっかけで岸田政権の副大臣・政務官が辞任しているが、4週目は三宅伸吾防衛政務官や自見英子万博担当相が報道されていた。
ここまで来ると、岸田政権はボロボロだ。ある自民党関係者は、年末まで持つのだろうかと心配していた。
そうした中で行われた日中首脳会談はAPEC首脳会議が開催されたアメリカ・サンフランシスコで17日午前中に行われた。
首脳会談はどちらが「マウントを取る」かが重要だが。場所は習近平国家主席の滞在するホテルで行われた。しかも、岸田首相の車がホテルに着けずに、岸田首相がホテル近くで車を降りて小走りで会談に向かうというありさまだった。
前日には米中首脳会談が行われたが、成果といえば、昨年8月のペロシ下院議長の訪台以降、米中間で切れていたホットラインを復活させたことだ。
中国軍が挑発行動に出て、米軍機との異常接近事故が相次いでおり、偶発的衝突の可能性があったが、今回のホットラインでその可能性が低くなったのは、日本、極東アジアにとってもいいことだ。
もっとも、バイデン氏は習氏歓迎の赤絨毯なしとか、記者会見後にわざわざ記者の追加質問に応じて、習氏を独裁者呼ばわりするなど、来年の大統領選挙を意識し、対中強行姿勢を見せざるを得なかった。中国も、アウェイのアメリカに来ざるを得ない厳しい状況で、互いに手詰まり感がある。
その翌日ということで、日中首脳会談は日本には比較的有利な状況だったが、初めからしてやれた。
岸田首相は、中国による日本産水産物の輸入規制の即時撤廃、日本のEEZ内に設置されたブイの即時撤去、中国における法人拘束事案について邦人の早期解放を中国側に求めたという。
強い国内基盤がまず必要
しかし、ブイについてはすみやかに撤去してもいい話だし、邦人の早期開放は日本側も在日中国人を逮捕してから交換すべき案件なので「お願いベース」ではなかなか解決しない。
そもそも相手が中国という非民主主義国なので、それなりの対応が必要なのだ。
しかも、岸田政権の支持率が低下しレームダック状態なので、残念ながら習氏はそれほど岸田首相を相手にしないだろう。となると、一年ぶりに首脳会談ができたことが成果とも言える。毅然たる外交のためには国内基盤の強い政権が必要だ。
●岸田内閣支持率10%台*レ前 毎日調査で「早く辞めてほしい」が55% 11/20
岸田文雄内閣の支持率急落が止まらない。読売新聞と毎日新聞が20日朝刊、時事通信が先週16日公表した世論調査で、いずれも政権維持の「危険水域」とされる30%以下に下落した。毎日と時事の調査では21%台と、10%台突入もあり得る状況となっている。
まず、岸田首相が、政権浮揚策に位置付けた経済政策の評判が悪い。読売調査では、経済対策を「評価しない」が66%。毎日調査では、所得税・住民税減税を「評価しない」が66%だった。
いつまで岸田首相に首相を続けてほしいかという質問は痛烈だ。毎日調査で「早く辞めてほしい」が55%、「(自民党総裁の任期が切れる)来年9月まで」が28%。読売調査では「来年9月まで」が52%、「すぐに交代」が33%だった。
岸田首相に近いベテラン議員は「八方ふさがりだ。このままでは『岸田降ろし』が始まる」と警戒している。
●毎日読売調査とも内閣支持率また過去最低更新…「早く辞めて」55%に上昇 11/20
大手新聞2社が先週末に行った世論調査で、岸田内閣の支持率が、また過去最低を更新した。
毎日新聞が18、19日に実施した全国世論調査では、支持率は21%で、10月の前回調査から4ポイント下落し、岸田内閣発足以降で過去最低を更新。岸田首相にいつまで首相を続けてほしいかについては「早く辞めてほしい」が55%で、最も多かった。同じ質問をした9月調査でも51%と過半数だったが、さらに4ポイントも上昇する結果となった。
また、読売新聞が17〜19日に行った世論調査でも、支持率は内閣発足以降、過去最低の24%で、前回10月調査から10ポイントも下落。読売の調査では、21年9月に当時の菅首相が退陣を表明した後の31%にも及ばなかった。
岸田首相の経済対策に盛り込まれた所得税・住民税減税措置については、毎日調査で「評価しない」が66%に上り、読売も61%と高水準だった。読売の調査によると、「評価しない」の理由は「選挙対策に見えるから」が44%で最も高かった。
政務三役3人が不祥事で相次ぎ辞任したことへの評価も厳しい。毎日の調査では、岸田首相の任命責任について「大いに責任がある」「ある程度責任がある」と答えた人が計86%にも上った。
自民党を巡っては、5派閥に政治資金規正法違反の疑惑がくすぶるなど、マイナス材料がまだある。既に“危険水域”だが、この程度では終わらない可能性がある。
●支持率急落、鬼の岸田にはもううんざり…国民が求める総理候補 11/20
岸田文雄政権の内閣支持率が、各メディアの世論調査で軒並み2割台に突入した。解散したくてもできない状況に、自民党内では「いつ退陣するのか」と議論を呼んでいる。政治事情にも詳しい経済アナリストの佐藤健太氏は次の総理に4人の名前を挙げる。混迷極める永田町で誰か動き出すのかーー。
「いつか解散か」ではなく「いつ退陣か」のフェーズに
岸田文雄首相の支持率が続落し、各種世論調査で軒並み過去最低を記録している。逆風のあおりを受ける自民党は福島や宮城の県議選で過半数割れという深刻な痛手を受け、東京・青梅市長選などの地方選でも支援候補の敗北が続く。岸田氏が再選を目指す来年の自民党総裁選まで1年を切る中、危機感を強める「ポスト岸田」はついに不気味な動きを見せ始めている。
「もはや岸田首相が『いつ解散を打つのか』ではなく、『いつ退陣するのか』にフェーズは移っているよ」。自民党ベテラン議員はこう危機感を強める。岸田氏は6月に衆院解散を模索したが、周囲の反対で断念。さらに起死回生を狙った年内解散も見送らざるを得ない状況に追い込まれた。
実際、岸田首相への逆風は止まらない。JNNが11月4、5日に実施した世論調査で内閣支持率は10月から10.5ポイントも下落し、29.1%と過去最低を記録。政権発足後初めて3割を下回って「危険水域」に突入した。NHKの調査(11月10日から3日間)でも10月調査時から7ポイント下落の29%となり、産経新聞とFNNの合同世論調査(11月11、12日)では10月比7.8ポイント減の27.8%と2カ月連続で過去最低を更新している。
支持率の高低よりも「不支持率」の高さがひどいことに…
時の政権の勢いをはかる目安としては、かつて「参院のドン」と呼ばれた青木幹雄元官房長官が示した法則がある。内閣支持率と与党第1党の政党支持率を足した数が50%を下回れば政権運営は行き詰まるというものだ。これを今回の調査で計算すると、JNNは「55.3%」、NHKは「66.7%」、産経などの調査では「56.8%」となる。数字だけを見れば上回っているものの、もうギリギリのところまで来ていると言えるだろう。
注目すべきは、支持率の高低よりも「不支持率」の高さだ。岸田内閣の不支持率はJNNで68.4%に達し、NHKは10月から8ポイント増の52%、産経などでは過去最高の68.8%に上っている。調査によってバラツキがあるため、NHKに絞ってみれば内閣支持率は首相が防衛費大幅増に伴う増税プランを決めた昨年末に3割台前半に落ち込んだものの、2021年秋の政権発足後の不支持率は46%が最高だった。5割を超えたのは初めてのことで、首相の不人気ぶりが止まらないことを表している。
その要因としては岸田政権が数々の増税プランや社会保険料アップという国民の負担増を模索し、「増税メガネ」との異名が首相に向けられたことにあるのは間違いない。岸田氏は「どんな風に呼ばれても構わない」と強がるが、突如として「税収増を国民に還元する」と減税策を打ち出したのは国民の不満を恐れたからだろう。
思い出される「漢字が読めない総理」
ただ、首相が挽回を狙った経済対策も不人気だ。JNNで「期待しない」は72%に上り、「評価しない」はNHKで6割近く、産経などの調査でも約7割に達している。首相は来年9月の自民党総裁選での再選を有利にするために年末の解散総選挙を虎視眈々と狙ってきた。その魂胆を国民に「バラマキという人参をぶら下げるつもりか」と見透かされ、逆に怒りを買っている形だ。首相が任命した副大臣や政務官の相次ぐ不祥事に加え、政権内のガバナンスも崩壊寸前にある。閣僚経験者の1人は「悲しいことに不名誉な異名がついた首相の下では政権が浮揚することは難しいだろう」と突き放す。
思い出されるのは、自民党が下野することになった2009年の総選挙前のことだ。現在は自民党副総裁を務め、岸田首相の信頼も厚い麻生太郎氏が首相に就いていた時である。麻生氏は、不人気だった前任の福田康夫首相から代わって早期の解散総選挙による事態打開を期待された。
「ポスト岸田」として誰が飛び出すのか
しかし、2008年9月の自民党総裁選はリーマン・ショックによる経済危機と重なり、早期解散を断念。その後は閣僚の失態に加えて、麻生氏が未曾有を「みぞうゆう」と誤読するなど「漢字の読めない首相」との異名もつけられた。
当時のNHK調査によれば、2008年12月に麻生内閣の不支持率は65%に上がり、最後の2009年9月は74%に達している。当時の自民党は2009年6月の千葉市長選で推薦候補が敗北し、東京都議選など地方選で惨敗。危機感を抱いた自民党議員は「麻生おろし」に動き回った。
結党以来の歴史的大敗を経験した麻生氏は、早期解散を狙う岸田首相に「なにも急ぐ必要はない」と進言してきたとされる。だが、解散見送りとともに不支持率が上昇する中で同じ轍を踏む可能性は決して低いとは言えない状況だ。民主党が勢いを持っていた当時とは異なり、期待が高まっていない野党をにらめば再び自民党が下野することは考えにくいが、「岸田おろし」襲来は十分にあり得るだろう。
では、その頭目となり得る「ポスト岸田」として誰が飛び出すのか。次期首相候補として名があがるのは、高市早苗経済安全保障担当相、河野太郎行政改革担当相、茂木敏充自民党幹事長の3人だ。いずれも党幹部または閣僚に就いており、表だって首相批判をすることはないものの、虎視眈々とタイミングをうかがっているのは間違いない。
高市早苗、河野太郎…突破力と発信力に長けた2人に共通する悩み
高市氏は来年の党総裁選への出馬をにらみ勉強会を発足。河野氏は予算執行の無駄などを検証する「行政事業レビュー」を舞台に、膨張が問題視される基金のあり方に切り込むなど露出を増やしている。
ただ、突破力と発信力に長けた2人に共通する悩みは「支持基盤の弱さ」だ。高市氏は、岸田氏と対決した党総裁選で善戦したものの、後ろ盾となった安倍晋三元首相の支援はもうない。派閥会長が決まらない自民党最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)が一枚岩となって高市氏を推すことは考えられず、推薦人集めから挑戦しなければならない。
河野氏にしても、所属する麻生派を率いる麻生副総裁の全面支援が欠かせない。改革イメージが先行する河野氏に対しては若手議員に期待する声がある一方で、ベテラン議員には抵抗も根強い。岸田首相と二人三脚で歩む麻生氏が、再選を目指す現職宰相のハシゴを外してまで河野氏に「GO」を出すことは考えにくい。
茂木は令和の明智光秀になる覚悟はあるのか
もう1人の茂木幹事長にも「壁」がある。茂木氏はトップに立つ意欲を重ねて示し、自ら率いる派閥を中心に同志を着々と増やしている。ただ、首相から起用された党ナンバー2の幹事長として岸田氏を支え続けなくてはならず、逆に「次」へ向けた動きは取りにくい。
野党時代の谷垣禎一党総裁が政権奪還直前の総裁選出馬を断念することになったのは、当時の石原伸晃幹事長が強行出馬したからだ。茂木氏がトップに立つために協力が欠かせない麻生氏は当時、「石原氏は『平成の明智光秀』といわれている。私の人生哲学には合わない」などと厳しく非難している。
仮に主君を討つようなイメージがつきまとえば、逆バネが働くのは必至だ。茂木氏が11月11日の講演で「光秀は好きじゃない」などと反旗を翻す考えはないと強調したのは、静かに「時」を待つスタンスに徹するしかないからだろう。
そんな中で注目集めるのは…
ポスト岸田の有力候補である3人が抱える事情を考えれば、逆に現時点で党幹部や閣僚に入っていない人物の方がチャンスと言える。その筆頭格は石破茂元幹事長だ。各種世論調査では「次の首相にふさわしい人物」としてトップに名があがり、現政権とも一定の距離を置いて準備を重ねている。
石破氏が自覚するように仲間が少ない点が総裁選で不利との見方がつきまとうが、仮に非主流派の二階派や菅義偉元首相に近い議員グループが推すことになれば流れは変わる。それだけでは勝利をつかむだけの議員数は足りないものの、二階・菅両氏と近いベテラン・中堅議員たちが協力することにすれば情勢は一変するだろう。
何より、岸田首相の不人気から「選挙の顔」を探す動きが強まれば、世論調査で支持率が高い石破氏に票が流れる可能性は高いと言える。政府関係者によれば、岸田氏はこうした石破氏周辺の動きに警戒を強めているという。
一度は率いた派閥を解体し、孤独感も漂う石破氏が一気に息を吹き返すことはあるのか。「火中の栗」をつかむことになりそうなポスト岸田から目が離せない年末年始を迎えようとしている。  
●岸田政権の減税策 「選挙目当ての下心が見え見えだ。意味がない」 11/20
ジャーナリストの須田慎一郎氏が11月20日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。岸田文雄政権が打ち出した所得税などの減税策について、「選挙目当ての下心が見え見えだ。意味がない」と批判した。
経済対策に専念するとして、噂された年内の解散総選挙を見送ることを9日、表明した岸田文雄首相だが、2024年6月にも実施される所得税などの減税策は国民からあまり評価を受けていない。内閣支持率も最低を更新し、求心力を失いつつある岸田首相。果たして、日本経済の行く末は大丈夫なのか―。
須田)岸田文雄政権の減税策は、意味がないです。選挙目当ての下心が見え見えだからです。
10月22日に投開票された衆参2補欠選挙に、自民党は非常に厳しい状況で臨みました。この補選で負けると「いよいよ退陣」「ポスト岸田」などと言われかねないため、岸田首相は何としても勝たなければならなくなりました。そこで、「減税」と言っておけば勝てるのではないかと考え、減税策を打ち出したわけです。
要するに、選挙を前に国民の関心を買うための減税策です。しかし、減税を巡っては、鈴木俊一財務相が後に、税収増分は使用済みだと答弁しました。つまり、「岸田政権の減税策とは何だったんだ」という話です。
●支持率下がる岸田政権…野党側が攻勢強める 補正予算案審議始まる 11/20
20日から補正予算案の審議が始まりました。支持率が下がる岸田政権へ野党側は攻勢を強めています。
立憲民主党・熊谷参院議員「総理は経済・経済・経済と宣言していましたが、ふたをあければ、辞任・辞任・辞任でありました。このような状況を私は残念・残念・残念でなりません」
岸田首相「任命責任者として、その責任、重く受け止めているところです。国民の皆様の信頼を回復できるよう、内閣として一層の緊張感を持って、与えられた課題に全力で取り組んでまいります」
岸田首相は副大臣や政務官など政務三役の辞任が相次いだことについて、改めて陳謝しました。21日からは予算委員会での審議が始まります。野党側は、新たに浮上した自民党の派閥の政治団体が政治資金パーティーの収入を過少記載したとされる問題をめぐり、追及を強める構えです。
●自民5派閥 政治資金収支報告書に4000万円“不記載”告発に「精査中」 11/20
自民党の5つの派閥の政治団体が政治資金パーティーの収入およそ4000万円分を収支報告書に記載していなかったとして告発されている問題で、各派閥が対応に追われている。
宏池政策研究会(岸田派)はFNNの取材に対し「ご指摘の件に関しては、事実を確認した上で適正に対応する予定です」とのコメントを出した。
また、志公会(麻生派)は取材に対し「指摘の件に関しては、事実を確認した上で適正に対応する予定です」と応じた。
一方、清和政策研究会(安倍派)、平成研究会(茂木派)、志帥会(二階派)は現時点でのコメントは控え、事実関係を精査している。
岸田首相は20日首相官邸で記者団に対し、一般論とした上で、「政治資金の収支報告等において指摘があるならば、それぞれの政治団体において、責任を持って点検し、適切に対応するべきものである」と述べている。
●「歳出を平時に戻し、財政健全化を」 財政審が24年度建議 11/20
財務相の諮問機関である財政制度等審議会(会長・十倉雅和経団連会長)は20日、2024年度予算編成などに関する建議(意見書)をまとめ、鈴木俊一財務相に提出した。建議では、物価上昇(インフレ)や金利上昇などで経済状況が「これまでとは異なる局面に入っていく可能性がある」と指摘。歳出を新型コロナウイルス禍対応から平時に戻し、財政健全化を進めるよう提言した。
建議では、国際的に低インフレ・低金利から高インフレ・高金利に経済の潮目が変化していると強調。国債発行残高が1027兆円(9月末時点)と「世界最悪」(鈴木氏)の財政状況となるなか、金利上昇で利払い費が増加すれば「財政運営に支障を来す恐れがある」と懸念を示した。
その上で「責任ある財政運営が一層重要」とし、有事にも対応できるよう「常に財政余力を確保しておくことが求められる」とした。
財政健全化に向けては、年々増大する社会保障費の抑制などがカギとなる。そのため、来年度予算編成は医療サービスの対価として医療機関に支払われ、来年度が見直しのタイミングとなる診療報酬について、全体の改定率をマイナスとするよう求めた。
財務省の全国調査で、診療所の利益率が他産業と比べて高いことが明らかになったことを受け、診療所の報酬単価の引き下げを提言。報酬単価を5・5%程度引き下げると、保険料負担が年間約2400億円減るとの試算を示した。
医療業界は物価高や賃上げを受け報酬引き上げを求めているが、診療所の利益剰余金や賃上げ税制の活用で対応できると訴えた。
岸田文雄政権が打ち出した児童手当の拡充など少子化対策の費用は、医療保険に上乗せして広く国民から徴収する方針だが、歳出改革などを通じて他の負担を減らし、実質的に負担を生じさせないようにすべきだと盛り込んだ。
一方、防衛費増額のための所得・たばこ・法人税の具体的な増税時期については、言及しなかった。
財政審財政制度分科会の増田寛也会長代理(日本郵政社長)は提言手交後の記者会見で、来年度予算編成について「財政健全化に切り替えていく大きな節目だ」と強調。診療報酬については「診療所の利益を守るのか、勤労者の手取りを守るのかという形での国民的な議論をお願いしたい」と話した。
 11/21

 

●2024年自民党を襲う特大スキャンダル 選挙大敗、ブタ箱送りも 11/21
なす事すべてが裏目となり、支持率も下落する一方の岸田政権。完全に国民から見限られた感が強い首相ですが、もはやこのまま去りゆくしか道はないのでしょうか。年内の解散総選挙を断念した岸田首相の行く末を予測。さらに来年9月の総裁選までに残された、総選挙に打って出られる「唯一のタイミング」を考察します。
年内解散総選挙を決断できず。ついに見えた岸田政権の終わりの始まり
岸田総理が年内の解散、総選挙を断念したと『朝日新聞』(1面)とNHKニュースが報じたのは、11月9日だった。
政権が驚愕したのは、毎週1人(山田太郎文科政務官、柿沢未途法務副大臣、神田憲次財務副大臣)の辞任も反映して、世論が離れているからだ。
11月13日に公表されたフジテレビと産経新聞の世論調査では、内閣支持率が27.8%(前回は35.6%)、不支持率が68.8%(前回は59.6%)だ。
もはや危険水域に入り、「春にも電撃退陣」と断定して煽るメディアまで現れている。菅義偉政権が選挙を前にして退陣したのと同じ空気が流れている。
私の実感としては、2009年夏の政権交代選挙に至る麻生政権のときのようだ。9月にリーマンショックが起き、世界経済に波乱が襲い、日本経済も先行き不透明になった。
麻生政権の支持率も低下し、いつ解散、総選挙に向かうかと、毎日のように観測情報が流れた。
私は「新党日本」公認、「民主党」推薦で東京11区(板橋)で立候補する予定で、毎日毎日地元を歩いていた。
私にとっては初めての衆議院選挙だった。参議院選挙と違って、いつ解散があるかは総理の腹次第だった。正直にいって毎日のように不安と不満が溜まっていった。「早く解散してくれ」という思いだ。
いままた多くの予定候補者の心境がわかる。勝利するか敗北するかではない。時間が延びれば勝つ条件ができていくというレベルではないのだ。
選挙の臨戦態勢を取っていた創価学会
岸田文雄総理は今年夏の通常国会明けに解散と総選挙を想定していた。公明党も維新との対抗でそう望んでいた。
実際に支援団体の創価学会は夏からつい最近まで選挙の臨戦態勢を取っていた。組織は北海道から沖縄まで13の方面がある。とくに兵庫に2区と8区は1996年に小選挙区制になってから、2009年の政権交代選挙での8区を除けば公明党が勝ってきた。
大阪と同じく創価学会にとっては「常勝関西」なのだ。だから公明党=創価学会は維新が候補者を立てる兵庫で浸透が進まないうちに総選挙をやってもらいたかった。
「12月10日」「12月17日」と具体的な投票日まで創価学会は想定していた。
ところが岸田首相はまったく煮え切らない。所得減税の経済対策を打ち出しても、支持率は上がらないどころか低下していった。
2000年の森喜朗政権のときには支持率が16%台にまで低下した。それでも解散、総選挙を行ったが自民党は微減で済んだ。世論調査一般と現実の投票行動は違う。あとは総理の覚悟なのだ。
岸田総理にはそれがない。野党の候補者擁立が進まず、連携が取れていないいま。挑戦無くして勝利なし。岸田総理にはこれからも厳しい道が続く。
2024年、自民党を襲う大スキャンダル
公明党=創価学会だけではない。来年になると自民党に大スキャンダルが襲う気配がある。
派閥パーティーで得た資金を政治資金規正法で適正に報告していないことを指摘され、東京地検に告発されている問題があるからだ。
1回のパーティで20万円を超える購入者を収支報告書に記載することは義務付けられている。2018年から21年では5派閥で約4,000万円が記載されていなかったことが明らかになったのだ。
清和政策研究会(安倍派)約1,900万円、志帥会(二階派)約950万円、平成研(茂木派)約600万円、宏池会(岸田派)約200万円。パーティ券を購入した団体が収支報告書に記載しているのに、買ってもらった団体が記載していないのだ。
昨年12月に薗浦健太郎議員(当時)が、政治資金の過少記載で略式起訴され、公民権停止となったように、悪質なケースは立件される。
この疑惑を知った岸田総理は年内解散に進まないと来年は危険だと判断した時期があった。しかし解散を断念した。
来年9月の総裁選までに総選挙に打って出ることを総理なら考える。1月の通常国会冒頭は難しい。6月の会期末なら東京都知事選と重なる。そうすると予算成立の3月末が想定される。そこで覚悟できないならば、岸田退陣の動きは加速する。
●出番だぞ!小泉総理説…地獄の岸田政権、支持率21%

で岸田オロシ開始 11/21
時事通信の11月の世論調査によると、岸田内閣の支持率は前月比5.0ポイント減の21.3%となり、12年の自民党政権復帰後の最低を記録した。年内の解散もなくなったことで、そろそろ自民党内には「岸田おろし」が始まってもおかしくなさそうな気配だ。
しかし、次の総理は誰なのか。9月13日、14日に日本経済新聞社とテレビ東京が実施した緊急世論調査では、「次の自民党総裁にふさわしい人」は小泉進次郎元環境相が16%で首位に立ったという。東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出後、その安全性を自らサーフィンすることでアピールしたことが国民に好感を持って受け止められたためだろうか。
フランス哲学者の福田肇氏によれば、「意外かもしれないが、実は小泉進次郎氏はフランスでも人気がある」というーー。
小泉進次郎は、なぜフランスで好意的に受け止められているのか
2020年1月15日、フランスの新聞「ル・フィガロ」(Le Figalo)紙は、こう報じた。「ある大臣が父親育児休暇の取得へ」。「ある大臣」とはいうまでもなく小泉進次郎のことである。
「職務中のいかなる大臣も今までこうした申請をしてこなかった。高齢で大臣職を得るのが一般的なかの国で、もっとも若い大臣がルールを変えようとしている」と、同紙は興奮気味に報じている。
この、フランスで最古の歴史を誇る新聞によれば、小泉進次郎の声明は、「妊娠に関する話題が日本ではタブーであり、日本企業内では男性優位論調がお決まりであることを知っているならば、衝撃的な宣言」である。
同紙は、我が国の会社内で、妊娠が重ならないよう順番を調整する暗黙の掟が女性に課されること、2015年の国政調査で、妊娠中の有職女性の半分がいわゆる「マタハラ」を受けた経験をもち、そのうちの20%が妊娠の理由で退職せざるを得なかったこと、法律上は母親も父親も育児休暇が認められながらも、男性の家事従事にたいする慣習的な偏見のせいで、わずか6%の父親しか育児休暇を取得しないということ、等々の惨憺たる現状を論じつつ、妊娠をめぐる理不尽な風潮にあらがう小泉進次郎の決意と行動を高く評価している。
「ル・フィガロ」紙の小泉進次郎に対する賞賛は、フランス社会の父親育児休暇という制度にたいする姿勢をみればよく理解できる。小泉進次郎が育児休暇を取得した当時、フランスでは父親は出産時に11日間の父親休暇にくわえ、3日間の「法定休暇」つまり義務づけられた休暇を取得することができた。小泉進次郎の14日間の休暇申請も、フランスのこの制度にならっているのだろう。
家族は大切なのだ
それだけではない。2020年9月23日、フランスのマクロン大統領は、出産時の父親の休暇日数を、2021年7月から25日間とし、さらに3日間の法定休暇を加えた最長28日間の職務免除を申請できるようにすると発表した。そして現在は、そのように改正された法律が施行されている。
フランス人にとってもっとも大切なものは「家族」であるといわれる(ちなみに、2番目に大切なのは、「ヴァカンス」である)。フランスがここまで父親育児休暇に熱心である理由もうなずける。家族を思い、当時のフランスの制度を意識して[連続ではないにせよ]きっちり14日間∴邇凾ノ専念すると宣言した小泉進次郎が、フランス人たちに圧倒的な好感度をもって支持されることは疑いない。
原発大国フランスでは、原発処理水放出は必須
2023年9月14日、フランス外務省は、次のような声明を発表した。
「福島第一原発の原子炉に由来する処理水の海洋投棄 (le rejet en mer des eaux traitées)に関して、この数ヶ月にわたって営まれた日本との継続的な対話に、フランスは敬意を評する」
フランス外務省は日本を二つの点において評価する。第一に、「処理水の海洋投棄の作業が、核の安全性と放射線防護の最高基準をじゅうぶんに尊重していることを確認するために日本が払った努力」。フランス外務省は、「海洋投棄は、人と環境に対して無視できるほどの放射能の影響しかもたない」と結論づけてさえいる。第二に、原子力エネルギー国際委員会(AIEA)との協力作業で日本のチームが示した透明性」。つまり、フランスは、「IAEAおよび周辺国との協力を推進するうえで透明性を保ったアプローチを追求する」日本の姿勢に対して賛辞を送っているのである。
処理水をめぐる画策と対応に関して、フランス外務省がここまで日本を熱狂的にホメ殺しているのはゆえなきことではない。
フランスは原発大国である。電力のおよそ70%を原子力に依存している。福島第一原子力発電所の2011年の事故は、当時のオランド大統領に、原子力発電に対する依存度を引き下げる決断を強いた。その方針を、現マクロン大統領も当初は継承していた。しかし、マクロンは、エネルギーの脱炭素化と安定供給の観点から、原子力発電の再生に努めるべきだとして、2022年、政策の転換を宣言したのである。
2019年12月、欧州委員会は「欧州グリンディール」(EUGreenDeal)という成長戦略を発表した。その目的のひとつが、「2050年までに気候中立[=温暖化ガスの排出量実質ゼロ]を実現する」ということである。さらに2022年2月2日には、同委員会は、「気候委任法(Complementary Climate Delegated Act)が、EUタクソノミー[=持続可能性に貢献する経済活動への分類]がカバーする経済活動のリストに、厳密な条件のもとで、原子力エネルギーに関する活動を加える」ことを決定する。
サーフィンを楽しむ様子
マクロンの政策転換は、これを背景にしているのだろう。同法は、2023年1月1日をもって適用が開始された。
さらにこうした事情のもとで、2023年5月、西村康稔経済産業大臣とアニエス・パニエ=リュナシェ仏エネルギー移行大臣の会談が実現し、そのなかで両者は日本とフランスの協力関係をさらに深めるための共同声明に署名している。共同声明の項目の一つが、「もっとも高い水準の安全性をともなう、福島第一原子力発電所の廃炉」へ向けた技術協力関係の構築である。というのも、「事故から引き出された分析と教訓、そして廃炉に結びついた努力が、両国における核エネルギーの安全な使用を改善することになる」からだそうだ。
原発大国フランスにとって、核廃棄物の処理、老朽化した原発の廃炉のための技術開発は深刻な問題である。このとき、福島第一原発の事故処理をめぐって蓄積される技術的ノウハウとその適用の結果は、「欧州グリンディール」戦略のもとでビジネスチャンスの創出を目論むフランスにとっては、貴重な情報にちがいない。処理水の海洋放出に対してフランスが手放しの支持を表明するのには、このような背景があるのである。
9月3日、自民党の小泉進次郎元環境相が福島県を訪れ、地元の子どもたちとともにサーフィンを楽しんだことがメディアで話題になった。もしかすると、フランスでもこのアピールは好意的に受け止められたことだろうと思いフランス在住の知人に聞いてみたが、「そんなことは話題にすらならなかった」という。
フランスでは、小泉進次郎に追い風が吹いている。

●岸田政権を揺るがせるか…「派閥とカネ」の醜聞 11/21
内閣支持率の低下や政務3役の「辞任ドミノ」でぐらつく岸田政権。これに加えて一つの告発状が永田町をざわつかせている。
東京地検が自民党5派閥を事情聴取
東京地検に告発状を提出したのは上脇博之神戸学院大学教授。
「自民党5派閥の政治団体が、政治資金パーティー収入を過少記載した」とし、各団体の会計責任者らを政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)で刑事告発した。
告発状によると、2018年〜21年分の政治資金収支報告書に、安倍派1900万円、二階派900万円、茂木派600万、麻生派400万円、岸田派200万円の計4000万円分が記載されていなかった。
告発を受け、東京地検特捜部は各派閥の関係者などから事情聴取している。
同法違反の「不記載・虚偽記入」の発覚自体は珍しくない。多くは「事務的なうっかりミス」として事後の修正・訂正で済まされてきた。
しかし、今回の場合は、「不記載が継続的に行われ、かつ多額で、単純な記載ミスとの言い訳は通じない」(自民党関係者)という。
最大派閥・橋本派の日歯連ヤミ献金事件
派閥とカネを巡っては、日本歯科医師連盟(日歯連)によるヤミ献金事件(2004年)を思い起こす人がいるだろう。
都内の料理屋で、日歯連側から橋本竜太郎元首相に小切手1億円が手渡された。橋本派は収支報告書にこれを記載せず、裏金処理した。政治資金規正法違反で会計責任者が逮捕、会長代理だった村岡兼造・元官房長官が起訴された(橋本氏は嫌疑不十分で不起訴処分)。
かつて私は政治記者として自民党最大派閥の橋本派を担当し、ヤミ献金事件の際は、読売ウイークリー誌の記者として取材した。逮捕された金庫番(会計責任者)はよく知る人物だっただけにつらい取材だった。
派閥の中堅議員は当時、こう証言した。
「事件の背景には、旧田中派以来のズサンな会計慣行があります。派閥の財布と派閥を仕切る幹部の財布がごっちゃになり、会合費や親睦ゴルフの費用、選挙対策費などが個人的なものか、派閥のものか区別がつかず出ていったのではないか」
収支資金報告書に記載されず支出された金が、会計上は毎年の「繰越金」として計上された。その粉飾決算の「穴埋めとして1億円が使われた」と、この中堅議員は説明した。
事件では橋本派の大金庫の存在も注目された。会長室わきの小部屋に置かれ、開け閉めのカギは逮捕された会計責任者が管理していた。実物を一度見せてもらったことがある。黒光りして大人一人が入れる大きさだったと記憶する。「派閥とカネ」を象徴する存在だった。
パーティー収入の不記載4000万円は「氷山の一角」
今回の過少記載も各派閥に「いいかげんな会計慣行」がまかり通っていた結果なのではないか。日歯連事件の場合は橋本派だけの話だったが、今回は5派閥が対象である。告発内容が事実であれば、各派閥が横並びでやっていたことになる。政治資金パーティーが裏金づくりの温床になっていたのではないか。 ・・・
●信頼回復へ「結果出す姿勢持ち続ける」  衆院予算委で本格論戦スタート 11/21
政府の経済対策の裏付けとなる令和5年度補正予算案を審議する衆院予算委員会の基本的質疑が21日午前、始まった。経済対策の柱である所得税・住民税の定額減税、大阪・関西万博の会場建設費問題、政権の不祥事などを巡る本格的な論戦がスタートした。岸田文雄首相は副大臣・政務官3氏の相次ぐ辞任について「任命責任者として重く受け止めている」と述べた。
報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率は過去最低に落ち込んでいる。自民党の若宮健嗣氏に「傷ついた国民からの信頼をどのように回復するか」と問われた首相は、物価高騰対策を挙げ「先送りできない課題について臆することなくしっかり判断し、結果を出していく姿勢をこれからも持ち続け、努力していくことを通じて国民の信頼回復に努めていく」と強調した。
また、賃上げに関し「来年、再来年と続けていかなければいけない」と意欲を示した。
●片山さつき氏が岸田首相に認識問う「心は女」事件 女性の安心・安全? 11/21
三重県桑名市の温泉施設で「心は女」と主張する男が女性風呂に侵入した事件を受け、自民党の片山さつき元地方創生相が20日の参院本会議代表質問で、岸田文雄首相に見解をただした。さまざまな問題・疑問が指摘されながら、LGBT理解増進法の法制化を急いだとされる岸田政権や、積極推進派の責任ある対応が求められそうだ。
「(LGBT法によって)全国の女性や、女児を持つ親から、『本人の性自認のみで(女性専用スペースに)入れるようになる危険性があるのでは』という非常に強い不安の声が押し寄せている」
片山氏は「心は女」事件を示し、強い危機感を岸田首相に投げかけた。
さらに、LGBT法の成立や、「性転換手術なしで戸籍上の性別を変更できる」とした最高裁判断を引き合いに、「国民は『(今回の事件と同じケースで)今後も逮捕できるのか? 注意した側が差別だと訴えられないか?』と心配している」と強調した。
これに対し、岸田首相は「女性の安心と安全を守ることは重要だ。性的マイノリティーもマジョリティーも含め、生き生きとした人生を享受できる社会の実現に取り組む」などと答弁した。
片山氏は同法施行後、自民党有志による「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」を立ち上げ、「女性専用スペース」の安全確保などを訴えている。この日も「全国6400万人の女性の安心と安全、究極の生存権を1ミリたりとも危うくすることないように」と訴え、女性専用スペースの安全確保を担保する議員立法などを提言した。
ところが、議場の一部から「人権侵害だ」「やめろ!」などと激しいヤジが飛んだ。まさか、女性の安心・安全に反対するのか?
片山氏は代表質問後、「(浴場などの)事業者からも不安、苦情、営業権への侵害という声があがっている。現状や国民の不安をしっかりと把握し、それを取り除く対応策が早急に必要だ」と語った。
●内閣支持率25%…自民党政権復帰後11年間で最低 人物も政策も信頼されず 11/21
朝日新聞社は18、19日に全国世論調査を実施した。岸田文雄内閣の支持率は25%(前回10月調査は29%)に低下。不支持率は65%(同60%)に上昇した。
政府が経済対策に盛り込んだ減税と現金給付は「評価しない」が68%で、「評価する」の28%を大きく上回った。
その減税と現金給付を打ち出した首相が考えたのは「国民の生活」と答えた人はたったの19%。対して「政権の人気取り」は76%に達した。
支持率は2012年12月に自民党が政権に復帰して以降の11年間で、菅義偉内閣の21年8月の28%を下回り、最低。不支持率も、最高だった前回を更新した。支持率が25%以下になるのは、民主党の野田佳彦内閣時代の最後の調査となった12年12月上旬の21%以来だ。
仕事ぶりから首相を「信頼できる」と答えた人は26%(同30%)にとどまり、「信頼できない」は67%(同62%)にのぼった。政務三役3人の辞任について、任命した首相の「責任は大きい」は61%で、「それほどでもない」は35%だった。
人物も政策も信頼されない岸田首相。毎日、読売に続き支持率ガタ落ちも当然だろう。
●岸田内閣支持率の低迷「非常に危機感」 自民・森山氏 11/21
自民党の森山裕総務会長は21日の記者会見で、報道各社の11月の世論調査で岸田文雄内閣の支持率が低迷していることに関し「非常に危機感をもって受け止めている」と述べた。各社の支持率は20%台に下がり、2021年10月の政権発足以降で最低水準となった。
森山氏は「今は党をあげて首相をしっかり支え、信頼回復に取り組むことが大事だ」と強調した。「やるべき政策を一つ一つ前に進め、危機感と緊張感をもって事にあたっていく」と話した。
梶山弘志幹事長代行は同日の記者会見で内閣支持率の低迷を巡り「週末を利用して地元に帰り説明していくことが大変重要だ」と説明した。
党内で首相の政権運営への不満が高まっているとの見方に関し「善後策も含めてたまったものをしっかり良い議論の場で出していくことが重要だ」と語った。
●「解体後に転売」疑惑も浮上して...自衛隊「軍用車」がロシアと北朝鮮に流出 11/21
2022年11月、ウクライナのテレグラムサイト「NMTE」に投稿された1枚の写真。そこにはロシア軍が使用している軍事車両が写されていたのだが、その車両というのが、かつて日本の自衛隊が使用していた「高機動車」であるという疑惑が浮上して、国会でも取り上げられるなど大騒動となったことは記憶に新しい。
「今年3月の衆院外務委員会でも、自身も予備自衛官の経験がある国民民主党の議員がこの高機動車疑惑を指摘したのですが、車両を管理する防衛装備庁は『自衛隊で使われている高機動車に外観は似ているが確実な証拠がない』と、これを否定。その後も調査結果は明らかにされていません。ただ、以前から、自衛隊が廃棄した装備品などがタイやフィリピンなどを経由して海外に転売されているという噂はありました。仮にそれがウクライナを攻撃するロシア軍の軍事車両として使われているとしたら、大問題だと言わざるを得ません」(全国紙政治部記者)
高機動車とは、トヨタが製造する最大10人乗りの汎用4輪駆動車で、1990年代前半から普通科連隊を中心に配備が始まり、現在も陸上自衛隊に配備されている軍用車だ。
「高機動車本来の目的は、人員輸送やトレーラーの牽引ですが、荷台部分には各種ミサイル搭載も可能で、移動式発射台としても使用でき、レーダー装置も搭載しています。転売されたと言われている車両は、自衛隊で使用済みとなったものだと思われますが、使用済み車両の民間への払い下げは禁止されており、使用済み車両は再利用できないよう、原型を留めないまでに破砕、溶解させ、鉄くずとして処理するという厳しい規則があります。にもかかわらず、それが海外に出回っている可能性があるんです」(軍事ジャーナリスト)
陸自では、転売や再利用防止のため、2018年と2022年に関連規則を改正している。しかし、高機動車などは、戦闘に特化した戦車などに比べ、解体処理の実態はそれほど厳しくはないとも言われている。
「むろん、解体については、陸自の定めた仕様書にある、解体・処分要領に従うよう義務付けられています。ですが、実際には書類さえ整っていれば問題なしとされる、という話も聞こえてきます。そのため、悪質な業者は、提出が義務付けられている破砕溶解後の写真を他車と使い回ししたり、いったんバラバラにしたパーツを輸出し、海外で新たに組み立て直して再利用するという話もあるほどです」(前出・ジャーナリスト)
数年前には陸自の「軽装甲機動車」に酷似した4輪装甲車が北朝鮮の軍事パレードで目撃され、話題になったこともある。
参議院決算委員会で質疑に立った浜田靖一防衛大臣は、「請負業者の破砕現場に防衛省の職員が立ち会うなど細部要領を検討している」と答弁したが、防衛省や防衛装備庁は、二重三重のチェックで海外流出を防止するべきだろう。  
●岸田首相、またもや現役世代を “生贄” に…子育て「支援金」という「税金」 11/21
岸田政権が少子化対策の財源として検討している「支援金」に対する批判が高まっている。
支援金は公的医療保険の保険料に上乗せして徴収され、国民1人あたり月500円の負担増となる見込み。支援金とはいうものの、実質的には税金で、増税となる。
さらに、この支援金について、低所得者の負担軽減措置を設ける方針だと、共同通信などが報じている。軽減措置を受けるのは約2600万人で、低所得の国民健康保険加入者約1400万人、後期高齢者医療対象の約1200万人としている。
実業家のひろゆき氏は11月21日、自身の「X」を更新。このことを報じた記事を引用し、
《自民党「年金は、全世帯で払いましょう。少子化対策支援金は、後期高齢者は払わなくていいです。」( ´_ゝ`) フーン》 と皮肉った。
日本維新の会・政調会長の音喜多駿衆院議員も、「X」に
《「低所得者」の多くは高齢者。全世代で負担を分かち合うと綺麗事を言いながら、結局は現役世代に負担を押し付けるいつものパターン。断固反対》(11月20日投稿) と、この案を強く批判している。
「こども家庭庁が11月9日に開いた有識者会議の会合で、支援金を保険料に上乗せする案が示されました。税金では風当たりが強いため、反発が薄く徴収しやすい支援金にしたというのが見え見えです。また、医療保険を医療以外の目的で使うことも問題視されています。
厚労省によると、2021年度の後期高齢者医療制度の支出は16兆6129億円で過去最高。このうち、現役世代の健康保険組合や国民健保からの支援金は6兆5266億円ですから、約4割を現役世代からの支援金で支えているんです。
いっぽうで、75歳以上の高齢者が支払っている保険料は1兆3893億円ですから、自分たちではわずか8%しか負担していない計算になります。そのうえで、子育て支援金も現役世代からはしっかり取り、高齢者は負担減となれば、不公平感が高まるのは当然です」(週刊誌記者)
「X」には、
《低所得者の多くは高齢者。結局は高齢者の負担減で現役世代の負担増。毎度毎度のパターン。何でこーなるの?》
《子育て支援金。応能負担って所得に応じて??ならたんまりお金をお持ちの高齢者も低所得に分類されちゃうわけだから、結局稼げる現役世代がまたもや生贄》
《低所得者の中には、退職した資産のある高齢者もたくさんいるよね。現役世代は税と社会保険料を身の丈に合わないほど負担してきてる人たちも多く、もう限界》
《少子化対策を一切やめて、その分を返した方が子供増えそう。》
など、批判的な声が渦巻いている。加藤鮎子こども政策担当相は、この支援金を「新しい分かち合い、連帯の仕組みだ」というが――。
●大阪関西万博の成功は「人が集まる、日本の魅力を世界に発信できたとき」 11/21
岸田総理は、2025年の大阪・関西万博は何をもって成功と言えるかと問われ、「未来を考えるための機会とか分断が進む世界において人が集まる機会とか、日本の魅力を世界に発信する機会とか、こういった目的を果たすことができたと感じられるときが成功したと評価されることになるんだと思っている」と語りました。
衆議院予算委員会で公明党の伊佐進一衆院議員の質問に答えました。
 11/22

 

