閣僚辞任ドミノ

閣僚辞任ドミノ
政治屋ばかり 政治家のいない国

メディアは村社会 気楽な稼業ときたもんだ
忖度メディアに様変わり

平和な国 
馬鹿真面目な 民ばかり

旗振りのいない国
49番目の州になるか・・・
消えてなくなるかも・・・

 


 
  

 

●安寧 [あんねい]
無事でやすらかなこと。特に、世の中が穏やかで安定していること。
・・・この間町じゅうで大評判をした、あの禽獣のような悪行を働いた罪人が、きょう法律の宣告に依って、社会の安寧のために処刑になるのを、見分しに行く市の名誉職十二人の随一たる己様だぞ。こう思うと、またある特殊の物、ある暗黒なる大威力が我身の内に宿って・・・ 著:アルチバシェッフミハイル・ペトローヴィチ 訳:森鴎外「罪人」
・・・木戸木戸の権威を保ち、町の騒動や危険事故を防いで安寧を得せしむる必要上から、警察官的権能をもそれに持たせた。民事訴訟の紛紜、及び余り重大では無い、武士と武士との間に起ったので無い刑事の裁断の権能をもそれに持たせた。公辺からの租税夫役等の賦課・・・ 幸田露伴「雪たたき」
・・・かくして民族の安寧と幸福を保全することが為政者の最も重要な仕事の少なくも一部分であったのである。 この重要な仕事に連関して天文や気象に関する学問の胚芽のようなものが古い昔にすでに現われはじめ、また巫呪占筮の魔術からもいろいろな自然科学の・・・ 寺田寅彦「自由画稿」
・・・「非常時」というなんとなく不気味なしかしはっきりした意味のわかりにくい言葉がはやりだしたのはいつごろからであったか思い出せないが、ただ近来何かしら日本全国土の安寧を脅かす黒雲のようなものが遠い水平線の向こう側からこっそりのぞいているらし・・・ 寺田寅彦「天災と国防」
・・・厳父の厳訓に服することは慈母の慈愛に甘えるのと同等にわれわれの生活の安寧を保証するために必要なことである。 人間の力で自然を克服せんとする努力が西洋における科学の発達を促した。何ゆえに東洋の文化国日本にどうしてそれと同じような科学が同じ・・・ 寺田寅彦「日本人の自然観」
・・・ 文明を誇る日本帝国には国民の安寧を脅かす各種の災害に対して、それぞれ専門の研究所を設けている。健康保全に関するものでは伝染病研究所や癌研究所のようなもの、それから衛生試験所とか栄養研究所のようなものもある。地震に関しては大学地震研究所・・・ 寺田寅彦「函館の大火について」
・・・むしろ国民社会一般の幸福安寧に資すべき調査研究報告機関のようなものになってしまう。こういうものは全国にただ一つあって、各地には適当に支局を分配して、中央を通じて相連絡すればよい。 政治経済教育宗教学芸産業軍事その他ありとあらゆる方面にわ・・・ 寺田寅彦「一つの思考実験」
・・・政事は目下の安寧を保護して学者の業を安からしめ、学問は人を教育して政事家をも陶冶し出だす。双方ともに毫も軽重あることなしとの裁判にて、双方に不平なかるべし。 一国文明のために学問の貴重なること、すでに明らかなれば、その学問社会の人を尊敬・・・ 福沢諭吉「学問の独立」
・・・政治・経済、もとよりその学を非なりというに非ざれども、これを読みて世の安寧を助くると、これを妨ぐるとは、その人に存するのみ。 余輩の所見にては、弱冠の生徒にしてこれらの学につくは、なお早しといわざるをえず。その危険は小児をして利刀を弄せ・・・ 福沢諭吉「経世の学、また講究すべし」
・・・ただ我が輩の目的とするところは学問の進歩と社会の安寧とよりほかならず。この目的を達せんとするには、まずこの政教の二者を分離して各独立の地位を保たしめ、たがいに相近づかずして、はるかに相助け、もって一国全体の力を永遠に養うにあるのみ。諸外国に・・・ 福沢諭吉「政事と教育と分離すべし」
・・・ 然るに彼の講和論者たる勝安房氏の輩は、幕府の武士用うべからずといい、薩長兵の鋒敵すべからずといい、社会の安寧害すべからずといい、主公の身の上危しといい、或は言を大にして墻に鬩ぐの禍は外交の策にあらずなど、百方周旋するのみならず、時とし・・・ 福沢諭吉「瘠我慢の説」
・・・何でも一身の打算と安寧からだけ進退したがる現今の人心を、よいと認めることの出来ない常識に、こういう山本有三氏の或る程度の社会正義感の発動は、少なからず触れるものをもっているのは自然である。山本有三氏の正義感は、常識を備えた今日の一般人の胸の・・・ 宮本百合子「山本有三氏の境地」
・・・「英国人の着実な商魂が実際においてどれだけの働きをしているかと云うことは、炭坑夫安寧協会の仕事を見ても分る。炭坑主が一頓について一ペンスだけ出して独立な大きいビジネスをやってるんだ。」 しかし、その同じ着実な商魂が考え出した英国炭坑・・・ 宮本百合子「ロンドン一九二九年」
・・・父を失ったあらゆる子供たちの将来の安寧と幸福を築き守るものは、共通の涙と奮起する心とを知り合っている婦人たちの実行ばかりである。 婦人参政権の問題がおこってより、お互によくこういう批評をきいた。日本の婦人は、実に自覚がなくて、自分たちの・・・ 宮本百合子「私たちの建設」
・・・「われわれがその子供たちの生命とその家庭の安寧を守ることを神聖な義務と考えていることを、世界の希望をになう婦人および母親たちに知らしめよ。世界の青年に告げて、未来の輝やかしい道から大量殺人を一掃するために、政治的意見、信教に関係なく団結せし・・・ 宮本百合子「わたしたちには選ぶ権利がある」
・・・その趣意は、あんな消極的思想は安寧秩序を紊る、あんな衝動生活の叙述は風俗を壊乱するというのであった。 丁度その頃この土地に革命者の運動が起っていて、例の椰子の殻の爆裂弾を持ち廻る人達の中に、パアシイ族の無政府主義者が少し交っていたのが発・・・ 森鴎外「沈黙の塔」 
●政治家 

 

職業として政治に携わっている者のことであり、一般的に国会議員、国務大臣並びに地方公共団体の長及び都道府県あるいは市区町村議会の議員などが政治家と呼ばれる。
職業としての政治
マックス・ヴェーバーは、自身の講演 『職業としての政治』 の中で「政治家の本領は『党派性』と『闘争』である」と指摘している。
アメリカではジェイムズ・ポール・クラークが“A politician thinks of the next election and a statesman thinks of the next generation.”(政治屋は次の選挙を考え、政治家は次の時代を考える)と喝破した。金や権力など利権を得ることに熱心な政治家を揶揄して「政治屋(せいじや)」と呼ぶこともある。
政治家は国家によって認定された資格に基づく職業ではない。選挙結果によっては職を追われるため、不安定な職業である。政治家は有権者の利益や意向を議会に反映させるが、その方法は有権者の具体的な要望を忠実に実現する方法と、自らが信じる方法で有権者に有益な結果をもたらす方法の2つがある。
世界的に政治家は嫌悪される職業になりつつある。アメリカでは職業政治家に対する嫌悪が広がっており、2016年の大統領選挙では非職業政治家および反職業政治家の候補が支持を伸ばしたとする分析がある。タイでは、2014年のバンコク大学の調査によって、6歳〜14歳の子供の80%前後が政治に関わる仕事に就きたくないと答えたことが分かった。
   政治家と利権
政治家を仲立ちとする地方と国との利害関係やそれに起因する諸問題は、今も昔も政治の世界では避けて通ることができない。政治家を選出する側である有権者は、諸制度の改善や地元地方へのインフラ整備などによる社会的・福祉的な恩恵、あるいは国家的なイベントや企業誘致や公共事業の受注などによる経済効果を求めるし、政治家も地元への便宜をはかることで次の選挙での再選を期そうとする。社会的な利益の還元として地元を潤す形であれば特に法を犯すこともないが、一部政治家の強烈な圧力によって公共事業の計画を大幅に変更させたり、公共事業をばらまいたりといった行為がしばしば非難の対象となる。こういったことは日本に限らずアメリカでも聞かれる話で、少し古い話だが、1950年代後半にアメリカ陸軍の準中距離弾道ミサイルMGM-31 パーシングの主契約企業の選定作業で、元ミシガン州知事であった陸軍長官ウィルバー・ブラッカーが、契約をミシガン州の企業に与えるように地元から圧力をかけられていたことがあった。候補に挙がっていた企業の中でミシガン州の企業はクライスラーだけであったが、実際に受注したのはマーティン・マリエッタであった。
こういった政治家を仲立ちとする利権が、制度の不備の改善や交通網の整備といった公共の福祉を大幅に超えて特定の個人や企業に対する不正な利益供与に至ると汚職事件にも発展していく。政治家の汚職は幾度となく問題となり、逮捕者が出たり、有罪判決が出て失職するような事件が起こっても後を絶つことがない。また、有罪判決を受けて失職してしまったにも関わらず、有権者の地元への恩恵の期待から、その政治家が次の選挙で再び当選してしまうことも決して珍しいことではない。
   政治家のクオリティ
ヴェーバーは、『職業としての政治』の中で、政治家にクオリティ(Qualitäten)として次の三つを挙げている。
1.情熱 (Leidenschaft) : Sacheへの情熱
2.責任感 (Verantwortungsgefühl)
3.目(Augenmaß) : 距離をおくこと
日本の「政治家」
一般的に国会議員、国務大臣並びに地方公共団体の長及び議会の議員などが政治家と呼ばれる。公職選挙法や政治資金規正法においては、その適用対象となる「候補者、立候補予定者、現に公職にある者」を総称して政治家と呼ぶ。
政治家は、国民の代表者として選挙によって選ばれた上で、有権者の意思を国や地方自治体の政策に反映させようと活動する。主な仕事は、自らが所属する議会や委員会での議案の審議に参加することで、修正などの作業に関わり最終的に表決することである。また、陳情を聞いたり集会に参加することで有権者の意見を聞き政策に反映させる。地方自治体の首長や大臣など内閣の役職に就いた場合には、官僚機構全体を統括して調整し動かすことで政策を決定・実行する。
近年では、親族や親戚の後を継承した世襲政治家や、タレントとしての知名度を武器に当選したタレント政治家の割合が増えつつあるが、このような形で政治家となることに疑問を呈する意見もある。世襲議員に関しては、国会議員のうち、選挙における地盤や資源に恵まれるため、当選回数が多く、自分が代表する地域により多くの補助金をもたらしているという分析がある。タレント政治家に関しては、批判も多いが政党を牽引しているとする指摘もある。
   評価
政治家を職業として見る時、日本国内での評価は芳しいものではない。村上龍『13歳のハローワーク』では、「ひょっとしたら政治家ほどわかりにくい職業はこの世にないかもしれない。この本は職業を定義するためのものではないので結論を先にいうが、世の13歳はこんなにわかりにくい職業を目指すべきではない」「将来的には、NPOやNGOなどで国際的に活動してきて、利害調整の困難さと重要性を理解した人がやむにやまれず政治に参加するようになればいいと思う。あるいは企業活動と環境保護の調整に長く深く関わった人とか、企業や銀行を見事に再生させた人とか、地域社会や教育の活性化にたずさわった人とか、そういった分野から政治家が現れるようになるべきだ」と酷評されている。
精神科医・斎藤環は、政治家の特徴として「どんな場所でも、どんな相手でも、とにかく自分の話しかしない」「ガサツで、押しが強く、明らかに後から植え込まれた強い自己肯定感を持っている」という特徴を挙げ、ドブ板選挙は「カルトや自己啓発セミナーの洗脳」と同構造と指摘、「謙虚さと卑屈さを履き違え、駅前で土下座せんばかりに頭を垂れている政治家を見て、子どもたちが「あんなふうになりたい」と思うわけがないでしょう」と批判している。
事実、政治家自身の職業肯定感も低く、NHKによる地方議員2万人への調査では「生まれ変わっても議員になりたいですか」という質問に、現職の地方議員の7割近くが「NO」と回答している。  
●日本の政治を悪くしているのはいったい誰なのか 11/26 

 

日本の政治がぐずぐずだ。英国、アメリカなど外国の政治状況も相当にひどいように見えるので、政治がダメなのは世界的な現象であるのかもしれないが、今回は日本の政治を考えよう。
「不支持>支持」が長期化する懸念
読者もご承知の通り、岸田内閣の支持率はここのところ下落傾向にあり、多くの調査で内閣の支持率を不支持率が大きく上回る結果が出ている。
11月11日〜13日に行われたNHKの世論調査では支持が33%、不支持が46%で、不支持率が前月と同様に支持率を上回っていて、しかもその差が5%から13%に拡大した。日付けがもう少し新しい(11月19〜20日)ANNの調査でも支持率が30.5%、不支持率が44.7%と同様の傾向だ。
内閣そのものを見ても、10月24日に山際大志郎経済再生担当大臣、11月11日に葉梨康弘法務大臣、11月20日に寺田稔総務大臣、と相次いで閣僚が辞任しており、任命そのものについても、辞任に至る経緯についても、岸田文雄首相が批判の的になっている。
日本の政治が満足に機能しない原因はおそらく複合的で、本稿ではすべてを取り上げるわけにはいかない。おそらくは、「第2次世界大戦での戦争の負け方が悪すぎた」といった大きな原因もあれば、「国民の政治的無関心」といった当面の問題もあるのだろうが、今回は、本来だったら除去できるはずの対策不足が原因となっている問題を2つ取り上げる。
政権及び与党に関しては、旧統一協会問題に解決の決着を付けられていないことの悪影響が大きい。
この問題を取り上げることについては、安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者の思うつぼであるかもしれない点に、忸怩たる思いがある。しかし、社会的に有害である(かもしれない)団体と政権与党との間に相互依存的な癒着関係があるのだとすると、それ自体は看過できない解決を要する問題だ。
なお、脇道に逸れるが、この問題の1つ嫌なところは、多くの政治記者が旧統一協会と自民党との関係を「前から知っていた」点だ。彼ら彼女らは、知っていながらこの問題を「タブー」として長年報道せずに来た(東京五輪の汚職で明るみに出た、スポーツビジネスにおけるスポンサーと大手広告代理店系のフィクサーとの間の癒着問題に話が似ている)。
さて、自民党にとって、旧統一協会問題は、世間にさらされた「起きてしまった」問題だった。問題のトラブルシューティングを少なくとも岸田首相は考えただろうし、その他にも政権中枢の誰かが考えたはずだが、問題の対処方針を初期の段階から間違えてしまった。
自民党はどうすれば良かったのか
自民党にとって、旧統一協会問題は以下のような問題だった。
1 幹部も含めて少なくとも国会議員で100人以上、細かな事例まで含めると半数近くの議員に何らかの問題がある範囲の広い問題
2 パンフレット、動画、証人などがいると、過去にあった問題が明らかになる、後々まで材料の出る問題(=時間の経過でうやむやにするのが難しい問題)
3 国民の関心が高く党全体に影響が及ぶので、自民党としても、個々の政治家としても、開き直りでは解決できない問題
4 政治家にとって最大の関心事である選挙に影響する問題
仮に、読者が経営コンサルタントで、自民党がクライアント(顧客)の会社であるとした場合、どのようなアドバイスをするか考えてみてほしい。読者なら、どうするか?
前提として、党の存続に関わる4の問題に目処を付けておかねばならないが、結論を言うなら、なるべく早い段階で、(1)旧統一協会への党としての態度を明確にし、(2)党独自の基準を設定して問題議員を公表し、(3)問題議員を大臣・副大臣・政務官などの政府の職と党の役職からすべて外してクビにして人事を一新して、(4)今後は一切関わらないと宣言することが必要だった。
「なるべく早い段階」は、(3)がサプライズを以て世間に受け止められるような初期の段階であることが理想だ。大臣や党三役などできるだけ「大物」のクビを切ることが出来たら効果的だったはずだ。(1)、(4)は後にそのような方針を打ち出したのだし、その他の問題については、善悪は別として「党の経営者」は以下のように考えたらよかった。
大規模な役職解雇は党内を混乱させるだろうが、それで党を割る勇気のある議員は少ないはずだし、仮に党が割れても選挙をやれば岸田首相に近いサイドが大勝するはずだ。従って、「党内のハレーション」を恐れる必要など全くない。
また、旧統一教会系との縁切りは、国会議員、地方議員などに個々の影響が出る可能性があるが、野党が弱いので自民党全体としては問題にならないだろう。
クビになった大臣も、選挙で当選すると「みそぎ」が済んだことになるという奇妙な慣行がこの国にはある。選挙を勝つ実力のある政治家にとって「1回休み」は致命的な問題ではない。
そして、次の選挙で「公認する・しない」、「対立候補を立てる・立てない」といった権限を行使することで、岸田氏は党内での勢力を大きく伸張するチャンスを持てただろう。
「身体検査漏れ」で、旧統一協会との不適切な関係が後から明らかになった議員については、党として厳しく処分するといい。党は(党首も)、有権者にわびる立場でもあるが、同時に、不正な党員を処罰するポジションに立つことが出来る。
おおむねこのようにするしかなかったし、できるだけ早くこうするほうが良かった。
岸田首相を「本気で助けたい人」が不在
実は、先ほど、読者をコンサルタントに、自民党を会社に譬えたのには理由がある。旧統一協会問題は、会社で言うと、かつて問題になった反社会的勢力との問題と同じ構造なのだ。この問題は、個人単位ではなく会社単位で「縁切り」を決意して、実行するしかなかったし、やってみると、所謂「総会屋」がいなくとも、株主総会には何の問題もない会社が今やほとんどのはずだ。
例えば、「反社」の問題について、経営者が「当社の役員、社員は、反社会的勢力と自分の関わりについて情報公開し、個々人が自らの責任において説明責任を果たすことを求めています」と言って、問題が片付いたはずがない。自民党は、旧統一協会の問題に対して、個々の政治家に責任を押しつけるのではなく、党がまとめて説明責任を引き取って問題に区切りを付けるしかなかったのだ。
1つ不思議に思うのは、茂木敏充幹事長が有名な経営コンサルティング会社のご出身であり、一部には「頭が切れる」との噂があることだ(噂だけかもしれない)。彼は、どうして旧統一協会問題のトラブルシューティングについてアドバイスしなかったのだろうか。
「次は俺だ」と思っていて、岸田首相を助ける気持ちなどハナからないのかもしれない。茂木氏に限らないが、岸田首相を本気で助けたいと思っている人物が党内・政権内にいるように見えない点が気になるところだ。
前述のように、岸田政権は見るのも嫌なくらいのぐずぐずなのだが、自民党にも国民にも、政権が代わるかもしれないという緊張感が漂ってこない。これはひとえに、野党に存在感がないからだ。
野党に存在感がない理由ははっきりしている。野党がバラバラで、政権交代の可能性がまったくないからだ。野党のあまりの力のなさを前提としてだが、岸田首相は局面打開のために解散総選挙に打って出る可能性があるとの声さえあるくらいだ。
連合こそ与党にとっての実質的な最大の支持勢力
野党が、国政選挙でまとまった勢力とならず、選挙による政権交代の可能性を事実上ないものにしている理由に、選挙にあって、野党にとって、なにがしかの票を差配できる協力的団体であり、選挙の手足になることもある、労働組合の上部団体「連合」(日本労働組合総連合会)の存在がある。
「まとまった票」、「選挙の手足」といった選挙における連合の機能は、自民党の少なからぬ議員の選挙において、旧統一協会が果たしてきた役割によく似ている。
旧統一協会に対する自民党の候補者の実感もそうだろうが、たとえ1000票でも、時には100票でも、「票が減る」こと、ましてその票が競合候補に向かう可能性があることは、候補者にとって恐怖だろう。加えて、選挙の手足も重要だ。一般に連合の組織票としてイメージされる数字よりも、その存在感は大きいにちがいない。
ところが、この連合が、有り体に言って共産党が大嫌いであることから、選挙における野党共闘がまとまらない。
しかし、日本共産党を含めて広い範囲の野党をまとめて政策協定を作り、選挙で協力させるのでなければ、国政選挙は少なくとも政権交代のスリルを含んだものにはなりえない。野党共闘を強力に阻んでいるという意味で、今や連合こそが、政府与党にとっての実質的に最大の支持勢力だと言っていいくらいのものだろう。
加えて、連合の目指す「政策」について触れると、先日筆者は「新しい資本主義実現会議」第10回の芳野友子委員(連合会長)の提出資料を読んで、絶望的な気持ちになった。
提出資料の1ページ目の中ほどよりやや下の、労働者の転職機会や産業間・企業間の労働移動を巡る検討の中に「労働移動の促進という観点から、解雇規制や労働法制の緩和につながるような議論がなされることがあってはならない」という文章があった。
議論さえ封じようという強い文末にも驚くが、経済の活性化のために必要なのは、労働移動の促進という観点から、解雇規制や労働法制の緩和を考えることそのものだ。
これに対して、議論を封じてでも抵抗しようという点には、連合が、(1)立場の確立された正社員労働者のための団体で、(2)企業から見て解雇の対象とすることが合理的な、いわゆる「働かないおじさん(おばさん)」を守る利益代表にすぎないことをよく表している。連合は、やる気がある有能な労働者のチャンスを奪っているし、日本企業の経営効率の改善を阻害している。
野党の政治にとって、連合依存は大きな問題
企業の現場の「働かないおじさん」は徐々に代謝(同時に退社)されていくとしても、野党の政治にとって連合への依存は大きな問題だ。
自民党が旧統一協会との関係の途絶を目指すのと同様に、(共産党を除く)野党各党は連合との関係に縛られずに政治方針を考えるべきだ。仮に、野党共闘が実現した場合に、連合がいったいどの政治勢力を応援するのかは、けだし見物である。
今回は、日本共産党のあれこれの善し悪しについて踏み込まないが、現実的な政権交代の勢力を作るうえで、共産党も含めた選挙協力とその前提となる政策協定が必要なはずだ。
ところで、旧統一協会は、かつて「国際勝共連合」という政治団体を持っていて、同団体の名前や趣旨に自民党の一部政治家は大いに賛同していたはずだ。労働組合の方の連合はさすがに「勝共連合」とは名乗っていないが、政治的に果たしている第1の役割は反・共産党だ。
こうしてみると、日本の政治は、2つの「勝共連合」が悪くしている。そして、どちらも、政治の側が本気で取り除こうと思うと可能な相手だ。 
●日本の政治 

 

