北京冬季五輪

中国 習主席

北京2022オリンピック競技大会
大会の成功に自信


 


競技トラブル / 開会式の入場順ショートトラックの韓国ハンガリー選手ショートトラックリレー失格5人のジャンプがスーツ規定違反で失格高梨沙羅の謝罪平野歩夢の不可解採点ドーピング疑惑のワリエワワリエワSPワリエワFPその後のワリエワ評価・・・
北京オリンピック開会式入場順
 
 
 
 
 
●北京冬季五輪 開幕 2/4
北京冬季五輪は2月4日午後9時(現地時間同8時)から開会式が始まり開幕しました。入場行進した選手たちはマスク姿で、新型コロナウイルス感染再拡大の中でのスタートとなりました。主要な民主主義国の首脳が訪問を見送る一方、ロシアのプーチン大統領らが出席しました。
午後11時すぎ
聖火リレーの最終ランナーが、雪の結晶をモチーフにした聖火台の中心部にトーチを設置。聖火がともりました。中国メディアによると、女子選手は新疆ウイグル自治区出身のウイグル族といいます。開会式が終わり、20日の閉会式まで熱戦が繰り広げられます。
午後11時ごろ
五輪旗が中国国旗と並んで会場に掲げられました。
午後10時51分
「開幕を宣言します」。中国の習近平国家主席がマスクを取って宣言しました。
午後10時24分
入場行進の最後に開催国、中国の選手団が登場すると、客席から歓声が上がりました。
午後10時ごろ
会場の気温が氷点下の中、米領サモアの旗手は上半身裸で行進しました。
午後9時49分
2008年北京五輪と同じように、中国語(簡体字)の国・地域名表記で、1文字目の画数の少ない順に入場しています。
午後9時24分
台湾の選手団が登場しました。「中華台北(チャイニーズタイペイ)」と会場のアナウンスで紹介されました。中国国務院(政府)台湾事務弁公室の報道官は1月26日の記者会見で「中国台北」と呼び、台湾側の反発を招いた経緯があります。
午後9時23分
日本選手団は10番目に入場しました。ノルディックスキー複合男子の渡部暁斗選手とスピードスケート女子の郷亜里砂選手が旗手を務めます。
午後9時16分
五輪マークが出現し、ギリシャを先頭に選手入場が始まりました。選手もマスクを着用しています。
午後9時すぎ
開会式の会場にはロシアのプーチン大統領の姿もありました。
午後9時2分
開会式が始まった直後、スピードスケートの小平奈緒選手が大会への意気込みをツイートしました。
午後9時すぎ
カウントダウンにあわせて「SPRING」という文字の花火が上がりました。2月4日は「立春」で、中国では新たな1年の始まりとされています。
午後9時
中国の習近平国家主席と国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が会場に現れました。北京冬季五輪が開幕しました。
午後8時30分ごろ
開会式まで30分ほどとなりました。開幕に先立ち、会場に北京冬季五輪のエンブレムが浮かび上がりました。
午後8時10分
東京スカイツリーでは北京冬季五輪に出場する日本選手に応援の気持ちを込め、日の丸をイメージしたライトアップが行われています。
午後7時51分
首相官邸のツイッターには、選手の活躍を祈る応援メッセージが投稿されました。
午後
観客席はマスクを着用した招待客で埋まってきました。ダウンジャケットなどの防寒着を着込み、帽子をかぶる人の姿も目立ちます。
開会式が開かれる北京市の国家体育場(通称・鳥の巣)です。会場内は青くライトアップされています。
国家体育場の入口には招待客が次々とやってきています。コロナ対策のためチケットの一般販売は見送られましたが、招待された観客は入場することができます。
開会式の会場となる北京の国家体育場では着々と準備が進められています。2008年の北京夏季五輪と同じ会場です。観客席に消毒液を散布するスタッフの姿なども見られ、コロナ対策が徹底されています。
ロシアのプーチン大統領が開会式に合わせて訪中し、中国の習近平国家主席との会談が始まりました。米国や英国、オーストラリアなどが中国の人権侵害を理由に政府代表を派遣しない「外交ボイコット」をする中、中ロの共闘姿勢をアピールした格好です。
開会式にはロシアのプーチン大統領のほかカザフスタンのトカエフ大統領、国連のグテレス事務総長らが参加する見通しです。2008年の北京夏季五輪にはブッシュ米大統領、福田康夫首相ら約80カ国が首脳を送っており、外国首脳の出席者は当時より少なくなります。
フィギュアスケート団体のペアショートプログラム(SP)で、三浦璃来選手、木原龍一選手のペアが演技をしました。男子SP(宇野昌磨選手)、アイスダンス・リズムダンス(小松原美里選手、小松原尊選手)、ペアSPを終えて日本は4位につけました。
北京冬季五輪の聖火リレーです。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が走者として登場しました。夜に開会式会場の国家体育場で聖火台に点火されます。
北京五輪で現地入りする選手や関係者の感染確認が相次いでいます。大会組織委員会は日本時間の午後1時ころに感染状況を発表しています。同委員会によると、1月4日から2月3日までに選手・関係者で380人の陽性者が確認されました。空港検疫でPCR検査が陽性となった選手・関係者は245人、バブル内での検査で陽性となった選手・関係者は135人です。
正午ごろ
フィギュアスケートでは団体がスタート。初のメダルを目指す日本は男子ショートプログラム(SP)に宇野昌磨選手が登場しました。自己ベストとなる105.46点をマークし、2位に入りました。
ノルディックスキー・ジャンプ女子の高梨沙羅選手が正午ごろから約1時間半、会場の国家ジャンプセンターで試合前日の公式トレーニングに臨みました。強風の影響で各選手3本の予定だった練習が2本で打ち切られましたが、課題の着地姿勢などを入念にチェック。2018年平昌五輪で銅メダルを獲得し、3度目の五輪で悲願の優勝を目指す高梨選手は「目指すところは金メダル。4年間かけて変わってきた姿を見ていただけるように頑張りたい」と意気込んでいました。(写真=ロイター)
午前11時ごろ
スピードスケート女子の高木美帆選手は午前11時ごろから約1時間、本番会場の国家スピードスケート館で調整し、5日に控える今大会最初の種目、3000メートルに向けて「メダル圏内を意識して攻めたい」と意気込みを語りました。日本選手団主将も務める高木選手は「ここに来ている選手団全員がこの日をいろいろな気持ちで待ちわびていたと思う。最後まで全員が戦い抜けることを強く願っているし、それぞれの舞台でおのおのがやりたいことを表現できたらいい」と仲間にエールを送っていました。
新型コロナウイルスの感染対策として、チケットの一般販売は見送られましたが、招待された観客らがフィギュアスケートの会場で観戦しています。マスクの着用が求められ、人と人との距離を保つために1席ずつ間を空けて着席しています。
午前10時30分ごろ
開会式に先立ち、競技は既にスタートしています。カーリングでは混合ダブルスが2日から始まりました。4日も午前中から熱戦が繰り広げられています。
北京冬季五輪の会場は3つのエリアに分かれています。フィギュアスケートなどは北京、ボブスレーやリュージュは北京郊外の延慶、ノルディックスキーやスノーボードは北京から北西に約150キロメートル離れた河北省・張家口。張家口の気温は日中も氷点下が続きます。北京から延慶・張家口エリアへは高速鉄道が主な移動手段となります。
午前
開会式が開かれる国家体育場の周辺では武装警察隊員が警備しています。マスク姿です。3日までと比べて警察官が目立ち、警備が強化されているようです。 
 
 
 
 
 
●オリンピック 中国 習主席 “北京大会の成功に自信” IOC総会  2/3
中国の習近平国家主席は3日、北京で開かれたIOC=国際オリンピック委員会の総会にビデオメッセージを寄せ、4日開幕する北京オリンピックの成功に重ねて自信を示しました。
中国外務省によりますと、この中で、習主席は「2008年の夏のオリンピック以来、今回の大会に至るまで、中国はオリンピックムーブメントに積極的に参加し、オリンピックの理想を徹底的に追求してきた」と述べました。
そして「北京オリンピックは、あす夜開幕するが、世界は中国に期待しているし、中国は準備ができている。中国は、簡素で、安全で、すばらしい大会を世界に届け、『より速く、より高く、より強く』というオリンピックのモットーの実現に尽くす」と述べ、大会の成功に重ねて自信を示しました。
習主席は、4日夜に行われる開会式に出席して、開幕を宣言するということです。
北京2022オリンピック競技大会
2022年北京オリンピックは、2022年2月4日から2月20日までの17日間、中華人民共和国の首都である北京市および隣接する河北省張家口市を会場として開催される予定のオリンピック冬季競技大会。一般的には、2008年夏の北京オリンピックと区別して北京冬季オリンピックと呼称され、北京冬季五輪と略称される。
日付: 2022年2月4日(金) – 2022年2月20日(日)
開催都市: 中華人民共和国 北京
参加人数: 2,871
参加国・地域数: 91 
●無観客の万里の長城、聖火駆ける 2/3
北京冬季五輪の聖火リレーは3日、北京市北部にある世界遺産・万里の長城(八達嶺)で行われた。2日に北京市中心部をスタートした聖火リレーは、新型コロナウイルス対策を理由に4日の開会式当日までの3日間に期間を限定し、一般の人々が観覧できない異例の方式で行われている。
組織委員会の発表によると、聖火を持った走者約40人が、長城に設けられた1・47キロ・メートルの区間を駆け抜けた。聖火はこの後、ノルディックスキー、スノーボードなどの競技会場がある河北省の張家口を巡る。
●選手ら約1000人が使い捨てスマホ使用へ 情報抜き取り警戒 2/3
北京冬季五輪に参加する7カ国の選手やコーチら約1000人が使い捨てのスマートフォンを使う見込みであることが分かった。英メディアが3日までに報じた。中国の習近平国家主席は1月に国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と会談した際、五輪に約90カ国・地域から3000人が来ると誇示したが、関係者の多くが情報の抜き取りなどを警戒しているようだ。
報道によると、7カ国は米国、英国、カナダ、スイス、スウェーデン、ドイツ、オランダの欧米諸国。中国の通信回線を通じた個人情報抜き取りや行動監視を警戒し、自国選手に私用スマホを持ち込まないよう呼び掛けている。
米連邦捜査局(FBI)も1月31日、使い捨て端末を使うよう促した。ABCテレビによると、FBIは選手らへの通知で「マルウエア(悪意のあるソフト)を埋め込まれたり、個人情報を盗み取られたりする恐れが高まる」と警告した。
新型コロナウイルス禍で開かれる北京五輪では、各国代表団や報道関係者などが入国前に公式アプリ「MY2022」をスマホにインストールし、健康状態を申告することが義務付けられている。米国などの情報セキュリティー専門家らは、このアプリが不正アクセスを招く可能性があると警告。中国側はこうした懸念に反発している。
 
 
 
 
●広い部屋・心地よいベッド、高木菜那「北京ダック出る」…選手村でくつろぐ  2/2
各国・地域の選手・役員らが滞在する北京オリンピックの「選手村」。新型コロナウイルスの感染対策のため関係者以外との接触は禁止されており、北京の選手村は周囲がフェンスで厳重に囲われるなどの厳戒態勢となっているが、日本代表の選手たちが村内でくつろいで過ごせている一端も見えてきた。
選手村の居住スペースや食事は充実しているようだ。
日本選手団の先陣を切って、1月27日に北京の選手村に入ったアイスホッケー女子日本代表の大沢ちほ主将は「選手村では全員が1人部屋。すごく広く、ストレスなく過ごせる」と元気な様子を見せた。スピードスケート女子の高木菜那選手も「(選手村で)北京ダックが出る。食事はおいしい」と満足している様子だった。
本番を控えた選手たちが、選手村で思い思いに過ごしている様子も伺い知れた。
スピードスケート男子の小田卓朗選手は「魚をさばく動画を見ていました」と、選手村でのリラックス方法を語り、ショートトラック女子の神長汐音選手は、女子代表3人の結束力を高める作戦について「(選手村の部屋で)お米をみんなで順番に炊くことですね」と明かす。
このほか、日本選手のツイッターには、選手村の部屋の様子を紹介する動画も投稿された。真っ白な布団が敷かれたベッドや公式マスコットの「ビンドゥンドゥン」が入ったクッションのようなものを見せて、「部屋は広くてあったかいです」「ベッドも心地よくて、過ごしやすいです」と字幕でつづっていた。
●北京で聖火リレースタート「共に未来へ」開幕までの3日間、1200人がつなぐ 2/2
北京冬季五輪の聖火リレーが2日、北京市中心部のオリンピック森林公園からスタートした。新型コロナウイルス対策を優先し中国各地の巡回は見合わせ、五輪会場周辺だけを巡る。期間は4日の開幕までの3日間に短縮。世界の結束へ願いを込めた大会スローガン「共に未来へ(一起向未来)」を掲げ、約1200人のランナーが聖火をつなぐ。
習近平指導部は感染防止に配慮しつつ大会の順調な進行をアピールし、米英などの「外交ボイコット」の形骸化を印象付けたい考えとみられる。
3日に世界遺産、万里の長城の観光スポット「八達嶺長城」を通って河北省張家口に入り、遺跡公園やスキー場を回る。4日は北京に戻り、歴代皇帝が整備したとされる庭園、頤和園を通る。外部との接触を遮断した「バブル」内も走る。
ロボットによる聖火の受け渡しや自動運転車の走行も予定。中国が誇る「中華民族」の歴史と先端技術を内外に示すルートとなっている。
聖火は古代五輪の舞台だったギリシャで昨年10月18日に採火され、同20日に北京で到着式典が開かれた。採火式では中国の人権問題を巡り五輪開催に反対する活動家が乱入する騒ぎがあった。
●北京五輪日本選手団スキー選手1人新型コロナ陽性 無症状 2/2
日本オリンピック委員会(JOC)は2日、北京オリンピック(五輪)に出場する日本選手団(TEAM JAPAN北京2022)のスキー選手1人に、新型コロナウイルス検査の陽性反応が出たと発表した。今大会の日本選手団で陽性者が出るのは初めて。
発生は前日1日で、本人は無症状。渡航前のPCR検査では陰性が確認されていたが、現地に入った後の検査で陽性判定を受けたという。
今後は大会組織委員会の指示に従い、必要な措置を取ることになる。試合出場の可否等についてはプレーブック(コロナ対策行動ルール集)や国際オリンピック委員会(IOC)と組織委のルールに従うという。
プレーブックには、その後の検査で2度の陰性(24時間以上の間隔を空けて連続)が出ることなど、復帰の諸条件が記されている。
昨夏の東京夏季五輪と同様、個人情報保護のため氏名等の公表はしない。
スキー競技は5日のジャンプからスタートする。
●北京五輪でデジタル人民元を開放 「海外客はカードで」 2/2
北京冬季五輪・パラリンピックの取材拠点となる「メインメディアセンター(MMC)」内にはレストランや喫茶店、土産物店などが点在している。主な支払い手段は大会スポンサーの米VISAカードだが、「e-CNY」という見慣れないものもあった。中国人民銀行(中央銀行)が実証実験に取り組むデジタル人民元だ。
新型コロナウイルスのまん延が収まらないなか、中国政府は外国から訪れた選手や記者の隔離を免除する一方、選手村や取材拠点が外部と接触できないようにする「バブル方式」をとる。取材拠点に入った記者は外で自由に買い物ができないが、MMCで一通りそろう。
「デジタル人民元のアプリ、お持ちですか?」。ボランティアの女性から声をかけられた。使ってみたいと伝えると「アプリストアで検索して、ダウンロードしてみてください」。検索してみるも、一向に出てこない。後に中国国内で契約したスマートフォンでしか直接アプリを入れられないと分かった。
中国の国有銀行、中国銀行で発行できるかもしれないとの話を耳にし、MMC内にある同行の出張所に向かった。結果、同行の口座がなければアプリは使えないことが判明。肩を落としていると、女性行員から「海外のお客様が記念に作れるよう、プリペイド式カードもあります」と声をかけられた。「チャージする現金が必要です」
外に出られず、使う機会のなかった現金500元とパスポートを預けると、大会公式マスコットが描かれた「e-CNYカード」を発行してくれた。
興味本位で早速レストランの会計で提示した。女性店員から「これはVISAカードですか?」と聞かれた。アプリしか使ったことがなく、カード式は初めて見たという。「とても便利なので、滞在中は存分に使ってください」と笑顔で声をかけられたが、現金チャージ式と伝えると、店員も驚きの表情を浮かべた。
ICカードなどと同様、端末にかざせばすぐに支払いが終わる。取引が完了し印刷されたレシートに残高が書かれていない。「いくら残っているか分かりますか?」と尋ねると、困ったように首を横に振られた。残高照会は銀行でしかできなかった。
中国政府は北京冬季五輪を「デジタル人民元のショーケース」と位置づける。中国の銀行口座やスマホを持たない外国人にも使ってもらい、将来の外国人観光客の利用に役立てる考えだ。
消費者からすれば、これまでのカード払いやスマホ決済と大きな差を感じにくい。対照的に、人民銀の利点は大きい。国内の決済情報を瞬時に把握でき、きめ細かい金融政策の調整に役立てられる。海外への違法な資金の持ち出しやマネーロンダリング(資金洗浄)の防止にもつながるとみる。
人民銀は北京冬季五輪会場のほか、10を超す都市で実証実験を進めてきた。2021年末まで個人による専用のデジタル財布の開設は2億6100万件に上り、取引額は約875億元(約1兆5700億円)に達した。今後は実証実験とともに、デジタル人民元を法定通貨に加える中国人民銀行法の改正作業にも取り組み、正式発行への準備を進める方針だ。
 
 
 
 
●北京五輪 プーチン大統領含む外国の国家元首ら32人が開会式出席 1/29
中国外務省は28日、ロシアのプーチン大統領やグテレス国連事務総長を含む外国の国家元首や政府首脳、王室関係者、国際機関の幹部ら計32人が2月4日の北京冬季五輪開会式に出席すると発表した。
欧米の主要国からは、国家元首や首脳の参加はない。
習近平国家主席は4〜6日、各国要人の歓迎会を開き、個別に会談する。発表されたリストが挙げた出席者は他にカザフスタンのトカエフ大統領、ポーランドのドゥダ大統領、韓国の朴炳錫国会議長、エジプトのシシ大統領、カンボジアのシハモニ国王、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長ら。
 
 
 
 
●北京の公園にバッハ会長の胸像お目見え、中国とIOCと密接関係が際立つ 1/27
北京冬季オリンピック(五輪)開幕を来月4日に控え、北京中心部の公園に国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の胸像がお目見えした。
習近平国家主席も訪中したバッハ氏を厚遇しており、中国とIOCの密接な関係が際立っている。
報道によると胸像は15日にお披露目された。2008年北京夏季五輪を前に04年にできた公園に、これまで会長を務めたサマランチ、ロゲ両氏の像と並ぶ。五輪史のモニュメントや近代五輪の父、クーベルタン男爵の像もある。
中国の元副首相に性的関係を迫られたとテニス選手が暴露した問題では、バッハ氏が選手とテレビ電話して「安否確認」を演出し、人権抑圧に加担したとの批判も浴びた。
公園に飾られた大会マスコットと孫の記念撮影をしていた女性は「中国にたくさん金メダルを取ってほしい」と期待。一方「像がいつできたのかすら知らない」と関心が薄い住民もいた。
習氏は25日、国賓や国家元首との会談に使う北京の釣魚台迎賓館にバッハ氏を招いて会談し、大会成功に自信を示した。
 
 
 
 
●北京五輪まで2週間 「ゼロコロナ」政策で感染拡大に警戒強める  1/21
冬の北京オリンピックの開幕まで21日で2週間です。北京では、新型コロナウイルスの変異ウイルス、オミクロン株などの感染が散発的に確認されていて、旧正月の春節にあわせた帰省の動きも本格化する中、当局は、大会に向けて感染拡大を抑え込もうと警戒を強めています。
冬の北京オリンピックは、北京と隣接する河北省の張家口で来月4日に開幕します。
北京市内では、公式マスコットをあしらったモニュメントや花壇などが設置され、大会を盛り上げようという動きが少しずつ出ています。市民の1人は「2008年に行われた夏のオリンピックよりも良くなるよう期待しています」などと話していました。一方、中国では旧正月の春節にあわせた大型連休が今月31日から始まるのを前に、ふるさとなどに帰省する動きも本格化しています。
都市などをまたぐ移動の場合、PCR検査の陰性証明が求められるケースが増えていて、北京市内に設けられた臨時の会場では、検査を待つ人たちの長い行列ができていました。
北京では、今月15日にオミクロン株の感染が初めて確認されて以降、デルタ株も含めて散発的に感染が確認されています。習近平指導部は徹底して感染を抑え込む「ゼロコロナ」政策をとりながら、オリンピックの成功をアピールし、政権への求心力を高めたい考えです。こうした中、北京市当局は22日以降、市内に入る人には到着後72時間以内のPCR検査を受けるよう義務づけるなど、大会に向けて感染拡大を抑え込もうと警戒を強めています。
 
 
 
 
●春節連休に五輪…「オミクロン株上陸」の中国発サプライチェーン不安拡大 1/18
新型コロナウイルスのオミクロン株に対する中国式封鎖政策が世界的なサプライチェーン不安を呼んでいるとニューヨーク・タイムズが16日に伝えた。世界の製造業生産の3分の1を占める中国で感染力が高いオミクロン株が広がり始めたためだ。中国は新型コロナウイルス感染者が出れば感染者の生活半径一帯をすべて封じ込める「コロナゼロ」を固守している。
中国は最近、上海、大連、天津、深センの港湾都市4カ所で一部閉鎖措置を取った。埠頭は閉鎖しなかったが、こうした措置だけでフォルクスワーゲンとトヨタは天津工場の稼動を一時中断しなければならなかった。同紙は「中国で広範囲な封鎖がさらに広がれば(中国に供給を極めて依存している)米国全域のサプライチェーンにも影響を及ぼすだろう」と分析した。
フィナンシャル・タイムズも15日に警告の声を出した。「オミクロン株を抑制するための中国の戦闘はスマートフォンから家具に至るまで製品生産と物流の流れを脅かす」としながらだ。3週にわたり都市全体が封鎖されている山西省西安にはサムスン電子のメモリー半導体工場だけでなく、米国の半導体会社マイクロン、台湾のパワーテックテクノロジーの工場もある。
実際にサムスン電子は西安の封鎖長期化で生産ラインを縮小した。サムスン電機をはじめLGエレクトロニクス、SPCなど韓国企業1000社が進出する天津でも最近オミクロン株感染者が出て懸念が大きくなっている。天津地方政府は9日から12日まで市民1500万人を対象にPCR検査をし、市内すべての機関と企業、事業者にこの期間に休業するよう通知した。
「新型コロナ、春節、五輪合わせればパーフェクトストーム」
外信は中国の長期間春節連休(1月31日〜2月6日)と2月4日の北京冬季五輪開幕が重なりサプライチェーン不安がさらに大きくなると予想する。連休を迎え労働者が大挙休業に入る上に北京五輪を控え中国当局が防疫政策を強化するものと観測されてだ。実際に中国の首都北京市は22日から3月末まで北京に進入する外部の人は市進入後72時間以内にPCR検査を受けるよう義務付けた。
米サプライチェーンコンサルティング企業セラフのアンブローズ・コンロイ最高経営責任者(CEO)は「新型コロナウイルス、春節連休、五輪がすべて合わさりパーフェクトストームを見るかもしれない」と話した。彼は「企業は現在の短期的な閉鎖に対してはいくらか準備できているが、何週間にもわたる広範囲な閉鎖は企業に大きな被害をもたらすかもしれない」と指摘した。
中国政府が港湾まで統制する場合には混乱が加重されるものと専門家らは予想する。世界的格付け会社ムーディーズのアジア太平洋首席エコノミスト、カトリーナ・エル氏は14日、CNBCとのインタビューで「中国がコロナゼロ政策により重要な港と工場まで閉鎖する傾向があることを考慮すると、これは本当に混乱を加重させるだろう」と話した。実際に中国は昨年世界で3番目に物流量が多い寧波港を閉鎖して世界的な物流大乱を起こした。当時寧波港では1人のコロナ感染者が発生しただけなのに中国は2週間にわたり港を閉鎖した。
最近首都北京をはじめとして中国南部の深センでオミクロン株が市中感染により発見された。香港紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストは16日、深センと天津、北京などが「封鎖競争」を行っていると報道した。こうした中国の雰囲気のため国際格付け会社の中国経済予測評価も下方修正されている。CNNによるとゴールドマン・サックスは2022年の中国の経済成長見通しを4.8%から4.3%に下げた。これは昨年の成長見通しの半分水準だ。ゴールドマン・サックスは中国がオミクロン株の上陸にもかかわらずコロナゼロ政策を固守しさらに高い水準の制限政策を展開することを考慮してこのように決めたと明らかにした。
 
 
 
 
●北京でオミクロン株市中感染者 五輪3週間前、警戒高まる―中国 1/15
中国の北京市政府は15日、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の市中感染者1人を確認したと発表した。北京での同株への感染確認は初めて。来月4日の北京冬季五輪開幕まで3週間を切る中、感染拡大への警戒が高まっている。
感染者は海淀区在住で、同区内で勤務。最近14日間は北京を出ておらず、のどの痛みを覚え14日に自主的にPCR検査を受けていた。市当局は、感染者の住居と職場を直ちに封鎖。感染者が1日以降立ち寄ったスーパーや劇場、スキー場などを公開し、接触した可能性のある市民に届け出るよう呼び掛けた。
 
 
 
 
●国内観客の扱い、決まらず 北京五輪 1/13
国際オリンピック委員会(IOC)のデュクレ五輪運営部長は12日、オンラインで取材に応じ、来月4日に開幕する北京五輪で中国本土居住者に限定する観客の扱いについて、詳細が決まっていないことを明らかにした。同氏は「(チケット販売の)選考手順や、ファンがどのように会場に行けるのかは現時点で決まっていない」と述べた。
大会は「バブル方式」により、選手ら関係者と外部との接触が遮断される。中国では新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染拡大により緊張が高まっているが、デュクレ氏は「内部で集団感染があったとしても、中国国内に影響を与える懸念はない」と強調した。
 
 
 
 
●中国・天津でオミクロン株市中感染 北京五輪前に広がる緊張 1/9
北京に隣接する大都市、天津で8日、少なくとも2人の新型コロナウイルスの変異株オミクロン株への市中感染が確認された。感染経路は現時点で不明だという。天津市当局は市民に現在の居場所から移動しないよう呼びかけ、9〜10日の2日間で約1400万人の市民全員を対象としたPCR検査を実施する。天津は北京市内への通勤圏でもあり、北京冬季オリンピック開幕まで1カ月を切った北京市にも緊張は広がっている。
天津市内では8日に20人の感染が確認され、そのうち2人についてオミクロン株と確認された。2人とも天津市外へは出ておらず、天津市の保健当局は「感染がコミュニティー単位で広がっている可能性がある」と判断している。天津では昨年12月13日に中国本土外からの感染者が確認されたが、このオミクロン株と今回の感染との関連は確認できていないという。
居住エリアの封鎖(ロックダウン)は今のところ、地区を限定して行われている。ただ、市中感染の範囲が広い場合は大規模ロックダウンに移行する可能性もある。
中国内陸部・西安で昨年末に実施されたロックダウンでは、新型コロナとは無関係の症状の患者が病院への受け入れを拒まれて死亡したり、隔離中の市民への食料が不足したりする問題がおきた。天津市防疫当局は「生活必需品を確保し、価格を安定させ、十分に供給する」との指示を各部署にだしているが、インターネット上には「西安でも同じことを言っていたが問題が起きた」と不安を漏らす市民もいた。
北京市中心部から天津市中心部は高速鉄道で30分程度と近い。そのため北京市当局も「北京冬季五輪開幕を控え、防疫に一瞬の油断も許されない」と市民に呼びかけ、警戒を強めている。北京市疾病予防コントロールセンターは9日、12月23日以降に天津のオミクロン株の感染が確認された地域に出入りした北京市民は自宅隔離とするなどの措置を発表した。
中国内の移動が大幅に増える旧正月「春節(2月1日)」を控えた時期にオミクロン株の市中感染が確認されたことも中国政府にとっては不安材料だ。主催国としての狙い通り、開催地北京が「コロナゼロ」の状態で冬季五輪開幕を迎えられるか、正念場に来ている。
 
 
 
 
●中国のロックダウン戦略 西安市にみる厄介なコスト 1/8
自宅から出ることを禁じられた住民たちが助けを求めている、あるいは治療を受けに病院に行った人が、門前払いを受けている――。中国・西安市から最近伝わってくる話は、これまで何度も耳にしたものと同じだ。
西安市では過去2週間、全住民1300万人がロックダウンの対象となっている。これまでに1800人を超える新型コロナウイルス感染者が確認されており、感染の流行を抑えるために厳しい対策が取られている。
現地当局は、来月開かれる冬季オリンピックの権威に傷をつけないよう、感染の抑え込みに必死だ。そして、何百万人もが国内を移動する春節を、感染急拡大につながる「スーパースプレッダー・イベント」にしないよう、断固たる決意を固めている。
しかし、西安市の状況からは、強硬なロックダウンと大規模検査の組み合わせという中国の標準的な戦略が、いかに厄介で酷な負担を住民にかけているのかも、明らかになっている。
食料を買うための外出すら禁止する厳しい規制が実施されて以来、不安を覚えた市民たちがソーシャルメディアで、食料の備えが減っていると訴えている。携帯電話と食料を交換して欲しいともちかける人も現れている。
政府職員が支援物資を配っているが、配給はまばらだ。厳格な隔離措置が実施されているため、運転手や配達人が不足していると報じられている。
真夜中に自宅から出るよう命じられ、バスで隔離施設に移動させられた人もいる。必要な医療が受けられない人たちがいるとの訴えも浮上している。
市内の高新医院では、厳しい新型ウイルス対策のために治療を拒まれ、心臓まひに見舞われた男性が死亡し、妊娠8カ月の女性が流産したとされている。
この事態を受けて当局は、市内の病院に診察拒否を禁じた。高新医院の院長には停職を命じた。
こうした話をオンラインで読んだ多くの人々は、震えあがってぼうぜんとしている。パンデミック初期に武漢市の市民が味わった大変な苦難との共通点を感じながら、嫌な既視感に襲われる人もいる。
複雑な現実
中国各地で厳格なロックダウンがたびたび実施されるようになって2年がたった。不適切な対応と計画性のなさが今も続いていることを疑問視し、当局は何を学んだのかと批判する声も出ている。
「武漢から何を学んだのかについて、真剣な議論はまったくなかった。中国モデルは成功した、西側民主国家の対策は効果が低い――と、そういう比較した語る文脈しかなかった」。米外交問題評議会のグローバル・ヘルス担当シニアフェロー、ヤンゾン・ファン教授はBBCにそう話した。
中国当局が唯一学習したのは、感染が拡大したら徹底的な「感染者ゼロ」戦略で臨むという、その姿勢だけだろうと同教授は付け加えた。
中国の政策はトップダウンで決定される。そのため地方当局は、大きな目標を示されると、「強引で画一的な方法で遂行せざるを得ない場合が多い」。西安市で取られている極めて厳しい措置は、まさにその例だ。
そしてこれが、「たとえ感染者の数は少なくても(中略)過剰反応したり、厳しくしすぎる事態」につながっている。
西安市の状況は、中国共産党が前面に打ち出す一枚岩の強さや効率の良さのイメージとは異なり、実際の現場では時折かなりの混乱がみられることも示している。
中国の地方政府は分権化されているため、多くの当局者は「感染者ゼロという非常に高い目標を設定しているものの、中央政府からの支援はごくわずかだ」と、中国政治が専門の香港科技大学のドナルド・ロウ教授は話す。そのため流行の発生時に対応する能力はあまりないという。
つまり、「地方当局は単独で地域のロックダウンも実施できないのに、その一方で、短時間で100万人以上の住民への食料配給を手配しなくてはならない」と、オーストリア・ウィーン大学のクリスチャン・ゲーベル教授(中国研究)はオンラインの分析で記した。
「うまく行けば中央の手柄となり、うまく行かなければ地方当局の責任にされ、お払い箱となる」
実際すでに西安市では党幹部2人が解職され、数十人が処罰されている。
抜け出せる?
だがそれよりも、感染者ゼロ政策の効果が出にくくなっていることの方が、大きな問題だ。
専門家は、新型ウイルスが進化してさらに感染力の高い変異株が出現するにつれ、現在と同レベルの感染抑制を続けようとすれば、一段と厳しい対策を取ることになると警告している。
感染者ゼロ政策はなお広い支持を得ているが、住民の我慢は限界に近づく一方だろう。
例えば西安市では、ソーシャルメディアのハッシュタグを使って住民の気分を盛り上げようとする、国営メディアのプロパガンダに反発が起きている。
中国のソーシャルメディアの微博(ウェイボ)には、西安市民らの新型ウイルスと闘いに関するハッシュタグを下品な言葉で批判するコメントが投稿された。このコメントはすぐに検閲によって削除された。
中国はこれまでのところ、感染者ゼロ政策を緩和する様子は見せていない。世界的パンデミックが終息するのを、甘んじて待っていると思われる。しかし、オミクロン株のような新たな変異株が現れており、近いうち流行が終わることはないだろうと多くの人が考えている。
果たして中国は、ゆくゆくは持続不可能になるかもしれない政策から、素早く抜け出すことができるのだろうか?
米外交問題評議会のファン教授は、政治的に高度に繊細な2つのイベントの間に、その機会があると考えている。来月開催のオリンピックと、今年秋の第20回共産党大会の間だ。その期間に、中国が新型ウイルスとの共生に向けた対策を取ることは可能だとみている。
考えられる1つの方法は、より効果的なワクチンと治療法を見つけ、新型ウイルスを今ほど恐れないよう中国の人々を教育することだ。
もう1つの方法は、いくつかの都市を選び、もっと穏やかな対策を試すことだ。ただ、それすら政治的に困難だろうと、香港科技大学のロウ教授は話す。
「どの都市を選ぶのか? 新型ウイルスは敵だと市民に言ってきたのだから、裏切りと取られるだろう」と教授は言う。そして、主要都市以外では医療システムが貧弱なことや、国産ワクチンの効果に対して、多くはまだ不安を感じていると述べた。
そうした間も、中国の人々は現行措置の影響をまともに受け続けることになる。
中国のメッセージアプリの微信(ウィーチャット)に投稿したエッセイで、西安市のジャーナリスト江雪氏は、市民らがロックダウンで直面している困難を詳しく記し、変革が必要だと切々と訴えた。
このエッセイはその後、削除されたが、江氏はこう書いていた。
「何もかも終わった後に私たちが、何があったのかじっくり振り返らず、血と涙でしぼりとった教訓を吸収せず、さっさと成果ばかりに注目して人を表彰したり歌を歌ったりするなら、大勢の苦しみは無駄だったということになる」
 
 
 
