政治のうわさ話

平和な日本
一時(いっとき)とは言え 目の前にやることはなし

政治は誰のもの
建前は「民」 
本音は「政治家という稼業の拡大」

お役人 応援団体 票田 金持ち スポンサー 権力者 派閥 政党 
仲間 縁故 身内 世襲
「 政治家」 家業 稼業 職業です 

 


 
 
 

 

●物価高に円安、さらには増税も…苦しい生活、求める“生活支援策”とは? 10/23
TOKYO MX 朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」。「激論サミット」のコーナーでは、経済の専門家を交え、今政府に求めるべき“生活支援策”について議論しました。
必要なのは減税か?給付か?補助金か?
円安などの影響で値上がりが続くガソリン価格。電気料金も大手電力10社が10月請求分から、都市ガスも大手4社全てで値上げされました。
帝国データバンクによると、原材料高の影響で9月の食品値上げ数は2,000品目以上。10月には4,500品目を超え、物価高の波が続いています。
さらに、負担となるのは物価高だけでなく、財務省によると昨年度の国の一般会計税収は3年連続で過去最高。所得税や法人税、消費税などの税収は増え続けています。政府は追加の経済政策をまとめるとしていますが、世間からは賃上げや減税を求める声が上がっています。
そんななか、今、国民に必要なのは“補助金”か“現金給付”か“減税”か。政府はどんな生活支援策を行うべきなのか。
まずは経済の専門家、第一生命経済研究所 首席エコノミストの永濱利廣さんに聞いてみると「理論上は“減税”がいいが(行うためには)法改正などが必要になるので(時間がかかる)、緊急のときには給付、“補助金”にならざるを得ない」との見解を示します。
さらに、永濱さんは「お金を使った人が得になるような政策をもっとやらないといけない」とも。例えば、補助金や給付だと使わなくてもいいため、世間に還元できるか分からないということもあり「使った人が得をするような政策で経済を回すことが足りない」と私見を述べます。
最低賃金の引き上げの裏に潜む問題とは?
国際社会文化学者のカン ハンナさんは、「東京より地方、大手企業より中小企業」とシンプルに弱いところへの支援を熱望。
永濱さんも「これは重要な政策」と賛同しつつ、「税制なども含めてもっとじっくりやったほうがいい」と補足。
そして、前明石市長の泉房穂さんは「重すぎる負担の軽減」を憂い、「私の子ども時代は国民負担率が2割程度、今は5割ぐらいある。中長期的には別の論点があると思うが、物価を下げるのも大事なものの、今の時点では(国民の)負担を調整するのもアリだと思う」と語ります。
永濱さんは、泉さんの意見に頷きつつ「国民負担率はG7諸国と比較するとこの20年で日本だけ圧倒的に上がっている、こうした状況では経済成長はしない」と警鐘を鳴らします。
さらに泉さんからは「減税もひとつの選択肢で、私は(生活支援策を)全部やったらいいと思う」との大胆な意見が。ちなみに、泉さんが市長を務めた兵庫県・明石市では市内でしか使えない地域商品券を大量に発行。すると使用された97%の商品券全てが市内の消費に回り経済が活性。市民だけでなく事業者側にも恩恵があったそうです。
一方、アフリカの紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さんが訴えたのは「最低賃金引き上げ」。現状の物価高対策はほとんどが補助金で「それはその場の一時凌ぎ的な傾向が強い」とし、「負担が増えても賃金が上がれば問題ない。賃金も上がってはいるが物価高に追いついていないのが問題で、物価高を上回る、もしくは同程度の最低賃金の引き上げが必要」と主張します。
永濱さんはこれも「非常に重要」と認めるも、ひとつ課題が。それは「130万円の壁」と言われる社会保険の扶養に入れる年収基準で、「最低賃金を引き上げるとそれを超えてしまうということで、労働時間を減らしてしまうことがある。最低賃金の引き上げは大事だが、セットで130万円の壁をなだらかにすることなども必要」と問題点を指摘します。
すると阿部さんは「例えば、正社員や給料を増やした分、社会保険料を下げるなど(会社の)負担を軽減すれば経営者としてはやりやすいのではないか」と新たに提案すると、永濱さんも頷き、「今は賃上げの税制優遇策をやっているが、それは黒字の起業しか恩恵を受けていない。社会保険料を下げるほうが効果は大きいと思う」と話します。
できることなら軽減税率の引き下げを…
さまざまな生活支援策が考えられるなか、永濱さんが最も手っ取り早く、効率的な策として挙げたのは「消費税減税」。しかし、前述の通り法改正などが必要ですぐにはできず、「社会保障の財源に結びついていたりするので、そういう意味では実現の可能性は低い」と言及。
もうひとつ効果がある支援策が「軽減税率の引き下げ」。なぜなら「今、消費者物価は3%上がっているが、そのうち2%分が食料品の値上げ」、さらに永濱さんは「消費税も今、軽減税率8%だが、これを仮に0%にしても年間必要な財源は4兆円。消費税を5%から段階的に10%に引き上げ13兆円の財源が確保されたが、社会保障に結びついているのは8兆円。5兆円は使えるので軽減税率の引き下げに使えば効率的」と解説するも、これも法改正などが必要。
泉さんは「軽減税率の引き下げに大賛成」と強調。「食料品は海外でも消費税が入っていない国が多い。日本だけ一律でとってしまうから最低限の生活すらしんどくなる。食料品は軽減税率を適用すべき」と声を大にします。
政府のお金の使い方、どう思う?
2022年度の一般会計税収は71兆円超、3年連続過去最高で所得税、法人税、消費税、全てが増えていますが、すでに2024年度の適切な時期に防衛費の財源として法人税、たばこ税の引き上げが決定。さらには異次元の少子化対策のため社会保険料を月500円増。そして16〜18歳の扶養控除は縮小される予定になっています。
年々税収が増えるなか、泉さんは「今の時代にあった使い方を」と望みますが、財務省なり、財政局の管理が厳しいのが現実。泉さん自身、明石市長時代に何かをしようとすると財政局から止められたそうですが「それでも市民のためにやるのが政治家。政治家の問題」と熱弁。永濱さんも「(財務省を)変えるのは政治しかない」と話すも、「そこが日本は弱い」と嘆きます。
カンさんによると韓国でも同様の問題はあり、生活支援も行き届いていないものの、日本と違い「市民の声が大きい」と言います。というのも、韓国は大統領、そして政治家が定期的に変わることが多いため、市民の声が届きやすいとか。
この意見に泉さんは大きく頷き、「実は明石は韓国(の政治)を見ている。政策は韓国を参考にしている」と明かします。例えば、泉さんが明石市長時代に真っ先に行った給食費の無償化は、先んじて韓国・ソウルが実施しており、さらに養育費の立て替えも韓国の政策を参考に進めたと泉さん。
いま政府がやるべき生活支援策は?
最後に、今回の議論を踏まえ、政府が今、進めるべき生活支援策を聞いてみると、阿部さんは当初の意見にプラスアルファし「年収の壁を見直し、賃金引き上げ」と提言。
そして、泉さんはあらゆる手段を使って支援するとともに、なかでも子育て費用をはじめとする無償化の拡充を熱望します。
「各自治体は今、一気に(支援を)やっていて、なぜかといえば市民の悲鳴が聞こえるから。市民の声を受けて自治体は思い切って方針転換をしている。国民が頑張り、地方も頑張っているのに国だけがサボっている。国の政治家がちゃんと国民のほうに向いた政治をすべき」と力説。
カンさんは「国がいろいろな立場の人たち、例えば中小企業、地方の自治体、市民の声をしっかり聞いて、そこから何ができるのか、何をすべきなのか1回見直していただけたら」と国民の声を聞くことを望みます。
永濱さんは、喫緊の問題である「物価高策延長」に言及。現在、岸田政権は物価高対策延長を示しているものの、細かく見ると疑問点が多いとか。例えば、ガソリンは175円まで下げるとしていますが、去年は168円まででした。また、電気やガスも負担軽減の延長を決めるも9月に負担軽減が半減され、それが続行となるので、実質的には8月に比べると負担軽減は少なくなっています。
永濱さんは「予想では今年度の税収は昨年を超え約79兆円。大幅に上がるので出口に向かうのではなく、もっと大きな支援を」と切望。この増額分で軽減税率の引き下げも余裕で可能になるそうで、それを聞いた堀からは「すぐにやってください!」との声が。
堀は、今回の議論で賃上げ、減税、軽減税率などさまざまな案が出てきたことから、政府に対しても「私たちが要求を具体的に」と提案。
キャスターの豊崎由里絵は、国民の負担が政治家には全然伝わっていないのではないかということで「私たちがもっと声をあげるべき!」と訴えていました。
●衆参2補選 自民党の1勝1敗 与野党一騎打ち 10/23
与野党一騎打ちの構図で、岸田首相の政権運営や、衆議院の解散戦略への影響からも注目されていた、衆議院と参議院の2つの補欠選挙は、自民党の1勝1敗だった。
【当選】衆院 長崎4区 金子容三氏(自民・新)「物価高、そして経済対策。まずは地域の現状・苦しみを私が受け止めて国に届けていかなければならない」
北村元地方創生担当相の死去にともなう、衆議院長崎4区の補選では、自民党新人の金子容三氏が、立憲民主党で前議員の末次精一氏に勝った。
【当選】参院 徳島・高知選挙区 広田一氏(無・元)「岸田・自民一強独占状態に風穴をあけて、政治に緊張感をつくっていこう、そういった多くの皆さんの思いが、一つの大きな力になって今回、勝利することができたと」
一方、自民党議員が秘書に暴行し辞職したことによる参議院の徳島・高知選挙区の補選では、無所属の広田一氏が当選を果たした。
元参議院議員の広田氏は、立憲民主党と共産党の支援を受け、自民党の西内健氏を破った。
岸田首相は9月の内閣改造後、初めての国政選挙を五分の結果で乗り切ったものの、元々は自民党だった議席の1つを失った形。
●「五輪と万博」の幻想にとらわれる日本―低成長時代に見合う発展とは 10/23
札幌市が2030年冬季オリンピック・パラリンピックの招致を断念した。2年前の東京大会を巡って贈収賄や談合が発覚し、不祥事の影響で札幌の招致熱も高まらなかったためだ。一方、2年後に開催が予定される大阪・関西万博でも会場建設が滞り、準備の遅れが次々と表面化している。高度成長期の日本に活気をもたらした「五輪と万博」。しかし、その再現に人々は疑問を投げ掛けている。
札幌での五輪開催は2034年も困難に
10月11日、東京都内で日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長、札幌市の秋元克広会長による記者会見が開かれた。口火を切ったのは山下会長だった。
「JOCと札幌市は昨今の状況を踏まえ、2030年の冬季大会招致を中止し、34年大会以降の可能性を探ることにした。20年大会の一連の(不祥事)事案を受け、大会運営の見直しやガバナンス体制の検討を進めてきたが、住民の理解を得ているとは言いがたく、私から秋元市長に提案した」
その翌日からはインドで国際オリンピック委員会(IOC)の理事会・総会が開かれた。「34年以降を目指す」と宣言した札幌の意に反して、IOCは30年と34年大会の開催地を同時決定することを決めた。30年大会は、スウェーデンやスイス、フランスの都市が候補に挙がり、34年大会は02年に開催実績のある米国のソルトレークシティーが有力視されている。年内にも絞り込まれる見通しで、2大会一括で決まるのであれば、札幌が体制を立て直す余地はない。事実上、34年の招致も絶望的になったのだ。
IOC総会後の札幌市議会で、秋元市長は「スケジュールありきではなく、これまで以上に市民との対話を積み重ねて、招致の実現に向けて取り組んでいく」と答弁した。38年大会を目指す考えはまだ明言していないが、招致レースからの完全撤退も含め、戦略の見直しは必至だろう。
地元では市民団体が住民投票条例の制定を求めて署名活動を展開している。賛否が分かれる問題であるだけに、住民の意向を無視して先に進めることはできないはずだ。
物価高や人件費の高騰を読めず、予算は膨張
大阪市の人工島、夢洲(ゆめしま)で開かれる国際博覧会、大阪・関西万博は、2018年当初、1250億円で各国のパビリオン会場を建設する計画を進めていた。しかし、その2年後には予算が1850億円に膨らみ、さらに最近になって2350億円規模にまで上振れする計画が示された。物価上昇による資材高や人件費の高騰を予測しきれていなかったというが、このままの経済状況が続けば、建設費は当初予算の2倍に膨らむことも懸念される。
収入面でも苦戦が予想されている。前売りチケットの購入を関西経済連合会(関経連)の会長、副会長を輩出している企業16社に依頼したものの、反応が芳しくないという。チケットは1枚6000円で、1社当たり15万〜20万枚。金額にすれば1社9億〜12億円という計算になるが、開催の準備遅れが表面化する中、どの企業も二の足を踏んでいるようだ。
財政的な懸念が高まる中、政府は警備費の20億円を国庫負担とする方向で調整に入った。当初は民間資金のみで運営経費を賄う予定だったが、結局は国民の税金が費やされることになる。岸田首相は政府主導で準備を進める考えを示し、経産省や財務省の局長級幹部を現地に派遣する方針も打ち出した。
毎日新聞社の世論調査によれば、万博の開催について「規模を縮小して、費用を削減すべきだ」との回答が42%で最も多く、「万博をやめるべきだ」も35%。五輪と同様、万博も国民の厳しい目にさらされている。
繰り返す「成長神話」への期待
池田勇人内閣の下、「所得倍増計画」に躍った1960〜70年代の高度成長期。その頃の「成長神話」を追うかのように、日本では大規模イベントの誘致が繰り返されてきた。戦後復興の象徴とされた1964年の東京五輪以降の足跡をたどってみたい。
東京五輪後の流れはこうだ。70年大阪万博、72年札幌冬季五輪、75年国際海洋博覧会(沖縄海洋博)、85年国際科学技術博覧会(つくば科学万博)、88年名古屋五輪(招致失敗でソウルに決定)、90年国際花と緑の博覧会(大阪花博)、98年長野冬季五輪、2005年愛知万博、08年大阪五輪(招致失敗で北京に決定)、16年東京五輪(招致失敗でリオデジャネイロに決定)、20年東京五輪(新型コロナウイルスの影響で21年開催)、25年大阪・関西万博、30年札幌冬季五輪(招致断念)──。
開催を踏みとどまった例もある。国内の地方博として、東京臨海副都心で1996年に計画された世界都市博覧会は、開催10カ月前に中止が決まった。中止を公約に掲げて当選した青島幸男知事の判断だった。しかし、これによって宙に浮いた東京のウオーターフロント開発は、石原慎太郎知事時代に東京五輪の招致という形で再燃することになる。
大阪は2008年の五輪招致で北京に敗れたが、会場予定地は大阪市の人工島、舞洲(まいしま)だった。万博が開催される夢洲の隣の島であり、湾岸開発という点で五輪と万博はここでも連動している。
開発利益にすがる時代遅れの発想
札幌五輪の招致は、北海道新幹線の札幌までの延伸とともに地元経済を潤すと期待され、万博会場となる大阪の夢洲では、日本初のカジノを含む統合型リゾート(IR)が開業する予定だ。大規模イベントの開催は、常に開発利益や商業主義と密接に結びついている。
しかし、今や右肩上がりの発展を望むのは難しく、少子高齢化の低成長時代に入っている。国際的なイベントを日本で開催し、世界における存在感を高めようという発想自体、もはや時代に即していないのではないか。
五輪は商業主義が渦巻く中で不正がはびこり、国際平和や青少年教育といった本来の意義が薄れている。各国の科学技術や文化を披露する国際博覧会も、世界中の情報が簡単に手に入るインターネット時代で目新しさを欠いている。
米国の政治学者、ジュールズ・ボイコフ氏は、大勢の人々が祝福するイベントの陰で巨額の資金が動き、開発に伴う利益ばかりを追い求める風潮を「祝賀資本主義」と批判的に表現する。コロナ禍で開催された2年前の東京五輪はその象徴でもあった。
国立競技場が全面改築され、それに続いて計画される明治神宮外苑の再開発には反対運動が繰り広げられている。外苑内の樹木伐採は大きな非難を浴び、工事は暗礁に乗り上げた状態だ。五輪招致をきっかけに進められた開発は、大会が終わった今も逆風にさらされている。
持続可能な「光る国」に
五輪や万博の問題を研究してきた吉見俊哉・国学院大教授(社会学)は「1990年代以降、21世紀の日本が生きているのは緩やかな収縮の時代である。そんな時代に『お祭りドクトリン』の継続は幸せをもたらさない。むしろ、もう成長しない経済のなかで、人々が生活を豊かにしていく方法が求められているのだ」(『検証 コロナと五輪 変われぬ日本の失敗連鎖』)と述べている。
「お祭りドクトリン」とは、五輪や万博といった「お祭り」に依拠した戦後日本の発展政策を指す言葉だ。「祝賀資本主義」と意味するところは共通している。
秋元市長は、今の時代に札幌で五輪を開催する意義を「外からおカネを稼いでいくための社会システムに変えていくには、海外へ向けての発信が必要。こういう大会を使って街を変えていく意識を市民と共有しなければならない」と強調する。人口減少が続く中、地方都市が外国からの観光客に期待する気持ちも分からなくはない。起爆剤としての五輪という位置づけなのだろう。
バブル経済が崩壊した90年代半ば、『小さくともキラリと光る国・日本』という、政治家・武村正義氏(元新党さきがけ代表、昨年死去)の本が話題になった。経済大国、政治大国、軍事大国ではなく、日本はもっと違う形での発展を目指すべきではないか、という内容だ。自民党を離党し、新党を結成した当時をのちにこう振り返っている。
「バブル経済の残像が残る中で、まだ大国主義に酔いしれている政治家や国民に冷水を浴びせ、変革を促したかった。小さくてもキラリと光っている国を目指す、それを質実国家(質が高く、実のある国家という意味)として表現もした」(毎日新聞滋賀版「きらり・武村正義物語」2005年4月9日)
今も示唆に富む言葉だ。高度成長期とは異なる時代に日本は何をなすべきか。かつての夢を再び追いかけるのではない。環境や福祉、教育といった人々の暮らしに密着した地道な分野で、持続可能な「光る国」を追求すべきではないか。
●「世襲議員」はもはや憲法違反だ 日本は事実上の「貴族政治」になっている 10/23
議員の世襲の弊害については久しく議論されているが、世襲議員はますます増え続けている。岸田首相、麻生自民党副総裁等、自民党議員の4割弱は世襲である。
世襲議員を批判すると、必ず、彼らにも参政権と職業選択の自由が憲法で保障されている……という反論が返ってくる。加えて、彼らは身近で政治に接して政治に習熟しており、当選1回目でも政治家として活躍できる……という擁護論まで出てくる。
しかし、まず、「政治を熟知している」というが、自民党政治家の家族として政治に接していたということは、「利権政治」のノウハウを熟知していることに他ならず、むしろ、今、限界が露呈した「役立たず」の政治を熟知しているにすぎない。
また、彼らにも職業選択の自由と被選挙権があることは否定しないが、民主政治が正しく機能するためには何よりも選挙が「公正」でなければならないという、大前提がある。
そういう点で、世襲候補は、先祖から「地盤(集票組織)、看板(知名度)、鞄(政治資金)」の「3バン」を「無税」で相続しているために、苦労せずに当選できてしまう。
だから、当選後も、後援者の陳情だけを聞いても、国民一般の声に耳を傾ける必要はない。しかも、私も多数の世襲議員を見てきたが、皆、非常に恵まれた育ちをしているために、庶民の感覚が全く理解できない人物になってしまったように見える。
しかし、政治は、大多数の庶民を含む「全国民の幸福の増進」を担う権力活動であるが、その点で、あたかも家業として権力を世襲した貴族のような世襲議員たちには民主政治を担う資格がないのでは、と疑わざるを得ない。まさに「世襲貴族」による政治である。
日本国憲法は14条で「貴族」制度を明確に禁止している。
「失われた30年」と言われるほどに、事実上の「世襲貴族」である自民党議員たちに主導されてきた近年の日本の政治が、主権者国民にとって役立たずであったことは、もはや明白である。しかし、それは、彼らを当選させ続けた有権者自身が招いた「自業自得」だとも言えるであろう。
●首相らの「還元」に感じるモヤモヤの正体は 財政学者「社会がない」 10/23
税収を国民に戻すとの意味合いで「還元」という言葉がたびたび使われるようになりました。岸田文雄首相をはじめ政治家たちが発言し、それを新聞やテレビも報じています。記者はこの言葉遣いに言いようのないもやもやを感じました。その正体を考えたいと、桃山学院大の吉弘憲介教授(財政学、租税政策)に話を聞きました。
とりわけ重くなった日本の個人負担
――なぜ、いま政治が「還元」を強調しているのでしょうか。
経済協力開発機構(OECD)に加盟するいくつかの国について、2000年と20年で個人の税金と社会保障の負担がどう変わったかを比べました。
デンマーク、フランス、ドイツ、日本、スウェーデン、米国のうち、対GDP比で個人所得税、労働者負担分の社会保険料、消費税の三つがすべて上がったのは、日本だけでした。
日本は消費税が倍になったほか、社会保険料も対GDP比で3.7%から6.0%に上がっています。個人所得税は少し緩やかで、5.3%から6.2%に上がりました。
たとえばスウェーデンよりは日本の全体の負担率は低いです。それでも、税金や社会保険料の負担が上がり、生活が苦しくなった実感があるなかで、「負担を下げてほしい」という議論が出てくるのは必然的だろうと思います。
負担感を和らげようとしているとアピールするため、「還元」が使われるのでしょう。
「本当に還元する余力があるのか」
――所得税の減税が取りざたされていますが、「還元」という言葉をどう感じますか。
財政学の教科書を読むと、基本的な考え方として「量出制入(りょうしゅつせいにゅう)」が出てきます。「出ずるを量りて入るを制す」、つまり「公共サービスのためにこれだけの歳出がどうしても必要なので、税金をお願いします」ということです。
税金は、私有財産の処分権を政府が強制的に召し上げるもので、国民からすれば嫌なもの。だからこそ予算や歳出項目は先に決めておいて、そのために必要な税金を払ってもらうわけです。
今回の「還元」は減税の意味で論じられています。政府が作り出した公共サービスを配るのではなく、ただ「税金を集めすぎたので戻します」と言っているように聞こえます。
これには二重の意味で違和感が生じるのではないでしょうか。
ひとつには「そもそもそこま ・・・
●日本除くG7首脳が共同声明 民間人の保護 国際法順守を要請 10/23
日本を除くG7(主要7カ国)の首脳が22日に対応を協議し、イスラエルの自衛権を支持するとともに、国際人道法の順守を要請する共同声明を発表した。
アメリカやイギリスなど6カ国の首脳は22日に会談し、その後、共同声明を出した。
声明では、ハマスによるテロからイスラエルが自国を防衛する権利をあらためて支持するとともに、民間人の保護を含む国際法の順守などを要請している。
また、ハマスに誘拐された残りの人質全員の即時解放も求めた。
参加したのは日本を除くG7の6カ国の首脳で、イスラエルへの連帯をあらためて示すとともに、人道危機が深刻化するガザを念頭に、イスラエルへ慎重な対応を促す狙いがあるとみられる。
●“増税メガネ”と呼ばれ…岸田首相が所得税減税の検討指示 10/23
岸田文雄首相「徳島のみなさん、こんにちは」
「増税メガネ!」(ヤジ)
岸田首相は「増税メガネ」というヤジが飛ぶ中、演説を続けました。
増税メガネとは、政府税制調査会から通勤手当や退職金への課税・増税といったいわゆる「サラリーマン増税」の提言を受け取ったことなどから、ネット上などで「増税しそう」というイメージで岸田首相は、このようにからかわれるようになったのです。
しかし岸田首相が23日の所信表明演説で明らかにしたのは、増税ではありませんでした。
岸田文雄首相「現世代の国民の努力によってもたらされた成長による、税収の増収分の一部を公正かつ適正に還元し、物価高による国民のご負担を緩和いたします」
円安や物価高によって影響を受けている家計の負担を一時的に和らげる対策で、これには「所得税の減税」が念頭にあると見られています。
萩生田政調会長は「恒久減税ではない」
岸田総理は10月20日、総理官邸で自民党の萩生田政調会長に、年末の税制改正で所得税減税を検討するよう指示しました。
萩生田政調会長は「恒久減税ではない」と述べ、期限を区切った措置として検討する考えを示しました。
その一方で、所得税減税は所得税率の低い低所得者の世帯にあまり効果がないことから、自民党内には「給付」を求める声もあります。
自民党 遠藤利明前総務会長「私は給付のほうが、より当面は妥当ではないかと。その上で減税するかどうかの議論ですが、(岸田首相は)若干『増税メガネ』ということに少し過剰に反応されていますし、選挙を意識して減税をということもありますが」
このような反応について岸田総理は。
岸田文雄首相「物価高に最も切実に苦しんでおられる低所得者の方々の不安に配慮し、寄り添った対応を計ることがきわめて重要です」
こう述べて、これまでに自治体で行われた、低所得者世帯1世帯あたり3万円の支援のための地方交付金の枠組みを追加的に拡大する方針を示しました。
これで、岸田政権の「国民への還元」の方法は、所得税減税と低所得者世帯への給付という2つが見えてきたことになります。
仮に、所得税が減税されれば、家計にどのような恩恵がもたらされるのでしょうか?
神戸市灘区で子ども3人を育てる西山さんの給与明細を見せてもらいました。
西山さん「これが総支給で、こっちが引かれてる分なんですけど。所得税含め、かなり税金に持っていかれるので苦労してます」
土木系企業の営業部門で働く西山さんは、年に数十万円の所得税が引かれていました。
西山さん「じっくり中身をみたことなかったけど、改めて結構引かれてるんだなって感じてます。もう少しゆるめていただければという思いです」
物価高による食費の高騰に加え、子どもの習い事などにもお金がかかるようになり、家計の出費は多くなっています。
そうした中で、所得税が減税されれば…
西山さん「減税になれば、子どもらにいろんなもの買ってあげれると思います」
経済ジャーナリストの荻原博子さん
Q:どれくらい減税されたら嬉しい?
西山さん「半分くらい減税してもらえれば助かります。子どものことが1番ですけど、(減税した分)ちょっとでも小遣いを増やしていただけたらありがたいなと思っています」
今回の所信表明演説では具体論の発表はありませんでしたが、経済ジャーナリストの荻原博子さんは2つの懸念点として「減税までに時間がかかることと、1年程度の期間限定減税では効果がない」と話しました。
果たして、今後私たちの生活に直結するような、実感の持てる減税になるのでしょうか?  

 

●「日本の人道支援」評価 ヒラリー・クリントン元米国務長官 10/22

ヒラリー・クリントン元米国務長官は産経新聞とフジテレビに対し、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとイスラエル軍が対峙する大規模紛争の早期収拾を訴えた。
――ガザ情勢について
「今の状況はおぞましいテロリスト(ハマス)の攻撃で始まった。緊張を簡単に緩和できるか分からない。米国は長らく、中東に平和な解決をもたらすため尽力してきた。(パレスチナとイスラエルを仲介した)私の夫(ビル・クリントン元大統領)は2国家の実現に近づいた。だが結局はパレスチナ人がNOと言った。今回の危機がイスラエルのハマスへの強い措置によって解決されることを望む。ハマス以外のパレスチナ人が指導力を発揮し、パレスチナでより良い生活が実現することも望む。日本の人道支援はうれしい。日本は重要なプレーヤーだ」
――福島第1原発の処理水海洋放出に対する中国の反発をどう考える
「中国のプロパガンダだ。中国は本当はこの問題を懸念していない。日本を攻撃し、政治問題化することに関心がある。日本は従来方針を堅持すべきだし、(魚を輸出するため中国以外の)市場を探すべきだ。駐日米大使は日本の魚を購入するため調整をしている」
――台湾情勢について
「中国の習近平国家主席は台湾統一に言及している。その意味は海上封鎖か侵攻か分からない。だが習氏は何らかの動きをする。この地域や全世界が中国に『間違いだ』と言う必要がある。私たちは中国との競争をいとわない。ビジネスや影響力行使のために健全なことだ。一方、アジアで習氏が紛争をもたらすことは阻止すべきだ。(習氏は)地域を支配したいと熱望している」
――ウクライナ情勢について
「ウクライナ人は再度冬季中にロシアの攻撃にさらされる。電気や暖房が必要だ。ウクライナ支援は続けられるべきだ。プーチン(露大統領)は帝国を欧州地域に築くという妄想にとらわれている。プーチンはウクライナだけで満足しない」
――米大統領選が来秋実施される
「バイデン大統領の指導力は経済を安定させてきた。トランプ前大統領は共和党から候補者指名を受けたいだろう。バイデン氏はトランプ氏を倒し、再選されると思う。彼はそれに見合う仕事をしてきた。私自身、再出馬しない」
――日本の女性進出が欧米に比べ遅れている
「日本の女性は教育され、自信にあふれている。日本は、政治の重要な部分に貢献したいという女性に十分な機会を与えていないと思う」
●福田元首相「日中の平和友好関係を継続しなければならない」 10/22
日本の福田康夫元首相はこのほど、新華社の取材に応じ、日中平和友好条約の最大の目的は両国の平和友好関係を継続し、共に良好な関係を築くことだと述べた。
今年は中日平和友好条約締結45周年に当たる。1978年10月23日、福田康夫氏の父、当時の福田赳夫首相と訪日した中国の指導者、ケ小平(とう・しょうへい)氏が中日平和友好条約の批准書交換式に出席し、同条約が正式に発効した。
当時、父親の秘書として交換式に立ち会った福田康夫氏は「私は平和友好条約の成立の証人でもある」と語った。
中日平和友好条約は、中国と日本が平和、友好、協力を堅持し、互いの内政に干渉せず、覇権を求めず、他のいかなる国または国の集団による覇権の確立にも反対することを法律の形で規定している。
福田氏は、日中が平和友好関係を継続することが条約の最大の目的であり、そのためにはさまざまな問題に遭遇するかもしれないが、両国は努力して困難を乗り越え、共に良好な関係を構築しなければならないと述べた。
中日両国は2008年、「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する共同声明を発表した。当時の日本の首相は福田康夫氏だった。
1972年の中日国交正常化以来、両国が署名した四つの政治文書のうち二つは福田父子と密接な関係にある。福田康夫氏は、四つの政治文書は日中関係において順守すべき原則を規定したもので、われわれは常に心に銘記し、これに反することをしてはならないと指摘。「地政学的に言っても日本と中国は隣り合っており、文化的にも非常に密接な関係がある。双方は政治文書の精神を順守し、この先も衝突を起こしてはならない。これは日中両国に与えられた宿命である」と語った。
今年は中国の改革開放45周年でもある。福田氏は、中国の改革開放以来、日中両国は緊密な協力関係を築いてきたと指摘。両国が互いに助け合い、互恵ウィンウィンの関係にあることは、両国の長期的な利益に合致していると述べた。
2010〜18年にボアオ・アジアフォーラムの理事長を務め、中国の継続的な対外開放の拡大と急速な経済発展を目の当たりにした。中国経済の先行きについて、楽観的な見方を示している。
福田氏は中国が提唱する「一帯一路」共同建設の構想を高く評価。「一帯一路」共同建設は人類運命共同体構築の理念の実践になっているとの認識を示した。
●自民、減税にメッセージ性 防衛増税とちぐはぐと立民 10/22
20日召集の臨時国会は、週明けから岸田文雄首相の所信表明演説と各党代表質問が始まり、論戦が本格化する。与野党幹部は22日のNHK番組で経済対策を巡り議論を交わした。首相が所得税減税を含め検討するよう与党に指示したことに関し、自民党の稲田朋美幹事長代理は「減税にはメッセージ性がある」と意義を強調した。立憲民主党の岡田克也幹事長は、防衛費増額のための増税に所得税が含まれるとして「ちぐはぐだ。給付金の方が早く、手続きも容易だ」と指摘した。
公明党の石井啓一幹事長は、所得税減税について「定額減税が望ましい」と表明した。
日本維新の会の藤田文武幹事長は「社会保険料を減免し、中長期の構造改革につなげるべきだ」と主張した。
共産党の小池晃書記局長は消費税減税を挙げ、実施を求めた。
国民民主党の榛葉賀津也幹事長は所得税減税だけでなく「消費税やガソリン税、法人税の減税」が可処分所得を引き上げるのに有効だとした。
れいわ新選組の高井崇志幹事長は、年4回の一律現金10万円給付や消費税廃止を主張した。
●「止まっている日本」へ声上げよう 10/22
私は子どもの頃から褒められると、それまでできていたことができなくなる「褒められるとダメになるタイプ」です。そもそも不器用すぎてほとんどうまくできないので、褒められることすら少ないのが救いです(笑) 。「できない=サボっている」ならバカヤロー者ですが、「努力はしている=それでも、できない」こともあると解釈し、褒められることは向上するための修行と捉えるようにしています。ですが、これはフリーランスだから許される考え方。企業に勤めていたら1週間で解雇されるかもしれません。
知り合いの正社員、派遣社員はいずれも「生きるってこんなに大変なの?」「どこにも居場所がない」「意見を言いづらい世の中だ」と口をそろえています。ふと思い返すと、希望しかなかった子どもの頃とは確実に現実は違う。「生きやすさ」とは何かを日々考えています。「幸福度ランキング」なんてありますが、「1位の国」は果たして本当に全国民が幸福だと思えているのか? それは違うと思います。「幸せの感じ方」と「生きやすさ」は個々に異なる。30年前の日本は今より幸せが多く存在していたように感じます。実際に今も外国から見える日本は経済大国で人々は豊か、貧しい人はいなくて平等≠ノ見えている。いや、正確には「見えていた」です。
私は8歳で来日し、日本の方々に助けてもらいながら生活の基盤を母と共につくってきました。そして「日本基準」で物事を見ていましたが、世界を旅していく中で日本が止まっている¢スくのことに気づかされました。「30年以上賃金が上がらない」「高度経済成長期の日本を支えた世代が孤独死していく」「選挙の投票率が低い」「我慢こそが美学」「報道の自由がない」「民衆主義なのに、国民の声が反映されない」「格差が広がっていく」「抗議デモ、ストライキがほぼない」「女性の立場がまだまだ弱い」・・・。書き出したら止まらないので、ここでいったん区切ります。
「日本は先進国」とだんだん言えなくなってきているかもしれません。こういうことを書くと「反日」と言う方もいますが、そうではない。日本を愛してるし、私の故郷でもあります。気づいていますか? 日本を支えているのは「政治家ではなく、国民であるアナタ」だと。電気代、物価の高騰がここまで加速していたら、他国では今ごろデモが起きています。
日本では、心の中でそう思っていても「何を食べにいく? どこに遊びにいく?」とギリギリの状況をまだ頑張って過ごせている人がいる一方で、わが子に食べ物も買ってあげられない、家賃も払えない人々が増えています。きらびやかにみえる光の裏側の闇は、少しずつ大きくなっていく。声を上げないのは美学ではないのです。声を上げられる人が今、上げないと、明日はアナタも危ない。国民のための国家になるためには、「声」を出せる社会になってほしいと強く思います。
●立憲・大串氏「幅広い野党の力結集できた」 参院補選、広田氏当選 10/22
立憲民主党の大串博志選対委員長は22日夜、参院徳島・高知選挙区補選で、同党などが支援した無所属元職の広田一氏が当選したことを受け「幅広い野党の力を結集できた。岸田政権の政権運営に対し『ノー』だという厳しい声を突きつけることができた」と語った。党本部で記者団の質問に答えた。
岸田政権の物価高対策などに言及し「やっていることが遅い、手ぬるいといった厳しい声を広田さんに託していただいた結果だ」と述べた。広田氏が自民候補との一騎打ちを制したことに関し「与野党1対1の対決構図を作るのは非常に有効だと明らかになった」と指摘。「次期衆院選に向けても各野党の皆さんと真摯(しんし)に向き合い、少しでも野党の議席を増やせるように話を進めていきたい」と述べた。
「広田氏は無所属候補ではあるが、元々立憲民主党の仲間の議員だったこともあり、党を挙げて応援した。良い結果が出て、党として勢いがつくのではないか」と期待を込めた。
●参院徳島・高知で自民敗北 2補選、岸田首相に痛手 10/22
第2次岸田再改造内閣の発足後初めての国政選挙となった衆院長崎4区と参院徳島・高知選挙区の補欠選挙は22日投開票され、自民党は徳島・高知選挙区での敗北が確実になった。与野党一騎打ちとなった2補選で、自民は選挙前の2議席を守ることができず、岸田文雄首相(自民総裁)にとって痛手となった。
首相は23日、臨時国会で所信表明演説に臨み、与野党の論戦がスタートする。野党は勢いづくとみられ、内閣支持率が下落する中、政権基盤が揺らぐ可能性もある。一部で取り沙汰される年内の衆院解散は困難との見方が広がりそうだ。
自民の世耕弘成参院幹事長は東京都内で記者団に「大変厳しい戦いだった。経済対策策定を地道にやっていくことが重要だ」と指摘。立憲民主党の大串博志選対委員長は「岸田政権の政権運営にノーという厳しい声を突き付けることができた。意義のある戦いだった」と語った。
2補選では物価高騰への対応に加え、首相の政権運営の評価が争点となった。首相は選挙区に入り支持を訴え、20日には所得税減税の検討を打ち出すなどしたが、徳島・高知選挙区では及ばなかった。
徳島・高知選挙区補選は秘書に暴力を振るった高野光二郎氏(自民離党)の議員辞職を受けたもので、元立民衆院議員で無所属の広田一氏(55)が元高知県議で自民新人の西内健氏(56)=公明党推薦=を破った。
長崎4区補選は自民の北村誠吾元地方創生担当相の死去に伴う。2021年衆院選で比例代表で復活当選した立民前職の末次精一氏(60)=社民党推薦=と、自民新人の金子容三氏(40)=公明推薦=が争い、出口調査によると両候補は競り合っている。
●岸田内閣の支持率が過去最低値、永田町常識は既に「政権は倒れた」状況 10/22
岸田内閣の支持率が下がり続けている。この状況を「青木の法則」にあてはめると…。
ほぼ全てのメディアの10月の世論調査で、岸田文雄内閣の支持率が発足以来最低になった。何か大きな失策や不祥事があったわけではないのに、何がこの状況を生んでいるのか。
「青木の法則」
まずは、マスコミ各社の10月の世論調査結果を見てみよう。数字は雄弁だ。
時事通信の調査(10月6〜9日、以下カッコ内は前月比)では、内閣支持率は26.3(-1.7)%で、内閣発足以来最低である。この数字に自民党支持率の21.0%を足すと47.3%で、50%以下である。
参議院のドンと称された青木幹雄は、内閣支持率と与党第一党の支持率の和が50%以下になると、政権は倒れると言った。これを「青木の法則」という。つまり、既に岸田内閣への退陣要求が出たと考えてよい。内閣不支持率は、46.3(+2.3)%である。
朝日新聞の調査(14、15日)によると、内閣支持率は29(−8)%で、過去最低である。不支持率は60(+7)%で、自民政権復帰(2012年)以来最高である。政党支持率は、自民党26%、無党派45%である。
読売新聞の調査(13〜15日)では、内閣支持率34(-1)%でやはり過去最低である。不支持率は49(−1)%である。政党支持率も、自民党は30%で、無党派は46%である。
毎日新聞の調査(14、15日)によると、内閣支持率は25(±0)%、不支持率は68(±0)%である。政党支持率は、自民党が23%、無党派が27%である。この調査でも、青木の法則が当てはまる。
共同通信の調査(14、15日)では、内閣支持率は32.3(-7.5)%で過去最低、不支持率は52.5(+12.8)%で過去最高である。
産経新聞の調査(14、15日)では、内閣支持率は35.6%で過去最低、不支持率は59.6%で過去最高である。
「経済無策」
以上見てきたように、内閣支持率が内閣発足以来で最低というほど低い。なぜなのか。それは、物価上昇などについて有効な対策を講じていないという不満が国民の間で広まっているからである。
朝日新聞の調査では、政府が月内にまとめる経済対策に対して、「期待できない」が69%に上り、「期待できる」は24%にすぎない。「期待できない」とした人については、内閣不支持率は75%である。
同じ質問に対する毎日新聞の調査では、「期待する」が21%、「期待しない」が63%である。読売新聞では、「期待できる」が21%、「期待できない」が73%である。いずれも同じような回答である。
物価上昇、生活苦の改善が見られないことに、国民は閉口している。
税収増なのに減税せず
岸田首相がなぜ「増税クソメガネ」などと批判されるかというと、税収が増えているからである。
税収は、2020年度に60.8兆円と過去最高となり、2021年度は67.0兆円、2022年度は71.1兆円と、わずか2年で10兆円以上も増えている。しかし、賃金の上昇は物価の上昇に追いついていない。物価が上がれば、消費税負担も上がる。名目賃金が上がれば、所得税負担も増える。企業が儲かれば、法人税もより多く支払うことになる。そこで、「増税クソメガネ」と揶揄される。
岸田首相は、「今こそ経済成長の果実を国民に還元すべきだ」と述べ、「減税」も口にした。しかし、16日に自民党がまとめた経済対策の提言には、所得税の減税には全く触れていない。
これでは、「増税クソメガネ」という批判は続くであろう。そもそも、少子化対策や防衛費増額で財源が必要なのに、減税というのでは辻褄が合わない。
有事のリーダーとしては失格
岸田首相は、物静かなタイプの政治家で、落ち着いているが、強烈なアピール力に欠ける。その分、ポピュリズムに走る危険性は少ないが、国民にとっては、抑揚のない平板な歌を聴かされている感じである。記者会見も、演説も、一本調子で国民の心に響かない。
平時にはそれでも良いが、今はウクライナ戦争、円安、物価高、ハマス・イスラエル戦争と有事である。有事には、思い切った対策で、国民のニーズに応えるようにし、その政策を力強く、自分の言葉で語らなければならない。
そして、政策のアピールにはパフォーマンスも必要なのである。ところが、今の岸田首相には、「何もしない」というイメージしかない。これでは有事のリーダーとしては失格である。
22日には衆院長崎4区と参院徳島・高知選挙区の補選が行われるが、自民党にとって情勢は厳しい。解散どころではないかもしれない。 

 

●上川外相、独自色に腐心 女性の人権アピール 目立つ説明不足 10/21
9月の内閣改造で就任して1カ月あまりたった上川陽子外相(70)が、独自色発揮に腐心している。19年ぶりの女性外相として、戦時下の女性保護や平和構築への女性参画に取り組む姿勢をアピール。イスラム組織ハマスが7日にイスラエルを大規模攻撃して以降は情勢対応に追われ、20日からはパレスチナ自治区ガザの人道状況改善に向けエジプトを訪問中だ。ただ、イスラエルの邦人退避ではチャーター機派遣などを巡り説明不足も目立ち、与党からも批判が出た。発信力が今後の課題となりそうだ。
「紛争で特に影響を受けるのは女性や子供など脆弱(ぜいじゃく)な立場にいる人々だ。WPSの視点も踏まえ、関係機関と連携する」。上川氏はエジプト訪問を発表した20日の記者会見で強調した。
WPSとは「女性・平和・安全保障」の英語の頭文字を取ったもので、紛争下の性暴力からの保護などに加え、紛争の予防や復興に女性が指導的な立場で参画することで、平和・安全保障の面でジェンダー平等や女性の人権尊重を進める取り組み。国連安全保障理事会が2000年、関連決議を全会一致で採択した。
上川氏は就任時のインタビューでも「WPSを日本外交の一環として力強く推進する」と述べており、ロシアの侵攻が続くウクライナやパレスチナ情勢でも取り組みを進める考えを示す。
17日には上川氏が「女性活躍のロールモデル」(外務省関係者)とするヒラリー・クリントン元国務長官と駐日米国大使公邸で面会し、WPSの取り組み推進で一致した。外務省幹部は「にわかに主要外交テーマの一つになった」と話す。
ただ、イスラエルの邦人退避を巡る対応は後手に回った。韓国軍機が14日夜に一足早く日本人51人を無償で韓国まで退避させたのに対し、日本政府のチャーター機は到着地がドバイで、8人の搭乗にとどまり、1人3万円の負担も求めた。
外務省はイスラエルと日本の民間航空路線が維持されていたことなどを理由とし、費用負担を求めることは英米でも一般的だと説明する。ただ、上川氏が積極的に説明する場面はなく、自民中堅は「外務省の説明が足りなすぎる」と不満を漏らす。外務省幹部は「説明不足は大きな反省点。今後は迅速な発信に努める」とした。
●稲田朋美「他国がとやかく言うのは違う」 政治家が靖国参拝する意義 10/21
17日から3日間の日程で行われた、靖国神社の秋の例大祭。西村経産大臣、新藤経済再生担当大臣、高市経済安保担当大臣や、超党派議連の96人は集団で参拝。岸田総理は「真榊」と呼ばれる供物を私費で奉納し、参拝は見送った。
問題とされているのが、第二次世界大戦で戦争犯罪人とされたA級戦犯が一緒に祀られていること。閣僚らの参拝に中国や韓国が抗議の声をあげており、今回も中国外務省は「軍国主義の象徴」、韓国外務省は「深い失望」と非難した。SNSでは、過去の戦争を反省しないのは問題との声がある一方、参拝を肯定する意見も根強くある。
靖国神社参拝はなぜいつも論争になるのか。本当に戦争賛美なのか。「伝統と創造の会」で毎年2回参拝している、自民党幹事長代理の稲田朋美衆議院議員を交え議論した。
稲田議員に長谷川ミラ「政治家が行くと“ケンカを売っているんだな”と」
4月28日(主権回復の日)と8月15日(終戦の日)に、参拝に行っている稲田議員。「どんな歴史観に立とうとも、自国のため、自分の愛するものを守るために命をかけた先人たちの積み重ねの上に今の日本があるという思いだ」と説明。中国・韓国からの批判について、「かつては大騒ぎだったが、だんだんそうでもなくなってきていると思う。その国ごとの祀り方があり、他国がとやかく言うのは違うのではないか」と反論する。
政治家による靖国神社参拝の問題点を指摘している作家・宗教学者の島田裕巳氏は、150年にわたる靖国神社の歴史に触れた上で、「A級戦犯の合祀という話がすぐに出てくるが、実は合祀当初の段階では、日本人も関心を持たなかったし、諸外国からの批判もなかった。靖国神社は戦後、民間の宗教法人になり、他国がとやかく言う状況にはなかったからだ。しかし、1985年に中曽根元総理が公式参拝として実行してから、A級戦犯を合祀しているということで問題になったのが大きな転換点。日本を批判する武器を諸外国に与えてしまった」と述べる。
A級戦犯は戦争の計画や準備、開戦に加担したなど「平和に対する罪」、B級戦犯は敵兵や敵国民への虐待や大量殺人など「戦争犯罪」、C級戦犯は現地住民への人権侵害や捕虜の虐待など「人道に対する罪」となっている。
稲田議員は「平和に対する罪を犯したということで処刑されたのが、A級戦犯。清瀬弁護人が東京裁判所の管轄権に対する動議を出したように、当時、指導者個人の責任を問う国際法はなかった。事後法で裁いたわけだが、証拠の採用なども本当に不公平なやり方だった。私たちは戦争に負けたからということで受け入れたが、そういう裁判だったということは抑えておかないといけない」とした。
モデル・ラジオナビゲーターの長谷川ミラは「政治家の皆さんは靖国神社の立場をわかった上で参拝に行っているのだから、“ケンカを売っているんだな”と。子どもの時から、ニュースを見る度にそう思ってしまうのは必然ではないか」「政治家が個人として行動しても、日本全体がそういう国だと見られてしまう。そういう意味で、“個人の考え”で済むかというとすんなり入ってこない」と投げかける。
稲田議員は「私も防衛大臣の時は8月15日の参拝を避けた。日本の平和を考えた時に、その行為がどういう影響を与えるのか。岸田総理も真榊は奉納したが参拝しないという選択をしたし、安倍元総理も1回行った以外は躊躇した。それは当然だと思う。その時々の情勢があり、自分の国を守るということは一番に考えなければいけない」と述べた。
分祀は「靖国神社の姿勢が変わらない限りできない」
A級戦犯を祀る場所を移す「分祀」はできないのか。島田氏は「靖国神社は一民間なので、“自分たちがどういう神を祀るか”はその権限で行われる。また政教分離の原則があり、政府が何かを言うことはできない。靖国神社は“1回合祀したものを分けることはできない”と主張しているので、その姿勢が変わらない限りできない」と話す。
日本国憲法第20条第1項では信教の自由が保障されている一方で、第3項では“国及びその機関は宗教的活動をしてはならない”と明記されている。「政治家が特定の神社に行くのは第3項に反するのではないか」という声もある。
稲田議員は「政治家が靖国神社に行く場合、応援するとか、神道を盛り立てるということが目的ではない。国難に殉じた方々を追悼、慰霊できない国はどうなのか。忘恩の徒にはなりたくないという思いだ。何か利益や特権を与えるものではないと理解している」と説明。
島田氏は「靖国の問題は非常に複雑。単体の問題というよりも、宗教法人や神社のあり方まで掘り下げて考えるべき時期に来ているのではないか」との見方を示した。
「神道を宗教として捉えていいのかという議論がある。少なくとも戦前は、宗教にあらずということでその枠から外されていた。靖国神社も戦後、国が管理する施設から変わったわけだが、そういう時代を経ていることが、どうしても靖国神社の今の性格に関わってくる。政治と宗教を分けることの難しさが露呈している場所だと思う」
●もうむちゃくちゃ…自民党が目指した政策を事実上批判!臨時国会開会 10/21
秋の臨時国会が10月20日に開幕した。内閣支持率が低迷する中、来年の自民党総裁選での再選に向けて正念場となる岸田文雄政権だが、本人は自分に対する批判を過剰に気にしてしまっている。国際政治アナリストで早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏が分析するーー。
支持率低迷の本質的な理由
岸田政権の支持率が10月に入ってから大きく下落している。この理由は一体何であろうか。もちろん、岸田首相にこびり付いた「増税」イメージが支持率下落の直接的な原因の一つであることは疑い得ない。しかし、より本質的な問題は岸田首相に「総理の器がない」、つまり政権担当能力がないことが露呈したことである。
報道によると、岸田首相は自らのニックネームである「増税メガネ」を気にして、形だけの時限的な減税政策を打ち出すことにしたという。自民党幹部からも「岸田首相が増税メガネに過剰反応している」という発言が飛び出し、この自体はほぼ間違いないだろう。したがって、直近では自らの支持率向上のためのパフォーマンスとして、イトーヨーカドーなどを視察して物価高対策に取り組む姿勢などを示したことも合点がいく。
しかし、岸田首相にとっては残念だが、日本国民はバカではないため、そのような首相の姿を見てその本質を見抜いている。だからこそ、岸田政権の支持率は下落しているのだ。単純に政策の問題だけではない。日本国民は岸田首相の本質である「世襲の御公家様体質」に見切りをつけたのだ。このような御公家様体質は、自分の息子を当初秘書官に据えても大丈夫と判断した甘さにも表れていた。
世襲議員はその特徴として自らに対する批判に過敏に反応
世襲議員はその特徴として自らに対する批判に過敏に反応する傾向がある。まして、岸田首相は生粋の世襲一家の一員として楽な選挙戦を勝ち抜き、地味で目立たないタイプであった。そのため、メディアやSNS上でこれだけ様々な批判されることは、人生で初めての体験だろう。その結果として、様々な問題がメディアで紛失するたびに自らの保身のために過剰反応を繰り返している。国民はこの情けない姿を見て、岸田首相に「総理の器無し」と判断しているのだ。
岸田総理が本来やるべきことは、自らの政権及び政党の政策方針を国民に堂々と説明し、その信を問うことであった。たとえば、物価高や増税に対する批判を受けたとき、岸田首相が総理として国民に説明すべきであったことは下記の通りだ。
1. 物価高について…自民党は安倍政権時代からデフレ脱却のために異次元の金融緩和を継続してきている。そのため、物価が着実に上昇することはインフレ誘導による景気拡大に向けた政策が効果を発揮していることを意味する。インフレによる経済の好循環を図るため、国民には物価高を今しばらく許容してほしい。
自民党が目指した政策を事実上批判するかのようなパフォーマンス
2. 増税について…中国の軍事的脅威に対抗するために、防衛費を倍増させる決断をした。そのため、法人税、所得税、たばこ税の増税方針を決定し、今後は計画的に複数年かけて増税を実行する。また、20兆円規模の脱炭素投資のため、石油・石炭輸入事業者にGX賦課金を課すこと及び電力会社に対する排出権買取強制を行うための法案を制定した。これらは全て新たな国民負担であるが、日本に必要なことなので納得してほしい。
岸田総理は自分の政策を真摯に繰り返し説明するだけで良かった。なぜなら、デフレ脱却は直近10年間の自民党の方針であり、岸田政権が決断した政策には増税が重要だからである。そして、内閣総理大臣の仕事は国民に政策を説明し納得させることだ。その言葉には「総理の器」を感じさせる重みが必要だ。
翻って、現実の岸田首相は、物価高批判を受けて、直近10年間、自民党が目指した政策を事実上批判するかのようなパフォーマンスを実施している。経済政策の根幹である金融政策の方針を理解しているのか否かすら怪しく見える。
●臨時国会開会 政府・党の連携に不安が残る 10/21
臨時国会が開会した。山積する内政、外交の課題の解決に向けて、政府と与野党には実りある論戦を期待したい。
審議の焦点は、物価高への対応を柱とする経済対策だ。岸田首相が与党の政策責任者に所得減税の検討を指示したことで、減税もテーマとなる。
与野党はそれぞれ独自案をまとめようとしているが、バラマキを競うようでは困る。事業の妥当性や効果を建設的に論じ合い、真に必要な対策につなげるべきだ。
臨時国会の初日には、首相の所信表明演説が行われるのが慣例だが、今回は週明けに先送りされた。野党が、衆参の二つの補欠選挙の投票日前に、首相の演説だけを行うことに反発したためだ。
今国会の開会日を巡る政府・与党の調整も混乱し、開会は当初の想定より数日ずれ込んだ。
日程調整さえ覚束ない状況で、様々な課題を適切に処理できるのか心もとない。首相官邸と国会、与党は意思疎通を密にし、政権運営を安定させる必要がある。
今国会では、国会議員や秘書のあり方も論点になっている。
自民党と立憲民主党、日本維新の会の衆院議員の公設秘書が、市議や町議を兼務していたことが先月、判明した。これを受け、与野党は、公設秘書と地方議員の兼職の禁止を申し合わせた。
国会議員秘書給与法は公設秘書の兼職を原則として禁じ、議員が許可すれば可能と定めている。
国会質問の作成に携わるなど議員活動を支えながら、地方議員として地域の課題の解決に努め、住民の負託に応えようというのは無理がある。それぞれの職務を軽視していると言わざるを得ず、不適切極まりない。
地方議員との兼職は、法改正で禁じるのが筋ではないか。
国会議員に月100万円を支給している調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の見直し論議も滞っている。
野党は、使途の公開や未使用分の国庫返納を義務づけるよう主張しているが、自民党は慎重だ。
政治に一定のコストがかかるのはやむを得ない。ただ、使途の公開などで透明性を高め、国民への説明責任を果たすことは大切だ。政治家が自らを厳しく律しなければ、国民の信頼は得られまい。
議員の質問通告が遅く、答弁を作る官僚が深夜まで残業を強いられている現状も改善したい。
与野党は今年6月、「速やかな質問通告に努める」ことで一致した。その実効性が問われる。
●本気なのか?岸田政権が狙う「政治家の賃上げ」 世間知らずな金銭感覚 10/21
20日に開会した臨時国会に、閣僚など特別職国家公務員の給与を上げる法案が提出された。首相の場合、月額は6000円増えて201万6000円に。一般職に合わせて引き上げられ、一部は返納されているものだが、今は物価高で国民が苦しんでいるタイミングだ。くしくも岸田内閣では、武見敬三厚生労働相が介護職員の月6000円程度の賃上げ案を「妥当」と発言し、批判されている。永田町の金銭感覚を考えた。
「給与を下げるなら分かるが」
「国民は物価高などで苦しい。民間の賃金を底上げしてから上げるなら分かるが、税金からもらう側だけ上がるのはおかしい」
20日、国会の近くを歩いていた東京都立川市の会社員男性(55)は、政府が首相らの給与を引き上げる法案を提出したことに憤りをあらわにした。元民間病院の職員という文京区の無職男性(70)も「国民の生活が苦しい中、給与を下げるなら分かるが、上げるなんてとんでもない。ちゃんと国民の方を向いて仕事をしてほしい」とあきれた様子だった。
法案によると、人事院勧告を受けて一般職の国家公務員の給与を引き上げるのに合わせ、首相や閣僚、副大臣ら特別職の国家公務員の給与も改定。各月額給与は、首相が201万6000円(6000円増)、閣僚が147万円(4000円増)、副大臣が141万円(同)、大臣政務官が120万3000円(同)となる。
内閣人事局によると、2015年4月以来の改定。法案が今国会で成立すれば、今年4月にさかのぼって引き上げられる。合わせて賞与も、それぞれ年間で3.4カ月分に0.1カ月分引き上げられる。
ただ内閣総務官室によると、行財政改革を着実に推進する観点から、14年4月以降、首相は3割、閣僚と副大臣は2割、大臣政務官は1割をそれぞれ月額給与から国庫に返納している。
「政府は賃上げを率先してやらないと」と公明ベテラン
20日に登院した議員はどう思っているのか。院内に入って尋ねると、「皆、一部を返納しているのだから全く問題ない」(自民党若手)「返納で、こちらとしても厳しく対応しているので理解してほしい」(ある副大臣)「政府は賃上げを掲げているので率先してやらないといけない」(公明党ベテラン)といった声が聞かれた。
一方、「身を切る改革」を掲げる日本維新の会の幹部は「うちなら絶対にやらない」と強調。共産党幹部も「一般職は上げないといけないが、首相ら特別職を上げるのはいかがなものか」と疑問を呈した。
岸田首相、今さらスーパーを視察し物価高を知る
首相や閣僚の給与とは別に、国会議員には歳費が出る。議員1人当たりの歳費は月額129万4000円で、年間の賞与は約620万円。首相や閣僚は給与と二重取りできないが、一般の議員にはかなりの収入だ。
この歳費も首相や閣僚の給与が上がるのに合わせて引き上げられてきた。今回は、公明党の石井啓一幹事長が13日の記者会見で「従来は歳費も引き上げてきたが、国民の実質賃金がプラスになるまでは控えるべきだ」と慎重な姿勢を示している。
国民の困窮を知ってか知らずか、岸田文雄首相は16日に都内のスーパーを視察。近く取りまとめる経済対策に関し、記者団に「まずは物価高から国民生活を守る」と強調した。露骨なパフォーマンスに、ネットでは「視察しなければ物価高が分からなかったのか」などと冷ややかな声が上がっている。
介護職の賃上げ「月6000円程度が妥当」の上から目線
一方、偶然にも首相と同じ「月額6000円」の賃上げがなされようとしているのが、介護職の人々だ。
政府が取りまとめる経済対策に「月額6000円」を盛り込む方針が、18日に一部で報じられた。介護事業所で働く人らでつくる労働組合「日本介護クラフトユニオン」の村上久美子副会長は同日の記者会見で、「6000円ではとても追いつかない。他の産業へ人材が流出していく」と危機感を示した。
翌19日、武見厚労相が川崎市の介護施設を視察した後、報道陣に「月6000円程度が妥当」との考えを示し、批判が噴出した。同日に岸田首相と面談して賃上げ推進を求めた全国老人保健施設協会の東憲太郎会長も、その後の会見で「(月6000円では)全く足りない」と言い切った。
介護職の賃金水準を理解しているのだろうか
首相や閣僚と異なるのは、もともと介護職の賃金水準がかなり低いことだ。2022年の賃金構造基本統計調査によると、施設勤めの介護職員の給与は月24万2200円。全産業平均の31万1800円と比べて、7万円近い開きがある。
介護サービス事業者の収入にあたる介護報酬は、国が原則3年に1度見直す公定価格のため、賃金を引き上げて価格に転嫁できない。賃上げするには、介護報酬自体を引き上げるか、補助金などで手当てするしかない。
政府は21年の経済対策でも月平均9000円相当の賃上げ策を盛り込み、昨年から実施している。しかし、昨今の物価高や人手不足で多くの産業が大幅な賃上げを進め、今春闘の主要企業の平均賃上げ率は3.6%となった。一方で介護職員の賃上げは1.4%にとどまり、その差は広がるばかり。高齢化が急速に進むいま、他産業への人材流出の懸念が強まっている。
「人材定着には働きやすい職場づくりをサポートする政策」
そんな中で出た「6000円は妥当」発言。約10年、祖母を介護し、介護福祉士の資格も持つ介護ジャーナリストの小山朝子さんは「介護の現場がどれだけ大変か、丁寧に視察した上で発言したのだろうか。他産業との差が広がっているのに、『妥当』と言われたら、現場は反発する」と話す。
ただでさえ介護現場は人手不足に加え、新型コロナウイルス対策などの新たな負担も生じている。小山さんは、認知症の利用者が増えている点も挙げ、「これまで排せつ、食事、入浴という身体介護が中心だったが、認知症利用者のメンタルのケアに関する新たな知識や技術も求められている」と指摘した上で、政府にこう求める。
「人材を定着させるには処遇改善はもちろんだが、職員の負担を軽減するシステムも大切。職員が働きやすい職場づくりをサポートする政策的な措置が必要だ」
「バナナのたたき売りのような政策ばかり」
こうした国民の生活実感と、かけ離れたように見える岸田政権の「金銭感覚」。自分たちの給料はお手盛りで増やしつつ、防衛費などに巨費を投じ、24年度一般会計予算の概算要求額は約114兆円と過去最大の規模に膨れ上がった。5年で43兆円にもなる防衛費のために将来的な増税を見込む一方、期限付きの所得税減税に乗り出すという。
淑徳大の金子勝客員教授(財政学)は「岸田首相は党内バランスばかりを見て妥協を繰り返し、政策に一貫性がない。権力維持しか考えない世襲政治家の悪い部分がもろに出ている」とばっさり切り捨てる。
「防衛増税は選挙に負けるからと延期し、じゃあ減税も一時的と、まるでバナナのたたき売りのような政策ばかり。国民は『選挙が終わったら増税で取り戻すんでしょ』と、見抜いているから支持率は上がらない。もはや末期症状ではないか」
デスクメモ
誰もが介護を受ける可能性がある時代。職員の賃上げに反対する人がどれだけいるのか。経済原理に任せず、大事な人々には予算を割くのが政治の役割だろう。魅力ある職場と感じて人が集まれば、労働環境も改善する。少しずつでなく、一気に好循環を生むインパクトある政策を。
●“期限付きの所得税減税”検討を指示 岸田首相の狙いは? 10/21
臨時国会が20日に召集されました。岸田首相は早速、与党に対して期限付きの所得税減税を検討するよう指示を出しましたが、狙いはどこにあるのでしょうか。日本テレビ・政治部官邸キャップの平本さんの解説です。
岸田首相は経済対策の目玉を模索してきました。その具体策として打ち出したのが、期限付きの所得税減税でした。このタイミングで打ち出した背景には、3つの要因があると思います。
1つ目 政権の「増税イメージ」の払拭
「防衛増税」や「異次元の少子化対策の財源」など、政権が新たな負担を求める中、首相周辺は「間違ったイメージだが、『増税』というイメージを払拭するために『減税』の打ち出しが必要だった」と話しています。SNS上で岸田首相が“増税メガネ”と揶揄(やゆ)される中、支持率低迷の背景に「増税」イメージが影響しているのではと払拭したいようなんです。
2つ目 岸田首相の「リーダーシップ」
実は今週17日に与党の経済対策がまとまったのですが、「所得税減税」の記載は見送られました。ある政府関係者は「臨時国会で首相が打ち出すために、目玉政策をとっておいた」と明かしています。最新の動きですが20日、早速、岸田首相は与党幹部に早急にとりまとめるように指示しています。
3つ目 「解散」の大義の模索
複数の自民党幹部は、今の低い支持率や日程的にゆとりがないことを挙げて、「年内の解散は厳しい」と指摘しています。ただ、岸田首相自身は解散について「年内も含めて何も決めてない」と依然、話しているようで、一定数の自民党議員が「減税は解散への布石では」とみています。
――この所得減税の議論ふくめ、臨時国会の焦点はどこになりますか?
野党側は改造後初の国会ということで、新閣僚の資質を追及したり、いわゆる“統一教会”問題への対応などでも攻勢を強める考えですが、何といっても政権が急きょ打ち出した「所得税減税」を巡る攻防が激しくなりそうです。
所得税減税を巡っては、首相の側近議員からも「防衛増税という一方で、所得税は減税するというのは説明がつかない」との指摘。野党側も「政策の整合性」、さらに、物価高対策には「減税より給付のほうが効果的だ」などと主張し、論戦を挑むとみられます。
22日は衆参合わせて2つの補欠選挙の投開票もあり、選挙結果は政権運営に少なからず影響を与えるとみられています。
この国会は、序盤から緊迫した展開になることも予想されます。
●政府補助いつまで続く? 安くならない電気料金 「日本独特、政治が弱っちい」 10/21
政策アナリストの石川和男が10月21日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のエネルギーリテラシー」に出演。政府が一部補助を続け、低く抑えられている家庭用電気料金について、「日本独特、政治が弱っちい」と指摘した。
現在、日本国内の家庭用電気料金は地域によってばらつきはあるものの、去年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、天然ガスなどの燃料輸入価格上昇に伴い、高止まりが続いている。そこで政府は、家計のひっ迫を防ぐため、今年1月の使用分から電気料金の一部補助を開始。見かけの負担額は減ったものの、補助分を除けば値下がりしていない。この原因について石川は、2011年に発生した福島第一原発事故以降、多くの原発が止まったままで、化石燃料を多く使う火力発電所などがフル稼働している現状に言及。その上で、こう述べた。
石川)人類は原発事故を3つ経験している。最近だと福島第一原子力発電所、その前が1986年ウクライナ(当時旧ソ連)のチョルノービリ(チェルノブイリ)、その前が1979年のアメリカ・スリーマイル島。だけど、アメリカのスリーマイル島の事故とウクライナ(当時旧ソ連)のチョルノービリ(チェルノブイリ)事故の時って、事故炉はさすがに止めたけど、他の原発は動いているし、まして他の原発まで止めたなんて、こんなアホみたいなことはやっていない。だからこういうのって、日本独特の何というか、政治が弱っちいんじゃないかなとみている。
●首相の減税検討指示を疑問視 10/21
岸田首相が所得税減税の検討を指示したことを巡り、自民、公明両党では、政権浮揚の効果や防衛費増額のための増税との整合性を疑問視する声が上がっている。過去の内閣では、減税で苦境に追い込まれたこともあるためだ。野党は「露骨な選挙目当て」などと批判を強めている。
実施に時間
「やや立場を超えた話になるが、これから減税策を考えるのに、来年から防衛増税をやるのは国民に全く分かりづらい話だ」
自民の萩生田政調会長は20日、首相官邸で首相と面会した後、記者団にこう強調し、所得税増税も含めた防衛増税の来年実施見送りは既定路線だとの考えを示した。
防衛増税との関係に関しては、公明党の北側副代表も「整合性を持たせないといけない」と語っていた。
そもそも、所得税減税は、法改正が必要で実施に時間がかかるほか、税が給与から天引き徴収される会社員らには恩恵を実感しづらいとの問題点が指摘されている。萩生田氏も「効果はなかなか出てこない」と語ったこともある。
首相は18日、麻生副総裁と党四役との「6者会合」を開き、減税にも言及したが、出席者の一人は「慎重な意見が多かった」と振り返った。所得税減税については、政府・与党内で元々浮上していたのにもかかわらず、与党の経済対策提言では触れず、首相が指示する形となったことについても、自民の閣僚経験者は「引っ込めたり、出したりしているようで国民に分かりにくい」と苦言を呈した。
経済再生が課題となっていた1998年には、当時の橋本首相が所得税減税を含む2兆円の「特別減税」を実施したが、首相の発言が「恒久減税」に意欲を示したと受け取られて迷走。7月の参院選で惨敗して退陣を迫られた。
自民内では「税は鬼門だ」との見方が根強く、森山総務会長が「過去の検証結果もよく見ることだ」と15日に記者団に語ったのもこのためだ。
野党も批判
22日には衆院長崎4区と参院徳島・高知選挙区の両補欠選挙が投開票を控えていることから、立憲民主党の泉代表は20日、「茶番だ。減税を選挙目的に使っている」と党本部で記者団に語気を強めた。
日本維新の会の音喜多政調会長は記者会見で、「(与党の税制調査会で)年末に検討を始めるのでは、緊急の経済対策として明らかに遅すぎる」と述べた。国民民主党の榛葉幹事長は「期間限定では納税者はがっかりする。選挙にむしろマイナスでは」と語った。

 

● 岸田首相、政権浮揚へ「減税カード」=補選意識、自民に異論も 10/20
岸田文雄首相が所得税の減税に向け動きだした。22日投開票の衆参2補欠選挙を前に、「減税カード」を切ることで、物価高に伴う国民負担の軽減に取り組む姿勢をアピールする思惑がある。ただ、自民党幹部に効果を疑問視する向きもあり、党内議論が紛糾する可能性もある。
「『首相が言っているからそうなる』ではなく、党税調でしっかり議論したいと(首相に)申し上げた」。宮沢洋一税調会長は20日、首相から所得税を含めた減税措置の検討を指示された後、記者団にこう述べた。
発端は9月26日に経済対策の策定を首相が関係閣僚に指示した際、「税収増を国民に還元する」と発言したこと。政府は臨時国会召集日を10月20日とし、首相の所信表明演説も同日に行うスケジュールを描いた。
念頭にあったのは、首相の政権運営を左右する22日投開票の参院徳島・高知選挙区、衆院長崎4区の2補選。内閣支持率が低迷する中、「投開票日前に首相自ら『減税』を打ち出しアピールするのが狙いだった」と政府関係者は明かす。
一方、「減税」の具体的な中身については「ガソリン税か所得税かそれ以外なのか、官邸内でもはっきりしなかった」(経済官庁幹部)。首相の意図が明確にならない中、与党内では所得税減税への期待が先行。「所得税を減税し、(給与の)手取りを増やすのも非常に有効だ」(自民党の世耕弘成参院幹事長)などの声が相次いだ。
「今回はまずい」
所信表明演説は、野党の反発で23日にずれ込んだ。首相は自公両党への減税の検討指示を急きょ20日に設定。接戦が伝えられる補選をにらんだものだ。
だが、自民執行部には「既成事実化」した所得税減税に異論も上がる。複数の関係者によると、首相が18日に開いた麻生太郎副総裁と党四役による「6者会合」では、「なぜ所得減税なのか」「効果は薄い」との意見が出たという。
自公は来週前半にも税制調査会の会合をそれぞれ開き、議論を開始する。自民税調メンバーに内定しているベテランは、所得税減税について「低所得者への恩恵は低い」と批判的で、「税調内でも前向きな意見は少ない。今回はかなりまずいことになる」と早くも懸念を示した。
●秋本被告の汚職事件は氷山の一角=@10/20
「洋上風力発電事業をめぐる汚職事件で、東京地裁は先週末(9月28日)、東京地検特捜部に受託収賄と詐欺の罪で起訴された衆院議員、秋本真利被告(48)=自民党を離党=について、保釈請求を却下する決定をした。特捜部は、自民党再生可能エネルギー普及拡大議員連盟(通称・再エネ議連)の事務局長だった秋本被告だけで、洋上風力発電の入札ルール変更ができたのか、強い疑問を持っているとされる。特捜部が認定した賄賂総額は計7200万円。秋本被告は起訴内容を否認しているが、もし国民の電気代に上乗せされる再エネ賦課金が還流して、政治家らの懐を潤していたとすれば許されない。「再エネの闇」について、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志氏が緊急連載する。」
秋本議員が9月7日、受託収賄の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。洋上風力発電の入札制度をめぐって、風力発電会社「日本風力開発」の塚脇正幸社長(当時)から収賄し、その見返りに便宜を図ったという容疑である。
「再生可能エネルギーの切り札」として鳴り物入りで推進されてきた洋上風力発電の1回目の入札が2021年12月に行われた。このとき、圧倒的に安い価格を提示した三菱商事が3件すべてを落札した。
この「総取り」の事態を受けて、2回目の入札はすでに公示されていたにも関わらず、1年間延期された。また、入札方式が変更されて、単一の事業者が総取りできないようになったほか、価格以外に「事業開始までの迅速性」などの要件が強化された。
この制度変更は、日本風力開発など、三菱商事以外の事業者が落札できるようにするためだったとみられている。
一度公示された入札が延期されたと言うのも異常であるし、一度定められた入札制度がすぐに変更されるのも異常である。
この入札制度の変更にあたっては、秋本議員が塚脇社長から収賄し、その見返りとして国会で質問をするなどして、日本風力開発に有利な制度になるよう活動したのではないか、というのが容疑の概要である。
もちろん、まだ逮捕・起訴されただけなので、白黒がはっきりするには、これからの捜査や裁判を待たねばならない。
その一方で、秋本議員は自民党再エネ議連の事務局長を務めていたが、この議連には100人を超える議員が名を連ねている。この事件が秋本議員だけに留まるのか、他の国会議員にも波及して一大疑獄になるのか、今は分からない。
いずれにせよ、今回の事件の本質を見誤ってはいけない。これは、単なるモラルの問題にとどまるものではない。
1回目の入札では、入札制度の導入前ではほとんどの関係者が考えていなかったぐらい、三菱商事は圧倒的に安い価格を提示して落札した。それにも関わらず、この制度が変更されたことで、国民はもっと高価な風力発電を押し付けられることになった。
この構造には既視感がある。
11年の再エネ全量買取り制度の発足以来、強い政治的な影響力のもとで、事業者にとって極めて条件のよい制度が導入されるということが、再エネ政策では継続的に起きてきた。そのための負担は、すべて電気料金などのかたちで一般の国民に押し付けられた。
「政治主導」によって強引に推進されてきた再エネには、他にも問題が噴出している。本連載で述べてゆこう。今回の事件を契機として、来年度の第7次エネルギー基本計画においては抜本的見直しをすべきだ。
「洋上風力発電汚職事件 「脱原発」を掲げ洋上風力発電を推進してきた衆院議員、秋本真利被告に対し、事業参入を目指す日本風力開発前社長の塚脇正幸被告が多額の資金(特捜部が認定した賄賂総額は計7200万円)を提供したとされる。
東京地検特捜部は8月4日、東京・永田町の議員会館事務所などを家宅捜索。秋本被告は外務政務官を辞任し、翌5日に自民党を離党した。国会で同社を後押しするかのような質問をしており、特捜部は2人が共同で設立した競走馬の組合が賄賂の受け皿になったとみて捜査してきた。」
●大阪・関西万博の建設費「倍増」に国民の怒り爆発 10/20
いい加減、規模の縮小を決断したらどうなのか。2025年に開催予定の大阪・関西万博の会場建設費用が、当初発表の1,250億円から倍近い2,350億円にまで上振れすることが明らかになった。20日夕、万博の運営主体である日本国際博覧会協会が、西村康稔経済産業相、大阪府の吉村洋文知事、関西経済連合会の松本正義会長らが出席するオンライン会議で報告するという。このニュースが報道されるや、ネット上では国民の怒りが爆発。万博開催そのものを疑問視する声も多数上がる事態となっている。
3年前にも当初予定を600億増額するという「前科」も
誘致決定時の平成30年には1,250億円とされていた建設費だが、資材費高騰や施設計画の変更などのため、令和2年12月に当初予定を600億円上回る1,850億円へ増額。この際にも万博開催に対して懐疑的な意見が噴出したが、さらにその額に500億円もが上積みされることとなる。博覧会協会にはそんな「前科」があるだけに、今後も増額されるだろうという見方も強い。
ネット上には吉村知事への厳しい意見も
この報道を受け、ネットには「やりたい奴らが自費で補填しろよ」「得意のインパール作戦でまた玉砕するのか」「もう五輪も万博も日本開催なしって事でいいよ」といった書き込みが殺到。さらに「大阪に維新がなければ、そもそも存在しなかった負担」「吉村知事は税金は使わないとか言っていたのに、どんどん膨れ上がるな」との日本維新の会や吉村知事への批判や、「税金から建設費、運営費がゼネコン、政治家に流れるだけの催しなんて中止しろ!」といった政府与党やゼネコンとの癒着を厳しく非難する声が溢れている。
元明石市長で弁護士の泉房穂さんも痛烈批判
元明石市長で弁護士の泉房穂さんは、Xで「まだまだ増えそうな雲行きだ。国民のほとんどは、これ以上の負担にはNOだと思う。自見万博担当大臣、吉村知事、ここは思い切って『縮小』の政治決断をすべき時では?」と提言。この意見は正鵠を射ていることは確かなようで、20日午後の時点で数万の「いいね」がついている。
泉氏は10月19日公開のMAG2NEWSインタビューで、大阪万博について、―――「 経済も右肩下がりの状況ですから、大型イベントは時代に合っていないと思いますね。気分も盛り上がらないし、費用ばかりがふくらんで、そこに投入される税金は国民が負担することになる。しかも万博で作った箱は潰すしかない。作って潰すために税金を使うことになるのは分かっているじゃないですか。マスコミが一緒になって盛り上げようと感動ドラマを作ってますけど、大手メディアはすべて協賛スポンサー、つまり一味ですから。なので「必ず成功」と報道される。要はモノを作ってお金もらって、壊してお金もらうことが目的だから「万博を開催する」ことが彼らにとっての「成功」なんですよ。客が来るとか来ないとか、国民みんなが喜ぶとか関係ないわけです。」―――と批判している。
もはや国や吉村知事に残されている道は、コンサルタントの永江一石氏が自身のメルマガやブログで提唱している「食い倒れ万博」をアレンジし、世界一カネのかからない「青空万博」を選択する以外にない。
1970年の大阪万博では、未完成の建物をそのままパビリオンとした、横尾忠則氏のディレクションによる「せんい館」が高い評価を得た。
―――「 足場を組んだまま、その足場を凍結して、一気にこのパビリオンは未完のまま、実現にいたった。当時はいろんなところから「せんい館」は建築途上で予算がなくなって途中放置されたとか、「横尾にだまされたのだ」とか、さまざまな批判が集中したが、その後、美術界でプロセスアートがちょっとしたブームになり、万博の前年に出品したパリ青年ビエンナーレで、僕は完成作を否定した、そこに至るプロセスを3点の作品に分解して提示した未完作品によってグランプリを受けることになったが、せんい館の未完のプロセスをそのままコンセプトにした作品であった。」―――
今回、建設費が不足しているということであれば、同様のものを再現するのも一興ではないか。世界の注目を集めることは間違いない。
●交付金9党に78億円 総務省、今年3回目 10/20
総務省は20日、政党交付金78億8412万円を9党に交付した。毎年4、7、10、12月の4回に分けて支出されており、今年3回目。政党交付金制度に反対する共産党は受け取りに必要な届け出をしていない。各党への交付額は次の通り。
自民党39億7752万円、立憲民主党17億814万円、日本維新の会8億3786万円、公明党7億1747万円、国民民主党2億9331万円、れいわ新選組1億5492万円、政治家女子48党8360万円、社民党6504万円、参政党4623万円。 
●減税国会開幕!岸田内閣が不人気なのは岸田さんがフラフラしているから 10/20
首相のツルの一声
岸田文雄首相はどうやら所得税減税をするらしい。
一律で税額を差し引く定額減税などを年間数兆円の規模で数年間行うことになるようだ。来月まとめられる経済対策に盛り込まれることになる。
奇妙なのは与党両党が17日に政府に出した経済対策の提言には所得減税が盛り込まれていなかったことだ。だがその夜のぶら下がりで所得減税を実施する考えがあるか聞かれた首相は「大胆な取り組みに踏み込みたい」と述べ意欲を示した。
一体どうなっているのか。
先月26日、岸田氏は「物価高に苦しむ国民に、成長の成果である税収増を還元する」と明言した。これを受けて自民党からは、すでに挙げられていた法人税減税だけでなく、所得減税、さらに消費税減税まで求める声が出て、「減税解散」の期待も高まった。
与党の提言に所得減税が盛り込まれなかったのは、賃上げ減税や低所得家庭への給付の方が効果があるという政府与党の共通認識があり、官邸からも「所得減税は入れるな」という指示があったとも聞く。
だが首相の「ツルの一声」で所得減税は復活した。
「偽減税」と「増税メガネ」
ただ防衛費増額のために法人税、たばこ税とともに所得税も増税することを政府はすでに決めている。つまり減税か増税か一体どっちなんだという話になり、野党やメディアはここを攻めるだろう。
また岸田政権は少子化対策のために社会保険料の値上げを考えているのだが、日本維新の会は18日に発表した経済対策で保険料について、低所得者は半減、それ以外の人は3割減とするなかなか強烈な案を出した。
保険料の軽減の方が減税より時間もかからないし、給料明細などを見れば自分がいくら恩恵を受けるか一目でわかる。維新は臨時国会ではこれ一本でガンガン攻めてくるのではないか。
さらに消費税については、維新に国民民主党、共産党、さらに自民の若手までもが減税を求めている。
臨時国会は社会保険料を含めた「減税国会」となるだろう。減税をアピールする岸田首相に対し、野党側は「どうせ後から増税するんだろ」と批判し、「偽減税」さらに「増税メガネ」と攻め立てるのは今から目に見えるようだ。
直近の内閣支持率は、FNN・産経新聞が9月から3ポイント下落して36%となり、2年前の政権発足以来、過去最低となった。
だが36%はまだいい方で、読売が34%、共同も32%と過去最低、さらに朝日は29%、毎日は25%で、政権維持の「危険水域」と言われる20%台に入っている。さらに下がると年内解散どころか政権維持も困難になってしまう。
岸田氏は真面目な人なので防衛力強化や少子化対策のためには増税や社会保険料の値上げなど国民が嫌がることも決めてきた。だが「増税メガネ」などと批判されると真面目だからなのか、すぐに「減税します」と言ってしまう。このフラフラしているところが国民の信頼を得られない理由ではないのか。
立憲民主党の案が意外に良い
ところで野党の経済対策の中で「あれっ?」と思ったのが立憲民主党の案だ。与野党とも求めている「減税」には触れず、中間層世帯への3万円のインフレ手当、所得制限なしの1万5千円の児童手当、さらに奨学金の無利子化など「給付」が中心になっている。
これが実は「意外」と言っては大変失礼だが悪くない。時限的な所得減税は以前にも行われたが、効果はあまりなく混乱しただけだったと言われている。社会保険料の軽減や消費減税も、やるのはいいが元に戻すのが大変だ。弱い首相だと戻せない。
所得減税はこれから年末にかけて税調で決定し、来年度予算案に盛り込まれる。予算が成立するのは3月末で、実際の減税は6月頃になる。そんな時間がかかることをやるよりは、同じお金を使うなら、立憲の言う給付策の方がマシな気もする。これだと時限的な減税と違って後からもめないからだ。
岸田氏は減税を打ち出し、支持率が上がれば「減税解散」したいのだろう。だが現実には「減税国会」で野党からボコボコにされて、メディアからもいじめられると、解散などとてもできないかもしれない。
●「聞く力」が低迷させる岸田政権の支持率 10/20
ハマスによるテロで多くの一般人が惨殺されたことには心が痛む。その上で、いくらその報復のためとはいえ、イスラエルの軍隊がガザ地区のパレスチナ難民を同じ目に遭わせるというのは、人権重視の今の価値観に馴染まないというのが、国際社会の多くの人々の心情ではなかろうか。
だが、「テロを許してはならない」ことを忘れてはならない。その都度、テロリストを根絶やしにし、再発の芽を摘む必要がある。ハマスは住民を盾に使うし、偽旗工作も横行する。地上戦が始まればイスラエル非難の声が高まるだろう。が、ガザ住民が恨むべきはテロを起したハマスである。
ユダヤ教とキリスト教とイスラム教の聖地であるエルサレムがあるこの地域の問題の根は、紀元前に遡るほど深く、そこには民族と宗教という人類の根源的な問題が絡む。その種の問題には、寛大というか無関心というかは別として、深入りをしない日本人の理解を越えている。
ところがその日本で、ここ一年、テロと宗教問題が起きている。発端は昨年7月に安倍元首相の暗殺テロを起した犯人の供述とされる、旧統一教会(「教団」)が絡む出所不明のリークだった。それを機に、過去のことと思われていた「教団」問題が再燃し、連日TVメディアを中心に「教団」叩きが行われた。
そこに「聞く力」を発揮した岸田文雄は昨年8月、総裁として党議員に「教団」とその関連団体との関係を断たせ、首相としては、「教団」との過去の関係を理由に閣僚7人を更迭した。2ヵ月後には宗教法人格を剝奪すべく、文化庁をして「教団」に質問権を行使させ、東京地裁に解散命令を請求させた。
筆者は宗教には学問的な関心しか持ち合わせていないので、「教団」被害者とされる方の話を聞けば同情するし、「教団」の言い分を聞けば、それもそうだなあと思う。つまり、「教団」の解散問題は、裁判所が宗教法人法に則って判断すれば良いという立場なので、今後の成り行きにも余り関心がない。
が、岸田総理総裁が、「教団」が宗教法人法に基づく法人格を保持していた昨年8月の時点で、自党議員に「教団」との関係を断たせ、閣僚を「教団」との関係を理由に更迭するなどは、憲法に謳われた思想信条の自由や信教の自由を、法治国家の指導者が侵す行為だと考えている。
管見の限りだが、この問題で筆者と同じ様に岸田総理総裁のこうした行動を法に反すると断じているのは、ひとり三浦小太郎氏だけのようだ。そこで筆者は先ごろ、月に一二度会って話す近所の友人との話題にこの問題を上らせてみた。
団塊の世代真っただ中に生まれた彼は、学生運動も経験した左翼からの転向保守、さらに台湾好きなので話が合う。筆者のブログも読んでくれ、時に褒めてもくれるが、それは論旨というよりも、こまめに法律や条約や原著に当たる姿勢や、文章の書き回しであることが多い。
滅多に白熱することのない二人の居酒屋談義だが、この問題では少し熱くなった。筆者は先述の様に、「教団」解散云々よりも、法を外れた岸田のやり方を問題視した。が、年齢相応に「教団」の来し方を知る彼は、心情的には解散すべきとし、筆者の岸田不法論にも異論を述べた。
その主旨は、自民党が私党ならば勿論のこと、公党であっても、主義主張を同じくする者の集まりであり、その総裁が自党議員に一宗教団体との関係を断てと指示したところで、議員が選らんだ総裁である以上、否なら従わなければ良いし、あるいは仲間を募って総裁降ろしに動けば良いというもの。
首相としても、国会議員の過半数の指名で選ばれる総理大臣には、国務大臣を任命することも、任意に罷免することもできる(憲法第68条)。従って、総理の意に沿わない大臣を辞めさせたところで、傍から何かをいうのは良いが、それで結果が変わる訳ではないという理屈だ。
その時はすでに紹興酒が1本空いていたので、彼もこれらを理屈立てて話した訳ではない(依って、上記は筆者が彼の言い分を忖度して書き足したことを少なからず含む)。そう言われて筆者はハタと考え込んでしまったが、そのうち話題も変わって、お開きと相成った。
今こうして整理してみても、彼の言い分は理に適っているが、どうも釈然としない。さらに良く考えて、釈然としない原因に辿り着いた。それは、理不尽な指示をした岸田も岸田なら、それに唯々諾々と従った議員も議員で、彼らが岸田に盲従したのも、世間の猛烈な教団叩きのせいだろう、と。
政府が「教団」の解散命令を請求したことの是非を問う世論調査では、84%が評価したそうだ。「猿は木から落ちも猿だが、代議士が落ちればただの人」といわれる通り、議員が世論を気にするのは当然だから、世論調査を見る限り、岸田も自民議員も国民の声を「聞く力」を発揮したことになる。
が、次の様な設問ならどういう結果になったろうか。
即ち、「岸田総理総裁は宗教法人格を保持している宗教団体とその関連団体との関係を理由に、閣僚を更迭し、自党議員にも関係を断たせた。これは憲法に謳われた思想信条や信教の自由を侵していると思うか否か」。
筆者は、この種のことはハマスとイスラエルの問題と同様に、先ずは一般論、あるいは原理原則や法律の側面から考える必要があると思う。然る後に、目の前で起きていることや個別具体的なことに立ち戻って、再考してみるのだ。さもないと感情に流され、事の本質を見失いがちだ。
岸信介はこう言った。
「国会の周りはデモでナニしていたけれども、後楽園球場はでは数万の人が入って野球を楽しんでいる。大衆に追随し、大衆に引きずり回される政治が民主政治とは思わない。民衆の二三歩前に立って、民衆を率い民衆と共に歩むのが本当の民主政治のリーダーシップだ。」
安保闘争は、その後もごく一部の活動家に引き継がれはしたものの、今となっては日米同盟抜きには日本の安全保障が成り立たないことを、国民の多くが当たり前に知っている。岸田首相に欠けているのは、岸のこの確固たる信念と二三歩前に立って国民を率いるリーダーシップではなかろうか。
「ポピュリズム」という語がある。「大衆迎合」などと訳される。が、岸田首相には、国民は国の政(まつりごと)を専門家である政治家に任せていることを忘れてもらっては困る。「聞く力」とか言って頼って来られても、国民は困るのだ。
多くの国民が今、この政権の「聞く力」に名を借りた「ポピュリズム体質」の「頼りなさ」と「危うさ」とを感じているのではなかろうか。筆者はそれこそが今、岸田政権の支持率が秋の日さながら釣瓶落としとなっている理由だと思う。自民党は総裁を変えるべきだろう。
●少子化の本質とトレンド反転のために必要な施策 10/20
我が国はいわゆる「1.57ショック(‘89)」で1990年に少子化を問題と認識した。以来「エンゼルプラン」(’94)などと銘打ち対策を講じてはきた。
しかし30年経っても「合計特殊出生率2.07を回復できない」など、少子化トレンドは収束する気配を見せない。それどころか2022年には「合計特殊出生率1.26」や「出生数77万人」など過去最低の事態を迎え、逆に少子化が加速しそうな気配すら漂う。だがそれは当然である。
「少子化」とは単なる「問題」ではなく「成熟国家の必然」であり、「老衰と死」とでも形容すべき「国家衰退の宿命」だからである。
言い換えると、「集落人口が半分になる見通しで半数近くが老人になろうかというのに『子育て世代の負担を少し軽減する』策で事足りるとし、より少なくなってゆく若い女性(潜在的母親世代)に「もっと都会(社会)に出て活躍せよ」というようなものである。
認識があまりに浅いのだから核心をつく対応ができないのは必然である。なぜならそれは「問題の読み間違い」であり、誤読に従って「的外れな解決策を立案・遂行」してしまうからである。
上述の主張を支える各論や根拠は膨大になるため、別稿という形で追って示して行く。本稿は「サマリー」として少子化の本質と対策を打ち出すが、その意味を理解できる最低限度の説明は付しておく。
現状認識 「少子化」とは「晩婚化・非婚化」
「少子化」とは「晩婚化・非婚化」であることは、直感的に想像し易く時系列の推移からも一見当然のことのように思えるが、本当にそうなのだろうか。筆者はそこから疑って検証した。
結論としては、「相関関係も因果関係もある」といえる。
グラフ1は、70年にわたるわが国の長期的な「初婚年齢」と「合計特殊出生率」の関係である。「初婚年齢」を横軸に、「合計特殊出生率」を縦軸にして散布図化を形成し相関関係の有無を調べた。(横軸は時系列でなないが順調に高年齢化しているので疑似的に時間軸のように見えるが違うので誤読しないよう注意が必要だ。)
この検証から下記の結論を得た。
日本には、「結婚が1歳遅くなると合計特殊出生率が0.16減少する」という逆相関の関係がある。
ただし、「相関関係があるならば、因果関係もある」と断定することは真ではない。そこで次は、困難な作業で限界もあるが因果関係について検証した。結果を整理したのが図2である。
およそ半世紀前 (昭和50年)と現在を比較した。
初婚の平均年齢は5歳ほど遅くなり確かに晩婚化した。
具体的に見て行くと、半世紀前には第三子を産み終わる年齢(30歳)で今は第一子を出産している。その一方、生物としての実質的な妊娠可能期間(新家族を形成する終端期)はほぼ変わらないので、タイトな間隔で産むことを強いられている。
ただし平均で考える限界があるので、実相とはある程度の乖離があることに注意が必要だ。実際に第二子と第三子を1.1年間隔で産むケースは少数であり、「早めに結婚した世帯で第三子を儲けている一方、遅めに結婚した世帯では第三子は儲けていない」というのが実相に近いだろう。
このことはつまり、「晩婚化によって第三子を儲ける機会は減少し、世帯当たり出生数の減少につながっている」という現代の状況を浮き彫りにしていると言える。
※ 一般的に「再生産年齢」という言葉は「出産可能年齢という意味で15歳〜49歳」の階級を指す。「再生産」は筆者の造語ではなく“reproductive”の訳語と考えられるが言葉狩りに会うリスクがある。その憂き目を見ないために「リプロダクティブ」または「母親母集団」という単語を使用する。
現状認識 母親母集団さえ高年齢化
日本全体が高齢化しているのは周知の事実だが、「リプロダクティブ世代」もまた高年齢化している。グラフ2は、「母親母集団(15歳から49歳の女性)」について、人数と「平均年齢」に関する1920年から2020年までの時系列推移である。年齢で約4歳高年齢化し、人数規模も20%ほど最盛期(90年)から減少している。
これは、そもそもの母集団が高年齢化しているために、基礎的条件としては出生数が減少する環境となっていることを示す。つまり、仮に初婚年齢や社会の風潮が最盛期と同じになったとしても、「出生数はより少なく、出生率はより低くなってしまう」ことを示している。
次にグラフ3は、高年齢化かつ規模縮小の状況が一目瞭然となるような人口ピラミッドの年代比較(1970年⇒2020年)である。ここでも上述のような状況が一目瞭然となっている。
現状認識の最後に、有配偶率の低下状況を確認する。
下記の「グラフ 階級別有配偶率推移(1930-2020)」は、年齢階級(5歳)ごとの1930年から2020年の有配偶率の推移である。
1970年(青実線)には「25〜29歳」での有配偶率が80%を超え、「30〜34歳」では89.9%となり、ほぼ「皆婚」に近い状態である。このことは、リプロダクティブ世代は最適齢期に8割から9割が参加していることを示している。逆算すると、平均で2.3〜2.6人のこどもを儲けることで、リプロダクティブ世代全体では合計特殊出生率2.07を達成できるということである。
これに対して2020年では「30〜34歳」でも57.4%なので、平均で3.6人の子供をもうけないと全体で2.07に到達しない。この状態は実現不可能である。
結論として「合計特殊出生率2.07を実現するためには、リプロダクティブ世代(特に25〜29歳)の有配偶率を上げる」ことが必須である。(シミュレーションは別稿で詳述したい。)
具体的政策提言
ここで具体的な内容を詳述するのは字数から考えて不可能なので、「体質転換のための長期的施策」と「喫緊の課題に対応するための短期的施策」に分けて項目と概要を列挙する。詳細は別稿であらためて論じたい。
長期的施策(体質転換) テーマ:国の作り直し
   憲法改正:「世代継承(リプロダクト)努力義務」条文の新設
日本国憲法では第三章において、国民に対し「教育(第二十六条)」「勤労(第二十七条)」「納税(第三十条)」の義務をそれぞれ規定している。
しかしこれには、「子供は、わが国の規模を維持するために十分な人数が生まれる」という暗黙の前提条件があった。憲法が制定された時代(1946〜47年)背景に鑑みて、「わざわざ明文化する必要がないくらい当たり前の共通理解」だったのである(グラフ参照)。例えば憲法が施行された1947年の合計特殊出生率は4.32だった。
そこで憲法に「人口政策」として「次世代を儲ける努力義務」を明記する。もちろん憲法に努力義務を条文として明記しても、個人に強制するものでも罰するものでもない。これは国として各個人の「家族形成」を歓迎し支援する機運を醸成することが目的である。
   組織改革:「人口安全保障省」創設と機能・人員・予算の集約
「厚生労働省・文部科学省から少子化問題に関連する事業と予算を集約し『人口安全保障省(仮)』を創設する。また「少子化“担当”大臣」ではなく「人口安全保障大臣」を設置したい。
そして、この部署の初代大臣には総理大臣級の大物・実力政治家に創業してもらうことが必須であり、それには例えば萩生田光一政調会長のような突破力を持った人物に担当していただくことが必須である。
   教育改革:「義務教育の3年前倒し・1年延長」と「大学卒業20歳への前倒し」
義務教育を3年前倒しし、更に1年延長する。これにより現行9年間(6歳〜15歳)の義務教育期間を13年間(3歳〜16歳)に延長する。合わせてカリキュラムの組み直しを行い、高校卒業と大学入学を16歳代とし、大学の教育期間を16歳〜20歳とする。
このことで大学卒業年齢を今より2歳前倒しすることが可能になり、就職などのライフイベントを総じて2歳早めることが可能となる。
短期的施策(対症療法) テーマ:リプロダクティブ世代(18〜35歳)の結婚支援
   早婚化推進政策
「晩婚化傾向を早婚化傾向」にトレンド転換を促す。具体的には18歳〜20代前半での結婚に対して、支援金や給付金を設定するなどの支援策を充実させたい。また、若年世帯に対する第一子以降の出産についても同様の支援策を用意する。
   非婚化抑制策
「いつかは結婚する」つもりでいながら、積極的には動けない層の結婚を促進する策を導入する。具体的には企業内支援事業に対する補助金設定や、地域活動への支援金などを設定する。
   子育て支援の多子化推進策
「ミルク支援金」や「第二子第三子のインターバル短期化」奨励金など、多子化を促進する支援制度を充実させる。
   子育て世帯保護者側の再学習再就職支援
早期に子育てを開始した世代に対して、子育ての負担が下がったタイミング(たとえば子供の中学卒業など)で親世代自身の再教育を支援する制度を整える。更に再教育期間から一気通貫でリャリア形成支援なども充実させる。
   女性支援体制の全面的な作り直し
現行の「男女共同参画」的な政策を一旦取り下げ、新概念として例えば「男女共生」的な社会の取り組みを創設する。具体的には「20代で出産した女性」への支援強化など、「多子化」を担う女性への支援を手厚くする。
むすび
国柄の作り直しや従来政策からの転換のような大事は、普通の政治家にとっては「火中の栗を拾う」行為だろう。それは諸先輩が政治家として手掛けてきた事業(の功績)を否定することにもなる“損な役割”だからである。
例えば小泉純一郎元総理は、総理総裁として大先輩である中曽根康弘元総理に議員としての引導を渡したが、そのお釣りには大変なものがあっただろう。「国柄の作り直し」のような改革断行には、それと同じくらい胆力のある政治家が必要である。
また、過去の少子化問題に関する分析は、どこかで原因帰属が狂ってしまっている。これが30年にわたり「実効性がない解決策」が出続ける日本の構造的な原因になったと思われるが、それらの分析は別稿で示したい。
●岸田内閣の女性登用は? 「外面だけ」「政治家向きの女性育成を」 10/20
岸田内閣の女性登用を評価する? それとも、評価しない?
朝日新聞フォーラム面が、「副大臣・政務官女性ゼロ」というテーマでネットを通じてアンケートを募っている。
岸田文雄内閣は、9月の内閣改造で、過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を起用した。その一方で、2001年から導入された副大臣・政務官では、初めて「女性ゼロ」だった。
男女格差をはかるジェンダー・ギャップ指数(2023年)では、日本は146カ国のうち125位で、政治分野では138位と特に低迷している。国政における女性登用について、国内外から注目されている状況だ。
アンケートの自由回答では、次のような意見が寄せられている。
「外側だけ女性登用をうたって、実質的には女性登用していないということを証明してしまったよう。あまりにも外面だけ、中身の伴わない態度だということが明白になった」(岐阜、女性、60代)
「もうちょっと、政治家向きの女性をリクルートする努力が欲しい。二世議員や芸能人出身者ではいまひとつだ」(京都、男性、60代)
「単に女性だから良いとは思わないが、今回はちょっとひどい。ただ、クオータ制はやってみても良いのでは?」(長野、男性、60代)
「現在の日本は女性の労働力が必要であることは明確です。まずは全政策の策定のベースに、男女平等と家父長制の廃止があるべきです。我が国の政策策定と、今後政界のリーダーとなっていく人物の育成という意味から、副大臣と政務官に女性がゼロというのは、全く理解ができません」(兵庫、女性、60代)
●中東情勢緊迫で原油相場は1バレル=150ドルへ 日本企業は困惑 10/20
先週、宗教学の某大学教授にイスラエルとハマスの戦闘についての私見を聞いた。
同氏いわく「イスラエルのユダヤ人は『選民思想』のもと2000年前にパレスチナはわれわれの国土だったと主張し、パレスチナ人を追い出した。それは、いまロシアが歴史的にクリミア半島やウクライナ東部はロシア領だとして、ウクライナから独立させたのと同じであり、欧米がロシアをテロと批判しているが、イスラエルも同じことをパレスチナでしてきた」と。
1967年6月の第3次中東戦争で欧米の支援を受けたイスラエルが、アラブ諸国と戦い勝利。エジプトからガザ地区、シナイ半島、ヨルダンから東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区、シリアからゴラン高原を奪い占領。いまで言う「現状の変更」である。
国連人権高等弁務官事務所のターク高等弁務官は10月10日、イスラエルが宣言したガザ地区の「完全包囲」について、「生存に不可欠な物資を奪うことにより市民の生命を危険にさらす完全包囲は、国際人道法で禁止されている」と明言した。
それでもバイデン米大統領は、2024年の大統領選挙に向け、ユダヤ人社会の支援を取り付けたいのか、いち早くイスラエル支援を表明した。14日にオースティン国防長官は空母打撃群を東地中海に追加派遣するよう指示。イランやレバノンのヒズボラなどパレスチナ支援勢力を抑止、すなわち参戦の構えだ。
ブルームバーグ・エコノミクスは、ハマスとイスラエルとの軍事衝突が大幅にエスカレートすれば、ハマスに武器や資金を提供しているイランがイスラエルと直接衝突するシナリオも排除できず、そのような事態となった場合、原油相場(10月16日時点で1バレル=87ドル前後)は1バレル=150ドルに急騰し、24年の世界GDP伸び率は1.7%に落ち込む可能性があると推計した。
他方、ロシアのラブロフ外相は9日、モスクワを訪問したアラブ連盟(21カ国とパレスチナ解放機構)のアブルゲイト事務局長と会談し、イスラエルとガザ地区における「流血を阻止する」ため、ロシア政府と同連盟が協力していくと表明。
ロシアとアラブ連盟は「中東における恒久的な平和の確立に意欲のある国々」とも連携していく用意があると述べた。ウクライナ・ロシア戦争でもG7とBRICS加盟国・加盟申請国との温度差が目立ったが、イスラエル・ハマス戦争でも同じ構図となりそうだ。
わが国では10月下旬から上場企業の9月中間決算発表が本格化する。各社は下期計画の策定に困惑、投資家も運用ポートフォリオ・インシュアランスを強化する。先物やオプション取引でのリスクヘッジに不慣れな個人投資家はインデックスETFの空売りを考えるだろう。投資リスク許容度は、日銀介入を念頭にインデックスETFの信用取り組みに反映されよう。まさに株式投資に元本保証はない。
●「3度も選挙応援に行っておいて」小池都知事が風邪で公務キャンセル… 10/20
東京都の小池百合子知事が風邪のため、10月20日の定例会見をキャンセルした。翌21日に予定されていたイベント出演なども欠席する。
小池知事が公務を休むのは、2023年5月以来。東京五輪・パラリンピックや新型コロナウイルス対応などに追われた2021年には、6月と10月に入院している。理由はいずれも「疲労のため」だった。
「2021年に2度の入院をした際には重病説も飛び交った小池氏ですが、その後は至って元気です。この10月に入ってからは、都議会などの公務をこなしているほか、15日に投票がおこなわれた東京都議補選の東京ファーストの会公認候補のため、3度も立川に行き応援演説をおこなっています。
元気とはいえ、もう71歳。さすがに疲れが出たのでは。以前はTwitter(現X)やInstagramなど、SNSで積極的に発信していましたが、2023年になってから一度も更新されていないことも気になります」(週刊誌記者)
小池氏が応援した候補は初当選を果たしたものの、SNSには
《選挙ファースト 選挙が命の知事は、都議補選で立川に3度も応援に行き体力・気力を使い果たしたのか?その結果、公務はキャンセルですか?》と、皮肉る声も。
「立川市の東京都議補選の結果、都議会では小池氏が特別顧問を務める都民ファーストの会と自民党の会派人数が並び、第1会派へと返り咲きました。所属議員に不祥事や造反が相次ぐなど、都ファに以前ほどの勢いはないとはいえ、小池氏の神通力はまだまだ通じるということかもしれません。
かつては国政復帰を狙う動きもあった小池氏ですが、年齢的にもそれはあきらめ、いまは2024年7月予定の都知事選に出馬するとみられています。2016年は44%、2020年には60%と、圧倒的な得票率を誇るだけに、出馬すれば3選の可能性は高い。
2020年には独自候補擁立をあきらめた自民党ですが、都知事選まで1年を切ったいまも、動きが見えません。よほど強力な候補を立てなければ小池氏には勝てないわけで、慎重になるのも当然でしょう」(同前)
そんななか注目を集めているのが、作家の百田尚樹氏が立ち上げた政治団体『日本保守党』だ。9月30日から党員募集を始めたばかりだが、10月20日時点で党員は5万人を超えた。Xの公式アカウントのフォロワー数は31.7万で、自民党(広報)の25.1万、立憲民主党の18.8万をはるかに上回っている。
10月18日には、結党後初の街頭演説が名古屋駅前で開かれ、SNSでも驚異的な人数が集まったと話題になっている。
そんな日本保守党が、次の都知事選に目玉候補を送り込むのでは――との見方もある。10月18日の「東スポWEB」は、百田氏が党の事務総長を務める有田香氏を都知事選に送り込むことを示唆、と報じている。有本氏は著書「『小池劇場』が日本を滅ぼす」などで、小池都政を厳しく非難してきたジャーナリストだ。
1年後、東京は、「小池劇場」はどうなっているのだろうか。
●途上国への支援「3500万円まったく効果なし」に批判殺到 10/20
政府開発援助(ODA)の一環として、途上国に学校などの整備資金を無償提供する事業で、国費約3500万円の効果がまったく発揮されていないことが、10月19日、会計検査院の指摘でわかった。
2022年度の無償資金協力は2745億円。このうち検査院が29事業(約125億円)について調べたところ、2018〜2020年度に計約3500万円を贈与したフィジーの小学校3校の工事が完成しないまま中断していた。
施工業者と連絡が取れなくなったり、予定になかったホールを建設されたりしていたという。現地の大使館は進捗状況を把握しておらず、検査院は外務省に対して、資金協力の効果が十分に現れるよう、事業の進捗を確認する措置を徹底するよう求めた。
「ODAをめぐっては、2017〜2019年に日本がミャンマーに無償供与した3隻の旅客船のうち2隻が、クーデターを起こしたミャンマー国軍により軍事利用されていたことが判明しています。旅客船は本来、通勤や通学に活用してもらうはずのものでした。
この問題は、国際人権団体の『ヒューマン・ライツ・ウォッチ』が2022年10月のレポートで発表。外務省は事実確認に半年以上を要し、チェック機能の甘さを露呈しました。
政府は6月、8年ぶりに、ODAの基本方針となる『開発協力大綱』を改定。ODAを『外交の最重要ツールの一つ』と位置づけ、相手国の要請を待たない『オファー型協力』を強化するとしています。
ただ、無償での資金協力や供与がどれだけの効果を上げたのか、チェックする機能が甘ければ、無駄なODAを繰り返すことになりかねません」(政治担当記者)
今回、無償資金提供した約3500万円が「まったく効果なし」と指摘されたことに、SNSでは批判的な声が多くあがった。
《責任追及も賠償責任も問われないから岸田首相はあちこちにホイホイ拠出してるけど本当に国益に叶ってるのか?》《無駄金。我らの汗と涙の税金》《管理能力も考慮せずにただバラまいてるだけじゃん。それなら国民にバラまくほうがまだマシ》
岸田文雄政権の海外資金援助には、「ばら撒き」という批判が根強い。援助額を高らかに誇るだけでなく、その使途と効果を明確にしてほしいものだ。
●「ドケチメガネ」? ガザへ1000万ドル支援即決も、邦人退避代「3万円請求」 10/20
イスラム主義組織ハマスとイスラエルの軍事衝突により、ガザ地区の緊迫の度合いは日に日に増している。日本政府も人道危機に対応し、上川陽子外相は10月17日、ガザ地区に対し、政府として水や食料など1000万ドル(約15億円)の人道支援を行うことを発表した。ただ、現地からチャーター便で帰国する邦人に対しては「1人3万円」の負担を求めたことに批判が殺到。自民党内からは「さらに対応を誤ると、政権の命運にもかかわる」と不安の声も漏れる。
G7議長国のリーダーシップを意識?
ガザ地区の情勢緊迫化を受けて、岸田文雄首相も連日、EUのフォンデアライエン欧州委員長やエジプトのシシ大統領など周辺国首脳と電話会談を行うなど、対応に追われている。
全国紙政治部記者は、首相の対応をこうみる。
「連日、外務省幹部と面会するなど、刻一刻と変わる情勢に対応していますが、外相も長く務めた『外交の岸田』を強く意識し、G7議長国としてのリーダーシップをアピールしたい気持ちもあるのでしょう」
岸田首相はこれまでも外交において、国内外へのアピールを意識してきた。3月には、ウクライナを電撃的に訪問し、ゼレンスキー大統領と会談。
「岸田首相以外のG7各国首脳はすでにウクライナを訪問していた。首相の地元・広島で開催されるG7前に、なんとしても訪問すべく極秘裏に計画を進め、実行しました。
親イスラエルの米国・バイデン大統領やドイツのショルツ首相はすでにイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相と会談しています。こうした他国の対応も意識しつつ、自身の存在感をアピールしていく考えでしょう。
責任の所在は不明ながらも、ガザの病院で大規模な爆発が起きるなど、当地の死傷者は増える一方で、イスラエルへの国際的批判も強まっています。日本の立ち位置は難しいところですが、ガザへの人道支援ならば即決しやすく、アピールにもなったといえます」(同)
「退避する邦人からは3万円」に自民党内からも批判
一方、現地に滞在する邦人への対応をめぐっては、批判の声も上がっている。
日本政府のテルアビブ発チャーター機は日本時間14日深夜、邦人8人を乗せ、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイに向けて出発した。だが、政府が搭乗者に対して、ひとりあたり3万円を請求していたことが報じられると、SNS上などで批判が噴出。
自民党内からも「政府の対応が後手後手に回っているのではないか。生命最優先なのだから、3万円を請求するとは情けない」(中堅議員)などと疑問の声が上がっている。
こうした指摘に松野博一官房長官は16日の記者会見で「航空券を購入して出国した日本人も多くいることを踏まえ、総合的な判断として運賃負担をいただくこととした。アメリカやイギリスなども原則として搭乗者に一定の費用負担を求める方針にしている」などと説明。
ただ、韓国は日本のチャーター機よりも早く、かつ51人の日本人も含め無料で搭乗させただけに、全国紙政治部記者は「韓国の対応と比較しても、日本の対応の『ケチさ』が際立ってしまった」とあきれる。
これまでも、外国に滞在中の邦人の緊急帰国をめぐって、渡航費を請求した対応が批判を浴びたケースはあった。
2020年、新型コロナウイルスの感染が広まり、封鎖された中国・武漢に滞在していた邦人を帰国させる際のチャーター便は当初、搭乗者に対して8万円を請求する予定だった。しかし、二階俊博幹事長(当時)が「突然の災難。惜しんでばかりいてもしょうがない」と安倍政権の対応を疑問視。党内外から批判の声が相次ぎ、結局、帰国費用は政府が負担することとなった。
「武漢からのチャーター便も今回も、国民の命を守るための手立て。その際にお金をとるようでは、政権の“国民を守る本気度”が疑われてしまいます」(全国紙政治部記者)
支持率低迷で、対応誤れば大ピンチ?
今回の軍事衝突の対応次第では、このところ低支持率にあえぐ岸田政権がさらにピンチに陥る可能性もある。
「3万円請求」の批判が沸き起こった直後の16日には、朝日新聞の世論調査で内閣支持率が過去最低の29%となるなど、複数の世論調査で「過去最低」と報じられた。
首相は「一喜一憂しない」と語るが、自民党内には動揺が広がっている。
「物価高への対応の遅れが響いているが、中東情勢の緊迫化でさらに経済の先行きの不透明さは増す。国内外への存在感アピールも大事だが、邦人の安全確保に加え、足元の国内の経済対策もしっかりしておかないと、政権への逆風はさらに強まってしまう」(自民党関係者)
折しも、今月22日には衆参2補選が控え、自民候補は接戦ないしは劣勢となっている。2補選ともに敗北すれば首相の求心力は低下し、衆院解散も難しくなるとの見方が永田町には根強い。さらに首相がめざす来年秋の総裁選での再選にも黄信号がともる。
ガザ地区の情勢緊迫化を受けた邦人保護をめぐっては、「3万円請求」への批判も意識して、イスラエルに滞在する邦人を今週後半にも自衛隊機で退避させる際には費用負担を求めない方向となった。
「自身の政権を維持することが第一の首相だから、今後も、支持率が下がらないよう、そして国内外へのアピールにもなるよう、ガザ情勢に対応していくだろう」(同)
今回の「3万円請求」にネット上からは“ドケチメガネ”の声もあがっている。「増税メガネ」から派生する”メガネ大喜利“を断ち切るためか、期限付き所得税減税の検討を含め、各局面で岸田首相の必死のアピールは続く。
●立憲・安住氏「増税隠しのための減税」と岸田首相の所得減税検討を批判 10/20
立憲民主党の安住国対委員長は20日、臨時国会開会にあたっての記者団の取材に対し、物価高対策などをめぐる政府の対応を「増税隠しのための減税」と批判した。
安住氏は、岸田首相が所得税を念頭においた減税を検討していることについて、「残念ながらサプライズ感も何もない」と述べた。さらに「所得税減税というのは実行に移すとなっても、相当な時間を要する」と指摘した上で、「給付の方がはるかに早いし、はるかに庶民の皆さんの懐に直接物価高分が届くということからいうと、政策選択を間違えているのではないか」と批判した。
そして今後、防衛費増額や少子化対策の財源として増税が行われるとの見方を示し、「所得税の減税は増税隠しのための減税なんじゃないか」として、国会論戦で追及する考えを強調した。
また、岸田内閣の物価高対策や、内閣改造から臨時国会まで1カ月以上が経過したことなどについて、「全てにわたってスピード感のない内閣だ。全てが後手後手の政権だ」と批判した。
●臨時国会召集、岸田首相「変化をチャンスに変えていく」 10/20
第212臨時国会が20日、召集された。第2次岸田再改造内閣発足後、与野党による初めての本格的な論戦の場となる。政府・与党は、経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案の成立に全力を挙げる。
岸田首相は20日午前、「経済対策、物価高対策などについて与野党と活発に議論を深め、岸田政権がどのように変化をチャンスに変え、そのチャンスを力に変えようとしているかを国民に丁寧に説明していく」と語った。首相官邸で記者団の質問に答えた。首相は同日午後、期限付きの所得税減税を検討するよう与党に指示する方針だ。
会期は12月13日までの55日間。衆院は10月20日午後の本会議で細田博之議長の辞任を許可し、後任に自民党が推す額賀福志郎・元財務相を選出する予定だ。天皇陛下をお迎えして開会式も行われる。
首相の所信表明演説は23日、与野党の代表質問は24〜26日に衆参両院で実施する。
臨時国会では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の高額献金を巡る被害救済や、閣僚の「政治とカネ」を巡る問題などもテーマとなる見通しだ。
●物価高対策、“急きょ浮上”所得税減税など問われる…臨時国会召集 10/20
物価高対策や急きょ浮上した所得税の減税が問われることになる、臨時国会が召集されました。前野全範記者が中継。
突如、浮上した所得税の減税について、首相側近も「勝手にバタバタして傷口を広げている」と指摘するなど、政権に混乱の兆しも見える中、国会が始まります。
岸田首相「岸田政権がどのような変化をチャンスに変えようとしているか、そしてそのチャンスを力に変えようとしているのか、丁寧に説明をしていく。こうした国会にしたい」
臨時国会で岸田首相は、物価高対策になる経済対策を打ち出し、裏づけとなる補正予算案の速やかな成立を図る方針です。また、20日午後には期限付きの所得税減税を検討するよう与党に指示します。ただ、所得税減税には即効性がなく、ある自民党幹部も「総理が増税メガネ批判を気にし過ぎておかしなことになっている」と首をかしげています。
立憲民主党・泉代表「たまりにたまった国民からいただいた思い、苦しみ、痛みを、ぜひこの国会で皆さんと一緒にぶつけたいと」
一方、野党側は、政権が打ち出した防衛「増税」と所得税「減税」は整合性がとれるのか、追及していく方針です。
減税をめぐって、自民党内からでさえ疑問の声が上がる中、首相の政権運営が問われる、厳しい国会になりそうです。 

 

