G7 広島サミット 

議長国日本
G7
広島サミット


何が決められる ・・・

 


5/155/165/175/18・・・
G7広島サミット 5/195/205/21・・・
5/225/235/24セッション概要・・・
 
 
 

 

●G7広島サミットの重要課題
背景
今日国際社会は、コロナ禍に見舞われ、また、国際秩序の根幹を揺るがすロシアによるウクライナ侵略に直面し、歴史的な転換点にある。
2つの視点
法の支配に基づく国際秩序の堅持:力による一方的な現状変更の試みやロシアが行っているような核兵器による威嚇、ましてや、その使用はあってはならないものとして断固として拒否し、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くとのG7の強い意志を力強く世界に示す。グローバル・サウスへの関与の強化:エネルギー・食料安全保障を含む世界経済や、気候変動、保健、開発といった地球規模の課題へのG7としての対応を主導し、こうした諸課題へのG7による積極的な貢献と協力の呼びかけを通じ、グローバル・サウスと呼ばれる国々への関与を強化する。
重要課題
   地域情勢
ウクライナ:G7はロシアによるウクライナ侵略を法の支配に基づく国際秩序への挑戦と捉え、これまで結束して対応。G7として引き続き対露制裁及びウクライナ支援を強力に推進していく。
インド太平洋:「自由で開かれたインド太平洋」に関するG7の連携を確認・強化する。
   核軍縮・不拡散
「厳しい安全保障環境」という「現実」を「核兵器のない世界」という「理想」に結びつけるため、G7として現実的かつ実践的な取組を進めていくとの力強いメッセージを発信すべく議論を深める。
   経済的強靱性・経済安全保障
G7エルマウ・サミットの首脳コミュニケで初めて言及。サプライチェーンの強靱化、非市場的政策及び慣行、経済的威圧への対応等の経済安全保障課題に取り組む。
   気候・エネルギー
ロシアによるウクライナ侵略によりエネルギー安全保障確保の重要性が再認識される中においても、2050ネット・ゼロに向けた目標は不変。主要排出国を巻き込みながら、各国・地域の事情に応じた強靱なエネルギー移行の道筋を示していく必要あり。
   食料
現下の食料危機を踏まえ、全ての人々の廉価で安全な栄養のある食料へのアクセスと強靱な食料安全保障の確立が急務。そのため、喫緊の食料問題に対処しつつ、世界の食料システムの構造的脆弱性を特定し、その克服への道筋をつける。
   保健
新型コロナの教訓を踏まえ、将来の健康危機に対する予防、備え及び対応を中心に、グローバルヘルス・アーキテクチャーを構築・強化する。また、より強靱、公平かつ持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成に貢献するとともに、様々な健康課題に対応するためのヘルス・イノベーションを促進する。
   開発
2030アジェンダ及びSDGsの全ての目標の達成に向け、人間の安全保障の考え方を踏まえつつ、「人」に着目し、危機下の脆弱な人々への支援を念頭に議論を行う。また、不透明・不公正な開発金融への対応を議論する。
ジェンダー、人権、デジタル、科学技術等の分野についても、引き続き取組を推進。
●G7広島サミット開幕まで4日 “夫人外交”舞台裏に密着 「おもてなし」準備 5/15
G7広島サミットに合わせバイデン大統領が来日し、18日に日米首脳会談が行われることが正式に決まりました。G7広島サミットの開幕まであと4日。“おもてなし”の準備も着々と進められています。私たちは今回、大きな役割を担う岸田首相の妻・裕子さんに特別に密着させてもらいました。“夫人外交”の舞台裏は…。
13日、海外などからの記者の拠点となる「国際メディアセンター」がオープンしました。会場では、“広島の味”として「お好み焼き」が振る舞われます。
アッツアツの鉄板に卵を落として溶きほぐし…キャベツの上に生地をのせ、ちょうどよく火が通ったら麺と一緒に卵の上へ…。岸田首相は広島の名物・お好み焼きを試食し、できばえに満足している様子でした。
岸田首相「お好み焼きは温かいのが1番。外国の方も喜ばれるでしょう」
一方、サミットの会場では着々と準備が進められています。「グランドプリンスホテル広島」には12日、サミットで首脳たちが実際に座るテーブルや椅子が運び込まれました。広島の家具メーカーが作った木製の椅子は、背もたれと肘置きがつながっていて、首脳たちが左右を見ながら話す際に体を動かしやすい作りになっているといいます。
さらに、サミットで特別な“おもてなしプラン”を考えていたのは、岸田首相の妻・裕子さんです。ブルーのスーツで出迎えてくれました。
裕子夫人「今回G7のために作ったんです。これをG7でも着ようと思います」
デニムの産地、福山市の「備後デニム」で作ったというスーツ。サミットではこのスーツで、各国首脳のパートナーをもてなすといいます。岸田首相も「パートナー同士の交流は、首脳外交にも良い影響を与える」として力を入れているのです。
今回、私たちは、裕子夫人の“おもてなしの準備”に特別に密着させてもらいました。
裕子夫人は今年2月、広島市内の工芸品店を訪れました。
裕子夫人「こんにちは。お世話になります。きょうは、よろしくお願いいたします」
パートナーたちへの贈り物の1つとして、「広島漆器」と呼ばれる漆塗りのおわんを選びにきたのです。打ち合わせを終えると工房へ向かい、手袋をつけます。
店主「漆塗りはされたことは?」
裕子夫人「いえ、ないです。ないです」
伝統を伝えるだけでなく歓迎の気持ちを表すため、自ら漆塗りを行うことにしました。
裕子夫人「真ん中に?」
店主「はい」
裕子夫人「伸ばして伸ばして…」
真剣な表情で、1つ1つ丁寧に塗っていきます。おわんは重ね塗りを繰り返し、数か月をかけて先週、完成しました。
裕子夫人は「首脳の配偶者の方々に持って帰っていただいて、日本文化も広島のことも、そしてG7であったこと、平和のこともいろいろ話題になって、それが広がっていけばいいな」と話しました。
世界に日本の伝統や文化を発信する機会にもなるG7サミット。開幕は19日です。

 

●岸田総理インタビュー G7広島サミットに向け 戦争被爆国として 5/16
岸田総理大臣はG7広島サミットが5月19日に開幕するのを前に、NHKのインタビューに応じ、サミットについて、ロシアのウクライナ侵攻を許さない立場や、法の支配に基づく国際秩序の重要性を確認し、対ロ制裁の実効性を高めたいという意向を示しました。また、被爆地での開催を通じ、核廃絶の機運を高める転機にしたいなどと決意を強調しました。
世界情勢への認識は
Q.いよいよ、広島でのG7サミットとなるが、ウクライナや中国の主張をどう見ているか。また北朝鮮の核・ミサイル開発は止まることを知らず日本国民も不安になっている。いまの世界情勢をどう見ているか。
A.ロシア、北朝鮮をはじめ、さまざまな動きがある。激動の国際社会を見る中では、いままでわれわれが常識だと思っていた国際的な秩序が大きく揺るがされている。今後の状況をしっかり注視していかなくてはならないが、やはり国際社会のありようは歴史的な転換期を迎えているのではないか。またエネルギーをはじめ、食料など、国際的な規模の大きな危機にどう対処していくのかが迫られ、大事な時期にあるのではないか。その中で行われるサミットに大変、緊張感を感じているところだ。
広島でのサミットで何を目指す
Q.総理自身、広島が地元だ。また、これまでの経緯を見ても2016年に総理が外務大臣時代、広島でG7外相会合を開き、当時のケリー国務長官が広島に、その後オバマ大統領の歴史的な訪問と続いた。そうしたことなどがあってのことしの広島でのサミットだが何を目指していくのか。議長としての考えを聞かせてもらいたい。
A.今回、サミットを広島で開催するわけだが、かつて原爆によって壊滅的な被害を受け、その後、力強く復興を遂げた。そしていま世界に向けて平和のメッセージを発している、この広島という場所に、世界のリーダーやG7のリーダーたちが集まる、平和や安定について議論する。この意味は大変大きいと思っている。激動する国際社会が歴史的な転換期を迎えている中で、広島ほど、こうした議論をするのにふさわしい都市はほかにないと思っている。
ウクライナ情勢への対応は
Q.国際社会の激しい転換期という話があったが、続いてはウクライナ情勢にどう対応していくのかという点。総理は3月には首都キーウも訪問したが、今回のG7の場でロシア軍の即時撤退を強く求める考えか。G7としては、どんなメッセージを出そうというのか。
A.今、激動する国際社会の中において「領土や主権の一体性を守る」という国連憲章に基づく極めて基本的な原則、これは守っていかなければならない。こういった思いをどれだけ多くの国と共有できるか。これが、今回の侵略をやめさせる上でも大きなポイントになってくるんではないか。法の支配に基づく国際秩序。国連憲章をはじめとする国際法に基づいて国際社会が活動していく。これはやはり弱い立場、脆弱な国にとってこそ大切なルールであると思っている。これを守っていこうということについては、どんな立場の国であっても共有できるのではないかということを考えている。今回のサミットでは、まずは力による一方的な現状変更は許してはならない。また、ロシアが行っているような核兵器による威嚇、ましてや使用は許してはならない。こうしたことを訴えるとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序をこれからも維持し、強化していく。こうしたG7の強い思いを世界に発信していくサミットにしたいと思っている。
Q.まさに現在、ウクライナの反転攻勢はどうなるのか、世界中が見守っている。大変重要な時期になると思うが、ウクライナへの具体的な支援については、G7でどのような話し合いを行い、とりまとめていこうと考えているか。
A.ウクライナ情勢については、長期化が懸念されている。やはりG7としては、そうした中だからこそ改めてウクライナに対する強い連帯を一致して示さなければならないと思っている。厳しい対ロ制裁と力強いウクライナ支援。これをこれからも継続していく。こうしたメッセージを発していくことが大事だと思っている。
Q.支援の話があったが、ウクライナは武器を支援してほしいという声が強い。一方で日本には出来ることと出来ないことがある。従来の枠を越えて日本が防衛装備品の提供を行う可能性は今後、出てくるか。
A.日本はこれまでもG7各国とも連携しながらウクライナ支援を行ってきた。例えば厳しい冬を乗り越えるための発電施設など、さまざまな人道的支援、また財政的な支援など日本らしい支援を行ってきた。その上で日本として今後ウクライナのニーズもしっかり踏まえながらどんな支援を考えていかなかればならないのかという中で防衛装備品についても、さまざまな議論がある。昨年末にまとめられた国家安全保障戦略の中でも、こうした装備品の支援という部分は、日本にとって好ましい国際環境を作り出すためにも、国際法に違反して侵略を受けたような国に対して支援をするという観点においても重要な政策的な手段になりうるという整理をされている。こういった考え方に基づいて、今、与党において議論を始めているという段階だ。丁寧に議論を行った上で、この部分については、日本としての考えを整理しなければならないと思っている。ただ、今の現状、日本に期待されるさまざまな支援は具体的にたくさんあるわけだから、日本としてできる限りのウクライナ支援は行っていきたいと思っている。
Q.ウクライナ侵攻以後、まもなく1年3か月、日本もG7とともに対ロ制裁に積極的に参加してきている。この制裁の効果どう考えるか。
A.おっしゃるように日本もG7との枠組みを通じて協調して制裁を行ってきた。政策の効果についていろいろな議論はあるが、例えばロシアにおいては、輸入依存度の高い自動車産業で急速に活動が低下しており、半導体不足で武器の製造が滞っているなど、さまざまな制裁は一定の効果は出ていると認識をしている。ただその中で迂回をしたり制裁逃れをしているといった指摘もある。第三国による制裁逃れ、迂回の動きなどに対しては、今後ともG7においても連携して実態を把握した上で、第三国に対する働きかけを行うことによって制裁の実効性を高めていく。こうした努力は行わなければならないと思っている。
東アジア情勢など
Q.続いて東アジア情勢について。日本はG7の7か国のうちでアジア唯一のメンバーで、アジア代表になると思うが、総理は現在のこの日本を取り巻く東アジアの情勢について、どのような認識を持っているか。
A.今回のG7においては、アジア、あるいはインド太平洋地域に対し、欧米各国にしっかりと関心を持ち、関わってもらう。こうした手がかりにもしたいと思っている。今、東アジア情勢については、力による一方的な現状変更の試みが東シナ海あるいは南シナ海といった地域でも起きている。ウクライナにおける侵略行動、こうした力による一方的な現状変更は、決してヨーロッパだけの話ではなく、東アジアにおいても真剣に考えなければいけない重要な課題だ。事実、東シナ海、南シナ海などにおいては、力による一方的な現状変更が行われている。さらには北朝鮮による核・ミサイル開発もどんどんと進んでいる。この東アジアの情勢、まさに戦後最も複雑で厳しい安全保障環境にあると言われている。そうした厳しい状況にあるという認識を持っている。
Q.指摘のように今回のサミットで議論は、日本で行われるということで、中国をかなり意識したものになるんではないかと私たちは考えているが、今回のG7で議長としてとり上げる中国の課題は具体的に何か。
A.中国は国際社会において経済をはじめ、さまざまな分野で大きな存在感を示している。こうした中国に対し、まずわが国としては中国との関係において、さまざまな可能性もある一方で、課題や懸念が存在する。そういった課題や懸念に対して、言うべき、主張すべきことはしっかり主張し、そして中国に対し国際社会の一員として責任をしっかり果たしてもらう。しかし一方で、対話は大事にしながら気候変動をはじめとする、協力すべき課題については、協力をしていく。こうした建設的で安定的な関係を中国と双方の努力によって築いていきたい。このように日本は思っているわけだが、こうした考え方については、これまでもG7各国とすり合わせを行い、中国に対して主張すべきことはしっかり主張する、懸念、課題についてわれわれの思いはしっかり伝えていく。そうしたうえで中国に責任ある国際社会の一員として振る舞ってもらう。こういった思いは伝えていこう、一致して伝えていこうという思いについては、これまでも確認をしている。ぜひ今回のサミットにおいても中国に対して、こうしたわれわれの考えている課題や懸念については率直に伝え、そして国際社会の一員としての責任を果たしてもらう。こうしたメッセージをしっかり伝えていくことが重要であると思っている。私も去年11月の日中首脳会談で、そういった思いを習近平国家主席に直接伝えたが、G7のサミットにおいてもG7各国とも連携しながら一致したメッセージを発していきたいと考えている。
台湾情勢は
Q.台湾をめぐる情勢については中国がどんどん強硬になってくる。軍事力も見せながらということになっているが、台湾をめぐって戦争をさせない。それから戦争に巻き込まれないということが日本にとっても世界にとっても大事な点だと思うが、この点についてはG7の中で議論をどうリードし、どんなメッセージを出していきたいと考えているのか。
A.台湾海峡の平和と安定は、わが国のみならず、地域や国際社会全体の平和と安定にとっての重要な課題であると思っている。そしてわが国のこれまでの一貫した立場として、台湾の平和と安定については、対話により平和的に解決されるべきでというものだ。こうした考え方については、従来、習近平国家主席をはじめ、各レベルで中国に伝えているわけだが、こうした思いはG7各国ともこれまでさまざまな形で共有してきた。こういったわが国の考え方は日米首脳会談をはじめ、各国との二国間会談においてもしっかり伝え、そしてG7として、この思いを一致させるよう努力をしてきた。今回も台湾に関しても、そういった思いをG7として発するメッセージを出していきたいと考えている。
G7内の対中温度差への対応は
Q.中国に関して議長としてG7の議論をまとめていこうと考えておられるが、G7の中で、日本とアメリカ、一方、フランスを中心にヨーロッパの中で、中国に対する姿勢や問題意識に温度差があるのではないかという指摘もある。これをどう見ていて、どのように議論をリードしていこうと考えているか。
A.おっしゃるようにG7各国それぞれ地政学的にも置かれている立場が違うので、中国との間において、具体的な関係の違いは存在するとは思うが、その中にあってもG7として一致したメッセージを出していこうという努力をこれまでも続けてきた。4月、軽井沢で行われたG7外相会合でも、中国に対して懸念や課題を率直に伝えるとともに、国際社会において責任を果たしてもらう。こうしたメッセージを発していくことで一致をした。中国との課題や懸案についても一致して対応し、連携をしていく。こういった確認をG7外相会合でも行ったところだが、今回のサミットにおいても、その基本的な考え方に基づいて、中国に対してメッセージを発していくことになると考えている。
核兵器のない世界の実現は
Q.被爆地でのサミットだけに、核兵器をめぐる対応は最大の焦点だ。総理は広島が地元で、小さなころはおばあさん、親戚のおじさんの被爆の記憶もあると自身の著書にも書かれている。核軍縮、核不拡散はライフワークだと言っているが、なかなか理想と現実は厳しいところがあるとも思う。世界、そして東アジアでの核をめぐる現状認識や問題意識はどういったものか。
A.まず広島・長崎に原爆が投下されてから今年で78年目になるわけだが、その間、多くの先人たちが核兵器のない世界という理想に向けて、さまざまな努力をしてきた。しかしながら、現在、この10年ほどの動きを振り返ったときに、核兵器のない世界を目指すという機運がどんどん後退している。昨年もNPT(核拡散防止条約)運用検討会議という核軍縮・不拡散で大変重要な、5年に一度開催される会議も開催され、私も日本の総理大臣として初めて出席をした。しかしその場で、残念ながら一致した共同文書を取りまとめるというところには至らなかった。これは2回連続のことだ。こうした状況を見ても、世界が軍縮・不拡散という課題において分裂している。さらに今ロシアによる核の威嚇が懸念されている。あるいは北朝鮮のミサイル・核開発が懸念されている。こうしたさまざまな現実をみても、核兵器のない世界という理想に向けての機運が後退していることを強く心配している。しかしそういったときだからこそ、被爆地・広島で開催されるG7サミットにおいて、今一度核兵器のない世界を目指そうという機運を盛り上げる転機にしたいと思っている。
Q.現状の世界の核をめぐる状況。ロシアのプーチン大統領もそうだし、北朝鮮もそうだが、中国の核の不透明性っていうところもあると思う。広島が地元だけに、それをご覧になると残念だなという気持ちは強いか。
A.広島の人間としては、今の現状を本当に残念に思っている。しかし、それだけ厳しい現実を前にして、ここであきらめるわけにはいかない。そして今、現実に広島でサミットを開催するということだから、このサミットにおいて今一度、国際社会で理想に向けて、勇気をもって努力をしようという雰囲気を作っていく。こうした転機を作りたいという思いはより強く、広島のみならず、核兵器のない世界を願う多くの人たちにおいて、強い思いなのではないか。こんなことを考えている。
Q.G7の中にはアメリカ、フランス、イギリスという核保有国がある。この中でサミットの議長として核廃絶に向けてどういうメッセージを出し、どういう局面にしたいという思いか。
A.まず大きなメッセージとして、今一度、核兵器のない世界という理想に向けて努力をしようという思いを発信したいと思う。その理想に向けて現実をどう近づけていくのか。これを考えるのが外交であり、政治だと思っている。現実と理想を結びつける道筋、ロードマップ。これを考えていかなければならないが、その点については、私は昨年のNPT運用検討会議に出席した際に、総会の演説をさせてもらい「ヒロシマ・アクションプラン」という考え方を明らかにした。その中に5つ項目があるんだが、まず第1に核兵器不使用の歴史を継続しなければならないということ。2つ目として、核兵器の数を減らしていく努力。かつて冷戦期は莫大な核兵器があった。努力によって減らされてはきているものの、今でも1万発以上の多くの核兵器が世界に存在する。この核兵器を減らす努力を続けていかなければならない。その際に、詳しく説明は省くが、CTBT=包括的核実験禁止条約などといった核軍縮の枠組みの中で議論が行われてきた。これを今一度復活させようというような思い。そして、こうした努力の基盤になるのはお互いの信頼関係であると。信頼関係を支えるのは、核を持っている国の透明性。自分たちはどれだけの核兵器を持っているのか。これを明らかにするところから始めようではないかとか、こういった具体的な提案を私はさせていただいた。こういった考え方に基づいて、具体的な取り組みを今一度始めようという呼びかけをしたいと私は思っているところだ。
核兵器禁止条約に日本は
Q.理想と現実の間で日本はNPTを中心に核廃絶、核軍縮を実現していこうということだと思うが、一方で核兵器禁止条約が立ち上がった。この中で世界の唯一の戦争被爆国である日本が、なぜ条約に参加しないんだという批判の声もある。これについてはどう考えているか。
A.私は本の中でも書かせていただいているが、核兵器禁止条約というのは、核兵器のない理想に向けて、まさに出口にあたる大変重要な条約だと思う。ああいった条約を作り、そして法的拘束力を作ることによって、最後、理想にたどり着くんだと思う。ただ、その核兵器禁止条約には、核兵器国は今は1国も参加していない。これが厳しい現実だ。私は外務大臣を4年8か月務めている中で、核軍縮・不拡散の多くの会議に出席し、長年、議論に関わってきた経験の中で、やはり現実を変えるには、核を持っている国、核保有国が変わらなければ現実は変わらない。これが厳しい現実でもあるということも嫌というほど感じてきた。だからこの核兵器禁止条約は、理想に向けての出口にあたる重要な条約だと思うが、核兵器国を、この核兵器禁止条約に参加させてこそ、大きな目標にたどり着くんだと思っている。核兵器国は今、厳しい現実の中、それぞれの安全保障の考え方に基づき、それぞれの核についての考え方を持っている。そして、日本もその厳しい現実の中で、核抑止をはじめとする様々な枠組みの中に存在しているわけだが、この厳しい現実を、さっき言った理想へどう結びつけるかを考えなければいけないわけだ。そのために今、私も「ヒロシマ・アクションプラン」という提案をさせていただいたが、そういった枠組みに参加してくれる国を1国でも増やしていく。こうした努力が大事だと思っている。まずはG7から始め、G7以外にも、ロシア、中国、この核兵器国がある。そして現実は、そのさらに外側に核兵器を現実に持っている国が存在している。これが厳しい現実なので、こういった国々をいかに巻き込んでいけるか。これがこれからの取り組みの大変重要なポイントになると考えている。
Q.中長期的には核兵器禁止条約にオブザーバー参加という道は、日本にはあるかもしれないと考えないか。
A.これは今言ったロードマップをどうか描くか。その中で唯一の戦争被爆国として、核兵器国を多く巻き込むために、どこでどういう役割を果たすのかだと思う。まずは日本にとって唯一の同盟国であるアメリカとの信頼関係のもとに、核兵器のない世界を目指す、こういった方向性を確認するところから始めて、G7、さらには中ロを巻き込んで、そういった取り組みを進めていかなければならないと思う。日本が1国でこの核禁条約に関わる。これはひとつの考え方だと思うんだが、それで結局、核兵器国が動かなければ、現実は変わらない。日本としての具体的な役割を果たすためにはどうあるべきか。これを今後とも考えていきたい。
●G7広島サミット 最大2万4千人の警備態勢 東京以外では最大規模 広島 5/16
あと3日となったG7広島サミットの警備について、東京を除くサミットでは最大規模となることが発表されました。
警察庁は広島サミットの現場警備などについて最大2万4千人態勢であたるということです。
2000年の九州・沖縄サミットは2万3千人、2016年の伊勢志摩サミットは2万2千人など東京を除く開催では過去最大規模の警備態勢となります。
広島サミットは人口が密集する市街地での開催となるため、警察庁は全国から警察官を動員したうえで大規模な交通規制を実施するほか、サイバー攻撃に対処する部隊も出動させています。

 

●G7サミット、岸田首相がパーティーで決意 5/17
原爆慰霊碑に手を合わせる観光客
広島の平和記念公園では観光客らが原爆慰霊碑を前に手を合わせる姿もみられました。米ユタ州から観光で訪れた男性(52)は「平和記念資料館の展示を見て言葉にならないほど悲しい気持ちになった。ここでサミットが開かれるからには核兵器を減らすための議論を深めてほしい」と話していました。
首相、岸田派パーティーでG7へ決意
G7広島サミットで議長を務める岸田文雄首相が自らが会長を務める自民党の派閥「宏池会」の政治資金パーティーで意気込みを語りました。宏池会会長の先輩にあたる大平正芳、宮沢喜一両元首相もサミット議長を経験したことを引き合いに「宿命を感じずにはいられない。真正面から取り組み成功に努力したい」と力を込めました。
広島県内でも夏日や真夏日
日本列島は17日、各地で気温が上昇しました。G7サミットをひかえた広島県内でも夏日や真夏日を観測する地点が相次ぎました。
入島規制前日の宮島、海外観光客らでにぎわい
宮島(広島県廿日市市)はサミットに伴い18〜20日に入島が島民ら一部に制限されます。前日の17日は観光客らでにぎわいました。米国のワシントンDCから旅行で来た夫婦は「神社などの景色がきれいと聞いて宮島にも足を運んだ。入島できなくなる前に来られてよかった」と安堵の表情を浮かべていました。
広島の平和大通り、市営駐車場で利用制限
広島市中心部を東西に横断する平和大通り沿いにある一部の市営駐車場はG7サミットに伴い利用を制限しています。一定の期間封鎖する駐車場もあり、警察車両が駐車していたり、フェンスなどの資材を置いていたりします。
G7各国のお好み焼き登場 広島の食文化発信
上下をバンズで挟む「アメリカ焼き」にフィッシュ・アンド・チップスをトッピングした「イギリス焼き」――。広島の一般財団法人「お好み焼アカデミー」がG7各国をイメージしたお好み焼きのレシピを開発し、加盟店が販売しています。開発者のひとりは「広島の食文化を海外に広めたい。地元の人も是非世界を感じてほしい」と意気込んでいます。
マツダなど広島企業が展示会、原爆からの復興伝える
広島の地元企業が旧広島市民球場跡地のイベント広場で展示会「プライドオブ広島」を企画し、報道陣に公開しました。被爆後の街で資材を運んだマツダの三輪トラック、人々の胃袋を満たしたお好み焼きの屋台から広島カープの財政難を救った樽募金の実物まで紹介しています。実行委員長の池田晃治さんは「戦火が続く地域の人たちにも、復興の未来は来るということを伝えたい」と語りました。
広島本通商店街にサミットの垂れ幕
市内中心部の広島本通商店街には白地に金色の文字でG7広島サミットの開催を伝える大きな垂れ幕が掲げられています。買い物に来た女性(84)は「商店街に来るたびに横断幕を眺めていた。いよいよ始まるんだと実感する」と感慨深く話していました。
広島の平和記念公園、周辺のドローン飛行禁止に
広島市の平和記念公園付近ではドローンなどの「小型無人機等飛行禁止指定地域」の掲示物がフェンスに張られました。19日のサミット開幕に向けて警備が強化されています。
各地で気温上昇、広島市も夏日に
日本列島は高気圧に覆われて各地で気温が上昇しています。G7サミットを控える広島市は夏日になり、平和記念公園の周辺で日傘を差して歩く人の姿がみられました。
学生ボランティア「平和の大切さを伝える」 JR広島駅
海外からの訪問者に観光や交通を案内する学生ボランティアが精力的に活動しています。16日に設けたJR広島駅のインフォメーションカウンターでは道案内などに丁寧に対応していました。広島市の大学3年生の女性(20)は「被爆地でサミットを開く意味を伝えるチャンス。平和の大切さを発信したい」と話します。
サミット主会場の宇品島周辺、大阪府警も警戒
サミット主会場のグランドプリンスホテル広島(広島市南区)がある宇品島周辺の海上で大阪府警や海上保安庁の船舶が警戒に当たっていました。島内でボランティア活動をしている男性(51)は「毎日島に来ているが県外の警察の船は初めて見た」と驚いた様子でした。
シェアサイクル「ぴーすくる」交通抑制呼びかけ 
広島市内840台ほどのシェアサイクル「ぴーすくる」に交通量抑制を呼びかけるステッカーが貼られました。業務用車両の運行調整やマイカーの利用自粛を促します。広島県と市などでつくる広島サミット県民会議の担当者は「新たに200台を県外から追加した。国内外の政府、報道関係者に利用してもらいたい」と呼びかけます。
広島空港、ゴミ箱も展望デッキもサミット態勢
広島空港(三原市)はG7サミット閉幕翌日の22日まで、通常設置している木製のゴミ箱を中が透けて見えるタイプに一部置き換えています。県警の要請を受けて不審物をみつけやすくする狙いです。滑走路が一望できる展望デッキも警備上の理由で18日から閉鎖します。空港側は「ご不便をおかけするが、広島の玄関口の一つとして何事もなく会議を開催できるよう警備に協力する」と理解を求めています。
平和記念資料館に目隠しシート
広島平和記念資料館では内側がみえないようガラスに目隠しのシートを貼る作業が進んでいます。資料館によると作業は16日に着手したそうです。要人らが訪れるのを前にセキュリティー上の対策です。
玄関口のJR広島駅、交通規制お知らせ
観光客ら多くの人々が行き交うJR広島駅ではサミットの開催に伴う交通規制を掲示で知らせています。友人と買い物に来ていた東広島市の専門学生(18)は「普段よりも移動に時間がかかると思うので余裕を持って行動したい」と語っていました。
サミット会場の宇品島に続く道路、往来制限中
サミット主会場のグランドプリンスホテル広島(広島市南区)がある宇品島につながる唯一の道路は15日午後から警備のため往来が規制されています。外務省が発行した「識別証」を持つ住民や関係者以外は通行できません。島内に住む30代女性は「通るたびに緊張するが、無事に終わってほしい」と話しました。
平和記念公園、G7歓迎の思い込め
平和記念公園にはG7サミット開催を歓迎するモニュメントがあります。市内の小学校で児童が育てたピンクと白色のペチュニア1400株が「G7 HIROSHIMA」の文字を彩ります。散歩に来ていた女性(82)は「平和都市の広島が世界に注目される良い機会。各国首脳には宮島などきれいな場所もたくさん見てほしい」と期待を示しました。
JR岡山駅のコインロッカー閉鎖
広島県外のJR主要駅でも警備対策に力が入ります。岡山駅(岡山市)では15日から駅構内や商業施設などにある計660ほどのコインロッカーの閉鎖作業が順次進んでいます。18〜21日は完全に使えなくなるため、残っている荷物は管理会社の事務所で保管します。
平和記念公園、県外の警察官も警戒
広島市の平和記念公園は早朝から警察官が巡回し、滋賀県警など県外から来た警察官の姿もありました。期間中には最大2万4千人ほど(うち特別派遣はおよそ2万1千人)が動員されるそうです。犬の散歩で公園を訪れた広島市の70代男性は「普段と違い物々しい雰囲気だ。サミットが重要な会議だと感じさせられる」と語りました。
サミット開催間近の原爆ドーム
広島には原爆ドームなど核兵器の悲惨さをいまに伝える遺構があります。近くで毎朝ラジオ体操をしているという男性(77)は「広島を象徴するような建物で、県民は補修しながら大事に守ってきた。G7サミットで被爆の実相が世界に広く伝わってほしい」と訴えました。
●G7広島サミットの経済効果は900億円超、警備費拡大で前回の2倍に…  5/17
G7広島サミットでは、各国の大統領・首相と関係者に加え、警備人員や報道陣など多くの人が集まる。警備上の関係もあって一時的に一般観光には制約が生じるものの、消費拡大やサミットで話題となった商材が後に人気になったこともある。過去の日本開催G7サミットを振り返りつつ、今回のサミットによる広島経済への波及効果を探った。
ロシア侵略、首相襲撃、インフレの余波
先進7か国首脳会議(G7サミット)が近づき、全国から警察関係者らが続々と広島に集まっている。機動隊員たちは列をなして警備対象となる平和記念公園内を歩き、原爆ドームなどを視察していた(広島市中区で)先進7か国首脳会議(G7サミット)が近づき、全国から警察関係者らが続々と広島に集まっている。機動隊員たちは列をなして警備対象となる平和記念公園内を歩き、原爆ドームなどを視察していた(広島市中区で)
今回のサミットで最も経済効果が大きいとみられているのは警備に伴う波及だ。関西大の宮本勝浩・名誉教授は、広島サミットの開催による県内への経済波及効果を約924億円と試算している。単純には比較できないが、2016年の伊勢志摩サミット(約483億円)の約2倍で、「警備費の増加が主な理由」(宮本氏)という。
広島市内では、会議開幕を前に歓迎ムードが高まるとともに、来日する要人の安全を確保するための警備が強化されている。警備費増大の理由は、1.開催地2.警備強化3.コストの三つだ。
日本で開催されたG7サミットは、前回が三重・伊勢志摩、その前が北海道・洞爺湖だ。いずれも「保養地」での開催だったが、今回は広島市内という「都市」での開催だ。大統領・首相らが市内中心部の平和記念公園を訪問することもあり、警備は広範になる。4月に和歌山市で起きた首相襲撃や昨年の安倍晋三・元首相の銃撃事件の影響も少なくない。ロシアのウクライナ侵略が続く中、国際的に注目されるG7サミットへの警備強化は不可欠だ。世界的なインフレ(物価上昇)もコスト増に拍車をかけている。
過去の事例では、08年の北海道・洞爺湖サミットで道内の経済効果が350億円(北海道経済界試算)と見込まれた。従来に比べて、開催に伴う直接的な効果が大きいだけに、地元経済でも期待は膨らんでいる。
観光客呼び込み、産品の販売促進…2次波及が焦点
大事な視点となるのが、サミット後に経済効果を広げることができるかどうかだ。
各国首脳の訪問先や、夕食会で振る舞われた食事などは、日本だけでなく海外のメディアも発信し、世界に広く伝えられる。開催地にとっては知名度向上や観光客の呼び込みにつながる可能性がある。
伊勢志摩サミットでは、首脳の乾杯酒に採用された日本酒「 作ざく 」はサミット後に注文が殺到し、発送まで数か月待ちとなる事態となった。蔵元の「清水清三郎商店」(三重県鈴鹿市)の清水雅恵・統括マネジャーは「海外でも認知され、輸出が増えた」と話す。
伊勢志摩サミットで振る舞われた「作」(写真は現在の商品、清水清三郎商店提供)伊勢志摩サミットで振る舞われた「作」(写真は現在の商品、清水清三郎商店提供)
配偶者プログラムで提供されたサブレなどが注目を浴び、特別販売につながった。観光地としても知られ、コロナ禍で減少した訪日客を取り戻すきっかけになる。
もっとも、サミットによる経済効果は長続きしないことが多い。北海道では、開催翌年の09年度の観光客数は前年度比1.4%減、伊勢志摩サミットのあった三重県も開催翌年の17年の観光客数が0.7%増にとどまった。
宮本氏は「観光客の誘致効果は長続きしない。サミットの機会を生かすには、その後もイベントを誘致するなどの努力が欠かせない」と指摘する。
●G7広島サミット“ロシアの制裁逃れに連携対抗”各国と最終調整  5/17
19日に開幕するG7広島サミットで、議長国の日本は、ウクライナ侵攻を続けるロシアが「第三国」を介して制裁を逃れる動きに、G7などで連携して対抗していく方針を確認したい考えで、首脳宣言にどう盛り込むか、各国と最終調整を進めています。
今回のG7広島サミットで、各国首脳による討議では、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの制裁措置の扱いが焦点の1つです。
サミット開幕に先立ち、岸田総理大臣はNHKのインタビューで、これまでの対ロ制裁について「自動車産業で急速に活動が低下し、半導体不足で武器の製造が滞るなど、一定の効果は出ている。ただ、ロシアがう回や制裁逃れをしているという指摘もある」と述べました。
議長国の日本としては、対ロ制裁の実効性を高めるため、ロシアが、つながりのある「第三国」を介して武器や物資の提供を受けて制裁を逃れる動きにG7などで連携して対抗していく方針を確認したい考えで、首脳宣言にどう盛り込むか、各国と最終調整を進めています。
一方、政府は成果文書に核軍縮・不拡散に向けて、核兵器を使用しない歴史の継続や核兵器の削減、核保有国の透明性向上の重要性を盛り込むための協議も続けています。
●G7広島サミットで成果文書6本まとめる方向で調整 国連事務総長も広島訪問 5/17
G7広島サミットまであと2日となりました。サミットでは、首脳宣言を含む6本の成果文書をまとめる方向で調整が進められています。
複数の政府関係者によりますと、サミットでは首脳宣言として輸出制限などにより相手国に圧力をかける「経済的威圧」に対抗するため、G7が連携することを明記する方向で調整が進められています。
中国を念頭に置いたもので、台湾海峡の平和と安定の重要性などについても言及する見通しです。
この首脳宣言とは別に、ウクライナ問題、核軍縮、経済安全保障、クリーンエネルギーの4分野で成果文書をとりまとめるほか、G7と招待国が共同でロシアのウクライナ侵攻に伴う食料危機への対応についても文書を出す方向で調整が進められています。
こうしたなか、国連はグテーレス事務総長がG7サミットに出席するため、広島を訪問すると発表。グテーレス氏は「今こそ核軍縮を再び進めるべきだ」と述べ、被爆地で開催されるサミットで核兵器に関する議論が前進するよう期待感を示しました。
ところでサミット初日、岸田総理は広島市の平和公園で各国首脳を迎える予定です。昨夜は公園内の原爆資料館のあたりでパトカーや国の名前を記した紙を貼った車が車列を作って流れを確認していました。
首脳がそろって平和公園を訪れるのは初めてです。
警戒態勢が強まり準備が進む広島。
首脳の到着に合わせた高速道路などの規制は今夜遅くから始まります。
●G7広島サミットの裏で…中国が中央アジア5か国との初の首脳会議開催へ 5/17
中国は、中央アジア5か国との初の首脳会議をあすから開催します。G7広島サミット直前の開催で、対中包囲網を強めようとするアメリカなどの動きをけん制する狙いがあるとみられます。
記者「こちらはメディアセンターですが、ウズベキスタンメディアの人たちが続々と到着しています」
中国内陸部・陝西省西安市では、18日から2日間にわたって中国とウズベキスタンやタジキスタン、カザフスタンなど中央アジア5か国の初の首脳会議が開催されます。中央アジア5か国は旧ソ連圏でロシアの強い影響を受けてきましたが、ウクライナ侵攻以降、ロシアと距離を置く一方、中国とは経済的結びつきを強めつつあります。
一方、中央アジア5か国に対してはアメリカも関与を強め始めていて、2月にはブリンケン国務長官がカザフスタンを訪問しました。
アメリカを含むG7=主要7か国が、19日からの広島サミットで中国を念頭に、「経済的威圧」への対抗を首脳宣言として明記する方向で調整が進められる中、中国としては中央アジアとの関係を強化し、西側諸国の中国包囲網に対抗したい考えとみられます。
●G7広島サミット、アフリカ諸国は「期待度低い」 カイロ大准教授が指摘 5/17
エジプト・カイロ大アフリカ研究学部のアハメド・アマル准教授(36)が産経新聞の電話取材に応じ、グローバルサウス(南半球を中心とした新興国・途上国)の一角であるアフリカの視点から、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に対する見解を語った。
アマル氏はサミットでグローバルサウスを巡る問題の比重が大きくなることを評価。エネルギー・食料の安全保障や気候変動の問題が議題となったことについては「これらはグローバルサウスにとっても最優先の課題だ」と歓迎した。
ただ、アフリカからは少なくとも過去4回のサミットに連続して招かれた南アフリカが招待されず、アフリカ連合(AU)議長国としてコモロが参加するにとどまったとし、「アフリカ諸国の期待度は比較的低いのではないか」と述べた。南アフリカは2月に中露と合同で海上軍事演習を行っている。
アフリカを巡っては先行して浸透してきた中国に加え、米国も関係強化に動いている。アマル氏は、アフリカ諸国が中国とは貿易、米国とは治安や軍事、政治と協力分野を分けて交流を進め、米中の勢力争いに巻き込まれるのを避けようとしているとみる。同時に「支援を失って経済や治安に悪影響が出るのを恐れている」ともし、米中双方との関係維持を望んでいるとの見方を示した。
アマル氏は、民主主義の進展などアフリカ諸国の内政を念頭に、欧米との間には「議論もある」とする一方、中国との間でも過剰な債務によって権益を奪われる「債務の罠(わな)」の問題が深刻化していると指摘。ロシアは民間軍事会社ワグネルの進出や武器売却などの手法で浸透を図るが、「アフリカの発展に必要な貢献をしていない」と語った。
●国連グテーレス事務総長「核兵器を使わないと確認する時」G7広島サミットに 5/17
国連のグテーレス事務総長はG7広島サミットに向けて、核軍縮をめぐり、「核兵器を使わないと確認する時であり、日本には特別に道徳的発言権がある」と述べました。
国連グテーレス事務総長「核保有国はいかなる状況下でも核兵器を使用しないことを確認する時だと考える。この点で、日本には特別に道徳的発言権があると私は信じている」
グテーレス事務総長は16日、G7サミットで、広島を訪問するとしたうえで「今こそ核軍縮を再び活性化する必要性を強く主張しなければならない」と訴えました。
また、サミットの主要テーマのひとつであるウクライナ情勢については「現時点では実りある和平交渉は非常に困難だ」という認識を示したうえで進展を望んでいると述べました。 
●アメリカ バイデン大統領 G7で広島へ 狙いは? 5/17
G7広島サミットに出席するため、日本を訪れるアメリカのバイデン大統領。
ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア、影響力を拡大する中国に、G7としてどう対応していくのか。
そして、アメリカは日本に何を期待し、日米韓3か国関係の将来は?
バイデン政権の元高官に、広島訪問にあたってのアメリカの狙いについて聞きました。
バイデン大統領のG7でのねらいは?
話を聞いたのは、バイデン大統領のもと、去年までホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議で東アジア部長を務めたクリストファー・ジョンストン氏です。ジョンストン氏は今回のG7サミットについて「バイデン大統領は、G7という枠組みの復活、インド太平洋地域への脚光、そして、広島という特別な場所での開催、この3つの意味で重要だとみている」とした上で、それぞれの意味について次のように述べました。 ※以下、ジョンストン氏の話
G7という枠組みの復活
G7は世界の主要な経済大国のあいだで政策を調整する重要な枠組みとして復活しました。つい最近まで、G7は廃れ行き、G20のような枠組みに取って代わられるという見方がありました。ところがもはやそうした見方はありません。ロシアがウクライナに軍事侵攻したことで、この見方は完全に逆転し、極めて重要な国際問題について政策を調整する、最重要の枠組みとして復活したのです。
インド太平洋地域への脚光
今回は日本が指導力を発揮でき、かつインド太平洋地域に焦点を当てることが可能な7年に1度の機会です。そしてその最大のテーマが中国です。バイデン大統領と岸田総理大臣双方にとって、今回は、国益優先で「法に基づく秩序」を変えようという中国に焦点を当て、そうした行動を押し戻し“経済的威圧”と呼ばれる行為などへの対策を調整するうえで大事な機会となります。
広島という特別な場所での開催
初めて原子爆弾が使われた場所である広島でことし、G7サミットを開くということ自体に大きな意義があると思います。ロシアのプーチン大統領が核兵器使用の可能性をちらつかせ、朝鮮半島情勢が懸念されるさなかにあるからこそ、核の使用がいかに危険で、核のない世界に向けて長期的なビジョンを維持していくことがいかに重要かという、非常に力強いメッセージを発信することになります。
G7とG20の違いとは?
G20の課題はロシアや中国がメンバー国だということです。ロシアがウクライナに侵攻した今日において、G20が効果的に機能することは非常に難しくなっています。一方で、私がオバマ政権時にホワイトハウスにいたときは、正直に言って政権内でG7の意味合いが非常に低下していました。オバマ大統領自身、G7に熱心ではありませんでした。彼はG7はもはや過去の枠組みであり、G20こそが今、そして未来に向けた枠組みだと捉えていました。いま、バイデン政権はそれとまったく逆の考えを持っています。
広島でのG7 バイデン政権のメッセージは?
危険な核の使用に対してG7が強いメッセージを発信することは確実だと思います。2016年に広島を訪問したオバマ大統領は当時、「核なき世界」の実現を掲げていました。しかし不幸なことに、世界はそこから遠ざかってしまいました。その後、北朝鮮は核兵器開発を続け、中国は核兵器の近代化をはかり、ロシアはヨーロッパで核使用の可能性をちらつかせています。しかし、私たちが「核なき世界」の実現というビジョンを持ち続け、あきらめないことは重要です。だからこそ、広島で開かれる今回のG7サミットは、重い意味を持ちます。
「グローバル・サウス」への対応は?
G7や先進国のあいだでは、ウクライナでの戦争やロシアへの対応で非常に強い結束がありますが、グローバル・サウス(アジア、アフリカ、中南米などの新興国や途上国)のあいだではそこまでの合意がありません。グローバル・サウスの中には西側諸国のやろうとしていることは偽善だと見る国もあります。彼らは、(アメリカなどの軍事侵攻によって始まった)イラク戦争のことを覚えており、ウクライナへの軍事侵攻をめぐって、アメリカなどがどうやったら「法に基づく秩序」などと言えるのか、といぶかしんでいます。中国やロシアはこの力学を利用して自分たちの利益を拡大しようと動いています。それは東南アジアだけでなく、アフリカやラテンアメリカなどいたるところで起きているのです。ですから、今回のG7では「法に基づく秩序」が途上国の経済にどんな利益をもたらすのか、という前向きなビジョンを発展させるため、各国が協力すべきです。それは投資、気候変動対策での協力、グローバルなレベルでの健康といった領域を通じてやるべきです。グローバル・サウスの繁栄にG7がどのように貢献できるのかを示すことがとても重要になります。岸田総理大臣はこのことにおいて力強い発信力を持っていると思います。
G7のメンバー国であるフランスのマクロン大統領が4月、台湾情勢をめぐってヨーロッパはアメリカと中国の対立から一定の距離を保つべきだという発言をして波紋を呼びました。
マクロン発言 バイデン政権の受け止めは?
マクロン大統領の発言は、実際にはほかのヨーロッパの指導者の考えからは、ずれたものだと思います。イギリスやドイツの指導者の中国をめぐる公の場での発言はまったく異なっています。現実には、中国の振る舞いに対する懸念という点において、インド太平洋地域とアメリカ、ヨーロッパのあいだの認識はますます一体化しています。中国の習近平国家主席が「無制限のパートナーシップ」と称してロシアのプーチン大統領に同調する決断をしたことや、ことし前半にプーチン大統領に会うためにモスクワを訪ねたことは、非常にマイナスのメッセージを送り、アメリカ、ヨーロッパ、インド太平洋地域が結束することを助けました。中国に対する見方は当然、国によって多少の違いはあります。しかし、サミットの首脳宣言では、台湾海峡をめぐる問題に加え、南シナ海、東シナ海の問題についても、とても力強いことばが並ぶはずです。中国による“経済的威圧”に対しても、強いメッセージが出されると思います。
バイデン政権は台湾海峡情勢をどう見ている?
切迫したものだと見ています。ただ、良いニュースはアメリカも中国も、台湾をめぐる衝突を望んでいないということです。中国が台湾統一に向けた、確固たる工程表を持っているとは思いません。中国が軍事的な準備を進めていることは間違いありませんが、中国がいかなる軍事的衝突であってもリスクが伴うことをよく認識していることも確かです。だからこそ、抑止力が衝突を回避するうえで、非常に有効な方法となります。アメリカがインド太平洋における安全保障上の態勢を強化し、日本が防衛費を増額して反撃能力などの新しい能力の獲得に動き、オーストラリアやフィリピンといった友好国や近隣国が行動を起こしているのは、そのためです。これらすべてのことが抑止力を高め、中国が軍事力を行使した場合に支払うことになる代償を高めることにつながるわけです。最終的にはわれわれは安定を保ち最悪の結果を回避できると、私は楽観的に見ています。
中国への対抗 日本に望むことは?
第一にわれわれ日米両国は、同盟関係を継続して深化させ一段と統合された関係へと発展させていくべきです。私はまさにその方向に両国は動いていると思います。日本が防衛費を増額し反撃能力やサイバーへの対処能力などを備えることにしたことは、同盟関係をより深化させる上での扉を開きました。地域のほかのパートナー国家との関係を強化することも必要です。日本はオーストラリアと速やかに安全保障面での関係を強化しました。これは大変、歓迎されています。日米豪3か国は多くの共同作業や演習に一致して取り組むことができるでしょう。そして、日米韓3か国は非常に重要な関係の枠組みです。日本と韓国がミサイルの脅威に関するデータの共有に踏み出したことは非常に心強く、こうした動きを加速させるべきです。日本は地域での経済援助戦略を実行に移しました。そしていま、防衛装備品を東南アジアなどの友好国に移転するという新しい手段も持つようになりました。日本は、共通の価値観を持つ国々のあいだのネットワークを構築する上でも大事な役割を果たせます。そのことが集団的な抑止力の強化につながるのです。
日本との関係改善に踏み出した韓国 どう評価?
韓国のユン大統領は、正しいことをするために相当な政治的なリスクを負いました。そのことは称賛に値します。日本の植民地時代の「徴用」の問題を解決しようという行動が、3月の日本訪問を実現させました。そして岸田総理大臣の韓国訪問もとても前向きなものでした。ユン大統領の決断と、それに対する岸田総理大臣の対応によって、今まさに関係改善のモメンタム(機運)が醸成されました。私が期待するのは、このモメンタムを加速させることです。日米韓という3か国は、地域で最も重要なグループです。この3か国のあいだにはたくさんの共通利益があります。それは北朝鮮問題だけでなく、インド太平洋地域における経済安全保障分野での協力しかりです。私たちは多くのことに一緒に取り組めます。
日米韓3か国の関係は格上げされる?
経済安全保障など多くの分野で、日米韓3か国の協力は深まっていくと思います。3か国の対話がより制度化されていくと見ています。防衛分野で言えば、拡大軍事演習やミサイルの脅威に対する情報共有です。そしてインド太平洋地域をめぐる対話、そして戦略の調整といったこともあるでしょう。もし、こうした分野での3か国の関係を制度化できれば、この力強い協力の枠組みを後戻りのできない永続的なものにすることができます。
アメリカの核戦力を含む抑止力で同盟国を守る「拡大抑止」をめぐっては、日本と韓国のあいだで考え方に温度差があります。
「拡大抑止」でも日米韓3か国の関係はうまく機能する?
私は「拡大抑止」において3か国が対話を深めていく余地があると強く感じています。確かに日本と韓国のあいだでは議論に性質の違いがあります。韓国では核兵器をめぐって非常に深刻な議論があります。ユン大統領のワシントン訪問の際には、アメリカが戦略原子力潜水艦を韓国に派遣することや情報共有の枠組みを新たに設置することで合意があり、多少なりとも韓国での議論が前進しました。これに対して日本での議論は性質が異なります。しかし、日本もアジア地域における核の脅威に懸念を抱いているという点では同じです。「拡大抑止」やアメリカによる「核の傘」の信頼性への考え方において、日本と韓国のあいだには一定の共通点もあります。ですので、私は「拡大抑止」についても将来、日米韓3か国の防衛当局者が意見を交わす機会が訪れるものと確信しています。
●リトアニア外相 G7にロシアに対する制裁強化訴える  5/17
ロシアと国境を接するバルト三国の1つ、リトアニアのランズベルギス外相がNHKのインタビューに応じ「ロシアへの圧力を強めれば、ウクライナの勝利に近づく」として、日本を含むG7=主要7か国に対して、ロシアに対する制裁強化を訴えました。
安全保障に関する国際会議への参加などのため日本を訪れているリトアニアのランズベルギス外相は17日、都内でNHKのインタビューに応じました。
リトアニアは、ロシアと国境を接するほか、第2次世界大戦中に旧ソビエトに併合された歴史を背景に、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻後、積極的にウクライナを支援してきたほか、EU=ヨーロッパ連合の中でもロシアへの厳しい制裁を主張してきました。
ランズベルギス外相は「リトアニアは軍事侵攻を身近に感じ、無視できないだけでなく、ウクライナが勝たなければロシアは危険な隣国であり続ける」と危機感を示しました。
そのうえで「一方を支援するなら、もう一方への支援はやめるべきだ。ロシアへの圧力を強めれば、ウクライナの勝利に近づく」と述べ、日本を含むG7各国にロシアに対する制裁の強化やロシアによる制裁逃れの阻止を訴えました。
一方、リトアニアに「台湾」の名を冠した出先機関が開設されるなど、リトアニアが台湾との関係を深めているのに対し、中国は、外交関係の格下げなどで反発しています。
ランズベルギス外相は「中国からの圧力は本当に厳しいものだったが、こうしたことが起こりうると世界に示すことになった。日本も中国のサインを見極め、計画を考えることが必要だ」と述べ、中国との関係が悪化した場合にも耐えられるような備えが日本にも必要だと指摘しました。
 
 

 

●G7、対ロシア制裁履行強化を協議へ 中国の経済的威圧対策にも言及 5/18
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は17日、広島市での主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの制裁の抜け穴を防ぐため、G7として制裁履行の強化策を打ち出す方針を明らかにした。また、対中国政策の基本原則について認識を共有し、共同声明では中国による他国への経済的威圧への対応策にも言及するとの見通しを明らかにした。
サリバン氏は、日本に向かう大統領専用機内で記者団に語った。G7サミットの主要議題として、ウクライナ情勢や対中政策に加え、重要な産業物資のサプライチェーン(供給網)の再構築、新興国・途上国へのインフラ投資、人工知能(AI)の活用とリスク管理などを挙げた。
ウクライナ情勢をめぐる協議では、戦況を分析し、ウクライナがその意思を示した場合の将来的な和平協議に向けた「適切な条件設定」に関しても話し合う。
対露制裁の強化については「制裁の確実な履行と制裁逃れへの対応が主要な論点になる」と説明した。各国による制裁で凍結されたロシア関連の資産をウクライナの復興支援に充てる案も「協議する」と述べた。G7で検討中だと英メディアが報じた対ロシア全面輸出禁止措置に関しては「(協議は)想定していない」と述べた。
●G7首脳 広島原爆資料館へ初訪問 難航した水面下交渉 5/18
5月19日から3日間、被爆地・広島で開催されるG7サミット。ウクライナ情勢や世界経済、核軍縮などを主要7か国の首脳らが議論する。議長を務める総理大臣・岸田文雄が強くこだわってきたのが、初日で調整されている、G7首脳による原爆資料館訪問だ。アメリカのホワイトハウスは、バイデン大統領が、G7各国の首脳らと原爆資料館を訪問すると発表。G7の核保有国の中には、資料館に足を踏み入れることさえ難色を示す国も出ていた中、首脳に何を見てもらうのか。シビアな水面下の交渉に迫る。
米も仏も英も難色
「被爆の実相を見てもらわないとな」
G7サミットの広島開催を去年5月に決めて以来、岸田は、G7首脳による原爆資料館訪問の意味について、周囲にそう強調してきた。被爆地選出の国会議員として「核廃絶」をライフワークに掲げてきた岸田。
被爆地でのサミット開催は、おととし秋の総理就任時から温めてきたプランだ。なかでも原爆資料館訪問の実現にはこだわりを見せていた。
その意を受けて、外務省が各国に打診を始めたが交渉は難航する。交渉過程について報告を受けた岸田は、焦りをにじませ、周辺にこう漏らしたという。
「アメリカだけじゃなく、フランスやイギリスも難色を示しているんだよな」
G7メンバーのうち、アメリカは78年前に広島・長崎に原爆を投下した当事者で、いまもロシアと並んで世界最大の“核大国”だ。フランスやイギリスも核保有国である。
ある政府関係者は次のように解説する。「原爆資料館には原爆の惨状を伝える数々の展示物がある。その場所を首脳が訪れれば、いま核兵器を保有し抑止力を必要とし正当化している国の立場が揺らぎかねない、という懸念があるのだと思う」
ウクライナ情勢を強調
どうすれば各国の首脳に、原爆資料館への一歩を踏み出してもらうことができるのか。日本が強調し続けたことの1つがウクライナ情勢だった。
政府関係者はこう明かす。「核軍縮をめぐる立場は各国、温度差は現実としてある。しかし、対ロシアでは一致できるはずだと踏んで、粘り強く働きかけた」
侵攻が長期化する中、ロシアは核兵器使用の威嚇を行っていた。現実にまた核兵器が使われてしまうかもしれない。そうした脅威が世界中を覆い、G7各国もロシアの行為を一斉に非難していた。
政府関係者の1人は「核廃絶に向けた第一歩は核による威嚇をしないことだ。そのメッセージを発する場にしたいと強調した」と語る。
「G7首脳が原爆資料館を訪れることは、各国の核保有をいまただちに否定するメッセージを伝えるためではない。将来の人類共通の目標として、核廃絶というゴールを共有する意義がある」と、各国に理解を求めたという。
そして、交渉開始から半年余りの去年12月下旬。
「資料館訪問はなんとか大丈夫そうだ」
関係者の1人が取材にこう漏らした。G7首脳でそろって原爆資料館に訪問するメドがたったというのだ。実現すれば初めてのことだ。
政府関係者「G7首脳に直接、原爆被害の実相を見てもらう。核廃絶や平和のメッセージを発信する上で、これ以上の舞台はない」
さらなる壁は“何を見るか”
しかし、ここでもう1つ大きな壁が立ちはだかる。資料館を訪れた上で、何を見るかという点だ。
原爆資料館は「東館」と「本館」に分かれていて、被爆の実相を詳しく伝えるのは本館だ。
原爆投下直後の広島市内の様子や被爆者の姿を写した写真。亡くなった被爆者の衣服。遊んでいる時に被爆し亡くなった子どもが乗っていた焦げた三輪車などが展示されている。
日本としては、この本館までしっかり見てもらいたい。しかし、今度はその点に難色を示す国が出てくる。資料館は訪問するにしても、あくまで選ばれた展示物をいくつか見るにとどめ、時間をかけて本館を視察するのは避けたいというのだ。
ある政府関係者は背景をこう説明する。「例えばアメリカには、『原爆投下は日本との戦争を早く終わらせるために必要だった』という意見が根強く残っている。来年はアメリカ大統領選挙を控えている。そのように、各国のなかには、国内世論への影響を避けたいという思いもあるのではないか」
オバマの資料館訪問は短時間
アメリカについては、大統領による資料館訪問は初めてではない。7年前の2016年、当時のオバマ大統領による訪問が最初だ。このとき、岸田は外務大臣として訪問に同行し、オバマ大統領への説明役を務めていた。
中でどのようなやりとりがあったのか。7年が経過した今でも、岸田は誰に聞かれても「それは今後もずっと言わない約束になっているから」とだけ話し、固く口を閉ざす。アメリカ大統領の発言内容が明らかになって国際社会に与える影響を思慮しているのだろう。
当時を知る関係者によると、オバマは東館に短時間滞在したのみで、本館には入らなかったと見られている。
関係者の1人は振り返る。「オバマ大統領は、ほかの場所との移動の合間に、休憩も兼ねて原爆資料館に立ち寄ったという設定だった。そこに数点の展示品を運んで見てもらった」
直接、原爆資料館だけを訪れたわけではないという立場をアメリカ国内向けに示す意味があったのではないかとの見方がある。
別の関係者は「岸田総理には、アメリカ大統領を広島に呼び、原爆の被害に触れてもらったという感慨の一方で、もっと被爆の実相を知ってもらいたいという心残りもあったのではないか」と話す。
渡り廊下でつながった資料館の本館と東館の距離は、わずか数十メートル。岸田にとっては、被爆の実相を国際社会に伝える上で、はるかに長い距離のようにも思えるほど、大きな宿題として残った。
「本館を見なければ…」粘る岸田
「バイデン大統領だけ“置いてきぼり”でいいのか。外務省もそれでいいってことだな」
サミット開催が近づいてきたことしの春先。本館を訪れるかどうかをめぐり「アメリカを説得するのは難しい」と報告した外務省幹部に厳しく問い返す岸田の姿があった。なんとしても本館を見てもらいたいという7年越しの思いがあるのだろう。
さらに、ことし3月、岸田には資料館訪問への思いをより強くする体験があった。それはウクライナ訪問だ。キーウ郊外ブチャでロシア軍による虐殺現場に直接足を運んだ。
多くの民間人が埋葬された教会を訪れて献花し、当時の様子を、写真なども交えて関係者から聞いた。同行していた関係者は「岸田総理のあんなに厳しい表情は見たことがなかった」と振り返った。そして岸田はキーウに戻る途中、誰に対してでもなく「ちゃんとやらないといけない」とつぶやいたという。
政府関係者の1人は、岸田の胸の内をこう推測する。「総理はブチャ訪問で戦争の実態を直接知ることの重要性を改めて痛感したと思う。世界の安全保障情勢や核廃絶などについて議論するサミットで、資料館を訪れる意味は大きいという思いをいっそう強めたんだろう」
シビアな調整“本館訪問”
本館の訪問は実現するのか。サミット開催ギリギリまで調整が続いた。
政権幹部は、こう明かした。「かなりシビアな調整が続いていて決着していない。やはり、本館に行くことは相当ハードルが高いようだ。なんとか実現したいが、押しっぱなしでもよくない。原爆資料館への訪問そのものがなくならないよう慎重に交渉しないといけない」
強引に進めようとすれば、一部の国が取りやめる姿勢に転じ、G7首脳そろっての資料館訪問そのものがだめになる事態を懸念しているのだ。
バイデン大統領は、4月末、来年の大統領選挙での再選を目指して立候補を表明した。今後激しい選挙戦が予想され、アメリカ国内の世論に慎重に配慮しなければいけない状況とみられる。
日本政府は、各国の情勢も見極めながら対応していた。
サミット開幕の直前になって、アメリカのホワイトハウスは、バイデン大統領が初日の19日、G7各国の首脳らと原爆資料館を訪問すると発表。ホワイトハウスの高官は、記者団から、原爆投下を念頭に「謝罪するのか」と質問されたのに対し、「大統領のコメントは予定されていない。訪問は歴史に敬意を表するためだ」と述べた。
ウクライナ情勢や世界経済、それに国際保健やグローバルサウスへの対応など、多岐にわたる課題が議論されるサミット。今回は被爆地でのサミットであることを踏まえ、首脳宣言とは別に、核軍縮・不拡散に関する成果文書を発表することが検討されている。
G7首脳そろっての資料館訪問が実のあるものとして実現するかどうかが、その後のG7議長としての岸田の采配や首脳間の核軍縮・不拡散の議論に影響を与える可能性もあるだけに、まさにギリギリの交渉が続けられていた。
●G7広島サミット開幕前に バイデン大統領が岩国到着 5/18    
19日のG7広島サミットの開幕を前に、岸田総理大臣は、18日、アメリカのバイデン大統領との首脳会談に臨みます。日米同盟のさらなる強化を確認するとともに、サミットの成功に向け、最終的な論点のすりあわせを行いたい考えです。
岸田総理大臣は午前10時ごろ、総理大臣官邸で「今回のG7広島サミットは、国際社会が歴史的な転換期にある中で開催される重要なサミットだ。議長として、G7をはじめ、国際社会をけん引する強い決意と覚悟を持って臨みたい」と意気込みを述べました。岸田総理大臣は正午に広島空港に到着し、アメリカのバイデン大統領などG7各国の首脳との会談に臨むことにしています。
バイデン大統領を乗せた大統領専用機「エアフォース・ワン」は午後4時前に、山口県のアメリカ軍岩国基地に到着しました。
   ●速報
15:58ごろ バイデン大統領が岩国基地に到着
G7広島サミットに出席するアメリカのバイデン大統領を乗せた大統領専用機「エアフォース・ワン」が18日午後3時58分ごろ、山口県のアメリカ軍岩国基地に到着しました。
15:05ごろ 岸田首相 首脳会談に向け広島市中心部へ
アメリカのバイデン大統領などG7各国の首脳との会談に臨む岸田総理大臣を乗せた車が、18日午後3時5分ごろ、サミットのメイン会場のある広島市の宇品島を出て、広島市中心部に向かいました。
   JR広島駅 不審物検知のAIカメラ設置
JR西日本は18日、テロなどに備えたJR広島駅の警備の様子を公開し、警備員や警察官が危険物探知犬を連れて不審な物がないか構内を確認していました。また、駅の改札には不審物や不審な人物を検知するAIカメラが設置されていました。JR西日本中国統括本部でG7の警備を担当する有澤一浩さんは「テロを起こさせないように最大限の警戒警備態勢を取っています」と話していました。
   日本自動車工業会 “脱炭素化にさまざまな技術で”
G7広島サミットの開幕を前に18日、日本自動車工業会が記者会見し、自動車の脱炭素化について、EV=電気自動車に限らず、それぞれの国や地域の特徴を踏まえてさまざまな技術で取り組むべきという考えを示しました。日本自動車工業会ではG7の期間中、広島市でEVやハイブリッド車、それに燃料電池車など日本メーカーの車を展示することにしていて、豊田章男会長は「世界を見てもこれだけ多様な自動車会社がそろっている国はなく、G7を通じて日本らしいカーボンニュートラルへの山の登り方を提案したい」と述べました。
12:10ごろ 平和公園も立ち入り規制に 祈りささげる人も
広島市の平和公園では、18日から立ち入りの規制が始まりました。平和公園は原爆ドームの周辺も含めて今月21日まで立ち入りが制限される予定です。平和公園のそばを通って通勤しているという50歳の女性は「ふだんは人の多い公園に入れなくなりさみしいです。ただ、安倍元総理大臣の銃撃事件や岸田総理大臣がねらわれる事件もあったので、何事もなくサミットが終わればいいなと思います」と話していました。立ち入りが正午から制限されるのを前に、平和公園の原爆慰霊碑の周辺や公園近くの橋の上では、多くの人たちが祈りをささげていました。大阪から訪れた58歳の男性は「各国の首脳がこの場所に訪れることを原爆で亡くなった人たちに報告しました。まさにここで核兵器が使われたということを想像してほしい。核兵器がなくなっていくことを願っています」と話していました。
12:00ごろ 宮島口でも立ち入り制限
首脳らが訪れる予定の宮島では18日正午から立ち入り制限が始まり、廿日市市の宮島口にあるフェリーターミナルでは、正午になると制限を知らせる看板が設置されました。正午以降に訪れた人は住民であることなどを示す識別証を係員に見せながら手荷物検査を受けて乗り場に向かっていきました。
   広島空港に警備犬 厳戒態勢に
各国の首脳が利用する広島空港は、テロなどの不測の事態に備えて厳戒態勢となっています。ターミナルには多くの警察官のほか、警備犬も配置されています。また、ふだんはエプロンや滑走路の様子を見ることができる展望デッキは18日から閉鎖され、一般の人の立ち入りはできなくなりました。一方、サミットに伴う交通規制の影響で、空港と広島市内などとを結ぶバスが運休となる中、到着ロビーでは学生ボランティアが外国人に英語で広島市内への行き方などを案内する様子も見られました。
12:00 岸田首相 広島空港に到着
正午、岸田総理大臣が広島空港に到着しました。このあと、広島市内に移動し、アメリカのバイデン大統領などG7各国の首脳との会談に臨むことにしています。
12:00 政府 危機管理センターに「情報連絡室」設置
政府は、19日開幕するG7広島サミットに向けて、テロやサイバー攻撃への警戒を強化するため、18日正午、総理大臣官邸の危機管理センターに「情報連絡室」を設置しました。
   高速道路 一部区間で交通規制 始まる
このうち山陽自動車道は、午前10時50分から広島県内の本郷インターチェンジと広島東インターチェンジの間の下り線で通行止めが始まり、サービスエリアも閉鎖されました。小谷サービスエリアでは午前9時半ごろから警察やNEXCOの社員が利用するドライバーに声をかけ「施設を閉鎖するので早めにご退出お願いします」と呼びかけていました。サービスエリアの管理者によりますと、山陽自動車道の下り小谷サービスエリアの再開は19日の午前4時ごろを見込んでいるということです。
   広島市で交通規制 通勤・通学時間帯に混雑も
サミット開幕を控え、広島市内では交通規制が始まりました。広島電鉄では18日から22日までの平日は路面電車とバスの便数をいずれも通常の半分程度に減らしているため、18日朝の通勤・通学の時間帯は利用者で混雑しました。一方、それ以降は目立った混雑は起きておらず、広島市中心部では、午前11時現在、車の交通量もふだんより少なくなっています。広島電鉄は夕方以降、帰宅ラッシュで再び混み合う可能性があるとして、最新の運行状況を確認し時間にゆとりを持って利用するよう呼びかけています。
11:00ごろ 松野官房長官「核兵器ない世界へ機運を」
松野官房長官は18日午前の記者会見で「G7広島サミットでは、国際的な機運が後退している中で『核兵器のない世界』に向けた機運を盛り上げるとの思いを形にしたいと考えており、力強く実効性のある取り組みにつながるようなメッセージを発信したい」と述べました。また、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国の枠組み=クアッドの首脳会合の開催については「現在4か国間で調整中だ」と述べました
10:50 岸田首相 政府専用機で羽田空港出発
午前10時50分、岸田総理大臣が政府専用機で羽田空港を出発し、広島に向かいました。岸田総理大臣は、19日開幕するG7広島サミットに先立ち、広島に到着したあと、午後にはアメリカのバイデン大統領との日米首脳会談に臨むほか、ほかのG7のメンバー国の首脳とも会談を行う方向で調整を進めていて、サミットの成功に向けて、最終的なすりあわせを行うものとみられます。
10:00ごろ 岸田首相 官邸出発「強い決意と覚悟を持って」
岸田総理大臣は、午前10時ごろ、総理大臣官邸で記者団に対し「今回のG7広島サミットは、国際社会が歴史的な転換期にある中で開催される重要なサミットだ。議長として、G7をはじめ、国際社会をけん引する強い決意と覚悟を持って臨みたい」と意気込みを述べました。その上で「開催される広島という街は、原子爆弾によって壊滅的な被害を受け、力強く復興して平和を希求する街であり、こうした広島でG7や各地域の主要国が平和へのコミットメントを示すという取り組みを歴史に刻まれるものにしたい」と述べました。そして、サミットの開催地広島に向け、官邸を出発しました。
10:00前 国際メディアセンター開設
G7広島サミットの取材拠点となる「国際メディアセンター」が広島市中区の県立総合体育館に開設され、センターの運用が始まる午前10時を前に、施設の入り口には国内外から集まった報道関係者が長い列を作り、入念な荷物検査を受けて入場していきました。イタリアのテレビ局の男性は「ロシアのウクライナ侵攻や環境問題などで議論が進むことを期待しています。各国首脳の原爆資料館への訪問は、過去に何が起こったか知り今後の正しい行いにつなげるために大切なことだと思う」と話していました。
9:20ごろ 宮島への立ち入り制限前に 金属探知機設置
18日正午から宮島への立ち入りが制限されるのを前に、広島県廿日市市の宮島口にあるフェリーターミナルには、午前9時20分ごろから金属探知機などの機械が設置されました。
8:30ごろ 広島市 人通りはふだんより少なく
広島市では午前8時30分ごろ、歩く人や通行する車の数はふだんより少なくなっていました。県内の企業はG7広島サミットの開催にあたり、18日から臨時休業や出社人数を制限するなどの対応を取っています。
1:47ごろ 伊 メローニ首相 広島空港に到着
G7広島サミットに出席するイタリアのメローニ首相を乗せた専用機が、18日午前1時47分ごろ、広島空港に到着しました。今回のサミットに出席するG7の首脳で広島に到着したのはメローニ首相が初めてです。
1:00ごろ 米 バイデン大統領 日本へ出発
G7広島サミットに出席するため、アメリカのバイデン大統領は日本時間の18日午前1時ごろ、大統領専用機で首都ワシントン近郊の空軍基地を出発しました。バイデン大統領は日本時間の18日午後、広島に到着したあと、岸田総理大臣との日米首脳会談に臨み、19日から21日まで開かれるG7広島サミットに出席します。バイデン大統領としては、一連の協議を通じて、各国と連携してロシアによる軍事侵攻が続くウクライナへの支援を維持し、ロシアに対する圧力を強化するとともに、インド太平洋地域をはじめとする世界各地で影響力を拡大させる中国に対抗するための結束を確認したい考えです。とりわけアジアの同盟国・日本が議長国を務める7年に1度の機会をとらえて、各国の関心をインド太平洋地域に向けさせ、中国を念頭に経済的威圧に一致して対抗するための方策を打ち出したい考えです。バイデン大統領は当初、G7広島サミットに出席したあと、オーストラリアなどを訪れる予定でしたが、アメリカの債務上限の引き上げをめぐる協議が続く中、G7後の日程をキャンセルし21日にアメリカに帰国する予定です。バイデン大統領は出発を前に17日、ホワイトハウスで演説し、アメリカ政府の借金の上限、いわゆる債務上限問題について「合意できると確信している。アメリカは債務不履行にはならない」と述べ、野党側との協議に全力を挙げる姿勢を示しました。
   米ホワイトハウス 日米韓3か国首脳会談は「調整中」
バイデン政権は、G7広島サミットに出席するバイデン大統領が、日本滞在中に岸田総理大臣と韓国のユン・ソンニョル大統領と日米韓3か国の首脳会談を行うと今月はじめに発表しています。これについてホワイトハウスのサリバン大統領補佐官は17日、記者団に「3か国とも開催には前向きだ」とした上で「非常に過密なスケジュールの中で時間が取れれば首脳会談を行いたいが確定はしていない。まだ多くの予定を調整している最中だ」と述べ検討を続けていることを明らかにしました。バイデン大統領は国内の債務上限の引き上げをめぐる協議を行うため一連の外国訪問を短縮するなど予定の見直しを行っていて、日程の調整が続いています。
   ●G7広島サミット 開幕前に きょう日米首脳会談へ
G7広島サミットは、19日から3日間の日程で開催され▽ウクライナやインド太平洋を含めた地域情勢に加え▽世界経済や▽食料・エネルギー問題、▽核軍縮・不拡散などをテーマに首脳間の討議が行われます。開幕に先立ち、G7メンバー国の首脳は、18日来日し、岸田総理大臣も現地入りする予定です。そして、岸田総理大臣は、18日午後にアメリカのバイデン大統領との首脳会談に臨むことにしています。会談では、中国の海洋進出の動きや北朝鮮の核・ミサイル開発など、東アジアの安全保障環境が厳しさを増していることも踏まえ、日米同盟の抑止力と対処力のさらなる強化を確認したい考えです。また、半導体や重要鉱物のサプライチェーンの強じん化を含めた経済分野での協力などをめぐっても意見が交わされる見通しです。そして、広島サミットの成功に向けて、ロシアに対する制裁の扱いやウクライナ支援のあり方など、19日からの討議の論点について首脳間で最終的なすりあわせを行いたい考えです。岸田総理大臣は、ほかのG7メンバー国の首脳とも、サミット開幕に先立って個別に会談を行う方向で調整を進めています。
各国首脳 きょうから広島入りで厳戒態勢に
G7広島サミットにあわせ、アメリカのバイデン大統領をはじめ、各国首脳は18日から広島に入る予定です。警察庁によりますと、G7広島サミットの警備は最大2万4000人の態勢になるということで、国内の地方で開催されるサミットとしては過去最大規模です。制服の警察官を前面に出すことでテロなどを防ぐいわゆる「見せる警備」を重視していて、警察は18日に日米首脳会談が行われる会場や、各国首脳が宿泊するホテルなどを中心に警備に臨む方針です。また、平和公園沿いなど広島市中心部を流れる川では警備艇などを出動させるとともに、海上保安庁とも連携してサミット会場周辺の臨海部での警備にあたります。会場周辺は立ち入りが厳しく制限されていますが、ドローンを使った攻撃に備え、不審なドローンの飛行を電波を使って妨害する「ジャミングガン」と呼ばれる機材を備えた部隊を配置しているということです。電力など重要なインフラをねらったサイバー攻撃も懸念されていて、警察は不審なアクセスがないか情報収集や分析を進めるなど、厳戒態勢で警備にあたっています。
平和公園や宮島 正午から立ち入り制限
G7広島サミットは19日から3日間の日程で行われ、各国の首脳や配偶者などが広島市中区の平和公園や広島県廿日市市の宮島を訪れる予定です。これに伴って、平和公園と日本三景の一つ、宮島はいずれも18日の正午から立ち入りが制限されます。このうち平和公園は、原爆ドームの周辺も含めて今月21日まで立ち入りが制限される予定で、園内にある原爆資料館や広島国際会議場、レストハウス、それに追悼平和祈念館は休館となります。一方、宮島は20日の午後2時まで、識別証を持つ住民などを除いて原則として島に入ることができなくなる予定となっています。世界遺産の嚴島神社では、19日の終日と20日の午後2時ごろまで閉門し、宝物館と千畳閣も同じ期間、拝観を取りやめることにしています。また、宮島水族館と宮島歴史民俗資料館、それに宮島伝統産業会館は、21日まで3日間休館を続けることにしています。
●サミットあす開幕 宮島など立ち入り規制、宿泊施設混乱も 5/18
先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の開幕を19日に控え、首脳や配偶者の訪問が見込まれる宮島(広島県廿日市市)や平和記念公園(広島市中区)への立ち入りが18日正午から制限された。宮島では、20日午後2時まで識別証を持つ島民らに出入りを限定。島内の宿泊施設は、予約客へのキャンセル対応に追われるなど混乱もみられた。18日は各国首脳が相次いで広島入りする予定で、本番を目前に控え、警戒が強まっている。
入島制限を翌日に控えた17日午後、土産物店が立ち並ぶ宮島の参道は、すでにシャッターを下ろした店が散見された。土産物店を営む男性は「明日から営業はできない。仕入れを調整する必要もあり、前倒しで休んだ店が多いのでは」と話す。島内には外国人観光客や修学旅行生の姿もあったが、いたるところで制服姿の警察官が巡回。すでに厳戒態勢に入っていることがうかがえた。
宮島では各国首脳の配偶者が参加する「パートナーズ・プログラム」の舞台となるほか、首脳の訪問も見込まれている。島民らには識別証が発行され、20日午後2時まで島民以外の出入りは厳しく制限される。官民の支援組織「広島サミット県民会議」は3月にこうした入島制限の方針を示し、宿泊施設や飲食店、土産物店などに期間中の休業を要請してきた。
これを受け島内のホテルや旅館は、すでに入っていた予約をキャンセルする作業に追われることに。ある旅館の担当者は「サミットの意義は大きい。できる限りの協力はしたい」と話す一方、外国人観光客への対応に苦慮したと明かす。
日本国内からの予約客には一人一人に電話で事情を説明したが、外国人にはなかなか連絡がつかず、数組と連絡が取れないまま開幕が迫る事態になった。他の宿泊施設も同様の問題を抱えていたことから、県民会議は4月末、一転して連絡が取れないまま島へと渡るフェリーが発着する宮島口を訪れた客には、「一時識別証」を発行して入島を認める方針を示した。
「宿泊を受け入れられると誤解されるし、疑問符がつく対策だ」と本音を口にするのは別の旅館の関係者。この旅館も海外予約客1組と直前までキャンセルを巡ったやり取りが続いたといい、「スタッフも必要最小限しかいないし、仮に来島されても対応できない」とこぼす。
期間中は世界遺産・厳島神社への参拝はできず、宮島水族館など他の観光施設もすでに休業を決定。飲食店や土産物店も大半が要請に応じるとみられ、厳重な警備も敷かれることから、島に入ったとしてもほとんど観光はできないのが実情だ。
一時識別証の発行について県民会議の担当者は「あくまで最終手段」と強調。廿日市市は、連絡がつかなかった観光客が訪れた場合に備え、期間中は宮島口に職員を配置。市が確保している宮島口の宿泊施設に自費で泊まれることを案内し、入島制限に理解を求める方針だ。
●G7広島サミット「国際メディアセンター」オープン 報道陣5000人が利用 5/18
サミットの取材拠点にある「国際メディアセンター」が18日朝オープンし、海外からもメディアが集まっています。
(箕輪適記者報告)
広島市内にある「国際メディアセンター」です。普段はスポーツイベントなどが行われるメインアリーナには、報道各社が早速作業を進めています。
メディアセンターは18日午前10時にオープンし、日本のメディアを中心に海外メディアや海外の研究グループが訪れ作業を進めています。
外務省によりますと、最大でおよそ5000人が利用するという見込みだということです。
ドイツの通信社記者「日本の首相がここでG7サミットを開催すると決めたのは、国際情勢やウクライナの戦争を考えるうえで象徴的だ」
会場内には筆や琴といった広島の工芸品のほか、70種類以上にも及ぶ広島の地酒をPRしています。
そして、「被爆体験」と「平和」についての展示もあります。広島市内を平和について考えながら巡る観光地の紹介や、原爆資料館に所蔵されている資料を直接見ることもできます。
18日午後には日米首脳会談が行われるということもあり、メディアセンターは本格的に稼働を始めました。
●G7広島サミット「対中基本原則」で一致へ 米政府 5/18
アメリカのサリバン大統領補佐官は17日、G7広島サミットで「中国に対処するうえでの基本原則を巡り、意見のすり合わせと一致が見られると思う」と述べました。
この「対中基本原則」はサミットの成果として反映される見通しで、G7として対中国で足並みを揃え、結束強化につなげたい考えです。
●G7広島サミット議長国の日本、台湾情勢への懸念強める 5/18
沖縄にある航空自衛隊の那覇基地では、F-15戦闘機のごう音が、同じ滑走路を使用する民間機が立てる音を圧倒している。
ジェット戦闘機3機が次々と離陸し、その日の訓練が始まる。多くの場合、戦闘や航空機の迎撃を想定したシナリオに基づいている。
ここにいる関係者らによれば、これまでに少なくとも数機の戦闘機が、中国のものとみられる航空機に対応するため「現実のスクランブル(緊急発進)」を行ったことがあるという。
田中正利2等空佐によれば、こうした日常的な訓練が、かつてなかった緊張感を帯びるようになっているという。
「非常に緊張しているというところはある」と田中2等空佐は言う。「毎日、対領空侵犯の措置についている。中国の活動は数、質、範囲を拡大してきている。無人機や爆撃機、偵察機だ。この地域では空母なども多く活動している」。
那覇基地がある沖縄諸島は、中国と台湾の間で起こるかもしれない紛争の最前線に位置する。中国は台湾について、自国の領土だとし、必要であれば武力で奪うと公言している。世界最大級の火種となっており、米中間の緊張が高まる中で特に危うさが増している。
中国が威圧感を強めるにつれ、台湾の安全保障をめぐり、日本が懸念を強めている。日本の広島では今週、主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)が予定されており、中国が主要議題になる見通しだ。地域の安定化を図るうえで、日本の役割は重要さを増すばかりとなっている。
政策研究大学院大学の岩間陽子教授(国際関係論)は、ウクライナでの戦争と、不安定さを増すインド太平洋情勢が、日本を「列強の連携において重要なポジション」に押し上げたと話す。
「日本は、この地域におけるアメリカの同盟とパートナーシップのネットワークの要。アメリカもそれを認識していると思う」
確かに、そのことを反映する動きを岸田文雄首相は見せている。日本は3月、長年冷え込んでいた韓国との外交関係を正常化。「新たな章」の始まりとされた。
岸田首相は同月、インドのナレンドラ・モディ首相と会談。さらにウクライナを電撃訪問し、殺傷能力のない軍事装備品支援に3000万ドル(約40億円)を拠出すると約束した。
日本は岸田政権の下で、第2次世界大戦後で最大の軍備増強を発表している。2027年までに防衛費を倍増させると約束しており、実現すれば世界3位の防衛予算をもつ国となる。このことから分かるのは、日本は自国を守る能力があるとともに、最大の同盟国アメリカを支援することもできると、早急に示す必要があるということだ。
あらゆる日本の防衛シナリオには、アメリカが関与する。そして駐留米軍が日本国内で最も多く集中するのが、沖縄だ。ただ、日本も自ら戦えると示すことが求められている。そのことが中国を抑止し、この地域での紛争を回避させると期待されている。
日本は、望まずとも巻き込まれる恐れがある紛争の波風を、肌で感じられるだけの近い距離に位置している。
中国軍は4月、台湾「封鎖」のリハーサルとみられる軍事演習を3日間実施した。日本の防衛省は当時、沖縄・宮古島の南約230キロメートルの海上に中国の空母がいたと発表した。
昨年、アメリカのナンシー・ペロシ下院議長(当時)が台湾を訪問し、中国が激怒してミサイルを発射した際には、日本最西端の与那国島から100キロメートルも離れていないところに少なくとも5発が着弾した。
石垣市の中山義隆市長は、「台湾や東南アジアも非常に近いので、危機感をもっている」と語る。同市がある石垣島は、那覇基地から飛行機で約1時間の距離にあり、漁業と農業で知られる美しい島だ。白い砂浜と透き通った青い海は、観光客やシュノーケリング愛好家たちを長年魅了してきた。
現在、石垣島には自衛隊の最新の駐屯地が置かれている。周囲で農家らが畑で作物を育てる中、隊員らはゲートを守り、クレーン車やブルドーザーが土砂を運んで建設を続けている。
中山市長は、自分たちの身は自分たちで守る必要があると言う。「近くで中国の船が航行している状況で、地対空誘導弾や地対艦誘導弾は、私たちの島を攻めてこようとする船や飛行機があった場合に対抗するための措置だ。決して他国を攻めるような部隊ではないことを理解してもらいたいと思う。もちろん、戦争も望んでいない」。
石垣島には今年、自衛隊員約600人が移って来た。陸対艦と陸対空ミサイルを東シナ海とその先に向けて発射できる部隊も含まれている。
石垣島と近隣の島々は、二つの火種の間近にある。一つは尖閣諸島だ。この無人島は日本が管理しているが、中国も釣魚島と呼んで領有権を主張している、もう一つは台湾で、200キロしか離れていない。
さらに、ロシアによるウクライナ侵攻が、中国の攻撃に対する懸念を高めている。ウクライナで戦争が激化する中、この地域の状態と類似性が指摘されている。
前出の岩間教授によれば、いくつかの類似点があるという。
「まずは、ウラジーミル・プーチン(ロシア大統領)と習近平(中国国家主席)という、2人の指導者のタイプだ。さらに、他国の統治下にある土地を自国のものだと主張する、その姿勢も似ている」、「そうした類似を見て、ここでも起こるのではないかと人々は心配している」
岩間教授はまた、ウクライナの大部分が爆撃や砲撃を受けているのを見て、日本人は第2次世界大戦の記憶をよみがえらせたと付け加えた。「(ウクライナでの)出来事が、自分のこととして感じられた」。
しかし、そうした記憶は、石垣島の住民らを怒らせてもいる。自分たちの住む場所が再び紛争に巻き込まれるのではないかと恐れているのだ。沖縄は、アメリカと日本の軍隊が歴史的な戦いを繰り広げた土地だ。
戦争から80年近くがたった今、軍事基地がその恐怖を再燃させ、結束の強かったコミュニティーを分断している。
第2次世界大戦で家族4人を失った山里節子さん(85)は、石垣島に軍事基地が建設されると聞き、「オバーたち」を集めて反対の声を上げた。
「最初に思ったのは『もうごめん』ということだった」
山里さんたちは今、基地の外で毎週、抗議活動を続けている。片手につえ、もう片手には「子どもたちに平和な未来を」などと書かれたものを持ち、時折、咳払いをしたり呼吸を整えたりしながら声を上げる。
「自衛隊が島にやって来る。ミサイル基地を作ろうとしている」と山里さんは訴える。「私たちの島は弥勒(みろく)の神様に守られているから、自衛隊に守ってもらわなくていい」。
幼少期に戦争を経験した山里さんは、年を取ってまた戦争を目にするようなことは望まないと言う。
「戦場にされるのはもってのほか」、「私たちはこの島の自然や文化に育まれてここまできているし、その私たちの宝を戦争という手段で破壊されたり、奪われたりしたくない」。
●中国、G7広島サミットと同時期に国際会議−世界秩序の再構築狙う 5/18
中国は陝西省西安に中央アジア5カ国の首脳を招き、18日からサミットを開く。19日に広島市で開幕する主要7カ国(G7)首脳会議に対抗し、米国主導の国際秩序の外側で中国の影響力を示す。
今回対面で初めて開かれる「中国・中央アジアサミット」にはカザフスタンとキルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの首脳が参加する。ウクライナでの戦争に加え、貿易関係や地域の安全保障問題を中心に討議が行われる見込みだ。
国営メディアが中国外務省の当局者を引用して伝えたところでは、習近平国家主席が基調演説に臨み、中央アジア5カ国との協力に向けた新たな措置を発表する。
G7広島サミットでは中国の「経済的威圧」に対し、足並みをそろえた対応が打ち出される見通し。米国が主導するシステム内で中国が孤立感を深める中、ほぼ同時期に開催される2つのサミットは、重要な戦略的パートナーとして新興・途上国のグローバルサウス諸国を奪い合う多極的な世界の固定化を象徴する。
多極化した世界で陣営拡大競い合う−G7広島サミット、成果出せるか
ロシアと中国は米国に対抗するという点では一致しているが、プーチン大統領抜きで旧ソ連圏5カ国を集めてサミットを開くという習指導部の決断は、「無限」とされる中ロ関係で中国が格上であることを一段と印象付ける。ロシアはウクライナ侵攻後、欧米の制裁による経済的影響の穴埋めや外交的な支援で、中国に頼る場面が多くなっている。
シンガポールの南洋理工大学ラジャラトナム国際学院のシニアフェロー、ラファエロ・パントゥッチ氏は「中国とは競争できないという点を、ロシア側はある程度認めている」と指摘。「両国は一致して国際秩序の変更を進めていると考えている」と話す。
西側のグループが世界情勢を動かす状況を習氏は転換しようとしており、中国を中心とした構造づくりを図っているとパントゥッチ氏は分析。「多くの点でG7が象徴となっている第二次大戦後に欧米が定めた秩序に対する代替案を中国が示そうとしている」と語る。
米シンクタンク、大西洋評議会のグローバル・チャイナ・ハブでノンレジデントフェローを務めるニバ・ヤウ氏は、「中央アジアが望むものをロシアは提供できる状況にないと中国も分かっている」とし、「中国との協力がなお選好されている」との見方を示す。
世界的な影響力を巡る争いが激しくなる中、日本に集まるG7首脳は中ロを相手に「支援合戦」に乗り出す準備を進めている。協議に詳しい関係者の話やブルームバーグ・ニュースが確認した文書で分かった。
欧州連合(EU)や米国は中国との「デカップリング(切り離し)」ではなく、「デリスキング(リスク低減)」を進めると説明しているが、こうした競争激化は習主席をより強力なパートナーとする中ロをさらに結束させることになりそうだ。その意味では、習氏が旧ソ連圏の中央アジア諸国の首脳とのサミットを開いても、ロシアとの関係に不和が生じる公算は小さい。
カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのディレクター、アレクサンドル・ガブエフ氏は「中ロ間で深まっている枢軸はますます非対称で、非常に大きな影響力を持つ中国側が優位に立つ形となっており、中央アジアとの関係が大きな亀裂をもたらすとはみていない」と述べた。
●G7広島サミット前にイギリス・スナク首相が東京に到着 5/18
イギリスのスナク首相がG7広島サミットを前に、けさ、東京に到着しました。
イギリスのスナク首相は、日本時間のきょう午前8時半過ぎに羽田空港に到着しました。
スナク首相は、きょう、海上自衛隊の横須賀基地を視察した後、新たな投資を呼び込むため経済関係者を招いたレセプションを東京で開催する予定です。その後、G7サミットに出席するため広島に移動し、今夜、岸田総理と会談します。
イギリスの現職の首相が広島を訪れるのは初めてで、スナク首相は声明で「日英関係におけるこの歴史的な瞬間に東京と広島を訪問できることを光栄に思います」としています。
また、両国の関係について「インド太平洋地域の平和と安全、自由で公正な貿易を含む共通の価値観を守ることの重要性について緊密に連携している」とした上で、「防衛分野での協力を強化し、経済をともに成長させ、世界をリードする科学技術の専門知識を発展させることができる」と強調しました。
●「全国警察の総力を結集」 G7広島サミット警備で谷国家公安委員長 5/18
谷公一・国家公安委員長は18日の定例記者会見で、19〜21日に広島市で開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)について「全国警察の総力を結集して警備に万全を期すよう警察を指導したい」と述べた。警察当局は、最大時約2万4000人の態勢で警備に当たる。
G7サミットの警備を巡っては、各国首脳らが移動する会場周辺で大規模な交通規制などが予定されている。谷氏は「国民の生活に少なからず影響が生じることになるが、国民の理解と協力をお願いしたい」と呼び掛けた。
一方、会見に同席した警察庁の露木康浩長官は「海外からのサイバー攻撃についての警戒も強化しているところであり、外国機関等との連携も推進していく」と話した。 
 