 
●中国、コロナ「ゼロ寛容」政策を長期に維持へ=専門家 2021/11
中国が新型コロナウイルスに対する「ゼロ寛容」政策を近いうちに断念することはない──。複数の専門家がこうした見方を示した。
感染拡大を防ぐための大規模検査や的を絞ったロックダウン(封鎖措置)、移動制限によるゼロ寛容政策は感染拡大の抑制に寄与する一方、地域経済を混乱させるケースも見られている。
2020年初めに中国の対新型コロナ戦略の策定に寄与した呼吸器疾患の専門家、鐘南山氏は国営メディアに対し、「(中国の)政策は長期にわたり変わらないだろう。どの程度続くかは世界の新型コロナウイルス制御状況に左右されるだろう」と述べた。
7−8月の国内発症者数は1200人を超え、直近の10月17日−11月1日は538人となっている。
龍洲経訊(ガベカル・ドラゴノミクス)のアナリスト、崔爾南氏はノートで、クラスター(感染者集団)がうまく封じ込められているほか、国際的な移動の制限が支持されていることを考慮すると、中国が少なくともあと1年はゼロ寛容政策を維持する公算が大きいと指摘。「当局者はゼロ寛容アプローチを断念すれば別の問題に置き換わるだけだと信じているようだ」とした。
鐘氏は、世界的にワクチン接種が進んでいるにもかかわらず現在の死亡率が2%となっていることについて、中国では許容できないと指摘。「ゼロ寛容は確かに多くのコストがかかるが、ウイルスが広がればもっとコストがかかる」と語った。
●中国はなぜ「ウイルスゼロ」政策を堅持するのか 2021/11
「ニューヨーク・タイムズ」がこのほど発表した中国の感染症対策についての記事が、人々の注目を大いに集めた。「中国はどうして、世界で1カ国だけ『コロナゼロ』を堅持しているのか」と題したこの文章は、中国では「コロナゼロ」政策が顕著な効果を上げていることに言及する一方で、同政策が中国をますます異質な国にしていると評し、現状では中国だけが唯一、ウイルスの徹底した根絶に努力している国と論じた。
西側メディアが中国の「コロナゼロ」政策を批判するのは、これが初めてではない、ブルームバークはこれまでに、現在では世界の大多数の国が新型コロナウイルスとの共存を試みはじめているのに、中国は長期に渡り新型コロナウイルスを徹底的に消滅させようとしており、そのための代償は極めて大きいことになると主張する文章を発表したことがある。
中国各地の感染症の発生は依然として楽観が許されない状況だ。政府は「外からの進入防止、内では再燃の防止」を堅持し、断固たる措置を講じており、管理と抑止を強化している。感染症対策部門は感染者との接触歴がある人や感染の可能性がある人を全力で探し出し、感染に関連したコミュニティー区を封鎖し、重点地域にある映画館などの商業施設を臨時閉鎖させ、省境を越えた旅行を制限するなど、各種の措置を厳格に実施している。
中国の感染症対策の専門家として有名な鍾南山氏は、一部の国による放任して感染が発生してから対策を取る受動的措置に比べ、中国が採用している「コロナゼロ」政策は現状において、実際にはやむをえない措置であると同時に、コストが高すぎることははなく、低コストの方法と説明した。なぜなら、新型コロナウイルスは拡散速度が極めて速く、死亡率も高止まりしているからだ。仮に大規模な感染が発生してから規制をおこなえば、支払う代償はさらに巨大になるという。
中国は感染症対策のために局所的に代償を支払っているが、その見返りとして経済が安定しつつ好転し、社会の安定が保たれている。感染症が猛威を振るい、どの人も危険にさらされている一部の西側諸国に比べれば、中国は世界でも得難い「浄土」と言える。中国国民は政府の感染症対策を心から支持ししている。14億人あまりの人口大国が感染症に対する防衛ラインをしっかり守っていることは、国際的な感染症対策に極めて大きな貢献をしていることだ。
今年の夏、中国では感染症による「死者ゼロ」が実現していたが、一部の国では逆に10万人近くの命が奪われた。なのに中国の「コロナゼロ」政策を批判し、あたかも教師であるような態度で中国の感染症対策を疑問視し、さらには「経済や社会を何度も閉鎖するのではなく、ウイルスをコントロールすることを学ぶ必要がある」と訓告することまでする。彼らにそんな風に語る資格や気力を与えているのはいったい誰なのだろうか。
中国が「コロナゼロ」政策を守り通していることは、自国を外界と隔絶して鎖国により国を閉ざしていることではない。中国は自分自身の各種の感染症対策をしっかりと行った上で、各国の企業に幅広いビジネスチャンスを提供し、世界経済の復活に原動力を提供している。全世界において感染症が原因で展示会などのイベントが大量に取り消され延期されている状況にあって、中国は国際輸入博覧会、国際サービス貿易交易会、広州交易会、国際消費品博覧会など一連の開放型プラットフォームを構築し、世界とチャンスを共有し、手を携えて未来を創造している。中国は感染症によって「閉鎖的」になったのではなく、より開放的になった。協力の「友達の輪」は小さくなったのではなく、ますます大きくなりつつある。
世界における感染症の現状に基づき客観的に論じるならば、新型コロナウイルスが短期間で一掃されることはありえず、中国の「コロナゼロ」政策も永遠に不変ではないだろう。ワクチンの大規模接種と効果の向上にともなって、中国は感染症対策を徐々に緩和していくだろう。人類は歴史上、ウイルスとの戦いにいくたびも勝利してきた。その勝利が再現され、各国の人々が再び自由に往来する日も、そう遠くはないと信じる。
●「ゼロコロナ」の呪縛から逃れられるか 中国ナショナリズムの変化 2021/10
新型コロナ感染症が世界的に沈静化の傾向を見せ始めたことで、中国政府が堅持している「ゼロコロナ政策」の今後に注目が集まっている。
周知のように、中国は「国内に新型コロナウイルスの存在を許さない(零容認=ゼロコロナ)」方針を掲げ、その実現のための厳格な措置を実行している。その政策は、おおむね所期の成果を挙げてきた。
そして、そのことを「政治・社会体制の勝利」として高らかに謳い上げ、一方で、他国の政府、特に米国を筆頭とする西側先進国の政治体制がいかに頼りなく、政権が無策であるかをメディアが書き立ててきたという状況がある。折悪しく、昨今の西側諸国との政治的、経済的対立がその傾向に油を注いでいる。
しかし、本来、科学的、合理的に取り組むべき感染症対策を「政治体制の優劣」と結びつけて論じてしまったことで、中国の当局は「引くに引けない」状況に自らを追い込んでしまう結果になっている。コロナ対策での失敗は、即、政治体制の優位性の否定を意味してしまうからだ。こういう状態は、中国自身はもちろん、世界にとっても良いことではない。
今後、政治的な面子(メンツ)にとらわれず、本当に客観的、合理的な対策を中国の政府が取りうるのか、世界が注視すべきはその点だろう。今回はこのあたりの話をしたい。
デルタ株出現で「ゼロコロナ」に脚光
中国では政府の厳格な移動制限などの措置によって、2020年半ばには国内の新規感染がほぼ抑え込まれ、事実上「ゼロコロナ」に近い状況が実現した。しかし当時「ゼロコロナ」という言葉は一般的ではなかった。それは、その時点では欧米諸国や日本など、基本的にすべての国がコロナの完全な終息を目指しており、いわば「ゼロコロナ」の実現が当たり前の目標だったからである。
状況が大きく変わったのはデルタ株出現以降のことだ。インドから広がったとされるデルタ株は、今年5月、WHO(世界保健機関)が「注視すべき変異」と位置付けたことで世界的に注目された。米国CDC(疾病予防管理センター)の報告では、デルタ株は従来型ウイルスの2倍以上の強い伝染性があり、別の研究では感染者の体内のウイルス量が従来型に比べて1000倍以上多くなると報告されている。厚生労働省によると、日本でも7月下旬時点で陽性検体に占める割合では関東の75%、関西の32%のウイルスがデルタ株に置き換わったと推定された。
こうした強力な感染性を持つデルタ株の出現に、欧米諸国などでは次々と「ゼロコロナ」の実現を放棄し、新型コロナウイルスの消滅は不可能との前提のもと、ワクチン接種の拡大と治療薬の開発などを軸に、同ウイルスと「共存」しつつ社会を正常化していく方針に転換した。中国と諸外国との対策の距離が開き始めたのはここからだ。
中国でもデルタ株拡大の衝撃
デルタ株の感染は中国国内にも広がった。7月20日、江蘇省南京市の空港職員9人の感染が確認され、同市はただちに800万人の市民にPCR検査ならびに抗原検査を実施、184人の陽性者が確認された。さらに同月末までに四川省瀘州(ろしゅう)市など8つの省、22の市で感染者が発生、9月には福建省での厦門市、莆田市、泉州市などで470人の陽性者が確認された。これまでにデルタ株の感染者は計1000人を超えるとみられる。
この数は諸外国と比べても大きなものではなく、重症者も少数のレベルに留まっている。しかし、中国国内でこれだけまとまった数の新規感染者が確認されたのは約1年ぶりのことで、当局に大きな衝撃を与えた。
コロナウイルスとの「共存論」に激しい反発
状況の変化は国内世論にも影響を与えた。同月末、上海市の医師で感染症の専門家として世論の信頼の高い張文宏医師が、SNS上で「世界がいかにウイルスと共存していくか、それは各国が自ら回答を模索しているところだ。中国はこれまで完璧な回答を出してきたが、南京での感染拡大以降、私たちはさらに多くのことを学ぶだろう」(訳は筆者)と、婉曲な表現ながら、中国もデルタ株の出現を機に、ゼロコロナの方針を転換し、「ウイルスとの共存」を目指す可能性を検討すべきとの見方を示した。
これに対して中国のメディアは次々と批判的な記事を掲載、世論は強い拒否反応を示した。「張医師の発言は欧米諸国に迎合するものだ」「他国の政府の無策の結果、仕方なくゼロコロナを諦めざるを得なくなったにすぎないのに、なぜ中国が追随する必要があるのか」といった書き込みがあふれ、一部には張医師に賛同する意見もあったが、少数に留まった。
この件は張医師の個人攻撃に発展し、翌8月には20年以上も前の2000年に張医師が執筆した博士論文に不正引用があったと報道される事態も発生(その後、大学当局により、この疑惑は否定された)、中国国内の「ゼロコロナ信仰」の根深さを実感させた。
また同月、かつて中国衛生部(現・中国健康と衛生委員会、日本の厚生労働省の一部機能に相当する中央官庁)の部長(大臣)を務めた高官が、張医師を名指しこそしなかったものの、その発言を念頭に以下のように語った。
「一部の専門家は、米国、英国などの対策はオープンなもので、隔離中心の我が国のやり方は閉鎖的だとの発言をした。西側諸国は何の目算もなく制限措置を解除したり緩和したりして自らの統治能力を誇示しようとしている。これは人々の健康を考慮した措置とは言えず、米国や英国の統治制度の欠陥がもたらした、誤った政策である」。
西側諸国の政治体制の不備を指摘し、ゼロコロナ状態の死守こそが正しい道だと改めて強く宣言した形だ。
長期戦に備え、5000室の巨大隔離施設を建設
こうした動きが出る中、厳格な隔離体制をより強化するため、中国政府は広東省の国際空港近くで5000室という巨大な隔離施設を建設、9月下旬に運用を開始した。
中国政府が建設したのは「広州市国際健康ステーション」。華南の中核空港である広州白雲国際空港から西へ約20km、車で30分ほどの農村地帯にある。敷地面積は25万u。隔離用のホテル式客室5000室、スタッフ2000人の宿舎、医療棟などからなる巨大な施設である。今後、同様の施設を広東省の広州市や深圳市、東莞市などにも建設の構想があるという。
現在のように入国者をホテルで隔離する場合、換気設備の不備で客室間で空気が流通してしまう例が報告されていた。また隔離措置の実施が長期化するにつれ、対応する人員の手配や食事の提供、医療機関との連携などの非効率が課題となっていた。今後もゼロコロナを維持するとなれば、市中に散在するホテルでは対処しきれない。そのため最新設備を備えた専門施設の建設を決めたとみられる。
欧米各国を中心に、国際的な移動規制の緩和が相次ぐこの時期、巨大な隔離施設を新たに建設するということは、コロナ関連規制撤廃へと動く欧米諸国とは一線を画し、中国は当面、事実上の「鎖国状態」も辞さず、ゼロコロナの維持に向けて長期戦の覚悟を固めたと見るのが自然だろう。
なぜ中国はゼロコロナに執着するのか
なぜ中国はこのように強くゼロコロナに執着するのか。その背景には、冒頭に触れたように、中国がコロナの抑え込みに見事に成功し、そのことを中国の政治体制の優位性がもたらしたものと国民に強くアピールしてきた事実がある。
中国国内でコロナを事実上、制圧した中国政府にしてみれば、極論すれば、新型コロナの感染症が恐ろしいものであればあるほど、自らの功績が大きくなる――という構造が存在する。そのような背景もあって、中国では海外の感染状況の悲惨さが数多く伝えられた。現実に今年2月には中国のコロナ感染発生時から約1年間の全死者数(4500人あまり、香港、台湾を除く)を米国の1日の死者数(5463人、2021年2月12日)が上回ってしまう状況になり、そのインパクトは絶大だった。
そこでは、いかに米国社会が悲惨な状況に陥っており、経済は疲弊し、職を失う人が街にあふれ、それとの対比で中国の社会制度がいかに優れているかが強調された。こうしたプロセスを通じて、中国の「普通の人たち」が、中国の体制の優位性を強く感じるようになったことは否めない事実である。
強権的な体制に日頃いろいろ不満はあっても、ことコロナ対策については、中国の世論はほぼ政府支持一色といっても過言ではない。中国の友人たちと話をすると、「中国に生まれて本当によかった」と真顔で語る人が何人もいる。そして東京にいる私に対して、「日本は大変だよね。本当に気をつけて。安全が第一だから」と心からの善意と友情で心配してくれるのである。
中国製ワクチンの微妙な状況
新型コロナのワクチンをめぐる状況も、中国のゼロコロナ政策に微妙な影響を与えている。中国で広く接種されているワクチンは「不活化ワクチン」と呼ばれるタイプで、接種後に深刻な副反応が表れるケースは少なく、保存や運搬も容易とされる。反面、日本でもおなじみのファイザーやモデルナなど欧米諸国で開発されたmRNAワクチンに比べると効果の面で及ばないことは中国政府の専門家も認めている。
中国でのワクチン接種は驚異的なペースで進んでおり、10月4日現在、22億1456万回の接種が完了。単純な人口カバー率で8割、12歳以上に限れば9割を超える。日本の10倍以上の人口に対して、この速度で接種を行う底力はすさまじいものというしかない。
この中国産ワクチンの効果について、中国政府は表立っては口にしないものの、効果の限界は認識しており、全幅の信頼を置けずにいるとの見方がある。西側諸国でmRNAワクチンの有効性が実証されつつある中、仮に中国が「ウイルスとの共存」路線をとった場合、そこで感染が急拡大するようなことがあれば、中国製ワクチンの有効性に疑念が生じかねない。そうした事態は絶対に避けなければならない。
中国製mRNAワクチン開発に時間を稼ぐ
こうした懸念もあってか、中国政府は現在、中国製mRNAワクチンの開発を急いでいる。そのトップランナーは復星国際(Fosun International Limited)傘下の復星医薬集団が、ドイツのビオンテックの技術を導入して生産するもので、日本でファイザー製ワクチンと呼ばれるものとほぼ同様の製品とみられる。そのほか、中国軍事医学研究院と民間企業のグループおよび前述の不活化ワクチンを生産している国有企業のシノファーム(SINOPHARM、中国医薬集団)も2022年の発売を目指してmRNAワクチンを開発中と伝えられる。
このうち復星医薬集団のmRNAワクチンは今年7月、まもなく中国政府の承認が下りる見通しと伝えられたが、その後、承認の動きは進展がない。「ウォール・ストリート・ジャーナル(日本語版)」2021 年 8 月 28 日号は「中国の保健当局はビオンテック製ワクチンの承認が自国製ワクチンに対する国民の不信につながり、自国製を利用して政府のワクチン接種目標を年内に達成する計画がつまずきかねないと不安視している」と伝えている。政治的な思惑から、ドイツの技術によるワクチンの承認を意図的に遅らせ、国産のmRNAワクチンの開発に時間を稼いでいるのではないかとの見方もある。
国の威信をかけた北京2022 冬季五輪
そしてもうひとつの要素として挙げられるのが、北京2022 オリンピック/パラリンピックの開催である。夏季と冬季、両オリンピックを開催する世界初の都市となる北京市としては、大国の威信にかけても大会を成功させなければならない。2020年の東京大会が1年延期のすえ、無観客開催という変則的な形になったことから、北京での大会を完璧な形で成功させれば、国家としての力量を高らかに示せるとの思惑もある。
今年10月3日、中国冬季オリンピック組織委員会は、海外から大会に参加する選手・役員は基本的に中国社会との接触を避け、一定の領域内での行動に限定する「閉鎖式管理」を行うこと、そして国外への観戦チケットの販売は行わないことを発表した。東京大会と違い、国内の観客は観戦できるようになる見込みだが、チケットの販売方法など詳細はまだ発表されていない。
気がかりなナショナリズムの高まり
こうしたさまざまな政治的要素が、「ゼロコロナ政策」の維持に影響していると考えられる。ゼロコロナの政策そのものは、実行のプロセスで行き過ぎの面はあるにせよ、それ自体、中国の国情を考えれば、現実的な政策だろう。問題なのは冒頭にも触れたように、中国政府自身が、その成功の理由を「体制の優劣」として論じ、西側先進国の無策さを強調して、自らの政治的資源として使ってきたことである。
ご承知のように中国は国内の情報流通を国家が監視、管理していることを公言している国であり、党と政府が「国家にとって有益」と判断した情報以外、国民に伝えられることはない。その判断の権限は党と政府が握っている。そういう制度の国である。
そのような状況の下、中国の当局が自国のコロナ対策の有効性を強調し、諸外国の政府の対応をネガティブに伝えてきたことで、国民の間には、自国への誇りと安心感が芽生えたと同時に、有効な対策を取り得ない諸外国に対して一種の優越感、時には哀れみ、嘲笑に近い視線が生まれている。昨今の西側諸国との政治的、経済的な対立を背景に、国内にはナショナリズム的な気分が高まり、一部には外国人忌避のムードすら芽生えつつある。この点は非常に気がかりである。
「一党専制」最大の弱点
加えて、同様の理由から、今回の新型コロナウイルスに対する過度の恐怖感が社会に広がっている。日本も含め、コロナとの共存に舵を切った社会では、過去1年半にわたるウイルスとの闘いの中で、多大な犠牲を払いつつ、国民一人ひとりが「このウイルスはどの程度、恐れるべきものか」、身を持って学習してきたところがある。その蓄積の結果としての「ゼロコロナの放棄」であったわけだ。
しかし中国の社会は、すべてを国家が決め、国民はそれに従う。それで良い結果になれば有り難いことではあるが、国民の間には上から知らされた「とにかくウイルスは怖い」という観念が強く刻まれたままになっている。そうであるからこそ、ゼロコロナの政策を変えられない――という状況が生じている。
ゼロコロナの維持という、いわば国の閉鎖性をさらに高める政策が継続されることで、中国国内の人々とその他世界の人々の意識との落差がいま以上に大きくなれば、中国をめぐる国際環境はますます悪化する。そのような事態は誰にとっても良いことはない。
詰まるところ、国家が国民を信用していないから、国民にすべての情報を知らせ、国民の判断を尊重する――という仕組みが機能していない。そのため政府は失敗が許されない。権力者は常に全知全能、無謬の存在を演じ続ける以外にない。これは非常に危ういことである。
自らの手段が功を奏したために、その宣伝が効きすぎて国民がその気になってしまい、他の選択肢が取り得なくなるというパターンは、今回のコロナ対策に限った話ではない。「一党専制」という一見、強力な仕組みの最大の弱点はここにある。
 
 
 
 
 
競技トラブル
●北京五輪開会式、入場は漢字の画数順 日本は10番目 2/4
北京冬季オリンピックは4日、北京市の国家体育場(通称「鳥の巣」)での開会式で17日間の戦いが幕を開けた。各国・地域の入場行進は2008年夏季五輪に続き、中国語表記(簡体字)の1文字目の画数の少ない国から順に登場した。
五輪開会式の入場行進は先頭が五輪発祥のギリシャ、最後が開催国と決まっているが、その間の順番は原則として開催国の言語の順番を採用する。大会組織委員会の発表によると、ギリシャの次はトルコ(漢字の「土」)で、日本は10番目だった。日本の次には台湾、香港が並んだ。08年大会と同じく中国語表記は台湾が中華台北、香港は中国香港だった。
昨夏の東京五輪では日本語の50音順で各国・地域が登場したが、「あ」から始まるはずの米国は序盤ではなく最後から3番目に登場。夏季五輪の今後の開催国を最終盤に登場させる方法に変えた。28年ロサンゼルス五輪の米国、24年パリ五輪のフランス、開催国の日本の順番となった。五輪に巨額の放映権料を支払う米テレビ局の意向を尊重して、米国の登場を先送りしたとみられる。 
●オリンピック開会式、入場行進の順番は?日本は何番目? 2/4
2月4日に開幕する2022年北京冬季オリンピックには、91の選手団が参加する。開会式は午後8時(日本時間午後9時)にスタート。目玉の一つが、各国選手団の入場行進だ。
先頭はオリンピック発祥の地ギリシャで、その後は開催国の言語にあわせた順番になる。今大会では、中国・簡体字による国名の1文字目の画数と書き順で入場行進の順番が決まり、ギリシャに続くのはトルコだ。1文字目が同じ場合は、2文字目の画数・書き順が考慮される。
1. ギリシャ / 2. トルコ / 3. マルタ / 4. マダガスカル / 5. マレーシア / 6. エクアドル / 7. エリトリア / 8. ジャマイカ / 9. ベルギー / 10. 日本 / 11. 台湾 / 12. 香港 / 13. デンマーク / 14. ウクライナ / 15. ウズベキスタン / 16. ブラジル / 17. パキスタン / 18. イスラエル / 19. 東ティモール / 20. 北マケドニア / 21. ルクセンブルク / 22. ベラルーシ / 23. インド / 24. リトアニア / 25. ナイジェリア / 26. ガーナ / 27. カナダ / 28. サンマリノ / 29. キルギスタン / 30. アルメニア / 31. スペイン / 32. リヒテンシュタイン / 33. イラン / 34. ハンガリー / 35. アイスランド / 36. アンドラ / 37.フィンランド / 38. クロアチア / 39. サウジアラビア / 40. アルバニア / 41. アルゼンチン / 42. アゼルバイジャン / 43. ラトビア / 44. イギリス / 45. ルーマニア / 46. ROC / 47. フランス / 48. ポーランド / 49. プエルトリコ / 50. ボスニア・ヘルツェゴビナ / 51. ボリビア / 52. ノルウェー / 53. カザフスタン / 54. コソボ / 55. ブルガリア / 56. アメリカ合衆国 / 57. バージン諸島 / 58. 米領サモア / 59. タイ / 60. オランダ / 61. ジョージア / 62. コロンビア / 63. トリニダード・トバゴ / 64. ペルー / 65. アイルランド / 66. エストニア / 67. ハイチ / 68. チェコ共和国 / 69. フィリピン / 70. スロベニア / 71. スロバキア / 72. ポルトガル / 73. 韓国 / 74. モンテネグロ / 75. チリ / 76. オーストリア / 77. スイス / 78. スウェーデン / 79. モンゴル / 80. ニュージーランド / 81. セルビア / 82. キプロス / 83. メキシコ / 84. レバノン / 85. ドイツ / 86. モルドバ / 87. モナコ / 88. モロッコ / 89. オーストラリア / 90. イタリア / 91. 中国

