岸田首相 施政方針演説

岸田首相の施政方針演説

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●岸田首相の施政方針演説要旨 1/17
はじめに
新型コロナウイルスに打ち勝つことに全身全霊で取り組んでいく。
新型コロナ対応
オミクロン株による感染が拡大している。過度に恐れることなく、最新の知見に基づく対応を冷静に進める覚悟だ。特性を踏まえめりはりをつけた対策を講じていく。病床が逼迫(ひっぱく)するような緊急事態は何としても避けなければならない。先進諸国の取り組みを参考に、入退院基準などについて科学的知見の集約を急ぎ、対応を検討する。ワクチンは3月以降、高齢者の接種を6カ月間隔で行い、一般向け接種も少なくとも7カ月、余力のある自治体では6カ月で接種を行う。自衛隊による大規模接種会場を設置し、自治体の取り組みを後押しする。迅速に薬事承認を行う仕組みを創設する。6月をめどに司令塔機能の強化や感染症法の在り方、保健医療体制の確保など、中長期的観点から必要な対応を取りまとめる。
新しい資本主義
経済再生の要は新しい資本主義の実現だ。歴史的スケールでの「経済社会変革」の動きが始まっている。新しい資本主義によって世界の動きを主導していく。成長戦略ではデジタル、気候変動、経済安全保障などの社会課題の解決を図り、官民の投資を集め成長のエンジンへと転換していく。春には春闘がある。近年、賃上げ率の低下傾向が続いているが、このトレンドを一気に反転させ、賃上げが実現することを期待する。早期に全国加重平均1000円以上となるよう最低賃金の見直しにも取り組む。官民の人への投資を早期に少なくとも倍増し、さらにその上を目指していく。海外の先進事例からも学び、公的職業訓練の在り方をゼロベースで見直す。今春、新しい資本主義のグランドデザインと実行計画を取りまとめる。
気候変動問題への対応
官民がこの分野への投資を少なくとも倍増させ、新しい時代の成長を生み出すエンジンとしていく。カーボンニュートラルの目標実現に向け、産業構造、国民の暮らし、地域の在り方にわたる経済社会全体の大変革に取り組む。「アジア・ゼロエミッション共同体」をアジア有志国とつくる。
全ての人が生きがいを感じられる社会へ
こども家庭庁が主導し、教育や保育の現場で性犯罪歴の証明を求める日本版DBSを進める。
地域活性化
本年は沖縄の本土復帰50周年だ。沖縄の歴史に思いを致し、強い沖縄経済をつくる。
災害対策
東日本大震災からの復興は大きな課題だ。福島の復興・再生を前進させるのみならず、国際教育研究拠点を具体化する法律を整備する。
外交・安全保障
日本外交のしたたかさが試される1年だ。米国のバイデン大統領と早期に会談し、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化し、より広く国際社会に貢献する同盟へと導いていく。中国には責任ある行動を強く求めると同時に、日中国交正常化50周年であることも念頭に、建設的かつ安定的な関係の構築を目指す。各国の現・元政治リーダーの関与も得ながら、「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」を立ち上げ、本年中を目標に第1回会合を広島で開催する。新たな国家安全保障戦略などを策定する。敵基地攻撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討する。
憲法改正
積極的な議論が行われることを期待する。
おわりに
国土交通省の建設工事受注動態統計の検証結果を真摯(しんし)に受け止め、国民におわび申し上げる。政府統計全体の信頼を回復するべく、指導・監督していく。 
 
 
 
 
●岸田首相の「新時代のリアリズム外交」とは何か 1/29
自民党内派閥の「宏池会」は伝統的に政策通の多いハト派集団で知られ、タカ派の代表である安倍晋三前首相が属する清和会(清和政策研究会)の対極に位置する。池田勇人、大平正芳、宮澤喜一らの首相を輩出し、その源流は吉田茂までさかのぼる。吉田ドクトリンや所得倍増計画など、通底しているのは軍事より経済を、イデオロギーより現実を重視する点だろう。
その宏池会の会長でもある岸田首相が1月召集された通常国会の所信表明演説で外交に関して「新時代のリアリズム外交」という新しい概念を打ち出した。「新時代のリアリズム外交」はいかにも「宏池会」らしい表現だが、その内容はまだはっきりしない。
岸田首相はこの言葉の説明として、「自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値や原則の重視」「気候変動問題などの地球規模課題への積極的取り組み」「国民の命と暮らしを断固として守り抜く取り組み」という3つの柱をあげた。
安倍氏など清和会への違和感が根底に
しかし、その具体的内容となると、日米同盟関係の強化、北朝鮮による拉致問題や核ミサイル開発問題の解決、沖縄の基地負担の軽減、「自由で開かれたインド太平洋」の推進など、特別目新しい政策はなかった。目立ったのは広島選出の議員らしく「核兵器のない世界の追求」を強調している点だろうが、これは岸田首相の持論といったところだろう。
首相の施政方針演説や所信表明演説は、かつては各省の政策の寄せ集めにすぎなかった。それを嫌った小泉純一郎首相のように演説にほとんど重きを置かなかった首相もいた。ところが政治主導がいわれる近年は、細部はともかく重要部分は首相官邸で書き上げており、各省官僚の関与は激減したとされる。
岸田首相が打ち上げた「新時代のリアリズム外交」も外務省はまったく関与していないという。しかし、外務省幹部は「内容を見る限りこれまでの外交政策と変わりないので安心している」と話す。
就任直後の国会での所信表明演説で岸田首相は外交について「強い覚悟をもって毅然とした外交を進めます」と発言していた。「毅然とした外交」は自民党内タカ派が好んで使う表現だ。就任直後の高揚感もあってこういう言葉を使ったのかもしれないが、1月の演説からは消え、正反対の「リアリズム」が登場した。
こうした変化から推測するに、岸田首相は森喜朗首相を皮切りに小泉、安倍氏と続いた清和会出身政権の外交政策に少なからぬ違和感を持っているのだろう。しかし、いきなり宏池会的カラーを前面に出せば党内の強い反発を招くことになる。だから、宏池会のホープである林芳正氏を外相に起用したうえで、権力基盤を徐々に固めながら自分らしい外交を展開しようとしているのかもしれない。
そこで岸田氏の著作物(『岸田ビジョン』、『核兵器のない世界へ』)などから、岸田首相のいう「新時代のリアリズム外交」を読み解いてみたい。
外相を長く務めた自信と「宏池会」の誇り
一見、控えめに見える岸田首相だが、安倍政権時代に4年7カ月も外相を務めたこともあって、「外交・安全保障の分野では、私以上に経験豊かな政治家はあまり見当たらないと自負している」と、外交にはかなりの自信を持っている。
安倍政権時代の外交は、安倍首相とトランプ大統領の緊密な関係、官邸主導で展開された北方領土問題に関する日ロ首脳会談など、主要外交はことごとく安倍首相中心に展開され、岸田外相の影は薄かった。数少ない成果だった従軍慰安婦をめぐる日韓合意も、文在寅大統領があっさりと反故にしてしまった。そういう意味では不遇の外相でもあるが、長期間の外相時代に培った世界各国の人脈の広さなどが岸田氏の自信につながっているようだ。
もう一つの自負は、宏池会に対する誇りであろう。1955年に保守合同して結成された自民党内には2つの流れがある。岸田氏に言わせるとそれは、自主憲法制定や再軍備を主張した鳩山一郎を中心とする「戦前保守派」と、再軍備を脇に置き敗戦で疲弊した日本経済再生を優先した吉田茂を中心とする「戦後保守派」である。
「戦前保守派」は連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)によって公職追放され、後に解除されて政界に復帰した勢力が中心だった。宮澤喜一元首相は、当時の状況について「鳩山さんに代表される追放復活者の方々の顔ぶれを見て、彼らの信条どおりの政治が実現すれば、明らかに戦前にさかのぼることになるのですから。私たちとは明らかに違う人たちが戻ってきたということがはっきりしていました」(『90年代の証言 宮澤喜一』)と述べている。
岸田氏に言わせると、戦前のイデオロギーにこだわる鳩山らに対し、吉田らは現実主義(リアリズム)に徹してきた。それが宏池会に生き続けており、「新時代のリアリズム外交」という言葉が出てきたのであろう。
そのうえで自らの経験を踏まえた外交について、「外相時代の経験から言えば、外交では対話を絶やさないことが重要だ」「外交の要諦はまず相手の話を聞くこと。すべてはそこから始まります。相手国にこちらの思いを押し付けてはならない。押し付けたら向こうは受け付けてくれません」と述べている。いかにもハト派らしい考え方である。
日米関係については意外に懐疑的
主要国との関係についてみてみると、まず日米関係については意外にも懐疑的な考えを持っていることがわかる。もちろん日米同盟関係の重要さを認めているが、「アメリカとの適切な距離感が、今後の日本外交の一つの課題になると考える」、「日本はアメリカの代理国ではなく、独自のどんな役割を果たせるのか。ルール作り、枠組み、アジア地域の秩序維持をリードする役目がある」として「日米安保体制のバージョンアップ」を唱えている。
こうした発想は、日米関係を最優先してきた小泉、安倍首相ら清和会政権との大きな違いでもあるだろう。しかし、その具体的内容はまだ明らかにはされていない。
対中外交については強硬論一辺倒の自民党内タカ派とは明らかに一線を引いている。施政方針演説は「主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めていく」「対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力し、本年が日中国交正常化50周年であることも念頭に、建設的かつ安定的な関係の構築を目指します」と今のところ当たり障りのない一般論を述べている。
著書では多少踏み込んで「RCEP(東アジア地域包括的経済連携)やTPP協定といった枠組みを主導することで中国を含めた大きな輪を作り、そこに時間をかけてアメリカを巻き込んでいく」と書いているが、簡単な話ではない。自民党内に中国に対する厳しい意見があふれている中、容易に具体策を打ち出すことはできないだろう。
慰安婦合意を反故にされた韓国に対しては当然だが厳しい姿勢を示している。
現代の文在寅政権を「支持率維持のために世論受けする反日に活路を見出そうとしている」、「韓国政治がいくら苛烈でも合意を国際事情で変えられたら信頼関係は保てない」などとストレートに批判、「国と国の国際的約束ほど重いものはなく、韓国がとる態度には、率直に言って腹が立ちます」と岸田氏としては珍しく感情をあらわにしている。
韓国とは政権交代を機に関係改善を模索
日韓合意を無視した文在寅大統領の任期は残り4カ月余り。岸田首相は「原理原則は決して曲げずに、日本の最終的な国益のために折り合っていくことが外交のありようの基本である」とも書いており、ここでも宏池会流のリアリズムを捨てたわけではない。韓国での政権交代を機に、新大統領との間で関係改善を模索していくことになる。
日米中の外交を考えた時、2022年は3国とも重要な政治イベントを抱えているため外交的に動きにくい年だ。アメリカは11月に中間選挙を、中国も秋に党大会を控えている。それらの結果が出なければ、両国とも本格的な外交を展開しにくい。同じことは日本にも言え、7月に予定されている参院議員選挙に向けこれから半年間の政治の焦点は選挙となる。
韓国の大統領選を含め各国の政治体制やその動向が明らかになったのちに、本格的な外交が動き出す。岸田首相が唱えた「新時代のリアリズム外交」の具体像はその時に明らかになるのだろう。 
●「前の総理は、伝え下手…今の総理は伝える場所を設けない」 1/28
俳優の坂上忍が28日、MCを務めるフジテレビ系「バイキングMORE」(月〜金曜・午前11時55分)にスタジオ生出演した。
番組では、新型コロナウイルスの濃厚接触者の待機期間をめぐり現在の10日間から今後、政府が7日間に短縮する方向で調整することを伝えた。
坂上は、政府の情報発信について「岸田さんの前の総理は、ちょっと伝え下手なところがあったけど今の総理は今度、伝える場所を設けないっていうね。そこらへんのだんだん表に出てこないと不信感に変わっていっちゃうと思うんです」と指摘していた。 
●日米首脳、今年前半のクアッド開催確認 テレビ会談 1/27
岸田文雄首相は21日夜、米国のバイデン大統領とテレビ会議形式で会談した。軍事力や経済力を背景に覇権主義的行動を強める中国を念頭に、日米の外務・経済閣僚の新たな協議の枠組みとして経済版「2プラス2」を設置することで合意。今年前半に日米とオーストラリア、インドによる「クアッド」の首脳会合を日本で開催し、バイデン氏が来日することを確認した。
首相は会談後、記者団に対し、「日米が連携し、いかに国際社会をリードしていくかについて率直な議論ができた。日米同盟の強化につながる大変有意義な議論だった」と述べた。会談は約80分間。
両首脳は会談で、中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて連携を深めることで一致。台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認した。北朝鮮による核・ミサイル問題について緊密に連携していくことも確認し、バイデン氏は拉致問題の即時解決を支持した。
また、首相は国家安全保障戦略などを改定し、日本の防衛力を抜本的に強化する決意を表明した。「敵基地攻撃能力」の検討にも触れ、バイデン氏が歓迎した。ロシアのウクライナ侵攻を抑止するため、緊密な連携も確認した。
日米両政府は会談に先立ち、核拡散防止条約(NPT)に関する共同声明を発表しており、両首脳は「核兵器のない世界」の実現に向けてともに取り組んでいくことを確認した。
新設で合意した経済版「2プラス2」は日本側は外相と経済産業相、米側は国務長官と商務長官が参加する。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」を踏まえ、経済安保やインド太平洋地域でのインフラ投資などの協力を議論する見込み。
首相は会談で、中国が加盟を申請した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について、米国の復帰を呼びかけた。
核抑止維持へ問われる首相のリアリズム
日米両政府は21日、首脳会談に合わせてNPTに関する共同声明を発表し、核不拡散と核軍縮で連携する姿勢を強調した。被爆地・広島出身の岸田文雄首相にとって「核兵器なき世界」は大事なテーマだ。バイデン大統領も核兵器の役割縮小に意欲を示してきたが、両氏の組み合わせは日本の戦略環境を不安定化させかねない危うさをはらむ。
「核兵器のない世界に向けてともに取り組んでいくことを確認した」
首相は21日夜、バイデン氏との会談後、記者団にこう述べた。新型コロナウイルス対策で方針転換をいとわず「こだわりがないのがこだわり」とも評される首相が長年取り組んできたのが核問題だ。共同声明は外務省と米国務省が発表したが、首相も事前に目を通したという。
一方、バイデン政権は「核態勢見直し(NPR)」の発表に向け取りまとめを進めている。バイデン氏は2020年春の論文で米国の核兵器に関し、核攻撃に対する抑止と報復を「唯一の目的」とする考えを示しており、いかなる形でNPRに反映されるかが焦点となる。
バイデン氏が副大統領を務めたオバマ政権では核の先制不使用が検討され、米軍や同盟国の反対で断念した。「唯一の目的」論は敗者復活戦ともいえ、日本側ではバイデン政権発足時に「オバマ政権の左派が影響力を持ちかねない」と警戒する声が上がっていた。
同盟国が通常兵器や生物兵器、化学兵器などの大量破壊兵器で攻撃されたとしても米国が核で反撃しないとすれば中国や北朝鮮が攻撃を仕掛ける誘惑にかられかねない。本来なら日本政府のトップはいきすぎた理想追求をたしなめる立場にある。岸田政権も核先制不使用を疑問視する歴代政権の立場を踏襲してはいる。
しかし、核廃絶に向けた首相の熱意は健在だ。自身が会長を務める自民党岸田派(宏池会)の議員を核軍縮担当首相補佐官に充て、17日の施政方針演説では「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」の設立を表明した。長期的な目標としての核廃絶と米政権の核戦略は直接リンクしないとはいえ、首相の姿勢がバイデン政権内部の理想主義グループを勇気づける可能性は否定できない。首相が掲げる「新時代リアリズム外交」は首相自身の発案だったという。核兵器をめぐる問題でこそ首相の現実感覚が問われる。 
●野党、ワクチン3回目接種遅れを攻撃で「菅賛歌」 岸田首相イライラ 1/27
24日から続く衆院予算委員会で野党第1党の立憲民主党などが「実行力を欠く」などと岸田文雄首相を追及している。新型コロナウイルスワクチンの3回目接種の実績の伸び悩みが筆頭の攻撃材料に。菅義偉前首相(衆院神奈川2区)の「1日100万回接種実現」などの実績を引き合いに出した攻撃で、自民党内の対立や分裂の誘発も狙っているようだ。
「今月の1日当たりの接種は約11万回。菅総理の時代を振り返ると昨年7月10日には169万回も打っている。10倍も開いているじゃないか」。25日、立民の山井和則氏は岸田首相に「リーダーシップがない。菅内閣のように接種回数の目標を立てよ」と迫った。
岸田首相は「状況に合わせて迅速に打っていく。回数目標うんぬんではない」と否定。「菅賛歌」(自民幹部)を交えた山井氏からの追及に、普段の淡々とした表情から一転、「再三言っているでしょ!」と声を荒らげた。
大串博志氏からは24日、「総務省を使い自治体へ協力要請の直電をさせるなど接種の指揮を執った菅前総理の熱意を持て」とただされた。「自衛隊による大規模接種会場も改めて設ける」などと反論したが「会場での回数見込みも菅政権の4分の1程度」との比較で逆襲された。 
●結局アベスガ路線。「新しい資本主義」の言葉は踊れど見えぬ岸田色 1/26
17日、就任後初の施政方針演説で岸田文雄首相は、自身が掲げる「新しい資本主義」について言及。具体的な中身が見えてこないとの指摘を払拭することはできたのでしょうか。1月13日に創刊したばかりのメルマガ『室伏謙一の「霞が関リークス」増刊号』では、著者で国会議員、地方議員の政策アドバイザーを務める室伏謙一さんが、演説内容に岸田政権らしさがないと指摘。その中で明言した「四半期開示の見直し」すらも、どこをどう見直すのか示されず、問題点を理解していないのだろうと呆れています。
岸田総理は四半期決算を見直す気はない?──施政方針演説から考える
今週から通常国会が始まりました。少々始まりが早いのは、今年の夏、参院選があるからで、会期の延長も難しいというか、事実上不可能だからでしょうね。5月後半以降は完全に参院選モードに入りますから、通常国会は6月15日までの150日間と言っても、政府提出法案数も限定するのでしょうし。
さて、国会開会冒頭に行われるのが、政府4演説です(勿論その前に、天皇陛下の御臨席の下、開会式が行われますが)。政府4演説とは施政方針演説、財政演説、外交演説、そして経済演説です。このうち総理が行うのが施政方針演説で、これは通常国会の時のみ行われます(臨時会では所信表明演説。なお、臨時会引き続き常会という流れを採った平成25年の通常国会、民主党から自民党に政権交代した時の国会ですが、この時は、まず所信表明演説をやって、その後本予算の審議に合わせて施政方針演説が行われました)。
その施政方針演説ですが、今回これを行ったのは、当然、岸田総理です。ではその中身はと言えば、「新しい資本主義」といった言葉こそ踊れど、新規性に欠ける、岸田政権らしさに欠ける、安倍政権的、菅政権的な事項が無造作に並べられているだけでした。
唯一岸田政権らしさが出たものがあると言えば、「人への投資」の観点から、四半期開示の見直しを明言したことぐらいでしょうか。これでさえも、四半期「決算」と言わず四半期「開示」という言葉を使い、その見直しの方向性も全く示されませんでした。単に見直し、しかも「開示」の見直しということであれば、四半期ごとに決算を開示する義務を止めるのか、開示の方法を変えるだけなのか、開示内容をより厳格化するのか、いくつかの方向性が考えられますし、それによって影響・結果も全く異なります。
そもそも、この前段で述べているのは、「人的投資が、企業の持続的な価値創造の基盤であるという点について、株主と共通の理解を作っていくため、今年中に非財務情報の開示ルールを策定します」ということ。つまり、四半期開示においては非財務情報も含めて開示せよという話になることも考えられるわけです。