 

 

●G7広島サミット きょう開幕 国際秩序 核廃絶などで議論へ  5/19
G7広島サミットが19日に開幕します。議長国・日本は、ロシアや中国の動向を踏まえ、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化に向けてG7の結束を示したい考えです。また被爆地・広島でのサミットで、核廃絶に向けてどのようなメッセージを打ち出せるのかも焦点です。
日本では7年ぶりとなる主要7か国の首脳会議、G7広島サミットは19日から3日間の日程で開かれます。
午前中、議長を務める岸田総理大臣が広島市の平和公園で各国の首脳らを出迎え、そろって原爆資料館の視察などを行ったあと、午後から本格的な討議に入ります。
21日までの期間中、招待国の首脳らが参加するものも含めて10のセッションが行われ、世界経済やウクライナ情勢、それに、核軍縮・不拡散や食料・エネルギー問題などをめぐって意見が交わされます。
岸田総理大臣としては、ウクライナ侵攻を続けるロシアや覇権主義的な行動を強める中国の動向を踏まえ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて、G7の結束を示したい考えです。
また、国際協調を広げるには「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国との連携が不可欠だとして、こうした国々が直面する課題への関与の強化も図る方針です。 さらに、ChatGPTなど生成AIの急速な普及を受けて、国際的なルールづくりも主導したい意向です。
一方、岸田総理大臣は被爆地では初めてとなる今回のサミットで、核廃絶の機運を高めたいとしていて、核保有国も含むG7として、どのようなメッセージを打ち出せるのかも焦点です。
経済分野の焦点は
G7広島サミットは19日から3日間の日程で開かれ、ウクライナ侵攻や米中の対立などを背景に、今回初めて経済安全保障を中心に議論を行うセッションが20日に設けられます。
この中では中国を念頭に禁輸などで他国の政策や意思決定に影響を与えようとするいわゆる「経済的威圧」にG7各国が連携して対抗するための枠組みを設けることなどを議論する見通しです。
また焦点のエネルギー分野では、世界全体で、二酸化炭素の回収といった排出削減対策が取られていない化石燃料を段階的に廃止することで合意に向けて調整が進められていることが新たに分かりました。
このほかデジタル分野では、ChatGPTなどの生成AIについて、著作権の侵害や偽情報への対応などを閣僚級で議論し、年内に共通見解をまとめる方向で議論が行われる見通しです。
さらに食料危機への懸念が高まるなか、「グローバル・サウス」と呼ばれる途上国や新興国に対する農業支援のあり方もテーマとなり、一連の会合の成果を首脳宣言や成果文書としてまとめることにしています。
国内IT企業 “AI規制”に「慎重な議論が必要」
G7広島サミットでChatGPTなど生成AIの利用や規制のあり方などが議論されることについて、国内のIT企業からは、AIを活用したビジネスが阻害されないよう、慎重に議論を行うべきだといった声があがっています。
東京にあるIT企業「Ridge-i」では、実用化が進む生成AIについて、顧客への対応や書類や資料の作成などに活用できないかという取引先からの相談が増えているということです。
その一方で、取引先からは情報漏えいのリスクのほか、書類などを作成する過程で信頼性の低い情報が紛れ込むことへの不安の声も多いということです。
このためこの会社では、AIの精度を高めるためにも信頼性の高いデータの流通に向けた制度づくりの議論が進むことに期待する一方、AIを活用したビジネスが阻害されないよう慎重に議論は行われるべきだとしています。
この会社の小松平佳取締役は「先端技術を扱う立場としてAIの活用と規制の両立が大事だと考えている。特に規制は、開発が進んでいる企業の動きを意図的に止めることもできるので、慎重な議論が必要だ」と話していました。
警察は最大級の警戒態勢
各国首脳が移動する広島市内や宮島では大規模な交通規制が予定されています。警察はテロなど万が一の事態を防ぐため、最大級の警戒態勢で臨む方針です。
初日の19日は、アメリカのバイデン大統領をはじめ各国首脳が、平和公園や宮島などを訪問する見通しです。
首脳らの移動に伴って、広島市内中心部や宮島の一部の沿岸道路では大規模な交通規制が予定されています。
警察は先月、和歌山県を訪れていた岸田総理に向かって爆発物が投げ込まれた事件を受けて、不審者や不審物への対応を強化していて、各国首脳の訪問先や移動ルートの沿道などでは、職務質問や所持品検査を徹底することにしています。
平和公園の周辺ではすでに立ち入りが厳しく制限されていて、不審物が発見された場合に初動対応にあたる爆発物処理班を近くに待機させ警戒にあたります。
また宮島へは船を使った移動が想定されているため、警備艇を出動させるとともに、海上保安庁とも連携して臨海部の警備にあたることにしています。
このほか、主要な駅や空港など多くの人が集まる「ソフトターゲット」と呼ばれる場所でもテロの危険性が高まるとして、警察は、万が一の事態を防ぐため、最大級の警戒態勢で臨む方針です。
●ゼレンスキー大統領、広島訪問か G7サミット出席 英紙報道 5/19
英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は19日、ウクライナのゼレンスキー大統領が21日、広島で開催されている先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に対面で出席すると報じた。関係者の話として伝えた。米ブルームバーグ通信も同氏が広島を訪問すると報じた。ウクライナを侵略するロシアから自国領土を奪還するための大規模な反転攻勢を前に、岸田文雄首相やバイデン米大統領らG7首脳に支援の強化を訴える狙いとみられる。
ゼレンスキー氏は当初、19日午後にオンラインでサミットに参加する予定だったが、日本政府は18日、ゼレンスキー氏が「ウクライナ側の事情」により、21日にオンラインで参加すると発表していた。
ゼレンスキー氏の訪日が実現すれば、2022年2月24日にロシアがウクライナ侵攻を始めてから最初のアジア訪問となる。同氏は昨年12月に米国を訪問し、今月にはG7構成国であるイタリア、ドイツ、フランス、英国を歴訪して、各国首脳に軍事支援の拡大を訴えた。岸田首相は3月にウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問し、ゼレンスキー氏と会談した。
サミットへの出席を通じ、ゼレンスキー氏は米国製のF16戦闘機の供与実現を働きかける可能性がある。バイデン米政権は供与に慎重だ。インドや韓国などの招待国にも協力も呼び掛け、インドを始めとするグローバルサウス(南半球を中心とする新興・途上国)からの支持拡大につなげる構えとみられる。
●英 スナク首相 “核不拡散やウクライナへの支援継続 確認を”  5/19
G7広島サミットに出席するため日本を訪れているイギリスのスナク首相がNHKの単独インタビューに応じ、19日からのサミットを通じて、各国との間で核不拡散やウクライナへの支援を継続する方針を確認する考えを示すとともに、日本について価値観を共有する国として、関係をさらに強化する重要性を強調しました。
スナク首相は18日、都内でNHKの単独インタビューに応じました。
この中で19日から始まるG7広島サミットについて、「広島と平和記念公園を訪れ、歴史の教訓から学ぶのは非常に特別なことだと感じている。核戦争の恐怖を思い出させるとともに、私たちが信じる核不拡散の将来に向けた指針となる」と述べて、被爆地・広島で開催される意義を強調しました。
そして、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアが、核による脅しを繰り返していることについて、「われわれが全く受け入れられないことをしかねない国と対じしていることを改めて思い知らされた。今回のサミットのテーマの1つは、ウクライナがロシアを撃退できるよう、G7の国々が断固たる支援の継続で結束することだ」と述べました。
またイギリスは今月、これまでで最も射程の長い巡航ミサイル「ストームシャドー」をウクライナに供与するなど、アメリカに次ぐ規模の軍事支援を行っていることをあげ、「ウクライナが軍事作戦を成功させるのに特に必要なのは防空能力、長い射程の武器、そして戦車だ。今後数週間、あるいは数か月以内にさらなる支援を打ち出す。ロシアに、この違法で一方的な戦争を続けてもむだだと分からせるため、われわれは支援を続ける」と述べ、ウクライナへの支援を継続し、ロシアの撤退につなげる考えを示しました。
さらに、「われわれはすでに、将来的にロシアによる侵攻に対し、ウクライナが抑止力として機能するような、長期的な安全保障についての合意についても検討している」と述べ、今回のサミットで話し合う方針であることを明らかにしました。
また、イギリスがインド太平洋地域を「外交政策の恒久的な柱」と位置づけ重視していることについて、スナク首相は、「中国は世界の秩序を作りかえる能力と欲求を持っている国で、重大な挑戦となっている。日本とイギリスは、力による一方的な現状変更を認めず、自由で開かれたインド太平洋地域を目指している点で完全に一致している」と述べました。
そのうえで、日本との関係について「安全保障だけでなく、公正なルールに基づいた地球規模の貿易や、イノベーションを土台とする経済など、両国は非常に似た価値観を持っている。日本の人たちにはイギリスのことを近いパートナー、同盟国、そして何よりも友人として見てほしい」と呼びかけ、関係をさらに強化する重要性を強調しました。
“日本企業 イギリス国内で約3兆円規模の投資を計画”
スナク首相は、日本企業がイギリス国内で、クリーンエネルギーの分野などに3兆円規模の投資を計画していることを経済界の会合で明らかにしました。
スナク首相は18日、東京都内で開かれた日本とイギリスの経済界の会合に出席しました。このなかで日本企業がイギリス国内であわせて177億ポンド、日本円でおよそ3兆円規模の投資を計画していると説明しました。
イギリスの首相官邸によりますと大手商社の丸紅が、洋上風力発電といったクリーンエネルギー事業などに今後10年間でパートナー企業とともに100億ポンド程度を投資する覚書をイギリス政府と交わすことにしているということです。
また、大手商社の住友商事は洋上風力発電事業に対してほかの企業と共同で40億ポンドを投資する計画です。
また、不動産大手の三菱地所と三井不動産がおよそ35億ポンドを投資してロンドンに住宅やオフィス、生命科学の研究施設を建設することにしています。
スナク首相は日本からの大規模な投資計画を歓迎するとともに「イギリスはヨーロッパでTPP=環太平洋パートナーシップ協定に参加する唯一の国で、これは大きなチャンスだ」と述べて、日本との連携を深める考えを強調しました。
●G7広島サミット 5/19
G7広島サミットが19日に開幕しました。議長国・日本は、ロシアや中国の動向を踏まえ、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化に向けてG7の結束を示したい考えです。また被爆地・広島でのサミットで、核廃絶に向けてどのようなメッセージを打ち出せるのかも焦点です。
複数の欧米メディアは関係者の話として、ウクライナのゼレンスキー大統領が来日し、G7広島サミットに対面で出席すると伝えました。ロシアによる軍事侵攻が始まってから、ゼレンスキー大統領が日本を含めたアジアを訪れるのは初めてになります。外交筋によりますと、ゼレンスキー大統領は、今回、広島訪問が実現した場合、原爆資料館を視察する方向で調整を進めているということです。
日本政府 ロシアに追加制裁を科す方針固める
木原官房副長官は、G7広島サミットの初日のセッションでウクライナに関する首脳声明が発表されたのに合わせ、日本政府として、ロシアに対し追加の制裁を科す方針を固めたことを明らかにしました。具体的には、新たに制裁の回避や、う回に関与したロシアの関係者など、およそ100の個人や団体を資産凍結の対象に追加します。また、日本からの輸出を禁止する団体に、およそ80のロシアの軍事関連団体などを追加するほか、ロシア向けのサービスの提供を禁止する分野に建築とエンジニアリングを新たに加えることにしています。
22:30ごろ 核軍縮に関する声明「広島ビジョン」発表
午後10時半ごろ、G7広島サミットの核軍縮に関する声明「広島ビジョン」が発表されました。ロシアによる核の威嚇を非難するとともに、中国の核戦力の増強への懸念を示し、世界の核兵器を減らし続けていくため、NPT=核拡散防止条約の体制を堅持することなどを明記しています。
22:15ごろ 岸田首相「G7の揺るぎない結束確認」
岸田総理大臣は、G7広島サミットの初日の日程を終えたあと、午後10時15分ごろから記者団の取材に応じました。岸田総理大臣は「議長としてウクライナや、インド太平洋、核軍縮・不拡散を含む外交安全保障などについて議論を主導し、G7の揺るぎない結束を確認するとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くことで一致できた」と成果を強調しました。また、G7の首脳らと原爆資料館を視察したことについて「G7首脳とともに被爆の実相に触れ、これを粛然と胸に刻む時を共有した。核兵器のない世界への決意を世界に示す観点からも歴史的なことであったと考えている」と述べました。
   首脳の配偶者ら 学生が平和考える催しに参加
G7広島サミットに合わせて来日した各国首脳の配偶者らが、19日、学生たちが平和を考える催しにゲストとして招かれました。この催しは広島市中区の「おりづるタワー」で開かれました。岸田総理大臣の妻の裕子夫人のほか、サミットのために訪日した各国首脳の配偶者がゲストとして登場すると、集まったおよそ100人の学生から拍手で迎えられました。催しでは、平和公園にある「原爆の子の像」のモデル、佐々木禎子さんのおいの佐々木祐滋さんが講演し、禎子さんが病床で折り鶴を折り続けたエピソードや、平和への思いなどを語りました。各国首脳の配偶者たちは、禎子さんが実際に折った折り鶴を紹介されると、身を乗り出すようにして見入っていました。このあと、裕子夫人が学生たちを前に「小さな祈りでも集まれば世界を動かす力になると信じています。広島の若い世代から平和の祈りの輪が広がるよう願います」とあいさつしたほか、アメリカのバイデン大統領の妻のジル夫人も「未来は遠いゴールではなく、創るものです。自由で平和な世界を一緒につくっていきましょう」と語りかけていました。
   クアッド首脳会合 20日に開催へ ホワイトハウス発表
アメリカのホワイトハウスは、G7広島サミットにあわせて開催が調整されていた、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国の枠組み=クアッドの首脳会合が、20日に行われると発表しました。
   ドイツ ショルツ首相「想像もつかない苦しみ」
ドイツ政府によりますと、原爆資料館を視察したショルツ首相は、資料館の芳名帳に「この場所は想像もつかない苦しみを思い起こさせる場所だ。きょう、私たちはパートナーとともに、全力で平和と自由を守るという誓いを新たにする」などと記帳したということです。
21:25ごろ 各国首脳を乗せた船 広島市 宇品島到着
G7広島サミットに出席している各国の首脳を乗せた船は、19日午後9時25分ごろ、メイン会場のホテルがある広島市の宇品島に到着しました。
   ゼレンスキー大統領 インドのモディ首相と会談で調整
インドの首都ニューデリーにいる外交筋によりますと、G7広島サミットに出席するウクライナのゼレンスキー大統領は、広島でインドのモディ首相と、会談する方向で調整を行っているということです。ウクライナとインドの両首脳が対面で会談を行えば、去年2月にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって以降、初めてとなります。
   プーチン大統領 「制裁強まるほど社会の結束強固に」
ロシアのプーチン大統領は19日、ロシア南部で開かれた会議に出席し、「ロシア社会の全体に攻撃的な圧力がかかっている。経済や軍事、政治、情報面で強力な反ロシアのプロパガンダが展開されている」と述べ、欧米側を強く非難しました。そのうえで「ロシアでは、ロシアに対する制裁や中傷が強まれば強まるほど、社会の結束が強固になってきた」と述べ、ロシアに対する制裁強化も話し合うG7広島サミットの開催を念頭に、欧米側をけん制したとみられます。
20:56 各国首脳乗せた船 宮島出発
G7広島サミットに出席している各国の首脳を乗せた船が19日午後8時56分ごろ、広島県廿日市市の宮島を出発しました。
   バイデン大統領 途中退席 債務上限問題対応か
アメリカのバイデン大統領は、19日夜、宮島の旅館で夕食をとりながら行われていたセッションを、討議途中の午後8時前に退席し、宿泊先の広島市内のホテルに向かいました。ロイター通信は、野党 共和党のマッカーシー下院議長らとの協議が続く、アメリカ政府の借金の上限、いわゆる債務上限問題について、報告を受けるためだと伝えています。
20:50 バイデン大統領乗せた車 広島市のホテル到着
アメリカのバイデン大統領を乗せた車は19日午後8時50分ごろ、宿泊先の広島市内のホテルに到着しました。
20:34「外交・安全保障」テーマとした討議終わる
午後8時34分、宮島の旅館で行われていた「外交・安全保障」をテーマとした、討議が終わりました。
20:30ごろ バイデン大統領乗せた車 広島市のヘリポート出発
アメリカのバイデン大統領を乗せた車が、19日午後8時半ごろ、広島市内のヘリポートを出発しました。
20:18 バイデン大統領 広島市のヘリポート到着
アメリカのバイデン大統領を乗せたヘリコプターは、19日午後8時18分ごろ、広島市内のヘリポートに到着しました。
   バイデン大統領 討議の途中退席
アメリカのバイデン大統領は、宮島の旅館で行われていた「外交・安全保障」をテーマとした、討議の途中、退席しました。
   中国「小さなグループつくることやめるよう求める」
G7広島サミットについて中国外務省の汪文斌報道官は19日の記者会見で「われわれはG7に対し、オープンな時代の大勢に順応し、脅迫外交や、閉鎖的で排他的な小さなグループをつくることをやめるよう求める」と述べ、各国をけん制しました。また、サミットで中国の動きを念頭に、「経済的威圧」への対応がテーマとして扱われる見通しであることについて、「アメリカこそ国家の力を乱用して中国のハイテク企業を抑圧し、さらには5Gの設備を供給する中国企業と協力してはならないと他国を脅している」と述べ、アメリカを非難しました。このほか、G7広島サミットでロシアに対する追加の制裁が話し合われたことについて、「中国は一貫して、国際法上の根拠がなく国連安全保障理事会の承認を経ていない一方的な制裁に反対している」と述べました。
   林外相 米ブリンケン国務長官と会談
林外務大臣は、19日夕方、G7広島サミットにあわせて日本を訪れているアメリカのブリンケン国務長官とおよそ45分間、会談しました。両外相は、日米同盟の抑止力と対処力の向上に向けた協力を着実に実施し、中国をめぐるさまざまな課題に連携して対応していくことで一致しました。そして、林大臣が日本と韓国の首脳間の相互往来「シャトル外交」が本格化するなど、日韓関係の改善の動きが進んでいる状況を説明しました。その上で、両外相は、北朝鮮の完全な非核化に向けて日米韓3か国の緊密な連携を確認しました。
   被爆体験証言 小倉桂子さん「興味を持って聞いてもらった」
G7広島サミットで原爆資料館を訪れた各国の首脳に対して、みずからの被爆体験を英語で証言した、小倉桂子さん(85)は、「海外から来た人は原爆投下の瞬間について知りたいと思い、ぴかっと光ったとき、真っ白で何もみえない、爆風で立ってられず、地面にたたきつけられたということを伝えました。そのとき見たもの、心で感じたことをそのまま語りました」と話していました。話を聞いた各国首脳の様子については「興味を持って聞いてもらい、かなり長く話をさせてもらいました。内容は言えませんが、質問もたくさんしてもらいました」と話していました。その上で「互いに相手の話を聞きながら外交の力でロシアによるウクライナへの軍事侵攻をやめさせてほしいです。絶対に核を威嚇に使ってはいけない。核のない世界のために広島から一歩を踏み出す宣言をお願いしたいです」と話していました。
   ワーキングランチのメニューは
G7広島サミットでは、首脳らが会議をしながら食事をとる、ワーキングランチやワーキングディナーの場が設定されていて、広島や瀬戸内のほか、全国からえりすぐりの食材を使った料理が提供されます。このうち、初日のワーキングランチでは、前菜に広島レモンを使ったサーモンのマリネや、ホタテ貝のコンフィなどが出されました。また、広島県産のメバルとムール貝、小豆島のオリーブなどを使ったアクアパッツアや、広島県産の「東広島こい地鶏」の、バロティーヌやもも肉ときのこの煮込みのパイ包み、それに瀬戸内レモンと宮島はちみつを使ったセミフレッドもふるまわれました。また、ディナーには、広島の地酒やワインなども提供されました。G7広島サミット事務局は、首脳らの会議を食事で支えつつ、世界にむけて日本の食文化や食材をアピールしたいとしています。
   首脳配偶者が参加「パートナーズ・プログラム」始まる
G7広島サミットの開催に合わせ、各国首脳の配偶者が参加する関連行事「パートナーズ・プログラム」も始まり、初日の19日は昼食会が開かれました。岸田総理大臣の妻、裕子夫人が主催した19日の昼食会には、アメリカのバイデン大統領の妻、ジル夫人など各国の首脳の配偶者あわせて4人が参加しました。一行は広島市西区の「上田流和風堂」を訪れ、地元広島の旬の食材を用いた懐石料理に舌鼓を打ちました。続いて、香をたいて香りを楽しむ日本の伝統文化「香道」を体験したり、茶道の家元によるお点前を鑑賞したりして親睦を深めていました。また、19日、一行はこれに先立ち、平和公園内の原爆資料館で記帳を行ったほか、慰霊碑に花を手向けて黙とうをささげました。
18:55 「外交・安全保障」テーマのセッション開始
午後6時55分、宮島の旅館で、「外交・安全保障」をテーマとした、3つ目のセッションが始まりました。このセッションでは、中国を含むインド太平洋情勢や核軍縮・不拡散などについて夕食をとりながら討議が行われます。
18:33 厳島神社で集合写真
午後6時33分、G7各国の首脳らは、宮島にある世界遺産の厳島神社を訪れ、大鳥居の前で集合写真を撮影しました。
18:00ごろ 首脳到着 宮島口にぎわう
海を挟んで広島県の宮島を見渡せる廿日市市の宮島口では、各国の首脳を乗せたヘリコプターや船を一目見ようと見物する人たちの姿が見られました。宮島口の海沿いでは、午後5時すぎから地元の人たちなどが次々と訪れました。そして、アメリカのバイデン大統領を乗せたヘリコプターや各国の首脳を乗せた船が宮島に到着した午後6時ごろには、カメラを構えたり、双眼鏡をのぞき込んだりして到着の瞬間を見届けました。近所の50代の男性は、「地元に首脳が来る機会はめったにないので貴重な機会に立ち会えた。いい写真が撮れました」と話していました。娘と一緒に訪れた40代の母親は「3月に大阪から引っ越してきて、大阪ではG20を見ることができたので、また見ることができてラッキーです。ライブ中継の映像はずっと見ていましたが、首脳が乗ったヘリや船を生で見られて感動しました」と話していました。
   日本政府 ゼレンスキー大統領の出席踏まえ調整など急ぐ
ウクライナの政府高官が、ゼレンスキー大統領がG7広島サミットに対面で出席することを明らかにしたのを踏まえ、日本政府は、日程のつめの調整や警備態勢の確認などを急いでいます。政府関係者によりますと、ゼレンスキー大統領は20日にも来日し、21日のウクライナ情勢に関する討議に、G7各国の首脳らとともに参加する方向で調整が進められているということです。また、岸田総理大臣との首脳会談や原爆資料館の訪問なども検討されています。一方で、日本政府は、19日夕方の時点でも、公式にはゼレンスキー大統領はオンラインでサミットに出席する予定だとしたままで、議長国として安全面で万全を期すため、情報保全を図る考えもあると見られます。
18:03 各国首脳 宮島に到着
各国の首脳を乗せた船は、午後6時3分ごろ、広島県廿日市市の宮島に到着しました。このあと、世界遺産の厳島神社を訪れることにしています。
17:30ごろ 各国首脳 宮島へ
午後5時半ごろ、G7各国の首脳らは、サミット会場の広島市のホテルを出て、高速船などで世界遺産の厳島神社がある宮島に向かいました。
   「過去を思い出して希望の未来を共に描こう」伊 首相が記帳
フランス大統領府によりますと、原爆資料館を視察したマクロン大統領は、資料館の芳名録に「広島の犠牲者を記憶し、戦いに値する唯一の戦いである、平和のための行動をとれるかどうかは私たち次第である」と記帳したということです。また、イタリア政府によりますと、メローニ首相は「きょう私たちは頭を下げて祈りの中で立ち止まる。闇には最後の言葉はなく、過去を思い出して希望の未来を共に描こう」と記帳したということです。
17:09 2つ目のセッション終了
午後5時9分、ウクライナ情勢をテーマとした、2つ目のセッションが終わりました。
   松野官房長官「首脳に『禎子の鶴』」
松野官房長官は午後の記者会見で「G7首脳に被爆の実相に効果的に触れてもらいたいとの考えのもと、原爆資料館の主な展示テーマに即した形で重要な展示品を見ていただけるよう準備した」と述べました。その上で「広島市の平和公園にある『原爆の子の像』のモデル、佐々木禎子さんが病床で折り続けた折り鶴『禎子の鶴』のストーリーを知っていただき、何点かの展示品について岸田総理大臣からも説明を行った」と明らかにしました。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領のサミット参加については「21日午前に新たに設けることになったG7首脳とゼレンスキー大統領によるウクライナセッションにオンラインで参加する予定だ」と述べました。
   JR広島駅 交通規制で閑散 タクシー客も少なく
JR広島駅では交通規制で構内を出入りする人もまばらで、駅の北口にあるタクシー乗り場も客が少なく閑散としていました。この乗り場ではふだんの平日の午後3時ごろは50台ほどが待機してやってきた人を次々乗せて発車しているということですが、19日は待機しているタクシーが15台ほどとふだんより少ないうえ、客が乗るまでに30分以上待つ車両もあったということです。広島駅構内タクシー協会の大橋秀雄さんは「交通規制により台数を減らしたタクシー会社も多いのですが、それでもきょうはお客さんがかなり少なく、待機する車両ばかりです。コロナの感染が拡大していたときと同じくらい人が少ないと感じます」と話していました。
15:47 ウクライナ情勢テーマの2つ目のセッション開始
午後3時47分、ウクライナ情勢をテーマとした、2つ目のセッションが始まりました。ウクライナのゼレンスキー大統領が日本を訪問し、サミット最終日に対面で出席すると海外メディアで報じられたことを受けて、首脳間でもやりとりが交わされるか注目されます。
   ウクライナ政府高官 大統領の日本訪問明らかに
ウクライナ政府で安全保障を担当する国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は19日、公共放送のインタビューに対し、ゼレンスキー大統領がG7広島サミットに出席するため日本を訪問すると明らかにしました。その上でダニロフ書記は「非常に重要なことがサミットで決まる。ウクライナの利益を守るためにもゼレンスキー大統領が現地に行くことが重要だ」と述べ、サミットに出席する意義を強調しました。ウクライナのゼレンスキー大統領が来日し、G7広島サミットに参加するという情報を受けて、広島で取材しているウクライナのテレビ局の記者、ドミトロ・アノプチェンコさんは「来日するということでとてもうれしいです」と話していました。その上で「日本を訪れることはとても意味のあることで、アメリカのバイデン大統領など、G7の首脳たちと電話ではなく、直接会って話をすることは大きな成果になると思います。反転攻勢にはさらなる支援が必要です。ウクライナへの支援について議論が進むことを望みます」と期待を述べました。また、グローバル・サウスと呼ばれる新興国や途上国の首脳とも接触する機会があることについて「直接会ってウクライナの現状を知ってもらうことがとても重要だと思います」と話していました。
15:25 韓国 ユン・ソンニョル大統領 広島空港に到着
G7広島サミットに出席する韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領を乗せた専用機が午後3時25分ごろ、広島空港に到着しました。広島市にある韓国総領事館によりますと、韓国の現職大統領が広島市を訪れるのは初めてです。
   原爆資料館 滝川館長「視察は大変有意義」
G7広島サミットで各国の首脳が原爆資料館を訪れことについて滝川卓男館長は「G7首脳がそろって視察したことは大変有意義だったと思う。G7首脳の発信力は強く、それぞれの国民に平和に対するメッセージを発信してもらいたい」と話していました。一方で、ウクライナのゼレンスキー大統領がG7広島サミットに出席するため日本を訪問することについて「被ばくの実相をあらゆる国に発信し、核兵器廃絶と世界恒久平和を願うヒロシマの心に寄与するのが役目だと思っている。スケジュールの調整はあると思うが、広島に来られるなら、原爆資料館の視察を組み込んでいただきたい」と話していました。
15:05 世界経済めぐる最初のセッション終了
午後3時5分、デジタルや貿易を含めた世界経済をめぐる最初のセッションが終わりました。討議では、急速に普及が進む、ChatGPTなど「生成AI」の利用や規制のあり方をめぐっても意見が交わされたものとみられます。
   JR上野駅 ゴミ箱の投入口封鎖 コインロッカーも使用停止
JR上野駅ではゴミ箱の投入口が封鎖され、使用ができなくなっているほか、コインロッカーにも使用の停止を知らせる紙がはられていました。また、駅の構内を警察官がパトロールし不審物が置かれていないか確認していました。サミットにあわせて警視庁は警戒レベルを引き上げ、各地に多くの警察官を配置して不審な兆候がないか確認を続けるなど厳戒態勢で警備にあたっています。過去に海外で開かれたサミットでは、会場から遠く離れた首都でテロが発生したケースもあり、サミットの期間中は、首都・東京でもテロへの警戒が強化されています。
13:44 最初のセッション始まる
午後1時44分、G7広島サミットは、広島市のホテルで「分断と対立ではなく協調の国際社会へ」をテーマに最初のセッションが始まりました。昼食をとりながら、デジタルや貿易などを含む世界経済をめぐって討議が行われます。冒頭、議長の岸田総理大臣は「みなさんを私の地元の広島に迎えられてうれしく思う。広島は静かで波平らかな瀬戸内海に囲まれた街だ。このような静かな環境で世界が直面するさまざまな課題について、G7らしい率直かつ戦略的な議論を行いたい」と述べました。また「世界は今、気候危機やパンデミック、ロシアによるウクライナ侵略といった複合的な危機に直面している。基本的な価値を共有するG7は、国際社会の重要な課題に効果的に対応し、世界をリードしていかなければならない」と強調しました。そして「サミット全体を通じての大きなテーマは分断と対立ではなく、協調の国際社会の実現に向けたG7の結束の確認と役割の強化で、そのための積極的かつ具体的な貢献を打ち出すことだ」と述べました。
   ゼレンスキー大統領 “サミットに対面出席” 欧米メディア報道
イギリスの経済紙フィナンシャル・タイムズなど複数の欧米メディアは、関係者の話として、ウクライナのゼレンスキー大統領が来日し、G7広島サミットに対面で出席すると伝えました。ロシアによる軍事侵攻が始まってから、ゼレンスキー大統領が日本を含めたアジアを訪れるのは初めてになります。一方、外交筋によりますと、ウクライナのゼレンスキー大統領は、今回、広島訪問が実現した場合、原爆資料館を視察する方向で調整を進めているということです。広島市内の国際メディアセンターで取材しているドイツの新聞社の男性記者は「安全上の観点からゼレンスキー大統領が日本に来るのは簡単ではないと思っていたため、ニュースを見て驚いた。訪日が実現すればG7のウクライナへの強い連帯を示す象徴的なできごととなる」と話していました。また、イタリアの公共放送の男性記者は「ゼレンスキー大統領が実際に訪日すれば、国際社会により強いメッセージを届けることができる。民主主義を脅かす陣営に対し、G7の首脳が結束し、ウクライナの支援に当たっていくことを再確認する場になるだろう」と話していました。
12:37 岸田首相 宇品島に入る
岸田総理大臣を乗せた車は午後0時37分ごろ、サミットのメイン会場のホテルがある広島市の宇品島に入りました。
12:30ごろ 宇品島 検問所の沿道で近隣住民が各国首脳を歓迎
G7広島サミットの会合が開かれる宇品島に続く道に設けられた検問所の沿道では、近隣の住民が各国の首脳らが乗った車に向かって手を振ったり、スマートフォンで撮影したりしていました。イタリアのメローニ首相やカナダのトルドー首相が車の中から手を振って応えている様子が確認できました。近くに住む40代の女性と中学生の親子は「表情は、はっきり見えませんでしたが、優しく笑いながら手を振ってくれたと思います。テレビで見る人たちなので記念になりました」と話していました。
12:27 岸田首相 平和公園を出発
岸田総理大臣を乗せた車は午後0時27分ごろ、広島市の平和公園を出発しました。
12:07 広島市長から説明
午後0時7分、各国の首脳らは広島市の平和公園で松井一実市長から説明を受けました。原爆慰霊碑や原爆ドームなどについて説明を受けたものとみられます。
12:06 集合写真を撮影
午後0時6分、広島市の平和公園で各国の首脳らによる集合写真の撮影が行われました。
   被爆者らは…
広島県被団協の箕牧智之理事長と被爆者の田中稔子さんはG7各国の首脳が平和公園を訪れた様子をテレビで視聴しました。箕牧さんは、各国首脳の原爆資料館の視察がおよそ40分だったことについて「時間が短いのではないか。この時間でたくさんのものを見られるわけがないし、惨状が分かったというところまではいかないのではないか」と話しています。その上で「記帳をしたり被爆者の証言を含めてどれが何分だったか詳細なことを知りたい。何をどれくらい、どんな気持ちで見たか感想を聞きたい」と話していました。田中さんは、アメリカのバイデン大統領が原爆資料館から出てきた時の表情について「随分深刻な、痛ましい顔をしていたので、バイデン大統領の心には、原爆の惨状が以前より響いてるのではないかと感じました」と話していました。また「被爆者の話は原爆を目の前で見た人の話です。首脳たちには、その話を心に政治をしてほしい。世界から核兵器をなくす方向に動かしてほしい」と話しています。
12:05 原爆慰霊碑に献花
午後0時5分、各国の首脳らは広島市の平和公園で原爆慰霊碑に献花を行いました。
12:01 原爆資料館の視察終える
午後0時1分、各国の首脳らは原爆資料館の視察を終え、資料館を出ました。このあと平和公園の原爆慰霊碑に献花を行うことにしています。
11:25 交通規制で郵便配達員足止め
平和公園周辺の道路では大規模な交通規制が行われ、郵便の配達員が警察官に通行を止められる様子も見られました。配達員は「事前に交通規制に関する情報収集はしましたが、この時間にこの場所で通行止めが行われるとは思いませんでした。配達が遅れないか心配です」と話していました。
11:21 首脳ら 原爆資料館へ
午前11時21分、岸田総理大臣とG7各国の首脳らがすべて原爆資料館に入りました。このあと館内を視察することにしています。各国の首脳が原爆資料館を訪問したことについて、ICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンの国際運営委員を務める川崎哲さんは「非常に意義深いことだと思う。展示は凄惨(せいさん)なものも多いが目をそらさず一つ一つ見ていただきたい」と述べました。一方で、資料館内の訪問の様子が公開されないことについては「開かれた形で見学があれば、なおよかった」とした上で「首脳の到着までにも時間がかかっているので、時間をむだにせずたくさんの展示をしっかり見てもらいたい」と話していました。
11:10 バイデン大統領 宿泊先ホテルを出発
アメリカのバイデン大統領を乗せた車は午前11時10分ごろ、宿泊先の広島市内のホテルを出発しました。
11:02 立ち入り制限の宮島 店舗は閑散 臨時休業も
18日から立ち入りが制限されている宮島に渡る廿日市市の宮島口のフェリーターミナル周辺の店では客の姿は少なく、臨時休業の貼り紙をしている店もみられました。このうち、フェリーターミナル近くで名物のあなご飯を提供する創業120年余りの飲食店は、19日も営業を続けていましたが、ふだんは多くの客でにぎわう午前11時ごろ客の姿は少ない様子でした。従業員の女性は「この時期は多くの観光客でにぎわい、こんなにお客さんが少ないことはほとんどなく、コロナ禍のときよりも少ないくらいかもしれません」と話していました。客の中には、立ち入り制限を知らずメキシコから訪れた観光客もいて、通訳ガイドのボランティアに店を案内してもらって、あなご飯を楽しんでいる姿もみられました。
10:28 岸田首相と裕子夫人 各国の首脳ら出迎え
午前10時28分、広島市の平和公園で岸田総理大臣と裕子夫人によるG7各国の首脳らの出迎えが始まり、G7広島サミットが開幕しました。
   平和公園は厳戒態勢
G7広島サミットは、岸田総理大臣が広島市の平和公園で各国の首脳らを出迎えて開幕します。平和公園は原爆ドームの周辺も含めて18日の正午から立ち入りが制限されていますが、19日朝から公園周辺の道路での通行規制も行われ厳戒態勢となっています。このうち平和大通りの周辺では午前8時過ぎから歩道と車道の間に柵が置かれ、警察官が車の運転手に通りに入らないよう求めたり、歩道を歩いている人に横断しないよう呼びかけたりしていました。70代の男性は「バイデン大統領の乗った車が見られるのではないかと思って足を運びました。 今回の広島でのサミットが、これからの平和の維持につながるように期待したいです」と話していました。また、50代の女性は「勤務先に着けるように少し早めに出ましたが規制が始まっていました。何かあってはいけないので、しかたがないことだと思います」と話していました。
10:18ごろ 岸田首相 平和公園に到着
岸田総理大臣を乗せた車は19日午前10時18分ごろ、広島市の平和公園に到着しました。
10:12ごろ 岸田首相 宇品島を出る
岸田総理大臣を乗せた車は19日午前10時12分ごろ、サミットのメイン会場のある広島市の宇品島を出て、広島市中心部に向かいました。
10:01 日仏首脳会談 終了
午前10時1分、広島市のホテルで行われていた岸田総理大臣とフランスのマクロン大統領による首脳会談が終わりました。これで岸田総理大臣は、広島サミット開幕前に、G7各国の首脳すべてと個別に会談を行ったことになります。30分余り行われた会談の冒頭、岸田総理大臣は、情勢が悪化したアフリカ・スーダンから日本人が待避する際のフランスの協力に重ねて謝意を伝えました。その上で「サミットでは法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持、強化を力強く打ち出したい」と述べました。そして、両首脳はロシアに対する制裁とウクライナ支援を継続するとともに、サミットの成功に向けた緊密な連携を確認しました。また、自衛隊とフランス軍の共同訓練の実施やサイバー、宇宙分野での連携などを進めていくことでも一致しました。
10:00 立ち入り制限で警察官の同行のもと宅配
立ち入りが制限され通行も規制されている広島市の平和公園の周辺には、基本的に住んでいる人以外は立ち入ることはできませんが、宅配業者などは入ることができます。午前10時ごろに訪れた宅配業者の男性は警察官の同行のもと配達する場所を伝えながら、マンションなどに荷物を届けていました。
9:40 EUミッシェル大統領 “中国との安定した関係必要”
G7広島サミットに参加しているEU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領はきょう午前、記者会見を行いました。この中で「EUとしてはウクライナが反転攻勢に向け必要とする武器や弾薬をよりはやく供与できるよう、取り組んでいる。またロシアの軍事行動を止めるためにも抜け穴を埋めることに力を注いでいる」と述べ、午後行われるセッションのなかでウクライナ支援やロシアへの制裁に関する議論が加速することに期待を示しました。一方、中国に関しては「中国との建設的で安定した関係は共通の利益にかなう。中国には国際社会のなかで特別な責任があり、国際ルールに従わなくてはならない。そして、ロシアに対して軍事行為を止めるよう圧力をかけてもらいたい」として、中国にロシアのウクライナ侵攻を終わらせるための役割を果たすよう求めるとともに経済面を含めて中国との安定した関係を持つことの重要性を強調しました。
09:30ごろ 家庭ゴミも金属探知機で確認
広島市中区光南の各国首脳の車列が通る道路の脇では、家庭ゴミの周囲にも赤いコーンが置かれ、念のため警察官がゴミを金属探知機で確認する様子が見られました。
09:24 日仏首脳会談 始まる
午前9時24分、広島市のホテルで、岸田総理大臣とフランスのマクロン大統領による首脳会談が始まりました。
09:19 日独首脳会談 終了
午前9時19分、広島市のホテルで行われていた岸田総理大臣とドイツのショルツ首相による首脳会談が終わりました。冒頭、岸田総理大臣は「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化に向けたG7の議論を牽引したい」と述べました。その上で両首脳は、G7の議論ではとりわけグローバル・サウスと呼ばれる新興国や途上国との連携が重要だとして、協力して取り組んでいくことで一致しました。そして、ウクライナ情勢をめぐり、ロシアに対する制裁と強力なウクライナ支援に加え、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くという、G7の決意を力強く世界に発信していく考えで一致しました。一方で両首脳は東アジア情勢についても意見を交わし、中国をめぐるさまざまな課題や北朝鮮の核・ミサイル開発や拉致問題への対応などで引き続き緊密に連携していくことを確認しました。
08:42 日独首脳会談 始まる
午前8時42分、広島市のホテルで、岸田総理大臣とドイツのショルツ首相による首脳会談が始まりました。
08:34 日本カナダ首脳会談 終了
午前8時34分、広島市のホテルで行われていた岸田総理大臣とカナダのトルドー首相による首脳会談が終わりました。両首脳は、サミットでG7の揺るぎない結束を世界に示すため、日本とカナダ両国でも連携していく方針を確認しました。また、東アジア情勢についても意見を交わし、中国をめぐる諸課題に加え、核・ミサイル問題や拉致問題を含む北朝鮮への対応で協力していくことで一致しました。
08:04 日本カナダ首脳会談 始まる
午前8時4分、広島市のホテルで、岸田総理大臣とカナダのトルドー首相による首脳会談が始まりました。
07:51ごろ フランス マクロン大統領 広島空港に到着
G7広島サミットに出席するフランスのマクロン大統領を乗せた専用機が19日午前7時51分ごろ、広島空港に到着しました。これで今回のサミットに出席するG7の首脳は、すべて広島に到着しました。
●G7首脳が平和記念公園訪問 初日は核軍縮・不拡散について議論 5/19
被爆地広島で、先進7カ国首脳会議(G7サミット)が19日、開幕した。核兵器保有国の米英仏を含む7カ国と欧州連合(EU)の首脳たちが参加。ウクライナに侵攻したロシアが核使用を辞さない構えを見せる中、初日は平和記念公園(広島市中区)を訪れた後、核軍縮・不拡散について議論し、特別文書をまとめる。核兵器廃絶への一歩を踏み出す内容を盛り込めるかどうかが焦点となる。
G7首脳は車列で平和記念公園に到着。地元選出の岸田文雄首相が出迎えた。首脳たちは原爆資料館を見学、被爆者と対面し、原爆慰霊碑へ献花する。
会期は21日まで3日間。初日は主会場のグランドプリンスホテル広島(南区)でウクライナ情勢、訪問先の宮島(広島県廿日市市)で核軍縮・不拡散を話し合う。
日本としては特別文書に、広島、長崎への原爆投下後、核兵器が攻撃に使われていない歴史や、世界的な核兵器数の減少傾向を続ける必要性を明記したい考え。ただ、G7は核保有国と米国の核に頼る同盟国で構成。「核兵器なき世界」へ近づくため、地元選出で議長を務める岸田首相の手腕が問われる。
他の主要議題は世界経済、気候変動、食料安全保障など多岐にわたり、20日から再び主会場で議論を続ける。核保有国インドのほか、韓国、ブラジルなど招待国8カ国の首脳も参加。最終日の21日に、全体の成果をまとめた共同声明を発表し、岸田首相が記者会見する。
広島市中心部の一般道は断続的に交通規制され、平和記念公園も関係者以外は立ち入れない。21日のサミット関連行事が終わるまで、厳重なテロ対策が続く。
●G7広島サミット 「期待と歓迎」とともに「開催反対や不安」の声が上がる…  5/19
G7広島サミットへの期待と歓迎が高まる中、開催に反対したり不安を抱いたりする声が上がっている。軍拡の中で被爆地を政治利用する違和感や、開催後も平和に近づかないサミットへの失望だ。対中ロ包囲網やグローバル化の旗振り役に、過度な期待を抱けないという見方も。開幕直前の異論に耳を傾けた。
広島から軍拡の発信をしてほしくない
「G7前に日米首脳会談を行って、事実上の軍事同盟を強化することは、核廃絶や戦争廃絶とは方向が違い、広島の心を踏みにじるものだ」
18日、日米首脳会談会場のホテルがある、爆心地近くの広島市中心街。市民団体などが街頭演説し、サミットを前に日米同盟強化を確認する会談の開催に抗議した。
広島市では13日も、サミット自体に反対する集会が開かれた。市民団体「ピースリンク広島・呉・岩国」世話人の新田秀樹さん(59)は、周辺に米軍岩国基地や自衛隊呉基地、アジア最大級の弾薬庫といった軍事施設がひしめくことを指摘し、「さまざまな基地の問題があるにもかかわらず、行政が『広島から平和を発信する』と偽善的なことを語っている」と強調した。
「こちら特報部」があらためて尋ねると、「岸田(文雄)首相は核廃絶の機運を高めると言っているが、現実には日米同盟の強化や北大西洋条約機構(NATO)諸国との連携、つまり軍事強化が主要なテーマ。広島から軍拡の発信をしてほしくない」と説明した。
核廃絶 核保有国は本気なのか
集会では、被爆者で、韓国などの「在外被爆者」を支援してきた豊永恵三郎さん(87)=広島市安芸区=も講演。「日本政府は長く在外被爆者を放置してきた。日本は唯一の被爆国というが、いろんな国の人が被爆している。唯一で強調する必要はない」と話し、ウラン採掘者や原発従事者などを含めたヒバクシャの支援も説いた。
豊永さんは取材に「サミット開催には絶対反対というわけではない」と話す。ただ、「本気になって将来の核廃絶とか、核を少なくするとか、共同宣言に入れてくれなければ、広島でサミットを開く意味はない。でも核保有国の首脳たちがそれを支持するだろうか。(米大統領だった)オバマさんが広島に来たときには謝罪しなかった。今回もかなり不安だ」と漏らした。
核を保有する米英仏が参加するサミットで、岸田首相が掲げる「核兵器のない世界」がどこまで議論されるかも不透明だ。集会で、富山大の小倉利丸名誉教授(現代資本主義論)は「G7の各国に核を放棄するつもりがないのに、来日を歓迎するスタンスはおかしい。被爆地である広島と核廃絶は切り離せず、今回のサミットはふさわしくない。被爆地が核を肯定し、軍備増強を加速させるきっかけにもなり得てしまう」と懸念を示した。
14日には、原爆ドーム前からサミット反対を訴えるデモも。参加した被爆二世の西岡由紀夫さん(67)は「国際平和都市広島」のイメージだけが政治利用されかねないことを危ぶむ。「オバマ大統領が広島に来たとき、被爆者を抱擁し、米国を許すような雰囲気の写真が世界中にばらまかれた。米国のイメージづくりに利用され、実際の核廃絶につながっていかなかった」
G7は対ロシア戦争の参戦国会議
サミットの主会場となるグランドプリンスホテル広島がある宇品地区はかつて旧日本陸軍の施設が集まり、中国大陸や南太平洋に兵士を送り出した出兵拠点だった。西岡さんは訴える。
「母は被爆者で、父は宇品から中国へ出兵した。原爆の被害と、侵略の加害の両面を持つのが広島だ。そうした両面に向き合わないで、都合の良い広島のイメージをサミットで政治利用することは許されない」
18日には東京の新宿駅東口広場でも、市民団体主催の広島サミット反対デモが行われた。
参加者らは「NO G7 NO War」と記されたのぼりを掲げ、「ウクライナ戦争を止めろ」「即時停戦を働きかけろ」と声を張り上げた。その後、広場周辺をプラカードを持ちながら歩いた。
「G7は対ロシア戦争の参戦国会議だ」とも主張。マイクを握った男性は「G7は戦争を早く終わらせるべきだ」と述べた。広島の集会にも参加した女性は「広島の核廃絶の思いを台無しにする」と訴えた。
そもそも、G7はどのように成立したのか。
第二次世界大戦の戦勝国として拒否権を持つ常任理事国にロシアと中国を含む国連とは異なり、G7に法的根拠はなく、かつての西側先進国のみで構成されている。Group(グループ)の頭文字からG7と呼ばれる。
きっかけは1973年の第一次オイルショック。世界的な不況やインフレなど経済問題への対応を協議する場としてサミットが開催された。冷戦終結後の97年にはロシアも加わってG8となったが、クリミア半島を併合した2014年に除外された。
こうした歴史を経てきたサミットだが、13日の広島集会は「G7を広島で終わらせよう」という宣言を採択した。「主権平等の原則で課題解決に臨む国際社会に真っ向から対立する」と位置付け、「軍事同盟を既成事実化し、気候変動とジェンダーの課題に取り組むポーズを示し、自分たちのリーダーシップを誇示する情報戦の舞台」と断じた。
登壇したピープルズ・プラン研究所の白川真澄さんは「冷戦終結後の国際潮流はグローバル化だが、その司令塔を担ってきたのがG7だ」と語った。広島サミットでは、「経済安全保障」を名目に掲げ、半導体のサプライチェーン(供給網)から中国を排除する動きに注目。「米国に追随し、日本も輸出規制を強化する方針で、そこにインドも巻き込む。今回のG7は世界的な中国包囲網を敷き、米中対立の激化を招いてしまう」と指摘した。
沖縄サミット開催後も基地の島変わらず
G7の現状には、00年にサミットが開かれた沖縄の人たちも複雑な思いを抱く。広島集会に参加した「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の高里鈴代共同代表(83)は、取材に対し「沖縄サミットは振り返れば、県民の声を沈静化させるためのものだった」と嘆く。
1995年の米兵による少女暴行事件を受け、大規模な県民集会で米軍基地の縮小を訴えた沖縄。だが、辺野古新基地の工事は今も続いており、陸上自衛隊の駐屯地が置かれた宮古島・石垣島にはミサイル部隊が配備されている。
高里さんは言う。「サミットから23年が経過し、米軍のみならず、自衛隊まで増強された。岸田政権は防衛費増額にかじを切り、この広島サミットは軍事同盟強化の場になる。核廃絶への合意には遠く、何の意義もない」