ギリシャ、トルコ(土耳其)、マルタ(※馬耳他)、マダカスカル(※馬達加斯加)、マレーシア(※馬来西亜)、エクアドル(厄瓜多爾)、エリトリア(厄立特里亜)、ジャマイカ(牙買加)、ベルギー(比利時)、日本、台湾、香港、 ・・・(中略)・・・ オーストラリア(澳大利亜)、イタリア、中国 ※「馬」は簡体字 
●開会式の入場順のなぜ… 中国の担当者「その質問は対面で答える」 2/7
国・地域名の中国語表記で、1字目の画数が少ない順に入場する――。4日にあった北京冬季五輪の開会式では、こんなルールがあった。日本は10番目だった。でも疑問が残った。画数が同じ場合、どう順番付けするのか。
振り返ってみよう。先頭はギリシャ。近代五輪発祥の地で毎回先頭で入場する。次はトルコ(土耳其)。「土」は3画だ。3番目はマルタ(馬耳他)で、「馬」の画数が多いじゃないかと突っ込みたくなるが、中国の簡体字では3画で表記される。
問題は4画の国・地域だ。
入場順で並べると、エクアドル(厄瓜多尓)、エリトリア(厄立特里亜)、ジャマイカ(牙買加)、ベルギー(比利時)、日本、中華台北、中国香港、デンマーク(丹麦)、ウクライナ(烏克蘭)、ウズベキスタン(烏茲別克斯坦)、ブラジル(巴西)、パキスタン(巴基斯坦)、イスラエル(以色列)と13も並ぶ。まさに群雄割拠だ。
取材班の間では「1字目が同じなら、2字目を比べる」という説も出たが、むしろそれなら日本がベルギーより先になるはずだ。
開会式の後、どうしても気になって大会の広報窓口にメールで尋ねた。すると、普段は短い返信なのに「この質問には、対面でお答えしなければいけません」と連絡がきた。さっそく、担当の黄さん(41)に取材に行った。
いわく「漢字の順序の決め方 ・・・
●ショートトラックの金メダルは中国の手に?韓国メディアが猛反論 2/4
2022年2月3日、韓国・スポーツ朝鮮は「北京冬季五輪のスピードスケート・ショートトラック混合リレーで中国が1位、韓国が2位になるという衝撃の予想が発表された」と伝えた。
記事はまず「韓国の最初のメダリストは5日に首都体育館で誕生する可能性が高い」とし、「韓国はショートトラック混合リレーでメダル獲得を狙う」としている。
韓国からはファン・デホン、イ・ジュンソ、チェ・ミンジョン、イ・ユビンが出場するという。記事は「過去のショートトラック代表チームより戦力が弱化したとの評価も出ているが、全員が世界最高レベルの選手だ」とし、「ファンは500メートルで強い姿を見せており、イ・ジュンソは今大会最高のダークホースとなる可能性が高い。チェは1000メートルと1500メートルの女子の部最強者で、イ・ユビンはAP通信が予想した1500メートルの金メダル有力候補だ」と説明している。
ところが、北京冬季五輪の公式OIS(五輪情報サービス)は2日に「21年10月に世界新記録を樹立した中国が1位になる可能性が高い。ショートトラック強国の韓国とオランダは中国の後に続くだろう」との予想を発表したという。
これについて記事は「中国も優勝候補であることは事実。平昌冬季五輪の男子500メートルで金メダルを獲得した武大靖(ウー・ダージン)がいる上、任子威(レン・ズーウェイ)も500メートルランキング3位。女子では非マナープレーが得意の范可新(ファン・カーシン)がホームアドバンテージに後押しされる可能性がある」としつつも、「ただし、混合リレーではタッチ時の技術的連結が非常に重要となる上、首都体育館の独特な氷質はチェと相性がいい。そのため技術的に優位な韓国が負ける理由はない」と強調。また「むしろ過度なプレッシャーが中国代表に悪影響を及ぼす可能性もある」とし、「おかしな“ひいき判定”さえなければ韓国代表が金メダルをとることは十分に可能だ」と伝えている。
これを受け、韓国のネットユーザーからは「今は中国に大口をたたかせてあげようよ。試合後は何も言えなくなるんだから」と強気な声が上がっている。
一方で「中国も弱小チームではない」「韓国の監督を引き抜いた上に北京開催だからもしかすると…」と不安げな声や、「ひいき判定があるに決まっている」「今回も非マナープレーが続出しそうだ」「不正も反則もすごそう」と警戒する声も多い。
その他「選手たちがコロナに感染せず、無事に帰ってくればそれでいい」「今はコロナが大変なことになっているから五輪どころじゃない」「今までの五輪の中で一番興味ないかも」との声も見られた。
●韓国に続きハンガリーもおかしな失格…中国、一度も1位にならずに金メダル 2/8
組1・2位を占めた黄大憲(ファン・デホン)とイ・ジュンソを失格させ不公正判定議論を起こした北京冬季五輪ショートトラック男子1000メートルの競技で中国選手が金・銀メダルを獲得した。
7日に行われたショートトラック1000メートル決勝でハンガリーのシャオリンサンドラ・リュウが1分26秒74を記録し1位でゴールラインを通過した。2位は任子威、3位は李文竜が占めた。
しかしリュウは競技後反則の判定を受けイエローカードで失格処理され、結局任子威が金メダル、李文竜が銀メダルを取った。銅メダルはリュウの弟のシャオアン・リュウが占めた。
これに先立ち準決勝各組で1・2位を占めた黄大憲とイ・ジュンソも失格処理された。黄大憲の失格で2・3位だった中国の李文竜、武大靖が決勝進出権を与えられた。
黄大憲は準決勝1組で1位でゴールラインを通過した。しかし審判陣は競技後のビデオ判定を通じて黄大憲がトップの座を奪う過程でレーン変更が遅れたとしてペナルティを与えた。2組で出場したイ・ジュンソも2位で通過したがビデオ判定の末にレーン変更で反則を犯したとして失格となった。
●強く引っ張っても金メダル…中国に勝てば失格「度を越した不公正判定」 2/8
2022北京冬季オリンピック(五輪)で不公正判定問題の中で相次いで失格を受けた韓国ショートトラックが中国側に強く反発した。
韓国ショートトラック代表チームは不公正判定で失格となった競技に対して、国際スケート連盟(ISU)と国際オリンピック委員会(IOC)に異議を提起し、受け入れられなければ国際スポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴するべきだと強く反発した。大韓スケート連盟は8日(日本時間)、大韓体育会関係者と会って今後の対応方案を議論する予定だ。
韓国ショートトラック男子代表チーム看板選手の黄大憲(ファン・デホン)と期待株の李俊瑞(イ・ジュンソ)は7日、釈然としない判定のためそろって男子1000メートル準決勝進出に挫折した。黄大憲はこの日、中国北京首都体育館で開かれたショートトラック男子1000メートル準決勝1組で組1位で決勝線を通過した。レース序盤3位だった黄大憲は4周を残して鋭くインコースに食い込み、中国の任子威と李文竜を同時に抜いた。黄大憲は最後まで先頭を守って決勝線を通過した。
しかし黄大憲は直ちに失格となった。審判陣がビデオ判読を通じて黄大憲が先頭に上がってくる過程で遅れてレーン変更をしたという判定を下したためだ。黄大憲はペナルティを科されて脱落した。代わりに3位に決勝線を通過した李文竜は2位に上がり、任子威とともに決勝に直行した。黄大憲が彼らを追い抜く過程で接触は全くなかった。むしろ中国の李文竜が先に抜け出ようとする黄大憲に手を使った。審判は李文竜を決勝に進出させる判定を下した。
続く準決勝2組に出場した李俊瑞もペナルティを科されて脱落した。李俊瑞は2位で決勝線を通過した。だが、審判は李俊瑞が競技の途中でハンガリーのシャオアン・リュウと接触し、その過程でレーン変更の反則を犯したと判定した。李俊瑞が失格によって脱落する代わりに3位だった中国の武大靖が2位に繰り上がって決勝に進出した。韓国選手2人が釈然としない判定で衝撃の脱落、その2人に代わって中国選手2人が決勝に上がるというあきれる結果が二度も起きた。
ハンガリー代表チームも中国に有利な不公正判定に異議を提起した。ショートトラック男子1000メートル決勝でハンガリーのシャオリンサンドル・リュウが一番最初に決勝線を通過しても反則で失格になった。しかも中国の任子威はシャオリンサンドル・リュウの身体の一部を手でつかみさえした。だが、審判陣は長時間の協議を通じてビデオ判定を下して、むしろシャオリンサンドル・リュウにペナルティを与えた。ハンガリーは直ちに異議を提起したという。1000メートル男子金メダルに出場した優勝候補と所属国家は誰も中国の金メダルを認めていない。
●「金メダルが奪われた」 ハンガリー選手が接戦を制すも失格に 2/9
2月4日に開幕した北京五輪。各国代表がしのぎを削り大会を盛り上げる一方、ショートトラックでは、中国選手に有利な判定が相次いでいると不満の声が挙がっている。
問題視されているレースのひとつが、5日の混合団体リレーの準決勝。第2走者が第3走者にタッチせずも容認された中国に対し、アメリカとロシアオリンピック委員会(ROC)は妨害で失格処分を受けた。この結果、繰り上がって決勝へ進出した中国は、イタリアとの激しいデッドヒートの末、金メダルを獲得したのだ。
これに対して、スポーツ界を越え政治家が発言したとロシアメディア『Metaratings』が伝える。同国議会のビタリー・ミロノフ氏は、「中国人を訴えるのは難しい。彼らはホストなので」としたうえで、「でもこのスキャンダルを揉み消さない。双方アスリートが悪いの場合は、両方を罰する必要がある」と訴えている。
そしてリレーに次いで、7日の男子1000メートル決勝でも不可解なジャッジが下された。中国の3選手と、ハンガリーの2選手の5人でメダル争いを行なった同レースは、シャオリン・サンドル・リュー(ハンガリー)と任子威(中国)の2選手の競り合いに。接戦を制したのはリューだったが、喜びは束の間。ゴール直前の激しいポジション取りが不運にも妨害とみなされ、失格が言い渡されたのだ。これに海外メディアも不信感を抱いている。
というのも、リュー側ではなく任子威に非があると見ているのだ。ハンガリーの日刊紙『Magyar Hirlap』は、「リューの金メダルが奪われ、弟のリューが銅メダル」と見出しを打ち、監督のコメントを取り上げた。
「中国選手が、我々ハンガリー選手を封じ閉じ込めようとしていた。途中で小さな衝突はあったが、これはお互いさまだ」と言うも、問題のフィニッシュに関しては「最初にフィニッシュラインを通過したリューを、中国選手が両手で引き戻した」と訴える。
また、任子威が妨害していることを証明する複数の写真は、米放送局『FOX SPORTS』のオーストラリア版で公開されており、同メディアは「冬季五輪で中国は相手が不正したと見せかけたが、恐ろしい写真が出てきた」と報じている。
韓国放送局『JTBC1』は、すでに諦めモードに入っているようで「中国選手に触れてはいけない、追い越すのはもっとダメ。一緒に並んではいけない」と注意喚起した。
世界が疑念を抱く“中国ファースト”のジャッジ。真相はいかに……。
●5人の失格に「不可解」「怒り」 ジャンプ検査、選手混乱 2/8
北京冬季五輪のノルディックスキー・ジャンプ混合団体で、日本の高梨沙羅を含む計5人がスーツの規定違反で失格となったことについて、選手や監督の間からは「理解できない」「事前によく整理しておくべきことだった」などと、怒りや嘆きの声が噴出した。検査方法が従来とは違ったとの指摘も出て、混乱が広がっている。
ロイター通信によると、失格となったノルウェーのシリエ・オプセトは「理解できない。茶番だ」と衝撃を隠せない様子。チームメートで同様に失格となったアンナオディネ・ストレムも「これまでの検査方法と違い、少し奇妙だった」と戸惑いを口にした。
ノルウェーチームの監督は検査方法を事前に明確にしておくべきだったと指摘、失格者が女子ばかりだったことにも首をかしげ「スキージャンプ全体にとって暗い一日となってしまった」と語った。
カタリナ・アルトハウスが失格となったドイツの男子選手は「こんなに失格者が出るなんて理解できない。とても変なことだ」と語った
高梨はスーツの太もも回りが2センチ大きかったとして失格となった。選手の間では、新型コロナウイルスの感染防止策で自主隔離をしたり、適切な食事を取れなかったりしたことが影響したとの見方も出ている。
●高梨ら失格者続出、スーツ規定違反に困惑の声 北京冬季五輪 2/8
7日に行われた北京冬季五輪のスキージャンプ混合団体では、スロベニアが圧倒的な強さで初代王者となったが、高梨沙羅のほか女子選手5人がスーツの規定違反を取られるという前代未聞の展開となった。
空中で選手にアドバンテージを与えるとされる緩いスーツで失格となったのは、高梨に加え、ドイツやノルウェー、オーストリアの選手だった。スキージャンプで選手が失格になるのは珍しくはないものの、一つの種目でこれほど多くのケースが出るのは異例となる。
男子ノーマルヒルを制した小林陵侑を筆頭とする日本は、1回目のジャンプで高梨が失格になった逆境を乗り越えて2回目に滑り込み、見事4位に入った。
女子ノーマルヒルで優勝候補に挙げられながらも4位に終わった高梨は、2回目のジャンプで着地した後、思わず涙を流していた。
チームメートの佐藤幸椰は「いろいろな五輪を見てきたけれど、こんな五輪は初めてなのでびっくりしている」とした上で、「それだけ多くのルールの下でジャンパーは準備している。勝負しての結果なので、こういうことがあっても不思議ではない」とコメントした。
世界選手権で混合団体を4度制しているドイツも、カタリナ・アルトハウスが同じ違反で失格となり、1回目で敗退した。
失格を知って号泣したアルトハウスは独スポーツ通信社SIDに対し、国際スキー連盟(FIS)への不満を口にした。
「今回の五輪で、(女子の)二つ目の種目が行われるのをとても喜んでいた。今回の運営で、FISは全てを水の泡にした。彼らは女子のスキージャンプを台無しにしていると思う。彼らが何をやろうとしているのか分からない」
「11年間のスキージャンプ人生で何度もチェックを受けたけれど、失格になるなんて一度もなかった。自分のスーツが規定に準拠しているのは分かっていた」
ドイツ男子チームの監督を務めるシュテファン・ホルンガッハー氏は、「もちろん、深く失望しているが、規則は受け入れなければならない」としながらも、「選手たちは前日と同じスーツを着ていて、そのときは何も問題なかったので、とにかく奇妙だ」と述べた。
さらに「冬季五輪でこんなことが起きて困惑している。全てを前もって明確にしておくべきだ」とし、「競技にとってよくない」と付け加えた。 
●ジャンプ失格続出に広がる波紋 運営に怒り、疑問の声 2/8
7日に行われたスキージャンプ混合団体で、4位になった日本の高梨沙羅(クラレ)を含む5人の女子選手がスーツの規定違反で失格となった波紋が広がっている。
「この11年間、1度も失格になったことがなかったのに!!!判定には言葉がない」
ドイツ女子のカタリナ・アルトハウスは自身のインスタグラムに感情をぶちまけた。銀メダルを獲得した個人と同じスーツを着用していたにも関わらず、規定違反とされた。世界選手権4連覇中の強豪は1回目9位に沈み、2回目に進めなかった。
チームマージャーのホルスト・ヒュッテル氏は「アルトハウスは普段より入念にチェックされ、何か問題が発見されるまでチェックが続いたと言っていた」と明かした。「オーストリア、日本と話したが、女子選手はみな個人戦と同じスーツを着て、その時は問題なかったと言っている。理解できない状況になっている。女子のトップ選手が3人も失格になるなんて、国際スキー連盟(FIS)は運営が適切か疑問を持つべきだ」と指摘した。
シュテファン・ホルンガッハー監督は今季、スーツ問題に悩まされ続けてきたと明かし「五輪になって突然、通常とは異なる計測が行われている。前日は同じスーツを着て問題がなかったのに、失格になったのは奇妙すぎる。信じられないほど頭にきているし、理解できない」と怒りがおさまらなかった。
2回目で女子選手が2人とも失格になったノルウェーはショックが大きい。シリエ・オプセトは初めての失格に「何が起こったのか全く理解できない」と困惑。「女子選手だけが失格させられているように感じた。理解できない」とした。W杯100戦近い出場実績のあるアンナ・オーディン・ストロムは「いつもと違う姿勢でチェックされた。どんなに奇妙に思えても、そこから学ばないといけない。正直、言葉がない」と普段の大会との違いを指摘した。
ノルウェーチームを率いるクラス・ブレーデ・ブローテン氏はFISに説明を求めることを明らかにした。「結果は変えられないが、何が起きたかを知り、今後に生かす必要がある。こんなことは二度と起きてほしくない」と意図を説明した。
オーストリアのダニエラ・イラシュコシュトルツは1回目で腰回りの違反で失格になった。高梨同様に2回目も飛び、チームは5位になった。38歳のベテランは「自分のミス。チームに申し訳ない」と潔く受け止めたが、動揺はチームに広がった。男子複合のマリオ・シュテヒャーは「年間通して同じ規定で計測が行われてきたのに、五輪になっておかしな動きが出ている。正しく規定が適用されているのか疑問に感じる」と投げかけた。
●スーツ規定違反続出の“茶番劇”に各国から困惑と怒りの声 2/8
2月7日に行なわれたスキージャンプ混合団体で、日本、オーストリア、ドイツ、ノルウェー(2人)の計4チーム5名の選手がスーツ規定違反で失格の処分を受けた。1本目、ないしは2本目のジャンプを飛び終えた選手が、次々と処分を下された異常事態は、各国で大きな波紋を呼んでいる。
日本は1回目の第1グループで登場した高梨沙羅が103メートルのビッグジャンプを披露し、2位につける好発進を見せた。ところが直後に失格が告げられ、同ジャンプは無効となったのだ。
「茶番劇だった」と同試合を表した欧州放送局『Eurosport』は、まずオーストリアのシュテファン・ホルンガッハー監督のコメントを掲載。同氏は「完全にクレイジーだ。彼女たちは常にW杯で勝ち続けている。私たちに説明が無かった」と怒りを露わにした。
果たして何が行なわれていたのか……。2回目のジャンプで同違反を受けたシリエ・オプセット(ノルウェー)は、「何を言えばいいのか……」と悔しさを滲ませながらも、こう証言した。
「彼らは全く異なる方法でスーツを測定していて、これまでとは違う方法で立つように言われた」
ノルウェーのクラス・ブレーデ・ブローテン監督は、「アスリートにとって非常に苦痛なはず。新競技で、五輪で女子選手が出場できる2つ目のイベントで起きた。なぜ失格になったのは女子選手だけだったのか?私たちのスポーツにとって残念な日だ」と語った。
仮に十分な「説明が無かった」まま、「全く異なる方法でスーツを測定」していたならば、運営側の不備を咎められても致し方ないだろう。4年に一度の大舞台にかけてきた選手たちの想いを考えると、心が痛むばかりだ。 
●スーツ失格の高梨沙羅、検査方法の違いを指摘していた… 2/10
スキージャンプ混合団体でスーツの規定違反で失格となった女子の高梨沙羅(クラレ)が全日本スキー連盟(SAJ)の聞き取りに「検査方法がいつもと違う」趣旨の回答をしたことが分かった。SAJは国際連盟(FIS)に検査法のあり方についての意見書などを送付する方針。スキー日本代表の斉藤智治監督が10日、明らかにした。
沙羅はスーツの太もも回りが規定より2センチ大きいとされた。斉藤監督によると、通常飛躍後はスパッツをはいたまま太ももを測定されるが、スパッツを脱がされたと沙羅が回答。腕も通常は体から約30センチ離した位置まで広げて検査を受けるが、万歳を求められた。検査方法が違うとしてやり直しを求めたが、受け入れられなかったと話しているという。
検査方法を巡っては、2人の失格者が出たノルウェーのアンナオディネ・ストレムも「これまでの検査方法と違い、少し奇妙だった」と証言。同国代表のブラーテン監督も、ノルウェー紙の取材に対し、手を頭に乗せたままで行ったと語っている。一方、マテリアルコントロールの責任者、ポーランド人女性のボンチフスカ氏は「新しい測定の手順は行っていない」とするなど、食い違いが生じている。
スーツ失格問題を巡っては、8日に沙羅が自身のインスタグラムで真っ黒な画面とともに「皆の人生を変えてしまった」などと謝罪。斉藤監督は「今後の検査をフェアにしていかないと。こんなことで1人の選手をつぶしてはいけない」とも強調した。今季は2〜3月にW杯を残しており、沙羅は既に中国を離れて欧州へ移動している。
●高梨沙羅の失格巡り、全日本スキー連盟がFISに意見書提出へ… 2/10
7日のスキージャンプ混合団体で高梨沙羅(クラレ)ら5選手がスーツの規定違反で失格となったことについて、全日本スキー連盟(SAJ)の斉藤智治競技副本部長は10日、五輪終了後に国際スキー連盟(FIS)に対して文書を提出する考えを明らかにした。検査のあり方について、意見書や提案として出すことを検討しているという。
斉藤氏によると、高梨はチームの聞き取りに対し、計測の仕方がワールドカップ(W杯)と違っていたと説明。W杯ではスパッツの上から行う太ももの計測が、今回は着用せずに行われ、測り直しも認められなかったという。斉藤氏は、「こんなことで選手をつぶしてはいけない。フェアな大会が開かれるよう、あり方を考えるべき」と述べた。
高梨はSNSに謝罪文を投稿するなどショックを受けており、斉藤氏は、「SAJとして、今は彼女のケアが最優先」と話した。高梨は選手村を出発する際、バスの中からスタッフに手を振っていたという。
●高梨沙羅『失格』させた検査官が判断の正当性を強調 2/10
7日に行われたノルディックスキー・ジャンプの混合団体は、日本の高梨沙羅(25)=クラレ=ら4チーム計5選手がスーツの規定違反で失格。高梨は太もも部分が規定寸法の最大許容差(女子は体からプラス2〜4センチ)より2センチ大きかったと判断された。
国際スキー連盟(FIS)から派遣され、高梨ら女子選手を担当した“アガ”ことアグニエスカ・バチコフスカ機材検査官(マテリアル・コントローラー)兼コーディネーターは、判断の絶対的な正当性をあらためて強調した。出身国ポーランドの放送局TVP、ニュースサイトのスキージャンプ・ポーランドなどが9日までに報じた。
「私は競技者全員に同じチャンスがあるよう確認しなければならない。なぜならば、これは正義の問題だからだ」。高梨が涙を流したシーンについては「自分自身も目にした。感情的に難しい仕事だった」としつつ、「いつも言うことだが、私が誰かを失格にするのではなく、選手は自分自身で失格になる。その原因は、違法なスーツを着用することだ」と、あくまでも規定違反の責任は選手側にあるとした。
また、自身の職業上の厳格さを「全ての選手が規定に沿った正しいスーツを着用すれば、私はハッピーだ。だが、着用しないのならば、少しの勇気を奮い起こし、規定違反があったと明確に伝えなければならない。たとえ、それがオリンピックであってもだ」と説明した。
●高梨沙羅ら5選手を失格させた検査官 決断に胸を張る 2/10
7日に行われたノルディックスキー・ジャンプの混合団体は、日本の高梨沙羅(クラレ)ら4チーム計5選手がスーツ規定違反とされ、失格。高梨は太もも部分が規定寸法の最大許容差(女子は体からプラス2〜4センチ)より2センチ大きかったと判断された。
国際スキー連盟(FIS)から派遣され、高梨ら女子選手を担当した“アガ”ことアグニエスカ・バチコフスカ機材検査官(マテリアル・コントローラー)は、妥当な判断だったと強調した。ポーランドのニュースサイト、FACTなどが9日までに報じた。
「違反者は全員、スーツのサイズが大きすぎた。それも5ミリや1センチという程度でなく、もっと大幅にオーバーしていた。今年はみんな(スーツのサイズが)本当にひどかったから、それに対抗しなければならなかった。決断には一切、疑念を抱かなかった」
FISは8日、公式サイトで今回の一連の規定違反騒動を「この日の話題の中心になった」と、人ごとのように報じた。
高梨自身は、SNSで「日本チームのメダルのチャンスを奪ってしまった」「皆様を深く失望させる結果となってしまった」「誠に申し訳ありませんでした」と謝罪。「私の失格のせいで皆んなの人生を変えてしまったことは変わりようのない事実です」「深く反省しております」(原文まま)などとつづった。
●高梨沙羅を失格にした審判員「彼女たちのことは何年も前から知っている」 2/10
安らぎは、手のひらに落ちた雪のように束の間だった。2月7日に行われたスキージャンプ混合団体の1回目、日本の1番手で登場した高梨沙羅は103mの大きなジャンプを見せた。点数が表示されて、ホッと微笑んでカメラに手を振る。今大会でテレビを通じて見ることができた、結果的に唯一と言ってもいい高梨の笑顔だった――。長く葛藤してもがき続けた4年間は、そんな一瞬笑うためだけのものだったのだろうか。そうじゃなかったはずだ。思い出すたび胸が締めつけられるような刹那の笑顔だった。
2日前の個人戦ではメダルを逃して失意の4位。「もう私の出る幕じゃないのかもしれない」と思いつめていただけに、チームに大きく貢献できたこのジャンプには本人も救われる思いがしたはずだ。《もっとちゃんとテレマークを入れなきゃいけないな》と、くだけた感じで両手を横に広げる姿。心の余裕も少し取り戻して、高梨はマテリアルコントロールと呼ばれる用具の検査ルームに向かっていった。しかし、すべてが暗転した。
元ヘッドコーチも衝撃「なんで今ここで、というのが…」
次にテレビに映し出されたとき、さっきまで笑っていた彼女はもういなかった。凍える寒さの中、うずくまって、小さくなって、泣いていた。あまりに打ちのめされて、ドイツチームのスタッフに差し出された涙を拭くためのティッシュも受け取れないほどだった。
スーツの規定違反による失格。信じたくないような、悪夢。
「なんで今ここで、というのがまず思ったことです」
日本で見守っていた小川孝博にも衝撃の展開だった。前回大会まで高梨らと一緒に世界を転戦し、五輪を戦ってきた女子代表の前ヘッドコーチだ。
「(個人戦に出場していた)勢藤(優花)とかと話をしても『なんで、今?』っていうのが現場の雰囲気だったみたいです。選手は常に特注のスーツを何着も持っていて、その中の2つ、3つを会場に持ってくる。完璧にフィットしていなければ、その箇所を詰めて合わせたりもします。その選手の体に合わせてすべて規定内で作ってますから。まあ、規定のギリギリではあるんですが……」
ジャンプのスーツはどう“検査”されているのか?
ジャンプを飛んだ後、ランダムに選ばれた選手はエクイップメントの検査を受ける。スーツは体に対して男子なら1〜3cm、女子は2〜4cmのゆとりを認められている。
「どう計測するかというと、足周りであれば膝や腰骨から下に何cmというふうに位置を決めて、まず体に線を引いて、そこでぐるりと実寸を測るんです。スーツには腰骨にかかるところに帯がある。そこから同じように何cm下に、と測った上でスーツの外周を測ります。そこで規定以上にスーツのサイズの方が大きいと失格ということになりますね」
腕周りは壁に背中をつけて立った上で手を水平に伸ばし、脇の下から手首の小指側にあるぽこっと出た骨までの長さを測定。あらかじめ登録していた数値より長くなっていないかを確認する。
ジャンプを飛ぶ前にチェックするのは股下になる。リフトを上がった後にスタートの待機場所付近で測り、申請してある数値よりも長ければ問題なし。もし短ければスーツをずり下げて浮力を得ようとしている可能性があるため、修正が求められる。
高梨が足りなかったのは太もも周りの2cmだったという。
日本代表の横川朝治ヘッドコーチは「寒さが厳しくて十分に筋肉がパンプアップできなかった」と語り、鷲沢徹コーチは体重減少の可能性を指摘していた。どちらもあり得る事態だと小川は言う。
「実寸を測るときは、力を入れている状態と入れてない状態では筋肉の盛り上がり方が違うから当然サイズが変わってきます。それがうまくいかなかったのかもしれません」
スキージャンプでは身長と体重によって使用できる板の長さまでも厳密に決められている。
「だから体重もみんなギリギリで調整しているんです。リフトに乗る直前に水を飲んで体重を合わせて上がっていくこともある。筋肉量が減れば実寸も減りますから。そういったところまで当日のボディチェックを(自分達で)するというのは、ルールがある以上やらなきゃいけないことですけど、完璧に把握することは実際には難しい。一方で人間が測るので、スーツを斜めに測ってしまえば1cmぐらい長く測れてしまうこともありえると思いますよ」
いくら厳しくても…5人も失格の“異常事態”はどう見る?
ただし、この日の試合は、高梨だけでなく個人戦銀メダルのカタリナ・アルトハウス(ドイツ)ら次々と失格者が出る異常事態となった。この日失格となった4カ国5人の選手はいずれも女子選手。高梨がそうだったが、おそらく他の選手も個人戦で使用したスーツ、もしくは同型のものを着用していたはずだ。
今回、女子の検査はポーランドのアグニエシュカ・バチコフスカが担当した(男子と担当が分かれているのは、脱衣して計測する必要があるため)。バチコフスカは試合翌日、母国の大手スポーツウェブメディア『SPORT.PL』のウカシュ・ヤヒミアック記者のインタビューに答えている。
ヤヒミアック「おはようございます! Mrs.アグニエシュカ “ジレット”」
バチコフスカ「それって私のあだ名?(笑)」
ジレットは、あのカミソリメーカーのこと。切れ味鋭い裁定は母国メディアからも“深剃り“すぎると感じられたのだろう。五輪初採用だった混合団体の興を削いだことは否めないからだ。
インタビューの中でバチコフスカは、大量失格の理由はあくまでルールを厳正に適用した結果だと説明した。
「選手が守るべきルールがある。私の仕事はそれを適用すること。個人戦では全選手が検査を受けたわけではありません。1回目に40人、2回目に30人全員をチェックするのは物理的に不可能。だから検査されなかった選手がいました。その時の検査で問題がなかったから今回も大丈夫だろうと思っていた選手もいたかもしれない。でも、残念ながらそうではなかった」
号泣していた高梨についても問われ、直接的な言及は避けながら答えた。
「もちろん失格がないことが一番。彼女たちのことは何年も前から知っている。マテリアル検査で失格になることを伝えるのは本当に心苦しい。選手たちには申し訳なく思うし、五輪でそれが起きたことは残念だけど、それが私の仕事。どのチームも限界ギリギリを攻めて、チャンスを掴もうとする。それがもし行き過ぎてしまったら、失格になるしかない」
平昌五輪の審判員も「ちょっと……納得いかないというか」
「でも彼女個人の判断でなくて、今回は厳しく検査するようにというFIS(国際スキー連盟)内の判断があったんだろうと思うんですよ」
4年前の平昌五輪で飛型審判員を務めた西森勇二は、インターハイのために訪れていた小林陵侑の地元岩手で関係者と試合を見守っていた。高梨の失格にはやはり一同言葉を失ったという。     
「ちょっと……納得いかないというか、なんでそんな風になるんだろうと。オリンピックという舞台で、なんで今まで検査を通っていたスーツがそんなに違反になるんだと。日本だけじゃなくてドイツ、オーストリア、ノルウェーと強豪国がこぞって失格になっている。どうなってるんだろうと思いましたね」
ジャンプ界で激化する“スーツ戦争”が背景に
ジャンプのスーツはF1の開発競争にも例えられるほど、サイズや素材、空気透過量など、厳密に定められたがんじがらめのルールの中、抜け道を探りながら新しいアイディアをひねり出し、少しでもアドバンテージを得ようとする“戦争“である。
たとえば、五輪直前のW杯でも、ドイツ代表監督のシュテファン・ホルンガッハーがポーランドの新しいブーツにクレームをつけたことで、同国の2選手が失格となり、その裁定をノルウェーが支持した。さらに、ホルンガッハーは日本の佐藤幸椰の板の幅にも抗議し、佐藤も失格となっていた。
そのホルンガッハーが今回は自チームの選手が失格に追い込まれる立場となって「これじゃパペットシアターみたいだ。理解できない」と裁定を非難する。そうしたつばぜり合いもまた日常の世界なのだ。
事後ではなく、股下検査と同じようにスタートの待機小屋に上がったところですべてのチェックをすればいいという意見もあるだろう。ただし、それでは時間的に間に合わず、実際にスタートするまでになんらかの細工を施すリスクも排除しきれないという。だからこそ、事後の抜き打ち検査が行われてきた。
西森は言った。「許容範囲は決められているので、今回それを超えてしまったのは間違いないのでしょう。ただ、ノルウェーの選手が『普段と測り方が違っていた。手を水平でなく、頭の上に乗せて計測した』と言っているという報道も見ました。もしそうであれば、やはりなぜ五輪で、とは思います。今季のW杯のどこかでみんなに示しをつけておけばよかったのに」
女子の個人戦ではスーツ違反、板の長さ違反による失格者はそれぞれ1人ずつだった。それに比べると団体戦での5人のスーツ違反はやはり異常に映る。エクイップメント責任者のフィンランド人男性の”過剰介入”が指摘されるなど、試合が終わってもなお自体は混迷の度合いを深めている。「スキャンダル」とまで言われている今回の事態を経て、FISは近いうちになんらかの手を打っていく必要があるだろう。
「今回のことはこれからも波紋を呼ぶでしょうね。失格になった他の選手もそうですけど、沙羅も責任を感じてしまって辞めるとか言い出したら、かわいそうでならないですよ」 
高梨が繰り返した謝罪「皆んなの人生を変えてしまった」
西森がそう危惧してから数時間後、高梨はインスタを更新した。そこでは現在の心境を示すような真っ黒な画像とともに謝罪の言葉が繰り返されていた。
「私の失格のせいで皆んなの人生を変えてしまったことは変わりようのない事実です。謝ってもメダルは返ってくることはなく責任が取れるとも思っておりませんが今後の私の競技に関しては考える必要があります」
今回の大会前にインタビューしたとき、彼女はこう語っていたはずだ。
「人に何かを与えられるものがある限り、私は飛び続けたい」
失格の連発によって日本がまさかの2回目進出を果たしたとき、精神状態を危惧する周囲に対して高梨は自ら飛ぶことを願い出たという。
千切れた心をかき集めて、飛ぶ瞬間だけはカッと目を見開いて涙を止め、磨き上げたジャンプで見事に98.5mを飛んだ。同情も、憐憫も、そして称賛であっても今の彼女には慰めにはならないことを分かった上で思うのは、その強さには人の心を打つものがあった、多くの人の感情を揺さぶる力があった、ということだ。
痛切な投稿の最後に自らの名前を記した後、高梨はこんな思いを付け加えた。
「私が言える立場ではない事は重々承知の上で言わせていただけるなら、どうかスキージャンプとゆう素晴らしい競技が混乱ではなく選手やチーム同士が純粋に喜び合える場であってほしいと心から願います」
高梨もまたその喜び合える場に立っていていい。それに値する選手であると誰もが知っている。 
●ジャンプ 高梨沙羅 “測り方が違った” 失格受け連盟に回答  2/11
北京オリンピックスキージャンプの新種目、混合団体で高梨沙羅選手がスーツの規定違反で失格となったことを受けて、全日本スキー連盟が高梨選手に聞き取りをしたところ、「今までと測り方が違った」と回答していたことがわかりました。全日本スキー連盟は北京オリンピック終了後、国際スキー連盟に対し検査のあり方などについて意見を添えた文書を提出する方針です。
「もう一度、測り直してほしいと言ったが…」
今月7日に行われたスキージャンプの混合団体で日本の高梨選手は、スーツの太もも周りが規定より2センチ大きかったとして失格となりました。これを受けて全日本スキー連盟は、高梨選手に聞き取りをしたということです。スキー日本代表チームの斉藤智治監督は「高梨選手は『今までのワールドカップと測り方が違った。もう一度、測り直してほしいと言ったが、聞き入れてくれなかった』」と回答していたことを明らかにしました。また斉藤監督によりますと、通常は腕を広げて体から30センチほど離して検査を受けるということですが、高梨選手は「バンザイするように求められた」と話しているということです。斉藤監督は「今後、ジャンプ競技というスポーツをクリアな大会にするためにも、今後の検査をフェアにすることが大切だ」と話していました。全日本スキー連盟は北京オリンピック終了後、国際スキー連盟に対しスーツの検査のあり方などについて意見を添えた文書を提出する方針です。
混合団体 5人が失格 海外選手らも疑問
スキージャンプの混合団体を巡っては、日本の高梨選手以外にも今大会、ノーマルヒルの銀メダリスト、ドイツのカタリナ・アルトハウス選手など合わせて5人がスーツの規定違反で失格となりました。当日の検査のしかたについて海外の選手やコーチも疑問を呈していました。
2人のスーツ規定違反があったノルウェーのクリスチャン・メイヤーコーチは「この日のスーツの検査は本当におかしい。厳しすぎるし、こんな試合がオリンピックなんてありえない」と怒りをあらわにし、同じくノルウェーのシリエ・オップセット選手は「検査の担当者は、これまでと全く違う方法で計測して、手続きも以前とは違った」と訴えていました。また、オーストリアのシュトルツ選手は「何が起こっているのかわからない。内部ベルトが1センチ大きかったので規定に合わなかったが、そんなことは起こるはずがなかった。今となっては、それにも確信を持てないでいる」と地元メディアの取材に心境を語っていました。
一方、スーツをチェックした担当者は「私からすればコントロールルームで特にいつもと違うことはしていない。失格になった選手をとても気の毒に思うが規則は規則であり、すべての人に適用されるもの。それに従わなければこうしたことも起こることをあらかじめわかっておくしかない」と話していました。 
●高梨沙羅ら“大量失格”の背景か…専門家が「不正行為の常態化」を指摘 2/12
ノルディックスキー・ジャンプの混合団体(7日)で高梨沙羅(25=クラレ)ら5人の女子選手がスーツの規定違反で失格となった問題の裏に、一部選手による不正行為≠フ常態化があったと指摘されている。
高梨らを失格させたポーランド人判定員のアガ・ボンチフスカ氏は失格の判断について正当性を主張しているが、日本をはじめ、失格者を出したドイツ、オーストリア、ノルウェーで猛批判にさらされている。
そんな中、ポーランドメディア「PAP」によると、長年国際スキー連盟(FIS)でジャッジを務めてきたジャンプスーツの専門家であるタデウス・ショスタク氏が「厳正な処分は五輪のずっと前からやるべきだった。以前は機材管理の責任者がこれほどまでに厳しくなかった」と実態を明かした。
同氏はこう続ける。「これまできちんとやっていれば、フェアプレー精神が特に重要な五輪でこんなに失格者を出すことはなかった。この種目では、いかにしてジャッジをだますか≠ニいうことまで実践されているのは周知の事実。ジャンパーは特定のことを避ける方法を教えられている」と暴露。スーツ検査の際に選手が検査官を欺こうとする行為が散見されていたため、五輪の大舞台で綱紀粛正≠図ったというわけだ。
そして「この流れを止めるのは判定する者の役目で、ジャンプを本当のスポーツに戻すことができる」。ルールを厳格に適用して選手を失格としたボンチフスカ氏の判断を支持した。
もちろん高梨ら日本勢がショスタク氏の指摘する違反行動を行っているわけではないだろうが、悪質なすり抜け≠ェ横行していた実態が今回の問題の背景にあるようだ。
●高梨沙羅スーツ違反問題 「責任の所在明確にすべき」の指摘が 2/14
北京五輪のスキージャンプ混合団体で高梨沙羅がスーツの規定違反で失格となったことについて、日本選手団の伊東秀仁団長が、国際スキー連盟(FIS)に抗議しない意向を表明したことが大きな反響を呼んでいる。
高梨は同競技の1番手で飛び、103メートルを計測。女子個人銅メダルのニカ・クリジュナル(スロベニア)の126・6点に次ぐ2位の124・5点が表示されたが、その後にスーツ規定違反で失格となったことが判明。規定違反の理由は高梨のスーツがもも周りが規定より2センチ大きかったという。1回目の得点が「0」となり、うずくまり顔を覆って涙を流している映像が映った。2回目は98.5メートルを飛び、佐藤幸椰、伊藤有希、小林陵侑も好ジャンプで猛追したが、4位とメダルに届かなかった。この競技で4カ国5人と失格者が続出。ルール適用と透明性について注目を集めた。
報道によると、13日に北京市内のメインメディアセンターで中間報告会見を行った伊東団長は「現時点ではすべての選手やスタッフのケアを最優先として今大会に注力することが必要だという認識」と強調した上で、「今すぐこのルールに対して我々が抗議するということではない。今後この規定に関してはスキー連盟を通していろいろ話し合いながら、抗議ではなく改善を求めていく可能性はある」と述べたという。
「各国の選手たちから『これまでと違う採寸方法だった』という証言が出ています。ルール違反をしたから従ってFISに抗議しないというのではなく、採寸方法がどう違ったのか、なぜ事前にその通達がなかったのかなど詳細を明らかにするように訴えるべきです。もちろん、高梨選手の精神的ケアは重要ですが、2度とこのような悲劇を繰り返さないためにも、なぜ今回のようなアクシデントが起きたのか検証しなければないといけない。一連の騒動の一番の問題点はルール運用が極めてあいまいなことです。計測方法は統一されるべきだが、『今までスーツ規定のチェックが甘かったから、今回も通るだろう』と日本選手団が判断したのであれば責任の所在を明確にすべきです。高梨を含めて選手たちは大げさでなく命をかけて戦っているわけですから」(スポーツ紙記者)
ネット上では、「協会が異議申し立てをしないと誰がするのですか?選手個人が発言するとバッシングやその後の競技活動に影響することとを考えても協会が質問状とかはっきりさせないとダメじゃないですか?事なかれ主義はダメですよ。ここまで話が大きくなれば 黙っているのが美徳となる日本はやめとかないと選手が可哀想です」「決定した結果について抗議しないのはわかるとしても、今回の件における様々な疑問点については、選手から聞き取った結果をとりまとめ、協会としてきちんと意見書を出し、運営側からの回答を求めるべき。選手と運営の言い分が異なっている以上、また、今後このような事態が二度と起きないよう、他国と足並みを揃え、徹底的にやるべき」などのコメントが。
高梨に責任を背負い込ませてはいけない。自身のインスタグラムで「今回、私の男女混合団体戦での失格で日本チーム皆んなのメダルのチャンスを奪ってしまったこと、そして、今までチームを応援してくださった皆様、そこに携わり支えて下さった皆様を深く失望させる結果となってしまった事、誠に申し訳ありませんでした。私の失格のせいで皆んなの人生を変えてしまったことは変わりようのない事実です。謝ってもメダルは返ってくることはなく責任が取れるとも思っておりませんが今後の私の競技に関しては考える必要があります。それ程大変なことをしてしまった事深く反省しております」と悲痛な思いを綴っているが、スーツ規定違反の責任はない。
伊東団長と会見に同席した原田雅彦総監督は、今月25日に開幕する女子W杯ヒンツェンバッハ大会(オーストリア)に向けて、高梨が欧州に入っていることを明らかにしている。深い悲しみにうちひしがれたが、前を向いて戦い続けている。一方で、今回のスーツ規定違反について、FIS、日本選手団は説明責任を果たす必要があるだろう。
●失格の高梨沙羅「やせてしまった可能性」 2日前と同じスーツを着用 2/7
北京五輪は7日、ノルディックスキーのジャンプ混合団体の1回目で、日本の1番手・高梨沙羅がスーツの規定違反で失格となった。
103・0メートルを飛び、124・5点で1回目の2位につけたが、得点は無効になった。
その後、1回目でオーストリア、ドイツにも失格が相次いだ。
「日本やオーストリア、ドイツと強豪国が軒並み、失格したことは聞いたことがない。何があったのか」
ソチ五輪で日本のジャンプ女子のコーチを務めた小川孝博さんは、驚きを隠せない様子だった。
「スーツは各国の選手がルールの中でギリギリを攻めている。だけど、日本が意図的に違反のスーツを使うことはまず考えられない」と話す。
公平性を保つため、ルールは年々厳しくなっており、毎年のように変化する。
体の部位によって、基本的に男子なら1〜3センチ、女子は2〜4センチしかゆとりは許されない。
選手はまず、スタート前に全員、スーツの股下の長さの測定を受ける。
飛んだあとは、何人かの選手がピックアップされて、スーツの空気透過率や太ももなど体の各部位のゆとりなどがチェックされるという。
選手は各部位のサイズを事前に申告しているといい、小川さんは今回の高梨のケースについては、「大会中にやせてしまった可能性もある」と話した。
競技会場にいる日本チームのスタッフによると、高梨は飛ぶ前の検査では問題がなかったが、競技後にピックアップして行われるチェックで、両太もものまわりが規定より2センチ大きいとされたという。
このスタッフは「こちらの確認不足。高梨はこちらが与えたスーツを着て飛んでいる」と話した。高梨は2日前の女子ノーマルヒルと同じスーツを着ていたといい、その時は失格になっていなかった。
●高梨沙羅選手の「ケアを徹底して」 2/8
日本が4位と健闘したスキージャンプ・混合団体。北京オリンピックで初めて実施された新種目だったが「スーツの規定違反」で日本を含む複数のチームのジャンプが失格となる波乱が起きた。日本は高梨沙羅選手が1回目のジャンプの後に失格を言い渡されたが、その後、チーム全員の奮闘で順位を押し上げた。だが、多くの視聴者は「そもそもなぜ、選手が飛ぶ前に検査をしないのか」という点も疑問に感じたようだ。いったい何が起きていたのか、経緯を振り返る。
「スーツの規定違反」。何が起きていたのか
高梨選手は1回目のジャンプで103メートルを飛び、一時は2位と幸先の良いスタートを切った。だが、その後しばらくして、放送を担当していた実況アナウンサーが高梨選手の「スーツの規定違反」による失格を伝えた。日刊スポーツの報道によると、日本の鷲沢徹アシスタントコーチは規定違反の理由について「太もも(部分)が2センチずつ大きかった。本人のせいではない。ぎりぎりで攻めていかないとメダルを取れない。どのチームもぎりぎりまで攻めてやっている」などと説明していた。実際に7日の混合団体では、高梨選手を含めオーストリア・ドイツ・ノルウェーで5人(4つの国のチーム)の選手のジャンプが同じ理由で失格となっていた。高梨選手は5日に女子ノーマルヒル・決勝にも出場していたが、7日の混合団体は5日の試合で着用したものと同じサイズのスーツを着ていたという。試合が行われた環境もこの度の波乱に影響を与えたようだ。会場となったジャンプ台(国立スキージャンプセンター)は標高1650メートルに位置し、7日に1回目のジャンプが行われた午後8時ごろの気温はマイナス10度ほどで湿度は38パーセントだったという。NHKは日本代表の宮平秀治コーチのコメントを報道。それによると、選手の調整面について「標高とともに気温も低く、体重の維持が難しい。水を飲んだりして体重を維持できるよう対処している」と説明していた。
“抜き打ち検査”に多くの視聴者が思っていたこと
物議を醸した「スーツの規定違反」。高梨選手は2021年のノルディックスキーのW杯でも失格になったことがあった。オリンピックでは原田雅彦さんが2006年トリノ五輪に出場した際に失格となったこともある。だが、今回は海外のチームの関係者も怒りを露わにした。日本と同じく失格となったドイツのコーチを務めるシュテファン・ホルンガッハー氏は、競技後のインタビューで「シーズンを通してスーツが問題になっていた。何が起こったか分からないし、私は信じられないほど怒っている。失望することしかできない」とコメント。“スーツ問題”が五輪特有のものではないことを指摘していた。国際スキー連盟(FIS)の規則では、スーツの規定について「直立姿勢で、スーツの寸法は身体と一致しなければならず、最大許容差はスーツのあらゆる部分において、ボディーに対しプラス1センチ〜3センチ(女子は同2センチ〜4センチ)とする」と確かに定められている。だが、多くの視聴者が思っていたのは、なぜ選手が飛ぶ前に検査をせず飛んだ後に検査をするのかという点だ。Twitterではこの対応に疑問の声が多く上がっていた。スキージャンプ男子の竹内択選手は、7日の日本テレビ系『NEWS ZERO』に出演し、検査がいわゆる“抜き打ち”で行われることを明かしていた。
「沙羅ちゃんのケアだけ徹底して」。仲間が訴える
竹内さんは8日、Twitterで自身の考えを発信。「今回の出来事は不運とは言わないと思う。明らかにおかしな状況であると言えます、カオスですね。結果は覆らないけど、こんなにまで失格者を出す運営ってなんだろう。しかもオリンピックで。沙羅ちゃん(高梨選手)のケアだけ徹底してあげたいところです」と運営側の問題を指摘していた。
今日の出来事は不運とは言わないと思う。明らかにおかしな状況であると言えます、カオスですね。結果は覆らないけど、こんなにまで失格者を出す運営ってなんだろう。しかもオリンピックで。沙羅ちゃんのケアだけ徹底してあげたいところです。。
高梨選手はスーツを着替えて2回目に臨み、98.5mのジャンプを見せた。だが、滑走の後はすぐさま顔を覆い、涙を流した。その後、得点が表示される場面で高梨選手はカメラに向かって深々と頭を下げた。責任を感じていたのが伝えるシーンだった。スキージャンプは女子の競技が終わった。今後は男子のラージヒルと団体が控える。順位やメダル獲得よりも願うのは、各々の選手が納得できるパフォーマンスをすることだ。“4年に一度”の舞台が後味の悪いものに終わって欲しくない。
●高梨沙羅が謝罪「私のせいで皆の人生を変えてしまった」 2/8
北京五輪に出場していた高梨沙羅(クラレ)が8日にインスタグラムを更新し、心境をつづった。7日のノルディックスキージャンプ混合団体の1回目にスーツの規定違反で失格。日本は4位だった。号泣した高梨は競技後、取材に応じられず、今回の投稿で初めて想いを明かした。
高梨はインスタグラムに真っ黒の画像を公開。メダルがなかったこと、違反してしまったことへの謝罪を記した。その上で、最後まで諦めずに戦った日本チームにも感謝。「今後の私の競技に関しては考える必要があります」とし、スキー競技が「選手やチーム同士が純粋に喜び合える場であってほしい」と願いを明かした。以下、投稿全文。

「日本チームを応援して下さっている全ての皆様
今回、私の男女混合団体戦での失格で日本チーム皆んなのメダルのチャンスを奪ってしまったこと、そして、今までチームを応援してくださった皆様、そこに携わり支えて下さった皆様を深く失望させる結果となってしまった事、誠に申し訳ありませんでした。
私の失格のせいで皆んなの人生を変えてしまったことは変わりようのない事実です。謝ってもメダルは返ってくることはなく責任が取れるとも思っておりませんが今後の私の競技に関しては考える必要があります。
それ程大変なことをしてしまった事深く反省しております。
そして、私のせいでメダルを取れなかったにも関わらず、最後の最後まで支え続けてくれた有希さん、幸椰さん、陵侑、そして日本チームのメンバーの皆さま、スタッフの皆さまには感謝してもしてきません。
こんな私を受け入れてくれて本当にありがとうございました。この度は本当に申し訳ありませんでした。
私が言える立場ではない事は重々承知の上で言わせていただけるなら、どうかスキージャンプとゆう素晴らしい競技が混乱ではなく選手やチーム同士が純粋に喜び合える場であってほしいと心から願います」