だいたい、なぜ四半期決算が問題なのかと言えば、これが企業の短期主義経営を助長しているからです。しかし、岸田総理の施政方針演説ではこうした短期主義の問題には触れられていません。ということは、短期主義を助長する株主資本主義は維持しつつも、非財務情報も開示させるようにすれば、人への投資、つまりは賃上げという観点からは多少は改善されるだろう、そういう考え方、話なのではないかと思われてしまいます。
要するに、というかやはり、岸田政権は「新自由主義からの転換」を本気で考えておらず、新自由主義の問題点を理解できておらず、なぜ日本経済が成長できず、デフレのままなのかについても正しく理解できていないということのように思います。だから「新しい資本主義」と言いながら、その中心はデジタル田園都市構想なのだと、頓珍漢な話になってしまうのでしょう。
人の話を聞く岸田総理、聞きすぎて飽和状態になってしまっているというか、こんがらがってしまっているのかもしれませんね…。 
●脱炭素「目標自体が大変高い」 1/26
岸田文雄首相は26日の衆院予算委員会で、2030年度の温室効果ガス排出量を13年度比で46%減らす政府目標に関し「目標自体が大変高い。決して気を緩めず努力を続けなければならない」と述べた。立憲民主党の源馬謙太郎氏が、コロナ禍で経済活動が停滞したにもかかわらず20年度速報値が13年度比で18・4%減にとどまったとして認識をただした。
首相は施政方針演説で提唱した、アジアの脱炭素化への取り組み「アジア・ゼロエミッション共同体」の構想に中国は入っていないと明らかにした。日米などは温室効果ガス排出の50年実質ゼロを宣言したが、排出トップの中国は約束していない。 
●「国土強靱化」が2位、首相が施政方針演説で災害対策に強い覚悟と表明 1/25
人気テーマ・ベスト10
1 メタバース / 2 国土強靱化 / 3 半導体 / 4 ゼネコン / 5 電気自動車関連 / 6 PCR検査 / 7 グローバルニッチ / 8 パワー半導体 / 9 半導体製造装置 / 10 TOPIXコア30
「人気テーマランキング」で、「国土強靱化」が2位にランクしている。
政府が昨年12月24日に閣議決定した2022年度予算案は、一般会計総額が過去最大となる107兆5964億円となり、そのうち公共事業関係費は6兆575億円となった。新たに発足したデジタル庁が計上した公共事業関係のシステム関連などの費用を含めると、22年度は前年度を26億円上回る予算が計上された。
岸田首相は先週17日に召集された第208回通常国会における施政方針演説で、強い覚悟を持って災害対策に取り組む考えを表明した。南海トラフなどの巨大地震や風水害、豪雨への備えのため、5年間で15兆円規模の集中対策を進め、27年前の阪神・淡路大震災に触れた上で「引き続き強い覚悟を持って、防災・減災、国土強靱化を強化する」と述べた。また、静岡県熱海市で昨年発生した土石流災害の再発防止に向けても、全国に3万6000カ所あるとされる点検が必要な盛り土の安全確保を進める意向を示した。
安倍政権以降、「国土強靱化」は株式市場で重要なテーマの一つであり、政府の予算編成や国会開会のたびに思惑を呼び、関連株へ物色の矛先が向かいやすい。岸田首相は昨秋の自民党総裁選から「国土強靱化」への投資拡大を主張し続けており、投資家の注目は続きそうだ。 
●日本、専守防衛の原則破りついに「敵基地攻撃能力」を手に入れるか 1/25
「北朝鮮が繰り返す弾道ミサイル発射は断じて許されず、ミサイル技術の顕著な向上を見過ごすことはできません」
今月17日午後2時、日本の国会。同日、通常国会の開会を知らせる施政方針演説を行った岸田文雄首相が強調したのは、日増しに高まっている北朝鮮のミサイル脅威だった。ちょうど同日、演説が始まるわずか5時間前の午前8時50分と54分、北朝鮮は再び2発のミサイルを発射した。今月に入って5日、11日、14日に続く4回目の発射だった。
北朝鮮が最近連続して発射したミサイルのうち、2回(5日と11日)は日本が大金を投じて構築したミサイル防衛(MD)システムでは事実上迎撃が不可能な「極超音速ミサイル」であることが明らかになり、安全保障をめぐる日本の不安は以前とは比べものにならないほど高まっている。これを表すかのように、岸信夫防衛相は18日の記者会見で「北朝鮮は(ミサイル)発射形態の多様化など、急速かつ着実に関連技術の運用能力や向上を図ってきている。一連の弾道ミサイル発射を含む北朝鮮の軍事動向は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威だ」と述べた。もし、実際に北朝鮮のミサイルを日本が誇る2重ミサイル防御システムのイージス艦とパトリオット(PAC)3を通じて迎撃できなかったらどうするのか。残る選択肢は相手の攻撃原点を打つ能力を持つことしかなくなる。岸田首相は同日の演説で、こうした覚悟を示すかのように、日本が敵の基地を直接打撃できる「いわゆる『敵基地攻撃能力』を含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討する」と述べた。
時期をほぼ同じくして、韓国でも日本のこうした動きと酷似した場面があった。北朝鮮が今年、相次ぐ発射で高度化したミサイル能力を備えているという事実を立証したことを受け、韓国の「保守」も同じ声をあげ始めたのだ。国民の力のユン・ソクヨル大統領選候補は、北朝鮮が今年に入って2度目のミサイルを発射した11日、対北朝鮮「先制攻撃論」を取り上げた。ユン候補は「マッハ5以上のミサイルが発射され、(このミサイルが)核を搭載したとすれば、首都圏に到達して大量殺傷をするのにかかる時間は1分以内」だとし、「キルチェーンという先制攻撃しかこれを防ぐ方法がない」と述べた。
これを通じて分かるように、ユン候補の「先制攻撃論」と日本が推進する「敵基地攻撃能力」保有は本質的に同じ話だといえる。北朝鮮と中国の核の脅威が現実化し、北朝鮮のミサイル能力が高度化したことで、以前とは質的に異なる安全保障上の不安を感じるようになった日本と韓国の保守が同じ方向に動き始めたのだ。
相手を先制攻撃できる兵器を持つことに何の憲法的制約もない韓国と違って、日本では敵基地攻撃能力の保有問題をめぐり、過去60年以上にわたり論議を繰り広げてきた。日本は1948年5月に平和憲法を持つようになって以来、日本の武力は自分を防御するためだけに使うという「専守防衛」の原則を維持してきた。
そのような日本で、敵基地攻撃能力に関する初めての論争が始まったのは1956年だった。 冷戦時代、東西両陣営間の対立が激しくなり、相手が日本を攻撃するためにミサイルを発射することが火を見るよりも明らかなのに、日本が専守防衛の原則にしがみつき、手を拱いていても良いのかという指摘が出た。これに対し、鳩山一郎元首相(1883〜1959)は衆議院内閣委員会で「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思う。そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきだ」と述べた。「座して自滅を待つ」のは到底ありえないことだから、日本も敵の基地を攻撃できるという見解を示したのだ。しかし、その後も日本政府は「適基地攻撃能力を保有することは法理的には可能だが、その能力を持つことはない」という中途半端な立場を維持してきた。
この立場に本格的な修正を加え始めたのが安倍晋三首相(当時)だった。中国の浮上と北朝鮮の核開発で日本に対する脅威がますます高まっている状況で、決断を下さなければならないと判断したのだ。日本はこのため2018年の防衛計画大綱に敵の攻撃範囲外からミサイルを発射できる「スタンド・オフ(stand-off)防御能力」を確保すると明記した。これに伴い、米ロッキードマーティン社の「長射程合同空対地ミサイル」(JASSM-ER)と「長距離対艦ミサイル」(LRASM)の導入を決定した。日本の戦闘機に同ミサイルを搭載して発射スイッチを押せば、九州や沖縄で北朝鮮と中国の内陸を攻撃できるようになる。このミサイルの導入で、日本は表向きには曖昧さを維持しながらも、「事実上」敵基地攻撃能力保有の線を越えた。
その後、安倍首相は、日本がこれまで維持してきた曖昧さから脱し、本格的に敵基地攻撃能力を持つことを決心する。自民党政策調整審議会傘下に設置されたミサイル防衛検討チームは2020年8月4日、「相手領域(領土)内でも弾道ミサイル等を阻止する能力を含めて、抑止力を向上させるための新たな取り組みが必要だ」として、「敵基地攻撃能力」を政府に提言した。だが、安倍首相の健康問題が足を引っ張った。持病の潰瘍性大腸炎が再発した安倍首相は退陣直前の2020年9月、異例にも個人談話を発表し、「(ミサイル)迎撃能力を向上させるだけで、国民の生命と平和な暮らしを守り抜くことができるのか」と問いかけた。防御だけでなく攻撃手段を検討する時が来たと主張したのだ。
誰も予想できなかった安倍首相の退陣で「敵基地攻撃能力」論議が宙に浮いた後、安倍政権の後を継いだ菅義偉首相は、新型コロナウイルス感染症の対応に追われ、内容をこれ以上進展させることができなかった。この議論を引き継いだのが岸田現首相だ。岸田首相は昨年10月の自民党総裁選挙で「敵基地攻撃能力保有を含め、抑止力として用意しておくことは考えられる」と述べた。
日本は敵基地攻撃能力を確保できる主要手段として「12式地対艦誘導弾」の改造に力を入れている。日本政府は現在200キロメートルの射程を5倍長い1000キロメートル以上に増やし、地上、艦艇、戦闘機に搭載して2020年代後半までに実戦配備する計画だ。開発費だけで総額1000億円が計上されている。また自衛隊の主力戦闘機F-15に、すでに導入を決めた「長射程空対地ミサイル(JASSM-ER)」を搭載し、ステルス能力を備えたF-35には合同打撃ミサイル(JSM)を搭載する計画だ。
しかし、このような動きには懸念の声も高まっている。日本総合研究所国際戦略研究所の田中均理事長は最近、毎日新聞への寄稿で、「敵基地攻撃能力」について、互いに強硬策に走りそれが衝突につながる可能性があると警告した。さらに「台湾を巡る衝突の可能性が高まり、日米と中国の関係が決定的対立に至るといったことは排除されない」としたうえで、「あまり『台湾有事』を軽々に語るのではなく、台湾有事を避ける静かな外交を展開していくべき」だと強調した。山崎拓元自民党副総裁も同紙への寄稿で「今、日本の政治に求められているのは、岸田首相が東アジアの平和と安全に関するビジョンをしっかり持ち、それに基づいてバイデン大統領と習主席双方を説得する度量と能力を持つこと」だと指摘した。
このような懸念の声にもかかわらず、日本の敵基地攻撃能力保有の流れは止められない状況になっている。日本政府は26日、国家安保戦略の改正や敵基地攻撃能力などを議論するため、初の専門家会議を開く予定だ。 
●ワクチン追加接種は「第6波が終わってから」という悪い冗談 1/24
グズグズしていると、ピークアウトする
岸田政権は、施政方針演説で、「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組む」と発言した。しかし先週の本コラムに書いたように、ワクチンの3回目接種は進まず、米軍基地の感染でも米国との交渉は遅きに失したと、筆者は見ている。
私事であるが、1月23日に3回目ワクチン接種を受けた。筆者は日本の中では比較的早いほうだが、世界と比べると、あまりに遅い。
特に、厚労省が2回目後以降8ヵ月の接種に固執していたので、3回目が遅れてしまった。昨年11月時点では、日本のワクチン接種のスピードは先進国でトップクラスだった。ワクチンを他国の供給に依存していた日本は、スタートでは出遅れたものの、菅政権は次々と打開策を打ち出した。厚労省だけに頼らない周到な国内準備を行い、米国へは首相自らが働きかけ、国内での打ち手問題には「超法規的措置」といった具合で、ワクチン接種を加速させていった。
しかし岸田政権になってから、そのスピードが目に見えて落ちていった。その結果、3回目接種では、世界よりかなり遅れてしまうことになったのだ。
1月23日、筆者はこうツイートした。「今日、ワクチン追加接種済。感染・重症化予防がある。ただ、岸田政権政権では追加接種が酷く遅れたので、6波が過ぎてから追加接種という悪い冗談になりかねない」
3回目の接種から抗体が出来るのは1〜2週間後だ。そのころには、もう第6波はピークアウトしている可能性もある。
5類への引き下げをやらない理由
データから、いずれも新規感染者数のピークアウトはこれまでより早いことがわかる。
これらの事例を日本に当てはめると、1〜2週間もするとピークアウトしている可能性がある。ワクチンの3回目接種でここまで出遅れると、ピークアウトしてからワクチン接種という冗談みたいな展開が現実になりかねない。
もっとも現在の新型コロナウイルスは、感染力は強いものの、毒性は弱毒化している。筆者のまわりにも、オミクロン株で感染したと思われる人が、前回デルタ株の時よりかなり増加している。しかし、相変わらず感染症状では2類相当なので、感染した人はビジネスで支障が出ている。
新型コロナの感染症法上の分類について、2類相当から5類への引き下げについて、岸田文雄首相は、「感染急拡大している状況で変更するのは現実的ではない。2類から5類に一旦変更し、その後、変異が生じた場合、大きな問題を引き起こす」と消極的だ。
このような変更決定は、新型コロナの感染者数が極めて少なかった昨年10月、11月にやっておくべきだった。ワクチンの3回目接種でも在庫があったにもかかわらず、手を打たなかった。そのため、沖縄では医療従事者が感染し医療にも支障が出ているという。分類変更もそれとも同じで、波が静かなときに何も準備しなかったことが問題だ。今さら手遅れだ。
また、今後変異があるから変更すると大問題を起こすので対応できないというロジックもおかしい。これはやらないことをいう「官僚答弁」である。一般論であるが、ウイルスは変異するたびに感力は強くなるが弱毒化していく傾向がある。そうした一般論が当てはまらない場合も少ない確率であり得るが、そのときには再び分類を変更すればいい。柔軟に対応すると岸田首相は言うが、こうした柔軟性をもってもいいだろう。むしろ変異があるからこそ、迅速に対応すべきなのだ。
過剰対応ばかりしている
なぜ、ここまで感染症法上の分類に拘らなければいけないのか。
それは、新型コロナ関係の地方自治体の事務は、法定受託事務だからだ。新型インフルエンザ等対策特別措置法第74条において「この法律の規定により地方公共団体が処理することとされている事務は、地方自治法第2条第9項第1号に規定する第1号法定受託事務とする」とされている。
国から依頼される地方自治体の事務は、法定受託事務と自治事務に分かれている。本コラムを読んでおられる読者であれば、給付金の時にこの議論をしたのを覚えているだろう。給付金事務は自治事務なので、地方自治体の裁量で可能だ。昨年議論になったとき、岸田政権は明らかに給付金事務が自治事務であることを知らずに、余計な指示を地方自治体に出して大混乱させた。
新型コロナの事務が法的受託事務であるかぎり、地方自治体は国に従う義務がある。国は正しく指針を出せないと、各種の事務負担が発生する地方自治体は大混乱するのだ。特に地方の保健所業務はもう手一杯だ。それでも感染症に危険性があるならば、国民の命を守るためにはやむを得ないが、今のオミクロン株でそこまでやる必要があるのか。筆者の推計ではせいぜい死亡率は0.2%どまりだ。他の先進国との比較から見ても、日本の対応は過剰対応といわざるを得ない。
菅政権であれば、昨年10〜12月の段階で、2類相当から5類に変更していただろう。いずれにしても、岸田政権と菅政権の時との差が著しい。岸田政権では、前任の河野大臣と比べて堀内ワクチン接種担当大臣の存在感がないなど、実務対応力はかなり貧弱になっている。
なお、ワクチンを打ってもオミクロン株に罹っているのだから、追加接種は意味がないという意見もあるが、やや情緒的だ。追加接種を受けなかった場合と比較し、60才以上では感染例発生率は一桁違いだ。ワクチンを打てば、罹るかもしれないが罹る確率がかなり低くなる。重症化・死亡の予防効果ももちろんある。
ワクチンパスポートでもモタモタ
ワクチンの意味を正しく理解できていない人は、打たない場合と比較してという確率論ができない人が多いのだろう。そうした確率論が理解できない人は、脱原発の議論の際にゼロリスクを求めるのと同じだ。かつて子宮頸がんワクチンなどでは副反応のみを強調し、ゼロリスクを求めてワクチン拒否運動をしていた人も同じだ。
ワクチン接種は自分の年令などによるリスクに応じて個人の自由の判断で行うべきである。ほとんど死亡しない子供は不要だという考え方もあるが、高齢者や基礎疾患のある人へのワクチン接種は急ぐべきだった。今さらワクチン不要という誤ったゼロリスク論を社会にまき散らせば有害である。
さらに、岸田政権はワクチンパスポートでもモタモタしている。
政府は、オミクロン株の感染拡大を受けて、行動制限緩和に向けたワクチンパスポートを一時停止する方向だ。ワクチンの2回接種を証明するか、検査の陰性証明の提示のどちらかで飲食店やイベントの人数制限を緩和する制度だ。しかし2回接種後も感染する事例が相次いでおり、現状の仕組みの活用は難しいと判断している。
ワクチンはそもそも感染させないためにあるのではなく、感染しても重症化させないためのものだ。そして、ワクチンパスポートは、重症化しにくい人の行動制限を緩和して経済への打撃を少なくする。
岸田政権は、2類相当から5類への引き下げをせず、ワクチン接種も遅れた。さらにワクチンパスポートも一時停止する一方、まん延防止措置をとるなど、感染者増を抑えることばかりを考え、経済を回すことを考えていない。
今回のオミクロン株への対応は、2年前に新型コロナが流行し始めたときと同じである。新型コロナはその間変異し弱毒化しているのに、その事実への考慮がなく、まったく進歩していない。
岸田政権は、1月17日の施政方針演説で「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組む」といったが、その準備は不十分だ。ワクチン接種を見ればわかるように場当たり対応してきただけだ。しかも、本コラムで書いたように、官僚を後ろから撃つようなこともしているので、ますます官僚の初動が鈍くなっている。菅政権と比較すると、岸田政権は国民への仕事が遅すぎし、やるべきをやっていない。不十分だ。 
 
●迷走の施政方針演説に垣間見た、岸田首相の政治家としての意地 1/22
引用された勝海舟の言葉は、誰に投げつけられたのか
年初の国会で1年の政府の基本姿勢を示す施政方針演説は、総理大臣が行う最も重要な演説だ。だが岸田文雄首相が1月17日に行った施政方針演説は、その方向性がいまいちわかりにくいものだった。立憲民主党の泉健太代表などは、「画龍点睛を欠くものだ」 と批判した。
演説の冒頭で述べられ、演説の時間の多くを占めたのは、新型コロナウイルス感染症対策だった。感染力の強いオミクロン株をなんとか抑え込まなくてはという意気込みは理解できる。しかしその他は、何を骨格にしているのかがさっぱりわからない。だがキーワードを参考にすると、それはおぼろげながら見えてくる。
「行蔵は我に存す」
岸田首相は施政方針演説で、この文を2度述べている。「行蔵」とは出処進退を意味するもので、勝海舟が福澤諭吉に宛てた手紙の一文が引用されたのだ。岸田首相はこれを「責任をもって行う」と解したようだが、もともとは「放っておいてくれ」あるいは「大きなお世話」という意味だ。勝は幕臣でありながら、開国に尽力。咸臨丸に乗って渡米したり、江戸城を無血開城させたことで歴史に名前を刻んでいる。
一方で福澤は咸臨丸に乗船したものの、軍艦奉行の木村芥舟の従者で、教授方頭取の勝とは格差があった。もっとも勝の方が福澤より12歳年上だったが、もともと気が合わなかったらしい。
その福澤が後に慶應義塾を創設し、徳川幕府を終わらせた責任者でありながら、明治政府に入った勝を批判した。それに対して勝は、「お前の知ったことではない」とやりかえしたのだ。
安倍元首相に意地を見せたのか?
その勝の言葉を岸田首相が引用したのは何の意味があるのだろうか。岸田首相が「お前の知ったことではない」と言いたかった相手は誰なのか。それは、かつては岸田首相への禅譲をほのめかしていたにも関わらず、2020年の総裁選で菅義偉前首相を支持し、2021年の総裁選では高市早苗政調会長を全面的に支援した上、「岸田票」をばっさりと剥がそうとした安倍晋三元首相ではなかったか。
たとえば施政方針演説で岸田首相は、「新しい資本主義」では行き過ぎた市場依存を批判し、分厚い中間層の衰退による民主主義の危機を警告している。これは「アベノミクスは失敗だった」と言っているに等しいものだ。また「経済あっての財政」と言いながら、経済を立て直した後に財政再建に取り組むことを忘れていない。これも、積極財政に大きく旗を振っている安倍・高市路線と異なる点だ。
こうした安倍元首相ら清和研究会系と岸田首相が属する宏池会系とは、経済への視点について根本的に対立する。それは池田勇人元首相の所得倍増計画に、旧大蔵省出身の福田赳夫元首相が「党風刷新連盟」を結成して反対したことに遡る。池田元首相は宏池会、福田元首相は清和研の創立者だ。
宏池会からのDNAでは玉木氏に負ける?
