失敗に学ぶものはない

成功の対極に「失敗」がありますが 
「失敗」の対極に成功があるとはかぎりません 
 
失敗に学んでも成功はできません 
世に何千何万の失敗例があり 
何千何万その中の何十何百かが成功を掴み取ります 
 
成功に学びましょう
 


世界の成功哲学50の名著成功哲学で判明した「8つの習慣」「7つの習慣」「7つの習慣」で変わったビジネスマン人生1ビジネスマン人生2
 
失敗 (太平洋战争)    バブル
 
「失敗に学ぶ」 
自虐好きな日本人の言葉遊びです
 
言葉として失敗の対極に成功があるだけです 
失敗に学んでも成功するとはかぎりません
 
失敗と成功の距離は天地無限です 
ピラミッドの底辺が「失敗」で頂上が「成功」でしょうか
 
失敗しない予防注射の効果は認めます 
失敗はなくとも 
消えた人消えた会社は山とあります 
消えた国もあります 
その時点で前例のない新たな「失敗」を犯しただけです
 
新たな「失敗」 
限りのない 人間の欲望 
政治家・領袖のわがまま 
身勝手な夢の実現 
思い出したくない忘れていた「失敗」 
資源の有限認識 
時代が変われば新しい「失敗の種(しゅ)」が生まれるものです
 
限りのない人間の欲望/サブプライムローン 
ババ抜きゲーム 
新たなバブル崩壊の引き金をひきました
 
私の蔵書「複合不況」宮崎義一著・中公新書・1992年  
咽元過ぎて私も忘れていました
 
政治家・領袖のわがまま/北朝鮮 
気違いに刃物
 
身勝手な夢の実現/中国・アジアの覇権 
大東亜共栄圏
 
思い出したくない忘れていた「失敗」/米ソ冷戦・グルジア侵攻 
大国の再生
 
資源の有限認識/ガソリン高騰 
消費拡大から消費のコントロール
 
資源の有限認識/食料高騰 
消費拡大から消費・人口のコントロール
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
これからも 
未知の「失敗」が待ち構えています 
人間の欲望に限りはありません
 