立ち入り規制前の原爆資料館に行った。被爆人形は撤去されていたが、きのこ雲の下で焼かれた人々の写真や遺品を国内外の観光客が食い入るように見ていた。急いで回っても1時間はかかる。きな臭いだけのG7なら、せめて時間をかけて原爆被害を学び、被爆者と対話してほしい。
●G7首脳、平和記念公園で原爆慰霊碑に献花 広島サミット 5/19
広島市で19日に開幕した先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、核兵器を持つ米英仏を含む参加国と欧州連合(EU)の首脳たち9人が平和記念公園(中区)を訪れ、原爆慰霊碑に献花した。G7首脳がそろって原爆犠牲者たちを追悼する、被爆地にとって歴史的な瞬間となった。
首脳たちは、車列で続々と平和記念公園に到着。岸田文雄首相たちの出迎えを受けた。原爆資料館を見学した後、原爆慰霊碑へ。米国のバイデン大統領、英国のスナク首相、フランスのマクロン大統領たちが碑前に花を手向け、祈りをささげた。
G7首脳はほかにイタリアのメローニ首相、カナダのトルドー首相、ドイツのショルツ首相と、EUのミシェル大統領、フォンデアライエン欧州委員長。会期は21日までの3日間で、初日はウクライナ情勢や核軍縮・不拡散を取り上げる。また、核保有国インドのモディ首相、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領たち8カ国の首脳が20日から拡大会合に加わり、21日に平和記念公園を訪れる。会期中、公園内へ関係者以外の市民たちは立ち入りできず、市内では交通規制も敷かれている。
広島でのサミット開催は初めて。ウクライナに侵攻したロシアが核兵器使用を示唆する中、被爆地で原爆の惨禍に触れた首脳たちが「核兵器のない世界」への意思や具体策を示せるかが焦点となっている。
●韓国 ユン大統領 きょうから広島を訪問  5/19
韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領は19日から広島を訪問します。G7広島サミットで7か国と関係国による会合に出席するほか、岸田総理大臣とともに韓国人原爆犠牲者慰霊碑を訪れ、両国関係を未来志向で進めていく姿勢を内外に示したい考えです。
韓国のユン・ソンニョル大統領はキム・ゴニ(金建希)夫人とともに19日から3日間の日程で広島を訪れます。
G7の7か国と関係国の首脳などが世界的な課題について討議する「アウトリーチ会合」に出席するほか、21日には岸田総理大臣と会談する予定で、アメリカのバイデン大統領を交えての日米韓の首脳会談についても調整を進めています。
会談では北朝鮮の核・ミサイル開発への対応や、半導体など重要な製品のサプライチェーン=供給網の強化などについて議論することにしています。
また、岸田総理大臣とともに韓国の大統領としては初めて韓国人原爆犠牲者慰霊碑を訪れる予定です。
ユン大統領はことし3月の訪日以降、異例の頻度で岸田総理大臣との会談を重ねていて、韓国国内でユン政権の対日外交に批判的な声がある中、今回、両首脳がそろって慰霊碑を訪れることで、両国関係を未来志向で進めていく姿勢を内外に示したい考えです。
●フランス・マクロン大統領が広島空港に到着 G7首脳 そろって平和公園へ 5/19
19日午前、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が広島空港に到着しました。これでG7各国の首脳は7人全員が広島に到着したことになります。
マクロン大統領は、2017年、歴代最年少となる39歳でフランスの大統領に就任。去年、2期目となる再選を果たしています。
G7広島サミット初日のきょう19日、G7の首脳たちはそろって平和公園を訪れ、原爆資料館を視察し、原爆慰霊碑に献花する予定です。
●G7首脳らきょう広島平和公園へ バイデン大統領は原爆投下謝罪せず 5/19
G7=主要7か国の首脳はきょう、広島サミットの最初の行事として平和公園を訪れます。
アメリカの現職大統領としては、2人目の訪問となるバイデン大統領は、原爆投下に関する謝罪をしない見通しです。
G7の首脳らはきょう午前、広島市の平和公園を訪れ、岸田総理の案内で原爆資料館を視察するほか、原爆慰霊碑の前で花輪を手向け、記念の植樹を行う予定です。
アメリカの現職大統領としては、オバマ元大統領に次いで2人目の広島訪問となるバイデン大統領が今回、核をめぐってどのような発言をするか注目されていますが、アメリカ政府高官によりますと、平和公園では発言の機会はなく、原爆投下に関する謝罪もしないということです。
高官は「78年前に広島で命を落とした人々に敬意を表するとともに、核不拡散に対するアメリカの責務を再確認する」と話しています。
●G7サミット 対ロシア輸出制限拡大 ウクライナ声明に明記で調整  5/19
G7広島サミットで議長国の日本は、ロシアに対する追加の制裁として、輸出制限の対象を侵攻に重要なすべての品目に拡大できるよう行動することをウクライナに関する声明に明記する方向で各国との調整に入りました。
G7広島サミットで、議長国の日本は首脳宣言とは別にウクライナに関する声明を発表する予定で、これまでにウクライナに永続的な平和をもたらすためのあらゆる努力を払うなどとする原案をまとめています。
この声明について、日本政府はロシアへの制裁に関する部分の案を固め、各国との調整に入りました。
それによりますと、輸出制限の対象を戦場で使用されているものを含め、侵攻に重要なすべての品目に拡大できるよう行動し、製造や建設といった分野の従事者などを制裁対象に加えるとしています。
また、ロシアが制裁を逃れる動きを防ぎ、第三国がG7のこうした取り組みに関与することを奨励するとしています。
さらに、ロシアのエネルギーへの依存度を下げ続けることや、ロシアが金属やダイヤモンドから得る収入を削減するよう取り組むことも盛り込んでいます。
日本政府はサミットでの首脳間の討議を踏まえ、声明を取りまとめることにしています。
●岸田総理 「核兵器のない世界」実現に向け“機運を再び盛り上げたい” 5/19
きょうからG7広島サミットが始まります。岸田総理は、被爆地・広島で開かれるサミットであることから、核兵器のない世界を目指す機運を再び盛り上げたいとしています。
岸田総理「被爆地・広島で開催されるサミットですので、さまざまな課題の中にあっても、核兵器のない世界を目指すという理想をG7をはじめとするリーダーたちと共有する貴重な機会にしたいと思います」
サミット開幕にあたり、岸田総理は昨夜、記者団にこのように述べたうえで、「核兵器のない世界」の実現に向け、「後退している機運を再び盛り上げる転機にしたい」と意気込みを語りました。
サミットでは、インド太平洋情勢や核軍縮などの外交安全保障、エネルギーや食料問題、デジタルや貿易を含む世界経済など、幅広い分野での議論が行われます。
また、外務省は、あさって21日午前にG7首脳とウクライナのゼレンスキー大統領によるオンライン会合が開かれると発表しました。当初はきょう午後に予定されていたものの、ウクライナ側の事情で変更されたとしています。
きのうは岸田総理が日米首脳会談で、核軍縮に向けた自身の考えをバイデン大統領に伝えました。
両首脳は、ウクライナ情勢をめぐり、ロシアへの厳しい制裁と強力なウクライナ支援を行うことや、中国をめぐる諸課題について緊密に連携していくことで一致しました。
このほか、AIを含む、最先端技術の研究を行う大学を日本に誘致する「スタートアップ・キャンパス構想」の推進で一致しています。
●G7広島サミット開幕 バイデン氏ら被爆地訪問 5/19
先進7カ国首脳会議(G7サミット)は19日、広島市で開幕。議長を務める岸田文雄首相はバイデン米大統領ら各国首脳を平和記念公園で出迎え、被爆の惨禍を伝える広島平和記念資料館(原爆資料館)を訪問する。ウクライナに侵攻したロシアが核の威嚇を繰り返す中、核兵器の使用を許さない姿勢を打ち出す。ロシアや覇権主義的動きを強める中国を念頭に、法の支配に基づく国際秩序の堅持を21日に発出する首脳声明に明記する方針だ。
核兵器を保有する米英仏3カ国を含むG7首脳が一同に資料館を訪れるのは初めて。現職の米大統領としてはバイデン氏が2016年のオバマ氏以来2人目になる。
首相は18日夜、記者団に「被爆地・広島で開催されるサミットなので、『核兵器のない世界』を目指す理想をG7をはじめとするリーダーと共有する機会にしたい」と述べた。サミットの日本開催は16年の伊勢志摩サミット以来7年ぶりで7回目。
G7首脳は19日午後、広島市内で昼食を取りながら世界経済や人工知能(AI)などについて議論。ウクライナ情勢に関する討議も行う。当初、ゼレンスキー大統領がオンラインで出席予定だったが、ウクライナ側の事情で21日に変更。19日はG7首脳のみでウクライナ支援や対露制裁の強化を話し合う。
その後、首脳らは世界遺産・厳島神社がある宮島(広島県廿日市市)に移動。夕食をとりながら核軍縮・不拡散を含む外交・安全保障について協議する。中国や北朝鮮などインド太平洋地域の情勢もテーマになる。
20日はインドやブラジルなどの招待国が加わり、拡大会合を開催する。G7と中露の中間に位置する新興や途上国をG7側に引き寄せられるかが焦点となる。最終日の21日には首相が議長記者会見で成果を発表し、閉幕する予定。
●広島サミット開幕 G7首脳「原爆資料館」訪問 5/19
G7広島サミットが3日間の日程で開幕しました。
G7広島サミットは初日、さっそく山場を迎えます。
核保有国を含むG7(主要7カ国)の首脳らが平和公園を訪れ、原爆資料館を視察しています。
広島県選出でもある岸田総理は核軍縮を巡り、核保有国の透明性の向上や核兵器の削減努力を継続していくことなどを首脳宣言に盛り込みたい考えです。
各国の首脳らは初日最大のテーマのウクライナ問題で、ロシアへの制裁の継続を確認する見通しです。
●G7広島サミット 各国首脳 まもなく平和公園へ 5/19
G7広島サミットがきょうから始まります。各国の首脳がこのあと、広島市の平和公園を訪れます。
朝から強い雨が降り続いている広島市の平和公園です。
サミット初日のきょう、岸田総理はG7各国の首脳らを平和公園で出迎えます。核保有国のアメリカ、イギリス、フランスの首脳が、そろって広島を訪れるのは初めてです。
岸田総理は今回のサミットについて「核兵器のない世界に向け『あのとき流れが変わった』と言われるぐらいの大きなメッセージを発していきたい」と意欲を示しています。
各国の首脳は岸田総理の案内で原爆資料館を視察するほか、原爆慰霊碑に花輪を手向け、記念の植樹をする予定です。
原爆資料館では、亡くなった被爆者の遺品などを展示していますが、各国首脳がどういった展示を見るかは明らかにはされていません。
また、被爆者と会って、言葉を交わす機会があるのかも注目されています。 
●G7広島サミット、岸田首相はなぜ8カ国を追加招待したのか 5/19
もしも主要7カ国首脳会議(G7サミット)がディナーパーティーなら、ホストはガレージで伸縮式テーブルを探し、予備のテーブルマットやフォーク、ナイフなどがないか積み上げた箱の中をがさがさ探していることだろう。
なぜかというと、今年のホストの岸田文雄首相が、19日に広島で始まったサミットに、通常より8人多く招待したからだ。
このことは、ウクライナでの戦争から、私たちの食卓に食べ物がどれだけ届くのかに至るまで、今回のサミットがいかに厄介な議題山積かのあらわれだ。加えて、国際秩序の急速な変化も示している。話題の中心は、招待されていない2国、ロシアと中国だ。
毎年恒例のこの会議は、世界で最も裕福な民主主義国家7カ国(日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、イタリア)が参加する。欧州連合(EU)は正式なG7メンバーではないが、代表を送る。近年の会議では、議長国が独自の判断でメンバー以外の国を招いている。
しかしながら、G7の経済的な影響力は弱まっている。国際通貨基金(IMF)によると、G7は1990年、世界のGDPの半分強を占めていた。それが今や30%弱に過ぎない。G7は、有力な新しい仲間を必要としているのだ。
そこで岸田氏は、欧米を超えた、より世界的な連合を求めて、テーブルを伸長した。テーブルをいつもより大きくして、オーストラリア、インド、ブラジル、韓国、ベトナム、インドネシア、コモロ(アフリカ連合代表)、クック諸島(太平洋諸島フォーラム代表)の席を設けたのだ。
岸田氏はここ1年半で16回、外国を訪れている。インド、アフリカ、東南アジアなどの国々に、中国とロシアの金や権力に代わるものがあると証明するために。
広島への招待国リストからは、「グローバル・サウス」と呼ばれる国々(アジア、アフリカ、中南米の開発途上国)をG7側に引き寄せようとの思惑がうかがえる。それらの国はどこも、政治的・経済的にロシアや中国と複雑なつながりがある。
結束感に欠ける戦線
岸田氏は今回、ロシアのウクライナ侵攻に対する「統一戦線」を示すことをはっきりと目標に掲げている。だが、それはかなりの難題になるだろう。
G7は、ロシアの軍資金拡大につながるエネルギーや輸出品に対する制裁を強化しようとしている。
しかし、追加招待された国々の多くにとって、これは好ましい動きではない。例えばインドは、ロシアからの輸入品に対する西側の制裁に同調するのを拒んでいる。
インドは、ロシアのウクライナ侵攻を明確に非難してもいない。両国には長年の関係があり、インドにはエネルギーを輸入に依存しているという現実もある。同国は高価格での購入は無理だとし、ロシアからの原油購入の正当性を主張している。
これはインドにとどまらない。複数の新興国は、ウクライナでの戦争が一因のコスト上昇に大打撃を受けている。
新興国は、追加制裁によって、黒海を通じたウクライナ産穀物の輸出合意をロシアが打ち切ることを恐れている。もしそうなれば、食料不足は深刻化し、価格がさらに上昇する恐れがある。
他の国々にとっては、これは単に制裁の個人的代償にとどまらない。
「ヴェトナムは歴史的にロシアと密接な関係にあり、少なくとも兵器の60%と肥料の11%の供給を受けている」。シンガポールにある東南アジア研究所の客員研究員、グエン・カク・ジャン氏は、こう指摘する。
「インドネシアは、ロシアへの依存度は大きくはないが、ロシアの兵器の重要な輸入国で、ロシアと良好な関係を維持している」
「こうした理由からヴェトナムとインドネシアは、ロシアへの追加制裁に明確に異議を唱えることも支持することもしないだろう。仮にそうしたとしても、経済的・政治的に大きなリスクを負う一方で、利益はほとんどない」
岸田氏は、10万人以上が死亡した被爆地・広島でG7を開くことによって、参加者がロシアの核の脅威を強く意識すると、期待しているはずだ。
岸田氏の政治地盤でもある広島を訪れれば、核兵器がもたらす惨状を常に考えることになる。そうした兵器が二度と使われないようにする責任が、この街に招かれた人にはあるのだと、そのメッセージも強調される。
さらに、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領からの圧力もある。ゼレンスキー氏は首脳会議にオンラインまたは対面で出席し、すでに多大な代償を払った自国民のため、強い気持ちを込めて嘆願するとみられている。
しかし、制裁をどこまで強化するかをめぐる意見対立は、解消されないかもしれない。また、G7以外の国々には、自分たちの声が西側にあまりにも無視されがちだとの不満が高まっている。それでもアナリストらは、そうした国々の声に耳を傾け、パートナーとして扱うことが、少なくとも第一歩になると考えている。
前出の東南アジア研究所のジャン氏は、ヴェトナムとインドネシアについてこう言う。「(広島サミットは)それらの国々がさまざまな問題についてG7首脳に懸念を伝えるいい機会となる。ウクライナでの戦争、世界経済の減速、東アジアの安全保障リスク、そして特に南シナ海での問題や台湾情勢についてだ」。
中国への対抗
台湾は昨年、周辺海域での緊張の高まりも含め、最大の危機の一つとなった。
岸田氏はアジア唯一のG7メンバーの指導者として、今回のサミットを、台湾周辺における中国の軍事力強化に対処するチャンスと捉えている。日本が西側に向けて発するメッセージは明快だ。「ウクライナでのあなたたちの戦いは、私たちの戦いでもある。しかしそれは、双方向に機能しなくてはならない」というものだ。
しかし、世界のサプライチェーンに事実上組み込まれている中国は、おそらくロシアよりも厄介な相手だ。
先日、北京を訪問したフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ヨーロッパが「自分たちのものではない危機に巻き込まれる」べきではないと警告した。この言葉は西側で少し騒がれたが、東アジアでも、見捨てられることに対する根強い恐怖心がよみがえった。
アメリカのリンジー・グレアム上院議員(共和党)の発言を思い出す人も多いだろう。同国と北朝鮮との緊張がかなり高まっていたころ、グレアム氏は「数千人が死ぬとしたら、向こう(北朝鮮)で死ぬことになる」と警告した。その後、ドナルド・トランプ大統領(当時)が在韓米軍を削減すると脅しをかけた。
中国の声がはっきりと聞こえるのは、西側の民主国家とは異なり、その立場が選挙のたびに変わることがないからだとアナリストらは言う。
もちろんアメリカもこの1年、ウクライナ支援や台湾への関与において揺らぎは見せていない。同盟国の日本、韓国、フィリピン、オーストラリアと共同で、太平洋で軍事演習を行ってきた。
しかし、G7は中国の軍事的野心だけを批判対象にしているわけではない。中国の「経済的威圧」についても懸念している。中国は自国に批判的とみなした行動に対し、報復に出ている。2019年のオーストラリアからの輸入削減や、2017年の韓国企業を標的にした措置はその例だ。
G7の対抗措置がどのような形になるのか、あるいはEUのパートナーたちと一緒に行動することで合意できるのかさえ、現時点では不明だ。どうあれ、日本もEUも中国を最大の貿易相手国として頼りにしているという現実がある。
だが、さらに難しいのは、他の国々を同調するよう説得することだろう。グローバル・サウスの多くが、中国とより強力な経済的関係をもっているからだ。
例えば、中国と中南米の貿易は拡大している。中南米の国内総生産(GDP)の8.5%を中国が占め、ブラジルなどは対中貿易が黒字だ。一方、アフリカではガーナやザンビアなどの国々が中国に多額の債務を負っており、融資の返済に苦しんでいる。
中国はG7主導の取り組みに対し、意見を明確にしている。中国外務省の汪文斌報道官は先週、「中国自身がアメリカの経済的威圧の被害者であり、他国による経済的威圧には常に断固として反対してきた」と述べた。
新たな戦場
影響力をめぐる戦いが今も繰り広げられている地域がある。太平洋諸島だ。太平洋諸島諸国を代表する小さな国、クック諸島が招待されたのはそのためだ。
気候変動による影響が極めて大きいこれらの島しょ国は、自国の戦略的重要性をアメリカと中国の双方に対して使っている。
中国は昨年、ソロモン諸島と安全保障条約を締結。この地域に軍事基地を建設するのではないかとの懸念が高まった。これにアメリカはすぐ対応。地域の14カ国と8億1000万ドルの資金援助を含む協定を結んだと発表した。
岸田氏の連合体構築の努力は、G7が気候変動やエネルギー安全保障への対応でどう合意するかにもかかっている。それが、ロシアの石油やガス、あるいは中国の援助に対する、地域の国々の依存度を下げることにつながるからだ。
しかし、すでにほころびもうかがえる。アメリカのジョー・バイデン大統領はサミット終了後、パプアニューギニアに飛び、太平洋諸島を訪問する初の現職米大統領になるはずだった。
しかし、アメリカの債務上限をめぐる危機を理由に、太平洋諸島訪問は取りやめになった。アジア・ソサイエティ政策研究所のシニアフェローで、元オーストラリア情報当局トップのリチャード・モード氏は、これは後退だと指摘する。
「この地域では、姿を見せることがすべてだ」とモード氏は最近のパネルディスカッションで話した。「姿を見せることが戦いの半分だ。中国は常に姿を見せており、それからすると、形勢はあまり良くない」。
●G7広島サミット・ワーキングディナーの舞台 宮島の老舗旅館「岩惣」 5/19
このあと各国首脳のワーキングディナーが開かれるのが廿日市市宮島の老舗旅館「岩惣」です。国内外の要人を魅了してきた「奥座敷」を紹介します。
古くは初代内閣総理大臣伊藤博文に・・・大隈重信など数々の文化人や著名人が宿泊してきた老舗旅館「岩惣」近年も要人たちが訪れています。
【小泉純一郎首相(2004年)】「いい味だ。うーん、おいしい」
また2016年の外相会合のときは畳の上に机とイスが並べられワーキングディナーの会場になりました。当時外務大臣だった岸田総理の姿も。今回のサミットでは各国の「首脳」のもてなしの舞台になります。
改めてこのあとの夕食会の会場になる老舗旅館「岩惣」がどんな場所か掘り下げていきましょう。江戸時代末期、元々は茶屋として始まり他にも夏目漱石やヘレンケラーなど名だたる偉人が宿泊をしてきました。
Q:モーリーさんは「岩惣」はご存知でしたか?
【国際政治学者 モーリー・ロバートソンさん】「もしかしたら子供のころ大人に連れられて行ったかも知れません」
厳島神社から徒歩3分の位置にありまして手つかずの自然が残る弥山の麓で旅情を誘います。
現存する主屋が建てられたのは明治25年・1892年で伝統と格式を誇ってきました。玄関を彩るのは石の柱を深く埋め込んで作ったという趣のある石畳。独特の風合いを漂わせる梁や天井はすべて弥山のマツでできています。
【「岩惣」7代目女将岩村玉希さん】「この辺りですね、松やにが付いています。昔のいい材をたくさん集めて作られたと聞いています」外相会合のときに会場となった「離れ」は一室一棟の平屋建てで、伝統建築があしらわれています。もみじ谷公園にも溶け込んだまさに「宮島の奥座敷」とも言える場所です。
今回、その「奥座敷」で議題となるのが「外交安全保障」と「核軍縮・不拡散」などです。G7サミットで「核軍縮・不拡散」が議題になるのは今回が初めてです。歴史と荘厳な宮島の自然の中でどんな議論を期待したいですか。
【国際政治学者 モーリー・ロバートソンさん】「核軍縮、核廃絶という最終目標と目の前の軍事的脅威であるロシアのウクライナ侵略、中国の南シナ海の暴走、北朝鮮の暴走をどう封じ込むのか、具体的にどう支援するか話は踏み込んむと思う。それが前進すればその先にある核廃絶に向けて世界平和、世界に民主主義を浸透させるという目標が見えてくると思う」
●G7広島サミット初日を終えての所感等についての会見 5/19
初日の議論を終えた感想について
この広島の地にG7各国首脳をお迎えし、本日無事にG7サミットを開幕できたこと、大変喜ばしく思っています。今回のサミットは、ロシアによるウクライナ侵略により、国際秩序の根幹が揺るがされ、国際社会が複合的危機に直面する中で開催される歴史的にも重要なサミットであると考えています。その初日となる本日、私は議長として、デジタルや貿易を含む世界経済、ウクライナ、インド太平洋、核軍縮・不拡散を含む外交安全保障等について議論を主導し、G7の揺るぎない結束を確認するとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くということにおいて一致することができました。今朝、私はG7首脳と共に、平和記念資料館の視察、被爆者との対話や原爆死没者慰霊碑への献花等を行いました。原爆により壊滅的な被害を受け、その後、見事な復興を遂げた広島において、G7首脳と共に被爆の実相に触れ、これを粛然と胸に刻む時を共有いたしました。「核兵器のない世界」への決意を世界に示す観点からも、これは歴史的なことであったと考えています。また、本日のG7首脳との議論を踏まえ、核軍縮に焦点を当てたG7初の独立主導文書である「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」をまもなく発出いたします。この文書は、「核兵器のない世界」の実現に向けたG7首脳の決意、具体的合意、今後の優先事項、方向性を力強く示す、歴史的意義を有するものであると考えています。この「広島ビジョン」では、「ヒロシマ・アクション・プラン」を歓迎し、その内容を改めて確認するとともに、特に透明性については、未実施の核兵器国による核戦力データの公表、核兵器国のNPT(核兵器不拡散条約)履行実施報告の非核兵器国や市民社会を巻き込んだ、双方向議論の実施等の新たな合意も明記いたしました。この「ヒロシマ・アクション・プラン」の下での取組を進めていく上で、大きな推進力を得たものと考えています。さらに本年が、FMCT、すなわち核兵器用核分裂性物質生産禁止条約、この条約の構想を謳(うた)った国連総会決議採択から30年に当たる年であるということを踏まえて、FMCTの早期交渉開始に向けた政治的関心を高めることを呼び掛けています。これを受けて、我が国としては、国連総会ハイレベルウィークの機会等を利用し、関係国等と記念行事を開催する方向で調整を今行っております。今回のサミットの成果を踏まえ、核兵器国の関与も得ながら、現実的かつ実践的な取組を進め、核軍縮に向けた国際的な機運を一層高めていきたいと思います。また、日本が国連と共に立ち上げ、先般、参加募集が開始されたユース非核リーダー基金を通じて、「核兵器のない世界」への決意を次の世代にも伝えていきたい、このように思っております。以上です。
インド太平洋情勢と核軍縮の議論等について
まず、今回のサミットはアジアで開催するものであることから、インド太平洋の課題についてもしっかり議論し、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」に向けたG7の連携を強化することが重要と考え、議長として、G7の議論を主導した次第です。G7首脳とはこれまでも議論を重ねてきており、そこで培った信頼関係の下、非常に打ち解けた、和やかな雰囲気の夕食会でありましたが、我々が直面する様々な課題について、率直かつ突っ込んだやり取りが行われ、あっという間の1時間40分であったと感じています。そして、その中で中国に関しては、私から、我々共通の懸念を直接伝え、国際社会の責任ある一員としての行動を求めつつ、グローバルな課題や共通の関心分野については中国と共同し、対話を通じて、建設的かつ安定的な関係を構築することの重要性を強調し、各国からも同様の認識が示されました。台湾情勢については、G7として、台湾海峡の平和と安定の重要性と、両岸問題の平和的解決を促す、このことで一致いたしました。核軍縮・不拡散については先ほどの質問にお答えした通りであります、以上です。
グローバルサウスを含む招待国との拡大会合及びゼレンスキー大統領が対面でサミットに出席するという報道について
まず、グローバルサウスを含む招待国との会合についての意気込みの部分ですが、明日の午後から始まる、招待国及び国連機関を交えたセッションでは、G7を超えたパートナーとの間で、食料、開発、保健、気候変動、エネルギー、さらには環境といった、国際社会が直面する諸課題への対応について、率直な議論を行いたいと思っています。これらの諸課題については、G7だけでは対応することができず、いわゆるグローバルサウスと呼ばれる国々を始めとする国際社会のパートナーと、協力して対応することが必要とされます。G7として、こうした国々が抱える様々なニーズに寄り添って、きめ細やかな対応を行い、人を中心に据えたアプローチを通じて、積極的かつ具体的な貢献を行うことを示したいと思っています。そして、もう一つのゼレンスキー大統領のG7会合への参加についての御質問ですが、様々な報道は承知していますが、日本時間、本日午後、ウクライナ政府の国家安全保障国防会議WEBページも、ゼレンスキー大統領がオンラインでG7広島サミットに参加する旨、発表している、このように承知しております。よって、昨日、18日の夜に、私の方から申し上げたことについては、現時点で付け加えることはない、こういったことであります。
平和記念資料館の視察が非公開であった理由について
各国のハイレベルを含め、国際社会に対して被爆の実相をしっかりと伝えていくことは、核軍縮に向けたあらゆる取組の原点として重要です。そのため、サミット日程全体を通して時間的な制約がある中で、G7首脳がそろって平和記念資料館を訪問し、私自身が展示内容について説明をするとともに、被爆者・小倉佳子さんとも対話を行いました。それに向けて、資料館の主な展示テーマに即した形で、重要な展示物を見ていただけるよう、準備をいたしました。その準備・調整の過程で、資料館訪問の内容ややり取りについて非公開とすることとなったものです。いずれにせよ、今回の視察を通じて、「核兵器のない世界」の実現に向けた、G7としてのコミットメントを新たにする後押しになったものであると考えております。以上です。
●G7首脳と1人で面会 “長い間の葛藤 追体験してください” 5/19
G7広島サミットの初日、各国の首脳は広島市の平和公園を訪れ、原爆資料館を視察しました。そこで面会したのは、ひとりの被爆者でした。
G7の首脳がそろって原爆資料館を訪問したのは、きょうが初めてです。資料館の中での様子は非公開となりましたが、外務省によりますと、岸田総理大臣が展示の内容を説明し、各国の首脳は広島市在住の被爆者、小倉桂子さんと対話したということです。
小倉さんは85歳。8歳の時、爆心地から2.4キロ離れた自宅近くで被爆しました。原爆資料館の館長を務めた夫・馨さんの遺志を継ごうと、通訳者のグループを立ち上げ、平和公園を訪れる外国人向けのガイドなどの活動を行うとともに、みずからの被爆体験を英語で世界に向けて発信してきました。
外務省によりますと、各国首脳と面会した被爆者は小倉さん1人だったということです。
G7首脳の様子は
「みなさんが入ってこられたら、思わず『Welcome to Hiroshima』と言いました」
小倉さんは、各国の首脳に対して被爆体験を英語で証言しました。
「海外から来た人は原爆投下の瞬間について知りたいと思い、ぴかっと光ったとき、真っ白で何もみえない、爆風で立ってられず、地面にたたきつけられたということを伝えました。そのとき見たもの、心で感じたことをそのまま語りました」
話を聞いた各国首脳の様子については。「興味を持って聞いてもらい、かなり長く話をさせてもらいました。内容は言えませんが、質問もたくさんしてもらいました」
“広島から一歩を 生きているあいだに”
そのうえで小倉さんは、次のように話しています。
「長い間感じてきた被爆者の心の中の葛藤、そして目に見えない傷、トラウマとか悲しみとか人に言えない秘密とか、私の目を心を通して追体験してくださいと申し上げました。
次に進むためにはどうすることができるのか十分討議をしていただいて、外交の力でできるだけ早く戦争をやめてほしい。広島から一歩を踏み出す宣言を世界にぜひともお願いしたいと思います。少なくとも被爆者が生きているあいだに」
平和公園訪問 テレビで見守った被爆者は…
G7各国首脳が平和公園を訪問する様子を、テレビなどで見守った広島の被爆者の人たちに、受け止めを聞きました。
“原爆の惨状 以前より響いてるのではないか”
6歳の時に爆心地からおよそ2.3キロの地点で被爆した田中稔子さん、84歳です。原爆によって親族や多くの同級生を亡くし、心に深い傷を負って60年以上にわたって被爆体験を話すことができませんでした。
しかし、国際交流で南米を訪れた際に現地の人から「あなたには被爆の経験を話す責任がある」と言われて考えが変わり、70歳になってから証言活動を始めました。70代後半から学び始めたという英語で、通訳を介さずに講演を行っています。
きょうは、G7各国の首脳が平和公園を訪れた様子をテレビで視聴しました。
田中さんは、アメリカのバイデン大統領が原爆資料館から出てきた時の表情について「随分深刻な、痛ましい顔をしていたので、バイデン大統領の心には、原爆の惨状が以前より響いてるのではないかと感じました」と話していました。
そして「被爆者の話は原爆を目の前で見た人の話です。首脳たちにはその話を心に政治をしてほしい。世界から核兵器をなくす方向に動かしてほしい」と話しています。
“サミットの最後には核兵器廃絶の宣言を”
14歳の時に爆心地からおよそ1.5キロの地点で被爆し、顔や体に大やけどを負った森下弘さんです。
森下さんは「ウクライナへの軍事侵攻が起こったり、核廃絶への議論が停滞したりする中、資料館の展示を見ることでこの悲惨な出来事は広島と長崎であっただけでなく今後、自分たちにも起こりうることだと考えて欲しい」と話していました。
その上で「サミットの最後には核兵器の廃絶を宣言して、世界中に核兵器に対する姿勢をアピールしてほしい」と話していました。
“視察の時間 短いのではないか”
広島県被団協の箕牧智之 理事長は、G7各国の首脳が平和公園を訪れた様子をテレビで視聴しました。
箕牧さんは、各国首脳の原爆資料館の視察がおよそ40分だったことについて「時間が短いのではないか。この時間でたくさんのものを見られるわけがないし、惨状が分かったという所まではいかないのではないか」と話しています。
その上で、「記帳をしたり被爆者の証言を含めてどれが何分だったか詳細なことを知りたい。何をどれくらい、どんな気持ちで見たか感想を聞きたい」と話していました。
“非常に意義深いが、開かれた形で見学があれば”
ICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンの国際運営委員を務める川崎哲さんです。「非常に意義深いことだと思う。展示は凄惨なものも多いが目をそらさず一つ一つ見ていただきたい」と述べました。
一方で、資料館内の訪問の様子が公開されないことについては、「開かれた形で見学があれば、なおよかった」とした上で、「首脳の到着までにも時間がかかっているので、時間をむだにせず、たくさんの展示をしっかり見てもらいたい」と話していました。
ゼレンスキー大統領のサミット出席について
ウクライナ政府の高官が、ゼレンスキー大統領が来日しG7広島サミットに対面で出席することを明らかにしたことについて、受け止めを聞きました。
広島県被団協の箕牧智之 理事長「私たちとしては歓迎したい。ただ、今回の訪問でG7とロシアとの関係が悪化しないか心配しています」
森下弘さん「ゼレンスキー大統領の思いや状況を直接、みんなが聞くことができるのは大切なことだと思う。ウクライナへの軍事侵攻をやめ、核兵器の廃絶に向けた歩みを進められる可能性があると思います」
田中稔子さん「戦争を終わらせる方向に進めるのが広島の役割。戦争を有利に進めるための兵器について広島で話すとしたら、容認できません。戦争を回避するような方向転換ができるといいと思います」
 
 

 

●G7広島サミット 5/20
23:47 岸田首相とクック諸島 ブラウン首相の会談終わる
広島市のホテルで、岸田総理大臣と、南太平洋の島しょ国で「太平洋諸島フォーラム」の議長国を務めるクック諸島のブラウン首相による首脳会談が終わりました。
   ゼレンスキー大統領 独ショルツ首相と会談
ウクライナのゼレンスキー大統領はドイツのショルツ首相とも会談しました。ドイツは今月13日、ウクライナに対して新たに27億ユーロ、日本円でおよそ4000億円相当の軍事支援を行うと発表したばかりで、ゼレンスキー大統領は会談後、ツイッターに「防衛に対するドイツからの強力な支援に感謝を表明した」と投稿しました。また、ショルツ首相も会談後、ツイッターに「私たちは必要とされるかぎりウクライナを支援する」と投稿し、支援を継続する姿勢を強調しました。ドイツメディアによりますと、会談はおよそ20分間、行われたということです。
23:47 韓国ユン大統領 広島市内のホテルに到着
韓国のユン大統領を乗せた車は午後11時47分ごろ、宿泊先の広島市内のホテルに到着しました。
23:36 バイデン大統領 広島市内のホテルに到着
アメリカのバイデン大統領を乗せた車は午後11時36分ごろ、宿泊先の広島市内のホテルに到着しました。
23:34 韓国ユン大統領 広島市宇品島を出る
韓国のユン大統領を乗せた車は午後11時34分ごろ、サミットのメイン会場のホテルがある広島市の宇品島を出ました。
23:25 バイデン大統領 広島市宇品島を出る
アメリカのバイデン大統領を乗せた車は午後11時25分ごろ、サミットのメイン会場のホテルがある広島市の宇品島を出ました。
23:20 岸田首相とクック諸島 ブラウン首相の会談始まる
午後11時20分、広島市のホテルで、岸田総理大臣と、南太平洋の島しょ国で「太平洋諸島フォーラム」の議長国を務めるクック諸島のブラウン首相による首脳会談が始まりました。
23:13 各国首脳らの社交行事が終わる
午後11時13分、広島市のホテルで、岸田総理大臣や各国の首脳、それに国際機関の代表と、その配偶者による夕食をとりながらの社交行事が終わりました。
   EUミシェル大統領がゼレンスキー大統領と会談
EU=ヨーロッパ連合は、ミシェル大統領が、来日したウクライナのゼレンスキー大統領と会談したことを発表しました。それによりますと、両首脳はロシアの軍事侵攻が続くウクライナでの最新の戦況と、あらゆる分野におけるウクライナへの支援について話し合いました。また、ミシェル大統領は、ウクライナに来年以降の複数年にわたる財政支援を準備していることや、軍事面でも弾薬の供与や戦闘機の調達に向けた枠組みの構築など、支援のさらなる強化を伝えたということです。さらに、ウクライナが目指すEU加盟をめぐっては、加盟に向けて取り組んでいる司法改革や汚職対策を評価し、年末までにEUの首脳会議の議題として取り上げる意向をあらためて示しました。
21:50 各国首脳らの社交行事が始まる
午後9時50分、広島市のホテルで、岸田総理大臣や各国の首脳、それに国際機関の代表と、その配偶者による夕食をとりながらの社交行事が始まりました。
21:30 クアッドの首脳会合が終わる
午後9時半、広島市のホテルで開かれていた日米豪印4か国の枠組み、クアッドの首脳会合が終わりました。冒頭、岸田総理大臣は、ロシアのウクライナ侵攻で安全保障環境が厳しさを増していると指摘した上で「厳しい情勢の中だからこそ、われわれが一堂に会し、国際社会を分断と対立ではなく協調に導くという目標に向けて、『自由で開かれたインド太平洋』という共通のビジョンへの強固なコミットメントを改めて国際社会に示す意義は極めて大きい」と述べました。その上で「ASEAN=東南アジア諸国連合や南アジア、また、太平洋島しょ国といった地域の国々の声に耳を傾けながら、善を推進する力として、地域に真にひ益する実践的協力を展開していく。議論を通じてわれわれの取り組みをさらに強力に推進していくための弾みとしたい」と述べました。
   仏マクロン大統領“ゼレンスキー大統領と会談”
フランスのマクロン大統領は、広島を訪れているゼレンスキー大統領と会談を行ったと自身のSNSで発表しました。会談の冒頭、マクロン大統領は、G7広島サミットにゼレンスキー大統領が対面で出席することについて「『グローバル・サウス』の国々と意見を交換し、ウクライナのメッセージや視点を伝えるまたとない機会だ。これは『ゲームチェンジャー』になりうる」と述べ、歓迎しました。
20:43 クアッドの首脳会合が始まる
午後8時43分、広島市のホテルで、日米豪印4か国の枠組み、クアッドの首脳会合が始まりました。岸田総理大臣、アメリカのバイデン大統領、オーストラリアのアルバニージー首相、それにインドのモディ首相の4か国の首脳が出席しています。会合では、地域情勢をめぐって意見を交わし、東シナ海や南シナ海で海洋進出の動きを強める中国を念頭に自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた連携を確認する見通しです。また、半導体のサプライチェーンの強化を含めた経済安全保障の取り組みや気候変動問題への対応など、共通の課題をめぐる協力の進ちょく状況などについても協議が行われているものとみられます。クアッドの首脳会合は当初、サミット後の今月24日にオーストラリアで開かれる予定でしたが、アメリカの債務上限問題を受けてバイデン大統領が外交日程を変更したこともあって見送られ、再調整した結果、4首脳がそろうサミット期間中に行われました。クアッドの首脳会合は、去年5月に日本で行われて以来で、対面では3回目です。
   ゼレンスキー大統領「英スナク首相と会談」
ゼレンスキー大統領は自身のSNSに「日本でイギリスのスナク首相と会談した。国際的な戦闘機の連合でリーダーシップを取っていることに感謝を表明した」と投稿しました。また、イギリスからの軍事支援について協議したとしたうえで「二国間関係のさらなる発展について話し合い、互いの立場を確認した」としています。一緒に投稿された動画には、両首脳が対面した際笑顔で抱擁する様子や、真剣に話し合う様子が映っています。また、スナク首相も自身のツイッターにゼレンスキー大統領と抱擁している写真とともに「ウクライナ、私たちはどこにも行かない」と投稿しました。
20:30 G7広島サミット7つ目のセッション終わる
午後8時半、気候やエネルギー、環境などを含む「持続可能な世界に向けた共通の努力」をテーマとした、G7広島サミット7つ目のセッションが終わりました。このセッションは、G7のメンバー以外の招待国8か国の首脳や7つの国際機関の代表も出席して行われました。
   広島市HPにサイバー攻撃か つながりにくい状態に
広島市によりますと、20日午後4時45分ごろから市のホームページがつながりにくい状況となっているということです。広島市は、ウェブサイトなどに大量のデータを送りつける「DDoS(ディードス)攻撃」というサイバー攻撃を受けたとみています。広島市は午後7時までに復旧作業を終えたということですが、今もつながりにくい状況が続いているということです。広島県警察本部によりますと、サイバー攻撃によるものか分析を進めているということですが「現時点でサミットの進行に影響は出ていない」としています。
   インド政府モディ首相がゼレンスキー大統領と会談
G7広島サミットに出席するため来日しているインドのモディ首相とウクライナのゼレンスキー大統領が対面で会談しました。インド政府は公式のツイッターで、両首脳が握手を交わす様子と、テーブルを挟んで意見を交わす様子の2枚の写真を投稿しています。会談の冒頭、モディ首相は「ウクライナで続いている戦争は世界全体にとって大きな問題だ。経済や政治にとどまらず、人道的な問題だと私はとらえている」と述べました。そのうえで「インド、特に私は個人レベルで解決のためにできることは何でもする」と、ゼレンスキー大統領に伝えました。一方、ウクライナ大統領府は20日、両首脳の会談について声明を発表し、ゼレンスキー大統領が「戦争は多くの危機と苦難をもたらしている。子どもたちは国を追われ、国土は地雷で覆われ、私たちの街や運命が破壊された」と訴えたとしています。そのうえでインドによる人道的な支援に感謝を伝え、さらなる支援に期待を示しました。またウクライナが和平に向けて掲げる10の項目について説明したとしています。インド外務省の高官によりますと、会談はウクライナ側からの求めで行われ、30分程度行われた会談の中でゼレンスキー大統領はモディ首相をウクライナに招待したということです。両首脳が対面で会談を行うのは去年2月にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって以降、これが初めてです。インドは「グローバル・サウス」とも呼ばれる新興国や途上国を代表する国のひとつで、ウクライナ情勢をめぐり欧米諸国とロシアが対立する中、動向が注目されています。
18:44 G7広島サミット7つ目のセッション始まる
午後6時44分、広島市のホテルで、気候やエネルギー、環境などを含む「持続可能な世界に向けた共通の努力」をテーマとした、G7広島サミット7つ目のセッションが始まりました。このセッションは、G7のメンバー以外の招待国8か国の首脳や7つの国際機関の代表も出席して行われています。
18:23 新興国などへのインフラ投資を話し合うサイドイベント終了
午後6時23分、「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国などへのインフラ投資のための協力について話し合う、G7広島サミットのサイドイベントが終わりました。
   首脳宣言発表「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を強化」
G7広島サミットは首脳らによる討議の成果をまとめた首脳宣言を発表しました。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を強化すると明記し、ウクライナ支援を継続するほか、現実的なアプローチを通じて「核兵器のない世界」に向けて取り組むとしています。また「グローバル・サウス」とも呼ばれる新興国や途上国に対し、各国の事情を考慮しながら支援するとしています。
17:50ごろ ゼレンスキー大統領 到着後に各国首脳と相次ぎ会談
20日に来日したゼレンスキー大統領は、午後5時50分ごろから、イタリアのメローニ首相と会談しました。続いて、フランスのマクロン大統領、そしてイギリスのスナク首相と相次いで会談を行いました。これまでのところ詳しい内容は明らかにされていませんが、ウクライナへのいっそうの軍事支援などに向けて、意見を交換しているものとみられます。ゼレンスキー大統領は滞在中、岸田総理大臣やアメリカのバイデン大統領とも会談を行う予定です。
17:40 新興国などへのインフラ投資を話し合うサイドイベント開始
午後5時40分、広島市のホテルで「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国などへのインフラ投資のための協力について話し合う、G7広島サミットのサイドイベントが始まりました。
17:30ごろ 「お仕事がんば」警察官を応援したくてきた男の子
広島県福山市の小学2年生の男の子が「お仕事がんば」と書かれたうちわで、警備をしている警察官を応援していました。母親が手作りしたうちわを持って応援していると、警察官からは、「ありがとう」や「頑張るね」といった声をかけられていたほか、ウェットティッシュもプレゼントされ、ひとときの交流を楽しんでいました。男の子の母親によりますと、男の子は警察官に憧れていて、全国から集まった警察官を応援したいと広島市にきたということです。男の子は「きょうは暑かったけど、プレゼントをもらえてうれしかった」と話していました。
17:10ごろ G7や招待国の首脳らが写真撮影
午後5時10分ごろ、G7各国の首脳らに加え、招待国8か国の首脳と7つの国際機関の代表は、サミット会場の広島市のホテルで海を背景に集合写真を撮影しました。
16:56 G7広島サミット6つ目のセッション終わる
午後4時56分、広島市のホテルで、食料や保健、開発、ジェンダーなどを含む「複合的危機への連携した対応」をテーマとした、G7広島サミット6つ目のセッションが終わりました。このセッションは、G7のメンバー以外の招待国8か国の首脳や7つの国際機関の代表も出席して行われました。
16:40ごろ ウクライナから避難した女性「歴史に残る出来事」
ウクライナのゼレンスキー大統領を乗せた車がサミットのメイン会場のホテルがある広島市の宇品島に入った際、島の入り口近くにある検問所では多くの報道陣の中にウクライナの国旗を持った2人の女性の姿がありました。去年9月にウクライナから広島市に避難してきたという姉のファジレ・ボロジナさん(20)と、妹のマリア・ボロジナさん(19)です。妹のマリアさんは「ゼレンスキー大統領を見てとても興奮しました。同じウクライナ人として誇りに思います。これは世界の歴史に残る出来事です。各国の首脳たちとはウクライナの問題を解決するだけじゃなく、世界の未来のことも話し合ってほしいです」と話していました。
16:35ごろ ゼレンスキー大統領が宇品島に入る
ウクライナのゼレンスキー大統領を乗せた車は午後4時35分ごろ、サミットのメイン会場のホテルがある広島市の宇品島に入りました。
15時50分ごろ ゼレンスキー大統領の到着を見た人は
広島空港にはゼレンスキー大統領の到着を一目見ようと訪れた人たちがいました。東広島市から妻と訪れた50代の夫は「広島まで来るんだと驚きました。ゼレンスキーさんの発言力や発信力に期待したいです。そして、早く戦争が終わってほしいです」と話していました。
15:50 ゼレンスキー大統領がツイッター投稿
ゼレンスキー大統領は広島空港に到着した直後、自身のツイッターに「日本。G7。ウクライナのパートナー、そして友人たちとの重要な会議だ。私たちの勝利のため、いっそうの協力と、安全を。きょう、平和はさらに近づくだろう」と投稿しました。
15:45ごろ ゼレンスキー大統領を乗せた車 広島空港を出発
ウクライナのゼレンスキー大統領を乗せた車は午後3時45分ごろ、広島空港を出発しました。
15:30ごろ ウクライナ ゼレンスキー大統領が来日
警察によりますと、ウクライナのゼレンスキー大統領は、午後3時30分ごろ、G7サミットに参加するため広島空港に到着しました。ゼレンスキー大統領を乗せた飛行機は、駐機場へ移動したあとタラップが設置され、赤いじゅうたんが敷かれました。まもなくして飛行機のドアが開くと緑色の服を着たゼレンスキー大統領が1人でタラップを降り、出迎えた政府の関係者らとあいさつして車に乗り込みました。
   岸田首相「複合的危機への連帯した対応について議論を」
岸田総理大臣は、招待国の首脳らを交え食料・エネルギー問題などについて意見を交わすセッションの冒頭「パートナー国や国際機関の皆様を、ここ広島の地にお迎えできて大変うれしく思っている。このセッションでは、まず世界が直面する複合的危機への連帯した対応について議論したい」と述べました。
15:19 G7広島サミット6つ目のセッション始まる
午後3時19分、広島市のホテルで、食料や保健、開発、ジェンダーなどを含む「複合的危機への連携した対応」をテーマとした、G7広島サミット6つ目のセッションが始まりました。このセッションは、G7のメンバー以外の招待国・8か国の首脳や7つの国際機関の代表も出席して行われています。食料安全保障に関しては、ロシアによるウクライナ侵攻を背景にした食料危機に深い懸念を示し、影響を受ける「グローバル・サウス」とも呼ばれる途上国などの支援に取り組むなどとした声明を取りまとめるものと見られます。
15:08 G7メンバー以外の招待国の出迎え終了
午後3時8分、広島市のホテルで、岸田総理大臣と裕子夫人による、G7のメンバー以外の招待国8か国の首脳や7つの国際機関の代表と、その配偶者の出迎えが終わりました。
14:33 G7メンバー以外の招待国の出迎え開始
午後2時33分、広島市のホテルで、岸田総理大臣と裕子夫人による、G7のメンバー以外の招待国8か国の首脳や7つの国際機関の代表と、その配偶者の出迎えが始まりました。
13:31 G7広島サミット5つ目のセッション終わる
午後1時31分、広島市のホテルで、経済安全保障をテーマとした、G7広島サミット5つ目のセッションが終わりました。このセッションは、昼食をとりながら行われました。
12:10 G7広島サミット5つ目のセッション始まる
午後0時10分、広島市のホテルで、経済安全保障をテーマとした、G7広島サミット5つ目のセッションが始まりました。このなかで、岸田総理大臣ら各国の首脳は、貿易などを通じて影響力を強める中国を念頭に、禁輸などの措置で他国の政策や意思決定に影響を与えようとするいわゆる「経済的威圧」に、各国で協調して対応にあたることを確認したいとしています。このセッションは、昼食をとりながら行われます。
11:51 G7各国の首脳 海を背景に集合写真撮影
午前11時51分、G7各国の首脳らは、サミット会場の広島市のホテルで、海を背景に集合写真を撮影しました。
11:24 G7広島サミット4つ目のセッション終わる
午前11時24分、広島市のホテルで、「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国をめぐり、「パートナーとの関与の強化」をテーマとした、G7広島サミット4つ目のセッションが終わりました。
10:10 G7広島サミット4つ目のセッション始まる
午前10時10分、広島市のホテルで、「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国、それにG20=主要20か国などの「パートナーとの関与の強化」をテーマとした、G7広島サミット4つ目のセッションが始まりました。
   日本政府 ゼレンスキー大統領の広島訪問を発表
政府は、ウクライナのゼレンスキー大統領が、G7広島サミットに出席するため、広島を訪問すると発表しました。21日行われるウクライナ情勢をテーマにしたセッションに参加するほか、岸田総理大臣との首脳会談などを行うとしています。
09:48 岸田首相とブラジルのルーラ大統領 会談終わる
午前9時48分、広島市のホテルで、岸田総理大臣とブラジルのルーラ大統領による首脳会談が終わりました。
09:43 警察 手荷物検査を行い警戒
G7広島サミット2日目の20日、広島市中区光南の各国首脳を乗せた車などが通る道路脇では、警察官が、見学をしに来た人に設置されたコーンの内側で見るよう伝え、手荷物の検査を行って警戒していました。
09:30頃 米大統領補佐官「バイデン大統領は対面を楽しみに」
アメリカ・ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は記者会見でG7広島サミットに出席するため、広島を訪問するウクライナのゼレンスキー大統領について「バイデン大統領がゼレンスキー大統領と会うのは間違いない。バイデン大統領は対面で話し合える機会を楽しみにしている」と述べました。
また「アメリカはゼレンスキー大統領を広島まで送り届ける当事国ではない」と述べて移動のための航空機は提供していないと説明しました。サリバン大統領補佐官は「バイデン大統領はG7のほかの首脳に、アメリカはウクライナ軍のパイロットに対し、F16戦闘機を使った訓練の実施を支援すると伝えた」と述べました。F16戦闘機はウクライナのゼレンスキー大統領がロシアへの反転攻勢に必要だとしてアメリカを始めとするNATO=北大西洋条約機構の加盟国に供与を求めています。
   ICAN “「広島ビジョン」軍縮に向けた策提示できず”
G7広島サミットで発表された核軍縮に関する「広島ビジョン」について、国際NGO、ICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンは、「実際の軍縮に向けた策を提示できなかった」とする声明を出し、核兵器の開発や保有などを禁止する「核兵器禁止条約」への参加が必要だと訴えました。声明のなかでICANは、G7サミットが被爆地 広島で開催されたことを歓迎する一方、19日に発表された核軍縮に関する首脳声明「広島ビジョン」について、「実際の軍縮に向けた新たなステップを含んだ策を提示できなかった」と指摘しました。具体的には、「広島ビジョン」で核兵器について「防衛目的の役割を果たし、侵略を抑止する」と記されていることについて、ICANは「核兵器は無差別かつ不均衡で、大規模な殺傷を目的として設計されている」として、核兵器は防衛の目的を果たさないと反論しています。そして「G7の保有する兵器の数などについて透明性が保たれていないほか、一部の国は備蓄を増やしている」として、核保有国が核の不拡散を重視する一方、軍縮の責任を果たしていないと批判しています。そのうえで「求められているのは、すべての核保有国を軍縮協議に参加させるための具体的かつ実行可能な計画だ」として、おととし発効した核兵器の開発や保有などを禁止する「核兵器禁止条約」に参加することが必要だと訴えています。
08:49 岸田首相とブラジルのルーラ大統領 会談始まる
午前8時49分、広島市のホテルで、岸田総理大臣とブラジルのルーラ大統領による首脳会談が始まりました。
08:46 岸田首相 インドネシアのジョコ大統領 会談終わる
午前8時46分、広島市のホテルで、岸田総理大臣とASEAN=東南アジア諸国連合の議長国を務めるインドネシアのジョコ大統領による首脳会談が終わりました。
08:21 岸田首相とインドネシアのジョコ大統領 会談始まる
午前8時21分、広島市のホテルで、岸田総理大臣とASEAN=東南アジア諸国連合の議長国を務めるインドネシアのジョコ大統領による首脳会談が始まりました。
08:18 岸田首相 インドのモディ首相 会談終わる
午前8時18分、広島市のホテルで、岸田総理大臣とG20=主要20か国の議長国を務めるインドのモディ首相による首脳会談が終わりました。
07:39 岸田首相とインドのモディ首相 会談始まる
午前7時39分、広島市のホテルで、岸田総理大臣とG20=主要20か国の議長国を務めるインドのモディ首相による首脳会談が始まりました。
   未明 ゼレンスキー大統領 サウジアラビアから広島へ
外交筋によりますと、ウクライナのゼレンスキー大統領は、アラブ連盟の首脳会議に出席するため訪れていたサウジアラビアのジッダの空港を、日本時間の20日未明、フランス政府の航空機で出発し、日本に向かっているということです。ゼレンスキー大統領は日本時間の20日午後、広島空港に到着する見通しです。
●イギリス・スナク首相 朝から「お好み焼き」で精をつける? 5/20
G7サミットが開催されている広島では、イギリスのスナク首相がけさ、午前のセッションの前、こんな場所を訪れました。
警察車両に先導され、車を降りてきたのはG7サミットのため広島を訪れているイギリスのスナク首相。足早に向かった先は広島名物「お好み焼き」の体験スタジオです。
時刻はまだ午前9時過ぎでしたが、これから続くセッションに向けて朝から「お好み焼き」で精をつけたのでしょうか。
スナク首相はおととい、岸田総理との会談で広島カープのロゴが入った赤い靴下を履いて登場していて、忙しい日程の合間にも広島を満喫する様子を見せています。
●G7、ワーキングディナーは広島の食材豊富な和食料理 比婆牛や穴子寿司も 5/20
G7広島サミット1日目の19日、岸田文雄首相によるG7首脳らに対するおもてなしの一環として、広島県廿日市市宮島町の老舗旅館「みやじまの宿 岩惣」で、ワーキング・ディナーが開催された。
ディナーは同日午後6時55分ごろから約100分間。広島県各所、瀬戸内海の豊富な食材を用いた多彩な和食料理と、広島県産を中心とした日本酒、国産ワインを提供した。
料理人は岩惣取締役、料理顧問の坂本守氏。飲料は一般社団法人日本ソムリエ協会の田崎真也会長が監修した。
●G7広島サミット 19日のディナーは宮島の老舗旅館「岩惣」の和食料理 5/20
19日、政府はG7広島サミット1日目に各国首脳に振舞われた「ワーキング・ディナー」のメニューを公開しました。広島県内や瀬戸内海の食材を使った和食料理だったということです。
G7広島サミットの1日目となった19日。首脳らは午後から廿日市市の宮島にある旅館「岩惣」に移動し、午後6時55分から夕食をとりながらのワーキング・ディナーを行ないました。ワーキング・ディナーでは、G7首脳へのおもてなしの一環として、広島県内や瀬戸内海の食材を使った和食料理、広島県産を中心とした日本酒・国産ワインが提供されました。
首脳に振舞われたメニューは次のとおりです。
【瀬戸の品】能美牡蛎酒蒸し 湯来のキャビア添え
【向八寸】車海老酒盗漬 筍源平焼き 菱蟹東寺揚げ 白子最中 陸蓮根 玉蜀黍
【一汁一菜】清出汁仕立て 汐待ちの鯛安平 早松茸 羽衣豌豆 長蕨 青柚子
【平椀と合肴】虎魚鼈煮 団扇海老黄金煮 楓冬瓜 独活 サムライ葱
【留肴・御飯】広島牛(比婆牛)赤海胆と潤香茄子 吉和わさび 鮎蓼 穴子寿司花茗荷 新生姜
【安芸の水菓子】瀬戸醤油香る・備前大納言と和三盆の羽二重蒸し 三次米薫る雷おこし 紅葉饅頭 八朔大福
【活濁酒】龍勢(藤井酒造・竹原市)
【スパークリング酒】泡酒(AWASAKE)(南部美人・岩手県二戸市)
【日本酒】純米大吟醸広島錦賀茂鶴(賀茂鶴醸造・東広島市)
【赤ワイン】富士の夢2021(山野峡大田ワイナリー・福山市)
【貴醸酒】10年熟成大古酒華鳩(榎酒造・呉市)
料理は、「岩惣」の坂本守さんが担当し、飲み物は日本ソムリエ協会会長の田崎真也さんが監修したということです。政府は、日本の食文化の魅力を世界に発信する上で、有意義な機会になったとしています。
●G7広島サミット 首脳宣言案の全容が明らかに  5/20
G7広島サミットで発表する首脳宣言の案の全容が明らかになりました。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を強化すると明記し、ウクライナ支援を継続するほか、現実的で実践的なアプローチを通じて「核兵器のない世界」の実現に向けて取り組むと強調しています。
G7広島サミットでは、21日の閉幕にあわせて首脳宣言を発表する予定で、その案の全容が明らかになりました。
まず前文で、G7は世界の課題に対応し、よりよい未来に向けた道筋をつけるため、これまで以上に結束すると強調し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を強化すると明記しています。
そして、ウクライナ情勢をめぐって、首脳宣言とは別に声明を発表したことに触れ、ウクライナへの支援を継続、強化するとともに、世界の弱い立場の人たちへの影響を軽減するよう取り組むとしています。
また、中国について、東シナ海や南シナ海の状況に深刻な懸念を表明し、力や威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対するとしています。
そして、台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて確認するとともに、問題の平和的な解決を促すとしています。
さらに、ロシアがウクライナへの侵攻をやめるよう、圧力をかけることを中国に求めています。
一方で、グローバルな課題では協力し、建設的で安定的な関係を構築するとしています。
核軍縮・不拡散をめぐっては、現実的で実践的なアプローチを通じて「核兵器のない世界」の実現に向けて取り組むと強調しています。
世界経済をめぐっては、金融面の動向を注意深く監視し金融の安定とシステムの強じん性を維持するため、適切な対応をとるとしています。
経済安全保障では、中国を念頭に、禁輸などで他国の政策や意思決定に影響を与えようとする、いわゆる「経済的威圧」に連携して対抗するための枠組みを立ち上げるとしています。
また食料危機への懸念が高まるなか「グローバル・サウス」と呼ばれる途上国や新興国への支援を念頭に、具体的な措置をとるとしています。
一方、デジタル分野では、生成AIに関する議論を行うため「広島AIプロセス」を立ちあげるようG7各国の関係閣僚に指示し、年内に作業部会で議論することを盛り込んでいます。
ジェンダーをめぐっては、性的マイノリティーの人々の完全かつ有意義な社会参加を確保するとしています。
G7首脳は、21日までの討議を経て宣言を固める方針です。
●G7サミット2日目 午後は経済討議 ゼレンスキー大統領が広島へ  5/20
G7広島サミットは、2日目の20日、経済安全保障をテーマにした討議が正午すぎから行われます。こうした中、政府はウクライナのゼレンスキー大統領が、サミットに出席するため、広島を訪問すると発表しました。
G7広島サミットの2日目は、午前中、「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国との関係のあり方をなどをめぐって意見を交わしました。
午後0時半ごろからは経済安全保障をテーマに討議が行われる予定です。
このなかで、岸田総理大臣ら各国の首脳は、貿易などを通じて影響力を強める中国を念頭に、禁輸などの措置で他国の政策や意思決定に影響を与えようとするいわゆる「経済的威圧」に、各国で協調して対応にあたることを確認したいとしています。
そのうえで、こうした威圧的な行為に対抗し、G7として被害を受けた国々を支援する「調整プラットフォーム」の立ち上げなどを盛り込んだ成果文書を発表する予定です。
また午後には気候・エネルギーのほか食料などについての討議も行われます。
このうち自動車の脱炭素化では、G7各国の保有台数をベースに二酸化炭素の排出量を2035年までに半減させることなどを確認することが分かりました。
さらに経済分野では、クリーンエネルギーへの移行を加速させるための行動計画や、ウクライナの農業の復興支援などを盛り込んだ食料安全保障に関する行動声明も取りまとめ、成果文書として発表する予定です。
一方、政府はウクライナのゼレンスキー大統領が、G7広島サミットに出席するため、広島を訪問すると発表しました。
ゼレンスキー大統領は、20日午後、広島に到着するとみられます。
議長の岸田総理大臣としては、ロシアへの制裁とウクライナ支援を継続する方針を直接伝えることで、G7との揺るぎない連帯をアピールしたい考えです。
●G7広島サミット 中国への懸念共有 対話通じ関係構築で一致  5/20
G7広島サミットは、外交・安全保障をテーマに討議が行われ、中国について、さまざまな課題に対しての懸念を共有する一方、気候変動対策などをめぐっては、対話を通じて建設的で安定的な関係を構築することが重要だという認識で一致しました。
G7広島サミットの外交・安全保障をテーマにしたセッションは、19日午後7時前からおよそ1時間半あまり、宮島の旅館で夕食をともにしながら行われました。
この中で、岸田総理大臣は「世界のどこであっても、力による一方的な現状変更の試みは決して認められず、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くG7の強い意志を示すことが不可欠だ」と述べました。
その上で、首脳らは、中国について、さまざまな課題に対しての懸念を共有し、中国に対して国際社会の責任ある一員としての行動を求める一方、気候変動対策などをめぐっては、対話を通じて建設的で安定的な関係を構築することが重要だという認識で一致しました。
また、台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて共有するとともに、問題の平和的な解決を促していくことを確認しました。
さらに、北朝鮮をめぐっては、前例のない頻度と方法で弾道ミサイルの発射を繰り返していることを強く非難し、緊密に連携して対応していくことで一致しました。
一方、核軍縮・不拡散をめぐり、岸田総理大臣は、被爆地 広島で議論する意義を伝え、NPT=核拡散防止条約の体制の維持・強化を図ることこそが「核兵器のない世界」を実現する唯一の現実的な道だと強調しました。
また、木原官房副長官によりますと、セッションの中で一部の首脳から、広島市の平和公園や原爆資料館を訪問したことについて「良い機会をいただいた」などといった発言があったということです。
●G7広島サミット 核軍縮「広島ビジョン」を発出 “77年間に及ぶ核不使用”強調 5/20
G7広島サミットの初日の議論が終わり、岸田総理は核の不使用に向けたG7初の独立首脳文書「広島ビジョン」の発出を表明しました。
G7首脳らは広島サミットが開幕したきのう、世界経済やウクライナ情勢などについて意見を交わし、核軍縮に焦点をあてたG7初の独立首脳文書「広島ビジョン」を発出しました。
岸田総理「この文書は核兵器のない世界の実現に向けたG7首脳の決意、具体的合意、今後の優先事項、方向性を力強く示す歴史的意義を有する」
「広島ビジョン」では、「77年間に及ぶ核兵器の不使用の記録の重要性を強調する」と明記しました。そのうえで、核兵器に関する透明性を重要視し、アメリカ、フランス、イギリスは核戦力やその客観的規模についてのデータを提供しているとして、中国などを念頭に核戦力のデータの公表を求めました。
岸田総理は「核兵器国の関与も得ながら、現実的かつ実践的な取り組みを進め、核軍縮に向けた国際的な機運を一層高めていきたい」と訴えています。
きのうの議論では、中国についてG7として共通の懸念を直接伝え、国際社会の責任ある一員として行動を求めることも確認しました。 
●ゼレンスキー氏が広島入り、首脳声明を前倒しで発表 G7サミット2日目 5/20
広島市で開かれている主要7カ国首脳会議(G7サミット)は2日目の20日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が現地入りした。21日に予定されているウクライナ情勢をテーマにした討議などに加わる見通し。20日には招待8カ国の首脳らも次々到着し、開発問題などの議論に参加した。また、サミット全体の首脳声明が予定より早く発表された。
ゼレンスキー氏は午後3時半ごろ、フランス政府機で広島空港に降り立った。前日にサウジアラビアでアラブ連盟の首脳会議に参加し、日本へと向かっていた。
タラップを降りて、木原誠二内閣官房副長官ら日本政府関係者や、セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使らウクライナ大使館関係者の出迎えを受けると、素早く車に乗り込んで空港を離れた。
ゼレンスキー氏は広島に到着後、「日本。G7。ウクライナのパートナーや友人たちと、大事な会議がたくさんある。我々の勝利のため、安全保障と協力関係の強化だ。今日、平和は近づく」と英語でツイートした。
同氏が広島を訪れるとの情報は、サミット開幕日の19日に流れ始めた。その後、情報は錯そうし、この日まで同氏の予定は明らかにされていなかった。
サミット会場のホテルに入ったゼレンスキー氏は、イタリアのジョルジャ・メローニ首相、イギリスのリシ・スーナク首相、インドのナレンドラ・モディ首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、シャルル・ミシェル欧州理事会議長、ドイツのオラフ・ショルツ首相と個別に相次ぎ会談した。
ゼレンスキー氏は20日夜にツイッターへ、ウクライナ国民にこの日の取り組みを説明する動画を投稿。「平和フォーミュラ。ウクライナのため、できるだけ多くの国やリーダーに関心を持ってもらう。防衛。ウクライナへの長期的な支援プログラム。金融と経済」について、複数の首脳と建設的な話し合いを重ねたとして、「広島初日はとてもパワフルだった。2日目はさらにパワフルになる」と書いた。
サミット最終日の21日には、ウクライナ情勢に関する討議が予定されている。ゼレンスキー氏はそれに参加する見通し。また、岸田文雄首相らとの首脳会談にも臨むとみられている。21日午後に広島で演説を行うとも報じられている。
サミット首脳声明を発表
広島サミットの成果をまとめた首脳声明がこの日、予定を前倒しされて発表された。最終日の21日に出されるはずだったが、ゼレンスキー氏が広島入りしたことを受け、同氏を交えた最終日の討議に備えるためとみられる。
英文で40ページにわたる首脳声明は、G7によるウクライナ支援や、中国の経済的威圧への対応、核不拡散、人工知能(AI)などの問題に触れている。
ウクライナ情勢については冒頭で言及。「ウクライナに対する外交、財政、人道、軍事支援を強化し、ロシアとその戦争を支援する国々の負担を増加させる」ことと、戦争の負の影響に対処している世界の他の国々を支援することに、G7として関与していくとした。
首脳声明は続いて、19日に発表された、核軍縮に焦点をあてた「広島ビジョン」を強調。「核兵器のない世界」を目指す覚悟を表明した。ただ、明確な約束はしなかった。
中国については、「デリスキング」(リスク低減)を呼びかけた。これはサミットに出席中のウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長が提唱している政策で、アメリカが考える中国との「デカップリング」(切り離し)を穏健化したもの。中国の経済的発展を妨げる意図はないとした上で、個別にも集団的にも、経済的活力に投資するための措置を講じ、重要なサプライチェーンにおける過度の依存を減らすとした。
一方で、中国が海洋進出を続ける東・南シナ海情勢を深く懸念しているとし、力や威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対するとした。
また、台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて強調。それらは国際社会の安全と繁栄に不可欠だとし、台湾をめぐる問題の平和的解決を促した。
招待8カ国の首脳らも合流
この日は、議長国の日本が招待した8カ国の首脳らも相次ぎ広島に入り、岸田首相が出迎えた。
オーストラリア、インド、ブラジル、韓国、ベトナム、インドネシア、コモロ(アフリカ連合代表)、クック諸島(太平洋諸島フォーラム代表)の各国。
日本は今回、七つの国際機関も招待しており、国連のアントニオ・グテーレス事務総長や、国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエヴァ専務理事らも次々と広島を訪れた。
夕方には、G7と招待国の首脳、招待国際機関の代表らが、サミット会場のグランドプリンスホテル広島で集合写真を撮影した。この約90分前に広島空港に降り立ったゼレンスキー氏の姿はなかった。
この日は午前から、「パートナーとの関与の強化(グローバル・サウス、G20)」をテーマにした討議が開かれた。
午後には、「経済的強靱(きょうじん)性・経済安全保障」をテーマにした討議を開催。その後、招待国の首脳らも交えて、「複合的危機への連携した対応」(食料、保健、開発、ジェンダーなど)をテーマにした協議などが行われた。
●中国に深刻な「懸念」、ロシアも非難 G7首脳声明 5/20
先進7カ国(G7)首脳は20日、広島市で開かれている首脳会議(G7広島サミット)の成果をまとめた首脳声明を発表した。中国が海洋進出を強める東・南シナ海情勢に深刻な懸念を示し、力や威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みに強く反対すると表明した。ウクライナ侵略を続けるロシアを「可能な限り最も強い言葉で非難」し、不法な侵略が続く限り、ウクライナを支援することも明記した。
G7は声明で、中国に懸念を直接伝え、建設的かつ安定的な関係を構築する用意があるとも強調。国際的な課題については中国と協力する必要があると明示した。台湾海峡の平和と安定の重要性も再確認し、両岸問題の平和的解決を促した。
ロシアのウクライナ侵略に対しては、「国連憲章を含む国際法の深刻な違反」と断じた。日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋」の重要性を強調し、法の支配に基づく国際秩序への支持を明記した。
岸田文雄首相が掲げる「核兵器のない世界」に向けては、現実的で実践的なアプローチで、核軍縮・不拡散の努力を強化すると表明した。核拡散防止条約(NPT)体制が核軍縮・不拡散を追求するための基礎になるとも強調した。
核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に関しては、前例のない頻度の弾道ミサイル発射を非難した上で拉致問題を即時に解決するよう強く求めた。
国際社会で存在感を増している「グローバルサウス」(南半球を中心とする新興国・途上国)を念頭に、国際的なパートナーとの連携強化も強調した。重要鉱物や半導体、蓄電池などの物資でG7メンバー以外と連携し、「サプライチェーン(供給網)を強化していく」と明記した。
東京電力福島第1原発の処理水を海洋放出する日本政府の方針に関しては、人間や環境に害を及ぼさないための国際原子力機関(IAEA)の検証を支持した。人工知能(AI)については「信頼できるAIという共通の目標を達成するため、民主主義的価値観に沿って国際的議論を進める」と指摘した。
●バイデン大統領がG7の会議を異例の欠席 難航する債務上限協議への対応 5/20
アメリカ・ホワイトハウスによりますと、バイデン大統領は債務上限問題に対応するため、G7のきょう午前の会議を欠席したということです。サミット開催中に首脳が会議を欠席するのは異例のことです。
債務上限問題をめぐるバイデン政権と野党・共和党との協議は19日も協議が一時中断するなど難航していて、バイデン大統領は報告を随時受けながら対応にあたるとしています。
●「グローバルサウス」との連携へ 招待8か国参加の拡大会合始まる 5/20
サミットは、きょうから韓国やインドなど8か国の招待国も参加した拡大会合が始まり、G7としては存在感を高める「グローバルサウス」との連携も図りたい考えです。
岸田総理「世界が直面する複合的危機への連帯した対応について議論したい」
2日目を迎えたG7広島サミットは午後、韓国の他、インドやブラジルなど8か国の招待国の首脳も加わり、「食料」や「保健」など国際社会が直面する諸課題への対応などについて議論を始めました。
インドやブラジルなど「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国が政治的・経済的に存在感を高める中、G7としては、グローバルサウスが抱える「食糧危機」や「エネルギー問題」などの解決に共に取り組むことで、連携を図りたい考えです。岸田総理はこれに先立つG7首脳との会合で、グローバルサウスとの関与を強化していく上では「“人”を中心に据えたアプローチを通じて、人間の尊厳や人間の安全保障を大切にすることが重要だ」と訴えています。
また、G7首脳はきょう初めてサミットで経済安全保障について議論し、G7の枠組みを通じて包括的な形で協働し、連携していくことを確認しています。
その後、出された首脳声明では輸出制限などにより相手国に圧力をかける中国などを念頭に「経済的威圧に対抗していく」と明記。新たな枠組みを創設し、経済的威圧の抑止などのため連携を強化していくとしています。
 
 

 