しかしながら岸田首相が池田元首相の政策をそのまま受け継いでいるとは言い難い。岸田首相は昨年9月の総裁選で「令和版所得倍増」をぶち上げたが、いつの間にかそのスローガンを口にすることはなくなった。もっとも「デジタル田園都市国家構想」は、大平正芳元首相の「田園都市国家構想」をもじったものであることは間違いないが、後者が家庭基盤の充実を基本とする「日本型福祉社会の建設」とともに都市の活力と田園のゆとりの両立を目指し、人間が築き上げる文化や文明が感じられたのと対照的に、「デジタル田園都市国家構想」はただデジタル化の世界の趨勢に遅れまいとするだけで、「人への投資」を主張するものの、肝心の「人間」が見えてこない。さらに地方の活性化についてはとってつけ感が満載だ。
ならば昨年にいち早く国民ひとり一律10万円支給を提唱し、早くから教育国債など具体的な「人への投資」を主張してきた国民民主党の方がよほど“宏池会スピリット”を踏襲しているとはいえまいか。なお同党の玉木雄一郎代表は香川県2区選出で、大平元首相の後継を自負している。
得意の外交でも迷走か
岸田首相が得意とする外交では「新時代リアリズム外交」を打ち出しているが、これは安倍・菅政権時代から変わるものではない。安倍元首相はアメリカのドナルド・トランプ前大統領とコンビを組んで国際政治に大きな影響力を持ったが、岸田首相はどうするのか。対米従属外交では中国が台頭するこれからの国際社会を乗り切ることはできず、また日米地位協定などいまだ戦後を引きずる遺物を取り除くことにも消極的だ。
なお岸田首相は1月21日夜(日本時間)には、アメリカのジョー・バイデン大統領とテレビ会談を行い、新たな閣僚レベルの枠組みとして経済版「2プラス2」を設置することに合意した。これは中国の巨大経済圏構想である「一帯一路」を念頭に置く経済安全保障のひとつで、今年前半に日米豪印による「クアッド」の首脳会談を開くことも決定。だがバイデン大統領の政権基盤は頑強とはいえず、支持率の低下も懸念されている。訪米して日米首脳会談を望む岸田首相にとっても、その影響は免れないだろう。
ハネムーン期間を経ても内閣支持率は安定
しかし岸田政権は通常国会開会の5日前、政権発足100日目を迎えた。一般的に政権が発足100日を過ぎると、「ハネムーン期間」が終わったとして内閣支持率は下降するが、岸田政権の場合は維持あるいは上昇傾向すら見せている。
それは安倍政権に対峙する姿勢からくるものなのか。あるいは菅政権での反省でコロナ対策を前倒しで行ったのが原因か。
いずれにしろ国民は目くらましに騙されず、政治家の言葉から本質をつかみ取るべきだ。 
●岸田首相、掛け声だけでは賃上げ普及は無理だ 1/21
岸田文雄首相は、国会での初の施政方針演説で、「近年、賃上げ率の低下傾向が続いていますが、このトレンドを一気に反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げが実現することを期待します」と宣言した。
分配重視の目玉は賃上げだが、経団連の十倉雅和会長は自民党幹部に対し、「収益が好調な企業には積極的な対応を期待します」と返答し、各社ごとの経営判断という建前を崩さない。
岸田政権が経済界に賃上げを求めるのは、企業の財務構造からみればごく当然の政治的要求と見える。グラフをみよう。
金融・保険を除く企業の昨年9月末の内部留保は477兆円と前年同期比で24兆円増えた。内部留保は企業財務で利益剰余金と呼ばれ、株主資本、つまり株主のものということになる。2020年度の利益剰余金484兆円に対し賞与を含む従業員給与総額が147兆円で、3.3倍にもなる。デフレが始まった1997年度はそれぞれ、146兆円、142兆円でほぼ同水準だったが、給与はほとんど増えず、利益剰余金ばかりが増えてきた。
賃上げ要請は安倍晋三政権当時も繰り返されたが、給与総額はアベノミクス開始前の2011年度が150兆円、安倍氏が首相を退陣した19年度が152兆円で、はかばかしい成果を挙げられなかった。
経済界が従業員への利益還元よりも、内部留保を重視するのは、いわゆる新自由主義的考え方による。01年発足の小泉純一郎政権は「民のものは民へ」というフレーズで新自由主義への作り替えを行い、05年には商法を改正し株主重視の会社法を制定した。
小泉政権はまた、非正規社員の規制を大幅に緩和して製造業での非正規雇用を全面的に解禁した。その結果、大企業は正社員の採用を大幅に抑え、非正規雇用を増やす雇用構造の転換を進め、人件費を抑制し、増える利益を留保するビジネスモデルへと転換した。
このモデルこそは、会社は株主のもの、利益剰余金も、という新自由主義に沿っている。分配重視の新しい資本主義を目指すというなら、根本的な会社のあり方についても見直すべきだが、大企業の集まり経団連に代表される財界寄りの議論が行われている。
岸田政権が全雇用の約7割を引き受けている中小企業を含む全産業の賃上げをまんべんなく実現するためには、経団連への賃上げを促すだけでは不十分である。デフレ経済では企業は国内での設備投資を抑制し、人件費の圧縮に努めるので、民間主導では内需回復が困難だ。一般会計、特別会計合わせて国内総生産(GDP)の5割前後の資金を采配する政府こそが脱デフレに責任を負う。
政府が国債追加発行によって成長分野への投資を増やすことはもちろんだが、すぐに効果を出せる策がある。消費税の大型減税を行うだけで、勤労者家計負担はぐんと軽くなる。分配の前提として、政権が財政主導で脱デフレを目指す意志を明確にすべきなのだ。
●尖閣もウイグルも出てこない…岸田首相の施政方針演説の“空疎”に ... 1/21
通常国会が17日に開会し、岸田文雄首相が初の施政方針演説を行った。良くない意味で「驚く部分」の多い演説だった。
まず、「はじめに」含め、冒頭の大きな2項目を「新型コロナウイルス対策」に割いていることが、今回の岸田演説の特徴である。最も力説したかった事柄のはずが、その割には首を傾げたくなる表現が散見される。首相官邸からは「あなたごときが余計なお世話」といわれるだろうが、具体的に指摘してみたい。
コロナに苦しむ人への見舞い、コロナ対策に協力する国民への感謝の後、次のくだりがある。
「そして、新型コロナ対応の最前線におられる、自治体、医療機関、介護施設、検疫所、保健所などのエッセンシャルワーカーの皆さんに、深く、感謝申し上げます」
コロナ対応の最前線にいる筆頭に「自治体」を挙げるセンスに驚く。自治体の職員が頑張っていないとはいわないが、やはりこの筆頭は「医療従事者の皆さま」にするのがよいのではないか。
「医療機関」という表現も、その後の「〜などのエッセンシャルワーカーの皆さん」につなげるものだということは分かるが、やはり違和感大だ。
この後、(コロナ後の新しい日本を創り上げるための挑戦)という項目の最初の一文にまた驚く。
「内閣総理大臣に就任してから、国内外の山積する課題に、スピード感を持って、決断を下し、対応してきました。『行蔵(こうぞう)は我に存す』。それぞれの決断の責任は、自分が全て負う覚悟で取り組んでまいりました」
スピード感を持って決断を下してきた…という首相の自己評価を「確かにそうだ!」と思う国民はどのぐらいいるだろう。
例えば、北京冬季五輪への「外交的ボイコット」の表明は、先進諸外国と比したら恥ずかしくなるほど遅かった。しかも、その表明は松野博一官房長官に丸投げだったと記憶している。
同じ項に、次の表現もある。
「このように、『信頼と共感』の政治姿勢を堅持しつつ、まずは、新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組んでまいります」
うーん。これまた高い自己評価の言葉。岸田首相は腰低く見せているが、案外ゴーマンキャラなのか。
「新型コロナに打ち克つ」
という表現も、昨年9月の自民党総裁選出馬時に語っていた、「私たちはコロナと共存する未来をめざす必要があります」という「ウィズ・コロナ」的な表現と矛盾するように聞こえる。とはいっても、このとき岸田氏は「いつでもどこでも無料のPCR検査」などと、既に矛盾することを言っていたので、いまさらこんな齟齬(そご)を指摘しても詮無いか。
医療機関の中には、新型コロナの補助金不正受給(しかも多額の)が指摘されたところもある。ここは「組織」にではなく、現場で奮闘する個々人への声がけの表現にすべきであった。
最後に、外交の項での驚くべき箇所を指摘したい。
岸田首相は「新時代のリアリズム外交」を掲げている。しかし、その趣旨、コンセプトは演説で語られていない。最近の講演等での発言から推察するとそれは、大平正芳、宮沢喜一といった「宏池会の先輩」首相を手本とする外交らしい。
大平氏といえば日中国交樹立をまとめた外相、宮沢氏といえば、韓国に謝罪し倒し、ついに、河野洋平官房長官による「河野談話」発出に至った首相だ。この二故人の「リアリズム外交」とは中国・韓国重視だが、そこに「新時代」と付けて何をするつもりか。
答えの一端は、同じ項の少し後にある。
「中国には、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めていきます。同時に、諸懸案も含めて、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力し、本年が日中国交正常化五十周年であることも念頭に、建設的かつ安定的な関係の構築を目指します」
沖縄県・尖閣諸島の「せ」の字も、ウイグルの「う」の字も出てこない。自国の重大課題である北朝鮮の拉致問題への言及部分でもいきなり「各国と連携して」と、はなから他力本願の表現…。
年初から暗い気持ちにさせられる演説だ。岸田首相の思いの薄さが原因だが、スピーチライターは一体誰だ? 
●「新しい資本主義」は矛盾だらけ…岸田首相の経済政策、「壊滅的」! 1/21
突っ込みどころ満載の「新しい資本主義」
岸田文雄首相が「文芸春秋」2月号に、ご自慢の「新しい資本主義」を解説する論考を発表した。ようやく具体的な経済政策が出てきたか、と思ったら、やはりよく分からない。それどころか、主張が相互に矛盾している。首相はいったい、何をしたいのか。
「私が目指す『新しい資本主義』のグランドデザイン」と題する論考は、次のような書き出しで始まっている。
「私の提唱する新しい資本主義に対して、何を目指しているのか、明確にしてほしいといったご意見を少なからずいただきます」
首相自身も、世間の評価を気にしていたのである。そこで「このままでは、マズイ」とみて「緊急寄稿」したようだが、中身は突っ込みどころが満載だ。
たとえば、冒頭「市場や競争に任せれば全てがうまくいくという考え方が新自由主義」と書いている。同じことは、1月17日の施政方針演説でも述べていた。だが、私の知る限り、そんな乱暴なことを主張している「新自由主義者」は、実は1人もいない。
新自由主義はたしかに、政府の過剰な介入を嫌って、不要になった規制をなくすよう求める。だからといって「規制をなくせ、そうすれば万事うまくいく」などと唱えているわけではない。私が安倍晋三、菅義偉両政権で参加した日本の規制改革(推進)会議でも、そんな議論はなかった。首相の話は、だれも言っていない極論をでっち上げた誇張だ。
続けて、気候変動問題に触れて「昨年7月の熱海市の土石流災害をはじめ、各地で被害が発生しています」と書く。熱海市の災害では、被害者が土地所有者らによる無茶な開発が原因として、損害賠償を求めて提訴している。それを気候変動問題に結びつけるのは、乱暴だ。首相が開発業者に味方して、免責を認める話になりかねない。
根本から「矛盾」している
以上は「序の口」だ。本論で、首相は「『人』重視で資本主義のバージョンアップを」と主張して、こう書いている。
〈人的資本を大切にしない経営では、長期的に企業価値を最大化することが困難となり、かえって長期的に株主に還元を行なうことが困難になってしまいます、そこで、私の新しい資本主義では、その鍵を「人」、すなわち人的資本に置くことにします。「モノから人へ」が、新しい資本主義の第一のキーワードです〉
そのうえで、企業の人材への支出が対GDP比で0.10%と米国やフランス、ドイツに比べて小さい点を指摘し、政府は3年間で4000億円規模の施策パッケージで「能力開発支援、再就職支援、他社への移動によるステップアップ支援をおよそ100万人程度の方に講じる」という。
いかにも善政のようだが、ちょっと待てよ、と言いたくなる。能力開発支援はいいとして「再就職支援と他社への移動、つまり転職支援」は、雇用の流動化促進にほかならず、それはまさに、首相が嫌いな「新自由主義」の政策ではなかったのか。
左翼は「首切り反対」を唱えて、雇用の流動化に抵抗する。だが、低い生産性の業種、企業から高い生産性の業種、企業への人材流動化を通じて経済全体としての生産性を高める。そのために「市場の機能を活用して、雇用を流動化させる」のは、新自由主義そのものだ。
もっと言えば、欧米では、こうした政策を、もはや「新自由主義」とさえ呼ばない。〇〇主義などと大げさに呼ぶには、当たり前すぎるからだ。むしろ、世界標準で見れば、日本の終身雇用のほうが異端だったのである。何かと言えば、〇〇主義などとレッテル貼りして攻撃するのは、日本が井の中の蛙である証拠だ。
そんな日本でも、雇用の流動化は、とっくに始まっている。定年間近な人を別にすれば、雇用者の立場で考えても、生産性が低く将来性のない企業にしがみついているより、新たな機会を求めたほうがいいからだ。
岸田首相は「人的資本を大切にせよ」と説教する一方で「雇用の流動化は応援する」と言っている。雇用の流動化を進めたいのか、それとも終身雇用を守れ、と言っているのか、いったい、どっちなのか。どちらの立場にも心地よい話をしているようにしか見えない。
首相は具体的な政策として、人的資本の「非財務情報について金融商品取引法上の有価証券報告書の開示充実に向けて、金融審議会での検討をお願いする」「人的資本の価値を評価する方法について、各企業が参考になるよう、今夏には参考指針をまとめる」という。
私は、人的資本の大切さ自体に異論はないので、もしも客観的に評価できる指標が示せるのであれば、ここは理解できる。ただし、ありとあらゆる業種に適用できて、しかも企業と雇用者に公平で有効な指標があるかどうかは、分からない。
金融パニックが起こりかねない
首相は「新たな『官民連携』で付加価値を引き上げていく」ことも提唱している。これも一見、もっともらしいが、具体論を聞いてギョッとした。こう言っているのだ。
〈新たな成長に向けて企業の事業再構築を進めていくためには、主な貸し手、メインバンクが債務を軽減すれば新たな投資が可能であると判断する場合には、全ての貸し手の同意がなくても、債務の軽減措置が決定できるよう、法制整備を図ります〉
つまり、企業の「主な貸し手、メインバンク」が「新たに投資すれば事業再構築が可能になる」と判断すれば、残りの貸し手の同意がなくても、法的に債務軽減をできるようにする、と言っている。そんなことを言い出して、大丈夫なのか。
多くの企業はメインバンク1行だけでなく、複数の金融機関から融資を受けている。ところが、メインバンクの判断だけで債務の軽減ができるようになったら、他の金融機関はどうなるのか。自行の経営判断とは関係なく、金利減免を強制されてしまいかねない。
それでなくても、金融機関は長く続いている低金利で、融資が儲からずに困っている。そんな法律ができたら、金融機関は自分がメインバンクになっている企業以外の融資先からは、一斉に融資を引き上げてしまうのではないか。
私が銀行経営者だったら、将来の減免リスクに備えて、自分がメインバンク以外の企業取引は避けたくなる。みんなが一斉にそう動いたら、企業と銀行は大混乱に陥るだろう。
これはメインバンクの主導権を過剰に認める政策であり、企業融資の市場原理を根底から脅かしかねない。首相の論考は具体的な制度の中身を語っていないが、私は本当に動き始めたら「金融パニックが起きてもおかしくない」と思う。
「人への投資」はお題目なのか
首相は「大胆な投資の実現」とも言っている。
民間企業の設備投資が2000年から19年までで日本は1.1倍にとどまり、米国やフランスに比べて低い。研究開発投資も日本の1.06倍に対して、ドイツは1.35倍、英国は1.33倍、米国は1.31倍などと数字を挙げた。そのうえで「政府は今後5年間の研究開発投資の目標を、政府全体で約30兆円、官民合わせた総額は約120兆円」と紹介している。
だが、首相は前段で「人への投資」を強調したのではなかったか。それならそれで、人的投資を一挙に拡大すれば良さそうなものだが、ここでは「付加価値を上げていくために重要なのが投資」と強調して、設備投資と研究開発投資を重視している。
しかも金額は、と言えば、人的投資が先に紹介したように「3年間で4000億円」であるのに対して、研究開発投資は約120兆円という。桁違いだ。これでは、人への投資は、単なるキャッチフレーズにすぎないことを白状したようなものだ。
上辺だけの規制改革になる
それから、規制改革である。
論考は「改革マインドがない」と批判されていることに言及し「明確に否定させていただく」と述べている。なぜ、批判されたかと言えば、規制改革に言及してこなかったからだ。それを意識したのか、論考は「4万件の法律、政省令などの一括的見直しを行い、今春には規制見直しプランをとりまとめます」と述べた。
これを聞いて、霞が関の官僚たちは「誰が吹き込んだか知らないが、この首相は何も分かってないな」と、ほくそ笑んだことだろう。霞が関のすべての省庁が関わっている「4万件もの法律、政省令を一括で見直す」など、できるわけがないからだ。
だからこそ、歴代の政権は規制改革専門の会議体を作って、1件ごとに関係者、関係省庁とともに具体的な議論と改革を積み重ねてきた。手間はかかるが、残念ながら、それは民主主義のコストである。
一括でできるとすれば、せいぜい「岸田内閣は規制改革を進めます」と宣言する法律でも作って、お茶を濁す程度だろう。そんな宣言をしただけでは、まったく実質的な改革にならず、既得権益勢力は痛くも痒くもない。結局、何も変わらないからだ。
岸田首相は「世界最高水準の研究能力がある大学を日本に形成するため、10兆円規模の大学ファンドを本年度内に実現し、運用を開始する」と胸を張った。だが、これは岸田政権の政策ではなく、菅義偉前政権肝いりの政策である。
論考は菅首相の「菅」の字に一言も言及していないが、前政権の遺産を、あたかも自分の手柄のように語るのは、いかがなものか。
結局、岸田首相が唱える「新しい資本主義」は、言葉が踊っているだけだ。中身は乏しく、下手をすると「金融パニックを引き起こす」というシロモノである。これまた朝令暮改になるのは、時間の問題だろう。
●コロナ患者が爆発的に増えても「2類」から「5類」に引き下げられない根拠 1/21
1月17日、岸田文雄首相(64)が就任後初となる施政方針演説を行った。その中で岸田首相は、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染拡大を踏まえ、「岸田政権の最優先課題は、新型コロナ対応です」と語った。
演説では、オミクロン株がデルタ株と比較すると、感染力は強いものの症状は軽いことにも言及した。
《感染力が高い一方、感染者の多くは軽症・無症状であり、重症化率は低い可能性が高い》(註1)
だが、《高齢者等で急速に感染が拡がると、重症者が発生する割合が高くなるおそれがある》との分析も、専門家から報告されたという。
もし重症者の絶対数が増えた場合、《病床がひっ迫するような緊急事態に陥ることは、何としても避けなければなりません》と指摘。
対策として、3回目のワクチン接種を前倒しすることや、経口薬の在庫を増やすことなどを挙げた。
《新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組んでまいります》
こんな強い表現も飛び出したが、「新型コロナの『2類相当』を見直します」とは表明しなかった。担当記者が言う。
「感染症法で新型コロナは、危険度が5段階のうち2番目に高い『2類相当』に指定されています。結核やSARS(重症急性呼吸器症候群)と同じレベルです。2類相当はオミクロン株の対応策としては過剰すぎるため、『5類相当』に引き下げるべきではないかという意見が、一部の国会議員や地方自治体の首長、そして医師からも出ているのです」
消極的な岸田首相
5類の代表は季節性インフルエンザだ。もし「5類相当」になれば、近所の病院で診察を受け、自宅で療養することが可能になる。つまり、医療崩壊を防ぐことができる。
「ただし、そのまま引き下げると、医療費の自己負担分が増えるといったデメリットも生じてしまいます。5類相当を支持する医療関係者からは、『メリットだけを増やし、デメリットは防げるよう、特例を整備すべき』との意見が出ています」(同・記者)
松本人志(58)は16日放送の情報番組「ワイドナショー」(フジテレビ系列・日・10:00)で、「オミクロン株は怖くないが、緊急事態宣言の再発令は怖い」と語った。
この発言も、弱毒化している可能性があるオミクロン株への過剰な対応を懸念するものと捉えることができるだろう。
だが、岸田首相は5類相当への引き下げには消極的だ。
「首相は1月4日に伊勢神宮に参拝し、記者会見を開きました。その際、『陽性者は全員入院、濃厚接触者は全員宿泊待機』という方針を見直すと言明したのです。具体的には、自治体の判断によって陽性者でも自宅療養が可能にすると述べました。これは2類相当の措置を緩和したことになります。そのため5類相当へ引き下げるのではないかと期待が高まりましたが、13日、記者団に『感染が急拡大している中での変更は現実的ではない』と否定的な見解を示しました」(同・記者)
菅政権でストップ
この発言を受け、同日、東京都の小池百合子知事(69)は、5類への引き下げを検討するよう国に求めた。
小池知事が岸田首相に異議を申し立てたことになる。もっとも、以前に政府が引き下げに動いたことは、意外にも知られていないようだ。
安倍晋三氏(67)が首相だった2020年8月、2類相当を見直す議論が行われると相次いで報道された。
○ コロナ「2類相当」見直しへ 軽症者の病床減らし負担軽減(産経新聞:20年8月26日朝刊)
○ 政府、運用見直し検討 コロナ原則入院「保健所・病院の負担増大」 経済活発化、狙いも 指定感染症(朝日新聞:20年8月27日朝刊)
「ところが、この報道から1カ月も経たない9月16日、安倍首相は退陣してしまいます。官房長官だった菅義偉氏(73)が後継首相になると、ワクチン接種が最優先課題となり、引き下げの問題は脇に追いやられてしまったのです」(同・記者)
“ボトムアップ”が理由!?
岸田政権が21年10月4日に発足した後も、引き下げの問題が検討された形跡はなかった。そこで安倍元首相が動き出す。
「読売新聞のインタビューに応じ、1月1日と3日の2回に分けて記事が掲載されました。その中で《新型コロナの法律上の位置付けを変更してはどうか》と発言したのです。《薬やワクチンで重症化を防げるならば、新型コロナを季節性インフルエンザと同じ「5類」として扱う手はあります》と呼びかけたのですが、結果はご覧の通りです(註2)」(同・記者)
岸田首相が掲げる「聞く力」どころか「馬耳東風」という印象だが、これには内閣の“高支持率”が背景にあるようだ。
時事通信が14日に発表した内閣支持率は51・7%、読売新聞と日本テレビ系列各局が16日に発表したものでは66%と、菅内閣時代の低支持率を一気に挽回した。
時事通信は自社の調査を《目立った実績もない中で支持率が上向くのは異例》と報じ(註3)、読売も《菅内閣と対照的も盤石とは言えず》と見出しに打った(註4)。なぜ岸田内閣の支持率は上昇したのか、永田町関係者が言う。
「いわゆる“アベ政治”の真逆を行っているからでしょう。安倍さんも菅さんもトップダウンを重視し、有権者の声をあまり聞かないきらいがありました。例えば安倍さんは、最初の緊急事態宣言を発令する前に、全国の小中高校に臨時休校を要請しました。異論も多かったものの、政治的判断で変更することはありませんでした」
“民意”に配慮
一方の岸田首相は、18歳以下を対象とした10万円給付問題で、5万円分をクーポンとする方針が不評だと把握すると、すぐに止めてしまった。
「5類相当への引き下げ問題を有権者がどう受け止めているか。Twitterを見ると賛否両論の百家争鳴といった状態です。しかし議論には、コロナ問題に関心の高い人しか参加していません。大半の有権者は5類と2類の問題にも無関心で、むしろ自宅療養に対しては『療養ではなく放置』と不安を訴えるツイートも相当な量にのぼっています」(前出の記者)
引き下げ賛成派と反対派、そして圧倒的な無関心層という状況は、まさに岸田内閣の支持率を象徴しているのかもしれない。
「このまま2類を維持したほうが、『コロナ対策を手厚く真剣にやっています』というイメージは作りやすいでしょう。『経済より対策』と“ゼロコロナ”を指向する有権者も決して少なくありません」(同・記者)
安全運転がベスト!?