どうしたら防げるのでしょう 
大命題です
   
起きてしまった失敗を 
如何に短時間短期間に終焉収束最小化させることが 
人間の知恵でしょうか

 
2008/ 
 
 
世界の成功哲学 50の名著 
世界的にベストセラーになった成功哲学の本を50冊ピックアップしたブックガイド(読書案内)の本ですが、各書籍のエッセンス(要点)をコンパクトにまとめてくれているので、その内容がどんなものか大まかに知りたいという人にも役立ちます。  
成功哲学というと、仕事(ビジネス)で大きな成功を得る方法だとか、大富豪・権力者になった人の教訓めいた人生論だとか、傑出したリーダーや偉人になるための条件だとか、一般人の日常生活に余り関係のない内容が多いように感じますが、成功の原理原則から自分の人生や仕事、人間関係に関係した何らかの“気づき・アイデア”を得られるところが面白いと思います。  
実際問題として、成功哲学やビジネス書を熱心に読んで実践したからといって、本当にその著者のように破格の経済的成功・社会的上昇が追体験できるわけではないと思いますが、自分なりの上昇・成長・達成に役立ちそうな内容をセレクトして読んでみたり、現状からのモチベーションを高められる考え方(肯定的な認知)を参考にしたりすることができます。  
学術書や哲学書を読み慣れている人からすると、成功哲学の思考法や価値観は本質から隔たった表層的なものに見えやすいかもしれませんが、誰が読んでも前向きに生きようとする姿勢・現状をより良いものにしようとする意欲が刺激されやすいというのが、成功哲学や自己啓発の本が読まれる理由なのでしょう。書いてある通りの内容をそのまま受け容れるといった読み方もありますが、個人的には自分にとって役立ちそうな部分・内容に自然に共感できる要素などを拾い読みしていくくらいの読み方がちょうどいいのではないかと思います。  
成功体験の共通要素として重要視されるのは、現実的な楽観主義・目的の明確化(一つの目的へのリソースの集中)・精神状態の安定(悩んでも解決しないことにとらわれない)・働く意欲・ポジティブな自己暗示・読書と向学心・リスクテイクなどですが、それらは個別的に見ても、自分の人生や仕事を充実させる要素と言えるでしょう。  
世界の成功哲学 50の名著では50冊の本が紹介されていますが、意欲を引きだす・潜在能力を発揮する・富と財産を築く・リーダーシップを発揮するの4つのテーマに分類されているので、各テーマから3〜4冊ずつセレクトして概略と感想を書いてみます。  
50冊の中にはちょっと退屈そうな内容(概略を説明した文章はそれほど詳細なものではないですが)のものも含まれていますが、どの本が面白くて参考になり、どの本が退屈で余り役に立たないと思うのかは読者によってそれぞれ違うでしょう。 
意欲を引きだす  
ぼろ服ディック(1867年) ホレイショー・アルジャー  
伝統的な道徳説話の要素を含んだ貧しい少年の成功物語の19世紀の古典なので、現代には通用しない部分もあるが、社会的・対人的に評価されやすいオーソドックスな人間像を小説形式で表現している。  
成功哲学というよりかは教育・勉強の有効性や勤勉・努力の大切さ、正直・倹約・人助けなどの道徳などを示す訓話的小説に近い。その時々において、自分にできる最大限の努力や工夫をしながら、堅実に自分の仕事や生活の基盤を確立していくという平均的な市民・労働者のライフスタイルを重視しているという意味では、かなり現実的で気を衒った成功法則の要素はない。  
勤勉に努力し続けることの大切さや利己主義に偏らずに他人を助けることの徳など、読み方によっては説教臭さを感じるかもしれないが、靴磨きの貧しい少年がその日暮くらしの生活状況から段階的に抜け出していくプロセスは、苦境から立ち直る勇気を感じさせてくれるだろう。  
ゼロからひとっ飛びで100に行き着く夢のような成功哲学ではなく、ゼロから1へ、1から10へというステップバイステップの地道な勉強や努力、自制、人間関係が実を結ぶことに期待する方法論なので、成功する方法というよりも人生の要素を積み上げて築く方法と言えるのかもしれない。結果としての富の獲得も成功の要因としているが、人格性の向上・倫理の体現・財産の社会還元のほうを重視した内容になっている。  
7つの習慣(1989年) スティーブン・R・コヴィー  
今でも成功哲学書や自己啓発書としてベストセラーになっているコヴィーの7つの習慣は、日本でもよく読まれている本のようだ。真の成功を実現するための原則を、人間の習慣的な行動・思考の観点から考えた本であり、コヴィーの言う真の成功者とは誠実な人格性と普遍的な価値基準を兼ね備えた人のことである。  
どのくらいの富・財産を築いたかとか、社会的な地位や名声をどれだけ高められたかとかは、コヴィーの真の成功の状態とは直接の関係を持っていないところに独自性がある。財力・地位・名声をただ盲目的に追いかけて忙しく生きることは、人生の最終期において自分の成功の基準を満たせないリスクを孕んでおり、ひたすらに忙しく活動して成果を求めるだけの人生は活動の罠にはまると警告する。  
自分の内面に普遍的な価値基準が確立しないままに、みんなが欲しがる金銭や地位ばかりを追い求めることによって、自分が最終的にどのような人間になりたいのか?という成功の基準を見失えば、無意味な活動に自分の時間を浪費する危険があるというのである。  
コヴィーが真の成功の要因として上げているのは、約束をきちんと守る・自分の誤りを認めて改める・自由意志による選択性に責任を持つ・時間の管理をして時間を無駄にしない・面倒や手間を厭わずに率先して行動する・人の話を傾聴することができるなどかなり基本的なことばかりである。  
そして、社会全体を改善しようとか、大衆や貧困層を救済しようとかいうマクロな目的意識を持つことも大切だが、まずは自分の身近にいるひとりひとりの人間に誠実に向き合い、愛情・肯定的評価を注げることのほうが何倍も価値が高いとコヴィーは語る。  
7つの習慣の骨子は、今までの物事・世界の見方を新しい物事・世界の見方に転換するという認知療法的な方法論にあり、自分自身の基本的な認知(考え方)を変えることによって、人生脚本(自分の人生に対する大まかな粗筋・ストーリー)を良い方向に書き換えることができるという。  