高梨は1回目に103.0メートルの大ジャンプ。124.5ポイントを獲得し、笑顔を見せた。しかし、スーツの規定違反でまさかの失格に。それでも、2本目も98.5メートルで意地のジャンプをマーク。佐藤幸椰、伊藤有希、小林陵侑とともに最後まで戦い抜いた。他国も含め、失格者は4か国5人と続出。ルールについて世界的に物議を呼んでいた。
●ジャンプ高梨沙羅に、06年トリノ五輪「悲劇のレース」を乗り越えた大津広美 2/8
北京五輪4日目 7日に行われたノルディックスキージャンプ混合団体で、高梨沙羅(クラレ)を含み、オーストリア1人、ドイツ1人、ノルウェー2人と5人もの女子選手がスーツ規定違反で失格になった。1回目の失格に泣き崩れながらも、1時間足らずの間に気持ちを切り替え、2回目にスーツを着替えてK点を超えた姿に、女子ジャンプの第一人者として3回目の五輪にかけたプライドがあふれ出ていた。審判が採点出来ない「魂の飛型点」の高さが、メダルとは別の輝きを十分に見せつけたと思う。
ただし、女子の有力選手5人が失格した点や、検査にあたった女性2人、検査方法、ランダム検査は通常通りだとしても、結果的に五輪新種目の意義と価値を大きく損なった点など、挽回した日本選手たちの頑張りだけでは十分ではないだろう。「抗議はない」とするFIS(国際スキー連盟)副会長の重職には、日本から村里副会長が就任している。こうした政治でも、是非指導力を、と願っている。
「トリノの悲劇のレースと、2人の女性トップスケーターの振る舞い」
太もも回りが2センチ大きかったと、突如失格させられ、立っているのも難しいほどうなだれ、選手や関係者に抱きかかえられる高梨の様子に、06年トリノ五輪のスピードスケートで起きた「悲劇のレース」と、女性アスリート2人を思い出した。
前回18年平昌五輪では、団体追い抜きで日本女子が金メダルを獲得。他国を圧倒するチームワークには、多くの人が胸を揺さぶられたはずだ。今大会も金メダル候補にあげられる。
実は同種目、トリノから初めて新種目に加わった。初の種目の初代女王を目指した日本は、大津広美、当時ダイチに所属していた田畑真紀、富士急の石野枝里子、と富士急に在籍したメンバー3人で見事なコンビネーションを展開、銅メダルをかけた3位決定戦では、一時ロシアを1秒近くもリードした。先頭で引っ張った大津は残り約2周の地点で、ラップを上げようとの作戦で先頭から最後尾に移動。しかしバランスを崩して、そのままリンクサイドのマットにあおむけで激突し、ロシアにメダルを譲ってしまった。
新種目での、しかもトリノでメダルがなかったスピードスケートチーム初のメダルが見えた瞬間だった。オリンピック初出場の大津は、今回の高梨と同じようにレース後うなだれチームメートや関係者に抱きかかえられ、「先頭の交代で焦ってしまったんだと思う。もしかしたら表彰台に立てたかもしれないのに……私の責任です」と泣いた。
「五輪の様々な魔物と戦ったアスリートたち」をテーマに原稿を書くため、2019年、第一子の出産を控える大津に13年ぶりに話を聞いた。この時、それまで話して来なかったエピソードを穏やかな表情で明かしてくれた。ほとんどの選手、関係者に「あなたの責任ではない」「4位になれたのは大津のおかげ」と慰められたが、13年経った今も忘れられない、そして、その意味や強さを改めて思い起こす言葉をかけてもらった、と。
4度目の五輪出場を果たし、トリノ五輪では主将の重責に、風邪で発熱しながら500b4位に入った同じ富士急の先輩、岡崎朋美はうなだれる大津に笑顔でこう言ったそうだ。
「オリンピックで記憶に残る選手になれて良かったねぇ!」
岡崎にも取材をすると、その時かけた言葉の理由を、笑いながら振り返った。
「確かにメダルは逃しましたが、それもオリンピックならではなんです。ベストは尽くしましたし、五輪のアクシデントを責めるのはおかしな話です。だから、記憶に残る選手になれて良かったね、と言ったと思います」
もちろん、帰国してから別の言葉で励まし共に練習を続けた。あとわずかで転倒して初種目のメダルを逸した大津と、「アクシデントはオリンピックならではなんだ」と腹を決め、その中でベストを尽くせたかどうかなのだ、と言ったオリンピック百戦錬磨の岡崎。先人のこういう女性アスリートたちが、アクシデントを、自分を乗り越え、冬季五輪の歴史を塗り替えてきたのだと、高梨も知っているだろう。
●高梨沙羅に謝罪文を書かせたのはいったい誰か 2/10
北京オリンピックに出場していた高梨沙羅選手が2月8日、自身のインスタグラムを更新し、その内容が大きな反響を集めています。高梨選手は7日に行われたノルディックスキージャンプ混合団体の1回目で、スーツの規定違反による、まさかの失格。涙を流しながらも2回目のジャンプに挑み、見事に成功させましたが、その後は取材に応じられないほどの焦燥した姿を見せていました。
悲痛なほどに思いつめた謝罪文を投稿
高梨選手は2度の「申し訳ありませんでした」という謝罪だけでなく、「日本チーム皆んなのメダルのチャンスを奪ってしまった」「私の失格のせいで皆んなの人生を変えてしまった」「責任が取れるとも思っておりません」「大変なことをしてしまった事深く反省しております」などと悲痛な言葉を重ねました。
その文章と同等以上にショックの大きさを物語っていたのは、写真や動画がベースのインスタグラムに、背景が真っ黒の写真をアップしていたこと。その内容が人々の想像を超える深刻なものだったからか、9日朝の時点で2万6000件を超えるコメントが寄せられました。
また、9日朝の情報番組でもトップニュース級の扱いで報じられ、「めざまし8」(フジテレビ系)の「AI集計 記事アクセスランキング」で1位、「SNSから抽出 最新ニュースワードンキング」で2位を記録。今回は圧倒的に擁護の声が多かったにもかかわらず、報道の中には、「一部で批判の声が挙がっていること」を紹介する番組もありました。
なぜ高梨選手はこれほど思い詰めたような謝罪文を書かなければいけなかったのでしょうか。
「良い、悪い」を勝手に決める人々
まず一部で挙がっている批判の声に関しては、気にする必要すらないでしょう。批判の声は酷いものであるものの、ごく少数派に過ぎない以上、それをわざわざピックアップするメディアのほうが不自然。むしろ「批判はけしからん」と言うことで番組や記事への注目を集めたいメディアによるものとみなすほうが自然です。
また、その数日前に報じられた高梨選手のメイクに対する批判を結びつけて考察するメディアや専門家もいますが、そもそもこのような批判ありきの少数派意見を採り上げて得をするのは、そのメディアや専門家だけ。一方、そんなマッチの火を大火にするような報道を見て声を挙げる人々も「メディアや専門家の誘いに乗っている」という点で、問題の一端を担っています。
もともと批判ありきの声を挙げる人は以前からいましたが、やはりごく少数派であり、取るに足らない存在にすぎませんでした。最大の問題は、そんな批判を浴びせる少数の人々ではなく、他人の言動に「良い、悪い」を勝手に決めつけて悦に入る人が多いこと。そんな人が多いから、本来取るに足らないはずの批判をピックアップしてしまうメディアが後を絶たないのです。
高梨選手がこれほどのプレッシャーと責任を抱えることになってしまったのは、自分に直接関係のないことに対しても、「これは良い。これは悪い」と判断を下す人々が多いからではないでしょうか。さらに、もし「悪い」と判断されたら、日常生活に支障をきたすほどの猛烈なバッシングを受けるのですから、必要以上に落ち込んでしまうのも当然でしょう。
個人の尊重が叫ばれる中、アスリートに限らず芸能人や文化人などの有名人たちは、常にその言動を世間から「良い、悪い」と勝手に判断されるプレッシャーにさらされています。
今回が3度目のオリンピック出場となる高梨選手は、そんなプレッシャーを長年感じ続けてきただけに今回の結果は、「世間の人々から『悪い』と判断された」と感じたではないでしょうか。特に今回は国の名前で戦う団体戦だったため、高梨選手へのプレッシャーはさらに高まり、それがインスタグラムへの悲痛なコメントに表れていました。
藤井アナの言葉は本当に優しいのか
また、8日夕方に放送された「『news every.』(日本テレビ系)で藤井貴彦アナが高梨選手に向けて「もう謝るのはおしまいにしてください」などと語りかけたことが人々の感動を呼んだ」という記事をいくつか見かけ、ツイッターのトレンド入りしていたそうですが、これも耳当たりの良い言葉を並べただけで、同じ図式に過ぎません。
藤井アナが「高梨選手は良い」というメッセージを勝手に発信し、勝手に同調している人が多いだけであり、依然として高梨選手に「良い、悪い」のレッテルを選んで一方的に貼り続けている状態に変わりはないのです。
番組も藤井アナも視聴者も、今回は「良い」というレッテルを貼っているだけで、その図式に気づいていません。むしろ「日ごろから他人に『良い、悪い』のレッテルを貼ることをやめるべき」ということを発信する人が増えなければ、現状を変えることは難しいでしょう。
一方、「めざまし8」の谷原章介さんは、「『気にしなくてもいいよと言えば言うほど苦しんでしまうかな』と思うと、『僕たちはどうすれば彼女のことを癒してあげられるんだろう』と思うんですけど……」とコメントしました。ただ耳当たりの良い言葉を発するのではなく、「答えがわからない」ことを認め、「もっと考えていかなければいけない」というニュアンスを感じさせたのです。
さらに、「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)の羽鳥慎一さんは、「これから帰国もされると思いますけど、『私たちは報道の仕方というのに気をつけていかなければ』と思います」とコメントしました。この言葉が最も本質をとらえていましたが、大切なのは今後、人々が他人に「良い、悪い」のレッテルを貼ることをあおるような報道は避けること。それを明言できないところにMCという立場の難しさと、もどかしさが感じられたのです。
人格者を思わせる最後の一文
高梨選手がインスタグラムへのコメントで、名前のあとに書き足された最後の文章が、彼女の人柄を物語っていました。
「私が言える立場ではない事は重々承知の上で言わせていただけるなら、どうかスキージャンプとゆう素晴らしい競技が混乱ではなく選手やチーム同士が純粋に喜び合える場であってほしいと心から願います」
この一文で、「いかに高梨選手が利他的な素晴らしい人物であるか」がわかるでしょう。これだけ自分が追い詰められた状況においても、彼女が考えるのは競技や仲間たちのことでした。もしあなたが、そんな人格者に「良い、悪い」の判断を下しているとしたら、決まりが悪いのではないでしょうか。
もはや日本代表という立場も、団体戦というジャンルも、「国や国民のために戦う」というニュアンスは薄い時代になりました。今後、高梨選手がクリアな気持ちで「自分と仲間のために戦う」ことができることを願ってやみません。 
●松本人志 高梨沙羅の失格問題に憤慨 2/13
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(58)が13日に放送されたフジテレビ系情報バラエティー番組「ワイドナショー」に出演し、北京冬季五輪スキージャンプ混合団体で、スーツの規定違反で1本目の記録が取り消された高梨沙羅(25)=クラレ=の問題について「後から言われたルールは守りようがない。人の人生、何やと思うとんねん。M―1で優勝したのにネクタイしてなかったから駄目(という感じ)」などと憤った。
ゲストコメンテーターの2014年ソチ五輪男子団体銅メダリストの竹内択(34)が「失格はワールドカップ(W杯)でもあるんですが、今回は(失格が)女子選手だけだし、メダルが有力視される競合だけだし、個人戦があった後など、いろいろな疑問点がある。ちょっと普通じゃない」と問題点を指摘すると、松本はいじり半分「怒ってますよね。目がバッキバキですから」と返した。
松本はさらに「明日はわが身というわけじゃないですけど、みんなで抗議したらどうですか」と話すと、竹内は「普段のW杯でも、あの選手大きくない? とか見ていると分かるんですよ。そこには選手が介入できなかったりする」と説明した。
●高梨沙羅の “疑惑ジャッジ” に日本選手団が「抗議せず」… 2/14
北京五輪でスキージャンプ混合団体に出場し、スーツ規定違反で失格となった高梨沙羅。日本選手団が「今すぐ抗議することはない」との方針を示したことで、波紋が広がっている。
競技当日、103メートルの大ジャンプを見せたが、その後の抜き打ち検査でスーツ規定違反により1回目のジャンプは失格に。太もも周りのサイズが規定より2cmオーバーしていたという。高梨は号泣しながら、スタッフに抱えられて控室に戻っていった。
「この日、スーツ規定違反で失格になったのは高梨だけではありません。参加10カ国中5カ国の女子選手たちが失格となっているのです。高梨含め、選手からは『検査方法がいつもと違った』といった証言も出ています。
検査の責任者たちは『手順は変わっていない』とメディアで反論していますが、“疑惑のジャッジ” として、各国から説明を求める声が殺到しているんです」(スポーツ誌ライター)
騒動が大きくなるにつれ、日本も対応に動き出した。全日本スキー連盟の斉藤智治常務理事によれば、全日本連盟から国際スキー連盟に対し、“抗議” ではなく、検査方法に関する何らかの “提案” をまとめ、文書で提出するという。
2月13日におこなわれた日本選手団本部による記者会見では、伊東秀仁団長が「現時点では選手・スタッフのケアを最優先し、今大会に注力することが重要」とし、「今すぐルールに対して抗議することはない。スキー連盟を通して、いろいろ話し合いながら……国際連盟に抗議することはないが、改善を求めていく可能性はある」と、今後の方針を示した。
ただ、こうした対応は、当日の詳しい経緯を明らかにするとは思えないとして、SNSでは、モヤモヤした声があふれている。
《メンタルケアが最優先、全くもってその通り。が、明らかに間違っていることであればハッキリ主張する事も同じくらい大切では?》
《いつまで事なかれ主義でいくの?おかしいものはおかしいと言わないと。だから日本は舐められる》
《選手のケアは当たり前のことで、おかしい事はおかしいと、しっかり抗議しないのはやはり納得できない。命がけでやってきた選手を守る気概を見せろ》
高梨は競技後、自身のインスタグラムで《私の失格のせいでみんなの人生を変えてしまったことは変わりようのない事実です》と綴っている。
現在は次のW杯に向けて欧州入りしており、原田雅彦総監督によれば、「チームのみんな、それから国民のみなさまに本当に励まされて元気になった」というが、胸中はいかばかりか。
今回の騒動が、誰もが納得いく方向に収まることを願うばかりだ。
●常軌を逸していた高梨沙羅選手へのメーク批判 2/14
北京五輪のスキージャンプ女子ノーマルヒル代表・高梨沙羅選手(25)へのメーク批判は常軌を逸していた。2012年に高梨選手がワールドカップ(W杯)に初優勝した15歳当時の印象が強いためか、これまでにも高梨選手のメークが話題に上がることがあった。ただ、今回のように〈チャラチャラするな〉〈メイクしている暇があれば練習しろ〉などの厳しい言葉とともにSNSで「メイク批判」がトレンドワードになることはなかったように思う。
こうした心ない批判に対し、元レスリング世界女王のダルビッシュ聖子(41)やX JAPANのYOSHIKIら著名人が擁護の声を上げた。
学生の時にはメークをすると怒られるが、社会に出るとメークはマナーになる。さらには年齢やTPOに応じたメークを求められるようになるなど、女性のメークには「注文」が多い。
なぜ、今回のような批判が起こったのか? 一般社団法人メイクセラピストジャパン代表・岩井結美子氏に話を伺った。
メーク批判をする2つの抑圧パターン
「高梨選手のメークを批判している方々は大きく分けて2つの特徴があります。一つ目は、女性性のアピールに対する偏見や思い込みを持っている方。過去に女性から受けた傷つき体験が引き金になることがあります。メークという行為によって女性性が増すように感じられ、ご自身でも気づかないうちに、無意識にオーバーラップしてしまう。それが思い込みや偏見となり、メークそのものに対する嫌悪感に繋がっているパターンです。
二つ目は、過去に親などからメークをするなと制限されたり、肌質などが原因でメークすることができなかったりして、キレイになることを楽しめなかったコンプレックスが誘発され、メークそのものをネガティヴなものと捉え、嫉妬の感情を生んでいるパターンです。」
メークで容姿を華やかにすることが「はしたない」「ふしだらだ」というイメージは、令和の時代になっても未だ根強く存在してしまっているのかもしれない。岩井氏が続ける。
「脳にとっては変化もストレスなので、『第一印象の15歳の頃のままの高梨選手でいて欲しい』という思いと、アスリートは選ばれし神聖な存在であってほしい、クリーンかつナチュラルであるべきという無意識の期待が存在していることも原因のひとつだと思います。そこにメークによって世俗的な要素が加わってしまうことで、自分の中のアスリートに対するピュアなイメージが汚されたと感じてしまうのでしょう」
アスリートにとってメークはユニフォーム
しかし、アスリートにとってメークの目的は、容姿をより良く見せることだけではない。
「鏡を通して視覚から自分の顔の印象が入ってきた時に『今日の私イケてる』と思うことで、まず自己肯定感が安定します。するとおのずとパフォーマンスも安定してきます。アスリートにとってモチベーションが下がる不安要素を取り除くことは当たり前のこと。メークをする暇があるなら練習しろという批判の声もありましたが、高梨選手は競技に集中するための手段としてもメークをしているのだと思います。アスリートは試合前に集中するために瞑想をしたり、アロマを焚いたり、音楽を聞いたりなどのメンタルを整えることをしているはず。それらとメークすることは同じ位置にあるといえるのではないでしょうか?」
実際に高梨選手は過去のインタビューで自身の性格を「もともとネガティブの塊」分析し、メンタル強化の方法を模索したという。
高梨選手のメークの変遷には、「研究と分析」の跡が感じられ、きっとそれはアスリートとしても培った視点が用いられていたのだろう。メークは戦うための「武器」でもあるし、アスリートにとっては必要な「ユニフォーム」といえるのではないだろうか?
●号泣の高梨沙羅に駆け寄った女性は理学療法士だった!  2/15
7日に行われた北京五輪ノルディックスキー・ジャンプ混合団体で高梨沙羅(25=クラレ)がスーツの規定違反で失格なったことで意外な人物が注目されている。
失格判明後、泣き崩れる高梨のそばに寄り添い、ティッシュを渡して肩をさすって慰める姿がテレビで中継されていたのを覚えている人もいるだろう。その女性は着用のウエアからドイツチーム関係者であることは指摘されていたものの、日本国内では誰なのか特定までは至っていなかった。ネット上では「誰なのだろうか。教えていだだけませんか」などの声が上がっていた。
そんななか、ドイツメディア「ユーロスポーツ」は「ドイツチームの理学療法士であるテレジア・シュスターが、泣きじゃくる高梨沙羅を慰める映像が映し出されていた。この映像はSNSで拡散されて日本ではシュスターはヒロインとなっている。日本で賞賛のコメントが相次ぐ」と報じた。ドイツ勢も混合団体でカタリナ・アルトハウス(ドイツ)が失格となったが、他国選手への気遣いはさすがだ。
陰ながら選手を支える理学療法士が、いつもと変わった形で注目された出来事だった。
●ハーフパイプ平野歩夢が「金」 スノーボード日本勢で初 2/11
北京冬季五輪第8日の11日、スノーボード男子ハーフパイプで平野歩夢(23)が96・00点で優勝した。1998年長野五輪で採用されたスノーボードで日本勢金メダル第1号となった。15歳だった2014年ソチ五輪は2位で冬季五輪の日本選手最年少メダリストとなり、平昌五輪も「銀」。冬季の日本選手で初めて3大会連続のメダルを獲得した。
元世界王者で銀メダルのスコット・ジェームズ(オーストラリア)や、過去3大会優勝で4位に入ったショーン・ホワイト(米国)らとの熱戦を制した。
平野海祝は75・50点で9位、戸塚優斗は69・75点の10位、平野流佳は12位。
平野歩夢の話 まだ実感がないが、ようやく小さい頃の夢が一つかなった。ここを取らずには終われなかった。ずっとやってきたことが全てここで出し切れた。2回目の点数は納得できず、自分の怒りが最後にうまく表現できた。
●平野歩夢の採点、2本目「茶番だ…」 3本目「正義だ!」 2/11
北京五輪は11日、スノーボードの男子ハーフパイプ決勝が行われ、冬季五輪2大会連続銀メダルの平野歩夢(TOKIOインカラミ)が96.00点を記録し、日本スノーボード史上初の金メダルを獲得した。2回目は大技連発するも得点は伸びずに2位となったが、最終試技で大逆転した。米国で五輪放映権を持つ放送局「NBCスポーツ」の実況席は採点に揺れ、「こんなはずがない!」と大混乱から一転、「正義だ!」と熱狂した。
本場・米国の実況席も揺れる平野劇場だった。平野は2回目の試技で「トリプルコーク1440」をはじめ、1440を3度も入れる史上最高難度のルーティンを成功。「NBCスポーツ」の中継で、解説を務めたスノーボーダーのトッド・リチャーズ氏は「アユム・ヒラノは異星人だ!」「これで終わりだ。このランには誰にも届きっこない」「98点くらいでしょう」と演技直後は興奮気味だった。
しかし、得点は91.75点と予想外に伸びず。「えぇっと……えっ? なにかミスがありましたか? 一体……ちょっと待ってくれ。こんなはずがない! 91.75点だと!?」と絶句。実況の同局アナウンサー、トッド・ハリス氏から「何が起きたんでしょう」と問われると、語気を強めた。
「自分が懸念する限り、ジャッジは信頼性を粉々に破壊してしまった」「良いランがどんなものか私は知っている。このランのどこを減点できるのか説明してくれ。信じられません。正直言ってこれは茶番ですよ」などと憤慨した。
平野はそれでも、3回目で2回目を上回る試技を披露。リチャーズ氏は「この競技を長年やってきた私は、ハーフパイプがどんなものか知っています。これ以上、技術的に高いランはあり得ません」「ジャッジは得点をあげるでしょうか」と固唾をのんで見守り、金メダルが確定した。
「正義だ! ハーフパイプ史上最高のランでした」と2回目とは一転して熱狂。米国が誇るレジェンド、ショーン・ホワイトを擁し、注目された競技だったが、日本に誕生した新王者を祝福していた。
●平野歩夢、採点可視化を提起 不可解判定巡り 2/12
北京五輪スノーボード男子ハーフパイプで金メダルを獲得した平野歩夢(23)=TOKIOインカラミ=が12日、メダリスト会見を行った。
平野は金メダルを決めた3本目と同じルーティンを2本目で成功させていたが、91・75点と低い点が出され、その時点で2位に止まった。これが不可解判定として世界中に波紋が広がっている。
平野は2本目の採点についての思いを吐露。「まずは僕が思っているように、周りの人も同じように思ってくれていた。僕以上にもっと怒っている人もいたり。僕だけじゃなく、今後のスノボのジャッジの基準として、しっかり今回はどこをみていたのかという説明を聞くべきだとは思いますし、競技やっている人たちは命を張って、リスク背負っている。選手のために整理させた方がいいんじゃないか」と、問題提起した。今後のスノーボード界を思い「振り返ってみると、スルーしない方がいいんじゃないかというところはある」と、改めて語った。
ハーフパイプの採点は、パイプ上で繰り出される5〜6つの技を6人の審判員が全体の印象で採点。各審判が出した得点の最高点と最低点を除いた平均点で競う。今回の事象はフィギュアスケートのように技1つ1つに得点があるわけではなく、印象が大きく左右するために起きた事象といえる。
平野は言葉を選びながら「スノーボードは幅広くて、色んなスタイルあるからこその魅力、自由さが1つのかっこよさとしてある」としつつ「それはそれとして切り分けるべき。競技の部分では競技の高さ、グラブ、そういうものを計れるように整えていくべきだと思います。ジャッジの評価は、そういう意味では、まだまだちゃんとしていない。選手の最大のリスクを抱えてやっているものに対して、もっと評価してジャッジするべき。なにか新たなシステムを、他の競技ではそういうのがあるので。大会と大会ではないものきりわけた上で、しっかりするべき時代になってきたんだと思う」と、強く訴えた。 
●平野歩夢、採点論争を未然に防いだ金メダルに英紙称賛 2/12
北京五輪は11日、スノーボードの男子ハーフパイプ決勝が行われ、平野歩夢(TOKIOインカラミ)が金メダルを獲得した。最後の試技で逆転優勝となったが、2本目の得点の低さには米国で五輪放映権を持つ放送局「NBCスポーツ」の実況席も疑問を呈していた。これに英メディアも注目。「全ての解説者は安堵した。採点の論争を話題にしなくて良くなったから」などと指摘している。
スノーボードでは日本史上初の金メダルを獲得した平野。最後の試技で逆転したが、2本目も4回転の中に縦3回転を入れる「トリプルコーク1440」など大技を次々に成功させた。しかし、得点は91.75点と思ったほど伸びず。海外では大きな議論が巻き起こっていた。
英紙「ガーディアン」は2本目終了時点で、「2本目終了。そして、ジャッジの論争が巻き起こっているのか?」と速報。競技を中継していた米「NBCスポーツ」で解説者を務めたスノーボード界のレジェンド、トッド・リチャーズ氏が憤慨した件に注目していた。
記事では「日本のアユム・ヒラノはまたしても前人未到のトリプルコークを繰り出した」「完璧なコンビネーションでリチャーズを驚嘆させた」などと報じ、リチャーズが「これが優勝ランだ」などと興奮気味に語ったことも伝えた。しかし、得点が表示されると「91.75? そんなわけあるかい!」「ジャッジは信頼性を粉々に破壊してしまった」などと語気を強めた様子を描写した。
それでも平野は3本目で逆転優勝。同紙の速報では「ジャッジよ、2本目のランは君たちに十分ではなかったのか? そうか。これならどうだ。彼の最後のランは2本目のトリックと全く同じだったが、さらに良くなった。ファイナルスコアは96.00。全ての解説者は安堵した。彼らは採点の論争について話題にしなくても良くなったからだ」と伝えていた。
「採点スポーツは常に多少、主観的になる。しかし、ヒラノは他の誰よりも困難なランを実践していた。そして、着地も完璧だった」と記事では平野を絶賛していた。
●平野歩夢 採点方式の限界を指摘 2/13
北京冬季五輪のスノーボードで不可解な採点やジャッジのミスが相次ぎ、非難が噴出している。男子ハーフパイプで初の金メダルに輝いた平野歩夢(TOKIOインカラミ・新潟県村上市出身)も疑念を隠さず「どこを見ていたのか聞きたい。命を張っている選手のためにも整理させた方がいい」と訴え、主観的な印象を数値化する現行方式の限界を指摘した。
11日の決勝2回目。平野歩は自身しか大会で決めたことがない「トリプルコーク1440」(斜め軸にした縦3回転、横4回転技)を組み込んだ圧巻の試技をミスなく完走した。だが表示された得点は、平野歩ほどは試技の難度が高くない印象だった首位選手に0・75点及ばず、会場では各国選手や関係者からブーイングが起こった。
米国のテレビ解説者が「あり得ない」と激怒し、会員制交流サイト(SNS)も炎上。3回目に2回目と同じ試技で完成度をより高く通し、4・25点伸ばして優勝した平野歩は「(回転数など)全部を(数値で)測れるようなシステムを整えていくべきだ」と求めた。
批判殺到
7日の男子スロープスタイルでも“ミスジャッジ”があった。マックス・パロット(カナダ)が90・96点をマークして優勝を決めた試技。横4回転半技の加点要素でグラブ(板をつかむ技)が認定されたが、実際につかんだのは右膝だった。わずか2・26点差で2位だった蘇翊鳴(中国)は、今大会でただ一人、横5回転の大技を決めた。蘇を指導する日本人コーチの佐藤康弘さんは「悔しいが、ジャッジも人間だから仕方がない」と潔かったが、SNSでは「蘇は金メダルを盗まれた」と批判が殺到した。
危険度増
今大会のハーフパイプは高さが7・2メートルで、2002年ソルトレークシティー五輪より2・3メートルも高い。20年前は横3回転や斜め軸の縦1回転、横2回転半が最高難度だった技も、平野歩が3回とも決めたトリプルコーク1440へと急速に進化した。年々、危険度が増す中で限界を押し上げる挑戦を続ける平野歩は「競技をやる人は命を張ってリスクも背負っている」と、鍛錬の成果が正確に評価されることを切に願った。
●ワリエワ ロシアがドーピング疑惑だけでない「もう一つの心配事」 2/13
2月7日、フィギュアスケート団体戦で、2大会ぶりに優勝したROC(ロシア・オリンピック委員会)。2位の米国に9点差をつける圧勝劇だった。
その立役者は15歳のカミラ・ワリエワだ。女子として五輪史上初の4回転ジャンプを成功させるなど、女子のSP(ショートプログラム)とフリーでともに1位(10点)の活躍で、衝撃の五輪デビューを飾った。
「女子フリーでは、4回転サルコーとトーループを連発し、ノーミスだった2位の坂本花織に30・26点差の強さでした。地元のロシアのテレビ局が付けた異名は『絶望』。確かにライバルにとってはお手上げの存在です」(スポーツ紙デスク)
そのワリエワが今、ドーピング疑惑に揺れている。
「欧州の複数のメディアが9日、『北京五輪前に行われた薬物検査で、禁止成分とされている血管拡張作用があるトリメタジジンが検出された』という旨を報じ、団体戦で獲得した金メダルの剥奪や個人戦の出場停止の可能性が浮上していた」(前出・スポーツ紙デスク)
一方で、『薬物は競技力向上のためではなく、心臓に疾患がある場合に使用されるもの』という内容の報道もあり、翌10日になると、ロシアのメディアが《調査が終了し、個人戦に出場することが決まった》と、相次いで報道した。
「ロシアメディア『Championat』は、内部での議論の結果、ワリエワの疑惑が晴れて予定どおり個人戦に出場することが決まったと報じ、ロシアメディアの『OKA』も『ワリエワは世界アンチ・ドーピング機構(WADA)から罰を受けることはない』などと伝えています。
ただ、ロシアの各メディアは『この決定がスポーツ仲裁裁判所(CAS)に持ち込まれる可能性が残されている』とも指摘し、個人戦の終了後に再び、問題視されることもありそうです」(前出・スポーツ紙デスク)
WADAの規程により、16歳未満のアスリートは正式に発表などが行えないため、ワリエワの肉声は聞こえてこないが、現地から「彼女の心配事は、それだけではない」という話が流れてきている。
「それはコロナ感染です。代表選手であれば、彼女に限らず誰もが不安ですが、ROCのフィギュアスケート女子代表の3人娘は17歳以下です。昨年11月、ロシア通信の取材に対し、ROCのポズドニャコフ会長は『未成年者へのワクチン接種が認められていないため、私たちの選手が隔離されることはないとIOCに確認した』と語っていました。
つまり未成年の彼女たちは、ワクチンを打つことができなかった。一般的に予防接種で免疫ができることで、再び感染症にかかりにくくなり、かかっても症状が軽くなるだけに未接種の彼女らは不安を抱えているでしょうね」(スポーツジャーナリスト)
7日のアイスホッケー女子1次リーグA組カナダ対ROC(ロシア・オリンピック委員会)は、両チームがフェースマスクの下にマスクを着用して行われた。
「予定されていた試合開始時間になっても、リングに現れたのはROCの選手だけでした。ロイター通信は『カナダの地元メディアは、ROCがカナダ側に新型コロナウイルスの検査結果を通達していなかったため、カナダは会場入りを遅らせた』と報じていました。ROC側は先週、6人の陽性者が判明し隔離に入っていただけに、カナダ側が不安を覚えたのも納得できましたね」(前出・スポーツジャーナリスト)
第3ピリオドでは、ROCがマスクを外してプレーするなか、カナダは最後までマスク着用のままだった。NHKは速報で、「大会3日目の6日までに、新型コロナに感染が確認された各国の選手やチームの関係者は142人で、スキーのジャンプやノルディック複合のトップ選手が感染したケースも明らかになっています」と報じているが、続報が聞かれない。
「大会組織委員会からの発表がないためだと思いますが、現地ではバブル内感染も起きて、選手も報道陣も不安が募るばかり。ROCはフィギュアスケート団体戦で、通常は個人戦を見据えてSPとフリーで別々の選手を起用するところをワリエワ1人に任せた。
本気で金メダルを獲りにきたとも見えますが、『コロナのリスクヘッジではないか』という声も聞かれました。ワリエワ以外にも、昨季世界女王のアンナ・シュバルコアと複数の4回転ジャンプが跳べるアレクサンドラ・トルソワの豪華布陣ですから、個人戦の金メダルは取りこぼしたくない」(前出・スポーツ紙デスク)
フィギュアスケート女子で、史上初の表彰台独占を狙うROCに、ドーピング疑惑以外でも暗雲が立ち込めてきた――。
●「五輪が彼女に勝利の喜びと夢の実現をもたらす」… ワリエワを激励  2/13
フィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ選手(15)がドーピング問題で揺れる中、2006年トリノ五輪金メダリストで、「皇帝」の異名を持つロシアのエフゲニー・プルシェンコさんが13日、インスタグラムの公式アカウントで「このオリンピックが彼女に勝利の喜びと夢の実現をもたらすと信じている」と投稿した。
プルシェンコさんはワリエワ選手について「フィギュアスケート史上最高の選手の一人。世界中の何百万人ものファンを刺激し、驚かせる。このスポーツを始めたばかりの何千人もの少女や少年のアイドルだ」と強調。「これからも彼女のスケートに喜び、感動し、刺激を受け続けたい」と期待を寄せた。
ワリエワ選手は7日に終わった団体で優勝し、15日午後7時(日本時間)から始まる個人戦でも優勝候補に挙げられている。スポーツ仲裁裁判所(CAS)は今後の試合の出場可否にかかわる裁定を14日午後に下すとしている。
●ワリエワの処分めぐる問題 IOC“年齢に配慮した対応重要”  2/13
北京オリンピック、フィギュアスケートの、ROC=ロシアオリンピック委員会のカミラ・ワリエワ選手へのドーピング違反による処分をめぐる問題で、IOC=国際オリンピック委員会は「15歳という年齢で、非常に慎重に扱わなければいけない」と、年齢に配慮した対応の重要性を強調しました。
今月7日に行われたフィギュアスケート団体で金メダルを獲得した、ROCの15歳のワリエワ選手について、ITA=国際テスト機関は、去年12月のドーピング検査で血流促進作用などのある禁止薬物「トリメタジジン」の陽性反応が出たことを発表しました。
ロシアアンチドーピング機構は、ワリエワ選手を一時的な資格停止処分としたものの、その後、ワリエワ選手側からの抗議を認めて処分を解除したため、IOCやWADA=世界アンチドーピング機構などはこの決定を不服として、CAS=スポーツ仲裁裁判所に申し立てを行いました。
この問題について、IOCのクリストフ・デュビオリンピック統括部長は13日の会見で「15歳の年齢でこうした状況に置かれているということに着目し、非常に慎重に取り扱わなければいけない」と話し、年齢に配慮した対応の重要性を強調しました。
そのうえで、IOCのマーク・アダムス広報責任者は「選手の精神状況のケアはまずチームが行うものだが、大会としてもさまざまなサポートを用意している」と話し、必要に応じてワリエワ選手を精神的にサポートする考えを示しました。
ワリエワ選手をめぐるCASの裁定は、ワリエワ選手が出場予定の女子シングルショートプログラムの競技前日の、14日午後に出されることになっています。
●ドーピング問題で注目、ワリエワのSP滑走は26番目…  2/13
15日に行われる北京オリンピックフィギュアスケート女子ショートプログラム(SP)の滑走順抽選が13日に行われ、ドーピング問題をめぐって、今後の出場可否に注目が集まるカミラ・ワリエワ(ROC=ロシア・オリンピック委員会)は、5組目の2番目、30人中26番滑走の予定と発表された。競技は15日の日本時間午後7時から始まる。
河辺愛菜(木下アカデミー)は1組の4番目。樋口新葉(明大)は4組目の2番目となる20番目、日本のエース坂本花織(シスメックス)はワリエワと同組の最終5組目の6番目、30番目の最終滑走となった。
ワリエワのドーピング問題をめぐっては、スポーツ仲裁裁判所(CAS)が、今後の出場可否にかかわる裁定を14日午後に下すとしており、13日夜に、オンラインでワリエワ選手らの事情聴取を行う。
スポーツ仲裁裁判所 (CAS=Court of Arbitration for Sport)1984年、IOCが設立した1審制の第三者機関。本部はスイス・ローザンヌにあり、スポーツに関する選手や組織間の様々な紛争の解決を図る。個々の案件について、法律家などでつくる仲裁団が結論を出す。
●ワリエワ笑顔で「グッドモーニング」ドーピング騒動後初の肉声 2/13
15日にショートプログラム(SP)を控えたロシア・オリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ(15)が、ドーピング違反による騒動後、初の肉声を発した。午前7時35分(日本時間同8時35分)から35分間の練習後、日本メディアの前を「グッドモーニング」と笑顔で通り過ぎた。
練習ではSP曲をかけての通しで、両手を上げてのトリプルアクセル(3回転半)、フリップ−トーループの連続3回転、ルッツ−トーループの連続3回転とジャンプ全てに成功。その後は4回転トーループからの3連続ジャンプなどを披露し、充実した調整となった。
ワリエワは北京五輪代表を決める試合の1つだったロシア選手権(サンクトペテルブルク)で昨年12月25日に採取された検体から、持久力向上の効果があるとされる禁止薬物トリメタジジンが検出された。
検査結果は北京五輪団体戦金メダル獲得後の2月8日に判明し、即時の暫定資格停止処分を受け、北京五輪を含む全てのスポーツ大会への参加が禁止された。
だが、ワリエワ側が翌9日にロシア・アンチ・ドーピング機構(RUSADA)に異議を申し立て、同日夜に暫定資格停止処分の解除が決定。それを不服とし、国際オリンピック委員会(IOC)と世界反ドーピング機関(WADA)がスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴している。
CASは個人種目への出場可否に関する裁定が14日午後になると発表している。  
●「ドーピング陽性」ワリエワのコーチは陰謀説を提起…国際社会は怒り 2/14
「フィギュアの天才」カミラ・ワリエワ(16)のドーピング陽性反応の結果が2022北京冬季オリンピック(五輪)から出たことを巡りロシアは疑いを拭いきれないでいる。
ワリエワのコーチ、エテリ・トゥトベリーゼ氏は12日(現地時間)、ロシア国営テレビチャネル1とのインタビューで「かなり厳しい状況だがワリエワは潔白だと確信している」と話した。あわせて昨年12月に実施したドーピングテスト結果が今になって発表されたことを巡り「偶然の一致か、とてもよく仕組まれた計画の可能性がある」と主張した。国際オリンピック委員会(IOC)は11日、大会定例会見で「ワリエワが今大会前に実施されたドーピング検査で陽性反応を示した」と発表した。
ワリエワは昨年12月25日、ロシア・サンクトペテルブルクで開かれたロシア選手権大会で小便サンプルをロシアアンチドーピング機構(RUSADA)に提出し、このサンプルはスウェーデン・ストックホルムの世界アンチ・ドーピング機関(WADA)に送られた。そして約6週後である今月8日、狭心症治療剤のトリメタジジン(2014年1月禁止薬物指定)が検出されたという通知を受けた。通常ドーピングテストの結果は1〜3日後に出てくるが、ワリエワの結果は46日が経過した、北京五輪が今まさに開催中の時期に通知されるという異例のものだった。偶然にもワリエワが活躍したロシアがフィギュア団体戦で金メダルを獲得した翌日だった。
ロシアオリンピック委員会(ROC)やRUSADAなどは「一連の過程に疑問を持たざるをえない」とした。反面、ロイター通信によると、WADAは「研究所内で新型コロナ感染者が増えて検査の分析と報告が遅れた」という立場だ。
ロシアは2012年から、国際大会全般で選手が組織的に禁止薬物を服用してドーピングテスト結果を隠したとされて、IOCとWADAから制裁を受けている。ロシア出身選手は今年12月までオリンピック(五輪)で国号や国旗を使用できず、ロシアオリンピック委員会所属の個人の資格で大会に参加している。
IOCのディック・パウンド委員はロイターとのインタビューで「ロシアは絶対に反省しない。すべてのドーピング結果に控訴している」としながら「ロシアオリンピック委員会所属でも大会に出場できるようにしたことは寛大すぎる処置だった。今後は国際大会への参加停止を考慮することができる」と強調した。未成年者選手に禁止薬物を投じたことはコーチ陣の誤りという批判も続いている。体操選手出身の弁護士レイチェル・デンホランダー氏は「未成年者選手は権威があるコーチが与えない限り、そのような禁止薬物を服用しない」と話した。
8日、ドーピング結果を聞いたRUSADAは直ちにワリエワに臨時に資格停止懲戒を下した。ところがワリエワは9日に控訴し、どのような理由か分からないが、懲戒はすぐに解除されてその後公式訓練に姿を見せた。これに対して五輪でドーピング検査を実施している国際検査機関(ITA)が法律検討を経てスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴した。CASは13日午後、北京のあるホテル会議室でワリエワ関連の聴聞会を開き、14日に懲戒についての結果を発表する予定だ。
2006年4月26日生まれのワリエワは誕生日がまだ来ておらず現在15歳だ。保護対象である未成年者であるため、ワリエワとコーチ陣が禁止薬物の服用事実を認めるなら、警告処分だけを受けて出場停止懲戒は下されないだろうとの展望だ。国際スポーツ弁護士のポール・グリーン氏は「懲戒の程度が警告にとどまるのなら、競技に出場することはできる。しかし、そのためには禁止毒物の服用事実を認めなければならないが、ワリエワのコーチ陣がそうしない可能性がある」と伝えた。ロシアのフィギュア団体戦金メダルを受賞するかどうかは今後決まる予定だ。
●15歳のカミラ・ワリエワが自らドーピングに手を染めたとは考えられない… 2/10
大会の華はしおれるのか。北京冬季五輪は、咲き立てのヒロインが、新たな名花として咲き誇る舞台になるはずだった。15歳のロシア娘、カミラ・ワリエワに注がれる世界の目は、称賛から落胆へと代わった。突如、急浮上した禁止薬物使用の疑惑に胸が痛む。
開幕を華やかに告げるフィギュア・スケートの男女混合団体戦で優勝したROC(ロシアオリンピック委員会)の主役になったのは、間違いなくワリエワだった。それが、暗転して、いま、疑惑の目が、この少女に集中している。
各国代表が、祖国の名、旗の下に集うとき、ロシアは国の代表の名を剥奪され、国旗、国歌を許されず同国五輪委員会の代表としてのみ参加を許される辛い立場である。それもこれも、かつてドーピングがはびこり、その撲滅に動いたIOCを頂点とするスポーツ界に非協力的だったことが根底にある。国を代表する選手として認められず、あくまでも個人としての参加が認められている。冬は2014年ソチ大会から、今大会まで、その不名誉が続く。
私には15歳の少女が、自らの意思でドーピングに手を染めたとは考えられない。一歩間違えたら栄光から暗闇に転落する道を、少女が自ら選ぶとは思えない。ワリエワに「クロ」の判定が下されたら、1人のスポーツ少女が哀れである。
かつて、筆者は、1人のアスリートが転落の道を歩むことになったとき「当時(事)者」だった。1988年9月24日。ソウル五輪男子100メートル決勝で、ベン・ジョンソン(カナダ)は、文字どおり「瞬間的に」、最大のライバル、カール・ルイス(米国)を破り、9秒79の「世界新記録」で「優勝」した。それから3日後、27日の紙面で、ベンのドーピングを暴いたのは、私も一員だった中日新聞特派員グループで、世界的スクープだった。
ベンは、直後にオリンピックから追放され、ソウルを去った。その後、汚された金メダルの裏側に悪しき指導者、医者らの暗躍があったことが分かった。だが、26歳だった彼が、再び競技の世界で輝くことはなかった。
一瞬の輝きー。その後にやって来るつらい暗闇ー。15歳のロシア娘に起きるかもしれない悲劇の裏側には、やはり指導者の仮面を被った大人が存在しているのだろう。カミラ・ワリエワ、まだ若い。疑惑が本当なら、汚れのない華になって帰ってきてほしい。
●ワリエワの五輪個人種目への出場が可能に…CAS 2/14
フィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(15)のドーピング問題をめぐり、スポーツ仲裁裁判所(CAS)は14日、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)がワリエワの北京五輪への参加継続を認めたことを不服とした国際オリンピック委員会(IOC)などの申し立てを棄却した。ワリエワは15日にショートプログラム(SP)が行われる個人種目に出場できることとなった。
北京五輪にロシア・オリンピック委員会(ROC)から参加しているワリエワは、昨年12月に採取された検体から禁止薬物のトリメタジジンが検出された。RUSADAは今月8日、ワリエワに暫定的な資格停止処分を科したが、翌日に事情を聞いたうえで同処分を解除し、五輪の参加継続を認めた。IOCや世界反ドーピング機関(WADA)などがその判断の可否について、CASに提訴していた。
CASは今回の決定の理由の一つに、ワリエワがWADAの規定で、16歳未満などの「要保護者」に当たることなどを挙げている。団体のメダルの扱いについては、判断していない。
ワリエワは7日まで行われた団体戦で、ROCチームの一員として金メダル獲得に貢献。15日からの個人種目でも金メダルの最有力候補に挙がっている。
●ワリエワ 五輪個人種目の出場認める CASが発表 15日に女子SP 2/14
昨年12月のドーピング違反が判明した北京冬季五輪フィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(15、ロシア・オリンピック委員会=ROC)の個人戦出場が認められた。
スポーツ仲裁裁判所(CAS)が14日、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)によるワリエワの暫定資格停止処分解除を不服とした国際オリンピック委員会(IOC)、世界反ドーピング機関(WADA)、国際スケート連盟(ISU)からの提訴を却下した。
4回転ジャンプとトリプルアクセルが武器のワリエワは7日に行われた同五輪団体戦でROCの金メダルに貢献し、15日にショートプログラム(SP)、17日にフリーが行われる女子個人戦でも金メダル最有力候補とみられている。
CASは13日午後8時34分(北京時間)から北京市内のホテルに設けた臨時事務所で聴聞会を実施。オンライン形式で14日午前2時10分(同)までIOC、WADA、ISU、RUSADA、ワリエワ本人、ROCを事情聴取した。ワリエワは昨年12月25日のロシア選手権の検査で、持久力向上が期待できる禁止薬物トリメタジジンに陽性反応を示し、今月8日に検査結果が判明。RUSADAが暫定資格停止処分を科したが、異議申し立てを受けてRUSADAの規律委員会が9日に処分を解除していた。
WADAは裁定の理由として、16歳未満のワリエワが処分が軽減される保護対象であること、五輪期間中に陽性反応を示していない選手への考慮、今回出場を認めなければワリエワに取り返しのつかない損害を与えること、などを挙げた。団体戦の扱いに関しては裁定を要求されていないため、決定は別になるとも記した。
一方でIOCからの要請を受け、WADAはワリエワらROC女子選手を指導するエテリ・トゥトゥベリゼ・コーチや医師ら周辺スタッフの調査を独立委員会に依頼すると明かしている。
●ワリエワの五輪出場を許可、スポーツ仲裁裁判所が発表 2/14
スポーツ仲裁裁判所(CAS)は14日、北京オリンピック(五輪)フィギュアスケート女子ROC(ロシア・オリンピック委員会)代表のカミラ・ワリエワ(15)が昨年末のドーピング検査で陽性反応を示していた問題で、北京五輪の個人戦出場を認める裁定を下した。