●政治史・事情​
55年体制​
戦後10年間は小党が分立する状態が続いたが、1955年(昭和30年)に日本社会党の右派と左派が統一し、日本民主党と自由党が合同(保守合同)して自由民主党が成立したことにより、55年体制が確立した。55年体制では自由民主党が常に与党となり、国会では自由民主党の総裁が内閣総理大臣に指名された。自由民主党の一部議員が離党して作った新自由クラブとの連立政権が組まれた時期(1983年(昭和58年)から1986年(昭和61年)まで)を除き、長らく自由民主党の単独内閣が続いた。
細川非自民連立政権から自公連立政権までの経緯​
1993年(平成5年)に自由民主党が分裂し、宮沢内閣の不信任決議案が衆議院で可決され、宮沢内閣は衆議院解散を選択した。自由民主党の一部議員は離党して新党さきがけ、新生党を結成し、このあと行われた総選挙で、自由民主党は公示前の勢力をほぼ維持したものの過半数を割り込んだ。この選挙後に召集された特別国会で、日本新党の細川護煕が内閣総理大臣に指名され、日本社会党、新生党、公明党、日本新党、民社党、新党さきがけ、社会民主連合、民主改革連合の連立により、細川内閣が組まれ、55年体制は崩壊した。この連立は次の羽田内閣でも維持されたものの、首相指名直後に日本社会党が連立離脱を表明したため、少数与党内閣となった。
1994年(平成6年)6月に羽田内閣は在任わずか64日で内閣総辞職を行い、国会は日本社会党の村山富市を内閣総理大臣に指名し、自由民主党、日本社会党、新党さきがけの連立内閣(自社さ連立政権)が組まれた。この連立は次の第1次橋本内閣でも維持された(閣外協力は第2次橋本内閣の1998年(平成10年)6月まで)。
1999年(平成11年)1月、小渕内閣は自由民主党と自由党の連立内閣(小渕第1次改造内閣)となり、同年10月には公明党も加わった(小渕第2次改造内閣、自自公連立内閣)。翌2000年(平成12年)に自由党は分裂して、離党した一部議員が保守党(後に保守新党)を結成し、連立に残留した(第1次森内閣、自公保政権)。この連立は、次の小泉内閣でも維持されたが、2003年(平成15年)11月の第43回衆議院議員総選挙後に保守新党が自民党に吸収され、自民党・公明党の連立(自公連立政権)となり、2009年(平成21年)8月の第45回衆議院議員総選挙において、自民党、公明党が大敗し、野党になるまで続いた。
現在の政治状況​
2012年(平成24年)12月16日に執行された第46回衆議院議員総選挙において、与党の民主党、国民新党が大敗し、同年12月26日に自由民主党、公明党による連立政権が発足した。現在、内閣総理大臣は自由民主党総裁の岸田文雄が務めている。
国会に議席を持つ主要政党
与党
   自由民主党
   公明党
野党
   立憲民主党
   日本維新の会
   国民民主党
   日本共産党
   社会民主党
   れいわ新選組
政治の清廉度​
トランスペアレンシー・インターナショナル(ドイツのNGO)によると、2015年における当国の腐敗認識指数は167ヶ国中18位(下位であるほど腐敗している)である。
●国家形態・政治体制​
代議制をとる民主主義の国である。日本の政治は日本国憲法に基づいて行われる。そのため、日本は、立憲主義に基づく国家(立憲国家)であると言える。また、日本の行政・司法は、憲法と国会が定める法律以下、明文化された法令等に基づいて行われる。そのため、日本は法治国家であるとも言える。
日本国憲法は、主権が国民に存する国民主権を定める。また、政治上の権力を立法権・行政権・司法権の三権に分け、それぞれを国会・内閣・裁判所に配する権力分立の体制を定める。国会を「国権の最高機関」とする議会制民主政治が行われ、国会と内閣の協働による議院内閣制が採られる。憲法第1章では、主権者たる日本国民の総意に基づいて「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」の地位にある天皇を置く(象徴天皇制)。天皇は国政に関する権能を有しないと憲法で定めており、内閣の助言と承認により国事行為のみを行う。
日本国憲法はまた、地方自治を定める。日本の地方自治は、全国を47の地域に隈なく分けた都道府県と、都道府県の中をいくつかの地域に分けた市町村の、2段階の地方公共団体によって担われる。すべての都道府県と市町村には、各々、議事機関である地方議会と執行機関である首長(都道府県知事、市町村長)が置かれる。地方公共団体は、法律の範囲内で条例を制定することができる。
日本国憲法の三大原理としてよく挙げられるのは、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3つである。
政治制度​
「間接民主制」「象徴天皇制」および「議院内閣制」
議会制民主主義​
国民の代表者たる国会議員が国会において政治に参画し、民主主義を実現する制度(間接民主制)。この他憲法改正の国民投票においては直接民主制を採用する。
議院内閣制​
国会における内閣総理大臣指名選挙によって国会議員の中から内閣総理大臣が選出され、内閣総理大臣を首長とする内閣が組織され、その内閣は国会と連帯して責任を負う制度。
衆議院は内閣不信任決議を可決あるいは内閣信任決議を否決して、内閣に総辞職を迫ることができ、内閣はこれに対抗して衆議院を解散することができる。なお、この場合によらず、内閣は任意に衆議院を解散できると解釈される。
象徴天皇制​
日本国憲法で規定された、天皇を日本国及び日本国民統合の象徴とする制度。
日本国憲法第1条は、天皇を日本国と日本国民統合の「象徴」と規定する。その地位は、主権者(主権在民)たる日本国民の総意に基づくものとされ(前文、第1条)、国会の議決する皇室典範に基づき、世襲によって受け継がれる(第2条)。天皇の職務は、国事行為を行うことに限定され(第7条)、内閣の助言と承認を必要とする(第3条)。国政に関する権能を全く有さない(第4条)。
元首​
日本の元首について、様々な見解がある。外交権を持つ内閣ないしその首長たる内閣総理大臣とする説、戦前と同様に天皇とする説等である。
国政​
憲法上は国会を「国権の最高機関」と定め、「国の唯一の立法機関」としていることから、付与される政治上の権力は国会が最も大きい(日本国憲法第41条)。もっとも、憲法は、内閣総理大臣に内閣を代表して議案(内閣提出法案)を提出する権限を付与しており(日本国憲法第72条)、国会で成立する法案の大半は内閣提出法案となっている。そのため、実質的には内閣の権限が国会に優越するほど大きく、内閣の下に置かれる行政機関の影響力も非常に大きい(いわゆる行政国家現象の顕在化)。さらに、行政機関の内部では、資格任用制により採用される幹部職員、いわゆる官僚(キャリア公務員)が、政治任用される幹部職(大臣・副大臣・大臣政務官の政務三役)をしのぐ影響力を持っていたため、長らく官僚国家であるとされてきたが、現在では首相とその周辺である内閣官房がイニシアティブをとる官邸主導型決定となっており、内閣人事局を通じてキャリア公務員の人事権を政務三役が掌握することで、政務三役のキャリア公務員に対する権限が格段に強化されている。
また、憲法は、裁判所に違憲立法審査権を付与している(日本国憲法第81条)。裁判所は、法律をはじめとする国の法令や行政行為について、それが憲法に適合しているか否か宣言することができる。この権限は、国家の行為の適否について、終局的に判断する権限であることから、最も強い権限のはずである。このような体制を指して、司法国家と言われる。しかし、裁判所はいわゆる司法消極主義に立つとされ、国会や内閣(いわゆる政治部門)の判断に対し、異議を差し挟むことには謙抑的である。特に、高度の政治性を有する国家行為に対する合憲性の審査は裁判所の権限外とする「統治行為論」を採用した場合、裁判所はただ時の政権に追従するのみになってしまうとの批判がある。なお、司法に主権者たる国民の意見を反映させる機会としては、最高裁判所裁判官に対する「国民審査」制度や刑事裁判における「裁判員」制度などがある。
国の政治制度​
立法
   国会
      衆議院
      参議院
行政
   内閣
      内閣総理大臣
   中央省庁
司法
   最高裁判所
●立法​
日本国憲法は、国会を「国権の最高機関」であり「国の唯一の立法機関」と定める。国会は、衆議院と参議院からなる(二院制)。いずれも国民から直接選挙され、全国民を代表する国会議員で構成される。衆議院議員と参議院議員を兼ねることはできない。
国会議員​
衆議院議員の任期は4年だが、衆議院が解散された場合には任期前に資格を失う。衆議院解散は内閣が決定し、天皇が行う。衆議院解散の実質的決定権については論争はあるが、今日、内閣は天皇の国事行為に助言と承認を行う立場(日本国憲法第7条)にあることから、実務上、天皇の国事行為に責任を負う内閣が実質的決定権を有するとされる。内閣不信任決議が可決されて10日間に内閣総辞職をしない場合は衆議院解散をしなければならないが(日本国憲法第69条)、それ以外でも内閣は憲法7条に基づいてその裁量により衆議院を解散できると解されている。なお、衆議院解散の実質的決定権という点については学説に争いがあるものの、少なくとも衆議院解散の形式的宣示権は憲法上天皇にあり(日本国憲法第7条3号)、今日、解散詔書の文言については日本国憲法第69条により内閣不信任決議が可決あるいは内閣信任決議が否決された場合か否かを問わず「日本国憲法第七条により、衆議院を解散する。」との表現が確立している。これは衆議院解散は詔書をもって行われるが、詔書の直接の根拠は日本国憲法第7条にあり、また、この文言は解散の理由を問わないため、一般的には、いかなる場合の衆議院解散についても適用しうるものと解されているためである。。
衆議院の解散または衆議院議員の任期満了に伴う選挙を、すべての議員が選ばれるため「総選挙」という。参議院議員の任期は6年で、3年ごとに半数が改選される。参議院議員の任期満了に伴う選挙を通常選挙という。
衆議院の総選挙は小選挙区制と比例代表制(拘束名簿式)からなる小選挙区比例代表並立制が採用され、参議院の通常選挙は選挙区制(大選挙区制、中選挙区制)と比例代表制(非拘束名簿式)が併用されている。定数は、衆議院が465(小選挙区選出議員289、比例代表選出議員176)、参議院が242(選挙区選出議員146、比例代表選出議員96)。
国会の種類・会期​
国会は毎年1回の召集が義務づけられており、これを常会(通常国会)という。また、内閣が自ら、あるいは一定数の国会議員の要求により、内閣が臨時に国会の召集を決定することもでき、これを臨時会(臨時国会)という。1992年(平成4年)以降は例年1月に常会が召集され、9月頃に臨時会が召集される。衆議院議員総選挙後には特別会(特別国会)が召集され、内閣総理大臣を指名する。
国会は会期制が採られており、会期不継続の原則と一事不再議の原則が定められている。会期不継続の原則とは、会期独立の原則ともいわれ、継続審議の議決がなされない限り、会期中に議決に至らなかった議案は廃案(消滅)となる原則である。一事不再議の原則とは、一度議決された議案は、同一会期中に再度提出できないという原則である。
常会の会期は150日間で、延長は1回のみ可能。臨時会と特別会の会期はその都度両院一致の議決で定め、延長は2回まで可能。会期の決定及び延長については衆議院の優越が認められ、衆参の議決が不一致の場合及び参議院が議決をしない場合は衆議院の議決による。
立法過程​
法律案(法案)は、各々の国会議員、および内閣により提出される。国会議員から提出された法案を議員立法あるいは衆法(衆議院議員が提出した法案)・参法(参議院議員が提出した法案)といい、内閣から提出された法案を内閣提出法案(政府提出法案)あるいは閣法という。現在、1会期における提出法案のうち、おおむね30%が議員立法で、70%が内閣提出法案となっている。成立率(提出された法案のうち成立したものの割合)は、議員立法が20%程度で、内閣提出法案は80%以上。したがって、成立する法律のほとんどは内閣が提出したものである。これは、国会から内閣総理大臣を選出し、その内閣総理大臣が内閣を組む議院内閣制を採っていることの帰結である。内閣総理大臣を輩出する与党と内閣は、協働して内閣提出法案の成立に努める。
   内閣提出法案の成立過程
1.内閣提出法案の原案は、それを所管する各省庁が第一次案を作成し、関係省庁や与党との意見調整、審議会への諮問、公聴会での意見聴取などが行われる。
2.法律案提出の見通しがつくと、主管官庁は法文化作業を行い、法律案の原案を作成する。
3.主管官庁で法律案の原案ができると、原案は内閣法制局の予備審査を受ける。内閣法制局では、憲法や他の法令との整合性、法文の配列や用語などについて審査する。
4.予備審査が終わると、主任の国務大臣から内閣総理大臣に対し、国会提出について閣議請議の手続を行う。閣議請議の窓口である内閣官房は、受け付けた請議案を内閣法制局に送付する。内閣法制局は最終的な審査を行い、必要に応じて修正し、内閣官房に回付する。
5.閣議請議された請議案は、閣議において、内閣法制局長官からその概要の説明が行われる。異議なく閣議決定されると、正式な法律案となる。この法律案は、内閣総理大臣から国会(衆議院または参議院)に提出される。
   議員立法の成立過程
1.議員は、法律案の策定にあたって、公設秘書・私設秘書、政策担当秘書、議院法制局や国立国会図書館の職員、関係省庁や地方公共団体の職員、その他のブレーン、民間企業や団体、一般国民など、多くのスタッフと協議する。特に、議院法制局は、立法技術の専門的な見地から、憲法や他の法令との整合性調査、法律案要綱の作成、法律案の条文化などを行い、法律案の局内審査と法制局長決裁を行う。
2.議院法制局の審査を経た法律案は、依頼者である議員に手交され、所属政党内の法案審査手続きにかけられる。
3.議員が議案を発議するには、衆議院においては議員20人以上、参議院においては議員10人以上の賛成を要する。ただし、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては議員50人以上、参議院においては議員20人以上の賛成を要する。
4.議院法制局の審査を経て、所定の賛成者をそろえた法律案は、議長に提出される。
   国会に提出された法律案の過程
1.提出された法律案は、提出された議院(先議の議院)の議長により、適当な委員会に付託される。
2.法律案を付託された委員会では、まず、主任の国務大臣が法律案の提案理由説明を行い、審査に入る。審査は、議員から国務大臣・副大臣・大臣政務官その他の公務員などに対し、法律案に関する質疑応答の形式で行われる。委員会での質疑、討論が終局したときには、委員長が終局を宣言し、表決に付す。
3.委員会における法律案の審査が終了した後、法律案の審議は本会議に移される。本会議では、法律案を付託された委員長から委員会での審査について報告が行われる。必要に応じて討論として、法律案に反対の立場からの演説、賛成の立場からの演説が行われる。討論の後、議長から委員会表決の結果報告が告知され、採決に入る。
4.本会議で法律案が可決されると、議長から他の議院に法律案が送付される。送付を受けた議院においても、委員会の審査、本会議の審議を経て、採決が行われる。
5.法律案は、憲法に特別の定めのある場合(地方自治特別法など)を除き、衆議院および参議院の両議院で可決したとき法律となる(日本国憲法第59条1項)。
6.法律が成立したときは、後議の議院の議長から、内閣を経由して天皇に奏上される。奏上された案文は天皇が決裁(自筆の署名をし、御璽を押印)し、内閣に戻される。
7.法律は、奏上された日から30日以内に公布されなければならない。法律の公布に当たっては、主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署する。法律は官報に掲載することで公布される。
8.公布された法律は、附則に定められた日に施行される。施行日は、「公布の日から起算して○年を超えない範囲内において政令で定める日」と附則に定めることもできる。
●政党​
日本国憲法には政党に関する規定はない。政治資金規正法は、「政治団体」のうち、国会議員を5人以上有するもの、または直近の総選挙または直近の通常選挙もしくは直近の通常選挙の前の通常選挙における得票総数が有効投票総数の100分の2以上あるものを「政党」と定義している。
この「政党」には、届出・収支報告義務を定め、政治資金の透明化を行うとともに、政党のうち、国会議員を有するものに政党交付金による助成を行っている。
●行政​
行政権は内閣に属する(日本国憲法第65条)。
国会議員の中から、国会の議決によって内閣総理大臣が指名される(日本国憲法第67条1項)。内閣総理大臣は天皇に任命される。内閣総理大臣は国務大臣を任命し、内閣総理大臣と国務大臣の合議体である内閣を構成する。内閣総理大臣は国務大臣を任意に罷免することができる。内閣総理大臣は国会議員の中から指名されるが、国務大臣は過半数が国会議員であればよい。
以下の場合には内閣は総辞職する。
・衆議院による内閣不信任→衆議院が解散されないとき
・内閣総理大臣が欠けたとき
・衆議院議員の総選挙の後に初めて国会が召集されたとき
●司法​
司法権は最高裁判所および法律により設置される下級裁判所に属する。
終審裁判所である最高裁判所は、長たる裁判官(最高裁判所長官)とその他の最高裁判所裁判官から構成される。最高裁判所長官は内閣が指名し、天皇が任命する。その他の最高裁判所裁判官は、内閣が任命する。最高裁判所長官とその他の最高裁判所裁判官は、任命後、国民審査を受ける。その後10年を経過するごとに、さらに国民審査を受ける。最高裁判所の裁判官は、法律で定めた年齢(70歳)に達すると退官する。
下級裁判所(高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所)の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿により、内閣が任命する。下級裁判所の裁判官は、任期を10年とし、再任されることができる。下級裁判所の裁判官の定年は65歳(簡易裁判所裁判官は70歳)である。
●地方の政治​
都道府県および市町村の議会の議員、都道府県知事および市町村長は、すべて住民に選挙され、任期はいずれも4年間である。
地方の政治制度​
都道府県
   都道府県知事
   都道府県議会
市町村
   市町村長
   市町村議会
●外交関係​
日本は国際連合の加盟国で、安全保障理事会の常任理事国入りを目指しているG4諸国の一つである他に、東アジアにおいて重要な役割を果たしている。
日本国憲法は、日本が武力を以て、他国との間で戦闘を交えることを禁じている。一方で、日本には、陸海空から成る自衛隊が組織されており、2003年から2009年にかけて、自衛隊がイラクへ派遣された。これは、第二次世界大戦以降では、日本が初めて海外に武装組織を派遣した瞬間だった。
経済大国としては、日本は主要国首脳会議 (G8) およびアジア太平洋経済協力 (APEC) の参加国である他、ASEANとの間では、ASEAN+3として関係を発展させている上に、東アジアサミットにも参加している。国際援助および開発支援の場でも日本は大きな貢献者であり、2004年には、同年の国民総所得の0.19%を援助金に充てた。
領土に関しては、北方領土を巡ってロシアと対立している他に、韓国から日本固有の領土である竹島を、独島と称して自国の領土であると主張されたり、日本海の呼称を東海に変更するよう求める活動を実施されたりしている。また、中国および台湾との間には尖閣諸島に関する問題、さらに中国との間では沖ノ鳥島の位置付けを巡る議論がある。これらの領土問題は、ある面では、それらの島の周囲の海域に埋蔵されていると推定される、石油や天然ガスといった天然資源および海洋生物資源を自国の支配下に置くための紛争であると見ることもできる。
北朝鮮との間では、同国による日本人の拉致と核兵器開発疑惑に関連する問題が現在進行中である。 
 
 

 

●岸田内閣揺るがす「閣僚辞任ドミノ」わずか19日間で2閣僚更迭 11/11
岸田内閣を揺るがす「閣僚辞任ドミノ」だ。岸田文雄首相は11日夕方、死刑執行に関する職務を軽視するような発言をした葉梨康弘法相を急転、事実上の更迭とした。岸田氏は「軽率な発言によって法務行政に対する国民の信頼を損ねた」として葉梨氏の辞表を受け入れ、斎藤健元農相を後任とすることを発表した。岸田内閣の事実上の閣僚更迭は10月24日の山際大志郎前経済再生相から、わずか19日間で2人目となった。
岸田氏は、この日午前の参院本会議では「職責の重さを自覚し、説明責任を徹底的に果たしてもらわなければならない」と改めて葉梨氏の交代を否定した。ところが本会議直前の衆院法務委員会で葉梨氏は「法相は朝、死刑(執行)のはんこを押す。昼のニュースのトップになるのはそういうときだけ、という地味な役職だ」などの発言について「東京のパーティーでは計4回、地元の会合でも複数回、同趣旨の発言をした」と連発していたことを明らかにした。その上で「職員、国民のためにも仕事をすることで、ご迷惑をかけたことをしっかりリカバリーしていかなくてはならない」と続投に意欲を示した。
葉梨氏を巡っては10日の衆院本会議で予定された民法改正案の採決が野党側の反発で採決困難と判断されて、先送りされるなど与党内からも批判が一気に高まった。岸田氏は「旧統一教会による被害者救済に政府を挙げて取り組む中、その重責の一端を担う法務大臣の発言によって重要施策の審議などに遅滞が生ずることを考慮し、辞任の申し出を認めた」と一転して8月の改造人事で初入閣させた岸田派側近の葉梨氏を約3カ月で事実上、更迭した。
岸田氏は、この日午後から東南アジア歴訪に出発の予定だった。だが党内には葉梨氏の更迭が遅れれば、「政権へのダメージは計り知れない」(閣僚経験者)との指摘が広がり、出発を12日未明に延期して火消しに奔走した。
岸田氏は8月の改造人事で留任させた山際氏を、旧統一教会と複数の接点を「記憶がない」と否定し、指摘されると追認を繰り返したことから事実上の更迭としたばかり。同じ広島選出で岸田派側近の寺田稔総務相も「政治とカネ」を巡る問題が相次いで判明するなど、身内の不祥事は止まらない。「辞任ドミノ」という負の連鎖が続く可能性はある。
 
 

 

●岸田総理は外交アピールも… 国内では“辞任ドミノ”警戒 11/14
法務大臣の辞任から週が明け、与党内からは閣僚の辞任ドミノを警戒する声が上がっています。14日も国会では政治とカネの問題を抱える寺田総務大臣に対して野党が追及の手を強めています。
ASEAN首脳会議を皮切りに一連の外遊がスタートした岸田総理大臣。なかでも注目を集めたのが韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領との会談です。報道陣を前に笑顔を見せた2人ですが、両国の関係悪化で正式な日韓首脳会談はおよそ3年ぶり。その日韓関係の改善に向けて前向きな姿勢を示したという尹大統領。北朝鮮問題で連携していく方針も確認しました。
岸田総理大臣「旧朝鮮半島出身労働者問題については、懸案の早期解決を図ることで改めて一致をした。こうした会談内容でありました」
今回の会談について、ある政府関係者は。
政府関係者「北朝鮮問題はかなり深刻に捉えているので、そういう意味では時期が良かった。外交はいい。国内は重苦しいから」
その国内では岸田内閣の閣僚が14日も追及されました。
政治とカネを巡って、野党から追及を受けている寺田総務大臣。自らが所管する政治資金に絡む問題が次々を浮上し、自民党内からは山際前大臣、葉梨前大臣に続くドミノ辞任を警戒する声が上がっています。
立憲民主党・田島麻衣子議員「今ですね、自民党さん内からもですね、辞任論が出ています。こうした状況についてどうお思いですか」
寺田総務大臣「適法に、また適正にですね、政治資金処理をですね、行っていくことを旨として、今後も取り組んで参りたいと考えております」
問題発覚後、政治資金収支報告書を訂正した回数がすでに4回を数えているほか、妻が代表を務める政治団体の脱税疑惑、関係政治団体が故人を会計責任者としていた有印私文書偽造疑惑、さらに領収書偽造疑惑と、野党側は徹底追及する構えです。
立憲民主党・安住国対委員長「政治資金の所管大臣がですね、自ら法を犯すようなことを繰り返していると。責任問題もですね、これから追及していかなければならないと」
自民党関係者「寺田大臣を切るつもりならタイミングを逸しすぎている。このままダラダラ行くような気がする。後は内閣支持率がどうなっていくかじゃないか」
政府・与党としては岸田総理が19日に帰国した後、速やかに物価高騰対策を盛り込んだ第2次補正予算案の審議に入りたい考えですが、野党側は岸田総理の任命責任も問いただす方針です。
立憲民主党・田島麻衣子議員「総理大臣もお疲れだと思うので、そういうところにも気をつかってですね、もう辞任したらいかがですか?どうですか?」
寺田総務大臣「疑惑ではあるかもしれませんけれど、事実でないということであります」
 
 

 

●窮地の岸田首相 「閣僚辞任ドミノ」で支持率落ちても強気なワケ 11/17
岸田文雄首相が大ピンチに直面している。旧統一教会問題や物価高騰への対応での集中砲火、問題閣僚の“辞任ドミノ”も加わって、内閣支持率は続落した。しかし、国会混乱の最中の8日間にわたる東南アジアでの首脳外交では、自信満々で「外交の岸田」をアピールするなど、政権維持への強気の姿勢は変わっていない。
10月3日の臨時国会召集前後からの相次ぐ難題処理の拙劣さで、与党内からも「判断がすべて後手」(自民幹部)との批判が噴出。政局運営での岸田首相の求心力喪失が際立つことで、政界では「早期退陣論」も現実味を増している。
岸田降ろしの封じ込め戦略が奏功
にもかかわらず、岸田首相は「事ここに至っても自信と余裕の心境」(側近)だとされる。周辺によると、その理由は「衆院解散さえしなければ退陣に追い込まれることはなく、政権内部の“岸田降ろし”封じ込め戦略も効果が出ている」(側近)との判断からだという。
もちろん、超大型経済対策実施のための第2次補正予算の早期成立も含め、臨時国会での与野党攻防を乗り切ることが危機脱出の大前提。ただ、野党も補正処理には柔軟対応の構えをみせ、首相も「旧統一教会問題解決のカギとなる被害者救済法案で野党と妥協して今国会成立にこぎつける」(自民幹部)ことを狙っている。
ただ、こうした「前のめりの対応」(同)が自民党内の不信感を招き、同法案に警戒心を強める公明党とのあつれきも顕在化している。このため、首相周辺から「首相の独断が混乱を拡大させれば、自らの首を絞める」(官邸筋)との不安ももれるなど、今後の展開は極めて不透明だ。
10月末の大手メディアの世論調査で、内閣支持率はいったん下げ止まり傾向となった。その時点で、岸田首相は「1つひとつ成果を出せば、反転攻勢は可能」(側近)と自信を回復していたとされる。
ただ、旧統一教会との“癒着”での拙劣な対応で、10月24日に“更迭”となった山際大志郎前経済再生相を、すぐさま党のコロナ対策本部長に就任させるという大失態。さらに、首相を支えるはずの岸田派幹部・葉梨康弘氏の、いわゆる「死刑にハンコ」発言での11月11日の法相更迭劇で「危機管理能力欠如を露呈」(閣僚経験者)して国民的不信も急拡大し、内閣支持率は危険水域に突入間近となっている。
そうした状況にもかかわらず、「首相は心の奥底では、次期総裁選まで続投する自信は揺らいでいない」(岸田派幹部)とされる。その背景には、1最大派閥・安倍派の空中分解の可能性、2反岸田勢力の旗頭の菅義偉前首相、二階俊博元幹事長の支持取り付け、3有力な後継候補の不在、という自民党内の権力構図があるとされる。
まず安倍派の状況だが、当初有力視された塩谷立会長代理の昇格案が、同派中堅若手などの反対で頓挫。その背景には次期総裁選に向けての同派総裁候補の激しい主導権争いがあり、その場しのぎの「集団指導体制」でも軋みばかりが目立ち、「次期総裁選でも草刈り場になりかねない状況」(若手)だからだ。その場合、岸田首相は「最大派閥の圧力から解放される」(周辺)ことになる。
“会食攻勢”で二階氏ら懐柔、後継候補も不在
次に、党内の「反岸田勢力」の活動をみても、「その中核となる菅、二階両氏が政権支持を表明するなど広がりに欠ける」(自民長老)のが現状。10月下旬からの岸田首相の二階氏らに対する“会食攻勢”も「効果が出ている」(同)とされる。
さらに、“ポスト岸田”候補については、自民党内で茂木敏充幹事長、河野太郎・内閣府特命担当相らの名前が挙がる。ただ、「いずれも党内での評価は低く、とりあえず岸田首相の続投が無難との声が多い」(閣僚経験者)との見方が支配的だ。だからこそ「当面引きずりおろされるリスクは少ないとの判断から、政権危機にもうろたえていない」(側近)のだ。
その一方で「首相の『解散せずに任期3年全う』というのは絶対に表沙汰にできない“秘策”」(同)でもある。「次期総裁選不出馬を明かせば、政権はすぐ死に体化し、何もできなくなる」(自民長老)からだ。
このため首相は、側近らや安倍派幹部の松野博一官房長官などを通じて、来年広島サミット後の衆院解散説を流すなど、「求心力維持への手練手管に腐心している」(同)とされる。自民党内でも、「首相は虎視眈々と解散の機会を探っている」(若手)と受け取る向きが多い。
もちろん、麻生太郎自民党副総裁ら政権を支える最高幹部は「薄々、首相の本音を感じ取っている」(首相経験者)のは確かだ。ただ、「それはあくまで暗黙の了解で、麻生氏も当面は早期解散論を主張し続ける構え」(同)とみられている。
首相が参考とするのは、三木武夫元首相(故人)の政局対応だ。約半世紀前、「金権批判」で退陣に追い込まれた田中角栄首相(故人)の後継首相となり、「クリーン三木」を売り物に、戦後最大のスキャンダルとなったロッキード事件での田中氏逮捕を主導したとされるのが三木氏。
「挙党協」に屈しなかった三木首相の粘り腰が念頭に
これに対し、三木・中曽根両派を除く田中氏逮捕に反発する党内各派が、「挙党体制確立協議会(挙党協)」を結成して1年半にも及ぶ激しい“三木降ろし”を展開した。しかし、三木氏はあえて解散で対抗せず、衆院議員の任期満了選挙に持ち込んで途中退陣を免れるという「政治史に残る粘り腰で任期を全うした」(自民長老)。
ただ、こうした首相の“秘策”には、なにより官房副長官や首相秘書官で構成する「官邸チーム」や、総裁派閥・岸田派の結束と支援が不可欠だ。ところが、国民の政権不信を招いた岸田首相の“朝礼暮改”は「まさに官邸チームの能力不足」(自民幹部)が原因とみられている。
さらに葉梨前法相や、政治資金スキャンダルで野党が罷免を要求する寺田稔総務相は、いずれも岸田派の主要幹部なのに、「首相を支えるどころか足を引っ張るばかり」(派若手)だ。これに関連して同派関係者は「親分のために命を懸ける議員が1人もいない」と嘆息する。
16日の日本の国会は「首相不在で開店休業状態」だったが、岸田首相が参加しているインドネシア・バリ島でのG20(20カ国・地域首脳会議)開催中に飛び込んだ「ロシア製ミサイルがポーランド東部の村に着弾した」との情報に、G7と北大西洋条約機構(NATO)が緊急首脳会合を開催する事態となった。その後、バイデン米大統領が「ロシアから発射されたとは考えにくい」と述べたが、国際社会は緊迫した。
さらにこれと同時進行で、アメリカでトランプ前大統領が次期大統領選出馬を高らかに宣言したことが世界中で速報された。「まさに、国際情勢は物情騒然の様相」(外務省幹部)だ。
求められる「身命を賭して国を守る決断」
これにより、かねて岸田首相が指摘してきた「日本にとって戦後最大の危機」がますます深刻化するのは明白。だからこそ与党内からも「宰相としての決断と実行が、日本の未来を決める。政権維持の策謀などは論外」(自民長老)との声が相次ぐのだ。
このため、政界では「岸田首相が身命を賭し、『チーム岸田』を率いて国を守るための決断と実行に邁進しない限り、任期途中での政権崩壊は避けようがない」(同)との厳しい見方も広がるが、当の岸田首相にその覚悟があるのかどうか……。
 
 

 