このアイデアは、カウンセリング技法の交流分析と共通するものとしても興味深いが、家族や他人の言動・評価によって規定された悲観的な人生脚本・自己認知に支配されてしまってはいけないということであり、自分の考え方で自分の可能性を閉ざさないようにしなければならないということでもある。自分が蒔いたものしか刈り取ることはできないというネットでも有名な格言も含まれている。  
人の心をつかむ―成功を呼ぶ交際術(1956年) レス・ギブリン  
レス・ギブリンは、円滑な人づきあいの本質を理解しており、人づきあいの素質と技術に恵まれた人が社会的・経済的に成功するという。人間関係とは、自他のプライドを損なわずに相互尊重ができるように付き合う技術であり、真の成功や満足の要素としてそういった素晴らしい人間関係を除外することは難しい。  
仕事で成功するためだけではなく、自分自身が心から満足するためにも相互尊重できる人間関係は欠かすことはできないし、人間の欲望とは精神分析家ジャック・ラカンが語るように他者の欲望の欲望という側面を強く持っている。誰もが自分に価値や尊厳が備わっていると感じており、その価値や尊厳を上手く言語化して承認してくれる相手に対して、好意・好印象を抱くようになるというのはおよそ普遍的な人間関係の原則だ。  
自分の価値を貶めたり自尊心を傷つけたりしてくる相手は、人から嫌われたり恨まれたりすることはあっても、好かれたり助けてもらえることは殆どない。他人の人格や存在を尊重して大切にする人は、自分自身も他人から自分の人格や存在価値を肯定的に認めてもらいやすく、あらゆる対話や交渉において説得力を高めることもできる。  
他人を説得して自分の意見に同意させたいのであれば、議論や反論によって相手の間違いを指摘して打ち負かすよりも、相手の意見に敬意を示しつつ落ち着いて事実・根拠を丁寧に提示するだけのほうが格段に効果がある。相手の意見を浅薄で無知なものだとバカにしたり、相手の人間性を揶揄するような表現を用いたりすれば、自分の意見がどんなに正しくても、相手は絶対にその意見を受け容れようとはしなくなってしまうということでもある。  
他人と誠実に向き合い、他人の自尊心や人格性に適切な敬意・配慮を払うことによって、他人を敵ではなく味方として認識することが容易になり、実際にも友好的・協力的な態度を取ってくれる人が増えてくるというのは、時代を問わずに通用する人間関係のセオリーだろう。  
あなたはいまの自分と握手できるか(1986年) アンソニー・ロビンズ  
成功できるか否かは行動を起こす能力と深く関係していて、他人の成功体験からの模倣学習によって、自分自身が成功する確率も高まるというのがロビンズの主張である。ロビンズは誰もが求める力は、人間の外部にある金銭や地位(各種の権力)ばかりにあるのではなく、真の力の源泉は人間そのものであるというところから話を始めている。  
無から何かを創造しようとする意欲やアイデアだったり、他人に自分の思想や表現で影響を与えて動かす説得力だったり、金銭や権力と縁遠い個人であっても発揮できる力の形態があり、そういった個人に内在する力を行動に結びつくことでより良い成果を生み出せるとする。  
ロビンズが重要視しているノウハウは、成功者の人生の軌跡・伝記に学ぶということだが、そのノウハウは自分が見習いたいと感じて尊敬できると思えるロールモデル(理想の役割モデル)を見つけてマネするということに行き着く。  
NLP(神経言語プログラミング)の技法や概念も取り入れており、知覚内容を肯定的なイメージに置き換えるサブモダリティの変換や物事を見る視点(枠組み)を変えることで認知を適応的なものにしていくリフレーミングについても言及されているようだ。脳神経系のシステムを機械的構造として理解することで、脳機能を有効的かつ効率的に活用していくためのノウハウがNLPであり、NLPを学んで使うことによってコミュニケーションや人生認識を良い方向へと切り替えやすくなるメリットはあるだろう。 
潜在能力を発揮する  
ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則(2001年) ジム・コリンズ  
15年間以上にわたって優れた業績を上げた偉大な企業を選び出して、コリンズはそれらの企業の利益の飛躍や好調の持続の要因について分析している。コリンズが偉大な企業として選んだ企業は、ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)やジレット(カミソリ)、キンバリー・クラーク(おむつ・ペーパータオル)といった地味な商品を取り扱っている余り冴えないイメージの企業ばかりだが、その業績は高い水準で安定的に推移している。  
コリンズはビジョナリーカンパニーを経営しているリーダーの素質として、謙虚さ・禁欲性・不屈の精神などを挙げており、個人としてはそれほど目立たず自己顕示・自己保身が弱いタイプの経営者が多いという意外な事実を報告している。企業の業績の持続性や成長可能性に重きを置いており、経営者個人の報酬や名誉への執着が弱いため、一時的な繁栄や成長に酔いしれて判断をミスすることが少なくなっている。  
会社のために意欲的に働いて貢献してくれる優良な人材を丁重に取り扱っており、優れた人材の価値を優れたビジョン・数字の価値よりも上位に置いているため、経営状況や市場競争の変化に柔軟に対応できる人的資源が不足するリスクが低くなっているという。現実を客観的に直視する合理性を持ちながらも、厳格ではあっても冷酷ではない企業文化を浸透させているので、社員が不当な待遇や処分を受けることが少なく、目的の共有・モチベーションの維持を行いやすくなっていることも特徴だという。  
ビジョナリーカンパニーと呼べる偉大な企業は例外なく、企業活動全般に通用する普遍的な行動理念・価値基準(ビジョン)を持っているという。その具体的な内容は3つの円によって示されるが、この円のアイデアは、企業だけではなく個人にも応用可能な要素を持っている。第一の円は、自分が世界一になれる分野・部分の発見、第二の円はその仕事で十分な報酬を生み出すビジネスモデルの部分、第三の円は仕事に対する情熱・意欲の部分である。  
有能で意欲的な人材を大切に取り扱い、事実や業績をありのままに認識して、組織全体で共有可能なビジョン・価値基準・コンセプトを確立していくこと、それがビジョナリーカンパニーへの道として語られている。  