女子ショートプログラム(SP)は15日、フリーは17日に予定されている。SP、フリー、合計点の世界歴代最高得点を持つ15歳が、金メダルを獲得した団体戦に続いてリンクに立つ。
CASは13日午後8時34分から北京臨時オフィスをベースにオンラインで公聴会を開き、以下の6者が出席した。ワリエワ / 国際オリンピック委員会(IOC) / 世界ドーピング防止機構(WADA) / 国際スケート連盟(ISU) / ロシア・アンチ・ドーピング機構(RUSADA) / ROC。
ワリエワに関しては北京五輪代表選考会の1つだったロシア選手権(サンクトペテルブルク)で12月25日に採取された検体から、持久力向上の効果があるとされる禁止薬物トリメタジジンが検出された。RUSADAは団体戦終了翌日の2月8日に暫定資格停止処分を課したが、ワリエワサイドが翌9日に異議を申し立て、同日夜に処分の解除が決定された。
その決定を不服とし、IOC、ISU、WADAがCASに提訴していた。今回、CASが下した裁定を受け、国際的な議論は続きそうだ。
●ワリエワ オリンピック出場継続へ CASが判断  2/14
北京オリンピック、フィギュアスケート女子の有力選手でROC=ロシアオリンピック委員会の15歳 カミラ・ワリエワ選手に対して出されたドーピング違反による資格停止処分が解除され、オリンピックへの出場の継続が認められた決定について、CAS=スポーツ仲裁裁判所はこの決定を取り消さない判断を示しました。
今月7日に行われたフィギュアスケート団体で金メダルを獲得したROCの15歳、ワリエワ選手について、ITA=国際テスト機関は、去年12月のドーピング検査で血流促進作用などのある禁止薬物「トリメタジジン」の陽性反応が出たと発表しました。
ロシアアンチドーピング機構はワリエワ選手を一時的な資格停止処分としたものの、その後、ワリエワ選手側の抗議を認めて処分を解除したためIOCなどはこの決定を不服としてCASに申し立てを行いました。
CASは日本時間のきょう午後3時に裁定を発表し、ワリエワ選手のオリンピックへの出場の継続が認められた決定について、これを取り消さない判断を示しました。
CASはこの判断の理由について、15歳のワリエワ選手はWADA=世界アンチドーピング機構の規程では「要保護者」に当たり、証拠の基準や制裁が低く定められていることや、12月に行われた検査の結果がオリンピック期間中に出たことはワリエワ選手の責任ではないなどとして、出場停止にすることはワリエワ選手に著しい損害を与える可能性があるとしています。
これに先立って行われた会見でIOCのマーク・アダムス広報責任者は「出場資格についてCASの裁定は絶対であり、尊重し従う」と述べています。
16歳以下は「要保護者」
WADA=世界アンチドーピング機構の規程では、ドーピング違反があった場合、違反者の氏名や違反のあった禁止物質の種類、それに処分の内容などを一般に開示しなければならないと定められています。
ただし、16歳以下の選手は「要保護者」と位置づけられ、情報の開示は求められないことになっています。
ITA=国際テスト機関は11日にワリエワ選手のドーピング違反の経緯を開示した理由について、「一部のメディアが保護の規程にのっとらずに非公式な情報に基づく報道をしたことから、公式な情報の必要性が高まったため」と説明しています。
圧倒的演技 ロシアでは“絶望”の異名
このうち、去年11月のグランプリシリーズロシア大会では、ショート、フリーともにすべての演技をほぼ完璧に決めて272.71をマークし、自身が持つ世界最高得点を更新して実力を示しました。
他を寄せつけない圧倒的な演技からロシアでは“絶望”という異名で呼ばれています。
今大会はすでに団体に出場し、予選の女子シングルショートプログラムでは世界最高得点に迫る得点をマークするなど決勝のフリーとともにトップになる活躍を見せて、チームの金メダル獲得に貢献しました。
13日も競技会場で練習を行っていて、15日から始まる個人戦の女子シングルでは、同じくROCのアンナ・シェルバコワ選手、アレクサンドラ・トゥルソワ選手とともに表彰台独占を果たすかどうかも注目されています。 
●ワリエワ薬物疑惑に「関わってない」繰り返すIOC 薄い当事者意識 2/14
国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は「またか」という気持ちだろう。
バッハ氏が2013年秋にIOC会長に就任してからの五輪は、常にロシアの薬物汚染の闇がつきまとう。これだけ尾を引く背景には、IOCが及び腰だった面もある。
14年ソチ冬季五輪におけるロシアの国家ぐるみのドーピング違反は、16年リオデジャネイロ五輪の直前に発覚した。世界反ドーピング機関(WADA)がロシアの全面的な参加禁止を求めた。
しかし、バッハ会長は各競技の国際連盟に判断を委ね、ロシアの参加を条件付きで認めた。「国家の過ちによって、疑いが持たれていない人間を罰することは出来ない」と判断の正当性を強調し、「決断は正義に基づいて行われるべきで、政治から独立していなければならない」とも付け加えた。
この対応には、WADAから批判の声が上がった。リオパラリンピックからの締め出しを決めた国際パラリンピック委員会(IPC)のフィリップ・クレーブン会長(当時)が「ドーピング違反を大目に見たら、パラリンピックへの信用は失墜する。腐敗を許すことは死を意味する」と明快に語っていたのと対照的だった。
●ワリエワ表彰台入りならメダル授与式なし、IOC発表 2/14
国際オリンピック委員会(IOC)は14日、ロシア五輪委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ(Kamila Valieva)が15日から始まるフィギュアスケート女子シングルで3位以内に入った場合、メダル授与式を行わないと発表した。
延期になっている団体のメダル授与式も大会期間中は実施しないことが発表された。前週の団体ではワリエワの活躍もあってROCが金メダルを獲得。米国が銀メダル、日本が銅メダルを手にした。
ワリエワは昨年12月のドーピング検査で禁止薬物に陽性反応を示していたが、スポーツ仲裁裁判所(CAS)がこの日、五輪出場の継続を認める裁定を下した。
女子シングルの優勝候補に挙がっているワリエワだが、ドーピング違反の疑惑が解消されたわけではなく、後日処分が下る可能性もある。
IOCは「われわれは法の支配に従う必要があり、ゆえに彼女の女子シングル出場を認める必要がある」と説明した上で、ワリエワが検査で陽性反応を示したことに触れつつ、「全選手に対する公平性の観点から、北京冬季五輪の期間中にフィギュアスケート団体戦のメダル授与式を行うのは適切ではない」とした。
「ワリエワ選手が女子シングルで3位以内に入った場合も、大会中のフラワーセレモニーとメダル授与式は行わない」
●ワリエワ出場に警鐘「薬がまだ体内に」「命を落とすかもしれない」 2/15
15日放送のフジテレビ「バイキングMORE」では、北京冬季五輪でドーピング疑惑の渦中の中、出場可能となったフィギュアスケートのカミラ・ワリエワ(15=ROC)の問題を取り上げた。
12月に行った大会後のワリエワの検体から禁止薬物トリメタジジンが検出されたことが、今月8日に判明。これに対し、スポーツ仲裁裁判所(CAS)は検体の結果が遅れたことや、ワリエワが16歳未満の保護対象の年齢であることから「回復不可能な傷を負わせることになる」などを理由に出場を認める決定をした。
これについて元フィギュアスケート選手の村主章枝氏は「回復不可能の傷を負わせることを回避するなら、止めるべきだった。12月の検体でその薬が入っているなら、まだその薬が体内に残っている可能性もあり、命を落としたりするかもしれないし、健康のことを考えたら出場させるべきではなかった」とそのリスクを指摘した。
またスポーツライターの小林信也氏は「今回は周りが(ワリエワを)出す方向でバトンを出している。RUSADA(ロシア反ドーピング機関)が出場停止を解除したことに、IOC(国際オリンピック委員会)が不服としてCASに提訴した。しかし、IOCが『これはダメだよ』と出場停止を決めても良かった。責任をなすり付け合っている」と疑問の声をあげた。
●“疑惑の15歳”ワリエワは個人戦OK CAS “ロシア野放し”裁定 2/15
五輪が無法地帯と化した。14日、ドーピング違反が発覚したフィギュアスケート女子のワリエワ(15、ROC=ロシア・オリンピック委員会)の個人戦出場に関して、スポーツ仲裁裁判所(CAS)がゴーサインを出したからだ。
ワリエワは昨年12月のロシア選手権時に提出した検体が陽性となり、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)が五輪への暫定資格停止処分を下した。が、ワリエワ側の抗議によりアッサリと処分を解除。これを不服とした国際オリンピック委員会(IOC)や国際スケート連盟(ISU)などがCASに提訴していた。
CASは出場を許可した理由について、現在15歳で満16歳以下のワリエワは世界ドーピング防止規定(WADC)における「被保護者」であることや、五輪期間中の検体は陽性ではなかったことなどを挙げた。ロシアが団体戦で獲得した金メダルの有効性は改めて裁定されるが、これではドーピングをやっても満16歳以下の選手なら無罪放免になるという“判例”を作ったようなものだ。
CASの裁定には世界中から反発の声が広がっている。米五輪委員会のハーシュランドCEOが「決定に失望した」との声明を発表。ISUも指をくわえて見ているわけではないという。五輪以降の国際大会の出場停止や、五輪、世界選手権出場の年齢制限引き上げなどにより、ロシアへの制裁の動きが活発になると見る向きは少なくない。
そもそも五輪出場には年齢制限がなく、各競技団体の国際連盟(IF)の判断に委ねられている。フィギュアは2021年の7月1日時点で15歳以上。15歳のワリエワはギリギリセーフで、06年トリノ大会では14歳だった浅田真央が出場できなかった。各競技団体が年齢制限を設けているのは、低年齢選手への過度な身体的負担や精神的重圧を避けることが主な理由だが、特に女子フィギュアは18年平昌大会でザギトワ(ロシア)が15歳で金メダルを獲得するなど、低年齢化が著しい。
その最たる例がロシア勢だ。ザギトワ以外にも、16年世界選手権(ボストン)で当時16歳だったメドベージェワが優勝。平昌大会後に開催された国際連盟総会では、欧米諸国を中心に年齢制限を17歳以上に引き上げる案が浮上した。
「総会ではイスラエルが適用除外を求めたことなどもあり、現行の制度が継続された。とはいえ、今大会もロシアのシングル男女出場メンバーは6人中5人が10代と若い上に、世界最強を誇る15歳の少女がドーピングにまで手を染めていた。ドーピング汚染を防ぎ、ダーティーなイメージを払拭するため、年齢引き上げによってロシア勢の低年齢化に歯止めをかけようというわけです」(放送関係者)
米五輪委員会のハーシュランドCEOは「この事件はまだ解決していない」とも述べている。欧米諸国を中心とした「ロシア包囲網」がますます広がりを見せそうだ。
疑惑の15歳が15日からのフィギュアスケート個人戦に出場することになったが、それにしても、ロシアのドーピング違反はなぜなくならないのか。
ロシアは2014年に国ぐるみの組織的ドーピングが発覚。20年にはCASが不正を認定し、22年12月まで主要な国際大会から排除することを決めた。その一方で過去に違反歴のない選手は個人資格で五輪参加が許可され、昨年の東京五輪と今大会は「ROC」として出場。“執行猶予中”での違反発覚である。
ワリエワは15歳という年齢もあって恩情措置が取られたが、ドーピング違反が発覚すれば、資格停止処分と獲得したメダルが剥奪される。そのリスクを冒してまで薬物に手を染めるのは、メダルを獲得すれば、母国ロシアでの歓待が待っているからだろう。
メダルの色に応じて報奨金を授与。金メダルで400万ルーブル(約600万円)、銀で250万ルーブル(約375万円)、銅で170万ルーブル(約255万円)とさほど高額ではない。しかし、その余得がトンデモない。電車、飛行機など日常の移動費はすべてタダ。国からは車と豪奢な住居が支給される。06年のトリノ五輪ではトヨタのレクサス、10年のバンクーバー五輪ではアウディ、14年ソチ五輪ではベンツがメダリストに贈呈された。まだ免許を持っていない選手には、専用ドライバーをつけるという手厚さだ。
さらに、現役引退後は政界や国の中枢からのオファーも多くあり、生活や地位が保障される。04年アテネ五輪の新体操金メダリスト、アリーナ・カバエワ(38)は現役引退後に6年間、下院議員を務めたのち、ロシア最大メディア「ナショナルメディアグループ」会長に就任。一時はプーチン大統領と再婚間近ともウワサされた。
オイシイご褒美が盛りだくさん。そりゃ、ドーピングもなくならないわけである。
●涙が止まらないワリエワ、複雑な心情を吐露「うれしいが…」 2/15
フィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ選手(15)(ROC=ロシア・オリンピック委員会)が14日、自身のドーピング問題を巡るスポーツ仲裁裁判所(CAS)の裁定後、露政府系テレビの取材に応じ、涙ながらに複雑な心情を吐露した。
ワリエワ選手がCASの裁定後、メディアの取材に答えたのは初めて。ワリエワ選手は、ドーピング検査で禁止薬物の陽性反応を示していたことが今月判明してからCASの裁定までの期間について、「とても困難な日々だった」と振り返った。
北京冬季五輪の競技継続に道を開いたCASの裁定に関し、「うれしいが、精神的にとても疲れた」と話した。取材中のワリエワ選手は時折、笑顔を見せる場面もあったが、涙が止まらず精神的な動揺の大きさをうかがわせた。15日に始まる個人種目に向けては「できる限り調整し、結果を出したい」と抱負を語った。
●ワリエワのドーピングは「祖父が使用していた薬が混入」弁護士が説明 2/15
昨年末のドーピング検査で陽性反応が出たものの、スポーツ仲裁裁判所(CAS)から北京オリンピック(五輪)女子フィギュアスケートの個人戦出場を認める裁定が下ったROC(ロシア・オリンピック委員会)のカミラ・ワリエワ(15)の弁護士が「ワリエワの祖父が使用していた薬が混入した」とドーピングについて説明していることが分かった。ロイター、APをはじめ各国メディアが報じた。
国際オリンピック委員会(IOC)規律委員会のデニス・オズワルド氏が、13日に行われたCASの聴聞会におけるワリエワ側の主張だとして明かした。また同氏によると、ワリエワの弁護士は、ワリエワが“有罪”だとするには疑念が生じるような要素も示したという。
ワリエワは昨年末のドーピング検査で陽性反応を示したが、まだその時のBサンプルについては分析が行われていない。
また、女子フィギュア個人戦には出場できるが、ドーピングについての調査は続く。すでに団体で金を獲得し、個人戦でも優勝候補の大本命だが、後日メダルを剥奪される可能性は残されているという。
●ワリエワ、ドーピング陽性の原因は「Xマスに祖父と同じワイングラス使用」 2/15
北京五輪フィギュアスケート女子シングルに出場するカミラ・ワリエワ(ROC)は、ドーピング違反で出場可否が注目されていたが、欧州メディアはその原因に注目。昨年のクリスマスに祖父と同じグラスを使ったことを陽性の理由と、母親が主張しているという。
団体戦で金メダルのワリエワは、昨年12月のロシア選手権で採取された検体から禁止薬物トリメタジジンが検出。これを受け、国際オリンピック委員会(IOC)はワリエワの資格停止処分を解除したロシア反ドーピング機関(RUSADA)の決定を不服とし、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴。しかし、15歳という年齢が保護対象であることなどを理由に、15日から始まる個人戦出場が認められていた。
そんな中、スペイン地元紙「マルカ」英語版は「ワリエワの言い訳」という見出しで特集。記事では「家族の訴えによると、母親のイス・ワリエワと弁護士のアンナ・コズメンコは彼女の体内から検出された低いレベルのトリメタジジンは、クリスマスに祖父と同じグラスを使った際に混入した可能性があると主張している。祖父は心臓の薬として使っていた」と報じている。
金メダル候補のワリエワが3位以内に入った場合、メダル授与式は行われないとIOCは決定。記事では「ワリエワは依然として無実を証明しなければいけない」と指摘している。
●五輪=WADA、ワリエワ問題の責任者は「生涯資格停止に」 2/15
世界反ドーピング機関(WADA)のウィトルド・バンカ会長は、ロシア・オリンピック委員会(ROC)のフィギュアスケート女子代表、カミラ・ワリエワ(15)のドーピング疑惑を受け、ロシア当局が国内のドーピングに関する状況を改善することを願っていると述べた。
また、ワリエワの関係者を徹底的に調査し、責任が発覚した場合、生涯資格停止処分にすべきとの考えを示した。
ワリエワは昨年12月のドーピング検査で禁止薬物に陽性反応を示したが、スポーツ仲裁裁判所(CAS)は14日、同選手が引き続き北京冬季五輪に出場することを認める判断を下した。
バンカ会長は14日、ロイターに「子どものドーピングは邪悪であり、許されるべきではない。医師やコーチらサポートスタッフが未成年者に運動能力が向上する薬物を提供していた場合、生涯資格停止となるべき。個人的には刑務所に入れられるべきだと思う」と話した。
●ドーピングでも五輪出場に「完全なるジョーク」 元全米王者が激怒 2/15
ドーピング違反が発覚した北京五輪フィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ選手(15、ROC)の個人戦出場をめぐり、元全米王者で平昌五輪団体銅メダリストのアダム・リッポン氏が、ツイッターで怒りを爆発させた。
昨年12月に行われた薬物検査の結果、禁止薬物の陽性反応が出たワリエワ選手。スポーツ仲裁裁判所(CAS)は2022年2月14日、国際オリンピック委員会(IOC)などの訴えを退け、ワリエワ選手の個人戦出場を認める決定を行った。
この問題について多くのアスリートが言及する中、元全米王者のアダム・リッポン氏も15日未明のツイッターで、「取り返しのつかない損害は、オリンピック全体に及ぶもの」とし、「彼女は競技に参加させるべきではない」とワリエワ選手の出場に反対の意志を見せた。
リッポン氏は、北京五輪フィギュアスケート女子に参加するほかの選手にも影響が出ていることを懸念し、「公平ではない」と訴え。「この15歳の少女(ワリエワ選手)のために心を痛めることができると同時に、出場する他のすべてのスケーターが、競争がクリーンではないことを知りながら競争しなければならないことに心を痛めることができる」とつづった。
リッポン氏は、ワリエワ選手について、「彼女を素晴らしいスケーターにしているもの(スピン、フロー、柔軟性)は、どれも薬物からは生まれない」と評価しつつも、「しかし、彼女のチームは規則に従おうとはしなかった」とあらためて問題点を指摘。
また、CASの決定に「私は激怒している」とし、15日夜に始まるフィギュアスケート女子ショートプログラムについて、「完全なジョークのようなイベントだ」と痛烈に批判。そのうえで、
「本当の競技ではないし、おそらくメダル授与式もないだろう。このように、オリンピックでの多くの経験が、身体強化薬の助けを借りずにここまで来たクリーンなアスリートたちから奪われてしまった。残念だ」
などと嘆いていた。IOCは、ワリエワ選手が女子シングルで3位以内に入った場合、競技後のセレモニーやメダル授与式は行わない、としている。
リッポン氏は、このような思いをつづった投稿に続けて、「Fuck this(クソったれ)」の一言をツイートしている。 
●15歳ワリエワ騒動を“ただのドーピング事件”にしてはいけない理由… 2/15
 選手たちが語った“ロシアフィギュア界の闇” 「みんなやってるよ」
多くの人がもやもやした気持ちを抱えたまま、フィギュアスケート女子を観戦することになった。ROC(ロシア五輪委員会)の北京五輪フィギュアスケート代表、カミラ・ワリエワの検体から禁止薬物が検出されたというニュースが発表されたことで、彼女の個人戦出場は一時不透明な状態になった。そして出場できるか否かはCAS(スポーツ仲裁裁判所)の手に委ねられた。そして、2月14日午後。ワリエワに「出場許可」というニュースが届けられた。なお、3位以内に同選手が入賞した場合は、表彰式やメダル授与式を実施しないという。今回の経過、裁定に関してはすでにニュース速報などでカバーされているはずなので、ここでは、今回の一連の騒動、そしてロシアの抱える問題に焦点を当てたい。
ワリエワ本人に“ドーピングの意思”はあったのか?
15歳が禁止薬物を自ら購入し、摂取したのか。
ドーピングのニュースが出た際、多くの人が違和感を感じたのではないだろうか。
検出された薬物「トリメタジジン」は狭心症や心筋梗塞などのための薬で、血流を良くしたり心肺機能を高める効果があると言われている。
スポーツに関して言えば、回復力を上げる効果があるとも言われている。長時間の練習が必要とされるスケートにおいて、この薬物を服用することで、彼女が他の選手よりもフレッシュな状態で練習に臨めていた可能性は拭い切れない。
ちなみに2014年に水泳の孫楊(ロンドン五輪金メダル)が3カ月、2019年にはロシアの漕艇選手セルゲイ・フェドロフツェフ(アテネ五輪金メダル)が4年間の出場停止処分を受けるなど、トップ選手の使用実績もある。過去に陸上を含むロシアの選手がこの薬物で処分を受けていることもあり、ロシアではある程度認知されている薬物だ。
スポーツ界には「うっかりドーピング」という言葉があるが、ワリエワが心臓に痛みを感じたり、何らかの症状を感じたとしても「うっかり」飲んだとは考えにくい。
ワリエワのコーチ、エテリ・トゥトベリーゼ氏のチームは選手の体重や練習などを徹底管理することで知られている。このチームを追いかけたドキュメンタリーでは、選手たちの体重が100グラム単位で管理されていることを仄めかしている。
ということは、選手が服用している薬を知らないとは考えにくい。
もしワリエワがコーチや関係者に体調不良などについて相談していたなら、しかるべき機関で検査をし、治療もしくは休養をさせるべきだ。もし彼らが確信的にワリエワにこの薬を飲ませたならば、それは「虐待」と言われても仕方がない状況ではないだろうか。
“いわくつきの医師”がROCフィギュア代表に同行
2018年以降の五輪で、ロシアが『ロシア』ではなく『OAR(ロシアからの五輪選手)』『ROC(ロシア五輪委員会)』という名称で出場しているのには理由がある。組織的なドーピング問題で2022年12月まで国際大会から除外されており、その制裁の一環だからだ。ただしクリーンと認められた選手は個人資格で五輪に出場が認められている。
そういった制裁があるにもかかわらず、ロシア人選手のドーピングの違反数減少は見られない。陸上に関して言うと、2016年以降にも60人以上の違反が発覚し、処分を受けている。ドーピングに関して監視が(一応)敷かれ、反ドーピングが強化されている(はず)にもかかわらず、他国と比べてその数は依然として多く、ドーピングに対しての姿勢が改善しているとは言えない。
今大会のROCの姿勢も理解できない点がある。
ROCのフィギュアスケート代表にはいわくつきの医師、フィリップ・シュベツキー氏が同行している。
同医師は2008年夏季北京五輪の際、ロシアボート連盟の医師も務めていたが、大会前に選手たちに不正輸血を行っている。結果的に6選手が資格停止処分、またロシア代表は国際ボート連盟主催の試合に1年間の出場停止処分が下された。遠征先のスイスのホテルのゴミ箱から、血液が付着した注射針などが見つかり違反が発覚したというのだから、杜撰というか、もう言葉がない。(※1)
ちなみに同医師は2007年から2010年までアンチ・ドーピング規則違反への違反によりロシアボート連盟から資格停止処分を受けていたが、現在はROCフィギュアスケート代表の医師になっている。他の国ならばスポーツから永久に締め出される案件だが、ロシアはそうではないらしい。
2016年3月にアイスダンスのエカテリーナ・ボブロワの検体からメルドニウムが検出された際にも、シュベツキー医師が関与していたと言われている。
ボブロワはロシアのスポーツ紙に対して、通常は大会の1週間半前くらいから医師に勧められた『アクトベジン』を摂取するが、シュベツキー医師がそれと(メルドニウムを)間違ったのではないか、と答えている。(※アクトベジンは持久力を高めたり、筋肉の回復を早める効果があると言われている)(※2)。
シュベツキー医師への(ロシア以外の)世間の目は厳しいにも関わらず、自身のSNSでワリエワとの写真を掲載し、親しい関係性をアピールしているように、優秀なスポーツドクターを演じている。彼もまた今回の出来事のキーマンであることは疑いようがない。
過去にドーピングをほのめかした選手も
過去にロシアのフィギュアスケート界にドーピングが蔓延していることをほのめかした選手もいる。(※3)
今大会、ウクライナ代表として出場するアナスタシア・シャボトワは、2019年1月に自身のインスタライブでのファンとのやり取りのなかでこんな発言をしている。
「安定した演技をする秘訣は?」
ファンからの些細な質問だったが、それに対し、シャボトワはこう答えた。
「いっぱいドーピングをすることで、安定した演技ができるんだよ。それが成功の秘訣。正しい薬を飲むことが大切だけどね」
その答えに驚いたファンがこう続けた。
「五輪メダリストを輩出しているモスクワのチームでも禁止薬物を使用しているの?」
「もちろん、みんなやってるよ」
この発言は当然ながら大きな物議を醸したが、ロシア反ドーピング機関やモスクワ市スポーツ局がシャボトワと話をし、シャボトワが謝罪して幕引きとなっている。
シャボトワは当時13歳だったが、中学生が「安定した演技の秘訣は」と聞かれたら、ハードな練習をしてよく食べて寝ること、というような答えをするのが一般的ではないだろうか。ドーピングという言葉がサラリとでる中学生がいること自体が驚きで、彼女が「ドーピング」と答えたのは、なんらかの根拠があると考えるのが妥当だろう。
ドーピング問題以外にも気になることがいくつかある。
深刻な健康問題も「五輪中に固形物を口にしなかった」
ロシアの女子フィギュアは10代前半の若い選手が多いが、彼女たちの健康が守られているようには感じられない。
平昌五輪金メダルのアリーナ・ザギトワは、五輪後に4回転ジャンプに挑戦するかどうか問われたところ、「4回転に挑戦するにはタフな心身が必要だと思っている。それに(もし挑戦するなら)体重を3キロ減らさないといけないし」と慎重な姿勢を見せた。平昌五輪の時も十分にスリムで、それ以上の減量は少し無謀にも思われた。
4回転への挑戦が難しいからかどうかはわからないが、若い選手の台頭もあり、ザギトワは2020年以降、主要大会には出場していない。
ザギトワの同門の先輩であり、2014年ソチ五輪に15歳8カ月で出場し、団体戦金メダルに貢献したユリア・リプニツカヤも体重問題で苦しんだ。彼女は、さまざまな取材でソチ五輪中に固形物を口にせず、粉末飲料(シェイク)のみ摂取していたと話していたが、摂食障害を患い、3カ月もの間、入院生活を余儀なくされた。2017年には19歳で引退を発表している。
衝撃の発言「33キロから59キロをウロウロしていた」
同じく同門のアリョーナ・コストルナヤは、2020年7月にトゥトベリーゼからプルシェンコにコーチ変更した際にSNSでこんなことを言っている(後に投稿は削除された)。
「過去に在籍した選手は皆、コーチに虐待されたと言っている。ジェーニャ(メドベージェワの愛称)やユリアは摂食障害になったし、ジェーニャは疲労骨折にもなった」
平昌五輪銀メダルだったエフゲニア・メドベージェワも同様だ。
メドベージェワ本人も、2021年にインスタライブでファンからの「食事制限はありますか」という質問に対し、「身長は158cmで、体重は33キロから59キロをウロウロしています。病気になってからは、決まった時間にちゃんと食事を摂るようにしています」と答えており、摂食障害という言葉は出していないものの、なんらかの問題を抱えていることが窺える。
そのほかにも骨折や怪我で、若くして引退を余儀なくされた選手が多くいる。
ワリエワのドーピング問題は“氷山の一角”
今回のワリエワのドーピング問題はもちろんだが、ほかにもロシアのフィギュアスケートには多くの問題があると感じられる。国際大会からドーピングの影響で制裁を受けているにもかかわらず、過去にドーピングに関わっていた医師を帯同すること自体、理解に苦しむ。
また同じチームから摂食障害の選手が多数出ている現状も見過ごせない。
少し異なるケースだが、米国の陸上長距離チーム、ナイキ・オレゴンプロジェクトで指導していたアルベルト・サラザール氏は、ドーピングに関与していた疑いで米国反ドーピング機関から4年間の資格停止、また性的および精神的な違法行為(女子選手の体重や見た目を侮辱する発言や行動など)で米国セーフスポーツセンターから、米国において永久に指導ができないという厳しい処分を受けている。
今回の件で言うと、ワリエワは被害者だろう(しかし陽性が出ているので出場は許可されるべきではないのだが)。そしてこれは、氷山の一角だと感じる。
ロシアの女子選手たちは、SNSやメディアを使って我々にサインを送っている。その声を無視し続けていいのだろうか。
ロシア五輪委員会や反ドーピング機関に自浄作用がないのであれば、国際的な団体が介入し、彼女たちが安全な状況で競技ができる環境が整備されることを願ってやまない。
●日本勢トップは坂本の3位、初出場の樋口5位、17歳・河辺15位 女子SP 2/15
北京オリンピックは15日、フィギュアスケート女子ショートプログラムが行われ2大会連続出場の坂本花織が好発進。最終滑走の30番目に登場した坂本はスピードに乗った演技を披露、高さあるジャンプなど最後まで大きなミスなく自己ベスト更新の79.84点で3位。演技後は緊張が解け涙を見せた。
五輪初出場の樋口新葉(21)はただ一人トリプルアクセルを成功させ73.51点で5位、17歳の河辺愛菜も一番の武器であるトリプルアクセルに挑んだが転倒。その後は質の良いジャンプでまとめ62.69の15位。
昨年12月のドーピング検査で陽性が判明しながらも、今回、出場が認められたROC(ロシアオリンピック委員会)のカミラ・ワリエワ(15)はスピンやステップでも高い評価を獲得。82.16点で1位。
女子ショートプログラム
1位 カミラ・ワリエワ(ROC) ―― 82.16
2位 アンナ・シェルバコワ(ROC) ―― 80.20
3位 坂本花織(日本) ―― 79.84
4位 アレクサンドラ・トルソワ(ROC) ―― 74.60
5位 樋口新葉(日本) ―― 73.51
15位 河辺愛菜(日本) ―― 62.69
坂本花織 「始まる前からすごく泣きそうでどうなるかなと思ってたんですけど、なんとかジャンプを3つそろえることもできたし、一生懸命ルッツも練習したのでそれがちゃんと認定されたので嬉しい限りです。演技前から緊張で泣きそうだったのでそれを3分間くらいこらえて、それが(演技後)先生の顔を見てほっとした瞬間に(涙が)出たという感じです。(自己ベストの79.84点について)80点近く出たというのが国際大会で初めてだったので、すごく自身になったしトリプルアクセルなしでここまで点数が上げられたというのは今後の自分にとってすごく良い経験にもなったと思うのでこの結果をしっかり受け止めて、次また進みたいなと思います」
●五輪=フィギュア年齢制限、15歳ワリエワの薬物疑惑で再注目 2/16
フィギュアスケート女子、カミラ・ワリエワ(15、ロシア)のドーピング問題をきっかけに、現在は15歳となっている同競技の年齢制限が改めて取り沙汰されている。
ワリエワは北京冬季五輪のフィギュアスケート団体に出場し、ロシア・オリンピック委員会(ROC)の優勝に貢献した。しかし、その後に昨年12月のドーピング検査で禁止薬物に指定されている狭心症の治療薬「トリメタジジン」に陽性反応を示していたことが判明。個人シングル出場が危ぶまれたが、スポーツ仲裁裁判所(CAS)が許可したことで15日のショートプログラムに出場した。
今回の問題を発端に話題となっているのが、以前から指摘されているフィギュアスケートの年齢制限。北京大会の金メダル最有力候補とされるワリエワも15歳だが、女子シングルでは過去7回の五輪のうち6回で10代の選手が金メダルを獲得している。
特に近年、ロシア勢の10代選手の台頭が著しい。生体力学の専門家によると、若いスケーターは腰と肩の幅が細いために空中で速く回転でき、4回転ジャンプで有利。ワリエワのコーチを務めるエテリ・トゥトベリゼ氏を中心とした育成システムにより、ロシア選手は4回転ジャンプを武器に高得点を上げている。
ただ、メダル獲得のために厳しく鍛え上げられる一方で選手寿命は短く、思春期になって体が変化し、成績が落ちるとすぐに姿を消す傾向にある。
米国代表マライア・ベルは年齢制限を17歳に引き上げるべきかとの質問に「私は絶対に年齢制限はあるべきだと思う。自分の経験から、成長期には多くの変化が起こっていることが分かる」とコメント。
一方、スウェーデン代表ヨセフィン・タリエゴルトは「ワリエワは演技がうまくないわけではない。ジャンプしかできないのならそうかもしれないが、全部上手なので何とも言えない」とし、「年齢制限よりも、もっと長く競技ができるように奨励するのがいいかもしれない」と語った。
●ワリエワから計3種類の心臓疾患治療薬物検出 禁止指定外の物質も 2/16
北京オリンピック(五輪)のフィギュアスケートで、15日に首都体育館で行われた女子ショートプログラム(SP)でドーピング違反となりながらもスポーツ仲裁裁判所(CAS)から個人戦出場を認める裁定が下ったカミラ・ワリエワ(15、ロシア・オリンピック委員会=ROC)が82・16点で首位発進した。
そのワリエワについて、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が15日、検出された禁止物質トリメタジジンに加え、もう2種類の物質が検出されていたと報じた。ともに、禁止薬物ではないというが、心臓疾患の治療に使用されることもあるものだという。
「ハイポキセン」と「L−カルニチン」。CASに提出された文書から、明らかになったとしている。
●ワリエワ、検体から複数の治療薬検出 米紙報道 2/16
北京冬季五輪に出場しているフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(ロシア五輪委員会<ROC>)について、米紙ニューヨーク・タイムズが15日、今回のドーピング騒動につながった検体から心臓の治療に使う3種類の薬物が検出されていたと報じた。
ワリエワは昨年12月の検査で禁止薬物のトリメタジジンが検出されたことを五輪開幕後に知らされた。トリメタジジンは狭心症の治療に用いられる一方、持久力を高める効果のある薬物だが、スポーツ仲裁裁判所(CAS)は14日にワリエワの五輪出場継続を容認。ただし、ドーピング疑惑が解消されたわけではなく、後日処分が下る可能性がある。
ニューヨーク・タイムズは、ワリエワの検体にはトリメタジジンの他にも、世界反ドーピング機関(WADA)が禁止薬物に指定していない心臓の治療薬ハイポクセンとL-カルニチンが含まれていたと報じた。
これらの薬物が検出されたことは、13日のCASの聴聞会で提出された資料に示されていたという。CASはこの聴聞会をへて、出場許可という物議を醸す判断を下した。
国際オリンピック委員会(IOC)幹部のデニス・オズワルド氏によれば、ワリエワは聴聞会で、祖父の薬が誤って体内に入ったことが陽性反応の原因だと主張したという。ロシアメディアは、心臓の治療でトリメタジジンを服用する祖父とワリエワが同じグラスを使ったようだと伝えている。
●「ワカバより9点も上なんて馬鹿げてるわ」 ワリエワの採点に不満 2/16
北京五輪は15日、フィギュアスケート女子ショートプログラム(SP)が行われ、樋口新葉(明大/ノエビア)が五輪史上女子5人目となる3回転アクセルを成功させた。得点は73.51点で5位発進。15歳カミラ・ワリエワ(ROC)は82.16点が首位に立った。この採点に対し、ソチ五輪団体銅メダリストのアシュリー・ワグナー(米国)は「馬鹿げているとしか言えないし、全く面白くもない冗談」と不満を明かしている。
冒頭で3回転アクセルを決めた樋口。3本のジャンプいずれもミスがないように見えたが、連続ジャンプで回転不足を取られ、得点は73.51点にとどまり、5位発進となった。その後に登場したワリエワは、3回転アクセルがステップアウトになったものの、以降は演技後半に高難度の連続ジャンプを披露するなど、さすがの内容。82.16点の1位でフリーを迎えることになった。
これに反応したのが、ワグナーだった。ワリエワの演技直後に「どうしてこのプログラムがワカバより9点も上になるのか、馬鹿げているとしか言えないし、全く面白くもない冗談よ」とツイッターに投稿。熱烈な“新葉通”で知られる名スケーターで、樋口が3回転アクセルを決めた演技直後には「これぞ、私のワカバよ!!!」を熱烈に興奮していた。ワリエワの出場裁定に非難も表明しており、不満が噴出したようだ。
樋口にとってすれば、五輪メダリストも認める演技だったことの裏返し。3位の坂本花織とともにROC勢の牙城を崩し、メダルを狙える立場にいることも事実だ。17日のフリーで最高の演技を披露する。
●ワリエワ 祖父の心臓薬摂取は「非現実的」専門家が指摘 検体に新事実も 2/16
昨年12月に判明したカミラ・ワリエワ(15)=ROC=のドーピング陽性は同選手の祖父の心疾患治療薬を摂取したためとの同選手の弁護士の主張に対し、ドーピング専門家が「非現実的」と否定的な見解を示した、と15日(日本時間16日)、米誌ニューズウィーク電子版が伝えた。また、ニューヨーク・タイムズ電子版は陽性反応を示したワリエワの検体から3つの薬物が検出されたと報じた。
ワリエワの弁護士らは国際オリンピック委員会(IOC)などの提訴を受けてスポーツ仲裁裁判所(CAS)が13日に実施した公聴会で、陽性反応の要因は同選手の祖父が心疾患の治療薬を服用した際に使った同じコップを使用したためと説明。故意ではなく、“無実”を主張した。
しかし、ニューズ−によると、禁止薬物検査機関(BSCG)のオリバー・カトリン氏は「薬を砕いて水に混ぜない限り、その説明は筋が通らない」と否定した上で「(検出された禁止薬物の)トリメタジジンは通常、カプセルに入っている。祖父は手で口に入れて水で流し込んでいるはずだから、コップ内に残ることはない」と指摘。「もし粉末が溶けた水であれば説明はつくが、カプセルや錠剤の話をしている状況では論外だ」と語った。
ワリエワの弁護士がもう一つのシナリオとして提示したと言われている、祖父が置きっぱなしにした薬をワリエワが知らずに摂取した点には「薬物検査で引っ掛かるような物質を口にすることは絶対にない」と言い切ったという。
祖父は13日の公聴会には出席しなかったが、ニューヨーク・タイムズ紙が入手した公聴会に提出された文書によると、祖父は車内で撮影した動画で心疾患治療薬が入った袋を見せ、発作の時に服用していると証言したという。
また、同電子版は昨年12月に陽性反応を示したワリエワの検体から心疾患の治療薬であり、禁止薬物のトリメタジジンのほか、禁止薬物に指定されていないハイポキセンとL−カルニチンの計3種類が検出されたと報道。L−カルニチンは脂肪燃焼促進効果があり、通常、ダイエットに使用されるが、過去にドーピングに用いられたことを説明した上で「アンチ・ドーピング機関によると、ワリエワのような若いエリートアスリートの同一検体から複数の物質が見つかるのは極めて珍しい」と記した。
CASの裁定により、今五輪の参加が認められたワリエワは前日の個人SPでトップに立った。あす17日に行われるフリーで団体に続き、金メダル獲得の可能性が高まるなか、ワリエワ側の今後の対応や同問題の結論が注目される。
●米テレビ解説者、ワリエワSP演技に“怒り”の沈黙で抗議… 2/16
北京五輪のフィギュアスケート女子ショートプログラム(SP)が15日に行われ、ドーピング陽性が発覚したものの出場が認められたロシア・オリンピック委員会(ROC)の15歳、カミラ・ワリエワは82・16点をマークし、首位スタートした。この出場に関して、抗議の動きが広がっている。
米紙「ニューヨーク・ポスト」は「静かな怒り」と題し、「彼女の演技中の沈黙は耳をつんざくようなものであった」と、米のテレビ中継でも抗議の意志での沈黙が広がっていることを伝えた。NBCのフィギュアスケート中継チームも同様で、解説を務める元フィギュアスケート選手で五輪代表のジョニー・ウィアーさんとプロスケーターのタラ・リピンスキーは、ワリエワが氷上にいる間、「放送はほぼ沈黙し、彼女の演技について2、3のコメントを出すにとどまった」という。ワリエワが観客に頭を下げると、ウィアーさんは「私が言えるのは、あれはオリンピックでのカミラ・ワリエワのショートプログラムだったということです」とだけコメント。リピンスキーは「彼女は検査で陽性反応が出た。このスケートを見るべきではなかった」と演技の内容についてのコメントを避けた。
ウィアーさんは14日、自身のツイッターで「この判断は許せない。薬物検査で陽性反応が出たのだから、陽性反応が出た選手に落ち度があろうとなかろうと、年齢や検査・結果のタイミングに関係なく、クリーンな選手と競争させるべきでない」とコメント。リピンスキーも「この決定には強く反対です。結局のところ、陽性反応が出たのだから、彼女が競技に出ることを許されるべきではないことは間違いない。年齢や検査・結果のタイミングに関係なく。このことは、私たちのスポーツに永久的な傷を残すことになると思います」とつづっていた。
●ワリエワ、新たに検出された物質2種類は事前に記載されていた 2/16
北京オリンピック(五輪)に出場しているフィギュアスケート女子ROC(ロシア・オリンピック委員会)代表のカミラ・ワリエワ(15)のドーピング違反問題について、新たに検出された禁止指定外の物質2種類は、事前に提出された書面に記載されていたとAPが報じた。
今回の問題が発覚する前に、ワリエワのドーピング防止管理フォームには心肺機能を改善するために使用される「L−カルニチン」と「ハイポキセン」が記載されていたという。世界反ドーピング機関(WADA)は、この2つの物質は禁止薬物ではないが、禁止物質のトリメタジジンが誤って入ったというワリエワ側の主張を弱めるものであると述べているという。
心臓への酸素の流れを増やす効能があるハイポキセンは、米国反ドーピング機関が最近、禁止リストに載せようと試みた物質。L−カルニチンは、特定の値を超えて注射するのは禁止されている。
●IOC ワリエワの成績は“暫定的”フィギュア女子シングル  2/16
北京オリンピック、フィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ選手のドーピング違反をめぐり、17日結果が出る女子シングルの成績について、IOCの広報責任者は「暫定的」なものとして扱うことを明らかにしました。
“すべての手続きが終わるまでは授与式は行われない”
ROC=ロシアオリンピック委員会の15歳、ワリエワ選手は、去年12月のドーピング検査で血流促進作用などのある禁止薬物「トリメタジジン」の陽性反応が出たことが、北京オリンピック期間中の今月11日に明らかにされました。
この問題について、CAS=スポーツ仲裁裁判所は、15歳のワリエワ選手はWADA=世界アンチドーピング機構の規程で「要保護者」にあたり、証拠の基準が異なり制裁が低く定められているなどとして、大会出場の継続を認める判断を示し、ワリエワ選手は15日行われた女子シングル前半のショートプログラムでトップに立ちました。
16日行われたIOCと大会組織委員会の会見で、ワリエワ選手が17日結果が出る女子シングルで3位以内に入った場合、ROCのメダルの数に加わるのかと質問されたのに対し、IOCのマーク・アダムス広報責任者は「いくつか問題がある」などとして、成績を「暫定的」なものにすることを明らかにしました。
一方で団体のメダル授与式についてはメダルを獲得した国やIOCの本部があるスイスのローザンヌを代わりの候補地にあげて「関係する国のオリンピック委員会や選手と協議する。ただ、すべての手続きが終わるまでは授与式は行われない」と話しました。
米有力紙“禁止でない2種の薬物検出”
こうした中、アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは15日、ワリエワ選手の検体から「トリメタジジン」のほかに、禁止薬物のリストには入っていないものの心臓病の治療などに使われる「ハイポクセン」と「Lーカルニチン」という2種類の薬物が検出されていたと報じました。
ワリエワ選手側は、禁止薬物の検出は祖父が服用している薬の混入が原因だと主張しているほか、ほかの2種類の摂取については事前に申告していたということですが、記事の中でUSADA=アメリカアンチドーピング機構の幹部は、若いトップ選手から複数の薬物が検出されるのは極めて異例だとしたうえで「3種類の組み合わせは、持久力の向上や疲労軽減などを目的としたものと見られる」と指摘しています。
●ワリエワ検体から心臓治療用の3種類の物質検出…米紙  2/16
フィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(15)(ROC=ロシア・オリンピック委員会)のドーピング問題で、検体からは禁止薬物トリメタジジンを含め、心臓の治療に用いられる3種類の物質が検出されていたと15日、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が報じた。
スポーツ仲裁裁判所(CAS)への提出文書を入手したという同紙によると、新たに検出が判明したのは、禁止薬物に指定されていない「ハイポキセン」と「L―カルニチン」。ワリエワは検査の際、この2種類と免疫力を上げるサプリメントの使用を申告していたという。
米国反ドーピング機関のトラビス・タイガート最高責任者は、これらの組み合わせが、「持久力向上や疲労軽減、酸素の効率的な取り込みが目的のように見える」と指摘した。
●ワリエワ出場に米選手の父「理解できない」と不満 2/16
北京五輪は15日、フィギュアスケートの女子ショートプログラム(SP)が行われ、15歳カミラ・ワリエワ(ROC)は82.16点で首位発進した。ドーピング違反騒動で海外メディアや元選手らの批判が上がる状況。中国のウェブメディア「網易新聞」は米国選手の父の言葉を伝えている。
同メディアは「中国の解説者・陳露が微博(ウェイボー)で疑問に答える 中国系米国選手の父親は『娘は12歳の時にはもう検査を受けさせられていた』と怒りの発言」の見出しで記事を掲載。本文にこう記した。
「2月16日、ワリエワのフィギュア女子シングル出場については論争が続いている。アメリカ、韓国はいずれもそれぞれの方法で抗議しているが、中国フィギュアスケート界のレジェンド―陳露はワリエワ支持の姿勢を続け、ネットユーザーから疑問の声が上がっていたが、微博でそうした声に答えた」
米国や韓国の放送局では、ワリエワの演技中に実況席が無言を貫くなどして抗議。記事では、平昌五輪団体銅のアダム・リッポン氏(米国)が「とても憤慨している。女子シングルの試合が茶番になってしまった」と怒りを爆発させたことを伝えた。さらに、米国代表として女子シングルに出場しているアリサ・リウの父は不満を語ったという。
「私には、ワリエワに対して『取り返しのつかない傷を与えるから』という説明が全く理解できない。それだったら、他のクリーンな選手に対する取り返しのつかない傷はどうしてくれるのか。あなたはクリーンな選手たちの権利を剥奪しているのですよ!」
リウの父は中国出身。記事では「リウが12、13歳の時からドーピング検査をさせられていることに言及した」と父の言葉を説明している。スポーツ仲裁裁判所(CAS)はワリエワの15歳という年齢が保護対象であることなどを理由に、個人戦出場を認める決定を下していた。
●ワリエワ選手めぐるドーピング問題 トリノ金メダリスト荒川静香さんがコメント 2/16
フィギュアスケート・トリノオリンピック金メダリストの荒川静香さんが、ROC(ロシアオリンピック委員会)のカミラ・ワリエワ選手をめぐるドーピング問題についてコメントしました。