●首相、期限付き所得減税の検討指示へ 10/19
岸田文雄首相は19日、税収増を国民に還元するため、期限付きの所得税減税を検討する方向で調整に入った。20日に自民党の萩生田光一、公明党の高木陽介両政調会長らと官邸で会談し、自ら指示を出す意向だ。複数の政府関係者が明らかにした。
●小沢一郎、岸田首相による期限付き所得税減税検討指示を「保身」とばっさり 10/19
立憲民主党の小沢一郎衆院議員が19日、岸田首相による期限付きの所得税減税の検討指示のニュースのリンクを添え、X(旧ツイッター)を更新。首相を「この人」呼ばわりした上で「保身」と施策をぶった切った。
「期限付き。」と書き出して「不人気に慌てて碌に議論もなく決めるから筋悪になり、逆に事態を悪化させる。結局、この人物は国民の生活ではなく自分の保身と目先の解散総選挙のことしか考えていない。政治家は先を見ないといけない」と批判を展開した。
コメント欄は「期限付き? またいつものやってるフリ…」「人間ここまで信用失うともう何やってもダメでしょうね。期限付きでみんな『やっぱりな』とか思ってそう。もうバレバレ」と政権への失望感たっぷり。さらに「減税メガネと呼ばれたいのかな」と、岸田首相のネット上の蔑称「増税メガネ」を踏まえたようなコメントもあった。 
●岸田政権、還元強調も負担増論議に影 経済対策10月中に取りまとめ 10/19
政府・与党が10月中に経済対策を取りまとめる。岸田文雄首相が「税収増の還元」を強調したことで物価高対策としての現金給付や「減税」の扱いが注目される。選挙対策の色合いが濃い政策が前面に出ることで、年末の少子化対策財源や防衛増税など負担増論議に影響しそうだ。
9月末の岸田文雄首相の指示を受け、政府・与党が10月末の経済対策取りまとめへ作業を進めている。自民、公明両党の提言も踏まえ政府は裏付けとなる2023年度補正予算案を編成し、10月20日召集の臨時国会での成立を目指す。
対策は(1)「物価高対策」、(2)「持続的賃上げ、所得向上と地方の成長」、(3)「国内投資促進」、(4)「人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革推進」、(5)「国土強靱(きょうじん)化、防災・減災など安全・安心の確保」――の5つを柱に据える。
物価高対策ではガソリンや電気、都市ガスの価格抑制策を継続する予定だ。既に補助金制度の年末までの延長を決めており、年明け以降も継続する方針だ。これまでに計9兆円超の予算を計上しているが、兆円単位の上積みが必要となり、「出口」への道筋は不透明だ。
賃上げ促進策に関しては、中小企業に適用する賃上げ促進税制の強化などを盛り込む。政府は賃上げを促す対策財源に23年度予算で新型コロナウイルス対策などのため計上していた4兆円の予備費の使途を変更して活用する方針だ。
国内投資促進策では、半導体や蓄電池などを対象に初期投資に限らず生産量に比例して法人税を優遇する税制措置の創設や、半導体向け補助金の拡充などを検討する。
こうした施策に加えて焦点となっているのが現金給付と所得税減税の行方だ。特に減税論議が高まったのは首相が9月末以降、「税収増の国民への還元」や「減税」を繰り返し発言したためだ。
22年度の国の税収は71.1兆円と当初見通しより6兆円程度上振れし、3年連続で過去最高を更新した。財務省は23年度について69.4兆円と慎重に見込んでおり、上方修正されるとの見方が根強い。首相の減税発言には、こうした税収状況を踏まえ、防衛増税やインボイス(適格請求書)制度導入などを受けてSNS(交流サイト)上で強まる自らの増税イメージを払拭し、衆院解散に向けた環境整備を進めようという狙いが透ける。
首相周辺によると、首相の発言はもともと、企業向けの政策減税を念頭に置いたもので、首相は「与党内の反応を見ていた」という。その後与党から次期衆院選を意識し、所得税減税の検討を求める声が相次いだ。
首相側近の木原誠二幹事長代理は10日のインターネット番組で、「物価高に苦しむ国民への還元も重要だ」として減税や現金給付の必要性に言及。公明党は低所得世帯への給付金と時限的な所得税の定額減税の実施を求める構えだ。自民党は最終的に経済対策に関する提言に低所得世帯向け給付の検討を求める一方、法整備に時間がかかることなどから所得税減税の明記は見送ったが、党内には「企業向け減税では国民は恩恵を実感できない」と所得税減税の実施に期待する声が少なくない。
今回の経済対策はコロナ禍を脱し、久々のインフレ局面ということもあり規模や中身が注目されている。経済対策の規模は、コロナ禍前は国費ベースで最大でも10兆円台だったが、感染拡大以降30兆〜40兆円台が続いていた。
内閣府の推計では日本経済の供給力と需要の差を表す「需給ギャップ」が今年4〜6月期に15四半期ぶりに需要不足を解消した。需要不足を補正予算で穴埋めするという説明はしづらく、物価高の状況で過度に需要を喚起すればインフレを加速させる恐れもある。
社会保障費や防衛費が中長期的に膨らむことが見込まれ、日銀の政策修正で長期金利の上昇も想定される。政府は6月に決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で財政支出の構造を「平時に戻す」と明記し、財政規律を重視する姿勢を示している。
「供給力強化策へ資源集中を」
こうした中、10日の経済財政諮問会議で、経団連の十倉雅和会長ら4人の民間議員は経済対策について、物価高対策は厳しい状況の方々を重点的に支援すべきだとしたうえで、「供給力強化に資する施策に資源を集中させる」よう提起した。「早期に国民が安心した将来を見通せる全世代型社会保障を構築する」ことも求めた。経済対策で還元を掲げることで、年末の少子化対策財源や防衛費増額など負担増論議への影響を懸念する声も強まっており、適切な対応を求めた形だ。
ここにきて財政健全化や社会保障制度の見直しを求める声は広がっており、経済界や学識者らが参加する「令和国民会議」(令和臨調)は10月6日、国の財政収支や税・保険料の負担などについて長期予測を出す財政推計委員会の創設などを求める提言を発表した。取りまとめ役の一人である小林慶一郎・慶応義塾大学教授は「政権が注力すべきなのは生産性向上や成長につながる政策と、財政健全化のカギとなる社会保障改革だ」と語る。
給付や減税策の扱いは最終的に首相の判断に委ねられるが、首相の減税発言で今後の負担増論議のハードルが上がったのは間違いない。財務省幹部は「衆院選が行われない限り、選挙に響くからと歳出改革や負担増論議がしづらい状況が続く」と懸念している。
●経済対策での焦点は「減税」 歳出改革は手つかずに 10/19
政府が今秋取りまとめる経済対策は「減税」の在り方が焦点になるのは確実な情勢で、鈴木俊一財務相の調整能力が改めて問われそうだ。
減税を巡っては、自民党の森山裕総務会長が岸田文雄首相の衆院解散戦略に関連し、税に関しては国民の審判を仰ぐ必要があると発言したのを皮切りに、与党幹部からも、近年の税収増を踏まえて減税措置を求める声が続出。
法人減税と共に所得税減税が検討される模様だが、財務省内では「減税できるなら、防衛力強化や少子化対策のための負担増は必要ないと思われるのでは」(中堅)などと懸念する声がくすぶる。今後、政府・与党内の駆け引きは激化しそうだ。
10月3日の記者会見で鈴木氏は、記者団に「減税を打ち出す状況ではないのではないか」と指摘されると「新型コロナウイルスや物価高騰に対応してきたため、財政状況はより一層厳しさを増しているのは事実」と応じた。
ただ、「現下の物価高騰に苦しむ国民に税収増を適切に還元する必要」にも言及。「構造的賃上げと投資拡大の流れを強化するため、税制面での対応を含め真に必要で効果的な政策を積み上げる」とも語り、減税措置に含みを残した。
毎回のように鈴木氏は「財政健全化目標の達成に取り組んでいくことも重要」と強調するが、岸田政権でも歳出改革はほぼ手つかずだ。霞が関では「今の財務省はバラマキの先頭に立っている」(経済官庁幹部)と揶揄する声もある。
財務省幹部は「今の官邸は決められないし、調整ができない」(主計局)と呆れる。首相は4日夜、官邸で記者団に「税制や給付などあらゆる手法を動員して思い切った対策にしたい。効果的な経済対策を作っていきたい」と述べたが、具体策は与党に「丸投げ」(同)状態だ。
首相の側近である木原誠二幹事長代理が「首相と話すばかりで党幹部への根回しは中途半端」(閣僚経験者)な上、今の官邸は「総理室で決めた政策が党幹部の意向でコロコロ変わる」(財務省幹部)という。歳出改革へ向け、鈴木氏の本気度が問われる。
●岸田内閣「若者の支持率」ついに10%! 安倍、菅内閣と真逆… 10/19
こうなると衆院解散どころか、早期退陣もあり得るのではないか。低迷していた岸田内閣の支持率が、もう一段、下落しはじめた。朝日(29%)、毎日(25%)、読売(34%)、共同(32.3%)、時事(26.3%)と、軒並み過去最低を更新している。
自民党議員が慌てているのは、大きなスキャンダルもないのに支持率が下がっていることだ。自民党の支持率も落ちている。
「首相秘書官だった岸田首相の長男が不祥事を起こした時も、内閣支持率は下落しています。でも今回は、分かりやすい下落原因が見当たらないのに下がっている。しかも、支持率をアップさせるために、女性閣僚を5人も登用し、ガソリン補助金も延長した。旧統一教会の解散命令請求も提出した。それでも過去最低を記録してしまった。心配なのは、経済対策に『期待できない』が約7割に達していることです。もし、国民生活の悪化が支持率の下落要因だとすると、もはや小手先の人気取りでは支持率の回復は難しくなります」(自民党関係者)
特徴的なのは、若者の支持が極端に低いことだ。
時事通信の10月調査によると、「18〜29歳」の支持率は10.3%だった。「30歳代」も18.1%と低かった。支持率は、年齢にほぼ比例し、「70歳以上」が36.0%と一番高かった。世代間ギャップが大きく、「70歳以上」と「18〜29歳」の間には25.7ポイントもの開きがあった。
男女別では、「男性」29.9%、「女性」22.5%と、7.4ポイントの差があった。全体の内閣支持率は26.3%と過去最低だが、相対的に「高齢者」「男性」の支持が高く、「若者」「女性」の支持が低いのが岸田内閣の特徴だ。「若者」の支持が高かった安倍内閣や菅内閣とは真逆である。
ビジョンやメッセージが見えてこない
明大教授の井田正道氏(計量政治学)はこう言う。
「安倍内閣はキャッチフレーズがうまく、なにか新しいことをやっているイメージがありました。若者の雇用も改善した。菅内閣には携帯電話の料金を大幅に下げるという実績があった。だから、若者の支持が高かったのでしょう。ところが岸田内閣からは、なにをやりたいのか、ビジョンやメッセージが見えてこない。若者は、そこにモノ足りなさを感じているのだと思います。
物価高もあります。貯蓄の乏しい若者に物価高は切実ですからね。その一方、安倍、菅政権の時は、賛否が分かれ、国民世論が分裂することが多かったのに比べ、合意型の岸田政権は安心感がある。高齢者の支持が高いのは、そのためでしょう。それと、かつて高齢者が経験した古き良き時代を象徴する“宏池会”の出身総理だという思いもあるのだと思います」
岸田支持層には、景気のいい時代に人生を謳歌し、十分な退職金と相当の年金をもらっている恵まれた高齢者が多いのかも知れない。しかし、この先、高齢者の支持も離れる可能性がある。
「多少の貯蓄があった高齢者も、物価高が2年に及び、不安が強まっているはずです。後期高齢者は医療費負担も大幅に増やされた。岸田内閣の発足時は、宏池会出身という期待も高かったが、少しずつ失望に変わりはじめてもいます。高齢者は投票率が高いだけに、野党に一票を投じたり、棄権すると、自民党は思わぬ敗北を喫する可能性があります」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
若者が大挙して投票所に足を運んだら、自民党は真っ青になるに違いない。
●岸田首相が導入意欲「ライドシェア」問題点こんなに…マイナカードの二の舞 10/19
《また見切り発車か》《早くして。待ったなしだ》《大丈夫なのか》
岸田文雄首相(66)が、20日に召集される臨時国会の所信表明演説で表明するとされる「ライドシェア」導入の方針をめぐり、賛否を含む様々な意見がSNS上で広がっている。
「ライドシェア」は一般ドライバーが自家用車を使って有料で乗客を運ぶことを認めるものだ。
道路運送法は現在、第2種運転免許を持たない一般人による有償運送を「白タク行為」として原則禁止しているが、岸田政権はこの解禁を目指すらしい。
岸田首相は過疎地域での新たな交通手段としての活用や、観光地の代用タクシーといった利用を描いているようだが、自民党の「タクシー・ハイヤー議員連盟」(会長・渡辺博道元復興相)が17日に党本部で開いた会合では、「ライドシェア」導入に反対意見が続出。議連幹事長で岸田政権の閣僚でもある盛山正仁文部科学相(69)も、「安易なライドシェアを認めるわけにはいかない」などと反対姿勢を崩さなかった。
米国ライドシェア企業では年間1000件もの性的暴行事件が
「ライドシェア」導入をめぐっては、過去の国会でも度々議論されてきた。タクシー不足や巡回バスが1日数本しか来ない──といった過疎地域での交通手段として活用が検討されてきたわけだが、実現しなかったのは理由がある。例えば、「ライドシェア」を導入した場合の犯罪、交通事故の問題だ。
「ライドシェア」に関して質疑が行われた3月22日の衆院国土交通委員会では、政府参考人の国交省自動車局長が、日本のタクシー会社と米国のライドシェア企業を比較しつつ、こう答弁している。
「日本のタクシーと米国の主要ライドシェア企業の比較として、輸送回数では、日本のタクシー約5.6億回、米国主要ライドシェア企業が約6.5億回と、おおむね似たような数字となっておりますが、例えば、令和2年における交通事故死者数につきましては、日本のタクシーで16人、米国の主要ライドシェア企業では42人、身体的暴行による死者数につきましては、日本のタクシーにおいてはゼロ、それに対し、米国の主要ライドシェア企業では11名、性的暴行件数につきましては、日本のタクシーでは19件、米国ライドシェア企業におきましては998件となっております」
どんなに注意を払っていても交通事故は起きる可能性があるとはいえ、乗車前に会社で健康状態や飲酒などのチェックを受けた上で乗務するタクシー運転手と「一般人」では、とっさの判断力などに違いが出る可能性もあるだろう。米国とはいえ性的暴行件数が1000件近いことも衝撃だ。これではとてもじゃないが女性は単身で利用するのに躊躇するのではないか。過疎地域であればなおさらだ。
顧客獲得競争の激化でタクシー運転手が収入減に
課題はまだある。タクシー運転手の収入減など労働環境への影響だ。
過去の国会審議でも、「ライドシェア」を解禁した場合、結局は大資本企業の進出によって顧客の獲得競争が激化し、タクシー運転手の収入が大きく減る可能性のほか、大資本企業の「ライドシェア」システムに参加する「一般人」は労働者なのか、個人事業主になるのかといった課題が浮上する恐れも指摘されていた。
飲食宅配代行サービス大手「ウーバーイーツジャパン」(東京)が導入した配達員への報酬システムをめぐってトラブルが起きたが、「ライドシェア」でも同様の事態になりかねないわけだ。
いずれにしても「ライドシェア」の導入をめぐっては、マイナンバーカードのような拙速な制度設計だけは避けてほしい。
●岸田政権「年収の壁」対策は期間限定 2年後に新たに「70万円の壁」 10/19
岸田政権が10月から「年収の壁」対策に乗り出した。どのような対策が行なわれていて、その先にどんな変化が待ち受けているのか。今回の支援策はあくまで2年間という期間限定のものであり、働き手の側が深く考えないままでいると、2年後に難しい状況に直面しかねないと専門家は指摘する。
“年金博士”として知られる社会保険労務士・北村庄吾氏がまず「年収の壁」問題とは何かを解説する。
「年収の壁とは、会社員や公務員である配偶者の扶養に入りながらパートなどで働く人(第3号被保険者)が、一定の収入を超えると扶養を外れて年金や医療の社会保険料を負担しなくてはならなくなり、手取りが減ってしまう現象を指します。従業員101人以上の企業で週20時間以上働く人の場合、年収106万円を超えると厚生年金などの社会保険料を支払わなければならず、手取りが減る。これが『106万円の壁』と呼ばれるものです。
また、壁はもう一つあり、それが健康保険の被扶養者と第3号被保険者の収入基準である『130万円の壁』です。年収が130万円を超えると配偶者の扶養を外れることになり、第1号被保険者となるケースでは国民年金や国民健康保険料を支払う必要が出てきて手取りが減る。また、第2号被保険者となる場合は、厚生年金と健康保険料の負担が生じます。第1号被保険者となる場合は、将来受け取れる国民年金の額は扶養に入っていた時と変わらない。これが『130万円の壁』となります」
手取りが減ることを避けるため、「壁」の手前で就労調整をする人は少なくない。結果、企業側にとっての人手不足が発生したり、「壁」を越えたくない一部の短時間労働者のために全体の賃上げが抑制されたりする現象が発生。そうした問題への対策を岸田政権がスタートさせたわけだ。
本当に気にすべきは2025年の「年金制度改正」
岸田政権の対策は、どのような内容なのか。前出・北村氏が続ける。
「『106万円の壁』については、壁を越えて働く人の手取りが減らないように助成をしていく。具体的には賃上げ、労働時間の延長などで従業員の収入を増加させ、被用者保険に加入させた企業に対し、パート労働者が保険料負担によって手取りが減らないように1人あたり最大50万円を助成するというもの。
もう一方の『130万円の壁』の対策は、この壁を越えても事業主が一時的な収入増だと証明するなどの手続きを踏めば、配偶者の扶養に入ったままでいられるというもの。いずれも2年の期限が設けられています」
あくまで時限的な措置であり、政府は2年後の年金制度改正で抜本改革を実行するとみられている。2024年は5年に一度ある年金制度の「財政検証」の年にあたり、その結果を受けての翌2025年の制度改正が、まさに「年収の壁」を巡る時限的な支援が終わる2年後に重なるスケジュールになっているのだ。
「月給5万8000円以上」=「年収70万円」の“壁”出現へ
2年後に実施される年金制度改正の見通しについて、北村氏はこう語る。
「政府はとにかく、厚生年金の加入要件を拡大して、1人でも多くの人に厚生年金保険料を負担してもらおうという方針です。現在進んでいる議論のなかでは、月5万8000円以上の収入がある人は全員厚生年金に加入させることが検討されている。2年間は年収の壁対策で助成金を出して間をつなぎ、その後は月給5万8000円以上の人はすべて厚生年金に加入させるという道筋ではないか。
そうなると、月5万8000円×12か月=年69万6000円ですから、社会保険への加入が義務づけられて手取りが減ってしまう『年収70万円の壁』が新たに出現することになるのです。
合わせて、厚生年金が適用される企業規模の要件もどんどん厳しくなっています。来年10月からは従業員51人以上の企業が適用対象になる。将来的には企業規模要件は撤廃へと議論が向かっており、そうなると『130万円の壁』の問題に悩んでいた人たちに対しても『70万円の壁』が出現することになるのです」
「年収の壁」問題の対応をどう考えるか
ただし、厚生年金の適用拡大は結局、“いたちごっこ”を引き起こし、政府の思惑通りには進まない懸念もある。
「壁を引き下げて厚生年金に加入する人を増やしても、加入した人が保険料を計算するための『標準報酬月額』を気にして働き控えに走るかもしれない。少しの賃上げでも、標準報酬月額の等級が上がってしまう境目にかかっていると保険料負担が増えるので、就労抑制を考える人が出てきかねないということです」(北村氏)
このように「年収の壁」問題を巡ってははっきりとした解決策が見えにくい。そうしたなかで、一人ひとりはどのように対応を考えればいいのか。
「厚生年金に加入したほうがいいのかという問いへの答えは、究極的には終身年金なのでどれだけ長生きできるかによって変わります。長生き家系なら厚生年金を増やして老後の生活の安定を目指すのもいい。ひとつはっきりしているのは、政府が厚生年金に加入させる網を広げる流れが鮮明ということ。そのため、働く時間を調整するなどして当面の社会保険の適用を回避したとしても、最後は網に掛けられてしまう。そこまで見据えるなら、潔く働く時間を増やし、スキルアップしながら稼いでいくほうがいいのではないか。熟年離婚も増えているので、年金を夫婦の単位で考えず、それぞれが厚生年金を増やしていったほうがいいという考え方もできるでしょう」(北村氏)
多くの人の「働き方」が大きな岐路に立たされているのかもしれない。
●岸田首相、日中対話訴え 10/19
日中両国の政財界人や有識者らが外交・安全保障や経済を議論する「東京―北京フォーラム」が19日、北京で開幕した。岸田文雄首相は書面でメッセージを寄せ「日中両国は地域と国際社会の平和と繁栄に重要な責任を有する大国だ」と強調し「中国との対話は極めて大事だ」と訴えた。主催者が明らかにした。
中国の王毅外相はビデオメッセージで「平和と友好、協力が唯一の正しい選択だ」としつつ、台湾問題で「日本はたびたび一線を越え、両国関係の政治的基礎を損なっている」と批判した。
フォーラムは日本の民間非営利団体「言論NPO」と中国国際伝播集団が主催し、2005年から毎年開かれている。
●防衛相の発言 自衛隊を政治利用するな 10/19
選挙の応援演説で、自衛隊の政治的中立を疑わせる発言が飛び出した。実力組織の指揮監督を担う防衛相として、軽率のそしりは免れない。
木原稔防衛相は衆院長崎4区補欠選挙で演説し、自民党候補の名前を挙げて「しっかり応援していただくことが、自衛隊ならびにそのご家族のご苦労に報いることになる」と訴えた。
看過できない発言だ。自衛隊や隊員家族の苦労に報いるために、自民党候補を応援してほしい−。防衛省のトップがそう呼びかけた、と受け取られても仕方あるまい。
演説したのは選挙区で最も有権者が多い長崎県佐世保市だ。海上自衛隊や陸上自衛隊の拠点があり、多くの隊員と家族が暮らす。
立場をわきまえ、自衛隊を選挙利用したと疑われることのないように、言葉を選んでしかるべきだった。
言うまでもなく、国家公務員は国民全体の奉仕者で、政治的中立を保つことを厳に課せられている。さらに公職選挙法は、閣僚を含む全ての公務員の地位を利用した選挙運動を禁じる。
木原氏の発言が、こうした法の趣旨に照らして問題があるのは明らかだ。
日本では軍部が暴走した戦前の反省から、公正な選挙で選ばれた国民の代表が軍事力を統制する文民統制(シビリアンコントロール)を戦後貫いてきた。
政治と自衛隊の分離は徹底しなければならない。木原氏はその自覚を欠いていたと言わざるを得ない。
過去にも似た問題発言があった。2017年に当時の稲田朋美防衛相は、東京都議選の応援演説で「防衛省、自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いをしたい」と訴えた。
自衛隊を政治利用する発言だと非難され、撤回しても閣僚の適格性を問われ続けた。防衛相に先月就任したばかりの木原氏も、この経緯を知っているはずだ。
野党などから発言を批判された木原氏は「自衛官とその家族への敬意と感謝を申し上げたが、誤解を受けたとすれば遺憾に思う」と釈明した上で「誤解を生むのであれば撤回したい」と述べた。
釈然としない。政治家が問題発言をするたびに繰り返される言い方で、真摯(しんし)な反省が感じられない。
発言は引っ込めたものの、「聞いた人が誤解しているようだ。間違ったことは言っていない」と言わんばかりではないか。
任命した岸田文雄首相も、問題意識を持っているのか疑わしい。本人の弁明をなぞり「引き続き職務に当たってもらいたい」とだけ述べた。不問にするようだ。
政府、自民党では昨今、元政務官(離党)が汚職事件で逮捕された。人権侵犯が認定された衆院議員は党の要職に起用された。たがが緩んでいるのは、トップの姿勢が影響しているのではないか。
●過去最低の内閣支持率 国民の生活苦に向き合え 10/19
岸田内閣の支持率が報道各社の世論調査で最低水準となった。物価高への有効な対策が示されていないことに加え、防衛力増強などの財源確保策が不透明なままだ。国家財政の将来への不安が広がっている。与党自民党が決別を宣言した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係についても断ち切れていないとの不信感が根強い。
20日には臨時国会が召集される。岸田文雄首相は、財源の裏付けとなる2023年度補正予算案を提出する方針だ。論戦では各党から厳しい追及が想定される。首相には国民の疑問や疑念に真摯(しんし)に向き合う姿勢が求められる。
共同通信が今月14、15両日に実施した全国電話世論調査で、内閣支持率は前回9月調査から7.5ポイント下落の32.3%だった。21年10月の内閣発足後、最低となった。不支持率は前回から12.8ポイント上昇の52.5%と過半数を占め、過去最高だ。
国民は生活実感として暮らし向きの上昇を感じられない。最低賃金の引き上げなど、政権は賃上げを主要施策としている。ただ、エネルギー資源価格の高騰や円安などもあり、物価高の波は賃金の上げ幅を上回るものがある。
厚生労働省が6日に発表した8月の毎月勤労統計調査で実質賃金は17カ月連続のマイナスとなった。国民の目には物価高への対応で手をこまねいているように映る。
マイナンバーカードを巡ってトラブルが続発しながら、マイナカードとの一本化による健康保険証の廃止を来年秋に断行する方針だ。健康保険証の廃止には国民の不安が根強いにもかかわらず、その声を顧みようとはしない。
国民の不信に向き合わない、疑念に応えようとしないのは旧統一教会との関係についても言える。多くの自民党議員が選挙で支援を受けていたことなどが発覚した。党の接点調査などを経て、つながりのあった議員の多くは教団との関係を断っていよう。
しかし、世論調査では、自民党が教団との関係を「断てていない」「あまり断てていない」が合計で6割に達した。細田博之衆院議長が説明責任を果たしていないとの批判を受けている。解散命令請求について8割超が「評価する」としているが、支持率には表れない。国民の多くが「これで幕引きとはならない」と考えているからではないか。
補正予算案に加え、物価高などに対応する経済対策が10月中に策定される。一方で、防衛費や少子化対策の財源確保は不透明なままだ。防衛増税の開始時期についても示されないまま臨時国会を迎える。
岸田首相は「聞く力」をアピールしてきたが、生活苦にあえぐ国民に向き合う姿勢が伝わらない。政権浮揚を意識した場当たりの対応が目立つからだ。国会論議ではさまざまな疑問をかわすことなく、自ら強調してきた説明する姿勢を示してもらいたい。
●中国経済がスベったのは「日本化」できなかったから 政治が成長を鈍らせた 10/19
奇跡的な成長を遂げた中国経済の墓石には、「習近平による夭折」と刻まれるだろう。
すべての高成長国は豊かになるにつれて成長が鈍化する。だが、中国の習近平国家主席が自らの政治的目標のために経済成長を犠牲にすることは、国際通貨基金(IMF)が中国の成長率を2028年までにわずか3.5%(80カ国中13位)に失速すると予測している理由である。エコノミストの予想を困難にする、金融破綻が起きれば、中期的な成長率はさらに低下するだろう。このような転換点では予測は難しい。
消費へのシフトができていない
不動産バブルの根本的な原因は、国民所得に占める賃金の割合が低すぎること、つまり消費の割合も低すぎることだ。中国は何年もの間、GDPの45%を投資にあてていた。しかし、発展するにつれて投資の必要性は低下し、消費にシフトする必要が出てきた。
中国の指導者たちはこのことを認識していたが、消費へのシフトを実行することはなかった。それどころか、「誰も住まないアパート」を建設し始め、その過程で負債を積み上げた。
日本と同様、不動産バブルはより根本的な問題の一部にすぎない。1976年に毛沢東が死去したとき、同氏は中国を140カ国中2番目に貧しい国にした。それに対してケ小平は、日本やシンガポールのアドバイザーに助言を求め、受け入れ、「日本とシンガポールの特徴を持つ社会主義」を作り上げた。習近平がその“レシピ”を放棄したことが、中国最大の問題である。
不可欠な要素の1つは、日本型の産業政策――すなわち、国家による近代産業の振興と、民間企業による競争を通じた効率化の追求という組み合わせ――だった。2018年までに、毛沢東政権下で唯一の合法企業であった国有企業は、都市部の雇用と輸出のわずか12%、企業投資のわずか3分の1を占めるにすぎなかった。
国有企業はけっして経済の奇跡を生み出すことはできなかった。半数近くが定期的に赤字を出しており、経済が縮小する原因となっている。黒字の国営企業でさえ、投資1元あたりの成長率は民間企業より低い。
習近平は国有企業の優位性を復活させようとしている。習近平が就任する前の2012年には、銀行融資の32%しか国営企業向けではなかった。2016年には、国有企業への融資は83%に達した。習近平はなぜこのようなことをしたのか? 中国共産党は、私企業が権力の別拠点になることを懸念しているからだ。
外資系の力を借りるプロセスは進んだが
同様に不可欠なのは、技術を移転し輸出を促進する外資系企業の役割である。日本と同様、輸出が工業化をリードしなければならなかった。中国の人々はまだ貧しく、近代的な工場製品を買うことができなかったからだ。
残念ながら、中国はまだ世界市場で競争することができなかった。シンガポールはその解決策を提供した。外資系企業を中国に誘致し、製品を製造・輸出させたのだ。
2000年までに、外資系多国籍企業は中国の輸出品の半分、特にハイテク製品を生産するようになった。外資系企業はコンピューター製品の100%を輸出したのに対し、衣料品は40%だった。このプロセスは、これらの輸出品の内容の80%を供給するすべての新しい民間企業、さらには無関係の企業にノウハウを移転した。
一方、習近平は中国を孤立させたいわけではないが、外国の技術や企業への依存度を下げれば、中国はより安全になると考えているようだ。また、中国はもはや外国の技術を以前ほど必要としていないとも考えている。
これは誤算だ。2015年、同氏は中国がいくつかの極めて重要な技術や製品で世界的な覇権を握ることを目的とした「メイド・イン・チャイナ2025」プログラムを立ち上げたが、これは失敗に終わった。
例えば、特許を大量に発行する企業に対する中国の税制優遇措置によって、企業は質の高い特許から質の低い特許へとシフトした。中国の経済学者によれば、これは実際にイノベーションと企業の生産性を低下させたという。中国が一部の技術で飛躍的な進歩を遂げたことに疑問を抱く人はいないだろうが、外国企業を迫害することは、イノベーションと成長を阻害する。
外資系企業を「迫害」したツケ
何年もの間、外資系企業は調達における差別、知的財産の窃盗、17人の日本人従業員を含む外国人従業員のスパイ容疑での逮捕に苦しんできた。中国での売り上げが鈍化しているため、企業はこのような慣行を容認しなくなっている。すべての国から中国への外国直接投資(FDI)は、今年の最初の8カ月で8%急落した。
民間企業や外資系企業に対する締め付けは、これ以上悪いタイミングがない状況で行われている。労働人口が減少し、民間投資が減速する中、中国は労働力と資本の投入からより多くの生産物を得なければ成長できない。
この効率性の尺度は全要素生産性(TFP)と呼ばれる。1980年から2010年の間、TFPは1人当たりGDPの成長率の約40%を占めていたが、習近平政権下でTFP成長率は3分の2に急落している。これが1人当たりGDP成長率低下の要因の1つである。
中国と他の富裕国は相互依存関係にあるため、中国が打撃を受ければ他国も打撃を受け、逆に他国が打撃を受ければ中国も打撃を受ける。ロイターが引用したエコノミストによれば、中国の苦難は「日本の年間成長率を1〜2%ポイント押し下げる可能性がある」という。最大の理由は、日本の対中輸出がGDPの4%近くを占めていることだ(製品の製造に使われる輸入エネルギーや輸入物資を除く)。
すでに今年の最初の8カ月間で、日本の輸出は昨年より約10%減少している。景気後退がさらに拡大し、長引けば、大きな打撃となるだろう。そのうえ、中国の成長率が1%低下するごとに、東アジアの他の地域の成長率は約0.3%低下する。これは日本からの輸入を減らすことになる。
中国が金融危機に見舞われた場合、日本への打撃は金融の伝染というよりも、むしろ輸出への打撃となるだろう。2008年から2009年にかけての世界金融メルトダウンがそうだった。
自動車産業を除けば、ほとんどの日本企業は輸出を通じて中国の顧客にリーチできており、中国国内で事業を展開しているわけではない。それでも、中国で事業を展開する企業はすべて、企業スパイやその他の問題の影響を受けやすい。
多くの企業が、中国での売上高の伸びが他の地域のそれより劣ると予想しているのに、リスクを冒す価値があるのだろうか。今後数年間に事業拡大を計画している日本企業はわずか20%にすぎず、香港とロシアを除く18の対象国の中で最も低い割合となっているのも不思議ではない。さらに5.5%の企業が事業縮小を計画している。大半は現在の水準を維持するか、不透明である。
中国自体が世界経済の「最大のリスク」? 
このほかにも、中国は好戦的な地政学的野心を支えるためにテクノロジーを利用している。そのため岸田政権は、アメリカやヨーロッパとともに「リスク回避」に乗り出した。これは、先進的な半導体製造装置のような特定の重要技術の対中輸出を断つことを意味する。
これに対して中国は、報復として、あるいは無関係な政治的理由から、日本や他の国々への重要鉱物の輸出を制限している。経済的強制を避けるため、日本は他の国々とともに、たとえコストが上がるとしても、重要な供給源の多様化に取り組んでいる。
中国もその他の国々も、通常の貿易と投資の大幅な切り離しは望んでいない。これらの国々は相互依存関係にあり、IMFは対中貿易が大きく落ち込むと、世界のGDPが7%も減少すると予測している。これは、新型コロナウイルスによる影響よりも大きい。
各国の誤算、そして行動や反応によっては事態が変動する可能性もある。これは大きなリスクだ。さらなるリスクは、中国が今、強力で自信に満ちた不安定化勢力となっていることだ。弱い経済が社会の不安定を生み出せば、さらに大きな問題になりかねない。
●旧ジャニーズ、旧統一教会…「袋叩きの不祥事組織」が報道に反論する? 10/19
旧ジャニーズと旧統一教会は報道に「反論」してもいい
「見苦しい」「反省していない」「被害者のことを考えていない」「自分の主張を一方的に垂れ流したいだけで聞く価値がない」――。
今、日本中から批判されている二つの組織が、相次いでメディアの報道に対して「反論」をしたことでボロカスに叩かれている。「旧ジャニーズ事務所」ことSMILE-UP.(スマイルアップ)と、「旧統一教会」こと世界平和統一家庭連合(以下、家庭連合)だ。
スマイルアップに関しては、ホームページにネット記事や週刊誌報道への反論などを10月5日から立て続けにアップしたことが、「メディアを高圧的に支配していた時代と何も変わらない」「必死すぎてダサすぎる」という感じで、メディアからネット民まで厳しく批判をされている。
家庭連合に関しても同様で、かねて週刊誌やネット記事などに反論をしていたが、10月4日には関連団体の「UPF-JAPAN」がジャーナリスト・鈴木エイト氏を名誉毀損で訴えた。
鈴木氏は、UPFが開催した国際会議でビデオメッセージを寄せた安倍元首相に、UPF側から「5000万円」の謝礼が支払われていた、とX(旧ツイッター)などで繰り返し主張をしている。鈴木氏の「調査報道」が事実なら、安倍元首相の政治家としての評価が大きく失墜するだけではなく、自民党もアウトだ。なぜかというと、安倍元首相の収支報告書にはそのような金額の記載はないので、“確信犯的”に政治資金規正法違反などの違法行為に手を染めていた事になるからだ。
しかし、UPFはこれを「事実無根」として猛反発した。この対応がまたメディアやネット民の怒りを買った。「鈴木エイトさんを黙らせるためのスラップ訴訟(嫌がらせ)だ、恥を知れ!」「この期におよんでまだ犯罪者の安倍をかばうのか!この反日カルトめ!」なんて感じでボロカスに叩かれているのだ。
旧ジャニーズ事務所に関する報道や鈴木氏の調査報道が「事実」かどうかは筆者にはわからない。ただ、このような現象はかなり興味がある。
話題の二つの組織が、奇しくも「報道への反論」でともに激しい批判を受けていることは、企業で危機管理を担当されている人たちが一度は直面するであろう問題と、かなり関係があるからだ。
一言で言うと、「不祥事報道のどさくさに紛れて、適当なデマを流すメディアやジャーナリストをどうするんだ」という問題である。
不祥事に乗じた「デマ」は盛り上がるから黙認?
例えば、ある会社で長年続けられてきた「不正行為」が明らかになったとしよう。言い逃れできない証拠・証言もある。社内調査でも認められたということで、経営陣が謝罪会見を催して不正の事実を発表した。
当然、これで終わりとはならず、マスコミがさまざまな報道をするようになる。会社側が把握していない「元社員」などがメディアに続々と登場して「社長が知らないわけがない」「社内ではタブーだった」とかなんとか証言して、ネットやSNSで拡散されて「大炎上」というのがいつものパターンだ。
しかし、そんな騒動に乗じて「デマ」が流れることがある。このケースならば、「社長が嫌がる社員に不正をするように命令をしていた」とか、「不正をしたら上司からほめられて社内で表彰された」なんて、実際にその会社にいる社員からすれば「さすがにありえないでしょ」「本当にうちの取材している?」と首を傾げるような“盛った話”が、メディアや著名ジャーナリストの口からバンバン飛び出すのだ。
「正義のメディアがそんなことをするわけがないだろ」と怒る人もいるだろうが、メディアで働く人の間では、わりとよく聞く話で「飛ばし記事(事実か疑わしい記事)」という言葉もあるくらいだ。筆者も記者をやっていた25年以上前から、大きな事件の現場で「うわ、すげえ飛ばしてんな」という報道に幾度となくお目にかかった。しかし、多くの同業者はそれを問題視することはなく「黙認」していた。
不祥事企業、凶悪事件の犯人、不倫をした芸能人、悪徳政治家など、社会全体で石打ちの刑に処していい「悪人」の場合、「悪人らしい情報」があって叩ける方が、読者や視聴者の「勧善懲悪」欲求が満たされる。
その方が部数も上がるし、ワイドショーの視聴率も上がる。「飛ばし記事」は「悪人」とその家族にとっては理不尽極まりない報道被害だが、それ以外の大多数にとって「みんながハッピーになるエンタメ」という現実があるのだ。
では、このように「悪」のあるところに必ず生まれる、「正義」の人々が流す「適当なデマ」に企業や団体はどう対処すべきか。
危機管理の専門家も「泣き寝入り」をすすめるワケ
意外に思うかもしれないが、「泣き寝入り」することが多い。「報道に反論」をしている旧ジャニーズ事務所や旧統一教会が“とんでもない非常識なことをする団体”とバッシングをされているのがその証左だ。
では、なぜ「泣き寝入り」をすることが多いのか。
すねに傷を持つ者はどんなひどいことを言われても、「おしん(NHKの朝ドラ)」のように歯を食いしばって耐えなくてはいけないという日本人的な美徳もあるが、危機管理の専門家がそうアドバイスをすることも大きい。
理由は「報道に反論をすることでバッシングを長引かせる」「メディアやジャーナリストが言論封殺だとか騒いで逆に取材攻勢を強めてしまう」ということだ。つまり、デマに反論したところでほとんど聞いてもらえることはなく、事態を悪化させるだけというわけだ。
もちろん、株価や取引先に悪影響を及ぼすような「デマ」ならば毅然とした姿勢で抗議をすべきだと主張する専門家もいるが、既に「不祥事企業」で日本中から叩かれているので実状的には株価も信用もへったくれもない。しかも毎日、記者から追いかけ回されてメンタルが壊れかかっている経営陣の腰が引ける。とにかく一日でも早くバッシングを終わらせてほしいと願うので、「メディア批判」という新たな燃料を投下することに二の足を踏んでしまうのだ。
このような話を聞けば聞くほど、スマイルアップや家庭連合の「報道批判」は危機管理的に失敗だったと思うだろう。
確かに、短期的には世論の反感を買ってボロカスに叩かれているので「失敗」だったと筆者も思う。しかし、「中長期的な視点」で見ると「成功」だと考えている。
旧ジャニーズと旧統一教会のメディアへの反論は「成功」
デジタルタトゥーという言葉があるように一度、ネットやSNSで流れた「悪評」はたとえそれがデマだとしてもなかなか消えることはない。しかも、デマを流した側のメディアやジャーナリストは「飛ばし記事」を訂正して名誉回復に努めるなんてことはほとんどない。つまり、デマのデジタルタトゥー化を防ぐためには、社会から叩かれながらも「事実無根な話は事実無根」としっかりと言っておかなければいけない。
それをやっておけば、少しずつではあるが名誉挽回できる。わかりやすいのが「日本端子」問題だ。
21年の自民党総裁選時、一部のジャーナリストやメディアが、自民党の河野太郎氏(現・デジタル大臣)のある「疑惑」を報じた。
日本端子は、河野太郎デジタル大臣の一族が経営する自動車部品会社で、この会社が中国で合弁会社を作っていた。その合弁会社が自己資本比率の高さなどで、中国共産党から「破格の待遇」を受けており、太陽光ビジネスの利権に関わっているというのだ。つまり、このファミリー企業を通じて、河野氏が中国とズブズブだという疑惑だった。
この報道を見て筆者は正直、「うわっ、自民党総裁選の前だからって飛ばしてるな」と思った。中国で経済活動をしている企業や、自動車業界を少しでも取材したことがある人ならばすぐにわかる「デマ」だからだ(『橋下徹氏「上海電力疑惑」にモヤモヤ、河野太郎氏の親中疑惑騒動と瓜二つ』参照)。
騒動後、すぐに筆者はネットメディアでこの「疑惑」はデマですよ、という記事を書いたが、残念ながらライター風情が騒いだところで影響はない。ネットやSNSでは「なぜマスコミは日本端子問題を追及しない!また闇の力が動いているのか」とか陰謀論まで盛り上がる始末だった。
しかし、ほどなくしてこの「疑惑」は収束していく。日本端子自身が当時ホームページで「反論」を掲載したのだ。もちろん、今もSNSを見ると、「河野太郎の日本端子問題を追及せよ」なんて騒いでいる人もいるので、また河野氏が自民党総裁選に出馬したりすると「復活」するのだろうが、「中国の手先」なんて誹謗中傷はかなり少なくなった。
ここで大事なポイントは、「疑惑」をあおっていた側は一切そういう「被害回復」はやってくれないということだ。あれほど騒いでいていたジャーナリストやメディアは日本端子の反論をスルーしているし、今日にいたるまで「すいません。勘違いだったみたいです」みたいな釈明もない。
批判をしているわけではなく、ジャーナリストやメディアとはそういうものなのだ。不正を徹底的に追及して闇をあぶりだそうなんて人は「自分が絶対に正しい」という強烈な信念がないとやってられない。ちょっと間違っていたからと訂正や謝罪をするような性格では、正義のジャーナリストは務まらないのだ。
しかも、ジャーナリストが叩くべき「悪の組織」から間違いを指摘されて、発言を修正するなんてことがあったら「信用」が大きく傷つく。支持者も離れてしまう。マスコミが訂正や謝罪を嫌がるのはそこだ。「正義」は間違ってはいけないのだ。
そんなジャーナリストの「気質」がよくわかる出来事が最近もあった。
「ジャニーズ会見に事務所側が記者を仕込んだ」というデマ
旧ジャニーズ事務所の会見で、声を荒げてわざと場を荒らすような記者がいた。それを一部のジャーナリストたちが“直感”で、「メディアの人間ではない」とテレビなどで発言したことで、「仕込み記者」疑惑が盛り上がった。
正義のジャーナリストやメディアのみなさんは「NGリストはつくるわ、昔の総会屋みたいなのを仕込むわ、ジャニーズ事務所はまったく反省していない、会見をやり直せ!」と怒っており、ネットやSNSでは「ジャニーズがガラの悪い人間を記者のふりをさせて会場に入れた」という話は、半ば「事実」として語られている。
しかし、「デイリー新潮」が複数の出席者に取材して確認をしたところ、この記者は産経新聞記者だったことがわかった。一般の方はあまりご存じないだろうが、不祥事企業の記者会見などは、経済部ではなく、遊軍の社会部記者や、これまでまったくこの企業を取材していないフリージャーナリストやら有象無象が集まる。その中に時代錯誤的な「やからのような記者」もたまにいるものなのだ。
こういう「事実」が明らかになってからも、「ジャニーズはニセ記者を仕込んでいたのでは」と騒いでいた人たちは特に訂正も釈明もしない。繰り返しになるが、批判をしているわけではなく、ジャーナリストやメディアというのは“そういう人”なのだ。
悪い奴らを叩いている「正義の自分」は多少事実と違うことを言ったとしてもそれは許される。そういう細かな揚げ足取りをするのは、「正義の自分」を黙らせたい卑劣な連中だーー。
冗談抜きで本気でそう考えている人も多いのだ。
筆者は月刊誌の編集者として、著名なジャーナリストにたくさんお会いした。中には、大御所なのにすごく気さくな人もいたが、反権力を掲げているわりに権威的で、絶対に自分を正しいと信じ込み、他人の言葉に耳を傾けない偏屈な人も少なくなかった。
そういう人たちから編集者としておしかりを頂戴しながら、「ああ、これくらい強く自分が正しいと思えないとジャーナリストは務まらないんだな」と感じたものだ。
だから、筆者はフリーになってから自分で「ジャーナリスト」を名乗ったことは一度もない。たまにコメントを求められて「ジャーナリスト」と紹介されても訂正している。
不祥事企業の皆さんが対峙するのは、それくらい「強い信念」をもった人たちなのだ。だから、もし彼らの言っていることが事実ではないのなら、生半可な気持ちではなく強い信念をもって抗議・反論をしていただきたい。 

 

●超党派議連が靖国参拝 秋季例大祭に合わせ 10/18
超党派の議員連盟「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」のメンバーが18日午前、東京・九段北の靖国神社を秋季例大祭に合わせて一斉参拝した。事務局によると、自民党、日本維新の会、国民民主党、政治家女子48党、参政党や無所属の96人が参加した。
参拝後に記者会見した逢沢一郎副会長(自民)は「平和の尊さを次世代に語り継いでいくのは私たちの大きな使命だ」と強調。岸田文雄首相が17日に「真榊」と呼ばれる供物を奉納したことに関し「(戦争犠牲者らへの)尊崇の念を明らかにした」と述べた。
議連の一斉参拝は、終戦の日の8月15日以来。政務三役からは岩田和親経済産業副大臣、石橋林太郎国土交通政務官らが参加し、小里泰弘首相補佐官も参拝した。
●超党派の議員連盟 96人 靖国神社を参拝 10/18
靖国神社の秋の例大祭に合わせて、超党派の議員連盟のメンバー96人が18日朝、そろって参拝しました。
超党派の議員連盟「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」は毎年、春と秋の例大祭と、8月15日の「終戦の日」に靖国神社に参拝しています。
18日は午前8時ごろ、自民党の森山総務会長のほか、日本維新の会、国民民主党などの国会議員合わせて96人が靖国神社の本殿に昇殿し、そろって参拝しました。
このうち岸田内閣からは小里総理大臣補佐官や井林内閣府副大臣、岩田経済産業副大臣ら副大臣や政務官など11人が参拝しました。
参拝のあと、議員連盟の副会長を務める逢沢 元国会対策委員長が記者会見し、「今日の日本の安定や繁栄の陰には多くのご英霊が礎となってくださっていることを忘れてはならず、改めて戦争の悲惨さや平和の尊さを次の世代にしっかりと語り継いでいきたい」と述べました。
●超党派議連が靖国神社を参拝 秋季例大祭に96人 10/18
超党派の議員連盟「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」のメンバーが18日午前、東京・九段北の靖国神社を秋季例大祭に合わせて一斉参拝した。事務局によると、自民党、日本維新の会、国民民主党、政治家女子48党、参政党や無所属の96人が参加した。
参拝後に記者会見した逢沢一郎副会長(自民)は「平和の尊さを次世代に語り継いでいくのは私たちの大きな使命だ」と強調。岸田首相が17日に「真榊」と呼ばれる供物を奉納したことに関し「(戦争犠牲者らへの)尊崇の念を明らかにした」と述べた。
政務三役からは岩田和親経済産業副大臣、石橋林太郎国土交通政務官らが参加し、小里泰弘首相補佐官も参拝した。
●韓国政府、日本の議員たちによる靖国神社参拝に「深い遺憾」 10/18
岸田文雄首相が今月17日、太平洋戦争のA級戦犯が合祀されている靖国神社に供物を奉納したことにつづき、日本の与野党議員たちは18日に靖国神社を訪れ集団参拝した。
韓国外交部(外務省)は18日、“日本は歴史を直視し、過去の歴史に対する省察と心からの反省を行動で示すべき”というタイトルの報道官による論評を通じて「政府は、日本によるかつての侵略戦争を美化し、戦争犯罪者を合祀した靖国神社に、日本の責任ある指導級の人物たちが再び供物を奉納したり参拝を繰り返すことに対し、深い失望と遺憾を表す」と伝えた。
韓国政府は「日本の責任ある指導者たちが歴史を直視し、過去の歴史に対する謙虚な省察と心からの反省を行動で示すことにより、韓日関係の未来志向的な発展に寄与していくことを求める」と伝えた。
秋季例大祭の2日目であるこの日の午前、日本の超党派議員の集いである「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の所属議員たちは、集団で靖国神社で参拝した。
また前日(17日)には岸田首相が「内閣総理大臣、岸田文雄」の名で真榊(まさかき)の供物を奉納し、内閣の閣僚3人が参拝した。 
●自公が経済対策 岸田首相に提言 所信表明で減税意欲表明へ 10/18
岸田首相は、経済対策について、自民・公明両党からの提言を受け、物価高などに「大胆な取り組みに踏み込む」と述べた。
自公両党の提言には、ガソリン価格の高騰を抑える補助金の継続などが盛り込まれた。
一方で、所得税減税については、両党の提言には盛り込まれなかった。
岸田首相「物価高に苦しんでいる国民を支援することとともに、新しい経済ステージへのチャンスをつかみ取る、大胆な取り組みに踏み込みたいと思っている」
こうした中、岸田首相は、臨時国会召集後の23日に行う所信表明演説で、減税への意欲を表明するとの見通しが明らかになった。
所得税減税を実施することを念頭に、与党への指示をするとみられる。
●岸田文雄首相のスーパー視察と発言を疑問視 10/18
17日放送の『バラいろダンディ』で、ふかわりょうが岸田文雄首相の発言に苦言を呈した。
岸田首相がスーパーを視察
岸田首相が経済対策のため江東区のスーパーを訪れた話題を取り上げたこの日の放送。
食品売り場を見て回った同首相は「国民のみなさんが物価高に負けない、幸せを維持する社会を」「思い切った対策を実行する」と話したことが紹介された。
ふかわが一瞬固まって…
岸田首相の発言が理解できない様子のふかわは一瞬固まったあと、金子恵美に「これはどういうふうに解釈したら?」と質問する。
金子は「日本はデフレからの脱却ということでね。今の物価高は行き過ぎていると。経済の好循環が生まれて、賃上げに繋がって幸せにと言いたいんでしょうけれども」とコメント。
そして自身も政治家時代に視察をしていたと話し、「政治家からするとパフォーマンスというふうには見られないと本人は思っているんですけど、政治家を辞めて外から見ると、こんなにまでパフォーマンスに見えてしまうのかと。それだけ国民のみなさんが苦しいから、そう映ってしまうのかな」などと語った。
出演者から苦言が続々
話を聞いたふかわは「おっしゃるところもあると思うんですけどね、SPの数とか、フラッシュのたかれる感じとか、やっぱりパフォーマンスに見えてしまう。なんか、降りてきてくださったかのように」と笑いを浮かべながらも苦言を呈す。
画家でコメンテーターの中島健人氏も「パフォーマンスでいいからメモを取らないで30分レジを打ってくれって。本当にみんなギリギリなんだということがわかると思う」と指摘。
そして「岸田政権になってから2年経つわけですよ。そのなかで17カ月実質賃金が下がり続けている。岸田政権になってから、みんな毎日貧乏になっている。それにもかかわらず岸田さんが発したワードって「『明日が良くなる社会を目指して』って」と呆れたように話し、「支持率が危険水域に行っているのは、われわれの正直な反応」と斬った。
「政治家のやることではない」
アシスタントの松澤千晶も「物価高という現実的なワードに対して、幸せという抽象的なワードを並べているのはモヤッとしました」と語る。
するとふかわも「本当に松澤さんの言う通りで、ここで幸せをって持ってくるのは、政治家のやることじゃないですよね」とバッサリ。
続けて「政治家って生活じゃないですか。生活を支えるというか、保証するというところで。そこで幸せという考え方次第じゃないけど、気の持ちようともとらえられることを掲げるのは、政治家のやることではない」と苦言を呈していた。
ネットでも厳しい声が
岸田首相のスーパー訪問と「物価高に負けない幸せな社会」という抽象的と思えるキャッチフレーズには、『バラダン』出演者はもちろん、SNSなどでも厳しい見解が散見される。
●旧統一教会の解散命令請求でも…岸田内閣「最低支持率」29% 10/18
岸田文雄内閣の支持率が、2021年10月の発足以来最低水準に落ちたという日本の主なマスコミの世論調査結果が相次いでいる。
朝日新聞は16日付の記事で、14日、15日に全国世論調査(回答者1064人)を実施した結果、岸田内閣の支持率は29%と、先月の調査(37%)より8ポイント下落したと報じた。これは岸田内閣としては最低の数値だ。ムード刷新のために内閣改造を行ったのに続き、世論を受けて世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令請求も決めたが、岸田首相の支持率はむしろ下落した。
これに先立って、読売新聞(34%)、毎日新聞(25%)、共同通信(32.3%)などの今月の世論調査でも支持率が最低水準を記録した。岸田首相は16日、記者団に対し「最低支持率」の流れについて「一喜一憂せず先送りできない課題に一つ一つ取り組んでいく」と述べた。
岸田首相の支持率が下がり続けているのは、韓国の住民登録証に似た「マイナンバーカード」の混乱や、持続する高物価などで信頼を失ったことが主な原因として作用している。「岸田首相を信頼できるか」という質問に対し、回答者の62%が「信頼できない」と答えた。「信頼できる」は30%にとどまった。政策の進め方について、岸田首相の情熱やわかりやすい説明能力など、指導者の基本的な資質についても、それぞれ回答者の59%と69%が否定的評価を下した。
このため岸田首相が進める政策に対する期待感も低迷している。今月中に発表される経済対策について、回答者の69%が「期待できない」と答え、「期待する」(24%)をはるかに上回った。
政権与党の自民党内では憂慮の声が高まっている。朝日新聞は、岸田首相は年内を含めいつでも衆議院を解散できるよう環境整備を進めてきたとし、しかし支持率が低すぎて自民党内では任期中の衆議院解散は難しいとの懸念があると伝えた。さらに、岸田首相が再選を目指す来年秋の自民党総裁選にも悲観論が出ていると付け加えた。
●「最悪の国民生活破壊政権」 10/18
17日発売の『サンデー毎日』は、「岸田政権2年」について日本共産党・志位和夫委員長のインタビュー記事を掲載しました。このなかで志位氏は、岸田政権のもとで進む物価高、国民生活窮乏打開のための経済対策、敵基地攻撃能力保有の問題点と安全保障政策、野党共闘などについて縦横に語りました。聞き手は毎日新聞の倉重篤郎専門編集委員。
倉重氏は冒頭、腹が立つのは異常な物価高に政治が「無策なことだ」と指摘。「国民は日々の消費生活で鬱積(うっせき)をため込んでいる。真っ当な対策を打てない政権の非力も薄々感じている」などとして、岸田政権2年の総括者として、「20年余、16人の首相と渡り合ってきたキャリアの持ち主」である志位氏の目に「岸田氏はどう映る?」と質問しました。
ただ延命と保身
志位氏は、「こういう国がつくりたいなどのグランドビジョンがあるわけではない。ただ自らの延命と保身で権力を握り続けたい。そのためなら何でもやるというのがこの政権の本質ではないか」とばっさり。安倍晋三元首相の場合は、「強権国家、戦争国家をつくるという彼なりの信念が明確だった」が、「岸田氏からはそういう信念のようなものを感じたことがない」と断じました。
その上で、「延命と保身となると、結局大きく強い声に従うことになる」と述べ、敵基地攻撃能力保有と大軍拡の推進、マイナンバーカードの押し付け、インボイスの強行など政権の強権姿勢を批判。「『聞く力』というが、右の耳で米国の声を聞き、左の耳で財界の声を聞く。国民の声を聞く耳は残されていない」と批判しました。
志位氏はさらに、安倍氏は集団的自衛権行使を容認する際、憲法解釈の変更を行ったが、岸田氏は「専守防衛」という国是を「変えない」と言いながら根本的な変更に乗り出していると指摘。「長射程ミサイルを多数導入し、軍事費を2倍にする。誰が見ても『専守防衛』の放棄だ。国民に明々白々な『ウソ』をつき事を進めているのは安倍氏と比べてもより悪質だ」と厳しく批判しました。
経済再生プラン
「物価高に無策?」との倉重氏の問いかけに志位氏は、「『失われた30年』がベースにある」と主張。労働者の実質賃金がピーク時の1996年に比べ年収ベースで64万円減、アベノミクス以降の10年でも24万円減り、消費税を税率で5%、14兆円も増税してきた数字をあげ、「実質賃金下落と大増税で暮らしがへとへとになっているところに物価高が襲ってきた」と指摘しました。さらに、奨学金の借金残高が10兆円と、この30年間で7倍になったと告発しました。
志位氏は、岸田首相が記者会見で「長年続いてきたコストカット型経済が賃金、設備投資までその対象としたことで消費と投資の低迷を招いた」と語ったことに「ひとごとのように言っていることに驚く」と批判。「この間の経済運営をやったのは誰か。自公政権に責任がある。その反省もないし、打開策もない」と断じました。
その上で、▽賃金コストカット▽企業の社会保険料のコストカット▽企業の税のコストカットのための法人税減税・消費税増税―大企業本位の三つのコストカットをあげ、「その結果が失われた30年になった。財界の要請に従ったわけだが、皮肉なことにこれが全体のパイを縮め、大企業の活力も奪った」と指摘しました。
倉重氏から「どうすればいい?」と聞かれた志位氏は、日本共産党の「経済再生プラン」―「三つの改革で暮らしに希望を」を紹介。(1)政治の責任で賃上げ、待遇改善を図る。中小企業を直接支援し最賃を1500円にする(2)消費税廃止を目指し5%に減税、インボイスを中止、学費ゼロを目指し、まずは半額にし、奨学金の返済も半分に(3)気候危機打開、エネルギー・食料の自給率向上を図る。40兆円規模の積極予算を組み財源は富裕層と大企業の応分負担―などの内容を語りました。
外交安全保障政策について志位氏は、来年度の軍事費は概算要求ベースで7・7兆円、これに米軍再編費が乗って8兆円にのぼり、2年前の5・5兆円から2・5兆円の大幅増になったと指摘。うち2兆円が米国主導の統合防空ミサイル防衛(IAMD)強化予算で敵基地攻撃のための長射程ミサイルの大量導入、開発費用に充てられると告発しました。
共闘再構築図る
「野党共闘」について問われた志位氏は、「今の政権がこの体たらくだし、維新の会や国民民主党といった政権の補完勢力が議席を伸ばそうと動いているから野党が共闘しなければならない大事な局面だと思う。共闘を願っている声が広くある」と答え、「大軍拡と暮らしについてしっかりとした旗を立て共闘の再構築を図りたい。私はあきらめないで努力したい」と決意を語りました。
志位氏は、2021年の前回衆院選では59の小選挙区で勝っているなどとして「『野党共闘は失敗した』というのは事実と違う」「共闘しか今の流れを転換する道はない」と説きました。
志位氏は最後に「来年1月の党大会」について、「4年前の党大会で、党綱領を一部改定し、中国に対する位置付けを見直し、新しい世界論、未来社会論を展開した。改定綱領の生命力がどう発揮されたかを明らかにしていきたい」「この間の野党共闘路線の中間総括もしながら共産党の躍進をどう勝ちとるか、という議論をしたい」「何といっても党建設、いかに強く大きな党を作るかが最大課題になる」と述べました。人事について問われ、「人事のことはノーコメント。私が勝手に言えません。大会で民主的に決めていきます」と答えました。
●税収増の還元策、首相が具体化指示へ 所得減税も視野、政権浮揚狙う 10/18
岸田文雄首相は物価高などに対応するため、税収増を国民に還元する一時的な税制措置の具体化を与党の税制調査会に指示する方向で調整に入った。
23日にある臨時国会の所信表明演説で、こうした方針を表明する考えだ。与党税調の議論では、所得減税も対象になる見通し。複数の政府関係者が明らかにした。
首相は所信表明演説で目玉政策の一つとして、税収の増収分の還元を訴える。税収還元を「デフレ脱却のための一時的緩和措置」として打ち出し、政府与党政策懇談会を近く開催し、与党税調に早急な検討を指示することを表明する意向だ。
政府は月内にも総合経済対策をとりまとめる予定で、与党からは減税措置を求める声が相次いでいる。首相は演説で減税を具体的に検討する姿勢を強調し、政権浮揚につなげたい考えだ。
●木原防衛相発言 撤回では済まぬ軽率さ 10/18
木原稔防衛相が衆院長崎4区補欠選挙の自民党候補の応援演説で「しっかり応援していただくことが自衛隊ならびにそのご家族のご苦労に報いることになる」と支持を訴えた。
自衛隊を政治利用したと取られても仕方のない発言である。
木原氏はその後「誤解を生むのであれば撤回したい」と述べた。
だが、防衛省のトップであれば、自衛隊員が自衛隊法で政治的行為を制限されていることは百も承知のはずだ。
自衛隊の政治的中立性に疑念が生じれば、政治が自衛隊を制御する文民統制(シビリアンコントロール)が揺るぎかねない。
発言を撤回しても、防衛相としての資質を疑わざるを得ない。
問題の発言は15日、長崎県佐世保市で開かれた自民党候補の集会で飛び出した。
木原氏は翌日、記者団に「自衛隊とその家族への敬意と感謝を申し上げたが、誤解を受けたとすれば遺憾に思う」と釈明した。
公職選挙法は閣僚を含むすべての公務員の地位を利用した選挙運動を禁じている。木原氏の発言が法の趣旨を逸脱しているのは明らかだろう。
軍部が無謀な戦争を主導した戦前の反省から、実力組織である自衛隊は文民統制の下で政治と厳密に一線を画すことが求められる。木原氏は政治家としても、こうした自覚を欠いている。
岸田文雄首相は野党が求める木原氏の更迭を否定する。
2017年に当時の稲田朋美防衛相が東京都議選の応援で「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」と演説した。
撤回しても防衛相としての資質を問われ続け、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣した陸上自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)問題などで辞任に追い込まれた。
同じ過ちを繰り返すつもりか。
政治側だけでなく、自衛隊内部でも文民統制を脅かす事態が18年に明らかになっている。
幹部自衛官が野党の国会議員に対し「国益を損なう」「ばか」などと暴言を吐いた。
安倍晋三政権が15年に集団的自衛権の行使を容認する安全保障法制を成立させ、自衛隊の活動を大きく転換させた時期と重なる。
岸田政権も防衛費の大幅増額や敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を推し進める。
文民統制のタガが緩んでいないか。防衛省・自衛隊のあり方を正すべきだ。
●岸田内閣の支持率下落 経営難に応える政策を 10/18
日本農業新聞が行った農政モニター調査で、岸田文雄内閣の支持率が下落し、不支持が支持を逆転した。生産資材高騰が長引き、経営が危機に陥る中、政府の農業政策に対する不満は高まっている。生産現場の声に改めて耳を傾け、実効性ある対策を迅速に打ち出すべきだ。
岸田内閣の支持率は前回5月のモニター調査では50・8%まで回復していた。だが、9月に実施した調査では支持率が6・3ポイント下がり、44・5%に。不支持率は54・4%と5・7ポイント上昇し、不支持が支持を上回った。
背景にあるのは、政府の農業政策に対する不満だ。農業政策について「大いに評価する」「どちらかといえば評価する」と答えた人は、前回に比べて4・5ポイント減り、計26・6%。一方、「どちらかと言えば評価しない」「まったく評価しない」は4・6ポイント増えて計62%と過半に上った。
生産現場が求めているのは、肥料や燃油など長引く生産資材高騰への対策拡充だ。ロシアによるウクライナ侵攻以来、農業経営への打撃は続き、離農に歯止めがかからない。今回のモニター調査でも、資材高騰が農業経営に「影響がある」との回答は85・2%に上った。
問われるのが、物価高騰に対して政府が月内にもまとめる経済対策の中身だ。岸田首相は現金給付や減税、社会保障負担の軽減に重点を置く考えを示す。農業分野では肉用子牛の価格低迷への対策、猛暑による米の等級低下といった課題への支援策も盛り込む方針だ。国民に必要な事業はしっかりと打ち出すべきだ。
政府は今後、経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案を編成し、20日に始まる臨時国会に提出する。生産現場が求める十分な内容になっているのか、与野党で検証し、議論を深めてほしい。
持続可能な農業生産には、農畜産物への適正な価格転嫁の実現も課題となる。今回のモニター調査でも、政府が進める食料・農業・農村基本法の見直しについて聞いたところ「生産コストの価格転嫁」を求める声は、最多の63%に上った。農水省も11日の会合で、牛乳と豆腐・納豆を対象に、それぞれ作業部会を設け、適正な価格形成に向けた仕組みづくりの検討を始めるという。
一方、生産現場の期待が大きい米や野菜、牛・豚肉は、作業部会の設置を見送った。米は銘柄別の価格差が大きく、コストも経営規模によって異なるなど生産・流通構造が複雑という理由だが、持続可能な農業に向けて経営の安定こそ最も優先すべき事項だ。弱体化が進む生産基盤をどう食い止めるか。岸田政権の喫緊の課題である。 

 

●また竹中平蔵が儲ける?増税●●メガネ「ベビーシッター割引券配布再開」 10/17
いかにも「裏」がありそうな話である。「増税●●メガネ」というニックネームがすっかり定着した岸田首相は16日、ベビーシッター使用料の一部を補助する「ベビーシッター割引券」の発行を17日から再開すると表明した。
この割引券は、ベビーシッターを利用した会社員に対し、子ども1人につき1日最大4400円が補助される仕組み。財源には企業から徴収した「子ども・子育て拠出金」が当てられ、こども家庭庁が支援事業として「全国保育サービス協会」を通じて行っている。今月2日に配布上限を超えたため発行を停止していた。
SNS上で上がる「パソナへの利益誘導」を疑う声
この割引券の再配布について、視察先の江東区で「働く親の皆さんが仕事と育児を両立できる環境を整えるためにしっかり取り組みたい」と語った岸田首相だが、年内とも囁かれる解散総選挙に向けた、主婦層や子育て世代に対する「支持率アップ策」との見方も多い。さらにX(旧ツイッター)には、竹中平蔵氏が昨年まで取締役会長を務めていた「パソナグループ」が展開するベビーシッター事業への便宜を疑うポストが溢れた。
その他、「「ベビーシッター割引券」のニュースを見て『どうせ自公維とズブズブの企業が優遇されるんだろ』と思っていたら、そのまんまパソナの中抜き事業じゃねーか」「パソナにカネが流れる仕組み?」「ベビーシッターの派遣まさかパソナ関係してないよね」……支持率アップどころか、ネット上に「パソナ中抜き疑惑」が溢れる結果となっている。
自民党埼玉県議団による「虐待禁止条例案」との関係性を疑う声も
さらには、先日当サイトでも取り上げた自民党埼玉県議団による「虐待禁止条例案」とベビーシッター割引券の関係性を疑う声までもがポストされた。
選挙前の支持率アップ工作に加えてパソナへの便宜供与疑惑までもが浮上した増税●●メガネ政権。不足することになるであろうその財源は、すでに勝ちを見据えている選挙後にステルス増税もしくは消費増税でまかなうおつもりなのか。
報道によると、すでに配布された39万枚のうち19万枚が利用されていないというベビーシッター割引券。事実、預けることを躊躇する親も多いのが現状だ。そのような事業に財源を充てるのならば、いっそ所得減税をお願いできないものか。もちろん法人税アップでも大歓迎だ。
●日本閣僚の靖国神社参拝に…徐坰徳教授「近隣諸国を無視」 10/17
西村康稔経済産業相がA級戦犯が合祀された靖国神社を参拝したことに対し、誠信女子大の徐坰徳(ソ・ギョンドク)教授が「韓国や中国など近隣諸国を無視するものだ」と批判した。
徐教授は17日、フェイスブックで「日本の過去の侵略戦争を擁護する行為」とし、このように指摘した。続いて「今日から19日まで秋季例大祭が開かれる。日本の政治家がまたどんな行為をするのか注視しなければいけない」とコメントした。
西村経済産業相は16日、靖国神社を参拝した後、記者らに対し「国や家族を思い、戦禍に倒れた英霊の安寧をお祈りした」と伝え、私費で玉串料を奉納したことを説明した。
17日には新藤義孝経済再生担当相が靖国神社を参拝した。岸田文雄首相は「内閣総理大臣 岸田文雄」の名前で、供え物の「真榊」を奉納したと、共同通信が報じた。岸田首相は2021年の首相就任以降、靖国神社を参拝せず、供え物を奉納している。今年の秋季例大祭期間にも参拝はしないという。
最近靖国神社などに対する現場調査のために東京を訪問した徐教授は「あちこちで旭日旗商品がたくさん販売されていた」とし「日本で旭日旗を自分たちが起こした戦争時に使用したことを自ら認めるものだ」と指摘した。
続いて「日本外務省が制作した旭日旗広報映像では、第2次世界大戦と太平洋戦争などで旭日旗を『戦犯旗』として使用したという説明だけを抜いて今まで世界に広報している」と伝えた。
徐教授は「靖国神社と旭日旗の歴史的な意味を世界の人たちに正確に知らせるグローバル広報キャンペーンをさらに強化していく」とし「日本が歴史を歪曲すれば我々は真実を知らせなければいけない」と強調した。
靖国神社は明治維新以降に日本起きた内戦と日帝が起こした多くの戦争で死去した約246万6000人の英霊を合祀している。極東国際軍事裁判(東京裁判)で処刑された東条英機元首相ら太平洋戦争のA級戦犯14人も含まれている。 
●岸田内閣発足2年 生活守る政策が前進 10/17
岸田政権の2年間で、日本経済は回復傾向が目立つ。コロナ禍から経済活動が正常化し、円安が企業の業績改善を後押し。物価高が続く中、賃上げも着実に進む。さまざまな経済指標には「30年ぶりの高水準」「過去最高」などが並ぶ。
例えば、国内総生産(GDP)は、2023年4〜6月期の実質成長率(2次速報)は前期比1.2%増、年率換算で4.8%増。実額は558.6兆円と過去最高だった。
主な要因は、大企業を中心とした収益の改善。特に、製造業では、足元で1ドル=149円台で推移する円安を追い風に、輸出が大幅に増えている。
賃上げも進む。今年の春闘の賃上げ率(連合最終集計)は3.58%と、30年ぶりの高水準に。このうち中小企業も3.23%と着実に伸びている。
今年3月には公明党が推進してきた、政府と労働団体、経済界が賃上げを話し合う「政労使会議」が8年ぶりに開催された。公明党が積極的に賃上げを後押しした結果、23年度の最低賃金は全国加重平均で初の1000円を突破。引き上げ額も過去最高を更新した。
一方、生活に大きな影響を及ぼしているのが物価高騰だ。公明党の主張を受け、政府は電気・都市ガス代、ガソリンなど燃油代の補助を23年末まで継続。朝日新聞の世論調査では、補助継続を「評価する」との回答が73%に上った。
税収、過去最高を更新
こうした企業業績の回復、賃上げ、物価高などを反映して、国の22年度の一般会計税収は71兆1374億円と3年連続で過去最高を更新した。他方、急激な物価高に賃上げが追い付かず、実質賃金は依然としてマイナスの状況下にある。経済再生を軌道に乗せるため、物価高を上回る持続的な賃上げとともに、税収増を国民に還元するための効果的な取り組みを含めた、新たな経済対策の実施が急がれる。
エネルギー代補助は妥当
明治大学 飯田泰之教授「物価高の中でも電気やガス、燃油といったエネルギー価格の高騰は、人々の生活、そして産業にも影響が出る。公明党も推進した政府の価格抑制策の継続は、家計だけでなく、企業にも広く裨益しており評価できる。特に、ガソリンや灯油の使用量は地域によって偏りがあるが、現行の燃油補助制度はこれに対応できており、これらの施策には妥当性がある。また、公明党は中小企業の賃上げに力を入れているが、地域の中心にいる企業を支え、日本の未来を担う将来の大企業を育てることにもつながり、大きな意義がある。賃上げで人材を集める、成長志向の企業に対する支援を充実させてほしい。賃金に関しては、労働者の移動が活発な国ほど上がりやすい。日本も本格的に賃上げが進むよう、雇用の流動化を促す政策も進めてもらいたい。」
●ザイム真理教≠フ詭弁に要注意 「税収増を還元」岸田首相の方針 10/17
イスラエルとパレスチナの紛争が緊迫度を高めている。パレスチナ・ガザ地区を実効支配している武装組織のハマスが、イスラエルへのロケット弾攻撃や戦闘員による領土侵入を行い、民間人を多数殺害し、100人以上を誘拐した。
イスラエルはガザ地区に対して報復の空爆を行い、さらに地上戦の準備が整ったと報道されている。ハマスを支援するイランなど中東諸国とイスラエルとの緊張も増しているため、原油先物価格などが一時高騰した。
今後の展開次第では、「石油ショック」的な事態もあるかもしれない。ウクライナ戦争が長期化し、中国の失速などもあり、世界経済の先行きがさらに不透明化することは避けられない。
日本ができることは、経済面では政府と日銀が協調して国民生活を安定化させることだ。岸田文雄政権が現在策定している補正予算が重要な意味を持つ。「経済成長の成果の適切な還元」を目的にした「思い切った対策」が本当にできるのかどうかが試されるだろう。だが、この時に大きな障害がある。ザイム真理教≠セ。不景気でも緊縮を追求する財務省が立ちはだかる。
最近では、鈴木俊一財務相が、「税収増を還元する」とする岸田首相の方針に対して、「十分な財源的な裏付けがあるとは思っていない」と驚くべき発言をした。首相の予算編成の方針に、閣内から平然と異議を唱えるのがザイム真理教の姿だ。財務省は首相や国民の上に立っているという認識だろうか。
鈴木財務相は、税収増は2022年度のものに限るという認識を示している。22年度の税収増は約4兆円だ。そこにコロナ対策での予備費などを景気対策に振り替える金額が4兆円。合わせて8兆円程度だ。日本経済の総需要不足が最大で20兆円と推定されるので、これだけではとても足りない。
鈴木財務相は、できるだけ補正予算を絞りたいのだろう。だがそんなことをすれば日本経済の安定した成長には遠い。ちなみに鈴木氏は、特定の経済観を持っている政治家とは思えない。財務省の台本≠読んでいるだけではないだろうか。
最近、ザイム真理教批判が効いてきたのか、「財務省にはスーパー権力はない。権力があればこんなに財政赤字が膨大にならない」という識者の声を聞く。それは違う。財務省はそのスーパー権力で、不況であっても財政緊縮を時の政権に強要することで日本経済を失速させ、税収も大きく減少させることで、自ら財政赤字を拡大させてきたのだ。
ザイム真理教はいろいろな詭弁を使う集団だ。国民は騙されないように常に監視が必要だ。
●経済対策めぐる自民提言案判明 給付盛り込む一方、減税は今後検討へ 10/17
政府が今月末にまとめる経済対策に向けた自民党の提言案が明らかになりました。低所得世帯への給付措置を求める一方で、所得税などの減税措置については盛り込まない方針です。
提言案では、ガソリンや電気・ガス料金などの補助金の継続や物価高対策のための地方交付金の拡充、賃上げに取り組む中小企業への金利の低減措置の導入などを求めています。
また、過去の給付措置を参考に低所得世帯向けの支援を検討することや共働き世帯などの就労時間を長くすることで所得を増やせるよう家事負担軽減サービスの導入を促進することなども盛り込んでいます。
自民党内からは消費税や所得税の減税を求める声も出ていましたが、今回の提言では盛り込まず、今後、改めて検討する見通しです。
17日、最終調整したうえで岸田総理大臣に提言する予定です。
●公明代表が岸田首相と会談「所得税減税は見送ったわけではない」 10/17
岸田首相と公明党の山口代表は17日、首相官邸で昼食を共にした。この中で山口代表は、政府が策定中の経済対策について、公明党の提言を踏まえて検討するよう要望し、岸田首相は与党の提言を受けとめて取りまとめる考えを示した。
山口代表は会談後、記者団に対し、公明党の経済対策の提言に関して、所得税減税を見送ったわけではないとの考えを示し、「税の話は年末に税調の議論をしないといけない。そのことを踏まえて議論していく」と述べた。
●「偽減税」確定なら国民の怒り爆発♀ン田政権、所得減税見送りか 10/17
政府が今月中に取りまとめる総合経済対策をめぐり、自民、公明両党が所得税減税を提言しない見通しとなった。岸田文雄首相は「税収増を国民に還元する」として減税方針を打ち出していたが、与党の提言を受けて前言を翻すのか。報道各社の世論調査では、経済対策への不信感から内閣支持率が過去最低となっている。いわゆる「偽減税」が確定すれば、国民の怒りが爆発しかねない。
「国民の暮らしや家計を直接支えるため思い切った施策を求める」
自民党は17日にも岸田首相に提言を提出する。前日判明した提言案には、物価高への対応を、こう記していた。
党内で浮上していた「所得税減税」は見送られた。即効性に欠けるうえ、財政規律を重視する観点から慎重論も根強かったという。公明党も所得税減税に言及しない方向で調整に入った。
提言案には、過去の給付措置を参考にした低所得世帯向けの支援検討のほか、ガソリンや電気・都市ガスの激変緩和措置の継続や、地方交付税の拡充といった物価高対策が盛り込まれていた。
岸田政権の方向性に沿った提言案だが、国民の期待値は低い。
報道各社の世論調査では、内閣支持率が相次いで「発足以来最低」を更新している。朝日新聞が17日朝刊で報じた世論調査(14、15日実施)でも、支持率は前回調査から8ポイント下落して29%となった。
産経新聞・FNN(フジニュースネットワーク)が16日公表した調査も過去最低の35・6%だった。経済対策には62・2%が「期待しない」と答えた。税収増による国民還元≠フ使途は、51・7%が「減税」を求めている。
自公与党の「所得税減税」見送りをどう見るか。
岸田政権の減税策を「偽減税」と命名した早稲田大学公共政策研究所招聘研究員の渡瀬裕哉氏は「与党側から浮上した所得税減税案は、経済対策への世論の批判が強いなかで、『試しに言ってみた』という印象を受ける。その他の減税案も、同じ調子で見送られる懸念が拭えない。法人税、所得税、消費税の『基幹3税』の税率を下げる対策をとらないと顕著な景気浮揚効果は見込めない。政治日程や、経済の先行きすらも見通していない。岸田内閣の政権担当能力への疑念も増し、支持率低下にさらに拍車をかけかねない」と語った。
●日本閣僚の靖国神社参拝に…徐坰徳教授「近隣諸国を無視」 10/17
西村康稔経済産業相がA級戦犯が合祀された靖国神社を参拝したことに対し、誠信女子大の徐坰徳(ソ・ギョンドク)教授が「韓国や中国など近隣諸国を無視するものだ」と批判した。
徐教授は17日、フェイスブックで「日本の過去の侵略戦争を擁護する行為」とし、このように指摘した。続いて「今日から19日まで秋季例大祭が開かれる。日本の政治家がまたどんな行為をするのか注視しなければいけない」とコメントした。
西村経済産業相は16日、靖国神社を参拝した後、記者らに対し「国や家族を思い、戦禍に倒れた英霊の安寧をお祈りした」と伝え、私費で玉串料を奉納したことを説明した。
17日には新藤義孝経済再生担当相が靖国神社を参拝した。岸田文雄首相は「内閣総理大臣 岸田文雄」の名前で、供え物の「真榊」を奉納したと、共同通信が報じた。岸田首相は2021年の首相就任以降、靖国神社を参拝せず、供え物を奉納している。今年の秋季例大祭期間にも参拝はしないという。
最近靖国神社などに対する現場調査のために東京を訪問した徐教授は「あちこちで旭日旗商品がたくさん販売されていた」とし「日本で旭日旗を自分たちが起こした戦争時に使用したことを自ら認めるものだ」と指摘した。
続いて「日本外務省が制作した旭日旗広報映像では、第2次世界大戦と太平洋戦争などで旭日旗を『戦犯旗』として使用したという説明だけを抜いて今まで世界に広報している」と伝えた。
徐教授は「靖国神社と旭日旗の歴史的な意味を世界の人たちに正確に知らせるグローバル広報キャンペーンをさらに強化していく」とし「日本が歴史を歪曲すれば我々は真実を知らせなければいけない」と強調した。
靖国神社は明治維新以降に日本起きた内戦と日帝が起こした多くの戦争で死去した約246万6000人の英霊を合祀している。極東国際軍事裁判(東京裁判)で処刑された東条英機元首相ら太平洋戦争のA級戦犯14人も含まれている。
●解散命令請求に旧統一教会側が“猛反論”  10/17
2022年7月に起こった、安倍総理銃撃事件。これをきっかけに、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)における「高額献金」「霊感商法」「政治家との関係」など、さまざまな問題が浮き彫りに。以降、被害者へのヒアリング、史上初となる質問権の行使で教団に組織運営や献金について報告を求め、実態の把握に努めてきた文部科学省。13日、旧統一教会に対する解散命令を東京地裁に請求し、受理された。
教団はどうなるのか。被害者や宗教をアイデンティティとする2世信者などにはどのような対処が必要なのか。13日の『ABEMA Prime』で、長く教団を取材してきたジャーナリスト・作家の鈴木エイト氏とともに考えた。
鈴木氏は「ようやくここまできたかという感触と、国がどのように認定するかがはっきりした。本来であれば、もっと早い段階で規制をかけたり、解散命令を請求すべきだったと思う。ただ、その歪んだ構造を是正するような形で、国が1年かけて動いたということは大きい」とコメント。
刑事事件が根拠ではない解散命令請求は今回が初。「オウム真理教と明覚寺は、幹部らが刑事罰を受けている。旧統一教会に関しては、民法上の不法行為を積み上げてやってきているので証拠も膨大になり、そこを裁判所がどう判断するか。盛山文科大臣の発言からも、かなり綿密にやっていることがうかがえる。解散命令が通る決定が出る確率が相当高いと思っている」との見方を示す。
旧統一教会側は「気がつくと私たちはマスコミ報道によって“絶対悪”のモンスターのようにされていました」「国から解散命令を受けるような教団ではないと確信しております」との見解を発表している。
鈴木氏は「裁判例は減ったとしても、そこに至るまでに和解や交渉で解決する案件も相当あり、被害は継続してきたと見るほうが普通だ。教団が『改革を進めている』と言っても、非難を躱すためとか、間に合わせの部分がどうしても透けて見えてしまう。本当に反省をしていたら、解散命令請求が出た後に、敵対的なメディアのせいにするような声明を出すわけがない。そのあたりの欺まんがまだまだあると思う」とした。
では、現役信者へはどのような対処が必要なのだろうか。「何も悪いことをしていない信者・2世信者たちが、偏見の目を浴びたり、差別にあうのは決してあってはならないこと。この先、任意団体になったとしても、“国から解散命令請求を出された団体の信者”ということで、穿った目で見られるかもしれない。根本は人権をいかに守っていくかというところなので、そういう方たちへの目配りが一番重要だと思う」と述べた。
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「信じてはならない宗教団体という話ではなく、あくまで税優遇といった特権が剥奪されるだけだ。オウム真理教もその後名前を変えて『Aleph(アレフ)』や『ひかりの輪』になっている。信者の人もそのままコミュニティ活動を続けられる」と述べた。
韓国教団本部は声明で、解散命令請求の決定について「深く遺憾の意を表明。公正に審査され、判断されることを願う。日本の信徒たちの幸せと社会的信頼を守れなかったことを非情に残念に思う。本部の立場として、道義的責任を実感している」、今後について「日本だけでなく、世界各国の家庭連合にといて、信徒とその家族の方々が疎外感や不幸を感じているのではないかと、改めて徹底的に検討。日本社会から信頼を得られる新しい教会文化をともに作っていく」としている。
鈴木氏は「韓国の教団本部はかなり財政難に陥っていて、分派との裁判闘争に敗れたことによって、1000億円ほどの負債を抱えていると言われている。そんな中で、日本から年間数百億円入っていた定期収入がなくなってきており、ジリ貧状態。危機感を抱いていると思う。日本の教団には1000億円近くプール金があると言われているので、それをどういうかたちで韓国に移動させるかというお金の動き、財産保全の部分は注目して見ていかないといけない。また、教団本部の『道義的な責任を感じる』という文面。日本の幹部、例えば会長を更迭するか辞任させ、謝罪会見なども開いて、表向きは反省の弁を述べて幕引きを図ろうとしているんじゃないかという情報もある。今後どういう人事が行われるかも要注目だ」と指摘した。
ジャーナリストの岩田明子氏は「被害者補償のために財産保全をする方向性はいいと思う。ただ、解散が確定する前の段階で財産保全ができてしまうと、対立している宗教団体同士がお金目当てで、例えば、個人や弁護士でも解散請求はできるのではないか。そうした争いが起こらないように、精緻に議論を積み重ねる必要があると思う」とコメント。
鈴木氏は「確かに利害関係人も請求できるが、そのあたりはこれからの議論の中で、“こういうケースの時にはこうなる”というところを詰めていくべきだ。当然、特定の宗教団体だけを網にかける法律はできない。“海外に本部があって年間数百億円を送っているような団体”など、いろいろな枠組み・項目を作っていくことによって、相当な不法行為をしている反社会的な団体だけを規制するような法律にすることも可能だと思う」と述べた。
宗教法人解散が最高裁で確定するまで、明覚寺は約3年、オウム真理教は7カ月がかかっている。旧統一教会については「地裁の決定で1年ぐらい、そこからまた2カ月ぐらいで高裁、最高裁。高裁の決定の時点で精算人が選定されて確定はするので、1年と2〜3カ月ぐらいが現実ではないか。もう少し早く、1年以内に決着する可能性もあると思っている」との見通しを示した。
●木原防衛相「職責に全力を」=茂木自民幹事長 10/17
自民党の茂木敏充幹事長は17日の記者会見で、木原稔防衛相が衆院長崎4区補欠選挙で自民党候補を応援することが「自衛隊の苦労に報いることになる」と発言したことに関し、「発言は速やかに撤回した。厳しさを増す安全保障環境の下、職責に全力で取り組んでほしい」と述べた。 
●木原防衛相「引き続き職務にあたる」 “自衛隊”発言での辞任を否定 10/17
木原稔防衛相は、17日の会見で、選挙応援で自衛隊に言及して支持を訴えた問題について、「引き続き緊張感を持って職務にあたっていきたい」と述べ、辞任を否定した。
木原氏は、衆議院の補欠選挙の自民党候補の応援演説で、「しっかり応援していただくことが自衛隊ならびに家族の苦労に報いることになる」と発言し、野党から、「政治的中立を侵す」などとして罷免の要求が出ていた。
木原氏は会見で、「一議員として、自衛官と家族への敬意と感謝を申し上げたもので、自衛隊を政治的に利用するような意図はない」とした上で、「誤解を招くのであれば撤回したいと述べ、撤回した」と述べた。
そして、「防衛力の抜本的強化をはじめ様々な重要課題に全力であたることが、岸田内閣の一員としての私の責務だ」として、引き続き防衛相の職務を続ける考えを強調し、辞任を否定した。
●石破氏が木原防衛相発言に「ふさわしくない。自衛隊の政治利用は注意を」 10/17
木原稔防衛相が、衆院長崎4区の補欠選挙の自民党候補の応援演説で「しっかり応援していただくことが、自衛隊の苦労に報いる」と発言し、自衛隊の政治利用だと野党などから批判が出ていることをめぐり、石破元防衛相は「選挙の応援で熱が入っちゃったかなと思うが、これから十分気をつけていただきたい」と述べた。
石破元防衛相は17日、FNNの取材に対し「大臣は発言を撤回している。それはそれでよしとせねばならん」と述べた。
自衛隊員の政治的行為の制限は、自衛隊法61条で定められている。
これに関し石破氏は、「木原防衛相の発言は、直接61条に触れるわけではないが、ふさわしいものではない」と言及。「自衛隊は、地域においてものすごく人数の多い集団。発言によって結果が左右されることはあり得る。どの党が政権をもっていようと、自衛隊の政治利用は注意をしないといけない」との考えを示した。
●首相「ホタテ販路拡大」 中国輸入停止で支援強調 10/17
岸田文雄首相は17日、北海道の鈴木直道知事や道漁業協同組合連合会会長らと官邸で面会した。鈴木氏らは、東京電力福島第1原発の処理水放出に反発した中国による日本産水産物の輸入停止を踏まえ、打撃を受けたホタテやナマコ輸出の促進へ支援を要請。首相は「水産業関係者を守るという方針を貫徹しなければいけない」と述べ、水産物の販路拡大に取り組む姿勢を強調した。
鈴木氏らが用意した北海道産ホタテの刺し身も試食し「肉厚感、なめらかさ、舌触りが豊かだ」と太鼓判を押した。
政府は中国の輸入停止措置を受け、国内消費の拡大や輸出先の転換対策など支援策をまとめている。
●支持率最低 「無風政治」を打破せよ 10/17
共同通信社が14、15両日に実施した全国電話世論調査で、岸田内閣の支持率は過去最低の32・3%まで落ち込んだ。
全国紙3紙(朝日・毎日・読売)やNHKの世論調査も同様の傾向を示している。朝日と毎日の調査では不支持率が60%を超えた。
9月の内閣改造が政権浮揚につながっていないだけでなく、岸田文雄首相が旗を振る経済対策についても、極めて厳しい評価が示された。
政府は今月中に経済対策を取りまとめる予定だが、共同の調査では「期待しない」との声が若年層、中年層とも60%を超える。
「具体性がなく場当たり的」との批判は自民党の中からも上がっている。
岸田首相は何がしたいのだろうか。「安倍政治」の呪縛から抜け出せず、政策面でも人事面でも迷走が目立つ。
防衛費の大幅増額で増税方針が打ち出されたかと思うと、解散風が吹き始めた途端、今度は与党から減税の大合唱が起こった。
内閣改造では、女性ゼロの副大臣、政務官人事が批判を浴びた。首相が語る言葉は官僚言葉が多く、国民に届いていない。
細田博之衆院議長の辞任表明の記者会見も、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点について曖昧な説明に終始し、疑念を膨らませた。
だが、支持率が低迷し続けているにもかかわらず、日本の政治には緊張感が乏しく、無風状態のまま。誰も次の選挙で政権交代が起こるとは思っていないからだ。

高度成長期の日本は「経済一流、政治三流」といわれた。しかし今や1人当たりGDPは先進7カ国(G7)の最下位に転落している。
G7各国の平均賃金は上昇しているのに、日本はほぼ横ばい。非正規雇用の増加で国内の経済格差も広がった。
有権者が重視する政策は「物価・経済対策」である。その政策に期待が持てないという人が多いにもかかわらず、政権交代の風はどこからも吹いてこない。
解散権は政権維持のための道具として使われ、与党の都合のいいように「解散の大義」が語られる。
小選挙区制の下で野党が政権交代を実現するためには候補者の一本化が必要だが、野党共闘は完全に行き詰まってしまった。
日本の政治が無風状態なのは、岸田政権の支持率が低迷しても、野党がばらばらで、政治の展望を示しきれないからである。

政権交代がなければ政治に競争原理が働かず、政治は活力を失い、よどんでくる。
政治におごりが生じ、それをチェックする機能さえ失われれば、民主主義そのものが空洞化せざるを得ない。
補正予算案を審議する臨時国会は20日、召集される。
議論すべき課題は山積している。岸田首相は、支持率に表れた国民の声を正面から受け止め、掲げた政策をきちんと説明すべきである。
本格的な国会論戦を通して「無風政治」を打破することを政府と与野党に求めたい。
●日本学術会議と政府 任命拒否解決し正常化を 10/17
政治家と科学者がにらみ合っているようでは、日本が直面する課題の解決はおぼつかない。
日本学術会議の新体制が始動した。会員の半数が改選され、新しい会長に光石衛(まもる)・東京大名誉教授が選出された。
菅義偉前首相は3年前、法学者ら6人を任命しなかった。学術会議は理由を開示し任命するよう求め続けた。だが菅氏は応じず、対立が深刻化した。
岸田文雄首相は今回、学術会議が提出した105人の候補全員を任命した。ここには6人は含まれていない。
3年前に任命されるべきだった人々を新会員候補とするのは筋が通らない、というのが学術会議の主張である。光石会長は、任命拒否問題は解決していないとの立場を示している。
一方の岸田氏は「当時の首相が判断したもの」と、「我関せず」の態度を決め込んでいる。
懸念されるのは、対立の長期化による機能不全だ。
不誠実な対応でうやむやに済ませようとしている政府に責任があることは言うまでもない。学術会議にも事態打開に向けた取り組みが求められる。
8月末には学術会議のあり方に関する政府の有識者懇談会が発足した。国を代表するアカデミーの役割や、使命を果たすのにふさわしい形態を探るという。
諸外国のアカデミーの運営形態は多様だ。王室や議会に属する組織もあれば、法人格を持ち、寄付金や公的資金で活動する組織もある。その国の成り立ちや歴史、文化と深く関わっている。
学術会議は長期的、俯瞰(ふかん)的な知見を政策に反映させる目的で1949年に新設された。国の機関だが独立性が法律で定められ、軍事研究や生命倫理などに関する見解を発信してきた。
政治との距離を保ちつつ、幅広く国民から支持される組織を目指さなければならない。
気候変動による環境悪化や災害の多発、安全保障環境の変化など、学術の知見が求められる政治課題は山積している。人工知能(AI)時代への対応も急務だ。
日本の針路を示す上で政府と学術会議の連携は欠かせない。正常化への道を模索する時だ。
●指名NGメディア!? 首相会見で“絶対に指名されない”日刊ゲンダイの矜持 10/17
指名されないゲンダイ記者
政治の節目に行われる首相の記者会見は、首相官邸の記者クラブ(内閣記者会)に所属していないメディアや登録済みのフリーランス記者も参加できる。ただ、コロナ禍以降、記者クラブ以外の記者は、抽選により毎回10人ほどに限定されている。
日刊ゲンダイは「日本雑誌協会(雑協)」に加盟しており、雑協を通じてほぼ毎回、参加を申し込んでいるが、抽選に当たるのは2回に1回。抽選に当たって出席しても、一度も質問できたことはない。どんなに挙手を続けても、司会を務める内閣広報官が指名してくれないのだ。
記者会見は「予定調和」だ。まず幹事社が質問し、記者クラブの全国紙や東京キー局の記者が複数人指名された後、海外メディア、地方紙、インターネットメディア、フリーランスと続き、最後に再び全国紙で終了する。幅広く質問を受けているように見えて、実際はパターン化されている。雑協の記者が質問できることはほとんどなく、ましてやゲンダイ記者は絶対に指名されない。どんな質問が飛ぶかわからないから怖いのだろうか。
正直、首相の記者会見はテレビやネットで視聴できるので、質問できないのにわざわざ出席するのは時間の無駄だが、参加しなければ権力側の思うツボだ。「常に見ているゾ」という意思表示のためにも、参加申し込みを続けている。
ある日、30代のゲンダイ記者が首相会見終了後に内閣広報官に話しかけようとしたら、広報官は無視して去っていったという。そこまで嫌わないでも……、と苦笑するしかない。
自民党議員・職員の懐の深さ
政権に厳しいスタンスを取るゲンダイ記者は自民党議員に煙たがられそうだと思うかもしれないが、実はそうでもない。自民党議員は案外、懐が深い。長く政権与党であるため、幅広い有権者を代表している意識が強いベテランになればなるほど分け隔てがない。かつての自民党には、権力は批判されて当然、との認識もあった。
それは自民党職員も同様で、政局や選挙取材などでいつも私に貴重な視点を与えてくれたのは、党本部や東京都連の職員だった。そこは組織を超えた人間同士の付き合い。いろいろと勉強させてもらった。
だが一方で、2012年末からの第2次安倍政権時代に自民党は劣化が進んだのではないか、という思いも持っている。庶民生活を顧みず、野党を軽視し、唯我独尊になっているのではないか。
政権発足から半年後の2013年8月19日発行のゲンダイ1面で、政治ジャーナリストの泉宏氏がこうコメントをしていた。
「佐藤内閣から40年政治を見てきましたが、いまは内閣も自民党内も『物言えば唇寒し』みたいになっている。つまり、誰もトップに逆らわない。こんな異様な状態は初めてです。かつては閣内にいても、首相に対し言うべきことはしっかり言う大臣がいた。『私は賛成できない』と辞任した閣僚もいました。それなのに、いまは情けないの一語です」
「自民党の3分の2は安倍さんのやり方に本音では反対ですよ。しかし、高支持率に加えて、野党がだらしないから、安倍政権は今後、最長5年8カ月の長期で続く可能性がある。だからみな、安倍さんに睨まれたら冷や飯を食わされる、と黙ってしまう。それでどの派閥も長いものに巻かれろになっているのです」
実際に、その通りになった。最長5年8カ月どころか、2期6年だった自民党総裁の任期を3期9年まで延ばし、7年8カ月の憲政史上最長の政権を築いた。政高党低と一強政治で、安倍首相は絶対的存在≠ノなり、その結果、自民党内の活力が大きく失われた。
([安倍晋三VS.日刊ゲンダイ「強権政治」との10年戦争]抜粋)
●「安倍さんはひどかったが、岸田さんはもっとひどい」支持率急落の岸田政権 10/17
“安倍氏以上に安倍的”といわれる理由
「日本の社会の中で一番権限が大きい人なので(総理大臣を)目指した」
「安倍さんはひどかったが、岸田さんはもっとひどい」
取材をすると幾人もの識者からこんな言葉が出てくる。その感覚に半分納得する一方で違和感も覚えた。ならば安倍氏はマシだったのか。選挙演説中の銃撃という非業の死を遂げたこともあり、安倍氏の行ってきた政治に対しての評価がオブラートに包まれてしまいそうな気がした。
例えば、大平正芳や宮沢喜一らの時代を知る年配の人になればなるほど、岸田氏がハト派の宏池会であることにかすかな希望を見ていた。安倍氏の強権路線を「軽武装 経済重視」のソフト路線に転換してくれるのではないかと期待していた。だが、財源も中身も不透明なまま、米国に促されるように防衛費倍増を決めるなどの裏切りに、「岸田さんはもっとひどい」に変わったという。
確かに岸田氏は、総理大臣として何をやりたいのか、2年経過してもよくわからない。かつて、「総理になったら最もやりたいこと」を問われ「人事」と答えた。総理になってからも、「どうして総理になろうと思ったのか」と尋ねた子どもに、「日本の社会の中で一番権限が大きい人なので目指した」と答えている。「国家観がない」「総理大臣がゴール」と言われる所以だ。
岸田氏本人は「俺は安倍さんもやれなかったことをやったんだ」と自負していると報じられた。安倍氏の元側近は「岸田さんは安倍さんのやり残し≠自分の手柄にしている」とこぼす。
本書で書いてきたように、日本の政治も経済も社会もダメにした元凶はやはり安倍氏だ。岸田氏はその延長線上にいるに過ぎない。しかし岸田氏は、安倍路線を確固たる信念を持って踏襲しているわけではないから、何事にも躊躇がない。逡巡がない。目の前の課題を淡々とこなす優等生の姿にも見える。だから怖い。
やっていることは「ミニ安倍政治」。現実に起きていることは「安倍政治の巨大化」。路線を敷いた安倍氏とそれを形にする岸田氏と、どちらがひどいのだろうか―。
「岸田首相が安倍氏以上に安倍的な政治を行っている」
安倍氏が亡くなって1年余。本人は不在なのに、もの言えば唇寒しの風潮や社会の分断は続き、「新しい戦前」への準備が進む。今も安倍政権時代が続いているかのようだ。
日刊ゲンダイの記事(2023年7月4日発行)で元経産官僚の古賀茂明氏がこう話していた。
「安倍氏はもういない。安倍派にも実力のある議員がいるわけでもない。それなのに、得体の知れない『安倍的なもの』が、ウイルスのように人々に伝染し続けている。安倍氏亡き後、このウイルスも勢いを失うかと思ったが、実際には安倍派的な政治家ではないと思われていた岸田首相が安倍氏以上に安倍的な政治を行っている。
一部の右翼だけでなく、世論も、例えば岸田政権が原発活用に転じたことについて『電気が足りないから仕方ない』、防衛費を増やすことも『安全保障環境を考えたら仕方ない』という空気になってきた。安倍氏が死去して1年。ウイルスの増殖は気づかぬうちにむしろ勢いを増し強くなっている」
安倍的なものが日本の政治や永田町にしっかり根を張り、朝令暮改で自分のない岸田氏によって、新型コロナウイルスのように自由自在に変異しながら増殖しているのが現状だ。知らず知らずのうちに罹患してしまわぬよう、ウイルスに抗い、世間にも大声でしつこく呼びかけていく。そんな地道な仕事を変わらず続けていきたい。
小さな光は地方議会で女性議員が増えたことだ。静かに地殻変動が起きている。これが国会へと広がっていくには、まだ時間がかかるかもしれないが、その時は間違いなく政治の景色が変わる。安倍的なウイルスを死滅させる原動力にもなっていくのではないか。
([安倍晋三VS.日刊ゲンダイ「強権政治」との10年戦争]抜粋) 

 

●野党「国民が幻滅」「退陣すべき」 岸田内閣支持率29%で過去最低 10/16
朝日新聞社が14、15日に実施した全国世論調査で、岸田文雄内閣の支持率が大幅に下落し、発足以来最低の29%となった。他の報道機関の調査でも同様の傾向となっており、野党は20日召集の臨時国会で攻勢を強める構えだ。
「首相は何をやりたいのかがわからない。国民が幻滅しているのではないか」
立憲民主党の泉健太代表は16日、朝日新聞の取材に支持率下落の要因をこう分析した。
泉氏は物価高は喫緊の対策が必要だったが、首相が「解散風」を吹かせたことなどから「経済対策の策定と(それを裏打ちする)補正予算案の提出が遅れている」と断じた。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令請求についても「政局的な扱いでこの時期になった」と指摘。政権維持優先の姿勢が国民に見透かされていると強調した。
泉氏と同様、首相の「その場しのぎの対応」「将来ビジョンのなさ」を指摘する声は多い。
日本維新の会の遠藤敬国会対策委員長は、記者団に「岸田政権は何かやってくれそうに思えない。減税があったとしても選挙目当てで、いずれ増税されるという不信感がある」。国民民主党の古川元久国対委員長も、経済対策や少子化対策を念頭に「具体的に何をどうするのかが出てこない」と苦言を呈した。
共産党の小池晃書記局長は会見で、「首相は衆院解散・総選挙というよりも、結果を受け止めて退陣すべきだ」と迫った。立憲幹部は「首相は支持率を上げるチャンスをことごとく潰してきた。もう上がることはないんじゃないか」と語り、野党に有利な状況と指摘。臨時国会で経済対策や教団問題など、政権の「弱点」を追及する方針だ。
●邦人退避「遅い」と批判 立民代表、日本政府の対応に 10/16
立憲民主党の泉健太代表は16日、イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突を受けた日本政府による邦人退避の対応を「遅い」と批判した。長崎県佐世保市で記者団に語った。韓国軍の輸送機が日本人51人を運んだのに対し、日本政府が手配したチャーター機は8人だった事実に触れ「一刻も早く退避したい方が51人いたことを政府が把握できていなかった」との見方を披露。「情報収集力や決断が足りなかった」と指摘した。
● ジェンダー平等を実現するために 日本の現状や個人にできることは? 10/16
SDGsの目標のひとつにも掲げられており、世界中が取り組んでいるジェンダー平等の実現。男女格差が大きいと言われる日本だが、現状はどのようになっているのだろうか。本記事では、日本のジャンダー平等の現状に触れながら、個人でできることを10個紹介していく。
そもそも「ジェンダー平等」とは
「ジェンダー(gender)」とは、社会的、後天的につくられ、獲得される性のことを指す。同じく性を表す言葉として「セックス(sex)」があるが、こちらは遺伝学的・生物学的なオス・メスを表す言葉だ。
現在の社会では、男性に向いている仕事や役割、女性に向いている仕事や役割など、個人の希望や能力ではなく「性別」によって、生き方や働き方などの選択肢が狭められてしまう場面がある。しかし、身体のつくりは違うものの、言わずもがな男女は平等だ。
「ジェンダー平等」とは、ひとりひとりが性別にかかわらず、平等で責任や権利、機会をわかち合い、あらゆる物事を一緒に決めることができることを意味している。
日本のジェンダー平等の現状
近年、世界中でジェンダー平等の実現向けて取り組みが行われている。ここからは、日本におけるジェンダー平等の現状について見ていこう。
日本のジェンダーギャップ指数はG7で最下位
ジェンダー格差(性別によって生じる格差)や、女性の経済、政治などへの参画実現度合いを知るための指標として、世界経済フォーラムが毎年発表している「ジェンダーギャップ指数」がある。これは、各国の現状を経済、政治、教育、健康の4つの観点から評価し、それぞれの平均値がスコア化されているものだ。
2023年のジェンダーギャップ指数ランキングにおいて、日本は125位と前年のランクより9位下がり、過去最低にランクダウン。G7(主要7か国)の中では、日本が最下位である。
日本の女性管理職の割合は国際的にみて低水準
日本は、ジェンダーギャップ指数における評価観点のうち、経済(労働参加率・同一労働における賃金・収入格差・管理職の男女比・専門技術の男女比)、政治(議会や閣僚など意思決定機関への参画・過去50年間の国家元首の在任年数における男女差)のスコアがとくに低い。
就業者に占める女性の割合は、44.5%。そのうち管理的職業従事者は14.8%にとどまっている。アメリカの就業者に占める女性の割合47.0%で中管理的職業従事者40.7%。フランスは48.5%中、34.6%であることに比べると、日本が低水準であることがわかるだろう。
社会的な地位では男性の方が優遇されやすい
内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」 (令和元年9月)によると、「男性の方が優遇されている」と考えている人は74.1%にものぼる。数値だけでなく、男女地位の平等感の低さを人々は実際に感じているといえるだろう。
男女別にみると、「男性の方が優遇されている」と回答した人は男性よりも女性が多い。性別を理由に、望んだ生き方や働き方、キャリアを叶えられない、ともどかしく感じている人は少なくないようだ。
ジェンダー平等とSDGs
SDGsの17の目標のうち、目標5に「ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられていることを知っているだろうか。
この目標では、「政治、経済、公共の場でのあらゆるレベルの意思決定において、完全で効果的な女性の参画と平等なリーダーシップの機会を確保する」といった社会的な目標や、「あらゆる場所で、すべての女性・少女に対するあらゆる形態の差別をなくすこと」「人身売買や性的・その他の搾取を含め、公的・私的な場で、すべての女性・少女に対するあらゆる形態の暴力をなくす」などが目標に設定されている。
そのほかにも、LGBTQ+といった性的マイノリティの人々が生きやすい社会にしていくことも目指している。ジェンダー平等を実現することで、SDGsの目標の達成につながり、多くの人がより暮らしやすい世界になるのだ。
ジェンダー平等のために個人としてできること
ジェンダーに関する問題は、政府や企業だけが取り組む話ではない。ジェンダー平等の実現に向けて個人にもできることはたくさんあるのだ。ここからは、ジェンダー平等のために個人でできることを、10個紹介していく。
ジェンダーバイアスについて調べる
「ジェンダーバイアス」という言葉を聞いたことがあるだろうか?「バイアス」とは偏見のこと。「ジェンダーバイアス」とは、「男の子は泣くものじゃない」「女の子なんだからお手伝いしなさい」といった、男性や女性の社会的な役割に対する固定観念のことを指す。
ジェンダーバイアスは、男女の格差を生む原因のひとつともいわれており、まずはどのようなことがジェンダーバイアスに当たるのか、無意識に持っていないかを調べることが大切だ。
家庭内にジェンダーバイアスがないか見直す
ジェンダーバイアスについて理解したところで、家庭内にジェンダーバイアスがないか見直して見よう。家事や育児、家族の介護をしても給与はもらえないが、会社で働くことと同様に重要な仕事だ。
女性ばかりが「家事全般に責任を持たなければ」と背負いすぎていないか、また男性ばかりが「家計を支えなければ」と感じすぎていないか、など協力して家庭生活を営むために、いま一度それぞれが抱える悩みや負担を話し合い、理解することが大切である。
家事や育児を分担する
家庭内で負担や悩みを話し合った上で、家事や育児を分担するのもジェンダー平等の実現に向けてできることのひとつである。それぞれの得意をいかして、できるだけストレスのない分担を見つけたり、掃除は場所ごとに頻度や担当を決めたりするなど、各家庭にとってベストな方法を考えてみよう。
最近では共働きの家庭も多いため、細々とした作業もリストアップして分担することで、女性の負担が軽減される。
職場内にジェンダーバイアスがないか見直す
家庭と同様に、当たり前になっているからこそジェンダーバイアスに気が付きにくいのが職場だ。
お客さんへのお茶出しや花瓶の水換えなど、「女性の方が得意」という思い込みや、昔からの慣習で女性に任せていることはないか、などあらためて見直す必要がある。当たり前におこなっていたことでも、意識的にジェンダーバイアスに気付き指摘し合うことで、少しずつ組織や社会の意識が変わっていくだろう。
「女の子らしい」「男の子らしい」という言葉を使わない
家庭や職場でのジェンダーバイアスのほかに、気をつけたいのが子供に対する発言だ。何気なく「ピンクの方が女の子らしい」「こっちの方が男の子らしい」などの言葉を使っていないだろうか。
性別ではなく、それぞれの好みや“らしさ”を尊重するべきであり、「女の子らしい」「男の子らしい」という言葉で「そうならなくてはいけない」と思い込んでしまったり、窮屈な思いしたりする子供も少なくない。
家庭ではもちろん、学校など教育の場でもこうした言葉が使われていないか、注意してみよう。
職業選択についての声がけを意識する
将来の夢を語る子供や、中学生や高校生、大学生といった進路を考える学生への声がけも、ジェンダーバイアスがないよう意識したい。
職業選択は自由であり、「男らしくない」「女らしくない」という大人の固定概念や偏見で生き方を狭めてしまうことがないように、常に気をつけることが大切だ。
LGBTQ+の人々を特別視しない
LGBTQ+とは、性の多様性であり特別なことではない。しかし少数派であることから、年齢や地域に関わらず、世界各地で人権侵害や差別、迫害を受けることも多くある。
LGBTQ+の人々が生活しにくいと感じている仕組みや問題を解決していくことはもちろん大切だが、まずは「LGBTQ+であることは特別なことではない」ことを理解することが重要だ。その上で、子供たちにも伝えていくことが、未来のジェンダー平等の実現に向けてできることのひとつである。
積極的に政治に参加する
ジェンダー平等を掲げている候補者や、ジェンダー意識が高い候補者に投票することも個人にできることである。
「ジェンダー平等が実現したらいいな」と思っているだけでなく、積極的に政治に参加し、その思いを行動に移していこう。
世界のジェンダー問題を知る
日本におけるジェンダーバイアスや男女格差について触れてきたが、世界でも耳を塞ぎたくなるようなジェンダー問題に苦しんでいる人々が多くいる。
「女の子だから」という理由で教育が受けられなかったり、10代で望まない結婚をさせられたり。アフリカや東南アジアなどの一部では、女性器切除という女性の外性器の一部もしくは全体を切り取る行為が社会的な慣習としておこなわれているという。
身の回りのジェンダーバイアスと向き合いつつ、世界全体のジェンダー問題にも目を向ける必要があるだろう。
ジェンダー平等を目指す活動団体に寄付をする
発展途上国などでは経済的、宗教・社会制度の問題から、女性が格差や暴力、望まない制度の犠牲になることも多い。子どもに望まない結婚をさせ、その引き換えに家族や親戚が金品を得るという人身売買に等しい行為がおこなわれ、それによって未発達の児童が妊娠し生命の危機にさらされていることもある。
そうした厳しい状況のなか生きている発展途上国の女性たちを支援する活動団体に寄付をする、という形でもジェンダー平等に貢献することもできる。
身近なところから、ジェンダー平等への一歩を
ジェンダー平等といっても、実現に向けて解決すべき問題は多岐にわたる。まずは、家庭や職場、そして自分自身の発言など、身近なところのジェンダーバイアスを見直してみよう。ひとりひとりが一歩を踏み出し行動することで、日本、そして世界のジェンダー平等実現へと少しずつでも近づいていくはずだ。 
●経済政策に期待薄、岸田政権に厳しい判定≠らわ 10/16
各報道機関の最新の世論調査で、岸田文雄政権に対する厳しい判定≠ェ如実となった。共同通信の世論調査では内閣支持率が32・3%と内閣発足以降最低で、不支持率は52・5%と過去最高だった。「増税」イメージを払拭しようと、「減税」を含む新たな経済対策を打ち出した岸田政権だが、国民の政策への不信感は根強いようだ。
岸田首相は先月25日、物価高対策や賃上げ支援などを柱にした経済対策で「税収増など成長の成果を国民に還元する」と宣言し、「減税」方針を打ち出したが、偽減税≠ニ批判も出ている。
共同の調査では、この経済対策について聞いたところ、「期待しない」が、「あまり期待しない」を含めて計58・6%を占めた。一方、物価高対策を念頭にした所得税減税については、63・2%が「必要」と答えており、世論の負担感は切実のようだ。
毎日の調査でも、内閣支持率は25%で、発足以来最低だった前回と変わらず、低空飛行が続いている。
経済対策については「期待しない」が63%と、「期待する」の21%を大きく上回った。岸田政権発足後の暮らし向き≠ナは、60%が「悪くなった」と答え、「良くなった」はわずか3%だった。
読売の結果も厳しい。内閣支持率は1ポイント減の34%で過去最低を更新し、不支持は1ポイント減の49%だった。経済対策について「期待できる」は21%にとどまる一方、「期待できない」は73%にのぼった。
物価高をめぐっては、家計負担を「感じている」とする回答が、「大いに」「多少は」と合わせて86%となった。政権の目玉政策である賃上げについては75%が実感が「ない」と回答した。
岸田首相が「国民還元」と「減税」方針を打ち出して以降、自民党幹部からは同調する発言が相次ぎ、与野党で追随する反応が続出している。
ただ、自民党の森山裕総務会長は15日、所得税減税について「過去にもやったことがあり、その時の検証結果もよく見ながらということだ。自民党が慎重であることは正しい方向だ」と強調した。森山氏は「財政規律をしっかり考えながら対応していくことが大事」とも述べ、国民の負担軽減には後ろ向きな姿勢を見せたとの受け止めもある。
厳しい支持率低迷が続く情勢をどう見るのか。
政治評論家の有馬晴海氏は「新たな経済対策は中身が薄い。新型コロナによる疲弊感が根強いなか、国民は政権の発信する『給付』『負担軽減』が、支持狙いのアピール≠セと肌感覚で受け止めており、政治への無関心、期待喪失が進んでいる。支持がこれ以上目減りする余地は少ないが、岸田首相の存在感は薄く、今後も低調な推移が続くだろう」と分析した。
●岸田首相の経済政策大不評%煌t支持率ついに過去最低 10/16
臨時国会召集を20日に控え、岸田文雄首相の衆院解散・総選挙をめぐる判断が注視されている。岸田首相が唐突に示した「減税方針」を発端に、与野党では国民還元アピールが過熱している。政府は13日、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の解散命令を東京地裁に請求し、解散のハードルを1つ越えたとされる。一方、イスラム原理主義組織ハマスの大規模テロを受けた、岸田政権の危機管理には疑問も指摘されている。ベストセラー作家の百田尚樹氏と、ジャーナリストの有本香氏が立ち上げた「日本保守党」の動きが注目されるなか、岸田首相は伝家の宝刀を抜くのか。また、解散風を収束させるのか。「岸田カレンダー」を探った。
「先送りできない問題に一意専心に取り組む」「今は考えていない」
岸田首相はこれまで、解散について慎重な言い回しに徹してきた。
共同通信と読売新聞が行った最新の世論調査では、岸田内閣の支持率は、それぞれ32・3%(14、15日実施)、34%(13〜15日実施)で、いずれも「内閣発足以降最低」を更新した。毎日新聞の世論調査でも、内閣支持率は25%(14、15日実施)で、発足以来最低だった9月調査から横ばいとなった。
解散は、ますます困難との見方もあるが、自民党議員は「『解散権』『人事権』は首相の求心力の源だ。解散しないまま来年秋の自民党総裁選が近づけば、その力はどんどん薄れる。岸田首相は機会を探しているはずだ」とみる。
最近もその気配はあった。
9月13日の内閣改造・自民党役員人事に続き、岸田首相は同25日、経済対策を発表した。その中で、「物価高に苦しむ国民に『成長の成果』である税収増を適切に還元する」と、減税方針をブチ上げたのだ。
ところが、岸田首相の示した減税案は「賃上げ企業への減税策」「特許所得などへの減税制度」などと国民に直接響く内容ではなく、「偽減税」との批判にさらされた。結局、人事に続き、支持率アップにつながらなかった。
ただ、この直後、茂木敏充幹事長や世耕弘成参院幹事長ら与党幹部から、減税を歓迎する発言が次々と出た。岸田首相に近い森山裕総務会長は「税に関することは『国民の審判』を仰がなければならない」と、減税が解散の大義≠ノなるとの見方を示した。
永田町では「岸田首相の頭の中には、臨時国会冒頭での解散もあったのでは」(自民党中堅議員)との声もあるが、日程はどうなるのか。与党ベテラン議員は、次のように見立てを語る。
「岸田首相としては、所信表明演説などに続き、10月中に経済対策を裏付ける今年度補正予算案を固める。11月中に衆参で予算案を通過させてから解散というのが常道だろう」
永田町では、「12月10日」「12月17日」「12月24日」など、具体的な投開票日を予測する情報も飛び交った。
一方、「補正予算成立に加えて、来年度の予算編成なども考えれば、年内解散は相当タイト」(前出のベテラン議員)との声もある。12月17日前後には、ASEAN(東南アジア諸国連合)の特別首脳会議が東京で開催予定だ。
さらに臨時国会を前に荒れた雰囲気も漂う。一部野党が日程に猛反発しているのだ。
22日に参院徳島・高知、衆院長崎4区の両補選が投開票されるが、岸田首相の所信表明演説が20日なら、代表質問は投開票後となる。
一部野党は、「選挙前に政権が一方的にPR≠して、反論は封じる戦略」と批判している。
今年6月、野党が内閣不信任決議案提出に乗り出した局面では、岸田首相は「情勢をよく見極めたい」と解散風を強めた。だが、最終的に「今国会での衆院解散は考えていない」と、自ら収束を図った経緯がある。
与党内では、「野党の準備が整う前に決断すべきだった」「支持率維持は難しい」と懸念する声があがった。実際に広島G7(先進7カ国)サミット後、政権では不祥事などが相次ぎ、支持率は厳しい下落となった。
ある与党議員は「『議席が減るなら、傷が浅いうちに打って出るべき』との声は根強い」と明かす。
次期衆院選をめぐっては、自民党について「善戦」と「大敗北」という真逆の情勢分析≠ェささやかれている。岸田首相は決断するのか。
鈴木氏 日本保守党は自民党の「要警戒対象」
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「年内解散の可能性は残っている。永田町周辺では『議席予測の数字』が飛び交っているが、解散という選択肢があるからこそ、こういう分析情報も出回るものだ。解散の条件は、1衆参補選の結果2旧統一教会への解散命令請求への評価3経済対策・減税への評価―だろう。内閣支持率が上がれば解散だが、衆参補選は厳しい戦いだ。旧統一教会への解散命令請求を評価する世論もあるが、国会では『自民党とのつながり』を野党に追及される。減税論は、政権の想像を超えた焦点になった。期待外れなら国民の失望は計り知れない」と語った。
新たな不確定要素≠ニして、ベストセラー作家で保守論客として知られる百田氏らが立ち上げた「日本保守党」の存在が指摘されている。
鈴木氏は「自民党支持層の3割は、強固な保守だ。『保守政治を体現していた安倍晋三元首相が亡くなった後、岸田首相は思想のないまま、安倍路線を都合よくつまみ食い≠オている』との批判が一部にある。岸田政権に反発する『岩盤保守層』が日本保守党の支持に回れば、影響は大きい。自民党内の保守派が、日本保守党と連動する可能性もある。野党より怖い『要警戒対象』になるかもしれない」と語っている。
●日経平均が再上昇する重要なシグナルが点灯した 10/16
期待の大きかった10月相場。まずはこの2週間を振り返ってみよう。
受け渡し日ベースで見ると、実質10月相場入りしたのは9月28日である。ここから日経平均株価は5営業日連続で10月4日まで下落。合計1845円安となり、10月の1週目は波乱で始まった。
強気予想は不変でも、直近の日経平均急落は見通せず
筆者は、2023年の大発会から始まった今回の大相場が、2024年まで、場合によっては2025年いっぱいまで続くとみており、この相場観に変わりはない。しかし、53年間にもなる「兜町暮らし」の中で、見通しが外れたことはこれまで何度もあったのだが、これだけ見事に外れた記憶はない。
もちろん、9月中盤を超えてから2週間の4兆6037億円に及ぶ対内証券売買契約(財務省ベースでの外国人投資家動向)の売り越しについては、詰まるところ、配当の税金対策における海外ファンドの「玉移動」という特殊要因が大きいことはわかっていた。
また、ウクライナ戦争の最中に、アメリカの議会がさまざまな対立から機能麻痺状態に近くなっても、政府機関が完全に閉鎖されるはずもないと思っていた。実際、同国の混乱は筆者の想定内だったことから、日経平均は今年の高値をつけてからのモミ合いゾーンの下値である3万1500円前後を簡単に割れることはないと思っていた。
実際は、3万1500円どころか、その下があった。当初の下げはアメリカの混乱で同国債が売られ、長期金利が上昇するという「悪い金利上昇」に過度に反応したのが原因だ。だが、アメリカよりも日本株の下げが激しかったことで、「何か日本国内に隠れた悪材料があるのか」との不安が広がった。
3万1500円を割れたことで、高値での「大きなしこり」を作ることになっただけでなく、3万1000円を割り、4日はザラバで3万0487円まであった。
3万0500円前後は2021年の高値で、テクニカル面でも非常に重要な水準である。ここまで下げたことで、市場は総悲観となり、勢いに乗った売り方は「日経平均3万円割れ、相場崩壊」まで想定し、大量の売り物がたまった。
「自動売買に弱い日本株」の体質が露呈した
前出の日経平均3万0500円前後の水準は、昨年の2022年は1度も抜けなかったガチガチの「上値のカベ」だった。だが、今年の大発会を起点とする上昇相場で抜いたことで、今度は「重要な下値支持の岩盤」に変わった。
5日に日経平均が反発して3万1000円台に戻ったことで、まさに上記のテクニカル面での見方が機能し、一気に買い戻し相場が爆発。今度は一転して、10月12日まで予想外の1967円もの急騰(10月)となった。
前出のとおり、今回の日経平均の急落と、直後の急騰の原因はアメリカ長期金利の変動による。だが、同国の10年債利回りとの関係でいうと、日経平均は4.8%前後で急落して4.6%前後で急騰したことになる。
結局、アメリカの長期金利が、たった0.2%前後の範囲で動いただけで、日本株はこれだけ変動したわけだが、AI(人工知能)を駆使した先物の自動売買に極めて弱い体質があることをあらためて認識させられた。個人投資家の方々は、今後とも冷静に対応しなければならない。
しかし、今回の異常ともいえる上下動が、まったく意味がなかったわけではない。日経平均は、大発会から7月3日までを「上昇第1波動」とすると、約3カ月に及ぶ調整局面を終え、ようやく「上昇第2波動」開始のシグナルが灯ったといえよう。
重要な上昇シグナル点灯、岸田政権の政策も評価へ
筆者がいつも重視している、買い方と売り方の勢力を表す「移動平均総合乖離」(25・75・200日移動平均線の乖離率の合計)で見ても、この値はプラスに転換しており、買い方が有利な情勢だ。
また、簡単にいえば売り場か買い場かの目安ともなる騰落レシオ(25日)も、9月25日の141%から急激に下がり、13日現在では買い場ともいえる81%台になっている。
一方、ファンダメンタルズ(基礎的条件)で見ると、デフレ脱却相場のカギとされていた半導体の需要が回復に向かっており、これでハイテク系と、自動車などのバリュー系との2本柱が整ったことになる。
企業業績面で見ても悪くない。10月13日現在の日経平均予想EPS(予想1株利益)は約2108円と、戻り歩調だ。また、IMF(国際通貨基金)の世界経済成長率予測で見ても、先進国の中で日本は相対的に高い成長予測(2023年2.0%、2024年1.0%)となっている。
その中で、岸田政権が景気対策として5本柱を示し、さらに減税政策の検討や、運用大国への決意を世界にアピールしたことで、世界の投資家から見れば、「2023年の2%のあとの2024年のたった1%成長」など、許されない状況になっている。
しかも、インフレ懸念が続くアメリカ、デフレ懸念のある中国、低成長が続きそうな欧州ということになれば、世界の投機資金の向かうところはおのずと狭まってくるはずだ。
また、国内の資金量で見ても、9月のマネーストック(M3)は前年同月比+1.8%の1591兆3000億円となっている。これは、新型コロナウィルスの「5類感染症移行」などの理由もあり、過去最高だった8月からは3兆4000億円減っているものの、引き続き高水準だ。
「戦い」はこれからだ
ただし、「反転態勢に入った」と言っても、13日現在の日経平均は3万2315円だ。日経平均が高値をつけた7月だが、同月の3万3000円台での東証プライム市場の売買高合計は200億株を大きく超えている。含み損を抱えている人も多くいることから、高値を抜くための戦いはこれからが本番だ。
さらに、兜町筋と話をしていて意外に思うのが、今回のイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突に対する注目度の高さだ。経済やファンド運用への影響度は、ウクライナ戦争に比べればはるかに小さい。なのに、なぜか兜町は気にしている。その理由はウォール街にあるようだ。
ウォール街とユダヤ資本の関係は昔から言われてきたことだが、ウォール街はアメリカの学生たちの間に広がっている「反ユダヤ」容認の気配をかなり気にしているようだ。学生たちは、今回の事変の歴史的本質を知っている。
ウォール街にしてみれば、ウクライナ戦争に対する世論に比べると、嫌な雰囲気だと警戒しているようだ。そんな雰囲気が、お金の動きに敏感な兜町にも伝わっているとみられる。このあたりはしっかり見極めたい。
●維新の躍進がもたらすもの 対立軸のパラダイムシフト 10/16
境家史郎・東京大教授が5月に出した「戦後日本政治史」(中公新書)は、占領期の東久邇内閣から直近の岸田内閣までを扱っている。80年近い政治の曲折が、平易な表現でバランス良くつづられ、若い読者にも理解しやすい通史だ。
ただ、本書の最終的な狙いは、現在ある閉塞(へいそく)感の「正体」を提示することにある。平成の政治改革を経て「55年体制」から抜け出したかに見えた日本の政党政治が、再びイデオロギー対立による「ネオ55年体制」へと舞い戻ったことで、ダイナミズムを失ったと著者は見ている。
「ネオ55年体制」は、右派の安倍晋三政権が長期化したことで生まれた。2017年衆院選の際、小池百合子東京都知事の「希望の党」から排除された旧民主党の左派が「立憲民主党」を結成し、野党内で存在感を示したのが典型だ。
右派色の強い政権が憲法や安全保障政策で「直球」を投げてくると、左派政党は「反作用」で一定の支持を獲得できる。だが、「改憲阻止」「反安保」の総量には常に上限があり、政権交代まではもたらさない。旧社会党はこうして万年野党に安住してきた。
だから皮肉なことに、憲法9条が厳然と存在しているからこそ、自民党は優位を保ち続けたという法則性が浮かび上がる。
境家教授は最後にこう書いている。「憲法改正という争点を『軍国主義か民主主義か』というイデオロギー的問題として捉える枠組みから日本人が解放されない限り、この国の『戦後』が終わることはないだろう」と。
この構図に変化の兆しがある。日本維新の会の躍進だ。
今春の41道府県議選で、維新は改選前の57から124に議席を倍増させた。7月末の仙台市議選では議席ゼロから新人5人の全員当選を果たし、政界を驚かせた。
選挙協力をめぐる自民、公明両党のゴタゴタも、背景には維新の脅威がある。公明は大阪、兵庫の衆院小選挙区で議席を奪われる恐怖心から、定数の増える東京で目減り分を抑えようとしたが自民が拒否。両党は一時、深刻な相互不信に陥った。
岸田文雄首相は9月の内閣改造で国民民主党の矢田稚子(わかこ)・元参院議員を首相補佐官に起用する奇手を繰り出した。その狙いは「自公国」連立への布石、連合の分断などと指摘されるが、もう一つある。
首相に近い自民党幹部は「空中戦が得意な維新に、国民の抱える民間労組がくっついて地上戦を始めると御しがたくなるから」と言う。つまり維新と国民を引き離すため、というのだ。
安倍、菅義偉両元首相と親密な関係にあった維新は、しばしば「自民の補完勢力」とみなされてきた。だが、現在の馬場伸幸代表らに岸田首相との接点はない。この疎遠さがかえって維新には好都合だった。
安倍政治とは系譜の異なる岸田自民党を「既得権維持・微修正の党」と遠慮なく批判し、自らを「抜本改革の党」と名乗ることで、現政権に飽き足らない保守層や無党派層に浸透しつつあるからだ。
維新の藤田文武幹事長(42)は最近出した著書で「維新の会の一番の応援団は、既存政党の古い政治慣習を廃し、民間感覚をフル活用した改革を期待する有権者です」と自信を示している。
自民と立憲の対立が選挙の中心であれば、「憲法・安保・原発」の3点セットがなお一定の効力を持つ。しかし、維新が主要なチャレンジャーになれば3点セットの効力は薄れ、代わりに「改革」の争いになる。ここで対立軸のパラダイムシフトが起きる。
政権3年目に入った岸田首相は衆院解散の時機を見計らっている。政党支持率で維新はすでに立憲を上回っている。日本の政党政治は端境期を迎えた。
●財務省の共犯者たち 10/16
結局、現・経団連会長の十倉雅和も、当初は新自由主義からの脱却的なことを主張しておきながら、財務省に取り込まれてしまったようです。(財政制度等審議会の会長になったからだと思います)
一度、財務省の共犯者になってしまうと、未来永劫、消費税増税路線を主張せざるを得ない。共犯者のプロパガンダです。(抜け出た人がいないわけではないですが)
現在の日本は、国民が輸入物価上昇に起因するコストプッシュ型インフレ、物価高に苦しめられ、国民の実質賃金、可処分所得が減少し、結婚できない若者が増え、結果、少子化がひたすら進行していっています。
それにもかかわらず、経団連は消費税の増税を主張するわけですから、良く言って「財務省の犬」であり、悪く言えば「頭がおかしい連中」としか表現のしようがないのですよ。
改めて、消費税の仕組み。
   【消費税課税の仕組み】
消費税は、課税売上から課税仕入を差し引いた「利益+非課税仕入」を11で割って計算されます(本当にそうなのです)。
ということは、非課税仕入の人件費を外注費に変更すれば、消費税納税額が減る(本当に減ります)。
だからこそ、日本では正規社員を外部化する動きが激増した。結果的に、雇用が不安定化し、所得が減り、少子化が進行した。
それにもかかわらず、経団連は、「少子化対策のために、消費税増税を」と、主張しているわけですから、「頭がおかしい」と評価されても仕方がないでしょう。
そもそも「消費税」という言葉が「詐欺」なのです。
なにしろ、日本の消費税は「課税売上」から「課税仕入」を差し引いた企業の生産、すなわち「付加価値」を11で割って計算される税金なのです。
すなわち、付加価値税です。付加価値税でございますから、バリューチェーンのあらゆる段階で課税される。
結果、取引相手と「消費税負担の押し付け合い」が起きることが宿命づけられている税金なのでございます。当然ながら、競争関係において「弱い方」が消費税を負担することになります。
ちなみに、アメリカには小売売上税がありますが、これが本当の意味での消費税です。なにしろ、「消費者相手」の小売店だけが、税金を上乗せし、販売し、納税するのです。
日本の消費税は、正しくは「付加価値税」です。
コロナ禍を受け、実に100カ国以上の国々が付加価値税の減税を実施しました。
それにもかかわらず、「消費税減税は時代に逆行」と、まさに時代に逆行した女が、稲田朋美。稲田は、10月8日のフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」に出演し、「消費税を下げて、見かけの物価を下げていくっていうのは
時代に逆行している」「消費税だって、高額所得者に有利だし、高額なものを買う人に恩恵が大きいので」意味不明なレトリックで、消費税減税に反対をしていました。
稲田朋美は、消費性向すら理解していない。(消費性向=消費÷所得)
消費税が高所得者に有利って・・・・。年収一億円の人の消費性向は、滅茶苦茶に低いです。なにしろ、人間、
お腹がいっぱいになったら、もう食べられません。
それに対し、年収200万円の人の消費性向は100%に近いでしょう。
結果、消費税増税による物価が上げられたことによるダメージは、低所得者層の方が圧倒的に高くなる。
消費税減税ほど、低所得者層を助ける政策は、そうはない(後は、社会保険料の減免くらいです)。
稲田朋美のような「時代に逆行した政治家」を糾弾し、駆逐しない限り、我が国に繁栄の未来はありません。
●「貯蓄から投資」本格化に手応え、デフレ脱却の潮目に-神田政務官 10/16
岸田文雄政権が掲げる資産運用立国の実現を目指して海外投資家らとの対話を重ねた「ジャパン・ウイークス」を終え、内閣府の神田潤一金融担当政務官は、日本が長年目指してきた「貯蓄から投資へ」の動きが本格化する手応えを感じている。
日本銀行出身の神田氏は12日のインタビューで、海外投資家は岸田首相と直接対話したことで「日本市場の改革に対する政府のコミットメント」を強く意識したと指摘。新規参入が増えて競争環境が整えば多くの課題解決につながると述べた。期間中に海外投資家から寄せられた「1980年代の奇跡の再来」を期待する声に「しっかりと応えて」実現していくと語った。
金利の上昇局面にあり、長期にわたったデフレ経済から脱却する「潮目」にあることも改革を後押しするという。資産を銀行に預けたままでは「目減り」することに国民が気付き、「運用収益を得た方が良いとの意識が急速に育つタイミング」だとして、運用者側の改革と併せて投資行動に変化が生じると期待する。
岸田政権は、2000兆円に上る家計金融資産を投資に呼び込むことで企業の持続的成長を促す取り組みを進めている。昨年、少額投資非課税制度(NISA)の拡充を決定して個人の資産運用に向けた環境を整備したのに続き、資産運用会社側の改革に着手。日本独自のビジネス慣行、参入障壁の是正や「資産運用特区」の創設などを相次いで提唱し、その「本気度」を示してきた。
9月25日から2週間の日程で開催された一連のイベントには岸田首相が計5回出席して日本の取り組みを発信。岸田首相を囲むラウンドテーブルに参加した米資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は、日本は「驚異的な経済の変容途上にある」とした上で、日本経済が急成長した「80年代の奇跡がよみがえり、その奇跡は今回は長く続くだろう」と発言した。   
動かぬ滞留資金
歴代政権は「貯蓄から投資へ」の取り組みを繰り返してきた。1996年には第2次橋本内閣が金融規制改革「金融ビッグバン」を打ち上げ、家計がリスクマネーの提供者となり金融市場を活性化することを促した。しかし、翌97年の山一証券の自主廃業で金融不安が高まり、以後、現預金比率は50%前後の安全志向が続いている。今年6月末時点の家計金融資産は過去最高の2115兆円で、52.8%が現預金。
日本は現預金比率が5割超
   家計金融資産ポートフォリオの各国比較
現預金の多さは、運用で得られたはずの利益逸失にもつながっている。家計金融資産の8割を株式や債券、投資信託で運用する米国では、2022年の賃金を除く運用資産額が20年間で2.4倍に増加したが、日本は1.2倍にとどまっている。
日本は大手金融グループ傘下の非独立系が多い
   非独立系が85%、ガバナンスに課題も
大手金融グループに属する非独立系の資産運用業者が多い日本では、グループ全体の人事異動の一環として資産運用子会社のトップが交代し、中長期視点の人材育成や商品開発に取り組みにくい環境にある。政府は同分野でも改革を先導する。
ジャパン・ウイークスに参加したロベコのサステナブル投資責任者であるカローラ・ヴァン・ラモン氏は、「日本政府からの明確な指導や政策は環境を整える一助になる」と政府の役割に期待を示した。
一方、英国やスイスに拠点を置く投資助言会社サセックス・パートナーズの共同創設者兼マネージングパートナー、パトリック・ガーリ氏は、岸田首相が掲げる資産運用立国について「この手の話題は移ろいやすいし、時間がたてば人々が興味を失ってしまうかもしれない」との懸念も抱いている。日本政府は海外の資産運用会社を呼び寄せたいのか、それとも国内の資産運用業界を強くしていきたいのかということを整理する必要があると語った。
資産運用立国に向けた主な政策
高齢者が現預金を崩せるか
長年にわたって現預金で資産を保有してきた高齢者が大きく行動を変えるのは難しいという見方もある。金融審議会資産運用タスクフォース委員も務めるフィンウエル研究所の野尻哲史代表は、「家計金融資産の6割超を保有する高齢者は相対的にリスクを取りにくく、短期間に現預金が有価証券に置き換わることは難しい」と指摘する。貯蓄を切り崩して投資を増やすのではなく、新たな収入を投資に誘導する長期視点で取り組みが必要としている。
6割超を60代以上が保有
   家計金融資産の世代別保有内訳
経済への影響面では、第一生命経済研究所の佐久間啓・経済調査部研究理事が、「数パーセントが投資に向かうだけでも数十兆円のインパクトがある」と述べ、一気に投資に流れなくとも経済効果は期待できるとコメントした。
政府は、金融機関の運用力向上やガバナンス改善を議論する有識者会議で年内に具体的な政策プランをまとめる。岸田首相は、政策プランがまとまった後も継続的に海外投資家のニーズをとらえて規制緩和などの対応を進める「資産運用フォーラム」を設置すると表明。年内に準備委員会を立ち上げる。
●岸田内閣の支持率34%、政権発足以来最低 NNNと読売新聞の世論調査 10/16
NNNと読売新聞が今月13日から15日まで行った世論調査で、岸田内閣の支持率は34%で、政権発足以来、最低となりました。
世論調査で、岸田内閣を「支持する」と答えた人は34%で、前回9月調査から1ポイント下がり、政権発足以来、最低となりました。「支持しない」は前回より1ポイント下がり、49%でした。
岸田内閣の発足から2年間の実績については、「評価しない」と答えた人が「あまり」と「全く」を合わせて53%で、「評価する」と答えた人、「大いに」と「多少は」を合わせた44%を上回りました。
政府が検討している、物価高対応などの経済対策については「期待できない」が73%でした。
世論調査を受け、松野官房長官は「世論調査の数字に一喜一憂はしない」と答え、岸田首相の側近議員からも「いまは我慢の時だ」という見方が出ていますが、複数の自民党議員からは年内の衆議院解散について「この低支持率で、できるわけない」との声も出ています。
一方、立憲民主党の幹部は「景気対策や統一教会の解散命令請求をしても国民は反応せず、国民の岸田内閣への評価が定まったのだろう」との見方を示しています。
20日から臨時国会が始まる中、岸田首相としては経済対策などで「決断と実行」する姿を示し、政権浮揚につなげたい考えです。
●なぜ今なのかが不可解な旧統一協会解散請求 10/16
ついに政府が世界平和家庭連合(旧統一協会)の解散命令を東京地裁に請求した。私は昨年10月31日付の本欄で、福音派キリスト教信者として「政府と国会が現在進めている旧統一協会への対応に恐怖を感じている。…なぜなら、信教の自由という憲法で保障されている大原則によってこれまでできないとされてきたことが、次々とできることにされているからだ」と書いた。その恐怖はより強くなっている。特に、キリスト教、仏教、神道などのリーダーを含む宗教法人審議会が解散命令請求に全会一致で賛成したことに戦慄を覚えた。
宗教団体への「人民裁判」
今回、文部科学省は解散命令請求の根拠として「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」(宗教法人法81条1項1号)だけでなく、「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと」(同2号)に該当すると主張した。宗教団体に対する死刑宣言のようなものだ。
岸田文雄首相は昨年10月、「法令違反」の法令とは刑法に限られるとしていた国会答弁を一夜にして変えて民法も含まれるとし、文科省に旧統一協会に対して解散命令を視野に入れた質問権行使を命じた。
ここで、なぜ今なのかという大きな疑問が生まれる。政府は過去に旧統一協会が大きな社会問題となった時に「解散命令請求はすべきでない」と繰り返してきた。2012年に全国統一教会対策弁護団は文科省が解散命令請求をしないことを違法として国家賠償請求訴訟を起こしたが、2017年に東京地裁は行政の裁量の範囲内だとして訴えを棄却した。
その上、集団リンチ殺人という重大な刑法違反をした三つの宗教法人(神慈秀明会、紀元会、空海密教大金龍院)に対しても解散請求を行っていない。
繰り返し書くが、なぜ今なのか。誰が見ても許し難い被害事例が新たに判明したのか。そうではない。安倍晋三元首相のテロ犯が旧統一協会を恨んでいたという情報が奈良県警からリークされるや、マスコミが旧統一協会たたきを始め、旧統一協会と関係があったという理由で自民党が激しく批判され、岸田政権の支持率が下がった。それが契機だったのではないか。そうだとすると、宗教団体に対する「人民裁判」ではないか。
侵される信教の自由
朝日新聞、東京新聞などは今回社説で、安倍元首相は旧統一協会の「広告塔」だったとか、旧統一協会が度重なる非難にもかかわらず法人格を維持できた理由の一つは「自民党保守派との強い紐帯」があったからだと書いて、政府与党への攻撃を強めている。宗教団体にも政治活動の自由はある。見当外れの批判になぜ自民党は反論しないのか。
いま、旧統一協会とその信者の信教の自由が大きく侵されている。それなのに「明日は我が身」である他の宗教から、信教の自由を守れという声がほとんど出ていない。強い危機感を覚える。
●岸田首相「増税クソメガネ」を気にして“偽装減税” 裏で「15兆円の増税」 10/16
解散風が吹き荒れていた永田町に、突如「減税」議論が巻き起こった。「増税マシーン」と化した岸田文雄・首相が甘い言葉を口にするからには裏がある。首相の背後には、国民を欺く「増税のための偽装減税」を囁く財務官僚たちがいる。
財務省にとって好都合
「今こそ経済成長の果実を国民に還元すべきだ」。そう経済対策を打ち出した岸田首相が、はっきり「減税」という言葉を口にした。
「給付措置、減税、社会保障負担の軽減、インフラ投資はじめあらゆる手法を使う」(10月7日の茨城講演)
「増税クソメガネ」と呼ばれることを非常に気にしている首相は、減税を言い出さなければ支持率を回復できそうにない。国民の信頼を失って切羽詰まっているようだ。
だが、安易な人気取りの減税は政治家にとって“麻薬”ともいえる政策だ。首相がひとたびそれを口にすると、選挙を気にする自民党議員からは「消費税減税」「所得税減税」「給付金」を求める声が噴出し、歯止めが利かなくなっている。
自民党執行部は「ダイレクトに減税措置等々によって国民に還元」(茂木敏充・幹事長)「物価上昇対策には所得税減税が有効」(世耕弘成・参院幹事長)と足並みを揃え、公明党も「現実的な手法としては所得税が望ましい」(山口那津男・代表)と、低所得者への現金給付と所得税減税を政府に提案する方針だ。まるで“減税禁断症状”である。
その財源は税収増だ。国の税収は基幹3税と呼ばれる「所得税」「消費税」「法人税」がコロナ自粛下で増え続けて2020年度に過去最高の60.8兆円に達し、2022年度には71.1兆円とわずか2年間で、年ベースで10兆円以上増えた。しかも、「税収増は今年度以降も相当期待できる」(世耕氏)と見られている。
増税派の財務省は減税論に強く反対するかと思われたが、「総理に『成長の果実を国民に還元する』という言葉を囁いたのは財務省だ。表立っては賛成しないが、裏では減税を容認している」(自民党幹部)という。だから与党は色めき立った。
首相の側近中の側近で、これまで増税の旗振り役を務めてきた財務官僚出身の木原誠二・幹事長代理はネット番組で「岸田政権が増税政権だと言われている以上は、減税やりゃいいんだよ、やって示すしかない」と述べ、方針転換した理由をこう語っている。
「オレが役所に入ってから税収が増えたことってないんですよ。税収が増えない時代の財務省ってのは、出すもの減らすか、増税するしかない。だからオレなんか増税請負人みたいに言われてるけど、そういう風に育てられてるわけ、基本的に。
今はいよいよ税収が増える時代に入って、予算バンバン使う時代に入ってるのよ。1960年代、1970年代の財務省役人ってのはたとえば鉄は国家なりとかそういうとこにバンバンとカネつけてた。だけど今の財務省の役人、オレも同期たちも含めてそういう経験ないから。そういう予算編成をこれからするわけよ」(『魚屋のおっチャンネル』の対談)
税収が増えれば、予算編成権を握る財務省の力は強まる。財務省取材の経験が長いジャーナリストの長谷川幸洋氏(元東京・中日新聞論説副主幹)が語る。
「財務省にすれば、低支持率にあえぐ岸田首相や与党幹部たちが経済対策で減税や給付金バラマキをしたがり、霞が関の各省庁が予算を欲しがるのは好都合です。予算の配分を楯に政治家や霞が関をコントロールしやすくなる」
政治家の“減税禁断症状”は財務省の目論見通りなのだ。
15兆円の“ステルス増税”
岸田首相は税収増を「経済成長の果実」と自分の功績のように自慢しているが、国民にとっては負担増そのものだ。経済ジャーナリストの荻原博子氏が指摘する。
「国民の実質所得が増えて、税収も増えているなら成長の果実といえますが、それなら経済対策の必要はないはずです。現状はその逆。企業が多少賃上げしても、物価がそれ以上に上がっているから実質賃金は17か月連続でマイナス。それなのに国民は名目上の賃上げで所得税を多く払わされ、モノの値段が上がった分、支払わされる消費税の税収も増えている。
実質所得が減って支払う税金が増えるのは国民にとって負担増以外の何物でもありません。法人税の税収が増えているのも、企業が賃上げをケチって利益を出している証拠です。10兆円の税収増とは、そのまま国民にとって10兆円の負担増ということです」
国民の負担増は税金だけではない。
名目賃金が上がれば、給料から天引きされる年金、医療、介護などの社会保険料も増える。
政府の社会保険料収入総額は2021年度の72.4兆円から2023年度は77.5兆円へと5兆円以上も増える見込みだ。国民は年間5兆円も多く保険料を払わされる。「成長の果実」どころか、国民には税収増と社会保険料増を合わせて15兆円の負担増、“ステルス増税”が行なわれたといえる。
そのカネの流れを辿ると驚かされる。政府はこの3年、コロナ対策や物価高騰対策を謳って毎年大型経済対策を行なってきた。
昨年度は岸田首相が「燃料費高騰対策」や「物価高騰対策」など鳴り物入りで2回の経済対策を打ち出し、総額約32兆円の補正予算を組んだ。ところが、国の2022年度の決算を見ると、今年度への「繰越額」約18兆円、国庫に返納された「不用額」約11.3兆円など使い切れなかった金額が約30兆円もある。補正予算とほぼ同額が余ったのだ。2020年度は約34兆円、2021年度も約30兆円余っている。
大型経済対策と宣伝しながら、毎回、予算を余らせて次の経済対策の財源にぐるぐる回している。前出の長谷川氏が言う。
「こんな見せかけの経済対策では経済効果は望めないが、財務省にすれば、岸田首相に何回経済対策をやらせても、財源使い回しだから腹(国庫)は痛まないわけです」
「減税」を前面に掲げた今回の経済対策は、「少なくとも15兆円、できれば20兆円規模」(世耕氏)とされる。財務省にとってはやらせてもお釣りが来る金額だろう。
税収は年間10兆円増え、経済対策の財源は使い回しとなれば、国にはカネが余って仕方がない。
その一部は役所がいろんな基金に溜め込んでおり、国に約140種類もある基金の残高はコロナ前の7倍、約16兆円に達している。いわゆる「霞が関の埋蔵金」だ。
財務省が減税を容認しているのは、それを隠せなくなってきたからだ。 

 