●自民5派閥 政治資金問題 総理“速やかに説明を”幹事長に指示 11/22
自民党の派閥の政治資金を巡る問題で、岸田総理大臣は各派閥が速やかに説明するよう茂木幹事長に指示を出したと明らかにしました。
この問題が火種となって国会審議に影響が出ています。予算委員会は50分遅れで始まりました。
立憲民主党 野田元総理大臣「自民党の主要の派閥5つの派閥で同じ事が起こっていた。政治に対する信頼を取り戻すために党の総裁として、もっとリーダーシップを振るって、どぶさらいをしなければいけないと私は思うんです」
岸田総理大臣「国民の信頼という観点から、重大な危機感を持たなければならない」
また、立憲民主党の岡田幹事長が「減税は1年限りなのか」とただしたのに対し、岸田総理は「来年は減税で可処分所得を下支えし、再来年に持続的賃上げを実現する」として明言を避けました。
引き続き、野党は「減税措置」「政務三役の辞任ドミノ」「政治とカネ」の3点セットで迫る考えです。
ある立憲のベテランは「政権を追い込むなら今しかない」と意気込んでいます。
●小池百合子の名前まで浮上。岸田文雄の次に総理大臣の座に就く人物 11/22
マスコミ各社による世論調査でも支持率が軒並み過去最低を記録するなど、もはや打つ手なしの状況に陥ったと言っても過言ではない岸田政権。なぜ首相はここまで国民からの信頼を失ってしまったのでしょうか。米国在住作家の冷泉さんが、支持率低下につながった4つのポイントを指摘。さらに日本における「政界再編」の可能性を探るとともに、政党や政治家たちの具体的な動きを大胆予測しています。
予兆あり。政界再編で日本に生まれる2大政党のメンツ
まず、現在の日本の政局ですが、11月13日までに時事通信が実施した月次の世論調査によると、岸田内閣への支持は21.3%となり、内閣発足以来の最低を更新したようです。また自民党の支持率も下落しており19%になっています。合計でも40%しかなく、俗に言う「方程式」理論から言えば足して50を割ると危険水域なのだそうですから、極めて危険ということになります。
一般的に、議院内閣制の宿命としては不人気な内閣を担ぎ、更に政党支持率まで下がってしまうと首班指名の支持母体である自民党の議員団としては、個々の議員が「自分は次の選挙が危ない」という危機感を抱いてしまうことになります。その場合に、衆議院の小選挙区から選出された議員などは、当に「選挙に落ちてタダの人になる」という恐怖を実感してしまうことになります。比例の名簿順位が下位の議員の場合は、それこそ絶望的になります。
国政選挙が当面はなくても、支持率低下が問題になるのは、そうした「瀬戸際議員」の場合は、2年とか3年先のことでも恐怖のエネルギーは小さくないからです。こんな総理総裁を担いでいては、自分が落選してしまうという恐怖は、この種の政治家にとって決定的だからです。
では、どうして支持率が急落しているのかというと、具体的には4つぐらいの原因があるようです。
1つは、とにかく定額減税が不評だということです。順序として「異次元の子育て対策」があり、その財源は「増税」だと明らかになると世論が猛反発したので、「だったら減税」だけれども「恒久減税ではなく定額」という流れでした。その場当たり性が余りにも露骨であったことが、世論の怒りを買ったわけです。
2つ目は、副大臣、政務官レベルの辞任が3名続いたことです。原因は全て個別で、不倫、公選法違反、脱税ということで、お粗末な内容です。ただ、総裁選に勝ち、組閣して総理の座にとどまるには他派閥の協力は欠かせません。その際に決め手になるのは人事です。当選回数を重ねながら、要職に就いたことのない人物「派閥に押し込まれる」という意味では、総理には100%の任命権はないわけで、そんな中でしっかり「身体検査」を行うノウハウが欠けていたとなると、周囲が騒がしくなるのは抑えられないということになります。
3つ目は、中東情勢です。ここへ来て世論の風向きが変化しているので、また少し違うトーンになってきたのですが、10月7日のハマスによる奇襲テロ攻撃の直後は、若い世代を中心に岸田総理の態度に違和感が出たようです。つまり、ウクライナに対しては被害者の正義を認めて即座に100%の支持をしたのに、テロ被害者のイスラエルに対しては曖昧な態度を取ったことがイメージ低下に繋がったようです。
これは、日本がG7の中では特殊な「中東における中立外交」を行ってきたことが、しっかり若い世代に伝わっていなかったのが原因です。ですが、総理として、この機会にその「国是」を自分の言葉で説明する努力は全く足りませんでした。
何をやっているのか、何をやりたいのかが分からない岸田政権
4つ目は、経済政策です。円安がジリジリと進行することで、原油、そして輸送費が上昇し、更に穀物など食料品が上がっています。そして建設資材なども高くなり、全国的に影響が出ています。安倍政権時代には意図的に実施していた円安ですが、現在は全く違う様相になっています。エネルギー高と円安がダブルで効いていること、ドル円水準が120円前後ではなく、150円という弱さを見せていることを考えると、安倍=黒田時代とは構造的な違いが出てきています。
では、岸田氏は現状をどう認識して、どんな政策を打って行くのか、これがサッパリ見えません。デジタルの関連も総理のメッセージ発信は弱く、担当大臣に丸投げですし、ライドシェアの問題も総理としては「知らぬ存ぜぬ」に見えます。
4点ほど「現象面」からの指摘をしましたが、全体的に言えるのは、政策の方向性が全体的に見えないことで、内閣の存在感が希薄になっているということです。過去の政権と比較すると、例えば小泉政権は(徹底的に骨抜きになっていたにしても)構造改革を前向きに売り込むという「姿勢」がありました。安倍政権(第二次)は保守派の支持を取り付けることで、政治も経済も外交も中道政策で課題を解決するという手品を続けた政権でした。例えば前世紀になりますが、小渕政権などは、結果的に捨て金になったにせよ、バブル崩壊で傷んだ経済に対して公共投資のバラマキを必死に続けた政権と言えます。
そうした過去の政権と比較すると、岸田政権というのは何をやっているのか、何をやりたいのかが分からないわけです。安倍政権より中道寄りかと思うと、いきなり防衛費を倍増するとか、ウクライナに100%のコミットをしてしまうとか、その一方で、広島サミットでは核廃絶に情熱を込めるなどという発言が出るわけです。では、核禁条約と核不拡散の二重体制というウルトラCをやるかというと、この点ではアメリカ追随の現状維持にとどまるわけです。
その結果が最初に述べたような「子育て政策の財源は増税で、それを批判されたら定額減税」という世論の「尾を踏む」ような迷走になっているわけです。つまり、一貫性、左右のマトリックスにおける立ち位置というものがハッキリしないと言いますか、伝わって来ないのです。
国会答弁について言えば、小泉、安倍のように「俺様の本音はもっと右だけど、官僚の建前と憲法の建前があるので、ここは官僚の作文をイヤイヤ読んでおこう」というような態度は、勿論ですが、決してお行儀が良いとは言えません。気持ちが入っていないので棒読みを批判されたり、見苦しい局面が多かったのは事実です。
一方で、岸田氏の国会答弁を聞いていると、塾世代のガリ勉タイプですからさすがに読み間違えとかは少ないのです。ですが、とにかく彼の本音はどこで、そこからどのぐらいズレた建前を喋っているのか、あるいは理想論はあそこだが今喋っているのは現実だとかという「政治の位置感覚」があるのかないのか、分からなくなるのです。もっと言えば思想的、政策的な「ホンネ」そのものが欠落しているか、もしくは極端に現実離れした社会観を持っているのかもしれません。
多分、本当に中長期ビジョンはないし、左右のプロッティングと言いますか、あるいは改革か守旧か、短期か長期かといった判断の感覚というのが、もしかしたら決定的に欠けているのかもしれないのです。それでいて、どうやら舞台裏での暗闘に関しては敵味方を峻別してネチッこくやっているフシもありますが、世論にはそれも良くも悪くも伝わっていないようです。
そうしたことの全体が、どうも「この総理では不安だ」ということになっているのではないかと思うのです。
対立軸が良くも悪くもハッキリしているアメリカ
こういう場合は、やはり政策論議に戻るのが一番です。確かに、岸田政権への不安は属人的であり、具体的にはコミュ力を中心とした統治スキルの問題だと思います。ですが、例えば岸田がダメなら、茂木はどうか、河野は危ないので菅の復帰でどうか、あるいは選挙対策で上川を担げなどという中で、一々それぞれのスキルを比較しようにも、徹底的に各人のスキルを追及する場というのがそもそもありません。
とにかく、日本の総理選出のシステムは、総理総裁になる直前までの権力闘争は密室政治であり、就任した途端に「国民との直接対話」という未経験のガチンコ演技が求められるというギャンブル性の高い制度になっています。これを、すぐに変えることができないのであれば、政権が弱まった際にはやはり政策論議という基本中の基本に戻るのが重要と思うのです。
この政策の対立軸ということでは、日本とは反対に「良くも悪くもハッキリしている」のが、アメリカの場合です。単純化をするのであれば、大きく分けてアメリカの政界には4つのグループがあると考えられます。
   民主党主流派=オバマ、ヒラリー、バイデンなど
インフラ整備に積極的、環境政策は受け身ながら積極的、格差問題には受け身、移民は世論を気にしつつもまあ寛容、ウクライナ全面支持で援助継続、NATOと国連+西側同盟の結束を特に重視、イスラエルを積極的に支持、グローバル企業にはフレンドリー、医療保険は現在のオバマケア(民間保険+政府補助)、対中政策は政冷経熱、保護貿易と自由貿易の中間、LGBTQや中絶問題では支持で結束
   民主党左派=サンダース、AOCなど
インフラは環境中心、環境は政策の柱、格差是正に極めて積極的、移民の人権にも積極的、ウクライナ支持でNATOと国連+西側同盟の結束は尊重するがホンネは孤立主義+絶対反戦、パレスチナ支持に近い、グローバル企業にはシャープに敵対、医療保険は公営化、対中政策には是々非々で緊張拡大には興味ない、保護貿易に近い、LGBTQや中絶の権利では主流派以上に熱心
   共和党主流派=ヘイリー、クリスティ、マッカーシーなど
インフラ整備には反対、格差是正にも興味なし、基本は小さな政府論と自己責任、移民は労働力として寛容な面もあるが保守世論に乗って一応厳格、ウクライナ支持で徹底抗戦、NATOと国連+西側同盟の結束を特に重視、イスラエルを徹底支持、グローバル企業にはフレンドリー、医療保険は民営、対中政策は政冷経熱、自由貿易、LGBTQや中絶問題では保守派に迎合するが関心薄い
   共和党保守派=トランプ、ジョーダンなど
インフラ整備には絶対反対(トランプは不徹底だが)、格差是正に全く興味なし、むしろ富裕層への減税を推進、国家の主流派を潰すのが目的で小さな政府論や自己責任にも実は余り興味がない、移民はパフォーマンス的に排斥して民意を扇動、ウクライナ支持反対、NATOと国連+西側同盟の結束を破壊しても米国の徹底的な孤立を実現したい、イスラエルを徹底支持するがトラブルには関与したくないしホンネにはユダヤ差別の感情も内包、グローバル企業は庶民の劣等感を喚起するので徹底的に叩く、医療保険改革は民営(ジョーダンなど)と言いつつトランプは高齢票を意識してバラマキ的な側面も、対中政策は表面強硬で内実は行き当たりばったり、トランプの場合は徹底した保護貿易、LGBTQや中絶問題では徹底的にリベラル叩き(但し東部のトランプは賛否に消極的)
とまあ、何ともメチャクチャな違いがあります。現在の政局は、民主党も共和党も内部分裂の動きがあり、同時に世代交代のマグマも燃えているわけですが、その動きの方向性については、この4つのグループの力関係で見えてくることになります。また世代別の支持なども、この4つのグループの政策のマトリックスの中で可視化できるわけです。
見事なほどに政策のマトリックスが見えない日本
こうした状況と比較しますと、日本の場合は「見事なほどに政策のマトリックスが見えない」ことになっています。また、政策の違いがあっても可視化できない形で政策が動いてゆくという面があるようです。
例えばですが、安倍晋三氏亡き後の「保守派」というのが、自民党を割る動きにもなるかもしれないとか、いやいや清和会などを通じて影響力を維持するとか、派閥横断で勉強会がどうとか注目されているわけです。では、彼らは具体的な憲法改正案を持っているのかというと、国軍設置か9条加憲なのかハッキリしません。例えば東シナ海政策でも、大局的にどんな抑止プランがあるのか不明です。
個別の問題、例えば東シナ海のブイ問題とか、トランスジェンダーの問題など個々の問題が出てくると右から盛大に色々と繰り出してくるわけですが、それならヤフコメと変わりません。一貫した政策がないとか、中長期展望がないということでは、岸田政権とは変わらないのです。
左派も同様です。共産にしても、立憲にしても、例えば処理水には反対する、辺野古には反対する、などまるでデパ地下の「プラ食器の試食」のようなもので、味見程度の話で、食べたらポイというレベルであるわけです。例えば脱原発の経済成長というシナリオ、沖縄の非武装化による台湾海峡の安定と尖閣の保全といったシナリオを彼らが持っているのかというと、全く無いわけです。
例えばですが、直近の問題、それも重要な問題について考えてみても、円安問題、中東情勢、ライドシェア、AIなどについて、野党が「具体的な政策」を持っているのかというと全く怪しいのです。共産党などはライドシェアに反対ですが、「バス、タクシー輸送力の維持」についてシナリオを持っているわけではありません。とにかく味が漠然と和風とか中華ということを「試食」する程度の政治と言えます。
似たような問題としては、維新とか都民ファのような「都市型の小さな政府論」政党の問題があります。この2つのグループ(プラス旧みんなの党)というのは、要するに都市の納税者の反乱に過ぎないわけで、納税額のリターンがないことへの怒りが原動力になっています。
ただ、この2つのグループには共通の根本的な欠陥があります。
1つは「小さな政府というコストカット戦略」はあっても「民間活力による成長戦略」はないということです。どちらも「ある」と強弁していますが、実際はありません。そして維新は現時点では万博企画の行き詰まりという問題を抱えています。また都民ファはコロナ禍におけるバラマキ政策で一気に都財政を悪化させて将来の高齢単身世帯群を支える資金を喪失したという大罪を抱えています。つまり偉そうに自民を批判していたくせに、経済という点で大失点を抱えているのです。
2つ目は、これは党派の成り立ちからくる欠陥ですが、地方政策がないことです。現在の日本の各地方は、道州制による県庁リストラ効果などでは埋めることのできないマイナスを背負いつつあります。これは観光収入などでもチャラにはできません。人口の分散をどう集約するのか、過剰な交通インフラを持続可能な姿に「まとめ」つつ交通や流通、あるいや防災や除雪を支える人材をどう確保するという「サバイバルの段階」に入っています。
維新や都民ファといった都市政党はあくまで地方を無視するのか、あるいは積極的に税金の地方還流を止めて地方を追い詰めて改革へと向かわせるのか、それとも全国政党を目指して、突然地方にバラマキをするのか、良くわからないのです。
つまり、2つ目の地方行政に解答をもっていないが故に都市政党にとどまり、その一方で、リストラ政党だけではネガティブなので、大阪では万博、東京ではコロナ禍のバラマキをやって、どっちも「統治能力の欠陥」をさらけ出しているわけです。ちなみに、国民民主というのは、表面的には民主党分裂の際の受け皿と、希望の党の失敗の受け皿に見えますが、本質は旧同盟系の票の受け皿という特殊な政党です。この際、民社党とでも名乗ったほうが正直かもしれません。
維新と都民ファが手を組む?「政界再編」の可能性はあるか
というわけで、各政党、各派閥には傑出した政策というものはないし、有権者が特定の政策を実行してもらうと思っても、政策的な選択が難しい状況です。例えば、円安をある程度是正してもらいたいが、失敗して円高が暴走するのは困るというような「票」、あるいは中国を経済のパートナーとして良好な関係を続けたいが、自由と民主主義とか台湾海峡の安定ということは維持してもらいたいというような「票」は、一体どこへ入れたら良いのか分からないということになります。
では、イデオロギー、政策と政党や会派、あるいは派閥というものが合致していない、あるいは合致していても余計なものがついてくる場合に、今度は政党や政治家の統治能力を考えて選択をするということになります。
実はこの「政策より統治能力を優先して選択する」という有権者の行動は、21世紀に入ってからの政権選択ではこちらがメインであったのかもしれません。第一次安倍政権は格差問題への対処で政権が崩壊、麻生太郎政権も、野田佳彦政権も同じことです。菅義偉政権も「五輪を強行」したことで崩壊したのではなく、有権者は「五輪を止めることのできる統治能力がない」という判断をしたように見受けられます。
今回、岸田文雄政権が非常に厳しい状況に追い詰められているのも、このパターンです。例えば、先週サンフランシスコに出張した岸田総理は、バイデン大統領から「来年前半に国賓待遇で米国へ」という招待を受けました。これは、上川外相あたりが、根回ししたのかもしれませんが、バイデンの招待があるからということで、倒閣運動に対抗しようというのはミエミエです。もっとも、半年先などという遠い将来のことなどは全く「誰にも分からない」のであって、バイデン政権がどうなっているかも分かりません。
いずれにしても、岸田氏の不人気により年内解散というのはほとんど消えたようです。では、今後の政局はどう動いていくのか、以降は1つの仮説です。「こういうこともある」という仮のストーリーで、どの程度の可能性があるのかは私には全く分かりません。ですが、日米の様々な政争の様相を見てきた私としては「1つの可能性」を感じているのは事実です。それは「政界再編」の可能性です。
まず、維新と都民ファという2つの都市政党は、これまでは微妙にと言いますか、かなり距離を置いて動いていました。維新はアンチ東京という感情論が支えているというのが一番の理由ですが、維新が大阪の自民党を敵視しており国政レベルでもケンカしていますが、東京では国政では都民ファは弱いので自民党とは一定の関係があります。もっと言えば、小池と橋下という2人のキャラは重ならないという問題があります。
ですから、両者が手を組むという可能性は低かったのです。ですが、ここへ来て両者が接近するという環境が少しですが整ってきたようです。
大阪の維新は万博、東京の都民ファでは財政悪化という問題があり、どちらも看板の掛け替えで印象を刷新したい動機がある。
小池の場合は、来年7月に知事の改選を控えている。国政に勝負をかけるのであれば、その前。71歳の小池には完全にラストチャンス。
自民党の中で特に「保守派」という部分が浮いており、これを外から引っこ抜く可能性は出てきた。
小池、吉村、高市などは少なくともパブリックなコミュ力では場数を踏んでおり、岸田、菅のようなダメダメよりは格段に安定感がある。
急浮上した上川待望論は、実は小池待望論のダミーかもしれない。言い方を変えれば、上川の待望論が出てくるようだと、小池が黙っている訳はないのであって人生最後の勝負に出てくるかも。
つまり、地方向けには保守イデオロギーを掲げつつ、大都市の「小さな政府論」と「アンチ自民党」の感情論を糾合して全国レベルの集票というスキームは整理するかもしれません。そこに、イデオロギー運動としての「日本保守党」なども流れ込めば、政権の受け皿としては成立します。これをグループAとしましょう。
ハト派+経済成長という「食い合わせの良い」グループB
問題は、接着剤になり影の仕掛け人になるような人物がいそうもないことです。小池にはしっかりした参謀はいた試しがないし、維新の人材難もダメダメです。高市自身にその覚悟はないだろうし、恐らく高市も参謀がなく、そのくせ小池を立てるような知恵も薄そうです。選挙に勝つには国民民主の旧同盟票とか、保守系の宗教票なども必要ですが、そうした部分を「ひっかき集めてくる」ような泥臭い行動力がある人物はいそうにありません。
しかしながら、仮にこうした動きがあるとしたら、その反力が生じます。例えばですが、自民党の「茂木派+石破+河野+菅」が結託して、立憲を取り込み、更には公明を取り込み、場合によっては国民民主を取り込むということはあると思います。そうすると、一応、ハト派+経済成長という「食い合わせの良い」セットになるわけです。
個人的には、原発が動かなくなると経済が破滅するのと、立憲や公明が入ると改革が潰されるので良い感じはしません。ですが、保守イデオロギーと改革は両立しないのは安倍政権ではよくわかったので、違う組み合わせで試みてもらいたい気はします。超ウルトラCとしては、このグループ(仮にグループBとしましょう)が小池を担ぐというような寝技ができれば、強力ではあります。
ちなみに、周辺の環境としては、
団塊の保守派がどんどん隠居している中では、日本の政治風土もやや左にシフトしているかもしれず、このグループBが成立する条件はある。
若者票は保守化しているのではなく、改革を旗印にすればこちらに来るかも。
池田大作が亡くなったので、公明は動きやすくなったかも。
このぐらいやらないと、立憲は党勢挽回できない。
菅とか、枝野、岡田とか、あるいは茂木とか、老獪な寝業師はこっちのグループの方がいそうな感じ。
更に勝手なエンタメ話にするのであれば、
   グループA
ボス高市(または小池)、サブ吉村、これに自民保守派、日本保守党、維新、都民ファが加わる。内容は保守+小さな政府論。
   グループB
ボス河野+サブ玉木(但し小池を担ぐ可能性あり)、これに平成研、石破G、菅G、二階派、立憲、公明、国民民主(場合によっては更に都民ファ)が加わる。内容は中道+構造改革+先端投資路線。
という2大政党の対立構図という「デッサン」を描くことはできます。ちなみに、こうしたダイナミックな動きとなれば、岸田派(宏池会)と清和会(旧安倍派)は解体してABの草刈り場になるかもしれません。勿論、このストーリー、現時点では「エンタメ芸」の域を出ないかもしれません。ですが、予兆はあるのです。予兆と言えば、まず、唐突な上川待望論が、小池とか高市への起爆剤になる可能性はあると思います。
加えて、非常に小さな動きですが、直近の2つの事件というのが、個人的には引っかかります。まず、副大臣、政務官のスキャンダル問題ですが、神田憲次議員の場合は、旧統一との関係を切れないし公表もできない地雷議員なのでリスクを切った格好というようにも見えます。恐らく真相はその近辺でしょう。
一方で、山田太郎議員柿沢未途議員の場合は「旧みんなの党」というのが気になります。仮の話として、水面下で政界再編などの「自民党離脱」の動きをしていたのなら、岸田周辺が「先に泥を塗って切った」のかもしれません。
もう1つの政界再編への動きの「初期微動」
もう一つ、妙な動きがあります。18日(土)に明るみに出たのですが、自民党の五派閥について、傘下の政治団体が、政治資金パーティーの収入およそ4,000万円分を収支報告書に記載していなかったとして告発されているというのですが、この問題で、東京地検特捜部が、各派閥の担当者から任意で事情を聴いているという報道があったのです。
その五派閥というのは清和会(旧安倍派、1,900万円)、志帥会(二階派、900万円)、平成研(茂木派、600万円)、志公会(麻生派、400万円)、宏池会(岸田派、200万円)です。告発というのは、要するにタレコミがあったということです。岸田派が少なく、岸田に近い順に少なく、遠い順に多くなっているので、タレコミは岸田周辺からという可能性もありますが、どう考えても不自然です。
特捜が動いていることも含めて、これは党外からの力学が動いているのかもしれません、としたら政界再編への動きの「初期微動」である可能性を感じます。もしかしたら、若狭(希望の党失敗の際に、小池と組んだ特捜OBの若狭勝氏)人脈などが動いているのかもしれません。
それはともかく、現在の日本において政治に閉塞感があるのは、岸田総理1人の責任ではないと思います。明らかに選択の必要な問題があるのに、選択可能なセットで選択肢が示されていません。そこを直してゆくということは、理想論でもなんでもなく、民主政治を機能させるためには普通の動きだと思います。
そう考えると、政界再編をやって必要な選択肢を用意するというのは、国民、すなわち有権者に対する政治の側の義務であるようにも思うのです。
●野田元首相「岸田首相から危機感を感じられない、うっかりミスか」と追及 11/22
国会は衆議院予算委員会で22日、立憲民主党の野田元首相が、岸田首相に対し自民党派閥の政治団体が政治資金収支報告書に、合わせて約4000万円の収支未記載があったことを追及した。
野田元首相は、自民党の現状について「一強の奢りと歪みがでている」と指摘した上で、岸田首相に対し「政治と金の不祥事が多発してきたことに危機感を持つべきだ」「岸田首相からは危機感が感じられない」と追及した。
さらに「岸田総理は適切に対応するという言葉を使うが『各政治団体に任せる』と、適切な対応との内容は、ミスをしたら修正すればいい、うっかりミスが続いているかのような言い方だ」と「政治とカネ」の問題に対する岸田首相の対応に問題があると指摘し、「政治に対する信頼を取り戻すためにリーダーシップを奮ってドブさらいをしなければいけない」として自民党総裁として責任ある姿勢を求めた。
岸田首相は、これに先立ち、予算委員会冒頭で「具体的な訂正内容について各政治団体において適切に説明を、できるだけ速やかに行うよう幹事長を通じて指示した」と発言して、幹事長を通じて、自民党に対し初めて具体的な説明を行うように指示した。
岸田首相は、野田氏への質問に対しては「重大な危機感を持たなければならないというのは仰るとおりだ」と指摘を受け入れた。さらに「党の総裁として幹事長に指示を出し、説明責任、適切な説明がおこなわれることを徹底したい」と重ねて強調した。
ただし、収支報告書への未記載があった派閥の政治団体について「政府とも自民党とも別の政治団体だ」と述べた際には、野党から「おかしい、派閥は自民党とは違うのか?理解されない」と指摘する声が委員会室の野党委員から上がった。
●子どもが多いほど住宅ローンの金利引き下げ、国交省“少子化対策”は詭弁 11/22
国会で審議真っ最中の2023年度補正予算案。その中に国土交通省がひっそりと紛れ込ませたのが、子どもの数が多いほど住宅ローン金利を引き下げる新制度だ。しかし「少子化対策」と銘打たれたその中身は、子育て世帯に「お得」といえるようなものではなく——。
子ども1人につき年0.25%引き下げ
制度は住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」に新設される予定だ。
18歳未満の子ども1人につき、借り入れから当初5年間の金利を、年0.25%引き下げる。2人なら0.5%、3人なら0.75%と子どもの数が増えるほど下げ幅は広がり、最大で子ども4人で1%を引き下げる。
5人以上の場合は年0.25%の引き下げを、子どもの人数に応じて期間を延長して実施する。例えば子どもが5人いたら、借り入れ6〜10年目も年0.25%金利を引き下げる。
制度は法律婚の夫婦だけでなく、事実婚や同性パートナー、ひとり親も対象だ。
加えて夫婦などカップルのどちらかが40歳未満であれば、子どもがいなくとも年0.25%引き下げの対象になる。
住宅金融支援機構は同制度を「少子化対策」と説明しており、国交省は同制度のため2023年度の補正予算で13億1400万円を盛り込んだ。
なお、フラット35では省エネ性能の高い住宅などを対象に、条件によって固定金利を一定期間、一定程度引き下げる仕組みがもともとあった。今回の改定に合わせて、既存の制度で金利引下げの条件に該当していた場合の下げ幅を最大1%まで拡大する。
本当にトクする?むしろリスク
しかし、この施策を「子育て支援や少子化対策」と主張するのは「詭弁だ」と言うのが、LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所・副所長兼チーフアナリストの中山登志朗さんだ。
住宅ローンの変動金利はSBI新生銀行が業界最低水準で年0.29%、大手銀行で0.3%台もめずらしくは無い。一方で、固定金利であるフラット35の場合、返済期間21〜35年の金利は年1.96〜3.53%だ。
「住宅ローンの金利は変動より固定のほうがはるかに高いのに、子ども1人につき0.25%安くなるというだけの理由でフラット35を選ぶでしょうか? 子どもが欲しくなるでしょうか? そもそも金利引き下げも初めの5年間だけで、その後は上がってしまいます。たとえば子どもが3人いる場合は6年目以降は0.75%金利が上がることになるわけですが、変動金利でもこんな急激な利上げはありません。政権の支持率が低下する中で生活者目線の政策を打ち出したのでしょうが、お得でもなく、むしろリスクが高い、子育て世帯を騙すような施策になってしまっていることに疑問を覚えます。」(中山さん)
岸田政権の迷走する子育て政策を象徴するような今回の施策。住まいのサポートは必須だが、真に支援になっているのか? 再考が必要だろう。
●膨らむ国の基金 監視する仕組み欠かせぬ 11/22
複数年にわたる事業のため国が積み立てている基金が、膨張し続けている。
残高は2022年度末時点で計約16兆6千億円に上る。19年度末は約2兆4千億円だった。
新型コロナの対策や経済安全保障関連の事業で、政府が補正予算などを通じ大型の予算を投入し続けてきた結果だ。
各年度の必要額をあらかじめ見込むのが困難な場合などに、予算の単年度主義の例外として限定的に認められた手法である。ここまでの規模に膨らむと、予算編成で常態化した感すら漂う。
基金の活用には、中長期的な政策の予算を安定して確保できる利点がある一方、必要性が十分に吟味されず無駄な支出につながっているとの批判がある。
外部有識者が予算執行の無駄を点検する「行政事業レビュー」で今月、企業支援や農業強化の基金について、ずさんな運用の改善を求める指摘が相次いだ。200ほどある基金のうち約3割の基金が事業の終了時期を定めていなかったことなども問題視された。
こうした状況を踏まえ、河野太郎・行政改革担当相が全基金を点検する考えを表明した。使う見通しのない資金を国庫に返納させるなどの対応を取るという。
当然の対応だ。現状の点検にとどまらず、基金に対する政府の姿勢を振り返り、活用のあり方を考え直していく必要がある。
岸田文雄首相はこれまで、「単年度主義の弊害を是正し、国家課題に計画的に取り組む」として基金の積極活用を掲げてきた。いまはむしろ、基金を多用することの弊害に目を向けなくてはならない状況になっている。
基金は管理上の課題が多い。いったん積まれた後は単年度の予算と違って国会の監視が効きにくくなる。実際の運営は各省庁の外郭団体などに委ねられ、責任の所在が曖昧になるとの指摘もある。監視を行き渡らせる具体的な仕組みを検討しなければならない。
岸田政権は開会中の臨時国会に提出した23年度補正予算案で、各種の基金に投じる資金として計4兆3091億円を計上した。
半導体関連の支援に2兆円近くを盛ったほか、新設では宇宙分野の技術開発を支援する「宇宙戦略基金」に3千億円を投じる。
財政法は、補正予算の編成を「特に緊要となった経費の支出」などに限定している。大型対策をアピールして基金を膨らませる補正対応に緊急性があるのか。国会は精査しなくてはならない。
●「令和の若者=超ツライ」証拠の数字、1980年代若者との生活の差 11/22
岸田政権に対する若年層の支持率の低さが目立つなど、若年層と高齢者層における政治意識の乖離が激しくなっている。若年層は今の高齢者層が若かった時代と比較して、税金や社会保障の負担が増えており、こうした実情も影響していると考えられる。国民負担における世代間格差は実際、どの程度、大きいのだろうか。
若年層からの支持が著しく低い
このところ岸田政権の支持率低下が顕著となっているが、中でも若者からの支持が著しく低い。時事通信の10月調査によると、「70歳以上」では36.0%の支持があるのに対して、「18〜29歳」の支持率は10.3%だった。安倍政権や菅義偉政権では、若年層の支持率は高かったという現実を考えると、首相のイメージが大きく影響しているのは間違いない。若年層の経済的負担は年々増加しており、もともと支持率が低下しやすい土壌があった。ここに岸田氏のイメージが重なり低支持率になったと考えるのが自然だろう。
日本では高齢化の進展に伴い、有権者の比率が高齢者に偏っていることから、高齢者向けの政策ばかりが実施されるという、いわゆる「シルバー民主主義」が顕著となっていた。これは人口構成上、ある程度は仕方のないことかもしれないが、若年層から見ると自分たちは放置されているという感覚を持ってしまう。こうした中で政策を立案する場合には、可能な限り世代間格差を縮小させる工夫を行うことが重要となってくるが、そのためには、若年層と高齢者層で、どの程度、負担が違うのかについてしっかりと認識しておく必要がある。
若年層が中高年世代に対して、最も世代間格差を感じているのは、やはり年金だろう。
日本の年金は現役世代が支払う保険料で高齢者の給付を賄うという賦課方式となっている。現役世代の人口が減り、高齢者世代の人口が増えると、当然のことながら現役世代の負担は大きくなる。
現時点で年収400万円程度のサラリーマン(ボーナスが70万円と仮定)における月々の年金保険料は約3万円となっている。一方、1980年代の後半に若者だった世代は、そろそろ年金をもらう年齢に差し掛かりつつあるが、この世代が若い時には、同じ年収400万でも月々の負担は1万7,000円程度で済んでいた。
つまり30年程度の期間を経て月あたり1万3,000円程度、負担が増えた計算となる。この違いが許容できないレベルなのかは人によって感覚が異なるかもしれないが、やはり月1万3,000円の負担増は大きい。
政府も世代間格差の縮小を進めている
政府もこうした状況を放置していたわけではなく、現役世代の負担があまりにも重すぎることから、これを是正する改革を進めてきた。その中核となっている仕組みが「マクロ経済スライド」である。
先程、説明したように、日本の年金は現役世代が納めた保険料を高齢者に支払う方式なので、年金財政の悪化を回避するには、現役世代の保険料をさらに引き上げるか、高齢者の年金給付を減らすかのどちらかしかない。政府はこれ以上、現役世代の保険料を引き上げることは難しいと判断し、段階的に高齢者の年金給付を減らす「マクロ経済スライド」を発動した。
このため、今、高齢者が受け取っている年金は、毎年少しずつ減額されている。40代の頃、400万円台の年収を得ていた人は、現時点では月15万円程度の年金を受け取れているが、年金額は毎年減らされており、20年後には月12万円程度まで下がる可能性が高い。このところ物価上昇が顕著になっているにもかかわらず、年金が増えないため生活が困窮しているというニュースをよく目にするが、これは若年層の負担を軽減するため、高齢者の給付を削減したことの要因が大きい。
しかしながら、この減額制度はあくまでも高齢者の給付を引き下げるという話であって、現役世代の負担が直接的に減るわけではない。こうした状況から、世代間格差を本当に解消するためには、若年層の保険料を引き下げる必要があるとの意見も出ている。
では、高齢者が若かった頃のレベルまで、つまり月3万円から月1万7,000円程度まで負担を減らした場合、年金はどうなるだろうか。年金の場合、徴収と給付はセットで考える必要があるため、保険料を引き下げれば、理屈上、その分だけ給付を減らす必要が出てくる。
上記のケースでは、保険料を43%減額することになるので、給付も同じ割合だけ減らさなければ年金財政は破綻してしまう(企業がその分を負担すれば話は別だが)。ここで給付を維持するため税金から補填してしまえば、結局のところ現役世代の稼ぎの一部を充当することと同じになり、不公平を解消できない。
保険料の減額は最終的には若年層にも影響を及ぼす
先ほど、月15万円ほどの年金をもらえている人は、20年後には月12万円程度に下がるという話をしたが、ここに先ほどの保険料減額分を単純適用すると、月々の年金は約7万円まで下がる。この金額で高齢者が納得すれば、世代間の不公平を解消することが可能だ。
この金額で高齢者に納得してもらえるのかが最大の政治的課題だが、保険料を減額した場合の問題点がもうひとつある。それは保険料を減額してしまうと、若年層の人が年金をもらう時にも十分な年金が手に入らず、老後貧困の問題がつきまとうことである。
現役世代の保険料を減額し、その制度を続けるということは、若い世代の人が年金を受け取る頃にも、同じような額の年金しか受け取れないことを意味する。
近年は持ち家信仰が薄れ、一生賃貸と考える人が増えている。マイホームは下手をすると「負」動産になりかねない現実を考えると、一生賃貸で通すということにもそれなりに合理性がある。ただ、一生賃貸というライフスタイルを実現するにあたっては、絶対にクリアしなければならない条件がある。それはしっかりと資産形成を行い、年金収入に加え、資産からの所得も見込めるようにすることである。
若い時には、あまりイメージできないかもしれないが、高齢になると多くの人が疾患を抱え、体が思うように動かなくなる。月7万円しか年金がなく、十分な収入を得られない中で、その中から家賃を支払って生活することは極めて難しい。
無関心でいられない? 年金問題をホンキで考えるべき理由
筆者が若い頃、年金財政の問題は取り沙汰されており(そうだからこそ消費税の導入が決定された)、「どうせ年金はなくなるのだから保険料など払いたくない」「年金はないものと思っている」と強く主張する知人も多かった。
当時の若者(今の中高年)の口から出ていた台詞は、今の若年層と大きな違いはない。だが、実際に年金をもらえる年齢が近づいた今、彼らはどうなったのというと「自分はいくら年金がもらえるのか?」という話ばかりするようになっている。
厳しい言い方になるが、若年層の多くが、今は無関心であっても、年齢が高くなると「年金、年金」と騒ぎ出すのはほぼ確実だ。こうした現実を踏まえた上で、どこまで保険料を減額するのが妥当なのか、腰を据えて考えていく必要があるだろう。
●老人医療への「支援金」をやめれば健康保険料は半分に減らせる 11/22
岸田政権の政策の特徴は、目的がはっきりせず、場当たり的に財源を求めることだ。少子化対策の財源も、増税ではなく医療保険に上乗せして徴収するという。なぜ少子化対策の財源が医療保険なのか。リスキリング(職業訓練)の予算は雇用保険(失業手当)から支出される予定だ。政府の審議会でも、目的外使用に疑問の声が相次いだという。
サラリーマンの健康保険料の半分は老人医療の「支援金」
こうした政策には、一つだけ一貫した方針がある。それは消費税は上げないということだ。社会保障給付が急速に膨張している状況で、その財源となる消費税の増税から逃げるので、社会保険料の流用が行われるのだ。これは少子化対策が初めてではない。次の図のように後期高齢者の医療給付の40%が、それ以外の保険から流用した後期支援金6.3兆円でまかなわれている。
それ以外にも市町村国保の赤字(主として前期高齢者)3.6兆円をサラリーマンの組合健保・協会けんぽが埋めている。この結果、組合健保の保険料収入6.9兆円の半分が支援金などに流用され、組合員への給付には半分しか使われていない。
負担は健保組合のサラリーマンが負うが、彼らには給付を受ける権利はなく、その使途もチェックできない。この負担のおかげで健保組合の8割が赤字になり、解散が相次いでいる。
「国民皆保険」の矛盾をとりつくろう支援金
この根本には、国民皆保険の矛盾がある。戦前からの健康保険は企業の従業員を対象とするもので、自営業者を想定していなかったが、岸信介が自民党の集票基盤だった農村に支持を広げるために国民年金と国保をつくった。
しかし皆保険は源泉徴収のサラリーマンならできるが、自営業者や非正規労働者は未納が多いため、保険会計は赤字になる。それを税金で埋めると財政赤字が膨大になるので、取りやすいサラリーマンから取ることにしたのだ。
このような財政調整が始まったのは、1982年の老人保健法からである。これは1973年に老人医療の無料化で負担が市町村の国保に集中したことから、給付の30%を国庫負担し、70%を各保険者(健保組合)が拠出することにしたものだ。
しかし老人医療費は急速に膨張し、国保の赤字を埋める健保組合が1999年に不払い運動を起こした。その結果、2002年に老人医療が1割負担になり、2008年に後期高齢者医療制度ができたが、財政調整の制度は残った。不明朗な支援金は、30年も続いた老人医療無料化のなごりなのだ。
消費税を上げると健康保険料は半減する
この矛盾が超高齢化で顕在化した。今の後期高齢者は現役のときほとんど保険料を払っておらず、企業と雇用関係もないので、本来は自分で保険料を払わないといけないが、後期高齢者の保険料は、給付の1割にも満たない。これは実質的には国営なのだから、すべて税で負担するのが筋だが、それだと消費税を増税するしかない。
しかし消費税は橋本内閣で大事件になってから増税が封印され、特別会計の中でやりくりすることが常態になり、自公政権はこの支援金を既得権として守った。このため後期支援金と前期調整額の合計9.9兆円が現役世代から支出されている。
この支援金をすべて消費税に置き換えると5%の増税が必要になるが、それだけ保険料が減る。特に健保組合の保険料は半分に減らせるが、全体としての負担額は同じだ。
後期高齢者医療の給付は9割が税金になり、実質的に国営化される。財源が税金になれば、いま話題の診療報酬引き下げのように財務省がきびしく査定できるので、今の無責任な支援金よりはましだろう。
医療は最大の成長産業
支援金や拠出金は廃止し、保険料で足りない部分は税でまかない、窓口負担は一律3割とすべきだ。高度医療や延命治療は保険適用外とし、民間保険を活用して自由診療でやればいい。医療・福祉はこれから製造業を超える944万人の雇用を吸収する国内最大の産業になる。豊かな老人は豊かな医療サービスを受けることが、経済成長の源泉にもなる。
最大の難関は増税だが、これは消費税である必要はない。医療保険の本質的な機能は所得再分配なので、所得税・住民税と社会保険料を一体化した社会保険税という目的税にする案もある。低所得者が人工透析などの高価な医療を必要とする場合は「負の社会保険税」を給付してもよい。
税に一元化すると一般会計は増税になるが、特別会計の減税で相殺できるので、国民負担は変わらない。逆進的でサラリーマンに負担が集中する健康保険料より、高齢者も負担する消費税のほうが公平だ。一時的には国債でファイナンスして、徐々に増税することも考えられる。
政治家が不人気な増税を避けるために、サラリーマンに過大な負担を押しつけているのは理不尽である。現役世代は声を上げるべきだ。また健保組合が不払い運動を起こせば、政治は変わるかもしれない。
●底が見えぬ支持率低下…国民に愛想を尽かされた「政治屋による政治」 11/22
11月22日 連日のように岸田文雄内閣の支持率低下報道を見聞きする。最新は毎日新聞の世論調査(18〜19日)で支持率は先月に比べ4ポイント減の21%。もう低下には驚かないが、あの菅直人民主党内閣の15%(2011年8月)に次ぐ低水準と聞くと来るべき時が来たかの感がある。「早くやめてほしい」が55%はさもありなんだ。
経済対策の切り札とした所得税減税は逆に国民の不評を買い、税金滞納で4度も差し押さえを食ったトンデモ副大臣ら政務三役3人の辞任ドミノが追い打ちをかけた。さらに自民党5派閥の政治資金パーティー収入の過少記載という、いずれ大ごとになりそうな問題も浮上してきた。
かと思えば石川県の馳浩知事は衆院議員時代、東京五輪招致活動で内閣機密費を使い1冊20万円のアルバムをIОC委員全員に贈ったことを自慢げに明かした。その後、事実誤認と謝罪したが「綸言(りんげん)汗の如し」で言葉は取り消せない。機密費がそんなものに使われたのかと呆れる。地方からも足を引っ張られては首相もたまらない。
もはや政権は末期的症状に見えるが、党内では「岸田おろし」のゴングはまだ鳴ってないというからフシギだ。高市早苗氏の「勉強会」という名の仲間作りが前触れに見える程度。選挙など先のことを考えればわが身大切が一番で引きずり降ろすまでの動きはないらしい。
かつて漫才師から参院議員になったコロンビア・トップは「日本の政治家は政治屋だ」と毒舌を吐いた。先見の明か、今や家業を継ぐ世襲議員だらけ。世間にはそんな政治屋サンの動きが透けて見えるのか。ある調査では支持政党なしが60%。政治は愛想を尽かされたということだろう。 
●支持率低下止まらない岸田政権 「アメリカ訪問」と「予算案成立」を花道に 11/22
数量政策学者の高橋洋一が11月22日、ニッポン放送に出演。衆議院予算委員会での実質的な審議が始まった補正予算案について解説した。
衆議院予算委員会、補正予算案の実質的な審議始まる
国会では、衆議院予算委員会で経済対策の裏付けとなる補正予算案の実質的な審議が始まった。新たな経済対策について、岸田総理は「今回の経済対策はデフレからの脱却が大きな目的。賃上げは道半ばであり、給付や減税といったあらゆる政策を用意し、国民の自由に使えるお金を確保することで消費を落ち込ませないよう配慮する必要がある」と述べた。
飯田)岸田総理の答弁だけを聞いていると、「そうなのか?」という感じですが。
高橋)一方では物価高対策に関し、「デフレからの脱却が目的」と言っていますが、デフレからの脱却で物価高対策を行うのは少しおかしいですよね。
飯田)デフレはむしろ物価が伸びない現象です。
高橋)「可処分所得を増やす」というだけであれば結構なのです。しかし、「デフレからの脱却」にこだわっているように思える。誰が考えているのか知りませんが、「デフレからの脱却と物価高対策」というのは、きちんと説明しないとわかりにくいですよね。
飯田)そのまま聞くと「アクセルとブレーキを同時に踏むのか?」と感じてしまいます。「ちょうどいいところを狙う」というようなイメージでしょうか?
税収増が1710億円であるはずがない 〜もっと多いはず
高橋)よくわかりません。岸田さんの政策はいつもわからないのですが。補正予算については、国会できちんと議論してもらいたいですね。補正予算にはフレームがあるのです。「歳出がどんな項目か」というところばかりにみんな着目しますが、予算だから歳入と歳出は全部載っているのです。歳入のところを見ると、実は税収増で、年度途中に補正予算を出すから、年度予算の改定になるため、税収のところだけ直さなくてはいけないのです。
税収増を見積もれば特例国債なしでも賄える 〜歳入についての数字がデタラメ
高橋)税収増の項目を見ると、1710億円とされています。しかし、税収の改定でこんなに少ないはずがないのです。そもそも年度の名目経済成長率を4.4%で計算しているから、税収弾性値はすごく低く見積もっても、ギリギリで1.1なのです。そうすると4.8%伸びるから、これだけで5〜6兆円にいくわけです。もう少し真面目にやれば、6〜8兆円くらいの数字でもいいような話です。
飯田)なるほど。
高橋)一方で、特例国債(赤字国債)が6兆3650億円と書いてあるわけです。私がいま言ったように、普通に税収増を見積もれば、特例国債はなしなのですよね。
飯田)それで取れてしまうと。
高橋)なぜ、このようにするのでしょうか。歳出の話に関して、いろいろなものがあるのはいいですよ。しかし、それを賄う歳入の方はデタラメなのではないかと、正直言って思いましたね。ここまでデタラメだと、誰かが質問しなければおかしいです。
これまで法人税を払っていなかった企業が法人税を払うのだから税収が伸びるのは当然
飯田)税収弾性値の話がありましたが、いままではデフレもあって、あまり景気もよくならず、赤字企業が法人税を払っていないなど、いろいろありました。しかし、これだけ名目の成長があったということは 、GDPの成長以上に税収も伸びるのではないでしょうか?
高橋)税収弾性値1.1という数字も信用できないのですけれど。本当に測ると、2か3だと思います。
飯田)経済成長以上に税収は伸びる。
高橋)いま話があったように赤字企業など、0だったところが払うのだから、税収弾性値はすごく伸びるに決まっているではないですか。
飯田)いままで払っていなかったところが払えば。
高橋)結果、2か3だと思うけれど、そこは議論があるからさて置き、1710億円は少なすぎます。兆単位までいかないとおかしいですよね。つくっているのは財務省なのですが、こういう数字に対し、国会で誰がきちんと質問するのか見ていますよ。
税収が上振れしているはずなのに
飯田)確かに為替がこれだけ変わっていて、特に海外に資産を持っていたり、輸出企業などはかなり伸びているはずです。
高橋)そもそも為替値が円安になるとGDPが伸び、それだけで増収要因になりますから。財務省にいて為替が安くなれば、全体の税収が増えることはわかるはずです。見積もりとは言え、酷い計算だなと思いました。最終的には税収が増えると、国債の発行額が減るだけなのです。人畜無害と言えば人畜無害ですが、それにしても酷い計算です。
飯田)これだけ公債を増やすというのは、また「財政規律が大変だ」ということを言いたいのでしょうか?
高橋)「言いたいから」としか思えませんね。真面目な人の計算ではありません。桁が違います。
飯田)最近は毎年「税収が上振れした」という話が出ますよね。
高橋)上振れして大変なのでしょう? それなのに、これは何なのでしょうか。もう少し言うと、外為特会の益も繰り入れられますしね。
飯田)外為関係の特別会計には米国債などがあって、当然、円安になれば円での評価額は高くなる。
高橋)評価額のみならず、普通は3年債だから、50兆円くらいは償還が来るのですよ。
飯田)自然に償還期が来る。
高橋)普通ならロールオーバーするだけでも含み益が出るのです。3分の1の含み益を出したら、それだけでも10兆円以上です。
飯田)十分に補正を賄える。
約50兆円の「貯め込んだ財源」を国民に還元するべき
飯田)その辺りを探していくと、財源が……。
高橋)50兆円くらいはあるでしょう。
飯田)それだけで補正どころか、本予算も「半分くらい賄えるのではないか」という話になりますね。
高橋)できるでしょう。そんなに貯め込んでいても仕方ありません。早く国民に還元しなければ、経済が好循環になりませんよ。
飯田)岸田総理は「可処分所得を増やす」と言ってはいますが。
高橋)具体的な策としては、いま言ったように「貯め込んでいる部分を吐き出す」ことがいちばん簡単です。政府が貯め込んだ分を国民に吐き出せば、好循環になるのです。景気がよくなって賃上げもされ、税収も増える。そして、またそれを吐き出す。その循環をグルグルと回すのですよ。
飯田)そうすれば「規律が」と言っている国の財政も、よくなるのではないですか?
高橋)結果的によくなっていくので、なぜ、そういう単純な話をしないのだろうかと思います。
支持率が下がっていても緊張感が感じられない岸田総理
飯田)昨日(11月21日)は衆議院予算委員会で、自民党、公明党、立憲民主党の方々が質問していました。22日には国民民主党の玉木雄一郎さんが質問しますが、このような内容を聞きそうな感じがします。
高橋)いちばんしそうですね。野党は頑張って、みんなで質問したらよろしいと思います。
飯田)議論が深まり、中身が変わっていけばいいのですが、国会で中身は変わるのでしょうか?
高橋)なかなか変わらないでしょうね。「岸田総理が何をしたいか」によりますが。支持率が下がっているのに、本人は全然平気らしいのです。バイデン大統領から来年(2024年)早期に向け、国賓待遇で招待を受けたようですが、それで喜んでしまっています。招待されたので、「そこまでは大丈夫だな」と本人は思っているのでしょうね。
2024年春の「アメリカ公式訪問」と「予算案成立」を花道に「退陣」というストーリーも 〜「退陣、新総理で解散総選挙」が自民党には好都合
飯田)2024年の本予算が成立したあと、3〜4月くらいにアメリカから国賓待遇で招待を受けている。
高橋)逆に言うと、「それが花道かな」と思ってしまうくらいに支持率が下がっていますよね。「予算とアメリカ招待」を花道に退陣し、総裁選をするかどうかはわかりませんが、新総理になり、そこで解散総選挙を行うのが自民党にとってはありがたいでしょうね。
飯田)看板を変えてフレッシュな形にして、「支持率の高いうちに」と考える。
高橋)そうすると「年内の岸田下ろしはないな」と思っているのかな、と想像してしまいます。
飯田)さまざまな勉強会が立ち上がり、「閣僚なのに何をしているのか」と高市さんが批判されたりしています。結果的に高市さんの動きから、いろいろな候補が名乗りを上げるという動きにもなっていますね。
高橋)それはそうでしょうね。菅さんも「政策が届いていない」など、最近いろいろと言っています。
飯田)ネット番組などでいろいろと発言されています。
「税収増分は使用済み」と財務大臣に言われ、はしごを外された岸田総理 〜財務省が仕掛けた罠のようなもので主流派は容認
高橋)そういう非主流派の動きは必ず出てきます。でも、今回は主流派の方がやっていますからね。財務大臣に「還元する原資はない」と言われてしまった。税収増分を還元する話があったでしょう。あれは財務省が仕掛けた罠のような話です。要するに、岸田さんに関してはしごを外すことを、麻生さんなどの主流派は容認していますよね。主流派の人がはしごを外しているから、非主流派も「いいのね」という感じでやっていると思いますよ。
飯田)主流派と言いながら、一枚岩ではないのですか?
内閣支持率が下がり、自民党の支持率が下がっていないときが最も代えやすい
高橋)この支持率ではもう無理でしょう。「次が有利になるよう、早く挿げ替えたい」と考えているはずです。これだけ下がってから復活した人は記憶にありません。自民党の支持率が下がってきたら、収拾がつかなくなりますからね。
飯田)下野してはまずいので、「だったら代える」というような流れになっています。
高橋)自民党の支持率も下がりかけています。内閣支持率が下がり、自民党の支持率が下がっていないときが最も代えやすいのです。
飯田)いまはその状態ですか?
高橋)ギリギリです。危ないですね。内閣支持率が下がっているのは間違いありませんが、自民党の支持率も下がってきていますから、麻生さんのときと同じようになってしまうかも知れない。
飯田)2009年の政権交代のとき。
高橋)「野党が強くない」という理由だけで、いまは持っているのです。
●発言迷走で退陣の過去も…減税「鬼門」の歴史 景気浮揚効果は限定的 11/22
岸田文雄政権が経済対策の目玉とする所得税減税は過去の政権でもたびたび実施されてきたが、景気回復や政権浮揚にはつながらず失敗例が目立つ。首相退陣の引き金になったケースもあり、時の政権の「鬼門」とされるゆえんだ。現政権の減税も各種世論調査で多くが評価しておらず、リスクとなる可能性をはらむ。
昭和末期以降の政権では橋本龍太郎政権が減税を巡る橋本首相の発言の迷走により退陣に追い込まれた。
1997年4月の消費税率引き上げで消費が冷え込み、アジア通貨危機や山一証券破綻で金融不安が拡大。橋本氏は同12月に定額減税を表明、翌98年1月に関連法成立、2月に実施とスピード対応だったが、7月の参院選で減税の恒久化を「する」「しない」でぶれたと批判を浴びた。橋本氏は事態収拾へ恒久減税を打ち出したものの、自民党は惨敗して内閣総辞職した。
続く小渕恵三首相は「恒久的な減税」を掲げ99年から定率減税に変更。所得税を一律20%差し引いた。期間は「経済の状況等を見極める」との条件付きだったが、税率を元に戻すと増税感が出るため景気が持ち直した後も継続。小泉純一郎政権が2005年に段階的な廃止を決定し、安倍晋三政権の07年に全廃されるまで続いた。約8年にわたる減税は財政悪化を招いた。
福田康夫政権は08年、公明党の意向を受けて経済対策に定額減税を盛り込んだが実現しないまま退陣。
麻生太郎政権はリーマン・ショックによる景気悪化を踏まえ、即効性や非課税世帯への恩恵を考慮して定額減税を給付金に切り替えた。一方、給付金は全世帯を対象としながら、麻生氏は高額所得者が受け取ることを「さもしい」と発言。支持低迷の一因となった。
これまでの減税策は景気押し上げ効果は限定的で、政権の局面打開の起爆剤になったとは言い難い。岸田首相側近も「過去の例は相当勉強した」と明かす。官邸側は国民への丁寧な説明や与党との調整などを慎重に進め、歴代政権の轍(てつ)を踏まないよう実現を目指す。
ただ共同通信社の今月の世論調査によると定額減税を「評価しない」は62・5%に上り既に風向きは良くない。内閣支持率は過去最低の28・3%で、来年6月から実際に減税が実施されたときにどれほど支持が回復するかも未知数だ。与党重鎮は「税は国民の関心が高いだけにダメージが大きい。先が思いやられる」とこぼす。
●どうにも不自然な自民党の政治資金記載漏れ問題 11/22
自民党の「五大派閥」が設立しているそれぞれの政治団体が、合わせておよそ4000万円分を収支報告書に記載していなかったとする告発状が提出されたことが、11月18日土曜に明るみになりました。具体的には、政治資金パーティーに20万円を超える支出をした団体の名前など、記載すべき事項が記載されていないということで、東京地検特捜部が捜査を始めたようです。
具体的な捜査としては、東京地検特捜部が、各派閥の担当者から任意で事情を聴いているという報道がありました。その五派閥と、それぞれの「記載漏れ金額」も公表されています。具体的には清和会(旧安倍派、1900万円)、志帥会(二階派、900万円)、平成研(茂木派、600万円)、志公会(麻生派、400万円)、宏池会(岸田派、200万円)です。まさに自民党の「五大派閥」が揃い踏みというわけです。
しかし、告発というのは、要するに情報提供、もしくは内部告発があったということです。内部告発は、例えば営利企業の反社会的な行動に関しては、内部告発行為そのものが社会的な利益になるので、告発者を守る必要があります。もちろん今回の内部告発も、脱法行為を明らかにするという社会的正義はあるわけです。ですが、政治の世界は企業活動とは性格が異なります。そう考えるとこうした告発そのものが政治的な意味を持ってしまうことは避けられません。
つまり、どうしても告発の背景というところに想像を巡らせてしまうことになります。まず、純粋に考えると、政治とカネに関する自民党の姿勢を正すために、まさに社会正義の立場から告発したということは考えられます。ですが、全く別団体の各派閥の収支状況とか、政治資金パーティーの収支などにアクセスするには、例えば政治家の秘書としての同業者の裏のネットワークなど、本当に「内部」の情報に接する人脈が必要です。そんなことまでして、社会正義を貫こうというのはストーリーとしてやや不自然です。
告発の背景には何がある?
そうなると、どうしても政治的意図を疑ってしまいます。
まず考えられるのは、記載漏れ金額について、岸田派が少なく、岸田派に近い順に少なく、遠い順に多くなっているという点です。これは偶然かもしれませんが、このまま公表すれば、例えば清和会(旧安倍派)は金額が多いので批判されるが、宏池会(岸田派)は比較的金額が少ないので、ダメージは小さいかもしれません。ですから、岸田派の周辺の人物が「ライバル派閥を貶める」ために、自派閥にもダメージを受ける形で、告発に踏み切ったという可能性は考えられます。
もっと言えば、岸田政権周辺の考え方として、「仮に自民党にダメージになるにしても、正義の告発をして自浄作用を促す」方が正しいし、結果オーライになるという考え方をした可能性はあるでしょう。
ですが、こうしたストーリーはどう考えても不自然です。内閣支持率が低迷しており、様々な批判を浴びている岸田政権には、こうした告発はダメージになりこそすれ、何も得をすることはないと思われるからです。何よりも、岸田首相は自民党総裁であり、今回の事件の全体に責任を負う立場でもあるからです。
考えられる党外からの力学
そうなると、もう1つ別のストーリーが考えられます。それは党外からの力学です。総選挙を意識して、自民党全体のイメージを下げたいという動機は野党各党には濃厚にあります。その中でも、保守系の野党は、自民党との間では秘書同士の人事交流もあり、ネットワークもあります。だとしたら、保守系野党の政治家秘書などが、個人的な人脈から「政治資金の記載漏れ」というネタを握って、特捜部に告発をしたことは考えられます。
ですが、これもまたやや不自然です。政治資金の記載漏れというのは、違法行為ですが、だからといって、選挙を意識してそこまで露骨な暴露をやるというのは、過去に聞いた事はありません。特捜部にしても、余りに露骨な格好で野党を利するような捜査を行えば、公正中立であるべき検察としての汚点になります。
そう考えると、もっと別の背景の想像が必要でしょう。例えばですが、このままでは自民党が総選挙で大敗し、自分が秘書をしている政治家の議席も危うくなるという危機感から、一部の自民党の秘書などが動いているという可能性です。同業のネットワークを使って情報を集め、これを告発したとして、仮にその「大義」として政界再編という目的があれば、話は変わって来ます。
単に野党による政争に加担するのではなく、政界再編という大義がウラにあるのであれば、協力者も増えるでしょうし、検察も動きやすくなるのかもしれません。特捜部のOBの中には、過去にも政界再編の仕掛け人として動いた人物もあり、こうした可能性は全く否定はできないと思います。
いずれにしても、今回の告発劇には、何らかの政治的意図がある可能性は否定できないし、もしかしたら政界再編の予兆かもしれません。政界再編ということでは、大阪万博で行き詰まった維新、コロナ禍で都財政を悪化させた都民ファーストなど、保守系の野党には「看板を書き換えたい」動機があることも指摘できます。内閣支持率が極端に低迷していることと併せて、何かが起きる予兆かもしれません。
●「完全に野党ペース」の声も…衆院予算委で野田元首相が岸田首相追及 11/22
衆議院の予算委員会では、自民党の派閥の政治資金問題をめぐり、岸田首相に対する野党の追及が勢いを増している。
国会記者会館から、フジテレビ政治部・福井慶仁記者がお伝えする。
首相周辺から「完全に野党ペースだ」との声が漏れる中、22日朝は委員会に先立つ理事会で、野党側が首相の姿勢に抗議し、1時間近く開会が遅れた。
およそ4,000万円の資金の未記載をめぐり、「自民党と派閥は別団体だとして、岸田首相らが回答を避けている」などと野党が指摘し、委員会の冒頭で岸田首相が説明をすることになった。
岸田首相「具体的な訂正内容等について、各政治団体において、適切に説明をできるだけ速やかに行ってもらうよう幹事長に指示をいたしました」
これに対し、首相経験者の立憲民主党・野田最高顧問が追及を続けた。
立憲民主党・野田元首相「まだまだ危機感が足りない。これ氷山の一角じゃないか。なぜこんなことが起こっているのかということを解明するところまでが調査だと思いますよ」
岸田首相「政府とも違う、自民党とも別の政治団体、それぞれにおける、さまざまなこの政治とカネの問題。それぞれの立場から信頼回復に向けて努力していく」
支持率が低迷する岸田政権は、野党の攻勢を前に正念場が続くとみられる。
●岸田内閣の支持率低下と池田大作の死は、日本政治の新たな「転換点」に 11/22
岸田内閣の支持率低下が止まらない。自民党内で「岸田降ろし」が始まってもおかしくない状況だ。
そんな中、11月15日、連立政権のパートナーである公明党を創設した創価学会の池田大作名誉会長が95歳で死去した。公明党はもちろん、自公連立政権の今後にも大きな影響を与えそうである――。
支持率低下が止まらない岸田政権
マスコミ各社の10月の世論調査では、岸田内閣の支持率は内閣発足以来最低を記録したが、11月の調査の結果は、もっと悪くなっている。
11月10〜13日に行われた時事通信の世論調査では、内閣支持率は21.3(-5.0)%で過去最低であった。不支持率は53.3(+7.0)%である。政党支持率を見ても、自民党支持率は19.1% で政権復帰以来最低である。
かつて参議院のドンと称された故青木幹雄は、内閣支持率と与党第一党の支持率の和が50%以下になると政権は倒れると言ったが、これが「青木の法則」と称されている。21.3+19.1=40.4と50%以下であり、岸田内閣は倒れるということである。
政策の評価については、「減税」を評価するのは23.5%のみで、評価しないという回答が51.0%であった。
17〜19日に行われた読売新聞の世論調査でも、内閣支持率は24(-10)%で内閣発足以来最低であるのみならず、2012年12月に自民党が政権復帰して以来でも最低である。
これまでの最低は、2021年9月の菅内閣のときである。政党支持率では自民党は28(−2)%である。不支持率は62(+13)%である。
政府の経済対策については、「評価する」が23%、「評価しない」が66%である。「減税」については、「評価する」が29%で、「評価しない」が61%である。
また、文部科学政務官、法務副大臣、財務副大臣が不祥事で辞任したことについて、政権運営に「影響がある」としたのは68%にのぼった。
岸田首相にいつまで首相を続けてほしいかという問いに対しては、「自民党総裁任期が切れる来年9月まで」が52%、「すぐに交代してほしい」が33%、「できるだけ長く」が11%である。
18〜19日に実施された毎日新聞の世論調査では、内閣支持率は21(-4)%で内閣発足以来最低で、不支持率は74(+6)%と過去最大である。自民党支持率は24%であった。この調査でも「青木の法則」の50%以下である。
減税については、「評価する」は22%のみで、「評価しない」が66%にのぼった。7万円の給付についても、「評価する」は30%で、「評価しない」が60%である。3人の副大臣や政務官の辞任については、総理の任命責任が「ある」は86%で、「ない」は11%にとどまった。
18〜19日におこなわれた朝日新聞の世論調査も同じ傾向である。内閣支持率は25(−4)%で、自民党が政権に復帰してから最低である。支持率は、自民党支持層でも59%であり、無党派では10%である。
内閣不支持率は65(+5)%で過去最大である。自民党支持率は27(+1)%で、7月以来、連続で30%割れをしている。
経済対策では「評価する」が28%、「評価しない」が68%となっている。「減税と給付」について首相が考えたのは、「国民の生活」が19%、「政権の人気取り」が76%である。
岸田首相はなぜここまで不人気なのか
国会では、補正予算案の審議も始まったが、以上のような世論調査結果は野党を勢いづかせている。
岸田首相の最大の弱点は国民へのアピール力の欠如である。物価高騰の今、減税や低所得世帯への給付は大いに助かるはずである。ところが、先に見たように、世論調査では評価するのは2割あまりしかいない。この政策の利点を分かりやすく大衆に説明すべきである。
それには、演説に抑揚が必要である。岸田の演説は平板な一本調子で、どこにアクセントがあるのかわからない。官僚が作文した文章をただ読んでいるような感じで、政治家の言葉ではない。
アクセントが効き過ぎると、ポピュリズムになりかねないのでリスクはあるが、そのリスクを冒すことがカリスマにつながるのである。
経済政策にしても即刻性が必要で、その成果が出たならば、マスコミを動員して大々的に宣伝すべきである。たとえば、ガソリン価格は、1リットル当たり、レギュラーで2ヵ月前には180円台だったのが、今は160円台である。それは対策の効果なのであるが、政府からの十分な説明はない。
また、物価の上昇に賃金の増加が追いついていない状況に対しては、強制はできないまでも、少なくとも利益を上げている企業については、賃上げを強力に要請すべきである。そして、それに応じた企業を称え、広く知らせるとよい。
そのためにはマスコミを活用することが不可欠である。岸田側近にはマスコミ対策に長けた人材が不足しているようである。
3人の副大臣や政務官が不祥事で辞任したことについても、事前の「身体検査」が徹底していなかったきらいがある。そのことは、官僚機構の掌握が上手くいっていないことを示しているのかもしれない。国税庁、警察庁、総務省などの調査機能を活用すれば、辞任を招きそうな事案はチェックできるはずである。
その点では、安倍政権は官邸主導の体制を構築して、人事についてもミスを最小限にしたが、岸田政権はそのような体制の整備には至っていないようである。
公明党、自公連立政権の今後
11月15日、創価学会の池田大作名誉会長が死去した。1960年に第三代会長に就任して以来、国内会員数を140万世帯から800万世帯に拡大させた。海外にも進出し、世界192ヵ国・地域で280万人の会員を獲得した。
1964年には、公明党を創設し、政治の世界でも大きな影響を及ぼしてきた。その過程で「言論出版妨害事件」なども起こし、政教分離の議論を巻き起こした。
1999年10月5日に、公明党は自民党と自由党の連立政権である小渕内閣に参加した。その後、自由党が連立から抜け、保守党が加わったが、2003年11月に保守新党は自民党に吸収され、自公連立政権となった。
2009年夏の政権交代で民主党に政権が移ると、公明党も下野したが、2012年12月の総選挙で民主党が敗北し、自公連立政権が復活した。
1994年、細川内閣の下で、小選挙区比例代表並立制が導入され、1996年の衆院選から実施された。小選挙区制では、選挙区で1人しか当選しないため、自民党の候補は、創価学会の集票力に依存することになっていった。
これはいわば麻薬のようなもので、いったん依存すると、それなしには当選できないような体質になってしまう。
私は、現役時代に何度も自民党、公明党候補の応援に行ったが、創価学会の集票マシーンの凄まじさ、票読みの正確さには舌を巻いたものである。今の自民党の衆議院議員で公明党の援護なしで、自らの票のみで当選できるのは圧倒的に少数である。とくに、野党の相手候補との接戦となったときには、公明党票が決定的に重要な意味を持つ。
その集票力こそが、連立政権内で公明党が影響力を増す理由になっている。
池田大作の天才的なところは、選挙活動を宗教活動の一環として位置づけ、功徳を増す道だとしたことである。いわば無料奉仕の選挙活動であり、街頭演説での聴衆動員、学会員ではない友人・知人(F・フレンド)への働きかけなどを徹底的に行う。
しかし、最近は創価学会員も高齢化し、そのような活動を以前のようには行えなくなっている。「聖教新聞」などの配達も学会員の無料奉仕に頼っていたが、今では人が足らず、外注に出している地区もある。
公称827万世帯の会員世帯数を誇る公明党であるが、2019年の参院選比例区で公明党が獲得したのは653万票で、2022年にはさらに減って618万票であった。
2021年11月、選挙で実働部隊として辣腕を振るってきた「婦人部」がなくなり、「女子部」と統合されて「女性部」となった。女性会員の減少を物語るエピソードである。
宗教2世の若い世代の学会離れも目立ってきている。池田大作というカリスマの死によって、今後、創価学会の凋落傾向に拍車がかかる可能性がある。そうなった場合、自民党は連立のパートナーを日本維新の会や国民民主党に代えることも可能である。政策的に大きな隔たりはないからである。
岸田首相の不人気と池田大作の死は、日本の政治に新たな胎動をもたらすかもしれない。
 11/23

 

●暗黒クソメガネ政権「4000万円裏金スキャンダル」で東京地検特捜部が狙う 11/23
支持率20%台に低下して存続の危機に瀕する岸田文雄内閣に、新たな大問題が浮上した。岸田派を含めた自民党5派閥の政治団体が、政治資金パーティーの収入を過少申告していたのである。その額、なんと約4000万円。「裏金」として扱われていたのでないかと、衆院予算委員会では猛烈な追及を受けた。永田町を揺るがす「政治とカネ」のスキャンダルへ発展する局面になっている。永田町関係者が声を潜めて言う。
「告発を受けて各派閥の担当者に任意で事情を聞いている東京地検特捜部が、どこまで本気でやるかがポイントになります。『記載ミス』という言い逃れが成り立たない物的証拠を集めることができるか、捜査力が問われるでしょうね」
これまでにも岸田内閣では次々とスキャンダル、不祥事が発生。不倫問題の山田太郎前文部科学政務官、東京都江東区長選の公職選挙法違反事件で捜査されている柿沢未途前法務副大臣、税金を滞納した神田憲次前財務副大臣の政務三役3人が辞任した。そればかりか、足元の自民党では「舌禍女王」の杉田水脈衆院議員がまたしても問題発言でバッシングされるなど、火に油が注がれている。岸田総理は年内の衆院解散・総選挙を見送らざるをえない状況に置かれているが、失地回復は難航を極め、いよいよ沈没へと追い詰められつつある。
「負のイメージがこびりついた岸田総理では選挙を戦えないとして、自民党内からも退陣コールがくすぶっています。次期衆院選は自民党にとって大逆風となるのは確実。旧統一教会と決別宣言をして初の選挙となり、カルト教団の支援を受けていた自民党議員は軒並み、落選が予想されている。自民党が選挙協力している公明党では、創価学会の池田大作名誉会長が死去したことで、学会組織票の集票力が低下するとみられます。選挙基盤の弱い自民党議員は特に、新たな顔で選挙をやってほしいと願っていますよ」(前出・永田町関係者)
もはや「終わり」を待つのみの暗黒クソメガネ政権に、光が差す気配は全くない。
●岸田首相が池田大作氏弔問で政治不信深まる 11/23
時事通信は11月20日、「岸田首相弔意、政教分離で波紋 政府『前ローマ教皇にも』 池田氏死去」の記事を配信した。11月15日、創価学会の池田大作名誉会長が老衰で死去。18日に事実が明らかになると、まず岸田首相はX(旧Twitter)に「深い悲しみにたえません」などと投稿した。
さらに19日、岸田首相は東京・信濃町にある創価学会本部別館を弔問のため訪れた。時事通信は、現職の首相が学会施設を訪れるのは《異例》と指摘。池田氏が学会を支持母体とする公明党の創立者であることから、《連立政権を組む同党に配慮したとみられる》と伝えた。
ところが岸田首相の行動を、政教分離の観点から問題視する意見が相次いだ。例えば18日のコメントは「内閣総理大臣」と「自民党総裁」の肩書で出された。19日の弔問も首相としての行動だったのは、時事通信が報じた通りだ。
特にSNSでは批判が殺到。時事通信も記事で《政教分離と関連付けて疑問視する意見が続出》と紹介し、ネット上における岸田首相の“炎上”を、ニュース価値が高いと判断したことを伺わせた。それではSNSがどんな状況なのか、具体的にXからいくつかのポストをご紹介しよう。
《政教分離の原則をなげ捨ててるじゃん》、《政教分離できずに脊髄反射でポストする総理の政治力低過ぎ》、《政教分離を無視して、誰に向かってアピールしたいのでしょうか》、《政教分離のはずなのに、選挙協力してもらったからですか? 》……。
「創価学会は憲法違反」
政府は火消しに躍起となった。松野博一官房長官は20日の記者会見で、岸田首相がXに投稿を行ったのは《個人として哀悼の意を表するため》と説明。他にも宗教団体幹部の死去に伴ってコメントを出した具体例として前ローマ教皇ベネディクト16世を挙げた。
だが、この“釈明”にもXでは異論が相次いだ。例えば「岸田首相は個人として弔意を示した」との説明には、《【内閣総理大臣 岸田文雄】って長い名前の個人はいないよ》と揶揄。
ベネディクト16世の名前が出たことには、《ベネディクト16世名誉教皇と創価学会池田大作名誉会長を同列にするの? 》、《大川隆法さんが亡くなられた時は何も言わなかったよな? 》──といった具合だ。
さて、先に紹介した投稿以上に、厳しく創価学会や公明党を批判したコメントをご紹介しよう。ひょっとすると、かなりの方々が「まさに正論」と頷かれるかもしれない。
《一つのポイントは憲法第二〇条。二〇条には、(信教の自由の保障と同時に)いかなる宗教団体も政治上の権力を行使してはならない、とありますが、創価学会はまさにこれに触れている状況にあるのです》
《日本の議員内閣制の場合、政治権力の最終決定権は、総理ではなく各大臣にあるんです。各省の決済は大臣で最終決済でしょう。それが池田大作の子分になっちゃっているんです。政治権力を行使する大臣が、池田氏の完全な支配下にある(略)それは憲法違反の状況なんですよ。これだけで内閣不信任の理由になると思いますよ》
政教一致の政権
発言の主は誰なのか。岸田政権を批判する立憲民主党や日本維新の会の議員だろうか。いや、それは違う。あろうことか当時は自民党の衆議院議員だった、亀井静香氏が週刊新潮の取材に応じて語ったコメントなのだ。
亀井氏が、なぜこれほど創価学会や公明党を糾弾していたのか、今ではピンとこない方もいるだろう。ベテランの政治記者が解説する。
「亀井さんが上記の発言を週刊新潮に対して行ったのは1994年5月のことで、当時は羽田孜さんが首相でした。与党は非自民・非共産8党派という連立政権だったので、公明党は与党だったのに対し、自民党は野党でした。つまり自民党と公明党は敵対関係にあり、自民党の国会議員は公然と公明党や創価学会を批判していたのです」
振り返れば、1993年7月の衆議院議員選挙で自民党は過半数割れに追い込まれた。8月に細川護熙氏が首相に就任すると、自民党は「憲法20条を考える会」という勉強会を発足させた。創価学会を支持母体に持つ公明党が連立政権に参加している以上、細川内閣は政教分離ではなく政教一致という批判を行った。
“反創価学会キャンペーン”
「憲法20条を考える会」の初代会長は亀井氏。96年に亀井氏は入閣したため、会長職は白川勝彦氏が引き継いだ。
参加した国会議員は約50人。幹事や顧問には、野中広務氏や石原慎太郎氏も名を連ねた。2人とも“反公明・反学会”の立場を鮮明にしていたことで知られる。今となっては興味深いが、10人を超える副代表には麻生太郎氏、9人の事務局には安倍晋三氏の名前も記載されていた。
「この『憲法20条を考える会』を母体として、1994年5月に『四月会』が誕生しました。創価学会に批判的な宗教法人や学識者が中心メンバーでした。設立総会には自民党総裁だった河野洋平氏、社会党委員長だった村山富市氏、新党さきがけの代表だった武村正義氏が出席し、大きな注目を集めました」(同・記者)
自民党は「憲法20条を考える会」や「四月会」における議論も参考にし、【1】創価学会の税金問題、【2】政教一致の問題、【3】欧州の創価学会インタナショナル(SGI)など、海外組織への送金問題──などを問題視した。
そして自民党の機関誌「自由新報」で“反創価学会キャンペーン”を展開し、国会でも池田大作氏の証人喚問を求めるなど強硬姿勢で臨んだ。
自民党の“変節”
先に亀井氏が週刊新潮の取材に「大臣が池田大作の子分になっている」と問題視していたことをご紹介したが、これは羽田内閣の顔ぶれを踏まえての発言だった。21の閣僚ポストのうち、浜四津敏子氏など6人が公明党の議員だったのだ。
94年6月に羽田内閣は総辞職。すると社会党が連立を離脱し、「自社さ」連立による村山政権が誕生した。「憲法20条を考える会」や「四月会」が自民党の政権奪取に大きな役割を果たしたのは間違いない。
亀井氏は村山政権が誕生した際も週刊新潮の取材に応じ、改めて公明党と学会を厳しく批判した。
《羽田政権では何と三分の一の大臣が池田大作の子分だったわけですが、大統領制のアメリカと違って議院内閣制の日本では最終決定権は大臣にある。言ってみれば、一宗教団体が国政を牛耳っていたようなものです》
ところが1998年の参議院議員選挙で自民党は大幅に議席を減らしてしまう。橋本龍太郎内閣は総辞職し、小渕恵三内閣が発足。政権基盤が弱体化していたことから、まず自由党と連立を組み、さらに公明党も参加した。こうして現在にまで至る「自公連立政権」が誕生したわけだ。
政治不信の元凶
「自民党は、なりふり構わず政権を取り返しました。その際、党幹部は公明党に謝罪し、反創価学会キャンペーンを終わらせてしまったのです。以来、自民党の議員が学会や公明党の政教一致問題を指摘することはなくなりました。今回の岸田首相による弔問は、長きに渡る連立政権に対する感謝の意を表したようなものです。結局、与党に返り咲くためなら、公明党と学会の政教一致問題など、どうでもよかったのです。今でも自公連立の枠組みに釈然としない想いを抱いている有権者は存在するでしょうし、実際、SNS上では自公連立を野合と批判する投稿は少なくありません。日本において政治不信が加速している元凶の1つと言えるでしょう」(同・記者)
●石破氏、岸田総理に苦言 「何をやりたいのか分からない」 11/23
自民党の石破元幹事長は東京都内で講演し、岸田総理大臣は「何をやりたいのかよく分からない」と苦言を呈した上で明確に国民に考えを伝えるべきだと指摘しました。
「何がやりたいの、ということがよく分からない。総理はあるんでしょう、きっと。何をおやりになりたいんですかっていうことをもっとクリアに国民に正面から語るということが必要で、支持率が低いことそのものが問題だと私は思っておりません」(石破元幹事長)
その上で、総理大臣指名選挙で「『岸田文雄』と書いた責任は負わねばならない」と述べ、引き続き政権を支える考えを示しました。また、2024年秋の自民党総裁選挙に出馬する意欲について問われると「ないと言うと嘘になる。状況によってはだ」と含みを残しました。
●岸田首相が開けた政権崩壊への「パンドラの箱」 11/23
岸田文雄首相が「絶体絶命の大ピンチ」(自民長老)を迎えている。「増税メガネ」に端を発した“メガネ騒動”の果ての減税への「国民総スカン」状態に、「超お粗末な理由」(閣僚経験者)での政務3役3連続辞任も重なり、内閣支持率下落が“底なし沼”になったからだ。
これに連動したような高市早苗経済安保相の「決起」を始めとする自民党内の反岸田勢力の胎動と、財務省や検察の政権からの離反、さらに創価学会の池田大作名誉会長の死去も絡み、「政権崩壊への“パンドラの箱”が開いた状況」(同)に。これを受け、週刊誌など多くのメディアが「首相の早期退陣」と「ポスト岸田候補の品定め」を競い合うなど、永田町はまさに「政権崩壊前夜」の様相となりつつある。
“底なし沼”の支持率下落
臨時国会が中盤を迎えた段階で各種メディアが実施した世論調査では、岸田内閣の支持率が2012年末の自民党政権復帰以来の「最低・最悪の数字」(アナリスト)となった。ほとんどの調査で内閣支持率は2割台まで落ち込み、不支持率は7割近くに達するありさまだ。
しかも、これに連動するように自民党支持率も下落傾向が際立ち、唯一の対面調査となる時事通信調査では内閣支持率21.3%―自民支持率19.1%にまで落ち込んだ。この数値は、故青木幹雄元自民党参院議員会長が唱えた「政権の寿命は1年以内」とする、いわゆる「青木の法則」に当てはまる。
岸田首相肝いりの超大型補正予算案の国会審議が始まった20日も、朝から首相官邸や自民党の幹部らの間では、与野党論戦そっちのけで週末の世論調査の話題ばかりに。時事通信だけでなく、朝日新聞25%、毎日新聞21%、読売新聞24%など大手紙の調査でも軒並み過去最低の支持率を記録したからだ。
これに対し、岸田首相は直前までアメリカ・サンフランシスコでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席し、習近平中国国家主席との日中首脳会談を実現するなど、岸田外交を内外にアピールすることでの態勢立て直しに躍起となった。しかし、結果的には「支持率下落の歯止めにはならなかった」(官邸筋)のが実態だ。
岸田首相周辺も「首相がこだわった『減税』が批判のキーワードになり、いくらあがいても逆風は収まらない」(官邸筋)とうなだれるばかり。こうした状況について、自民党中枢の1人の森山裕総務会長も21日の記者会見で、「非常に危機感を持って受け止めている」としたうえで「今は党を挙げて岸田首相をしっかり支え、信頼回復に全党で取り組んでいくことが大事だ」と厳しい表情で繰り返した。
岸田首相への逆風が、自民党そのものへの逆風に
多くの世論調査をみると、岸田首相が「適材適所」を強調してきた政務3役で、職責に絡んだ辞任ドミノが起きたことについて、大多数が「首相の任命責任は重大」と受け止めている。さらに岸田首相が打ち出した所得減税や現金給付も「評価しない」が平均で6割以上にとなり、自民党内からも「1年限定での税金の還元という発想自体が『馬鹿にしている』と国民を怒らせた」との指摘が相次ぐ。
さらに「岸田首相への逆風が、自民党そのものへの逆風になりつつある」(麻生派若手)との不安も広がり、党有力幹部も「世論全体が『岸田さんを支持する』と言いにくい空気になっている」と天を仰ぐ。
そうした状況に追い打ちをかけたのが、自民党5派閥の政治団体が政治資金パーティーの収入を政治資金収支報告書に過少記載したとする告発状をうけての東京地検特捜部の捜査だ。各メディアは同特捜部が各派閥の担当者に任意の事情聴取を進めていると報じ、21日から始まった衆院予算委で泉健太立憲民主代表を先頭に「各派閥の収入の不記載は合計4000万円を超える」と指摘し、自民党総裁で岸田派会長でもある岸田首相に対して説明を求めた。
これに対し岸田首相は「岸田派の政治資金収支報告書の訂正」を認めるなど、防戦一方となり、野党側は「閣僚の中に収支報告の責任者となる派閥の事務総長や経験者がいる」として茂木派事務総長の新藤義孝経済再生担当相、安倍派の元事務総長の松野博一官房長官と西村康稔経済産業相に対して「会計担当者から相談を受けているかどうか」などをただしたが、新藤、松野、西村3氏は「政府にいる立場としてお答えは控える」の一点張りでかわした。
これに怒りを隠せない立憲民主は、22日午前の衆院予算委前の理事会で激しく抵抗、野党側が不記載の金額などを明示するよう要求したが、自民は拒否し、結局、岸田首相が委員会の冒頭に発言することで折り合った。これを受け岸田首相は各派で政治資金収支報告書の訂正をしていると強調した上で、「適切に説明を速やかに行ってもらうよう茂木敏充幹事長に指示した」と答弁したが、野党側はなお追及を続ける構えだ。
与党内には今回の検察当局の動きについて「早期の政権崩壊を見越して、検察が独自に動き出した。減税の原資は赤字国債だと主張した財務省も合わせて、明らかに政権離反の動きにみえる」(公明党幹部)との指摘も出ており、官邸サイドも深刻さを隠せない。
意気盛んな高市氏、菅・二階両氏もうごめく
そうした中、民放テレビ番組などで次期総裁選について「戦わせていただく」と明言している高市経済安保相は、15日に自らの勉強会の初会合を行って党内から批判された。しかし高市氏は19日に自身のX(旧ツイッター)を更新し、「現職閣僚が担務外の政策を同僚議員と一緒に勉強する事の何が悪いのか、意味が分からん」などと反論するなど意気盛んだ。
この高市氏の動きと連動するように、菅義偉前首相と二階俊博元幹事長も9日に森山総務会長を交えて密談。二階派関係者によるとこの席で二階氏は「手のひらをひっくり返す素振りを見せながら『徹底的にやるぞ』とうそぶいた」とされる。
さらに菅氏もこの席で首相批判を繰り返したうえで、各世論調査でポスト岸田候補の上位に並ぶ石破茂元幹事長、河野太郎行革担当相、小泉進次郎元環境相のいわゆる「小石河連合」との連携もほのめかしたといわれる。
こうした現状は「党内の岸田包囲網の広がり」(岸田派幹部)だが、その最中の池田大作氏の死去も岸田政権を揺さぶる要因となった。創価学会は18日、「池田氏が15日夜に新宿区の居宅で老衰のため亡くなった」と発表したが、この18日は創価学会の創立記念日でもあり、機関紙の聖教新聞はお祝いムードの報道があふれていただけに、SNSを中心に違和感を指摘する声が相次いだからだ。
これに対し、学会関係者は「創立記念日にわざわざ訃報を伝えることは学会側にメリットがなく、意図的に発表を3日待ったということはありえない」とし、学会の内部では池田氏の存在がすでに過去の人になっていることをにじませた。
池田氏死去で「自公協力弱体化」も
ただ、池田氏の訃報を受けて岸田首相が19日夜、東京都新宿区の創価学会本部を自民党総裁として弔問し、原田稔会長や池田氏の長男、博正主任副会長と面会したことも、波紋を広げた。SNS上では憲法が定める政教分離と絡めて疑問視する意見が相次ぎ、松野官房長官が20日の記者会見で「個人としての弔意で問題はない」と釈明する事態となった。
こうした状況を予測したかのように、21日発売の週刊文春は「池田大作(創価学会名誉会長)“怪物”の正体」という特集記事を掲載。その中で「公明票への影響は『マイナス200万票』の衝撃」としたことも政権を揺さぶった。
そもそも、直近の国政選挙での公明党の得票は最盛期の約3割減ともなる600万票余まで落ち込んでいる。それがさらに200万票も減るとなれば「自公選挙協力の弱体化を露呈する」ことは明らかだ。特に、「平和を訴え続けた池田氏に共鳴した学会員たちが、自民党の保守・右傾化に愛想をつかして投票に行かなければ、首都圏などの自民党候補はバタバタと落選する」(自民選対)という事態を招きかねない。
こうした状況にもかかわらず、岸田首相自身は首脳外交に勤しみ、政権批判にもあえて笑顔を絶やさず「どうする文雄」どころか「とにかく明るい岸田」を演じ続け、この「ミスマッチ」がさらに岸田首相への国民的不信を増幅させるという悪循環に陥っている。
ここにきて永田町では、「解散権を奪われたかにみえる岸田首相が、やけくそでの『七夕選挙』を狙っている」との臆測も飛び交う。「まさに、年末以降の政局は、何でもありの出たとこ勝負」(自民長老)になりつつあるわけだが、「こうした自民内の闇試合が、さらに国民の政治不信をかき立てる」(同)ことだけは間違いなさそうだ。
●立憲民主党・野田氏 世襲多い岸田政権批判「ルパンだって3世までだ」 11/23
立憲民主党の野田佳彦氏は22日の衆院予算委員会で、岸田文雄首相の政治姿勢を批判した。自民党に世襲議員が多すぎるとして、人気アニメ「ルパン三世」を引き合いに「首相は3世で、ジュニア(翔太郎氏)に委ねると4世だ。ルパンだって3世までだ。歌舞伎役者じゃないんだから」と述べた。
現閣僚の約半数も世襲だとして「父親や祖父の顔が思い浮かぶ。適材が世襲ばかりなのは異常な事態だ」と指摘。首相は「国民が幅広く有能な人材を選べる制度や仕組みをつくる努力は、絶えず行わなければならない」と語った。
野田氏は、北朝鮮の軍事偵察衛星打ち上げに備えた自衛隊への破壊措置命令が続く中、首相は政治空白をつくる衆院解散風を繰り返し吹かせたと指摘。「危機管理より政局を優先してきたのは残念だ」と非難した。首相は「先送りできない課題に一意専心取り組むとの発言を繰り返してきた」と反論した。  
●内閣支持率“危険水域” 岸田政権に3つの逆風 11/23
岸田内閣の支持率の低下が止まりません。週末に行われた報道各社の世論調査の結果は、軒並み20%台で過去最低を更新しました。こうしたなか、自民党の5つの派閥に対して、過少申告の疑いで東京地検特捜部が任意で事情を聴いていることが明らかになるなど、新たに3つの逆風が吹き荒れています。
週末に行われた報道各社の世論調査で内閣支持率が軒並み危険水域とも言われる20%台となった岸田政権。いずれの調査でも政権発足以来、過去最低を更新しました。
こうした中、審議入りしたのは、経済対策の財源の裏付けとなる政府の補正予算案です。経済対策に盛り込まれた所得税などの減税について、岸田総理は「国民から見れば、新型コロナウイルス禍の際に納めた税金が戻ってくる。還元そのもの」と減税の意義を強調しました。
ただ国民に還元されてもいいはずの経済対策は、かえって支持率下落に拍車をかけました。
「国民の皆さんに伝わっていない。従ってこれが今度は心に響かない」(鈴木財務大臣)
支持率低迷の中で、更なる逆風となるかと懸念されているのが、「創価学会」池田大作名誉会長の死去です。創価学会は、自民党と連立を組む公明党の支持母体で、創価学会の集票力を背景に自公の選挙協力が定着しています。その得票数は1小選挙区あたり2万票とも言われ、多くの自民党議員を支えてきました。
ただ、近年は学会員の高齢化から、集票力の低下も指摘されていて、そこに創価学会の象徴的な存在だった池田名誉会長の死が更なる影響を与えかねないという懸念もあるのです。
創価学会の本部がある信濃町周辺に集まっていた学会員たちは「毎月読書会があって本(人間革命)を買った。(池田大作名誉会長は)私の兄のような何でも相談したい感じ。(創価学会の結束力は)自信がなくなっちゃったような感じ」「覚悟はしていた。後継者も作られているので、これで揺らぐということはないと思う」と話します。
不安の声も上がる中、国会で開かれた公明党の会合で山口代表の口から語られたの「これからの公明党はどうなるのかといろいろな声もあるかもしれない。名誉会長から示された立党精神。『大衆とともに語り、大衆のために戦い、大衆の中に死んでいく』。これを変わらぬ原点として、永遠に守り抜きたいと思うが、皆さんいかがか」との言葉でした。
こうした中、政治と金を巡る2つ目の逆風が吹いています。
問題となっているのは自民党の5つの派閥の金について。岸田総理が率いる宏池会も含まれます。政治資金収支報告書にパーティー券収入合わせて4000万円分が記載されていない疑いで、告発を受けています。
「それぞれの政治団体が責任を持って点検し、適切に対応するべきもの」(岸田総理)
一方、思わぬところから3つ目の逆風が。
東京五輪で、招致推進本部長を務めた馳浩石川県知事が官房機密費で、IOC(国際オリンピック委員会)の委員およそ100人への贈答品として、1冊20万円でアルバムを制作したと発言したのです。その後、発言を撤回しましたが、事実関係を巡り、岸田政権に飛び火しかねない事態になっています。
「内閣官房報償費(機密費)は、国の機密保持上、使途などを明らかにできない」(松野官房長官)
●岸田文雄首相に日本医師会側から1400万円献金 医療政策を左右? 11/23
岸田文雄首相が日本医師会(日医)の政治団体から高額献金を受けているとの報道を受け、ネット上では怒りのコメントが殺到した。
日本維新の会の青柳仁士議員が22日の衆院予算委員会で、「日本医師連盟(日医連)」からの高額献金により、政府の医療政策がゆがめられていないかを追及。首相は「献金によって政策が変わることはあってはならない」と政策判断への影響を否定した。
日医連は2021年、首相に1400万円、武見敬三厚生労働相には1100万円を献金。青柳氏は「医療業界が嫌がるような改革が実行できない」と今後は受け取らないよう求めたが、首相は直接の回答は避けた。
内閣支持率が20%台に低迷する中で、国民の感情を逆なでするような「政治とカネ」の問題の浮上にネットも紛糾。X(旧ツイッター)には、「ゴリゴリの利権」「あってはならないって⁉ いつも他人事だなぁ」「賄賂メガネ??」などの声が殺到。「何にもメリットが無かったら1400万円もの献金なんかするわけないじゃない」との指摘や、「変わることはないよね 元々医師会寄りだもん」と皮肉るコメントも見られた。
日医は、医療サービスの対価である診療報酬を巡り、医療従事者の賃上げを理由に、24年度の改定で引き上るよう求めている。
●医師会から首相&厚労相に2500万円の高額献金 11/23
岸田文雄首相に1400万円、武見敬三厚生労働大臣に1100万円。2021年、日本医師会(日医)の政治団体「日本医師連盟(日医連)」が、2人にパーティ券購入などを含めた、計2500万円の巨額献金をしていたことが、11月22日の衆院予算委員会で明らかになった。
「日本維新の会の青柳仁士議員が質問しました。この献金によって、医療政策が医師会に有利になることが懸念されますが、首相は青柳議員の質問に『献金によって政策が変わることはあってはならない』と否定しました」(政治担当記者)
しかし、厚労大臣に任命されたときから、武見氏は「医師会のスポークスマン的立場」(永田町関係者)とも言われていた。
「武見大臣の父親は、25年にわたり日医の会長を務め、『日医のドン』とも呼ばれた故・武見太郎氏です。『ケンカ太郎』とあだ名されるほど熱量が高い方で、医師会は診療報酬改定などでは、カネと票をチラつかせながら政権政党の自民党に影響力を保ってきました。武見議員自身も、日医連などから支援を受けている、いわば“お抱え議員”です。
9月14日の大臣就任会見でも、そのことが質問され、大臣は『私はけっして医療関係団体の代弁者ではない』と胸を張りましたが、額面どおりに受け取る有権者はいないんじゃないですか」(自民党関係者)
2024年度は、診療報酬の改定年度である。そのための予算審議が本格化する2023年、武見「大臣」が誕生したのだ。日医は2024年度の改定で、診療報酬の引き上げを要望している。
「しかし、財務省は医療側の収入が多いことから『マイナス改定』を主張しています。もちろん、日医は抵抗するでしょう。武見大臣のもとで『日医寄りの裁定になるのでは』と国民が不安を抱くのも当然です」(前出・政治担当記者)
ニュースサイトのコメント欄にも《素直にただの清らかな心で1千万円単位を献金するわけがない。 何がしかの目的、魂胆がある。受け取る側も相応の見返りをするのが当たり前》《岸田さんはそんな献金では政策が左右されることがないと答弁しているとの記事だが、それだったら医師会はそんなばからしい献金を何故したのか不思議でしょうがない》《献金という名前の賄賂だろうね。政治献金は何かの意図や意思があってのことだろうから日本医師会に不利な政策は出しづらくなることは明白》など、批判の声が多く寄せられていた。
内閣改造人事での「適材適所」を強調する岸田首相だが、誰にとっての「適材適所」なのか――。
●政教分離に誤解も?総理が池田大作氏追悼メッセージ 11/23
創価学会の池田大作名誉会長の死去を受け、岸田総理大臣が弔意を示したことに対して「政教分離の原則」から逸脱しているのではという声が上がっています。
東京・新宿区にある創価学会の本部には半旗が掲げられていました。老衰のため95歳で亡くなった池田大作名誉会長。23日に都内で「創価学会葬」が執り行われ、多くの関係者が参列しました。
その足跡や影響力など連日、報道されるなか、再び議論になっているのが「政教分離」です。
きっかけとなったのは岸田総理の弔意表明と弔問でした。
岸田総理公式HP「池田大作氏の御逝去の報に接し、深い悲しみにたえません。池田氏は、国内外で、平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました」
そして、追悼文の最後には「内閣総理大臣 岸田文雄」と記名。さらに翌19日には「自民党総裁」として、創価学会の本部を弔問に訪れました。
これに対し、政教分離の原則に反するのではないかと批判の声が殺到したのです。政府はあくまでも個人による哀悼の意だと説明。
松野官房長官「公明党の創立者である池田大作氏に対して、個人としての哀悼の意を表するため、弔意を示したものと承知をしています」
SNSでもこれが「政教分離」の原則に反するか否か論争に。
X(旧ツイッター)への投稿:「内閣総理大臣の記名はだめでしょう」「弔問は選挙のため?政権に公明党がいること自体が疑問」「これが駄目なら伊勢神宮参拝も亡くなったローマ法王への弔意もNGでは?」
そもそも政教分離とは、どういうものなのか。
憲法20条には、信教の自由とともに「いかなる宗教団体も国から特権を受け、または政治上の権力を行使してはならない。国、及びその機関は宗教教育その他、いかなる宗教的活動もしてはならない」などと定められています。
それを踏まえ、多くの人が問題点として挙げているのが創価学会が支持母体となっている公明党です。
約60年前の1964年に結党されたのですが、池田氏は公明党と創価学会の関係について、分離されたものと説明していました。
 11/24

 