どのような経緯であれ、ドーピング検査で禁止薬物が検出された時点で、記録取り消しや以後の競技に出場できない期間が発生するのがルール。だからこそ、アスリートはドーピング検査の目的や、禁止薬物と関わらないよう競技生活の中で注意すべきことなど、競技と健全に向き合っていくために厳しい教育を受けている。
トップアスリートは抜き打ちでの検査も行われるため、日頃から食べ物、飲み物に薬物が混入していないか、口にする物には注意するよう徹底し、痛み止めや風邪薬ですら、細かく専門の医師に成分など確認してもらってから服用するなど、細心の注意を払っている。
今このオリンピックで混乱している要因は、オリンピック期間に入ってから、2か月前の検査結果が届き、その調査が間に合っていないことで、ワリエワ選手の出場が継続されていることにあると思う。その結果、他の選手に大きな影響が出てしまっている。
●フィギュアのワリエワ問題が示したロシア・ドーピングの闇 2/17
北京五輪はまたもやロシアのドーピング禍の深い闇を国際社会にさらすイベントになった。
フィギュアスケート女子で個人戦に出場したロシア・オリンピック委員会(ROC)代表のカミラ・ワリエワ選手は昨年末の大会で、禁止薬物のトリメタジジンが検出され、出場の是非がスポーツ仲裁裁判所(CAS)の判断を仰ぐ事態となった。この問題には、ワリエワ選手や彼女のコーチのエテリ・トゥトベリーゼ側の五輪前の選手の体調管理の拙さという単純な構図ではなく、これまであらゆる競技のスポーツ界を揺るがしてきたプーチン政権下の泥沼の薬物汚染の実態ということが背景にある。
スポーツの政治利用という悪弊
プーチン政権はスポーツを国威発揚のために積極的に活用し、世界の大国であることを示すため、極端な選手強化策を推進してきた。2014年ソチ五輪で明るみになった組織ぐるみのドーピング問題では、パラリンピックの選手までも薬物汚染に染まり、悪名高きソ連時代の諜報機関である国家保安委員会(KGB)の後身組織であるロシア連邦保安庁(FSB)が隠ぺいに関わり、告発しようとした関係者が不審死する事態にも陥っている。
高難度のジャンプとステップを次々に決め、しなやかな表現力で演技するワリエワの才能はフィギュア大国のロシアにして「史上最高のスケーター」とされ、そもそもドーピングなどに手を染めなくても、今大会の金メダルは確実な情勢になっていた。
スポーツに不正はあってはならない。しかし、誤解を恐れずに言えば、15歳の少女が金メダル欲しさに禁止薬物に手を出すことは考えられず、周りのいる大人にこそ咎めはある。そして、ロシア国内では今回もこのドーピング問題を欧米主導の陰謀によってロシアを落とし込める口実にしているとして、大きな非難が沸き上がっている。ウクライナ危機とごちゃまぜにしている論調もみられる。
個人戦を前にして「精神的にどん底に陥った」と嘆いたワリエワ。彼女は過去にドーピングに染めてきた人物たちが起こした騒動や、スポーツを政治利用してきたロシア歴代政権の悪弊に引きずられた犠牲者なのである。
ワリエワへの疑惑と裁判所の判断経緯
ワリエワのドーピング問題にはさまざまな情報や憶測が飛び交っている。事態を冷静に振り返るため、この問題のポイントを箇条書きにて整理したいと思う。
・禁止薬物は21年12月25日に行われたロシア選手権での検査から採取された。検出されたのは心臓の病気である狭心症などに使われる薬「トリメタジジン」。モスクワ市内の薬局などでも市販されており、購入することができる。
・北京五輪フィギュア団体戦終了後の2月7日にロシア反ドーピング機関(RUSADA)が国際オリンピック委員会(IOC)に報告。検査の結果通知が遅れたことが期間中の報告になった。
・国際オリンピック委員会(IOC)はワリエワ選手の大会期間中の試合への参加を禁じ、団体戦のメダル授与式も中止に。その後、RUSADAはワリエワ側の抗議を受け、暫定資格提出処分の解除を決定し、出場継続を認めた。IOCや世界反ドーピング機関(WADA)がこれを不服として、CASに提訴し、ワリエワ側に聴取をして14日に訴えを却下し、五輪出場を認めた。
・CASが五輪出場を認めたのは、ワリエワ選手がWADAの規定する16歳未満の「要保護者」にあたり、制裁が軽減されたから。この状況下で出場を禁じれば、機会を奪い取り返しのつかない損害をもたらすことも理由にした。
・今回の裁定は暫定的な処分であり、陽性反応が出たことや団体戦の結果については検証対象になる。個人戦の結果についても、変わる可能性がある。
・CASの聴取に対して、ワリエワ選手は「途中20分の休みしかない状況で7時間質問を受けた」と説明。ワリエワ選手の母親と弁護士は「昨年クリスマスに心臓病を患い、薬を服用していた祖父と同じワイングラスを使って、ワリエワが誤って口にしたからだ」と状況を説明した。
・15歳の少女が自分の意志で禁止薬物を採取することは考えにくく、WADAはRUSADA関係者や、トゥトベリーゼ氏らコーチ、さらにはチームドクターらへの聞き取り調査を行うことを発表。調査結果をその後、発表する。
・トゥトベリーゼはロシアメディアに対して、「ワリエワは過去3年間でも最高の状態にある。どんなドーピングでも4回転を跳ぶことの助けにはならないし、音楽的な演技を表現する能力を授けたりはしない」と話して、ドーピング疑惑の潔白を訴えている。
フィギュアはじめスポーツ選手と薬物の歴史
・フィギュアスケートでのドーピング違反は他の競技に比べても極端に少ない。しかし、ロシアでも違反例はあり、17年グランプリ(GP)ファイナル2位のマリア・ソツコワ氏から利尿剤に含まれるフロセミドが検出され、その事実を隠蔽しようとしたとして、RUSADAが10年間の競技出場資格停止処分を発表した。
・トリメタジジンは健常者が使うと疲労回復や持久力の向上作用があるとされ、ノルウェーの「アンチドーピングデータベース」によると、過去の摘発例は20件で旧ソ連圏が多い。国別内訳はロシアが8件、ウクライナと中国が3件。エストニアが2件。米国、カザフスタン、ジョージア、フランスが各1件。競技内訳は陸上5件、競泳4件、ボート、レスリング2件ずつなど。8人の選手が4年間の資格出場処分、4人が2年間の処分。
・トリメタジジンと同系統のメルドニウムはロシア選手の陽性事例が相次いでいる。16年にはテニス界の名選手、マリア・シャラポワ氏もメルドニウムによる陽性反応が出たことを公表している。18年平昌大会ではロシアから参加した女子のボブスレー選手と男子のカーリング選手の2人から検出された。ボブスレー選手は失格となり、カーリングチームはメダルのはく奪となった。
・14年ソチ五輪後のロシアの組織ぐるみのドーピング禍を訴え、現在は米国に逃亡しているモスクワの反ドーピング検査所元所長のグリゴリー・ロドチェンコフ氏が英紙デイリーメールの取材に対し、「トリメタジジンはかつてロシアのスポーツ界で乱用された長い歴史がある。2006年にスウェーデンで行われた欧州陸上選手権で、ロシア人選手のホテルの部屋からトリメタジジンの使用済みパックとメルドニウムの空(から)の瓶が見つかった」と指摘した。
ロシアでは「不正の域を超えた犯罪」
フィギュアスケート界のトップを走る15歳の少女の体内から、禁止薬物が検出されたことには大きな衝撃があるが、演技のレベルをあげるために意図的に採取したのかどうかについては、こうして正負の相反する情報があり、真相はなおも闇の中だ。WADAは、ロシア選手権の際に採取したワリエワの検体Bを再度、詳細に調べることも行うだろう。
この問題をめぐっては、米国オリンピック・パラリンピック委員会や韓国のフィギュアスケートのスター、キム・ヨナさんからもワリエワのドーピング疑惑について、厳しいコメントが出ている。これはロシアのスポーツ界にはソ連時代から続くドーピング禍がはびこり、14年ソチ大会で明らかになった組織ぐるみのドーピング問題の「不正の域を超えた犯罪」(WADA調査報告書責任者、リチャード・マクラーレン氏の言葉)の衝撃がなおも大きいからだ。
ロシアがソチ事件から8年経った今も、国家の代表として出場できず、選手が個人資格のROC所属として出場しているのもドーピング禍の闇がなおも深いことを物語っている。
ロシアにとって、スポーツは歴史的に、国威発揚を図り、米国やほかの先進国と伍して負けない大国であることを世界にアピールする手段として用いられてきた。
冷戦時代の五輪は、宇宙開発競争と匹敵する米ソ頂上決戦であり、ソ連政府は全土から身体能力に優れた少年少女をモスクワの育成センターに集めて、エリート教育を行なってきた。当時、盛んに指摘された「ステートアマ」は「国家のアマチュアアスリート」を意味し、五輪であればメダルを獲得すれば、家や就職口も政府から供与され、一生が安泰という保証がなされた。
プーチン大統領もソ連時代の養成システムで柔道を鍛えたアスリートであり、00年に権力の座についてからも、スポーツを国威発揚の手段として用いた。「スポーツは、社会の団結ならびに発展に役立つ普遍的な手段である」とスピーチしたこともあり、14年冬季五輪開催地を決めるため、07年に行われたIOC総会では会場に自ら乗り込み、ロシア語、英語、フランス語で最終プレゼンをアピールしたことはよく知られている。
ところが、ロシア選手団はソチ大会の直前となる10年バンクーバー五輪で、金3個、銀5個、銅7個というソ連時代を通じて、過去最低のメダル数に陥ってしまう。これは、ちょうどこの五輪に参加する選手の誕生年がソ連崩壊、新生ロシア誕生の混乱期に差し掛かり、英才教育が出来なかったことが原因とされている。いずれにせよ、冬のスポーツ大国の威信はここでずたずたに引き裂かれたのである。
そして、プーチン政権下で迎える国家の大事業であるソチ大会を競技成績として成功に収めるため、無理強いした上からのメダル獲得指令が、組織ぐるみのドーピング体制を副産物として産み出したのである。露紙ベドモスチは、プーチン政権がソチ五輪での勝利を「経済や社会情勢が悪化する中、国民を動員する手段」として政策に取り込もうとしたことが、無謀な不正を招いたとの見方を伝えた。
国ぐるみで進められていた偽装工作の数々
先ほど、紹介したロドチェンコフ氏の暴露をもとに作られた16年発表のWADAの報告書はまさに全世界に衝撃を与えた。ロシアの不正は「前例のない規模」であり、関与したのは五輪・パラリンピックの30以上の競技におよび、1000人超の選手が関与したと告発した。
不正工作は大掛かりで、五輪会場のソチのドーピング検査所には、警備の厳しい制限エリアの壁に小さな「ねずみ穴」が設けられ、陽性反応が出る可能性の高い選手の尿検体が隣の部屋に運び出された。
代わりにすり替わったのはその選手の「クリーンな検体」。モスクワには事前に個々の選手から採取された、禁止薬物を服用する前の尿検体を保管する秘密の場所があり、尿の保存には「コーラの瓶」が使われていた。極秘の工作は、「マジシャン」と呼ばれていたFSBの工作員が下水道作業員を装って検査所に出入りして、行っていた。
瓶の中の検体は入れ替えられていた。FSBは開封厳禁だった瓶のふたを「歯科医が治療で使うような器具」を使ってこじ開ける手法を開発し、それを使った。WADAはロドチェンコフ氏の指示通り、科学捜査機関の鑑定で、ふたの裏側に小さな傷があることを突き止めた。
ロドチェンコフ氏はさらにWADAの検査官を欺くため、検体に塩やコーヒーの粉を加えて本来の尿の成分を変えたり、禁止薬物が検知されにくい「カクテル」を作ったりして選手の筋肉増強などに役立てていたことも赤裸々に語った。
最初にこの問題を告発したロシアの女子陸上選手、ユリア・ステパノワ氏は「ロシアのスポーツ選手の間では、ドーピングは普通の話だった」と打ち明け、検体の意図的な破棄や、ドーピングの専門知識を悪用した検査所職員が選手にわいろの要求をしていた泥沼の実態も白日の下にさらした。
ロドチェンコフ氏もステパノワ氏もロシア国内の保守派からは「ユダ(裏切者)」呼ばわりされ、すでにロシアを去った。ロドチェンコフ氏は妻子を残して、米国に逃れた。亡命が認められ、ホワイトハウスの証人保護プログラムによって米国内の秘密の場所で暮らしている。17年にはモスクワの裁判所がロドチェンコフ氏の逮捕状を取り、国際指名手配を申請することが報じられた。
ロドチェンコフ氏の命がけの告発は、米映画界の最高の名誉であるアカデミー賞も受賞した。17年にロドチェンコフ氏の証言を元に制作されたネットフリックスのドキュメンタリー作品「イカロス」は第90回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した。
20年夏の英紙フィナンシャル・タイム紙のインタビューで、ロドチェンコフ氏は「政治腐敗の成れの果てです。プーチンとその一味は完全な犯罪者集団ですから」と語った。そうして、ドーピングの専門知識を悪用して、不正に関わったその動機について「義務でした。他に選択肢はなかった。私のキャリアは、ひとえにロシア選手のソチ大会での活躍にかかっていた」とも明かした。
この記事では、プーチン政権の反体制派の抹殺のように、ロドチェンコフ氏には暗殺計画があるとも明かされた。
ドーピング問題での一番の被害者は
ロドチェンコフ氏が恐れているのも無理はない。ロドチェンコフ氏の側近で、組織ぐるみのドーピング禍の中枢にいたとされるRUSADAの元最高責任者のニキータ・カマエフ氏と、ビャチェスラフ・シニョフ元会長の2人が16年2月に相次いで死亡した。
それでもこの事実はロシア国内でもほとんどニュースに報じられなかった。後に、英紙サンデー・タイムズはカマエフ氏が同紙のスポーツ部門チーフ記者にEメールを送信してきて、「私はこれまで公表されていない事実や情報を握っている」と調査報道の依頼をしてきた事実を明かした。
「死人に口なし」――。カマエフ氏はロシアのドーピング禍の闇を訴えようとしたときに亡くなったのである。
ロシアのドーピング禍の被害を受けてきた世界のスポーツ界が、北京大会でのワリエワ選手の問題発覚を受けて、「また、ロシアの選手が汚染されているのか」という思いをするのも無理はない。
筆者は以前、新聞記者時代にこの問題を発表したときに、文章の最後にこう記して、記事を閉じた。
「今回(ドーピング禍)の問題の最大の犠牲者は不正に手を染めず、自身の生涯をかけ、五輪を目指して頑張ってきた他の選手であり、将来、スポーツ界で輝くことを夢見てきたロシアの子供たちである」
ワリエワ選手はもしかしたら誤って禁止薬物を服用したかもしれない。だとすれば、リンクで流す彼女の涙を見たとき、再び、この感情がわいてくるのである。
●ワリエワの結果はIOC「暫定成績」扱い 3位以内なら表彰式なし… 2/17
昨年12月のドーピング違反が発覚しながら北京五輪出場継続が認められ、フィギュアスケート女子SPで1位となったカミラ・ワリエワ(15、ロシア・オリンピック委員会=ROC)が、17日のフリーに出場する。国際オリンピック委員会(IOC)は16日、ワリエワの結果は暫定成績になると発表する一方、会見欠席を容認する姿勢を示した。疑惑の15歳が3位以内なら表彰式は行われない。異様な状況で、冬の女王争いが展開される。SPで自己ベストをマークして3位発進した坂本花織(21=シスメックス)ら日本勢もこの日、本番リンクなどで調整した。
ワリエワは16日、本番リンクで公式練習に参加した。フリー「ボレロ」の曲かけでは冒頭の4回転サルコー、3回転半、4回転トーループからのコンビネーション2本を次々に着氷。3回転半の着氷が乱れ、自身が持つ世界最高得点を8・29点も下回った15日のSPからは見違えるような滑りだった。40分の割り当て時間を5分残して切り上げ、関係者と談笑しながら取材エリアを通過。夜の練習には姿を見せなかった。
絶対的優位は揺るがないフリーを前に、IOCのアダムス広報部長は、ワリエワがROCの金メダルに貢献した団体と個人の結果は暫定成績として取り扱うと発表した。各国・地域の獲得メダル数にも注釈がつくという。ドーピング違反の予備検体も未分析の状態で今後処分が下される可能性があるためだが、フリーで世界最高得点を更新しても「金メダル獲得」とは言えず、表彰式も行われない。
義務ではないとはいえ、SP後のワリエワは「気分が優れない」(ROC)との理由で通常3位までが出席する会見を欠席。アダムス広報部長はフリーでも「強要は適切ではない。(出席の)可能性は低いと思う」と容認する考えを示し、公には無言で北京を去る公算が大きい。スポーツ仲裁裁判所(CAS)が出場を認めたばかりに異例の状況が続いており、ロシアを除く各国から批判が続出。米NBCや韓国のテレビ局は、SPの演技中にコメントをしない放送で抗議姿勢を示した。
15日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、ワリエワからは禁止薬物トリメタジジン以外に、心臓疾患の治療に使用される「ハイポキセン」「L―カルニチン」が検出されたことが明らかになった。ともに禁止物質ではないが、ダイエット効果がある「L―カルニチン」は注射などによる制限値を超えた投与は禁止。心臓への酸素供給を助ける「ハイポキセン」は米国反ドーピング機関(USADA)が最近、禁止薬物指定を訴えて実現しなかった。
USADAのタイガート委員長は3種類の薬を組み合わせた服用の利点を「持久力の向上、疲労の軽減、酸素消費効率の促進」と説明。世界反ドーピング機関(WADA)は、2種類の薬物検出はトリメタジジンを誤って摂取したとのワリエワの主張と合わないと指摘している。疑惑が深まる中、冬季五輪最高の見せ場であるはずの女子フリーが幕を開ける。
ワリエワのこれまで
21年12月25日 ロシア選手権女子シングルで優勝。
22年2月1日 北京入り。
同7日 団体で五輪の女子競技史上初めて4回転ジャンプを着氷。
8日 ロシア選手権の検査結果を世界反ドーピング機関(WADA)が報告。禁止薬物のトリメタジジンに陽性反応を示し、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)はワリエワを暫定資格停止処分に。団体戦表彰式は「法的問題」で延期。
9日 RUSADAの規律委員会に異議申し立て。暫定資格停止処分が解除される。各国メディアがドーピング違反を報じる。
10日 個人戦へ練習再開。
11日 ドーピング検査を管轄する国際検査機関(ITA)が大会前のドーピング違反を公表。IOCなどが暫定資格停止処分解除への異議をCASへ申し立て。
13日 CASがオンライン形式で聴聞会。
14日 CASが個人戦出場を認める。
15日 女子SPで首位発進。
カミラ・ワリエワ
2006年4月26日生まれ、ロシア・カザン出身の15歳。09年にスケートを始め、18年シーズンからトゥトベリゼ・コーチに師事。19〜20年シーズンにジュニア・グランプリファイナルと世界ジュニア選手権を制覇。21年からシニアに参戦し、スケートカナダやロシア杯、欧州選手権で優勝。SPの90.45点、フリーの185.29点、合計272.71点はいずれも歴代世界最高記録。1メートル60。
●ワリエワ抜群の安定感…フィギュア  2/17
ROCの3人が、SPで前評判通りの実力を見せた。ワリエワは周囲の 喧騒けんそう をよそに、抜群の安定感を披露した。ミスらしいミスは、着氷が乱れたトリプルアクセルだけ。滑りの技術や音楽に合わせた演技など、主に表現面を評価するプログラム構成点でもトップに立った。
フリーでは4回転ジャンプを計3本組み込む予定で、頂点の座に最も近いのは間違いない。16日の通し練習では、全てのジャンプを着氷するなど好調で、練習後は取材エリアを関係者と笑いながら通り過ぎた。
今季自己ベストの80・20点で2位につけたアンナ・シェルバコワは、「全てのジャンプをコントロールできた」と満足した様子。4位には、フリーで4回転5本を跳ぶ可能性のあるアレクサンドラ・トルソワが入り、「クリーンな演技がしたい」と意気込んだ。
●ワリエワ2冠達成なら一気に億万長者! 収入は20億円程度爆上げ=@2/17
北京五輪でドーピング違反問題の渦中にあるフィギュアスケート女子ロシア・オリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ(15)が、団体戦に加えて個人戦も金メダルを獲得すれば一気に巨万の富を得ることになりそうだ。
ロシアメディア「ctニュース」は「ロシアの有名なフィギュアスケート選手のカミラ・ワリエワは、スポーツの功績で得た名声のおかげで15歳にして大金を稼ぐ可能性がある」と報道した。
「ワリエワは2021年に賞金で約500万ルーブル(約750万円)を得ていたことが知られている」とブレークした昨年から徐々に収入が増えているが、北京五輪で確実視される2冠が実現すれば破格のカネを得ることになるという。
「2022年にワリエワが五輪で2つの金メダルを獲得すれば、国から800万ドル(約9億2000万円)、スポンサーから数百万ドルの支払いを受ける可能性がある」と指摘。国のボーナスや有力スポンサーからの契約料などで合計15億円を超す見込みだ。
さらに「ワリエワのインスタグラムアカウントでは、積極的に広告販売が開始された。すでに複数の優良企業がスポンサーとして名を連ねている」。ワリエワのSNSはフォロワーが急増しており、金メダル効果も重なれば広告料も激増することは確実。数億円の収益は確実で、こうした収入をすべて合わせると20億円前後に達することになりそうだ。
ショートプログラム(SP)首位で迎える今日17日のフリー。疑惑の女王≠ェ金メダルとともにビッグマネーをつかむことになるのか。
●往年の金メダリストもワリエワの出場に「明らかに正しくない」と苦言! 2/17
ドーピング違反を犯した15歳の少女に世界的なバッシングが起きている。北京五輪に出場中のカミラ・ワリエワ(ロシアオリンピック委員会=ROC)だ。
2月15日に行なわれた北京五輪フィギュアスケート女子シングルのショートプログラム(SP)で、トリプルアクセルの着氷が乱れるなどミスはあったが、82・16点を獲得。ワリエワは堂々の首位に立った。しかし、大会期間中の今月8日に発覚した、違法薬物使用問題に対する風当たりは弱まる気配がない。
仮にフリースケーティング(FS)終了後にワリエワが3位以内に入っても、メダルの授与式は行なわれない。まさしく異常事態だ。実際に北京五輪に参戦する選手たちからも「明らかにフェアな試合ではない」(ナターシャ・マッケイ=英国)といった声が噴出。往年の覇者、元アメリカ代表のクリスティー・ヤマグチも、女子フィギュア界への危機感を募らせている。
1992年のアルベールビル五輪で金メダルを獲得し、世界選手権連覇(91、92)の経歴を持つヤマグチ。90年代の女子フィギュア界を支えた名手は、米放送局『NBC』の番組「Today」の取材で、業界を揺るがす問題に「ショックを受けた」と持論を語った。
「完全に解決はしていませんが、彼女のオリンピックへの出場は、オリンピックの理想から明らかに反するものだと思います。私たちはアスリートとして、『ドーピングをせずに切磋琢磨し、スポーツマンシップとフェアプレー精神に則って出るんだ』と心に誓うんです。それが、誰もが見たいと願うスポーツのあるべき姿だからです。でも、現状はそうしたものからはかけ離れている。明らかに正しくない状況にある」
さらに「仮にどうなっても、不穏な空気が流れ過ぎていて、がっかりする結果は避けられない」と断じたヤマグチは、こう言い放っている。
「こうして重要な意味のあったオリンピックが、他のアスリートたちから奪われていくのは本当にありえない。何よりも悲しいことだと思う」
各国のメディアや識者からの非難の声は強まり続けている。明らかな苦境のなかで、ワリエワはいかなる滑りを見せるのか。FSの演技と結果には世界が注目している。
●沈黙のワリエワ IOC、15歳に配慮―フィギュア女子 2/17
五輪開幕後に発覚したドーピング問題の渦中にいるフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(ロシア・オリンピック委員会)。15日のショートプログラム(SP)は、金メダル候補としての地力を示してトップに立った。
冒頭のジャンプで着氷が乱れたミスを除けば、しなやかな表現力もジャンプの精度も一級品。観客や関係者から、15歳の少女へ惜しみない拍手が送られた。
しかし、動揺をのぞかせるシーンもあった。演技直後はこらえきれない様子で表情を崩し、涙。各国の報道陣が待ち構えた取材エリアを無言のまま足早に通り過ぎた。SP3位の坂本花織(シスメックス)ら上位3人が臨むはずの記者会見には姿を見せず、沈黙を貫いた。
一夜明けた16日。国際オリンピック委員会(IOC)のアダムス広報部長は、17日の女子フリー後にワリエワが3位以内に入った場合も会見の欠席を容認する姿勢を示し、「強要は適切ではない」と述べた。
スポーツ仲裁裁判所(CAS)の判断により、IOCはワリエワの出場継続を阻止できなかったが、未成年者の精神面に及ぼす影響に配慮して柔軟な対応を見せた。
違反の有無が確定するまで、数カ月はかかるとも言われている。さまざまな情報、批判的な意見や臆測が世界中を飛び交う中、最終組で滑走するワリエワに再び大きな注目が集まる。
●ワリエワ首位に喝采を送った中国レジェンド 「並外れた技を知って」 2/17
北京五輪フィギュアスケート女子ショートプログラム(SP)では、15歳カミラ・ワリエワ(ROC)が首位発進した。ドーピング違反騒動で海外メディアや元選手らの批判が上がる状況。中国の元五輪銅メダリストは首位発進を称えたようで、「素晴らしい試合を見てほしいだけ」と持論を述べている。
中国のウェブメディア「網易新聞」はワリエワ騒動に関する記事を掲載。その中で「中国フィギュアスケート界のレジェンド・陳露はワリエワ支持の姿勢を続け、ネットユーザーから疑問の声が上がっていたが、微博(ウェイボー)でそうした声に答えた」と記した。
1994年リレハンメル、98年長野の女子シングルで2大会連続銅メダリストとなった陳露(チェン・ルー)氏のことを紹介。同氏はワリエワの演技を称えるコメントを残していたようで、「多くのネットユーザーは、陳露が中国女子フィギュア界の指導的人物として、なぜドーピング陽性の選手にプラスの姿勢を続けているのか疑問を呈している」と説明した。ファンの声に同氏はこう答えたという。
「私がK宝(ワリエワ)を支持していると言うなら、今日、彼女に82.16点をつけて1位にしたISU(国際スケート連盟)の審判は、みな彼女を支持しているということになります。今回の試合の解説者として、私はただ、みなさんに素晴らしい試合を見てほしいだけです。並外れた技というのがどんなものなのか知ってほしいのです。私は五輪の試合の場に立つ選手の全てが大好きで、彼らのパフォーマンスに喝采を送っています!」
ワリエワは昨年12月のドーピング検査で禁止薬物が検出。スポーツ仲裁裁判所(CAS)はワリエワの15歳という年齢が保護対象であることなどを理由に、個人戦出場を認める決定を下していた。
●ワリエワ騒動、韓国ユ・ヨンの採点に影響と母国メディア指摘 2/17
北京五輪は17日、フィギュアスケートの女子フリーが行われる。韓国のユ・ヨンはショートプログラム(SP)6位発進。韓国メディアは得点について触れながら報じている。
初の五輪を迎えたユ・ヨンは70.34点をマークし、5位の樋口新葉に次ぐ6位につけた。好位置だが、韓国メディア「デイリーアン」は「“歴代級の鵜の目鷹の目(粗探し)” ユ・ヨン3Aむしろ毒?」の見出しで記事を掲載。「演技力には満足したが、残念な点を挙げるとしたらやはりジャンプの完成度だった」とつづり、こう続けた。
「ユ・ヨンは最初のジャンプだった3回転アクセルをはじめ、全てのジャンプを安定的に着地することに成功した。しかし、審判員たちはユ・ヨンのジャンプを疑問視し、演技後にビデオ判定を通じて細かく観察した。
特に大きな点数を得る3回転アクセルは惜しくも減点処理されてしまった。着地には成功したが回転不足との判断だった。空中で3回転半回らなければならない3回転アクセルは女子フィギュアでは4回転ジャンプとともに一番難しい技として知られる。ほとんどのジャンプが後ろに飛ぶのとは違い正面を見て飛ぶからだ」
今大会の樋口を含め、五輪史上5人しか成功していないジャンプ。記事では歴代の成功者を紹介した。さらに「問題は女子シングルを判定する審判たちが“鵜の目鷹の目(粗探し)”で試合を見ている点だ」と説明。カミラ・ワリエワのドーピング騒動に触れながらこう記している。
「今回は世界記録保有者カミラ・ワリエワのドーピング摘発で大騒ぎになっている。結局、スポーツ仲裁裁判所はワリエワに出場を許可し、これに対応するかのようにIOC(国際オリンピック委員会)はすぐに声明を発表し、ワリエワがメダルを獲った場合、メダル授与式を開催しないと明かした。
審判たちも負担になるしかなかった。全世界の人たちの視線がフィギュア女子シングルに向いている状況で万が一、判定議論など誹謗された場合、影響が大きいためだ。実際に行われたSPではユ・ヨンをはじめ、ほとんどの選手がジャンプの回転不足や着地の動作と関連して減点されたりもした」
最終第4組に食い込んだユ・ヨン(韓国)は午後10時9分(日本時間)に登場する。記事では「トリプルアクセルを試したユ・ヨンの立場では負担が大きくなるしかない。17日に行われるフリーでもより完璧な技術を駆使することが要求される理由である」とした。
●ワリエワのコーチに米メディア注目 恐るべき指導法 2/17
北京五輪のフィギュア女子でドーピング騒動の渦中にいるロシア・オリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ(15)を指導しているエテリ・トゥトべリーゼさん(47)の剛腕が注目されている。
米メディア「SLATE」は、ワリエワを支援するトゥトべリーゼコーチは、2014年ソチ五輪団体金メダルのユリア・リプニツカヤ、2018年平昌五輪女子シングルス金メダルのアリーナ・ザキトワらを指導した実力者と紹介。その上で「4回転ジャンプの革命が起き『エテリガールズ』はすべての大会で数えきれないほどの4回転ジャンプを着地させ、メダルを獲得した」とし「トゥトべリーゼはチャンピオンを生み出す世界有数の専門家とみなされるようになった」と伝えた。
さらに、同メディアはトゥトべリーゼコーチの原点はハードな練習と厳しい指導にあるとし「その方法は秘密ではない。エテリガールズは競技中に水を飲めない≠ニ公然と話し、粉末栄養剤か更年期障害を誘発することで知られるルプロンを接種することで思春期を遅らせるため最善を尽くしている」と指摘。さらに「エテリガールズ」は引退年齢が若いことからして「フィギュアスケートファンの間では『エテリの有効期限』と呼ばれている」という。
同コーチは今回の騒動について、ロシアの「チャンネル1」に取材に「取り巻く環境はとても複雑だ。私はカミラ(ワリエワ)が無実であると信じている」などとコメント。ワリエワの演技ととともに、今後はコーチの動向も注目されそうだ。
●ワリエワ まさかの4位 ドーピング問題の中のフリーはミス相次ぐ 2/17
フィギュアスケート女子でカミラ・ワリエワ(15=ROC、ロシア・オリンピック委員会)がドーピング問題に揺れる中、ジャンプでミスが相次ぎ141.93、合計224.09点で4位。シニアでの大会で初めて1位となることができず、得点が発表されると泣き崩れた
ショートプログラム(SP)では着氷が乱れ82.16点だったが首位。冒頭の4回転サルコーは着氷したが、トリプルアクセル(3回転半)はステップアウト。4回転―3回転の連続トーループで転倒し、後半の4回転トーループでも手をついた。演技が終わると顔を覆うワリエワに、客席から大きな拍手が送られた。
ライバルたちに勝利を諦めさせる強さから、ファンは畏敬の念を込めてワリエワを“絶望”と呼ぶ。今シーズン出場したグランプリ(GP)シリーズ2連勝、ロシア選手権、欧州選手権と出場5戦全勝でSP、フリー、合計ですべて世界最高得点をを打ち立てた。さらに、6日に行なわれた団体戦のSPでも90・45点の高得点で鮮烈五輪デビューを果たし、フリーでは女子選手として五輪で初めて4回転ジャンプを成功させ、ROCの金メダルに貢献した。
だが、その後状況は一変。北京冬季五輪のドーピング検査を管轄する国際検査機関(ITA)は11日、昨年12月のドーピング検査で陽性反応を示したと発表。12月25日のロシア選手権(サンクトペテルブルク)で採取された検体から禁止薬物トリメタジジンが検出されたという。
CASは13日夜、オンライン形式の聴聞会を約5時間半も開催。ワリエワ本人、暫定資格停止処分を解除したロシア反ドーピング機関(RUSADA)、提訴したIOC、世界反ドーピング機関(WADA)、国際スケート連盟(ISU)を事情聴取し、以下の「例外的な状況」で処分解除は妥当と裁定した。だが、裁定は五輪出場の可否のみで調査は継続中のため、今大会の成績は「暫定」扱いになる前代未聞の事態となった。3位以内に入った場合には、大会中のメダル授与式は行わないとも発表された。
メンタル面も心配される中、これまで圧倒的な強さを見せつけていたワリエワも完璧な演技を見せることができなかった。
●ドーピング違反騒動ワリエワ金ならず、精彩欠き4位 2/17
ドーピング違反騒動に揺れるROC(ロシア・オリンピック委員会)の15歳、カミラ・ワリエワは4位だった。
禁止薬物トリメタジジンの陽性反応が出て、批判の中にあって夢舞台に立った。世界最高記録を持つフリー曲「ボレロ」の赤と黒の衣装で登場し、冒頭で4回転サルコーを着したが、その後のジャンプで着氷のミスが出るなど精彩を欠いた。演技後、笑顔はなかった。
国際オリンピック委員会(IOC)から「暫定」記録とされる。
ワリエワは昨年末のドーピング検査で陽性反応が出たものの、スポーツ仲裁裁判所(CAS)から個人戦出場を認める裁定が下された。国際オリンピック委員会(IOC)はワリエワが3位以内に入った場合はメダル授与式を実施しないと発表し、前代未聞の混乱が続いていた。
金メダルはアンナ・シェルバコワ(ROC)、銀メダルはアレクサンドラ・トルソワ(ROC)。坂本花織(21=シスメックス)が153・29点で合計233・13点となり、銅メダルを獲得した。樋口新葉(21=明大)は5位、河辺愛菜(17=木下アカデミー)は23位だった。
●ジャンプ5本失敗しフリー5位でメダル逃したワリエワ、自らが「絶望」の表情  2/17
17日に行われた北京オリンピックのフィギュアスケート女子フリーで、ドーピング疑惑の渦中にいるカミラ・ワリエワ(ROC=ロシア・オリンピック委員会)にミスが相次いだ。自身の持つ世界最高点を43・36点も下回る141・93点。フリーだけなら5位と、「絶望」との異名を取る美しい演技は全く見られなかった。首位だったショートプログラム(SP)の貯金をはき出し、合計でも4位に転落、坂本花織(シスメックス)にも抜かれ、メダルすら逃した。
フリーは、2種類の4回転ジャンプを3度跳ぶ、今大会の団体の時と同じ構成を予定していた。
しかし、7本のジャンプのうち出来栄え点でプラスの評価を得たのは2本のみ。二度の転倒に加え、手をついたり、バランスを崩したりと、5本のジャンプを失敗するなど、疑惑の影響は隠せなかった。
演技後には手で顔を覆い、得点を見て固まってしまった15歳は、絶望感に襲われていた。
●ワリエワ、転倒し、計224・09点でまさかの4位 SP首位から転落 2/17
女子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)1位でロシア・オリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ(15)が、141・93点の合計224・09点でまさか4位となった。ワリエワは今大会中にドーピング陽性反応が出たため、出場は認められているものの順位は暫定的なものとして取り扱われる。自己ベストは21年11月のロシア杯で記録したフリー185・29点、合計272・21点でともに世界最高。
「ボレロ」に乗せて、冒頭の4回転サルコーで着氷したが、続くトリプルアクセルでは手をついて、思うようにジャンプが決まらない。後半は4回転トウループで転倒。トリプルフリップ、トリプルトウループでは着氷した。演技後は、感極まった。得点が表示されると、あふれる涙をこらえきれなかった。
北京五輪シーズンの今季がシニアデビューのワリエワ。4回転ジャンプと長い手足をいかした優雅な演技で、SP、フリーともに世界最高を更新し続けてきた。15歳ながら圧倒的な実力についた愛称は「絶望」。昨年12月のロシア選手権では、2位以下を30点以上引き離す合計283・48点で優勝し代表に内定し、五輪の優勝候補筆頭だった。
6日の団体SPで90・18点をマークし、衝撃の五輪デビュー。8日の同フリーでは、女子の五輪では初めて4回転ジャンプを成功させROCの1位に貢献した。ただその直後に、ワリエワのドーピング疑惑が発覚。昨年12月に採取された検体から禁止薬物が検出され、ロシア・アンチドーピング機関(RUSADA)は選手資格を一時暫定的に停止した。
その後、RUSADAはワリエワからの異議申し立てを受けて9日の処分を解除。この決定に国際オリンピック委員会(IOC)と世界アンチドーピング機関(WADA)が異議を申し立て、スポーツ仲裁裁判所(CAS)へ提訴した。CASは14日に、ワリエワが引き続き個人種目に出場することを認める裁定を発表。ドーピングは陽性ながら、ワリエワが16歳以下の「要保護者」である点など「彼女の責任ではない」とされた。
15日のSPでは、82・16点で首位発進したワリエワ。演技後には涙も見せ、上位3名による公式会見は欠席した。今大会最も注目を集めた15歳は、失意の中終演を迎えた。IOCは、今大会のワリエワの成績の取り扱いについては、「暫定的」なものとして扱うことを明言している。
ROCは団体でも1位となっているが、ワリエワが出場していたためメダル授与式は行われていない。授与式の代替地としては、メダル獲得国やIOC本部があるスイス・ローザンヌを挙げ「(処分など)全て終えた後に調整する」としている。
●「なぜあきらめた?」 悲嘆のワリエワにコーチが詰問 2/18
北京冬季五輪のフィギュアスケート女子シングルに出場したロシア五輪委員会(ROC)のカミラ・ワリエワは、17日のフリースケーティング(FS)でミスを連発し金メダルを逃したが、厳しい指導で知られるコーチのエテリ・トゥトベリーゼ氏(47)は同情する様子をほとんど見せなかった。
ワリエワは、禁止薬物陽性となったにもかかわらず、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に出場を許可されたことで、世界中の注目を集めた。また、15歳という若さから、周囲の人々、特にコーチのトゥトベリーゼ氏にも関心が集まった。
「氷の女王」と呼ばれるトゥトベリーゼ氏は、10代のロシア人スケーターを次々と世界トップクラスの選手に育成してきた敏腕コーチだが、その厳しい指導法に疑問を呈する声も出ていた。
この日、演技を終えて動揺した様子でリンクから戻ってきたワリエワを最初に出迎えたトゥトベリーゼ氏は「なぜあきらめたの? なぜ戦いをやめたの? 説明して」と詰問。その後は、点数の発表を待つ間に泣き崩れたワリエワの肩に手を回す様子も見せた。
同じくトゥトベリーゼ氏が指導するROCのアンナ・シェルバコワとアレクサンドラ・トゥルソワはそれぞれ、金と銀メダルを獲得した。
競技の終了直後、ロシア陣営では感情が高ぶる場面があった。トゥルソワは怒りをあらわにし「このスポーツが嫌い。もう氷上には行かない」と声を荒らげた。その後、落ち着きを取り戻したが、競技引退については否定せず、「今後についてはよく考えてから決めたい」と記者団に語った。
●玉川徹氏、4位のワリエワに「ただただ彼女はかわいそうだった」 2/18
テレビ朝日の玉川徹氏が18日、コメンテーターを務める同局系「羽鳥慎一モーニングショー」(月〜金曜・午前8時)にリモート生出演した。
番組では北京冬季五輪の女子フィギュアスケートでショートプログラム(SP)1位でロシア・オリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ(15)が、141・93点の合計224・09点でまさか4位となったことを報じた。ワリエワは今大会中にドーピング陽性反応が出たため、出場は認められているものの順位は暫定的なものとして取り扱われる。
玉川氏はワリエワについて「率直にかわいそうだった見てて。かわいそうでした彼女が」とコメントした。
さらに「ドーピング疑惑」の渦中にさらされた演技に「世界がこんな状況にならったらメンタルが正常でいられるわけがない」などとし「仮にもしも完璧な演技をやったとしたら、自分のことを潔白だと信じて跳べたという話になるかもしれないけど…」としたが「どう捉えていいのかわかりません。ただただ彼女はかわいそうだった」と繰り返していた。
●渦中のワリエワ演技前に客席の米国選手団が一斉退席 2/18
北京五輪は17日、フィギュアスケート女子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)首位だった15歳カミラ・ワリエワ(ROC)はまさかのミス連発で4位(順位は暫定扱い)。昨年12月のドーピング検査で陽性反応を示していたが、スポーツ仲裁裁判所(CAS)が今大会の出場継続を認めて演技。会場の観客席にいた米国勢は、ワリエワの演技前に一斉に退席したという。米記者が伝えている。
SP首位だったワリエワは最終滑走者として登場。その演技前、観客席にいた米国代表の選手たちの様子を、米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」のライネ・ヒギンス記者がツイッターでレポートした。
ヒギンス記者は「女子フリーを見るためにたくさんのフィギュアスケート米国代表選手たちがスタジアムにいました。しかし、彼らは全員カミラ・ワリエワが氷に降りる前に歩き始めました。それは意図的なもののように見えました」と記し、ワリエワが演技する前に退席したことを伝えた。
単に時間の都合による可能性もあるが、出場裁定に対する抗議的行動とも考えられる。また続く投稿で「これはブレブレの証拠写真ですが、先に気付いた私の同僚が撮ったものです」と、会場から去る米国選手の姿を公開していた。
ワリエワの出場裁定を巡っては米国の五輪委員会は失望と批難の声明を発表。以降、米国のフィギュア界でも今大会の出場選手を含め、現役選手らが続々と批判する流れが広がっていた。SPでは放送局「NBCスポーツ」で98年長野五輪金メダリストのタラ・スピンスキー氏ら解説陣が演技中の解説を放棄したことも話題になっていた。
●ワリエワ騒動に「未成年のアスリートを使い捨てにしすぎなんじゃねーの」 2/18
お笑いコンビ、メイプル超合金のカズレーザーが18日、フジテレビ系「めざまし8」に出演。北京五輪のフィギュアスケート女子でROC(ロシア五輪委員会)のカミラ・ワリエワ選手(15)がドーピング疑惑で揺れる中、フリーで4位に終わったことに対して、「未成年の、年少のアスリートを使い捨てにしすぎなんじゃねーのかな」と怒りをあらわにした。
番組では、ミスを連発したワリエワ選手のフリーの演技を放送。演技直後に、コーチから「どうして気を緩めたの?説明して!」と厳しく叱責され、キスアンドクライで泣きじゃくるワリエワ選手の様子などをオンエアした。
カズレーザーは「我々、心情を察することはできません」と前置きした上で「ワリエワ選手という偉大な才能あふれる選手ということで、我々も過大に評価していると思うけど、やっぱり15歳の未成年のアスリートが大きな舞台でミスをすることはあって当たり前のこと。それをあまりに期待を負わせすぎている。それはドーピングのあるなし関係なしにプレッシャーをかけすぎなのではないかと思う」と話した。
怒りの矛先はIOCに。「今回のIOCの不信感はあると思う。ROCという形で出場を認めるというのは、ドーピングに対しての制裁は全くないのと一緒で。今回の五輪でジャンプスーツの採寸で失格となるなど、選手が自分でどうにもならない不安と戦っているので。未成年の、年少のアスリートを使い捨てにしすぎなんじゃねーのかなと五輪を見る度に思う」と語った。
話を受けたMCの谷原章介も、ロシアの女子フィギュア界が若年齢化している現状を踏まえ、「もしかしたらワリエワ選手にとっては最初で最後の五輪になったのかもしれない」と悲痛の表情を見せた。  
●「インスタを閉鎖するのよ!」メドベージェワが失意のワリエワにエール! 2/18
失意のどん底にいるだろう可愛い後輩に、平昌五輪の銀メダリストが熱いエールを贈った。
現地木曜日に行なわれた北京五輪・女子フィギュアスケートは、ROC(ロシア・オリンピック委員会)のアンナ・シェルバコワが見事に優勝。2位に同胞のアレクサンドラ・トゥルソワが、3位には日本の坂本花織が食い込んだ。ショートプログラムで首位に立っていたカミラ・ワリエワ(ROC)はらしくないミスを連発し、4位でのフィニッシュとなった。
そんななか、ロシア3人娘と同じくエテリ・トゥトベリーゼ氏に師事するエフゲニア・メドベージェワがインスタグラムを更新。3選手の最新画像を掲載しつつ、それぞれへのメッセージを添えた。
トップで書き出したのが、ドーピング疑惑に揺れるワリエワへの想いだ。今回ROC選手団の大使としてサポート役も担っているメドベージェワは「カミラ、あなたがどう感じているのかはよく分かるわ」と発し、次のように続けている。
「あなたはこれで終わり、と思っているかもしれない。でも違う。これは終わりじゃない。私はこれからもずっとあなたが競技を続けてくれることを切に願っている。いま経験していることはきっと、時間と傍にいてくれる人びとによって癒されるはずだから」
そして、「1週間はインスタグラムを閉鎖して、愛する人たちと一緒にいなさい。まだまだ人生は続くし、この先、たくさん大会があるわよ」と励ました。
さらにトゥルソワに対しては「素晴らしいフリープログラムだったわ! これまでの五輪チャンピオンはあなたに嫉妬しているはずよ。私も真似できないもの」と称え、金メダルのシェルバコワに向けては「あなたは本物のファイターであり、とても強い精神力を持った怪物のようなアスリートよ」と絶賛し、「今日はあなたとあなたの両親にとって最高の日。おめでとう!」と祝した。
●15歳「ワリエワ」で揺れた五輪の銀盤 ドーピング問題に浮かぶ二つの謎 2/18
アスリートが輝くはずの舞台が暗い影に覆われた。北京冬季五輪のフィギュアスケート女子。ドーピング検査で陽性反応を示しながら出場を認められたカミラ・ワリエワ(ロシア・オリンピック委員会=ROC)は、ショートプログラム(SP)こそ1位でまとめたもののフリーで大きく崩れ、「4位」にとどまった。ROCの一員として出場した団体の1位を含め、成績は注釈付きで暫定的な扱い。団体のメダル授与式は行われておらず、ROCに金メダルが与えられない可能性がある。なぜ15歳の少女の検体から禁止薬物が検出されたのか。検査から陽性発覚まで1カ月半近くも経過した原因は何なのか。問題は解決されておらず、真相究明は長期化も予想される。
フリーで号泣、ドーピング問題の経緯
周囲から疑いの視線が向けられ、3位以内に入ってもメダルを手にできる保証はない。異例の厳しい環境にさらされたワリエワの演技は、明らかにこれまでと違った。17日のフリーはジャンプでバランスを崩し、転倒するなどミスを連発。フリーは自身の持つ世界歴代最高得点を約43点も下回り、泣き崩れた。
個人種目が始まる前日の14日、ロシアメディアに「精神的に疲れた」と吐露し、「これは私が乗り越えなければいけない舞台のようだ」と必死に自身を奮い立たせた。ドーピング問題の渦中にある15歳を五輪の銀盤に立たせ続けることは、本当に正しかったのだろうか。
昨年12月25日のロシア選手権で採取されたワリエワの検体から、禁止薬物トリメタジジンが検出された。ストックホルムにある世界反ドーピング機関(WADA)の検査所は同月29日に検体を受け取ったが、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)に分析結果を報告したのは1カ月半ほど経過した今月7日。くしくも北京五輪のフィギュア団体でROCが1位となった日だった。
RUSADAは翌8日にワリエワに通知し、暫定資格停止処分を科した。ワリエワ側の異議申し立てを受け、RUSADA規律委員会は9日に処分を解除。この処分解除を不服とした国際オリンピック委員会(IOC)、WADAなどがスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴した。
CASは14日、ワリエワが16歳未満の「保護対象者」であり、五輪出場を妨げれば「回復不可能な損害を与える」などの理由を挙げて訴えを退け、ワリエワの五輪出場継続を認めた。IOCはワリエワが3位以内に入った場合はメダル授与式や表彰式を行わず、成績にはアスタリスク「*」の注釈を付けると発表。前代未聞の状況下で女子の個人種目は行われた。
祖父の薬、3種類の薬物
ワリエワはシニアに本格参戦した今季、世界歴代最高得点を次々と更新。4回転を含む高難度のジャンプを鮮やかに決めるだけでなく、柔軟性や表現力にも優れ、「史上最高の選手」と呼ばれた。才能豊かな15歳はどのような経緯で禁止薬物を摂取したのか。これこそが最大の疑問であり、焦点だろう。
検体から見つかった禁止薬物トリメタジジンは、狭心症など心臓の治療薬として用いられる一方、持久力向上につながるとされ、2014年にWADAの禁止薬物に加わった。同年に競泳男子五輪金メダリストの孫楊(中国)の検体から検出され、孫楊は3カ月の資格停止処分を受けている。
CASによると、ワリエワ側は祖父が定期的に服用している心臓疾患の薬を、同じ食器やグラスを使用した際に誤って摂取したのが原因である可能性を主張。ワリエワの母親の証言によると、祖父は毎日ワリエワを家から練習場まで送迎し、昼休憩時は一緒に過ごしている。検体からはトリメタジジンを含め心臓疾患の治療に使用される薬物が計3種類検出された。
他の2種類は禁止薬物に指定されていない「L―カルニチン」と「ハイポクセン」。ワリエワは検査時に提出する書類で、この2種類については使用を申告していた。米国反ドーピング機関のタイガート最高責任者は、「持久力を高めて疲労を軽減し、酸素を効率的に取り込むことを狙った組み合わせに見える」との見解を示した。
混乱招いた検体処理の遅れ
今回のドーピング騒動の混乱に拍車をかけたのが、検体処理の遅れだ。北京五輪前に分析結果が明らかになっていれば、今回のような異常事態にはならなかっただろう。CASも「結果通知が時機を逸したことも重大な問題。競技者の責任ではなく、法的要件を立証する能力を妨げた」と指摘した。なぜ約1カ月半もの長期間を要したのか。
CASによると、検査所は新型コロナウイルスの流行により人員が不足したと説明。WADAはRUSADAからストックホルムの検査所に送られてきた検体に、優先的に処理する印がなかったと主張した。これに対し、RUSADAは分析するのに十分な標準的な期間内で検体を届けたとした上で、検査所から1月に優先的に分析する旨の連絡を受けたと反論した。
WADA元事務総長のデービッド・ハウマン氏は、ワリエワの五輪出場継続を認めたCASの裁定を受けて、「大会前に採取された全ての検体が、要求通り大会前に分析される必要性を確認するものだ」と語り、「アスリートに約束されたクリーンな大会が提供されているとは到底思えない」と批判した。
晴れぬ「ロシア」の疑念
ロシアは自国開催だった14年ソチ冬季五輪で、国家ぐるみでドーピングの不正に関与していたとWADAやCASに認定された。ロシア選手団は22年12月まで主要国際大会から追放され、北京五輪は昨夏の東京五輪同様、「潔白を証明した選手」がROCの一員として個人資格で参加している。
ワリエワは「潔白」なのか。アスリートは自身の体内から検出された全ての禁止物質に対して責任を負わなければならない。五輪中のドーピング検査では陰性だったとはいえ、五輪前に陽性となった事実は揺るがず、出場することは矛盾しているように映る。韓国の放送局はワリエワのSPの演技中、沈黙する「中継ボイコット」で抗議の意を示した。米国の放送局も同様にほとんどコメントしなかったという。
WADAやRUSADAは、ワリエワをサポートしているコーチや医師らを調査する方針。北京五輪のヒロインとなるはずだった15歳から禁止薬物が検出された衝撃は大きく、周囲の関係者も責任を免れない。関与はなかったのか、ロシアはドーピングから抜け出せていないのか。疑念は晴れない。アスリートの夢が詰まったスポーツの祭典は再び汚され、失望と落胆が広がる。
日本が3位、米国が2位だったフィギュア団体の最終順位は、いつ確定するのか不透明なままだ。選手は一生に一度、五輪のその瞬間でしか味わえないメダル授与式の感動を奪われ、輝くメダルを持ち帰ることもできない。スポーツの根幹にある公平性や高潔さは揺らいだ。闇に包まれた真実を明らかにしなければ、五輪の価値そのものが失われかねない。
●ワリエワ騒動はこれからが本番…非難殺到“ロシア鉄の女”は粛清対象に? 2/19
「鉄の女」への非難が止まらない。ドーピング違反を犯したフィギュアスケート女子のワリエワ(15、ROC=ロシア・オリンピック委員会)は、17日のフリーで精彩を欠き、4位に終わった。キスアンドクライで号泣する15歳の姿に世界中が重い空気に包まれた。
問題は競技直後に起きた。「鉄の女」ことエテリ・トゥトベリゼ・コーチが泣きながら肩を落とすワリエワをねぎらうこともなく、「何で戦うのをやめたの? 説明して!」と詰め寄ったのだ。ロシアメディアによると、ワリエワは「これで表彰式は中止にならない」と話したという。
銀メダルを獲得した同じROCのトルソワも競技後、ハグしようとするトゥトベリゼコーチを身をよじって振り払い、「嫌い! みんな知ってるのよ!」と激高。同コーチのもとを離れることを示唆したそうだ。
鉄の女によるワリエワへの冷酷すぎる言動に、五輪経験者やメディアは一斉に批判。同コーチはワリエワのドーピング違反が発覚した際もロシア国内から「恥を知れ!」などと非難されていた。
18日に会見を行ったIOCのバッハ会長も、「こんなにも冷たい態度を取れるのか」と異例の批判を繰り広げ、「ドーピングはほとんどの場合、アントラージュ(周囲)が関わっている。15歳の未成年の体内に禁止薬物を投与した人物が有罪。彼女を守るべきだった人々への調査が始まる。断固とした措置をとる」と言及。選手には不正告発を促した。
「鉄の女=諸悪の根源」という構図ができつつある。同コーチは選手を「原材料」、スケート場を「工場」と表現。2018年平昌金のザギトワら多くのメダリストを輩出した一方、徹底した体重管理などにより、14年ソチ団体金のリプニツカヤ、18年平昌銀のメドベージェワらが摂食障害になったことを明かしている。
「過酷な環境に追い込まれ、多くの教え子がエテリから離れたがっていて、実際に去った選手もいる。しかし、最終的に彼女のもとに復帰しているケースが多い。エテリがロシアの女子フィギュア界を仕切っている以上、選手が歯向かうことは許されない。ワリエワのドーピング違反も過度な勝利至上主義がもたらした負の遺産というしかない」(フィギュア関係者)
ロシアはソチ五輪でデータの改ざんなど組織ぐるみのドーピング違反が発覚した。ロシア反ドーピング機関所長としてこれに関与、その後、ロシア当局による粛清を恐れて米国へ国外逃亡したロドチェンコフ氏は、映画「イカロス」などで、国家主導による尿検体のすり替えの実態などを赤裸々に明かしている。
独メディアがロシアのドーピング違反を報じたことをきっかけに、ロシアは国際的な非難を浴びた。プーチン大統領は組織的不正を否定。「責任は(違反した)個人が負うべきだ。逃げられはしない」と強調した。その後、2人の研究所員が不審死を遂げた。