●岸田首相が掲げる「減税」は目くらまし…一皮めくれば“個人負担増”のワナ 10/15
税収が上振れしていることを踏まえ、岸田文雄首相が突如「減税」を言い出した。この秋の衆院解散・総選挙をにらんだ発言なのは明らかだが、「次元の異なる少子化対策」の財源はいまだ確保されておらず、防衛力強化のための増税も既定路線となっている。個人の懐が潤う減税になるかどうかは不透明で、結局は将来想定される「負担増」への批判をかわすための目くらまし≠ニ評判なのだ。
9月25日、首相官邸で岸田首相は記者団に「成長の成果である税収増を国民に還元する」と言い放ち、「減税」に言及した。
だが、よくよく聞いてみると首相の口から出てくるのは、賃上げ企業への減税や特許所得などの減税制度の強化など、企業相手の減税が中心だった。
国民に還元する減税といえば所得税減税や消費税減税などが思い浮かぶが、そうではなかった。世間で「偽減税」と批判されるゆえんである。
全国紙政治部記者が言う。
「財務省主導の増税政権というイメージを払拭したいだけの『減税詐欺』ですよ。首相の頭にあるのは次期衆院選で勝利し、来年9月末の任期満了に伴う自民党総裁選で再選を果たすこと。つまりはやっているふりで、国民をバカにしている。見かけ倒しに終わるのは、間違いありません」
また、別の政治部デスクからはこんな声も上がっている。
「首相は周囲に『思い切った経済対策をやらなければならない。今が正念場だ』と、まるで減税が自身に与えられた使命かのように漏らしているが、長期政権を築くことが基本戦略。シナリオ通りに来秋の自民党総裁選で再選できれば、次の任期中には宏池会(岸田派)の創設者、池田勇人元首相の在職日数を超える。そのため、茶番も甚だしいとウワサになっているのです」
実際、政府は税収増といえども、政策の財源確保に四苦八苦。財務省関係者は、「減税などしている余裕はない」と話す。
代表的な例は少子化対策だ。政府は、年間3兆円台半ばの追加予算を投入する方針を掲げている。財源は社会保障分野の歳出改革と、国民が幅広く加入している公的医療保険の保険料を上乗せして徴収する「支援金制度」の創設などで賄う方向だ。
岸田首相は「国民に実質的な追加負担を求めない」と語るが、そんな言葉を信じる者は自民党内ですらほとんどいない。そもそも歳出改革をしようにも、高齢社会において医療・介護サービスを削るのは至難の業。歳出改革の名の下にサービスが低下して困るのは、高齢者を中心とした国民だからだ。
しかも、来年度は医療サービスの対価として医療機関に支払われる診療報酬改定の年。自民党の支持団体である日本医師会は、物価高を背景に診療報酬の引き上げを求めている。解散・総選挙がささやかれる中、首相は日医の意向をむげにはできないだろう。
結果、医療保険料の上乗せに頼らざるを得なくなる可能性があり、待っているのは税の負担増でしかなさそうだ。
減税の党内議論は暴走中
一方、防衛費については約1兆円を法人税、所得税、たばこ税で賄うとしているが、増税の実施時期は決まっていない。ことほどさように、負担増から逃げまくっているのが、岸田政権の実態なのである。果たして、税収の上振れ分は、個々人に恩恵をもたらしてくれるのか。
「減税詐欺」「偽減税」と批判されることを懸念する自民党の茂木敏充幹事長は、10月3日の記者会見で「税収増分を政策に使って国民に還元することもあるし、ダイレクトに減税措置などによって国民や企業に還元することもあり得る」と語った。
また、同党の世耕弘成参院幹事長は「税の基本は法人税と所得税なので、当然、減税の検討対象になってくる」と、暗に個人に対する減税を政府に迫った格好だ。
もっとも、減税騒動はこれだけにとどまらず、ついには消費税減税を訴える議員まで出始めた。自民党の若手議員らによる『責任ある積極財政を推進する議員連盟』のメンバーは、消費税率を5%にする時限的引き下げを求めている。そこに財政規律の議論はなく、減税に向けて党内論議は「暴走」している。こうした現状に、当の首相は戸惑い気味だという。
一方、岸田首相の「減税」発言に、野党は焦りを隠せない状況に陥っている。立憲民主党は、昨年の参院選や一昨年の衆院選の公約に「税率5%への時限的な消費税減税を目指す」ことを掲げていたが、今回の自民党若手議員らの動きにお株を奪われた格好だ。党内からは「自民に消費税減税を言われたら、野党は埋没し、自民との差別化を図れない」とため息が漏れているという。
そのためか、立民のベテラン議員の間には現実路線を歩む政党であることを訴えるため、公約から「消費税減税」の削除を求める声も上がっているほどだ。
ただ、首相は所得税減税に踏み切る可能性はあるものの、財務省政権であるため消費税減税まで行うつもりはサラサラないとみられている。魂≠ワでは売らないというわけだ。
ともあれ「減税」を連呼しておきながら、個人減税はせずに企業減税しかしなかった場合は、完全に信頼を失うことになるだろう。まさに、この秋の衆院解散を目論む岸田政権の命運は、そこにかかっているとも言えるのである。
●岸田首相が応援に入るも、衆参補選で自民党惨敗か? 10/15
永田町に飛び交った偽情報
衆院長崎4区補選が告示された2日後の10月12日、「西日本新聞が行った電話調査」なる数字が永田町に出回った。内容は「2000世帯に電話をかけ、1318世帯が回答。結果は自民党の金子容三氏が48%で、立憲民主党の末次精一氏が29%、「その他」が23%というものだ。
自民党現職の死去による補選であるからといって、この数字は驚愕だった。というのも、同区については10月7日に長崎新聞が“自民党実施とみられる情勢調査”として「2.5ポイント差」と報道したばかり。それがまたたく間に「19ポイント差」になるのだから、さすが自民党は強い!
知事選分裂と刑事告発〜ゴタゴタの長崎自民党
と、思うわけがない。そもそも長崎の自民党は2つに分裂しているのだ。それが表沙汰になったのは、昨年2月の県知事選で、現職で4期目を目指した中村法道氏に対し、知事時代に中村氏を副知事に起用した金子原二郎元農水相や谷川弥一衆議院議員が元厚労省医療技官で国政に意欲を示していた大石賢吾氏を擁立した。大石氏は541票の僅差で当選したものの、その直後に出納責任者と選挙選挙コンサルタント会社社長による公職選挙法違反問題が発覚し、長崎地検に刑事告発されている。
長崎を巡る問題はそればかりで終わらない。長崎県知事選で中村氏を応援した北村誠吾元規制改革担当相は今年5月に食道がんで死去したが、その1か月前に後継として山下博史県議を指名し、自民党本部に申し入れた。しかし党本部は「宏池会の問題」としてそれを受け入れず、結果的に北村氏が地盤とした4区の大部分が吸収される新3区の公認候補として、金子氏の長男の容三氏が決定。その前哨戦となる4区補選にも、容三氏が出馬した。
容三氏は「世襲3世」で、父・原二郎氏が衆議院議員、県知事、参議院議員を務めたばかりではなく、祖父の岩三氏も第1次大平内閣で科技庁長官、第1次中曽根内閣で農林大臣として活躍した。また容三氏の姉の夫は谷川建設の谷川喜一社長で、谷川弥一衆議院議員の長男だ。弥一氏が創業した同社は県内最大の建設業者で、2022年には237億5394万円の売上高を計上した。
このような華々しい背景を背負いながら、長崎から伝わってくるのは「苦戦」の情報。ただし「立憲民主党の末次氏が強いから」という話ではない。
岸田首相が応援に現地入り
自民党本部は危機を感じ、岸田文雄首相が14日に高知と徳島に入り、西内健候補を応援した。現役の首相が高知県入りするのは10年ぶりだが、それ以上に異例なのは「劣勢の選挙に首相が出てくる」という点だ。そこで頼みにするのは公明党で、岸田首相はこの日、山口那津男代表と一緒にマイクを握った。
その後はいったん東京に戻った岸田首相だが、翌15日には長崎県に飛び、5月に亡くなった北村氏の追悼式典に参加した。岸田首相は5月26日の通夜にも27日の告別式にも参加していなかったから、その「罪滅ぼし」のつもりだったかもしれない。だが上記した事情によって分裂した長崎県政で、岸田首相が苦戦する金子陣営のために北村陣営に「世直し」に出向いたようにしか見えないのだ。
当初は「衆参補選で2勝すれば、衆議院の解散に踏み切る」と言われた岸田首相だが、10日に告示されると「2勝」はほとんど不可能になってきた。そんな時に出てきたのが、冒頭の不可思議な数字だった。「西日本新聞が10月7日と8日に実施」したにもかかわらず、その後に西日本新聞による記事は皆無。しかも自民党と立憲民主党の“一騎打ち”にもかかわらず、「その他」が加わっていた。ある永田町関係者は、「自民党の圧倒的優位を流布して、“勝馬”に乗ろうとする人を誘導する意図があるのではないか」と訝しる。
内閣支持率は低迷したまま
なお西日本新聞は「補選に関して電話調査を行っていない」と関与を否定し、「衆院補選にデマ拡散 熱帯びる情報戦、陣営は冷静」とタイトルを打った記事を掲載。水面下での熾烈な戦いを匂わせている。
実際に同じ頃に行われたJX通信社の調査や日経新聞社の調査によれば、長崎4区は横一線状態。しかも世論調査についての日経新聞社の記事の表記では、末次氏の優位の模様だ。
そのような中で岸田首相による応援は、果たして自民党候補にとって功をなすものなのか。ちなみに15日に公表された毎日新聞の世論調査によれば、内閣支持率は前回と同じ過去最低の25%で、不支持率も68%で前回と同じだった。
衆参補選はいよいよ後半戦に入る。もし全敗すれば、来年の総裁選までの政権の継続も困難になるかもしれない。岸田政権の命運が衆参補選にかかっている。
●岸田内閣支持率、4カ月連続30%下回る 毎日新聞世論調査 10/15
毎日新聞は14、15日の両日、全国世論調査を実施した。岸田内閣の支持率は25%で、発足以来最低だった9月16、17日実施の前回調査と同じだった。支持率が30%を下回るのは4カ月連続。不支持率も前回調査と同じ68%だった。政府が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令を請求したことについては「評価する」が83%に上ったが、内閣支持率への影響は限定的だった模様だ。
教団の解散命令請求を「評価しない」としたのは6%、「どちらとも言えない」は9%だった。
内閣支持率はマイナンバーカードを巡るトラブルなどから6月以降、下落・横ばい傾向が続いており、内閣改造があった9月には発足以来最低だった2022年12月と同じ25%となった。岸田文雄首相はその後、物価高対策などを柱とする経済対策を10月中に取りまとめると表明。政府が13日に東京地裁に請求した教団の解散命令と共に政権浮揚につながるかが政府・与党内で注目されていた。
一方、自民党が旧統一教会との過去の関係について十分に説明したと思うかとの質問では、「説明は不十分だ」が85%で、「十分に説明した」の6%、「どちらとも言えない」の9%を大きく上回った。「不十分だ」との回答は自民支持層でも66%に及んだ。
教団を巡っては、多数の自民議員が過去に教団や関連団体の会合に出席したり、選挙の応援を受けたりしていたことが明らかになり、首相は将来に向けて教団との関係を「遮断する」と説明していた。教団との接点が指摘された自民出身の細田博之衆院議長は13日の記者会見で「会合に呼ばれれば出るという程度で特別な関係にはない」と説明し、記者の質問が続く中で会見を打ち切っていた。
政党支持率は、自民党23%(前回26%)▽日本維新の会13%(同13%)▽立憲民主党11%(同11%)▽れいわ新選組5%(同5%)▽国民民主党5%(同5%)▽共産党4%(同5%)▽公明党4%(同2%)▽参政党3%(同3%)――などで、「支持政党はない」と答えた無党派層は27%(同25%)だった。
調査は、携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)機能を使う方式と、固定電話で自動音声の質問に答えてもらう方式を組み合わせ、携帯463件・固定567件の有効回答を得た。
●岸田内閣の2年間で「暮らし向き悪化」60% 毎日新聞世論調査 10/15
14、15日実施の毎日新聞世論調査で、政府が10月中に策定する予定の総合経済対策への期待感を聞いた。「期待しない」が63%で、「期待する」の21%、「どちらとも言えない」の16%を大きく上回った。
岸田文雄首相は9月26日の閣議で、物価高対策や賃上げ支援など五つの柱からなる総合経済対策の策定を閣僚に指示した。首相は「税収増など成長の成果を国民に適切に還元する」とアピールしている。
内閣支持層では経済対策に「期待する」との回答が55%に及んだものの、内閣不支持層では7%にとどまった。年代別では、30代の8割近く、50代の7割近く、70歳以上の約6割が「期待しない」と答えた。
岸田内閣が発足してからの2年間で暮らし向きがどうなったかについては、「悪くなった」は60%で、「良くなった」は3%にとどまった。「変わらない」は36%だった。
首相は構造的な賃上げを政権の重要課題に掲げ、最低賃金の引き上げや賃上げ企業への支援などに取り組んできた。しかし物価高は世界的な資源価格の高騰や円安を背景に賃上げを上回る勢いで続いており、厚生労働省が6日発表した8月の実質賃金は前年同月比2・5%減で17カ月連続のマイナスだった。
暮らし向きが「良くなった」と回答した人の大半は経済対策にも「期待する」と答えた一方、暮らし向きが「悪くなった」とした人の8割弱は経済対策に「期待しない」と回答した。 

 

●旧統一教会問題の幕引き急ぐ自民党・岸田政権 10/14
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令を請求した岸田政権。教団との決別を強調するが、接点を指摘された自民党議員の多くは十分説明せず、要職に就いている人物も多い。20日開会の臨時国会では財産保全などの議論が待ったなしだが、どこまで進むのか。ボールは司法に移ったとばかりに、政治が幕引きを図れば、被害者の救済は見通せない。
細田博之衆院議長、初めて記者会見で説明したが
文部科学省が旧統一教会の解散命令請求を行った13日午後。細田博之衆院議長が辞任にともなう記者会見を議長公邸で開き、これまで会見で公に説明してこなかった教団との関係について述べた。
「問題はございません。そのことは申し上げたい」。記者に答える細田氏の声は病気の影響か、かすれ気味で聞き取りづらい。教団の会合に出席したことは認めたものの、特別な関係ではないと強調した。記者の人数は制限され、教団との関係を問う質問が続く中で会見を切り上げた。
会合に出席した接点ある盛山文科相は教団への忖度を否定
教団との接点が指摘されながら誠実に説明しないのは、岸田内閣の閣僚らも同じだ。この日に解散命令を請求した文科省の盛山正仁大臣自身も、関連団体の会合に出席してあいさつしていた。13日の会見でも、解散請求に際して教団に対する忖度そんたくが働くのではないかという質問が飛んだが、「全く不本意。解散命令が相当と認め請求を行った。今後の審理に万全を期したい」と語気を強めた。
旧統一教会の元宗教2世のもるすこちゃんさん(仮名)は「解散命令を請求したことは良かった」としつつ、盛山氏の説明には納得がいかないという。「解散命令を請求した段階では、忖度といった疑念は残る。本当に疑念が晴れるのは解散命令が出た時だと思う」
文科省では、青山周平副大臣もパーティー券の購入やイベントへの出席などがあった。「こちら特報部」が13日に事務所に取材すると、「既に党による調査で報告している通り。担務は(宗教法人を扱う文化庁ではなく)教育とスポーツ分野であると承知している」と答えた。
「教団を利用して票を取っておいて、今となっては知らん顔」
第2次岸田改造内閣では、文科省以外でも、教団と接点があった議員が多数選ばれている。閣僚では、鈴木淳司総務相、伊藤信太郎環境相、木原稔防衛相がそうで、盛山氏と合わせて4人。副大臣・政務官は26人で、全体54人の半数近くに上る。
昨年9月に自民党が公表した調査では、教団側と何らかの関わりがあった国会議員は180人。党所属の半数近くに上るとはいえ、関係がない議員に候補はいなかったのか。
「教団を利用して票を取っておいて、今となっては知らん顔。もっとオープンな場で個別に説明をしてほしい」。旧統一教会の元宗教2世の奥野まきさん(仮名)は、細田議長をはじめ自民党議員の説明不足に不満を隠さない。
解散命令請求に一定の評価はするが、わだかまりもぬぐえない。被害の賠償は不透明なうえ、解散命令請求が政治の道具に使われた気がしてならないからだ。
「内閣支持率の回復のために請求したとは思いたくないけど、物価対策、増税論議など今の政権が国民を向いているとは思えない。今回も被害者を考えてのことなのか」と政権の姿勢を疑問視し、こう続ける。「本当はここからがスタート。早期の財産保全や反カルト法の立法などやってほしいことはあるが、今の内閣には期待できない」
解散命令の決着までに財産流出の恐れ
解散命令請求について今後東京地裁での審理が始まるが、請求通りに解散を命じられても、教団側が争えば、確定までにさらに時間を要する。過去、法令違反を理由に解散命令請求を受けたオウム真理教は確定までに7カ月、明覚寺は3年かかった。
審理の長期化で懸念されるのが、財産の流出。宗教法人法では、解散命令が確定してから精算手続きに入り、財産が保全されるが、命令を請求した時点では効力は発しない。解散命令が確定するまでの間に、教団側が財産をどこかに流出させてしまえば、被害の賠償は難しくなる。
財産流出なら被害救済が不可能に…立民、維新が法案検討
野党はこうした事態を招かないように、必要な法案を臨時国会に提出する構えだ。立憲民主党は財産保全のための特別措置法案を提出する方針で、泉健太代表は「(22日投開票の衆参)補欠選挙で財産保全が必要だという意思を示したい。これを争点にしたい」と述べている。
日本維新の会も「臨時国会冒頭の20日に、財産保全を義務付ける宗教法人法の改正案を提出する」とする馬場伸幸代表のコメントを発表。解散命令の請求があった場合に、宗教法人の財産については命令確定までの間、「必要な保全処分を命ずることができる」との条文を加える内容だ。解散命令の請求時点で財産保全がなされる会社法の規定を準用した。
こうした財産保全の法制化は、かねて全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が求めてきた。事務局長の川井康雄弁護士は「財産保全措置が取られる前に解散請求がなされたことで、統一教会が海外に資産を流出させる危険性が一層高まった。懸念が現実となれば被害救済が困難になる。速やかに臨時国会で実効性のある法案成立が求められる」と訴える。
解散確定前の財産保全には異論も
一方、立法救済には法律的な壁も残っている。北海道大の桜井義秀教授(宗教社会学)は、解散命令の請求自体は評価しつつ、解散の確定前に財産保全することには疑問を抱く。
「財産を保全するには、被害者が旧統一教会側に対して債権を持っていることが条件になる。これまで個別の損害賠償訴訟での司法判断を経て、教団に弁済を請求してきた。そうした経緯を経ず、行政が代替的に資産を差し押さえることが果たして適切なのか、慎重に吟味する必要がある」として、こう続ける。「被害者救済のためとはいえ、厳密に進めないと、逆に『宗教迫害』と海外でアピールされる恐れもある」
政府の動きは鈍い
そもそも政府の動きは鈍い。解散請求時の財産保全を巡っては、昨年12月の国会で永岡桂子文科相(当時)が「宗教活動に対して過度の制限をかけることになりかねない」と否定的な見解を示している。13日の記者会見で改めて見解を問われた盛山文科相は「(政党間の)動きをみながら今後の対応になっていく」と述べるにとどめた。
自民党は議員立法にも明確な姿勢を見せていない。このまま野党案が提出されても、まともに扱われない恐れはないのか。政治ジャーナリストの泉宏氏は「財産保全は民意に沿った内容で、与党が野党案に乗ってくる可能性はある」との見方を示し、こう続ける。
「被害者のために、というなら与野党は協調して取り組むべき案件だが、現実には野党はばらばらに法案を出し、政党間の手柄争いを演じている。こうした権力闘争の駆け引きが政治不信を招いている」

大きな節目を迎えた13日。解散命令請求に加え、細田議長の記者会見、安倍元首相銃撃事件被告の公判前整理手続きもあった。昨夏の衝撃やその後の混乱が思い出される一方、記憶が上書きされ、押し流されるような感覚もある。1年余で何が変わったのか。政治のチェックが必要だ。 
●遅すぎる岸田政権の「邦人退避」対応 ハマス大規模テロ、在留邦人の安全 10/14
イスラム原理主義組織ハマスの大規模テロを受けた、イスラエル軍との軍事衝突をめぐり、在留邦人の安全が懸念されている。岸田文雄政権は13日になって、自衛隊機の待機とチャーター機の手配を表明したが、ハマスによる残虐非道なテロが発生したのは7日である。イスラエル軍は13日、ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ北部の全住民に24時間以内の退避を勧告した。岸田政権の危機管理は大丈夫なのか。
「イスラエルに滞在する邦人らの輸送をする必要が生じた場合、迅速に対応できるよう自衛隊機を派遣し、待機させる。在留邦人の退避、安全確保に万全を期す」
岸田首相は13日、首相官邸で記者団にこう説明した。
松野博一官房長官は同日の記者会見で、在留邦人の退避に向けて14日にイスラエル中部テルアビブからアラブ首長国連邦(UAE)のドバイへ向かうチャーター機1便を手配すると発表した。
日本政府によると、イスラエルとパレスチナには約1300人の日本人が滞在し、ガザ地区にも国際機関関係者らがいる。
ハマスによる7日の大規模テロを受け、世界各国は自国民退避を急いだ。
ポーランドとハンガリーは9日までに軍用機を派遣して自国民などを退避させた。メキシコは10日、国防事務局機で自国民を脱出させ、フランス政府は12日、チャーター機で自国民約380人を帰国させた。米国や韓国は退避希望者のために13日からチャーター機を用意している。
一方、日本は首相官邸の危機管理センターに「情報連絡室」が設置されたのは、スポーツの日の連休が明けた10日午前10時。外務省が、海外渡航者向けの危険情報レベルを引き上げ、ガザ地区などを最高のレベル4「退避勧告」としたのも10日である。イスラエルのテルアビブやエルサレムなどは、「不要不急の渡航中止」を求めるレベル2だ。
岸田政権の対応をどう見るのか。
福井県立大の島田洋一名誉教授は「岸田首相は当初、ハマスの攻撃を『テロ』として明確に指弾しなかった。G7(先進7カ国)議長国ながら、声明も特に遅かった。自国民の退避はイスラエルの協力が不可欠で、日本の姿勢が対応のスピードにも反映される。外交的な判断の遅さが、自衛隊機などの派遣の遅れにもつながっているのではないか」と指摘した。
●岸田首相「選挙で山口代表とマイク持つのは極めてまれ」 参院補選 10/14
(10月22日投開票の参院徳島・高知選挙区補選という)特定の選挙で、公明党の山口代表と、自民党の総裁である私が同じ舞台に立ってマイクを持つのは、極めてまれなこと。それだけこの選挙が大事だということを、皆さん方に訴えたい。
山口代表と来させていただくにあたり、昨日の夜に代表と綿密に打ち合わせをしました。代表のネクタイは赤、私のネクタイは青です。ネクタイもかぶってはならない。そこまで綿密に打ち合わせをしてかけつけました。
高知をはじめ、人口減少、少子高齢化が大きな課題になっています。自民党と公明は、子ども子育て政策を思い切って進める。一方で、デジタル化で地方の効率化を進める。この2本柱で地方の活性化へ政策を進めます。
●自公党首、補選応援でそろい踏み 立民幹事長「政権は悠長」 10/14
衆参2補欠選挙の22日の投開票を約1週間後に控え、与野党幹部は14日、街頭演説などで支持を訴えた。岸田文雄首相(自民党総裁)は、公明党の山口那津男代表とそろい踏みし、物価高騰への取り組みをアピール。立憲民主党の岡田克也幹事長は、岸田政権の動きが鈍いと批判した。
首相は2補選で初の現地入り。14日は参院徳島・高知選挙区補選が行われている高知、徳島両市を回った。演説では「物価高に苦しんでいる皆さんをしっかりと支援しなければいけない。思い切った経済対策を今月取りまとめる」と強調。「成長の果実を所得という形で還元する」とも語った。
山口氏は「給付だけでなく、納税者が納得できる対策も考えていきたい」と述べ、所得税減税を政府に求める考えを示した。山口氏の補選応援は「異例」(与党関係者)という。
一方、岡田氏は徳島県勝浦町で街頭演説。経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案の臨時国会提出が11月半ば以降にずれ込むとの見通しを示した上で、「なぜもっと早くしないのか。本当に国民の痛みが分かれば、こんなに悠長ではないはずだ」と政府の対応を酷評した。
岡田氏は演説後、与党が投開票の直前となる20日に首相の所信表明演説を行う日程を提案したことについて「論外だ。フェアではない」と記者団に主張した。
補選は、参院徳島・高知選挙区と衆院長崎4区で実施。いずれも与野党一騎打ちの構図となっている。
●岸田首相が徳島・高知入り 経済対策アピール、立民は物価高批判 10/14
岸田文雄首相(自民党総裁)は14日、参院徳島・高知選挙区補欠選挙(22日投開票)の応援のため、両県で遊説を行った。徳島市内では「物価高をしっかり乗り越える経済対策を用意する。変化に立ち向かう政治に力をいただきたい」と訴えた。
同補選は自民新人と、立憲民主党などが支援する無所属元職の一騎打ちの構図。自民は前職の不祥事が発端の補選なだけに「有権者の目は厳しい」(陣営)と危機感を強めており、麻生太郎副総裁や世耕弘成参院幹事長らを投入し、挙党態勢で臨んできた。同じく22日投開票の衆院長崎4区補選とともに、次期衆院選の「前哨戦」と位置付けられ、結果は首相の政権運営や解散戦略も左右する。
首相はこの日、公明党の山口那津男代表と並んで、徳島・高知両県で演説。次期衆院選での選挙協力を巡って一時は亀裂が生じた両党関係の修復をアピールした。
一方、立民の岡田克也幹事長も14日、徳島県勝浦町で演説し「物価が上がって生活が大変だ。岸田政権は一体何をやっているのか」と批判した。 

 

●もう騙されない!選挙前の風物詩 自民党発「ガス抜き都合よすぎ提言」中身 10/13 
もう騙されるものか…選挙前にまた出ました「減税政策」
「消費税を時限措置として5%に引き下げするべき」
10月、自民党の議員連盟「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の提言だ。
その実現性はさておき、提言では消費税に関して「物価高に苦しむ生活者」のため一時的に5%、さらに食料品などの軽減税率対象の品目の消費税をゼロにするべき、としている。
もちろん解散や選挙の気配のあるたびに、選挙に弱かったり新人だったりの与党議員が美味しい話を出すのは常套手段で、多くの一般国民が、「また騙されるものか」と思うのは無理もない話だが、消費税そのものが果たして「このままでいいのか」という指摘はもっともな話である。
財務省は消費税上げること前提
1989年に消費税が導入されて34年、四半世紀以上が経ったいま、冷戦下でバブル景気の時代と現在の日本の現状を鑑みれば、改めて消費税がおかしなことになっているのではないか、この失われた30年余そのままに、一般国民を疲弊させてきたのではないか、この疑問を改めて考えさせられる。
物価高騰とガソリンの高止まりに二重課税問題、そしてインボイス導入に疲弊する一般国民。近年では一部の識者やSNSを中心に「消費税は法人税減税のための穴埋め」「福祉に使われるどころか大企業の輸出還付金に使われている」など疑念の声が飛び交っている。2022年度の税収が一般会計で71兆超えと過去最高になったこと、大企業を中心としたいわゆる輸出還付金が10兆円を超えるという見込み額も、こうした不公平感、税の不信に拍車をかけている。
岸田文雄首相自身は「消費税の引き上げは考えていない」としているが、すでに一般国民の税負担は数字の上でも限界が来ている。
国民負担は増え続けている
財務省『所得・消費・資産等の税収構成比の推移』によれば、国の総税収(国税)のうち、1989年度(決算額)からの消費税導入当時(3%)、消費税の割合は18.9%だった。法人所得課税は35.3%、個人所得課税が34.4%、そして資産課税等で11.4%である。
しかし2023年度(消費税10%・予算額)では総税収(国税)のうち消費税の割合は41.2%にまで拡大している。逆に法人所得課税は割合を減らし24.9%、個人所得課税が28.9%、そして資産課税等が5%である。
消費税が3%から10%になった現在なら当然だろう、と思うかもしれないが、総税収(国税)のうち消費税と個人所得課税で70.1%を占めている。ちなみに総税収に地方税を加えた表でも消費税(34.8%)と個人所得課税(29.8%)の総税収に占める割合は64.6%と6割を超える。
他の様々な要因はある。数字の読み方もある。しかし、一般国民の負担が増し続けてきたことそのものは明白である。
岸田首相「今を生きる国民自らの責任」発言
「今を生きる『国民自ら』の責任」
岸田首相が2022年、防衛費増額のための増税理解を求める際に発した言葉だ。自民党はのち「今を生きる『我々』の責任」のつもりだった、と修正したが、この数字を見る限り政府、財務省も含め、本来は修正する必要のない「本音」だろうか。実際、一般国民はこれだけの高負担の中、これだけの責任を果たしてきた。それでも岸田首相にわざわざ言われた。反発が起きるのは必然である。
それにも関わらず経団連は「消費税などの増税から逃げてはいけない」と、さらなる消費税増税をほのめかしている。彼ら大企業はすでに海外で稼ぐことが前提であり、まして輸出産業として消費税は還付されるから、という声もあるが、これも反発は必然である。ネットスラングなら「お前が言うか」だろうか。
国民への還元、具体的な内容は言及せず
「税収増等を国民に適切に還元する」「経済成長の成果を的確に還元する」
このように岸田首相は9月から10月にかけて度々「還元」という言葉を使っている。それは「税の基本」とする世耕弘成参院幹事長の言及なら「法人税」と「所得税」ということになる。これが「適切」で「的確」な還元かは、先の数字から読み取っていただけるだろう。
本人が気にいらないと噂の「増税メガネ」
冒頭の「消費税を時限措置として5%に引き下げするべき」という自民党内の声に対し、岸田首相は具体的な内容には言及せず、「思い切った対策にしたい」と答えるにとどまった。
突然、自民党内から降って湧いた消費税5%減税と軽減税率対象の消費税0%案。時限措置、かつ言うだけタダの話かもしれないが、支持率30%台の定位置ならぬ低位置に納まりつつある岸田首相にとって、これそのままとはいかないまでも「思い切った対策」として断行すれば、望みの解散総選挙に打って出ることも、御本人が気にいらないと噂の「増税メガネ」というあだ名も払拭できるように思うのだが。
岸田首相がいまだ国民に披露していない特技、「特技は人の話をしっかり聞くこと」(2021年10月3日、自民党広報のポストより)を、いまこそ披露するべき時だろう。  

 

●「政治の関与未解明」宗教学者、岸田政権の旧統一教会対応を批判 10/12 
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する政府の解散命令請求方針について、政治と宗教の関係を研究してきた島薗進・東京大名誉教授(宗教学)は「自民党の調査が不十分だったこととのつじつま合わせであるなら、大いに問題だ」と語り、「岸田文雄首相は政治家と教団のもたれあいに対処できていない」と批判した。
島薗氏は、教団との親密な関係が指摘されてきた安倍晋三元首相らを調査の対象外とした点を問題視。「重大な人権侵害が疑われる教団を政治家が守るような働きをした可能性があるのに、どう関与したかが解明されていない。通り一遍のアンケートをしたにすぎず、調査は非常に不十分」と指摘し、教団の不法行為に関する調査とは別にしっかり行うべきだったとした。
その上で「解散命令が出ても教団は形を変えて存続するだろう。政府や自民党がどう対処するのかという課題は依然として残る」と話した。  
●国民を70歳まで働かせる準備を進めていた…年金制度は破綻寸前 10/12 
2040年には厚生年金の積立金が枯渇し、財政破綻する可能性が高いと言われている。この問題の解決策に対して政治家はまったく手をつけようとしないのが現状だ。支給開始年齢の引き上げなど不人気な政策が必要だからだと推測できるが、もはやそうも言ってはいられないところまできているだろう。日本経済の現状と展望をエコノミスト・野口悠紀雄氏が分析する。
財務省は、支給開始年齢引き上げが必要だという
政府は年金支給開始年齢の引き上げが必要と考えているようだ。
まず、財務省は、厚生年金の支給開始年齢を68歳に引き上げる案を、2018年4月11日、財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)の財政制度分科会に提出した。
この資料で同省は、「人生100年時代」を迎える中で、年金財政悪化により、給付水準低下という形で将来世代が重い負担を強いられると指摘している。
さらに、2035年以降に団塊ジュニア世代が65歳になることなどから、「それまでに支給開始年齢をさらに引き上げていくべきではないか」と主張している。
そして、開始年齢を68歳とした場合の「支給開始年齢の引上げによる受給水準の充実」のイメージ図を提示している。また外国でも、支給開始年齢は67、68歳が多いことを指摘している。
なお、財務省が年金支給開始年齢の引き上げを主張しているのは、年金会計の収支バランスを図るためというよりは、受給者数の増大によって国庫支出金が今後増えることを抑制しようとしているのであろう。あるいは、国庫負担率をさらに引き上げる要求が出てくることを恐れているのであろう。
70歳までの雇用確保が進められている
他方で、70歳定年に向けての準備も進められている。
政府は、年金支給開始年齢を従来の60歳から65歳に引き上げたことに合わせて、65歳までの雇用を目指しており、2025年度には、企業に対して65歳までの雇用が義務づけられる。
また、「高年齢者雇用安定法」の一部が改正され、2021年4月1日から施行されている。
それによると、事業主は、170歳までの定年の引き上げ、2定年制の廃止、370歳までの継続雇用制度の導入、などの措置を講じるよう努めることとされている。
これは、仮に公的年金の支給開始年齢が70歳になっても生活ができるようにするための環境整備だと考えられなくもない。
つまり、それまでは年金がカバーしていた65〜69歳の生活を保障する責任を、年金でなく企業が受け持つという方向だ。
「受益の全世代化」でなく「負担の全世代化」が必要
前記のように2019年に財務省が支給開始年齢の引き上げ問題を提起したが、その後政府は、「全世代型の社会保障改革」を進めるとし、「あらゆる世代が社会保障制度から利益を得る」という面を強調するようになった。つまり、「受益における全世代化」だ。
しかし、社会保障が実現する世代間移転の基本的な姿は、「若年者が負担し、高齢者が受益を受ける」ことだ。この逆のパタンの世代間移転は、あまりない。今後も、そうしたものが生じるとは考えにくい。
日本の社会保障制度が直面している問題は、負担者である若年者人口が減り、受益者である高齢者人口が増えるために、社会保障制度の維持が難しくなることだ。
これに対処するため、高齢者の受益額の減少、ないしは負担額の増加が求められている。
これは、年齢構造の変化からどうしても必要とされることだ。
だから、あえて「全世代」という言葉を使うなら、いま必要とされていることは、「負担の全世代化」である。
ところが、それは、政治的には不人気なことだ。
しかし、それをあえて実行しなければならない。社会保障改革は、人気取り政策にはなり得ないのである。それを、「全世代型社会保障」という曖昧なキャッチフレーズで覆い隠してはならない。
2024年の財政検証で、支給開始年齢の問題を提起すべきだ
支給開始年齢の引き上げは、いつ行なわれるだろうか?
最も早くは、65歳への引き上げが完了する2025年からだ。このためには、2024年の財政検証においてこの問題が提起されなければならない。
しかし、支給開始年齢引き上げには大きな反対が予想されるので、来年時点でこのような大問題が提起されるとは考えにくい。
ただし、この問題はいつまでも放置するわけにはいかない。
前述のように、支給開始年齢が現在のままだと、厚生年金の積立金は2040年頃には枯渇すると考えられるからだ。
したがって、遅くとも、支給開始年齢引き上げは、2040年までには完了している必要がある。
70歳までの引き上げであるとすれば10年間かかるので、次の次の財政検証時点である2029年に、この問題が提起されなければならない。
ただし、2024年の財政検証において、この問題にまったく触れなくてよいわけではない。
これまで指摘してきたように、現在の財政検証は、高すぎる実質賃金伸び率という虚構の上に立っている。虚構ではなく、経済の実態に即した真摯な見通しが示されるべきだ。  

 

●バラマキ減税で「台所財政」に回帰する岸田政権 10/11 
岸田首相が今月中に出す経済対策をめぐって、与野党から減税を求める声が高まっている。その原因は、昨年度の税収が71兆円と過去最高を記録し、予備費が11兆円も余っているから、それを納税者に「還元」するのだという。
今までは「景気が悪いから補正予算」と言っていたのに、景気がよくなると「物価高対策で補正予算」だというが、これは理屈になっていない。減税すると総需要は増えて物価は上がるのだ。
減税は財政バラマキである
こういう政治家が知らないのは、ISバランスに影響を及ぼす政府支出とは財政赤字だということである。需要不足(需要<供給)のときは、財政赤字を増やして需給ギャップを埋める政策に意味があるが、その逆(需要>供給)でインフレになったとき財政赤字を増やすと、インフレがひどくなる。それがアメリカで起こっていることだ。
これは給付金でも減税でも同じ(厳密にいうと減税の場合は貯蓄される分だけ効果が少ない)である。このように財政赤字による景気対策を最初に提唱したのは、ケインズである。彼は『一般理論』でこう書いた。
「もし財務省が古い瓶に紙幣を詰めて廃鉱の適度な深さに埋め、それを町のゴミで地表まで埋め立て、民間企業に紙幣を再び掘り起こさせれば、もう失業は起きないだろうし、そのおかげで社会の実質所得と資本資産も、おそらく現状をはるかに上回る水準になるだろう。」
これは悪い冗談だったが、失業率が20%を超えた1930年代には意味があった。紙幣を掘り出す無意味な作業でも、穴を掘る労働者には所得が生まれ、彼らがその所得を使うと総需要が増えるからだ。それによって景気が回復し、財政が黒字になったら、借金を返せばいい。
周回遅れでケインズ理論に目覚めた大蔵省
しかし日本では、ケインズ理論はながく認知されなかった。大蔵省は単年度の均衡財政主義で、不景気で財政赤字になると増税し、景気がよくなって黒字になると減税したので、不景気もインフレも増幅された。私の学生のころは、経済学者はこれを台所財政と呼んで批判していた。
それが赤字財政を容認するようになったのが1990年代だった。特に1998年以降の金融危機で、小渕内閣は大型の補正予算を組み、みずから「世界一の借金王」と呼んだ。長銀や日債銀の国有化などに、50兆円近い公的資金が注入された。
この時期から企業が貯蓄超過になり、金利がゼロになってデフレになった。これは不良債権の清算にともなう一時的な現象だと思われたが、その後も20年にわたって続いた。それを不況の原因と誤認した安倍政権は「デフレ脱却」のために異常な金融緩和をやったが、これが結果的に資本逃避を招いて製造業の空洞化をもたらした。
安倍政権のもう一つの失敗は、消費税の増税を先送りして、法人税をほとんど下げなかったことだ。次の図のように日本の法人税率はアジア最高であり、これが空洞化の大きな原因になった。
社会保険料の事業主負担は「第2法人税」
もう一つ意外に見逃されているのが、社会保険料の事業主負担である。これは赤字企業も負担する「第2法人税」であり、法人税を払っていない6割の赤字法人にとっては、こっちの負担のほうが大きい。労働者にとっても給料の30%も取られる社会保険料の負担は、消費税よりはるかに重い。
法人税を下げて消費税を上げようとした大蔵省の方針は正しかったのだが、最初に竹下内閣でつまずいて内閣が倒れ、5%に上げた橋本内閣が金融危機で倒れ、安倍政権はそれにこりて2度も増税を延期し、すっかり消費税はきらわれものになってしまった。
岸田政権は50年前の台所財政に戻ろうとしているが、それが何をもたらすかは明らかだ。減税でインフレはさらに悪化し、企業は海外に出て行き、円安が進行し、実質賃金はさらに下がるだろう。
ただし一発逆転のチャンスもある。それは岸田首相が「3%のインフレを10年続ける」と宣言して、大幅な減税をやることだ。これによってインフレ税で預金者と年金生活者が300兆円ぐらい損するので、所得分配も世代間格差も是正できる。ただしインフレと金利が発散して大惨事にならないとは保証できない。  
●「偽減税」にだまされるな、“増税メガネ”岸田首相、12月から増税ラッシュ 10/11 
岸田首相は、新たな経済政策として「減税」を強調している。2021年10月の首相就任以来、減税措置を講じてこなかったために、この突然の方針変更に戸惑いや批判の声が多く上がっている。さらには、この政策を掲げて「減税解散」に踏み切るのではないか、という憶測も飛び交った。12月以降から増税ラッシュを迎えるということもあり、「偽減税」だとも言われているこの政策で岸田政権はイメージを払拭することはできるのであろうか。
増税主義者が打ち出した「減税政策」
「増税メガネ」などとの揶揄に耐えきれなくなったのか、岸田文雄首相が「減税」も政策メニューへ加えることになった。
岸田首相は、筋金入りの増税主義者として、国会のある永田町では知られてきた。自身の出身派閥『宏池会』では、財務省出身者が名を連ねており、増税を主導してきた面もある。
過去をさかのぼれば、宏池会出身の池田勇人元首相は、「1,000億円施策、1,000億円減税」を掲げ、日本の高度経済成長を減税という形で支えた。有名な『所得倍増計画』では、防衛費を最小限に抑え、民生向上を中心とした経済政策に優先的に配分していった。
宏池会が外交面ではリベラルな立場を貫く政治家が多いにも関わらず、自分たちが「保守本流」であることを事あるごとに強調するのは、こうした戦後の経済成長を、宏池会が引っ張ってきたことが念頭にあるからである。
しかし、宏池会は、池田政権の「官僚主導」という側面だけが拡大していくという組織の変容を遂げていってしまったようだ。今では、自民党全体でバラマキ政策を練り上げたところで、必死でファイナンスをする役目を負わされることになっている。
宏池会は、自民党内で財源や増税議論をするたびに重用され、影響力が拡大する派閥に成り果ててしまったのである。
岸田首相も、そんな宏池会を表した政治家の1人である。岸田首相は、かつて「日本の政治は消費税率引き上げにさまざまなトラウマがある。成功体験を実感することが大事だ」「消費税を引き上げる、ぜひ、この引き上げを円滑に行うことによって、引き上げの成功体験を国民の皆さんとともに実感し、未来を考える、こういったことの意味は大変大きい」などと発言している。
増税が一部のバラマキ先の財源になるという意味では、一部の人にとっての成功体験になるのだろうが、大半の人にとってはただ負担が増えるだけの結果になる。
なぜ? 実質賃金は「17カ月連続」でマイナスに
日銀が2000年に発表したレポートによれば「国民負担率が1%上昇すれば成長率は0.30%低下し、潜在的国民負担率が1%上昇すれば成長率は0.27%低下する」「国民負担率の上昇→貯蓄率の低下→資本蓄積の阻害→成長の制約というメカニズムの存在を示唆しているように思われる」という。
また、第一生命研究所(エコノミスト・永濱利廣氏)が発表したレポートによると、「国民負担率(税・社会保障負担の国民所得に対する割合)の上昇により可処分所得が減少すれば、消費支出が削減されるほか、貯蓄の減少ももたらすことになる。国全体としての貯蓄率の低下は、中長期的に資本ストックの減少をもたらし、潜在成長率の低下につながる」という。
ほかにも同じ結論を示唆するレポートはあるのだが、いずれにしろ、国民負担を軽くしなくては、消費は増えないし、経済成長も果たせないということだ。
家計について、岸田首相は、「低迷してきた賃金は物価高を上回る、3.5%超の引き上げで労使交渉が妥結し、最低賃金も来月から4.5%引き上げる」(2023年9月22日ニューヨーク経済クラブでの岸田文雄首相の講演より)と発言したが、実質賃金は17カ月連続でマイナスだ。
ミスリードを誘う言い方をニューヨークの投資家相手にしているわけだが、岸田首相は証券会社の営業にでもなってしまったのだろうか。
額面上の賃金ばかりを与野党含めて議論したがるが、私たちにとって大事なのは、当然ながら、手元に残る賃金が大事であり、実質賃金が上がらなくては何の意味もない。このままでは、取られる所得税が増えるだけの話である。 ・・・  

 

●内閣支持36%、不支持44% 10/10  
NHKは、今月7日から3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかける「RDD」という方法で世論調査を行いました。
調査の対象となったのは2366人で、52%にあたる1219人から回答を得ました。
岸田内閣を「支持する」と答えた人は先月の調査と変わらず36%だったのに対し、「支持しない」と答えた人は1ポイント上がって44%でした。
支持する理由では、「他の内閣よりよさそうだから」が45%、「支持する政党の内閣だから」が27%、「人柄が信頼できるから」が10%などとなりました。
支持しない理由では、「政策に期待が持てないから」が56%、「実行力がないから」が20%、「人柄が信頼できないから」が10%などとなりました。
各党の支持率は 「支持政党はない」40%
10月の各党の支持率です。
「自民党」が36.2%、「立憲民主党」が5.3%、「日本維新の会」が4.9%、「公明党」が2.5%、「共産党」が2.5%、「国民民主党」が1.2%、「れいわ新選組」が0.3%、「社民党」が0.5%、「政治家女子48党」が0.1%、「参政党」が0.5%、「特に支持している政党はない」が40.0%でした。 
●不人気をよそにはしゃぐ「岸田首相」の大事な「おもちゃ」 10/10
インパクトを最も実感
今年6月の通常国会の会期末、解散風を吹かせまくった岸田文雄首相。うろたえた与野党を見て、ほくそ笑むような振舞いを見せていたという。そして今、10月20日の臨時国会召集を前にして、また新たに解散風を吹かせているというのだが、はたしてその本音とは? 
「今年6月、岸田首相は政権幹部らとの対話の中で解散について言及し、それが報じられるなどして、解散の可能性がいろんなところで語られるようになりました。与野党含め、平然と受け取った者よりは動揺が走った者の方が多かったようですね。結果、懸案だった防衛費増額のための財源確保法などが成立したり、自民党内で対立が先鋭化すると見られていた次期衆院選小選挙区における『10増10減』をめぐる候補者調整などがスンナリ進んだりということがありました」と、政治部デスク。
「解散するかも・するぞ……という言葉のインパクトを最も実感したのが岸田首相だったのは間違いないでしょう」(同)
はしゃぎっぷり
「本当に解散しようとしていたかは本人以外、知る由もないのですが、首相の“はしゃぎっぷり”もまた永田町内では伝わっていて、“解散権をおもちゃにしている”との批判がつきまとっています」(同)
10月20日に臨時国会の召集を控え、改めて解散風が話題になり、いくつかのメディアが報じてもいる。
「自民党の衆院の現有議席は261。過半数は233です。自民党がここ最近行った選挙区情勢調査の結果では現状維持に近い数字が出たとの報道もありました。さらにここに来て、増税ばかりを主張してきた方針を転換したかのように、減税に言及し始めたことも“選挙前のアメではないか”などと評するムキもあります」(同)
実際、首相の本音や解散の可能性はどういったものなのだろうか。
「少なくとも年内解散はないと見ています。自民党の調査結果は現状維持なのかもしれませんが、岸田政権の不人気は根深いものがあり、下手をすれば自民党の過半数割れもあり得るでしょう。頼みの公明党・創価学会も世代交代や統一教会問題の余波を受け、勢いをそがれて行く一方。彼らの票なしには当落線上から転げ落ちる自民党候補は結構いるのです」(同)
早期解散にメリットなし
「首相にとって耳に痛いことでしょうが、一応は自覚していると思いますがね」(同)
つまり、早期解散にメリットはないというわけだ。とはいえ、今後に政権浮揚のきっかけが見いだせるかというとそんなこともなさそうだ。
「内閣支持率は30%台と低位安定。今後、支持率アップにつながるイベントがあるわけではない。首相は来年の自民党総裁選での再選を目指しており、それに絡めた解散時期をああだこうだと模索しているわけですが、議席を減らすどころか負けるくらいなら解散を回避するのは当然。あるいは強力な総裁候補がいないなら総裁選に再選したうえで、残り約1年となっている衆院議員の任期中に解散という選択肢もあるでしょう。それこそ、任期切れ直前のタイミングで参院とのダブル選なども取り沙汰されています」(同)
今後も、解散風を岸田首相自身が吹かせ続けることになるのだろうか。
「その可能性は高いですね。やればやるほど効果は低くなっていくわけですが……。首相になって何をしたいというのが就任時には感じられず、それが2年経っても変わらないままなので、首相になること自体が目的だったのかもしれません。なりたいけどなかなかなれず、終わった人だと思われていたところでなれたタイプでもありますしね。権力の行使に酔っていると言われても仕方ないでしょう」(同)
その酔いがさめる日はいつになるのか。
●政治との連携強化に関する見解 日本経済団体連合会 10/10
岸田政権は、2021年の発足以降、ポストコロナへの移行を果たしつつ、「新しい資本主義」を掲げ、デフレからの脱却・力強い経済の再生に加え、GX(グリーントランスフォーメーション)に向けた環境・エネルギー政策の推進や、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、こども・子育て政策の強化など、わが国の積年の課題に真正面から精力的に取り組んでいる。
また、わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中にあって、G7広島サミットの議長国としての取りまとめや、日韓関係の改善、日米韓首脳会談の実現、防衛力の抜本的な強化など、積極的な外交・安全保障政策を展開してきた。この間の政権運営は、高く評価できるものである。
ポストコロナの時代が幕を開けた今こそ、成長と分配の好循環の実現を通じ、わが国経済にダイナミズムを取り戻すことが求められる。そのためには、経済と政治が力を合わせ、国内投資の活性化などにより、産業競争力の強化を図るとともに、財政健全化、税・社会保障一体改革といった課題に取り組んでいく必要がある。同時に、厳しさを増す国際情勢の下、自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化に努めていく必要がある。岸田政権には、引き続き、国民との積極的な対話と、スピード感をもった政策の実行・推進を期待する。
経団連はこれまでも、民主導の経済社会の実現に向けた改革を加速するため、政治との連携を図ってきた。引き続き、経済活力と国民生活の向上に資する政策提言、政党・政治家とのコミュニケーション、官民一体となった経済外交の推進、企業人の政治参加意識の高揚などの活動をより一層積極的に行い、政治との連携を強めていく。
一方、政治寄附については、経団連はかねてより、民主政治を適切に維持していくためには相応のコストが不可欠であり、企業の政治寄附は、企業の社会貢献の一環として重要性を有するとの見解を示してきた。
政策本位の政治の実現、議会制民主主義の健全な発展、政治資金の一層の透明性向上に向けて、クリーンな民間寄附の拡大を図っていくことが求められる。
そこで、経団連は、会員企業・団体に対し、自主的な判断に基づき、自由主義経済のもとで企業の健全な発展を促進し、日本経済の次なる成長のステージに向けた政策を進める政党への政治寄附を実施するよう呼びかける。また、経団連としての政党の政策評価も実施していく。
あわせて、企業・経済界は、わが国経済にダイナミズムを取り戻すべく、社会性の視座に立脚し、サステイナブルな資本主義の実践に取り組んでいく。
●日本はもはや稼げる国ではない 割り切って「人材加工立国」「出稼ぎ立国」 10/10
日本中のあらゆる分野で人手不足が深刻化している。
物流業界では、2024年問題が深刻だと騒がれる。モノの移動だけではなく、バスの運転手の不足で、各地で路線バス廃止や減便が加速し始めた。
もっと心配なのは介護業界だ。50年度に介護士が122万人不足し、400万人の介護難民が生まれるという試算(第一生命経済研究所の星野卓也氏)があるが、これは数字だけの問題ではない。60代後半のある精神科医は、
「我々の世代は、認知症が酷くなって病院や介護施設に入らざるを得なくなったら、最後はベッドに縛りつけられたまま死ぬと思った方がいいぞ」と私に語った。今でも民間の精神科病院では、人手不足が原因で拘束を認める基準が事実上どんどん緩められているが、それを加速するしか手がないというのだ。高齢者にとっては、お先真っ暗な話だ。
地方選出の国会議員と話すと必ずと言って良いほど、地元では人手不足で農業が崩壊寸前だという話が出る。外国人労働者が少しでもいなくなったらとても存続できないと心配する。
建設、幅広い分野の製造業、飲食、宿泊、小売、ありとあらゆる分野で人が足りない。少子高齢化がその最大の原因だ。
それを克服しようとして、自民党政権下では長年少子化対策が掲げられているが、何の効果もなく、22年の出生数は初めて80万人を切り合計特殊出生率も過去最低水準となった。子供を産む年齢の女性の絶対数が激減しているので、どんなに頑張っても、出生数が増えるところまでは当面の間到達できない。
これまでは、女性や高齢者の就業率(働く人の割合)が高まることで、少子高齢化による労働力不足が緩和されてきたのだが、これも限界に近づきつつある。
出産を機に退職する女性が多く、子育て世代の女性の就業率が大きく下がるいわゆるM字カーブが日本では欧米諸国に比べて顕著だったが、今やそれもかなり解消された。女性就業率はイタリアなどよりかなり高くなっていて、米国を上回っている。スウェーデン、ドイツなどに比べるとまだ低いので、若干の向上はありうるが、大きく上がると期待するには無理がある。
また、高齢者についても、全雇用者に占める65歳以上の割合は、22年に過去最高を更新し、10.6%。米国7%、ドイツ4%などに比べてかなり高い。
一方で、意外なことに70歳以上の賃金は、過去10年で9%も減少している。ということは、無理に働いている人が多く生産性が上がらないので、企業が賃金を上げられないということを意味する。60歳以上の労災死傷者数(新型コロナ感染を除く)が22年には5年前の26%増の3万8千人になったことも相当無理に働いている人が多いことを示唆している。もちろん、生きがいのために働くという人もいるし、今後ロボットの普及で高齢者のサポートが可能になるという話もあるが、高齢者の就業率を上げて労働力不足を補うのはそろそろ限界だと考えるべきだろう。
こうして見てくると、国内の労働力不足を国内で解決するのはほとんど無理だということがわかる。日本は移民を受け入れる以外に生きていけない国になったのだ。
これに対して、政府は、依然として、本格的な移民受け入れという建前は取っていないものの、背に腹は代えられないということで、人身売買との批判が絶えない外国人技能実習制度の廃止を含め、技術移転ではなく、人手不足対策を主眼とした新たな制度を設ける方向だ。
ただし、日本政府が、事実上の移民受け入れに舵を切りつつある中で、実は、将来的に外国人が日本に来て働いてくれることはなくなるのではないかという懸念も強い。
強制労働、さらには現代の奴隷制とまで言われる技能実習制度の悪評は、SNSでアジア諸国に広まっている。さらに悪いことに、円安により日本での賃金が大きく目減りしているため、外国人にとって日本は働く場所としての魅力を失っているのだ。
先週のコラムで指摘したとおり、円安を止める力は今の日本にはもうないと考えると、外国人に選ばれない国になるという懸念は日に日に強まっていると考えなければならない。
人手不足が解消するとしたら、円安がさらに進み、物価が急騰して消費が激減することで、モノもサービスも売れなくなり、それによって人がいらなくなるか、円安を止めるために金利を思い切り上げることで、経済活動を急激に冷やして景気後退するという二つの道しか思い浮かばない状況だ。
さらに、その先にはもっと深刻な問題が見えてくる。
それは、外国人が来てくれないだけでなく、日本の若者が大挙して海外に出て行き、さらにはもう帰ってこないという事態だ。
報道されているとおり、ワーキングホリデーを活用したカナダ、オーストラリアなどへの出稼ぎが増えている。また、すでに寿司職人などの日本脱出ブームが始まり、寿司職人養成学校も大盛況だ。美容師やネイルアーティストなどの海外脱出も少しずつだが始まった。風俗業でもブームになりつつあるそうだ。
日本人の手先の器用さや細部へのこだわり、謙虚さ、そして低賃金でも文句を言わず働くこと、遅刻・無断欠勤や薬物使用、周囲への迷惑行為が少ないことなどは、日本人には当たり前でも、海外の雇用者側には極めて魅力的な特質となる。
海外は日本よりも物価が高く、言葉の壁や文化の違いもあり、それなりに苦労はあるだろうが、何よりも賃金が高く、英語が学べる。さらには、労働時間が短く休暇も取れる。そして、セクハラ・パワハラが日本よりも少ないと言われる。
今後、SNSで成功例が広まると、どこかの時点で、若者の大量海外流出が始まる可能性がある。若者人材空洞化の懸念が現実味を帯びてきた。
そこで思い出したのが、ある在米の日本人経営者の話だ。
彼によれば、日本の電気工事士、配管工などがアメリカで働けば、数千万円の年収を得られるのは確実だという。
人手不足は日本に限ったことではない。多くの先進国で同様の問題が生じ、賃金の急上昇とインフレの原因になっている。特に、工事関係の技能工が足りないそうだ。
ニューヨーク郊外などでは、電気や水道・下水などの故障を修理する業者が不足している。アメリカの戸建住宅は、日本よりも故障・不具合が多いという。
ニューヨーク郊外在住の日本人の悩みは、まず、修理代が非常に高いこと。日本の数倍は当たり前。しかも、修理を頼んでも対応が遅い。これも人手不足が最大の原因だ。さらに、修理をして1年もしないうちに同じ箇所で故障が生じることがよくある。それでも、他の業者がいないので、また同じ業者に頼まざるを得ない。
そうした業者が、年収数十万ドル(数千万円)稼いでいるという話を聞いたとき、彼らの苛立ちは頂点に達する。日本の工事業者がアメリカに来れば、もちろん、年収数千万円は固い。日本人の丁寧な仕事を見れば、引く手数多だろうという。
その話を聞いて、私は、個人営業の日本の電気工事業者に聞いてみた。彼らの多くは、大手電力会社や建設業者の下請けで仕事をすることが多く、収入はかなり少ない。ある業者にアメリカで働きたいとは思わないかと聞いたら、できることなら行ってみたい気はするが、「英語ができませんからね」という返事だった。
もちろん、アメリカで仕事をするには、ビザの問題もあり簡単ではない。しかし、技能工がいないために、住宅建設コストが非常に高くなり、しかも工期が遅れる傾向にあるということは、経済にとってマイナスだ。カナダでも、建設関係の専門職が不足して工事が滞っていると米ABCニュースが伝えていた。
そこで誰でも考えるのは、日本から、優秀な電気工事士や配管工など、欧米で不足している専門技術者を「輸出」する人材紹介・派遣業を始めることだ。語学の問題は、欧米の専門家を招聘して事前に最低限の日常会話と専門用語の勉強をさせて解決する。受け入れ国の出入国管理当局と建設業監督当局と日本政府が交渉して、協力の取り決めを行えば理想的だ。
そう言うと、日本も工事関係の専門職が不足していると反論する人がいるだろう。しかし、足りないなら普通は賃金が急上昇するはずだが、いまだに諸外国に比べて非常に低い賃金しか払えないのだから、海外でもっと良い機会があるのなら、それを活かす方が本人の幸せのためだ。日本の専門学校を卒業したら、アメリカで働くというコースがあっても良い。
日本の若者を外に出すだけだと限界があり、また日本の産業に打撃かもしれないので、それを緩和するために、外国人労働者を大量に招いて専門技術を習得させたのちに、その一定割合を海外に「輸出」するということが考えられる。
住宅建設などでは、日本人のように真面目で信頼できる技術者がいたら、発注者はどんなに心強いか。Built by Japaneseというブランドを確立することもできそうだ。
不謹慎かもしれないが、人材をモノに例えると、日本の専門技術者は競争力がある製品のようなものだ。
途上国の労働者や日本の中高生は、製造業で言えば原材料。それを訓練して高度専門人材に仕立て上げるのは、原材料を加工し付加価値をつけて製品にするのに似ている。日本では人材に投資してもリターンが少ない。それならば、高付加価値製品を輸出するのと同様に、高付加価値人材に投資して輸出する。「人材加工貿易」というイメージだ。
もちろん、「品質管理」は重要だ。輸出される人材は、高く評価される技能工で、器用さ、正確さ、丁寧さ、粘り強さ、誠実さなどの特質を備えていなければならない。
モノと違って、その人材の能力が発揮できて非常に高い対価を得ることで、より人間的な生活ができるということなら、普通の貿易よりさらにメリットがある。
人材を日本につなぎ留めるのは難しい。それならば、割り切って、人材加工立国、さらに、日本人の若者が家族に仕送りする出稼ぎ立国も同時に目指す。ベストではないが、人材流出を嘆くだけというよりはマシかもしれない。
●「停戦を」鈴木宗男氏、“ロシア勝利宣言”の真意を説明 10/10
日本維新の会が、党に無断でロシアを訪問したとして、鈴木宗男参議院議員を除名処分にする方針を固めた。
鈴木氏は10月1日から5日にかけてロシアを訪れ、外務次官らと会談した。ウクライナ侵攻後、日本の国会議員としては、初めての訪問となる。鈴木氏をめぐっては、ロシア国営通信「スプートニク」でのインタビュー動画で、「ロシアの勝利を100%確信している」と発言したとして、問題視されている。
「特別軍事作戦が継続されているが、ロシアの勝利。ロシアがウクライナに対して屈することがない。ここは何の懸念もなく100%確信を持って、私はロシアの未来、ロシアの明日を私は信じており、理解をしている」(スプートニクでの鈴木氏発言)
除名報道があった10月6日午後、政治ジャーナリストの青山和弘氏が単独インタビューで、鈴木氏に発言の真意を問うと、改めて「100%私はロシアが勝利すると確信している」との認識を示した。
「国力の差が違います。武器をもらったり、お金をもらって、やっと戦っているのがウクライナの現状です。だから、早く停戦した方がいいんです。もっとわかりやすくも言いましたよ。『日本の国技に相撲というのがある。一番強いのは横綱だ。一番力のないのは序ノ口』という。ウクライナとロシアを比較したら、ロシアが横綱で、ウクライナは序ノ口。残念ながら。そのぐらいの差があるんだと言うことを、私は私の認識として言っただけ」(単独インタビューでの鈴木氏)
青山氏が「報道を見ると、『勝ってほしい』と言ったように聞こえる」と問うと、鈴木氏は続ける。
「私はそれをちゃんと考えていますから。ロシアが勝つ。私の認識では」「戦争は終わるんです。ただ長引けば、世界でたった一つの命はなくなるんですよ。特に女性、子ども、お年寄りです。これは避けなければいけません。だから私は“停戦”と言っているんです。」(鈴木氏)
第2次世界大戦を例に出し、鈴木氏は「78年前の日本と同じ状況にしてはいけない」と語る。
「一部陸軍軍部の跳ね上がりが、一兵まで戦うとか、女・子どもに竹やり持たせて米兵をうたせる。今ゼレンスキー(ウクライナ大統領)が言っていることと似ているんじゃないですか。『女性よ銃を取れ』なんて。私は、日本の経験をウクライナにさせてはいけない、してもらっては困ると思っているんです」(鈴木氏)
加えて、鈴木氏は「何のためにロシアに行った」「ロシアに利用されている」といった指摘にも反論する。
「日本とロシアは隣国ですよ。世界一のエネルギー大国はロシアです。日本のウィークポイント(弱点)は、エネルギーがないことです。だからアメリカに、今でもクビ根っこを押さえられている。いつまでも自立できない。」「『遠くの親戚より、近くの他人』が私の考えなんです。ロシア・中国は世界の大国です、ならばケンカだけしてもちますか。きちっと折り合いをつけながら、隣国外交をやらなきゃいけない」(鈴木氏)
「特にロシアとは北方領土問題がある。あれは平和条約締結交渉があるんですよ。黙ってても動きません」それが、鈴木氏の持論だ。
●日本株は割安?割高? 10/10
9月後半以降、日本株は調整色が強まった。米国の長期金利が上昇して世界的にリスクオフの動きが広がり、その影響を受けたことが要因だろう。また、米国の政治的混乱や、中国経済の不透明感も重石になっている。日本株は株価純資産倍率(PBR)が低いため、「割安」との評価は少なくない。もっとも、その背景には相対的に低いROEがある。一部の上場企業が増配や自己株取得・消却を積極的に実施しているのは好材料だが、市場全体としてみた場合、国際比較の観点でバリューの面から日本株が割安であるとは言えないだろう。一方、日経平均のイールドスプレッドは、足元、適正水準の範囲内にある。そうしたなか、日経平均の予想1株利益(EPS)と連動性の高い米国の製造業景況感指数が、3か月連続で上昇した。過去のケースから推測すれば、日本株のEPSの伸びは加速することが想定される。政治的混迷下でも米国景気が堅調に推移するのであれば、ここからの下げは長期的な視点で日本株への逆張り投資の機会となるのではないか。
日本は理論上の解散価値を下回る株価の企業が極端に多い
今年4月以降の海外投資家による日本株の大幅な買い越しは、日銀が植田和男新総裁の下でも大規模緩和を継続する方針を示したことに加え、東京証券取引所による上場企業への企業価値向上へ向けた対策の開示要請が契機になった。日経平均採用銘柄のうち、半数近くがPBR1倍を割れているのは日本株の特徴だ。低いバリューの修正が進んだ場合、日本株の上昇余地は大きいとの判断だろう。
日本株のバリューの低さはROEで説明される
「株価純資産倍率(PBR)=株価収益率(PER)×自己資本利益率(ROE)」であり、日本株のPERは他市場との比較で平均的な水準だ。つまり、日本株のバリューの評価が低い要因は、資本利益率の低さが要因に他ならない。主要市場におけるROEとPBRは統計的に正の相関があり、企業価値は相対的に資本リターンに比例している。日本株の低ROEから見ると、バリューが割安とは言えないだろう。
日本のROEは安倍政権が目標とした10%以上を超えていない
2023年における日本株のROEは8.35%に止まり、米国の18.50%、英国の14.65%、ドイツの11.89%を大きく下回る。一部の日本企業は増配や自己株取得を積極化、ROEの改善を目指すようになり、前向きな姿勢と評価できるものの、引き続き米欧主要市場には見劣りする。低いバリューが「割安」として評価されるためには、事業の絞り込みや不要な資産の売却など経営資源の集中が必要だろう。
日本株はドルベースだと小幅なアウトパフォーム
日本株の年初来の相対パフォーマンスは、円建てだと引き続き良好だ。しかしながら、ドル建ての場合、アウトパフォームの率が急速に縮小する。理由は円安に他ならない。外貨を円転して日本株に投資をしてきた海外の投資家にとって、この円安は頭の痛い問題だろう。リスクオフのムードの下、日本株のパフォーマンスが悪化すると、海外の投資家が利益確定のために日本株を売る可能性は否定できない。
米国長期金利の上昇に連れて外国人は日本株を売り越し
財務省の対外・対内証券投資調査によれば、今年4-6月、非居住者(海外投資家)は日本株を9兆5,236億円買い越した。一方、8,9月はその3分の2近くに相当する6兆302億円を売り越している。米国の長期金利上昇を背景とした国際金融市場におけるリスクオフの動きを反映したものだろう。また、円安による外貨建てパフォーマンスの悪化も、日本株離れの要因と考えられる。
日本株はバリュエーションから見ると割高ではない
株式益回りから10年国債の利回りを引いて求める日経平均のイールドスプレッドは、9月末の時点で4.0%になった。過去20年間の平均は4.43%、標準偏差1.62%ポイントであり、足元は適温レベルの範囲内に収まっている。日銀のYCCにより10年国債利回りの適正水準は見え難いが、金利水準との比較でバリュエーションを見た場合、現在の日経平均が特に割高な水準にあるとは言えないだろう。
日経平均は採用銘柄の1株利益に連動
過去20年間、日経平均は予想1株利益(EPS)に連動して推移してきた。結果として、リーマンショック期を底とする日本株の上昇プロセスで、予想PERは概ね15倍を中心に安定している。従って、企業の利益水準が伸びれば、それに連動して日本株は上昇すると考えられよう。このところの株価の大幅な下落は、予想EPSが4月をピークに頭打ちの傾向を示していたことが背景なのではないか。
日本企業の業績を左右するのは米国景気
日経平均のEPSの増減率は、米国の製造業景況感指数(PMI)に連動する傾向がある。PMIは3か月連続で上昇、基準である50に迫る水準になった。日経平均のEPSが米国の景気に連動するのは、日本企業の業績が米国経済に大きく左右されているからと見られる。米国のPMIに連動する形で日経平均のEPSが前年を上回る状況になっているのは、日本株にとってプラスの材料と言って良いだろう。
まとめ
米国の政治状況は不透明で、予算成立の遅れが経済に及ぶ可能性は懸念される。ただし、雇用は引き続き堅調であり、腰折れのリスクは限定的だろう。そうしたなか、日本企業が株価を意識して株主への還元を強化しつつあることは間違いない。また、利益のモメンタムは、日本株にとってプラス材料になると考えられる。米国の政治の動向、そして中国指導部の動静を慎重に見極めつつではあるが、ここからの一段の下落局面は、長期的な視点から日本株への逆張り投資の機会になるのではないか。
●<アベノミクスは正しかったのか> 寸評 10/10
シュンペーターが大学の講義で「葡萄酒は葡萄からも作られるのだよ」と語ったのは有名な話。「物価指数は物の値段の上下で作られる」という比喩だが、ここに罠がある。経済学を深めるにつれ「貨幣量を増減させることで物価は如何様にも操作できるのでは?」という錯覚に陥いりやすいことをシュンペーターは諫めたのだ。アベノミクスはこの罠に嵌まったのではと考えていたが、後の日銀の議事録を読むとこの点を指摘された見識ある委員がいたようだ。10年に及ぶ異次元金融緩和でも物価は思う様には上がらなかった。皮肉なことに黒田総裁最後の一年で物価は上がりだした。物の値段・葡萄の値段が上がったのだ。一部積極財政主義を語り、政府はいくら国債を発行してもお金刷れるから債務不履行にならないと語る政治家やアナリストがいる。しかし海外の労働者が資源と労力を使って作った製品を日本は紙とインク代だけでお金を刷って買いあさっているとなると市場はその国の通貨を敬遠する。グローバルな金融経済では、市場の信認を失った通貨はただの紙切れとなる。選挙がちらつき、与党からは財源の根拠無き政策が気安く飛び出すが、政府はしっかり財政規律を確保すべきだ。  

 

●期待できない世襲政治家ランキング 3位小渕優子、2位小泉進次郎 1位は? 10/9
岸田文雄首相が9月13日に行った内閣改造で、入閣した世襲政治家は岸田首相を含む8人。新内閣の実に4割が世襲議員となった。政界には親族の後を継いだ2世、3世の政治家がゴロゴロ……。親族の威を借りる、彼ら、彼女たちに私たち国民の代表たる大役が務まるのか。
週刊女性は9月25日〜26日にかけて全国の20〜70歳の女性3000人にネットアンケートを実施。編集部で、71歳以下の現役の世襲国会議員34名を挙げ『期待できない議員』を選んでもらった。また『期待できない議員はいない』とする選択肢と自由記述欄も設けた。そのうえで、選んだ理由について回答してもらった。有効回答数は2891票。女性たちの怒りの声が爆発した。
「口先だけな感じが好きになれない」
第10位は、こども政策担当相として初入閣した加藤鮎子議員。33票を獲得。父親は、自民党幹事長を歴任した加藤紘一氏だ。
《大臣になるほどの実績がない》(広島県・61歳)
政治ジャーナリストの角谷浩一氏はどう見るのか。
「当選回数も3回でまだまだですし、入閣の適齢期よりもかなり早いことから大抜擢といえます。一方で、入閣して力をつけた政治家も過去にはいる。加藤さんが閣僚としての役割に耐え、経験を積めるかがポイントですね」
第9位は、自民党の石破茂元地方創生相。42票を獲得した。父親は鳥取県知事や参議院議員だった石破二朗氏。
《テレビで話すのを聞いていると、口先だけな感じが好きになれない》(兵庫県・46歳)
とする声が。
「石破さんの弱点を挙げれば、イザというときにグイッと前に出るパワーが足りないこと。国民としては、もっと頑張ってほしいという期待もあるのではないでしょうか」(角谷氏、以下同)
にデカデカと家系図を載せ、血筋アピール
父親である岸信夫元防衛相の地盤を継いで今年4月に初当選した岸信千世議員が第8位。55票を獲得した。岸信介元首相が曽祖父で、伯父は安倍晋三元首相だ。
《親も伯父も、政治家として失格だった。この人は国政よりも岸家の名誉しか考えていない》(埼玉県・44歳)
《ホームページにデカデカと家系図を載せ、立派な血筋アピール。自分に何ができるのかの主張も実績もないお坊ちゃま》(大阪府・58歳)
当選したばかりだが、厳しい意見が並んでいる。
「経験や実績がないとする意見もありますが、ついこの間、当選したばかり。こうした声が多いのは、やはり伯父である安倍さんや父・信夫氏への批判なんでしょう」
と話して、今回のアンケート結果の印象を続ける。
「やはり大物世襲議員の注目度は高いですね。世襲議員はうんざりする反面、そうした“有名税”をありがたく思う複雑な気持ちなはず。何もせずともニュースに名前が載るわけですから。一方、アンケートからもわかるように国民の目は厳しい。県会議員から国会議員になった人は、こんなに厳しく言われません」
信千世氏が、どんな仕事をしてくれるのか注目したい。
第7位は、自民党の鈴木貴子議員。64票を獲得した。父親は、現職の国会議員として日本維新の会に所属する鈴木宗男氏という“異色な政治家親子”だ。
《自民党にいる理由がわからない。親を見ていると公私混同をして、税金を無駄につぎ込んでそう》(山形県・52歳)
《父親が地元で努力してきたから、親の七光りで当選できる》(高知県・63歳)
貴子氏に関しては、角谷さんも厳しい視線を向ける。
「貴子さんは、民主党から自民党へ行った人。民主党に地盤を作ってもらいながら、看板(知名度)とカバン(資金)は父親の宗男さん頼りという謎の政治家です。宗男さんが維新の会にいるのも娘をバックアップするためのようで、所属する維新の会の言うことは聞かない。親子で“個人的に政治をやっている”という印象ですね。お父さんがいなくなったときに、貴子さんの真価が問われるでしょう」
いつ、親離れができるのか。
第6位は、東京都知事などを歴任した石原慎太郎氏の三男・石原宏高議員。84票を獲得した。今年9月には、総理大臣補佐官に就任した。
《父親の印象が強すぎるため、ご本人は頼りなく見えてしまう》(東京都・61歳)
《“最後は金目でしょ”と被災者をバカにしたから》(香川県・42歳)
との声があったけど、「最後は金目でしょ」発言は兄・石原伸晃元衆議院議員の言葉だ。父や兄のイメージが強いよう。
同じく“家のブランド力”でランクインした世襲議員がいる。110票を獲得し、第4位となった鳩山二郎議員だ。父親は法務大臣などを歴任した鳩山邦夫氏で、伯父が鳩山由紀夫元首相だ。
《伯父が総理のときに失望したので。鳩山家にいいイメージがない》(千葉県・48歳)
《鳩山ブランドは信用できない》(北海道・42歳)
など、お家批判が殺到。
「石原慎太郎さんは大きい政治家すぎたことも関係していますね。カリスマ性はすごかったけど、裏を返せば敵もたくさんいるってこと。父親だけでなく選挙で落選した兄・伸晃氏の迷走ぶりも含めて、石原家への批判が強まったのでは。これは鳩山家も同じでしょう。二郎氏が政界で頭角を現しているかと聞かれると、まだまだ。ただ、回答の多くは2人がどんな人かは知らず、家柄だけで批判している。有名税の大変さがわかります」
「口先ばかりで責任を果たさない」
第5位は、デジタル大臣として入閣する河野太郎議員。93票を獲得した。父親は、自民党元総裁の河野洋平氏だ。
《デジタル庁がしっかり機能していないからマイナンバーカードは何年もたっているのに、問題がいまだに多発している》(宮城県・54歳)
《口先ばかりで責任を果たさない。担当行政の理解もなく、いい加減な放言ばかり。批判的な意見は拒絶し、痛いところを突かれるとすぐ感情的になる》(千葉県・32歳)
マイナンバーの個人情報が漏えいするなど、さまざまな問題が噴出。河野氏は謝罪することに。
「ワクチン問題のときもそうでしたが、トラブルが起こるとキチンと説明せずに逃げるという印象が国民にあるのだと思います」
一挙手一投足を国民は見ている。汚名返上できるか。
第3位ランクインは、党4役の選対委員長に抜擢された小渕優子議員。304票を獲得した。父親は、小渕恵三元首相だ。
《ドリルで政治資金の不正を証拠隠滅する人は信用できない》(千葉県・69歳)
《不正に対するあからさまな証拠隠滅。最低限のルールも守れず不正を働きそう》(大阪府・54歳)
'14年に発覚した政治資金規正法違反が尾を引いている。検察が押収した事務所パソコンのハードディスクがドリルで破壊されていた。これにより“ドリル優子”という呼び名がつけられた。
ただ、国民の評価と政界での評価は差があるという。
「僕は少し厳しい評価だなと思っています。9年前のことで、その間に2度選挙があったけど、彼女はトップ当選しています。さらに刑事裁判も終わっている。その間、小渕さんはポストを打診されても全部断り、党内で雑巾がけをしてきた。それを見てきた人たちが、小渕さんを評価した結果です。小渕さん=ドリルという短絡的な評価がされがちですが、小渕さんの知られざる9年間も知ってほしい」
国民からの視線は厳しいが、その評価を覆せるか。
レジ袋の有料化。3年たっても、その恨みは消えず
306票を獲得し、第2位に名前が挙げられた、小泉進次郎元環境相。父親は小泉純一郎元首相だ。
《メディアアピールばかりがうまくて、実態が伴っていない。レジ袋の有料化は、今でも納得できない。彼のパフォーマンスのための策に思えて不満だ》(愛知県・40歳)
《若手議員の中でも期待していたが、世間の感覚とズレがある》(大阪府・37歳)
'20年7月にスタートしたレジ袋の有料化。3年たっても、その恨みは消えない。
「大臣になってから、その薄っぺらさが露呈してしまった。純一郎氏の息子だから大丈夫と思ったし、注目が集まって期待したけど全然ダメじゃん、と。期待感の裏返しですね」
そして《期待できない議員》第1位に選ばれたのは、岸田文雄首相だ。父親は、元衆議院議員の岸田文武氏。
《まさに悪政。異次元の増税。国民は苦しいのに、海外へバラマキするも、他国からは相手にされない。岸田政権に殺される》(宮崎県・43歳)
《政策の成果を国民として実感できない。なぜ所得が下がっているのに、税金だけは上がるのか》(滋賀県・31歳)
《増税ばっかり。インボイス制度導入を反対する署名を受け取り拒否するとか、国民が本当に何を望んでいるか考えていない》(千葉県・37歳)
'21年11月に首相に就任し、所得倍増を掲げたが、蓋を開ければ増税ばかり。
「麻生太郎副総裁が9月24日、福岡県で講演した際にこんなことを話しました。“岸田さんの誠実そうな、リベラルに見える顔が世の中に受けている”と話したうえで“(防衛費を)NATO並みにGDPの2%にします。安倍晋三が夢にまで見ていた数字、できなかった数字。これを岸田はスッと通した”と」
安倍さんの悲願を、実現させたということ?
「つまり“こうしたい!”と叫ぶ安倍さんよりも、フニャッとまとめる岸田さんのほうがワルってことを麻生さんは言っていると思うんです。穏やかそうだけど、したたかな戦略家というのを、国民に見抜かれるまでに時間がかかったということですね」
“聞く力”をひたすらアピールしてきた岸田首相は、こうした声に何を思うのか。
週刊女性は岸田首相にアンケート結果を記し、国民の声をどう受け止めたのかメールで問い合わせたが、期限までに回答はなかった。
その一方で《期待できない議員はいない》と回答した人は1207票だった。世襲議員たちは、この期待と信頼を維持できるか─。
●「脱炭素」が「中国依存」を深める――日本に求められる「グリーン経済安保」 10/9
多くの日本人が気づかないなかで、日本を取り巻く「経済」と「安全保障」をめぐる地政学的状況が激変している。「脱炭素」を進めようとすればするほど「中国依存」が進んでしまうという困難な課題に直面しているのだ。どの西側先進国も同じ課題に直面しているが、欧州は先頭を走り、米国もそれに続き、日本だけが大幅に出遅れている。
そう警鐘を鳴らすのは、「文藝春秋」2023年11月号(10月10日発売)に「 グリーン経済安保を脱中国依存で進めよ 」を寄稿した前国家安全保障局長の北村滋氏だ。
ウクライナ侵略の2週間後、EU首脳らは「ベルサイユ宣言」を発出
事態が大きく変わったのは、ロシアによるウクライナ侵攻がきっかけだ。
北村氏は次のように指摘する。
〈EUは経済安保政策に関する限り、日米に比べて動きが鈍かった。中国との地理的距離もあり、長年にわたり中国を地政学的リスクと見るよりも、むしろビジネスチャンス豊かな成長市場として捉えてきたからだ。しかしながら、ロシア・ウクライナ戦争がその様相を一変させた〉
〈2022年3月、ロシアによるウクライナ侵略の2週間後、EU首脳らはフランス・ベルサイユで非公式会合を開き、「ベルサイユ宣言」を発出した。(1)防衛能力の強化、(2)エネルギーの対ロシア依存の低減、(3)より強靭な経済基盤の構築を三本柱とするもので、これがEU経済安保政策の出発点となった〉
「脱ロシア依存」が「中国依存」を深める
しかし、ここで欧州は困難に直面する。ウクライナ戦争をきっかけに「ロシアからのエネルギー自立」=「脱炭素化」を迫られたのだが、その「脱炭素化」はそのまま「中国依存」に直結するからだ。
〈EUはEVのバッテリーの4分の1、太陽光発電モジュールと燃料電池のほぼすべてを中国に依存している。太陽光発電技術とその部品については、その依存度は9割を超えるという。
すなわち、ロシアからのエネルギー自立を目指した脱炭素の加速策は、結果としてロシアリスクを中国リスクに置き換えるものとなってしまったのだ。経済安全保障におけるEUの脆弱性が、環境先進地域を自任する自らのグリーン政策によって露わになったのだ〉
要するに「脱ロシア依存」が「中国依存」を深めるというジレンマだ。
日本に求められているのは、脱炭素と脱中国依存の両立
日本が置かれた状況もまったく同様であると北村氏は指摘する。
〈電気自動車(EV)や風力発電に欠かせない重要鉱物についても、日本のサプライチェーンは脆弱だ。経済産業省の「重要鉱物に係る安定供給確保を図るための取組方針」によると、EVのバッテリーに欠かせないリチウムは、約55%を中国からの輸入に依存している。EVのモーターや風力発電タービンの生産に不可欠なレアアース(希土類)も、中国からの輸入が約60%を占めている〉
「中国依存」のリスクは、中国が2010年に尖閣諸島沖の中国漁船衝突をきっかけにレアアースの対日輸出停止に踏み切ったケースからも明らかだ。
ここで北村氏が提唱するのが、「グリーン経済安全保障」だ。
〈野心的な脱炭素目標の一方で、脱炭素を巡る技術や製品の国産化、資源のサプライチェーン強靭化は追い付かず、中国依存が問題化している。今、日本に求められているのは、脱炭素と脱中国依存の両立、すなわち「グリーン経済安全保障」(グリーン経済安保)と言うべき政策だ〉 

 

●「減税解散の大義」…森山氏発言に、稲田氏が一定の理解 10/8
自民党の稲田朋美幹事長代理と立憲民主党の小川淳也税調会長は8日、「日曜報道 THE PRIME」に出演し、岸田文雄首相が「減税」を掲げて衆院解散・総選挙に踏み切るのではないかとの臆測をめぐって意見を戦わせた。
この中で、自民党の森山裕総務会長が1日に「税に関することは国民の審判を仰がなければならない」と述べ、減税が解散の大義になり得るとの認識を示したことが取り上げられた。
これについて稲田氏は「解散は総理の専権事項」、「減税で解散することは誰も思っていない」と話す一方、「減税でということではなく、税という大きな国の形を決めることについて解散で信を問うことはあり得ると(森山氏は)言っているだけだ」との認識を示し、森山氏の発言に一定の理解を示した。
一方、小川氏は「日本政治の劣化の象徴が減税で(国民の)信を問うということだ。みんな透けて見えている。人気取り以上の何物でもない」と断言し、減税解散をけん制した。
番組コメンテーターの橋下徹氏(弁護士、元大阪府知事)も「減税を大義に掲げて選挙はありえない。それは人気取りとしか思えない」と指摘した。
以下、番組での主なやりとり。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー): 改めて岸田首相の発言を紹介する。岸田首相は7日「給付措置、減税、あるいは社会保障の負担軽減、さらにはインフラ投資をはじめ、あらゆる手法を使ってこの物価高を乗り越える」と発言した。その財源として見込まれているのが、過去最高を更新した2022年度の税収の上振れ分、約6兆円といわれている。
橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事): 本当に野党に頑張ってもらいたいが、与党は選挙を意識してなのか、なんとなく一律減税という、国民にすごく喜ばれる、聞こえのよいことを言い始めている。(野党は)これは何のためなんだということは、ぜひしっかり追及してほしい。
松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員): いま議論にあった減税を打ち出す背景として、実は選挙を考えてのことなのではないか、という意見が出ている。自民党の森山裕総務会長は先日、「税に関することは国民の審判を仰がなければならない」と発言して、(政府が今月まとめる経済対策に)減税措置を盛り込むのであれば、それが衆院解散の大義になり得るとの考えを示した。減税は解散の大義になるのかどうか。
小川淳也氏(立憲民主党税調会長): これはもう日本の政治の劣化の象徴だ。亡くなった安倍晋三氏(元首相)が残した一つの負の遺産だ。2014年、当時予定されていた消費増税を延期するので解散すると…。
松山キャスター: (消費税率の)10%への引き上げを延期すると、安倍氏が表明した。
小川氏: あの時、我々も含めて国民の多くが、なぜこんなことで解散しなければいけないんだと(思った)。これこそ人気取りではないかとの議論が相当あった。私は森山裕氏を尊敬しているが、森山氏ほどの方でも、こういうことを平気で言うような時代になっている。議会政治は本来、国民負担などを納得いただくために議会が存在し、そこで合意を得られるものを実行に移す。百歩譲って、減税して、これこれの給付を切り下げて、これで国の財政を正常に運営していきたいのでどうだと言うならまだしもだ。減税して給付をして、その分赤字国債を積み増すから(国民に)信を問うでは、お話にならない。日本政治の劣化の象徴がこの減税で解散して信を問うことだ。みんな透けて見える。こんなものは人気取り以上のものでもなんでもない。
橋下氏: 減税が解散の大義になることはありえない。だって、国民は誰も減税に反対しない。
松山キャスター: 基本的には減税を歓迎する人が多い。
橋下氏: そう。でも、ここにいろんな問題があることを議論するのが本来の政治家の役割なのに、減税を大義に掲げて選挙なんてありえない。ただ、小川さん、安倍さんの話は、あれは法律でもう増税が決まっていた。だから国民負担を求める時だけの解散ではなくて、法律で決まっている流れをやはり変えるということであれば、これは解散の大義があると僕は思う。ここはいろいろ考え方あると思う。今回の一般的な減税は別に流れが決まっている話でもなく、減税やろうと思ったらいつでもできる。何かが決まっているわけでもない。これ(減税)は解散をいちいちやって国民の信を問う必要はない。稲田さん、政府・与党で議論してほしいのは教育の無償化だ。教育の無償化にかかるのは3兆、4兆円で、地方も税収上がっているので、国と地方で折半すれば、国は1兆円台、2兆円も要らない。子どもが生まれてから大学を卒業するまで教育の無償化をやろうと思ったらできる。これぐらいワンチャンスでやってほしい。こんな一律減税ではなくて…。
稲田朋美氏(自民党幹事長代理): まだ岸田首相は減税と言ったわけではなく、いろんなメニューを出している。これから(の議論)だということがひとつ。今回、目的は決まっていて、一つは急激な物価高で苦しんでいる人たちに対して、低中所得者に対して、しっかりと対策を打つ。もう一つはやはりこのデフレから脱却(する流れ)を、あと戻りさせないという大きな目標がある。そのためにいろんなことをやるということだ。森山先生も、減税で(解散)ということではなく、税という、この大きな国の形を決めることについて、解散で信を問うことはあり得ると言っているだけで、減税で解散することは誰も思っていない。それに解散は総理の専権事項なので、私はコメントする立場ではない。
橋下氏: でも、本当に解散するのなら、社会保険料改革、医療保険改革などで今、高齢者は年齢により負担が軽減されているから、現役や若者世代と同じような負担にして、若者が健康保険料の拠出金で数千億円も高齢者に取られている。こういうのをやめますよ、とかいうことで解散をやるならわかるが、減税でとは、人気取りとしか思えない。
●「国力の差からロシアは負けないと述べた」…「いかなる決定も受け入れる」 10/8
日本維新の会の鈴木宗男参院議員は8日、札幌市内で記者会見を開き、自身のロシア訪問を巡って維新が除名処分を検討していることについて「いかなる決定も受け入れる」と述べた。
鈴木氏は1〜5日に訪露し、ロシア政府高官らと面会した。維新執行部は、党に事前届け出がなかった点や、鈴木氏が現地メディアに対しウクライナ侵略でロシアの勝利を期待する趣旨の発言を行ったことを問題視し、10日に処分を決定する方向で調整している。
鈴木氏は「届け出の手続きでは 瑕疵があった」とする一方、現地メディアへの発言については「一にも二にも停戦というのが私の考え。国力の差からロシアが負けることはないという認識を述べた」と説明した。 
●立民・小川淳也氏「日本政治の劣化の象徴」 岸田首相の「減税解散」 10/8
立憲民主党の小川淳也税調会長は8日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」に出演し、岸田文雄首相が「減税」を掲げて衆院解散・総選挙に踏み切ろうとしているのではないかとの臆測に関し「日本の政治の劣化の象徴だ」と批判した「亡くなられた安倍(晋三)さんの残された、1つの負の遺産」とも指摘した。
自民党の森山裕総務会長が今月1日、政府が10月にとりまとめる経済対策で「減税」が検討されていることを念頭に「税に関することは国民の審判を仰がなければならない」として、減税が解散の大義になり得るとの認識をにじませた。
小川氏はこの発言が紹介されると、安倍氏が2014年に、2015年10月からの消費税再増税の1年半延期などを打ち出し、国民の信を問うとして衆院解散を表明したことに触れ「あの時、国民の多く、我々を含めて『何でこんなことで解散しないといけないの』と、これこそ人気取りだという議論が相当あった。それに慣らされちゃっている」と指摘。「私は森山先生を尊敬していますけれど、森山先生ほどの方でも、こういうことを平気で言うような時代になっている」と批判した。
その上で「議会政治では、国民負担に納得頂くために議会が存在し、そこで合意を得られるものを実行に移す。100歩譲って、減税して、これこれの給付を切り下げてこれで国の財政を正常に運営していきたいからどうだ、というならまだしも、減税して、給付して、その分、赤字国債を積み増しますから信を問います、ではお話にならない」「日本政治の劣化の象徴が、この『減税で解散して信を問う』ということ。みんな透けて見えている。こんなもの、人気取り以上の何物でもない」と批判した。
岸田政権で減税論が浮上していることについても「唐突感があると受け止めている。年がら年中、解散風を吹かせている方ですから、選挙目当ての人気取りという色彩が色濃いんじゃないか」と、推測。「租税政策ですから筋が大事。体系や目的ですよね。何のためなのか、そのあたりが(現状は)不透明だ」とした上で「一般論では、減税政策は基本的に富裕層に有利。物価高騰に苦しんでいるのはむしろ中・低所得者なんですから。かつての定率減税は完全に(所得が)高い人に有利。かつて定額減税もやりましたが、それすらも所得を納められている人しか恩恵がない。所得税を納められない方々もたくさんいらっしゃる」とかつての減税政策を振り返り「何のためなのか、それでどうするのか。議論を筋道立ててやっていただきたい」と、岸田首相にくぎをさした。
●岸田内閣の支持率は?  10/8
社会調査研究センターは10月1日、インターネット調査方式「dサーベイ」による全国世論調査の結果を発表した。同調査は10月1日から、全国約6500万人(18歳以上)から無作為に抽出したNTTドコモのdポイントクラブ会員の回答者1505人を対象にインターネットで実施したもの。
・内閣支持率の推移
岸田内閣の支持率は23%で、前回調査(9月3日)の25%から2ポイント減の横ばい。不支持率は前回比1ポイント増の64%だった。岸田文雄首相は9月に内閣改造と自民党役員人事を行ったが、岸田政権に対する期待が「高まった」との回答はわずか4%で、「高まっていない」が79%に上った。
・岸田政権がまとめる経済対策
岸田政権が今月中にまとめる経済対策についても「期待する」は15%にとどまり、「期待しない」が68%を占めた。
・岸田政権の少子化対策
岸田政権の少子化対策に「期待する」は14%、「期待しない」は70%だった。
・首脳外交を重視する岸田首相の外交
「岸田首相は、首相自らが外交を主導する首脳外交を重視しています」というプラスイメージの説明を付けて、岸田首相の外交に期待するかを尋ねても「期待する」は24%で、「期待しない」の57%を大きく下回った。
●鈴木宗男氏「政治家が自分の認識を述べるのは当たり前」 維新の処分 10/8
日本維新の会の鈴木宗男参議院議員が7日、自身のブログを更新した。
日本維新の会は、党への事前届け出をせずロシアを訪問した同氏を除名処分とする方向で調整に入っている。10日にも持ち回りの党常任役員会を開き、決定する。議員団の役員会では、無断での訪ロに加え、現地メディアの取材に「ロシアの勝利を100%確信している」などと発言した映像があるとして問題視した。
これを受けて、鈴木氏は「ロシアのスプートニクのインタビューの『切り取り』がネットに出てから『ロシアが勝利する』と言ったことがケシカランという話になって来ている」とした上で、「政治家が自分の認識を述べるのは当たり前で、人それぞれの認識を否定する権限は誰しも持ちえない」「私は昨年来からいつでも言っているフレーズであり、それは『一にも二にも停戦』」と続けた。
また、相談している弁護士からの「処分によって裁判する値がありますよ。民主主義の一番である言論の自由と、間違った解釈、判断で政治生命に関わり、何よりも人権を毀損することになりますから、裁判すると認識を問う初めての判例となります。極めて重いことでいつでも対応します」という声も紹介した。
そして、事務所に数々の激励の声が届いているとし、「ここは信念を持って闘って参りたい」「私は私の筋を通して行く」とつづった。

 

●岸田首相の“増税地獄”に「すべての元凶はメガネ」「外すとイケメン」怒る国民 10/7
岸田文雄首相への、国民の怒りが止まらない。
「10月4日で、岸田政権の発足から2年を迎えましたが、支持率は低迷していますね。これまで“増税はしない”と繰り返し発言していたのに、やっていることは増税ばかりで……。SNSでは、岸田首相を揶揄するハッシュタグ《#増税メガネ》がトレンド入りしています」(ワイドショースタッフ)
「増税メガネ」がトレンド入り、岸田首相に怒り収まらない国民
自民党総裁選に出馬した2021年9月の時点、総理の座を目指していたころは、「10年程度は、消費税を上げることは考えていない」と発言。しかし、2023年10月からスタートしたインボイス制度は、消費税の支払いを免除されていた年間売上1000万円以下の小規模事業者から消費税の徴収を強化する“消費増税”にほかならない。
「現在の収入でギリギリの生計を立てる小規模事業者からすれば、さらなる課税を受けることで廃業に追い込まれる可能性もある。こうした結果、私たちが受けるサービスや購入する商品が値上がりしていくと予測されます。インボイス制度の導入は、大きく見れば日本全体への“増税”なんですよ」(全国紙経済担当記者、以下同)
さらに、岸田政権の肝いり政策であった“異次元の少子化対策”にも隠れた増税が……。
「『扶養控除』の廃止や見直しによって、結局のところ家庭によっては負担増となるケースもでてくる。少子化対策をしているように見せかけて、ウラでは“ステルス増税”をしているのです」
小規模事業主や子育て世帯だけではない。企業で働くサラリーマンへの増税も検討されている。
「6月30日に、政府の税制調査会がまとめた中期答申には、通勤手当への課税や退職金への増税を検討していることが明らかになりました。退職金を見越して人生計画を立てている人も、見直しを迫られる。岸田首相は“サラリーマン増税は考えていない”と主張しつつも、その影響を受けるのはサラリーマンなわけですから、サラリーマン増税以外の何物でもない」
“ステルス増税”で岸田首相のあだ名が「悪い進化」
2019年に金融庁が公表した報告書では、老後30年間で必要な資金は2000万円とされた。
その一方、物価上昇が止まらない。たまご1パック100円の時代から今や300円に。自動販売機の清涼飲料水も150円が気がつけば180円ほどに値上がり。ほかにも内容量を減らすなど、食品のステルス値上げが相次いでいる。ガソリン代は高騰し、10月からは電気代やガス代も値上がりする。
「給与は上がらず、物価は上昇。さらに給与から天引きされる所得税や社会保険料といった非消費支出も増えています。総務省が発表した『家計調査』によると、2022年度の非消費支出は、2人以上の勤労者世帯で11万7750円にのぼります。
これは2002年度の非消費支出8万5376円から3万円以上も上昇している。ここに岸田政権の“増税地獄”が加われば、生活は困窮していくしかない……。老後資金だって2000万円あったとしても、足りなくなるはず」(前出・ワイドショースタッフ、以下同)
こうした現実に直面し、国民たちはその怒りを岸田首相へぶつける。
「SNSでは、《#増税メガネ》というハッシュタグから《#増税クソメガネ》に“進化”し、岸田首相が“だったらレーシックでもすればいいのか”と発言したとする報道を受けて《#増税クソレーシック》へと“変化”しました。メガネを外した岸田首相が、実はイケメンだとも話題になっていましたね。国民の批判が集中したすべての元凶はメガネだったのかも……」
今はどうなっているのか。
「直近では《#増税クソメガネ》に“後退”していますが、《#鬼畜増税クソメガネ》《#バラマキ増税クソメガネ》《#増税嘘つきクソメガネ》といった“亜種”も見かけます。こうした中でも、次の進化先は《#増税嘘つきクソメガネ》かと、個人的には思っています。“増税しない”って言ったのに、増税しているんですから」
国民が求めているのは、岸田首相がレーシックで眼鏡を外すことではない。自慢の“聞く力”だけでなく“理解する力”の発揮に期待したい。
●借金まみれごまかす岸田政権と植田日銀 本当に「出口戦略」体制か 10/7
日本で財政規律はもはや死語なのか。そう言わざるをえないほど政治が壊れてしまったように思える。
岸田文雄首相が経済対策のとりまとめを指示した。物価高対策や持続的賃上げ、人口減対策などを柱に、あれもこれもの内容だ。自民党の幹部たちは「(規模は)少なくとも15兆円、できれば20兆円」「減税も当然、検討対象」などと次々に注文をつけている。
いまは景気が悪いわけではない。日銀短観の大企業の景況感はバブル期に近い好調さだ。それなのに世界最悪の借金依存が心配されている政府と与党によって巨額の追加歳出が検討されているのは、かなり異常な構図である。
岸田首相は「今こそ成長の成果である税収増を国民に適切に還元すべきだ」とあたかも経済成長がまったく新しい対策原資を生んだかのような説明をしている。本当にそうか。首相の説明はいわば「朝三暮四」のようなものではないか。
昔、中国で猿にトチの実を朝三つ、暮れに四つ与えようとしたら少ないと不満が出た。そこで朝四つ、暮れ三つと順序を変え提案した。すると猿は喜んだ。
経済対策の財源論もこのごま ・・・ 
●岸田政権3年目 任命責任またもや疑問符 10/7
岸田文雄首相率いる政権は発足3年目に入った。ただ、先月の2次再改造内閣と党役員の改選では、任命直後から政治資金問題が指摘される議員を閣僚に起用したり、人権侵犯の認定を受けた議員を党の役職に充てたりするなど、任命権者として疑問符がつきかねない事態を招いている。
昨年8月の内閣改造後には「政治とカネ」問題などを受け4人の閣僚が辞任した。当時の寺田稔総務相と秋葉賢也復興相が妻らに事務所の賃料を払っていた問題が浮上し、別の疑惑と相まって、首相は事実上の更迭に踏み切った。首相はその際「任命責任を重く受け止める」と語った。
それを忘れてしまったかのような今回の人事。初入閣させた加藤鮎子こども政策担当相、松村祥史国家公安委員長のほか副大臣2人の政治団体が親や親族が代表を務める会社に事務所の賃料を支出していたことが判明した。両大臣は「相場に見合った賃料」などと述べたが、身内への支払いは政治資金の「環流」に当たるとして批判されてきた。
首相は党総裁としてきっちり「身体検査」を行ったのか。適格性を見極めた人事とはいえず、20日からの臨時国会で野党から追及されるのは必至であり、またもや任命責任が問われる事態になろう。
他の閣僚や党役員らにも不適当な事案が判明している。公選法では国と契約を結ぶ事業者が国政選挙に関して寄付することを禁じているのに、高市早苗経済安全保障担当相が代表の政党支部は2021年の衆院選と近い時期に寄付を受けている。西村康稔経済産業相や萩生田光一政調会長らにも同じ問題が浮上した。
国からの事業請負を知らなかったとしても政治倫理上看過できないし、返金でよしとはできない。首相が代表を務める選挙支部でも政治資金の処理に不手際があったのを見過ごしにはできない。真剣に反省するというのなら、資金の扱いについて徹底調査を指示すべきではないか。
杉田水脈衆院議員を党環境部会長代理に登用したことにも驚いた。この人事が決まる前に、杉田氏のアイヌ民族への侮辱的なブログ投稿が、札幌法務局から人権侵犯と認定されていた。杉田氏は性的少数者を「生産性がない」と月刊誌でやゆするなど不適切な発言などを繰り返してきた。首相は前回の内閣改造時に杉田氏を総務政務官に抜てきしたものの、批判を受け更迭した経緯がある。
首相は就任時に「多様性が尊重され、全ての人々が互いの尊厳を大切にする社会を目指す」と言明。閣僚に女性5人を登用したが、副大臣・政務官では1人もなかった。その時点で言葉の「真贋(しんがん)」は明らかだろう。
●岸田政権のウケ狙いバラマキがかえって国民を苦しめるワケ 物価高対策 10/7
円安や原油高が進み、物価の値上がりはなかなか収まりそうもない。岸田文雄政権は10月末をめどに物価高対策をまとめる方針だが、経済評論家の斎藤満さんは「本気で物価高を抑えたいようには見えない」と批判する。
「あらゆる手法を動員して思い切った対策にしたい」
岸田首相は10月4日、準備を進めている新しい経済対策について、こう話した。
対策をめぐっては、自民党の茂木敏充幹事長や世耕弘成参議院幹事長ら与党内から、所得税や法人税の減税も検討の対象にするべきだといった声が出ている。自民党の若手有志からなる議員連盟も4日、消費税率の5%への引き下げなどの検討を求める提言をまとめた。百家争鳴の様相を呈しつつある。
岸田首相は、こうした与党の提言も踏まえて対策をまとめ、裏付けとなる2023年度補正予算案を20日に召集する臨時国会で成立を目指す考えだ。
これに対し、経済評論家の斎藤さんは「国民の支持集めや人気取りのためのバラマキの材料として言っているようにしか思えない」と切り捨てる。
「今回の経済対策は、そもそも物価高対策のはず。でも、日本銀行は2%の物価安定目標の達成が見通せないとして緩和策を続けています。そのため日米の金利差は縮まらず、円安・ドル高が進みやすい状況にあります」
今のままでは年末にかけて1ドル=150円後半から160円近くの水準までずるずると進む可能性もある」と齋藤さんは指摘する。
「足元では原油高も加わり、物価の上昇は簡単に収まりそうもありません。さらに経済対策に盛り込む財政支出や減税も、インフレを促す性質のものです。政府に物価高を本気で抑える気持ちはあるように見えません」
斎藤さんの目には、特に今回、新型コロナウイルスや大規模災害といった従来の補正予算編成にあたって打ち出してきた巨額の予算を投じるための名目が見当たらないように映る。内閣府が9月に発表した推計結果は、日本経済の供給力と需要の差を表す「需給ギャップ」が小幅ながらプラスに転じた。常とう句のように使ってきた「脱デフレ」も、補正予算を組む上で前面に打ち出しにくくなっている。
このため斎藤さんは「『物価高』がバラマキ対策を行うための格好の理由として用いられた」とにらむ。
「本当に物価高を抑えたいのだったら、緩和策をやめなければ筋が通りません。緩和策でインフレを後押ししているのに物価高対策を行うなんて、アクセルとブレーキを同時に踏むようなもので、支離滅裂です。今はむしろ財政支出を抑制して景気を冷ます局面ではないでしょうか。衆院解散や総選挙への思惑があるから、誰もそんなことは言いだしにくいのでしょう」
国民受けを狙ったバラマキ対策が物価高をさらに押し進め、かえって国民の首を絞めかねない状況にある。岸田首相は、こうした矛盾を解きほぐせるか。
●「増税クソメガネ」「増税クソレーシック」…憲政史上、最もみっともないあだ名 10/7
政治の世界で「首相プレミアム」という“指標”が存在するのをご存知だろうか。世論調査の「内閣支持率」から「与党第一党の政党支持率」を引く。導き出されたプレミアムの値が大きければ大きいほど、政権は有権者の広範な支持を得ていることが分かる。逆に値がマイナスなら、首相は不人気というわけだ。
ノンフィクション作家の小林照幸氏は2021年9月、当時首相だった菅義偉氏(74)の首相プレミアムを計算し、信濃毎日新聞のコラムで紹介した(註)。
使われたのは共同通信の全国電話世論調査。菅内閣は20年9月の発足時、支持率は66・4%、自民党支持率は47・8%。プレミアムは18・6だった。
だが、コロナ禍が猛威を振るい、菅内閣の支持率は下がっていく。21年7月12日、政府は東京都に4度目の緊急事態宣言を発令。23日に東京五輪が開幕するが、内閣への逆風は止まらなかった。
8月14日から16日に行われた世論調査で、菅内閣の支持率は発足以来最低となる31・8%、自民党支持率は39・5%。その結果、プレミアムはマイナス7・7となり、結局、10月4日に菅内閣は総辞職した。
それでは岸田文雄首相(66)のプレミアムを計算してみよう。ここでは読売新聞の世論調査を使う。
10月4日、菅内閣が総辞職したことで岸田内閣が発足した。読売新聞は4日と5日に緊急世論調査を実施。内閣支持率は56%、自民党支持率は43%となり、プレミアムは13だった。
だが、今年の7月から9月にかけて行われた3回の世論調査でプレミアムを計算してみると、7月は2(内閣35%、自民党33%)、8月は5(内閣35%、自民党30%)、9月は4(内閣35%、自民党31%)という値になり、発足当初の“ご祝儀相場”の貯金を使い果たしてしまったことが分かる。
「増税メガネ」がトレンド入り
朝日新聞や産経新聞の世論調査でも、やはりプレミアムの値は減少している。特に毎日新聞ではマイナスに転じた。9月16日と17日に行った世論調査では、内閣支持率は25%、自民党支持率は26%で、プレミアムはマイナス1だった。
「首相プレミアム」はご存知ない方でも、「青木の法則」なら耳にしたことがあるかもしれない。“参院のドン”と呼ばれた自民党の青木幹雄氏(1934〜2023)が提唱したとされ、第一と第二の法則がある。
特に有名なのは第一で、「内閣支持率と与党第一党の支持率を足す」ことで「青木率」が求められ、その値が60を切れば政権に黄色信号が灯り、50を割ると赤信号になるというものだ。
9月に行われた毎日新聞の世論調査で青木率を計算すると51となる。黄色信号が灯り、赤信号は間近という値だ。担当記者が言う。
「世論調査を見ると、岸田首相に強い逆風が吹いているのは明らかです。そのためネット上でも、首相を批判する投稿がかなりの数に上ります。特に話題になったのは『増税メガネ』と『増税クソメガネ』、そして『増税クソレーシック』というあだ名です。もともと岸田政権は、防衛増税やサラリーマン増税に踏み切るのではないかという不信感が持たれていました。特に10月1日から始まったインボイス制度については、零細自営業者から切実な悲鳴が上がっていました。そのため『増税メガネ』というあだ名は、8月25日から26日にかけX(旧Twitter)で大幅に拡散され、トレンド入りしました」
「レーシックでもすればいいのか?」
なぜ「増税メガネ」のあだ名が拡散したかについては諸説ある。ここでは中日スポーツが8月25日に配信した「岸田首相は『増税メガネ』? 不名誉ニックネームがじわじわ浸透…SNSでトレンドトップ10入り」の記事を紹介しよう。
《岸田首相を名指しした「増税メガネ」と呼ばれる呼称は、2021年末頃から旧ツイッター上で散発的に投稿されていた。今年7月頃から徐々に投稿は増加傾向にあったが、8月25日午後に大型掲示板サイト「5ちゃんねる」に、その呼称をタイトルに載せたスレッドが登場。まとめサイトに転載されたことから、X上で一気に拡散されたとみられる》
この「増税メガネ」が「増税クソメガネ」になり、さらに「増税クソレーシック」に発展した。メガネがレーシックに変化した理由は、FLASH(電子版)が9月29日に配信した記事「岸田首相 『増税メガネ』呼称にご立腹…国民は『収支報告書ミス』に怒りぶちまけ」が影響を与えたようだ。文中の《官邸関係者》によるコメントをご紹介しよう。
《マスコミで『増税メガネ』が話題になっていますが、ついに首相本人がそのあだ名を気にしはじめたのです》
《首相は『レーシックでもすればいいのか?』とご立腹です。我々は『現実が視えるようになればいい』と囁き合っているのですが……》
岸田首相は“スライム”
ネット上では、レーシックでメガネを不要にするのではなく、増税を不要にしてほしいといった投稿が殺到。「増税メガネ」より批判のトーンが強い「増税クソメガネ」を元にして「増税クソレーシック」という新しいあだ名が登場したわけだ。
首相にあだ名が付けられること自体は珍しくない。吉田茂(1878〜1967)は「ワンマン」、田中角栄(1918〜1993)は「今太閤」、中曽根康弘(1918〜2019)は「風見鶏」という具合だ。
「今の感覚に照らし合わせると、洒落にならないものもあります。例えば、大平正芳さん(1910〜1980)は『讃岐の鈍牛』と呼ばれました。香川県出身で、その容貌が牛に似ているからというのが理由でした。それが岸田さんの『増税クソレーシック』となると、何しろ『クソ』が付いています。日本の憲政史上、最も過激なあだ名であることは間違いないでしょう」(同・担当記者)
政治アナリストの伊藤惇夫氏は「確かに上品なあだ名ではありませんが、国民が岸田政権に怒りを感じていることが伝わってきます」と言う。
「なぜ国民は岸田政権に怒りを感じているのか。それは岸田さんの政策は捉えどころがないからです。私は『スライム政権』と呼んでいますが、一体、増税をするのでしょうか、減税をするのでしょうか。防衛増税は実施するのか、子育て支援の財源をどこから確保するのか、増税はしないが社会保障費の負担は上げるのか、そういった説明は一切ありません。これでは国民が憤りを覚えるのは当然で、それが『増税クソレーシック』というあだ名に象徴されているのだと思います」
「なったら総理」
伊藤氏によると、歴代の首相は「なったら総理」と「なりたい総理」の2タイプに分類することが可能だという。
「『なったら総理』は、首相になる前から『総理になったら必ずこれをやる』と政策ビジョンを練り続けた政治家です。代表的人物としては、中曽根さん、小泉純一郎さん(81)、安倍晋三さん(1954〜2022)といった方々が挙げられます。一方、『なりたい総理』は、総理になることだけが目標で、それが実現すると次の目標はありません。国家観や政策上の定見といった中心軸が存在しないのが特徴で、その代表は菅直人さん(76)と岸田さんでしょう」
岸田首相にビジョンなど何もない。そのため「増税クソレーシック」と批判された理由は、増税に対する懸念だけではないという。
「『なりたい総理』は、実現を目指す改革案や政策を持ちません。そのため長期政権が目標という本末転倒の状態に陥ります。その象徴が9月に行われた内閣改造でした。来年9月に予定されている自民党総裁選で岸田さんが再選を果たすための改造であり、ライバルを封じ込めるのが最大の目的でした。国民の暮らしをよくするために人事を行ったわけではないのです。今の日本は物価高に苦しみ、見かけ上の所得が増えた人もいるでしょうが、全体として実質所得は減少を続けています。今後も岸田さんが国民の生活苦を直視しないのであれば、政権の支持率が回復することはないと思います」(同・伊藤氏)
大手メディアの責任
伊藤氏は「全国紙など大手メディアの責任も重いと言わざるを得ません」と指摘する。
「岸田政権の問題点を指摘するどころか、解散風を煽る報道しか行っていません。今、衆議院を解散する必要がどこにあるのでしょうか。自民党の森山裕総務会長(78)は、減税を行うかどうかが解散の大義になるという見解を示しましたが、これに納得する有権者は少ないでしょう。全国紙は『今の社会状況で解散などあり得ない。岸田政権は国民の生活苦を解消する政策に注力すべき』と指摘しなければならないのに、明日にでも解散するかのような記事しか書いていません。これでは政治部ではなく政界部です。大手各紙は猛省が必要だと思います」 

 