●岸田内閣“辞任ドミノ”の根底には首相から就活生まで逃れられない宿痾が 11/24
和を大事にする日本人はバランス感覚を重視する。それはビジネスパーソンにとって、利害調整など円滑な業務遂行のためにも必須項目である。しかし、変革やイノベーションが急務の時代において、バランス感覚が阻害要因になっている。岸田内閣の“辞任ドミノ”の根底にある「派閥順送り人事」はその典型だが、バランス感覚の呪縛は日本の隅々に絡みついている。
メッキが剥がれた岸田首相
岸田内閣の支持率が低迷しています。報道各社が実施した11月の世論調査では、軒並み20%台という支持率となり、2021年10月の政権発足以来最低水準となりました。毎日新聞の調査では21%の支持に対し、不支持が74%という結果でした。
岸田首相は10月の所信表明で「経済、経済、経済」と連呼し、「経済に重点を置く」と訴えました。しかし、国民の期待と政策との乖離が目立ち、それが支持率の低下を招いているようです。「経済」ではなく「体裁」ばかり気にしているのではないかと、首相の言葉には虚無感さえ漂います。
岸田氏は自身の強みとして「聞く力」を挙げていました。多種多様な意見を聞き入れて決断するタイプであると自己PRしたのは、バランス感覚を持った人物であると言いたかったのでしょう。日本人の中には、聖徳太子の「和を以て貴しとなす」の精神が息づいており、独断専行型より調整型のリーダーに安心感を覚える傾向があります。岸田氏がバランス感覚を大事にする「いい人」をアピールするのは巧妙な戦術だと思っていました。
それが今や、「聞く力」「バランス感覚」「いい人」アピールのメッキは剥がれています。支持率が示す通り、発足当初の期待感は大きく低下しました。調整型とされる岸田氏の存在は、日本の閉塞感を体現していると感じています。
企業も然りです。新陳代謝や創造的破壊が日本企業の復活に必要だと言われながら、過去の成功体験の思い出に浸るばかりで、なかなか成長軌道に戻れません。
新陳代謝や創造的破壊を平易な言葉で言えば「変革」「イノベーション」です。しかし、残念ながら、実現させることができず、日本経済は長期低迷から脱していません。 
では、なぜ官民挙げて挑戦しているはずの「変革」「イノベーション」が実効性を持たず画餅に終わってきたのでしょうか?
強烈な自己PRから一転、黙り込む就活生
私は、テレビ朝日で経済記者や人事部長として企業から学生まで見てきました。その経験から、課題山積なのに変革が進まない障害の一つは、日本の隅々に染みついている「バランス感覚」にあるのではないかと考えています。
企業が変革に大ナタを振るわなければならないとき、経営者に求められるのは「バランス感覚」ではありません。しかし、そんな企業で調整型の人物がトップに選ばれ、局面を打開できずに終わるケースは往々にしてあります。
個人もバランス感覚の呪縛は根強いものがあります。ひとつエピソードを紹介しましょう。テレビ朝日の人事部長として、私が実際に経験したことです。
毎年の新卒採用で企業は、様々な選考プロセスを経て内定者を決めます。その選考方法の一つに「グループディスカッション」があります。何人かのグループに分けられた応募者が、与えられたテーマについて議論し、より良い合意形成を導くというものです。
ただ、このグループディスカッションについて、かねて私は半信半疑でした。対策マニュアルや要領が学生に浸透していること、協調性を判断するには面接で十分だと考えていたことが理由です。そこで、突破力を持った学生を求めるべく、「トークバトル」という新しい選考を考案し、数年間実施しました。
グループでディスカッションするという点では同じですが、トークバトルでは、あるテーマについて自分の考えがベストだとして最後まで貫き、全員を合理的に納得させるというものです。毎回、事前に通常のグループディスカッションとの違いをくどいほど説明し、始めてもらいました。
するとどうでしょう。それまでの面接で強烈に自己PRしていた学生が、黙り込んでしまうことが少なからずありました。議論を見渡すと、当たらず障らずというバランス感覚が充満したグループが多く見られました。
また、こんなことを言い出すケースに何度も遭遇しました。
「AさんとBさんの案を融合しましょう」
「AさんとBさんの案を融合しましょう」
「一人ずつ、他者の案の良い点を挙げましょう」
始める前に「合意形成が目的ではない」「突破力が大事である」と丁寧にルールを説明したにもかかわらず、です。やはり、日本人は同調に安堵を覚え、集団の和を重んじる気質なのだと実感しました。
期待していた突破力を発揮できる学生は一定程度いることは確認できたものの、それまでの選考で見せていた激しい自己アピールの姿とは打って変わって、議論を丸く収めようとする学生は想像以上に多かったのです。結果的に、「選考」という意味で有効ではありましたが、バランスを重視しようする意識がここまで働いているのかと痛感しました。
自分の意見を合理的に説明し、他者に納得させる。これはある種のプレゼンテーションです。最近の学生は、パソコンで制作したスライドを使って説明する技術は、上の世代に比べると秀でているはずです。本来はもっとうまく人を説得できるはずなのに、バランス感覚がその邪魔をしているのです。
日本人は幼少期から、仲間、チーム、組織の和を大事にすることを叩き込まれ、バランス感覚が鍛えられます。そして、和を乱すような発言や振る舞いは、世間から笑われたり、敬遠されたりすると戒められます。
企業社会でも「バランス感覚」という言葉は、どちらかというと褒め言葉として使われ、それを持った人に安心感を抱く傾向がないでしょうか。利害関係の対立を乗り越えて、難度の高い調整をすることができる人は、バランス感覚があると評価されます。
スティーブ・ジョブズが遺した言葉
しかし、AI(人工知能)などテクノロジーの進化が著しい社会の中で、旧来の価値観の中でバランス感覚に依存し過ぎるのは危ういことです。バランス感覚は冒険やリスクと対極にあるものなので、リスクを負ってイノベーションを追求することが求められるご時世には、成長の阻害要因になる可能性があるからです。
変革をもたらすためには、前例踏襲からの脱却、既成概念の否定が必要です。そうした時、全体の調和を図るよりも、新しいアイディアやチャレンジを尊重するべきです。なのに、バランス感覚がどこからともなく入り込んで曖昧になり、常識的な線に落ち着く・・・そういうことはよくあるのではないでしょうか。 
まるで「反復横跳び」をしているかのようです。左右に動きますが、結局、中心線に戻るだけです。前に進むことはありません。
自分が出したアイデアを少なくとも1回は人に笑われるようでなければ独創的な発想とは言えない——。
これは、米マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏の言葉です。常識的な発想では、たいした結果は生まれないということです。米アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏も米スタンフォード大学の卒業生に「Stay hungry,Stay foolish」と語りかけましたが、これも「常識にとらわれるな」という趣旨です。
イノベーションを起こした先駆者たちは、人は常識に囚われやすいことを注意喚起し、常識が邪魔になると訴えています。常識的な着地点に導くバランス感覚も同じようにイノベーションの阻害要因になると言えます。
スタートアップを成長させるために
内閣官房の新しい資本主義実現本部事務局が2022年10月に発表した「スタートアップに関する基礎資料集」によると、日本の開業率と廃業率はアメリカやヨーロッパ主要国と比べて、最も低いレベルで推移しています。経済社会の新陳代謝は進まず、起業家も少ないということです。
それでも、若い世代で起業したい人は増えています。東京商工リサーチによると、その背景に終身雇用制度の崩壊や副業の解禁があり、政府の後押しも大きいとのことです。日本のスタートアップの資金調達額は、2013年に877億円でしたが、2022年は8774億円と約10倍に伸びています。そして、2027年に10兆円に伸ばす計画を政府は掲げています。
岸田首相は9月に内閣改造を実施しましたが、副大臣2人、政務官1人が相次いで辞任しました。適材適所ではなく、自民党の派閥順送りの力学においてバランスを取った人事だったということです。岸田首相のバランス感覚が通用するのは、旧態依然の永田町の世界だけかもしれません。若い世代は、改革を阻害する「バランス感覚」にとらわれず、起業家精神を発揮して、新しい価値を創造するゲームチェンジャーになってほしいものです。
●60年超運転へ 岸田政権の原子力政策大転換 : 揺らぐ「推進」と「規制」 11/24
原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁の長官、次長、原子力規制技監のトップ3全員が経済産業省出身者になり、同省と原子力規制庁の蜜月は深まったように見える。史上最悪とも言われる東京電力福島第1原発事故への反省から原子力の推進と規制を分離するために規制委が発足したのだが、今、推進と規制は癒着しつつあるのではないか。
「可能な限り低減」から「最大限活用」へ
岸田文雄内閣は2023年2月10日、「GX(グリーン・トランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」を閣議決定し、原子力政策を大転換した。
安倍晋三内閣、菅義偉内閣は、原子力発電所の再稼働は進めつつも、原発依存度を「可能な限り低減する」とし、原発の新増設やリプレース(建て替え)は現時点では想定していないとの立場をとってきた。
これに対しGX基本方針は、「エネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い」原子力を「最大限活用する」とし、次世代革新炉の開発・建設に取り組み、まずは廃炉を決定した原発の敷地内での建て替えから進めていくことを明記した。
また、福島第1原発事故後、新規制基準に基づく審査や、裁判所からの仮処分命令などにより原発が停止していた期間を運転期間から除くことで、「原則40年、最長60年」と定められていた原発の寿命を延ばすことも決められた。この基本方針に基づく「GX脱炭素電源法」は、5月31日に成立する。
福島第1原発事故の傷は未だ癒えてはいない。最長40年とされた廃炉作業は、約880トンある燃料デブリの取り出しができず、完了の見通しが立たない。2023年になっても、7市町村にまたがる帰還困難区域の総面積は337平方キロメートルに及び、福島県からの避難者は2万6808人に上る(8月1日現在。福島県発表)。8月24日からは、地元漁業者の反対を押し切って、放射性物資のトリチウムを含むALPS処理水の海洋放出が開始された。原発の安全性への懸念が依然として強い中、なぜ原子力政策は転換されたのであろうか。
政策転換に慎重だった安倍・菅内閣
原発の発電コストは、バックエンド費用(使用済燃料再処理費用、放射性廃棄物処分費用、廃炉費用)や事故リスク対応費用、さらに建設費と安全対策費が福島第1原発事故後に大幅に上昇したことなどを勘案すると、低いとは言えない。しかし既存の原発については、燃料費だけを考えると発電コストは低く、電気料金の抑制につながる。また原発は、停止期間中も高い維持管理費がかかる。
このため電力会社、産業界、経済産業省は、新規制基準に基づく審査で停止した原発の再稼働を強く要請してきた。また安倍内閣のときから、発電コストの抑制や電力の安定供給、エネルギー自給率の向上、気候変動対策としての脱炭素化を理由に、今後も原発は必要だとして、原発の新増設をエネルギー基本計画に明記するよう求めてきた。原発が新設されなければ、原発に関わる専門人材や技術が失われていくからである。
しかし首相官邸は、内閣支持率への悪影響を危惧して、原発の新増設やリプレース(建て替え)は現時点では想定していないとの立場をとり続けた。朝日新聞の世論調査では、原発の再稼働に賛成が3割前後、反対が5〜6割で推移するなど、世論は原発に厳しい目を向けてきたからである。
菅内閣も、この方針を踏襲する。菅首相は、脱原発派の河野太郎や小泉進次郎を閣僚に登用し、再生可能エネルギーの推進に力を入れた。岸田首相も、政権発足当初は原子力政策の転換に「そこまで意欲的ではなかった」という。岸田は自著で、「将来的には、洋上風力、地熱、太陽光など再生可能エネルギーを主力電源化し、原発への依存度は下げていくべきだというのが私の考えです」と記していた。
エネルギー価格高騰・円安が推進派の神風に
ところが、原発推進派に「神風」が吹く。エネルギー危機の到来である。2021年に入ると、欧米諸国では新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着き、エネルギーの消費量が増えた。これに生産が追いつかず、エネルギー価格は上がり始める。消費も活発化し、物価が高騰したため、各国は利上げに踏み切る。それに対し日本は異次元緩和を続けたことから、円安が進み、円建てでの石油・天然ガス価格が一層上昇した。さらに2022年2月24日にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始したことで、資源の供給不安からエネルギー価格が急騰し、電気料金は大きく値上がりする。
他方、気候変動対策として脱炭素化が求められており、火力発電所の新規建設が進まず、効率の悪い老朽火力の廃止も相次いだ。このため、日本の電力供給力は低下し、2022年3月には東京電力管内と東北電力管内で「電力需給ひっ迫警報」が初めて出されるなど、大規模停電のリスクが高まった。
電気料金の値上がりと電力不足に直面して、世論も変化し始める。2022年2月の朝日新聞の世論調査では、原発再稼働への反対が5割を下回った。岸田首相の政務秘書官・嶋田隆は、経済産業省の元事務次官で、実質国有化後の東京電力の取締役も務めた。嶋田は秘書官就任直後に「リプレースには、この政権で手をつけてもいい」と語っていた。経済産業省内では「今決めるしかない」との声が広がり、岸田も、「古いものを使い続けるより、新しくした方がよい」と、原発の新増設、建て替えを推進するようになる。
2022年7月10日の参議院選挙に勝利し、衆議院の解散がなければ国政選挙がない「黄金の3年」を手に入れた岸田は、7月27日に「GX実行会議」の初会合を開き、原発の新増設や運転期間延長に動き出す。原発の運転期間延長や新規建設の効果が出るのは10年以上先のことで、現下のエネルギー危機の解決にはつながらない。しかし、それが錦の御旗として用いられたのである。
このように原子力政策の大転換は、もともと政策転換を図っていた産業界や電力会社、経済産業省が、エネルギー危機を利用して実現したものである。それでは、なぜ岸田は安倍や菅とは異なり、内閣支持率の低下につながりかねない原子力政策の転換に踏み切ったのであろうか。
「安倍さんもやれなかったことをやった」
岸田は首相就任以前から「やりたいことが見えない」と批判されていた。その岸田が2022年12月に、原子力政策の大転換に加えて、安保関連3文書を改定して敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を決めるという安全保障政策の大転換にも打って出た。
岸田は周囲に「俺は安倍さんもやれなかったことをやったんだ」と高揚感を隠しきれない様子で語っていたという。さらに岸田は、2023年1月4日の記者会見で、岸田政権の歴史的役割として、「これ以上先送りできない課題に正面から愚直に挑戦し、一つひとつ答えを出していく」と述べ、「異次元の少子化対策」を掲げた。
要するに岸田は、やりたいことがあって首相になったわけではなく、首相になることが目的であった。そこで「これ以上先送りできない」困難な課題に取り組み、政府・自民党内での評価を得て政権の求心力を高めることで、政権の長期化を図ろうとしていると考えられる。
核燃サイクルの破綻、最終処分場未定という難題
原子力政策の大転換には、多くの課題が指摘されている。原発の新規建設については、はたして現実的なのか、疑う声が多い。次世代革新炉の中では、欧州の最新型原発に取り入れられている革新軽水炉が有望視されているが、建設費は1兆円規模になると見られている。地域住民の反発も予想される。また、原発の運転期間の実質的延長については、設計の古さや設備の劣化に対して実効性のある安全規制が可能なのか、懸念の声が上がっている。
従来から原発を推進することには、六ヶ所村の使用済核燃料再処理工場の完成が見込めないなど、核燃料サイクル政策が破綻していることや、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場が決まっていないことから、批判がなされており、こうした問題は解決されていない。また原発事故時の避難計画を策定できていない周辺自治体も多く、避難計画が策定されていたとしても、複合災害が発生した場合に住民の避難が本当に可能なのか、その実効性が疑われている。さらにロシアがウクライナの原発を攻撃して占拠したことから、原発が軍事攻撃やテロの標的になる可能性が現実味を帯びて指摘されるようになった。
原発の再稼働も十分には進んでいない。与党や経済界からは、審査が長期化していることについて、原子力規制委員会への不満の声が上がっている。だが、審査が長期化している原発は、自然条件が厳しい場所にあるものが多く、電力会社が災害時の原発の安全性を示せないことが、再稼働が進まない原因である。電力会社が提出した資料の間違いが指摘されることも多い。
揺らぐ推進と規制の分離
さらに問題なのは、運転期間の実質的延長の決定にあたり、原子力規制委員会の独立性に疑いが持たれたことである。2022年7月1日付で原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁の長官、次長、原子力規制技監のトップ3全員が経済産業省出身者になり、経済産業省と原子力規制庁の蜜月は深まったように見える。その後のGX脱炭素電源法の策定過程では、原子力規制委員長への報告なしに、原子力規制庁と経済産業省資源エネルギー庁の担当者が、法改正の検討を重ねていたことが発覚している。
2023年2月13日に原子力規制委員会は、所管する原子炉等規制法から運転期間の規定を削除して経済産業省所管の電気事業法に移す法改正案を審議する。石渡明委員が「安全側への改変とは言えない」と反対する中、異例の多数決をとり、4対1で法改正案を了承した。ところが賛成した複数の委員からも、「外から定められた締めきりを守らねばならないという感じでせかされて議論してきた」「(60年超の審査手法など)重要な指摘が後回しになったのは違和感がある」といった不満の声が上がった。この決定は、法改正を急ぐ政府が原子力規制委員会に圧力をかけた結果と見られている。
岸田内閣は原子力を最大限活用するため、原発事故の教訓から採用された「推進と規制の分離」を揺るがしている。だが、これにより安全規制への信頼が損なわれれば、原発の活用はかえって困難になるであろう。
●植田日銀と岸田政権の減税・解散、思惑が交差する来年の緩和修正 11/24
円安はすでにピークを越えたという見方が広がっている。米連邦準備理事会(FRB)の利上げはもう打ち止めになり、2024年のどこで利下げに転じるかが焦点に変わっている。
米債務上限問題も、11月17日の期限の間際でつなぎ法案が成立し、一部の政府機関について2024年1月19日、それ以外は2月2日まで閉鎖を回避できることになった。これは米金利低下要因である。また、それ以外のいくつかの要因が重なって、円安が修正されつつある。
裏目に出た岸田政権の減税
しかし、日本側の要因でみると、まだ根強く円売りの材料があり、それほど急激には円高に振れないのではないか。
第1の理由は、岸田文雄政権が所得減税を軸に経済政策を打ち出したことが裏目に出ている点だ。この苦境から挽回するのは相当に難しい。
内閣支持率が大きく低下していることで、夏場までのように思い切った政策(例えば防衛増税)が打てなくなる。やはり、所得減税で支持率を回復できると読み違えたことが、今後、経済政策で高評価を受けにくい素地をつくってしまった。
岸田首相は、所得減税を実施することの理由付けとして、デフレ脱却のためと説明した。筆者はこの言葉に耳を疑った。6月の所得減税の実施まで日銀のマイナス金利解除が封じられる選択もあるのではないかと感じた。
ならば、岸田首相の経済対策は円安要因となるのではないか。もしも、日銀が微妙に政治的意向を感じ取れば、これまでよりもデフレ脱却に対して慎重なトーンに変わっていくという可能性もある。
未来志向はどこへ行ったか
岸田政権の政策には、これまでも現状維持的な性格が目立っていた。例えば、ガソリンなどの価格維持、電気・ガス代への補助を延長し続けることがそうだ。今回の補正予算でも、4月末まで当面延長する。おそらく、この現状維持はもっと延長されるだろう。
本当は、脱炭素化に向けて、電気自動車(EV)化や産業のエネルギー転換を図るべきだが、化石燃料消費への支援が強い分、そうした構造転換は鈍くなる。電力も原発再稼働がもっと急ピッチで進むかと期待したが、こちらも鈍い。
貿易赤字が改善しにくいことは、構造的な円安要因となる。ガソリン補助金を延長し続けることは、結果的に円安の原因になる。円安はエネルギー価格を押し上げるので、補助金支出を政府が増やすことにつながる。現状維持のための政策は、財政依存を強める悪い循環にはまっていく。
今の日本に必要なものは、現状をより良い未来に変革していく改革志向だ。EV化は、中国、欧州、そして遅れていた米国でも加速しようとしている。日本の自動車メーカーもEV化・電動化にかじを切ろうとしているのに、ガソリン補助金を単純延長するのは、どの方向を向いて政策を決めているのかと不思議に思える。
自動車産業は、日本の輸出の柱であり、世界のマーケットが脱ガソリン車へとシフトしていこうとする中で、日本政府も本来はその流れを後押しするのが望ましいはずだ。
岸田政権は、これまでの円安によって、輸出拡大が十分に進んでいない点にもっと危機感を抱いた方がよい。半導体の復活だけに夢を託すのではなく、もっと幅広い輸出振興に力を尽くすべきだ。
トラス政権の二の舞は避けたい
岸田政権は苦しい手詰まり感に直面している。減税が裏目に出たことが原因だ。支持率アップが狙える外交イベントも当面ない。
目先、大きな実績を得られるかもしれないのは、賃上げである。来春に向けて、今年を大きく上回る春闘の成果が得られれば、少しは支持率を挽回できるだろう。
ところで、賃上げは円安要因であろうか、それとも円高要因であろうか──。
好循環シナリオが実現していくと、日銀の利上げも違和感なく行われる。今回のような大型補正予算を敢えて組まなくても済む。政府が必要以上の財政拡張をしなくなれば、日銀への超低金利に依存しなくて済む。賃上げがしっかり行われることは、円安是正になると考えられる。
筆者は10月中旬に、岸田首相が5兆円規模の所得減税を口にしたときに、以前の英国のトラス政権の「二の舞」になりはしないかとヒヤリとした。10月末に1ドル=151円台まで円安が進んだ。
しかし、その後に米消費者物価指数(CPI)が予想よりも低い伸び率になるなど、米長期金利が低下してドル安・円高へと方向転換した。失策により、円売りが進むようなことになっていない点は、不幸中の幸いだったと思う。
植田総裁の正念場
岸田首相は、日銀に金融緩和の是正をしてほしくないかもしれない。植田和男総裁は、賃上げを確認して、マイナス金利を解除するところまでは歩みを進めたいと考えているだろう。どこまで植田総裁が思い通りの政策運営ができるのかを注目したい。
もしも、岸田首相が年内に衆院を解散をしていれば、来年の緩和解除はやりやすかっただろう。現在は、解散の日程が大きく後ずれしている。岸田首相の自民党総裁任期は2024年9月である。
解散の日程がどこに来るかがわからない中で、植田総裁は2024年のなるべく早いタイミングでマイナス金利解除をしたいはずだ。そう考えると、6月の所得減税をデフレ脱却のために行うという建前がどうにも邪魔になる。
そのハードルをどう跳び越えるかが本当の正念場になる。6月を待って、7─9月に解除をしようとすると、今度はそこで解散の日程と接近してしまう。日銀は苦しい立場である。
●「“結局は票”に無力感」 生長の家総裁が語る政治と宗教の関係 11/24
かつて世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治運動で共闘し、日本最大の右派団体「日本会議」を生み出すもとにもなった宗教法人「生長の家」の谷口雅宣総裁(71)が毎日新聞のインタビューに応じた。政治と宗教との関わりや旧統一教会を巡る一連の動きについて答えた。
旧統一教会を巡る政府・自民党の対応について、谷口氏は「おかしいなというのが一番の印象。自民党は教会側から長年、絶大な支援を受けてきた。『不都合』が起きたので今度は切り捨てようとしているのではないか」と指摘。政府の解散命令請求についても違和感をにじませ、「検討することに反対はしないが、政治の都合で宗教団体をどうにでもできる枠組みにしようとしていないか注視していく」とした。
1960〜80年代は谷口氏の祖父で教団創始者、谷口雅春氏(1893〜1985年)の主導で政治団体「生長の家政治連合」(生政連、64年設立)をつくり、「明治憲法復元」など、右派色の強い政治運動を展開した。3代目の総裁にあたる谷口氏は「当時は東西冷戦のまっただ中。旧統一教会も『反共』を掲げていたので協力関係にあった」と証言する。旧統一教会の教義で日本は「韓国に仕える国家」などとされるが、「あくまで(反共という)同じ政治目標で一つになっていたのであって、互いの教義については触れなかったと思う」と振り返った。
教団として玉置和郎元総務庁長官や「参院のドン」と呼ばれた村上正邦元労相を参院に送り出したが、83年に生政連の活動停止を決め、政治運動から手を引く。当時の自身と玉置氏らとの考えの違いに触れ、「政治家は結局、票になるかどうかしか考えない」という「無力感」を教団が覚えたことが背景にあった、と明かした。
生政連の活動停止を機に、後に「日本会議」(97年設立)の中核となる人々が教団を離れた。日本会議には今も「明治憲法復元」といったことを唱える人もいる。谷口氏は人権に制限をかける明治憲法が「理想的だ、とは必ずしも言えない」と述べ、防衛費倍増による「軍拡」を進める岸田文雄政権については「憲法無視だ」と批判した。
旧統一教会の問題でクローズアップされた宗教と政治。政治権力と一体化した宗教の「堕落」の歴史を振り返り、谷口氏は「政治と近づくと権力が手に入り、お金も入るようになる。それが『うまみ』に映ったとしても、宗教としては一番まずいことなのではないか」と指摘した。
●維新、補正予算案に賛成へ 岸田内閣では初 経済対策と万博を考慮 11/24
日本維新の会は22日、政府の総合経済対策の裏付けとなる今年度補正予算案に賛成することを決めた。
維新は「野党第1党を目指す」とし、政権と一定の距離を置いてきたが、デフレ脱却のための経済対策の必要性を考慮したという。
この日の両院議員総会で、所属議員による多数決で決めた。維新が岸田内閣提出の予算案に賛成するのは初めて。会見した藤田文武幹事長は「デフレ脱却のラストチャンス」としたうえで「現役世代の可処分所得に直接アプローチするべきだ。(政府の)問題意識は一定の評価ができる」と賛成する理由を説明した。
今回の補正予算案は、維新が推進する大阪・関西万博の関連経費も盛り込まれており、反対に回りにくかったとの事情もある。藤田氏は「評価すべきだとの意見もあった」とも語り、維新中堅は「幹部から万博があるから賛成に回ってほしいと説得された」と話す。
補正予算案をめぐっては、与野党が24日に衆院予算委と本会議で採決することで合意。与党などの賛成多数で可決し、参院に送られる見通しだ。
●アベノミクスについて考えていく必要ある=検証必要性で岸田首相 11/24
岸田文雄首相は24日の衆院予算委員会でアベノミクスについて「これまでのありようや、今後何が求められているか考えていく姿勢が必要」と述べた。逢坂誠二委員(立憲)によるアベノミクスの検証が必要ではないかとの質問に対する答弁。
円安・物価高の背景にアベノミクスがあるのではとの質問に対して、首相は、「金融政策の具体的手法は日銀にゆだねないといけない」としつつ「円安の要因は一概に言えないが、そのなかで金融政策が議論に挙げられる」と指摘した。政府としては円安のプラス面活用としてインバウンドや、マイナス面抑制のための物価対策などを進めると強調した。
●前原誠司氏、国民民主党離党報道を否定 11/24
国民民主党の前原誠司代表代行は24日、自身のX(旧ツイッター)を更新し、党が23年度補正予算案に賛成する場合は離党する意向を関係者に伝達したという同日の報道を否定した。
「補正予算の賛否を理由に、重大な政治決断をすることはありません。本人に確認することなく、この様な記事を書くとは。誤報です!(誠)」と投稿した。
国民の玉木雄一郎代表は22日の衆院予算委員会で、ガソリン税を引き下げる「トリガー条項」について、来春以降の凍結解除を岸田政権が決断すれば「補正予算案に賛成してもいい」と提案。これに対し、岸田文雄首相は自民、公明、国民3党による協議の検討を表明した。国民はかねて、連立政権入りも取りざたされるなど、政権との距離感の近さが指摘されている。
一方、前原氏は、政策実現を優先する現実路線の玉木氏に対し「非自民・非共産」の枠組みによる野党共闘による政権交代を目指すとの立場。2人の目指す党の路線は異なる。
前原氏は今年9月の党代表選で玉木氏と戦い、敗れたが、党内融和の観点から、代表選後の人事では前原氏は留任となった。
●減税表明が支持率低下に拍車、日本経済反転へ「決め手」欠く 11/24
岸田文雄内閣の支持率低下が止まらない。所得税減税を打ち出した後に、低下が加速しているところが特徴的だ。物価が上昇する中、減税では生活の不安が消えないと感じる人びとが多いことを示している。世論には選挙目当ての弥縫策と映り、日本経済を反転に導くだけの決め手に欠けると受け止められたことが、政権の浮揚力を失わせていると筆者は考える。
「ゆとりなし」との回答と政策のぶれ
国内メディアの世論調査では、内閣支持率が20%台に低下した結果が続出している。岸田首相が与党内の異論を抑え込んで決断した所得税などの定額減税に対し、評価しないという割合が過半数を占める調査が多く、その理由として「選挙対策に見える」との回答が上位を占めている。
この世論調査の結果は、岸田首相にとって相当にショックだったのではないか。国民に支持されるはずの減税の評判がどうして悪いのか──。それは、これから先に「こども・子育て政策」や防衛費の増強で増税が控えていることを多くの人々が予想しているからだと思われる。
根底には、物価上昇による実質賃金のマイナスと購買力の伸び悩みがある。9月の実質賃金は前年比2.4%低下と18カ月連続のマイナスを記録。日銀の生活意識に関するアンケート調査(9月調査)では、現在の暮らしに「ゆとりがなくなってきた」との回答が57.4%に上った。
そこに岸田首相の政策判断の「ぶれ」とも見える曲折がある。これまで検討を拒んできたガソリン税を一時的に下げる「トリガー条項」の凍結解除について、岸田首相は22日の衆院予算委で「凍結解除も含めて与党と国民民主党で検討したい」と述べた。国内メディアによると、岸田首相はこの後、自民党の萩生田光一政調会長に対し、自民、公明、国民民主3党の政策責任者による協議を行うよう指示した。
岸田政権の目指している日本経済は、どのような姿なのか──。国民が不安に思っても致し方ない状況が表れ出している。こうした中で一人当たり4万円が支給されても、それで消費を増やす人は広がらないとみられる。
今年のGDP、ドイツに抜かれて4位に
現実の経済に目を向けると、世界の中で相対的な地位がじりじりと下がる日本の実態がある。
国際通貨基金(IMF)は、国内総生産(GDP)で3位の日本が2023年にドイツに抜かれて4位になるとの見通しを発表した。一人当たりGDPは22年の段階で主要7カ国(G7)の中で最下位の32位に下がった。
IMFは成長率が加速しているインドが、27年に日本とドイツを抜いて3位になると予想している。このまま手をこまねいていては、世界経済における日本の相対的地位の低下に歯止めをかけることはできないだろう。
経済成長率を反転させるには、労働投入量の増加と技術革新、資本が必要な3要素だが、岸田政権の政策には決め手がない。
こども政策から抜け落ちた40%近い低所得層
最も深刻なのは、生産年齢人口が減少しつづけていることだ。岸田政権は「こども・子育て政策」を打ち出して「今からの6─7年がラストチャンス」と訴えているが、政策メニューを見ていると、大切な部分が抜け落ちていると指摘したい。
例えば、児童手当の拡充や高等教育費の負担軽減などを重要な項目として取り上げているが、これらは一定以上の所得水準がある階層に出産・育児への意欲を高めてもらう政策のように映る。
言い換えれば、正規社員を家族に持つ階層を対象にしているのではないかと筆者には見える。国税庁の調査によると、2022年の非正規社員の平均年収は205万円(46歳)で、正規社員の523万円(同)と大きな差がある。
結婚を考えている若い世代の年収は平均よりも下がるので、非正規社員の場合は200万円以下の年収で結婚と出産を組み込んだ人生設計をすることになる。これは相当に高いハードルが待ち受けていると言えるのではないか。
総務省によると、2022年の雇用者全体に占める非正規社員の割合は36.9%。正規社員63.1%だけを対象にしたかのような政府の「こども・子育て政策」では、少子化に歯止めをかけることはできないだろう。
増加する空き家、低所得層に公費で貸し出し
低所得層にとって安い家賃で住宅を借りることができれば、可処分所得が相対的に増えて生活に余裕が生まれやすい。そこで注目したいのが、全国で急増している空き家の利用だ。2018年に全国で全戸数の13.6%にあたる約848万戸が空き家になっている。
空き家と言えば、地方の人口過疎地域で多いというイメージが強いが、最近は都市部での急増が目立っている。18年に東京都内の空き家は約81万戸、空き家率は10.6%。23区では世田谷区が約5万戸、大田区が約4.8万戸と上位を占めている。
自治体は今、空き家情報を提供してマッチング促進を図っているが、国や自治体が補助金を出して低所得の階層に安い賃料で貸し出せば、年収200万円でも可処分所得が増え、結婚・出産を検討する人が増えるのではないかと提案したい。幅広い階層の人々が安心して生活できる環境づくりが、少子化防止への「近道」だと考える。
新しい技術の振興に関しては、半導体受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)(2330.TW)の工場を熊本県に誘致するなど半導体分野で、ようやくキャッチアップへの第一歩を踏み出し始めた。
今後は、年間で4兆円を超えるサービス赤字を計上しているプラットフォームサービスに代表されるデジタル赤字の縮減に向けて、国内企業の技術開発・新規投資に政府が財政支援する仕組みを作るべきだ。
年明けの通常国会で示される施政方針演説で、岸田首相は国民が不安に思っている点を自覚し、どのような未来像を描いているのか、はっきりわかるように語ってほしい。
●岸田政権の支持率下落の原因、「51.5%が減税政策ではない」と回答 11/24
一般社団法人救国シンクタンクでは、2023年11月14〜16日、大手インターネット世論調査会社に委託し、有効回答数1044人(18〜79歳の男女/全国/人口構成比割付)で、減税に関する世論調査を実施いたしました。
特に、岸田政権と減税政策に関する詳細な世論調査を実施し、同政権における減税政策に対する有権者の受け止めを分析いたしました。その結果を下記、取りまとめております。
(1)岸田政権の支持率下落原因は「減税政策そのもの」ではない
・「あなたは岸田内閣を支持しますか?」という設問に対して、「支持する」「やや支持する」の合計が16.8%、「あまり支持しない」「支持しない」の合計が74.7%。支持を不支持が大幅に上回る回答結果となっています。
・「岸田内閣が任期途中で退陣した場合、その原因は減税政策を主張したからだと思いますか?」という設問に対して、「そう思う」が11.0%、「そう思わない」が51.5%、「分からない」が37.5%。岸田政権の支持率下落の主因として、減税政策そのものが理由とは考えられていないことが分かります。
(2)岸田政権の所得税減税に対する「世代間のギャップが浮き彫りに」
・「あなたは岸田政権が提示した『所得税減税』政策を支持しますか?」という設問に対して、「支持する」「やや支持する」の合計が28.4%、「あまり支持しない」「支持しない」の合計が55.3%。支持を不支持が大幅に上回る回答結果となっています。
・不支持理由は1位「短期間の減税後にそれ以上に増税されることがわかっているから」53.6%、2位「岸田首相の減税政策が単なる選挙対策に思えるから」45.9%、3位「恒久減税または複数年に渡る減税を行うべきだから」29.8%であり、岸田首相の一時的なパフォーマンスに過ぎないと有権者が受け止めていることが分かります。
・年代別データでは、支持者は18歳〜40代合計33.8%、50代以上の合計23.8%と所得税減税に関する世代間ギャップが背景にあることが分かりました。
(3)社会保険料・子育て財源については「総論賛成」「各論反対」
・社会保険料の引き下げについては全世代肯定的な評価を下しているものの、後期高齢者の窓口負担3割引き上げについては高齢者を中心に根強い反発があり、「反対である」「どちらかというと反対である」合計は60代・75.9%、70代以上・83.9%が存在しています。
・少子化対策の財源は「歳出削減によって賄うべきだ」34.5%、「経済成長による自然増収により賄うべきだ」24.2%が多く、「増税によって賄うべきだ」に関しては4.7%の回答者しか容認していません。
(4)約過半数45.6%の回答者は、岸田首相は「増税に関して国民の信を問うべき」と主張
・「政権与党がマニフェスト(選挙公約)に掲げていない増税を決定する場合、直近の国政選挙で国民の信を問うことについて」という設問に対して、「賛成である」「どちらかというと賛成である」の合計が45.6%、「反対である」「どちらかというと反対である」の合計が28.0%となっています。
●立民・泉健太代表「魂まで売ってしまったらおしまい」 維新、国民民主を批判 11/24
立憲民主党の泉健太代表(49)が24日、国会内での定例会見で、政府の2023年度補正予算案に賛成する方針を示した日本維新の会と国民民主党に「取り引きをしなきゃ政策って実現しないものなのか。魂まで売ってしまったらおしまい」と批判した。
泉氏は「我々は明確に反対という姿勢で臨みたい」と、立民の姿勢を示した上で「他の野党で、大変どうかと思う賛否の声が聞こえてきております」と切り出した。
維新が、岸田政権下で初めて補正予算案に賛成する方針を決めたことに泉氏は「維新さんは万博予算がちらついてしまうと、そもそも反対できない。予算の問題点については考え方が相当、同じところがあるんじゃないかなと思いますが、万博予算等が入っているものですから。賛成せざるを得ないとか、大事な部分を握られている。物を言えなくなっている」と懸念した。
国民民主が、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結解除を与党と協議することで合意したことで、補正予算案に賛成することを決めたことにも「トリガーの凍結解除というのが判断基準ということ。前回確か、トリガーを凍結解除するということで補正予算案に賛成した国民民主党でしたが、その時は完全に裏切られた。それも分かって賛成したのか。そういうことが過去にもあって、今回さすがに一度ならず二度もないだろうという風に思ってましたが…」と皮肉った。
泉氏は「急に国民民主党が凍結解除だったら(補正予算案に)賛成しますと言った途端に、政策の検討を開始するっていうのは極めて不見識で、不誠実」と、岸田文雄首相(66)の姿勢もとがめた。「その取り引きが国民から評価を受けるかどうかということ。取り込まれてしまったらミイラ取りがミイラになる。野党の『新しい政権づくりのためにやるんです、徹底批判しまう』ということができるのか」と維新、国民民主両党の姿勢に苦言を呈した。
●財務省、特捜が岸田首相に引導≠アの先も大スキャンダル「一寸先は闇」 11/24
岸田文雄内閣の支持率低下が止まらない。報道各社の世論調査は軒並み、「危険水域」とされる30%以下に落ち込み、10%台突入も視野に入ってきた。LGBT法の拙速な法制化などで、安倍晋三、菅義偉両政権を支えた岩盤保守層は距離を置き、自民党5派閥の政治資金パーティー券疑惑の影響か、政党支持率まで落ちてきた。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は「一寸先は闇」といえる岸田政権の現状に迫り、「ポスト岸田」や、警戒される最強官庁・財務省と、東京地検特捜部の動きに迫った。
岸田内閣の支持率が急落している。報道各社の世論調査では、内閣支持率は軒並み、20%台に突入した。では、自民党に「ポスト岸田」にふさわしい候補者はいるのか。私は、高市早苗経済安全保障相を推す。
高市氏は、中国に一貫して厳しい姿勢を示してきた。前回の自民党総裁選(2021年9月)では、金融緩和と戦略的な財政出動、大胆な投資を掲げて、基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化目標の凍結を明言した。憲法改正も訴え、全体として、安倍元首相の路線を継承している。それが支持する理由だ。
萩生田光一政調会長や西村康稔経産相など、ほかにも人材はいるが、総裁選に手を挙げた実績を評価したい。
課題は「党内で、どこまで支持が広がるか」だ。とりわけ、かつて所属していた安倍派(清和会)には、「彼女だけはダメだ」という声が少なくない。派閥を飛び出しておきながら、安倍氏に重用され、日の当たるポストを得てきた経歴に対する嫉妬が主な理由だろう。
だが、ここまでくると、「そんなことは言っていられない」という声が強まる可能性がある。自分の選挙を考えて、「自民党の人気が回復できるなら、何でもいい」という話になるかもしれない。
かつての自民党には、「リベラルがダメなら、次は保守路線で」というダイナミズムがあった。党内で「疑似政権交代」を繰り返し、長期政権を維持したのだ。このメカニズムがいまも健在なら、高市氏にも目が出てくる。女性である点も有利に働く。
最大の問題は「岸田政権が倒れるのかどうか」だ。
健康問題で辞任した安倍氏と、衆院選で敗北した麻生太郎氏を別にすると、直近で自ら退陣した首相は福田康夫氏と菅義偉氏である。2人の場合はどうだったか。
福田退陣への引き金を引いたのは、公明党と麻生氏の存在だった。当時は民主党が参院で多数を握る「ねじれ国会」だったが、公明党は翌年に迫った東京都議選や衆院選を控えて、「支持率が急落した福田政権では戦えない」とみていた。そこで、税制改正法案に反対する意向をにじませて事実上、福田氏に退陣を迫ったのだ。
この先も大スキャンダルあるか
公明党の賛成が得られなければ、衆院で法案を再議決できず、公明党がキャスチングボートを握っていた。
菅氏の場合は新型コロナ対策に忙殺され、衆院を解散する機会を逸したまま、総裁選が迫った事情が大きかった。無役だった岸田氏が総裁選に立候補するなか、支持率が落ちていた菅氏は総裁選を辞退し、退陣表明した。
現状はどうか。
内閣支持率は急落しているが、公明党は所得税の定額減税と低所得者への補助金支給を勝ち取り、岸田氏に反旗を翻す理由がない。高市氏をはじめ、ライバルは政権内に取り込んでいる。総裁任期も衆院の任期も残っている。
となると、誰が岸田首相に弓を引くのか。
私は財務省と東京地検の動きに注目している。財務省は増税を封印し、減税を言い出した岸田首相に内心、怒りをたぎらせている。税金の滞納問題で辞任した財務副大臣の税務情報を握っていたのは、財務省だ。
東京地検特捜部は、自民党5大派閥の政治資金不適切処理問題をメディアにリークした。彼らは岸田倒閣に動いている。
この先も大スキャンダルが火を噴く可能性がある。まさに、「一寸先は闇」だ。
●岸田総理の池田大作氏弔問が物議 11/24
23日、老衰のため95歳で亡くなった池田大作名誉会長の創価学会葬が執り行われ、多くの関係者が参列した。一連の動きのなかで岸田内閣総理大臣が弔意表明と弔問を行い、政教分離が再び議論になっている。
「池田大作氏のご逝去の報に接し、深い悲しみにたえません。池田氏は、国内外で平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました」(岸田総理のXから)
追悼文の最後には「内閣総理大臣 岸田文雄」と記名し、翌19日には、「自民党総裁」として、創価学会の本部を弔問に訪れた。これに対し、政教分離の原則に反するのではないかと批判の声が殺到。松野官房長官は「公明党の創立者である池田大作氏に対して、個人としての哀悼の意を表するため、弔意を示したものと承知をしている」(総理官邸・20日)と述べた。
SNSでも「内閣総理大臣の記名はだめでしょう」「弔問は選挙のため?政権に公明党がいること自体が疑問」「これがダメなら伊勢神宮参拝も亡くなったローマ法王への弔意もNGでは?」などの声が上がり、議論になっている。
果たして、岸田総理の弔意と弔問は憲法の政教分離に反するものなのか。23日の『ABEMA Prime』では、宗教学や宗教社会学の専門家を招き、政治と宗教の距離感について考えた。
弔意は憲法違反に該当しない“社会的な儀礼”
政教分離について、憲法20条には、信教の自由とともに、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、または政治上の権力を行使してはならない。国及びその機関は、宗教教育、その他いかなる宗教的活動もしてはならない」などと定められている。
この前提を踏まえ、作家・宗教学者の島田裕巳氏は岸田総理の弔問を、「憲法は宗教団体に特権を与えないことを規定している。宗教団体は政治上の権力を行使してはならないということだ。今回のケースは、その範囲には入らない“社会的な儀礼”と考えていいだろう。最高裁もこれは憲法に違反しないと言っている。弔意だからセーフという感じはある」と述べた。
政治と宗教の関連では、歴代総理の靖国神社参拝が問題視されたケースもあったが、島田氏は「問題は2点ある。1つ目は公金を支出するかどうか。中曽根康弘元総理は公式参拝と称して公金を支出した。これは憲法違反の疑いが濃厚になる。小泉純一郎元総理も参拝を繰り返したが、当時の裁判では、靖国神社の宗教活動を総理の立場で支援しているということで違反との判決が下った。この2点では憲法違反になってくる」と指摘。
そのうえで「裁判所の判断は目的効果論だ。例えば政治家の行為が、ある宗教団体の利益になり、布教や宣伝活動に資する場合はダメという原則だ。非常に曖昧な部分であることは確かだが、人間が亡くなったことに対して意思を表明する“弔意”まで政教分離の議論になるのか」と述べ、総理が弔意を示したことは問題ないとの見方を示した。
一方で「こうしたケースが今までになく、岸田総理が最近、手のひら返しのように態度を変えてしまうことが不信感を助長している。最初から内閣総理大臣と記名せず、自民党総裁と名乗っていれば問題にならなかったのではないか」とも指摘した。
創価学会票への意識が「見え見え」と批判も
今回、岸田総理は総理大臣として哀悼の意を表した。これは宗教的活動に含まれないのか。
島田氏は「岸田総理の支持基盤が弱くなっているなかで、創価学会の票を意識して発言し、行動しているのが見え見えという部分はある。総選挙で大きな意味を持つ大票田を手放したくない意思が先走っている。他のことに対する配慮はないことが見えてしまった」と述べた。
公明党は創価学会が支持母体となっているが、池田氏は両者の関係について、「創価学会と公明党の関係は制度の上で、明確に分離していく」(東京・日大講堂 1970年)と述べており、公明党のホームページによると、あくまでも支持団体と支持を受ける政党という関係であり、憲法違反にはあたらないとの姿勢を示してきた。
今回の公明党と総理の対応を比較して島田氏は「公明党の山口那津男代表は今中国にいて学会葬には出ていない。創価学会が支持母体であることを公言しているなかで学会葬に出ないのは、政教分離を相当気にしているから。ところが岸田総理は、あまり気にしていない。対照的だ。総理の行動は、こうした前提を破壊するようなものだから、学会・公明党にとっても迷惑なのではないか」と分析する。
弔意が不適切との見方も 難しい政教分離の線引き
一方で総理の弔意は不適切だと考える専門家もいる。
宗教社会学が専門で社会学者の橋爪大三郎氏は「政教分離の一番大事なところは、国や国の職員は特定の宗教に関与をしてはならないことだ。岸田総理はまず総理と名乗ってはいけない。それから勤務時間内に弔問をしてはいけない。個人として弔意があるなら誤解のない形でやらなければならない。政治家として弔問するのであれば、行き先は公明党であって、創価学会に弔意を示す必要はない」との見方を示した。
これまでの国会答弁や最高裁での判決(【図】政治家・政党と信教の自由を参照)を見ると、1946年の金森国務大臣の発言を筆頭に、宗教関係者が政治に参加することを禁止するものではないという憲法解釈がなされてきた。
しかし、橋爪氏は「今回の件で岸田総理は政治的効果を狙っている。総理として創価学会に配慮することが選挙や政権運営にプラスになると考えているから、個人として見えない方がいいと考えている。これが憲法の禁じている行為に似てきてしまう。憲法よりも政治的効果を優先している点で、大変問題があると思う」と述べた。
また、政教分離について「日本やアメリカ、多くの国の憲法で政教分離が書いてあるのは近代国家の根本だからだ。この原則がなかった時代に多くの人が血を流し、殺され、差別され、大変な目に遭った。そういうことが起きないように近代国家の大原則として、政府は宗教活動から距離を置き、政府職員はそれに間違えられるような行動をしないようにしようとなっている」と指摘。
さらに「人々の利益はさまざまなグループ間で相反している。それぞれの利益団体が自分の利益を政治に反映させたいと思うのは当たり前だ。それを憲法は禁じていない。だが、信仰は利益ではなく、人々の内心と良心に関わることで、国や第三者に踏みにじられてはいけない。それを守るため、国は特定の宗教を応援しない、レフェリーの立場だ」と述べた。
一方、島田氏は「政教分離はどの国でも規定されているわけではなく、イスラム国家などは政教一体だから、国によって政教分離の在り方は違う。そこを含めて議論して考えないとこうした問題の答えは出ない」と述べた。
●池田大作氏ヨイショで炎上!岸田首相は「創価学会」につぶされる 11/24
創価学会は岸田政権の「アキレス腱」
「国内外で、平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました」――。
新興宗教「創価学会」の池田大作名誉会長が亡くなったことを受けて、岸田文雄首相がSNSに投稿をした哀悼コメントが「政教分離はどこいった?」と炎上している。
ただ、個人的には、岸田首相が旧統一教会を「社会的に問題が指摘される」ことを理由に政治決断で解散命令請求を下した時点から、創価学会との関係で炎上することはわかりきっていた。「いよいよ“終わり”のはじまりだなあ」くらいの感想しかない。
なぜわかりきっていたか。ちょっと長いが、その理由を一言で言ってしまうとこうなる。
「自民党は、さまざまな宗教団体の支援を取り付けて、“政教分離”をなあなあにすることで大きくなってきた政党なので、どこかの宗教を切り捨てればそのロジックがそのまま特大ブーメランになって突き刺さる」
手前みそで恐縮だが、筆者は1年以上前から以下のような記事で、岸田政権にとって「創価学会」がアキレス腱になると予想してきた。
《創価学会へ統一教会批判が飛び火!それでも被害者救済法が「骨抜き」にされそうな訳》(22年11月10日)
今、旧統一教会が指摘されている高額献金や宗教2世などの問題は、創価学会をはじめ、あらゆる宗教団体にあてはまる普遍的な問題だ。うそだと思うなら、「創価学会 被害者 高額献金」などでググってみればいい。旧統一教会の「被害者」と同じく、「人生をめちゃくちゃにされた」と訴える被害者が出てくるはずだ。
つまり、政治が旧統一教会との関係を清算するのなら、同じく「被害」を訴える人が存在している創価学会との関係も清算しなくては、筋が通らないのだ。
解散命令請求で「バンドラの箱」を開けてしまった
関係を見直さなければいけないのは、創価学会だけではない。
「自民党と旧統一教会の蜜月関係が問題だ!」と怒っている人たちはあまりご存じないだろうが、自民党に選挙応援をしている宗教団体など日本中に山ほどある。党内の保守系議員は、日本全国の神道系の宗教団体からなる「神道政治連盟」や「日本会議」の支持を受ける。他にも仏教系団体や、ローカル新興宗教に応援されている議員もいる。そして、ここが大事なポイントだが、そういう宗教団体の中には、元信者や信者のその家族が「だまされた」と訴えている「社会的に問題が指摘されている団体」もある。
これらの宗教団体は、ちゃんと政策に影響を与えている。
例えば、政府与党が選択的夫婦別姓に消極的だったり、LGBT法案を「骨抜き」にしたのは、神道系団体がこれに反対をしていることが影響している。ネットやSNSの陰謀論者の間では、すべて旧統一教会の仕業ということになっているのだが、団体の多さ、すなわち選挙や政治への影響力からいってありえない。旧統一教会の政治団体は、無数にある自民党支持の保守系政治団体の中の「ワン・オブ・ゼム」に過ぎないのだ。
ということは、旧統一教会と同じようなことを主張して、同じように蜜月関係で、同じように自民党議員が会合に参加したりする神道系の宗教団体についても、マスコミは「宗教汚染」「ズブズブ」とメスを入れなくてはダブルスタンダードになってしまう。
旧統一教会を「政教分離に反する」と切り捨てるということは、政府や自民党は創価学会や神社本庁ともしっかりと距離を置かなければいけない。それができなければ、「二枚舌メガネ」などと叩かれて炎上するのも当然なのだ。
そんな「宗教ブーメラン」にさらに破壊力をもたせてしまったのが、「解散命令請求」だ。『解散命令請求背景に岸田首相の強い意志 選挙もにらむ』(産経ニュース10月13日)という報道からもわかるように、岸田首相にとってこれは「カルトをこらしめて国民の溜飲を下げて支持率V字回復」という狙いがあった。
しかし、それは目先の利益しか見ておらず、中長期的には岸田政権どころか自民党まで崩壊させてしまう「バンドラの箱」を開けてしまったと言わざるを得ない。解散命令請求時、この政治決断の問題点を指摘した箇所を再掲しよう。
《理屈上はあらゆる新興宗教をターゲットにできる。反政府運動にも利用できる。自民と連立を組む公明党の支持母体・創価学会の被害を訴える「元信者」をたくさん集めて民事訴訟を起こして、政府に迫れば連立も解消させられる。「社会的に問題がある団体」とは関係を断つと岸田首相が宣言している以上、自民党は「問題」を指摘された団体はすべて切らなくてはいけない》(10月12日)
創価学会との蜜月関係にも厳しくなった民衆の目
これまで説明してきたように、自民党の議員はそれぞれの選挙区で、さまざまな宗教団体の支援を受けている。その中には“被害者のいる宗教団体”もある。そういうところの信者が、選挙ボランティアをしてくれるし、名簿づくりを手伝ってくれたりもする。だから、自民党議員としては、ギブ・アンド・テイクでそれらの宗教団体の会合があれば顔を出す。頼まれたらスピーチもするし、教祖やら幹部との記念写真もたくさん撮影する。
それが政治の世界では「常識」だったが、これからはすべて「アウト」になる。そして、ここが大事なポイントだが、野党や反政府運動をする人々はそこを戦略的につけば、自民党をガタガタに崩壊させることができるということだ。
今、旧統一教会の「被害」を訴えている人々の話が大体20年、30年前の話だということからもわかるように、宗教というものは、「信仰を失った人々」にとって長く憎悪と敵意の対象になる。それは裏を返せば、元信者や家族に水を向ければ、「○○教の被害者」などいくらでも見つけることができるということだ。そういう「被害者」をまとめて民事訴訟を起こせば、ほとんどの宗教団体は「社会的に問題を指摘される団体」にできる。
そして、もし筆者が反自民の人間なら、このスキームで狙うのは、やはりもっとも自民党と蜜月である「創価学会」だ。
ご存じのように、この宗教団体の信者は、自民党と連立を組んでいるので、大臣や政務三役になっている。しかも、政策に影響力がある。岸田政権でも公約になかった「18歳以下を対象にした10万円バラまき」が強行されたのは、公明党、つまりは創価学会からの強い要望を受けたからだ。そんな政権のコントロール力を公明党側も隠さない。
《公明党は「小さな声を聴く力」を生かし、子育て支援やバリアフリーを大きく拡充させてきました。また、経済再生にも成果を上げています。近年の国政選挙を見ても、掲げた公約を着実に実現しています。参院選では、各党が公約を掲げて支援を訴えていますが、日本を前へ進めることができるのは公明党です》(公明党ホームぺージより)
「日本を前に進める」というのは内政だけではない。
旧統一教会より創価学会の方がよほど問題では?
山口那津男代表は22日、中国の北京を訪問して、岸田文雄首相からの親書を携えて習近平国家主席ら要人との会談を打診している。日本産の水産物の輸入停止措置を解除するよう求めるという。日本政府は「親中」で知られる創価学会のコネクションに依存して、中国外交をしているのだ。
ここまで世話になっているならば、その献身に対して自民党が創価学会へ何かしらの「見返り」を用意しているのではないかと考えるのも当然だ。
この1年半ほどマスコミは「旧統一教会が政教分離に反する」と大騒ぎをしていたが、創価学会の方がよほど問題のような気がする。
ジャーナリストの櫻井よしこ氏がフジテレビの報道番組で「旧統一教会は6万票から8万票ですよ、創価学会は600万票から800万票ですよ」と述べていたが、旧統一教会と創価学会では集票力も資金力も雲泥の差だということは、政治を取材してる人間ならば「常識」だ。
旧統一教会が「創価学会に比べて大したことのない影響力」だということは政策を見てもわかる。旧統一教会を母体とする反共団体「国際勝共和連合」が掲げている政策も「憲法改正」や「選択的夫婦別姓反対」「LGBT法案反対」など他の神道系政治団体の政策と丸かぶりだ。旧統一教会の教祖・文鮮明氏が提唱していた「日韓トンネル」(日本と韓国を海底トンネルで繋ぐ構想)を安倍政権が成長戦略に入れたとかの事実があれば、「日本を裏で支配するカルト」という主張にも納得だが、そういう話もない。
また、安倍元首相とズブズブだったおかげで、やりたい放題の悪事ができたとか主張をするような人もいるが、事実は逆で、安倍政権は2018年に消費者契約法を改正して、「霊感商法」のような詐欺商法にひっかかっても、お金を取り戻せるような法整備をした。ストーリーがあまりに「雑」なのだ。
このように、選挙的にも政策的にもそれほど大きな影響力があったと思えない旧統一教会が「巨悪」として解散命令請求をされている中で、櫻井氏の言葉を借りれば、100倍の集票力があり、中国の国家主席ともパイプのある創価学会と自民党との蜜月関係を「政教分離に反さない」というのはさすがに無理があるのではないか。
その場しのぎの「二枚舌」は炎上する
事実、歴史をひも解けば自民党は「公明党」の存在そのものを政教分離に反すると認めていなかった。
1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件を受けて、「カルト宗教問題」が大きな社会テーマになり、翌96年に自民党が「宗教問題ワーキングチーム」を立ち上げて、「宗教法人基本法案」の骨子をまとめた。
『自民党が検討している「宗教法人基本法案」(仮称)の骨格が四日までに固まった。宗教団体の政治活動の「政教分離」に関する憲法二〇条の政府解釈を見直し、宗教団体の政党創設を禁じたほか、靖国神社への首相、閣僚の公式参拝も事実上、禁止している。また、「信者の脱会の自由」や「霊感商法の禁止」などの規定を盛り込んでいるのが特徴だ』(読売新聞1996年1月5日)
これを聞くと、驚くだろう。実はこの時代、自民党は社会党、新党さきがけと連立を組んでいた。公明党は分裂して、その一部は小沢一郎氏率いる新進党と手を組んでいた。要するに自民の「敵」だったのだ。
だから、この時期の国会では亀井静香氏や島村宜伸氏らが、今の旧統一教会への批判がかわいく思えるほどの創価学会バッシングを展開した。亀井氏にいたっては、池田大作名誉会長から公明党に指示があるのかなどを確認するため、池田氏の国会招致を請求。学会員の皆さんから「仏敵」などと憎まれていたのだ。
そんな自民党の「宗教団体の政党創設禁止」という案はほどなくして闇に消えた。先ほども述べたように、自民党は当時からもあまたの宗教団体から支持を受けており、その方面からクレームが入ったからだ。
そして、もう二度とこのような法案が自民党から出ることはなくなった。公明党と連立を組んだからだ。
何が言いたいのかというと、自民党と宗教団体との関係における「政教分離の解釈」なんて、こんな程度だということだ。宗教によって自分たちが「損」しそうになれば、容赦なく切り捨てるし、「得」になればズブズブの共生者となってヨイショもすれば祝電も送る。
ただ、そういう節操のないことをしていると「因果応報」ではないが、自分自身も必ず同じようなひどい目に遭うだろう。
旧統一教会という特定の宗教団体にすべての「罪」を押し付けてその場しのぎで延命できても、これまで宗教団体と同じようなズブズブの関係を続けてきたのだ。その「二枚舌」はいつか白日のもとにさらされて大炎上する。
「人を呪わば穴ふたつ」ではないが、「宗教をつぶした政治家は、宗教によってつぶされていく」ということかもしれない。
●岸田さんはそんなにダメな首相なのだろうか。こんなに実績があるのに 11/24
岸田氏は今週もブルー
先週、サザエさん症候群(月曜に会社や学校に行くのが嫌で日曜夜に落ち込むこと)について書いたが、今週も岸田文雄首相にとっては辛い月曜となったであろう。読売新聞の支持率が初めて20%台となり、朝日、毎日も続落したからだ。
しかも火曜からは国会の予算委員会が始まり、支持率低下の一番の原因である所得税減税のほか、政務3役の不祥事、大阪万博の経費問題など、野党にボコボコにされ、ほぼサンドバッグ状態だった。今週末調査をやったら来週も支持率は必ず下がる。
おそらく今、テレビ局や新聞社から電話がかかってきて「岸田内閣を支持しますか」と問われた時、よほど熱心な自民党員でない限り、「はい支持します」とは言いにくいと思う。
つまり世間は岸田首相を支持したり、ほめたりするのが、はばかられる雰囲気になっている。私も岸田政権を評価する記事を書くと読者の皆様からものすごくお叱りを受ける。
しかし冷静に考えてみて、岸田さんというのはそんなにひどい首相なのだろうか。就任して2年がたつが実は実績は色々挙げているのだ。だから天邪鬼な私は叱られる覚悟で岸田政権の実績を挙げてみることにする。
岸田政権の実績を挙げてみよう
直近では原発処理水の放出を断行した。決めたのは菅義偉前首相だが、やはり実行に移す方が大変だ。案の定一部の野党やメディアは大騒ぎしたし、中国は海産物の禁輸に踏み込んだ。
だが先日のサンフランシスコでの日中首脳会談での習近平主席の言い方は「適切に処理すべきだ」という表現で、中国が国内にいろいろ問題を抱えていることを差し引いても、ずいぶんおとなしかった。
処理水問題では中国は国際社会では明らかに孤立しており、もうほぼ「終わった」話だと思う。多くの国を味方につけた日本の外交的勝利だが、特に韓国の対応が大きかった。韓国野党は「処理水けしからん」と騒いだので、中国としては是非韓国に「あちら側」に来てほしかっただろうが、尹錫悦大統領はブレずに、日本側についた。
その対韓関係の改善も大きな実績だ。日韓のトラブルは慰安婦、徴用工で長期的に厳しい状況だが、尹政権が頑張ってここまで戻してきた。日本も余計なことをせず、輸出手続きのホワイト国再指定など最低限の妥協にとどめて、うまく軟着陸した。
他にも外交では、危険を冒してあえて行ったウクライナ訪問、バイデン米大統領らを原爆資料館に招いた広島サミット、安全保障では反撃能力保有の容認、エネルギーでは原発への積極的な関与など、多くの実績がある。
防衛増税に批判が多いが、防衛力強化に税金を払うのは当たり前で、しかも所得税は今の50歳以上の人にはほとんど関係ない。事実上、若者や子孫に「つけ」を回すのに「増税許すまじ」と叫ぶのは身勝手を通り越してピンボケだ。
不人気の理由は発信力ではなく国民の気分?
もちろん文句を言いたいこともある。LGBT法の拙速な成立は、バイデン氏の原爆資料館訪問のバーターだったのかもしれないが、維新と国民の案を丸呑みするという極めてみっともないやり方で保守派の離反を呼び、今の支持率低下の遠因となっている。
また「異次元の少子化対策」をするのはいいのだが、所得が2000万円や3000万円の人たちに児童手当をあげるために現役世代が多く負担する社会保険料を値上げするのはナンセンスだ。これでは子供は増えない。
こんな風に書いていくと、ダメなところより実績の方が多いような気もするのに、なぜこんなに不人気なのだろうか。よく「岸田首相は発信力が弱い」という批判があるのだが、実は国民が首相に求めるのは「発信力」や「説明力」ではなく「実行力」だという調査結果が出ている。
だからもしかしたら今の不人気の理由は国民の「気分」ではないのか。だったら年が明けて賃金が上がり、物価も落ち着いて、減税も実施されて、一息つけば国民の「気分」も晴れるのかもしれない。どうやら今の自民党には岸田氏をおろして誰か代わりを立てる「あて」はないようだから、それまでじっと我慢するしかないと思う。 
●立憲・泉代表「ミイラ取りがミイラに」国民民主党の補正予算案賛成を批判 11/24
今年度の補正予算案に国民民主党が賛成したことについて、立憲民主党の泉代表は「ミイラ取りがミイラになる」と国民民主党の姿勢を厳しく批判しました。
国民民主党はガソリン税を引き下げる「トリガー条項」をめぐり、自民・公明と協議を進めることで合意したとして、24日の衆議院・予算委員会で補正予算案に賛成しました。
立憲民主党 泉健太代表「魂まで売ってしまったらおしまいだし、取り込まれてしまったら、ミイラ取りはミイラになる」
立憲民主党の泉代表は国民民主党の姿勢について「岸田政権から材料をまかれて、そこに飛びつかざるを得ない状況は本当に残念だ」と指摘。「自民党との取引によって政策が変わるのかと問われる」と厳しく批判しました。
また、泉氏は「国民民主党が補正予算に賛成するということは連合側も想定してないだろう」として、今後、連合の芳野会長と協議したいとの考えを示しました。
●実質賃下げになってしまった国家公務員給与法改定 11/24
実質賃下げになってしまった給与法改定。非正規も含めてあげるべきですね!これだけ物価が上昇している中では人事院勧告に囚われていたら遅れてしまいますしね。春闘だけでなく秋闘も必要な段階でしょう。
れいわ新選組は、国家公務員の一般職給与法、裁判官報酬法、検察官俸給法、防衛省職員給与法の4法案に「給与の引き上げが不十分である」という理由で、反対した。また、総理などの給与を決める特別職給与法案には「引き上げる必要がない」として反対した。私たちは、国民経済の再生のために、今、岸田政権が公的部門の賃上げを主導するべきであり、国家公務員に対しても十分な賃上げが必要だと考える。国家公務員給与の金額は、地方公務員給与に波及し、来年の春闘や民間給与にも影響を及ぼしていくからだ。今回の法案は、人事院勧告に基づき国家公務員給与を「少しだけ引き上げる」ものであるが、引き上げがあまりにも不十分だった。例えば一般職給与法はたった0.96%の引き上げとなり、物価高騰をふまえれば実質の賃下げとなる。2022年以降、コスト高による悪い物価高が襲いかかり、直近の調べとなる2023年9月時点で、物価は2020年と比べ6%を超えて上昇している。それによって、18か月連続で民間の実質賃金は下がっている。この物価高を超える賃上げがなされない限りは、実質的に賃金は目減りする、つまり暮らしは貧しくなる。民間労働者も公務員も、この国の生産・供給を支える労働者であり、そして消費を支える重要な主体である。岸田総理は、公的部門の賃上げを、目標をもっておこなうべき。内閣人事局も「政府が人事院勧告に必ず従うとの法的な義務はございません」と回答している。政治のリーダーシップで「人事院勧告+α」の増額をおこなうことは可能である。次に、特別職給与法案については、総理大臣などの特別職は、現状、経団連とアメリカの顔色を伺う上級国民がその席に座っていることから、「所得向上」の対象外とし、増額改定には反対した。また、この法案に含まれる万博政府代表の給与引き上げについても、れいわ新選組は「万博中止」を求める立場からも反対した。公務員給与については、「身を切る改革」や「構造改革」によって、公務員バッシングのやり玉に挙がってきた。しかし、今こそ、正規一般職だけではなく、非常勤職員も含めて、総理の責任で徹底的に底上げし、「30年以上続いたコストカット経済」からの脱却の第一歩とすべきだ。れいわ新選組は、一人ひとりの徹底した所得向上と、それによる日本経済の再生を、これからも求めていく。
●補正予算案 衆院本会議で可決 自民 公明 維新 国民など賛成 11/24
経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案は、衆議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決されて参議院に送られました。
一般会計の総額が13兆1992億円となる今年度の補正予算案は、24日の衆議院予算委員会で、岸田総理大臣とすべての閣僚が出席して締めくくりの質疑が行われたあと、採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会、それに国民民主党の賛成多数で可決されました。
これを受けて、午後に衆議院本会議が開かれ、討論で自民党は「デフレに後戻りしないよう大胆な政策を総動員することが急務だ。日本経済を一段高い成長軌道に乗せ、物価高に負けない賃上げを達成し成長と分配の好循環を実現することがわれわれの責任だ」と強調しました。
これに対し、立憲民主党は「岸田総理大臣は突如として所得税などの減税を打ち出したが、始まるのは来年6月で物価高対策としては遅すぎる。新規の赤字国債の発行が必要となり、還元どころか負担を将来に付け回す大盤ぶるまいで、国民を欺くものだ」と訴えました。
そして採決が行われた結果、補正予算案は自民・公明両党と日本維新の会、それに国民民主党などの賛成多数で可決されて、参議院に送られました。
補正予算案には物価高への対応として、住民税が非課税の低所得者世帯に対する7万円の給付や、ガソリン代や電気代・ガス代の負担軽減措置の延長が盛り込まれているほか、持続的な賃上げの実現や国内投資の促進に向けた費用などが計上されています。
補正予算案は、来週27日と28日の2日間、参議院予算委員会で岸田総理大臣とすべての閣僚が出席して質疑が行われることになっていて、与党側は来週中に成立させたいとしています。
岸田首相 維新と国民民主の控え室を訪れ謝意
補正予算案が可決されたあと、岸田総理大臣は、自民・公明両党に加え、賛成した日本維新の会と国民民主党の控え室を訪れて謝意を示しました。
このうち国民民主党の玉木代表が「覚悟を持って賛成したので『トリガー条項』の凍結解除をやりきりたい。岸田総理大臣も覚悟を持ってほしい」と求めたのに対し、岸田総理大臣は「与党と国民民主党の間でしっかり議論と検討を進めていきたい」と応じ握手を交わしました。
また日本維新の会の馬場代表とは、23日夜、総理大臣公邸の居住スペースの設備に不具合が生じ、岸田総理大臣が急きょ、近くのホテルに宿泊したことが話題になり、岸田総理大臣は「きのうはちょっと不都合があった。きょうは公邸に帰れると思う」と述べました。
森屋官房副長官「与野党を超えて理解していただいた」
森屋官房副長官は記者会見で「総合経済対策の裏付けとなる補正予算案は国会で精力的に審議され、デフレ完全脱却のための千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかないという趣旨に対し、与野党を超えて理解していただいたと受け止めている」と述べました。
その上で「補正予算案に盛り込まれた取り組みを国民に理解してもらえるよう、引き続き参議院でも丁寧な説明に努め、一日も早い成立に向け努力していきたい」と述べました。
立民 泉代表 “物価高や生活への支援になっておらず反対”
立憲民主党の泉代表は記者会見で、「補正予算案に反対の立場だ。時期はずれの所得税の減税は今の物価高や生活に対する支援になっておらず、結局は国債を余分に発行することになり、大盤ぶるまいの人気取りの減税には賛成できない」と述べました。
その上で、野党の日本維新の会や国民民主党が補正予算案に賛成することについて、「自民党からすればしてやったりで、岸田政権に賛成の材料をまかれ、飛びつかざるをえないという状況は残念だ。国民民主党は『トリガー条項』の協議が判断基準だと言うが、これまでも自民党に裏切られている。取り引きをして取り込まれてしまったら、『ミイラ取りがミイラになる』のではないか。国民民主党が政治に緊張感を持たせようという考え方を持っているのか、連合の芳野会長と今後の対応を協議しなければならない」と述べました。
維新 馬場代表「苦渋の判断だが賛成」
日本維新の会の馬場代表は、記者会見で「政府の経済対策は決して十分ではなく、『やらないよりまし』という50点くらいの評価だ。大阪・関西万博の会場建設費の増額分のうち、国の負担分が計上されており、大阪府などでも負担分を議会に諮るなか、反対するのは矛盾する面もあり、苦渋の判断だが賛成した」と述べました。
一方、「トリガー条項」の凍結解除については「発動されれば即効性があり、日々の暮らしの物価にも反映されるので賛成だが、そもそもガソリン税の暫定税率を廃止すべきだ」と述べました。
公明 石井氏 「維新と国民民主賛成 補正予算案が必要との認識」
公明党の石井幹事長は記者団に対し「野党の日本維新の会と国民民主党も賛成したことは、多くの国民が補正予算案が必要だと認識していることの反映ではないか。重要な課題に応える中身なので、いち早く成立を期したい」と述べました。
共産 田村政策委員長「参議院でも徹底的に追及したい」
共産党の田村政策委員長は、記者会見で「国民が全く期待していない経済対策の中身で、消費税の減税こそ、物価高騰対策として求められている。自民党の派閥のパーティー券の問題も、裏金に回っている疑念は払拭(ふっしょく)できず、参議院でも徹底的に追及したい」と述べました。
一方、日本維新の会や国民民主党が賛成したことについて、「大変疑問だ。岸田内閣の経済政策には日本維新の会もかなり厳しい質問をしており、国民民主党も『トリガー条項』を検討するから賛成というのはいかがなものか。対決する野党の立場ではない」と述べました。
国民民主 玉木代表「覚悟を持った賛成」
国民民主党の玉木代表は記者団に対し「覚悟を持った賛成だ。長年の課題だった『トリガー条項』の凍結解除を必ず勝ち取りたい。ガソリン減税はわかりやすく、中小企業や地方の賃上げの後押しにもなるので、内閣支持率が上がらない岸田政権にとっても正念場だ。実現しなければ、厳しく批判しなければならず、政府・与党との関係も大きな岐路を迎える」と述べました。
また「トリガー条項」の凍結解除が実現できなかった場合の自身の責任について問われたのに対し、「背水の陣で臨みたい。進退の覚悟はできており、幹部も共有している」と述べました。
●10月消費者物価、前年同月比2・9%上昇…4カ月ぶり拡大 物価高 11/24
総務省が24日発表した10月の全国消費者物価指数(2020年=100、生鮮食品を除く)は、前年同月比2・9%上昇の106・4だった。前月の2・8%から拡大した。拡大は4カ月ぶりで、物価高が収まらない状況だ。
宿泊料が前年同月比42・6%、トマトが41・3%、リンゴが29・4%、牛乳が19・8%それぞれ上昇した。
総合指数は3・3%上昇、生鮮食品とエネルギーを除く指数は4・0%上昇だった。
●自民・世耕氏、岸田首相にまた苦言=「言葉に情熱感じない」 11/24
自民党の世耕弘成参院幹事長は24日発売の月刊誌「WiLL」の対談記事で、岸田文雄首相がリーダーシップを示せていない原因について問われ「言葉に情熱を感じない」と苦言を呈した。世耕氏は「首相自身、やりたい政策はあるだろうし、懸命に仕事をされていると思う。しかし熱意がいまいち伝わってこない」と述べた。
世耕氏は10月25日の代表質問で首相の政権運営に苦言を呈したことについて「毎回厳しいことを申し上げている。ところが、返ってくる答弁は無味乾燥なことが多い」と主張。代表質問の際も官房副長官を通じて「政治家としての言葉で返してほしい」と事前に伝えたことを明かした。
 11/25