チーズはどこへ消えた?(1998年) スペンサー・ジョンソン  
チーズはどこへ消えた?は発売当時にベストセラーになった本だが、変化に慌てずに対処するための人間の基本原則について寓話を用いて説明している。迷路の中で暮らすネズミのスカリーとスニッフ、小人のヘムとホーが登場して、大きなチーズの塊を食べつくした後の行動の違いが描かれる。  
無くなってしまったチーズの塊の幻影にこだわり続ける小人たちと、チーズが無くなってしまった現実を受け容れて、新しいチーズを探しに冒険に旅立つネズミたちのコントラストによって、変化に適応する重要性を示唆している。  
過去にあった価値あるものが失われてしまった時にどういった行動を選択するかによって、その後に得られる結果には非常に大きな差が生まれてくる。誰でも今までにあった安定した快適な環境・大切な相手を失うのは恐ろしい、大多数の人にとってそれなりに良い経済状況や人間関係の変化というのは不安や恐怖をもたらすものでしかないだろう。  
しかし、失業したり離婚したり失恋したり挫折したりしたときに、過去にあった良いものばかりに執着して落ち込んで嘆いてばかりいれば、新しいチーズを永遠に手に入れることはできずに飢え死にする他はなくなる。  
変わらなければ破滅するという危機感を持てるか否かによって、成功するか失敗するかの結果は左右されるし、既に失われたものにこだわり続ければ、本当はこれから手に入れられたはずのものを次々に失ってしまうことになるのだ。シンプルだけれど普遍的な人間世界の原則を教えてくれる本であり、ビジネス・働き方だけでなくプライベートな人間関係にも応用できる。  
最強のセルフプロデュース術(1998年) シェリル・リチャードソン  
毎日忙しく働きすぎて、自分自身の時間を持てず自分の人生を楽しめなくなっている人へのアドバイス集のような内容になっている。社会的・経済的成功だけでは、人間は本当の幸福や安らぎを得ることはできないのであり、そこに徹底的なセルフケア・自分自身の時間と健康の尊重が伴っていなければならない。  
リチャードソンの成功哲学のエッセンスはクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上にあり、今風に言えばワーク−ライフバランスをどう実現するかということについて書かれた本である。ひたすら忙しく長時間働き続けるだけの人生には意味が乏しいだけではなく、自分の優先順位に従った人生を送れない・大切な人間関係を失うリスクがある・主体的な時間配分が困難になるといった各種の問題を引き起こしてしまう。  
自分の健康や幸福感を高めていくために必要なのは自分のための時間を確保するという自己管理(セルフマネージメント)であり、自分の人生の時間すべてを不本意な仕事・雑事だけに注ぎ込むようなアンバランスな状態を改善するということである。リチャードソンは経済的・社会的に成功することと引き換えに、健康・家族・恋人・時間といった自分の人生にとって真に重要なものを喪失するのであれば、それは成功などと呼べるものではなく馬鹿げた無意味なことだと考えている。  
自分自身を過度に消耗させていることから遠ざかり、意識的に何もしない時間・何も考えない時間を作って休養しないと、人間の心身は疲弊してまともなパフォーマンスを発揮できなくなり楽しみ・幸福からも遠ざかってしまうものだ。自由に使える時間と自分の支えとなる人間関係の相対的価値を高められるということも、経済的な豊かさと同等以上の価値を持っており、真の成功というのは時間配分・人間関係の充実による精神状態と無関係なものでは決してないのである。 
富と財産を築く  
思考は現実化する(1937年) ナポレオン・ヒル  
金持ち父さん貧乏父さん(1997年)ロバート・キヨサキ  
豊かさをもたらす大いなる法則(1962年) キャサリン・ポンダー  
一般的には、清貧・禁欲道徳を推奨すると思われているキリスト教だが、神は人間に実際的な豊かさを与えてくれるという聖書の独自の解釈を元にした成功哲学を展開している。  
何が欲しいのか、いつ手に入れたいのかという願望を紙に書き留めていくこと、肯定的なイメージを思い浮かべることなどは自己暗示の一種であるが、聖書を根拠にして経済的な豊かさを獲得しようとする異色・異端の読み物として面白そうである。  
なぜ、この人たちは金持ちになったのか(2000年) トマス・J・スタンリー  
実際に億万長者のライフスタイルや心理、信念体系をリサーチして書かれた本で、人生を楽しんでいる金持ちの多くはカネを使う娯楽・派手な遊びには関心が薄く、家族や友人と過ごす時間・地域活動やボランティア・スポーツ(余りお金を使わない活動)に価値を見出しているという。  
職業については、自分が好きで熱心に取り組める仕事をするのが最善であり、人とは違う物事の考え方・見方をしてニッチ市場を開拓することにチャンスがある。また、金持ちはリスクテイクについての考え方が一般の人とは異なり、安定した給料条件で長時間雇われること(自分で労働時間や収入をコントロールできないこと)のほうが、自分で事業を興して利益獲得を目指すことよりも遥かにハイリスクだと感じている。一般の人とは、かなりリスク認識や人生設計に隔たりがあるようだ。  
人を雇わず自分ですべての仕事を行うスモールビジネスはリスクが低いが大きな売上は出しにくい、反対に、人を雇って行う自営業・会社経営はリスクが高いが大きな売上・利益を生む可能性を高める。金持ちは、時間・労力にせよ金銭にせよ分散投資よりも一点集中の投資を好む傾向があり、学業成績については人並み以上ではあるが圧倒的に知的能力が高かった人は少ないようだ。  
結婚(精神的支えとなり各種の美点を持つ配偶者)が、自分の事業の成功の大きな要因になったと感じている金持ちが多く、必要な部分へのお金は惜しまないが、見栄・日用品などのために散財する人は少ないという。
この本は、いわば金持ちのリサーチ結果をまとめただけの本であるが、ミリオネア・マインドの基本が自分の仕事を好きになり本気でのめり込むことができるかという部分にあるという指摘は、経済生活や自分の仕事への適応にとって重要なことである。日常生活の無駄遣いを自制できるか・必要以上の見栄を張らずにいられるかという堅実さ・自律性も、安定した経済生活を送るために必要となる要素だろう。 
 