●1カ月で3閣僚「辞任ドミノ」が止まらない 岸田政権「お友達人事」 11/21
寺田稔総務相が20日に更迭され、岸田政権は1カ月で3人の閣僚が「辞任ドミノ」で次々に退場する異常事態となった。3人は岸田文雄首相の派閥所属や盟友の後押しによる入閣で、身内びいきの「お友達」人事が招いた失敗といえる。更迭判断の遅れも三たび繰り返した。物価高や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題など山積する課題に対する政権の実行力が疑問視されている。
問題相次ぐも後手後手の辞任劇
「私としても重要課題に一つ一つ答えを出すことを最優先にする考えから辞任を認めた。辞任の事態に至ったことは大変遺憾だ」。首相は20日夜、苦しげな表情で記者団に語った。
寺田氏を巡っては、妻への事務所費支払いや故人が政治団体の会計責任者を務めていた問題など次々と週刊誌に報じられ「辞任は時間の問題」とされてきた。
寺田氏は「法的問題はない」と強弁し、野党の辞任要求を拒否し続けたが、「公職選挙法や政治資金規正法所管の大臣が疑惑まみれでは厳しい」(総務官僚)とまで言われる状態。葉梨康弘前法相が11日に死刑を巡る発言で更迭された際、自民党内から「寺田氏も同時に更迭すべきだ」との声が上がった。
だが、任命責任者の首相は判断を先送りして外遊に出発。その間も、新たな公選法違反疑惑が報じられた。21日に始まる2022年度第2次補正予算案の国会審議への影響は避けられない情勢となり、自民党幹部からも「もう持たない」と迫られ、首相はようやく重い腰を上げて、決断した。
3人の「お友達」を初入閣させた首相
寺田氏は、首相にとって「身内」同然だ。同じ広島選出で、首相が会長を務める自民党の派閥「宏池会」所属の側近。しかも、寺田氏の妻の祖父は宏池会を創設した池田勇人元首相だ。
寺田氏を含め更迭された3人の閣僚は、いずれも首相の「お友達」人事と言える。1週間前に更迭された葉梨氏も宏池会に所属。旧統一教会問題で更迭された山際大志郎前経済再生担当相は首相の盟友・甘利明前幹事長の側近で、8月の内閣改造でも甘利氏が再任を要請したとされる。3人とも岸田内閣で初入閣していた。
自民党幹部は「身内が首相の足を引っ張っている」と憤るが、資質に欠ける閣僚を選んだのは首相自身だ。
まだまだ山積する問題 支持率も苦戦
首相は8月の内閣改造で「山積する課題に対し経験と実力を兼ね備えた閣僚を起用した」と説明したが、相次ぐ辞任に「経験と実力」との説明はむなしく響く。「辞任ドミノ」を恐れ判断が遅れた末に、結局「辞任ドミノ」に至り、決断力の欠如もあらわになっている。
岸田内閣には事務所費問題が指摘される秋葉賢也復興相をはじめ、誹謗ひぼう中傷ツイートへの「いいね」問題を抱える杉田水脈総務政務官、旧統一教会との接点が問題視される政務三役などが残っている。
報道各社の内閣支持率は下落傾向が続くが、国民生活を圧迫する物価高や、旧統一教会の被害者救済など課題は山積している。「政権は危機的だ」(自民中堅)との声も上がる中、閣僚辞任が相次ぐ政権の政策遂行能力が疑われている。
●“辞任ドミノ”で国会混乱 「内閣改造するしかない、崩れるときは早い」 11/21
わずか1か月で3人の閣僚が交代。寺田前総務大臣がきのう夜更迭され、辞任ドミノが現実のものとなりました。
きょう、国会では、物価高対策などを盛り込んだ補正予算案の審議が衆参両院で始まる予定でしたが…
立憲民主党 安住淳国対委員長「1時からの本会議は、まずとりあえず白紙にすると」
寺田氏の辞任で国会は混乱。衆議院のみの審議となり、開始時間も大幅に遅れました。
岸田総理「国会開会中に大臣が辞任する事態となったことは誠に遺憾であり、私自身、任命責任を重く受け止めています」
岸田政権の運営自体を危ぶむ声が高まっています。
立憲民主党 吉田晴美衆院議員「今度は岸田総理ご自身が身を引くことを考えるべきではないでしょうか」
政治資金収支報告書への不適切な記載など、寺田氏の「政治とカネ」をめぐる問題が指摘され始めたのは1か月以上前のことでした。ただ、きのうになっても…
寺田稔前総務大臣「(Q.辞任しないという考えに変わりないでしょうか)はい。(Q.岸田総理と話されましたか、大臣)まだです」
きのう夜、辞表を提出した直後も最後まで迷いがあったと明かしました。
寺田稔前総務大臣「政策をしっかりと前に進めたいという思いは最後の最後まで持っておりました」
しかし、山際氏、葉梨氏に続いて、寺田氏についても総理の更迭の判断が遅れたことで傷口は広がりました。
自民党幹部「岸田総理の感覚が悪いとしか言いようがない。任命責任が問われる」
自民党ベテラン議員「更迭するなら葉梨氏と一緒のタイミングでやっておくべきだった」
岸田総理と会談した公明党の山口代表も…
公明党 山口那津男代表「(寺田氏は)説明をするように努力をされていたと思いますが、なかなか不透明感が残ったなと」
公明党の佐藤国対委員長は、「もうこれ以上、足を引っ張るようなネタを政府の方から提供しないでもらいたい」と苦言を呈しました。
低下する総理の求心力。与党の幹部は、思い切った手が必要だと訴えます。
与党幹部「政権浮揚には内閣改造をするしかない。崩れるときは早い」
早い段階での内閣改造を求める声もすでにあがっているのです。
立憲民主党 安住淳国対委員長「大変遅きに失しましたが、この先、任命責任を含めて厳しく問うていくことになると思います」
野党側は、母親に支払った事務所の賃料が税務申告されていないなどの「政治とカネ」の問題を抱える秋葉復興大臣に追及の狙いを定めています。
支持率の低迷も続く中、官邸幹部は…
官邸幹部「旧統一教会の被害者救済新法で理解を得ていきたいが、政府案は最大限、野党の考え方に歩み寄れるところは寄ったというのが正直なところだ」
政権の立て直しの兆しを見出すことに苦戦を強いられている岸田総理。厳しい舵取りが続いています。
 
 

 

●閣僚「辞任ドミノ」 首相が窮地 身内も苦言 11/22
寺田稔前総務相の更迭から一夜明けた21日、岸田文雄首相は野党の攻勢にさらされた。閣僚交代で国会日程が一時混乱し、2022年度第2次補正予算案の審議入りが遅れたことで、当初目指した月内の成立は早くも絶望的となった。連立を組む公明党幹部も公然と批判するなど求心力は著しく低下。政権立て直しに向けた前途は極めて険しい。
首相が20日中に寺田氏を更迭したのは、総合経済対策の裏付けとなる補正予算案審議への影響を最小限にとどめたかったからだ。だが、野党は総務相交代の手続きが終わるまで国会の審議日程は「全く白紙だ」(立憲民主党・安住淳国対委員長)と主張した。衆院本会議はかろうじて開いたものの、参院本会議は先延ばし。衆院予算委員会での実質審議入りもずれ込んだ。政府・与党が描く月内成立は困難となり、物価高対策の実行遅れにもつながる。
閣僚更迭に関する首相の国会説明は山際大志郎前経済再生担当相に続いて2回目。極めて異例のため政府・与党にとっては「屈辱的な対応」(首相周辺)で、自民幹部は「二度と応じない」としていた。だが1カ月で3閣僚が辞任する事態に野党は勢いづき、要求を受け入れるしかなかった。
与党内のいら立ちは募る一方で、首相は本会議前に公明党の山口那津男代表と会談し、与党の結束維持に腐心。だが山口氏は会談後「首相は任命権者として、厳しい反省の上に再出発しなければならない」と冷ややかに述べ、公明の佐藤茂樹国対委員長は「もうこれ以上、足を引っ張るようなネタを政府から提供しないでもらいたい」と憤った。
ただ「辞任ドミノ」が収まるかは不透明だ。閣内にはまだ、政治資金を巡る問題を抱えた秋葉賢也復興相が残っている。立憲幹部は「次のターゲットは秋葉氏」と断言しており、予算委で秋葉氏に焦点が当たるのは必至。国会審議がさらに紛糾する可能性もある。
寺田氏の後任には松本剛明元外相が決まったが「他の適任者には断られて、もう人がいない。消極的選択だ」と首相周辺。政権の体力は著しく低下している。
首相は21日の本会議などで寺田氏の名前を2度言い間違え、答弁も弱々しかった。閣僚経験者は「首相の弱気がさらに支持率低下を招く」とこぼす。政府・与党内には「年明けの通常国会前に内閣改造に踏みきるしか手がない」との声が強まる一方、「改造に失敗したら、それこそ政権が終わる」と官邸関係者。政権浮揚のきっかけはつかめていない。
●寺田総務大臣更迭 辞任ドミノ “岸田流”の顛末は 11/22
「私自身、任命責任を重く受けとめている」総理大臣・岸田文雄は、岸田派に所属しみずからに近い総務大臣・寺田稔の辞表を受理したあと、記者団に述べた。「辞任ドミノ」「更迭の判断がまた遅れた」野党だけでなく与党内からも疑問の声が上がる更迭劇。判断の裏側には何があったのか、辞任までの1か月半を追った。
日曜夜の辞表提出
11月20日、日曜日の夜8時前。「たった今、岸田総理大臣に大臣の辞表を提出させてもらった。けじめをつけた」
雨が降る中、記者団にそう話し、総理大臣公邸をあとにした総務大臣の寺田。
“主計官”の余裕
混迷の始まりは10月6日だった。この日発売の「週刊文春」は、寺田が代表を務める政治団体が、地元・広島の事務所を共有する妻に、賃料として9年間でおよそ2000万円を支払っていたなどと報じた。この段階で、寺田周辺は、「大丈夫だ」と楽観視していた。記者会見で寺田の表情には余裕もうかがえた。「当然、建物の所有者には賃料を支払います。金額も適正で、収支報告書に適正に記載しています。妻も適正に税務申告している」また、人件費としてスタッフらに毎年500万円ほど支出しているのに、税務申告を行っていないのではないかと指摘された質問には、手元のメモを見ずに、こうそらんじた。「税金を払う前提として控除項目、経費と控除があります。医療費、災害控除、雑損控除などがあります…(以下、略)」問題はないという認識を示した寺田の会見対応に、総務省幹部は「『さすが』と言わざるを得ない。しっかり説明している」と自信を見せた。寺田は旧大蔵省出身。20代で税務署長も務め、主計局で予算査定にあたる主計官も務めた。ことし8月の内閣改造で総務大臣に就任すると、総務省内で付いたあだ名は“主計官”。寺田が総務大臣になっても、打ち合わせで細かい点に至るまで矢継ぎ早に質問を飛ばすことが由来だという。
“ボディーブロー”の嵐
しかし、“余裕”は長続きしなかった。このほかの政治資金をめぐる問題が次々に指摘されたのだ。国会で野党側は「政治資金を所管する大臣として不適格だ」として、追及のボルテージを上げていった。指摘されたのはほとんどが地元に関するものだ。徐々に寺田の答弁にもほころびが見られ、委員会で答弁を修正する場面も見られた。また、一部法令に違反していたことを認めるなど、委員会質疑は「野党ペース」になっていく。国会の後、寺田周辺は「ひとつひとつには答えられているが、『問題が発覚して追及』、また『問題が発覚して追及』…次々に“ボディーブロー”を打たれているようなものだ」とこぼした。野党の辞任要求が強まる中、与党内でも「補正予算案の審議を控え、交代した方が良いのではないか」と辞任論が出始める。11月17日の国会答弁で寺田は「政治家としての出処進退であり、私自身が判断すべきものだ」と“出処進退”に言及した。その翌18日、寺田は、記者会見でこう発言した。記者「自民党内から早期辞任論も上がっているが」寺田「何人かの自民党の方々からは激励を受けております。直接私に『辞任しろ』という方はございません」いつもの冷静な答弁とは違い、いらだちが見て取れた。
「W辞任か?」
実は、この間、「寺田更迭か」と緊張が走った時があった。11月11日、法務大臣の職や死刑執行を軽んじるような発言に批判が集まった葉梨康弘が辞任した日だ。永田町には、「寺田も同時に更迭されるのではないか」という情報が飛び交った。寺田が公務を終え、総務省を出たのは午後2時半。その後の日程は入っていない。総理大臣官邸に現れるのではないか。警戒を続けたが、寺田は午後8時前に帰宅。局面は訪れないまま総理大臣の岸田は、翌日未明に外国訪問に出発した。
「寺田さんが来ない!」
そして、11月19日の土曜日に岸田が帰国。第2次補正予算案の国会審議入りを翌日に控えた20日。普段は静かな日曜日の総理大臣公邸を、報道陣のカメラが囲んでいた。寺田が岸田に辞表を出すため、公邸に入るのではないか。ピリピリした雰囲気となっていた。前日、岸田は、訪問先のタイで開いた記者会見で、寺田を続投させるかどうか問われ、こう述べていた。「経済対策の実現のための補正予算案の成立や、旧統一教会の被害者救済に向けた新法の策定など、難しい課題に結論を出していかなければならない。内閣総理大臣として判断していきたい」「続投」を明言せず、「総理として判断する」とは、更迭のことではないのか。そうした見方が広がる中、寺田は、地元の広島・呉市から、午後2時過ぎに帰京。記者団が「辞任に対する考えはいかがか。岸田総理大臣とやりとりはあったのか」と声をかけたのに対し、無言で車に乗り込んだ寺田。しかし、その後、総理大臣公邸に動きはない。「寺田さんはどこに行った」報道陣に不安が広がり始めた。
「辞める」「辞めるな」長引く調整
複数の政府・与党関係者への取材を総合すると、この間、岸田はギリギリまで関係者と電話協議を続けていたことがわかってきた。岸田に対し、寺田は「国会審議に迷惑をかけたくない」と辞意を伝えた。本人の意向を受けて、岸田は、いったん更迭の方針に傾く。しかし、これに「待った」をかけたのが複数の自民党幹部だった。「ここで辞めれば政権運営に影響が大きい。葉梨氏と同時に辞めさせなかった以上、続投させて踏んばるべきだ。寺田さんを説得してください」党幹部の主張を受けて、岸田は寺田と複数回に渡って電話で会談し、慰留した。しかし、寺田の辞任の意思は固い。結局、更迭の方針が固まったのは夕方になってからだった。政府関係者は、「決まったのは、本当にギリギリのタイミングだった」と漏らす。
“岸田流” 夜の決着
午後8時すぎ。寺田の辞表を受理した岸田は、記者団にこう語った。「年末にかけて正念場を迎えていることから、寺田大臣の辞任を認めることにした。相次いで閣僚が辞任することとなり、深くおわびを申し上げます」寺田の辞任について、野党側は「遅きに失した」と任命責任を追及している。わずか1か月の間に3人の閣僚が相次いで辞任する異例の事態となり、与党内からも「辞めさせるなら葉梨氏と同時にしておくべきだった」と対応を疑問視する声のほか「政策判断でも遅れが出るようなら内閣自体が揺らぐ」などと、危機感が出ている。「もっと早く、更迭の判断はできなかったのか?」この日の夜、岸田に近い、ある政府関係者に率直に疑問をぶつけると、こう返ってきた。「岸田さんはそういう人ではない。本当に優しい人なんですよ…」この1か月。大臣の辞任が相次ぐ中で、判断の遅れを指摘されると、岸田周辺から聞こえてきた「すぐに辞めさせずに、きちんと自分で説明させて猶予を与える。説明責任を果たさせるのが“岸田流”」という解説。今回も、丁寧に耳を傾け判断するという、その「岸田流」が表れた結果だとも言えるが、政権運営へのダメージは少なくない。岸田は、山積する政権課題に結果を出し、信頼を回復したいとしている。終盤国会に向けて、第2次補正予算案の審議や、旧統一教会の被害者救済に向けた新たな法案の提出も残っている。年末には、来年度予算案の編成も控える。内閣支持率の下落が続き、政権運営の厳しさが増す中、正念場が続く。
 
 

 

●「なぜ自民党は政治資金とか選挙の領収書を厳密にチェックしないのか」 11/23
元衆院議員でタレントの杉村太蔵(43)が23日、コメンテーターを務めるテレビ朝日「大下容子ワイド!スクランブル」(月〜金曜前10・25)に出演。岸田文雄政権における閣僚の辞任ドミノについて私見を語った。1カ月足らずの間に山際大志郎前経済再生担当相、葉梨康弘前法相に続き、寺田稔総務相も更迭された「閣僚辞任ドミノ」。杉村は「なぜ自民党は徹底的なコンプライアンスチームっていうのを作って政治資金とか選挙の領収書とかを厳密にチェックして、“これでは絶対問題になりませんよ”っていうことをやらないのか」と疑問を口に。続けて、政治資金問題が相次いで発覚していた寺田氏について「寺田さんなんて東大出て大蔵省出て、ハーバード大学行って、税務署長もやってる方ですけど、そんな方が何でこんなずさんなことを…。そこ、しっかりやらないとだめだよな」と話した。
●辞任ドミノ続く岸田政権に「国民が今、切実に内閣改造を望んでますか?」 11/23
フリーアナウンサーの古舘伊知郎(67)が23日、TBS系「ゴゴスマ〜GO GO!smile〜」(月〜金曜後1・55)に生出演。わずか1ヶ月で3人の閣僚が交代するなど、混乱を極めている岸田政権について言及した。
古館氏は「岸田政権が今、ひどい状況だから引きずり下ろそうという力が働いて次々、疑惑が出てくるわけですよ。でも今やるべきことは、この政権は急に衆議院解散もできないわけじゃないですか。内閣改造とか出てきてますけど、そういう風に衣替えする前にやっぱり旧統一教会の救済法案、野党の言うことをもっと聞いて厳しい法律を作るということと、この物価高で庶民があえいで大変だと、中小零細で成り立ってるこの国が。そういう時にやっぱり予算を成立させなきゃいけないことに邁進しないと。コロナ対策も含めて」と内閣改造や閣僚の不祥事を追及するよりも大事なことが他にあるとした。
そして「だから、そういうことがおろそかになっていてはダメなので、(岸田首相は)“説明しなきゃいけない”って言うけど、説明しないから皆、“説明しなきゃいけない”って言ってるだけなんです。やることやってくださいよ、と」と嘆いた。
その上で「“私はこういうことを断行しますから、ちょっと細かい問題待ってください”って総理こう言うとき言わないんですかね?“これとこれを国民のためにやらなきゃいけないから、待っててください。その後ですよ”ぐらいのこと言えばいいのに、決まり切った言葉で繰り返し会見するのはやめてもらいたい」と岸田首相の定型文のような会見は不要とした。
また、年明けと噂される内閣改造についても「国民が内閣改造を望んでるんですかね?」と疑問視。「1回やって、変な大臣が出てきた、更迭の嵐だ。じゃ、またやりますか?って言ったって、自民党の中のいろんな派閥の駆け引きの中で、うちからどれだけ大臣出すってことは重要かもしれないけど、国民が今、切実に内閣改造を望んでますか?」と政権に訴えた。
古舘氏は「そうやって風を変える、空気を変えるのは分かるけど、この松本新大臣の話だってズルいよ。本当にズルいけど、昔からこのパターンは有名です。政治家のパーティーとってもエコなパーティーだって皮肉で言うんですよ」とチクリ。「そういうところも大事なんだけど、質さなきゃいけないのは大事なんだけど、今やるべき事なのかなって」と閣僚の「政治とカネ」の問題を追及し、不正を問い詰めることも必要としながらも、今やるべきことなのかと首をかしげた。
 
  

 

●閣僚の「辞任ドミノ」続く岸田政権、秋葉賢也復興相に新たな政治とカネ疑惑 11/24
閣僚の「辞任ドミノ」が続く岸田政権で、今もなお「政治とカネ」の問題を抱える自民党の秋葉賢也復興相に、新たな疑惑が浮上した。昨年10月の衆院選で、公設秘書報酬を受け取って選挙運動を行ったとして、公選法違反(運動員買収)の疑いがあると、写真週刊誌「フライデー」デジタルが24日までに報じた。
記事では、昨年の衆院選の「選挙運動費用収支報告書」に、選挙運動の報酬として、公設第1秘書に12万円、公設第2秘書に8万円をそれぞれ支払ったとする記載があったと指摘。公選法は報酬の支払いの対象を限定し、事務員や車上運動員などに限られている中で、「フライデー」デジタルは、公設第1、第2秘書が昨年の衆院選当時、街頭で秋葉氏への支援の呼びかけなどの選挙運動をしていたとする趣旨の発言をしたと指摘。公設秘書が報酬を受け取って選挙運動をしていたのが事実とすれば、「運動員買収」に当たるとしている。
この問題を受け、松野博一官房長官は24日の会見で、秋葉氏から23日に「しっかりと説明責任を果たしたい」とする電話を受けたことを明かした上で、「秋葉氏は政治家としての責任において。適切に説明することが重要だ」と述べた。
秋葉氏は昨年の衆院選で、小選挙区(宮城2区)で立憲民主党の鎌田さゆり氏に571票差で敗れ、比例復活している。
秋葉氏をめぐっては、これまで自身の政治団体が自身の妻と母に地元事務所の賃料を支払っていたことなど、複数の疑惑が指摘されている。これまでは21日に辞任した寺田稔前総務相ら、更迭された「ドミノ辞任3閣僚」の陰に隠れるような形だったが、3人が辞任したことで野党のターゲットになっている。
22日の閣議後会見では「これからも、ご納得いただけるように丁寧に説明させていただきたい」と話した秋葉氏だが、今後の国会審議で野党から繰り返し説明を求められるのが確実なことから、寺田氏と同じタイミングで更迭すべきだったと、首相の判断の遅れを指摘する声は根強い。
岸田政権では、寺田氏の後任の松本剛明総務相にもパーティー券販売をめぐる問題が浮上。また岸田首相自身、昨年の衆議選の選挙運動費用収支報告書に、ただし書きのない領収書を98枚添付していたことを認めるなど、政治とカネの問題が「底なし」の様相となっている。
●岸田首相「出納管理者の確認漏れ」 自らの不祥事は「完全に他人事」 11/24
11/22「文春オンライン」に公職選挙法違反の疑いがあると報じられた岸田文雄首相。
記事によると、昨年10月の衆議院選挙に伴う選挙運動費用収支報告書に、宛名も但し書きも空白の領収書を94枚添付。金額はおよそ計9万5千円分だったといい、目的を記載した領収書を提出するよう定めた公職選挙法に抵触する可能性が報じられた。
報道を受け、24日に自らの言葉で釈明した岸田首相。しかし、その説明が“他人事のよう”だとして批判が相次いでいるのだ。
各メディアによると同日午前、首相官邸で記者団の取材に応じた岸田首相は、「添付書類の記載に一部不十分な点があったことについて、今後このようなことがないように事務所に指示を出したところであります」と説明。選挙運動に関する支出は「適正だった」とした上で、「出納管理者の確認漏れ」だと回答したという。
「同日に岸田事務所が発表したコメントによると、領収書を選挙管理委員会に提出した際、記載漏れを指摘されなかったため『問題なし』と判断したようです。また、但し書きの欄に記載がない領収書は98枚だったと明かしており、収支報告書本体には記載していると釈明しています。今後の対応として、宛名のない領収書に関しては発行者から依頼があれば追記するとしており、発行者に対しても“きちんと書くように”と喚起しています」(全国紙記者)
岸田政権といえば、わずか1カ月以内に閣僚が“辞任ドミノ”となる前代未聞の危機に直面している。20日には“政治とカネ”をめぐる疑惑が発覚した寺田稔元総務相(64)が辞任し、世間を騒がせたばかりだった。
「まず、旧統一教会(現在は世界平和統一家庭連合)との密接な関係について、野党から追及を受けていた山際大志郎前経済再生担当相(54)が10月24日に辞任しました。そして11月11日には、役職や死刑執行を軽んじるような発言をした葉梨康弘前法相(63)も辞任。表向きは3名それぞれが辞表を提出し受理されていますが、事実上の更迭と言ってよいでしょう」(前出・全国紙記者)
辞任した3名には一貫して、「説明責任を果たしてほしい」と求めていた岸田首相。さらに21日には、「国会開会中に辞任する事態となったことは誠に遺憾であり、私自身、任命責任を重く受け止めている」とも記者団に語っていた。
しかし、自らの不祥事に関しては「出納管理者の確認漏れ」「事務所に指示を出した」と釈明。まるで“自らに非はない”と受け取れるような姿勢に、ネット上では厳しい声が相次いでいる。
《完全に他人事》《空白の領収書なのに、なぜ自分だけは正当だと言い切れるのか? 理解不能です》《岸田さん、見苦しい言い訳すなよ。他人のせいにすれば済むとでも? 民間企業なら白紙領収書なんて経理から突き返されるで。その前に出さへんけど。どんな神経しとる?》《『次からちゃんとするように指示した』はぁ? ずいぶんいい加減だなぁ。暗に『私はちっとも悪くない』と言ってるようなもの。一般企業で、90枚以上もこんなデタラメな領収書がでたら、とことん追求され、責任をとらされますよ》
19日、20日に実施されたANNの世論調査では支持率30.5%と、政権発足して以来最も低い数字となった。信頼回復への道のりは、ますます困難を極めそうだ。
●岸田総理 “空白の領収書”98枚認める…政権にダメージ?  11/24
岸田総理は2021年の衆議院議員選挙で提出した収支報告書にただし書きのない空白の領収書が98枚あったことを認め、再発防止を事務所に指示したことを明らかにしました。
閣僚3人の辞任が続き、新大臣にも“政治とカネ”の疑惑が浮上。この窮地に内閣改造は行われるのでしょうか。
岸田総理“空白の領収書”認める 政権へのダメージは?
ホラン千秋キャスター: 「ただし書き」が書かれていない空白の領収書について、98枚あったことがわかりました。この件は文春オンラインが報じて発覚しました。
文春オンラインは、2021年の衆議院選挙で広島県選挙管理委員会に提出した収支報告書に「宛名」「ただし書き」が不記載の空白の領収書が94枚あると指摘。公職選挙法違反の疑いがあると報じました。
領収書の扱いについて、公職選挙法ではどのように定められているのでしょうか?
<“領収書の記載” 公職選挙法では…>
「選挙運動に関する全ての支出について、金額・年月日・目的を記載した領収書など支出を示す書面を選挙管理委員会に提出する義務がある」
“ただし書きがない領収書”はここに違反しているのではないかという疑いが指摘されたわけです。
<“空白の領収書” 岸田事務所と総理は…>
岸田事務所
「去年の衆議院選挙で提出した『収支報告書』に、ただし書きのない“空白の領収書”が98枚あった」と公表
「今後このようなことがないよう、領収書の記載を確認するようにいたします」とコメント
岸田総理(11月24日 参院厚労委)「選挙運動に関する支出は適正にされている。ただその添付書類である領収書の記載の一部に不十分な点があった」
「事務所に再発防止を指示。領収書の訂正、修正などについては選挙管理委員会と相談して適切に対応していく」
「空白」の領収書 総理のダメージはどれくらいあるのか
この空白の領収書について、どれくらいダメージがあるのかTBSスペシャルコメンテーターの星浩さんに伺いました。
星浩さん「収支報告書に『空白』の領収書を添付する議員は与野党を問わず多い。ミスと言えばミスだが、岸田総理は、領収書の修正などについて『適切に対応する』と説明しており、“大きなダメージにはならないだろう”と本人は思っているようだ」
井上貴博キャスター: 総理大臣が全ての領収書をチェックするのは不可能だと思いますが、98枚という数と今、内閣支持率も低迷している中でのタイミングの悪さを感じます。
萩谷麻衣子弁護士: 法律が選挙運動費用について全ての領収書に目的や金額を書かなきゃいけないとしているのは、公正な支出がなされて、公正な選挙がされたかどうかを国民が検証できるようにするという国民主権や民主主義からの要請です。だから岸田さんがいくら公正に適正にしている、支出は適正だといったところでそれを国民が検証できなければ意味がない。そこは認識が薄いのかなと思います。
星さんの指摘で、与野党共に空白が多いということであれば、前から言われていることですけども選挙用にクレジットカードを作って全てクレジットカードで支出する。国民に対して国はデジタル化だと言っているので、ご自身たちもそれを徹底すればいいのになって。そうすれば明細書で明らかになるんじゃないかなとは思います。
閣僚“辞任ドミノ”新大臣は疑惑否定 内閣支持率30%台…浮揚策は
ホランキャスター: 総理自身に発覚した浮上した政治とカネの問題、岸田内閣で考えていきますともう既に3人の閣僚が辞任しています。
山際前経済再生担当大臣、葉梨前法務大臣、政治とカネ問題で辞任した寺田前総務大臣。その後任の松本剛明総務大臣にもある疑惑があるということです。
<「しんぶん赤旗」によると…>
政治資金パーティーで会場の収容人数を超えるパーティー券を販売したのではないか。これによって政治資金規正法違反の疑いがあるのではないか。
これについて、松本総務大臣は11月22日「政治資金については法にのっとって適切に処理をしていると承知しております」と話しました。
年末年始の内閣改造 可能性はある?
次々と辞任をしていく負のイメージや内閣支持率の低迷を打破したいということで、内閣改造するのではないかと言われていました。
岸田総理(11月19日)「難度の高い課題にひとつひとつ挑戦していくためにどうあるべきなのか、(内閣改造について)適切なタイミングを総理として判断していきたい」
可能性としてはあるのかなという含みのある発言ですよね。ただ、24日に記者が内閣改造について質問したところ…
岸田総理(11月24日)「そうしたことは全く考えておりません。今は国会に専念しなければなりません」
きっぱりと可能性がないと話しました。この背景には何があったのか、星さんに伺いました。
星浩さん「閣僚の辞任ドミノに加え、国会も野党ペースで進み、岸田総理が内閣改造と党役員人事で態勢を立て直したいのはやまやまだが、自民党内には反対の声も少なくない。23日に茂木幹事長と極秘会談したが、“ここは慎重にいきましょう”と言われ、一旦クールダウンした形」
井上キャスター: 内閣改造を行うことで反転攻勢、支持率を上げたいという思惑はあるのかもしれないですけど、元々はやりたいことがあるために布陣を変えるのが本来の考え方だと思いますし、とにかくしっかりと仕事をやっていただきたい。
萩谷弁護士: 内閣支持率が下がったのは辞めた大臣にも問題があると思うんですが、元々は岸田さんの判断力や対応が問われた結果だと思うんです。安倍さんの国葬について法的な根拠が曖昧なまま早急に実施を決めて、その後、旧統一教会について自民党の調査に消極的だった、問題のある大臣の更迭も判断が遅れた。全て岸田さんの判断や指導力に対して国民が不信感を抱いた結果だと思うので、いくら内閣改造で他の人たちの顔を変えても、岸田さん自身への不信感が消えなければ結局支持率は戻るのか疑問に思います。
 
 

 