岸田内閣には“成功体験”があることも大きいという。昨年11月に外国人の新規入国禁止を表明したが、これが内閣支持率のアップに寄与したとみられている。
「かなりの有権者が、コロナ禍における“安全運転”を評価しています。おまけに5類相当への引き下げを検討してしまうと、“アベ政治”の復活だと勘ぐられる不安もあるでしょう。せっかく“アベ政治”の真逆を行って支持率を伸ばしたのに、ぶち壊しになってしまうかもしれません」(同・記者)
こんな現状だと、どうも5類相当への引き下げは当分先のようだ。
「岸田首相が引き下げを決断することは、今のところないでしょう。経済や医療の現場で深刻な状況になれば、方針を転換するのではないかという可能性までは否定しませんが、『5類相当はあり得ない』というのが首相の本心だと思われます」(前出の関係者)

註1:第二百八回国会における岸田内閣総理大臣施政方針演説(首相官邸ホームページ)
註2:[語る]新年展望(1)岸田氏 人事思い通りに 元首相 安倍晋三氏67(読売新聞:22年1月3日朝刊)
註3:「負の遺産」清算、懸案先送り 内閣支持率が異例の上昇―時事世論調査(時事通信:22年1月15日7時6分配信)
註4:岸田内閣、感染拡大でも支持率上昇…菅内閣と対照的も盤石とは言えず(読売新聞:22年1月17日8時47分配信)  
●玉木代表が総理大臣施政方針演説に対し代表質問 1/20
玉木雄一郎(国民民主党・無所属クラブ)
国民民主党代表の玉木雄一郎です。総選挙で約束した公約を一つでも多く実現するため、この国会でも「改革中道」として「対決より解決」を実践します。特に、公約の柱である「給料が上がる経済」を実現するため、全力を傾けてまいります。
聞く力
さて、岸田総理は「聞く力」を売りにしておられますが、私もツイッターとYouTubeで総理にぶつける質問を募ったところ、3日で1万人弱の方からコメントをいただきました。聞く力では総理に負けていない自負があります。声を寄せていただいた皆様にこの場を借りて御礼を申し上げます。岸田総理におかれては、私の質問も国民の声として聞いてください。
10万円給付は所得制限なしで
ツイッターでは、特に10万円給付の所得制限をやめてほしいという意見が多く寄せられました。児童手当の所得制限もやめてほしいという声もありました。「#所得制限は出産制限」とのハッシュタグもできたほどです。子育て世帯はみんながんばっています。地方創生臨時交付金を活用し、独自に所得制限なく給付する地方自治体もありますが、例えば東京都23区の中には半数以上の世帯が給付対象外で、所得制限をなくそうにも臨時交付金が足りず、できないところもあります。住む地域によってもらえる子どもともらえない子どもが分かれるのはおかしい。総理、所得制限があることで、出産や子育てにマイナスになっているなら、所得制限を撤廃すべきです。「子育て・若者世代の所得を引き上げる」「中間層を維持」というなら、国として所得制限なく全ての子どもに給付すべきではないですか。
クーポン5万円ですが、実際にクーポンを配ったのは約1,700自治体のうちたった7つです。クーポン給付にかかる事務費用967億円は、どれだけ使われ、どれだけ余っているのでしょうか。余っているなら所得制限撤廃のための財源に回してください。
そもそも、子育て支援であれば、今回のような1回だけの給付ではなく、中学卒業までとなっている児童手当を、高校卒業まで拡充すべきです。国民民主党は選挙公約の5本柱の一つ「人づくりは国づくり」の具体策として提案しています。総理、「子育て・若者世代の所得を引き上げる」「中間層を維持」というなら、児童手当を高校卒業まで延長しませんか。さらに、今回の10万円給付だけでなく、児童手当、幼児教育無償化、私立高校無償化などの所得制限も撤廃しませんか。できないなら、せめて年少扶養控除を復活させてください。
トリガー条項の凍結解除によるガソリン値下げ
総理、再びガソリン価格が上昇しています。移動を車に依存せざるを得ない地方からも、なんとかしてほしいとの声がたくさん届いています。ガソリン価格に上乗せされているリッター25.1円の税金を減税する「トリガー条項」の凍結解除を、今こそやるべきです。国民民主党が日本維新の会と共同提出した法案に賛成していただければ、来月2月1日からガソリン価格をリッター25.1円、下げることができます。給料が上がらない中、生活必需品の価格が続々と上がっているからこそ、ガソリン価格を引き下げるべきです。総理の決断を求めます。
病床確保のための感染症法改正
コロナ対策について伺います。岸田政権のコロナ対策のゴールは何ですか。病床のひっ迫を回避し、死亡者や重症者を減らすことを最優先にするなら、病床確保に関する国や知事の権限を強化する感染症法の改正こそ、この国会でやるべきです。なぜ最も大切な法改正を先送りするのですか。必要な立法措置も講じず、効果があるかどうかよく分からない飲食店の時短要請や人流抑制をお願いするだけでは、国民の理解は到底得らません。そもそも、まん延防止等重点措置の飲食店への時短要請は、オミクロン株対策として効果があるのですか。
感染は止める、社会は止めない
国民民主党は年明け早々の1月7日に緊急提言をとりまとめ、先週、厚生労働大臣とワクチン担当大臣に対し、「感染は止めるが、社会は止めない」ための対策を強く要請しました。ワクチン3回目接種、飲み薬、毎日検査の3つが鍵です。この3つがあれば、まん延防止等重点措置は避けられたはずですが、間に合わず残念です。しかし、今からでも3つの対策を急ぐべきです。
第一に、発症予防効果、重症化予防効果のある3回目のワクチン接種です。英国保険当局の報告などによれば、2回目接種から5か月ほどで発症予防効果が10%未満に低下します。2回目接種からの間隔を「原則5ヶ月」に短縮し、そのために必要なワクチンの確保に全力を傾けるべきですが、できていないのではないですか。
第二に、死亡・入院リスクを下げる飲み薬も重要です。経口治療薬を医療現場に3万人分を届けたとのことですが、160万人分の1.88%に過ぎません。「経口薬へのアクセスの確保を徹底します」というものの、遅すぎます。160万人分の残りと、月内に合意するとされる200万人分が全て現場に届くのはいつになりますか。スケジュールを明示してください。
第三に、自分がコロナ陰性であることを日々確認できる毎日検査です。英国では、PCR検査や抗原検査による毎日検査で陰性であれば、濃厚接触者でも自宅待機しなくていいルールになっています。我が国でも医療従事者については、毎日検査を条件に濃厚接触者であっても勤務できるようになりました。総理、今のままのルールだと、感染者が増えるたびに経済・社会活動が止まってしまいます。英国と同様に、我が国でも毎日検査を条件に、濃厚接触者であっても仕事や活動ができるようにしませんか。
不十分で遅すぎる補償や支援策
まん延防止等重点措置が出るのに、事業者や個人に対する支援策があまりにも不十分です。月次支援金は昨年10月分で打ち切りになっていて、岸田政権の看板政策「事業復活支援金」は、いまだに申請すらできません。
住民税非課税世帯への10万円給付も来月あるいは再来月から申請開始の自治体が多いと聞きます。これも遅すぎます。必要な人に必要な支援はいつ届くのでしょうか。
また、生活再建までの生活費を月20万円まで貸し付ける総合支援資金についても、岸田総理は総裁選中に3ヶ月分延長して12ヶ月分に拡充するとおっしゃっていましたが、今こそ実行すべきではないですか。貸付枠を3ヶ月分拡充できなくても、せめて昨年末で締め切られた再貸付の申請期限を今年3月末まで延長してもらえませんか。
演劇や音楽コンサートなど日本のエンターテイメント産業は、コロナで瀕死の状態に陥っています。収入の9割減が2年も続いているところもあります。一方、韓国のエンターテイメント産業は海外進出により大きく成長しています。今のままでは日本のエンターテイメント産業が消滅してしまいます。この危機を乗り越えるため、官民挙げてエンターテイメント産業に対する支援をさらに強化すべきではありませんか。
地方のバス、鉄道事業なども瀕死の状態です。こうした公共交通機関の利用そのものが感染拡大につながったという科学的な証拠はあるのでしょうか。今のままでは地域のバス路線などは持ちません。政府としてどのような対応を考えているのか、総理の見解を伺います。
オンライン国会を実現
民間にリモートワークを促しているのに、この国会の本会議場はご覧の通り、相変わらずの「密」です。国民民主党は、オンライン国会を可能とするため、議院運営委員会にて「議場にいない議員は表決に加わることができない」としている衆議院規則の改正を提案しました。オミクロン株が拡大する中、自民党にも規則改正に協力していただけませんか。また、憲法56条の「総議員の3分の1以上の出席」がオンライン国会の制約となるのかの憲法解釈についても、憲法審査会で議論し、明らかにしていくつもりです。
「賃金デフレからの脱却」に全力
米国でも欧州でも韓国でも給料が上がる中、日本だけが4半世紀にわたって給料が上がっていません。私たち国民民主党はこの「賃金デフレ」こそが日本経済最大の課題と考えます。そこで、私たが選挙公約として掲げたのが「給料が上がる経済の実現」です。岸田総理とこの議場にいらっしゃる与野党の議員の皆さんに私から提案があります。この国会を、賃金、給料を上げることに与野党を超えて知恵をしぼる「賃上げ国会」、「給料を上げる国会」にしていこうではありませんか。
私たち国民民主党は、4%の名目賃金上昇率、4%の経済成長率、4万円台の日経平均株価の「3つの4」を政策目標に掲げ、給料が上がる政策を提案していきます。4%成長が18年続けば、給料は倍になります。所得倍増は夢物語ではありません。自民党総裁選で掲げた「令和版所得倍増」を諦めることなく、岸田内閣として、例えば、20年間で日本の賃金水準を倍にするという中長期のビジョンを示してはいかがですか。
昨年の企業物価指数は4.8%で過去最大の伸びでした。米国がインフレ抑制のために金利を上げれば、さらに日本の物価が上がります。総理には物価が上がるのに給料が上がらないという国民の悲鳴は聞こえていますか。物価は上がるのに経済は低迷する「スタグフレーション」の懸念が高まっているのではありませんか。
物価目標2%は、安倍政権発足後間もない2013年1月に発表された政府と日銀による共同声明に盛り込まれています。岸田内閣は、この共同声明を引き継いでいますか。そして2%を達成したら、金融緩和を縮小するつもりなのか、あわせてお答えください。
円安による原材料価格の上昇に起因する物価上昇は、必ずしも経済回復を反映した物価上昇ではありません。国民民主党は、「給料が上がる経済」の金融政策として、名目賃金上昇率が一定水準に達するまで金融緩和を継続すると選挙公約で提案しました。つまり「賃金デフレ脱却」を金融政策の目標にすべきと考えますが、総理の見解を伺います。
コロナ禍からの回復局面で財政健全化、プライマリーバランスの黒字化にこだわり過ぎて、景気回復の腰を折るようなことはあってはなりません。国民民主党は、「給料が上がる経済」の財政政策として、政策目標をプライマリーバランスの黒字化ではなく、名目賃金上昇率にすることを選挙公約で提案しました。つまり、「賃金デフレ脱却」を財政政策の目標にもすべきと考えますが、総理の見解を伺います。
賃上げの大前提は、積極財政による脱デフレだと考えます。国民民主党は、名目賃金上昇率が一定水準を上回るまで消費税を5%に減税する法案を国会に提出しています。家計負担の上昇を防ぎ、消費減退を防ぐためにも、「賃金デフレ脱却」が確実になるまで消費税を減税すべきではありませんか。
介護従事者の待遇改善が急がれます。しかし、今回の賃上げは「介護職」に限定されており、機能訓練指導員、生活相談員、管理者など「介護職」以外の介護従事者は対象になっていません。これら介護従事者全体を賃上げの対象とすべきと考えますが、総理の見解を伺います。また、今後、都市部での介護従事者の確保が極めて困難になると予想されています。そこで、東京都は「介護職への家賃補助」制度を導入予定ですが、これを全国レベルで導入してはいかがでしょうか。総理の見解を伺います。
「新しい資本主義」の鍵は「人への投資」
岸田総理の掲げる「新しい資本主義」成功の鍵は「人への投資」だと考えます。岸田総理は、国民民主党が従来から提案しているように、「人への投資」を倍増すると施政方針演説で述べました。それ自体は評価しますが、令和4年度当初予算案で文教科学技術振興費は微減となっており、言っていることとやっていることが矛盾しています。倍増と言いながら、なぜ文教予算を減らしたのか、いつまでに何をどう倍増させるのか、明確にお答えください。
国民民主党は、選挙公約の柱として「積極財政への転換」「人づくりは国づくり」を掲げ、教育国債の発行などを財源に、児童手当の高校卒業までの延長、給食費、教材費を含めた完全無償化を所得制限なく実現することを提案しています。過去2回の代表質問でも、財政法改正による「教育国債」の創設を総理に提案しました。総理は「安定財源の確保あるいは財政の信認確保の観点から、慎重に検討する必要がある」と木で鼻をくくったような答弁しかしていただけませんが、高齢化に伴う年金や医療などの自然増が増える中で、教育国債の発行もせず、どのように「倍増」の財源を確保するのか、具体的に示してください。
デジタル田園都市国家構想が描く国家像とは
デジタル田園都市国家構想について伺います。「田園の安らぎと都市の快適さを融合する」という、大平正芳元総理が1980年に打ち出したコンセプトには大賛成です。しかし、施政方針演説を聞いても、個別政策が列記されているだけで、この構想でめざすべき国家像が見えません。岸田総理がデジタル田園都市国家構想で目指す国家像はどのようなものか、答弁を求めます。
必要なのは「総合安全保障」
岸田内閣が進める経済安全保障の重要性を否定するものではありませんが、エネルギー安全保障や食料安全保障の観点が相対的に弱いと言わざるを得ません。今、必要なのは、大平正芳元総理も提唱した「総合安全保障」ではありませんか。国民民主党は、政府案に足りない「エネルギー安全保障」「食料安全保障」そして「人材の安全保障」も含めた総合安全保障確立法案を提出する予定です。ぜひ、参考にしてもらいたいし、成立に協力していただきたい。
特に、給料が上がる経済の実現のためには、エネルギーの安定供給は不可欠な要素です。折りしも、EUの欧州委員会は、原発をグリーンな投資先として認める方針を打ち出しました。2050年カーボンニュートラルを達成するための現実的な対応だと考えます。日本としても、特に、小型モジュール炉(SMR)や高速炉の実証研究には積極的に取り組むべきだと考えますが、岸田総理の方針を伺います。
戦略的な人権外交
人権侵害非難決議について伺います。与党の慎重な姿勢で昨年の通常国会、臨時国会で見送りとなりました。国民民主党はいつでも対応できますが、今国会で人権侵害非難決議を行うつもりはあるのか、自民党総裁としての見解を伺います。
政府・与党は、今国会でも、人権侵害制裁法や、人権デューディリジェンス法案を出さないのですか。また、中国がTPPへの加盟申請をしましたが、TPPには強制労働を排除する規定があります。日本は、TPP交渉を通じて、中国の人権状況の改善を求める戦略的なアプローチをとってはどうかと考えますが総理の見解を伺います。
敵基地攻撃能力
北朝鮮などは迎撃が困難な極超音速ミサイルなどの開発を進めている中、政府の検討する「敵基地攻撃能力」保有の検討は必要だと考えます。あくまで自衛のための反撃能力を高める趣旨だと理解していますが、そもそも総理の考える「敵基地攻撃能力」保有の意義、具体的な装備体系、そして実現可能性について伺います。
緊急時における国会機能の維持
憲法改正について伺います。私は前回の憲法審査会で、コロナ禍で顕在化した憲法上の課題として、衆議院議員、参議院議員の任期満了時に、大規模感染症や、大規模災害等が発生した場合、特例で議員の任期を延長できる規定が憲法上必要だと提案しましたが、総理の見解を伺います。なお、自民党の緊急事態条項の条文イメージ案では、非常事態として「感染症」が想定されていません。自民党の4項目の原案にこだわらずに柔軟に議論すべきだと考えますが、総理の見解を伺います。
内密出産の法整備が必要
熊本市の「慈恵病院」は、10代の女性が身元を明かさず出産する「内密出産」を行なったと発表しました。国内で初の事例です。午前中、蓮田院長に直接お会いして話を伺いました。慈恵病院は、2019年から、赤ちゃんの遺棄を防ぎ、母子の命を守る方策として独自に導入したのですが病院が母親の名前を記載せずに熊本市に出生届を出した場合には、刑法の公正証書原本不実記載罪に問われる可能性があります。ドイツでは子どもの知る権利にも配慮した法制化が2014年に行われました。総理、母子の命と体を守る取り組みである「内密出産」は「違法」なのでしょうか。仮に違法性の疑義があるなら、違法とならない条件を通達するか、法改正すべきではないでしょうか。蓮田院長は物事を前に進めるためには「自分が捕まった方が早いのかな」とさえおっしゃていました。総理の見解を伺います。
「政策先導」「対決より解決」
日本の最大の課題は、四半世紀にわたって賃金が上がらないことです。がんばって就職して一所懸命働けば給料が上がる、そんな希望さえあれば、学生は奨学金を借りることも不安ではないし、若い人も結婚できるし望めば子どもも持てます。年金の不安だって薄らぐでしょう。つまり、日本の問題の多くは、給料、賃金が上がらなくなったことが原因です。しかし、この間、日本人が怠けたから賃金が上がらなかったわけではありません。みんな自分や家族、子どものために懸命に働いてきたはずです。間違っていたのは、経済政策です。だからこそ今、経済政策の転換が必要なのです。国民民主党は、経済政策を規律ある積極財政に転換し、人への投資を倍増させることで「給料が上がる経済の実現」に全力で取り組む方針です。
岸田総理、総理が施政方針演説で述べた「賃上げ」や「人への投資」に国民民主党は賛成です。だからこそ、この通常国会を、どうすれば賃金、給料が上がるのか、与野党を超えて知恵を出し合う「賃上げ国会」「給料が上がる国会」にしようではありませんか。私たち国民民主党は、20年間で国民所得を倍増するための、税制を含む総合的な経済政策を示していきます。国民の皆様に、特に若い人に希望を与える論戦を展開しようではありませんか。このことを呼びかけ質問を終わります。 
●パンチがなかった岸田首相施政方針演説 1/19
通常国会の開催に際し、岸田首相が施政方針演説を行いました。地味な内容だったため、メディアでの露出は限定的です。日経の社説も無理に取り上げたような感じにとどまっているのは突っ込みどころがない成績優等生の答案ということかもしれません。
岸田首相は世論調査では最新版が読売のもので66%と上昇、オミクロンが急拡大している中で菅前首相とは真逆の反応を示しているとしています。その理由を同紙は「先手先手で対策を講じていることが大きい」としています。つまり、いったん決めたものでもそのあと微調整するフレキシビリティを持たせた点が評価されているとしています。
私は菅氏が首相になってすぐに当ブログで「この政権は持たない」と申し上げたのは菅氏の頑固さが日々刻々変わる時代に不向きとすぐに察知したからです。菅氏の官房長官時代からのその仕事のやり方を知っている人ならば彼がどれだけ融通の利かない首相だったかお分かりになるでしょう。
その点、岸田首相はかなりタイプが違います。逆に言えば芯がどこにあるのか、どうしたいのかわからないともいえるのです。施政方針演説では全ての項目に於いてまるで選挙立候補の演説のような耳障りの良い、ペーパーテストをすれば95点取れる内容なのです。これではマスコミも何も書けないでしょう。私が当初から岸田政権は長期政権になる、と申し上げているのはそのあたりを考慮したものです。
さて、その演説のトップがコロナ対策でした。これは確かに重要なのですが、政府がやることと地方自治体がやることがバラバラであったり様々な専門家が相変わらず「心配症候群」の発言を繰り返しているため一種の洗脳が起きてしまっています。他国の動きと同じになると仮定するなら日本では1月末あたりにピークが来ると予想できます。それまでには1日10万人を超える程度まで感染者は増えるかもしれませんが、その後、一気に下がり、2月末には相当落ち着いてくる公算が強いとみています。
重症者もさほど増えておらず、慌てることはないとみています。既に英国やアメリカ、カナダではこれ以上の危機をあおることもないし、感染者の減少サイクルに入っているため、しっかり見届けるという状態になっています。よって、政府としてはブースター接種を着実に進め、経口剤などで対策をとり医療体制をしっかり整えておくという実務であって、厚労省マターにしてもよいぐらいだと思っています。
2番目に挙げた「新しい資本主義」では、首相は財政健全化、格差是正、新自由主義の行き過ぎへの反省、デジタル活用による地方活性化、人への投資、中間層の維持を盛り込みました。正直、これが全部できればノーベル賞もので、そんなうまい話はないと考えてよいでしょう。その中で首相の性格からすると財政健全化が一番踏み込むエリアではないかと思います。つまり、安倍/高市グループとは一線を画するとみています。
財政健全化を前面に掲げる心理の場合、思い切った投資はできません。なぜなら失敗が怖いからです。コロナ対策のような絶対必要なものには財政を投入しますが、岸田氏は経済の成長分野に投資を決めても小遣い程度に留まるとみています。私なら気候変動と異常気象が日常的に起きることを踏まえ、コンパクトシティの推進とメリハリあるインフラの整備があってしかるべきと考えます。
1年後には「新しい資本主義」なんていうぶち上げた看板を掲げなければよかったと本人は思うし、アベノミクスのような話題にもならないはずです。なぜなら「三本の矢」のような具体的プランもないのですから。
次いで気候変動問題ですが、これには私はある期待感があります。それは「日本式アプローチ」をアジア地区に展開し、欧米方式と差別化し、それが世界的に認知されるように売り込めるのではないか、と思っています。例えば自動車も何が何でもEVというのは欧米方式、日本はハイブリッドの良さを十分理解しています。アンモニアを使った新燃料の開発は日本が先頭を走っていると理解しています。また水資源や森林資源が豊富だという点ももう少しアピールしてもよいでしょう。
カーボンゼロは極めて耳障りがよく、政治家が一番飛びつく主題ですが、今年は必ずその反動が来ます。そしてより現実解を求めるための議論が進むでしょう。その時、日本方式の「第三のアプローチ」を世界に発信していくプレゼンターとなれるか、岸田首相の能力が問われます。ちなみに就任後すぐにグラスゴーで発表した岸田首相のCOP26のプレゼンは欧米では全く評価がなかったと理解しています。出席だけすればよいという外交ではだめです。岸田氏も外務大臣だったのですから外交のノウハウは十分ご存じでしょう。
ではその外交の部分の演説ですが、これがよくわからない、それが私の感想です。「新時代リアリズム外交」。誰がこの表現を作成したのか知りませんが、一言でピンとこないキャッチはそもそも失格です。演説を読む限り全方位外交です。その順番がアメリカ、オーストラリア、北朝鮮、インド太平洋、ASEAN、TPP、中国、ロシア、韓国となっています。これはちょっと違うと思います。好き嫌いで外交をするのではなく、重要度で捉えるべきです。そうなれば必然的にアメリカ、中国が先に来るわけで北朝鮮は韓国と並列でよいはずです。
その他の演説は短いし、内容も深くないので省きますが、一番最後に憲法改正を申し訳なさそうに挿入しています。文字数171字は少なすぎやしないか、と思いませんか?熱意が伝わらないと思います。
今後は岸田カラーを出せるのか、これが肝ではないでしょうか?立憲民主党が新体制になり、どうもベクトルが定まらず、方向性も打ち出せていません。泉さんではまとめきれないかもしれないし、懸案の共産との関係の方向性も打ち出せていません。一方、中国寄りの公明党も支持率は厳しくなるとみており、勝者無き政党政治になりつつあるのかもしれません。
●「朝令暮改」批判に岸田首相反論 支持率アップで自信―代表質問 1/19
岸田文雄首相の初めての施政方針演説に対する各党代表質問が19日に衆院で行われ、通常国会の論戦が始まった。立憲民主党の小川淳也政調会長は、新型コロナウイルス対策や18歳以下への10万円給付をめぐる首相の再三の方針転換をやり玉に挙げ、「朝令暮改」と批判。首相は臨機応変に対処することの意義を強調し、従来のスタイルを通す意向を表明した。
「確固たる信念、方針に欠けた優柔不断な朝令暮改」。小川氏は首相の手法を厳しく批判し、政策の変更が混乱を招いているとして「後からひっくり返さなくて済むよう熟慮を重ねていただく必要がある」と主張した。
首相は「大切なことは最善の対応を取ることだ」と反論。「今後も状況が変化する中、国民により良い方策となるよう粘り強く対応し、しっかりと説明する」と述べた。
軌道修正をためらわない姿勢に自信を見せるのは、各種世論調査で内閣支持率が上昇傾向にあるためとみられる。「強権的」と批判された安倍、菅両政権と比べ、看板の「聞く力」が世論に好感されていると首相サイドは判断している。
ただ、これに対しては自民党からも「こんなやり方ではいつかつまずく」(ベテラン)といった懸念が出ている。立民幹部は「実態は後手後手、右往左往だ。いつまでも通じない」と語り、今後も厳しく追及する構えを示した。
●首相初の施政方針 具体的な施策に乏しい 1/19
4カ月で3回目となる国会演説は、今回も具体的内容に乏しかった。
岸田文雄首相は17日召集された通常国会で、就任後初の施政方針演説を行った。過去2回の所信表明演説同様、新型コロナウイルス対策と「新しい資本主義」に力点を置いた。コロナ対策では、水際対策強化や医療関係者、高齢者へのワクチンの3回目接種を加速する方針も示した。
国内では新たな変異株「オミクロン株」が急拡大を続けている。オミクロン株は重症化率が低いとされるが、感染者数が激増する中でどのように感染を抑え込み、医療提供体制を維持していくかは眼前の課題だ。だが演説では対策の具体的な期限には踏み込まず、切迫感が感じられない。
そもそもオミクロン株は、日本の検疫が適用されない在日米軍の兵士から沖縄などに感染が拡大したとされている。それに対し首相は、演説の中で「地位協定に基づく日米合同委員会において、しっかり議論していく」と述べるにとどめた。
これで県民、国民の不安が払拭(ふっしょく)されるのかは大いに疑問だ。
「新しい資本主義」についても、首相は「成長と分配の好循環」を繰り返すだけだった。特に分配戦略については、春闘での「賃上げが実現することを期待する」として、ほぼ企業側の対応に丸投げした形を取っている。最低賃金を全国加重平均で千円以上にするとの目標も「できる限り早期に」としか言及しなかった。
具体策に乏しいだけでなく、首相は多くの重要テーマについて語らなかった。
このうち日本学術会議会員の任命拒否を巡っては、首相は国会開会前の14日に「もう結論は出ている」と語り、幕引きを図っている。
森友・加計学園問題にも触れなかった。この問題は、いまだ政権側から「お友達」に便宜が図られた可能性について十分な説明や解明がなされたとは言えない状態だ。