●辺野古、代執行へ国が提訴 あまりにも政治力がなさすぎる政府の「解決策」 10/6
米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画をめぐり、政府は代執行訴訟に踏み切る方針だ。県が繰り返し求める対話に応じず、「解決」は図られるのか。
国家権力が総がかりで沖縄をねじ伏せにかかっている。名護市辺野古の新基地建設をめぐる国と県の係争の「最終局面」はそんな印象を強くするものだった。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画をめぐり、新たな区域の埋め立て工事に必要な防衛省の設計変更申請について、斉藤鉄夫国土交通相は5日、国が県に代わって承認する「代執行」のための訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。玉城デニー知事は6日、「訴状の内容を精査したうえで対応を検討する」との声明を発表、判断を保留した。代執行訴訟が行われた場合、年内にも県の敗訴が濃厚とみられる。
設計変更の不承認処分をめぐる訴訟の9月4日の最高裁判決で県の敗訴が確定して以降、玉城知事の苦悩の表情が何度もマスコミを通じて映し出された。その都度、この表情には既視感がある、と思っていた。最も近いと感じたのが、1990〜98年に知事を務めた大田昌秀氏だ。
大田氏が知事在任中の95年9月、米海兵隊員らによる少女暴行事件が起きた。翌10月の県民総決起大会で壇上の大田知事が最初に口にしたのは被害者の少女に対する謝罪だった。
「行政の責任者として、いちばん大事な幼い子どもの人間としての尊厳を守ることができなかったことを心の底からおわび申し上げます」
大田知事はその後、米軍用地の代理署名拒否に踏み切る。代理署名とは、米軍用地への提供を拒む地主に代わって知事が代理署名を行い、民有地の強制使用を可能にする手続きだ。これにも沖縄県特有の背景がある。在日米軍基地の大半が戦前の旧日本軍の基地をそのまま使用しているのに対し、沖縄県では戦後、米軍による公・民有地の強制接収が行われたため、沖縄県を除く全国の米軍施設・区域では約87%が国有地なのに対し、沖縄県では民有地が4割近くを占める。知事が代理署名を拒否すれば、米軍用地の使用は違法状態となり、日米安保体制が根幹から揺らぐ事態になるため、日本社会の耳目が沖縄に集中した。そんな中、日米両政府が合意したのが96年の普天間飛行場の返還だった。市街地の真ん中にある同飛行場の返還は大田知事が最優先で求めていたからだ。この返還合意はのちに「県内移設」が前提であることが分かり、現在に至る混沌(こんとん)の出発点になる。
96年8月、最高裁は代理署名拒否訴訟の上告審で沖縄県の訴えを棄却、県の全面敗訴となった。沖縄では最高裁判決の直後の96年9月8日に、「基地の整理・縮小」と「日米地位協定の見直し」について賛否を問う県民投票が行われ、賛成は約9割にのぼった。県民投票の翌々日、大田知事は橋本龍太郎首相(当時)と面談。県民投票の結果を伝え、基地問題解決や沖縄振興を訴えた。これを受け、橋本首相は基地の整理縮小と日米地位協定の運用見直し、沖縄の経済振興に尽力するとの談話を閣議決定した。会談から3日後、大田知事は橋本首相の談話を評価する形で、代理署名手続きである公告・縦覧代行に応じることを表明する。
この時の会見に臨む大田知事がまさに今、東京のテレビニュースで見る玉城知事の姿と重なるのだ。国の意向に従うにせよ、あらがうにせよ、県民の民意と国家権力の板挟みになる沖縄県知事の苦悩の姿だ。
今回の玉城知事の判断に際し、琉球大学の我部政明・名誉教授(国際政治)は「沖縄の知事には宿命づけられた任務がある」と歴代の沖縄県知事と連なる点を指摘している。「米軍基地を巡る政治と行政の間での緊張関係の中で、知事には将来の沖縄を形作る決定が問われる。どの知事にも決定が問われる時が必ずやってきた」(10月5日付沖縄タイムス)と。
沖縄の知事と他の都道府県知事との違いは、日本の「安全」を支える米軍基地の大半(米軍専用施設面積の各都道府県に占める割合は、沖縄県が8.10%なのに対し、次に割合の高い神奈川県で0.61%と大きな開きがある)を抱えさせられていること。そして、それに伴う負担を強いられる住民と政府の間に立たねばならないことである。我部氏は「沖縄の知事は、日本の安全保障政策に対し、沖縄の利益表出と行政組織である沖縄県の執行の二つの役割を担う」と説き、こう続ける。
「その二つが両立できない時、政権との距離に関係なく過去の知事たちは自らの考えに沿い判断してきたようだ。そして、行政の立場を選んだ。理由に、法律上の知事の権限が及ばないことを挙げてきた。知事の政治的役割も検討したが、決定後の世界を政治的に見通せなかったと推測する」
代理署名をめぐる大田知事の応諾表明はまさにそうだろう。
96年に大田知事が代理署名の応諾に踏み切ったことで沖縄県内には批判が巻き起こる。それに対し、大田知事は「(応諾を)拒否してその先に何が見えるのか。雇用の拡大につながるのか。基地の整理・縮小につながるのか」と訴えざるを得なかった。知事が二度と代理署名拒否の行動に出られないよう国は97年、知事から代理署名権限などを奪う駐留軍用地特別措置法改正案を約9割の圧倒的多数で衆院可決した。この際、自民党で衆院安保土地特別委員長を務めていた野中広務衆院議員は「圧倒的多数で可決されようとしているが、『大政翼賛会』のようにならないように若い方々にお願いしたい」と異例の意見表明を行った。
当時の心情について野中氏はのちに筆者の取材でこう答えている。
「沖縄には琉球政府時代の自立心や琉球王府としての歴史もある。それから米軍の支配で復帰が遅れた。こういうことを無視してはいけないし、われわれもまた、沖縄は兵隊だけでなく一般民衆も犠牲になった(沖縄戦など)、沖縄には耐え難い歴史がずっと残っているんだということを脳裏に置きながら、節目節目で民族としての償いをしてきた。しかし、それが分かっている政治家がだんだん少なくなっていた。政治家だけでなく日本全体だけれども」
野中氏の「大政翼賛会にならないように」との発言は、衆院可決から4日後の理事会で議事録から削除されることが決まった。
一方、今回の玉城知事の判断は後世、どのように評価されるだろう。法廷が舞台の係争は「最終局面」になりそうだが、玉城知事が「沖縄の利益表出=政治家」の立場を選んだ場合、沖縄の民意を背負った玉城知事と政府の確執は続くことになる。またこの先、玉城知事が「行政の立場」を選んだとしても、「辺野古」の行方は依然混とんとしそうだ。
選択を迫られているのは玉城知事や沖縄県民だけではない。防衛省は着工を起点とし、施設の引き渡しまでは約12年要すると試算。ただし、実際に工事を開始しても、1兆円近くに膨らむ総工費や海底の軟弱地盤など政権は極めて難しい問題に直面することになる。
沖縄に今、押し寄せている本土の記者たちも、次の展開がないと判断した時点で大波がひくように去っていく。そして残されるのは、10年以上かけて完了するかどうかも分からない埋め立て工事だ。県民はそれをずっと見守ることになる。
水深70メートルの軟弱地盤に7万7000本の砂の杭を打ち込んで地盤の改良工事をする計画は、専門家からも「技術的に困難」との指摘が出ている。しかし国は「地盤改良すれば建設可能」との姿勢を崩さない。無論、こう主張しなければ「軟弱地盤で建設は困難」とする沖縄県の訴えを認めることになるから当然といえば当然だろう。
だが、大浦湾周辺には環境省レッドリストで絶滅危惧種(IA類)に指定されているジュゴンなど262種の絶滅危惧種を含む5300種以上の生物が生息する。仮に10年経って、環境や生態系を取り返しのつかないレベルまで改変し、何兆円もの税金を費やして、「やっぱりできませんでした」となっても、その時には首相も防衛省の事務方も裁判長も、判断を下した国側の関係者はその職から遠のいているだろう。そして結局、誰も責任をとらないのは目に見えている。
安全保障環境が厳しさを増しているのも、中国には警戒が必要なのも、そのために沖縄に基地が必要なのも分かる。それは沖縄県知事をはじめ多くの県民が共有している。沖縄の人が安保情勢に疎いわけではない。ましてや日本の防衛に協力しないと言っているのでもない。むしろ最も貢献している人たちであり地域だ。 その沖縄のただ一つの基地を何とかしてほしい、という要求を、対話も拒否したまま退けることで本当に将来に禍根を残さないのか。これが日本政府の「解決策」だと言うのなら、あまりにも政治力がなさすぎる。
●訪露した鈴木宗男氏、現地メディアにロシアの勝利期待する趣旨の発言… 10/6
日本維新の会は6日、党への事前届け出をせずにロシアを訪問した鈴木宗男参院議員を除名処分とする方向で調整に入った。10日に党常任役員会を開き、正式に決定する。複数の党関係者が明らかにした。
鈴木氏は今月1〜5日の日程で訪露し、ロシア政府高官と相次いで面会した。参院に海外渡航届を提出していたが、党には事前に届け出ていなかったという。
維新の国会議員団は6日、党紀委員会を開き、鈴木氏から訪露の経緯など詳しい事情を聞いた。党紀委員会は除名処分が相当とする答申案をまとめた。
党紀委員会に先立って開かれた国会議員団の役員会では、党への事前届け出がなかったことに加え、鈴木氏が訪露中、現地メディアの取材に対し、ロシアの勝利を期待する趣旨の発言を行ったことを問題視する意見が出たという。 
●消費税率引き下げ「慎重な検討が必要」 鈴木財務相、自民若手提言で 10/6
鈴木俊一財務相は6日の閣議後記者会見で、自民党の若手議員らによる「責任ある積極財政を推進する議員連盟」のメンバーが消費税率の5%への時限的引き下げを求めていることについて「税率引き下げには極めて慎重な検討が必要だ」との認識を示した。
鈴木氏は消費税について「全世代型社会保障制度を支える重要な財源として位置づけられている」と指摘。税率見直しなどには丁寧な議論が欠かせないと強調した。
議連のメンバーは5日、自民党幹部を訪ね、新たな経済対策に関し、政府に対し消費税率の時限的引き下げなどを求める提言を手渡した。
議連の中村裕之共同代表は「生活者が実感できる減税を経済対策でお届けしたい」と訴えている。
●日本が滅びる前に 10/6
対立軸は「大人のための政治か、子どものための政治か」泉房穂氏が市長引退で引き起こした地殻変動。
「大人のための政治は子どもを犠牲にするが、子どものための政治は、大人を豊かにする。この真理が人々に理解されたとき、日本の政治構造は一挙に転換するはずである」そう説くのは、東京大学東洋文化研究所の安冨歩教授だ。
子どもをあらゆる暴力から守ることを政治の原則とすべき
私は2018年7月に、埼玉県東松山市の市長選挙に立候補した。自公推薦の現職候補が圧倒的に強く、無投票になりそうだったからだ。その地域で、政治的関心を持つ市民のグループが何人かの人に立候補を打診したが断られて、最後に私にお鉢が回ってきた。
結果はトリプルスコアの惨敗であったが、幸いにも供託金没収は免れた。敗因は明らかで、そもそも私は一年しかそこに住んでおらず、知り合いも全くおらず、その上、あらゆる組織からの支持を得られず、しかも私を担いだ人々と喧嘩して、公示日一週間前に、全員を後援会から放逐してしまったからだ。
それでも、なぜか女優の木内みどりさんがボランティアで一週間滞在して応援くださり、また、私の立候補が報道され、全国から多大なご寄付とご声援とをいただいて、馬と音楽とを中心にした楽しい選挙を展開できた。
また、その話が発端となって、翌年にれいわ新選組から参院選に出た時には、あの原一男監督がドキュメンタリー映画『れいわ一揆』を制作してくださった。この映画のおかげで私は東京国際映画祭のレッドカーペットを歩いたり、ニューヨーク現代美術館で原監督とともにスピーチしたり、という光栄に浴した。
この二回の選挙の中心思想は、「子どもを守ろう」ということであった。私は、本当の政治的対立軸は、「子どもを守るか/大人を守るか」にあると考えている。全ての子どもをあらゆる暴力から守ることを政治の原則とすべきなのだ。原則というのは、あらゆる政策の可否を判定する基準のことである。
たとえば、文教費を増やすある政策が、子どもダシにして生活を成り立たせている教育関係者を守ることにはなっても、子どもを守ることにはならないなら、棄却されるべきである。防衛費を増やす政策が、本当に子どもを守ることになるというなら、それは認められるべきである。そういう政治的判断の基準として、すべての子どもをあらゆる暴力から守る、という原則を設定すべきだ、というのである。
この段階で、私は迂闊にも、兵庫県明石市の泉房穂市長が、子どもを中心にした市政を展開していることを知らなかった。しかもその泉氏が、私が強い思想的影響を受けた石井紘基の系譜を引く政治家であることも知らなかった。もし、明石市の例を挙げて選挙戦をやっていれば、もう少し良い勝負ができたかもしれない。
日本全国で急激に広がる「明石モデル」
とはいえ、4、5年前は、その程度であった。しかし、この2年で、事態は大きく転換した。明石市のように子どもを重視する政策を展開してほしい、という思いが、日本全国で急激に広がっている。しかも、泉市長が「暴言」によって政治家引退を表明することで、さらにそれが燎原の火のように燃え広がっている。
それ以前は、この政策を掲げて圧倒的な支持を得られたのは、泉市長本人だけであった。泉房穂という政治家が不在になることで、この力が急に普遍性を帯び始めた。2023年春の明石市の県議選挙、市長・市会議員選挙は、その最初の波であり、泉氏の支援を受けた候補者が、驚異的な得票を叩き出した。
そして、7月の兵庫県三田市の市長選挙で、政治経験の全くない無名の無所属の新人が、泉氏の支持を得たことで、自民・公明・立憲・国民の推薦する三期目の現職候補にかなりの差をつけて勝利した。しかもほかに、二人の有力な市議が市長候補として立っていたというのに、である。
これは実に驚異的な事態である。もちろんそこには三田市民病院が神戸市に移転するという奇想天外な政策への強い反発が背景にはある。たとえそうでも、東松山市長選挙で、三期目の現職市長と一騎打ちで惨敗するという経験をした私からすれば、想像を絶する事態である。
これは、泉氏が、泉房穂市長の不在という空白を自ら作り出すことによって、空間構造を変えてしまったことで起きている地殻変動だと私は理解する。自民党・公明党のみならず、立憲民主党や共産党でさえも、「既成勢力」と見做され、それを維新というポピュリズム政党が切り崩しつつある、という状況に絶望している有権者にとっては、福音と言っても過言ではなかろう。
泉氏のこの活躍により、「大人のための政治か、子どものための政治か」が真の対立軸であることが証明された、と私は理解している。大人のための政治は子どもを犠牲にするが、子どものための政治は、大人を豊かにする。この真理が人々に理解されたとき、日本の政治構造は一挙に転換するはずである。
本書は、この地殻変動を惹起した人物の思想が明らかにされている。日本社会の閉塞を打ち破ろうとする人は、必ず紐解くべきであるし、これを読めば、なぜ、子どもをはじめとする弱い人々を、政治家が自らの手で助けようとすることが、社会全体を良い方向へ導いていくのか、が理解できるはずである。
私はこれを以下のように理解している。弱い人々は、社会の歪みをより強く受けるので、その痛いという声は、社会にとってのセンサーなのである。センサーの発する信号を無視すれば社会の歪みが拡大し、逆に、為政者が耳を澄ませて行動すれば、社会は安寧へと向かう。これが『論語』の「仁」の思想の本質なのだ。
泉房穂という稀代の政治家が、「仁政」を12年にわたって実行し、突然その地位を去ったことが、この真理への覚醒をもたらした。本書はその経緯と論理とを明らかにしている。
●旧統一教会が、解散命令を招く「国への対決姿勢」に転じた裏事情… 10/6
政府は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を請求する方針を固め、10月12日にも宗教法人審議会(文部科学相の諮問機関)を開き、最終判断する見通しだ。一方、安倍晋三元首相を銃撃して逮捕された山上徹也被告の初の公判前整理手続きが今年6月に奈良地裁で予定されていたが、地裁に不審物が届き、職員たちが一時屋外に避難する騒ぎが起こった。しかし、荷物の中身は被告の減刑を求める署名だった。公判前整理手続きは取り消しとなり、山上被告の弁護団の一人は「今年中に裁判が始まることは100%ない」と語る。戦後最大の長期政権を築いた元首相を殺害した男の裁判では、いったい何が争点になるのか。『「山上徹也」とは何者だったのか』(講談社+α新書)を上梓したジャーナリストの鈴木エイト氏に聞いた。
旧統一教会問題の追及を終えることは 安倍元首相の死に目を背けること
――安倍元首相が突然あのような形で凶弾に倒れ、当初は安倍元首相に同情する方向で話が進むのではないかと思いました。しかし、実際にはむしろ、旧統一教会と政治の関係を問題視するほうに世の中の関心は向かったようにみえます。エイトさんはどのような感想をお持ちですか?
もし、山上徹也被告がここまでを意図して計画していたとして、今の状況にほくそ笑んでいたとしても、それは別の議論だと思います。そのような感情論で本件の扱われ方が左右されてしまうと、旧統一教会の抱える根本的な問題は置いていかれてしまいます。
安倍元首相があのような非業の死を遂げたのはかわいそうである。それは、その通りで、どのような人であれ、あのような殺され方をされるべきではありません。しかし、では安倍元首相がなぜあそこまで恨まれて、ターゲットにされたのか。山上徹也被告はまだ核心を語っていませんが、動機面はちゃんと調べて追及していく必要があります。
この問題を突き詰めて調べていくと、どうしても、安倍元首相と旧統一教会の関係がクローズアップされる。これは問題の性質上、避けられないことだと思います。
山上徹也被告をそこまで追い込んでしまったという点で、私は自分にも責任があると思っています。それは、安倍元首相と旧統一教会の関係について私が触れなければ、こんな事件は起きなかったということではありません。むしろ、もっと早く、もっとちゃんとこの問題の本質を世に問うていたら、安倍元首相も殺害されることなく、生きたまま追及されたはずだと思うのです。そして、山上徹也被告を犯罪者にすることも防げたかもしれません。
全国霊感商法対策弁護士連絡会の紀藤正樹弁護士も「政治家の先生方にこういった教団と付き合うことの重大性をもっと認識してもらっていたら、こんな事件は起こらなかった」と語っています。
「安倍晋三という偉大な政治家がどうしてこんな形で亡くならなければならなかったのか」「そこをちゃんと検証しましょう」という動きが、本来は安倍派の政治家から出てくるべきだと思います。はたして、彼らは本当の意味で安倍元首相を追悼しているのでしょうか。自分に火の粉が及ばないように、この問題をここで終えて、安倍元首相の死に目を背けているのではないでしょうか。
安倍元首相と旧統一教会の関係を 正確に語れる人がいなかった
――「教団への憤り・恨みが安倍晋三という個人へ向かったことには飛躍があると、多くの識者やコメンテーター、キャスターは言う。しかし、本当にそうだろうか」と書かれています。
事件後の報道で「安倍元首相と旧統一教会の関係以外にも、山上徹也被告があの事件を起こした原因があったのではないか」という臆測はよく見られ、有名なキャスターなどがそうした発言をしたケースもありました。
あるいは「(安倍元首相が事件前に旧統一教会の大規模なイベントに韓鶴子〈ハン・ハクチャ〉を礼賛するビデオメッセージを送ったことに対し)政治家であれば、頼まれればビデオメッセージくらい送るよね」「あれだけで逆恨みされちゃったんだね」といったコメントをする人がかなりいました。ひどいケースになると、安倍元首相と旧統一教会の関係を陰謀論扱いする人もいます。
NHKが事件から1年ということで番組を作りましたが、そこでは「旧統一教会との関係以外に安倍元首相を狙った動機は他にもあったのではないか」と世の中で思われていることに対して、山上徹也被告が「それは心外だ」とリアクションを示したことを紹介しています。
私は以前『自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言』(小学館)という本を出し、その中で爆笑問題の太田光さんと対談をしましたが、太田さんは「山上徹也被告は無差別殺人者になった可能性もある」といった主旨の発言をされています。これに対しても、山上徹也被告からは否定するリアクションが最近ありました。
正しい情報を十分に知らなければ「旧統一教会との関係以外に安倍元首相を狙った動機は他にもあったのではないか」と考えてしまうのはある程度は仕方のないことなのかもしれません。
実際、この10年の安倍元首相と旧統一教会の関係を正確に語れる人がいませんでした。有田芳生さんなどは非常に詳しく取材をされていましたが、それでも、この10年の動きは正確に追いきれていなかったと思います。多くの人は岸信介と旧統一教会の関係から、一気に安倍元首相のビデオメッセージに話が飛んでしまうのです。
問題ある団体と理解した上で 付き合ってきた政治家たち
――90年代などは合同結婚式などが問題になり、旧統一教会はたくさん報道されましたが、それ以降は安倍元首相が銃撃されるまで、メディアはほとんど旧統一教会の話題を扱いませんでした。この間、自民党の政治家はどの程度、旧統一教会と付き合っていたのでしょうか?
政治家たちは秘密裏に教団と付き合っていました。安倍元首相が銃撃された事件の後に、教団が政治家を広告塔に使ってきた、といった報道が見られましたが、それは間違いです。教団側は政治家を広告塔としては一切使ってきませんでした。
ネット配信している教団の出版物でも「国会議員の挨拶」などの事実は記載されていても、挨拶した政治家の個人名は記載されない。これはつまり、自分たちと関係があることが知れると、国会議員の先生たちに迷惑がかかる。自分たちが外聞の悪い存在だという自覚が教団側にあるのです。
では、いったい何のために国会議員とつながりを持とうとするのか。高額献金を課せられた信者たちが、教団の在り方に疑問を感じて離れようとしても、こんなに偉い先生がイベントに出席して礼賛している。「やはりちゃんとした団体なのだ」と思わせる。つまり、内部統制の手段として使ってきたのです。
政治家の側からすると、後援会を作ってくれたり、選挙活動を手伝ってくれたり、無償で秘書を派遣してくれたりする。非常に便利な存在です。見返りに教団イベントに参加したり、祝電を送ったりするけれど、政治家の活動報告を見ても、教団のイベントに参加した部分だけはすっぽり抜け落ちている。政治家たちは明らかに問題のある団体だと理解した上で付き合ってきたのです。
ところが、2017年頃から政治家との関係が露見しても問題ないだろうと教団側のタガが緩み始めました。教団はこの時期から自分たちのイベントをネット配信するようになり、我々のような信者ではない者でもその内容を見ることができるようになりました。
配信内容を見ることができるURLは、教団の韓国のウェブサイトなどに掲載されていたので、私もそういったところからアクセスしてイベントの模様を見て、問題のある部分に関して記事を書くこともありました。山本朋広(衆議院議員)の「マザームーン」発言などは、そうした中で見つけることができたものです。
それ以前は、教団イベントの内容を配信するときに、政治家が出てくる部分はカットしていたのですが、逢沢一郎(衆議院議員)や柳本卓治(元参議院議員)といった教団に近しい政治家に関しては、教団のネットニュースなどにも少し顔が映ることがありました。
ジャニーズ問題との 共通点と相違点
――「メディアを恣意的に操り無力化することに長けた官邸主導によって作りあげられたシステムは、安倍政権下で確立したとされる」「そのためか、私や弁護団が、いくら旧統一教会と関係を持つ政治家の責任を問うても、問題が広がりを見せることはなかった」と書かれています。官邸には問題がありますが、操られ続けてきたメディアも頼りなく、どこか最近のジャニーズ問題と構図が似ているようにもみえます。
確かにジャニーズ問題と旧統一教会問題はそのような点においては印象が似ています。しかし、本質的な違いがあるとすれば、ジャニーズ問題はみんながそこで何が起きているのかを知っていながらメディア側もそれに加担していました。タレントの選別を考慮して、一事務所の意向に沿ってメディアが動いてきました。
しかし、旧統一教会問題の場合は、多くのメディアは「大した問題ではない」という意識の下に無視してきました。そして、もしこの問題に手を付けると、面倒くさいクレームや訴訟に巻き込まれる可能性がある。だから触らない、という自主規制でした。
総務省の放送法の解釈のときにも、政権に批判的なキャスターが外されており、官邸はメディアコントロールを強化してきました。こうした中で、メディアが十分に異議を唱えようとしなかった面もあると思います。
旧統一教会問題では、武田良太(衆議院議員)という政治家はほぼ追及を受けていません。武田氏は自民党の副幹事長時代までは旧統一教会のイベントにズブズブで参加していた。にもかかわらず、その後は国家公安委員長になり、菅義偉政権下では総務相にまでなっている。この辺の追及に関しては、まだメディアに忖度があるかもしれません。
武田氏の事務所は私の質問に対してもずっとノーコメントで通しており、秘書からは非常に高圧的な態度をされたこともあります。
自らの発言力を増すことで 適切な情報を伝えたい
――エイトさんは、拘置所にいる山上徹也被告に対して複数回手紙を出されています。2通目の手紙で、山上徹也被告の裁判では「安倍元首相をターゲットにしたことへの相当性」「被告がその確信に至ったことへの相当性」が問題になることが想像され、そうなった場合に、エイトさん自身が証人として出廷することも意見書を提出することもいとわない、と書かれています。
公判前整理手続きが行われていない現在の段階では、何がどうなっていくのかを想像することはまだ難しいところがあります。弁護側がどの程度、事件の動機面を争点にしていくのかはまだ分かりません。いろんな可能性があり、弁護方針によって変わりますが、動機面を正面から取り上げるという方向性はあり得るし、私はそうしてほしいという思いがあります。
山上徹也被告は事件前に私が旧統一教会と安倍元首相について書いた記事を全て読んでおり、一連の流れについて書き続けてきた報道は他にないので、彼の動機面を本人以外で説明できるのは私以外にはいないのではないかと考えています。
そうなった場合「私は出廷します」「証言もします」ということを担当弁護人に伝えています。旧統一教会と政治家の関係に詳しい人物として争点になった際は「お願いする可能性がある」ということも弁護人から言われています。
――エイトさんのジャーナリストとしての活動やご自身の生活は、事件以来、どのように変わりましたか?
根本は全く変わっていませんが、取り巻く状況は一変しました。こんなにメディアに露出するようになるとは思わなかったし、このような形でインタビューを受けるような存在ではありませんでした。多少戸惑っているところもありますが、実はそんなに戸惑ってもいなくて、全ては必然のような印象があります。
自分が出演していない場合でも、テレビなど見ていて、ヘンな発言をするコメンテーターがいると、自分がその場にいれば「それ、違いますよ」と言えるのに、と思うことがよくあります。私は「ブロックゲスト」「専門家ゲスト」という扱いの立場なので、まだまだ発言力も強くありません。
これは事件直後に思ったことなのですが、「それ、おかしいですよ」と言える立場にならないと何も始まらない。それもあって、あの事件以降、少し自分を売り込んでいった部分もあります。「売れたい」「もうけたい」ということではなく、発言力を増して、人から無視されない存在になることによって、適切な情報をもっと伝えられるのではないかという思いがあるのです。
――事件前は、旧統一教会のことについて本を書こうとしたり記事を書いたりしても、ネタとして注目されていないので、メディアから相手にしてもらえない時期が続いたことも書かれていました。
一時期、書く媒体がほぼなくなりました。ノンフィクションの賞に応募したり、企画書を作って持っていったりしても、どこも受け入れてくれませんでした。そうした中であの事件が起きました。
この1年に関しては「やっとみんなこの問題に気づいてくれた」という気持ちがあります。みんなやっとこのネタを追ってくれるようになった。人が亡くなっているので、適切な表現ではありませんが、問題に気づいてもらったことに関しては喜びもありました。
地方局も含め、大手メディアの取材力には感心します。自分で追いきれなかった部分も次々明らかになり、いろんなピースがつながっていく。旧統一教会に関する報道では、健全なスクープ合戦が行われていると思います。この1年新たに出会ったメディア関係者の方々も悪い印象を持った人はほとんどいませんでした。「こんなにちゃんとした人たちが、ちゃんと追ってくれているのだ」というありがたさを感じています。
国に対して対決姿勢を あらわにした教団の事情
――文科省が7回にわたり質問権を行使しましたが「適切な回答が得られなかった」ということで、政府は10月にも旧統一教会に対して解散命令を請求する考えです。今後、旧統一教会はどうなっていくと思われますか?
旧統一教会側は9月8日に、国に対して反論の会見を開きました。完全に対決姿勢をあらわにしたという印象です。これは教団にとっては悪手だったと思います。国は解散命令を出しやすくなりました。しかし、だから10月中旬に解散請求の命令が本当に出るかといったら、そこはまだ分かりません。
ここで旧統一教会に対して解散命令が出ると「次は自分たちなのではないか」と恐れる宗教団体や、それを票田とする政治家たちがいます。解散命令が出されたとしても、財産保全の規定がないので、特別措置法を制定すべきであるという議論がありますが、与党がまだ乗ってきません。他の宗教団体の顔色をうかがっているのだと思います。
解散請求を止めようとする動きは、いろんなところにあるのですが、岸田さんが必死に進めているところなので、この件に関しては「岸田ガンバレ」という気持ちで見ています。
教団は今追い詰められています。コロナ禍で、日本の信者が韓国に行けない時期があり、さらに、安倍元首相の銃撃事件があり、日本から韓国にカネを送ることができていない状況が続きました。安倍元首相の銃撃事件の直後は、日本の教団におよそ1000億円のプールがあったともいわれるのですが、これをなかなか韓国に送ることができなかったそうです。
韓国では、旧統一教会の持っている財団が資金を補填しながら自転車操業的にやっているのですが、お金が回らないので、旧統一教会が韓国に持っている優良な不動産を売り始めています。
また、Y22という日本でいうところの霞が関のような所に、教団が地上権を持っていて、そこに超高層ビルが立っているのですが、この地上権を巡って韓鶴子派と三男派が闘っていましたが、結果的に、韓鶴子派が敗訴しました。
加えて、三男派はアメリカでUCIという教団の資産管理団体を持っているのですが、このUCIの所有権を巡る裁判でも三男派に負けたことによって、総額で、およそ1000億円の賠償義務が韓鶴子派に発生しています。相当な金欠状態ですが、頼みの収入源である日本からはお金が入ってこない。その上、日本で解散命令請求が進められているということは、教団にとっては壊滅的な状況です。
教団ナンバー2だった尹^鎬(ユン・ヨンホ)氏が失脚し、韓鶴子はラスベガスで豪遊していたスキャンダルが暴かれて、信者の引き留めにも必死になっています。こうしたことが、解散命令請求に対する、教団のあの威圧的な会見につながったのだと思います。
●尖閣侵入、ミサイルに抗議 赤嶺議長が中国大使と面会 10/6
県議会の赤嶺昇議長は5日、中国の呉江浩大使の表敬訪問を受け、中国海警局の艦船が石垣市の尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返している問題に抗議し、平和的な外交を求める「要望書」を渡した。中国が昨年8月の軍事演習で、波照間島周辺の日本のEEZ(排他的経済水域)に弾道ミサイルを撃ち込んだ問題に対しても、沖縄近海で軍事演習を一切行わないよう要求した。沖縄の有力政治家が、尖閣や弾道ミサイルの問題で中国側に直接抗議したのは初めてと見られる。赤嶺議長が呉大使との面会後、報道陣に明らかにした。
要請書では、尖閣周辺海域で操業する日本漁船を中国海警局船が威圧している問題に抗議。信頼関係の構築によって問題解決に取り組むよう求めた。
弾道ミサイル発射に関しては「このような行動は偶発的な軍事衝突を生む」として、平和的な外交交渉の必要性を強調した。いずれも県議会で同内容の決議が可決されている。
赤嶺議長は、中国が尖閣諸島を自国領のように表示している新地図を公表した問題も取り上げ、口頭で抗議の意を伝えた。
呉大使との面会は非公開で行われた。赤嶺議長によると、大使は沖縄側から抗議されることを予想していなかった様子だった。要望書は受け取ったものの「見解の相違がある」などと反論したという。
また、自ら台湾に言及し「台湾が独立を宣言すれば平和は維持できない」と警告。台湾独立を支持する「誤ったメッセージ」を発しないよう求め、沖縄世論を牽制(けんせい)した。
玉城デニー知事の訪中については「中国メディアでも大きく取り上げられた」と高く評価した。
玉城知事は訪中時、中国政府の要人と面会しながら、尖閣やミサイル発射の問題について一切抗議しなかった。赤嶺氏は報道陣の取材に対し「知事が中国に行くのは結構だが、言わないということは一切責任を取らないということだ。(知事は地域外交と言っているが)ある程度耳が痛いことを言うのが外交。知事が『国の専管事項』と言うなら、ジュネーブ(国連)には行くなという話になる」と知事の対中姿勢を疑問視した。
赤嶺氏と呉大使の面会は中国側の要望で実現した。玉城知事も6日、県庁で呉大使と面会する予定で、発言内容が注目されそうだ。
呉大使は3月に着任。4月に日本記者クラブで講演し、台湾有事に関し、日本が介入の姿勢を示せば「日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」と発言。物議をかもした。
●高市大臣「岸田首相と戦うと言ったつもりない」 総裁選出馬発言で軌道修正 10/6
高市早苗経済安全保障相は6日の会見で、3日に自身が次の自民党総裁選挙について「また戦わせていただく」と発言したことについて、「岸田首相と戦うというようなことを申したつもりはない」と説明した。
高市氏は3日、BSフジの「プライムニュース」に出演し、次の総裁選への意欲を問われた際、「まずはセキュリティクリアランス(適格性評価)を仕上げさせていただきます。そして、また戦わせていただきます」と述べ、立候補する考えを示していた。
この発言の真意について6日の会見で問われた高市氏は、「特に来年の総裁選挙に限定して、岸田首相と戦うというようなことを申したつもりはない」と釈明した。その上で「自分が必要とされる時が来たらしっかり戦うという、政治家としての心構えを述べた」と述べた。
岸田内閣の閣僚でありながら、岸田首相と次の総裁選で戦うと受け止められた発言に関して軌道修正しつつ、今後の状況次第では出馬する余地を残した形だ。
●「増税メガネ」繰返し中傷され続ける岸田政権と、中華TikTokの“懸念と脅威” 10/6
選挙モード一色になりつつも、割と直近の衆参補選の事前情勢が悪くて「2戦1勝1敗なら解散」とか「2敗したら年内解散見送り」など、立浪ドラゴンズの最下位星取表予想みたいな状況になってきました。
問題は各種調査の結果、どうも俺たちの岸田文雄政権の支持率がすごく低く出ていることなんですよね。「それでも支持率25%は高い」と思う人もいるかもしれませんが、解散総選挙を決断する(はずの)岸田さんに人気がなくて、自民党自体はまあまあ支持堅調なところを見ると「解散は岸田さんが決めても自民党が選挙に勝つには顔は岸田さんじゃないほうが勝ちやすい」みたいなジレンマが起きてしまいます。
なら解散すんなよって気もしますが、仮に来春まで延ばしたところで政権支持率が上がりそうなイベントが特になく、秋には自民党が総裁選になってしまいますのでそこで罷り間違って岸田さんが総裁選に出馬もできず総裁留任できなそうだとなると菅義偉さんから2代続けて「総裁選に負けそうだから後継指名もできず退陣に追い込まれる総理」になってしまいます。
その岸田政権の不支持傾向をしげしげと見ておりますと、いくつかキーワードがあります。最たるものは「若者低所得層」と「都市部」、そして「ネット利用時間が多い層」です。ある意味で、安倍晋三さんとやや逆な感じなんすよね。
「ネットを見ている層から岸田政権は不人気のようだ」という傾向は気になるところで、フィードに流れてくるSNSやネットニュースをそのまま見ている人は、繰り返し表示される岸田政権DISを読んで真に受けている(事実関係はともかく、信じている)構造はあるかもしれません。特に、一部メディアでも報じられた「増税メガネ」の揶揄動画はTikTokでも繰り返し表示され、他の動画サイトでも特にショート動画は岸田政権批判が完全にフィルターバブルの中に入っちゃってます。
つまり、一度二度、岸田政権批判のリールやショート動画を観たりタップしたりしてしまうと、SNSに載っている人工知能が「おっ、こいつは岸田批判動画が好きなんやな。ほなら、もっと岸田批判を表示したろ」ってなってしまうのがフィルターバブルの恐ろしさなんですよね。
とはいえ、国民が作った自然発生的な動画を岸田政権が「都合が悪いから」と表示するなというわけにもいかず、しかもTikTokも instagramも Youtubeも全部海外のサービスですから、うっかり「お前らもうちょっと考えろよ」と忖度を求めようにも「日本語ワカリマセーン」となってしまいます。
岸田政権はネット対策にあまり関心がない?
それもこれも、岸田政権はネット対策にあまり関心がなさそうだというのが理由とも言えます。リアル政治の事情として、旧統一教会対策や広島サミットなどを優先したことで、メディア対応やプラットフォーム事業者規制が後手に回ってしまい、いまになってネットで大量に中傷されて明らかに支持率が伸び悩む状態になっておるわけです。
逆に、ネットや在阪マスコミを駆使してテーマ性を駆使し支持を伸ばしてきているのは日本維新の会で、いくつかのシミュレーションでは「維新の会が候補者を出すことで割りを喰うのは反自民で競合する立憲など野党」ではなく「本来の自民党支持者が岸田不支持で維新に投票されてしまう都市部自民党」という話になります。前回の統一地方選ではかなり自民党が負けた東京各選挙区の調査では、前回自民党現職候補と野党統一候補の一騎討ちだった選挙区に維新候補者が闖入すると、見事に自民票が維新に喰われて自民維新共倒れで立憲候補勝利になってしまうと見られる選挙区が出てきています。
国民からそこまで広く支持されているわけでもない立憲民主党が、反自民と経済難のあやで議席を都市部で確保する傾向が強まるのは、かつて各選挙区に共産党テンプレ候補が多数出馬した結果、左派票が割れて勝てるはずの立憲候補が苦戦してきた構造と同じです。その構造と同じか、立憲における共産より強烈な奴が「勝てないけど出てくる維新候補者」に保守票を取られて苦戦する都市部自民党候補という話でもあります。
最近は維新も不祥事を報じられる議員を国政でも地方でもたくさん出してしまって統制が効いておらず、余計な事件をたくさんやらかしてゆっくりと勢いを失ってきている面はありますが、自民党にとっても公明党にとっても保守票や支持政党のない有権者の票を喰う維新は脅威であることには変わりありません。
で、選挙前だからいろいろ調べ物していて気になることがありまして、やっぱり日本維新の会が躍進するのは仕方ないとして、で、どんぐらい議席取んのよという話なんですよ。
気になる各調査の結果は…
各種調査では、いま解散しても与党はそんなに議席を落とさないよという予想と、都市部を中心にかなり自民党は議席を失うのではないかという予想が拮抗しています。
自民党の有力議員が早期解散論を主張しているのは、どうも自民党内の某調査は「すぐに選挙になっても落とす議席は数議席に留まる」という結果になったからことが根拠のようです。他方、ブロックごとや都市部で調査をやると左から立憲が、右から維新が躍進して得票を伸ばし、間に挟まれた自公が競り合いを落とす可能性も示唆され、維新の獲得議席予想は小選挙区と比例併せて65から75議席も取って躍進する可能性があります。出た数字をそのまま議席数に反映させると維新85議席とかいう数字にもなるので、警戒感は持って然るべきだとは思うのですが。
特に東京選挙区は、今回一人一票の格差是正の影響で10増10減のうち小選挙区が5個増えて30選挙区になってます。狭い。しかし、国会議員を一人送り出す小選挙区の区割りが世田谷区より小さいとかいうバグが起きて、区長選のほうがよほど民意を担っている、みたいな状況になっていてウケます。
このような選挙区情勢で、ネット経由の、SNSやネットニュース、ネット動画が中心となって作り上げられる都市部の政治状況が、有権者の投票行動をほんのり変え続けてきた結果、思ってもみなかったような票の動きになるのではないかと心配になるんですよね。仮にそれが杞憂なのだとしても、岸田文雄さんからビンビンに感じる「俺は自信をもっていい政治を実現しているのだから、国民はきっと評価してくれるだろう」という、ある種のナイーブな考えはちょっと危険なのではないかな、と思います。
政治こそ宣伝が必要だという話をすると、あたかもプロパガンダをどんどんやれという受け取られ方をしてしまうのかもしれませんが、少なくとも岸田文雄政権が取り組んで結果を出した政策もたくさんあり、ただインボイス制度やマイナンバーカードのあれこれは国民にとって不人気だったにすぎません。防衛費増額による財源議論も社会保険料値上がりによる国民負担も、別に岸田さんが悪いわけでもないんですよね。
ウェブサービスが中国ほか外国資本に押さえられている
むしろ、ガソリン代や電気代、小麦など、ピンポイントで国民にとって必要な物資、電気代には大胆に政府補助を入れ、消費者価格をコントロールしきって、他国に比べれば抜群に物価統制がうまくいったのは岸田政権の功績です。ただ、なぜそういう政治をしなければならなくなったのかと言えば、アベノミクスの失敗や副作用による負の遺産を、岸田文雄政権が自らの宿題としてどうにかしなければならなくなっているからに他なりません。
いまの円安にしても、安倍政権で続いてきたゼロ金利による金融緩和の影響で「弱い日本円」がエネルギーなど輸入価格を押し上げ、相対的に日本を貧乏にしている面は否めないのです。本来、岸田文雄さんが解散総選挙に踏み切るのならば、ここに対するアンサーを分かりやすく国民に提示する必要があります。
国民からすると、そういう岸田政権の本質が分かりにくいのは確かで、メッセージ性を欠いて、選挙に挑むテーマもはっきりしないので岸田さんを支持しようがないという状況なうえ、ネットで中傷されても「俺が岸田を守る!」という熱狂的なシンパもいないので、もはや“増税メガネ”が定着しちゃうわけですよ。いきおい、秋の補正に関連して岸田さんもつい「減税する」と言い始めてしまいました。
このあたりの流れは、政治的な影響力が大きくなったSNSをはじめとするウェブサービスが、中国ほか外国資本に押さえられ、日本の統制下にないことも含めて構造を見極めるしかないんじゃないですかね。
●企業向けと補助金を優先、岸田政権に個人を潤す減税≠ナきるのか 10/6
岸田文雄首相が掲げている減税策は、賃上げ税制など直接的には企業向けの減税が中心となっている。家計が直接恩恵を受ける所得税や消費税の減税は難しいのか。
しばしば「一度減税すると再び増税するのは難しい」といわれる。それならばということで、自民党の森山裕総務会長は1日、新たな経済対策で「減税」が検討されていることを踏まえ「税に関することは国民の審判を仰がなければならない」と述べた。減税なら国民の審判仰ぐ必要という意見だ。
戦後78年で、衆院選が26回、参院選が26回行われた。衆参同日選が2回、ほぼ同時が2回あるので、戦後48回の国政選挙が行われたとみなすと、平均2年に1回以上となる。そのたびに増減税は国政の課題となっており、この意味で、減税で国民の審判を仰ぐというのはこれまでと同じだ。できれば一般論ではなく、誰を潤す減税なのかも明らかにしてほしい。
まず、一般会計税収に占める所得税、消費税、法人税の比率のそれぞれ10年ごとの推移を見てみよう。1979年度は所得税が39%、消費税が0%、法人税が31%だった。
消費税が導入された89年度は所得税が39%、消費税が6%、法人税が35%。99年度は所得税が33%、消費税が22%、法人税が23%。2009年度は所得税が33%、消費税が25%、法人税が16%。19年度は所得税が33%、消費税が31%、法人税が19%となっている。
所得税比率は30%台で安定しているが、消費税比率の高まりとともに法人税比率が低下しているのが分かる。
理論的には法人税比率が長期的に低下傾向であるのは不思議ではない。法人は個人の集合体であり、法人収益は労働所得、株主配当、内部留保に分けられるが、内部留保が株式に反映されれば、法人収益は個人所得に還元できる。つまり、個人所得の捕捉が完璧であれば、法人税は二重課税になってしまう。その意味で法人税ゼロというのも理論的・究極的姿として考えられないわけでない。ただし、現実はそうした究極から程遠いので法人税はやむを得ない。
岸田政権は、企業への補助金・減税手法を多用している。ガソリン価格対策でもガソリン税を引き下げれば済むところを石油元売り企業への補助金だ。
賃上げ税制でも、所得税の限界税率の引き下げではなく企業向けの減税で対応する。鳴り物入りの「年収の壁」対策でも、社会保険料の限界的徴収(部分的な保険料引き下げ)や、控除に代わる二分二乗方式(夫婦単位合算均等分割制、所得税減税になる)ではなく、「社会保険適用促進手当」という企業への補助金だ。
個人を潤す減税というのは、二重のハードルがある。岸田政権は個人より企業、減税より補助金を選ぶからだ。この理由は岸田政権が古いタイプの官僚主導だからだろう。消費税対応では、レジの電子化やマイナンバーで個人銀行口座とのリンクが容易になった以上、政策コストを考えても、個人より企業、減税より補助金を選ぶ必要性は少なくなっている。 

 

●「解散戦略」大混迷、岸田首相自身が打ち消し発言 不気味な日本保守党 10/5
岸田文雄首相の「衆院解散」戦略が混迷している。政権浮揚を狙って内閣改造・自民党役員人事に踏み切り、新たな経済対策を発表したものの、内閣支持率などに目立った効果が出ていないのだ。「秋の臨時国会(今月20日召集)での解散」が注目されているが、首相自身がそれを打ち消すような発言を行った。広島G7(先進7カ国)サミット後の6月に続き、今回も解散を先延ばしすれば、春の統一地方選で躍進した日本維新の会が選挙態勢を整えてしまう。ベストセラー作家の百田尚樹氏らが立ち上げた「日本保守党」の動きも気になる。解散風の行方に迫った。
「子育て世代の所得向上が重要であり、最低賃金を含めた賃上げなどに全力で取り組んでいく」
岸田首相は2日、看板政策「次元の異なる少子化対策」の財源を検討する「こども未来戦略会議」でこう語った。社会保障の歳出改革や、社会保険料の引き上げで捻出する方向だが、選挙を意識したのか、首相から負担増に関する言及は乏しかったという。
永田町では、衆院解散をめぐる憶測が飛び交っている。9月13日に第2次岸田再改造内閣が発足し、同25日に岸田首相が新たな経済対策を発表すると、緊張感はにわかに高まった。
内閣改造では、岸田政権から離反したとされる「岩盤保守層」を意識してか、「政界屈指の親中派」である林芳正氏を外相から退任させ、「親台派」である木原稔氏を防衛相に抜擢(ばってき)した。女性閣僚は過去最多に並ぶ5人を登用した。
ただ、報道各社の世論調査で内閣支持率に大きな反応はなかった。
新たな経済対策の発表では、岸田首相は「税収増を国民に還元する」として「減税案」を示したが、国民が期待する「所得税減税」や「消費税減税」「ガソリン税減税(トリガー条項発動)」ではなく、「賃上げ企業への減税策」「特許所得などへの減税制度」などだった。
TBS系JNNが1日公開した世論調査では、岸田首相の経済対策に、63%が「期待しない」と回答した。内閣支持率も前回比0・9ポイント増の39・6%で、不支持率は57・8%だった。
岸田政権の政権浮揚策や解散戦略をどう見るか。
鈴木哲夫氏「首相も確証を持って行動できなくなっている」
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「岸田首相としては『人事』と『経済対策』で弾みを付け、『旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の解散命令』と『外交的成果』を掲げて衆院解散に打って出たかったが、いきなりつまずいた。国民は『減税案』は自分たちの負担軽減に直結せず、ピント外れの欺瞞(ぎまん=偽減税)だと気付いた。国民は、岸田首相の『聞く力』に懐疑的になっている。首相自身も確証を持って行動できなくなっているのではないか」と語る。
そのためか、岸田首相は先月29日、「(2023年度)補正予算案を臨時国会に提出したい」「先送りできない課題に一意専心に取り組む。それ以外のことは今は考えていない」と、官邸で記者団に語った。
臨時国会に補正予算案を提出すれば、審議・成立までに数週間かかる。このため、「首相が自ら解散風≠沈静化させた」(自民党ベテラン議員)、「解散の意欲は薄まった」(自民党中堅議員)との観測もある。
ただ、永田町では古くから、「首相は解散については、ウソをついてもいい」と言われている。現に、政府は、旧統一教会の解散命令を裁判所に請求する方向で最終調整に入っている。早ければ今月12日に宗教法人審議会を開き、請求について意見を聴くという。
当然、野党は警戒を緩めていない。
立憲民主党の泉健太代表は1日、年内の衆院解散の可能性について、「かなり高い。10月解散も十分あり得る」と語った。
日本維新の会の馬場伸幸代表も先月27日、早期の衆院解散・総選挙について「五分五分だ」と述べた。
「日本保守党」自民党を割れば大政局
鈴木氏は「支持率低迷で、解散のタイミングを先延ばしにしても、状況は厳しくなる一方だ。勢いのある日本維新の会は、日を追うごとに選挙準備を整える。野党間の協力体制を考えても、選挙は早い方がいい。その観点では、年内いつ選挙があってもおかしくない。一部に『岸田首相は、来年秋の自民党総裁選まで動かない』との見方もあるが、解散・総選挙に踏み切らないまま総裁選になれば、岸田首相に『党の顔』として疑問符が付く。茂木敏充幹事長や、高市早苗経済安保担当相ら有力候補は軒並み打って出るだろう。総裁選前の総選挙は不可欠だ」と語る。
さらに党内政局≠加速させる波乱要因もある。
ベストセラー作家で保守論客として知られる百田尚樹氏と、ジャーナリストの有本香氏らが立ち上げた「日本保守党」だ。9月30日正午に党員募集を開始したが、3日朝時点で「4万人に近い」(百田氏)という。公式X(旧ツイッター)のフォロワーは30万人を超えている。
鈴木氏は「インターネット上での反響は大きい。未知数の部分も多いが、保守系議員や、現状の自民党に反発する『岩盤保守層』と共鳴し、自民党を割る事態になれば、大政局になり得ると注目している」と語っている。
●連合「立民・国民民主の政治勢力結集」 運動方針を採択 10/5
連合は5日開会した定期大会で2024〜25年度の運動方針を採択した。賃上げの継続といった重点課題の実現に関し「政策を最も共有している立憲民主党と国民民主党を中心に政治勢力の結集・拡大をめざす」と明記した。
連合は傘下の産業別労働組合で立民と国民民主に支援が割れている。二大政党制を目指し、運動方針に「政権交代可能な健全な議会制民主主義を実現する目標に立ち返る」と明記した。
岸田文雄政権については「成長分野への労働移動の円滑化を打ち出している」と評価しつつ「所得再分配に向けた税制改革などの姿は見えない」と注文をつけた。
女性があらゆる意思決定過程に参画する必要性を提起した。デジタルトランスフォーメーション(DX)や脱炭素社会の実現は労働者への負荷がかからない「公正な移行」が必要だと主張した。
定期大会は6日、芳野友子会長の2期目入りを正式決定して閉会する。 
●引越しパーティーは参加費770万円!「中国人の金持ち」が日本に続々移住 10/5
いま中国では、習近平体制の締めつけが厳しくなっている。それに辟易した中国のカネモチたちは、ひっそりと日本に移住していた。彼らはどんな生活を送り、何に悩んでいるのか。そのリアルに迫る。
参加費770万円の会
今年4月上旬、東京・六本木ヒルズの一角にある「グランドハイアット東京」の宴会場で、盛大なパーティーが開かれた。主催者は、中国出身の大物経営者と有名女優のカップルである。
参加した在日中国人の陸建氏(仮名)によると、参加者はみな、男性はタキシード、女性はイブニングドレスなどフォーマルな装いで、とても豪華な雰囲気だったという。
陸氏が語る。「大物経営者というのは、中国では誰もが知っている不動産大手『万科企業』の創業者・王石氏で、有名女優というのは、『宮廷の諍い女』など数々のドラマに出演したこともある田朴珺氏です。万科企業は、いま不良債権問題で話題の中国恒大集団よりずっと大きい不動産会社です。王氏は70代。10年以上前に日本で病気の治療をして以来、日本に魅了されて日本ファンになり、ついにこのたび夫婦で日本に新居をかまえることになったそうなんです」
今回のパーティーは、すでに実業界を引退している王氏が、中国の有名企業の経営者らと日本の政治家、経営者などを引き合わせる企業家交流会という名目だったが、彼ら夫婦の「日本への引っ越し記念パーティー」も兼ねていたという。陸氏が続ける。
「何より驚いたのは、中国からやってきた経営者らの参加費です。費用には、パーティー以外に日本での研修会費なども含まれていたそうですが、なんと一人38万元(約770万円)。
移住者急増中
日本からの参加者のなかには、親中派で知られる大物政治家も含まれていましたが、その方に支払った謝礼は60万円だったと聞きました。
どうやらパーティーに箔をつけるために、日本の方にはお金を払って参列してもらったようなのですが、口さがない中国人の間では『日本の名士って安いんだね』と噂されていました。
昨年からアリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏もしばしば来日し、長期滞在を繰り返していますが、いま、ほかにもあちこちで日本に移住した中国人富裕層や芸能人の引っ越しパーティーが行われている。引っ越しパーティーラッシュといった様相ですね」
王氏、田氏のケースに代表されるように、じつはいま、日本に移住する中国人富裕層が急増している。
行政書士によれば、中国人富裕層の多くは、日本で事業を営むことができる「経営管理ビザ」を取得するケースが多い。その取得者は'22年末で約1万6000人。'12年末には約4400人だったので、この10年間で約4倍になった(ちなみに、'22年末で、日本に長期滞在する中国人の総数は約76万人)。
中国社会にウンザリ
この数年で日本に移住してきたおよそ1万人強の中国人富裕層を、新しいタイプの中国人移住者といって差し支えないだろう。なぜ「新しい」のかといえば、彼らは、従来の移住者とはちょっと違う存在だからである。彼らはどんな特徴を持ち、どんな生活を送っているのだろうか。
まず、この1〜2年で移住してきた富裕層を特徴づける重要なポイントの一つが、移住の「理由」である。彼らが日本に移住してきている最大の要因は、'19年末に始まったコロナ禍だ。
中国政府はゼロコロナ政策を打ち出し、厳しい行動制限やロックダウンを行った。'22年3〜5月には最大の都市、上海市でもロックダウンが行われたが、中国の移民仲介会社には海外移住を希望する人からの電話が殺到した。
なかでもとくに危機感を抱いたのが富裕層だった。ロックダウン中、コロナ以外の病気でも救急車を呼ぶことができず、多くの人々が亡くなったが、富裕層のなかにも「この国にいる限り、いつ、どんなひどい目に遭うかわからない」と痛感する人が急増したのだ。
驚くべき暮らし
'21年に強化された「共同富裕」(格差是正を目的とする政策のこと。大手IT企業や富裕層、芸能人がターゲットになり、脱税などが摘発された)の影響もある。東京都内で、中華圏最大級の日本不動産プラットフォームを運営する「神居秒算」代表取締役の趙潔氏は、「今後もしばらく日本移住を希望する富裕層は増えるでしょう」という。
さて、こうして移住してきた彼らの生活を、もう少しのぞいてみよう。
上海市出身で、40代前半の会社経営者・王鳴氏(仮名)は'22年秋、東京・港区内にある約2億円のタワーマンションに妻と娘の3人で引っ越してきた。上海のロックダウンを経験し、中国に住み続けることの不安や、習近平体制下で娘の将来を心配したことが理由だ。仕事はIT関係で、日本からリモートで日々の業務を行っている。
彼が来日して最初に探したのは、専属運転手とお手伝いさんだ。
「日本では、アプリを使ってもなかなかタクシーがつかまらないと聞きましたので雇いました。友人の紹介で、月給45万円でいい人が見つかった。お手伝いさんは、その運転手のツテで探しました。上海に近い江蘇省の出身なので、家庭料理の味つけも似ているし、日本の生活習慣も教えてもらえます」(王鳴氏)
●「売国奴」「国賊」…ロシア渡航の鈴木議員を袋叩きする日本人の平和ボケ 10/5
「政治家のくせに政府を介さずに外交」は悪いのか?
「ロシアのスパイが祖国に帰ったぞ!」「こんな売国奴はもう二度と戻ってこなくていい」「日本が税金で応援をしている戦争の相手国にすり寄るなど国賊ものだ」
ロシアに行って、ルデンコ外務次官と会談をした鈴木宗男・参議院議員に対して、愛国心あふれる人々の怒りが爆発している。所属政党「日本維新の会」への届出をせず海外渡航をしたことで処分が検討されているというニュースが報じられて、火がついた形だ。
怒れる人々の意見を見ていると、鈴木氏が「国賊」と叩かれている理由がだいたい以下に集約される。
「政治家のくせに政府の渡航中止勧告を無視して、政府を介さずに外交をしているところが許せない」
ただ、この主張はかなりユニークだ。国際社会では、戦争終結のためならば、あらゆる対話チャンネルを活用するのは「常識」だからだ。市民の犠牲をなくすため、戦争当事国にあらゆる方向から対話をする。そこでは、さまざまな人間が政府を介さずに水面下で接触・対話をするということは珍しくないのだ。
そういう意味でも、筆者としては、鈴木氏の「個人外交」は悪くないと思っている。また、国会議員がけしからんというが、国会議員だからこそ、ロシアのような国に行くべきだとも考えている。なぜか。
「対話」でしか終わらぬ戦争、今対話できるのは誰か
例えば、今年4月にアメリカの元政府高官らがニューヨークでロシアのラブロフ外相と極秘会談し、停戦に向けた交渉の糸口を探っていた、ということをアメリカのNBCテレビが報じた。
この元政府高官はバイデン政権の指示で動いたわけではない。つまり、立場としては鈴木宗男氏とほぼ同じ「政府を介さない個人外交」をしていたわけだ。
この報道後、アメリカ社会で「なに?ロシアの高官と政府を介さずに会談をしただと?そんな国賊はさっさと捕まえて反逆罪にしろ!」みたいな大騒ぎにはなっていない。これでわかるように、泥沼化した戦争を終結させるために、公式・非公式を問わずありとあらゆる「対話チャンネル」を利用することは当たり前だ。実際、報道によれば、この元高官が得た情報は、ホワイトハウスに共有されたという。
「政府を介した外交」だけではどうしても建前的な対話しかできないので、戦争や紛争のような国家間の利害が衝突する「本音ベース」の対話ができない。政府の会談内容はオープンにされるので、自国民にもどんな交渉をしたのかが伝わって、政権の支持率などにも露骨に影響が出てしまうからだ。
昨年11月、アメリカのジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が、アメリカの利益のために、アメリカ政府とロシア政府の対話チャンネルは開かれたままだと認めたように、この泥沼化した戦争を最終的に終わらせるのは、「対話」しかないことは明らかだ。
「戦争」というものを映画やマンガでしか知らない人は、「悪の帝国」を正義の国が団結してみんなで追いつめて、独裁者プーチンが「私が悪うございました」と泣いて降参してめでたしめでたし……という理想的なストーリーを思い描いているだろうが、現実世界でそのような終わり方をした戦争はほとんどない。
相手の軍は撤退しても内戦が長期化するとか、国が分断されるとか悲惨なことになって、今以上に多くの人が死ぬ。最悪、かつての日本のように「一億総玉砕」とか徹底抗戦を叫んでいるうちに、核兵器などの大量破壊兵器を使われる恐れもある。
しかも、西側諸国と日本はそれなりに団結しているが、世界にはロシアの「友好国」や「中立国」が山ほどある。つまり、1年くらい前に盛んに言われた、「ロシアを国際社会の中で孤立させて戦争をやめさせる」というのは夢物語に過ぎないのだ。だから、国連もどうにかしてプーチンと「対話」しようとしている。
そういう世界の現実を踏まえれば、ロシアとズブ……ではなく、太いパイプのある鈴木宗男氏が、「個人外交」をすることを何も問題はない。
「親ロシアの鈴木氏が行ってもロシアに利用されるだけだ」とか言う人もいるが、そもそも平時から外交というのは「狐と狸の化かし合い」である。
ロシア側は鈴木氏にこういう情報をつかませてきた、ということを想定しつつ、日本政府も鈴木氏から情報を得ればいいし、鈴木氏のパイプを逆に利用すればいいだけの話だ。
という話を聞いても、腹の虫がおさまらない人も多いだろう。そういう方たちがよく言うのは、「政府が渡航中止勧告をして、国家間に緊張が走っているこのタイミングで、国会議員が行くのは背信行為」というものだ。
しかし、個人的には国会議員という立場だからこそ、今のように両国の関係が冷え込んでいる時だからこそ、ロシアに行くべきだと考えている。
なぜかというと、「日本人」の安全を守るためだ。
政府が日本人を救えないパターンも、では誰が助けてくれる?
「今の時期にロシアに行くとは何事だ!」と叫んでいる人からすれば意外かもしれないが、実は今もロシアでは普通に日本人が生活をして、普通に日本企業が経済活動をおこなっている。
外務省領事局政策課の「海外在留邦人数」によれば、令和4年10月1日時点で1321人の日本人がロシアで生活をしている。また、「海外進出日系企業拠点数調査」でもロシアには380の企業拠点がある。
当たり前の話だが、海外にいる「邦人」の安全を確保することは日本国がやらなくてはいけないことだ。なので、政府はその国に、邦人や日系企業の安全確保で協力を依頼する。
しかし、岸田政権はアメリカやEU側の立場を貫いているので、ロシア政府からは「非友好国」扱いだ。そんな国の頼みをロシアが素直に受け入れるわけがない。
つまり、もしも何か不測の事態が起きて、ロシア政府と日本政府が決定的な「断絶」をした際、日本政府は1321人と380の企業の安全確保が十分にできないことになるのだ。そうならないために、鈴木氏のような親ロシア政治家のパイプを維持して、活用できるように準備しておくことは非常に重要だ。
「はあ?日本政府が海外の邦人を助けられないなんてことがあるわけないだろ」という声が聞こえてきそうだが、割とよくある。
わかりやすいのは、湾岸戦争だ。
アントニオ猪木が「個人外交」で救出した湾岸戦争下の日本人
1990年8月、イラクのサダム・フセイン大統領(当時)が率いる軍隊が、クウェートに侵攻して一方的に併合を宣言した。この両国に駐在していた多くの民間外国人は帰国を許されず、日本人も多数が戦略拠点に「人質」として留めおかれていた。
もちろん、日本政府としては「邦人保護」は何よりも優先すべきことなので、「公式対話チャンネル」を用いてイラクやクウェートに働きかけた。が、無理だった。1991年初頭に幕を開ける湾岸戦争の前で、緊張が極限まで高まっていたからだ。結局、イラクで日本人46人(家族含む)が事実上の人質となった。
そこに、1人の参議院議員が単身乗り込んだ。故・アントニオ猪木氏だ。
90年12月にイラクで「スポーツと平和の祭典」というイベントを開催、政府の高官と会談して、「個人外交」を展開した。
まさしく、今回の鈴木氏と同じことをしたのである。だから当然、この時も愛国心あふれる人々からは「国賊」扱いでボロカスに叩かれた。政治評論家は、プロレスラーならいざ知らず、国会議員のバッジをつけている者が、パフォーマンスに走るなど言語道断だとぶった斬った。「独裁者・フセインにこびて国際社会に誤ったメッセージを与える」「素人が余計なことをして人質が殺されたらどう責任を取るのだ」とイベントを開催した猪木氏を罵った。
しかし、プロレスラーとして中東でも抜群の知名度とコネのある猪木氏は、最終的にフセイン大統領と交渉をして、46人を全員救出した。
政府が渡航中止勧告を出している国に、参議院議員が単身で乗り込んで、「政府を介さない外交」をしたおかげで、「邦人」の安全を確保することができた。
「国賊」と批判を浴びながら猪木氏が動かなかったら、あの戦火の中で日本人の安全はどうなっていたのか、考えるだけでも恐ろしい。
これが「戦争」というものだ。「政府を介した外交」だけで「独裁者」が心を入れ替えて、軍が撤退をするのなら、そもそもウクライナ戦争はこんなに長期化していない。
ロシアを孤立化させろ、プーチンを追いつめろ、と叫んでいるのは、テレビで野次馬的に戦争を見物している人々からすれば、「勧善懲悪ショー」に参加しているようで気持ちいいだろうが、「現実の戦争」は野球や五輪のように白黒がつく勝負ではないのだ。
ロシアにはロシアの「正義」があるし、ロシアについている国もまだたくさんある。長期化すればするほど、死者が増えていくこの状況を止めるには、早急に「対話」をして両国の落とし所を探っていくしかない。そして、その仲介役は、ロシアと対話ができる第三国が担うしかないのだ。
今、その役目は中国やインドが期待されている。しかし、日本にもロシアとはこれまで密接な関係を続けてきた人も少なくない。その代表が、鈴木宗男氏である。
猪木氏と同じように、鈴木氏の「政府を介さない個人外交」もいつか歴史的な評価をされる時がくるかもしれない。
●「事業仕分け」地方では今も続いていた 目的は市民の政治参加にシフト 10/5
経費削減などを目的に、地方自治体の取り組みを専門家や市民が評価する「事業仕分け」。2014年度以降に行われた約800事例を、シンクタンク「構想日本」がネットで公開した。民主党政権で注目された後、国ではあまり聞かなくなったが、過去20年余に全国126自治体で287回行われ、約7000事業が対象となってきたという。地方ではなぜ続いているのか?
市民が投票で「凍結」「拡充」
「無駄の削減につながり、市民の市政参画のきっかけにもなった。当初目的としていた効果は見込めた」
17〜19年度に事業仕分けをした岐阜県羽島市の担当者が手応えを語る。
市民の市政参画促進や予算の無駄削減が目的。老人クラブや保育所への補助、道路の維持管理、ごみの減量化、農業関連交付金などを対象とした。時代に応じた市民ニーズに合っているか、受益者負担が適正かなどの観点から、16事業の18項目について存続の可否を検討した。
各年度1、2日間で集中的に行い、構想日本が選んだ学識経験者や行政関係者ら6人の「仕分け人」が市側に質問。それを受け、市が無作為に抽出した市民約30〜40人が投票で「不要・凍結」「要改善」「現行通り・拡充」などの結論を出したという。
800事業の判定結果をネット公開
自治体の事業仕分けは02年に岐阜県で開始。09年に誕生した民主党政権が無駄削減を旗印に導入して注目を集め、その後も各地で続いた。今回のネット公開は、自治体の仕分けに20年協力してきた構想日本が、知見を生かしてもらおうと企画。14〜22年度に約20自治体が仕分けした福祉や教育、産業支援、補助事業、地域づくりなどの約800事業を選んだ。
構想日本のサイトで実施自治体や事業費、判定結果を見られるほか、有料で改善点などを閲覧できる。構想日本の担当者は「蓄積されたノウハウを活用して、税金の使われ方がより良くなることに貢献できれば」と話す。
構想日本によると、「リーマン・ショック」のあおりで自治体が税収減の影響を受けた10年ほど前までは、歳出削減を目的とするケースが多かった。今は行政だけでは解決できない地域課題について市民とともに考える場としての実施が主流という。
自治体側に緊張感も…ならば国でも
学識経験者や企業経営者、他の自治体職員らが「仕分け人」として対象事業を検討し、無作為に選ばれた市民が「改善」や「廃止」などの判断をするのが一般的だ。評価や判定に法的拘束力はないが、担当者は「7、8割の自治体が市民の評価結果を生かした行政運営に取り組んでいる」と説明する。
元千葉県我孫子市長で、国や自治体の仕分け人を務めた中央学院大の福嶋浩彦教授によると、市民判定方式は09年に埼玉県富士見市が初めて取り入れ、他の自治体にも広がった。
福嶋氏は「市民が結論を出すことで自治体側により緊張感が生まれ、仮に仕分け結果と異なる行政判断をした場合には明確な説明責任が求められる」と指摘。一方で「首長のリーダーシップで導入するケースも多いが、まだまだ仕分けをする自治体は少ない。自分の地域をより良くするために、市民に声を上げてほしい」と求める。
これに対し国の事業仕分けは、民主党政権で「官僚たたき」と反発を受けた後、影が薄れている。政治評論家の有馬晴海氏は「国家予算が膨張する中、岸田政権が方針を示した防衛費倍増や少子化対策などは財源が見当たらない。限られた財源の中で国民が納得できるように、必要な事業とそうでない事業を精査し、無駄を減らす事業仕分け的な改革が政治に求められているのではないか」と指摘する。
●国民・玉木代表 立憲と選挙協力できない理由 10/5
国民民主党の玉木雄一郎代表は5日、記者団に対し、ともに労働組合の全国組織・連合の支援を受ける立憲民主党との選挙協力に消極的な理由について、「連合の中の産別(労組)の考え方の違いや濃淡で、政党が分かれる形につながってきている。連合の中の問題だ」と指摘。
「連合の中で、労働組合が行う政治のあり方を話し合ってほしい」と注文をつけた。
これに先立って都内のホテルで行われた連合の定期大会で、芳野友子会長は、過去二回の国政選挙を振り返り、「政治勢力を拡大できず、忸怩たる思いがある」と強調。
「二大政党的体制の一翼を担う、働く者や生活者の立場に立つ政治勢力の結集を目指さないといけない」と述べ、立憲、国民両党の連携を呼びかけた。
これについて玉木代表は取材に対し、「連合が言っている二大政党的な政権交代は難しい」との見解を示した。
さらに、「原発をはじめとしたエネルギー政策、安全保障、憲法などの問題について、連合の中で意見が分かれている」とした上で、その政策の違いのため、立憲、国民両党が連携できないと説明。
まず連合が、政策や考え方を整理し、まとめるべきだとの考えを強調した。
●岸田政権2年の経済政策レビュー 財政健全化堅持下で成長戦略の推進 10/5
岸田政権の経済政策は良い方向に転換
10月4日に、岸田政権は発足から2年を迎えた。この間、物価高騰の逆風に見舞われながらも、経済環境全般を見れば比較的安定した状況にあり、それが政権を支えてきた面があると言える。この間は、コロナショックの影響が薄れてきたことが、日本経済そして世界経済に安定をもたらしてきた。
この2年間の岸田政権の経済政策を振り返ってみよう。政権が当初に掲げた「新しい資本主義」は、その具体的な内容がなかなか固まらず、経済政策はスタート時点でもたついた感があった。「分配と成長の好循環」も標榜されたが、実際には分配政策が重視されるリベラル色(左派色)の強い考え方であった。
賃金の長期低迷の要因は、分配の問題よりも低成長にあることを踏まえると、分配よりも成長促進の政策を重視すべきだった。また政権発足当初は、株式市場に逆風ともなる、金融所得課税の見直しが検討されており、株式市場をやや敵に回すかのようなスタンスであった。
ところが、2022年春頃から、岸田政権の経済政策は成長重視に大きく軌道修正されていく。これは望ましいことであった。「資産所得倍増計画」が掲げられ、政府が長く維持してきた「貯蓄から投資」の方針が、改めて確認された。そのもとで新NISA制度が形作られたのである。
その延長線で、現在では資産運用会社とアセットオーナーの改革が進められている。個人の資金を株式市場に呼び込み、企業はそれを設備投資に回すことで成長する。その成長の果実を個人は配当、株価上昇として受け取り、それが個人消費を拡大させて企業に恩恵が及んでいく。株式市場を通じてこうした好循環を目指すことは正しい。
ただし、経済・企業の成長期待、収益増加期待が高まらない中では、個人資金は株式市場にそれほど積極的には資金を回さないだろうし、企業も設備投資を積極化させない。「貯蓄から投資」を好循環につなげるためには、合わせて、成長戦略を推進することを通じて、企業、個人の成長期待を高めることが必要となる。
「歳出3兄弟」で財源確保に課題
その後、岸田政権の経済・財政政策の軸足は、大規模な歳出増加を伴う、いわゆる「歳出3兄弟」へと移る。それは、防衛費増額、GX投資、少子化対策の3つである。これら政策は、いずれも総論で賛成が得られやすいため、比較的容易に歳出拡大が固まっていった。
5年間で43兆円を計画する防衛費、年間3兆円台半ばの少子化対策、10年間で20兆円のGX投資を合計すると、この先、年間10兆円規模での歳出上積みとなる。
ところが、歳出が大幅に上積みされる一方、財源確保の議論が紛糾している。防衛費を巡っては2022年末に、首相が主導して年1兆円の防衛増税を決めたが、党内の反発を受けて現在も決着できずにいる。少子化対策の財源の議論については、具体的にはまだ始まっていない。GX投資はつなぎ国債(GX経済移行債)で当面は賄われ、その後にカーボンプライシングの手法で企業から徴収される資金が充てられる。しかし、つなぎ国債の償還に十分な資金が確保できるかどうかは不確実だ。
このように、「歳出3兄弟」の大幅な歳出拡大は固まったが、財源確保はできていない。岸田首相が想定する財源確保については、自民党内の保守派の反対にあってなかなか前に進められない状況だ。岸田首相の政権基盤の弱さが、政策推進力を削いでしまっているのである。
岸田首相がこうした状況を打破するには、今後の国政選挙で勝利を重ね、さらに現在低迷している国民の支持率を回復させることが必要だ。それにはなお時間がかかるだろう。
「歳出3兄弟」の財源議論がまとまらなければ、なし崩し的に新規国債発行で歳出が賄わることになるだろう。それは一段の財政環境の悪化と将来の世代の負担増加、将来需要の減少観測による成長期待の低下、経済の潜在力の低下につながってしまう。
3期目は成長戦略の一段の推進に期待
3期目に入った岸田政権の経済政策面での課題は、引き続きこの「歳出3兄弟」の財源確保に務め、財政健全化の姿勢を堅持することだ。それと並行して、多くの成長戦略を強く推進していくことが望まれる。
少子化対策も重要な成長戦略の一つではあるが、既に決まった児童手当の拡充策を中心とする施策だけでは、出生率の顕著な向上にはつながらないのではないか。女性の育児と仕事の両立、男性の育児参加の拡大など、幅広い観点からの少子化対策の推進が依然として求められる。
10月中にまとめられる経済対策の中で岸田政権が掲げている、構造的賃上げとそれを実現するための三位一体の労働市場改革には期待したい。リスキリングを通じた労働者の技能向上と転職の活性化が組み合わされれば、前向きの産業構造の転換と経済全体の生産性向上を促す効果が発揮されると期待される。さらに、労働者の技能向上を賃金上昇につなげるためには、日本型職務給制度の拡大が必要となる。
ただし、三位一体の労働市場改革が労働生産性向上と賃金上昇に結び付くまでには、時間を要することから、並行して、その他の成長戦略を推進していくことが望まれる。
先般政府が示した「年収の壁」対策は、労働供給を拡大し、経済の成長力、潜在力を高める観点から重要だ。しかし、企業への補助金などは一時的な対策でしかなく、女性の労働参加を妨げている「第3号被保険者制度」の抜本的な見直しが先行き必要となる(コラム「『106万円の壁』問題解決に助成金制度を10月に導入へ:抜本的な対応は第3号被保険者制度の見直し」、2023年8月18日)。
インバウンド需要と外国人労働力の活用拡大
現在急速に回復しているインバウンド需要の持続性を高め、企業の投資を誘発させることも、経済の潜在力向上につながる重要な成長戦略の一つである。そのためには、外国人観光客を地方へと誘導していき、宿泊先不足など都市部でのボトルネックを緩和させることが求められる。
また、地方でのインバウンド需要の拡大は、地方に新たな需要を作り出し、地方経済の活性化策ともなる。その結果、企業、労働力が都市部から地方へと移動し、地方で有効に使われていないインフラを活用するようになることで、日本全体の生産性向上にもつながる。
外国人労働者の受け入れ拡大も、重要な成長戦略だろう。外国人の在留資格である特定技能2号の対象を広げることで、政府は外国人労働力の受け入れ拡大に既に動いている。また、長期滞在と家族呼び寄せも可能となる。これは、日本の移民政策の事実上の修正と言えるのではないか。それは、労働力不足の緩和、将来にわたる労働力の拡大、出生率の改善、消費の増加などを通じて、潜在成長率の上昇に貢献するだろう。
ただし自民党内の保守派には、移民政策の修正につながる外国人労働者の受け入れ拡大に強い抵抗がある。そうしたもと、日本人と外国人の共生といった社会的課題を解決しつつ、外国人労働力の受け入れをさらに拡大し、潜在成長率の向上につなげていくことができるかどうか、岸田政権の政策手腕が試される。
成長戦略こそが持続的な賃金上昇の近道に
賃金の引き上げは、政権発足当初から、経済面での最大の課題と言える。今年は予想外に名目賃金が上昇したが、物価上昇分を差し引いた実質賃金はなお下落を続けている。物価高騰を受けて企業は賃金を引き上げたが、物価上昇に見合ったペースで賃金を引き上げることはないだろう。その結果、実質賃金の低下はなお長く続いてしまうことが考えられる。
実質賃金を上昇させ、個人消費の拡大を促すためには、労働生産性を向上させることが必要である。それは、政府の成長戦略などを受けて企業の中長期の成長期待が高まり、設備投資を拡大させることで実現される。
実質賃金を引き上げ、個人の生活環境を改善させるには、企業に賃上げを直接促すよりも、様々な成長戦略を並行して推進することで労働生産性を高めることが近道である。それこそが、岸田政権の構造的賃上げの基本的な考え方である。
深刻な人手不足のもと、企業が賃上げに積極な姿勢に転じたとの楽観的な見方も強まっている。しかし、物価高騰に促された高い賃上げは持続的ではないだろう。そうした過度に楽観的な期待のもと、来年の春闘での企業の賃上げを漫然と見守るようなことは、時間の浪費である。
3期目に入った岸田政権は、企業の賃上げ姿勢の積極化を期待して待つのではなく、成長戦略を加速させることで実質賃金の上昇を強く促していく政策姿勢が望まれる。それを通じて実質賃金が持続的に上昇するような環境が見えてくれば、政治基盤もより安定し、長期政権の道も見えてくるのではないか。
●12月に1兆円大増税隠して”11月に解散総選挙”の姑息…岸田政権 10/5
岸田文雄首相が、新たに打ち出した経済政策で「減税」を強調している。2021年10月の首相就任以来、減税を訴えたことはほとんどなかっただけに、唐突な路線変更をした形になる。
だが、国民が長く続く物価高に苦しむなか、即効性のある「所得税減税」や「消費税減税」「ガソリン税減税(トリガー条項発動)」などは見られない。元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏は「国民はバカだと思われ、騙そうという気が満々だ」と指摘するーー。
“筋金入りの増税主義者”が策定した国民を欺く減税対策
岸田文雄首相は9月26日の閣議で、経済対策を10月末にまとめるよう指示を出した。その経済対策は1物価高から生活を守る対策2持続的賃上げ、所得向上と地方の成長3成長力強化に資する国内投資促進4人口減少を乗り越える社会変革の推進5国土強靱(きょうじん)化、防災・減災など安全・安心の確保――という5つの柱で構成されている。その中で、特筆すべきは「減税」という項目だろう。賃上げ税制における減税制度の強化、特許などの所得に対する減税制度の創設、ストックオプション減税の充実、事業承継税制の減税措置の申請期限延長などを強調した。
岸田首相は、かつて「日本の政治は消費税率引き上げに様々なトラウマがある。成功体験を実感することが大事だ」「消費税を引き上げる、ぜひ、この引上げを円滑に行うことによって、引上げの成功体験を国民の皆さんとともに実感し、未来を考える、こういったことの意味は大変大きい」などと発言しており、筋金入りの増税主義者であることは疑いようもない。いくつかの増税案について、国民の猛反発を受け撤回したものの、バラマキをやめたわけではなく、ステルス増税(=増税なのに、増税ではないと言い張る)や赤字国債(=結局、将来増税)で国民の目を欺いているのが現状だ。
インボイス制度によって、売上の低い中小企業や個人事業主を狙い撃ちにした負担増が実施され、来年には復興特別所得税(徴収期間が14 〜 20年延長)、高齢者の介護保険(ある程度の所得のある高齢者の負担増)、国民年金(国民年金保険料の納付期間が5年増え、約100万円の負担増)、森林環境税(1人あたり年間1,000円を住民税とあわせて徴収)、生前贈与(相続税の対象期間が広がるという事実上の増税)、2025年には「結婚子育て資金の一括贈与の特例」が廃止される。
解散総選挙後に待っている「大増税」とは
今、永田町は、岸田首相が衆議院議員解散し、「11月26日投開票」の総選挙を行うのではないかという情報が駆け巡っている。その場合、外交日程等が障害となってくるが、人気のない岸田首相が応援演説をしたところで票が伸びることはほとんどないだろう。それよりも、批判されることのない外交日程をこなしたほうが有利に運ぶ可能性がある。
事実、自民党の森山裕総務会長は、10月1日、北海道北見市で講演。<新たな経済対策で「減税」が検討されていることを踏まえ「税に関することは国民の審判を仰がなければならない」と述べた。衆院解散の大義になり得るとの考えを示した発言とみられる>(日経・10月1日)と報道されていて、岸田首相が増税ではなく、減税を掲げて国政選挙を戦う地ならしをしているともとれる行動をしている。
しかし、冒頭で並べた減税案を振り返ってみてほしい。どれも非常にテクニカルで、わかりにくい減税ばかりだ。金額も、これから予定されている増税の規模とは比べ物にならないぐらいに小さい。その一点をもっても、国民はバカだと思われ、騙そうという気が満々だ。100円減税するから1000円増税するというのは、減税ではなく、増税である。ふざけるのもいい加減にしてもらいたいところだ。
岸田首相が、11月中に解散選挙をしないといけないのは、もう一つ理由がある。それは12月に予定されている、防衛費増の財源のための1兆円大増税だ。防衛費を大幅に増額するという決定を行った岸田首相は、財源について、増税をすると明言したにも関わらず、実施時期についてごまかしをつづけてきた。この実施時期についての判断が12月なのだ。選挙が終わったあとに、騙し討ちのように、大増税が発表されるという段取りだ。
さらには、異次元の少子化対策として、効果がほとんどないバラマキをはじめたが、これについても、毎年6000円を社会保険料として徴収する計画が政府内にある。これをいつ発表するかといえば、当然、選挙の後だということだ。これまで何度も指摘してきたが、少子化は「未婚率と晩婚率の増加」が原因の9割を占めており、子育て世代にお金やサービスをばらまいたところで、出生率が増える要因にはならないのである。まったく無意味な政策に、莫大な税金を投入したツケは、社会保険料を収める現役世代にそのままかえってくるのである。
“増税凍結”のためにも自公政権に審判を下すとき
日銀が2000年に発表したレポートによれば<国民負担率が1%上昇すれば成長率は0.30%低下し、潜在的国民負担率が1%上昇すれば成長率は0.27%低下する><国民負担率の上昇→貯蓄率の低下→資本蓄積の阻害→成長の制約というメカニズムの存在を示唆しているように思われる>。
第一生命研究所(エコノミスト・永濱利廣氏)が発表したレポートによれば、<国民負担率(税・社会保障負担の国民所得に対する割合)の上昇により可処分所得が減少すれば、消費支出が削減されるほか、貯蓄の減少ももたらすことになる。国全体としての貯蓄率の低下は、中長期的に資本ストックの減少をもたらし、潜在成長率の低下につながる>。つまり、経済政策として、明確な結論がでている。
バカバカしい説明になるが、騙されないために、わかりやすく伝えたい。それは、減税すればいいのではない。
岸田首相が、“増税メガネ”“増税宰相”などの汚名を晴らしたいのであれば、
1. 政府が増税と認めても認めなくても、すべての国民負担増につながる政策はすべて、経済成長率を下げる。貯蓄が減る。消費が減る。
2. すべての増税に反対する、少なくとも全体として減税(国民負担減)となっていることが大事であることことを理解し、国内外に発表し、政策で明らかにすることだ。
たしかに、増税とバラマキしかない岸田食堂に「減税」というメニューが加わったことは、大変喜ばしいことだ。しかし、岸田食堂は、お客を舐めきっている。表には「減税はじめました」などと書いてあるので、入店したら、減税メニューを頼むにはものすごい条件が必要で金額もわずか。結局、これまでどおりの、大盤振る舞いのバラマキと大増税という美味しくもないメニューを食べさせられる。
こんなことに騙されてはいけない。選挙を前にして、自公政権は国民世論に震え上がっている。次の選挙まで、すべての増税を凍結すると約束させるまでが勝負なのである。
●連合の定期大会始まる 岸田首相“持続的な賃上げ実現目指す” 10/5
連合の定期大会が5日から始まりました。岸田総理大臣は、自公政権の総理大臣としては16年ぶりに出席し、労働界とも連携して持続的な賃上げの実現を目指す考えを強調しました。
自公連立政権の首相 16年ぶりに出席
労働組合の中央組織、連合の定期大会は2日間の日程で東京都内のホテルで始まりました。
初日の5日は、政府を代表して岸田総理大臣が出席し、「経済の熱量の源は言うまでもなく賃上げだ。賃上げの大きなうねりを持続的なものとし、地方や中堅・中小企業にまで広げていかなければならない。賃上げ、そして人への投資による経済の好循環を実現するため、引き続き皆さま方とコミュニケーションを密にとりながら全力で取り組んでいく」と述べました。
自民・公明両党の連立政権の総理大臣としては、2007年の福田総理大臣以来16年ぶりの出席です。
また、2期目に入る連合の芳野会長は、「賃上げの流れを継続していく必要がある。賃上げは国を挙げた最重要課題として取り組んでいかなければならず『政労使』の意見交換は今後も絶対に必要で、さまざまな課題解決のため『政労』の対話も実現されるべきだ。連合は対話の窓を常にオープンにして取り組んでいく」と述べました。
このほか、大会には連合の支援を受ける立憲民主党の泉代表と国民民主党の玉木代表も出席しました。
泉氏は、「物価高が襲い、実質賃金が下がり続けている。政府の取り組みが弱いのであれば、立憲民主党がもっと立ち上がり、政治全体に緊張感を持たせていかなければならない」と述べました。
玉木氏は、「賃上げを働く人や生活者に実感してもらえるよう所得税の減税を今こそやるべきだ。賃上げの流れを確実にするため、皆さんと力や心をあわせていく」と述べました。
このあと大会では、人への投資や賃金の持続的な改善を力強く推進していくほか、立憲民主党と国民民主党の議員を中心に政治勢力の結集・拡大を目指す必要があるとした上で、幅広い政治家との連携も模索していくなどとした今後2年間の運動方針を決定しました。
立民 泉代表 “国民民主と連携強化を”
立憲民主党の泉代表は記者団に対し、「岸田総理大臣の出席は、連合が政府を招待したものであり、自民党が呼ばれている訳ではない。政党として招かれているのは立憲民主党と国民民主党であり、明確に線引きされている」と述べました。
その上で、「地方で連合の運動に参加している人からは『立憲民主党と国民民主党が協力して議席獲得を目指せ』という声が多い。働く人の声を一手に集め、一本の矢として届ける必要があり、国民民主党とより強く連携していかなければならない。政権交代可能な二大政党的政治を目指す連合と方針をよくすり合わせていきたい」と述べました。
国民 玉木代表 “総理出席 意味あった”
国民民主党の玉木代表は記者団に対し、「岸田総理大臣が出席し、持続的な賃上げに向けた意気込みを語ったことは、政治側と労働側のコミュニケーションを強化していく一環としても意味があった」と述べました。
その上で、「われわれも、政府に負けない持続的な賃上げ実現のための経済政策を今週にも取りまとめたい。労働者のためにどのような政策や政治が実現可能なのか、連合としっかり議論していきたい」と述べました。
連合 問われるスタンス
岸田総理としては、選挙もにらみ、野党を支援する連合に接近し、取り込みを図る狙いもあるとみられます。
総理大臣補佐官には国民民主党の元参議院議員が起用され、立憲民主党からは「野党が分断されかねない」といった警戒感も出ています。
連合は組合員がピーク時の800万人からおよそ100万人減少しています。
組織の維持も課題となる中、賃上げなど政策を実現するため政府・与党と連携を強化していくのか、それとも政権交代の実現に向けて野党勢力の結集を目指すのか、そのスタンスが問われています。
●警察も司法も取り締まらない“暴走車”と化した岸田政権 日本は終わるよ 10/5
アイヌ民族への侮辱的な投稿で札幌法務局から人権侵犯の事実があったと認定された杉田水脈氏が、なんと党の環境部会長代理に。フランス研修旅行とは名ばかりの観光旅行に次女を連れ大使館員に面倒を見させ、先に行って早く帰ったという疑惑まである松川るい氏は副幹事長に任命された。
どちらも釈明や謝罪の会見もなく反省する気配もない。
そして妻の殺人疑惑がいつの間にか不問になり、その他のスキャンダルも抱えた木原誠二氏は幹事長代理と政調会長特別補佐に。統一教会べったりで教祖を「ご父母様」と呼んだ萩生田光一氏は政調会長続投。
いやはやなんだこれ。ワザとやってるのか。車で言えば岸田総理は逆ハンドルを切った状態だ。横滑りを防ぐには常道だが、そこそこ運転技術が必要だ。
しかもこの車、アクセルは国民民主党だ。玉木代表自ら「アクセルになりたい」と言ったのだから。さらにガソリンの予備タンクには維新がたっぷり入ってる。
公明党はブレーキだ。しかし麻生さんに「がん」だと言われ、その機能は怪しく、いざという時に止まれないかもしれない。
要するにこの車は暴走車だ。いつ交差点の歩道に飛び込んで来るかわからない。
しかし警察も司法も取り締まってくれない。
自殺した近畿財務局赤木俊夫さんの妻雅子さんが、行政文書を不開示とした国の決定の取り消しを求めた訴訟で、大阪地裁は雅子さん側の請求を棄却した。
ウィシュマさん死亡事件で、名古屋地検は入管側13人を不起訴にした。「私死ぬ」と訴えたウィシュマさんを「看守の注目を集めるために言った」とした。「詐病で人は死なない」と弁護士。当たり前だ。
これはもう独裁国家だ
もうこの国に正義はない。それを正しく報道するメディアもない。これはもう独裁国家だ。
しかもニュースで「最近日本人がフルーツを食べない」と言っていた。バカ。食べないんじゃない、食べられないんだよ。フルーツまで買う余裕がないんだよ。
こんなド腐れ三流国家に落ちぶれた日本を愛せないよ。反日とでもなんでも言ってくれ。
「日本を取り戻す」って誰か言ってたけど、あんたが取り戻した日本はニセモノだったよ。
今こそ本当の日本を取り戻さないと、このままじゃ100年いや50年もたないぞ。
●岸田自民が突如「減税」言い出すも国民すでに見透かし… 10/5
「何かの施策に使って還元することもあるし、ダイレクトに減税措置等々によって国民、企業に還元することもあり得る」(茂木敏充幹事長)
「(税収増の)還元のやり方は党内で議論していけばいい。法人税と所得税の減税も当然検討対象になる」(世耕弘成参院幹事長)
「税に関することは国民の審判を仰がなければならない」(森山裕総務会長)
政府が月内にまとめる経済対策の柱として検討している「減税」を巡り、自民党幹部から所得税減税などを求める発言が相次いでいることに対し、SNS上で《騙されてはいけない。安倍政権を思い出せ》との声が広がっている。
故・安倍晋三元首相は2017年9月、2年後に予定していた消費税増税の先送りに加え、幼児教育・貧困世帯の高等教育の無償化などの子育て支援に回す──などと使途の変更を打ち出し、「税の使い道の約束を変更するため民意を問う」として臨時国会の冒頭解散に踏み切った。
このため、今回も岸田首相が「減税」を大義に衆院を解散・総選挙に打って出るのではないかとの見方が野党内にも広がっているわけだが、よくよく考えればおかしな話。
自民党政権は支持率が下がると減税を言い始める
「減税」は国民にとって喜ばしいとはいえ、ならば「5年間で43兆円」と決めた防衛費の負担増はどうするのか。いまだに決まらない「異次元の少子化対策」の財源はどうするのか。「減税」できるのであれば、なぜ、退職金や通勤手当などに課税するといった「サラリーマン増税」の話が浮上してくるのか。まったく辻褄が合わない。
「減税」を大義に選挙となれば、有権者は「イヤだ」とは言わない。それが岸田・自民党の狙いだろうが、岸田政権が本気で信を問うべき課題は別にある。「防衛費増税」に加え、政権発足時に掲げた「令和の所得倍増」といった数々の看板政策が手付かずなことや、外遊のたびに諸外国に大盤振る舞いする政治姿勢などだ。
消費税増税先送りを訴えて解散し、総選挙で勝利した安倍政権も結局、選挙が終わればやりたい放題。《騙されるな》との声が出るのも当然なのだ。
《有権者には見せかけの減税でごまかして、他の部分で大増税する》
《自民党政権は支持率が下がると減税を言い始める。そして勝ったら庶民いじめの特大増税》
有権者は、岸田首相が一部で増税好きの意味を表す「増税メガネ」などと不名誉なあだ名で呼ばれていることを忘れてはダメだ。 

 

●「決めるまで話さない」 政権2年 向かう先は? 10/4
「言わない岸田」政権発足から2年、いま自民党内からこう評される総理大臣・岸田文雄。口を閉ざすことで求心力を高めているという見方がある一方、党内には疑心暗鬼が生じている。発足から2年を迎えた政権の現在地と向かう先は?
”総理が分からない”
「何をどう考えているのか、なかなか考えが読めない人だ」(自民党議員)
最近、永田町でよく聞かれるこうしたフレーズ。なかなか心の内を見せない岸田に向けられた言葉だ。9月13日に行われた内閣改造と自民党役員人事の際も、自民党内で恨み節としても聞かれた。
人事で岸田は政権の「骨格」をほぼ維持した。とりわけ「骨格」の主要メンバーとも言える副総裁の麻生太郎、幹事長の茂木敏充の2人は、早い段階から留任が有力視され、報道が飛び交った。
しかし、当の本人たちには、岸田からの連絡が一向に来ていなかった。
「茂木さんは『総理から何の話もないということは、報道のとおり留任なのかな』と考えているようだ」(茂木幹事長周辺)
推し量るしかない2人に、岸田がようやく留任を告げたのは人事の数日前だった。同じく留任した内閣の要、官房長官の松野博一も、直前まで岸田から知らされることはなかったという。
「骨格」以外の閣僚ポストもしかりだ。岸田は、入閣の「当確」情報を、本人はもちろん、水面下で交渉していた各派閥の幹部にも改造前夜まで明かさなかった。
「総理の言いぶりからして入閣できるとは思うが、総理は『絶対にとる』とは言わない。だから確証が持てない」(派閥の幹部)
多くの派閥幹部から、こんな困惑の言葉が聞かれた。
岸田に近い関係者は、このやり方こそが“岸田流”だと話す。
「ぎりぎりまで判断を明かさないことで、横やりを入れられないまま物事を決めることができる。これが“岸田流”の政治だ」(岸田に近い関係者)
三頭政治はいま…
「特技は『人の話をよく聞く』ということだ」
おととし、岸田は「聞く力」を掲げて政権運営をスタートさせ、党内に向けても、その姿勢を強調していた。背景にあるとみられるのが、岸田の党内基盤の弱さだ。
岸田が率いる岸田派は党内に6つある派閥の第4派閥で、総裁派閥としては力に欠ける。このため岸田は、第2派閥と第3派閥をそれぞれ率いる麻生、茂木と緊密に連携することで政権の安定を図ってきた。定期的に会合を重ねて直面する政治課題をめぐる情報を共有。他派閥から妬みの声も出るほどに互いの距離を縮めた。そして、3人を中心とした政権運営は“三頭政治”とも呼ばれるようになった。
しかし、いま政権中枢のこの3人の間に微妙な緊張感が漂い始めているという。要因の1つは“岸田流”のふるまいにあると指摘する声もある。岸田が、麻生、茂木の2人に重要な情報を十分に伝えなくなってきているという見方が出ているのだ。
徹底した情報管理
“秘密主義”とも党内でささやかれる“岸田流”の情報管理の徹底ぶりを、取材を通して最初に感じたのが、ことし2月の日銀の総裁人事だった。
日銀出身者が就くのではないかという大方の見方を裏切り、岸田は日銀総裁として戦後初めて学者の植田和男をトップに据える“サプライズ人事”を行った。国内外から高い注目を集めるであろう「学者案」を実現させるにあたって、岸田は情報が漏れないよう、細心の注意を払ったとみられる。人選は少人数で行うことを厳命し、そこに麻生と茂木は加えなかったとされる。毎週のように行っている麻生、茂木との三者会談でも、固有名詞は一切口にしなかったという。
「総理はのらりくらりと、2人をかわしていたようだ」(政府関係者)
結局、岸田は人選の最終盤、2人に新総裁の名前を伝えた。
その後、“岸田流”の情報管理は、いっそう徹底されたようにも見える。
ことしの通常国会の会期末の6月。
衆議院の解散・総選挙をめぐり「今は考えていない」という言い回しを突如変え「情勢をよく見極めたい」と岸田が口にしたことで、一気に解散風が吹き荒れた。岸田が発するひと言ひと言の真意を読み解こうと、頭を悩ませる議員の姿があちこちで見られた。麻生と茂木も、ほかの議員と同様、岸田の真意を測りかねていた。解散するのか否か。岸田が2人に腹を割って相談した形跡は見られない。
2年の歳月を経た“三頭政治”。党内からは徐々にバランスが変わりつつあると指摘する声が聞かれる。
「総理は秘密主義だ。本当に言わないね。見事に言わない」(自民党執行部)
解散めぐり再び…
人事が終わり、与野党の関心事は、再び衆議院の解散・総選挙の時期に移っている。そんな中、永田町では、こんな言葉をあちこちで耳にした。
「6月の“解散風”の時と同じだ」(自民党議員)
8月下旬、岸田は物価高などに対応するため新たな経済対策を検討する意向を表明した。そして、9月中旬、裏付けとなる補正予算案の編成を指示する考えを示した。しかし、ここから2週間あまり、補正予算案を秋の臨時国会に提出するかどうか明言しなかった。
これによって、早期解散があるのではとの見方がじわじわと広がっていった。自民党内からは困惑の声が聞かれた。
「『解散するかも』と思わせたいから補正予算案の提出時期を言わなかったのかもしれないが、本当にそうなのかは分からない」(自民党執行部)
「『解散という切り札がある』と見せておきたかったのだろうが、そういうやり方は仲間の疑心暗鬼を招くおそれがあり、国民からも解散権をもてあそんでいるように思われかねない。総理はそこを分かっているのか」(自民党幹部)
9月29日。岸田は、ようやく臨時国会に補正予算案を提出する意向を明らかにした。
そして、記者団から臨時国会で衆議院を解散する考えがあるかを問われ、こう答えた。「経済対策をはじめ先送りできない課題に一意専心に取り組む。それ以外のことは今は考えてない」ひとまず解散風を沈静化させる狙いがあったとみられている。
決めるまでは話さない
政権発足から2年。この間、岸田は、新型コロナ対策や防衛力の抜本的な強化、「異次元」の少子化対策、そして物価高への対応策などを矢継ぎ早に打ち出してきた。
胸の内を秘したまま決断するスタイルを近くで見ている1人はこう分析する。
「政権を担う期間が長くなるにつれ、総理は自信を深めてきている。自分で決めるという思いが強くなっているのだろう」(政権幹部)
また、自民党内には「言わないこと」が結果的に岸田の求心力を高めることにつながっていると評価する声もある。
「麻生さんや茂木さんが自分なりに解釈するかもしれないが、総理からすればそれでいいのだろう。真意を見抜けない方が自分を大きく見せることができる」(自民党幹部)
一方でこんな見方もある。
「総理は、もともと口が堅く慎重。あいまいな情報は伝えない。それで信頼を得て政界を勝ち抜いてきたという思いが強いんだ。それは政権発足当初も今も変わらない」(岸田派関係者)
「伝えるべきことは前と変わらず適切なタイミングで根回しはしているはずだ。党内から不満が出るのは、総理が変わったというより、内閣支持率の低下など政治情勢の変化も影響しているのではないか」(政府関係者)
岸田も、自身の対応は、これまで一貫していると考えている。岸田は周囲にはこう語っているという。「話はちゃんと聞くし、意見も聞く。意見を聞いた上で最後は自分で決める。そして決めるまでは話さない。決めるとはそういうことだ」
木原人事が波紋
“岸田流”の情報管理をめぐりさまざまな声が飛び交う一方、内閣改造・自民党役員人事で岸田がとったある対応が、党内に波紋を呼んだ。
岸田の側近、木原誠二をめぐる人事だ。
自身の家族に関する週刊誌報道をめぐって、説明を求める声が野党などから上がる中、政権発足時から2年近く務めた官房副長官の職を退いた木原。その木原が、党の幹事長代理と政務調査会長特別補佐の2つのポストに就いたのだ。党務全般を扱う「幹事長室」と政策決定を担う「政務調査会」に関わる2つのポストを1人が兼務するのは極めて異例だ。
党内では岸田が党の状況を逐一把握しようと腹心の木原を送り込んだのではないかと警戒する声が聞かれた。
「総理の意向が強すぎて、党内は疑心暗鬼だ」(自民党幹部)
木原の特別補佐への就任の理由を記者団から問われた政務調査会長の萩生田光一は、こう強調した。
「木原氏は政務調査会の正式メンバーではない。決定事項に関わることはない」
木原に過剰に権限が集中するものではないと説明することで、岸田の人事に疑問を呈す党内の声に配慮しているようにも見えた。
政権幹部は「官邸と党との連絡調整をより円滑にするための人事だ」としているが、“岸田流”の情報管理と相まって、逆に官邸と自民党の間にすきま風を生まないか、懸念も生じている。
岸田は結果を出せるのか
果たして岸田の政治姿勢は変わったのか、変わっていないのか。
9月の内閣改造・自民党役員人事で岸田が敷いた布陣は、報道各社の世論調査を見る限り、政権浮揚につながったとは言えそうにない。
連立を組む公明党代表の山口那津男は、岸田は国民の厳しい声をしっかりと受け止めた上で結果を出すことが問われると指摘した。
「新閣僚が11人いたが、派閥からの推薦でとったと言われている。“内向き”のことだけでは国民にアピールしきれない。厳しい評価を胸に刻み仕事で応えてもらいたい」
マイナンバーをめぐる問題や、処理水の放出に反発する中国への対応など、待ったなしの課題が山積している。少子化対策や防衛費増額の財源確保など、中長期的な難題にも道筋を付けなければならない。
新たな内閣で初めての論戦に臨む秋の臨時国会では、新閣僚の資質を野党から厳しく追及されることも想定され、政権運営は、厳しい局面が続きそうだ。
政権を担う人間が責任を持って決めるとする“岸田流”は、ある意味、当然と言えば当然のやり方だ。しかし、党内基盤が弱いままで、独りよがりだと周囲に受け止められる動きを続ければ、求心力を失うことにもつながりかねない。
次の衆議院選挙、そして来年秋の党総裁選挙を見据え、岸田はどう動いていくのか。突然の解散はあるのか。その動向を国民は注視している。
●あなたの話が伝わらない理由、教えます。豊島晋作キャスターの「伝え方」 10/4
テレビ東京の経済報道番組『ワールド・ビジネス・サテライト(WBS)』に出演するキャスター、豊島晋作。ディレクターからキャリアをスタートした豊島だが、現在はYouTubeの解説動画が1.5億回も再生されるほど、そのわかりやすい解説で視聴者から支持されている。
“解説メインキャスター”として2021年から2年出演した『モーサテ』をはじめとして、現在では『60秒で学べるNews』やYouTube番組「豊島晋作のテレ東ワールドポリティクス」「豊島晋作のテレ東経済ニュースアカデミー」などでも解説を務める。
特に、ウクライナ侵攻をはじめとする国際情勢に関する解説は人気で、2022年には著書『ウクライナ戦争は世界をどう変えたか 「独裁者の論理」と試される「日本の論理」』(KADOKAWA)を上梓した。
“タイパ(タイムパフォーマンス)”が重視される昨今、ものごとを適切に「伝える」にはどうすればよいのか。日々複雑なニュースをわかりやすく伝えている豊島が、そのコツを教えてくれた。
   伝えたいことを「引き算」して考える
例えば好きな人に告白するとき、次のどちらが相手に刺さるだろうか。
1. あなたが好きです。その理由は5つあります。それは……
2. 実は、最初に会ったときから好きでした。
「僕は、シンプルな後者だと思います。伝えようという気持ちが強くなって、理由をたくさん並べてしまうと逆に伝わらないことが多いですよね」(豊島)
このように“最も伝えたい要素”以外は、引き算することが大切だという。伝えたいことがたくさんある場合でも、要素は3つ程度に絞ると伝わりやすくなる。
「言語的なカルチャーの問題もあるので、国によって多少違いはありますが、日本では3つか4つの要素が定番です。信号も3色ですしね。個人的には、4だと説明しすぎな印象。3よりは2のほうがいいと思っています」
   想像力を働かせる「言葉選び」が有効
次のポイントは、伝えたいイメージを、聞き手の頭の中でうまく想像させること。例えば、あなたは次の文章を読んで、どんなイメージを描くだろうか。
“収賄疑惑のある政治家を、カメラが追いかけている。建物から出てきた政治家は、押しかけた報道陣を振り切り、そのまま車に乗り込んだ。車は幹線道路を走り出したが、少し先で信号が赤に替わり停車した。すると、追走していたスポーツカーが、政治家の車の横にピタリと止まった。その瞬間、スポーツカーのパワーウィンドウが開き、運転していた女性が政治家の方を睨みつけた――”
政治家の着ているスーツの色は?
「政治家の着ているスーツは黒かグレー。中年以上の男性で、髪は薄い。スポーツカーの色は黄色か赤で、女性の髪は長く、おそらく美人」。スーツやスポーツカーの色、政治家の性別女性の容姿についての情報は一切ないが、これに近い想像をした方も多いのではないだろうか。色や形まで想像できるように、聞き手側との共通認識を押さえながら言葉を取捨選択することが大切なのだ。
「特に経済ニュースの場合は、聞き手がビジュアルを想像できるような話し方を意識しています。例えば、『リニューアブルエネルギーが〜』と話すよりも、『太陽光や風力といった再生可能エネルギーが〜』と表現した方が、より多くの方がイメージしやすいですよね」
また、最近では「引き算」や「言葉選び」に加えて、「ストーリー」も意識している。物語にすると、引き算をしなくても伝わるケースがあるからだ。例えば、「高齢者・山・川・桃・犬・猿・きじ・鬼」。これらの単語をバラバラに言われると覚えるのは大変だが、桃太郎の物語を知っている人であれば、すんなりと覚えられるはずだ。
「複雑で長い話も、ストーリー仕立てにして伝えることで記憶に残り、理解も早くなります。ですので、解説をする際にもなるべく順序立てた物語のように話すようにしています。ただ、ニュースをストーリー仕立てにするのは難しいので、まだ訓練中です」
視聴者に政治や経済の動きを理解してもらう上で理想とするのは、海外のシリアスな政治系ドラマ。米国の作品だと『The West Wing(邦題:ザ・ホワイトハウス)』や『The Newsroom(邦題:ニュースルーム)』などである。
「視聴者に政治経済の現実を、ストーリー性を持ってリアルにかつ分かりやすく伝えるというのは、日本の報道分野で十分に手がつけられていない最後の分野ではないかと思います。特にテレビは“見せ物商売”の側面があるので、エンターテインメント性を意識しないわけにはいかないですしね」
   60秒で伝えるか、1時間で伝えるか
では、伝えるために要する“時間”は、短いほうが良いのだろうか。長いほうが良いのだろうか。
答えは両方だ。あくまで方法論が異なるだけ。実際に豊島は、60秒から1時間以上まで様々な尺での解説をこなしている。テレビ東京では、タイパ需要に対応した番組として地上波で「60秒で学べるNews」を放送。過不足なく多面的な情報を聞きたい人のためにYouTubeで30分〜1時間と長尺の解説番組を配信しているのだ。
豊島はキャスターとしての立場から、以下のように分析する。
「久米宏さんが『ニュースステーション』で報道をお茶の間に届け、池上彰さんがニュースをわかりやすく伝えた時代を経て、今は国民総メディア時代に突入しました。伝え手は、正しい情報をクイックに伝えることはもちろん、時間がかかってもいいので情報を多面的にかつ深掘りし、丁寧に伝えていくことも求められています」
学生に「テレビは観ない」と言われて
豊島は大学で講義を行った際、学生に「テレビ番組は、テレビをつけたタイミングで途中から始まる。動画は始めから楽しみたいからテレビは観ない」と言われたという。
ものごとを伝える際には、こうした視聴者(聞き手)側のハードルを知った上で、伝え方を工夫する必要がある。実際に、『60秒で学べるNews』はこうした声に応え、「60秒であれば、始めから最後まで観てもらいやすいから」と生まれた。ニュースのVTRが流れたあとに、豊島やゲスト解説者が“60秒”で解説するという構成だ。
   「良い聞き手」になる方法
豊島は自ら“伝える”だけでなく、専門家などのゲストに質問をし、時には議論しながらニュースを深掘りする役割を担うこともある。専門的な話を視聴者にわかりやすく伝える橋渡し役だ。
相手の話を引き出しながらも場をコントロールし、流れをつくってまとめる。そんな「良い聞き手」になるためのポイントは、2つあるという。
ひとつは、相手の話が長くなりすぎているときに使うテクニック「身振りと視線」だ。
「相手が丁寧にお話をしてくださっているがあまり、説明が細かすぎたり繰り返しになったりしてしまうことがあります。そういうとき、じっと黙って聞いていては容認のシグナルととられてしまい、相手も話を続けてしまいます。そこで、実際に声は出さないのですが、手や口を少し動かし、視線でも話したそうな雰囲気を出します。すると相手が話を一区切りするきっかけになり、スムーズに入っていくことができるのです」
これは、オンライン会議での会話の“被り”を防ぐテクニックにもなる。突然話し出すのではなく、少し口を開けて待ってみると、「話したいのかな、どうぞ」という空気になるのだそうだ。
ただ、話の最中に割り込むのは、相手にとっては気持ちのいいことではない。「良き聞き手」になるためには、相手が直前まで話していた内容を反芻してから話しはじめることが大事だという。
「ここまでの話は聞いていましたよ、だからこうですよねという形で話すと、相手も話の腰を折られたという気にはなりにくいですよね」
もうひとつのポイントは、「波乱」を起こすこと。
話し手が複数いる場合、それぞれが自分に求められた役割を演じて議論するのは構図としてはわかりやすいが、そのまま終わるとつまらなくなってしまう。そこで面白くするために、“別の視点”を与えるのだ。
「例えば、複数の専門家と“台湾有事の可能性”というテーマで議論したとき。日本の防衛の専門家と中国の専門家などがいたのですが、ひとしきり真っ当な議論をしたあとで防衛の専門家の方に『逆にあなたが中国側の立場だったらどうしますか』と質問しました。これがうまくいって、もう一度盛り上がりを生み出すことができました」
豊島のわかりやすい解説は、専門家に無駄なくスムーズに話してもらい、適切なタイミングで発言を引き継ぐ、「聞き手」としての能力の高さによっても支えられているのだろう。
こうした豊島キャスターの「伝え方」そして「聞き方」を、明日からのコミュニケーションに活用してみてはどうだろうか。 
●「増税メガネ」にいら立ちも…岸田政権2年で支持率低迷 異例の「減税」発言 10/4
岸田政権の発足からきょうで丸2年。支持率低迷に苦しむ岸田総理は最近、しきりに「減税」という言葉を繰り返し強調しています。政府としては異例の発言ですが、一体なぜなのでしょうか。
政権発足から「2年」。けさの岸田総理は晴れやかな雰囲気と思いきや、険しい表情をしていました。
岸田総理 2021年8月「国民の皆様の声を丁寧に聞いてまいります」
政権発足直後から、岸田総理は代名詞の「聞く力」を生かし、最低賃金の引き上げや「年収の壁」の解消に向けた対策など、次々と政策を打ち出してきました。
しかし、支持率は「低空飛行」。その理由のひとつとして考えられるのが、「増税議論」です。
岸田総理 1月「先送りすることなく、今を生きる我々が将来世代への責任として対応してまいります」
岸田総理はこれまで、金融所得課税の課税強化や防衛力の抜本的強化に向けた“防衛増税”など、歴代政権が避けてきた“増税”にも積極的に言及してきたことから、付いたあだ名は「増税メガネ」。
2年間の実績よりも「増税派」のイメージが先行してしまう状況に、岸田総理は。
岸田総理(周囲に対し)「まだ何も決まっていないのに『増税だ』と言われるのはおかしいだろ!」
周囲にこう怒りを露わにする岸田氏ですが、最近は発言に「ある変化」が。
岸田総理 9月25日「賃上げ税制のこの“減税”制度の強化。特許などの所得に対する“減税”制度の創設」
異例の「減税」発言。今月に取りまとめる予定の経済対策をめぐり、岸田総理は「減税」の可能性を繰り返し強調しているのです。
政権としてのメッセージが国民に伝わっていないとの思いから、「わかりやすさ」を意識した格好ですが、自民党内からは。
閣僚経験者「増税メガネって言われているのがショックだったんだろうね」
きのう、記者団から「聞く力」を発揮できているのか問われた岸田総理は。
岸田総理「聞く力と決断し実行するということ、このバランスが政治には求められるんだと思います。聞くだけで終わってはならない」
岸田総理には「聞く力」だけでなく、国民に対してわかりやすく「説明する力」も求められそうです。
●岸田政権発足2年 経済対策などで成果を出し政権浮揚なるか焦点 10/4
岸田政権の発足から4日で2年です。経済対策をはじめ国内外の課題への対応で成果を出し、衆議院の解散などもにらみながら政権浮揚につなげていけるかが焦点となります。
岸田政権は、おととし10月4日の発足から4日で2年となります。
岸田総理大臣は、これまで新型コロナへの対応や防衛力の強化、それにG7広島サミットの開催などに取り組んできました。
3日夜、インタビューに対し「国内外で歴史的な転換点と言えるような状況を感じてきた。先送りできない課題に一つ一つ正面から取り組み、勇気を持って決断し実行してきた2年間だった」と振り返りました。
今月末をめどに新たな経済対策を策定する方針で、企業による賃上げや投資を促す減税を検討するとともに、所得税などの減税策の必要性について今後の与党の議論を踏まえ判断する考えです。
そして経済対策の裏付けとなる補正予算案を、今月20日に召集される見通しの臨時国会に提出し、会期内の成立を目指すことにしています。
一方で、先月の内閣改造後初めてとなる臨時国会では、新閣僚の資質やマイナンバーをめぐるトラブルなどについて野党側が追及を強める構えです。
今月末で衆議院議員の任期が折り返しを迎える中、岸田総理大臣としては、衆議院の解散や来年の自民党総裁選挙もにらみながら、経済対策をはじめ国内外の課題への対応で成果を出し、政権浮揚につなげていけるかが焦点となります。
●焦点はいつ解散 支持率の危機感も 岸田政権発足 きょうで2年 10/4
岸田政権が発足してから4日で2年となった。
岸田首相が直面する課題と今後の行方について、国会記者会館から、フジテレビ政治部・阿部桃子記者が中継でお伝えする。
3年目を迎えた岸田政権だが、最大の焦点となっているのは、任期が折り返した衆議院の解散・総選挙がいつ行われるか。
節目の日を迎えた岸田首相は、普段と同じように、かすかな笑みを浮かべ、4日午前9時過ぎに官邸に入った。
焦点の解散について、首相周辺は「するようでしない状況が一番効果がある」と話している。
これまで、解散をちらつかせて求心力を維持してきた岸田首相だが、20日からの臨時国会の終盤で解散を打てるかに注目が集まっている。
自民党内からは、解散を視野に、「所得税の減税に踏み切るべきだ」との発言が飛び出しているが、国会で野党が新閣僚の資質を追及することで、支持率が下落するとの危機感も出ている。
自民党総裁としての任期も残り1年を切ったが、前回、総裁のいすを争った高市経済安保相は3日夜、次の総裁選への立候補の意欲を明らかにした。
高市経済安保相「(Q. 次の総裁選への意欲を教えてください)また戦わせていただきます」
「岸田首相が最近、側近にも本心を語らなくなった」とも言われていて、政権のかじ取りと解散の判断にいっそう注目が集まる。
●岸田首相 “補正予算案は臨時国会で会期内の成立目指す” 10/4
岸田政権は4日、発足から2年となります。岸田総理大臣はNHKのインタビューに応じ、経済対策の裏付けとなる補正予算案について臨時国会に提出し、会期内の成立を目指す考えを示しました。また所得税などの減税策の必要性について、今後の与党の議論を踏まえ判断する方針を示しました。
この中で岸田総理大臣は、この2年間の政権運営について「数十年に一度起こるかどうかというようなできごとが次々と起こり、国内外で歴史的な転換点と言えるような状況を感じてきた。先送りできない課題に一つ一つ正面から取り組み、勇気を持って決断し、実行してきた2年間だった」と振り返りました。
そして、物価高を受けて今月末をめどに策定する新たな経済対策について、「給付であれ、税制であれ、社会保障負担の軽減であれ、あらゆる手法を駆使して目的を果たしていく対策にしたい」と述べました。
また、所得税などの減税策を行う考えはないか質問したのに対し、「供給面では賃上げ、あるいは設備投資における減税の議論を進めている。合わせて需要面においてもどのような対策が必要なのか与党で議論をお願いしているので、その議論を踏まえて判断していく」と述べました。
そのうえで、経済対策の裏付けとなる補正予算案について今月20日に召集される見通しの臨時国会に提出し、会期内の成立を目指す考えを示しました。
衆議院の解散については「今は経済対策をはじめ先送りできない課題一つ一つに一意専心、取り組んでいくことに尽きる。今、解散のことは考えていない」と述べました。
さらに来年の自民党総裁選挙については、直面する課題への対応に全力を挙げた上で「その結果として、さまざまな状況を判断していく」と述べました。
一方、岸田総理大臣は、自民党内から「官邸と党の情報共有が十分行われなくなっている」という声が出ていることについて「官邸と党本部が意思疎通を図ることが大事なことは言うまでもない。だからこそ先日の内閣改造や党役員人事でも党と官邸がより緊密に連携できる体制を作った。この体制のもとに連携を引き続き深めていきたい」と述べました。
このほか、事務レベルで4年ぶりの開催に向け調整が進められている日本、中国、韓国の3か国による首脳会議について「日中韓サミットは地域の安定や課題を議論する大変有意義な場だと認識している。すでに早期の適切な時期に開催することで一致しており、その方針に基づいて検討したい」と述べました。
また国民民主党が自民・公明両党の連立政権に加わる可能性については「まずは自公連立の強い連携のもとにさまざまな政治課題に取り組んでいきたい。その上でそれ以外の政党とも政策協議など協力できる場面では協力していく。これはどの党であっても決して避けるものではない」と述べました。
「『聞く力』と『決断、実行する力』も求められる」
岸田総理大臣は総理大臣官邸で記者団に対し「政治において国民の声を聞く力が重要だと自民党総裁選挙の段階から申し上げ続けてきたが、政治には、『聞く力』とあわせて、決断し、実行する力も求められる。聞くだけで終わってはならず、国民のさまざまな声がある中でも勇気を持って決断し、実行して、結果を示せるかどうかも問われている」と述べました。
その上で「これからも『聞く力』は大事にしていきたいと思うが、あわせて、決断し、実行する政治の責任も果たしていくというバランスを心がけながら、国民の理解を得られるよう努力していきたい」と述べました。
自民 茂木幹事長「取り組み道半ば」
自民党の茂木幹事長は記者会見で「岸田政権は、防衛力の抜本的強化や新たな成長分野への投資の拡大、少子化対策などで大きな決定を行い実行に移している。外交面では、主要国の中で最も安定した政権基盤を背景に国際舞台でリーダーシップを発揮している」と述べました。
その上で「日本経済の再生などの取り組みは道半ばだ。大胆な改革を進め、内外の課題解決に取り組んでいきたい」と述べました。
立民 岡田「先送りする政権だ」
立憲民主党の岡田幹事長は記者会見で「何をやりたいのか分からない政権だと言われるが、そのとおりだ。少子化対策や防衛力の強化に必要な財源の話を先送りし、肝心なことをはっきり言わずに先送りする政権だ」と述べました。
その上で「補正予算案が成立したあとに衆議院の解散という可能性が高いと思っている。その際には、何のために解散するのか明確にするよう求めたい。自分たちにとって有利な時期の選挙になるとか、来年の自民党総裁選挙にとって有利だといった情けない理由で解散というのはありえないことだと申し上げておく」と述べました。
公明 山口代表「忍耐強く丁寧」
公明党の山口代表は記者団に対し「岸田総理大臣は、賃上げに取り組み、物価高に対応する中で経済のよいトレンドを今後も持続させようという意気込みを持っている。忍耐強く、丁寧に進めていくことが岸田内閣の持ち味なので、与党としてしっかり支えながら結束して国民の期待に応えていきたい」と述べました。
国民 玉木代表「日本をどこに導いていくのか」
国民民主党の玉木代表は記者会見で「新型コロナやロシアによるウクライナ侵攻など、外的な変化への対応を余儀なくされた2年間だったが、一定の成果を上げているのではないか」と述べました。
一方で「来た球を打つのではなく、自分から道をひらいて実現するところがまだ弱い。『新しい資本主義』を掲げているが、何を目指して何を実現するものなのか、国民も岸田総理大臣も分かっていないと思う。日本をどこに導いていくのか堂々と訴えてもらいたい」と述べました。
●「老後資金は自分で稼げ」国民は限界だ…自民党世襲一家生まれ岸田総理 10/4
数々のキャッチフレーズを並べ、「スローガン政治」を進める岸田文雄首相がまたしても新たなキーワードを唱えた。訪問先のニューヨークで今度は海外勢の参入を促す「資産運用特区」を設けると表明したのだ。首相は日本独自のビジネス慣行や参入障壁の是正などに取り組むと意気込む。
だが、経済アナリストの佐藤健太氏は「何でもかんでも規制で縛り、古い慣習が残る日本型システムに改革のメスを入れるのは良いが、国や国民の資産が吸い取られないのか注意する必要がある」と警鐘を鳴らす。
米ニューヨークで海外投資家に日本を売り込んだ岸田首相
国連総会出席のため米ニューヨークを訪問した岸田首相は9月21日午後(日本時間22日未明)、現地で企業経営者や投資家向けに講演した。日本への投資を呼びかける中で発したのが「資産運用特区」構想だ。昨年5月、英ロンドンの金融街シティーで「Invest in Kishida!」(岸田に投資を!)と唱えて海外勢の関心を買ったことを思い出させる。
「2000兆円を超える個人金融資産を活用した日本の資産運用ビジネスの発展は、法の支配や市場経済といった普遍的価値を共有する日米間において、投資の流れとウインウインの関係を強固にし、世界経済に大いに貢献するものだ。すでに述べた構想を政策パッケージとして具体化し、世界の投資家に賛同いただくため、今秋に世界の投資家を日本に招聘する『ジャパン・ウィークス』を展開する。皆さんも是非参加いただきたい」
岸田首相は金融や投資銀行、有力ヘッジファンドなどのトップが集まる「ニューヨーク経済クラブ」主催の会合で、このように力説してみせた。国家のリーダーが海外で日本を売り込むのは当然だ。ただ、それは注意しなければ「日本売り」にもつながる危険性があることだけは認識しておかなければならない。
岸田首相「資産運用立国を目指す」
首相は講演で「日本における資産運用セクターが運用する資金は800兆円で、足元3年間で1.5倍に急増している。このパフォーマンスの向上を狙い、運用の高度化を進め、新規参入を促進する。まず、日本独自のビジネス慣行や参入障壁を是正し、新規参入者への支援プログラムを整備する。あわせて、バックオフィス業務のアウトソーシングを可能とする規制緩和を実施する」とも発言している。要は海外参入を促進するために投資家ニーズに沿った規制改革を行うということだ。
言語や雇用条件、ビジネス慣行の「壁」を改善していくとの表明は、当然ながら海外勢には評判が良い。首相は「取り組みが遅れていると指摘されてきた構造改革も断行する」と語り、帰国後の9月25日には日本証券業協会などが主催する全国証券大会で「成長と分配の好循環を実現していく上で、家計の資産を預かり運用する役割を担う、資産運用業の高度化が不可欠だ。資産運用に関わる皆様におかれては慣習や業務を見直し、運用力の向上やガバナンスの強化に取り組んでいただきたい」と力を込めた。政府は新規参入支援の拡充を通じた競争促進など資産運用業の改革に向けた具体的な政策プランを今年末までに策定する方針だという。
首相が目指す「資産運用立国」は、今夏に閣議決定された国の経済財政運営と改革の基本指針「骨太の方針」にも盛り込まれている。「2000兆円の家計金融資産を開放し、日本の金融市場の魅力を向上させ、世界の金融センターとしての発展を実現すべく、取組を進める」と掲げ、持続的成長に貢献する「資産運用立国」を実現するとうたっているのだ。ただ、今回の一連の首相発言には、候補地に名があがる主要都市から「何も聞かされていない」との不満もくすぶる。
岸田政権の本音「資産運用しやすくするので、老後資金は自分で稼いでください。ただし損するリスクもありますけど」
首相が資産運用業の活性化を急ぐ背景には、来年夏の自民党総裁選をにらみ自らが掲げてきた「資産所得倍増」につなげたいとの思惑もある。当初は「令和版所得倍増計画」とうたっていたものの、それが叶わない現実を見た首相は「所得倍増」ではなく、「資産所得倍増」に切りかえた負い目があるからだろう。昨年の資産所得倍増プランの策定や少額投資非課税制度(NISA)の拡充・恒久化に続き、国内外の優れた金融機関や人材を日本に集めることで、より良い商品やサービスを提供する金融資本市場の実現を目指す。
だが、ここで気になるのは「1億総投資家」となることのリスクだ。資産運用は利益が出ることがある一方で、当然ながらリスクもつきまとう。それを十分認識した上で運用する人にとっては選択肢が増えて良いかもしれないが、国のリーダーが唱える「資産所得倍増」というニンジンに飛びついた結果、老後資金が不足するようになれば悲惨だろう。
日本銀行が9月20日に発表した資金循環統計(速報)によれば、今年6月末時点の家計金融資産は前年同期比4.6%増の2115兆円で過去最高を更新した。株式や投資信託などの保有は増加しているものの、現預金は1117兆円と5割を超えている。このような状況下で「資産運用立国に向けて、制度は国が用意するから老後に不足する分は自分で稼いでください」と言われても実現は容易ではないだろう。
失われた30年の責任は岸田首相、自民党にある
来年からは新NISAがスタートするが、そもそも資産運用に回すだけの余裕がない人も少なからず存在する。これまで以上に格差が広がることを不安視する向きは多く、「物価の上昇が止まらず日々の生活をするだけで精一杯」(大阪府在住の個人事業主)といった声のほか、海外勢の新規参入にも「本当にハゲタカに喰われるだけにならないのか」(東京都内在住の40代サラリーマン男性)などという懸念が尽きない。
「30年間、日本で見られなかった前向きな攻めの姿勢が起きている」。首相は先に触れた「ニューヨーク経済クラブ」の会合でこのようにも語っている。「失われた30年」と比べて今の日本は勢いがあると強調したかったのだろう。だが、岸田氏は1993年から今日にいたるまで30年間、衆院議員を務めてきた。この間に外相や防衛相、規制改革担当相や科学技術政策担当相、自民党政調会長などを歴任しており、「失われた30年」の責任は首相にも向けられる。
もっと言えば、首相は父が1979年から1992年に衆院議員を務め、祖父も戦前から国会議員に7回当選した政治家一家だ。従兄は自民党税制調査会長の宮沢洋一参院議員、叔母の義兄は宮沢喜一元首相である。海外勢の新規参入に加えて、タクシーやバスなどの運送業についても外国人労働者を活用するプランを検討しているという首相。数々のスローガンを並べる一方で、20年以上も国民の年収が上がらず、かねて指摘されてきた少子化対策などでも有効な手を打てなかった責任を問われた時、岸田氏はどのように総括するのだろうか。
●円安背景に株価堅調 長期金利上昇、先行きに不透明感―岸田政権2年 10/4
岸田文雄政権は4日で発足から2年を迎える。日銀の粘り強い金融緩和策に伴う円安と、コロナ禍からの経済活動正常化の流れを受け、株式市場は底堅く推移してきた。ただ、足元の長期金利上昇がどのような影響を及ぼすのか見通しにくい状況で、市場の先行きには不透明感が漂う。
首相は昨年、ロンドン、ニューヨークを歴訪し、市場関係者を前に日本株への投資を訴えた。11月に決定した「資産所得倍増計画」では少額投資非課税制度(NISA)の大幅拡充も打ち出し、国民の「貯蓄から投資へ」を後押しする姿勢を鮮明にした。東証が今春に企業に求めた資本効率改善の要請もあり、夏場にかけて海外投資家の「日本株買い」が市場をけん引した形だ。
一方、米欧が歴史的なインフレを抑制するために昨年前半から急速に利上げを進めたが、日銀は大規模金融緩和を継続したため、金利差を意識した円安が進行した。政権発足時に1ドル=111円台だった円相場は昨秋に続き、今秋も150円近辺まで下落。輸入物価の上昇が家計・企業に重い負担となる中、政府・日銀は昨年9、10月に円買い・ドル売りの為替介入を実施したが、このところの円安でさらなる介入の観測もくすぶる。
日銀の植田和男総裁は大規模緩和からの出口を探り、今年7月に長期金利の変動許容幅の上限を従来の0.5%から1%に事実上引き上げた。長期金利はじりじりと上昇し、10月3日には0.780%を付けた。長期金利の上昇が止まらなければ市場心理を冷やしかねず、株価が底堅さを維持できるかは予断を許さない。
●岸田政権3年目へ、物価高対応で正念場−くすぶる早期解散観測 10/4
岸田文雄政権は4日、発足から3年目に入る。物価高への不満を背景に内閣支持率は低迷。早期の衆院解散・総選挙も取り沙汰される中、10月中の経済対策策定を急ぐ。1年後には自民党総裁選も控え、政権は正念場を迎えている。
日本では21世紀に入り、森喜朗氏から岸田氏まで10人が首相を務めている。2年以上にわたり政権を維持できているのは小泉純一郎、安倍晋三両氏に続き、3人目だ。
岸田首相が党総裁に再選してさらなる長期政権を築くには、政府・与党内での求心力維持が必要だ。衆院解散は有効な手段となるが、内閣支持率は9月の内閣改造後に読売新聞が行った世論調査で35%と横ばいだった。家計を圧迫する物価高が影を落とし、反転攻勢にはつながらなかった。
公明党の山口那津男代表は9月26日のインタビューで、世論調査に見られる不満は、物価高への対応が「部分的である、足りないということが一番だ」と指摘した。子育て支援策を財源の裏付けを持って実行することと合わせて、政府の取り組みが望まれていると述べた。
   物価高対策・持続的賃上げなど柱、あす経済対策策定を指示−岸田首相
経済対策「期待しない」が6割超
今回の経済対策で岸田首相は、地方や中堅・中小企業を含めた賃上げを後押しする方針だ。半導体や蓄電池などの戦略分野の国内生産拡大に向けては、設備投資への減税も打ち出した。個人への直接支援も、公明党の山口代表が、住民税非課税世帯など低所得層への現金給付も「選択肢の一つとして検討すべきだ」と述べるなど検討課題に挙がっている。
前のめりの政府・与党に対し、国民の反応はいま一つだ。JNNが9月30日と10月1日に実施した世論調査では、経済対策に「大いに期待する」「ある程度期待する」が合わせて35%だったのに対し、「あまり期待しない」「全く期待しない」と回答した人は63%となった。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、9月26日付のリポートで、国民は食料品価格の上昇に苦痛を感じており、「円安で輸入インフレが起こっていることを考えると金融政策の見直しを含めて議論する方がよい」と指摘した。
政府が物価高対策を掲げる一方で、日本銀行が金融緩和を続ける現在の状況に関し、熊野氏は「安定的に2%の物価上昇という共同声明の方針を植田和男総裁が課されていることが矛盾の原因」だとの見方も示した。植田総裁は「賃金上昇を伴う形での2%物価安定目標の実現を見通せる状況には至っていない」との姿勢を堅持している。
今年の春闘では賃上げ率が3.6%と約30年ぶりの高水準を達成したが、厚生労働省の調査では7月の実質賃金は16カ月連続で前年を下回り、物価高に賃金上昇が追いついていない。岸田首相は5日から都内で始まる連合の定期大会への出席も調整しており、労働界と協調して賃上げに取り組む姿勢を示すとみられる。実現すれば自民党政権下では16年ぶりとなる。
   7月の実質賃金は16カ月連続マイナス、減少幅は前月に続き拡大
経済対策に「一意専心」−岸田首相
経済対策に減税が盛り込まれることで、20日に召集予定の臨時国会で岸田首相が衆院解散に踏み切るのではとの観測が政界でくすぶっている。賃上げ支援などと並び有権者にアピールしやすい政策だからだ。
自民党の森山裕総務会長は1日、経済対策で減税措置を打ち出すのであれば、衆院を解散する大義になり得るとの考えを示したとNHKが報じた。「税に関することは国民の審判を仰がなければならないので、どうなっていくのかが非常に大事だ」と語ったという。
   自民総務会長、経済対策で減税措置実施なら衆院解散の大義に−報道
岸田首相は3日放映されたNHKのインタビューで衆院解散について問われ、「経済対策をはじめ先送りのできない課題一つ一つに一意専心、取り組んでいく」として、「今、解散については考えていない」との考えを示した。
節目を迎える今週、岸田首相は官民が協力して海外投資家らを招き実施しているJapan Weeks(ジャパン・ウィークス)の関連イベントに連日のように姿を見せている。2日の会合では、看板政策である「新しい資本主義」の重要課題の一つとして「貯蓄から投資へのシフト」を強調。少額投資非課税制度(NISA)の恒久化に続き、資産運用特区の創設も打ち出している。
岸田政権の2年間で東証株価指数(TOPIX)は15%上昇したが、政権浮揚には直結していない。
●岸田政権の新しい資本主義 気になる汚名「増税メガネ」払拭へ 10/4
岸田文雄首相は9月25日の経済対策に関する記者への説明や、27日の新しい資本主義実現会議で、「コストカット型の経済から歴史的転換を図る」と話した。「成長の成果である税収増を国民に適切に還元する」として減税にも言及しているが、岸田政権が目指しているのはどのような政府の姿なのか。
「新しい資本主義」とは、つかみにくい話で、閣僚経験者も「中身がさっぱり分からない」とこぼしていた。
当初は宏池会らしく、池田勇人政権のように「所得倍増計画」を掲げていた。これは、インフレ率4%の「高圧経済」を想定すれば、名目成長6%となり、12年で所得倍増となるので、筆者としては期待できると思っていた。
ところが、いつのまにか取り下げとなって、「資産所得倍増」とすり替えられた。しかも金融所得課税付きだったが、棚上げとなった。
岸田首相はここにきて、「税収増を国民に適切に還元する」と言い出した。これは結構なことだ。首相は「増税メガネ」と言われているのを気にしているという。前官房副長官の木原誠二氏は、「閣内にいたときには(減税を)言いにくかった」と閣外に去った後にこぼしているが、「増税メガネ」との汚名を払拭する一番簡単な方法は、減税を実行することだ。
岸田政権以降、当初予算と比較すると15兆円程度、税収が上振れしている。この際、本コラムで書いてきたように15兆円程度の「還元減税」を行えば、誰も文句を言えない。この数字は、真の需給ギャップにも対応するので、経済対策としても満点だ。
しかも、この補正予算は極めて簡単に作ることができるし、減税はほぼ100%予算執行されるので即効性もある。
こうした還元減税は、かつては「成長減税」といわれ、しばしば実施されたことがある。これを実行すれば賃上げや雇用が確保ができ、「人への投資」は満点だろう。
「モノへの投資」については、公共事業の評価に使われる「社会的割引率」が高すぎるという問題がある。この見直しを行えば、国債や財政投融資特別会計国債(財投債)による政府投資は現状の数倍にできる。それで民間投資を誘発すればいい。いまの金融環境に合わせるだけで、不採算の投資をするわけでなく、費用対効果からみても合理的な投資だ。特別なことをするわけでもない。
ここまで対策がそろうと、新しい資本主義に欠けているのは「規制改革」だ。規制改革は1970年代末の大平正芳政権から綿々と受け継がれてきた。これがないと、いくら政府が頑張っても民間がついてゆけず、官民のバランスが悪くなり、まともな成長ができない。
具体的には、菅義偉前首相が主張する「ライドシェア」などドライバー不足対応が喫緊の課題だ。ただし、安易な外国人ドライバーへの依存は危ない。
規制改革で宏池会の大先輩に見習えば、岸田政権の「新しい資本主義」について、もう誰も「分からない」などと言えなくなるだろう。 

 