世界の「成功哲学」名著50冊徹底調査で判明した「8つの習慣」 
なぜ「成功哲学本」にハマる人に成功者はいないか
「あなたは、自分の人生をより充実したものにしたいですか?」
「人よりも成功して多くの収入を得たいですか?」
これらの問いに「イエス」と回答する人にとって、成功した人・過去の偉人を研究してまとめた成功哲学や自己啓発本は有効な教材になります。
ベンチャー起業家でGMOインターネットの熊谷正寿会長兼社長は、デール・カーネギーの『人を動かす』『道は開ける』を何十回と読み返し、普段の経営や、逆境が訪れたときに役立てていると語っています。
今回は、成功哲学書に共通する8つの習慣をご紹介します。
成功哲学本マニアに成功者はいない。なぜ、私はそう思うのか。
成功哲学本を読みあさっているにもかかわらず、何も変わらない人が少なくないのです。この記事を読んでいる方にも、そういう人がいるかもしれません。
私自身、自己啓発書はたくさん読んできました。累計で500冊は超えると思います。
「なるほど」と思わされることも多いですが、多読乱読の途中で、あることに気づきました。それはどの本も、表現が異なるだけで、せんじ詰めれば、自己変革して成功を収めるために重要だと感じていることは同じような内容だということでした。
多くの自己啓発書を読むのは楽しいものです。毎回表現が新しいので刺激になり、おかげで高揚感に満ち溢れます。しかし、それはたいてい一過性のもので、結局何も実践しないままで終わる人が大半です。自己啓発系のセミナーでも本でも同じですが、一時的なカンフル剤にするだけでは、もったいありません。
自分なりに具体的な行動に落とし込み、習慣にまで昇華させた人が成功できる人ではないか。
私は習慣化コンサルタントとして、経営者やビジネスパーソンの夢実現のために個人コンサルティングをする際、このことをよくお話ししています。
『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著)や『原因と結果の法則』(ジェームズ・アレン著)など大好きな本はありますが、著者たちが共通して提唱する行動は何か? 習慣は何か? を考えたうえで、そのエッセンスだけを愚直にやり続けることこそ、成功するための秘訣だという結論に達したのです。
統計分析のプロが世界の自己啓発書50冊を研究
私の友人に、統計のプロである高田晋一氏がいます。彼もまた自己啓発書を読みながら、多くの本が、なぜその行動を提唱するのかという根拠が不明確であることに不満を持ちました。
元来、自分で深く納得しないと動けない彼は、世界的名著全体を分析し、頻出度の高い法則なら信じられると調査を始めたのです。分析対象の50冊の自己啓発書リストは、著名な自己啓発書を集めて、厳選したT・バトラー・ボートンが書いた「世界の名著シリーズ」250冊を参考にしました。
私が大好きな名著もたくさんサンプルに入っていました。
 『原因と結果の法則』 ジェームズ・アレン
 『人を動かす』 デール・カーネギー
 『7つの習慣』 スティーブン・R・コヴィー
 『EQ こころの知能指数』 ダニエル・ゴールドマン
 『人生を変える80対20の法則』 リチャード・コッチ
 『影響力の武器』 ロバート・B・チャルディーニ
 『第1感「最初の2秒」のなんとなくが正しい』 マルコム・グラッドウェル
 『思考は現実化する』 ナポレオン・ヒル
 『チーズはどこへ消えた』 スペンサー・ジョンソン
 『人生に奇跡をもたらす7つの法則』 ディーパック・チョプラ
など……非常に信頼性の高いものです。サンプルのピックアップ方法など詳細は彼の著書『「人生成功」の統計学』(ぱる出版)をご参照ください。
高田晋一氏の分析では、世界的名著50冊の中に書かれていることのうち次の8個の「文言」が全書籍で繰り返し述べられていることが判明した。
 (1) 成功をイメージする。言葉に出す ……掲載数:18冊/50冊(36%)
 (2) 楽観的になる・ポジティブになる ……掲載数:16冊/50冊(32%)
 (3) 自分の直感や内なる声に従う ……掲載数:15冊/50冊(30%)
 (4) 他人に与える・奉仕する ……掲載数:12冊/50冊(24%)
 (5) 人生の目標や目的をはっきりさせる ……掲載数:12冊/50冊(24%)
 (6) 他人に思いやりを持つ、許す ……掲載数:11冊/50冊(22%)
 (7) 楽しいこと、楽しい仕事に取り組む ……掲載数:11冊/50冊(22%)
 (8) 自分の価値観・求めているものを知る ……掲載数:10冊/50冊(20%)
このように数字で見ると、頻出の文言の持つ意味合いもずいぶんと違うものに映るのではないでしょうか?
成功をイメージする、楽観的になる、直観に従う……つまり、自分を信じ、前向きに生きるということが成功哲学本の肝ということになるでしょうか。
結局のところ、たくさんの成功哲学本を読みあさるよりは、この8つの法則をどのように実践するかを考えた方が近道だと私は考えます。 
 