また、与党の元衆院議員が貸金業法違反で在宅起訴されるなど、このところ相次ぐ「政治とカネ」の問題についても演説の中で取り上げなかった。
「核兵器のない世界」を目指すと強調、各国の政治リーダーらを集めた国際賢人会議設立をうたった。一方で被ばく者が切望してやまない核兵器禁止条約への参加には触れなかった。これでは、首相の本気度が問われることになるだろう。
演説では、沖縄が今年復帰50周年に当たるとして「強い沖縄経済をつくるための取り組みを進める」と述べた。基地問題には「沖縄の皆さんの心に寄り添い」「辺野古への移設工事を進める」と従来の政府見解を繰り返した。
しかし、沖縄関係予算は来年度大幅な減額となる見込みだ。また辺野古新基地を巡っては、県が指摘する軟弱地盤の問題をどう解消するのか、明確な見通しが立っているとは言えない。
こうした「矛盾」も含め、首相は今後国会で、納得いく説明をする必要がある。
●方向性がわからない 岸田首相の施政方針演説 1/18
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月18日放送)にジャーナリストの有本香が出演。通常国会で行われた岸田総理の施政方針演説について解説した。
1月17日、通常国会が召集され、岸田総理大臣が施政方針演説を行った。岸田総理は感染が拡大するオミクロン株など、新型コロナウイルスへの対応が最優先の課題と強調した。
通常国会召集、岸田総理大臣が施政方針演説
飯田)「まずは新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組んで参ります。皆で協力しながら挑戦し、コロナ後の新しい日本をつくり上げて行こうではありませんか」と強調したということです。コロナのみならず、いろいろな課題が出て来ています。
有本)いま読んでいただいた「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組んで参ります」という言葉もそうなのですが、全般的に耳に残らないのです。岸田さんの演説は、不思議なのですが、聞いたことのあるような言葉がちりばめられていて、内容的にもかなり総花的で、耳に残る言葉が本当に少ないという印象です。
有本)「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組む」というのは、「ウィズコロナ」ではないのです。総理のなかにイメージをお持ちなのだろうかと、疑問に思います。何となく聞こえがよさそうな言葉を並べているように感じます。都道府県知事の「まん延防止」要請についても、簡単に受け入れていて、「中途半端なコロナ撲滅に向かっているのか」と思ってしまいます。
飯田)「ゼロコロナ」的なものですか。
有本)全体的に、方向性がわからない施政方針演説でした。
有本)とりわけ気になるのは、この国際情勢ですから、外交・安全保障というところです。「新時代リアリズム外交」に関してはまったくわかりません。
飯田)新時代リアリズム外交。
有本)アメリカとの関係は「バイデン大統領と早期に会談する」と。私たちは「さっさとやってくださいよ」と思っているのですが。中国には「言うべきことは言うのだ」という話です。しかし、既に言うべきことを言っていないのです。岸田政権が発足して、もう3ヵ月以上が経ち、北京オリンピックの開催まで1ヵ月を切るなかで、「総理ご自身の言葉で、はっきりと、1度でも苦言を呈したのか?」ということです。そんなもの、聞いたことがありません。
飯田)「外交ボイコット」とも言わないし、その発表も官房長官の会見のなかでありました。
アメリカが外交ボイコットを示唆するなかでの林外務大臣の空気を読めない発言
有本)先日、『夕刊フジ』の政治部長である矢野さんが、私の個人チャンネルに来てくださって、面白い資料を持って来てくれました。総選挙が終わって、岸田政権が本格的にスタートして以来の、林外務大臣を含めて岸田政権が発信したことをすべてまとめてくれたのです。それとアメリカ側の発信を重ね合わせると、アメリカが同盟国との方向性を示した際に、日本がそれを打ち消すような発信をしているのです。
飯田)足並みを揃えるのではなく。
有本)時系列に並べて見ると、足並みを揃えたがっていないことが確かめられます。例えば、日米外相の電話会談では、曖昧にはなりますが、「一緒に頑張って行きましょう。中国に対しても、いろいろな対応をして行きましょう」と言っています。その翌日ぐらいから、アメリカは外交ボイコットを示唆し始めます。観測気球も投げて、向こうの主要メディアがそのことを報じ始める。
飯田)そうでした。
有本)そのタイミングで日中外相会談がありましたが、その会談の直後に、林さんがテレビ番組で「王毅外相から訪中を打診されたので、前向きに」ということを言ってしまった。この空気の読めなさというのは、アメリカからしたら「イラッ」としますよね。
飯田)林大臣は衆議院選挙後の就任なので、11月、ちょうどアメリカでは政府筋からの話が出て来ている時期でした。
有本)そうです。外交ボイコットの話がホットになって来たときに……。
飯田)12月6日ごろに発表するから、それまでの下地づくりを1ヵ月くらいかけてやっていた時期でした。
有本)そこに冷や水を浴びせるような、「日本は同調しないの?」という感じですよね。そういう流れがあったためか、最初の日米外相会談で「岸田総理の訪米を調整する方向で合意して行こう」ということになったのですが、未だに調整がついていません。
飯田)結局、対面というのはなくなったのか、どうなのか……。
有本)そうですね。オンラインで、という。
飯田)「21日にオンラインで」という話になっています。
有本)訪米して会おうと思えば、会えるはずですよ。
飯田)それこそ10月に就任された直後、臨時国会の前後、年明けにかけて、ずっと「模索」と言っています。
有本)そうです。行くとおっしゃっていましたよね。
飯田)通常国会がいよいよ迫って来たら、2月の連休でという話もあったのですが。
有本)それも進んでいない。はっきり申し上げて、少し嫌われていると思います。ある種の信頼関係が崩れて行くのはあっという間なのです。アメリカは、そこははっきりしていますし、特に民主党政権は伝統的に、日本に対しての当たりが厳しいときは厳しいのです。
飯田)クリントン元大統領の「ジャパン・バッシング」もありました。
有本)ただ、いまは中国の脅威が当時とは格段に違うので、アメリカは日本と協調して行かなければならないでしょう。気になるのは、1月7日に行われた「日米2プラス2」のことです。
飯田)オンラインでやりました。
有本)オンラインだったせいもあると思いますが、2021年3月に「2プラス2」をリアルでやったときは、ブリンケンさんは日本に滞在中もそうだったのですけれど、アメリカ側の外交責任者は2人ともブルーリボンバッジを付けていたのです。これはリアルだったからとも思うのですが、「連帯してやって行くよ」という日本側に対する1つのアピールです。
飯田)拉致問題も。
有本)オンラインだったこともあるのでしょうが、今回は(バッジが)なかったのです。やはり、少し冷え込んでいる感じがします。実務上ではいろいろと連携はされているでしょう。しかし、世界に対するメッセージというものがあります。自分の国のことではなくて、仮に韓国がもしこういう状況であれば、「韓国はアメリカとのトップ会談もできないのか」と言います。そういう状況がいま日本にあるという事実は、懸念材料として考えなければいけないのかなと思います。
飯田)これだけ周りの情勢が緊迫しているなかで、東アジアのキーとなるはずの日本がおかしなことになっている。
有本)そうです。そして日本にとっては、好むと好まざるとに関わらず、唯一の同盟国です。こんな状況でいいのかと思います。
クアッドのなかからも、外されかけている日本
有本)冒頭に戻りますが、岸田さんのイメージや方向性を感じにくい言葉は、外交上でもそうです。「この人にも言うべきことは言って行きますよ」、「この人とも仲よくしますよ」ということを言っているのですが、これだけ情勢が難しくなっているなかで、「日本がどのように存立を確保して行くのか」というイメージが見えません。クアッドは安倍さんが考えた日本発の構想ですが、クアッドのなかからも、外されかけている。
飯田)オーストラリアとの関係は「オーカス」、アメリカ・イギリス・オーストラリアなど、そちらに軸足が移っているのかなという感じがします。
有本)期待度が低くなっていると感じます。他のG7外相がイランへの対応を話し合うときにも、日本の林外務大臣は外されています。もちろん、中東に対するスタンスは欧米諸国と日本では違うのですが、かなり気になる現象です。
飯田)しかも当事国のなかで、日本やアメリカなどと対峙する中国などから見ると、「日米にすきま風が吹いているのなら、チャンスではないのか」ということになりますよね。
有本)当然、そうなります。
飯田)そうなると、かえって不安定化の要因になる。
有本)そう思います。北朝鮮は連日のようにミサイルを撃って来ています。「自ら危険を呼び込む状況になっていないか」と心配しています。「心配しすぎだ」と言われるかも知れませんが、北京オリンピック後に何が起こるかわかりませんから。
飯田)せっかく国会が開いているのですから、その辺りを質問する野党の議員も。
有本)そうですね。質問して、このことを熱く議論して欲しいです。
●施政方針演説 1/18
岸田文雄内閣総理大臣は、2022年1月17日、衆議院本会議で施政方針演説を行った。新型コロナウイルスのオミクロン型への対応では、当面2月末まで、海外からの流入を防ぐ現在の水際対策を維持する。ワクチン接種は前倒しし、3月以降は高齢者の摂取は6か月間隔で、一般向け接種も余力のある自治体は6か月、少なくとも7か月間隔で実施していく。
「新しい資本主義」については、行き過ぎた市場依存が生み出す様々な弊害を是正するしくみを、「成長戦略」と「分配戦略」の両面から資本主義の中に埋め込むという。そして、成長戦略の第1の柱は「デジタルを活用した地方の活性化」であるとした。例えば、ITインフラを整備し、企業版ふるさと納税のルールを明確化することで、企業の支援による地方のサテライトオフィス整備を進める。それにより、企業や個人の都市から地方への流れを加速させる。イノベーションの推進では、2022年をスタートアップ創出元年とし、5カ年計画を設定して大規模なスタートアップの創出に取り組む。
第2の柱である「人への投資」では、スキル向上・再教育を通じた人的資源の充実を図る。人的投資は企業の持続的な価値創造の基盤であるということを、株主が納得できるようにするため、2022年中に非財務情報の開示ルールを策定する。第3の柱「中間層の維持」では、子育て・若者世代に焦点を当て、世帯所得の引き上げ、男女の賃金格差の是正に向けた企業の開示ルールの見直しなどを挙げた。このような「新しい資本主義」のグランドデザインおよび実行計画は、2022年春に取りまとめる予定だ。
脱炭素化、気候変動の抑制に向けた取組では、温室効果ガス排出を2050年には実質ゼロとすることを目指した活動を引き続き進めていく。さらに、アジアの脱炭素化へ向け、日本の水素やアンモニア関連の技術、制度、ノウハウで貢献する方針も示した。「アジア・ゼロエミッション共同体」を、有志国と力を合わせて作ることを目指すという。
●岸田首相施政方針 1/18
危険で冷たい姿勢があらわだ
岸田文雄首相が就任後初の施政方針演説を行いました。当初予算案が審議される通常国会での施政方針演説は、政府のその年の基本方針や政策を明らかにするものです。岸田首相は「経済・社会全体の大変革に取り組む」とか、「新しい時代を拓(ひら)く」と大見えを切りました。しかし、中身は行き詰まった自民党政治の焼き直しです。大軍拡や改憲などでは、新たな危険な姿を浮き彫りにしました。国民の願いに背く岸田政治を包囲することが急務です。
米兵検査の大穴に無反省
岸田首相は冒頭、感染が急拡大している新型コロナへの対策をとりあげ、3回目のワクチン接種を急ぐことや病床の確保などを並べ立てました。しかし後手後手の対応で、オミクロン株による第6波を招いていることに深刻な反省はありません。沖縄などの在日米軍基地が水際対策の大穴となり、感染爆発を引き起こしたことにも無反省です。米兵の検疫は米軍任せで、日米地位協定の抜本改定を求める声に背を向けました。
コロナ禍の中でも、75歳以上の高齢者の医療費の窓口負担2倍化など、国民に冷たい政策は続ける姿勢です。
岸田首相が強調した「新しい資本主義」も新しい内容はありません。市場任せの「新自由主義」が格差と貧困を拡大し、環境を悪化させ、中間層を衰退させたと述べたものの、どこが間違いだったのか具体的に語りません。
岸田首相が昨年の自民党総裁選で主張した大資産家の金融所得への課税強化は、全く消えました。「デジタル」や「経済安全保障」「科学技術・イノベーション」なども、大企業への応援が中心です。分配を重視すると言って、「賃上げ」を強調しますが、その対策は来年度税制改定での「賃上げ」減税ぐらいです。もうけがあって法人税を払っている大企業は利用できても、税金を払えない多くの中小企業には無縁です。これまでも賃上げには効果がなかった仕組みです。最低賃金の引き上げも「全国加重平均1000円」を目指すというだけで、全国一律1500円以上にという労働者の切実な要求からは程遠いものです。
地球的な課題である気候変動への対応では、国際的水準と比べてあまりに低い二酸化炭素排出削減目標も引き上げません。
核兵器禁止条約には今回も一言も触れません。「敵基地攻撃能力」の検討や、「スピード感」をもった軍事力の抜本的強化を主張し、軍事対軍事の緊張を高める姿勢があらわです。沖縄・辺野古の米軍新基地建設推進も明言しました。憲法については、「積極的な議論が行われることを心から期待」と、改憲機運の促進を狙います。岸田首相による、「戦争する国づくり」を許してはなりません。
「信頼と共感」いいながら
「森友・加計・桜」などの「政治とカネ」問題や日本学術会議会員の任命拒否についてはまたも言及はありません。統計改ざん問題の解明も言葉だけです。国民の「信頼と共感」といいながら都合の悪いことにはフタをする態度です。
首相も弊害を口にする新自由主義を転換するには、雇用・社会保障・税制の根本的改革で“やさしく強い経済”の実現が不可欠です。
岸田政権に代わる新しい政治を開くたたかいが重要です。
●岸田首相が施政方針演説 コロナ対応に全力 緊急承認制度成立に意欲 1/18
岸田文雄首相は1月17日召集の通常国会で施政方針演説を行い、新型コロナ対策の重要性を強調し、「息の長い感染症対応体制の強化策として、まずは、安全性の確認を前提に、迅速に薬事承認を行う仕組みを創設する」と強調した。今通常国会に厚労省は緊急時に新たな医薬品を速やかに薬事承認する「緊急承認制度」を盛り込んだ改正薬機法案を提出する。一方、鈴木俊一財務相は財政演説で、少子高齢化が進むなかで、「財政健全化の旗を降ろすことなく、2025年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出・歳入両面の改革をしっかり進める」と述べた。会期は6月15日までの150日間で、与野党の論戦が展開する。
新型コロナ対策について岸田首相は、「専門家の意見をうかがいながら、過度に恐れることなく、最新の知見に基づく対応を冷静に進める覚悟だ。一度決めた方針でも、より良い方法があるのであれば、躊躇なく改め、柔軟に対応を進化させていく所存だ」と述べた。
ファイザー新型コロナ治療薬「200万人分購入で最終合意」早期実用化を目指す
具体的な方策としては、新型コロナワクチンの3回目接種については、医療関係者や高齢者3100万人を対象とする接種の前倒しを行うほか、3月以降に追加確保した1800万人分のワクチンを活用し、高齢者の接種を6か月間隔で行うとした。また、5500万人の一般向け接種も、「少なくとも7か月、余力のある自治体では6か月で接種を行う」と述べた。新型コロナ治療薬については、米メルク(MSD)の経口薬・ラゲブリオの160万人分について、「全国2万2000の医療機関・薬局が登録し、医療現場に3万人分をお届けしている」と述べた。1月14日にファイザーが申請した経口薬にも言及し、「月内に200万人分の購入に最終合意し、来月できるだけ早くの実用化を目指す」と述べた。
6月目途に司令塔機能の強化、感染症法のあり方など取りまとめ
このほか「次の感染症危機に備えて、6月を目途に、危機に迅速・的確に対応するための司令塔機能の強化や、感染症法の在り方、保健医療体制の確保など、中長期的観点から必要な対応を取りまとめる」考えも示した。
岸田首相は、「新型コロナとの闘いに打ち克ち、経済を再生させるため、2021度補正予算の早期執行など、危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期す」と述べたうえで、「経済再生の要は、“新しい資本主義”の実現だ」と強調した。「私は、成長と分配の好循環による“新しい資本主義”によって、この世界の動きを主導していく。官と民が全体像を共有し、協働することで、国民一人ひとりが豊かで、生き生きと暮らせる社会を作っていく。日本ならばできる、日本だからできる。共に、この“経済社会変革”に挑戦していこうではありませんか」と訴えた。
デジタル活用ではオンライン診療に言及 地方の活性化も視野
成長戦略としては、第一の柱に、「デジタルを活用した地方の活性化」をあげた。このなかでオンライン診療にも言及。高齢化や過疎化などに直面する地方においてこそ、「デジタルサービスを活用できるよう、5G、データセンター、光ファイバーなどのインフラの整備計画を取りまとめる」と述べた。経済安全保障についても、「待ったなしの課題であり、新しい資本主義の重要な柱」と述べ、サプライチェーンの強靭化への支援にも触れた。
また、「社会課題を成長のエンジンへと押し上げていくためには、科学技術・イノベーションの力が不可欠」との見解を表明。アカデミアの支援に加え、「本年をスタートアップ創出元年とし、五か年計画を設定して、大規模なスタートアップの創出に取り組み、戦後の創業期に次ぐ、日本の“第二創業期”を実現する」と述べた。
そのうえで、「成長と分配の好循環による持続可能な経済を実現する要となるのが、分配戦略だ」と述べ、賃上げや人への投資の重要性についても強調した。
鈴木財務相 22年度政府予算案の早期成立を目指す
鈴木財務相は同日、財政演説で、「感染症による危機を乗り越え、新しい資本主義に向けて、成長と分配の好循環を実現していく必要がある」と表明した。一般会計総額が過去最大規模の107兆5964億円となる2022年度政府予算案について早期成立を目指す姿勢を強調した。
鈴木財務相は、「日本の財政は、少子高齢化が進む中、社会保障の受益と負担のアンバランスという構造的課題に直面している」との認識を示したうえで、「財政は国の信頼の礎であり、財政健全化の旗を降ろすことなく、経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太方針2021)における25年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出・歳入両面の改革をしっかり進めて参る」と述べた。
メリハリある診療報酬改定や薬価改定「実質的な伸びを“高齢化の増加分におさめる」
社会保障関係費については、「看護、介護、保育等の現場で働く方々の処遇改善に必要な経費を確保しつつ、診療報酬のメリハリある改定や市場価格を反映した薬価改定など、様々な改革努力を積み重ねた結果、実質的な伸びを“高齢化による増加分におさめる”という方針に沿ったものとなっている」と説明し、理解を求めた。
厚労省 「雇用保険法等一部改正案」など3法案提出へ
厚労省は今通常国会に、予算関連法案である「雇用保険法等の一部を改正する法律案」のほか、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案(改正薬機法案)」、「児童福祉法等の一部を改正する法律案」の3本の法案提出を予定する。このうち、改正薬機法案では、新型コロナワクチンの後れなどを踏まえ、緊急時に新たな医薬品を速やかに薬事承認する仕組みである「緊急承認制度」や、電子処方箋の仕組みの整備などが盛り込まれる。電子処方箋の整備は、処方情報や調剤情報の一元管理を可能にするとして期待されている。国会への提出は、3月上旬の予定。
●首相、コロナ対応は「柔軟に」 施政方針演説 「ちゅうちょなく改める」 1/18
17日の施政方針演説で、岸田文雄首相は新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」対策に万全の備えを取っているとアピールした。夏の参院選まで半年。政権は、世論の賛否が割れそうな法案などの提出を見送り、「安全運転」に徹して通常国会の本格論戦を乗り切る腹づもりだ。ただ、感染急拡大の新しい「波」に対し「後手」の印象を持たれれば、堅調な内閣支持率も暗転しかねない。
この日、衆院本会議で42分間に及んだ演説中、首相がこだわって引用したのが幕末から明治にかけて活躍した勝海舟の言葉だ。「行蔵(こうぞう)は我に存す」−。「それぞれの決断の責任は、自分が全て負う覚悟で取り組んでまいった」とひときわ力を込めると、議場から拍手が起こった。
その言葉を最も強く照射させたのが、コロナ対策だった。費やした文章量は、オミクロン株が市中感染局面に移行していなかった昨年12月の所信表明演説から2倍超に。経済を回す観光支援事業「Go To トラベル」などは姿を消し、感染拡大抑止に重点を置いた「めりはりの付いた対策」を列挙する中身となった。
3回目ワクチン接種の前倒しを急ぐ。保健所の体制を強化する。今後、新規感染者の爆発的な増加と、それに伴う重症者増によって医療が機能不全となる事態を避けるため、入退院基準も見直す…。
生煮えで詰まっていない部分もあり、実効性を伴うかは不透明。それでも、首相は「一度決めた方針でも、より良い方法があるのであれば、ちゅうちょなく改め、柔軟に対応を進化させていく所存です」。機動的に「先手」を講じているとの空気感をにじませた。
指導者が、国政全般にわたる運営方針を示す施政方針演説。
文案を練る際、首相は「同じ書きぶりばかりではだめだ」と内容のフレッシュさに執着し、随所に「企業版ふるさと納税」の改良などの独自色を盛り込んだ。気候変動問題に関わるパートは、特に手厚くした。前任者である菅義偉前首相の「グリーン」という表現ではなく、「炭素中立」という言葉を使い「脱炭素の実現と、新しい時代の成長を生み出すエンジンとしていきます」と訴えた。
一方で、勝利すれば中長期政権の扉を開ける参院選を意識して「守り」を固めたところも。当初は「所得」「人的投資」など「五つの倍増」を掲げる構想もあったが、野党側に無用の批判材料を与えて不利になるリスクもあるとして取りやめたという。
何をおいても政権の消長を左右するのはオミクロン株、コロナ禍だ。感染者数は過去最大だった昨夏の「第5波」に迫り、まん延防止等重点措置などの「ドミノ適用」が現実味を帯びている。政権幹部は、自らに言い聞かせるようにこう話す。
「コロナでつまずけば全てが狂う。『岸田カラー』は参院選後からでいい」
●初の施政方針演説 1/18
通常国会が17日に開会し、岸田文雄首相が初の施政方針演説を行った。良くない意味で「驚く部分」の多い演説だった。
まず、「はじめに」含め、冒頭の大きな2項目を「新型コロナウイルス対策」に割いていることが、今回の岸田演説の特徴である。最も力説したかった事柄のはずが、その割には首を傾げたくなる表現が散見される。首相官邸からは「あなたごときが余計なお世話」といわれるだろうが、具体的に指摘してみたい。
コロナに苦しむ人への見舞い、コロナ対策に協力する国民への感謝の後、次のくだりがある。
「そして、新型コロナ対応の最前線におられる、自治体、医療機関、介護施設、検疫所、保健所などのエッセンシャルワーカーの皆さんに、深く、感謝申し上げます」
コロナ対応の最前線にいる筆頭に「自治体」を挙げるセンスに驚く。自治体の職員が頑張っていないとはいわないが、やはりこの筆頭は「医療従事者の皆さま」にするのがよいのではないか。
「医療機関」という表現も、その後の「〜などのエッセンシャルワーカーの皆さん」につなげるものだということは分かるが、やはり違和感大だ。
医療機関の中には、新型コロナの補助金不正受給(しかも多額の)が指摘されたところもある。ここは「組織」にではなく、現場で奮闘する個々人への声がけの表現にすべきであった。
この後、(コロナ後の新しい日本を創り上げるための挑戦)という項目の最初の一文にまた驚く。
「内閣総理大臣に就任してから、国内外の山積する課題に、スピード感を持って、決断を下し、対応してきました。『行蔵(こうぞう)は我に存す』。それぞれの決断の責任は、自分が全て負う覚悟で取り組んでまいりました」
スピード感を持って決断を下してきた…という首相の自己評価を「確かにそうだ!」と思う国民はどのぐらいいるだろう。
例えば、北京冬季五輪への「外交的ボイコット」の表明は、先進諸外国と比したら恥ずかしくなるほど遅かった。しかも、その表明は松野博一官房長官に丸投げだったと記憶している。
同じ項に、次の表現もある。
「このように、『信頼と共感』の政治姿勢を堅持しつつ、まずは、新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組んでまいります」
うーん。これまた高い自己評価の言葉。岸田首相は腰低く見せているが、案外ゴーマンキャラなのか。
「新型コロナに打ち克つ」という表現も、昨年9月の自民党総裁選出馬時に語っていた、「私たちはコロナと共存する未来をめざす必要があります」という「ウィズ・コロナ」的な表現と矛盾するように聞こえる。とはいっても、このとき岸田氏は「いつでもどこでも無料のPCR検査」などと、既に矛盾することを言っていたので、いまさらこんな齟齬(そご)を指摘しても詮無いか。
最後に、外交の項での驚くべき箇所を指摘したい。
岸田首相は「新時代のリアリズム外交」を掲げている。しかし、その趣旨、コンセプトは演説で語られていない。最近の講演等での発言から推察するとそれは、大平正芳、宮沢喜一といった「宏池会の先輩」首相を手本とする外交らしい。
大平氏といえば日中国交樹立をまとめた外相、宮沢氏といえば、韓国に謝罪し倒し、ついに、河野洋平官房長官による「河野談話」発出に至った首相だ。この二故人の「リアリズム外交」とは中国・韓国重視だが、そこに「新時代」と付けて何をするつもりか。
答えの一端は、同じ項の少し後にある。
「中国には、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めていきます。同時に、諸懸案も含めて、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力し、本年が日中国交正常化五十周年であることも念頭に、建設的かつ安定的な関係の構築を目指します」
沖縄県・尖閣諸島の「せ」の字も、ウイグルの「う」の字も出てこない。自国の重大課題である北朝鮮の拉致問題への言及部分でもいきなり「各国と連携して」と、はなから他力本願の表現…。
年初から暗い気持ちにさせられる演説だ。岸田首相の思いの薄さが原因だが、スピーチライターは一体誰だ?