●殺傷能力ある武器輸出に市民団体が反対声明 国会での徹底議論求める 10/3
武器輸出を制限する政府の「防衛装備移転三原則」の運用指針見直しをめぐって、市民団体が3日、国会内で記者会見し「殺傷能力がある武器の輸出を可能にし、日本を平和国家から『死の商人国家』へ転落させる」として輸出解禁に反対する声明を発表した。
政府は与党実務者協議を踏まえ、これまで禁じていた殺傷能力のある武器の輸出を一定条件下で可能とし、日英伊で共同開発する次期戦闘機や部品の第三国輸出を容認する見解を示した。
ピースボートや日本国際ボランティアセンターなどの団体代表による声明では、「武器を輸出しないことは、専守防衛や非核三原則と並ぶ平和憲法下での日本の国是。その国是を、わずか12人の与党政治家が密室協議で覆そうとしている」と政府・与党を批判。運用指針見直しに関する与党実務者チームを解散させ、国会で徹底議論するよう求めた。
●日本の同性カップル、結婚の平等が認められず 理解増進法にも失望の声 10/3
アキさんとヒカリさんが東京で家を借りようとしたところ、不動産業者から、その家は「カップルじゃないと住めない」と言われた。
「私たちはカップルです」と伝えると、「男女のカップルのための家」だと返事が返ってきたのだという。
アキさんとヒカリさんは共に30代。交際を始めて7年がたち、2人で息子を育てている。2人で赤ちゃんをあやし、交代で食事ととおむつ替えをし、どちらかが眠れるように交代で世話をしている。新しく買った調乳ポットについての話題も絶えない。
だが日本の法律と、政府と、保守的な社会の中では、2人は合法的なカップルではない。周囲からサポートを受けている一方で、多くの人に自分たちの関係を隠し続けている。2人がこの取材で本名を明かさないのもそのためだ。同性カップルをめぐるタブーがまだ社会に根強く残るだけに、息子のために細心の注意を払っているという。
「日本という社会において、3人家族として認められていない」と、アキさんは話した。
日本は主要7カ国(G7)の中で唯一、同性カップルを完全に認めておらず、明確な法的保護も与えていない。男女のカップルと同様に同性カップルに結婚の権利を認める、いわゆる「結婚の平等」も認められていない。その結果、この国の性的少数者(LGBTQ)コミュニティーは、自分たちは弱い立場にあり、ほとんど可視化されていないと感じている。私たちは、アキさんとヒカリさんのアイデンティティーを守るため、仮名を使って報道している。
いくつかの民事裁判で、現行法で同性婚を認めないのは違憲、あるいは違憲状態だとする判断が出て以降、同性婚の合法化を求める圧力は高まっている。しかし岸田文雄首相は、伝統にこだわる政界幹部の反対を前に、それを押し切るような改革は実現できずにいる。
一方で、変化を求める若い層の大きな声に応える進展も、あるにはある。一部の地方自治体がパートナーシップ制度を設けた。ただし、これに法的拘束力はない。中央政府でも、LGBT理解増進を担当する首相補佐官を新設。6月には性的マイノリティーに対する差別を対象とする「LGBT理解増進法」が制定され、内閣府に担当部署が設けられた。
だが、保守派議員の厳しい反対にあったこの法律は、結婚の平等を認めるには程遠いものだったため、当事者コミュニティーは失望している。
活動家たちはまた、性的少数者への「理解を促進する」措置を講じる際に、「全ての国民が安心して生活できるよう留意する」とする法案の文言にも激しく憤っている。多数派の権利を優先し、LGBTコミュニティーが他者の心の平穏を脅かす可能性があることを暗に示す文言だと、活動家らは指摘する。
「この法律を抑止力にして、学校や会社での教育や活動を制限しようとする政治家はすでにたくさんいます。そうした意図をとても恐れています」と。一般社団法人「LGBT法連合会」の事務局長代理を務める西山朗さんは、こう指摘した。
同性カップルのアキさんとヒカリさんは、法的認知の欠如は自分たちにとって抽象的な懸念などではなく、それどころかそのせいで実際に日々の生活が困難なのだと話す。
たとえば、2人がなかなか受け入れられずに苦労していることの一つに、息子を出産したアキさんだけが親権を持っているという事実がある。
「この子を産む直前に遺書を書いたんです。自分が出産する時に万が一死んでしまった時に、この子の親権を持つ人がこの世に誰もいなくなってしまうので、パートナーに未成年後見人を指定するように依頼した遺書です。でもその遺書があったからといって、必ずしも未成年後見人になれるわけではない」と、アキさんは話した。
また、同性カップルの一方が入院した場合、もう一方はパートナーに代わって書類を作成したり、同意書に署名したりする法的権利を持たない。多くのカップルは、住宅購入のための共同住宅ローンを組むことができない。また、パートナーの一方が死亡しても、もう一方には相続権がない。
それぞれの状況を回避するための特別許可を申請することもできるが、その判断は当局の裁量による。
ヒカリさんとアキさんが家族や親しい友人にカミングアウトし、結婚を考えるようになったのは、自分たちが親になったからだ。
2人は、息子が大きくなった時に、自分の2人の母親の関係を、周りに説明できるようにしたかったと話す。日本で結婚できないことはわかっていたが、とにかく婚姻届を提出した。
日本で婚姻届が拒否されると、2人はヒカリさんが大学に通っていたカナダで結婚した。
アキさんは、「自分たちはここにいるよ、という気持ちを表したくて」と話した。だが日本では、自分とヒカリさんは透明な存在になってしまっていると感じるという。
「私は日本の小さな街で生まれて。すごく保守的な地域でした」とアキさんは話す。「自分がLGBTQだと気づいた時から、それを直さなくてはと強く思っていたんですね。20歳ぐらいまで、誰にもカミングアウトしないで暮らして。いつも諦めることが多い人生だったので、どうせできないからやらないということを、今後はしたくないと思った」
進歩の余地はある。しかし、権力者たちが変化に強く抵抗しているのだと、LGBT法連合会の西山さんは言う。「伝統的な家族や家父長制という考えを守りたい、保守的な政治家たちです」。
「LGBTQ+の人たちを守るために10年近く積極的に活動してきました。だからこそ、本当に戦わなければいけない、毎日頑張らなければいけないと感じているので、本当に悔しいです。LGBTQ+の人たちの権利が法律で守られている他の国で暮らすこともできますが、私は日本の社会を変えたいし、自分の権利を守りたいので、まだその道を選んでいません」
西山さんは闘うことを決してやめないと言うが、その遅々とした前進に疲れ果て、意気消沈もしている。
他方で、もう少し前向きな、年長の男性同士のカップルもいる。ケイタロウさんとヒデキさんは1年以上前にバレエ教室で出会い、離れがたい仲になった。
2人は、パートナーシップ証明書を取得したことを喜んでいる。法的保護は与えられないものの、2人の絆を象徴するものとみなしている。
「本当の絆は婚姻関係以上のものです。それを見つければ、社会がどう思うかはあまり関係がなくなります」と、ケイタロウさんは話した。
40代前半のケイタロウさんは10代の頃にカムアウトし、それ以来、自分の性的指向をオープンにして暮らしてきた。
一方、10歳年上のヒデキさんは、家族にカムアウトしていない。東京に近い保守的な農村地域に住み、パートナーに会うために定期的に上京している。ヒデキさんは、面倒を見ている90代の母親にショックを与えたくないのだという。
「自分をとりまいている環境とかもそうなんだけれども、やはり差別とかが日本って根強いと思うんです」
「二重生活を送る人が減ればいいなと思います」と、ケイタロウさんは話した。
「法的保護は大事だと思います。認知され、偏見がなくなれば、みんな安心してカムアウトできるようになります」
アキさんとヒカリさんもそれを求めている。いつか日本で結婚し、息子に結婚式に出てもらいたいと願っている。
一方で、自分たちの子供のことを心配し、学校や社会でうまくやっていけるのか考えている。アキさんはだからこそ、自分の家族のためだけでなく、自分たちのような人々のために、もっと多くのことを望んでいるのだと話す。
「同性カップルを親に持つ子供たちが、もっと生きやすい社会になっていくのが、自分たちの願いです」
「今いるLGBTQの若い子供たちも、守られていってほしいと思う。最近では自分だけ隠していくだけではなくて、他の人もつらいを思いしてほしくないなと思います」
●お役所にはもう行かない? 世界の“マイナ”事情 10/3
「家のソファーにいながら、ほとんどのサービスが受けられるよ」「納税手続きはオンラインで数分で終わり。これが普通だ」 行政や医療分野で、個人番号制度を利用したオンラインサービスが普及する北欧のスウェーデン。もう何年も役所を訪れていないという人にも出会いました。世界では日本に先がけて、個人番号制度が多くの国で利用されています。ただ、情報漏洩えいやひも付けミスなどの課題も山積。世界の個人番号制度をめぐる現状を取材しました。
スウェーデン 生まれた直後に個人番号を付与
人口はおよそ1045万(2021年時点)の北欧スウェーデン。個人番号制度が導入されたのは70年以上前の1947年のことです。人口の把握などが目的でした。当初は地域の教会がとりまとめていましたが、その後電子化され、1991年から国税庁が管理を担っています。市民にとって、個人番号はどれほど身近なものなのでしょうか。
地元の大学生「学校のあらゆる書類には必ず書いてあります。自分の番号で本人確認もしますし、いいシステムだと思いますよ。簡単ですし」
75歳の女性「銀行に行くときも使うし、インターネットでものを買うときも使うし、病院に行くときも使います。とても便利です」
スウェーデンでは、個人番号は、生まれると同時に付与されることになっています。
ヴィデルさん「生まれたり、移住してきたりすると、誰であれ個人番号を取得します。新しく子どもが生まれると、助産師がオンライン上のシステムで報告をあげ、30分以内に番号が割り当てられるんです」
数分で納税手続き 利用者は対象者のほぼ100%
この番号制度の利点が最も活かされるのが、毎年の納税手続きだと言います。スウェーデンでは銀行口座も個人番号とひも付けられています。国税庁は個人番号ごとに給与や証券取引などのデータを収集し、税金の額や、還付金の額が記載された書類をオンラインで送付。受け取った納税者は、金額を確認して電子上でサインすれば、手続きは完了です。IT関連会社を経営するアレックス・ベイカーさんは、今や、この制度のない生活は不便で考えられないといいます。
ベイカーさん「納税手続きはいまや数分で完了します。ここではそれが普通です。もう何年も役所には行っていませんよ」
国税庁 ヴィデルさん「以前は大変でした。複数の職場で働いている場合は、すべての給料の合計と、いくら控除されたか、税金も自分で記入しなければいけませんでしたが、今では800万人の国民がこのサービスを利用しています。ほぼ100%のカバー率です」
医療記録も 民間企業も個人情報を活用
医療関係の会社で働くカール・アルストランドさんです。3年前には日本の京都大学に留学していました。個人番号があることで、銀行口座の開設や医療情報の閲覧が簡単にできると言います。スウェーデンでは、名前や生年月日など法律で定められた一部の情報に限って、銀行や病院など民間にも情報が提供されています。
アルストランドさん「私の医療記録には、どんな薬をどの病院で受け取ったのかが書いてあります。医療システムとリンクしているので、病院の予約もできます。日本留学中は、役所に行っていろいろな書類を書いたり、行列に並んだりすることもありました。スウェーデンではほとんどのサービスが家のソファーにいながらできます」
実は多かったひも付けミス
ただ、過去には誤って他人の情報を別の人に登録するなどのミスもあり、批判も相次ぎました。
国税庁 ヴィデルさん「1991年に国民の家族構成などの情報データベースを作る際、すべてが手作業で行われました。そのため、ひも付けのミスも多く発生しました」
しかし、オンラインで利用できるサービスが増えて利便性が飛躍的に向上したことで、国民からの評価も高まっていったといいます。
国税庁 ヴィデルさん「1つずつミスを直しながら、サービスの質を高める努力をしています。もちろん、必要以上の情報を一般に提供できませんし、必要以上の情報を受け取ることも許されません。物事をより簡潔に進め、市民からすれば便利に、私たちからすればスムーズな処理や意思決定を進められるウィンウィンな関係だと感じています」
個人情報に“カーテンはなし?”
実は、スウェーデンでは、名前を入力するだけでその人の住所が表示されるウェブサイトも存在していて、年収すら調べようと思えばわかると言います。夫がスウェーデン人で、10年以上現地に暮らすダールマン容子さんは、番号制度が広がった背景には国民の政府への信頼の高さもあるのではないかと指摘します。
ダールマンさん「スウェーデンにはカーテンがないんです。カーテンで隠せば、なにかやましいことをしているのではないかと思われます。だからのぞくまでもなく、丸見えです。自分の名前、生年月日、住所、電話番号、一緒に住んでいる人、所有している車、すべてが公開されていて、ほとんどが個人番号と結びついています。それでも、政治家がちゃんとやってくれるだろうという信頼感が前提にあるので、様々な情報が個人番号にひも付けられていてもそんなに気になりません」
ダールマンさんは、日本人にあったやり方で少しずつ制度を取り入れていくのがいいのではないかと話します。
ダールマンさん「日本で同じことをしようとするのは難しいと思うので、抵抗を感じないところでうまく調整をしつつ前に進めていき、独自の進め方が見つけられればいいのではないでしょうか」
日本の専門家はどう見る?
スウェーデンの事例は、日本の参考になるのか。マイナンバー制度に詳しい中央大学の宮下紘教授に話を聞きました。
宮下教授「納税や医療という分野で番号制度が利用されるという点で、日本は、将来的にスウェーデンのような暮らしを目指していくことになると思います。また、どこの国でもデジタル化を進める中でミスは起きてしまうものです。スウェーデンの研究者の論文によると、2008年1月までに7万件以上の個人番号の変更がありました。その原因の多くがひも付けミスであるとされています。日本でも、ミスをどう是正していくのかは、政府が対応するのは当然としても、国民側も自らの情報に関する不備を見つけて訂正を呼びかけるなど、政府だけに任せない意識を持つことが今後必要になるでしょう」
デジタル活用の台湾 直面する課題とは?
膨大な市民の個人情報をどう適切に管理するのか。今、この点に向き合っているのが台湾です。台湾は、デジタルを活用した行政サービスに力を入れてきました。例えば、コロナ禍では、薬局のマスクの在庫がひと目で分かる地図サイトの開発を支援したり、健康保険カードを提示すればマスクを購入できる仕組みを導入したりするなど、ITを積極的に利用した対応が世界から注目されました。その台湾にも、個人番号はあります。「統一番号」という10桁の英数字で、出生時に割り当てられます。満14歳になると、番号を記載した紙ベースの「身分証」が発行され、ふだんから携帯することも義務づけられます。台湾では、本人確認のため空港やスタジアムなど様々な場所で、多くの人がこのカードを提示しています。行政手続きのデジタル化のため、「身分証」とは別に、2003年に導入されたのが、ICチップがついた「自然人証明書」と呼ばれるカードです。ネット上で行政サービスを受けるための個人認証に使うものです。納税の申請のほか、戸籍謄本の写しの取得や医療の受診記録の確認などのサービスを受けられます。ただ、自宅から利用する際も、パソコンにカードリーダーをつなげてカードを読み込む手間がかかり、発行数は約928万と、普及率は5割未満にとどまっています。
肝いりの計画も 市民からはストップ!
こうしたなか、台湾当局は、より行政サービスの利便性を高めようと、2019年、この2つのカードを2020年に統合すると発表。将来的には健康保険カードや運転免許証の機能も一緒にする方針を明らかにしました。しかし、この新たな証明書の導入については、さまざまな市民団体から懸念の声があがりました。
中国からのサイバー攻撃も懸念
このうち1つの団体に話を聞くことができました。懸念として指摘したのは、
   ・中国からのサイバー攻撃による情報流出のおそれがあることや
   ・ネット環境に馴染みのない高齢者などが適切に利用することができるのか
といった点でした。そして、新たな制度の導入にあたっては、独立性の高い立場で個人情報が適切に管理されているかどうか監督する組織の設立が必要だとしています。
郭さん「中国だけではなく、いまは多くのハッカーが情報を狙っています。デジタル化は避けては通れず、きちんと適切な対応策をとり、個人情報保護とセキュリティに対する配慮がされれば、団体としては物事がうまくいくと考えることができます。課題を解消しながら段階的に進めるべきです」
重要なのは市民からの理解
こうした声を受けて、台湾当局は2021年、「社会のコンセンサスが得られるまで、計画をいったん停止する」と発表しました。台湾当局は現在、個人情報保護を担う組織作りや、それに伴う法整備を進めていて、専門家は行政のデジタル化には市民からの理解が欠かせないと指摘します。
陳院長「意思決定のプロセスはより透明性のあるものにする必要があり、率直に問題提起をして、それに対する解決策を積極的に示すことが求められます。当局は(個人情報漏洩などの)違反があった場合は厳しく臨むという意思を示すべきで、このことは市民から支持を得るために重要なことです」
「現在の利点を残しつつ、どう利便性を高めるか」
世界各国で導入されている個人番号制度は、対象となる人口規模や制度導入の目的など、日本とは背景が異なるケースも多くあり、一概には比較できない側面もあります。現在、日本では、マイナンバーカードをめぐって、利便性を訴える声、トラブルや情報漏えいを懸念する声など、国民や有識者からさまざまな意見が上がっています。国内外の番号制度に詳しい国際社会経済研究所の小泉雄介主幹研究員は、「国民の利便性を高める」という視点で、番号制度を議論すべきだと指摘しています。
小泉主幹研究員「日本ではカードの交付にこだわった結果、ヒューマンエラーでミスが相次いでいます。海外ではデジタルIDが主流で、物理的なカードの取得を義務にしていない国もあります。カードそのものの取得をためらう人がいるなか、カードを義務化する必要はあるのでしょうか。デジタルIDを含めた運用をより重視すべきだと思います。また日本は北欧などと比べても、自治体の対面サービスが充実していると言えます。高齢者にとってみれば、便利なのはオンラインではなく、対面サービスだという場合もあり、それをなくす方向にいくのはもったいないと思います。それぞれの国民にとっての便利さを追い求めるべきで、『デジタル化ありき』ではないと考えています。現在の利点を残しつつ、どう利便性を高めていけるのかが重要です」
「情報の保護と利活用は車の両輪」
中央大学の宮下教授は、マイナンバー制度が普及すれば利便性の高いサービスの実現は可能だとした上で、情報をいかに適切に管理できるかが重要だと指摘します。
宮下教授「情報の保護と利活用は車の両輪だと思います。情報が繰り返し漏洩したり、誤りが多かったりするシステムやカードでは、国民の理解も得られません。保護を強めれば利活用の妨げになるといったことはありえず、利活用を進めたければ情報をまずは適切に保護すべきです。利用してもらいたいからと言って拙速に制度を拡大しようとするのではなく、丁寧に情報を管理し信頼を得ながら進めていくべきだと思います」
●「国防上の懸念」中国系資本によるメガソーラ−用地買収 10/3
全国でメガソーラー(1000キロワット以上の大規模太陽光発電所)への風当たりが強まっている。「脱炭素」の掛け声の下、国の旗振りで爆発的に導入が進んだが、景観破壊や土砂災害誘発のリスクに加え、中国など外資による用地買収に「国防上の懸念」も指摘されているのだ。倒産した事業者が太陽光パネルを放置する問題も表面化しており、専門家は現行制度の不備を強く指摘する。その深刻な実態を追った。
福島市は8月末、「ノーモア メガソーラー宣言」を発出した。建設中も含めて市内には26カ所のメガソーラーがあり、同市では「市民からも山肌が削られた景観への失望や、土砂災害を誘発するのではと不安の声が上がっている」と説明する。
経産省によると、今年3月末時点で事業認可を受けているメガソーラーは全国に8600カ所以上もある。
元農水官僚で再エネ事業の土地買収の実態に詳しい姫路大学の平野秀樹特任教授は、福島市の宣言にも「遅きに失したと言わざるを得ない。メガソーラーに適した用地買収はすでに全国で終わってしまい、主戦場は風力発電に移った。国土がどれだけ外資に買われているかも全貌を把握することは困難だ」と話す。
政府関係機関の調査では、2020年10月までの時点で再エネ発電事業者として何らかの形で中国系資本が買収に関与したとみられる土地は全国で約1700カ所に上ることが判明しており、防衛関連施設の周辺も含まれていた。
平野氏は、海上自衛隊や米軍の基地がある山口県岩国市のメガソーラーが中国系企業に転売された例もあるとし、「安全保障上も極めて由々しき事態。国内に外資の発電所があるのは電力を海外から輸入しているのと同じこと。中国系発電施設に何らかの理由で母国から『送電中止』などが指示されたらどうするのか。基幹インフラを外資に委ねることは国のガバナンスに関わる」と力を込める。
平野氏によると、国土買収の問題点は、1軍事的拠点として利用される2所有者不明となるケースも多く、税の徴収が困難になる3占有者に立ち入りを禁止され、今後は行政の力が長期的に及ばない場所になる―の3点がある。
「外国人や外資に無条件で土地を開放し、取得後も規制せずに放置している国は世界でもほぼ日本だけだ。過去15年調査した限りでも、短期転売が繰り返されたケースを除いて、日本人が土地を買い戻せた事例を私は知らない。4、5年前からは中国系資本による農地や港湾など、より広い『面』での買収が増え始めている」という。安全保障上重要な施設や国境の離島などを対象とする「土地利用規制法」の強化など、早急な法整備の必要性を訴えた。
メガソーラーが放置される事態も報告されており、有害物質が含まれるとされる太陽光パネルの廃棄も問題だ。
経済安全保障アナリストの平井宏治氏は、各地の現場を視察したうえで、「破産したメガソーラーは、草が伸び、荒れ放題で手つかずの悲惨な状態になっている。棚ざらしにすれば土壌汚染も起きるだろう」と危惧する。
破産した事業者の「パネル放置」問題も
東日本大震災後、再エネ電力の「固定価格買い取り(FIT)制度」が始まり、太陽光発電事業は爆発的に拡大した。平井氏は「確実にもうけられると外国から投資目的の参入が相次いだ」と説明する。
環境省は、30年代後半には耐用年数を過ぎるなどした廃棄パネルが年間最大80万トン出ると試算する。メガソーラーの解体・廃棄費用は1万キロワットのメガソーラーなら約1億3000万円超と見込まれる。
太陽光発電設備の最終的な廃棄処理の責任は排出者が負うとされ、国は、昨年7月から、10キロワット以上のFIT制度認定事業者に費用の積み立てを義務化した。
しかし、資本金100万円前後の合同会社に出資する形で参入する再エネ発電事業者も多い。このため合同会社が破産しても事業者は出資金の損失で済み、原状回復費用を負担しない例もあるという。
平井氏は「破産管財人が内部積立金を原状回復ではなく債権者への弁済に使うことも起きうるため、大量のパネルが放置されたままになることを防げない。なぜ原状復帰費用を最初から一括で自治体に預託させる制度にしなかったのか。当初の議論で『事業者の初期負担を重くしては、再エネ導入の速度が遅くなる』と反対した政治家の意図を疑う」と批判した。
政府は昨年4月、再エネ電力を市場で売却する際に国が補助を上乗せする新制度「FIP」を始め、FITからの段階的移行を進めている。
一方、自民党「再生可能エネルギー普及拡大議員連盟」の事務局長だった衆院議員、秋本真利被告(48)=自民を離党=が洋上風力発電事業をめぐる汚職事件で逮捕、起訴されるなど、再エネ事業に関連した不祥事は後を絶たない。蝕(むしば)まれる国土とともに、国防は内側から崩れ落ちる危機に瀕している。 
●岸田首相「バラマキ経済対策」は的外れ!賃上げ、少子化解消がほど遠い 10/3
岸田文雄首相が、新たな経済対策を策定するよう閣僚に指示した。物価高や少子化への対策、国土強靭化などを含めた“5本柱”を重視するという。だが、中には「支持率向上のためのバラマキ」だとしか思えないものもある。そうした対症療法では“真の課題”は解決できない。
岸田首相の「新経済対策」は対症療法にすぎない
岸田文雄首相は9月26日の閣議で、新たな経済対策を策定するよう閣僚に指示した。
今回の経済対策では「物価高から国民生活を守る対策」「持続的賃上げ、所得向上の実現」「国土強靭化」などの“5本柱”を重視するという。
しかし、これらの方針は「解散・総選挙を意識したバラマキ」だと野党などから批判されている。そして、この批判は一理ある。
物価高に苦しむ人々や、経営が傾く産業を救うのは政治の重要な役割だ。だが、バラマキによって国民を救済しても「カネが尽きたら、またカネがいる」の繰り返しとなる。ただでさえ日本政府は多額の借金を抱えている。この繰り返しが続いても、財政赤字が加速するだけだ(本連載第163回)。
その状況下で、岸田首相が打ち出した新経済対策は的を射ているのか。“5本柱”から4項目をピックアップして、その中身を考察していきたい。
まずは物価高への対応だ。岸田内閣は今後も、ガソリン代・電気代・都市ガス代などの負担軽減を重点的に行うという。補助金支給を年末まで実施することは既に決まっているが、年明け以降まで延長される可能性もありそうだ。
確かにこの施策は、物価高に苦しむ国民を一息つかせるだろう。だが前述の通り、その効果は一時的なものだ。効果が切れたら「また次」の繰り返しになりかねない。
これを防ぐには、物価高の本質的な解決が必要だ。
しかし、9月22日の金融政策決定会合で、日本銀行は金融緩和策の現状維持を決めた。欧米の主要な中央銀行は、次々と金融引き締めに動いている。日銀だけが世界の潮流と真逆に見える。そのため、外国為替市場で円安が一段と進み、さらに物価高となる懸念がある、
日銀が金融緩和をやめるのが難しいのは、金融緩和で延命させてきた製造業などが利上げに耐える体力がないからだろう。そして、利上げに耐え得る新しい産業が育っていないからだ。経済の構造改革の遅れで、日銀は身動きできなくなっているように思える。
そうした本質的な解決が難しいのであれば、新経済対策における物価高への対応は「対症療法」の域を出ないだろう。
日本で「賃上げ」が進まない背景にある雇用システムの問題
次に賃上げを考える。岸田内閣は新経済対策で「賃上げした企業に対する優遇税制の拡充」などを打ち出している。だが、賃上げは安倍晋三政権期以降、何度取り組んでも成功したことがない。
一方、海外企業は賃上げに熱心だという。内閣官房がまとめた「賃金・人的資本に関するデータ集」によれば、1991年から2019年の日本の賃金上昇率は1.05倍である。一方、英国は1.48倍、米国は1.41倍、ドイツ、フランスは1.34倍だ。
日本企業が賃上げできない理由は「生産性の低さ」で説明されることが多い。その一因は「年功序列・終身雇用制」だろう。
海外企業では「ジョブ型」の雇用制度が主流であり、パフォーマンスの低い社員が「社歴が長い(年齢が高い)」というだけで高給を得られるケースはほぼない。
ジョブ型雇用の企業では「ジョブ・ディスクリプション(業務内容を記した書類)」のもと、社員の職務内容が明確化されている。そして年齢を問わず、同レベルの業務を担う社員には同水準の給料が支払われている。たとえ若くても、高いレベルの職務を遂行できるメンバーは高給取りとなるが、その逆もまたしかりである。
中途採用においても、企業は自社が求める職務内容を明確に定義し、その仕事に適した人材を見極めて採用する。「適性がない人材を誤って採用し、すぐに異動させる」という事態が起こりづらい制度設計になっている。もし社内異動を行う場合は社内で公募をかけ、社員が自らの意思で応募可能にするのが一般的だ。
「同一労働・同一賃金」との相性も良く、同じ労働をしていれば、正規と非正規の不合理な待遇差は生じづらい。だからこそ、優秀な人材はよりよい待遇を求めて企業を渡り歩き、労働市場は競争的になる。企業は賃上げをしないと人材を引き留められなくなる。
一方、多少は変わってきたとはいえ、日本では年功序列・終身雇用制がいまだ根強い。労働者は同じ会社で長年働き、勤続年数が長いほど高給を得られる。若手社員はどれだけ成果を上げても給料は低いままだ。欧米に比べると、労働者の転職も少ない。
そして、日本では「メンバーシップ型」の雇用慣行のもと、職務ではなく「会社」にマッチする人材が育てられる。個人の適性や得意不得意を問わず、社員は定期的に部署異動の対象になり、オールラウンドな人材になっていく。そのためITなど一部の業界を除いては、とがったスキルが評価されて「給与大幅アップでの転職」を果たすような人材は育ちにくくなる。
さらに「同一労働・同一賃金」も見掛け倒しになりやすく、依然として正規と非正規の不合理な待遇差が生じている。こうした雇用制度の差が、生産性の差を生み、ひいては賃金上昇率の差につながっているのではないだろうか。
日本では賃上げを、政府の要請によって「人為的に行われるもの」だと捉えている人が多い印象だ。だが本来、賃上げは経済や企業業績が良ければ、半ば自然発生的に起こるものだ。生産性が高く、効率よく利益を生んでいる企業では、人件費に回せるお金も自然と増えるからだ(そのお金を内部にためこみ、労使交渉が行われている企業もあるが)。
その原理が、年功序列・終身雇用制によってゆがめられているのだ。つまり、日本の賃上げ問題の本質的な解決には、日本型雇用システムの抜本的改革が必要なのだ。岸田政権はジョブ型雇用への移行を推奨しているものの、日本の雇用慣行が大幅に変わったとは言い難い。今回の賃上げは、そうした雇用慣行の整備にも踏み込んで行われることを期待する。
「国土強靭化」に踏み切る前に土木建設業の人手不足解消が急務
さて、次に国土強靭化について考えてみたい。この項目は、インフラ整備を含めた「災害対策の強化」などを指していると思われる。国土強靭化を進めるには、土木建設業など民間の協力が不可欠だ。しかし、こうした業界では少子高齢化によって人手不足が慢性化している。
特に建設業は深刻である。国土交通省の「最近の建設業を巡る状況について(令和3年10月15日)」によれば、2020年の建設業の就業者数は492万人で、ピーク時の1997年の685万人と比べて約28%減少。今後も建設業の労働人口は減少し、2025年には約90万人不足すると予測されている。そして現在は、人材確保のために外国人労働者を受け入れざるを得なくなっている。
振り返れば安倍政権時の2019年に、単純労働分野での外国人労働者の受け入れを認める「改正出入国管理法」が成立した。それまでは医師、弁護士、大学教授など「高度専門人材」に外国人の就労資格を限定してきた。それを「非熟練の単純労働」に広げる、日本の入国管理政策の歴史的な大転換であった(第200回)。
だが、この制度を導入しても、建設業をはじめとする国内の人手不足は改善されていないのが現実だ。外国の単純労働者にとって、日本は魅力ある働き場所ではないのだろう。
というのも、実は今、アジアの労働市場では日本の優位性が低下している。中国経済の急激な発展によって、上海など都市部では建設ラッシュで魅力的な仕事が豊富にある。日本の「出稼ぎ先」としての優位性は薄れ、中国人技能実習生の数はピークの半分程度に落ち込んでいる。
アジア諸国と比べた賃金面の優位性も、昨今の円安で失われた。さらに問題なのは、日本の外国人労働者に対するさまざまな人権侵害が、国際的な批判を浴びていることだ(第333回)。
日本には、外国人を危険な場所で作業させたり、差別的な扱いをしたりする企業がいまだ多い。国連人権委員会の作業部会が、日本の人権問題に関するさまざまな勧告を行っているが、その中には「外国人労働者や移住労働者の労働条件」が含まれている。
そのため、人権侵害を受けるリスクを冒してまで日本で働くのではなく、韓国や台湾へ行こうと考える東南アジア系の出稼ぎ労働者が増えている。
要するに、低い賃金、劣悪な労働条件、人権侵害問題などで外国人に選ばれず、土木建設業の現場が疲弊しているのが日本の現実だ。岸田政権は国土強靭化に予算をつぎ込む前に、そうした状況を改善するべきではないだろうか。
「異次元の少子化対策」は「子育て支援策」にすぎない
最後に、“5本柱”に含まれる「人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革」について少し触れておきたい。いわゆる少子化対策だ。
この施策については、これまで打ち出してきた「異次元の少子化対策」を具体的に進める形になりそうだ。
異次元の少子化対策は、(1)児童手当を中心とする経済的支援強化、(2)幼児教育や保育サービスの支援拡充、(3)働き方改革の推進――の3点から構成される。
だが、これらは「既に結婚して子どもがいる人たち」を支援の対象とし、未婚や子どもがいない人たちは対象外である。子どものいる家庭の生活をサポートする「子育て支援策」にすぎず、真の意味での少子化対策になっていない印象だ。
真の少子化対策を進めるには、子どもがいない人たちが「産みたい」と思える社会を作る必要がある。繰り返しになるが、そのために必要なのは雇用慣行の是正だ。
一昔前の日本では、妊娠・出産などによって一度離職した女性が幹部になるのは難しかった。日本における離職は、組織内における同世代の「出世争い」からの離脱を意味し、一度離れると二度と争いに復帰できなかった。
ゆえに、かつての日本では結婚して子どもができると、妻は離職して専業主婦になるか、正規雇用の職を失い、パートなどの非正規雇用になっていくしかなかった。
今は女性の社会進出が進み、表面上は日本企業でも産休・育休制度が普及した。一度現場を離れた女性(育休の場合は男性も)が、正社員として復帰できる体制が整ってきた。
ところが、かつての名残なのか、産休などから復帰した人が周囲になじめなかったり、子どもの送り迎えなどで仕事を中抜けする人が白い目で見られたりといった「あしき風習」は今も企業に色濃く残っている。
バラマキよりも重要なのは雇用慣行の改善だ
今の日本では、夫婦の約7割が共働きだという。その中で人々が仕事をしながら「子どもを産みたい」と思える環境を築くには、こうした風習の是正が不可欠ではないか。
岸田首相が打ち出した新経済対策について考察した結果、くしくも多くの項目で、今後の日本に必要なのは「雇用慣行・労働環境の改善」だという結論に至った。これこそが解決すべき“真の課題”ということなのだろう。
ここからも分かる通り、巨額のバラマキなどは本質的な課題解決にはつながらない。岸田政権は社会・経済を取り巻く深刻な諸問題から目を背けず、長期的な視点を持って、課題解決に地道に取り組んでいくことが重要である。
●秋本被告の汚職事件は氷山の一角、再生エネ事業者に条件がよい制度続々 10/3
洋上風力発電事業をめぐる汚職事件で、東京地裁は先週末(9月28日)、東京地検特捜部に受託収賄と詐欺の罪で起訴された衆院議員、秋本真利被告(48)=自民党を離党=について、保釈請求を却下する決定をした。特捜部は、自民党再生可能エネルギー普及拡大議員連盟(通称・再エネ議連)の事務局長だった秋本被告だけで、洋上風力発電の入札ルール変更ができたのか、強い疑問を持っているとされる。特捜部が認定した賄賂総額は計7200万円。秋本被告は起訴内容を否認しているが、もし国民の電気代に上乗せされる再エネ賦課金が還流して、政治家らの懐を潤していたとすれば許されない。「再エネの闇」について、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志氏が緊急連載する。
秋本議員が9月7日、受託収賄の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。洋上風力発電の入札制度をめぐって、風力発電会社「日本風力開発」の塚脇正幸社長(当時)から収賄し、その見返りに便宜を図ったという容疑である。
「再生可能エネルギーの切り札」として鳴り物入りで推進されてきた洋上風力発電の1回目の入札が2021年12月に行われた。このとき、圧倒的に安い価格を提示した三菱商事が3件すべてを落札した。
この「総取り」の事態を受けて、2回目の入札はすでに公示されていたにも関わらず、1年間延期された。また、入札方式が変更されて、単一の事業者が総取りできないようになったほか、価格以外に「事業開始までの迅速性」などの要件が強化された。
この制度変更は、日本風力開発など、三菱商事以外の事業者が落札できるようにするためだったとみられている。
一度公示された入札が延期されたと言うのも異常であるし、一度定められた入札制度がすぐに変更されるのも異常である。
この入札制度の変更にあたっては、秋本議員が塚脇社長から収賄し、その見返りとして国会で質問をするなどして、日本風力開発に有利な制度になるよう活動したのではないか、というのが容疑の概要である。
もちろん、まだ逮捕・起訴されただけなので、白黒がはっきりするには、これからの捜査や裁判を待たねばならない。
その一方で、秋本議員は自民党再エネ議連の事務局長を務めていたが、この議連には100人を超える議員が名を連ねている。この事件が秋本議員だけに留まるのか、他の国会議員にも波及して一大疑獄になるのか、今は分からない。
いずれにせよ、今回の事件の本質を見誤ってはいけない。これは、単なるモラルの問題にとどまるものではない。
1回目の入札では、入札制度の導入前ではほとんどの関係者が考えていなかったぐらい、三菱商事は圧倒的に安い価格を提示して落札した。それにも関わらず、この制度が変更されたことで、国民はもっと高価な風力発電を押し付けられることになった。
この構造には既視感がある。
11年の再エネ全量買取り制度の発足以来、強い政治的な影響力のもとで、事業者にとって極めて条件のよい制度が導入されるということが、再エネ政策では継続的に起きてきた。そのための負担は、すべて電気料金などのかたちで一般の国民に押し付けられた。
「政治主導」によって強引に推進されてきた再エネには、他にも問題が噴出している。本連載で述べてゆこう。今回の事件を契機として、来年度の第7次エネルギー基本計画においては抜本的見直しをすべきだ。
洋上風力発電汚職事件 「脱原発」を掲げ洋上風力発電を推進してきた衆院議員、秋本真利被告に対し、事業参入を目指す日本風力開発前社長の塚脇正幸被告が多額の資金(特捜部が認定した賄賂総額は計7200万円)を提供したとされる。
東京地検特捜部は8月4日、東京・永田町の議員会館事務所などを家宅捜索。秋本被告は外務政務官を辞任し、翌5日に自民党を離党した。国会で同社を後押しするかのような質問をしており、特捜部は2人が共同で設立した競走馬の組合が賄賂の受け皿になったとみて捜査してきた。
●岸田首相が「投資で儲けろ」とけしかける「資産政策3連発」が招く“円安地獄” 10/3
「海外からの参入を促進するため、資産運用特区を創設し、英語のみで行政対応が完結するよう規制改革し(中略)日本に投資いただくことを強く求めたい」
9月21日、岸田文雄首相が米国ニューヨークで行ったスピーチの一節だ。
海外から日本への投資を拡大しようというのは結構なことだと思う人が多いだろう。しかし、これが日本経済を助けるどころか、持続可能性に疑問符がつく日本経済の破綻に向けた第一歩になってしまうのではないかと私は懸念している。
話は少し前に遡るが、2021年の自民党総裁選を思い出してほしい。
岸田氏は、分配政策の柱の一つとして、金融所得課税強化を打ち出した。その根底にあるのが「新しい資本主義」という考え方だ。「市場や競争に任せれば、全てがうまくいく」という新自由主義的な考えの弊害を指摘し、「格差と貧困の拡大」を問題視する姿勢は、これまでのアベノミクスとは一線を画すものだった。
とりわけ、金融所得課税の強化は、象徴的なテーマだ。
所得税は給与などの所得が多いほど税率が上がる累進制で最高45%が適用される。しかし、株式の売却益などの金融所得は給与と分離して一律15%の税率を適用する分離課税を選択できる。金融所得が多い富裕層は総合課税であれば高い税率が課されるのに、分離課税によって所得全体からみた税負担率が下がってしまう。その結果、所得1億円を境に所得税の税率が実質的に低下していく逆転現象が起きる。これが「1億円の壁」である。富裕層を不当に優遇する不公平税制だから、これを是正するのは当然だ。
では、その後、これがどうなったのか。
総裁選で金融所得課税が話題になっただけで、市場には衝撃が走った。株価が下がり、「岸田ショック」とさえ言われた。株式保有を不当に優遇する制度が是正されれば、株価にマイナスの影響が出る。誰でも予想できる話だ。
しかし、岸田首相にとっては驚きだったのだろう。この方針は大きく後退し、ほとんど意味のない改革で終わってしまった。
25年分の所得から、所得が30億円を超える「超富裕層」に限定して、30億円から3.3億円を引いた上で、たったの22.5%の税率をかけて税額を計算し、これが通常の税額を上回る場合にその差額を徴収することにしたのだ。対象となる人はわずか200〜300人で所得50億円でも負担が2〜3%上がるだけだという。ふざけた話だ。
また、総裁選の時に岸田氏は「所得倍増」も掲げた。しかし、こちらも、早々に、時期は区切らないとして公約を撤回してしまった。
広く知られているとおり、労働者の実質賃金は、安倍晋三政権の時から減少傾向が続き、民主党政権の最後の年の12年に比べて大幅ダウンしたまま。今も16カ月連続マイナスが続いている。今年の春闘で大幅賃上げが達成されたと喧伝されているが、実はこれは大嘘である。連合が発表した賃上げ率は平均で3.58%と表面的には高く見えるが、これには定期昇給分が含まれていて、本当の賃上げであるベースアップは、定期昇給とベースアップを区別できる組合の平均で2.12%に過ぎなかった。物価が3%上がっているのだから、これでは、どう頑張っても実質賃金はプラスになりようがない。
岸田首相は、「構造的賃上げ」という言葉で宣伝しているが、賃金上昇が物価上昇に追いつかない状況が恒常化し、「構造的賃下げ」になっているのだ。こうなると国民の暮らしは苦しくなるばかりで、将来の夢もなくなる。
岸田首相は、賃金で勝負するのはかなり厳しいということは比較的早く肌で感じたのだろう。「所得倍増」を諦めて、「資産所得倍増」を前面に打ち出した。働いても豊かにはならないので、金融商品を買って豊かになろうというキャンペーンである。
確かに、日本では、家計の金融資産2115兆円のうち、現金・預金が1117兆円と過半。欧米に比べてかなり高い。「貯蓄から投資へ」は、これまで何度も唱えられたが、実際にはほとんど進まなかった。だが、今回は少し状況が違う。
NISA(少額投資非課税制度)などの改革が実施され、国民の間に真剣に投資について考えようという雰囲気が醸成されていることに加え、大幅な円安が続き、ドル建て資産などの魅力が増していることから、国民の海外資産への関心が高まっているからだ。特に若者層で海外資産への投資が急激に広がっている。これは、円預金一本というよりは望ましい変化だと言えるかもしれない。
一方、日本の金融機関の金融商品の開発や販売行動は、長らく庶民の利益ではなく、自分たちの利益最優先で行われてきたことも徐々に知れ渡ってきた。そこで、岸田政権は、23年になると、「資産運用立国」を掲げ、その中で、日本の資産運用会社の改革と能力アップを目指す方針を打ち出した。国民に貯蓄より投資をしろと言うのだから、その投資が利益を生むように運用会社の質を高めるというのは、確かに悪い話ではない。その結果、投信の手数料や株式売買手数料の引き下げ競争も起こり望ましい変化も生じている。
資産所得倍増、資産運用立国と続けた政策に手応えを感じたのだろう。岸田首相は、さらに資産政策第3弾を打ち出した。冒頭に紹介した「資産運用特区」である。海外の資産運用業者を日本に誘致して、日本株に投資してもらうために行政手続きの英語化に加え、運用を担うファンドマネジャーのために住宅や子どもの教育環境を整備することまで打ち出した。至れり尽くせりである。
資産所得倍増、資産運用立国、資産運用特区。「資産、資産、資産!」という岸田首相の政策は、前述のとおり、働いて豊かになるというシナリオを諦めるという意味がある。その代わりに投資で豊かにということなのだが、まず、預金すらできない人々が多数いることを忘れているという批判がある。
金融所得で大儲けしている富裕層にしっかり税金を払わせるという元々の約束はどうなったのかという声も出るだろう。
だが、岸田氏の資産政策3連発には、もっと深刻な懸念があることを指摘しなければならない。
それは、1200兆円を超える日本の公的債務に関連する。かなり前から持続不可能だと言われ、リベラル系の経済学者などが、今にも財政破綻が起きると警鐘を鳴らし続けてきた。これ以上借金が増えると海外勢に国債を売り浴びせられて国債が暴落するとか、ハイパーインフレになるというストーリーだ。私はそんなことは簡単には起きないと見ていた。日本の家計の金融資産の多くが銀行預金にとどまっていてそれが国債購入に当てられていたからだ。
しかし、今は違う。国債の残高は引き続き増えているが、それでもそれが消化されているのは、日銀が大量にこれを買い支えているからである。
日銀が際限なく国債を買うので、国債の価格は下がらず、金利の上昇は抑えられる。これにより、財政の金利支払いの負担が極端に低下している。住宅ローン金利も抑制され不動産バブルに拍車がかかる。通常の金利を支払うだけの利益も出せないゾンビ企業もそのまま生き残る。結果として、日本経済は低位安定を続けているのだ。
仮に、日銀が国債を買わなくなれば、その価格が暴落し、金利は急騰する。財政の金利負担が急増し、住宅ローン破産が増え、ゾンビ企業は一気に倒産ラッシュとなる。だから日銀は国債を買い続けて、マイナス金利政策を続けざるを得ない。
日銀が金利を上げられないのに対して、海外の金利は上昇しているから、金利差が原因で円安が進む。原油をはじめ輸入物価が上がっているのに、さらに円安で拍車がかかる。
こういう状況で岸田「資産政策3連発」が効果を発揮するとどうなるのか。
若者層に海外投資の機運が盛り上がっているが、これはすぐにあらゆる年代に広がるだろう。海外の運用会社が日本での活動を強化する時、海外資産への投資の機会は確実に増える。ドル資産に投資して儲かったという話は、巷に溢れていて、どうやって乗り遅れないようにしようかという意識も広がっている。ドル預金で年利5%といっても、為替が10円円高になったら大損なのだが、日銀が大幅な金利引き上げに舵を切ることはできないように見えるし、長期的に見れば、日本経済がジリ貧だということはほとんど自明なことのように思える。少なくとも、全資産を円で持っているより、半分はドルにしておこうと考えても決して無謀な博打ではなく、むしろその方が安全な投資姿勢である。
ということで、岸田資産政策が効果を上げれば、家計の金融資産の大量海外流出が進む可能性が高い。そうなれば、円を売る動きになるのだから、円安に拍車がかかる。物価に上昇圧力がかかり、海外投資する余裕のない庶民は「円安地獄」のどん底に堕ちるわけだ。
そして、銀行預金から大規模な海外投資への転換が起きれば、その時こそ、国債の買い手がなくなり、日銀の直接引き受けが見えてくる。もちろん、日本政府への信頼は地に堕ち、国債暴落・金利急騰で日本経済破綻というシナリオだ。
一方で、海外投資に巨額の資産を振り向けた富裕層は、巨額の利益を手にすることができる。日本がもう住めない国になったと思えば、豊富な外貨を手に海外に移住することもできる。
貯蓄から投資というのは、決して悪い政策ではない。
しかし、その前に、本来なら日本産業の強化を進めなければならなかったはずだ。アベノミクスの成長戦略が失敗して、日本の産業競争力が地に堕ちたことで、国民に残された投資先は海外のみ。そのタイミングで「効果的な」資産政策3連発。
海外からは笑い話のように見えるかもしれないが、日本という国から逃げられない我々庶民から見れば、こんなに恐ろしい話はない。
●衆参補選、岸田首相「必勝期す」 10/3
岸田文雄首相(自民党総裁)は3日の党役員会で、22日投開票の衆院長崎4区と参院徳島・高知選挙区の補欠選挙に関し「物価高に直面する国民の生活を守り抜き、変化を力にする日本に向け、党を挙げて必勝を期したい」と述べ、総力戦で臨むよう呼び掛けた。
●「岸田政権は忍耐強く丁寧が持ち味」公明・山口代表が政権発足2年で評価 10/3
公明党の山口代表は、政権発足から4日で2年となる岸田内閣について「忍耐強く、丁寧に進めて行くことが岸田内閣の持ち味だ」と評価し「政府与党として結束して国民の期待に応えたい」と語った。
山口代表は3日、官邸での政府与党連絡会議後、記者団から岸田政権発足から2年が経つことについて問われ、「岸田首相は衆院選で自身の内閣の体制を作って、参院選にも臨み大きな選挙が続いた」と2年間を振り返った。
その上で今の課題である経済対策に触れ、「今は賃上げ、物価高の流れの中でいい経済のトレンド、ベクトルを今後に持続させていく意気込みで臨もうとしている」として「忍耐強く、丁寧に進めて行くことが岸田内閣の持ち味だ」と岸田内閣を評価した。
また「与党としてしっかり支え、政府与党で結束して国民の期待に応えていきたい」と意気込みを語った。
●岸田政権と沖縄 言ったことを実行せよ 10/3
岸田政権はあす4日で、発足から2年を迎える。
2021年10月8日、初の所信表明演説で岸田文雄首相は、沖縄についてこう述べた。
「日米同盟の抑止力を維持しつつ、丁寧な説明、対話による信頼を地元の皆さんと築きながら、沖縄の基地負担の軽減に取り組みます」
「丁寧な説明」と「対話による信頼構築」。確かに首相は、そう語った。
だが、安保政策の大転換の結果、当初の対話の姿勢は消え去り、それとは真逆の、負担増をもたらす基地施策が矢継ぎ早に打ち出されてきた。
復帰50年に当たる22年、岸田首相は、重要な場で、3回にわたって「過重な基地負担の軽減」を強調した。
復帰50年決議を採択した4月28日の衆院本会議で、5月15日の復帰50周年記念式典で、そして6月23日の沖縄全戦没者追悼式で。
その実行を首相に求めたい。公式の場で繰り返し強調された発言は県民への誓約である。
司法判断が示された以上、後は突っ走るだけだと防衛省が考えているとすれば、それは驕慢(きょうまん)以外のなにものでもない。
新基地建設の地盤改良工事が始まってから基地として提供されるまで約12年。
米軍普天間飛行場の「一日も早い危険性除去」と言いながら、その間どうするのか具体策は示されていない。「辺野古が唯一」と言いながら、普天間返還の時期も明らかにされず不透明なままだ。
支離滅裂ではないか。

宜野湾市議会は9月、普天間飛行場の外来機の飛来禁止や夜間の飛行禁止、一日も早い閉鎖・返還の実現、市民が実感できる形での負担軽減の実施などを求める抗議決議を全会一致で可決した。
岸田首相は、3回にわたる県民へのメッセージを受け、この市議会の抗議決議に丁寧に答えるべきである。
一体、どうしたいのか。どうするつもりなのか。
玉城デニー知事は、「対話による解決」を重視し、首相との話し合いを求めてきた。だが、バスケットボール男子ワールドカップ(W杯)を観戦した時も、知事とは会わなかった。
木原稔防衛相も9月24日、就任後初めて沖縄を訪問した時、宮古島市や石垣市で自衛隊駐屯地を視察し、両市長と面談したものの、玉城知事には会わなかった。
沖縄振興予算は翁長雄志元知事以来、見せしめのような減額傾向が続いている。

総額の減少だけではない。23年度、使い道の自由度の高い「沖縄振興一括交付金」は減額された。
逆に、県の頭越しに市町村に直接交付することのできる「沖縄振興特定事業推進費」は増額された。
憲法や地方自治法は当然のことながら全国あまねく適用されているが、米軍基地が集中する沖縄では他府県並みに「自治」「自己決定」が保障されているとは言い難い。
岸田首相には、この状況に正面から向き合い、具体的な負担軽減策や、その道筋を示す責任がある。 

 

●岸田政権がいまするべきことは「最低賃金の引き上げ」ではない 10/2
ジャーナリストの須田慎一郎が10月2日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。最低賃金の引き上げについて解説した。
最低賃金、10月1日から順次引き上げ
最低賃金が10月1日から都道府県ごとに順次引き上げられる。2023年度の全国平均の引き上げ幅は過去最大の43円。時給の平均は初めて1000円を超え、1004円となる。
新行)最低賃金について、働く人たちからは「物価上昇が続くなかで引き上げ額が十分ではない」という声が上がる一方、企業からは「中小企業の支払い能力では厳しい対応だ」という懸念の声もあるようです。
最低賃金の引き上げは中小事業者の首を絞めることになり、場合によっては事業継続が困難になる可能性も
須田)最低賃金を政治的思惑で引き上げることになったのですが、「いまはそのような環境にあるのか?」とも思います。引き上げることに対して反対はありませんし、もう少し引き上げ幅が大きくてもいいのですが、これを実現してしまうと、特に最低賃金の引き上げに大きな影響を受ける中小零細企業、あるいは小規模事業者の経営が大丈夫なのかと、心配で仕方がありません。
新行)最低賃金の引き上げをしてしまって。
須田)利益がきちんと上がらないなかで人件費が高騰してしまうと、事業継続が難しくなり、場合によっては廃業や経営破綻、倒産という状況にもなりかねません。そうでなくても雇用を抑制する方向になりかねないので、働く側にとってはプラスですが、雇用する側、特に中小事業者の首を絞めることになる可能性があります。
最低賃金を上げる前に、景気をよくして中小企業が利益を上げられる環境を整えるべき
須田)私が指摘したいのは、「岸田政権はその前にやるべきことがある」ということです。つまり景気をよくして、きちんと中小零細企業が利益を上げられる環境を整えることです。景気回復はまだ道半ばです。
新行)まだ道半ば。
須田)有権者は支持してくれるかも知れませんが、中小企業にとっては死活問題になってきます。「まずは景気をよくしてください」と思います。
新行)順番が違うということですよね。
須田)インボイス制度も同じです。中小事業者がきちんと利益を上げられるようになり、適正価格で買い取ってもらえる状況になれば導入するべきですが、そのような環境ではないのですから、「いまやるべきことなのか?」と思います。
発注数量を増やすことによって、利益の絶対額を増やしてきた下請け会社 〜経営を維持することは可能でも賃金を上げるインセンティブは働かない
新行)企業としては、賃金の上昇と雇用はバランスですよね。
須田)一方で、日本を代表する産業に自動車産業がありますが、最終製品をつくっているトップの自動車メーカーの下には、1次下請けから5次下請けまであります。6階建てのピラミッド構造になっている。
新行)6階建ての。
須田)ところが、そのメーカーが下請けメーカーに発注する部品単価、あるいは部品の手間賃・工賃は、この20年間ずっと下がり続けているのです。
適正価格で売って適正な利益を上げる構図をつくることが必要
須田)なぜそれで経営が持つのかと言うと、売り上げも微々たる利益なのだけれど、発注数量を増やすことで利益の絶対額を増やしてきたからです。しかし、これだと経営維持は可能かも知れませんが、「賃金を上げていく」というインセンティブは働きません。
新行)経営は可能でも。
須田)「なぜこの20年間、単価が下がり続けなければいけなかったのか?」ということです。確かに経営効率を上げるのはいいかも知れませんが、それによって結果的に中小零細企業の業績が厳しくなり、首を絞めていることにならないか。そもそも適正価格で売って、適正な利益を上げる構図をつくる必要があります。なおかつ景気をよくする。そこに手を付けず、「最低賃金を上げれば有権者は喜んでくれるだろう」と考えるのはいかがなものでしょうか。
経済対策としてお金が出ていくような仕組みをつくるべき
新行)「年収の壁」を解消する対応策も、10月から始まります。
須田)これについても社会保険料は折半なので、言ってみれば企業の負担を強くすることになります。「このまま放置してもいい」ということではなく、それによって困っている人たちに対し、国がきちんとバックアップ体制を敷いていく。補助金という形になるのかも知れませんが、それを敷く一方で、企業が負担に耐えられるような経済環境をつくるべきなのです。
新行)そもそもの土台の部分ですね。
須田)いま岸田政権は経済対策に関して、何とか景気のテコ入れをしようと動いています。そのようななかで、一時的なものになるかも知れませんが、テコ入れ策としてお金が出ていくような仕組みをつくるべきです。企業に負担を与えるだけで、その辺りが一向に見えないのが少し不可解なところです。
お金を使う気がない「経済対策の5本柱」
新行)「経済対策の5本柱」については、どう評価されていますか?
須田)「お金を使う気がないのだろうな」と思います。ようやくコロナが明けて経済が回復し始め、企業や個人が暗中模索のなかで動いています。安定軌道に乗せていくためには、政府がしっかりとお金を使わなければいけないのですが、その意欲や、景気をよくしようという気持ちが見受けられません。目新しいメニューが5項目も並んでいるのですが、どれも「中途半端なレベルにも達していない」というものばかりです。
新行)還元するという言葉もありましたが。
須田)例えば減税と言っても、「どこに対する減税なのか?」という問題もあります。もっと踏み込んで「消費税の減税なども考えているのか?」と思うのですが、一切考えていません。「減税」という言葉で「有権者が喜ぶのではないか」という下心が見え隠れしているのです。
●「インボイス制度」強行の岸田首相 あだ名が「増税クソレーシック」に進化中 10/2
10月1日から課税売上高が1000万円以下の「免税事業者」も消費税の申告・納税が課せられる『インボイス制度』が開始した。免税事業者だったフリーランスや個人事業主などは実質増税となる。
「対象となるのは1000万円の“利益”ではなく、“売り上げ”です。仕入れ費用や経費など差し引けば、そういう事業者やフリーの人たちは、経済的に余裕があるとはいえない。この物価高、円安、エネルギー高など非常に厳しいご時世で、平然と強行するのは“冷酷”としか言いようがない。
反対する市民団体は29日に岸田首相の秘書官に54万人分の署名が入ったUSBメモリーを手渡しました。それを受け、岸田首相は事業者の不安解消を閣僚らに指示しましたが、指示するのは“不安解消”ではなく“廃止や延期”ではないでしょうか」(テレビ局報道記者)
実業家の“青汁王子”こと三崎優太氏は9月30日に自身のXで、反対の署名が集まっていることを取り上げ《国民がいくら声をあげても、そんなものは一切無視。強行されるのが現実です。もはや民主主義のありかたを疑うレベル。政治とは国民を豊かにするためのもの、しかし今の政治では貧しくなっていくだけのように感じる》とコメント。ネット上などでも、制度導入に批判が渦巻いている。
度重なる増税や負担増報道により、岸田首相はネット上で“増税メガネ”という不名誉なあだ名がついているが、インボイス制度開始の前日である9月30日には“増税クソメガネ”がXでトレンド入り。不名誉さに拍車がかかった。
9月29日に『Smart Flash』が官邸関係者の話として、岸田首相が“増税メガネ”というあだ名にご立腹で、《レーシックでもすればいいのか?》と話しているということを報じた。
これに対してネット上では《そっちじゃねーよ! 増税の方何とかしろ!》というツッコミが多数見受けられた。そしてついには“増税クソレーシック”という新たなあだ名までXでトレンド入りした。
9月30日放送の『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)では、経済学者の森永卓郎氏が“岸田首相は財務省に洗脳されているのでは”と指摘した。
「財務官僚は政治家の元にやってきては“増税”の必要性を説き、財政が破綻するというような嘘を信じ込ませるのは有名な話です。普段から政府の借金である赤字国債の話ばかりしますが、政府が借金をして民間企業に公共工事を発注すれば、民間が潤うことにつながるのです。
一方、国債発行が膨らんでも日銀は世間に出回っている全国債の53%以上を保有している。政府が日銀に払う国債の金利はすべて国庫に入るため、借金のようだが政府は自分に払っているのと同じです」(経済ジャーナリスト)
さらに日本が海外などに保有する対外純資産は418兆6千億円以上あり32年連続で世界一という事実も忘れてはならないだろう。
「借金ばかり強調し、資産がたくさんあることは国民に大々的に言わない。バブル期以上に税収も最高になっているにもかかわらず、それでも弱者からまだ搾り取ろうとしているのです。日本人は怒らなさすぎるため政府はどんどん無茶な法律を作っています」(同・経済ジャーナリスト)
一国の首相が、“増税クソメガネ”などと罵倒されることはなかなかないだろう。なぜそれほどの汚名を授かったのかを岸田首相に考えていただきたいものだ。 
●強まる「解散風」臨時国会20日招集へ なぜ「減税」が大義に 岸田政権 10/2
臨時国会の召集(20日)を前に、衆院解散・総選挙をめぐる思惑が交錯している。今月策定する新たな経済対策をめぐり、「増税・負担増路線」が目立った岸田文雄首相が「減税方針」を打ち出したのだ。「偽減税」との批判もあるなか、2023年度補正予算を成立させるには解散時期の選択が厳しいが、自民党幹部は「減税は解散の大義になり得る」との見方を示した。国民の負担を強いる増税で信を問うのは分かるが、どうして減税が大義となるのか。永田町で一体、何が起こっているのか。
「先送りできない課題に一意専心に取り組む。それ以外のことは今は考えていない」
岸田首相は9月29日、官邸で解散・総選挙の意向を問われ、こう語った。解散・総選挙の観測を打ち消したとの報道もあった。
内閣改造・党役員人事が不発だったせいか、岸田政権は最近、さまざまな政策を打ち出し、政権浮揚を図っている。先週末には、旧統一教会の解散命令を裁判所に請求する方針も浮上するなど、「政権の評価を高める話題作りに専念している」(野党ベテラン議員)との見方もある。
中でも、特に注目を浴びたのが、岸田首相が先月25日、新たに示した経済対策で、「税収増を国民に還元する」と明言し、「減税方針」を打ち出したことだ。
自民党の森山裕総務会長は1日、これに呼応するように、「税に関することは国民の審判を仰がなければならない」と述べ、減税措置が衆院解散の大義になり得るとの考えを示した。
ただ、岸田首相の解散姿勢は明確ではない。今年6月にも、解散風を強めながら、最後は自ら否定した経緯もあるだけに、永田町では解散に懐疑的な見方も広がっている。
臨時国会をめぐっては、岸田首相は新たな経済対策を裏付ける今年度補正予算案を提出する方針を示している。成立までは解散がしにくく、「解散の意欲は薄まった」(自民党中堅)との観測もある。
現状では、補正予算成立は11月下旬から12月上旬の見込みで、年内の解散シナリオはより困難となったかたちだ。
今月から、事業者間取引で消費税額を正確に計算するインボイス(適格請求書)制度も導入されたが、中小企業などから厳しい批判の声が上がっている。
混迷する政局をどう見るのか。
政治評論家の有馬晴海氏は「岸田首相は解散に意欲がある。総選挙に勝てば、来年秋の総裁選を無事通過する確度が高まる。現状でライバルはおらず、世論や政局を見極めているのだろう。ただ、解散・総選挙は国民の意に反する負担増などに『信を問う』もので、減税に大義があるとするのは筋が違う。それならば、増税・負担増路線を示した時点で、信を問うべきではなかったか。岸田政権の政策は単なるキーワードの羅列で肝心な財源や具体的方向性は先送りで、支持率狙いの様子見が鮮明だ」と語っている。
●岸田政権が企業にちらつかせる「アメとムチ」 10/2
岸田文雄首相は、9月26日の閣議で、物価高を受けた新たな経済対策を10月末をメドにとりまとめるよう指示した。新たな経済対策の裏付けとなる補正予算の編成が必要となる。
補正予算にはどのようなものが盛り込まれるか。
9月27日に開催された新しい資本主義実現会議で岸田首相は、賃上げ税制の減税措置の強化や、蓄電池、電気自動車、半導体など戦略分野の国内投資に対して新たな減税制度を創設することについて、具体的に言及した。
給付は物価上昇を助長しかねない
他方、一部報道で、物価高に伴う家計の負担増を緩和するために、低所得者向けの給付措置を新たな経済対策に盛り込む検討に入ったと報じられたが、松野博一官房長官は28日の記者会見で、そうしたことを検討した事実はないと否定した。
物価上昇の折、低所得者向けであろうがなかろうが、給付を増やせば消費を刺激することになって、物価上昇をあおることになる。それでは、かえって低所得者対策にならない。物価上昇を上回る賃上げが実現してはじめて低所得者の実質所得が増えて、生活水準が高まることになる。
わが国経済において、久しぶりの物価上昇局面であるから、どのように対処すればよいかについて、コンセンサスが形成しきれていない。
物価上昇期において、減税一辺倒や給付増一辺倒の財政政策では、需要を刺激するから、物価上昇を助長してしまい、逆効果になる。
物価上昇期に必要な政策は、物価上昇を緩やかにすることである。そのためには、引き締め的な財政政策を適切に講じることである。他方で、所得格差是正は、物価上昇期においても必要である。
そう考えれば、低所得者に給付を増やすなら、それと合わせて高所得者に増税することとセットで行い、全体としては増税の規模が上回る(ネット増税)措置を講じることで、所得格差を是正するとともに、物価上昇を緩やかにできる。
特に、金融政策で依然として緩和的な政策スタンスを取り続けているならば、そこに財政政策まで緩和的な政策スタンスをとると、物価上昇をますます助長する。ここが、物価下落局面とは正反対なのである。
とはいえ、本稿執筆時点では、低所得者向けの給付措置は検討した事実はないとのことなので、それが今次補正予算に盛り込まれることはないとみられる。
防衛強化&子ども予算の財源はどこから
では、岸田首相自らが発言で触れた賃上げ税制の減税措置の強化や、戦略分野の国内投資に対する新たな減税制度の創設は、今次補正予算に盛り込まれるだろうか。
税制において、年度途中で追加的な減税を行うことは、原則として困難である。税制は、租税法律主義に基づき、事前に議会で法律が議決されて執行される。すでに始まっている年度の初めまでさかのぼって、後から決まった税制措置を適用することはまずない。
特に、増税の場合は、前もって予定されていない負担増を、過去にさかのぼって後出しじゃんけん的に行うのでは、租税法律主義の趣旨に反する。
では、なぜ岸田首相は減税措置に触れたのだろうか。そこには、防衛財源や子ども予算の財源の確保の影がちらつく。
防衛力強化に係る財源確保のための税制措置では、2022年12月に閣議決定された2023年度税制改正大綱で、「法人税額に対し、税率4〜4.5%の新たな付加税を課す」と明記された。
ただし、中小法人に配慮する観点から、課税標準となる法人税額から500万円を控除することとしている。なので、法人税を500万円超払う企業、つまり法人所得が約2155万円以上の企業に対して増税をすることを予定している。全法人(約300万社)のうち6%弱が、その対象となるとみられる。
加えて、子ども予算の財源確保もある。
子ども財源で第二、第三の法人税
2023年6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」では、徹底した歳出改革による財源確保と、構造的賃上げと官民連携による投資活性化に先行して取り組んで経済社会の基盤強化を行う中で、「企業を含め社会・経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で、広く負担していく新たな枠組み(「支援金制度(仮称)」)を構築することとし、その詳細について年末に結論を出す」と明記された。
「支援金制度(仮称)」とは何か。その説明の冠に、わざわざ「企業を含め」と記されている。
企業に拠出を求めて子ども予算の財源を確保する仕組みとしては、「子ども・子育て拠出金」がすでにある。児童手当の支給や子育て支援のための費用の一部に充てるために事業主から徴収している。従業員の負担はなく、全額が事業主負担である。いわば「第二法人税」ともいえよう。
「支援金制度(仮称)」は、詳細について2023年末までに結論を出すべく、今後議論されるのだが、この子ども・子育て拠出金を想起させる。
こうして見渡すと、防衛財源や子ども財源を確保するために、企業に負担増を今後求めることが予見される。そうなると、経済界からは、「企業に対して今後ただひたすら負担増を求めるだけなのか」との不満や批判が出てこよう。
拙稿「日本をよそに仁義なき保護主義に立ち返る欧米」で触れたように、最近になって政策優遇を受ける欧米企業と対峙する日本企業に、防衛財源や子ども財源の確保のための負担増ばかりを強いることになれば、日本で生産や研究開発をしづらくなりかねない。加えて、コロナ後を見据えて、新たな産業構造に転換していくことも迫られている。
負担増を打ち消す「優遇」で賃上げや投資を促す
そう考えれば、わが国において活発に活動する企業に対しては、政策的な恩恵が得られるようにする必要が出てこよう。
企業の利益は増えているのに賃上げも新たな投資も不熱心な企業には、その利益に課税するなどして今後負担増を求めるが、賃上げや新たな投資に積極的な企業は、負担増を打ち消すような政策優遇が受けられるようにする。こうした政策スタンスが、前掲の岸田首相の発言の背景に見え隠れしている。
もちろん、物価上昇局面で、企業への政策支援を補助金増や減税だけを行えば、物価上昇要因になる。だから、すべての企業ではなく活発に活動する企業にのみ、物価上昇を上回る賃上げにつながる付加価値の増加、それに労働分配を促せるような政策誘導を行うなら、物価上昇の悪影響を和らげられる。
企業への減税だけを行えば、物価上昇を助長するが、防衛財源や子ども財源の確保において今後負担増を求めることとしており、それだけ物価上昇を緩やかにできる。
防衛財源では国債増発を予定していないが、子ども財源ではつなぎ国債の発行を認める方針である。しかし、国債増発を伴う歳出増は、物価上昇を助長する。物価上昇の悪影響を拡大しては子育て世帯のためにならない。
今次補正予算こそ、規模ありきではなく、物価上昇を助長しない適切な政策が実施できるものとすべきである。そのためには、補正予算で国債増発をいかに抑えられるかが焦点となる。
●なぜGAFAは日本の官僚を引き抜いているのか…巨大IT企業の活動 10/2
元ホワイトハウス報道官がアマゾンでやったこと
ロビーにまつわる話は興味深いものが多い。ここではアマゾン、グーグル、アップルのロビーに関する話を紹介していきたい。
アマゾンはロビー活動の王者だ。2022年のロビー費は2138万ドルで民間企業トップ。読売新聞の調査では、2021年は2059万ドル、2019年は1679万ドルで、いずれも民間企業で最大だった。
アマゾンのロビー活動はビジネス同様、威圧的で、首都ワシントンで反感を買っているという。それを2022年まで率いていたのが上級副社長のジェイ・カーニーだ。カーニーはオバマ政権でホワイトハウスの報道官を務め、副大統領だったバイデンの広報担当ディレクターを務めたこともある。2015年、アマゾンの広報・政府渉外の統括者に転じ、社内に「ロビー活動の巨大組織を構築した」という。彼の加入後、アマゾンはロビー活動を拡大した。
ロイター通信は2021年、アマゾンが音声サービス「アレクサ」などの情報収集に影響が出ないよう、各州のプライバシー規制を骨抜きにするようなロビー活動を展開したと報じた。ロイターによると、カーニーは、「アレクサの成長を阻害する米国やEUの規制・法律を変更、または阻止する」ことを目標に、大規模なロビー活動を展開した。多くの消費者の音声データを蓄積し、技術開発で優位に立つためだったという。
「花への水やり」プログラムとは
アマゾンに好意的な政治家を増やす活動は「花への水やり」プログラムと呼ばれ、カーニーはこの活動を拡大し、政治家との交流を大幅に増やしていった。プログラムの目的は「手入れの行き届いた庭」を作ることにあり、カーニーらは政治献金や会合、アマゾンの施設ツアーなどを通じて多くの政治家を取り込んでいったという。
カーニーは2022年、アマゾンを退職し、エアビーアンドビーの政策責任者に転じた。強引な手法が敬遠されたとの見方もある。
「アマゾンはワシントンで攻撃的な姿勢をとっていると批判されているが、多くのアマゾン幹部はカーニー氏のスタイルが原因だと考えている」
「ホワイトハウスで彼の力は麻痺していた。彼の元上司バイデンは、しばしばアマゾンを公然と批判し、ホワイトハウスのイベントでもアマゾンは敬遠されがちだった」
ウォール・ストリート・ジャーナルはカーニーのアマゾン退職をそう報じている。
ロビイストだった男のありえない転身
米国ではロビー活動はごく一般的だ。政府高官が実は過去に企業のロビイストだったということもある。しかし、巨大ITの「敵」である司法省反トラスト部門トップが過去にグーグルのロビイストだった、と知った時には驚くしかなかった。
トランプ政権下の2019年、司法省は巨大ITの調査に乗り出すと発表。調査の指揮を執るのは反トラスト部門トップ、マカン・デラヒムだった。
「競争の規律が働かなければ、(巨大ITが)消費者の要求に応えなくなる」
デラヒムはそんな声明を出し、調査の重要性を強調した。
デラヒムはその後も好調だった。米議会公聴会ではグーグルとフェイスブックの名を挙げ、両社のネット広告事業を調査していると明かした。当局が調査対象の企業名を公にするのは珍しいことだった。
ところが、驚くことにそのデラヒム本人がグーグルのネット広告事業と密接に関わっていた。デラヒムは2007年、グーグルのロビイストとして、グーグルによるネット広告大手「ダブルクリック」買収の承認を支援していたという。
政権と民間で人材が行き来する
「(グーグルは)ワシントンでの活動を強化するため、外部の三つのロビー会社とも契約した」
「(共和党寄りの一つのロビー会社は)ブッシュ政権で司法省副次官補として独禁法チームの責任者を務めたマカン・デルラヒムを迎えたばかりだった」
グーグルが巨大化する過程を追った『グーグル秘録』にデラヒムの名前が出てくる。
画像や動画の広告に強みを持つダブルクリックの買収は、ネット広告市場でのグーグルの支配力を決定づけたと言われていた。
「彼ほど分かりやすい形で(元ロビー担当企業に)偏った政策を打つ人はいないですよ。司法省の反トラストの長になった人間がそれでいいんですかね」
ある米国の弁護士からは、そんな話も聞いた。かつてグーグルのロビイストだった人物がグーグルの調査を指揮する。そんなことが許されるのだろうか――そう思うのは私だけではなかったろう。
2020年初め、デラヒムは静かにグーグルの調査から身を引いた。司法省は「以前の仕事との利害関係を改めて検討したところ、巨大ITの調査に関わる案件から身を引くべきだと判断した」とする短いコメントを出しただけだった。
政権と民間の間でめまぐるしく人が出入りする「回転ドア」。急成長の過程で、将来の独禁当局トップをロビイストとして取り込んでいた事実は、グーグルの強力な政治力を感じさせた。
えげつない人材の引き抜き
アップルが2022年に米国でロビーに充てた金額は936万ドルと、GAFAの中では最も少ない。だが、私の印象では、アップルが最も効果的にロビー活動をしているようにみえる。それはCEO、ティム・クックの強力な「トップロビー」も関係しているだろう。
裏ではえげつないこともやっている。2021年、ワシントンのある議会スタッフの転職が注目を集めた。巨大ITの規制を検討する民主党上院議員、エイミー・クロブシャーの立法スタッフが退職し、アップルの対政府担当になったのだ。
クロブシャーはアップルのアップストアに対する規制を強く唱え、規制法案を提出していた。その手の内を知るスタッフが「反対側」のアップルに取り込まれる形になり、関係者に衝撃が走った。
アメリカだけではなく日本でも
他社より静かにロビー活動を展開してきたように見えるアップルだが、アップストアの規制法案に対しては、かなり積極的に対抗している。
「アップルのロビーマシンは、いかにしてジョージア州を攻略し、勝利したのか?」
米政治専門紙ポリティコは2021年、米ジョージア州など州議会でのアプリストア規制法案をめぐるアップルの激しいロビー活動を白日の下にさらした。同紙によると、ジョージア州の議員がアプリストア規制法案を提出すると、アップルは直ちに5人のロビイストを雇い、法案の反対運動を展開。ロビイストたちは法案をアップル寄りに修正するように働きかけ、勢いを削いだという。別の州の議員は「アップルは法案を潰すために脅迫し、多額の資金を使うことができた」と話したという。
州議会でアプリストアの規制法案が提出されるや否や、アップルが投資の約束や資金の引き揚げで議員に強い圧力をかけ、法案が失速する――複数の州で似たような事例が起きているという。
アップルはアップストアを規制する動きが強まる欧州でも2022年、グーグルを上回るトップクラスのロビー費を投じた。
そして、欧州と同様の規制を検討する日本でも、規制阻止に向けて政界関係者への働きかけを強めている。
官僚たちの意外な転職先
アップル日本法人の「政務部長」は総務省出身だ。
ある政界関係者は日本でのGAFAロビーの実態を明かす。
「GAFAは役所の優秀な若手を引き抜いてロビイストにしている。法務省、公取、経産省出身者もいる。この前まで逆側にいたじゃないか、と言いたくなるが、役所出身だけあって、誰がキーマンで、誰が敵で味方か、完全に把握している」
「有力な政治家や将来有望な政治家には、実に丁寧にコミュニケーションをとり、政策を見て、デジタル分野の政策実現にお役に立てることがあれば、と近づいてくる。アメリカで議員と議論したい、と言えば、お任せください、と外務省よりきちんとした議員を提案してくる。かゆいところに手が届く、という感じだ」
GAFAと友好関係を築いて政策を進める議員もおり、中には、すでにGAFA側に取り込まれている大臣経験者もいるという。
デジタル関連の政策を進めるうえで、日本でも利用者が多く、資金が豊富なGAFAの協力は議員らの大きな助けになるに違いない。議員からすれば、GAFAと仲良くするメリットのほうがデメリットより圧倒的に大きいだろう。日本でも広がるロビーの網。GAFAロビーは決して遠い国の話ではない。
●外国人投資家は意外にも岸田政権の政策を支持している 10/2
「会社四季報オンライン」では原則毎週月曜日、独立系の実力アナリストである平野憲一氏と馬渕治好氏によるコラムを交互に掲載。今回は平野氏の予測を掲載する。
アメリカの連邦議会は9月30日、10月1日から11月17日までの45日間の予算執行を可能にする「つなぎ予算」案を土壇場で可決。政府機関の閉鎖を回避した。
法案は下院が賛成335票、反対91票、上院が賛成88票、反対9票だった。ただし、連邦政府の閉鎖回避を優先させるために、ウクライナへの追加援助はこのつなぎ予算案に盛り込まれていない。この件については、今後の問題点となる。
想定どおり、9月末は理想的な買い場に
さて筆者は10月以降の上昇を期待して、9月までの調整局面を「押し目買い一貫」で通し、最近では「10月よりも前に買い終われ」と主張してきた。実際に9月の後半2週間の日経平均株価は1675円の下げとなり、方針のとおり理想的な買い場となった。
ただ、この間は、原油先物価格の急騰、全米自動車労組のストライキ拡大、そして政府機関の閉鎖危機など、濃厚な相場展開だったこともあり、強気の投資家でも気迷い気味だったはずだ。今後のこともあるので、一連の事態について、あらためて基本を確認しておきたい。
まず、順序が逆転するが、アメリカ政府機関の閉鎖危機の話から始めよう。これは今まで何度も経験したことだ。しかも、ウクライナ戦争の最中にアメリカが長期間の機能不全になることは許されない。もちろん、ストライキなどは今でこそ珍しいが、昔はよくあり、相場材料としてはごく一般的なものだった。
突然で恐縮だが、筆者にはマーケット分析の師匠が2人いる。1人は筆者が1970年4月から2014年6月まで44年間在籍した立花証券の創業者、石井独眼流こと石井久氏(1923〜2016年)。もう1人は、その石井久氏を紹介してくれた小説家の清水一行氏(1931〜2010年)だ。
石井久氏は“相場の神様”として証券界に名をはせている方であり、言わずもがなだが、株の真理をイチから教わり、今でも多くの知恵を拝借している。
また、清水一行氏は、大学1年のときに『小説 兜町(しま)』を読んで感激し、自宅(当時は作者名に住所もついていた)に押しかけてから、亡くなるまでお世話になった。営業成績に困ったときに注文をいただいたり、うるさい筋とトラブったときには話をつけてくれたり、娘の名づけ親になってくれたり、銀座の飲み方を教わったり……。なぜ、こんな若造に目をかけてくれたのか、本当に感謝に堪えない。
「ストを買うなら突入時だ」
その清水一行氏は生前「問題は発生したときが買い場だ。そこで勇気を出して買える力があるかどうかが相場で財を成す分かれ道」と言っていた。そして、当時よく起きていた企業のストライキを例に出し、「ストを買うなら突入時」と教えてくれた。
もちろん、これは突発的ネガティブ材料に対しての考え方である。ポジティブな材料、またはある程度のリスクとして事前に取り沙汰されていた場合などは「噂で買(売)って実現で売る(買う)」という格言もあり、1つ1つの判断は簡単ではない。だから相場は面白いのだ。
実際、今回のアメリカのケースでは、政府機関閉鎖の可能性は五分五分だったかもしれず、もちろんネガティブ材料だった。もし「閉鎖!」となって売られたら、そこは買い場と考えるのが「ストを買うなら突入時」の考え方だ。ひとまず45日間の余裕ができたわけだが、45日後にそのときがまたやってくる。今後の相場展開の中で、しっかり考え方を固めておくところでもある。
しかも、アメリカに比べて日本のファンダメンタルズ(基礎的条件)は良好だ。周りを見渡しても中国は「景気低迷」、欧州は「スタグフレーション(景気停滞と物価上昇が同時に起きること)」であることを考えると、日本は世界の投資資金を集める魅力を十分持っている。
しかし、残念ながら日本人の習性として、変化は外圧によって起きる例が多い。とくに国民は、日本の政治家に対する尊敬の念が薄い。今のところ、政権が唱える5つの政策(物価対策、賃上げ実現、国内投資の促進、人口対策、防災対策)に対する評価も極めて低いままだ。
「国策に売りなし」は依然有効
そこで、筆者が紹介したいのが、「政策に資金を乗せろ」(国策に売りなし)だ。実は、アメリカに本拠を置く大手運用会社ブラックロックなど、世界の名だたるファンドは国内勢よりもはるかに高い評価をこの政策に与えている。
世界は物価上昇を抑えるために、ハードランディングの危険を冒してまで利上げ・引き締め政策をとっている。だが、日本は前向きに政策を実行する環境にある。もちろん、今後どれだけの成果が出るかはわからない。だが、まずこの政策に資金を乗せるのが先人から学んだ知恵だ。
さて、主な今週の予定を見てみよう。前出のように10月の立ち合いは2日から始まる。ここで出てくる相場格言は「2日新甫は荒れる」だ。商品相場発祥とされる格言で、月の取引の最初の日が1日ではない月は荒れるというものだが、アメリカの議会は「閉鎖回避」となったことで、むしろ買いが入るかどうか注目される。
一方、2日は寄り付き前に日銀短観(9月調査)も発表となる。大企業DIの製造業がプラス6、非製造業はプラス24と予想されている。
また、アメリカの指標は注意したい。2日の9月ISM製造業景況感指数は8月の47.6を上回るかどうか。3日は8月JOLTS求人件数、4日の9月ADP雇用レポートや9月ISM非製造業景況指数も市場に影響しそうだ。週の最後は6日の9月雇用統計だ。政府機関が閉鎖となっていれば、データが出なかった。だが無事に出てくることになって、やれやれだ。
とにかく、直前の急落で買った投資家には十分な余裕ができたことだろう。10月相場に期待しよう。
●日本の最大政党「無党派層」を動かせ! 10/2
自民党は保守政党ではない
日本保守党が立党を目指したことで、ネット上に多く存在する国内の保守系の有権者が日本保守党に期待する声が大きくなっている。ただ、これはあくまでもネット上の話で、現実に有権者全体の1%程度ではないかと思うが、根拠はない。
そこで改めて、自民党支持者が保守ばかりなのか?という点に焦点を合わせ、日本保守党のような政党が自民党を揺るがす存在になり得るのかを考察しながら、来る衆院選に向けての考察を行ってみたい。
その意味で、憲政史上最長の政権を維持し、大きな支持率を持っていた第二次安倍政権を例に挙げて見ることは無駄ではないと思う。ただし、この短い文章で「安倍晋三研究」などという、仰々しいものを書こうとは思わないし、私にそんな実力は無い。
今の日本の政治において、他がどうしようもないから仕方なく自民党を支持するという有権者が多いのは周知の事実。言い換えれば、本来、自民党を動揺させるような野党がいないことが日本の悲しい現実でもある。
私は以前から、日本に必要なのは保守二大政党だと言ってきたが、前回の拙稿『安倍晋三と「日本保守党」』で触れたように、日本に必要なのは中道二大政党だと訂正させていただく。つまり、右でも左でもなく、中道なんだけどちょっと右と、中道なんだけどちょっと左。中道なんだけど少し保守、中道なんだけど少し革新の二大政党制が大事だと考えるようになった。
「それなら今の自民党のことで、右と左を包摂してるじゃないか!」
という見方もあるし、それはとても正しい指摘で、自民党内はその少し右と少し左が派閥となって党内政局を行っている。そして、青山繁晴氏が指摘するように、自民党は党内では切ったはったのせめぎ合いを行うが、党内で統一した意見が出たら、党全体はそれに従って動く。政権与党として意見集約をして、政府に働きかけを行う。その意味で、自民党が少し右と少し左を包摂しているという指摘は誠に正しいし、だからこそ、長年、自民党が政権与党として日本の政治の屋台骨を支えてきたと言える。
有権者の中の自民党支持層は、その党内政局である派閥の争いの中で、自民党議員の批判を繰り返していて、多くの人が勘違いしているのが、自民党議員でありながら野党寄りの発言をするのはけしからんというものだが、けしからんも何も自民党とは保守とリベラルを包含した政党だからこそ、これまで政権与党としての任を果たせてきたのだ。長文になるので、その辺りの実例は割愛する。
ただはっきりしてるのは、どこでその自民党的なものが形を成してきたのか?ということは、X(旧Twitter)でも触れさせていただいたが、戦後最大のフィクサーであり最後のフィクサーであった児玉誉士夫氏が逮捕された時期と重なると思う。
在日朝鮮人と被差別部落民を利用する人々
戦後すぐ、日本が国家の再建に向かうにあたり、最大の問題点は治安維持だった。朝鮮半島を中心に日本国内では日本の軍国主義に対抗した社会主義体制を目指す陣営が、教育、法曹、報道、政治の世界に浸透し始めたことで、ある種の革命思想を心酔する勢力が台頭したことは間違いなく、同時に警察機構がGHQ頼みで機能不全に陥っていたことで、国民は社会生活に大きな不安を抱いていた。
当時、現在の自民党を支持する保守層と、地方の警察機構の不足を補う意味で、政治家や警察機構は、治安維持の面で侠客(ヤクザ)の世界に頼ったことは間違いない。それが山口組や稲川会、住吉会が勢力を広げ拡大の地歩を固めるに至った背景だ。当然だが警察機構はそれらヤクザ組織とは友好関係とは言わないが、ある意味、直接的な警察権力の行使を行わないでいた。戦後の混乱期、世情が不安定な中、朝鮮半島出身者、旧部落出身者が組織を持たない形で蛮行を行う懸念が常にあり、それをヤクザ組織が押さえ込んでいたからだ。
そしてそれら日本の政治体制に不満を持ち、日本において在日朝鮮人や旧部落出身者の代弁者として台頭したのが社会党であり、自民党との55年体制を築く礎となった。
ここでは詳細は触れないが、戦前、戦中、国内の動乱の元凶になるのが、もう一つある。それは旧来からある寺社仏閣以外の明治の終わりから大正時代、昭和初期に数多く生まれた新興宗教だ。
明治政府は廃仏毀釈で仏教系の宗教を弾圧し、戦前戦中は国家神道により宗教自体を政府が統治することが行われてきた。戦後、信教の自由が憲法によって認められたことにより新興宗教が一気に開花する時代を迎えたのだが、彼らが教宣を流布させる為に利用したのが、日本で不遇な境遇にあった在日朝鮮人や旧部落出身者だった。この辺りは、また別の機会に触れたいと思うが、数ある新宗教の中でも例えば創価学会などは関西方面を中心に、在日朝鮮人の多くを勧誘したのは有名な話だ。
前述の日本の治安維持におけるヤクザの存在、そして戦前戦中を通して潤沢な資産を得た児玉誉士夫のごとき日本の政治と裏社会を繋げる人物の出現は、時代背景から見て、むしろ当然と言えるものだった。加えて、新興宗教が地位とか名誉とか国籍とかアイデンティティを抜きにしたコミュニティの形成を行ってきたことで、政治や警察が成し得なかった日本の表と裏の面の受け皿が出来上がってきたのだ。
また同様に、児玉誉士夫のような保守思想の強い人物を中心に、日本における右翼と呼ばれる団体も数多く勃興し、それらの団体も在日朝鮮人や同和問題を抱える旧被差別部落出身者を受容する受け皿となっていった。所謂、赤尾敏氏をはじめとした右翼思想を柱にした団体は、一見、同じ政治思想でまとまっているかのように錯覚してしまうが、戦後、宗教法人法の制定と合わせて徐々に整理されてきた社団法人や政治団体を統括する政治資金規正法を一種の隠れ蓑にした裏社会の一つの形骸化されたものだと言える。事実、右翼団体の多くの構成員には在日朝鮮人もいれば旧部落出身者も数多くいた。
政治思想的に、軍国主義に走った国粋主義や皇国史観に則った純粋な右翼活動家はごく一部で、実際は地域社会の裏側に影響力を持たせてきたに過ぎない。
また政治的に保守的な政治思想に対抗してきた社会党にしても、本当に社会主義国家の建設や社会主義革命の実現を目指していたわけではない。中には社会で虐げられてきた被害者意識から、平等な社会の実現をしたいという者もいたかもしれないが、むしろ不遇な人々を受け入れてくれたのが社会党だったというだけのことだ。酷な言い方かもしれないが、これは厳然たる事実だと言える。
雑駁な説明だが、これらは今の自民党以外の特定野党が伝統的に、社会で虐げられている自称弱者の受け皿を目指す政党ばかりであることの所以だ。ただこういった政治の世界に働きかける、特に教育の面での社会主義革命的な活動は、被害者がいないところに被害者を作る加害行為だと考えている。
例えば被差別部落出身者が、差別するなと言いながら、教育委員会と組んで、小学校などで部落問題等の教育を行っている。子供達には差別意識など微塵も無いところに、わざわざ差別意識を植え付けているのだ。しかも教育委員会が一緒になって、子供達に差別意識を育てようとしている。昨今では減ってきたと言っても、地方に行けばまだまだそれらの間違った教育が行われているのが現実だ。
同和問題についての艶聞は他にもある。
昭和から平成初期くらいまで、地方では当たり前にあった問題であり、特に悪質性を感じるのは、日本の同和問題をまとめて百科事典のような仰々しい装丁の本を、地元の中小零細企業に売り歩く行商行為だ。その高額な書籍の購入を渋る地元企業には誰が指示しているのか背後関係は全く不明だが、何故か犯人を特定できない嫌がらせが続く。結果、渋々、1冊10万円くらいする本を買わされる。
最初に行商人が来た時に買っておけば1冊で良かったものが、一度断って嫌がらせが始まると、5冊とか10冊買うと、不思議にその嫌がらせが止まる。地元警察もまともには取り合ってくれず、行商人の言うがままに従うしかない。そのような事案は、江戸時代の終わりから明治、大正と部落問題を抱えている地域に、特に多く見られた。
繰り返すが、企業への嫌がらせは犯人も分からないし、警察もまともに取り合わない。でも、同和問題を取り上げた豪華で高額の全く役に立たない本を買ったり、同和問題の研究会や組合に関係する企業に優先的に仕事を回すと、不思議に企業への嫌がらせが無くなる。
関西方面で悪事の限りを尽くした関西生コン問題も、実は根っこは同じだ。彼らが繰り返している、業務妨害をやりなが労使問題だから民事不介入で警察は手を出せないと言う方便にしても、以前は警察もめんどくさいことになるから見て見ぬふりをしてきただけであって、SNSが普及し、スマホで簡単に証拠動画を残される時代になり、関西生コンの悪行も世の中に知られることになったことで、彼らの年貢の納め時となった。
これら、日本社会の裏側を説明するには関西生コンの背景にも社会党を中心とした政治家との繋がりがある。マイノリティが自分たちの権利主張をするには政治家の力を借りるのが得策であることを知っているのだ。そしてお決まりのように、関西生コン関係者の多くは、在日朝鮮人が多いと言われている。 

 

●岸田政権「年収の壁」対策は奏功するか? 国民も制度を知ることが必要 10/1 
夫の扶養家族となっている妻がパートに出て働き、一定以上の年収を超えると、社会保険料を支払わなければならなくなったり、扶養から外されたりするという事態になる。そうなると、手取りが減ってしまうことになる。これを「年収の壁」という。
「年収の壁」とは?
そこで、「年収の壁」を超えないように働く時間を抑える人が増える。
このことは、新型コロナも2類から5類に変更になり、景気も回復しつつあるときに、人手不足に拍車をかけることになっている。この対策に、岸田文雄首相が乗り出したのである。
106万円の壁と130万円の壁
106万円の壁は、従業員が101人以上の企業で働く場合である。年収が106万円を超えると、夫の扶養を外れ、健康保険や厚生年金の保険料を支払わなければならない。保険料は106万円で約15万円なので、手取りは91万円になってしまう。保険の手当や年金が増えるというメリットはあるものの、手取りが減るのは馬鹿馬鹿しいと考えて、労働時間を抑制するのである。仮に125万円以上稼ぐと保険料を引かれても手取りが106万円を越えるので、「稼ぎ損」の状態は解消する。
106万円の壁に該当しない人も、130万円を超えると扶養から外れ、自分で国民健康保険、国民年金に加入せねばならなくなる。
そこで、106万円や130万円の壁を越えないように、労働時間を抑制することになってしまうのである。スーパーマーケットなどでは、パート不足に悩んでいるが、この壁がその状況をさらに悪化させている。
岸田首相の対応策
そこで、岸田首相が「年収の壁・支援パッケージ」として打ち出したのは、まず106万円の壁については、125万円まで賃上げを行った企業に対して、従業員1人当たりで最大50万円を助成するという政策である。
ただ、何でも補助金で解決すればよいのかという批判は当然起こってくる。
130万円の壁については、130万円を超えても、一時的な増収であれば2年まで扶養を外れないようにするという。いずれも期限を区切っての当面の対応策である。厚生労働省は、2年後には年金制度の改正を行うので、そのときには、年収の壁についても、さらに踏み込んだ対策や改正を行うことを考えている。
年金改革
日本は国民皆保険、国民皆年金という仕組みを誇っているが、これを作るときに専業主婦をどうするかという問題があった。1986年4月の改正で、第3号被保険者制度が始まったが、厚生年金加入者である第2号被保険者の扶養配偶者を第3号被保険者という。
働いている独身者などの女性は、保険料を払い、年金も支給される。専業主婦の場合に年金が支給されないという問題が生じるのを防ぐために、第3号被保険者制度が導入されたのである。保険料は、夫が一括して負担しているので、主婦が個別に保険料を支払う必要はない。
女性が、専業主婦、共働きのいずれを選ぶかは個人の自由である。どちらを選ぶかによって不公平が生じるのは避けねばならないが、その要請に完全に応えるのは難しい。年収の壁も、その問題の一つである。
社会保障制度の改革
マイナンバーも導入され、社会保障も個人が単位となるが、配偶者扶養の仕組みをどう改革するかは衆知を集めて検討する必要がある。専業主婦の家庭での働きをどう金銭的に評価するか。夫の年収が600万円の場合、夫婦で稼いだと考え、単純化して夫の年収が300万円、妻の年収が300万円と見なせば、税金や社会保険料の処理が個人単位でできる。
しかし、様々な問題も生じる。税収の確保を第一に考える財務省と、社会保障制度を管轄する厚生労働省との見解も異なってくるだろう。各政党が、自らの社会保障制度改革を掲げ、その優劣で政権を争うような競争が民主主義の理想である。それが実現しないのは、政策作りを官僚に任せてきた政治家の怠慢である。
皆で考えよう
私たちも、税制や社会保障制度が変わると、どのようなプラスとマイナスがあるか、頭の体操をしてみたい。年収によってプラスになったり、マイナスになったりするし、社会全体にとってはまた別の視点も必要である。
年収の壁だけが問題ではない。これを機会に、健康保険、介護保険、年金などの社会保障制度、また税制についても、基本的知識を得るようにするとよい。霞ヶ関の役人に騙されないためには、私たちも制度を熟知しておく必要があるのである。 
●総裁再選、支持率が左右 残り1年、岸田首相「長期政権」懸け 10/1
岸田文雄首相の自民党総裁任期が9月30日で残り1年となった。長期政権を目指す首相にとって、総裁選での「再選」は絶対条件。9月の内閣改造で「ポスト岸田」の顔触れを政権内に囲い込んだことで、対抗する動きは今のところ見られない。ただ低迷する内閣支持率に反転の兆しは見えず、道のりは視界不良だ。
「先送りできない課題に一意専心に取り組む。それ以外のことは今考えていないと再三繰り返している」。首相は29日、記者団が早期の衆院解散の可能性を質問したのに対し、こう語気を強めた。
首相は内閣改造・党役員人事で、党内各派の意向に配慮した「総主流派」体制を構築。来秋の総裁選出馬が取り沙汰される茂木敏充幹事長や、高市早苗経済安全保障担当相、河野太郎デジタル相らを政権内に留め置いた。
茂木氏と同じ党四役として、茂木派で「首相候補」の呼び声もある小渕優子選対委員長を起用。これを「野心をちらつかせる茂木氏へのけん制」(四役経験者)と見る向きは多い。高市氏が担当する機密情報の取り扱い資格者認定制度の創設や、河野氏が推進するマイナンバーカードの健康保険証一体化は、賛否が分かれ、矢面に立ちやすい。自民関係者は「対抗馬に力を蓄えさせない首相の執念を感じた」と話す。
それでも首相の再選戦略が盤石とは言い難い。命運を左右しそうなのは内閣支持率の推移。改造人事では女性閣僚を過去最多に並ぶ5人に増員したものの、副大臣・政務官は女性ゼロとなり批判を招くなど、期待した浮揚効果は得られなかった。年末以降は防衛費増額や少子化対策の財源確保に向けた議論が本格化する見通し。「国民負担増」の議論が具体化すれば、政権への逆風が強まる可能性もある。
次の総裁任期中となる2025年には参院選が行われるほか、現在の衆院議員が任期満了を迎える。政権の体力がじりじり失われる中で来年の総裁選を迎えれば、「選挙の『顔』にはなり得ないと見なされ、一気に『岸田降ろし』が吹く」(閣僚経験者)恐れもある。それゆえ、与野党では、総裁選に向け求心力を強めたい首相が「年内に衆院解散を断行するのでは」との観測が強まる。
一方で、現状のまま解散に打って出ても勝てる保証はない。政府関係者は「自ら掲げた重要政策の財源論をあいまいにして解散すれば、しっぺ返しを食らう」と指摘する。選挙の結果次第では首相の責任が問われる。直ちに引責辞任につながらなくとも、再選シナリオはますます描きにくくなる。
●岸田政権4日で2年も、具体的目標見えず…「派閥順送り人事」で政策実現は 10/1
岸田文雄首相は10月4日で就任2年を迎える。9月13日に内閣を改造し、政権2年の総括と今後の目標を新閣僚で実現するとの説明があった。例によって「適材適所」と表現したものの、一方で「あまり得意な分野ではない」とぼやいた新閣僚もいたようだ。約3カ月温めてきた改造人事の岸田案≠ェ、直前に森喜朗元首相や麻生太郎副総裁にひっくり返されたとも漏れ伝わってきた。
結果的に政権の骨格は留任組が担い、女性閣僚5人、入閣待機組ら新入閣11人となった。「派閥順送り人事」と指摘されている。次の総裁選を考えたらそうせざるを得なかった、ということだろうか。
約7年8カ月続いた第2次安倍政権を除くと、小泉政権以降は1年程度でコロコロと交替していた近年の政権と比べれば、2年もったのはむしろ立派との見方もできる。自民党内で強力なライバルが見当たらず、野党もまとまりに欠ける。このまま衆院任期いっぱいまで解散総選挙をしなければ、1500日弱の長期政権ということも考えられる。宏池会の創始者で先輩の池田勇人内閣の1575日に迫る。
岸田首相は就任前の2年前の総裁選で「所得倍増計画」や「金融所得課税の強化」などと、壮大な構想をぶち上げてアピールした。だが制度設計が甘く、いつの間にかフェードアウトした。「新しい資本主義」というフレーズだけは残っているが、いまだに何を指しているか分からない。
やはり、政治には具体的な目標が必要だ。デフレからの脱却、異次元の少子化対策は決して小さな課題ではない。デジタル社会の進展と言われながらも、日本は世界から「周回遅れ」と指摘されている。総裁選に向けてバランスのいい絶妙な人事との評価もあるが、必要なのはお飾り内閣ではなく、さまざまな分野で実現する政治。岸田政権3年目はこれまでのような様子見≠ナはなく、一つ一つ政策を実現していってほしいと願う。
●岸田首相 解散命令請求は衆院解散への追い風? 10/1
昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件を機に、自民党と旧統一教会との密接な関係が次々と露呈し、内閣支持率が暴落した岸田文雄首相。解散命令請求の方針には、年内実施も模索する衆院解散・総選挙を判断する際の追い風材料にしたいとの思惑も透ける。
臨時国会は20日召集予定。今月末までに策定する経済対策への世論の反応などを見極めていくが、9月13日の内閣改造による政権浮揚効果は限定的。首相は同日の記者会見の冒頭発言で、教団問題を巡り「しっかりとした結論を出すべく、最後の努力を進めていく」とわざわざ付け加えており、請求により、政権として教団と決別する姿勢をアピールしたい考えだ。
宗教法人審議会に報告する12日は、22日投開票の衆参ダブル補選の真っ最中。結果は解散判断に大きな影響を与えるが、両補選とも自民党の苦戦は必至の情勢。内閣支持率は最低水準で、1勝1敗でも解散反対論が高まるとみられ、“てこ入れ”にはもってこいのタイミングとも言える。
一方、教団側から見れば“請求の政治利用”と映りかねない岸田政権の判断。自民党関係者からは、同党との関係を巡る教団側によるさまざまなリークを危惧する声が上がる。安倍氏の祖父、岸信介元首相との関係を築いて以来、半世紀以上にわたり日本に根を生やしてきた教団。安倍家3代とのつながりをはじめ、政権与党の歴史の暗部が白日の下にさらされていくのか、関係者は注視している。
●朝日の「洋上風力」報道に異議あり 10/1
洋上風力発電事業を巡り、電力関連会社「日本風力開発」(日風開)に有利な国会質問をする見返りに賄賂を受け取ったとして、東京地検特捜部は9月7日、受託収賄容疑で衆院議員の秋本真利氏を逮捕し、このほど同罪で起訴した。
新聞各紙は同氏の逮捕時、「秋本議員逮捕 再エネ汚職 真相究明を」(朝日)といった社説を掲載し、「政治とカネ」を巡る汚職事件の徹底解明を求めた。朝日社説は「再エネ拡大の『切り札』として、洋上風力に力を入れる岸田(文雄)首相にとっても、ひとごとではない」とし、「政策がゆがめられてはいないか、検証して明らかにする」必要性も指摘した。むろん、政治家による再エネ事業の利権化は論外だ。
ただ、これまでの朝日の洋上風力発電に関する記事では、違和感を持たざるを得ない内容もあった。例えば、元編集委員が書いた令和4年2月3日付夕刊の「洋上風力、価格崩壊の衝撃」という見出しの記事だ。3年12月に国が行った洋上風力発電の3カ所の入札で三菱商事連合が想定外の安い売電価格を提示して総取りした結果を受け、「(この安さで)日本での発電所建設、経営は相当厳しいものになる」と指摘。その上で「国の導入計画の練り直しが必要」「地元からは売電価格が低くなれば、発電会社による地域貢献が手薄になるのではとの不安も出ている」などと書いている。売電価格が安ければ、国民の利益になるのに不思議な記事だ。
秋本氏は日風開側がこの事業の受注に失敗した後の昨年2月17日の衆院予算委で、次の入札までに「安さ」だけでなく、工期の短さ、事業者の信頼性を評価するよう経済産業省に基準の見直しを要求。この質問の後、評価基準の見直しが決まった。この見直しの経緯についても解明が必要だろう。
論点はまだある。普及のために電気料金に一律で上乗せして徴収されている「再エネ賦課金」の算定根拠の一部となる買い取り費用は、5年度の予想で4兆7477億円に及ぶ。それに伴う負担に価値はあるのか。風力発電設備(風車部分)の昨年の世界シェアは、上位15社のうち10社が中国企業だが、他国の製品を使うことで日本の情報管理は大丈夫なのか。
国のエネルギー政策の行く末を国民に考えてもらうために、関連情報を正確に提供するのが新聞の役割のはずだ。「反原発」にとらわれ「再エネ賛美」に傾くと、多様な視点を見失いかねない。 

 

●なぜ経済学者も政治家もバカになったのか? 9/30
経済学者と政治家は、いつからこんなにバカになってしまったのだろうか。それは、世界的にも第2次世界大戦後、徐々に進んでいる現象だ。日本ではとくに、高度経済成長が終わり、1980年代のバブルで加速化し、アベノミクスによって決定的に壊滅した。
バブルにまったくこりていない世界と日本
日本に関しての議論が中心になるが、世界でも同じである。
アメリカでは、2000年には「ITの発達で景気循環がなくなり、リスクが低いニューエコノミーとなって、株価は新たな高みに行く」といわれた瞬間にITバブル(テックバブル)が崩壊し、さらに2001年のエンロン事件、同時多発テロによって、株価も経済も混乱、低迷した。
それにもかかわらず、バブルにまったくこりずに、1930年代の大恐慌の経験をねじ曲げて解釈し、「悪かったのは中央銀行が金融を早く引き締めすぎたからだ。バブルは潰してはいけない。崩壊してから、その後の混乱を大規模金融緩和で処理すればよい」という「FED VIEW」(中央銀行の見解)なるものが確立していた。
だが、2008年のリーマンショックで、それはまったくの間違いであることが判明した。つまり、100年かけて「進歩ゼロ」だった。
さらに、1990年代から2000年にかけては、日本が先進国では珍しいデフレに陥り、ゼロ金利に追い込まれ、苦肉の策として量的緩和なるものが発明された。このときも「ジャパナイゼーション」と呼んで、日本と日本銀行をバカにし、「俺たちはそんな間抜けなことはしないもんね、デフレもゼロ金利にもならないようにちゃんとするから」と言っていた。
だが、リーマンショック後、欧米諸国はみなゼロ金利で量的緩和を行い、欧州に至ってはマイナス金利幅を拡大していった。日本の経験からも学ばず、量的緩和をQEと呼んでバカにしていたが、FEDも結局QE3と呼ばれたように、3回も量的緩和を実施する羽目になった。
この経験によって「21世紀はデフレの時代だ。もはやインフレは問題となりようがないから、インフレターゲットなどを2%よりも高くして、3〜4%に目標を引き上げて、21世紀の長期停滞に対処すべき」とまじめに議論した瞬間に、コロナ危機となった。
終わってみると、とてつもないインフレが加速し、ゼロ金利から一気に5%以上まで金利を引き上げるという大不始末をしでかした。しかも、インフレが急速に高まってから1年以上も放置して「これは一時的だから心配ない」と言い続けたあとに、「インフレ抑制が最優先、景気がどうなろうとまずインフレを抑え込むことが必要だ。インフレ抑制こそが中央銀行の最大の使命」などと、1年前とは180度違うことを声高に叫ぶという、とてつもない恥辱の政策転換を行った。
経済学はいまだ未熟な学問
なぜ、こんなに間違ってしまったのか。要は、経済学には、いまだに経済が全体のシステムとしてどうなっているかがわかっていないからだ。
それなのに、1968年にノーベル賞に経済学が追加され、実力以上に世の中で偉くなってしまい、また自分たちも偉いと思ってしまったからである。さらに、1970年代からは合理的期待仮説旋風が吹き荒れ、経済主体が合理的に将来を予想しているとされてしまった。この数学的モデル化が便利な魔法のツールを武器に、経済学は数学的モデルと統計的にテクニカルな実証分析の学問となってしまった。
少なくとも第2次大戦前までは、どの経済学者も自分自身の経済システムへの見方があり、「リカード体系」「ワルラス体系」「ケインズ体系」などがあった。だが、こうした体系への理解も情熱も1970年以降は失われ、モデルの数学的精緻化、統計的な有意性の検証に明け暮れてしまった。
また、経済学が偉くなったことにより、業績争いが加速し、その結果、論文による業績競争となり、これを公平に評価するという名の下に、細部の厳密性を執拗にほじくり返されるために、経済学の論文はすべて部分的な限定的な非常に狭いトピックをそれぞれ検証するようになった。
とりわけミクロ経済学系統では、ヴィジョン(全体像の把握や展望)がまったく失われてしまった。一方、世間の人々や政治家たちは経済学への期待を高め(あるいはそうしたふりをして)、「著名な経済学者のお墨付きをもらった」などと言って自分たちの望ましい政策の正当性を主張するようになった。ここに、世論も政治家も、経済学の中身を理解しないまま悪用を、たとえ無意識にせよ、行うようになってしまった。
経済学者は、「手元にある道具」をより研ぎ澄まして、細分化によって、より適する鋭利な刃物を仕上げていったが、全体像を把握するのとは逆方向にどんどん進んでいった。21世紀になると、この傾向は加速度的に強まり、経済も経済学も世の中も、ただ混乱してきているのである。
日本は、さらにひどい。1980年代のバブル期には「日本の不動産価格、株価はバブルではない」ということを、無理やり経済理論モデルで説明しようとしていた。流通などの非効率性も、長期的な関係を、ゲーム理論などを用いながら必死に「つじつまが合う」と主張してきた。
日本の混迷を決定づけたのは「リフレ派」
結局、これらは1990年代末から膨大なコストをかけて処理していくことになった。21世紀になると、日本の経済停滞を、アメリカのポール・クルーグマン氏(現ニューヨーク市立大学大学院センター教授)が、日本の現実をまったく知らないままに(知ろうともせずに)たまたま思いついた「トイモデル」(おもちゃのような理論モデル)で自慢げに分析してみせた。
アメリカの有名経済学者についていくことが最も進んだ経済学者の証しだと思い込んでいる同国コンプレックスの多くのマクロ経済学者は、これを絶賛し、日本政府の政策を責めたてた。
政治家も世論も自分では何も確かめようともせずに、有名経済学者の話を鵜呑みにし、現在でも、そのときの常識がそのまま残ってしまって、それを土台に議論が行われている。
日本の経済問題の核心は、人口減少や地方の衰退などの構造的な問題であることは明らかなのに、すべてはデフレ、緩やかな価格下落、あるいは価格が上がらないこと、つまりインフレにならないことが諸悪の根源とされた。いまだに、日本国中を挙げて、これをなんとか変えようとしている。
日本でも、前述のアメリカの経済学の混迷と同じ構造が根底にはあるが、この経済学と政治による経済政策の大混乱を決定づけたのは、アベノミクスであり、その元はリフレ派という謎の理論であった。
これは拙著『リフレはヤバい』でも解説したのだが、日本では世論も政治家も皆ぐうたらで、めんどくさがりである。したがって「日本経済はもう終わりだ」などと悲壮な叫びを上げながら、これを解決するために一発大逆転を望むのだ。
難しい議論はいやなので、単純な1つの理屈で一挙にすべてを解決する政策しか望まれないのである。この「一挙解決願望症候群」が政治家も世論をも覆っており、まじめに丁寧に問題を解きほぐす論者や理論は政策マーケットから駆逐される(というより無視される)。「これが問題だから、これをぶっ壊せばすべて解決」という主張しか生き残らなかったのである。
政治家が好きな「ガラガラポン」というふざけた言葉が国会の論戦でも頻出し、「もうガラガラポンするしかない」とまじめ腐った顔で語り、すぐに平成維新とか、ゼロクリアの革命を求める議論やネーミングが流行るのである。
「すべて財務省が悪い」というのが昭和や平成の前半に使われた論理だが、平成の後半と令和においては、スケープゴート(贖罪の山羊)は日本銀行となっている。そして、リフレ派は「インフレになれば、すべての停滞が一気に解決する」と主張し、そのためには「ただマネーをばらまけばよい」と主張したのである。
政治的には「デフレ脱却」「デフレマインド脱却」がキラーフレーズ(殺し文句)となり、とにかくインフレにすればすべてが解決するということになってしまった。そして、こともあろうに、日銀自身までが「悲願の物価上昇率2%達成が目前」とまで言い出す始末となっている。
つまり、似非(えせ)エコノミストだけでなく、まともなマクロ経済学者、マクロ金融学者、日銀エコノミストまでが、物価上昇がすべてという議論にはまってしまっているのである。
「証拠に基づく政策立案」による改善効果は?
一方、ミクロの経済学者はどうしていたのか。彼らは、この乱暴な「政策マーケット」の議論に腹を立て、エビデンスベースの政策決定を声高に主張した。EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)というやつである。この結果、今度は「詳細なミクロデータがある政策だけが正しい」という風潮が高まった。
その結果、どうなったか。昔から繰り返し行われている政策については、多少の改善が見られた。エビデンスなしに、なんとなくイメージで効果があると思われていた政策の一部が「効果が薄い」として縮小していったのである。
これ自体はすばらしいことである。しかし、それは政策全体の1%未満の領域での改善にすぎない。なぜなら、多くの政策は、効果があるかどうかではなく、政治家あるいは利害関係者がやりたい政策を行っているだけであるから「効果が薄い」といわれても、意に介さない。「マイナスではない」「これで助かっている国民が1人でもいる以上、廃止するわけにいかない」という論理で、多くの予算が割かれているものについては何の改善も見られなかった。
しかし、本当の害悪は、まじめなミクロ経済学者たちがその視野の狭さにより、自分の領域におけるエビデンス立証だけに夢中になり、世の中全体で起きている最も重要なイシュー(課題や論点)を無視してしまったということである。
「常識による政策の不在」で日本は静かに衰退し続ける
世の中で最も重要なことは、今までにない問題が起きたとき、どう解決するかである。現在の経済は変化も激しいし、複雑で、次から次へと今までに経験しなかった問題が起こる。これに対処するのにも、エビデンスの有無、学問的、実証分析的論拠を求めたため、自ら発言する力を失ってしまったのである。
未体験ゾーンには、エビデンスなど原理的に存在しない。そこにどうやって立ち向かうか。丁寧で視野の広い観察を先入観なく行い、それに論理と常識を当てはめることで、何とか道を見出すという努力が必要なのに、その努力さえも行わなくなってしまったのである。
つまり、前出の政治家や世論の乱暴な一挙解決願望、具体的に言えば、コロナ対策やインフレ対策の給付金などである。これらも丁寧な仕組みの構築と手間を惜しんで、「とにかくパッーと一気にばらまくしかないだろう」という議論をしてしまう。
こうした乱暴な議論と、その一方で、これまた極端な詳細なエビデンスを求める、まじめな視野の狭い学者先生たち。この極端な二極化により、常識による政策が不在になってしまったのである。この結果、思考停止となり、政治家も経済学者も阿呆にしか見えない行動をとり続け、日本の経済は政策無策で、静かに衰退し続けているのである。
では最後に、私が常識による政策を提示しよう。
まず、インフレ。インフレになれば、手持ちの貯金、給料の価値は目減りする。だから、消費を控え、節約するしかない。悪いのはインフレである。物価が上がらないのは、むしろ生活者にとって望ましいことである。
デフレスパイラルという、物の値段が際限なく下落していく世界は恐怖である。だが、大恐慌のときと違って、今は街に失業者もあふれていないし、物価は上がらなかっただけで、暴落したわけではないのだ。
円安を止めれば、ほとんどの問題は解決する
では、円安はどうか。海外旅行に行けない。海外の投資家に大事な土地も企業も人材も買い尽くされて奪われてしまう。しかも、日本は貧しくなる。
韓国よりも所得が低いのは、円安だけのせいだ。そして、現在起きているインフレも、半分以上は円安が原因だ。だから、過度な円安を解決し、妥当といわれる1ドル=90円前後まで円が戻れば、ほとんどの問題は解決してしまう。
景気はどうか。日本の景気はよい。デフレギャップすら存在しない(そもそもデフレギャップは、つねに存在する方向にバイアスがかかっているデータである)。失業率はきわめて低い。誰もが、人手不足で困っている。鹿児島でも、青森でも、大都市だけでなく、日本中で働き手が消えている。
景気は問題でない。景気対策は一切要らない。需要も消費も喚起する必要はない。問題は実質所得の目減りであり、それは円安を止めれば、インフレも軽減され、問題は解決する。
物価と賃金の好循環はどうか。そういうものは存在しない。世界中の経済の歴史において、物価主導で賃金がそれを上回って上昇し、経済がよくなったことは一度もない。ありえない。いちばんよくてスタグフレーション(景気低迷下の物価上昇)である。
そもそも勤労所得のない消費者が、日本国民の半分である。物価が上がれば、国民全員が困る。賃金は転職などにより交渉により企業からもぎ取るものである。インフレが賃金上昇をもたらす理由は、交渉なしでは1つもない。インフレだから、という交渉材料がふえるだけのことだ。
もちろん、ただでさえ原料高に苦しんでいる企業は、賃金を上げるとさらにコスト高になる。だから、物価上昇率以上の賃金上昇が経済全体で起こる理由はゼロである。逆だ。必ず、実質賃金は下落する。
インフレを抑制、実質賃金を上げるには?
実際、現在の日本は、インフレが始まってから、実質賃金は16カ月連続で下落し、下落幅は拡大している。実質賃金を上昇するためには、インフレをなくすしかない。そのうえで生産性を上げることが個々の労働者にできれば、賃金は上がる。だから、インフレを止めること、物価を下げることが実質賃金上昇への唯一の道なのである。
現実世界を見れば一目瞭然だが、アメリカ、さらに悪いのは欧州である。中でも英国は、物価上昇からの賃金上昇は最悪の悪循環で、これを断ち切るために死に物狂いになっている。もちろん賃金はどこでも物価に追いつかないし、好循環だという人はひとりもいない。それどころか、最強の悪循環だという認識を全員がもっている。
最後に日銀の金融政策はどうか。マイナス金利終了、イールドカーブコントロール(長短金利操作)終了。この2つを直ちに行うべきだ。
円安の原因の1つは日銀の異常な緩和策による。だから、やめるべきだ。だが、「金融政策は為替に影響を与えてはいけない、だから円安を理由に政策変更すべきでない」と、大真面目に言う優秀な経済学者がいる。
わかっていない。現実を見よ。日銀の金融政策があまりに異常であるため円安が起きているのであり、金融政策が為替市場を歪めているのである。それこそ中央銀行が最もやってはいけないことだ。中央銀行の金融政策が為替を歪めていれば、それを普通に戻すのは当然どころか、義務だ。
まあ、きりがないので、これでやめておこう。
●「Z世代のアメリカ」はどこへ向かうか?日本はどうすべきか? 9/30
Z世代(1997〜2012年生まれ)が今後いよいよ社会の中心となり、アメリカを動かしていく。来年の大統領選挙にも大きな影響を及ぼすことになる。彼らはどのような思考で、いかに行動するのか。その言動の背景にあるアメリカの現状はどうなっていて、未来はどう変わるのか。そうした問いに答えを提示する『Z世代のアメリカ』(NHK出版新書)の著者、三牧聖子氏をロングインタビューした。後編では、アメリカが“世界の警察官”でなくなった現実を前に、日本はどうすべきかについてなども聞いた。
副大統領ハリスはなぜ不人気か? 中道であることの難しさ
――副大統領のカマラ・ハリスについて書かれた章(第6章)では、「多様性を象徴する存在」であったハリスが不人気になった原因が考察されています。1年前の共著『私たちが声を上げるとき アメリカを変えた10の問い』では、「はじめに」や「おわりに」はハリスへの期待を感じさせる論考となっていましたが、彼女も為政者として妥協を繰り返してしまったのでしょうか。
私ももちろんハリスの不人気ぶりをあげつらいたいわけではなく、マイノリティの女性政治家としての困難を体現する存在として分析しました。
2020年大統領選に勝利した結果、ハリスは黒人、アジア系、そして女性として初の副大統領となり、当時は将来的には最も有力な女性大統領候補になるとまでいわれていましたが、現在その人気は、危機的なレベルにまで低迷しています。
今年6月のNBCニュースの調査で、ハリスに否定的な見解を抱いていると回答した人は49%にのぼり、肯定的な見解を抱いていると回答した32%を凌駕しました。
なぜ、ここまで不人気なのか。黒人女性という属性ゆえにハリスは、「既存の政治を変えてくれるかもしれない」という期待を、おそらく過剰に集めてきました。他方、政治家としてのハリスは中道派で、その時々の状況に応じて政策的な主張を変えてきた。こうした柔軟さゆえに、バイデン政権の副大統領の地位に上り詰められた面もあります。
しかし今日のアメリカでは、特に政治家たちの口先だけの改革論に飽き飽きしてきたZ世代は、政治家にますます「誠実さ」や「インテグリティ(統合性)」を求めるようになっています。
この世代にサンダースが絶大な人気を誇っている理由も、労働者の権利やメディケア・フォ・オール(国民皆保険)など、彼の政策的な主張が一貫していることにあります。
これに対してハリスは、警察改革にしても、移民難民対策にしても、副大統領の座に着く前と着いた後で一貫性を欠いています。自身の名を全米レベルの知名度にした性差別是正運動「#Me Too」運動への関与すら、一貫できていない面がある。Z世代はこういった政治家の欺瞞に非常に敏感であり、ハリスは厳しい目を向けられてきました。
もっとも、民主党と共和党の対立が進むばかりのアメリカにあっては、両極を橋渡しをするような、中道の政治家は必要です。
中道の政治家が必要な状況であるのに、中道的なポジションをとると、人々の不人気を買ってしまう。そこで、支持を集めるためにだんだん極端な主張を掲げるようになってしまう。こういう問題はアメリカだけでなく、日本政治にも共通しているところがあるかもしれません。
『Z世代のアメリカ』では、ハリスを称賛するのでも、断罪するのでもなく、フェアに評価したいと思いました。
――最終章の第7章「揺らぐ中絶の権利」には、「社会運動では勝っても、権力闘争では負けるリベラル?」という悲観的に見える節もあります。
もちろん、社会運動の価値や意義はまったく否定しません。しかし、運動やアドボカシーを通じて社会にいくらリベラルな価値観が普及し、多くの人々が個人の権利や自由を大事に考えるようになっていても、州議会や最高裁などの権力の座を保守派に握られてしまっていては、重要な権利や自由を守りきれません。
2022年6月に最高裁がロー対ウェイド判決を破棄し、数十年間定着してきた人工妊娠中絶の憲法上の権利を否定したこと、その結果、厳しい中絶制限を行う州が多数でてきたことはその端的な例です。
この判決の背景には、保守派が絶対多数となった最高裁の構成がある。自分の任期中に合計3名の保守派判事を最高裁に入れた前大統領トランプの強引な手腕は誉められたものではありませんが、民主党側も、権力闘争を嫌悪し、共和党のやり方を批判しているだけではこの状況は変わりません。
人々の権利や自由を守るために、リベラル側にも長いスパンで、どのように権力を取り戻していくかという戦略が必要だと思います。
石橋湛山や吉野作造の思索を 今後の対外論にどう活かすか
――最後にご専門である対外政策についてお聞きします。最初の単著『戦争違法化運動の時代―「危機の20年」のアメリカ国際関係思想』(名古屋大学出版、2014年)のあとがきに三牧先生は、「石橋湛山や吉野作造の対外論を検討しているうちに、彼らの対外論に占めるアメリカの重要性を認識し、アメリカ研究にひかれていった」と書かれています。現在の日本でも「日本は今後どうすべきか」を考える中で、国会で「超党派石橋湛山研究会」という議員連盟が発足して、彼の思想を見直す動きがあります。どう思われますか。
吉野や石橋が活躍した大正時代のアメリカは、国際政治に理想主義の考えを持ち込もうとしました。学者出身のウッドロウ・ウィルソン大統領が登場し、民族自決や国際連盟の創設を掲げて、国家間のパワー・ポリティクスに特徴付けられた国際政治を変革していこうとしたのです。
もっとも、国際連盟はアメリカ国民には不人気で、民主党のウィルソン政権は、共和党政権に代わられてしまいました。とはいえ共和党政権も、国際平和に対してアメリカが何もしなくていいと考えていたわけではなく、民間にまず広まっていた「戦争違法化」のアイデアを取り入れて、1928年の不戦条約の成立などに貢献しました。
言及していただいた『戦争違法化運動の時代』は、戦争違法化の考えを広める運動をたった一人で、私財を投じて始めた弁護士サーモン・レヴィンソンの活動に注目したものです。
その後、この考えは、アメリカ政府、さらには国際連盟のような国際的な場にも広がっていき、国家の政策の手段としての戦争を放棄することを宣言するとともに、国際紛争を平和的に解決すべきことを定めた不戦条約の思想的な背景にもなりました。
吉野や石橋ら、この時代の日本のリベラリストたちの国際協調論は、こうしたアメリカの理想主義に大きな影響を受けていました。
しかしだからこそ、日本人移民排斥問題や満州事変をめぐってアメリカとの関係が冷え込み、日本の対米イメージが悪化すると、彼らの国際協調論も力を失っていきました。
『Z世代のアメリカ』で描いたように、今日のアメリカは、自信や理想主義に満ちていた時代のアメリカとは根本的に異なる存在になっています。
対外的に民主主義をうたってはいますが、足元で自国の民主主義は動揺し、アメリカを民主主義のお手本とみる国際世論も弱まっています。
私たち日本の対外認識や平和論は、アメリカに肯定的な人も、批判的な人も、やはりアメリカを中心にしてきました。今すぐとはいいませんが、長期的には、アメリカに頼りすぎない平和論や対外論を構想していく必要があると考えます。
吉野も石橋も決して単純な日米協調論者ではなく、アメリカの問題性、アジア諸国との関係の重要性に気づいていた論客です。彼らの思索を今後の対外論に活かすという場合には、むしろそうした面にこそ注目していくべきではないでしょうか。
――アメリカはオバマ大統領の時代に「世界の警察官ではない」と宣言しています。米中対立が深まる中、地政学的リスクが高まっていますが、日本はどうすべきでしょうか。
中国への警戒論や中国脅威論は、アメリカでも高まっています。それは、Z世代も同様です。
ただ、Z世代にとっては、中国は生まれたときから既に大国であり、彼らには、今後中国と長く付き合っていかねばならない世代としてのリアリズムがある。それを第3章「米中対立はどう乗り越えられるか―Z世代の現実主義」で描きました。
年長の世代には、米中の間に圧倒的な力の開きがあった時代へのノスタルジーがあり、どうしても中国への優越感、さらには人種差別主義もあります。
Z世代は、相対的にそうした観念から自由です。彼らには、米中の国家間関係の悪化が、アメリカ国内で中国系やアジア系への差別に結びつくことはあってはならないという人権意識も強い。
中国は非常に付き合いが難しい国であることは、残念ながら変わらないでしょう。日本は、その人権侵害的な政策や拡張主義的な政策については、毅然として批判していかなければなりません。
他方で、こうした国が日本の隣国という事実は変えられない。中国という難しい国と、決定的な衝突を避けながらどう付き合っていくかについて、アメリカのZ世代の模索から、私たちも学ぶことがあるのではないかと考えています。
●「人材不足の自民党ではろくでもない女性政治家が出世する」 9/30
実業家「ひろゆき」こと西村博之さん(46)が29日、自身のX(旧ツイッター)を更新。一定の比率で女性議員に議席を与えるクオータ制を実施した場合に「人材不足の自民党ではろくでもない女性政治家が出世する」と私見を語った。
クオータ制は人種や性別、宗教などの少数者の格差をなくすため、一定の比率で人数を割り当てる制度。日本の女性の国会議員の比率が、先進国では最低水準のため、導入の是非が話題に上っている。
ひろゆきさんは、アイヌ民族への差別的な投稿で札幌法務局から人権侵犯を認定された杉田水脈衆院議員を、自民党が環境部会長代理に起用した報道を引用。「一定比率のポストを強制的に女性に与えようとするクオータ制をやると人材不足の自民党ではろくでもない女性政治家が出世するので反対なおいらです」と語った。
投稿に対し、「正しい理屈ですね」「まずはマトモな女性国会議員を増やさなきゃ。いや、今の政府(国会)見てたら、マトモな女性は国会議員になりたがらないか〜」「女性ありきや名のある女性芸能人じゃなくて能力ある人選んでほしい」といった声が挙がった。一方で「クオータ制と杉田議員の件は別問題では」などの意見もあった。
「ろくでもない女性政治家は出世する前に選挙で排除される」とする指摘に対して、「杉田水脈議員は比例代表制で当選しているので、自民党のお偉いさんが比例代表のリストの上位に居れ続ける限り、選挙で排除というのができません」と反論した。
●中国への“挑発発言”連発 エマニュエル米国大使の意図は 9/30
28日夕方、ホテルニューオータニで開かれた中国の建国記念日にあたる「国慶節」のレセプション。「国慶節」は中国で最も祝うべき日「ナショナルデー」だ。原発処理水をめぐり関係が冷え込む中、日本の政界からの出席者は福田康夫元総理や自民党の二階俊博元幹事長ら、中国との太いパイプを持つお馴染みの面々だ。
各国の大使も集まるのだが、米中の対立が深まる中、アメリカのラーム・エマニュエル駐日大使(63)は出席するのだろうか。「絶対に出ないよ」 関係者は前日までそう言っていたが、当日の朝、「どうやら出席するようだ」という情報が入った。現場に向かう取材班に伝え、知らせを待つ。
エマニュエル大使はSNSでも公の場でも、中国に対して舌鋒鋭く批判を続けている。出席するかどうか、注視していたのだが、大使が妻を伴って会場に現れたと現場の記者から連絡が入った。
しかし、中国の呉江浩大使のスピーチが終わると、声掛けにも応じず消えるように帰ってしまったのだ。大使同士の写真撮影が始まり、エマニュエル大使が紹介されたが、すでに不在という事態になってしまった。その夜、SNSには大使同士のツーショットではなく、中国大使館の総合政策部・羅松濤公使参事官と挨拶する写真がアップされた。
こうしたぎくしゃくした関係になることも厭わず、原発処理水や人権問題で繰り出される、エマニュエル大使の発言の意図はどこにあるのか。
繰り出し続ける中国批判 ついに“自粛要請報道”も
「シェイクスピアが『ハムレット』で書いたように、『何かが怪しい』。国防部部長の李尚福の動静が3週間にわたり途絶えている。」(15日のSNS投稿)
「習政権の閣僚陣は、今やアガサ・クリスティの小説『そして誰もいなくなった』の登場人物のようになっている」(8日の投稿)
中国の要人の消息が絶えたことについてアメリカのエマニュエル駐日大使は日々、挑発するような発信を続けていた。
19日、ニューヨークでの国連総会。演説に立ったアメリカのバイデン大統領は、ロシアを強い言葉で非難する一方で中国については直接的な批判を避けるような言葉を選んだ。「競争が対立に傾かないよう、責任を持って管理することを求めている」「孤立させるのではなく、リスクを分散させることに賛成している」可能な分野で中国と協力するとして、噂される11月のAPEC=アジア太平洋経済協力会議での習近平国家主席との首脳会談の実現に向けて融和を模索する姿勢が垣間見える。
こうした中、米NBCテレビはバイデン政権の側近がエマニュエル大使に対して「米中関係修復に向けた努力を損なう」と、中国を刺激する発信を自粛するよう求めたと報道した。
在日アメリカ大使館は即座に「エマニュエル大使は並外れたアメリカ合衆国の代表として仕事をしている」というホワイトハウス関係者の言葉で、報道を完全否定するコメントを出した。そして、大使自身は、報道後も自身のSNSや発言で中国批判を再び炸裂させるのだ。
止まることないエマニュエル節
22日、小雨がぱらつく東京・六本木の政策研究大学院大学で行われた講演には、エマニュエル大使がどんな発言をするのかを聞こうと多くの人が集まっていた。会場となったホールの上段に設けられたプレス席には海外メディアも多数詰め掛けていた。
大使は講演の2時間前、自身のSNS上でこれまで通り新たな中国批判を投稿。米軍が撮影したとみられる中国漁船の画像や日本海域の地図を示しながら、「日本沿岸で操業を行う中国漁船が同じ海域で再び漁を行っている」と問題提起した。そうした中での講演会で、大使の発言がなおさら注目されたのだ。
参加者の多くは大学院などの研究者ということもあってか、エマニュエル大使は終始穏やかではあるものの、中国の経済的な威圧は執拗で悪質であり、日米や周辺国が対抗していることを、地図や表を用いて説明。そして講演後、アメリカ大使館は記者に対応するため大使が立ったまま質問に答える“ぶら下がり”を設定した。
エマニュエル大使はメディア向けに、しばしばこうした機会を設ける。例えば3月に東京大学の駒場キャンパスで講演会を行った後のぶら下がりは「桜の木が見える場所で」と大使館が指定した。今回は講演会場のホールとは異なる場所に、日本の国旗と星条旗が立てられ、その前に大使が立った。映像でも「日本との連帯」を示す演出をする意図が感じられる。
そのぶら下がりの冒頭、記者が単刀直入に「米メディアはホワイトハウスがあなたに、中国を挑発するようなツイートを自粛するよう求めたと報じたが事実か?」と尋ねると、エマニュエル氏は苦笑いした。そして、右手で額を触りながら「私が言えることは、ホワイトハウス関係者がすでに話しています」と直接の回答は避け、すぐに問題となっている投稿を補強するようなエマニュエル節を展開した。
「3週間半にわたって中国の国防相の行方を皆さん知らないでしょう?」「(処理水放出で)海産物が健康上の問題であるなら、なぜ彼らは漁を続けるのか?」
英仏EUの大使と一線を画す態度 「同盟国の大使としての責任」
エマニュエル大使の中国批判は、いわゆる“西側諸国”のヨーロッパの駐日大使よりかなり踏み込んでいる。
私のインタビューに対して、フランスのセトン駐日大使は2月、中国の偵察気球が米国上空に飛来し撃墜されたことについて「世界はさらなる危機を必要としていない」と語った。EUのパケ駐日大使は7月の日本EU首脳会談を前に「台湾海峡での緊張や、南シナ海での航行の自由については、ヨーロッパでも関心が高まっている」と懸念を示したものの中国を名指しして批判することは避けた。イギリスのロングボトム駐日大使は4月の会見で「イギリスは同盟国やパートナー国との関係を強化して、インド太平洋地域で中国共産党の野心が広がらないよう注視していく」と述べたが、批判の対象はあくまでも中国共産党だということを強調し、トーンはエマニュエル大使より大分柔らかい。
22日の講演後、エマニュエル大使は「なぜ、北京ではなく東京にいる大使が問題提起しているのか?」と問われ、このように答えている。
「最も重要な同盟国の大使として、この地域で何が起きているのか、アメリカや日本がこの地域の課題に対して何をしているのかについて発言する責任がある」
「ランボー」の異名を持つ パワフル大使
エマニュエル大使は1959年シカゴで両親が医者であるユダヤ人家庭に生まれた。ウクライナのオデーサにいた父方の先祖はポグロム(ユダヤ人虐殺)から逃れてきたという。大使はロシアによる侵攻後のウクライナへ大きな関心を寄せ、ことあるごとに言及している。
政界を目指し1993年にクリントン政権で大統領上級顧問に就いたのを皮切りに下院議員、オバマ政権の大統領首席補佐官、シカゴ市長を歴任している。攻撃的な弁舌と行動で「ランボー」の異名を持つ。実力ある政治家としてキャリアを重ねてきたのだ。
今年2月、長年の友人だというNASAのネルソン長官が、アメリカ大使館に招かれた際の挨拶でエマニュエル大使について「大統領の首席補佐官の職を全うした男だから、世界中のどんな仕事もこなすことができる」とそのタフさを評価していた。
ワンフレーズの表現 主張の根幹には「自由」
私は今年だけでも8回、エマニュエル大使を取材している。ホワイトハウス高官やシカゴ市長として、何度も大勢の人間を前に会見をこなした経験があるエマニュエル大使は、他の国の駐日大使に比べて圧倒的に話がうまい。そして、複雑な事象をワンフレーズにして表現する能力にたけている。
「日米関係は『守りの同盟』から『攻めの同盟』に転換している」「NATO新加盟国は自らの意志で西側に加わってきた」「西側には自由や個人を尊重するという引力がある」という表現はよく出てくる。また、「3つのC、新型コロナ(Covid)、中国による威圧(Coercion)、ロシアによる紛争(Conflict)が近年の国際情勢を激変させている」というのもお気に入りのフレーズだ。
3月の東大での講演では、こうしたフレーズを並べて、ロシアや中国による武力や経済での威圧に対して各国が連携して対応しなければならないと力説した後、学生の質問を受けた。香港、イラン、ロシア、などで繰り返された抗議デモへの弾圧について「民主主義の後退ではないか」と問われたエマニュエル大使は言下にそれを否定した。
「民主主義が後退しているのではなく、抗議する若者らは自由のために立ち上がっているのだ」「自由の力を過小評価してはいけない」
歯に衣着せぬエマニュエル大使の発言の背景には「自由」が最優先だという考えが常にある。それは政治や国際情勢にとどまらず、個人の価値観や人権にまで及ぶ。
物議を醸したLGBT論争
福島第一原発の処理水放出を受けて日本の水産物を輸入禁止にした中国の対応を徹底的に批判するエマニュエル駐日大使の姿勢に「日本の政治家が言ってくれないことを言ってくれた」「至極真っ当なことを言っている」と歓迎する反応が寄せられた。
その一方で、LGBTなどの性的少数者の権利擁護を求める発言については「内政干渉だ」と猛烈な批判を浴びた。シカゴ市長時代にイリノイ州の同性婚法制化を実現したエマニュエル大使は、G7広島サミットの開催を前に公的な場で、日本政府に圧力をかける動きを加速させた。
4月に都内で開かれた、性的少数者への偏見や差別のない社会を目指すイベント「東京レインボープライド2023」に参加。「異性婚、同性婚に差はない。結婚は結婚だ!」と17の国や地域の駐日大使らとともに、こぶしを振り上げながら声を上げるよう聴衆に呼びかける。「世論調査ではすでに75%の日本国民が同性婚を支持していて、社会は変化している。遅れているのは政府と政策だ」と訴えた。
さらに、日本の保守層の批判を受けながらも、G7広島サミットの開幕を控えた5月には、15の駐日大使館の大使らが、性的マイノリティーの平等を訴えるビデオメッセージをとりまとめて発信している。
このビデオメッセージに参加しなかったある駐日大使に近い人物に取材したところ、「それぞれの国にはそれぞれの立場があり、政策は日本が決めることである」とアメリカの姿勢と距離を置いたことを暗に明かしてくれた。エマニュエル大使も「日本は主権国家だから、日本のことは日本が決めるべき」と毎回必ずコメントに加えている。
だが、なぜ彼は性的マイノリティーの権利向上について強いメッセージを発し続けているのだろうか。
高校生のときにクラシックバレエにのめり込んでいたエマニュエル大使。4月の内外情勢調査会の講演で、1970年代に男性がバレエをすることで後ろ指を指された苦い経験や、自身の結婚式のベストマン(新郎のサポート役)は同性愛者で、家族ぐるみの付き合いをしていることを明かした。その上で、2人の人間が愛する気持ちは何が何でも守られるべきだと熱弁をふるったのだった。
日本との関係 その先のキャリアは?
日本に大使として赴任してから、毎朝早朝に起きて、トレーニングを欠かさないというエマニュエル氏。鉄道好きの「鉄オタ」として知られ、日本各地を移動する様子を頻繁に自身のSNS上にアップして注目されている。地方視察の際に乗る在来線では、大使館関係者が席につくなか1人だけ座らず、つり革を握って立ったままでいるという。ここまで精力的にタフに動き回っている駐日アメリカ大使は極めて稀だろう。
アメリカ大使館関係者に話をきくと、エマニュエル大使は日本のメディアでの報道をよくチェックしているというが、それ以上にアメリカで自分がどのように報じられているかを気にするという。日本から強いメッセージを発し続けることで、アメリカ国内に自分の存在を示しているのかもしれない。現在63歳のエマニュエル氏のこれまでの経歴をみると、駐日大使というポストで引退するように思えない。
22日の講演会を取材していた、欧米メディアの記者は「次の大統領選挙後、彼は国務長官などの政権の重要ポストを狙っているのではないか」と口々に話していた。この講演会でのエマニュエル大使の発言は、ロイター通信が速報し、中国外務省もその日の夕方の会見で反応した。米NBCの“自粛要請報道”も、注目されたという点では、彼にとってはポイントになったのかもしれない。
●未婚の蔡英文総統に 「親心をわかっていない」と批判も 9/30
台湾は日本より女性が政治活動しやすいのか
岸田文雄首相が行った内閣改造では、54人の副大臣・政務官がすべて男性だったことに驚きの声が上がった。トップが女性の台湾は、蔡英文総統をはじめ閣僚級7人が女性。単純に比べられないが、日本の副大臣・政務官クラスには、20人以上の女性が選ばれている。そもそも立法院(国会)の議員の人数に占める女性の割合が高いのだ。ただ、その背景は、女性が社会進出しやすい状況にあるというわけではなさそうだ。
2020年の立法委員(国会議員)選挙の当選者は113人中、女性は47人(前回より9.3%増)、男性は66人(前回より5.7%減)で、女性の割合が初めて4割を超えた。
地方議員レベルでも女性は増え続けている。2022年11月の統一地方選挙で、新たな直轄市議、県議、市議、郡・町・市民代表など約3千人の女性代表が選出された。内政部(総務省)の統計では、当選した女性の割合が直轄市議は約40%、県市議が約36%、郡・町・市民代表が26%だった。いずれも過去20年間で最も高い割合になった。
「婦女保障名額」とは
立法委員の女性の数を確保することを義務づける「婦女保障名額」という規約もある。立法委員選挙のうち比例代表で選出される議席は、「女性を50%以下にしてはいけない」という条項である。これは「クオータ制」と呼ばれ、マイノリティーへの格差是正をめざすもので、先進国を中心に100以上の国・地域が採用している。
台湾がクオータ制を採り入れた経緯に詳しい、台湾大学政治学科の黄長玲教授によれば、きっかけは1996年、台湾初の総統直接選挙を経て、民主化が進んだ李登輝政権のもと、全土の地方議会にクオータ制を採り入れる法改正が実現したことだという。
議会の男女格差の縮小を求めていた民間団体が、当時野党の民進党に圧力をかけ、1996年に党の候補者の4分の1を女性にする方針を採用させた。さらに、李登輝政権で生まれた女性初の内政部長(総務相に相当)だった葉金鳳氏にクオータ制の導入を訴えたという。
「時代の流れ」を感じた葉氏は、地方議会の各選挙区で当選者の4人に1人は必ず女性に割り当てる改正案を内閣として提出し、成立させた。民間団体に押されて女性候補者を増やした民進党は、女性を重視する政党というイメージを世論へ広め、国民党へ圧力をかけた形になったという。
各党はこれ以降、優秀な女性の発掘に努め、多くの女性候補が男性候補にも競り勝った結果、優先枠を使わなくても当選するケースが続出してきた。
地方議会で強まった女性の政界進出の動きは2005年、立法院の比例区の男女比を5割ずつとする選挙制度改革へと発展した。2008年の総選挙から加えられた条項で、113議席の約3割にあたる比例区の34議席が男女同数になった。そして2020年には4割の立法委員が女性で占められるまでになったわけだ。
名家を背負っての政治活動
そんなクオータ制のなかから生まれた立法委員で民衆党の呉欣盈さん(48)に話を聞いた。呉さんは台湾の企業グループである「新光集団」の保険部門の副CEOのキャリアを持つ。新たな政党である民衆党に望まれ、議員になった。
呉さんのいる議員会館を訪ねると、外資系企業のように英語でのミーティングが声高に響いていた。そんななかで「私の父は早稲田、母は明治なんです」と片言の日本語で話してくれた。
立法委員になってからも仕事への姿勢は、ビジネスの延長線上になっているようだった。
「私の活動が、台湾の政策になると思ったら、達成感がある」
呉さんの場合は、名家を背負っての政治活動という一面もあった。母方の祖父も政治と関わっていて、おじの呉東昇氏は李登輝元総統を中核した政党「台湾団結連盟」から立法委員になっている。
一方、地方で議員活動に力を入れる女性もいる。
「女性は、男性のとは違う包容力や優しさで、より民間に対していい仕事ができるはず」
そう話すのは、5年前に台北市内で初めて選挙に出馬して里長(地区代表)に当選した林佩燕さん(55)。同地区で長期間里長を務めていた父が高齢になり、その地縁をバックに立候補したという。
とはいえ、女性が議員として活動することは、決して簡単ではないという。
「女性は子供や家庭の面倒をみることも要求されるため、政治活動だけに没頭できる男性よりキツいです。1日48時間分、働かなくてはいけないんです。『女だからダメだ』と言われるのをはねのけるために、家庭もケアしながら結果を出さなくては評価されない」
林さんはそう話し、こう続けた。
「台湾の女性議員たちは、ボランティアなど人に奉仕する仕事から頭角を現す人が多いですね。男性のように強烈な指導力を発揮するかどうかは別として、ソフトなイメージで外堀を埋めていく、という手法が効果を上げるようです」
林さんには子供が3人いる。選挙に出ることに対し、家族全員から、「個人攻撃などをされて傷つく姿を見たくないし、自分で商売もしているのに、なぜそれをやめてまで社会へ奉仕する必要があるのか?」などと反対されたという。
「台湾の女性は政治参加の途上」
前出の黄教授は女性議員と保障枠の問題をこう話す。
「(台湾では)政治参加の途上で、女性は男性よりも多くの障害に直面します。女性は社会的に、結婚と出産への期待が含まれますから、女性議員は独身者の割合が高い。『子育てに忙しくて、公務に支障が出るのでは?』といった意地悪な質問も避けられる。ただ、未婚の蔡英文総統は『(子供を産んでいないから)親心をわかっていない』などと批判を受けることもある」
そうした面があることを踏まえたうえで、クオータ制の意義についてこう語る。
「女性政治家はセクシュアルハラスメントにさらされる可能性も高い。2019年、民進党の最年少立法委員候補であるョ品、さんは、出馬を発表した直後、水着の写真を暴露され、性的な意味を持つ言葉で侮辱された。女性はそういう環境がわかるから、政治活動に興味があってもちゅうちょしてしまう。クオータ制、つまり保障枠の設置は、そんな女性の意欲を高めることに役立っています」 
●旧統一教会の解散命令請求へ 10月12日にも宗教法人審議会 9/30 
政府は宗教法人法に基づき、旧統一教会の解散命令を請求する方針を固めた。7回の質問権行使で集めた資料や高額献金被害者の証言を精査した結果、解散命令の要件を満たすと判断した。文化庁が10月12日にも宗教法人審議会を開いて報告し、その後に東京地裁へ解散命令請求を申し立てる方向で調整している。政府関係者への取材で30日、分かった。
宗教法人法は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」があった場合、所轄庁などの請求によって裁判所が解散を命じることができると規定。解散命令が出た場合、宗教法人格を失い、税制上の優遇措置が受けられなくなる。
文化庁は解散命令につながる法令違反などが疑われるとして、昨年11月以降、旧統一教会に対して質問権を計7回行使。組織運営や財産・収支、教団の法的責任を認めた民事判決、教団本部がある韓国への送金などについて報告を求め、資料の提出を受けた。並行して、高額献金被害の規模や実態を明らかにするために多数の被害者の聞き取りを実施してきた。 

 