●“眠らない国際メディアセンター”時差と戦う海外記者 5/21
G7広島サミットの取材拠点、国際メディアセンター。日本メディアが寝静まった後の真夜中を取材してみると、時差と必死に戦う海外メディア記者たちの姿がありました。
日本と海外のメディアを合わせて約5000人が利用するという国際メディアセンター。ですが、真夜中の様子をのぞいてみると、昼間のにぎわいが嘘のように、目に入るのは数人の海外メディア記者の姿だけ。時刻は深夜2時半です。静かなフロアで記者たちに声を掛けてみると…。
アメリカの記者「(Q.インタビューできますか)申し訳ない。構っていられる余裕がないんだ」
イタリアの記者「(Q.仕事終わりましたか?)終わりました。とても疲れたよ。話す気分になれないよ」
こちらの記者は、スイスから。日本との時差は約7時間です。
スイスの記者「(Q.まだ働いているのですか)もちろんです。朝の4時50分まで仕事なんです。広島のこの時間はスイスでは夜の9時50分で、夜のニュース番組のために残らないといけないんだ。寝るのは朝の5時半か6時くらいになりそうだね」
こちらの女性記者も何やら忙しそうな様子。
アメリカの記者「(Q.少し話せますか?)だめよ!締め切りが迫ってるの。破綻しそうよ」
聞くと、この後に生放送が控えているのだそう。入念に準備して、いよいよ本番です。うまくいったのでしょうか。
アメリカの記者「素晴らしいです。日本に来る夢がかないました!まだ来たことがなかったのでとても興奮しています。広島でG7サミットが開かれることはとても良い機会でした。歴史や原爆の悲劇、被爆者にとっても力強いメッセージになると思います」
●ゼレンスキー大統領、G7首脳と討議開始…反転攻勢前に支援策を意見交換 5/21
広島市で開かれている先進7か国首脳会議(G7サミット)で、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を対面で招いたG7首脳の討議が21日午前、始まった。昨年2月のロシアの侵略開始以降、G7首脳がそろってゼレンスキー氏と対面するのは初めて。
討議開始前には、ゼレンスキー氏を中央にG7首脳が横一列に並んで、記念撮影が行われた。
討議には、岸田首相やバイデン米大統領、スナク英首相やマクロン仏大統領など、G7首脳らが参加した。近くウクライナによる大規模な反転攻勢が行われるとの見方がある中、今後のG7の支援策などについて意見を交わすとみられる。
●G7広島サミット ゼレンスキー大統領も参加した討議終了 5/21
G7広島サミットは最終日の21日、ウクライナのゼレンスキー大統領が参加した討議が午前11時前から行われ、終了しました。
サミット最終日の21日、岸田総理大臣は、韓国のユン・ソンニョル大統領とともに、広島市の韓国人原爆犠牲者慰霊碑に祈りをささげたあと、日韓首脳会談を行いました。
続いて、インドやブラジルなど、招待国の首脳らとともに、広島市の原爆資料館を視察しました。
このあと、ウクライナのゼレンスキー大統領が参加して、「ウクライナ情勢」をテーマにしたセッションが、午前11時前から1時間近く行われました。
G7の首脳らはこれまで2日間の討議でロシアの侵攻を強く非難し、結束して、ロシアへの制裁とウクライナ支援を継続することを確認していて、ゼレンスキー大統領にこうした考えを直接伝えたものとみられます。
続いて、正午から、インドなど招待国の首脳らも交えて「平和と安定」をテーマにしたセッションが行われました。
冒頭、岸田総理大臣は、「ウクライナ情勢をはじめ、国際社会が直面する平和と安定への挑戦にどのように対応すべきなのか議論を深めたい」と述べました。
セッションはおよそ1時間半行われ、中間的な立場をとってきたインドなどの首脳がどのような反応を示したか注目されます。
●イタリア首相、G7サミット途中で帰国 国内の洪水被害で 5/21
イタリア政府は20日、広島市で先進7カ国首脳会議(G7サミット)に出席していたメローニ伊首相が予定を切り上げ、イタリアに帰国すると発表した。伊北部で起きた洪水被害で、対策にあたるためとしている。
伊ANSA通信によると、洪水は大雨により、北部エミリア・ロマーニャ州で発生。14人が死亡し、約3万6千人が避難を迫られている。
●イタリア・メローニ首相 G7広島サミット、21日の会議に出席せず帰国と発表 5/21
G7広島サミットに参加していたイタリアのメローニ首相は、イタリア北部で起きた洪水被害への対応のため、21日の会議に出席せず帰国すると発表しました。
イタリアのメローニ首相は、広島市内で21日未明に会見し、北部エミリアロマーニャ州で起きた豪雨による洪水被害に対応するため、G7広島サミットの21日の会議には出席せず帰国すると発表しました。
「困難な時にイタリアから離れていることはできない」と述べ、他の首脳にも伝えたとしています。
イタリアメディアによりますと、エミリアロマーニャ州では大雨が続き、洪水や土砂崩れが発生。14人が死亡するなどの被害が出ています。イタリア政府は23日に閣議を開き、支援策などを決定する予定です。また、会見で、メローニ首相は議長国を務める来年のG7サミットを6月にイタリア南部のプーリア州で開催すると表明しました。
●G7広島サミット最終日 ゼレンスキー大統領も対面で参加  5/21
G7広島サミットは最終日の21日、ウクライナのゼレンスキー大統領も参加し、G7や招待国の首脳らによるセッションが行われます。議長国の日本は一連の討議を通じ、法の支配に基づく国際秩序を維持・強化する重要性を強く発信したい考えです。
G7広島サミットは、2日目の20日までに首脳による討議を実質的に終え、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援を強化することや、現実的なアプローチを通じて「核兵器のない世界」を目指すことなどを明記した首脳宣言を発表しました。
サミットは最終日の21日、ウクライナのゼレンスキー大統領が対面で参加し、G7首脳による「ウクライナ情勢」のセッションと、招待8か国の首脳らも加えた「平和と安定」に関するセッションが行われます。
「平和と安定」に関するセッションでは、ゼレンスキー大統領が出席している中、ウクライナ情勢をめぐって中間的な立場をとってきたインドなどの首脳がどのような反応を示すかが注目されます。
議長国の日本としては、一連の討議を通じ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化する重要性を強く発信したい考えです。
その後、岸田総理大臣はゼレンスキー大統領との個別の首脳会談に臨み、日本として復興分野を含めて今後も最大限の支援を続けていく方針を伝え、ウクライナとの揺るぎない連帯を示すことにしています。
ゼレンスキー大統領 各国首脳と相次いで会談
ロシアによる軍事侵攻が続くなか、ウクライナのゼレンスキー大統領は、G7サミットに参加するため、20日に広島に到着し、G7の4か国とEU=ヨーロッパ連合、さらに招待国のインドの首脳と相次いで会談したと、自身のSNSで明らかにしました。
このうちイタリアのメローニ首相との会談では、ウクライナの防空能力の強化、そして政治的支援について議論が行われたとした上で「2国間関係に関する対話を継続することが重要だ」としています。
また、イギリスのスナク首相との会談では、イギリスからの軍事支援について協議したとした上で「2国間の関係のさらなる発展について話し合い、互いの立場を確認した」としています。
このあと行ったインドのモディ首相との会談について、ゼレンスキー大統領は、ロシアの軍事侵攻により甚大な被害が出ていることを訴えた上で、インドによる人道的な支援に感謝を伝えたとしています。
さらにウクライナが和平に向け掲げる10の項目について説明したとしたうえで「すべての自由主義の国が明確に必要としているルールに基づく秩序の回復にインドが参加してくれると信じている」としています。
EU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領との会談では、ウクライナの和平に向けて世界的な支持を固めるための具体的な方法などについて議論したとしています。
フランスのマクロン大統領とは定期的に安全保障について意見交換をしているなどとした上で、今回の会談について「有意義な会談で、ウクライナの勝利に向けた動きに自信を与えるものだ」と評価しています。
またドイツのショルツ首相との会談では、ドイツからの軍事支援に感謝を表明するとともに「公平な和平をどのように加速させるかや、G7での共同作業をいかに強化するかについて議論した」としています。
ゼレンスキー大統領は21日、ウクライナ情勢をテーマにしたセッションに参加するほか、岸田総理大臣やアメリカのバイデン大統領や首脳会談を行う予定です。
異例のサミット 警戒を一層強化
開催中のG7広島サミットは最終日の21日、急きょ来日したウクライナのゼレンスキー大統領が出席し、ウクライナ情勢などをテーマにしたセッションが行われる予定で、サミットのメイン会場がある広島市内を中心に交通規制が行われます。
また、政府関係者によりますとゼレンスキー大統領は広島市の原爆資料館を訪問する方向で調整が進められているということです。
警察は参加国の増加などを想定して準備していた「予備部隊」を投入し、ゼレンスキー大統領の周辺警護にあたっていて、訪問先や移動ルートの沿道などでは、所持品検査などを徹底することにしています。
戦闘が続いている国の指導者がサミットに参加するのは極めて異例で、警察は、テロなど万が一の事態を防ぐため警戒を一層強化し警備にあたる方針です。
総料理長「記憶に残るような料理を」
今回のG7広島サミットで首脳らに提供される食事のうち、洋食メニューの考案を担当した、「西武・プリンスホテルズワールドワイド」の下井和彦総料理長は、2か月ほどかけて試食を繰り返しながら食材の選定などを行ったといいます。
下井総料理長は「料理には、広島や瀬戸内のものをはじめ、全国の食材を取り入れた。日本にはいい食材がたくさんあるので、いろんな人に知ってもらいたい」と話していました。
また、世界各国からさまざまな人が訪れることから「食べやすさやボリューム感だけではなく、ハラルやビーガンなどの人も喜んで食べてもらえるようなものを作ることに苦労した」と話していました。
下井総料理長は見た目にもこだわったということで、20日の社交ディナーでは、特別に作った広島の海をイメージした飾り皿を使用したほか、平和への祈りを込めてチョコレートで折り鶴を作って提供しました。
さらに、料理にあわせて、四季折々の映像が皿に映し出される演出も施されたということです。
下井総料理長は「おいしかっただけではなく、匂いや見た目など五感で楽しんで食べてもらいたい。プレッシャーは相当あるが、このような場で料理を作れるのは限られた人しかできないので、しっかりと日本を代表するぐらいの気持ちで作っている。1品でも記憶に残るような料理を作りたい」と話していました。
●G7広島サミット最終日 ゼレンスキー大統領参加で首脳会談 5/21
G7広島サミットはきょう最終日を迎え、ゼレンスキー大統領が参加して会合が始まっています。
広島市内のホテルで首脳会談は行われていて、ウクライナの反転攻勢が近いと言われる中、焦点は「各国からの最大限の支援を得られるか」です。
45分ほど前から始まった会合で、ゼレンスキー大統領は当事国の実情を伝えるとともに、G7の首脳らに武器の供与を含めた軍事支援の強化なども求めているものとみられます。
さらに、この後、招待国であるインドやブラジル、韓国なども交えての議論が予定されています。
ゼレンスキー大統領は、G7とロシアの中間的な立場を取る国が多い「グローバルサウス」に対しても、ロシア軍の完全撤退などウクライナが求める和平案の実現に協力を呼びかけたい考えです。
日本としては、政府高官が「ウクライナへの揺るぎない連帯を表明したい」と述べているほか、政府関係者も「それぞれ立場は違うが、各国が最大限の支援を示すことが重要だ」と語っています。
ゼレンスキー大統領は午後に平和公園を訪れて献花などをするほか、夜には広島市内で会見を行います。
被爆地からどんなメッセージが発せられるのか、サミットはまさに佳境を迎えています。
●インドなど招待国首脳も原爆資料館に G7広島サミット 5/21
岸田文雄首相は21日、主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)の拡大会合(アウトリーチ)に招待したインドのモディ首相ら8カ国の首脳や国際機関トップらと広島市の平和記念資料館(原爆資料館)を訪問した。公園内の原爆慰霊碑に献花した。
サミットが開幕した19日にG7首脳らは初めてそろって原爆資料館を訪れた。最終日となる21日に招待国の首脳らにも被爆の実相を伝える機会をつくった。
招待国のうちインドは核拡散防止条約(NPT)に加盟せず、条約の枠外で核兵器を保有する。サミット期間中に首脳が原爆資料館を訪ねた核保有国は米国、英国、フランスに次ぎ4カ国目となった。
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領も招待国として訪問した。米国と軍事同盟を結び、米国の「核の傘」により周辺国の核の使用を抑止してきた。中国、ロシアの2つの核保有国と北朝鮮に近接し、日本と同様の立場にある。
招待国はブラジル、インドネシア、ベトナム、オーストラリア、クック諸島、コモロを含む8カ国で、全首脳が行事に同行した。 
●G7、経済安保に軸足=米主導で再結束―広島サミット 5/21
先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)は、対中国を念頭に置いた経済安全保障に関する首脳声明を初めて発表し、「グローバルサウス」と呼ばれる新興国や途上国を巻き込んで国際経済秩序を再構築すると表明した。G7が特定国への対抗策を重点的に協議したのは米ソ冷戦期以来。対中包囲網の形成を主導してきたバイデン米大統領は、議長国の日本と共に、「経済のG7」復活に向けて歴史的な転換を図った。
G7が目指す経済安保は「デカップリング(切り離し)ではなくデリスキング(リスクの軽減)に基づくべきだ」。バイデン氏はサミットで、米中対立を背景とする世界経済の分断を回避しつつ、半導体や重要鉱物資源など戦略物資の国際サプライチェーン(供給網)を再編し、中国への過度な依存から脱却することが必要だと主張した。
首脳声明に「分断の回避」を明記したのは、厳しい中国非難を表向き封印することで、アフリカやアジア、南米を含むグローバルサウスを取り込む思惑もある。ロイター通信によると、ドイツのショルツ首相は「対中投資や輸出を続ける」と強調。フランスのマクロン大統領も「中国に甘えはしないが、関与を望む」と配慮を見せた。
G7サミットは、1970年代の石油危機と世界同時不況に対応するために始まった。日本はアジアで唯一の参加国として国際社会での存在感を保ってきたが、中国をはじめとする新興国が台頭するにつれ、G7の影響力は徐々に低下。2008年のリーマン・ショック後は、20カ国・地域(G20)首脳会議が脚光を浴びた。
潮目が変わったのが、新型コロナウイルス禍とロシアによるウクライナ侵攻だ。医療物資やレアアース(希土類)を囲い込もうとする中国、エネルギー輸出を政治利用するロシア。多国間連携を重視するバイデン政権は、自国第一主義のトランプ前政権とは一線を画し、世界経済の主導権回復に向けてG7の立て直しを進めてきた。
ただ、世界のGDP(国内総生産)に占めるG7の割合は、ピークだった冷戦終結時の7割から現在は4割程度まで下がっている。サミットの議長を務めた岸田文雄首相は「グローバルサウスから背を向けられれば、G7は少数派となる」と繰り返し危機感を訴えている。
●「核戦争の破壊的現実を思い出させた」 バイデン氏、資料館に言及 5/21
バイデン米大統領が21日、主要7カ国首脳会議(G7サミット)後に広島市で記者会見した。19日の平和記念資料館などへの訪問について「核戦争がもたらした破壊的な現実を力強く思い出させるものだった」と振り返った。G7が「核兵器のない世界」の実現に向けた取り組みを続けることを確認した、とも述べた。
バイデン氏は19日、他のG7首脳とともに平和記念資料館を訪問し、約40分間滞在した。現職米大統領の訪問は2016年のオバマ大統領(当時)に続き、2人目となった。資料館の視察の様子は非公開だった。
バイデン氏は、かねて「核なき世界」の理想を掲げてきた。だが、ロシアのウクライナ侵攻が続くなか、米側からみれば、米軍が原爆を投下した広島での発信に慎重にならざるを得ない面があり、核軍縮を進めるのも難しい情勢だ。米政権は中国による不透明な核戦力の増強にも警戒感を強め、核抑止の強化を重視している。
バイデン氏は会見でも、核軍縮の具体的な方策には言及しなかった。ただ、被爆地広島で「破壊的な現実」の認識を示し、平和の構築に向け「決して努力をやめないという、我々が共有する責任」を強調した。
バイデン氏は21日、ウクライナのゼレンスキー大統領と個別に会談。他国からウクライナへの米F16戦闘機の提供を認め、訓練を支援すると伝えた。バイデン氏は、F16をロシア国内の攻撃に使わないことの「確証を得た」とし、戦争の激化につながるとの見方を否定した。
また、中国との関係をめぐっては、2月に中国の気球が米本土上空を飛行し、米軍が撃墜した問題をめぐって意思疎通が停滞したが、「とても近いうちに」改善できるとの期待感を示した。経済においても米中の対立が深まっているが、バイデン氏は「中国とのデカップリング(切り離し)をするつもりはない。リスクの軽減と関係の多様化を求めている」とも強調した。
●被爆者サーロー節子さん、広島サミットは「失敗」 5/21
21日に閉幕した広島市での先進7カ国首脳会議(G7サミット)について、カナダから同市に帰郷している被爆者サーロー節子さん(91)は「失敗だったと思う」と総括した。
サーローさんは、G7首脳と被爆者との対話などが非公表で「被爆者が体験したことを理解してくれたのか。反応が聞きたかった」と不満を表明。また、「市民と政府が一緒に核軍縮を進める機運が生まれたのか」と疑問を投げかけた。
サーローさんは昨日、G7サミットがまとめた核軍縮に関する「広島ビジョン」を巡り「自国の核兵器は肯定し、対立する国の核兵器を非難するばかりの発信を被爆地からするのは許されない」と批判。核兵器禁止条約の締約国との協働など期待していたが、「広島ビジョンでは全く無視されている」としていた。
日本被団協は21日、オンライン記者会見を開き、サミットの成果について同様に厳しい見方を示した。日本被団協の木戸季市事務局長(83)は、核抑止を事実上肯定し、核兵器廃絶に向けた十分な議論がなかったと強調。「希望は完全に打ち砕かれた。核の傘の下で戦争をあおるような会議だった」と憤った。
和田征子事務局次長(79)も、核兵器なき世界への具体策がなく、議長を務めた岸田文雄首相の責任は重いとし、「被爆者の願いを踏みにじった」と落胆した。児玉三智子事務局次長(85)は「首脳はどういう思いで献花し、何を誓ったのか。ただのセレモニーだったのか。一人一人の率直な言葉を聞きたかった」とG7首脳の発信にも物足りなさがあるとした。
●G7広島サミット、中国は「内政への粗暴な干渉」と反発 5/21
G7広島サミットが中国に関する幅広い問題を主要議題としたことに対し、中国の習近平政権は「内政への粗暴な干渉」と反発した。中国は今後、米国が呼び掛ける「対中包囲網」に対抗するため、米国と欧州の離間を狙うなど硬軟両様の外交を積極化させるとみられる。
中国外務省は20日夜発表の報道官談話で「西側の少数の先進国が他国の内政に理不尽に干渉し、世界を操る時代は過去のものとなった」とG7を非難した。広島サミットの首脳声明は、「台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認する」と明記したほか、東・南シナ海や、新疆(しんきょう)ウイグル自治区などにおける人権状況、香港など多様な問題について提起したが、同談話はこれに対し「強烈な不満と断固とした反対」を表明した。
中国国営新華社通信は21日に「日本は議長国として、米国の『インド太平洋戦略』や世界戦略に力の限り歩調を合わせた」と批判する専門家の見解を伝えた。習政権は、日本へのいらだちを強めており、対日圧力を増す可能性がある。
首脳声明は「国際的な課題で中国と協力する必要がある」と明記しており、習政権はフランスなど関係が比較的良好なG7メンバーが対中圧力で米国に追随しないよう働き掛けを強める見通しだ。ロシアのウクライナ侵略を巡り、中国は仲介役を担おうとしているが、これは欧州取り込みを意識した側面が強い。
ただ、広島サミットにウクライナのゼレンスキー大統領が参加したことで、仲介役としての存在感が薄まることを中国は懸念しているとみられる。また、中国政府の特別代表が16、17両日にウクライナを訪問し「速やかな停戦」を求める中国側の立場を説明したのに対し、ウクライナ側から「領土喪失や紛争の凍結を含む提案は受け入れない」とクギを刺されている。
仲介役としての資格に疑問を持たれている原因でもあるロシアのプーチン政権との密接な関係に変化はない。習政権は、G7を中心とした西側諸国が主導してきた国際秩序を崩すことに力を注いでおり、ロシアはそこにおいて欠かせないパートナーだからだ。ミシュスチン露首相が23、24両日に訪中する予定で、広島サミットを踏まえた対応について話し合うとみられる。
●G7広島サミット閉幕 核兵器のない世界へ「広島ビジョン」発表 残る課題は 5/21
G7広島サミットが3日間の日程を終え閉幕しました。発表した首脳宣言では「核兵器のない世界という究極の目標に向け取り組みを強化する」としていますが、依然として課題は残されています。
G7首脳が初めてそろって原爆資料館を訪問し、平和記念公園で献花をする歴史的なシーンで幕を開けた広島サミット。核軍縮がテーマとなったセッションでは、「核戦争は決して行われてはならない」とした「広島ビジョン」を発表しました。
岸田首相「我々の子どもたち・孫たち・子孫たちが核兵器のない地球に暮らす理想に向かって、一歩一歩、現実的な歩みを進めていきましょう」
もうひとつの大きなテーマ「ウクライナ問題」では、ゼレンスキー大統領がサミット期間中に広島を訪れセッションに出席するという大きなサプライズがありました。サミットでは、人道支援や軍事支援を必要な限り提供するとともに、ウクライナに平和を取り戻し自由で開かれた国際秩序を守り抜く決意を確認しました。
一方、中国については「力や威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対する」ことを確認しました。ただ、首脳宣言には「経済規模をかんがみて協力する必要がある」とも明記し、連携を模索する姿勢も示しています。
「サミットは閉幕するが、G7議長としての1年は続く」と語った岸田首相。「核兵器のない世界」に向け、ロシアや中国にどう行動を促していくのか。引き続き、険しい道のりが残されています。
●G7広島サミット閉幕 被爆者や関係者などの受け止めは  5/21
日本被団協「これまでと変わらず残念」
G7広島サミットが閉幕したことを受けて、日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会は21日午後、オンラインで会見を開き、田中煕巳代表委員は「被爆者たちは核兵器と人類は共存できず、可能なかぎり速やかに核廃絶を目指してほしいとこれまで訴えており、今回の会議で少しでも前進させてほしかったが、結果として核抑止に依存しNPT体制を重視するというこれまでと変わらないもので、残念でならない。参加した核保有国たちが核廃絶に向けてどのような努力をしていくかという姿勢くらいは示してほしかった」と話していました。
木戸季市事務局長は「核廃絶を正面に据えた議論を求めてきたのに、核抑止力に依存した会議になってしまったことに怒りを覚える」と述べました。
また、ウクライナのゼレンスキー大統領が広島を訪れたことについて、田中代表委員は「ウクライナはロシアによる侵攻を受けている国ではあるが、一方の当事国だけを参加させることは、今の情勢を踏まえるとマイナスの影響のほうが大きいのではないか」と話していました。
広島県被団協 箕牧理事長「広島サミットよかったと思えるよう」
広島県被団協の箕牧智之理事長(81)は、広島サミットを振り返り、受け止めについて、「被爆者の面会が実現した点はよかったものの、どのような話をしたかやどんな展示を見たのかなどは何も明かされず、隠されていることが残念です。今回のG7サミットにとても期待していた分、今は風船がしぼんだような気持ちでいます」と話しました。
また、核軍縮に焦点をあてた単独の首脳声明「広島ビジョン」については、「核抑止を正当化するような内容に感じました。ロシア以外のどこの国も、核兵器を使ったり持ったりしていいということはありません。また、核兵器禁止条約について触れられていないことについても落胆しています」と話しました。
一方で、「10年後に振り返った時に、広島サミットはよかったと皆が思えるよう、首脳たちにはこのサミットをきっかけに核兵器廃絶に向けて具体的な行動を取ってもらいたいと思います」と話していました。
サーロー節子さん「核兵器禁止条約にひと言も触れていない」
カナダ在住の広島の被爆者、サーロー節子さんは広島市内で記者会見し、G7広島サミットで核軍縮に焦点をあてた単独の声明「広島ビジョン」について核兵器禁止条約への言及がなかったことに失望したと述べました。
13歳のとき、広島の爆心地から1.8キロで被爆したサーロー節子さん(91)は半世紀以上にわたって世界各国で核兵器廃絶を訴え続け2017年にICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンがノーベル平和賞を受賞した時には授賞式でスピーチを行いました。
サーローさんは広島ビジョンについて「広島の人たちはG7のリーダーたちに広島で開かれる意味を理解して原爆資料館で見て考えこの街で起きたことを理解してほしいという期待が強かったと思うが声明にはリーダーたちの感じた体温、脈拍が感じられず、リーダーの思いが反映されていないと感じた」と述べました。
そのうえで「国際社会には核兵器禁止条約があるが、声明ではひと言も触れておらず驚いた。広島に来て被爆者と会って、資料館に行って考える機会もあったのにこれまで議論されてきたようなことだけしか書けないのかと思うと失望した」と述べました。
さらに、サーローさんは「市民と政府が一緒になって、核軍縮を前進させようという機運が生まれたようには思えない。サミットをお祭り騒ぎで終わらせず核廃絶に向けた機運を続けるようにしてほしい」と訴えました。
森下弘さん「平和や核軍縮に向けた動きに注目したい」
14歳のときに被爆した広島市佐伯区の森下弘さん(92)は、21日午後、自宅のテレビでG7広島サミットの閉幕にあたって行われた岸田総理大臣の記者会見を視聴しました。
森下さんは3日間のサミットについて、「広島でサミットが行われたことは歓迎したいが、G7の首脳らが原爆資料館を訪れて具体的に何を見て、どう感じたのかが伝わってこないのが残念だ」と振り返りました。
そして、核軍縮に焦点をあてた単独の首脳声明「広島ビジョン」については、「ロシアが核で脅しをかけていることを踏まえて核軍縮を目指すことを広島の地で発表したこと自体は望ましいことだが、そのビジョンを核兵器の廃絶に向けた具体的な動きにつなげてほしい。現在の核保有国については保有を認める状態にとどまっているので、もう一歩前に進めてもらいたかった」と話していました。
そのうえで、「ウクライナ情勢から目が離せない中、広島で話し合われた平和や核軍縮に向けた動きについて、各国でどこまで具体的な政策が実行されるのか注目したい」と今後に期待していました。
切明千枝子さん「核廃絶の気配なく残念」
15歳のときに被爆した広島市安佐南区の切明千枝子さん(93)は、3日間のサミットを振り返り「核保有国を含めたG7の首脳が原爆資料館を訪れて核兵器の悲惨さを目の当たりにすることで、核廃絶の糸口になることを願っていたが、その気配がないので残念だ。広島訪問で何か心に響いてこれから核廃絶に向けて一歩でも二歩でも踏み込んでほしい」と話していました。
切明さんは、広島を訪れる修学旅行生などに被爆体験を証言していて、「『まだ言っているのか』とか『聞き飽きた』と言われても諦めずに繰り返し証言しないといけない。G7広島サミットで被爆地、広島に世界の注目が集まったと思う。核を廃絶してほしいというメッセージをこれからも世界中に伝え続けたい」と決意を示していました。
小倉桂子さん ゼレンスキー大統領にみずからの体験伝える
原爆資料館を訪れたウクライナのゼレンスキー大統領に対して、広島市在住で被爆者の小倉桂子さんが自身の体験を伝えたことが分かりました。
小倉さんは19日にもG7各国の首脳らと面会していました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、21日午後5時20分すぎに広島市中区の平和公園を訪れ、広島県の湯崎知事や広島市の松井市長とことばを交わしたあと、原爆資料館の中に入りました。
そして、ゼレンスキー大統領は、およそ40分後に岸田総理大臣らとともに資料館から出てきました。
資料館の中での様子は非公開となりましたが、広島市在住の被爆者、小倉桂子さんがゼレンスキー大統領と面会したことを記者団に明らかにしました。
この中では、自身の被爆体験や平和公園にある「原爆の子の像」のモデルで、被爆後に白血病を発症して亡くなった佐々木禎子さんについても伝えたということです。
また、インドなどG7以外の招待国の首脳らが原爆資料館を訪れた際も小倉さんが話をしたということです。
小倉さんは85歳。
8歳の時、爆心地から2.4キロ離れた自宅近くで被爆しました。
原爆資料館の館長を務めた夫・馨さんの遺志を継ごうと、通訳者のグループを立ち上げ、平和公園を訪れる外国人向けのガイドなどの活動を行うとともに、みずからの被爆体験を英語で世界に向けて発信してきました。
小倉さんは、サミット初日の19日にも原爆資料館の中でG7各国の首脳らと面会していました。
ICAN 川崎哲さん「核兵器廃絶に向けて行動伴う成果なく失望」
ICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンの国際運営委員を務める川崎哲さんは「核兵器の廃絶に向けて行動が伴う成果がなく、とても失望している」などと見解を述べました。
ICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンの国際運営委員を務める川崎さんは21日夜、G7広島サミットの取材拠点の「国際メディアセンター」で報道各社の取材に応じ、閉幕したサミットについて見解を述べました。
川崎さんはまず、閉幕後にウクライナのゼレンスキー大統領が広島市の原爆資料館を訪れ、記者会見で戦争のない世界を求めたことに触れて「市民が傷つけられた広島の様子を国の惨状にひきつけていた。これが最後の戦争になるようにと話し、戦後の復旧への言及もあった。戦争のない世界を、この状況でも構想するという大きな視点だった」と評価しました。
一方で、核軍縮に焦点を当てた首脳声明の「広島ビジョン」などについては「“相手の核兵器は悪いが自分たちの核兵器はいい”と各国が言っているかぎり、起きることは核軍拡競争で、最終的にはわれわれ全員の破滅だ」と指摘しました。
そのうえで、今回のサミット全体の評価として「世界の多くの指導者が原爆資料館を訪れたことはよかったが、実際の核兵器廃絶の行動が伴わないといけない。その意味では成果がなく、とても失望している」と話していました。
 
 

 

●バイデン大統領「核戦争の悲惨な現実を思い知らされた」 5/22
アメリカのバイデン大統領はG7広島サミットを終えて会見を開き、原爆資料館への訪問で「核戦争の悲惨な現実を強く思い知らされた」と話しました。
アメリカ バイデン大統領「この街に来て原爆資料館を訪れ、核戦争の悲惨な現実を強く思い知らされました」
バイデン大統領はきのう会見でこのように語り、「核兵器の脅威のない世界を目指し、努力を続ける責務について、G7首脳たちと改めて確認した」と述べました。
また、G7サミットの主要な議題の1つとなった中国との関係について、気球の撃墜以降続いている緊張状態が「非常に近いうちに緩和し始めるだろう」と述べ、対話再開への期待を示しました。
●鳩山由紀夫氏「原爆資料館に核ボタンを持ち込むとは言葉を失う」 5/22
鳩山由紀夫元首相が22日までにツイッターを更新。広島で開催されたG7広島サミットをめぐり、バイデン米大統領が「核のボタン」を携行したことなどについて私見を述べた。
鳩山氏は21日に閉幕したG7広島サミットの成否は「被爆者が判断することだ」とし、「その1人サーロー節子さんは失敗と断じた。核抑止として自国の核兵器は許し対立する国の核兵器を非難するのは許されないと」と、カナダを拠点に核兵器廃絶を訴えている被爆者のサーロー節子さん(91)が記者会見で話した言葉を紹介。「あらゆる核の保有も禁ずる核兵器禁止条約に広島ビジョンは触れず。謝罪どころか原爆資料館に核ボタンを持ち込むとは言葉を失う」とした。
また、ウクライナのゼレンスキー大統領が参加したことについて、「今世界が求めているのは一刻も早くウクライナ戦争を停戦にすることだ。本来G7がやるべきだったのはゼレンスキーを呼ぶならプーチンも呼んで、停戦の対話を導くことだった」と指摘。「G7がウクライナを支持して武器を提供すれば、さらに多くの命が奪われ、ウクライナが荒廃するだけだ。戦争で儲けたいなど論外だ」とした。
●G7広島サミットの成果踏まえ外交努力継続へ 岸田首相 5/22
21日に閉幕したG7広島サミットについて、岸田総理大臣は、ウクライナのゼレンスキー大統領の出席も得て国際秩序を守り抜く決意やG7の連帯を示すことができたとしています。
今回打ち出したメッセージをもとに国際社会に行動を促し、ロシアによる侵攻の停止などの具体的な成果につなげたい考えです。
ロシアのウクライナ侵攻が続く中、3日間にわたって開かれたG7広島サミットでは、ロシアに対する制裁やウクライナ支援の継続・強化を確認したほか、G7としては初めて核軍縮に焦点をあてた成果文書を発表し、現実的なアプローチを通じて「核兵器のない世界」を目指していくことで一致しました。
また「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国を含む招待国との拡大会合を開き、こうした国々が直面する食料・エネルギー問題に協力して取り組んでいくことも確認しました。
さらに、最終日の21日はウクライナのゼレンスキー大統領のほか、欧米とロシアの間で中間的な立場をとってきたインドを含めた招待国も討議に加わり、力による一方的な現状変更を許さないことの重要性などを共有しました。
岸田総理大臣は、サミット閉幕後の記者会見で「ゼレンスキー大統領を招き、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を確認し、守り抜く決意を新たにするとのメッセージを、世界に向けて力強く示せたことは意義深い」と強調しました。
また岸田総理大臣は、21日夜、ゼレンスキー大統領と個別に会談し、日本からの追加支援として自衛隊の車両を提供することなどを伝え、今後、一層、緊密に連携していくことを確認しました。
岸田総理大臣としては、今後もことしのG7議長国として、今回のサミットで打ち出したメッセージをもとに国際社会に具体的な行動を促し、一刻も早いロシアによる侵攻の停止や核軍縮・不拡散体制の強化など、具体的な成果につなげていきたい考えです。
成果は、そして今後は
Q.ゼレンスキー大統領が参加したことに対する日本側の受けとめは。
A.今まさに侵攻を受けている国のリーダーとともに、被爆地・広島から、平和と安定や核軍縮の重要性などを発信できたことは画期的だと評価する声が大勢です。ある政府関係者は「これまで日本で開催したサミットの中では、最も強い発信力があったのではないか」と指摘しています。また、ゼレンスキー大統領のみならず、ウクライナ情勢で中間的な立場をとってきたインドなども加わった討議で、力による一方的な現状変更の試みを許さない立場を共有できたことも、大きな成果だとしています。その反面で「強すぎるメッセージは、ロシアや中国などを刺激し、かえって分断を深める懸念がある」という声もありまして、国際情勢への影響は冷静に見ていく必要がありそうです。
Q.厳しい戦況のなか来日したゼレンスキー大統領だが、滞在中の動向やメッセージは?
A.30時間という限られた滞在の中で、時折、疲れた様子を見せつつも、少しでも多くの支援を取り付けようと直接働きかけていました。ゼレンスキー大統領は滞在中、2つの討議に参加し、10人を超える首脳らと次々に会談を行うなど、精力的に外交を展開しました。このうち中立な立場を保つインドなどのグローバル・サウスと呼ばれる国の首脳も参加した討議では、いまウクライナで起きていることは世界全体の問題なんだと英語で訴えかけ、理解と支援を求めたといいます。そして、ロシアの激しい攻撃を受けて破壊されたウクライナの街をかつての広島と重ね合わせ、平和を取り戻し、いずれ復興を成し遂げると決意を新たにしていたのが印象的でした。
Q.一方、ロシアの反応は。
A.ロシア外務省は21日に声明を発表し、G7広島サミットについて「ウクライナの指導者を呼び込み広島のイベントをプロパガンダのショーに変えた」としてゼレンスキー大統領の参加を批判しました。そして、ゼレンスキー大統領がウクライナを不在にしているタイミングをねらったかのようにロシア国防省は東部の激戦地バフムトを完全に掌握したと発表しました。ウクライナ側は否定していますが、ロシアの通信社は、「プーチン大統領がバフムト解放作戦の完了を祝福した」と伝えています。ウクライナが近く大規模な反転攻勢に出るとみられるなか、ロシアとしては戦果ををアピールし、軍事侵攻を続ける姿勢を示すねらいがあるとみられます。
Q.岸田総理は、今後、どのような外交を展開しようという考えか。
A.国際社会に「行動」を促していく考えです。いかに力強いメッセージを発したとしても、いざ行動となると、各国それぞれの事情や地政学的な背景から、足並みが乱れがちなのが外交でもあります。実際、インドなどの招待国を招いて開かれた、21日の会合でも「立場は共有したが、ロシアを名指しで非難するのは避ける国もあった」と政府関係者は明かしています。岸田総理としては、G7など先進国の論理だけで物事が動かなくなっている現実も踏まえ、G20など、ほかの枠組みの国々とも連携強化を図り、ロシアによる侵攻の停止や、核軍縮・不拡散体制の強化など、具体的成果につなげる外交努力を続ける方針です。
経済安全保障の強化など実効性が課題に
21日に閉幕したG7広島サミットでは、ウクライナ侵攻や米中対立が続くなか、経済安全保障の強化やデジタル分野のルールづくりなどにG7として結束して取り組む姿勢を打ち出しました。
今後はその実効性が問われることになります。
経済分野では経済安全保障について、ウクライナ侵攻をきっかけにぜい弱性が浮き彫りとなった重要鉱物や半導体などのサプライチェーン=供給網を新興国や途上国とも協力して強化することで一致しました。
また、中国を念頭に禁輸などの措置で他国の政策や意思決定に影響を与えようとするいわゆる「経済的威圧」に対抗するため、 G7として被害を受けた国々を支援する「調整プラットフォーム」を立ち上げることで一致しました。
さらにデジタル分野では、ChatGPTなど生成AIの急速な普及を受けて、「広島AIプロセス」として信頼できるAIの普及に向けて閣僚級で議論し、年内に報告をまとめることで一致しました。
一方、気候・エネルギーの分野では、石炭火力発電の廃止時期の明示や、電気自動車の導入の数値目標を設定するよう求める欧米諸国と、慎重な立場の日本との間で調整が続きました。
しかし、ウクライナ侵攻や中国が影響力を拡大させるなか、G7の結束などを優先させようという思惑もあり、サミット直前に開かれた閣僚会合の内容を引き継ぐ形で決着しました。
議長国の日本としては、「グローバル・サウス」とも呼ばれる新興国や途上国とも連携して経済分野の課題に結束して取り組む姿勢を強く打ち出せたと評価していますが、今後はその実効性が問われることになります。
岸田首相 サミット閉幕会見 ウクライナとの連帯など成果を強調
G7広島サミットの閉幕にあたり議長を務めた岸田総理大臣は21日平和公園で記者会見を行いました。ウクライナのゼレンスキー大統領の対面での参加を得て、連帯を示せたことは意義深いなどと成果を強調しました。そして、今後も法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けた取り組みを主導していく決意を示しました。
岸田総理大臣は今回のサミットについて、「G7首脳と胸襟を開いて議論し『核兵器のない世界』に向けて取り組んでいく決意を改めて共有し、G7として初めてとなる核軍縮に焦点を当てた『広島ビジョン』を発出できた。被爆地を訪れ、被爆者の声を聞き、被爆の実相や平和を願う人々の想いに直接触れたG7首脳が、このような声明を出すことに歴史的な意義を感じる」と述べました。
そのうえで「夢想と理想は違う。理想には手が届く。われわれの子供たち、孫たち、子孫たちが、核兵器のない地球に暮らす理想に向かって、ここ広島から、きょうから、1人1人が広島の市民として、一歩一歩、現実的な歩みを進めていこう」と呼びかけましたそして、「力による現状変更のための核兵器による威嚇、ましてやその使用はあってはならない。核兵器を使わない、核兵器で脅さない。人類の生存に関わるこの根源的な命題を、今こそ問わなければならない」と述べました。
ウクライナ情勢をめぐっては「主権や領土一体性の尊重といった、先人が築き上げ、長年にわたり擁護してきた原則が挑戦を受ける真っ只中でサミットは開催された。ゼレンスキー大統領を招き、G7とウクライナの揺るぎない連帯を示すとともにG7として、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を確認し、これを守り抜く決意を新たにするとのメッセージを、世界に向けて力強く示せたことは意義深い」と述べました。
その上で「G7として、1日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和をもたらすべく努力していく」と述べ、ロシアへの制裁や制裁回避を防ぐ取り組みを強化することで一致したと明らかにしました。
一方で、岸田総理大臣は、「世界は今、ウクライナ侵略に加えて気候変動やパンデミックなど、複合的な危機に直面し『グローバル・サウス』や脆弱な立場の人々が甚大な影響を受けている。こうした国や人の声に耳を傾け喫緊の幅広い課題に協力する姿勢を示さないことには、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くとの訴えも空虚なものとなりかねない」と述べました。
その上で「こうした国々とG7を橋渡しすべく対応しなければならないさまざまな課題について真剣な議論を行った」と今回のサミットの意義を説明しました。
また、喫緊の課題である食料危機に、G7と招待国が連帯して取り組む行動声明をまとめたほか、気候変動問題について各国の事情に応じた多様な道筋で脱炭素社会を目指す認識を共有できたという認識を示しました。
さらに新型コロナが収束する中で、次の感染症危機に備えるための連帯も確認したとした上で、国際保健分野で日本として、官民合わせて75億ドル規模の貢献を行う意向を明らかにしました。
その上で「世界の諸課題の解決に向けた貢献は、常に、G7の中核的な使命であり続けてきた。今こそ、G7としてさまざまな課題に直面する国際的なパートナーの声を聞き連携しつつ、課題にきめ細かく対応していく決意だ」と述べました。
一方、世界経済をめぐっては、ロシアのウクライナ侵攻が長期化する中、インフレ圧力などの問題が深刻だとして、サミットの議論を踏まえ、国際社会全体の経済的強じん性と経済安全保障の強化の取り組みを推進していく考えを示しました。
さらに、中国への対応をめぐっては「率直な対話を行い懸念を直接伝える重要性やグローバルな課題などについて協働する必要性で一致するとともに、国際社会で責任ある一員として行動すべきことや、対話を通じて建設的かつ安定的な関係を構築する用意があることなどについて認識を共有した」と述べました。
最後に「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜き、議長年の務めをしっかりと果たしていく。『グルーバル・サウス』を含めた国際的なパートナーと連携する機会も続く。ここ広島での充実した議論を引き継ぎ、さまざまな課題をともに解決するべく、これらの国々との連携強化を主導していく」と決意を示しました。
予定された質問後 呼び止められ
一方、会見で、岸田総理大臣は、予定されていた質問に答えて、会場を離れようとした際、記者から「核軍縮ビジョンについて教えてください。総理、逃げるんですか」と呼び止められました。
このため岸田総理大臣は演台に戻り、核保有国に、透明性の向上を促すことなどを明記した核廃絶への日本の行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」の内容を詳しく説明しました。
その上で「G7の歴史上初めて独立文書としてまとめられた成果文書の中で『ヒロシマ・アクション・プラン』を高く評価し、その考え方に基づいてG7で努力していくということを確認した。こうした考え方に基づいて努力を続けていきたい」と述べました。
「メッセージをより力強く国際社会に発信できた」
岸田総理大臣は、記者会見で「ロシアによるウクライナ侵略に対し、国民の先頭に立って立ち向かうゼレンスキー大統領にも議論に参加してもらい、メッセージをより力強く国際社会に発信することができたことは非常に有意義だった」と述べました。
また招待国の首脳らを交えたセッションについて、「各国からきたんのない意見が出され、実質的な意見交換が行われた。予定の時間を大幅に越え、希望する発言者すべてから発言をいただき議論を深めた」と振り返りました。
さらに「ロシアによる核の威嚇が行われる中、ゼレンスキー大統領を迎え、議論を行ったことは力による現状変更のための核兵器による威嚇、ましてやその使用はあってはならないというメッセージを緊迫感を持って発信することになった」と述べました。
「ロシア制裁 第三国を通じたう回、回避を防ぐことが重要」
岸田総理大臣は、記者会見で「ロシアに対する制裁をいっそう効果的にするためには、第三国を通じた制裁のう回、回避を防ぐことが重要だ。G7を超えた多くの国に協力を求めていく必要があり、今回、第三国への働きかけを継続していくことを確認した」と述べました。
その上で、ロシアに協力的な中国企業などへの対応について「日本としても、どのような措置をとることが最も効果的なのかという観点に立って対応を考えていかなければならない」と述べました。
「北朝鮮の完全な非核化を目指していく」
岸田総理大臣は、記者会見で、サミットでの討議について「私から北朝鮮が前例のない頻度と新たな態様で弾道ミサイルの発射などを行っており、深刻に懸念する旨を述べ、G7として北朝鮮によるたび重なる弾道ミサイル発射を強く非難した。G7を含む国際社会と協力しながら関連する国連安保理決議の完全な履行を進め、北朝鮮の完全な非核化を目指していく」と述べました。
「いま解散・総選挙については考えていない」
岸田総理大臣は記者会見で、野党が内閣不信任決議案を提出した場合には、衆議院解散の大義になると考えるかと問われ「いま重要な政策課題に結果を出すことに最優先で取り組んでいる。そうした取り組みを続けているところであり、いま解散・総選挙については考えていない。この考えは従来と変わっていない」と述べました。
●G7広島サミットめぐり中国が日本の大使へ申し入れ 大使は反論 5/22
G7広島サミットで中国に関する問題が取り上げられたことについて中国外務省は、孫衛東次官が21日、北京に駐在する日本の垂秀夫大使を呼び、厳正な申し入れを行ったと発表しました。
この中で、孫次官は「日本はG7の議長国として関係国とともに中国を中傷、攻撃し、内政に乱暴に干渉しており、中国の主権や安全、それに発展の利益を損なっている」と述べ、強烈な不満と断固反対する考えを示したということです。
一方、北京の日本大使館によりますと、垂大使は中国側の申し入れに対し「中国が行動を改めないかぎり、これまで同様にG7として共通の懸念事項に言及するのは当然のことであり、将来も変わらないだろう。まずは中国側が前向きな対応を行うべきだ」と反論したということです。
●ゼレンスキー大統領“世界の多数派と理解し合えた”G7サミット 5/22
ウクライナのゼレンスキー大統領は、21日閉幕したG7広島サミットについて「ウクライナにとってすべての重要な点で世界の多数派と理解し合えた」と述べ、一連の外交の成果を強調しました。
ウクライナ大統領府は21日、G7広島サミットを終えたゼレンスキー大統領の新たな動画を公開しました。
この中で「世界はわれわれの立場に耳を傾けている。領土の奪還などウクライナにとってすべての重要な点で世界の多数派と理解し合えた」と述べ、一連の外交の成果を強調しました。
そして、G7でウクライナ情勢が主要なテーマの1つになったとして「G7のウクライナへの敬意は特別なものだ」と述べ謝意を示しました。
一方、ロシア大統領府は21日、激戦が続いてきたウクライナ東部ドネツク州のバフムトについて「プーチン大統領がバフムト解放作戦の完了を祝福した」と発表し、戦果をアピールしました。
この発表に先立ちロシア国防省も、民間軍事会社ワグネルとともにバフムトを完全に掌握したと主張しました。
これに対し、ゼレンスキー大統領はG7広島サミットのあとの記者会見で「きょうの時点でバフムトはロシアに占領されていない」と述べ、ロシア側の発表を否定しました。
また、ウクライナ陸軍のシルスキー司令官は21日、SNSにバフムト近郊の前線を訪れ兵士を激励した動画を投稿し「ウクライナ軍の反撃は続いている」と強調しました。
双方の主張が食い違う中、戦況の行方が引き続き焦点となっています。
●ゼレンスキー大統領「一生忘れない」G7広島サミット出席で 岸田総理と会談 5/22
ウクライナのゼレンスキー大統領は岸田総理と会談し、出席したG7首脳会合でウクライナへの支持が表明されたことについて「一生忘れることはない」と謝意を伝えました。
ウクライナ ゼレンスキー大統領「今回のサミットで、これだけウクライナに対する注目をいただいたこと、特にウクライナの主権、領土一体性及びウクライナの人たちに対する支持を表明していただきまして、一生忘れることはありません」
岸田総理とゼレンスキー大統領の首脳会談はおよそ50分間行われ、岸田総理は「戦時下の困難な状況の中、G7広島サミットに参加頂いたことに心から感謝する」と伝えました。一方、ゼレンスキー大統領もG7の首脳らからウクライナを支持する表明を受けたことについて「一生忘れることはない」と話し、両首脳は緊密に連携していくことで一致しました。
サミットでG7首脳はウクライナへの軍事支援などを必要な限り提供することで一致していますが、岸田総理はウクライナ側の要請を踏まえ、あらたに100台規模のトラックなどの自衛隊車両を提供するほか、ウクライナ負傷兵の自衛隊中央病院への初となる受け入れ決定を伝えています。
●G7広島サミットは何を残した? ウクライナの人 そして被爆者は 5/22
G7広島サミットが21日に閉幕しました。岸田総理大臣は、ウクライナのゼレンスキー大統領の出席も得て国際秩序を守り抜く決意やG7の連帯を示すことができたとしています。今回のサミットを被爆者の人たち、そしてウクライナの人たちはどのように見ていたのか。そして、サミットは何を残したのか。
小倉桂子さん「大統領は泣くのをこらえていたのだと思う」
21日、原爆資料館を訪れたウクライナのゼレンスキー大統領に英語でみずからの被爆体験を伝えた広島市在住で被爆者の小倉桂子さん(85)が一夜明けて、思いを語りました。22日、広島市の国際メディアセンターで報道陣の取材に応じた小倉さんは、原爆資料館を訪れたゼレンスキー大統領と面会したときの様子について「私の被爆体験を話すと、ゼレンスキー大統領は何もおっしゃらず、厳しい顔をして、声も出ないという感じでした。おそらく、自分の国と重ね合わせて、泣くのをこらえていたのだと思います。街はどんなに壊されても再建することができますが、いちばん大切なのは人の命です。子どもたちの命を守ってくださいとお伝えしました」と話しました。また、小倉さんは、原爆資料館を訪れたすべての首脳たちに証言をしたということで「知ることが戦争をやめさせる一番最初の平和運動で、それが今回だと思う。彼らのやり方で、戦争を終わらせてほしい。核兵器の事実を少なくとも私はお話できたし、皆さんは感じられたと、自信を持って言えます」と話し各国の首脳が核兵器の廃絶に向けて動き出すことに期待を示しました。
広島市長「首脳たちに広島の思い受け止めてもらえたと思う」
湯崎知事は22日、G7広島サミットを支援してきた広島サミット県民会議の会長として記者会見しました。この中で湯崎知事は「交通規制などで県民の皆様にはさまざまな不便をかけたが協力のおかげで、円滑な開催ができたことにお礼を申し上げる」と述べました。そのうえで「サミットを通じて広島のすばらしさを感じてもらえたと思うので、このチャンスを活用して、今後も平和発信や、産業と観光の振興につなげていきたい」と述べました。また、県民会議の副会長を務める広島市の松井市長は「平和公園や原爆資料館を訪問した首脳たちには広島の思いをしっかり受け止めてもらえたと思う」と述べました。そして、ウクライナのぜレンスキー大統領が急きょサミットに参加したことに触れ「ウクライナ政府側からも今の美しい広島を見て復興支援をお願いしたいという話もあった。今後も世界の為政者や若い世代への平和の発信に取り組みたい」と述べました。
キーウの市民 今後の軍事支援に期待する声
ウクライナのゼレンスキー大統領がG7広島サミットに対面で参加したことについて、首都キーウの市民からは21日、歓迎する声や今後の軍事支援に期待する声が相次ぎました。このうち、30代の男性は「ゼレンスキー大統領が世界を飛び回ってくれてうれしいです。ウクライナには支援が必要で大統領はそれを各国に伝えてくれています」と話していました。また、アメリカが同盟国などとともにウクライナの兵士へのF16戦闘機の訓練を開始するなど新たな軍事支援を表明したことについては「長い間、待っていました。F16戦闘機ならキーウに飛んでくるミサイルを撃ち落とし、防空能力を高めてくれます」と歓迎していました。20代の女性は「サミットはウクライナで何が起きたのかを伝えるすばらしい機会だと思います」と話し大統領の対面でのサミット参加を評価していました。子連れの30代の女性はF16戦闘機について「本当にすばらしい。私たちには保護が必要ですし、領土を取り戻す必要があります」と歓迎したうえで、今月に入ってロシア軍による攻撃が増えていることに触れ戦闘機の供与が早期に実現することに期待を示していました。
原爆資料館 4日ぶりに開館 オープン前には行列も
G7広島サミットの開催に伴って今月18日の正午から21日まで休館していた原爆資料館が22日から再開し、多くの外国人などが訪れています。4日ぶりに開館することから、オープン前には外国人を中心に多くの人が列をつくって開館を待ちました。そして、午前8時半にオープンすると並んでいた人たちは続々と中に入り、展示に見入っていました。また、サミットの開催にあわせて資料館の窓ガラスに貼られていた目張りが剥がされる様子も見られました。並んでいたカナダ人の男性は「もともとはもっと早く訪れる予定でしたがサミットの影響で予定を後ろ倒ししました。サミットの開催と同じ時期に展示を見ることで、広島に起こったことをより学ぶことができると思います」と話していました。また、アメリカから資料館を訪れた女性は「きのう訪れる予定でしたが、閉まっていることに気付き、きょう来ることにしました。原爆によって広島に何が起こったか知りたいと思います」と話していました。原爆資料館はサミットをきっかけに来館者が増加することが予想されることから7月末までは通常よりも1時間長い午後7時まで開館することにしています。
メイン会場 宇品島の人たちが警備を終えた警察官を見送る
21日まで3日間にわたって開催されたG7広島サミットでは、全国から派遣された警察官など最大2万4000人の態勢で警備が行われました。メイン会場となったホテルがある広島市南区の宇品島では、サミット開催の4日前から立ち入りが制限され21日に解除されました。規制の解除で島で警備にあたった警察官が所属に戻ることから、22日は地元の子どもなど多くの人たちが沿道に集まって警察官を見送りました。子どもたちは「ありがとう」や「感謝」と書かれた紙を掲げて沿道に立ち、警察官を乗せた車両に向かって手を振って見送っていました。警察車両に乗った警察官も敬礼して住民にあいさつし「ご協力ありがとうございました」などと呼かけていました。見送りに来た小学校6年生の児童は「ありがとうという気持ちで見送りました。『お疲れさまでした』という思いが伝わっていたらいいです」と話していました。また、見送りを企画した元宇品町の門隆興町内会長は「何事もなく終わりほっとしています。警備にあたってくれた警察官のおかげなので感謝しています」と話していました。
7つの被爆者団体が広島市で署名活動
広島県内の7つの被爆者団体は22日、核兵器禁止条約に批准するよう求める署名活動を広島市で行いました。広島市中区の平和公園で行われた署名活動には、県内の7つの被爆者団体のメンバー合わせて12人が参加し、公園を訪れた人たちに署名を呼びかけました。団体によりますと午後0時半からの30分ほどで56人分の署名が集まり、年末にまとめて政府に提出する予定だということです。7つの団体のうち、広島県被団協=広島県原爆被害者団体協議会の佐久間邦彦 理事長は、21日閉幕したG7広島サミットについて「核兵器禁止条約を議論してほしいと要望していたが実現せず残念だった。一日でも早く核兵器がなくなる日が来るように頑張っていきたい」と話していました。
原爆資料館の「芳名録」公開 8か国首脳らが記帳
ウクライナのゼレンスキー大統領が21日に広島市の原爆資料館を訪問した際に記帳した「芳名録」が広島市役所で公開されました。また、G7広島サミットの招待8か国の首脳とその配偶者、それに国連などの国際機関の代表らが記帳した「芳名録」も公開されました。いずれの芳名録もA4サイズで平和公園に届けられた折り鶴を再生した紙で作られています。
ウクライナからの避難者「G7に出席した決断 評価したい」
21日に閉幕したG7広島サミットにウクライナのゼレンスキー大統領が参加したことについて、都内にいるウクライナの避難者からは、サミットでの一連の外交が戦争の終結につながることを期待する声などが聞かれました。去年4月にウクライナから日本に避難し、「日本ウクライナ友好協会」が運営する都内の料理店で働くヴィクトリア・ステブリュクさんは、21日、G7広島サミットに出席したゼレンスキー大統領の様子をテレビで見守ったということです。22日、NHKの取材に応じたヴィクトリアさんは「ゼレンスキー大統領が日本に来てくれたことはとてもうれしかったですし、G7という大きな国際会議に出席した決断を評価したいです」と話していました。そのうえで「戦争によって多くの人が亡くなっているウクライナの現状をほかの国々のリーダーに直接伝え、さらなる支援やロシアへの制裁の継続を呼びかけることができたのは重要な機会だったと思います」と述べ、サミットでの一連の外交が戦争の終結につながってほしいと期待を寄せていました。
平和公園のフェンス撤去 市民や観光客らでにぎわう
広島市の平和公園はG7広島サミットの警備に伴って開幕の前日の18日から公園を囲むようにフェンスが設けられ、立ち入りが制限されていました。この制限は21日夜に解除されフェンスを撤去する作業も始まったことから22日は市民や観光客らが公園を訪れていました。訪れた人たちはG7の首脳らが献花した慰霊碑の前まで足を運んだり、サミットのモニュメントの前で写真を撮ったりしていました。2歳の子どもと一緒に訪れた市内に住む夫婦は「首脳が訪れたことで被爆地のことが世界に伝わったらいいなと思います。子どもが大きくなったら今回のことを伝えたいです」と話していました。また、インドネシア出身の女性は「きのうは入れなかったのできょう来ました。首脳が訪れた場所に来ることができてうれしいです」と話していました。広島サミット県民会議によりますと、フェンスの撤去は出入り口の周辺から優先的に行い、1週間から2週間ほどかけて作業を進めるということです。
ゼレンスキー大統領の記帳内容公表
ウクライナのゼレンスキー大統領が、21日、広島市の原爆資料館を訪問した際に「芳名録」に記帳した内容が公表されました。それによりますと「資料館の訪問に深く感銘を受けた。世界中のどの国も、このような苦痛と破壊を経験することがあってはいけない。現代の世界に核による脅しの居場所はない」と記しています。ロシアのプーチン大統領が核戦力の使用も辞さない構えを見せる中、被爆地・広島で核の脅しに屈しない姿勢を示しています。
避難者「世界が侵略に立ち向かい平和訪れるのでは 希望わいた」
21日夜、G7広島サミットに参加したウクライナのゼレンスキー大統領が、ロシアを改めて非難したうえで、将来的にウクライナを復興させる決意を示したことについて、埼玉県内の避難者からは、サミットを契機に各国の対応に変化が起きて侵攻が終わってほしいという希望の声が聞かれました。ステファニヤ・シトニツカさん(75)は、埼玉県内で暮らす娘を頼って、去年5月、キーウ州から埼玉県川口市に避難しました。21日夜、同じく避難してきたイリーナ・スヴィドランさん(65)とゼレンスキー大統領の会見をパソコンで見守り、ステファニヤさんは、「大統領の話が心に響きました。ウクライナで起きていることをサミットの場から世界に伝えられてよかったと思います」と話していました。そのうえで、「すべての国々が大統領の話に耳を傾け、ウクライナを支援してほしいです。今回のサミットによって各国の対応に変化が起きてウクライナ人の安全確保やロシアへの制裁などにつながるのではないかと期待しています。終わりのない戦争はないはずです」と話していました。また、イリーナさんは、「来日したことで、オンラインでは話せないことまで協議できたのではないでしょうか。世界が侵略に立ち向かい、平和が訪れるのではないかと希望がわきました」と話していました。
●「G7は世界の総意ではない」 ロシア紙、グローバルサウスは異なる立場強調 5/22
広島市で閉幕した先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)について、ロシアの経済紙コメルサント(電子版)は21日、「和平交渉ではなく、武力でロシアを敗北させるというウクライナの仲間たち(G7)の決意を示した」と論評した。一方で同紙は「グローバルサウス(南半球を中心とする新興・途上国)の多くがG7と異なる立場をとっている」とし、G7は世界の総意ではないとする見方を強調した。
記事は、バイデン米大統領がウクライナのゼレンスキー大統領に米戦闘機F16の操縦訓練を含む追加軍事支援を表明したことがサミットの「クライマックス」だったと指摘。欧州連合(EU)のミシェル大統領らも軍事支援や対露制裁の強化を約束したと伝えた。
さらに、G7首脳声明について「ロシアに戦闘停止や撤兵を求めながら、将来的な和平交渉に関しては一切言及していない」とし、「G7首脳陣が打ち出したのは、ウクライナ主導の和平案だけを認めるという立場だ」と批判的に論じた。
記事は一方で「サミットに招待されたインドのモディ首相は対話による紛争解決を求めた」とし、グローバルサウスではこうした立場が一般的だと主張した。
記事は最後に「ロシアに『戦略的敗北』を与えようと固執するG7首脳陣は、ウクライナの指導者を彼らの会合に出席させ、とうとう広島での行事をプロパガンダ(政治宣伝)ショーに変質させた」などとする声明を露外務省が発表したとも伝えた。
●限界と矛盾がいよいよ深刻に―G7広島サミットについて 志位委員長が談話 5/22
日本共産党の志位和夫委員長は21日、「限界と矛盾がいよいよ深刻に―G7広島サミットについて」と題する談話を発表しました。
(1)G7広島サミットは、米国を中心とする軍事ブロックに参加する諸国で構成されるG7という枠組みが、グローバルな諸課題に対処するうえで、深刻な限界と矛盾に直面していることを浮き彫りにするものとなった。さらに日本固有の異常な立ち遅れを露呈するものともなった。
(2)広島が開催地であることから、内外の多くの人々が核兵器廃絶に向けた前向きのメッセージを期待したが、G7の対応はこの期待に真っ向から背くものだった。核兵器による威嚇によって他国を抑えようという「核抑止力」論を公然と唱える一方、世界の92カ国が署名し、すでに国際法としての地位を確立している核兵器禁止条約を無視する姿勢をとったことに、失望と批判が広がっている。被爆者のサーロー節子さんは、「自国の核兵器は肯定し、対立する国の核兵器を非難するばかりの発信を被爆地からするのは許されない」と語ったが、この批判は、G7広島サミットの本質をズバリ言い当てたものである。「核抑止力」論の根本的な見直しと、核兵器禁止条約に正面から向き合う姿勢が、G7諸国に強く求められている。
(3)世界の平和秩序をめぐって、G7広島サミットが、「ロシアによるウクライナに対する侵略戦争」を強く非難したこと、世界のいかなる場所においても「力による一方的な現状変更の試み」に反対したことは当然である。同時に、G7諸国が、これらの動きに、軍事ブロックの強化で対応していることは、世界の分断をより深刻にし、軍事対軍事の危険な悪循環をつくりだしていることを、きびしく指摘しなければならない。G7首脳宣言は、「インド太平洋」の安全保障の枠組みについて、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)という、中国を排除・包囲するブロック的対応の危険をはらんだ枠組みを前面に押し出した。サミット期間中に、中国を念頭にした包囲網として構想されている「日米豪印戦略対話」(クアッド)の首脳会談を開いた。同時に、G7首脳宣言は、「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)に沿った「協力を促進」することを明記した。AOIPは、米国、中国も含めて、この地域に関係するすべての国を包摂する平和の枠組みとして提唱されているものだが、G7首脳宣言がこの構想への協力を明記したのは、ASEAN諸国の力を無視しては、地域の安全保障を語ることができなくなっていることを示している。ここにはG7が直面している矛盾が示されている。排除の論理でなく、地域のすべての国を包摂する安全保障の枠組みを強化していくことこそ、東アジアに平和をつくる大道であることを強調したい。
(4)議長国をつとめた日本の問題について、2点にしぼって指摘したい。第一は、ウクライナ支援の問題である。「ウクライナに関するG7首脳声明」は、「我々は、必要とされる限り、ウクライナが求める、財政的、人道的、軍事的及び外交的支援を提供するという我々のコミットメントを新たにしている」とのべているが、憲法9条をもつ日本の対応は、国際紛争の助長を回避する立場に立ち、あくまでも非軍事の人道・復興支援に徹するべきだということを強調しておきたい。第二に、G7広島サミットは、日本が一連の重要な問題でG7の他の諸国と比べても異常な立ち遅れにあることを浮き彫りにするものともなった。気候危機打開で焦眉の課題となっている石炭火力発電所からの撤退期限が、日本の反対でG7の合意とならなかった。G7首脳宣言は、「世界中の女性及び少女並びにLGBTQIA+の人々の人権と基本的自由に対するあらゆる侵害を強く非難する」と明記しているが、日本がG7諸国で、唯一同性婚が法律で認められておらず、性的マイノリティーへの差別を禁止する法律がないことは、国内外で大きな問題となっている。G7首脳宣言は、「難民を保護し、避難を強いられた人々や受入国及びコミュニティーを支援し、難民及び避難民の人権及び基本的自由の完全な尊重を確保」すると明記している。日本で進められている難民・外国人の命を脅かす「入管法改悪案」は、この宣言に真っ向から反するものといわなければならない。日本政府は、環境、ジェンダー、人権などの諸課題で、こうした異常な立ち遅れを直視し、その打開のための取り組みを真剣に行うべきである。
●理想と現実、広がる溝 「核なき世界」壁高く 広島サミット 5/22
被爆地・広島で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、核軍縮に関する初の独立文書「広島ビジョン」を打ち出して閉幕した。
岸田文雄首相は21日の議長記者会見で「歴史的な意義を感じる」と強調。ただ、「核兵器なき世界」という自身の「理想」と、核依存から脱却できない国際社会の「現実」との溝は広がるばかりだ。
「世界が全員、広島の市民となった時、地球上から核兵器はなくなるだろう。そうした思いで世界の首脳たちに集まっていただいた」。首相は平和記念公園で原爆ドームを背景に行った会見の冒頭、核廃絶を目指すと力説した。
首相は広島ビジョンについて「理想の実現に向けたG7首脳の決意、行動を示す力強い歴史的な文書になった」と誇った。地元記者が「日本は核抑止力への依存を続け、広島が願う核廃絶への思いとは相いれない」と質問すると、首相は「安全保障上の課題に対処すること、核兵器のない世界という理想に現実を近づけていくべく取り組むこと、これは決して矛盾するものではない」と反論した。
ウクライナに核使用の脅しを続けるロシアに対し、G7が結束して「平和」のメッセージを発したのは一定の成果と言える。G7首脳全員による原爆資料館見学も初めて実現した。バイデン米大統領は「世界から核兵器を最終的、永久になくせる日に向け、共に進んでいこう」と記帳した。
広島ビジョンはロシアの核威嚇を「危険で受け入れられない」と非難した。ただ、核軍縮の進め方については「安全が損なわれない形」との条件が付され、「防衛目的」や「侵略抑止」の場合は使用が容認されるとの立場を盛り込んだ。核保有国の米英仏との「妥協の産物」であることは間違いない。
核の脅威は増し、理想実現への壁は高い。中国は核戦力を増強し、北朝鮮も核・ミサイル開発を加速。ロシアは新戦略兵器削減条約(新START)履行を停止した。米国の有識者は「首相の理想は、世界の現状からかけ離れている」と指摘。日本政府内からも「核抑止と廃絶は両立しない」との声が漏れる。18日の日米首脳会談では、米国の「核の傘」の重要性を確認。首相は「厳しい安全保障環境の下、国民の安全を守り抜く」と核抑止に頼る姿勢を重ねて示した。
広島ビジョンについては厳しい評価もある。国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のダニエル・ホグスタ暫定事務局長は取材に「とても期待外れで怒りを覚える」と酷評。首相が昨年8月に打ち出した核廃絶に向けた行程表「ヒロシマ・アクション・プラン」に触れて「(同ビジョンは)それ以下だ」と語った。 
●G7広島サミット閉幕 経済安全保障の強化など実効性が課題に 5/22
21日に閉幕したG7広島サミットでは、ウクライナ侵攻や米中対立が続くなか、経済安全保障の強化やデジタル分野のルールづくりなどにG7として結束して取り組む姿勢を打ち出しました。
今後はその実効性が問われることになります。
ウクライナのゼレンスキー大統領のほか、インドや韓国など招待国の首脳らも出席して行われたG7広島サミットは首脳宣言を発表し、3日間の日程を終えました。
経済分野では経済安全保障について、ウクライナ侵攻をきっかけにぜい弱性が浮き彫りとなった重要鉱物や半導体などのサプライチェーン=供給網を新興国や途上国とも協力して強化することで一致しました。
また、中国を念頭に禁輸などの措置で他国の政策や意思決定に影響を与えようとするいわゆる「経済的威圧」に対抗するため、 G7として被害を受けた国々を支援する「調整プラットフォーム」を立ち上げることで一致しました。
さらにデジタル分野では、ChatGPTなど生成AIの急速な普及を受けて、「広島AIプロセス」として信頼できるAIの普及に向けて閣僚級で議論し、年内に報告をまとめることで一致しました。
一方、気候・エネルギーの分野では、石炭火力発電の廃止時期の明示や、電気自動車の導入の数値目標を設定するよう求める欧米諸国と、慎重な立場の日本との間で調整が続きました。
しかし、ウクライナ侵攻や中国が影響力を拡大させるなか、G7の結束などを優先させようという思惑もあり、サミット直前に開かれた閣僚会合の内容を引き継ぐ形で決着しました。
議長国の日本としては、「グローバル・サウス」とも呼ばれる新興国や途上国とも連携して経済分野の課題に結束して取り組む姿勢を強く打ち出せたと評価していますが、今後はその実効性が問われることになります。
●「反ロシア、反中国の悪意に満ちている」ロシア外務省がG7広島サミット批判 5/22
ロシア外務省はG7広島サミットについて声明を発表し、「反ロシア、反中国の悪意で満ちている」と批判しました。
ロシア外務省は21日、G7広島サミットの閉幕にあわせて声明を発表し、「その主な結果は反ロシア、反中国の悪意に満ちた一連の声明だ」「ロシア恐怖症、中国恐怖症のヒステリーをあおることに全力を注いでいる」と批判しました。
そのうえで、G7について「アメリカ主導でロシアへの制裁や、ハイブリット戦争を計画する作戦本部だ」と述べ、ウクライナのゼレンスキー大統領をサミットに参加させたことで「プロパガンダのショーになり果てた」と反発しました。
また、インドなど「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国をめぐっては「G7は彼らを取り込み、ロシアや中国との関係発展を阻むために恥ずかしげもなく媚を売っている」と主張。ロシアとしては、欧米とグローバルサウスとの接近を警戒しているものとみられます。
一方、ロシア連邦捜査委員会は21日、ウクライナ侵攻をめぐる戦争犯罪の疑いでプーチン大統領に不当に逮捕状を出したとして、ICC=国際刑事裁判所のカーン主任検察官ら2人について本人不在のまま起訴し、指名手配したと発表しました。 
●G7広島サミット閉幕 デジタルやAIについても議論 5/22
G7広島サミットが21日に閉幕した。ウクライナのゼレンスキー大統領の来日もあり、ロシアの侵略戦争に直面するウクライナの支援が最大のトピックとなったが、その他にも、現在のグローバルな課題への対応方針などが示されている。
20日に発表されたG7広島首脳コミュニケにおいては、ロシアの違法な侵略戦争に直面する中で、必要とされる限りウクライナを支援す方針や、「核兵器のない世界」という目標に向けて、軍縮・不拡散の取組を強化すること、経済的強靱性や経済安全保障へのアプローチにおいて協調すること、将来のクリーン・エネルギー経済への移行を推進することなどを確認している。
AIについては、民主的価値に沿った「信頼できる人工知能(AI)」という共通のビジョンと目標を達成するため、包摂的なAIガバナンス及び相互運用性に関する国際的な議論を進める。
AI、メタバース、量子情報科学技術など、デジタル全般において、「デジタル経済のガバナンスは、我々が共有する民主的価値に沿って更新し続けられるべき。公正性、説明責任、透明性、安全性、オンラインでのハラスメント、ヘイト、虐待からの保護、プライバシー及び人権の尊重、基本的自由、そして個人データの保護を含む」とし、安全性やセキュリティが優先されること、各プラットフォームが子どもの性的搾取や虐待の脅威に対処することなどを求めている。
また、「責任あるAI」の推進のため、透明性、開放性、公正なプロセス、公平性、プライバシー及び包括性を推進する手続の重要性の認識などを強調。加えて、「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」を促進することの重要性を改めて表明している。
●G7、中国の「経済的威圧」に対抗 新たな枠組み創設 5/22
主要7カ国(G7)の首脳らは、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を広島に招き、ロシアに対して強いメッセージを発した中で、もう一つのライバル国のことも念頭に置いていた。中国だ。
イギリスのリシ・スーナク首相は中国について、世界の安全保障と繁栄の面で「現代最大の挑戦」を突きつけており、「国内外で権威主義的な姿勢を強めている」と述べた。
世界で最も豊かな民主国家の指導者たちは今回、一つだけでなく二つの声明で、インド太平洋や台湾といった争いのある問題について、中国に対しその姿勢を鮮明にした。それらのメッセージの核にあったのは、中国の「経済的威圧」に対する考えだ。
G7にとってこれは、バランスを取るのが難しい問題だ。貿易を通し、各国の経済は中国とは切り離せない状態となっている。一方で、中国との競争は激しさを増しており、人権など多くの問題で意見が対立している。
そして今、G7各国は自分たちが人質に取られているのではないかと懸念している。
中国は近年、自分たちの機嫌を損ねた国に、臆面もなく貿易制裁を科している。韓国に対しては、米国製ミサイル防衛システムを導入した際に発動。オーストラリアに対しても、最近の関係が冷え込んだ時期に制裁を科した。
リトアニアが台湾に事実上の大使館を設置し、中国がリトアニアからの輸出品を拒んだ際には、欧州連合(EU)が特別な憂慮を示した。
こうしたことからすれば、「経済的依存関係の武器化」が「不安になるほど増加」しているとG7が非難したのは驚きではない。
このような威圧は、「G7メンバーや世界中のパートナーの外交・国内政策や立場の弱体化」を狙ったものだと、G7は主張した。
そして、「デリスキング」(リスク低減)を呼びかけた。これはG7サミットに出席したウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長が提唱しているもので、アメリカの「デカップリング」(切り離し)という考え方を穏健化したものだ。具体的には、外交での厳しい主張、貿易相手の多様化、通商とテクノロジー保護が含まれる。
G7はまた、威圧に対抗し、新興国と連携するための「調整プラットフォーム」を立ち上げた。実際にどう機能するかはまだ判然としないが、中国による妨害を回避するため、各国同士の貿易を増やしたり、資金を提供したりして、相互に助け合うことになりそうだ。
断絶は望まないことも強調
G7はさらに、鉱物や半導体など重要物資のサプライチェーンを強化し、ハッキングや技術盗用を防ぐためにデジタルインフラを増強することも計画している。
しかし、最大の武器は多国間の輸出規制だ。これは、特に軍事や諜報に使われる技術が「悪意ある人物」の手に渡らないよう協力することを意味する。
アメリカはすでに、中国への半導体と半導体技術の輸出禁止によって、これを実行している。日本とオランダもこれに加わっている。中国は反発しているが、G7はこうした取り組みを続けるだけでなく、強化していくと表明している。
G7はまた、研究活動を通じて共有される技術の「不適切な移転」についても、引き続き取り締まるとした。アメリカなど多くの国々は産業スパイに悩まされており、中国のために技術機密を盗んだとみられる人物を収監している。
同時に、断絶は望んでいないことも、G7首脳らは明確にした。
経済的威圧に関して述べるときには、中国を名指ししなかった。中国を直接指弾しないための配慮とみられる。
中国に言及した場合は、含みのある表現でG7としての立場を示した。
自分たちの政策については、「中国に害を与えるようとするものでも、中国の経済的進歩と発展を妨げようとするものでもない」と説明。中国を刺激しないよう努めた。また、「デカップリングでも内向き志向でもない」とした。
一方で、「国際ルールを守りながら成長する中国は、世界にとって利益だ」と述べるなど、中国の協力を促すために圧力もかけた。
加えて、「率直な」交流も呼びかけた。これは中国に対して率直に懸念を伝えられる関係の構築を目指すもので、緊張した空気の中でも対話手段を確保したいとの思いをうかがわせた。
G7のメッセージを、中国の指導者や外交官らが内心でどう受け止めるのかはわからない。しかし国営メディアはこれまで、中国を批判しながら経済連携の果実を得ようとする西側諸国を非難してきた。
今のところ中国の公式な反応は、いつも通りの怒りに満ちた言葉を発する、というものになっている。
中国は明らかにG7の声明を予測していた。そして、国営メディアや各国の中国大使館はサミット開幕前、アメリカによる経済的威圧や偽善を非難する文書を発表した。
20日夜には、中国を「中傷や攻撃」しているとG7を非難。議長国の日本に苦情を申し入れた。
他のG7諸国に対しても中国は、アメリカによる「経済的威圧の共犯者」にならないよう要望。「集団で排他的ブロックを形成すること」や「他国を封じ込め服従させること」をやめるよう求めた。
注目すべきは、中国も独自の同盟を他の国々と作ろうとしていることだ。G7サミットが開幕した先週末には、中央アジア諸国を集めて会議を開催した。
G7の計画がうまくいくのかは、まだわからない。しかし、中国の浸食に対抗する明確な戦略を求めてきた国々には歓迎されそうだ。
米シンクタンク「ジャーマン・マーシャル財団」のインド太平洋および中国の専門家であるアンドリュー・スモール氏は、今回のサミットの声明を「真のコンセンサスが感じられる」と称賛。G7の「中道的」な見解を表すものだとし、次のように述べた。
「『デリスキング』が何を意味するのか、機密技術の輸出制限をどこまで行うべきか、経済的威圧にどのような集団的措置を取る必要があるのかをめぐって、まだ大きな議論となっている」
「だが、先進工業国が中国との経済関係のバランスをどう取り直すかの明確な枠組みができた」
●G7共通の懸念言及は当然と日本、中国がサミット巡り抗議 5/22
広島で開催された主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)で「中国関連問題」が取り上げられたとして中国が日本の大使を呼び出して抗議したことに対し、日本側はG7が共通の懸念事項に言及するのは「当然のこと」で、将来も変わらないと説明した。
中国外務省や在中国日本大使館の発表によると、21日に孫衛東・中国外務次官が日本の垂秀夫駐中国大使を呼び出し抗議。日本大使館によると、垂大使は懸念に言及しないことを求めるのであれば、「まずは中国側が前向きな対応を行うべき」と反論した。
垂大使は、日中関係が厳しい時こそ民間交流を推進していくことが重要との認識を示した上で、中国側が日中関係が悪化すればすぐに民間交流や文化交流の実施を妨げていることを指摘、中国側に善処を求めた。
中国外務省によると、孫氏は日本がG7サミットで関係国とともに「中国を中傷、攻撃し、内政に著しく干渉した」と批判。「国際法の原則や日中間の4つの政治文書の趣旨に反している」と主張した。
日本の行動は中国の主権、安全保障、発展の関心事に有害だとし「強い不満と断固たる反対」を表明した。
その上で日本に対し、中国に関する理解を是正し、戦略的自立を確立し、1972年の日中共同声明をはじめとする4つの文書の原理に忠実に従い、「建設的態度」で両国関係の安定的発展を誠意をもって推進するよう訴えた。
松野官房長官は22日午前の会見で「中国との間では主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含め、対話をしっかり重ね、共通の課題については協力する建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていくというのがわが国の一貫した方針だ」と述べた。
●信じられないほど「持っている」岸田首相のG7広島サミットをガチンコで総括  5/22
ゼレンスキーの来日で変わった
5月19日から開かれていたG7広島サミットが21日、閉幕した。連日テレビなどでも報道があったが、広島サミットとは何だったのか、振り返っておこう。
広島サミットはG7首脳が集まるものであり、その前後に、G7の各担当大臣会合がある。それらは日本各地で4月から開催されており、12月まで続く。そのため、ほぼすべての霞が関官庁が、今年はサミットを中心に動いている。広島サミットの時点までに行われた各大臣会合の成果は、広島サミットの宣言にも取り入れられている。
では、広島サミットでは何が話されたのか。実際に中身を聞いていなくても、サミット概要と成果文書を見ればわかる。といっても、それだけでもかなり膨大なので、本稿ではそのうちに特に重要ものを取り上げておこう。
こうした文書が苦手な人もいる。そうした人向けに、5月17日に筆者の「高橋洋一チャンネル」で《広島サミットの注目は原爆資料館に連れて行けるかどうか》をアップしている。
そこでは、広島でしかできないこととして、G7首脳を原爆資料館本館に連れて行けるかどうかをテーマにした。さらにそのうえで、核廃絶はあくまで長期的な目標として、まずは核保有国の責任、核共有・核抑止に議論を持っていくべきとした。
筆者が出演した他のネット番組では、「原爆資料館本館に連れて行き、それを全世界に公開できるかどうか」「バイデン大統領から、原爆という戦争犯罪に対し謝罪があるかどうか」などもポイントだと述べた。
それでは、サミット文書の検討に入る前に、筆者がYouTubeなどでテーマとしたことが実際どうなったのか見てみよう。
G7首脳が原爆資料館に行ったのは事実だが、その中身はほとんど非公開だ。漏れ聞くところによると、本館ではなく東館だったようだ。謝罪どころか、各国首脳の反応も出てきていない。この点はやや不満が残るが、原爆資料館にG7首脳すべてを連れて行った点は評価できる。
これだけでは岸田首相もイマイチと思っていただろうが、そこに急遽、ウクライナのゼレンスキー大統領の訪日が決まった。これは大きなサプライズであり、原爆資料館視察の足りないところを補ったと言ってもいいだろう。21日のセッション8「ウクライナ」には、ゼレンスキー大統領が参加した。
衝撃的なモディ首相との写真
それ以上に衝撃だったのは、岸田首相がインドのモディ首相と会談したことだ。ゼレンスキー大統領とモディ首相の握手の写真は凄い。
もちろんインドはどの国とも等距離に外交するので、西側に与したとは簡単にいえないが、それでもロシアにとってはイタい写真だ。これだけでも、今回の広島サミットは開催意義があったと言えるだろう。
さて、今回作成された文書のなかで広島サミットを概観するには、「G7広島首脳コミュニケ」がいい。まずこれをみて、さらに個別文書を見ればいい。
ゼレンスキー大統領が参加したこともあって、冒頭に〈ウクライナ〉の項目が置かれている。その中にはこう書かれている。
《我々は、国連憲章を含む国際法の深刻な違反を構成する、ロシアによるウクライナに対する侵略戦争を、改めて可能な限り最も強い言葉で非難する。》
《我々は、包括的で、公正かつ永続的な平和をもたらすために必要とされる限りの我々の揺るぎないウクライナへの支持を再確認する。》
要するに「ロシアは進行中の侵略を止めること。また国際的に認められたウクライナの領域全体から即時、完全かつ無条件に撤退せよ。それまでG7は支援する」ということだ。
次が、岸田首相がこだわった〈軍縮・不拡散〉が述べられる。
《我々は、核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンと共に、全ての者にとっての安全が損なわれない形で、現実的で、実践的な、責任あるアプローチを採ることによる、核兵器のない世界の実現に向けた我々のコミットメントを表明する。》
まあ、将来目標は核のない世界だが、それまでは核保有を認めて核軍縮現実路線だ。
もう一つのポイントが中国だ。これは、〈地域情勢〉のところで書かれている。
《我々は引き続き、東シナ海及び南シナ海における状況について深刻に懸念している。》
《我々は、力又は威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対する。》
《我々は、国際社会の安全と繁栄に不可欠な台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認する。》
いずれも中国が嫌がることが書かれている。さらに、
《我々は、中国に対し、ロシアが軍事的侵略を停止し、即時に、完全に、かつ無条件に軍隊をウクライナから撤退させるよう圧力をかけることを求める。》
と中国への圧力もある。
お花畑の議論
名指しされたロシアと中国は広島首脳コミュニケに反発している。
《プーチン大統領「極めて強力な反ロシアプロパガンダ」欧米非難》《中国 G7首脳宣言は「中国を中傷し攻撃するもの」と強く反発》といった記事を見れば明白だ。今回の広島サミットが、先進国G7だけではなく、豪州、ブラジル、コモロ、クック諸島、インド、インドネシア、大韓民国、ベトナムの首脳の参加を受入れたことも、中ロの孤立を際立たせた。
また、G7の成果については、反発だけでなく的外れなコメントまで出ている。
《G7サミット「期待裏切られた」 被爆者団体、失望と怒り》
《ゼレンスキーだけ呼んでどうする》
《ドイツに行ったらアウシュビッツに行くでしょ》
《日本が保有するF-16》
上記のコメントのうち、まず一つ目の「期待を裏切られた」というのは、核全廃は将来の理想目標であって、それまでは核抑止・核共有が現実解ということをまったくわからない「お花畑」の議論だ。
そして二番目の「ゼレンスキーだけ呼んでどうする」は、前維新代表の松井一郎氏のいうように、ロシアがウクライナから完全撤退した後に主張すべき話だ。
また最後の二つは「無知だが意見だけは言いたい」という典型的な「左巻き」のものだ。
今回のG7サミットに対する論評で、リアルな話と夢想の話のどちらを話しているのかをリトマス紙のように判定できるのはよかった。
それにしても、ゼレンスキー大統領が来日したのは、岸田首相が「持っている」証だ。岸田首相はこのところ、支持率上昇、株価上昇、コロナ減退と「持っている」。
広島サミット後の今国会で解散すると、安倍元首相の1周忌あたりに投開票日が設定できるうえに、懸案のLGBT法案もスキップできる。こうした「惑星直列」といういえる好機は滅多にないだろう。岸田首相はどう判断するのだろうか。
 