●激しく足ゆする秋葉復興相 否定していた“統一教会”との接点判明… 11/25
政治資金の疑惑をめぐって野党の追及を受ける秋葉復興相に旧統一教会との接点があったことが11月25日明らかになった。
秋葉復興相に新たな“統一教会”との接点
閣議が行われる前の岸田首相。閣僚の“辞任ドミノ”が続く中、薄く笑みを浮かべていた。
しかし、またしてもその任命責任を問われかねない問題が浮上している。
野党が照準を合わせる4人目の大臣は…
25日の予算委員会の委員会室で激しく右足をゆすっていた秋葉賢也復興相(60)だ。
選挙運動などをめぐる疑惑に加え、新たな事実が明らかになった。それは旧統一協会との接点だ。
秋葉大臣は2022年8月の大臣就任会見で「旧統一協会が主催する会合に出席したり、私が関係団体に会費を支払ったりしたことは一切ない」と明言していた。
ところが、秋葉大臣が代表を務める自民党宮城県第2選挙区支部が2021年7月、旧統一教会の友好団体に会費2万4000円を支出していたことが政治資金収支報告書で分かった。
この点を問われた秋葉大臣は…
秋葉復興相: けさ取材依頼が来たところですので、今、事務所で事実関係を確認をさせていただいているところでございます。
立憲民主党 後藤祐一議員: いや、収支報告書上明らかになったという、一瞬で分かりますよ。コレ。確認すればすぐできるじゃないですか?これは間違いないですよね?
秋葉復興相: きょうは朝から予算委員会でございましたので、(報告書を)全く見ている暇がございませんでした。
そして2022年9月に自民党の調査が発表された際には、事実関係を確認できなかったと釈明するが…
立憲民主党 後藤祐一議員: ウソをついていたということですよね?収支報告書なんて真っ先に調べるところのはずじゃないですか。
秋葉復興相: あのー今、事務所でしっかり確認作業をさせていただいているところでございます。
繰り返し確認中と答弁する秋葉大臣に、任命権者である岸田首相は…
岸田首相: 様々な疑念が指摘をされているということでありますので、それに対しては丁寧に説明責任を果たしてもらわなければなりません。
野党は、秋葉大臣を更迭するよう求めるなど追及を強めている。その秋葉大臣は週末に予定していた福島県の出張を急きょキャンセルした。
●「法令で認められた報酬」 秋葉復興相、公選法違反を否定 11/25
秋葉賢也復興相は25日の閣議後記者会見で、公設秘書が昨年の衆院選で選挙運動の報酬を受け取り、公職選挙法違反(運動員買収)の疑いがあると週刊誌に報じられたことについて「事実誤認。法令で認められた報酬を支払ったものだ」と述べ、違反には当たらないとの認識を示した。
写真週刊誌「フライデー」の電子版は23日、公設秘書2人が選挙運動の報酬として12万円と8万円をそれぞれ受け取っていたと報じた。報酬の支払いは車上運動員らに限定されている。秋葉氏は「選挙管理委員会に届け出を行った上で、車上運動員として活動した日数分について報酬を支払った」と説明。「誤解を払拭(ふっしょく)できるように丁寧に説明を尽くす」と語った。
●岸田政権「政治とカネ」戦々恐々 秋葉氏説明焦点、野党手ぐすね 11/25
岸田政権は25日から今国会のヤマ場となる衆参両院予算委員会に臨む。3閣僚の辞任で政権の苦境が続く中、「政治とカネ」の疑惑を抱える秋葉賢也復興相が説明を尽くし、審議を乗り切れるかが焦点。岸田文雄首相と松本剛明総務相にも政治資金絡みの問題が浮上しており、さらなる打撃を狙う野党は手ぐすね引く。
「政治家としての責任において適切に説明することが重要だ」。松野博一官房長官は24日の記者会見で、秋葉氏の疑惑についてこう強調。23日には秋葉氏から電話で「しっかり説明責任を果たしたい」と報告を受けた。
写真週刊誌「フライデー」は秋葉氏の公設秘書2人が昨年10月の衆院選で、選挙運動の報酬として12万円と8万円をそれぞれ受け取っていたと報じた。報酬の支払いは事務員らに限られており、公職選挙法に抵触する可能性が指摘されている。秋葉氏には母や妻に家賃を支払う形で政治資金を還流させた疑いも出ている。
与党は、3閣僚の交代を巡り首相の判断が遅れたとして、不満を募らせている。秋葉氏が予算委で立ち往生し、4人目の閣僚交代となれば、内閣支持率が低迷する政権の致命傷になりかねない。首相周辺は「何があっても突っ切ってもらうしかない」と語った。
首相にも「政治とカネ」の問題が発覚。昨年の衆院選の選挙運動費用収支報告書に、ただし書きのない領収書を多数添付していたと別の週刊誌に報じられたことについて、首相は24日、官邸で記者団に「領収書の記載の一部に不十分な点があった」と述べ、不適切な処理を認めた。公選法は支出目的や金額を記載した領収書の提出を義務付けているが、ただし書きの記載がない領収書は98枚に上る。
総務相を巡っては、資金管理団体が開催した政治資金パーティーで、会場の収容人数を大幅に上回るパーティー券を販売していたと、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が伝えた。24日の参院総務委員会で共産議員が実際の参加人数を示すよう再三求めたが、松本氏は「法の定める事項は報告している」と答弁。共産議員は「答えられないなら寺田稔前総務相と同じだ」と非難した。
首相と松本氏の問題に関し、与党内では「続報がなければ大ごとにはならない」との見方が多い。だが、自民党関係者は「大事なのは国民がどう受け止めるかだ」と懸念を示した。
●「影武者は何人?」秋葉復興相に“公選法違反”疑惑 岸田総理は更迭否定 11/25
国会では、きょう衆議院予算委員会で第2次補正予算案の本格的な審議が始まり、公職選挙法違反の疑いが指摘されている秋葉復興大臣が野党側から追及を受けました。
野党側は、去年の衆院選で秋葉大臣の地元・仙台市で、秋葉氏ではない人物がタスキをかけ選挙活動をおこなっていたことについて「公選法違反の疑いがある」と指摘しました。
立憲民主党 大西健介 衆院議員「いわゆる影武者がですね、選挙のたびにですね、選挙期間中、何度も色んな所で目にするそうなんですよ。秋葉大臣、これ身に覚えがありますか。また、影武者っていったい何人いるんですか」
秋葉賢也 復興大臣「私の次男が、親でもある私の選挙を心配して少しでも私の力になりたいと考えての行動だったようですが、指摘を受けてすぐにタスキを外したと聞いております」
立憲民主党 大西健介 衆院議員「やったこと自体は(公選法の)文書図画違反だということを大臣、お認めになるということでよろしいでしょうか」
秋葉賢也 復興大臣「認めたという発言がありましたが、私は一切認めておりません。当時、選管や警察から特に指摘はなかったと聞いております」
立憲民主党 大西健介 衆院議員「大臣、他には(影武者は)いないんですか。他には絶対いないと断言できますか」
秋葉賢也 復興大臣「他には1人もいないと断言していいと思います」
また野党側は、秋葉大臣が代表を務める選挙支部が旧統一教会の関連団体と同じ住所にある団体に対し、2万4000円を支出していたのではないかと迫りました。
立憲民主党 後藤祐一 衆院議員「自民党の調査は、旧統一教会および関連団体に対する会費類の支出という項目があって、秋葉さんの名前はないんですよ。隠ぺいしてやり過ごそうとしたんじゃないんですか。そのときに調べてるはずじゃないですか」
秋葉賢也 復興大臣「正確にお答えしたいことでございますので、しっかり確認をしてお答えをさせていただきたいと思います」
さらに秋葉大臣は、宮城県多賀城市で行われた教団の関連イベントへの出席についても問われましたが、「記憶の限りでは認識がない」と繰り返しました。
野党側は秋葉大臣の更迭を求めましたが、岸田総理は「選挙運動や政治資金に関わることについては、秋葉大臣として誠実に説明していかなければならない」と述べました。
●秋葉氏次男、応援でたすき 野党批判「影武者か」  11/25
秋葉賢也復興相は25日の衆院予算委員会で、次男が選挙応援のため、路上で秋葉氏の名前が入ったたすきをかけたと認めた。立憲民主党の大西健介氏が、昨年の衆院選の際に撮影されたとする写真を示し「影武者がいるのか」と追及。秋葉氏は「私の力になりたいと考えての行動だったようだ。指摘を受け、すぐにたすきを外したと聞いている」と釈明した。
大西氏は、若い男性がたすきをして路上に立つ画像を提示。衆院選中の昨年10月、秋葉氏の選挙区がある仙台市内で撮影されたとし、たすきには「秋葉賢也」の文字の上に小さく「次男」と書いてあったと指摘した。
●秋葉復興大臣の次男「影武者」で選挙運動 その証拠写真とは? 11/25
政治資金の疑惑が次々と明らかになっている秋葉賢也復興大臣が、国会で釈明に追われました。新たに去年10月の衆院選期間中、秋葉大臣の次男が、秋葉大臣の名前を記したたすきをかけ、選挙運動をしていたことが分かりました。
去年10月28日に仙台市泉区で撮影され、秋葉復興大臣の名前を記したたすきをかけた男性が写っています。しかし、この男性、本人ではなく次男で、たすきの上部には「次男」と書かれていたといいます。25日の衆議院予算委員会で立憲民主党の議員から、本人以外が候補者の名前を記したたすきをかけることは公職選挙法違反ではないかと指摘された秋葉大臣は、「承知していなかった」としつつ、事実関係を認めました。
秋葉賢也復興大臣「私の次男が、親である私の選挙を心配して、会社の有給休暇を取り、3日間選挙の応援のために勤務先の東京から仙台まで駆けつけてくれたのだが、本人としては家族の自分が応援していることをアピールすることで、少しでも私の力になりたいと考えての行動だったようだが、指摘を受けてすぐにたすきを外したと聞いている」
また、秋葉大臣は「公設秘書が報酬を受け取って選挙運動をしていた」とする週刊誌の報道について、「法令で認められた報酬を支払ったものだ」と述べ、報酬の支払いは適正だったとの認識を示しました。
秋葉復興大臣「秘書への選挙期間中の支払いについては、選挙管理委員会に届け出を行った上で法令で認められた報酬を支払ったものになります」
また、委員会では秋葉大臣の義理の兄が代表を務めた政治団体「政治経済研究所」の所在地である義父の家に、家賃の支払い実態がないのではとの追及もあり、秋葉大臣は「他の方が代表を務める解散した団体の家賃の支払い先のことで、本来は私が答える立場にない」とした上で、「改めて義兄に確認したところ間違いなく義父に支払っている」と疑惑を否定しました。
●閣僚のドミノ辞任は異常事態でなく「常態化事態」  11/25
1か月で3人の閣僚が辞任し、後任の総務相にも「政治とカネ」の問題が指摘され、さらに岸田首相には「宛名のない領収書」疑惑が浮上しています。こうしたドミノ倒し現象は、自民党政治の異常事態ではなく、新常態(ニューノーマル)なのでしょう。
「新常態(ニューノーマル)」というより、以前から自民党政治で恐らく常態化していたのでしょう。そういう意味では、異常事態ではなく、「常態化事態」、つまり「常態事態」といってもよい。
1人ずつ単発で問題が表面化すれば、釈明し、不備を詫びれば幕引きできたのかもしれません。それが次々に不祥事、不手際が連続すると、自民党政治の構造、体質の問題に拡大し、一つ一つを切り離せなくなる。一気に「常態化した自民党政治の病巣」への対応が必要になったと思う。
新聞論調を読むと、政治ジャーナリズムは覚醒してほしいと感じます。日経社説は「一か月足らずで閣僚が3人の辞める異常な事態である」と指摘しています。毎日は全く同じ表現で「異常事態である」と、読売も「異常事態だ」と嘆いています。
政治ジャーナリズムは「異常事態どころか、常態化した自民党政治の構造、体質に問題がある」となぜ指摘しないのか。「異常事態」なら対応によってしのげる。「常態事態」なら長期にわたる構造改革、体質改善なしに、政治を正常化できません。
3人の辞任、更迭の理由は、旧統一教会との接点の問題(山際経済財政・経済再生相)、「死刑執行にハンコ」という職責を軽んじる発言(葉梨法相)、政治資金収支報告書のずさんな管理(寺田総務相)と、不祥事や不備・不正の類型が見事に勢ぞろいしています。
「旧統一教会問題とは無縁」という理由で起用されたらしい松本総務相には、さっそく政治資金の処理における規制違反の疑いが浮上しました。さらに「本人たちに丁寧な説明を求める」と言い続けてきた岸田首相にも、「宛名書きのない政治パーティー領収書発見」の疑惑が浮上した。
これが事実だとすれば、首相自身の説明、釈明が問われます。3人の閣僚を更迭、辞任に追い込んだだけに、首相自身はどう身を処すのか。首相自身の発言が自分自身に跳ね返ってきました。
新聞論調は「対応が後手後手に回った」、「丁寧な説明が必要だ」、「首相の任命責任が問われる」で、各紙とも同じです。「タガを締め直して国政に臨んでもらいたい」(日経)も、「首相官邸と自民党との連携不足が目立つ」(読売)も、論じるべき次元が低すぎる。
「後手後手」の理由は、身ぎれいな後任を簡単に見つけられないことが大きいでしょう。多くの議員が似たようなことをやっているからです。だから短期間では身元調査を十分にできかねる。
平議員の不祥事はニュース価値は低い。閣僚に就任すると、ニュース価値が一気に高まり。文春砲(週刊文春)などに狙い撃ちされる。だから閣僚のなると、次々に疑惑が発覚する。
朝日新聞は一面トップで、「首相陳謝『任命責任は重い』」との見出しで、首相の発言を伝えました。歴代の首相が閣僚の不祥事のたびに「任命責任は私にある」と発言してきたことか。任命責任を負うとは、具体的に何をするのか。何ができるのか。単なる政治用語でしかない。
政治ジャーナリズムはそこを問わない。首相が「任命責任」を口にすれば、それで首相もジャーナリズムも幕引きをしてきたのです。軽々にそういう空疎な表現をジャーナリズムは使ってはいけない。
野党を含め、政界の人材のレベルが低下していることは間違いない。国際市場で過酷な競争にさらされる民間企業とは違い、政界は日本国内、さらに言えば永田町という狭い世界に生息しています。それが人材の質的な低下を招く大きな一因になっています。
それを監視すべき政治ジャーナリズムも、日本政治を国際比較して論じ、問題を提起する広い視点を持たない。政治家との接点を持ち、維持して情報が途切れないようにすることにエネルギーを注力しています。
岸田首相も、葉梨氏も寺田氏も、後任の松本氏も皆、世襲政治家です。松本氏が「高祖父は初代首相の伊藤博文で、父親は元防衛庁長官、親族に外交官も多い」(日経)。そこまで書いても、世襲政治と小選挙区制がセットになり、政界を目指そうとする人材に対する参入障壁になっている構造的な問題に言及しない。
●“辞任ドミノ”止められるか 岸田総理、予算委で謝罪 11/25
国会では政府の経済対策の裏付けとなる第2次補正予算案を審議する衆議院予算委員会が始まりました。閣僚の“辞任ドミノ”を止められるかが焦点です。
岸田総理大臣は冒頭から“辞任ドミノ”を謝罪するなど、守りの姿勢で乗り切りたい構えです。
岸田総理大臣「国会開会中に大臣が辞任する事態に至ったこと、これは誠に遺憾なことであり、私自身、任命責任を重く受け止めておるところであります」
与党の公明党からも「政権として何をやりたいのか強く発信し、しゃにむに行動を」と苦言が呈されました。
岸田総理は、経済対策と旧統一教会の被害者救済法案で政権浮揚を狙います。
救済法案は「今の国会に提出し、早期成立に努める」と述べました。ただ、2週間後に迫る会期末までに成立させられるかは不透明です。
25日午後には、野党が質問に立ちます。
選挙運動員の買収疑惑などが報じられている秋葉復興大臣をターゲットに徹底追及する構えです。
秋葉大臣について、自民党内からは「頼むから持ちこたえてくれ」と祈りに近い声も聞こえてきます。
 
 

 

●「10増10減」争奪戦で自民党の“内ゲバ”激化 醜聞噴出で続くか閣僚辞任 11/26
岸田内閣は1カ月足らずで3人の閣僚が辞任する異常事態になっているが、「辞任ドミノ」は止まりそうにない。自民党内の“内ゲバ”が激しくなっているからだ。
「1票の格差」を是正するため、衆院小選挙区の数を「10増10減」し、区割りを見直す改正公職選挙法が18日に成立。28日の公布も決まり、1カ月の周知期間を経て12月28日に施行されることになった。選挙区が1つずつ減る10県で調整が難航するのは間違いない。自民党は全選挙区に支部長がいて、誰か1人は確実に選挙区を失うことになるのだ。
この熾烈な選挙区争奪戦が、閣僚のスキャンダル噴出につながっているという見方がある。
「『死刑のはんこ』発言で一発アウトの葉梨前法相はともかく、寺田前総務相も山際前経済再生相も、地元発としか思えない情報が次々と報じられて追い込まれていった。本人の人望のなさもあって、地元の市議や県議も積極的にメディアに話をしていましたね。もちろん国民から疑念を持たれることをした本人が悪いが、それぞれ選挙区事情を抱え、次期衆院選に向けた地盤争いも関係しているのでしょう」(自民党ベテラン議員)
寺田前総務相の地元である広島県は減区の対象だ。寺田氏の広島5区と、新谷正義元総務副大臣の4区がほぼ統合されて「新4区」になる。選挙区調整でどちらかがはじき出される可能性が高い。
寺田氏と同様に「政治とカネ」の疑惑を抱え、新たに「公選法違反」報道が炸裂。野党が“次のターゲット”に照準を定める秋葉復興相の地元、宮城県も選挙区が1つ減ることになっている。
疑惑大臣の厳しい選挙区事情
複雑なのは、選挙区が増えればいいというものでもないことだ。18から20に増える神奈川県では、横浜市都筑区と川崎市宮前区で編成される新設19区が「火薬庫」と呼ばれるほど、地盤争いが過熱している。ここで都筑区を地盤にしているのが鈴木馨祐元財務副大臣(旧7区)、宮前区に支持者が多いのが山際前経済再生相(旧18区)だ。
「どちらが19区から出ることになるのか、まったく読めません。旧統一教会の問題とフザケた答弁で総スカンの山際ではなく、別の地方議員を担ごうとする勢力もある。新設区は、神奈川の選挙区を失った公明党も狙っています。相手を蹴落とすためにスキャンダルを探すのは昔からある手法で、しばらく怪文書が飛び交いそうです」(神奈川県政関係者)
区割り変更の影響を大きく受ける選挙区では、国会議員に連なる県議や市議、支援者らが激しいつばぜり合いを演じている。現職閣僚では、林外相や加藤厚労相も区割り問題の渦中にある。 
山口県は長年、県政も市政も林派と安倍派が対立してきた。減区になって林氏が安倍元首相の地盤だった「新3区」の奪還を目指すが、安倍派地方議員の反発は激しい。
自民が全5選挙区を独占する岡山県も減区で、「新3区」の争いが苛烈を極める。ここを地盤とする自民現職は加藤氏と平沼赳夫元経産相の次男・正二郎、さらには比例選出の阿部俊子元外務副大臣と3人もいるのだ。
内ゲバがスキャンダルを呼び、辞任ドミノが続けば政権は崩壊の一途だ。
●辞任ドミノ≠ナ求心力低下、岸田政権に内閣改造報道 11/26
閣僚の「辞任ドミノ」などで内閣支持率が続落するなか、岸田文雄首相が12月末から来年1月の通常国会召集までの間で、内閣改造・自民党役員人事を行う検討に入ったと一部メディアが報じた。ただし、断定ではなく、毎日新聞は「今後の臨時国会の状況などを踏まえて人事を断行するかどうかを判断する」(22日朝刊)という。
筆者は、この時期の内閣改造・党役員人事はないだろう、と見る。
そもそも、人事を行えば必ずどこかに不満が出る。その不満を抑えるためには、一定以上の求心力が必要だ。わずか1カ月で閣僚3人が辞任した現在の岸田政権に、そういう体力はないのではないか。
過去の例を見ても、求心力が低下している時期に、人事を行って成功したためしがない。それどころか、それを契機に退陣に結び付くことすらある。菅義偉前首相も昨年9月、局面打開を狙った党役員人事が難航し、万策尽きて「総裁選不出馬」に追い込まれた。
それに、新しい閣僚に不祥事が発覚した場合、今度こそ内閣の命運に直結する。現閣僚を続投させる方がリスクは少ない。仮に人事を行っても、政権の骨格を大きく変えることはできない。だとすれば、国民に対するアピール度は限定的で、政権浮揚効果も期待できないだろう。
以上が「ない」と見る理由だが、参院選以後、岸田政権の政局運営を見ていると、まるで素人のような稚拙さが目立つ。特に、国会運営をめぐる不手際は目を覆いたくなるばかりだ。
閣僚3人が辞任した理由はお粗末で論評に値しないが、ここまで追い込まれた遠因は窮屈な国会日程のなか、野党に国会運営の主導権を握られたことにある。そのことへの反省や検証は不可欠ではないか。
わが国は現在、「国難」といえる状況にある。「平時」ではない。
中国による「台湾有事」「日本有事」の脅威や、北朝鮮の相次ぐミサイル発射など、安全保障環境は戦後経験したことがないほどの緊張が高まっている。国内に目を転じれば、新型コロナが再び拡大の兆しを見せ、物価高騰への対応も急を要する。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題も、岸田首相が決意を示した以上、一定の結論を出さなければならない。
こうしたなか、政局の乱れは外国勢力に付け入られる隙(すき)を生じかねない。特に、政府の活動原資となる来年度予算が成立するまでは、国家として最も脆弱な時期といえる。岸田首相は一心不乱に政府・与党を牽引していく責任がある。
●秋葉復興大臣に“影武者”疑惑 去年の衆院選で次男が“候補者タスキ” 11/26
秋葉賢也復興大臣に“影武者”疑惑が浮上しました。野党側は去年の衆院選で、秋葉氏ではない人物がタスキをかけ選挙活動をおこなっていたことについて「公選法違反の疑いがある」と国会で指摘しました。秋葉氏は次男が応援に入ったことを認めたうえで違法性については認めませんでした。
11月25日の衆院予算委員会で、野党議員が示した1枚の写真。矛先である秋葉賢也復興大臣に手渡されました。その写真には…「秋葉けんや」のタスキをかけた男性が道路脇に立つ姿が。撮影されたのは衆議院選挙直前の、2021年10月28日。場所は秋葉大臣の選挙区、仙台市泉区の交差点だといいます。
立憲民主党 大西健介 衆院議員「『秋葉けんや』のタスキをかけている男性は、秋葉大臣よりも若くて、大臣では少なくともないように見える。地元ではこうした影武者が選挙の度に、選挙期間中に何度もいろんなところで目にするそうなんです」
立憲民主党 大西健介 衆院議員「(写真の)提供者によれば、タスキの上には小さく『次男』と書かれているそうです」
秋葉賢也 復興大臣「私は承知しておりませんでしたので、事務所に確認したところ、私の次男が親でもある私の選挙を心配して、会社の有給休暇を取り、少しでも私の力になりたいと考えての行動だったようですが、指摘を受けてすぐにタスキを外したと聞いています」
タスキの人物は、次男であると認めました。
実は秋葉大臣の“次男”「影武者」 違法性は?
立憲民主党 大西健介 衆院議員「総務省に確認しますけども、第三者が候補者になりすまして、候補者名のタスキをかけて立つことは、公選法に違反するという理解でよろしいですか」
総務省の担当者「候補者以外の者が使用することはできないと解されています」
「違法性を認めるか」と問われた秋葉大臣は…
秋葉賢也 復興大臣「私は一切認めておりません。当時、選管や警察から特に指摘はなかったと聞いていますし、そもそも公職選挙法違反かどうかについては、当局が判断するものと承知しています」
2021年、小選挙区で敗れた秋葉氏。道路脇で足元に大きなパネルを置くというスタイルは、秋葉氏本人が実践しているもので、遠目に別人と見分けるのは難しそうです。
立憲民主党 大西健介 衆院議員「候補者になりすまして、いろんな場所に出没することで露出を増やそうという意図ではないか。有権者をだまそうとしているわけで、違法か以前に卑怯な戦法で恥ずかしいと思いませんか」
秋葉賢也 復興大臣「私が聞いているところでは継続したのではなく、(タスキを)つけたその日のうちに外して二度とつけてやることはなかったと聞いています」
“影武者疑惑”のほか、秘書の公職選挙法違反疑いや、旧統一教会との接点など集中砲火を浴びた秋葉大臣。
25日午後、5回目のワクチン接種を終えたあと、岸田総理は…
岸田文雄 総理「大臣は丁寧に答弁はしていたと思いますが、まだ様々な疑問が残るとしたならば、説明責任は引き続き果たしてもらわなければならない」
●岡田地方創生相が“買収まがい”の政治資金を地元有権者にバラ巻いていた 11/26
山際前経済再生相が事実上更迭。岸田官邸は「辞任ドミノ」を警戒しているが、日刊ゲンダイの調べで“次のクビ”候補が急浮上だ。岡田直樹地方創生相(参院・石川選挙区)が、地元有権者に“買収まがい”の政治資金を配りまくっていたことが分かった。
岡田氏が代表を務める「自民党石川県参議院選挙区第2支部」の政治資金収支報告書(2018〜20年分)を精査すると、毎年10月から12月にかけて「宣伝事業費」の「広報掲示板管理料」を計上。選挙区在住の複数の有権者に、1件1万2500〜8万円を支出していた。3年で計77件、総額は202万7500円に上る。
広報掲示板とは、議員ポスターを貼る掲示板のこと。果たして維持管理に1件数万円もかかるのか。そもそも、地元有権者に有料で“委託”する必要などあるのか。ある現職国会議員が言う。
「掲示板の管理は地元事務所の職員が行うのが通例です。そんなに頻繁に維持管理を必要としませんから、数万円のコストはかからない。維持管理名目で有権者にカネを配るなんて、下手したら“ワイロ”と疑われても仕方ありません」
確かに、実際には維持管理を行っていない地元有権者にカネを配ったら、選挙期間の有無にかかわらず、公職選挙法が禁じる「寄付」に抵触しかねない。抵触した場合、50万円以下の罰金に処される。そこで本紙は、収支報告書に記載された複数の有権者に実情を聞いた。
「確かにウチの前には掲示板が置かれていますけど、維持管理なんてしてませんよ。それは岡田先生の地元事務所の方がやってくれています。私たちは一切、タッチしてませんよ」(金沢市在住のAさんの妻)
「地元秘書がカネの入った封筒を持参してくる」
記載のある同市のBさんも「維持管理はしてません」と証言し、こう続けた。
「ウチは毎年、岡田さんの事務所から数万円のお金を頂いてます。『維持管理』ではなく『謝礼』名目です。毎年末ごろ、秘書の方がお金の入った封筒を持参して、『掲示板を置かせていただいてありがとうございます』とお礼しにきます」
維持管理の実態がないのに収支報告書に「維持管理料」と記載したのなら、政治資金規正法の虚偽記載に当たる恐れもある。岡田事務所に質問すると、文書でこう回答があった。
〈(掲示板は支援者宅の)屋外設置のため広報板やポスターなどに不具合がある場合は修理していただいたり、事務所にご連絡いただくことなどに対する、相当対価として『広報掲示板管理料』をお支払いしている〉
あくまで維持管理への対価を払っているとの説明だが、AさんやBさんの証言と食い違う。改めて証言内容について事務所担当者に電話で話を聞くと、こう答えた。
「石川は大雪の時期もありますから、掲示板が壊れたりした時に修繕してもらうケースが結構あるんです。『維持管理していない』『謝礼名目で金銭をもらった』というのは、その方たちが誤認しているということではないか。私どもとしては、あくまで『維持管理』への対価という認識です」
政治資金問題に詳しい神戸学院大教授の上脇博之氏はこう言う。
「『証言した方たちの誤認』とは、あまりに苦しい言い訳です。政治資金規正法や公選法に違反していないと言い張るため、支援者に責任転嫁しているように映ります。この説明では、法令違反の疑いは拭いきれません」
極めて“クロ”に近い。
  
 

 