●岸田首相「臨時国会に補正予算提出」を明言 解散風を沈静化? 9/29
岸田首相は、先ほど首相官邸で、10月20日から臨時国会の召集が決まったことに関連して、10月中にとりまとめる経済対策の裏打ちとなる、補正予算について「臨時国会に提出したいと思う」と述べた。
臨時国会を開いて、補正予算を国会に提出せずに、衆議院の解散に踏み切るのではないかとの観測について、沈静化を図った形となった。
●国民に手間をかけさせ「マイナ保険証」を強制する岸田政権… 9/29
メリットが乏しいのに「2万マイナポイント」だけで普及をはかる愚策
現在、申請中も含めると、日本国民は9000万枚を超えるマイナンバーカードを持っていると言われている。しかし、カードを持つことでのメリットはあまり感じることがない…政府は「こんなに便利!」と強調していたはずだが、いったいどうなっているのか。
『マイナ保険証の罠』 より、一部抜粋、再構成してお届けする。
マイナンバーカードのメリットとデメリット
そもそもマイナンバーカードとは、どんなもので、どんなメリットがあるのか? そう聞かれると、自信をもって答えられる人は多くないでしょう。
本来ならば、国は、マイナンバーカードが本人証明のためのカードであること、マイナポータルに個人情報を(本人の同意の上で)集めて、民間も含めて、使用する目的のものであることを丁寧に説明すべきでした。
後述するように、「自分は同意した覚えはない」という情報でも、「同意しない」とわざわざ言わなければ、同意したものとみなされ、いつのまにかマイナポータルで見られるようになっている、といったケースもあります。
こう書くと、「カードをつくる時に、そんな説明はされなかった」と言う人がほとんどでしょう。でも、丁寧に「あなたの個人情報をすべてマイナポータルで見られるようにしてあるので、もし、情報が漏れても、自己責任でお願いします」などと言ったら、多くの人がノーと言うに決まっています。
そこで、政府は、そんなことは一言も言わずに、「マイナンバーカードを持っていると、こんなに便利です」という説明を繰り返してきたのです。
しかし、マイナンバーカードはそんなに便利なのか?
いまでは9000万枚を超えるほど普及しているはずですが、「やっぱり便利で、マイナンバーカードなしにはやっていけない」という声は聞いたことがありません。マイナンバーカードなどなくても、ほとんどの人は、それほど生活に不便は感じていないというのが、私の実感です。
国は「こんなに便利!」と言うけれど……
国も、便利でなければカードが普及しないということは、重々承知していたはずです。ですから、パンフレットなどでは「こんなに便利!」と強調した宣伝をしています。
ただ、こんなパンフレット(図12)を見せられても、首をかしげる人が多いのではないでしょうか。
「公金受取口座の登録で給付金等の受取がカンタン!」と言われても、マイナンバーカードを使ってコロナの時の10万円の給付金をオンラインで申請した人は、「便利」どころか、紙やプラスチックの保険証で郵送申請した人よりも給付が遅くなったり、オンラインでの受け付けができない自治体が出てきたりで、ひどい目に遭いました。
コロナのワクチン接種証明も、証明書を出せと言われるケースが少なかっただけでなく、民間で操作が簡単なワクチン証明書がどんどん出てきたので、ことさらにマイナンバーカードで電子証明を行う必要性が感じられませんでした。
確定申告も、年に1回のことだし、サラリーマンだと医療費控除を申請するくらいで、マイナンバーさえあれば、マイナンバーカードをわざわざつくらなくても、国税庁のページに入って、簡単に確定申告ができます。
これでは、カードがなかなか普及しなかったのもうなずけます。サービスを受けるはずの国民から見て、特に便利に感じられず、魅力に乏しいのです。
結局2万円のマイナポイントが普及の決め手に
現在、申請中も含めると、日本国民は、9000万枚を超えるマイナンバーカードを持っています。マイナンバーカードがここまで普及した最大の理由は、間違いなく、最高で2万円ぶんのポイントがもらえる「マイナポイント」にほかなりません。
これは逆に言うと、2万円のプレゼントをつけないと、カードをつくる人が増えなかったことになります。もし、「マイナンバーカード」が本当に便利なカードだったら、2万円ぶんのポイントなどつけなくても、みんな持とうとするはずです。
ちなみに、今まで政府は、「マイナンバーカード」の普及のためにトータルで約3兆円の税金を使っています。
これは、2021年3月の衆院内閣委員会で、当時首相だった菅義偉氏が明らかにした数字ですが、過去9年間で8800億円の税金が使われていました。さらに、その後普及のためのポイントのキャンペーンにつぎ込まれた予算は累計で2兆円以上になります。
普及のために約3兆円もの税金が使われたということは、国民ひとり当たり約3万円の税金が使われたということ。2万円ぶんのポイントをもらっても、本当は、そんなに喜べる話ではないはずです。
国民に不便を強いて「マイナ保険証」を強制
こうして2万円のプレゼントつきで、ようやく国民に持たせることができたマイナンバーカードですが、使い道がなければ、意味がありません。
そこで政府が目をつけたのが、国民の誰もが加入している健康保険制度でした。
みんなが利用している健康保険証を廃止して、「マイナ保険証」を義務化することで、マイナンバーカードを事実上の「強制」に持ち込もうとしたのです。
健康保険証の廃止が発表されるまで、マイナ保険証に切り替えていた人は20%程度でした。第四章で詳しく述べるように、医療機関などでも、導入のハードルが高いこともあって、普及が進んでいなかったのです。
いわば「マイナ保険証を持っていると便利だから」ではなく、「マイナ保険証を持っていないと、医療機関にかかれなくなる」と、国民に不便を強いることでマイナ保険証を押し付けたわけです。
●岸田首相 「増税メガネ」呼称にご立腹… 国民は「収支報告書ミス」に怒り 9/29
「これでよくも国民に増税をお願いできるもんだ」と呆れる声が聞こえてきそうだ――。
「岸田首相が代表を務める自民党広島県第1選挙区支部が、2021年に自民党柔道整復師連盟支部からの寄付金10万円を政治資金収支報告書に記載していませんでした。
ほかにも自身の政党支部から500万円の寄付を受けた日付、自身の後援会と資金管理団体で650万円をやりとりした日付などが間違っていたケースが計9件わかりました」(政治担当記者)
首相は2022年にも2021年分の政治資金や選挙費用などで領収書のただし書きや宛名の空欄、誤記載が判明、そのときは『不備はあったが適正な支出だった』として追及を逃れた。
ほかにも現内閣では加藤鮎子こども政策担当相が代表を務める資金管理団体が、法律の上限を超える政治資金パーティ券代を2021年の政治資金収支報告書に記載、「寄付として処理すべきものを、パーティー券収入として記載してしまった」と陳謝した。
高市早苗経済安全保障担当相、萩生田光一政調会長、小渕優子選対委員長らが、国政選挙に際して、国の事業を請け負う業者からの寄付を禁止する公職選挙法に抵触する疑惑も明らかになっている。
これには、民間企業の経理部社員も本誌に怒りをぶちまける。
「我々だったらとても許されません。経理担当者は処分対象ですよ。しかも10月からインボイス制度が始まります。国は企業などに取引日付、請求者と買い手の名称、税率と額、消費税額など帳簿記載の厳格化を求めています。それなのに政治家は『間違えました。訂正します』で済むんですからお花畑です」
ネット上でも、怒りの声が多く寄せられている。
《個人事業主なら記載ミスで許されませんからね。国会議員には甘く国民には厳しい日本の構図がよくわかる》
《ミスでしたって言葉で片付けるなよ 民間はこういうミスで脱税扱いされるんだから》
《一般人が申告をミスしたら追徴課税に重加算税。政治家は修正さえすればおとがめ無し》
《客商売でお釣りを一円間違うとお客さんとトラブルになります》
しかし岸田首相が気にするのはそういった声ではなく、あの「あだ名」らしい。官邸関係者が語る。
「マスコミで『増税メガネ』が話題になっていますが、ついに首相本人がそのあだ名を気にしはじめたのです。解散が視野に入り、増税のイメージが先行するのは、政権にとって致命的です。
そこで減税という言葉を多用していますが“増税メガネ”を取り上げる報道は収まりません。首相は『レーシックでもすればいいのか?』とご立腹です。我々は『現実が視えるようになればいい』と囁き合っているのですが……」
国民の声に耳を傾け、国民のためになる政治をしてくれれば、誰も「増税メガネ」と言わなくなるのだが……。
●去年の政党交付金 使われた金額は341億円 選挙関係費や人件費は減少 9/29
去年の政党交付金について、総務省がその使い道をまとめました。9つの政党が使った総額はおよそ341億円です。
政党交付金は、人口1人あたり250円=総額でおよそ320億円を、所属する国会議員の数や選挙での得票数に応じて、各政党に配分する仕組みとなっています。
共産党は、この制度そのものに反対して交付金を受け取っておらず、去年は9つの政党に合わせておよそ315億円が交付されました。
これに前の年に使い切らなかった分を加えて、9党が去年支出した額は、合わせておよそ341億円となりました。
もっとも多く使ったのは自民党でおよそ172億円、次いで立憲民主党のおよそ73億円、公明党のおよそ34億円となっています。
前の年より各党の選挙関係費や人件費が19億円少なくなりました。
総務省は選挙関係費が少なくなった一因として、去年は参院選があったものの、衆院選のあった前の年より候補者が少なく支出が減ったと考えられるとしています。
それでもおよそ255億円は使い切ることなく、翌年に繰り越しとなっています。
●自民党が「エッフェル姉さん」松川るい議員を副幹事長に起用、批判殺到 9/29
「エッフェル姉さん」の蔑称で知られる松川るい参院議員が、自民党の副幹事長に起用されることが決まった。「ただの観光旅行」と批判を浴び、はげしく炎上したフランス研修から2カ月しか経過しておらず、SNS上では「国民をなめすぎ」と怒りの声があがっている。
問題のフランス研修には、自民党女性局から38人が参加。松川議員はエッフェル塔前で喜々としてポーズをとった写真を7月27日にX(旧ツイッター)に投稿し、はげしく炎上。松川議員は7月31日、写真を「問題だとは思っておりません」としつつ「ご迷惑がかかるとしたら本意ではありません」として削除した。その後、8月に局長を辞任し、SNSでは沈黙をつづけている。
不祥事から間もない議員を党要職にあてる人事に、X(旧ツイッター)では右からも左からも批判が集中。「もはや、国民にケンカを売ってるとしかおもえない」「フランス視察の成果報告もまともにできない者になにができるんですかね」「『お前らの抵抗は無駄だ』と無力感をすりこむための人事」「”悪さ”で出世する組織?」「自民党って、ホント世論が見えてないんやな」などと厳しい意見があいついでいる。
また、自民党はアイヌ民族や性的少数者に差別的な言動をくりかえしてきた杉田水脈衆院議員を環境部会長代理に起用する人事も決めた。これに対しても「自民党は人権=差別問題にまったく反省がありません」「一定の禊期間は必要では?」と疑問の声がぞくぞくとあがっている。
●フランスの女性議員が衝撃を受けた、日本における「学校と政治のかかわり」 9/29
先日、東京国際フランス学園を訪問した。主にフランスの幼稚園、小学校、中学校、高校のカリキュラムに沿ってフランス語で教育をする学校であり、3〜18歳の生徒たちは日仏ハーフが多い。今回は取材が目的で、来日したフランス国民議会(下院)のヤエル・ブロン・ピベー議長に同行した。
国民議会初の女性議長である彼女はその日、高校の2〜3年生と対話するためにフランス学園を訪れた。対話のテーマは「選挙および民主主義」。選挙や民主主義とは何かといったことだけでなく、民主主義が機能するためには具体的に何が必要なのかといった話もあった。
ブロン・ピベーは高校生にこう語りかけた。「あなたたちも政治に参加すべきだ。政治は日常生活に関わるのだから、政治家に任せることではない。われわれ政治家がいま決定することは、20年、30年、50年後の未来を左右する。それはわれわれが死んだ後のことだ。あなたたちの意見を聞かずに決定するのはよくない」
そして、彼女はいくつかの例を挙げた。1つ目は原子力。どこかの国が原子力発電所の建設を決定した場合、実際にその発電所を運転するのは現世代ではなく次世代になる。つまり、現世代が次世代の未来の一部を決めたということだ。
2つ目の例はコスタリカだ。コスタリカは軍隊も自衛軍もない国で、その代わり教育や社会保障制度に投資している。想像しにくいかもしれないが、それも長い目で見た場合の一つの選択肢だ。
高校生が考える「若者の投票率が低い理由」
そういった大きな選択をするときには、国民も参加すべきだと議長は強調した。フランスでは選挙権年齢は18歳だが、16歳に引き下げるべきではないかという議論がある。これについて議長が当事者である高校生たちに聞いたところ、答えは圧倒的に「反対」だった。18歳でも投票率が低いのだから、16歳にして改善すると思わない、と。
では、なぜ投票率が低いのか。彼らの答えは大変興味深かった。マスコミが報道する政治のことは、高校生たちの興味のあるものではないという。
彼らは日本に住み、二重国籍を持つ人も多い。18歳になったら日本の選挙権も持つことになる。それでも、日本で政治家が学校を訪問して、議長と同じような話をすることはあまり考えられないだろうが、彼女にそう伝えたらとてもびっくりしていた。
「政治に参加することが民主主義の基礎だ」
「政治家が学校に行って、民主主義の重要性を語るのは欠かせないことだ。そうしないと、若者の政治離れを防げない。政治に参加することが民主主義の基礎だ」。そう話す彼女はエマニュエル・マクロン大統領率いる与党に所属し、マクロンの政策の支持者だが、高校生との議論のときにはそれを全く感じさせなかった。つまり、中立性のある議論ができていた。
日本の政治状況、特に女性議員の割合が低いことについての質問もあった。議長は逃げずに答えた。
「女性の政治家を増やすための方法はたくさんあるわけではない。まず、候補者や議席の一定数を女性に割り当てるクオータ制を法律で定めないと無理だ。積極的に女性を増やしたいという政治家の気持ちと行動も必要になる。また、より多くの女性が政治に参加するということは、男性の一部を追い出すことでもあると認識しないといけない。日本がその3つの要件を満たせるかどうかは分からないが、そうしないと女性議員の数を大きく増やすことは無理だ」
日本の学校でも、政治についてこんな自由な議論をすることが可能なのか。可能であってほしいと思うが、正直言って難しいだろう。政治家が授業の内容に関与してくるという点について、親の不安が避けられそうもない。 
●ドル150円後の展開、上下のリスクは原油高と米景気失速 9/29
9月19、20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)と21、22日の日銀金融政策決定会合を通過し、両者のスタンスの違いが再確認された。週明けのドル/円は149円台まで上昇しており、150円の大台もいよいよ現実味を増してきた。そこで、本稿ではドルと円の状況をそれぞれ俯瞰(ふかん)しながら、2023年度後半のドル/円相場を展望する。
タカ派スタンスのFRB
FOMCではドットチャートを通じ、年内の追加利上げの可能性が示された。来年以降の利下げ幅も6月に比べると半減し、市場の利下げ期待がけん制された。経済見通しでは、実質国内総生産(GDP)の成長率が引き上げられ、失業率は引き下げられた。景気の先行きに対する慎重な見方が後退しており、FOMC参加者のインフレ警戒は緩んでいない。
当面、米国債利回りの上昇につれ、ドルが小じっかりと推移しそうだ。ただ、記者会見で米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長はインフレに沈静化の兆しもみられるとし、その一因にこれまでの引き締め効果を挙げる場面もあった。実際には年内の追加利上げが見送られる可能性も残る。
とは言え、その場合もドル安に転じるとは考えにくい。というのも原油価格の上昇を受け、ここから年末に向けて、少なくともヘッドラインのインフレ率には上振れ圧力が加わる公算が大きいからだ。そのケースでは、追加利上げ観測が来年以降に持ち越され、利下げ時期が後ずれするとの見方も強まろう。
加えてしばらくの間、ドルにはこうした金融政策を巡る思惑とは異なる上昇圧力も加わる可能性が高い。
ドル高の季節到来か
まず、原油価格の上昇がドル高要因となりそうだ。世界有数の産油国となった米国にとって、原油高は貿易収支や交易条件の改善を通じた通貨高要因となるためだ。特に、北半球が冬場に突入し、需要が高まるにもかかわらず、ロシアやサウジアラビアは少なくとも年内いっぱい減産を続ける見通しだ。
次に、有事のドル買いが挙げられる。足元では、中国経済の先行きに暗雲が立ち込めており、総じて世界的に株式相場が不安定な値動きをみせている。
これに米国では、再び政府機関閉鎖の懸念も加わりつつある。7月25日付のコラム「安全資産から転落した円、スイスフランにみる反転のヒント」で示した通り、リスク回避局面での円買いが限定的となった分、有事のドル買いが以前にも増して顕在化しやすい。実際、昨秋以降、XIX指数(.VIX)とドル指数との間に、高い順相関の関係性が認められる。
このほか、季節的なドル高要因も加わってくる時期だ。例年、第4四半期は、年末越えのドル資金の需給が引き締まり、為替市場でのドル高に波及する傾向がみられる。例えば、2013年から2022年までの10年間のうち、9月末よりも年末の方がドル高・円安となった年が7回を数える。
依然目立つ円安材料
日銀や円相場の状況も確認しておこう。金融政策決定会合後の記者会見における植田和男総裁は、総じてハト派姿勢と映った。フォワードガイダンスを含め、政策が維持された点は概ね想定された通りだ。
にわかに高まっていた早期のマイナス金利解除観測に関し、植田総裁は市場の受け止め方を否定した。ほかの金融政策の正常化に関する質問に対しても、決め打ちできる状況にない点を繰り返し、市場に予断を与えなかった。特に会見中に円安が進行したわけでもないが、漠然とした円安期待を残したはずだ。
ほかにも依然として円安材料が目立つ。原油価格の上昇は、米国とは対照的に日本にとっては貿易赤字の拡大と輸入物価指数の上昇による交易条件の悪化を通じ、円安に作用しやすい。
また、原油価格の上昇を受け、輸入インフレの再燃が必至の情勢だ。名目金利がそれほど上がらなければ、実質金利が低下し、これも円安圧力となる。
加えて、長期金利が上がったと言っても、世界的にみれば低金利通貨である点に変わりはない。現在のように為替市場のボラティリティが低いままとあっては、円のキャリートレードが一定の円安圧力となりやすい。事実、投機筋による先物市場での円の売り越し幅は拡大傾向にある。
先に述べた複数のドル高要因と合わせて考えると、年内はドル/円の堅調推移が見込まれ、昨年高値である151.94円を上抜けする可能性も非常に高い。
メインシナリオはドル/円ピークアウト
もっとも、米国の利上げは「あってもあと1回」とみなされている。来年のいずれかのタイミングで利下げに転じるとの見方も変わっていない。さらに、インフレの粘着性に着目すれば、日銀も来年のどこかで金融政策のかじを正常化へ切り始める公算が大きい。
そうしたことを見据えると、年度末にかけての日米金利差は拡大するより、限定的ながら縮小する可能性の方が高いのではないか。2022年以降の日米間の名目長期金利差とドル/円の散布図を描くと150円台は既にオーバーシュートの領域でもあり、155円に達することなくピークアウトすると考えられる。
もちろん、日本の貿易赤字が定着しつつあり、引き続き円が相対的にみた低金利通貨であることには変わりない。ピークアウトしたからと言って、ドル/円がそのまま下落トレンドに入るわけでもなかろう。年度末にかけて、140円大台で推移する時間帯が長引くのではないか。
上下双方のリスクシナリオは何か
最後にこのメインシナリオに対する上下双方のリスクシナリオを検討しておく。まず、ドル/円がメインシナリオの想定を超えて上抜けするのは、米国のインフレが再燃し、複数回の利上げ観測が浮上する場合だろう。
足元における需給悪化への懸念も相まって米国の長期金利が5%に迫れば、ドル高を支えにドル/円も一段高となりそうだ。加えて、市場がリスク回避的となれば、有事のドル買いも加わるだろう。
こうした場面では、日銀の金融政策のスタンスが多少変化したところで、そのインパクトは限られよう。本邦の円買い介入の効果も大きく削がれるはずだ。
反対に、ドル/円が130円大台へと大きく値下がりするのは、ドル安の流れに円高も重なる場合だ。ドル安が生じるとすれば、米国の景気後退入りが現実味を増し、利下げが前倒しで行われるとの見方が強まるとみられる。インフレ率の低下に伴う実質金利の上昇や量的引き締めの進展、銀行の融資スタンスの厳格化など、実体経済に悪影響を及ぼしかねない動きを注視していく必要がある。
一方の円高は、日銀が来年早々にも例えばマイナス金利の解除に踏み切るケースだ。サプライズも加わり、円高の勢いがしばらく続きそうだ。その可能性を占う上で、差しあたって10月は日本労働組合総連合会(連合)が2024年度春闘に向け、どの程度の賃上げを要求するのか、10月末の経済・物価情勢の展望(展望レポート)で日銀が2024年度以降の物価見通しをどのようにみているか、注目を要する。
多くの国や地域で利上げが終盤戦に突入した一方、原油価格の上昇がインフレ制圧に影を落としている。引き続き経済データなどを丹念にチェックしながら、シナリオを修正していくほかないであろう。
●「エコテロリスト」とは誰か──過激化する環境活動家とその取り締まりの限界 9/29
・欧米では地球温暖化対策が不十分と訴える活動家による抗議活動が過激化している。
・これに対してメディアでは「エコテロリズム」といった用語が流布している。
・しかし、環境保護のために過激な手段を用いているとしても、そのほとんどはテロリストと呼びにくいが、このまま社会と隔絶し続ければ環境テロが本格化する恐れが大きい。
欧米では環境活動家の過激化を「エコテロリズム」と表現することが増えている。
ブランデンブルク門を毀損したのは
ドイツの首都ベルリンで9月17日、環境団体「ラスト・ジェネレーション」の活動家がブランデンブルク門をスプレーで着色し、警察は14人を拘束した。1791年に完成したブランデンブルク門はベルリンのシンボルである。
現場の動画をSNSに掲載したラスト・ジェネレーションは「政治変革の時がきた」と高らかに叫んだ。
ラスト・ジェネレーションはドイツをはじめヨーロッパ各国で拡大しており、環境意識の高い若年層を中心にするとみられる。
そのほとんどは自国政府の温暖化対策を不十分と批判し、2030年までに化石燃料の使用を終わらせることを主張している。これは国際的な目標より遥かに高い水準だ。
こうした主張のもと、ラスト・ジェネレーションはしばしば幹線道路で座り込んだり、航空機の離発着を妨害したりするなど、人目をひく活動を行ってきた。そこには温室効果ガスの主な排出源である自動車や飛行機の使用が、ほとんど規制されていないことへの批判がある。
ラスト・ジェネレーションはドイツ以外でも、例えばイタリアでは観光名所のトレビの泉で黒い液体を撒くなど、文化財を標的にした抗議活動が目立つ。注目を集めて、温暖化対策を加速させる世論を喚起しようというのだろう。
「エコテロリズム」批判の高まり
しかし、当然のようにこうした活動への批判もある。
文化財の毀損に対して、イタリア当局は10,000〜60,000ユーロ(約150〜950万円)の罰金を科す構えだ。
ドイツでもブランデンブルク門のあるベルリンのウェグナー市長は表現の自由を尊重すると断った上で「こうした活動は文化財だけでなく、我々の未来にかかわる重大な問題に関する議論をも傷つける」と述べた。
道路封鎖に関しても同じで、座り込んだ活動家たちはしばしば警官だけでなくドライバーとも悶着を引き起こしており、ドイツのショルツ首相は5月、「何の解決の役にも立たない行動だと思う」「完全に馬鹿げている」と批判した。
ドイツ警察は5月、全国15カ所に一斉に踏み込み、パイプラインへの妨害活動を計画していた容疑などでラスト・ジェネレーション活動家7人が逮捕された。
ウクライナ侵攻後に高騰する天然ガスの需要を満たすため、ドイツ政府は北海海底で新たなガス田開発を検討しているが、ラスト・ジェネレーションはこれに反対し、4月末に活動家が5カ所のパイプラインを手動で停止させていた。
こうした過激な活動を行う団体はラスト・ジェネレーションだけでなく、欧米メディアではエコテロリズム、気候テロといった用語も定着している。
「テロリズム」なのか
道路封鎖や文化財の毀損が迷惑行為、不法行為であることは間違いない。「エコテロリズム」という用語がキャッチーで、メディア受けすることも確かだ。
ただし、実際にテロと呼べるのか、あるいはその呼称が妥当なのかは疑問である。テロと呼ぶには実際の行為があまりに不釣り合いだからだ。
文化財の毀損は容認できないし、修復費用の請求も妥当だろう。
バンダリズム(公共物とりわけ一般的に高く評価されている建造物や文化財の破壊)はテロの一つと認知されている。その意味で、ラスト・ジェネレーションなどによる文化財攻撃は、アフガンのイスラーム組織「タリバン」が行ったバーミヤン仏教遺跡の爆破や、欧米でしばしば発生するユダヤ教徒の墓石の破壊と、毀損の程度に差はあれ、本質的には同じだ。
しかし、それを除けば、環境活動家による直接行動の損害や影響が「テロ」と呼ぶに値するかは疑問だ。例えば、そのパイプラインや発電所などへの不法侵入のほとんどが操業・建設の中止を求めるものだ。
これに対して、イスラーム過激派や極右過激派にはインフラの破壊を目指すものも少なくない。とりわけアメリカでは「腐敗した体制をひっくり返す内戦」を目指す極右過激派による事件(未遂を含む)が増加している。
極右組織「アトムワーヘン分隊」創設者ブランドン・ラッセルは2017年に爆発物所持の容疑で逮捕されたが、公判ではユダヤ教のシナゴーグや送電線とともに原子力発電所までも標的にした爆破計画が明らかになった。極右によるこうした事件はアメリカだけで2020〜2022年に14件発生した。
武器を持たずにパイプライン施設に新入し、自分の手でバルブを締めようとしたラスト・ジェネレーションの活動家とはだいぶ異なる。
「テロ」の認知の重み
環境団体のなかでも、テロリストと呼ぶに相応しいものはある。
アメリカを本拠地とする地球解放戦線(ELF)は2001年頃からエネルギー企業などに対する爆破事件(未遂を含む)をしばしば引き起こし、アメリカ政府から国内テロ組織に指定されているようなものもある。
しかし、少なくともラスト・ジェネレーションのように昨今メディアの注目を集める団体の活動のほとんどは、文化財毀損を除くと威力業務妨害に当たるとしても破壊活動とは呼べない。
そもそもテロリズムとは政治的信条に基づく暴力だが、基本的に殺人、集団での襲撃、誘拐、放火・爆破といった、人間の生命・安全にかかわる破壊活動を組織的、継続的に行うものを指す(逆に、破壊活動に政治的目標や主張がない通り魔やサイコパスなどはテロリストと呼びにくい)。
極右でもヘイトスピーチを繰り返すだけなら過激派と認知されてもテロリストとは呼ばれない。アメリカ大使館の前で星条旗を燃やすイスラーム主義者も、過激派ではあるだろうが、それだけならテロリストではない。
社会にとって著しく危険と認知されるからこそ、公的機関はテロリストに対して日常的な監視、逮捕、資産凍結、組織の解散といった厳しい対応を行える。
テロの呼称にはそれだけの重みがある。
ラスト・ジェネレーションなどの直接行動の多くは、そこまでの深刻さがない。端的にいえば、誰も殺されていない。
道路封鎖をする活動家は、ほぼ無抵抗のまま警官などに強制的に運ばれることがほとんどだ。この点だけなら、インド独立運動におけるマハトマ・ガンジーや公民権運動におけるキング牧師らの非暴力路線に近い(後に広く賞賛される彼らも当時「テロリスト」と呼ばれた)。
少なくとも、環境過激派のほとんどは対立者への暴力を誇示してきたアルカイダやKKK(アメリカの白人至上主義団体のルーツの一つ)と異なる。
解散命令は有効か
だからこそ、エコテロリズムや気候テロといった呼称がメディアで流布しても、環境過激派を正式にテロリストと扱うことは各国政府にとって難しい。
その一例としてフランスを取り上げよう。
フランス政府は6月21日、環境保護団体「地球の反乱(SLT)」に解散命令を出した。その前日、SLTメンバー18人が逮捕され、ジェラール・ダルマニ内務大臣は「集団的な暴力は容認されない」と主張した。
そもそもラスト・ジェネレーションは確固たる組織ではなく、ネット上で結びついた緩やかなネットワークである。
そのため「解散命令」そのものがシンボリックなものだが、それでもマクロン政権が環境団体を違法化したのは初めてのことで注目を集めた。
フランスでは3月、西部サン・ソリーヌで地下水を大規模に汲み上げて作られた貯水池に反対する約5,000人のデモ隊が3,000人の警官と衝突した。フランス政府はこの衝突で30人の警官が負傷したと発表したが、デモ隊の側について詳細は明らかでない。
SLTはこのデモの主催団体の一つで、国外からも参加者を募っていた。
SLTはこれ以外にも、イタリアと結ぶ新たな高速鉄道の建設に反対する違法デモ計画や、フランスを代表する建設企業の一つラファージュのセメント工場における器物損壊などの容疑がもたれている。
ところが、こうした理由からフランス政府が出した解散命令は、8月に裁判所によって停止された。行政裁判所は政府の解散命令が結社の自由に抵触するため慎重である必要を指摘し、SLTが暴力を煽動している証拠を内務省が十分示していないと判断したのだ。
この問題に関しては、国連の専門家会議も「警察がゴム弾や催涙ガスを使用するなど過度な取り締まりを行ったことが衝突を加熱させた」と指摘し、フランス政府による判断に懸念を示している。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチも同様の指摘をしている。
過大評価も過小評価もできない
ネブラスカ・オマハ大学のエリザベス・チェレキ教授は「環境活動家に'テロリスト'のラベルを貼ることは政府にとって便利な近道だ。彼らの動機づけや懸念を考慮しないまま、犯罪者として逮捕できるからだ」と指摘する。
この視点からすれば、フランス政府は政府に批判的なグループをテロリストにすることで取り締まり、結果的にマクロン政権の温暖化対策の遅れをカモフラージュしたことになる。
裁判所命令を受けて、フランス政府による「解散命令」は宙ぶらりんのままである。
ただし、環境過激派のリスクを過大評価するべきでないとしても、過小評価するべきでもない。
先述のチェレキ教授は「環境活動家が過激化する様子は、テロが生まれる典型的なパターン」とも指摘する。
ほとんどのテロは政治に無視され、社会的に封じ込められるなか、暴力的な反動として登場しており、このままではエコテロリズムが本格化する可能性がある、というのだ。
実際、中東でイスラーム過激派によるテロが急速に増えたのは1990年代だが、これは湾岸戦争(1991年)をきっかけに市民レベルで反米世論が噴き上がるなか、中東各国のほとんどの政府が外交的判断を優先させてアメリカに協力的な態度を示し、むしろイスラームの大義を掲げる集団が弾圧されたことを背景とした。
欧米で外国人や有色人種を標的とする極右テロが急増したのは2000年代末頃からだが、これは2008年のリーマンショックでグローバルな金融・経済に大きな問題があることが判明したにもかかわらず、各国が基本的に既定路線を維持し、それ以前から格差などに直面し、反グローバル化を訴えていたグループが黙殺された時期に符合する。
この視点からみれば、チェレキ教授の指摘は相応の説得力がある。
(筆者自身を含めて)ほとんどの人は自分の生活を優先しがちだ。地球温暖化が重大な問題だと思っていても、そのために道路封鎖をする団体を積極的に支持する人は多くないだろう。
さらに、経済状況やエネルギー事情を考えれば、現状を上回るペースで地球温暖化対策を進めることは不可能に近い。
つまり、ラスト・ジェネレーションなどの社会的認知が高まる見込みも、その要求が実現する見込みも、限りなく乏しい。
こうした状況のもと、便利な「テロリスト」の語だけが定着すれば、環境過激派の疎外感が強まり、ますます先鋭化させかねない。それは本物のテロリストを引き寄せる転機にもなり得るのである。
●じつはいま「日本から帰国を望む中国人」が増えている…中国人“労働者層” 9/29
日本に行けば「稼げる」時代は終わった
中国政府の締めつけや政治リスクを懸念し、日本に移住する中国人富裕層が昨年ごろから急増している。そのことについて、筆者はこれまで『じつはいま「日本への移住を望む中国人」が激増している…その「驚きの実態」』や、『なぜ「日本への移住を望む中国人」がここへきて急増しているのか? その「驚きの理由」』など、いくつもの記事で紹介してきた。
在日中国系不動産会社によると、今日からスタートしている国慶節の大型連休中も、観光を兼ねて、数億円のタワーマンションを物色しに来る富裕層が引きも切らないという。
しかし、筆者は最近、在日中国人で、マッサージ師の仕事をしている友人から、これらの動きとはまったく異なる方向の話を聞いた。富裕層が大挙して日本に移住している反面、日本在住歴20〜30年のブルーカラーの人々は、逆に、低迷する日本での生活に見切りをつけ、日本よりは発展性のある中国に本格的に帰国しようとしている、という話だ。
中国人の友人によると、そのうちの1人は同業者で、60代のマッサージ師。20代後半の頃、「経済発展している日本に行けばお金が稼げる。日本で必死に働いて、中国の親を楽にしてあげたい」という思いから来日し、以降、身を粉にして働いてきた。
当時、日本に来ることができた中国人といえば、ごく一部のエリート留学生と、彼らのような出稼ぎ労働者だった。出稼ぎの多くはマッサージ師や調理師などのサービス業、建設業などに従事することが多かった。
いまでは信じられないが、1990年代前半、日本の国内総生産(GDP)が中国の8倍もあり、中国人にとって日本は憧れの国、お金が稼げる国だった時代の話だ。
中国の「健康ブーム」に乗じて
友人によると、その人は30代の頃に一度結婚したが、のちに離婚。以来、ずっと1人暮らしだ。東京の郊外で小さなマッサージ店を経営していたが、まもなく、その店を畳み、家財道具などもすべて処分して、中国東北部・黒竜江省にある故郷に帰る決断をしたというのだ。
「思い切って、全財産をつぎ込んで、中国でマッサージ店を開店することにしたそうです。SNSで写真を見せてもらったんですが、2階建てのきれいなビルで、もうすぐ看板が完成するんだと喜んでいました。
友人によると、中国はいま、ものすごい健康ブーム。マッサージや整体など、リラクゼーションにお金を使う人が増えており、東北部の町でさえ、マッサージは1時間300元(約6000円)くらいの施術料を取れるとか。東京の私の店よりも高いです。
日本と違って、中国では食事会のあと、4〜5人で連れ立ってマッサージに行くことが多いので、1〜2人でやるような店は流行らない。少なくとも、5人以上のマッサージ師を雇う必要があるそうですが、景気が悪く、失業率が高いからか、返って若くていい人材が集まったそうです。
マッサージ師の給料もどんどん上がっていて、その町でもがんばれば、月給は9000元〜1万元(約18万〜20万円)くらいになるとか。彼が日本で覚えたマッサージ技術を教えるといったら、いずれ独立できると喜ばれたそうです」(筆者の友人)
筆者が驚きながら相槌を打っていると、友人はこう続けた。
「彼は日本に住んでいたけれど、日本語学校に通ったことがないので、日本語が下手。日本社会にほとんど入っていなかったから、決断したんだと思います。友人と呼べる日本人もほとんどいないし、お金を稼ぐことが目的で来日したので、日本に住んでいても、日本のことは何も知らない。だから、日本に対する未練もあまりないと思う。
それに、日本で仕事をしていても、この先の人生はもう見えている。マッサージ店に来るお客さんも高齢化しているし、コロナ禍もあって、お客さんの数自体も減っている。異国の日本でひとりぼっちで暮らしていても、わびしいだけ。でも、中国では、これから若いお客さんが増えるし、まだ少しは発展の余地がある。競争も激しいけれど、やりがいがある。だから、帰国するんだと言っていました」
日本人や日本社会と隔絶している
筆者の友人の場合は、この先、たとえ発展性がなくても、日本が好きで、慣れ親しんだ日本で静かに生活したいと考え、都内に中古のマンションを購入。日本に骨を埋めるつもりだという。
しかし、マッサージという肉体労働の仕事の大変さや老後の不安もあり、友人はその人が下した人生の決断に、わが身を振り返り、深く考えさせられたそうだ。
筆者もその話を聞いて、その人にとって、日本での働き詰めの30年間は一体何だったのだろうか、と考えさせられた。日本に住んでいても、日本人や日本社会と隔絶して暮らしているという点では、最近来日している富裕層と共通している。
30年前に来日した彼らは、お金も稼いだかもしれないが、労働者として日本の経済を支えたのに、日本人と深く交流する時間も、日本のよさを知る機会もほとんどなかった。
いま、富裕層は日本のタワマンを買い、日本に生活の拠点を設けているが、彼らが関わり合うのは日本人ではなく、言葉が通じる在日中国人だけだ。そのことに一抹の寂しさを覚えた。
そして、改めて感じたのは、いま日中が置かれている立場の逆転だ。
先日、別件で取材した中華料理店のオーナーによると、ここ数年、中国から調理師を採用することが非常に難しくなっているという。東京都内の中華料理店は、以前から日本で働いていた中国人調理師をスカウトする以外に、中国からわざわざ招聘する場合もあるが、昨今は日本の調理師と中国の調理師の給料の差がほとんどなくなってきているため、日本に来たがらない調理師が増えているそうだ。
日本でもそうだが、中国でも人気調理師となれば、有名店からスカウトされ、引き抜かれることもある。腕がよければ、2万元(約40万円)以上の給料をもらえることもある。そのため、言葉がわからず、生活習慣が違う日本までわざわざ来る必要はないと考えて、二の足を踏む人が増えているのだと聞いた。
つまり、中国人ブルーワーカーにとってでさえ、「日本に行けば、お金を稼げる」という時代は完全に終わりを告げ、むしろ、日本から出ていく人がこれから増えるかもしれないということだ。
もちろん、それはいまに始まったことではなく、2010年に日中のGDPが逆転した頃からじわじわと始まっていたのかもしれない。2022年には中国のGDPは日本の4倍になっているのだから、当たり前といえば当たり前の話だろう。何を今更、と思われるだろうが、筆者はこのマッサージ師の話を聞いて、改めて、この30年間で、すっかり立場は入れ替わったのだということを思い知らされた。そして、多くの日本人が知らない間に、この国で苦労し、年齢を重ねた彼らが、ついに日本での生活に見切りをつけ始めたということに、筆者は少なからずショックを受けた。
●内閣改造は「80点」岸田総理肝いり“人事”で政権基盤安定 9/29
第2次岸田再改造内閣が発足した。
初入閣は11人、女性閣僚5位(最多タイ)ながら、「目玉がなくて、地味すぎる」とも言われている。そんな内閣改造だが、政治ジャーナリストの青山和弘氏は、「国民不在だが、完成度という点では80点」と高得点を付ける。
「(岸田文雄総理の)政権基盤を安定させるという目的では、さすが人事をやりたかった総理だなと。プロっぽい人事だが、これで支持率上がると思うなよ、といった人事でもある」(青山氏)
青山氏の解説によると、岸田政権は、岸田総理、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長の「三頭政治」で動いているが、岸田派は所属議員46人で党内基盤が弱い。最大派閥・安倍派(99人)は、安倍晋三元総理の亡き後、集団指導体制となっているため、強い影響力を持つ森喜朗元総理の意向を聞けばよいとされる。麻生太郎副総裁の意志をくめば、第2派閥の麻生派(55人)も押さえられる。
茂木派(54人)の茂木敏充幹事長は、ポスト岸田への野心を見せている。しかし岸田総理は今回、茂木派の小渕優子氏を自民党の党4役である選挙対策委員長に登用した。もともと茂木派は「小渕(恵三元総理)派」であり、その娘である小渕氏を引き上げることで、茂木氏の出馬をけん制できる。また、小渕氏の厚遇を求めていた森氏を立てれば、安倍派も抑えられる。
茂木氏が総裁選出馬となれば、「三頭政治」が崩れ、権力構造が変わる可能性があるため、麻生氏は茂木氏をけん制する立場だ。麻生氏を抑えれば、麻生派の河野太郎デジタル大臣も抑えられる。
小渕氏が党4役へ入ったことで、岸田総理の盟友でもある遠藤利明氏(谷垣派)は党総務会長を退いた。しかし、同じく谷垣派・山形選出で、遠藤氏と共通点のある加藤鮎子氏が、子ども政策担当大臣として初入閣した。
「玉突きをいろいろ考えて、バッチリ第1派閥(安倍派)、第2派閥(麻生派)、第3派閥(茂木派)を抑える。第4派閥の岸田派も、ナンバー2の林芳正さんが外務大臣で政府に入っているから、派閥を抑える人がいなくなった。『派閥に戻ってくれ』と外務大臣から外して、(同じく岸田派の上川陽子氏を後任にすることで)女性閣僚も1人増える」
では、なぜ100点ではないのかと問われ、青山氏は「第5派閥以降は、ほぼ干し上げてしまった」と語る。二階俊博元幹事長がトップの二階派(41人)や、菅義偉前総理らの無派閥(36人)の不満は高まっているようだ。とくに岸田氏と菅氏の関係は「最悪」だという。
「菅さんは岸田さんを全く評価していない。岸田さんはそれをわかっている。たまに会って意見は聞くが、ご飯を食べることはない。議員会館でちょっと話すだけで、心は許し合ってはいない」
今回の内閣改造が、衆議院解散につながるのか。青山氏は「なぜ自民党総裁選で勝てる人事をしたのかというと、『解散できそうもないな』という雰囲気があったから」と分析する。岸田総理は今年6月にも解散を見送っている。
「解散して選挙で勝って、『俺は民意を得た総理だ』と言って自民党総裁選を乗り切るのが基本戦略だったが、『この支持率では解散できないかもしれない。じゃあ総裁選を解散なしで乗り切る体制を組もう』と、今回の人事をした」
そのため、青山氏は「解散の可能性は下がっている」とみるが、菅氏や二階氏の動向や、支持率によっては、かつての菅氏のように「引きずり下ろされる」可能性があるとも指摘する。考えられるタイミングはいくつかあるが、10月中旬に召集されるとみられるの臨時国会冒頭では「経済対策くらい打ち出さないと支持率が上がらない」という見方を示した。
「(11月に提出・成立する)補正予算で国民にアメをばらまいて、その後に解散という可能性がある。ただ岸田政権は支持率が悪く、改造でも上がらなかった。勝てない選挙をやってもしょうがないので、ここを見送ると年明けになる」
●「どうせ時限措置、バカを見るだけ」、信用されない岸田政権「年収の壁」対策 9/29
会社員や公務員が扶養する配偶者の年金保険料を免除する「第3号被保険者」制度を見直す議論が、厚生労働省の社会保障審議会年金部会で始まった。労働力供給の妨げになるとして何度も改正議論の俎上に上がっては生きながらえてきたが、主な対象となる専業主婦が減少の一途をたどる中、2025年に予定される次期年金改革でついにメスが入るかもしれない。
この9月25日には女性の就労を抑制する「年収の壁」対策として、政府は企業への助成金制度を立ち上げるといった対策を発表したが、パートで働く専業主婦からの評判は芳しいとは言えない。求められているのは、働き方の多様化に対応した制度ではないのか。
同じ専業主婦でも扱いが違う
日本の年金制度のベースとなる国民年金の加入者は、自営業やフリーランスなどの第1号被保険者、会社員や公務員の第2号被保険者、そして、第2号被保険者に扶養される配偶者である第3号被保険者(主に専業主婦)の3通りに分類される。
第1号被保険者は自分で保険料を納め、第2号被保険者の保険料は会社と折半する形で給与や賞与から天引きされる。しかし、第3号被保険者は現状、年金保険料の納付を免除されている。
つまり、第3号被保険者は自分で保険料を支払うことなく、将来は被保険者期間に応じた自分名義の老齢基礎年金を受給することができるわけだ。扶養者の第2号被保険者が加入する厚生年金などが代わりに「基礎年金拠出金」を出しているからだ。
しかし、同じ専業主婦でも第1号被保険者に扶養される場合、自分で国民年金の保険料(2023年度は月額1万6520円)を納める必要がある。こうした不公平感や、「共働きやシングルの会社員が間接的に第3号被保険者の保険料を負担させられている」といった不満から、制度への批判の声が絶えなかった。
一方で、第3号被保険者の適用を受けたいがゆえに自発的に就労を控えたり、労働時間をセーブしたりしているとしたら、人手不足で困っている企業にとっては手痛い損失となる。
そもそも、第3号被保険者制度そのものが時代遅れだという指摘もある。
いまや専業主婦世帯は共働き世帯の半数以下
確かに、この制度が立ち上がった1986年から女性の就労状況も大きく変化している。当時の日本では、専業主婦家庭が圧倒的多数を占めていた。しかし、徐々に共働きが増えてミレニアム頃に両者の形勢が逆転し、現在では共働き家庭の数が専業主婦家庭の倍以上だ。さらに、若い世代ほど女性の就労率や正規雇用の比率が高まっている。
   女性の就業率は上昇を続けている
   いまや共働き世帯数は専業主婦世帯数を大きく上回る
制度見直しの機運は、専業主婦家庭と共働き家庭の数が逆転した頃からあった。しかし、様々な利害関係が絡み合い、実現には至らなかった。
公的な審議の場では、第3号被保険者が廃止され該当層がパートなどに就労することで、競合するシングルマザーや単身者などの賃金が上がりにくくなるのではないかという懸念が示された。一方では、政治家が第3号被保険者やその配偶者など、制度の恩恵を受けている有権者の反発を危惧したとの指摘もある。
とはいえ高齢化による生産年齢人口(15〜64歳)の先細りで状況は変わった。2020年に当時の安倍政権が「一億総活躍社会の実現」を重要政策に掲げるにあたり、政府はこの問題に対して別方向からのアプローチも行ってきた。パートなどの短時間労働者に対する厚生年金の加入条件を緩和し、かつ、加入義務を負う企業の範囲を段階的に拡大したのだ。
これにより現在は「従業員101人以上の企業」では、従来は年収「130万円超」だった加入要件が同「105万6000円以上」(月額8万8000円以上。ただし、勤務期間1年以上、週の労働時間20時間以上といった条件もある)に緩和されている。
この105万6000円以上が俗に言う「パートの106万円の壁」で、2024年10月からは「従業員51人以上の企業」も対象となる。
ただ、第3号被保険者だったパートが新たに厚生年金に加入した場合、保険料が引かれる分手取り収入が減ることになる。仮に週に数時間労働時間を増やしたとしても、その分が“働き損”になってしまう可能性もある。
年金の繰り下げ受給のほうがマシ
9月25日に発表された岸田政権の「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」の中には、それに対する支援策が盛り込まれている。
具体的には、「106万円の壁」については従業員が負担すべき保険料の増加分を手当として支給する企業に対し、従業員1人につき3年間で最大50万円を助成する。従来型の「130万円の壁」を超えた人も続けて2年間は配偶者の扶養にとどまることができる。
これらの支援策は、10月中にも導入の予定という。迅速な対応からは政府の本気度がうかがえるが、第3号被保険者自身はどう受け止めたのだろう。
「どうせ時限措置。そんなのにつられて労働時間を増やしたら、最後にバカを見るのは自分」。第3号被保険者歴30年に上る知人の50代パート女性は、そう切り捨てる。
厚生年金に加入して保険料を納めれば、その分、将来の年金額を増やすことができる。しかし、「年金が増えるといってもせいぜい年間で数万円。それなら繰り下げ受給でもした方がずっといい」。自分たちのような弱者に対し、給付を受けるなら負担をといった原則論を振り回す廃止論者にも腹が立つという。
「私たちは“3号逃げ切り世代”」
国民年金保険料の納付上限年齢は2025年の次期年金制度改革で引き上げられる可能性があるものの、現行制度では60歳。「私たちは“3号逃げ切り世代”。昨年、今年と時給が上がり、収入の壁をキープするために労働時間を減らしているくらい。同世代のパートさんたちとは『この年になってから頑張らなくてもね』と話している」とけんもほろろだ。
老後への不安が強い若い世代の第3号被保険者なら、また考え方も違うのかもしれないが……
先の50代パート女性には、フルタイムで働く20代の娘がいる。昨年第一子を出産して今夏から仕事に復帰したばかりだ。育児休業中の娘と働き方について話をしたところ、娘から「お母さんはセコ過ぎる。お母さんみたいなおばさんがたくさんいるから、私たちが将来年金をもらえなくなる」と言われて少し落ち込んだそうだ。
さて、前述した厚生労働省社会保障審議会年金部会に話を戻そう。第3号被保険者制度の見直しという“聖域”に手を突っ込むにあたり、厚労省は66ページにも及ぶ資料を用意した。
そこには、第3号被保険者誕生の背景から、実現に至らなかったこれまでの見直し論議などが仔細につづられている。行間からは、歴代担当者の怨嗟の声さえ聞こえてきそうだ。
そして、思惑通りと言うべきか、第3号被保険者制度改正については委員各氏から「社会の実態に合っていない」「一定の配慮の下で見直すべき」といった肯定的な意見が続出した。
画一的な保険料の支払い方でいいのか
年金部会での議論は2024年末までに取りまとめられ、次期年金制度改革に反映される。40年近く続いてきた制度に、いよいよメスが入ることになるのかもしれない。しかし、そこにはまた別の視点も入ってきてほしいと思う。
雇用の流動化が進み、若い世代にFIRE(Financially Independence, Retire Early)志向が高まるなど、男女共に働き方は多様化している。そうした中で、例えば、子育て期間中やリタイア後は保険料が軽減される、期間集中で生涯分の国民年金保険料を払い終えておくことができる、といった柔軟な制度運営が求められているのではないか。
単なる「第3号被保険者潰し」では終わらない、時代にマッチしたイノベーティブな制度改革に期待したいところだ。
●ついに公明・創価を見限った自民。元国民民主の議員を「首相補佐官」に抜擢 9/29
連立政権を組みながらも、近年は選挙協力を巡り関係性が悪化するなど微妙な状況にあると言っても過言ではない自公両党。その関係を揺るがしかねない官邸人事がさまざまな憶測を呼んでいます。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、元国民民主党の議員を首相補佐官に抜擢した自民党の思惑を推測。さらに当人事に対する公明党代表の反応を紹介しつつ、自公国の「三角関係」の成り行きに注目しています。
自民が知った労組票を取り込む旨味。元国民民主議員を首相補佐官に抜擢した意図
岸田首相は、かつて電機連合の組織内候補だった元国民民主党参院議員、矢田稚子氏をこのほど首相補佐官に起用した。
それがどうしたと言われそうである。第一、矢田稚子氏という名前を耳にしてピンとくる人は案外、少ないのではないか。しかし、コトは自公連立体制にかかわる可能性があるのだ。
首相補佐官といえば、総理直属で国家の重要政策を担うポスト。安倍・菅政権で辣腕をふるった和泉洋人氏は首相補佐官という地位を威圧的に用いて悪名をはせた。そこに、元参院議員とはいえ、野党の国民民主党所属だった人を充てたのだから、まさに、サプライズ人事というほかない。
矢田補佐官の仕事の中身は、岸田首相が進めようとしている賃上げ政策の担当で、官邸では「賃金・雇用の専門家として、助言をもらいたい」と期待しているそうである。
矢田氏が連合傘下のパナソニックグループ労組の幹部だったゆえに、「賃金・雇用の専門家」というのは早計にすぎるが、官邸と労組間のパイプ役としては、一定の役割を果たせるだろう。
むろん、賃金政策のみが人事の目的であるはずはない。各メディアで言われているように、国民民主党との連立への布石、あるいは労働組合票の取り込み、という面は否定できない。
大企業系の民間労組が、国政選挙で自民党との融和姿勢に転じる動きが、その底流にある。民間労組を支持母体とする国民民主党が岸田政権にすり寄ってきたのも、この変化と無縁ではなく、自民、公明両党の関係を激しく揺さぶっている。詳しく見てみよう。
2021年10月に芳野友子氏が会長に就任した連合は自民党との対立関係を緩め、傘下の民間労組にも大きな変化のうねりが起きはじめていた。全トヨタ労連は50年以上、野党系の推薦候補を国会に送り込んできたが、同年10月31日投票の総選挙では擁立せず、結果として自民党に議席を明け渡した。
エンジンから電動化への変革の波が押し寄せる自動車業界にあって、自民党との協力体制は欠かせないとみる当時の豊田章男社長が、岸田首相の3%賃上げ要請に対し、他社に先駆けて満額回答を示したが、その姿勢に労組が呼応した形だった。
自民党幹部が見つけた民間労組票という新たな票田
2022年2月22日の衆議院本会議で、国民民主党の玉木雄一郎代表は新年度予算に「賛成」を表明し、岸田政権への協力姿勢を示した。このあたりから、国民民主の連立入りが取りざたされるようになる。
22年7月の参院選では、国民民主党を支援する民間労組が一部選挙区で自民党をバックアップした。当時の自民党選対委員長、遠藤利明氏が以下のように明らかにしている。
―――「選挙協力」というような明確な協力関係があったわけではない。しかし、遠藤氏は、国民民主を支援する産業別労働組合(産別)の一部が、複数の選挙区で「自民支援ないしは中立という形で動いてくれた」と語った。遠藤氏の念頭にあったのは、電力総連、自動車総連、UAゼンセン、電機連合の4産別だ。自民と連携する理由として「賃上げ問題で自動車、原発政策で電力」などと指摘した。―――(8月10日毎日新聞)
参院選公示直前の22年6月上旬、国民民主幹部が4産別の一つの組織内議員を通じ、立憲の現職がいた岩手、新潟、山梨の3選挙区で、自民候補を支援するよう出身労組に働きかけたという。これによって勝利をつかんだ自民党は、労組票を取り込む旨味を実感したことだろう。
この年の1月には、自公間の問題が表面化していた。公明党の石井啓一幹事長が定例会見で、夏の参院選をめぐり選挙協力が難航していることを明かした。自民党の茂木幹事長が兵庫選挙区などで公明党候補の推薦を渋っていたためだ。
その後、それならもう選挙協力はやめだと公明党が強硬姿勢を示したとたん自民党側が折れ、菅義偉前首相が水面下で動いて、合意した経緯がある。
公明党との選挙協力が先行き不透明になりつつあっただけに、自民党幹部は、民間労組票という新たな票田を見つけた思いがしたに違いない。
自民党は長きにわたる公明党との連立で、選挙の足腰が弱くなり、創価学会票なしには勝てなくなってしまった。しかし、近年、創価学会じたいが少子高齢化の進行でじわじわと弱体化しつつある。自民党内には、いつまでも公明党に譲歩していていいのかという強硬論が右派を中心に強くなっている。
22年に続き、23年にも自公の選挙協力をめぐる揉め事が起こり、公明の石井幹事長が「信頼関係は地に堕ちた」と発言、東京の衆院小選挙区で自民党候補を推薦しないと言い出した。自民党内の意識変化を感じ、公明党側が苛立ったとみることもできるだろう。
公明党との交渉に苦労した茂木幹事長は、公明党嫌いで知られる麻生副総裁とはかって国民民主の連立入りを画策し、22年夏ごろから秘密裏に根回しを進めてきたといわれる。労働組合票に手を突っ込むには、国民民主党を味方にするのが近道というわけだ。ちなみに、国民民主党には、連合傘下の自動車総連、UAゼンセン、電力総連、電機連合出身の国会議員7人が所属している。
だが、物事はそう簡単にはいかない。長く選挙で敵対してきた自民党と手を組むことに関して、連合内部の反発が強いからだ。
もともと連合は、大企業系労組(民間産別)を主体とする旧民社党系の「同盟」と、官公労を中心とす旧社会党系の「総評」が合体してできた労組のナショナルセンターだ。近年、大企業系労組が執行部を牛耳り、官公労系の影響力は低下しているとはいえ、連合という組織全体の意見集約を無視し、一部労組が権力側に一気に走るわけにはいかない。どうしてもということになれば、分裂するしかないだろう。
執拗とも思える自民党の「工作」の真の狙い
先般の内閣改造で玉木氏を入閣させるもくろみは、そんなわけでとん挫した。そこで浮上したのが、矢田氏の補佐官起用だ。矢田氏は2022年7月の参院選で落選、今年7月に次期参院選への不出馬を表明し、電機連合の役職をやめて、パナソニックの正社員として職場復帰したばかりだった。
矢田氏は今年4月の大阪市長選で自民党から出馬の打診を受け、前向きの姿勢を示したといわれる。その情報を得た官邸が、矢田氏を一本釣りしたようだ。
ただ、この執拗とも思える自民党の“工作”の真の狙いが、国民民主との連立にあるのか、民間労組の取り込みにあるのかは、はっきりしない。国民民主党の内部には「わが党から支持労組を引きはがそうとしているのではないか」とか「結局は自民に使い捨てにされるだけ」といった警戒感もあるらしい。
25年参院選比例代表に自民党が矢田氏を擁立し、電機連合を完全に掌中におさめるのではという見方もあり、連合内部でも「連合をぶっ潰そうというのか」と心配する声が上がっている。たしかに、矢田氏の首相補佐官就任は、連合解体の引き金になりかねない。
芳野会長は「政争の具に使われないよう気をつけてもらいたい」と釘を刺しているというが、麻生副総裁と会食するなど自民党への接近が目立つ芳野氏のこと、先刻承知の人事なのではないかと勘繰るむきもある。
一方、政権の一角を占めることへの異常な執着を持つ公明党は、自公関係に割って入ろうとする国民民主党の動きに神経をとがらせている。
山口代表は矢田氏の人事について「総理が任命した意図に従ってどう生かしていくか、総理のやり方を見ていきたい」、国民民主の連立入りに関して「どこからも私たちは聞いたことがない。連合は連立について否定している」と語り、淡々とした態度のなかにも、拒否感をのぞかせている。
おりしも、麻生副総裁が安保3文書をめぐって山口代表ら公明党幹部を「ガン」呼ばわりする発言が飛び出し、自公間の新たな火種となっている。麻生氏が公明党・創価学会を忌み嫌っていることは周知の事実であり、国民民主党を使って、自公関係の見直しに結びつけたい思惑があるのも確かなようだ。
自民党には、麻生氏のように学会票の助けが不要な議員もいるが、それなしには選挙に勝てない議員も数多い。問題は、自民党がそんな状況に甘んじていることだ。特定の宗教団体に集票を依存し、その結果、政策が歪められるというのでは、真の「国民政党」とは言えないだろう。
自公国の“三角関係”が今後、どうなっていくのか。その成り行きしだいで、日本の権力構造が大きく変わるかもしれない。
●再エネ汚職 政策への不信払拭を 9/29
再生可能エネルギーの普及に水を差し、脱炭素社会実現の妨げにしてはならない。国会議員による働きかけで、政策がゆがめられることは本当になかったのか。国民の不信を払拭(ふっしょく)するには、岸田政権自身による検証と、納得のいく説明が不可欠だ。
国の洋上風力発電事業をめぐり、秋本真利衆院議員=自民党を離党=が、「日本風力開発」に有利な国会質問をした見返りに、計約7286万円の賄賂を受け取った受託収賄の罪で起訴された。
東京地検特捜部の捜査の過程で、秋本議員が新型コロナ対策の持続化給付金200万円を、知人の会社名義で不正に受給していた疑いも明らかになり、詐欺罪でも起訴された。コロナ禍で苦しむ事業者のための国の施策を、国会議員自らが悪用していたとすれば、これもまた、国民の負託に対する裏切り行為だ。
当選4回の秋本議員は、自民党内では珍しい「再エネ族」を自任し、この新たな政策分野で、関連業界との関係を深めてきた。太陽光発電が伸び悩むなか、再エネ推進の「切り札」とされる洋上風力を後押しすることは必要だが、私利をむさぼる道具にすることは許されない。
秋本議員は趣味の競走馬にかかわる資金として、日本風力開発の前社長から多額の資金を受け取っていたが、その賄賂性を否定。受託収賄と詐欺のいずれの起訴内容も否認しているという。公判での徹底した解明が待たれる。
一方、経済産業省は、秋本議員の働きかけで政策決定がゆがめられたことはないとしている。ただ、洋上風力の事業者公募の選定基準の見直しが、秋本議員の国会質問の後に決まったという、外形的な事実は否定できない。
発端は21年12月の公募で、秋田、千葉両県の3区域すべてを、最も安い売電価格を提案した三菱商事系の企業連合が落札し、日本風力開発などは参入できなかった。秋本議員は翌年2月の国会質問で、売電価格だけでなく、計画の迅速性なども重視するよう基準の見直しを求めた。
当時の萩生田光一経済産業相は、次の入札の公募を延期し、その後、秋本議員の要望に沿う形に基準は改められた。議員会館にある秋本議員の事務所で現金約1千万円が渡されたのは、改定の翌日とされる。
政府は単に、適正な手続きによる変更だと言うだけではなく、経緯を検証し、説明を尽くすべきだ。不明朗さを残したままでは、再エネ拡大に必要な、国民の理解も事業者の協力も得られない。 

 

●連合会長が異例の見解「一定の距離を…」 矢田氏の首相補佐官就任で 9/28
連合の芳野友子会長は28日の会見で、傘下の産業別労働組合(産別)出身の前参院議員で、首相補佐官に就任した矢田稚子氏について、「立場が変わったので一定の距離を置きたい」と述べた。連合として「組織決定した方針や政策の実現に向け、毅然(きぜん)とした態度で政府に対応していく」との見解も示した。
連合がこうした見解を示すのは異例。芳野氏らによると、矢田氏の補佐官就任を受け、地方連合会や構成組織から連合の関与を問う声や、就任をやめさせるべきだといった意見が寄せられ、動揺が広がっていたという。
岸田政権内には、矢田氏が所属していた国民民主党との連立を模索する動きがあるが、芳野氏は会見で「私どもとしては連立入りはあり得ない。(同党を支援する)4産別も同じ考えだ」と強調。一方、10月5日からの連合の定期大会に岸田文雄首相が出席することについては、「継続的な賃上げなどを実現してもらえるよう、大会で言っていただけると非常にありがたい」と期待感を示した。
●19年ぶりの女性外務大臣 “上川カラー”は? 9/28
就任からわずか1週間。国連総会で外交デビューした上川陽子外務大臣。19年ぶりの女性外務大臣として海外からも注目された。ニューヨークに同行した記者が見た、“上川カラー”とは。
就任5日で国連総会
「5日間で16人の首脳・外相および4つの国際機関の長と会談を行い、個人的関係を構築できた」
9月22日。一連の外交日程を終えた上川はニューヨークのホテルで記者会見し、やや高揚した様子で手応えを強調した。
内閣改造に伴い、上川が外務大臣に就任したのは9月13日。国連総会が開かれるニューヨークに向けて出発するわずか5日前のことだった。その国連総会を直前に控え、外務省は林・前大臣が続投するのを前提に準備を進めてきた。日本は今年1年間、G7議長国を務めていることもあり、交代の可能性は低いとみていた。
それだけに省内は大慌てとなり、上川新大臣へのレクや勉強会が土日返上で行われた。各国の外相と初顔合わせになるため、急きょ会談を追加するなど日程の組み替えも行われたという。
“日本のオルブライトになれる”
上川は衆議院静岡1区選出の当選7回で70歳。2000年に初当選し、2007年に当選4回で少子化・男女共同参画担当大臣に抜擢された。
安倍政権や菅政権では3度にわたり法務大臣を務め、オウム真理教による一連の事件で、麻原彰晃=本名 松本智津夫・元死刑囚ら13人の死刑執行を命じた。それ以来、上川には常に身辺警護のためSPが付いている。
政治家になる前は、ハーバード大学大学院に留学したほか、アメリカの上院議員の政策立案スタッフを務めた経験もあり、国際派の一面を持つ。
「上川はいいぞ。オルブライト国務長官みたいになれる」(自民党幹部)
ある自民党幹部は、アメリカのクリントン政権下で初の女性国務長官を務め、コソボ紛争の解決などに尽力したオルブライト氏を引き合いに出し、上川の外務大臣起用に期待感を示す。
堅実な仕事ぶりや実務能力に加え、「胆力のある政治家」というのが、自民党内から聞こえる上川評だ。一方、外務省の副大臣や政務官、党の外交部会長といった、外交に関するポストは経験しておらず、外務大臣としての手腕は未知数とも言える。上川本人には改造前日の夕方に岸田総理から打診があったといい、「私が一番驚いた」と語る。
外交デビューした「ヨーコ」
9月18日。上川はニューヨークに到着すると、初日から、アメリカ、イギリス、ブラジルの外相、IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長と立て続けに会談を行った。
アメリカのブリンケン国務長官との会談では「トニー」、「ヨーコ」とファーストネームで呼び合う場面も見られた。その夜には、G7外相会合に議長として初めて出席した。G7外相会合は対面では今年4回目の開催で、各国の外相は旧知の間柄となっていた。初参加の上川は英語で言葉を交わし、打ち解けた雰囲気だった。
フランス、ドイツ、カナダの外相を含めて女性は4人となった。会合ではウクライナ侵攻を続けるロシアを断固として非難し、即時かつ無条件の撤退を求めるなどとした議長声明を発表した。
上川は「初めての参加で議長という大役を務めることになったが、率直なやりとりができたことは大変有意義だった」と話した。
“上川カラー”発揮
就任時、「女性の視点を外交政策に生かしたい」と述べた上川。“上川カラー”を打ち出す場面もあった。
2日目に行われたフランスのコロナ外相との会談。上川がジェンダーバランスについて「日本は政治分野において法律はできたが実態は追いついていない。ともに女性活躍を推進しよう」と呼びかけると、コロナ外相は「女性は異なる視点を提供することができる。女性の視点がより良いということではなく、男女双方の視点が必要だ」と応じた。
地元・静岡のお茶を出して、お土産にプレゼントしたこともあってか、リラックスした雰囲気の中で率直な意見が交わされた。
そして、今回上川が最も強く出席を希望したのが、「WPS」をテーマにしたシンポジウムだ。聞き慣れない言葉だが「Women Peace & Security」の略で、「女性・平和・安全保障」のことを指す。
紛争の被害者になりやすい女性の保護や救済に取り組むほか、女性自身が紛争の予防や紛争後の和平に主体的に参画することで、より平和に近づけることができるという考え方だ。2000年に国連安全保障理事会でも決議が採択されている。国連では、この考え方に沿って国連平和維持活動を行う部隊や、和平交渉の責任者に女性を入れることなどを求める「WPSアジェンダ」を設けている。
WPS推進の旗手
上川が「WPS」に関心を持ったのは、2007年に男女共同参画担当大臣を務めたときだった。
その後、総務副大臣として国内の被災地の避難所を訪れた際には、運営に女性が携わっている避難所はトラブルの発生数が少なくなっていることを知った。議員連盟を立ち上げ、1年前の国連総会のWPSシンポジウムには、一議員の立場でパネリストとして参加した。
そして今回、外務大臣として再びシンポジウムに出席することになり、会場では大きな拍手で迎えられた。
「戻ってこられて嬉しい」スピーチでは、紛争のみならず災害対応にも女性の視点を組み込んでいく重要性を指摘し、日本としていっそう推進していく考えを表明した。会場の出席者からは「ようやく日本もWPSの土俵に上がった」という声が聞かれた。
上川はWPSの考え方を、12月に日本で開かれる、日・ASEAN特別首脳会合の成果にも反映させたいと意気込んでいる。
19年ぶりの女性外相に“先輩”からエール
女性の外務大臣は実に19年ぶりとなる。
今回の外交デビューに注目していたのが19年前、外務大臣だった川口順子氏(82)だ。
「国連の場というのは一度に大勢の外務大臣とお会いでき、一度に自分を知ってもらえるチャンスという意味で得難いチャンス。立派に務めてデビューしたと思う」
旧通産省、飲料メーカーの役員などを経て、2002年から2004年まで小泉政権で外務大臣を務めた川口。当時は、海外でも女性外相は多くなかったという。
「20年前は、中国も韓国も近隣の国では女性の外相がまだ出ていなかった。それで中国や韓国に行った時に、日本は女性の外務大臣だということで国民の皆さんに関心を持っていただいたことがあって、それはメリットだったかなと思う」
時代は変わり、上川は「今回会った海外の外相の半数が女性だったことが印象的だった」と振り返った。
その一方で日本は遅れている。世界経済フォーラムがことし6月に発表した男女格差を示すジェンダーギャップ指数で、政治参加の分野は146か国中138位だ。
川口は語る。「今回5人の女性閣僚を登用したのは大きな前進だと思うが、5人というのがガラスの天井になってはいけない。今回のことがきっかけになり、女性が『私も政治に出よう』と思ってくれることが大事だ。見えない目標は存在しない。幸いにも上川大臣のような方が現れているわけなので、今後みんなバリバリと政治を目指してほしい」
外務大臣として重要なことについては。「日本の外務大臣というのは、国際会議があっても国会の関係があって外に出られない。そうした時には電話でかなり話をした。東南アジアの外相の方々と、非常に親しくなり、いまだにやり取りがある。私は、外交というのは、もちろん国と国との関係だけれど、外務大臣と外務大臣の関係というのも大事だと思う」
デビュー戦の評価は
初の外国出張ながらハードスケジュールを精力的にこなした上川。関係者はどう評価しているのだろうか。
同行した外務省幹部の1人はこう話す。
「初外遊にしては会談の相手国も多く、難易度が高かったと思う。事前の勉強会では歴史的背景などについても質問され、勉強熱心だと感じた」(外務省幹部)
アメリカ政府内からも評価の声が上がった。
「就任してすぐだったにもかかわらず、事前の準備もきちんとできていて、そつなくこなしていた」(アメリカ政府内)
その一方で、次のような声も聞かれた。
「会談時間が短く、正直まだどういう人か分かっていない」「彼女が何に最優先で取り組んでいきたいか、何に関心があるのか、まだ知ることはできていない」
「林 前大臣とブリンケン国務長官は、かなり仲良く、音楽を通じて個人的な関係を深めていたが、上川大臣と信頼関係をどうやって築くかはこれからだ」
鵬程万里
上川は就任会見で「鵬程万里」(ほうていばんり)という四字熟語を紹介した。中国の想像上の大きな鳥が、はるか遠くを飛ぶさまから、非常に遠い道のりを指す言葉だ。「遠くを見つめる眼差しを持って、目先だけではなく、長い時間軸を念頭に置いた外交を進めることが必要だ」(上川)
今回の取材を通じて、WPSにこだわりを持って臨んだように、耳目を引くパフォーマンスよりも中長期的な視点を持って大局を見据えて取り組む“上川流”外交の一端をかいま見ることができた。
この先、11月のG7外相会合、APEC、日中韓外相会議、12月の日・ASEAN特別首脳会合、来年はじめのウクライナ復興推進会議など重要な外交日程が切れ目なく続く。そうした中で、上川が「鵬程万里」の道のりをどう歩むのか。今後も取材を続けていきたい。
●「資産運用特区」って何?岸田首相がNYでぶち上げ このタイミングでなぜ…  9/28
岸田文雄首相が打ち出した「資産運用特区」なる構想。海外の資産運用会社の日本進出を促すといい、今月下旬、外遊先の米ニューヨークで表明した。ただ現状でも日本の市場は開放されており、外国人投資家も日本株を自由に売買できる。あえて海外から投資会社を招く特区をつくる狙いは一体何なのか。国民生活にどんな影響があるのか。
英語のみで完結 日本投資を拡大
首相は21日、企業経営者や金融関係者らで構成する「ニューヨーク経済クラブ」での講演で、特区構想をぶち上げた。
その狙いを「海外からの参入を促進するため」とし、外国人が資産運用業を始めるのに必要な行政手続きについて、「英語のみで行政対応が完結するよう規制改革する」と表明。運用責任者である「ファンドマネジャー」が来日した際の住環境や、その子どもたちの教育環境といった「生活環境の整備」を重点的に進める方針を示した。
特区の候補地は、東京・大阪・福岡・札幌の4都市が有力視されている。すでに世界から人材や情報が集まる国際金融センターの実現に向け、英語での行政手続きや、海外投資家受け入れ態勢の整備を進めている所だ。しかし、具体的な内容は「これからやる」(新藤義孝経済再生担当相)とされ、まだ判然としない。政府は年内をめどに、具体策をまとめる方針という。
「資産所得倍増」を掲げる岸田政権は2024年1月から少額投資非課税制度(NISA)を拡充。家計に眠る約1100兆円の現預金を投資に振り向けさせ、国民の資産形成や企業の成長につなげることを狙っている。さらに新特区で、海外のファンドマネジャーらを呼び込むことで、競争を活性化させて日本への投資拡大を図る考えだ。
ただ、日本への投資が増えるとは限らないとの見方もある。淑徳大の金子勝客員教授(財政学)は「新NISAと資産運用特区の合わせ技で円安、インフレが止まらなくなり、国民の格差がさらに広がりかねない」と懸念。新NISAは非課税枠が最大1800万円に増えるが、「日本の投資家は、成長しない国内で資産運用するより、利回りが良い海外にドルで投資する可能性が高い。すると、さらに円安を招く」と指摘する。
暮らしは「二極化」
一方で「円安を受けて、特区で日本に来た外資が、割安な日本の株や不動産を買いあさっては売り抜いていく」とし、こう見通す。「円安、物価高の悪循環が加速していく中で、将来的に資産運用できて救われる人と、貯金もできず苦しい生活を強いられる人の二極化が進んでいく」
それにしても、このタイミングで首相が特区構想を海外で表明したのはなぜか。政治ジャーナリストの泉宏氏は「物価が上がって国民の可処分所得が減っている中で、国民の所得増につながる政策をとにかく打ち出し続けることが岸田政権の生命線。メディアにも取り上げられやすい外遊先でアピールした方が、国内的な反響が大きいと判断したのだろう」とみる。
「解散向け主導権」
与野党内では秋の臨時国会で衆院が解散されるとの観測がくすぶるが、選挙を見据えて経済政策をアピールする狙いもあったのか。泉氏は「個人的には今は解散はないと思っている」とした上で、こう続ける。
「政局的にみると、岸田さんにしてみれば、『解散を考えているのでは』と周りに受け取ってもらえればラッキーという話。解散風が吹くほど、政治の主導権を握れる。内容の実効性はともかく、アピールできる政策を今後も打ち出していくだろう」
●まさに売国 補助金で中国製EVを普及させ日本の自動車産業を潰す岸田政権 9/28
世界中で猛烈な勢いをもって進むEVシフト。その流れに乗り遅れたとされる日本の自動車メーカー各社ですが、こともあろうに日本政府が国内での中国製EVの普及に「手を貸す」事態が起きているようです。メルマガで、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんがその事実を明らかにするとともに、政府に対して至極真っ当な要望を突きつけています。
日本政府が日本の自動車産業を潰すまでのプロセス
私がモスクワに行った1990年、ロシア国民の夢は、「日本製の家電で家を埋め尽くすこと」でした。
私は当時、知り合いのロシア人に、「日本車は?」と尋ねました。すると、皆口をそろえて、「それは、難しすぎて夢にもならん」と言いました(今モスクワは、日本車、ドイツ車だらけになりましたが)。
そう、1990年当時、世界には日本製品があふれていたのです。
ところが…。いつ頃からでしょうか?世界市場で、日本の家電はシェアを落とすようになっていきました。はっきりは覚えていませんが、20年ぐらい前でしょうか。
日本を代表する家電メーカーP社の社員が、「韓国に負けそうだ」と泣き言を言っているという話を聞きました。私は、「冗談だろう!?」と仰天したのをよく覚えています。
モスクワの家電量販店では、日本製が徐々に駆逐され、韓国、つづいて中国製が目立つようになっていきました。
日本製が中国製に駆逐されたプロセス
思い出してみてください。1990年代、まだ中国製品は、「安かろう悪かろう」と思われていました。中国製の服は激安ですが、「買ったその日にボタンがとれる」といった感じでした。「中国製を着るのはちょっと恥ずかしい」という感覚もあったでしょう。
いつから「中国製全然OK」になったのでしょうか?1990年代末にユニクロが大人気になったことがきっかけでしょう。ユニクロのフリースは1998年200万枚、99年850万枚、2000年2600万枚売れたそうです。これで、「メイド・イン・チャイナでもいいよね」となった。
要するに、日本の会社が中国で安く生産し、日本が逆輸入する。日本企業が、「メイド・イン・チャイナ」の信用を上げたのです。
それから20年以上の月日が流れました。アパレル業界はどうなっているのでしょうか?
「シーイン」という会社があります。私にはよくわかりませんが、「めちゃくちゃ安くてかわいい」と若者に人気なのだそうです。
シーインの特徴について、小島尚貴先生は、最新刊『脱コスパ病 〜 さらば自損型輸入』の中で、「企画、デザイン、開発、縫製、検品、流通、広告、営業、販売、顧客フォローまで、一つも日本企業の関与なく完成させた」という点にあります。(59p)と書かれています。
少し流れを振り返ってみましょう。まず、日本企業が日本で作る段階がありました。ところが日本企業の一部が中国で製造し、「安くて質もまあまあ」の製品を作り、逆輸入した。日本企業が、「メイド・イン・チャイナ」の信用を上げた。
次の段階として、「中国企業が中国で生産した製品を、日本に輸出する」。日本企業は、一切関わっていない。皆さん、どうでしょう?シーインは、ユニクロに勝てるでしょうか?
小島先生はシーインの未来について、
「日本人が現代中国を見る時は、どんなことを見聞きしても、最初は油断して見下します。前作で大きな反響を集めた熊本の「い草、畳表」の事例でも、国産農家と自治体は油断で大敗北を喫しました。同じパターンで、後に白物家電、パソコン、スマホもやられました。(61p)と警告されています。
最後の砦「自動車産業」も破滅の道を進むのか?
日本はかつて「家電王国」でしたが、韓国、中国にやられました。それでも自動車は、なんとか国際的地位を保っています。既述のように、ロシアでも、金があれば日本車かドイツ車を買います。
しかし、日本の自動車産業は、安泰なのでしょうか?前述小島先生は、こんなことを書いておられます。
「中国の上汽通用五菱汽車が生産する小型商用EVを佐川急便に7200台納品するのは、東京に本社を置くEVベンチャー企業ASFです。」(62p)
ASFの日本人社長は言います。
「コストほど顧客に刺さるサービスはない。15〜16社ほど、さまざまな業界大手から連絡が来ている」(63p)
「コストほど顧客に刺さるサービスはない」そうです。
実際、大手15〜16社が佐川急便のように何千台も購入すれば、それがきっかけで「中国車でもいいよね」となっていくかもしれません。
ASFの事業内容を見ると、
「電気自動車の企画、開発、製造及び販売バッテリーリース事業上記に附帯又は関連する一切の業務」(ASPのHPより)
となっています。要するにASFがコントロールし、「中国で安く生産する」ということなのでしょう。
このパターン、アパレル業界でいえば、「ユニクロと同じやり方」と言えます。ASFが大成功すれば、「自動車もメイド・イン・チャイナで大丈夫だよね」となるでしょう。
次に来るのは、アパレルでいうシーインですね。つまり、中国企業が安く生産し、日本で売る。その時、日本国民の中国車に対する信用は、すでに醸成されている。
そして、「国がお金を出して中国製電気自動車の普及を後押ししている」としたら、皆さん、どう思いますか?
「日本政府は同社(北野註:ASF)のEVに対し、購入と普及を促進するために補助金を適用し、その補助金込みの価格は150万円程度という低価格になる見通しだそうです。」(64p)
皆さん、これどうですか?私たち国民が納めた税金が、中国製電気自動車と日本自動車メーカーつぶしに使われる。
小島先生は、こうも書いておられます。
「米国のバイデン政権は2023年4月に、「米国で最終組立を行っていないEVには米国政府の補助金を適用しない」と発表」(65p)
「グローバリストの手下」と親プーチン派からバカにされているバイデンの方が、日本政府より自国企業に優しいみたいです。
日本政府も、エコカー補助金は、完全国産車だけにしてもらいたいです。 
●財務省はカルト教団化している 森永卓郎氏が知ってほしかった「真実」 9/28
『ザイム真理教――それは信者8000万人の巨大カルト』(森永卓郎著)を読む。「予算における支出と収入は一会計年度で一致すべきだ」という財政均衡主義の考え方は教義的だ。
『ザイム真理教――それは信者8000万人の巨大カルト』の冒頭において著者が指摘しているのは、「財政均衡主義」の問題点だ。それがそのまま、「ザイム真理教問題」につながっていくからである。
ザイム真理教――それは信者8000万人の巨大カルト
いうまでもなく、「予算における支出と収入は一会計年度で一致すべきだ」という財政均衡主義の考え方は、政界や財界、一般国民にまですっかり浸透しているだろう。だがそれは、とりわけ自国通貨を持つ国の財政に大きな弊害をもたらす。
景気が悪化して、供給力に比べて、需要が足りなくなったとき、すなわちモノやサービスを作れる能力を経済が持っているのに、それが売れずに余ったときには、政府が公共事業を増やしたり、減税を行なって、需要を拡大すべきだというのがマクロ経済学の教えだ。(「まえがき」より)
逆に考えれば、政府がなにも景気対策をせずに需要不足を放置していたとしたら、経済の収縮とともに税収が落ち込み、財政はますます悪化するわけだ。
財務均衡主義は長期的にも間違っている
また、財政均衡主義は長期的にも間違っているようだ。財政の穴埋めのために発行した国債を日銀が買い取ったときには、その時点で事実上政府の借金は消えるからだ。
まず、元本に関しては、10年ごとに日銀に借り換えてもらい、永久に所有し続けてもらう。そうすれば、政府は返済の必要がなくなる。政府は日銀に国債の利払いをしなければならないが、政府が日銀に支払った利息はごくわずかの日銀の経費を差し引いて、全額国庫納付金として戻ってくるから、実質的な利子負担はない。(「まえがき」より)
もちろんこういうことをやりすぎるとインフレが襲ってくるので、限界があるのも事実。しかし現在の日本では、このやり方での財政資金調達の天井がかなり高いことを、アベノミクスが図らずも証明している。
安倍政権の最終年である2020年度も1年間で、日銀は46兆円も国債保有を増やしたが、続いたのはインフレどころかデフレだった。もちろんこの年だけの話ではなく、アベノミクスの時代に似たような状況が続いたことはご存知のとおりだ。
そうしたことを踏まえれば、消費税率を5%に下げることの財政負担は14兆円にすぎないから、その税収不足を国債発行でまかない、それを永遠に続けることはまったく問題がないことがわかる。(「まえがき」より)
財務均衡主義という“教義”が広く深く浸透してしまった
それは著者の目から見れば単な仕掛けであるようなのだが、なぜか多くの人にそれは伝わっていない。だから結果的には、財務省のいいなりになってしまうわけだ。
なぜか?
それは、旧大蔵省時代を含め、財務省が40年間にわたって布教を続けてきた「財政均衡主義」という“教義”が、国民やマスメディア、政治家にまで広く深く浸透してしまったためだ。
話を単純化するなら、さまざまな理由や根拠を見せられたうえで「お金がないので増税するしかありません」と言われたとしたら、国民は「だったら仕方がないかなぁ」と思うしかないわけである。だが、それが問題なのだ。それは、国民全体が財務省に洗脳されてしまったということにほかならないのだから。
すなわちそれが、昨今ネットの世界で散見されるようになったワードであり、本書のタイトルにもなっている「ザイム真理教」問題なのだ。
そこで本書では、ザイム真理教が生まれるまでの経緯、そして、それがどのように国民生活を破壊するのかということをわかりやすく解説しているのである。重要なポイントは、この「わかりやすく」という部分だ。多くの人々(私もまたそのひとりだ)にとって財務省の思惑や行動を理解することは決して簡単ではない。だから知らず知らずのうちに、多少なりとも思考停止状態に陥ってしまうのだ。
大手出版社から軒並み出版を断られた
だが当然のことながら、そんな状態では自身の将来を守ることはできない。だからこそ、わかりやすく解説する必要があるということ。つまり著者にとってそれは、「自分のために、なんとか真実を理解してほしい」という切実な思いでもあるのだろう。
財務省は、宗教を通り越して、カルト教団化している。そして、その教義を守る限り、日本経済は転落を続け、国民生活は貧困化する一方になる。(「まえがき」より)
本書のページをめくっていくたびに、これが決して大げさな表現ではないことを読者は知ることになるだろう。ザイム真理教という名称自体は冗談めいているかもしれないが、実のところ彼らの考えていること、やっていることは非常に恐ろしいのだということをも。
それは、著者が本書を世に送り出すまでの経緯にも表れている。2022年末から翌年の初頭にかけて一気に骨格をつくり揚げ、そののちできあがった原稿を大手出版社に持ち込んだものの、軒並み出版を断られたというのである。つまり大手各社は、このテーマの本を出すこと自体を拒んだわけだ。
私は出版の世界では、言論の自由は守られていると信じていた。もちろんふつうのテーマは自由に書けるし、実際に私もたくさん本を出している。ところが、ことザイム真理教に関してだけは言論の自由がほとんどないのかもしれない。(「まえがき」より)
そのため出版をあきらめかけていたなか、本書の版元だけが引き受けてくれたのだという。そんなプロセスを経なければならなかったということ自体に問題があるのは明らかであり、そういう意味でも、本書に目を通してみてほしいと強く感じる。
●韓国政治が大混乱へ…!逮捕棄却で国民も激怒した「日本叩き党首」のウソ 9/28
「日本批判の急先鋒」が息を吹き返した…!
韓国・最大野党で日本が最も警戒すべき「共に民主党」(以下、民主党)の李在明代表の拘束令状をソウル中央地裁が27日、棄却した。
国会による李在明氏逮捕同意案可決から、ソウル中央地裁による令状棄却まで逮捕劇のドタバタがもたらしたものは、政府・検察と民主党双方にとって大きな負担となった。今後、両者は、裁判所の人事問題と来年4月の国会議員選挙に向けて、どちらが主導権を握るか、激しく対立することになるだろう。
劉昌勲(ユ・ジョンフン)令状専従部長判事はその理由について、「被疑者の防衛権補償の必要性程度と証拠隠滅の懸念の程度などを総合すると、被疑者に対し不拘束捜査の原則を排除するほど拘束の理由と必要性があると見るのは難しい」と説明した。
韓東勲(ハン・ドンフン)法務部長官は、国会で逮捕の必要性について「多数の関係者が組織的に関与しており、共犯者に対する懐柔や圧迫を通じた証拠隠滅の懸念が非常に大きい」と説明しており、劉判事の判断はこれと真っ向対立するものだ。
当然ながら、検察の反発は大きい。しかし、逮捕令状の棄却で、今後の李在明氏に対する捜査に影響することが避けられないだろう。
検察は拘束令状再請求をすればさらに手続きが1〜2ヵ月かかるため、請求はせずに起訴する予定だという。しかし、李在明氏関連捜査の最終盤を迎え、同氏の逮捕が認められなかったことにより、今後の捜査と裁判は難航が予想される。
まず、政府と検察は、李在明氏に対する捜査が強引ではなかったのかという国民の目を意識する必要があろう。
また、部長判事出身の弁護士は「(今回の判断が)ペクヒョンドン開発特恵疑惑と北朝鮮への送金事件など主要容疑に対する立証水準を問題視したというのは今後の裁判でも負担になるだろう」との見解を示している。
検察として、今後の捜査の進め方を検討しなおす必要があるかもしれない。
国民の怒りで、民主党議員が「大量造反」
韓国国会は21日、本会議において検察から提出されていた李在明氏に対する逮捕同意案を採決し、賛成149,反対136(棄権6,無効4)で可決した。
同意案の可決には出席議員の過半数148票が必要であり、民主党が多数を占める国会では、否決されるだろうとの見方が支配的であった。ところが、一転して可決されたのは、民主党から29人ほどの造反者が出たからだと見られている。
民主党が強力に擁護した文在寅政権は、スキャンダルを隠蔽し高い支持率を誇ってきた。しかし、今回多くの離反者が出たのは、民主党の不逮捕特権乱用に対する国民の批判を意識したものである。
これは、8ヵ月ほど前の国会採決が影響したものだ。
検察は今年2月、李在明氏の城南市長時代の数々の不正疑惑をめぐり国会に逮捕状を請求した。この時は、民主党の反対で同意案は否決されたが、この表決に関し、国民から不逮捕特権の乱用だとの批判が出ていたからだ。
また、民主党は、一連の不正が明るみに出た危機感から、議員の不逮捕特権放棄を「党の決議」として採択していた。もちろん、李在明代表自身も不逮捕特権の放棄を表明している。
にもかかわらず、李在明氏は、今回の採決の前日に、フェイスブックに「検察独裁の暴走機関車を止めてください」と題する寄稿を寄せて逮捕同意案を否決するよう訴えた。韓国の主要各紙は、これが李在明氏の公約放棄として、逆効果になったのではないかと分析している。
李在明氏がハンストを行ったのも、体力限界まで自らを追い込むことで、党内の結束を高め、反対票を増やそうとしていただけと見方が広まり、国民からの李在明氏に対する同情はあまりない。
今回の逮捕同意案の可決によって民主党内には少なくない造反者がでて、党の分断が鮮明となった。党内の対立が越えがたい程度に深まったことが、最大の変数である。
●「日本叩き急先鋒」政党代表がひど過ぎる…!「不正もみ消し」「逮捕も棄却」 9/28
日本嫌いの最大野党で「内紛激化」
韓国・最大野党「共に民主党」(以下、民主党)の李在明代表の拘束令状が27日に棄却されたことは、政府と検察、そして民主党に大きな負担を強いることになる。
前編『また韓国政治が大混乱へ…!逮捕棄却で国民も激怒した「日本叩き党首」のウソと裏切りの「呆れた政争」』で指摘したとおり、裁判官の人事問題と来年四月の国会議員選挙に向けて、どちらが主導権を握るか、対立が激しくなることを意味する。また、検察においても逮捕令状の棄却で、今後の李在明氏に対する捜査や起訴後の裁判が難航することは必至である。
福島の処理水に反発してハンガーストライキを行う李在明氏(マイクを持った人物) Photo/gettyimages
一方で、民主党は21日に国会で行われた逮捕同意案の採決で、大量の造反者を出し党の分断が鮮明となった。
乗りこえ難いほどに高まった党内の対立は、今後、どのように深まっていくだろうか。
卑劣な「脅迫状」と「内ゲバ」の呆れた中身
逮捕同意案が国会を通過したことで造反議員は、党の役員から報復性のメッセージが送られ、党の支持者からは犯人探しと殺人予告を受けるなどしている。趙正シク(チョ・ジョンシク)事務総長は「今回の可決採択には必ず責任が伴うはず」と述べた。
金成柱(キム・ソンジュ)政策委首席副議長も「同志だった人たちが裏切った」「同じ志でなかったことを表した、みじめな思い」と憤慨した。
李在明氏支持者の反応は過激だ。
党内の「非李在明派」国会議員を狙った殺害予告がインターネット上で複数回あった。警察は、あるネットコミュニティーで民主党の金鍾民(キム・ジョンミン)議員に対し脅迫めいた投稿をした人物の特定を進めている。
京畿道でも非李在明派の議員らに対する殺害予告をした40代の投稿者が検挙された。ネット上では一部の強行派の党員たちが造反者のあぶり出しに動いており、非李在明派のリストを共有し、携帯電話に非難メッセージを送りつけている。
深刻な混乱に陥った民主党は、緊急非公開最高委員会と緊急議員総会を相次いで開催した。
議員総会では、国会運営を担う朴グァンオン院内代表ら院内執行部と事務総長が総辞職した。その場では、「親李在明派」と「非李在明派」が怒号を浴びせながら衝突し、もはや関係修復は困難になったようである。
民主党は26日議員総会を開き、院内代表に洪翼杓(ホン・イクピョウ)議員を選出した。この議員総会に向けて院内代表に立候補した4人はいずれも親李在明派である。新院内代表となった洪同議員は当選3期目で、改革を重視する政策通と言われ、党内では「親李在明派」と言われる。
しかし、非李在明派からの立候補はなく、両派が協力して党運営することは困難な情勢かも知れない。
巧妙な李在明の「捜査対策」
今回、逮捕状が承認されなかったのはなぜか。
過去の裁判所の拘束令状審査は、発布が認められないケースが2割近くあった。
特に令状審査を担当したソウル中央地裁の劉昌勲(ユ・ジョンフン)令状専従部長判事は、2月に韓東勲(ハン・ドンフン)法務部長官の居住宅に進入した容疑を受けた「ザ・探偵」の韓・ジング代表に対する拘束令状と、金の入った封筒を配った容疑を受けた民主党の李成万(イ・ソンマン)議員に対する拘束令状を承認しなかった。「容疑と関連した証拠がすでに十分確保された」ので今さら身柄を拘束する必要がない、という理由だった。
このため、今回李在明氏の拘束が認められるかどうか、五分五分だと言われていた。
同部長判事は、令状の実質審査で拘束の必要性として検察が強調した偽証教唆容疑と証拠隠滅の懸念に対する判断を一つ一つ提示した。
「柏峴洞(ペクヒョンドン)開発事業の場合、後者の事業参加排除の部分は被疑者の地位、関連決裁文書、関連者の陳述などを総合すると被疑者の関与があったと見られるほどの相当な疑いがあるが、一方でこれに関する直接証拠そのものは不足した時点で事実関係がないし、法理的側面で反論している被疑者の防御的意見が排斥されほどに至ると断定するのは難しい」と述べた。
また、「偽証教唆とペクヒョンドン開発事業の場合、現在までに確保された人的、物的資料に照らして証拠隠滅の懸念があると見るのは難しい」とも主張した。
この部長判事の判断に対し、検察も長文の反論を出し遺憾を表明した。
「偽証教唆容疑が疎明されたと認め、ペクヒョンドン開発不正に被疑者の関与があったと認めるほどの相当な疑いがあるとしながらも、北朝鮮への送金と関連し被疑者の介入を認めた李華泳の陳述を根拠にした争いの余地があると言った判断に対しては納得しがたく非常に残念」と述べ、続けて「偽証教唆容疑が疎明されたというのは証拠隠滅を現実的にしたというのに証拠隠滅の懸念はないと判断し、周辺人物による不適切な介入を疑うほどの状況を認めながらも証拠隠滅の懸念はないというのは矛盾だ」と主張した。
実際、李在明氏は大統領選挙敗北後、一貫して自らを逮捕から守ることを主眼として国会議員補欠選挙当選、民主党代表就任、防弾国会の開催などの政治活動を行っている。また、検察は、証拠隠滅の懸念を強調してきたが、李代表は過去に捜査を避けるために自身を弟と偽り、2回にわたり逃走した前歴がある。これを自叙伝『李在明はやります』で明らかにしていることも検察は指摘したが、拘束令状は棄却された。
令状審査経験のある弁護士は、「証拠隠滅の懸念よりは野党代表という存在にウェイトを置いた判断。被疑者自ら誠実に裁判を受けるという野党代表を敢えて拘束する必要があるかという考えが作用したもの」という。
韓国司法府の「政治色の濃い判決」
韓国の司法府の判断には、これまでも納得のいかないものがあった。特に劉部長判事は、文在寅時代の金命洙大法委員長に任命された人である。
反面、韓国憲法裁判所は26日、文在寅政権で成立した北朝鮮への体制批判のビラ散布を禁じる南北関係発展法24条の第1項第3号について違憲と判断した。
同法は文政権時代民主党が国民の力などの反対を押し切って推進し、2020年12月14日に可決され公布されていた。27の北朝鮮人権団体と脱北者団体は、表現の自由を過度に制限しているとして憲法裁に訴願していたが、文在寅政権下での憲法裁だったなら、このような判決にはならなかったであろう。
一部では、対北朝鮮ビラ禁止法の意見決定が今後の北朝鮮に対する拡声器放送の再開などにも影響を及ぼしかねない、という見方が出ている。
知日派の大法院長任命をめぐって大混乱
文在寅氏が任命した金命洙院長の任期が9月で終了するが、今、韓国国会で次期大法院長(最高裁長官)の任命をめぐる対立が深刻化している。
民主党は20日、尹錫悦大統領が指名した李均龍(イ・ギュニョン)候補者が、尹大統領と親しい友人関係であり、公平な裁判所運営ができないと主張して政府に指名撤回を求めた。
李均龍氏は慶応大に派遣された経験があり、裁判所内では日本の法制度に詳しい人物として知られている。尹政権は元徴用工問題の解決策推進に向け、判決金相当額を裁判所に供託して債務を消滅させる手続きを進めるが、これがことごとく地裁で退けられている。
最高裁の最終判断が焦点になる。
野党は人事聴聞会で尹大統領との「親しい友人」であるという人間関係を問題視した。「司法の独立を成し遂げる上で適任者なのかと主張している。
しかし、文在寅氏が任命した金命洙大法院長官は大法官の経験がなく、地方裁判所の所長からの抜擢であった。それは文在寅氏の立場に近い判決を出してきたからである。金命洙氏は、大法院長になると裁判官人事を次々に敢行し、革新系の司法府に替えていった。
民主党の言いがかりは、文政権でしたことを無視し、司法府の主導権を渡したくないとの強引な嫌がらせとしか思えない。
来年4月の総選挙が正念場
韓国の国会297議席のうち167議席を占めることが、文在寅政権の弊害から抜け出せない最大の要因である。このため、次期総選挙が行われる来年4月まで、あらゆる問題は総選挙に向けた国民の支持獲得という視点で重要になってくる。
李在明氏逮捕劇の迷走がどちらに有利に働くか、国民の支持をどちらが獲得するかが重要である。尹錫悦政権尹しては李在明氏究明も重要であるが、国民から保守政権の独走と受けとめられないよう細心の注意も必要である。
●日中復交51年 暗雲払う政治的知恵を 9/28
日中関係は10年以上も暗雲の晴れない状況が続く。2012年の日本政府による尖閣諸島国有化で最悪の谷に陥った両国関係は、本格的な改善軌道に戻らぬまま、東京電力福島第1原発の処理水放出をめぐり、さらに冷え込んでしまった。29日で、国交正常化から51年。関係改善には両国の対話継続が肝要で、次回の首脳会談も早期に実現すべきだ。
国交回復50周年だった昨年は岸田文雄首相と習近平国家主席が、首脳同士としては3年ぶりに対面で会談。20年には習氏の訪日も予定されたが、新型コロナの影響で延期されるうち、台湾問題や、スパイ容疑での邦人拘束が中国で相次いだことなどにより、関係改善へのムードはしぼんだ。
そこへ追い打ちをかけたのが、処理水放出。中国政府は「核汚染水」と呼んで、日本の水産物輸入を全面禁止。中国の日本大使館や日本人学校への投石、中国から日本への迷惑電話などが相次いだ。日本政府の強引な放出決定にも問題があるが、中国政府が国民の反日的な動きを迅速に鎮める姿勢を見せなかったことは残念だ。
ただ、インドネシアでの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議の際、岸田首相が中国の李強首相と接触を図ったことは、「立ち話」レベルであったとしても評価できる。首脳間の対話のパイプを維持する努力は重要だ。
岸田首相は「建設的かつ安定的な日中関係の構築は重要だ」と語りかけたうえで、禁輸措置の撤回も求めたという。中国外務省報道局長も会見で、接触を認め、今年が日中平和友好条約締結45周年に当たることに言及し「未来に向け両国関係の改善、発展を進めることを望む」と述べた。
減速する経済への影響、あるいは米国へのけん制といった観点から、中国にとっても対日関係改善の利点は小さくないはずだ。大国らしい「冷静な判断」を不断に促しつつ、中国側の発するシグナルを見落としたくない。
年内には、4年ぶりとなる日中韓首脳会談開催の可能性もある。そうした場も活用し、首脳対話の道を探ってほしい。何かことが起きて一時的に関係が険悪化することがあっても、少しずつ積み上げてきた関係改善への流れを一気に振り出しに戻すというパターンを繰り返すべきではない。日中両国の政治的知恵に期待したい。
●岸田首相、連合の定期大会に出席へ 自民党政権の首相として16年ぶり 9/28
岸田文雄首相は10月5、6両日に東京都内で開かれる労働組合の中央組織・連合の定期大会に出席する調整に入った。複数の関係者が27日、明らかにした。連合の定期大会は2年に1回開催されており、岸田首相が今回出席すれば、自民党政権の首相としては2007年の福田康夫氏以来16年ぶりとなる。
岸田首相は1月、連合の新年交歓会に2年連続で出席したほか、4月には連合主催のメーデー中央大会にも現職首相としては9年ぶりに出席した。政権の重要課題と位置付ける賃上げ実現に向け、連合重視の姿勢を強めている。
首相は今月15日、電機連合の組織内議員だった元国民民主党参院議員の矢田稚子氏を賃金・雇用担当の首相補佐官に起用する異例の人事を決めた。定期大会では芳野友子会長の再選が決定される予定で、首相の出席には矢田氏の起用に続き、労組票取り込みの狙いもありそうだ。
●岸田首相 政権の“皇室担当”が退任も後任は置かず…議論放置“皇室軽視” 9/28
天皇陛下と雅子さまにとって、多忙な秋がやってきた。10月には、国民体育大会の開会式へ臨むために鹿児島県を、国民文化祭の開会式などに出席するために石川県をそれぞれ訪問されることが9月20日に発表された。
「先日は、北海道で開催された全国豊かな海づくり大会に両陛下は臨席されました。雅子さまにとっては24年ぶりの北海道ご訪問です。終始明るくお元気な様子で、同行した側近も一様に安堵したと聞いております」(宮内庁関係者)
だが雅子さまにとって、心穏やかではいられない動きが、突如政府内に起きていた。
「じつは、皇位継承問題などを担当していた山ア重孝内閣官房参与が、13日に退任していたことが明らかになりました。上皇さまの退位を受け設置された政府の有識者会議は2021年末に最終報告書をまとめ、翌年にかけて国会に示されました。山ア氏は事務方を取りまとめ、皇室を維持するための一連の議論を集約する役割を担ってきました。その山ア氏の退任によって、官邸の“皇室担当”が不在となってしまったのです」(政治部記者)
昨年春ごろに岸田文雄首相は、「皇室典範の改正は私の代でしっかりやりたい」などと語っていたというが、この人事には、官邸内部からも首を傾げる声が聞こえる。
「山アさんの後任となる“皇室担当”の参与は当面置かないそうです。つまり、“官邸は何もしない”ということにほかなりません。現状では、政府から国会に対して最終報告書を示している形で、“政府として議論を促さない”という姿勢を貫いています。しかし、自民党内に設置された『皇室問題等についての懇談会』も2022年1月に初会合を開いて以降、一度も開かれていません。岸田総理に対しては、『自民党総裁として議論を促すべき立場にあるにもかかわらず、やる気がなさすぎる』『保守層の離反で支持率が下がることを恐れている』などという声が官邸や与党内から聞こえてきます」(官邸関係者)
保身のために変心した岸田首相の姿勢に翻弄されるのは、愛子さまのご将来にほかならない。静岡福祉大学名誉教授の小田部雄次さんはこう警鐘を鳴らす。
「皇室にとって愛子さまに期待される役割は年々大きくなっている一方で、現在の皇室典範では結婚によって皇室を離れてしまうことが避けられません。残るとしても結婚することを諦め、独身であり続けなければならず、改正は欠かせない状況にあります。将来にわたる皇室のあり方についての議論が停滞することは、皇室の存続の危機を放置するばかりか、愛子さまの人生の選択肢をより狭めていってしまうのです」
岸田首相の“裏切り”は、愛子さま、そして皇室の未来を揺るがしかねない――。
●福島党首会見 岸田政権の経済対策を批判〜まず不公平税制の是正を〜 9/28
社民党の福島みずほ党首は9月27日、記者会見を行ない、岸田政権の経済政策やインボイス制度などについて語った。
岸田文雄首相が25日に発表した経済対策の骨子について、福島党首は「たくさんの人々を応援する政策に全くなっていない」と批判した。
「経済対策で低所得者への給付、住民税非課税世帯を軸にやると言うが、今までやってきたこと。もちろん抵所得層への支援は必要だが、(新たな経済骨子は)働く人を中心にした多くの世代を本当に潤す、応援するというものになっていない」
また福島党首は、「格差の指標であるジニ係数が過去最大水準になった」として、「個人消費が落ち込んでいる。物価高。ガソリンが高い。電気が高い。だから買い控えが進行している中、消費税はマイナスということを政府は認識すべき」と述べた。「人々の生活をどう応援するのか。消費税減税、抜本的な賃上げしかない。根本的には公平な税制の実現が必要だ。法人税は過去7回どんどん下げて、その分、消費税を上げて法人税の減税分を賄っているという構図をどうするのか。大企業には内部留保が500兆円ある。社民党は企業の内部留保に課税せよという政策を各政党の中で一番初めに打ち出した。新自由主義の転換が必要だ」。
10月から始まるインボイス制度に反対する署名が52万筆も集まったことについて福島党首は、「消費税は逆進性があり、収入が少ない人により大きな負担となる。小規模でやっているフリーランスの人や事業主は、インボイス制度で消費税を払えとなると、1ヵ月分の収入が消えることになる。大企業は輸出に対して消費税を免除されており、不公平だ」と指摘。「インボイス制度は導入延期または中止すべき」と述べた。
●「持続的賃上げ」「国内投資促進」指示 岸田首相 新しい資本主義実現会議で 9/28
「持続的賃上げ」と「国内投資促進」による成長型経済を実現するための議論が始まった。
岸田首相「コストカット型の冷温経済を、持続的な賃上げや活発な投資がけん引する、適温の成長型経済へ転換する手法について、ご議論をいただきました」
政府は27日、新しい資本主義実現会議を開き、10月中にとりまとめる経済対策の柱となる「持続的賃上げ」と、「国内投資促進」を実現するための重点事項を示した。
賃上げに取り組む企業や、戦略的に長期投資が必要と国が認めた半導体・蓄電池などの分野への減税などが議論され、成長型の経済を目指すとしている。
岸田首相は、今後3年間を変革期間として、関係省庁で政策の具体化を早期に実行するよう指示した。 

 

●経済対策5本柱を発表した岸田首相が言われたくない「2つの言葉」 9/27
「コロナ禍を乗り越えた国民は、今度は物価高に苦しんでいる」
26日の閣議でこう指摘して「今こそ成長の成果である税収増を国民に適切に還元すべきと考えている」と述べた岸田首相。その上で、25日夜に表明した、物価高対策・持続的賃上げ・国内投資促進など経済対策の5本柱を改めて示し、賃上げ税制の強化などを含めた具体的な対策を10月末をめどにとりまとめるよう、閣僚に指示した。
このニュースについて、政治部の高田圭太デスクが解説する。
「還元」という言葉に“こだわり”
岸田首相が掲げた「税収増を国民に適切に還元する」というのは、どういうことなのか。
この「還元」という言葉。関係者によると岸田首相の“こだわりの言葉”だったようだ。
今、税収はコロナ禍からの景気回復や円安に伴う物価高などの影響で増えていて、昨年度の税収は71兆円と前の年度より4兆円も増えた。岸田首相としては、このお金を国民に還元して、暮らしを支え、経済の好循環につなげようということだ。
具体的には「物価高対策」「持続的な賃上げ」「国内投資促進」「人口減少対策」「国民の安全・安心」の5本柱。もともと賃上げと投資をまとめた4本柱だったが、それぞれを独立させて5本柱にしたもので、これに基づいてこれから具体策を決めていくことになる。
国民の暮らしには、どのように還元されるのか。
現時点で岸田首相が言及しているのは「燃料油や電気・ガス代の補助」「物価高に伴う地方交付金の追加」「賃上げを支援する減税制度の強化」「年収の壁を乗り越える支援策」で、これからさらにどのような対策が追加されるかがポイントとなる。
「増税」「バラマキ」と言われたくない…
この「還元」という言葉にこだわった裏で、実は岸田首相が今、言われたくない言葉があるという。
それが「増税」と「バラマキ」だ。
岸田政権でこれまで大きな増税は行われていないが、防衛費の増額に伴う増税を打ち出したり、政府の税制調査会の答申が「サラリーマン増税」と報じられた影響か、一部で岸田政権に増税というレッテルを貼る向きがある。
岸田首相はこの増税イメージを払拭したいということで、減税による還元を盛り込むことにこだわったようだ。
そしてもう一つ、岸田首相の家計支援策などについては「バラマキ」と批判する声もあり、岸田首相はこれも払拭したいようで、政府関係者も「ばらまけばいいということではなく、設備投資や研究開発など次のものを生み出せるところに還元するということだ」と強調している。
25日の記者会見で、「岸田政権では今後3年間を変革期間とし、集中的に取り組んでいくこととしています」と発言した岸田首相。今回の経済対策で目指す変革には3年間かかると言っていて、この対策のために3年は岸田政権を続けさせてくださいという思いがうかがえた。
●岸田首相「家計支援は低所得世帯だけ」に非難轟々…「高齢者へのバラマキ」 8/27
またもや、住民税非課税世帯――。
9月26日、政府、与党が食料品価格や光熱費の高騰による家計負担を軽減するため、低所得者向け給付措置を経済対策に盛り込む検討に入った。同日、共同通信が報じた。
給付対象は、住民税の非課税世帯が軸となりそうだという。現金で給付するか、使い道を一定範囲に絞るクーポンなどで給付するか、また、低所得の子育て世帯の支援を手厚くするかどうかも検討される。経済対策は10月末をめどにまとめ、2023年度補正予算案を編成する。
2022年9月に政府が決めた、電力、ガス、食料品などの価格高騰に対する支援では、住民税非課税の約1600万世帯を対象に1世帯あたり5万円を支給。国の支出決定額は8540億円にのぼったという。
厚生労働省が7月4日に公表した2022年の『国民生活基礎調査』をもとに計算すると、住民税非課税世帯全体に占める年齢別の割合は、
   ・29歳以下:3.9%
   ・30〜39歳:2.9%
   ・40〜49歳:4.7%
   ・50〜59歳:7.3%
   ・60〜69歳:15.8%
   ・70〜79歳:36.6%
   ・80歳以上:28.7%
となり、60歳以上では81.1%となる。保有資産にかかわらず、一定の所得水準以下であれば住民税非課税世帯となるため、高齢層が占める割合が高くなる。
そのため、SNSではまたも住民税非課税世帯への給付が検討されることに、批判的な声が多くあがった。
《またかよ!!もう暴れ回りたいくらい腹が立つ!!どんだけ我慢すればいいんだ!!非課税世帯以外も苦しんですけど!!全国民に恩恵のある減税してよ!!》
《住民税非課税世帯は高齢者の割合が全体の約82%を占める。つまり高齢者向けの選挙用バラマキ政策と言われても仕方ない。相変わらず現役世代に対しての支援策を打ち出す気は更々ないようだ》
《これほんと何回やるの…資産もない高齢者は働いているから、ほとんど資産があって悠々自適に過ごしている高齢者なんじゃあ、、、》
《また!また!また!またまたまた!!これ何回目よ。低所得者といいながら、実際は主に高齢者にバラまく選挙対策でしょ!!》
「政府は、2021年11月、新型コロナ禍の影響対策として18歳以下の子供に対し、10万円相当(現金5万円、クーポン5万円)の給付を決めました。このとき、およそ年収960万円の所得制限が設定されました。
2022年4月には、物価高騰の緊急対策として、子供1人あたり一律5万円の支給が決まりましたが、このときも住民税非課税など低所得という条件がつきました。
このように、現役世代には厳しく、また低所得者向けといいながら、実際は高齢者中心にバラまく政策と批判されても仕方ないところでしょう」(経済担当記者)
新型コロナウイルスの経済対策として、国民1人一律10万円の「特別定額給付金」が支給されたのは3年前。以降、実質賃金は16カ月連続でマイナスが続くなど、苦境は続く。
岸田文雄首相は、9月25日、経済対策の方向性について「成長の成果である税収増等を国民に適切に還元する」と説明したが、住民税非課税世帯への給付ばかり続くなら、疑問の声がさらに大きくなりそうだ。 
●IT先進国スウェーデン、学校で「紙と鉛筆のアナログ教育」に戻る計画を発表 9/27
教育先進国と言われている北欧諸国では、ICTを活用した学習を進めてきた。例えば、スウェーデンのソレントゥナ市は、2010年にタブレットやPCを1人1台付与する計画を進め、紙の教科書を原則として廃止するなど、思い切ったIT活用に踏み切った。これは、デジタル社会にいち早く対応した取り組みとして、日本にも紹介され、評価されてきた。
しかし現在、それに逆行する流れが生まれつつあるようだ。
2023年8月中旬から始まった新学期では、スウェーデン全土の学校で、印刷された本や静かに本を読む時間、手書きの練習に重点が置かれている。その分、タブレットを使った自主的なオンライン調査、キーボード操作のスキルに割く時間は減らされた。
この動きを主導しているのは、約1年前にスウェーデンの学校担当大臣に就任したロッタ・エドホルム氏である。彼女はテクノロジーの全面的な導入に以前から反対してきた。エドホルム大臣は2023年8月、「幼稚園でのデジタル機器の使用を義務付けるという教育委員会の決定を覆す」と発表し、さらに、6歳未満の子どもたちのデジタル学習を完全に止める計画であることを明らかにした。
実は近年、特に2016年から2021年にかけてスウェーデンの児童の読解力は低下している。小学4年生の読解力に関する国際的な評価である「国際読解力調査(PIRLS)」において、ヨーロッパ平均は上回っているものの、毎年ポイントを下げているのだ。
以前より、保育園でのタブレット導入など、スウェーデンの教育へのデジタル化アプローチが基礎的な学力の低下につながっているのではないか、という政治家や専門家から疑問の声があがっており、エドホルム大臣の決定はこれらに応えた形だ。
スウェーデンのカロリンスカ研究所も、「デジタル情報源から知識を得るのではなく、印刷された教科書と教師の専門知識を通じて知識を得ることに重点を戻すべきだと考えている」との声明を発表している。
だが、話はそんなに単純だろうか。
スウェーデンの「伝統的な教育方法」への回帰に異論を唱える専門家もいる。オーストラリアのモナシュ大学で教育学を専門とするニール・セルウィン教授は、「テクノロジーの影響を批判することは、保守的な政治家がよく使う巧妙な方法」だと言う。
セルウィン教授は、英・Guardianの取材にて「スウェーデン政府は『テクノロジーが学習を向上させるという証拠はない』と言っているが、裏を返せば『テクノロジーによって何が効果的なのか、よく分かっていない』ということだろう。テクノロジーは、教育における複雑な要因の一部に過ぎないのだから」と述べている(※1)。
日本でも、2020年より進められているGIGAスクール構想により、小中学校で1人1台の学習用端末の配備がほぼ完了している(※2)。また、今後はChatGPTなど生成AIの登場により、これらを活用した授業のあり方が議論されている。
これからもICTは間違いなく生活に欠かせないツールであり、さらに驚くべきスピードで進化し続けている中で、初等教育はどうあるべきか、どのように取り入れていくべきか、手探り中という状態だ。
関与する教育関係者の政治的立場や思い込みではなく、事実に基づいた検証と議論を重ねることで、教育の中心である子どもたちに最高の学習環境を提供することが、大人としての責務ではないだろうか。
●政治化した自動車産業の行く末 本当にEV? 9/27
EVのニュースを傍で見ていると時としてこれは漫才ではないだろうか、と思うことがあります。
十数年前、EVの時代が来るぞ、とマーケティング上のアーリーアダプターたちが興奮しました。日本では三菱自動車や日産が世界に先駆けてEVを発売し、「さすが自動車大国ニッポン」と思わせました。
その日本では推進派と反対派がぶつかり、産業界はどっちつかず。その頃、中国では国を挙げて「EVを作る!」で盛り上がるも、日本の技術者はそのEVをみて「素人のプラモデル」程度だとこき下ろしました。
欧州ではVWの排ガス問題から一気にEV化を政治問題に絡ませ、産業構造の変換を図ろうとします。一方のアメリカでは「国土が広いし、その辺掘れば、原油もでるぜ」でまともに構える気もなし。
それがいつの間にかSDG’sだ、産業は変わる、電池も変わると異口同音にEVバンザイとなります。
その間、馬鹿にされていた中国ではEVの実用化が進むどころか、レッドオーシャンの中国国内自動車市場で改善改良を重ねた車が続々登場、淘汰も進む中でBYDが後続を数馬身離して国内トップを走ります。
EVで笑える企業は現在は世界でも数社しかないと思います。そしてその快進撃は世界のポリティックスに歩調を合わせながら巧みに展開されています。つまり、市場が求めたというより政府がそうさせようと仕向けているのです。
今、西側諸国は中国と厳しい関係になっています。そして世界が最も重視する産業の一つ、自動車業界についてはその運用面や電池開発、またその素材供給で中国のリードを許す結果になっています。
では世界の政治家はこれからどうするつもりなのでしょうか?案外、簡単かもしれません。
再度、ゲームチェンジをすればよいのです。無茶苦茶な話かもしれませんが、絶対にないとは言えない気がしています。
欧州では2035年以降、ノーエミッションカーの新車販売のみ許される、というルールをドイツがごり押しで変えました。合成燃料(E燃料)の車は例外にすると。合成燃料は空気中のCO2と水素から作り、走る時はCO2を排出します。作る時にCO2を減らし、走る時に同量を出すので足し引きしてチャラだろう、という論理です。この論理は今までの頑なな石化燃料ダメダメ論からずいぶんこなれた思想に転換したな、と思うのです。
だったらPHVで合成燃料ならどうだろう、と思うのです。私だけが勝手に思っているのですが、日本は万々歳でしょう。日産のガソリンを電気に変える方式の車両に合成燃料を使えるようにしたらOKなのでしょうか?環境規制が最も厳しい欧州でのこの変化は内燃機関のクルマをどうにかして認めるという話になるかもしれません。
英国のスナク首相が2030年のガソリン車とディーゼル車の販売禁止計画を5年延長すると発表しました。一部自動車メーカーから「間に合わない」と悲鳴が上がったことが理由とされます。つまり、政治的決定もそれが現実的でなければ施行できないのです。自動車メーカーが出来ないと言ってしまえば「じゃあ、延ばそう」なのです。つまり政治とはそれぐらい時の風に吹かれやすいのです。
アメリカはどうでしょうか?トランプ政権の時、EVよりもライトトラックでした。「環境問題どこ吹く風」だったのです。が、大統領が変わるだけでこうも世の中の絵図が変わってしまうのです。では来年の大統領選。どうなるかわかりませんが、それ次第ではアメリカのEV熱はまた変わるかもしれません。
技術的にはどうでしょうか?基本は電池の開発がEV化の波を後押ししています。トヨタの27年全個体電池の実用化に関しては、日産などがすぐに続く見込みで日本が新型電池に賭ける期待は大きいのですが、電池のディファクトスタンダードがリチウムからとってかわるとも断言出来ません。
既存電池の改良版からナトリウムイオン電池やら多価イオン電池など他にもいろいろ開発が進みます。充電方式もバッテリーも着脱方式やインダクティブ方式などが議論される中で何が来るのかさっぱりわからない、これが正直なところです。水素自動車も今はひっそりしていますが、そのうち再び脚光を浴びるでしょう。
最近、私が関連するある団体でEVチャージャーを駐車場に導入する議論をしていたので私は強く意見しました。「バンクーバーでは数年のうちにEVチャージャーが供給過剰に陥る。よってチャージャーを持たないことが不動産や事業の価値の劣化にはつながらない」と。全個体電池が出来れば航続距離は1000キロを超え、充電時間は数分から10分前後となればチャージャーの総使用時間は極端に減るのです。
今、バンクーバーのダウンタウンにはガソリンスタンドはたった1か所、それでも混んでいるわけではないのです。つまり、我々は政治に振り回され、いらぬ投資をさせられた可能性があります。
それに中国と敵対関係にあるならEVを推進することで敵を利することになるわけで国内産業保護の点からみて政治家はそれでも現在のEVを推進したいのか、私には疑問なのです。フォードがミシガンに建設予定のEV工場は中国電池大手CATLからの技術供与が前提でした。今回、工場建設を中断するとしたのも結局は政治が背景です。
ここからの自動車のEV化は勝利の方程式が見えない泥沼の戦いになるとみています。EV開発競争は黎明期からテスラ独走、そしてその追撃期を経てどんな新展開をするのか、一筋縄ではないような気がします。
●岸田首相が政権幹部と会談 麻生氏・茂木氏・松野氏と都内ホテルで 9/27
岸田首相は27日、自民党の麻生副総裁、茂木幹事長らと会談するため、東京都内のホテルに入った。
会談には、松野官房長官も同席し、東京・千代田区のホテル内で昼食をともにして行われる。
内閣改造・党役員人事を終え、経済対策の柱を発表した岸田首相は、政権幹部らと今後の政治日程や政権運営などについて、意見交換しているものとみられる。
10月に再改造内閣の発足後、初めての国政選挙となる参院徳島・高知選挙区、衆院長崎4区の補選を控えているほか、党内には衆院解散の観測がくすぶっていて、こうした情勢についても話し合う可能性がある。
●国民は限界だ!弱者を切り捨てる鬼の岸田政権…インボイス制度開始の裏 9/27
国が起業や副業を推奨する中、10月からインボイス(適格請求書)制度がスタートする。請求書と帳簿に関するルール変更は事務負担が増大する上、インボイス以外の請求書は仕入先に消費税を支払ったとは認められないため、フリーランスや小規模事業者からは「弱い立場の事業者が排除される」と反対の声が上がる。
だが、政府は納税額の緩和措置などで理解が得られるとの立場だ。このままインボイス制度がスタートすれば何が起きるのか。経済アナリストの佐藤健太氏は「様々な業種で実務の影響は小さくない。特に飲食業やタクシー業は要注意だ」と指摘する。
インボイスがないとどうなるか
インボイス制度は消費税の納税額の正確な把握を目的に始まる制度だ。事業者が販売先から預かった消費税を仕入先に支払った消費税と合わせて計算するためには、請求書などがインボイスである必要がある。この点だけを見れば何も問題がないように思われるかもしれない。だが、インボイス以外の請求書であれば仕入先に消費税を支払ったとは認められず、仕入れにかかる消費税も国への納付が必要となる。
つまり、事業者が販売先から預かった消費税が150円だった場合、インボイスの場合は仕入先に支払った消費税100円を差し引いた50円を納付することになる。だが、請求書がインボイス以外のケースは仕入先に消費税を支払ったとは認められず、150円の納付が必要になる。
インボイス制度は選択制のため、事業者は消費税の申告義務がある課税事業者になるか、義務がない免税事業者になるかを選ぶ。課税事業者が適格請求書発行事業者として税務署に登録すればインボイスの発行が可能になるが、それ以外の事業者や免税事業者はインボイスを発行できないものだ。
インボイスが「弱者切り捨て」制度であるのは明白
ここで問題になるのは「インボイス以外」の免税事業者となる。これまでは課税売上高が1000万円に満たない事業者は免税事業者とされ、消費税10%を納税する必要がなかった。しかし、インボイス以外の請求書を受け取った事業者は消費税を仕入れ税額控除できなくなるため、多くの事業者はインボイスが発行できる事業者との取引先を求めることになる。
免税事業者からすれば、これまで不要だった消費税分を課税事業者になって国に納めるか、取引先から敬遠されることを恐れず「インボイス以外」を選択するかの苦渋の判断を迫られる。フリーランスや小規模事業者から「インボイスは実質増税」「弱者切り捨て」との声があがる理由だ。
東京商工リサーチが8月31日に発表したアンケート調査結果によると、インボイス登録をしない免税事業者との取引方針については「取引しない」が8.3%、「価格を引き下げる」が3.4%で1割強が「インボイス以外」との取引にネガティブとなっていることがわかる。取引は継続するものの、「内税」の形で実質的な価格が引き下げられれば、フリーランスや小規模事業者に打撃となるのは想像に難くない。
鈴木財務省「増税を目的にしたものではない」
鈴木俊一財務相は9月15日の記者会見で「増税を目的にしたものではない」と制度導入に理解を求め、適正な課税を確保するためのものだと強調する。財務省は約460万の免税事業者のうち約160万が課税事業者になることを選択すると踏んでいるが、約300万は取引の先行き不安を抱いたまま10月を迎えることになる。
9月初め、東京都内の税理士法人で開かれたインボイス制度に関するセミナーには零細事業者が殺到した。「免税事業者から課税事業者になればインボイスが発行でき、取引も従来通り継続することができるかもしれない。でも、事務負担増に加えて実質的な増税は大打撃になる」「免税事業者のままでいたいが、取引先から排除されたり、値下げを強いられたりするのが不安」といった意見が相次いだ。進むも地獄、退くも地獄を迫られているとの声が広がる。
国は負担軽減措置として、当初の3年間はインボイス発行事業者となる小規模事業者に対する「2割特例」を設ける。売り上げにかかる消費税額から売上税額の8割を差し引いて納付税額を計算するものだ。また、6年間は免税事業者と取引する事業者の負担抑制措置も講じることで制度導入に理解を求める考えに変更はない。
タクシー、飲食店もインボイス登録を迫られる
ただ、インボイス制度が始まると事業者の負担増の他に、身の回りでも様々な変化が生じることが予想される。具体的にどのようなことが起き得るのか。まず身近で考えられるのは「タクシー」の選別だ。仕事の経費とする場合、乗車する前にインボイスを発行できるタクシーなのか否かをチェックする必要に迫られる。影響を受けるのは「個人タクシー」でインボイスを発行できない場合は客から敬遠される可能性があるだろう。タクシー業界は車体や行燈に「インボイス発行できます」といった目印をつけることが予想される。
もう1つ挙げるとすれば「飲食店」への影響が考えられる。客から「領収書をください」といわれることが少ない店はインボイス登録をしないままでも良いかもしれないが、サラリーマンが接待で利用するような店はインボイスを発行できなければ、客足が遠のく可能性がある。料金を支払う際、店側から「インボイス登録していません」と言われて困らないためにも事前に確認することが重要になるだろう。
政府「老後のお金は2024年からの新しいNISAで自分で稼げ」
インボイスは2019年から消費税が8%と10%に分かれたことの対応策として導入されることが決まった。複数税率となった経緯を改めて振り返ると、これまでは増税反対論を抑えるために免税事業者の「益税」を認めてきたものの、今後は厳しい財政事情を踏まえて許さないという国の強い意志を感じる。
国から副業や起業を推奨されたと思っていたらインボイス制度が導入。サラリーマンのまま老後を迎えようと思ったら、退職金の課税見直しを含めた「サラリーマン増税」が政府税制調査会で議論される状況だ。物価上昇の勢いとは異なり、人々の所得が思うように上がらない中で老後不安を解消するために国が用意したのは資産運用の道だけと言える。要するに「老後のお金は2024年からの新しいNISAで稼げ」というようなものだろう。
50を数える税に、増えていく社会保険料。消費税率のさらなる引き上げは念頭にないと繰り返す岸田首相だが、取れるところから徴収していけば良いというスタンスからは多用する「異次元」を見ることはできない。
●岸田政権が“実弾介入級”1ドル=149円台の円安放置…口先介入 9/27
円安が止まらない。26日、とうとう1ドル=149円台に突入。昨年の例に倣えば、とっくに「実弾介入級」の水準だが、政府の動きは鈍い。
「FRB(米連邦準備制度理事会)が金融引き締めの長期化をにおわせたのに対し、日銀は粘り強い緩和継続を強調した。これを受け、米金利は上がり、円安が進んでいる。今後、米金利のさらなる上昇が見込まれ、円安加速は避けられない。米ゴールドマン・サックス(GS)は半年後に1ドル=155円まで円安が進むと予想しています」(市場関係者)
ところが、政府・日銀はノンビリだ。
昨年は9月に145円台に突入したところで、政府・日銀は実弾を投入。約24年ぶりにドルを大量に売って円を買う為替介入に踏み切った。その後も10月に2度実施し、介入額は計9兆円超に上った。米国の景気後退懸念もあって、10月21日の1ドル=151.94円をピークに円安は収まり、11月下旬以降は130円台に落ち着いた。鈴木財務相は「一定の効果があった」と胸を張った。
国民生活よりインバウンド優先
今年は150円台に近づいても口先介入にとどまっている。26日、鈴木財務相は「過度な変動にはあらゆる選択肢を排除せず適切に対応する」とあらためて市場を牽制。岸田首相や松野官房長官も先週、「あらゆる選択肢」と口にしている。
「口先介入には段階があります。〈安定的に推移するのが望ましい〉や〈注視する〉から〈必要に応じて適切な措置〉に踏み込み、次が〈あらゆる選択肢〉です。さらに、〈断固たる措置〉があり、最後に、日銀が金融機関の担当者に相場水準を尋ねる“レートチェック”を行います。『あらゆる選択肢』と言っても、市場関係者は〈為替介入はまだ先〉と受け止めるだけです」(金融関係者)
円安が長期化し、GSの予想通り155円まで突き進めば、輸入物価が高騰し、暮らしは壊滅的となる。原油価格も1バレル=100ドルに迫るとの見方もある。金融ジャーナリストの森岡英樹氏が言う。
「昨年と違って、今年は水際対策が緩和。日本経済はインバウンドに大きく依存しています。もし、昨年のような介入を実行して、130円台まで円高に振れれば、『安い日本』が呼び込むインバウンド需要に水を差すことになる。だから、岸田政権は口先で済ませているのです。国民は円安による物価高に苦しむことになりますが、国民生活よりもインバウンドを優先なのでしょう」
訪日客の“円安天国”を眺めながら、国民は“値上げ地獄”でもがくことになりそうだ。
●「爆買い離れ」の今、インバウンドに血税バラマキは意味があるのか… 9/27
9月25日、岸田政権が10月に取りまとめる大型経済対策の骨子が明らかになった。いつものように総花的な印象が拭えないものの、どこに力点を置くのかというメリハリをつけることで、それなりに効果を上げることも可能だ。最大の焦点はどこに予算が重点配分されるかだろう。
経済対策を評価する4つの視点
今回の経済対策は主に5つの柱で構成されている。1つ目は「物価高対策」、2つ目は「持続的賃上げと所得向上」、3つ目は「成長につながる国内投資促進」4つ目は「人口減少を乗り越える社会変革」、5つ目は「国民の安全・安心」となっている。
表現がやや抽象的なので、 もう少し具体的に説明すると、物価高対策についてはガソリン代や電気代の補助などが軸となっており、現行の補助策を年明け後も延長するのか、あるいはあらたな方策を実施するのかが焦点となる。これに加えて、訪日外国人観光客の呼び込み、農林水産品目の輸出拡大などが盛り込まれた。
持続的賃上げについては、リスキリング(学び直し)などの施策を想定していると思われる。リスキリングは岸田政権が当初から打ち出してきた政策であり、これをどのように拡大・具現化していくのかが注目される。
国内投資促進については、半導体工場など国内生産体制の強化が検討されている。空洞化した日本の産業構造を転換することで所得全体の底上げを目指す。
人口減少対策については、デジタル行財政改革の推進と物流2024年問題への対応が中心になると考えられる。5番目の国民の安全・安心の確保については、福島第一原発の処理水対策や国土強靭化となっている。
経済対策を分析する上で大事なのは、短期的な政策なのか中長期的な政策なのかという時間軸の視点と、需要側を喚起する政策なのか供給側を支援する政策なのかという2つの視点である。2軸で構成されたマトリックスを考え、どこを重視しているのかが分かればおおよその効果が推定できる。
ちなみに短期的な政策は即効性があるものの、その効果は長続きしないという欠点があり、中長期的な政策はすぐには効果を発揮しない一方で、中長期的な成長を担保するという役割がある。では、上記の2軸の視点で今回の経済対策について評価するとどうなるだろうか。
政権の腕の見せ所
物価対策に盛り込まれたガソリン代補助などの施策は、いつまでも継続できるものではないため、時間軸的には短期ということになり、実施対象という点では、国民の可処分所得を増やすという効果があるため需要側を喚起する施策といえる。
一方、リスキリングや半導体の国内生産拡大というのは、労働生産性を向上させたり、国内での供給力を強化するという流れなので供給側に対する支援策と考えてよい。これらの施策は1年や2年で成果が出るものではなく、時間軸という点では中長期的な政策に区分される。図版にまとめたので参照してほしい。
デジタル行財政改革や物流2024年問題への対処は、2024年と時期が区切られているものの、デジタル化の推進などで社会全体の効率をアップさせるという話なるので、 時間軸的には中長期的政策といえる。どちらも企業や官公庁の効率改善に寄与するため、供給支援と位置付けることができる。
最後の処理水対策や国土強靭化計画は内容次第で位置付けが変わる。従来の公共事業に近い施策であれば、即効性があり、かつ長期的にも効果が期待できた。だが、乗数効果が乏しい現代においては短期的な効果が中心で、需要喚起というニュアンスが強くなる。
この政策パッケージがうまく機能するのかを見定めるには、マトリックスのどこに比重が置かれるのかについて検討する必要がある。短期的で、かつ需要側に力点を置いた政策の比重が高い場合、即効性がある割に効果があまり持続しないこともあり得る。
一方、中長期的かつ供給側に力点が置かれた場合には、即効性がない分、日本経済の長期的な成長に寄与することになる。
一般的に選挙対策として経済対策が用いられる場合、前者になることが多く、行き過ぎれば、いわゆるバラマキになってしまう(図の上半分)。現時点での効果を確保しつつ、いかに中長期的な施策を盛り込めるのかが政権としての腕の見せ所といえるだろう。
選挙の有無で比重が変わる
各施策の中でもっとも大きな目玉となる可能性が高いのは、ガソリン代補助など物価高対策と、リスキリングや国内生産拠点の拡大など供給体制の強化だろう。
岸田政権は近く解散を検討しているとの報道もあり、もしそれが事実であれば、選挙対策というニュアンスが強くなり、ガソリン補助など近視眼的な政策の比重が高まる可能性が高い。
もしそこまで選挙を意識していないのだとすると、来年秋の総裁選をターゲットに、リスキリングによる生産性向上や半導体の国内生産強化など、賃上げにつながる政策の比重が高くなるだろう。
一部では、訪日外国人観光客によるインバウンド需要の復活を期待する声もあるが、中国経済がバブル崩壊によって苦境に陥っていることや、中国人のライフスタイルが途上国型から先進国型に変わっていることなどもあり、かつてのような爆買いが復活する可能性は低い。
仮に以前のような爆買いが戻ったとしても国内への経済効果は5兆円から7兆円程度であり、賃金に対して1%程度の上昇効果しか見込めない。日本は経済大国なので、観光が経済全体に占める比率は低く、インバウンド強化を実施しても、全体への効果は限定的と考えた方がよいだろう。
農林水産品の輸出拡大についても、当該業界にとっては非常に重要な項目だが、インバウンドと同様、GDP(国内総生産)に占める割合はごくわずかであり、経済全体への効果という意味では限定的なものとならざるを得ない。
デジタル行財政改革も同様で、遅れている日本の行政 デジタル化が進めば、長い目で見た社会の効率化が促進されるだろうが、現時点における最大の課題はマイナンバー制度の不備の解消であり、基本的には当該業界への支援にとどまる。
全体を整理すると、ガソリン代補助などの支援策をいつまで継続するのか(あるいはガソリン税減税など恒久的な措置に踏み込むのか)、どのような財源が選択されるのか、リスキリング政策が具体的にどのような中身となり、予算規模はどの程度なのかといったあたりが注目ポイントと言えそうだ。
日本企業の収益が低く推移してるのは、デジタル化の不備と密接に関係しており、デジタル化を推進するためには、労働者のリスキリングが必須となる。
だがこの施策については、相当程度の予算を長期で投入しないと効果は得られない。このあたりについて、どの程度踏み込んだ方針が示されるのかで、政権の本気度が分かるだろう。
 