●「リニューアルオープンの看板を掲げて中身変わってないお店のよう」 1/18
1月18日(火)大竹まことゴールデンラジオ(文化放送)にフリーライターの武田砂鉄氏が出演し、昨日行われた岸田総理の施政方針演説について「具体性が無く、『新しい資本主義』と繰り返したが中身を覗くと基本的な構成成分が変わっていない。これではリニューアルオープンという看板を出したけれど、中身が変わってないお店みたいだ」と批判した。
武田氏は、岸田総理はこれまでの資本主義の変革と言ってはいるが、内容を聞いてみるとアベノミクスと同じではないか、と多くの人が動揺したと語り、「『日本ならばできる、ともに挑戦していこう』と早速気持ちで押して行こうとする言葉を述べて「何が?」となった」と正直な感想を述べた。
また、コロナ感染拡大がアメリカ基地経由で進み、それを放置してしまったことにも触れず、日米地位協定に踏み込まないとしていることや最後に国土交通省の不適切統計処理についてもGDPにどのように影響しているのか明らかにしないまま謝罪をして、これにて終わらせようとしていると指摘。
その一方で、岸田総理が「丁寧に国民の耳を傾ければ改革の道は見えてくる」と述べたことについて、高らかに宣言はしているけど昨年末から続く文書交通費問題、や森本学園、ウィシュマさんさんの件など、批判されそうな問題については演説に盛り込まなかったとバッサリ。スローガンが先立っているが実際にやろうとしていることとかなりのずれがあると批判した。
パーソナリティの大竹まことが「それでも支持率が上がっているっていう話も聞きますが」と不思議がると、武田は「前の人よりは話が通じるってことですかね」と吐き捨てた。
●岸田首相が施政方針演説、「賃上げ率一気に反転」 四半期開示を見直し 1/17
通常国会が17日開会し、岸田文雄首相は衆院本会議で施政方針演説を行い、賃上げなど
1月17日、通常国会が開会し、岸田文雄首相(写真)は衆院本会議で施政方針演説を行い、賃上げなど人への投資の重要性を訴え、春闘に向けて「賃上げ率の低下トレンドを一気に反転させたい」と期待感を表明した。写真は都内で昨年12月撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)
人への投資の重要性を訴え、春闘に向けて「賃上げ率の低下トレンドを一気に反転させたい」と期待感を表明した。年内に非財務情報の開示ルールを策定する。新型コロナワクチンの3回目接種の前倒しや、脱炭素に向けた投資加速などを唱えるとともに、企業の四半期開示の見直しを行うと改めて表明した。
3回目のワクチン、前倒し接種
岸田首相は冒頭「わが国は、オミクロン株の感染急拡大に直面している」と述べ、「政権の最優先課題は、コロナ対応」と指摘した。
その上で「オミクロン株について、感染力が高い一方、感染者の多くは軽症・無症状であり、重症化率は低い可能性が高い」との専門家の知見を引用し、「リスクが高い方々に、的確に医療を提供することに主眼を置いて、医療提供体制を強化する」と語った。
ワクチンは「医療関係者、高齢者3100万人を対象とする3回目接種の前倒しについて、ペースアップさせる」とした。
「3月以降は、追加確保した1800万人分のワクチンを活用し、高齢者の接種を6カ月間隔で行うとともに、5500万人の一般向け接種も、少なくとも7カ月、余力のある自治体では6カ月で接種を行う」と説いた。
在日米軍の感染拡大防止措置に触れ、「在日米軍の駐留に関わる保健・衛生上の課題に関し、地位協定に基づく日米合同委員会において、しっかり議論する」とした。
春闘に関しては「近年、賃上げ率の低下傾向が続いているが、このトレンドを一気に反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げを実現することを期待する」と述べ、「できる限り早期に、全国加重平均1000円以上となるよう、最低賃金の見直しに取り組む」と強調した。
「官民の人への投資を、早期に、少なくとも倍増する」と述べ、「人的投資が、企業の持続的な価値創造の基盤であるという点について、株主と共通の理解をつくっていくため、今年中に非財務情報の開示ルールを策定。あわせて四半期開示の見直しを行う」方針を打ち出した。
脱炭素で投資加速──アンモニア、核融合
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて「この分野への投資を早急に、少なくとも倍増させ、脱炭素の実現と、新しい時代の成長を生み出すエンジンとする」と述べた。
投資分野や論点として「送配電インフラ、蓄電池、再生エネルギーはじめ水素・アンモニア、革新原子力、核融合」「カーボンプライシング」などを列挙した。
●ワクチン3回目は? コロナ対策説明 岸田首相 施政方針演説  1/17
岸田政権になって初めての通常国会が17日召集される。岸田首相は、午後の施政方針演説で、ワクチンの3回目接種を加速させる方針など、コロナ対応に最優先で取り組む姿勢を示し、「新しい資本主義」の実現に向けた具体策についても説明する見通しだ。
会期は6月15日までの150日間で、夏の参議院選挙を睨んだ、与野党の論戦が繰り広げられる。政権幹部は、「オミクロン株への対応が序盤の最大の焦点になる」と話していて、感染急拡大への、岸田総理大臣の対応力が早速問われることになる。
今国会は、経済安全保障を強化する法案や、子ども家庭庁設置に関する法案などが審議されるが、外国人の収容や送還のルール見直し(出入国管理法改正案)など、与野党の対立が予想される法案の提出は、参院選への影響もふまえ見送られた。一方、野党は、いまのオミクロン株の拡大の要因に在日アメリカ軍基地の存在があるとして、政府の水際対策を追及するほか、国交省による統計書き換え問題の事実解明にも照準をあてる考えだ。
迫力不足との指摘を受けた去年の教訓をふまえ、野党は政府与党への追及を強める構えで、「聞く力」を持ち味とする岸田政権との攻防が幕を開ける。
●核兵器ない世界へ「国際賢人会議」 首相施政方針演説 1/17
第208通常国会が17日召集され、岸田文雄首相(広島1区)は就任後初めての施政方針演説を衆参両院の本会議で行った。「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」を各国の為政者らの関与を得ながら創設し、今年中に広島で初会合を開くと表明した。新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の感染急拡大を受け、早期克服に「全身全霊で取り組む」と強調。脱炭素社会の実現に向けた大改革も呼び掛けた。夏に参院選を控えた与野党の論戦は19日の衆院代表質問でスタートする。
国際賢人会議のベースは首相が外相時代に設立を主導した「賢人会議」。核軍縮を巡る核兵器保有国と非保有国の有識者による議論の場を発展させ、現職、元職を含めた各国政治リーダーに参画を呼び掛ける。現職米大統領で初めて広島を訪れたオバマ氏が原爆資料館(広島市中区)で記帳した言葉を紹介し、「この思いを引き継ぎ、勇気を持って核兵器のない世界を追求する」と訴えた。
コロナ対応を政権の最優先課題とし、6月をめどに感染症法の在り方を含む中長期的な対応を取りまとめる方針を示した。今後は国内対策に重点を置き、重症者を中心とした医療提供体制の強化や3月以降のワクチン3回目接種前倒しを加速させる。高齢者の接種間隔は6カ月とし、64歳以下も余力のある自治体で同様の接種を目指す。
感染拡大は米軍岩国基地(岩国市)など在日米軍基地が「震源地」となった可能性が高い。基地関係者の入国時の検疫を米軍任せにしている日米地位協定に関し、「保健・衛生上の課題を地位協定に基づく日米合同委員会でしっかり議論する」と述べるにとどめた。
気候変動問題は「資本主義の負の側面が凝縮している」と指摘し、自ら掲げる「新しい資本主義」の実現で克服するべき最大の課題と位置付けた。2050年に国内の温室効果ガス排出を実質ゼロにする政府目標の実現に向け、「経済社会全体の大変革に取り組む」と訴えた。
日本の技術を生かしたアジアの脱炭素化への取り組み「アジア・ゼロエミッション共同体」の実現も掲げた。新資本主義の実行計画を今春に取りまとめ、先進7カ国(G7)首脳会議などを通じ、資本主義の変革に向けた世界の議論を先導するとした。
気候変動に加え、デジタル、経済安全保障といった社会課題の解決を図ると強調。官民による人への投資や最低賃金の見直し、子どもに関連した施策の司令塔「こども家庭庁」の設置に取り組むと主張した。
敵基地攻撃能力を含めた現実的な防衛力強化を検討すると述べ、憲法改正について国会での積極的な議論に期待を寄せた。国土交通省の建設受注統計書き換え問題を陳謝した。
●「岸田総理らしさがぼやけている」「肝心なところに具体策がない」 泉代表 1/17
泉健太代表は17 日、国会内で岸田総理の施政方針演説について記者団の取材に応じ、「岸田総理らしさがどんどんぼやけているのではないか」との見方を示しました。
冒頭、泉代表は「総理は大変なお仕事だと思います。そして非常に誠実な人柄が出ていると思いながら(聞いていました)。しかし、画竜点睛(がりょうてんせい)を欠くというか、痒いところに手が届かないというか、肝心なところに具体策がないという感想を持ちました。コロナ対策も、想定以上とおっしゃられていて、最悪を想定するのではなかったのかという思いで受け止めました。米軍由来の感染拡大の一方で、地位協定の見直しということまではおっしゃられない。そして若者の所得の大幅引き上げと言うが、具体策に乏しい。新しい資本主義も、おそらく今日こうして集まっている記者の皆さんも、分からない、中身が見えないと受け止めているのではないかと思います」と、考えを述べました。
さらに、「岸田総理らしさがどんどんぼやけているのではないか」と指摘した上で、「新しい資本主義も総裁選で言っていたようなものではなく、感染症法の見直しも、入管法も後回し。そして、金融所得課税はもう完全に触れられなくなってしまった。文書通信費のことについても演説原稿に書かれていなどなど、いろいろと党内で気を遣うことが多いのだろう」と列挙し、岸田総理らしさを欠いた印象を抱いたと重ねて語りました。
記者からの主な質問とその回答(要旨)は以下の通り。
Q:施政方針演説受けて代表質問、予算委員会ではどう問いただしていきますか
新型コロナ対策ではオミクロン株の感染拡大に伴って、具体的に政府が何をしなければならないのかということについて、われわれからも提案をさせていただくし、政府の具体的な考え方を明らかにしていきたいということが一つです。もう一つは、新しい資本主義とは何か、アベノミクスとどう違うのかという点も聞かなければいけません。その新しい資本主義を、ブレイクダウンしたときに、結局、どんな政策を持っているのか、これもよくわからないのでただしていきます。また、例えば子ども家庭庁ができたからといって、子育て世帯が恩恵をどれだけ受けるのか。この子ども家庭庁の並びで出てきた今日の演説の中身も、対象者が非常に狭いというか、一部の方々に向けたもの。賃上げ税制も、どちらかというと広くあまねくというよりも、一部の方だけが恩恵を受けるものということで、風呂敷は大きいけれども実際に恩恵を受ける方々が少ないのではないかと(思います)。そういう政策で果たして多くの国民にちゃんと分配でき、恩恵が届くのかというところは問わなければいけないと思っています。立憲民主党の考え方として、この分配というのは、所得や地方、そしてやはり子育て世帯、こういうところへの分配を行っていきたいということを具体策を交えて議論していきたいと思っています。
Q:まん延防止等重点措置の地域拡大については
「確かに感染力は強い。しかし重症化はしない。だから大丈夫」という話ではないということですね。これだけ感染者が増えると、重症化率が低い割合であっても、やはり病床を圧迫しつつあるところが出てきています。われわれとしては、早急にこの緊急事態宣言の考え方、まん延防止等重点措置の考え方をオミクロン株に合わせたものに切り替えるべきだということは政府に強く求めていきます。
●施政方針演説 1/17
岸田文雄首相は17日の施政方針演説で、「日本外交のしたたかさが試される一年だ」と述べ、提唱する「新時代リアリズム外交」を展開していく考えを強調した。中国を念頭に置いた防衛力強化など「現実路線」の外交・安全保障政策は実績も挙げつつあるが、外交関係の基軸である米国とはバイデン大統領との対面会談が先送りされ、オンライン開催となった。新型コロナウイルス禍に伴い、外交力の発揮が制約される状況が続きそうだ。
「理想の旗を掲げつつ、現実を直視し、新時代リアリズム外交を展開する」「現実から目を背けることなく、領土、領海、領空、国民の生命と財産を守り抜く」「敵基地攻撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討する」
首相は演説で「現実」「リアリズム」という言葉を多用した。首相が率いる自民党派閥の宏池会(岸田派)はリベラル派閥として、外交では「親中国」、安保では「軽武装・経済重視」を掲げてきた伝統がある。岸田政権にも「中国寄り」という疑い≠フ目が向けられることを意識し、自身の外交・安保政策を「現実主義」と位置付けて反駁(はんばく)する意図も感じられる。
実際、岸田政権は宏池会の伝統を上書きするような実績も挙げつつある。防衛費には令和3年度補正予算と4年度予算案をあわせて初の6兆円台を計上。敵基地攻撃能力の議論も検討を具体化させ、17日の演説では「スピード感をもって防衛力を抜本的に強化する」と強調した。
一方、首相は「新時代リアリズム外交」の第1の柱として自由や民主主義、人権など普遍的価値の重視を掲げた。価値観外交とリアリズムの両立が課題となるが、これまでの対応には疑問符も付く。北京冬季五輪への対応では政府代表団の派遣を見送ったが、人権侵害への抗議だという明確な説明はなかった。17日の演説では「中国には主張すべきは主張し、責任ある行動を求めていく」と述べたものの、香港や新疆ウイグル自治区の人権侵害や台湾海峡など、個別の問題には言及しなかった。
●「安全運転」に徹する岸田首相 通常国会、参院選見据え「火種」消す 1/17
夏の参院選を見据えた通常国会が始まった。参院選を安定政権への足がかりとしたい岸田文雄首相は、野党からの批判材料を排し、「安全運転」に徹する。
「岸田政権の最優先課題は新型コロナ対応です」
17日開会の国会で施政方針演説に臨んだ首相は、冒頭からそう強調した。感染力が強い変異株「オミクロン株」により全国的に感染が拡大しており、今国会の最大の焦点になるためだ。
沖縄や山口などでは在日米軍基地から感染が広がったとの見方もあり、政府対応が国会で批判されかねない。首相は演説で、医療提供体制の確保や保健所の体制強化などに加え、在日米軍の「保健・衛生上の課題」を日米合同委員会で議論するとの方針を改めてアピールした。
安定政権をめざす首相にとって、通常国会後に控える参院選が最大の関門となる。しかし、過去の参院選では、通常国会中に内閣支持率が下落し、与党の敗北につながったケースも多い。
2007年参院選では、ずさんな年金記録問題などで第1次安倍政権下の自民党は歴史的大敗。10年には「政治とカネ」の問題などで当時の鳩山由紀夫首相が国会閉会直前に退陣したものの民主党は敗北を喫した。
今国会が正念場となる岸田政権は、国会で争点となりそうな「火種」を極力消すことに腐心した。
国土交通省による統計書き換え問題について、首相は演説であえて言及。「問題が表沙汰にならない形で収束させようとした」と断じた第三者委員会の検証結果を「真摯(しんし)に受け止め、国民のみなさんにおわび申し上げます」と陳謝した。
コロナ対策では、「10万円給付」などで迷走した政府の対応を逆手にとって「より良い方法があればちゅうちょなく改め、柔軟に対応を進化させていく」と主張。昨年12月の臨時国会の所信表明演説で準備を進めるとした「Go To事業」などの消費喚起策は、「今訴えたらたたかれる」(官邸幹部)として、盛り込まなかった。
国会への提出法案でも、昨年の通常国会で廃案になった出入国管理法改正案や、コロナ対応で国や自治体の病床確保権限を強化する感染症法改正案など、世論の反発や野党との対決が予想される法案の提出は見送った。本数も当初の61本から58本まで絞り込んだ。
ただ、首相が今国会での「参院選対策」を徹底しても、思惑通り進むかは見通せない。オミクロン株によって感染の拡大はスピードを増す一方で、首都圏を含め、全国各地で緊急事態宣言に準じた「まん延防止等重点措置」の適用に向けた動きが活発になっている。
コロナ対応をする官僚の一人は、「今は年末年始で活動が活発だった現役世代での感染が多いが、今後高齢者にも広がれば、重症者や死者も増える恐れがある」と指摘。今後のコロナ対応などでかじ取りを誤れば、首相の求心力が一気に低下する可能性もある。
●首相、送配電・蓄電池などで脱炭素へ道筋 施政方針演説 1/17
第208通常国会が17日召集され、岸田文雄首相は衆参両院の本会議で就任後初めて施政方針演説に臨んだ。2050年温暖化ガス実質ゼロの目標に向けた「経済社会全体の大変革」を強調した。送配電インフラや蓄電池、核融合などの具体策を掲げて道筋を示すと訴えた。
新型コロナウイルスへの対応を「最優先課題」と位置づけた。変異型「オミクロン型」の感染拡大を受け、現役世代ら5500万人分の3回目のワクチン接種を前倒しすると表明した。
経済再生の要は成長と分配の好循環を生む「新しい資本主義」だとし、春に実行計画をまとめる方針を明らかにした。「経済社会変革に挑戦していこう」と呼びかけた。
成長戦略はデジタル、気候変動、経済安全保障、科学技術・イノベーションの4つを挙げた。「これまで日本の弱みとされてきた分野に官民の投資を集め、成長のエンジンへと転換していく」と述べた。
50年カーボンニュートラル(炭素中立)の実現に向け、世界全体で年1兆ドルの投資を30年までに4倍に増やす必要があるとの試算に言及した。日本は官民の投資を「早急に少なくとも倍増させる」と語った。
夏に策定する「クリーンエネルギー戦略」で分野や時期、方法、投資規模を示すと表明した。送配電網のほかにも再生可能エネルギーをはじめ水素・アンモニア、革新原子力、核融合といった脱炭素の電源について「方向性を見いだしていく」と訴えた。
需要サイドの改革として地域における脱炭素化、ライフスタイルの転換にも触れた。温暖化ガスの排出に値段をつけるカーボンプライシングも論点とした。
首相は「日本の技術や制度、ノウハウを生かし世界、特にアジアの脱炭素化に貢献し、技術標準や国際的なインフラ整備を共に主導していく」と話した。具体策として「アジア・ゼロエミッション共同体」を提唱した。
脱炭素社会やデジタル化による産業構造の変化を踏まえ「スキル向上、再教育の充実、副業の活用といった人的投資の充実」を打ち出した。
必要とされる人材像や技術を明確にし、公的職業訓練のあり方を変える。「官民の人への投資を早期に少なくとも倍増し、さらにその上をめざす」と明言した。
新型コロナ対応をめぐっては現役世代らへの3回目のワクチン接種を前倒しする。2回目から8カ月の間隔をとるのが原則だったのを「少なくとも7カ月、余力のある自治体では6カ月」と短縮する。米モデルナ社から追加で確保した1800万人分を活用する。
オミクロン型の拡大について「強力な変異型が現れる最悪の事態を想定して、万全の体制を整えるべく、政府を挙げて取り組んできた」と語った。
重症化率が高くないことを念頭に「過度に恐れることなく、最新の知見に基づく対応を冷静に進める」と説いた。「一度決めた方針でも、よりよい方針があればちゅうちょなく改め、柔軟に対応を進化させていく」と話した。
感染拡大の懸念がある地域で予約なしの無料検査を広げる。ファイザー製の飲み薬は1月中に200万人分の購入に合意して2月の実用化をめざす。迅速に薬事承認する仕組みもつくる。6月をめどに感染症法や司令塔機能を見直す中長期対策をまとめる。
子ども政策の司令塔「こども家庭庁」を設置し、虐待の疑いのある子どもの死因究明に取り組む。最低賃金の全国平均1000円以上をめざし、賃上げに意欲を表した。
経済政策で「危機に対する必要な財政支出はちゅうちょなくし、万全を期す」と主張した。「経済あっての財政だ。経済を立て直し、財政健全化に向けて取り組む」と言及した。
「日本外交のしたたかさが試される1年だ」と指摘し「新時代リアリズム外交」を標榜した。バイデン米大統領と「早期に会談し、国際社会に貢献する同盟へと導く」と言明した。中国に関し「建設的かつ安定的な関係の構築をめざす」と表現した。
核軍縮の実現に向け「国際賢人会議」を創設し、年内に広島で初会合を開く目標を掲げた。人権問題については「初めて任命した専任の補佐官とともにしっかりと取り組む覚悟だ」と話した。
国土交通省が建設工事受注動態統計を書き換えた問題には「国民におわび申し上げる」と陳謝した。
施政方針演説は毎年1月に召集する通常国会で実施し、1年間の内閣の基本方針や施策を示す。2021年10月に就任した首相は初めての施政方針演説になる。
●「負の遺産」清算、懸案先送り 内閣支持率が異例の上昇 1/15
岸田内閣の支持率が、時事通信の1月の世論調査で51.7%と過去最高となった。政権発足から3カ月余り、目立った実績もない中で支持率が上向くのは異例だ。新型コロナウイルス対応が一定の評価を得ているとみられるが、過去の政権の「負の遺産」清算を急ぎ、批判を招きそうな懸案は先送りする政治姿勢も見逃せない。
「世論調査に表れた国民の皆さまの声を真摯(しんし)に受け止め、政府の対応に生かしていく」。松野博一官房長官は14日の記者会見で、堅調な内閣支持率にも表情を変えなかった。