 

●政務三役の辞任/適材適所が聞いてあきれる 11/25
岸田文雄首相は昨年来、閣僚などが辞任する度に「任命責任は重く受け止めている」と述べてきた。しかし、その発言があまりに軽い。本当に自身の責任を重く受け止めてきたのであれば、1カ月で政務三役が3人も辞任に追い込まれることなどあるはずがない。
神田憲次財務副大臣、柿沢未途法務副大臣、山田太郎文部科学政務官・復興政務官が相次いで辞任した。税理士でもある財務副大臣が税の滞納を認め、法務行政を監督する副大臣が選挙違反への関与を疑われ、教育行政を所管する政務官が女性との不適切な交際があったことが直接の理由だ。
岸田首相は9月に副大臣・政務官人事を行った際、「適材適所で人選した」と説明した。それぞれの役職が泣くような不祥事が相次いだ原因は任命権者が適材を配さなかったか、人を見る目に誤りがあったかのどちらかだ。適材適所が聞いてあきれる。
改造内閣の発足以降、副大臣などの不祥事が続いている背景に、岸田首相が来年の総裁選をにらんで、各派閥の推薦を丸のみしたためとの指摘がある。派閥の推薦は当選回数などによるもので、職務への適性を示すものではない。
就任してほどなく不祥事が露見するのは、官邸のチェック機能が低下していることの表れとみるのが自然だろう。
今回の辞任の連鎖を、これまでの派閥重視から脱却し、登用の理由付けを明確にした人事に転換する契機にすることが重要だ。
気になるのは、岸田首相が閣僚などの問題が明らかになる度、任命責任を認めるのみで、説明責任を果たさせるのに消極的な姿勢に終始していることだ。自身の責任に言及することで幕引きを図ろうとしているようにも見える。国民の不信を招いたのであれば、当事者に説明させるべく指導力を発揮することが任命権者の責任の果たし方ではないか。
今月の共同通信世論調査で、内閣支持率が政権発足後初めて30%を割り込んだ。経済対策への期待感の薄さに加えて、不祥事などに対する政権の対応への不信も影響しているとみられる。
岸田首相は、既に使い道の決まっている税の増収分を「国民に還元する」と述べるなど、実質の伴わない発言が最近特に目立つ。総裁選での再選をにらむのであれば、求められるのは言行一致だ。適材適所と言葉にする前に登用する人材を厳選し、経済を成長させるとの決意表明に語気を強めるより、国民誰もが認める成果を上げることにこそ力を注ぐべきだ。
●「ルパンだって3世までだ」 立民・野田佳彦元首相、自民の世襲体質を批判 11/25
選挙戦略や党運営、重要政策を巡る方針と、さまざまな懸案に関する野党幹部らの発言を採録した「今週の野党」をお届けします。
ミイラ取りがミイラに
立憲民主党・泉健太代表「今の政治に緊張感を持たせる、という考え方に本当に立っているのかを改めて確認しなければいけない。(特定の政策の推進を条件に予算案に賛成するという)取引が国民から評価を受けるかどうかということだ。魂まで売ってしまったらおしまいだし、取り込まれてしまったら、ミイラ取りがミイラになる。」(24日の記者会見、国民民主党が令和5年度補正予算案に賛成する方針を決めたことを受けて)
歌舞伎役者じゃないんだから
立憲民主党・野田佳彦元首相「首相は3世で、ジュニア(息子)に委ねると4世だ。ルパンだって3世までだ。歌舞伎役者じゃないんだから。」(22日の衆院予算委員会、岸田文雄首相に対し自民党の世襲議員の多さを指摘して)
少しずれるが…
日本維新の会・藤田文武幹事長「デフレ脱却のラストチャンスだ。経済対策の必要性は(政府とも)共有している。われわれの政策と少しずれるが、中長期的に国民の可処分所得を上げていくとの問題意識は評価する。」(22日の記者会見、令和5年度補正予算案に賛成する方針を決めた理由について)
支持率の低い内閣であっても
国民民主党・玉木雄一郎代表「われわれの立場は変わらない。「対決より解決」だ。支持率の低い内閣であっても、いいことをやっていれば協力するし、支持率が高くても「だめなものはだめだ」と言っていく。持続的賃上げにとっても重要な局面を迎えている。われわれの積極的な政策提案や政策を先導していく姿勢が重要になってきている。」(21日の記者会見、岸田文雄内閣の支持率下落に関連して)
●補正予算案衆院通過 国民の生活、救えるのか 11/25
2023年度補正予算案がきのう衆院を通過した。経済対策を軸にした一般会計で13兆1992億円の大型予算案には与党の自民、公明両党に加え、日本維新の会、国民民主党も賛成した。
日本は歯止めの掛からない物価上昇や歴史的円安に直面している。補正予算で国民の暮らしを下支えすることは理解できる。
だが、政府の経済対策は与党からも「国民への説明が足りない」などと不評を買う始末だ。しかも目玉とする所得税減税は今回の補正予算案に含まれていない。
政府側の答弁は一貫性を欠き、政策そのものより次期衆院選への対応や政権維持を優先しているようにしか感じられない。内閣支持率の下落が著しいのも、岸田文雄首相のそうした思惑が国民から見透かされているのではないか。
岸田政権は6月に閣議決定した「骨太方針」で、新型コロナウイルス禍が落ち着き、歳出構造を平時に戻すと掲げた。それに反する大型の補正編成である。それなりの理由と説明が必要なはずだ。
ところが、規模が大きい割に物価高に対応する具体策が乏しいのはなぜだろう。半導体生産支援などの基金に4兆円以上を積み立てることが、今回の補正にどうしても必要だったとは思えない。
驚くのは首相が「税収増を国民に還元する」と強調したのに対し、鈴木俊一財務相が「減税の元手はない」と否定したことだ。増収分は既に使われ、実際の財源は借金である国債発行だ。補正予算案も7割近くを借金で賄う。すると首相は「還元が目的ではない」と言い、放漫な財政運営が物価高を加速させる懸念にはまともに答えなかった。
肝心の所得税減税の実現は来年6月になる。首相は「給付の方が即効性があるのは指摘の通りだ」と野党の言い分を認めている。賃上げと減税のセットにこだわる理由がよく分からない。実質賃金の目減りは18カ月続いている。来年6月の減税では景気下支えが手遅れになる恐れもある。通常国会後に経済対策を検討する時間はあったはずだ。
自民党5派閥の政治資金収支報告書の過少記載問題では、自身が派閥会長なのに人ごとのような答弁を続け、リーダーシップを発揮できていない。求心力を急速に失っている感は否めない。
一方、野党も心もとない。立憲民主党は対案は示したとはいえ、給付金か減税かの議論に終始した感がある。日本維新の会は「大阪・関西万博の予算が付いていることを評価すべきだ」という意見もあったなどとして賛成した。
国民民主党は、ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除を政府が検討する方針を示したことで賛成に回った。予算の内容より、それぞれの党内事情を優先したと国民の目には映ったのではないか。これでは政治不信はさらに深まってしまう。
国民の生活をいかに守るかは、与野党がなれ合いで決められるテーマではない。参院では、もっと突っ込んで議論を尽くしてもらいたい。
●パーティー券で「裏金」つくる自民党のやり方…5派閥の過少記載問題 11/25
自民党5派閥が2018〜21年の政治資金収支報告書にパーティー収入約4000万円分を過少記載したとして告発された問題が、政権を揺るがす新たな材料となっている。岸田派会長を務める岸田文雄首相(党総裁)らは、あくまで事務的なミスと主張するものの、現行のルールには抜け穴があり、「意図的」との疑念は払拭(ふっしょく)されないままだ。識者は早急なルール見直しを訴える。
「ノルマ以上の券を売ると議員個人の収入になる」慣習
自民党の各派閥は、年1回政治資金パーティーを開くのが通例で、1枚2万円が相場とされるパーティー券を団体や企業などに販売することが最大の収入源だ。パーティーなどを通じた派閥の収入は、22年は麻生派が2億9000万円近くで最多だった。
派閥の所属議員には当選回数や閣僚経験に応じて、販売ノルマがあるが、「ノルマ以上の券を売ると議員個人の収入になる」(自民関係者)。政治家個人に対する企業・団体献金が禁止されている中、パーティー券収入が議員にキックバックされて「裏金」になっている実態があるとされる。
20万円を超える購入者の氏名や金額は記載義務
政治資金規正法は1回のパーティーにつき、20万円を超える購入者の氏名や金額を収支報告書に記載するよう義務付ける。5派閥は記載漏れの指摘を受け、相次いで訂正した。
首相は、複数議員が同じ団体に券購入を依頼し合計した結果、20万円を超えたケースで記載が漏れていたとするが、22日の衆院予算委員会では立憲民主党の渡辺創氏が「一度に20万円超が振り込まれた例も確認した。容易に気づけたはずだ」と指摘した。
20万円以下に分割すれば「セーフ」? なんともユルい規制
こうした政治資金のずさんな取り扱いが起きる背景には、パーティー収入を巡る規制の緩さがある。
「ブラックボックスどころかブラックホール。誰にどれだけ券を売ったか分からない」。ある自民議員秘書は実情を率直に語る。購入額が20万円以下なら記載が不要なため、例えば22万円分を購入しても、11万円ずつに分ければ誰が買ったかは表に出ない。
今回の過少記載は20万円超の券を購入した政治団体側の収支報告書に支出の記載があり、派閥側の報告書の収入と突き合わせて発覚した。購入者が企業や個人ならば支出を公表する義務はなく、寄付にも当たらないため、売った側が記載しなければ把握できない。
日本大の岩井奉信(ともあき)名誉教授(政治学)は「過少記載してもチェックがほとんど働かないので、丼勘定で資金を集めていたのでは」と指摘。「現金での直接のやりとりを一切禁止し、振り込みで記録を残すなどの見直しが必要だ」と話す。
●自民5派閥、558万円不記載 22年のパーティー収入など―政治資金規正法 11/25
総務省が24日公表した2022年の政治資金収支報告書で、自民党安倍派など5派閥の政治団体が政治資金パーティーの会費などとして支出を受けたうち、少なくとも計558万円分について記載がなかったことが分かった。
政治資金を巡っては、自民党の複数の政治団体が21年まで4年間のパーティー収入計約4000万円を記載しなかったとして政治資金規正法違反容疑で刑事告発され、東京地検特捜部が捜査している。今回判明した22年分も同法違反に当たる可能性がある。
5派閥は、安倍派(清和政策研究会)、麻生派(志公会)、茂木派(平成研究会)、二階派(志帥会)、森山派(近未来政治研究会)。
同法は、1回のパーティーで20万円超の支出をした個人・団体の名前や金額を収支報告書に記載するよう義務付けている。
公表された収支報告書で、「パーティー券購入」や「会費」などの名目で政治団体が各派閥側に支出したとされる金額が、派閥側の収入として記載されているかどうかを調べた。
その結果、清和政策研究会は1団体からの28万円について記載がなかったほか、別の1団体からの収入を6万円過少記載していた。志帥会は4団体からの計286万円、平成研究会は1団体からの26万円を記載していなかった。
志公会は1団体からの180万円を記載していなかったほか、別の団体からの収入を2万円過少記載していた。森山派は1団体からの30万円が不記載だった。
各派閥は「事実を確認し適切に対応する」などとしている。
政治資金に詳しい岩井奉信日本大名誉教授(政治学)は「最近は『見つかれば修正すればいい』と政治家が制度をないがしろにする傾向がある。報告書を電子化するなど、在り方を考えていかなければいけない」と話した。
●自民派閥収入、麻生派が首位 二階派後退、総額12.8%減―政治資金 11/25
総務省が24日公表した2022年の政治資金収支報告書によると、自民党6派閥の収入総額は前年比12.8%減の11億8371万円だった。総裁選や衆院選を見据え集金が活発化した21年と比べ、4派が収入を減らした。
トップは2億8658万円を集めた麻生派で、前年の2位から浮上した。岸田政権を支える主要派閥として存在感を示し、4月に開いた政治資金パーティーの収入は6派中で最多の2億3511万円に上った。
岸田文雄首相が率いる岸田派が2位。パーティー収入が2割増となる一方、個人や政治団体からの寄付が減少し、前年比10.4%減の2億2935万円となった。
3年連続首位だった二階派は、同34.2%減の2億2094万円で3位に後退。柱となるパーティー収入が約9000万円落ち込んだことが響いた。長年、幹事長派閥として影響力を持ってきたが、岸田政権では非主流派と位置付けられ、集金力にも影を落とした形だ。
茂木派は同2.7%減の2億1612万円で、前年と同じ4位だった。最大派閥の安倍派は1億8635万円、森山派は4436万円を集め、いずれも増収となった。
派閥の政治資金を巡っては、森山派を除く5派が、政治資金パーティーの収入計約4000万円を18〜21年の収支報告書に記載していなかったとして告発され、東京地検特捜部が各派の担当者から事情聴取している。
●池田大作・創価学会名誉会長が死去 「後継者問題」と「岸田政権の崩壊」 11/25
FRIDAY記者の手元に、1枚の写真がある。撮影場所は、静岡県富士宮市にある日蓮正宗総本山・大石寺。約700年前に開創されたこの巨大な寺院は、’91年に日蓮正宗に破門されるまで、創価学会にとって聖地≠ニ言える場所だった。’68年、その大石寺で創価学会婦人部の幹部457人が参加する夏季講習会が行われていた。境内を埋め尽くさんばかりの女性幹部に囲まれ、両足を広げて椅子に座っている恰幅のいい男は――今年11月15日に95歳で死去した池田大作創価学会名誉会長だ。
「全盛期に500万人近い数の部員を抱えていた婦人部は、″先生″にとって、そして学会にとって最も重要な存在でした。’64年の公明党結成以来、選挙戦において彼女達は徹底した集票マシーン≠ニして活躍していた。全国各地に散らばった婦人部員が非学会員に声をかけ、時には家庭訪問までして、投票を呼び掛けました。先生はその労をねぎらうため、女性幹部を集めて講習や研修会を開いていました。成果をあげた学会員には自ら近寄り、直接言葉を交わした。それを見た婦人部の面々は、『私もいつかは先生からお言葉を……』とさらに選挙活動にのめり込んだのです。結果として公明党は、ピークの’05年には898万票を獲得する一大政党に成長しました」(学会関係者)
政界にも多大な影響を及ぼした池田氏だが、その晩年は謎のベールに包まれていた。死去が発表されるまで10年以上、表舞台に一切姿を現さなかったのだ。
「’10年6月の本部幹部会を池田氏が突如欠席し、現会長の原田稔氏(82)に実務を全て引き継ぎました。以降、学会員へのメッセージを、長男で主任副会長の博正氏(70)が代読する形で求心力を保っていた。池田氏がいなくなることで、心が離れてしまう学会員が少なくないことを、幹部たちはよく理解していたのでしょう」(ジャーナリストの山田直樹氏)
「池田教」と揶揄されることもあった創価学会。″神格化″されていたカリスマの死は、学会内に混乱をもたらしている。
「10月27日に5期目を迎えることが発表された原田会長が82歳、理事長の長谷川重夫氏も82歳。4年の任期を終える頃には、ともに86歳です。次期会長候補と目される66歳の谷川佳樹氏は4年後に70歳。もう一人の候補である萩本直樹氏、池田大作氏の長男である博正氏は二人とも70歳で4年後には74歳。幹部陣は皆、高齢者なんです。それなのに、創価学会が打ち出した来年のテーマが『世界青年学会 開幕の年』というのはおかしな話。
創価学会内部には、抜本的な世代交代や内部改革を求める会員が存在し、現執行部を批判する声もあがっていました。ところが唯一のカリスマの池田氏が鬼籍に入った。教団にとっては危急存亡の秋ですから、当面は池田氏の死をバネにして組織を引き締め、少なくとも、次の総選挙くらいまでは現行の体制で乗り切るでしょう」(創価学会ウォッチャーのジャーナリスト・乙骨正生氏)
その「次の総選挙」が行われるのはいつなのか。支持率低下に苦しむ岸田内閣が、池田氏の「弔い合戦」に燃える学会員の熱量に期待し、最後の一手として年明けに解散総選挙を仕掛ける可能性もくすぶっているが――。
「信者も高齢化が進んでおり、もはや弔い合戦に燃える人は少ない。彼らがカリスマを失った喪失感や混乱に耐え、まともな選挙活動ができるとは考えづらい。最大898万あった公明党の得票数も、昨年の参院選では618万と280万減り、今年の統一地方選でも苦戦。そんな状態で奮戦を期待するのは博打が過ぎますし、公明党も今すぐに国政選挙の準備はしたくないでしょう」(自民党関係者)
そもそも、外交や安全保障の分野で成果を上げてきた岸田政権と、池田氏の掲げる平和主義の理念を信ずる創価学会員の相性は悪かった。
「それでも、池田氏が存命の間は『先生にもなにか考えがあって自民党と組んでいるのだろう』と納得できたわけです。しかし池田氏亡き今、『平和を愛する先生ならこんなことはしなかった』とか、『先生の理念から公明党は離れてしまった』と防衛力強化を掲げる自民党と組むことをよしとせず、優秀な集票部隊が選挙協力に消極的になる可能性もある。
池田氏の死は、自民党と公明党のどちらにも大打撃です。公明党との連立だけでは政権を維持できないと判断した自民党が、維新や国民民主と組む可能性だってあります。政界再編≠ェ起きるかもしれません」(宗教問題に詳しいジャーナリストの藤倉善郎氏)
岸田文雄首相(66)は池田氏死去の報を受け、Xに〈池田大作氏の御逝去の報に接し、深い悲しみにたえません。池田氏は、国内外で、平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました〉と追悼文を投稿。立憲民主党の泉健太代表(49)や国民民主党の玉木雄一郎代表(54)らもそれに続いた。
「正直驚きました。ゴルバチョフ元ソ連大統領や胡錦濤前中国国家主席と友好な関係を築くなど、日本の民間外交で大きな業績を上げた功労者としての池田氏を追悼するという建て前なので、法的には政教分離の原則に反しないとは思いますが、特定の宗教団体のトップを国政政党の代表が称賛するのは不適切ではないでしょうか」(藤倉氏)
岸田政権は支持率が危険水域の10%台に近づいているうえ、起死回生の総選挙に踏み出すこともできない。池田氏の死去によって、いよいよ″崩壊″に向けたカウントダウンが始まった。
●霞が関「2大権力」検察と財務省が岸田政権に離反か… 11/25
忖度横行した安倍政権時とは様変わり──
ついに霞が関も「倒閣」に動きはじめたのか。内閣支持率が“危険水域”の20%台まで下落し、“早期退陣”の声もあがる岸田内閣。岸田氏周辺は、霞が関の「2大権力」とされる検察と財務省の動きに神経をとがらせているという。政権離反した疑いがあるからだ。
自民党の5大派閥が、政治資金パーティーの収入を政治資金収支報告書に記載していなかった問題に、東京地検はどこまで切り込むのか、自民党議員は戦々恐々としている。
東京地検は各派閥の職員を任意に聴取し、大物議員からも話を聴いた、という話も飛びかっている。政治資金パーティーを利用して「裏金」をつくっていたとしたら、政治資金規正法違反の罪で立件された自民党の薗浦健太郎前衆院議員とまったく同じだ。特捜部の捜査次第では、派閥幹部が立件される可能性がある。
「まさか地検特捜部が、ここまで本腰で捜査を進めるとは思わなかった。岸田政権への打撃は大きいですよ。さらに、公職選挙法違反の疑いがかかっている柿沢未途議員の捜査もつづいている。もし、柿沢議員の身柄を取られるようなことがあったら、岸田政権への批判が強まるのは確実です。安倍政権の時は、こんなことはなかった。やはり政権が弱体化していると、捜査をやりやすいのだろうか」(自民党関係者)
弱体化に拍車
岸田内閣を支えてきた“最強官庁”である財務省も、岸田政権と距離を置き始めたのではないか、と指摘されている。岸田首相が強調してきた「税収増を還元する」という所得税減税の理屈を真っ向から否定したからだ。
鈴木俊一財務相は、国会で「税収の増えた分は、政策的経費や国債の償還などにすでに使っている」と平然と答弁している。還元する財源はない、と認めてしまった。財務大臣の答弁は、財務省が作っている。岸田氏は財務省からハシゴを外された格好だ。永田町では一時「財務省の倒閣運動が始まったのか」と騒然となったらしい。
「さすがに財務省や検察が倒閣に動くことはないですよ。偶然が重なっただけでしょう。でも、安倍官邸が霞が関を強権支配していた時なら、忖度がはたらき、政権を困らせるようなことはやらなかったでしょう。いまは財務省も検察も、やるべきことをやっている、ということだと思う。ただ、それが結果的に岸田首相を窮地に立たせていることになっています」(霞が関事情通)
弱体政権の退陣も近いのか。 
●岸田首相が方針転換、本気か? トリガー条項の凍結解除を議論 11/25
岸田文雄首相の方針転換に疑念・懸念が広がっている。ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除について「議論」を指示したかと思えば、中国が日本の排他的経済水域(EEZ)に無断設置した「海洋ブイ」について撤去の「検討」を明らかにしたのだ。報道各社の内閣支持率が30%以下の「危険水域」に突入し、「岸田降ろし」の政局がくすぶるなか、岸田政権を支える財務省や、習近平国家主席率いる中国への配慮・弱腰を封印したのか。それとも、ポーズだけなのか。リーダーは、他人の意見に耳を傾けることも大切だが、危機を前にジタバタしないことも重要だ。岸田首相は政権運営の正念場を迎えている。
「(自公)与党と国民民主の政策責任者で議論、検討を進めたい」
岸田首相は24日、2023年度補正予算案の衆院通過を受け、国会内で国民民主党の玉木雄一郎代表と面会した。玉木氏が「覚悟を持って(補正予算案に)賛成した。(トリガー条項)凍結解除はやりきりたい。覚悟を持って取り組んでほしい」と求めたのに対し、こう応じた。
これまで岸田首相は、トリガー条項の解除について、灯油や重油が支援対象外となり、流通を混乱させるとして慎重な考えを示していた。昨年春に公明党も含めた3党で解除を協議したが結局、見送られた経緯がある。
早速、財務省の牽制(けんせい)が始まった。
鈴木俊一財務相は24日の記者会見で、「(トリガー条項の解除には)国、地方合計で1兆5000億円もの巨額の財源が必要」などとクギをさしたのだ。自民党内でも、慎重論が大勢を占めるとされる。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は「ガソリン価格は下落傾向だ。厳しい値上がりで庶民の家計が苦しいときには真剣に議論せず、いまさら『議論』『検討』とは国民をバカにしている。そもそも、関係法令の改正に時間がかかる。本当に国民の苦難を思うなら『消費税減税』が一番効果的だが、その議論に真剣さは感じられない。結局、政局や選挙を見据えた打算の思惑に見えてならない」と語った。
中国が、沖縄県・尖閣諸島近くの日本のEEZ内に無断設置した海洋ブイについても、岸田首相の方針に変化が見られる。
岸田首相は22日の衆院予算委員会で、日本維新の会の三木圭恵議員から「中国が撤去しないのであれば、日本が回収して(ブイの)中身を調べた方がいい」などと迫られ、「ブイの撤去も含めて、可能、かつ有効な対応を関係省庁で連携して検討していく」と答弁したのだ。
度重なる右往左往に支持率低迷スパイラル
日本政府はこれまで、国連海洋法条約に規定が明記されていないとして、撤去に後ろ向きの姿勢で、中国への抗議と撤去要請に留めていた。
これに対し、日本と同様、中国の覇権主義的行動と対峙(たいじ)するフィリピンは、中国海警局が勝手に設置した長さ約300メートルの浮遊障壁を撤去している。
国際関係に詳しい福井県立大学の島田洋一名誉教授は「相手国に圧力をかけて反応を瀬踏みするのは、中国の常套(じょうとう)手段だ。フィリピンの毅然(きぜん)とした対応は、米国でも広く報道された。日本も海洋ブイを発見後、すぐに『危険物』として撤去すべきだった。いまさら『検討』では遅きに失しているが、淡々と撤去してブイの構造を調査したうえで『必要ならお返しする』と通達すればいい。中国が行動をエスカレートさせる局面で試金石になる。これで撤去できなければ、中国側に『日本は口だけ』という誤ったシグナルを送ることになる」と懸念した。
それにしても、岸田首相が「年内の衆院解散」を見送る意向を示した後で、方針転換が続くのを、どう評価するのか。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「あまりにも唐突で、支持率狙いの対応としか受け止められない。重要な外交案件で熟議もせず、唐突に方向性を示す姿勢は危うささえ感じる。トリガー解除も、やるべき時に踏み切らなかった。所得税などの減税策でも、唐突に岸田首相が方針を示し、後々の調整で大混乱した。度重なる右往左往が国民の疑念を招き、支持率低迷のスパイラルを招いた。国民は一連の対応を『聞く力』ではなく『場当たり的』だと、厳しく判断している」と突き放した。
 11/26

 

●森喜朗氏、今こそ安倍派が支えるべき  年内解散、まだ可能性ある 11/26
極めて軽率
(東京五輪の招致活動で機密費を使って贈答品を渡したという)馳浩知事の発言は軽率も軽率、極めて軽率です。知ったかぶりをして言ったんでしょう。すぐに全て撤回したのはよかったですがね。
だいたい馳さんは、スポーツだとか五輪だとか得意分野で調子に乗りすぎるところがあります。「俺はこんなこともしてきたんだ」と誇示したかったのでしょう。私に言わせれば、幼いというか、いまだに学生気分、選手気分が抜けていない、かわいらしさがあります。
ただ、相手との面会や交渉の内容をしゃべり過ぎたり、ブログに載せたりすると、せっかく良好な関係を築いた富山や福井の知事からも警戒されかねません。大知事を目指すのなら、言動だけで注目を集めるのでなく、広い視野に立った政策で「なるほど」とうならせないといけません。
亀井氏が画策
目下、岸田内閣の支持率が下がっています。高市(早苗経済安全保障担当相)さんが勉強会を始めるなどいろんな動きが出てきましたが、高市さんは内閣の一員なんだから今は助けてあげるべきではないでしょうか。こんな時こそ、自民党は踏ん張って岸田(文雄)総理を支えないといけません。
この前、亀井(静香)さんから電話があって「いっぺん集まらないか」と言うんです。私は「足が悪いから無理だ」と断りました。小泉(純一郎)さんや山崎(拓)さんにも声を掛けているようで、何かを画策しているんですよ。だからと言って党内で「これは大変だ」とはなりません。「年寄り連中が何を考えてんだ」と言われるだけですよ。総理があっぷあっぷで溺れそうになっているところを頭の上から押さえつけることないでしょう。みんな自民党の仲間じゃないですか。
麻生(太郎)さんはどこまで本気で岸田さんを支えるつもりか分からないし、茂木(敏充)幹事長も自分からは仕掛けられなくても次にやりたくてしょうがない。
だから今こそ、清和政策研究会(安倍派)が岸田さんをしっかり支えないといけない。
岸田さんを総理に、という原点は安倍(晋三)さんの意向です。岸田さんもわが派に配慮してくれているじゃないですか。幹部の「5人衆」は今もいいポストに収まっていますし、初入閣もちゃんと2人起用してくれた。それなのに、ピンチになったら急に手のひらを返すようなまねをしてはいけません。この苦難をともに乗り切る覚悟が必要です。それが安倍さんの遺志でもあると思いますよ。
近々また5人が集まるようです。5人には「次の選挙までには決めろ」と言っていますが、会長が決まりそうな雰囲気はありません。いつまでもグチグチ言ってないで、西村(康稔)さんなのか萩生田(光一)さんなのか早く誰かが覚悟と責任を示すべきです。減ったとはいえ99人の議員を抱えている大派閥なんですから。
このままだと結局、私がわざと会長を決めるのを先延ばししているんじゃないかと邪推されるんです。会長不在の方が森は影響力を発揮しやすいだろう、などと思われるのは大変心外です。
福田達夫(元総務会長)さんは「リーダーが必要だ」と現在の集団指導体制に異を唱えました。若手らしい正論です。佐々木(紀衆院議員)さんと同じ4期でしょ。こういうことを、本当は佐々木さんに言ってほしいのです。
「しっかり頑張ります」
岸田さんには「自分が辞めたら誰がやるんだ、そういう気概でやりなさい」と励ましました。「しっかり頑張ります」と言っていましたよ。幸い、最近も岸田さんの表情は明るい。歩いている姿も下を向いていないし、堂々としたものです。大変な時期でも、そういう姿勢は実にいい。
私が多少心配しているのは、岸田さんは人が良すぎることなんです。宏池会(現岸田派)は伝統的に大蔵省に近いですが、岸田内閣も財務省のペースに乗せられている。最近は外務省の言いなりにもなって、バイデン米大統領に高い買い物をさせられている。軍事的圧力を増す中国とどう対峙するかを考えた時、ロシアとの関係はどうあるべきなのか。日本の安全保障をしっかり見据えて戦略的に対応すべきだと思います。
内閣支持率が20%台になると騒がしくなりますが、私が総理の時は一切無視しました。小渕(恵三)さんの後を救援した私は「やれるところまでやったら、いつでもやめてやる」と思っていましたから。
年内の衆院解散は見送りという報道が出ましたが、まだ分かりませんよ。岸田さん本人は何も言ってませんからね。党内をあっと言わせるために、解散に持ち込む可能性はまだありますよ。
今の状況をがらっと変えるために、一度思い切ってやってもいいんじゃないですか。私も内閣支持率20%台で解散に踏み切りましたが、負けませんでしたよ。
●「日本の首相9人のうち好感度1位は小泉元首相」…岸田首相は? 11/26
25日付の読売新聞によると、スマートニュースメディア研究所は「メディア価値観全国調査」を実施した結果を24日発表し、小泉純一郎元首相が2001年以降に就任した日本の首相9人のうち好感度1位となった。岸田文雄首相は6位にとどまった。
小泉元首相は10点満点で6.6点を獲得し1位を占めた。次に安倍晋三元首相と菅義偉元首相が5.4点で2位タイを占め、福田康夫元首相が4.8点で4位につけた。
小泉元首相は2001年4月から2006年9月まで在任し、菅元首相は岸田首相の前に約1年間国政を運営した。福田元首相は第1次安倍内閣後の2007年に首相になった人物だ。安倍元首相はこの中で最も長い間首相を務めた。
好感度5位から9位は野田佳彦元首相(4.4点)、岸田首相(4.2点)、菅直人元首相(3.6点)、麻生太郎元首相(3.5点)、鳩山由紀夫元首相(3.1点)の順だった。
野田前首相、菅前首相、鳩山前首相は2009年から2012年の民主党政権時代に首相を務め、現在の自民党副総裁の麻生前首相は2009年に民主党に政権を譲る前に国政を運営した。
今回の調査で岸田首相に対する好感度は、新聞やテレビなどの既存メディアを好む高齢層で高くなった。SNS利用者は年齢に関係なく岸田首相に対する好感度が低くなる傾向があった。
調査に参加した東京大学の前田幸男教授は「岸田総理は安倍元総理に比べてSNSで否定的な情報が拡散し、その影響を受けた可能性がある」と分析している。
●ボロボロの岸田首相が「保守層」にアピールか  「天皇について驚きの見解」 11/26
ついに動き出した
天皇制を巡って長らく懸案となっていた問題が、ついに動き出すかもしれない。
自民党は11月17日、岸田文雄首相が主導して立ち上げた「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」の初会合を開いた。そして、時期を同じくして、国会では非常に重要な政府の見解が示されていた。いったいどのような見解だったのか。
まずは皇室の現状について簡単におさらいしておこう。
周知のとおり、いま、天皇の皇位継承は危機的な状況にさらされている。
これまで、天皇家は男系によって継承されてきたとされる。皇室について定めた法律「皇室典範」においても男系男子が皇位を継承すると決められているが、現在の皇族で将来的に皇位に就く可能性があるのは秋篠宮さまや、その長男・悠仁さまなどに限られている。
そして今後、さらに皇位を次代に引き継ぐためには、悠仁さまがご結婚し、男子が生まれる必要がある。そうでなければ天皇家が断絶してしまうという事態になっているのだ。
この問題を解決する方法は大きく2つある。
1つは戦後、現行の皇室典範が施行される中で、皇籍を離脱した旧皇族(旧宮家)を皇族に復帰させるという案だ。
2021年に菅義偉政権、岸田政権下で設置された有識者会議が提出した報告書でも、いまは皇族に認められていない「養子縁組」を皇室典範改正で可能とし、皇統に属する男系男子を新たに皇族として迎え入れるという方策が検討されている。
そして、もう1つが皇位継承を女性や女系へも拡大させるという案だ。
これは2005年に小泉純一郎政権下で設置された有識者会議で提案され、一時は報告書に沿った皇室典範の改正法案も準備されたが、翌年に男系男子の悠仁さまがお生まれになったことで改正が見送られた。
衆院内閣委員会で語られたこと
今後、安定的な皇位継承を実現するためには何らかの方策を取る必要があり、自民党も懇談会を開くなかで問題解決に本腰を入れている形だが、そうしたなか、国会では皇位継承に関する政府の重要な見解が示された。
見解が示されたのは11月15日の衆議院内閣委員会。
立憲民主党の馬淵澄夫議員が、旧宮家の男系男子を皇室への養子縁組の対象として選ぶことは、憲法14条における「法の下の平等」に反するのではないかと質問したことに対し、内閣法制局の木村陽一第1部長が「皇族という憲法14条の例外として認められた特殊な地位を取得するものであり、問題は生じない」と答弁したのである。
きわめてややこしい話だが、どういうことか。
日本国憲法では第14条で「法の下の平等」を定めており、「すべて国民は、人種、信条、性別、社会的身分または門地により差別されない」としている。しかし、天皇の地位は例外的なものである。職業選択の自由などがない、やや特殊な存在だ。もっとも、特殊ではあるものの、その地位は同じく憲法で定められているため、14条の例外として認められている。
ただし、旧宮家は既に皇籍を離脱しているため一般国民となっており、14条の定める平等原則が及ぶ。そこから養子を選んで皇族に復帰させることは憲法違反になるのではないかという指摘が一部の憲法学者からも出ているのだ。
保守層の取り込み…?
実は政府はこれまで、この指摘に対して見解を示すことを避けていた。
今年2月の内閣委員会では、同様の質問を受けた松野博一官房長官が「(憲法14条との整合性については)実際に制度化が図られる際に検討されていくもの」とのみ答弁してお茶を濁している。
それが、今月15日の内閣委員会では「問題は生じない」という明確な見解が示されたため、永田町では「いよいよ政府が皇室典範の改正に向けて布石を打ってきたのではないか」という見方が広がっている。
現在、岸田首相は各社の世論調査で内閣支持率低下にあえぎ、来年9月に自民党総裁選が想定されるなか、自身の求心力をどう保つかが喫緊の課題になっている。
そのため、来年の通常国会で旧宮家の皇籍復帰によって男系男子の皇族を増やす皇室典範の改正を進め、保守層からの支持をとりつけようとしているのではないかとも見られている。
しかし、日本国の象徴である天皇について定める皇室典範の改正は、与野党を超えて、多くの国民が理解、納得する形で進めることが重要で、高度な調整力、政治力が求められる。
皇室の問題は、決して支持率や求心力を回復させるための手段として使われ、拙速な議論に終始するようなことはあってはならない。
その胆力が岸田首相に残っているのか。これから問われていくことになりそうだ。
●ポスト岸田に急浮上「上川陽子外相」の豪胆素顔 11/26
「2浪して東大」人呼んで「不屈の人」
やることなすこと裏目ばかり。見当違いな減税カラ手形に、内閣改造直後の政務三役のドミノ辞任。もはや中折れ状態の岸田政権を見限って、水面下では“ポスト岸田”探しが進行中だ。すると意外にも「日本初の女性総理」が急浮上してきた。
岸田文雄総理(66)が誇らしげに強調した「適材適所」の人事は、あっさりと崩壊。昨年末は、わずか2カ月余りで4人の閣僚が辞任。10月20日に捲上重来の臨時国会が始まってからは、3人の政務三役がドミノ倒しで辞任する異常事態だ。
内閣支持率は過去最低の21.3%(16日発表、時事通信)まで落ち込み、相次ぐ地方選でも敗北。危機的状況に追い込まれているが、岸田総理の近況について官邸担当記者が解説する。
「経済対策に盛り込んだ所得税減税が評価されず、支持率の低迷には顔をこわばらせ、ショックを受けている様子でした。それでも、退陣に追い込まれるほどの政局になるとは思っておらず、野党の弱さも相変わらずとあって、焦りは見られません」
今では「増税メガネ」と揶揄され、断末魔にも“聞かない力”で無視を決め込み、増税路線をひた走る構えだ。
目下のところ、年内解散は見送られたとはいえ、次期衆院選に向けてこれ以上の逆風は避けたいところ。
先を見据えて「ポスト岸田」が最大関心事になり、茂木敏充幹事長(68)や河野太郎デジタル相(60)とともに、急浮上しているのが、上川陽子外相(70)だ。
名前を聞いてもすぐに顔が浮かばないほど地味な存在だが、政治ジャーナリストの山村明義氏は、「自民党の中では数少ない人材」と、評してこう話す。
「これまで日本初の女性総理候補に、高市早苗経済安全保障担当相(62)や野田聖子衆院議員(63)、小渕優子選挙対策委員長(49)などの名前が挙がっていましたが、一番下からごぼう抜きして躍り出ました。世襲でもなく、重鎮に気に入られて出世したわけでもなく、実績で評価された本格派です」
その経歴は華々しく、東京大学卒業後、米ハーバード大学で政治行政学修士号を取得。現在、当選7回で岸田派に所属。東大の同級生で日銀マンだった夫との間には娘が2人。少子化担当相を2期、法相を5期務めて、総理大臣の有資格者として申し分なし。ただ、キャリアウーマンだが苦労人でもある。
東大卒でも現役ではなく2浪での入学、96年の衆院選初出馬も静岡1区から無所属で出馬して惨敗。その後、自民党に入党するも、00年の衆院選は公認争いで敗れた。しかし、出馬を強行し、除名されながらも初当選を果たし、見事にリターンマッチ復党にこぎつけた根性の持ち主なのだ。
「1回目も2回目も選挙区で取材しましたが、普通は惨敗を経験したり、除名までされたら政治家をあきらめてもおかしくありません。それでもへこたれる姿は見せない不屈の人。地味だけど芯があって、タダモノではないすごみを感じました」(山村氏)
一方で、先の自民党関係者はしたたかな素顔をこう明かす。
「キャリアがあってプライドは高いけど、選挙になると有権者の前で平気で泣けるタイプ。ウソ泣きだろってツッコまれることもあるけど、しれっと心をつかんじゃう。ありゃ寝業師だよ」
頼もしさも見せる上川氏の成り上がり伝説は、まだほんの序の口だった。
オウム信者ら16人の死刑執行を命令
一躍、注目を集めた法相時代には、オウム真理教の教祖・麻原彰晃をはじめ、計16名の死刑執行を命じて関係者の度肝を抜いた。
「麻原を死刑にすれば必ず信者がテロを起こし報復するという話は、永田町や法務省関係者の間で周知の事実。それでも上川氏が決断したことで、安倍晋三元総理は生前に『肝が据わっている』と絶賛していました」(山村氏)
それでも代償は大きく、生涯にわたって、24時間の厳重な警護体制が敷かれることになった。
武闘派の一面も兼備している。安倍政権下の法相時代、検事総長の最有力候補だった林眞琴氏(66)との対立が表面化した時など、
「上川氏が推進していた『国際仲裁センター』の日本誘致を巡る計画に林氏が真っ向から反対したんです。これに怒った上川氏は菅義偉官房長官(74)を説得し、18年1月に林氏を名古屋高検検事長に転出させました」(政治部デスク)
実は、岸田派でありながら、岸田総理とも反りが合わないと言われている。
「20年の菅政権の時、一本釣りで3度目の法相に就任しました。この時、もはや安倍さんから岸田総理への禅譲はないと見たか、派閥の領袖である岸田さんに打診されたことを黙っていたんです。それで不仲説がささやかれ、上川さんは“隠れ菅派”と揶揄されていました」(自民党関係者)
岸田政権誕生後も蚊帳の外に置かれたが、今年9月に行われた内閣改造で今度は外相に起用される。その一方で、留任が有力視されていた岸田派の林芳正氏(62)とのバトンタッチは、「最大のミステリー」と物議を醸した。
岸田総理の心変わりには麻生太郎副総裁(83)の鶴の一声があったと、自民党関係者は耳打ちする。
「岸田総理と人事の話をしていた時に麻生さんが、『1週間分の新聞を持ってきてみな。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻や台湾有事の緊張が高まっているのに、どこに林の名前があるのよ。何にもやっていないじゃないか』と進言したんです。それで私情を挟んでいる場合ではなくなり、岸田派で実力のある上川さんに白羽の矢が立った」
このたびの外相就任で総理待望論も浮上。これまでは野望を口にしたことはなかったが、
「2年くらい前から『政治に大事なのは調整力。いつか総合調整をさせていただけるなら、やってみたい』と、口にするようになったんです。『総合調整』とはすべてに関わることで、いわば、総理大臣の仕事。それで周囲はやる気まんまんだと、気づいたんです」(自民党関係者)
神輿を担ぐのが趣味だという上川氏。日本初の女性総理という神輿に担がれる日は来るか。
●短命化する日本人 11/26
日本人の平均寿命が2年連続で短くなっている事実をご存知だろうか。女性の平均寿命は、20年の87・71歳をピークに、21年87・57歳、22年87・09歳と2年間で0・62年短くなっている。男性も、20年の81・56歳をピークに、21年81・47歳、22年81・05歳と2年間で0・51年短くなっている。高齢社会の到来で、社会保障費の負担がとんでもない重荷になると言われながら、日本人が短命化するという思わぬ変化で、その問題が緩和されてきているのだ。
もちろん、この短命化は一時的な現象だとする見立てが多いし、政府もそう解釈している。新型コロナの感染拡大で亡くなる人が増えたのが短命化の原因だと言うのだ。だから、新型コロナが落ち着いた今年は、再び長寿化のトレンドが戻るだろうというのが、大方の見方だ。
ただ、私はそうではないだろうと考えている。22年の平均寿命は、前年と比べて男性は0・42年縮んでいるが、そのうち新型コロナの影響は0・12年に過ぎないと厚生労働省の寄与分析が明らかにしているのだ。女性も、ほぼ同様だ。つまり平均寿命が縮んだことの3分の2以上は、新型コロナ以外の要因なのだ。
それでは何が起きたのか。明確な因果関係を立証するデータは存在しないのだが、近年、高齢者が医療や介護サービスを利用する際の自己負担が、どんどん引き上げられている。そのため、お金がなくて、体調が悪化しても医療にかかれず、介護サービスを利用できない高齢者が増えているのではないだろうか。
すべての政策の評価は、平均寿命に集約されると言われる。その意味で、岸田政権の政策は、これまで最悪の結果をもたらしている。岸田政権が続く限り、短命化は続くのではないか。
●政府の少子化対策は「やってる感」を醸すだけ…人口減が爆速で進む日本 11/26
先進国で進む急激な少子化問題。これは資本主義システムに限界が来ている証左に他ならない。なぜ政府による少子化対策はことごとく失敗するのか? マルクス経済学に精通した2人が解き明かす。
あらゆる業界が人手不足
少子高齢化の悪影響が労働力不足という形で日常生活に押し寄せている。人口は14年連続で減少し、昨年はマイナス80万人。これは減少率・減少数とも過去最大だ。こんな事態を招いた元凶は何なのか。岸田政権の少子化対策は大間違いと喝破する経済学者と思想史家による白熱の議論。
白井 日本では労働力不足が私たちの日常生活の中で顕著に表れています。たとえば、来年にはトラックドライバーの労働時間の規制が強化されることで、圧倒的なドライバー不足に陥ることが見込まれています。この規制強化自体は歓迎すべきことですが、即日配達のようなサービスは今後、難しくなるでしょう。
新幹線の車内販売をやめるのも、人手不足がいちばんの理由だそうです。首都圏の電車でワンマン運転が増えているのも、かつてのようなコストカットが目的なのではなく、人手不足への対応が背景にあります。
大西 報道番組はよく人手不足問題を扱いますが、大抵は労働力の代替としてのAIやロボットのほうに焦点が当てられ、その根源が人口減少なのだという根本の問題は正面から取り扱われません。「人口減」とは、要するに資本主義が「人口再生産のコスト」を払わなくなっているということですが、それはつまり若者の貧困を放置し、子どもを育てられなくしているということですね。「人口を維持する」ためには、それだけのコストを払う必要があるのですが、多くの場合、資本主義は、農村社会からの人口移動や移民に頼ってきました。欧米の場合は特に移民ですね。
白井 大西さんの最新刊である『「人口ゼロ」の資本論 持続不可能になった資本主義』(講談社+α新書)でも触れられているポイントですね。高度資本主義の果てである人口減少問題を根本的にえぐる視点が、いわゆるマルクス経済学の方法から出てくることに衝撃を受けました。
労働力を確保するための人口流入は、歴史的には戦争奴隷という形を取っていました。現代では、さすがに人狩りをするわけにいかないので、自発的な出稼ぎや移民、場合によっては難民という形を取るわけです。しかし、これらの人々も、元の生活に不満がなければ来るはずがありません。言ってみれば、極度の低開発状態、あるいは戦乱状態に置かれている国があることが、先進資本主義国が繁栄するためには必要だということになります。
中国もついに人口減
白井聡氏 白井 岸田首相が「異次元の少子化対策」を掲げていますが、2児の親である私の立場からすると、まずは子どもがいる家庭への減税をするべきです。
生まれた子どもは誰かが育てなければなりません。それには必ずコストがかかる。年少扶養控除(16歳未満の子どもがいる場合に所得から38万円を控除する制度)を復活しないかぎり、そのコストを無視していることになります。「この社会は存続しなくていい」と宣言しているに等しいような凄まじい話です。「異次元」の前に、一丁目一番地から着手するべきです。
大西広氏 大西 ヨーロッパと日本の家族対策費をGDP比で比較すると、全然数字が違います。ただ、ヨーロッパの大規模な対策でも、合計特殊出生率レベルでせいぜい0.3程度の改善にしかなっていません。つまり、人口置換水準(人口の増減がない状態になる水準の合計特殊出生率)である2.07に戻すには、資本主義がこれまで放置してきた「貧困」を根本的になくさなければならない。そうでなければ、少子化対策は「やってる感」を醸し出すだけの「アヘン」にしかなりません。
白井 出生率の低下は世界でも東アジアにおいて顕著で、中国は日本よりも数字が悪くなっています。この問題を正面から見据えている国はないでしょう。保守的な価値観を掲げて家族を重視したハンガリーのオルバン政権の政策が日本でも注目されていますが、こちらも出生率2.07どころか、他の欧州諸国並みの1.56に過ぎません。
日本の合計特殊出生率は1.26('22年)で過去最低となったが、韓国は0.84、香港は0.88、台湾は0.99(すべて'20年)と1を割り込んでいる。中国も1.09('22年)で日本より低い。
大西 中国もついに人口減という後期資本主義の問題が表面化しました。結局、イスラエル(2.90)を除いたすべての先進国で出生率は2を下回っています。これは個別の国の問題ではなく、資本主義の問題なのです。だから資本主義を乗り越える国が出ない限り、元には戻らないと思います。
●「全ての既存政党を壊す」泉房穂氏が語った政権奪取の青写真 11/26
東京都立川市、埼玉県所沢市の市長選で当選した「非自民」候補を応援し、交流サイト(SNS)などで注目を集めている兵庫県明石市の前市長、泉房穂氏(60)が本紙のインタビューに応じた。泉氏は、物価高などの影響で「国民の生活は持ちこたえられなくなっている」と岸田政権を批判。地方選での自身の勢いを次期衆院選につなげ、国民負担増から国民を救う政治へと転換する「救民内閣」の発足に向け、政権奪取構想を練り始めていると明らかにした。主なやりとりは次の通り。
勝因は、候補が組織と市民のどちらを向いているか
――東京都立川市、埼玉県所沢市の市長選で支援した候補の勝因は。
「候補が、組織と市民のどちらを向いているかの違いだ。自治体の選挙は市民に近い。政党ではなく市民を向いていれば、既存政党に飽き足らない人が投票してくれて勝てる」
――マスコミの予測では、あなたが支援した候補は劣勢との見方も強かった。
「マスコミは、政党や有力団体ばかりを取材するから間違う。これらの選挙は与野党対決ではない。今の国民は与党も野党もNO。自分たちの生活が大変だから、これ以上負担を課すなという思いを持っている。野党が良いとも思っていない。完全無所属市民派だと野党支持層はもちろん、無党派層も大挙して流れ、与党支持層も票を入れる」
――どうして、それが分かるのか。
「街頭演説をすれば票読みはできる。駅を利用する有権者が候補者を無視するのか、顔を向けるのか、立ち止まるのか。1〜2分でも演説を聞くのか。電車を1本遅らせて話を聞き続けるのか。これを見れば、票は読める」
『明石モデル』を全国で知らせるには首都圏で勝利が必要だった
――首都圏の自治体選挙で応援をする理由は。
「明石市長として、18歳までの医療費無料化などを実現し、10年連続で人口が増え、税収も増やした。この流れを他にも広げたいと、市長退任直後で同じ兵庫県で行われた三田市長選に注目した。現職は自民と公明、立憲民主、国民民主の推薦で3選を目指したが、私は元銀行員の新人を応援して勝利した。しかし、全国的なインパクトは弱かった。『明石モデル』を全国で知らせるには首都圏の有名な街での勝利が必要と考え、人口30万人の明石市と同規模の所沢市をその一つに選んだ」
岸田首相には国民への愛も、国家への責任感もない
――今の国政をどう見る。
「岸田文雄首相は首相をやりたかっただけで、国民に対する愛も、国家に対する責任感もない。『異次元の少子化対策』と言いながら、財源も確保せず、国民の負担だけを増している。そんな人が長期政権を敷いているのが今の日本の不幸。国民は疲弊しているのに、毅然と反論する与党議員もいなければ、野党も体たらくで、国民には選択肢がない。仮に岸田首相が退いても、国民の生活不安は変わるはずはなく、劇的な方針転換を求めている」
――物価高対策として、岸田政権は4万円減税や低所得世帯への7万円給付などの経済対策を行う。
「何の意味もない。国民にすれば、給料は上がらないのに、税金や保険料は取られ、物価も上がっているのに、たかだか4万円減税かという思い。その支援をはるかに超える将来の負担増がセットになっていて、整合性が取れていない。ドイツなどは日本と変わらない国民負担率なのに、教育は無償だ。どうして日本ができないのか。それは、お金がまともに使われずに消えているからだ」
「救民内閣」子ども・教育予算を倍増、食料品の消費税率ゼロに
――地方選挙の勢いを今後、どう展開する。
「明石市の成功事例を他の自治体に広げる『横展開』だけでなく、その施策を国政に広げる『縦展開』、自分の命には限りがあるから未来につなげる『未来展開』がある。そのために考えているのが救民内閣創設だ。これ以上の国民負担増はせず、子ども予算と教育予算を倍増させる。食料品の消費税率はゼロにする」
――次期衆院選にはどんなイメージで臨むのか。
「これまでのような右や左の対決ではなく、『国民の味方』対『国民の敵』の戦い方に持ち込む。2005年の郵政選挙で自民党が大勝した時、4年後に民主党政権が誕生するのは誰も想像しなかった。私は救民内閣創設を訴え、政治の流れを一瞬で変える。1回の衆院選で政権は取れる」
全ての既存政党を壊す。政治の夜明けを国民に
――その流れをどう作る。
「既存政党とは別の新党を立ち上げるというよりも、全ての既存政党を壊すイメージ。衆院選は小選挙区制だから、今はいずれの政党の議員であったとしても、『国民の味方』が勝てると思えば、こっちに流れてくる。国民の負担増を許さない勢力を一つにまとめるのか、連合軍で戦って勝つのかは、いずれでも良い」
――あなたはどんな立場を取るのか。
「自分が国会議員の1人になるかどうかに意味はない。政治映画を製作するイメージで言えば、主演を務めるのではなく、シナリオを書いてキャスティングもした上で、総監督として、政治の夜明けを国民に届けたい」
●支持率が最低水準の岸田総理に元側近が苦言 11/26
「信念がないから“語る力”がない」「奥の座敷には入れてくれない」
自分でブレーキをかけている
「岸田さんは“聞く力”よりも“語る力”が問題だと感じています」
と話すのは、元衆議院議員の三ツ矢憲生氏(72)。2003年に初当選後、2期目から現在、岸田総理が会長を務める宏池会に在籍した。一昨年に政界を引退し、現在は国会近くに事務所を構え、宏池会所属議員の相談相手にもなっている。
宏池会のご意見番とも言える三ツ矢氏にいまの岸田総理と政権についてどう思っているかを問うと、口にしたのは厳しい言葉の数々だった。
「岸田さんは昔から、自分の言葉で話しているという印象がないんです。性格的なものが大きいのでしょうけれど、他の政治家が失言しているところを見て、自分でブレーキをかけているのかもしれません。自分で考え、自分の言葉で話せば、もっと国民に届くのではないでしょうか」
11月に入り、各社が実施した世論調査によれば、毎日新聞の内閣支持率21%、不支持率70%を筆頭に、NNN・読売新聞が支持率24%、不支持率62%、朝日新聞が支持率25%、不支持率65%と軒並み過去最低を記録した。
菅義偉前 政権の最低支持率は28%(朝日新聞)だった。これよりも、支持率が下がってしまった格好だ。政権としては末期的とも言える状況だろう。
「支持率が低い上に、前回調査からの落ち方が激しいですよね。政務三役が立て続けに辞任していることも影響していると思います。特に財務副大臣の税金滞納問題は効いている。やはり早くに辞めさせるべきでした。これは推測ですが、岸田さんが三役を早く辞めさせる決断ができない背景に派閥の推薦があったのではないでしょうか。自分で選んだ人事ではないので、派の様子を窺いながら、政権運営をせざるを得ない。それがいまも続いているということでしょう」
“自分は現実主義者なんです”
では、支持率急落を招いている岸田総理の「語る力」のどこが問題なのか。
「そもそも、岸田さんの中に“語るべきもの”があるのか、疑問です。一昨年の自民党総裁選の直前、現在官房副長官を務める村井英樹が私のところに来たんです。そこで彼は“新しい資本主義について三ツ矢さんに相談してこい、と岸田さんに言われた”というんです。では、“新しい資本主義って何をやりたいのか”とこちらから聞くと何もなかったんですね。キャッチフレーズはいいんだけど、自分がこの路線で行くんだ、という信念がないように感じます。信念があれば、国民に語りかける言葉にも力が出てくるはず。会合などの席でも、踏み込んだ話はしてくれません。岸田さんと話していると玄関先から応接間までは入れてくれるけど、奥の座敷には入れてくれない、そんな感じです」
ある時、三ツ矢氏は岸田総理からこんな言葉を聞いたという。
「岸田さんが総理になった後、“どんなことをしたいのか”という趣旨のことを聞いたことがありました。その時、“自分は現実主義者なんです”と言って、目の前の問題を一つ一つ的確に対処していきたいと話していました。しかし、政治家の仕事というのは、問題の対処について“方向性”を示して解決していくことです。ただ問題に対処するだけなら、官僚でもできるし、そちらの方が政治家よりもうまく処理できるでしょう。だから政策と政策の間に整合性がとれなくなってしまう。その“方向性”を示せなかった一例として、少子化対策が挙げられます。仰々しい言葉がついた少子化対策は突き詰めれば、児童手当を増やすという政策です。しかし、児童手当を増やすだけで子どもが増えるのでしょうか。非正規雇用で結婚できない若者など様々な原因が背景にあるはずなのに場当たり的で、方向性を示して対処できているように思えません」
“明日枯れる花にも水をやる心”
三ツ矢氏は初当選後、1期目の時は無派閥で活動し、2期目に宏池会に入会した。そのきっかけになったのは、
「かつて宏池会の会長だった大平正芳さんの言葉でした。大平さんはある時、政治とは何かと問われ、こんな言葉を残しています。“明日枯れる花にも水をやる心”。光の当たらないところにも光を当てる、弱い立場の人にも手を差し伸べるのが、政治の役割だと。その言葉に共感し、入会したんです。当時、宏池会は旧古賀派と旧谷垣派に分かれていましたが、その後、有隣会(谷垣グループ)を立ち上げることになる谷垣禎一さん(自民党元総裁)は非常に懐が深く、この世界で数少ない尊敬できる政治家でした。物事を決めつけるのではなく、多面的に見える方で、教養の深さがそれを裏付けていた。非常に宏池会らしい政治家だと感じ、私は有隣会のチャーターメンバーになったんです。いまの岸田さんは谷垣さんに宏池会らしさを学んだ方がいいですよ」
というのも、
「前回総裁選の半年くらい前でしょうか。いきなり岸田さんから携帯に電話がありました。そこで岸田さんは“自分は発信力が弱いとある人に言われた”と語り、ついてはこういうことを発信したいと、2つの政策を挙げました。一つは敵基地攻撃能力の整備。もう一つは中国の海警が武器を使用できることになったことを受け、海上保安庁も同様に外国船に武器を使用できるようにする海上保安庁法の改正でした。私は岸田さんに“およそ宏池会らしくない政策ですね。安倍(晋三)さんから言われたのですか”と聞くと、“いや直接じゃないんですけど……”と話していました」
所属議員の前で説明してください
結局、岸田総理はこの電話の後、2つの政策について表現を変えて、ツイッターなどで訴えていくことになる。
「その後、私は岸田さんに“宏池会の会長なのだから、あの政策は派の方針になりますよ。正しい、というなら所属議員の前で説明してください”とお願いしたんです。しかし、岸田さんは結局説明することはありませんでした。当時、私は派閥の事務総長代行。説明がないなら代行を辞めさせてくれ、ともお話ししました」
代行辞任問題は岸田総理に慰留され、そのままになったが、いまも政策への疑問は残る。
「防衛費をGDP比2%に増額していくことも、岸田さんが本当に必要だと感じている政策だったのでしょうか。岸田さんは“宏池会らしさ”という言葉を出すと嫌がります。しかし、宏池会らしさというのは決してリベラルであれ、ということではなく、先に大平さんの言葉で触れたように弱い立場の人に手を差し伸べていくことです。国民生活を考えれば、所得税ではなく、食料品にかかっている軽減税率をさらに下げる方がよほどいい。やはり、いま国民が最も関心を持っているのは経済。このままでは日本は本当に沈んでしまう。金をかけずにできる政策はいくらでもあるはずです」
支持率低迷からの打開策が全く見えない岸田政権。“身内”からの苦言を総理は聞くのだろうか。 
●北京では何も見えない何も聞けない 対話と協議は本当に可能なのか 11/26
岸田文雄首相は16日、米サンフランシスコで中国の習近平国家主席と会談した。「戦略的互恵関係」の推進を再確認するなど、意思疎通を強化することで合意したという。日本政府関係者は「トップ同士で話し合えた意味は大きいし、方向性は間違っていない」と語る一方、「これからが大変だ」と語る。東京はともかく、北京で意思疎通の強化を図ることなど、至難の業だからだ。
中国が大きくその姿を変えたのは、一度目の北京五輪(夏季・2008年)と二度目の北京五輪(冬季・2022年)の間だった。夏季五輪の開会式にはジョージ・W・ブッシュ米大統領、韓国の李明博大統領、日本の福田康夫首相ら100人余の世界のVIPが集まり、米中協調の時代を印象づけた。14年後の冬季五輪開会式では、韓国は閣僚を送ったものの、日本は橋本聖子参院議員という立法府からの参加になり、米国は政府代表団の派遣を見送った。冬季五輪の開会式に先立ち、習近平氏はロシアのプーチン大統領と首脳会談を行い、両国の蜜月ぶりを演出した。日本の専門家は「中国がパートナーを米国からロシアに切り替えた、象徴的な瞬間だった」と語る。
新型コロナウイルスが流行したこともあり、日中の対話チャンネルはほとんど封鎖に近い状態になった。ようやく、コロナの感染拡大が収まった今も、チャンネルはもとに戻っていない。関係者の1人によれば、北京の日本大使館が外務省本省に送る政務関係の電報が激減したという。中国が7月、「反スパイ法」を改正したこともあり、北京で本音を語ってくれる人は姿を消した。別の関係者は「コロナの感染が拡大する前の2019年ごろまでは、少ないながら、本音を語ってくれる中国人もいた」と語る。気心が知れた相手と1対1になり、閉ざされた空間で会えば、習氏の悪口を漏らす場面にも出会えたという。「今はとてもじゃないが、そんな会話はできない。自分たちは外交特権で守られているからまだ良いが、相手の中国人にどんな災厄がふりかかるかわからない」
日本は苦しみながら、今年初めから対話再開に向けた手を打ってきた。2月、米本土での中国偵察気球撃墜事件が起きるなか、日本は中国が提案した安保対話の開催を受け入れた。5月には日中防衛当局間ホットラインの開設にもこぎつけた。日本政府は当時、徐々に対話を増やしたうえで、岸田首相の訪中実現を模索していたという。関係者の1人は当時、「(2020年春にコロナを理由に延期されている)習近平氏の国賓訪問は消えていないが、国内世論を考えた場合にハードルが高すぎる。まずは、首相訪中を実現したい」と語っていた。少なくとも、日中外交当局間ではこの方針が共有されていたという。
しかし、今年8月に南アフリカで開かれた新興5カ国(BRICS)首脳会議後、この動きは一時全面ストップした。関係者の1人は「おそらく、中国外交部が上げた提案を、習近平氏が拒否したのだろう」と語る。習氏は保健衛生や国家安全保障を強調していたため、福島第1原子力発電所から出た処理水の海洋放出に強く反応したとみられた。そればかりか、中国は日本産水産物の全面禁輸を発表。永田町では「外務省は事前に情報を把握できなかったのか」という非難の声が渦巻いた。外務省も情報収集をしたくても、手も足も出ないという状況だったのだろう。
さらに、中国では今年に入り、秦剛外相と李尚福国防相が相次ぎ、行方不明になったあげく、解任されるという騒ぎが起きた。習近平氏が指導する中国はもともと、法の支配が弱かったが、習氏が自ら承認した人事すらひっくり返される事態が起き、中国高官たちは我が身を守ることで汲々としている。韓国の専門家たちは、忠誠心競争で必死になる中国人たちを「中国の北朝鮮化」という言葉で揶揄している。
米国も中国との間で対話と協議のチャンネルを増やす努力をしている。しかし、それは何らかの合意を得る目的があるからではなく、偶発的な衝突が全面戦争に発展しないようにする保険としての意味しかない。逆に言えば、米中はいつ、偶発的な衝突が起きてもおかしくない状態に陥っているとも言える。
日中両首脳は16日の会談で、処理水の海洋放出と水産物禁輸の問題を対話と協議を通じて解決することで一致したという。今月末に韓国・釜山で開かれる日中韓外相会議や、それに続いて開かれる日中韓首脳会議を経て、来年前半にも岸田首相の訪中を実現させたいという腹積もりなのだろう。だが、それは外交当局間などの協議と調整があってこその話だ。同じく、中国との対話の強化で合意した米国と同様、日本政府も引き続き、いばらの外交を強いられることになる。
●岸田内閣支持率 政権発足以降でまた最低 11/26
テレビ東京と日本経済新聞社が実施した11月の世論調査で、岸田内閣の支持率は30%で政権発足以降で最低となりました。
岸田内閣を支持するかどうか聞いたところ、支持するは前回10月の調査から3ポイント減少し30%で、2021年10月の政権発足以降で最低となりました。
支持率が最低を更新するのは2カ月連続です。
支持しないは3ポイント増えて62%でした。
政府は所得税減税と低所得者への給付をセットで実施する方針です。
この方針について政府が適切な説明をしているかどうか聞いたところ、適切な説明をしていると思うが11%、思わないが81%となりました。
また政府は経済対策によって、来年夏の段階で所得の伸びが物価上昇を上回る状態を目指しています。
これが実現するかどうかについては、実現すると思うが11%、思わないが82%でした。
岸田内閣の9月の改造後に副大臣や政務官の辞任が相次ぎました。
このことが政権運営に影響するかどうか聞いたところ、影響すると思うが63%、思わないが31%となりました。
岸田総理がどれくらいの期間、総理を続けてほしいか聞きました。
直ちに交代してほしいが30%、来年9月の自民党総裁の任期満了までが56%、できるだけ長くが9%でした。
調査は11月24〜26日に18歳以上の869人から固定・携帯電話による聞き取りで回答を得ました。
●岸田首相、政治資金パーティーで1億4800万円ゲット... 11/26
11月24日、総務省が2022年分の政治資金収支報告書(総務相所管分)を公開した。
直前に、自民党の5派閥で一昨年までの4年間に総額4000万円の記載漏れがあったことが発覚。大学教授らが東京地検に告発状を提出して受理されたことから、例年以上に注目されることになった。
自民党6派閥の収入総額は約12億円。そのうちパーティー収入が8割弱の約9億円になる。
収入が多かった順に麻生派(2億3511万円)、二階派(1億8845万円)、岸田派(1億8329万円)、茂木派(1億8142万円)、安倍派(9480万円)、森山派(4016万円)だった。
岸田文雄首相の資金管理団体「新政治経済研究会」もパーティー収入が1億4872万円になり、林芳正外務大臣(当時)の8150万円、加藤勝信厚生労働大臣(当時)の5884万円などを大きく引き離し、永田町を驚かせた。
「岸田首相の団体は、1回の収入が1000万円を超える政治資金パーティーが6回あり、もっとも多かったのは2022年12月19日に『ANAインターコンチネンタル』(東京・港区)で開催されたパーティーです。参加者は1200人。収入は約3654万円でした。
『赤旗』の計算では、2022年度の合計収入から経費を引いた利益率は89%だったといいます。なんとも効率がいい “集金” です」(政治担当記者)
しかし、「これらのパーティー収入には問題がある」という。
「2001年1月、内閣は『国務大臣、副大臣、及び大臣政務官規範』を閣議決定しています。そのなかに『パーティーの開催自粛』という項目があり、『政治資金の調達を目的とするパーティーで国民の疑惑を招きかねないような大規模なものの開催は自粛する』と明記されています。
これは今も踏襲されていますが、金額が書いていないことから線引きが難しく、時の政権が都合よく勝手に解釈していました。しかし、国民感情からすると、年間1億円を超えるパーティー収入は大規模ですよね」(同)
形骸化されている規範だが、パーティー収入は裏金の温床になりやすい。
「政治資金は非課税なので、税金はかかりません。これだけ不透明だと、裏金を作るのが目的ではないか、選挙の買収資金になっているのではないかとの疑惑を持たれかねません」(同)
ニュースサイトのコメント欄にも、
《12億円もの収入は、係る経費を除いても超優良団体(企業)である。これが腐敗堕落自民党の金権政治ですね》
《政治資金規正法に記載漏れした政治献金は全て没収で良いのでは「指摘されたら修正申告でOK!」なんて、一般社会では通用しない》
など批判のコメントが多く書き込まれていた。「閣議決定」さえも都合よく解釈する岸田首相のようである。
 11/27

 