●終わらぬ閣僚辞任ドミノ=@支持率なお低下なら秋葉復興相も… 11/27
岸田政権の閣僚辞任ドミノ、まだまだ終わりそうにない。寺田稔総務相の辞任で3人目となり、今度は秋葉賢也復興相に照準が移った。秋葉氏は国会で釈明に追われる中、復興庁は秋葉氏の福島視察出張を中止すると25日に発表。こんなことで政治が停滞するのは、国民にとって不利益と言わざるを得ない。
それにしても、影武者≠ニは…。長い間永田町をウォッチングしてきたが初耳だ。昨年の衆院選期間中、「秋葉けんや」と書かれたたすきをかけた若者が街頭に立っている写真が国会で野党側から提示された。名前の上部に小さく「次男」とかかれていたという。秋葉氏は「指摘されて、すぐに外したと聞いている」と釈明。事実であることを認めた。
公職選挙法では、たすきについて候補者本人が選挙運動のために用いる場合のみ許容するとしており、影武者≠ヘ選挙違反にあたる。
秋葉氏を巡っては、政治団体から地元事務所の賃料として母親と妻に支払われていた疑惑がまず表面化。さらに、接点を否定していた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体に、会費などとして選挙区支部から支出があったことも判明した。旧統一教会、「政治とカネ」に加えて選挙違反…。合わせ技一本≠ニいうつもりはないが、辞任に値するような要件がそろってしまった。国会答弁もおぼつかない様子で、国民の不信を買っている。
今後の世論調査で内閣支持率がさらに下落すると、秋葉氏も辞任に追い込まれる可能性がある。人心一新で内閣改造までささやかれ始めた。疑惑閣僚が1人ずつ交代していって、結果的に改造されていたということにならなければいいのだが…。
●オウンゴール連発の岸田首相 大臣更迭の判断 「戦術変更」が必要では? 11/27
「負の連鎖」というワードが、時の政権にのしかかる。旧統一教会との関係や失言、政治資金をめぐる問題で山際大志郎、葉梨康弘、寺田稔の各氏が、この1カ月の間に立て続けに大臣の職を追われた。
これまで数々の政権をピンチに陥れ、時に首相の退陣にも発展した「ドミノ辞任」だが、約30年、永田町をウオッチしてきて、1カ月の間に3人の閣僚がドミノで辞めた政権は、記憶にない。今、日本中がサッカーW杯初戦の森保ジャパンのドイツ撃破で持ちきりだが、「岸田ジャパン」は永田町でオウンゴール3発。さらなる連発も予想される。
もともと「政治とカネ」の問題が指摘された閣僚は、山際氏と寺田氏に加えて、今再び、更迭の可能性が高まる秋葉賢也復興相だった。しかし山際氏が辞任後、葉梨氏の失言問題が飛び出し、寺田氏の問題も大きくなるうちに、秋葉氏の問題は他閣僚の影に隠れるような形になっていた。寺田氏は11月20日に更迭。そうなれば再び秋葉氏にスポットライトが当たるのは分かっていたはずだが、この間、事実上“放置”された形に。自民党の人に話を聞くと、多くが「寺田氏が辞めたら秋葉大臣が標的になる」と話していたのに、今では新たな公選法違反疑惑や旧統一教会との接点の問題も出て、「手の付けられないような状況」(関係者)になっている。
秋葉氏は11月25日の衆院予算委員会で、想定通り野党の集中攻撃を浴びた。その場で、野党に抗議する場面があった。昨年の衆院選中、次男が候補者以外つけることが認められない候補者名入りのたすきをつけて「影武者」として街頭に立ったのは公選法違反ではないかと指摘された際、立憲民主党の大西健介氏が、次男とみられる人物が写った写真の紙を掲げた時だ。NHKで中継されており、多くの人の目に触れることを懸念したようで「こうしたテレビの時にふさわしいものではない」「掲示をしないということを含めて聞いていた。ひとこと抗議をしないと思い発言をさせていただいた」と述べた。
質問者ではなく、「外野」からのやじにも反応した。「問題が多いからだ」の声には「いち民間人が映っているから申し上げた」と身内をかばうような言葉もあったが、野党議員から「自分が批判されている問題の本質を理解しているのか」とあきれた声も聞いた。
秋葉氏は答弁の中で、自身が初当選した2005年衆院宮城2区の補欠選挙は、公選法違反による連座制の適用で、当時の民主党議員が辞職したのに伴うものだったことに言及。「法の順守やクリーン選挙には人一倍気をつけて活動してきた。疑念が生じたことは誠に残念。原点に立ち戻りたい」と強調した。
当時、連座制で辞職したのは、昨年の衆院選で17年ぶりに国政に復帰した立憲民主党の鎌田さゆり氏だ。連座制で宮城2区での立候補が5年間禁止された後、国政選挙や首長選の落選などを経て、昨年の衆院選で秋葉氏と対決。わずか571票差で小選挙区を勝ち、秋葉氏は比例復活当選となった。今回の「影武者」問題は、鎌田氏との戦いの熾烈(しれつ)さを物語るが、だからこそ疑惑の目が向けられた問題には、きちんとした説明がなければならない。
秋葉氏はこれまで「丁寧に説明させていただいている」と繰り返しているが「口調は丁寧だが、答弁の中身が丁寧なわけではない」と、野党関係者は語る。岸田首相は25日も説明責任を果たしてほしいとして野党の更迭要求をはねのけたが、これまで更迭した3人の閣僚と同様、目の前で説明内容を聞いているだけに、きちんとした説明かそうでないかを判断できる立場にある。しかし、これまでの3人は、いずれも「野党から更迭要求」とか「自民党内でも辞任論」などの動きが出た後の判断。今回も同じような流れをたどっている。周りに言われる前になぜ判断しないのだろう。
サッカー日本代表はドイツ戦で、前半から戦術(布陣)が変わった後半の2得点で逆転勝ちした。前半先制され、追い込まれた森保監督が戦術を変え、交代で送り出した選手の得点もあり、勝利につながったことが話題になった。岸田首相は、問題閣僚を抱えて辞めさせるタイミングが遅い。こちらはずーっと、同じ戦術だ。サッカーとは対照的に、チーム(政権)の足を引っ張る選手(閣僚)の存在も、チームをどんどん追い詰めている。
11月28日、29日と衆院予算委員会で再び質疑が予定され、秋葉氏が辞めていなければ、同様に秋葉氏への追及が続く。また寺田氏の後任に就任したばかりの松本剛明総務相にも、政治資金パーティーのパーティー券販売をめぐる疑惑が発覚した。追い詰められても追い詰められても、岸田政権では何度も同じ光景が繰り返され、それがオウンゴールにつながっている。
 
 

 

●閣僚辞任ドミノの岸田政権、第1次安倍政権末期に酷似 11/28
閣僚の辞任ドミノが止まらなくなってきた。山際大志郎・前経済再生相、葉梨康弘・前法相に続いて寺田稔・前総務相とわずかひと月で3人の大臣が辞任し、後任の松本剛明・総務相に政治資金問題が発覚、秋葉賢也・復興相と岸田文雄・首相自身にまで「政治とカネ」の疑惑が浮上し、政権は追い込まれている。
「第1次安倍政権の末期に酷似している」。そう指摘するのは政治ジャーナリストの野上忠興氏だ。
「安倍政権も岸田政権同様、政権発足当初は『プリンス登場』ともてはやされて支持率が高かったが、政治資金問題や失言で閣僚の辞任が相次ぎ、後任の大臣にも不祥事が発覚して4人の大臣が交代、支持率が急降下していった。現在の状況はそっくりだ。しかも、閣僚辞任のペースが当時より格段に速い。一気に追いつめられている」(同前)
官邸も機能不全に陥っている。
物価高騰対策の補正予算案をめぐっては、岸田首相は当初25兆円規模を想定していたが、萩生田光一・自民党政調会長の一喝で29兆円へと4兆円も上積みさせられ、山際氏の辞任問題では、首相は「決断が遅すぎる」と批判されて国会で異例の謝罪までさせられた。
「官邸が全く党を抑えられなくなった。政調会長は首相の言うことを聞かないし、国対委員長も首相を守ろうとしない」(官邸の中堅官僚)
こうした現象も第1次安倍政権の“官邸崩壊”を思い出させる。
岸田首相は「4人目の大臣辞任」が出れば政権の致命傷になると、12月にも不祥事を抱える大臣を一斉に入れ替える内閣再改造を検討しているが、8月の内閣改造から4か月あまりで組閣をやり直せば人事の失敗を自ら認めることになる。任命責任が一層厳しく問われることは間違いない。
「第1次安倍政権は内閣改造から1か月後に退陣した。岸田首相も再改造に踏み切れば後がない。かといって、首相にはもはや一か八かの解散・総選挙を打つ力も残っていないでしょう」(野上氏)
自民党内では「岸田内閣は年内いっぱいか、来年1月まで」(二階派幹部)との見方が広がっている。
●更迭秒読み秋葉復興相の次の“辞任ドミノ”候補は岡田地方創生相!  11/28
岸田首相はまたもや決断が後手に回って、自らの首を絞めることになりそうだ。野党の追及の矢面に立たされている秋葉賢也復興相のことである。
事務所費の親族還流疑惑に続き、秘書2人に選挙運動の報酬を支払った公職選挙法違反疑惑が報じられ、党の調査に「ない」と報告していた統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との接点まで見つかった。
25日の衆院予算委員会での答弁はボロボロ。公選法違反絡みでは、次男が選挙期間中に候補者本人の名前が記載されたたすきをかけていたことが明らかになり、「影武者がいるのか」と問いただされる場面も。無理筋の釈明に終始し、「もはやアウト」という空気が漂った。
その夜、予定されていた週末(27日)の被災地視察をキャンセルしたことで、「20日の日曜に辞任した寺田前総務相と同じパターンが繰り返されるんじゃないか」との情報が永田町を駆け巡った。
結局、日曜(27日)の辞任はなかったが、「更迭秒読み」なのは変わりない。週内のXデーが濃厚だ。
「予算委はきょうあすが衆院、本会議で補正予算案を通過させられれば、参院が30日、1日の方向。まだ4日もあるのに、あの答弁では秋葉さんは持たない。補正成立と旧統一教会をめぐる被害者救済新法の審議を引き換えに更迭か。すでに後手に回っているが、岸田首相がどのタイミングで決断するのか」(自民党ベテラン)
政界では非常識な「維持管理料」の実態
崖っぷちに立たされているのは秋葉氏だけではない。岡田直樹地方創生相も「政治とカネ」の問題がくすぶっている。
岡田氏が代表を務める政党支部は、2018〜20年、選挙区内の有権者に「広報掲示板維持管理料」として1件1万2500〜8万円を支出(掲示板1カ所あたり2500円)。日刊ゲンダイが先月末、支部の支出は公選法違反の疑いがあると報じて以降、国会で追及された岡田氏は「問題なし」と答えてきたが、疑惑はまだ晴れていない。
ポイントは維持管理料の妥当性だ。岡田氏は2500円の支払いについて「掲示板の『設置』と『維持管理』への対価として妥当な金額だ」と説明。総務省によると「設置」への対価は適法だが、「維持管理」については「維持管理した実態」がなければ、有権者への寄付に当たり違法の可能性がある。
日刊ゲンダイは、収支報告書に記載のあった複数の有権者から「維持も管理もしていない」という証言を得ている。立憲民主党の太栄志衆院議員も国会質問で同様の有権者の証言を突き付けたが、「匿名の方の発言にはコメントしない」とゴマカすばかりだった。
怪しい点は他にもある。収支報告書への記載が明らかに不正確だ。岡田氏は有権者への支出について「地域のリーダー格の方に複数の掲示板の管理料をまとめて支払った」と答弁。つまり、支出が1件8万円の場合、掲示板32枚分の維持管理料をリーダー格1人に支払い、地域の人に配ってもらったということだ。これでは誰に2500円が支払われたのか、収支報告書からは全く読み取れない。
ハッキリしたのは、岡田氏の「維持管理料」がいかに非常識だったかということだ。18日の衆院内閣委員会で立憲民主党の青柳陽一郎議員は「与野党含めいろんな方に維持管理料を支払っているか聞いたが、誰一人そういう人はいなかった」と発言。それもそのはず、これが認められれば、資金力がある議員ほど「維持管理料」と称した政治資金バラまきが可能になってしまう。
まさに、秋葉氏の後ろの「辞任ドミノ」候補の列に岡田氏が並んでいる状態だ。
「松本総務相も政治資金パーティーで会場の収容人数を上回るパー券を販売していた問題が炎上している。秋葉さんはある意味、野党の追及の“防波堤”になっている。辞めれば、追及が他の大臣に向かうのは必至です」(官邸事情通)
岸田首相は苦悶の表情を浮かべているに違いない。 
 
 

 