●2閣僚ら親族に賃料支出 松村祥史氏や加藤鮎子氏、政治資金の「還流」 9/27
第2次岸田文雄再改造内閣の政務三役のうち、松村祥史国家公安委員長、加藤鮎子こども政策担当相と副大臣2人の政治団体が、議員の親や、親族が代表を務める会社に事務所の賃料を支出したと政治資金収支報告書に記載していたことが分かった。親族への支払いは政治資金の「還流」が疑われるとして疑問視する声もあり、丁寧な説明が求められそうだ。
判明したのは閣僚2人のほかに、工藤彰三内閣府副大臣と酒井庸行経済産業副大臣。
松村氏の「自民党熊本県参議院選挙区第1支部」は2018年1月〜20年6月に月額3万円、20年7月〜21年12月に月額5万円を兄が代表取締役を務める建設会社に支払っていた。
加藤氏の「加藤鮎子地域政策研究会」は少なくとも18年〜21年、月額15万円を母親に支出していた。
岸田首相の内閣改造が政権浮揚につながらなかったばかりか、国民の不信感を強めかねない問題の発覚。昨年8月の内閣改造後には、閣僚4人が相次いで交代となる「辞任ドミノ」となっており、政権内に警戒感が広がっている。
●「ドリル優子」との批判がやまない小渕氏の不安な前途 9/27
第2次岸田再改造内閣発足から2週間、岸田文雄首相が狙った支持率アップにはつながらず、与党内でも「このままでは解散困難」との声が広がる。特に“目玉人事”だった小渕優子元経済産業相の自民選挙対策委員長への起用が、「国民的にも不評」(自民幹部)だったことで、今後の政権運営の“火種”にもなりかねない状況だ。
岸田首相があえて自民党4役の一角に小渕氏を起用した人事には「茂木派内の事情を見透かしたうえでの、茂木幹事長への牽制」(自民長老)との受け止めが大勢だ。多くの他派閥幹部が「将来の小渕派復活への布石になる」(安倍派)と読むからだ。
そもそも、岸田首相が茂木氏に幹事長を続投させたのは「次期総裁選への茂木氏出馬の芽を摘む狙い」(岸田派幹部)との指摘がある一方「状況次第では、次期総裁選で茂木氏に政権を禅譲することで、大派閥領袖としての影響力維持を目指す戦略」(麻生派幹部)との見方も出る。「茂木政権後の小渕派への衣替えをにらんで、双方に恩を売る」(同)という“岸田流強か人事”の一環との分析からだ。
ただ、岸田首相の小渕氏起用が思惑通りの結果になるかは、「まさに小渕氏次第」(自民長老)だ。通り名とまでなっている「ドリル優子」の汚名と、小渕氏がどっぷり漬かってきた「昭和の政治」からの脱却ができない限り、「初の女性宰相は夢のまた夢」(同)になりかねないのが実態だ。
戦後最年少での初入閣で「自民のプリンセス」に 
小渕氏は恵三元首相(故人)の愛娘で、政界デビュー時から「自民党のプリンセス」と呼ばれ、2008年の麻生内閣で内閣府特命担当相として戦後最年少(34歳9か月)で初入閣した頃から「初の女性首相の最有力候補」の呼び声が高まった。
そうした中、2014年9月に発足した第2次安倍改造内閣では、重要閣僚の経済産業相に女性として初めて任命された。しかし、10月に自身の政治団体を巡り政治資金規正法違反があったことが『週刊新潮』に報じられ、わずか1カ月半で辞任に追い込まれたことが、「政治家としての挫折」(茂木派幹部)となった。
特にこの問題で、東京地検特捜部の家宅捜索前にパソコンのデータを保存するハードディスクがドリルで破壊されていた事実が報じられると、ネットも含め「ドリル優子」と大炎上。さらに、2015年に元秘書2人の政治資金規正法違反での有罪判決を受けて、小渕氏の管理責任が厳しく問われたが、説明のための本格的記者会見は地元群馬で2015年に1回開いただけだったため、いまだに当時の汚名を引きずる状況が続いている。
小渕選対委員長も含めた自民党4役の就任会見は内閣改造に先立つ9月13日午前、永田町の自民党本部で開かれた。これまでの党4役就任会見は儀礼的な内容となるため、記者席も空席が目立つケースが多かったが、今回は50人近い記者で満席となり、しかも最前列に多数のカメラマンが並ぶという物々しい雰囲気で始まった。
もちろん、注目の的は小渕氏の言動だった。就任会見という晴れ舞台に黒いパンツスーツで臨んだ小渕氏は殊勝な態度で抱負を語ったが、記者団は次々と過去の政治資金規正法違反事件について小渕氏を問い詰めた。
「決して忘れることができない『傷』」と涙ぐむ
これに対し小渕氏は、次第に感情が高ぶったのか、目に涙をたたえて「あの時に起こったことは、政治家として歩みを進めていく中で、決して忘れることのない『傷』。私自身の今後の歩みを見て判断していただきたい」と言葉を絞り出し、すさまじいカメラのフラッシュを避けるように頭を下げた。
小渕氏は、この事件についての地元群馬での記者会見では「心からおわび申し上げる」などと謝罪を繰り返したが、詳細については「関係者が亡くなったり、資料がなかったりして十分に説明できない」「捜査や調査の限界があるのでこれ以上の説明はできない」などと“幕引き宣言”して、以後は沈黙を続けてきた。
だからこそ、今回の就任会見での対応が問われたわけで、自民党内からも「改めてきちんと説明できなければ、涙で訴えても逆効果」(長老)との厳しい声が噴出。そうした状況も踏まえ、山口那津男公明党代表は9月24日放送のBS朝日「激論! クロスファイア」で、「説明責任が十分ではない。しっかり果たしてもらいたい」と苦言を呈した。
そもそも、政治資金をめぐる自民党議員の不祥事は「日常茶飯事」(選対幹部)だ。それだけに、小渕氏にしてみれば「なぜ自分だけがいつまでも追及されるのか、との思いが強かった」(周辺)とされる。
しかし、その原因は「いつか世間も忘れてくれるという態度を続けてきたことへの批判」(閣僚経験者)だったことは否定できない。だからこそ安倍、菅、岸田と続いた3政権では目立つ役職への起用は避けられてきたのだ。
その中で小渕氏は、2017年には党組織運動本部長代理、2019年には党政調会長代理、2021年には党選対委員長代行と党組織運動本部長として、裏方の活動を続けてきた。これに対し「色々思惑はあっても、自民党内では“小渕ブランド”復活への期待があり、それが今回の人事につながった」(同)とみられている。
岸田首相が小渕選対委員長に踏み切った背景には「6月に亡くなった青木幹雄・元自民党参院議員会長の『優子を頼む』との“遺言”と、それを後押しした森喜朗元首相の強い要請」があった。青木、森両氏は、小渕氏の父の恵三元首相と早大雄弁会の同窓として深い絆があり、特に小渕恵三政権で幹事長を務めた森氏は、首相在任中に病に倒れた小渕氏の後継首相となった経緯があるからだ。
人事前のインタビューで「腹くくる瞬間がある」と決意
今回の表舞台復帰を前に、小渕氏は『サンデー毎日』の企画した田原総一朗氏の特別インタビューの中で、初めて「首相の座」を目指す心境を吐露した。同インタビューは内政・外交各分野での小渕氏の考えを質したものだが、やはり注目されたのは有力政治家としての今後の目標についての発言だった。
インタビューの終盤に田原氏が「小渕首相待望論があるが」と核心に切り込むと「私の場合は父が倒れ、私なりに覚悟を決めてこの世界に入りました」と答えたうえで「私はずっと父の背中を見ながら育ち、父が総理をやった2年弱の苦労を見ています。命を削り身をもってそれを体現した姿が浮かびます。あの背中と同じ背中を今の自分が見せられるだろうか。自信はないし不安だらけです」とまずは正直に語った。
そのうえで総理の座について「目指しているとも言い難いが、腹をくくる瞬間というのがある。経産相になる時も、子供を産む時もくくる瞬間があった。(将来)またあの瞬間が来るだろうなとは思う」と控えめな表現ながら決意をにじませた。
当の田原氏はインタビュー後「人柄もよく、調整能力に長けている。女性初の総理を目指してほしい」と小渕総理への期待を強調した。しかし、改造後の各種世論調査では、小渕氏の抜擢を「評価しない」との声が多数派だ。
折しも、政局秋の陣は「いよいよ佳境に入り、解散風も吹き荒れている」(自民長老)。その中で野党側は小渕氏への“個人攻撃”に活路を見出そうとしており、「今後の展開次第では、岸田首相にとって小渕氏という存在が政局運営でも重い足かせになる可能性」(同)も少なくない。
●「ブレーキ役」の公明は自公政権の「がん」だった? 麻生太郎氏が酷評 9/27
自民党の麻生太郎副総裁が、敵基地攻撃能力(反撃能力)保有を含む安全保障関連3文書の昨年の与党協議に関し、公明党幹部の存在を「がんだった」と酷評した。能力の保有に当初は反対していた公明に今も強い不満を抱いていることの表れだ。憲法の平和主義や専守防衛を損なうような安保政策の大転換に慎重な姿勢を示す公明をけん制し、自民主導で次期戦闘機の輸出や改憲などの議論を一気に加速させたい思惑も透けて見える。
「連携に変わりはない」と山口代表
共同通信によると、講演は24日に行った。麻生氏は「北朝鮮からどんどんミサイルが飛んでくる。だが公明党は専守防衛に反するという理由で反対。現実をよく見てみろ」と指摘。山口氏、石井啓一幹事長、北側一雄副代表や公明の支持母体である創価学会が「がんだった」とした上で「今は時代が違う。ウクライナみたいに日本が戦場になると言い続け、納得するという形になった」と語った。
「自公で力を合わせながら国民の求める政策を推進し、これからの課題を乗り越えていくという基本姿勢の下で協力し合いたい」。公明の山口那津男代表は26日の記者会見で、麻生氏の発言への評価を避けつつ、自公連携のあり方に変わりはないと強調した。
公明は「平和の党」を自任しつつも、連立維持を最優先し、支持母体の創価学会に慎重論が残る安保政策の転換も容認して自民に追随してきた。2013年には当時の安倍政権が自衛隊と米軍の一体化を進めるために提出した特定秘密保護法に賛成。15年には歴代政権が一貫して「憲法上許されない」としてきた他国を武力で守る集団的自衛権の行使を容認する安保関連法も成立させた。
それでも、公明は当初、集団的自衛権の容認に懐疑的で、拙速に物事を進めようとする自民に抵抗。最終的には自民に押し切られ、安保政策の大転換を受け入れたが、行使に厳格な要件を設けようとするなど、十分とは言えないが、一定の歯止め役を果たした。
敵基地攻撃能力の保有を巡っても、公明の山口氏は20年に「(政府が)将来にわたって能力を持つ考えはないと答弁していたのに、なぜ変わろうとしているのか」と述べ、自民と議論すること自体に一貫して消極的な態度だった。
鬱憤晴らしか保守層へのアピールか、その代償は…
21年衆院選後も議論に否定的で、山口氏は会見で態度が軟化したかと問われて怒りをあらわにする場面も。北側一雄副代表は「敵基地」「攻撃」の用語に「先制攻撃と誤解される可能性がある」と注文を付けた。台湾有事を声高に叫んで防衛力増強を訴える麻生氏にとって、公明幹部のせいで安保政策の見直しが思い通りに進まず、鬱憤うっぷんをためていたとみられる。
防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の要件緩和に向けた与党協議でも、公明が「政権のブレーキ役」(山口氏)の立場は変わらない。自民は、英国やイタリアと共同開発する次期戦闘機の第三国輸出を念頭に結論を急ぐ構えで、平和国家の理念を損なわないよう徹底した議論を求める公明の対応はもどかしく映る。
改憲では、自民は日本維新の会や国民民主党といった積極的な野党との連携も視野に論議を推進したい考え。9条改憲に慎重な公明とは温度差が消えない。
法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)は「公明が安保協議に加わらなければ、岸田政権はもっと強い防衛政策を取れたと訴えることで、岩盤保守層へのアピールもあった」と推測。自公は次期衆院選の候補者調整を巡って関係修復にかじを切ったばかりだが、自公関係について「麻生氏の発言で一枚岩ではないことを印象づけ、公明支持者が選挙で動くか不透明になった」と指摘した。 

 

●「扶養は不要だ」と専門家 “年収の壁”はそもそも主婦優遇の不公平な制度 9/26
岸田首相は、9月26日の閣議で閣僚に経済対策の取りまとめを指示しました。その柱の一つが、働き控えにつながっている“年収の壁”の改革です。
一定の年収を超えると、配偶者の扶養を外れて、社会保険料の負担が生じ、手取りが減ってしまう、いわゆる“年収の壁”。政府の新たな方針が決まりましたが、みなさんの生活にかかわる問題かもしれません。なぜ変えるのか、そして最終的に何が目的なのか、など労働と経済の問題に詳しい昭和女子大学の八代尚宏特命教授に聞きました。
年収の壁には2種類あります。
「106万円の壁」。
従業員が101人以上の企業などで働く人が該当するものです。現状、年収が106万円を超えた場合、配偶者の扶養から外れ、社会保険料が発生し、実質の手取り額が減少します。
どれぐらい減るか、夫が会社員、妻がパートの場合の例をあげますと、
・妻の年収105万円の時:雇用保険と所得税・住民税が約2万円引かれて、手取りは103万円となります。
・妻の年収106万円の場合:厚生年金と健康保険も引かれますので、手取りが約89万円になります。壁を超えることで一気に約14万円手取りが減るということです。
新たな案では、賃上げなどで手取りが減らないように取り組んだ企業に対し、国が従業員1人当たり最大で50万円を助成する方針だということです。
「130万円の壁」。
従業員が100人以下の企業で働く人が該当します。現状、年収が130万円を超えると、扶養から外れ、社会保険料が発生し、手取り額が減ります。
新たな案では、2023年10月から2年間は、いくら稼いでも扶養にとどまれる、つまり社会保険料が発生しないというものです。
昭和女子大学 八代尚宏特命教授「この2つの中で特に重要なのは『130万円の壁』です。これは働きたい人が働けないという大きな問題があります。それと同時にもともとこの制度は不公平な制度なんです。サラリーマンに扶養されてる家庭の主婦だけが保険料を払わなくても基礎年金がもらえるという仕組みで、この不公平だという点も忘れずに示さないといけないと思います。国が補助金を出したり、あるいは扶養の定義を変えて、200万でも、300万でも、いくら稼いでも2年間は保険料払わなくてもいいというのは極めて不公平な制度で、不公平をさらに拡大させるということに大きな問題があります。そういう意味で、私は今回の案は非常に改悪だと思います」
国が助成金を出してまで実施したいというのは、なぜなのでしょうか?
八代尚宏特命教授「もともと社会保険の制度は、一定の所得になれば社会保険料を払って、年金や医療給付を受けるというものです。だけど夫に扶養されてる主婦の場合は、夫の保険にカバーされていますから、保険料を払わなくて済んでいるわけです。“扶養”という制度があるから問題が起こるわけで、今パートの主婦の労働に依存している小売店などは働いてもらいたいから何とかしてくれと泣きついて、結局そもそもの制度を変える代わりに、補助金を出すという形で、その場しのぎの対策をしているというのが現状なわけです」
番組コメンテーターでエコノミストの崔真淑さんは「一言でいうと、改革が中途半端だと感じました。特に『補助金で』という話があったんですが、いつまでもダラダラと払い続けるんじゃないかという話も出てくるし、本当に賃金や企業の労働者不足が抜本的に解決されるかというと、解決から遠くなる気もするんです。こういった話が出てきたことによって、経済が潤いすごく働きやすくなると反応するならば、例えば今日の株式市場も大きく上昇してもおかしくないんですが、 むしろ株価が大きく下落している。やはり投資家を含めて今回の政策をどうなのかと思っている人は少なくないんだと思います」と話しました。
八代尚宏特命教授「崔さんのおっしゃる通りだと思います。問題は経済効果が大きいか小さいかは二の次で、その場しのぎだということが問題です。 例えば2年間は扶養控除を維持するということですが、2年後に何が起こるか。補助金が終わるかどうかが怪しいという話がありますが、私もそう思っています。この問題は長年議論され解決できなかったことが、2年後に本当にできるのかと思います。もし岸田政権が本気で改革する気があるならば、『検討に2年間かけますが、こういう控除をなくす方向で検討します』ぐらいのことを言わないと、全くインパクトがないと思います」
10月から新制度が開始される予定ですが、2年後の2025年に年金制度が改正されます。国の案としては、年収の壁は残すが、年収の壁を超えた人の保険料は免除or収入に合わせて負担率を増やすことが検討されています。今後について八代教授の見解では、「もう扶養は不要だと思う」ということです。
八代尚宏特命教授「今の案が本当に実現するかどうか分かりませんが、もしそうだとしたらひどいことです。2年後も改革しないということと同じです。つまり主婦パートの方が保険料を払わずに基礎年金をもらえるという制度は、もともとなかった制度で、昔は主婦の人は夫の年金で暮らせばいいという考え方でした。それでは不安だということで、主婦にも年金が必要だというのは当然のことです。その時に何をしたかというと、夫が奥さんの年金も払う形で、年金を確保する。実に7割の人がその制度に入っていたんです。だけどなぜか、せっかく7割の人が自発的に保険料を払っていたのに、政府が大盤振る舞いでそれを免除してしまうひどい改悪をして、それが現在にまで至っています。本来は昔の制度、つまり奥さんの保険・基礎年金分は夫が払う、もしそれが払えない人であれば自営業と同じように免除するやり方もあります。そういうことをせずにだらだらと不公平な制度を維持するのは、とんでもないことだと思います」
免除の話もありましたが、どうしても働きたいんだけれども働けない、例えば育児や介護で物理的に働けない方もいるとは思いますが、そういう方はどういった制度で救われていくことになるのでしょうか?
八代尚宏特命教授「育児については保育所も充実していますし、介護保険制度もあり、専業主婦か共働きか単身かにかかわらず、そういう問題はあるわけです。だから基礎年金の保険料を免除するというやり方で、所得のある人も、働ける人もひとまとめにして優遇するというのは、全く合理的な仕組みとは言えないと思います。困ってる人は働き方の違いにかかわらず、きちっと対応策を取るというのが基本だと思います」
関西テレビ「newsランナー」視聴者からの質問です。
Q.今回の改正案は選挙対策ではないですか?
八代尚宏特命教授「当然そうだと思いますね。専業主婦の保険料を免除することをやめると言ったら、専業主婦の多い中高年齢層は反発するわけです。お金をばらまいて、とにかく反発をくわないという選挙対策と言えると思います」
社会や働き方が変わっている中での年収の壁対策、それから2年後に迫る年金制度改正にも注目していきたいと思います。
●岸田政権「経済対策5本柱」の中心「物価対策」にエコノミストが「物言い」...9/26
岸田文雄首相は2023年9月25日、物価対策を中心とする5本柱の「経済対策」を打ち出した。10月中には与党・政府内で取りまとめ、補正予算案として国会に提出する。しかし、幅広い項目が並び、再び借金である国債発行に頼るのは必至で、財政がさらに悪化する恐れがある。本当に物価対策ができるのか。「もの言うエコノミスト」たちが岸田首相に提言する。
補助金政策は、高所得者ほど恩恵に預かり不公平
報道をまとめると、岸田文雄首相は9月25日夜、首相官邸で記者会見を行ない、「経済対策」の柱として次の5項目を示した。
   (1) 物価高から国民生活を守る。
   (2) 持続的な賃上げと、所得向上と地方の成長を促す。
   (3) 成長力につながる国内投資を促進する。
   (4) 人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革を進める。
   (5) 国土強靭(きょうじん)化など、国民の安全・安心を図る。
このうち、岸田首相が最も重視しているのが、トップに掲げた「物価対策」だ。
日本経済新聞社が9月13日〜14日に実施した緊急世論調査でも、首相に優先してほしい課題のダントツ1位が「物価対策」であり、回答比率は42%に達した。
岸田政権はすでに、2023年9月末までとしていた激変緩和措置(電気代、都市ガス代、ガソリン、灯油などの価格抑制策)を年末まで延長することを決めている。ガソリン元売りへの補助金の延長など、補助金を使った物価対策を今後も続けるつもりなのだ。
これに対して、「補助金政策は高所得者ほど恩恵に預かるため、不公平だ」と批判するのは、ニッセイ基礎研究所経済調査部長の斎藤太郎氏だ。
斎藤氏はリポート「補助金政策の問題点〜高所得者ほど負担軽減額が大きくなる〜」(9月20日付)のなかで、補助金を使った政府の対策は、物価高による家計の負担を和らげる効果がある一方で、次のようにさまざまな不公平の問題が生じると指摘する。整理すると、下記のようになる。
(1)石油産業には補助金は出るが、食品産業は放置されるといった、特定産業だけが救済されるという不公平。
(2)家計の立場から考えると、特定の品目に補助金を投入すると、それを使う人と使わない人の間に生じる不公平。たとえば、日常的に自動車に乗る人はガソリン補助金による負担軽減額が大きくなるが、自動車を使わない人にはまったく恩恵がない。
(3)エネルギー関連の補助金では、所得が多い世帯ほど電気代、都市ガス代、ガソリン代などの支出が増える一方、補助率は一定なので、結果的に高所得者ほど恩恵をこうむる額が増える。
【図表1】は、補助金によって生じる、所得階級別のエネルギー関連負担軽減額を表わしたグラフだ。これを見ると、最も所得が高い「第5階級」(年間平均収入1207万円)は半年間で4万8000円軽減されているのに、最も所得が低い「第1階級」(同259万円)は3万4000円と、「第5階級」より1万4000円も少なかった。
   (図表1)所得階級別の負担軽減額(エネルギー関連)
こうしたことから斎藤氏は、こう提言している。
「現在行われている補助金政策には、高所得者ほどその恩恵が大きくなるという問題がある。今回の物価上昇局面では、食料品の伸びが特に高く、その支出割合が高い低所得者層により厳しいものとなっている。こうした状況への対応として、補助金政策は必ずしもふさわしいとは言えない。低所得者層により手厚い支援が可能な、所得制限付きの給付金支給のほうが適切な政策と考えられる」
許可が下りた原発の早期再稼働で、抜本的なエネルギー対策を!
さて、延長された「激変緩和措置」は来年(2024年1月)には切れることになっている。現在、原油価格が高騰しており、その後はいったいどうなるのか。
許可が降りている原子力発電所の早期再稼働を始めるなど、根本的なエネルギー対策を急ぐべきだ、と指摘するのは、第一生命経済研究所の首席エコノミストの永濱利廣氏だ。
永濱氏はリポート「出口を見据える物価高対策延長〜今冬はエネルギー負担大幅増の可能性〜」(9月25日)のなかで、3か月〜7か月先行する原油先物や輸入天然ガス価格が高騰しているグラフ【図表2】を示しながら、こう説明する。
   (図表2)原油・天然ガス価格と電気・ガス代の関係
「激変緩和措置が切れる2024年1月の電気・ガス料金は、まさに足元で上昇している。2022年8〜10月の輸入化石燃料価格が基準となる。そして、足元の原油価格は産油国の減産に前向きの姿勢などにより、水準をあげている。こうしたことからすれば、激変緩和措置が切れる年明け以降はさらに電気・ガス料金に押上げ圧力がかかり、制度が切れる年明け以降は急速に電気・ガス料金の負担が増加することになりかねない」
では、どうすればよいのか。永濱氏はこう提案する。
「年明け以降の経済状況次第では、(激変緩和措置の)さらなる延長もしくは負担軽減額の拡充が必要であり、本当の意味で電気・ガス料金の負担軽減の効果を期待するのであれば、それは許可が下りている原発の早期再稼働や、省エネ関連の投資促進などによって、どの程度エネルギー効率が高まるかにかかっているといえよう」
チェックが甘い「補正予算頼み」は、ますます経済を悪化させる?
一方、岸田政権の物価対策を柱とする「経済対策」を、補正予算で実施することに疑問を投げかけるのが、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏はリポート「岸田首相が経済対策の方針を表明へ」(9月25日)の中で、補正予算は本来緊急時に限るべきだとして、こう主張する。
「(政府の経済対策には)日本経済の潜在力向上に資する重要な施策も含まれるが、それらを補正予算で実施する必要性、緊急性に乏しいものも少なくない。本来補正予算による財政支出は、本予算編成時に想定できなかった環境の変化に対応するための緊急措置である。他方で、補正予算は本予算ほどには国会、国民のチェック機能が働かないという問題もある。毎回のことではあるが、補正予算での経済対策が常態化しているのは大いに問題である。さらに、それが国債発行で賄われ、財政環境を一段と悪化させ、経済の潜在力を損ねることになっている」
そして、こう結んでいる。
「補正予算を伴う今回の経済対策は、過去にないほどに多様な内容を含むものとなりそうだ。そこには、大規模対策となることが『選挙対策のバラマキ』との批判を覆い隠す狙いも感じられる。いたずらに規模の大きな経済対策に膨れ上がらせることを避け、緊急性がある政策にしっかりと絞り込み、政治色を排し、国民生活の安定に資する経済対策となるよう、しっかりと議論されていくことが強く望まれる」 
●沖縄で新たな全県的「反戦組織」が発足…その狙いは? 台湾有事の想像 9/26
専守防衛に反するとの指摘がある安保関連3文書の閣議決定や、自衛隊の南西シフトを受けて、沖縄では全県的な反戦組織「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」が発足、24日にキックオフ集会が開かれた。11月23日に那覇市内で1万人規模の県民大会を開き、党派や世代を超えた全国的な運動を目指す。沖縄発の平和運動に、首都圏から呼応する動きも始まっている。
防衛強化が進む沖縄 「捨て石」にされた過去
会は60以上の市民団体などで構成。沖縄県沖縄市で開かれたキックオフ集会には約800人が集まった。共同代表で前南城市長の瑞慶覧長敏さんは、「戦争をさせないという1点で集められた会。11月以降も集会を重ねていく。沖縄だけでなく、県外、世界との連帯を深めて平和を発信していく」と決意表明した。
昨年12月に閣議決定された安保関連3文書は反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有などを明記。2016年の与那国島を皮切りに南西諸島の島々に陸上自衛隊駐屯地が開設され、奄美大島、宮古島、石垣島にはミサイル部隊も配備された。
沖縄では、中国脅威論や台湾有事の想定そのものが「日本政府や本土中心の議論ではないか」との不信感も根強い。本土防衛の「捨て石」とされ、多くの犠牲を出した78年前の沖縄戦と重ねる県民は少なくない。
共同代表の具志堅隆松さんは「相手を攻撃できる基地があれば攻撃の対象になる。本土の人は、台湾有事が起きれば地域紛争で終わらないことを想像してほしい。沖縄に配備されたミサイルを撤去してほしい。そうでないと私たちの生存が危うくなる」と訴える。
「全国の問題としないと解決しない」
組織の運営に若い世代も多く携わる。集会で司会を務めた平和ガイドの平良友里奈さん(35)=南城市=は「基地の反対運動は争いがある怖いものというイメージもあったが、この状況で若い世代が参加しないのはまずいと思った。11月に向けて、多くの若い人が参加しやすいきっかけ作りをしたい」と語った。
首都圏の人々も動き始めた。瑞慶覧さんを招き10月に横浜市内で講演会を開く「島ぐるみ会議と神奈川を結ぶ会」の深沢一夫さん(70)は「沖縄を再び戦場にしない、という危機感を、基地県の神奈川でも共有したい。日本の軍備増強の話であって、全国の問題としないと解決しない」と話す。横浜港の米軍「横浜ノースドック」には、小型揚陸艇部隊の配備計画がある。「南西諸島などへの物資輸送のための部隊。自分ごととしてつながっている」
●日本版DBS先送り 実効性ある制度欠かせぬ 9/26
子どもと接する仕事に就く人に性犯罪歴がないことを確認する制度「日本版DBS」を創設する法案について、政府は来月にも開会する臨時国会への提出を断念する方針を固めた。
こども家庭庁の有識者会議が今月初めに公表した制度案では学校や保育所、児童養護施設などに確認を義務付ける一方で、学習塾や放課後児童クラブ、スポーツクラブといった民間の事業者は任意で確認を行い、それを国が認定して公表。確認できる情報は不同意わいせつ罪などで、刑事裁判によって有罪判決が確定した「前科」に限るとした。
これに対して、与党から義務化の対象職種が限定されるなど内容が不十分との批判が相次いだため、政府は来年の通常国会への法案提出を目指し、義務化の範囲などについてさらに検討を進めると先送りを迫られた格好だ。学習塾などでも子どもへの性犯罪が相次いでおり、保護者らが不安を募らせている以上、幅広い職種で犯歴の確認を義務化するよう求める声が上がるのも当然だろう。
日本版DBSが俎上(そじょう)に上ったのは、ベビーシッターやキャンプ場のボランティアをしながら計20人の男児にわいせつ行為などをしたとされる男が3年前に逮捕されたのがきっかけだ。最近では、大手中学受験塾の元講師が教え子への盗撮容疑で逮捕された。加えて、ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川元社長による性加害問題も明るみに出るなどし、被害者でつくる団体などが日本版DBSの対象に幅広い職業を求めるよう、こども家庭庁に要望している。
有識者会議の制度案では民間の学習塾などに関して「設置や運営などで公的関与が大きい学校や保育所と異なる」として、犯歴確認を義務化せず認定制度を提案。政府は保護者の信頼を得るために、多くの事業者が手を挙げるとし「実質的に義務化と同程度の状況になる」と強調する。ただ、認定事業者になることで従業員の研修などを求められるとされ、大手はともかく中小の事業者は負担を嫌うことにもなりかねない。
懸念されるのは前科として残らないケースだ。警察が捜査しても検察が不起訴処分にした事案は犯歴確認の対象外で、被害者側と示談して起訴を免れればチェックされない。各地の迷惑防止条例などで規定される性犯罪についても、罪となる行為にばらつきがあるとして対象から外れている。
再犯率の高さを考えれば前科なしというだけでは保護者は安心できない。憲法が保障する「職業選択の自由」、社会復帰や更生の道との兼ね合いは理解できるが、より多くの情報を提供できる実効性ある制度の構築が欠かせないはずだ。
●国民を馬鹿にしている…鬼の岸田政権「偽減税」で増税ロード継続方針 9/26
岸田文雄首相が9月25日に発表した新経済対策では「減税制度の強化」という不思議な言葉で減税政策が国民に伝えられた。早稲田大学招聘研究員で、『税金下げろ、規制をなくせ 日本経済復活の処方箋』の著者である渡瀬裕哉氏が「これは一般の日本国民の知的水準を侮辱する、偽減税だ」と怒りを爆発する。なぜそう言い切れるのか――。
岸田首相は基幹三税の税率自体の引き下げを頑なに拒否
9月25日、岸田首相が日本国民に向けて経済対策の柱を発表した。筆者は増税メガネと揶揄される岸田首相が画期的な減税政策を打ち出す淡い期待を抱いていたが、そのような片思いは呆気なく粉砕された。
自民党政権は直近10年間も異次元の金融緩和政策を推進しており、今更物価対策を主張すること自体がそもそもナンセンスではある。しかし、直近のガソリンや食料価格の高騰はサプライチェーン混乱による要素も強い。そのため、本来は税制措置によって、ガソリン税の暫定税率廃止や消費税減税などで対応することが有力な選択肢のはずだ。実際、諸外国は同様の対策を常識的に実行している。
しかし、岸田首相は所得税、法人税、消費税の基幹三税の税率自体の引き下げを頑なに拒否し、ガソリン税の暫定税率の廃止もせず石油元請けに補助金をばらまき続けている。その減税を拒否する姿勢は尋常ではない。
再来年度以降の大増税
では、なぜ岸田首相は税率を引き下げる形のシンプルな減税政策を嫌うのだろうか。
それは岸田首相の政策は「再来年度以降の大増税」が前提となっているからだ。つまり、岸田首相が望んでいる早期の解散総選挙での勝利、来年秋の自民党総裁選挙での再選、その後の岸田長期政権化による大増税というシナリオが既定路線だと言える。そして、その際の大増税とは、所得税、法人税、消費税の基幹3税の税率引き上げのことだ。
ただし、岸田首相は「増税メガネ」という蔑称の通り、すっかりと増税の鬼としてのイメージが定着している。そこで、本来は大増税とセットで行われるはずの「ショボい政策減税(=偽減税)」を解散総選挙前に経済対策として先行して打ち出すことで、増税イメージを払拭しようとしているのだ。実に姑息なやり方である。
鬼の岸田首相が減税をできない理由
岸田政権が継続した場合、所得税と法人税の税率が上がることは既にほぼ内定している。
防衛増税に絡めて「令和5(2023)年度税制改正の大綱」では、法人税、所得税及びたばこ税について、2027年度に向けて複数年かけて段階的に実施するとし、その施行時期は2024年以降の適切な時期と明記、さらに「骨太方針2023」では、税制措置の開始時期について「2025年以降の然るべき時期とすることも可能となるよう」柔軟に判断するとしている。岸田派で親族でもある宮沢洋一税調会長も同増税政策に対して非常に熱心な姿勢を示し続けている。
したがって、所得税や法人税の税率自体を引き下げるシンプルな減税はできない。岸田首相がそのつもりも毛頭ないことは誰が見ても自明のことだ。
「大増税パッケージ」とセットになるはずのショボい政策…一般国民には影響なし
そのため、岸田首相が発表した経済対策は、「大増税パッケージ」とセットになるはずのショボい政策(扶養控除の壁、賃上げ税制など)を、解散総選挙用の経済対策として、増税政策本体と分離して先出しているだけなのだ。
「増税メガネ」はこんな簡単なトリックで国民を欺けると思っているのだろうか。世襲権化の実質的な貴族である岸田首相は、一般の日本国民の知的水準を侮辱しすぎだろう。まさに岸田首相が述べた政策は「偽減税」と呼ぶに相応しい。
さらに、岸田首相が発表した「減税制度の強化」策は、筆者に岸田政権が長期化した場合に消費税増税を実行する可能性が極めて高いことを確信させるものだった。
岸田首相が掲げた同策は「賃上げ税制の減税制度の強化」、「国内投資の促進や特許所得に対する減税制度の創設」、「ストックオプションの減税措置の充実」の3つである。いずれも企業関連税制だと言えるだろう。
この3つの政策の出元は9月12日に発表された経団連の「令和6(2024)年度税制改正に関する提言」である。3つの政策の内容がほぼ記載されているだけでなく、その表現自体もほとんどそのままだ。岸田政権がこの期に及んで一般国民の生活とは遊離したピントがズレた効果が薄い政策を打ち出した理由は、この提言のうち財務省が飲める部分をほぼ丸写しにしただけだからだろう。(岸田首相が掲げた減税制度の強化の内容は、大半の中小企業やその従業員にはほぼ関係がない。)
国民を本気で潰しにかかる経団連
このように岸田政権の「減税制度の強化」と名付けられた経済対策が経団連の言いなりであることは明らかだ。
そして、同経団連の提言書には
「消費税については、広く全世代の国民全体が負担すること、生涯所得に対して比例的で長期的には公平であること、財源として安定的であることなどの特徴により、社会保障財源としての重要性が高く、中長期的な視点からは、その引上げは有力な選択肢の1つである。」
と堂々と明記されている。実際、経団連の十倉雅和会長は、少子化財源などについて年末までの議論の締め切りを念頭に「若い世代が将来不安なく、安心して子どもを持つには全世代型の社会保障改革しかない。それには消費税などの増税から逃げてはいけない」と述べている。
岸田政権が進めば資産課税の大増税が行われる可能性
岸田首相は目玉となる経済対策で経団連の提言をそのまま採用している。したがって、解散総選挙前には口にしなくとも、経団連が主張する子育て大増税に消費税増税が財源として充てることも織り込み済だろう。
経団連の提言には「基幹3税以外にも、資産課税のあり方や、資産の保有状況を勘案した社会保険料負担などについて、検討すべきであ。」とも明記されており、岸田政権が進めば資産課税の大増税が行われる可能性すらある。
ちなみに、岸田首相の最側近である財務省出身の木原誠二議員は、今年9月の内閣改造後に官房副長官を外れて出演したインターネット番組で下記のような発言を行っている。
与党議員は政権入りしているうちに減税とは言えない
「岸田政権が増税政権だって言われてる以上 は自分が内閣にいる時はそういうこと言えなかったけど、今離れてると、減税やりゃいいんだよ、やって示すしかない」
一見すると、木原議員は減税政策に肯定的なように見えるが、これは議員の本音が「減税」であっても岸田政権の中ではそのような発言はできない、というようにも取れる。与党議員が政権入りしているうちに減税とは言えないなら、議院内閣制の日本において岸田政権では減税などできようはずもない。(同番組では木原議員は研究開発投資減税を減税すべき事例として挙げていたが、それも経団連の提言の一部だ。)
増税メガネで日本沈没へ
実際、岸田首相が首相秘書官に新たに任命した議員が財務省主税局出身の村井英樹議員である。同議員は子育て財源として「こども保険」を提言した人物であり、やはり社会保険料に新たな負担を課そうとした過去がある。岸田首相が子育て政策の財源が議論される重要な局面で、このような人事を断行しておきながら、「岸田首相は増税メガネではない」と強弁するのは流石に無理だろう。
当然であるが、岸田首相が選挙前から「選挙が終わったら増税します」と宣言するはずがない。しかし、上述の通り、岸田政権が継続した場合、所得税、法人税、消費税の基幹3税の「大増税」はほぼ決まっていると言ってよい。「増税メガネ」はどこまで行っても「増税メガネ」なのだ。岸田政権が解散総選挙後・自民党総裁選挙後に何年も続くことがあれば、日本は「増税メガネの大増税」で再び沈没することになる。
●結果だけ見ると岸田政権は「国民の敵」、なぜ物価高対策をアピールしない? 9/26
内閣改造によって発足した第2次岸田再改造内閣。林芳正前外相の交代や過去最多タイの女性閣僚などサプライズもあったが、幹事長や政調会長、官房長官など政権の骨格となるメンバーが変わらなかったこともあってか、政権の支持率浮揚にはつながっていない。
今秋の早期解散説もくすぶる中、今回の内閣改造と今後の展開について、国内政治と選挙動向に精通した社会学者の西田亮介氏と、情報法制研究所の上級研究員を務める山本一郎氏が語り合う。
山本一郎氏(以下、山本氏):岸田さんって、真意をつかみにくい人ですよね。
安倍さんや菅さんの場合は「こういう政策をするんだ」「その布石を打つためにこういう人事をするんだ」というのが、わりと分かりやすかったんです。今回の人事でも、岸田さんはそのあたりが本当に分かりにくい。総理として、こだわりのポイントは分かるにせよ、全体として何をされたいんだろうなっていう。
西田亮介氏(以下、西田氏):「合成の誤謬」みたいなところがありますよね。
ご承知の通り、岸田政権の政策キーワードは「古き良き宏池会」のキャッチコピーを今風にアップデートしたものに過ぎません。例えば、「令和版所得倍増計画」。もはや誰も覚えていませんけど。
山本氏:ありましたね。
西田氏:それも、いつの間にか名前が変わって「資産所得倍増計画」になりました。「所得倍増」と「資産所得倍増」、これまったく意味が違うわけですよね。
「所得倍増」なら多くの人に恩恵があるんですが、「資産所得倍増」は、言ってみれば、資産を多く抱える山本さんのような資産家にしか恩恵がないわけです。
しかも、おそらくいまの環境だと、資産所得倍増計画だって無理でしょう。日本だって、いつ金融引き締めに入っていくのかよく分からない局面ですから。倍増なんて夢見ている場合ではないだろうと。
ここはメディアにも言いたいんですが、岸田政権が掲げている政策がどうなったのか、ちゃんと検証している報道がない印象です。古典的な新聞紙面でさえ、緊張感を持って最近の政策の推移をちゃんと追っているのかなと不安になります。
山本氏:ひっそりと看板が掛け替えられているっていうケースはありますね。
岸田政権の政策の問題点は二つあると思っています。一つは、いま西田さんがおっしゃった、古き良き宏池会の発想ということに関する問題です。
「アベノミクス」の負債をすべて背負い込む岸田政権
山本氏:「田園都市構想」から「デジタル田園都市構想」になったわけですが、その「デジタル田園都市構想」って何なのか。宏池会の看板政策であった「田園都市構想」の頭に「デジタル」ってつけただけですよね、これ。
「新しい資本主義」もよく分かりませんね。事務方は頑張って会議を回していますが、例えば海外の研究者やファンドの人から「あれはなんだ」と聞かれても答えられないという。
もう一つの問題は、アベノミクスの負債をぜんぶ背負っているということです。本当は「アベノミクスは失敗に終わった」って総括をして、決別しなきゃいけない。そういう作業をいま政府はすべきなのに、ぜんぶ背負ってしまっているんです。
アベノミクスの金融政策の結果、エネルギー価格は上がるわ、円安は進むわ、といういまの経済状況です。1ドル147円というような世界で、日本政府は防衛ラインを155円くらいにまで下げなきゃいけないという議論をまじめにしています。
これから日本も金利が上がって日米差が縮小するので円高に振れる可能性があるにせよ、国内物価が高騰している理由の一つは、まぎれもなく円安による資源高もあるでしょうから、その「新しい資本主義」とやらでテーマを打ち出さなければなりません。本当はね。
結局、アベノミクスは敗戦したんですよ。その敗戦処理をしているのが岸田さんです。本当は、中継ぎの菅さんがうまくさばいてくれる雰囲気でしたが、途中でダメになってしまったので。
宏池会の伝統で受け継がれている古き良き日本を取り戻したいけど、アベノミクスの失敗を糊塗する目的で政策を編まなきゃいけない。それが「新しい資本主義」とか「デジタル田園都市構想」とかあのあたりの座組みなんでしょうが、やりきれないでしょう。
西田氏:敗戦処理に「田園都市構想」という名前を付けてみた、というわけですね。
ぼくは穏健なリフレ派的なマクロ経済観を持っていますので、アベノミクスが間違っていたかどうかは大変悩ましいところです。ですが、3本の矢のうちの3本目、成長戦略がなかったという点は指摘せざるを得ません。
アベノミクスも何度か看板の掛け替えがありました。最後はSociety 5.0と言っていたはずです。デジタルを柱に据える政策は岸田政権に始まったことではなく、安倍政権の末期には着手されていました。でも、それもまったくうまくいっていなかったわけです。
山本氏:安倍さんがね、もうちょっと丁寧にやってくれていれば。
西田氏:結局、政策のアイデアや幅が狭まっている中で、柱は脈々と引き継がれてきていて、岸田政権なりのラベルを付けてみたというところにとどまっているということですかね。
岸田政権に渋いことをもう一つ言えば、保守派への配慮が過ぎるという点です。岸田政権下で派閥が息を吹き返しているという話をしましたが、とりわけ第1派閥である安倍派への配慮が非常に目立っている。
国民へのアピールが下手という致命的な欠点
西田氏:ご存じの通り、安倍派は大変保守的な派閥です。防衛費やLGBT理解増進法の顛末を見ると、党内保守派の影響を強く受けていることが明らかです。
理解増進法なんか、騒がれた割には中身がないですから。はっきり言ってしまえば。可でも不可でもありません。本来求められているのは、当事者の方々に対する具体的な権利保障の仕組みのはずです。それが完全に流れてしまいました。
自民党以外のほぼすべての主要政党、それどころか自民党内の現実派ですら穏健なレベルで具体的な権利保障の仕組みは必要だ、という感じだったにもかかわらずです。完全に実のない状態にしてしまったのは、党内保守派と岸田政権の問題です。
山本氏:LGBT法は公明党さんの要望も強かった面もありつつ、憲法判断で性別変更に手術の必要性があるかで違憲判決が出たら、そもそもLGBT法自体が吹っ飛ぶわけですし。
やるかどうかは五分ですが、キリスト教圏の主要問題である本件を、アメリカからプッシュされたからと言って岸田政権が保守派をぶち抜いて成立させるほど重要な法案だったのかと言われると疑問は確かに残ります。
西田氏:岸田政権に対して苦言ばかり呈してきましたが、他方で、ちょっとかわいそうだなと思える内容もあります。それは、物価高対策が評価されていないということです。
岸田政権では数少ない、比較的マシな政策が物価高対策だと思うんです。ですが、朝日新聞の世論調査では、うまくいっていないという評価が大勢を占めました。実質賃金が上がらない中での物価高は、生活困窮世帯を中心に生活者に高い負荷がかかります。
ガソリン、小麦、電気代。この3つを生活と産業におけるボトルネックだとみなして集中的に補助金を入れ、手当てをしています。ガソリンは二重三重の課税になっていますから、本来なら国民民主党が主張しているように根本的な減税をするべきだと思いますし、主要諸外国に比べれば日本のガソリンは安く抑えられています。
小麦や最終製品も、もちろん値上がりはしていますが、それでもまだ抑えられている方です。政府による一括払い下げに近いような仕組みで、本来なら市場価格に連動するところを据え置いているからです。
こうした対策がまったく評価されていない。なんで岸田政権は「こんなに頑張って物価高対策しています」「成果が出ています」って言わないんでしょうか? 
経済対策の中に政策広報の必要も指摘されていますが、岸田政権や関係者が強く主張しているのを、見たことない気がします。
山本氏:岸田さんって、アピールしないんですよ。
西田氏:家でご飯食べている姿をさらして、逆に炎上していましたけどね。あれがPRだと思っているのか。多くの人が不安に感じている、その中でうまくいっている政策の効果を発信すればいいのに。
ここまでメディア対応が機能していない政権も珍しい
山本氏:そもそも、本来の物価高対策は物価が上がるほどに賃金も上がっていくようにすることが肝要なのであって、補助金をぶち込んで価格そのものを抑え込む経済政策でいいのかという懸念は常にあります。
それでも、エネルギーを中心とした物価高対策は、筆頭首相秘書官の嶋田隆氏(元経済産業省事務次官)が音頭を取ったことで、かなりうまくいきました。
嶋田さんは要のポジションですから、エネルギーだけじゃなくてもっとオールジャンルで政策全般を見てよ、って感じはありますが。ただ、処理水の海洋放出もうまくさばきましたよね。
汚染水をALPS処理水に変え、海洋放出するというアプローチも、段取りを仕切ったのは嶋田さん以下事務方のみなさんでした。対外的なパブリシティは秋葉剛男国家安全保障局長が段取りを組み、ロジがしっかりしたことで、この2人のタッグでうまくいったんです。
ですが、それもほとんどアピールされていません。むしろ中国から怒られてどうのとか、そっちの方で炎上気味です。政治家としてポイントになるべきものが、失点にされちゃっているわけですね。
岸田さんのやろうとしてきたことをちゃんとみんなが組んで実現してきたにもかかわらず、その価値を他の人に言えないので、結果的には失敗扱いされ、支持率の低迷につながっていると解釈しています。ですが、岸田政権はそう思っていなくて、「我々はまだ努力が足りない」なんて言っているわけですよ。
西田氏:意味不明ですね。
山本氏:ここまでメディア対応が機能していない政権も珍しいです。政治の世界では、悪いことをしようと思っていないにもかかわらず、悪く書かれることはいくらでもあります。ですから、それに対して必ずカウンターを入れる必要が出てくるじゃないですか。
プロパガンダとかそういうことではなく、「事実はこうですよ」と。「国民のみなさん、この事実はきちんと知っておいてくださいね」という発信は、私は大事だと思うんですが。現政権はそういう広報や情報浸透に力を割いていないから、本来なら褒められるべき政策や岸田さんのこだわりが、国民にも海外にもうまく伝わらない。
本当だったら、官房長官なり補佐官なりがメディアとの席を設け、対外的に説明する努力が必要なんです。安倍さんも菅さんも、よくやっていましたよね。愚にもつかないようなジャーナリストとの会食を一生懸命やっていました。
そういう点で言うと、岸田さんはある種マジメなんでしょう。「オレがやっていることは正しいから、分かってくれるはずだ」と思っている気がするんです。「オレのこだわりはこれだから、このこだわりが分かるヤツだけついてこい」なんて雰囲気がするんですよ。
西田氏:すごく不思議ですよね。
最低賃金の引き上げに中小企業は耐えられるか? 
山本氏:世論調査やヒアリングの仕事をしていると、岸田政権を支持はしないのに、岸田さんの人柄を評価していると答える人が多いんですよね。過去の政権に比べて、岸田さんは格段に人柄を評価されているんです。
西田氏:なるほど。分かりやすい、伝統的な政治家像に収まっているからですかね。
山本氏:なんだけど、政策に対するアピールが少なすぎるから、「あの人はもういい」「この位置にとどまってほしくない」っていう人も、やっぱり少なくなくいるわけですよ。
支持率が上がらないのはたぶんそれです。ある意味、「顔のいい麻生さん」みたいな感じです。麻生さんは人相と態度が悪くて支持を失ったので。岸田さんが政治に関心のない中高年女性に少し厚めの支持層がいるのも、清潔感のあるイケメン中年だからじゃないのか、という。
西田氏:イケメンですか……。かろうじて、「信頼できそうなおじさん」って感じですかね。
山本氏:今回の人事で、首相補佐官に国民民主党の元参院議員を起用しました。パナソニックの労組出身です。労組内の評判は置いておくとして、政策通ではありました。
そういった意味で、労働政策に対して岸田さんは本気なんだと思います。もっと賃金は上がるべきだと思っているでしょうし、働き方に見合った生活の保障ができる仕組みを整備したいと考えているでしょう。
これって、本来は左翼政権がやる政策を自民党が横取りしている面があり、これが保守派が岸田政権を支えたがらない大きな理由であると同時に、やるべき仕事を岸田さんに奪われ、立憲民主党や日本共産党の支持が低迷している理由でもあります。
ですが、この経済状況で最低賃金をガンガン引き上げるとどうでしょうか。今度は監視が追い付かないから、最賃以下の労働が横行するようになりますよ。黒字倒産しかねないところなんかは、やっぱり最賃近くで雇いたいし。雇いたいけど人が来ないようなところは人手が間に合わずにつぶれちゃう。
これ、全国に多発するようになります。そして、「そういうところは死ねばいい」なんて平気で言う政党が支持を受けるようになるでしょう。
西田氏:困ったものですね。
山本氏:会社がつぶれるのはよしんば仕方ないとしても、労働者は守らないとダメです。彼らが根幹となって経済は回っているんですから。ここにちゃんとお金や生活の安心が行き届くような政策をやらなきゃいけないんだけど、いまの政府にそれをやる能力を感じないですね。
これはさすがに誰かが指摘するんだろうとずっと待っているんだけど、誰も言わない。
「国民の敵」と言われても仕方がない政権
西田氏:おっしゃる通りだと思います。労働者、生活者の味方になる政党なり政策なりが必要だという点。本当にその通りだと思います。
この間、新型コロナがありました。安倍政権以降引き継がれてきた政策は、通常の危機管理行政の蓄積とはまったく逆でした。
生存権保障のための給付と、事業者に対しては無利子、低利貸付支援、この組み合わせが復旧復興行政における日本のセオリーです。今回、企業に対しては、効くのかどうかよく分からない給付措置をたくさんやりました。雇用調整助成金も、結局は企業を経由しています。
それに対し、一般国民への給付は何回あったでしょうか。指折り数えるほどですよね。住民税非課税世帯等困窮世帯に対する給付もそうです。
元をたどれば、安倍政権で最初に浮上したのは、生活困窮世帯に30万円という案でした。これが、公明党の意向を汲む形で、家族の人数×10万円になりました。しかし、これだと困窮世帯より中流世帯にとって有利になります。
データを見れば、困窮世帯は圧倒的に高齢で、単身あるいは2人世帯が中心ですから。こうした世帯には、元の通り30万円給付された方が多くもらえていた可能性が高いわけですね。
山本氏:困窮世帯へ直接給付をする道筋を探ってはいましたが、実務的に難しかったようではあります。
マイナンバーに銀行口座を紐付け、政府から直接現金を支給する方法を模索していたのですが、なぜか救われる側であるはずの困窮者がマイナンバーカードに反対するついでにマイナンバー制度とごっちゃになって騒動となり、結局、金持ちも貧乏人も家族の人数あたり10万円という謎救済になってしまうわけですね。
西田氏:いずれにせよ、アウトプットの評価だけで言えば、安倍政権以降の政権は「国民の敵」だって言われても仕方ないところがあります。国民への給付措置を不十分なままに引き継ぎ、だんだんサイズだけは小さくなってしまいましたから。
一方で法人向けの給付はどうなったかというと、審査を簡素化して給付を急いだこともあって不正の嵐です。金額ベースで見ても、件数ベースで見ても、ちょっとシャレにならない。大企業からも次々に不正が明らかになっています。なんなのでしょうか、これは。
山本氏:そもそも法人向け給付は、休業補償対策としての緊急措置でしたからね。それが次第に、何か事あるごとに給付するんやみたいな空気になり、大型経済対策の根幹に据えられるようになってしまっています。
西田氏:経営環境の激変緩和や、困窮世帯や 一般国民向けの給付が十分手厚くなされているのであれば、百歩譲って法人向けをやってもいいでしょうが、国民向けの措置は少額。あまりに不均衡ですよ。
山本氏:これから一番の問題は、防衛費の増額です。
西田氏:もうすでにみんな忘れている気がしますが。それでも、いざ本当に増税になるぞとなればものすごいブーイングが出ることでしょう。「実質賃金下がっている中で増税なんてふざけんな」という感じで。
山本氏:法人税の引き上げができない以上は、たぶん所得税、消費税を上げるんですよ。
マイノリティ政党が起こしている困った問題
西田氏:ところで、これはもうただの肌感みたいなもので、何のエビデンスもないんですけど、この間、国民の政策理解のレベルってどんどん下がっている感じがします。増税は「やむを得ない」と回答する人たちが増えているのとか意味不明なんです。
昔は増税に対する嫌悪感は非常に強くて、特に消費税なんか、政権が口にさえできなかったわけですよ。ところが、安倍さん以降、何か別に消費税率引き上げてもしょうがないみたいな感じになってきました。
山本氏:「れいわ・共産問題」ってのがあるとみています。あそこらへんが「増税反対」って声高に言うもんだから、れいわや共産が嫌いな人たちが増税賛成に回っているような節があるんですよ。調査を見ていると。
西田氏:かもしれませんね。
山本氏:そうしたマイノリティ政党が起こしている風評被害は大きいですよ。沖縄や福島でのことはたくさんありますけど、この消費増税の件もかなりやらかしています。「あいつらの話は信用できないから、消費増税はやむを得ない」っていう人、わりといるんですよね。
政策面だけじゃなく、投票動向を見ても、れいわ新選組も日本共産党も支持率はたいしたことないのに、負の支持率、いわゆる「絶対に投票しない先」としては自由民主党と並ぶ嫌われぶりになっている属性も少なくありません。
これは調査屋の汚点でもあるのであまり言いたくないんですが、これまで世論調査では支持政党を聞いてきたんです。でも、これから大事なのは「各政策別の興味」や「支持しない政党」でしょう。最近の調査では、ここをちゃんと聞くように心がけるようにしています。
●安倍晋三と菅義偉が反面教師の岸田政権 柔軟な対応力は求心力を欠く 9/26
首相・岸田文雄自身が好んで繰り返す時代の大きな「転換点」にあるいま、「首相が何をしたいのか分からない」ことを政治記者として見過ごすわけにはいかない。最も身近に最高権力者を取材する総勢13人の朝日新聞首相官邸クラブだからこそ見える、岸田首相と岸田官邸の「状況対応型」ゆえの強さと危うさを言語化した。『鵺の政権 ドキュメント岸田官邸620日』から一部紹介する。

2021年12月12日、日曜日の首相公邸。上座についた首相の岸田文雄を秘書官たちが囲んだ。岸田はこの年の10月4日に首相に就任。初めて臨む衆院予算委員会を翌日に控えていた。焦点は、「10万円給付」だった。
子育て世帯を支援するため、児童手当の所得制限を超えた世帯をのぞき、18歳以下の子ども1人あたり10万円を給付する――。過去最大の35兆円超に積み上がった補正予算などを使って、岸田政権が最初にぶち上げた現金給付策だ。
だが、新政権の「実績」を急ぐあまり、政策の意義も、制度設計もあいまいで、混乱の種になっていた。
年内に現金5万円を支給し、残り5万円分は翌年にクーポンとして渡す当初の案だと、事務作業にかかる費用が約1200億円に上ることが判明。地方自治体から「ニーズに合っていない」との批判も相次いだ。
12月8日、岸田は衆院代表質問への答弁で「全額現金給付」を容認した。それでも批判は収まらず、今度は分割給付に矛先が向いた。一問一答形式の予算委で岸田が集中砲火を浴びるのは目に見えていた。
混乱の最中の10日ごろ、財務省から岸田のもとに報告が入った。自治体が年内に10万円を一括給付しても、後から国が5万円を補填できる――。岸田は言った。「できるんだったらやればいいじゃん。自治体に迷惑かけるのはよくないしな」
そして12日。公邸では、自治体が現金一括給付をする際の条件が話し合われた。用意された資料には細かな条件が書き連ねられていた。
秘書官の一人がこぼした。「これ、わかりにくいですね」
岸田は言った。
「そうだな。10万、年内、現金、一括、条件なし、でいこう」
政権の目玉政策は、あっさりとその姿を変えた。
受験生への対応「朝令暮改と言われようが……」
首相就任3カ月を迎えた22年1月4日、岸田は新年の伊勢参り後の記者会見で、自らの受験生への対応「朝令暮改と言われようが……」
首相就任3カ月を迎えた22年1月4日、岸田は新年の伊勢参り後の記者会見で、自らの岸田が11月に出したオミクロン株の水際対策強化の指示をきっかけに、国土交通省が日本に到着する国際線の新規予約を12月末まで止めるよう航空会社に要請し、混乱した問題と構造は同じだ。海外滞在の日本人が帰国できなくなる可能性が指摘されて批判が噴出すると、岸田は3日後に要請を撤回させた。官邸幹部は「みんな走りながらやっているからこうなる」と拙速さを認めた。
ワクチンの3回目接種でも、前倒し接種を求める声の高まりを受け、時期や対象など詳細を詰めきらぬまま前倒しを表明して地方自治体の混乱を招いた。別の幹部は「軌道修正は当然だ。朝令暮改と言われようが妥当な判断だ」と話した。
自民党幹部「鵺(ぬえ)みたいな政権だ」
このころ岸田が意識していたのは、自民党が政権に返り咲いた2012年以降、長期政権を築いた元首相の安倍晋三と前首相の菅義偉だ。両政権の行き過ぎた点や足らざる点を「反面教師」に自らの立ち位置を定めた。
安倍・菅政権下での「官邸主導」は、民主党政権の「決められない政治」を反面教師に、時に強引な対応で世論の反発を呼んだ。そして、コロナ対策の多くの局面で後手に回ったとの批判を浴び、急速に求心力を失って瓦解した。それゆえ岸田は先手を打つことにこだわり、批判を受ければ、ためらうことなく方針を転じた。変わり身の早さを、自民党幹部はこう評した。
「鵺みたいな政権だ」
融通無碍を可能にしているのは、岸田自身のこだわりのなさだ。安倍や菅のように、自らが立てた旗を振って政策を推し進めようとはしない。党政調会長時代の岸田とともに仕事をした閣僚経験者は「受け身で、調整型。こだわりのなさから『無色』に映った」と振り返る。
だから時に野党の言い分も丸のみする。
内閣官房参与に任命した元自民党幹事長で盟友の石原伸晃が代表を務める政党支部が雇用調整助成金を受け取っていたことを問題視されると、わずか1週間でクビを切った。高額な保管費用が批判された「アベノマスク」は、年度内に廃棄することを、自ら記者会見で発表した。結果的に争点を潰してしまうしたたかさに、野党からは「やりづらい」との声が漏れる。
「聞く力」を盾にした「安全運転」に、報道各社の世論調査は上向き傾向を示した。12 月の朝日新聞の調査では内閣支持率が49%で、10月の内閣発足直後の45%を上回った。首相官邸には、高揚感すら漂った。政権幹部は「もしかしたら長生きするかもしれない」と自信をのぞかせた。
ただ、柔軟さはもろ刃の剣でもある。羅針盤なき政策で不安定なかじ取りを重ねれば、政権は迷走するほかなく、そのツケは国民に及びかねない。そもそも求心力の源泉となる「旗」を持たない岸田には、遠心力が働きやすい。
安倍・菅両政権の中枢を務めたある議員は、岸田政権が内包する危うさに警鐘を鳴らした。
「一度決めたことが変わってしまうと、『首相の決定事項』という重さがなくなる。今後、国民に負担を求めるような厳しい政策に取り組むとき、ぐらつき、何も決められなくなるだろう」
●安倍元首相「国葬儀」から1年…世論の反対を押し切って断行、岸田政権 9/26
安倍晋三元首相の「国葬儀」から明日9月27日で1年が経つ。もう一度おさらいしよう。
《国葬は国に功労のあった人の死去に際し、政府が主催し全額国費で執り行う葬儀だ。正式には「国葬儀」と呼ぶ。どのような基準で国葬を催すのかを定めた法律はない。》
「国葬」ではなく「国葬議」
報道各社は「国葬儀」ではなく「国葬」と報じた。この流れは時系列で振り返るとわかりやすい。
当時を思い起こすと、ここしばらく歴代の首相は内閣・自民党の合同葬だったのに安倍氏を国葬にするのはなぜ? という論議が起きていた。すると「国葬ではなく国葬儀」という“きちんとした言いなおし”が出てきた。自民党HPにも『国葬儀という形が適切』(2022年9月9日)という記載がある。というのも、国葬には根拠となる法令がないからだ。
しかし当初はストレートに、政治家の国葬をやるかどうかが実質的な論議だったはずだ。記事でおさらいしよう。
安倍氏が亡くなってから5日後に産経新聞が『安倍氏「国葬」待望論』(2022年7月13日)と1面トップで書いた。ちゃんと「国葬」と書いてある。しかも待望論があると。
ところが記事を読むと、国費を投じること、最近では内閣と自民党による「合同葬」が主流などを挙げて国葬は難しいかなぁ……という産経新聞の正直な思いが伝わってきた。まぎれもなく「国葬」の話だった。
すると翌日、岸田首相は国葬をおこなうことを発表した。経緯は次になる。安倍氏が死去した数日後、首相は安倍氏の国葬を検討するよう、周辺に指示した。ただ、国葬を定めた法律はない。全額国費でまかなうことに、政府内には「行政訴訟のリスクがある」との慎重論もあった(朝日新聞デジタル2022年7月22日)。
《そこへ、内閣法制局からの報告が届く。》(同前)
内閣府設置法を理由に、政府単独による国の儀式としてなら閣議決定だけで国葬も可能という内容だった。岸田首相は国会での議論を飛ばせることになり、「国葬儀」と言い始めた。ここは押さえておきたい流れだ。そして同時進行で話題が大きくなったのが旧統一教会問題だった。安倍氏との関わりが濃かったことが明らかになるにつれ、国葬論議も過熱していく。
岸田首相が語った「国葬の理由」
岸田首相は8月31日の記者会見で、国会で説明することをようやく表明した。国葬の理由については「弔問外交」の意義を主張し「日本国として礼節を持って応えることが必要だ」と強調した。それでいうと次の質問が面白かった。
《本紙は、国葬ではなく内閣・自民党合同葬だった過去の元首相の葬儀にも現職の米大統領ら多数の要人が来ていることを指摘して「当時は国際儀礼、礼節を欠いていたとの認識か」とただしたが、首相は回答しなかった。》(東京新聞WEB8月31日)
調べてみると3年前に開かれた中曽根康弘氏の内閣・自民党の合同葬でも「外国の要人らが献花を行った」(産経新聞2020年10月17日)とある。菅義偉首相(当時)による合同葬という対応は失礼だったのだろうか。2000年、小渕恵三氏の合同葬ではクリントン米大統領や金大中韓国大統領が参列していた。当時の森喜朗首相は礼節を欠いていたのだろうか? たしかに森喜朗は数多くの失礼をしてきたかもしれないが、この時の対応はそうだとは思えない。
弔問外交についてわかりやすく指摘したのが、毎日新聞のコラム『井上寿一の近代史の扉』(2022年9月17日)だ。弔問外交の良い点は、2国間で緊張関係にあっても一時的に棚上げして接触することができるメリットを書いていた。
《この観点に立つと、もっとも重要な弔問外交の相手国はロシアのはずである。しかしプーチン大統領がいち早く欠席を表明したことで、どうにもならなくなった。ロシアのつぎは中国だろう。》(井上寿一学習院大教授)
ロシアや中国のトップは来日しなかった。こうして弔問外交という理由も説得力がなくなっていった。
さて整理したいことがある。国葬について考えると安倍氏の顔が浮かぶが、これは岸田首相を考える案件だ。
岸田政権の分岐点だった?
岸田氏は首相就任後、政策や決定を出して世論に不評だと、あとから“軌道修正”するというスタイルをとっていた。発足から4か月となる岸田政権について、読売新聞オンラインは『政策の軌道修正繰り返す岸田政権…支える官邸の重厚布陣』と書いている(2022年1月28日)。
岸田政権は政策の軌道修正が目立ち、朝令暮改、場当たり的といった批判がつきまとうが、ミスや弱点が見つかったらすぐに改めようとする姿勢を評価する声の方が多いと。上記の記事では具体例として「18歳以下への10万円相当の給付」について書かれている。
そんな岸田首相が独断で大きな決断をした。それが「国葬」だった。しかしどの世論調査でも徐々に反対の声が大きくなったが、岸田首相は得意の軌道修正はしなかった。閣議決定もしたので引っ込みがつかなくなったのだろう。押し切るしかなかった。
ところがどうだろう、押し切ったら「いけてしまった」のである。これは分岐点ではなかったか。その後の政策、たとえばマイナ問題などを見ても軌道修正せずに押し切ろうとする姿勢が目立ち始めた。国葬で味をしめたと言えないか。
「検証をしっかり行う」と明言したが…
岸田首相は国葬について「検証をしっかり行う」と明言した。その結果はどうだったか。先日政府は国葬の記録集を作成したが内容には批判が多い。
山陽新聞は『国葬の記録集 批判をなぜ後世に伝えぬ』(9月17日)とし、《納得しかねるのは、国葬の是非が世論を二分したにもかかわらず、課題を検証した有識者ヒアリングの内容が盛り込まれなかったことだ。》と指摘している。
『安倍氏国葬記録 岸田首相の約束は反故に』(信濃毎日新聞9月12日)という社説も。
《一連の「検証」を振り返ると、次の国葬は当面ないと踏み、国民の記憶が薄れるに任せているとしか思えない。防衛政策や原子力政策、デジタル化も同様だ。異論を封じ、政権内の意見調整だけで重要案件を次々と推進し続けている。首相自身の約束も、十分な説明責任も果たさない。》(同前)
今の態度にもすべて通じていると指摘されている。やはり岸田首相にとって「国葬」は大きな分岐点だった。
では、あらためて考える。国葬と内閣・自民党の合同葬のどちらがふさわしかったのか。実は国葬当日にヒントがあった。
「国葬」が歴史に刻んだもの
菅前首相は安倍氏の遺影に向かい「あなたの判断はいつも正しかった」と述べた。大きなポイントだった。あの言葉が自民党葬なら違和感はなかったろうが、国葬だと不自然に思えたからだ。
故中曽根康弘氏は「政治家の人生は、その成し得た結果を歴史という法廷で裁かれることでのみ、評価される」と言った。政治家の評価は長い時間が必要なのだ。身内の評価だけで盛り上がるなら内閣・自民党の合同葬がよかったのではないか。もしくは佐藤栄作モデルの「国民葬」だ。内閣と自民党、国民有志が共同で実施、費用はそれぞれが支出したものである。
これなら税金投入は少なくなるし、国民有志からかなり費用が集まったのではないか? 合同葬か国民葬ならあれほどの賛否は起きず、粛々と安倍氏をおくる儀式ができたのではないか。岸田首相のひたすら曖昧な態度が歴史に刻まれたのが国葬だった。
●米政府閉鎖なら「米国債にマイナス」 ムーディーズ警告 9/26
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは25日、米連邦政府の政府機関が閉鎖に追い込まれれば、米国債の「信用面でマイナスだ」と表明した。経済への影響は「短期的」とする一方、金利上昇と債務残高の膨張で年間の返済負担が増え、「財政の柔軟性はさらに低下する」と警告した。
ムーディーズは声明で、政府閉鎖のリスクが高まっていることについて「解決できなければ財政政策の立案を巡る脆弱さが露呈する。長期金利も上昇し(米政府の国債発行体としての)信用格付けと見通しを圧迫する」とつづった。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は20日、米景気に不確実性をもたらす大きな要因のひとつとして原油高や大規模ストライキなどと並べて政府閉鎖を挙げた。9月末の会計期末を控え、政府機関の閉鎖を防ぐ「つなぎ予算」などを巡って与野党の駆け引きが続いている。
米国債の信用格付けについては、8月に格付け大手フィッチ・レーティングスが最上位から1つ下の「ダブルAプラス」に格下げした。今後予想される財政悪化や、債務上限の引き上げを巡る政治の膠着を理由に挙げた。
格付け大手のS&Pグローバル・レーティングは2011年に債務上限を巡る論争が過熱した際、米国債の格付けを「ダブルAプラス」に1段階引き下げた。現状で最上位の格付けを維持しているのはムーディーズのみ。そのムーディーズが、政府閉鎖で格下げにつながる可能性を示唆したため、市場の注目を集めている。
米長期金利の指標である米10年物国債の利回りは25日、一時4.5%台半ばに上昇した。前日より約0.1%高く、ほぼ16年ぶりの高水準で推移している。
キングスビュー・インベストメント・マネジメントのポール・ノールト氏は25日の顧客向けメモで「投資家は、政策金利が『より高く、より長く』続く状態に適応しようとしている」と指摘した。 
●米政府閉鎖なら700万人の食糧給付危うく、バイデン氏・高官が警告 9/26
バイデン米大統領とビルサック米農務長官は25日、連邦議会が期限までにつなぎ予算案を可決できず政府機関が一部閉鎖されれば、約700万人の低所得層への食糧給付が危うくなるなど広範囲に影響が及ぶと警告した。
バイデン氏は食糧給付、危険廃棄物処理場の検査、公正住宅法の執行などに影響が出て黒人社会が苦しむことになると述べた。
共和党のマッカーシー下院議長と数カ月前に歳出規模について合意したことに言及し「われわれは合意し握手した。下院共和党のごく一部の強硬派がその取り決めを守ろうとせず、国民全てがその代償を払うことになるかもしれない」指摘した。
マッカーシー氏と話したかとの問いに「していない」と答え、いつ話すのかと聞かれた際には首を横に振った。
ビルサック長官は先に記者団に対し、女性や子ども向け特別補助栄養プログラム(WICプログラム)対象者の「大多数」向けの給付が政府閉鎖直後から数週間で減額される可能性があると述べていた。
農務省によると、国内の新生児の半数近くがWICに依存している。
別の給付プログラムである補足栄養補助プログラム(SNAP)は10月中は通常通り継続されるが、その後は影響を受ける可能性があるという。
ビルサック長官はまた、農業サービス機関も収穫期の農家への融資を停止し、農村部では新規住宅購入者が融資を受けられなくなると述べた。5万人以上の農務省職員が一時帰休となり、給与を受け取れなくなるという。
●米政府機関の閉鎖危機で野党批判 大統領、格付け大手も警告 9/26
バイデン米大統領は25日、議会で予算案がまとまらず連邦政府機関が10月以降に一部閉鎖する危機が迫っている事態を受けて「政府資金の調達は議会の最も基本的責務だ」と述べ、野党共和党の対応を批判した。米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは同日、政府機関の閉鎖は「米国債の信用にマイナスとなる」と警告した。
議会下院では多数を握る共和党内の対立が収束せず、10月以降の暫定的なつなぎ予算すら成立のめどが立っていない。今週中に対応できるかが焦点で、トランプ前政権下で過去最長の政府機関閉鎖となった2018年12月〜19年1月以来の危機再来が現実味を帯びる。
●米政府閉鎖、影響を受ける機関と受けない機関 9/25
米議会が10月1日から始まる来年度の予算案を巡り合意できない場合、一部の政府機関が閉鎖される。「必要不可欠」と見なされる職員は職務を継続するが、給与は支給されない。多くの政府機関は過去に準備したコンティンジェンシープラン(不測の事態を想定した緊急対応策)を変更していない。業務を継続する政府機関と閉鎖される政府機関の概要は以下の通り。

200万人の軍人は職務を継続するが、国防総省の文民職員80万人の約半数は自宅待機となる。政府機関閉鎖前に締結された契約は継続される。国防総省は国家安全保障に必要な物資・サービスを新たに発注できるが、契約の更新や延長を含め、新たな契約は締結できない。ボーイング(BA.N)、ロッキード・マーチン (LMT.N)、RTX(旧レイセオン)(RTX.N)など国防企業への支払いが遅れる可能性がある。エネルギー省の国家核安全保障局は核兵器の管理を継続する。
法執行機関
司法省の2021年の計画によると、連邦捜査局(FBI)、麻薬取締局(DEA)などの連邦法執行機関の職員は職務を継続する。刑務所の職員も職務を続ける。トランプ前大統領に対する2件の起訴も含め、連邦レベルの刑事訴追手続きは継続される。民事訴訟の大半は延期になる。地方警察への支援や補助金の支給が遅れる可能性がある。国土安全保障省の22年の計画によると、国境警備隊、移民取締官、税関職員は業務を継続する。大統領警護隊(シークレットサービス)と沿岸警備隊も業務を継続する。連邦取引委員会(FTC)では、消費者保護を担当する職員の大半と、反トラスト法(独占禁止法)に関する業務を担当する職員の半数が自宅待機となる。
連邦裁判所
連邦裁判所には、少なくとも10月13日まで業務を継続できる資金があるが、それ以降は活動が縮小される恐れがある。連邦最高裁判所も同様に業務を継続する。
運輸
コンティンジェンシープランによると、空港の保安検査員と航空管制官は勤務を義務付けられるが、欠勤が問題になる可能性はある。2019年の政府機関閉鎖中、一部の空港は管制官の病欠で業務の中断を余儀なくされた。航空管制官の新人研修は停止される。ブティジェッジ運輸長官は、これにより職員の不足が悪化しかねないと警告している。ホワイトハウスによると、環境審査や許認可手続きの中断で一部の主要インフラ事業に遅れが生じる可能性がある。
外交
国務省の22年の政府機関閉鎖計画では、米国の大使館・領事館は業務を継続する。パスポート・査証(ビザ)の手続きは、業務に必要な手数料収入がある限り継続する。不要不急の公務出張、講演、その他の行事は縮小する。一部の対外援助プログラムも資金不足に陥る恐れがある。
国立公園と天然資源
国立公園や国定記念物などへの影響は不明。18─19年の政府機機関閉鎖中は、多くが業務を継続したが、トイレや案内所は閉鎖され、廃棄物の処理も行われなかった。13年の政府閉鎖閉鎖中は業務が中断された。農務省の20年のコンティンジェンシープランによると、山火事の消火活動は継続する。国有林の木材販売は縮小する。
科学
国立衛生研究所、国立科学財団、海洋大気庁(NOAA)などの機関で大半の職員が自宅待機となるため、科学研究に混乱が生じる。航空宇宙局(NASA)では、国際宇宙ステーションの支援と人工衛星の追跡は継続するが、1万8300人の職員のうち1万7000人が自宅待機となる。天気予報、漁業の規制、特許・商標の審査は継続する。新薬や新たな医療機器の審査も継続する。
医療
疾病対策センター(CDC)は疾病発生については監視を継続するが、職員の半数以上が自宅待機となるため、他の公衆衛生活動に影響が出る可能性がある。国立衛生研究所では大半の職員が自宅待機となり、新たな臨床試験が遅れるとみられる。退役軍人・先住民向けの医療サービスは継続する。飲料水、化学施設、有害廃棄物処理場の検査は大半が中止される。食品医薬品局(FDA)による食品安全検査が遅れる可能性もある。
金融規制
証券取引委員会(SEC)は4600人の職員の約90%を自宅待機とし、緊急対応を除き大半の業務を停止する。21年の計画によると、商品先物取引委員会(CFTC)は、ほぼ全ての職員を自宅待機とし、監督・執行・規制業務を停止する。連邦準備理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、通貨監督庁は、議会が定めた政府歳出予算ではなく業界の手数料で資金が賄われているため、通常通り業務を継続する。
経済指標
10月6日の雇用統計や翌週の物価統計など、労働省労働統計局の重要経済指標の発表は停止される。小売売上高や住宅着工件数など、商務省経済分析局や国勢調査局からの報告も停止される可能性がある。
社会保障、メディケアなどの給付
社会保障局は退職・障害手当の支給を継続する。メディケア(高齢者向け医療保険)とメディケイド(低所得者向け医療保険)の給付も継続する。21年の計画によると、退役軍人への給付も継続する。補助的栄養支援プログラム(SNAP)を通じた食料支援は、食料品店が免許を更新できないため影響を受ける可能性がある。
徴税
内国歳入庁(IRS)は通常通り業務継続する。IRSの予算は失効しないため、8万3000人の職員全員に引き続き給与が支払われる。
災害対応
連邦緊急事態管理庁(FEMA)は災害救助や長期復興事業の資金が底をつく恐れがある。
教育
教育省の21年の計画によると、ペル・グラント(返済不要の奨学金)と学生ローンの支給は継続されるが、教育省の大半の職員が自宅待機となるため、混乱が生じる恐れがある。同省によると、政府機関閉鎖が長引けば、学校・大学などの教育機関への支援が「著しく制限」される恐れがある。年内に予定されている支給に遅れが出る可能性もある。
育児
ホワイトハウスによると、就学前児童1万人が「ヘッドスタート」(低所得家庭の未就学児教育補助プログラム)を利用できなくなる。
中小企業支援
中小企業庁は新たな融資を行えない。自然災害で被害を受けた企業への融資は継続する。
労働
ホワイトハウスによると、職場の安全検査は制限され、不当な賃金慣行に関する調査は停止される。22年の計画によると、全国労働関係委員会(NLRB)の職員1200人のほぼ全員が自宅待機となるため、労働争議の調停能力が低下する。
ホワイトハウス
ホワイトハウスは18─19年の政府機関閉鎖で、大統領府の職員1800人のうち1100人を自宅待機とした。国家安全保障会議など一部の機関は全職員が職務を継続したが、行政管理予算局(OMB)などは業務を大幅に縮小した。ホワイトハウス職員の自宅待機により、下院共和党によるバイデン大統領(民主党)の弾劾調査への対応が難しくなる可能性がある。
郵便配達
郵政公社は議会に資金を依存していないため影響はない。 
●加藤こども政策担当大臣「日本版DBS」について法案の提出時期は“白紙” 9/26
きょう行われたこども家庭庁の会見。質問が集中したのは、性犯罪から子どもを守る「日本版DBS」についてです。
(Q.日本版DBSについて、臨時国会での法案提出が見送りとなってしまった事態について?)
加藤鮎子こども政策担当大臣「(法案提出の)スケジュール等については、定まったものがございません。与党をはじめ様々なご意見を丁寧に伺いながら、制度設計について検討を進めていく」
「日本版DBS」について、法案の提出時期は“白紙”との考えを示した加藤大臣。この制度(「日本版DBS」)は、子どもに関わる仕事に就く人に性犯罪歴がないことを確認するもの。
元ジャニーズJr.の男性らが子どもへの性犯罪をめぐり、法整備を含め国が被害者救済に積極的に関与するよう訴える中、政府は来月予定される臨時国会への法案提出を目指していました。
事実上、法案の提出時期が先送りされたことについて、自民党内からは担当大臣に加藤氏を起用したことが影響しているのではないかとの声があがります。
加藤鮎子こども政策担当大臣「パーティー券収入として処理をする形で受領記載をしてしまっていた」
就任直後、政治とカネの問題が明らかとなり、対応に追われた加藤大臣に自民党内からは…
閣僚経験者「大臣の政治とカネの問題の対応で、政策の話が進まない。岸田総理には、地味でも良いからちゃんと実務をやってくれる人を起用してもらいたかったが、これが日本の政治の現実だ」
自民党中堅議員「加藤大臣以下、今の新しい布陣じゃ国会答弁を乗り切れないよ」
また、「日本版DBS」をめぐっては、自民党内の議論で性犯罪歴の有無を確認する対象範囲などをめぐり異論が噴出し、党内調整が間に合わなかったことも法案提出の先送りに繋がりました。
(Q.[日本版DBSを]小さく生んで大きく育てるんだっていうような趣旨の見解を専門家の皆さんもおっしゃってたのかなと思っているんですが?)
加藤鮎子こども政策担当大臣「提出しなかった場合の仮定の内容について、お答えをすることは差し控えさせて頂きたいと思います」
当事者が声を上げる中、性犯罪から子どもを守る法案は成立はおろか提出時期も白紙のままで、政権の本気度が問われています。 

 

●“冷温経済”から“適温経済”へ…岸田総理・物価高など“経済対策”5本柱 9/25
岸田総理は25日午後、経済対策の5本柱を発表しました。
物価高への対応が一番に掲げられました。そのうえで、こう述べました。
岸田総理「我々は、ようやく“冷温経済”を脱し、活発な設備投資、賃上げ、人への投資による経済の好循環を実現し、経済の熱量を感じられる“適温経済”の新たなステージに移れるチャンスをいま迎えています」
去年の経済対策で、電気代やガス代などの抑制策を実施した岸田政権。今回も負担軽減策を盛り込みます。
止まらない物価高。街の人は、どう対応しているのでしょうか。
美容師(20代後半)「食費の金額を決めているので、1週間の金額をオーバーすることが増えるようになった。特売品を一気に買って、冷凍して、うまく使うようになりました」
美容師(20代後半)「副業でキャッシュポイント(収入源)を複数つくって、仕事をちょっとでも頑張って、お金を稼いで。自分たちで守らなきゃなって意識がすごく強い」
主婦(40代)「本屋さんもよく行くのですが、本も高くなっている気がするし、じりじり攻められている気がする」
岸田総理は、“聞く力”を発揮すべく、去年、商店街を視察しました。この1年で変化はあったのか、聞いてみました。
タコとハイボール武蔵小山店・駄澤巧店長「結論でいうと値上げして、たこ焼きの値段、9月から値上げになって。結構、状況としては、よくはなっていないと思います。物価高は、もちろんそうなんですけど、今後は、これ以上、物価高が続かないように、消費者が、飲食店を利用しやすい方向にもっていってくれたら」
岸田政権での“物価”と“賃金”を見ると、『消費者物価指数』は、24カ月連続で上昇。一方で、物価の影響を考慮した実質賃金は、16カ月続けてマイナスとなっています。物価高の勢いに、賃上げが追いつかない状態が続いているのです。
物価高による倒産は、今年8月までで、すでに503件。去年を超えて、過去最多となりました。
18人の社員を抱える『富士精器』。ここにも、去年、岸田総理が視察に来ました。「電気代の抑制策には助けられた」と話しますが、厳しい状況が続いています。
富士精器・藤野雅之社長「ある材料は2倍くらいになっている。運送コストやエネルギーコストは価格転嫁できてないものがいっぱいある」
この春、若い技術者を育てたいと、3〜4%の賃上げを何とか実現しましたが、企業努力だけでは限界があると感じています。
富士精器・藤野雅之社長「我々、中小企業は、なんとか技術を上げるので、経済を上手く回して還元ができる政策をぜひ打ってもらいたい」
経済対策の柱には、いわゆる“年収の壁”への対応も含まれています。『106万円の壁』については、社会保険料の負担を避けるため、企業に対し1人あたり最大50万円を助成へ。また『130万円の壁』については、最大2年の間、扶養にとどまることができる方向で調整を進めています。
報道ステーションが、週末に行った世論調査では、内閣支持率は30.7%で、4カ月連続で、不支持が支持を上回る結果となっています。
岸田総理は25日午後、「“冷温経済”を脱し、“適温経済”の新たなステージへ移れるチャンスを迎えている」としました。
「人や設備・研究開発などへの投資もコストカットの対象で、消費と投資の停滞を招いた」という状況を“冷温経済”としたうえで、「活発な投資や賃上げなどで経済の好循環を実現し、熱量を感じられる“適温経済”」への転換期だとしました。
岸田総理は、今後3年間は“変革期間”として、経済対策に集中的に取り組んでいくことを表明しました。
この“適温経済”を達成するための“経済対策の5つの柱”を発表しました。
   物価高から国民生活を守る
   持続的賃上げ、所得向上と地方の成長
   成長力につながる国内投資促進
   人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革
   国土強靭化など国民の安心・安全
今回の経済対策では、この“5本柱”を重視していくとしました。岸田総理は、この“5つの柱”に基づき「10月をめどに政府与党と緊密に連携しながら、経済対策を取りまとめる」としています。そして、その後、「速やかに補正予算の編成に入りたい」としています。
●経済対策についての会見 9/25
先ほど、自民党、公明党、両政調会長に対しまして、明日の閣議で、来月中をめどに経済対策を取りまとめる指示をすることを伝えました。与党においても十分な検討を進めて、そして政府に対して提言を頂く、これをお願いした次第であります。今回の経済対策については、2つ大きな目的があります。ここにありますが、第1が向こう側ですが、物価高に苦しむ国民に対して、成長の成果について適切に還元を行うということであります。これについては、コロナ禍で苦しかった3年間を乗り越えて、経済状況は改善しつつあります。3.58パーセントの賃上げ、名目100兆円の設備投資、また、50兆円もの需給ギャップの解消も進みつつあります。税収も増加しています。他方、コロナ禍を乗り越えた国民の皆様は、今度は物価高に苦しんでいます。今こそ、この成長の成果である税収増等を国民に適切に還元するべく、経済対策を実施したいと考えています。
そして、第2は、こちら側ですが、日本経済が、長年続いてきたコストカット型の経済から30年ぶりに歴史的転換を図る、この歴史的転換を着実に図れるよう、強力に政策的に後押しをしていく、これが、2つ目の目的であります。人への投資、賃金、さらには未来への投資である設備投資や研究開発投資まで、コストカットの対象として削ってきたことで、消費と投資の停滞を招いた、この状況を「冷温経済」と呼んだ専門家もおられましたが、我々はようやくこの「冷温経済」を脱し、活発な設備投資、あるいは賃上げ、そして人への投資による経済の好循環を実現し、経済の熱量を感じられる「適温経済」の新たなステージに移れるチャンスを、今、迎えています。このチャンスを逃すわけにはいきません。岸田政権では今後、3年間を変革期間として、三位一体の労働市場改革や、持続的賃上げを伴う消費の活発化、DX(デジタル・トランスフォーメーション)、またGX(グリーン・トランスフォーメーション)など、未来への投資促進やスタートアップ育成を始めとする、企業の新陳代謝による経済の供給力の強化・高度化などに集中的に取り組んでいくこととしています。その際に大切なのは、スタートダッシュです。足元を見ると、国民の皆様は物価高に苦しんでおり、個人消費や設備投資も力強さに欠ける不安定な状況にあります。各種の給付措置に加え、税制や社会保障負担の軽減などあらゆる手法を動員することで、熱量あふれる新たな経済ステージへ移行することへの方向感、これを明確かつ確実にし、「冷温経済」へ決して後戻りすることがないよう、経済対策を実行していきたいと考えています。
そして、今申し上げたこの2つの目的を着実に実行できるように、今回の経済対策では、ここにあります5つの柱、これを重視していきたいと思います。第1に、足元の急激な物価高から、国民生活を守るための対策、第2として、地方、中堅・中小企業を含めた持続的な賃上げ、所得向上と地方の成長の実現、そして3つ目として、成長力の強化・高度化に資する国内投資の促進、そして4つ目として、人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革の起動と推進、そして5つ目として、国土強靱(きょうじん)化、防災・減災など、国民の安心・安全の確保、この5つを柱として経済対策を考えていきたいと思っています。今後、政府・与党の密接な連携の下、精力的に取りまとめを進めてまいります。そしてこれを取りまとめた後、速やかに補正予算の編成に入りたいと考えています。
なお、従来より経済対策はスピードが大事であると申し上げてきました、このため、対策の取りまとめを待つことなく、既にガソリン補助金等を開始しているところですが、若い世代の所得向上や人手不足への対応の観点から、「年収の壁」支援強化パッケージについても、週内に決定し、時給1,000円超えの最低賃金が動き出す、来月から実施してまいります。「130万円の壁」については、被用者保険の適用拡大を推進するとともに、次期年金制度改革を社会保障審議会で検討中ですが、まずは「106万円の壁」を乗り越えるための支援策を強力に講じてまいります。具体的には、事業主が労働者に「106万円の壁」を超えることに伴い、手取り収入が減少しないよう支給する社会保険適用促進手当、これを創設いたします。こうした手当の創設や、賃上げで労働者の収入を増加させる取組を行った事業主に対し、労働者1人当たり最大50万円を支給する助成金の新メニュー、これを創設いたします。こうした支援によって、社会保険料を国が実質的に軽減し、「壁」を越えても、給与収入の増加に応じて手取り収入が増加するようにしてまいります。政府としては「106万円の壁」を乗り越える方、全てを支援してまいります。このため、現在の賃金水準や就業時間から推計して、既に目の前に「就労の壁」を感じておられると想定される方々はもとより、今後、「壁」に近づく可能性がある全ての方が「壁」を乗り越えられるよう機動的に支援できる仕組みを整え、そのための予算上の措置を講じてまいります。
そして、この経済対策の重要な部分となる成長力の強化についてですが、成長力強化に向けて賃上げ税制の減税制度の強化、また、戦略分野の国内投資促進や、特許などの所得に対する減税制度の創設、また、ストックオプションの減税措置の充実の検討など、持続的賃上げや国内投資促進に向けた重点項目につきまして、明後日27日に新しい資本主義実現会議で議論を行います。
さらには本日、認知症の治療薬として、レカネマブが薬事承認されました。アルツハイマー病の原因物質に働きかける画期的な新薬であり、認知症の治療は新たな時代を迎えたと考えています。同じ27日に、認知症と向き合う高齢社会実現会議を立ち上げ、認知症施策の総合的な推進に向けて検討を深めてまいります。また、6月に策定した、こども未来戦略方針に基づく、こども・子育て支援についても、スピード感ある実行を行っていくため、できるところから取組を実施してまいりたいと考えています。こども未来戦略会議を来月初めには開催いたします。
このように経済対策の策定、これを最優先にしながら、変化を力にする日本に向けて、先送りできない課題に一つ一つ取り組んでまいります。私からは以上です。
(補正予算案提出時期と10月に解散に踏み切る可能性について)
本日説明した柱立てに基づいて、この10月をめどに、政府・与党と緊密に連携しながら、経済対策を取りまとめることとしています。そして、その後速やかに、補正予算の編成に入ることとしたいと思っています。御質問は解散についてということでありますが、経済対策を始め、先送りできない課題、これに一意専心取り組んでいく、これはもう従来から申し上げております。現在、それ以外のことは考えてはおりません。
(円安の是正の必要性について)
円安、為替相場については、ファンダメンタルズ、これを反映して、そして安定的に推移することが重要であるということ、それから過度な変動、これは望ましくないということ、これは従来から申し上げてきたとおりであります。政府としては、為替相場については、引き続き高い緊張感を持って注視していきたいと考えてはおりますが、基本的な考え方は今申し上げたとおりであります。
(経済対策の柱立てに半導体の生産支援は含まれているか及び単身者や自営業者による保険料支払の不公平感の課題について)
まず1点目の質問については、経済対策は、そもそもこれから取りまとめるわけですから、個別具体的に、これが対象になります、なりません、これを今の段階で申し上げることは控えなければならないとは思いますが、半導体を始めとした戦略分野について、国内投資を促進し、成長力を強化していく、これは重要な考え方であると思っています。地方を含めた、こうした成長分野への投資、これは雇用の創出ですとか、あるいは持続的な賃上げ、さらには所得向上に向けて、大変重要な取組であると考えています。そういう考えに基づいて経済対策を取りまとめていきたい、このように思っています。
それから、今おっしゃった、要するに「就労の壁」についてですが、これは1つ、経済対策の中で重要な考え方として紹介させていただきました。ですから、この対策の対象になる方以外についても、どのような経済対策を用意するか、これは、正にこれから与党とも議論をしながら、来月中に取りまとめるということであります。今、御説明した「就労の壁」の点については、政府として重視していきたいということを申し上げました。それに加えてどんな対策が必要なのか、与党ともしっかり連携していきたい、このように思っています。
(防衛増税の実施時期と今後の方向性について)
防衛力強化に伴う、いわゆる税制措置ですが、これは従来から考え方を申し上げてきたとおりです。防衛力抜本的強化のための税制措置の実施時期については、昨年末決定した閣議決定の枠組み、また本年の骨太方針、これに基づいて、行財政改革を含めた財源調達の見通し、そして景気や賃金の動向及びこれらに対する政府の対応、これを踏まえて判断していく、この方針は変わっておりません。引き続き政府・与党、緊密に連携し、柔軟に判断していきたいと考えています。以上です。
●岸田政権、人権担当の補佐官が不在に 首相「公約」ポスト消滅の波紋 9/25
岸田文雄政権で新設された「国際人権問題担当」の首相補佐官が、2年足らずで不在となった。岸田首相が自民党総裁選で公約に掲げた「肝いりポスト」だった。日本外交のあり方が問われる深刻な人権課題が山積するなか、国際社会に誤ったメッセージになると懸念する声もある。
首相補佐官は内閣法で5人以内と定められ、重要政策について首相にアドバイスする。今回の内閣改造で任命されたのは、新任・留任あわせて5人。女性活躍や国土強靱(きょうじん)化の担当が維持された一方、「人権」はなくなった。岸田政権が衆院解散・総選挙を経て本格始動した2021年11月から、中谷元・元防衛相が務めてきたポストだ。
人権補佐官は、岸田首相が21年9月の総裁選で「香港の民主主義・ウイグルの人権問題に毅然(きぜん)と対応」(政策集)するとして新設を約束した。首相は22年1月の通常国会でも「同盟国・同志国と連携し、深刻な人権問題への対処にも、私の内閣で初めて任命した専任の補佐官と共に、しっかりと取り組む覚悟です」と述べていた。 ・・・
●「尖閣」に危機感ゼロ♂ォ縄の政治家とメディア 9/25
尖閣諸島を行政区域に抱える沖縄県石垣市が8月から、ふるさと納税の返礼品として尖閣周辺海域で獲れた高級魚「アカマチ」を提供している。尖閣周辺での漁を活性化することで領海を守ろうという取り組みで、中山義隆市長は「漁業者が尖閣周辺で操業することの支援につながれば」と期待する。
市への寄付額10万円につき、船上活け締めした「尖閣アカマチ」2尾約5キロを冷凍して寄付者に送る。寄付の申し込みが一定数あった時点で、八重山漁協の依頼を受けた漁業者が尖閣周辺に出漁する仕組みだ。天候などの条件にもよるが、漁協は3カ月に1回程度の航海を予定する。
漁協によると、漁業者が尖閣周辺海域に向かうと燃料費だけで1往復10万円以上かかるという。せっかく、ふるさと納税の返礼品に尖閣アカマチが加わっても、寄付の申し込みが少ないと利益が出せず、出漁できない可能性がある。市によると9月上旬の時点で申し込み数は低迷しており、今後、寄付額の値下げも検討するというが、尖閣を守るため、多くの国民に一肌脱いでほしい。
一方、尖閣問題に対する沖縄本島のムードは、対照的に冷ややかだ。
尖閣周辺海域に8月下旬、約150隻の中国漁船が押し寄せたとの報道があった翌日、玉城デニー知事の記者会見が県庁で開かれた。
だが、尖閣問題を質問したのは産経新聞の記者1人だけ。県紙やテレビ局の記者らは、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設問題の質疑を延々と繰り返した。
県紙では、辺野古移設問題をめぐる訴訟で県の敗訴が決まったという記事が1面トップの大見出しだったが、尖閣周辺に中国漁船が殺到した話題は、紙面の片隅でベタ扱いだった。
メディアの報道ひとつ取っても、八重山と本島の温度差が如実に感じられる。
8月には辺野古などを選挙区とする立憲民主党の前衆院議員、屋良朝博氏が石垣市で講演し、「中国の領海侵入は1カ月に1回、2時間だけ。儀礼的になっている」と発言した。尖閣周辺に出漁する日本漁船が海警局船から威嚇を受けていることに関しては、「(日本政府が)グリップできていない人が若干いる。それが問題だ」と述べ、暗に出漁を止めない日本政府に非があるかのような主張を展開した。
危機感ゼロの放言に開いた口が塞がらないが、これも沖縄本島の空気感を反映しているのだろう。
反基地イデオロギーにどっぷりとつかったメディアや政治家が沖縄を危うくし、日本全体の安全保障にも悪影響を与えている。尖閣アカマチの普及に取り組む石垣市もそうだが、沖縄で尖閣問題に真摯に取り組もうとすると、孤軍奮闘を強いられる現状が悲しい。  
●11/26 投開票日?河野太郎氏留任に透けて見える岸田政権の解散戦略 9/25
内閣改造によって発足した第2次岸田再改造内閣。林芳正前外相の交代や過去最多タイの女性閣僚などサプライズもあったが、幹事長や政調会長、官房長官など政権の骨格となるメンバーが変わらなかったこともあってか、政権の支持率浮揚にはつながっていない。
今秋の早期解散説もくすぶる中、今回の内閣改造と今後の展開について、国内政治と選挙動向に精通した社会学者の西田亮介氏と、情報法制研究所の上級研究員を務める山本一郎氏が語り合う対談の第1回。
山本一郎氏(以下、山本氏):9月13日の内閣改造は、一言でいえば、玄人筋だけが感心するような人事でしたね。
いや、党や官邸の中身を知っている人たちは好意的に見ていて、わりと勝負師をかき集めてきたなという印象はあるんですよ。でもそれは内側の論理であって、外から見ると「誰これ?」って感じで。
唯一のサプライズは林芳正外相の交代くらいで、それも「党務をやってくれ」というよくわからない理由でした。
西田亮介氏(以下、西田氏):自民党内ではいまだに派閥の論理が強いんだなというのが強く印象に残りました。閣僚、党役員とも各派からのバランス重視で、とりわけ主流派である第1、第2、第3派閥(安倍派、麻生派、茂木派)に対する配慮が色濃く出た人選になっていると思います。
安倍、菅、岸田という流れで見た時にも、自民党内における派閥の存在感を感じますね。菅政権は「安倍政権を継承する」と言っていましたが、安倍派(旧細田派)は筆頭派閥で菅氏は無派閥でした。 菅氏が粘れなかったのは、そこに大きな要因があるのではないでしょうか。
安倍氏と岸田氏を比べてみても、安倍派は第1派閥で、岸田派は第4派閥です。自民党内で行使できる影響力の主導権はぜんぜん違うでしょう。
岸田氏が首相になったことで岸田派に権力が移ってくるのか、主導権を握ることができるようになるのかと思いきや、今回の人事を見るとそうはなっていないようです。
「自民党をぶっ壊す」と小泉(純一郎)さんが言って、派閥政治が弱体化するのではないかと言われました。安倍政権の下でも派閥色がすごく薄まり、このまま派閥は弱体化していくようにも思えました。
それが近頃、鵺(ぬえ)のように戻ってきて、存在感を見せているということが強く印象に残っています。
山本氏:派閥の論理で言うと、留任した茂木幹事長と、小渕選対本部長は2人とも経世会(現平成研=茂木派)ですね。
割と早くから「茂木幹事長留任」の噂は流れていたにせよ、党内で声望が高く、世代交代の象徴とも言える小渕優子さんの起用こそ肝とも言えるわけで、この人事を強行したのはびっくりしました。
「ドリル優子」をあえて表に出した理由
西田氏:経世会への配慮が強くなされていますが、ある種、内閣を支えてもらうということを誓わせているようです。
山本氏:そういう目的もあるかもしれませんね。
西田氏:それから小渕さん、さっそく昔のことをつつかれています。「ドリルさん」って。ある意味、当然です。
見方によっては、このタイミングであえて表に出すことで、今後、選挙の顔にしにくくしているのかなと。つまり、裏方にいれば、彼女の場合は時が経つにつれて自然と人気が戻ってきたかもしれません。だけどそれができないように、あえていまこの段階で蒸し返し、くぎを打っているようにも見えます。
そういう意味では、岸田さんの選挙に対する意識を非常に強く感じます。自分こそが顔となって、国政選挙に勝つ。自分は選挙を戦えるんだということを示している。そのことに対する執念です。
いまのところ、その道筋はある程度うまくいっているようにも見えます。最初の総選挙のときには「岸田で大丈夫なのか?」と言われていたわけですが、そこで案外、結果を出した。野党が弱すぎて話にならないということが大きいとはいえ、選択理由が消極的だとはいえ、です。数字と結果は重要です。
その後、同じように岸田さんは参院選でも勝ち切りました。衆参の国政選挙で、続けて成果を出した形です。ここで次、もう一度勝ち切ることができれば長期政権が視野に入ってくる。これは第2次安倍政権の立ち上がりと似ていますね。安倍さんは当時、2012年の総選挙、13年の参院選に勝ちました。
「野党が弱い」という状況は、おそらく当時以上でしょう。当時はまだ民主党がまとまりとして存在していましたから。場合によっては、変に負ければ再度の政権交代となってしまうかもしれないという危機感がありました。
そんな危機感はいまはありません。支持母体からガタついていますし、そう簡単に立憲と国民は次の塊にはなれない状況ですし、維新も変なスキャンダルが相次いでいます。そういう意味では、環境的には岸田さんにとってものすごく有利です。
そうしたことを、岸田さんは見据えているように映ります。
岸田首相が探る解散のタイミング
山本氏:解散のタイミングは常に探っているんでしょう。(首相の衆院解散表明が取り沙汰された)6月13日はしびれました。
あのタイミングでやっていたら、ほぼ確実に自民党は都市部を中心に大幅に議席を失って惨敗していました。政権交代はないにしろ、あまり望まない連立政権ができた可能性が高かったんじゃないかなと思っています。
今回の内閣改造で、じゃあそこから倍旧でよくなる要素があったかと言われると、現段階ではそうなっていません。勝負師ぞろいと言いながら、残念ながら国民受けする人事というわけではありませんでした。
内閣改造によって支持率がふわっとでも上がり、秋の国会論戦で経済対策や統一教会(現・家庭連合)の解散命令請求などで政治に対する関心が高まり、支持が加速度的に伸びていけば、解散が打てるんじゃないか。岸田さんとしては、そんなストーリーを描いていたんでしょう。
いろんな世論調査も各媒体、各組織で立ち上がっていますが、改造の入口と出口の2回、支持率の調査をするんですね。今回、これがほぼ変わりませんでした。どんな調査方式でもほぼ変わっていません。
支持率の調査は、「支持しますか、しませんか?」と聞いて「どちらとも言えない」と答えた場合、「しいて言えば……」と更問いする場合があります。岸田政権は実は、この2回目で「支持する」と答える人の割合が低いのが特徴です。「しいて言えば……」と聞かれたときに、「支持しない」といった人の割合がものすごく高かったんです。
このデータは、岸田政権の「消去法では選ばれない」という厳しい現状を物語っているんじゃないかと思います。
西田氏:もう一つ改造でいえば、女性閣僚ですね。安倍政権に並ぶ5人ですか。なんでここもう1人増やさなかったのかな、とは思ってしまいますね。安倍政権を超えておけばよかったのに(笑)。
山本氏:適切な人材がいなかったのかね。
西田氏:牧島かれん(前デジタル相)さんとか、もう1回入閣したらおもしろかったんじゃないかなと思いました。
山本氏:精神的な打たれ弱さは、選挙目前の改造内閣では不向きとみられたんでしょうかね……。この内閣で期待する人っていますか?
「河野さんが評価されている理由がさっぱりわからない」
西田氏:いや。デジタル相留任はダメだろ、とは思いますが。個々人の政治家への期待というのは特にありません。ところで前からなんですが、河野(太郎)さんが評価されている理由がさっぱりわかりません。
山本氏:まったく同感ですね。
西田氏:例えば、新型コロナのワクチン行政です。これを進めたのは菅政権、それから河野さんの手腕だと言われています。でも、これ自治体にぶん投げただけですよね?
各地で接種計画をがんばったのは自治体とそれぞれの職員の人たちです。自治体の対応と手腕こそが評価されるべきではないでしょうか。政府は「自治体ごとに」と丸投げでした。もし手腕を発揮できていたのであれば、ひな形を作って、これでやってくださいと流すはずです。
各自治体で検討しろ。期日はここまで。
このやり方、マイナンバーカードと健康保険証の問題でも同じ構造に見えます。なぜ河野さんは、みんなからスターのように扱われるんでしょうか。いろんなところでそれがわからないと述べているのですが、私は声が小さいので、ちょっと山本さんにお願いしたい……(笑)。
山本氏:河野太郎さんの事跡に関して言えば、ほんと功罪があると思うんです。罪は、いま西田さんがおっしゃったように「オレが一言言えばみんな言うことを聞く」っていうようなニュアンスですかね。
思い込みが強いのか、周辺で話を持ち込んでくる人たちの質が悪いんじゃないかなと思う節があります。従前のエネルギー関連でも、活動家上がりの問題人物を自然エネルギー関連のタスクフォースに突っ込んできたり、いま騒ぎになっているライドシェア関係も正直めちゃくちゃですから。
タクシー行政に関するこの手の政策審議は、もう2016年からやっているはずです。
タクシーの数が減っているというのは、ドライバーさんの賃金が低いから起きている問題です。事前確定運賃制度が先行して一部が規制緩和される一方、ハイヤーや代行はたくさん就業者がおり、むしろ増えています。
二種免許や地理試験についても、イギリスや台湾などでは「やっぱりタクシー会社にしっかりサービス担保させるのは必要だ」という話になっており、単なる白タク配車サービスにならないように留意しています。
単にデジタル行政の「やった感」のためだけに、民泊や電動キックボード、EV普及のように安全措置のハードルが下がるのは問題じゃないのかなとは思います。
単に駅前の客待ちや通りの流しのタクシーが減ったから「ライドシェアどうやねん!」と言われても、そんなの知らねえよ、ですよね。それは国土交通省が定める総量と、運賃に関する規定を変えない限り解消しない話です。
ウーバーの仕組みは、配車タクシーと言いながらも実質はリムジン(ハイヤー)です。行き帰りの場所が最初に決められて、賃金も決められて、その場で支払いができるという仕組みなので、うまくいくわけです。
これとタクシーの数が少ない問題と一緒にするなというのは、正直なところ思います。この政策の経過を見ている人間はみんな知っている話です。
「お座敷」を破壊する河野氏の意味
西田氏:本当にデジタルも強いんですかね?
実は弱いんじゃないかと思った理由は、マイナンバーカード行政でAIを使った申請にすればいいみたいなことを幾度もおっしゃっていたからです。
一般的な自治体の申請窓口にはそもそもOCR(紙の文字をコンピューターで読み取る機能・機器)自体ありません。その環境でどうやってAIを活用するんでしょう。OCRの精度を考えても、必ず人力でのチェックは必要です。結局、政府が期間を設定したり、過剰なポイントプログラムなど変なインセンティブをつけたりして短期間に申請者が殺到したため、 ヒューリスティックなエラーが起きているわけです。
これを「AI、デジタルで解決できる」と言っているのは、「やっぱりこの人わかっていないんじゃないか」と大変不安な気持ちになりますね。
山本氏:何が一番問題かって、住所の表記の揺れですよね。この住所があるのかないのかということは、やっぱり人間の目でチェックしないといけませんから。
本当の重要閣僚に据えて枢要な政策を触らせると大変なことになるだろうなというのは思います。イージスで揉めた防衛大臣は一期限りでしたね。それはそういうことなんでしょう。
一方で功の面で言うと、河野さんは「お座敷」(今回はデジタル臨時行政調査会やデジタル田園都市国家構想実現会議など)をいっぱい整理・廃止しようとするんです。いいことなんじゃないですか、無駄だから。
アナログ規制撤廃で、一時期はアナログの象徴とも言える印鑑の廃止まで打ち出していました。「形骸化したものをやめましょう」と悪びれもせず正論が言えるのが河野太郎さんのいいところではあるので、そこのところでだけ、活躍してほしいと思います。
パワハラは問題にせよ、役人について回る無駄な仕事や調整が減る方向に進むのは、とてもいいことだと思います。激務で困っている官僚にちゃんと残業代をつけてあげようとかね。
ああいうところで、官僚たちが愚にもつかない資料をたくさん作って各党へ調整でレクに走り回るんですから。そういう資料作りを裏で担う高給のコンサルが嫌いだというのも、河野さんのいいところですね。
ただいずれにしても、平井卓也さんや牧島かれんさんが1期、1期で退任して、河野さんが今回2期やるのはまともではないですね。自民党内にふさわしい人材がいないということを示してしまっているように見えます。
しかも、自民党が議論しているのがWEB3.0(ウェブスリー)やNFTなどで成長戦略とかいう馬鹿みたいな内容なので、河野太郎さんのような人がデジタル大臣にいて、受け取っても一ミリも進まないってのが一番エレガントなんでしょうか。
河野太郎さんは総理になりたいのでしょうが、国民の可処分所得増大のため、携帯電話料金を政策的に一方的に下げてしまった菅義偉さんのお陰で、回り回って防衛予算増額の財源論に国のNTT株完全放出の話が出て、NTT法改正(撤廃)も視野に入れた議論が始まってしまうという、変なハレーションの出る政策を推し進めるために、河野太郎さんの謎の突破力が無駄に使われないよう祈るのみです。
●岸田首相が経済対策の方針を表明へ 9/25
物価高対策は弱者救済策に抜本的な見直しを
岸田首相は25日、経済対策の柱を表明する方向だ。これを受けて、26日には閣僚に策定を支持する。今回の経済対策は多様な内容を含むが、その中核は物価高対策となる。日本経済新聞社が13〜14日に実施した緊急世論調査によると、首相に優先してほしい課題のトップは「物価対策」となり、その回答比率は42%にも達していた。
先般の内閣改造は政権の支持率向上につながらなかったことから、この経済対策を政権浮揚につなげ、それを機に、岸田首相は秋にも解散・総選挙を検討する可能性が考えられる。毎回のことではあるが、経済対策は政治的な戦略を強く帯びており、その中で国民に最もアピールできるのが物価高対策だ。それを実現するために政府は、10月に臨時国会を召集し、相当規模の補正予算を編成する可能性が高い。
政府は、9月末に期限を迎えたガソリン補助金、電気・ガス代補助金の年末までの期間延長を既に決めている。補正予算で財源を確保したうえで、さらなる延長を検討しているのである。
ただし、物価高対策の補助金制度は、これで出口が見えなくなってしまった感がある。そのもとで、財政負担は膨らみ続ける。政府は新たに低所得者支援を検討するとしているが、物価高対策の補助金制度自体を大きく見直し、ガソリン購入者あるいは家計に対する一律の補助金ではなく、低所得者、零細事業者に絞った弱者救済的な補助金制度あるいは給付制度を抜本的に見直すべきだ。その方が、費用対効果は格段に高まるのではないか。
様々な施策を加えることで「バラマキ」との批判をかわす狙いも
自民党の一部からは、経済対策に「少なくとも15兆円、できれば20兆円ぐらいは必要になる」との声も出てきている。これは明らかに、「規模ありき」の考え方である。
しかし、4−6月期に需給ギャップがプラスに転じる中、経済対策で景気を刺激する必要性は乏しい(コラム「需給ギャップのプラス化と満たされたデフレ脱却4条件:政府はデフレ脱却宣言に慎重、日銀金融政策には影響せず」、2023年9月6日)。
従来、マイナスの需給ギャップを穴埋めするために、同額程度の経済対策を実施すべきとの議論が与党内からしばしば聞かれてきたが、現在、需給ギャップがプラスであるなかで、相当規模の経済対策が必要と考える理由は明確に説明されるべきだ。
そうした中、野党内からは、経済対策は「選挙対策のバラマキ」との批判が出ている。その批判をかわす狙いから、様々な経済施策を物価高対策に加えて、今回の経済対策案が作られた印象がある。
国民にアピールするには、規模を大きくすることが有効との考え方がある中、物価高対策以外も多くの施策を盛り込めば、規模が大きくなっても「バラマキ」ではないと主張することができるからだ。
緊急性の乏しい補正予算編成が常態化していることの問題
読売新聞が報じた骨子案では、「『物価高が国民生活に大きな影響』を与え、『消費の下押し』」を招いているとの危機感を示したうえで、構造的な賃上げと投資の拡大の流れを「より力強いものとし、『成長と分配の好循環』の実現を加速する」と強調されている。
具体的には、▽物価高対策と経済の足場固め▽構造的賃上げと投資拡大の流れの強化▽人口減少を乗り越えるための社会変革▽国民の安全・安心の確保――の4本柱が掲げられる。
これらには、日本経済の潜在力向上に資する重要な施策も含まれるが、それらを補正予算で実施する必要性、緊急性に乏しいものも少なくない。本来補正予算による財政支出は、本予算編成時に想定できなかった環境の変化に対応するための緊急措置である。他方で、補正予算は本予算ほどには国会、国民のチェック機能が働かないという問題もある。毎回のことではあるが、補正予算での経済対策が常態化しているのは大いに問題である。さらに、それが国債発行で賄われ、財政環境を一段と悪化させ、経済の潜在力を損ねることになっている。
リスキリング支援などを通じた構造的賃上げ策は重要だが。。。
対策には、労働者のリスキリング(学び直し)支援などを通じて構造的賃上げを促す施策が含まれる。それを補正予算のタイミングで実施することの妥当性の問題はあるが、労働市場改革を通じて生産性上昇率を高め、それを反映して賃金が上昇する環境を整えることは重要なことだ。仮にこのタイミングで実施するのであれば、実効性の高い施策となるようにして欲しい。
さらに、生産性向上などに力を入れる企業向けの補助金に関し、継続的な賃上げを支給要件にすること、スタートアップ(新興企業)育成の支援も検討される。
脱炭素、デジタル化、経済安全保障の観点から重要となる物資の供給力の強化策も検討されている。半導体や蓄電池、バイオ関連などといった重要物資を対象にして、初期投資に限らず5〜10年の単位で企業の生産コストの負担を軽減する税制が検討される。
人口減対策となる社会変革では、自治体業務の効率化を図る「デジタル行財政改革」を推進する考えが検討される。長時間労働の是正によってトラック運転手の不足が懸念される2024年問題に対応するために、運転手の待遇改善や規制改革などが検討される。
資産運用業への海外勢の参入促進策は過去の政策を十分に検証する必要
さらに、資産運用業への海外勢の参入促進策も検討される。岸田政権は、2022年に「資産所得倍増計画」を打ち出し、その一環として少額投資非課税制度(NISA)の拡充・恒久化などが実施された。今回はその延長上で、岸田首相は、「(資産)運用の高度化を進め、新規参入を促進する」とし、資産運用特区をはじめとした各種の規制改革を通じて、運用能力が高い海外人材の受け入れなどを積極化する考えを示した。
外国資産運用の参入促進を促す施策自体は悪くないが、「資産所得倍増計画」では、個人の資金を日本株に向かわせ、それを日本企業の成長に活用すること、さらに企業の成長が株価上昇や配当増加を通じて個人の所得を増加させて、個人消費を刺激し、日本企業の成長を助けるといった好循環が想定されていたと考えられる。まずは、こうした国内での好循環を一段と促す施策を優先させるべきではないか。
また、海外の資産運用業の参入が、果たして日本の資産運用全体の高度化につながるかどうかや、海外資産を含めた個人の資産運用の拡大につながるかどうかは明らかではない。
さらに、英語のみで行政対応を完結できる「資産運用特区」の創設などは、今までも議論されてきた東京あるいは日本の「国際金融センター構想」の焼き直しとも映る。ただし、同構想やそれを実現するための施策は、過去に何度も尻つぼみとなり、またとん挫してきた。そうした過去の失敗を十分に検証したうえで、より実効性の高い施策を示さないと、今回も掛け声だけに終わってしまうだろう。
いたずらに規模を追求せず重要施策に絞り込むことが重要
補正予算を伴う今回の経済対策は、過去にないほどに多様な内容を含むものとなりそうだ。そこには、大規模対策となることが「選挙対策のバラマキ」との批判を覆い隠す狙いも感じられる。補正予算を伴う経済対策は、本来、緊急性のあるものに限るべきだ。それ以外の施策は、しっかりと議論をしたうえで、来年の本予算や税制改正で実現していくのが本来の姿のはずである。また、大規模の経済対策の財源を確保できず、安易に国債発行で賄うことになることも大いに懸念されるところだ。
いたずらに規模の大きな経済対策に膨れ上がらせることを避け、緊急性がある政策にしっかりと絞り込み、政治色を排し、国民生活の安定に資する経済対策となるよう、しっかりと議論されていくことが強く望まれる。
●木原防衛相「防衛体制強化は喫緊の課題」 石垣駐屯地を視察 9/25
木原防衛相は24日、沖縄・石垣市の陸上自衛隊石垣駐屯地を訪れ、中国が周辺海域で活動を活発化させる中、警戒監視にあたる部隊の視察を行った。
木原防衛相「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、南西諸島の防衛体制の強化は喫緊の課題」
木原防衛相は、北朝鮮による弾道ミサイルや周辺海域の安全保障環境が厳しく、防衛体制の強化に理解を求めた。
また、住民避難用のシェルター設置について「被害防止の観点から重要」と述べ、さらに「抑止力になる」と必要性を訴えた。
これに先立ち、訪問した宮古島では、4月に起きたヘリコプター墜落事故の発生地近くの公園で、献花を行った。
その後、殉職した10人の隊員に向け、追悼の言葉を述べた。
●岸田政権「年収130万円超でも扶養2年まで」に漂う“場当たり感”… 9/25
岸田首相が25日、年収が一定額を超えると手取りが減ってしまう「年収の壁」を巡り、対策パッケージを発表する。人材不足を補う狙いだが、効果の程は疑問だ。
「年収の壁」には、いくつか種類がある。所得税が発生する「103万円」、従業員101人以上の企業で社会保険料が発生する「106万円」、従業員100人以下の企業で扶養対象外となり社会保険料が発生する「130万円」などだ。
会社員や公務員の扶養に入っている専業主婦(主夫)は年収に応じて「第3号被保険者」に区分され、保険料の支払いが発生しない。ところが、年収130万円を超えると扶養を外れ、保険料負担が生じてしまう。そのため、就労調整を余儀なくされている。
政府は「年収の壁」が人材不足につながっているとして問題視。そこで厚労省が打ち出したのが、年収130万円を超えても連続2年までは扶養を外れないとする案だ。
しかし、「2年まで」しか扶養に入られないのであれば、3年目以降は再び年収を抑えるパート労働者が続出すること必至だ。政府は「暫定的な措置」と位置付けているが、人材確保につながるとは考えにくい。経済評論家の斎藤満氏がこう言う。
「こんな場当たり的な対応では、本質的な問題の解決になり得ません。そもそも、扶養控除を受ける年収上限が必要なのか、扶養控除に頼らないで世帯所得を増やすにはどうすればいいか、政府はきちんと政策を講じるべきです。しかし、いつまで経っても、政府は企業の利益優先で、労働者の利益は後回し。『年収130万円超でも2年までは扶養』なんて、いかにも恩着せがましい。物価高で国民生活は苦しくなっているのだから、物価上昇率分を年収上限に加味してもいいはずです」  
●なぜ東大や京大をハズしたのか…10兆円大学ファンドが東北大を選択 9/25
年間予算500億円の東北大に100億円を配分
大学の研究力を高めるために政府が創設した10兆円規模の大学ファンドの初の支援対象候補に東北大が選ばれた。昨年12月から公募を開始し、国立、私立の10大学が手を挙げた。最終候補に東大、京大、東北大の3校が残ったが、なぜ東大、京大が落選し、東北大が選ばれたのか。
ここ20年にわたって日本の研究力は低下してきた。挽回の切り札として政府が打ち出したのが、この大学ファンドだ。
政府の出資で10兆円規模のファンドを作り、その運用益を使って、文部科学省が「国際卓越研究大学」と認定した数校の大学を支援する。
政府の計画では、約3〜約4%の運用益を目指し、2024年度から年間3000億円を上限に国際卓越研究大学に配分する。配分期間は最長で25年間続く。
今回選ばれた東北大は、その候補第1号というわけだ。
東北大には、2024年度に100億円程度の資金が配分される見通しだ。この資金を研究や若手研究者育成に充てる。東北大の収入予算は1458億円(2021年度)。このうち国から東北大に配分されている予算(運営費交付金)は458億円で、これが100億円増えることを考えると、影響は非常に大きい。
なぜ東大や京大は外されたのか
政府は国際卓越研究大学の認定は、数校に限る方針だ。
2000年代に入ってから政府は、経済活性化につながると思われる研究分野に手厚く予算を配分する「選択と集中」を続けてきた。国際卓越研究大学は、その大学版といえるだろう。
ただ、実際にどれぐらいの規模の資金が国際卓越研究大学に配分されるかは、運用益次第だ。ファンドを運用するJST(科学技術振興機構=文部科学省が所管する国立研究開発法人)は2022年度の運用で604億円の赤字を出しており、苦しいスタートとなった。
次回の公募について文科省は、「来年度中に開始したい」としつつも、「運用状況を勘案し、段階的に行う」と慎重な姿勢も見せる。
世間の関心を集めたのは、なぜ東北大なのかということだ。
最終候補の3校はトップクラスの大学であり、どこが選ばれてもおかしくないが、多くの人は、東大あるいは京大が選ばれると思っていたのではないか。
英国企業「クアクアレリ・シモンズ」の最新版世界大学ランキングでも、東大28位、京大46位、東北大は113位と差が開いている。
逆転現象が起きた理由のひとつは、文科省など政府の希望に沿った改革を目指しているかどうかだ。
文科省は選定にあたって、経済界、学術界、外国人の大学関係者など10人の有識者からなる「アドバイザリーボード」を設け、審査をした。アドバイザリーボードの報告書を見ると、なぜ東大、京大が落選したか、理由が浮かび上がってくる。
政府に従う大学とすぐには従わない大学で明暗
報告書は東大に対してこう指摘する。
〈既存組織の変革に向けたスケール感やスピード感については必ずしも十分ではなく、工程の具体化と学内調整の加速・具体化が求められる〉〈「成長可能な経営メカニズム」の具体化に向けては、長期的・世界的規模のビジョンと戦略を構築する「法人総合戦略会議」の設置(などが求められる=筆者注)〉
京大には
〈新たな体制の責任と権限の所在の明確化が必要〉〈実社会の変化への対応の必要が感じられた〉
東大、京大は、経営改革や組織改革などのスピードの遅さや、全学としての取り組みが不足していることが問題視されている。
一方、東北大については、〈改革の理念が組織に浸透している〉と、評価した。
文科省やアドバイザリーボードは、ガバナンス(組織統治)の強化、従来の慣習の廃止や見直しなど、徹底的な改革を大学に求めている。その大学像に向かって進む大学と、すぐには進めようとしない大学との差が今回の結果につながったと思われる。
ただ、報告書は、東大や京大に対して、含みを持たせた。
東大には
〈今後、構想の具体的内容を学内の多くの構成員が共有し、全学として推進することが確認できれば、認定候補となりうる〉
京大についても
〈構想の具体的内容を学内の多くの構成員が共有し、全学として推進することを期待したい〉
文科省など政府が望むように経営などのガバナンス強化をきちんと行えば認めるということだろう。
「災害からの復興」というメッセージ
東北大が選ばれたもうひとつの理由はストーリー性だ。最近、メディアなどで東北大がよく取り上げられるようになった。
東日本大震災以後、政府は東北地方を科学技術や研究成果を生かすイノベーションの拠点にしようとしている。
文科省は東北大の「東北メディカル・メガバンク機構」「災害科学国際研究所」や、東北大が中心になって進めている「ナノテラス(次世代放射光施設)」といった最先端研究施設新設を次々と支援している。
東北大学が第1号になるというのは、そうした一連のイノベーション拠点政策の集大成であり、「災害からの復興」というメッセージ効果が大きい。こうした点も評価されたのではないか。
大学ファンドに対しては、大学の研究者からかなり批判が集まっている。多くの大学や研究者が予算不足に悩んでいる。日本の研究力を高めたいのなら、数校に絞らずに幅広く支援すべきではないかというのだ。そうした意見が根強い背景には、開始前にどういう制度にするかを十分検討することや、議論が不足していることがある。
政府が制度を作る際にお手本にしたのは、米国のハーバード大など、欧米のトップ大学だ。
経営トップのガバナンスによる経営が行われ、大学独自の莫大なファンドの運用益を研究費などに使っている。政府はそこに着目し、日本の大学にもそうしたやり方を持ち込もうとしている。
海外大学を真似ても成功するはずがない
ただ大きな違いがある。欧米の大学の多額のファンドは、産学連携や寄付などによる大学自身のお金が原資になっている。一方、日本は巨額の税金が原資という政府丸抱えだ。
どういう制度にするかを議論するために、政府は、まず内閣府に有識者会議を設けた。会議では、海外の大学学長経験者や関係者のヒアリングを行ったが、日本国内の大学については東大、京大、東北大、大阪大の学長経験者や、産学官からなる大学改革支援組織のヒアリングですませた。
国際卓越大学の審査を行ったアドバイザリーボードのメンバー10人のうち半数は、この議論をした内閣府の有識者会議のメンバーだ。大学に大きな変革を求め、これからの日本の将来を決めるものだけに、審査する側の多様性や、大学の現場の声をもっと重視すべきではなかったか。
ファンドを運営しているJST(科学技術振興機構)が初年度の運用で600億円を超える赤字を出したことも暗雲を投げかけている。
文科省は9月にJST法の施行令を改正した。これまでファンドの運用方法は株や債券だったが、新たに「金利先物」「上場投資信託オプション」「株価指数先物オプション」「金利先物オプション」など10項目を加えた。
文科省はその理由として、「大学ファンドは元本の約9割が負債である長期借入金(財政融資資金)であり、さらに、毎年度の損益を確定させていかなければならないという性格がある」「よりきめ細かに損失のリスクを低減した資金運用を可能にするため」など、と説明する。
だが、不確実で不安定さを伴う資金調達法であることに変わりはない。研究支援、若手育成にあまりふさわしいとは思えない。
また同じ失敗を繰り返すのか
これまでも、政府が税金を投じて、民間も走らせ、結果、頓挫してしまった例は多々ある。
最近の例でいえば、三菱重工業を説き伏せて、国産初のジェット旅客機MSJ(旧名MRJ)を開発したが、開始15年後の今春に頓挫した。三菱重工は当初予定の1500億円を大幅に超える1兆円規模を投じたと見られている。
民間にも資金を出資させて官民ファンドをたくさん作ったが、赤字を流し続けていたり、きちんと機能していなかったりするところも目立つ。
ビジネス感覚に乏しい官主導の問題点を露呈しているのではないか。
大学ファンドについても、運用益を約3%〜約4%と見積もったことに対して、経済関係者からは「甘すぎる」と批判が出ている。
研究力の低下からの脱却は日本にとって喫緊の課題である。これまで通りの大学の在り方では、新しい時代にそぐわないこともある。ただ、甘い見通しと希望的観測が先行して大学を巻き込んでの失敗となると、日本の将来を潰しかねない。
大学の組織改革や巨費のファンドだけで、研究力や大学の国際競争力向上につながるわけではない。研究に必要な予算をきちんと投じて成果を上げるためには、現場の意見をもっと聞きながら着実に進める必要があるだろう。
税金を使う以上、国民への説明責任や透明性確保という問題があることも忘れてはならない。 
●SNS上で「静かな恐慌」という言葉が飛び交う…好調な米国経済「張り子の虎」 9/25
個人消費がついに息切れする? 
ジョー・バイデン大統領は現地時間9月14日、米東部のメリーランド州で行った演説の中で「米国経済は世界最強だ」と胸を張った。
自身が進める経済政策「バイデノミクス」の実績をアピールした形といえる。たしかに米国経済は堅調だ。東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に参加した国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事も、新型コロナのパンデミックやウクライナ戦争の痛手を被った主要国・地域の中で「米国だけが完全に回復した」と指摘した。
米国では今年春、中堅銀行の破綻が相次ぎ、リセッション(景気後退)入りの懸念が高まった。だが、気がつけば 「米国一人勝ち」の状況になっている。ウォール街を中心に「リセッションの懸念はなくなった」との楽観論もコンセンサスになりつつあるが、はたしてそうだろうか。
米国経済の好調を支えてきた個人消費が、ついに息切れするとの見方が強まっている。
各家庭はパンデミックの際に政府実施の財政支援で貯蓄し、インフレが続く現在はその貯蓄を取り崩すことで堅調な消費を維持してきた。だが年末までに、その余剰貯蓄が底を突くと確実視されている。
サンフランシスコ連銀の研究員は「余剰貯蓄は9月末までに底を突く」との見通しを示しており、市場関係者の多くもこの見方に同意している(9月11日付ブルームバーグ)。
金利上昇、学生ローン、就職難、原油価格高騰
消費者が債務を増やしながら支出を続ける状況にも、逆風が吹いている。
ニューヨーク連銀が9月11日に発表した8月の消費者調査によれば、昨年よりクレジットカードの利用やローンを組むのが「難しくなった」との回答は59.8%で、調査が始まった2013年6月以降で最高の数字となった。金利の上昇や銀行の慎重姿勢が災いしている。
学生ローンの返済再開 も個人消費にとって大きな痛手だ。返済再開により連邦政府の歳入が大幅に増加し、8月の財政収支は同月としては異例の黒字(892億ドル)になったほどだ(9月14日付ブルームバーグ)。
一方、人手不足のはずなのに、今年の大学新卒者は昨年と異なり深刻な就職難に直面しているという報道もあり、個人消費を牽引する若年層はダブルパンチに見舞われている状態だ。
「弱り目に祟り目」ではないが、原油価格の上昇も頭の痛い問題だ。
レギュラーガソリンの全米平均価格(9月上旬)は1ガロン(約3.8リットル)当たり3.8ドル強と、年初より約2割上昇している。
バイデン政権はガソリン価格抑制に向けて動き始めているが、戦略国家備蓄(SPR)を既に大量に放出しており、決め手となる対策が見つからないのが実情だ。
エネルギーコストの上昇が消費者の購買力を奪い、1970年代半ばと1980年代前半、1990年代にはリセッションにつながったことから、市場関係者の間で警戒感が広がっている (9月19日付ブルームバーグ)。
今年も年末商戦の時期が近付いているが、実質売上高の伸び率はリーマンショック以来最低になるとの見方が出ている。個人消費も「遅くとも来年初めまでにマイナスに転じる」との予測が有力になっている(9月13日付日本経済新聞)。
労働組合によるストライキが多発
米国経済を押し下げる新たな要因も浮上している。
全米自動車労組(UAW)は9月15日、米自動車大手との労使交渉の決裂を受けてストライキに入った。このように、米国では労働組合によるストライキが多発している。米労働省のデータによれば、今年8月の労働損失日数(労働者が仕事に携わらなかった延べ日数)は410万7900日(暫定値)と23年ぶりの高水準となった。
労働組合の影響力は低下傾向にあったが、息を吹き返している背景には世論の変化がある。米国の世論調査・コンサル企業ギャラップの調査によれば、2023年の調査で「労働組合に同意する」と答えた米国民は67%と、リーマンショック直後の2009年の48%から大きく上昇している。
「利益が労働者に公平に分配されていない」という積年の恨みを晴らすかのように、労働組合が要求している賃上げ率が急激に上昇し、市場では賃金インフレを警戒する意識が強まっている(9月19日付日本経済新聞)。
SNS上で飛び交う言葉「静かな恐慌」
悪材料が続出している米国経済だが、筆者が最も気にしているのは、好調な経済統計の陰で多くの米国人の暮らしが悪化の一途を辿っていることだ。
SNS上では「サイレント・デプレッション(静かな恐慌)」という用語が飛び交うようになっている。生計の手段を失うのではないかとの不安に苛まれており、メンタルヘルス関連の支出 はうなぎ上りだ(9月14日付Forbes)。
住宅価格高騰のせいでホームレスの数も急増している。かつては気ままな生活の象徴だったキャンピングカーやトレーラーハウスは社会問題を映す鏡になってしまった感が強い。
都市の治安悪化のせいで米国の商業店舗は踏んだり蹴ったりの状況だ。万引きに加えて、強盗や放火の被害まで生じており、高級店を中心に店舗を閉鎖する動きが広まっている。
昔から言われていることだが、社会の安定なくして経済の繁栄はない。足元の米国経済の好調は「張り子の虎」に過ぎないのではないだろうか。
●パクスアメリカーナの限界とウクライナ戦争、米国株大暴落も同じ流れの中に 9/25
米国内の分断が、高みに昇りすぎた米国株の大暴落からの大恐慌を誘発する。世界の主要国の分断が、米国発の大恐慌を世界に広げる。
そして、「保護主義」が世界大恐慌を「世界大戦」へと導く。
これまで人類が幾何級数的に加速してきた「地球の不足」が、世界戦争を長期化させ深刻なものにする。
いまの「世界システム」は崩壊する。新しい世界システムの誕生と一応の完成には2050年までかかるだろう。
アメリカファーストとは保護主義
「アメリカファースト」とは「保護主義」である。
来年の米大統領選挙を戦う予定のジョー・バイデン現大統領とドナルド・トランプ前大統領は「アメリカファースト」を掲げる点では一致している。
アメリカファーストとは「保護主義」であり、外国に対する差別的な貿易政策と国内産業の保護を意味する。
1990年代からの米国が「米中経済同盟」をグローバリゼーションの中心に置いて「ジャパンアズナンバーワン」を打破し、そのおかげで体制の違う中国が世界第2位の経済大国かつ軍事大国となった。
中国製品が米国製品に取って代わり、「アメリカンドリーム」の中心であった米国内陸部の工場を閉鎖して地域経済を崩壊させた。
リーマンショックがさらに米国民を分断して中国への怒りを増幅し、トランプ氏が大統領になってからの米国が保護主義に走ることは、第1次世界大戦直後に次の世界大戦の到来を予測したケインズ流の言い方をすれば、「当然の帰結」であった。
アメリカファーストとは、世界から米国への求心力の放棄を意味する。
そして、第2次世界大戦後の世界をここまで平和に保ってきた「パクスアメリカーナ」米国のもたらす世界の平和と繁栄の終わりを意味する。
アメリカファーストにより、第2次世界大戦後の世界での米国への求心力の源泉であり、日本のように資源のない国が成長できる源泉であるがゆえに、世界各国から米国への権威と尊敬を生んだ「自由貿易原則」を米国は放棄することを宣言した。
「保護主義」をトランプ、バイデン、2代の政権がスタートしたのだ。
それだけでなく「専制国家とは付き合うな」と日本をはじめとした「同盟国」に圧力をかけて世界の「ブロック経済化」を進め、すでに世界は分断されている。
来年に決まる次の米国大統領も、バイデン、トランプ両氏のどちらかになる見通しだ。
つまり、2028年まで保護主義とブロック経済化を米国と世界のルールにしようとする政権が米国に来年誕生する。
「グローバリゼーションは放棄する」ということだ。それが世界の経済と金融の世界にどのような影響を持つのだろうか?
グローバリゼーション放棄の衝撃
政治体制の違いを超えて世界中の国と広く交易し、相互に投資する。それによって自国も相手国も最も有利な条件で経済活動を行える。より安く買える。よりコストが安いところに工場を移せばインフレにならない。
だから超低金利になる。資金調達コストも生産調達コストも下がるから企業は利益を拡大し、株価は上がる。株が上がれば年金基金の資産は増えて国民は豊かになる。
だから世界は体制を超えて自由貿易を促進し、関税や投資規制などの障壁は撤廃しなければいけない。それがグローバリゼーションだ!
ついこの前まではこのような米国の御託宣を正しいものとして日本をはじめ世界各国は受け入れ、ダボス会議では「グローバリゼーションが世界を救う」というメッセージが毎年連呼された。
金融市場では、グローバリゼーションによりBRICs、つまりブラジル、ロシア、インド、中国、こうした米国と「体制の違う国々」が世界経済の主役になると喧伝された。
「オンリーイエスタデイ」の世界と言えるだろう。
そして、「米中経済同盟」を中核とするグローバリゼーションによって、コスト低下と企業収益の急成長は可能になった。
それを「インフレなき世界経済の成長」と言った。
インフレがないからゼロ金利も当たり前になった。株が上がるのも当たり前になった。それを「ニューノーマル」とも言った。
しかし今、グローバリゼーションはその「当然の帰結」として急速に崩壊しようとしている。
そうなれば、資源や食料価格は上がる。もはや中国では生産できなくなると労働コストも上がる。
世界の物価は上がる。インフレになる。すると金利は上がる。消費は低迷する。企業収益には巨大な下方圧力がかかる。
株価を下押しする圧力
「理論的には」株価は大きく低下しなくてはいけない。
その状態は一時的なものではない。次の米国大統領の4年間が終わる2028年まではその世界トレンドは続くだろう。
かつてのグローバリゼーションに戻ることはもはや不可能だからさらに長く続くことになる。
インフレと高金利が続けば企業収益は低迷し、倒産が増加し不況になるだろう。
インフレと不況が同時に来る「スタグフレーション」が50年ぶりの「ニューノーマル」になるだろう。
その上、ロシア・ウクライナ戦争が長期化し、世界のエネルギーと食料が不足し価格が高止まりすることも予想されている。
こうした状況は、米国のインフレ率と金利が10%以上であり続けた1970年代に酷似してきた。
さらには、米国で1970年代のスタグフレーションを引き起こした、中東から来た石油ショックを米国の長期インフレに増幅した、国内の構造要因が復活しようとしている。
労働問題だ。
来年の米大統領選挙の最大の論点になることが予想される、全米最大の労組UAW(全米自動車労働組合)による、全米の自動車工場における賃上げと「雇用確保」を要求する「ストライキ」の呼びかけだ。
米国の自動車工場でのストライキは極めて重要な意味を持つ。
保護主義か自由貿易か、という分かれ目だけでなく、100年続いたガソリン車か中国が世界一になったEVか、ガソリンエンジンで成長してきたビツグスリーか総合IT企業であるテスラか、という複雑な分かれ目になる。
このストライキは米国内と世界の両方の分断をさらに進めるだろう。
アメリカンドリーム生んだT型フォード
「アメリカンドリーム」は1908年に発売開始されたT型フォードの工場とともに始まった。
大衆が買えるT型フォードは、米国を一気に自動車社会にし、世界の自動車生産の6台中5台は米国製になった。
ヘンリー・フォードは「理想の工場」を作った。
労働時間は1日8時間に短縮され、賃金は普通の大学教授よりも高く、健康保険と年金は死ぬまで支給された。
もっとも、20世紀初頭の米国人の平均寿命は50歳以下だったのだが。フォードなどの自動車工場には祖父から3代にわたる労働者も多かった。
当時世界最強の米自動車産業の工場は、日独が第2次世界大戦で負けた時に「米国には物量では敵わない」と言った時の米工業生産力の中心であり、米国人の誇りであり、分厚い地域社会と「中産階級」の中心であり、中西部ミッドウエストに広く点在していた。
そのミッドウエストこそ2016年からの「トランプ革命」が露わにした米国の「反グローバリゼーション革命」の本拠地となった。
いまバイデン大統領が支持するUAWが主導する米自動車工場におけるストライキが成功すれば、「永続的なインフレ」に直結し、高金利を必然にし、米国株大暴落も必然になる。
かつてアメリカンドリームの中核にあった米国の工場労働者の多くは、インフレに対する「生活防衛」のために「COLA(生活費調整つまりインフレ連動賃上げ)」という権利を保障されていた。
それを勝ち取ったのが、今でも全米の組織労働者の4割を代表する、かつての輝ける労働組合UAWであった。
COLAという労使の取り決めのおかげで物価上昇率に連動して賃金が上がる「構造」ができた。
1973年からの石油ショックで米国の物価が上がればその分賃上げが起きた。企業は賃上げ分を製品価格に転嫁した。
それが物価を押し上げさらにインフレが進んだ。新たなインフレがまた新たな「賃上げ→価格上げ→インフレ→賃上げ」という循環を起こし、米国ではインフレが制御不能になった。
当時の日本でも、おりからの「列島改造ブーム」で地価が高騰したところへ石油ショックが加わり、列島中が「油断」(堺屋太一氏の小説の題名)の恐怖に見舞われて急激なインフレが起きた。
世界から称賛された総需要抑制政策
しかし、当時の田中角栄首相に「狂乱物価」の沈静化を請われて大蔵大臣に就任した福田赳夫氏が世界最初の「総需要抑制政策」を主導して見事に約束の3年で物価の鎮静に成功した。
福田氏の経済政策の成功は、戦後の世界経済史に特筆された日本の金字塔であるのだが、当時も今も日本国内の評価は低い。奇妙なことである。
経済政策の成功によりインフレを克服して高成長軌道に戻った日本、それに対してインフレの制御ができず不景気で低迷する米国。
「日本に学べ」「日本株式会社は素晴らしい」という声が1979年のエズラ・ヴォーゲル教授の「ジャパンアズナンバーワン」をベストセラーにした。
「日本とドイツに世界経済を引っ張ってもらえ」が持論の1977年当時のジミー・カーター米大統領は「日独機関車論」を唱導した。
日本の総需要抑制政策を超緊縮的な金融政策に応用したポール・ボルカーFRB議長が1979年に登場し、貨幣供給量を「抑制」することで経済のコントロールができるとするミルトン・フリードマンの「マネタリズム」が新しい経済理論として受容されることになった。
日本の世界におけるプレゼンスは飛躍的に向上し、やがて「日本警戒論」に変質していく。
一方、米国ではCOLAを象徴とする「硬直的な賃上げメカニズム」が石油ショックから始まる物価上昇を長期のインフレに転化してしまったのだ。
さらには、1979年からのイラン・イラク戦争による第2次石油ショックはさらに米国のインフレと高金利、そして不景気の悪循環を増幅した。
こうして1970年代の米国では、長期にわたるインフレは長期にわたる10%以上の高金利をもたらした。
企業の資金調達コストは急上昇し、消費は低迷し、企業の多くが赤字に陥り、インフレと不景気が併存する「スタグフレーション」が起き、米国株は長期に低迷した。
冷戦構造とグローバリゼーション以前の労働や資本を国境を越えて移動できない1970年代には、米国ではインフレと高金利と株価低迷が「ノーマル」だった。
しかし、1990年代以降には、「米中経済同盟」を中核としたグローバリゼーションが米国にゼロインフレをもたらし、ゼロ金利と企業利益の爆発的な成長を可能にした。
その世界はいま急速に消えつつあるのだ。そうなると、インフレ、高金利、企業収益の低迷が起きるはずだ。これらはすべて公知の事実だ。
理論上は米国の株価は半値以下
もし、米国株式市場が合理的であれば、つまり今述べたような誰でも利用可能な情報を組み込んだ計算に基づいた「株価評価」をするならば、米国株は今の半分以下で評価されなくてはいけない。
理論的には株価とは企業収益のキャッシュフローを長期の金利予測で割り引いた「割引現在価値」であるからだ。
もしも、米国企業の企業収益が長期にわたり「下方修正」され、長期のインフレにより金利予測が大きく引き上げられるという「合理的予想」を米国株式市場が正確に反映していたら、企業収益の金利による割引現在価値であるはずの株価はすでに大きく下落していなくてはいけない。
しかし、人間は合理的ではない。
人間が構成している市場経済も合理的ではなく、欲望と恐怖が支配し、上げるときも下げるときも「合理的な範囲」をはるかに超えて極限まで行ってしまう。
合理的でない人間の膨大な集合的意識と知識を集約したAIも現時点では合理的な神の領域にはとても達していない。
空前のバブルを起こした1980年代の日本、1999年からの米国ITバブル、戦前に人類史上最大の大恐慌を引き起こした米国、さらにはチューリップバブルを引き起こした17世紀オランダ、そのオランダから覇権を奪い南海泡沫(バブル)を起こした18世紀の大英帝国・・・。
古今東西、人類が「合理的価格形成」に失敗してきた例は数多い。
今回もまた「This time is different(今回は違う)」という大きな声が聞こえる。
「米国企業収益は超長期の成長パターンに入った」「人工知能は人間の労働を置き換えるから企業の収益を飛躍的に上昇させる」というものから、「人工知能は人間を超え、宇宙全体を覆うものになる」というものに至るまで枚挙にいとまがない。
その多くは「株が下がってもらいたくない」という願望の反映である。
「リーマンショックを米国株式市場は克服し、ここまで驚異の上昇を続けてきた。米国株を持ち続けてよかった。だから、次に米国株が大暴落しても問題ない。持ち続ける」というまことにもっともな意見もある。
だが、そうした見方は「リーマンショックは大恐慌にならなかった」がゆえに正当化されるだけだ。
しかも、リーマンショック直後は「大恐慌が来る」という意見が日米で有力だった。
ワンチームの崩壊が意味するもの
しかし、ここまで説明してきたように、リーマンショックが米国経済を大恐慌に引き摺り込まなかったのは、米国の統治機構が党派を超えて「ワンチーム」として金融の「巨大災害対応措置」を瞬時に発動したからである。
世界が大恐慌にならなかったのは、中国と米国と欧州と日本、つまり「体制の違う」世界主要国が一致して「ワンチーム」になり、相互に助け合って「奇跡的に」世界大恐慌の発生を防いだからだった。
しかし、リーマンショックは大恐慌を起こさなかったが、大恐慌を防ぐための「防災措置」が米国内を分断し、リーマンショック後の米中の対立が世界を分断した。
「グローバリゼーション」が本来抱えている「構造的矛盾」が顕在化したと言ってよい。
米国株暴落からの大恐慌が世界大戦を誘発するリスクも露わになった。その根本原因もまた、1990年代にその「種」が蒔かれた。
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻は、確かに2008年のリーマンショック後の分断された世界の産物でもあるが、そもそも、旧ソ連邦の独立国と国境を接するロシアによる「周辺国侵略戦争」の「種」はそのはるか前の1990年代初頭の米ソ冷戦終結後に蒔かれていた。
その当時から米国主導の「冷戦後体制」はやがてロシアとの戦争を生むことを米国の多くの専門家が警告していた。
そうした専門家の警告は、第1次世界大戦後のベルサイユ体制の帰結として「ドイツによる次の世界大戦」を予言した英国の経済学者ケインズの警告の相似形であった。
そして、100年前のケインズの警告が欧米諸国に無視されたように、ロシアとの戦争の警告は無視された。
ソ連との「冷戦に勝った」「歴史の終わり」だ、「米国だけが世界の超大国である「G1」の時代が来たのだ」と浮かれる「空気」が米国の指導層には充満した。
ジョージ・H・W・ブッシュ(父)からビル・クリントンの時代へと続く1990年代初頭である。
米ソ冷戦に勝利した後の米国指導者の思考を、第2次世界大戦への参戦に踏み切る直前の1941年8月に第2次世界大戦後の世界を「大西洋憲章」としてデザインし、本人の死後もその新しい世界システムにより、第2次世界大戦後の世界が「パクスアメリカーナ」として、2023年のここまでは続いてきた「米国による平和と世界の繁栄」、もちろんその最大級の受益者にはわが日本も入るのだが、を生み出したフランクリン・ルーズベルト米大統領と比較してみよう。
当時、ルーズベルト大統領は大英帝国のウィンストン・チャーチル首相に対して「大恐慌と世界大戦を引き起こしたのは米英だ」と喝破した。
そして、世界大戦を引き起こした原因が英米などの「保護主義」にあり、さらに保護主義の根本に当時アジア・アフリカのほとんどを植民地状態にしていた英国を筆頭とした欧州の「植民地主義」があること、そして、チャーチル英首相が懇願する対ナチスドイツ戦争への米参戦の条件として、戦後の「自由貿易」と「植民地解放」を約束させ、実行させたのだ。
ルーズベルトの偉大さ
繰り返して言うと、ルーズベルト大統領は「ヒトラーが悪い」「専制国家が悪い」といった分かり切ったことを言わず「お前と俺の国、民主主義と言っている米英が世界大戦に責任がある。だから、この戦争に勝ったら戦争を生まない世界を一緒に作ろう」と謙虚に説き、7つの海を支配した大英帝国のチャーチル首相がそれを受け入れた。
2人が今も世界史上の偉人として記憶されているのは、大英帝国の終焉を決断したチャーチルの「潔さ」と、当時の世界システムの限界を熟知した上で、戦後の平和と繁栄を生む世界システムを、世界大戦を自らの意思で開戦する前に構想し、それを自分の死後に実行させたルーズベルト大統領の偉大さにある。
そして、戦後の米国は、第2次世界大戦の最も手強い敵国であった日独両国をアジアと欧州の最大の軍事同盟国であり、経済同盟国にした。
このことが、日独だけでなく世界各国から米国への尊敬を集めて、「パクスアメリカーナ」の時代を築き、「自由貿易」を基本とする米国中心の世界システムが、戦後から今に至る世界の平和と繁栄をもたらした。
しかし、米ソ冷戦に勝った1990年代初頭の米国は、第2次世界大戦後の敗戦国の日独を温かく米国の同盟国に迎えたのとは全く違い、「冷戦の敗戦国」ロシアを戦勝国米国の軍事同盟国にも経済同盟国にもしなかった。
それどころか、ソ連邦の崩壊と解体の後遺症に苦しむロシアに対して敵意と冷淡な姿勢に終始した。
その様は、ケインズが「ドイツとの次の世界大戦を引き起こす」と警告された第1次世界大戦直後のベルサイユ体制の主導者フランスを想起させた。
まず、最後のソ連指導者のミハイル・ゴルバチョフ氏がロシアを中心とした軍事同盟であったワルシャワ条約機構を1991年に完全に解体したのに、米欧諸国は仮想敵である「共産主義ソ連を中心としたワルシャワ条約機構から西欧を守る」のが存在目的だったNATO(北大西洋条約機構)を存続させた。
NATOを存続させただけでない。
ゴルバチョフ氏へのブッシュ(父)大統領の「口約束」に反して、欧米の核戦力も持つNATOを、ゴルバチョフが強く反対した「東方拡大」、すなわち旧ソ連圏であった東欧諸国や旧ソ連邦の一部であった諸国にまで拡大してきた。
ソ連邦崩壊時には17か国で構成されていた世界最大の軍事同盟NATOは、いまや31カ国体制であり、地図を見れば分かるが、ロシアを西から包囲している。
冷戦時代の米国の対ソ連戦略の中心人物が、第2次世界大戦終結直後から「ソ連封じ込め戦略」を立案した当時米国務省のジョージ・ケナンであった。
ジョージ・ケナンの警告が現実のものに
ケナンは、ワルシャワ条約機構の解体後も米国と欧州が血道を上げるNATOの「東方拡大」がやがてロシアとの戦争を生むことを公開の場で何度も警告した。
ロシア・ウクライナ戦争が起きた今の事態はケナンの予言通りと言えるだろう。
「冷戦の敗戦国」ロシアに対して、米国は経済面でも冷淡だった。
第2次世界大戦の敗戦で焦土と化した日独を同盟国とした戦後の米国は、まず両国を復興させ、その後には技術供与やインフラ建設や資金援助によって工業大国として再生させ成長させた。
日本がドイツを抜いて日本史上初めて世界第2位の経済大国となったのは敗戦からわずか24年後の1969年のことだった。
米国の全面的なバックアップなしにはあり得なかった。
しかし、ゴルバチョフ氏が失脚し、跡を継いで1991年にロシア共和国大統領となったボリス・エリツィン時代に、ロシアは「改革開放」や「市場原理」や「経済自由化」にことごとく失敗した。
財政が破綻して、医療や教育などの基本的な公共サービスが提供されず、モスクワやペテルブルクでも飢餓が深刻になり、国民の平均寿命が3年も短くなるという悲惨な社会状態になった。
インフレ率は年率2000%を超えた。
そんなロシアに対して、かつて戦後飢えた日本国民に援助したような救いの手を米国が差し伸べることはなかった。
米国は「市場原理」「民営化礼賛」の御宣託をするだけで、米国に期待していたロシア国民を深く失望させた。
窮したエリツィン政権は、資源国ロシアの国有企業などを、政権首脳などとの縁故に基づいて、オリガルヒと呼ばれる新興財閥にただ同様で売却したが、腐敗を蔓延させた。
ついには、1998年にロシア財政は債務超過になり、国債取引を停止する「ロシア危機」が勃発した。
それでもエリツィン氏は権力の座にあり続けた。
ウオッカを浴びるほど飲み、重い心臓病を患っていたエリツィン大統領は、20世紀最後の1999年12月31日に後継大統領としてウラジーミル・プーチン首相を指名して引退した。
後継者となったプーチン氏は、新興財閥の起業家の多くを訴追し、追放して、没収した資産を国有企業の財産として取り戻し、政府支配の元に置き、有能な経営者を送り込んで収益を上げさせ、国庫に納付させて財政を改善した。
21世紀に入ってからのグローバリゼーションによる世界経済の成長は世界最大クラスのエネルギーや鉱物などの資源国であるロシアの経済を成長軌道に乗せて、財政を再建し、国民生活を向上させ、もちろん、プーチン大統領個人への権力と富の集中を生んだ。
ロシアの誇りを復活させたプーチン
こうしたロシアの劇的な変化は、プーチン大統領の視点から言えば「米国の世話にならず」「米欧のNATOの東方拡大という軍事的脅威にもかかわらず経済成長を成し遂げ」「ロシアの誇りを復活させ」「国防力を高めた」ことになる。
そして、「これ以上のNATOの東方拡大により、ロシアの国境にNATOという敵軍が布陣することは何としても許さない」「特に、ロシア公国の発祥の地であるウクライナとロシアそのものであるベラルーシをNATOに組み入れたら戦争も辞さない」というのは、プーチン大統領としては「至極当然」のことになった。
こうした様は、第1次世界大戦直後の戦勝国フランスが、敗戦国ドイツをさらに弱体化させようと、多額の賠償金を請求し、ドイツが払えないとドイツ領のルール地方を占領してドイツ国民のプライドを踏み躙り、やがてヒトラーの台頭を産んだ歴史の教訓をまざまざと想起させる。
第1次世界大戦直後ベルサイユ体制に対する英国の経済学者ケインズの警告と、米ソ冷戦後の「敗戦国」ロシアに対するNATOの東方拡大に対する対ソ冷戦理論の最高権威ジョージ・ケナンの警告とは、「構造的に」実によく似ている。
米国が冷戦の敗戦国ロシアを、第2次世界大戦の敗戦国日独のように、戦後の軍事と経済の同盟国にしなかったことは、米国の致命的な失敗であった。
もし、米国がロシアを同盟国にしていたら、いまの世界ははるかに違うものになっていただろう。
第2次世界大戦の連合国、つまり「United Nations(国連)」の安全保障理事会の常任理事国である米英仏露中の5カ国の内4カ国が軍事的に同盟国になっていた。
かつての敵国であった日独はすでに同盟国である。
世界的レベルで国際関係に通暁した方に「なぜ米国はロシアを同盟国にしなかったのでしょうか」と尋ねたことがある。
「軍事産業を抱えた選挙区の議員が強硬に反対したのが大きかった。本当に米露が同盟国になったら戦争がなくなってしまうからね」というお答えに納得したものだ。
「軍事産業を中心とした軍産複合体が米国を支配するようになる。それではいけない」と1961年の退任時の演説で米国民に警告したのは第2次世界大戦の連合軍総司令官としてヒトラーのナチスドイツを打ち破ったドワイト・アイゼンハワー大統領だった。
もしも軍産複合体の利益のために、冷戦終了後のロシアを同盟国にしなかったのだとしたら、米国の国益全体として見ると取り返しのつかない失敗というしかない。
なぜならば、もしも1990年代初めの米ソ冷戦終結時に、米露が同盟国になっていれば、その後に中国だけが孤立を選ぶことは中国にとっても危険なものになっていたはずであり、米国との軍事を含む全面的な同盟関係を中国が求めた可能性は高かった。
そうなれば、北朝鮮もまた、孤立を捨てて米露中日韓との同盟に参加して、東アジアに今とは異なる安全保障環境が生まれた可能性も高かったはずだ。
そもそも1972年の米国は、今の習近平政権よりもはるかに独裁的であり予測不能な毛沢東の中国とさえ国交を開いた。
第2次世界大戦の敵国日本とも同盟国になれたのだ。欧州では、長年の仇敵であった独仏もいまや強固な同盟国だ。敵対関係から友好関係に変わることの成功例は世界に多くあるのだ。
対立よりも同盟国になるメリットに大きな戦略的な利益があると両国が理解すれば、米中が今頃は安全保障条約さえ結び、台湾の帰属や民主主義や住民自治についての解決策も米中で協議している頃だったかもしれない。
お互いがトロイの木馬
経済摩擦が米中両国の国民に「お互いがトロイの木馬」という恐怖感を与えるのは「油断したら相手に軍事的に支配される」という「敵国」リスクが大きい。
そのことは、戦後軍事同盟関係となった日米の国民が「経済戦争」になっても相手国から身の危険を感じなかったことと好対照だ。
しかし、1990年代初頭の米国に、第2次世界大戦後の「パクスアメリーナ」を戦争前に構想したルーズベルト大統領のような、歴史と現実を踏まえて「米露同盟」という「ブレークスルー」を起こす国家指導者はいなかった。
もう遅い。ロシア・ウクライナ戦争は始まってしまった。
軍事と安全保障、人類の生命に直接関わる分野でこそ、世界の分断は、より深く、先鋭になっている。
台湾有事、北朝鮮の核ミサイルなど、日本が立地する東アジアも最大級のリスク地域だが、中東やアフリカや広大なユーラシアや中央アジアにも戦争や紛争の危険が充満している。
そして、「アメリカファースト」がすでに国論である米国は「世界の警察官」であることを半ば放棄している。
米国株の暴落から世界大恐慌が発生した時に、世界大戦、さらには各地での紛争や地域戦争が多発する「世界戦争」の時代の入り口にいる。
次に起きうる世界大戦は、当然のことながら1941年からの第2次世界大戦とは全く違う世界戦争となるだろう。
第2次世界大戦は、大英帝国を中心とした「西欧諸国の世界植民地支配」という旧世界システムの限界とその崩壊でもあった。
戦争を終わらせたのは、日独の挑戦とそれを退けた、旧世界システムの外部にいた米国を中心に「体制の異なる」ソ連と中国だった。
英仏などの西欧諸国は敗戦国であり、戦後はすべての植民地を取り上げられて、「自由貿易」を原則とする「パクスアメリカーナ」の時代が始まった。
パクスアメリカーナの終焉
次の世界大戦は、米国の圧倒的な軍事と経済での世界覇権を前提としたパクスアメリカーナという世界システムの限界と崩壊をもたらすだろう。
そして、第2次世界大戦の開戦前から西欧諸国の世界植民地支配という世界システムの崩壊が始まっていたように、パクスアメリカーナはすでに限界に来て崩壊を始めている。
グローバリゼーションは一時はパクスアメリカーナの「延命措置」として有効と信じられたが、今では米国民自身が拒絶している。
次の世界大戦の特徴は、現在の世界システムの崩壊が「同時多発性」であり、「多極面性」であり、「国境線崩壊性」であり、「歴史的怨恨の噴出」を伴い、「外国との戦争と内戦の同時進行」や「国家分裂性」などを特徴とするだろう。
そして、核兵器や通常兵器だけでなく、無人兵器、インフラ破壊、原子炉攻撃、通信網侵入と攻撃、AIやチャットGPTなどを駆使したフェイク戦、ハッキング、ランサムウェアなどを駆使して、物質と人間心理に影響を与えた新しい「総力戦」になるだろう。
次第に、誰が何の目的で、誰と戦っているのかも分からずに、ただ破壊だけが進行する「応仁の乱」型に移行するのかもしれない。
しかし、次の世界大戦の最大の特徴となるのは、「人類vs地球環境破壊」の戦いになるだろう。
そして、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のカンダタのように「自分だけは助かりたい」から「人のものを奪う」ことが世界中で発生するのだろう。
1900年に16億人であった世界人口はいまや80億人に迫っている。そして、その半数が都市に住み、「消費者」となり、水と食料とエネルギーと資源を消費するから、地球の供給限界に近づいている。
「地球が足りなくなる」時代にすでに入っている。
地球全体では化石燃料の消費は増え続けて地球温暖化を幾何級数的に加速している。
異常気象が累進的に激化して世界各地に被害を与え、南極と北極の太陽光線を反射していた氷は急速に溶けて、黒い水面が太陽の熱と光をさらに吸収して氷山の溶解を加速し、ヒマラヤの氷河はどんどん溶けて、インダス、ガンジス、メコン、黄河、揚子江などの30億人のアジア人口を支えている大河の水源の枯渇が本格化しており、黄河や揚子江の水がなくなる事態すら頻発している。
人類の生存のために必要な水、食料、エネルギー、資源、環境などの「物質的な限界」がきており、その被害は簡単に国境を超えて、地球全体に広がっている。
本来、大至急、人類が「ワンチーム」となってすぐに対処しなくては破滅的な被害が世界に広がる。
しかし、世界のリーダー国家であるはずの米国内が160年前の南北戦争以来の「分裂国家」になり、世界はさらに分断されて遠心力が働いている。
そうなると、米国株の大暴落が大恐慌から世界大戦に進むリスクが高まるだけでなく、それと同時に、核戦争よりも深刻な「地球が足りなくなり」「人類が住めなくなる」リスクが同時に高まるだろう。
そのことが今の世界システムの真の限界として地球上の人類が身に染みて知るようになるだろう。
その「人類生存のリスク」こそが、人類が一つの「種」であり、人類が「ワンチーム」として行動しない限り生き延びることができないことを共有して、新たな世界システムを構築する推進力となるのだろうか。
そうなるのに、30年はかかるだろうと推測している。 