安倍・菅政権を退陣に追い込んだコロナ禍は、年明け以降、急速に悪化している。岸田文雄首相は「最悪の事態を想定する」と繰り返し、「G7(先進7カ国)で最も厳しい」と自賛する水際対策を継続。感染が急拡大した沖縄など3県がまん延防止等重点措置の適用を求めると、あらかじめ定めた指標より地元の意向を優先して実施に踏み切った。
感染防止効果が期待される3回目のワクチン接種も前倒しを急ぎ、濃厚接触者の待機期間が社会機能維持に支障を来すとみるや、短縮を打ち出した。周辺には「できるだけ分かりやすく説明しよう」と指示し、自らも積極的に記者団の取材に応じて丁寧に説明を尽くそうとしている。
既定方針に固執しない柔軟さも目立つ。18歳以下への10万円給付で、現金・クーポン併用に批判が集まると、全額現金支給の容認にかじを切った。行政の信頼性を損ないかねない「朝令暮改」も、今回の調査では「評価する」が59.4%と、「評価しない」28.1%を大きく上回った。
一方で、負の遺産の後始末にも余念がない。安倍政権下で発覚した森友学園問題をめぐる公文書改ざん。自殺した財務省近畿財務局職員の遺族が起こした訴訟で、損害賠償責任を認めて訴訟を終わらせる同省方針を「それでやってくれ」と了承。遺族が求めた真相解明の機会を葬った。
同じく安倍晋三元首相が「行政の私物化」と批判を招いた「桜を見る会」について、首相は「私の内閣で開催することは考えていない」と明言。「世紀の愚策」と酷評された布製「アベノマスク」は大量の在庫で保管にも巨額の費用がかかっていることから、首相は年度内の廃棄を決めた。
こうした姿勢は17日召集する通常国会でも貫かれる。政府・与党は先の衆院解散で廃案となった入管難民法改正案の再提出を見送る方針だ。不法滞在する外国人の収容長期化解消は急務だが、夏の参院選を控え、収容施設でスリランカ人女性が亡くなった問題を追及されるのを避けるためだ。
「何かあったらすぐ修正し、発言も変える。それが国民に好意的に受け止められている」。立憲民主党幹部は、通常国会を前に攻めにくさを感じている。一方、自民党では「政策が評価されたわけでなく、目の前の問題にその都度対処しているからにすぎない」(参院若手)と冷めた声も漏れる。政権の真価が問われるのは、まだまだこれからと言えそうだ。
●成長戦略のグランドデザインを 岸田首相の施政方針演説 1/14
「新しい資本主義」で世界を主導するのは難しい
来週17日に召集される通常国会の冒頭で、岸田首相は施政方針演説に臨む。その原案が各種報道によって明らかになってきた。
経済政策では、「新しい資本主義」の実現に向けた施策や、賃上げの推進、人への投資などを全面に打ち出す。岸田首相は新しい資本主義を「経済再生の要」と位置付け、「今春、グランドデザインと実行計画を取りまとめる」と明言する見通しだ。さらに、「歴史的なスケールでの経済社会変革の動きが始まっている。新しい資本主義によって世界の動きを主導していく」としている。岸田首相は、「新しい資本主義」への日本の取り組みについて、世界経済フォーラム(WEF)が主催するオンライン会議「ダボス・アジェンダ」で18日に演説する予定だ。しかし、「新しい資本主義」の中身がまだほとんど固まっていない段階で、世界を主導するきっかけとなるような注目度が高い演説ができるとは思えない。
施政方針演説には、男女の賃金格差を是正するため「企業の開示ルールを見直す」との表現が盛り込まれる見通しだ。また、企業がより中長期的な視野で経営を進められる環境を整えるため、四半期開示の制度を改める考えも示される方向だ。しかし、これらは「新しい資本主義」の実現、というにはかなり小さい見直しである。また、脱炭素社会への貢献も「新しい資本主義」の中では企業に求められるのだろうが、それは既に世界の常識となっている。そして、企業に賃上げを求めることは、賃金が上昇していない日本特有の問題への対応であり、世界では注目されないだろう。
評価できる「人への投資」推進と脱炭素実現に向けた政策修正の課題
演説では、官民の「人への投資」を「早期に少なくとも倍増し、さらにその上を目指していく」と表明される。また、スキルの向上や再教育など人的投資の充実が「デジタル社会、脱炭素社会への変革を円滑に進めるためのカギだ」と岸田首相は訴える見通しだ。単純に賃上げを求める政策は上手く行かず、また日本経済の中長期の成長に貢献するとは思えない。しかしながら、労働者の技能を高め、前向きの産業構造の転換に資するような、真の「人への投資」は重要であり、今後も推進していって欲しい。
2050年のカーボンニュートラルの目標実現に向けては、エネルギーの供給構造の変革にとどまらず、産業構造・国民の暮らしなど経済社会全体の大変革に取り組むとする。さらに、脱炭素社会を見据えた取り組みとして、原子力の小型炉や核融合発電を挙げ、「多くの論点に方向性を見いだす」との表現が演説には盛り込まれる方向だ。脱炭素に向けては再生可能エネルギーの活用から、原発再稼働、稼働期間延長、さらには原発のリプレースメント、新設などへ、岸田政権の下では軸足がやや移るのではないか。
これは脱炭素実現に向けてより現実路線に軌道修正されるとの評価も可能であるが、他方で、世論の支持を得られるかどうかという点で、難易度が高い政策転換でもある。また、脱炭素に向けては、炭素税の導入などカーボンプライシングの導入は不可欠であるように思われる。企業の間では反対もあるが、岸田政権には早期に実現に向けて取り組んで欲しい。
企業の成長期待を高めることを最優先に
また演説では、2023年度に創設を目指す「こども家庭庁」についても言及される。縦割り行政の打破、という観点から説明されるようだが、「こども家庭庁」に関連して、少子化対策、出生率引き上げ策の具体策をもっと検討して欲しいところだ。それは重要な成長戦略である。
岸田政権は既に多くの成長戦略を打ち出している。しかし、それぞれがバラバラの印象があり、全体としてどのような成長の姿が展望できるのか十分に示されているとは言えないのではないか。地方への5Gの敷設を進める「デジタル田園都市国家構想」、海底ケーブルの拡大、行政のデジタル化、東京一極集中是正、少子化対策、インバウンド戦略の再構築などをすべて結び付け、省庁、企業、住民、海外からの旅行客が都市部から地方に移動していく環境を整え、地方のインフラを有効に活用する中で経済効率を高めていく、また出生率を引き上げる、などの具体的な見通しをロードマップで示せないか。
岸田政権は「新しい資本主義」のグランドデザインと実行計画の取りまとめを優先させる考えだが、それよりも成長戦略のグランドデザインを作り上げることが優先だ。その結果、信頼性の高い政策のパッケージを提示できれば、企業の成長期待は高まり、政府が強く働きかけなくても、企業は自ら設備投資、人的投資、新規雇用、賃上げに前向きになるはずだ。
●岸田首相、就任100日めの評価は…「方針ブレブレ」「八方美人」 1/11
1月11日、岸田文雄首相は就任から100日めを迎えた。首相官邸で取材に応じた首相は、「新型コロナウイルス対応、日本経済の再生、外交・安全保障。目まぐるしく変わる国内外の情勢に機動的に対応しながら、スピード感をもって山積する課題に一つ一つ決断を下し、対応してきた」と振り返った。就任以降、支持率は上昇しているが、SNSでの評価は微妙なものが多い。
《国民の人気取りに先のことは考えずに安易なばら撒き政策。判断は早いように見えて詰めは甘く、方針はブレブレ。まだ評価するには早いものの、岸田政権は菅や安倍の時よりよっぽど無能な気がする》
《岸田内閣は八方美人 事なかれ先伸ばし内閣》
「ブレブレ」という言葉は、岸田政権に対して、しばしば使われる。今年最初の会見で、自ら「一度物事を決めたとしても、状況が変化したなら、柔軟な対応をする。こういったことも躊躇してはならない」と語っていたが、その言葉どおり、政策はたびたび書き換えられてきた。以下、具体的に見てみよう。
「分配なくして成長なし」→「成長なくして分配なし」
2021年10月4日、首相就任後初の会見では「分配なくして成長なし」と経済政策に対する考えを強調。しかし、10月6日には、松野官房長官が「成長と分配は車の両輪」とトーンダウン。10月11日の衆議院本会議の答弁では、ついに岸田首相の口から「成長なくして分配なし。まず成長を目指すことは極めて重要であり、その実現に向けて全力で取り組みます」と語られた。
「令和版所得倍増計画を!」→「文字どおりの『所得倍増』を指し示しているものではない」
2021年9月の総裁選では、令和版「所得倍増計画」を打ち出し、国民全体の所得を引き上げることが「私の公約」と宣言した。しかし、10月の総選挙では公約を “封印”。当時の山際大志郎経済再生担当相は「文字どおりの『所得倍増』を指し示しているものではない」との認識を示した。
「ワクチン3回目接種をできる限り前倒し」→「全国民を対象にするのは困難」
臨時国会が召集された12月6日、所信表明演説のなかで、新型コロナの変異株「オミクロン株」の世界的な広がりを受け、「ワクチン3回目接種の前倒し」を表明。しかし、翌日には後藤茂之厚労相から「全国民を対象にした前倒しは困難」と軌道修正された。
「特別給付金10万円のうち5万円分はクーポン」→「10万円の現金一括給付も選択肢」
18歳以下への10万円相当の給付について、当初は2021年内に5万円を現金で、残り5万円をクーポンで支給する方針だった。貯蓄に回ることを避け、消費を喚起するためとされたが、クーポン支給の事務費が967億円にのぼることが発覚。さらにクーポンではなく、自治体独自の通販サイトで使えるポイント案も提示され、二転三転ぶりに世間から大きな批判が集まった。最終的に岸田首相は、年内に現金一括給付の形を取ることを容認した。
「オミクロン株濃厚接触者の受験は認めない」→「別室受験などの機会確保を」
12月24日、文科省は大学入試をめぐり、オミクロン株の濃厚接触者は、無症状でも受験を認めないとする方針を発表。受験生や保護者から不安の声が上がると、岸田首相は12月27日、「受験生に不安が広がっていることは承知」と語り、同日、一定条件を満たせば別室受験が可能となった。
「柔軟な対応」といえば聞こえはいいが、繰り返される方針転換に、国民が振り回されているのは間違いない。今後も朝令暮改を繰り返すようであれば、モヤモヤやイライラが溜まるばかりだ。
 
 
 


2022/1
 
 
 
●岸田首相、初の施政方針演説 「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組む」
通常国会が17日召集され、岸田文雄首相は衆参両院の本会議で就任後初めての施政方針演説に臨んだ。冒頭、首相は「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組む」と述べ、国民に協力を呼び掛けた。演説の全文を、記者のワンポイント解説とともに詳報する。首相の国会演説は、首相指名選挙で選出された昨年10月の臨時国会での所信表明演説、2021年度補正予算案が提出された昨年12月の所信表明演説に続き3回目で、施政方針演説は初めて。
施政方針演説 / 毎年1月に召集される通常国会(会期150日間)の冒頭に、首相が1年間の内閣全体の方針を示す演説。補正予算などを審議するために開かれる臨時国会や、衆院選後に召集される特別国会、会期中に首相が交代した時に行われる演説は「所信表明演説」と呼ばれ、首相が自らの政治姿勢や国政の重要課題などを説明する。ただ2つの演説に法的な区別があるわけではなく、あくまでも慣例的に使い分けている。
コロナ後の新しい日本を創り上げるための挑戦
今、我が国は、オミクロン株の感染急拡大に直面しています。まず、新型コロナに感染し、苦しんでおられる方々にお見舞いを申し上げます。また、長期にわたり、新型コロナとの闘いに御協力いただいている国民の皆さんに、心から感謝申し上げます。そして、新型コロナ対応の最前線におられる、自治体、医療機関、介護施設、検疫所、保健所などのエッセンシャルワーカーの皆さんに、深く、感謝申し上げます。岸田政権の最優先課題は、新型コロナ対応です。しかし、政府だけで対応できるものではありません。国民皆で助け合い、この状況を乗り越えていきたいと思います。引き続き、皆さんの御協力を、お願いいたします。
内閣総理大臣に就任してから、国内外の山積する課題に、スピード感を持って、決断を下し、対応してきました。「行蔵こうぞうは我に存す。」それぞれの決断の責任は、自分が全て負う覚悟で取り組んでまいりました。 その際、皆さんの声に丁寧に耳を澄まし、状況が変化する中で、国民にとってより良い方策になるよう、粘り強く対応し、判断の背景をしっかり説明する努力をしてきました。このように、「信頼と共感」の政治姿勢を堅持しつつ、まずは、新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組んでまいります。新型コロナという困難に直面しているからこそ、立ちすくむのではなく、皆で協力しながら、挑戦し、コロナ後の新しい日本を創り上げていこうではありませんか。
解説 岸田首相は冒頭で、新型コロナ対応を政権の最優先課題と明示しました。「行蔵は我に存す」は、江戸時代末期に幕臣として江戸城無血開城を実現した勝海舟が福沢諭吉に宛てた手紙の一節から引用されたようです。「行蔵」は出処進退を表し、自分の行動の責任は自分で負うという趣旨。旧幕臣なのに明治政府の要職に就いていたため、福沢から批判された際、勝はこう返したとされます。歴代首相は、故事や尊敬する偉人の言葉などを用いて演説を締めるケースが多いですが、岸田首相は冒頭に持ってきました。「皆さんの声に丁寧に耳を澄まし」と、国民に直接、自らの「聞く力」をアピールしています。
新型コロナ対応の基本的な考え方
オミクロン株による感染が拡大しています。国民の皆さんの、またか、いい加減にしてくれ、もう限界だという声を、私自身、聞いてきました。しかし、新型コロナという見えない敵は、想定以上に手強いことを、改めて認識しなければなりません。昨年、我が国は、ワクチン接種など、国民一丸となった取組により、デルタ株を何とか抑え込むことができました。そこに、すかさず、変異株が現れました。ウイルスの怖さを改めて感じます。ただし、新しい変異株の可能性は、専門家からも指摘されてきました。私自身、総理に就任した時から、デルタ株を超える強力な変異株が現れる、そうした最悪の事態を想定して、万全の体制を整えるべく、政府を挙げて、取り組んできました。先般の補正予算では、医療体制の拡充、ワクチン接種の推進や経口薬の確保、さらには、仕事や暮らしを 守り抜くための支援策を盛り込んでいます。もちろん、新型コロナには未知のことも多く、全てを見通した上で判断を行える訳ではありません。私としては、専門家の意見を伺いながら、過度に恐れることなく、最新の知見に基づく対応を、冷静に進める覚悟です。また、一度決めた方針でも、より良い方法があるのであれば、躊躇なく改め、柔軟に対応を進化させていく所存です。国民の皆さん、今一度、御協力いただき、共に、この国難を乗り越えていこうではありませんか。具体的な対応について申し上げます。
これまで政府は、G7で最も厳しい水準の水際対策により、海外からのオミクロン株流入を最小限に抑えてきました。この対策により、3回目のワクチン接種の開始、無料検査の拡充、経口薬の確保、医療提供体制の充実など、国内感染の増加に備える時間を確保できました。当面の対応として、2月末まで、水際対策の骨格を維持します。その上で、今後は、国内対策に重点を置きます。少しずつ明らかになってきたオミクロン株の特性を踏まえ、メリハリをつけた対策を講じていきます。専門家から、オミクロン株について、感染力が高い一方、感染者の多くは軽症・無症状であり、重症化率は低い可能性が高い、高齢者等で急速に感染が拡がると、重症者が発生する割合が高くなるおそれがある、といった分析が報告されました。こうした報告も踏まえ、重症者や中等症の患者、あるいは、そのリスクが高い方々に、的確に医療を提供することに主眼を置いて、医療提供体制を強化します。私から各自治体に、自己点検を依頼し、医療提供体制の確保に万全を期すよう要請しました。即応病床数の確保は順調に進んでいます。また、今後重要となる在宅・宿泊療養に対応する地域の医療機関を、全国1.6万、「全体像」の計画を 更に3割上回る体制を準備できました。陽性と判断されれば、直ちに健康観察や訪問診療を実施するとともに、必要な方へのパルスオキシメーターの迅速なお届け、経口薬へのアクセスの確保を徹底します。稼働状況の「見える化」を強化し、これらをしっかりと動かしていきます。その上で、感染が想定を超えて急拡大し、重症者の絶対数の増加が生じた時に、病床がひっ迫するような緊急事態に陥ることは、何としても避けなければなりません。この観点から、先進諸国の取組を参考にしながら、入退院基準などについて、科学的知見の集約を急ぎ、対応を検討します。
予防・検査・早期治療の強化も重要です。ワクチンについては、医療関係者、高齢者3100万人を対象とする3回目接種の前倒しについて、ペースアップさせます。3月以降は、追加確保した1800万人分のワクチンを活用し、高齢者の接種を6か月間隔で行うとともに、5500万人の一般向け接種も、少なくとも7か月、余力のある自治体では6か月で接種を行います。国としても、自衛隊による大規模接種会場を設置し、自治体の取組を後押しします。感染拡大が懸念される地域において、予約なしでの無料検査を拡充します。メルク社の経口薬160万人分について、既に全国2万2000の医療機関・薬局が登録し、医療現場に、3万人分をお届けしています。作用の仕組みが異なるファイザー社の経口薬についても、月内に200万人分の購入に最終合意し、来月できるだけ早くの実用化を目指します。オミクロン株は、お子さんの感染も多く見られます。これまでワクチンの接種対象ではなかった12歳未満の子どもについても、希望者ができるだけ早く、ワクチン接種を受けられるよう、手続を進めます。保健所について、体制の強化、科学的根拠に基づく業務の合理化、保健所に頼らない地域の重層的ネットワークの整備を進め、必要な即応体制を確保します。感染を抑えるためだけでなく、BCP計画遂行、社会活動維持のために、テレワークを積極的に活用していただくようお願いいたします。学校においても、休校時のオンライン授業の準備を進めます。入試については、追試などにより受験機会を確保するとともに、4月以降の入学を可とするなど、柔軟な対応を要請します。米国は、必要不可欠な場合以外の外出を認めない、夜間の外出を禁止するなど、在日米軍の感染拡大防止措置を発表しました。在日米軍の駐留に関わる保健・衛生上の課題に関し、地位協定に基づく日米合同委員会において、しっかり議論していきます。息の長い感染症対応体制の強化策として、まずは、安全性の確認を前提に、迅速に薬事承認を行う仕組みを創設します。さらに、これまでの対応を客観的に評価し、次の感染症危機に備えて、本年6月を目途に、危機に迅速・ 的確に対応するための司令塔機能の強化や、感染症法の在り方、保健医療体制の確保など、中長期的観点から必要な対応を取りまとめます。
解説 首相はワクチン接種のペースアップについて▽高齢者の接種を6か月間隔で行う▽一般向け接種も、余力のある自治体では6か月で行う▽12歳未満の子どもについても希望者が受けられるようにするーなどをアピールしています。ただ、いずれも既に明らかにされている内容で真新しさには欠けます。ワクチンの追加接種を巡っては昨年末から「2回目接種以降8カ月」からの前倒しを余儀なくされてきました。想定を上回る感染拡大のペースに供給が本当に追いつくかどうか、懸念は消えません。在日米軍基地で感染者が続出し、全国の感染拡大の一因となっている問題では、日本の検疫や行動制限などが及ばない日米地位協定の「壁」が改めて立ちはだかりました。首相は「在日米軍の駐留に関わる保健・衛生上の課題に関し、地位協定に基づく日米合同委員会において、しっかり議論する」と指摘しただけで、地位協定の抜本見直しを求める自治体にとっては「ゼロ回答」に等しい内容でした。
新しい資本主義の実現
新型コロナとの闘いに打ち克ち、経済を再生させるため、令和3年度補正予算の早期執行など、危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期します。経済あっての財政です。経済を立て直し、そして、財政健全化に向けて取り組みます。経済再生の要は、「新しい資本主義」の実現です。市場に依存し過ぎたことで、公平な分配が行われず生じた、格差や貧困の拡大。市場や競争の効率性を重視し過ぎたことによる、中長期的投資の不足、そして持続可能性の喪失。行き過ぎた集中によって生じた、都市と地方の格差。自然に負荷をかけ過ぎたことによって深刻化した、気候変動問題。分厚い中間層の衰退がもたらした、健全な民主主義の危機。世界でこうした問題への危機感が高まっていることを背景に、市場に任せれば全てが上手くいくという、 新自由主義的な考え方が生んだ、様々な弊害を乗り越え、持続可能な経済社会の実現に向けた、歴史的スケールでの「経済社会変革」の動きが始まっています。私は、成長と分配の好循環による「新しい資本主義」によって、この世界の動きを主導していきます。官と民が全体像を共有し、協働することで、国民一人ひとりが豊かで、生き生きと暮らせる社会を作っていきます。日本ならばできる、日本だからできる。共に、この「経済社会変革」に挑戦していこうではありませんか。様々な弊害を是正する仕組みを、「成長戦略」と「分配戦略」の両面から、資本主義の中に埋め込み、資本主義がもたらす便益を最大化していきます。成長戦略では、「デジタル」、「気候変動」、「経済安全保障」、「科学技術・イノベーション」などの社会課題の解決を図るとともに、これまで、日本の弱みとされてきた分野に、官民の投資を集め、成長のエンジンへと転換していきます。分配や格差の問題にも正面から向き合い、次の成長につなげます。こうして、成長と分配の両面から経済を動かし、好循環を生み出すことで、持続可能な経済を作り上げます。