『7つの習慣』(The 7 Habits of Highly Effective People) 
スティーブン・R・コヴィーによって書かれ1996年に出版された書籍。原著の初版は1989年。コヴィーの末日聖徒イエス・キリスト教会/モルモン教の信仰経験に基づいて書かれた。
ジャンルはビジネス書とされる場合が多いが、成功哲学、人生哲学、自助努力といった人間の生活を広く取り扱っており、人文・思想、倫理・道徳、人生論・教訓、自己啓発などに分類される場合もある。表紙のタイトルの下に『個人、家庭、会社、人生のすべて--成功には原則があった!』と表記され、『成功には原則があった!』の部分が副題とされる場合もある。帯には版によっていくつかの種類があり「この本を読むことは、あなたの人生における最高の冒険になるだろう。」「全世界1500万部突破の名著が教える永遠の人間学」などと謳われている。原著は英語。訳はジェームス・スキナーと川西茂による。
キングベアー出版によれば2010年の時点で44ヶ国語に翻訳され、全世界2,000万部、日本でも累計130万部を売り上げ、ベストセラーとなった。ダイジェスト版の小冊子が無償配布されていた時期がある。
また、以下の雑誌社が特集等で紹介している。
○ フォーブス - 「もっとも影響を与えたマネジメント部門の書籍」のトップ10。(2002年)
○ チーフ・エグゼクティブ・マガジン - 「20世紀にもっとも影響を与えた2大ビジネス書」のひとつ。
○ プレジデント - 「どの本&著者が一番役立つか」という特集の1位。(2008年)
○ ダイヤモンド - 特集として30ページにわたり7つの習慣を紹介する。(2010年)
○ タイム - 「The 25 Most Influential Business Management Books(25の最も影響を与えたビジネス書)」のひとつ。(2011年)
2013年8月30日、キングベアー出版より新訳版として『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(ISBN:978-4863940246)が出版されている。 旧訳版が当時のビジネスパーソンに特化した書かれ方をしていたことを踏まえ、新訳版では当時から不変である原則を伝えることを重視し、著者のより根本的な主張である「人格主義と個性主義」にフォーカスすることを目指した。オーディオブックの版監修を行った竹村富士徳によると、そもそも「成功には原則があった」という副題自体、マーケティングの都合で付けた全く関係無い文章であると指摘している。
内容
著者は本作を執筆するにあたり、アメリカ建国以来発行された約200年分の「成功」にかかわる文献を調査した。その結果、直近の50年分の文献ではコミュニケーションスキルやポジティブシンキングなど、上辺だけの応急処置的なテクニックの解説に終始するものがほとんどであったのに対し、初めの150年間の文献は誠意、謙虚、勇気、正義、忍耐、勤勉、節制、黄金律といった、不変の「原則」に基づく優れた人格の養成を重視していたことを発見する。著者は前者のパラダイムを「個性主義」、後者を「人格主義」と呼び、「人格主義」に基づいた成功への法則を抽出して、それを「7つの習慣」として提示する。
4つの部、11の章で以下のようにまとめられている。以下に見出しとその大まかな内容を箇条書きにする。
第一部・パラダイムと原則(Part 1 Paradigms and Principles)
インサイド・アウト(Inside-Out)
○ 一次的な真の成功とは、優れた人格を持つこと(人格主義)であり、社会的な成功、表面的な成功(才能などに対する社会的評価)、個性の発揮、コミュニケーションのスキル、他に影響を及ぼす戦略、前向きな姿勢などは、二次的なもの(個性主義)である。
○ 人が物を見る時には、ある種のレンズのような物(パラダイム)が存在し、それが認識、理解、解釈、行動、態度を決めている。従って、そのパラダイムを転換させることにより、自分のあり方を大きく変えることができる。
○ 人の生活には原則というものが存在し、その原則に従うことにより、高い効果を得ることができる。原則の例として、人が成長するためには、それぞれに時間がかかり、どの段階も飛ばすことのできない順序立ったプロセスを踏まなくてはならない、などが挙げられる。
○ インサイド・アウトとは、自分自身の内面(インサイド)、パラダイム、人格、動機などを最初に変え、それから、外側(アウト)、他人や環境を変えるということ。
7つの習慣とは(The Seven Habits--An Overview)
○ 習慣がいかに強力であるかを説明する。またその習慣の定義。
○ 7つの習慣の概要。私的成功とは、依存状態から自立することであり、第1,第2,第3の習慣が含まれる。自らが効果をつくりだす、ということ。公的成功とは、自立した人間が相互に依存することであり、第4,第5,第6の習慣が含まれる。2人以上の人間が協力し、一人でつくりだす効果よりも、より高い効果をつくりだす、ということ。再新再生には第7の習慣が含まれる。より高い効果をつくりだせるように自分を改善する、ということ。
○ 効果性の定義。効果をつくりだすためには『効果をつくりだすことと、効果をつくりだすための能力とのバランスをとる必要がある』という原則がある。そして、その能力には主に物、金、人の3つがあり、組織での応用例を挙げる。
○ この本の読み方についての2つの提案。1つは繰り返し読む本であり、一度通読して本棚にしまう、という類の本ではない。2つ目は、読者が本の内容を教わるのではなく、読者が本の内容を教えることを前提に読む、ということ。
○ この本を読むことで期待されること。私的成功により充実した気持ちに満たされる、公的成功により人間関係が改善される、再新再生により真の自立、相互依存の土台をつくることができる、など。
第二部・私的成功 (Part 2 Private Victory)
第一の習慣・主体的である(Habit 1 Be Proactive)
○ 自分の身に起こることに対して自分がどういう態度を示し行動するかは、自らで決めることができる。
○ 問題解決に向け率先してことを行う。
○ 自分の身の周りのことに対して、自分が動かされるのではなく、自分が周りの環境に作用を及ぼす。
○ 自分がコントロールできないことでなく、自分がコントロールできる、影響を及ぼすことができる事柄に集中する。
○ より良いものを持つのではなく、自分がより良くなる。
○ 失敗したときに、自分の間違いを認め修正をはかる。
第二の習慣・終わりを思い描くことから始める(Habit 2 Begin with the End in Mind)
○ 第二の習慣は、生活の多くの異なる状況やレベルに当てはまるが、最も基本的な応用は、全てを測るための基準や尺度の枠組みとして、人生の最後のイメージ、光景、パラダイムを持って今日を始めることである。
○ 万物にはまず人の頭の中で知的にものが作られ、それから実際に物的にそのものが作られる。
○ ミッション・ステートメント(個人的な憲法、または信条)を作る。
第三の習慣・最優先事項を優先する (Habit 3 Put First Things First)
○ 第2の習慣を身に付けたなら、それを具現化し、自由意志を発揮し、毎日の瞬間瞬間において実行する。
○ 価値観に調和した生活を送るために、効果的な自己管理を行う。
○ 重要だが緊急でない活動を行う。
○ 重要でない活動に対してノーと言う。
○ デレゲーション。人に仕事を委任する。
第三部・公的成功 (Part 3 Public Victory)
相互依存のパラダイム (Paradigms of Interdependence)
○ 第4,第5,第6の習慣を身に付けるためには、他人との信頼を築く必要がある。
○ 真の相互依存は自立の精神を身に着けていることが前提となる。
第四の習慣・Win-Winを考える (Habit 4 Think Win/Win)
○ 人間関係における6つのパラダイム「Win-Win」「Win-Lose」「Lose-Win」「Lose-Lose」「Win」「Win-WinまたはNo Deal」。
○ 互いにWin-Winとなる合意を形成できないなら、お互いのために「合意をしないという合意」をすることも必要である。
○ Win-Winの原則を支える5つの柱「人格」「関係」「合意」「システム」「プロセス」。
第五の習慣・まず理解に徹し、そして理解される(Habit 5 Seek First to Understand, Then to Be Understood)
○ まず相手を理解するように努め、その後で、自分を理解してもらうようにする。
○ 自分が他人に影響を与えるために、自分が他人に影響される。
○ 人が他人の話を聞く時にしてしまう自叙伝的な反応。
○ 感情移入を行い人の話を深く傾聴する。
○ 効果的にプレゼンテーションを行うための方法。
○ 一対一の時間を設けコミュニケーションを図る。
第六の習慣・シナジーを創り出す(Habit 6 Synergize)
○ 相乗効果とは、全体の合計が各部分の和よりも大きくなるということである。
○ 自分と他人との意見に相違が生じた時に、自分の意見を通すのでなく、他人の意見に折れるのでもなく、第三案を探し出す。
○ 自分と他人との相違点を尊ぶ。
第四部・再新再生 (Part 4 Renewal)
第七の習慣・刃を研ぐ (Habit 7 Sharpen the Saw)
○ 人の持つ4つの資源(肉体、精神、知性、社会・情緒)を維持、再新再生するという習慣。例として、運動(肉体)、価値観に対する決意(精神)、読書(知性)、公的成功(社会・情緒)などが紹介される。
再び、インサイド・アウト(Inside-Out Again)
○ 著者と彼の妻が経験した深いコミュニケーション。
○ 今までの世代で得た良い物は残し、悪い習慣は改め、次の世代に引き継いでいく。
○ 人間は自らを完成させることは出来ず、探究に終わりはない。
附録
著者がセミナーでよく聞かれる質疑応答や、日常的に「七つの習慣」を活用するためのケーススタディから成る。
○ 「原則」と「価値観」は全く異なる。原則は不変のものだが、価値観とは己の中にあるパラダイムそのものである。原則を己の価値観に出来れば理想的である。
○ 原則が7つになったのは全くの偶然であり、私的成功の習慣が「選択の自由」「選択」「行動」の3つ、公的成功の習慣が「尊重」「理解」「創造」の3つ、これら6つの習慣を「再新再生」していく習慣で計7つになった。7という数字にこれといった意味はない。
○ 7つの習慣に付け加えたり削除したりする箇所はない。どうしても付け加えたい行動習慣があるならば、各々が第2の習慣で挙げたミッション・ステートメントに書き込めばよいと考えている。
○ 著者が個人的に最も困難だと感じるのは第5の習慣である。
○ 著者自身や、己の会社が7つの習慣に基づいて行動できているかといえば「努力している」としか言えない。原則とはあるところで完成するものではなく、一生をかけて追い求めていくものである。
引用
7つの習慣では、多く文が引用されている。主な引用文は、以下の人たちからのものである。
インサイド・アウト
デイビッド・スター・ジョーダン / ウィリアム・ジョージ・ジョーダン / トーマス・クーン / セシル・B・デミル / アルバート・アインシュタイン / T・S・エリオット『四つの四重奏曲』
7つの習慣とは
アリストテレス(厳密にはニコマコス倫理学の内容がウィリアム・ダラントの著書"The Story of Philosophy"で書かれ、その言葉がそのまま、7つの習慣で引用される。) / ホーレス・マン / イソップ (ガチョウと黄金の卵) / マリリン・ファーガソン / トーマス・ペイン
第1の習慣
ヘンリー・デイヴィッド・ソロー『ウォールデン・森の生活』 / ガンジー / T・J・ワトソン
第2の習慣
オリバー・ウェンデル・ホームズ / ジョセフ・アディソン『Thoughts in Westminster Abbey』(1711) / ビクター・フランクル
第3の習慣
ゲーテ / ピーター・ドラッカー
相互依存のパラダイム
サミュエル・ジョンソン
第4の習慣
エドウィン・マーカハム
第5の習慣
パスカル『パンセ』の第4章277
第6の習慣
ジョージ・ブッシュの大統領就任演説 / カール・ロジャース
第7の習慣
ブルース・バートン / マルチン・ルター / デイビッド・O・マッケイ / フィリップス・ブルックス / ハンス・セリエ / ジョージ・バーナード・ショウ / N・エルドン・タナー / ダグ・ハマーショルド
再びインサイド・アウト
エズラ・タフト・ベンソン / アヌワール・サダト / アミエル / ティルハード・D・チャーディン / エマーソン 
 