そこでトゥトベリゼコーチだ。ロシアの大衆紙は先日、19年に同コーチが禁止薬物となったメルドニウムに代わる「新たな薬が必要だ」と語っていたと報じた。ドーピング違反に同コーチが関与していた可能性は消えないし、ロシアは今もなお、組織的なドーピングを疑われているのが実情。
ロシア当局が鉄の女に「個人の責任」を問うても、何ら不思議ではない。
●ワリエワ騒動で話題 …“鬼コーチ”エテリ「泣き出す生徒は数え切れない」 2/19
もうすぐ閉幕を迎える北京五輪。今大会で最も注目を集めたのが、フィギュアスケートのカミラ・ワリエワ選手(ROC)によるドーピング疑惑である。15歳という年齢から周囲の大人たちへも世間から厳しい目が向けられているが、彼女らが拠点とする“サンボ70 フルスタリヌ”とはどのような施設なのか? 現地ジャーナリストが取材した「Sports Graphic Number」掲載記事を特別に公開する<全2回の1回目/#2に続く>。
〈初出:2018年2月1日発売号「[ロシア虎の穴潜入レポート]メドベデワ&ザギトワ『天才少女の作り方』」/肩書などはすべて当時〉
女王メドベデワと新星ザギトワ。圧倒的演技で平昌五輪の金を争う2人がともに拠点とするのが、ロシアの虎の穴「サンボ70 フルスタリヌィ」だ。現地潜入取材と、コーチやスタッフの証言をもとに、次々と天才少女が生まれる強さの秘密に迫った。
メデベデワ、ザギトワを輩出した「サンボ70」とは
世界選手権2連覇中の女王エフゲニア・メドベデワ。そして、今季シニア1年目にして一気に頭角を現した新星アリーナ・ザギトワ。平昌五輪でメダル最有力候補とされる2人の天才少女がともに所属するのが、モスクワにある「サンボ70」と呼ばれるトップアスリート養成学校だ。
「サンボ70」という一風変わった名前は、サンボ世界選手権金メダリスト、ダビド・ルドマンが1970年に創立したことにちなむ。現在はサンボだけでなく新体操、水泳、陸上など22種目もの競技において国の援助のもと育成が推し進められている。
その一部門としてあるのが「フルスタリヌィ(ロシア語でクリスタル)」と呼ばれるフィギュアスケート専用施設だ。五輪へ向けた選手育成を目的として2003年に設立され、当初は「第37青少年スポーツ学校」という名称だったが、'13年にサンボ70傘下に統合された。メドベデワもザギトワもここから徒歩5分ほどの自宅に住み、週6日で練習に通っている。
世界トップレベルの選手を次々と輩出するフルスタリヌィとは、いったいどんな施設なのか。そこでは、どのような育成がなされているのだろうか。
2008年にエテリが専属コーチに就任
フルスタリヌィが本格的に始動したのは今から10年前の'08年のことだ。現在コーチを務めるエテリ・トゥトベリーゼの招聘がひとつの契機となった。練習場所が十分に確保できなくなったことによる移籍だったが、このとき8歳のメドベデワもコーチの後を追って移ってきている。
翌'09年にはユリア・リプニツカヤが門を叩く。当時10歳のリプニツカヤはジャンプが弱く、まだすべての3回転ジャンプを跳べないような状態だったが、トゥトベリーゼの指導のもとでめきめきと力をつけ、すぐにトップ選手の仲間入りを果たした。'14年の欧州選手権優勝でソチ五輪代表の切符を手にすると、本番では団体戦金メダルの原動力となり、一躍国民的大スターに。連日メディアで取り上げられ、彼女を育てたトゥトベリーゼの名も広く知れわたった。
当時の様子をフルスタリヌィ副部長のエドゥアルド・アクショーノフ氏が振り返る。
「あの頃のフィギュアスケート人気の過熱ぶりは異常でしたね。子どもに習わせたいという問い合わせが殺到し、連日対応に追われました。毎年180名の定員で新規生徒を募集するのですが、申し込み日には長い行列ができ、前日の晩から車に泊まり込む親御さんが大勢出たほどです」
ザギトワも上京「エテリ先生のところでもっと上を目指したい」
“リプニツカヤ効果”は競技人口の裾野を広げただけではなかった。モスクワのみならずロシア全土から才能ある生徒がフルスタリヌィに集まるようになったのだ。
「エカテリンブルクから母親とともに上京したリプニツカヤがひとつのモデルとなりました。一家総出で引っ越しをしてくることもあります。地方からわざわざ出てくるだけあって本人の決意も固く、家族のサポートも得られやすいのです」
ウラル山脈西部の町、イジェフスク出身のザギトワもまさにそのケースだ。モスクワに出てきた理由をザギトワはこう話す。
「今のモスクワの子たちは8歳くらいでもう3回転を跳びますが、私は12歳になっても3回転サルコウとループしか跳べませんでした。このままではだめだ、エテリ先生のところでもっと上を目指したいと思ったんです。それで両親のもとを離れて、モスクワの祖母のところに引っ越しました」
無名の43歳が「サンボ70」をロシア屈指の強豪クラブにした
現在、フルスタリヌィには週6日の練習生190名、週2回の練習生450名が通っている。今やサンボ70はCSKAモスクワやサンクトペテルブルクのディナモと並ぶ、ロシア屈指の強豪クラブとなった。
他のフィギュアスケートクラブとの違いをアクショーノフ氏はこう説明する。
「後発である私たちの強みは、まっさらな状態からのスタートだったことです。ゼロから人材を揃えるのはリスクもありましたが、熱意とアイデアのある次世代のコーチを迎えることができました」
現在70歳のタチアナ・タラソワ、76歳のアレクセイ・ミーシンと、ロシアフィギュアスケート界が誇る大御所たちに対して、トゥトベリーゼは43歳と若い。'08年当時30代前半の、まだ目立った実績こそないものの才気あふれるコーチは、歴史の浅いフルスタリヌィだからこそ過去の慣習にとらわれることなく指導に邁進できた。
エテリ「親が愛する子を思って厳しくしつけるように…」
「鉄の女」「氷の女王」などさまざまな異名を持つトゥトベリーゼの指導は非常に厳しいことで有名だ。「練習で150%、本番で110%」の言葉に表されるように、毎日の練習を最も重視し、生徒に質と量の両面を徹底して要求する。指導の際の口調は激しく、生徒の心に鋭く突き刺さる。
「泣き出す生徒は数え切れないほど見てきました。女子と男子とで涙の流れ方が違うことさえわかったほどです。小さい頃のジェーニャ(メドベデワの愛称)は叱られるとよくリンクの隅に行って戻ってこなくなりました」とトゥトベリーゼは微笑む。
ジャンプでよく失敗する幼いメドベデワをリンクの上で引きずり回したこともある。「氷の上がそんなに好きなら、ほら! どう、気に入った?」と。これにより「絶対に転ばず跳んでみせる」という強い執念が芽生えたとメドベデワは振り返る。
幼い子どもたちにとって厳しすぎるのではとの批判もあったが、意に介さない。
「私は生徒に真実だけを伝えます。たとえ耳の痛い話でもリンクではそれが必要だと思うからです。親が愛する子を思って厳しくしつけるように、私も生徒たちを愛し、育成の責任を果たしているのです。私は普通のコーチです。普通の親と同じように」
厳しくても「先生は私にとって母親のような存在です」
実際、生徒たちのほとんどがトゥトベリーゼのことを第二の母ととらえている。親しみを込めてではなく尊敬と信頼からだ。すでに10年以上の師弟関係が続くメドベデワは「もちろん家に家族はいます。でも、ここにもまた大切な家族がいるんです」と語り、ザギトワも「先生は私にとって母親のような存在です。たしかに厳しいですが、どうして厳しくするのかわかっていますから怖くありません」と話す。 ・・・
●ワリエワ騒動にバッハ会長「ゾッとした」、ROCコーチを批判 2/19
国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(68)が18日、北京市内で会見を開き、フィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(15、ロシア・オリンピック委員会=ROC)を指導するエテリ・トゥトベリゼ・コーチ(47)らを非難した。17日の女子フリーで4位に沈んだワリエワへの競技後の態度が「冷たかった」と指摘。大会を混乱させたドーピング疑惑の徹底解明を要望し、五輪出場選手の年齢制限を検討する考えも表明した。
開幕後初の会見に臨んだバッハ会長は機嫌良く話し始めた。スノーボード女子ビッグエアの岩渕麗楽が高難度の技に失敗した直後、各国選手が駆け寄って称えた場面に言及。「一生忘れられない。まさに五輪精神を象徴していた」と絶賛した。
だが、自らワリエワの話を切り出すと表情は厳しくなった。ミスを連発し、涙する15歳に対するコーチらの対応をテレビで見て「慰めるのではなく、拒絶しているように見えた。自分たちの選手に、こんなにも冷たい態度を取れるのか」と指摘。中継映像では「なぜ途中で諦めたの?説明しなさい」とトゥトベリゼ・コーチが叱る声が拾われ、バッハ会長は「ゾッとした。私は周囲の人々に信頼を置くことはできない」と言い切った。個人が対象の“攻撃”は異例で、ロシア政府の大統領報道官が「スポーツ界トップの意見だが、同意はできない。厳しさは勝利の鍵だ」と反発するほどだった。
ドーピング違反のワリエワの暫定出場停止処分が解除され、IOCや世界反ドーピング機関(WADA)は異議を申し立てたが、スポーツ仲裁裁判所(CAS)は却下。バッハ会長は「同じルールが全ての人に適用されなければいけない」と裁定に不満を示し、「ドーピングはほとんどの場合、選手関係者が関わっている。彼女に(薬物を)投与した人物が有罪」とコーチら周囲の責任を主張。WADAによる今後の徹底調査を要望した。
CASは出場を認めた理由に「要保護者」を挙げたが、15歳が周囲に利用された印象は否めない。バッハ会長は防止策として五輪出場選手の年齢制限を引き上げる可能性を口にし、「本来はIF(各国際競技連盟)がやるべきだが、我々がイニシアチブを取りたい」とIOC理事会で協議する考えを披露した。
●ワリエワのミス連発、五輪女王がTV解説中に涙の訴え 2/19
北京五輪は17日、フィギュアスケート女子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)首位だった15歳カミラ・ワリエワ(ROC)は4位(順位は暫定扱い)に終わった。金メダル大本命と見られていたが、ジャンプで転倒やバランスを崩す場面が続出。ドーピング騒動の中で出場し、世界的に物議を呼んでいた。五輪連覇経験のある女王は涙を流して同情している。
最終滑走者だったワリエワはジャンプでミスが続いた。精彩を欠いた演技後は両手で顔を覆い、悔しそうな表情に。キス・アンド・クライでメダルを逃したことが分かると、涙した。世界的に議論が巻き起こり、異様な雰囲気で迎えたフリー。精神的に不安定となる状況に、海外から15歳に同情の声が上がっていたが、ドイツの元五輪女王は涙を流している。
ドイツ公共放送「ARD」の五輪中継に解説者として出演した1984年サラエボ五輪、88年カルガリー五輪女子金メダルのカタリナ・ヴィット氏(ドイツ)。中継中に言葉を詰まらせながら、カメラに背中を向けて涙を流した。ドイツ公共ラジオ「ドイチュラント・フンク」スポーツ専門ツイッターが公開した動画内で涙ながらにこう語っている。
「彼女は完璧に滑ったとしても、五輪で優勝したとしても、この一連の戦いに勝つことはできなかった。最悪のことが起きてしまった。彼女は15歳の子どもなのよ」
「ARD」は一連の内容を記事として掲載。「ヴィットは欧州女王の悲劇を目にして感情を抑えきれず涙に」とつづった。2度の五輪女王はこう訴えたという。
「耐えることができないわ。こんなことが起きる前に彼女を守らなければならなかったはずです。彼女は食い物にされてしまった。彼女がこの戦いに勝つことはできなかった」
女子シングルはアンナ・シェルバコワが金メダル、アレクサンドラ・トルソワ(ともにROC)が銀メダル、坂本花織が銅メダルだった。今回のワリエワのフリー演技中、実況のダニエル・ヴァイス氏は、ワリエワが演技を終えると「私が彼女の父親ならば、とっくに家に連れて帰っている。かわいそうで仕方がない」と話したという。
●ワリエワを「ROCは守れなかった」 失意の15歳を米レポーターが擁護 2/19
北京五輪のフィギュアスケート女子シングルで4位(順位は暫定扱い)になった15歳カミラ・ワリエワ(ROC)。昨年12月のドーピング検査で陽性反応を示していたが、スポーツ仲裁裁判所(CAS)が今大会の出場継続を認めたため演技。フリーでは転倒が相次ぎ、優勝大本命とされながらもメダルを逃した。号泣した15歳には、ドーピングに厳しい姿勢を取っていた米メディアからも擁護する声が出ている。
ワリエワはショートプログラムで首位に立ったものの、フリーでは本来の姿とは程遠く、点数が伸びなかった。メダルを逃したことが分かると涙。18日に帰国し、空港に集まった熱狂的ファンから歓声を浴びたことがロシアメディアに伝えられていた。
米地元放送局「NBCベイエリア」は、五輪中継のメインホストを務める名物レポーター、マイク・ティリコ氏のコメントを記事で紹介。「彼女は先週、悪役と書かれたり被害者と書かれたりしていました。でも実際は『悪役の被害者』です」とワリエワを擁護している。
「誰が薬を処方したのか、指示を出したのかは不明だ。でもROCは彼女を守ることが出来なかったということだけは確実に言える」と、同氏はロシア・オリンピック委員会の責任を指摘。「1人の選手が薬物検査に引っかかったことで、五輪の目玉競技が汚され、多くのスケーターにとっての“瞬間”が奪われた」とワリエワ以外の多くの選手、フィギュアスケート自体も悪影響を受けたと主張した。
ワリエワに対するCASの出場許可裁定を巡り、米国の五輪委員会は失望と批難の声明を発表。同国の元選手らからも厳しい声が上がっていたが、フリー演技後にはワリエワ本人を同情する意見も出つつある。
●ワリエワのドーピング問題 ロシア国内では根強い欧米の陰謀論 2/19
フジテレビ系「アウト×デラックス」、「めざまし8」、TOKYO MX「5時に夢中!」などに出演している、ロシア生まれで兵庫育ちのタレント・小原ブラスが19日、テレビ朝日系「中居正広のニュースな会」に出演。北京五輪で騒動となったROC(ロシアオリンピック委員会)フィギュアスケート女子カミラ・ワリエワのドーピング疑惑についてロシア国内での印象など語った。
MCのタレント・中居正広からドーピング問題について尋ねられた小原は、ドーピングそのものの事実関係については「わかりかねます」と前置き。続けて「ロシアでオリンピック選手がメダルを取った時にもらえる金額っていうのが、ものすごい」と報奨金などがばく大だとした。
「ロシア政府が圧力をかけなくても『あの金額をもらうためなら、ぼくもやってまうかも』って思っちゃいます」とメダルの“うまみ”を表現。もらえる金額そのものは明言しなかったが「一生暮らせるとまでは言わへんけど、2〜30年は安泰だな、くらいはもらえると思います」と説明した。
さらに「ロシア国内でも、どんなことでも『アメリカ、欧米が裏で糸を引いてるんちゃうか』っていう考え方をする人が多い」と陰謀論が根強いことも解説。「『ロシアのイメージを悪くするために何かしてるんじゃないか』っていう説は広まってます」と明かし、日本国内とは印象がまるで違うことを伝えた。
●ワリエワ叱責鉄の女℃謔闃ェくロシアコーチ派閥争いの闇 2/19
闇は深い。北京五輪フィギュアスケート女子で4位に沈んだロシア・オリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ(15)のドーピング騒動が、さらなる波紋を広げている。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長がワリエワを叱責したコーチを批判するなど混乱が続く中、元全日本選手権4連覇王者の小川勝氏が今回の問題点をズバリ分析。さらに、元国際審判員の杉田秀男氏は古くから続くロシアの「勝利至上主義」の驚くべき実態を明かした。
ワリエワを巡っては昨年12月に採取された検体から禁止薬物トリメタジジンが検出。未成年であることからスポーツ仲裁裁判所(CAS)に出場を認められたものの、IOCはワリエワが3位以内に入った場合は表彰セレモニーを実施しない異例の措置を取った。結果は17日の女子フリーで、ジャンプミスの連続で4位に転落。演技後に泣き崩れる場面も含めて、世界に衝撃を与えた。
小川氏は「正常な気持ちで戦えるわけがない。体は重いし、明らかに情緒不安定。すごい選手なのに、今回はひどかった」とワリエワの演技を振り返り、IOCの対応には「表彰式をやらないというのは、まるで犯人扱い。CASが出場させると決めたなら、他の選手と同様に扱うべきだった。こんな状況に15歳が耐えきれるわけない」と疑問を投げかけた。
ワリエワに代表されるROCの「低年齢化」もフィギュア界の課題の一つ。大人になる前の少女が軽量を生かして4回転を次々と跳び、20歳を前に競技をやめていく。小川氏は「成長が進むにつれて4回転は跳べなくなる。その前にメダルを取らせてしまおうということだが、これは現在の足し算方式の採点法に問題があるのではないか。昔はジャンプが跳べても円熟味がなければ上にいけなかったが、今は基礎点の高いジャンプを跳べば勝てる競技になった」と問題提起した。
一方、女子フリー直後には別の騒動も勃発。失意のワリエワに対し鉄の女<Gテリ・トゥトベリーゼ・コーチが「なぜ戦うことをやめたのか?」と叱責したのだ。これを見た杉田氏は「普通じゃ考えられない。選手を慰めなければいけないのにビックリした」と目を丸くし「やはり古くからの組織的な体質が裏にあるのでしょう」と嘆いた。
古今東西、ロシアにはコーチの派閥が存在し、対抗勢力に勝つためには手段を選ばない。トゥトベリーゼ・コーチについて、杉田氏は「彼女は新興勢力です。大御所に対抗するのに、あの手この手で勝ちにいく。だから選手を次々に発掘し、入れ替えていくんです」と指摘。勝利への執念は並大抵ではないようだ。
「昔の話ですが、教え子がいい結果を出すとコーチや役員の待遇は一変する。勲章を手にして、家や車までもらえた。一生、食べていけるんです」
選手を勝たせるため、ジャッジに対するリンク外の営業活動≠烽ゥつては常とう手段だった。「僕にも来ましたよ。宿泊しているホテルに役員がキャビアとウオッカと琥珀を持ってきてね」。その役員に「うちの選手をどう思う?」と聞かれ、杉田氏が「とてもいい選手だ」と答えると「試合でもその意見を変えないことが大事だ」とプレッシャーをかけてきたという。
今回、ワリエワは組織的に薬物を飲まされた疑惑もある。選手をサイボーグ≠フように扱う陣営について、杉田氏は「もう昔のようなことはないと思っていたけど、まだ残っているんだと感じました」と率直な感想を語った。
やはり、氷山の一角にすぎないのか。今回の騒動が収束したとしても第2のワリエワ≠ェ出てこないとも限らない。 
●ワリエワ帰国 20日五輪エキシビ主催者側から招待されず 2/19
ロシアメディア「RBK」は18日、北京五輪(オリンピック)フィギュアスケート女子でドーピング問題に揺れたロシア・オリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ(15)が、モスクワに帰国したと報じた。
シェレメーチェボ空港に到着したワリエワは言葉を発することはなく、20日に行われる北京五輪のエキシビションには主催者側から招待されなかったと記されている。
21年12月のドーピング検査の結果、陽性が判明したワリエワは、スポーツ仲裁裁判所(CAS)から個人戦への出場を認める裁定が下された。金メダル最有力候補の実力通りに、ショートプログラム(SP)は首位発進。だが、最終滑走となったフリーでミスが続き、総合成績は4位となっていた。
●ワリエワ問題受け、出場年齢制限を17歳に引き上げ検討… 2/19
国際スケート連合(ISU)は19日、五輪を含むフィギュアのシニア大会の出場年齢制限について、現行の15歳から17歳への引き上げを検討していることを明らかにした。男女などを含めた全種目を対象とする。6月の総会で議論し、3分の2以上の賛成で採用が決まる。
北京五輪では、ROC(ロシア・オリンピック委員会)として出場しているフィギュア女子のカミラ・ワリエワ選手(15)が昨年12月のドーピング検査で陽性反応を示したが、16歳未満の「要保護者」であることなどを理由に、スポーツ仲裁裁判所(CAS)が五輪の出場継続を認めた。優勝候補だったワリエワ選手は17日の女子フリーで転倒が相次ぎ、演技後は号泣して4位に終わった。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は18日の記者会見で年齢制限について、IOCでも協議する考えを示し、「イニシアチブをとっていきたい」と話した。
フィギュア界では成長途中で体の軽い選手が高難度のジャンプを跳んで好成績を残し、未成年のうちに「燃え尽き症候群」や故障などで引退するケースが目立つ。
2014年ソチ五輪では、当時15歳だったユリア・リプニツカヤさんがロシアの団体金メダルに貢献したが、17年に19歳で引退を表明し、拒食症などに苦しんだことを明かした。18年 平昌ピョンチャン 五輪に「ロシアからの五輪選手」として15歳で出場し、金メダルを獲得したアリーナ・ザギトワさんは19年12月に活動休止を発表し、現在は競技の一線から離れている。
●ワリエワがドーピング問題で被った “損害額” を露メディアが算定  2/20
フィギュアスケート女子ロシア・オリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ(15)が、世界中を震かんさせたドーピング騒動により被った損害額≠ロシアメディアが算定した。
ロシアのスポーツベッティングメディア「メタレーティングス」は、ワリエワがドーピング問題によりどれほどの収入を失うかを詳細に分析した。
「ワリエワは昨年12月のロシア選手権でドーピングの陽性反応が出た後に出場した、今年1月の欧州選手権の優勝賞金166万ルーブル(約250万円)、北京五輪の団体戦で金メダルを獲得したことで予定される政府による報奨金400万ルーブル(約600万円)が返還の可能性がある」と指摘。ドーピング陽性判定後に出場した大会での賞金や報奨金が没収≠ニなる見込みだ。
さらに「毎月受け取る奨学金5万2000ルーブル(約8万円)、年間最大62万5000ルーブル(約94万円)が減らされる可能性がある」。これらを合計すると、ワリエワは今年だけで700万ルーブル(約1050万円)程度の収入を失うことになるという。
そして、これよりも大きいのがスポンサー収入だ。特に世界的企業のプーマ社との契約は高額で、同メディアによると「年間で最大1500万ルーブル(約2250万円)」だが「メダルがハク奪されると、多国籍企業のプーマとの契約が問題になる見通しだ」と大スポンサーから契約解除を通告される懸念も浮上している。
一方で、ロシアではドーピング騒動に擁護論が多く、ミスを連発して4位に沈んだ個人戦の後に人気がさらに沸騰。「皮肉なことにドーピングスキャンダルの後、ワリエワの人気は絶頂に達する可能性がある」。ロシア国内企業の間でワリエワへのオファーが殺到する動きがあり、新たなスポンサーを確保して収入はむしろ急増する可能性すらあるという。
ドーピング問題でどん底を味わった。このまま転落を続けるのか、災い転じて福となすのか…。
●エキシビションにワリエワは出場せず… 2/20
北京オリンピックは20日、日本時間の午後1時から、フィギュアスケートのエキシビションが始まった。発表されたスタートリストには、ドーピング疑惑を抱えているカミラ・ワリエワ(ROC=ロシア・オリンピック委員会)の名前はなかった。
ワリエワは、団体でROCの優勝に貢献したが、その後、ドーピング疑惑に巻き込まれた。女子フリーの演技では、二度の転倒に加え、手をついたり、バランスを崩したりと失敗が相次ぎ、ショートプログラムとの合計で4位に沈んだ。演技後には号泣する姿が話題を呼んだ。ワリエワは既にロシアに帰国している。ROCからは、女子で金メダリストのアンナ・シェルバコワらが出場する。
●15歳ワリエワは加害者でもあり被害者でもある… 2/20
「切なくて悲しい」
女子フリーを見たファンの呟きだ。多くのファンが楽しみにしていた北京五輪女子フィギュアは、とても切なく、涙の多い悲しいものになった。
金メダリスト最有力だったものの自らのドーピング問題の影響もあり4位に終わったカミラ・ワリエワはもちろん、チームメイトのロシア選手、団体戦のメダルを受け取れない選手たち。今大会は多くの選手や関係者に暗い影を落としている。
涙、怒り、無表情…異様な光景に溢れた女子フィギュア
女子フリーの最終滑走。注目のワリエワは、精彩に欠く演技で4位に終わった。リンクでは必死に涙を堪えていたものの、得点を待つ間に涙が溢れ出た。15歳の少女は肩を震わせ、泣きじゃくった。
2位のアレクサンドラ・トルソワは点数に納得がいかず、人目を憚らず悔し涙を流し、優勝したアンナ・シェルバコワは、そんな状況に戸惑い、感情を消した表情で呆然と立ち尽くしていた。 
ROCの3選手は全員が五輪初出場で、金メダルへのプレッシャー、そして同門対決のライバル感情もあっただろう。五輪という独特の雰囲気に加えて、ドーピング問題が持ち上がり、彼女たちへは厳しい視線が送られた。
金メダル獲得に喜びの感情を出せないシェルバコワを救ったのは、3位の坂本花織だった。坂本は大きな笑顔でシェルバコワを力強くハグし、演技直後の表彰式でも笑顔でシェルバコワをリードした。一方で、ROCの2選手のギクシャクした雰囲気に、坂本が困っているような様子も見られ、喜びやうれしさを共有できない状況になってしまった。
団体戦のメダルは未だ選手たちに届いていない
ワリエワのドーピング問題は、自身のチームメイトだけではなく、当然ながら同じリンクで戦った他国の選手にも波及し、団体戦の選手たちも被害を受けた。
ワリエワも出場した団体戦では、ROCは1位、それに米国、日本と続いたが、試合後にドーピング問題が発覚したため、表彰式は延期になっている。大会期間中に表彰式が行われるかどうかは未定で、大会期間後に最終決定された場合、メダルは各国五輪委員会に郵送されるという。
IOCのトーマス・バッハ会長はメダルを持ち帰れない米国、日本の選手に聖火トーチをそれぞれプレゼントする、と何とも微妙な代替案を出してきたが、表彰式でメダルをもらって帰国したい、というのが選手の本音だろう。米国のカレン・チェンは、チームメイトと一緒にメダルを貰いたい、とメディアに話した。坂本も団体戦のメダルを選手村の部屋に飾って個人戦への励みにしたい、と語っていた。
選手、関係者それぞれが色々な思いを胸に団体戦に臨み、戦い、掴んだメダル。仲間とメダルを受け取り、喜びを分かち合いたい。その瞬間を心ゆくまで楽しみたい。そう思うのはごくごく当然のことだ。
今大会一緒に戦ったチームメイトと4年後に再び団体戦を戦える保証もない。たとえ4年後に揃ったとしても、北京五輪の喜びの瞬間を取り戻すことはできない。
4位だったカナダの選手はもっと複雑な気持ちだろう。
メダルを貰えるのか、貰えるとしてもいつになるか分からない。メダルを首にかけ、家族や友人、お世話になった人々のもと、出身校に行く。メダリストの栄誉、祝福の言葉を彼らが手にすることができるのか。現時点では全く分からないのだから。
ドーピングで奪われるのは「メダル授与式」だけではない
ドーピングで失格者が出ると、順位が繰り上がった選手たちに金銭的な影響を及ぼすこともある。
今大会、米国、日本、カナダ各国ともにメダリストには報奨金が授与される。日本の場合、五輪委員会、スケート連盟それぞれから、金メダル500万円、銀200万円、銅100万円と設定されている。「メダルの色の違い=金額の差」になる。
ここで、過去の例を紹介したい。
ロンドン五輪の陸上走高跳、ロシア選手が優勝したが、その後、ドーピングで結果が抹消され、米国のカイナードが金メダルに繰り上がった。そのニュースが正式に発表されたのは五輪から9年もの月日が経った昨年11月だった。
カイナードが金メダルだった場合に得られた報奨金、スポンサーからのボーナス、各大会の出場料、様々なイベントへのゲスト出演料などは、1億を超えるだろう。
4位から3位に繰り上がった場合も同様だ。
北京五輪、陸上男子1600mリレーで3位に入ったロシアがドーピングで処分され、4位の英国チームが銅メダルに繰り上がった。カイナード同様、彼らがメダルを手にしたのは北京から9年後の2017年だった。ロンドン世界陸上の場で銅メダルを受け取った英国選手たち。観客の前でこそ笑顔だったが、4位で終わった時の心境を聞くと肩を震わせて涙を流した。
「4位で悔しくて悔しくて。レース後に泣いたのを覚えている。(9年後でも)メダルをもらえたことはうれしいけれど、あの時間はもう戻ってこない。北京のスタジアムで表彰されたかった」(3走のビンガム)
「自分はまだマシな方だ。その後に世界陸上でメダルをとって、メダリストとして扱われた。でも北京の後に引退した仲間はその栄誉を受けることさえできなかった。4人でメダルをかけて色んなところに表敬に行きたかった。それがとても悔しい」(4走のルーニー)
本来ならば彼らが受け取ることができたはずの多くのものは、返ってこない。
ドーピング問題は対戦した選手、関係者、家族などに、経済的、そして心理面でも影響を及ぼす。
スポーツをするアスリートの義務であり責任
ワリエワは陽性が出た時点で処分されるべきだった。
CAS(スポーツ仲裁裁判所)は「16歳未満で保護対象」「出場させないことが取り返しのつかない傷になる」という曖昧な理由で、ドーピング検査で陽性になったワリエワの出場を認めた。CASは「irreparable harm(取り返しのつかない傷)」という言葉を使ったが、結果的には出場したことが彼女の傷になったとしか思えず、彼らの判断ミスとしか言いようがない。
ワリエワのフリーの後に彼女の幼い頃のスケート動画を見た。今の彼女に通じる、流れるようなスケーティングや柔軟性が8歳頃にはすでに習得されていた。ロシアでも類稀な才能を持ったスケーターだったのだろう。それに加え、エテリ・トゥトベリーゼコーチの下で4回転ジャンプという武器を身につけた。前途は明るかった。
しかし検体から禁止薬物が検出された今、残念ながら彼女のパフォーマンスはドーピングによって作られたものに見えてしまう。彼女が自ら薬物を口に入れたなら、最終責任は本人にある。それがスポーツをするアスリートの義務で責任だから。
しかし今回の場合、周囲の大人や関係者が意図的に摂取させた可能性はかなり高い。
禁止薬物なしで彼女が五輪の舞台まで到達できたかどうかは分からない。しかしワリエワ自身も周囲の大人による被害者で、10代の貴重な時間、そして楽しくて始めたはずのスケートで心に大きな傷を負ってしまった。
IOCのバッハ会長は会見で「ワリエワは未成年で、私の経験から言うと、未成年が自らドーピングを行うのは非常に稀。指示した人間がいることが多い」と発言。長野五輪、15歳で金メダリストになり、現在は解説を務めるタラ・リピンスキーも「15歳の彼女をこういう状況に置いた大人たちに怒りを感じます。全責任を彼女に背負わせています」と怒りを口にした。
多くの選手、関係者を巻き込んだ今回のドーピング問題。ワリエワの周囲にいる大人たちは現時点では何の追及も受けず、当然ながら責任も負っていない。バッハ会長が関係者への調査を示唆したが、真相が究明され、責任の所在が明らかにされることを願っている。
●ワリエワのミスで「神に感謝します!」 米国の元有名選手らの解説が波紋 2/20
フィギュアスケート女子ロシア・オリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ(15)のドーピング違反騒動で、米国の中継局「NBC」で北京五輪の解説を務めた元フィギュア選手の発言が波紋を呼んでいる。
解説を務めたのは、日本でも「ジョニ子」の愛称で人気が高かったジョニー・ウィアー氏とタラ・リピンスキー氏。2人は今回のドーピング問題を巡ってワリエワを批判する急先鋒となっているが、その中でいきすぎた発言があったとして注目を集めている。
ワリエワは17日に行われたフリーで2度転倒するなどまさかのミスを連発。演技後は号泣し、あまりの悲惨な場面に世界から擁護する声も出てきている。
だが、ワリエワがミスを連発した直後にウィアーは「神に感謝します!」と絶叫。ワリエワの成績は暫定となるためメダル圏内の場合は表彰式が行われない方針だったが、4位と沈んで3位までの選手へメダル授与が決まったため、リピンスキーも「他のすべてのメダリストに、その瞬間を与えてくれてありがとう!」と続けた。さらにウィアーは追い打ちをかけるように「それが物事をクリーンにした」と興奮した様子で語ったのだ。
メダルを獲得した選手にドーピング問題の影響が出ないことを歓迎した2人の気持ちは分からなくはないが、15歳のワリエワが泣きながらミスを連発する姿に大喜びするコメントを疑問視する指摘も出ている。
ワリエワの精神的ショックを増大させることにもなりかねないだけに、今後波紋を呼びそうだ。
●ワリエワ、暫定4位で自嘲「これで表彰式は中止にならないんでしょう?」帰国 2/20
昨年12月のドーピング違反が判明しながら北京五輪の個人種目出場が認められ、フィギュアスケート女子シングルで暫定4位に終わったカミラ・ワリエワ(15、ロシア・オリンピック委員会=ROC)が18日、モスクワの空港に帰国した。
到着ロビーには報道陣のほか、「私たちはあなたと共にいる」「愛してる」などと書かれたプラカードを手にしたファン約200人が集まり、花束を持ったワリエワが姿を見せると歓声。コーチらに付き添われたワリエワは、メディアの問いかけに応じなかったものの、小さく手を振り、会釈をして通り過ぎた。「カミラ」コールが湧き起こり、さながら凱旋帰国のようだった。
ワリエワの北京五輪最後の演技となった女子フリー後に2ショット写真をインスタグラムに掲載し、「地獄は終わった。休んでいいよ」とねぎらった同門の18年平昌五輪銀メダリスト、エフゲニア・メドベージェワ(22)も同じ便で帰国。ロシア「テレビ24」の取材に対し、ワリエワは機内で笑顔を見せ、食欲もあったと明かした。また、同国のスポーツサイト「sports.ru」は、3位以内を逃したことを知ったワリエワが「これで表彰式は中止にならないんでしょう?」と自嘲気味に話していたとも報じた。
●女子フィギュアまさかの4位ワリエワ選手、検出された“3つの薬物”? 2/20
“絶望”の異名を持つ15歳カミラ・ワリエワ選手(ROC)が、SPで首位に立っていたにもかかわらず、フリーでまさかの複数回転倒で4位に終わった、北京五輪フィギュアスケート女子シングル。
IOCは、女子フィギュアスケートの順位は暫定的なものになる、ワリエワ選手のドーピングが確定すればROCの団体のメダルもはく奪される、と発表していた。解決が見えないドーピング問題、スポーツジャーナリストの二宮清純さんと、バレーボール女子日本代表のチームドクターも務めている荒木大輔医師が解説した。
Q.荒木先生、なぜ暫定的な順位になるんでしょうか?
荒木医師「まず同時に採取した検体を“A検体・B検体”の二つに分けて、それぞれ検査するんですが、(まだ検査されていない)B検体も陽性ということになれば、IOCの聴聞会が開かれて、それから決定されるので、今は暫定的なんです。」
ニューヨークタイムスは、ワリエワ選手の検体から、心臓病の治療に使用される「トリメタジジン」以外に、同じく心臓病の治療に使用される「ハイポキセン」と「Lカルニチン」という薬物が検出されたと報じた。「ハイポキセン」と「Lカルニチン」は、ドーピングリストには含まれていないが、アメリカの反ドーピング機関は、この3つの薬物を組み合わせると、持久力を高め、疲労を軽減し、酸素の利用効率を高める、と指摘している。
それに対してワリエワ選手側は、「トリメタジジン」は祖父の薬を誤って飲んだもの、「ハイポキセン」は“自身の心臓に異変があったため”とコメントした。しかし、ワリエワ選手の健康診断を行う団体は「ワリエワ選手の心臓に異常が確認されたことはない」という。
Q.二宮さん、意見が分かれていますが、どういうことなんでしょう?
二宮さん「何か、言い訳をすればするほど苦しくなっていっている印象を受けます。ドーピング専門医に話を聞いたんですが、確かに『ハイポキセン』と『Lカルニチン』は禁止薬物ではないけれど、これに『トリメタジジン』を合わせると“悪い意味”でのシナジーが出てくる。競技力の向上に悪い意味で寄与してしまうというんです。15歳の少女が、自分の知識でこの3種類の薬物を摂取するとは考えにくいです。ということは、背後に誰がいるのか?相当な専門知識を持った人物が裏にいるということが、徐々に見えてきていると思います。」
Q荒木先生、禁止されていない2つの薬物についてどうお考えですか?
荒木医師「例えば、『ハイポキセン』は、細胞の酸素消費量を減少させますので、持久力が上がるという効果があると思います。アンチドーピングの観点からは、薬物で競技力の向上を図るのは、禁止されていますので、たとえサプリメントであってもアスリートの体から出てくるのは、何か意図的なものを感じてしまいます。」
Q.荒木先生、ワリエワ選手は「トリメタジジン」について、間違って祖父の薬を飲んでしまったと言っていますが、普通アスリートはものすごく気を使っていますよね。
荒木医師「例えば、中国に遠征に行くと、食肉からドーピングにかかわる成分が体に入ったりしますので、選手は現地の肉製品は一切食べない、というようなことまでしています。また、ドーピングにかかわる成分の含まれた薬がたくさんあるので、そのあたりも講習会を開いて、そういうものは飲まないようにして、飲んでいい選抜医薬品を飲むように徹底しています。」
Q. 二宮さん、普通は選手の家族も気を使いますよね
二宮さん「疑わしいにも程があるという感じです。五輪に出る選手というのは、ドーピングに対する教育はしっかりしているものですよ。例えば、今のスポーツ庁長官の室伏さんは、選手村で、目を離したすきに薬を入れられる可能性があるので、水を汲みに行くときも食事ごと持って行ったと言っています。そのくらい気を付けているんですよ。しかも今は“コロナ禍”ということもあって、さらに気を付けているはずなので、祖父の薬を誤って飲むなんてことは、おおたわ史絵先生が指摘するように、天文学的な確率でありえないと思います。」
Q.ロシアはドーピングに対してどう考えているんでしょうか?選手の家族は断れないのでしょうか?
二宮さん「まさにそこだと思います。ロシアじゃなかったら“まさか”なんですが、ロシアの場合“またか”なんですよ。ずっと取材してきましたが、ロシアにとってドーピングは一つの“技術”なんです。ロシアでは『あらゆる手段を使っても目的を達成すればそれでいいんだ』という考えもあって、今回もドーピングが実行された可能性があると思っています。1988年のソウル五輪で、一番成績が良かったのがロシア(ソ連)で、2番目が東ドイツだったんですよ。1700万人の小国が、アメリカを抜いて2位になるというありえないことが起こったんです。そして、あとになってドーピングだったことが判明するんです。プーチン大統領もKGBの情報員として、当時東ドイツにいて、スポーツが国威発揚になることが分かったんでしょう。大統領就任後に『スポーツの勝利は100のスローガンより国民を団結させる』と言っています。そして、ソチ五輪の時に世界最多のメダルを取るわけですが、その後ドーピングによって、いくつかははく奪されています。これまでのことを考えると、常習犯といえます。」
Q.荒木先生、今後ドーピングとなった場合、ワエリワ選手側はスポーツ仲裁裁判所に持ち込むと思いますが、その場合の流れはどうなっていくでしょう?
荒木医師「スポーツ仲裁所は裁判所と同じですので、いろいろなことを(ワエリワ選手側が)実証しないといけないでしょうね。選手本人だけでなく、家族であったり、コーチ、スタッフ皆さん関係してくると思います。」  
●ワリエワのコーチ・トゥトベリゼ氏の指導に違和感 バッハ会長は「茶番男爵」 2/20
北京五輪のフィギュアスケート女子、カミラ・ワリエワ(15)のドーピング問題に揺れるロシア・オリンピック委員会(ROC)。ワリエワの単独による薬物使用に懐疑的な見方が広がる中、焦点はコーチのエテリ・トゥトベリゼ氏をはじめとする組織ぐるみの不正に集まっている。五輪史に汚点を残すスキャンダルの背景に何があったのか。夏冬通算16大会で取材、実況に携わった元NHKアナウンサーの刈屋富士雄氏(61)=立飛HD執行役員スポーツプロデューサー=が特別寄稿し、深掘りした。
百聞は一見にしかず
いまは真相が闇の中にあるROCの組織ぐるみによる薬物疑惑は、1枚の写真を見て確信を抱いたのは私だけではないだろう。銀メダルのトルソワが、トゥトベリゼ氏のハグを身をよじって拒否した場面だ。衆人環視のリンクサイドでトルソワは、「嫌よ! みんな知っているのよ!」と発言。組織的な不正は立証はされていないが、ほんの数秒間のこの場面だけで、コーチとワリエワの関係性や背景を感じ取るには十分だった。
違和感と不自然さ
トゥトベリゼ氏はワリエワや金メダルのシェルバコワ、トルソワらが育ったロシアの選手養成機関【注1】で全権を握る人物だ。私もここ数年、“虎の穴”と呼ばれるこの養成機関にはいくつかの疑問があった。
【注1】ロシアのトップアスリート養成学校「サンボ70」。18年平昌大会金のザギトワ、同銀のメドベージェワ、北京大会金のシェルバコワ、銀のトルソワらが所属。トゥトベリゼ氏が全権を握る。
選手としての実績もなく、ほぼ無名の指導者、トゥトベリゼ氏が、たった数年で世界女王や五輪女王を輩出していること。成長期にある10代前半の子供たちが1日12時間もの練習に耐えられること。18年平昌五輪金のザギトワら、育った選手が非常に短命であること。最たるものが、複数種類の4回転ジャンプを4分間のフリー演技に組み込める持久力がワリエワら15歳以下の選手にあること。これは男子の1500メートル全力疾走に匹敵する持久力だ。違和感と不自然さ。点と点の疑問が線になったのが、ワリエワから持久力、疲労回復を高める3種の薬物の陽性反応が出たことだ。実証こそされていないが、これらを可能にする何らかの方法論をおそらく持っているのではないかと思った。
馬軍団の悪夢
「最も汚れた金メダル」と呼ばれた96年アトランタ夏季五輪の陸上女子5000メートルで優勝した王軍霞(おう・ぐんか)の背景が、北京のROC勢と重なる。彼女が93年に女子1万メートルで出した世界記録もまた「最も汚れた世界記録」とも呼ばれ、16年夏季リオデジャネイロ大会で“人間”のアヤナ(エチオピア)が破るまで23年も不動だった。背景にあったのが、90年代の女子陸上界を席巻した「馬軍団」の組織的ドーピング【注2】だった。
【注2】90年代に馬俊仁コーチの指導の下、女子陸上界で世界記録を軒並み更新したが、当時からドーピング疑惑が指摘されていた。中国オリンピック委員会は、00年シドニー五輪の代表団から馬軍団の選手を含む27人を除外し「トカゲの尻尾切り」と非難を浴びた。15年に王軍霞さんらが馬軍団の組織的ドーピングと虐待を告白した手紙の存在が明るみに。不正による世界記録が破られた16年リオ五輪後に王さんは中国メディアに23年間の苦悩と「記録を突破してくれて感謝している」との談話を寄せた。
罪と罰
フィギュア女子は冬の華と呼ばれ、その大会のシンボルである。もし薬物反応が出たワリエワが金メダル、暫定で1位になっていたら言葉で表すなら「灰色の造花」。最悪は「フィギュア史上最も汚れた金メダル」という汚名を着せられただろう。15歳の涙には感傷的な意見もあるだろうが、ドーピングに年齢は関係ない。心身ともに未成熟なアスリートにコーチが薬物を投与していたなら、幼児虐待であり、なおさら罪深い。コーチやその国の競技団体に罪があり、出場を許し、女子アスリートをさらしものにした国際オリンピック委員会(IOC)に責任がある。最後のとりでとなったCAS(スポーツ仲裁裁判所)も事実上、逃げてしまった。数多くの不祥事があった五輪だが、その度にルールを改善し対応してきた。2組に金メダルを与えた、02年冬季ソルトレークシティー大会のフィギュア・ペアの不正採点疑惑【注3】が一例だ。当時は解決策を探り、五輪期間中にメダルを授与したが、今大会は団体のメダル授与式を期間中に行わないという最悪の選択をした。五輪の権威を落とし、アスリートに対しても極めて失礼な対応だった。
【注3】完璧演技をしたカナダ・ペアが2位になり、演技にミスがあったロシア・ペアが優勝。米国、カナダのマスコミが不当判定だと騒ぎ、大会期間中にフランス人審判が、フランス連盟会長からアイスダンスを勝たせるかわりにペアではロシアを勝たせるよう依頼されたと証言し不正が明るみに。ロシアのベレズナヤ&シハルリゼ組と、カナダのサレー&ペルティエ組(カナダ)に金メダルが授与された。問題となった採点方法は従来の6点満点から、審判の主観が入りにくい客観的指標を使った方式に変わった。
茶番男爵
根幹にあるのは、組織的なドーピング違反を繰り返してきたロシアを五輪から締め出せないIOCの弱腰な対応がある【注4】。国としての参加を認めていないのにもかかわらず、開会式には国家元首のプーチン大統領を招いた。バッハ会長のエゴもある。北京ではスノボ会場で選手に腕時計を贈呈したり、話題になった元テニス選手の彭帥(ほうすい)さんとの頻繁なツーショットなど、さまざまな場面で違和感のある行動が目立った。これは未来に残す五輪記録映画撮影のためのパフォーマンスではという声が複数聞こえてくる。昨夏の東京大会ではその金満ぶりが貴族のように欲深いと「ぼったくり男爵」と揶揄(やゆ)されたが、今大会はまさに「茶番男爵」。フィギュアの問題は放置すればとんでもない禍根を残す。自分の功績を記録映画に残すよりも、いまの五輪を正さなければ、五輪に未来はない。
【注4】14年冬季ソチ大会でロシアは33個のメダルのうち、11個で組織的ドーピング違反が発覚。16年夏季リオは陸上競技を中心に参加が認められず、17年12月にIOCがロシア・オリンピック委員会を資格停止に。18年平昌、21年東京、今回の北京と、違反歴や疑惑のない選手だけが個人資格で出場が認められた。 
●ワリエワが練習再開…チームのインスタにジャンプの動画  2/21
北京五輪のフィギュアスケート女子で、ドーピング検査で陽性反応を示しながら出場した15歳のカミラ・ワリエワ(ロシア・オリンピック委員会=ROC)が、練習を再開したとロシアメディアが20日に報じた。ワリエワを指導するエテリ・トゥトベリゼ氏のチームのインスタグラムに、氷上でジャンプするトレーニング動画が投稿された。
ワリエワは北京五輪の団体でROCの1位に貢献した後、昨年12月に採取された検体から禁止薬物トリメタジジンが検出されたことが判明。スポーツ仲裁裁判所(CAS)の裁定で出場継続が認められ、個人種目は4位だった。団体を含めて成績は暫定的な扱い。18日にロシアに帰国していた。
●ドーピング疑惑のワリエワ、ロシアで練習を再開… 2/21
北京五輪フィギュアスケート女子で暫定順位4位となった15歳・カミラ・ワリエワ(ROC)が、ロシア国内で練習を再開したことが21日までに分かった。ワリエワを指導するエテリ・トゥトベリゼ氏のチームの公式インスタグラムで動画が公開された。
同インスタグラムのストーリーにはワリエワの名前とともに「BACK TO PRACTICE」(練習に戻りました)とコメント。ワリエワが手を上げて4回転―1オイラー―3回転の高難度ジャンプを跳ぶ姿がアップされた。
ドーピング疑惑が発覚しながらも五輪に出場したワリエワは18日、モスクワの空港に帰国。100人規模のファンに出迎えられる様子が地元メディアに伝えられていた。
●ワリエワのコーチ・トゥトベリゼ氏、ドーピング騒動に言及… 2/21
北京五輪フィギュアスケート女子シングル4位カミラ・ワリエワ(ROC)のコーチ、エテリ・トゥトベリゼ氏が20日夜、自身のインスタグラムを更新。北京五輪でのドーピング騒動について言及した。
トゥトベリゼ氏は出場選手らとの笑顔の集合写真などをアップし、「私たちの学校の生活の中で、もう一つの非常に難しいオリンピックサイクルが終了しました。もしかしたら、ちょっとした分析をして結果をまとめることができるかもしれません」と書き始め、選手らの分析を展開。
ワリエワについて「カミラ・ワリエワ、団体競技のオリンピック・チャンピオン、私たちの小さな星。とても壊れやすいと同時に、とても強い選手です。カミラが受けた試練は、チーム全員で乗り越えなければならない」と言及。
さらに「昨日までニコニコしていた人たちが、今日はスタンドから離れ、指摘を受け、ジャッカルのように襲いかかり、さまざまな尋問の方法を提案する、そんな状況がいかに明白であるか」と激しい尋問があったことを明かした。加えて「それだけに、この人たちは真実を暴くかのように、運命的に引き離されてしまったのです」と表現した。
トゥトベリゼ・コーチは18年平昌五輪金メダルのザギトワ(ロシア)、同大会銀メダルのメドベージェワ(ロシア)らを育てたほか、19年GPファイナルで表彰台を独占した「ロシア3人娘」アリョーナ・コストルナヤ、アンナ・シェルバコワ、アレクサンドラ・トルソワも指導した。
17日の女子フリーでドーピング問題に揺れ演技に精彩を欠いたワリエワに対し、演技直後、慰めることなく「なぜ途中で諦めた」などと強い口調で叱責する様子が報じられバッハ会長は18日の会見で「ワリエワの周囲の人がとても冷ややかな対応をしているのを見てヒヤっとした」と批判していた。
ロシア側からはトゥトベリゼ氏擁護の意見が多く出ている。
●ワリエワ問題の渦中で… メディアに告発されたロシア女子の「奇妙な光景」 2/21
北京五輪フィギュアスケート女子で4位に終わったロシア・オリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ(15)のドーピング違反が波紋を広げる中、新たな疑惑≠フ証言が飛び出した。
ロシアメディア「チャンピオナット」は、米国の元フィギュア選手、ポリーナ・エドモンズがポッドキャスト番組「スケーティング・レッスン」で「奇妙な光景を見た」とロシア女子のある行動について語ったと報じた。
エドモンズは2013年に福岡で開催されたジュニアGPファイナルに出場。その際、後に平昌五輪で銀メダルを獲得するエフゲニア・メドベージェワ、マリア・ソツコワ、セラフィマ・サハノビッチのロシア3選手が、不思議な行動をとっていたという。
「控室で練習前の準備をしている彼女たちと一緒に座った。コーチも出てきた。彼女たちは靴ひもを結び、冗談を言いながら、くすくす笑っていた。リンクに出る5分前になると、全員が小さなボトルを取り出した。スポイトが付いていて、それぞれ数滴ずつ飲んでいました。ある人は『医者が飲み込めないって言ってたよ』と言い、もう一人は『大丈夫』と答えていた。なにか『変だな』と思った」
さらにエドモンズは3人の驚異的な姿を目撃する。「彼女たちはリンクに足を踏み入れるとすぐに、最初の1分間で3回転ルッツ―3回転トーループをやっていた。当時、私は15歳で、彼女らは13歳(くらい)。3回転ジャンプのために、ストレッチをして体を整えるのに私は15分もかかった。でもロシア人は40分間、不思議なくらい頑張っていた。練習の最初の30秒で3回転ルッツと3回転トーループをする人は見たことがない」と強烈な印象を残したという。
エドモンズは「ワリエワ以外の選手についてもチェックする価値がある」と語っており、ロシアのフィギュア勢に対する厳しい視線は増すばかりだ。
●ワリエワ騒動で浮き彫り ロシアの狂気的アスリート育成の実態… 2/21
生まれた国が悪かったのか……。
フィギュアスケート女子シングルで4位に終わったカミラ・ワリエワ(15、ROC=ロシア・オリンピック委員会)のドーピング騒動に揺れるフィギュア界。国際スケート連盟(ISU)では、五輪などシニア大会における出場年齢制限を15歳から17歳へ引き上げることが再検討され始めた。
ドーピング騒動で改めて浮き彫り
ロシアフィギュア界では2008年にエテリ・トゥトベリゼコーチが就任。彼女の教え子がフィギュア界を席巻しはじめてからというもの、選手の低年齢化と「使い捨て」が目立つ。14年ソチ五輪団体金に貢献したリプニツカヤ(23)は当時15歳。4年後の平昌五輪でも活躍が期待されたが、摂食障害で現役を退いた。その平昌で15歳で金メダルを獲得したザギトワ(19)も銀のメドベージェワ(22)も、五輪出場は1度だけだ。ジュニア世代を含めて選手層の厚さはあるにせよ、今回のワリエワ騒動を発端にロシア選手の消耗の激しさなど、過酷な実態が改めて露呈した。
何より今回、14年ソチ五輪で組織的なドーピング違反が発覚してもなお、15歳の少女が“クスリ漬け”にされているという事実に世界は衝撃を受けたわけだが、ロシアがそこまでスポーツに入れ込む根底はどこにあるのか。
ロシア情勢に詳しい筑波大の中村逸郎教授はこう言う。
体格による優劣の順番で並ぶ歴史が…
「組織的ドーピングの始まりは、リーマン・ショックの影響で海外から招聘していた有能なコーチがロシアから去ったことが大きな原因ですが、そもそもロシアという国は『頭より筋肉』を重視する傾向がある。体の大きさが強さの象徴で、大統領も身長の高さで選ぶという噂すらあります。ロシアには歴代大統領を『背の順』に並べたポスターがありますからね。軍隊でも最前列は最も身長の高い人が壁のようになって行進する。見栄えの良い人から並ぶというのが伝統なのです」
日本における「背の順」はかつて「前が見えやすいように」という配慮から身長の低い順に並ぶことが一般的だった。しかし、ロシアは体格による優劣の順番で並ぶ歴史がある。そのせいか、ロシアは日本のような学歴社会ではないという。
「いわゆる『頭の良さ』は、日本ほど評価されない国です。ほとんどのロシア人は学歴に関心がありません。日本で『先生』と呼ばれる医者、弁護士、教員はロシアでは三大貧困層。大学教員に至っては、高校生の家庭教師のアルバイトをしているほど。1回で100ドルほどのバイト代をもらえるので、本業よりもよっぽど割がいいのです。同じ大学でも、科学アカデミーの教授などは、政府の政策立案に関わる仕事をするため、給料が高い。ロシアで高給取りといわれる職業は銀行員、政治家や天然資源関係企業など、いずれも政府と仕事をする職業ばかりです」(中村氏)
子供がステロイドで痛みを和らげる異常
頭より運動能力という思想は、学校教育にも影を落とす。モスクワ市内だけで10校あるトップアスリート養成学校では、行き過ぎた英才教育が問題視されている。
「ワリエワ選手らが通っているモスクワ市内の『サンボ70』は一番の名門校として知られ、生徒数は約1万6000人。26種目の競技を網羅して指導している学校です。6歳から入ることができ、多くの子が親元から離れて寮生活を送る。早朝から国語や算数などの一般的な授業を受けた後、昼までの2時間、競技の練習をする。その後、再び授業を受け、また2時間の練習……というのを繰り返す。生徒が寮や自宅に帰れるのは早くても21時。ハードスケジュールのため、多くの生徒が授業中に寝ているそうで、睡眠時間も少ないため脳への悪影響も心配されています。スポーツと学業の両立をめぐって、トレーナーと教員の間でモメることもしばしば。『サンボ70』ではトゥトベリゼコーチが来てから食事制限にますます拍車がかかり、筋肉をつけずにジャンプを跳ぶため、多くのスケーターが背骨に負担をかけ、傷める弊害も出ている。若くしてステロイドなどの薬を使って痛みを和らげているというのは異常です」(中村氏)
メドベージェワは22歳の若さで背中の故障に悩まされ、フリップやルッツが跳べなくなり、引退を余儀なくされた。
ワリエワが15歳の若さで“クスリ漬け”になっているのが「ロシアのスタンダード」なのだとしたら、常軌を逸している。  
 