 

 

●G7広島サミットを彩った首脳の「スーツ着こなし」対決!ベストドレッサーは? 5/23
G7広島サミット(先進7カ国首脳会議)が5月21日、閉幕した。ウクライナのゼレンスキー大統領が来日し、全世界が注目する大舞台となった。首脳たちはSNS発信に余念がなく、イギリスのスナク首相の赤い靴下など、ファッション関連の話題にも事欠かなかったサミットといえよう。本稿では、各国のリーダーたちの「スーツ」に独自に着目した。東京・銀座のテーラーによる「スーツの国際政治学 G7サミット編」をお届けする。
G7首脳間でも年齢で異なるスーツのスタイル
国際情勢やビジネス環境は、目まぐるしく変わっています。それに伴い、フォーマルな装いも変化しているといわれています。世界の政治指導者が一堂に会するG7サミット、各国首脳は果たして、どのようなスーツスタイルで挑んだのでしょうか。
国際会議での首脳の着こなしほど、現代のフォーマルスタイルを表す機会はないでしょう。この度のG7広島サミットで最も印象的だったのは、年齢(のグループ)に応じたスーツのスタイリングが顕著に見られたことです。40代から50代前半の若手フレッシュ組と、60代から80代のベテラン組に大きく分かれたといえます。それぞれの良さについて説明します。
上の写真をご覧ください。フレッシュ組の楽しそうな一コマは、厳島神社の様子です。左からイタリアのメローニ首相、イギリスのスナク首相、そして、フランスのマクロン大統領。3者とも重すぎないスタイリングで、そのキモは、ナローラペルのジャケットにあります。ナローラペルとは、一言で言うと、細い上着の襟のことです。「仕事終わりに、飲み直そうか?」なんて会話が聞こえてきそうなフレンドリーさで、山積する政治課題も和気あいあいと解決できそうです。
対して、こちらはベテラン組の2トップ、われらが岸田文雄首相とアメリカのバイデン大統領です。伝統的な太めのラペル幅ジャケットと、ポイント長めのシャツの襟。両者とも、旧来の政治家然とした装いで安定感はピカイチ、これなら安心して日米関係を任せられそうな予感がいたします。
こちらもフレッシュ組のショット。カナダのトルドー首相(真ん中)は、若い頃はタトゥーにハマったり、スノボのインストラクターをしたりと、政治家2世でありながらやんちゃキャラの過去を持っています。そのせいか、オーソドックスなスーツスタイルでも、必ず靴下で個性を表現するのが有名です。小心者の日本人としては、国宝である厳島神社の欄干に無造作に腰掛ける首脳には冷や汗が出ますが、このポーズのおかげでトルドー首相のトレードマークソックスが「チラ見え」しているので、良しとしましょう。ネクタイとソックスの色合いが絶妙にマッチしています。
目立たない部分こそおしゃれを
さて、靴下といえば、今回最も注目を浴びたのが、イギリスのスナク首相です。日本ならではの「靴を脱ぐ文化」で、ネクタイとの真紅コーデがバッチリと写りました。広島到着の際に、小雨が降る中差していた、裏に大胆なユニオンジャック柄を配した傘にも感激しました。靴下や傘の裏といった目立たない部分こそ、おしゃれを楽しむのは、いかにも英国紳士といったところです。さらに、この靴下は広島カープのロゴ入り。岸田首相お膝元の野球チームへ敬意を込めた、これ以上ない粋な計らいです。スーツのおしゃれさも、G7首相のうちで群を抜いています。
スナク首相のトレードマークのナロータイとスリムなシルエットのスーツは、イギリスの伝統的な政治家らしからぬスタイリングともいえ、デザイナーズブランドや「オフ サヴィルロウ」(背広の語源となるテーラーが軒を連ねるサヴィルロウ通りから少し外れている、やや前衛的なテーラーをこう称します)で仕立てているそうです。出自や着こなしがこれまでのイギリス首相と一線を画すからこそ、政治手法にも非常に期待させられます。大富豪の娘さんである奥様は一時期ファッションブランドも経営していて、ファッションに敏感なパワーカップルらしいコーディネートをいつも楽しませてくれるご夫妻です。
今回、G7唯一の女性首相であるイタリアのメローニ首相にも触れます。サミットに先立ち、岸田首相との2国間会議で着ていたのはネイビーのブレザースーツでした。メタルボタンのダブルブレストは気迫あるスタイリングです。また20日の記念撮影では美しいサーモンピンクが映えるコートジャケット&パンツの装いがお似合い(記事冒頭写真)。イタリアでは首相に就任してから、装いがかなり洗練されたといわれています。15歳から働きながら政治活動をしてきたため、労働者階級の支持基盤が厚く、反感を恐れてかあえて公式発表はされていませんが、ジョルジオ・アルマーニを着ているのはイタリア国民の多くが知るところ。イタリア国産高級ブランドでマニッシュかつ上質な服装をまとって国際会議に臨むメローニ首相は、女性躍進のイメージをしっかり根付かせ、かなり好感が持てます。
G7広島サミットを彩った首脳の「スーツ着こなし」対決!ベストドレッサーは?
後列左からフランスのマクロン大統領、米のバイデン大統領、カナダのトルドー首相、前列左からインドネシアのウィドド大統領、日本の岸田首相、コモロのアスマニ大統領 Photo:WPA Pool/gettyimages
濃紺しか着ない大統領といわれるマクロン大統領は、今回もネイビースーツにネイビータイのブレないコーデでした。お隣のブルースーツのバイデン大統領はスーツの影響で表情まで明るく見えるから不思議です。余談ですが、バイデン大統領のネクタイはストライプが向かって左から右に下がるアメリカンストライプ、右下に見えているコモロのアザリ大統領のネクタイは右から左に下がる英国式レジメンタルです。
ダークカラーとシャツは「無地」
G7首脳の中では、最も中庸なスタイリングと思われるのがドイツのショルツ首相です。ドイツが誇る有名ブランド、ヒューゴ・ボスのスーツを着ているといわれています。岸田首相より1歳若いだけなのですが、スーツのカットの差で見た目はフレッシュ組に近い印象を受けます。
ここまでご覧になってお気づきと思いますが、国際首脳会議の場ではダークカラーのスーツが基本となります。中でも、9割のリーダーが濃紺スーツを選ぶと言っても過言ではないでしょう。濃紺の次に見られるのはチャコールグレースーツです。そしてシャツは白または薄いブルー。いずれも無地です。今回の広島サミットでもこの2色のスーツとシャツに、各国首脳ともネクタイで変化をつけるというスタイリングでした。
中でも特に、広島平和記念資料館を訪れた際と、ゼレンスキー大統領を迎えた装いは各国首脳とも慎重でした。
この二つのテーマに共通するのは戦争です。ここでは何より畏敬の念と和平への思いを込めた服装が最重要テーマになります。各国首脳のネクタイも明るい色や目立つ柄はなく、落ち着いた印象のVゾーンとなっていました。それ以外の場面で岸田首相は、小紋柄をはじめソリッドなカナリヤイエローやロイヤルブルーのネクタイをシーン別に選んでおり、ネイビースーツの中にも来賓やシーンに合わせてコーディネートする姿が見られました。安定感あるスーツ姿の中に、自身の主張が控えめに込められている印象を受けました。
トップ同士が集まる場面で最も大切な服装プロトコルは、相手への敬意です。ここに間違いが生じないよう、ネイビー無地を選ぶ首脳が多いわけですが、やはり装いは個性でもあるため、ルールの中で自分らしさを出すことはとても大切だと思います。
ベストドレッサーはインドネシア大統領?
今回、到着時のネクタイに赤を選んでいたのはトルドー首相とスナク首相でした。赤はそもそも情熱の色で、信頼の紺との組み合わせは、政治家が好む色です。それだけではなく、議長国である日本の国旗も意識したネクタイ選びだったのではないでしょうか。さらにスナク首相のカープソックスには岸田首相も心をわしづかみにされたはずです。たかがファッション、わざわざセレクトの意味を説明するケースの方が少ないと思いますが、されどファッション、意図をくみ取ってうれしいと感じる相手がいることも確かなのです。
このSNS時代に、服装で少しでも間違ったメッセージを出せば政局にもなりかねないと、保守的になるのはどこのリーダーも同じ気持ち。だからこそ一歩踏み込んでおしゃれをしてくださる来賓には、ホスト国民としてとてもありがたい気持ちになります。
その意味で、選びがちな色のスーツではないのに、今回の広島で一際おしゃれだったのは招待国インドネシアのジョコ・ウィドド大統領だと思います。グレージュの夏のモヘア素材と思われる美しい仕立てのスーツに、グリーン系のネクタイ。奥様のベージュとオレンジ系のコーデと絶妙に色がマッチしていて、最もエレガンスを感じるカップルのコーディネートでした。
アメリカの著名な心理学教授が提唱するメラビアンの法則では、人は見た目が9割といわれています。これをリーダーが戦略的に取り入れるかどうかで、国際会議でのパフォーマンスが飛躍的に上がるとすると、一国民として首脳のファッションもまた見逃せないポイントになるでしょう。
リーダーの装いは、単なるおしゃれとは違います。どんな印象に見せたいか、自分の個性をルール内でどう表現するか。あらかじめ与えられたフォーマット内でのスタイリング力を、文化や言語を超えて世界を舞台に発揮する醍醐味があります。
●玉川徹氏、G7広島サミットを総括…「広島で行われた価値?と疑問」 5/23
テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」(月〜金曜・午前8時)は23日、21日に閉幕したG7広島サミットを特集した。
サミットには、ウクライナのゼレンスキー大統領が参加した。スタジオではサミットでは核軍縮によるG7首脳の「広島ビジョン」が発表された。その中には「ロシアによる核兵器の使用の威嚇、ましてロシアによる核兵器のいかなる使用も許されない」とのメッセージが盛り込まれたことを伝え、これにロシアが反発していることを報じた。
コメンテーターで同局の玉川徹氏は、広島サミットについて「これが例えば日本じゃない国で行われたサミット、広島じゃない場所で行われたサミットであれば、成功と言えるような部分はあったと思います」とした上で議長を務めた岸田文雄首相について「しかし、広島出身の総理大臣があえて広島という場所でサミットを行った意味がどれぐらいあったんだろう?」と疑問を投げかけた。
続けて「広島ビジョンを出しましたけど、ロシアによる核の使用を許されないといった反面、じゃあG7側はどうだ?というと、防衛目的のための役割を果たしているんだということで、ある種、核を廃絶させていく方向への具体的な部分は何もでなかったことについて例えば、核廃絶を掲げるNGOの方々とか広島にいらっしゃる被爆者の団体の方々とかは、失敗ということまで言葉として使っている」などとし「私も被爆国に生まれた、育ったという歴史を考えれば、どれぐらいの広島で行われた価値があるんだろう?と疑問を持ちます」と指摘していた。
●岸田首相、ひと休み G7広島サミットで過密日程 5/23
岸田文雄首相は23日、午前中に首相官邸であった閣議に出席した後、公邸に戻った。政府関係者によると、首相は広島で19〜21日に開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)で過密な日程をこなしたため、23日は閣議と夕方の数件の打ち合わせを除いて休息に充てるという。防衛費増額の財源確保法案を採決した衆院本会議も出席しなかった。
休息時も秘書官を通じて常時連絡可能で、緊急対応が必要な場合はすぐに官邸に駆けつけるとしている。
首相は当初、オーストラリア・シドニーでの日本、米国、オーストラリア、インドの協力枠組み「クアッド」首脳会議に出席するため23日に日本を出発する予定だったが、バイデン米大統領が米債務上限問題への対応で訪豪を断念したため、クアッド首脳会議は急きょ20日の広島サミットの合間に前倒しで開催された。結果的に23日の首相日程に余裕ができていた。
●G7広島サミット 各地から広島に派遣の警察官 離県式  5/23
21日閉幕したG7広島サミットの警備のため、全国各地から広島に派遣されていた警察官の部隊の離県式が行われました。
3日間にわたって行われたG7広島サミットでは、全国各地から派遣された警察官を含む2万4000人が、会場周辺での警戒やウクライナのゼレンスキー大統領など首脳らの警備にあたりました。
坂町にある警察学校で行われた離県式には派遣部隊のうちおよそ200人が参加し、広島県警察本部の森元良幸本部長から代表の警察官に感謝状が手渡されました。
謝辞の中で森元本部長は、「首脳の移動は複雑で広範囲に及んだが、見事な連携で重層的な警備を実践してくれた。ここで得られた教訓を将来の警備に生かし、油断することなく力をさらに磨きましょう」と述べました。
このあと、派遣部隊の警察官は広島県警の幹部らに拍手で見送られました。
報道陣の取材に応じた森元本部長は、「警備は県民の理解と協力を土台にして初めて行うことが出来るものなので、県民の皆さんに心から感謝したい。県民の安心と安全を守り抜くという使命に変わりはなく、引き続き粉骨砕身の思いで臨んでいきたい」と話していました。
●G7サミットの報道 5/23
全国紙 欠落する本質的批判
「国際秩序を守る強い決意示した」(「読売」)、「秩序の維持へ結束示した」(「産経」)―。22日付の全国紙の社説・主張には、こんな見出しが並びます。被爆地・広島で開かれた主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)は、G7の深刻な限界と矛盾を浮き彫りにしましたが、各社の報道にそうした視点はなく、本質的な批判が欠落しています。
「読売」が、「世界の主要国とウクライナの首脳が一堂に会して、ロシアの侵略からウクライナを守り、国際秩序を維持する決意を示した意義は大きい」と評価したように、多くのメディアがウクライナとG7の「結束」を強調。「日経」は、岸田文雄首相がウクライナ支援の議論をけん引したとし、「ウクライナの要望を受け、欧米と協力してゼレンスキー氏(ウクライナ大統領)来日の環境を整えた労も多としたい」とねぎらいました。
一方で、G7諸国がこれらの問題で、ロシアや中国包囲のための軍事ブロックの強化で対応していることへの批判や告発はありません。世界の分断を深め、軍事対軍事の悪循環をつくりだしていることには目をつぶり、「結束」の固さを証明するために、「日本も殺傷力を持つ兵器の提供を実現するときである」(「産経」)とまで主張する始末です。
核兵器廃絶をめぐる議論については、「『核なき世界』の理想に向けて現実を近づける具体的な道筋は提示されなかった」(「朝日」)、「核軍縮に関する共同文書『広島ビジョン』は、『核兵器なき世界』に近づく新たな策を示していない」(「毎日」)など、一定程度、「核抑止」に縛られるG7を批判した報道も。しかし、各社そろって、肝心の核兵器禁止条約には一言も触れず、破綻した「核抑止力」論の根本的な見直しを問う報道はありません。日本の主要メディアの多くが世界の本流がどこにあるかを見失っています。
とりわけ「産経」は、「核軍縮に関するG7広島ビジョン」を「G7として必要な表明で結束を示した」と礼賛。加えて、「核の惨禍を避けるために、G7側が核抑止体制を整えざるを得ない点を岸田文雄首相らG7首脳は正直に説くべきだった」と、さらなる「核抑止力」論の強化を主張しました。
地方紙には批判も
一方で、地元紙の中国新聞は、「広島ビジョン」について、「(核兵器)保有国や米国の傘の下にいる同盟国の立場を肯定し、忖度(そんたく)するような記述には目新しさもない。ビジョンが、多くの原爆死没者が眠る広島の地名を冠するにふさわしいとは思えない」と指摘。西日本新聞も「(広島ビジョンは)被爆地の願いとは懸け離れていることを岸田首相は自覚しなければなるまい」と断じています。
広島の被爆者でカナダ在住のサーロー節子さんは、G7広島サミットは「失敗だった」と痛烈に批判。被爆地・広島から核兵器に固執する宣言が出されたことに、多くの被爆者が怒りの声をあげています。メディアが重く受け止めるべきは、こうした声ではないでしょうか。
●サミット感想巡り「抗議」 自民政調会長、麻生氏に 5/23
自民党の萩生田光一政調会長は23日の党会合で、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の評価を巡る麻生太郎副総裁の感想に「抗議」したと明らかにした。萩生田氏によると、麻生氏は22日の党会合で「2016年のG7伊勢志摩サミットではテレビで料理やお土産のことばかり報道されたが、広島サミットでは政治的なメッセージが多かった」と述べた。
これに対し、萩生田氏は「当時と状況が違う。料理や日本酒を紹介したことで大きな経済効果を上げた」などと説明したという。伊勢志摩サミットの際、萩生田氏は安倍内閣の官房副長官として記者への説明を担当していた。 
●G7広島サミット 成果と課題 5/23
被爆地・広島で開かれたG7サミット。ウクライナ情勢や核軍縮が大きなテーマとなり、ゼレンスキー大統領も参加しました。議長を務めた岸田首相は「歴史的な意義があった」と成果を強調しましたが、多くの課題に実効性のある解決策を示せたのでしょうか。また、欧米各国はどう評価しているのでしょうか。
権藤)二村さんは今回広島でサミットを取材してどう受け止めましたか?
二村)原爆慰霊碑での首脳らの祈りから始まり最後はウクライナのゼレンスキー大統領が連帯と平和を訴えて終わるという印象に残る演出でした。サミット取材は今回が10回目でしたがこれほどメッセージ性が強く議長国の思いが反映された会議はなかったのではないでしょうか。G7の影響力は相対的に低下し、アメリカのトランプ前大統領時代にはG7内の亀裂が深刻でしたが、国際秩序が揺らぎかねない危機に直面したことで存在意義が見直され結束を固めることができたと思います。
権藤)今回のサミットの成果をまとめた首脳宣言には、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くことや、ウクライナ支援の継続、「核兵器のない世界」への取り組み、「グローバル・サウス」とも呼ばれる新興国や途上国との関係強化などが盛り込まれました。
このうち最大のテーマとなったのはウクライナ情勢でしたが、二村さんはどうみましたか?
二村)ゼレンスキー大統領が広島に来たこと自体が結束と連帯の最大のアピールでした。
ウクライナに関する首脳声明では、ロシアの侵略を最も強い言葉で非難し、即時かつ無条件の撤退を求めた上で、ロシアの制裁逃れを防ぎ、第三国の関与を奨励するとして制裁に参加していない国々の協力を求めました。今回招待されたインドやベトナム、インドネシアなどはロシアから武器を購入し制裁にも参加していません。そうした国々の協力を引き出すことができるかが今後の課題です。
アメリカがヨーロッパの同盟国が保有するF16戦闘機の供与を容認したことはウクライナにとって大きな成果です。また日本政府はサミット直前に負傷したウクライナ軍兵士を東京の自衛隊病院で受け入れる方針を発表しました。ヨーロッパではない日本がこれほど積極的に戦争の当事国を支援することは、以前は考えられませんでした。欧米諸国はこれまで国際政治の場では影の薄かった日本が一歩踏み込んだと評価しています。
権藤)サミットでは、中国への対応も焦点の1つでした。
首脳宣言では「抑止と協調」を両立する姿勢を鮮明にしました。
海洋進出を強める東シナ海や南シナ海の状況には深刻な懸念を表明し、力や威圧による一方的な現状変更の試みにも強く反対するとしています。また、中国が台湾への軍事的圧力を強めていることを踏まえ「台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認し、両岸問題の平和的な解決を促す」と盛り込みました。台湾問題では、4月にフランスのマクロン大統領が米中の対立から距離を置く考えを示しG7の足並みの乱れも懸念されていただけに、台湾への姿勢で結束を表明できたのは一定の成果だと思います。
一方で、気候変動対策などグローバルな課題では中国と協力し、建設的で安定的な関係を構築するとしています。
二村)首脳宣言では「デカップリング=切り離しではなくデリスキング=リスクの低減が必要」と明記されました。中国切り離し、封じ込め戦略ではグローバルな問題は解決しない、かといって中国への過度の依存は経済安全保障上危険であり、リスクを抑えながら協力関係を維持するという発想です。中国に強硬だったアメリカと違い、ヨーロッパは中国を脅威ととらえながらも経済関係を重視し気候変動対策などでは協力が必要だとの立場をとり、デリスキングを唱えてきました。「抑止と強調」は、そうしたヨーロッパや日本の立場を踏まえた現実的な対応であり、中国と友好的な国が多いアジアやアフリカなどいわゆるグローバス・サウスへの国々への配慮もうかがえます。しかし、首脳宣言に対する中国外務省の強い反発を見ると「協調」は容易ではなさそうです。
権藤)広島が地元の岸田首相がこだわったのが、G7や招待国の首脳らが原爆資料館を訪れ被爆の実相に触れることで、訪問後「核兵器のない世界への決意を世界に示す観点からも歴史的なことだった」と振り返りました。そして核軍縮に焦点をあてた初めての声明「広島ビジョン」をまとめ、ロシアによる核の威嚇を非難するとともに中国の核戦力増強への懸念を示し核保有国に透明性の向上を求めることなどを盛り込みました。狙いは停滞している核軍縮の機運を高めることです。
そのために日本政府は、核保有国も加わる国際的な枠組み、NPT=核拡散防止条約の体制を堅持し着実に動かしていきたい考えです。ただ、岸田首相が初めて出席した去年8月の再検討会議ではロシアの反対で最終文書を採択できずに決裂しました。一方、政府は、被爆者らが求める核の保有などを禁止する「核兵器禁止条約」には後ろ向きで、ことし11月の締約国会議にオブザーバーとして参加するかどうかも明らかにしていません。核保有国が参加しておらず、日本がアメリカの「核の傘」に依存していることも背景にあります。岸田首相は「核保有国を動かさないと意味がない」との考えですが、ロシアや中国をどう動かしていくのか。安全保障環境の悪化を受けて西側でも核抑止力を強化する動きが広がるなか、核軍縮への現実的な道筋をどう描いていくのか問われています。
(二村)G7でも核兵器を保有する3か国以外にドイツ、イタリアは核兵器を自国領土に保管する核の共有国です。核軍縮への決意を各国首脳が示したことは意義がありますがそれで現状が変わるわけではありません。G7各国の具体的な取り組みが十分示されなかったという不満の声も広島で聞かれました。
(二村)サミットではグローバル・サウスとの関係強化も大きなテーマとなり、気候変動や食糧問題などでG7が結束して支援を強化する方針が示されました。
G7はこれまで民主主義と自由を世界の普遍的な価値観だとして新興国や途上国にもそうあるよう求めてきました。しかしロシアの侵略に非難の声を上げない国が少なくない現実を目の当たりにし、これまでの上から目線のやり方では同調を得られないことを学びました。
世界全体を見回しても完全な民主主義の国は少数派です。この地図の緑が濃いほど民主主義、黒に近づくほど独裁主義の強い国ですが、誰もが民主主義を望んでいるわけではありません。新興国や途上国の声に耳を傾け、それぞれの事情に適した対応が求められます。日本は近年東南アジアやアフリカの国々と「対等のパートナー」として向き合ってきました。アフリカで旧宗主国のヨーロッパとは異なる日本の接し方が1つのモデルになるのではないでしょうか。
国際秩序が揺れ動く中で開かれたG7サミットが日本にとっても転機となるのか、これがゴールではなくサミット後のありようが問われています。
権藤)今回、G7の結束は打ち出せたと言えるものの、東アジアや、グローバル・サウスにどこまで理解と協力を広げられるかは不透明です。サミットは閉幕しましたがG7議長国としての役割は年末まで続きます。日本政府は各国との対話を重ねるなど課題の解決に資する取り組みを粘り強く続けていく必要があります。
 
 

 

●訪日のモディ首相、ゼレンスキー・ウクライナ大統領、岸田首相などと会談 5/24
5月19〜21日に開催されたG7広島サミットに招待国として訪日したインドのナレンドラ・モディ首相は会期中、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領や、岸田文雄首相などと相次いで会談した。同大統領とは初めて、岸田首相とは3月のインド訪問以来の対面会談となった。
ゼレンスキー大統領との会談で、モディ首相は、ウクライナにおける衝突は政治、経済面ではなく、人権の面について個人的な懸念とした。また、インド人留学生の安全な退避への協力に感謝するとともに、退避した留学生がインドで各試験を受けられることを歓迎した。大統領は現在の情勢について説明し、両首脳は今後も連絡を取り合うことで合意した。
岸田首相との会談では、モディ首相はまず、岸田首相の訪問時に贈った菩提(ぼだい)樹の苗が広島に植樹されたことに謝辞を述べた。また、広島原爆の日にはインド議会で式典を行っており、日本の外交官が毎回出席していることに触れた。両首脳は両国がそれぞれG7、G20の2023年の議長国を務める中での連携について話し合い、その中でモディ首相はグローバルサウスの重要性について強調した。また、両首脳は両国の特別戦略的グローバルパートナーシップを強化していくことに合意し、特に環境、教育、観光、半導体、デジタル公共インフラなどについて話し合いを行った。
モディ首相は日本滞在中、日本と米国、オーストラリア、インドによるクアッド(QUAD)首脳会合に出席するとともに、フランス、韓国、ベトナム、ブラジル、英国などの首脳とも会談した。
●ゼレンスキー旋風の陰で、G7の対中姿勢は変わったのか? 5/24
主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)には正直言って驚いた。筆者は、外務省に入省した直後に開催された1979年の東京サミット以来、40年以上にわたってG7首脳会議をフォローしてきた。そんな筆者でも、こんな不思議な感覚は初めてだ。現代史が転換期に入りつつある中、今年のG7広島サミットほどグローバルで、中身があり、かつ重要な結果を伴う首脳会議は他に思い付かない。それほど全てが新しい光景だった。
過去10年の間に、ポスト冷戦の時代がようやく終わり、これに代わって新たな国際・国内政治環境が生まれつつある。ウクライナ戦争が長期化する中、中国、ロシア、北朝鮮などは、武力による現状変更の意図を隠そうともしない。こうした「現状変更」勢力が、既存の国際秩序に対する挑戦を始めて以降、初めてアジアで開催されたG7首脳会議が広島サミットだった。
幾つか偶然も重なった。米連邦政府の債務上限問題により米国のバイデン大統領がサミット後のオーストラリア訪問を取りやめたため、日米豪印の枠組み「QUAD(クアッド)」の首脳会合は広島開催となった。サミット2日目(5月20日)には、ウクライナのゼレンスキー大統領の訪日まで実現した。普段なら記念写真撮影と共同文書発表でシャンシャンと終わるはずのサミットが、突然、G7及び参加各国首脳によるリアルタイムの実質的政治決断の場となった。
G7の対中姿勢に関して相反する報道
当然ながら、G7広島サミットに関する報道の多くは、ゼレンスキー旋風とウクライナ戦争の行方を取り上げるものとなった。やはり、ウクライナ大統領がG7サミットに参加したことのインパクトは絶大なのだろう。これに比べて、今回のG7広島サミットで議論した対中政策に関する記事・論評はあまり見当たらない。ネット上で探してみても、中国に関しては、以下のような比較的小さな記事しか見当たらなかった。
・中国外務省次官は21日、北京駐在の日本大使を呼び、「日本はG7の議長国として関係国とともに中国を中傷、攻撃し、内政に乱暴に干渉しており、中国の主権や安全、それに発展の利益を損なっている」と述べ、強烈な不満と断固反対する考えを示した。(NHK 5月22日)
・G7広島サミットを受けて、複数の市場アナリストから、G7が中国への強硬姿勢を弱めているとのメッセージを送ったとの見解が示されている。(MINKABU PRESS 5月22日)
あれあれ、一体どちらが正しいのか。記事を読むだけではよく分からない。ちなみに、北京駐在の日本大使は、上述の中国側の申し入れに対し「中国が行動を改めない限り、これまで同様にG7として共通の懸念事項に言及するのは当然で将来も変わらないだろう。言及しないことを求めるのであれば、まずは中国側が前向きな対応を行うべき」(河北新報5月22日)と反論したという。極めて正しい対応である。
G7首脳コミュニケの中国関連部分を精査する
今回のG7でも多くの長文の成果文書が発表された。「G7広島首脳コミュニケ」と題された政治文書は英文で40ページという膨大なもので、全文に目を通すだけでも大変だった。この種の文書を読むたびに、いったい何人の人が全文を精読しているのか、疑問に思うほどだ。されば、今年のG7首脳コミュニケと昨年のそれを読み比べた人も、恐らくあまりいないのではないか。
報道にあるように、もし昨年よりも今年の方が「対中強硬姿勢」が「弱まっている」のであれば、中国が「強烈な不満と断固反対する考え」を表明する必要はなかろう。というわけで今回は、広島首脳コミュニケにおける対中政策部分を、昨年6月にドイツ・エルマウで行われたG7サミットでの成果文書と比較し、G7の対中姿勢がいかに変わったのか、または、変わらなかったかを検証したい。
広島首脳コミュニケの中国関連部分は、第51項と第52項にまとめられている。ここからは各パラグラフの書きぶりを紹介し(編集部注:外務省のサイトにある仮訳を引用)、必要に応じて、昨年との比較を試みる。しばし、お付き合い願いたい。なお、【】部分は筆者の個人的かつ非公式なコメントであるので、念のため。
51)我々は、G7のパートナーとして、それぞれの中国との関係を支える以下の要素について結束する。
・我々は、中国に率直に関与し、我々の懸念を中国に直接表明することの重要性を認識しつつ、中国と建設的かつ安定的な関係を構築する用意がある。我々は、国益のために行動する。グローバルな課題及び共通の関心分野において、国際社会における中国の役割と経済規模に鑑み、中国と協力する必要がある。
【宮家注】この部分は広島で新たに加わった内容だ。中国に「率直に関与」し、懸念を「直接表明」する、「建設的かつ安定的な関係を構築」する、「中国と協力する必要がある」など、これまでにない書きぶりである。上記の市場アナリストがG7の対中「強硬姿勢は軟化」したと見る理由は、恐らくこれだろう。
・我々は、中国に対し、パリ協定及び昆明・モントリオール生物多様性枠組に沿った気候及び生物多様性の危機への対処並びに天然資源の保全、脆弱な国々の債務持続可能性と資金需要への対処、国際保健並びにマクロ経済の安定などの分野について、国際場裏を含め、我々と関与することを求める。
【宮家注】気候変動、保健、マクロ経済の部分は昨年と比べ大きな変更はない。
・我々の政策方針は、中国を害することを目的としておらず、中国の経済的進歩及び発展を妨げようともしていない。成長する中国が、国際的なルールに従って振る舞うことは、世界の関心事項である。我々は、デカップリング又は内向き志向にはならない。同時に、我々は、経済的強靱性にはデリスキング及び多様化が必要であることを認識する。我々は、自国の経済の活力に投資するため、個別に又は共同で措置をとる。我々は、重要なサプライチェーンにおける過度な依存を低減する。
【宮家注】この部分は新たな記述。「中国を害すること」や「発展を妨げる」意図はない、とわざわざ書いている。また、求めるのは「デカップリング」ではなく「デリスキング」だとも述べている。確かに昨年にはなかった表現が加わっているようだ。
・中国との持続可能な経済関係を可能にし、国際貿易体制を強化するため、我々は、我々の労働者及び企業のための公平な競争条件を求める。我々は、世界経済を歪める中国の非市場的政策及び慣行がもたらす課題に対処することを追求する。我々は、不当な技術移転やデータ開示などの悪意のある慣行に対抗する。我々は、経済的威圧に対する強靱性を促進する。我々はまた、国家安全保障を脅かすために使用され得る先端技術を、貿易及び投資を不当に制限することなく保護する必要性を認識する。
【宮家注】ここでは、経済分野における中国に対する従来の要求を繰り返している。内容的には昨年とほぼ同様である。
・我々は引き続き、東シナ海及び南シナ海における状況について深刻に懸念している。我々は、力又は威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対する。
【宮家注】安全保障面では、昨年とほぼ同様、厳しい内容は変わっていない。
・我々は、国際社会の安全と繁栄に不可欠な台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認する。台湾に関するG7メンバーの基本的な立場(表明された「一つの中国政策」を含む)に変更はない。我々は、両岸問題の平和的解決を促す。
【宮家注】台湾部分では、「一つの中国政策に変更はない」との部分を新たに追加している。だが、全体として従来の立場に変わりはないようだ。
・我々は、強制労働が我々にとって大きな懸念事項となっているチベットや新疆ウイグルにおけるものを含め、中国の人権状況について懸念を表明し続ける。我々は、中国に対し、香港における権利、自由及び高度な自治権を規定する英中共同声明及び基本法の下での自らのコミットメントを果たすよう求める。
【宮家注】人権部分も、昨年とほぼ同じ表現を踏襲している。
・我々は中国に対し、外交関係に関するウィーン条約及び領事関係に関するウィーン条約に基づく義務に従って行動するよう、また、我々のコミュニティの安全と安心、民主的制度の健全性及び経済的繁栄を損なうことを目的とした、干渉行為を実施しないよう求める。
【宮家注】この部分は新たな要求。外交団や外国人に対する「干渉行為」を批判している。
・我々は、中国に対し、ロシアが軍事的侵略を停止し、即時に、完全に、かつ無条件に軍隊をウクライナから撤退させるよう圧力をかけることを求める。我々は、中国に対し、ウクライナとの直接対話を通じることも含め、領土一体性及び国連憲章の原則及び目的に基づく包括的、公正かつ永続的な平和を支持するよう促す。
【宮家注】ロシアに対する中国の姿勢に関する要求は基本的に昨年と変わっていない。
52)南シナ海における中国の拡張的な海洋権益に関する主張には法的根拠がなく、我々はこの地域における中国の軍事化の活動に反対する。(以下略)
【宮家注】南シナ海に関する表現も昨年とほぼ同様である。
そして、G7対中姿勢に変化は?
引用が長々と続いたことをおわびする。しかし、以上のG7成果文書は、決して気まぐれでは生まれたものではない。各国の政治家と官僚たちが、時には徹夜を重ね、練りに練った結果、出来上がった表現なので、あえて一言一句を味わっていただきたいと思った次第である。
中国に関する書きぶりが今回変わった理由や背景を筆者なりに推測してみよう。ポイントは3つある。
(1)対中姿勢は「軟化した」とまでは言えない
中国と「建設的かつ安定的な関係を構築する用意」はあっても、G7の目的はあくまで「国益の追求」だ。中国側の譲歩がない限り、実質的な関係改善に向かう可能性は低いだろう。それでも、こうした柔軟な姿勢を暗示する表現がG7首脳文書に加わったことは中国との関係を改善する上で悪くない。少なくとも、マイナスになることはないだろう。
(2)中国側の異様な反応
以上の通り、今回の中国関連部分は全体としてバランスの取れたものになっている。恐らく、「中国との関係においては『対決』と同時に『対話』も重視すべし」と考える日本を含む一部諸国の意向が反映されたからだろう。そうだとすれば、中国が今回示した反応はやや異様ではないか。今年のコミュニケが気に入らないのであれば、昨年のコミュニケはもっと気に入らなかったはずだからだ。
昨年、ドイツで首脳コミュニケが発表された際、中国外務省が北京駐在ドイツ大使を呼びつけて強烈な不満と断固反対する考えを示した、という報道は記憶にない。されば、今回は議長国が日本であったために、意図的に呼びつけた上でそれを公表したのだろう。その意味でも、北京駐在の日本大使の対応は見事である。
(3)むしろ強まる対中圧力
今回、中国側が過剰反応した理由は、文言上の問題ではなく、恐らくは、ウクライナを含む欧州情勢と、台湾を含むインド太平洋情勢が重なり合う危険を感じ取ったからだろう。今回の広島G7サミットの最大の成果は、独仏伊など欧州大陸国家が、インド太平洋と欧州の安全保障は一体であると実感したことだ。そうであれば、中国が過剰反応した理由も理解不能ではないだろう。
●G7広島サミットが「成功」と言える理由、これから日本人に求められる「覚悟」 5/24
G7広島サミットの「成功」
G7広島サミットが開催された。さまざまな意見があるだろうが、世界と日本に取って得たところの大きい、成功と呼べる会議だったと思う。G7の首脳が揃って原爆死没者慰霊碑に献花を捧げるシーンには、胸が熱くなるものを感じた。
ウクライナのゼレンスキー大統領をはじめ、インド、インドネシア、ベトナム、韓国、ブラジル、オーストラリア、クック諸島、コモロの招待国の首脳を迎えた上で、核兵器廃絶の理念を掲げてのロシアによるウクライナ侵攻についての強い非難を行ったこと、それを議長国の日本が取りまとめたことの意義は大きく、岸田首相をはじめとした関係者の貢献の大きさを思う。
一方で今回の成功は、複雑でトリッキーな状況でかすかな機会を日本がとらえたことの結果だと考える。「次にどう動くべきか」は、依然として不透明なままである。その点についての心理を分析してみたい。
補助線として引用したいのが、加藤典洋の『戦後入門』の中の次のような記述である。「吉田(筆者注:茂)が基礎を作り、その後、池田勇人、佐藤栄作の政権担当期をつうじて作り上げられる政治システム」は、次の顕教と密教を調和させつつ運用することだとされた。
[ 顕教:日本と米国はよきパートナーで・日本は無条件降伏によって戦前とは違う価値観の上に立ち・しかも憲法九条によって平和主義のうえに立脚しているとみる解釈のシステム
密教:日本は米国の従属下にあり・戦前と戦後はつながっており・しかも憲法九条のもと自衛隊と米軍基地を存置しているとみる解釈のシステム ]
二つのシステムの見事な使い分け
岸田首相の今回のサミットの舵取りは、この自民党の伝統を復活させ、この二つのシステムを見事に使い分けて運用した内容だったと言えるだろう。
これは思想的には安倍政権時代のものよりも肯定的に評価できる。安倍政権の時代には、今回のサミットとは異なり、もっぱら顕教の精神への攻撃、密教の精神の強化と思えるような運用が多かったからだ。
加藤のこの密教と顕教という表現にはお手本となる先行者がいる。鶴見俊輔と久野収が、戦前の日本の政治システムについて、次のような説明を行っていたことである。
[ 顕教:天皇を無限の権威と権力を持つ絶対君主とみる解釈のシステム
密教:天皇の権威と権力を憲法その他によって限界づけられた制限君主とみる解釈のシステム ]
この二つを巧妙に使い分けて運用することで、明治政府は前進していった。しかし時代の変化の中で、「天皇機関説」が排斥されるなど「顕教による密教征伐」と呼べる状況が出現し、日本は太平洋戦争への道を突き進んだ。
法による統治を重視する方のシステムを軽視した時に、日本の政治は長期的な指針を失い、目の前の状況に翻弄されるようになる。
そのような歴史的経緯の中で、岸田首相という現在の日本のリーダーが、一方のシステムだけを重視するのではなく、二つの解釈のシステムを意図的かつ主体的に運用したことは頼もしく感じられるのである。
戦後の密教の方向に進んでしまう危険性
一方で、「オモテとウラの使い分け」とも理解できる「二つの解釈のシステムの使い分け」という政治手法の限界も、やはり存在する。確かにそのやり方でも、今回のように複雑でやや日本が押し込まれた状況で、少ない機会を拾うという成功は可能である。
しかし、それは再現性・継続性に乏しい。「ウラオモテのない理念」を掲げた政治姿勢は、単調な印象を与えるかもしれないが、一貫した行動指針を与えてくれる。これは短期的な不利益を生じたとしても、長期的なビジョンを達成するためには必要なものである。現在の日本の政治からは、そういったものは見えてこない。
そしてやはり、今回のG7のように「広島」「被爆地」を強調して世界を動かしているのにもかかわらず、日本が「核兵器禁止条約」に参加しないことは、首尾一貫性を欠いていると批判されても仕方ないだろう。
状況によって自在に二つのシステムの使い分けが可能な政治姿勢を続けていることは、間違った機会に、戦後の密教(アメリカの属国である)の方向に進んでしまう危うさを抱え続けていることを意味する。
「しゃもじ」の方向に浮かれ過ぎるようなことがあってはならない。欧米のドライな感覚では、対中国との対立姿勢が今後もし強まってしまった場合に、日本に現在のウクライナの立場を押しつけようとする動きも出るだろう。
そのことは日本の国益を考えるならば、絶対に回避されなければならない。その時に日本が「核廃絶」のような価値に真剣にコミットしているならば、機を見て利を拾うことに専念した場合と異なり、欧米の人々に取って、日本をリスペクトする根拠になるだろう。
日本・日本人に求められている「覚悟」
日本の政治における思想的な課題は、顕教と密教のシステムを意識的な決断のもとに統合し、一貫性のある独立した主体性を確立していくことである。これは困難な課題であり、真剣に取り組んだ人は多くはない。
自民党の中にある戦後の密教を顕教(憲法九条)に優先させようとする傾向には注意すべきだと考えているが、ひたすらに顕教の立場から密教を批判することも、望ましい状況ではない。
あまりに教条的になり過ぎてしまい、事態が硬直化する。道義的に、すでに私たちは、アメリカの核の庇護の下で平和と経済的繁栄を享受してしまったことの負債を負っている。
日米の「核密約」のことは一般の国民は知らされていなかったとはいえ、現在はそれが曝露され、意志があれば簡単にその情報を知ることができるようになっている。
その状況を生きてきた/生きている当事者として、核廃絶のような理念をいかに実現するのかについて責任のある行動を引き受けていく必要がある。その覚悟なく、倫理的な高みから現状を非難するだけのような思想的な立場は、現状とこれからの日本において、多数の支持を受けるのが難しい。 
●G7広島サミットは第三次世界大戦への「進軍ラッパ」か 5/24
G7は「平和」を名目に、徹底してウクライナ戦争を加速させ、世界の分断を一気に深めただけでなく、第三次世界大戦をも招来させる役割を果たした。米国軍事安全保障関連シンクタンクの公開書簡から読み解く。
中国で報道されたアメリカ軍事安全保障シンクタンクの公開書簡
5月18日22時32分、中国共産党が管轄する中央テレビ局CCTVが<元米国当局者:アメリカとNATOはロシアの安全保障要求を無視し、その結果、ロシアとウクライナの現在の状況が発生した>という見出しで、米国のシンクタンクが発表した衝撃的な書簡と、そのシンクタンクの一員への米国メディアによるインタビューを報道した。シンクタンクの正式名称は「アイゼンハワー・メディア・ネットワーク(Eisenhower Media Network=EMN)」で十数名の元米軍高官や国家安全保障当局者から構成されている。
信用して頂くために、先にその書簡の英文原文のリンク先をご紹介する。
公開書簡のタイトルは<米国は世界平和のための力になるべきだ>なので、まずこれをクリックして、CCTVのタイトルが真実であるか否かを確認してから、以下のCCTVに関する紹介にお目通しいただきたい。
   CCTVの報道内容の概略
(5月)16日、十数人の元米軍高官と国家安全保障当局者が、ロシアとウクライナの紛争の平和的解決を促進するために懸命に働くよう、米国政府に求める公開書簡を発表した。
17日、公開書簡の署名者の一人である元米空軍将校のデニス・フリッツが米国メディアのインタビューを受け、「米国はウクライナに武器を提供し続けており、それはウクライナの人々に、より大きな災害をもたらすだけだ。米国とNATOはロシアの安全保障上の要求を無視しており、それこそが、状況がここまで来た理由だ」と述べた。
この書簡は16日にニューヨーク・タイムズに掲載され、「米国は世界平和の力になるべきだ」というタイトルで、ロシアとウクライナの紛争の外交的終結を求めた。書簡は、「ロシアとウクライナの紛争は多くの死傷者を出し、環境と経済に深刻な損害を与えており、紛争が核対立にエスカレートすると、被害は指数関数的に増加する」と指摘した。
デニス・フリッツは、17日の米国メディアとのインタビューで、「ロシアとウクライナの紛争は、ウクライナ国民を犠牲にした米国とロシアの代理戦争である」と断言した。
デニス・フリッツは「私たちはウクライナに、より多くの武器を送り続けているが、それはより多くの死と破壊を引き起こすだけであり、ウクライナの人々を犠牲にして、ロシアを弱体化させるために、ロシアとの代理戦争を戦っている。同時に、死と破壊の両方がウクライナとウクライナの人々に起こる」と述べている。
デニス・フリッツは、ロシアとウクライナの紛争について交渉が行われる場合、最初のステップは「米国とNATOがロシアの要求に耳を傾けることでなければならない」と述べた。「ロシアは、NATOの東方拡大がロシアの安全保障上の利益に触れることを米国に警告しようと何度もしてきた」と強調している。
デニス・フリッツは「動物を追い詰めると、動物は反撃して身を守る。もし、ロシアの武器や人員がカナダやメキシコに配備されれば、米国は間違いなく発狂するだろうし、これが、ロシアがいま直面している状況だ。米国は真っ赤な嘘に基づいてイラク戦争を開始し、その戦争でイラクは破壊された」と続けた。
デニス・フリッツは「NATOの拡大について考え、これらの進行中の戦争について考えてほしい。そこから利益を得る人々は常にいる。われわれの目標は、アイゼンハワー元大統領が私たちに警告した軍産複合体の利益を制限することだ。われわれの目標は戦争を制限し、戦争から利益を得る人々を制限することなのである。私たちがウクライナのために武器を購入するために支払うお金、このお金が動くための場所がある。誰がこれらの武器を作っているのか。誰も戦争によってお金を稼ぐべきではない」と締めくくった。
   