●岸田辞任ドミノの遠因 「パー券政治」のカラクリが日本政治をダメにしている 11/29
この1カ月で3人の大臣が立て続けに辞任に追い込まれ、岸田文雄首相本人にも空白領収書の問題が浮上した。旧統一教会問題に続き、岸田政権は今「政治とカネ」の問題でも危機に瀕している。
寺田稔前総務相のように、政治資金制度を所管する総務相自身の政治資金収支報告書が故人名義だったとなると、入閣時の「身体検査」がどれほど形骸化しているか嘆息する人も多いだろう。
かつてのロッキード事件のような億単位の金が飛び交う古典的贈収賄ではなく、政治資金収支報告書上の形式的な虚偽記載にすぎないという指摘もある。しかし、その矮小さはむしろ日本の民主政が危機に直面していることを物語る。
今回の政治とカネ問題に共通するのは、政治資金のずさんな処理と問題発覚後の説明の不十分さだ。
選挙後15日以内に提出しなければならない選挙資金の収支報告だけでなく、通常の政治活動の資金繰りを報告する年に1度の収支報告も、多忙を極め人手不足が恒常化する多くの政治家事務所にとっては負担が大きく、ずさんな処理の温床となる。収支報告時の外部監査制度は形骸化しており、政治家の側にも内部統制の発想は乏しい。
政治家は政治資金パーティーを開催して活動資金を捻出する。政党から支給される交付金では足りず、さりとて実名住所が公開される個人献金を嫌う人は多い。そこで20万円(2万円券10枚分)以下であれば匿名で処理できる政治資金パーティーのチケット(パー券)をできるだけ多くの支援者に売る政治文化が、与野党問わずはびこっている。
パー券売上額と開催実費との差額を収益とすることは政治資金規正法で認められており、差額の極大化を狙って実際の収容者数よりも多い枚数のパー券を売りさばく水増し販売も横行している。
政治家にとって「支持の拡大」すなわち次回選挙で投票してくれる地元有権者の獲得と並んで、「支援の拡大」つまり必ずしも選挙区での投票とは関係のない在京企業経営者や業界団体などからの政治資金獲得は重要である。
親から政治団体を継承し実質的に相続税を払うことなく豊富な資金を受け継ぐ2世や3世議員、あるいは事業で成功した資産家ではない普通の議員は、天下国家を論じる前に日常の政治資金を獲得することを優先しがちだ。
そのためパー券譲渡という「薄い利権」をめぐる関係構築が重視され、支援者の要望陳情を処理し「報恩感情」に訴える「小さな政治」に非世襲政治家は翻弄される。政治とカネの問題を解消すべく、小選挙区比例代表並立制と政党交付金制度を導入した1994年の政治改革の趣旨は、30年近くたった今なお実現には程遠い。
「大臣ポスト格差」はある
死刑ハンコ発言で更迭された葉梨康弘前法相は「法務大臣になってもお金は集まらない、なかなか票も入らない」とパーティーで述べた。確かに大臣ポストの違いによる政治的吸引力の差は存在する。
例えば21年度一般会計予算は、国土交通省が6兆578億円、厚生労働省に至っては33兆1380億円と巨額であるのに対して、法務省は7431億円にすぎない。
許認可に関わる行政処分の根拠法令数は、国土交通省が2805件、厚生労働省が2451件であるのに対して法務省は360件。関連業界の規模と業界に対する影響力には雲泥の差がある。
葉梨前法相の発言が「大臣をやると家が建つ」という私腹肥やし型の古典的腐敗に言及したのではなく、大臣格差による政治的吸引力の差とその帰結としてのパー券収入の多寡を指しているとしたら、この自虐的な嘆きは現代日本における「小さな政治」の本質を吐露したものとも言える。
民主政において多数派の決定に国政を委ねることが正当化されるには、少数派が納得できるだけの説明が議論の場で提供されることが必要となる。政治家の説明責任は本質的な要請であり、その政治家が誰によって支えられているかを示す財政的基盤の開示は健全性確保の観点から重要だ。
今回の政治とカネをめぐる問題は政治資金のずさんな処理だけでなく、発覚後の当人の説明が極めて不十分だった点にも批判が集まった。
寺田前総務相は「違法性はない」という抗弁に終始して自沈した。それはその場しのぎの対応で国民の信頼を損ねたというだけでなく、政治家の財政的基盤についての説明責任と透明性の確保が民主政においてどれほど本質的に重要なのかが理解されていないことが露呈したからだ。
イギリスでもジョンソン政権崩壊の遠因となり、アメリカでもドナルド・トランプ前大統領の納税不正問題が指摘されている。現代のデモクラシー国家において政治とカネに関わる不祥事の処理を誤れば致命傷になる。
●「3人もでしょ。ドミノでしょ。腹立たしいわね」辞任ドミノが続く岸田政権 11/29
辞任ドミノが止まらない岸田内閣。相次ぐ辞任に街の声を聞きました。
「3人の閣僚が辞任しました。岸田内閣は、即刻総辞職すべきです」立憲民主党・小沢議員
「政府一丸となって国政の運営にしっかりと取り組むことによって国民の信頼を取り戻し、職責を果たして参りたい」岸田総理
街の声は… 「3人もでしょ。ドミノでしょ。腹立たしいわね」「なんか行き詰まっているんじゃないか」「岸田さん自体、苦しい境地にあるのかな」
自民党支持者からも厳しい声が。
「首相も言われている任命責任は当然あると思う。大臣の方やそれぞれの方が本来やるべき仕事をしっかりやってもらえるようにしてほしい」自民党支持者
一方、地元選出の国会議員は。
「統一教会や政治資金の問題などいろんなことがあるので、われわれも反省しながらちゃんとやっていかないといけない」自民党・鈴木淳司衆議院議員
こう話すのは地元、愛知選出の自民党・鈴木淳司議員。政権内のごたごたが続くものの、すぐに解散総選挙はないと予想していました。
「解散できる状況じゃない。腰を落ち着けて(政治課題について)議論しなくてはいけない。新しい選挙区割もあるので(調整に)時間がかかると思うし」自民党・鈴木淳司衆議院議員
解散できない理由の1つ…それは、いわゆる一票の格差を是正するために実施された、小選挙区の区割り変更問題がまだ党内で解決していないためです。鈴木議員はいま、瀬戸市から大府市にわたる愛知7区から選出されています。
しかし、今回の変更により愛知に16区が新しく割り当てられ、隣の6区選出の丹羽秀樹議員と地盤を分け合う形に。党内での候補者の調整はまだこれからだということです。
一方、野党第一党の立憲民主党・近藤昭一議員は。
「看過できない問題である不祥事や大臣に関わる問題点をまず正さないといけない」立憲民主党・近藤昭一衆議院議員
疑惑を徹底追及の構えです。さらに、解散総選挙にまで一気に持ち込みたい意気込みです。
「解散をし、野党が強くなる、政権交代までもっていくことで事実を明らかにする。(政権を)変えていかないといけないという期待と要求は(国民から)すごく感じる」立憲民主党・近藤昭一衆議院議員
●影武者?公選法違反?教団と接点?秋葉復興大臣の疑惑次々 11/29
"辞任ドミノ"はさらに続くのか。秋葉復興大臣をめぐり疑惑が次々浮上。公設秘書が報酬を得て選挙活動をしたとの疑惑、旧統一教会の関連団体イベント参加疑惑、家族が「秋葉けんや」と書かれたタスキをかけていた"影武者"疑惑…。
「なぜあんなに脇が甘いのか、もうもたなそうだ」と与党幹部から冷ややかな声も。TBSスペシャルコメンテーターの星浩さんは、「支持率低下で行き詰まった局面の打開策の1つが内閣改造。岸田総理は慎重に日程調整しているのでは」と解説。岸田総理のリーダーシップに疑念が生じている状況である一方、「安倍政権が長く続いた影響で"次の総理候補"が育っていない現状もある」と指摘しました。
"影武者"疑惑や公選法違反疑惑も 国会で追及集中、与党からも冷ややかな声が
ホラン千秋キャスター / 秋葉大臣について疑惑が次々と浮上しているということで29日も国会で野党が追及をしました。
   2017年
秋葉大臣の政党支部が、秋葉大臣の義理の兄が代表だった政治団体におよそ600万円を寄付。この政治団体に実態がなかったのではないかという疑惑があるんです。こちらについて本人は否定しています。
   2021年
衆議院議員選挙で公設秘書が報酬を受け取って選挙活動をしていたのではないかという疑惑。事前に選挙管理委員会に届け出をすれば不適切とならないわけなんですが、届け出を出さずに選挙活動をしていたんじゃないかということなんです。一部週刊誌が「公職選挙法違反の疑い」を報道し、この疑惑に関しても本人は否定しているという状況です。
   秋葉大臣は旧統一教会との接点をずっと否定していましたが、関連団体のイベントに参加したのではないかという疑惑が浮上しました。本人は認識がないと否定しているんですが、収支報告書に旧統一教会の関連団体へ会費2万4000円を支出したということが記載されており、これに関して秋葉大臣は「雑誌の購読料だった」というふうに訂正したんですが、購読料をどう計算しても2万4000円にはならないということで、実際何に使われたかというのはまだわからない部分があるということなんです。
   2021年
衆議院議員選挙で秋葉大臣の次男が、秋葉大臣の名前である「秋葉けんや」というたすきをかけて選挙活動をしていた「影武者」疑惑。本人以外がたすきをつけて選挙活動をするというのは公職選挙法違反になります。ただ、このたすきをよく見ると、上の方に名前と比べるとやや小さく「次男」というふうに書いてあります。秋葉大臣は、次男が一時的に自分の代わりにたすきをかけていたということ自体は認めているんですが、このたすきについて野党から追及が相次ぎました。
立憲民主党 渡辺創 議員「『次男』と書かれたたすきは、次男が作るようスタッフに指示をした?」
秋葉大臣「自分で(次男と)書いたということだと思います」
他にも、週刊誌が報じた疑惑がいくつかあり、その中には影武者で「秋葉4号」までいたのではないかなどが書かれており、疑惑を追及しました。
立憲民主党 渡辺創 議員「『秋葉4号』まで存在した?」「県議時代は(秋葉氏の)弟が("影武者"を)つとめていた?」「メガネをかけて極端に太っていなければ("影武者"の)資格があった?」
秋葉大臣「私は一切そのような事実は承知しておりません」
秋葉大臣がこの後いったいどんな動きを見せるのかというのは注目されていますが、辞任となるとドミノがさらに続くということになります。
   山際前経済再生担当大臣(10月24日辞任)
    旧統一教会との関係
   葉梨前法務大臣(11月11日辞任)
    "死刑のはんこ"発言
   寺田前総務大臣(11月20日辞任)
    "政治とカネ"問題
秋葉大臣が4人目の辞任となるのかどうか。様々な疑惑が上がっていることに関して、与党幹部も「なんであんなに脇が甘いのか。もう、もたなそうだね」というような冷ややかな声も聞こえているということなんです。
止まらない“辞任ドミノ”…解散?内閣改造?岸田総理の次の一手は?
これまで辞任が続いているので、内閣改造が行われるのではないかというような話が浮上していたんです。その件に関して11月24日放送のNスタでTBSスペシャルコメンテーターの星浩さんは「岸田総理は11月23日に自民党の茂木幹事長と極秘会談。年末年始の内閣改造に慎重な姿勢になった」ということなんです。ただ、これまでの"辞任ドミノ"があるので、「内閣改造」に対する総理の考えに変化があるのかどうかという点を星さんに伺います。
TBSスペシャルコメンテーター星浩さん: 今の局面は非常に支持率も下がり、かなり行き詰まってきている。こういうときに局面を打開するのはふたつしかない。ひとつは、衆議院の解散総選挙で一気に打開するということですが、今解散したら大変なことになり自民党惨敗する可能性もありますから、それができないとなるとやっぱり内閣改造と自民党の役員人事を岸田総理はしたいんですね。ただ、国会が延長になるのかどうかとか、それから年末年始の外遊を考えていて、インドとかワシントンに行ってバイデン大統領と会談もしてみたいというのがあって、その日程調整がパズルのようになっていてそこで今、慎重にその日程調整を進めているというところだと思います。
井上貴博キャスター: 考え方としては、例えば解散しても野党も全然勝てないとなると、相対的に自民党が少し減らすぐらいでいいんじゃないかという考え方も出てくるんでしょうか。
星浩さん: この逆風は今までなかったような逆風で、そういう意味では博打を打てるかどうかというと岸田総理はそういうところは非常に慎重なので、そこまではちょっと踏み切れないと思います。
井上キャスター: 岸田総理にとっては一難去ってまた一難というか、どんどんボロが出てくる。内閣改造を8月にしたばかりですから。リーダーとして政府・自民党内をどこまでグリップできてるものなんでしょうか。
星浩さん: 実際には岸田総理にとって代わる総理候補ってなかなか見当たらないものですから、すぐ岸田総理をおろしてどうこうってことはないんですけど、例えば秋葉大臣の件なんかも、旧統一教会との関係について自民党の多くの議員は正直に申告して接点について批判されたりしていますけど、秋葉大臣の場合は、いくつかそれを隠しておいて閣僚入りをしてるという流れがあります。そういう人に対して岸田総理が思い切った処置ができないということに対して、リーダーシップに疑念がかなり強く出ているという状況だと思います。
井上キャスター: 旧統一教会と関係がなくて、失点の少ない議員自体が自民党内に少ないという現状があるんだと思いますが、岸田総理で本当にいいのか、派閥の闘争といいますか、岸田総理は多分自民党内でもそんなに力は強くない。まだ「他の人を」という流れではないんですね。
星浩さん: よく言われるのは、安倍政権で長期政権が続きましたので、なかなか次を狙う人は育ってこなかった。例えば財務大臣というのは、次の総理のステップポストなんですが、ずっと麻生太郎議員がやっていたものですから、財務大臣を経験した自民党の中堅リーダー候補はいないんですね。自民党の人材を育ててこなかったというツケが今になってブーメランのように跳ね返ってきてるという面はあります。
●「これ乗り越えれば攻勢転じるチャンスも」総理“救済新法”めぐり前のめり? 11/29
旧統一教会の被害者救済新法をめぐり、岸田総理は「寄付に関する念書を書かせた場合、違法性を示す要素になり得る」と踏み込みました。
政治部の原慎太郎記者に聞きます。
(Q.野党から「まだ不十分」だと指摘されている『救済新法』ですが、岸田総理は、今の国会で成立させようと、必死になっている様に見えますが、どうでしょうか)
やはり世論の逆風を意識していると思います。閣僚の“辞任ドミノ”で、岸田総理にとっては、厳しい国会運営が続いています。岸田総理は、周辺に対して「とにかく国会を早く終えて、政権の重要課題を前に進めないといけない」と語っていて、「早く次の段階」に進みたいというのが本音です。
終盤国会の最大の課題である『救済新法案』を1日も早く成立させて、けりを付けたいと考えています。
実際に、29日の自民党の総務会で了承されましたので、12月1日にも閣議決定というスピード感で手続きを進めています。上向く要素がないなかで、岸田総理としては、まずはこの国会を乗り越えれば、攻勢に転じるチャンスも出てくるとみています。
(Q.税制の改正や来年度の予算編成、日本の防衛など、たくさんあります。どう政権を浮上させていく方針なのでしょうか)
支持率が低下して以降、岸田総理はことあるごとに「1つ1つ政策で結果を出していくしかない」ということを周辺に語っています。まず、年末に向けて、税制改正や来年度予算の編成、安全保障関連3文書の改訂や防衛費の増額、GX(グリーントランスフォーメーション)の推進に向けた原発の再稼働など、内政の重要課題が待ち構えています。いずれも、大きなテーマですが、政権の基本的な姿勢を示して、国民の関心を政策に向けるチャンスにもなります。
さらに、年明けには、ワシントンでの日米首脳会談や、世界のリーダーが集まるダボス会議への出席を検討しています。来年、日本はG7の議長国ですから、5月の広島サミットに向けて、各国を訪問することを検討していて、内外にリーダーシップを示して“外交の岸田”を印象付けたい考えです。岸田総理としては、まさに今、この年末から年始にかけてのカレンダーのパズルを1つ1つはめ込んで、反転攻勢に向けた弾込めをしているという状況です。
●3大臣「辞任ドミノ」で政権の危機、一番説明責任を果たしていないのは誰? 11/29
山際大志郎前経済再生相、葉梨康弘前法相に続き、寺田稔総務相も辞任に追い込まれた。
旧統一教会とのただならぬ深い関係、死刑執行に関するとんでも発言、政治資金を扱う総務省のトップが政治資金規正法に違反するような行為をしていた等々、3人の行状はどれもがあきれ果てたものばかりだった。
岸田文雄首相は、そのたびに「丁寧に説明責任を果たしてもらいたい」と、なんとかの一つ覚えのように繰り返してきた。だがこの3人の辞任理由をどう説明するのか。山際氏の場合なら、「旧統一教会とのズブズブの関係を、具体的に、正直に語りなさい」とでも言うなら、まだ分かる。だがこれができないから辞任に追い込まれたのだ。丁寧な説明など無理ということだ。
葉梨氏の場合も同様だ。葉梨の問題発言の内容というのは、「法務大臣というのは、朝、死刑のはんこを押して、昼のニュースのトップになるのはそういう時だけという地味な役職だ」「外務省と法務省は票とお金に縁がない。法務大臣になってもお金は集まらない。なかなか票も入らない」というものだ。
これをどう説明しろというのか。説明など聞く必要もない愚かな発言だ。即刻、罷免するしかないものだった。森喜朗元首相などはその最たるものだが、自民党政治家はパーティーや講演会などで“受け狙い”で舌禍事件をよく引き起こす。葉梨氏の場合もその典型だ。
寺田稔前総務相の場合はどうか。関連する政治団体「寺田稔竹原後援会」が故人を会計責任者として収支報告を行っていた。それだけでなく11月21日付朝日新聞によると、その後援会の2014〜2020年の代表者欄に下見勝二氏の名前が記載されていたのだが、下見氏は「ここ10年近く後援会の仕事はしておらず、収支報告書に自分の名前があることも知らなかった。こんなめちゃくちゃな話はない」と憤っている。
これも丁寧な説明というものではない。いかに杜撰(ずさん)な政治資金収支報告書だったかというだけのことだ。
辞任ドミノは続くのか
3人で終わりかと思ったら、また出てきた。秋葉賢也復興相だ。
秋葉氏は、選挙で公職選挙法にのっとって報酬を払うことができる車上運動員(俗に言うウグイス嬢など)に公設秘書を登録し、報酬を支払っていたことが判明した。だが選挙運動の原則はボランティアである。ましてや給料をもらっている秘書が選挙運動を積極的に行うのは当然のことであり、報酬を上乗せするというのは普通あり得ない。
見解を問われた岸田首相も「自分の秘書を車上運動員として使ったことは一度もなかった」と答弁している。
車上運動員や運転手、事務員など報酬が認められた仕事以外に報酬を支払うと買収と見なされ、政治家本人にも連座制が適用され失職することもある。現に、電話作戦の人に報酬を支払ったため失職した国会議員もいる。軽い問題ではないのだ。
昨年(2021年)の衆院選で秋葉氏の次男が選挙区内で秋葉氏の名前が入ったタスキをかけ、まるで影武者のような行動を行っていたことも判明している。また旧統一教会との関係でも接点が新たに判明した。自民党内からも「公職選挙法の問題はまずい」「常識的に考えれば切った方がいい」という声が上がっているという(11月26日付朝日新聞)。
それにしても寺田氏といい、秋葉氏といい、「法相は金にならない」発言をした葉梨氏といい、なんという姑息で小さな政治家なのか。昔の自民党議員は、こんなチマチマしたことはやらなかった。これで「国家国民のため」などと言えるのか。
小選挙区制を導入する際、心配されたことの1つが、公認権を持つ党執行部が力を持ちすぎるということだった。みんなが上ばかり向いている“ヒラメ議員”になるからだ。現に今の自民党はそうなっている(日本共産党は、選挙制度にかかわらず執行部が絶対的な力を持っているが・・・)。
一番説明責任を果たしていないのは岸田首相
4人の大臣の問題で一番説明責任を果たしていないのは、実は岸田首相である。
岸田首相が言ったのは、「説明責任を果たすように」ということと、「辞任の申し出があったので認めた。任命権者として、厳しい反省の上に再出発しなければならない」と言うことだけだった。3回連続で「任命責任を重く受け止めています」と平然と言える岸田首相というのは、相当な鉄面皮である。普通なら恥ずかしくて、あんな平然とした態度はとれないものだ。
しかし、これでは説明責任を果たしたことにはならない。少なくとも、なぜ罷免ではなく、辞任の申し出があるまで待ったのか。野党はもちろん、与党内からも罷免の声は上がっていた。だが岸田首相はそうしなかった。それはなぜなのか。
最低限、これぐらいははっきり説明する責任がある。そうでなければ、「任命責任を重く受け止めています」というのもその場限りの口先だけということになる。
支持率が下がり続ける最大の責任は首相自身にあり
岸田内閣の支持率がどの調査でも最低を更新し続けている。旧統一教会と自民党の抜き差しならない関係が明るみ出たこともその大きな要因である。安倍元首相の国葬儀も大きい。それ以上に大きな要因になっているのは、岸田首相自身の首相としてのあり方であろう。
10月に行われた産経新聞・FNNの調査では、「支持しない」という理由に、「実行力に期待できない」と回答した人が51%に上っている。朝日新聞の調査では、「岸田首相は、リーダーシップを発揮していると思いますか」という問いに対して、69%の人が「発揮していない」と回答している。支持率低下の最大の要因がここにあるのだ。
なぜ実行力やリーダーシップに疑問符がつけられているのか。問題のある3大臣を罷免にしなかったこともある。だが、それより大きいのは、岸田首相が何をやろうとしているのか国民にはさっぱり伝わってこないからだ。
たとえば総額39兆円という過去最大規模の総合経済対策を閣議決定した。これによって2023年1月から9月までの光熱費・ガソリン代負担を4万5000円程度軽減することが盛り込まれた。産経・FNNの調査では、「とても期待する」「ある程度期待する」が48.5%になっている。だが「あまり期待しない」「まったく期待しない」が50.7%に上っている。朝日の調査でも、「あまり評価しない」「まったく評価しない」が50%になっている。
岸田首相が世界を飛び回り、国政にも懸命に取り組んでいることを国民は知らないわけではない。だが評価はしていない。なぜか。肝心の何をやっているのかが見えてこないからだ。
最近ニュースを見てつくづく思うのだが、バイデン米大統領やマクロン仏大統領などの話からは何をしようとしているのかが伝わってくる。
だが岸田首相にはそれがない。旧統一教会問題でも、岸田首相自身が厳しく糾弾し批判したことはない。安倍氏と旧統一教会の関係の調査もしない。これでは旧統一教会の被害者救済と言っても信用されないのは当然なのだ。
だから総合経済対策にしても、巨額の予算を組んだが、一言で言えばバラマキだ。これで支持率を上げようと考えているとすれば本末転倒もはなはだしい。そもそもこの財源はどうまかなうのか。国民はそこが知りたいのはそこだ。
全国旅行支援を来年も続けると言うが、この支援を使えるのは金と時間に余裕がある一部の人だけだ。国民は、なんでももらえるならありがたいと思っているわけではない。
岸田首相率いる宏池会は、池田勇人(故人、元首相)が立ち上げ、大平正芳(故人、元首相)らが引き継いできた。池田氏や大平氏は、国民を説得し、惹きつける力があった。なぜその力があったのか。政治に真剣に取り組んできたからだ。岸田首相には、この政治姿勢を学んでもらいたい。
●岸田内閣・閣僚辞任ドミノで露呈、「清濁併せ呑んでこそ政治家」の大誤解 11/29
岸田内閣の支持率が下落し、30%を割り込んだ。「政治と宗教」「政治とカネ」の問題や失言で、閣僚が相次いで辞任しているのだから無理もない。かつて50%台の高支持率を誇った岸田内閣は、なぜ人気が急落するとともに、閣僚の「辞任ドミノ」を招いたのか。その本質的な要因を考察する。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
宗教・カネ・失言…問題続出で 「閣僚の辞任ドミノ」止まらず
岸田文雄内閣の支持率下落が止まらない。マスメディアによる直近の各種世論調査では、内閣支持率が危険水域と呼ばれる30%を割り込んでいる。「不支持率」が50%を超えた結果もある。
内閣発足時から今夏まで、岸田内閣の支持率は50%台で推移していた。そして岸田首相は、2021年の衆議院議員総選挙(衆院選)と22年の参議院議員通常選挙(参院選)で連勝。日本政治では珍しく、国政選挙がない「黄金の3年」を手にした。
にもかかわらず、内閣支持率が急落するのは異常事態だ。
事の発端は、「安倍晋三元首相銃撃事件」であった。容疑者の母親が旧統一教会信者だったことから、政治と旧統一教会の関係が次々と明るみに出た(本連載第309回)。
それ以降、自民党議員が旧統一教会関連の会合に出席したり、祝電を送ったりしていたケースが続々と発覚した。
中でも、山際大志郎・前経済再生担当相は、教団との関係について新たな疑惑が浮上するたびに「記憶していない」「覚えていない」を連発。後から事実を追認する「後出し」対応を繰り返して批判を浴びた。山際氏は結局、最初に事実が発覚してから2カ月後の今年10月に辞任を余儀なくされた。
さらに、宗教関連だけでなく「失言」や「政治とカネ」の問題も目立ち、いわゆる「閣僚辞任ドミノ」が止まらない状況だ。
11月に入ると、葉梨康弘・前法務相(当時)が「法務大臣は死刑のはんこを押したときだけニュースになる地味な役職だ」と、法務大臣の職や死刑を軽んじる失言をした。岸田首相はギリギリまで葉梨氏を続投させる意向を示したが、かばいきれず、事実上の更迭となった。
追い打ちをかけるように、今度は寺田稔・前総務相が政治資金問題で辞任した。寺田氏の政治団体が、地元・広島県内の事務所を共有する寺田氏の妻に、賃料として9年間で約2000万円を支払っていたと週刊誌が報じるなど、政治資金の問題が次々と指摘されたことが引き金になった。
加えて、岸田首相本人にも、「選挙運動費用収支報告書」に添付した領収書94枚に、宛名もただし書きもなかったことが判明し、公職選挙法違反の疑いがあると指摘された。
この手の閣僚や政治家のスキャンダルは、他にも数多く発覚しており、枚挙にいとまがない。
その中には「政治とカネ」「政治と宗教」に関する深刻な問題もあるが、必ずしも重大とはいえないものも混ざっている。
要するに、メディアが重箱の隅を突き、揚げ足を取り、新しい問題を見つけては報道し、岸田内閣を追い詰めているのだ。それが支持率低下の一因になった可能性も否定できない。
「辞任ドミノ」を招いた根本的要因は 岸田内閣の初動の悪さだ
だが、この状況を招いた「そもそもの要因」は、安倍元首相銃撃事件が起きた後の、岸田内閣の初動が悪かったことに尽きる。いわば「自業自得」なのだ。
容疑者の動機が明らかになり、「政治と宗教」の問題が浮上してきた当初、岸田首相や茂木敏充自民党幹事長は、自民党と教団の間に「組織的関係はない」と強調した。
「党所属議員が旧統一教会との関わりをそれぞれ点検して、適正に見直す」と説明し、個々の議員の責任だとして、党の責任を回避しようとしたのだ(第314回・P4)。
しかし、それをあざ笑うかのように、国会議員だけではなく、地方の首長・地方議員・地方自治体に至るまで、旧統一教会関連団体との深い関係が明らかになっていった。
私は最初から、岸田首相や茂木幹事長の主張に異議を唱えていた。教団と党の関係は「組織的な関係」そのものであり、責任が党にあるのは明らかだったからだ。
その「組織的な関係」がどのようなものか、詳しく説明していこう。
「タダの人」にならないために 教団との付き合いが親密に
新人候補者が初めて選挙区に入るとき、党や派閥の幹部、地元のベテランのスタッフから、支持団体など票を入れてくれる組織や人にあいさつするように指示される。
学校の同級生くらいしか地元に知り合いがいない新人候補者は、勝手がわからず、言われるままに組織や人に頭を下げる。こういう支持団体の一つに旧統一教会がある。そこから候補者と教団の付き合いが始まるのだ。
新人候補者といえども、旧統一教会が霊感商法など「反社会的」な活動をしてきたことは当然知っているはずだ。だが、発言権のない新人に、支持団体との付き合いを拒否することなどできない。初当選後も、容易に関係を切ることはできない。
結果として、旧統一教会関連団体のイベントへの出席やあいさつ、祝電を続けることになる。逆に、教団関係者に政治資金パーティーの券を購入してもらうといった付き合いも続いていく。
「政治家は、選挙に落ちればタダの人」といわれる。もし新人候補者が当選した場合は、「タダの人」に逆戻りしないために、グレーな関係性はますます濃くなっていく。
要するに、自民党と旧統一教会の関係は、「党主導」そのものであり、個々の議員に主体性があるとはいえない。自民党では、各業界団体の票だけでは当選が難しい議員について、旧統一教会の票を割り振っていたという指摘があるくらいなのだ(第309回・p4)。
岸田首相や茂木幹事長が、自民党と教団の「組織的関係」を否定し、個々の議員の責任を押し付けたのは間違いだった。党の責任逃れであり、うそだといえる。メディアの追及によって、綻びが生じるのは当たり前なのだ。
その上、茂木幹事長は旧統一教会との関係を絶てない議員に「離党」を求める可能性にも言及した。結果として、恐れをなして本当のことを隠す議員が多数出てきてしまった。そこに「あら探し」を狙うメディアが群がり、ごまかしが次から次へと暴かれた。
私は、この問題の初期段階に、岸田首相が「党が旧統一教会との関係を主導した責任」を認めるべきだと主張してきた。そして、「個別の議員が自らの意思で教団との関係を拒絶するのは難しかった」と説明して、議員を守るべきだと主張してきた。
この問題を解決するための最適解は、首相の主導によって宗教法人法に基づく「質問権」を行使することではないだろうか。
旧統一教会の宗教法人格の認可を再審査し、場合によっては「宗教法人」としての認可を取り消すことも辞さない姿勢で接し、旧統一教会に変化を求めることしか現実的な解決はないはずだ。
ただし、この問題は、本質的には岸田首相や現在の党執行部だけの責任ではなく、過去の自民党から連綿と続いてきた体制や風土に起因している。そこが、解決に向けた「かじ取り」の難しいところだ。
それでも、岸田首相が先人に忖度(そんたく)することなく、歴史的背景も含めて教団との関係性を説明し、解決に向けて誠実に取り組めば、今のように批判は広がらなかっただろう。岸田首相が初動を誤ったことのツケは非常に大きかったのだ。
「霊感商法騒動」から時がたち 岸田首相らの危機感が薄れていた?
国のトップである岸田首相ともあろうものが、なぜこうした道を選ばず、「組織的関係を否定する」という小手先の対処に終始し、「辞任ドミノ」を招いてしまったのか。
あくまで私の見立てだが、岸田首相ら幹部は、政治と旧統一教会の問題を、閣僚が辞任するほど深刻な問題とは考えていなかったように思う。
旧統一教会による「霊感商法」は、確かに20年ほど前に大きな社会問題として取り沙汰された。だがそこから時がたち、メディア等で報じられるケースは減った。「宗教2世」の問題が表面化することもなかった。
また旧統一教会側も、その後は体制を是正して「近代化」したと説明していた。岸田首相や党幹部はこれをすっかり信じていたのだろう。
そのため、安倍元首相暗殺事件をきっかけに自民党と教団との関係が批判を浴びても、岸田首相は心のどこかで「一時的なもの」「旧統一教会の問題は終わったこと」だと楽観的に考えていたのかもしれない。
教団との接点が発覚した大臣や政治家も、「自らが積み上げてきた実績と評価を『些末(さまつ)な問題』で失いたくない」という思いがあったのだろう。そう考えると、彼らの対応が後手に回ったことにも合点がいく。
どんなに優秀な政治家でも 世襲でなければ選挙に弱い
では、日本の政治家はそもそも、なぜ宗教団体に頼らないと集票できないのか。ここからはその根本的要因についても考えていきたい。
私の意見では、その要因は世襲議員とその他の議員の「格差」である。
世襲議員は、金銭面・集票面の両方で親の基盤を受け継ぎ、選挙に強い。そのため、宗教団体から支援を受ける必要はない場合が多い。
世襲議員である河野太郎氏が「霊感商法対策の担当大臣」であることは象徴的である。
その一方で、非世襲議員は、どうしても基盤の面で世襲議員に劣る。旧統一教会との接点が発覚した政治家も、どちらかというと「優秀だが、選挙に弱い」人物が多い印象だ。
一連の問題で最もやり玉に挙げられ、辞任を余儀なくされた山際氏は東京大学大学院出身と優秀だが、世襲ではない「たたき上げ」だ。
旧統一教会との関係が取り沙汰され、8月の閣僚人事で閣外に去った、前経済安保担当相の小林鷹之氏(東京大学卒・ハーバード大学大学院修了)もサラリーマン家庭の出身である。
日本の政治では、どんなに優秀な人でも基盤が弱いと選挙に勝てない。そのため、旧統一教会のような「集票マシーン」に支えられねばならない。
「政治とカネ」の問題においても、非世襲議員は世襲議員と比べると、政治資金を集める上での人脈に大きなハンデを負っている。「泥水をすする覚悟で、どんな手段を使ってでも基盤を強化したい」という考えに至るのも、一応は理解できる。
ただ余談だが、冒頭で述べた寺田稔氏は、池田勇人元首相の孫娘を妻に持つ。例外として、強固な基盤を持ちながら不正に手を染める政治家が一定数いることも書き添えておく。
話を戻すと、金銭・集票の両面で、非世襲議員の基盤の弱さには同情すべき点がある。しかし、だからといって宗教団体と深く関わったり、カネの面で不正をしたりといった所業が許されるわけではない。
「清濁併せ呑む」の意味が 拡大解釈されている
日本には、古くから「清濁併せ呑んでこそ政治家だ」という概念が存在するように思う。だが、この言葉の意味は、政治の世界では大きく誤解されているようだ。
「清濁併せ呑む」というたとえは、本来は「善人・悪人を問わず、誰でも分け隔てなく受け入れる」という意味で、リーダー的人物の「器の大きさ」や「心の広さ」を表現する際に使われる。
それが一転、政治においては「良いことだけでなく、悪いこと(またはグレーな手段)に手を染めてこそ一人前」と、悪事を肯定したりたたえたりする方向で拡大解釈されている印象だ。
繰り返しになるが、政治の世界には出自による「格差」があることは事実だ。だが、非世襲というハンデを負いながら政治家になることを決めたのは、他でもないその人自身である。非世襲であることは、どんな手段を使っても許されるという「免罪符」にはならない。
こうした政治家像を是とする風潮は、今の世の中には適合しない。閣僚の「辞任ドミノ」が続く今こそ、一人前になる上で「不正」や「グレーな手段」が本当に必要なのか、全ての政治家に自問自答してもらいたい。
●止まらぬ逆風にもうヘロヘロ…岸田首相 11/29
岸田文雄首相が大物議員≠ニの会談を重ねている。臨時国会(12月10日会期末)は補正予算案など重要課題を抱えるが、閣僚の「辞任ドミノ」などで内閣支持率は続落しており、政権運営への協力や助言を求めたとみられる。年末までの国家安全保障戦略など「安保3文書」改定も控え、岸田首相は野党を抱え込む動きも見せている。
「最近の色んな動きを報告するとともに、意見交換した」
岸田首相は28日午後、議員会館で菅義偉前首相と会談後、記者団にこう語った。
醜聞直撃で1カ月で閣僚3人が辞任したうえ、自身の「空白領収書」問題も発覚するなど、岸田首相は逆風にさらされている。1年前の「菅降ろし」の口火を切った負い目はあるが、わらにもすがる思いのようだ。
岸田首相はこの日、自民党の麻生太郎副総裁や、茂木敏充幹事長とも意見交換したが、最近、党内外の有力者との会談を続けている=別表。
野党の攻勢を招いた自身の政権運営について、平身低頭、陳謝に徹しているという。
一方で、野党への歩み寄りもみられる。
防衛費増額や「安保3文書」改定の議論では、日本維新の会の馬場伸幸代表や、国民民主党の玉木雄一郎代表らと「議論の場」を設定する意向を示している。「防衛力強化」「防衛費増額」の必要性で認識を共有する両党と連携し、取り込む動きとの指摘もある。
8月の内閣改造から間もなく、局面転換の再改造には厳しい目が向けられている。衆院解散も来春の統一地方選を控えて慎重な声が根強い。
岸田首相としては当面、「配慮」や「抱え込み」に追われそうだ。
●野田元総理が「推敲に推敲を重ねた」追悼演説の舞台裏 11/29
山際大志郎氏、葉梨康弘氏、寺田稔氏と、閣僚の辞任が相次ぐ岸田文雄政権。内閣支持率は30.5%(ANN世論調査、11月19・20日)と、政権発足以来最低となった。
そんななか、野党・立憲民主党の政権奪取に向けた「秘策」が、元日本テレビ解説委員でジャーナリストの青山和弘氏の取材メモから見えてきた。
「保守層を取りにいきつつ党内をまとめるには、野田さんをもう一度担ぐしかないだろう。(安倍元首相に対する)追悼演説以降、野田さんの意識も変わってきた」(立憲民主党幹部の発言・青山氏取材メモより)
2012年11月14日、野田総理と野党・自民党の安倍総裁(いずれも当時)による党首討論は、議員定数・議員歳費の削減をめぐる「伝説の一戦」となった。国民に信を問う決断(=衆議院解散)を求める安倍氏に対して、野田氏は「一票の格差」と定数削減を、今国会ないしは次の国会で実現することを条件に解散すると明言。その後の総選挙で自民党が圧勝し、第二次安倍政権が誕生した。
それから10年。銃撃により亡くなった安倍氏への追悼演説が、今年10月25日に行われた。これまで追悼演説は、野党党首クラスが務めてきたが、民主党の元代表である野田氏が選ばれた。
「野田さんに追悼演説のオファーが来た時、本当に受けたくなかったそうだ。褒めても党内から怒られる。批判したら遺族に失礼で、とても難しい役回りだからだ」(青山氏)
立憲民主党のベテラン議員は、野田演説は安倍政治を褒めているものではないが、「遺族を泣かせ、与党側からも喝さいを浴びた」(取材メモより)として、それができるのは野田氏だけだと評する。
青山氏によると、野田氏自身は千葉県議会議員時代から駅頭に立ってきて、過ぎゆく通勤客を振り向かせるために磨いた話力が生きたと話しているという。
「自分はもう一度政権交代可能な二大政党を作るまでは、死んでも死にきれない。一強多弱のままではいけない」(野田氏の発言・取材メモより)
11月27日の『ABEMA的ニュースショー』では取材メモの背景について、青山氏がスタジオで解説した。演説者が野田氏に決定した経緯について、多数派である自民党からの推薦が必要なため、菅直人元総理や、枝野幸男元官房長官、立憲民主党・泉健太代表では「嫌みのひとつくらい言われるのではないか」となり、安心して任せられる人選になったと説明する。
実は野田氏と安倍氏にあまり接点はなかったそうだが、考えが正反対かというとそうでもないという。父が自衛隊員だった野田氏は保守寄りの考え方を持ち、安倍氏も「悪夢のような民主党政権」と生前振り返りながら、政権交代後の最初の総理が野田氏だったなら長期政権になっていたのでは、と評価していたという。
演説の文章も野田氏自身で作り、総理引き継ぎ時の皇居控室でのエピソードを盛り込むなど、「相当悩まれて、推敲に推敲を重ねた」(青山氏)。野田氏から直接聞いた推敲箇所として、以下の3点を挙げている。
・「<勝ち逃げ>はないでしょう」→「<勝ちっぱなし>はないでしょう」
・「長く国家のかじ取りに力を尽くしたあなたは、<歴史の被告人>にならなければならない運命です」→「長く国家のかじ取りに力を尽くしたあなたは、<歴史の法廷に、永遠に立ち続け>なければならない運命です」
・「あなたが放った強烈な光も<その先の暗い影も>」→「あなたが放った強烈な光も<その先に伸びた影も>」(いずれも取材メモより)
こうした細やかな気配りを背景に、野田氏再登板の動きがある。立憲民主党の支持率が低迷する要因は、左派に寄りすぎていることが考えられ、「中間層」を取り込む政策を考えるうえで、野田氏が適任なのではないかとの声があるという。党内でもリベラルとされる蓮舫氏や辻元清美氏も「野田さんなら、ついて行こう」と思うほどの人望があり、保守層を取り込みながら、政権交代を目指す可能性があるのではないかと、青山氏は分析している。 
  
  

 