 
  
 
 
 


2022/2
 
●北京オリンピック開会式の入場順
大会に出場する91の国と地域の選手たちの入場行進が行われました。日本が10番目と比較的早い入場だったこともあり、世間からは『何の順番なんだろう?』と疑問の声があがっていました。
今回の入場行進のは、国・地域名を中国で使われている漢字で表現したときに、1文字目の画数が少ない順番に入場していきました。『日本』で説明すると、1文字目の『日』が4画になるので、入場が早かったのだと思います。これに対し、『おもしろい!』という声もたくさん上がっていました。
ギリシャ:希腊(希臘)
1. ギリシャ:希腊(希臘)
古代オリンピック発祥の地で、1896年に第1回大会を開いたギリシャから始まりました。
3画
2. トルコ:土耳其(土耳其)
3. マルタ:马耳他(馬耳他)
4. マダガスカル:马达加斯加(馬達加斯加)
5. マレーシア:马来西亚(馬来西亜)
4画
6. エクアドル:厄瓜多尔(厄瓜多爾)
7. エリトリア:厄立特里亚(厄立特里亜)
8. ジャマイカ:牙买加(牙買加)
9. ベルギー:比利时(比利時)
10. 日本:日本(日本)
11. 台湾:中国台湾
12. 香港:中国香港(中国香港)
13. デンマーク:丹麦(丹麦)
14. ウクライナ:乌克兰(烏克蘭)
15. ウズベキスタン:乌茲别克斯坦 (烏茲別克斯坦)
16. ブラジル:巴西(巴西)
17. パキスタン:巴基斯坦(巴基斯坦)
5画
18. イスラエル:以色列
19. 東ティモール:东帝汶(東帝汶)
20. 北マケドニア:北馬其頓
21. ルクセンブルク:卢森堡(盧森堡)
22. ベラルーシ:白俄罗斯(白俄羅斯)
23. インド:印度(印度)
24. リトアニア:立陶宛(立陶宛)
25. ナイジェリア:尼日利亚(尼日利亜)
26. ガーナ:加纳(加納)
27. カナダ:加拿大(加拿大)
28. サンマリノ:圣马力诺(聖馬力諾)
6画
29. キルギスタン:吉尔吉斯斯坦(吉爾吉斯斯坦)
30. アルメニア:亚美尼亚(亜美尼亜)
31. スペイン:西班牙(西班牙)
32. リヒテンシュタイン:列支敦士登(列支敦士登)
33. イラン:伊朗(伊朗)
34. ハンガリー:匈牙利(匈牙利)
35. アイスランド:冰岛(冰島)
36. アンドラ:安道尔(安道爾)
7画
37. フィンランド:芬兰(芬蘭)
38. クロアチア:克罗地亚(克羅地亜)
39. サウジアラビア:沙特阿拉伯(沙特阿拉伯)
8画
40. アルバニア:阿尔巴尼亚(阿爾巴尼亜)
41. アルゼンチン:阿根廷(阿根廷)
42. アゼルバイジャン:阿塞拜疆(阿塞拜疆)
43. ラトビア:拉脱维亚(拉脱維亜)
44. イギリス:英国(英国)
45. ルーマニア:罗马尼亚(羅馬尼亜)
46. フランス:法国(法国)
47. ポーランド:波兰(波蘭)
48. プエルトリコ:波多黎各(波多黎各)
49. ボスニア・ヘルツェゴビナ:波斯尼亚和K塞哥维那(波斯尼亜和黒塞哥維那)
9画
50. ボリビア:玻利维亚(玻利維亜)
51. ノルウェー:挪威(挪威)
52. カザフスタン:哈萨克斯坦(哈薩克斯坦)
53. コソボ:科索沃
54. ブルガリア:保加利亚(保加利亜)
55. ROC:俄罗斯(俄羅斯)
56. アメリカ合衆国:美国(美国)
57. バージン諸島:美属维尔京群岛(美属維爾京群島)
58. 米領サモア:美属萨摩亚(美属薩摩亜)
10画
59. タイ:泰国(泰国)
60. オランダ:荷兰(荷蘭)
61. ジョージア:格鲁吉亚
62. コロンビア:哥伦比亚(哥倫比亜)
63. トリニダード・トバゴ:特立尼达和多巴哥(特立尼達和多巴哥)
64. ペルー:秘鲁(秘魯)
65. アイルランド;爱尔兰(愛爾蘭)
66. エストニア;爱沙尼亚(愛沙尼亜)
67. ハイチ;海地(海地)
11画
68. チェコ共和国:捷克(捷克)
69. フィリピン:菲律宾(菲律賓)
12画
70. スロベニア:斯洛文尼亚(斯洛文尼亜)
71. スロバキア:斯洛伐克(斯洛伐克)
72. ポルトガル:葡萄牙(葡萄牙)
73. 韓国:韩国(韓国)
74. モンテネグロ:K山(黒山)
75. チリ:智利(智利)
76. オーストリア:奥地利(奥地利)
13画
77. スイス:瑞士(瑞士)
78. スウェーデン:瑞典(瑞典)
79. モンゴル:蒙古(蒙古)
80. ニュージーランド:新西兰(新西蘭)
81. セルビア:塞尔维亚(塞爾維亜)
82. キプロス:塞浦路斯(塞浦路斯)
14画
83. メキシコ:墨西哥(墨西哥)
15画
84. レバノン:黎巴嫩(黎巴嫩)
85. ドイツ:コ国(徳国)
86. モルドバ:摩尔多瓦(摩爾多瓦)
87. モナコ:摩纳哥(摩納哥)
88. モロッコ:摩洛哥(摩洛哥)
16画
89. オーストラリア:澳大利亚(澳大利亜)
オリンピック開催国
90. イタリア:意大利(意大利)
91. 中国:中国(中国)
イタリアは次回開催国、中国は今回開催国なので、1番最後の入場でした。