CCTVの報道にある「公開書簡」を掲載したニューヨーク・タイムズ報道以外に、米国のResponsible Statecraftというウェブサイトが5月17日に<国家安全保障専門家:ウクライナ戦争は「軽減されない災害」>というタイトルで、アイゼンハワー・メディア・ネットワークの公開書簡に関して論評を掲載している。そこでは書簡にある
真実を見ることは弱さではない。それは(人類の)知恵だ。
という言葉が強調されている。
正に、その通りだ!
人類は、人類に真の幸福をもたらすために真実を直視しなければならず、それこそが、人間が「考える力を持つ生き物」であることの証しではないだろうか。
G7広島サミットは第三次世界大戦をもたらすための「進軍ラッパ」だ
然(しか)るに、今般広島で開催されたG7サミットは、ひたすらウクライナ戦争におけるウクライナに対する武器提供を加速させるための内容になっており、バイデン大統領はG7サミットでウクライナに対して「アメリカはF16戦闘機をヨーロッパの同盟国による供与を通して容認する」旨の発言までしている。
戦闘機の提供まで始めたら、第三次世界大戦に突入するとしてヨーロッパは慎重だった。しかしEUのボレル外相は、「いつも同じことだ…最初は誰もが気が進まないが、最後には絶対に必要なものだとして、軍事支援を提供するという決定を下すことになる」とした上で、「5月23日からヨーロッパの複数の国(たとえばポーランドなど)においてF16戦闘機のウクライナ人パイロットに対する訓練が始まった」という趣旨のことを語った。
もっとも、原文<EU welcomes F-16 jet decision for Ukraine>を詳細に見ると、どうやらポーランドの国防部長が、「すでに訓練が始まったのではなく、訓練をする準備をしている段階だ」とボレルの発言を訂正したとある。
注目すべきは、その記事に、「バイデン政権は、ロシアとの緊張が高まる可能性があるという懸念から、航空機の譲渡の承認や訓練の実施を1年以上拒否してきたのだが、ここに来て(G7広島サミットで)、突如、急激な逆転を遂げた」と書いてあることだ。
すなわち、F16戦闘機の投入は時間の問題で、これは第三次世界大戦に突入するゴーサインを出したに等しい。すなわち、G7広島サミットは、第三次世界大戦への「進軍ラッパ」を鳴らしたに等しいのである。
広島で開催したのだから、当然「核軍縮」が中心になければならないはずだが、G7で出された「広島ビジョン」は「安全が損なわれない形で、現実的で実践的な責任あるアプローチ」という魔法のような言葉で、「核を持つことによる抑止力=核抑止力」を肯定している。
米陣営を守るためなら「核」保有は許され、「米国が優位に立つ為の平和」は「戦争によって勝ち取る」という精神が貫かれている事実を、日本の大手メディアは見ようとしない。
「広島ビジョン」で非難の対象となっているのはロシアや中国あるいは北朝鮮の核戦力であって、米陣営の核戦力は、米陣営の「平和」を守るために許容される。
もちろんロシアのウクライナ侵略は絶対に許されない。しかし非米陣営の人口は、人類の85%を占めている。この85%の命は、米陣営15%の命より軽いと見ているのに等しい。
ブラジルのルーラ大統領はゼレンスキー大統領と会談するために、会談の部屋にウクライナの旗まで立てて待っていた。しかしゼレンスキーは現れず、記者団にルーラと会えなかったことに「失望したか?」と聞かれたゼレンスキーは「失望したのはルーラの方だろう」と笑いながら答えたと、ブラジルのメディアは怒りを込めて報道している。
G7広島サミットは、世界の分断を深めただけだ。グローバルサウスは、人類85%の中におり、中露と関係を深めている非米陣営だ。
G7広島サミットは、米陣営に都合がいい方向にウクライナでの「代理戦争」を加速させ、第三次世界大戦へと突入する「進軍ラッパ」を鳴らした。そのことに目を向けるだけの知力を持った日本人がおられることに期待したい。
●アメリカの報道はバイデンの原爆資料館訪問をスルー扱い 5/24
G7広島サミットにおいて、各国首脳は合同で慰霊碑への献花を行い、また原爆資料館を見学しました。日本国内の報道では、首脳たちが一斉に並んで献花をしたシーンは、大きく報じられています。その一方で、首脳たちが原爆資料館で見学をした際の詳細については開示されておらず、この点については批判が出ています。
開示されなかったというのは、具体的には「視察の様子は非公開」「メディアの館内取材は禁止」というかなり徹底したものだったようです。また、そうした報道規制以前の問題として、外務省筋からは、そもそも各国首脳による原爆資料館の見学ということ自体について、事前の折衝はかなり難航したという声があるという報道もあります。
具体的には、一番苦労したのがアメリカとフランスだったそうです。まず、フランスの場合に考えられるのは、マクロン大統領が進める核政策について、賛否両論があるという現実です。マクロン大統領は、まず欧州全体の電力安定という目的もある中で、核の平和利用をこれまで以上に拡大する立場です。また昨今は、核兵器の保有国として核抑止力の強化も進めています。
こうした核政策に関しては、日本と同じように、平和利用と軍事利用を混同した感情的な反対論があるようで、仮にそうした不満が年金問題などと結びついていくと、反政府的な動きが拡大しかねません。そんな中で、広島の悲劇を改めて知らせてゆくことには、政権として慎重にならざるを得ないということです。ただ、冷静に考えるとマクロン政権としては核軍拡を進めており、そのために報道規制を求めているのだとしたら核兵器への反省や反対の立場からはもっとも遠いと思われます。
バイデンが抱える事情
一方で、アメリカのバイデン大統領の場合はどうかというと、マクロン大統領とは動機が異なると考えられます。
バイデン大統領の立場は、オバマ政権の副大統領を務めていたこともあり、かなり明確になっています。それは「将来的には人類としての核廃絶を目指す」「現状としては核抑止力の維持を否定しない」「一方で核拡散や核威嚇には強く反対する」というものです。これは、今回のG7の基軸となる考え方そのものであり、そこにブレはありません。
では、どうしてアメリカはフランスと同様に、記念館訪問のオフレコ扱いにこだわったのかというと、例えば広島の有力地方紙『中国新聞』では「『核のボタン』を預かっているバイデン大統領に迷いが生じるのを周りが嫌ったようだ」などという説を紹介しています。(5月22日のデジタル版コラム「天風録」)
これは違うと思います。もっと明確な理由があるからです。それは、来年2024年の11月に大統領選が迫っているからです。バイデンは既に出馬宣言をしており、このまま進んで仮に民主党の統一候補に指名されると、共和党候補との一騎打ちになります。それ以前にも、仮に民主党内で本格的な予備選が行われる場合は、党内からも共和党サイドからも様々な攻撃に晒されることが予想されます。
具体的には、バイデンが広島で献花をしたり、何かを言ったり、何かを見たりすることが報道されると、3つの問題が出てくる可能性があります。
1つは、広島への原爆投下を正当化する世論の存在です。ソ連への威嚇や、巨額の開発費がかかったという以上に、核攻撃により日本が降伏したことで、本土決戦が回避されたというのはアメリカの世論の約半数では定説になっています。仮に本土決戦が起きた場合に発生したであろう日米双方で多数の犠牲者を救ったというのは、特に、1945年8月時点で太平洋戦線に従軍していた兵士の子孫には強い思いとしてあります。つまり、原爆投下がなければ父や祖父は還って来なかっただろうという実感であり、これが正当化論の中心になっています。
バイデンが「必要以上の反省」を口にしたり「必要以上の追悼」を行ったりすることは、こうしたグループの反発を買うであろうし、共和党側に攻撃の口実を与えることになるというわけです。
2つ目は、とにかくアメリカ合衆国大統領は「外国に対して謝ってはならない」という独特の考え方です。これも保守派には非常に強い考え方ですし、バイデンの場合はこれに高齢批判が重なると、「弱気の大統領」というバッシングにつながる可能性もあります。
テレビの扱いは小さく、新聞も冷淡
3つ目は、これは現在の世界情勢を受けた考え方です。仮にバイデンが「反省の姿勢」を見せると、ロシアなどが「自分たちの核は抑止力であり、威嚇の言葉を使うのも強く相手に抑止を効かせるために過ぎない、実際に核攻撃と大量虐殺を行ったアメリカに自分たちを批判する資格はない」などという舌戦を仕掛けて来る可能性があります。これに対してアメリカが反論した場合、反論があるレベルを超えると日本の世論は強く反発するでしょうから、「まんまと日米離反が可能になる」という状況も考えられます。
この中では、やはり1番目の問題が非常に大きいと考えられます。その結果として、今回の献花や記念館訪問に関するアメリカでの報道は極めて限定的です。まず、タイミング的にはアメリカでは週末ということもあり、テレビでの扱いは小さく、新聞も冷淡でした。週末に大きな事件があると、週明けに報道されることが多いのですが、これも多くの場合はありませんでした。
例えば、ニューヨーク・タイムズの場合、2016年のオバマ献花に際しては、1面トップで大きな写真が出ましたが、今回は紙版では土日共にトップにはなりませんでした。また、慰霊碑への首脳たちの献花の写真を扱った電子版(22日の時点)でも、記事の題名は「その一方で、バイデンはウクライナへの戦闘機供与に大きな一歩」ということで、広島で行うことの意味については基本的にスルーという姿勢でした。また、同紙を含めた主要メディアでは、バイデンが慰霊碑に向けて花輪を捧げている写真ではなく、献花の後で慰霊碑を背にしている首脳たちの写真などを使って「追悼、謝罪」のニュアンスを避けています。
残念ではありますが、これがアメリカの現実ということです。知れば怒り出すに違いない保守派には、そもそも慰霊碑献花も記念館訪問もできるだけ伝わらないようにするというわけです。その一方で、理解のある知的な世論には「広島で開催」「オバマ同様に献花」ということだけで、静かな賛成の意を共有してもらうことはできたと思います。その意味で、今回の開催はアメリカにとっても決して無駄ではなかったと思います。
●ゼレンスキーG7大統領電撃参加≠ノ狼狽したロシア 5/24
ウクライナのゼレンスキー大統領が電撃的に出席し、同国へのF16戦闘機への供与が事実上決まった広島での先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の結果に、ロシアのプーチン政権が狼狽している。ロシア外務省は閉幕日の21日に「広島サミットはプロパガンダ・ショーに成り下がった」などと批判する声明を出したが、具体性のない空疎な言葉が並べ立てられている印象は否めない。ゼレンスキー氏はG7サミットへの出席を通じ、インドなどグローバル・サウスの主要国とも連携することにも一定の成果を出した。
ロシアはミシュシチン首相を急遽中国に派遣し、ロシア・中国の連携をアピールするが、G7は中国には協議を呼び掛けるなど露中の接近にもくさびを打つ。中国からの支援を確保するために、ロシアは中国に対し一層下手に出ざるを得ないのは必至だ。
空疎な言葉の羅列
「G7首脳らは広島で開催されたイベントをプロパガンダ・ショーに変質させた」「反ロシア、反中国をヒステリックにあおっている」「欧州はアングロ・サクソンに主権を譲り渡した」
ロシア外務省の声明は、具体性のない言葉でG7への批判を並べ立てた。その内容からは、ロシアがむしろ今回のG7サミットでの決定事項や声明に対しての反論や、対応を決めることができていない現状が浮かび上がっている。それだけ今回のG7サミットの結果は、ロシアにとり衝撃的なものだったと推察される。
最大の焦点は、米国のバイデン政権がウクライナ軍パイロットに対するF16戦闘機の訓練を支援すると発表し、欧州などの同盟国がウクライナに対してF16を提供することを容認した事実だ。この報道が流れた翌日の20日、ロシア外務省のグルシュコ次官が「事態をエスカレートさせる動きであり、西側に途方もないリスクを背負わせることになる。しかし、われわれは対応する用意がある」と反応し、その後のロシアメディアの報道もF16の供与に向けた動きをつぶさに報じ続けている。ロシア側がF16投入を強く警戒している実態を伺わせている。
F16投入へのウクライナの期待
F16戦闘機は長射程の攻撃能力を持ち、ウクライナ軍が制空権を確保する作戦に重要な役割を担うと期待されている。戦闘能力は現在ウクライナ軍が主力とする旧ソ連製のミグ29の数倍とされ、ロシアが保有する戦闘機を上回る。ウクライナ軍はこれまで、ロシア軍の戦闘機からの長射程攻撃に悩まされてきたが、F16の投入により事態が大きく変化する可能性がある。
米メディアはF16をめぐり、「ウクライナでの戦況を本質的に変化させうる武器」だと指摘する。欧米諸国はこれまで最新鋭戦車の提供などは発表していたが、それらは長距離の攻撃を仕掛けるには限界があり、さらにロシアの占領地に侵入すれば燃料などの補給面などで大きな困難を伴う。一方で戦闘機は、一度の出撃で複数個所での作戦に従事でき、ロシア領内などから発射されたミサイルの迎撃能力にも優れるためだ。
ウクライナ軍兵士に対する訓練は今後数週間以内に始まるとも報じられており、訓練期間は「数カ月」(サリバン米大統領補佐官)を要する見通しだ。米国のどの同盟国がどれくらいの規模の戦闘機を提供するかも未発表だが、ゼレンスキー大統領は21日に広島市内で行われた会見で、「詳細は答えられないが、相手国と話し合いを進めている」と述べており、すでに訓練の実施や戦闘機の供与規模などをめぐっても詳細な協議が実施されている状況が伺えた。
ゼレンスキー氏はさらに「ロシアが(その威力を)実感≠キる武器になる」と述べるなど、強い自信をのぞかせる。今回の米国の決定が、戦況に重大なインパクトを与えるのは確実だ。
バイデン米大統領はこれまで、F16の提供に慎重な姿勢を崩さなかった。ただそれでも実際には、提供に踏み切るタイミングを模索していた跡もうかがえる。米軍はすでに3月の時点で、ウクライナ軍パイロット2人を国内の米軍基地に招き、フライトシュミレーターを使ってF16の訓練操縦に必要な期間を見定めようとしていたという。
同盟国からのF16提供も、ゼレンスキー氏の発言からはすでに水面下で進められていた実態がうかがえる。F16提供に向けた準備が整っていたことも踏まえ、最終的な調整を対面で行いたかったゼレンスキー氏が、日本政府に対し訪日を働き掛けていた可能性がありそうだ。
グローバル・サウスの反応
ゼレンスキー氏はさらに、G7サミットへの対面出席を実現させたことで、対ロシア制裁に加わらない南半球の国々との首脳との会談も実現させた。注目されたのはインドのモディ首相との会談だ。
ゼレンスキー氏の訪日が極秘裏に行われた背景のひとつは、ロシアへの制裁に否定的な国々がゼレンスキー氏訪日を事前に知れば、G7サミットへの出席を断る可能性があるためだった。そのような中、ロシアに融和的な国の象徴的存在であるインドのモディ首相は、ゼレンスキー氏との距離を感じさせない老獪な振る舞いを見せた。
モディ氏は会談で「あなたは私たちの誰よりも、戦争の痛みを知っている。インドも、私個人も、この問題の解決に向けてできることはどのようなことでもすると約束する」とゼレンスキー氏に語り掛けた。モディ氏はウクライナに留学していた自国の学生たちと話し合い、「ウクライナがどのような状況に陥ったか、詳細を聞いた」とも述べて、ウクライナを支援する姿勢を示した。モディ氏は会談で「これは、政治、経済の問題ではなく、人道の問題だ」とも語り、政治・経済とは切り離して対応する考えを強調した。
インドは制裁を受けるロシアから膨大な量の原油を輸入し、ロシア経済を事実上支えているうえ、4月末にはロシアとの防衛協力の強化にも合意している。そのようなインドが、ウクライナにどこまで実質的な支援を提供できるかは見通せないが、ウクライナを支える言質をインドのトップからゼレンスキー氏が直接得た意義は少なくない。
ロシア首相は中国詣で
そのような中、ロシアは同じくG7で批判の目を向けられた中国との連携強化に動き出している。23日にはミシュスチン首相が中国を公式訪問。それに先立つ22日には、パトルシェフ安全保障会議書記がモスクワを訪れた中国共産党幹部と会談し、テロ対策などをめぐり意見を交換した。
G7から名指しで批判された両国が連携を一層深めることは必至だ。ただ、実際にはウクライナに軍事侵攻をしかけているロシアと、台湾や日本などの周辺国を威圧するものの、ロシアのような軍事行動を起こしていない中国とは、置かれる環境が異なる。
G7は首脳声明で「中国に率直に関与し、われわれの懸念を中国に直接表明する」としながらも「中国と建設的かつ安定的」な関係を構築する用意があると呼びかけた。台湾情勢に言及されたことに中国は激しい反応を見せたが、「残酷な侵略戦争」を仕掛けたと指弾されたロシアとは同列には扱われていない。
中国はロシアに対する協力姿勢を強調するが、実際には欧州に売れなくなったロシア産原油を格安で買いたたくなど、その実態は打算的だ。旧ソ連諸国に対するロシアの影響力が弱まる中、中国の習近平国家主席は5月下旬に西安で、旧ソ連諸国である中央アジア5カ国首脳との初の首脳会議を対面で行った。これらの国々への影響力を高めようとする中国の意図は明白だが、ロシアは異論をはさむことすら困難だったに違いない。
そして23日夜にはロシアの首相が北京に駆け付けた。ウクライナ侵攻から抜け出せないロシアの首脳が、実質的に中国の支援を求めて訪中した格好だ。ロシアを取り巻く国際的な状況が、改めて浮き彫りになっている。
●「反ロシア」G7強調、リスクは?新たな「軍事ブロック化」の懸念  5/25
日本が議長国となった先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)は、電撃訪日したウクライナのゼレンスキー大統領が話題の中心となり、閉幕した。対ロシアでG7の結束を固めた半面、緊張を高めた懸念が残る。日本は親ウクライナ、北大西洋条約機構(NATO)追随の立ち位置をより鮮明にした。そのリスクまで思いを巡らせているか。ウクライナ以外の問題が陰に隠れてしまっていないか。
「ミャンマーでもスーダンでも」
「G7の皆さま、ミャンマー国民の声を聞いてください」。サミット最終日の21日、100人以上のミャンマー人らが東京都心をデモ行進し、母国の市民への支援と軍への圧力強化を訴えた。ミャンマーでは2021年2月に軍事クーデターが発生。抗議する市民を軍が弾圧し、地元人権団体の調べで死者は3500人を超えた。デモ参加者は、議長国日本に対する横断幕も掲げた。「法の支配に基づく国際秩序を守り抜くという強い決意をミャンマーにも示してください」 会社員スェイさん(30)は「戦争はウクライナだけではなく、ミャンマーでもスーダンでも起きている。人の命の重さは変わらない」と強調。サミットでウクライナと異なり、ミャンマーに関しては個別の声明がない扱いの差を残念がった。
サミットの関心はウクライナに
医療系研究者キンさん(42)は「G7はロシアには一致して制裁を科した。だが、ミャンマーの軍への制裁には日本だけ加わっていない」と違いを疑問視。「人権と民主主義が脅かされている状況は一緒だ」と、G7一丸の対応を求めた。ゼレンスキー氏の来日で、サミットでの関心はウクライナに集まった。同氏にとっては、原爆慰霊碑に献花し、平和を希求する指導者像を印象付ける場ともなった。戦時中の国を離れたのは、余裕を見せるパフォーマンスだろうか。慶応大の広瀬陽子教授(国際政治)は「世界が注目する『春の大攻勢』だけでなく、その先を見据えた長期戦略を練るために、F16戦闘機の確保などの軍事支援を確約させる必要があった」と実利面を読み解く。「今後も戦争が続く可能性が高く、ウクライナが国際的な支援を必要としているのは間違いない。国を空けるリスクを上回る利点があると判断したのだろう」
自民党内の「うわついた空気」
サミットでゼレンスキー氏は、新たな軍事協力を取り付け、インドをはじめ、ロシア制裁に慎重な「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国首脳との直接対話も実現した。G7やウクライナにとって、対ロシアでの結束を確認したサミットは「全体としては大成功といえる」と、広瀬氏は評価する。一方で、グローバルサウスを完全に取り込んだわけではなく、戦争終結の難しさも口にする。「制裁でロシアとの経済関係を断つのはグローバルサウス諸国にとっては致命的。『返り血』を甘受してウクライナと共に我慢する、というのは先進国の論理で、強制するのは難しい」 サミットは国内の政局にも影響を与えそうだ。政権の支持率が回復基調の中、自民党内では外交成果をアピールし、早期の衆院解散・総選挙を望む声が広がる。だが、政治ジャーナリストの泉宏氏はうわついた空気にくぎを刺す。「終盤国会に向けて防衛増税や少子化対策の財源、入管難民法改正など難しい課題が残っている。解散するしないのせめぎ合いが続くだろう」 また、サミットの「成果」自体にも慎重な見方を示した。「ロシアや中国に対して、戦争収束に向けたメッセージがなかった。ロシアを追い詰め、核の危機を高めかねない印象もある」と分断の加速を懸念した。
NATOへの接近
対ロシア、親ウクライナの姿勢を見せたサミットと同じ文脈で、日本は旧ソ連など東側陣営に対する軍事同盟として発足したNATOへの接近を強めている。岸田文雄首相は昨年、日本の首相としては初めてNATOの首脳会議に出席した。NATOが東京に連絡事務所の設置を検討していることも今月、報道などで明らかになった。こうした動きはロシアや中国との緊張を高めかねない。欧州情勢に詳しいジャーナリスト木村元彦氏は「今まで日本がそれなりに築き上げてきた独自外交活動が崩壊してしまう」と批判する。木村氏は「非加盟国の日本は本来、ロシアに対しても独自の戦争抑止を提案していくことが重要なはずだ」と説く。同氏は1999年のコソボ紛争時のNATOによる空爆で、日本が見せた欧米加盟諸国と大きく異なる対応を引き合いに出す。「(セルビアの)首都ベオグラードの日本大使館は、撤退せずに『この米国主導の空爆には大義がない』と霞が関に打電した。政府は最終的に踏み込んだ肯定を避け、『(空爆に)理解を示す』という表現に抑えた」
「戦争加害国」に入りかねない危険
そしてこう警鐘を鳴らす。「日本は軍事行動から距離を置いたその公正性が高く評価された。プーチン憎しから、国連決議無しで他国への軍事介入と基地化を行ったNATOへの接近をあたかも平和への道筋に捉える現在の空気は、戦争加害国に入りかねず、非常に危険だ」 サミットでは、グローバルサウスとの連携強化が一つのテーマになった。日本などが今後、ロシアや中国への対抗心から、ねじ曲がった連携を模索する恐れもある。アフリカの課題に取り組むNGO「アフリカ日本協議会」の稲場雅紀共同代表は「グローバルサウス諸国は、G7が『民主主義』、中ロが『権威主義』と、分けて見ていない。自陣営に取り込むといった発想での日本外交は失敗する」と危惧。「G7、中ロの双方が取り込み攻勢を掛ける状況では、どちらの陣営にも属さないのが得で、等距離を保つことで最大限の利益を得ようとする」と語り、日本の外交の行方を懸念する。「相手国の意向を無視した独り相撲の外交になりかねない。ゼレンスキー氏の来日で、一時的に国民世論は沸き上がるだろうが、2国間外交やG7のようなグループ外交、同志国との連携ばかりが重視されるだけでは、より規模の大きい多国間の協力や国際機関を介した連携が手薄になってしまう」
日本の取るべき行動とは
東南アジアに詳しい神奈川大の大庭三枝教授(国際関係論)も「グローバルサウス諸国はロシアの軍事侵攻を支持せず、停戦を求めているが、かといってロシアへの経済制裁に加担することもない。台頭著しい国にすれば、G7はすでに仰ぎ見る存在ではなく、ODA(政府開発援助)を中心とした日本の支援外交も効果はもはや薄い。打つ手を間違えている」と、日本をはじめとするG7のグローバルサウス観に疑問を示す。では、日本の取るべき行動は何か。「停戦交渉の一翼を担うこと」と提言するのは、山口大の纐纈こうけつ厚名誉教授(政治学)だ。「侵略戦争には断固反対しつつ、戦争の原因を分析し、停戦や和平の条件を紡ぎ出すことが必要だ」と強調する。纐纈氏は言う。「ゼレンスキー氏のサミット出席、ロシアを意識した結束の表明は、新たな軍事ブロックの存在を鮮明にし、国際的な緊張を高めてしまう。日本は平和重視の立ち位置を捨て、行動の幅を狭めたことになる。平和の地である広島が、戦争を加速させる場所になった。遠くない将来、日本の戦争への道筋が広島から始まったとなりかねない」
デスクメモ
G7とウクライナとの結束を強めた点では印象的なサミットだった。だが、グローバルサウスとの連携を深めたとは評価しがたい。サミット閉幕後、ロシアや中国は議論の内容に反発した。日本政府は「成功」をアピールしたいだろうが、今後の影響を見定める必要がある。
●G7広島サミットでインドが存在感を示した3つの成果 5/25
今年の主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、非常に重要なG7となったといえる。特にゼレンスキー大統領が対面参加したことで、対ロシアでのG7の結束は強く確認された。またG7で唯一、アジアに位置する日本が議長だったことで、インド太平洋地域から多くのゲスト国を招くことができ、対中国を念頭に置いた連携にも一定の成果が見られた。
そして、偶然にも、米国のバイデン大統領が南太平洋、豪州訪問を取りやめたことで、日米豪印4カ国の枠組みであるQUAD(クアッド)サミットも開かれた。対ロシア、対中国を念頭においたグローバルサウスへの説得工作でも成果があった。
日本は、過去、グローバルサウス各国を植民地支配したことがほとんどないため、他の国が主催するG7よりも有利な条件で話を進めることができたのである。つまり、日本が議長国になって狙った、対ロシア、対中国、グローバルサウス説得の3つすべてで、G7サミットは成果の多い成功例であった。
ただ、忘れてはいけないもう一つの国がある。2019年以来5年連続で、G7に招待され続けているゲスト国のインドだ。今やG7の「準会員」状態になっている。
今回のG7サミットでは特に存在感を示したといえる。そこで、本稿では、今回のG7サミットの3つの主要トピック、対ロシア、対中国、グローバルサウス説得の3つの観点から、インドが、どのような存在感を示したのか、それはどう今後につながるのか、分析することにした。
モディ―ゼンレンスキー会談の意味
まず、対ロシアという観点からいうと、モディ―ゼレンスキー会談は、非常に大きな成果だったといえる。22年2月のロシアのウクライナ侵攻以来、インドは中立の政策を採用してきたが、実際には、かなりロシア寄りの国とみられてきた。
ロシアによる侵攻を非難しない姿勢や、ロシアからの原油輸入を増やしていることが背景にある。実際には、インドが輸入した原油は、ヨーロッパに再輸出されている。ロシアから安く仕入れ、まともな価格でヨーロッパに売れば、その差額で儲かるからだ。
だから、顧客はロシアから原油輸入できなくなったヨーロッパ諸国であり、しかも、安く買いたたかれたロシアの収入は大幅に減っている。だが、ロシアに一定額の資金が流れるのは事実で、インドの姿勢は、対ロシア制裁の効果を抑えてしまうとの批判も受けてきた。
こういった政策は日印関係にとって、大きな問題だったと言える。米ソ冷戦時代、特に1970年代以降、インドは非同盟を掲げていたが、事実上、ソ連の同盟国であった。その結果、米国側の日本と、ソ連側のインドの関係は、あまり進展しなかったのである。今は、中国対策におけるインドとの連携の重要性は理解されているものの、インドとロシアのつながりは、日印関係を停滞させ得る危険性がある。
このロシア寄りのイメージを改善させたのが、2022年9月のモディ首相とプーチン大統領の会談である。モディ首相がプーチン大統領に「今は戦争の時代ではない」と直接伝えたのだ。インドは、ロシアへの配慮は維持しつつも、戦争そのものには反対だ、という中立の姿勢を内外にアピールする効果を持った。
今年、インドは、再びロシア寄りのイメージを変える必要がある。それはG20の議長国だからだ。9月にサミットを開く。
G20は、G7とその他13カ国・地域が集まり、そこにはロシアが含まれている。だから、そのまま開催すれば、ウクライナは招待されず、ロシアだけが参加する。それは中立とは言えない。
G20に参加するG7各国としても、相手がインドだと、欠席するわけにもいかない。でもゼレンスキー大統領が来ないのに、プーチン大統領だけと対面で会ってしまうのも、困る。議長国インドには、なんとかこの状況を打開してほしいのが本音だ。
だからインドは、ゲスト国としてウクライナを招待する可能性がある。ただ、招待するには事前の準備が必要だ。実際に1度は対面で会っておきたい。
昨年G20の議長国だったインドネシアのジョコ大統領は、モスクワとキーウ両方を訪問し、両方の首脳を招待した。だから、モディ首相も、ロシアとウクライナ、両方と調整する必要がある。
インドは今年、上海協力機構の議長国でもあり、7月にインドでサミットを開く。だからプーチン大統領と会う機会はある。だとすると、中立であるためにはゼレンスキー大統領に会う必要がある。
今回のG7にゼレンスキー大統領が広島を訪問したのは、完璧な機会だった。モディ首相は対面でゼレンスキー大統領に会うことができたのである。
G20に向けて、インドはロシア側の国ではなく、中立の国として、両方の首脳と対面で会談した、という実績になるわけである。これがG20へのゼレンスキー大統領の出席につながれば、G7各国としても安心してG20に出席できる。インドとG7各国、双方にとって安心材料だ。
いずれ、両国が停戦に向けて話す機会があれば、このような両方の首脳と対面で会ったという実績はプラスになるだろう。その点で、今回のモディーゼレンスキー会談は、非常に意味があるものだった。
インド太平洋の存在感を高めた
インドがG7に参加したことは、インド太平洋にとっても有益であった。日本は、G7で唯一のアジアの国だ。だから、ロシア対策も必要であるが、中国対策について話をしたい。だからこそ、今年、日本が議長国のG7においては、インド太平洋各国をゲスト国に選んだのである。
ゲスト国8カ国(ウクライナを除く)の内、ブラジルとコモロ諸島以外、インド、豪州、ベトナム、インドネシア、韓国、クック諸島の6カ国は、みな、インド太平洋の国々だ。日本が、インド太平洋の意見をG7に反映させようとしたことがわかる布陣だ。
実際、これらのゲスト国は、9つのセッションの内の3つのセッション、「複合的危機への連携した対応」「持続可能な世界に向けた共通の努力」「平和で安定し、繁栄した世界に向けて」に参加し、インド太平洋諸国の意見を直に議論へ反映させた。
特にインドの存在は重要だ。そもそも安倍晋三元首相が、「アジア太平洋」にかわり、「インド太平洋」という考え方を紹介したのは、インドを仲間に入れたかったからである。インドなしでは、インド太平洋の話をしたことにならない。
しかも、QUADサミットまで開かれた。QUADサミットは、過去2年半の間に5回目のサミットであるから、頻繁である。しかし、今回は特に2つの点で大きな進展があったといえる。
1つは、東南アジア諸国連合(ASEAN)、太平洋諸国フォーラム、環インド洋協力連合の3つと、QUADの動きを連動させたこと。これは、インド太平洋全体の動きを調整するために、既存の地域機構を利用する、戦略的な動きといえる。
もう1つは、海底ケーブルに関して、その強靭性確保のためにQUADで協力したことである。海底ケーブルを利用した各国のインターネット網は、各国の安全保障上重要になっている。潜水艦などで攻撃することも可能で、攻撃されれば通信は途絶える。
実際、インド太平洋の海底ケーブル網は、中国が影響力を有する海域、南シナ海などを通るものも多い。しかも海底ケーブル網は、そこにセンサーを設置すれば、マグマの動きや地震をとらえるだけでなく、潜水艦を探知することもできる。
だから、海底ケーブル網における協力は、サイバーから潜水艦対策まで、安全保障上重要なのだ。今回のQUADでは、その部分の協力について、合意がなされた。
モディ首相は、G7にきて、QUADに出て、その後、南太平洋のパプアニューギニアと豪州を訪問した。インド太平洋への関与を高めた重要な出張になっており、対中国戦略として、招待した日本の期待にも応える存在感を示したものといえる。
グローバルサウスの意見を反映させた
3つ目は、グローバルサウスの各国を説得する観点である。今年のG7では、日本はグローバルサウスの支持を獲得することが目標の一つだ。
そもそもグローバルサウスとの関係は、対中国戦略上重要であった。一帯一路構想に基づき、中国がグローバルサウス各国で支持を広げていたからだ。しかし、ロシアのウクライナ侵攻が開始されてからは、対ロシア戦略上も、グローバルサウスが重要になっている。グローバルサウス各国の支持がないと、ロシアに対する経済制裁もうまくいかないからだ。
日本がアフリカのコモロ諸島を招待したのも、その関係だといわれている。これまで繰り返しG7から招待されていた南アフリカが、自らの海軍の港を利用してロシアに武器を輸出した。だから、G7として南アフリカを招待することは止め、もっとG7に協力する国を呼ぶことにしたのである。アフリカ連合の議長国であるコモロ諸島が呼ばれたのは、そういった背景があった。
岸田文雄首相のアフリカ訪問時も、インド太平洋に面するために重要になっているモザンビークを除き、エジプト、ガーナ、ケニアの3カ国は、ロシアのウクライナ侵攻を非難している国々だ。同じグローバルサウスの国でも、G7に近い立場の国をより大事にし、G7側に着いた方が得になるようにしたい。グローバルサウス対策を進め、より多くの国々をG7側に引き付けたいのである。
そこで重要になっているのが、今年G20の議長国として、グローバルサウスの盟主を掲げるインドだ。昨年6月、インドのジャイシャンカル外相は、グローバルサウスを代弁する言葉を述べ、支持を集めた。
「ヨーロッパ諸国は、ヨーロッパの問題は世界の問題だが、世界の問題はヨーロッパの問題ではないという姿勢から脱却しなければならない」と述べたのである。これは、ロシアのウクライナ侵略を受け、ロシアに制裁を課した結果、ロシアからの穀物やエネルギーの輸出が止まり、価格が上昇、結果として、グローバルサウス各国の中で食糧やエネルギーを十分買えない国が出てきた。
食糧やエネルギーは生活の必需品で、十分手に入らなければ、死者が出る可能性のある安全保障問題だ。貧しい国にとっては深刻なのである。インドは、そういった国々の意見についてG7なども配慮するよう求めたのである。
実際、今回のG7では、日本がグローバルサウスへ配慮するにはどうしたらいいか、具体的に食糧やエネルギーの供給体制について検討した。そして、「強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明」を発出している。
インドが掲げた声は、日本を通じて、そして他のG7各国やゲスト国と共に、実現に向けて踏み出したのである。これは日本とインド双方にとって成果だ。
日本にとっても世界にとっても重要な存在に
こうしてみると、今回のG7広島サミットは、日本にとって大きな成果であっただけでなく、インドにとっても成果であった。インドは、モディーゼレンスキー会談によって、対ロシア政策における中立を再確認し、他のインド太平洋各国とG7とQUADに参加して対中国戦略の進展ももたらした。そして、グローバルサウス対策を進め、9月のG20対策も行ったのである。
かつてインドは、南アジアに限定された大国であった。しかし今、世界の大国としての戦略を模索し、一歩一歩、世界での付き合い方を学んでいる。まだ完璧と呼ぶには、程遠い側面もあるが、日本にとっても、世界にとっても、重要な存在になっていくことは、間違いないところだろう。 
●「中国だけが笑っている」 G7の外交的敗北で主体性ゼロの日本は堕ちていく 6/3
G7(主要7カ国)広島サミットが5月21日に閉幕し、主要メディアが行った世論調査では、議長として岸田文雄首相を評価する声が多数だという結果が報じられている。しかし広島サミットの結果は、世界の主要国が中国にすがりつかんばかりの声明を出し、それを日本がまとめたという「外交的敗北」以外の何物でもない。中国だけが笑みを浮かべる状況を自ら作り出してしまったといっても過言ではない。
G7広島サミットでの 「岸田外交」に疑問符
5月21日に幕を閉じた主要7カ国首脳会議(G7サミット)。被爆地の広島県を舞台にG7各国や招待国の首脳らが討議し、5月20日には、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がフランスの政府専用機で来日し、議論に加わった。中国とロシアを除く、世界を代表する国が集まったわけで、解散総選挙がうわさされる岸田文雄首相にとって、国内への絶好のアピールの場となったことだろう。
他方、米国の債務上限問題があり、G7に続いてオーストラリアで開催される予定だった日米豪印4カ国の枠組み、クアッドの首脳会談は中止となり、G7の日程の中でごく短期間で行われることとなった。
結束できたという演出は、G7全ての国が望むところなので当然の結果と言えるが、日本が安倍政権当時のように主体的な独自外交を目指していたかどうかは非常に疑問符がつく。この辺りを見ていこう。
「中国封じ込め」の位置付けである クアッドは“不発”に終わる
G7の顔触れは、イタリア、米国、英国、カナダ、ドイツ、フランス、そして日本だ。ヨーロッパ勢が7カ国中5カ国を占める。今のヨーロッパ各国にとって「外交」といえば、ウクライナ戦争である。彼らはウクライナの味方ではあるものの、とにかくウクライナ戦争を早期に終結させたいという強い意志を持っている。
しかし、米国と日本は違う。米国はウクライナの最大の支援者であり、ウクライナ戦争を早く終わらせたいという気持ちもあるだろうが、頭の半分には「対中国」がある。米国内にとってみれば、経済的なライバルである中国の封じ込めをどうするかの方が大事であろう。
日本は、「安倍外交と比べ、米国とは少し距離を置いた自主外交をしなくなった」とロシアから失望はされているものの、事実上、ウクライナに対して平和的な支援しか行っておらず、ロシアからの非難は軍事援助をする国と比べてトーンが一つ下がっている。サハリンを含め、日本の権益は多くロシア国内に残っている。そして、最大のライバルであり、軍事的脅威でもある中国問題を前に進めたいという思惑を持っている。
こういった前提があるからこそ、G7の後に大々的にオーストラリアで開催される予定だったが「50分」に縮小して広島で行われたクアッドは、大きな意味を持つとされていた。米国とオーストラリア、日本という中国に強い懸念を持つ3カ国に、さらにインドを加えて、中国の封じ込めが共通の利益となるという枠組みだ。
インドは、中国を心の中では封じ込めたいとしているものの、中国とは国境を接していて、軍事的緊張を高めたくないという思惑をもっている。他の日米豪は、このインドに中国封じ込めの輪に加わってほしいと願い、あの手この手を用いて籠絡(ろうらく)しようとしているのが現状だ。
国際社会へ送るシグナルとしては、「G7は対ロシア」「クアッドは対中国」だったのである。しかしクアッドの方は、たった50分では実質的な議論はできなかったであろう。首脳会合後に発表されている会議の内容も、「会合で4人の首脳は、東シナ海・南シナ海への進出を強める中国を念頭に、インド太平洋における力や威圧による一方的な現状の試みに深刻な懸念を表明し、強く反対していくことで一致しました」とNHKニュース(5月21日)で報じられているものの、外務省のホームページ(HP)で「日米豪印首脳会合共同声明」の全文を確認したら「中国」という文言が入っていなかった。残念な部分だろう。
G7共同声明に含まれていた 「中国へのラブレター」
対するG7の共同声明には、気になる部分がいくつかあった。これも全文が掲載されている外務省HPから引用したい。チベット新疆ウイグル、香港などの人権状況への懸念、東シナ海、台湾海峡での軍事的緊張への懸念を表明しつつも、中国の手を借りて、経済発展、そして何よりも大事なウクライナ戦争の早期終結を願う文言が並んでいる。
「我々は、中国に率直に関与し、我々の懸念を中国に直接表明することの重要性を認識しつつ、中国と建設的かつ安定的な関係を構築する用意がある」
「我々の政策方針は、中国を害することを目的としておらず、中国の経済的進歩及び発展を妨げようともしていない」
「我々は、中国に対し、ロシアが軍事的侵略を停止し、即時に、完全に、かつ無条件に軍隊をウクライナから撤退させるよう圧力をかけることを求める。我々は、中国に対し、ウクライナとの直接対話を通じることも含め、領土一体性及び国連憲章の原則及び目的に基づく包括的、公正かつ永続的な平和を支持するよう促す」
三つ目の引用については、特に今回加わった部分でもあり、中国へのラブレターにも似たメッセージとなっている。ロシアと仲が良いものの、そこまで肩入れせず、ウクライナとも良好な関係を続ける中国に何とか仲裁に入ってもらえないものかという、すがるような思いが込められているのだろう。
しかし、ちょっと待ってほしい。経済的にも軍事的にも日本の最大のライバルは中国なのである。世界は仲良くなった方がいい、隣人同士手を結んだ方がいいというのは一般論であり、中国に西側諸国がお願いをするような現在の状況は、日本軽視、そして無視につながりかねない危険な状態であることは確認されるべきだろう。
中国に土下座せんばかりの 共同声明は「外交的敗北」
安倍外交の全てが成功していたとは思えないが、少なくとも世界中の国々が(ドナルド・トランプ前米大統領につながりたいという動機があったにせよ)日本に助けを求めてきた時代から大きく後退しているのは疑いようもない事実だ。
岸田外交には、自主性がまるでない。空気だけ読んで片方につくだけでは、誰からも相手にされなくなってしまう。特にフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、中国との関係改善に意欲的で、4月の訪中時に欧米メディアが行ったインタビューに対して、以下のような発言をし、波紋を呼んだ。
「欧州は台湾問題に関して米中対立に巻き込まれてはならず、戦略的自律性を維持しなければならない」「われわれ欧州は台湾問題に関し、米国に追随したり中国の過剰反応に巻き込まれたりしてはならない」「われわれの危機でないものに関わることは欧州に対して仕掛けられたワナであり、それにはまることがあってはならない」「欧州は戦略的自律性を高めなければならない」
私は、中国がウクライナの仲裁に入るのは妨害せよ、などと言っているわけではない。勝手にやらせておけばいいし、そもそもこれまでのところ、まともに中国が本腰を入れてロシアのウラジーミル・プーチン大統領やゼレンスキー大統領を説得しているようには思えない。そんな状況で、日本まで中国に頼る意味はない、ということだ。
岸田首相は日本が独自外交などできないと達観して考えているかもしれないが、例えば、G20の議長国であるインドのナレンドラ・モディ首相と、G7の議長国である日本が、連携して仲裁に入るのは可能だろう。ロシアにとってみれば、天然ガスを買ってくれるインドを無視することはできないし、G7の中で日本はかつての安倍外交のように独自外交を展開してくれるのではないかという期待が大きいはずだ。
いずれにしろ、世界が中国に土下座せんばかりの声明を日本がまとめるというのは、外交的敗北以外の何物でもない。ウクライナ戦争が始まって、日本は西側諸国に追随するだけの外交となった。追随するだけなのだから失敗もないが、日本のプレゼンスは、各国へする莫大な援助額と反比例するように落ちていく。
 
 
 

 

●G7広島サミット セッション概要
セッション1 「分断と対立ではなく協調の国際社会へ/世界経済」
5月19日午後1時45分頃から約80分間、G7広島サミットのセッション1(ワーキング・ランチ)「分断と対立ではなく協調の国際社会へ/世界経済」が開催され、世界経済、貿易等についての議論が行われたところ、概要以下のとおりです。
1 岸田総理から、今回のサミット全体を通じての大きなテーマは、分断と対立ではなく協調の国際社会の実現に向けたG7の結束の確認と役割の強化であり、そのための積極的かつ具体的な貢献を打ち出すことである旨述べました。また、岸田総理から、そのため、第一に法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くこと、第二にG7を超えた国際的なパートナーとの関与を強化することという二つの視点を柱とし、G7として明確に打ち出したい旨述べました。議論の結果、G7首脳は、これら二つの視点の重要性について一致しました。
2 世界経済について、岸田総理から、「新しい資本主義」を掲げ、持続的な経済成長のため供給サイドの改革を進め、賃上げとともに「人への投資」の強化と国内投資の拡大を重視し、成長と分配の好循環を推進してきた旨述べました。また、G7首脳は、クリーンエネルギー経済への移行に向けた取組、特定国への依存の低減、信頼性あるサプライチェーンの構築に向け、G7間で緊密に連携するとともに、国際的なパートナーと協力していくことの重要性について一致しました。
3 デジタルについて、G7首脳は、G7の価値に沿った生成系AIや没入型技術のガバナンスの必要性を確認するとともに、特に生成系AIについては、「広島AIプロセス」として担当閣僚のもとで速やかに議論させ、本年中に結果を報告させることとなりました。また、岸田総理から、「人間中心の信頼できるAI」を構築するためにも、「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」を具体化させるべく、閣僚レベルの合意に基づき、国際枠組の早期設立に向けて協力を得たい旨述べました。これを受け、岸田総理は、議長国として相応の拠出も含め、貢献していく旨述べました。
4 貿易について、岸田総理は、WTOを中心とするルールに基づく自由で公正な貿易体制は、世界の成長及び安定の基盤である旨述べました。議論の結果、G7首脳は、WTO改革を含め、自由で公正な貿易体制の維持・強化に取り組んでいく必要性について一致しました。
セッション2 「ウクライナ」
5月19日午後15時45分頃から約85分間、G7広島サミットのセッション2「ウクライナ」が開催されたところ、概要以下のとおりです。
1 本セッションでは、ロシアによるウクライナ侵略をめぐる情勢についてG7間で率直な意見交換が行われました。
2 岸田総理からは、G7が結束し、あらゆる側面からウクライナへの力強い支援と厳しい対露制裁を継続していくことが不可欠である旨述べるとともに、今回のG7広島サミットでは、ロシアによる侵略を断固として拒否し、ウクライナに平和を取り戻すというG7の強い決意を改めて示したい旨述べました。
3 G7首脳は、ウクライナに対して外交、財政、人道、軍事支援を必要な限り提供するという揺るぎないコミットメントを改めて確認すると共に、制裁の回避・迂回対策含め、対露制裁の強化に向けた具体的な取組について一致しました。また、本セッション後に、これらの点に関する記載を含む「ウクライナに関するG7首脳声明」を発出しました。
セッション3 「外交・安全保障」
5月19日午後6時55から約100分間、G7広島サミットのセッション3(ワーキング・ディナー)「外交・安全保障」が開催されたところ、概要以下のとおりです。
1 本ワーキング・ディナーでは、冒頭、岸田総理から、厳しい国際情勢において、世界のどこであれ、力による一方的な現状変更の試みは決して認められず、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くというG7の強い意志を示していくことが不可欠である旨述べました。
2 各国首脳は、インド太平洋情勢について意見交換を行い、中国をめぐる諸課題への対応や、核・ミサイル問題、拉致問題を含む北朝鮮への対応において、引き続き緊密に連携していくことを確認しました。
3 また、核軍縮・不拡散に関し、岸田総理から、広島の地で核軍縮・不拡散について議論する意義に触れるとともに、NPTの維持・強化を図ることこそが、「核兵器のない世界」を実現する唯一の現実的な道である旨述べ、G7として「核兵器のない世界」へのコミットメントを再確認しました。
セッション4 「パートナーとの関与の強化(グローバル・サウス、G20)」
5月20日午前10時10分から約75分間、G7広島サミットのセッション4「パートナーとの関与の強化(グローバル・サウス、G20)」が開催されたところ、概要以下のとおりです。
1 岸田総理から、グローバル・サウスと呼ばれる新興国・途上国が存在感を高める中で、G7を超えた国際的なパートナーへの関与を強化し、これらの各国が直面する様々なニーズに応じてきめ細やかに対応するアプローチをとることが重要である旨述べました。また、こうした取組を進めるに当たり、「人」を中心に据えたアプローチを通じて、人間の尊厳や人間の安全保障を大切にすることの重要性を強調しました。
2 岸田総理から、G7として、食料、開発、保健といった国際社会が直面する諸課題において、G20が具体的な成果を得られるよう協力していきたい旨述べるとともに、G7広島サミットの成果を今後のG20との連携に繋げていきたいと述べました。
3 G7首脳は、(1)国際的なパートナーとの間で、国連憲章の原則や、国際社会が依って立つべき法の支配の重要性を共有していくこと、(2)こうした国々が抱える貧困、エネルギー移行、金融等の様々なニーズに応じて、途上国が現地で加工等を行えるようなバリューチェーンの構築、グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)を通じた支援、開発資金ギャップを埋めるための努力等を通じてきめ細やかに対応していくこと、(3)本年9月のG20ニューデリー・サミットに向けて、議長国インドを積極的に支えていくことについて一致しました。
セッション5 「経済的強靱性・経済安全保障」
5月20日12時10分から約80分間、G7広島サミットのセッション5「経済的強靱性・経済安全保障」が開催されたところ、概要以下のとおりです。
1 岸田総理から、経済安全保障上の課題に対処する重要性の急速な高まりを受け、今回G7サミットの議題としては初めて本件を取り上げることになる旨述べ、G7として、率直な議論を行いました。
2 G7として、(1)サプライチェーンや基幹インフラの強靱化、(2)非市場的政策及び慣行や経済的威圧への対応の強化、(3)重要・新興技術の適切な管理を含め、結束して対応していくことを確認しました。また、経済安全保障はG7が緊密な連携の下で取り組んでいくべき戦略的な課題であるとの認識の下、経済安全保障に関する取組について、G7枠組を通じて包括的な形で協働し、連携していく意思を確認しました。
3 さらに、AIがもたらす機会と課題についても議論が及び、G7首脳間で問題意識を共有しながら、データの重要性と対応の方向性について意見が交わされました。
4 本セッションでの議論を踏まえ、G7として初めて、経済的強靭性及び経済安全保障に関する包括的かつ具体的なメッセージを「経済的強靭性及び経済安全保障に関するG7首脳声明」として発出することで一致しました。
5 また、同様に、本セッションでの議論を踏まえ、G7として、クリーンエネルギー移行に必要不可欠な重要鉱物及び再生エネルギー機器製造のサプライチェーンの強じん化に関する「クリーンエネルギー経済行動計画」を発表し、世界全体のクリーンエネルギー経済への移行を加速することで一致しました。
セッション6 「複合的危機への連携した対応」
5月20日午後3時20分から約100分間、G7広島サミットのセッション6「複合的危機への連携した対応」が開催され、8か国の招待国と7つの招待機関(注)を交え、食料、保健、開発、ジェンダー等について議論が行われたところ、概要以下のとおりです。
1 岸田総理から、世界が直面する複合的危機への連携した対応の重要性を指摘し、食料、保健、開発、ジェンダー等について、招待国及び招待機関と率直な議論を行いました。
2 開発について、参加国・機関は、SDGs達成に向けた着実な進捗を得るべく、開発協力の効果的活用や民間資金の動員に向けた取組を推進していくことを確認しました。また、G7が立ち上げたグローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)の下で具体的な投資案件を推進していくことや、国際開発金融機関(MDBs)を始め様々な改革を推進していくことへの期待が示されました。さらに、透明で公正な開発金融の重要性や、債務問題への対応を加速する必要性についても一致しました。
3 食料について、参加国・機関は、喫緊の食料危機への対処と強靱な食料安全保障の確立が急務であることにつき認識を共有しました。議論の結果、G7と招待国の首脳は、共同で「強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明」を発表することで一致しました。
4 保健について、岸田総理は、グローバルヘルス・アーキテクチャー(GHA)の構築・強化に関して、首脳級ガバナンスや国際規範設定の重要性や、既存の機関等による緩やかな連携としての「ソフト・ガバナンス」の視点を指摘しました。また、今般G7が発出した「感染症危機対応医薬品等(MCM)への公平なアクセスのためのG7広島ビジョン」で示した原則に基づき、感染症危機対応医薬品等(MCM)に関するデリバリー・パートナーシップを立ち上げることを紹介し、連携を呼びかけました。議論の後、参加国・機関は、連携していくことを確認するとともに、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成等に引き続き連携して取り組んでいくことを確認しました。
5 ジェンダーに関しては、岸田総理より防災を含め女性・平和・安全保障(WPS)アジェンダの促進、女性の経済的自立等の取組を有機的に連携させることの重要性を強調したのに対し、参加国・機関よりこれに賛同する発言がありました。
6 この他、参加国・機関は、第13回WTO閣僚会合(MC13)の成功に向け、WTO改革を含む貿易分野における課題に取り組んでいくことを確認しました。
(注)8か国の招待国と7つの招待機関は、豪州、ブラジル、コモロ(アフリカ連合(AU)議長国)、クック諸島(太平洋諸島フォーラム(PIF)議長国)、インド(G20議長国)、インドネシア(ASEAN議長国)、韓国、ベトナム、国連、国際エネルギー機関(IEA)、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、世界銀行、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)。
セッション7 「持続可能な世界に向けた共通の努力」
5月20日午後6時45分から約100分間、G7広島サミットのセッション7「持続可能な世界に向けた共通の努力」が開催され、8か国の招待国と7つの招待機関(注)を交え、気候・エネルギー、環境等について議論が行われたところ、概要以下のとおりです。
1 岸田総理から、地球規模で問題が深刻化している気候変動、エネルギー、環境について一体として議論することの重要性を指摘しました。
2 気候変動・エネルギーに関して、参加国・機関は、気候変動、生物多様性、汚染といった課題に一体的に取り組む必要があること、「気候危機」への対応は世界共通の待ったなしの課題であり、G7も太平洋島嶼国もアフリカやその他の地域の国々も一緒に取り組む必要があることを確認しました。また、エネルギー安全保障、気候危機、地政学リスクを一体的に捉え、再エネや省エネの活用を最大限導入しつつ、経済成長を阻害しないよう、各国の事情に応じ、あらゆる技術やエネルギー源を活用する多様な道筋の下で、ネット・ゼロという共通のゴールを目指すことの重要性や、クリーンエネルギー移行に不可欠なクリーンエネルギー機器及び重要鉱物のサプライチェーンの強靱化の必要性を共有しました。さらに、気候資金を動員し、気候変動に脆弱な国や人々が取り残されないような支援が必要であるという認識を共有しました。
3 環境問題に関して、参加国・機関は、プラスチック汚染対策、生物多様性保全、森林対策、海洋汚染などの具体的な取組を進めていくための連携の強化を確認しました。
4 最後に、岸田総理から、こうした共通認識に基づき、本日の議論をCOP28等の機会における更なる行動につなげていきたい旨述べました。
(注)8か国の招待国と7つの招待機関は、豪州、ブラジル、コモロ(アフリカ連合(AU)議長国)、クック諸島(太平洋諸島フォーラム(PIF)議長国)、インド(G20議長国)、インドネシア(ASEAN議長国)、韓国、ベトナム、国連、国際エネルギー機関(IEA)、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、世界銀行、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)。
セッション8 「ウクライナ」
5月21日午前10時45分から約60分間、G7広島サミットのセッション8「ウクライナ」が開催され、G7首脳、ゲストとして参加したゼレンスキー・ウクライナ大統領の間でウクライナ情勢について議論が行われたところ、概要以下のとおりです。
1 冒頭、岸田総理から、厳しい冬も乗り越え、ロシアの侵略に結束して対抗してきたウクライナ国民の勇気と忍耐強さに、心から敬意を表する旨述べました。また、岸田総理から、ゼレンスキー大統領が公正かつ永続的な平和に向けた真摯な努力を続けていることを、G7として歓迎し、支持している旨述べました。
2 その上で、G7として、ウクライナに対して外交、財政、人道、軍事支援を必要な限り提供するという揺るぎないコミットメントを着実に実施していくことで一致するとともに、ウクライナに平和を取り戻し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜いていくことの決意を確認しました。
セッション9 「平和で安定し、繁栄した世界に向けて」
5月21日午前12時から約90分間、G7広島サミットのセッション9「平和で安定し、繁栄した世界に向けて」が開催され、G7首脳、8か国の招待国首脳、ゲストとして参加したゼレンスキー・ウクライナ大統領の間で、ウクライナ情勢を始め、国際社会が直面する平和と安定への挑戦にどのように対応すべきか議論が行われたところ、概要以下のとおりです。
1 岸田総理から、世界のどこであれ、力による一方的な現状変更の試みは認められない旨強調した上で、ロシアによるウクライナ侵略を一日も早く終わらせ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜いていく必要性を強く訴えました。また、岸田総理から、国際社会の平和を確保するためには、厳しい安全保障環境を踏まえつつ、「核兵器のない世界」の実現に向けた現実的な取組を進めることも重要であり、ロシアによる核の威嚇は断じて受け入れられず、ましてやその使用はあってはならない旨述べました。
2 ウクライナ情勢に関し、各国首脳からは、ロシアによるウクライナ侵略がもたらしている人的被害やエネルギー、食料不安の増大を含む世界経済への悪影響につき、深い懸念が表明されました。
3 各国首脳は、インド太平洋やアフリカを始め、国際社会が抱える様々な平和と安定に関する諸課題について議論を交わし、以下の点が重要であるとの認識を共有しました。
•全ての国が、主権、領土一体性の尊重といった国連憲章の原則を守るべきこと
•対立は対話によって平和的に解決することが必要であり、国際法や国連憲章の原則に基づく公正で恒久的な平和を支持するということ
•世界のどこであっても、力による一方的な現状変更の試みを許してはならないこと
•法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くこと
また、複数の首脳から、「核兵器のない世界」に向けた現実的な取組の必要性や、安全保障理事会を含む国連の改革の必要性についても指摘がありました。
4 その上で、各国首脳は、こうした土台に立ち、引き続き対話を続け、国際社会が直面する平和と安定に対する挑戦に共に立ち向かっていくことを確認しました。  
●ウクライナに関するG7首脳声明 (5/19)

 

1.前文
本日、広島における我々の会合で、我々G7首脳は、ロシアのウクライナに対する違法で、不当で、いわれのない侵略戦争に対して一つに結束するという我々のコミットメントを再確認した。我々は、ロシアによる明白な国連憲章違反及びロシアの戦争が世界へ与える影響を最も強い言葉で非難する。15か月に及ぶロシアの侵略は、何千もの命を奪い、ウクライナの人々に甚大な苦難を与え、世界の最も脆弱な人々の多くのための食料とエネルギーへのアクセスを危険にさらした。我々は、ウクライナの人々の損失と苦難に、心から同情と哀悼の意を表明する。我々は、ウクライナの人々の勇敢な抵抗に敬意を表する。我々のウクライナへの支援は揺らがない。我々は、ロシアの違法行為が世界に与える影響を軽減するという我々のコミットメントに、疲弊を覚えることはない。
本日、我々は、主権国家であるウクライナに対するロシアの違法な侵略を確実に失敗させ、国際法の尊重に根ざした公正な平和を追求するウクライナ国民を支援するため、新たな措置を講じている。我々は、必要とされる限り、ウクライナが求める、財政的、人道的、軍事的及び外交的支援を提供するという我々のコミットメントを新たにしている。我々は、ロシア及びロシアによる戦争遂行を支援する者に対するコストを増加させるための更なる制裁及び措置を課している。そして我々は、人道支援を含め、世界中のパートナーが、ロシアによる戦争によって引き起こされた苦難に対応する中で、彼らを支援するための措置を講じている。我々はまた、ロシアが我々や世界に対してエネルギーの入手可能性を武器にすることがもはやできないようにする取組において、成功を重ねている。2022年2月以降、我々は、制裁、輸入禁止及びその他の措置を実施し、ロシアのエネルギー資源への我々の依存度を低下させてきた。加えて、我々は、エルマウにおいて、ロシアの石油及び石油製品の上限価格措置の導入に合意した。この措置は機能している。ロシアの収入は減少している。世界の石油及びガス価格は顕著に下落し、世界各国に恩恵が及んでいる。
2.ウクライナの包括的、公正かつ永続的な平和に向けて
我々は、ロシアに対し、進行中の侵略を止め、国際的に認められたウクライナの領域全体から即時、完全かつ無条件に部隊及び軍事装備を撤退させるよう強く求める。ロシアがこの戦争を始め、この戦争を終わらせることができる。ロシアによるウクライナ侵略は、国際法、特に国連憲章の違反を構成する。我々は、力によってウクライナの領域を獲得しようとするロシアの違法な試みに対する我々の断固とした拒絶を改めて表明する。我々は、ロシアの部隊及び軍事装備の完全かつ無条件の撤退なくして公正な平和は実現されないことを強調する。これは和平を求めるあらゆる呼びかけに含まれなければならない。
ロシアの無責任な核のレトリック、軍備管理体制の毀損及びベラルーシに核兵器を配備するという表明された意図は危険であり、受け入れられない。我々は、ロシアを含む全てのG20首脳によるバリにおける声明を想起する。この関連で、我々は、ロシアのウクライナ侵略の文脈における、ロシアによる核兵器の使用の威嚇、ましてやロシアによる核兵器のいかなる使用も許されないとの我々の立場を改めて表明する。
我々は、本年2月に、国際社会の広範な支持の下に採択された国連総会決議である「ウクライナにおける包括的、公正かつ永続的な平和の基礎となる国連憲章の諸原則」決議(A/RES/ES-11/6)を改めて想起し、ウクライナの包括的、公正かつ永続的な平和を実現するための具体的な取組を引き続き追求していく。我々は、引き続き外交にコミットしており、また、国連憲章に沿った基本原則を平和フォーミュラにおいて掲げるというヴォロディミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領の真摯な努力を歓迎し、支持する。実行可能な戦後和平のため、我々は、関心のある国及び機関並びにウクライナと共に、ウクライナが自らを守り、自由で民主的な未来を確保し、将来のロシアの侵略を抑止することを支援するための持続的な安全保障や他のコミットメントに関する取決めに引き続き達する用意がある。我々は、ウクライナが自らの国民のために前向きな未来を構築することを支援することを決意する。我々は、ウクライナが欧州政治共同体において重要な役割を果たしていることを歓迎する。
3.原子力安全及び核セキュリティ
我々は、ロシアによるザポリッジャ原子力発電所(ZNPP)の著しく無責任な占拠及び軍事化に対し、最も重大な懸念を表明する。我々は、国際原子力機関(IAEA)の専門家の継続的な駐在及び現場における原子力安全と核セキュリティの確保に焦点を当てることを含む、ウクライナにおける核物質と原子力施設の原子力安全及び核セキュリティを強化し、並びに保障措置の適用を強化するためのIAEAの取組を支持する。我々は、IAEA事務局長による「原子力安全及び核セキュリティに不可欠な7つの柱」への支持を再確認し、いかなる状況においても原子力施設の安全と核セキュリティを確保し、及び促進することの重要性を強調する。この文脈で、我々は、この目的のためのウクライナにおけるIAEAの取組に対するG7の貢献を強調し、他国にも支援の提供を求める。
4.ロシアの侵略戦争を止めるための支援
我々は、ロシアの侵略から自らを守るウクライナに対し、そのニーズに応じながら、安全保障上の支援を続けることにコミットする。
我々は、各国の事情に沿って各国から提供される軍事及び防衛支援を調整する上での、ウクライナ防衛コンタクトグループの重要性を強調する。
5.ウクライナの復旧・復興に向けた支援
我々は、ウクライナが必要とする経済支援を確保することへの我々の強いコミットメントを再確認する。日本のG7議長国としてのリーダーシップの下、国際社会と共に、我々はウクライナが2023年及び2024年初頭に必要な財政支援を得ることを確保してきた。我々は、国際通貨基金(IMF)の拡大信用供与措置(EFF)が承認されたことを歓迎し、このプログラムが支援するウクライナの改革の速やかな実施を期待する。このプログラムは、ウクライナのマクロ経済及び財政状況の安定化を支援し、より長期的な経済の持続可能性に貢献し、他の国・機関や民間部門からの更なる資金支援の促進を支援するものである。
我々は、「ウクライナ復興ドナー調整プラットフォーム」における議論の進展を歓迎し、ウクライナ、パートナー国及び関連する国際機関と更に協調するという我々の意図を再確認する。我々は、ウクライナの復旧ニーズに対処することにコミットする。我々は、ウクライナの重要インフラの修復、復旧及び復興を支援するための共同の取組を継続する。我々は、我々の改革への援助と支援が十分に調整され、適切に順序付けられ、相互に強化し合うことを確実にするための主要なメカニズムとして、このプラットフォームを使用することを決意する。このプラットフォームは、ウクライナのニーズに合致するドナーによる支援を調整し、欧州への道に沿った形で、ウクライナの改革アジェンダを推進し、民間部門主導の持続可能な成長の促進を助ける上で中心的な役割を果たすであろう。我々はまた、ウクライナのエネルギー分野支援に関するG7+外相会合の取組を歓迎し、ウクライナのエネルギー・インフラの復旧及び改善に対する我々の継続的な支援を改めて表明する。我々は、人道的地雷処理、戦争に関連するがれきや汚染管理に関する経験、知見及び専門知識の共有を含め、ウクライナの持続可能で強靭な復旧及びグリーンな復興を支援する用意がある。
我々は、貿易・投資を通じたものを含め、保険やリスク管理のためのその他のツールによって促進され得る、ウクライナの復旧及び復興における民間部門の役割の重要性を認識している。この観点から、我々は、世界銀行グループ、欧州復興開発銀行(EBRD)、欧州投資銀行(EIB)及び我々の開発金融機関(DFI)によるマンデートに従った取組を歓迎する。これらの取組は、多数国間投資保証機関(MIGA)におけるウクライナ復興・経済支援信託基金(SURE)の設立や、DFI及びEBRD間の更なる協調や共同融資の効率化を通じて、より広くウクライナや影響を受けている国への支援を行うための、5月12日の東京でのウクライナ投資プラットフォーム立ち上げを含む。我々は、本年6月にロンドンで開催されるウクライナ復興会議が、ウクライナの復旧及び復興の機運を高めることを期待する。
6.汚職対策及び司法制度改革
我々は、汚職との闘いに関するウクライナ政府と国民の継続した決意及び取組を歓迎し、良いガバナンスを支援し投資家の信頼を向上させる効果的な改革アジェンダの継続的な履行を促す。
我々は、特に司法部門及び法の支配の促進において、必要な制度構築とウクライナの欧州への道に沿った実質的な法改革を進めるウクライナの取組を支持する。
7.制裁及びその他の措置
我々は、ロシアが違法な侵略を遂行する能力を更に損なうために、協調した制裁及びその他の経済的行動を講じることにおいて引き続き結束している。具体的には、我々は、それぞれの法的権限及び手続並びに国際法と整合的な形で、次の措置を講じている:
7-1 我々は、我々の経済へのロシアのアクセスを更に制限する。ロシアの軍事産業基盤の鍵となる部門を支える投入物にロシアがアクセスすることを阻止するために講じられた従前の措置を基礎として、我々は、産業機械、工具及びロシアがその軍事機構を再建するために利用しているその他の技術の輸出など、ロシアにより戦場で使用されているものを含めた、ロシアの侵略に重要な全ての品目の輸出が、全ての我々の管轄下において制限されることを確保するために我々の行動を拡大する。我々は、製造、建設、輸送といったこれらの主要分野で活動する者及びビジネスサービス分野を更なる対象とする。我々は、ロシアから、ロシアの軍事機構を支えるG7の技術、産業設備及びサービスを枯渇させる。我々は、農産物、医療品、人道用製品を我々の制限的措置から引き続き守り、第三国への潜在的な波及効果を避けるためあらゆる努力を継続する。
7-2 我々は、前線に物資を輸送する団体を対象とすることを含め、ロシアに対する我々の措置の回避や迂回を更に阻止する。我々は、我々の制限的措置の有効性を高めるために、「ロシアの支配層(エリート)、代理勢力、オリガルヒ」(REPO)タスクフォース及び実施調整メカニズムを通じて取組を続ける。我々は、G7の措置に対する第三国の理解を強化するため、制限されたG7の物品、サービス又は技術がそこを通じてロシアに提供され得る第三国に関与している。我々は、我々の措置が迂回されず、意図した効果をもたらすことを確保するために、これらの国々が行ったコミットメントに留意し、奨励する。
7-3 我々は、第三者に対してロシアの侵略への物的支援を直ちに停止するよう求め、そうしなければ深刻なコストに直面することとなることを、改めて表明する。我々は、ロシアに対して武器を供給している第三者を阻止し、これに対応するための連携を強化し、ロシアの戦争を物的に支援する第三国の主体に対し、引き続き行動を取る。
7-4 我々はまた、ロシアがウクライナでの戦争を進めるために、国際金融システムを利用することを更に制限するために取り組む。我々は、ロシアの戦争の資金調達を故意に支援する者に対して更なる措置を講じる用意がある。我々は、ロシアの銀行の第三国支店が制裁を回避するために使用されるのを阻止することを含め、ロシアが我々の金融措置を迂回するための手段を更に減じるための措置を講じている。我々は、不可欠な取引のための金融チャネルを残すべく調整しつつ、ロシアの金融部門に対する必要な行動を取り続ける。
7-5 我々は、輸出禁止並びに海上輸送されるロシア産原油及び石油精製品の上限価格措置を含むこれまでに我々が講じてきた措置を基礎として、ロシアのエネルギー収入及び将来的な採掘能力を制限する適切な措置を講じることにより、ロシアの違法な侵略の資金を調達するための収入を引き続き減少させる。我々は、ロシアのエネルギー及び物資への依存を劇的に低減してきた。我々は、ロシアが我々に対してエネルギーを武器にすることがもはやできないように、この道を歩み続けることを決意する。我々は、供給の多角化を追求する国を支援するため取り組むことを含め、ロシアからの民生用原子力及び関連製品への依存を更に低減する。我々はまた、ロシアの金属からの収入を減らすための取組を継続する。さらに、我々は、ロシアの石油及び石油製品の上限価格措置を堅持することに引き続きコミットしており、波及効果を回避して世界のエネルギー供給を維持しつつ、これらの上限価格の回避に対抗するための我々の取組を強化する。
7-6 ロシアがダイヤモンドの輸出から得ている収入を減らすために、我々は、ロシアで採掘、加工又は生産されたダイヤモンドの取引及び使用を制限するために引き続き緊密に協力し、追跡技術を含め、将来の連携した制限的措置の効果的な実施を確保することを目的として主要なパートナーと関与し続ける。
8.損害の責任
我々は、ロシアがウクライナの長期的な再建の費用を支払うようにする我々の取組を続ける。この文脈で、我々は、欧州評議会の枠組みにおける、また、国連総会からの要請に応えるための、ロシアによるウクライナ侵略により生じた損害を登録する機関の設立を歓迎する。REPOタスクフォースでなされたコミットメントに沿って、我々は、ロシアによる侵略に関連して制裁を受けている個人及び団体の資産を特定し、制限し、凍結し、差し押さえ、適切な場合には、没収又は剥奪するために、我々の国内の枠組みの中で利用可能な措置を引き続き講じる。我々は、我々の管轄下で動かせないようになっているロシアの国家が有する資産の保有状況について完全に把握するための取組を進めている。我々は、それぞれの法制度と整合的に、ロシア自身がウクライナにもたらした損害を支払うまで、我々の管轄下にあるロシアの国家が有する資産を、引き続き動かせないようにしておくことを再確認する。
9.アカウンタビリティ
ロシアによる民間人及び重要な民間インフラへの攻撃など、戦争犯罪及びその他の残虐行為に対する不処罰は、認められてはならない。我々は、ウクライナ政府により開催された国際会議「United for Justice」での取組を認識し、ウクライナの領域で行われた国際法の下での最も深刻な犯罪に対する責任を追及するブチャ宣言を想起する。
この文脈で、我々は、国際刑事裁判所(ICC)などの国際的なメカニズムの取組を支援することによるものを含め、責任を有する者の責任を国際法と整合的な形で追及するとの我々のコミットメントを改めて表明する。我々は、占拠されたウクライナの地域からロシアへの子供を含むウクライナ人の不法な追放及び移送を強く非難し、この観点から、ICCの捜査の進展を最大限の注意を持って引き続き注視し、これらの子供の帰還を求め続ける。我々はまた、ウクライナ人に対する紛争関連の性的暴力及びジェンダーに基づく暴力の事例を非難する。我々は、ウクライナに対する侵略犯罪の訴追のための国際センターの設立を歓迎する。
加えて、我々は、この文脈で国際連合教育科学文化機関(UNESCO)の取組を歓迎し、全ての子供たち、特に、侵略戦争によって影響を受けた子どもたちの教育の保護と、被害を受け、脅かされたウクライナの文化財及び文化遺産の保全の重要性を強調する。我々は、ロシアの侵略が国際スポーツに与える影響にも注意を払っている。スポーツ団体の自律性を完全に尊重しつつ、我々は、公正なスポーツ競技と、ロシア及びベラルーシの選手が国家の代表として出場することが決してないようにすることに焦点を当てている。
10.脆弱な国への支援
ウクライナへの支援と並行して、我々は、ロシアのウクライナに対する侵略戦争によって悪化した脆弱な国々の増大するニーズに対処するための我々のコミットメントを再確認する。特に、我々は、ロシアによる食料の武器化は、経済の脆弱性を増幅させ、既に酷い状況にあった人道危機を悪化させ、世界的な食料不安と栄養不良を前例のないレベルにまでエスカレートさせてきたことを強調する。我々は、2022年10月にIMFにより承認された食料ショック融資枠を通じて提供された重要な緊急融資を歓迎し、脆弱な国々に対する追加の取組を支持する。我々は、影響を受けている国や人々を支援するために、食料安全保障のためのグローバル・アライアンス(GAFS)を通じたものを含め、迅速な支援を引き続き提供する。我々は、EU・ウクライナの連帯レーンを通じたものを含む、ウクライナの農産物の輸出を引き続き支援する。この観点から、我々は、黒海穀物イニシアティブ(BSGI)の拡大及び延長を支持し、ロシアに対し、グローバルな食料供給を脅かすことを止めるとともに、BSGIが最大限の能力で運用されることを認めるよう求める。我々は、「ウクライナからの穀物」イニシアティブにコミットし続ける。我々の貢献は、国連世界食糧計画(WFP)と連携して、最も脆弱な国々への人道的食料援助の提供を支援している。我々は、エネルギー安全保障の強化と気候変動に関するコミットメントの達成のため、引き続き具体的な共通の行動に専心する。ロシアによるウクライナ侵略に端を発した世界的なエネルギー危機による影響を抑えるため、天然ガス及びクリーンな燃料の市場のモニタリング及び供給セキュリティに関する国際エネルギー機関(IEA)タスクフォースなどを通じて、脆弱で影響を受けている国々を支援するため、連帯して協力し続ける。
11.結語
我々は、「平和の象徴」である広島から、G7メンバーが我々の全ての政策手段を動員し、可能な限り早くウクライナに包括的、公正かつ永続的な平和をもたらすために、ウクライナと共にあらゆる努力を行うことをここに誓う。 
●経済的強靭性及び経済安全保障に関するG7首脳声明 (5/20)

 

互恵的なパートナーシップを促進し、強靱で持続可能なバリューチェーンを支援することは、我々の経済及び世界経済の双方に対するリスクを軽減し、全ての人々にとっての持続可能な発展を確保する上で、我々の優先事項であり続ける。最近の出来事は、自然災害、パンデミック、地政学的緊張及び威圧に対する世界中のエコノミーの脆弱性を浮き彫りにした。我々は、2022年G7エルマウ・サミットでのコミットメントを想起しつつ、脆弱性を低減するとともに、それらを利用し助長する悪意ある慣行に対抗することにより、経済的強靱性及び経済安全保障に関する進行中の我々の戦略的協調を強化するため、今日、追加的な措置をとることとする。これは、G7クリーンエネルギー経済行動計画で示されたサプライチェーンの強靱性を強化するために我々がとっている関連する措置を補完するものである。我々は、グローバルな経済的強靱性を高めるために、サプライチェーンの多様化及び地域の価値の創出を促進し、全ての地域の労働者及びコミュニティに利益をもたらす形で、サプライチェーンにおける低・中所得国のより重要な役割を支援することによるものを含め、G7の間及び全ての我々のパートナーとの間の双方で協力することの重要性を強調する。我々は、依存関係を助長するように設計された非市場的政策及び慣行に対処し、経済的威圧に対抗していく。我々は、安全保障のために不可欠な、又は国際の平和及び安全を脅かし得る、明確に定義された狭い範囲の機微技術が、より広範な技術の貿易に不当に影響を与えることなく、適切に管理されることを引き続き確保していく。我々は、経済的強靱性及び経済安全保障を強化するための我々の協力が、良好に機能するルールに基づく国際的な体制、特にWTOを中核とする多角的貿易体制の維持及び改善に根ざすものであることを確認する。これらの目的のため、我々は、毎年継続して成果を出すため、G7枠組みを通じて包括的な形で協働し、連携していく。
グローバルな経済的強靱性の強化
強靱なサプライチェーンの構築
新型コロナウイルスのパンデミック及びロシアによるウクライナに対する侵略戦争は、世界中の国々のサプライチェーンの脆弱性をむき出しにした。サプライチェーンの混乱は、開発途上、新興、先進エコノミーに同じように壊滅的な打撃を与えている。我々は、透明性、多様性、安全性、持続可能性、信頼性が、G7内外の信頼できるパートナー国との間での強靱なサプライチェーンネットワークを構築及び強化するに当たり不可欠な原則であることを認識する。我々は、全ての国に対し、これらの「強靱で信頼性のあるサプライチェーンに関する原則」を支持することを奨励する。我々は、グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)の実施を通じたものを含め、より広い国際社会、特に開発途上国の強靱性の構築を支援するとの我々の強い意志を再確認する。我々のパートナーシップは、国際法を遵守し、自由で公正であり、互恵的な経済及び貿易関係を促進する。エネルギーその他の経済的依存関係を武器化する最近の事案から教訓を得て、我々はそのような行為に断固として反対する。我々は、特に重要鉱物、半導体及び蓄電池などの重要物資について、世界中のパートナーシップを通じて、強靱なサプライチェーンを強化していく。我々は、供給混乱に対処するための意思疎通のチャネルを強化するため、また、それぞれのシナリオに基づくストレステストから得られたものを含め知見とベスト・プラクティスを共有するため、取組を強化していく。
強靱な基幹インフラの構築
我々は、特にデジタル領域における基幹インフラの安全性と強靱性を強化するために協力することの重要性を強調する。我々は、モバイル、衛星及びコアネットワーク、海底ケーブル、コンポーネント並びにクラウド・インフラを含め、情報通信技術(ICT)エコシステムの強靭性を強化するプロジェクトを歓迎する。我々は、信頼できるベンダーによる革新的で競争力のあるデジタル・エコシステムを支持し、サプライヤーの多様化への取組を歓迎し、安全で、強靱で、確立されたアーキテクチャと並んで、開かれた、相互運用可能なアプローチに向けた市場のトレンドについて、技術的に中立な形で、議論を継続する。日本のG7議長国下で、オープンRANの早期展開が進んでいることを背景に、我々は、オープンアーキテクチャや、セキュリティに関連する側面や機会について意見交換を継続していく。我々は、通信機器及びサービスの技術標準の策定において、技術的に中立な形で、オープン性と相互運用性を可能にするため、開放的で、グローバルで、市場主導で、かつ包摂的なマルチステークホルダー・アプローチを支持する。我々は、このようなインフラには、プラハ提言やEUの5Gツールボックスで述べられているような既存の施策に沿って、厳格な設備評価が必要であることを議論した。我々は、ベンダー及びサプライヤーがもたらす政治的、経済的、及びその他の非技術的な性質のリスクを評価する必要性を再確認した。我々は、それぞれの取組を通じて得られた情報やベスト・プラクティスを共有することにより、強靭な基幹インフラを構築するための取組を継続していく。
国際的なルール及び規範を損なう有害な慣行への対応
グローバルな経済的強靭性を確保するための非市場的政策及び慣行への対応
我々は、蔓延する不透明かつ有害な産業補助金、国有企業による市場歪曲的慣行及びあらゆる形態の強制技術移転といった幅広い非市場的政策及び慣行、並びに戦略的依存関係及び構造的な脆弱性を作り出すその他の慣行を利用する包括的な戦略に関し、新たな懸念を表明する。したがって、非市場的な政策及び慣行に対処することは、経済的強靱性、そして経済安全保障を強化する上で不可欠な側面となり得る。脆弱性を助長する目的での非市場的政策及び慣行の利用が増加していることに鑑み、我々は、既存の手段を効果的に用いるとともに、適当な場合には新しいツールを開発する必要性を再確認する。我々は、公平な競争条件を歪める非市場的政策及び慣行に取り組むためのより強力な国際的なルール及び規範を引き続き積極的に発展させていくとともに、これらの問題により良く対処するためにWTOにおける取組を強化していく。
経済的威圧への対処
世界は、経済的脆弱性及び経済的依存関係を悪用し、G7メンバーや世界中のパートナーの外交政策及び国内政策並びにその立場を損なうことを企図する経済的威圧の事案の憂慮すべき増加に直面している。我々は、G7メンバー及び小規模なエコノミーを含む我々のパートナーに対して、要求に従い適合することを強制することを通じ、経済的依存関係を武器化する試みが、失敗に終わり報いを受けることを確保すべく、協働していく。我々は、多角的貿易体制の機能及び信頼を損なうのみならず、主権の尊重及び法の支配を中心とする国際秩序を侵害し、究極的には世界の安全及び安定を損なう経済的威圧について、深刻な懸念を表明し、全ての国に対してその使用を控えるよう求める。我々は、それぞれの国内において、威圧的な経済的手段の使用を抑止しそれに対抗するため、既存の手段を活用し、その効果を検証していくとともに、必要に応じて新たな手段を開発していく。我々は、WTOにおけるものを含む既存の共同の取組の重要性を認識しつつ、経済的威圧に対する共同の評価、準備、抑止及び対応を強化するため、「経済的威圧に対する調整プラットフォーム」を立ち上げ、連携を強化していくとともに、G7以外のパートナーとの協力を更に促進していく。我々は、この調整プラットフォームの下、早期警戒及び迅速な情報共有を利用し、定期的に協議を行い、協力して状況を評価し、協調的な対応を追求し、経済的威圧を抑止し、それぞれの法制度に従って、適当な場合にはそれに対抗する。また、我々は、適当な場合には、連帯及び法の支配を堅持する決意の意思表示として、対象となった国家、エコノミー及び主体を支援するため、協調する。
デジタル領域における有害な慣行への対抗
我々は、企業に対してデータのローカライゼーションを不当に要求する規制、又は適切な保障や保護なしに、政府がデータにアクセスすることを許可する規制について、懸念を表明する。地政学的及び地経学的な変動の結果、グローバルなビジネスのバリューチェーン及びサプライチェーン、特に我々の基幹インフラに関わるそれらのものがリスクにさらされている。そのため、我々は、不当な影響力、スパイ行為、違法な知見の漏えい及び妨害行為からグローバルなバリューチェーン及びサプライチェーンを保護するため、デジタル領域における悪意ある慣行に対抗することを追求するための戦略的対話を深めていく。
国際標準化における協力
我々は、世界経済における技術標準の重要性を認識し、次世代の技術を形成する、開放的で、自主的で、コンセンサスに基づく標準の策定を共同で支援するという我々のコミットメントを再確認する。これらは、我々の共通の民主的価値と原則に沿った、包摂的なマルチステークホルダー・アプローチに基づくものであるべきである。我々は、共通の価値と原則を考慮し、情報共有及び確立された標準化プロセスへの関与を通じて、国際標準化に関連する問題について、それらが発生した場合には、特定し、対処していく。我々は、国際標準化に関する活動において、より広範な官民のステークホルダーを含め、情報共有を通じて、我々の協力を深化させるとともに、効果的な標準化を支援していく。このため、我々は、「デジタル技術標準に関するG7連携のための枠組み」を通じた協力を含め、我々の継続的な連携を再確認する。
国際の平和及び安全への脅威に関する共通の懸念への対処
重要・新興技術の流出防止による国際の平和及び安全の保護
我々は、重要・新興技術に関するG7パートナー間の研究開発を深めるに当たり、我々が開発する最先端技術が、国際の平和及び安全を脅かす軍事力の増強のために利用されることを防止するために連携する共通の責任及び決意を確認する。そのために、我々は、そのようなリスク及びそれらに対処するために必要な政策手段に関する共通理解を更に高めるため、適当な場合には、情報と経験を共有するとともに、各国の状況に応じて、輸出及び投資に関するものを含め、必要な場合には更なる措置を講じていく。我々は、デュアルユース技術を保護するための我々のエコシステムに存在するギャップが悪用されないよう、輸出管理分野における協力のための多国間での取組を更に強化していく。我々は、国際の平和及び安全を損なう目的で軍事力及びインテリジェンス能力を使用し得る主体が当該能力を強化する上で中核となると評価される、一部の狭い範囲の技術の発展が、我々の企業の資本、専門的知見、知識によって加速されることを防止することに共通の関心を有する。我々は、対外投資によるリスクに対処するために設計された適切な措置は、我々の機微技術が国際の平和及び安全を脅かす方法で利用されることを防止するために連携して機能する輸出及び対内投資に関する特定された既存の管理手段を補完するために、重要となり得ることを認識する。我々は、我々の経済安全保障上のツールキットを今日の課題に適合させるために引き続き取り組む中で、これらの共通の目標に関連して民間セクターに対して明確性を提供していく。また、我々は、我々の努力の効果を最大化させるため、引き続き、実現可能な場合には、協調し、教訓を共有していくとともに、アプローチの調和を追求していく。
●G7クリーン・エネルギー経済行動計画 (5/20)

 