●自民党への企業・団体献金、2022年分は自工会7800万円 11/27
内閣支持率の低下を更新し続けている岸田文雄首相が会長を務める「宏池会」など自民党の5派閥が、政治資金パーティーの収入を政治資金収支報告書に過小記載したとされる疑惑が表面化しているが、自民党の政治資金団体「国民政治協会」(国政協)への2022年分の企業・団体献金は21年比0.8%増の24億5000万円に上ったという。
献金総額は2年連続で増加
総務省が公表したもので、11月25日付けの日経などが詳しく取り上げていた。それによると、自民党への献金総額は2年連続で増加。企業の最高額は十倉雅和経団連会長の出身会社の住友化学と、トヨタ自動車の5000万円。自動車の個別企業でも最高のトヨタのほか、日産自動車が3700万円、ホンダが2500万円と上位に並んでいた。
また、増額幅が大きかったのは、ソニーグループが500万円増の2000万円、日本電気が300万円増の1800万円などの電機大手や航空大手のANAホールディングスも300万円増の600万円なども献金を増やしていた。
業界団体では日本自動車工業会の7800万円が最高額。2位は7700万円の日本電機工業会。3位は日本鉄鋼連盟の6000万円だったという。
自民党の自動車議員連盟の新会長に甘利氏
こうしたなか、自民党の自動車議員連盟の新会長に甘利明前幹事長を充てると、11月26日付けの日経が報じていた。10年ぶりの会長交代で、現会長の額賀福志郎氏が10月に衆院議長に就任したことを受け、新会長に甘利氏を起用するとともに、議連幹事長には茂木敏充幹事長が就く予定で、12月1日の総会で一連の人事案を諮るという。
甘利氏は過去に経済産業相を務め、経済政策や経済安全保障などに精通する商工族の筆頭。政府は脱炭素化に向け2035年までに乗用車の新車販売で電動車を100%にする目標を掲げており、ガソリン車を主体とした自動車課税の見直しも迫られる。「党税調の会長経験もある甘利氏が選ばれたのは、こうした自動車業界のビジネス環境の変化に政策や税制で対応する必要があったため」とも伝えている。
●岸田首相が創価学会・池田大作名誉会長死去で「異例の弔問」 11/27
公称会員世帯数827万を誇る創価学会の拡大をリードした池田大作・名誉会長の死は、自民党が選挙で頼る「学会票」に多大な影響を与える。「池田氏の弔い合戦」となる次期総選挙を前に、事態は焦眉の急を告げている。
長男が同席していた意味
池田大作氏の訃報に政界で最も敏感に反応したのは岸田文雄・首相その人だった。
〈池田大作氏の御逝去の報に接し、深い悲しみにたえません〉
池田氏が11月15日に死去していたことを創価学会が同18日に公表すると、岸田首相はサンフランシスコで開催されていたAPEC首脳会議への出席のため米国訪問中だったにもかかわらず、ただちに自身の公式サイトとSNSに「内閣総理大臣」として弔慰を発表した。
その直後から、SNSでは〈内閣総理大臣名で宗教法人のトップの訃報にコメントを出すのは問題〉〈政教分離に反する〉などの批判が相次いで炎上。松野博一・官房長官が会見で、「コメントは、個人としての哀悼の意を表するため、岸田総理大臣個人のSNSのアカウントやウェブサイトで弔意を示したものと承知している」と釈明するなど火消しに追われた。
過去に首相名義で政府が宗教指導者への弔意のメッセージを出したのは昨年12月に亡くなったカトリックの名誉教皇ベネディクト16世くらいだ。
支持率低迷のなか、批判には敏感になるものだが、岸田首相は逆に、批判が再燃しても構わないとばかりに翌19日はハードスケジュールを押して池田氏を弔問した。
この日は地元・広島(三次市)で裕子夫人の父、和田邦二郎氏の葬儀が行なわれた。岸田首相は当日未明に米国から帰国したばかりだったが、朝、空路広島入りして義父の葬儀に参列すると、火葬場からそのまま広島空港に向かって東京にとんぼ返りし、羽田からまっすぐ創価学会本部別館を訪れたのだ。
「総理は義父の邦二郎氏には初当選の頃から大変力になってもらったと恩を感じているが、お通夜には行けなかった。だから本当は葬儀で和田家の親類とじっくり話をしたかったはずなのに、池田氏の弔問には真っ先に駆けつけなければならないという総理自身の政治判断でとんぼ返りの強行軍になった」(官邸スタッフ)
首相を乗せた公用車が同別館に入る様子は日本テレビのニュースで報じられた。
そこで首相を迎えたのは原田稔・創価学会会長だけでなかった。池田氏の長男である池田博正・同主任副会長も同席していたという点は見逃せない。宗教専門誌『宗教問題』編集長の小川寛大氏が指摘する。
「岸田首相はこれまで創価学会との関係が比較的希薄だった。原田会長とも親しいとは言いがたく、ましてや博正氏と話す機会など、このタイミングを逃せば二度となかった可能性もある」
集団指導体制とされる創価学会組織のトップは原田会長だが、学会員からカリスマ的支持を集めるのは池田大作氏という二重構造があった。その池田氏亡き後、教団の精神的支柱になるとの見方もある博正氏。直接会える機会を逃したくないのが、岸田首相が批判のなかであえて弔問に出向いた理由ではなかったか。
テレビカメラが待ち構えるなかでの弔問は大々的に報じられ、岸田首相にとっては学会員への大きな宣伝になった。
岸田首相が今回の弔問をそこまで重要視したのには事情がある。
自公の亀裂、軋み
いま、創価学会の会員の間に岸田政治への不満が渦巻いているのだ。東京のある区の創価学会地区幹部が語る。
「学会員は岸田政権には当初からモヤモヤを感じていたが、その不満がかなり強くなっている。それは、安倍(晋三)政権、菅(義偉)政権の時と創価学会へのスタンスが大きく違うからです。学会員はタカ派の安倍政権を警戒していたけど、実際のところ、安倍さんや菅さんは自民党内の反対を押し切って消費税の軽減税率を導入したり、コロナの時も国民全員に10万円給付したりと公明党の主張を聞き入れてくれた。
しかし、学会の上のほうの人が集会で言うには、岸田さんは公明党の提案を全然聞かないそうです。それでいい政治ができるはずがない」
1人4万円の「定額減税」もすこぶる評判が悪い。
公明党は今回の経済対策では「減税措置は効果が出るまで時間がかかる。給付措置は即効性が高い」(北側一雄・副代表)と現金給付を主張していたが、首相は現金給付ではなく減税にこだわった。古参の学会員はこんな言い方をする。
「コロナの時の10万円は有り難かったが、今回は減税実施が来年6月と聞いてなんじゃそれはとガッカリ。岸田さんは庶民の気持ちを全くわかってないね。支持率が下がるのは当然だ」
自民党の「最強の集票マシン」である創価学会の“岸田離れ”は選挙にも影響している。
最近、自民党は地方選で大きく議席を減らしており、とくに東京では、9月の立川市長選、10月の都議補選、11月の青梅市長選と連戦連敗だ。選挙分析に定評がある政治ジャーナリストの野上忠興氏が指摘する。
「立川市長選、都議補選ともに公明党は自民候補を支持せずに自主投票に回った。その結果、市長選は負け、都議補選は定員が2あったのに自民候補は3位で落選。公明票がなければ都市部で自民は勝てない。そればかりか、青梅市長選は自公相乗りだったのに負けた。岸田首相の支持率が下がって公明党と選挙協力しても組織が動かなくなっている」
日程の無理を押しての弔問には、この機会に岸田離れを起こしている学会員に“媚び”を売っておこうという下心が見え隠れする。
死の前日の党首会談
池田氏は創価学会の政界進出を主導し、「日本最強の集票マシン」として育て上げた。
公明党・創価学会にとって、次の総選挙は負けられない「名誉会長の弔い合戦」となる。すでに選挙準備も整えた。選挙の第一線に立つ学会の活動家がこう言う。
「統一地方選が終わった後、今年7月から秋の解散総選挙を前提に全国で準備をスタートさせ、9月からは臨戦態勢です」
山口那津男・公明党代表も10月23日の講演で「ここから先は(解散が)いつあってもおかしくないという心構えで準備をしたい」と語っていた。
だが、その選挙戦略を狂わせたのも岸田首相だ。首相は「減税」を武器に解散に踏み切る構えを見せていたが、支持率急落で断念に追い込まれた。
新聞・テレビが「岸田首相 年内の衆議院解散 見送る意向を固める」(11月9日のNHKニュース)などと一斉に報じた5日後、11月14日に山口代表は官邸で首相と1時間にわたってサシの党首会談を行なった。
政界にはこんな情報が流れている。
「公明党・創価学会はカネも人手もかけて選挙準備をしてきた。今さら止められない。山口代表は岸田総理に年内解散は本当にないのかと迫った」(官邸関係者)
その翌日、池田氏が亡くなった。創価学会の選挙支援を受けてきた自民党ベテラン議員が語る。
「公明党・創価学会としては、池田氏が亡くなったからこそ、学会をまとめるためにも早く選挙で結集して頑張りたいはずだ。解散できないまま選挙の時期がズルズルずれ込み、時間が経つほど弔い合戦という名目を使えなくなる。だから、以前にも増して早く選挙をやってほしい事情ができた。しかし、岸田首相にはもう解散する力はないし、仮に岸田政権のまま選挙になれば自民党も公明党も玉砕になってしまう。公明党も学会も、岸田首相では選挙を戦えないということがわかっているのでは」
自民党では“岸田おろし”の動きが表面化してきた。注目されているのが反主流派の重鎮、菅義偉・前首相の言動だ。
「国民になかなか届いていないのは、きちんと説明をする必要がある」
ネット番組で岸田首相の経済対策を批判し、同じ反主流派の二階俊博・元幹事長、森山裕・総務会長と会合を重ねている。
「菅─二階─森山で加藤勝信・元厚労相を総裁に担ぐ動きがある。加藤氏と仲がいい安倍派の萩生田光一・政調会長がそれに乗れば、強力な候補になる」(政界関係者)
公明党・創価学会はそうした自民党内の“岸田おろし”の行方を見極めようとしているようだ。選挙分析に定評がある政治ジャーナリストの野上忠興氏が指摘する。
「創価学会が自民党で最も信頼している政治家といえば菅前首相です。菅氏が次の総理総裁の擁立に動き、自民党内の流れが決まってくれば、それに連動する形で公明・学会が岸田首相にNOを突きつけ、新たな首相を据えて解散総選挙で弔い合戦に臨むシナリオは十分あり得るでしょう」
そうなれば、まさに“死せる池田、生ける岸田を走らす”ではないか。
●「岸田離れが始まった」自民内で広がる遠心力 保守層つなぎ留めへ麻生氏 11/27
自民党の保守派内で岸田文雄首相(党総裁)の遠心力が強まっている。公然と首相を批判する声が上がり、高市早苗経済安全保障担当相は保守系議員の糾合とも取れる勉強会を設立。内閣支持率が過去最低に落ち込む中、「岩盤支持層」とされる保守層が離反しているとの焦りがにじむ。首相は、安定的な皇位継承策を議論する総裁直轄組織を新設するなど保守派のつなぎ留めに腐心する。
「安倍政権を支えた岩盤保守層が離れてしまった」。14日、安倍派の高鳥修一衆院議員は党有志の会合ではばかることなく恨み節を口にした。高鳥氏は首相が成立にこだわったLGBTなど性的少数者への理解増進法が保守層の反感を買ったと指摘。「内閣や自民の支持率が軒並み下がった大きな要素だ」と不満の矛先を首相に向けた。
翌15日には、前回の総裁選で安倍晋三元首相を後ろ盾に善戦した高市氏が、安保関連の勉強会「『日本のチカラ』研究会」を立ち上げ。この日の出席者は高市氏を含め13人にとどまったが、入会は45人とされる。
「現職閣僚が同僚議員と一緒に勉強することの何が悪いのか」と平静を装う高市氏に対し、自民内には「総裁選への足場固め。『岸田離れ』が始まった」(ベテラン)と波紋が広がる。
伝統的にハト派でリベラル志向とされる宏池会(岸田派)の会長でもある首相。防衛力強化などタカ派的な政策を推し進めるなど、意識的に保守派の取り込みに注力してきた。
しかし、報道各社の世論調査で内閣支持率は軒並み20%台に急落。自民が2012年に政権を奪還して以降、最低に沈む調査も多い。それに引きずられるように自民の支持率も下落している。LGBT理解増進法などで「保守の支持基盤が失われている」との見方もあり、くすぶる不満が表面化し始めている。
一方の首相は保守層の引き留めに神経をとがらす。
党内に皇位継承に関する懇談会を設置し、17日に初会合が開かれた。同様の組織はこれまでもあったが、総裁直轄機関に格上げして本気度を演出した形だ。座長に麻生太郎副総裁を据え、メンバーには男系男子を重視する保守派の重鎮議員も顔をそろえた。
ただ、以前の懇談会は活動が低調で、昨年の会合は1月の1回きり。先延ばしできない重要課題とはいえ、自民幹部は「急に言い始めた。不自然だ」と戸惑う。別の自民関係者は「保守層の取り込みと思われても仕方ない。議論が紛糾するようなことになれば、もっと支持を失う」と話した。
●「次の選挙で与党の過半数割れあり得る」立憲・泉代表に就任3年目の戦略 11/27
11月30日で立憲民主党の泉健太代表は就任3年目を迎える。この1年、岸田政権の支持率が低迷しているにもかかわらず、野党第一党の立憲に風は吹かなかった。
では3年目の泉・立憲にどんな戦略があるのか聞いた。
「5年で政権交代」発言の真意は?
――まず先日発言された「5年で政権交代」について党内から批判の声もあります。あらためて発言の真意を教えてください。
立憲民主党・泉健太代表:勘違いも含めて様々な声もありますが、基本的に私が言っていることはずっと変わっていません。いま我が党は衆議院で95議席なので、150議席に伸ばすのは相当大変なことです。ただ政権交代を1日も早く目指すのは当たり前のことですし、次の選挙で我々が150議席以上に躍進すれば他の野党の議席も増え、与党が過半数割れになるのはあり得ます。現時点では候補者が170人弱の状況なので、とにかく候補者を探すことに全力を尽くしているところです。
――日本の政治のジェンダーギャップをどう見ていますか。
立憲民主党・泉健太代表:まず立憲民主党として1人でも多くの女性候補者を擁立したいし、女性議員を誕生させたいですね。今年4月の統一地方選挙では女性議員を60人増やすことができました。私が党の代表になってからジェンダー平等を最大の重点課題として取り上げ、執行部の半分を女性に、そして参議院選挙の公認候補者も51%を女性にしました。当選者の比率でも53%でしたので、大きな一歩だったと思っています。
政治のジェンダーギャップを無くす
――女性候補者の当選比率を増やすために、どのような施策を行ってきましたか?
立憲民主党・泉健太代表:単に候補者数を増やしたということではありません。党にジェンダー平等推進本部を置いて、女性候補者へのメンター制度や支援交付金の上乗せ、ベビーシッターの整備など物心両面の支援制度をつくり、女性候補者の不安の軽減に取り組んできました。
――クオータ制の導入については賛成ですか?
立憲民主党・泉健太代表:全党的なクオータ制の導入にはもちろん賛成するし、立憲民主党として独自のクオータ制が実現をできればと党内調整を進めています。議会で取り上げられる課題や体力勝負の選挙スタイルなど、政界は男性中心なのが現状で、女性が選挙に出られる環境を作っていかないといけません。
困窮するシングル家庭や若者は給付で支える
――岸田政権の「異次元の少子化対策」についてどう見ていますか?
立憲民主党・泉健太代表:まず国が投じる予算が圧倒的に少なく、政策は小出しです。岸田総理にとっては異次元でラストチャンスなのかもしれませんが、実際に子育てをしている世代、若い世代からすれば「そんなことを言われても困る」「とにかく安心させてほしい」のが本音じゃないかと思います。
――特にいま大きな社会問題となっている困窮するシングル家庭や若者たちに対して、どのような施策をお考えですか?
立憲民主党・泉健太代表:我が党は教育の不安を解消するために、教育の無償化や奨学金を給付型に変えます。若い世代に対しては家賃補助も行います。所得の低い人たちには給付で生活を支える。また人への投資として、教育の無償化とともに社会人のリスキリングが大事なので、子どもを育てながら新しい資格を取れるだけの生活費の支援は特にやっていかないといけないと思っています。
30万人の不登校児に学ぶ環境と居場所を
――いま不登校の児童生徒が30万人となっていますが、この問題の本質と原因をどうお考えですか?また、問題解消のために教育行政は何をするべきだと思いますか?
立憲民主党・泉健太代表:まず私は不登校自体を問題だと思っていません。これは日本で自由を尊重できる社会基盤が整ってきていることだと思うし、より多様性が尊重される社会になってきたことの証明だと思います。しかし30万人の子どもたちに学ぶ仕組みや居場所がまだ整っていないのは問題であって、必ずしも学校に戻すという考え方を取るのではなく、地域や家庭で育っていく環境をより整備していくべきです。
――最近私が取材している中で、小学生が公立の小学校からオルタナティブスクールや一条校でないインターナショナルスクールに移ろうとして、その生徒は行政から「小学校を除籍処分にする」と言われたそうです。
立憲民主党・泉健太代表:チルドレンファーストでなければならないので、小学校に籍を置いたまま他でいろいろ学べることがいいと思います。
日本版DBS・在留特別許可・ライドシェア…
――日本版DBSについてのスタンスを教えてください。
立憲民主党・泉健太代表:子どもに対する性犯罪はあってはならないので、早期に実現すべきだと思っています。いま論点になっているのは、習い事、学習塾のような民間の業種をどこまでカバーするのか。また、いかなる犯罪においても前科が一定期間で消える中で、その人物を子どもに関する職業から永久に追放できるかどうか。これには、たとえばブラックリストをつくる一方で、安全な人物のホワイトリストを作るという考え方もあります。
――今年入管法が改正されましたが、あらためて移民難民問題、特に日本で生まれ育ち在留資格のない子どもたちについてどのようにお考えですか?
立憲民主党・泉健太代表:子どもの在留特別許可は当然の措置であって選別をするべきではないと思います。どんな理由であれ、この日本で生まれ育っている子どもたちもたくさんいる中で、その親が強制退去になったからといって、日本語を話し日本人の友達が大勢いて日本を愛している子どもが一方的に日本から追放されるのはあまりに理不尽です。日本で暮らす様々な国の由来の方々も日本社会に貢献できるという考え方で対処するべきだと思いますね。
――最近ライドシェア導入について超党派の勉強会が立ち上がり、立憲民主党では荒井優議員が事務局を務めるなどしていますが、党としてどのようなスタンスですか?
立憲民主党・泉健太代表:「より便利に、しかし安全に」が考え方です。車両や運転手の質が悪ければ事故や犯罪につながるので、ライドシェアの仕組みをいかに安全に構築していくか。この勉強会も100%自由なライドシェアを目指してはいないと思います。事故や犯罪の責任を大きな規模の事業者が負うようにすることも必要でしょうし、一部地域で始まっている事実上のライドシェアについては、柔軟に考えていいと思います。
共通認識は「自民党政権を変えること」
――最後に、次の選挙での議席増に向けてどのような戦略を描いていますか?
立憲民主党・泉健太代表:立憲民主党の仲間は政権交代を目指して、自民党ではないもう1つの極を作るのに取り組んでいます。野党第一党という立場で、各地域で勝利のために努力をしているわけですから、戦い方を一律に縛るつもりはありません。例えば、連合の推薦や支援を受けようと思えば、連合からは「一線を越えれば推薦を出さない」と明示されているので、我々としては党内に周知をして、その範囲で各議員が判断をしていくと思います。
――ほかの野党、共産党や国民民主党との連携は?
立憲民主党・泉健太代表:いまどこかの党と連立政権を組むという話は、少なくとも党としてしてはいません。まずは立憲民主党の地力を高めないといけない。その中で野党各党と様々な協議をしながら、野党議席の最大化を図るということです。「明確に何かを取り組んでいる党は?」と言われたら、それは唯一国民民主党です。前回の選挙で様々な調整をしましたし、それは現在もいきています。共産党は「立憲民主党と政権に入る」とは言っていないと思います。いまの共通認識としては、「国民のために自民党政権を変えなければならない」までですね。その共通の思いの中で、それぞれの政党がどう行動するかが問われている段階です。
一本化ではなく選挙区ごとに情勢判断
――共産党との選挙区の候補者一本化に向けた調整は進めますか?
立憲民主党・泉健太代表:今のところ党として他党の候補者を応援できる状況は生まれていません。我が党が仮に全選挙区に候補者を立てられない場合、他党が候補者をたてるかもしれない。一本化ではなく一人が立っていることを各党が受け止め、「ここには野党候補がいる」と各党が抑制的に考える選挙区は存在しています。各選挙区の情勢を見ながらどう判断するか。そのまま野党同士が突っ込んだら誰も得しない、政治も変わらないと、各党がいかに思うかですね。
――ありがとうございました。
●玉川徹氏「政権維持のためならやる」ポスト岸田候補は史上初の… 11/27
元テレビ朝日社員の玉川徹氏(60)は27日、レギュラーコメンテーターとして「羽鳥慎一モーニングショー」に出演した。ANNの世論調査で、岸田内閣の支持率が過去最低26・1%を記録したことを受け、苦境を乗り切るため新たな「顔」を選ぶ可能性に話題が及んだ際「このまま(支持率が下がって)行くと、自民党はしたたかだから、上川さんとか出してくるんだろうな」と、上川陽子外相(70)の名前を挙げ、初の女性首相を“推し”とする予想を披露した。
「ポスト岸田」の有力候補に上川氏の名前を挙げた玉川氏の発言に、政治ジャーナリスト田崎史郎氏が反応し「僕は可能性、あると思いますね」も同意。
続けて田崎氏は「本命は茂木敏充幹事長で、あと岸田派では林芳正さんもいらっしゃる。一方、河野太郎さんもいらっしゃるということなんですけれども」と次々に名前を列挙した上で「もし、大胆な局面転換をはかるとしたら、女性ということも十分考えられると思いますよ」と、指摘した。
ここで腕組みをした玉川氏は「なんせ、社会党と一緒にやったことのある政党だから、政権を維持するためならやると思いますよ」と、自民党のしたたかさをあらためて指摘した。
●支持率20%台でも「国民の声」「謙虚に受け止め」「丁寧に聞く」ばかり… 11/27
立憲民主党の辻元清美議員(63)が27日の参院予算委員会で、各メディアの世論調査で内閣支持率が2割台となった岸田政権に触れつつ、「総理は増税メガネの上に減税メガネをかけて、国民の望むことが見えなくなっているのではないか」などと質問。
これに対し、岸田文雄首相(66)は「国民の皆さんの声は、謙虚に受け止めると申し上げている。その上で政治として、日本経済がデフレ脱却に向けて、正念場にあるということを説明させていただいている。そのためにどういった政策が必要なのかを丁寧に説明することが重要だと思っている」と答弁。
さらに「国民の皆さんの声は、謙虚に承りながら、デフレ脱却という課題について、どういった政策を用意するべきか(略)」「意見は丁寧に聞きながら、今重大なこの経済の局面において、政治が何を決断するのかが重要だという思いで政府の経済対策をしっかり説明していきたい」などと訴えた。
「国民の声」を「謙虚に受け止め」「意見を丁寧に聞く」──。岸田首相はこう繰り返したわけだが、過去の国会質疑でも岸田首相が何度も口にしていた言葉だ。
実際は国民の声をてんで聞いていないし、謙虚さや真摯な態度もない
「国民の声なき声に丁寧に耳を傾ければ、そして国民とともに歩めば、おのずと改革の道は見えてきます。信頼と共感の政治に向けて謙虚に取り組んでいきます」(2022年1月の衆参本会議の施政方針演説)
「国民の声を丁寧に聞きながら、国民の信頼と共感を得る政治を行わなければなりません。岸田内閣としては、引き続き、国民の皆様の厳しい声にも、真摯に、謙虚に、丁寧に向き合っていくことをお誓い申し上げます」(22年10月の参院本会議)
そして今年10月の参院徳島・高知選挙区の補欠選挙で、野党系無所属の候補が当選したことへの受け止めを求められた際にもこう答えていた。
「選挙の結果については様々な国民の声が含まれていると認識をしております。(略)これは謙虚に受け止め、その結果を分析しなければならないと思っております」(参院予算委)
まるで壊れたレコードのよう。どれほど内閣支持率が落ちようと、世論批判が高まろうと、岸田首相はこの言葉をずっと言い続けていれば大丈夫と思っているのだろう。
《実際は国民の声をてんで聞いていないし、謙虚さや真摯な態度もない》
《国民をバカにしているとしか思えない。こう言っていれば逃げ切れると思っている》
SNS上の怒りの声は高まるばかりだ。
●辻元清美氏「増税メガネに減税メガネかけるから見えない」と批判 11/27
立憲民主党の辻元清美参院議員は27日の参院予算委員会で、内閣支持率の低迷に悩む岸田文雄首相を「増税メガネの上に減税メガネをかけているから国民の望むことが見えなくなっている」などと批判した。立民の蓮舫氏や小西洋之氏も首相へのヤジで加勢したが、首相の味方となるはずの自民党の議席は静かなままで、首相を援護射撃する場面はほとんどなかった。
「減税の後に大増税が待っている。みんな分かっている。防衛費の倍増だ」
辻元氏は質疑で、岸田政権が経済対策に所得税と住民税の定額減税を盛り込んだにも関わらず、世論の評価が低い理由をこう指摘した。辻元氏は2025年大阪・関西万博の会場整備費に関しても、政府が出展するパビリオン「日本館」の費用が膨らんでいる実態を指摘し、「(当初予定から)倍増以上になっていることを認めてほしい」とたたみかけた。
これに対し、首相は防衛費増額の財源に充てる所得税や法人税の増税に関して、「所得税(増税)で家計の負担は増えない。94%の法人は(増税の)対象外だ」と反論。税制措置について「内容も時期も影響しない最大の配慮をしている」とも強調した。首相は辻元氏の指摘にムッとした様子で、手元の答弁原稿にほとんど目を落とさず、時間をかけて説明を繰り返した。
防衛費の増額指針や万博を巡っては、国民負担増が懸念される背景に外部環境の変化がある。令和9年度までの5年間の防衛費の総額約43兆円を算出した政府の防衛力整備計画に関し、策定時に設定した為替レート(1ドル=108円)が現在の水準とかけ離れ、輸入装備品の調達費が上昇している。万博の建設費に関しても人件費や資材が高騰している実態があり、首相の答弁が明快だったとはいえない。
盛り上がる野党席と静かな与党席
質疑の場となった参院第1委員会室は、盛り上がる野党席と静かな与党席という対照も目立った。野党席からは「為替の上振れ、どうするの」(蓮舫氏)「根拠をまったく出していないじゃん」(小西氏)などとヤジが次々と飛び、辻元氏の追及ムードをあおりたてた。
一方、自民の議員席からは、経済対策などを熱を込めて反論する首相に向け「そうだ!」といった通常上がる援護射撃の声はほとんど聞かれなかった。
この日の質疑では、首相と辻元氏の間で憲法改正を巡る白熱した議論も展開されたが、改憲を党是に掲げるはずの自民席は静かなままだった。辻元氏が、自民が「改憲4項目」に掲げる緊急事態条項の創設や教育の充実について、「法律で対応すべき」と改憲不要論を主張。首相は「根本的な問題だから、法律の背景として憲法で議論することが重要だ」と、これも答弁原稿を読まずに細かく反論したが、自民席からは拍手も合いの手もほとんど起こらなかった。
自民の世耕弘成参院幹事長は、首相が指導力を示せていない理由について「言葉に情熱を感じない」などと批判している。熱っぽく答弁する首相を冷めた目で見る自民席は、党内で首相の今の立ち位置を表しているようだった。
一方、辻元氏は質疑後、記者団に「首相の答弁はすごい抽象的。まるで『エンプティ総理』。安倍晋三元首相とは意見は違ったが、互いに信念に基づき、激論を戦わせた。安倍さんが亡くなってさみしい」とも語った。 
●馳知事“機密費”発言で岸田総理「撤回の経緯踏まえ具体的な対応を」… 11/27
官房機密費をIOC委員への贈答品に使ったという趣旨の発言をして、即日撤回した馳知事。発言の真意は語られないまま、波紋が県内外に広がっています。岸田総理は27日の参院予算委員会で「具体的な対応を考えたい」と述べました。
政治ジャーナリスト 田崎史郎 氏「官房機密費の歴史の中でも初めてなのです。“何々に官房機密費を使った”というのは恐らく馳さんが初めて。馳さんは本当に賢くない人だなと」
ことの発端は、今月17日に都内で開かれた会合での馳知事の発言です。
馳浩 石川県知事(17日・都内)「安倍晋三さんから国会を代表してオリンピック招致は必ず勝ち取れ、金はいくらでも出す、官房機密費もあるから。IOC委員の全員のアルバムを作ってお土産はそれだけ。だけどそのお土産の額を今から言いますよ。外に言っちゃだめですよ、官房機密費使っているから。一冊20万円するんです」
2013年当時、自民党で東京オリンピックの招致推進本部長だった馳知事の生生しい発言…。
馳知事「発言は全面撤回しました」
岸田総理「自民党として具体的な対応を考えたい」
27日の参議院予算委員会でも、野党は岸田総理を厳しく追及。岸田総理は「自民党として発言撤回の経緯もしっかり踏まえ、具体的な対応を考えたい」と述べました。
立憲民主党 石橋通宏 参院議員「具体的な対応を考える…重ねて総理の国民に対する説明責任を果たそうという姿勢がさらさら感じられません」
野党は馳知事を参考人として招致するよう求めています。
立憲民主党石川県連 近藤和也 代表「国際的なルールを破ることにこの機密費を使っていいというのは全く違う。説明責任から逃れることはできないと思う。吐いたものはしっかりと説明していただくと」
TBSの川西全官邸キャップは、国会のようすをこう振り返ります。
「(野党が)ほぼ毎日のようにこの件を取り上げている状況。当時の安倍政権で官房機密費を使う立場にいたのは官房長官だった菅前総理だったということもあって野党の矛先も菅さんに向かっている」
一方で、知事の参考人招致が実現する可能性については。
TBS 川西全 官邸キャップ「(参考人招致が)成立するためには与党側も含めて賛成する必要がある。本人が出席を拒むことができる。馳さんもあまり前向きでない思われる以上実現する可能性は限りなくゼロに近い」
「失言したらすぐに謝って…」はせ日記“アルバム”の有無は?
馳知事(22日・県庁)「改めて、これについては2度とお話することはありません」
Q辞任する考えはあるのか?
「全くありません」
22日に開かれた記者会見では、五輪招致の発言について“全面撤回”から“今後一切発言しない”に変わり、より頑なな姿勢に…その一方で。
馳知事(22日・県庁)「改めて申し上げますけど、ブログに書いてあることは事実です」
馳知事自身が更新しているブログ「はせ日記」。2013年の記事には、当時の菅官房長官への五輪招致活動報告のひとつに「想い出アルバム作戦」と記載されています。
TBS 川西全 官邸キャップ「アルバムが1つのポイントだと思う。“私受けとったよ”とか“現物がこういうのだよ”とか、物証が出てきた場合は国会としても無視できない。与党側としても何かしらの説明が求められることになるので、知事を呼んだ方がいいのではないかという議論になる」
11月16日の「はせ日記」では、愛媛県産のじゃこ天を「貧乏くさい」とけなす発言をした秋田県の佐竹知事による、その後の対応について触れています。
「失言したらすぐに謝って仲直り。国会議員の皆さんも見習いましょう。私も見習います」(11月16日の「はせ日記」より引用)
こうブログに書いた翌日、自身の発言が取り沙汰された馳知事。周囲に見習いましょうと諭すほどの対応は今できているのでしょうか。
「石川どうなっとるんや」「最後まで言ってほしい」
馳知事は性格も豪快で、場合によってはハラスメントにつながるのでは…といった言動は国会議員時代からたびたび取り上げられています。今回も発言とその後の対応に脇の甘さが目立ちますが、石川県議会にも波紋が広がっています。
ある自民党の県議は「ちょっと軽かった。地元の人から“石川どうなっとるんや”と聞かれる。言ってしまったことは消されんやろ」と。また、非自民の議員からは「五輪招致の内実の1つを明らかにした。そこまで言ったなら最後まで言ってほしい」という声もあります。
発言自体を問う声というよりは、すぐさま撤回しそのあとは一切答えない、説明責任を果たさない政治姿勢そのものを咎める意見が目立っています。県議の間では12月1日から始まる12月議会で発言について知事に問う動きもあり、釈然としない態度を続けると今後ますます批判を招きそうです。
●茂木幹事長「国民の不満や不安が政治に」 岸田内閣の支持率下落巡り 11/27
岸田内閣の支持率の下落が続いていることについて、自民党の茂木幹事長は「国民の不満や不安が政治に向かっている」と述べたうえで、支持率の回復に向けて「結果を出すことが大切だ」と強調しました。
自民党 茂木幹事長「国民の皆さんの現状への不満であったりとか、将来への不安、これが今、政治に向かっているということを重く受け止めなければいけない」
ANNの世論調査で岸田内閣の支持率は26.1%と、政権発足以降、過去最低を更新しました。
茂木幹事長はその要因について、「物価高などで生活が厳しい状況が続くなか、政務3役の辞任などが続いた」と説明しました。
そのうえで、補正予算案を速やかに成立させ、物価高や少子化などの課題について「しっかり結果を出すことが大切だ」と強調しました。
また、自民党5派閥の政治資金収支報告書の記載漏れについて、先週、新たに公表された2022年分についてそれぞれの派閥で精査し、必要があれば訂正する作業に入っていると述べました。
茂木幹事長は先週、各派閥に対して再発防止を図るよう指示しています。
●日中韓外相会談4年ぶり開催も…乏しい成果 「上川外相の遺憾砲」 11/27
約4年ぶりの日中韓外相会談が26日、韓国・釜山で開かれた。上川陽子外相は前後して、中国の王毅共産党政治局員兼外相と、韓国の朴振(パク・チン)外相とそれぞれ個別会談し、「遺憾砲」などを放ったが、日本外交に知恵はないのか。岸田文雄政権の内閣支持率が極度に低迷するなか、一部メディアが突然、「ポスト岸田」に持ち上げた上川氏に迫った。
「隣国であるがゆえ、困難な問題に直面することもある」
上川氏は日中韓外相会談の冒頭、3カ国連携の難しさをこう表現したが、現状はまさに課題山積だ。
韓国では23日、いわゆる慰安婦問題をめぐり、ソウル高裁が日本政府に賠償を命じる逆転判決を言い渡した。上川氏は、朴氏との日韓外相会談で、「国際法上の主権免除の原則が否定された。極めて遺憾」と抗議し、是正措置を求めた。
日韓間の請求権問題は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」している。慰安婦問題も2015年の日韓合意で「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権下で、日韓関係は改善したとされるが、異常判決を「遺憾」で済ましていいのか。
日中外相会談も成果は乏しかった。
中国は、国際原子力機関(IAEA)の評価などを無視して、福島第1原発処理水を「核汚染水」と発信し、日本産水産物を禁輸している。さらに、沖縄・尖閣諸島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)にも無断で「海洋ブイ」を設置している。
上川氏は王氏に対し、台湾問題への懸念とともに、禁輸問題の解決を強く求めた。だが、王氏は処理水について、「海洋の安全と民衆の健康に関わる」とし、台湾問題でも「中国の内政に干渉してはならない」と一蹴したという。
日本国内では、「岸田降ろし」の兆しを受けて、上川氏を「ポスト岸田」に推す動きがある。ただ、与党のベテラン議員は「国内外で危機的状況のなか、米民主党とパイプがあるからといって総理総裁が務まるのか」と疑問を呈する。
朝鮮近現代史研究所所長の松木國俊氏は「上川氏の、韓国への抗議は甘すぎる。岸田政権は『日韓関係の改善』を強調するが、レーダー照射事件などでケジメを付けなかったため、今回のような判決が出た。対中国を含め、日本外交の『遺憾砲』は相手国に『効かん砲』だ。日本外交は正念場を迎えている。岸田首相、上川氏は現実を直視した外交を展開しなければならない」と強調した。
 11/28

 

●大阪万博の経費750億円が計上された岸田内閣の補正予算案に維新賛成 11/28
日本維新の会が岸田内閣が提出した補正予算案に賛成した。「自公の補完勢力」と指摘されてきたが、岸田内閣提出の予算案に賛成するのは初めてだ。所属議員による多数決で決めたという。
補正予算案は岸田内閣がまとめた経済対策の財源を裏打ちするもので、一般会計総額は13兆1000億円。内閣支持率を続落させた「岸田減税」に維新は賛成するということになる。
藤田文武幹事長は記者会見で「デフレ脱却のラストチャンス。(岸田内閣の)問題意識は一定の評価ができる」と理由を説明したが、本当の理由は「補正予算案に大阪万博の関連経費750億円が含まれているから」というのが大勢の見方だ。「万博があるから賛成に回ってほしいと幹部から説得された」という中堅議員のコメントも報道されている。
維新の馬場伸幸代表はこれまで「野党第一党を奪取する」ことを最大の目標に掲げ、打倒・自民よりも打倒・立憲を掲げてきた。立憲との対立軸を鮮明にするため、安全保障分野で自民党よりも右寄りな政策を打ち上げ、防衛力強化を進める岸田内閣を後押ししてきた。
それでも予算案に賛成することはなかった。政権批判票が立憲など他の野党に流れることなく維新に引き込むには岸田内閣との対決姿勢を鮮明にしていくことが不可欠であったからだ。
しかし、補正予算案に賛成したことは、岸田内閣を事実上信任したともいえる。「野党」から「ゆ党」(野党と与党の中間)に転じた格好で、「自公の補完勢力」との批判にお墨付きを与えた格好だ。
馬場代表は「第2自民党でいい」と発言して批判を浴びたが、今回の補正予算案賛成で自公政権批判層は維新から離れるだろう。
2022年度予算に国民民主党が賛成した際、維新の松井一郎代表(当時)は「連立を目指していると、ひしひし伝わってきた」、藤田文武幹事長は「政権与党に入りたいと捉えられても仕方ないのではないか」と激しく批判していた。過去の言動との矛盾も問われる。
さらに、賛成に回った本当の理由が「大阪万博の推進のため」というのは、最悪である。
大阪万博の建設費は当初の倍近い2350億円に上振れし、「身を切る改革」を掲げて躍進してきた維新に対して世論の批判が噴出している。とくに世界最大の木造建築という触れ込みで大阪万博の顔になる「リング」は閉幕後に解体されるということもあって「税金の無駄遣いの象徴」になった。
大阪万博は維新の躍進をピタリと止め、立憲を大きく上回っていた政党支持率はこのところほぼ横並びまで追いつかれ、一部調査では再逆転を許している。
それでも維新の吉村洋文・大阪府知事らは大阪万博を推進する姿勢を崩しておらず、維新の失速が止まる気配はない。大阪万博の開幕は2025年春の予定で、次の衆院選(任期満了は25年秋)や参院選(25年夏)まで大阪万博への批判は高まり続けるだろう。
安倍政権や菅政権は野党分断工作の柱として維新を位置付け、維新を後押ししてきた。国と大阪府・市と財界が費用を3分の1ずつ負担する大阪万博は、維新支援策のシンボルといっていい。東京五輪に続く経済活性化の柱として位置付けてきた。
菅政権は東京五輪を国内世論の反対を振り切って強行開催して支持率が下落し、衆院任期満了を目前に総裁選不出馬に追い込まれて退陣した。大阪万博で失速した維新の姿は、菅政権と重なり合う。
岸田政権は維新よりも連合との関係を重視している。岸田首相や麻生太郎副総裁は菅氏をライバル視しており、維新とのパイプを持つ菅氏に対抗して連合を取り込み、連合と密接な国民民主党の連立入りも模索してきた。
維新に近い菅氏と、連合に近い麻生氏の主導権争いのなかで、維新は自民党の距離感を探ってきたといえる。
国民民主党は2022年度当初予算案に賛成し、維新を差し置いて政権入りへ一歩進んだ。玉木雄一郎代表は当時、岸田首相がガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結解除を検討する意向を示したことを理由にあげたが、その後、トリガー条項の凍結解除は棚上げにされたままだ。
玉木代表は今回の補正予算案でも再び「首相がトリガー条項の凍結解除に踏み切る意向を表明すれば補正予算案に賛成してもいい」との考えを11月22日の衆院予算委員会で表明。岸田首相は「トリガー条項凍結解除も含めて、与党と国民民主で検討する」と応じ、国民民主党が補正予算案に賛成した。
維新が補正予算案への賛成を決めたのは、岸田政権と国民民主党の接近に「取り残されたくはない」との焦りもあるとみられる。落ち目の岸田政権は、維新と国民を張り合わせて引き込む野党分断工作でかろうじて延命している格好だ。
国民民主党内で玉木氏の岸田内閣への接近を批判して維新との連携を強化している前原誠司元外相は、国民民主党が補正予算案に賛成する場合は離党する意向を固めたと報じられた。いったん新党を結成し、その後に維新に合流するとの見方も広がっていた。
だが、維新が補正予算案に賛成することを決めた後、前原氏は離党報道を否定した。離党と維新入りの大義名分を失ったためとみられる。
大阪万博を最優先して補正予算案賛成に転じた維新の決断は、世論の反発を招いて政党支持率の低下を加速させることに加え、野党再編の主導権を失うマイナス効果をもたらすだろう。
維新が政権批判票を束ねて野党第一党にのしあがる道筋は「大阪万博」によってかなり厳しくなってきたのではないだろうか。大阪万博への風当たりは地元・大阪でも強いが、全国ではなお強い。大阪から全国に支持基盤を広げて全国政党へ脱皮するシナリオも大きく狂ってきたというほかない。
●岸田政権に「泣きっ面に蜂」の派閥資金不記載問題〜 11/28
内閣支持率、さらに下落
岸田文雄内閣の支持率が「危険水域」に入った。NHKの11月の世論調査(調査期間は11月10から3日間)によると、岸田内閣を「支持」すると答えた人は10月の調査から7ポイント一気に下がって29%となった。
2011年末の第2次安倍晋三内閣以降でこれまでに内閣支持率が30%を下回ったのは2021年8月の菅義偉内閣以来。菅首相は翌月に控えた自民党総裁選への不出馬を表明して政権を放棄する事態に追い込まれた。
今の岸田首相は何をやっても裏目に出る、と自民党内でささやかれる。支持率向上を狙って行ったはずの内閣改造も、直後に副大臣、大臣政務官が次々と辞任に追い込まれた。
物価上昇に喘ぐ国民の指示を取り戻すはずだった経済対策や減税も評判は芳しくない。物価高に対応するため、所得税などを1人あたり4万円減税し、住民税が非課税の世帯には7万円を給付する方針を打ち出したが、NHKの世論調査ではこれを「大いに評価する」が5%、「ある程度評価する」が31%にとどまり、「まったく評価しない」25%、「あまり評価しない」34%に及ばなかった。
「増税メガネ」と揶揄されたことがきいたのか、突然打ち出した「減税」に、解散総選挙を狙った人気取りだと有権者に見透かされたということだろうか。「評価しない」と答えた人の38%が「選挙対策に見えるから」と回答、「物価高対策にならないから」の30%を上回り、最も多い答えだった。
実は派閥問題、パーティー収入不記載
そんな存亡の危機に直面している岸田内閣に、もうひとつ問題が勃発した。自民党の派閥の政治資金収支報告書に、パーティー収入に関わる不記載が発覚したのだ。首相足元の自民党に「政治とカネ」の問題が持ち上がったのだ。
政治資金規正法は1回のパーティーにつき、パーティー券を20万円を超えて購入した個人や団体の名前や金額を収支報告書に記載するよう義務付けている。政治資金パーティーはたいがい1枚2万円なので、名前を出したくない企業や団体、個人の多くは10枚の購入にとどめる。もちろん購入を分割してそれぞれ20万円以下にして子会社の名義などで振り込めばこの規定には抵触せず、「ザル法」と呼ばれてきた。
ところが今回、「しんぶん赤旗」のスクープで発覚したのは、寄付した側が政治団体だったため。政治団体側の収支報告書には20万円を超える支出記載があることが発覚。自民党の5派閥すべてで記載漏れが表面化する結果となった。
自民党の派閥の問題が内閣支持率になぜ響くのかといえば、岸田首相が自民党の総裁であるだけでなく、自身が岸田派の会長を務めているからだ。歴代首相は首相に就任すると派閥の長を外れてきたが、岸田首相はとどまり続けてきた。派閥への国民の批判が一時に比べて弱まったと高を括ったからかどうかは分からない。自ら派閥の会長を務めている立場からすれば、派閥の記載漏れを厳しく批判することなどできるはずがない。あくまで「事務的なミス」だと言い逃れし、各派閥の事務総長などを務める閣僚もまともに国会答弁には応じずに口を閉ざしている。
本来ならば、首相自らが派閥を厳しく批判し、政治とカネの関係を透明化するよう強く指示することで、政権自体への火の粉を振り払うこともできるはずだが、自分自身が派閥の長ではそれもできないわけだ。また、岸田内閣の政権基盤自体が弱く、来年の自民党総裁選での再任のためには各派閥の支持を得る必要がある。それだけに各派閥のカネの問題に厳しく対処することもできないのだ。ちなみに副大臣や大臣政務官の人事もほとんど各派閥の意向で決まったとされ、官邸による「身体検査」がほとんどできなかったことが辞任ドミノの一因になっているとの見方もある。
結局は選挙用「裏金」か
さらに、首相らが口を閉ざす背景には、パーティー券によるグレーな資金集めが横行して背景がある。今回発覚したのはたまたま情報開示義務のある政治団体の購入額だったが、自民党を支える企業の多くが20万円を超える購入をしながら、名前が出ないように偽装しているのではないかという疑念がかつてからあるためだ。自民党の多くの国会議員の資金源である企業によるパーティー券購入を、規制強化で封じることになれば、選挙に使う「裏金」などに一気に窮することになるからだ。
ちなみに、しんぶん赤旗はその後、岸田首相自身が1回の収入が1000万円を超える大規模な政治資金パーティーを2022年に6回も開催し、1億4730万円もの収入を上げていたとを報じている。「政治とカネ」の問題が厳しく問われた2001年に閣議決定した規範によってパーティーについて「国民の疑惑を招きかねないような大規模なものの開催は自粛する」と定められている。それに従って閣僚に自粛を促さなければならないはずの首相本人がそれを違えていたとなれば、当然、内閣支持率に大きく影響することになる。
今、企業ではコンプライアンスやガバナンスが大きな課題になっている。上場企業の場合、年に1回届け出る有価証券報告書に記載する情報が年々増えている。仮に、この有価証券報告書に政治との関係の記載を義務付け、パーティー券を含む政治献金の支出を記載するようになれば、政治とカネ、特に企業と政治家の関係は白日の下に晒されることになる。
もちろん、そんな法改正を誰も言い出さないし、普段は企業のコンプライアンスに厳しく注文を付ける官僚機構もダンマリを決め込んでいる。そうした政治とカネの問題を根本から解決する動きにつながることを岸田首相や自民党の首脳は恐れているに違いない。
●外国人労働者にますます日本が「選ばれない国」に… 11/28
現代の奴隷制度
「現代の奴隷制度」との酷評もあった「外国人技能実習制度」などの見直しを検討してきた政府の有識者会議は先週金曜日(11月24日)、この制度を廃止して、新制度「育成就労制度」の創設を求める報告書を取りまとめた。
だが、目玉と言えるのは、最大の焦点だった別の職場への「転籍」の制限期間を現行の「3年」から「1年」に短縮することを原則として打ち出したことぐらいだ。その目玉でさえ、実際には、「経過措置」を設けて、当分の間は1年を超える制限を容認するよう求めるなど、尻抜けの提言にとどまった。
周知の通り、もはや、日本は、賃金水準の低さが響いて、外国人労働者から「選ばれない国」になっている。報告の内容は、経過措置を設けることによって、その日本国内でも賃金の低さや過酷な労働条件が仇となって人材の確保が困難になっている非効率企業の経営を支援する枠組みの存続を訴えていることに他ならない。
これでは、外国人労働者の賃金上昇をテコにして、日本人労働者の賃金を押し上げる効果や、生産性の向上を促す効果、そして国全体の成長を押し上げる効果も期待できないだろう。
優柔不断でピンボケの政策判断しかできない岸田政権らしい、落第点の外国人労働者の受入制度の改革に終始したと言わざるを得ない。
今回の提言をまとめた有識者会議は、「外国人材の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議」が2022年11月に設置を決めたものだ。政府は、今回の提言をもとに、来年(2024年)1月召集の通常国会に関連法案の提出を目指すとしている。
こうした見直しの根底には、現行の「外国人技能実習制度」に設けられている転職制限が「現代の奴隷制度」と酷評されるなど、内外から職業選択の自由を制限することへの批判が強まっていた問題が存在したことと無関係ではない。
加えて、政府に、今なお日本が圧倒的な経済大国という驕りが横たわっていた問題も見逃せない。「外国人技能実習制度」の目的を、「人材育成による国際貢献」と位置付けていた点が、そうした誤認と驕りの象徴になっていた。
半面、政府部内にも、以前から、国際的な労働市場の実情と日本の問題を適格に把握していた部署もある。例えば、経済産業省が2022年4月にまとめた「未来人材ビジョン」は、「日本は、高度外国人から選ばれない国になっている」との問題意識を明確にしたうえで、「外国人から『選ばれる国』になる意味でも、社会システム全体の見直しが迫られている」と正鵠を射た提言を出していた。
韓国にも水をあけられる
日本の問題の根底にあるのは、日本の賃金水準が決して高いとは言えないことである。経済協力開発機構(OECD)が集計した2021年の各国の平均賃金という統計を見ても、日本は4万1509ドルと、先進37カ国の中で25位という低位に甘んじている。この水準は先進37カ国の平均値(5万3416ドル)を下回っているばかりか、お隣の韓国(19位、4万8922ドル)にも水をあけられている。
発表当時、大きく報じられたことを記憶している人も多いと思うが、前述の「未来人材ビジョン」は、「日本は、課長・部長への昇進が遅い」うえ、「日本企業の部長の年収は、(シンガポールや米国だけでなく)タイよりも低い」といったショッキングな事実も指摘していた。
実際のところ、日本では、「働き手の中心」と考えられる15〜64歳の生産年齢人口の減少が続いており、2050年には5540万人と現状より2割以上も減る見通しだ。日本人の婚姻件数や出産数の回復が見込めない中で、経済の立て直しを目指すとすれば、労働生産性の向上だけでは策として不十分で、併せて、積極的な外国人労働者の受け入れ策の構築も急務となっている。
この点に関連しては、厚生労働省が11月24日に公表した人口動態統計の速報値(外国人らを含む)で、今年1〜9月の出生数(生まれた赤ちゃんの数)が前年同期比5・0%減の56万9656人にとどまっており、このままのペースだと年間の出生数が70万人台半ばに落ち込み、8年連続で過去最少を更新する可能性が高まっている問題も存在する。出生数低下の背景には婚姻数の減少もあり、立て直しが相当困難だ。そうした事情から、外国人労働者への期待が高まっている。
こうした観点から見れば、今回の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」の最終報告書には、食い足りない部分が目立つ。
第一は、避けて通れない問題なのに、端から無視した問題の存在があげられる。今回の報告書で「現行制度と同様、新たな制度及び特定技能制度においては認めないものとする」とされた、家族の帯同は、その代表的なポイントだろう。
家族の帯同に対する消極的な対応は、安倍元政権以来、外国人労働者の受け入れ問題が議論の俎上に上がるたびに、継続してきた問題だ。
今なお、この消極的な対応をする裏には、自民党支持層に移民への根強い反発があることへの配慮があるとみられている。とはいえ、諸外国では「外国人労働者の受け入れ」と「移民の受け入れ」は同義の問題だ。このまま無理な使い分けを続けているようでは、外国人労働者から「日本が選ばれる国」になることは覚束ない。
不可思議なこと
第二に改革したふりをしつつも、実態として現状を維持しようという部分もある。新しい制度の名称を「育成就労制度」とし、目的を「人材育成及び人材確保」とすることは一見したところ見直しだ。が、実際は「単純労働者は受け入れない」という表向きの公約に対する抜け道を引き続き維持しようという目論見がミヱミエになっている。
報告書が廃止を打ち出した技能実習制度の下では、6月末時点で35万8千人が就労している。が、目的に記されてきた、学んだ技能を帰国後活かして貰う「国際貢献」はほぼイル―ジョンだった。このため、目的から「国際貢献」という言葉を消し去るというのは理解できる。
とはいえ、目的をなぜ、ストレートに「人材確保」としないのか。不可思議だ。というのは、来日する多くの外国人の目的は「出稼ぎ」であり、雇用する日本の事業者の目的は「人材(労働力)の確保」なのだから、改めるのならば「就労機会の提供と人材確保」が実態に即しているはずである。
あえて「人材育成」を掲げるのは、「育成中だから」という理由で、「自由な転職を認めない」という本音が透けている。
加えて、事実上の人材ビジネスを営む監理団体の既得権を擁護し、存続を容易にする狙いもあるのだろう。
とはいえ、国内事情を優先した姑息な対応にしか映らない。なぜならば、短期的には、国際的な紛争や景気、外為市場の動向などに左右される面が大きいものの、中、長期的な国際労働市場の流動化が止まることは考えにくいからだ。結局のとこと、アジア諸国は経済成長を続けており、日本との国家間で、労働力の奪い合いがこれまでより激化することは避けられないとみるべきだろう。
「人材育成」に名を借りて、引き続き、転職の自由を制限するようなことを続けていけば、外国人労働者にとって、日本は益々「選ばれない国」になっていく。
今回の報告書で、国の制度改革がアテにならないことが明確になった以上、大切なのは個別企業の取り組みだ。それぞれが生産性を向上させつつ、並行して賃金水準を引き上げて「選ばれる企業・事業者」になる以外の生き残り策は考えにくい。
厳しいようだが、全体としての競争力向上や新陳対処の促進を考えれば、対応できない企業や事業者は市場から退出する以外の選択肢はないはずである。
●ついに麻生からも見捨てられた…「安倍晋三」になれなかった岸田首相 11/28
「悪いことはしていないのだけどな」
メディア各社による世論調査の数字が思わしくない岸田政権だが、11月26日に公表された日経新聞とテレビ東京の世論調査では、岸田内閣の支持率は前回比3ポイント減の30%と、かろうじて3割を維持した。とはいえ、「政権に好意的な数字が出る」と言われる同調査でさえ、不支持率も3ポイント増の62%だから、「嫌われ傾向にある」ことは変わりない。
それにしても、なぜここまで岸田文雄首相は国民に嫌われるのか―。岸田首相が善意を持ってやろうとしていることがことごとく、裏目に出ている印象だ。
たとえば10月20日に始まった臨時国会の所信表明で、岸田首相は税収の上振れを「国民に還元する」と宣言し、減税措置と非課税世帯への助成金支給を表明したが、「増税メガネ」の渾名が消えることはなかった。
「悪いことはしていないのだけどな」
11月21日付けの朝日新聞は、岸田首相が内閣低支持率を嘆いて漏らした呟きを報じている。
確かに岸田首相は精一杯やっている。総裁選の時に表明した「所得倍増」を「資産倍増」に変えながらも、国民の可処分所得が増大する政策を模索。
不穏さを増しつつある東アジアで日本の安全保障を増強するため、2027年度には防衛費を対GDP2%にすることも打ち出した。ウクライナ支援をきっかけに、防衛整備移転3原則の見直しにも積極的だ。その姿はとてもハト派といわれる宏池会の領袖のものとは思えない。
「安倍晋三」になれなくて…
岸田首相が手本にするのは、昨年7月の参議院選の最中に凶弾に倒れた安倍晋三元首相だろう。安倍元首相は2012年12月に民主党から政権を奪還し、第1次政権を含めた在職期間は、歴代最長の3188日にものぼる。
そして国内的にはアベノミクスを実施し、対外的には「地球を俯瞰する外交」を展開。とりわけ安倍元首相はアメリカのドナルド・トランプ大統領(当時)と懇意で、国際政治の舞台で暴走しがちなトランプ大統領を引き留め、先進国の首脳のまとめ役を任じることも多かった。
その安倍政権で、岸田首相は4年7か月もの間、外務大臣を務めた。「私の次は岸田さん」との安倍元首相の言葉を信じ、その側で21世紀の日本のリーダーは何をなすべきかを学んできた。
岸田首相はハト派の宏池会の領袖ながら、時折タカ派の行動をとるのはそれゆえだろう。もちろん党内4位の派閥のトップに過ぎない岸田首相は、安倍元首相を支援してきた岩盤保守層を取り込む必要もある。
しかしそれは国民が望んでいることなのか。安倍政権時の日本は、それまでの経済的閉塞感から脱却しそうでできないままに終わっている。「失われた30年」のために内向きでいた間に、世界からすっかりと遅れを取ってしまっている。
そうしたところから脱却し、これまでの方針を全て変えていかなければならないのに、岸田首相はいまだ「経済大国・日本の総理大臣」のままでいる。またアベノミクスの検証もないままに、新たな“キシダノミクス”ともいうべき「資産倍増計画」をぶち上げたことも問題だ。後者が宏池会の創始者である池田勇人元首相の「所得倍増計画」をモデルとしているのは明らかだが、「中味のない二番煎じ感」が否めない。
もっとも「平時の政治家」なら、それでも良かった。だが現在は平時ではない。コロナ禍後の世界は大きく変わり、日本は様々な内憂外患に脅かされている。
足元から崩れていく
しかも岸田首相の足元の閣内でさえ、意思統一が図れていない。
たとえば鈴木俊一財務大臣は11月8日に開かれた衆院財政金融委員会で、「(過去2年間で)税収の増えた分は、政策経費や国債の償還などですでに使っている。減税をするなら国債の発行をしなければならない」と述べ、岸田首相が打ち出した減税案を事実上否定した。
さらに岸田首相が22日の予算委員会でガソリン税のトリガー条項凍結解除を求める国民民主党の玉木雄一郎代表に対して前向きの姿勢を見せ、萩生田光一政調会長に公明党や国民民主党と協議を進めることを指示したのにもかかわらず、鈴木財務相は24日の会見で、脱炭素に向けた国際的潮流の他に「国・地方合計で1.5兆円もの巨額の財源が必要」と難色を示した。
これは“財務省の反乱”に止まらないものだ。岸田首相の後見人たる麻生太郎自民党副総裁の意向もうかがうことができるからだ。鈴木大臣は安倍・菅政権の9年間を財務大臣として支えた麻生氏の後任で、総理大臣をも務めた麻生氏の義理の弟でもある。
その麻生氏は11月8日に非主流派の二階俊博元幹事長らと会談した。2人は今年5月から、数回にわたって食事をともにし、情報交換に務めている。
またその翌日の9日には、二階氏と菅義偉前首相、森山裕総務会長らが会談。このように続々と大物が連携する中で、岸田首相は孤立感を高めている。
それが減税への“暴走”や、これまで慎重だったトリガー条項の凍結解除への容認に繋がっているのではないか。それらを国民がひしひしと感じ取ってしまうからこそ、内閣支持率の低下が止まらないのではないか。
●自民・茂木氏 支持率低下「国民の不満や不安が政治に」 11/28
岸田内閣の支持率の下落が続いていることについて、自民党の茂木幹事長は「国民の不満や不安が政治に向かっている」と強調しました。
「国民のみなさんの現状への不満であったりとか、将来への不安、これが今、政治に向かっているということを重く受け止めなければいけない」(自民・茂木幹事長)
ANNの世論調査で岸田内閣の支持率は26.1%と、政権発足以降、過去最低を更新しました。
茂木幹事長は、その要因について「物価高などで生活が厳しい状況が続く中、政務3役の辞任などが続いた」と説明しました。その上で、補正予算案を速やかに成立させ物価高や少子化などの課題について「しっかり結果を出すことが大切だ」と強調しました。
●松尾貴史ら、杉田水脈氏の差別的言動への岸田首相対応に疑問 11/28
タレント松尾貴史(63)らが28日までにX(旧ツイッター)を更新。岸田文雄首相が、自民党の杉田水脈衆院議員の差別的言動に「コメントを控える」などと発言したことに疑問を呈した。
岸田首相は27日の参院予算委員会で、アイヌ民族に関する発言で法務当局から人権侵犯認定を受けた杉田議員について「議員の発言に一つ一つコメントすることは控える」と、正面からの回答を避けた上で、「政治家は影響力を十分に自覚し、自らの言動について説明責任を果たしていくことが重要だ」とし、「アイヌであることを理由として差別する。こんなことはあってはならない」と述べた。
松尾は「言うべきことも言わず、すべきこともせずに、なぜ『控える』だけなのか」と首相の発言に疑問を呈し、「『控え』させるべきは差別主義者の狼藉でしょう」とした。
また、元参院議員でジャーナリストの有田芳生氏は自身のXで、「控えてはダメでしょう。自民党の総裁は岸田文雄総理。その自民党が擁護してきたのが杉田水脈議員。人権侵犯が法務省から認定されても見苦しい言い訳を繰り返し、いま。岸田政権は国際的な人権基準に照らしても失格だ。次期総選挙では差別主義者を公認すべきではない」と厳しく批判した。
ジャーナリストの江川紹子氏は自身のXで、岸田首相の今回の発言について「一般論を言ってるだけ」と指摘した。
●支持率21%「ポスト岸田」でうごめく6人 大穴の上川陽子氏の弱点は 11/28
岸田文雄内閣の支持率が急落している。11月の世論調査によると、共同28.3%、時事通信21.3%、読売24%、毎日21%、朝日25%と驚くべき凋落だ。自民党支持率も時事19.1%、読売28%、毎日24%、共同34.1%、朝日27%と急落している。内閣支持率と自民党支持率の数字を足したものが時事と毎日では50を割り、読売と朝日も52となった。50を割ると首相はほどなく退陣するという「青木の法則」(青木幹雄元自民党参議院議員会長が唱えた)が当てはまると話題になっている。
その最大の原因は、岸田首相個人への落胆、憤り、不信が極度に増大していることにある。
「地味だけど真面目そう」「安倍晋三氏や菅義偉氏と違い優しそう」「宏池会出身、広島選出で平和主義者」といったイメージがここにきて一気に崩れた。防衛費爆増の財源として増税を予定しながら、解散総選挙を狙って、増税イメージ打ち消しのために打ち出した突然の減税宣言は、支離滅裂だと酷評された。減税が悪いということではなく、岸田氏の政策が、国民のためではなく、自分の政権維持のためだと国民に見透かされ、岸田氏の人格自体に負の烙印が押されてしまったのだ。
副大臣・大臣政務官の辞任ドミノ、自民党5大派閥による総額4000万円の政治資金収入隠し疑惑、官房機密費を使用した東京五輪誘致のための賄賂工作疑惑などと続くスキャンダルへの不誠実な対応もまた岸田首相への信頼を大きく傷つけた。こうしたことが起きるたびに自民党他派閥が背後から首相批判の攻撃をするのも影響している。
こうした状況を見て、私が思い出すのは、麻生太郎政権末期の様子だ。2008年12月頃から翌年春にかけて、麻生不人気は極限に達し、支持率13.4%、不支持率76.6%(共同)にまで下落した。今でも印象に残っているのは、こんな冗談だ。
「ある小学校で女性教師が授業中に先生に隠れて漫画を読んでいた男の子に注意した。〇〇ちゃんだめよ。漫画ばかり読んでると麻生総理大臣みたいになっちゃうわよ」と。
一国の首相がここまで馬鹿にされるのは異例だ。
こうなると、麻生氏の言動全ては悪く解釈され、支持率回復は不可能。衆議院議員の任期満了ギリギリまで解散もできず、最後にやぶれかぶれの解散総選挙を行ったが、民主党に大敗し、自民党は政権を失った。
岸田氏が、増税メガネ、さらには増税クソメガネというあだ名をつけられて馬鹿にされる状況はこれに酷似している。
だが、実は、違うことが二つある。
一つは、麻生氏が衆議院任期まであと1年で政権に就いたのに対し、岸田首相の場合は、衆議院の任期まであと2年近くあるため、その間は首相が解散しない限り選挙の審判を受けなくてよいこと。
もう一つは、麻生氏の時は、民主党が破竹の勢いで支持を拡大中で選挙をすれば自民党大敗が確実な状況だったが、今の野党には政権交代する勢いは全くないということだ。
そこで、首相としてはこの二つの違いを利用した戦略が可能になる。
一つは、選挙なしで来年秋の自民党総裁選までなんとか低空飛行を続けること。その間に、支持率の若干の回復を図り、党内派閥の談合により、再選を果たす。その後、衆議院の任期が来るまでの1年以内に支持率をさらに回復して解散総選挙を行い、負けを最小限に抑えて、党内の退陣要求を抑え込む。「時間稼ぎ」の戦略だ。
もう一つは、立憲民主党の人気が低迷し、日本維新の会も準備が整わないうちに解散し、過半数プラスアルファで「勝利」宣言をして、党内の岸田おろしを封じる戦略だ。野党が政権交代できる体制にないことを利用するわけだ。来年度のばらまき予算を成立させ、減税が施行される来年6月以降が一つのタイミングになる。
それを狙っているのだろうか、来春には、「国賓待遇」で米国を訪問すると報じられた。国賓待遇だから、普通の訪米よりもはるかに手厚いもてなしを受け、議会での演説など見せ場も設定されるだろう。バイデン大統領とハグして「ジョー」「フミオ」と呼びかわし、バイデン氏に肩を抱かれてフラッシュを浴びる。世界一の大国アメリカの大統領との親密さを見せつける政治ショーで支持率を急回復させたいという「夢」を岸田首相は抱いているのだろう。
しかし、国民はそれほど馬鹿ではない。どんな戦略でも事態打開は至難の業。
それを見越して、すでに岸田首相を退陣させて総裁選を前倒しで行い、人気のある総裁を選挙の顔にして解散総選挙に打って出るという話が自民党内では始まっている。
では、誰を新総裁にするのか。そこには二つのポイントがある。
一つは、選挙に勝てる顔かどうか。
もう一つは、自民党や各派閥の利権を守れるかどうかだ。
ただし、この二つは二律背反になる。利権政治家だと見られれば、国民人気を失い選挙の顔には不向きとなるからだ。
こうした観点から、ポスト岸田について見ていこう。
次の総裁候補としては、最近の世論調査で、小泉進次郎元環境相の人気が急上昇している。
クリステル夫人との間に第二子が誕生したことで露出度が高まったのが最大の理由だが、最近はライドシェアの超党派勉強会を立ち上げるなど、政策面でのパフォーマンスも拡大中だ。ただし、総裁選に向けた準備は行なっていないようで、今回の立候補はないように見える。
2番人気は、石破茂元幹事長だ。石破氏は、自民党以外の有権者、特にリベラル層にも支持を受ける。選挙の顔としては魅力的だ。
一方、石破氏はかつて安倍元首相と激しく対立したために安倍派の反発が非常に強く、他派閥からも唯我独尊という批判が聞かれる。自分の派閥も消滅しており、党内基盤はきわめて弱い。
そこで、岸田氏に恨みを持つ二階俊博元幹事長や菅元首相などの支持を得る方法が考えられる。そうなれば、一気に本命になるかもしれない。
3番人気は僅差で河野太郎氏だ。人気は高く無党派にも強いのが選挙の顔として優位に立てる材料だ。ただし、マイナンバーでつまずき人気に少し翳りがあるのが気になる。
一方、人気の源でもある既得権に切り込む改革派としての過去の行動や脱原発の姿勢が警戒され、党内基盤の拡大には苦戦しているようだ。自分の派閥の麻生元首相の支持もまだ得られない。菅氏や小泉氏、さらには石破氏の支持を得ることで支持を広げたいというところだろう。
国民の立場から言えば、解散総選挙なしのまま自民党政権を続けざるを得ないという状況の中では、せめて石破氏や河野氏のように、従来型の自民党派閥談合政治にノーと言える政治家を総裁に選ぶ良識を自民党に求めたいところだ。
4番手に挙げられる高市早苗氏は早くから立候補に意欲を示している。
岩盤右翼、特に安倍元首相の支持層に強いため、一定の支持を集めるポテンシャルはあるが、党内では嫌われ者なので、現状では立候補のための20人の推薦人集めも難しく、仮にできても過半数の支持には到底届かないだろう。そもそも、こんな人が首相になったら、日本の政治は右翼層に乗っ取られて大変なことになる。国民の立場からは絶対に避けたい選択だ。
世論調査では目立たないものの、この他に政治部記者などの間で名前が挙がるのが茂木敏充幹事長だ。派閥領袖に取り入るのが上手く、特に、麻生元首相の評価は高いと言われる。利権政治家の顔も持ち、派閥の支持は取り付けやすそうだが、国民人気はほぼゼロ。パワハラのエピソードがたくさんあるとの悪評が高く、選挙の顔には向いていない。
さらに、目立たない実力者として林芳正前外相がいるが、岸田派のナンバー2の立場上、岸田内閣の下では動きにくく、岸田氏が責任を取らされた後にその一の子分が総裁になるのは党内の理解を得られない。
以上は有名な政治家であるが、ここへきて、これまで無名の上川陽子外相の名前が挙がり始めた。華がなく地味な印象だが、女性ということで急激に注目度が上がっている。英語が堪能などの面が知られるようになれば、新鮮さもあって支持が伸びる可能性がある。高市氏を悪役に仕立てて「女の戦い」を演出できればなおさらだ。
しかし、この人は、法相を3回務めている間に16人もの死刑を執行した実績の持ち主で、タカ派の顔を持つ。岸田派ではあるが、むしろ安倍元首相の寵愛を受けたこともあり、人柄が知れるにつれて、逆に人気が落ちるリスクもある。
また、経済政策に関する実績がほぼゼロで、日本の最大の課題である経済再生に不向きなことが致命的な弱点だ。
いろいろと書いてきたが、読者からはこんなヨタ話なんか聞きたくないとお叱りを受けるかもしれない。確かに日本の経済はボロボロなのに、国会では亡国予算と言われる23年度補正予算が成立する見込みだが、その間も、日本経済の危機は日々深刻化している。そんな時に「ポスト岸田」の政局話かと思うのも無理はない。
しかし、実際の政治では、むしろポスト岸田の話で持ちきりという感じで、危機感は全く感じられない。
タイタニック号が氷山にぶつかる前に船内の客室でダンスに興じる男女にも似た自民党議員の「政局ダンス」。誰もが踊らなくてはと浮き足立っているが、いつになれば本当の危機に気づくのか。
総裁選前倒しなら、全国の党員を含めたフルスペックの選挙は行われない可能性が高い。国民の声を全く聞かずに国会議員票による事実上の派閥談合決着となるわけだ。ふざけるなという国民の怨嗟の声が今から聞こえるようだ。
自民党議員と同じ船に乗る私たち国民は、今すぐにその舵を自民党から奪い取らないと、本当に日本はこのまま氷山にクラッシュ、沈没ということになりそうだ。そのためには、政局ダンスに興じる自民党議員に警鐘を鳴らすしかない。
選挙の道を封じられた私たち国民としては、声を上げることしか残された手段はないようだ。
●政治資金記載漏れ問題 「誰にとって都合が良いのか考えるべき」 11/28
自由民主党の5つの派閥(安倍・二階・茂木・麻生・岸田派)政治団体が、「政治資金パーティー収支を過少記載した」として政治資金規正法違反で刑事告発された。2018〜2021年までの政治資金収支報告書において、約4000万円分の記載漏れがあったという。
各派閥は既に収支報告書を修正し、再発防止に努力すると表明しているが、納得しないと回答している人は71%となっている。『ABEMAヒルズ』は、この問題について東京工業大学の西田亮介准教授に意見を求めた。
――記載漏れについてどう考えている?
「記載漏れはなぜかよく起きる。人間だから仕方ないともいえるが、たいていの場合、過少記載。その一方で、なぜか過大記載を見かけないのは不思議だ。政治資金規制法には罰則が存在するが『虚偽にも重過失にも当たらない場合』、ペナルティーがない。虚偽や重過失は立証が難しい。つまり、注意を払うインセンティブが設けられていないために、過少記載が頻発している」
――再発防止に努めるために何かペナルティーがあった方がいいのか?
「過少記載が生じやすい状態が、誰にとって都合が良いのか考えるべきだ。国民が物価高で余裕がない時に、パーティ券の売上が大きいと世論の批判を受けやすい。そのため、金額は少なく記載したいのは自然だ。これを防ぐためにも、やはり間違いが起こりにくい制度設計が必要だ。税金の申告間違いがあり、修正申告する場合にも金利が発生するが、同様の仕組みを政治資金規正法上の収支報告書にも取り入れることはできないか」
――さらに、この週末行われたANNの世論調査で岸田内閣の支持率が、政権発足以降、最低の26.1%になったことが明らかになった。この結果についてどうか?
「収支報告書の記載の修正に納得しないと回答する方が7割だった。多くの人たちが政治資金の問題、さらには経済対策についても納得していないという表れだ。修正するだけでは到底納得できないはずで、政権も構造的な問題に手を付けたほうがいいのではないか」
――減税なども打ち出していたが
「減税や給付など、生活者にとって嬉しい政策を打ち出した時、支持率は上がりがちである。しかし、岸田政権でそうならないということは、有権者や生活者がもはや政権の『約束』を信頼していないということである。これは政治不信の一つの表れだ。回復は容易ではない」
●鬼の岸田政権「メガトン増税」がついに始まる!国民負担率が50%を超える 11/28
数々のスローガンを打ち出し、自らのリーダーシップをことさらに強調してきた岸田文雄首相がピンチを迎えている。岸田氏の「言葉力」に国民が幻滅し、内閣支持率が急降下しているのだ。所得税・住民税の定額減税で歓心を買おうと目論んだものの、人々はその先にある“メガトン増税“を見透かしている。経済アナリストの佐藤健太氏は「まさに『言うは易く行うは難し』で、物価上昇に苦しむ国民は実行力や決断力のないリーダーに辟易としている」と指弾する――。
「所得倍増計画」という言葉はいつの間にか「資産所得倍増」にすり替えられた
国家のリーダーが放つ言葉は、時に国民を鼓舞し、時に失望を買う。2021年10月に発足した岸田内閣の歩みを振り返れば、あまりにも軽い首相の言葉によって失点が重ねられてきたことがわかる。首相就任前の自民党総裁選で「令和版所得倍増計画」を掲げたかと思えば、その後も「新時代リアリズム外交」や「新しい資本主義」「デジタル田園都市国家構想」などと、次々にキャッチフレーズを並べてきた。
だが、所得倍増計画という言葉はいつの間にか「資産所得倍増」にすり替えられ、国民が自己責任で資産運用する非課税制度の拡充策を設けただけ。経済成長も分配も実現するとした「新しい資本主義」の中身はいまだ不明瞭で、その多くが掛け声倒れに終わることが懸念されている。
足元の岸田内閣の支持率は各種世論調査で政権発足後最低を記録しているが、いくら言葉選びが上手であるとしても、それが実現できず、共感も得られなければ単なる「言葉遊び」と反感を買うのは当然だろう。象徴的なのは、岸田首相が今年1月4日の年頭記者会見で表明した「異次元の少子化対策に挑戦する」とのフレーズだ。
現役世代の負担増につながる仕組みが浮かび上がる
首相は結婚・子育て世代を中心に「異次元」という言葉への期待値が高まると、1カ月も経たずに「従来とは次元の異なる少子化対策を実現したい」(1月23日の施政方針演説)と言い換えた。6月には具体的な中身となる「こども未来戦略方針」が決定されたが、児童手当の拡充や出産費用の保険適用、保育士の配置基準改善など、従来施策の延長線上にあるものばかりが並んだ。岸田政権の看板政策であるはずなのに、そこに「言葉の重み」を感じることはできない。
さらに驚かされるのは、新たな少子化対策に年間3兆円台半ばの財源が必要になるものの、財源確保策が後回しにされたことだ。政府は歳出改革や既存予算の活用などを念頭に入れるというが、11月9日にスタートした議論を見ると、そこには現役世代の負担増につながる仕組みが浮かび上がる。
それは財源の1つとして政府が創設する「支援金制度」だ。
「さらなる国民の負担増はない」という“ウソ”
今年4月に発足した「こども家庭庁」は戦略方針の中で、「歳出改革等による公費と社会保険負担軽減等の効果を活用することによって、国民に実質的な追加負担を求めることなく、少子化対策を進める。少子化対策の財源確保のための消費税を含めた新たな税負担は考えない」と説明。岸田首相も「徹底した歳出改革を行った上で、国民に実質的な追加負担を生じさせないことを目指す」と述べ、さらなる国民の負担増はないと強調してきた。
だが、支援金制度の具体的設計に関する議論では「全世代が子育て世代を支える、新しい分かち合い・連帯の仕組み」として、公的医療保険料に上乗せして徴収される新たなスキームが検討されている。仮に年間1兆円強の財源を穴埋めすることになれば、国民1人あたり月に500〜1000円程度の負担増になる見込みだ。
新たな税負担は考えない、実質的な追加負担を生じさせないとしながら「第2の税」といわれる社会保険料で埋めるのであれば、もはや「言葉遊び」でしかない。
国民年金の保険料支払い期間が5年延長という新たな「重荷」も
経済同友会は11月22日の提言で「社会保険料を活用することは適切でない」などと現役世代の負担増回避を求めたが、少子化対策が結婚・子育て世代の負担増につながれば本末転倒だろう。病気やケガで受診した際の医療費を負担する公的医療保険をスキームに入れることにも疑問が残る。
そもそも支持率続落を受けた岸田首相が財務省の抵抗を押し切って所得税・住民税の定額減税を打ち出せたのは、のちに「回収」できる計算があるからだ。昨年末に決定された防衛費大幅増に伴う増税プラン(法人税・所得税・タバコ税)に加え、2024年度からは1人あたり年1000円が徴収される「森林環境税」がスタート。後期高齢者医療保険の保険料の上限は現在の66万円から2024年度に73万円、2025年度には80万円へと引き上げられ、一定以上の所得がある高齢者の介護保険料も増額となる見通しだ。消費税率のさらなる引き上げは否定する岸田首相だが、国民には事実上の「メガトン増税」が待ち構える。
加えて、岸田政権は国民年金(基礎年金)の保険料支払い期間を5年延長することも検討している。20歳以上60歳未満の40年間に支払う期間を「45年間」にするもので、5年間延長された場合には納付額が100万円近く増えることになる。退職金の課税見直しといった「サラリーマン増税」は2025年以降に見送られることになったが、税制改正だけではなく、社会保険料アップによるダメージも国民に突き刺さる。
近い将来、国民負担率は50%をゆうに超える
少子化対策と重なるのは、やはり財源問題だ。厚生労働省は11月21日、国民年金の保険料納付期間が延長された場合、給付水準を維持するためには2060年度に3兆3000億円の国庫負担の追加が必要との試算を示した。さらに、急きょ岸田首相が自民党幹部に指示したガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」の凍結解除には、「地方・国合計で1兆5000億円もの巨額の財源が必要」(鈴木俊一財務相)とされている。
国民負担率は2022年度に47.5%と所得の半分近くを占めているが、さらなる負担増は避けられない見通しだ。とりわけ、結婚・子育て世代を中心とする現役世代へのプレッシャーは大きい。首相は「明日は必ず今日より良くなる日本をつくりたい」と繰り返すものの、これだけの増税プランや社会保険料アップをテーブルに並べられれば、その言葉に共感する人は少ないのではないか。
岸田首相が所属する自民党の世耕弘成参院幹事長は10月25日の参院本会議で「支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待するリーダーとしての姿が示せていないということに尽きるのではないでしょうか」と指摘した。
メガトン増税」や社会保険料アップといった「ステルス増税」を模索する首相
さらに「首相の『決断』と『言葉』について、いくばくかの弱さを感じざるを得ません。世の中に対しても、物価高に対応して首相が何をやろうとしているのか全く伝わりませんでした」と苦言を呈した。
一国の宰相よりも、むしろ世耕氏の言葉に共感した人の方が多いだろう。
数々のスローガンを重ね、しばらく続く検討の末に方針を打ち出したかと思えば実現に至らない。ようやく実現すると思ったら裏打ちとなる財源がなく、最終的に国民負担増の形で回ってくる。各種世論調査であらわれた岸田政権による経済対策の不評ぶりや不支持率の高さを見ると、「メガトン増税」や社会保険料アップといった「ステルス増税」を模索する首相の言葉は、もはや国民に響かないように映る。
視線の先にあるのは、やはり宰相の座ただ1つに見える。
読売新聞が11月17〜19日に実施した全国世論調査によれば、内閣支持率は前月から10ポイントも急落し、24%と内閣発足以降最低を記録。毎日新聞の調査(11月18、19日)でも支持率は10月から4ポイント減の21%となり、過去最低を更新した。民主党の菅直人政権末期(15%)以来の低水準で、不支持率は74%に達した。不支持が7割台というのは麻生内閣(73%)以来14年9カ月ぶりという。
国民の支持が1割にすぎない宰相となれば、さすがに衆院を解散することはおろか、自民党総裁選への再出馬すらも困難になる。そこで首相は「止血剤」として公明・学会に急接近を図り、公明支持層からの支援を「内閣総理大臣」として懇願することにしたのだろう。
毎日新聞の世論調査では、岸田氏に「いつまで首相を続けてほしいと思うか」と聞いたところ、最多は「早く辞めてほしい」(55%)だったという。来年春の訪米を調整し、あれだけ頑なに否定してきたトリガー条項発動にも前向きに急変するなど、まだまだ意欲を見せる岸田氏。その視線の先にあるのは、やはり宰相の座ただ1つに見える。
●いつまで続く「地価高騰」…高利回りの「新築アパート投資」は無理か? 11/28
地価高騰、そして建築費高騰と、不動産投資に逆風が吹きすさぶ時代において、いかに「スモールリスク」の賃貸経営を続けていけるかは重要課題だ。この厳しい状況下、一都三県に100棟強の投資用新築アパートを建築してきたハウスリンクマネジメント株式会社はリスクヘッジに長けた企業といえる。同社のオリジナルブランド「カインドネス」シリーズの企画・開発に対する考え方をもとに、逆境を生き抜くアイデアを探っていく。
オリ・パラ後も続く地価高騰の背景にあるものは
2020東京オリンピック・パラリンピックが終了したら「日本国内の不動産価格は下落する」という話題があったが、あれは誰が言いだしたのだろう。とんでもない、地価はいまだ高止まり、または微上昇傾向にある。
地価高騰の一因として、1990年代のバブル経済崩壊以降“塩漬け”となっていた都市再開発事業が、オリ・パラに絡む公費放出によって動き始めたことが挙げられる。地方自治体が主体となり、道路拡張、駅前・繁華街の区画整理工事が全国各地で行われており、「これらのビッグプロジェクトに便乗しない手はない」と大手ゼネコンも再開発エリア周辺の土地買収に躍起となっている。
加えて海外資本もどんどん参入してくる。円安進行により海外市場において「買い負け」気味の日本。東京都心の一等地といえども海外企業にとっては青田買い程度の価格でしかなく、さらなる地価高騰を見込んで破格の買付額を提示してくる。これでは地価が下がるわけがない。
建材・人手不足が建築費を膨張させる
円安が日本の建築費を押し上げている一因であることは間違いない。ロシア・ウクライナ情勢の悪化で木材や石油の流通が停滞し、世界的な「ウッドショック(木製建材不足)」が起きているなか、買い負け続きの日本が確保できる建築資材は微々たるものだ。
コロナ禍の影響も大きい。リモートワークの常態化で、部屋数が多い戸建住宅の重要が急激に高まっているため、国内でわずかに流通する住宅用建材の価格はさらに高騰していく。これらの金額はすべて建築費に上乗せされる。
少子化に伴う労働人口減少の影響によって建築業界の人手不足も深刻化している。現在、建築現場の第一線で働いている作業員の年齢層は50〜60代とかなり高齢だ。若い人を雇いたいものの、建築業は給与水準が低い上に過酷かつ危険な仕事内容であることも相まって嫌厭されてしまう。そのため、多くの建設会社は給与増額によって若手作業員を集める必要がある。これらの人件費は建築費に跳ね返ってくることになる。
地価、及び建築費の高騰が新築アパート投資に及ぼす影響
地価や建物建築費が高騰している今、不動産投資にチャレンジすることは高いハードルであるように思える。大手投資法人ならまだしも、個人投資家にとっては厳しい時期かもしれない。しかし、大抵の人が尻込みするこのタイミングが投資家にとってチャンスとなりえる。ライバルがいない分、安価で収益性の高い物件を優位に手に入れることができるからだ。
では収益性の高い投資物件とはどんなものだろう。第一条件として、交通・商業利便性が高い場所にあること。言わずもがな、それは首都圏主要駅の駅前エリアだ。しかし、駅前の土地は商業地のため価格が高い。商業地とは、都市計画法で定められた用途地域でいうところの「商業地域」や「近隣商業地域」に該当し、建物の建蔽率(敷地面積に対する建築面積の割合)や容積率(敷地面積に対する建物の容積比率)が大きく取れるエリアのことをいう。
こういった土地は資金力のあるディベロッパーや投資法人が購入して投資用ワンルームマンションなどを建設するが、土地取得費や建築費がかさむため利回りが伸びない。良くて3%、都心一等地となると1.5〜2%程度の物件もざらにある。これではローン金利より低いため赤字になってしまう。個人投資家が手を出す場所ではない。
逆風の時代にも打ち勝つ“高収益”新築アパート投資とは
個人であっても堅実に稼げる不動産投資法として注目されているのが「新築アパート投資」だ。しかも首都圏の駅徒歩圏内立地で利回り7%の高利回りを実現している物件がある。それがハウスリンクマネジメント株式会社の新築投資用アパート「カインドネス」シリーズだ。
カインドネスシリーズは、駅前エリアより地価が下がる駅徒歩10分圏内、かつ最大でも3階までしか建てることができない用途地域内で収益性の高い投資用アパート建築しており、一都三県ですでに100棟強の実績がある(2023年8月末時点)。
建築費の低コスト化を重視するものの、建物資産としての品質の向上にもぬかりない。新築建物の劣化対策がどの程度行われているかを評価する基準に「劣化対策等級」があるが、カインドネスシリーズはその最上級である等級3(通常想定される条件のもと、3世代まで大規模な改修工事をせずに使えるように対策されているもの)を取得している。
最も重要な収益性については実例をもとに紹介しよう。小田急小田原線「玉川学園」駅徒歩5分に建つ「カインドネス玉川学園(物件価格9,610万円)」は、ローン返済が年間約540万円(金利4.5%)、家賃収入が年間約672万円で、年間キャッシュフローは約132万円と、約7%の高利回りを実現している。
●今年10月期の企業倒産件数は19か月連続で増加、1〜10月累計で前年超え 11/28
概況〜資金需要が旺盛になる年末を控えて企業倒産は増勢を強める可能性
東京商工リサーチから2023年10月度の全国企業倒産(負債額1000万円以上)に関するリポートが発表された。
まず件数は2022年4月から19か月連続で前年同月を上回った。また5月から700件台で推移した結果、1〜10月累計は7073件に達しており、前年の年間件数(6428件)を超えた。
負債総額も2か月連続で前年同月を上回った。10月度では2010年の5200億5000万円以来、13年ぶりに3000億円を超えた。負債100億円以上が6件(前年同月1件)、同50億円以上100億円未満が7件(同1件)と大型倒産が大幅に増加、負債を押し上げた。
「新型コロナウイルス」関連倒産は263件(前年同月比12.3%増)で、2023年1〜10月累計は2623件(前年同期比42.9%増)と前年同期の1.4倍と大幅に増加している。
産業別〜2か月ぶりに10産業すべてで前年同月を上回る
2023年10月の産業別件数は、10産業すべてで前年同月を上回った。10産業すべてが前年同月を上回るのは8月以来、2か月ぶりで、今年2度目となる。
最多はサービス業他の255件(前年同月比32.1%増)で、14か月連続で前年同月を上回った。月次倒産に占める構成比は32.1%(前年同月32.3%)だった。
次いで、資材価格の高止まりが続く建設業が164件(前年同月比76.3%増)で10か月連続、ウクライナ情勢や円安の影響による仕入コストが上昇している製造業が103件(同27.1%増)で15カ月連続で、それぞれ前年同月を上回った。
このほか、情報通信業27件(同35.0%増)が13カ月連続、小売業81件(同1.2%増)が6か月連続、運輸業34件(同17.2%増)が5か月連続、不動産業27件(同35.0%増)が3か月連続、農・林・漁・鉱業11件(同175.0%増)と卸売業89件(同17.1%増)、金融・保険業2件(前年同月ゼロ)が2か月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
地区別〜東北、北陸、九州を除く、6地区で前年同月を上回る
2023年10月の地区別件数は、9地区のうち、6地区で前年同月を上回った。
関東323件(前年同月比57.5%増)が、2022年5月より18か月連続で前年同月を上回った。このほか、近畿196件(同45.1%増)が11か月連続、中部92件(同6.9%増)と中国40件(同73.9%増)が6カ月連続、四国18件(同100.0%増)が5か月連続、北海道28件(同40.0%増)が2か月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
一方、北陸8件(同38.4%減)が2か月連続、東北33件(同29.7%減)が7か月ぶり、九州55件(同5.1%減)が16か月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。
[負債額上位5社]
1.(株)ガイア/東京都/パチンコ店経営/943億5500万円/民事再生法
2.(株)MG建設/東京都/建築工事/214億5000万円/民事再生法
3.(株)MG/東京都/パチンコホール/174億8800万円/民事再生法
4.(株)ガイア・ビルド/東京都/建築工事/155億1600万円/民事再生法
5.(株)トポスエンタープライズ/千葉県/物流倉庫事業/115億4100万円/民事再生法  
●年少扶養控除復活、検討しないと首相 11/28
岸田首相は参院予算委で、民主党政権が廃止した16歳未満を対象とする年少扶養控除復活に否定的な見解を示した。「検討課題とはしていない」と述べた。
●「増税やり放題がまもなく開始」”鬼の”岸田政権「まさに自転車操業」 11/28
「青汁王子」こと実業家三崎優太氏が21日までに、自身のX(旧ツイッター)を更新。岸田政権の増税問題について私見をつづった。
三崎氏は「鬼の岸田政権の宣言してた増税やり放題がまもなく開始される。年金の支払いが5年延長するけど、そもそも国民負担税が右肩上がりな流れの方が問題です」と記述。そして「日本政府は長期目線の問題から逃げ続け、いつか来る破綻の現実から目を逸らし続ける。これぞまさに自転車操業だね」と述べた。
この投稿に「自転車操業が破綻した際に更なる増税来るのが怖いですね」「年金負担は厳しいです」「最悪の時代ですよ」「増税し放題、税金使い放題プランの始まりですね」「負担が大きすぎる」などと将来を心配する声など、さまざまなコメントが寄せられている。
●菅・河野・小泉氏けん引=岸田首相「積極姿勢」に転換―ライドシェア 11/28
一般ドライバーが自家用車を使って有償で乗客を運ぶ「ライドシェア」の導入に向け、政府が検討を急いでいる。菅義偉前首相が解禁を求めたのを皮切りに、河野太郎デジタル相や小泉進次郎元環境相ら菅氏に近い自民党議員が推進論をけん引。政府内で慎重論が強い中、岸田文雄首相の背中を押した。首相には、運転手不足の解消に加え、政権と距離を置く菅氏らの取り込みを図る狙いもありそうだ。
首相は28日の参院予算委員会で、「担い手や移動の足の不足が深刻な社会問題と指摘される中、ライドシェアの問題に正面から取り組むこととした」と重ねて意欲を表明した。政府の規制改革推進会議は30日に開く会合でライドシェアに関する議論を続行。年内に方向性を示す方針だ。
ライドシェアは都市部や観光地、過疎地での深刻な運転手不足を踏まえ、インバウンド(訪日客)拡大を推進してきた菅氏が8月の講演で解禁を提唱し、議論の口火を切った。
これに呼応した河野氏が「守るべきは規制ではなく移動の自由だ」と主張し、政府内の議論を主導。小泉氏は今月22日に超党派勉強会の初会合で「迅速な対応が求められる。ライドシェア対タクシーではなく、『選択肢のある社会を』という思いだ」と訴えた。3人は党神奈川県連に所属。2021年9月の党総裁選では、首相に敗れた河野氏を菅、小泉両氏が支援した。
ライドシェアを巡っては、安全性確保や事故時の補償、競争の公平性などの課題が指摘され、政府は導入に慎重だった。自民党内でもタクシー・ハイヤー議員連盟の幹部を務める盛山正仁文部科学相が「安易なライドシェアを認めるわけにはいかない」と述べるなど賛否が分かれている。
政府内には「『菅印』の政策はやらないのでは」との見方もあったが、首相は10月の所信表明演説で「ライドシェアの課題に取り組む」と初めて表明し、積極姿勢に転じた。内閣支持率が低迷する中、党内での路線対立を避ける思惑もあるとみられる。菅氏周辺は「菅氏が発言すれば世の中が変わるというアピールになる」と述べ、同氏の影響力が強まるとの認識を示した。
 11/29