●防衛費、年内決着は不透明 岸田首相指示、自民に財源先送り論 11/30
岸田文雄首相が28日に2027年度の防衛費と関連経費の合計を、国内総生産(GDP)比で2%にするための財源確保措置を年内に決めるよう指示したのを受け、政府・与党の議論が本格化する。
ただ、自民党内には財源論議の先送りを求める意見が根強い。内閣支持率が低迷する中、指導力発揮をもくろむ首相の思惑通りに進むかは不透明だ。
「年末に緊急的に整備すべき中期防衛力整備計画の規模、防衛力を安定的に維持するための財源確保措置を一体的に決定したい」。首相は29日の衆院予算委員会でこう強調し、調整を加速させる考えを示した。
首相は28日、激しく動いた。衆院予算委散会後、根回しのため自民党の菅義偉前首相や麻生太郎副総裁らを訪問。公明党の山口那津男代表とも予算委の合間に電話で会談した。その後、浜田靖一防衛相と鈴木俊一財務相を官邸に呼んで、年内決定の指示を出した。
閣僚のドミノ辞任で求心力低下がささやかれる中、防衛費増額の財源論議でリーダーシップをアピールする狙いとみられる。周辺は「(財源の)具体的な税目についても年末までに示す」と首相の意気込みを代弁する。
もっとも、29日の自民党国防部会は「唐突だ。国民生活の実態を見ているのか」などと増税反対一色だった。背景には国民負担となる増税への根強い慎重論がある。来春には統一地方選も控えており、閣僚経験者は「国民への説明は難しい。増税で政権が吹っ飛んだことはいくらでもある」とけん制する。
党内では、まずは国債発行で増額分を確保し、財源論議は時間をかけて行うべきだとの声が少なくない。世耕弘成参院幹事長は29日の記者会見で「首相が28日に述べたのは、まさに5年後の姿だ。(年末に)税目とか税率を決めるのは不可能だ」と言い切った。自民ベテランも「首相は指導力不足という批判に、『自分が決めた』という形にしたかったのだろう」と冷ややかだ。
一方、財務省は財政規律の観点から、首相指示を「錦の御旗」にしようと動きを強める。鈴木氏は29日の閣議後会見で「防衛力を安定的に支える措置が不可欠だ」と強調。増税などによる安定財源の確保が必要との立場を重ねて示した。 
●無責任連鎖から責任の民主化へ 民主主義の復元力の波を起こそう 11/30
無責任連鎖を誰が断ち切るのか
岸田内閣の支持率が下がり続けている。7月の参院選直後にピークだった支持率は、その後急落、9月には支持と不支持が入れ替わり、10月に入ってからは危険水域といわれる30パーセントに近づいたまま。国葬と外交日程で大幅に日程が制約された国会も、開いてみれば一か月で3人もの閣僚が相次いで辞任(更迭)するばかりか、「次は誰?」と言われる状況だ。
「首相や自民党幹部は問題が明るみに出た当初は閣僚をかばう姿勢を見せ、辞任後も「国会審議への影響を最小限とするため」といった説明に終始している。これでは閣僚交代の理由は何で、政権としてどう反省しているのかが国民にきちんと伝わらない。
首相は閣僚辞任のたびに「任命責任を重く受け止めている」と繰り返している。そうであれば辞任による幕引きは許されず、問題や疑惑の解明と丁寧な説明への指導力を発揮すべきだ」(日経11/21社説)
辞任ドミノと言われる政権の状況は、まさに無責任連鎖そのものといえる。政治的不祥事が生じるたびに繰り返される「誤解を生じさせたなら、申し訳ない」とか「真意が伝わらなかった」という類の他人称の「お詫び」に比べれば、岸田首相は責任を認めて謝罪しているものの、「責任がある」をうやむやにする無責任の本質は同質ではないか。
「ここに、政治における無責任のあり方のひとつを見つけることができる。それは自らに「責任がある」を肯定しない態度である。・・・謝罪対象のすり替えは、政治責任の在りかにまで、責任追及の刃を届かせない。・・・不祥事の当事者は表面的な出来事に関して責任を取っているのであり、自らの政治責任、すなわち政治権力の選択的な行使に関する能力をどのように保持しており、いかに行使したかについては触れない。当該の出来事について、「責任がある」をうやむやにする」(鵜飼健史「政治責任」岩波新書)。
「政治責任の在りか」とは何だろう。統一教会との密接な関係を問われた山際大臣、職責を軽んじた失言を問われた葉梨大臣、政治資金報告書のずさんな管理を問われた寺田大臣、公職選挙法違反の疑いが浮上している秋葉大臣…法的な責任(違法行為)や道義的責任のレベルとは別に、これらに共通する「無責任」とは、「自らの政治責任、すなわち政治権力の選択的な行使に関する能力をどのように保持しており、いかに行使したかについては触れない」(鵜飼 前出)点だ。国民の付託を受けて国政の権力を行使する、という公職に伴う責任の在りかがうやむやにされ続けている。まさに無責任連鎖と言うべきだろう。
この無責任連鎖を誰が断ち切るのか? 
岸田首相の鈍感さや判断の遅れが、辞任ドミノの悪循環を招いているとも指摘されるが、土井隆義・筑波大学教授は、岸田首相の姿は現代に生きる私たちの社会の「合わせ鏡」でもあると、次のように分析する。
「安倍元首相は、自分と価値観の違う人を強制的にのみ込んで『こっちを向け』という先導型。他方、岸田首相は『おれの色に染まれ』とは言わない調整型。だから、当初は国民からすると『癒やしの岸田』という声もあった。でも、配慮しているようで実は放置するだけになっている。国民を『配慮の外部』にしてしまっているように見えます」(アエラ11/28号)。
先導型の「安倍政治」では権力の私物化に対しても、「誰々の責任」追及に収れんさせることも可能だった。(ただし森友問題での公文書書き換えを問う裁判でも、誰も責任を問われていない。「夫は法律に守ってもらえなかったのに佐川さんは守ってもらえるのか」と赤木さんは訴えている。)それに対して調整型の岸田政治では、誰もが無責任だから誰の責任も問えない。そしてそれは社会の「合わせ鏡」でもあるとすれば、政治家の無責任は私たちの問題だ、ということになる。
「先ほど、政治家の無責任は私たちの問題だと言った。しかしそれは、私たちが問題のある政治家を選んだという意味(だけ)ではない。無責任が発生しているのであれば、私たちがそれに対処する責任を投げかけられるという意味においてである。政治家を不満に思う私たちが、現実を(権力で)変えられないと発想する俗流リアリズムに染まっていないだろうか。たしかに政治家は無責任かもしれないが、私たちは自ら責任を取ることを拒絶していないだろうか」(鵜飼 前出)。
誰もが無責任だから誰の責任も問えない。こうした無責任連鎖の蔓延のなかでは、政治家やリーダーを評論したり批判することにとどまらず、フォロワー同士のなかで、「あなたも私も主権者ですよね。当事者として考えませんか」という関係性をつくることが決定的になる。責任の民主化とは、そういう攻防のステージだ。
無責任連鎖 = 財政民主主義の破綻にどう向き合うか
「別の角度から言うと、民主主義というなかに隠されている無責任の本質とは何か、ということ。右肩上がりの下では「依存と分配」と言ってきたように、物質的な恩恵だけで民主主義を見ていれば、非物質的資本主義の段階では「今だけ、カネだけ、自分だけ」になる。これは転換期には左右のポピュリズム、大衆迎合になる。財政民主主義も緊縮財政=ケチとしか理解できない」(戸田代表 総会報告)。
無責任連鎖は、財政民主主義の破綻として露呈している。
「国家運営のたがは緩むどころか完全に外れてしまった。岸田政権が過日発表した追加歳出29兆円という総合経済対策にそんな感覚を抱いたのは私だけではあるまい。
物価対策なのに巨額の財政出動そのものが物価高をあおるという政策的矛盾の問題はひとまず置いておく。より深刻なのは自民党中枢から平然とバラマキや規模拡大を求める声があがり、それが言い値で通ってしまう政権・与党のタメの無さ、歯止め不在の危うさである」(原真人 朝日11/23)。
ちなみに29兆円の歳出のうち8割(22.8兆円)は国債増発でまかなう。そのうち約20兆円は公共事業などの投資以外に充てる赤字国債であり、本来なら財政法が発行を禁じているものだ。そもそも国債発行なしに毎年の予算が組めないという財政状況下での巨額の財政出動は、コロナ禍での「異例」の措置だったはずだ。それが検証もされずに漫然と続けられている。
膨れ上がっている予備費もクセモノだ。コロナ予備費と呼ばれる予備費20兆円のうち、国会に使途を報告した12兆円あまりについて日経新聞が調査したところ、使途を最終まで確認できたのは約8千億円だったという(日経4/22)。
国会の議決なしに政府が使途を決められる予備費は、この二次補正を合わせて22年度は11兆7千億円と、コロナ対策で膨らんだ20年度を上回り過去最大となる。国会の議決なしに政府だけで使途を決められる予備費を大きく増やすことは、憲法が定める財政民主主義の軽視にほかならない。
財政民主主義とは、市民社会が議会を通じて国家の財政活動をコントロールすることであり、その職責を果たすことが国会議員の責任にほかならない。同時にその議員を選び、彼らを通じて政府をコントロールするはずの市民にも、「主権者として」考える責任がある。「今だけ、自分だけ」で将来世代にツケを回し続けるのか。税を「取られる」だけの存在に甘んじるのか、納税者からさらに主権者へと当事者性を深めていくのか。そのために「あなたも私も主権者ですよね。当事者として考えませんか」というワイワイガヤガヤの関係性をどう作りだしていけるか。
防衛の分野でも財政民主主義が問われている。「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」がまとめた報告書は、財源について「幅広い税目による負担が必要」と提言している。与党内には「増税なき防衛予算の拡大」を求める声があるが、報告書は「国債発行が前提となることがあってはならない」と断じる。戦時国債で戦費をまかない続けた結果、戦後のインフレによって国民が保有していた国債(国民にとっては資産、政府にとっては借金)をチャラにしたという「歴史の教訓」があるからだ。
ウクライナ戦争や中国の軍拡などを理由に、防衛省の概算要求は過去最大となった。なかでも項目に金額の上限記載がない「事項要求」が急増するなど、防衛省の概算要求額は不透明化している。ここで懸念されるのは、安全保障政策に関する合理的な判断そっちのけで、膨れ上がった予算の分捕り合戦が展開されることである。五輪もコロナ対策も利権まみれだったように、財政民主主義を機能させないプロセスは、まさに有識者会議が指摘する「歴史の教訓」に反するものだ。
報告書は、「金融市場の信認を確保することが死活的に重要」と指摘し、財政基盤の強化を求めている。また、わが国の防衛力強化には国民の協力が不可欠であると、真正面から説くことで幅広い税目による負担が必要と訴えている。国民の税負担への忌避感は、政府に対する不信に根差している。これは防衛の根幹にかかわる脆弱性だろう。
コロナ禍で私たちはいのちとくらし≠フ観点から、「政治なんて誰がやっても変わらない」のではないことを痛感したはずだ。政治は他人事でも、いのちとくらし≠ヘ自分事として向き合わなければならない。だからこそ、「今だけ、自分だけ」で将来世代にツケを回し続けるのか。税を「取られる」だけの存在に甘んじるのか、納税者からさらに主権者へと当事者性を深めていくのか、私たち自身が問われている。
財政は難しい? 確かに「兆」がつく金額はなかなか実感しづらいかもしれない。しかし自治体の予算や決算なら、自分たちの暮らしと密接に関連づけて当事者性を持って考えることは十分可能だろう。地域の今とこれからを、財政民主主義の観点から自分事として話し合う。統一地方選に向けて、そういうワイワイガヤガヤの場をつくりだそう。 
●閣僚辞任相次ぐ岸田内閣、首相に「直言する人いないのでは」 11/30
日大の岩井奉信名誉教授と東大の牧原出教授が30日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、1か月足らずで3閣僚が辞任した岸田内閣を巡る課題について議論した。
岩井氏は、死刑執行に関する職務を軽視するような発言をした葉梨康弘・前法相の更迭が後手に回ったことについて、「官邸内で発言に対する感度が非常に悪い。『まずいですよ』と直言する人がいないのではないか」と指摘した。牧原氏は「首相が何をしたいかだ。何をやっているかわからないまま、その場その場で対応しているふうにしか見えないのがまずい」と述べた。  
 
 

 

●岸田総理は茂木幹事長を切りたい? 「最近の茂木さんを快く思っていない」 12/1
閣僚の辞任ドミノが始まり、「ならば外交で」と意気込んだ東南アジア歴訪でも見せ場を欠いた岸田文雄総理。一時、取り沙汰された年内の衆院解散・総選挙説は賞味期限切れだが、奥の手が残っているという。
「閣僚がさみだれ式に辞める事態は最悪だ。来年1月の通常国会召集前に内閣改造するしかないな」と言うのは総理に近い自民党幹部。
わずか3週間足らずで山際大志郎経済再生相と葉梨康弘法相が辞任。更に11月20日には複数の政治資金問題が指摘されていた、寺田稔総務相も更迭された。
「同様に政治資金の問題を抱える秋葉賢也復興相が残っている。いつまでも爆弾を抱え続けるくらいなら、改造を口実に“問題閣僚”にはお引き取り願った方が傷は浅くて済むだろう」
「岸田総理は最近の茂木さんを快く思っていない」
が、岸田総理のホンネは別のところにあるという。
「当然、党の役員人事にも手を付ける。ポイントは幹事長を切れるかどうかだ」
党を預かる茂木敏充幹事長は、麻生太郎副総裁とともに総理を支える政権のキーパーソン。安倍晋三元総理が存命の頃から岸田、麻生の両氏と頻繁に会談し、最大派閥の安倍派をけん制してきた一人である。
政治部デスクが解説する。
「茂木さんは10月下旬に出演したテレビ番組で、古代ローマの政治体制を引き合いに“三頭政治と言う人もいるようだ”と得意げに語りました。伝聞調ではありましたが、本人が自負しているのは間違いない。ただ、岸田総理は最近の茂木さんを快く思っていないようでね」
総理は旧統一教会問題で、被害者救済に向けた新法案を政府として今国会に提出し、成立を目指すと表明。が、自民と立民などは政府より先に議員立法を前提に協議を始めており、ハシゴを外されかけた野党が強く反発。やむなく政策責任者の萩生田光一政調会長に代わり、茂木幹事長が収拾に乗り出した。
肝心な場面での判断ミス
「旧統一教会との深い関係を問題視された萩生田氏が、法案の調整を仕切るというのは悪い冗談。とはいえ、政府提出の法案作りに党幹事長が関わるのは極めて異例です。党内からも“スタンドプレーが過ぎる”との声が上がっているくらい」
茂木氏にとっては“ポスト岸田”の地歩を固める絶好のチャンス。18日には与野党の幹事長らを集めて消費者庁の長官に法案の概要を説明させ、その後は自ら法案のポイントを詳しく記者団にブリーフした。
「政策通なのは誰もが認めるところですが、肝心な場面での判断ミスも目に付く。最たる例が、議員と旧統一教会との接点に関する党内調査。自己申告制にしたことで漏れが相次ぎ、世論はほとんど評価しなかった」
党内論理では第4派閥の長に過ぎない岸田総理。存在感を誇示する茂木氏に引導を渡すことはできるのか。
●防衛費GDP比2%なら国民負担「1人4万円」…批判噴出必至の増税を強行? 12/1
どうやって財源を捻出するのか。これは“岸田降ろし”につながる可能性もあるのではないか──。岸田首相は28日、防衛費を2027年度に国内総生産(GDP)比2%に増額するよう関係閣僚に指示した。岸田首相が防衛費の具体的な水準を明言するのは初めてだ。防衛費「GDP比1%枠」との歯止めを取っ払う大転換である。
政府の有識者会議は22日、防衛費の増額について「幅広い税目による負担が必要」との報告書を岸田首相に提出している。29日の衆院予算委員会で「軍拡のために増税をするのか」と問われた岸田首相は「さまざまな財源を精査し、年末に向けて結論を出したい」と増税を否定しなかった。
GDP比2%なら防衛費は11兆円超に膨れ上がる。22年度の防衛費(当初予算)は5.4兆円(GDP比0.94%)。今よりも5兆円以上の財源確保が必要となり、すべて税金で賄う場合、1人年間4万円の増税となる。
「自民党は昨年の衆院選の公約で『防衛費GDP比2%』は掲げていましたが、防衛費増額のための増税には一言も触れていません。国民に信を問うことなく、年内に急いで結論を出そうとするのは、国民の理解を得られる自信がないのでしょう」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
しかし、軍拡のために1人当たり4万円の増税となったら、批判が噴出するのは確実だ。FNNの世論調査(11月12、13日実施)でも、防衛費の増額を所得税や法人税の増税でまかなうことについて「反対」「どちらかと言えば反対」の合計は66%に上る。
党内からは異論噴出で“岸田降ろし”加速も
増税によって財源を確保したい財務省は必死だ。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は29日、来年度予算編成に関する建議(意見書)を鈴木俊一財務相に提出。防衛費増額の財源について、「経常的な経費であり、負担を先送りすることなく、安定財源を確保しなければならない」と明記。増税を念頭に国民全体で広く負担することなどを訴えた。
鈴木財務相も「『財源がないから渋るな』ということが、必ずしも国債ということにつながらない」と国債で賄おうとする勢力を牽制した。
一方、来年春に統一地方選を控えていることもあるのか、自民党内からは異論が噴出。29日の党の国防部会では防衛増税に反対が相次いだ。
世耕弘成参院幹事長は会見で「『増税何%』は今すぐ決められる話ではない。財源の見込みが立つまでの間は国債でつなぐというのも一案だろう」と強調。最大派閥の安倍派(清和政策研究会)も29日、小野寺五典安全保障調査会長に「直接的に増税で賄うことは公約に盛り込んでいない」と提言した。
「防衛増税の税目について、岸田首相が年内決着にこだわれば、世論を敵に回すだけでなく、安倍派を中心に党内からも“岸田降ろし”の動きが加速しかねない。党内の反主流派が防衛増税を岸田降ろしの材料にする可能性があります」(自民党関係者)
閣僚のドミノ辞任でフンづまりの岸田政権。防衛費の財源論議でリーダーシップ発揮をもくろんだようだが、かえって、大きな火種となりそうだ。 
●「私はどうしたらいいのでしょう」安倍氏に聞いてみたかった…岸田首相 12/1
月刊「正論」主催の「不屈の政治家 安倍晋三写真展〜産経新聞カメラマンがとらえた勇姿〜」に行った。穏やかな笑顔の写真を見ていると、安倍元首相が生きていて、今にも「やあ久しぶり」と語りかけてくるような錯覚を覚えた。
岸田文雄首相が24日に訪れて、「安倍さんと対話しているような気になった。『総理として頑張れ』と励ましてもらったような気もした」と述べたのを聞いて、似たようなことを感じるんだなと思った。岸田氏の声は少し震えているようだった。
安倍氏の「国葬(国葬儀)」における岸田氏の態度は立派だった。直ちに国葬を行うことを決断し、内閣支持率は下がったが方針は変えなかった。産経新聞によると、国葬の際に海外要人との面会のため途中退席することを事務方が提案したが、「俺が安倍さんを最後まで見送る」と譲らず、献花が終わるまで会場で見守った。
安倍氏は、岸田氏のことをどう思っていたのか、本人から聞いたことがある。
岸田氏が外相時代の2016年、核兵器禁止条約の交渉会議に「出席して議論したい」と主張した。国家安全保障局が強く反対し却下されたのだが、その時、安倍氏は「おとなしくて何も言わない人だと思っていたから、びっくりした」という。
安倍氏は、岸田氏のことを「何も言わない人」と軽く見ているところがあったが、「自分の後継は、岸田氏だ」とも考えていた。20年9月に病気で退陣したときは菅義偉氏が緊急登板したが、菅氏本人もあくまでリリーフ役であり、長くやるつもりはなかったと思う。安倍氏は、菅氏退陣の後の総裁選で高市早苗氏を推したが、最終的に岸田氏が首相になることは織り込み済みだった。
安倍氏は「2度の消費増税」や「集団的自衛権の容認」など、当時は反対も多かった政策を断行した。後任の菅氏も東京五輪開催やコロナワクチン接種など「力業」で難問に立ち向かった。
ただ、こうした「改革」では血も流れるし疲弊もする。岸田政権になって高い支持率が続いたのは、安倍、菅両政権の「力業」に少し疲れた国民が、岸田政権でホッとしたからではないか。
しかし、人々の心変わりは早い。ここに来て岸田内閣の支持率は低迷し、閣僚の「辞任ドミノ」は止まらない。
18年の総裁選で、岸田氏は出馬するかどうかで悩み、「私はどうしたらいいのでしょうか」と安倍氏に聞いたという話がある。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の対応策や、防衛費増大の財源問題など悩みの多い岸田氏は、安倍氏の写真を見ながら「私はどうしたらいいのでしょうか」と聞いてみたかったのではないか。 
  
 

 

●葉梨前法相辞任影響は?地元の茨城で県議選が告示 12/2
任期満了に伴う茨城県議選(定数62)が2日、告示され、計96人が立候補した。同県議選は、来春の統一地方選の前哨戦と位置づけられていることもあって与野党が力を入れており、党首級を含めた幹部を応援に投入している。
茨城は、11月11日に「法相軽視」発言で法相を更迭された、葉梨康弘衆院議員の地元(茨城3区)でもある。葉梨氏ら3人の閣僚が更迭され、旧統一教会の問題などで岸田政権の支持率が急落する中、定数全体の約7割を占める自民党が現勢力を維持できるか、立憲民主党や、初の議席獲得を目指す日本維新の会などの野党が勢力を拡大するのかなどが焦点。地方都市の県議選ではあるものの、結果は中央政界にも影響を与えるものになりそうだ。
自民党が特に警戒するのが、葉梨氏の更迭による影響だ。葉梨氏の失言&更迭から県議選告示まで1カ月もなく、岸田政権の足を引っ張った「ドミノ辞任」閣僚の1人として、有権者の記憶に刻まれている。自民党は有権者の支持動向の変化を警戒しながら、支持固めを進める方針だ。
一方の野党側は「葉梨ショック」直後の選挙での党勢拡大を目指している。
現有議席数は、自民44、公明党4、国民民主党3、立憲民主党2、共産党2、無所属3。欠員4。投開票は12月11日。
●首相、国会「第2ラウンド」乗り切るも…立て直し急務 12/2
岸田文雄首相は今国会の論戦「第2ラウンド」となる衆参予算委員会を乗り切り、令和4年度第2次補正予算の成立にこぎ着けた。ただ、政治資金問題が相次いで発覚した寺田稔前総務相らの「辞任ドミノ」で審議日程がずれ込んだほか、秋葉賢也復興相の公職選挙法違反疑惑もくすぶり続けるなど政権が受けたダメージも大きい。今後は早期の立て直しを図れるかが焦点だ。
「物価対策と合わせ、構造的な賃上げや新型コロナウイルス禍を乗り越え、日本経済再生のスタートを切らなければならない」
首相は2日の参院予算委の集中審議でこう述べ、補正予算を裏付けとする総合経済対策を速やかに軌道に乗せる考えを強調した。
首相にとって、今回の予算委は試練の連続だった。予算委前に寺田氏や「法相は死刑のはんこを押す地味な役職」と発言した葉梨康弘前法相を更迭した影響で、野党から任命責任を追及され続けたからだ。
追い打ちをかけかねなかったのが昨年の衆院選での秘書への違法な報酬の支払い疑惑や次男の「影武者」問題が次々と発覚した秋葉氏の存在だ。「辞任ドミノ」が秋葉氏へと続けば、政権への打撃は計り知れない。2次補正や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済新法の審議にも影響を与える可能性もあった。
首相は秋葉氏に丁寧に答弁するよう重ねて指示。11月25日に衆院予算委が始まった時点では、気色ばむような場面が目立ち、自民党幹部も「イメージが良くない」と気をもんだが、その後秋葉氏は抑制的な答弁に努めた。
一方、秋葉氏を追及する立憲民主党なども辞任に追い込む決定打には欠けた。年末に控える国家安全保障戦略など「安保3文書」改定作業などより秋葉氏への追及を優先する立民の姿勢には他の野党からも疑問視する声が上がった。
からくも予算委を切り抜けた首相だが、6日からは救済新法の審議が始まる。秋葉氏の疑惑が再燃する可能性も否定できず、12月10日の会期末まで首相は気を抜けない展開が続く。 
 
  

 

●政権立て直し「窮余の策」 国民取り込み、公明反発 12/3
自民党が公明党との連立政権に国民民主党を組み込もうと動きだした。
新たな風を吹き込み、閣僚の辞任ドミノなどで苦境にある政権の立て直しを図ろうという「窮余の一策」だ。立憲民主党と国民の支持団体である連合を「股裂き」にして立民の弱体化も狙う。ただ、長年共に歩んできた公明党からは自民党の「独走」に反発する声も漏れており、連立構想がまとまるかは不透明だ。
2022年度第2次補正予算が成立した2日夕。自民党の茂木敏充幹事長は記者団に「厳しい国会運営の中で補正予算を早期に成立させることができた」と成果を強調した。補正には国民も賛成した。
複数の関係者によると、自民、国民両党幹部はこれまで極秘に接触を重ね、岸田文雄首相も連立構想に「ゴーサイン」を出しているという。自民党関係者は「ずっと布石を打ってきた。玉木雄一郎代表は腹を固めたようだ」と明かす。
実際、今年に入ってからは、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結解除を唱える国民に配慮。公明党と共に3党協議に応じるなど国民側との距離を縮めていた。
政権は現在、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題などで世論の逆風にさらされている。2次補正や被害者救済新法の成立で、低迷する内閣支持率が上向く保証はなく、党関係者は「立て直しには連立枠組みを変更するぐらいのインパクトが必要だ」と語る。党内には、来年1月の通常国会召集前に連立を組む案が出ている。
連立構想には政権浮揚などの狙いに加え、公明党をけん制する思惑もあるとみられる。今の自民党執行部は公明党・創価学会とのパイプが細く、安倍・菅政権時代と比べ、自公関係はぎくしゃくしているとの見方がもっぱらだ。
一方、国民側も自公両党との政策協議を通じて「準与党化」が進んだ。2日の与野党国対委員長会談でも、政府が国会提出した被害者救済法案に立民の安住淳氏が「ざる法では困る」と手厳しかったのに対し、国民の古川元久氏は「わが党の考え方がかなり含まれ、評価したい」と対照的だった。
自民党内では、政権が揺らいでいるこのタイミングを捉え、「玉木氏にとっては今が一番高く売れるのだろう」(関係者)と見る向きもある。
もっとも、自民、国民の接近に公明党は不信感を強めている。国民が連立入りすれば相対的に存在感が低下し、政権への影響力は弱まる。衆院小選挙区の「10増10減」を受けた選挙区調整に国民が加われば難航は避けられない。
何より信頼関係に亀裂が生じかねない。公明党関係者は「連立など簡単に組めるものではない。あり得ない」と反発。党重鎮は「そんなことをしたら連立崩壊だ」と息巻く。連合幹部も厳しい受け止めだ。「国民を支援する民間労働組合は反対する。連立が決まれば国民は分裂するだろう」。
公明党との関係を重視する自民党の閣僚経験者は、連立構想が党内論議の俎上(そじょう)に載ったことを想像し、「党内は荒れるだろう」と声を落とした。 
●岸田首相 森保監督に祝福電話しただけで「政治利用」「減税しろ」の火だるま 12/3
《森保一監督と田嶋幸三JFA会長に、直接電話をしました。日本国民に勇気と元気をもらいましたと感謝と祝意を伝えました。改めてW杯リーグ突破おめでとうございます。決勝リーグも期待しています。がんばれ日本!》
12月2日、Twitterにこう綴ったのは岸田文雄首相(65)だ。
この日、「FIFAワールドカップ カタール大会」1次リーグの第3戦で強豪スペインと対戦した日本代表。前半は0-1で苦しい展開となったが後半3分、堂安律選手(24)がペナルティーエリアの外から左足を振り抜いてミドルシュートを決めた。
そして6分にも三笘薫選手(25)のゴールラインぎりぎりからの折り返しに、田中碧選手(24)が身体ごと押し込んでゴール。その結果、逆転勝利を収め、その劇的な試合運びは“ドーハの奇跡”とも評されている。
サッカーファンが勝利の歓喜に沸くなか、森保監督と田嶋会長に祝福の電話を入れた岸田首相。さらに、ツイートにはその様子を収めた動画もアップされており、Twitterでは《私達の感謝と祝意も伝えていただきありがとうございます!》《岸田さんありがとう》《親しみ湧くな絶対この人いい人だよね》との声が上がっている。
いっぽうで、こんな批判の声も後を絶たない。
《サッカー日本代表は健闘しましたね。日本の代表は検討し続けてますが》《そんなアピールするなら、まずは自身の疑惑の説明や消費税減税をしなさいよ》《スポーツを政治利用しないで下さい》
辞任ドミノに続いて、自身の公選法違反疑惑…支持率は30%に
これも、支持率の低さゆえかもしれない。11月21日、ANNの世論調査によって支持率が政権発足以来、最も低い30.5%であると発表された。
「7月に起こった安倍晋三元首相(享年67)の銃撃事件を機に、“統一教会と自民党議員の関係”取りざたされていますが、岸田総理は党や教団に対して踏み込んだ対応をしているとは言い難い。また9月には『開催について説明が不十分だ』との声が多数上がるなか、安倍元首相の国葬が行われました」(全国紙記者)
さらに現在、辞任ドミノが続いている。10月24日、旧統一教会との関係が次々と報じられた山際大志郎議員(54)が経済再生担当大臣を辞任。続いて11月11日、自民党議員のパーティで「法務大臣は死刑のはんこを押す地味な役職」と発言した葉梨康弘議員(63)が法務大臣を降り、同月20日には不適切な政治資金収支報告書を提出するなど、いくつもの“政治とカネ問題”が指摘されていた寺田稔議員(64)も総務大臣職の辞表を提出した。
そして同月22日には、岸田首相の“公選法違反疑惑”も報じられた。「文春オンライン」によると、岸田首相は昨年10月の衆院選に関する選挙運動費用収支報告書に、宛名も但し書きも空白の領収書を94枚添付していたという。
24日、記者団の取材に応じた岸田首相は「添付書類の記載に一部不十分な点があったことについて、今後このようなことがないように事務所に指示を出したところであります」と説明。選挙運動に関する支出は「適正だった」とした上で、「出納管理者の確認漏れ」だと回答した。ところが、この説明にネットでは「まるで他人事だ」との批判が相次いでいた。
杉田水脈政務官という火種 岸田首相は「適材適所」と擁護
日本が円安や物価高に喘いでいることも支持率低下の要因だ。
「岸田総理は昨年9月の自民党総裁選にあたって、政策集に『成長と分配の好循環に向けた政策を総動員』と記し、その一つとして枠外に『金融所得課税の見直しなど1億円の壁の打破』と記載していました。
現在、所得が増えるにつれて所得税の負担が増えるにもかかわらず、所得が1億円を超えるあたりから、逆に負担の割合が軽減されています。『金持ち優遇だ』との指摘もあり、“1億円の壁”が問題視されています。そこで総理は『打破する』と銘打ちましたが、就任後の10月に一転。『金融所得課税の見直しは当面考えていない』と話しました。
また10月26日には『政府税制調査会』が開いた総会で、自動車の走行距離に応じた課税、いわゆる“走行距離課税”などの検討がスタート。来年10月からはインボイス制度も始まる予定で『どれだけ税金をとるんだ』と世論では怒りの声が相次いでいます」(金融担当記者)
そんななか、杉田水脈総務政務官(55)も岸田政権の“火種”となっている。
これまで雑誌「新潮45」’18年8月号で「LGBTのカップルは生産性がない」と寄稿し、11月30日の参院予算委員会では、過去にブログでアイヌ民族などを侮辱していたことも取り上げられた杉田政務官。杉田政務官は12月2日にこれらの発言について謝罪したものの、続投させる意向を示している岸田首相の姿勢を問う声も少なくない。
日本代表を祝福しただけでも、火だるま状態の岸田首相。支持率を取り戻すために、これからどう挽回するのだろうか? 
●「自公国の連立」構想で広まる憶測 岸田首相や玉木代表は全面否定 12/3
自民党が、公明党との連立政権に国民民主党を加える案を検討していると、時事通信が2日、報じた。自民、国民両党の幹部が水面下で接触を続けており、国民民主党の玉木雄一郎代表を年明けにも入閣させる案を…という内容だ。閣僚の相次ぐ更迭などで苦境に立つ岸田文雄政権には局面転換の秘策に感じる。関係者は全否定しているが、永田町で憶測を呼んでいる。
「どこからそのような情報が出たかは知らないが、私自身、まったく知らないし、考えてはいない」
岸田首相は2日夜、官邸で記者団に、連立構想をこう否定した。
玉木氏も同日、都内で記者団に「大変驚いている。そのような事実はない」と否定した。
だが、時事通信は3日朝、改めて「自民、国民と連立検討 局面転換狙う、玉木氏入閣案―公明反発も、実現不透明」という記事をサイトに上げた。記事には、「自民党関係者によると、国民側との交渉は岸田首相(党総裁)と麻生太郎副総裁も了承している」ともあるのだ。
永田町では過去、連立構想が何度も取り沙汰されてきた。当然、水面下で交渉され、「自社さ連立政権」「自自連立政権」「自自公連立政権」「自公連立政権」などが実現している。
今回、水面下の調整段階で発覚した可能性もある。現実味はあるのか。
ある自民党議員は「岸田首相は閣僚の辞任ドミノ、内閣支持率の低迷に直面している。党内情勢や、連立を組む公明党との関係から、解散や内閣改造に打って出ることも容易ではない。友好的な野党を取り込んで局面転換を図る連立構想が浮上しても不思議ではない」と語る。
最大野党の立憲民主党は、閣僚不祥事や疑惑を追及する「対峙(たいじ)・批判路線」を鮮明にしているが、国民民主党は今年度の一連の予算では採決に賛成し、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題を念頭にした被害者救済法案にも、賛同する方向だ。
玉木氏は連立構想は否定しているが、「政策本位で、選挙公約で国民に約束した政策の実現のためには与野党を超えて連携・協力する。今は野党の立場なので是々非々でやっていく」と語っている。
今回の騒動をどう見るのか。
政治評論家の伊藤達美氏は「国民民主党は勢力が小さく地味だが、優秀な人材もいる。岸田政権からすれば、『協力関係を模索できる野党』という位置づけになるのだろう」と語った。
  