我々G7首脳は、気候危機に対処し、遅くとも2050年までにネット・ゼロ排出を達成するために、世界のクリーン・エネルギーへの移行を加速させるべく行動し、協力を深化させている。我々は、パリ協定への揺るぎないコミットメントを再確認する。我々は、これらの目標を達成するためには、国内外における将来の産業への公的及び民間の投資が必要であり、世界的なエネルギー移行のコストを下げ、クリーン・エネルギーへの移行のための投資ギャップを埋めるために、更なる協力が必要であることを認識する。我々は、我々の貿易政策が我々の共通の目標を達成する上で大きな役割を果たすこと、また、我々の貿易政策が世界貿易機関(WTO)を中核とする、ルールに基づく、公正で、公平な、かつ透明性のある多角的貿易体制を強化するという我々のコミットメントに基づくものでなければならないことを認識する。我々は、持続可能な開発及びクリーン・エネルギーへの移行を含む我々の時代の最も差し迫った課題に効果的に対応できるよう、多角的貿易体制の包括的な改革及び強化に取り組んでいる。我々は、将来のクリーン・エネルギー経済を推進する上で、互いの犠牲の上に行動しないという我々の共同のコミットメントを反映した協調的な方法で、開かれた、かつ透明性のある協力を行うことを強調する。我々は、持続可能な成長及び質の高い雇用を実現するクリーン・エネルギー経済への公正な移行の礎として、上記の考えを支持することにコミットする。この文脈で、我々は、過度な戦略的依存を減らし、世界中の現地の労働者及びコミュニティに利益をもたらす、安全、強靱、廉価で持続可能なクリーン・エネルギーのサプライチェーンと強い産業基盤を構築することの重要性を強調する。我々はまた、これらの目標の達成においてクリーン・エネルギー技術が果たす役割を認識し、この目的のために、この分野における研究及び更なる協力にコミットする。クリーン・エネルギー経済への移行を導くための我々の共同の取組は、パートナーが自国の経済の野心的かつクリーンな移行を達成するために効果的にインセンティブを与える政策に取り組み、労働者の地位を向上させ、疎外されたコミュニティを支援し、環境を保護し、ルールに基づく多角的体制を堅持し強化するための我々の共同のコミットメントに基づくものである。低・中所得国のクリーン・エネルギーへの願望及びそれらの国々がクリーン・エネルギーへの移行において果たす重要な役割を認識し、我々の行動計画は、未来のクリーン・エネルギー経済への移行が貧困を削減し、繁栄の共有を促進することを確実にするために、世界中のパートナーとの協力及び支援を深化させることを目指す。
1.一致団結して前進
我々は、パリ協定の目標達成に向け、一致団結して前進する。我々は、各国のエネルギー事情、産業・社会構造及び地理的条件に応じた、多様な道筋があることを認識しつつ、気温上昇を摂氏1.5度に抑えることを射程に入れ続けるために、これらの道筋が遅くとも2050年までにネット・ゼロという共通目標に繋がるべきであることを強調する。この共通の目標を達成するために、私たちはゼロサム競争に対して取り組んでいる。我々は、政策を実施する際に起こり得る相違を、対話、協力及び協調を通じて解決することを目指す。我々は、我々の経済の脱炭素化に向けたグローバルな取組を支援するため、国際的なパートナーと協力し、開放的、協調的かつ包摂的な気候クラブにおいて引き続き活動するという我々のコミットメントを再確認する。我々は、気候クラブの創設メンバーとして、国際的なルールを遵守しつつ、時間をかけて、脱炭素化された産業生産を既定のビジネスケースとしていき、それにより、グリーン成長の支援に貢献し、特にカーボンリーケージ及び緩和の取組に対して起こり得るその他のリスクに対処することを期待する。我々は、すでに参加を表明している国々を歓迎する。
2.インセンティブの効果の最大化
我々は、パリ協定の目標を達成するためには、有意義で新たなインセンティブ、産業政策、公的及び民間投資が緊急に必要であると認識する。我々は、クリーン・エネルギーへの移行には、世界的にエネルギー移行のコストを下げるために投資ギャップを埋めることが必要であることを認識する。我々は、我々の規制と投資が、全ての国にとってクリーン・エネルギー技術をより廉価にし、誰一人取り残さずに、労働者と地域社会のためのグローバルで公正なエネルギー移行を促進することを確実にするよう取り組む。我々は、我々のそれぞれの政策がクリーン・エネルギーの技術及び慣行の展開を最大化し、公正で自由な貿易を促進し、相互支援的であるとともに、我々の多角的貿易体制に対するコミットメントに整合的で、公平な競争条件を維持するよう、政策の透明性及び協調にコミットし、これらの取組を損なう措置を自制する。我々は共に、ゼロサム競争に対して取り組んでおり、また、我々のインセンティブが全てのパートナーのためにクリーン・エネルギーの展開及び雇用を最大化し、資本が低・中所得国に流入することを可能にするよう、グローバルな貿易及び投資を促進する政策及び慣行を策定している。
3.貿易政策を通じた排出量削減
我々は、貿易及び貿易政策が気候変動に取り組むための重要なツールであり、持続可能な成長の原動力となり得ることを認識する。この認識に基づき、我々は、貿易財を生産する際に生じた排出量を明らかにするよう市場を促すことにより、脱炭素化及び排出削減を促進する貿易政策を追求し、不当に競争優位を得るために環境基準を引き下げるべきではないことを確認する。我々は、この分野におけるWTOの取組を歓迎する。我々は、共通の目標を持ちながら、我々の気候政策が、炭素価格付けメカニズム、規制及びインセンティブを含む異なるアプローチをとり得ることを認識する。我々はまた、そのような政策を実施するため、サプライチェーンを通じた生産時の排出量に関する情報など、必要なデータ及びツールを開発するための取組について集中的に連携する。我々は、気候政策に関する野心の相違が大きくなることにより、カーボンリーケージのリスクが増大する可能性があることを認識し、このリスクに対処するため、関連する国際機関を含め引き続き協力して取り組む。我々は、経済協力開発機構(OECD)に対し、製品やセクターの炭素集約度を産出するための方法論的アプローチを探求するための炭素緩和アプローチに関する包摂性フォーラム(IFCMA)の進捗状況を我々に報告するよう要請する。
4.強靱なグローバル・サプライチェーンの確立
新型コロナウイルスのパンデミック及びエネルギー危機は、国境の内外で重大な影響を与え、我々のサプライチェーンの脆弱性を露呈した。我々は、クリーン・エネルギー製造サプライチェーンへの総投資額を増加させ、関連技術の開発及び展開を加速させるという目標を共有している。我々は、COP28までに国際エネルギー機関(IEA)がクリーン・エネルギー・サプライチェーンに関する進捗を報告することを期待する。さらに、我々は、ストレステストを含め、サプライチェーンの脆弱性を分析することの重要性を認識する。我々は、クリーン・エネルギー技術の製造・設置への投資の規模を世界的に拡大すること、また、地理的に集中したクリーン・エネルギー・サプライチェーンから生じる過度の依存を低減・回避することに務めつつ、クリーン・エネルギーが安全で、強靭で、廉価でかつ、持続可能であることを確実にする形でクリーン・エネルギー・サプライチェーンを多角化することを重視する。この文脈で、我々は、加工及び精錬を含む重要鉱物資源のサプライチェーンを強固で強靱で、責任ある、かつ、透明性のあるものにするという我々の多角的貿易体制へのコミットメントに基づき、これらのサプライチェーンにおける現地での価値創造を支援する。また、これらのサプライチェーンが、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、ILO「三者宣言」、OECD「多国籍企業行動指針」など、責任ある企業活動に関する国際的に認められたスタンダードに合致するよう協力することも必要である。我々は、地域及び世界のエネルギー移行のために、安全で、強靱で、廉価で、かつ、持続可能なクリーン・エネルギー・サプライチェーンを構築する上で重要な役割を果たす低・中所得国との新しいパートナーシップを確立することにコミットする。我々は、低・中所得国がサプライチェーンの多様化の恩恵を十分に受け、高リスクの依存を低減し、自らのクリーン・エネルギーへの移行目標を達成することを支援する質の高い気候及びエネルギー安全保障投資に向けた公的及び民間資金を引き出すため、G7グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)を活用する。PGIIの一環として、これらの優先事項に向けて追加の民間資本を引き出す新しいインセンティブ及び方法を特定することにより、パートナーのクリーン・エネルギーへの移行を支援・加速し、低・中所得国における長期的な経済成長に貢献するため、我々はパートナーと協力し、融資可能なプロジェクトの候補を開発することを目指す。並行して、我々は、財務大臣が、関心あるパートナー及び国際機関、特に世界銀行グループと協力して、遅くとも本年末までの立ち上げを目指して、「RISE(強靭で包摂的なサプライチェーンの強化)に向けたパートナーシップ」を策定することにより、「脱炭素時代における強靭なサプライチェーン構築に向けた財政・公的金融手段に係るハイレベル政策ガイダンス」を具体的な行動に移すことを要請する。我々は、重要鉱物資源のサプライチェーンを強化し、採掘及び加工、並びにリサイクルにおける責任ある持続可能な投資を促進し、高い環境、社会、ガバナンス(ESG)の基準を推進するため、鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)を通じた協力を継続する。我々は、地域社会への利益を確保し、社会対話、社会・環境保護並びに労働及び雇用における権利に根ざした公正なエネルギー移行を進める、高いESG基準に沿ったサプライチェーンを促進する。我々はまた、責任ある企業行動を高めるために、OECD「多国籍企業行動指針」及びOECD「紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンス・ガイダンス」に沿ったデューディリジェンス要件の民間企業による採用を促進する。この取組を支援するため、我々は、IEAによるサミットへの新しい報告を歓迎し、2023年にハイレベルの国際ワークショップにつながるクリーン・エネルギー製造ロードマップを作成するようIEAに要請する。
5.クリーン・エネルギー技術の推進
我々は、国際的な活動を通じて、クリーン技術及び持続可能な解決策、特に再生可能エネルギー技術及びエネルギー効率化対策が、世界的に最も廉価でアクセスしやすくかつ魅力的な選択肢となるよう、また、持続可能なサプライチェーンを促進するために公共調達を通じて模範となるよう、引き続き協働する。我々は、クリーン・エネルギー技術・製品の研究、普及及び輸出入を促進する。我々は、開放的で透明性の高い競争力のあるエネルギー市場の促進という観点からこれを行い、国際標準化機構(ISO)を通じて重要鉱物市場に関する技術的な国際標準の開発に取り組む。我々はまた、ネット・ゼロに向けたイノベーション及び技術に貢献するスタートアップ企業及び中小企業の重要な役割を強調し、G7が意欲的なスタートアップ企業と世界的に協力することに期待する。我々は、低・中所得国におけるクリーン・エネルギーへの移行を加速するための重要な手段として、クリーン技術の研究、開発及び普及を引き続き支援する。その第一歩として、我々は、IEAに対し、公的部門、金融、企業、研究及びスタートアップ企業の関係者を集めた国際的な注目度の高いフォーラムを開催するよう要請する。
6.クリーン・エネルギーの物品及びサービスの貿易・投資の促進
我々は、脆弱なサプライチェーンに起因する経済的及び安全保障上のリスクを防止しつつ、気候目標の達成に資する温室効果ガスの削減を促進する重要鉱物資源を含む物品及びサービスの貿易及び投資を促進すること、及びクリーン・エネルギー技術への追加的な資本を動員することにコミットしている。我々は、特に、WTO等の国際機関において、気候変動の緩和及び適応に貢献し、製品のライフサイクル全体にわたってクリーン・エネルギー移行を促進するようなサービス及び物品の貿易を更に促進するために協働する。具体的には、気候変動対策に有意義な環境的な物品、サービス及び技術を特定し、これらのサプライチェーンにおける生産と貿易を促進するためにG7諸国間の取組を調整する。この取組の一環として、我々はWTOにおいて、クリーン・エネルギーの物品及びサービスのための循環型経済を促進するための作業を進める。加えて、我々は、WTOと整合的な方法で、貿易ルール及び貿易政策にこれらの取組を取り入れ、クリーン・エネルギーの物品及びサービスの生産時の排出量の削減について、更にインセンティブを与える方法を検討する。
7.グローバル・パートナーへの支援
我々は、貧困と闘い、包摂的で持続可能な成長、完全で生産的な雇用、全ての人々にディーセント・ワークを実現するために経済を転換する世界中の国々を支援することにコミットしている。我々は、これらの長年にわたる開発の優先事項が、野心的な気候目標の達成を含むグローバルな課題と深く絡み合っていることを認識する。そのため、我々は、PGIIとの相乗効果を活用し、公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)の成功裡の進捗を確保することを含め、クリーンで公正なエネルギー移行の面で各国を支援する我々の強いコミットメントを再確認する。我々は、低・中所得国に対する気候資金の提供のための取組を強化する。我々は、貧困削減及び繁栄の共有に不可欠な要素として、世界銀行を始めとする国際開発金融機関を、よりグローバルな課題に対応できるように進化させるための措置を講じている。この進化は、クリーン・エネルギーよりも広範であるが、G7を超える経済圏が将来のクリーン・エネルギー経済への移行の恩恵を十分に実現できる立場にあることを確保するために、我々の戦略にとって不可欠な要素である。我々は、脆弱な国の強靱性を高め、開発途上国及び新興経済国のグリーンな移行を促進するために、フランスが6月にパリで開発資金のための首脳会合を開催することを歓迎するとともに、全体として2030アジェンダの実現に向けた我々の取組を強化する。このクリーン・エネルギー経済行動計画を通じて、我々は、我々の経済を脱炭素化する貿易政策を策定し、強靱なクリーン・エネルギー・サプライチェーンの開発を加速させ、クリーン・エネルギーの物品及びサービスの共通の市場を成長させ、我々の低・中所得国のパートナーのために公的及び民間部門の気候及びエネルギー安全保障への多額の投資を動員するために協働する。我々が共有するエネルギー及び気候の課題を克服し、より安定的で繁栄した未来を確保するために、世界中のパートナー国とこの作業に取り組んでいく。 
●G7広島サミット首脳宣言 [全文] 5/21  

 

●前文
1 我々G7首脳は、現在のグローバルな課題に対処し、より良い未来に向けた方針を定めるとの決意において、これまで以上に結束し、2023年5月19〜21日に開催される年一回のサミットのため、広島で一堂に会した。我々の取組は、国際連合憲章の尊重及び国際的なパートナーシップに根ざしている。
我々は、次に掲げる具体的な措置を講じている。
・ロシアの違法な侵略戦争に直面する中で、必要とされる限りウクライナを支援する。
・全ての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界という究極の目標に向けて、軍縮・不拡散の取組を強化する。
・デカップリングではなく、多様化、パートナーシップの深化及びデリスキングに基づく経済的強靱性及び経済安全保障への我々のアプローチにおいて協調する。
・G7内及びその他の国々との協力を通じ、将来のクリーン・エネルギー経済への移行を推進する。
・今日及び将来に向けたニーズに対応するため、パートナー国と共に、「強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明」を発出する。
・「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」を通じて質の高いインフラへの資金提供において最大6000億米ドルを動員するという我々の目標を実施する。
上記は、本コミュニケの参考文書に示されている。
我々は、次のとおり協働し、また他の主体と共に取り組むことを決意している。
・自由で開かれたインド太平洋を支持し、力又は威圧による一方的な現状変更の試みに反対する。
・強固で強靱な世界経済の回復を促進し、金融安定を維持し、雇用と持続可能な成長を促進する。
・貧困の削減並びに気候及び自然危機への取組は密接に関連を持っていることを認識し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を加速させる。
・国際開発金融機関(MDBs)改革を加速させる。
・アフリカ諸国とのパートナーシップを強化し、多国間フォーラムにおいてアフリカがより代表されるように支援する。
・我々のエネルギー部門の脱炭素化及び再生可能エネルギーの展開を加速させることで地球を保全し、プラスチック汚染をなくし海洋を保護する。
・「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETPs)」、「気候クラブ」及び「森林・自然・気候の新カントリーパッケージ」を通じた協力を強化する。
・世界各地でのワクチン製造能力、パンデミック基金、パンデミックへの対応に関する新たな法的文書及びユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた取組を通じて、国際保健に投資する。
・国際移住について協力し、人身取引及び密入国との闘いにおける我々共通の取組を強化する。
・我々が共有する民主的価値に沿った、信頼できる人工知能(AI)という共通のビジョンと目標を達成するために、包摂的なAIガバナンス及び相互運用性に関する国際的な議論を進める。
2 我々は、次のとおり国際的な原則及び共通の価値を擁護する。
・大小を問わず全ての国の利益のため、国連憲章を尊重しつつ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持し、強化する。
・世界のいかなる場所においても、力又は威圧により、平穏に確立された領域の状況を変更しようとするいかなる一方的な試みにも強く反対し、武力の行使による領土の取得は禁止されていることを再確認する。
・普遍的人権、ジェンダー平等及び人間の尊厳を促進する。
・平和、安定及び繁栄を促進するための国連の役割を含む多国間主義及び国際協力の重要性を改めて表明する。
・ルールに基づく多角的貿易体制を強化し、デジタル技術の進化に歩調を合わせる。
3 我々は、誰一人取り残さず、人間中心で、包摂的で、強靱な世界を実現するために、我々の国際パートナーと協働していく。その精神から、我々は、豪州、ブラジル、コモロ、クック諸島、インド、インドネシア、大韓民国、ベトナムの首脳の参加を歓迎した。
●ウクライナ
4 我々は、国連憲章を含む国際法の深刻な違反を構成する、ロシアによるウクライナに対する侵略戦争を、改めて可能な限り最も強い言葉で非難する。ロシアによる残酷な侵略戦争は、国際社会の基本的な規範、規則及び原則に違反し、全世界に対する脅威である。我々は、包括的で、公正かつ永続的な平和をもたらすために必要とされる限りの我々の揺るぎないウクライナへの支持を再確認する。我々は、ウクライナに関するG7首脳声明を発出し、そこに示された明確な意図と具体的な行動により、ウクライナに対する我々の外交的、財政的、人道的及び軍事的支援を強化し、ロシア及びロシアによる戦争遂行を支援する者に対するコストを増大させ、世界の、とりわけ最も脆弱な人々に対する戦争の負の影響に対抗し続けることにコミットする。
●軍縮・不拡散
5 我々は、核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンと共に、全ての者にとっての安全が損なわれない形で、現実的で、実践的な、責任あるアプローチを採ることによる、核兵器のない世界の実現に向けた我々のコミットメントを表明する。我々は、より安定し、より安全な世界を作るための軍縮・不拡散の取組の重要性を再確認する。核兵器不拡散条約(NPT)は、国際的な核不拡散体制の礎石であり、核軍縮及び原子力の平和的利用を追求するための基礎である。我々は、生物兵器禁止条約及び化学兵器禁止条約の普遍化、効果的な履行、及び強化に引き続きコミットしている。我々は、急速な技術開発に対応した形で、軍事目的に使用され得る物質、技術及び研究に対する効果的かつ責任ある輸出管理を強化するためにとられた措置を歓迎するとともに、この点における多国間輸出管理レジームの中心的役割を認識する。
●インド太平洋
6 我々は、自由で開かれたインド太平洋の重要性を改めて表明する。これは、包摂的で、繁栄し、安全で、法の支配に基づき、主権、領土の一体性、紛争の平和的解決を含む共有された原則、基本的自由及び人権を守るものである。この地域の重要性に鑑み、G7諸国及び我々のパートナーは、我々の関与を強化するために、それぞれのインド太平洋に係るイニシアティブを取っている。我々は、東南アジア諸国連合(ASEAN)及びその加盟国を含む地域のパートナーとの連携を強化するとの我々のコミットメントを強調する。我々は、ASEANの中心性・一体性に対する揺るぎない支持及び「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」に沿った協力を促進するとの我々のコミットメントを再確認する。また、我々は、太平洋島嶼国とのパートナーシップを再確認し、太平洋諸島フォーラムの「ブルーパシフィック大陸のための2050年戦略」に従って、これらの国の優先事項及びニーズを支持する重要性を改めて表明する。我々は、自由で開かれたインド太平洋の実現に貢献する民間企業、大学及びシンクタンクによる取組を歓迎し、更に奨励する。
●世界経済・金融・持続可能な開発
7 世界経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック、ロシアによるウクライナに対する侵略戦争、関連するインフレ圧力などの複数のショックに対する強靱性を示した。しかしながら、我々は、世界経済の見通しについて不確実性が高まる中、引き続き警戒し、マクロ経済政策において機動的かつ柔軟である必要がある。強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長のために努力するに当たり、我々は、中期的な財政の持続可能性及び物価の安定を支援する、安定及び成長を志向するマクロ経済政策の組み合わせにコミットしている。インフレ率は引き続き高く、そして中央銀行は、それぞれのマンデートに沿って、物価の安定を達成することに引き続き強くコミットしている。一方、全体的な財政スタンスとしては、中期的な持続可能性を確保しつつ、財政政策は、引き続き、適切な場合には、生活費の上昇に苦しむ脆弱なグループに対して一時的なかつ的を絞った支援を提供し、グリーン及びデジタル・トランスフォーメーションに必要な投資を促進すべきである。我々はまた、G7の為替相場についての既存のコミットメントを再確認する。我々は、供給サイドの改革、特に労働供給を増やし生産性を高める改革の重要性を改めて強調する。我々はまた、包摂、多様性とイノベーションの促進を通じた、我々の経済の長期的な成功のための、女性及び十分に代表されていないグループの極めて重要な役割を強調する。我々は、民間部門の持続可能性及び強靱性を強化するための、「G20/経済協力開発機構(OECD)コーポレート・ガバナンス原則」の成功裏の見直しを期待する。我々は、我々の経済・社会構造がダイナミックかつ根本的な変容を遂げていることを認識しつつ、ウェルフェアの多元的な側面及びこれらの側面を実用的かつ効果的な方法で政策立案に組み込むべきであるということを強調する。このような取組は、G7の中核的価値観である民主主義と市場経済への信頼を維持することに資する。
8 我々は、金融セクターの動向を引き続き注意深く監視するとともに、金融安定及びグローバルな金融システムの強靭性を維持するために適切な行動をとる用意がある。我々は、2008年の世界金融危機後に実施された金融規制改革に支えられ、我々の金融システムが強靱であることを再確認する。我々は、ノンバンク金融仲介の強靱性の強化に関する金融安定理事会(FSB)及び基準設定主体の作業を強く支持する。我々は、通貨・金融システムの安定性、強靱性及び健全性に対する潜在的なリスクに対処しつつ、決済の効率性及び金融包摂のようなイノベーションの恩恵を活用するためのデジタル・マネーに関する政策検討を継続する。効果的なモニタリング、規制及び監視は、責任あるイノベーションを支援しつつ、暗号資産の活動及び市場がもたらす金融安定及び健全性のリスクに対処し、規制裁定を避けるために、極めて重要である。
9 我々は、OECD/G20包摂的枠組みによる経済のグローバル化及びデジタル化に伴う課税上の課題に対応し、より安定的で公正な国際課税制度を確立する二つの柱の解決策の迅速かつグローバルな実施に向けた我々の強い政治的コミットメントを再び強調する。我々は、第1の柱に関する多国間条約(MLC)の交渉における重要な進展を認識し、合意されたタイムライン内にMLCの署名ができる状態となるよう、交渉の迅速な完了に対する我々のコミットメントを再確認する。我々は、第2の柱の実施に向けた国内法制の進展を歓迎する。我々は、途上国に対して、二つの柱の解決策の実施に係る支援の重要性を強調しつつ、持続可能な税収源を築くための税に関する能力強化に対する支援を更に提供する。
10 我々は、2030年までの持続可能な開発目標の達成、貧困の削減、気候危機を含むグローバルな課題への対応及び低・中所得国における債務脆弱性への対処は、緊急であり、相互に関連し、かつ相互に強化し合うものであることを認識する。我々は、これらの課題に対処し、公正な移行を支援するために必要な民間資金及び公的資金を動員するために、自らの役割を果たす決意である。我々は、国際公共財を提供し保護することの重要性を認識しつつ、貧困を削減し繁栄の共有の促進のためのMDBsの取組に不可欠な要素として、強靱性、持続可能性及び包摂性の構築を組み込む取組を支援する。我々は、気候変動を含む脆弱性への対処を強化することにより、貧困をより効果的に削減するために、国際金融機関、二国間パートナー及び民間部門からの追加的な資金を動員するための開発資金ツールキットを強化するよう努める。我々は、6月22日〜23日にパリで開催される国際開発金融の再活性化のためのサミットに始まり、ニューデリーでのG20サミット、ニューヨークでのSDGsサミット、マラケシュでの2023年世界銀行グループ・国際通貨基金(IMF)年次総会、ベルリンでのG20の「アフリカとのコンパクト」に関する会議及びアラブ首長国連邦(UAE)での国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)を通じてこのモメンタムを維持し、今後1年間の重要な局面において、パートナーと共にこの野心を実現し、この議題について具体的な進展を得るために協働する。
11 我々は、SDGs達成に向けた進捗の後退を反転させるために、主導的な役割を果たすことを決意する。我々は、2023年がSDGs達成に向けた折り返し地点であることを認識しつつ、9月のSDGサミットの重要性を強調し、成功に向け野心的に貢献する。我々は、国際協力を再活性化し、多国間主義を強化することへのコミットメントを改めて表明する。我々は、持続可能な開発のための2030アジェンダとアディスアベバ行動計画(AAAA)の実施を加速し、その実施に当たっては地域主導の開発を通じたものも含め、包括的かつジェンダー分野を変革するような方法で行う。我々はまた、誰一人取り残さない社会の実現を目指し、新しい時代の人間の安全保障の概念を推進する。我々は、グローバルな課題に取り組む上で、開発協力と国際的なパートナーシップが果たす重要な役割や、国際的なパートナーとの連帯の必要性を強調する。我々はまた、持続可能な開発のための資金ギャップに対処するために、既存の資金の効率的な使用及び国内資金の更なる動員並びに民間金融資産の動員を求める。我々は、一部の国が採用している国民総所得(GNI)に対する政府開発援助(ODA)比0.7%目標などのそれぞれのコミットメントの重要性を認識し、革新的資金調達メカニズムを含むODAの増加とその触媒的な利用の拡大のための継続した取組の必要性を強調する。
12 我々は、債務持続可能性に対する深刻な課題がSDGs達成に向けた進捗を損なっており、低・中所得国がロシアによるウクライナに対する侵略戦争やより広範なグローバルな課題から偏って影響を受けていることを引き続き懸念する。我々は、こうした国々の債務脆弱性に対処する緊急性を再確認し、参加者に明確性を与えながら、予測可能かつ、適時に、秩序だった方法で連携した「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)を越えた債務措置に係る共通枠組」の実施を改善するためのG20の取組を完全に支持する。我々は、IMF理事会による、ガーナに対するプログラムへの最近の承認を歓迎する。共通枠組を越えて、中所得国(MICs)の債務脆弱性は、多国間の協調によって対処されるべきである。この点において、我々は、フランス、インド及び日本の3か国の共同議長の下、スリランカのための債権国会合が立ち上げられたことを歓迎し、MICsの債務問題に対処するための将来の多国間の取組の成功モデルとして、迅速な解決を期待する。我々はまた、民間債権者が、措置の同等性の原則に沿って、公平な負担を確保するために、債務措置を少なくとも同程度の条件で提供することの重要性を強調する。我々は、気候変動の影響に直面する債務者に対するセーフティネットを強化するために、「気候変動に対する強じん性を取り入れた借入条項(CRDC)」の発展を歓迎する。我々は、この論点に関する我々の財務大臣による作業を歓迎し、より多くの債権者が融資契約にCRDCを組み込むことを奨励する。債務データの正確性と透明性を高めるため、我々は、全ての公的二国間債権者が、債務データの正確性の分野におけるG20のイニシアティブを更に前進させることを含め、債務データ突合のためのデータ共有の取組への参加を促す。
13 我々は、MDBs及び開発金融機関(DFIs)に対し、MDB改革の実施を通じたものを含め、民間資金を活用する能力を高めるための取組を加速させることを奨励する。この点で、我々は、貧困削減と繁栄の共有の達成に不可欠である、気候変動、パンデミック、脆弱性、紛争などの国境を越えた課題によりよく対処するために、ビジネス・モデルを見直し、変革するためのMDBsの改革に関する進行中の作業を強く支持し、加速させることを奨励する。この改革は、既存の資本の最も効率的な使用を伴わなければならない。この目的のため、我々は、G20の「MDBの自己資本の十分性に関する枠組の独立レビュー」の勧告の実施に関する野心的なG20ロードマップの策定に貢献するとともに、MDBsに対し、その長期的な財政の持続可能性、強固な信用格付及び優先的に弁済を受ける地位を守りつつ、包括的な方法の下での更なる進展を求める。世界銀行グループにおける、今後10年間で最大500億米ドルのファイナンス能力を追加できる財務改革と、世界銀行グループのミッションと運用モデルに関する主要な改革を基礎として、我々は、野心的な改革が継続的に行われるよう、2023年の世界銀行グループ・IMF年次総会とそれ以降に向けた更なる進展を期待する。我々は、他のMDBsに対し、1つのシステムとしてのMDBsによる協調的な取組という観点からこのイニシアティブへの参加を奨励する。我々はまた、MDBsが、政策・知識面の支援を最大限に活用し、国内資金や民間資金の動員及び民間部門の関与を促進するための強化されたアプローチを模索することを求める。我々は、特別引出権(SDR)の自発的な融通又は同等の貢献を通じて最も必要としている国々を支援するための共同の取組を更に前進させた。我々は、日本とフランスによる追加のプレッジが、我々のこれまでの貢献やコミットメントと合わせて、1000億米ドルの世界的な野心を射程に入れたことを歓迎し、既存のプレッジの履行を求め、野心の達成のために全ての意欲ある、貢献可能な国からの更なるプレッジを要請する。我々は、IMFが、2023年の世界銀行グループ・IMF年次総会までに2021年に合意された資金調達目標を達成すること、そして、今後数年間で増大する低所得国のニーズを満たすことを目指して、低所得国を支援する貧困削減・成長トラスト(PRGT)を持続可能な基盤に据えるために、全ての利用可能な選択肢を特定することを支持する。我々は、国内の法的枠組みとSDRの準備資産としての性格と地位を保持する必要性を尊重しつつ、MDBsを通じたSDRの自発的な融通を可能にするため実行可能な選択肢をさらに模索する。
14 我々は、質の高いインフラへの資金提供、投資誘致に必要な政策改革を推進する取組の支援、国主導のパートナーシップの運用、案件形成支援を含む上流支援の促進等により、低・中所得のパートナー国のインフラ投資ギャップを縮小することの重要性を強調する。我々は、「G7グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」及び協働に向けた我々の共通のコミットメントを再確認し、2027年までに6000億米ドルを動員することを目指す。我々は、持続可能で、包摂的で、強靱であり、質の高いインフラへの官民投資のためのグローバル・パートナーシップを、パートナー国と共に引き続き強化していく。我々は、この目的に向けた行動を加速するため民間部門を動員する。我々の提案は公正かつ透明であり、現地レベルでのインパクトの実現に焦点を当て、地球規模の持続可能な開発の加速を目指す。我々は、G7とパートナーが、持続的かつ前向きな影響を生み出し、持続可能な開発を推進する投資を促進する上で、どのように具体的な進展を遂げてきたかを示すPGIIに関するファクトシートを歓迎する。我々は、アフリカのビジネス環境を強化するための重要な枠組みとして、G20の「アフリカとのコンパクト」を改めて支持し、改革志向のパートナーにこのイニシアティブに参加し、これを強化することを求める。
15 我々は、透明で公正な開発金融を促進し、債務の透明性及び持続可能性、公正な審査、選択及び質の高いインフラ投資のための貸付慣行といった既存の原則の実施におけるギャップに対処するために協働するとの決意を共有した。この点、我々は、全ての主体に対し、質の高いインフラ投資に関するG20原則、G20持続可能な貸付に係る実務指針、OECD国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約、OECD多国籍企業行動指針を含む、国際ルール、スタンダード及び原則を遵守することを求める。これらのルール、スタンダード及び原則には、インフラ投資の健全性を保護するための措置も含まれている。
16 我々は、開発、人道、平和及び安全保障の問題に共に取り組むことの重要性に留意する。我々は、女性、女児、及び脆弱な状況にある人々に焦点を当てた、前例のない数の人道危機に対処することを決意する。この観点から、我々は、緊急の食料危機への対応を含め、悪化する人道危機に対処するために、今年、合計で210億米ドル以上を供与することにコミットする。我々は、小島嶼開発途上国を含む多くの国が災害に対して脆弱であることに留意しつつ、仙台防災枠組2015-2030及び国連防災機関(UNDRR)が指揮した中間レビューの成果に沿って国際防災協力を加速する。我々は、災害に関する事前の備え、及び「リスク移転」だけではなく「リスク削減」にも貢献し、結果として先行的行動の強化につながる、人的資本、物品及びインフラへの投資の重要性を強調する。我々は、開かれた透明性のある方法で、我々が行った約束について説明責任を果たすことに引き続きコミットする。この点、我々は、食料安全保障及び栄養並びに難民及び移住に関するG7の開発関連のコミットメントをフォローアップする2023広島進捗報告書を承認する。
17 我々は、持続可能な開発のあらゆる側面における推進力として、世界の都市の変革の力を強調する。我々は、持続可能な都市に関する協力を継続し、我々の関係閣僚に対し、カーボンニュートラルで、強靱で、包摂的な都市、及びデジタル化に関する原則の策定と都市のためのデータ及び技術の使用の促進を検討することを指示する。この作業は、気候変動に関連する最も大きな課題に直面している都市を持つグローバルなパートナーとの交流を支援する。
●気候
18 我々の地球は、気候変動、生物多様性の損失及び汚染という3つの世界的危機並びに進行中の世界的なエネルギー危機からの未曾有の課題に直面している。我々は、この勝負の10年に行動を拡大することにより世界の気温上昇を摂氏1.5度に抑えることを射程に入れ続け、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させ、エネルギー安全保障を確保するとともに、これらの課題の相互依存性を認識し、シナジーを活用することで、パリ協定へのコミットメントを堅持する。ロシアによるウクライナに対する侵略戦争が世界のエネルギー市場とサプライチェーンに影響を与えているが、遅くとも2050年までに温室効果ガス(GHG)排出ネット・ゼロを達成するという我々の目標は揺るがない。我々は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)及びその第6次評価報告書(AR6)の最新の見解によって詳述された、気候変動の影響の加速化及び激甚化に対する我々の強い懸念を強調し、その最新の見解を踏まえ、世界のGHG排出量を2019年比で2030年までに約43%、2035年までに約60%削減することの緊急性が高まっていることを強調する。我々は、国が決定する貢献(NDC)目標の達成に向けた国内の緩和策を早急に実施し、例えば、セクター別目標の設定又は強化、二酸化炭素以外の温室効果ガスに係る副次的目標の策定、厳格な実施措置の採用によるものを含め、我々の野心を高めるために昨年エルマウで行ったコミットメントを再確認する。我々は、我々の指導的役割に留意しつつ、また、全てのG7諸国において排出量が既にピークを迎えたことに留意し、この勝負の10年及びその後数十年間における世界の気温上昇を抑える上で、全ての主要経済国が果たすべき重要な役割を認識する。この文脈で、我々は、全ての主要経済国が、パリ協定以降、NDCの野心を大幅に強化し、既にGHG排出量のピークを迎えたか、遅くとも2025年までに迎えることを示し、特にNDCにおいて全てのGHGを対象とする経済全体の排出削減目標を含めるべきであったことを強調する。この観点で、我々は、2030年NDC目標又は長期低GHG排出発展戦略(LTS)が摂氏1.5度の道筋及び遅くとも2050年までのネット・ゼロ目標に整合していない全ての締約国、特に主要経済国に対し、可及的速やかに、かつCOP28より十分に先立って2030年NDC目標を再検討及び強化し、LTSを公表又は更新し、遅くとも2050年までのネット・ゼロ目標にコミットするよう求める。さらに、我々は、全ての締約国に対し、COP28において、世界のGHG排出量を直ちに、かつ遅くとも2025年までにピークアウトすることにコミットするよう求める。我々は、「グローバル・メタン・プレッジ」へのコミットメントを再確認し、2030年までに世界全体の人為起源のメタン排出量を共同で2020年比で少なくとも30%削減するための取組を強化する。我々は、COP28における第1回グローバル・ストックテイク(GST)の最も野心的な成果物を確保するために積極的に貢献することにコミットし、その結果が、緩和、適応、実施手段と支援にまたがる強化された、即時かつ野心的な行動につながるべきである。我々は、全ての締約国に対し、COP30に十分に先立って、GSTの成果による情報提供を受け、全てのGHG、セクター、分類を含む経済全体の絶対削減目標及び摂氏1.5度の道筋に沿って大幅に強化された野心を反映し、次期NDC及びLTSを提出することを求める。これらは、摂氏1.5度の道筋に沿って大幅に強化された野心を反映するとともに、再検討され強化された2030年目標も含むべきである。
19 気候変動、生物多様性の損失、クリーン・エネルギーへの移行に関する行動の速度と規模を増加させる重要性に留意し、我々は、グリーン・トランスフォーメーションを世界的に推進及び促進し、遅くとも2050年までにGHG排出のネット・ゼロを達成するために我々の経済の変革の実現を目指して協働する。我々は、国の状況を考慮して、多様かつ現実的な道筋を通じた気候変動に強靱で、循環型で、ネイチャーポジティブな経済及びネット・ゼロGHG排出への移行を支援することを含め、排出削減を加速するために、開発途上国及び新興国に関与する。この目的のため、我々は、PGIIを含む協調行動により支援され得る、開発途上国の公正なエネルギー移行を支援することへの強いコミットメントを再確認する。我々は、南アフリカ、インドネシア及びベトナムにおけるJETPsで達成された進展を歓迎し、また、インド及びセネガルとの協議を継続する。我々は、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想」、「脱石炭同盟(PPCA)」、「2050パスウェイ・プラットフォーム、ネット・ゼロ・ワールド(NZW)」、「グローバル・カーボンプライシング・チャレンジ」など、クリーン・エネルギー移行を支援することを目的とした世界各国のイニシアティブに留意し、摂氏1.5度への道筋に整合したこれらのイニシアティブを通じた対応の重要性を強調する。我々は、供給側の措置について更なる行動を取るとともに、インフラや材料の使用の変更の促進、最終用途技術の採用、持続可能な消費者選択の促進など、需要側における更なる脱炭素化の取組の必要性を認識する。我々はまた、地域のニーズや環境条件に基づく気候・エネルギー行動を前進させるために、他のステークホルダーやパートナーと連携した地方政府の重要な役割を認識する。我々は、高い十全性のある炭素市場及び炭素の価格付けが、炭素の価格付けのための政策手段の最適な活用を通じ、費用効率の高い排出レベルの削減を促進し、イノベーションを推進し、ネット・ゼロへの転換を可能にする重要な役割を有することを再確認する。我々は、効果的に排出を削減する炭素価格付け、かかる価格付けによらないメカニズム及びインセンティブを含む適切な政策の組み合わせを支持し、これらは各国固有の状況を反映して変わり得ることに留意する。我々は、OECDの炭素緩和アプローチに関する包摂的フォーラム(IFCMA)を強く支持する。我々は、産業の脱炭素化を進めるために、開放的、協調的かつ包摂的な気候クラブを、国際的なパートナーと協力して進めることを期待する。我々は、民間事業者が信頼できるネット・ゼロ・プレッジ及び透明性のある実施戦略を通じて、バリューチェーン全体におけるGHGネット・ゼロ排出にコミットすることを奨励する。我々はまた、脱炭素ソリューションを通じ他の事業者の排出削減に貢献するイノベーションを促すための民間事業者の取組を奨励・促進する。我々は、鉄鋼生産及び製品の排出に関する新しい「グローバル・データ・コレクション・フレームワーク」の実施に向け作業を開始することを決定した産業脱炭素化アジェンダ(IDA)の進捗を歓迎する。我々は、2030年までの高度に脱炭素化された道路部門へのコミットメントを再確認し、世界全体の保有車両からのGHG排出削減の重要性及び気温上昇を摂氏1.5度に抑えることを射程に入れ続けるために必要な軌跡に沿ったこの目標に近づくための多様な道筋を認識する。我々は、2050年までに道路部門でネット・ゼロ排出を達成するという目標にコミットしている。この文脈で、我々は、2035年まで又は2035年以降に小型車の新車販売の100%又は大宗を排出ゼロ車両にすること、2035年までに乗用車の新車販売の100%を電動車とすること、関連するインフラ及び持続可能なバイオ燃料や合成燃料を含む持続可能なカーボンニュートラル燃料を促進することを目的とする国内政策を含め、我々のそれぞれが保有車両を脱炭素化するために取る様々な行動を強調する。我々は、これらの政策が、2030年までにグローバルに販売されるゼロ排出の小型車のシェアが50%以上へ進展していくことを含め、高度に脱炭素化された道路部門への貢献をもたらすという機会に留意する。国際エネルギー機関(IEA)の「エネルギー技術の展望2023」の調査結果を考慮し、我々はまた、ネット・ゼロ達成への中間点として、2035年までにG7の保有車両からのCO2排出を少なくとも2000年比で共同で50%削減し、また、その進捗を年単位で追跡する可能性に留意する。我々は、遅くとも2050年までに国際海運からのGHG排出をライフサイクル全体でゼロにすることを達成するための世界的な取組を強化することにコミットすることを再確認する。我々は、信頼できる一連の対策を通じ、産業革命以前の水準に比べて気温上昇を摂氏1.5度に抑えるための取組に沿って、国際海事機関(IMO)のGHG削減戦略の改定においてこの目標を支持し、2030年及び2040年の中間目標を導入することを支持することにコミットする。我々は、国際民間航空機関(ICAO)の国際航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキーム(CORSIA)を基礎として、持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進、新技術の導入及び運航の向上への取組を行うことを含め、2050年までに国際航空からのCO2排出実質ゼロを目指すICAOの目標の達成に向けた世界的な取組を加速することにコミットする。
20 気候変動がもたらす脅威の増大に直面する中、気候変動に脆弱なグループの支援は、人間の安全保障を確保し、強靭で持続可能な開発を実現するために不可欠である。我々は、早期警戒システムに関連した「気候リスクに対するグローバル・シールド」及び他のイニシアティブや気候変動に対する強靭性を取り入れた借入条項の導入も含む、気候変動適応、気候災害リスク削減、応急対応、及び復旧・復興、及び早期警戒システムの強化を通じて、気候変動に脆弱なグループの強靭性を強化するための支援を増加・強化し続ける。我々は、意味のある緩和行動及び実施に関する透明性の文脈において、2020年から2025年にかけて年間1000億米ドルの気候資金を合同で動員するという先進締約国の目標に対する我々のコミットメントを再確認する。我々は、2023年にこの目標を完全に達成するために、他の先進締約国と協働する。我々は、GHG低排出であり、かつ気候に対して強靱な開発に向けた道筋に資金の流れを整合させることも含め、世界的な取組の一部として、官民を問わず、多様な資金源から、パリ協定の目標の達成に貢献する、野心的で目的に沿った新規合同気候資金数値目標(NCQG)に関する議論を歓迎する。我々は、G7の重要な役割及び先進締約国が気候資金の動員を主導すべきであることを認識し、能力を有するがまだ国際気候資金の現在の提供者ではない全ての国及びステークホルダーが、この世界的な取組に貢献する必要性を強調する。
21 我々は、パリ協定第2条1cに従って、温室効果ガスについて低排出型であり、及び気候に対して強靱である発展に向けた方針に資金の流れを適合させる我々自身の取組を加速することにコミットする。我々は、特に、クリーン技術や活動の更なる実施及び開発に焦点を当てた民間資金を含む資金を動員することの重要性を強調する。我々は、気候を含む持続可能性に関する情報の一貫性、比較可能性、及び信頼性のある情報開示へのコミットメントを強調する。我々は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が、持続可能性に関する全般的な報告基準及び気候関連開示基準を最終化し、またグローバルに相互運用性のある持続可能性開示枠組の達成に向けて取り組むことを支持する。我々はまた、ISSBによる、その作業計画の市中協議に沿った、生物多様性及び人的資本に関する開示に係る将来の作業に期待する。我々は、「G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップ」の実施及びモニタリングを支持することに引き続きコミットする。我々は、企業が信頼性のある気候移行計画に基づき、パリ協定の気温目標に沿ったネット・ゼロ移行を実行する必要性を強調する。我々はまた、摂氏1.5度の気温上昇目標を射程に入れ続けることと整合的で、カーボン・ロックインを回避し、効果的な排出削減に基づいているトランジション・ファイナンスが、経済全体の脱炭素化を推進する上で重要な役割を有することを強調する。我々は、緑の気候基金(GCF)の野心的で成功した第2次増資を期待するとともに、G7の強固なプレッジの必要性を再確認する。我々は、他の国々にも同様のプレッジを促すとともに、全ての潜在的な拠出者を奨励することによりGCFの拠出国ベースの拡大の必要性を強調する。我々は、規模を拡大した資金源からの供与において緩和と適応の間の均衡を達成するという文脈において、開発途上締約国に対する適応のための気候資金の供与を、2025年までに2019年の水準から共同で少なくとも2倍にすることを先進国に求めるグラスゴー気候合意の要請に対応するための取組を引き続き加速する。我々はまた、国際開発金融機関に対し、改定され強化された2025年予測を発表し、野心的な適応資金目標にコミットするよう求めるとともに、G7以外の国に対し、民間資金を含む適応資金の供与と動員の拡大を求める。我々は、資金動員におけるIFIsの重要な役割を強調し、それらの政策、投資、運営及びガバナンスにおいて気候及び環境問題を主流化することを求める。我々はまた、国際開発金融機関に対し、ネット・ゼロ移行を促進し、民間部門の投資を可能にするために、気候資金を含む国際公共財への資金を増やし、政策に連動する金融を通じて開発途上国の野心的な規制改革を支援するよう求める。更に、環境十全性を確保しつつ炭素市場の発展を促進させるため、我々は、カーボンクレジット市場における実施を促進するための「十全性(質)の高い炭素市場の原則」を支持する。我々は、気候変動の悪影響に伴い、既に生じている経済的及び非経済的な損失及び損害、及び世界的に特に最も脆弱な人々が感じている影響の規模について、強い懸念を強調する。我々は、世界的な気候変動の悪影響を警戒し、特に最も脆弱な国々に対して、損失と損害を回避し、最小化し、これらに対処するための行動と支援を増加させる。これには、パリ協定第8条の文脈で気候変動の悪影響に特に脆弱な開発途上国のための基金を含む、新たな資金面での措置を設立する国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)/パリ協定第4回締約国会合(CMA4)決定の実施や、「G7気候災害対策支援事例集」で特定された支援の提供が含まれる。
●環境
22 我々は、持続可能で包摂的な経済成長及び発展を確保し、経済の強靱性を高めつつ、経済・社会システムをネット・ゼロで、循環型で、気候変動に強靭で、汚染のない、ネイチャーポジティブな経済へ転換すること、及び2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させることを統合的に実現することにコミットする。我々は、バリューチェーンにおける資源効率性及び循環性の向上が一次資源の使用量を削減し、気候変動やその他の環境目標の達成に貢献することを強調し、ステークホルダー、特に企業に対し、そうした行動を強化することを奨励する。したがって、我々は、循環経済・資源効率性原則(CEREP)を支持する。我々は、サプライチェーンにおける循環性を高めつつ、国内及び国際的な重要鉱物や原材料、その他の適用可能な原料の環境上適正で、持続可能かつ効率的な回収・リサイクルを増やす。我々は、水関連生態系の管理とガバナンスが地球上の全ての生命にとって不可欠であることを再確認する。我々は、本年成功裡に開催された国連水会議のフォローアップなど、関連する国際フォーラムに積極的に参加している。
23 我々は、G7オーシャンディールに基づき、クリーンで、健全かつ生産的な海洋の実現に向けて行動することにコミットする。我々は、違法・無報告・無規制(IUU)漁業を終わらせるという我々のコミットメントを再確認し、この現象にあらゆる側面から取り組むため、開発途上国への支援や我々の関連機関間の政策調整の強化を含めた更なる行動を取り、それらの関連機関に対し、本年末までこの問題に関する進捗の評価を指示する。特に、我々は、国連食糧農業機関(FAO)の違法漁業防止寄港国措置協定(PSMA)の非締約国に対し、PSMAの更なる世界的な受容と効果的な実施のため、加入を奨励する。我々は、国連海洋法条約(UNCLOS)の下での、国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)の保全及び持続可能な利用に関する法的拘束力を有する国際文書の交渉が妥結したことを歓迎し、その迅速な発効と実施を呼びかける。我々は、UNCLOSの下で求められているとおり、国際海底機構(ISA)の下での深海底鉱物の開発に関して、当該活動から生じ得る有害な影響からの海洋環境の効果的な保護を確保する規制の枠組みの策定に積極的に関与し続ける。我々は、2040年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにする野心を持って、プラスチック汚染を終わらせることにコミットしている。これを念頭に、我々は、包括的なライフサイクル・アプローチを踏まえ、我々の行動を継続し、発展させることを決意する。我々は、政府間交渉委員会(INC)のプロセスを支持し、2024年末までにプラスチックのライフサイクル全体をカバーする法的拘束力のある国際文書の作業を完了することを目的としたパリでの次回交渉に期待し、野心的な成果を求める。我々は、2025年に開催される国連海洋会議までに、これらの課題及び海洋保護に関するより幅広い議題について、できる限り進展させる。
24 我々は、人間の幸福、健全な地球及び経済の繁栄の基礎となる、生物多様性の損失を2030年までに止めて反転させるための歴史的な昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の採択を歓迎し、その迅速かつ完全な実施と各ゴール及びターゲットの達成にコミットする。この点で、生物多様性条約(CBD)締約国であるG7諸国は、GBFとそのゴール及びターゲットに沿った生物多様性国家戦略及び行動計画(NBSAPs)を2023年内又は生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)に十分に先んじて、改定、更新及び提出し、又は、該当する場合は、GBFの全てのゴール及びターゲットを反映した国別目標を伝達することにコミットする。我々は、遅くとも2030年までに生物多様性の保全と持続可能な利用のための有益なインセンティブを拡大しつつ、2025年までに生物多様性に有害な補助金等のインセンティブを特定し、その方向転換又は廃止を図り、遅滞なく初期措置を講じる。我々は全ての署名者に対し、GBFの下での彼らのコミットメントを迅速に実施し、開発途上国に対して支援を提供できるよう用意することを求める。我々は、自然に対する国内及び国際的な資金を2025年までに大幅に増加させるというコミットメントを改めて表明する。我々は、我々の国際開発援助がGBFと整合することを確実にする。我々は、国際開発金融機関に対し、あらゆる資金源の活用や一連の手段の展開を通じ、生物多様性のための支援を増加させることを求める。我々は、GBFを実施するため、あらゆる資金源からの資金の水準を大幅かつ段階的に増加させ、全ての関連する財政及び資金の流れをGBFに整合させることをコミットし、他国にも同様のことを行うよう求める。我々は、地球環境ファシリティ(GEF)内におけるGBF基金の設立及び2023年8月のバンクーバーでのGEF総会におけるその立上げの成功を支援することにコミットし、この新しい基金へのあらゆる資金源からの拠出の重要性に留意する。我々は、自然を活用した解決策への資金拠出の増加を含む気候変動及び生物多様性のための資金の相乗効果を高めるという我々のコミットメントを再確認する。我々は、「G7ネイチャーポジティブ経済アライアンス」のようなG7間の知識の共有や情報ネットワークの構築を含め、ネイチャーポジティブ経済への移行を支援・促進することにコミットする。我々は、企業が漸進的に生物多様性への負の影響を削減し正の影響を増大させることを求める。我々は、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の市場枠組みの発表を期待し、その開発を支援するよう市場参加者、政府及び当局に強く求める。我々は、保護地域や保護地域以外で生物多様性保全に資する地域(OECM)の指定及び管理を通じ、各国の状況及びアプローチに応じて、2030年までに陸域及び内陸水域の少なくとも30%、海洋及び沿岸域の少なくとも30%を効果的に保全・管理するという目標(30by30)を国内及び世界で達成するとのコミットメントを強調する。我々は、利用可能な最良の科学的証拠に基づき、世界の海洋生物多様性を保全・保護し、その資源を持続的に利用することをコミットする。この文脈で、我々は、利用可能な最良の科学的証拠に基づき、東南極、ウェッデル海及び南極半島西岸において海洋保護区を設置する提案を緊急に採択するという南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)の下での我々のコミットメントを再確認する。この点で、我々は、GBFの目標である30by30を達成するために、保護地域とOECMのベストプラクティスを共有することにより、他の国々を支援する。我々は、侵略的外来種対策について、国際協力を強化する。我々は、2030年までに森林の消失と土地の劣化を阻止し反転させるというコミットメントを改めて表明し、森林を始めとする陸域生態系の保全及びその回復を加速させるとともに、持続可能なバリューチェーン及びサプライチェーンを支援し、持続可能な森林経営と木材利用を促進することにコミットする。我々は、特に、炭素及び生物多様性の重大な貯蔵を有する国において、「森林、自然及び気候に関するカントリーパッケージ」を通じた我々の提案の調整などにより、まずは森林を中心として、炭素貯蔵量が多く生物多様性に富む生態系の保護、保全、回復を支援する統合的な解決策を提供するため、高い野心をもって協働する。我々は、関連商品の生産に関する森林減少や森林及び土地の劣化のリスクを低減し、この問題に対する様々なステークホルダーとの協力を強化する取組を継続することにコミットする。我々は、適切であれば、これを支援するための更なる規制の枠組み又は政策を策定する。
●エネルギー
25 我々は、エネルギー安全保障、気候危機及び地政学的リスクに一体的に取り組むことにコミットする。我々は、ロシアのウクライナに対する侵略戦争による現在のエネルギー危機に対処し、遅くとも2050年までにネット・ゼロ排出という共通目標を達成し、同時に、エネルギー安全保障を高める手段の一つでもあるクリーン・エネルギー移行を加速することの現実的かつ緊急の必要性及び機会を強調する。我々は、各国のエネルギー事情、産業・社会構造及び地理的条件に応じた多様な道筋を認識しつつ、気温上昇を摂氏1.5度に抑えることを射程に入れ続けるために、これらの道筋が遅くとも2050年までにネット・ゼロという共通目標につながることを強調する。この観点から、我々はIEAに対し、エネルギー及び重要鉱物の供給やクリーン・エネルギー製造をいかに多様化するかの選択肢について、本年内に提言を作成するよう招請する。これを通じて、我々はパートナーと共に、遅くとも2050年までにネット・ゼロ排出を達成し、気温上昇を摂氏1.5度に抑えることを射程に入れ続けるために、再生可能エネルギーのグローバルな利用拡大を含め、エネルギー安全保障、気候危機、地政学的リスクに一体的に取り組むことを模索する。我々は、過去と現在のエネルギー危機への対処の経験を通じて、「第一の燃料」としての省エネルギー及びエネルギーの節減の強化並びに需要側のエネルギー政策の発展の重要性を強調する。我々はまた、再生可能エネルギーの導入や次世代技術の開発・実装を大幅に加速させる必要がある。G7は、2030年までに洋上風力の容量を各国の既存目標に基づき合計で150ギガワット増加させ、太陽光発電の容量を、各国の既存目標や政策措置の手段を通じて、IEAや国際再生可能エネルギー機関(IRENA)で推計された2030年までに合計で1テラワット以上に増加させることも含め、再生可能エネルギーの世界的な導入拡大及びコスト引下げに貢献する。我々は、低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素並びにアンモニアなどのその派生物は、摂氏1.5度への道筋と整合する場合、産業及び運輸といった特に排出削減が困難なセクターにおいて、セクター及び産業全体の脱炭素化を進めるための効果的な排出削減ツールとして効果的な場合に、温室効果ガスであるN2Oと大気汚染物質であるNOxを回避しつつ、開発・使用されるべきであることを認識する。我々はまた、摂氏1.5度への道筋及び2035年までの電力セクターの完全又は大宗の脱炭素化という我々の全体的な目標と一致する場合、ゼロ・エミッション火力発電に向けて取り組むために、電力セクターで低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素並びにその派生物の使用を検討している国があることにも留意する。我々は、環境及び社会的基準を遵守しつつ、信頼できる国際標準及び認証スキームに基づき、低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素のための、ルールに基づき透明性のあるグローバル市場とサプライチェーンを開発するための取組を強化する。我々は、炭素集約度に基づく取引可能性、透明性、信頼性及び持続可能性のための水素製造のGHG算定方法及び相互認証メカニズムを含む国際標準及び認証を開発する重要性を認識する。我々は、2035年までに電力セクターの完全又は大宗の脱炭素化の達成及び気温上昇を摂氏1.5度に抑えることを射程に入れ続けることに整合した形で、国内の排出削減対策が講じられていない石炭火力発電のフェーズアウトを加速するという目標に向けた、具体的かつ適時の取組を重点的に行うというコミットメントを再確認し、他の国にも参画することを求める。我々は、IEAの2022年の「ネット・ゼロ移行における石炭」報告書において、IEAの2050年までのネット・ゼロシナリオに沿った主要な取組の一つとして特定された、排出削減対策が講じられていない新規の石炭火力発電所の建設終了に向けて取り組んでいく。我々は、公正な方法でクリーン・エネルギー移行を加速するため、排出削減対策が講じられていない新規の石炭火力発電所のプロジェクトを世界全体で可及的速やかに終了することを他国に呼びかけ、協働する。我々は、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援を2021年に終了したことを強調する。我々は、他の国、特に主要経済国が我々と同様にそれぞれのコミットメントを達成することを求める。我々は、二酸化炭素炭素回収・有効利用・貯蔵(CCUS)/カーボンリサイクル技術が、他の方法では回避できない産業由来の排出を削減するための脱炭素化解決策の幅広いポートフォリオの重要な要素となり得ること、また、強固な社会・環境面のセーフガードを備えた二酸化炭素除去(CDR)プロセスの導入が、完全な脱炭素化が困難なセクターにおける残余排出量を相殺する上で不可欠な役割を担っていることを認識する。
26 我々は、世界規模での取組の一環として、世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前の水準よりも摂氏1.5度に抑えるために必要な軌道に沿って、遅くとも2050年までにエネルギー・システムにおけるネット・ゼロを達成するために、排出削減対策が講じられていない化石燃料のフェーズアウトを加速させるという我々のコミットメントを強調し、他国に対して我々と共に同様の行動を取ることを呼びかける。我々は、非効率な化石燃料補助金を2025年又はそれ以前に廃止するというコミットメントを再確認し、全ての国々に同様に取り組むよう従前呼びかけたことを再確認する。摂氏1.5度への道筋に向けた変革において、ネット・ゼロ及び循環型産業サプライチェーンの新たな必要性の観点から、我々は、脱炭素化され、持続可能で、責任のある形で生産された非燃焼原料に関連する機会を認識し、この変革における、我々の労働者及びコミュニティへの支援にコミットする。我々はまた、国家安全保障及び地政学的利益の重要性を認識し、各国が明確に規定する、地球温暖化に関する摂氏1.5度目標やパリ協定の目標に合致する限られた状況以外において、排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の直接公的支援を2022年までに終了したことを強調する。クリーン・エネルギー移行を加速させることの主要な必要性を認識しつつ、パリ協定の我々のコミットメントに合致した形で、エネルギー節減及びガス需要の削減を通じたものを含め、ロシアのエネルギーへの依存からのフェーズアウトを加速すること、及びエネルギー供給、ガス価格及びインフレーション、並びに人々の生活へのロシアによる戦争の世界的な影響に対処することが必要である。この文脈において、我々は、液化天然ガス(LNG)の供給の増加が果たすことのできる重要な役割を強調するとともに、ガス部門への投資が、現下の危機及びこの危機により引き起こされ得る将来的なガス市場の不足に対応するために、適切であり得ることを認識する。ロシアのエネルギーへの依存のフェーズアウトを加速していくという例外的な状況において、明確に規定される国の状況に応じて、例えば低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素の開発のための国家戦略にプロジェクトが統合されることを確保すること等により、ロックイン効果を創出することなく、我々の気候目標と合致した形で実施されるならば、ガス部門への公的に支援された投資は、一時的な対応として適切であり得る。我々は、エネルギー市場の安定化を目的として、IEAなどの国際機関が提供する中立・公平な統計データを更に活用し、データ収集・分析機能を強化する。我々は、エネルギー市場の安定化及び気候目標に整合的な形での必要な投資の動員を目的として、生産国と消費国との間の対話と連携の場を強化することの重要性を強調する。原子力エネルギーの使用を選択したG7諸国は、化石燃料への依存を低減し得る低廉な低炭素エネルギーを提供し、気候危機に対処し、及びベースロード電源や系統の柔軟性の源泉として世界のエネルギー安全保障を確保する原子力エネルギーの潜在性を認識する。これらの諸国は、現在のエネルギー危機に対処するため、安全な長期運転を推進することを含め、既存の原子炉の安全、確実、かつ効率的な最大限の活用にコミットする。これらの諸国はまた、国内及びパートナー国において、高度な安全システムを有する小型モジュール炉及びその他の革新炉などの原子炉の開発及び建設の支援、核燃料を含む強固で強靱な原子力サプライチェーンの構築並びに原子力技術及び人材の維持・強化にコミットする。これらの諸国は、ロシアへの依存を減らすため、志を同じくするパートナーと協働する。G7は、最高水準の原子力安全及び核セキュリティが、全ての国及びそれぞれの国民にとって重要であることを強調する。我々は、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業の着実な進展とともに、科学的根拠に基づき国際原子力機関(IAEA)とともに行われている日本の透明性のある取組を歓迎する。我々は、同発電所の廃炉及び福島の復興に不可欠である多核種除去システム(ALPS)処理水の放出が、IAEA安全基準及び国際法に整合的に実施され、人体や環境にいかなる害も及ぼさないことを確保するためのIAEAによる独立したレビューを支持する。
●クリーン・エネルギー経済
27 世界的な気候・エネルギー危機は、遅くとも2050年までにネット・ゼロ排出実現に向けクリーン・エネルギー移行を加速させ、エネルギー・システムを変革させることが緊急に必要であることを浮き彫りにしていると強調しつつ、我々は、サプライチェーン等における経済的多様化及び変革の必要性を強調する。世界的規模でのクリーン・エネルギー移行を更に推進するため、我々は取組を強化し、特に、重要鉱物資源やクリーン・エネルギー技術を含む、安全で強靱な、廉価で持続可能なクリーン・エネルギーのサプライチェーンを追求することを決意する。また、エネルギー移行の実施にあたっては、市場の歪みを回避し、世界的に公平な競争条件を確保するために、協働して取り組むことの重要性を再確認する。我々は、クリーン・エネルギー経済を実現するため、クリーン・エネルギー経済行動計画に示された具体的な行動を通じて、引き続き国際的なパートナーと協力して取り組んでいく。
●経済的強靱性・経済安全保障
28 経済的強靭性と経済安全保障をグローバルに確保することは、経済的な脆弱性の武器化に対する我々の最善の防御となり続ける。我々は、2022年G7エルマウ・サミットでのコミットメントを想起しつつ、構造的な脆弱性から保護するため、グローバルな経済的強靭性及び経済安全保障を強化する経済政策を推進していく。このため、我々は、G7内の、及び開発途上国との連携を含むG7以外の世界中のパートナーとの対話に関与し、協力的なアプローチをとっていく。その取組の中で、我々は、世界貿易機関(WTO)を中核とするルールに基づく多角的貿易体制に基づき、貿易を円滑化し、経済的強靱性を促進するため、国際的なルール及び規範を推進していく。我々の取組には、我々及び世界中のパートナーのサプライチェーンが、より強靭で持続可能で信頼性のあるものにするための行動をとることや、全ての人の繁栄を促進するための適切な措置が含まれる。また、基幹インフラにおける信頼性及び安全性を促進していく。我々は、戦略的依存関係及び構造的な脆弱性を悪化させ、労働者やビジネスに害を与え、国際的なルール及び規範を損ない得る非市場的政策及び慣行に対処するため、継続している連携を強化していく。世界の安全及び安定を損なうリスクに対処するため、警戒を高め、協力を強化するというエルマウにおける我々の決意を基に、我々は、経済的威圧に対する共同の評価、準備、抑止及び対応を強化するため、「経済的威圧に対する調整プラットフォーム」を立ち上げ、連携を強化していくとともに、G7以外のパートナーとの協力を更に促進していく。我々は、デジタル領域における不当な影響力、スパイ行為、違法な知見の漏えい及び妨害行為からグローバルなサプライチェーンを保護するため、悪意ある慣行に対する戦略的対話を深めていく。我々は、我々が開発する最先端技術が、国際の平和及び安全を脅かす軍事力の増強のために利用されることを防止するために連携する共通の責任及び決意を確認する。この文脈で、我々は、ここに、「経済的強靭性及び経済安全保障に関するG7首脳声明」を採択する。
29 我々は、様々な分野での、特にグローバルなクリーン・エネルギー移行における重要鉱物の重要性の高まり、並びに、脆弱なサプライチェーンに起因する経済及び安全保障上のリスクを管理する必要性を再確認する。我々は、開かれ、公正で、透明性のある、安全で、多様で、持続可能で、追跡可能な、ルール及び市場に基づく重要鉱物の取引を支持する。我々は、重要鉱物に関する市場歪曲的な行為及び独占的な政策に反対し、強靱かつ強固で、責任と透明性のある重要鉱物サプライチェーンの構築の必要性を再確認する。我々は、市場の混乱等の緊急事態に対する備えと強靱性を強化し、IEAによる「重要鉱物の自主的なセキュリティプログラム」への支持を含め、そのような混乱に共同で対処する方法を検討することにコミットする。我々は、鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)等の、重要鉱物資源の精製及び加工を含むサプライチェーンの多様化のための取組における共同の進展を歓迎する。我々は、WTOルールに則った、重要鉱物サプライチェーンにおける地元での価値創造を支援する。我々は、開発途上国との協力の下、重要鉱物資源の国内外でのリサイクルを推進する。我々は、上流及び中流の環境にも十分配慮しつつ、堅固な環境、社会、ガバナンス(ESG)基準により、鉱物資源の埋蔵地域や精製及び加工工場の地元住民を含む地域社会への利益の確保、労働者の権利保護、透明性の促進を確認し、クリーン・エネルギー移行を更に促進するため、重要鉱物資源及びそれを用いて製造される製品の持続可能で強靭なサプライチェーンを確立する必要があることを改めて表明する。我々は、G7気候・エネルギー・環境大臣が採択した「重要鉱物セキュリティのための5ポイントプラン」を歓迎し、同計画を実施するよう同大臣に指示する。
●貿易
30 我々は、WTOを中核とするルールに基づく多角的貿易体制の基本原則及び目的として、現在の地政学的環境においてこれまで以上に重要である、自由で公正な貿易に対する我々のコミットメントの下、連帯する。我々は、これらの基本原則を尊重することは、透明で、多様で、安全で、持続可能な、信頼できる、そして全ての者にとって公平で世界の市民のニーズに応える強靱なグローバル・サプライチェーンを構築するために不可欠であることを確認する。我々は、それぞれの政策において、透明性、協調性、WTOルールの尊重を重視することを確認する。この世界貿易体制は、包括的でなければならず、それがもたらす繁栄が伝統的に適切に代表されていない集団を含む全ての人に実感されるべきである。このため、我々は、G7外のパートナー、特に、サプライチェーンや世界貿易体制において不可欠なパートナーである開発途上国パートナーとの協力を継続する。第12回WTO閣僚会議(MC12)の成果を踏まえ、第13回WTO閣僚会議(MC13)を成功させることを見据え、我々は、2024年までに全ての加盟国が利用できる完全かつよく機能する紛争解決制度の実現を目的とした議論の実施や、世界の貿易政策の課題に対応するための審議を強化することを含め、WTO改革に向けて取り組むことの重要性を強調する。さらに、我々は、漁業補助金協定の迅速な発効を確保し、漁業補助金に関する包括的な合意を達成するであろう追加規定についての勧告及び共同声明イニシアティブ(JSI)を含む複数国によるイニシアティブに建設的に関与し、電子的送信に対する関税不賦課のモラトリアムを恒久化するために、全てのWTO加盟国が協力することを求める。我々は、WTOのJSIにおける電子商取引交渉を加速し、2023年末までに野心的な成果を妥結するために取り組むことにコミットする。その成果は、高水準で商業的に意味のあるものであるべきである。自由で公正な貿易の流れは、多角的貿易体制に対する我々のコミットメントに合致しており、グリーンで公正な移行において重要な役割を果たす。我々は、環境物品・サービス及び技術の貿易の円滑化・促進を含め、WTOにおける我々の協力を継続する。我々は、グローバルな競争、貿易及び投資を歪める非市場的政策及び慣行とそれらの問題のある展開に関する我々の共通の懸念を再確認する。我々は、既存の手段のより効果的な使用並びに適切な新しい手段の開発及びより強力な国際ルール及び規範を通じて、公平な競争条件を確保するための我々の取組を更に強化する。我々は、不公正な取引慣行への対応が、パートナーの産業に不必要な障壁を作らず、我々のWTOの約束に整合的であることを確保していく。我々は、輸出管理が、軍事用途にとり重要な技術並びに世界、地域及び国家の安全保障を脅かすその他の活動のための技術の転用がもたらす課題に対処するための基本的な政策手段であることを再確認する。我々は、悪意ある者による重要・新興技術の悪用や研究活動を通じた重要・新興技術の不適切な移転に対処するため、マイクロ・エレクトロニクスやサイバー監視システム等の重要・新興技術の輸出管理に関する協力の重要性を確認する。我々は、貿易担当大臣に対し、10月のG7貿易大臣会合に向けてこれらの議論を深め、経済的威圧を含む貿易関連の課題に対し、適切な場合にはG7内外で協調又は共同行動を模索することを求める。
●食料安全保障
31 我々は、世界が一世代で最も高い飢饉のリスクに直面し、食料安全保障及び栄養の状況が継続的かつ悪化していることを深く懸念する。COVID-19のパンデミック、エネルギー価格の高騰、気候危機やショック、生物多様性の損失、土地の劣化、水の安全、武力紛争など複数の要因が、近年の食料システムとサプライチェーンの世界的な途絶と混乱、世界の食料安全保障の悪化に寄与している。特に、ロシアによるウクライナに対する違法な侵略戦争は、グローバルな食料安全保障の危機を劇的に悪化させた。我々は、達成された前向きな成果を基礎として、G7及び関連する国際機関により既に開始されているイニシアティブを含め、喫緊の問題に対処し、グローバルな食料安全保障を改善するための努力を継続することにコミットしている。我々は、2022年のG7エルマウ・サミットで発表された世界の食料安全保障に対する140億米ドルという共同コミットメントを超えたことを強調し、特にアフリカと中東において、現在の食料安全保障危機の影響を受ける脆弱な国や地域に対して、食料及び栄養関連分野における支援を継続する。また、これに関し、他の国際ドナーに対しても、貢献を強化するよう要請する。アフリカの角の至る所におけるニーズの規模から、我々は、エルマウ・サミットでのコミットメントを共同で満たし、同地域の歴史において最悪の干ばつの一つに対処するための支援を効果的に実施した。また、この点に関し、他の国際ドナーに対しても、貢献を強化するよう要請する。我々はさらに、ロシアに対して、ロシアの穀物や肥料の輸出を妨げる措置を解除するよう求める。ウクライナが世界への主要な食料輸出国として不可欠な役割を担っていることから、我々は、ロシアによる意図的なウクライナの農業部門の混乱が、最も脆弱な国々の食料安全保障に及ぼす現在及び将来の影響を深刻に懸念している。エルマウにおける我々のコミットメントを基礎として、我々は、穀物出荷の原産地の確認に使用できる穀物データベースの作成などを通じ、ロシアによるウクライナ産穀物の違法な収奪を特定し証明するための取組への支援を含め、ウクライナの農業部門の回復への支援を提供し続ける。我々は、EU・ウクライナの連帯レーン及びゼレンスキー大統領の「ウクライナからの穀物」イニシアティブの重要性を再確認する。我々は、ウクライナからの穀物輸出を更に促進し、必要としている人々への安定供給を可能にするために、国連及びトルコが仲介している黒海穀物イニシアティブ(BSGI)の継続かつ拡充した実施が極めて重要であることを再確認する。我々は、ロシアに対し、グローバルな食料供給を脅かすことを止め、BSGIが最大限の能力を発揮し、必要な期間にわたり活動できるようにすることを求める。我々は、食料・農業市場の開放を維持するために、ルールに基づく、開かれた、公正で、透明性のある、予測可能で無差別な貿易を確保し、不当な貿易制限的措置を回避する重要性を改めて表明し、我々のG20パートナーにも同様に行うことを求める。我々は、MC12で採択された、国連世界食糧計画(WFP)による食料購入の輸出禁止又は制限からの免除に関する閣僚宣言を歓迎し、完全な履行を求める。我々は、このような措置は、飢饉や深刻な食料不安のリスクがより高い国々に不均衡な影響を与えることを認識しつつ、農業生産国が課す輸出制限が世界の食料安全保障に与える影響に対処するため、より具体的な行動を求める。我々は、現在及び将来の食料危機への対応において、恣意的な措置や市場の変動を減らすために、市場の透明性と中立・公平なデータ及び分析に裏付けられた正確な情報の必要性を強調し、G20農業市場情報システム(AMIS)及びこれに関する国際機関による様々な取組の強化にコミットする。我々は、低・中所得国が、質の高い農業、市場及び食料安全保障に関するデータを収集、分析、利用し、データの質を維持する能力を強化することの重要性を強調する。我々はまた、危機対応に関する共通の理解を深めるための食料輸出国と輸入国との間の対話の価値を認識する。
32 我々は、人間一人ひとりに焦点を当て、各人が手頃な価格で、安全、十分かつ高栄養価の食料への安定的なアクセスを可能にすることが不可欠であるという見解を共有する。全ての人々が十分な食料への権利を漸進的に実現するために、我々は、短期的な食料危機への対応から食料システムを持続可能なものとするための中長期的な取組といった食料安全保障のあらゆる側面において、女性や子どもを含む最も脆弱な人々を保護、支援する必要性を確認する。また、栄養は、人間中心のアプローチの観点から基本的なものであり、我々は、学校給食プログラムを通じたものを含む健康的な食事へのアクセス改善の重要性を強調する。我々は、地方、地域、世界の食料サプライチェーンの強化、多様化、持続可能性の確保や、構造的ボトルネックの解消を通じた、包摂的で、強靱で持続可能な農業と食料システムの確立が急務であることを認識する。これには、既存の国内農業資源を活用し、貿易を促進することによる現地生産能力の向上、気候変動への適応と気候変動の緩和、生物多様性の保全を伴う持続可能な生産性向上、持続可能な食料消費などが含まれる。我々は、地域や環境、農業の条件に適し、小規模農家を含む全てのステークホルダーに利益をもたらす、幅広いイノベーションと技術を推進する。また、研究開発(R&D)や責任ある投資において、中小企業やスタートアップを含む民間セクターの役割を強調する。手頃な価格、アクセス可能性を維持し、サプライチェーンの混乱の影響を軽減するために生産を多様化し、適切かつ安全な肥料の使用を含む肥料の効率的で責任ある使用と土壌の健全性を促進する必要があると認識する。我々は、WTOルールに沿った形で、摂氏1.5度の温暖化抑制とパリ協定の目標と整合的に現地エネルギー源の活用を支援することを通じ、現地の肥料生産を含む肥料バリューチェーンを支援することの重要性を認識する。これらの取組についてより広範なパートナーシップを強化する。我々は、付属文書「強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明」に示された具体的な措置をパートナー国と共に取り組むことをコミットし、国際社会におけるより広範な協力を要請する。
●保健
33 我々は、COVID-19のパンデミックが国際社会に前例のない影響を与えたことを認識し、パニックと無視の連鎖を断ち切るため、将来の公衆衛生上の緊急事態に備え、世界保健機関(WHO)を中核としつつ、グローバルヘルス・アーキテクチャー(GHA)を発展させ、強化することへの強いコミットメントを新たにする。この目的のために、我々は、WHOの主導的役割を強調しつつ、重複を回避し一貫性を確保するため、パンデミックへの対応に関する新たな法的文書(WHO CA+)、国際保健規則(IHR)の部分改正及び2023年9月のパンデミックの予防・備え・対応(PPR)に関する国連総会ハイレベル会合を含む進行中の議論に留意しつつ、正当性、代表性、公平性及び有効性を確保する、保健分野の緊急事態のPPRのための、より協調的で持続的な首脳級のガバナンスに向けた政治的モメンタムを更に高めることにコミットする。我々はまた、国際保健においてWHOが主導的かつ調整のための役割を果たすために持続的に資金を確保することを見据え、予算案とともに改革の進捗を注視することの重要性を考慮しながら、分担金の割合を2022-2023年のWHOの基本予算の50%に引き上げることに向けて取り組むという第75回世界保健総会(WHA)における画期的な決定を称賛する。我々はまた、G20財務・保健合同タスクフォース(JFHTF)の継続中かつ不可欠な作業等を通じて、パンデミックのPPRのための財務・保健当局間の連携を強化するという我々のコミットメントを再確認する。我々は、パンデミック基金(PF)の立ち上げを歓迎し、初回案件募集の成功裏の実施を期待し、より幅広いドナー層からのPFへの積極的な参加と貢献の増加を奨励する。我々はまた、2027年までの更なる5年間について2022年にコミットしたとおり、IHRで求められる中核的な能力の実施に当たり、少なくとも100の低・中所得国を支援するというG7の目標達成のために、作業計画の共有及び追跡、優先国の取組及び進捗の奨励などに共に取り組むことにコミットする。我々はまた、パンデミックへの対応のためのファイナンシングの強化の必要性を強調する。このため、我々は、既存の資金源をパンデミックへの対応に如何に活用できるかを包括的に評価すること、調整改善を通じて既存のメカニズムを補完し、未使用の資金を蓄積することなく、パンデミック発生時に必要な資金を迅速かつ効率的に供給できる、サージ・ファイナンスの枠組みを検討することにコミットする。この目的のため、我々はG7財務・保健大臣合同セッションにおいて承認された、財務・保健の連携強化及びPPRファイナンスに関するG7共通理解を歓迎する。我々は、パンデミックのPPRを強化するためには、公平性を指針として国際規範及び規則を強化することが不可欠であることを再確認しつつ、2024年5月までの採択を目指したWHO CA+の交渉及び国際保健規則を強化するための対象を絞った改正に関する交渉に、全てのステークホルダーと共に貢献し、そのモメンタムを維持するとのコミットメントを改めて表明する。さらに、我々は、「パンデミックへの備えに関するG7合意」に沿って、平時及び危機の双方において、新たな及び進行中の保健上の脅威の多分野にわたる統合サーベイランスのために、関連するデータ保護規則の尊重を確保しつつ、安全かつ確実な方法で、病原体、データ及び情報を適時に、透明性を持って体系的に共有することの重要性を改めて表明する。また、我々は、健康危機管理部隊の検討を含む公衆衛生及び健康危機時の人材などの、十分かつ質の高い保健医療人材を世界中で常に強化し、維持することの重要性を認識する。我々は、WHOアカデミーを始めとする専門家のグローバルネットワークや研修の更なる強化を支援し、同一労働同一賃金のディーセント・ワークを推進し、緊急時や紛争時等において医療従事者を保護する。我々は、脆弱な状況にある人々に手を差し伸べることを含め、市民社会が果たす不可欠な役割を認識し、全ての人にとって、より健康な未来のために協働することに改めてコミットする。
34 我々は、2030年までにユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成し、SDGsの目標3への進捗を加速させることの重要性を強調しつつ、70年以上ぶりの世界的な平均寿命の低下を反転させることにコミットする。我々は、平時の保健システムを強化する取組の一環として、2025年末までにパンデミック前の水準より改善させることを達成するために、プライマリー・ヘルスケア(PHC)の支援、必須の保健サービスの発展及び回復を通じて、各国がUHCを達成できるよう、グローバルなパートナーと共に支援することに改めてコミットする。我々は、医療従事者の強化によるものを含め、各国がPHCの提供を強化することを支援することにコミットする。また、我々は、妊産婦、新生児及び乳幼児の死亡率の低減を含め、生存率をパンデミック以前のレベルよりも良い状態に、かつあらゆるSDGsの目標及び我々が同時に進捗を支援するUHC関連の指標と一致するように戻すことを支援することにコミットする。我々は、医療費によって人々が貧困に陥ることを防ぐために財政リスクから保護することの重要性を認識する。この目的のため、我々は、UHC行動アジェンダに関するG7グローバル・プランを承認し、関連する国際機関を支援し、財政、知見の管理、人材を含むUHCに関する世界的なハブ機能の重要性に留意する。我々は、人道的な状況における場合も含め、HIV/エイズ、結核、肝炎、マラリア、ポリオ、麻疹、コレラ、顧みられない熱帯病(NTDs)などの感染症、薬剤耐性(AMR)、メンタルヘルス症状を含む非感染性疾患(NCDs)、全ての人の包括的な性と生殖に関する健康と権利(SRHR)の実現並びに定期予防接種、健康的な高齢化及び水と衛生(WASH)の促進といった、パンデミックによって大きく後退した様々な保健課題に対応する上で、UHCの不可欠な役割を再確認する。我々は、COVID-19感染後の症状の理解に焦点をあてたものも含め、この観点における研究の先頭に立つことにコミットしている。我々は、グローバルファンドの第7次増資の歴史的な成果に留意し、HIV/エイズ、結核及びマラリアの流行収束に向けたG7及びその他の国々からの財政支援を歓迎する。我々は、2026年までのポリオ撲滅を軌道に乗せるために、世界ポリオ根絶計画(GPEI)に対する継続的な支援を求める。我々は、栄養を改善するため、2024年のパリ栄養サミット(N4G)2024に向けて、2021年の東京栄養サミット(N4G)の成功を基礎とする。我々は、特に脆弱な状況にある妊産婦、新生児、乳幼児及び青少年を含む全ての人の包括的な性と生殖に関する健康と権利(SRHR)を更に推進することにコミットする。我々は、グローバルヘルス・イニシアティブとそのインターフェースを含む国際保健のパートナーシップの包摂的かつ制度レベルの調整と整合化の必要性が高まっていることを認識しつつ、国際保健におけるガバナンスを強化し、UHCの達成を支援する観点から、断片化及び重複を避け、説明責任を果たし、その効果を最大化し、各国のリーダーシップを強化するための共同の行動を取る。この観点から、我々は、「グローバルヘルス・イニシアティブの将来(Future of Global Health Initiatives)」の成果を期待する。我々は、UHC、結核及びパンデミックの予防・備え・対応(PPR)に関する次期国連総会ハイレベル会合を最大限に活用し、相乗効果を確保すること等を通じて、UHC達成に更に貢献する決意を改めて表明する。COVID-19後の時代に向けた国際保健に貢献するため、UHCの達成を支援し、PPRを強化する観点から、我々は、官民合わせて480億ドル以上の資金貢献を強調する。また、我々は、更なる国内資金動員及び既存の資金の効率的な活用を求める。我々は、インパクト投資も通じたものを含む、国際保健における持続可能な資金調達に向けた民間セクターの重要な役割を強調し、「グローバルヘルスのためのトリプルI(インパクト投資イニシアティブ)」を承認する。
35 我々は、デジタルヘルスに関するものを含む革新的な取組が、GHAの強化とUHCの達成の鍵となることを再確認する。我々は、イノベーションを促進し、100日ミッションで強調された安全で有効な、品質が保証され負担可能な感染症危機対応医薬品等(MCM)の研究開発を強化することが緊急に必要であることを改めて確認する。我々は、製造及びデリバリーに関する課題に対応することを通じたものを含め、MCMへの公平なアクセスを強化することにコミットする。この観点から、我々は、WHO、世界銀行、国連児童基金(UNICEF)、グローバルファンド、Gaviワクチン・アライアンス、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT)、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)、革新的新規診断開発基金(FIND)、ユニットエイド及び医薬品特許プール、地域機関及び民間セクターを含む関連するパートナーと協力しつつ、WHO CA+に関して進行中の議論と整合し、かつMCM製造の多様化に積極的に貢献し、グローバルガバナンスの面も含めて、最も脆弱なパートナーのニーズと期待という優先事項に対処すべきである、エンド・ツー・エンドのMCMエコシステムに関するG20を含む進行中の議論に引き続き貢献する。このため、我々は「感染症危機対応医薬品等(MCM)への公平なアクセスのためのG7広島ビジョン」を発表し、公平性、包摂性、効率性、負担可能性、質、説明責任、機動性、迅速性といった原則に基づき、MCMへのより公平なアクセスとデリバリーに貢献するための「感染症危機対応医薬品等(MCM)に関するデリバリー・パートナーシップ(MCDP)」を立ち上げる。関連の機関が危機のより早い段階でMCMを調達し供給するための流動性を提供するための具体的な選択肢を今夏に特定する目的で、開発資金供与者間で協力することにコミットする。WHOと世界銀行が実施し、G20財務・保健合同タスクフォース及び国連ハイレベル会合で発表されるサージ・ファイナンスに関するマッピング演習を支援するものであり、WHO CA+に関する進行中の交渉に貢献するものである。我々はまた、統合的な取組を通じて、全体的なワンヘルスアプローチを適用することにより、気候変動、生物多様性の損失及び汚染によって悪化するものを含む国際保健上の脅威に対処することへのコミットメントを改めて表明する。我々は、薬剤耐性(AMR)の世界的かつ急速な拡大を認識しつつ、2024年のAMRに関する国連総会ハイレベル会合に向けて、抗菌薬の研究開発を加速させるためのプッシュ型及びプル型のインセンティブを探求し、実施するとともに、抗菌薬へのアクセス及び抗菌薬を慎重かつ適切に使用するための管理を促進することに引き続きコミットしている。我々は、認知症を抱える人々をケアするための政策及び資金投入を推進し、アルツハイマー病を含む様々な種類の認知症に対する疾患修飾の可能性がある治療薬の開発を歓迎する。
●労働
36 我々は、デジタル・トランスフォーメーション及びグリーン・トランスフォーメーション並びに出生率の低下などに起因し高齢化が進む社会を含む人口動態の変化などの構造変化に対応しつつ、公正な移行を確保するための人への投資の重要性を強調する。我々は、これらの変革を推進するために、適切な社会的保護と積極的労働市場政策の組み合わせとともに、リスキリングやアップスキリングの取組を通じて個人を支援することにコミットする。我々は、労働者がこれらの変化に適応することを支援するためのリスキリングやアップスキリングは、人への投資であり、コストと見なすべきではないため、職業訓練や生涯を通じた学びを含め、労働力の移行するニーズに対応するために必要かつ十分な投資を提供し続けなければならない。我々は、持続可能な成長と生産性に見合った実質賃金の上昇につながり、ひいては更なる人への投資に寄与する、労働者のウェル・ビーイングと社会経済の活力の好循環の実現に向けた取組にコミットする。我々は、結社の自由と団体交渉権が、ディーセント・ワークと賃金の上昇を促進する上で重要な役割を果たすことを強調する。我々は、労使やその他のステークホルダーと建設的に関わりながら、全ての人に働きがいのある人間らしい良質な仕事を保証し、特に、女性並びに障害者、高齢者及び若者を含む少数派のグループを誰一人取り残さない、包摂的な労働市場を構築することを決意する。我々はまた、質の高い雇用の創出、社会的保護への普遍的なアクセス、労働市場におけるジェンダー平等の更なる改善に向けて取り組む。我々は、有給・無給のケアワークや家事の不平等な分担など、根本的な差別的社会規範やジェンダー規範に取り組み、育児休暇を含む社会保障の促進と保護、インフラや長期ケアへのアクセスの促進を含む育児や他の分野のケアワークやケア経済への支援を提供することにコミットする。COVID-19のパンデミックは、女性及び女児に不均衡に影響を与え、有給・無給のケアワークが我々の社会と経済の機能において果たしている不可欠な役割を示しつつ、ケアワークの不平等な負担がジェンダー不平等の主要な原因となっていることを浮き彫りにした。特に、我々は、親が仕事並びに家庭及び私生活を両立させ、社会のあらゆる分野に積極的に貢献できるよう、親であることの保護を支援し促進する必要性を再確認する。我々はまた、ケアの需要を満たすために十分な仕事を創出しつつ、無償ケアを認識し、削減し、再分配すること、ケア労働者に公平に報酬を支払い、社会対話と団体交渉においてケア労働者に代表性を与えることの必要性を強調する。我々は、職場における安全及び健康とウェル・ビーイングの促進、職業上の安全及び健康衛生の確保、労働者の包摂的かつ公平なキャリア形成支援など、様々な施策を通じて、ワーク・エンゲージメントと労働者の定着の強化の重要性を認識する。グローバル・バリューチェーンにおける国際労働基準及び人権、特に国際労働機関(ILO)によって採択された基本条約の尊重を確保すること、また、技術協力によるものを含む、SDGsの目標8に沿ったディーセント・ワークの促進にコミットする。我々は、あらゆる形態の強制労働と児童労働の実効的な廃止へのコミットメントを改めて表明する。我々は、グローバル・サプライチェーンからあらゆる形態の強制労働を撤廃するために、我々の協力と共同の取組を強化するための措置を講じることを再確認する。我々は、法律、規制、インセンティブ及び企業へのガイダンスなどの、義務的及び自主的措置のスマートな組み合わせを通じて、グローバル・サプライチェーンにおいて、ディーセント・ワークを引き続き促進し、権利保有者を引き続き保護し、実行可能であり、かつ既存の政策的アプローチに付加価値を与えるような、国際的な合意に基づく法的拘束力のある措置に関するアイディアと選択肢を模索するため、全ての関連するステークホルダーと緊密に協議し、国連及びILOにおける議論に建設的に取り組むことにコミットする。我々は、労働雇用大臣が策定した「労働者のキャリア形成と構造変化に対応するレジリエンスを促進する行動計画」を支持する。
●教育
37 我々は、職業教育を含め、包摂的で公平な質の高い教育の確保に向けて前進することにコミットし、強靱で生産的な社会を築くために、全ての人の生涯学習の機会を促進する。近年の危機は、子どもや若者、特に女児や最も社会的に疎外され脆弱な状況にある人々の教育へのアクセスの減少や学習機会の損失の増大につながっている。教育は全てのSDGsの目標を達成するための触媒であるため、我々は、特にCOVID-19のパンデミック以降において教育を堅持し、より強靱な教育システムを構築する重要性を再確認する。我々は、全ての学習者の教育機会を保護し、ジェンダー平等とあらゆる多様性をもつ全ての女性及び女児のエンパワーメントを、この点に関する世界の政府開発援助(ODA)を優先することを含め、教育において、また、教育を通じて推進するというG7のこれまでのコミットメントを堅持することを改めて表明する。我々は、2022年9月の国連事務総長による教育変革サミット(TES)を歓迎し、各国が最も疎外された子どもたちのために、より強固な教育システムを構築することを支援するための主要なパートナーである「教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE)」や「教育を後回しにはできない基金(ECW)」、また、国連教育科学文化機関(UNESCO)や国連児童基金(UNICEF)を含む国連機関に対する継続的な支援を求める。我々はまた、教育が人権の一つであることに留意しつつ、基礎学習の重要性及び全ての学習者、特に子供たちが成長し、自らの福祉を増進するために必要な知識と技能を備えた質の高い学習機会を提供するため、G7がより公平かつ効率的な方法で人への投資を拡大する必要性を改めて表明する。我々は、より強靭で、包摂的で、かつジェンダー分野で変革的な教育のために、就学前教育から高等教育まで、ジェンダーに関連する障壁や根本的な差別的社会規範を引き続き打破する。我々は、若者間の国際交流、学生・研究者間の国際的な人材の移動及び循環、並びに高等教育機関や研究機関との間の協力を引き続き奨励する。我々は、教育を通じて経済成長を実現すると同時に、社会的課題の解決に貢献できる人材支援への投資の重要性を認識する。我々は、学校の指導・運営体制の整備も含め、全ての子どもが自らの可能性を発揮できる教育環境及び生涯学習の機会の整備に向けて努力する。これには、デジタル格差を拡大させないようにしつつ、少人数学級の推進、改善された情報コミュニケーション技術(ICT)環境の整備、教育・学習を支援するデジタル技術の効果的な活用を含み得る。
●デジタル
38 我々は、急速な技術革新が社会と経済を強化してきた一方で、新しいデジタル技術の国際的なガバナンスが必ずしも追いついていないことを認識する。技術進化が加速する中、我々は、共通のガバナンスの課題に対処し、世界的な技術ガバナンスにおける潜在的なギャップや分断を特定することの重要性を確認する。人工知能(AI)、メタバースなどの没入型技術、量子情報科学技術、その他の新興技術などの分野において、デジタル経済のガバナンスは、我々が共有する民主的価値に沿って更新し続けられるべきである。これらは、公正性、説明責任、透明性、安全性、オンラインでのハラスメント、ヘイト、虐待からの保護、プライバシー及び人権の尊重、基本的自由、そして個人データの保護を含む。我々は、安全性及びセキュリティが優先されることや、各プラットフォームがそのプラットフォーム上で子どもの性的搾取や虐待の脅威に対処することを確保し、オンラインでの安全とプライバシーに対する子どもの権利を堅持しながら、テクノロジーの責任あるイノベーションと実装を推進するため、テクノロジー企業及び他の関連するステークホルダーと協働する。我々は引き続き、民主主義のために技術を進歩させるための方法について議論し、新興技術とその社会実装について協力し、OECDの技術に関するグローバルフォーラムを含む関連するフォーラムを通じて、インターネット・ガバナンスを含むデジタル課題に関する包括的なマルチステークホルダー間の対話を期待する。我々は、法的拘束力を有する枠組みを尊重しつつ、AIの標準の開発におけるマルチステークホルダーアプローチの更なる推進にコミットし、責任あるAIの推進のため、透明性、開放性、公正なプロセス、公平性、プライバシー及び包括性を推進する手続の重要性を認識する。我々は、信頼できるAIという共通のビジョンと目標を達成するためのアプローチと政策手段が、G7諸国間で異なり得ることを認識しつつも、AIガバナンスに関する国際的な議論とAIガバナンスの枠組み間の相互運用性の重要性を強調する。我々は、マルチステークホルダー型の国際機関を通じて、信頼できるAIのためのツール開発を支援し、マルチステークホルダープロセスを通じて、標準化機関における国際技術標準の開発及び採用を促す。我々は、国や分野を超えてますます顕著になっているAIの機会及び課題について直ちに評価する必要性を認識し、OECDなどの国際機関が政策展開の影響に関する分析を検討し、人工知能グローバルパートナーシップ(GPAI)が実践的なプロジェクトを実施することを奨励する。この観点から、我々は、関係閣僚に対し、生成AIに関する議論のために、包摂的な方法で、OECD及びGPAIと協力しつつ、G7の作業部会を通じた、広島AIプロセスを年内に創設するよう指示する。これらの議論は、ガバナンス、著作権を含む知的財産権の保護、透明性の促進、偽情報を含む外国からの情報操作への対応、これらの技術の責任ある活用といったテーマを含み得る。我々は、デジタル・技術大臣会合における「AIガバナンスの相互運用性を促進等するためのアクションプラン」を歓迎する。我々は、全ての産業及び社会部門において革新的な機会を提供し、持続可能性を促進し得るメタバースなどの没入型技術及び仮想空間の潜在性を認識する。我々は、OECDの支援を受けて、相互運用性、ポータビリティ及び標準を含め、この分野での共同のアプローチを検討するよう我々の関係閣僚に指示する。我々は、コンピューティング技術の研究開発におけるあり得べき協力に関心を表明する。我々はまた、関係閣僚に対し、デジタル貿易を更に促進するための方法を検討するよう指示する。
39 我々は、越境データ流通、情報、アイディア及び知識は、プライバシー、データ保護、知的財産保護、データ及びクラウドインフラに関するものを含む安全性に関連する課題を提起する一方で、より高い生産性、より大きなイノベーション、より良い持続可能な開発を生み出すことを再確認する。我々は、正当な公共の利益の追求にかかる政府の能力を維持しつつ、信頼できる越境データ流通を可能にし、デジタル経済全体を活性化するために、「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」を促進することの重要性を改めて表明する。我々は、この概念を具体化するという我々の意思及び、マルチステークホルダー・エンゲージメントの支援、技術の役割の活用、国内及び自治体の政策と適正手続きの明確化等を通じて、将来の相互運用性を促進するために、信頼性のあるデータの流通を可能にする既存の規制アプローチや手段の間の共通性、補完性及び収斂の要素の特定に向けた取組のためのG7内外の協力に対する我々の支持を強調する。我々は、デジタル・技術大臣会合における「DFFT具体化のためのG7ビジョン及びそのプライオリティに関する附属書」及び「DFFT具体化に向けたパートナーシップのためのアレンジメントの設立」を承認する。我々は関係閣僚に対し、実質的な成果を実現するための作業を継続し、その後、我々に報告するよう指示する。我々は、民主的価値及び法の支配にコミットした国家間の越境データ流通における信頼性を高めるための手段として、OECDの「民間部門が保有するデータへの政府のアクセスに関する宣言」を歓迎する。我々は、インターネットの分断と、人権を侵害するデジタル技術の使用への反対を強調する。利益を達成するために実施される我々の措置とは区別される必要のある、データの自由な流通に対する、透明性を欠き、恣意的に運用される正当化できない障壁に対抗すべきである。我々はデジタル・エコシステム全体の信頼を高め、権威主義的アプローチの影響に対抗することを目指す。我々は、社会及び経済の基盤としての安全で強靱なデジタルインフラの重要性を認識する。我々は、海底ケーブルの安全なルートの延長などの手段により、ネットワークの強靱性を支援し強化するために、G7や同志国との協力を深化することにコミットする。我々は、ICTSサプライチェーンにおける供給者の多様化の取組を歓迎し、安全、強靭で確立された構成と共に、オープンで相互運用可能なアプローチに向けた市場動向について、技術的に中立な立場で引き続き議論する。G7議長国の日本でオープンな無線アクセスネットワーク(RAN)の初期の導入が進んでいることに鑑み、我々は、オープンな構成及びセキュリティに関連する側面と機会について意見交換を行った。我々は、デジタル分野の包摂性を促進し、都市の課題に対処するため、ジェンダー間のデジタル格差を含むデジタル格差を埋める必要性及びスマートシティ・イニシアティブなどのデータと技術を都市のために使用する取組の重要性を認識する。我々は、包摂的な開発を促進し、デジタル専門家のより大きな雇用と移動を可能にし、セキュリティ、相互運用性、個人データの保護及びジェンダー平等を含む人権の尊重がグローバルな連結性に組み込まれることを確保しつつ、公平性、普遍性及び廉価性の原則の下、デジタル・アクセスを拡大するために他の国々を支援するという我々のコミットメントを再確認する。
●科学技術
40 我々は、グローバルな課題を解決し、次の段階の経済成長を可能にする、イノベーションを推進するための先端技術、研究インフラ及び高技能な人材ネットワークの開発を支援する。このため、国際的な人材の移動及び循環を促進する。G7は、FAIR原則(Findable(見つけられる)、Accessible(アクセスできる)、Interoperable(相互運用できる)、Reusable(再利用できる))に沿って、科学的知識並びに研究データ及び学術出版物を含む公的資金による研究成果の公平な普及による、オープン・サイエンスを推進する。これは、研究者や人々が恩恵を受けるとともに、グローバルな課題に対する知識、イノベーション及び解決策を創造することへの貢献を可能にする。我々はさらに、責任あるグローバルな科学技術協力と、先進的なコンピューティングやバイオテクノロジーなどの新興技術の利用を促進するため、研究とイノベーションにおいて共通の価値観と原則を共有するパートナーとの協力にコミットする。これには、気候変動を踏まえた海洋の更なる理解や、大規模研究インフラの活用が含まれる。我々は、研究セキュリティ及び研究インテグリティ並びにオープン・サイエンスの理念に基づく国際的な共同研究の分野を含め、多国間対話を通じて、研究及びイノベーションにおける価値観と原則の共通理解の推進並びに促進にコミットする。我々は、予定されているG7バーチャルアカデミーの立ち上げ並びに研究セキュリティ及び研究インテグリティのベストプラクティスの文書の公表を歓迎する。これらの取組は、安全保障、経済及び科学研究の交際領域において生じる様々な課題への対処に貢献する。
41 我々は、宇宙システムへの依存がますます高まっていることを踏まえ、宇宙空間の安全かつ持続可能な利用を促進するとのコミットメントを改めて表明する。我々は、スペースデブリの問題に対処することの重要性を改めて表明し、国連宇宙空間平和利用委員会で採択された国際ガイドラインの実施を喫緊で必要なものとして強く支持する。我々は、スペースデブリの低減と改善のための更なる解決策及び軌道上デブリの低減と改善に関する技術の更なる研究開発を進展させる各国の取組を歓迎する。さらに、我々は、宇宙空間の安全、安定及び持続可能性を確保するため、破壊的な直接上昇型ミサイルによる衛星破壊実験を実施しないことにコミットし、他国が後に続くように促す。
●ジェンダー
42 ジェンダー平等及びあらゆる女性及び女児のエンパワーメントの実現は、強靭で公正かつ豊かな社会のための基本である。我々は、あらゆる多様性をもつ女性及び女児、そしてLGBTQIA+の人々の政治、経済、教育及びその他社会のあらゆる分野への完全かつ平等で意義ある参加を確保し、全ての政策分野に一貫してジェンダー平等を主流化させるため、社会のあらゆる層と共に協働していくことに努める。この観点から、我々は、長年にわたる構造的障壁を克服し、教育などの手段を通じて有害なジェンダー規範、固定観念、役割及び慣行に対処するための我々の努力を倍加させることにコミットし、多様性、人権及び尊厳が尊重され、促進され、守られ、あらゆる人々が性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、暴力や差別を受けることなく生き生きとした人生を享受することができる社会を実現する。我々は、ジェンダー平等アドバイザリー評議会(GEAC)の活動を歓迎し、その更なる強化に期待する。我々は、ジェンダー・ギャップに関するG7ダッシュボードの最初の改訂と、ジェンダー平等を前進させるための過去のG7のコミットメントを監視することを目的とする、最初の実施報告書の本年の公表を期待している。
43 我々は、特に危機的な状況下で女性及び女児の権利が後退することに強い懸念を表明し、世界中の女性及び女児並びにLGBTQIA+の人々の人権と基本的自由に対するあらゆる侵害を強く非難する。我々はさらに、SRHRがジェンダー平等並びに女性及び女児のエンパワーメントにおいて、また、性的指向及び性自認を含む多様性を支援する上で果たす、不可欠かつ変革的な役割を認識する。我々は、安全で合法な中絶と中絶後のケアへのアクセスへの対応によるものを含む、全ての人の包括的なSRHRを達成することへの完全なコミットメントを再確認する。国内外において、ジェンダー平等及びあらゆる多様性をもつ女性及び女児の権利を擁護し、前進させ、守ることにコミットし、この分野における苦労して勝ち取った進展を損ない、覆そうとする試みを阻止するために協働する。この観点から、我々は、WPSフォーカル・ポイント・ネットワークとのパートナーシップ及び国家行動計画の策定への支援を通じて、防災への適用を含む「女性・平和・安全保障(WPS)」アジェンダの前進、実施及び強化並びに交差的アプローチの推進にコミットする。我々は、暴力的紛争の予防、救援・復興活動の提供、永続的な平和の構築における女性の主導的な役割を強調し、和平及び政治プロセスにおける女性の完全で、平等で、意義のある参加を支持することを誓う。我々は、紛争に関連した性的暴力及びジェンダーに基づく暴力を撲滅するための取組の強化及びサバイバー中心のアプローチを用いて、被害者・サバイバーに包括的な支援と意義のある参加を提供する重要性にコミットする。我々はさらに、あらゆる形態の、性的及びジェンダーに基づくオフライン及びオンラインにおけるハラスメントや虐待、援助に関連した性的搾取や虐待を撲滅することにコミットする。我々は、全ての人々への教育の権利確保にコミットし、安全でジェンダー分野で変革的な質の高い教育への公平なアクセスを促進するとともに、科学、技術、工学、数学(STEM)の分野、教育及びデジタルにおけるジェンダー格差を解消する措置を講じる重要性を強調する。我々は、これが、気候、自然及び開発の課題に対処するために不可欠の土台である女性の起業家精神を促進するための鍵であると考える。我々はまた、リスキリングと技能向上の促進、働きがいのある人間らしい労働条件の促進、あらゆる多様性をもつ女性の金融包摂の強化及びジェンダー間の賃金格差の解消にコミットする。我々はさらに、女性の完全なエンパワーメントと、指導的地位を含むあらゆるレベルの意思決定プロセスへの完全かつ平等な参加を促進するためのコミットメントを改めて表明する。我々は、質の高いケアは、我々の社会及び経済の機能において不可欠な役割を果たすが、そのジェンダー不平等な分配によりジェンダー不平等の主要な原因となっていることを認識する。
44 我々のコミットメントを前進させるために、我々は、統合への取組を強化し、我々の社会の実質的な変革のためのジェンダー主流化を深化させることにより、ジェンダー平等問題の断片化と疎外化を克服する必要性を強調する。
この観点から、我々は、政治と安全保障、経済と社会の領域を橋渡しする「ネクサス(nexus)」を作り出すことによって、ジェンダー平等を促進するための継続的で、全体的かつ包括的なアプローチを求め、多部門の政策及び政策実施における多様な次元にわたる我々の行動の効率と影響の最大化を提唱する。我々は、外交及び持続可能な開発政策並びにODAにおける、このようなネクサス・アプローチの重要性を強調し、ネクサスを支援するよう努める。我々は、今後数年間にわたり、ジェンダー平等並びに女性及び女児のエンパワーメントを促進する、我々の二国間で割当可能なODAの割合を共同で増加させるべくあらゆる努力をするという我々のコミットメントを再確認する。この観点から、我々は、専門家が作成したファクトシート「ネクサス・アプローチを通じたジェンダー主流化の促進」を歓迎し、この分野での更なる進展を期待する。
●人権、難民、移住及び民主主義
45 我々は、世界人権宣言に示された全ての人の人権と尊厳を堅持し、誰もが社会に完全にかつ平等に参加できるようにするとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、人権侵害に対してしっかりと声を上げると同時に、対話と協力を通じて、人権を守り促進しようとする国々及び市民社会団体の声に耳を傾け、これを支援することにコミットする。我々は、G7内外においてビジネスと人権に関する議論を深める必要性を認識し、企業活動及びグローバル・サプライチェーンにおける人権及び国際労働基準の尊重の確保並びにビジネスのための強靱性、予見可能性及び確実性の更なる向上に向けて、情報交換の加速化を含む協力及び共同の取組を強化する意図を有しており、他者に対し、我々のこれらの取組に参加するよう呼びかける。我々は、難民を保護し、避難を強いられた人々や受入国及びコミュニティを支援し、難民及び避難民の人権及び基本的自由の完全な尊重を確保し、性的及びジェンダーに基づく暴力からの自由を含む紛争、危機及び避難により悪化した、脆弱な状況に直面する人々や疎外された人々の権利擁護と促進に対するコミットメントを再確認する。我々は、国際社会に対しても同様の対応を求める。我々は、記録の改善とともに、不処罰と闘うこと、及び、紛争に関連した性的暴力を含む、国際的な懸念事項である最も重大な犯罪の加害者の責任を追及することにコミットする。この観点から、我々は、将来の紛争に関連した性的暴力を防止するための国際的なアーキテクチャを強化する必要性を想起する。我々は、人道に対する犯罪の防止及び処罰に関する国際法委員会の条文草案の議論についての重要性を認識する。我々は、2023年12月の第2回グローバル難民フォーラムに向けて、国際社会との協力を継続する。我々は、人権及び基本的自由への完全な尊重を確保し、国際協力の精神に基づき、「難民に関するグローバル・コンパクト」並びに国内の政策、法制度及び状況に沿った形で、難民の包摂を支援するというコミットメントを再確認する。
46 我々は、世界における安全で、秩序ある、正規の移住を確保することへのコミットメントを再確認する。我々は、移民が我々の国にもたらし得る重要な経済的及び社会的利益を認識する。我々は、移民としての地位にかかわらず、人権及び基本的自由への最大限の尊重を確保することにコミットする。我々は、陸路や海路を含む、非正規かつしばしば非常に危険を伴う移住の防止にコミットしている。我々は、最も脆弱な人々から利益を得て、移民や庇護申請者の違法な移住及び危険な移動を助長する組織犯罪ネットワークに対処するための共同の取組にコミットする。我々は、人命を危険にさらし、G7パートナーの国内治安にリスクをもたらすこの冷酷な犯罪行為に対する断固たる対処を求める。この観点から、我々は、人身取引及び密入国に従事する者の犯罪・搾取活動を可能にするサプライチェーンを分断するための協力を含め、組織犯罪ネットワークのビジネス・モデルを破壊するための取組を強化する。この目的で、我々は、関係閣僚に対し、根本原因への我々の理解向上のためのパートナーシップを深化させ、この複雑な課題に対処するため、世界中のパートナーと協働するよう指示する。
47 我々は、民主主義が平和、繁栄、平等及び持続可能な開発を促進するための最も揺るぎない手段であるとの我々の共通の信念を再確認する。我々は、オンラインでのハラスメントや虐待、インターネットの遮断や分断からの保護を含む、メディアの自由及びオンラインの自由を支援し、民主的制度に対する信頼を損ない、国際社会における意見の対立を招く偽情報を含む外国からの情報操作及び干渉に対処することにより、情報環境を保護するという我々のコミットメントを再確認する。我々は、ロシアが、ウクライナに対する侵略戦争への支持を得るため、また侵略の事実を曖昧にするために、情報操作や干渉を広く行っていることを強く非難する。G7即応メカニズム(RRM)を通じて、我々は、国際人権法、特に表現の自由を十分に尊重しつつ、情報操作を含む民主主義への脅威に対抗するための我々の共同の取組を強化する。我々は、事実に基づく、質の高い、信頼できる情報の普及が確保されるよう取り組み、デジタル・プラットフォームがこのアプローチを支援するよう呼びかける。我々は、情報と民主主義のためのパートナーシップといった関連する国際的イニシアティブ及び国連やOECD等による取組の支援を通じたものを含め、こうした情報へのアクセスを促進する決意を共有する全ての地域の政府及び非政府のパートナーとこれらの問題について協力を強化する。
●テロリズム、暴力的過激主義、国際的な組織犯罪への対応/法の支配の堅持/腐敗対策
48 我々は、オンライン及びオフライン上におけるあらゆる形態のテロリズム及び暴力的過激主義、並びに薬物取引、人身取引、児童の性的虐待・搾取、腐敗、詐欺、知的財産の窃取、ランサムウェアの脅威、サイバー犯罪及び環境犯罪を含む国際組織犯罪、並びにマネー・ローンダリング及びテロ資金供与に対して、全ての関係者と協力して、統一的、協調的、包摂的で、透明性のある、人権に基づきかつジェンダーに配慮した方法で取り組むという我々の強いコミットメントを改めて表明する。テロ目的のための新技術及び新興技術の悪用に対抗し、犯罪目的のための技術の悪用に対抗する上で、我々は、グローバルな協力及びデジタル対応能力の強化のための最大限の努力を継続する。この観点から、我々の協力及び「クライストチャーチ・コール」等の既存の枠組みを通じた取組を基礎とし、また、厳密に管理された合法的なアクセスの維持を含め、従前のコミットメントを想起しつつ、我々は、テロ及び暴力的過激主義コンテンツのオンライン上での拡散の問題への取組を強化し、セーフティ設計を優先し、特に、プラットフォーム上での児童の性的搾取及び虐待を阻止するよう民間部門に求める。我々は、効率的な国境を越えた協力の基礎を形成する刑事司法当局及びその他関連する当局による幅広い協力において、国際組織犯罪防止条約及び国連腐敗防止条約(UNCAC)並びにサイバー犯罪に関する条約(ブダペスト条約)等の欧州評議会における条約などの関連する国際約束に署名し批准するというパートナー国の取組を支持する。我々はまた、違法合成薬物の公衆衛生上及び安全保障上の重大な脅威を認識し、これに対処するため、他の意欲ある国及び民間部門との協力を強化する。
49 我々はまた、法律の制定及び実施のための各国への法制度整備支援の提供や、司法機関に関連する能力構築等の、法務・司法分野における二国間の、地域的な及び多国間の連携及び協力を強化する。我々が共有する多くの優先事項を前進させるため、引き続き、腐敗との闘いを強化し、グッドガバナンスを促進し、及び説明責任があり、透明性があり、公平で、コミュニティに根ざした法執行を強化する。腐敗及び関連する不正資金や犯罪収益は、公的資源を流出させ、しばしば組織犯罪を助長し得るとともに、収奪政治(クレプトクラシー)体制により市民を犠牲にして富と権力を集積し、民主的統治を弱体化させることが可能になることを認識する。国際的な腐敗対策の義務と基準を精力的に実施し、関連する地域及び国際機関を通じたものを含む法執行に関する協力を強化し、腐敗した当事者の責任を問うため、より強力で統一されたアプローチを追求する。我々は、民主的制度の健全性と透明性のために実質的支配者の透明性が重要であることを想起し、実質的支配者を登録する機関の設立及び強化においてアフリカのパートナーを支援する重要性を再確認する。
●地域情勢
50 我々は、より安全で豊かな未来を築くために、中核となる外交政策及び安全保障上の課題に関して結束する。また、我々は、差し迫ったグローバルな課題に対処し、国際システムがこれらの課題に効果的に対応できることを確保するために、幅広いパートナーと共に取り組むという決意を再確認する。
51 我々は、G7のパートナーとして、それぞれの中国との関係を支える以下の要素について結束する。
・我々は、中国に率直に関与し、我々の懸念を中国に直接表明することの重要性を認識しつつ、中国と建設的かつ安定的な関係を構築する用意がある。我々は、国益のために行動する。グローバルな課題及び共通の関心分野において、国際社会における中国の役割と経済規模に鑑み、中国と協力する必要がある。
・我々は、中国に対し、パリ協定及び昆明・モントリオール生物多様性枠組に沿った気候及び生物多様性の危機への対処並びに天然資源の保全、脆弱な国々の債務持続可能性と資金需要への対処、国際保健並びにマクロ経済の安定などの分野について、国際場裏を含め、我々と関与することを求める。
・我々の政策方針は、中国を害することを目的としておらず、中国の経済的進歩及び発展を妨げようともしていない。成長する中国が、国際的なルールに従って振る舞うことは、世界の関心事項である。我々は、デカップリング又は内向き志向にはならない。同時に、我々は、経済的強靱性にはデリスキング及び多様化が必要であることを認識する。我々は、自国の経済の活力に投資するため、個別に又は共同で措置をとる。我々は、重要なサプライチェーンにおける過度な依存を低減する。
・中国との持続可能な経済関係を可能にし、国際貿易体制を強化するため、我々は、我々の労働者及び企業のための公平な競争条件を求める。我々は、世界経済を歪める中国の非市場的政策及び慣行がもたらす課題に対処することを追求する。我々は、不当な技術移転やデータ開示などの悪意のある慣行に対抗する。我々は、経済的威圧に対する強靱性を促進する。我々はまた、国家安全保障を脅かすために使用され得る先端技術を、貿易及び投資を不当に制限することなく保護する必要性を認識する。
・我々は引き続き、東シナ海及び南シナ海における状況について深刻に懸念している。我々は、力又は威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対する。
・我々は、国際社会の安全と繁栄に不可欠な台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認する。台湾に関するG7メンバーの基本的な立場(表明された「一つの中国政策」を含む)に変更はない。我々は、両岸問題の平和的解決を促す。
・我々は、強制労働が我々にとって大きな懸念事項となっているチベットや新疆ウイグルにおけるものを含め、中国の人権状況について懸念を表明し続ける。我々は、中国に対し、香港における権利、自由及び高度な自治権を規定する英中共同声明及び基本法の下での自らのコミットメントを果たすよう求める。
・我々は中国に対し、外交関係に関するウィーン条約及び領事関係に関するウィーン条約に基づく義務に従って行動するよう、また、我々のコミュニティの安全と安心、民主的制度の健全性及び経済的繁栄を損なうことを目的とした、干渉行為を実施しないよう求める。
・我々は、中国に対し、ロシアが軍事的侵略を停止し、即時に、完全に、かつ無条件に軍隊をウクライナから撤退させるよう圧力をかけることを求める。我々は、中国に対し、ウクライナとの直接対話を通じることも含め、領土一体性及び国連憲章の原則及び目的に基づく包括的、公正かつ永続的な平和を支持するよう促す。
52 南シナ海における中国の拡張的な海洋権益に関する主張には法的根拠がなく、我々はこの地域における中国の軍事化の活動に反対する。我々は、UNCLOSの普遍的かつ統一的な性格を強調し、海洋における全ての活動を規律する法的枠組みを規定する上でのUNCLOSの重要な役割を再確認する。我々は、2016年7月12日の仲裁裁判所による仲裁判断が、仲裁手続の当事者を法的に拘束する重要なマイルストーンであり、当事者間の紛争を平和的に解決するための有用な基礎であることを改めて表明する。
53 我々は、そのいずれもが複数の国連安保理決議(UNSCR)に違反している、北朝鮮による前例のない数の不法な弾道ミサイル発射を強く非難する。我々は、北朝鮮に対し、核実験又は弾道ミサイル技術を使用する発射を含め、不安定化をもたらす又はエスカレートさせるいかなるその他の行動をも自制するよう求める。これは、地域の安定を損ない、国際の平和及び安全に重大な脅威をもたらすものである。このような無謀な行動は、迅速で、結束した、力強い国際的な対応により対処されなければならない。これには、国連安全保障理事会により採られる更なる重大な措置が含まれる。我々は、関連する国連安保理決議に従った、核兵器及び既存の核計画、並びにその他の大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の、北朝鮮による完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な放棄という目標への揺るぎないコミットメントを改めて表明する。我々は、北朝鮮の人々の福祉よりも不法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画を優先するとの北朝鮮の選択を懸念する。我々は、北朝鮮に対し、日本、米国及び韓国からのものを含め、繰り返し提示されてきた対話の申出に応じるよう求める。我々は、北朝鮮に対し、人権を尊重し、国際人道機関によるアクセスを容易にし、拉致問題を即時に解決するよう求める。
54 我々は、ミャンマーの治安、人道、人権及び政治状況の悪化を引き続き深く懸念し、ミャンマーの人々との連帯を表明する。我々は、ASEAN議長を務めるインドネシア及びミャンマー担当ASEAN特使を通じたものを含め、ミャンマーの全てのステークホルダーとの継続的な関与を含む5つのコンセンサスの実施のためのASEANの取組を引き続き支持する。我々は、ミャンマー国軍に対し、全ての暴力を即時に停止し、全ての政治犯及び恣意的に拘束された人々を解放し、包摂的で平和的な対話のための環境を作り出し、同国を真に民主的な道に戻すよう引き続き求める。我々は、全ての国に対し、ミャンマーへの武器流入を防止するよう改めて求める。我々はまた、全ての人々、特に最も脆弱な人々に対する、完全かつ安全で、阻害されない人道アクセスを求める。
55 我々は、アフガニスタンの安定に対する増大する脅威及び悲惨な人道・経済状況に重大な懸念を持って留意する。我々は、タリバーンに対し、テロ対策へのコミットメントを堅持し、アフガニスタンの領土がいかなる国に対する脅威や攻撃、テロ行為の計画や資金調達、テロリストの保護や訓練にも利用されないことを確保するよう求める。我々は、タリバーンによる人権と基本的自由に対する組織的な侵害に対して、最も強い反対を表明し、特に女性及び女児に対する容認できない決定の即時撤回を求める。全てのアフガニスタン人は、公的生活の全ての領域において、完全で、平等で、意義ある参加を享受し、人道支援及び基礎的サービスへのアクセスを持たなければならない。我々は、タリバーンに対し、国連安保理決議第2681号(2023年)及び第8条を含む国連憲章を尊重し、アフガニスタンにおける国連の制限のない活動を確保するよう求める。政治的包摂性と代表性の恒常的な欠如を改善するため、我々はタリバーンに対し、全てのアフガニスタン人が参加できる、信頼可能で、包摂的で、アフガニスタン人主導の国民対話に関与するための重要な措置を採るよう強く求める。我々は、その他の国際パートナーと連携して、タリバーンに統一されたメッセージを伝えることの必要性を認識する。
56 我々は、イランが決して核兵器を開発してはならないという我々の明確な決意を改めて表明する。我々は、引き続き、信頼に足る民生上の正当性がなく、実際の兵器関連の活動に危険なほど近づいているイランの核計画の継続したエスカレーションを深く懸念している。この問題を解決するためには、外交的解決が引き続き最善の方法である。この文脈において、包括的共同作業計画(JCPOA)は引き続き、有益で参考となるものである。我々は、イランに対し、核不拡散及び保障措置に関する義務を含む法的及び政治的コミットメントを履行するために、迅速かつ具体的な行動をとることを求める。我々は、フェミニストの民衆抗議活動に対する抑圧や、イラン内外で女性、女児、少数派グループ及びジャーナリストを含む個人を標的とすることを含め、イランによる組織的な人権侵害に対する深い懸念を改めて表明する。我々は、イランの指導者に対し、全ての不当で恣意的な拘束を終わらせるよう求める。
57 我々は、イランによる、国連安保理決議第2231号及び第2216号を含む国連安保理決議に違反した、国家及び非国家主体並びに代理団体に対する、ミサイル、無人航空機(UAV)及び関連技術の移転を含む、イランによる継続的な不安定化をもたらす活動について重大な懸念を表明する。イランは、ロシアのウクライナに対する侵略戦争への支援を止めなければならない。特に、我々は、イランに対し、ウクライナの重要なインフラを攻撃し、ウクライナの市民を殺害するために使用されている、武装化されたUAVの移転を止めるよう求める。我々は、イランとサウジアラビアの最近の関係正常化に関する合意を含む、二国間関係を改善し、地域の緊張を緩和するイニシアティブを歓迎する。我々は、中東の水路における海上安全保障を確保することの重要性を強調し、イランに対し、全ての船舶による航行の権利及び自由の合法的な行使を妨害しないよう求める。
58 我々は、イスラエル人及びパレスチナ人に対して、二国家解決の実現に向け、信頼を構築するための措置を採ることを求める。そのために、全ての当事者は、入植活動や暴力の扇動を含む一方的な行為を控えなければならない。我々は、歴史的なエルサレムにおける現状への我々の支持を改めて表明する。我々は、エジプト、イスラエル、ヨルダン、パレスチナ自治政府、及び米国との間の最近の諸会合を歓迎し、彼らのコミットメントが真摯に履行されることを期待する。我々は、パレスチナ人の経済的自立及び国連パレスチナ難民救済事業機関への支援を継続する。
59 我々は引き続き、シリアにおける、国連安保理決議第2254号と整合的な、包摂的で国連が仲介する政治プロセスに強くコミットしている。我々は、国際社会は政治的解決に向けた真正かつ揺るぎない進展があった後にのみ、正常化及び復興支援を検討すべきであるということを再確認する。我々は、化学兵器禁止機関(OPCW)の活動に対する継続的な支持を表明し、化学兵器の使用並びに適用可能な国際人道法及び国際人権法を含む国際法の違反に責任がある者の責任を追及することにコミットしている。我々は、特に、範囲や規模において代替の無い国連によるクロスボーダー支援を通じ、支援を必要とする全てのシリア人への完全で妨げられない人道アクセスを求める。我々は、シリア北東部に残る、ISISによる拘束者と避難民のための持続的な解決策を含む、ISISの永続的な壊滅に引き続きコミットする。
60 我々はさらに、中東及び北アフリカの他の地域における安定と繁栄を維持するための我々の支持を表明する。イエメンについて、我々は、全ての当事者に対し、国連の下で、持続的な停戦を確保し、イエメン人主導の包括的で、持続的で、包摂的な政治プロセスに向けて取り組むよう求める。我々は、チュニジア政府が自国民の民主主義への希求に応え、自国の経済状況に対処し、IMFとの合意に達することを促す。また、我々は、アフリカ連合及びアラブ連盟と連携した、国連仲介の下での、リビアの安定と結束を達成するための取組を支持する。我々は、リビアの全てのステークホルダーが、2023年末までに、自由で、公正で、包摂的な大統領選挙及び議会選挙を実施するために、政治プロセスに建設的に取り組むことを求める。
61 我々は、ロシアの侵略戦争の影響、アフガニスタン情勢による不安定化、食料及びエネルギー安全保障、テロ並びに気候変動の影響を含む様々な地域の課題に対処するために、中央アジア諸国に関与することを再確認する。我々は、「中央回廊」及び関連プロジェクトを含め、地域の繁栄と強靱性を高めるために、貿易・エネルギー関係、持続可能な連結性及び輸送を促進することを決意する。
62 我々は、アフリカ諸国及びアフリカ連合(AU)を含む地域機関とのパートナーシップを深めている。我々は、国際場裏、特にG20においてより大きな代表性を求めるアフリカの呼びかけへの支持をそれぞれ表明した。我々は、アフリカ全域におけるテロ、暴力的過激主義及び不安定の拡散につながる根本的な状況に国際法に整合的な形で取り組む地域の政府を支持するとの我々の強いコミットメントを改めて表明する。我々は、大陸におけるロシアに関連のあるワグナー・グループ部隊のプレゼンスの高まり並びにその不安定化させる影響及び人権侵害を深刻に懸念する。西アフリカ及びサヘル、アフリカの角並びに大湖地域の状況を念頭に置き、我々は、アフリカ大陸における平和、安定及び繁栄に関するアフリカ主導の取組を支援するため共に取り組む。この観点から、我々は、エチオピア政府とティグライ人民解放戦線との間の敵対行為の停止に関する合意から生じている前向きな進展を歓迎し、両当事者に対し、完全な履行に引き続きコミットするよう求める。我々はまた、ソマリア大統領の改革の優先事項とアル・シャバーブとの闘いに対する国際的な支援を求める。我々は、コンゴ民主共和国の主権、独立、統一性及び領土一体性に対する我々のコミットメントを再確認する。我々は、3月に合意された敵対行為の停止を歓迎し、その完全な実施を求める。我々は、国連によって制裁を受けている3月23日運動(M23)武装集団の前進を非難し、アフリカの指導者たちと共に、M23が管理下に置いている全ての地域からから無条件で撤退するよう求める。我々はまた、西アフリカの沿岸国にテロの脅威及び活動が拡散していることを深刻に懸念し、これらの脅威に対処するための支援を行う用意がある。
63 我々は、スーダン国軍と即応支援部隊との間の進行中の戦闘を強く非難する。これは、市民の治安及び安全を脅かし、スーダンの民政移管の回復への取組を損なうとともに、地域の安定に影響を与える可能性がある。我々は、当事者に対して、即時かつ前提条件なしに敵対行為を終了させ、文民主導の民主的な政府への復帰を求める。我々は、全ての関係者に対して、暴力を放棄し緊張を低減させ、人道支援関係者を含む全ての人々の安全を確保するための積極的な措置を採るよう求める。紛争当事者は、国際人道法の下での義務を堅持し、人道支援関係者を含む全ての人々の安全を確保しつつ、命を救う支援の提供を阻害又は制限してはならない。我々は、スーダンで活動する人道支援機関の勇気と不屈の精神を称賛する。我々は、自国が重大な人道上の課題に直面しているにもかかわらず、増え続けるスーダン難民を受け入れているスーダンの近隣諸国の寛容さを認識する。我々は、スーダン及び東・北アフリカ全域並びにサヘル地域の難民と帰還民のための対応活動を支援することをコミットする。
64 我々は、共通の利益及び価値観を堅持するために、中南米の国々との協力を強化することの重要性を強調する。我々は、経済的課題、気候変動、生物多様性の損失、自然災害及びその他のグローバルな課題への対処のために地域のパートナーと共に取り組むことにコミットする。我々は、法の支配及び人権の尊重を促進し、この地域、特にベネズエラ、ハイチ及びニカラグアにおいて高まっている人道上及び安全上のニーズに応えるために、中南米のパートナー及びその他の主体との連携を強化するとの我々のコミットメントを改めて表明する。ハイチにおいて継続中の危機に関し、我々は、安定の回復のためにハイチ人主導の解決策に向けて取り組むことの重要性を強調し、暴力、汚職及び不安定を助長する者には責任を負わせる必要があることを強調する。
65 我々は、2月27日にブリュッセル及び3月18日にオフリドにおいて行われたEU仲介による対話でそれぞれ合意に至ったコソボとセルビアの間の関係正常化への道筋に関する合意とその実施附属書を歓迎する。コソボとセルビアの市民のために潜在力を最大限に引き出すべく、また西バルカン地域の近隣国との良好な関係を前進させるために、我々は両当事者に対し、適切かつ誠実にそれぞれの義務を履行するよう求める。
66 我々は、G7のエンゲージメント・グループとの交流及び同グループからのインプットに感謝する。我々はさらに、広島で我々と共に会合したIEA、IMF、OECD、UN、WB、WHO及びWTOの長からの貴重な貢献に感謝する。  
●G7広島サミット 議長国記者会見 5/21