 

●岸田首相、国民の「痛み」避ける答弁 少子化・防衛財源論に及び腰―予算委 11/29
少子化や防衛力強化を巡る今国会の議論で、岸田文雄首相が国民の負担増に関する答弁を避ける場面が目立つ。低迷する内閣支持率を意識し、国民の「痛み」につながる言質を取られまいとする思惑が透けて見えるが、政権の看板政策に対する不信につながっている面は否めない。
「賃上げと歳出改革で国民負担率を下げる。下げた枠内で、支援金を考えていく」。28日の参院予算委員会で首相は、少子化対策で公的医療保険料に上乗せされる「支援金制度」を創設しても、国民所得に対する税金と社会保険料の割合を示す「国民負担率」は上がらないと強調した。
日本維新の会の清水貴之氏は「負担は増えると言えないのか」と首相を追及。歳出改革の内容をただしたが、首相は医療・介護のDX(デジタルトランスフォーメーション)による合理化などを列挙したものの、具体的な歳出削減効果は明らかにしなかった。
国民負担率はあくまで統計上の指標で、賃上げが追い付かない場合や一部高齢者では、少子化対策で首相が掲げる「追加負担を生じさせない」とする方針が揺らぐ可能性がある。
急速な少子高齢化で、年金・医療・介護制度の持続可能性が危ぶまれ、政府は負担増につながる見直しを進めている。厚生労働省の審議会は今月、65歳以上の高所得者の介護保険料引き上げ案を大筋で了承。国民年金についても、保険料納付期間を65歳まで延長する案がある。
首相は28日の予算委で、少子化対策の必要性について「独身者や高齢者にとっても未来の社会、経済のありようが懸かってくる」と訴えたが、厚労省幹部は「『負担なし』の説明が突出し、本来必要な介護制度見直しなどの議論が進めにくくなった」と話す。
財源論に及び腰な首相の姿勢は、防衛費を5年間で43兆円に増やすことでも見て取れる。27日の参院予算委で質問に立った立憲民主党の辻元清美氏は、政府が昨年末の計画決定時に1ドル=108円で試算したものの、現在約150円まで円安が進んだ点を取り上げ、「装備品を減らすのか、大増税するのかどっちか」と迫った。首相は「装備品のまとめ買いなど工夫を凝らし、実質的な抑止力維持を図っていきたい」などの答弁に終始した。
円安でも43兆円の範囲内で対応する考えを強調した首相に対し、辻元氏は「調達効率化で吸収できるものではない。だから大増税しかないと言っている」と説明に強い疑念を呈した。
●馳知事がうっかり暴露した「東京五輪招致の闇」 11/29
馳浩・石川県知事が自らの東京五輪誘致活動で、官房機密費(内閣官房報償費)を使って国際オリンピック委員会(IOC)の委員全員に「20万円のアルバムを渡した」と口を滑らせたことが、政界だけでなくSNS上も含めて大炎上している。
元文科相で、東京五輪誘致での自民党推進本部長だった馳氏が、「政官界でも口外厳禁」(官房長官経験者)とされてきた官房機密費使用の一端を漏らしたことで、さまざまな疑惑がささやかれてきた日本の招致活動の闇が暴露されるきっかけになるとみられている。
しかも、東京五輪招致と、1年遅れの「強行開催」を主導した故安倍晋三元首相、菅義偉前首相、森喜朗元首相の3氏による馳氏への「具体的指示」にも言及していたことが、支持率下落にあえぐ岸田文雄首相の政権運営の新たな火種になりつつある。
馳氏は慌てて「全面撤回」、口つぐむ“関係者”
騒ぎの大きさに慌てた馳氏はすぐさま発言を「全面撤回」し、その後は「一切言及しない」と貝のように口を閉ざし、嵐の過ぎ去るのを待つ構え。しかし、野党はすぐさま「五輪全体が汚職まみれとされたが、誘致も金まみれだった」(立憲民主)として、国会への馳氏の参考人招致を要求するなど、臨時国会終盤での野党の政権攻撃を勢いづかせている。
馳氏の「機密費」発言は、11月17日に都内で行った講演で飛び出した。2013年に開催が決まった東京五輪に関する自らの招致活動として、「105人のIOC委員全員の選手時代の写真をまとめたアルバムを土産用に作った」と自慢げに披露し「官房機密費を使った。1冊20万円する」と踏み込んだ。事実ならIOCの倫理規定違反にも問われかねない内容だ。
しかも馳氏は、当時の安倍首相から「必ず(招致を)勝ち取れ。金はいくらでも出す。官房機密費もあるから」と告げられたことも明かし、「それ(アルバム)を持って、世界中を歩き回った」と語ったという。
さらに、自らの「はせ日記」と称するブログに、安倍首相の“指示”を受けて、当時の機密費を扱う官房長官だった菅氏にも報告し、同氏から「安倍総理も強く望んでいることだから、政府と党が連携して、しっかりと招致を勝ち取れるように、お願いする」とハッパを掛けられたことも明記。それが判明した際、馳氏も事実関係を認めざるをえなかった。
立憲民主党はこのブログも含めて「IOCの倫理規定違反が疑われる行為。官房機密費が使われていたとすれば大変な話だ」と勇み立つ。同党として終盤国会の攻防の中で馳氏だけでなく菅氏の参考人招致も与党に迫る構えだが、自民執行部は徹底拒否する方針。
菅氏の事務所もメディアの取材に対し「ご質問の件は承知していない。馳氏は発言を撤回したと聞いている」と固く口を閉ざしている。
その一方で、馳氏がブログに記した「ともだち作戦」という言葉について、当時の都知事で現在日本維新の会所属の猪瀬直樹参院議員が、都庁ホームページ「知事の部屋」に「重要なのは友達作戦と絆作戦」と記していたことも判明した。今のところ猪瀬氏もメディアの取材に口を閉ざしているが、維新も巻き込んでの騒ぎともなりつつある。
菅氏は官房長官在任中「86億円」使う
そこで問題となるのが「いわゆる機密費の存在とその使途」(政界関係者)だ。「内閣官房報償費」が正式名称で、「国政の運営上必要な場合に、内閣官房長官の判断で支出される経費」と規定されている。
この機密費が予算に計上されたのは終戦直後の1947年からで、近年は年間16億円余が予算化されてきたが、その後減額され、現在は総額14億6165万円が毎年計上され、そのうち12億3021万円が内閣官房長官の取り扱い分、とされている。
そもそもこの「機密費」は、内閣官房だけでなく各省庁にそれぞれ一定額が予算計上されている。もちろん官房機密費の額が群を抜くが、外交交渉を担う外務省の「機密費」がさらに巨額。ただ、関係者によると「内閣官房と外務省の機密費は事実上一体運用され、首相による首脳外交には双方の機密費がそれなりの配分で使われてきた」(外務省幹部)とされる。
そうした中、今回の“機密費騒動”で俎上に上げられた菅氏が、7年8カ月余の官房長官在任中に使った機密費総額は「86億円超」という巨額に上ることが、すでに明らかになっている。このため、菅氏は首相だった安倍氏の了解も得て、その中から五輪招致の活動費に支出していたと指摘されたわけだ。
今回の騒動に先立ち、過去には「官房長官が機密費を選挙活動に使った」として大阪市の市民団体が告発したケースもある。麻生太郎内閣の官房長官だった河村建夫氏が、政権交代選挙となった2009年8月の衆院選での自民惨敗を受け、在任中に2億5千万円もの機密費を引き出していたとして「背任罪・詐欺罪」で告発されたものだが、後日不起訴処分になっている。
「外遊の選別」「国会対策費」などの“証言”も
もともと、官房機密費の使途をめぐってはさまざまな「疑惑」が取り沙汰されてきた。歴代官房長官の中で「外遊する与野党国会議員への餞別に充てた」「国会対策で一部野党に配った」「有力なジャーナリストを懐柔するために使った」などと“証言”する向きも複数存在するのは事実。
ただ、その実態は「闇に包まれたまま一向に解明されず、現在に至っている」(自民長老)のが実態。今回も馳氏をはじめほとんどの関係者は一様に口を閉ざし、取材も受け付けない対応を続けている。
そうした状況に対し、多くの有識者からは「今回の馳氏の発言を聞き、それを裏付けるブログもみれば、誰が見ても機密費の悪用は隠しようがない。余りにも突っ込みどころ満載で、笑い出したくなる」(民放テレビコメンテーター)との辛辣な声が相次ぐ。
その一方で、与野党から「今回の機密費騒動での自民実力者の利害得失」(同)に視点を据える向きもある。
馳氏を「手先」として動かしたとされる首相経験者の安倍、菅、森3氏は、死去した安倍氏は別として、現在は森氏が麻生太郎副総裁と並ぶ岸田首相の“後見役”を自認する一方、菅氏は党内の「反岸田勢力の旗頭」の立場にある。
しかも、安倍氏に関しては「桜を見る会」への機密費支出問題が取り沙汰された経緯もあり、最大派閥の安倍派にも批判の矛先が向きかねない状況でもある。
これも踏まえて与党内では、「岸田首相にとっては、今回の機密費騒ぎを『安倍・菅政権の汚点』として、岸田降ろしのうごめきを抑え込む要因にもできる」(首相経験者)とのうがった見方すら出始めている。
支持率回復に向け「身を切る改革」の覚悟は…
もちろん、そうした闇試合をうんぬんする前に、膨大な機密費に対する国民の疑惑が、さらなる政治不信拡大につながらないよう、「行政府の政府だけでなく立法府の国会が連携して、現在の機密費制度の改廃に取り組む」(官房長官経験者)ことが必要なのは論を待たない。
それだけに、政権維持の正念場に立たされている岸田首相が、「機密費の縮減」や「一定期間後の使途公開」など“身を切る改革”にまい進すれば、「支持率回復のきっかけになる」(自民長老)という声も出るが、はたして岸田首相にその覚悟があるのかどうか……。
●民間シンクタンク調査「岸田内閣支持率16.8%」の衝撃… 11/29
・必死の大メディア「減税で支持率が落ちた」の大嘘で世論を誘導
岸田政権の支持率下落が止まらない。しかし、その原因を「減税政策を主張したから」とする一部の論調には疑問がある。
連日公表されるメディアの世論調査は、「減税政策を評価しない〇〇%」というストレートニュースを垂れ流しているが、果たして岸田政権の支持率下落は減税政策自体が嫌われているからなのだろうか。
国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は「独自の世論調査の結果、岸田政権の支持率下落要因は、減税政策そのものではないことが分かった」というーー。
岸田内閣を「支持する」「やや支持する」の合計は16.8%
筆者は「減税政策=支持率下落という誤った世論形成が日頃から増税を求める大手メディアによって中心になされること」を危惧したため、民間シンクタンクの調査研究として、大手インターネット世論調査会社に委託し、岸田政権の支持率下落と減税政策の関係について分析した。
具体的には、一般社団法人救国シンクタンクでは、2023年11月14〜16日、大手インターネット世論調査会社に委託し、有効回答数1044人(18〜79歳の男 女/全国/人口構成比割付)で、減税に関する世論調査を実施した。このアンケート設計自体には恣意性はなく、同調査会社のモニター調査システムをそのまま利用した。その結果として岸田政権の支持率下落要因は、減税政策そのものではないことが分かった。
具体的な設問と回答は下記の通りであった。
1 「あなたは岸田内閣を支持しますか?」
「支持する」「やや支持する」の合計が16.8%、「あまり支持しない」「支持しない」の合計が74.7%。支持を不支持が大幅に上回る回答結果となった。
2 「岸田内閣が任期途中で退陣した場合、その原因は減税政策を主張したからだと思いますか?」
「そう思う」が11.0%、「そう思わない」が51.5%、「分からない」が37.5%。岸田政権の支持率下落の主因として、減税政策そのものが理由とは考えられていないことが分かった。
つまり、仮に岸田内閣が支持率下落を受けて、何らかの理由によって退陣したとしても、有権者の多くはそれが「減税政策を主張したからだ」とは思っていない。岸田政権の支持率下落要因を「減税政策そのものにある」と関連付けて報じる大手メディアの報道姿勢は極めて問題だ。
岸田政権が減税を実施したところで、後から増税されるなら意味がない
大手メディアはそもそも増税論調のメディアが少なくない。特に新聞などは自分たちが軽減税率という政府からのお目こぼしを受けているせいか、増税を実質的に礼賛する主張を書き連ねている。軽減税率は増税を求める政府が業界をコントロールするためのツールに過ぎない。したがって、その恩恵を受ける大手メディアはあえて岸田首相以外の他の政治家に見せつけるかような論調を展開し、二度と減税という単語が政治家の口から出てこないようにしようとしているように見える。
では、岸田政権が実施しようとしている減税政策は、何故支持されていないのだろうか。
3 「あなたは岸田政権が提示した『所得税減税』政策を支持しますか?」
「支持する」「やや支持する」の合計が28.4%、「あまり支持しない」「支持しない」の合計が55.3%。支持を不支持が大幅に上回った。
4 「『所得税減税』政策について「あまり支持しない」「支持しない」と回答した方に質問します」その理由について教えてください。
1位「短期間の減税後にそれ以上に増税されることがわかっているから」53.6%、2位「岸田首相の減税政策が単なる選挙対策に思えるから」45.9%、3位「恒久減税または複数年に渡る減税を 行うべきだから」29.8%という結果であった。
5 「あなたが減税すべきと考える国税をお教えください。
1位「消費税」63.5%、2位「所得税」50.2%、3位「ガソリン税」48.5%、4位「相続税」24.6%、5位「贈与税」18.8%
結局、岸田政権の減税政策は「実際には減税政策として受け止められていない」ということだ。つまり、減税政策自体が否定されているのではなく、有権者の多くは「岸田政権の減税政策=偽減税だ」と考えているということだ。
実際、岸田政権の偽減税政策はまがい物だ。僅か1年の所得税減税政策では国民は後に続く増税を前提として貯蓄に回す可能性が高い。減税政策は複数年以上継続する前提で初めて有効に機能する。
大手メディアの世論調査方式は不適切だ
岸田政権が求めているものは、目の前に迫る総選挙のためであって、減税政策の効用を最大化することを目指していない。国民は岸田政権の浅はかな意図はお見通しなのだ。
直近では岸田政権はガソリン税のトリガー条項を検討するとしている。しかし、今から検討するのでは、実際にはその減税は来年の後半以降ということになるだろう。現在、エネルギー価格は既に下落傾向を示し始めており、来年には価格高騰が沈静化する可能性も十分にある。トリガー条項が必要な時にあえて発動せず、それが不要になる時期を見越して検討を開始するなど、国民を愚弄するのも甚だしい。そもそもトリガー条項という名称を返上すべき偽減税議論に辟易する。
さらに、年代別データを見ると、岸田政権の所得税減税政策の支持者は18歳〜40代合計33.8%、50代以上の合計23.8%と所得税減税に関する世代間ギャップが背景にあることも分かった。
所得税を現役で支払っている層の所得税減税を否定する人の割合は相対的に低い。当たり前のことだが、これは重要なポイントだと言える。
大手メディアの世論調査は今回のように日本の人口統計の年代・性別に割り付けた調査ではない。彼らの調査はRDD方式という電話に直接架電し回答を求める方式を取っているため、その回答者は60代以上の高齢者に偏っている。突然、自宅や携帯に見たことない番号から電話がかかってきて、自らの政治的志向について警戒心もなく回答する層をターゲットにした調査なのだから当然だ。本件のように所属する年代で回答内容が大きく異なる調査内容の場合、RDD方式が不適切であることは言うまでもない。
それらの偏ったサンプルによる調査を公表することは「減税政策は支持されない」という世論誘導づくりのためのアンケートのようにも見える。ある種の政治家に対する脅しとも言えるだろう。また、多くの国民も大手メディアの調査結果に違和感を覚えながらも、それ以外の調査がほとんどない中で変だと思いながら調査結果を受け入れさせられている。
アンケート調査は国民の人口構成に合わせた調査が可能であるインターネット調査を基本とするべきであり、なおかつ調査主体である新聞等は自らが軽減税率の対象となっていることを調査分析結果に明記すべきだ。
岸田政権の減税政策は偽減税として国民が理解している
「岸田政権の減税政策は偽減税として国民が理解している」ので支持されていないだけであり、国民は減税政策そのものを否定しているわけではない。正しい世論調査結果の普及が必要である。
ちなみにここで、米国で2023年10月に行われた「The Economist/YouGovpoll」の調査を紹介したい。
米国の世論調査は、調査結果の公表に際して、調査手法や回収サンプル属性だけでなく、クロス集計なども提供している。世論調査の数字を見た人がより深く内容をチェックし、報道内容の反証可能性を残すことは当然のことだからだ。これが本物のプロ意識というものだろう。
逆にそうでなければ、メディアが世論誘導しようとしている、と激しい批判にさらされることにもなるだろう。日本の大手メディアが「国民は減税を望んでいない」と事実上誘導しているように……。
ただし、高齢者に偏った回収サンプルの世論調査でも分かることもある。そのような調査にも関わらず、その結果で内閣支持率が26.9%しかなかったという岸田首相にとって重すぎる事実だ。仮に回収サンプルの年代属性が日本国民の統計データと同一のものだったとしたら、その結果はいかなるものになっていたのだろうか。
●トリガーで鈴木財務相「事前に説明受けていない」 11/29
鈴木俊一財務相は29日の参院予算委員会で、ガソリン税を軽減するトリガー条項の凍結解除に関し、与党と国民民主党が協議入りしたことについて、岸田首相から事前に説明がなかったことを明らかにした。
質疑の中で立憲民主党の杉尾議員は「国民は総理を信じられなくなっている。その最たるものが税をめぐる迷走だ、増税減税、何をやりたいのか、全くわからない」と指摘し、ガソリン税のトリガー条項解除検討について事前に相談があったか鈴木財務相に尋ねた。
鈴木財務相は、トリガー条項については2022年も与党と国民民主党の協議があり、その際に色々な課題を指摘されたと言及し、「また協議をするということについて、事前に私は説明を受けていない」と述べた。その上でトリガー条項の実施には国と地方合わせて1.5兆円の財源が必要であり、協議の中で財源についても検討されるとの認識を示した。
これを受けて杉尾議員は岸田首相に対し「肝心な財務大臣にも説明せず、総理が唐突に持ち出した。一度検討して断念した経緯があるが、今度も検討だけで終わるのではないか」と追及した。
岸田首相は「エネルギーの激変緩和措置を来年(2024年)4月まで継続することを政府として確認しているが、その先の議論として検討するとなっていたトリガー条項について、与党と国民民主党の政策責任者の中で検討していくことは有意義だ」と述べた上で「検討の行方を踏まえつつ、政府としても適切に対応したい」と強調した。
●東海第2原発の重大事故時…人口91万人でも避難は「最大17万人」 11/29
茨城県は28日、日本原子力発電東海第2原発(同県東海村)で炉心が損傷する重大事故が起きた場合、放射性物質が周辺にどのように拡散するかのシミュレーション(予測)結果を公表した。事故対応状況や気象条件を変えた計22パターンのうち、原発から30キロ圏内の避難者は最大で約17万人に上った。県は予測結果を活用し、避難計画の実効性を検証する。
原発30キロ圏内の人口は全国最大の91万人超
東海第2原発は首都圏唯一の原発で、2011年の東日本大震災後、運転停止中。東海村など重大事故時に即時避難する半径5キロ圏内に6万4451人が居住。毎時20マイクロシーベルトの空間放射線量で避難となる半径30キロ圏内を含めると、14市町村で全国最大の計91万6510人が住む。
予測は県が日本原電に要請した。事故状況をフィルター付きベントなど事故対策設備の一部が機能した場合と、「ほぼ全て」が機能喪失した場合の2通りを想定。それぞれ気象条件を
(1)同じ風向きが長時間継続
(2)同じ風向きに加えて降雨が長時間継続
(3)ほぼ無風
と変え、24時間後の放射性物質の拡散範囲を分析した。
避難者が最大となるのは「水戸市方面が風下かつ降雨あり」
避難者が最大となったのは、原発から南西、水戸市の方向が風下となり降雨を伴った場合で、対象人口はひたちなか、那珂両市で計10万5191人。5キロ圏内からの避難者を合わせると計16万9642人となる。同じ風下方向で降雨がない場合でも、水戸市で約5万9000人の避難者が出た。
一方、原子力規制委員会の審査で用いる重大事故を想定したもう一つのケースでは、5キロ圏内を除いて避難が必要となる地域は発生しなかった。
東海第2の事故時の広域避難計画は県のほか周辺5市町が既に持ち、他自治体も今後策定する。県の担当者は「予測結果をもとに、計画での避難にかかる時間や車両配備などの実効性を検証する」としている。
予測結果は県ホームページ「原子力安全対策課」で公開している。(竹島勇)
大井川和彦知事は避難の実効性に自信を見せるが…
茨城県が重大事故時の放射性物質の拡散予測を公表した日本原子力発電東海第2原発は、岸田政権が再稼働を目指す原発の一つに挙げる。再稼働は地元自治体の広域避難計画策定が条件で、予測結果は計画づくりの大前提となるが、想定には甘さが否めない。
東海第2の再稼働を巡っては2021年3月、水戸地裁での訴訟で「避難計画の実効性がない」などの理由から運転を認めない判決が出た。大井川和彦知事は28日の記者会見で「最大でも17万人の避難という結果が出た。相応の準備をすれば(避難計画の)実効性は確保できる」と述べた。
想定が少なすぎる?
ただ今回の予測は、安全対策が「機能した」「機能しなかった」の二つの想定しかなく、放射性物質の放出時間も事故後24時間限定で、想定規模は福島第1原発事故より小さい。避難者が出るケースも隕石(いんせき)落下やミサイル攻撃など「現実的には考えにくい」とするが、ウクライナ紛争では実際に軍事攻撃の標的になるなど「想定外」はあり得る。
実際に重大事故が起きれば、避難対象地域外で自主避難者も出る。原子力防災に詳しい環境経済研究所(東京)の上岡直見代表は「人員や車両を整えれば避難はできても、その間に住民の被ばくが許容量を超えたら意味がない。被ばくに関しどう実効性を検証するのかが見えない」と話す。
県は条件や設定を追加した分析を原電に求めた。真に「実効性ある」避難計画づくりにはまだまだ時間を要する。
●経済音痴の岸田首相が前のめり…年金制度「改悪」に大ブーイング 11/29
政界通 岸田政権がまたも「経済音痴」ぶりをみせ、経済界がブーイングだそうだな。
財界通 企業年金の「改悪案」のことか?
金融庁が旗振り役
政界通 そうだ。年金の資金をもっと積極的に運用しろと年金基金に圧力をかけているが、そうすれば成績がマイナスになるリスクも増す。首相官邸や旗振り役の金融庁の言い分を聞くと、マイナスになることはないと言わんばかりの能天気ぶりだ。
官界通 10月初め、首相肝いりの「新しい資本主義実現会議」の下に資産運用立国分科会が新設され、そこで改革に年内にも結論を出すとなって、霞が関の官僚も「何で?」と驚いていた。
財界通 日本人の大半は「安心・安全」が第一で、年金で高いリスクは取りたくない。そんなことも分からないのかという声が、経済界や労働界に多いね。
官界通 首相は2カ月余り前にも「日本に資産運用特区をつくる」と言い出した。力ずくでも個人の「虎の子」を証券投資へ向かわせようというのは、誰の発想なのかね?
政界通 取り巻きに発案者がいたとしても、首相自身が前のめりになっている。やることが裏目に出て内閣支持率が下がっているので、焦っているのかな。
財界通 確かに、年金基金が加入者に約束する「予定利率」は2%台前半まで下がり、物価の上昇率が2%を超えているから、運用利回りを上げたいのは分かる。でも、運用のプロが工夫してもその程度にしか回らないのだから、無理筋だ。
官界通 議論に参加した経団連代表も「企業年金は、労使自治の下で安全かつ効率的な運営が求められる」と指摘し、株式投資の拡大を狙うような「改悪」にきっぱり反対した。
財界通 当然だ。企業年金は退職金の多くを預けた資金に、企業が掛け金を投じて給付額を維持している。仮に運用成績がよくなっても掛け金が減るだけで、給付額はすぐに上がらない。
政界通 異次元の子育て支援策や医療費膨張への歯止め策など、年末へ向けて舵取りが難しい問題が控えているのに、どう着地させるのか。先が見えないね。
●遂に支持率20%台...ジャーナリストが指摘する「岸田内閣」3つの構造的欠陥 1/29
民間企業なら人事の任命責任者は辞任
内閣支持率20%台の超低空飛行、迷走を続ける岸田文雄政権の構造的な問題はどこにあるか。
それは政策能力云々以前の「危機管理」や「ガバナンス」といった政権運営と維持のための基本中の基本の欠如だと私は思う。
さらに、これを担う「側近」の存在もない。
この2年間、岸田政権はここを怠り、手を打ってこなかったツケがいま支持率となって表れているのではないか。検証したい。
「政権という組織が成り立っているのが不思議。民間企業ならこんなに人事で不祥事が出れば任命責任者は当然責任をとって辞任する。社員も『こんな会社じゃまともに評価されない』と嫌気がさして逃げ出す。それがのうのうと成り立っているのが政治の不思議なところだ」(民間シンクタンク代表)
今年9月に、低迷する支持率の挽回も考慮しながら行った内閣改造人事。ところが、副大臣、政務官人事は異例のスキャンダル続出ですでに3人が辞任した。
岸田首相はいつもの決まり文句「適材適所」と胸を張ったがとんでもない。山田太郎文部科学政務官は女性問題で、柿沢未途法務副大臣は選挙違反事件への関与で、そして神田憲次財務副大臣は税金滞納でそれぞれ辞任。特に神田氏は、補正予算や経済対策を主導する財務省本体の副大臣でありながら、2013年から22年にかけて自身が代表取締役を務める会社が保有する土地と建物の固定資産税を滞納した常習犯で、なんと4回も差し押さえを受けていたことが分かったのだ。
法務副大臣が選挙違反という法を犯した疑惑を招き、財務副大臣が税を滞納するという「まさにその役職と違反の中身がリンクしている。ブラックジョークとしての適材適所」(立憲民主党幹部)だが笑える話ではない。しかも、神田氏の更迭にも時間がかかった。
派閥が推すとそのまま素通り
なぜ、こんなことが起きるのか。これこそ象徴的な「危機管理能力」の欠如だ。
「副大臣と政務官人事は、自民党の各派閥から推薦で上がってきた議員を配分する仕組み。それをやるのは岸田首相ではなく側近や官房長官など。なので、派閥が推してくればそのまま素通りする。任命のあと週刊誌などは総力を挙げて不祥事など取材する。すると出るわ出るわでこんなことになってしまう」(自民党ベテラン議員)
しかし、過去人事で危機管理を徹底していた政権もある。2001年から5年続いた小泉純一郎政権だ。そこには陰で支えた飯島勲秘書官がいた。私が執筆した『汚れ役 側近・飯島勲と浜渦武生の「悪役」の美学』(2008年・講談社)の取材で、飯島氏から聞いた危機管理の鉄則がこの「身体検査」だった。
「まずは政治とカネ。閣僚はもちろん副大臣や政務官なども政治資金収支報告を徹底して調べる。こんなのは当たり前。もし怪しいのが見つかったら、先に修正させるなんていうこともやった」
飯島氏の凄さは、これ以外にも内閣情報調査室(内調)や警察庁などとのパイプを使って情報を確認したことだ。また、永田町の記者クラブに属する全国紙やテレビキー局の政治部ではなく、独自にスポーツ紙や週刊誌などのメディアに強力な人脈を築いてきたこともあって、そうしたところからスキャンダル情報なども大量に収集できた。
岸田政権にここまでチェックする側近はというと「官僚や議員では不在」(岸田派議員)という。仮に飯島氏なら、山田氏のケースは週刊誌筋などから、すでに警視庁が情報をつかんでいたとされる柿沢氏のケースはその筋から、また神田氏のケースは明らかに国税筋から情報を容易くつかみ処理しただろう。
岸田首相の「還元」をひっくり返した鈴木財務相
さらに岸田政権に欠けている「ガバナンス」。
最近の例ではこんなことがあった。岸田首相が政権浮揚の起死回生策として掲げた経済対策。物価高に喘ぐ国民に最も訴える政策だ。
夏ごろからアドバルーンを上げ始め、期待感を持たせたてきた。その中でも、過去2年間で所得税と住民税の税収が合わせて約3兆5000億円増えたことを踏まえ、「物価高対策として、国民に分かりやすく税の形で直接『還元』する」と言い続けてきた。いかにも税を頑張って納めている国民に感謝し、生活が苦しいいま戻しますと耳障りのいいアピールだ。
ところが……。
「(過去2年間で)税収が増えた分は、政策経費や国債の償還などですでに使っている。減税をするというなら国債の発行をしなければならない」
11月8日衆院財務金融委員会で鈴木俊一財務相は、今回の経済対策の財源を聞かれこう答えたのだった。
岸田首相がこれまでずっと使ってきた「還元」をひっくり返すものだ。増えた税収3兆5000億はもう使って財源はない。今後、減税や非課税世帯支援で国民にお金を配るが、その原資は新たに国債で借金する。国債の返還は将来的に国民。つまり、いま配るお金は国民自身が借金して作りいずれ自分たちで返せということなのだ。
岸田首相と距離を置き始めた財務省
さらに、所得税減税もたった一回きりでしかも実施は来年。評判は散々で、メディアの世論調査では、支持率回復どころか「経済政策に期待しない」がゆうに過半数である。
自民党の財務政務三役経験者は言う。
「そもそも財務省とベッタリの岸田首相は、今回の所得税減税や還元なども事前に話をしていたはず。しかし、鈴木財務相が岸田首相の面子を潰すような発言をした背景には、官邸と財務省のパイプ役だった木原誠二官房副長官が週刊誌報道で官邸を離れ、関係が希薄になっていること。また、支持率対策のために人気取りで政策がふらつく岸田首相に財務省が距離を置き始め、主導権を握り始めた」
まさに「ガバナンス」の崩壊だ。
岸田政権の「還元」や「減税」の迷走について安倍政権時代官邸にいた元官僚は言う。
「大きな勝負をするのだから、まず官邸内で官房長官や副長官が方向や戦略を定め、閣僚内や各省庁のトップ、党の実力者などと事前に話をしてストーリーの意思疏通をはかる。現政権はそれがまったくできていない。たとえば、臨時国会前の会見で『還元』や『税制の軽減』など思わせぶりな言葉を使ってしまい、減税世論を盛り上げてしまったために、『なんだ、減税は消費税じゃないのか、所得税か』と逆にがっかりされたり、党内の根回しができていないから所得税減税に批判が出たりする」
かつての「水面下の調整」がなくなった?
この元官僚は、税に関する政策決定で、2018年に安倍政権が消費税10%を決めた舞台裏を挙げる。
当時、政権幹部らはあからさまに賛否両論を展開した。麻生太郎財務相は「やる」とあらゆる場で公言。安倍氏の経済ブレーンの甘利明氏は「慎重」にと発言。そのほか閣内や党内の実力者たちの意見も真っ二つ。
じつは当時、私は官房長官だった菅義偉氏に直接聞いた。閣内不一致、党内不一致じゃないか。決着させられるのか―と。菅氏は笑ってこう答えた。
「大丈夫。ちゃんと(閣議のあとなどに)みんなで顔つき合わせて打ち合わせしてるから」
つまり、麻生氏や甘利氏や党の幹部らの発言はあえて役割分担しているのだった。世論は賛否ある。その中で、政権内や与党内でも賛否議論百出の状態を作り、最後には安倍首相が苦渋の決断をするという流れだ。そうやれば、反対派のガス抜きもできるし、国民からは侃々諤々の末の決断に見えるというわけだ。
また当時、反対していた公明党に対しては、公明党が主張していた軽減税率という交換条件を菅氏がまとめ上げ、創価学会の幹部などと折衝、10%を受け入れさせた。裏で仕組まれた見事な「ガバナンス」だ。
「今回の減税で、こうした水面下の調整があったとは思えない。いま根回し役の側近は一体誰なのか。一事が万事これから他の重要政策でも危ぶまれる」(前出元官僚)
ダブルの危機管理がピンチを救っていた安倍政権
菅氏にはこんなエピソードもある。
2012年、安倍政権発足直後に、私は官房長官に就いた菅氏にまずやりたいことは何かを訊ねた。
「内閣人事局を作りたい」
私は政策を聞いたのに返ってきたその答えにゾッとした。政権運営のためにそこまでやるのかと。つまり、内閣人事局は、官邸が霞が関の官僚人事を決める仕組みだ。政権がやりたいことをやるために抵抗する官僚を人事で黙らせる。言うことを聞かない官僚は飛ばす……。ガバナンスにおいてこれほど効果的で恐ろしい手段はない。
菅氏はその後、この制度を利用して人事を駆使。霞が関の省庁を掌握し、政治主導ガバナンスをキープした。また、警察庁や公安、内調などにも情報網を張り巡らせ、身体検査はもちろん、スキャンダルや不祥事についても情報収集し先手対応した。
安倍政権には、側近に経産省官僚の秘書官だった今井尚哉氏もいた。安倍首相を守る危機管理に徹したため菅氏と対応がぶつかることもあった。
たとえば、閣僚の不祥事が発覚した際に、菅氏は国会運営などを考えて早くクビをきるべきだと首相に進言する。一方の今井氏は、いま更迭すると安倍首相の任命責任に関わってくるので少し待って通常の内閣改造でさらっと代える方がいいと進言する。
政権全体を守るか、安倍個人を守るかの違いはある。しかし、ダブルの危機管理が政権のピンチを救ってきたのだ。
政権運営の絶対条件は「危機管理」と「ガバナンス」
改めて岸田政権の2年間を振り返る。
人事などの危機管理不能の例としては、旧統一協会と関係のあった閣僚の処遇、自らの長男の公私混同を疑われる問題への対応、今回の神田副大臣の更迭のタイミングの遅さなどがある。
一方でガバナンスは、政策を進める際の混乱ぶりを見ると機能していない。旧統一教会の解散命令請求やLGBT関連法案は「やらない」から急に「やる」へ。また、国会議論をすっ飛ばして世論に問うこともなく将来のサラリーマン増税の方針を打ち出したり、防衛費増額や原発運転延長を決めたりする唐突さもある。目玉政策といきなり子育て・少子化対策を打ち出すも財源問題は不透明だ。省庁や与党などとどこまでシナリオを詰めて反対勢力を制しているのか。
政権運営の絶対条件と言ってもいい「危機管理」と「ガバナンス」、そしてその役割を担う側近。それらなくして政権浮揚なし。今後も岸田政権は負のスパイラルを一気に下って行くことになるだろう。
●「現金を封筒に入れて」「教員が回収役に」…なぜ給食費は“昭和的”なのか 11/29
自治体独自で小中学校の給食費を無償化する動きが広がる中、東京23区内だけでも既に無償化を実施している区としていない区があるなど、“自治体格差”が生まれている実情がある。
家族の経済学に詳しい東京大学 経済学部 山口慎太郎教授は「すべての子どもたちが必要とする給食こそ、親の経済面などに左右されることなく国が一律で無償化を実施すべき」と提案する。
さらに山口教授は国が給食費の一律無償化を担うメリットについて「自治体による“子育て世代に人気はあるが効果がない政策”や自治体間の行き過ぎた競争の防止」や「教員が親から給食費を回収する労力のカット」などがあると説明。
一方で、内閣府が6月に公表した「こども未来戦略方針」には「学校給食の実態調査を速やかに行う」と明記されている。いまだに国は一律無償化実施に動けていないのが現状だ。
これに対し山口教授は岸田政権が掲げる「異次元の少子化対策」の中で注目を浴びている「児童手当の拡充」の半分以下の予算で給食費無償化は実現可能であると指摘。「出生数ばかりに目を向けるのではなく、『すでに生まれてきた子どもたち』により良い環境を用意することも社会にとって重要なのではないか」と述べた。
「給食費無償化の受益者は実は親ではなく子どもだ。子どもが将来立派な大人に育ってくれれば、それは社会にとっても大きな利益になる。 税金でカバーすることに全く問題はない」
給食費のキャッシュレス化は実現可能?
この給食費の一律無償化について教育経済学を専門とする慶應義塾大学の中室牧子教授は「子どもに投資をすることで将来社会に還元されるという『教育の投資的な側面』は大事だ」としつつ、「一方で千葉商科大学の小林航教授が指摘している『税金で給食を負担するということは、『子どもがいる高所得の親』の給食費を『子どもがいない低所得の人』の税金で賄うということになり社会の格差を広げる』という観点もある。この不公平感を国民がどう考えるか、ちゃんと議論すべきだ」と述べた。
さらに中室教授は34.8%しか進んでいない給食費の「公会計化」について「『私会計』になっている自治体では、封筒に現金を入れて先生に給食費を渡す必要があるところも。これは保護者の側も不便であり、徴収しなければいけない教員側にとっても大きな負担になっている」と山口教授の指摘に同意した。
なぜ、給食費などをはじめとした公金納付のデジタル化は進まないのだろうか?
中室教授は「官公庁側の言い分は『システムを変えるにはコストがかかる。費用対効果が悪い』というもの。だが、給食費は毎年払い続けるものであり、さらに、保育所の延長料金や入試の検定料・入学金もキャッシュレス化できていない。出張や入院などで現金が用意できないケースもある。現代の暮らしに合わせたやり方に変えていくべきだ」と述べた。
●立憲・安住氏がパーティー収入記載漏れを陳謝 自主点検で判明し修正 11/29
立憲民主党の安住国対委員長は29日、自身の政治資金パーティーの記載について、1団体30万円分の記載漏れがあったとして「私の責任だ」と陳謝した。
パーティー収入の総額は変わらず、団体と金額の内訳の記載が漏れていたという。安住氏によると28日に、2022年分の政治資金収支報告書の訂正を総務省に届け出ているという。
安住氏は記者団に対し、自主的に点検した際に気づいたと明かし、「私の責任だ。申し訳ない。先頭に立つ身として分かった段階で報告するのが義務だ」と陳謝した。
●参院予算委 杉尾秀哉議員「岸田総理は国民に信頼されていない」 11/29
参院予算委員会で11月29日、「令和5年度一般会計補正予算」について締めくくり質疑が行われ、杉尾秀哉議員が(1)岸田総理の政治姿勢(2)大阪万博(3)馳知事の東京五輪誘致をめぐる官房機密費発言――などの問題を追及しました。
(1)岸田総理の政治姿勢
杉尾議員は、岸田政権の支持率暴落の原因を「アピールや工夫の問題ではない。国民は総理を信じられなくなっている」として、岸田総理の「税をめぐる迷走」を指摘しました。
トリガー条項の解除について、昨年春に与党と国民民主党で協議を行い断念したにもかかわらず、岸田総理がまた協議を提案したことについて、杉尾議員は、「岸田総理は財務大臣にも説明せずに唐突に持ち出した。また断念するのではないか」「今度できなかったら総理の信用問題」と強く疑問を表しました。
(2)大阪万博
杉尾議員が1カ月前から要求している資料が出てこないことに触れ、「全体像はいつ示されるのか」との質問に、自見大臣は「早急に示せるように作業を加速する」と答えるにとどまりました。
会場のシンボルとなる「リング」について、わずか5mあげるだけで1億円かかるとの試算について、杉尾議員は「3分の1の予算でできるという専門家もいる。本当に精査したのか」と問いましたが、政府は「プロデューサーから提案があり、前回の増額の時に認めている」と答えました。杉尾議員は、「中抜きしているのかという疑惑がある。1億円の根拠を示してほしい」と述べ、予算委員会に資料を出すように求めました。
また、「パビリオンA50カ国のうち建設事業者が決まっているのは30超」との政府の答弁に対して、杉尾議員は、「本当に間に合うのかというのが大方の国民の意見」と指摘しました。
(3)馳知事の東京五輪誘致をめぐる官房機密費の発言問題
馳知事の官房機密費の発言問題について、官房長官が「誤解を与えかねない」と発言したことについて、杉尾議員は、「機密費をばらしたから不適切なのか。そう言っているようにしか聞こえない」と述べました。
岸田総理に対しては「馳知事が発言を撤回すれば済む問題なのか」と問うと、「統括する立場でない馳知事自身が発言したことが問題」と答えました。杉尾議員は「立場にないといっても政府のお金を使っている。もっと危ない話だ」と指摘し、「事実の精査が必要」と馳知事の参考人招致を予算委員会に求めました。
さらに、杉尾議員は「官房機密費は違法なものに支出してよいのか」と質問すると、松野官房長官は「会計検査を受けている。違法行為に使ってはならない」と答えました。
杉尾議員は、「機密費は問題が多い。何に使われているのか不明、不適切な支出であっても使途を言わないということで国民に明らかにならない。税金なのに、理解が得られない。一定期間後に使途の公開等透明性を高めるべきだ」と訴えました。
質疑終局後、採決に先立ち討論に立った高木真理議員は、冒頭「国民の暮らしは、物価高、エネルギー価格高騰が続く中、実質賃金が18カ月連続のマイナス、年金も実質カットと苦しさを増している。一刻も早い手当が打たれるべきところ、政府の補正予算の提出はあまりに遅いものだった。しかも国民の可処分所得を増すための減税が届くのは来年6月と全く遅すぎることに国民は大いに失望している」と指摘。そのうえで、本補正予算の反対理由として、(1)物価高を加速させかねない大幅な財政出動が盛り込まれる一方でのバラマキ予算であるなど、何を目指しているのか分からないこと(2)補正予算でありながら財政法29条の求める緊要性の要件を満たしていないこと――を挙げました。立憲民主党は、物価高克服の緊急経済対策として家計・事業者への直接支援、省エネ、再エネへの大胆投資に絞った支援策を盛り込んだ組み替え動議を衆院に提出したことにも触れ、「人へ、未来へ、まっとうな政治へ。国民に寄り添い、信頼を取り戻す政治の実現を目指していく」と表明しました。
●岸田文雄内閣の支持率低下要因を分析 「パーソナリティな部分に不信感」 11/29
28日放送の『バラいろダンディ』で、金子恵美が岸田文雄政権の支持率低下の要因を語った。
上川外務相が「ポスト岸田」に?
番組は支持率が低下している岸田内閣で、「ポスト岸田」に上川陽子外務相が候補として挙がっているという話題を取り上げ、出演者がトークをする。
金子は上川外務相について「すごく堅実な方だし、とても面倒見がいい方で。議員をやめた人にその後のことも考えて、手伝ってくれているというか 。そういう姉御肌のところもある方」と語った。
上川外務相に期待感?
さらに金子は「権力闘争、永田町のそういうのはあまり好きではない。ガツガツ行くタイプではないんですが、 ただ党内からは次の選挙のことを考えたときに『岸田さんで選挙を戦うのは厳しい』と思っているから、国民受けするというか、 女性だし、そういう意味では期待感が上がってきているんだろうなとは思う」と解説。
そのうえで「岸田派なので、もう1回次の総裁を岸田派で行くのかなというのもあり」と指摘。さらに岸田派の林芳正議員も首相候補で「派閥のなかでまとまるのかというと、ウーンと思う」と話した。
岸田首相は「パーソナリティに不信感」
支持率が降下している岸田首相には「岸田さんね、上川さんもそうですし、保守派の人たちが担ぎたい人じゃなくなってきてるというふうに思う」と語る。
また「岸田さんももともとは人柄で。強い政策とか政治信条というよりは、なんとなく良い人柄があったはずなのに、なんとなく増税しそうな人とか、パーソナリティの部分で不信感を持たれたのは結構痛いかなと。そこで持っていた支持が失われつつあるなと思う」とコメントした。
アンチもいないがシンパもいない
続けて金子は「ここで岸田さんは、打つ手って結構ないと思うんですけど。アンチ安倍(晋三)は結構いましたけど、安倍さんってシンパも多かった。だからシンパを作る、これだという今までやっていないこと、たとえば憲法改正を真正面からやるとか」と指摘する。
そして「そういうことをしたほうが、党内のなかでもまだ岸田さんに対しては少しは見方が変わるんじゃないかと思うけど、アンチもあんまりいないけどシンパもいない っていうのは、政治家として安倍さんとちょっと違うところかなと思う」と話していた。
増税イメージが定着
岸田政権は支持率の低下が顕著で、各メディアの世論調査で支持率が最低を記録。
ネット上では「増税メガネ」というニックネームがつくなど、増税イメージが定着している。
●政権の発信「ミスマッチある」 萩生田氏 所得税減税などで 11/29
自民党の萩生田政調会長は、28日、東京都内で講演し、岸田政権の所得税減税などの政策発信について、「予告編が長く、本番の中身にちょっとミスマッチがある」と指摘した。
自民党・萩生田政調会長「予告編が長くてですね。予告と本番の中身がちょっとミスマッチがあるということに、たぶん国民の皆さんに違和感があるんじゃないか。例えば異次元の少子化対策。残念ながら異次元というワードから連想すると、ややスモールではないかと」
萩生田氏は、所得税などの定額減税について、「岸田首相は、還元という言葉を使ったあと黙っていたが、周りの人がいろいろメニューを言って、出てきたものの期待値が国民と合わなかった」と述べた。
そして「政策責任者として一緒に反省し、正していかなければいけない」と強調した。  
●岸田政権 立直しの道険しく 11/29
総合経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算が成立した。支持率が低迷する岸田文雄首相は国会審議で、対策の目玉となる所得税減税をアピールしたが、野党だけでなく与党からも効果を疑問視され不発に終わった。年末までに積み残した課題も多く、政権の先行きを危ぶむ声がじわじわ広がっている。
「政策の真意が国民に伝わっていないのではないか」。29日、参院予算委員会の採決に先立つ審議で支持率下落の要因を問われた首相は、率直な感想を語った。これに対し、立憲民主党の杉尾秀哉氏は「国民は首相を信じられなくなっている。最たるものが税を巡る迷走だ」と断じた。
今国会で局面転換を図った首相の思惑は、のっけからつまずいた。減税方針を「税収増の還元」と説明する首相を横目に、鈴木俊一財務相は過去の税収増はすでに振り分けられていると主張し、認識の違いが露呈。予算審議では野党から「還元」のフレーズを訂正するよう突き上げられ、「税金が戻ってくる意味で還元そのもの」と苦しい説明に追われた。
審議では少子化対策や、円安進行下での防衛費増額も取り上げられ、「減税の後には大増税が待っている」(立民の辻元清美氏)と追及される場面も。さらに自民党の派閥でパーティー券収入の政治資金収支報告書不記載が発覚し、「政治とカネ」を巡る問題に再び厳しい視線が注がれた。政府関係者は「予算委は政権の鬼門。予期せぬテーマが降りかかる」と話す。
臨時国会のヤマ場を乗り越えた岸田政権だが、この後も難問が山積する。政府は年末までに少子化対策の財源確保のための「支援金制度」など具体策を詰める。政府内には医療保険料への上乗せ額を「1人当たり月500円程度」とする案などが取り沙汰されているが、首相は「追加負担を生じさせない」と繰り返し、詳しい説明に及び腰だ。
12月前半にはマイナンバー制度で相次いだトラブルの総点検が公表される見通し。結果を受けて首相は焦点の現行保険証の来秋廃止の是非を判断するが、「マイナ保険証」の利用率は数%にとどまっており、廃止には強い反対が予想される。自民党関係者は「今は何をやっても『岸田が悪い』と言われる。森喜朗政権の末期に似てきた」と頭を抱える。
ここへきて首相は自民、公明両党に国民民主党を交え、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」凍結解除に関する協議入りを指示。これまで一貫して慎重だったにもかかわらず突然出てきたトップダウンの決定に、自民内からは「穴埋めの巨額の財源はどうするのか」との戸惑いが広がる。党四役経験者は「安定感が絶対的に不足している」といら立ちを隠さない。
首相が力を入れる減税や賃上げも、効果を実感するのは来春以降にずれ込む見込みだ。岸田派中堅は「浮揚する要素は見当たらない」と指摘。来年秋の総裁選をにらみつつ、「いろんな動きが党内で出てくるだろう。何が引き金になるか、政権が正念場に来ている」と語った。
●岸田首相、補正成立も支持率低迷 政策推進力に陰り 11/29
政府の経済対策の裏付けとなる令和5年度補正予算が29日、参院本会議で可決、成立した。所信表明演説で「何よりも経済に重点を置く」と宣言した岸田文雄首相は、まずは最初の課題をクリアした。ただ内閣支持率は低迷が続き、経済の立て直しという政策の推進力にも陰りが生じかねない状況だ。
補正予算成立を受け、首相は官邸で記者団の取材に応じ、「さまざまな議論が行われたが、日本経済はデフレ脱却に向けて正念場を迎えている。このチャンスをつかみ取らないといけないという点においてはご理解をいただけたのではないか」と審議を振り返った。
ただ、審議が始まって以降の報道各社の世論調査で内閣支持率は20%台となるなど最低を更新し続け、衆院解散・総選挙に打って出る環境は遠のいている。
首相にとっての救いは、野党の支持率も上向いていないことだ。自民党総裁任期は来年9月まであり、現時点で「岸田降ろし」の動きが表面化しているわけでもない。与党内には「今は政権を支えるときだ」(幹部)とのムードがある。
世論調査で経済対策に対する評価は芳しくないが、その裏付けとなる補正予算には、日本維新の会と国民民主党も採決で賛成に回った。国民民主が賛成の条件とした「トリガー条項」凍結解除をめぐる与党と国民民主の3党協議は、30日からスタートする。
協議入りを与党に指示した首相には、ガソリン税の一部軽減という新たな減税策の議論に野党を巻き込み、局面打開を図る狙いがありそうだ。ただ凍結解除には与党内にも反対論が根強く、その成否は見通せない。
 11/30

 