 

 

●岸田が腰を抜かした…後藤田正純の「裏切り」と「知事選出馬」地元ビラの中身 12/4
もう、岸田では選挙に勝てない
わずか1ヵ月で3人の閣僚が辞任ドミノとなったばかりでなく、秋葉賢也復興相への追及も一段と熾烈を極めている。権力者が落ち始めると、その周辺からたちどころに人が引くのは政治の常。まず、岸田首相に情報が入らなくなった──。
「安倍国葬儀から政権はみるみる求心力を失っていった。党内の『岸田下ろし』が気になりだした岸田首相は、11月下旬、6日間で麻生副総裁、茂木幹事長、萩生田政調会長、菅元首相などと相次いで会食した。いずれも1対1の会合だったが、いわば党内に謀議がないか検証する会合だったといえる。
野党の追及に恐れ、党内の岸田離反を警戒し、さらには閣内からボロが出ないか監視する毎日で、岸田首相は睡眠不足に陥っているそうだ。何か起きれば夜中でも緊急会見しなければならない寝酒も出来ず、ストレスは溜まるばかり」(岸田周辺議員)
岸田首相は公邸で、深夜に起き出しテレビをつけてしまうことがあるという。しかし、目から明かりがはいることで余計眠れなくなると医師に窘められたという。岸田首相は、この議員にこう漏らしたという。
「なにをやっても、支持率は戻らない……」
満身創痍の岸田首相にムチ打つような情報が届いたのは先月下旬のことだ。
当選8回のベテラン、自民党徳島1区の後藤田正純元内閣府副大臣が徳島県知事選挙への出馬を検討しているというものであった。
後藤田正純は、中曽根康弘長期政権を支えた鬼の後藤田正晴官房長官を大叔父にもつ政界のサラブレットだ。女優の水野真紀と結婚し、政界一の美男美女ともてはやされてきた。前回選挙は小選挙区で初の落選を喫したものの、比例復活でなんとか議席を死守した。正直、次の選挙も危うい。
県知事選への出馬宣言か
一敗地にまみれた経験した者にとって、岸田政権のこの大逆風はいかにも恐怖であろう。
「後藤田は『自民党は結党以来の逆風だと悲壮感が漂っていた。改革案もはかどらない岸田政権に落胆している。それなら、地元を再生させたい』と話していた。
後藤田の徳島県知事選挙に出馬する意志は固い。すでに後援者にも出馬の意向を伝えているようだ。石破派から茂木派に移ったことで、当選同期の小渕優子元内閣府特命相などにも心境は伝えているのではないだろうか。
旧統一教会問題、政治とカネが政権をガタガタにしてしまった。地盤、看板、カバンが弱い自民党議員は、断崖絶壁に立たされている。岸田政権を見限って首長の道に鞍替えしようという若手、中堅議員はほかにもたくさんいると思う」(茂木派議員)
後藤田はこの11月、「徳島再生 県政刷新への覚悟」と題された文書を地元で配付していた。「リスク承知で何故県政改革を唱えたか」「全国と渡り合える知事〜国を動かす衆議院議員出身知事たち」などといった見出しが並ぶ。明言はしていないが、事実上の県知事出馬宣言といっていい。
岸田首相はこの文書で、後藤田の県知事選出馬への覚悟を知った。後藤田の文書には、「徳島のこれから10年が勝負と」つづり、「何かが変わりそう」「何かわくわくする」「安心できる」などと、自ら県政を担う覚悟を感じさせる。
6期目を目指す飯泉嘉門知事の多選に言及し、小池百合子東京都知事、馳浩石川県知事など、元国会議員だった知事の誕生によって国とのパイプは強力になるとほのめかしている。徳島県知事への出馬声明とみられるのも当然のことだろう。
ただ、徳島県政関係者は、後藤田の知事選挙出馬はそう簡単ではないと首をひねった。
「後藤田さんは上から目線で、地元議員団と大げんかしたのです。前回衆院選では地元から自民党本部に非公認申し入れという軋轢があった。しかも、来春の知事選は、自民党県議会として独自候補を擁立する動きがある。
このほかに自民党の三木亨参院議員が出馬を表明しているし、現職の去就もわからない。すると、いまのところ県知事選挙には4人の立候補の可能性がある。県政は、保守分裂どころか四分五裂状態なのです」(徳島県議会議員)
岸田政権のダッチロールは、地方政治まで影響を及ぼし始めている。岸田首相の周りから、こうして一人、また一人と人が去っていくのだろうか。
●岸田政権は財務省をコントロールしきれていない 12/4
岸田政権が苦境に立たされています。内閣改造後も支持率が上がる兆しはなく、それどころか新閣僚たちが相次いで辞任する「辞任ドミノ」が現実に。山際大志郎氏、葉梨康弘氏、寺田稔氏に続き、政治資金規正法違反の疑いで秋葉賢也復興相にまで追及が及んでいる状況です。1か月の間に3人の閣僚が辞任するだけでも総理の任命責任が問われますが、さすがに4人目の辞任ともなると、かなり厳しい局面を迎えることになるでしょう。
そんな中、国民の支持を得られるような目玉の政策も見られません。それどころか、増税論ばかり出てくる始末。金融所得課税、走行距離課税、防衛費増額財源のための増税…国民の人気が低下する中で、さらに嫌われるテーマが続出しています。これは一体どういうことか考えると、行き着いた結論は、財務省をコントロールしきれていないのではないかということです。
官僚機構の頂点に君臨する財務省は絶対的な力を持っています。第2次安倍政権が内閣人事局を作り官僚の人事権を掌握したタイミングから、官邸主導で霞が関をコントロールする政治が行われてきました。政治家が政治を動かす、そんな感覚を持っていましたが、今の岸田政権では財務省はアンダーコントロールではないのでしょう。だからこそ、政府が具体的な検討をしてもいない課税が唐突に話題に上がるのでは。
これは岸田さんだけの問題ではなく、官邸全体の問題。このままいくと、財務省に都合よく利用されボロボロになって岸田政権は終焉(えん)を迎えるかもしれません。岸田総理を体を張って守り抜く気概のある「仲間」は一体どれくらいいるのでしょうか。すべてはそこに尽きると思います。
政策に関しても、そして総理の伝家の宝刀である解散権の行使についても、岸田総理に求められるのは「決断する力」なのかもしれません。
●立民・泉代表、続く難局 政権追及アピールも支持低迷―就任1年 12/4
立憲民主党の泉健太代表は、先月30日で就任から1年を迎えた。当初は「提案路線」を掲げたが、7月の参院選で敗北し、かつての「対決路線」に回帰。今国会で3閣僚を辞任に追い込むなど、政権追及の「成果」をアピールするものの、党勢は低迷したままだ。事態打開の手だてを見いだせず、泉氏にとって難しい局面が続いている。
「支持率は簡単に反応するものではない。党としての信頼感を高めていく方が大切だ」。泉氏は2日の記者会見で、政党支持率が上向かないとの指摘にこう反論した。
泉氏は、昨年10月の衆院選で敗北、辞任した枝野幸男前代表の後を継ぎ、党を率いることになった。それまでの批判一辺倒との印象を払拭(ふっしょく)するため、国会対応を「提案」重視に転換。党役員に中堅・若手を積極登用するなど世代交代も目指した。
しかし、先の通常国会ではこれが裏目に出て埋没。参院選で敗北したことで、求心力が一気に低下した。
党内の強い反発を受け、泉氏は8月の党役員人事で、岡田克也幹事長らベテランを起用。国会対応の軸足を政策提案から政権追及に戻すと、今国会で早速、3閣僚の「辞任ドミノ」に結び付いた。
さらに、犬猿の仲だった日本維新の会と国会共闘で合意。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題の被害者救済に向けた新法案を巡り、政府に先んじて両党の独自案をまとめるなど、国会運営の主導権を握るケースが増えた。
それにもかかわらず、政党支持率は「低空飛行」が続く。報道各社の世論調査でも、1桁台にとどまるケースが多く、自民党との差は縮まる気配がない。立民幹部は「泉氏には存在感がなく、党勢回復の妙案はない」と頭を抱える。
党内からは、強まる「対決」重視の姿勢に対しても、不満の声が漏れる。中堅は「昔ながらの国対はいいかげんにしてほしい」と批判。若手も「スキャンダル追及ばかりだ」と語気を強めた。 
  
 

 

●岸田ジャパン前半劣勢≠チェンジするのは国民主党の玉木雄一郎代表? 12/5
“岸田ジャパン”に局面打開のゲームチェンジャーは現れるのか? 自民党と公明党の連立政権に玉木雄一郎代表(53)率いる国民民主党も加えるプランが浮上し、永田町は騒然としている。閣僚の辞任ドミノ、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係など問題山積の岸田文雄首相(65)にとっては劣勢状況を挽回するまたとないチャンスとなるが――
自公連立政権に国民合流の動きは先週、時事通信が報じた。年明けの通常国会を前に連立政権を組んで、内閣改造で玉木氏を入閣させるというもの。岸田氏、玉木氏ともに2日にこの報道を否定し、公明党も「寝耳に水」である上に、国民の連立政権入りに難色を示しているというが、自民党内では「麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長が水面下で動いている。維新よりも国民の方が組みやすく、この手しかないのでは」と決して観測気球ではないとの見方が大勢だ。
岸田氏は財務省(旧大蔵省)と関係が深い宏池会の会長で、ブレーンの木原誠二官房副長官(52)や村井英樹首相補佐官(42)ら側近は財務省出身。国民の玉木氏や古川元久国対委員長(56)らも財務省出身で、連立の窓口になっている麻生氏も長く財務相を務めた。
「木原氏と玉木氏は入省同期で、岸田氏と玉木氏もまめに連絡を取り合う仲でもあるし、財務省ネットワークでまとまりはいい」(党関係者)
国民が政権与党入りすれば、窮地に追い込まれている岸田政権も息を吹き返すチャンスが出てくる。8月の内閣改造後、既に3人の大臣が辞任。会期末が近づく今国会で野党からは、秋葉賢也復興相の政治とカネの問題、杉田水脈総務政務官の過去の差別発言が徹底追及されており、年明けの内閣改造で人心一新を図りたいところ。政務三役の人材が不足に陥っている中、玉木氏ら国民のフレッシュな顔が加われば、政権基盤の安定、支持率回復につながるというわけだ。
岸田氏があやかりたいのは、サッカーW杯で“ドーハの奇跡”を演出した森保一監督(54)だろう。優勝候補のドイツ、スペイン相手に前半はリードを許す劣勢ながらも後半から流れをガラリと変える戦術で堂安律、三笘薫ら交代カードを切って大金星を挙げた。
くしくも岸田氏と森保監督は“広島つながり”で親交があり、スペイン戦後はツイッターにすぐさま「ここ一番の大勝負で素晴らしい結果を残されました」と投稿。さらに“キッシー・フォン”の生電話で、森保監督を祝福した。
4日に「日曜報道 THE PRIME」(フジテレビ系)に出演した木原氏は岸田氏がほぼ徹夜の状態でテレビ観戦していたと明かし、「ものすごく喜んでいた。力をもらったんじゃないですか」と振り返った。さらに、W杯では初となるベスト8以上に進出した先には国民栄誉賞の授与も「検討」と前のめり。森保ジャパンの快進撃に少しでもあやかりたい思いを隠せなかった。
果たして、岸田氏は局面を転換させる新連立構想、そしてゲームチェンジャーとなる“堂安・三笘級”の新閣僚起用のタクトを振って、森保ジャパンのように“手のひら返し”の評価を受けられるか――。有効なカードを切れなければ、座して死を待つのみとなりそうだが…。
●窮地の岸田首相、自民党右派と「和解」で政権延命に躍起〜立憲民主党も? 12/5
岸田文雄首相が防衛費を2027年度にGDP比2%に増額するよう関係閣僚に指示した。現在の5.4兆円(GDP比0.96%)から11兆円(GDP比2%)へ倍増させるという計画だ。
1976年の三木武夫内閣以来、歴代政権は防衛費を1%以内に抑えることを原則としてきた。ロシアのウクライナ侵攻を受けてNATO加盟国が国防費を2%に増額する動きが広がる中、自民党では安倍晋三元首相らを中心に2%への増額を唱える声が高まっていた。
岸田首相は内閣支持率が続落して自民党内で「岸田離れ」が加速し、閣僚辞任ドミノまで発生して窮地に追い込まれている。立憲民主党と連携して消費税増税をめざす方針を封印し、まずは防衛費の大幅増額を受け入れることで最大派閥・清和会(安倍派)を中心とした党内右派の支持を取り戻したいという狙いであろう。
外務事務次官や駐米大使を務めた元外務官僚が座長を務め、三井住友フィナンシャルグループ会長ら財界人に加え、読売新聞社や日経新聞顧問、朝日新聞元主筆ら各界の重鎮をそろえた有識者会議も防衛力強化を訴え、「国民全体の負担」で財源を確保することを主張する提言を岸田首相へ提出した。既得権を握る官界、財界、学界、マスコミ界の上級国民たちは国民に増税を課して防衛費を増額することに諸手を挙げて賛成なのだ。
この国はどこへ向かっているのだろう。
防衛力強化の柱となるのは、相手のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」の保有である。ミサイルの長射程化や米国製巡航ミサイル「トマホーク」を導入するという。
日本国憲法のもとで戦後日本が掲げてきた「専守防衛」から大きく逸脱するのは間違いない。もはや「防衛費」という言い方は実態とかけ離れており、「軍事費」とはっきり言ったほうがよい。
自民党と連立を組む公明党は「反撃能力」保有を容認する方針で、もはや「平和の党」としての歯止めは期待できない。それどころか野党も追従する気配である。日本維新の会や国民民主党に続いて、野党第一党の立憲民主党も「反撃能力」の保有を容認する方向に傾いているのだ(日経新聞報道参照)。
れいわ新選組をのぞく野党はロシアのウクライナ侵攻で与党に同調し、ロシアを一方的に非難する決議に賛成したほか、ウクライナのゼレンスキー大統領の国会演説をスタンディングオベーションで称賛した(共産党もその輪に加わったのは衝撃だった)。米国のバイデン政権が煽る「台湾危機」に同調する向きも強く、安全保障については大政翼賛体制の気配が強まっている。
野党やマスコミが今回の防衛費倍増に真正面から反対して断固阻止を強く打ち出していないのは、とても気がかりだ。
そのなかで断固反対を強く打ち出している数少ない政治家の一人が、小沢一郎氏である。
1990年代以降の政局を主導し、剛腕と恐れられた小沢氏もすでに80歳。現在の立憲民主党は野田佳彦最高顧問や岡田克也幹事長、安住淳国体委員長ら「反小沢派」が実権を握り、小沢氏の存在感は薄れている。
その小沢氏(事務所)が11月28日に投じた連続ツイートが迫力満点だったので紹介したい。
小沢氏は岸田首相の防衛費倍増計画について「防衛費というのは、これまでも、また、現在でも巨額の無駄を生んで来ている」「この計画によって、国民の巨額の税金が更に無駄になる可能性がある」と切り出したうえ、「以下、これまで政府がいかに無駄遣いをしてきたか、列挙してみたい」と連続ツイートを始めたのだ。
「1 岸田政権は目下、「防衛費倍増」に向けて血眼になっているが、そもそも防衛費というのは、これまでも、また、現在でも巨額の無駄を生んで来ている。したがって、この計画によって、国民の巨額の税金が更に無駄になる可能性がある。以下、これまで政府がいかに無駄遣いをしてきたか、列挙してみたい。・・・」
小沢氏が最初に挙げたのは、米国が開発したミサイル迎撃システム「イージス・アショア」配備の断念だ。
膨大な資金が投入されたが、そもそもミサイルを海上で迎撃するのは技術的に難しいと指摘されてきた。相手国のミサイル技術は日進月歩で進化する(発射地点が移動すること、海上から発射すること、そもそも発射地点を確認できない可能性もある)。それに常に対応する迎撃システムを最先端型に更新していくのはほぼ不可能であるのは素人目にもわかる。
しかもミサイルを100発同時に発射されてすべてを確実に撃ち落とすのは至難の業だ。核弾頭を搭載したミサイルが一発でも東京に落ちれば終わり。そもそもミサイル迎撃システムという「お花畑」を信じ、米国の軍需産業に躍らされて巨額の予算を投入したのは、あまりに愚かだった。
このイージス・アショア計画は地元住民の反発を招いたという理由で頓挫した。小沢氏は「ろくに検証がなされないまま中止」と酷評する。話はこれで終わらない。代案としてイージスシステム搭載艦2隻を配備する計画にかかるコストは1兆円にのぼるというのだ。
小沢氏が次に掲げるのは「導入経費が当初の510億円から629億円まで高騰した無人偵察機グローバルホーク」である。「そもそも海洋監視には向かず、撃墜の危険にもさらされやすいというのが常識」で「2020年春に導入中止を米側に伝達」したのだが、「安倍政権のトランプ大統領への配慮により一転して継続を決定」した。小沢氏は「結局、米国の言いなり」と切り捨てる。
さらに自衛隊が島々の防衛のために52両を360億円で購入した水陸両用車AAV7は、サンゴ礁や護岸工事された海岸への上陸が困難のうえ、海上時速は13キロにとどまり、「精密誘導弾やドローンなどの普及により強襲上陸は自殺行為になる」。つまり役に立たないというわけだ。
小沢氏の指摘はこのあとも続くので連続ツイートをご覧いただきたいが、結論としては「防衛費倍増がいかに愚かか、我々はしっかりと理解し、厳しく対峙すべき」ということである。
防衛費倍増に必要な年5兆円は、消費税2%分に相当する。これだけあれば国民に現金一律5万円を給付できる。空疎な軍事費倍増よりも物価高に苦しむ国民生活を直接支援するほうがよほど重要だ。立憲民主党をはじめ野党には徹底抗戦を望みたい。
●崖っぷちの岸田文雄・首相 政権延命のため菅義偉氏を官房長官に起用も 12/5
支持率下落はとどまることを知らず、「内閣再改造」や「年始解散」説が駆け巡るほど政権は混乱を極めている。そんななか、崖っぷちの岸田文雄・首相は、耳を疑うような窮余の一策を考えているという。
サシで何を話したか
秋葉賢也・復興相の「4人目の閣僚辞任」をめぐって政局が緊迫するなか、注目の会談が行なわれた。11月28日、岸田首相は「最大の政敵」としてその動向が関心を呼んでいる菅義偉・前首相とサシで会談した。
政界きっての酒豪として知られる首相は、下戸の前首相とはもともと肌が合わない。だから2人で会う時は宴席ではなく、議員事務所のソファーで堅苦しく向かい合う。時間はわずか15分ほど。岸田首相はそそくさと菅氏の部屋を後にした。
「最近のいろいろな動きについて報告するとともに、意見交換した」。岸田首相は記者団にそう語ったが、表情は硬いままだった。
瀬戸際に立たされている岸田首相は、このところ連日、自民党の有力者たちと個別に会合を重ね、最後が菅氏だった。
当日、岸田首相は臨時国会の審議を終え、自民党本部で開かれた旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の被害者救済法案についての党役員会に出席。
そこから急いで衆院議員会館の菅事務所に向かい、会談後、わざわざ自民党本部に引き返して役員会で顔を合わせたばかりの麻生太郎・副総裁、茂木敏充・幹事長の2人と再び会った。菅氏との会談の“感触”を伝えるためだったとされる。
「総理は党首脳から『菅さんにも事前に相談したほうがいい』と忠告を受けて会いに行った」(自民党幹部)
岸田─菅会談でどんな話し合いが行なわれたのか。菅氏サイドの証言だ。
「岸田さんからは増額する防衛費の財源問題と、旧統一教会の被害者救済法案について説明があったようだが、どちらも方針は決まった後だ。正式決定前に報告することで菅さんを蔑ろにはしていないことを示したつもりかもしれないが、菅さんにすれば“何で今ごろそんな話をしに来たのか”という気持ちだろう」
だが、岸田首相の本音は別にあった。首相側近はこう言う。
「総理の菅事務所訪問の本当の目的は内閣再改造について菅さんの意向を探るためだった。反主流派を束ねる菅さんを閣内に迎えることができれば、難局を乗り切れるが、入閣の担保がなければ再改造に踏み切るのは難しい。しかし、総理は断わられることを恐れて、話を切り出せなかったようだ」
会談は完全にすれ違いに終わったが、岸田首相の次の一手、菅氏との関係修復が政権の命運を握っているのは間違いない。
実権のない副総理案も
岸田首相の菅氏に対する「入閣アプローチ」は水面下で続けられてきた。最初は今年8月の内閣改造の際、「菅副総理」説が流れた時だ。情報の出所は官邸サイドだ。
「総理が最も信頼する嶋田隆・総理秘書官が『菅さんを副総理に起用すべき』と強く進言した。しかし、当時は支持率が今ほど低くなかったし、総理は政権運営に自信を持っていたからギリギリで起用を躊躇した。もしあの時、入閣を打診していたら菅さんは受けていたかもしれない」(官邸筋)
その後、岸田内閣の支持率が旧統一教会問題批判と安倍晋三・元首相の国葬批判で急落したのに対し、菅氏は国葬での安倍氏への弔辞をきっかけに評価が高まり、最大派閥・安倍派への影響力を増して復権し、岸田首相を脅かす存在となった。
菅氏も最初から政権に協力する気がなかったわけではない。今年10月結成の自民党カーボンニュートラル推進議連では、岸田首相と菅氏がともに「最高顧問」に就任した。この時、興味深い動きがあった。
「菅さんは会合に総理が顔を出すと聞いて、自分も出席するつもりだったが、総理の日程が合わずに欠席となると自分も出席を見合わせた」(菅側近)
ここでもすれ違った。
一方、なかなか決断できなかった岸田首相が「菅入閣」に大きく傾いたのは、11月20日、岸田派の寺田稔・前総務相が辞任した時だという。岸田派議員が明かす。
「総理のもとには、自民党の重鎮や岸田派のベテラン議員などから、『菅さんを副総理にして政権基盤を強化したほうがいい。菅さんを入閣させれば、最大派閥の安倍派も取り込める』という助言が相次いだ。そこで総理は、寺田さんの後任人事で菅さんに副総理兼総務大臣として入閣してもらおうとようやく決心した。総務大臣は菅氏にとってこだわりのあるポストだから受けてくれるかもしれない。総理は心配性だから、もし断わられた場合でも、菅さんに頼んで菅側近の坂井学・前官房副長官を総務大臣に起用するというセカンドプランまで用意したが、調整がうまくいかなかった」
慎重な菅氏は自分を「実権のない副総理」として閣内に取り込もうという岸田首相の魂胆を見抜いて、易々とは乗ってこなかった。
だが、その後も閣僚不祥事が止まらず、岸田首相はどんどん追い詰められている。そこで首相周辺から挙がっている“奥の手”が、菅氏を官房長官に起用することで危機を乗り切ろうというプランだ。
「この際、菅さんを官房長官に迎えるのが最良の手だ。菅官房長官なら問題閣僚をスパッと切って混乱を収拾していたはずだ。副総理は受けてもらえなくても、政権を切り盛りできる官房長官であれば受けてもらえる可能性はある」(岸田派中堅)
政治評論家の有馬晴海氏も、「政権延命にはそれしかない」と指摘する。
「岸田内閣は完全に機能不全に陥っている。官邸で政権の危機管理を担当する松野博一・官房長官は、旧統一教会問題への対応や、閣僚不祥事の火消しができていない。役人は言うことを聞かないし、党幹部にも首相の抑えが利かない。自民党内を見渡すと、政権の危機管理を担う手腕があり、党内ににらみを利かせることができるのは、安倍政権の官房長官として数々のスキャンダルを乗り切った菅氏しかいない。
菅総理が松野氏を官房長官に起用したのは最大派閥の安倍派とのパイプ役にするためだったが、安倍氏の死後、役割は終わった。岸田総理は菅さんに『助けてください』と頭を下げ、三顧の礼をもって『官房長官になってください』と頼むしか生き残る方法はない」
主導権を握られる
現在の岸田首相と菅氏の立場は、1年前とちょうど逆になった。
昨年9月、コロナ失政の批判を浴びて支持率が低下した菅首相(当時)に対し、岸田氏は二階俊博・幹事長(当時)らの「党役員刷新」を掲げて“菅降ろし”の口火を切った。それに対して菅首相は二階氏の更迭方針を決め、内閣改造で事態打開を図ろうとした。
その時、改造の目玉にしようとしたのが、ワクチン担当相として名を上げた麻生派の河野太郎・消費者担当相だった。
しかし、菅氏が河野氏の親分である麻生氏に河野起用の人事を打診したところ、「お前と一緒に沈められねえだろ」と断わられ、望みを断たれた菅氏は翌日、退陣(総裁選不出馬)を表明した。
今度は岸田首相が、自分が引きずり降ろした因縁の相手である菅氏に政権の命運を握られることになった。
因縁はまだある。冒頭の岸田─菅会談の2日後、岸田首相の後見人である麻生氏が菅氏を宴席に招いて会談が持たれたのだ。
「2人がうまくいかないことにじれた麻生さんが間を取り持つために動いた」(前出・岸田派中堅)と見られているが、麻生氏は菅氏に、「岸田をあんたのように沈めないでくれ」と頼んだのだろうか。
だとしても、岸田首相にとって菅氏に官房長官就任を要請するのは“究極の選択”と言っていい。
「政策面を含めて政権の主導権を菅官房長官に全面的に委ねることを意味する」(有馬氏)からだ。事実上、菅氏が政権の実権を握り、岸田首相はお飾りになる。
岸田首相がそれを覚悟して就任を要請したとしても、もし、菅氏が断われば、内閣再改造の計画は潰え、岸田政権は瓦解に向かうことになる。
岸田首相は菅氏に頭を下げることができるのか。いや、菅官房長官就任に賭けるしかない土壇場に立たされているのだ。 
●税金はどう使われる?…「補正予算や防衛費」めぐる論戦 12/5
立憲民主党・大西衆院議員「いわゆる影武者が選挙期間中、何度も色んな所で目にする」
立憲民主党・渡辺衆院議員「少なくとも秋葉4号まで存在したと」
選挙運動に関わる違法疑惑が次々と指摘され…。
秋葉復興大臣「私は一切、そのような事実は承知しておりません」
立憲民主党・後藤衆院議員「本当に選挙本番期間中の記録、残っていないんですか」
秋葉復興大臣「選挙終了と同時に事務所の手元にあるものは大体、処分しているというふうに聞いております」
立憲民主党・後藤衆院議員「記録がない、記憶がない、山際大臣と全く同じですよ」
4人目の辞任ドミノという火種がくすぶる終盤国会。追及は、この人にも…。
立憲民主党・塩村参院議員「『女性差別というものは存在しない』と発言されていますが、これは間違いないでしょうか」
杉田総務政務官「日本には『命にかかわる、ひどい女性差別は存在しない』という趣旨でございます」
社民党・福島党首「命に関わる女性差別が存在しない。DVがあるじゃないですか自殺する女性がいるじゃないですか。そんな認識で政務官やれないですよ。こんな人政務官でいいんですか、総理」
岸田総理大臣「DVをはじめ、深刻な事態のなかで命を落とされる方がおられる。それを深刻に受け止める、これが政府の立場であります。ぜひ政府の方針に従って、その立場で職責を果たしてもらいたいと思っています」
政府が会期内での成立を目指す旧統一教会の被害者救済法案を巡っては…。
岸田総理大臣「法人等が寄付の勧誘に際して、念書を作成させ、あるいはビデオ撮影をしていること自体が法人等の勧誘の違法性を基礎付ける要素の一つとなり、損害賠償請求が認められやすくなる可能性がある」
立憲民主党・山井衆院議員「これは非常に重要な答弁ですね」
政府の解釈が次々と示されたものの、野党側はさらなる修正を求めて攻防が続いています。  
 
 

 

 
 
  

 

 
 
 

 



2022/11-