『7つの習慣』で変わったビジネスマン人生 1 
ワタミ取締役会長 渡邉美樹
博士のことを地球上で一番理解しているのは私だと思う
『7つの習慣』の中に次のような話がある。クラム・チャウダーが美味しいと評判の店があった。昼食の時間になると、毎日お客さまで大行列ができるほどだった。経営者は、欲を出してもっと儲かる店にしようとした。クラム・チャウダーの具を減らし、全体的に薄めて売ることで、仕入れの値段を落としたのだ。
最初は原価を落としたことでコストが下がり、一時的に儲けが出た。ところが、味が落ちたことに気付いたお客さまは徐々に店へ来なくなり、結果的に評判が落ち、売り上げはほとんどなくなってしまった。『7つの習慣』を否定的に見る人は、「この本に書かれていることは、あまりにも当たり前すぎる。こんなことは誰だって知っている」と言う。しかし当り前だと思っていても、それを実践できるかどうかはまったく別のことではないだろうか。
クラム・チャウダーの店の話でいうと、何を一番大切にしなければならないのかというと、お客さまである。お客さまが店に来てくれるから、利益が出て株主さまにも従業員にも利益を還元できる。優先順位でいけば、経営者である自分の利益は一番最後に考えなければならない。
これは理屈では誰でもわかっていることだ。けれども人間には欲があるので、当り前のことができなくなる。仕入れの値段を落として味が落ちれば、お客さまが離れてもしょうがない、とわかっていても、「もう少し原価を落としても、来てくれるだろう」と欲を出し、自分の懐にいくら入るのかを計算してしまう。欲との戦いで、その戦いに勝つにはしっかりとした人格が備わっていなければならない、それがこの本の主張なのだ。
クラム・チャウダーの話は、ワタミの外食部門の社員研修で何度も話してきた。『7つの習慣』を研修に使い始め、今では新入社員研修の課題本として活用している。
あるべき人格を身につけて、人は初めて成功できる。人格を磨かず最初から成功だけを目標にすると、表面だけの成功になってしまう。『7つの習慣』は、人格を磨くために必要な心構えと、そこから得た行動を説いている非常に奥深い本。だからこそ、ここに書かれている習慣を社員に身につけてもらいたいのだ。
この本の大きな魅力は、習慣について述べているだけではなく、具体的なエピソードを通して我々読者に訴え掛けてくるところなのだろう。私が一番好きなエピソードは、「ラ・マンチャの男」というミュージカルを題材にしたものだ。
「ラ・マンチャの男」の劇中劇には、ある中世の騎士がひとりの娼婦と出会う場面がある。ヒロインの娼婦は、娼婦であるというだけで周囲の人々から見下されている。しかし、主人公の騎士だけは、彼女の中に美しく気高い姿を見出し、彼女を肯定し、繰り返しそのことを訴え掛けた。
最初は、騎士の言うことを信じようとしなかった彼女だが、騎士の忍耐強い無条件の愛に刺激され、次第に彼女は本来持っている美しさや気高さを信じるようになる、というお話だ。
ゲーテは「現在の姿を見て接すれば、人は現在のままだろう。人のあるべき姿を見て接すれば、あるべき姿に成長していくだろう」と言っている。つまり、本来は目には見えないその人の可能性を信じて相手を高く評価すれば、相手もそれに呼応して自分の可能性を信じて生きられるようになる、ということだ。
これは部下と上司との関係についてもいえる。この部下は仕事のできない駄目な奴だという態度で上司が接すれば、部下も自分は駄目な奴だと思い込んでしまう。逆に、部下の良いところを見つけて、その可能性を信じて相手と向き合えば、部下は自信を持ち、仕事もできるようになる。自分の思いが相手をつくっていくのだ。
ワタミの社員には、手帳に5年先までの夢・目標をつけるよう話している。これは何かというと、「緊急ではないが、重要な事柄」を行うための手帳である。緊急ではないけれども重要なやるべき事を週単位、月単位、年単位でそれぞれ書き出していき計画化して、自分のやるべきことを明確にしていく。
なぜこのようなことをするのか。自分の仕事を緊急度と重要度の4つの領域で考えてみよう。緊急で重要なこと。緊急で重要ではないこと。緊急ではないが、重要なこと。緊急ではなく重要でもないこと。
この中で、もっとも力を入れるべきは「緊急ではないが、重要なこと」だ。
例えば、店舗でのクレーム対応について考えてみたい。お客さまからのクレームに即座に対応することは、当たり前のことだからだ。しかし、将来の見通しをもたないまま、緊急で重要な事柄にばかり追われていると、目の前の問題に振り回されるだけで疲れ果ててしまう。その結果、緊急ではなく重要でもないことに逃げ込むようになり、「緊急ではないが、重要なこと」にほとんど目を向けなくなる。何事にも受け身になり、自分の将来にも今の仕事にも無責任になって、やがては他人や組織に依存するようになるだろう。
そのようにならないためには、緊急ではないが、重要な事柄に目を向けるべきである。クレームを減らすには、従業員とのコミュニケーションを密にして、やる気を引き出しておくというのが一番だ。従業員がしっかり働いてくれれば、クレームも自然に減る。緊急で重要なことが減れば、さらに仕事のスキルを磨く時間が増えるという、いい循環に自分や自分の組織を導くことができるのだ。
私はこれまで『7つの習慣』を雑誌などで推薦したことはない。「論語」や「聖書」などは、手元に置き、いつも読み返してきたが、本書は違う。「座右の書」というより「親友」のような感覚だ。私が考えているのとまったく同じことを、違う言い方で表現してくれているのだ。人間にとっての幸せとは何か、人は何のために生れてきたのか。そのすべてに共感できる。亡くなられたコヴィー博士とは生前にお会いすることはできなかったけれど、「地球上で一番博士のことを理解しているのは私だ」と言えるぐらい親近感を持っている。 
 