●《増税クソメガネ》岸田首相は「底が抜けた風呂桶」 “嫌われるワケ” 11/30
“増税クソメガネ”こと岸田文雄首相。かつてこれほどまでに嫌われた総理大臣がいただろうか。
「11月20日、読売新聞が行った世論調査では岸田内閣の支持率が24%と政権発足以来、最低を更新しました。同時期の毎日新聞の調査では21%。どちらにしても不支持が70%超という結果です。2012年に自民党が政権に返り咲いてから最低の支持率となっています」(全国紙政治部記者)
なぜこれほど嫌われるのか
前任の菅義偉・前首相の内閣支持率は74%に始まり、2021年9月の退任時には34%まで落ちたものの、岸田内閣よりは10%以上も高い結果に。なぜこれほどまでに岸田首相は嫌われるのか。ジャーナリストの大谷昭宏氏は、「初手から失敗だった」と指摘する。
「ちょうど政権に陰りが出てきたときに、もっと影の薄い岸田さんが総理になった。国民は8年にわたる安倍政権にうんざりしていましたから、安倍さんが辞めた後、精彩を欠いた菅さんが総理になってがっかりしているところにさらに影の薄い岸田さんときた。このとき自分なりのキャラを出して“安倍政権をぶっ壊す”“アベノミクスは失敗した”くらい言うべきだった。現に約30年も賃金は上がってないじゃないですか。さらに円安のため国民の財布の中は実質、3分の2に減っている。その安倍政権を否定できなかったところが最初の誤り」(大谷氏、以下同)
続けて、岸田首相の性格についても分析する。
「国民はそんなにばかじゃない」
「この人は目先のことしか考えられないんですよね。軍事力の増強で40兆円かかりそうだと言ったそばから、減税すると言ってくる。朝日新聞の世論調査ではこの減税政策におよそ7割の人が評価していない。その先に増税があることをわかりきっていて、減税をちらつかされたって国民はそんなにばかじゃない。
それから岸田さんは、開成高校を出ていますが、霞が関の同校卒業生の同窓会をものすごく大事にしているわけです。閣僚に初めて抜擢された小林鷹之・経済安全保障担当相、嶋田隆・元経済産業事務次官など開成OBを信頼している。財務省には開成OBが多く、財務省の言うことを聞きすぎるのも開成人脈を信用しきっているからともいえます。3代続いた政治家セレブという自信が根本にあるんだと思います。たとえそれが間違っていたとしても、安倍さんのようにそれなりのポリシーを持ってやれば一定数の国民には評価されるんです。強烈な個性もなければ政策もその場しのぎ。支持する理由が答えられないんですよね」
一方で岸田首相を支持するというのは杉村太蔵・元衆院議員。支持率が歴代最高を記録した小泉純一郎・元首相のもと誕生した小泉チルドレンの1人だ。
「増税メガネと揶揄されることもありますが、私は国民の皆さんが言うほどダメではないかなって思うんですよ。なぜ増税が必要かといえば、超高齢社会、少子化対策といった社会保障の拡充から、ロシアや中国、北朝鮮などと隣接している日本としては防衛費も増額しなければならない。そのため、方々から少しずつ増税することで国民の負担を小さくして、持続可能な社会をつくっていきたいということが岸田政権のやりたいこと」
と、支持する一方で国民の理解が得られない理由にも言及する。
「小泉さんや安倍さんと比べるとわかりにくい政策だというのは事実だと思います。理由のひとつは数値目標が明確になっていないから。安倍さんは『デフレからの脱却』として物価を2%上げていった。菅さんの場合は『コロナに勝つ』と言って、1日100万人にワクチンを打つという政策を打ち出した。岸田さんにはそれがない。だから具体的にゴールがイメージしづらく国民の皆さんに伝わらないんだと思うんですよ」
“底が抜けた風呂桶”
前出の大谷氏は、「ポリシーがない」とバッサリ。
「本来、政治の目的は2つ。国民の生活を守ること、二度と戦争をしないことに尽きるんです。これは与野党共通の認識です。そこを前面に出してくれば国民は納得するわけですよ。ですが岸田さんの場合、税制に関しては増税をしたいときは減税をちらつかせる。人気がなくなると人気を取ろうとして、自民党内でも安倍さんを支えていた右派を取り込もうとする。彼らの支持が欲しいだけでポリシーもないのに憲法の改憲を持ち出してきたわけなんです。ただ、青山繁晴議員や高市早苗議員のように安倍さんにくっついていた改憲派は筋金入りの右派。半端な人間が改憲を打ち出したって、口先だけで取り込みにきたな、としか思わない。国民に対してだけでなく、党内でもどこでも失敗しているんです。やることなすこと失敗。ここでヒットを打てよ、というところで見事に三振してみせているのが岸田首相です」
さらに岸田首相を“底が抜けた風呂桶”と表現し、
「これだけ落ちたら小手先の作業では底が抜けた風呂桶の修理なんてできるわけがないんです。釘1本だけ持ってきて板を打ちつけたってうまくいくわけない。ドカンとびっくりするような大技を出さないと」(大谷氏) 
岸田首相の支持率を上げるための大技を大谷氏が提案する。
「国民の7割が反対している『大阪・関西万博』の中止を宣言すればいい。かつて東京で計画されていた『世界都市博』を開催中止にした青島幸男・元東京都知事のように“万博やめた、金も出さない、撤退しろ”と言えば何もせずに座っていても支持率は上がるんです」
前出の杉村氏は、
「支持率が低いのは岸田さんだけではない。先進国のリーダーは軒並み支持率が低いです。根本原因は物価高です。支持率回復には物価高対策しかないです」とフォローするが……。
曇りなき眼で世の中を見てくれる首相が求められる。
●来年度予算、議論加速 歳出「平時」回帰が焦点―政府・与党 11/30
2023年度補正予算が29日成立し、政府・与党は今後、24年度予算編成作業を加速させる。デフレ完全脱却を実現するために物価高対策や賃上げ促進に重点配分するほか、少子化対策の財源確保も課題。岸田政権はコロナ禍で膨らんだ歳出構造を「平時」に戻す方針を掲げており、財政健全化と経済再生を両立させられるかが焦点だ。
来年度一般会計予算の概算要求総額は過去最大の114兆3852億円に上り、今年度当初予算額114兆3812億円に並ぶ。医療・介護などの社会保障費、借金に当たる国債の利払い費、厳しい安全保障環境に対応するための防衛費は、今年度より膨らむのが確実な情勢だ。
岸田政権が支持率回復を狙って打ち出した物価高対策は協議の行方が見通せない。今月初めに決定した総合経済対策に定額減税と低所得者向け給付を盛り込んだが、減税の詳細な制度設計は与党の税制調査会に委ねた。原油高対策を巡っては、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結解除を含めて自民、公明、国民民主の3党が今後協議するものの、財源確保などの課題が待ち受ける。
来年度予算では金利の上昇を反映し、国債の利払い費を算出する際に使う想定金利が17年ぶりに引き上げられる方向。これにより、利払い費が増加し、先進国で最悪の水準にある財政がさらに圧迫されるのは必至だ。
一方、歳出改革のカギを握るのは診療、介護、障害福祉サービス報酬の「トリプル改定」。公定価格である各報酬の上げ下げは、少子化対策の財源問題も左右する。膨張が著しい社会保障費にどこまで切り込めるか、財政再建に向けた政権の本気度が問われる。
●政権立て直し、道険しく 「減税」不発、課題山積―補正予算 11/30
総合経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算が成立した。支持率が低迷する岸田文雄首相は国会審議で、対策の目玉となる所得税減税をアピールしたが、野党だけでなく与党からも効果を疑問視され不発に終わった。年末までに積み残した課題も多く、政権の先行きを危ぶむ声がじわじわ広がっている。
「政策の真意が国民に伝わっていないのではないか」。29日、参院予算委員会の採決に先立つ審議で支持率下落の要因を問われた首相は、率直な感想を語った。これに対し、立憲民主党の杉尾秀哉氏は「国民は首相を信じられなくなっている。最たるものが税を巡る迷走だ」と断じた。
今国会で局面転換を図った首相の思惑は、のっけからつまずいた。減税方針を「税収増の還元」と説明する首相を横目に、鈴木俊一財務相は過去の税収増はすでに振り分けられていると主張し、認識の違いが露呈。予算審議では野党から「還元」のフレーズを訂正するよう突き上げられ、「税金が戻ってくる意味で還元そのもの」と苦しい説明に追われた。
審議では少子化対策や、円安進行下での防衛費増額も取り上げられ、「減税の後には大増税が待っている」(立民の辻元清美氏)と追及される場面も。さらに自民党の派閥でパーティー券収入の政治資金収支報告書不記載が発覚し、「政治とカネ」を巡る問題に再び厳しい視線が注がれた。政府関係者は「予算委は政権の鬼門。予期せぬテーマが降りかかる」と話す。
臨時国会のヤマ場を乗り越えた岸田政権だが、この後も難問が山積する。政府は年末までに少子化対策の財源確保のための「支援金制度」など具体策を詰める。政府内には医療保険料への上乗せ額を「1人当たり月500円程度」とする案などが取り沙汰されているが、首相は「追加負担を生じさせない」と繰り返し、詳しい説明に及び腰だ。
12月前半にはマイナンバー制度で相次いだトラブルの総点検が公表される見通し。結果を受けて首相は焦点の現行保険証の来秋廃止の是非を判断するが、「マイナ保険証」の利用率は数%にとどまっており、廃止には強い反対が予想される。自民党関係者は「今は何をやっても『岸田が悪い』と言われる。森喜朗政権の末期に似てきた」と頭を抱える。
ここへきて首相は自民、公明両党に国民民主党を交え、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」凍結解除に関する協議入りを指示。これまで一貫して慎重だったにもかかわらず突然出てきたトップダウンの決定に、自民内からは「穴埋めの巨額の財源はどうするのか」との戸惑いが広がる。党四役経験者は「安定感が絶対的に不足している」といら立ちを隠さない。
首相が力を入れる減税や賃上げも、効果を実感するのは来春以降にずれ込む見込みだ。岸田派中堅は「浮揚する要素は見当たらない」と指摘。来年秋の総裁選をにらみつつ、「いろんな動きが党内で出てくるだろう。何が引き金になるか、政権が正念場に来ている」と語った。
●補正予算成立 国民の疑念晴れぬまま 11/30
臨時国会は2023年度補正予算が成立し、終盤に入った。
岸田文雄首相は論戦のヤマ場を乗り切ったと受け止めているかもしれないが、内閣支持率の下落を招いた国民の疑念は晴れないままだ。残る会期で説明責任を果たさなければ、政権から離反した民意は戻るまい。
10月20日に召集された臨時国会の会期は、12月13日までの55日間。9月に第2次岸田再改造内閣が発足した後、初の本格論戦の場だった。
政府は、物価高の家計負担を緩和するとして新たな経済対策を決定。対策の財源となる13兆1992億円の補正予算案を国会に提出した。首相主導の所得税と住民税合わせて1人当たり4万円の減税は、24年6月からの実施で補正予算の枠外だが、質疑ではその当否が最大の焦点になった。
共同通信の世論調査で、非課税の低所得世帯向けの7万円給付を含め「評価しない」との回答が6割を超え、他社の調査でも同傾向だったからだ。
減税されても、防衛力強化のための増税など負担増が控えていることや、財政悪化への懸念が主な理由だ。減税や給付の財源は、増税回避や財政再建に用いるべきだというわけだ。
首相は「経済を立て直した上で、防衛力や子ども政策について国民に協力してもらう」と強調、増減税は同時実施にならないことから「矛盾しない」と断言した。減税の狙いに関しては、経済の好循環を生むため、物価高を上回る賃上げまで「可処分所得を下支えする」などと繰り返し訴えた。
それでも内閣支持率が20%台に落ち込むのは、国民が減税を次の衆院選に向けて政権浮揚を図る方策とみなしていることも要因だ。首相は「選挙目当て」を否定するが、財政の行く末まで憂慮する国民に対し、首相の答弁は説得力に欠けていると言わざるを得ない。
今国会では、公選法違反事件に関与した法務副大臣や過去の税金滞納を認めた財務副大臣ら自民党出身の3人の政務三役が辞任した。
首相は人選を「手腕、経験、他の候補との比較を踏まえて行った」と釈明した。だが実態は来年秋の自民党総裁選再選の障害となる党内の不満を抑え込むため、派閥推薦や年功序列に重きを置いたはずだ。国民の不信感は、保身を図るかのような首相の姿勢にも根差していると重ねて指摘しておきたい。
国民の疑念をさらに増幅させたのは、自民5派閥がパーティーの収入を政治資金収支報告書に過少記載していたと告発された問題である。
21年までの4年分だけでも計約4千万円に上っている。各派閥は「事務的ミス」として順次報告を訂正しているものの、組織的、継続的な裏金づくりと疑われても仕方ないだろう。
首相は信頼回復のため、党として「どう対応すべきか考えたい」と述べたが、追及をかわす一時しのぎの発言であってはならない。対応策を早急にまとめて明らかにすべきだ。同様の問題は立憲民主党議員の資金管理団体でも発覚しており、与野党で取り組む課題でもある。
内閣支持率の下落原因を聞かれた首相は「一つや二つではないと思う」と分析した。そう認識しているのであれば、国民が抱くさまざまな疑問に国会の場で丁寧に答え、改めるべきは改める謙虚な政権運営に努めなくてはならない。
●官房機密費「月7000万円」 野中広務氏の告白 〜過去の紙面から 11/30
東京オリンピックの招致活動に関する石川県の馳浩知事の発言で、内閣官房報償費(官房機密費)が改めて注目されています。使途を公表していない官房機密費に関し岸田文雄首相も29日の参院予算委員会で、「取り扱いはさまざまな経緯を踏まえたもの。現状の取り扱いを維持していくべきだ」と話しましたが、過去に「目的外使用」が指摘されたことがありました。その一端を明らかにしたのが、小渕恵三内閣(1998年7月〜2000年4月)で官房長官を務めた野中広務氏(18年に92歳で死去)。10年5月、当時84歳だった野中氏が生々しく明かしたインタビューを、再掲載します。(2010年5月21日付・毎日新聞朝刊)
野中広務元自民党幹事長(84)は20日、毎日新聞のインタビューに応じ、小渕内閣の官房長官在任中(98年7月〜99年10月)、内閣官房報償費(官房機密費)を毎月5000万〜7000万円程度使い、国会での野党工作のほか複数の政治評論家にも配っていたことを明らかにした。また、今夏の参院選で「第三極」が伸びる可能性に言及し、選挙後、政治情勢は流動化するとの見通しを語った。
――官房機密費の使途の一部を公表した理由は。
国民の税金を表に出せない形で操作することはある程度必要かもしれないが、ちょっと大まか過ぎる。私も年だし、政権交代で変えてもらうのが一番いいという意味も含めて話した。
――具体的には。
(総額は)月に5000万から7000万円。(自民党)国対委員長に与野党国会対策として月500万円、首相の部屋に1000万円、参院幹事長室にも定期的に配った。政治評論家へのあいさつなども前任の官房長官からノートで引き継いだ。1人だけ返してきたのが田原総一朗さん。「もうちょっと(金額の)ランクを上げてくれ」と言った人もいた。政治家から評論家になった人が小渕(恵三首相)さんに「家を建てたから3000万円、祝いをくれ」と言ってきたときは「絶対だめだ」と止め… ・・・
●支持率低迷の岸田政権 身内からも「ミスマッチ」批判… 11/30
11月28日、自民党の萩生田光一政調会長(60)が、東京都内で行った講演で、岸田文雄首相(66)の情報発信について苦言を呈したことが報じられた。
「各誌によると、萩生田政調会長は岸田首相について、政策的には大きな失敗をしているわけではなく結果は出しているとフォロー。一方で、政策の方向性を示してから具体的な内容が出てくるまでの期間が長いうえ、その後出てくる内容が国民の期待と沿っていないことについて『予告編が長くて、中身がちょっとミスマッチ。国民は違和感があると思う』と表現したそうです」(WEBメディア記者)
防衛費増額のための増税や、会社員などの退職金への課税方式を見直し案、少子化対策のための財源確保手段として社会保険料の上乗せ案などが、さらなる“増税”になるのではないかと注目を浴びた今年。岸田首相についても、“増税メガネ”のあだ名が定着することに。
世間的に“増税する首相”との印象が強くなった岸田首相。イメージ払しょくも狙ってか、9月25日、「成長の成果である税収増を国民に適切に還元する」と、突如“減税”の姿勢を見せた。
「10月中旬以降になってみえてきた具体的な内容は、来夏をめどに所得税などを1人あたり年4万円差し引く”定額減税”と低所得者向けの7万円の現金給付。減税の実施が来夏とスピード感に欠けたことへのがっかり感や、一時的な”減税”は単なる選挙対策ではないかとの指摘が相次ぎました」(全国紙記者)
その後、11月に実施された報道各社の世論調査では、内閣支持率はそろって下落。20%台を相次いで記録し、過去最低を更新した。共同通信が実施した調査では、所得税減税などの経済対策について「評価しない」と回答した人が62.5%にも上った。
さらに、財務省との溝も浮き彫りとなっている。
11月8日、鈴木俊一財務相は過去の税収増分は政策的経費などで使用済みであり、「還元」のために減税するとなると、減収分は国債を発行して埋め合わせをする必要があると明かした。
さらに、岸田首相はガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」の凍結解除について、近く自民党、国民民主党、公明党の3党で協議をするとしている。しかし鈴木財務相は、11月29日の参院予算委員会で、「協議をするということについて、事前に私は説明を受けていない」と述べたほか、1.5兆円の財源が必要になることが課題だと慎重な姿勢をみせたのだ。
冒頭のように自民党内部からも批判され、孤立を深める岸田首相。徐々に、岸田政権の”末期感”が漂い始めている。
「岸田首相の任期は来年9月末。それまでに、衆議院を解散して勝利をおさめ、総裁選で再選するのというのが理想だったはず。しかし、この低支持率では解散も難しくなりそうです。この状況が続けば、9月まで解散せずに総裁選に突入する可能性もありますが、その場合岸田首相が首相で居続けられるのかは怪しいところでしょう」(前出・全国紙記者)
この苦境を乗り越え、国民にとってよりよい政治を行うことができるだろうかーー。
●補正賛否、割れた野党/対政権、異なる思惑/補正予算成立 11/30
2023年度補正予算の採決で、野党の対応が割れた。立憲民主党と共産党が反対した一方、日本維新の会と国民民主党は賛成。次期衆院選をにらみ岸田政権にどう対峙(たいじ)し、距離感を保つべきか−。各党の思惑は異なり、今後の連携に課題を残した。
貫いた反対
「財源のほとんどは国債依存だ。大いに不満な中身であり反対したい」。立民の水岡俊一参院議員会長は29日、参院本会議に先立つ党会合で、岸田文雄首相が成立を急いだ補正予算を批判した。
物価高克服が大きな政治課題となる中、立民筋は「一部の支持者から『賛成してもいいのではないか』との声が寄せられた」と打ち明ける。
だが21年度当初予算以来、立民は政府の経済対策について「生活者に寄り添っていない」(若手議員)と非難し、反対してきた。歳入の7割近くを国債の増発で賄う今回の補正で対応を変える理由はなく、共産と同様に反対を貫いた。
苦渋の決断
立民に代わる野党第1党を目指す維新は、賛成に回った。社会保険料減免を柱とした独自の経済対策を首相に提言したものの、政府の経済対策に盛り込まれず、政府の減税策を国会で追及してきただけに一見、奇異に映る。
それでも賛成したのは、維新が誘致を主導した大阪万博の会場建設費の一部が盛りこまれたことが大きい。藤田文武幹事長は29日の記者会見で「万博は大阪だけの話ではない。多くの人に関わってもらえるような啓発活動に取り組みたい」と意欲を語った。
党内では「成功を期する万博が控えており、補正に反対するのは難しい」(幹部)との声が大勢を占め、執行部は「苦渋の決断」(馬場伸幸代表)で採決に臨んだ。
対決より解決
国民民主も賛成した。玉木雄一郎代表はかねてガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除は物価高に有効だと主張。22日の衆院予算委では「凍結解除を決断するならば、補正に賛成してもいい」とあからさまに迫り、首相は自民、公明、国民3党で検討する意向を表明した。30日には3党の政調会長による初会合が開かれる。
国民は「トリガーを口実」(共産筋)にして、22年度当初予算にも賛成した。党内には、「対決より解決」を掲げる党として、政権に向き合う姿勢の表れだとの好意的な受け止めもある。
維新と国民の対応に関し、首相は早速「デフレ脱却に向け正念場を迎えているという点で、理解いただけたのではないか」と謝意を示した。
ただ他の野党の視線は厳しい。立民の泉健太代表は「万博とトリガーという弱みを握られた。与党と戦えるのか」と指摘。共産の小池晃書記局長は「自民に助け舟を出した」と酷評した。
●気候変動対策会議“COP28”開幕 岸田首相も出席 11/30
国連の気候変動対策会議・COP28が30日、UAE(アラブ首長国連邦)のドバイで開幕し、岸田首相も出席する。
脱炭素の実現に向け進展はあるのか、FNNバンコク支局・田中剛記者の解説。
会議では、各国の温室効果ガス削減目標の進捗(しんちょく)が初めて報告されるが、解決にはほど遠い状況。
COP28では、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えるための各国の取り組みの進捗状況を初めて評価する。
しかし、それぞれの目標を達成しても、今世紀末の世界の気温は最大2.8度上昇するとされ、最新の報告書は、2030年までに排出量を43%削減する必要があるとしている。
EU(ヨーロッパ連合)などは、化石燃料の「段階的廃止」を求めているほか、廃止に前向きでなかった日本も今回、石炭火力発電所の新設停止を表明する見通し。
世界では、地球温暖化による海面上昇で国が水没の危機にさらされたり、異常気象で大洪水などの被害が相次いでいる。
2022年の会議では、災害が多発する途上国を支援する基金の設置が決まったが、費用をどの国が出すかをめぐり対立したまま。
今回の議長国・UAEは、中東有数の産油国でありながら、世界の再生エネルギーを3倍にする目標を掲げているが、イスラエル情勢を受けて各国間の緊張が高まる中、国際社会が協力して脱炭素へ向けて有効な道筋を示せるかが注目される。
●国民民主 前原代表代行 離党の意向固める 新党結成を検討か 11/30
国民民主党の前原代表代行は、離党する意向を固めました。新党の結成を検討しているということです。
前原代表代行は午後4時から記者会見するとしています。
関係者によりますと、国民民主党の前原代表代行は、離党する意向を固めました。
玉木代表らが政策実現を理由に政府・与党と協調する姿勢を強めていることへの反発が背景にあるものとみられます。そして、前原氏はみずからに同調する議員とともに新党を結成することを検討しているということです。
前原氏はことし9月の代表選挙で非自民・非共産での野党結集の必要性を訴えましたが、玉木氏に敗れました。新党の結成により、野党勢力の結集に向けた足がかりにしたいねらいもあるものとみられます。
前原氏は、衆議院京都2区選出の当選10回で、61歳。民主党政権で外務大臣や国土交通大臣などを歴任し、現在は国民民主党の代表代行を務めています。
午後4時から記者会見
前原代表代行は午後4時から記者会見することを明らかにしました。
国会内で記者団から「離党するのか」と聞かれたのに対し「午後4時から記者会見する」と述べました。
離党の理由や検討している新党の結成について説明するものとみられます。
国民民主 緊急役員会で対応協議
国民民主党は、前原代表代行が離党する意向を固めたことを受け、午後1時からおよそ30分間、国会内で緊急の執行役員会を開き、対応を協議しました。
そして今後の対応について、玉木代表と榛葉幹事長に一任することを確認しました。
自民 森山総務会長「今後もいろいろな動きが続く」
岸田総理大臣は30日午前、自民党本部で麻生副総裁、茂木幹事長、森山総務会長、萩生田政務調査会長、小渕選挙対策委員長の党執行部のメンバー5人とおよそ30分間、会談しました。
出席者によりますと、国民民主党の前原代表代行が離党する意向を固め、新党の結成を検討していることが話題になり、今後の政治情勢への影響などについて意見を交わしたということです。
また自民党の森山総務会長は派閥の会合で「今後もいろいろな動きが続くと思うが、今は自民党と岸田政権にとって極めて大事なときだ。一致団結して政権を支え、自民党の将来を間違いのない方向に持っていくことが1番大事だ」と述べました。
維新 馬場代表「『教育無償化を実現する会』と協調」
日本維新の会の馬場代表は、記者会見で「いろいろな場面で前原氏とつきあいがあるので、いつとは言えないが、新党を考えていることは事前に聞いていた。前原氏は議員経験が長く、豊富な経験を持っていて、政策面ではずいぶん勉強している」と述べました。
また馬場氏は、「前原氏が結成する運びの『教育無償化を実現する会』と来年2月の京都市長選挙で協調していくと思う。われわれは、是々非々で各政党とつきあうことを基本原則で政治活動をしているので、前原氏の新党とも協調できる部分は積極的に協調していく」と述べました。
●「岸田降ろし」なぜ起きない? 周辺から聞こえる三つの理由 11/30
「ああ、また下がってしまったか」。岸田文雄首相と気脈を通じる長老の自民党議員は11月10日から13日にかけて時事通信が行った世論調査の結果を知ると、こう言ってため息をついた。
内閣支持率は21.3%。前月比5ポイント減で10%台が目前となったのに対し、不支持率は同7ポイント増の53.3%で過半数に達した。岸田政権が打ち出した物価高対策や所得税減税、政務三役の相次ぐ辞任などが影響したのは明らかだ。特に税金滞納が発覚した神田憲次衆院議員が財務副大臣を辞任したのは調査最終日の13日で、調査期間が2、3日遅ければ、支持率は10%台に落ち込んでいた可能性が大きい。
その後、11月に報道各社が実施した調査結果も軒並み厳しい。毎日新聞の調査(18〜19日実施)で内閣支持率は前月比4ポイント減の21%、読売新聞の調査(17〜19日実施)では同10ポイント減の24%、朝日新聞の調査(18〜19日実施)では同4ポイント減の25%となった。
特に毎日調査では不支持率が同6ポイント増の74%に達した。調査方法が異なり単純比較はできないが、麻生太郎政権時代の2009年2月には不支持率が73%となった。今回はそれ以来の70%台。麻生氏は7カ月後に政権の座から去っている。また、朝日調査の支持率は2012年12月に、自民党が政権復帰してから最低だった菅義偉内閣の2021年8月に記録した28%を4ポイント下回った。菅氏はその後間もなく9月の総裁選出馬を断念し、退陣している。
「早期辞任を」5割超す
毎日の調査では、「岸田氏にいつまで首相を続けてほしいか」を聞いたところ、結果は「できるだけ長く」8%、「来年9月の自民党総裁任期まで」28%、「早く辞めてほしい」55%、「わからない」9%―。早期退陣が過半数に達した。
こうした露骨な世論の「岸田離れ」の実態について、首都圏出身の自民党中堅議員は「地元の支持者と話していると、首相の政治姿勢への不信感の強さを痛感する」と語る。
また、自民党と連立を組む公明党の関係者は「うちの支持者との会合でも、首相批判だけでなく、『ポスト岸田』には誰が望ましいかという話も飛び交った」と明かした。
不発だった内閣改造
振り返って岸田内閣の支持率は2021年10月の発足当初、40〜50%台の水準を維持した。だが、22年7月に殺害された安倍晋三元首相の国葬を決めた後から下落し、不支持を下回る「逆転」状況に陥った。憲法学者をはじめ多くの専門家から「法的根拠不在」との指摘を受けながらも国葬実施に踏み切ったのは、保守層への配慮が強くうかがえたが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党の深い関係が判明したことが、世論の反感を買ったわけだ。
それでも、今年3月のウクライナ電撃訪問、5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を経て、いったん上向きかけたものの、首相の長男が首相公邸で親族と写真撮影した問題や相次ぐマイナンバーカード絡みのトラブルで再度下落に転じた。9月には内閣改造・自民党役員人事を行ったが、支持率対策としての効果はほとんど見られなかった。過去最高に並ぶ女性5人の閣僚起用も不発に終わり、10月以降は「底無し」のような下落が続いている。
総裁選再選の戦略として岸田氏が模索したとされる今秋の解散・総選挙を見送ったとみられているのは「とても選挙ができるような支持率ではなくなった」(自民党選対関係者)ためだ。
高市氏も意欲的だが
そうした中、高市早苗経済安全保障担当相が勉強会「『日本のチカラ』研究会」を立ち上げたことが党内に波紋を広げた。11月15日の初会合には事務局長の山田宏参院議員ら保守系議員13人が顔をそろえた。
高市氏は、かつて安倍氏が率いていた「清和会」に所属していたが、2011年に離脱して以来、無派閥を通している。それでも、前回2021年総裁選では安倍氏の強い後押しで推薦人20人を確保し、国会議員票では岸田氏の146票に次ぐ114票を獲得。引き続き次期総裁選出馬に意欲的で、10月には出演したテレビ番組で「また、戦わせていただきます」と述べている。
ただ、安倍氏という支柱を失った中、推薦人確保が大きな課題となっている。勉強会参加を検討したある議員は「所属派閥の幹部から『今はやめておけ』と自重を促された」という。安倍派幹部の世耕弘成参院幹事長も「現職閣僚がこういう形で勉強会を立ち上げるのは、いかがなものか」と苦言を呈しており、党内では逆風にさらされている。
このほか、11月22日に発足した「ライドシェア」導入に向けた超党派の勉強会は小泉進次郎元環境相が主導し、注目を集めた。ライドシェア導入は、岸田氏と一線を画す菅前首相が旗振り役を務めているテーマであるからだ。このため、背後には菅氏の存在も取りざたされるが、小泉氏自身は「総裁選は視野にない」とされる。
「解散なし」も視野
しかし、現時点で自民党内では、こうした動きが「岸田降ろし」につながる兆候はない。考えられる主な理由は三つある。第1は当面、全国規模の国政選挙がないこと。国政選挙を直近に控えている場合、与野党を問わず、党首は選挙の「顔」としてアピール度が問われることになるのだが、衆院の任期満了は2025年10月30日で、ほぼ2年先だ。
岸田氏に近い党幹部は、支持率低迷で菅氏が衆院解散に踏み切れずに退陣に追い込まれたことを引き合いにこう言い切った。「岸田氏が低い支持率のまま解散できずに総裁選を迎えても、菅氏のケースとは違う。菅氏の場合は総裁選直後に衆院議員の任期がやって来たが、岸田氏の場合は衆院の任期満了まで1年ある。支持率が低くても、慌てて解散しなれば、菅氏の二の舞とはならない」
岸田氏の総裁再選戦略は当初、「総裁選前の解散」が大前提だったが、「今や支持率下落が続く現時点では、解散なしで総裁再選を目指すことも岸田戦略のテーブルに上っている」(岸田首相側近)。また、岸田氏に近い元党幹部は「解散は総裁選後でいい。もし総裁選前に支持率が回復したらしたで、解散せずに総裁選は乗り切ればいい」とも語った。支持率回復を前提にしたこうした楽観シナリオは、「岸田降ろし」が起きていないことも背景にある。
第2は有力な「ポスト岸田」が存在しないことだ。11月11、12両日に産経新聞・フジテレビ(FNN)が実施した世論調査によると、「次の首相にふさわしい人」としては石破茂元幹事長がトップで15.2%。次いで河野太郎デジタル担当相11.6%、小泉進次郎氏9.7%、菅義偉氏8.8%。高市早苗氏6.2%─と続き、前回総裁選の河野陣営が上位4人を占めた。
このうち、トップの石破氏は講演で、総裁選について聞かれると、「ないと言えば、うそになる」と意欲をにじませたが、党内基盤が弱い石破氏にとって、総裁選出馬に必要な推薦人20人確保のハードルは高い。また、前回総裁選に出馬した河野氏は現在、岸田内閣の閣僚としてマイナンバーカード問題に取り組んでおり総裁選への動きを封印している。
一方、「ポスト岸田」を狙う茂木敏充幹事長は、「岸田氏が再選を目指す限り自身は出馬しない」との意向とされる。月刊誌のインタビューで「幹事長は総理総裁を支えるポストだ。私も出るとなれば『令和の明智光秀』になってしまう」と語った。首相は9月の内閣改造・党役員人事に当たって、一時、幹事長交代も検討したとされる。茂木氏を「野に放つと『岸田降ろし』の旗印になるリスクがある」(岸田氏に近い元幹部)ことを懸念したようだが、最終的には取り込むことを選択した。茂木派の参院側には会長の茂木氏の派閥運営に不満が根強く、「一枚岩」になりにくいとの判断からだ。
岸田氏が、茂木氏と溝があった故青木幹雄元参院幹事長が寵愛(ちょうあい)した小渕優子氏を党四役の選挙対策委員長に起用したことには、茂木氏をけん制する狙いもあった。
党内バランスにも配慮
先の内閣改造で党内のパワーバランスに配慮したことも、「反岸田」の動きを封じる形となっている。最大派閥の安倍派と第2派閥の麻生派は改造前の各4人を維持。第3派閥の茂木派からも引き続き3人を閣僚として起用した。また、党役員では「岸田総裁─麻生副総裁─茂木幹事長」の「三頭政治」体制を維持した。
最大派閥の安倍派の萩生田光一政調会長、西村康稔経済産業相、世耕参院幹事長ら「5人衆」を全員続投させた。ポスト岸田に向けて「分裂含み」とされる安倍派については、「5人衆の維持が得策」と判断したためだ。また、安倍派では「会長不在」によって影響力を増している森喜朗元首相が岸田氏支持の立場を示しており、「5人衆」続投は森氏への配慮の面もあった。これは「岸田降ろし」を封じる装置ともなっている。
しかし、岸田氏周辺もこうした状況が、「岸田降ろし」封じとしてどこまで機能するのかについては楽観していない。冒頭の長老議員は言う。「内閣支持率が10%台に落ち込めば、若手は首相交代を求めるのではないか。そうなれば、党内全体が一気に『岸田降ろし』に動く可能性がある」
このまま支持率の下落が続けば、「岸田降ろし」は突然、やってくるかもしれない。 
●なぜ岸田首相は「聞く力」を失ったのか… 11/30
人々が「空気」に支配される日本では、改革はなかなか進まない。批評家・哲学者の東浩紀さんは「いまの日本では、相手の話を聞き自分の意見を変える力、つまり『訂正する力』が失われている。
岸田首相も訂正することができないので、聞くこともできない。『ひとの意見は変わるものだ。われわれも意見が変わるし、あなたがたも意見が変わる』という認識をみなで共有するべきだ」という――。
なぜヨーロッパ人は「ルール」を平然と変えられるのか
訂正するとは、一貫性をもちながら変わっていくことです。難しい話ではありません。
ぼくたちはそんな訂正する力を日常的に使っているからです。
この点でうまいなと思うのは、ヨーロッパの人々です。彼らを観察していると、訂正する力の強さに舌を巻かざるをえません。
新型コロナウイルス禍を思い出してください。イギリス人の「訂正」にはすさまじいものがありました。大騒ぎしてロックダウンをしたと思いきや、事態があるていど収まると、われ先にマスクを外していく。
「自分たちはもともとコロナなんて大したことないと気づいていた」と言わんばかりです。「いや、そうだったかな」と思わずにはいられないですが、彼らはあたかもそれが当然だったかのように振る舞います。
日本人からすると「ずるい」と感じるかもしれません。スポーツでもしばしばルールチェンジが問題になっています。
それでもヨーロッパの人々はルールを容赦なく変えてくる。政治でも同じです。
たとえば気候変動。少しまえまでドイツは、「脱原発」や「二酸化炭素排出量の削減」を高らかに掲げていました。ところがウクライナで戦争が勃発しロシアからの天然ガスの輸入が途絶えると、「やはり原発と石炭火力も必要だ」と言い出す。
これまで観光業でさんざん稼いできたフランスも、最近はオーバーツーリズムを懸念し、「地元コミュニティと環境保護のために観光客数を抑制する」という新たな方針を打ち出しています。華麗な方向転換です。
持続しつつ訂正していくしたたかさ
ただ、ここで大事なのは、そのときに彼らが自分たちの行動や方針が一貫して見えるように一定の理屈を立てていることです。
それはある意味でごまかしですが、そういった「ごまかしをすることで持続しつつ訂正していく」というのが、ヨーロッパ的な知性のありかたなのです。
ヨーロッパの強さは、この訂正する力の強さにあります。それはきわめて保守的でありながら同時に改革的な力でもあります。ルールチェンジを頻繁にすることによって、たえず自分たちに有利な状況をつくり出す。それなのに伝統を守っているふりもする。それはヨーロッパのずるさであると同時に賢さであり、したたかさなのです。
先人たちの「訂正する力」を忘れてしまった日本人
日本にも訂正する力がないわけではありません。
昔からよく指摘されているように、大陸の辺境に位置するこの国は舶来のものに目がありません。中国に接したら中国の文化を受け入れ、欧米がきたらこんどは欧米の文化を受け入れる。それは野放図なようでいて、じつは肝心なところはまったくと言っていいほど変えていない。
たとえば名前です。朝鮮半島やヴェトナムでは中国文明の輸入とともに命名も中国風に変えてしまいました。
他方ぼくたちはいまだに古い名前を保持しています。
科挙も採用していません。日本語をローマ字化する運動も潰れました。なによりも天皇制が続いている。日本は、信念なくすべてを外国に合わせているように見えて、ひどく頑固で根底でずっと一貫している国でもある。つまり、改革に開かれているように見えてきわめて保守的な国でもあるわけです。
日本は日本でしたたかだったということです。ただ、ぼくたちはその先人たちの力を忘れ、うまく使えなくなっています。
日本の改革を妨げ続ける「空気」という問題
どうすれば訂正する力を取り戻すことができるのでしょうか。
身近な例から考えてみましょう。現代日本で改革の障害となっているのは、つねに「空気」、つまり社会の無意識的なルールです。
この空気なるものは、みなが他人の目を気にするだけでなく、同時に気にしている他人もまた他人の目を気にしているという入れ子の構造をもっているので、とても厄介です。たとえば、コロナ禍が終わってもマスクをなかなか外せないという話題がありました。これは、単純に周りのひとから「マスクをしろ」という圧力をかけられ、怖いというだけの話ではありません。
もしかしたら、周りのひとも本音ではマスクを外したいのかもしれない。けれども、彼らが「他人がどう思っているかわからないから、まだ外すのは控えよう」と思っているかぎり、自分だけマスクを外すわけにはいかない。実際にはみながマスクを外したいと思っていたり、無意味だと感じていたりしたとしても、相互の監視が存在するためにだれもが社会の無意識的なルールにしたがってしまう。これが空気の問題です。
山本七平が本当に書いていたこと
その結果、いつまで経ってもだれもマスクを外すことができない。と思いきや、ひとたび一部のひとがマスクを外し始めれば、こんどは逆に、花粉症などでマスクが必要なひとを含め、だれもが外さなければいけないような気持ちにされてしまう。その変化の切れ目がなんなのか、われわれはわからないし、またそれをコントロールすることもできない。
このような厄介な構造をもつ規範意識を、どのようにしたら「訂正」できるのでしょうか。
空気については、評論家の山本七平(やまもとしちへい)による『「空気」の研究』がコロナ禍で再注目されました。1977年に刊行された本ですが、昔から日本人は空気に支配されているという文脈で引っ張り出されたわけです。
ところがこの本を読み返すと、じつは空気という言葉は、いまのような相互監視という意味では使われていません。
同書の中心になっているのは「臨在感的把握」と呼ばれる現象です。ふつうの学問的な言葉で言うと、ある種のフェティシズムです。日本人はアニミズムとフェティシズムが強いから、たとえばいちど「コロナが悪」ということになったらみながそれを呪物のように扱ってしまい、あまり議論ができなくなるということです。
「山本七平が」と喧伝(けんでん)されているわりに、山本七平は実際はその話をしていない。これは今回確認してみて虚を衝(つ) かれました。戯画的に言えば、『「空気」の研究』の内容さえも空気で決まってしまっている。
「空気に差した水」がまた「空気」になってしまう
ちなみに、『「空気」の研究』はいま読むと問題含みな本でもあります。刊行された当時、日本ではイタイイタイ病や自動車の公害が社会問題になっていましたが、山本は懐疑的でした。窒素酸化物は有害か無害かわからないし、カドミウムも有害か無害かわからないのだと記しています。
当時「カドミウムは無害だ」と主張し、実際にカドミウム棒を舐めた学者がいたらしいのですが、その話題に紙面を割いています。『「空気」の研究』は古典ではありますが、気をつけて読まなければなりません。
空気批判が空気になるとはいえ、山本の議論がなにも参考にならないわけではありません。
山本は「水」について興味深いことを述べています。盛り上がりに「水を差す」と言うときの「水」です。この国では、空気に水を差していたと思ったら、水を差すこと自体が空気になっていく。だからいつも空気と水が循環している――。そんな議論で彼の本は締めくくられています。
これはじつは当時の左翼に対する批判です。「かつては軍国主義の空気があった。左翼は戦後そこに水を差すようになったが、しばらくしたらこんどはその水が新しい空気になって、言論が左翼に支配されるようになった」という話です。
半世紀後も通用する重要な指摘
『「空気」の研究』は半世紀前の本ですが、これはいまでも通用する指摘です。メディアでちやほやされる知識人が現実にはぜんぜん力をもたない現状は、おそらくこの空気と水の逆説に関係しています。
空気に抵抗しなければいけない。ルールチェンジをしなければいけない。そう主張するひとは多い。けれども、この国では、そのような主張(水)がそのまま受け取られるのではなく、すぐに「そういう主張をするひとが現れた」という新たな空気の問題として理解されてしまう。つまり、「『ルールチェンジをしなければいけない』と発言するという新しいルールでゲームをするひと」という受け取りかたをされてしまう。
そうすると、こんどはその新たな問題提起に考えなしに追随するひとが現れてしまう。いくら水を差しても、すぐそれが新たな空気になってしまう構造があるわけです。ひらたく言えば、権力批判をしているひとこそ、空気を読むようになる構造がある。
これは重要な指摘です。空気は空気批判もすぐに空気に変えてしまう。日本の閉塞感の原因はそこにある。
いつのまにか「空気」を変えていくしかない
だとすれば、そういった空気=ゲームを変えるためには、空気から素朴に脱出しようとするのではなく、同じ空気=ゲームのなかにいるようでいながら、ちょっとずつ違うことをやることによって、いつのまにか本体の空気=ゲーム自体のかたちが変わってしまうといった、アクロバティックなことをやるしかありません。
言い換えればこういうことです。空気が支配し、水もまたすぐ空気になる日本においては、よかれ悪しかれ、ものごとは「いつのまにか変わる」ことしかありえない。明示的に「変えましょう」と言っても、その水自体が新たな空気を生み出してしまうからです。だとすれば、その「いつのまにか」をどう演出するかが課題になる。その課題に答えるのが、この本の主題である訂正する力なのです。
つまり、空気が支配している国だからこそ、いつのまにかその空気が変わっているように状況をつくっていくことが大事になる。
デリダが唱えた「脱構築」という考えかた
じつはこれは日本だけの話でもありません。この状況認識はジャック・デリダというフランスの哲学者が唱えた「脱構築」という考えかたに似ています。
デリダは、表面上はすごく難しい哲学書を書いている哲学者です。だからふつうはこういう文脈では言及されません。
けれども彼はじつは、伝統的で保守的なルールに則(のっと)っているように見せかけつつ、それを深く追求していくことによって、ヨーロッパにおける哲学の型を根本的に変えてしまうといった試みをして、それが評価されているひとなのです。哲学のかたちを「いつのまにか」変えてしまうという試みを、哲学の方法として提示した。そのようなデリダ的、あるいは「脱構築」的な手法は、日本においても実践的に有効だと思います。
というよりも、日本では脱構築しか有効ではないと言うべきかもしれません。正面から既存のルールを批判しても力をもたない。ルールを訂正しながらも、その新しさを前面に押し出さず、「いや、むしろこっちこそ本当のルールだったんですよ」と主張し、現在の状況に対応しながら過去との一貫性も守る。そういった両面戦略が不可欠となります。
「訂正」に失敗した東京五輪
ところが、現在の日本人はこの訂正する力を失っている。東京五輪をめぐる混乱を思い出してみましょう。
五輪では夏の暑さが問題になっていました。東京都知事として五輪を招致し、多くの批判に晒(さら)された作家の猪瀬直樹(いのせなおき)さんは、五輪開催前にぼくと対談したときに「東京の夏は五輪に適している」と主張したことがあります。
どう考えても過酷な気候だと思うのですが、それでも「ほかの国も条件は同じだ」と譲らない。五輪はどんどん経費が嵩(かさ)み、それも問題になりましたが、猪瀬さんはこちらについてもツイッター(現X)で最後まで「コンパクト五輪のはずだった」と主張していました。これほどわかりやすく訂正する力が失われた例もありません。
猪瀬さんには、『昭和16年夏の敗戦』という名著があります。太平洋戦争開戦前、日本政府は「総力戦研究所」というシンクタンクにエリート官僚を集めて日米開戦の帰趨(すう)をひそかにシミュレーションさせていた。答えは日本必敗だった。にもかかわらず、日本は戦争に突入してしまったという内容です。この歴史と東京五輪の強行は部分的に重なります。
「官僚型答弁」が横行するワケ
猪瀬さんは、撤退を「転進」、全滅を「玉砕」と言い換えてごまかす、日本的な組織体質をよく知っていたはずです。それでもなぜ訂正できなかったのか。
それはおそらく、猪瀬さんが市民を信頼できなくなっていたからだと思います。猪瀬さんも東京の夏が暑いことはわかっていた。経費が想定以上に嵩んでいることも知っていた。ただ、それをひとことでも言ったら、批判勢力からなにを言われるかわからない。いまの日本では、あるていど影響力のある立場になってしまったら、危機管理上、訂正しない人間にならざるをえないわけです。
これは政治家だけの話ではありません。岸田文雄首相は「聞く力」を標榜(ひょうぼう)していますが、とてもその力が発揮されているとは思えない。でもそれは首相だけの話ではない。いまの日本人は全体的にその力がなくなっている。
「聞く力」は、相手の話を聞き自分の意見を変える力、つまり「訂正する力」でもあるはずです。けれども、訂正することができないので、聞くこともできない。
官僚型答弁が横行するのもこのことが理由です。官僚だけが悪いのではなく、日本社会全体で聞く力、意見を変える力がないのです。「最初に言ったことはまちがっていました」という説明ができない。そんなことをしたら徹底的に攻撃されて、自分たちの計画が潰されると、みなが警戒しあっている。
「訂正できない土壌」を変えていく
ぼくはこの10年ほどトークイベントスペースを経営し、そこで聞き手をやり続けています。
そこでも同じことを感じることがあります。登壇者のなかに、事前に用意してきた話題しか話さないひとがいるのです。ぼくが司会として合いの手を挟んだり、観客から質問をもらったりしても、自分が想定した質問でないとごまかしたり答えなかったりする。
それではわざわざ来てもらった意味がないのですが、すごく「見えない攻撃」を恐れている。その警戒心を解くのには苦労します。
つまり、いまの日本には訂正できない土壌がある。だからみな訂正する力を発揮できない。ここを変えねばなりません。
互いに意見を変えていけるからこそ議論に意味がある
これは民主主義の話とも関わります。民主主義の基本は議論ですが、議論を成立させるためには相手が意見を変える可能性をたがいに認めあわなくてはいけません。だれの意見も変わらない議論なんて、なんの意味もありません。
訂正できる土壌をつくることはとても大事です。「ひとの意見は変わるものだ。われわれも意見が変わるし、あなたがたも意見が変わる」という認識をみなで共有しなければなりません。これは教育にも関わります。小学校ぐらいから、話しあいの時間をつくり、「たしかにあなたの意見は正しいかも」と気づき自分の意見を変えていく、また他人の変化も認めあうという訓練を積み重ねるべきです。それは「論破」を目的としたディベートとは似て非なるものです。
●岸田首相への反旗≠ェ意味するものとは 水面下で加速する権力闘争 11/30
財務省が2度も、岸田文雄首相のハシゴ≠外した。
岸田首相は先月23日の所信表明演説で、税収増分の「国民還元」を宣言した。ところが、鈴木俊一財務相は今月8日の衆院金融財政委員会で、増加した税収は「政策的経費や国債償還などにすでに充てられた」といい、還元の原資はないと述べた。
また、岸田首相は22日の衆院予算委員会で、国民民主党の玉木雄一郎代表が求めた、ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除に前向きな姿勢を示した。
これに対し、鈴木氏は24日の記者会見で、「国・地方合計で1・5兆円の巨額の財源が必要になる」と、解除にクギを刺した。
これでは、「内閣不一致」ではないか。憲法66条3項が規定する「内閣の連帯責任の原則」に基づけば、岸田首相は鈴木氏を更迭するか、総辞職するしかないだろう。
鈴木氏は、2021年10月の岸田内閣発足とともに、財務相に就任した。前任者は安倍晋三、菅義偉政権の9年間、財務相を務めた麻生太郎副総裁だ。麻生氏は、鈴木氏の義兄であり、鈴木氏が所属する麻生派の領袖(りょうしゅう)である。鈴木氏の言動には、麻生氏の意向が反映していると見て不思議はない。
一方、麻生氏は岸田政権を支える最重要人物だ。岸田首相が率いる岸田派は47人で第4派閥に過ぎない。それを支えるのが56人の麻生派と、茂木敏充幹事長が率いる53人の茂木派だ。
党内最長老の一人で、首相経験者でもある麻生氏は、岸田政権の守護神≠ニいっていい。にもかかわらず、「予算」「税」といった最重要政策で、事実上造反≠オたことになる。これは一体、どうなっているのか。
永田町では、時を同じくして、上川陽子外相の「次期首相説」が浮上している。9月の内閣改造で、林芳正前外相の後任に抜擢(ばってき)された上川氏は、岸田派の所属だ。「ポスト岸田」の噂は、岸田政権が危機に陥った場合の保険≠ネのか。
岸田首相は今月、米サンフランシスコでの日米首脳会談で、ジョー・バイデン米大統領から、来年早期の国賓待遇での公式訪問の招待を受けたことを明らかにした。
この厚遇≠ヘ、岸田首相の政権運営にどう影響するのか。ポスト岸田をめぐり、水面下では壮絶な駆け引きが行われているのだろう。
内閣支持率に加え、自民党支持率にも陰りが見える現状に、「麻生政権末期に似てきた」との声も聞こえてくる。
自民党は、麻生政権下の09年衆院選で歴史的大敗を喫して下野した。安倍氏のもと、12年衆院選で政権奪取を果たし、自民党は一層したたかになったとの見方もある。
現状は「一強の自民党と多弱の野党」である。自民党を制すれば日本を制す―。権力闘争は、とどまるところがなさそうだ。
●“ガソリン減税”実現できる?自公国の3党協議なぜいま開始? 11/30
ガソリン税を引き下げる「トリガー条項」の発動をめぐる、自民・公明・国民の3党協議が始まりました。なぜ、このタイミングで与党は野党との協議に応じたのでしょうか。
トリガー条項の発動をめぐり、午後3時から始まった与党と野党・国民民主党の3党協議。発端は先週の国会でのやり取りでした。
国民民主党 玉木雄一郎代表「トリガーの発動、ここで決断できませんかね」
岸田総理「トリガー条項の凍結解除も含めて、ぜひ与党と国民民主党で検討したい」
3党での協議が行われているトリガー条項とは、レギュラーガソリンの価格が1リットル160円を3か月連続で超えた場合、25.1円安くなる仕組みのこと。
この3党は去年も検討チームを設け、議論を行いましたが、政府・与党内に地方の税収減に繋がるなど慎重な意見が多く、結論が見送られた経緯があります。
国民民主党 玉木雄一郎代表「われわれ覚悟を持って今回は(補正予算に)賛成しましたので、トリガー条項の凍結解除はやりきりたいと思います」
今も自民党内にはトリガー条項への慎重論が根強く残りますが、なぜ、岸田総理は3党協議を指示したのか。そこには2つの理由があるとの見方が出ています。1つ目は、国民民主党の連立与党入りです。
自民党幹部「自民党幹部の中に、いずれ国民民主党と連立を組もうとしている人がいる」
国民民主党の支援団体である連合の一部を取り込み、政権運営を安定化させようと、自民党内には国民民主党との連立を摸索する動きがあるのです。そして、2つ目はガソリン補助金の出口戦略です。
与党幹部「補助金をやめるタイミングが難しい。トリガー条項へ変えることでガソリン価格が下がれば、自動解除できるというメリットもある」
政権幹部も「岸田総理は非常にフラットな考え方で、最初からやらないとは決めていない」と話していて、トリガー条項の行方は政局含みでの議論に委ねられそうです。
●前原氏、国民民主の玉木代表らを批判 維新との連携示唆 11/30
国民民主党代表代行の前原誠司衆院議員は30日の記者会見で、新党結成に際し、国民民主に離党届を提出したと明らかにした。同党執行部の党運営について「トリガー条項の凍結解除に体重をほとんど乗せ、極めて支持率の低い岸田文雄政権と協力を模索する路線にある」と批判した。
他党との関係については「非自民・非共産の野党協力を求める。理念を共有してくれる方々とは連携したい」と強調。「教育無償化の実現に賛同いただけるのであれば、日本維新の会と連携していきたい」と語った。
前原氏のほか、国民民主から新党「教育無償化を実現する会」に加わる嘉田由紀子参院議員、斎藤アレックス、鈴木敦両衆院議員も離党届を提出した。
●前原誠司氏 離党届提出の国民民主党は「是々是々」 11/30
国民民主党の前原誠司代表代行は30日、国会内で会見し、党に離党届を提出し、新党「教育無償化を実現する会」を結成する予定であることを発表した。前原氏が代表を務め、同様に国民を離党した嘉田由紀子参院議員、斎藤アレックス、鈴木敦両衆院議員と、無所属の徳永久志衆院議員の計5人が参加する。
前原氏は「国民民主党の綱領や考えは極めて私の思いに合致している」としながらも、玉木雄一郎代表がこだわるがガソリン税のトリガー条項凍結解除に「体重のほとんどを乗せて極めて、支持率の低い岸田政権との協力を模索している」と指摘。「ガソリン代の値下げも大事と思うが、それがすべてではない。日本の失われた30年を取り戻すために新たな道を歩みたいという思いを共有し、今日に至った」と説明した。
党のスタンスについて「今は(岸田政権に)『是々非々』ではなく『是々是々』だ。(是々非々という党のスタンスから)かなり変わってきたという判断をしなくてはならない」とも指摘した。
前原氏ら国民所属の4人は会見前に党側に離党届を提出したが受理されなかったとして、離党届を内容証明郵便で送付したという。受理されなかったことは「遺憾」と述べ、玉木雄一郎代表とは「まだ話していない」と述べた。正式な新党結成は、党内手続きがすんだ後で、現在は政治団体としての位置づけになる。
党として訴える教育無償化、教育予算の倍増は「ボウリングでいえばセンターピン」とした上で、「日本の窮状を変えるには、ワンイシューで(与党に)協力するのではなく『非自民、非共産』でしっかり野党結集を進め、政権交代への道筋をつくりたい」と述べ、現在の党の路線との決別と、野党結集に活路を見いだしたい思いを示した。
●定額減税、所得制限設ける意見が大半 自民税調、公明と食い違い? 11/30
30日に開かれた自民党税制調査会の幹部会合で、岸田政権が決めた所得税などの定額減税について、富裕層への所得制限を設けるべきだという意見が相次いだ。会合後、宮沢洋一税調会長が記者団に明かした。一方、公明党の会合では意見が出なかったという。
政府は11月に閣議決定した総合経済対策で、3兆円台半ばの規模の定額減税を実施することを決めた。所得税と住民税を合わせて1人計4万円を来年6月以降に減税する。大枠は決まっているが、実際に法案として国会に提出するには与党税調で詳細を議論して年内に決める必要がある。
宮沢氏は「富裕層に対して制限を加えるべきだという意見が大半で、1人だけ制限がない方がいいという意見があった」と明かした。一方、公明の会合後、西田実仁税調会長は「(公明の会合では)誰もそういう意見は言っていなかった」と話した。
●選挙の顔♀ン田首相の不人気っぷり あまりに悠長… 11/30
「最近は何を打ち出しても、有権者に見透かされている気がするんだ」
旧知の自民党中堅議員が、ため息交じりに言いました。朝、街頭に立っても、今までにないほど有権者の反応が悪いそうです。
「コアな支持者からも『選挙区はともかく、比例は違うところに入れるかも』と言われる」と、こぼしていました。
内閣支持率が、与党の政党支持率を上回る部分を「首相プレミアム」と呼びます。「選挙の顔」としての岸田文雄首相の人気を計るバロメーターです。最近の世論調査の結果は以下の通りです。
朝日新聞(18、19日実施)内閣支持率25%、自民党支持率27%、首相プレミアム=マイナス2%。
読売新聞(17〜19日)内閣支持率24%、自民党支持率28%、首相プレミアム=マイナス4%。
産経・FNN(11〜12日実施)内閣支持率27・8%、自民党支持率29%、首相プレミアム=マイナス1・2%。
軒並みマイナスで、岸田首相の存在が足を引っ張っているようです。先月末で衆院議員の任期の折り返しを越え、ここからは常在戦場。いつ選挙があってもおかしくないとなれば、首相のイメージの悪さに注目が集まります。
しかし、どうして「何を言っても見透かされる」ほど信頼感を失ったのでしょうか?
私が担当しているニッポン放送の番組「OK!Cozy up!」にも、防衛費増額や少子化対策では増税や社会保険料の負担増を匂わせたのに、今回唐突に減税を言い出すのは一貫性がない―という指摘が毎日のように届きます。
一方で、外交では「日中首脳会談で言うべきことを言った!」という評価もあり、内政と外交で分けて考える人も多いようです。ただ、外交は自分の生活に直接影響はないが、内政、特に経済政策は自分の財布に直接影響するので、総体としては厳しい評価が多くなります。
その経済対策も、今年度補正予算は約13・1兆円を出し、減税まで訴えたのに世論には響かない。光明があるとすれば、この財政出動が迅速に世の中に回って経済を下支えし、来年の春闘で今年以上の賃上げ、そして減税が相まっての景況感の好転です。
首相周辺も「じわじわと支持率も上昇するのではないか」と期待しているとも聞きます。ただ、結果が出るのは半年以上先ですから、あまりに悠長です。
その前に「日銀が年明けにも『マイナス金利の解除』を打ち出すのではないか?」という噂もあります。支持率低下で、永田町・霞が関に忖度(そんたく)しないで進めるという見方です。
そうなると、引き締めシグナルで、また景気は腰折れ。岸田政権がますます窮地に陥るシナリオも見えてきます。岸田首相が所信表明演説で語った通り、政権の行方も「経済、経済、経済」なのかもしれません。
  
 
 12/1

 