 

岸田総理冒頭発言
先ほど、G7広島サミットは、全てのセッションを終了し閉幕いたしました。G7首脳、8つの招待国の首脳と7つの国際機関の長、そして、全ての参加者・関係者の皆様に心から感謝を申し上げます。今回の歴史的なサミットの成果について総括させていただきますが、その前に少しお時間を頂戴して、まず、ここ広島の地でサミットを開催した私の想いを述べさせていただきます。
1945年の夏、広島は原爆によって破壊されました。平和記念公園が位置するこの場所も、一瞬で焦土と化したのです。その後、被爆者を始め、広島の人々のたゆまぬ努力によって、広島がこのような美しい街として再建され、平和都市として生まれ変わることを誰が想像したでしょうか。
7年前の春、私は外務大臣として、ここ広島でG7外相会合を開催しました。さらに、その翌月には米国のオバマ大統領を広島に迎え、激しい戦火を交えた日米両国が、寛容と和解の精神の下、広島の地から「核兵器のない世界」への誓いを新たにしたのです。
平和記念公園を設計した丹下健三氏は、平和を創り出すとの願いを込め、原爆ドームから伸びる一本の軸線上に、慰霊碑や平和記念資料館を配置しました。平和の願いを象徴するこの軸線は、まさに戦後の日本の歩みを貫く理念であり、国際社会が進むべき方向を示すものです。
今、我々は、ロシアによるウクライナ侵略という国際秩序を揺るがす課題に直面しています。今のような厳しい安全保障環境だからこそ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持し、平和と繁栄を守り抜く決意を世界に示す、それが本年のG7議長国である日本に課された使命と言えます。
そのような決意を発信する上で、平和の誓いを象徴する広島の地ほどふさわしい場所はありません。このような想いから、今回、G7及び招待国の首脳、国際機関の長に広島に集まっていただきました。
そして今回、G7首脳と胸襟(きょうきん)を開いて議論を行い、「核兵器のない世界」に向けて取り組んでいく決意を改めて共有し、G7として初めての、核軍縮に焦点を当てた「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」を発出することができました。この中で、77年間の核兵器不使用の重要性について一致するとともに、「核戦争に勝者はなく、核戦争は決して戦ってはならないこと」を確認いたしました。被爆地を訪れ、被爆者の声を聞き、被爆の実相や平和を願う人々の想いに直接触れたG7首脳が、このような声明を発出することに、歴史的な意義を感じます。
また、今朝、招待国の首脳や国際機関の長とも、ここ広島記念公園を訪れ、平和の誓いを共有することができました。
我々首脳は、「2つの責任」を負っています。一つは、現下の厳しい安全保障環境の下、国民の安全を守り抜くという厳然たる責任です。同時に、「核兵器のない世界」という理想を見失うことなく、それを追い求め続けるという崇高な責任です。
将来の世代が、核の恐怖に怯(おび)えることなく平和と繁栄を享受できるようにすること、これは我々の信念であり責務です。だからこそ、核兵器の使用が筆舌に尽くしがたい惨状を現にもたらしたこと、そして、核戦争が我々人類そのものを破壊しかねないものであることを、被爆地広島から、我々の世代は訴え続けていかなければなりません。こうした悲惨な結末を何としても避けるため、「核兵器のない世界」という未来への道を着実に歩んでいく必要があります。
今日こうして、人類の生存を信じ、平和を希求し、広島に集う、各国のリーダーたち、世界のメディア、明日を担う若者や子供たち、そして先の大戦を知る皆さん、我々は皆、『広島の市民』です。世界80億の民が全員、そうして『広島の市民』となった時、この地球上から、核兵器はなくなるでしょう。私はそれを信じています。今回、私は、そうした想いで、ここ広島で世界の首脳たちに集まっていただきました。夢想と理想は違います。理想には手が届くのです。我々の子供たち、孫たち、子孫たちが、核兵器のない地球に暮らす理想に向かって、ここ広島から、今日から、一人一人が広島の市民として、一歩一歩、現実的な歩みを進めていきましょう。
1945年8月6日午前8時15分。77年と9か月の月日を経て、我々G7の首脳はこの地に集いました。時を隔てた広島の声と祈りを我々は今、共に聴いています。力による現状変更のための核兵器による威嚇ましてやその使用はあってはなりません。「核兵器を使わない、核兵器で脅さない。」人類の生存に関わるこの根源的な命題を、我々は今こそ問わなければなりません。
国際社会は今、力により一方的に国境線を変更しようとするロシアの暴挙を目の当たりにし、歴史の転換期に立っています。主権や領土一体性の尊重といった、先人が築き上げ、長年にわたり擁護してきた、誰しも疑いようのない原則が挑戦を受ける真っ只(ただ)中で、広島サミットは開催されました。ゼレンスキー大統領を日本にお招きして、G7とウクライナの揺るぎない連帯を示すとともに、G7として、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を確認し、これを守り抜く決意を新たにするとのメッセージを世界に向けて力強く示せたことは意義深いことであると感じています。
世界のどこであれ、力による一方的な現状変更の試みは決して認められません。G7として、1日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和をもたらすべく努力していきます。また、ウクライナの復旧・復興には民間セクターの参画が不可欠であること、そして、対ロシア制裁を維持・強化し、その効果を確かなものとするために、制裁の回避・迂回(うかい)防止に向け取組を強化していくことで一致いたしました。
世界は今、ウクライナ侵略に加え、気候危機やパンデミックなど複合的な危機に直面しており、それにより、「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国・途上国や脆弱(ぜいじゃく)な立場の人々が甚大な影響を受けていることも事実です。こうした国や人の声に耳を傾け、「人」を中心に据えたアプローチを通じて人間の尊厳や人間の安全保障を大切にしつつ、喫緊の幅広い課題に協力する姿勢を示さないことには、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くとの訴えも空虚なものとなりかねません。こうした国々とG7を橋渡しすべく、世界各地で積極的に行ってきた外交を礎とし、広島サミットでは、G7に加え、国際的なパートナーも交え、我々が対応しなければならない様々な課題について真剣な議論を行いました。
食料危機は、人々の暮らしに関わる喫緊の課題です。今回、G7と招待国が連帯してこの課題に取り組んでいくことを行動声明として確認しました。また、グローバルなインフラ支援で協働することを確認するとともに、その際、透明で公正な開発金融を促進していくことで一致しました。
人類共通の待ったなしの課題である気候危機についても率直な議論を行い、気候変動、生物多様性、汚染といった課題に一体的に取り組む必要があることを確認しました。また、エネルギー安全保障、気候危機、地政学的リスクを一体的に捉え、各国の事情に応じた多様な道筋の下でネット・ゼロという共通のゴールを目指すという認識を共有しました。日本は、「アジア・ゼロエミッション共同体」構想の実現を通じ、地域のパートナー国のエネルギー移行を支援していきます。
さらに、新型コロナが収束する中、「次なる危機」に備えるための国際保健、ジェンダー主流化の推進といった課題についても議論を深め、連帯を確認しました。国際保健については、G7全体として資金貢献を行っていく中で、日本は、グローバルヘルス技術振興基金への2億ドルのプレッジを含め、官民合わせて75億ドル規模の貢献を行う考えです。
世界の諸課題の解決に向けた貢献は、常にG7の中核的な使命であり続けてきました。世界が複合的な危機に直面する今こそ、G7として、様々な課題に直面する国際的なパートナーの声を聞き、彼らと連携しつつ、そうした課題に、きめ細やかに対応していく決意です。
世界経済に目を向ければ、ロシアのウクライナ侵略が長期化する中、インフレ圧力、食料・エネルギー不安を始め、深刻な困難が存在しています。G7として、世界経済を力強く牽引(けんいん)し、持続的な成長の実現のための取組を主導することを確認しました。
持続的な経済成長のためには、供給サイドに働きかけ、民間投資を喚起する取組の促進が重要であるとの考えをG7として議論する中で、私からは、日本が掲げる新しい資本主義について触れ、官民連携の下、「人への投資」や社会課題の解決などを通じ、成長と分配の好循環の推進に尽力していることを説明しました。
また、今回、G7サミットでは初めて経済的強靱(きょうじん)性・経済安全保障を独立したセッションで扱いました。多角的貿易体制の重要性は変わらない一方で、「グローバル・サウス」を含む国際社会全体の経済的強靭性と経済安全保障を強化していくことも必要です。そのために、G7として、サプライチェーンや基幹インフラの強靱化、経済的威圧に関するプラットフォームの立上げなど、取組を強化し、また世界全体のクリーンエネルギー経済への移行をリードしていきます。
今回のサミットは、7年ぶりにアジア唯一のG7メンバーである日本で開催されたこともあり、インド太平洋についても、しっかり議論を行いました。私からは「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)のための新たなプランを説明し、引き続き、G7としてFOIPの実現のために協力していくことで一致しました。
中国については、率直な対話を行って懸念を直接伝える重要性やグローバルな課題等について協働する必要性について一致するとともに、中国は国際社会において責任ある一員として行動すべきこと、そして、対話を通じて中国と建設的かつ安定的な関係を構築する用意があることなどについて、G7で認識を共有しました。東シナ海・南シナ海情勢については、深刻な懸念を表明し、力や威圧による一方的な現状変更の試みへの反対で一致しました。また、台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認し、両岸問題の平和的解決を促しました。
北朝鮮については、核・ミサイル問題や拉致問題について引き続き連携していくことを確認し、G7として拉致問題の即時解決を強く求めました。
本日、広島サミットは閉幕となりますが、日本のG7議長年は続きます。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜く、そして、国際的なパートナーとの関与を強化する。こうした観点からG7の議論を主導し、議長年の務めをしっかりと果たしていきます。
G20ニューデリー・サミットやSDGsサミット、日ASEAN特別首脳会議など、「グローバル・サウス」を含む国際的なパートナーと連携する機会も続きます。こうした機会に、ここ広島での充実した議論を引き継ぎ、様々な課題を共に解決するべく、これらの国々との連携の強化を主導していきます。
最後になりますが、3日間にわたるサミット開催に御協力いただきました広島の皆さんと関係各位に心から感謝申し上げます。誠にありがとうございました。
質疑応答
(内閣広報官)それでは、プレスの皆様からの質問をお受けいたします。まず、日本のプレスから質問のある方は挙手をお願いします。私が指名しますので、指名された方は近くのスタンドマイクの前に進み出て、所属と名前を名乗ってから質問を行ってください。質問は簡潔にお願いいたします。それでは、3列目の一番端の方どうぞ。
(記者)時事通信の市川です。今回のサミットは、ゼレンスキー大統領が出席されて、国内外の大きな注目を集めたと思います。サミットのテーマは、グローバル・サウスとの連携強化もひとつあったと思いますが、ゼレンスキー大統領とグローバル・サウスが連帯していくきっかけにできたとお考えでしょうか。また、サミットが注目を集めたことは、今後の政治日程にも影響すると思います。今日でちょうど会期末まで1か月となりましたが、このタイミングでの衆院解散についてどのようにお考えでしょうか。また、野党が内閣不信任決議案を提出した場合、解散の大義になるとお考えでしょうか。
(岸田総理)まず、前半のほうの質問についてですが、G7広島サミットでは、G7がこれまで以上に結束して、あらゆる側面からウクライナを力強く支援し、厳しい対露制裁を継続していくことを改めて確認するとともに、G7以外の招待国との間でも、世界のどこであっても力による一方的な現状変更の試みは許さず、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くことが重要であるとのメッセージを発出することができました。
本日、国際秩序の根幹を揺るがすロシアによるウクライナ侵略に対し、国民の先頭に立って立ち向かうゼレンスキー大統領にも議論に参加いただき、このメッセージをより力強く国際社会に発信することができたことは、非常に有意義であったと考えています。
先ほど行われました招待国やゼレンスキー大統領を交えて行われた平和と安定に関するセッションにおいては、各国から忌憚(きたん)のない意見が出されました。実質的な意見交換が行われました。予定時間を大幅に超えて、希望する発言者全てから発言をいただき、議論を深めました。その議論の最後に、私から以下の4点で認識の一致があったと申し上げました。
すなわち、ひとつは、全ての国が、主権、領土一体性の尊重といった国連憲章の原則を守るべきこと。2つ目として、対立は対話によって平和的に解決することが必要であり、国際法や国連憲章の原則に基づく公正で恒久的な平和を支持するということ。3つ目として、世界のどこであっても、力による一方的な現状変更の試みは許してはならないということ。4つ目として、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くということ。これらに加え、複数の首脳から、「核兵器のない世界」の実現に向けた現実的な取組の必要性についても指摘がありました。これらの点について、招待国を含む幅広い国々の参加を得て、基本的な考え方、これを共有できたこと、これは非常に意義あることであったと思っています。
核軍縮に関しても、ロシアによる核の威嚇が行われる中、ここ広島にゼレンスキー大統領をお迎えし、議論を行ったことは、力による現状変更のための核兵器による威嚇、ましてやその使用はあってはならない、こうしたメッセージを緊迫感を持って発信することになったと考えています。
そして後半の、政局に関する質問ですが、これは従来から申し上げていることではありますが、今、重要な政策課題に結果を出すこと、これを最優先で取り組んでいます。そうした政策課題への取組を続けているところであり、G7広島サミット出発の時も申し上げたとおり、今、解散総選挙については考えていない、この考えは従来と変わっておりません。以上です。
(内閣広報官)それでは、次に、外国プレスの方から質問をお受けいたしますので、挙手してください。同時通訳のイヤフォンも使用できますので活用してください。それでは、2列目の一番端の方。
(記者)ロシアだけがウクライナに対する核兵器使用の脅しを行っているのではなく、北朝鮮もアジア地域において核の脅しを強めています。G7は中国の役割をどのように考えており、G7は中国が北朝鮮に対し十分に圧力をかけていると考えていますか。また、G7には、北朝鮮を交渉の席に戻すためのイニシアティブをとる計画はありますか。
(岸田総理)今回のサミットでは、G7首脳の間で、厳しい国際情勢について、世界のどこであれ、力による一方的な現状変更の試み、これは決して認められない、こういった認識を共有するとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜いていくとの決意、また、ロシアによる核の威嚇は断じて受け入れられず、ましてやその使用はあってはならないという点について確認しました。
そして、中国については、私から、共通の懸念を直接伝え、国際社会の責任ある一員としての行動を求めつつ、気候変動等のグローバルな課題や共通の関心分野については中国と協働し、対話を通じて建設的かつ安定的な関係を構築していることが重要であることを述べ、G7として認識を共有したところです。
そして、北朝鮮については、私から、北朝鮮が前例のない頻度と新たな態様で弾道ミサイルの発射等を行っており、深刻に懸念する旨述べ、そして、G7として、北朝鮮による度重なる弾道ミサイル発射を強く非難いたしました。G7を含む国際社会と協力しながら、関連するこの国連安保理決議の完全な履行を進め、そして、北朝鮮の完全な非核化を目指していく。同時に、今回の首脳コミュニケでは、北朝鮮が日本、米国、韓国などからの累次の対話の呼びかけに応じるよう求める、こうした考え方を明記いたしました。今回の議論の内容、成果としては、今紹介させていただいたとおりであります。
(内閣広報官)それでは、再び日本のプレスの方から質問をお受けいたします。それでは向こうのブロックの4列目の端の方。
(記者)地元広島の記者クラブから、NHK広島放送局の石田茂年が質問させていただきます。今回のサミットでは各国首脳たちの平和記念公園訪問や被爆者との対話が実現しましたが、今後の核廃絶の議論にどのような影響を与えたと思いますでしょうか。また、開催でG7各国を中心とした軍事的結束を内外に発信した一方、ロシアや中国などの反発も予想され、かえって緊張が高まるという指摘もあります。核保有国に対し、核不使用の継続を担保させるための具体策をどのように考えていらっしゃいますでしょうか。また、日本政府は核抑止力への依存を続けており、そのあり方は被爆地・広島が願う核廃絶への思いとは相容れないという声もあります。これについて総理はどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
(岸田総理)あの、今回のサミットは、被爆地広島で開催し、G7首脳、招待国・国際機関の長とともに、平和記念公園での献花、資料館訪問、被爆者との対話等を行い、世界のリーダーたちに被爆の実相に触れていただき、これを粛然と胸に刻む時を共有させていただきました。このことは、各々の首脳が、芳名録に記したメッセージにも表れていると感じています。
そして、初日に行われた外交・安全保障セッションでは、平和記念公園訪問の印象が強く残る中、各国首脳と胸襟を開いた議論を行うことができました。「核兵器のない世界」へのコミットメントを再確認し、NPT体制の維持・強化を図ることこそが、これを実現する唯一の現実的な道であることを含めて、真剣な議論を行いました。その成果として、核軍縮に焦点を当てたG7初の独立首脳文書であります「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」を発出いたしました。我々が目指す「理想」の実現に向けたG7首脳の決意や今後我々がとるべき行動を示す、力強い歴史的な文書になったと考えています。
特に、今回の議論においては、昨年私自身が提唱した「ヒロシマ・アクション・プラン」への歓迎が表明されました。独立首脳文書でも、「核兵器の不使用の継続の重要性」を始め、この「ヒロシマ・アクション・プラン」の内容、これが明記されています。具体的な取組として、私が提唱した「ヒロシマ・アクションプラン」の取組、これを一つ一つ実行していくことが、現実的な取組として重要だと思っておりますが、この「プラン」の下で行動をとっていく上で、今回の議論の成果は大きな推進力になったと感じています。
そして、核兵器国、非核兵器国の双方が参加するG7の首脳による声明の発出を通じて、「核兵器のない世界」という「理想」に向けた歩みを進めるための今後の取組の基礎を確保し、核軍縮の進展に向けた国際社会の機運を今一度高めることができたと思います。
我が国を取り巻く安全保障環境、これは一層厳しくなっています。そのような中で、国民の命と財産を守り抜くべく安全保障上の課題に対処すること、そして同時に、この「核兵器のない世界」という「理想」に現実を近づけていくべく取り組むこと、これは決して矛盾するものではないと思います。まさに、厳しい現実を理想にどう結びつけていくのか、この道筋をしっかり示して行動することこそ、外交や政治に求められる責任ではないかと思っています。
今回の成果を踏まえ、より多くの核兵器国の関与を得るべく努力を継続しつつ、現実的かつ実践的な取組、これ、力強く進めていきたいと考えています。以上です。
(内閣広報官)次に、外国プレスの方、それでは白い帽子の前の席の方。
(記者)ブルームバーグ通信のイザベル・レイノルズです。貿易制裁についてお伺いしたいです。EUは、禁止されている物品や技術をロシアに供給する企業を厳格に取り締まっており、最近、厳格な貿易規制を複数の中国企業に拡大することを初めて提案しました。このトピックはG7の中でも議論されましたが、日本もまた、このようにロシアを援助していると思われる中国企業への制裁を検討しているのでしょうか。
(岸田総理)1日も早くロシアによるウクライナ侵略を終わらせる。そのために、厳しい対露制裁と強力なウクライナ支援を継続する。今回のサミットでは、G7はこの点について固い結束を確認いたしました。
このロシアに対する制裁を一層効果的なものにするためには、第3国を通じた制裁の迂回・回避を防ぐこと、これが重要だと考えています。
そのためには、G7を超えた多くの国の協力を求めていく必要があり、今回のウクライナに関する首脳声明でも、第3国への働きかけを継続していくことを確認いたしました。引き続き、こうした努力を続けて参ります。
そして日本としても、どのような措置を取ることが今言った点において最も効果的なのか、こうした観点に立って、対応を考えていかなければならないと思います。
なお、中国との関係では、ウクライナ情勢を含め、国際社会が直面する諸課題について責任ある行動を取るよう求めていく、こういったことについては、G7首脳間で確認しています。こうした考え方に基づいて、日本としても対応を引き続き考えていきたいと思っています。以上です。
(内閣広報官)それでは、以上をもちまして、岸田総理のG7広島サミットの議長国記者会見を終了いたします。プレスの皆様は、記者総理は退出されるので、そのままでしばらくお待ちください。御協力ありがとうございました。
(岸田総理)核軍縮ビジョンについて答えろという質問でありました。それをまさに、昨年8月、私は、日本の総理大臣として初めて、このNPT運用検討会議に出席し、総会で明らかにした、これが「ヒロシマ・アクション・プラン」であります。その際に、まずは、核兵器不使用の歴史、これは継続させなければならない。そして、これまで私たちの先人たちは、核兵器を減らすために様々な具体的な努力を行ってきました。CTBT(包括的核実験禁止条約)、FMCT(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約)、こうした努力、これが今や忘れられたかのような現状にあります。CTBTについても是非議論を続けなければいけない、これは昨年の国連総会において、久方ぶりに、関係国が集まって、議論を行いました。FMCTについては、今年、国連総会で決議されてからちょうど30年の節目の年を迎えます。改めて、FMCTについても、思い返そうではないか、こういったことによって、核兵器の数を減らす、こうした努力を続けていく、こういったことも訴えましたし、そして、こうした努力の基盤となるのはまさに透明性であります。
核兵器国が現在どれだけの核兵器を持っているのか、これを明らかにすることこそが、核兵器国と非核兵器国の信頼の基盤になる、こうした透明性を追求する、こうしたこともアクション・プランの中に明記しました。そして、併せて、核の不拡散、平和利用について4点目を掲げると同時に、5点目は、まさに先ほど申し上げました、核兵器の実相、被爆の実相を多くの人々、特に世界のリーダーや、次の世代を担う若い人たちに実相に触れてもらうことが、将来に向けて、この核兵器のない世界という理想を目指す上において何よりも重要であるということで世界中の若い人たちに被爆地に足を運んでもらう、そのための基金を立ち上げて、こうした招待の取り組みを進めていこう、こうしたことも組み込みました。こうした「ヒロシマ・アクション・プラン」に盛り込んだ、様々な取組を現実に具体的に動かしていくことこそが、今の厳しい安全保障環境、厳しい現実を理想に結びつけていくために何よりも重要であるということを申し上げてきました。
プランについて答えろということでありますが、こうした私自身が明らかにした「ヒロシマ・アクション・プラン」、これを具体的に動かしていくことこそ重要であると、今回のG7広島サミットの中でも訴え、そして、G7の歴史上初めて独立文書としてまとめたその文書の中に「ヒロシマ・アクション・プラン」を高く評価し、その考え方に基づいて、G7で努力していこう、こういったことを確認したということであります。こうした考え方に基づいて、是非努力を続けていきたい、このように思っております。
(内閣広報官)それでは以上をもちまして、総理の議長国記者会見を終了します。ありがとうございました。  
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 



2023/5