まずは成長戦略。第一の柱はデジタルを活用した地方の活性化です。新しい資本主義の主役は地方です。デジタル田園都市国家構想を強力に推進し、地域の課題解決とともに、地方から全国へと、ボトムアップでの成長を実現していきます。そのために、インフラ整備、規制・制度見直し、デジタルサービスの実装を、一体的に動かしていきます。高齢化や過疎化などに直面する地方においてこそ、オンライン診療、GIGAスクール、スマート農林水産業などのデジタルサービスを活用できるよう、5G、データセンター、光ファイバーなどのインフラの整備計画を取りまとめます。5G基地局を信号機に併設するなど多様な手法で民間投資を促し、自動運転や、ダイナミックな交通管制、ドローンなど、未来のサービスを支えるインフラを整備します。デジタルサービスの実装に向けて、規制・制度の見直しを進めます。単なる規制緩和ではなく、新しいルールを作ることで、地域社会に新たなサービスを生み出し、日々の暮らしを豊かにすることを目指します。例えば、「運転者なし」の自動運転車、低速・小型の自動配送ロボットが公道を走る場合のルールや、ドローン、AIなどの活用を前提とした産業保安のルールを、新たに定めることで、安全を確保しながら、新サービス展開の道を拓きます。例えば、企業版ふるさと納税のルールを明確化することで、企業の支援による、地方のサテライトオフィス整備の取組を後押しし、企業や個人の都市から地方への流れを加速させます。マイナンバーカードは、デジタル社会の安全安心のための「パスポート」であり、その利便性を改善させます。例えば、2024年度までに、運転免許証とマイナンバーカードの一体化を進めます。転居時、住所変更手続を市役所で行えば、警察署での手続を不要とします。リアルとネットが密接不可分となる中、サイバー攻撃等への対処体制を整備するとともに、企業のセキュリティ強化に取り組み、デジタル社会のリスクに対し、正面から向き合います。経済安全保障も、待ったなしの課題であり、新しい資本主義の重要な柱です。新たな法律により、サプライチェーン強靱化への支援、電力、通信、金融などの基幹インフラにおける重要機器・システムの事前安全性審査制度、安全保障上機微な発明の特許非公開制度等を整備します。あわせて、半導体製造工場の設備投資や、AI、量子、バイオ、ライフサイエンス、光通信、宇宙、海洋といった分野に対する官民の研究開発投資を後押ししていきます。
社会課題を成長のエンジンへと押し上げていくためには、科学技術・イノベーションの力が不可欠です。世界と伍する研究大学を作るため、研究力に加え、研究と経営の分離、若手研究者の登用など、先端的なガバナンスを導入する大学に対し、10兆円の大学ファンドで支援します。官民のイノベーション人材育成を強化するため、大学の学部再編や文系理系の枠を超えた人材育成の取組を加速します。本年をスタートアップ創出元年とし、5か年計画を設定して、大規模なスタートアップの創出に取り組み、戦後の創業期に次ぐ、日本の「第2創業期」を実現します。2025年には、大阪・関西万博が開催されます。科学技術や、イノベーションの力で、未来を切り拓い ていく日本の姿を世界に発信していきます。
成長と分配の好循環による持続可能な経済を実現する要となるのが、分配戦略です。その第一は、所得の向上につながる「賃上げ」です。先日、車座でお話を伺った中小製造事業の社長さんは、生産性向上を図り、従業員の可処分所得を3%引き上げたい、それが経営者としての信念だ、と力強く語ってくれました。成長の果実を、従業員に分配する。そして、未来への投資である賃上げが原動力となって、更なる成長につながる。こうした好循環を作ります。賃上げ税制の拡充、公的価格の引き上げに加え、中小企業が原材料費の高騰で苦しむ中、適正な価格転嫁を行えるよう、環境整備を進めます。春には、春闘があります。近年、賃上げ率の低下傾向が続いていますが、このトレンドを一気に反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げが実現することを期待します。できる限り早期に、全国加重平均1000円以上となるよう、最低賃金の見直しにも取り組んでいきます。
第二に、「人への投資」の抜本強化です。資本主義は多くの資本で成り立っていますが、モノからコトへと進む時代、付加価値の源泉は、創意工夫や、新しいアイデアを生み出す「人的資本」、「人」です。しかし、我が国の人への投資は、他国に比して大きく後塵を拝しています。今後、官民の人への投資を、早期に、少なくとも倍増し、さらにその上を目指していくことで、企業の持続的価値創造と、賃上げを両立させていきます。スキル向上、再教育の充実、副業の活用といった人的投資の充実が、デジタル社会、炭素中立社会への変革を円滑に進めるための鍵です。世界が、産業界が、地域が必要とする、人材像やスキルについて、現場の声を丁寧に聞き、明確化した上で、海外の先進事例からも学び、公的職業訓練の在り方をゼロベースで見直します。人的投資が、企業の持続的な価値創造の基盤であるという点について、株主と共通の理解を作っていくため、今年中に非財務情報の開示ルールを策定します。あわせて、四半期開示の見直しを行います。
第三に、未来を担う次世代の「中間層の維持」です。子育て・若者世代に焦点を当て、世帯所得の引き上げに向けて、取り組みます。全世代型社会保障構築会議において、男女が希望通り働ける社会づくりや、若者世代の負担増の抑制、勤労者皆保険など、社会保障制度を支える人を増やし、能力に応じてみんなが支え合う、持続的な社会保障制度の構築に向け、議論を進めます。世帯所得の向上を考えるとき、男女の賃金格差も大きなテーマです。この問題の是正に向け、企業の開示ルールを見直します。新たな官民連携を進めるにあたっては、公共施設の運営を民間に任せるコンセッションの一層の活用、ベンチャー・フィランソロフィーによるNPOや社会的企業への支援、社会的インパクト投資など、民による公的機能の補完も重要な論点です。今春、新しい資本主義のグランドデザインと、実行計画を取りまとめます。来年、日本がG7議長国を務めることを見据え、ダボス会議や、G7の場を活用し、世界の首脳や、経済界のリーダーと問題意識を共有しながら、世界の議論を牽引し、資本主義の変革に向けた大きな流れを作っていきます。
解説 岸田首相は、肝いりの「新しい資本主義」について多くの時間を割きました。首相は昨秋の自民党総裁選では新自由主義からの脱却を打ち出し、アベノミクスを修正して「分配」重視の姿勢を示していましたが、首相就任後は「成長と分配の好循環」に回帰した経緯があります。株式譲渡益や配当金などに課される金融所得課税についても当初は強化する姿勢を打ち出しましたが、直後に株価が下がると先送りを表明。新しい資本主義の理念や立ち位置があいまいだと指摘され続けています。今回の演説でも「成長と分配の両面から経済を動かす」と強調。今春、新しい資本主義のグランドデザインと実行計画を取りまとめる考えをあらためて表明しましたが、その具体像が問われます。
気候変動問題への対応 と多様性の尊重
過度の効率性重視による市場の失敗、持続可能性の欠如、富める国と富まざる国の環境格差など、資本主義の負の側面が凝縮しているのが気候変動問題であり、新しい資本主義の実現によって克服すべき最大の課題でもあります。2020年、衆参両院において、党派を超えた賛成を得て、気候非常事態宣言決議が可決されました。皆さん、子や孫の世代のためにも、共にこの困難な課題に取り組もうではありませんか。同時に、この分野は、世界が注目する成長分野でもあります。2050年カーボンニュートラル実現には、 世界全体で、年間1兆ドルの投資を、2030年までに4兆ドルに増やすことが必要との試算があります。我が国においても、官民が、炭素中立型の経済社会に向けた変革の全体像を共有し、この分野への投資を早急に、少なくとも倍増させ、脱炭素の実現と、新しい時代の成長を生み出すエンジンとしていきます。2030年度46%削減、2050年カーボンニュートラルの目標実現に向け、単に、エネルギー供給構造の変革だけでなく、産業構造、国民の暮らし、そして地域の在り方全般にわたる、経済社会全体の大変革に取り組みます。どの様な分野で、いつまでに、どういう仕掛けで、どれくらいの投資を引き出すのか。経済社会変革の道筋を、クリーンエネルギー戦略として取りまとめ、お示しします。送配電インフラ、蓄電池、再エネはじめ水素・アンモニア、革新原子力、核融合など非炭素電源。需要側や、地域における脱炭素化、ライフスタイルの転換。資金調達の在り方。カーボンプライシング。多くの論点に方向性を見出していきます。もう一つ重要なことは、我が国が、水素やアンモニアなど日本の技術、制度、ノウハウを活かし、世界、 特にアジアの脱炭素化に貢献し、技術標準や国際的なインフラ整備をアジア各国と共に主導していくことです。いわば、「アジア・ゼロエミッション共同体」と呼びうるものを、アジア有志国と力を合わせて作ることを目指します。
新しい資本主義を支える基盤となるのは、老若男女、障害のある方も、全ての人が生きがいを感じられる、多様性が尊重される社会です。人生や家族の在り方が多様化する中、女性の経済的自立や、コロナ下で急増するDVなど女性への暴力根絶に取り組みます。孤独・孤立に苦しむ方々に寄り添い、支えるため、NPO等の活動をきめ細かく支援するとともに、国・自治体・NPOの連携体制を強化します。少子化対策やこども政策を積極的に進めていくことも、喫緊の課題です。不妊治療の範囲を拡大し、4月から保険適用を始めます。こども政策を我が国社会のど真ん中に据えていくため、「こども家庭庁」を創設します。こども家庭庁が主導し、縦割り行政の中で進まなかった、教育や保育の現場で、性犯罪歴の証明を求める日本版DBS、こどもの死因究明、制度横断・年齢横断の教育・福祉・家庭を通じた、こどもデータ連携、地域における障害児への総合支援体制の構築を進めます。消費者という視点から、本年4月の成年年齢の引き下げを控え、若者の消費者被害防止に集中的に取り組みます。
解説 岸田首相が強調した水素・アンモニアは、燃焼時に温室効果ガスのCO2を出さない燃料として注目され、火力発電や車の燃料などとして、化石燃料からの置き換えが目指されています。ただ、現状は、水素・アンモニアは天然ガスなどから作られることが多く、製造時のCO2排出をゼロにすることが課題。輸送コストの高さなども実用化のハードルです。岸田首相は水素・アンモニアによる火力発電所に取り組むことを掲げ、アジア各国と連携して、関連技術や国際調達網の構築を先導する意欲を示していますが、環境団体からは事実上の石炭火力発電所の延命策だと批判されています。気候変動対策をエネルギー分野に限定せず「経済社会全体の大改革」の道筋を示すとした点も注目されます。エネルギー供給構造の変革だけでは、脱炭素社会は実現できませんが、新型コロナ禍で非正規雇用の女性らが苦境に陥ったように、社会経済の大きな変化によって苦しむ人が出ないよう「公正な移行」が求められます。
地域活性化と災害対策
デジタル以外の地域活性化にもしっかりと取り組みます。農林水産業については、輸出の促進と、スマート化による生産性向上により、成長産業化を進めます。昨年の農林水産品の輸出額は、1兆円を突破しました。次の目標である、2025年、2兆円突破に向け、輸出品目別に、オールジャパンで輸出促進を行う体制を整備します。コロナ禍による米価下落に対して、15万トンの特別枠の設定により対処してきました。現下の状況を重く受け止め、家族農業や中山間地域農業を含め、多様な農林漁業者が安心して生産できる豊かな農林水産業を構築できるよう、取り組みます。観光産業についても、新型コロナの影響への適切な支援を図りつつ、コロナ後を見据え、観光産業の高付加価値化を推進します。日本酒、焼酎、泡盛など文化資源のユネスコへの登録を目指すなど、日本の魅力を世界に発信していきます。本年は、沖縄の本土復帰50周年です。この節目の年に、復帰の歴史的意義を想起し、沖縄の歴史に思いを致します。強い沖縄経済を作るための取組を進めます。この節目の年に、復帰の歴史的意義を想起し、沖縄の歴史に思いを致します。強い沖縄経済を作るための取組を進めます。
27年前の今日、阪神・淡路大震災が発生し、6000名を超える尊い命が失われました。この震災を教訓に、それまで以上に、災害対策や危機管理の充実を図ってきました。切迫する南海トラフの巨大地震や首都直下地震。日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震。風水害、豪雨への備え。5年間で15兆円規模の集中対策を進め、引き続き、強い覚悟を持って、防災・減災、国土強靱化を強化します。昨年熱海で発生した土石流災害と同様の悲劇を繰り返すことがないよう、これまで規制をかけることができなかった地域においても、危険な盛土を、規制するための法律を整備します。あわせて、全国に3万6000か所ある、点検が必要な盛土の安全確保も進めます。福島の再生を含め、東日本大震災からの復興は、政権の大きな課題です。大熊町おおくままち、双葉町ふたばまち、葛尾村かつらおむらから、復興再生拠点の避難指示解除に向けた、準備宿泊の取組を進めます。被災者の方の心に寄り添いながら、住民の方の帰還を進めていきます。福島の復興・再生を前進させるのみならず、世界の課題解決にも貢献する、国際教育研究拠点を具体化するための法律を整備します。昨年、米国が日本産食品の輸入規制を撤廃し、福島県産米の輸出が始まりました。私自身、ジョンソン首相に働きかけを行った英国も、規制撤廃に向けた手続を開始しています。一日も早く、全ての国と地域で、規制が撤廃されるよう、政府一丸となって働きかけていきます。
解説 今年は沖縄の本土復帰50年の重要な節目ですが、首相は「強い沖縄経済を作るための取組を進める」と述べましたが、2022年度の当初予算案の総額が過去最大に膨らむ中、沖縄振興予算は減り、10年ぶりに3000億円を割り込みました。地元では、名護市辺野古の米軍新基地建設を巡って岸田政権との対立が続く県を財政的に締め付けるような姿勢に反発の声が上がっています。
外交・安全保障
厳しさと複雑さを増す国際情勢の中で、日本外交のしたたかさが試される一年です。私自ら先頭に立ち、未来への理想の旗をしっかりと掲げつつ、現実を直視し、「新時代リアリズム外交」を展開していきます。「新時代リアリズム外交」の第一の柱として、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値や原則を重視していきます。これらを共有する米国のバイデン大統領とは早期に会談し、我が国の外交・安全保障の基軸である日米同盟の抑止力・対処力を一層強化し、地域の平和と繁栄、そして、より広く国際社会に貢献する同盟へと導いていきます。豪州のモリソン首相とは、円滑化協定に署名し、安全保障協力を強化するなど、「特別な戦略的パートナーシップ」を新しいステージへと引き上げました。同盟国・同志国と連携し、深刻な人権問題への対処にも、私の内閣で、初めて任命した専任の補佐官と共に、しっかりと取り組む覚悟です。最重要課題である拉致問題について、各国と連携しながら、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で取り組みます。私自身、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意です。日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指します。我が国が提唱し、推進する「自由で開かれたインド太平洋」の考え方は、多くの国から支持を得ています。日米豪印では、ワクチンや質の高いインフラ整備など、実践的な協力が具体化しており、協力を前へと進めます。ASEANや欧州などパートナーとも連携を強化します。TPPの着実な実施、高いレベルを維持しながらの拡大に取り組みます。信頼性ある自由なデータ流通、「DFFT」の実現に向け、国際的なルール作りにおいて、中心的な役割を果たしていきます。
地域の平和と安定も重要です。中国には、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めていきます。同時に、諸懸案も含めて、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力し、本年が日中国交正常化50周年であることも念頭に、建設的かつ安定的な関係の構築を目指します。ロシアとは、領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針の下、2018年のシンガポールでの首脳会談のやり取りを含め、これまでの諸合意を踏まえ、2018年以降の首脳間でのやり取りを引き継いで、 粘り強く交渉を進めながら、エネルギー分野での協力を含め、日露関係全体を国益に資するよう発展させていきます。重要な隣国である韓国に対しては、我が国の一貫した立場に基づき、適切な対応を強く求めていきます。第二の柱として、気候変動やユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成を含め、地球規模課題に積極的に取り組みます。6年前、オバマ大統領は、原爆資料館で「核兵器のない世界を追求する勇気を持ちましょう」と記帳し、自作の折り鶴を残しました。被爆地広島出身の総理大臣として、私は、この思いを引き継ぎ、勇気を持って 「核兵器のない世界」を追求していきます。外務大臣時代に設置した「賢人会議」の議論を更に発展させるため、各国の現・元政治リーダーの関与も得ながら、「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」を立ち上げます。本年中を目標に、第1回会合を広島で開催します。貧困削減への貢献に向け、国際開発協会に対して、過去最大の約34億ドルを拠出します。TICAD8では、コロナ後を見据えた、アフリカ開発の針路を示していきます。第三の柱は、国民の命と暮らしを断固として守り抜く取組です。北朝鮮が繰り返す弾道ミサイルの発射は断じて許されず、ミサイル技術の著しい向上を見過ごすことはできません。こうしたミサイルの問題や、一方的な現状変更の試みの深刻化、軍事バランスの急速な変化、宇宙、サイバーといった新しい領域や経済安全保障上の課題。これらの現実から目を背けることなく、政府一丸となって、我が国の領土、領海、領空、そして、国民の生命と財産を守り抜いていきます。このため、概ね1年をかけて、新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画を策定します。これらのプロセスを通じ、いわゆる「敵基地攻撃能力」を含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討します。先月成立した補正予算と来年度予算を含め、スピード感を持って防衛力を抜本的に強化します。海上保安庁と自衛隊の連携を含め、海上保安体制を強化するとともに、島嶼防衛力向上などを進め、南西諸島への備えを強化します。海外で邦人等が危機に晒された際の輸送に万全を期すため、自衛隊法の改正案を今国会に提出します。日米同盟の抑止力を維持しながら、沖縄の皆さんの心に寄り添い、基地負担軽減に引き続き取り組みます。普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古への移設工事を進めます。
解説 被爆地広島出身の岸田首相は、自らが外相時代に設置した、核軍縮の道筋について各国の有識者が話し合う「賢人会議」の議論をさらに発展させるため、各国の首脳級の参加を目指した「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」を立ち上げる意向を表明しました。ただ、核兵器の開発から使用までを全面的に禁じる「核兵器禁止条約」の発効から22日で丸1年となりますが、演説では言及しませんでした。一方、17日には北朝鮮が今年4回目となる弾道ミサイルを発射。首相はこうした情勢を踏まえてか、憲法9条の専守防衛から逸脱する「敵基地攻撃能力」について「現実的に検討する」と表明。その踏み込みぶりは、核廃絶に向けた取り組みとは対照的でした。
憲法改正と統計の不適切処理
先の臨時国会において、憲法審査会が開かれ、国会の場で、憲法改正に向けた議論が行われたことを、歓迎します。憲法の在り方は、国民の皆さんがお決めになるものですが、憲法改正に関する国民的議論を喚起していくには、我々国会議員が、国会の内外で、議論を積み重ね、発信していくことが必要です。本国会においても、積極的な議論が行われることを心から期待します。
昨年末に明らかになった建設工事受注動態統計調査における不適切な処理について、一言申し上げます。先週14日に国土交通省の第三者委員会及び総務省の統計委員会から、検証結果が公表されました。検証結果を真摯に受け止め、国民の皆さんにお詫び申し上げます。関係大臣に対し、直ちに、再発防止に取り組むよう指示しました。政府統計全体の信頼を回復するべく、指導・監督してまいります。
「己を改革する。」幕末を生きた勝海舟は、「行蔵は我に存す」とともに、「己を改革す」、自らを律することに重きを置きました。今、新たな時代を切り拓くに当たり、統計の不適切処理はもとより、我々政治・行政が、自らを改革し、 律していくことが求められています。その最大の原動力は、国民の声です。国民の声なき声に、丁寧に耳を傾ければ、そして国民と共に歩めば、自ずと改革の道は見えてきます。引き続き、「信頼と共感」の政治に向けて、謙虚に取り組んでいきます。共に力を合わせ、この国の未来を切り拓くため、心より、国民の皆さんの御理解と御協力をお願いいたします。御清聴ありがとうございました。