●自民・二階元幹事長が政局見据えて「意味深発言」、岸田首相が“詰んだ” 12/1
老獪な二階氏の意味深な発言と 岸田首相を襲う3つの逆風
「二階さんは、『徹底的にやる』と明言したらしい」(自民党二階派幹部)
こんな声が聞かれるようになったのは、11月中旬のことだ。この「徹底的にやる」とは、11月9日、自民党の二階俊博元幹事長が、菅義偉前首相や森山裕総務会長らと、東京・銀座の懐石料理店「川端」で会食した際、飛び出した言葉だ。
この話は、これから始まる政局で主導権を握ろうとする決意の表れとして、その翌日の11月10日、産経新聞でも報じられたが、派閥の幹部によれば、確度が高い話のようである。
二階氏といえば、2020年の東京都知事選挙で小池百合子知事が再選を目指して出馬した場合、真っ先に支援する意向を示し、同年、「ポスト安倍」を巡る政局では、いち早く菅氏支持を打ち出し、菅首相誕生への流れを作るなど、先手必勝の「政治勘」には定評がある。
その二階氏が、政局に率先して動くとなれば、
(1)政務三役の相次ぐ辞任と経済対策の不評
(2)岸田派を含む自民党5派閥の政治資金収支報告書に、パーティー券収入4000万円分が記載されていなかった問題
(3)当時、自民党の衆議院議員で、東京五輪の招致推進本部長を務めた馳浩石川県知事が「官房機密費で、IOC(国際オリンピック委員会)の委員約100人への贈答品として、1冊20万円でアルバムを制作した」と発言した問題
これら、3つの問題で逆風にさらされ、すでに報道各社がはじき出す内閣支持率が、軒並み20%台まで下落している岸田文雄首相の足元など、たちまちに揺らいでしまうだろう。
「自民党はかつて当時の社会党とも手を組んだことがある政党。もう限界の岸田首相を降ろして、今の国内外の動きに対応し、衆議院選挙で勝てる総裁を、となれば、ワンポイントリリーフとして石破茂元幹事長を担ぐこともあり得る」(自民党無派閥中堅議員)
この言葉にもにじむように、岸田首相に残されている起死回生策はもうない。岸田首相は「外交の岸田」を自負しているが、来る2024年以降に予想される国際情勢の大きなうねりは、岸田首相のキャパシティーを超えているのではないかと思わざるを得ない。そのポイントを列記してみよう。
三つどもえの台湾総統選挙 中国の介入は実らず
まず、1月13日に行われる台湾総統選挙だ。今回の総統選挙は、「台湾のことは台湾人が決める」と、中国に対し毅然(きぜん)とした態度を貫いてきた民進党・蔡英文総統の後継を決める重要な選挙になる。
すでに、11月24日に立候補の届け出が締め切られ、与党・民進党が擁立した頼清徳氏(64)、中国との関係改善を重視する最大野党・国民党の侯友宜氏(66)、そして、第3勢力として台頭してきた民衆党の柯文哲氏(64)の三つどもえの戦いになることが決定した。
世論調査の支持率で30%台半ばを記録し、常にトップを走ってきたのが頼氏。対する侯氏と柯氏はそれぞれ20〜25%前後の支持率であったため、「野党が分裂したままでは負ける」と、「棄保」(共倒れを避けるため、勝てそうな候補に一本化する)を目指す作戦に出た。これが裏目に出る。
仲介したのは、親中派とされる馬英九前総統だ。馬氏は、11月2〜5日に北京を訪れた側近を通じ、民衆党に譲歩するよう国民党に迫った。国民党内で馬氏の影響力は今なお大きく、同15日には、馬氏が同席する中、両党が一本化に向けて交渉を本格化させ、複数の世論調査を比較して統一候補を選ぶことで合意したのである。
ただ、この交渉は決裂した。世論調査のどの部分を見て判断するのか意見が対立したほか、立候補届締め切りの前日、侯氏と柯氏の交渉の場に、柯氏が「誰も連れてくるな」と要望したにもかかわらず、侯氏が馬氏と国民党の朱立倫党首を連れてきたためだ。これに柯氏側が猛然と反発し、「藍白合作」(藍=国民党、白=民衆党のイメージカラー)は破談となってしまった。
この流れからすれば、頼氏が圧倒的に有利になる。民進党は頼氏でまとまる半面、野党側は2候補に分裂してしまうからだ。しかも馬氏の表舞台への登場は、明らかに「中国の選挙介入」によるものであり、そのことは頼氏の陣営やその支持者を結束させることになる。
もっとも、台湾の美麗島電子報は、最新の世論調査(11月21日〜23日実施)で、頼氏と侯氏が接戦であると伝えており、選挙の行方は予断を許さない。
とはいえ、野党候補の一本化が成功せず、頼氏が勝つとなれば、侯氏か柯氏を通じて台湾統一への足掛かりを作ろうとした中国の習近平総書記は頭を抱えることになるだろう。
習近平総書記が語った 「平和統一」はまやかし
その習氏は、国家主席として11月14日、サンフランシスコ郊外でバイデン大統領と会談した。メディアの中には、軍事対話の再開で合意した点などを取り上げ、米中両国の関係修復に向けて前進したと評価する声もあるが、筆者は「とんでもない誤報」だと感じている。
習氏は、バイデン氏を前に、「アメリカを超えようとか、アメリカに取って代わろうとか、考えたこともない」と述べ、「2027年か35年に台湾を侵攻するような計画は中国にない」と強調した。
しかし、この部分だけで、「台湾有事は杞憂だったか」と安心してはいけない。習氏は首脳会談でも、台湾について「統一することは必然」と決意を示している。さらに、「平和がもとより非常に良いが、時に必要であればより広い解決方法が必要だ」と付け加えているのだ。
これは、平和統一が首尾良く進まなかった場合、「武力行使もあり得ますよ」と述べているに等しい。
岸田首相では 米中首脳と渡り合えない
筆者が思い出すのは、ニクソン政権で国務長官などを務めたヘンリー・A・キッシンジャー氏のこの言葉だ。
「中国の指導者が、一度きりの全面衝突で決着をつけようとすることは、めったにない。中国の理想は、相対的優位をさりげなく、間接的に、辛抱強く積み重ねることだ」(『キッシンジャー回顧録 中国(上)』岩波書店)
仮に、台湾で頼清徳政権が誕生すれば、中国は、習指導部の下、武力行使も視野に、着々と軍事力の増強を進め、国内の統制も強化するはずだ。
すでに、中国軍は、2022年8月のアメリカ・ペロシ下院議長(当時)訪台以降、台湾近海にミサイルを撃ち込むなど予行演習を繰り返している。
頼氏は副総統候補に、駐米大使に相当する役職を経験してきたアメリカ通の蕭美琴氏を指名しているため、米台関係をこれ以上強固にさせたくない中国は、台湾包囲網をよりエスカレートさせていくに相違ない。
国内統制でいえば、中国国内に約20万人いるテレビや新聞の記者を、中国共産党の「世論工作部隊」に仕立て上げようとしている点が何ともおぞましい。
11月4日を皮切りに、習近平思想に関する全国統一試験まで実施し、「台湾統一」などの問題に答えられない記者は排除されるというのだから、言論統制の極みと言うほかない。これらの点では、キッシンジャー氏の指摘以上だ。
対するアメリカも、中国に甘い顔を見せてはいない。訪米した習氏が降り立ったサンフランシスコ空港には、赤じゅうたんは敷かれず、バイデン大統領やブリンケン国務長官が出迎えることもなかった。特別待遇を一切しなかったことは高く評価できる。
また、バイデン氏本人も、最後まで、習氏が引き出したかった「台湾独立を支持しない」という言葉を口に出さず、会談後には習氏を「独裁者」と呼んでみせたところは、いかにも老獪な政治家らしい。
こうしてみると、二人とも実にしたたかだ。このように二枚腰、三枚腰で腹芸もできる政治家と、求心力をなくした岸田首相が渡り合えるとは到底思えない。
トランプ大統領が誕生すれば 岸田政権はさらに危うくなる
もう一つ挙げれば、2024年11月に行われるアメリカ大統領選挙だ。選挙は、民主党のバイデン氏と共和党のトランプ前大統領の再戦になる可能性が極めて高い。
問題は、最新の世論調査でバイデン氏を上回るトランプ氏が、長い選挙戦を制して大統領に返り咲いた場合だ。
トランプ氏による機密文書持ち出しや不倫などは日本にとってつゆほどの影響もないが、トランプ氏が再び大統領になれば、米中関係の悪化は避けられなくなる点はリスクだ。
トランプ陣営では、政権構想の立案を、側近のステファン・ミラー前大統領上級顧問らを中心に進めているが、その政策綱領を見ると、まず、最初に、「中国依存の通商路線からの脱却、中国に対する最恵国待遇の廃止」がうたわれている。
トランプ氏といえば、中国と激しい貿易戦争が記憶に新しいが、強硬な対中政策を掲げるトランプ政権が再び誕生した場合、米中関係はさらに悪化し、台湾だけでなく日本にも大きな影響をもたらすことになる。
こうした中、「外交の岸田」はどうだっただろうか。たとえば、イスラエルとハマスの戦争において日本の存在感を何か一つでも国際社会に示してきたか、そして、北朝鮮の「偵察衛星」発射に関して事前に強いメッセージを送ってきたか、と問われれば、その答えは「NO」だ。
アメリカ大統領選挙が実施されるころには、岸田首相ではないかもしれないが、岸田首相のままであったとすれば、習氏の専横を許すのみならず、トランプ氏が返り咲いた場合に実践するであろう「アメリカファースト」の外交政策に翻弄されることは間違いない。
●”鬼の岸田首相”より酷い…維新議員が断言「ガソリン代は高くていい」 12/1
政府、自治体、経済団体は、こぞって「2050年カーボンニュートラルを目指す」、つまりCO2をゼロにする、「脱炭素社会」を宣言している。だが、脱炭素とは、石油もガスも石炭も禁止するということだ。経済が大きな打撃を受けることは容易に想像がつく。そもそも、脱炭素によって、温暖化が解消されるのだろうか?経済誌プレジデント元編集長の小倉健一氏が解説する――。
「地球温暖化対策」と「脱炭素」に相関性はあるのか
「日本維新の会」所属の足立康史衆議院議員が、11月25日、X(旧Twitter)に「ガソリン代は、高くていいのです」とポスト(投稿)した。続けて、「まさか、このポストだけ読んでリプしてる人は居ないと信じたいけど、先行するポストを読んでない人向けに、文脈を補足しておきます。地球温暖化対策、脱炭素という長期的な経済構造の観点から言えば、『ガソリン代は高くていいのです。』」と自身のポスト内容を補足した。
足立議員のいう「ガソリン代は、高くていいのです」という認識について、今回は考えを述べたい。
まず、文脈を切り取っているという指摘を受けないためにも、まずは「地球温暖化対策」としての「脱炭素」について述べる。足立議員を含む、多くの人も間違った認識を持っている可能性がある。
2023年9月25日に発表された『温室効果ガスの排出によって気温レベルはどの程度変化しているのか?』という検証結果が分かりやすいだろう。検証したのは、ジョン・K・ダグスヴィック氏ら。ノルウェー統計局に所属している。
検証結果の衝撃すぎる中身
これは、2020年に発表された結論である<過去200年間にわたって、人間によるCO2の排出は、気温の変動に大きな体系的な変化をもたらすほどの強い影響を与えているわけではありません>を、気温データに関する過去の統計分析、理論的な議論と統計的な検定を用いて、検証したのだ。
そう、繰り返すが、<過去200年間にわたって、人間によるCO2の排出は、気温の変動に大きな体系的な変化をもたらすほどの強い影響を与えているわけではありません>という結論は、正しかったのだ。つまり、地球温暖化は進んでいるけれど、人類が排出するCO2を減らしたところでどうこうなる問題ではないということだ。
この検証では、以下のようなことが指摘されている。
・過去200年間に観測された気温のデータには、長期的な周期性と温度上昇の傾向が一貫してみられる
・グリーンランドの現在の10年平均気温は、過去4000年間の自然変動の範囲を超えていない
・2031年から2043年の10年間で、地球の平均気温は -1.0℃下がると予想される
・地球の気温変動には複数の要因がありますが、その一つに太陽と月が引き起こす気温の周期があり、この周期は最大で約4450年に及ぶ。また、数十年ごとの気温変動の主要な原因は、木星型惑星(木星、土星、天王星、海王星)と海王星が生成する一定の軌道周期によるもの
・人間によるCO2の排出は、気温の変動に大きな体系的な変化をもたらすほどの強い影響を与えているわけではない
燃料代の高騰によって経済が悪化する実例がある
検証では、地球の気候が複雑で、CO2が地球温暖化に影響を与えることが証明できなかった一方で、過去の気候変動の枠内で現在の気候が変動していることを指摘している。
つまり、地球温暖化対策で、脱炭素を行うのは間違いであるということだ。
では次に行こう。「ガソリン代は高くていい」のかということだ。
これは、現在、失速をはじめたドイツ経済の例を考えるとわかりやすいだろう。国際通貨基金(IMF)の最新報告によると、ドイツ経済は今年-(マイナス)0.5%になるという。IMFによれば、アメリカは2.1%、日本は2%、イギリスは0.5%、ユーロ圏全体でさえ0.7%の経済成長が見込まれる中で、「一人負け」のような状態になっている。
IMFは、ドイツが「世界的に遅れをとっている」原因の一つとして、次のようにいう。
「ロシアのエネルギー輸入に大きく依存していた経済(とりわけドイツ)は、エネルギー価格の急騰と、より急激な景気後退を記録した」
燃料代の高騰がドイツ経済を悪化させている
ドイツ連邦議会では野党のハンスイェルク・ドゥルツ氏(カウダー独連邦議会キリスト教民主同盟・社会同盟)は、「ドイツの現在の経済危機は自業自得だ。グリーンな計画経済の代わりに、古典的で明確な供給サイドの政策が必要だ。官僚的なコストを削減し、税金や賦課金を減らしてエネルギー価格を下げ、企業の研究開発を強化する。そうでなければ、ドイツは長期的に遅れをとる恐れがある」(ドイツ経済ニュース)と批判をしている。
また同記事内では、ドイツ商工会議所(DIHK)のマルティン・ヴァンスレーベン専務理事のコメントも記載されている。
「エネルギー価格の高騰、将来のエネルギー供給に対する不安、高い税金や関税、官僚主義、熟練労働者の不足、世界経済の低迷などが、ビジネスの重荷になっている」
燃料代の高騰がドイツ経済を悪化させているという声を足立議員はどう受け止めるのだろうか。炭素税は日本企業の国際競争力を奪うものだ。
燃料代の高騰がいかに貧困層を痛めつけるか
「長期的な経済構造の観点から言えば、ガソリン代は高くていいのです」という足立議員の主張には、首を傾げざるを得ない。短期的にも長期的にもエネルギー代は安い方がいいと、経営者の感覚なら考えるのではなかろうか。
ちなみに、ドイツ紙で批判される「官僚主義」「計画経済」だが、足立議員は、経産省出身の元官僚だ。今後政権交代をしようという政党の有力議員がこの主張するのでは、警戒するほかあるまい。
最後に、燃料代の高騰がいかに貧困層を痛めつけるかについても述べておこう。
ガソリン・灯油などの燃料、光熱費は、所得が増加するにつれて、より多く消費されるようになる。しかし貧困層の相対的な負担は、可処分所得がはるかに低いことを考えると、より高い。また、容易に想像できることだが、都市部では、灯油暖房代の比率が低く、公共交通インフラが発達しているが、地方では逆だ。収入第T分位(年収・約330万未満の世帯)と呼ばれる所得層の家計消費支出に占めるエネルギー関連の支出は、10%超える水準で推移しているが、地方ではさらに大きな割合を占めていることになる。
足立議員の発言「ガソリン代は、高くていいのです」は倫理的にも間違っている
足立議員のいう「ガソリン代は、高くていいのです」は、倫理的にも誤った認識であることがわかるだろう。足立議員は、かつて貯金を含む金融資産に課税するとして、世論の不評を買った経緯がある。
増税するまえに何かすることがあるというのが、維新の掲げた精神だったと思っていたが、トリガー条項の発動にも否定的な発言を繰り返している。本音が出たのだろう。とても残念だ。
「増税メガネ」と揶揄された岸田文雄首相ですら、こんな認識には至らないのではないのではないのだろうか。政治家の発言として、軽すぎるし、ひどすぎる。
●四面楚歌状態続く岸田首相 「期待できない」のは多くの人々が反対だから… 12/1
岸田文雄政権が決定した経済対策の裏付けとなる今年度補正予算が11月29日、成立した。与党の自民、公明両党に加え、日本維新の会、国民民主党が賛成にまわった。
筆者は9日の当欄で、どこからも評価の声が上がらない岸田政権の経済対策を「四面楚歌(そか)状態」と形容したが、意外にも国会においては大多数の賛成を得るかたちとなった。
国民民主党の賛成については違和感がない。いわゆる、「トリガー条項」の凍結解除への協議開始が賛成の決め手とのことだ。もともと、「需給ギャップは解消していない」として15兆円規模の経済対策を主張するなど、岸田首相と軌を一にする立場だった。
日本維新の会が賛成したのには正直驚いた。10月の同党経済対策提言では、「全体として日本経済は緩やかな回復軌道に乗りつつある」として、「大量の国債発行を原資としたバラマキ型の需要喚起を行うべきでない」としていたからだ。
もしかすると、15日に発表された今年7─9月期の実質国内総生産(GDP)速報値が前期比0・5%減、年率換算で2・1%減となったことが影響したのかもしれない。
3四半期ぶりのマイナス成長で、賃金の伸びが物価上昇に追いついていないことが消費を圧迫した。日本経済のデフレ脱却がそう簡単ではないことを裏付けるものといえる。
日本維新の会が旗を振る2025年大阪・関西万博予算が盛り込まれていた要因があったにせよ、状況に応じて政策のスタンスを変えることはあり得る話だ。
補正予算が成立したとはいえ、岸田政権の経済対策に対する「四面楚歌状態」は依然として続いている。最近の支持率低下の最大要因として挙げられているのは、「政策に期待が持てない」との理由だ。
ただ、これだけ批判一色の論調では、「期待できない」と回答するのは当然の帰結ともいえる。
ちなみに、全国紙各紙は3日、「デフレギャップはほぼ解消しつつあり、景気刺激的な経済対策は必要ない」として、岸田首相の経済対策を批判した。ところが、約10日後の速報値は、「経済は回復しつつあるが、その力はまだ弱い」とする岸田首相の認識の方が正しかったことを証明したといえないか。
多くの人々が反対しているからと言って、それが間違っている政策とはいえない。同様に賛成が多いからと言って、正しい政策ともかぎらない。
筆者は、最近の経済政策論議が、「感情論」的色彩を強めていることに危惧の念を抱いている。岸田首相の政策が正しいのか間違っているのか、現時点では分からない。少なくとも言えることは、感情的な議論をいくら重ねても、正しい結論には到達しないということだ。
●ブレる岸田首相 今こそ問われる政治姿勢 12/1
評者は2019年に『自民党−価値とリスクのマトリクス』という書籍を出版した。自民党の有力政治家9名について、それぞれの過去の発言やインタビュー、対談、論考を徹底的に読み、その政治家の立ち位置を明示する試みを行った。
その中で一番困ったのは、岸田文雄氏の分析だった。とにかく言動にしっかりとした軸がなく、その時々の政権に合わせて変化する。一貫した信念やビジョンがなく、一体、何を実現したい政治家なのかわからない。そのため「ブレることだけはブレない」というのが、当時の私が下した岸田評だった。
政権発足以降、岸田首相の発言はぶれ続けた。首相就任以前は金融所得課税について力説していたにもかかわらず、経済界からの反対があると、あっさりと主張を引っ込めた。「新しい資本主義」を訴え、新自由主義からの脱却を主張したものの、再配分政策が大きく進展したとは言いがたい。むしろ防衛費の大幅増を打ち出し、それに伴う増税方針を示した。
そして、今回の減税の表明である。これを一つの契機として、内閣支持率が大きく下がり、30%を割り込む調査が続出している。
国民に減税政策が支持されていないのではない。岸田首相の信念・ビジョンの欠如と、それに伴って言っていることがぶれ続ける姿に、国民が愛想を尽かしているのだ。
行政学者の牧原出は、「所得減税 なぜ不評? 選挙狙い 有権者が見透かす」の中で、岸田の政治姿勢を厳しく批判する。今回の減税は1年限りで、長期的な視点になっているとはいえない。極めて対症療法的な減税の打ち出しで、選挙狙いであることは明らかである。国民は、岸田首相の魂胆を見抜いている。「『ばらまけば国民は言うことを聞くだろう』という一番やってはいけないやり方」であり、「経済や財政の問題に関する国民のリテラシー(理解力)を尊重しているとは言えない」。
近年の有権者の動向を見ると、概(おおむ)ね2:5:3という投票比率が見えてくる。選挙に行けば概ね野党候補に入れる人が2割、選挙に行かない・関心が薄い層が5割、選挙に行けば与党候補に入れる人が3割というのが、おおよその傾向といえる。自民党は基本的に、低投票率下において、固定票で勝つという選挙戦術をとってきた。そのため、内閣支持率が30%を切ると、固定票の離反が起きていることになり、いつもの選挙戦術が通用しなくなる。だから、内閣支持率が20%台に突入すると、内閣存続に黄色信号がともるのだ。
こうなると、自民党の中から固定票の回復を名目として、タカ派層に訴える主張が目立ってくる。特に注目すべきは、6月に成立したLGBTなど性的少数者への理解増進法への反発である。自民党の高鳥修一衆院議員は、11月14日に党有志が集まる「保守団結の会」の会合で「内閣支持率や政党支持率が軒並み下がった大きな要素は理解増進法の成立だ。安倍政権を支えた岩盤保守層が離れてしまった」と述べた。
この背景には、10月に結党会見を開いた日本保守党の存在がある。この党は、作家の百田尚樹やジャーナリストの有本香らが自民党への不満を共有して立ち上げられたが、そのきっかけは、自民党執行部がLGBT理解増進法を推し進めたことにあった。ジャーナリストの櫻井よしこは、LGBT理解増進法への反発に共感を示した上で、「この百田新党を、自民党は軽く見てはならないだろう」と牽(けん)制する。
自民党よりもタカ派の政治勢力の出現は、固定票に依存してきた自民党議員にとっては、危機と映るだろう。これまで与党が選挙を有利に進めることができたのは、野党支持票が複数の政党に分散してきたことにある。与党議員が恐れているのは、同じ現象が与党側に起きることである。
このような状況下で、低支持率に頭を悩ませる岸田首相が、タカ派議員の主張を取り込み、政権維持をはかる可能性が考えられる。「ブレることだけはブレない」岸田首相の政治姿勢が、今こそ問われる。
●岸田政権の支持率なぜ急落?世論調査で「浮動票が減った」深刻な理由とは 12/1
岸田内閣の支持率が急落している。毎日新聞の2023年11月世論調査によると、支持率は21%、不支持率は74%になっている。10月から比べると、支持率は4.5%ポイントの低下、不支持率は6%ポイントの増加である。もちろん、支持率の低下と不支持率の上昇が大きな話題になっているのだが、私は「分からない、無回答」の人に注目したい。日本では、このように答える人は多い。「どちらでもない」という問いがあれば、さらに大きい比率となるだろう。これらの回答は、白黒はっきりさせたくない日本人の本質を表している。また、分からないことを分からないと答えるのは、日本人の美質を表しているとも言えるだろう。そして、「分からない、無回答」と答える人に見限られたことこそが、岸田内閣の支持率低下の本質を示していることを明らかにしたい。
岸田政権の支持率増減の要因
下のグラフは「支持する」「支持しない」「分からない、無回答」(以下、「分からない」と表記する)と答えた人の割合の推移を示したものである。ここで示したのは、NHKの世論調査である。毎日新聞の世論調査でないのは、NHKの世論調査がより安定した結果を示すとされていること、および、長期の時系列が取りやすい形で提供されていることによる。
   図_岸田内閣の支持率の推移
まず、読者の方々に思い出していただくために、支持率とそれに影響を与える主な事象を整理する。
2021年10月に岸田内閣が発足して以来、徐々に支持率を高めてきた。これは、コロナウイルスワクチンの接種が進み、感染者が減り、コロナ収束の希望が見えたからだと私は思う。ところが、22年8月以降、支持率が低下してきた。その後23年になると徐々に支持率を高めたものの、6月以降は再び低下傾向となった。
2022年8月以降の低下は、旧統一教会と自民党の癒着のスキャンダル、安倍晋三元首相の国葬の決定が影響しているとされている(「旧統一教会、国葬 失速する岸田政権」朝日新聞、2022年9月12日)。
2023年3月の上昇は、戦時下のウクライナに赴き、ゼレンスキー大統領と会って連帯を示したことによる。
23年5月の上昇は、広島サミットで、G7首脳がそろって平和記念資料館を訪れ、献花したからだ。後に歴史の教科書に掲載されるような写真を見れば、支持率が上がるのも当然だ。しかし、外交は票にならないといわれるように、支持率を長期的に維持する効果を持たず、低下していった。
6月以降の低下は、マイナカードを巡る混乱だろう(「内閣支持率の急落、政府・与党内に衝撃…岸田首相はマイナ対策への注力で信頼回復図る考え」読売新聞、2023年6月26日)。
慎重な人々の岸田政権離れ
以上は、支持率と不支持率の動きだが、私が注目したいのは「分からない」と答える人の動きである。こう答える人は通常は25%程度ある。
岸田文雄首相は、安倍元首相のような、一方で根強い支持があり、他方で「安倍嫌い」がいるというキャラではない。どちらかというと、熱心な味方がそう多い訳ではないが敵も少ないというタイプだろう。となると、「分からない」と答える人が一定数で推移しそうだが、実際には傾向的に減っている。
まず、内閣発足直後は「分からない」が多かった。これは、まだ何もしていないのに評価は早いという冷静な判断だろう。その後、「分からない」が減って、支持が増えている。「分からない」から、支持に転換した人がいたのだ。
22年9月では不支持が急増するが、同時に「分からない」が減っている。「分からない」から不支持に変わったのだ。その後、広島サミットで支持率が高まった後、年末の不支持急増へと続く。この時、「分からない」が継続的に減少している。
支持率の低下は、「分からない」と答える慎重な層に徐々に見限られたのが理由ではないだろうか。
支持率急落は減税のせいなのか
ではなぜ、「分からない」と答える慎重な層に見限られたのだろうか。
識者の議論は、所得税などの定額減税が「選挙対策に見える」などと不評を買い、支持率低下につながったというものが多いようだ。しかし、このような議論は、私には、減税しても支持率は上がらないと世論誘導しているような気がしてならない。
減税は、民のお金を民に返すものだからすべて良いことであるのに、減税が悪いかのような議論は私には理解できない。政治家が選挙目当ての行動をするのは当然で、選挙目当てでも減税するのは良いことだと私は思う。
増税主義者と思われていた岸田首相は、「経済成長の成果である税収増などを国民に適切に還元する」と語ったとのことである(「岸田首相『税収増を国民還元』」日本経済新聞、2023年9月26日)。
一般会計税収の対GDP比は、自民党が政権に返り咲いた2012年度の8.8%から2022年度には13.0%まで4.2%ポイント上昇している。GDPとは、国民のすべての所得を足し合わせたものである。税収がそれに対して増えているということは、増税しているのと同じである。うち、国民に明示的に問うて増税したのは、消費税増税の5%分、対GDP比では2.5%分のみである。残りの1.7%分(4.2%−2.5%)は、国民の許可を得ずに増税したのと同じである。
名目GDPが増えれば、名目所得も上昇して累進課税の上の階級に行く。すなわち、例えば、今まで10%の税金ですんでいた人が、所得が330万円以上に上がれば、330万円以上の分については20%の税金を払わないといけなくなる。この結果、税金が重くなる(ブラケット・クリープ)。しかも、一般会計には含まれないが、社会保険料の引き上げもある。国民には、頑張って働いて給料も増えたのに手取りが増えないという実感がある。残念ながら、政治家は、この感覚が分からないようである。この感覚があれば、この増税分のいくらかを還元するのは当然のことと力強く表現できたのではないか。
実は、岸田首相が尊敬するという宏池会の創始者、池田勇人元首相こそ、この感覚が最も分かる人だった。高度成長時代、所得が上がれば、累進課税の上の階級に行って、手取りが目減りする。だから、常に減税をして、税収の対GDP比が上昇しないようにしていたのである。
岸田首相には、池田元首相に学んで、この感覚を理解していただきたい。そうすれば、「分からない」と答える人々の支持を失うことはなかったのではないか。 
●パー券「キックバック」一時認める 自民安倍派、法令違反の疑いも 11/30
自民党安倍派の塩谷立座長は30日、派閥のパーティー券を一定以上売り上げた議員に対し、収入の一部を払い戻す「キックバック」について「(派内に)あったことはあった」と認めた。党本部で記者団の質問に答えた。政治資金収支報告書に記載されていなければ、政治資金規正法違反に当たる可能性がある。その後、塩谷氏は発言を撤回した。
塩谷氏は、所属議員の経歴に応じてパーティー券販売の「ノルマ」があることを認め、「しっかりと販売してもらう」ためだと説明。払い戻した金が、報告書などに記載されない「裏金」になっているか問われると、「しっかりと中身を見てみないと分からない」と述べるにとどめた。「派として内容をしっかり把握する必要がある」とも話した。
塩谷氏はその後、国会内で改めて記者団の取材に応じ、キックバックについて「事実を確認したわけではないので、一切撤回したい」と釈明。その上で「精査して何かあれば、また報告したい」と述べた。販売ノルマの存在は撤回しなかった。
●化石燃料に補助金…脱炭素化に逆行≠キる日本 COP28で強調できるか 12/1
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで11月30日に開幕した国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、深刻化する気候変動問題に対し、協調して脱炭素化の具体策を打ち出せるかが焦点だ。ウクライナ危機の長期化に加え、中東情勢の緊迫化など足元のエネルギー安定供給への懸念材料も多い。ガソリン補助金など脱炭素化と矛盾しかねない政策も散見される日本は、独自の脱炭素化への貢献策で、存在感が示せるかが問われそうだ。
「現実的な転換」を模索
「現実に向き合いながら転換していかないといけない」。COP28での議論に対して、経済産業省幹部はこう指摘する。背景にあるのは、日本の置かれた事情だ。東京電力福島第1原子力発電所事故後の原発再稼働は道半ばだ。急速に普及した再生可能エネルギーも発電量が天候に左右されるため、電力の約7割は今も火力発電に依存している。電力需要が高まる夏や冬は、運転休止中の老朽火力も稼働させて、なんとか需給逼迫を回避する状況が続く。温室効果ガス排出量が多く効率の悪い老朽火力から高効率の新型火力への置き換えも進んでいるとは言い難い。「中長期的な脱炭素化の潮流がある中、火力に大規模な新規投資をするのは難しい」(大手電力関係者)からだ。
補助金、再三にわたり延期
ウクライナ危機に伴う資源価格高騰や急速な円安の影響で、大半を輸入に頼る化石燃料由来の物価高が国民生活を直撃しているが、政府による物価高対策も脱炭素化の流れとは逆行するものだ。
政府は令和4年1月からガソリン補助金を導入。投じられた予算は累計で6兆円を超えた。政府も「いつまでも続けるわけにはいかない」(西村康稔経産相)とするが再三にわたり延期を繰り返しており、終了時期は見通せない。
ガソリン価格高騰対策はウクライナ危機直後の原油価格急騰を受け、先進7カ国(G7)でも相次いで導入されたが大半は終了。続けているのは日本と英国だけだ。日本では補助金終了後を見据え、ガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」の凍結解除に関する協議が与党などで本格化している。トリガー条項が発動されれば、日本だけが化石燃料への補助金を続けている国となる可能性もある。
日本はアジアにおける火力発電への水素・アンモニア混焼の推進など独自の脱炭素化策を打ち出し、貢献をアピールしたい考えだ。ただ日本の難しい事情も丁寧に説明しなければ、脱炭素化に消極的な国とみなされかねない。
●岸田首相を評価して初めて褒められた!本当に不人気なのか… 12/1
もういちいち数字を書かないが、今週も岸田文雄内閣の支持率は、日経新聞・テレビ東京と、テレビ朝日系ANNの世論調査で続落した。
先週から今週にかけて行われた国会の予算委員会では、野党側が支持率低下の一番の原因とされる所得税減税や、政務3役の不祥事、自民党派閥のパーティー券疑惑などで連日、岸田首相をボコボコにした。これでは支持率は下げ止まらない。
ただ、筆者は天邪鬼(あまのじゃく)なので、先週金曜、フジテレビのネットサイト「FNNプライムオンライン」に、「岸田さんはそんなにダメな首相なのだろうか。こんなに実績があるのに」という記事を書いてみた。
最近は岸田首相のことを「良く言う」のは、はばかられる。ネットを見ていると「嫌い」を超えて「憎しみ」の域に達しているようだ。だから世論調査の電話がかかってきても、「岸田さん支持します」とは答えにくいだろうし、筆者も岸田政権を評価する記事を書くと、多くの読者にお叱りを受ける。
だが、今回は少し違った。まずアクセス数が多かった。
例えば、ヤフーに転載された記事についたコメント数は27日現在、1800を超えていた。また、記事をリポストしたX(旧ツイッター)の「いいね」は4000を超え、インプレッション数(表示された回数)は144万回だった。筆者が書く「地味な」記事にこれだけの反応は珍しい。
「お叱り」のヤフコメももちろん多かったのだが、褒めてくれる人もいたし、さらに積極的な議論を展開する前向きなコメントも多かった。
ヤフコメを読んでいて、「本当にこれが支持率30%を切って、政権維持が『危険水域』に入っている政権への反応だろうか?」と不思議だった。もしかしたら、世論調査の数字ほど有権者は岸田首相を「憎んで」いないのかもしれない。そうだとしたら反転攻勢のチャンスはあるのだろうか。
記事では、原発処理水の放出などいくつかの実績とともに、「岸田さんがやったダメなこと」として、特にLGBT法の拙速な成立と、異次元の少子化対策を挙げている。
LGBT法成立をきっかけに、岩盤保守層が自民党を離れただけでなく「敵に回った」と以前書いた。岸田首相のやるべきことは「修正」だ。最近も、「体が男性で心が女性」の人が女湯に入って逮捕された。こういう「女性の安全を脅かすこと」が起きないような「仕組み」をつくり、それをアピールすることだ。
また、異次元の少子化対策は、あれで子供が増えるのか疑問なうえ、財源として現役世代が多く負担する健康保険料を値上げするのは愚の骨頂だ。これは今後、防衛増税よりはるかに批判を呼ぶ。直ちに修正すべきだ。
2度目の安倍晋三政権が7年9カ月も続いたのは、常に政策をリアリスティックに修正したからだ。岸田首相も間違っている部分は修正し、実績を増やせば国民の評価は変わってくると思う。
●巨額裏金疑惑、自民に動揺=広がる疑心―安倍派パーティー券不記載 12/1
自民党派閥のパーティー券収入不記載問題に絡み、最大派閥の清和政策研究会(安倍派)が巨額の裏金づくりを続けていた疑いが発覚した。岸田政権の中枢にいる同派歴代幹部が事情を知っている可能性もあり、野党からは「リクルート事件以来の大事件」との声さえ出る。求心力低迷に苦しむ岸田政権に追い打ちとなるのは必至だ。
「この場は政府の立場としてお答えしている。個々の政治団体や私の政治活動については差し控える」。1日、安倍派で「閥務」を取り仕切る事務総長を務めていた松野博一官房長官の記者会見は裏金疑惑に質問が集中したが、松野氏は事実上のノーコメントを繰り返した。
同派の裏金の総額は2022年までの5年間で1億円以上に上るとみられ、東京地検特捜部が捜査を進めている。この間の事務総長は、松野氏が19年9月から21年10月まで、その後西村康稔経済産業相が22年8月まで、高木毅自民党国対委員長が現在まで務める。
幹部らは1日、一様に「貝」となった。安倍派座長の塩谷立元総務会長は午前、「事実関係を精査する」とコメントした後、報道陣の取材を振り切った。高木氏も国会から雲隠れし、西村氏は閣議後の記者会見で「個々の政治団体の話なので答えを控えたい」と語った。
パーティー券収入の一部を払い戻すキックバックについては、塩谷氏が前日、派内で行われていたことを一時認めたが、すぐさま撤回。参院安倍派会長を務める世耕弘成参院幹事長は1日の会見で、自身がキックバックを受けたことはないか問われ、「慎重に事実関係を調査し、適切に対応させたい」と直接の回答を避けた。
政府・自民党内ではパーティー券収入不記載問題が明るみに出て以降、裏金づくりの存在がささやかれ「この件はさらに進展する」(自民関係者)との見方が広がっていた。
ある安倍派関係者は「安倍派の事務処理がずさん過ぎる」と述べつつも、「うちだけで収まる話のわけがない。他派閥もやっていることだ」と党内に疑いの目を向ける。他派閥の閣僚経験者からも「裏金というと聞こえは悪いが、パーティー券をノルマ以上に頑張って売ってくれた人にお返しするということ。悪質とまでは言えないのではないか」と同情する声が漏れる。
立憲民主党の泉健太代表は1日の会見で、「他派閥でも行われたと想像するのは当然だ」と強調。「この(臨時)国会で岸田文雄首相や自民党に説明を求める」と明言した。
「政治とカネ」の問題では、東京都江東区長選を巡り、自民党の柿沢未途前法務副大臣に対する東京地検特捜部による買収容疑での捜査も進んでいるもよう。政府関係者は「『裏金』スキームは悪質。年明け以降、捜査が本格化するだろう」との見通しを示しており、来年1月の通常国会でも自民党の政治資金の在り方が主要テーマとなる可能性がある。
党内では「これでは衆院解散などとても打てない」(中堅)との空気が大勢を占めつつある。岸田文雄首相は訪問先のドバイで「情勢を確認して答えたい」と述べるにとどめ、政府高官は「当面様子を見るしかない」とうめいた。 
●岸田首相に踏み絵<gリガー条項、政策実現に死に物狂い 12/1
国民民主党の玉木雄一郎代表が、夕刊フジの単独インタビューに応じた。2023年度補正予算は29日、参院本会議で可決、成立した。一般会計の歳出(支出)は13兆1992億円。今回の採決では、自民、公明与党だけでなく、国民民主党や日本維新の会などが賛成に回った。玉木氏は賛成の代わりに、岸田文雄首相にガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除を迫っている。これには、岸田政権に影響力を持つ財務省側が抵抗しているとされる。玉木氏は、トリガー条項の凍結解除について、「国民のための政策実現」「減税にすれば税金が天下り団体に漏れていくことがなくなる」と指摘。岸田首相が言及した憲法改正には、「自民党の保守派へのパフォーマンス」「やるやる詐欺だ」と喝破した。
財務省が牽制か
トリガー条項は、レギュラーガソリンの全国平均価格が1リットル当たり160円を3カ月連続で超えた場合、約25円の課税を停止し、130円を3カ月連続で下回れば元の税率に戻る仕組みだ。民主党政権時代の2010年に導入されたが、11年に東日本大震災後の復興財源確保を名目に凍結され、これまで適用された例はない。
玉木氏は「わが党は、2年前の衆院選から唯一、凍結解除とガソリン値下げを公約に戦った。選挙公約は、死に物狂いで実現せねばならない。野党も与党もその姿勢がないから、政治不信が高まっている」と強調する。
凍結解除のメリットは何か。
「補助制度は時の内閣が裁量で決める。トリガー条項は法制度に基づき、透明性が高い。エネルギー高騰への出口戦略として、補助から減税≠ノ移行すべきだ」
岸田首相が自民、公明、国民民主の3党で凍結解除について協議するよう指示したところ、財務省の牽制(けんせい)も始まった。鈴木俊一財務相は凍結解除について「国、地方合計で1兆5000億円もの巨額の財源が必要」などとクギを刺した。
減税で財政効率上がる
首相自身も灯油や重油が支援対象外となり、流通を混乱させるとして慎重な考えを示してきた。自民党内も慎重論が大勢を占めるが、玉木氏は、こうした指摘を退ける。
「補助金による激変緩和事業のうち、70%超がガソリンと軽油だ。これを補助から減税に振り替える。トリガー対象外の油種は補助金を継続すればいい」「鈴木財務相は1・5兆円の財源が必要というが、補助金ではそれをはるかに上回る予算が費やされている。減税にしたほうが、途中で天下り団体に漏れていくことがなくなり、財政効率は上がる」
凍結解除は、昨年春にも3党で協議したが見送られた経緯がある。玉木氏は今回の協議に「背水の陣で臨む」とし、進退について覚悟≠表明している。
「国民のため政策実現するには野党でも、与党でも協力する。与党にすり寄るのではなく国民生活に寄り添う。凍結解除もそうだ。補助金制度のムダが出たなら弊害を取り除くのはわれわれの責任だ」
岸田政権に是々非々で臨む玉木氏だが、憲法改正の議論については厳しく批判する。
「現場のやる気、熱意が全く感じられない。岸田首相の総裁任期である来年9月までにやろうとしたら、遅くても7月ごろまでに発議し、国民投票に入らねばならない。来年の通常国会の頃には、ある程度の案文がまとまっている必要がある。テーマを決め、たたき台となるような改正条文案をこの臨時国会で作らねばならないが、今のスピード感では到底無理だ」
国内防衛産業強化も必要 独自色のある外交を
玉木氏はこの背景に与野党の慣れ合いがあるとし、ネオ55年体制≠セと喝破する。
「自民党は『保守派』向けのパフォーマンスだけで、憲法改正する気はないのではないか。『やるやる詐欺』で野党を分断し続ける。一方、ひたすら護憲を叫ぶことで選挙には通る一部野党もいる。この奇妙な共闘関係が、憲法改正を阻んでいる」
中国、北朝鮮、ロシアという核保有国に囲まれ、日本の国防は厳しさを増している。岸田外交をどう見るのか。
「受動的外交はそつなくこなしていると思うが、世界秩序、アジアにおける秩序への構想力、能動的な外交の姿が見えにくい。例えば、中国に対して、同盟国や有志国と連携強化する姿は見せた。その結束を背景に、積極的外交を仕掛けていくべきだ。わが国の国益を増進するために何をやるのか。独自色のある外交も必要だと思う」
玉木氏は、国防強化にも、強い熱意を見せる。
「防衛力強化、防衛費を増やすことには賛成だ。自分の国は自分で守るというのが、われわれの安全保障戦略の基本だ。ただ、増えた予算で、単に米国から装備を買うだけという予算の使い方は、結果として国を強くするとは思えない。国内の防衛産業を強化することも必要だ」
衆院解散・総選挙がくすぶり続ける中、党勢拡大へ、国民民主党は何を訴えるのか。
「日本経済も社会も正念場だ。今、高齢者福祉が大切だと言わない政党はない。その陰で、働いている若手世代の給料は上がらない。わが党は賃上げを言い続け、ようやく国の課題にも上がった。給料が上がっても、税金と保険料があがれば手取りは増えない。社会保険料をこれ以上増やさない社会保障制度改革が必要だ。教育国債を発行して子育て、教育、科学技術、人への投資の無償化、あるいは予算を倍にする。次世代への投資、現役世代や若者を徹底的に応援しないと、今働いている人が高齢者を支えられなくなる。今の若者は、給料が低く、国民負担率が高く、結婚も出産も困難な『無理ゲー』(攻略不可能なゲーム)を強いられている。国民民主党は頑張れば報われる社会を作りたい」
●需給ギャップが再びマイナスに、7―9月期は3兆円不足=内閣府推計 12/1
内閣府は、2023年7─9月期国内総生産(GDP)の需給ギャップがマイナス0.5%だったとする推計値を発表した。3四半期ぶりのマイナス成長となった1次速報を反映し、再びマイナスに沈んだ。実質の年率換算では3兆円程度の需要不足となる。
需給ギャップは日本経済の需要と供給のバランスを示したもので、需要が供給を下回ればマイナスとなる。4―6月期には3年9カ月ぶりにプラスに転じたが、プラス基調に戻せなければ岸田文雄政権が目指す「デフレ完全脱却」の実現が遠退く。
●黒田前日銀総裁の目に余る失敗塗り潰し=c大型消費増税で内需不振 12/1
「中国に投資するなんて言おうものなら、お前は正気かと疑われる」とは、最近会ったニューヨーク・ウォール街の著名投資家の言である。「親中」一辺倒だったウォール街ですら「脱中国」が今や当たり前だ。
日本国内をみると、政官財の指導層は相変わらず中国に甘い。岸田文雄政権は先の米国での習近平共産党総書記・国家主席との会談では中身ゼロの「戦略的互恵」を持ち出す始末で、中国当局による理不尽な日本企業駐在員の拘束、福島第1原発の処理水に対する難癖への対抗策を打ち出す気配はまるでなかった。
日本の指導層の弛緩(しかん)した対中認識は今に始まったわけではない。一端は、連載されている黒田東彦前日銀総裁の日経新聞「私の履歴書」に見える。同連載では黒田日銀の失政塗り潰しが目に余るが、今回は第24回「マイナス金利 原油・人民元安に懸念」(11月25日付)を例に取る。「私は16年1月、スイスでの世界経済フォーラム(ダボス会議)に登壇し(中略)『中国は資本規制を強化した方がよい』と発言した。人民元安が再び日本を含むアジアにデフレ圧力を及ぼす懸念があった」「新興国経済への先行き懸念もあり、世界的な株安や円高が進んでいた。スイスに出発する前、私は追加金融緩和の選択肢を議論できるように、内々に準備を要請していた。帰国後、1月29日の金融政策決定会合で、日銀はマイナス金利政策の導入を決めた」とある。
当時、中国は資本逃避が急増し、習政権は追い込まれていた。為替投機家のジョージ・ソロス氏が同じダボス会議で「中国のハードランディングは不可避だ」と言い放ち、中国市場は大きく揺れた。が、黒田氏が助け舟を出した。人民元は前年12月に国際通貨基金(IMF)特別引き出し権(SDR)構成通貨となり、人民元は円を抜いてドル、ユーロに次ぐ第3位の「国際決済通貨」の座を獲得したばかりだった。人民元のSDR入りの条件は市場自由化だったが、黒田氏は約束履行を迫るどころか中国の規制継続を容認したのだ。
新たにマイナス金利が組み込まれた異次元金融緩和とともに大量発行される日銀資金の増発分相当額は国際金融市場に流出し、その多くが中国に投じられた。こうして習政権は金融危機脱出に成功した(詳しくは拙著「現代日本経済史」《ワニプラス刊》参照)。日本国内では、黒田氏が故安倍晋三元首相に飲ませた2014年4月からの大型消費税増税が招いた内需不振のためにカネは回らず、デフレが続いた。黒田氏が犯した重大な誤りについて、リフレ派諸氏は不問に付すが、拙論だけは黙るわけにはいかない。
中国は今、かつてない金融危機に直面している。グラフはその一端を示す。冒頭の発言通り、米国を中心とする海外投資家は人民元資産を大幅に減らし続けている。人民元は当局の介入によってかろうじて暴落を免れている。岸田政権が習政権の横暴を抑えたいなら、この機をどう活かすかだ。
●安倍派の裏金疑惑 言い逃れは通用しない 12/1
もはや「事務的なミス」という言い逃れは通用しまい。政治資金収支報告書の信頼性を根底から覆す行為で、徹底した説明責任と、「闇」の解明が求められる。
自民党の最大派閥・安倍派(清和政策研究会)が開催した政治資金パーティーで、パーティー券の販売ノルマを超えた売り上げを政治資金収支報告書に記載せず、集めた所属議員に還流させるキックバックを続けていた疑惑が表面化した。最近の5年間で1億円以上の「裏金」になった可能性があり、東京地検特捜部が政治資金規正法違反の疑いで調べているという。
不可解なのは、安倍派の塩谷立座長の対応だ。11月30日にキックバックの慣習があるのか問われ、いったんは「そういう話はあったと思う」と事実上認めたものの、その日のうちに「事実を確認しているわけではないので、撤回したい」と述べた。これでは疑念が膨らむばかりだ。なぜ発言を変えたのか、明確に説明しなければ国民は納得しないだろう。
派閥のパーティーを巡っては、2018〜21年に開かれた5派閥の収支報告書に計約4千万円の過少記載があったとして学者が刑事告発し、各派とも慌てて修正した。このケースは購入した政治団体に支出の記録があるにもかかわらず、そのすべてが派閥側の収入として記載されていなかったことから発覚した。複数議員が同じ団体に販売し、「名寄せ」が不十分だったとしている。
「政治とカネ」の問題で、最も肝心なのはカネの「収入」と「支出」を収支報告書に正確に記載して、透明性を確保することだ。ノルマ以上のパーティー券を売った議員に報いたいならば、派閥と議員側の収支報告書にその分を記載すれば法的に問題がないはずだ。
安倍派の今回の疑惑が事実ならば、「収入」も「支出」も隠蔽(いんぺい)した虚偽の報告書を提出していたことになり、極めて悪質だ。パーティー券の代金が議員個人の領収書不要の使い勝手のいいカネに化けたと疑われても仕方ない。政治資金規正法に基づく制度の根幹を揺るがす背信と言える。
政治資金規正法は、1回のパーティーで20万円を超える購入者・団体名を収支報告書に記載することを規定している。5派閥では、一晩で9千万円から2億円余りを売り上げる大きな資金源となっているからこそ、ありのままの収支を記し、国民の不断の監視の下に置く作業が欠かせない。
過少記載が国会で追及された際、岸田文雄首相らは、パーティー収入の総額は変わらないと強調。裏金づくりではないか、との指摘を全面否定した。
ただ、告発はパーティー券を購入した政治団体の収支報告書と照らし合わせて判明したのであって、報告する必要のない企業や個人の購入に関しては把握できないのが実態だ。
物価高に苦しむ国民は、政治とカネの問題に敏感にならざるを得ない。立て続けに明るみに出たずさんな処理に、政治不信は積み重なる。安倍派は憲政史上最長政権を支えた100人規模の集団だけに、重い責任を負う。低支持率に苦悩する岸田首相は自民党総裁として、各派閥に対してパーティーの収支の総点検をさせ、その結果をつまびらかにしない限り、不信を払拭できないと認識しなければならない。
●安倍派、裏金1億円超疑い パーティー収入還流 ―政治資金問題・東京地検 12/1
自民党の派閥による政治資金パーティー券収入を巡る問題で、最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)が、パーティー券の販売ノルマを超えて所属議員が売った収入について、政治資金収支報告書に記載せず裏金として議員側に還流させていた疑いがあることが1日、関係者への取材で分かった。裏金の総額は2022年までの5年間で1億円以上に上るとみられるという。
告発を受けて捜査している東京地検特捜部の任意の事情聴取に、安倍派関係者がキックバックについて説明していることも判明。特捜部は、政治資金規正法違反(不記載など)容疑での立件も視野に資金の流れなどを調べているもようだ。
安倍派の塩谷立座長は1日、記者団の取材に「これから事実関係を精査する」と述べた。
関係者によると、安倍派では派閥のパーティー券販売について所属議員の役職などによってノルマが与えられる。ノルマを超えて売った分は、議員側にキックバックする運用が続けられてきたという。
派閥や議員側の収支報告書に記載していれば法的には問題ないが、安倍派はいずれの収支報告書にも記載せず、裏金にしてきた疑いがある。裏金の総額は、収支報告書の不記載、虚偽記載罪の時効にかからない18〜22年の5年間で1億円以上とみられる。
●松野官房長官 自民・安倍派の1億円不記載疑惑をめぐり言及避ける 12/1
自民党の最大派閥・安倍派が政治資金パーティーの収入を議員側に「キックバック」し、収支報告書に記載していなかった疑いがあることについて、派閥の事務総長を務めていた松野官房長官は「現在、派閥を代表する立場にない」として言及を避けました。
松野博一 官房長官「現在、派閥を代表する立場にありませんので、それぞれの政治団体は事実関係を確認の上で、必要に応じ説明するなど、必要な対応がなされるものと考えています」
松野官房長官は、2019年9月からおよそ2年間、自民党・安倍派で幹部にあたる事務総長を務めていましたが、派閥の政治資金パーティーに関する一連の問題をめぐり、「現在、派閥を代表する立場にない」として言及を避けました。
また、松野氏は「この記者会見は政府の立場としてお答えしていると認識している」と強調した上で、「まずは政治団体において精査した上で説明するということに尽きると思う」と述べるにとどめました。
●安倍派 パーティー収入不記載 5年で数億円か キックバック疑い 12/1
自民党の最大派閥「清和政策研究会」安倍派が、所属する議員がパーティー券の販売ノルマを超えて集めた分の収入を議員側にキックバックし、派閥の政治資金収支報告書に収入や支出として記載していなかった疑いがあることがわかりました。関係者によりますと、議員側にキックバックされた資金の総額は去年までの5年間で数億円に上るとみられ、東京地検特捜部は資金の流れなどについて調べを進めているものとみられます。
自民党の派閥の政治資金をめぐっては、複数の派閥が、所属する議員の役職や当選回数などに応じてパーティー券の販売ノルマを設定し、ノルマを超えて集めた分の収入を議員側にキックバックしていたことを示すリストを作成していたことがわかっています。
このうち自民党の最大派閥「清和政策研究会」安倍派が、議員側にキックバックした販売ノルマを超えた分の収入を、派閥の政治資金収支報告書にパーティーの収入や議員側への支出として記載していなかった疑いがあることが関係者への取材でわかりました。
安倍派のパーティー収入は、去年までの5年間にあわせておよそ6億5800万円と収支報告書に記載されていますが、関係者によりますと収支報告書にはノルマ分が収入として記載されていて、議員側にキックバックされた資金の総額は去年までの5年間で数億円に上るとみられるということです。
また、キックバックを受けた議員側の政治団体も収入として記載していない疑いがあるということです。
政治資金規正法は政治資金パーティーを主催した団体が収入の総額を収支報告書に記載することを義務づけています。
東京地検特捜部もこうした経緯を把握し、派閥の会計責任者などから任意で事情を聴いていて、資金の流れや収支報告書が作成された経緯などについて調べを進めているものとみられます。
塩谷 元文部科学相「これから事実関係を精査」
自民党安倍派の座長を務める塩谷 元文部科学大臣は「これから事実関係を精査する」というコメントを出しました。
岸田首相「国内情勢を確認してから答えたい」
岸田総理大臣は訪問先のUAE=アラブ首長国連邦で、自民党の派閥の政治資金をめぐる問題への見解や対応を問われ「これからCOP28の開会式に臨むところだ。会議に専念しているところなので、国内情勢を確認してから答えたい」と述べました。
松野官房長官「政府の立場で答えること 差し控える」
松野官房長官は記者会見で、記者団から「かつて事務総長を務めていた安倍派ではノルマを超えて集まった収入を所属議員にキックバックしていたのか」と問われ、「個々の政治団体の活動に関して政府の立場で答えることは差し控える。それぞれの政治団体の責任で必要な対応がなされると考えている」と述べるにとどめました。
また「みずからが派閥のパーティー券を販売して得た収入は全額、派閥に納めてきたのか」という質問に対しては、「この場は政府の立場として答えているものと認識しており政治団体や私の政治活動に対するお尋ねについては差し控えたい」と述べました。
宮下農相「私自身の事務所ではキックバックの事実はない」
自民党安倍派に所属する宮下農林水産大臣は、閣議のあとの会見で「私自身の事務所ではキックバックの事実はなく、そうしたことは認識していない」と述べました。
その上で、ノルマがあったのか問われたのに対し、「その時その時で目標額というか、目標に向けてお願いして、ということだ。基本的に、『超えて戻す』ということはなかった」と述べました。
西村経産相「各政治団体の責任で対応や説明がなされるべき」
過去に自民党安倍派の事務総長を務めていた西村経済産業大臣は、閣議のあとの会見で、「報道は承知しているが、個々の政治団体の活動に関して政府の立場で答えることは差し控える。それぞれの政治団体の責任で必要な対応や説明がなされるべきだと考えている」と述べるにとどめました。
高市経済安保相「返してもらう話には至ってなかったと記憶」
かつて自民党安倍派の前身の派閥に所属していた高市経済安全保障担当大臣は記者会見で「派閥のパーティーでは、割り当てられた枚数のパーティー券を売り切るのが精いっぱいだったので、よけいに販売して返してもらうような話には至ってなかったと記憶している。その仕組み自体、私には分からない」と述べました。
自民 世耕参院幹事長「事実関係を調査 確認し適切に対応」
安倍派に所属する自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「慎重に事実関係を調査・確認のうえ、適切に対応していくことが重要だ。政治資金収支報告書の修正が繰り返されているので、われわれは真摯(しんし)に受け止め、再発防止に努めることが重要だ」と述べました。
また「キックバックを受けた経験はないか」と問われたのに対し「政策集団の会計に関わることであり、刑事告発を受けたという報道がある以上は、慎重に事実関係を調査・確認して適切に対応させたい」と述べました。
立民 泉代表「自民党や総理に説明求めたい」
立憲民主党の泉代表は記者会見で「安倍派で裏金があったということであれば、そのお金がどう使われたのか明らかにしなければいけない。安倍派に限らず、ほかの派閥でも同様のことが行われていたのではないかと国民が想像や推測するのは当然で、自民党や岸田総理大臣に説明を求めたい」と述べました。
維新 馬場代表「自浄能力を発揮して調査し国民に説明を」
日本維新の会の馬場代表は、記者団に対し「事実とすればゆゆしき事態だ。自浄能力を発揮してきちんと調査し、国民に説明するよう求める。政治とカネの問題は、政治に対する信頼を低下させる一番の要因になるので、襟を正してもらわなければ政治全体に悪影響が出る」と述べました。
公明 石井幹事長「誠実な対応と説明を」
公明党の石井幹事長は記者会見で「各派閥や政治団体がしっかりと説明を尽くすことが重要であり、国民の信頼が得られるような誠実な対応と説明をしていただきたい。プラスのイメージにはならないが、内閣支持率を上げる奥の手はないので、政府・与党としては直面する課題にしっかり取り組んでいく以外にない」と述べました。
共産 田村政策委員長「首相の説明責任 追及していく」
共産党の田村政策委員長は記者会見で「裏金作りがあったということではないか。岸田総理大臣は、お金の動きをきちんと調査し、国民に説明する責任を果たさなければならず、追及していきたい。抜本的な法改正が必要で、政治資金パーティーを含む企業・団体献金を全面的に禁止する法案を提出したい」と述べました。
●岸田首相トップ、2億円超 党首収入比較、平均4452万円―22年政治資金 12/1
2022年の政治資金収支報告書から与野党各党首の収入を比較したところ、岸田文雄首相(自民党総裁)が2億679万円でトップだった。自民総裁が首位となるのは9年連続で、2位に4倍以上の差をつけた。党首の平均は4452万円だった。
各党首の資金管理団体と政党支部の収入を合計して比較した。共産党、みんなでつくる党の2党首は該当団体がないなどの理由で除いた。
首相は、東京や地元広島で開いた収入1000万円以上の「特定パーティー」7回分について、前年の政治資金パーティー収入を上回る1億4872万円を記載。個人・団体からの寄付では、日本医師会の政治団体「日本医師連盟」などから計3338万円を集めた。
2位は国民民主党の玉木雄一郎代表で4720万円。党からの交付金が減った影響で、前年から総額を2500万円以上減らした。立憲民主党の泉健太代表は3307万円で、前年から減少したものの3位に浮上した。
日本維新の会の馬場伸幸代表が2335万円で4位。収入の柱だった個人献金が大幅減となり、総額は前年の約4割だった。5位は社民党の福島瑞穂党首の2149万円で、個人からの寄付が半分近くを占めた。6位が公明党の山口那津男代表の1176万円。7位のれいわ新選組の山本太郎代表は859万円で、寄付の割合が7割以上に上った。
参政党の神谷宗幣代表は対象が資金管理団体のみで392万円だった。
 12/2

 

●佐藤ゆかり前衆議院議員 「パーティーばっかり…本末転倒」 12/2
11月29日の国会に先立つ予算委員会の質疑で、自民党の政治資金パーティーに関する収支報告書の記載漏れについて、野党が追及した。 政治資金パーティーの実態や問題点について、前衆議院議員の佐藤ゆかりさんに詳しく聞いた。
「政策をやりたいが、パーティーをやらなければいけない」
政治資金パーティーの売り上げは大きな金額となっている。各派閥のパーティー収入報告書によると、2022年は一番多かった麻生派が約2.3億円、岸田派・茂木派・二階派はそれぞれ約1.8億円を売り上げた。これは派閥の収入の8割ほどを占めているそうだ。 これほどまで政治資金って必要なものなのか?
佐藤ゆかりさん: 全てが利益にはならないんです。これは収入で、経費で回っていくわけです。私も議員活動をやっていましたけれども、税金だけでは到底政治活動というのは回らないです。ですからパーティーをやって収入を集めて、そこから私設秘書の人件費を払ったり、活動費を払ったり支出がどうしても必要です。パーティーをするとか、あるいは裕福な方は自己資金を投入して政治活動をやるとか、そういうことでないと今の政治は活動できないです。これでもかつかつぐらいだと思いますね。
政治というのが、こういうことをしないと回らないのなら、日本の政治が回っていないと言えるのではないのか?
佐藤ゆかりさん: 本当にパーティーばっかりやって何してるのか。本来政策についてやりたいところが、パーティーをやらなければいけない。本末転倒で、ちょっとこれは違うなと思いますね。
――佐藤さんご自身、お金集めの必要性は感じていましたか?
佐藤ゆかりさん: 国会議員の時代に、例えば秘書を大体10人ぐらい雇うわけです。そのうちの3人しか税金で人件費が出ないです。残り6、7人は自腹で払いますから、自己資金を持っていない人は当然パーティーをやって収入を集めて、それで人件費や活動費・移動費に出したり、秘書の宿泊費に出したり、広報宣伝費でニュースレターを印刷したり、ポスター刷ったり、いろいろあります。派閥だけじゃなく、個人でもやらないと間に合わないのが現状です。
2万円で「コーヒー1杯・名産品・本」ということも
取材した自民党の中堅議員の個人パーティーの内容で、コロナ禍ではあったが、最も価格と中身に乖離があると記者が感じたケースを紹介する。参加費2万円のパーティーで出されたのは、コーヒー1杯、選挙区の名産品、議員が執筆した本だった。これで2万円だったら、利益率がとても高いとはいえ、結局個人献金ではないかと思われかねないのではないのでは。禁止されている政治家個人への献金のようにみられ、政治不信につながるのではないかと気になった。
佐藤ゆかりさん: そうですね。個人献金は、政治家個人に献金をしてはいけないと禁止されています。パーティーの収入が入る先は、個人ではなくて政党支部に入ります。議員が代表を務めている支部に入るので、違法行為ではありません。ただしこれだけの資金がないと政治活動が回っていかないという、日本の民主主義の仕組みそのものが限界に来ているのではないかなと、やはり私は思います。
収支報告書の記載漏れは「起こり得る」
野党が追及したパーティー収入の記載漏れはなぜ起きたのか。 派閥側の説明では、ある政治団体が同じ派閥に属する議員3人から10万円ずつパーティー券を購入した。この政治団体は派閥のパーティー券を30万分購入しているが、各議員から派閥への報告は10万円ずつで、収支報告書に記載が必要な20万円を超えていない。3件全てが同じ団体からのお金だと確認することをしないため、派閥としては記載する必要がないと判断してしまったということだ。
さらに野党からは現在、記載されていないお金を裏金に回しているのではないかという疑惑も追求されている。
――このようなケースは、実際にあることなのですか?
佐藤ゆかりさん: 起こり得ます。派閥のパーティーですと、複数の議員が一つの同じ団体に対して売りに行くわけです。そうするとその団体はいろんな議員の顔を立てたいと考えて、この人から10万円、この人からも10万円…合計すると団体が派閥に対して30万円支払っていたと。銀行の通帳を見るとカタカナで名称の一部が記載されていますよね。あのカタカナだけだと、3回に分けて入ってくると、なかなか分からないことがあるかもしれません。ただ一つの団体から、一つの派閥に対して30万円であれば、記載しなければいけません。
――記載漏れがあるとすると、裏金になっているのではないかと疑いを持たれることにもなりますよね?
佐藤ゆかりさん: 当然、疑惑を持たれて仕方がないです。記載漏れですから。
不透明なお金の流れは政治不信につながる。チェック体制をしっかり整える必要があるのではないのか。
●武見厚労相、医療界から多額献金 相次ぐ閣僚の大規模パーティー 12/2
2022年の政治資金収支報告書で、野党が問題視する「政治とカネ」に絡む記載が改めて確認された。武見敬三厚生労働相は、医療界から多額の献金を受領。自粛が求められる大規模パーティーを開催する閣僚も相次いだ。自民党派閥の政治資金パーティー収入を巡る「裏金」疑惑が浮上する中、野党は一段と追及を強めそうだ。
武見氏は、父親が過去に日本医師会の会長を務め、自身も医師会の政治団体「日本医師連盟」から推薦を受けたことがあるなど、医療界と関係が深い。報告書によると、資金管理団体が医師や関係団体から、献金や「勉強会」の会費として2000万円超を集めた。過去3年間の総額は少なくとも1億円に上る。
24年度の診療報酬改定で、日本医師会などは大幅な引き上げを求めている。業界から手厚い支援を受けてきた武見氏が議論の調整役を務めることに、野党からは「医師会の代弁者になるのではないか」などと疑問の声が上がる。
政治資金パーティーを巡っては、岸田文雄首相が収入1000万円以上の「特定パーティー」を計7回開いたと報告書に記載。閣僚らに大規模パーティーの開催自粛を求める「大臣規範」に抵触すると国会で指摘された。
岸田内閣では、22年当時に現職だった林芳正前外相、加藤勝信前厚労相らも開催。今後、批判を招く可能性もある。
●資金力トップは西村経産相 「ポスト岸田」比較、茂木氏が2位 12/2
2022年の政治資金収支報告書で、「ポスト岸田」として名前が挙がる自民党議員8人の収入を比較したところ、トップは西村康稔経済産業相の1億8997万円だった。茂木敏充幹事長が1億8526万円で迫り、3位に林芳正前外相が続いた。
各議員が代表を務める資金管理団体と政党支部の収入を合算し、両団体間の資金移動を除いて比べた。
西村氏は22年中に東京都内で大規模な政治資金パーティーを3回開催。地元の兵庫県内を中心にセミナーを重ね、事業収入が1億2100万円に上った。支出も8人中最多で、交際費や渉外費などの「組織活動費」に4800万円を計上。このうち、パーティー券の購入とみられる「会費」が1200万円超あった。支出先には自民党他派閥の議員も広く含まれ、来年の党総裁選をにらんだ支持拡大の意味合いもありそうだ。
茂木氏は伸び率が最も高く、前年比23.9%増だった。パーティーを前年の倍となる4回開催し、収入が6000万円程度増えたことが主因。一方で、支出は前年から3700万円減っており、総裁選を見据え資金を蓄えた可能性がある。
林氏は個人や企業・団体からの寄付が減り、前年を下回る1億2470万円だった。支出は3割近く増加し、飲食代や土産代が目立つなど、関係者との交流を重視したことがうかがえる。
勉強会を立ち上げるなど総裁選への意欲をにじませる高市早苗経済安全保障担当相は、1億2165万円で4位。支出では、パーティーやセミナーへの「会費」の件数が多かった。
5位は小泉進次郎元環境相で、パーティー収入を伸ばし1億1088万円。6位の河野太郎デジタル相は企業・団体寄付の減少が響き、前年より8400万円少ない1億138万円だった。
石破茂元幹事長は4835万円、上川陽子外相は3179万円にとどまり、いずれも減収となった。
●安倍派「裏金」疑惑、自民に逆風必至…要職多数で政権にも影響か 12/2
自民党5派閥が政治資金パーティーの収入を収支報告書に過少記載したとして告発された問題は、最大派閥・安倍派による組織的な裏金作りの疑いが浮上する事態に発展した。党全体への逆風が強まるのは必至で、岸田首相の政権運営に影響する可能性も出ている。
言及避ける
「慎重に事実関係を調査確認の上、適切に対応していくことが重要だ」
同派所属の世耕弘成参院幹事長は1日の記者会見でこう述べ、裏金疑惑について言及を避けた。
自民内では、新たな「政治とカネ」の問題の浮上に危機感が広がっている。読売新聞社の世論調査では夏以降、内閣支持率が続落する一方、自民支持率は大幅には落ち込まず、3割前後で推移してきた。党幹部は「かなりまずい事態だ。個別の派閥の不祥事とはいえ、党全体に批判が飛び火する。党支持率も下がる」と危惧する。
連立を組む公明党からも苦言が相次いでいる。石井幹事長は1日の記者会見で「国民の信頼が得られるような誠実な対応に努めてほしい」と求めた。
不信の目
安倍派は松野官房長官、西村経済産業相、萩生田政調会長ら「5人衆」が中枢を担う。いずれも岸田政権の要職に就いており、国民の不信の目が党や政府に向けられる事態は避けられない。松野氏は1日の記者会見で裏金作りについて問われ、「政府の立場としてお答えは差し控える」と繰り返したが、政府内からは「説明責任を果たさないと、疑惑は深まるばかりだ」(高官)との声があがっている。
野党追及
野党は国会審議などで追及を強める構えだ。立憲民主党の泉代表は1日の記者会見で「安倍派に限らず、他派でも行われていたのではないか。説明責任を果たしてもらわねばならない」と語気を強めた。日本維新の会の音喜多政調会長は「政治とカネの問題は最も国民の信頼を失う。ゆゆしき事態だ」と批判した。
●前原新党 野党結集 口だけでなく 12/2
岸田内閣の支持率は最低水準で推移しているのに、野党への期待は一向に高まらない。野党が分立し、巨大与党に対峙(たいじ)できない「多弱」状況を脱する呼び水になれなければ、生き残りのための離合集散と見透かされよう。
国民民主党の前原誠司代表代行が、新党「教育無償化を実現する会」の結成を表明した。一緒に離党届を提出した3人に、無所属の1人を加えた国会議員5人で構成する。前原氏は会見で、「政策本位で非自民、非共産の野党結集を進め、政権交代の選択肢をつくる」と動機を語った。
前原氏は、政策実現を掲げて政権与党とも連携する玉木雄一郎代表の党運営に異議を唱え、9月の代表選に立候補したが大差で敗れた。玉木氏が、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」発動の検討を大義名分に、問題だらけの補正予算に賛成するなど、岸田政権への傾斜を深めたことから、たもとを分かつ決心をしたようだ。
第2次安倍政権以降、バラバラな野党の非力が、国会審議を形骸化させ、政府へのチェック機能の低下を招いた。自公政権に代わる受け皿をつくり、政治に緊張感を取り戻す必要性に異論はないが、額面通りに受け取れない事情も透けてみえる。
前原氏は綱領で新党を「改革政党」と位置づけた。日本が抱える難題を解決するカギが「教育無償化」だとして、それを党名にし、教育予算の倍増以上、奨学金の返済免除などを前面に打ち出した。
ただ、教育無償化といえば、日本維新の会の看板政策だ。前原氏はもともと維新との連携を探っており、新党は維新への合流の布石ではないかとみられている。
年末間近のタイミングでの結党についても、政党交付金目当てではないかと指摘される。1月1日時点で国会議員5人以上を有する政党は交付対象となるからだ。
あくまで野党の結集が本意だというなら、実行で示すしかあるまい。しかし、野党第1党の立憲民主党と、次の衆院選でその座をとって代わろうとしている維新の手を結ばせるのは容易ではない。維新の馬場伸幸代表はかつて、「第2自民党でいい」と発言し、連立参加の可能性も否定しなかった。「非自民」を本当に貫けるのか。
前原氏は民進党代表だった17年の衆院選に際し、小池百合子東京都知事が率いる希望の党との合流を決め、野党勢力の分立を招いた。その責任を深く自覚するなら、結集の実をあげるべく全力を注がなければならない。 
●世界にアピールする岸田首相のグリーン・トランスフォーメーション(GX)、低評価 12/2
G7(主要7カ国)の議長国を務める岸田文雄首相は12月1日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)に出席し「日本は2030年度に46%減、さらに50%の高みに向け挑戦を続けている。すでに約20%を削減しており、着実に進んでいる」と演説した。
日本はGX(グリーン・トランスフォーメーション)推進法に基づき成長志向型カーボンプライシング構想を進めている。来年には国際認証を受けて世界初の国によるトランジション・ボンドを発行する。排出削減、エネルギーの安定供給、経済成長の3つを同時に実現するGXを加速させる戦略だ。アジアゼロエミッション共同体の首脳会合も初開催する。
福島原発事故で原子力への拒絶反応が根強く残る中、岸田首相は「徹底した省エネ、再生可能エネルギーの主力電源化、原子力の活用を通じたクリーンエネルギーの最大限の導入を図る。私たちには太陽光の導入量が世界第3位という実績がある」と世界で再エネ容量を3倍にし、エネルギー効率改善率を2倍にするCOP28議長国UAEの目標に賛同した。
政府や産業界から独立した環境エネルギー政策研究所によると、昨年の全発電電力量における自然エネルギーの割合は22.7%。化石燃料による火力発電は72.4%と前年の71.7%から増加した。原子力発電は4.8%となり、前年の5.9%から減少した。欧州では自然エネルギーの割合が40%を超える国が多く、欧州連合(EU)の加盟国平均でも38.4%に達している。
「石炭火力については各国の事情に応じて」
化石燃料依存に環境団体から批判の目が向けられる中、岸田首相は「排出削減対策の講じられていない石炭火力発電所については各国の事情に応じたネットゼロへの道筋の中で取り組まれるべきだ。日本も自身の道筋に沿い、エネルギーの安定供給を確保しつつ排出削減対策の講じられていない新規の国内石炭火力発電所の建設を終了していく」と強調した。
演説は日本語で行われたため、会場の拍手はまばらだった。昨年、世界の温室効果ガスの排出量は過去最大を記録し、今年も異常気象が相次ぐ。9月に公表された第 1 回 グローバルストックテイク(パリ協定の目標達成に向け各国が温室効果ガス排出量の削減目標を評価する仕組み)報告書では世界は1.5度目標と整合する道筋から外れているとの警告が発せられた。
地球環境市民会議(CASA)の早川光俊専務理事は「岸田首相のスピーチはまったく評価できない。地球沸騰化や、瀕死の状態といわれる1.5度目標への危機感がない。石炭火力についても石炭火力自体の廃止には言及しなかった。30年までの対策が決定的に重要だとの認識に欠けていると言わざるをえない」と厳しい。
FoE Japanの橋英恵氏は「『排出削減対策が講じられていない新規の国内の石炭火力の建設をやめる』との宣言は非常に周回遅れの発言と言わざるを得ない。日本は国内にあるすべての石炭火力発電所を段階的に早急に廃止するための明確なスケジュールを策定するべきだ。原子力にも頼るべきではない」と強調する。
人生の大半を環境問題に費やすチャールズ国王
日本国憲法前文で「国際社会において名誉ある地位を占めたいと思う」と宣言した高い志はいったいどこに行ったのか。一方、昨年はエジプトのシャルム・エル・シェイクで開かれたCOP27は成長至上主義者のリズ・トラス英首相(当時)から出席しないよう釘を刺されたチャールズ国王だが、今年はCOP28への出席が叶った。
長年にわたる環境問題の活動家として知られるチャールズ国王は自国のスコットランドで開催されたCOP26の開会式で「世界の意思決定者が貴重な地球を救い、危機に瀕した若者の未来を救うために力を合わせられるよう、違いを克服する現実的な方法を見出すことを強く求める」と呼びかけ、喝采を浴びた。
COP28でチャールズ国王は「私は地球温暖化、気候変動、生物多様性の損失など人類が直面する存亡の危機を警告することに人生の大半を費やしてきた。UAEが誕生して数十年の間に大気中の二酸化炭素は30%増え、メタンガスは40%近く増加している。グローバルストックテイク報告書が示すように私たちは軌道から大きく外れている」という。
「私は英連邦内外で気候変動によって生活と生計が破綻し、度重なる衝撃に耐えられなくなった無数の地域社会を見てきた。バヌアツやドミニカのような脆弱な島国ではサイクロンが繰り返し襲い、最も脆弱な被害者の犠牲が増大している。インド、バングラデシュ、パキスタンは未曾有の洪水に見舞われ、東アフリカは数十年にわたる干ばつに苦しんでいる」
英国の温暖化対策を遅らせるEU強硬離脱派リバタリアン
トラス前首相の背後には英与党・保守党内の欧州連合(EU)強硬離脱派リバタリアンが蠢いている。気候変動では「負の外部性(経済活動が第三者に有害な影響を与えること)」が発生するため、規制という政府の介入が不可欠になる。リバタリアンはこれが我慢ならない。彼らが主張する市場原理主義を貫けば英国の温暖化対策は大幅に後退しかねない。
リバタリアンの圧力に屈したのか、リシ・スナク英首相は9月20日「電気自動車への移行を緩和する。2035年までガソリン車やディーゼル車を買うことができる」と発表し、ガソリン車、ディーゼル車の新車販売禁止をこれまでの30年から5年間先送りした。ガスボイラーから環境に優しいヒートポンプへの移行も緩和した。しかし国王の立場は政治とは異なる。
チャールズ国王は「世界の平均気温が記録史上最高というニュースを見たとき、私たちはこれが実際に何を意味するのか一歩立ち止まって考える必要がある。私たちは自然界をバランスの規範や限界から逸脱させ、危険な未知の領域へと踏み込んでいる。私たちはあらゆる生態学的条件を一挙に変化させる広大で恐ろしい実験を行っているのだ」と釘を刺した。
「自然に逆らわず、自然と調和した未来を。皆さんの手には私たちの共通の希望を守り続ける見逃すことのできないチャンスがある。孫たちは私たちがしたこと、あるいはしなかったことの結果を背負って生きていくことになる」。岸田首相もチャールズ国王の演説に耳を傾け、今すること、しないことが未来に持つ意味をもう一度考えてみてほしい。
●75歳医療費、原則2割の検討案 少子化対策の財源に充当へ 12/2
政府内で、月内に策定する社会保障の改革工程表を巡り、75歳以上の人が医療機関で支払う窓口負担の原則2割への引き上げを検討すると盛り込む案があることが分かった。児童手当の拡充など少子化対策の財源に充てたい考え。複数の関係者が2日、明らかにした。現在は多くの人が窓口負担1割のため、負担増となる政策が岸田政権に打撃となる可能性があり、調整は難航しそうだ。
少子化対策は年間3兆円台半ばの追加財源が必要となる。政府は、このうち1兆円超を医療など社会保障の歳出改革で捻出する方針。工程表には2028年度までに取り組むメニューをまとめる。
75歳以上の後期高齢者の医療費は全体の40%弱。
●「池田大作と自民党」知られざる蜜月50年 12/2
「信濃町の2人の池田だ」
公明党と自民党との連立政権が成立したのは99年のこと。現在の協力関係はそこから始まったかに思えるが、実際には先ごろ亡くなった創価学会・池田大作名誉会長が公明党を結党する以前に築かれていた。巨大宗教団体のカリスマはいかにして政界に影響を与え続けたのか。知られざる60年の蜜月に迫る。
去る11月15日、創価学会・池田大作名誉会長が、老衰のため逝去し、3日後の18日に第一報が伝えられると、永田町界隈には大きな衝撃が走った。言うまでもなく、創価学会が連立与党である公明党の最大の支持母体であるからだ。
岸田文雄総理は報道があった同日にすぐさま、自身の公式サイトや](旧Twitter)で、総理大臣名義で異例の追悼コメントを発表。翌19日には弔問にも訪れている。いかに自民党にとって公明党との連携が重要なものかを如実に示す行動と言えるだろう。
両党の関係の源流は、64年の公明党結党以前にさかのぼるとも言われる。季刊誌「宗教問題」編集長の小川寛大氏が、公明党の成り立ちを解説する。
「党ができる前から、創価学会は政界進出を強く意識していました。結党前の選挙でも『創価学会系無所属』として立候補者を擁立、国政選挙で当選者も出しています。そして58年に戸田城聖第2代会長が死去したことを受け、60年に池田氏が33歳の若さで第3代会長に就任しました」
その前後の選挙では、現在の公明党とはかけ離れた政治的主張を掲げていたという。小川氏が続ける。
「当時の立候補者は『王仏冥合、国立戒壇建立』という政策を打ち出していました。有り体に言えば、創価学会による宗教国家をつくる、ということです。当然、拒否反応は大きかった」
結党後初の67年衆院選で25議席を獲得して以降は、創価学会や公明党への批判本も大量に出版された。そんな中の69年に起きたのが、批判本に対する「言論出版妨害事件」だった。
「当時から多数の出版物を出していた創価学会は、版元や取次業者に顔が利きました。そのコネで批判本の出版を取りやめるよう裏で圧力をかけていた、と言われますが、特にテレビなどにも多数出演しタレント教授として影響力が強かった藤原弘達氏の著書『創価学会を斬る』への妨害が明るみに出て、大きな社会問題となりました。公明党から著者との橋渡しを依頼された協力者として、当時自民党幹事長を務めていた後の総理、田中角栄の名が挙がったからです」(小川氏)
池田氏は生前、角栄をはじめ、池田勇人、福田赳夫ら歴代総理大臣経験者との友誼を公言していた。特に池田勇人に関しては、
「一説では池田勇人が創価学会本部のある東京・信濃町に居を構え、よく池田大作氏のもとに通っており、大作氏は『信濃町の2人の池田だ』と周囲に話していたとか」(小川氏)
池田勇人は岸田総理が領袖を務める党内派閥・宏池会創始者としても知られる。公明党結党直後の64年10月に退陣し、その後は療養生活に入ったため、池田大作氏との交流は結党以前のことになろう。
つまり、自民党と「池田・創価学会」の蜜月は現在まで60年以上も続いてきたことになるのだ。
公明党議員が中国で極秘折衝
「2人の池田」が池田勇人の死去後しばらく経ってからの発言であり、両者の年齢も30歳近く離れていたことで、「あれは噓だ」「元総理との仲をアピールしたくて風呂敷を広げている」と断じる永田町関係者は少なくはない。ただ、池田氏がそうした海千山千の大物政治家の懐に入り込む「人間力」の持ち主であったのは確かなようだ。
「田中角栄名言集 仕事と人生の極意」(幻冬舎)などを上梓し、田中角栄研究の第一人者として知られる政治評論家・小林吉弥氏が証言する。
「角栄が、『黒い霧事件』の余波で幹事長を辞したのは66年。池田氏が接触した時期には、再び同職に戻っていました。池田氏や公明党はその政治家としての勢いに頼りたかったのでしょう。池田氏と会食した角栄は帰途の車内、秘書に問わず語りでこう言ったそうです。『あれは食えない男だが、なかなかどうして、しなやかな鋼のようだ』と」
「今太閤」と呼ばれた稀代の政治家も池田氏の器量を認め、公明党との連携を深めていく。前述した「出版妨害」が明るみに出ても、両者に亀裂が入ることはなかった。
「『公明党から頼まれてやったわけじゃない、俺が1人で汗をかいただけだ』と語り、池田氏はそれを恩義に感じて、角栄を『いずれ総理になったら面白い』と讃えていたそうです」(小林氏)
その言葉通り、72年に角栄は総理大臣に就任すると、すぐさま日中国交正常化を成し遂げる。昵懇だった公明党の中央執行委員長・竹入義勝衆院議員に極秘折衝を任せるほど関係は良好だった。
角栄は俗に言う「金脈スキャンダル」で退陣後、76年に「ロッキード事件」により逮捕。その影響もあって同年の衆院選で自民党は大敗し、結党以来、初めて単独過半数を割り込んだ。
「これも、自民党と公明党が近しくなる一因でした。政権維持には野党との協力態勢が不可欠、と判断するきっかけになったのです」(小林氏)
自民党と公明党の「強いパイプ」の原点はこうして構築されたのだ。ただ一方で、池田氏自身は70年代以降、徐々に政治の表舞台から姿を消すようになる。季刊誌「宗教問題」編集長の小川寛大氏が言う。
「70年に池田氏が出版妨害事件の謝罪会見を開きます。そこで創価学会幹部の議員兼職をなくし、公明党の自立性を高めるとともに、自身の政界進出も行わないことを確約します。そして宗教的指導者としてよりも、平和主義を訴える文化人としてのスタンスへ移行していくのです」
これにより、公明党も、池田氏の掲げる平和主義、改憲路線へ政策をシフトしていくことになる。
岸田総理はパイプがなく大炎上
本格的な協力関係が明確になったのは、99年の連立与党の形成だった。だが、宗教団体を支持母体に持つ公明党をいきなりパートナーに据えたわけではない。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は、「その裏には、当時の自民党・野中広務官房長官の暗躍があった」とした上で、連立政権に投下した“爆弾男”の存在を明かす。
「野中にとって仇敵であり、自民党に反旗を翻した自由党・小沢一郎議員(現立憲民主党所属)を先に引き込んだのです。自自連立政権を樹立し、ここに公明が加わり自自公連立、自由党の分裂で保守党が誕生し自公保連立となり、保守党が自民党に吸収され、自公連立政権が誕生しました。野中は、恩師の金丸信元副総理の晩年に見舞いの一つにも来なかった元同門の小沢を嫌悪しながらも、連立のために土下座までします。そして周囲に『政権維持のためなら俺は何でもやる。人間相手に土下座はできないが、小沢は悪魔だから何をしても平気だ。連立を組んだ後はアイツだけ叩き出してやる』と語り、実際にそうなったわけです」
連立は野中の執念の産物だったのだ。一時、民主党に政権を奪われた時期もあるが、ジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう証言する。
「連立のうまみがない野党時代にも、公明党の漆原良夫国会対策委員長(現・公明党顧問)と自民党・大島理森幹事長(当時)らが常に連携を取っていました。議員会館の食堂に2人でいるところを何度見たかわかりません。その後も故・安倍晋三元総理は太田昭宏元国交大臣と、菅義偉元総理は創価学会の佐藤浩・元副会長と、といった具合に強力なパイプを築いていきます。しかし岸田政権にはそのパイプがなく、政策面や選挙区の候補者調整で対立することも増え、両党の間には現在、すきま風が吹いています」
そこで出たのが、公明党との関係を良化させたい岸田総理による追悼コメントだ。しかし、結果的には大炎上してしまうハメに。
「いち早く弔意を示したつもりでも、総理大臣名義では政教分離の原則から外れ、批判されることは当然。これも、岸田総理に公明党と相談できるパイプがないから。スタンドプレーに走り失敗したのです。創価学会で絶対的な存在だった池田氏が亡くなったことで、公明党の今後の選挙を心配する声が聞かれますが、大丈夫だと思います。関係者いわく、池田氏の健康不安があった中、1年ほど前から次世代の体制作りを進め、今はほとんど固まっている。むしろ『選挙があれば、先生の弔い合戦だ』と意気込む会員が多く、選挙への士気は高いそうですから」(鈴木氏)
次なる国政選挙で蜜月60年の真価が問われそうだ。
●気候・中東外交、見せ場乏しく 挽回図るも「内憂」拡大―岸田首相 12/2
岸田文雄首相は2日(日本時間3日)までのアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ滞在中、脱炭素に向けた日本の取り組みをアピールし、中東各国首脳にパレスチナ情勢の沈静化を働き掛けた。内閣支持率が低迷する中、外交で挽回を図ったが、見せ場は乏しかった。国内では自民党安倍派の裏金疑惑を中心とする「政治とカネ」の問題が急拡大し、政権運営は険しさを増している。
「アジアの脱炭素化に向けた取り組みを日本がリードするという考え方を示した」。首相は2日、ドバイで記者団に成果を強調した。
ドバイ訪問の主目的は国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)首脳級会合での演説。首相は、温室効果ガス排出削減対策を講じていない石炭火力発電所の国内での新設終了を宣言し、新興・途上国の脱炭素化支援を訴えた。
16日から東京で開く東南アジア諸国連合(ASEAN)との特別首脳会議に合わせ、日本の技術で脱炭素化を進める「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」の首脳会合に臨む。首相周辺は「アジアをリードする」と意気込んだ。
日本は、石炭にアンモニアを混ぜて燃やす「混焼」技術で二酸化炭素の排出量を減らし、一定規模の石炭火力を維持する方針。演説では稼働している発電所の廃止時期に触れなかった。欧州諸国から「延命策」と批判を受けており、今回の首相の「国際公約」に対しても「新鮮味はない」(自民中堅)と冷ややかな見方が広がった。
訪問のもう一つの狙いは中東情勢の安定化だった。イスラエルのヘルツォグ大統領や、同国とイスラム組織ハマスの一時休戦を仲介したカタールのタミム首長らと相次いで会談し、ガザ地区の人道状況改善や事態の沈静化を促した。
首相はヘルツォグ氏に、戦闘休止や人質解放などハマスとの合意を「歓迎する」と表明したが、この会談直後にイスラエルが戦闘再開を発表。首相は「残念だ」と落胆し、同行した政府関係者は「想定していた展開が変わった」と語った。
原油輸入の9割超を中東に依存する日本は、この地域の安定が死活的に重要だ。ただ、日本外交が果たせる役割は限定的で、外務省関係者は「人道(支援)を前面に出すしかない」と認めた。
●政治資金問題、自民党で対応 安倍派疑惑、首相「説明努力を」 12/2
岸田文雄首相は2日、自民党各派閥の政治資金問題に関し、「各政策グループの活動に、国民から疑念を持たれていると感じる。大変遺憾だ」と述べた。その上で「状況を把握しながら、党として対応を考えていく」と表明した。訪問先のアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで記者団に語った。
自民では、安倍派がパーティー券収入の一部を政治資金収支報告書に記載せず裏金を捻出していた疑惑が浮上している。首相は、同派事務総長の経験がある松野博一官房長官、西村康稔経済産業相に説明するよう指示するか問われ、「政治団体の事情は、最もよく知る人間が説明をしていくことがあるべき姿だ。その努力を続けてもらいたい」と強調した。
首相は安倍派の疑惑に関し「告発を受けている案件で、個々の事案にコメントすることは控える」と述べるにとどめた。自身が会長を務める岸田派で