『7つの習慣』で変わったビジネスマン人生 2 
東レ経営研究所 佐々木常夫
人間の成功は、先天的な要素より後天的な努力でほとんど決まるんです
コヴィー氏の『7つの習慣』は、私がいままで読んだビジネスの指南書では最高傑作の一つです。彼が挙げている7項目の習慣を表面的にとらえ「あたりまえのことだ」と評する人もいるようですが、とんでもない。ちゃんと読めば、そこに時代を超えた成功の法則があることがわかります。
私はこれまで、40代と60代で2度通読しています。やはり読書は、人生の経験を重ねるとともに、読み方や感銘も深化していくものです。2度目のころ私は、家族と仕事についての本『ビッグツリー』を書くために自分の考えを整理していました。その参考に読み進むうちに、私とコヴィー氏の価値観が似ていると気づきました。
例えば、第一の習慣「主体性を発揮する」のところに「人生の責任を引き受ける」とあります。私も同様に「運命を引き受けなさい。それが、生きるということです」と語ってきました。主体性を持った生き方とは、自分が置かれた条件や環境のなかで志を持ち、不断の努力をしていくことです。
そのときに必要なのが、よい習慣の実践と継続。そうすれば、コヴィー氏が説くように「依存から自立へ、そして自立から相互依存へと成長していく」のです。ここでいう相互依存とは周囲との信頼関係を意味します。私も「よい習慣は、才能を超える」と主張していますが、彼のいう7つの習慣こそ“よい習慣”そのものでしょう。
続く第二の習慣「目的を持って始める」と第三の「重要事項を優先する」も体得していくことが大切です。なぜなら私は、人間の成功は先天的な要素よりも後天的な努力でかなりの部分が決定すると考えるからです。
コヴィー氏も本で明らかにしていますが、7つのうち3番目までは、自己克服と自制に関連した私的成功のための習慣です。第四の習慣「Win‐Winを考える」と第五の「理解してから理解される」、第六の「相乗効果を発揮する」は、人間関係や組織での活躍など、よりレベルの高い公的成功といえます。
このことは、マズローの「欲求五段階説」に当てはめると理解できるでしょう。私たちはまず、空腹を満たし、安全に生活するために働く。しかしやがて、仲間が欲しいという社会欲求、尊敬されたいという欲求が出て、最後は自己実現が目的です。この社会欲求から上を満たすためには、コヴィー氏の示す公的成功が必須になります。
会社では、課とか部が集団で仕事をします。そして、当然のことですが成果を挙げなければなりません。その際、リーダーである課長や部長に求められるのが部下や得意先との良好な関係づくりです。そのためには、相手の立場を深く考えるべきです。そうすれば、双方が満足のいくやり方が見つかり、協力も得られることでしょう。
これこそWin‐Winの関係にほかなりません。部門を活性化させ、自分自身も評価され、双方が幸せになれるわけです。私は、これこそ働くことの真の意義だと思います。あえていえば、自己実現が個人の満足の範囲に止まってしまうとすれば、周囲に理解と相乗効果を生む生き方は、より自分を磨き、成長させることは間違いありません。
その意味で、数年前に読んだケント・M・キース氏が著した『それでもなお、人を愛しなさい』の指摘は強烈でした。そこには、人生の意味を見つけるために「人は不合理で、わからず屋で、わがままな存在だ。それでもなお、人を愛しなさい」とありました。
確かに、私が人を好きになれば、その人も私を好きになり、信頼してくれますから、なるべく多くの人を好きになるほうがいい。とはいえ10人のうち1人ぐらいは虫の好かない人物もいます。しかし、キース氏は「それでもなお」と、さらに踏み出していく。そうすることで自分が磨かれます。
よく、7つの習慣のなかでどれが一番大事かと聞かれますが、優先順位をつける必要はありません。それぞれの立場や境遇で、欠けていると感じたことを強化してもいいし、複数の習慣化を並行して進めてもいいでしょう。
私が“磨く”といっている概念と、コヴィー氏が第七の習慣とした「刃を研ぐ」は非常に近い。彼は「自然から授かった4つの側面〈肉体的側面、精神的側面、知的側面、社会・情緒的側面〉のそれぞれを再新再生させていくこと」だと書いています。そして、これらの能力をリフレッシュさせることはもちろん大切だが、この4つをバランスよく研ぐことによって、はじめて最大限の効果を発揮するともいっています。
ところで、私の最初の座右の書になったのは、20年以上も前に読んだ『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』でした。製薬会社などの経営で成功を収めた著者のキングスレイ・ウォード氏が、同じく企業家をめざす息子に、会社での人間関係や部下とのコミュニケーションなどを教えている。
その一方で、友人との付き合い方とか結婚の心がまえといった人生で遭遇する場面に言及してもいます。私は6歳で父を亡くしていますから「父とはこんなにやさしいのか、そしてこんなにも偉大なのか」と感動しました。
コヴィー氏の『7つの習慣』とウォード氏の本に共通しているのは、ビジネススキルあるいは机上の知識だけでなく人生の原則が説かれていることです。その原則とは時や場所を問わず存在し、変わらないものです。だからこそ、読む人に訴えかけてくる力が強いのではないでしょうか……。
さて、残念なことにコヴィー氏は他界されました。けれども、彼が遺した数々の名言は色褪せることはありません。幸い、私たちはそれを書籍という形で手に取ることができます。
コヴィー氏が「この本は、一度通読しただけで本棚にしまい込んでおくようなものではないと考えてほしい。なぜなら、この本は変化と成長のプロセスを通して繰り返し参考にできるように書いているからである」と記しているとおりです。折に触れて読み返せば、豊かな人生を送るための肥やしになるのではありませんか。