 

●処理水放出1か月 新たな輸出先の開拓や国内消費の拡大が課題に 9/24
東京電力福島第一原発にたまる処理水の海への放出が始まってから、24日で1か月です。中国が強く反発し、日本産の水産物の輸入を全面的に停止したことで水産業に影響が広がっていて、新たな輸出先の開拓や国内消費の拡大が課題となっています。
福島第一原発にたまる処理水を薄めた上で、海に放出することに対しては、反発する中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止し、香港やマカオも福島や東京など10都県の水産物の輸入を禁止しています。
最大の輸出先の中国は放出前から水産物の検査を強化し、ことし7月の中国向けの水産物の輸出額は、前の年の同じ月を23%余り下回って2年半ぶりに減少に転じました。
中国による輸入停止などで8月以降もさらなる減少が見込まれています。
政府は水産事業者を支援するため、すでにある800億円の基金とは別に緊急対策として207億円の支出を決め、中国に依存するホタテなどの輸出先の転換に向けて、人材の確保や加工設備の導入費用などを補助することにしています。
また、経済団体や流通業界などには、日本の水産物の販売促進などの働きかけを続けることにしています。
水産業者の間では、中国の輸入停止に伴い取り引き価格の下落などの影響が出ているという声も上がっています。
風評被害への懸念も根強い中、科学的なデータにもとづいた正確な情報を国内外に発信し、新たな輸出先の開拓や国内消費の拡大をどのように進めるかが課題となっています。
豊洲市場 水産物の仲卸会社 売り上げ大幅減少
処理水の放出を受けて、中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止した影響などで、東京の豊洲市場にある水産物の仲卸会社は、売り上げが大幅に減少しています。
東京 江東区の豊洲市場から、20余りの国や地域に高級魚のノドグロやキンメダイなどを輸出している仲卸会社では香港向けの輸出がおよそ半分を占め、一部は中国本土にも流通していました。
しかし、中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止し、香港やマカオも福島や東京を含む10都県からの水産物の輸入を禁止した影響などで、1か月当たりの売り上げは以前と比べて、数千万円減少しているということです。
また、禁輸の対象外の水産物を香港などに輸出しようとしても、税関の検査に時間がかかるようになったため、朝、水揚げされた鮮魚をその日の夜までに届けることで、高い利幅が得られた取り引きもできなくなったということです。
会社は中東などへの販路の開拓や国内販売の強化を検討していますが、新しい取引先を見つけるのは簡単ではない上、主力商品となっている高級魚の需要は日本国内では限られ、売り上げ回復のめどは立っていません。
仲卸会社「山治」の山崎康弘社長は「中国や香港などに向けて、20年かけて日本のおいしい魚を納得してもらいながら売り込んできました。新しい輸出先をすぐに見つけるというのは簡単なことではなく、大変な思いをしています。政治家が本気になって、中国や香港などに見直しを求めてほしい」と話しています。
回転ずし大手 国産ホタテのすしを販売するキャンペーン開始
中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止したことなどを受けて、回転ずしチェーン大手は水産業の支援に向けて、国内での消費を後押ししようと、国産ホタテのすしを全国で販売するキャンペーンを始めました。
回転ずしチェーン大手の「くら寿司」は、22日から全国にある540店舗すべてで、北海道などで捕れた国産ホタテのすしを販売するキャンペーンを始めました。
ふだんよりも倍の大きさのホタテを使っているということで、中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止する中、会社では特に大きな影響を受けているホタテの消費を促していきたいとしています。
都内の店舗でホタテのすしを食べた70代の男性は「報道で国産のホタテが大変な状況だと知り、支援になればと思って食べました。少しでもやれることをするのが大事だと思います」と話していました。
「くら寿司」広報部の小坂博之マネージャーは「処理水の放出の影響が出ている中、国産の水産物を取り扱うことで少しでも漁業者の支援につながればと思っている。今後はほかの魚でもこうした取り組みを続けたい」と話しています。
●インボイス反対署名50万筆突破 広がり続けた連帯の輪 9/24
10月1日から開始予定のインボイス制度に反対する「STOP!インボイス」のオンライン署名が24日、目標としていた50万筆に到達しました。2日前の22日には、日本のオンライン署名としては最多記録だった2021年のコロナ禍における東京五輪の開催中止を求める46万5481筆を抜き、日本トップに。2年近くにわたって粘り強く署名を集めてきた「インボイス制度を考えるフリーランスの会(STOP!インボイス)」は25日18時半から、制度に抗議する市民の声を届けるべく官邸前アクションを実施します。
インボイス制度は、企業などが取引する際、消費税の税率や税額を記載した請求書(インボイス)を使うルールのこと。課税売上高が1000万円以下の「免税事業者」はインボイスを発行できず、登録を受けるには消費税の申告・納税が課せられる「課税事業者」になる必要があります。このため「フリーや零細企業などで働いている人の負担があまりにも大きい」として、憂慮する意見が続出。特にここ1年ほどは、アニメ、声優業界をはじめ、フリーランスが多い各種団体が相次いで反対声明を出すなど、問題意識を共有する連帯の輪が広がっていました。
STOP!インボイスのオンライン署名は2021年11月にスタート。これまでまとまった数が集まる度に国の担当省庁に提出するなどしながら、情報発信にも努めてきました。今月4日には36万1711筆の署名と緊急提言を財務省、国税庁、公正取引委員会のほか、各政党に提出しています。
ここをゴールとせず、官邸アクションまでに東京五輪開催反対の46.5万筆を上回る「50万筆」集めることを目標に掲げたのは、「問題を報じないメディアと、専門家からも多くの問題が指摘されている制度を止めようとしない政治に、日本一という“数のインパクト”を与えたかったから」と、発起人でフリーライター・編集者の小泉なつみさんは話します。
2022年10月26日には、日比谷野外音楽堂で反対集会を開催。小泉さんによると、それまでに10万筆の署名を集めていましたが、自民党の国会議員に「せめて30万筆ないと話にならない」と鼻で笑われたのだそうです。
こうした経験にも心折れることなく、小泉さんたちは各方面への働きかけと並行して署名活動を継続。そして先述したように今月4日、36万1711筆の署名を関係省庁の担当者に手渡しました。そこからわずか20日でさらに約14万筆を積み上げての50万筆です。小泉さんは「多くの人が抱える不安や危機感の強さ、複雑怪奇な制度の問題点をあらためて痛感しました」と受け止めます。
官邸前アクションに向け、STOP!インボイスは「国内断トツの数となったオンライン署名を岸田総理に届けましょう。そして我々は、インボイス制度が本当に『STOP!』するまで、このオンライン署名で声を集め続けます」と参加や連帯を呼びかけています。
●「人口増加率日本一」は狙い通り…「異次元」な明石市の少子化対策 9/24
国の「異次元の少子化対策」は明らかに間違っている。
兵庫県明石市は、高校3年生までの子ども医療費や第2子以降の保育料など「5つの無料化」を実施している。前市長の泉房穂氏は「すべて所得制限なしにすることで中間層世帯が流入し、結果として大きな経済効果を生んだ。全世代が幸せになる子育て支援策は実現可能だ」という――。
議会、既得権益者、職員の反発は凄まじかった
私は明石市長として、これまで多くの政治家ができなかったことを実現しました。1つは「子どもは未来」を街づくりの基本方針に掲げた、数々の子育て施策。それらの施策により、子どもを応援すると街が元気になり、老若男女すべての人が幸せになることを示せたと思っています。
5つの子育て支援施策を「所得制限なし」の無料化にしたことで、明石市は全国的に有名になりました。ただ、これらの改革はスムーズにできたわけではありません。予算配分に反対する議会、それによって割を食う特定業界の既得権益者たちからの反発は凄まじいものでした。
子育て支援施策が結果を出し始める前までは、「お上意識」「前例主義」「横並び意識」に囚われた市役所の職員たちの反発も半端なく強いものでした。市の人事に関しては、「適時適材適所」を掲げて効率的に行っていったのですが、異動させられた職員からの不満も相当なものがあったと感じます。
本音を抑えていても「暴言市長」扱い
そんな反対勢力の一部が私の発言の一部を切り取り、不利な情報をマスコミにリークしたことで、私は「暴言市長」のレッテルを貼られたりもしました。
市長在任中はこれでも本音をかなり抑えていましたが、たしかに私は口は悪い。それは認めます。ただ、建前の空気にさして気を遣わない磊落らいらくな性格の私であっても、こうした四面楚歌そかの状況、反対勢力が起こす向かい風の強さには、正直「こりゃ、かなわん」と思うことも幾度もありました。
でも、後ろから大丈夫ですよと強く支えてくれたのは、多くの市民の方々です。全国で初という条例を私は在任12年間で10以上つくりましたが、それらはみな市民の力強い後押しがあったからこそ実現できたのです。
ムダな予算を削れば、財源は生み出せる
明石市が実施した、「所得制限なし」の5つの無料化施策は明石市民のみならず、日本全国の大勢の方から評価と賛同を得ましたが、それを見て、このような子育て政策は、高齢者施策にしわ寄せがいくのではないか、限られた財源しかない自治体はマネをしたくても容易にできないのではないか、単純にそう捉える方も一方で少なくありません。
しかし、高齢者にメリットがない、新しい財源がなければ積極的な子育て支援施策などできないというのは、はっきりいって間違った思い込みです。お金がないという点に関しては、予算にはムダな部分がたくさんありますから、それを何割かでも削ってまわしてくれば十分可能なのです。
明石市の子ども関連予算は私が市長になる2010年度は125億円でしたが、2021年度は297億円と、10年で約2.38倍増加しました。この増加分には、「所得制限なし」の「5つの無料化」にかかる費用、約34億円も含まれます。
日本の少子化対策は待ったなし
たとえば、この「5つの無料化」を、明石市全体のスケールで見るとどうなるか。明石市が年間に使えるお金はざっと2000億円です。「5つの無料化」にかかる施策費の約34億円は2000億円に対して、たった1.7パーセントの比率です。1.7パーセントというのは、年収600万円(月収ベースで50万円)の家庭に置き換えると、月々、家計から子どものお稽古に8500円捻出するようなものです。
つまり、「5つの無料化」にかかる予算というのは、その程度にすぎない。たくさんあるムダな予算をちょっと削るだけで浮く金額です。これだけを見ても、財源がしっかりなければ子育て関連施策の無料化などできないという発想は、誤った思い込みでしかないとわかります。
政府は異次元の少子化対策を打ち出しましたが、少子化の加速ぶりを見ると、かなり危機的な状況にあります。私が小学生のころ、日本の出生数は200万人程度だったのが、その後、減少を続け、2022年は約77万人、出生率は1.26まで落ち込んでいます。これ以上の減少を避けるには、早急に思い切った策を講じる必要があります。
政府の「異次元の少子化対策」は逆効果
私は別に人口増論者ではありません。人口は緩やかに減っていっても、安心して暮らせる社会をつくるべきであって、無理に産めよ増やせよと言っているわけではない。「産みたいのに産めなくさせている政治はおかしい」と言いたいだけです。今は産みたいのに産めない社会であるために、子どもの数が極端に減り続けている。それによって社会を支える人間が急速に減っていけば、人口の減少と同時に国民の負担は限りなく膨らみ、本当に国は滅びてしまいます。
国は異次元の少子化対策の財源を、社会保険料の増額や消費税増税などから捻出することや、加えて高校生の扶養控除を廃止する案まで持ち出しています。しかし、社会保険料の増額も消費税増税もまったく必要ありません。ましてや扶養控除の廃止は逆にマイナスの負担になるわけで、むしろ少子化を加速させてしまいます。一体国は何を考えているのか理解に苦しみます。
財源については、明石市が増税も何もせずに無料の子ども関連施策を実施したように、国も予算を適正化して子どもにまわせば十分にできるはずです。
3.5兆円と言わず、10兆円の予算を組むべし
国は防衛費について、2023年度から5年間で総額43兆円と現行計画の1.6倍に積み増すことを決定していますが、実際の規模は60兆円近くになるとの報道もありました。これほど防衛費を増額できるなら、「静かなる有事」と自ら言う少子化への対策に今すぐ優先的に重点投資すべきです。
防衛を強化しなければ国が滅びるというなら、その前に少子化対策をしっかりしなくては、国土が守られても住む人がいなくなります。陣地を守るのか、人を守るのか、どちらを優先すべきかという話です。もし、予算をまわすのが現状、難しいというなら、つなぎ国債でも発行して財源確保すればいい。
少子化対策には、3.5兆円の予算規模が見込まれていますが、私からいわせれば、3.5兆円なんてまったく少な過ぎます。国民に安心を与えるサプライズがまったくない。内容も予算も皮肉な意味で「異次元」です。
一気に10兆円の予算を組んで、大学の無償化をはじめ、子育てにかかるコストを劇的に少なくすれば、坂道を転げ落ちるような出生率は間違いなく回復するはずです。高等教育における「社会が賄う部分」と「自分が賄う部分」の費用負担割合は、フランスをはじめとする欧州各国はおおよそ7対3なのに対し、日本は正反対のほぼ3対7。日本が欧州並みになるには、国民の強い安心感が得られる思い切った子育て施策が必要です。
子育て施策で全世代がハッピーになる
「子育て施策が高齢者にとってメリットがない」というのも単なる思い込みです。私が無料化施策を実施したとき、その先にあるものをしっかり見据えていました。なぜなら、「所得制限なしの無料化政策」は、同時にきわめて有効な経済政策だからです。
明石市は、子育て層をはじめ誰もが安心して住みやすい街になったことで人口が10年連続で増え、出生率も上がり、その結果、税収増になりました。その間、街の商店街は売り上げがどんどん増え、移住者の増加によって至るところで建設ラッシュが起こっています。
子ども施策は経済政策でもあり、街に住むすべての人にとってハッピーなものになることをしっかり証明してみせました。このことは、地方自治体という小さな単位においてそうだというだけでなく、国のレベルでも同じ効果をもたらします。
2023年4月の「こども家庭庁」の発足など、政府がようやく子育て支援施策に本腰を入れ始め、それに対してさまざまな議論が起こっている今だからこそ、このことは強調しておきたい点です。
子ども1人にかかる養育費はだいたい3000万〜5000万円といわれています。その子どもが大人になってからの生涯賃金はおよそ2〜3億円です。子育て支援施策によって子どもが増えることは、それだけで大きな経済効果が見込めるということです。
「所得制限なし」が経済効果を生むカラクリ
「所得制限なし」の無料化施策がきわめて有効な経済政策でもある理由を、改めてもう少し詳しく見ていきます。
今や明石市を代表する「所得制限なし」の子育て5つの無料化は以下になります。
【「所得制限なし」の5つの無料化】
1(高校3年生まで)子ども医療費の無料化……薬代も無料。市外の病院も無料。病院代無料。
2(第2子以降の)保育料の完全無料化……兄弟の年齢も関係なし! 保育所・幼稚園 市外の施設もOK。親の収入も関係なし!
3おむつ定期便……市の研修を受けた見守り支援員(配達員)が、毎月おむつや子育て用品を家庭に直接届ける。
4中学校の給食費が無償……中核市以上で全国初。
5公共施設の入場料無料……天文科学館、文化博物館、明石海浜プール、親子交流スペース「ハレハレ」などの入場料が無料。
中間層に光を当て、人口増加率1位に
これら「5つの無料化」の実施にともない、所得制限を設けなかったのは、いくつか理由があります。私の考えるベーシックな子育て支援施策は「すべての子ども」が対象です。親の所得によってサービスの受けられない子どもが出てくるのは、私の理念に反します。
また、私は市長になる前から、「地域経済は中間層に光を当てることでまわり出す」と考えていました。所得制限を設けなかったのは、中間層に光を当てたかったからです。
明石市の人口は10年連続で増え続け、2020年の時点で30万人を突破しました。直近の国勢調査で、全国の中核市(人口20万人以上の指定を受けた自治体)のうち人口増加率1位にもなりました。明石市にどんな世帯が一番流入してきているかというと、それは先述した「中間層(その中でも中の上の世帯)」なのです。
「財政が圧迫される」「市が損をする」は間違い
「所得制限なし」「5つの無料化」によって大きな恩恵を受けられる中間層が、戸建てやマンションを買って明石市に移り住んでくる。中間層世帯は共働きで収入源が2つあるダブルインカムが多いですから、これらの世帯は言い換えれば「ダブル納税者世帯」です。中間層世帯は教育にも熱心で、子どもにお金をかけます。子どもに光を当てると、子どもを育てている親たちがお金を使えて、地域経済もまわるようになるわけです。
明石市は子育て支援サービスの無料化に所得制限をかけないことで、子育て層の負担を軽減し、経済の好循環を生みました。「所得制限をかけず、すべての世帯を対象にすると市の財政が圧迫される」などと言う人もいますが、間違いです。「5つの無料化」は納税者から預かったお金の一部をお返ししているだけなのです。
市が損をしているという解釈も間違っています。子育て支援策が市にもたらす波及効果を考えても、所得制限など設けず、中間層を支援したほうが市の財政も潤います。所得制限により中間層を排除する施策こそが、さらなる少子化や地域の衰退を招くことになるのです。

 

●「内向きでアピールできず」 岸田内閣の改造人事に公明代表 9/23
岸田内閣の改造人事を巡り、公明党の山口代表は、自民党の派閥が推薦した人などが数多く入閣したとして「内向きで国民にアピールしきれなかった」と指摘しました。
公明党 山口代表:「総理が自民党の中のことを色々お考えになって、政権の安定とか。あるいは来年の(自民党)総裁選挙等にらみながら、こういうシフトを敷かれたんではないか」
山口代表は内閣改造が政権浮揚につながっていないという指摘に対し「内向きのことだけで国民にアピールしきれなかった」と述べました。
また「適材適所かは仕事を見ないと分からない」とし、「結果を出せるかが一番問われる」と注文を付けました。
●「国民の信」を得なければ政策推進は困難、岸田首相は年内解散を決断か 9/23
岸田文雄首相は年内の解散総選挙をしないのか。13日には、「今は、まず思い切った経済対策を作り、早急に実行することを最優先に日程を検討していく」と述べた。
この発言から想定される政治日程は、10月に経済対策を作成し、それを具体化する補正予算の編成にとりかかり、その後の臨時国会で成立を図る、ということだ。通常のペースなら補正予算成立は11月中旬ぐらいになるだろう。
そうだとすれば、年内に解散総選挙を行うのは日程的に簡単ではない。年内の予算編成作業ができず、来年度予算の国会審議に支障が生ずるからだ。要するに、冒頭の発言は「年内の解散総選挙はしない」と言っているに等しい。
だが、それで大丈夫なのか。
岸田首相の政策には、マイナンバーカードに象徴されるDX(デジタルトランスフォーメーション)や、原子力活用を含むGX(グリーントランスフォーメーション)推進といった賛否が大きく分かれるものが多い。これまでの政策を大きく方向転換する防衛力の抜本的強化や、少子化対策といった課題もある。
8月24日発行の当欄で指摘したように、ここで「国民の信」を得ておかなければ、これらの政策の推進力を確保することは難しいのではないか、と筆者は思う。
確かに、岸田政権は衆参両院で過半数を確保している。関連法案や予算を成立させることは可能かもしれない。しかし、「国民の信」を得ていなければ、野党も簡単に成立を容認するわけにはいかなくなる。厳しい国会運営は避けられない。
それに、年内解散がないとすれば、次の解散のタイミングは、早くて来年度予算や関連法が成立する来年6月以降だ。場合によっては来年10月以降になるかもしれない。今より1年以上も先だ。そこまで国民は政府のやることを黙ってみていられるだろうか。
解散・総選挙によって政権の正当性を得ない限り、どんな政策も砂上の楼閣といえる。どんなに説明を尽くしても、理解が得られることはないだろう。それは、課題解決を優先して解散を先送りした麻生太郎、菅義偉両政権の結末を見れば明らかだ。
そう思っていたところ、永田町には別な見方が流れているという。
いわく、補正予算編成について岸田首相は「経済対策の取りまとめ後、その内容を踏まえてしかるべき時期に指示する」と述べるにとどめ、明言していない。つまり、経済対策を取りまとめ直後に解散すれば、予算編成に支障をきたさない日程が可能というのだ。
そんなウルトラCがあるのか―。玄人志向に過ぎるが、「岸田首相は何をしてくるか分からない」との評もある。岸田首相の動きをもう少し見てようと思う。
●差別を正当化する妄想の寄せ集め――「在日特権」というデマ 9/23
もはや都市伝説どころか、「神話」の域にまで達しているかと思いきや、一部ではまだ現実社会の“仕組み”として認識されていることに驚いた。
いわゆる「在日特権」のことである。
在日コリアンが日本社会において優越的な権利を有しているというトンデモ説だ。
在日コリアンは公共料金の支払いを免除されている、大企業への就職に際し優先枠が設けられている、といったものから、政界を牛耳っている、はては日本を支配しているといった、荒唐無稽な陰謀論までもが、いまだネット上にあふれている。
ネットで目にするだけではない。少し前にも、ヘイトスピーチをテーマとした行政主催による講演会の終了後、会場参加者の一人から「あなた(※筆者)が言うとおり差別はよくないと思うが、在日の人たちが特権を持っていることについてはどう思うのか」と真顔で訊ねられたことがあった。
その場で崩れ落ちそうになるのをこらえながら全力で否定したが、私と同世代と思しき質問の主は、「ネットに書いてあったので」云々と合点のいかない表情を最後まで隠さなかった。
まるで実体がありません、単なるデマです、ネトウヨのホラ話です、まぼろしにすぎません――これまで何百回となく、「在日特権」を口にする人々に向けて、そう述べてきた。バカバカしいと思いながらも、役所や政治家に「在日特権」の有無を問うてもきた。私が2012年に刊行した『ネットと愛国』(講談社)でも、あえて1章分を「『在日コリアン=特権階級』は本当か」といった特権説の検証に費やし、そのデタラメさを指摘した。
ない、あるわけがない。役所の担当者も与野党の政治家も、誰もが呆れ顔で特権の存在を否定した。ときに私自身がネットのデマに踊らされたネトウヨであるかのように誤認されながら、それでも「まぼろし」の検証を続けたのは、「在日特権」なる文言や概念それ自体が、ヘイトスピーチとして機能しているからである。
いや、差別を正当化させるために、そして在日コリアンを貶めるために、ありったけの妄想を寄せ集めたヘイトスピーチそのものと断言してもよい。
特定の人種や民族が優越的な権利を有し、マジョリティに不利益を強いているといった考え方は、洋の東西を問わず人種・民族への憎悪を煽るために利用されてきた。紛うことなき差別行為だ。
社会から多様性を奪い、人間から尊厳を奪うことなど、許されるわけがない。
だがネット上では、あるいは現実社会においても、だれがどのように否定しようとも、「在日特権」の亡霊は相も変わらず醜悪な姿をさらして徘徊している。
だから何百回であろうと、それがどれだけ手垢にまみれた言葉であろうと、私は繰り返す。
「在日特権」など存在しない。
ただの妄想に過ぎない。
浮かび上がってくるのは差別の歴史
それにしてもヘイトスピーカーたちが口にする「在日特権」とは具体的に何を指すのか――。
実は、これがまた適当すぎて整理に困るのだ。
『「在日特権」の虚構』(河出書房新社)の著者、フリー編集者の野間易通も同書にて次のように述べている。
「『在日特権を許さない』と宣言している市民団体の言う在日特権と、過去に別の誰かが論じた「在日特権」、あるいは街頭デモのビラに載っている「在日特権」のそれぞれが一致せず、概念としてまったく確立していない(中略)まるで鵺のようなものである」
存在しないものなのだから、まさに空想上の怪物と同様、いいかげんな思いつきで仕上がった「虚構」であることは当然だ。要は野間が指摘する通り、「すべてが根拠のまったくない偽情報」なのである。
たとえば、私の手元には、2013年に新大久保(東京都新宿区)で行われたヘイトデモの際、主催者が沿道でバラまいたチラシが残っている。
「日本人差別をなくそう」と題されたチラシには、「在日特権」とされるものが記述されていた。それによると――
   ・働かず年600万円貰って遊んで暮らす優雅な生活
   ・犯罪犯しても実名出ません
   ・税金は納めません
   ・相続税も払いません
   ・医療、水道、色々無料
   ・住宅費5万円程なら全額支給
おそらくネット上のデマをかき集め、なにひとつ検証、確認することなく列記したものだろう。すべてがデタラメだ。
そもそも「年600万円貰って遊んで暮らし」ながら税金、家賃、公共料金をも免除されている人々が、どこに存在するというのか。
国税庁の「令和3年分民間給与実態統計調査」によると、日本における給与所得者の一人当たりの平均年収は443万円である。これを大きく上回る金額が無条件に支給されているエスニックグループがあるとすれば、とうの昔に政治問題化していたはずだ。たとえば朝鮮学校に対する補助金カット、教育無償化からの排除など、マイノリティに対してイジメともいうべき政策を強行しているのが、いまの行政、国なのである。にもかかわらず、上記のような「特権」が政治問題化しないのは、それがヨタ話の類であるからに他ならない。存在しないものを問題にすることなどできないのだ。
一部では「特権」の象徴のように捉えられてもいる「生活保護の優先利用」といった言説もそうだ。
レイシスト集団として一時期、全国で差別デモを繰り返していた「在特会(在日特権を許さない市民の会)」は、かつて在日コリアンの「生活保護優遇廃止」を運動の最大目標として掲げていた。
「日本人は生活保護の申請からも排除されているのに、在日(コリアン)は簡単に生活保護を利用できている」
そうした主張を繰り返しながら、各地の役所に恫喝まがいの“要請行動”をおこなうことも珍しくなかった。
生活保護行政に問題があるのは事実だ。生活困窮者の保護申請を窓口の段階で拒む役所の「水際作戦」をはじめ、理不尽な保護打ち切りなど、行政による経済弱者切り捨ては、私だって絶対に許容できない。だからこそ多くの市民団体がこの問題に取り組み、当事者とともに闘っているのだ。
だが、貧困問題を口にする在特会などのレイシスト集団が、こうした隊列に加わることはない。この者たちはあくまでも「在日の優先利用」なるデマを吹聴しながら差別を煽っているだけなのである。
この問題に関しては、厚労省、各地の福祉事務所に徹底的に質してみたが、担当者はいずれも「優先利用などあるわけがない」と、私の取材を一蹴した。
東京都内のあるケースワーカーは次のように答えた。
「生保利用にあたって重視するのは、あくまでも申請基準を満たしているかどうかであり、在日(コリアン)だからと基準を曲げることなど、過去に遡っても聞いたことがない」
しかも外国籍住民の場合は、たとえば申請が認められなかった際、日本国籍者であれば不服申し立てを行うことで生保利用が許可される場合もあるが、その権利すらない。外国籍住民の不服申し立ては却下するよう、厚労省から通達が出ているのだ。「優先利用」どころか、大きな制限が加えられている。
前述のケースワーカーはさらにこう続けた。
「生活保護利用者の圧倒的多数は高齢者と障がい者、そして母子家庭です。これは外国籍住民であっても同じこと。あえて日本人との違いをあげてみれば、助けてくれるべき親族や知人が身近にいるかどうか、ということになります。外国籍住民の場合、全体の数そのものが少ないわけですから、援助してくれる親族、知人も限られている。特に単身高齢者の場合、就職に恵まれなかったり、無年金であったり、条件的に悪い人が多いのは事実。だからこそ地域によっては、日本国籍者よりも利用率が高いことがあったとしても、それはけっして『優先』を意味するわけではありません」
それこそが、外国籍住民、とりわけ在日コリアンの置かれてきた状況を示すものだ。
経済的、社会的基盤が脆弱であるうえ、特権どころか差別や偏見によって就職の機会も奪われ、厳しい生活を余儀なくされた在日は少なくない。なかでも高齢者は、国民年金制度の創設時には国籍条項によって加入資格すら得ることができなかった。生活保護に頼らざるを得ない困窮状態にある人が高齢世帯で多いのは当然だ。
いったい、これのどこが「特権」だというのか。取材して浮かび上がってくるのは、長きにわたって社会福祉制度から排除されていたという、差別の歴史でしかない。
暴走するデマとヘイトクライム
ちなみに「在日特権」なる差別的文言が定着したのは、2006年に刊行された『別冊宝島 嫌韓流の真実! ザ・在日特権』(宝島社)がきっかけだと言われる。著者の一人である野村旗守(故人)は、公安方面に強いライターで、私も週刊誌記者時代に交流があった。だが、私が同書を批判したことで険悪な関係となり、一時期は私を「訴える」と激高して電話をかけてきたこともあった。
同書が在日コリアンへの偏見を煽り、差別を流布されることに一役買ったことは事実だ。その罪は重たい。しかし、いまあらためて同書に目を通してみると、多くのデマを事例に挙げながら、そのほとんどが「実はそれほどでもなかった」という、締まりのない結論となっている。
野村は私が書いた『ネットと愛国』でも取材に応じ、「戦後の一時期、ある種の優遇政策があった」としながらも、次のように答えている。
「いま現在、在日にどれだけの特権が残っているというのか。そんなものほとんど消滅してますよ」
「(在特会などの活動は)『ない』ものを『ある』と言い、あるいは『小さくある』ものを『大きくある』と言って相手を責め立てるなら、これは不当な言いがかりであり、チンピラヤクザの因縁の類と変わりがないでしょう」
結果として自らが加担した差別扇動への責任を放棄した物言いだが、その野村でさえ、そう答えざるを得ないほどに「在日特権」なるデマは暴走をしていた。
そして――それを単なるヨタ話だとして放置することができないのは、在日コリアンの命を脅かすヘイトクライムの引き金となっているからでもある。
ネッシーやツチノコ伝説とはわけが違うのだ。
差別や偏見を伴ったデマは、人としての尊厳を奪う。命を奪う。さらに社会を破壊する。関東大震災直後の朝鮮人・中国人虐殺の歴史がそれを示しているではないか。
「在日特権」なるデマが日本社会に与えたのも、在日コリアンへの嫉妬や羨望ではない。排除の思想と激しい憎悪だ。
在日コリアンが多く暮らす京都・ウトロ地区(宇治市)で起きた放火事件もそうだった。昨年の公判時、被告(当時)は在日コリアンが「特別待遇」を得ているのだと訴えた。それゆえに憎悪が募り、放火に至ったのだと証言している。つまり、ここでもまた「在日特権」なるデマが、ひとりの放火犯を生み出したのだ。あるいは、その放火が住民の命を奪ったかもしれないという想像力こそ、日本社会は働かせるべきだ。
「在日特権」なる事実無根、荒唐無稽なデマは、差別扇動の、さらには虐殺の「火種」でもある。
あらためて確認したい。この日本において、日本国籍の日本人以上に優越的な権利を有した外国人など、どこに存在するのか。「思いやり予算」で十分な環境を保証された米軍人は例外として(これこそ特権の最たるものだろう)、生活も福祉も雇用も日本人以上に恵まれ、そのうえ「支配」する側に立つことのできる外国人など、どこにもいない。
税金は外国籍者にも同様に課せられるが、参政権からは排除され、政治の意思決定に参加することもできない。その不備を補うための施策が検討されると、たちまち「特権」だと批判の声が上がる。
だから何度でも繰り返す。
存在するわけがないのに、差別扇動の飛び道具として用いられる「在日特権」なる物言いは、れっきとしたヘイトスピーチである。ヘイトクライムを後押しするものである。
だからこそ、政治も行政も、いや、日本社会全体で、このふざけた文言を断固として否定すべきなのだ。
「殺戮」の材料など、踏み潰すしかない。 
●改革の無い日本の政治 9/23
政治家の不甲斐なさ
岸田首相が第2次改造内閣を誕生させた。日本政府の頻繁に代わる閣僚。それでは国を良くするための政治は出来ないと筆者は思うのであるが、どうであろう。だから尚更官僚主導の政治になってしまうのである。そして派閥で割り振りされた大半の大臣は官僚からの教えを仰ぐことになる。大臣が官僚を動かさねばならないのに、日本は大臣が閣僚に動かされているという事態になっている。
多くの優秀な閣僚を批判するのではない。政治家がその役目を果たしていないということなのである。一般に官僚は前例を踏襲して仕事をこなす傾向があり、前例のない新しいことに取り組むことが苦手であるから改革は進まない。
本来あるべき政治は、政治家が官僚をリードして時代の変化に即した新しい改革に取り組んで行かねばならないはず。ところが、日本の政治家の出来が余りにも悪く官僚依存症であるから堂々巡りを繰り返しているだけである。
日本を離れて50年後の変貌
筆者が日本を離れてスペインでの生活も50年近くになるが、筆者が日本を離れた頃は日本にはまだ活気があった。ところが、バブル崩壊以後の日本は少しづつ衰退の方向に向かっている印象を受ける。商用で頻繁に帰国していた頃、バブル景気で潤っていた時の夜の繁華街でタクシーを拾うのは容易ではなかった。ところが、バブル崩壊以後の日本は衰退の一途だけを辿っているという印象を受ける。
日本は30年以上次のような現象が続いている。GDPに伸びがない。平均賃金が上昇しいない。インフレでもないデフレでもないディスインフレーションの状態が長く続いて物価の上昇率が低い。
アベノミクスでの金融緩和での成果はGDPで平均して実質0.9%しかない。にも拘らず、今も金融緩和を継続している。その影響を受けて円安が続き、その恩恵を受けているのは輸出業者だけ。この円安の継続で実質的には1ドルが200円程度になっている。その一方で税金は上がり、輸入品は円安の影響で値上がりしているから賃金上昇の無い国民にとって生活がますます苦しくなっている。それに対して何も対策をしない政治家。
その一方で、この30年の低迷期に17人の首相が入れ替わっている。それでは国の成長の為に一環した政策を実行して行くことは不可能である。しかも、その大半は自民党の政権である。
日本の国民はおとなし過ぎる
筆者がいつも理解に苦しむのはこのように国民が苦しい生活を余儀なくさせられているのに国民から国の政権を揺るがすほどの抗議運動が起きないという不思議さである。他の国であれば自民党が野党に下って政権交代があって当然である。
例えば、5年続いた安倍政権での成長率が実質0.9%しかなかったのに、彼に代わる政権が野党から誕生しないという不思議である。そして金融緩和が功を奏していないと分かっていてもそれを今も継続している愚鈍さ。
金融緩和で低金利はもう景気の回復には有効ではない。なぜなら先行き不安な未来であるだけに低金利であっても企業は敢えて投資はせず現状維持を守ろうとする。低金利は景気を刺激することに貢献しなくなっているのである。
国民も先行き不安であるからできるだけ貯金しようと心がけて無駄づかいをしようとしない。それに味方するかのように、日本はインフレが低い国だから物価の上昇も他国と比較して低い。しかも企業間では出来るけ安くて良いものを市場に提供しようという姿勢が今も継続しているから企業は利益率を下げても安価に提供しようとする。そのしわ寄せがまた社員の昇給を妨げる要因にもなっている。日本人はますます貧困になっているのである。
日本の行く先はアジアの孤島
現状の日本をこの先も継続させれば、日本はアジアで未来の無い孤島になってしまうのは必至である。筆者が改革の必要性を強調するのは、今の子供たちが大人になった時に現状のまま改革の無い日本であれば非常に悲惨な生活を余儀なくさせられるからである。しかも、そのような悲惨な社会にしてしまうのは彼らの責任ではなく、今の大人たちの責任である。特に、政治家の責任である。その責任を今の子供たちが将来背負うことになるのは是非とも避けねばならない。
今の政治家からは将来の為に国を良くしようという意欲も情熱も感じられない。また無能である。現在の社会システムの中で動かされているだけである。特権階級に甘んじている彼らの方から自らの政治生命を賭けてそれを変えようとはしない。一人の議員を維持するのに国民は1億円相当を負担しているというのを国民は知っているのであろうか。
そのようなことを考慮すると、新しい政党の誕生が絶対に必要である。財政緊縮、精神と教育改革、デジタル化の早急なる推進、独自の外交、諜報機関の創設、貧困への取り組み、IT産業を推進すべく頭脳集団の外国からの積極的な受け入れ、移民対策、衆議院と参議院の定員削減、社会保障制度の改正などなど。早急に取り組み改革して行かねばならない課題は山積みしている。
先ずはその新しい政党に過半数の議席を獲得させ、必要な改革を断行して行く。そうすることによって、初めて国民は日本の未来に期待が持てるようになるのである。時は待ってはくれない。今も日本の衰退は毎日発生しているのである。自民党は既に消滅した恐竜でしかない。今の野党は政権を取れるような体制になっていない。
●SDGs 貧困撲滅へ日本の役割は重い 9/23
高邁な理想では各国が一致したが、現実には貧困や飢餓を克服できていない。日本は、長年の途上国支援で培った知見を生かし、民生の安定に力を尽くすべきだ。
持続可能な開発目標(SDGs)に関する首脳級会合「SDGサミット」が国連本部で開かれた。貧困の撲滅や質の高い教育、気候変動の影響軽減といった目標の達成に向け、政策を推進することを柱とした政治宣言を採択した。
SDGsは、国連が2015年に採択した30年までの目標だ。今年はその中間年に当たるが、 進捗 しんちょく には遅れが生じている。国連によると、17ある目標を細分化した169項目のうち、3割が「停滞または後退」しているという。
最も深刻な状況にあるのが、貧困・飢餓の撲滅だ。
アフリカの南スーダンやルワンダなど、サハラ砂漠より南の「サブサハラ」と呼ばれる地域では、現在も人口の3割以上が極度の貧困状態にあるという。
先進各国が途上国への食料支援を強化しているのに、その効果が十分に表れていないのは、ロシアがウクライナからの穀物輸出を阻んでいる影響が大きい。世界全体で食料価格が高騰し、途上国の多くは食料難に陥っている。
ロシアの侵略を終結させることは、ウクライナに限らず、途上国にとっても極めて重要だ。
サブサハラには政情不安の国が多い。食料や仕事がないため子供が兵士になり、紛争が長期化してさらなる貧困を招く、といった悪循環を断ち切らねばならない。
そのためには、教育の機会を確保するとともに、健全な経済活動を営むことができる国づくりを支援する必要がある。住民が適切な医療サービスを受けられるようにすることも大切だ。
教育や医療、保健に関わる支援は、日本が得意とする分野だ。多くの民間人や非政府組織(NGO)などが途上国で献身的に活動している。官民が協力し、自立を後押ししていきたい。
日本が国際社会で一定の発言力を保っているのは、長年、途上国を支援してきたからだ。政府は、政府開発援助(ODA)の戦略的な活用に努めるとともに、必要な予算を確保することが重要だ。
近年、アフリカ各国など「グローバル・サウス」と呼ばれる新興・途上国は存在感を増している。その盟主を自任するインドとの連携を深めながら、各国の発展を支えていくことは、日本の国益にも資するのではないか。
●木原氏、異例の党務「二刀流」 岸田首相、茂木氏けん制―自民 9/23
岸田文雄首相(自民党総裁)の最側近、木原誠二前官房副長官が22日、党の幹事長代理に就任した。政調会長特別補佐も兼務する異例の「二刀流」。党本部と首相官邸の連携を強化するとともに、総裁選出馬に意欲を見せる茂木敏充幹事長をけん制する狙いが透ける。ただ、週刊誌報道の標的となってきた木原氏が注目されることを不安視する声も、党内にはくすぶっている。
「木原氏は副長官として大事な役割を果たしてきた。(官邸との)より緊密な関係に貢献してもらえるのではないか」。森山裕総務会長は同日の記者会見でこう指摘。萩生田光一政調会長も記者団に「より緊密に官邸と連携を取りたいとの思いから(特別補佐に)指名した」と語った。
木原氏は財務省出身。首相が率いる岸田派に所属し、ブレーンとして知られる。2021年10月の岸田内閣発足に伴い副長官に就くと、内政・外交両面で黒子役として辣腕(らつわん)を振るってきた。
しかし、家族をめぐる疑惑などが毎週のように週刊文春で報じられ、先の内閣改造を機に自ら交代を希望したという。首相周辺は「木原氏の家族は精神的に相当参っていた」と明かす。
一方、首相が木原氏を党の要職へ移した意図について、岸田派幹部は「党の動きを知りたいのだろう」と解説。念頭にあるのは茂木氏だ。本人は「岸田政権を支える」と繰り返すが、子育て政策などの発信で「突出」が目立っただけに、首相の不信感は根強いとされる。そのため、木原氏の役割については、茂木氏の「監視役」との見方がもっぱらだ。
もっとも、自民党関係者は「木原氏にスポットライトを当てていいのか。当たらないように副長官から外したのではないのか」と危惧する。木原氏は週刊誌報道について直接説明しておらず、公明党の石井啓一幹事長は22日の会見で「本人が自覚して対応すべきことだ」と指摘した。 

 

●日本のEEZ内、中国「掘削船活動」発表後に撤回のワケ 岸田内閣を試す? 9/22
習近平国家主席率いる中国の狙いは何なのか―。中国海事局は21日、天然ガスなどを採掘する移動式掘削船が、沖縄周辺の東シナ海で活動するとしていた発表を撤回した。日本政府関係者によると、掘削船が活動するとしていた場所は日本のEEZ(排他的経済水域)内だった。中国は7月、沖縄県・尖閣諸島周辺の日本のEEZ内にも勝手にブイを設置していた。まさか、改造直後の岸田文雄内閣を試しているのか。
「わが国の主権や管轄権を侵害する行為を行うとすれば、断じて受け入れられない」
松野博一官房長官は21日の記者会見で、こう反発した。外交ルートを通じて、中国側に申し入れを行ったことを明らかにした。
中国海事局は20日、ウェブサイト上に、中国の引き船が掘削装置「勘探8号」を浙江省近海から曳航し、沖縄本島北西にある日本のEEZ内まで移動する航行情報を出していた。21日に取り消された。
NHKは21日、日本外務省の情報として、中国側が今回の発表は「入力ミス」によるもので航行予定の事実もないとして、日本側に撤回を伝えてきたと報じた。
中国は今年7月、尖閣周辺の日本のEEZ内に勝手にブイを設置したが、日本政府は2カ月後の19日になって抗議をしていた事実を認めた。中国を刺激したくないのか、岸田政権の「弱腰」ぶりがあらわになった。
今回の騒動をどう見るか。
中国事情に詳しい評論家の石平氏は「習政権の上層部からブレーキがかけられた可能性がある。習政権は、外相や国防相が相次いで動静不明になるなど混乱が続いている。米中首脳会談の実現も模索しており、対外的にもめ事は起こせない。日本の内閣改造で『親台派』とされる木原稔防衛相が誕生した。日本側が毅然とした対応をみせれば、中国側も無茶な行動は取れない」と述べた。 
●英語で行政手続き完結 “資産運用特区を創設” 岸田首相 9/22
岸田総理大臣は訪問先のニューヨークで経済関係者を前に講演し、国内の投資を加速させるため、海外の資産運用会社の参入を促したいとして、英語だけで行政手続きが完結できる特区の創設など、新たな取り組みを推進していく意向を表明しました。
岸田総理大臣は、日本時間の22日午前2時すぎからニューヨーク市内のホテルで200人を超えるアメリカの経済界の関係者を前に講演しました。
この中で岸田総理大臣は経済を柱に政権運営を進めているとした上で「日本のこの1年の経済指標は30年前以来のパフォーマンスを示している。名目のGDP=国内総生産の成長率は主要先進国で最高の伸びとなった。株価は33年ぶりの水準まで上昇している」などと成果を強調しました。
その上で、さらなる経済成長に向けて国内の投資を加速させるため、海外の資産運用会社の参入を促したいとして、英語だけで行政手続きが完結できる「資産運用特区」の創設や、日本独自のビジネス慣行や参入障壁の是正、それに新規の参入者への支援プログラムの整備など、新たな取り組みを推進していく意向を表明しました。
そして岸田総理大臣は「先日会った世界的に影響力のある投資家から『30年間、毎年日本経済に注目してきたが、今が最もポジティブだ』と言われた。わが国経済の底力と将来の計画をよく見てもらい、日本に投資いただくことを強く求めたい」と呼びかけました。
岸田首相は帰国の途に
岸田総理大臣は、日本時間の20日、国連総会の一般討論演説に臨み、ロシアによるウクライナ侵攻など世界は複合的な課題に直面しているとして、分断や対立ではなく国際社会が協調して対応していく重要性とともに、国連改革への行動を訴えました。
また、ウクライナ情勢をめぐる国連安保理の首脳級会合で法の支配に基づく国際秩序の維持・強化を呼びかけたほか、SDGs=持続可能な開発目標など地球規模の課題に関する会議にも出席し、日本としてさらなる貢献をしていく方針を伝えました。
岸田総理大臣は一連の日程を終え、日本時間の22日朝、政府専用機で現地を出発し、帰国の途につきました。22日夜、帰国する予定です。
●「小汚い格好」…韓服姿を当てこすった日本自民党議員、注意受ける 9/22
過去に韓服などの伝統衣装姿に対して品格に問題があるなどとソーシャルメディアを通じて発言していた日本の政治家が日本当局から人権侵害で注意を受けた。
21日、毎日新聞は自民党所属の杉田水脈衆議院議員(56)が2016年国連女子差別撤廃委員会に出席した韓服姿の女性に対して「コスプレおばさん」と表現し、当局から「人権侵害」注意を受けたと報じた。杉田議員は当時ブログなどに「国連の会議室では小汚い格好に加え、チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」という内容のコメントと写真を投稿した。また「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」などと続けた。
該当の発言は当時杉田議員が公職になかったため議論にならなかったが、昨年8月総務省政務官に起用された後、一歩遅れて知らされ、野党や世論から激しい批判を受けた。
当時委員会に出席した札幌アイヌ協会会員である多原良子氏は今年3月に札幌法務局に「侮辱だ」としながら人権侵害救済を要請した。アイヌは過去に北海道などに住んでいた原住民だ。委員会に出席した在日同胞女性も大阪法務局に申し立てをしていた。
その後、多原氏ら申立人はそれぞれ調査を行った札幌と大阪法務局から「人権侵害という結論を下して杉田議員に注意を与えた」という内容の知らせを最近受けた。多原氏は「投稿は差別であり、公人として許されない。一方で法務省が人権侵害を認めたことは大きな一歩だ」とコメントした。
一方、安倍晋三元首相の推薦で政界入りした杉田議員は「新しい歴史教科書をつくる会」で活動するなど右翼寄りの人物として知られている女性議員だ。杉田議員はこれまでさまざまな発言で物議をかもしてきた人物でもある。論争の発言としては「男女平等は絶対に実現し得ない。(女性は男性に守られなければならない存在で)日本に女性差別というものは存在しない」(2014年衆議院本会議)、「(同性愛者である)彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない。人として失格」(2018年後援会)、「慰安婦問題などはなかった。韓国と中国はうそをついている」(2018年)などがある。
●世界が失笑"岸田国連演説"「欧米人の猿真似」指摘…空気読めない首相 9/22
国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は、岸田首相による国連総会での演説を「本当にバランス感覚がない」とぶった切る。岸田首相が軽視し続けているグローバルサウスだが、本当に日本は今の対応を続けるべきなのか。渡瀬氏が解説する――。
岸田の各連演説は「欧米人の猿真似」
岸田文雄首相が今回の国連総会で疎らな聴衆に向けてウクライナ支援継続や空想的な核軍縮の取り組みに対する資金供与を約束した。G7広島サミットにおいても、岸田政権のウクライナ傾斜(=欧米リベラル勢力追従)はあまりにも度が過ぎている。欧米でもここまでのコミットメントは見られない。ゼレンスキー大統領の独善的な態度に欧米諸国内でやや支援疲れの空気が蔓延する中で、その空気を全く読まない岸田外交の異質感は一層際立っている。本当にバランス感覚がない。
日本が西側先進国側の陣営であることを米国でアピールすることは、米国民主党関係者と欧州のリベラル勢力にとっては歓迎すべきことだ。ただし、彼らの腹の内は、日本がウクライナに対して軍事的支援を実際には行わないこともあり、極東アジアの中堅国家が欧米人の猿真似をしているようにしか見ていない。地政学的な観点、経済的な観点、そして相互防衛の観点から見ても、岸田政権が望むように欧州諸国が台湾有事の際に日本・台湾側に立って中国に敵対するようなことは決してあり得ない。
欧州諸国の要はドイツ・フランスである。
後進国の仲間いりしつつある日本などどうでもいい
ドイツは今年6月にドイツ初の国家安全保障戦略を発表したが、中国の脅威に触れつつも、台湾海峡については一言も触れなかった。ドイツは今年7月まで対中国戦略の発表を遅らせ続けてきたが、それは第7回独中政府間協議のための李強訪独に配慮したからだ。この協議ではディリスキリングはあくまで民間企業が行うものとし、両国の政治的融和が演出されたのだった。その後に発表された対中国戦略では、一部インド太平洋地域での軍事的プレゼンスの拡大が述べられたが腰が引けた内容だ。また、ドイツとポーランドは今年6月までドルジバパイプライン経由でロシアのエネルギーを輸入しており、6月以降も第三国のエネルギーをロシア経由で輸入している。他国にウクライナ支援を求める以前の問題だ。自国の利益に対しては、徹底した対応をしているのだ。
フランスのマクロン大統領も中国に対しては更に及び腰の対応であり、NATOの東京連絡事務所の開設すら反対した。外交筋によると、最近起きていたフランス国内のデモがロシアの工作であると噂される中、それを中国に止めてもらうために明確な対応が必要だったことも理由の一つであったという話すら漏れてくる。ただ、フランスが日本の協力に恩義を感じているならば、その程度のことは認めるべきことだ。しかし結局、全会一致を原則とするNATOでは東京連絡事務所の設置を延期検討事項となった。更に、マクロン大統領は今年4月には訪中後に「私たちが一緒にやれることは幅広い。フランスと中国の友情万歳!」と自らのSNSに中国語で投稿している。欧州の安全保障のために多少なりとも貢献する日本に対して信じ難い扱いだ。少子高齢化、さらに経済力でもすでに後進国の仲間入りをしつつある日本との関係などどうでも良いのだろう。
日本はグローバルサウスからの信頼を自ら失いつつある
イギリスは独仏両国よりもマシな態度であり、EUから抜けたことで意思決定の自由度も増えた。しかし、当然であるが、欧州の意思決定に関与できる余地は減少しており、なおかつ中国が持つ巨額の金融資本の魅力から金融街であるシティが逃れられるはずもない。
したがって、岸田政権の欧米リベラル外交は表面上は歓迎されているように見られるのとは裏腹に、実際には全く成果を上げていないと言える。外務省お得意の見た目だけの友好関係が進展している演出だ。
このように欧米リベラルに追従することによって、日本はグローバルサウスからの信頼を自ら失いつつある。グローバルサウスはウクライナ問題など本音ではどうでも良いと考えている。むしろ、エネルギー価格・食料価格の高騰原因であり、どのような形でも早く終わってほしいと考えている。それどころか、意外かもしれないが、ロシア人は白人でありながら、ロシアがアジア地域にも跨る多民族国家であることから差別意識が薄く、歴史的にもグローバルサウスの近代化にも貢献した経緯もあり、非欧米諸国からは意外と好かれている面もある。
グローバルサウスが嫌う人権・ジェンダーなどの西側価値観
グローバルサウスの国々は、欧米諸国が押し付けてくるリベラルな価値観は、自国の安定を揺るがすものであり実は望んでいない。欧州諸国が標榜する人権・ジェンダーなどの価値観は、グローバルサウスの国々には早すぎるか、もしくは根本的に合わない類のイデオロギーだ。
グローバルサウスが持つ欧米のリベラル外交への不満を意に介さず、岸田首相はリベラルな傾向が強い上川陽子外務大臣を任命した。岸田首相も上川大臣も「大臣が女性であること」を強調していたが、これは国際的な文脈では「フェミニスト外交」を展開することを意味する。直近の外交デビューであった訪米でも「女性・平和・安全保障(WPS)フォーカルポイント・ネットワーク・ハイレベル・サイドイベント」に出席して拍手喝采を受けた。
フェミニスト外交とは、従来までの軍事や経済関係に関する外交だけでなく、女性の感性を生かして人権や福祉、特にジェンダー平等などを謳う外交手段だ。岸田政権は、人権団体の要望通りに今年5月にODAの実施原則を見直し、『ジェンダー主流化を含むインクルーシブな社会促進・公正性の確保』の原則」を入れたが、それを本気で歓迎するグローバルサウスの国がどれだけあるだろうか。日本とグローバルサウスの国々の政治的な隙間風が新たに生まれるだけだ。
何がしたいんだ岸田は…
一方、そのような欧米のリベラル風の政治圧力が伴わない中国・ロシア側に与する国々は実は増加している。BRICsの参加国は著しい拡大傾向を示しており、既に約20か国が公式に加盟申請し、さらに20か国以上が参加に関心を示している。また、ロシアの厳しい情勢下にも関わらず、9月のG20 の裏側で行われたウラジオストクの東方経済フォーラムには、中国、インド、ベトナム、カザフスタン、ラオス、ミャンマー、シンガポール、フィリピン、北朝鮮、ベラルーシ、といった国々が参加している。中長期的に見れば力をつけるグローバルサウスの国々は、欧米に必ずしも歩調を合わせているとは言えない。
岸田政権が進める外交政策のように、過剰にウクライナ支援に傾斜しても、日本は欧米諸国からは安全保障上の確かな見返りを得ることは決してできない。また、欧米のリベラルな価値観を丸出しにしたフェミニスト外交の展開など自ら外交上の選択肢の幅を制限する愚かな行為だ。日本は単純に欧米に追従するだけでなく、自分たちにとっての真の国益とは何か、欧米にはできない外交政策とは何かをもう一度見直す必要がある。 
●安部元首相殺傷事件から変わった権威に対する暴力の動機 9/22 
安部元首相の暗殺事件から1年経たずして、社会学者・宮台真司氏の襲撃事件や、岸田首相襲撃事件が起こった。同様に社会から孤立した人が起こした秋葉原歩行者天国での事件のように無差別な殺傷から打って変わって、ターゲットが個人に特定化される事件が多発している。そこには、政治的テロリズムとは言い難い、覚悟のなさや未熟さがあった。政治学者・白井聡氏と哲学者・内田樹氏の新著『新しい戦前 この国の“いま”を読み解く』では、二人がこの事件について対談形式で分析している。
安倍元首相銃撃と岸田首相襲撃事件
白井聡(以下、白井):2023年4月の統一地方選の最中、岸田首相の襲撃事件が起こりました。安倍元首相の暗殺事件から1年も経っていません。その間の22年11月には社会学者の宮台真司さんの襲撃事件もありましたよね。私はこうしたいわゆる政治と暴力の問題を非常にリアルに感じています。
実は私にも22年秋に脅迫状が送られてきました。犯人は捕まっていないけれども、その時は別に何も感じませんでした。本気のやつは黙って襲撃してくるだろうから放っておけばいいと思っていた。けれども宮台さんが刃物で襲われて重傷を負ったことで、気分的にかなり変わりました。宮台さんは本当に危なかった。運よく死なずに済んだけれども、死んでいても全然おかしくないような深刻な攻撃だったわけです。事件後に宮台さんは「殺害予告みたいなものは今までたくさんきていた。本当にやるんだったら黙って来るだろうと思っていた。ただ感覚が麻痺していて、警戒心がなくなっていた。そのことを後悔している」というふうに語っていました。私には、この宮台さんの言葉が非常に印象的でした。
山上徹也被告による安倍元首相銃撃からターゲットが特定化されるようになってきたのではないでしょうか。つまり、山上被告による事件が解き放った暴力という要因があるように見えます。
これまでも「無敵の人」と呼ばれるような人たちによる暴力の激発はありました。最も代表的なのは2008年6月に東京・秋葉原の歩行者天国で起こった無差別殺傷事件でしょう。ターゲットは文字通り無差別、たまたまそこに居合わせた一般の人たちでした。それに対して、権力者である安倍元首相、岸田首相、あるいは権威があると見なされた知識人の宮台さんと、権力や権威に対して暴力の方向性が向き始めたわけです。
無差別的な暴力の激発は、殺人というより、拡大自殺ととらえた方が適切なのかもしれません。死刑になることを目的にやっているフシがある。これとは対照的に、山上被告以降の事件は、自らの死ではなく、特定の他者の死が明確に目標になっています。
ただし、犯行の動機はそれぞれ違います。岸田首相に爆弾のようなものが投げられた事件は、ターゲットは現職の総理大臣ですから、まさに権力へ向けた暴力ということになります。けれども犯人がなぜそうしたのか、常人にはわからない論理で行動に走っているわけです。
安倍元首相の暗殺事件は動機をたどれます。自分がこんなにひどい目に遭ってきたのは統一教会(世界平和統一家庭連合)のせいだ、と。また、山上被告がツイッターなどに書き込んだ内容を読むと、個人として統一教会を恨んでいただけでなく、より普遍的な見地から同教団の反社会性を絶対に許せないという思いが滲んでいます。だから総裁の韓鶴子を殺さなければならないけれども、それは無理だ。だったら日本で統一教会を守ってきた頭目をやろう、誰だ、安倍だと。そういうかたちで山上被告の場合は論理をたどれます。
では、宮台さんを襲撃した犯人の中で、どういう動機形成がなされたのか。犯人が証拠隠滅、犯行動機の参考になるようなものを全部捨てたうえで自殺したので、よくわかりません。
ただ、いわゆる引きこもり的な生活を送っていたことは明らかです。また、知識人に対する憎悪があったと言われています。だから孤立している中で、何か気に食わないことを言っている知識人の代表として宮台さんが狙われた。それにプラスして、家から近かったという理由があると思います。相模原の犯人宅の辺りから宮台さんが勤める都立大学のある八王子の南大沢は、感覚的にはいわば近所です。
その程度のことは想像できますが、ターゲットが宮台さんでなければならなかった必然性は、やはりよくわからないんですね。たとえば、1930年代半ばに天皇機関説排撃運動が起こった時、法学者の美濃部達吉が右翼に殺されかけました。あれはターゲットはまさに美濃部達吉でなければならなかったわけです。それに比べたら、宮台さんを殺さなければいけない必然性は全く薄くて、別に他の人でもいいじゃないかというふうに見えます。
岸田首相を襲撃した犯人の場合はどうか。これもよくわかりません。すごく情報統制されている感じがあって、動機の解明が進んでいない印象です。ただ、犯人が政治に関心を持っていて、選挙について「立候補の年齢制限や供託金制度がけしからん」などと言って裁判を起こしていたことはわかっています。
しかし、その裁判は本人訴訟でした。違憲性を主張して国に損害賠償を求めるという訴訟ですが、本気で裁判で争おうと思ったら、専門家である弁護士によって構成された強力な原告団を形成して、論理を精緻に作らなければいけないと普通は考えます。ところがそんなことをやった形跡はありません。言ってみれば全く手作りの訴訟、裁判だったわけですが、これは非常識と言っていいでしょう。犯人には物事をきちんとステップを踏んでやっていくという思考回路が全くないように見えます。
神戸地裁で裁判が行なわれ、判決は当然のことながら敗訴でした。それで国家権力のトップである岸田首相を殺すという方向へ向かったのではないかと推論したくなります。ただしそれは、やはり常人には理解できない論理なんですね。
いずれにしても暴力の無軌道な激発というのは既に相次いでいたわけですが、暴力がある種の方向性を持ってターゲットを見出すようになってきたというのが、安倍元首相暗殺以降の新しい傾向です。しかし、その内的論理は混乱の極みでしかありません。そういうかたちの暴力が吹き荒れる時代になってきた。そこに私は非常にリアリティを感じています。
だから自分も身辺に気をつけなければいけないなと本気で思っています。いつ、どこから、どういう暴力が飛んでくるのかわかったものではない。そういう本当に嫌な状態に入ってきたなと。それが今の私の感覚なのですが、内田さんにも殺害予告が来たりしませんか。
政治的テロリズムと呼べない理由
内田樹(以下、内田):僕のところには殺害予告は来たことがないですね。もともと僕はネット上のリプライを読まないので、自分が世間でどういうふうに言われているのか知らないんです。ときどき「炎上してますよ」と知らせてくれる人がいますけれど、知らないうちに自然鎮火しているみたいです。
ネット上での脅迫とか罵倒とかは相手の生命力を減殺しようという「呪い」の行為ですけれど、呪いは相手に届かないと効果がない。効果がないどころか、「宛先」を見失った呪詛は呪いを発信した当人のところに戻って来るものと相場が決まっています。だから、「呪い返し」を避けるために呪いを発信する人たちは匿名を選択しているわけです。ということは、現代日本においても、みなさんは「呪詛」が効果的に機能することを知っているということです。呪いのルールにちゃんと従っている。ですから、僕も経験則に従って「鬼神を敬して之を遠ざく」で、「邪悪なもの」には近づかないようにしています。さすがに10年以上も「リプライ不読」を続けていると、「内田相手だといくら呪っても徒労だから、もう止めようか……」というふうになっているんじゃないかな。
白井:それでも変な逆恨みをする人がたくさんいます。とにかく内田の言っていることは気に食わない、けしからん、内田が日本を悪くしているから殺すしかないと妄想的に思っているような人がいても、全く不思議ではありません。内田さんが平気でいられるのは、やはり武道家であることが大きく影響しているのでしょうか。
内田:そうかも知れないです。自宅1階が道場ですからね。襲おうと思ってやって来ても玄関で「何のご用でしょうか」と門人が出てきますから。仮にそういう相手が5人、10人といるのをなぎ倒しても、2階まで駆け上がって「ラスボス」を仕留めるのは、けっこう大変だと思います。書斎には日本刀も置いてありますから、うっかり近づくとけっこう危ない(笑)。
白井:実際問題として、返り討ちに遭う可能性がかなり高い(笑)。
内田:人を襲おうという人だって、どうせやるなら費用対効果を考えて、リスクが少なく効果の多い相手を選ぶんじゃないですか。「相手は誰でもよかった」と言って、無差別的な暴力をふるうやつだって、女の人や子どもや老人、外国人や障害者のような弱い相手、あるいは社会的に孤立した、反撃されるリスクがない相手ばかり狙うじゃないですか。「無差別」といいながら、実は相手を選んでいるんです。
白井:そうですね。だから正確には無差別ではないんですよね。プロレスラーやヤクザを襲ったりしませんから。
内田:安倍さん、岸田さん、宮台さんに対する襲撃を「政治的テロリズム」と呼んでいいのかという問題もあります。僕はどれも「政治的テロリズム」の条件を満たしていないと思う。政治的テロリズムというのは、自分の政治的主張を広く世間に伝え、それを実現する合法的な手立てが他にないので、最後の手段として暴力を選ぶというもののはずです。だから、刑事罰を受ける覚悟で行なう。伝統的には、暴力を用いたその場で自死するというのがテロリストの倫理規範です。テロリストとは、自分の政治的主張を周知するために非合法的な手段を選び、その代償として自分の命を差し出す。この二つの条件を満たす者のことだと僕は思います。
明治時代、大久保利通を襲った島田一郎は「斬奸状」にはっきりと「有司専制の弊害を改め、速かに民会を興し」とテロの目的を明らかにしています。大隈重信に爆弾を投じた玄洋社の来島恒喜は大隈の進める「屈辱条約」締結反対運動の活動家であり、玄洋社の看板を背負っていた。彼らの行動の政治的意味については余人の解釈の入る余地がありません。島田は自首してのち斬首され、来島はその場で自ら首を刎ねました。これが基本だと思います。ですから、自分の行為の意味を明らかにして、かつ自分が殺す相手の命と引き換えに自分も死ぬという覚悟がない行動を「政治的テロリズム」と呼ぶわけにはゆかない。仮に行為の政治的目的が開示されていたとしても、相手を殺すだけで自分は生き延びるつもりなら、それはただの「暴力」です。独裁者が反対派を虐殺するのと変わらない。
山上被告の場合は本人が書いたと言われるTwitterの分析で動機はだいたいわかりましたけれども、それも第三者に解釈してもらって、動機を推測してもらうというものでした。でも、テロリストが自分の行動の意味を第三者の解釈に委ねるということはあるはずがない。間違った解釈をされるリスクがあるわけで、それでは行動した意味がなくなってしまう。自分自身の言葉で「私はこういう理由でこの行為に至った」という開示をしていないという点では、岸田首相に爆発物を投げた人も、宮台さんを襲撃した人も同じです。
何の目的かわからないまま暴力をふるったのは、無意識だとは思うけれども、自分の目的をはっきり言うことに自信がなかったからではないかと思います。自分の意図を適切に伝えるような言葉を持っていなかった。それだけ精神的に未熟だったということです。わずかな文字数のうちに自分の意図を誤解の余地なく書くというのは、かなりの知的な成熟が必要です。実際には、言いたいことのほとんどを諦めるという覚悟がないと「斬奸状」は書けない。トラウマがどうしたというような個人史的な事情なんかをつらつらと書き連ねるだけの行数はない。でも、自分の言いたいことのほとんどを諦めて、政治的意図だけに限定するという覚悟がなければ、テロリストの資格はない。
さらに言えば、どういう意図でやったのかはっきりさせないほうが、いろいろな人がああでもない、こうでもないと仮説を立ててくれる可能性がある。その方が自分の名前の被言及回数が増える。言動の軽重を「フォロワー数」や「いいね」の数で考量する習慣になじんだ人間なら、「どういう意図で行なわれたのかわからない」という方がむしろ効果的だと考えるでしょう。
事件を起こす人たちに共通しているのは、「社会的承認を得たい」ということのように見えます。繰り返し事件が言及されて、集団的記憶に自分の名前を刻み込みたいと願っている。被言及回数を増やすためには「斬奸状」を書いて、行動の意図を明らかにしない方がむしろ効果的だという無意識的な計算が働いている。そんな気がします。現に、今まさに僕たちは「何のためにやったのかわからない事件」について言及しているわけですから。 
●日銀への批判急増「国民生活を考えていない」 金融緩和継続 9/22
日銀は22日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の維持を決めた。植田和男総裁は7月の会合で長期金利の上限を引き上げたが、黒田東彦前総裁が推し進めてきた緩和策を引き継ぐ姿勢を強調している。だが、本紙の情報公開請求で日銀が開示した記録によると、今年6月に国民から日銀に寄せられた金融政策への批判は112件に上り、緩和継続による円安・物価高が国民の暮らしを圧迫する現状が浮かび上がる。
情報公開請求したら…批判、この1年で初の100件超え
日銀に対する「現行の金融政策への批判」(金融政策の見直し等を求める声)の声が100件を超えるのは昨年6月からの1年間で初めて。黒田氏が総裁を務めていた3月は23件だったが、植田氏が就任した4月には60件に増加。5月も68件だった。
具体的には、国民からの「金融政策関連」の意見・要望のうち「金融政策への批判」が植田氏の就任後に急増。日銀は、増加の理由を「3〜4月の正副総裁交代に伴う注目度の高まり」に加え「物価上昇や為替円安」があったとしている。
「為替関連」の意見・要望についても1ドル=140円台へと円安が再び進んだ6月には「円安対応を求める声等」が75件となり、1ドル=150円台に乗せた昨年10月(60件)を超える件数だった。具体的な意見・要望の内容を見ると「円安により、原材料価格が上がって本当に困っている」などの声があった。
他にも、「金融緩和を継続するだけでは(中略)物価高でやっていけない」など政策修正を求める声も寄せられた。また、日銀が緩和の維持を決めた6月の決定会合に触れ「結果が現状維持とは国民の生活を考えていない。いつまでも大規模緩和を続けるべきでない」とする訴えもあった。一方で、「金利を上げる政策を行わないで」と政策を支持する声も寄せられている。
消費者物価指数、3%超えが12カ月連続
日銀は22日の金融政策決定会合で大規模金融緩和の維持を決めた。同日発表された8月の消費者物価指数(生鮮食品をのぞく)は前年比3.1%上昇。12カ月連続で3%を上回り、日銀が物価目標として掲げる2%は17カ月連続で超えているが、植田和男総裁は会見で「物価目標の実現が見通せる状況に至っていない。粘り強く緩和を続ける」と緩和継続の考えを強調した。
日銀は7月の決定会合で長期金利の上限を0.5%から1%まで拡大する修正を行ったばかりだが、その後も日米金利差は大きく、為替相場では円安が進行。7月の会合直後は1ドル=139円台だった円相場が、22日は148円台まで円安が進んだ。
このため、マイナス金利政策の解除や長期金利政策の撤廃など次の修正策への関心を市場関係者らは強めているが、植田氏は「政策修正の時期や具体的な対応について到底決め打ちはできない」と説明。政策を変更する際の判断材料として賃金上昇が「最重要な要素の一つ」とした。ただ、来年の春闘を待たず年内にマイナス金利を解除する可能性についても「毎回の決定会合で判断する」と述べ否定はしなかった。
一方、家計は円安などに伴う物価高について行けない厳しい状況だ。毎月勤労統計調査によると、実質賃金は7月まで16カ月連続のマイナス。家計調査(2人以上の世帯)では物価変動をのぞいた実質の消費支出が、7月まで5カ月連続でマイナスが続く。
植田氏は「家計に負担が重くかかっているのは重く認識している」と述べた。
●日銀、大規模金融緩和の維持決定 植田総裁、政策修正の観測打ち消す 9/22
日本銀行は22日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和を続けると決めた。物価上昇率は日銀が目標とする2%を17カ月連続で上回るが、持続的な賃金上昇を伴う好循環には至っていないと判断した。植田和男総裁は、市場で強まっていた早期の政策修正の観測も打ち消した。米国では金融引き締めの長期化が見込まれており、日米の金融政策の方向性の違いが一段と鮮明になった。
日銀は、国債を買い入れて長期金利(10年物国債利回り)を抑え込む長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)や、マイナス金利政策などを維持する。企業が投資したり、人々が借り入れしたりする意欲を下支えする狙いだ。
植田氏は会合後の会見で、日本経済はいまだ金融政策を修正できる状況ではないと強調した。足元の物価高は輸入する原材料費の高騰が主因で、「プラス幅は縮小していく」との見方を示した。そのうえで「(物価目標の)安定的な達成には、強い需要に支えられ、賃金と物価が好循環を続ける姿が確認できることが必要。そこの確認に時間をとっている」と語った。経済の好循環はまだ起きておらず、後押しするための緩和を続ける必要があるとした。 ・・・
●植田日銀総裁、政策修正時期「決め打ちは到底できない」 9/22
日銀は22日に開いた金融政策決定会合で金融緩和策の現状維持を全会一致で決めた。長期金利の事実上の上限を1%とする長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)や、マイナス金利政策、上場投資信託(ETF)の買い入れなどの現行の緩和策を続ける。記者会見した植田和男総裁は「政策修正時期の決め打ちは到底できない」と述べた。
植田総裁は「物価目標の実現が見通せる状況にはない。粘り強く金融緩和を続けていく」と ・・・ 

 

●自民・茂木幹事長「政権支える」 岸田首相と距離、払拭アピール 9/21
自民党の茂木敏充幹事長は21日の茂木派(平成研究会)の例会で、「今後も一丸となって『変化を力にする日本』を目指す岸田政権を中核で、ど真ん中で支えていきたい」と強調した。先の党人事では幹事長交代論が一時浮上し、岸田文雄首相との距離が取り沙汰された。今後も首相を支える姿勢を示し、懸念払拭に努めた形だ。
党内第3派閥の平成研は、かつては最大勢力を誇った。当時は毎週の例会でカレーを所属議員に振る舞うことも多かったが、近年は弁当がもっぱらとなっている。茂木氏は「かつて平成研の総会は毎週カレーだった。党本部のカレーをみんなで一緒に食べるのは実に14年ぶりだ」と語り、勢力巻き返しに意欲をにじませた。
●岸田政権と女性 形ばかりの「活躍」では 9/21
岸田文雄首相が掲げる「女性活躍」の内実が問われている。
先日発足した第2次再改造内閣では、過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を起用したが、その狙いについて「女性ならではの感性や共感力を生かしてほしい」と述べた。
その一方、再改造後に行った副大臣と政務官計54人の人事では女性がゼロだった。ひな壇に男性ばかりの内閣幹部が並ぶ姿は、これで先進国なのかと思わせるほど奇異に映った。
政権の浮揚や政治的なパフォーマンスを狙う岸田氏の本心がちらつき、見せかけだけの女性登用ではないかと疑わざるを得ない。
「女性ならでは」発言には、各方面の識者から「対等な存在と見ていないことが透けて見える」「国籍や性別などの属性で相手を決めつけるのは、差別だという世界の潮流に逆行する」などとの指摘が相次いだ。
岸田氏は「多様性の確保が重要であることや、個性と能力を発揮して職務に取り組んでほしいとの趣旨で述べた」と釈明したものの、後付けの感が否めない。性別に対する時代錯誤の固定観念は改めねばならない。
誇らしげにアピールした女性閣僚数も、比率でみれば約25%にすぎず、不十分である。
岸田氏が6月に決めた「女性版骨太方針」では、上場企業に対して2030年までに女性役員の比率を3割以上にするよう求めた。民間に言うなら、まず内閣が範を示すのは当然ではないか。
まして閣僚育成のためにも重要な副大臣、政務官に女性がいないのは理解に苦しむ。前任の女性11人を留任させたり、民間から登用したりする手もあったろう。
政権の基盤を安定させるため、自民党各派閥の要求を優先したのは明らかだ。
党内には「女性議員が少ないから仕方がない」との声も聞かれるが、全体の約1割にとどまるのは女性候補を増やす努力を怠ってきた結果にほかならない。
候補者の男女均等を目指す政治分野の男女共同参画推進法にのっとり、政権党として候補者選定にクオータ(人数割り当て)制を導入してはどうか。
政府・自民党が打ち出す女性活躍政策や少子化対策には、経済再生のパーツのように、女性や出産をとらえる意識もうかがえる。
性差に関係なく誰もが暮らしやすい社会を目指すジェンダー平等の視点を、あらゆる施策の根底に置くことを求めたい。
●「核なき社会」岸田首相の国連演説は「安倍イズム」の否定 9/21
岸田文雄首相は19日(日本時間20日)、米ニューヨークでの国連総会で一般討論演説を行った。本稿では、この岸田演説から、岸田首相の本質と自民党政権の激変を読み取ってまいりたい。
岸田首相は演説の冒頭、「われわれが目指すべきは、脆弱(ぜいじゃく)な人々も安全・安心に住める世界、すなわち、『人間の尊厳』が守られる世界」と強調している。
しかし、その「人間の尊厳」が毀損(きそん)されている、最悪の事例の一つである「北朝鮮による日本人拉致問題」への詳しい言及はなく、中国当局によるウイグル人弾圧に触れることもなかった。
岸田首相はまた、「SDGs(持続可能な開発目標)は大きな課題に直面し」ていると言い、「分断・対立ではなく、協調に向けた世界を目指したい。これが私からのメッセージ」と力説した。
日本国首相の演説というより、国連事務総長のそれといった出だしである。
2019年、安倍晋三元首相が行った最後の国連演説と比べると、今般の岸田演説の「異様」は一層明らかである。
19年の安倍演説は、国連75周年への祝意を述べた後、こう始まる。
「私はこの際、私の国・日本が、国連の理念を奉じ、その目的に対し力を尽くそうとする点において、揺るぎのない足跡を残してきたことを、ご想起願いたく思います」
安倍氏ほど「国際協調」の重要性を知り、実践した政治家はいない。しかし、その国際協調の重要性やビジョンを語る際、安倍氏は常に「日本」を主語とした。岸田首相とは対照的ともみえる。
安倍演説は冒頭あいさつの後、こう続く。
「(国連の)安全保障理事会の変革を主眼とする構造改革が必須」
前段から国連改革を迫っていたのだ。今回の岸田演説では、この国連改革に関するトーンは和らげられ、演説の冒頭ではなく、目立たない後段に置かれた。
とにかく、岸田演説は非常に総花的で、聞く人の印象に残りにくい。国連事務総長の発言の繰り返しが多く、日本としての主体性が感じられない。SDGsやら、「分断から協調」など、聞き飽きたような美辞麗句が散りばめられた、まさに優等生役人の作文的代物。約4500字の日本語で成るその岸田演説の中に、最も多く登場した言葉は「人間の尊厳」であり、実に11回に上る。また、最も長く具体的に語られたことは何かといえば「核軍縮」だ。
ほぼ全ての日本メディアが見出しに取って報じたとおり、「新たに30億円を拠出して、海外の研究機関・シンクタンクに『核兵器のない世界に向けたジャパン・チェア』を設置します」と宣言したのである。
しかも、ジャパン・チェアの目的は、アカデミアや実務の世界における「『抑止か軍縮か』との二項対立的な議論を乗り越えるため」だと言っている。
このくだりを読んで、筆者は軽いめまいをおぼえた。
「核なき世界」が人類にとっての理想であることは論を俟たない。しかし、今、間近にある中国・ロシア、そして北朝鮮の核によって脅されている日本の首相が、これを強調することがいかに危険か。日本の首相が今すべきことは、議論に終止符を打たせることではなく、核の脅威度を下げ、地域の不安定化を止めることだ。
安倍氏は亡くなる直前、まるで遺言かのように、「核シェアの議論をすべきだ」と提言した。国際協調に尽力した安倍氏は同時に、安全保障において極めてリアルな考えの持ち主だった。「抑止か軍縮か」ではなく、「抑止も軍縮も」考えられる、まさに政治家だったのだ。
よく読むと、この岸田演説が「安倍イズムの否定」であることが分かる。この危険性を評論家の誰も指摘せず、従って国民は気づいていない。
岸田自民党に代わって、「日本を守る」新たな力が必要だ。手前味噌になるが、この強い危機感こそ、作家の百田尚樹さんと私が「日本保守党」を立ち上げる根源である。 
●「貯蓄から投資」に秘められた円安マグマ、注目される個人の外貨買い 9/21
9月20日、日銀から4─6月期の資金循環統計が公表された。「資産運用立国」の旗印の下、政府・与党が家計部門の「貯蓄から投資」を後押しする報道が連日見られているが、資金循環統計はその進捗度を測る有力な目安となる。今後、政策運営上の注目度も増してくる可能性があるだろう。
家計の外貨比率、過去20年間で4倍に
家計金融資産に関し、2022年12月末から2023年6月末の半年間の変化を見ると、依然として日本の家計部門における保守的傾向は根強いものの、わずかではあるが変化の胎動も見い出せた。
2023年6月末時点で家計金融資産は約2115兆円にのぼるが、そのうち円貨性資産が約97%(2041兆円)を占め、その中で現預金(除く外貨預金)が約53%(1111兆円)であった。こうしたスナップショットだけを見れば、日本の家計部門の運用傾向が保守的であるという現状はいまだ健在である。
しかし、目に付く動きもあった。例えば、春先以降の株高を背景として円貨性資産における株式・出資金の比率が12.7%まで上昇している。これは金融バブルと言われた2006年1−3月期につけた過去最高水準(12.9%)に肉薄する水準であり、近々にピークを更新するかどうか注目されそうである。
また、筆者の試算によれば、外貨性資産についても3.2%から3.5%へ0.3%ポイントとわずかながら上昇している。2000年1−3月期の外貨性資産の比率は0.9%だったので、過去20年余りで比率が4倍になったことになる。
もちろん、外貨性資産の存在感が小さいことに変わりはないが、徐々に、しかし確実に「貯蓄から投資」は「円から外貨」という形では進んでいるように見受けられる。このような傾向に政策的に後押しが加わることで、さらに現状が変わっていく可能性が想像される。
外貨預金金利の引き上げ報道が持つ意味
また、9月19日には国内大手行の一角において米ドル定期預金の金利が0.01%から5.3%に引き上げられるという事実が大々的に報じられた。既にネット銀行ではかなり前から5%台での提供は始まっているし、条件によっては10%に迫る米ドル定期預金も販売されているため、金融商品に土地勘のある向きからすれば「今までが異様に低かっただけ」という感想がほとんどだろう。
特に、スマートフォン片手にネット銀行経由で金融商品を売買することに抵抗が無い世代からすれば、外貨預金(とそれに類する外貨投資)は「もうやっている」という感覚が強く、それほど新味のあるニュースとして受け止めなかった向きも多いのではないかと想像する。
しかし、日本の人口動態を踏まえれば、上で見たような資金循環統計のすう勢を握るのはそうしたネットリテラシーのある若年世代ではなく「外貨と言えば、窓口で手数料を払って買うもの」という印象を強く持つ高齢者層だろう。
ネット銀行に限らず、そのような高齢者層にリーチするだろう大手行でも金利引き上げが決断され、それが大々的に報じられたことの意味は侮れないように思える。
「安全資産と言えば円の現預金」という発想を根強く持っていた世代の行動が変わる方が、日本の資金循環構造、ひいては円相場への動きに影響を与えやすいはずである。
特に日本人は国際分散投資という理論的な王道を説くよりも、新聞・雑誌・テレビ等のメディアが報道する中で「皆がやっているからやっている」という雰囲気があってこそ、初めて動くと思われる。
この点、変動為替相場制への移行後、これほど長きにわたって円安に伴う「負の側面」がクローズアップされたことはなく、金融商品に詳しくない人々においても「何もしないことのリスク」は徐々に体感するところになっているはずだ。
現実問題としてガソリンを筆頭とする日用品の価格が上がっているのは円安と資源高が併発した結果であり、名目賃金が物価高を相殺するほど上昇しないと見切った向きは、資産運用によってカバーするという発想を持つだろう。
契約通貨建ての輸入物価指数は変化率で見れば危機が去ったように見えるが、水準としては短期間にかなり高い水準へ引き上げられたまま止まっている。現状はこうした輸入物価の高止まりが、少しずつ日常生活に浸透してきている局面と思われる。
ここにきて政府・与党が繰り返し資産運用の必要性を説く背景には、名目賃金上昇に限界を覚える中で「ある程度、自分で何とかして欲しい」という思惑も透ける。
「投資」ではなく「防衛」としての運用
色々な考え方はあるものの、「弱い円」のリスクが外貨を買うことである程度ヘッジできることは事実である。
2022年を例に取れば、円は対ドルで最大30%も下落している。年初来から引きずられている「今の円安は、FRB(米連邦準備理事会)の利下げが遅れているだけで、いずれ円高になる」という広く流布されている見通しに賭けるのであれば、円建て資産中心のポートフォリオを継続しても問題ないだろう。
しかし、少なくともその考え方が完全に外れたのが過去半年である。過去の本コラムへの寄稿でも論じているが、そもそも円安の理由が全て米金利で説明できるという考え方自体に筆者は疑問を覚える。
本稿執筆時点のドル/円相場は1年前の同時期よりもドル高・円安だが、FRBが利上げペースを緩めれば円高になるのではなかったのか。いつから利下げが円高の必要条件になったのか。そのような説は支配的ではなかったように記憶する。最近では、米金利動向と円相場の関係に盲従し過ぎると、つじつまの合わない説明になりやすいように感じる。
もちろん、米金利は今後も円相場の重要なガイドポストになると思うが、東京外国為替市場では「円を売りたい人が多い」という需給環境に景色が変わっており、米金利が低下しても円高余地は限られる(少なくとも今次円安局面が始まった水準には戻らない可能性)という点も、押さえておくべき事実である。
いずれにせよ、ある程度円安相場が持続性を持つ(円高になっても限定的)と考えるのであれば、日本の家計部門が外貨建て資産を保有すること自体は「投資」であると同時に「防衛」とも呼べる行為になる。
これまで貯蓄に固執してきた日本人が初めて投資に積極的になるとしたら、やはり自己資産に対する危機感の芽生えが契機になるのかもしれない。
巨額の金融資産を抱える高齢者層が資産防衛の必要性に目覚めた時、約1100兆円の現預金が相応に動くことになる。仮に外貨建て資産へのシフトが5%ならば約55兆円、10%なら約110兆円の円売りになる。年間10兆円強の経常黒字しか持たない(しかも恐らくそのほとんどが円に回帰してこない)日本からすれば、極めて大きな資金移動であり、円相場の急落を促す可能性は十分考えられる。
問題は、少なくとも152円まで肉薄した2022年はそのような「家計部門の円売り」は本格化していなかったということだ。近い将来、160円や170円に行くと主張するつもりはない。
しかし、「家計部門の円売り」抜きでも150円を突破したという事実は、将来の円安リスクを考える上で重要な示唆を与えるように思う。巨大な円売り余地が家計部門に埋め込まれているのは厳然たる事実だ。
日本経済が抱える最大のテールリスクの一つが「家計部門の円売り」であり、それが現実化した場合のインフレ状況は現在の比ではないということは、各種資産価格の予想を検討する上で留意したい論点である。
●30人に1人が寝たきり。17人に1人が認知症。9人に1人が80歳以上の日本人。 9/21
日本ってどれだけ高齢者ばかりかマジで分かってる?
ココ5年ほどやっと認知されてきて異次元の少子化対策とか言い出しましたが、正直もう日本に残された時間はあまりないと思います。一番の理由が「国民の大半に危機感がない」ってこと。
「投票の結果、全ての社会保険料を消費税で置き換えるが最多得票となりました。2023年度予算ベースでは、保険料77.5兆円(うち被保険者拠出41.0兆円)ですので、一般会計ベースの消費税収は23.4兆円÷10%=2.3兆円とすると、77.5÷2.3≒33%の消費税率と機械的に計算できます。この他に公費分もあります」— 島澤諭 September 20, 2023
左翼は「税金払いたくないけど、国が金を恵んでくれ」を連呼するし、右翼は「まだまだ日本は力があって素晴らしい」を連呼します。
2022年は過去最高の税収71兆円でしたが、出費も過去最高で、特に社会保障費が物凄い勢いで増えています。その額134兆円!!!
いくら税収増えたってその2倍も社会保障に借金で払っていればどんどん借金(国債)は膨らんでいく。円安傾向が止まらないので金利を上げないといけないがそうすると国債の利払いで日銀は債務超過になって日本は信用を失うところまで来ているのです。
残念ながら日本の財政は火の車で世界通貨に対して日本円だけがどんどん下がってるし、給料は先進国で最安。国民の大半には労働意欲がないし、勉強もしたくない。左翼はそれはみんな国の嘘で本当は金持ちで自分たちに死ぬほど恵んでくれるはずだとアホみたいな妄想に浸ってるし、右翼はいまだに日本人の美徳は家族制度と勤勉さだと明治時代の夢を見ているわけです。ヤバいです。
寝たきりの高齢者に税金がいくら使われているか
日本の保険制度のおかげで、超高齢者の数は爆増しています。老人福祉法が制定された1963年には100歳以上の高齢者は全国でたった153人。81年に1000人を突破、98年に1万人を突破し、その後も爆増。
いまや100歳以上が10万人に迫り、90歳以上も265万人。80歳以上は1235万人もいます。恐ろしいのは80歳以上が40万人も増えていることで、これから団塊の世代が80代を超えてくると物凄い勢いでここが増加し、連動して寝たきりも激増する予定です。
ところで日本にはいま、寝たきりの人が200〜300万人いるということです。
ほんとうにざっくりと、寝たきりの方、ひとりあたりの公的負担医療費(高額医療費控除で実際に支払う額の残高)を年間200万円とかなり少なめに見積もりますと、300万人×200万円= 6兆円/年です。この人たちには年金も支払われているので合計では10兆円くらいが使われていると考えられます。
消費税1%が2.4兆円ですので、この金額は消費税なら4%に相当するわけですよ。日本の税収の1/7です。
「こんなんで日本が存続できるわけないでしょう 減税しろとか夢みたいな事ばかりいってるんじゃないよ」と私は思います。最優先で60〜70年も前に団塊の世代以上が自分の世代のみを守るために作った社会保障制度を抜本から時代に合ったシステムに作りなおさないと、減税はおろか社会システムが崩壊するところまで来ているのですよ。なのに経済が分からない馬鹿医師会がいまだに医療費をあげろと気が狂っていることを主張している。
中国、韓国も少子化???
馬鹿言ってるんじゃありません。こんなにいびつな高齢者ばかりの国は世界でも日本だけ。
ぶっちゃけ、高齢化にもほどがあるって感じなのです。見てください。異様でしょう。この異様さが分からないから「金くれ」とか言えるのです。
どうして日本はこんなに超高齢者が激増し、寝たきりもとんでもない数がいるのか
世界各国では看取りをどうしているのか。比較すると驚きます。
家制度がまだ残っている日本では子どもとの同居率が非常に高い。親離れ、子離れしていない。ペットも同じだが実家にいて何年も会っていないワンコが亡くなるのと、毎晩抱いて寝ているワンコが亡くなるのでは喪失感が違う。だから1日でも長く生かしておきたいと「どんなことをしてもいいから生かしておいてくれ」と子どもが頼んだりするわけです。全額自分で払ってくれるならまだしも大半は税金だし、しかも親にとっては虐待気味。家制度の弊害がココにも出ているわけです。
しかし、同居率は高いのに死ぬときは自宅じゃないのが日本!!
長生きしすぎて家族の手に負えなくなって病院に入院させてそこでなくなる。胃瘻で全身管に繋がれて生かさせる。親の年金を当てにして1日も長く生き延びさせてくれという家族も普通にいるらしい。実際には死期が近い人は
このように6割が自宅で死にたいと思っているのに、病院に送り込まれるわけです。うちの父は2年前に老衰で亡くなったが入院を拒んで自宅で亡くなりました。延命も拒否。
日本が破綻しないためには
簡単な事です。
   1 高齢者の医療負担も3割に
1割負担でいけたのは、現役が多くて高齢者が少なかったから。高齢者の方がむしろ多くなり、子孫を増やさなかったことに責任があるわけだからその負担でいけるわけがない。もはや現役の社会保険料負担は限界なのであるから、3割負担して貰うしかない。
   2 85歳を超えたら高額医療制度を対象外とする
高額医療制度とはいくら医療費がかかっても数万円以上は払わなくて良いというものですが、脳梗塞で倒れて治る見込みもないのに胃瘻で何年間も寝たきりになるとか、あり得ないことを平気でやっている病院が普通にあります。コロナの時も85歳以上にECMO装着しているところがありました。高額医療制度が適用外になれば、お金がある人は自費で受ければいいし、とにかく寿命まで生きたのならあとはご自分の資産でとなるのは問題ないと思います。
年金がなくなると困るからなんとか延命してくれという家族は、年金より高額な治療費がくるならその希望は取り下げるでしょう。どうせ金のためですから。
   3 尊厳死を法制化する
いままで政治家がこれを口にすると「老人は死ねというのか」という大合唱が野党を中心として起こり、政治家は失脚するというのが事例としてあるため、政治家も怖くて手が出せない。本当は「老人に死ねというのか」ではなく「老人にも死ぬ権利を」なのです。
わたしは認知症になって自分が誰か分からなくなったり、治る見込みがなくて寝たきりになるなら尊厳死したいし事前にそういう手続きをしたい。しかしその権利が奪われているのです。恥をさらして家族に迷惑を掛けて管に繋がれておしめを替えさせろと言われている。こんな人権侵害が許されていいのかと思います。
●杉田水脈氏の「人権侵犯」認定…国連演説で「人間の尊厳」を唱えた岸田首相 9/21
20日、X(旧ツイッター)で「人権侵犯」がトレンド入りした。ジャニーズ事務所の性加害問題で世界中から日本の「人権」意識が問われているなか、法務省に差別発言が認定された自民党の杉田水脈議員(56)の今後が注目されている。
杉田氏は、7年前の2016年、国連の会議に参加したときのことについて、自身のブログで「国連の会議室では小汚い格好に加え、チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場」「完全に品格に問題があります」「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」などとアイヌ民族を差別する投稿を行った。これに対し、今年3月、アイヌの女性が札幌法務局に人権救済を求める申し立てをし、今月7日付で札幌法務局は「人権侵犯の事実があった」と認定した。
だが、当の本人は報道で明るみに出るまで、事実を公表しておらず、報道後もコメントを出していない。
一方、自身のXでは7日以降も"通常運転"。12日には「石ノ森章太郎 テレビヒーロー大全」の写真とともに、「石垣島から山口県を経由して東京の家に帰ってきたら、届いてました!! きゃー! 家にこもってずっと見ていたい…。そんな訳にはいきません。かと言って、移動の飛行機や新幹線のなかで読んでたら隣の人にギョッとされそうで怖い」とお気楽投稿。その後もヒーローに関する投稿や、15日には「阪神優勝!おめでとうございます。…中略…セールに行っている時間は無さそうですが、どこかでお祝いモードに浸りたいです♪」と盛り上がっていた。
また、今回の問題が北海道新聞に報じられた19日には、Xで「文京区で行われた『新しい教科書をつくる会 東京支部』主催の講演会へ。用意した席では足らず、追加した椅子も満杯になるくらい、多くの皆さんがお越しくださいました」と報告。これには《新しい歴史教科書からアイヌを削除するのはやめましょう》《政治家が教科書に介入するな。歴史学者に任せろ》などと批判の声も出ていたが、杉田議員には響いてなさそうだ。
国民の怒りは、人権侵犯が認められた議員を総務大臣政務官に任命していた岸田文雄首相(66)にも向いている。しかも、このタイミングで、ニューヨークの国連本部で開かれている国連総会の一般討論演説でロシアのウクライナ侵攻などに触れつつ「『人間の尊厳』が尊重される国際社会を」と訴えたことから、SNSはツッコミと批判で炎上中。
《杉田水脈議員を政務官にしたり、「政府に記録がない」と逃げたり。言行不一致も甚だしい》《差別発言を繰り返す杉田水脈を政務官に任命した癖に》《国連まで出かけて人間の尊厳を唱える岸田には、法務省に人権侵害を指摘された杉田水脈についての見解を伺いたい》《岸田首相、人間の尊厳を言うなら杉田水脈を最低限自民党から追放しろよ》などと、責任を問う声で溢れている。
●野党の顔となった日本維新の会、令和版「昭和維新」を目指しかねない不安 9/21
大阪と仲が良くない京都で維新議員が誕生した驚き
私は京都人です。1980年から横浜市に住んでいるので、横浜暮らしのほうが長いのですが、いまだに高校野球は京都の高校を応援します。そんな京都人がびっくりしたのが、京都で日本維新の会の国会議員が誕生したことでした。
正直、京都人と大阪人は仲がいいとはいえません。京都人は大阪人を庶民的だと思い、大阪人は京都人をお高くとまっていると考えています。だから、「大阪ナショナリズム」ともいうべき大阪維新の流れを組む日本維新の会の国会議員が京都で誕生するとは、夢にも思っていませんでした。
そして、同時にこうも思いました。京都で当選するなら、日本維新の会は東京も制覇するかもしれない。つまり、政権政党になりうるかもしれないと。
私は大阪維新という政党ができたとき、ちょっと面白いなと思っていました。関西人は東京嫌いです。京都で共産党が強いのも、「反東京=反自民」という心情があるからだと思います。またドイツでは、同じキリスト教系の保守政党でも、キリスト教民主同盟とキリスト教社会同盟というように、仲の悪いプロイセン地域とバイエルン地域で別の二つの政党が生まれ、連合して政権運営をしていたことがありました。あんな風に地域政党の連合体になったほうが、自民党の中央集権的体質が変わる、そんな風に考えたからです。
しかし、大阪維新はともかく、日本の維新を唱えるには、彼らの政策は新味もなく、ただ過激な言葉が並んでいるにすぎないように見えます。
私には彼らが掲げる「維新」という言葉が、日本を西欧の植民地化から救い、徹底的な封建制度の廃止と近代化への道をつくった「明治維新」を目指すものなのか、大陸侵略で行き詰まったあとの愛国主義(ヘイト)に凝り固まった「昭和維新」を目指しているのか、わからなくなってきました。
確かに明治維新には、市民革命などではなく、薩摩や長州など、関ヶ原の合戦に敗れた雄藩による江戸幕府の打倒、武力革命という側面がありました。関西・大阪という地域で、かつての藩主に近い知事や市長中心の政党が東京から政権を奪取するなら、新しい日本をつくる、明治維新に近い「革命」ということになります。
しかし、明治維新との整合性は、これくらいしか見つからないのです。一方、昭和維新との整合性はどうでしょうか。昭和維新といってもピンとこない読者も多いでしょう。日本が満州事変から日中戦争へと大陸に引きずり込まれ、経済は疲弊し、政党政治が混乱している時期、陸軍や海軍の一部の「改革派」が唱えたのが「昭和維新」でした。
維新の会に感じるのは 明治維新ではなく「昭和維新」
日本維新の会を見ていると、この「昭和維新」の空気を感じてしまうのです。それは、かつての党首・橋下徹氏の従軍慰安婦肯定論のような、わかなりやすいタカ派議論からだけではありません。
以下は、政治学者のローレンス・ブリット氏が「ファシズムの14の特徴」について列挙したものです。
   1) 強大で執拗な国家主義の宣伝
   2) 人権の重要性の蔑視
   3) 団結のための敵/スケープゴートづくり
   4) 軍隊の優位性/熱烈な軍国主義
   5) 性差別の蔓延
   6) マスメディアの統制
   7) 国家の治安への執着
   8) 宗教と支配層エリートの癒着
   9) 企業権力の保護
   10) 労働者の力の抑圧もしくは排除
   11) 知性と芸術の軽視と抑圧
   12) 犯罪取り締まりと刑罰への執着
   13) 縁故主義と汚職の蔓延
   14) 不正選挙
1番目の「執拗な国家主義の宣伝」については、読者の皆さんも、彼らの演説やSNSを参照すればわかると思います。2番目の「人権の重要性の蔑視」に関しても、これでも議員かという低レベルな言動が目立ちます。以下は、これまでメディアで報じられた維新関係者の不祥事です。
[梅村みずほ・参議院議員] 入管施設で亡くなったスリランカ人女性をめぐり、「ハンスト(ハンガーストライキ)によって亡くなったのかもしれない」と発言し、「人権感覚を疑う」と炎上。6カ月の党員資格停止処分。
[丸山穂高・元衆議院議員] 北方領土で「戦争で島を取り返す」などと発言。酒席で「おっぱい! おっぱい! おれは女の胸をもみたい」といった発言もあり、除名処分に。
[笹川理・大阪府議(元府議団代表)] 同じ維新の女性市議にパワハラやストーカー行為をしていたと判明。一時は厳重注意だったが、その後に性的関係を迫るLINEも発覚し、最終的に除名処分に。
[藤間隆太・飯塚市議] 福岡県飯塚市議会で市の男女共同参画に関する啓発を巡り、無所属の女性議員を名指しし、「セーラー服を着て、PR動画を投稿すれば再生数を稼げる」と述べた。藤間氏は市議会でただ一人の維新議員で、取材に対して「失言だった。注意したい」と謝罪。
現代表までセクハラ発言 垣間見えるファシズムの特徴
3番目の「団結のための敵/スケープゴートづくり」については、何度も繰り返した大阪都構想選挙がよくわかる例です。
5番目の「性差別の蔓延」については 人権感覚を疑う失言をした議員たちの例を見れば、同じだということもわかります。大体、現在の代表の馬場伸幸氏自身がセクハラ発言をしています。京都タワー前(京都市下京区)の街頭演説で、参院選比例代表に擁立予定の新人女性の名前を間違えた際、「あまりにかわいいので間違えた」と発言しました。
また石井章参院議員は、栃木県日光市で開かれた女性候補の事務所開きで「顔で選んでくれれば1番を取る」と容姿に関する発言をし、厳重注意を受けていたにも関わらず、その後、茨城県牛久市の街頭演説で、参院選茨城選挙区に同党から出馬を予定する新人女性を紹介する際に「あまり顔のことを言うとたたかれるから言えない」と居直る始末。男女差が世界の中でもひどいといわれる日本で、その改革に挑む政党の幹部の発言とは思えない有様です。
6番目の「マスメディアの統制」は、橋下徹氏や吉村洋文・大阪府知事の、会見は開くものの質問にはほとんど答えないか、はぐらかす様子を見ればよくわかります。
すでに14の項目の6番目まで、4番目の「軍隊の優位性」を除けば、すべてファシズムの特徴に合致しています。
8番目以降については、まだ政権に就いたことがないので判断できない点もありますが、10番目の「労働者の抑圧」については、大阪府による保健所のリストラが激し過ぎたため、コロナ禍で犠牲者を増やす原因なったことが思い起こされます。そして11番目の「知性と芸術の軽視」については、文楽への補助金の廃止などが当てはまります。
まるでブリット氏は、日本維新の会を見て「ファシズムの14の特徴」を挙げたとしか思えません。
金銭に関する不正も 呆れた言動の背景とは
そして、この政党に多いのが金銭に関する不正です。これについても、メディアで報じられた維新関係者の不祥事を挙げてみましょう。
[中条きよし・参議院議員] 年金保険料の一部313万円を未納。
[上西小百合・元衆議院議員] 政治資金にまつわる疑惑。国会を病欠したはずが、居酒屋で3軒はしご酒をしており、除名処分に。
[下地幹郎・衆院議員] カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業の汚職事件を巡り、贈賄の疑いが持たれている中国企業側から現金100万円を受領したことを認めたものの、辞職せず。
[光本圭佑・元尼崎市議] 会派の同意を得ずに政活費250万円を引き出し、購入したパソコンなどの納品書を偽造。本人は幹事長を務めるが、250万円の支出について議会事務局が会派に確認したところ、大半の議員は知らなかった。
[松尾翔太・元吹田市議] 会派の口座から政務活動費を13回引き出し、同額を入金する処理を3間繰り返していた。
[池下卓・衆院議員] 地元の大阪府高槻市議だった男性2人を市議の任期中に公設秘書として採用。2人が兼職していた期間はそれぞれ約4カ月〜約1年半で、いずれも税金が原資の秘書給与と議員報酬を二重で受け取っていた。うち1人は2022年中に総額約2000万円の報酬を得ていた。
とにかく公募で急拡大を目指したため、政策立案や勉強より「見た目」を重視した候補者選びが先行していることが、不祥事続発の大きな要因の1つでしょう。しかし、ここで挙げたのは、報じられた問題議員の3分の1程度に過ぎません。あまりにセコい、馬鹿馬鹿しい失言と不正で、これでも議員になれるのかと考えざるをえないほどです。
極めつけは、殺人未遂犯が公設秘書になっていたことでしょう。前出の梅村参院議員の公設第一秘書となっていた人物が、過去が発覚して一度は辞職したものの、党職員として復活就職しているという事実が報じられました。
いやはや、すごい倫理観です。考えてみれば、私は編集局長時代、松井一郎氏の裏口入学疑惑を報じましたが、彼はその記事の正誤については応えずじまい。ただ、文春がいまだに告訴されていないことは事実です。
「ホワイト」に見える吉村洋文氏も、かつて弁護士時代、消費者金融武富士のビジネスを記事にした記者に対して総額2億円の損害賠償を訴える「スラップ訴訟」に参加していたと報じられたことを、忘れてはいけません。巨額の報酬を得たこのスラップ訴訟については、弁護士会から厳しい追及の声が上がりました。
また、元祖維新の橋下徹氏は、弁護士時代、『週刊現代』の連載で、田中真紀子氏の長女の離婚記事の仮処分差し止め(簡単にいうと、発禁)を「当然」であると発言していました。
政治家になってからは、この考えを撤回していますが、橋下・吉村両氏はマスコミを威圧することに対して抵抗感がない人物であることにも注目しておくべきでしょう。
不祥事が報道されても 支持率が上がり続ける懸念
それにしても、なぜこれだけ不祥事が報道されるのに、維新は支持率が上がり、党勢が拡大しているのでしょうか。多くの国民が「維新」「改革」「公務員の削減」といったイメージ先行のスローガンに魅せられているか、自民党のひどさに呆れて「第二自民党」としての期待をかけているからだと思われます。
しかし、維新の会は第二自民党ではありません。自民党はかなり独裁的にはなりましたが、いまだに代議制民主主義の枠の中にある保守政党であり、ファシズム政党、つまりは独裁を肯定するような政党ではないからです。私自身、自民党から一度は政権を剥奪すべきだと考えていますが、その替わりを維新が務められるとは思えないのです。
日本維新の会の勢力拡大が、令和版の「昭和維新」に繋がりかねない不安を感じているのは、私だけでしょうか。
●岸田政権「辞任ドミノ」再来も…加藤鮎子・小渕優子・土屋品子に醜聞続出 9/21
内閣改造・党役員人事から1週間が経過したが、早速、起用された女性3人のスキャンダルが噴出している。岸田首相は「女性登用」をアピールし、低迷する内閣支持率の回復を狙ったが、完全に裏目に出た格好だ。
問題大臣の筆頭は、当選3回で抜擢された加藤鮎子こども政策相だ。日刊ゲンダイの調べで、加藤氏が代表を務める資金管理団体が実母に家賃名目で政治資金計900万円を還流させていた問題が発覚。加藤氏は19日の会見で、実母への家賃拠出は問題ないとの認識を示した上で「あらぬ誤解を受けることのないよう適切な対応を取っていきたい」と語った。
加藤こども政策相に“出所不明金”疑惑浮上
加藤氏の「政治とカネ」を巡って、また新たな疑惑が浮上した。すでに加藤氏の資金管理団体が、関連政治団体「鮎友会」に、法律が定める上限を超える250万円分のパーティー券を購入してもらっていた問題が明らかになっているが、改めて鮎友会の収支報告書を精査すると“出所不明”の資金が浮かび上がった。
2021年の収支報告書によると、鮎友会は10月1日にパー券購入名目で資金管理団体に250万円を拠出(※加藤事務所は「寄付として処理すべきだった」と釈明済み)。
ところが、収支報告書を確認すると、前年からの繰越金約139万円のうち、10月1日までに約104万円を支出しており、250万円も支払う原資が残されていないことが分かる。10月1日時点の残金は約35万円で、250万円の資金の出所が不明なのだ。“裏金”と疑われても仕方ない状態だ。
加藤事務所に問い合わせたが、締め切りまでに回答はなかった。
小渕元経産相と土屋品子復興相にも「政治とカネ」問題が
問題は加藤氏だけじゃない。党の選対委員長に就任した「ドリル優子」こと小渕元経産相にも、また「政治とカネ」が持ち上がっている。
「週刊文春」最新号によると、21年衆院選に伴う小渕氏の選挙運動費用収支報告書に添付された領収書のうち、20枚が宛名欄が空白。金額は計20万円にも及ぶという。これでは、誰が何を買ったのか全く分からず、選挙と無関係な領収書が紛れている可能性も否定できない。他人宛ての領収書を不正使用した疑いも残る。
3人目は土屋品子復興相だ。土屋氏が代表を務める資金管理団体は11、12年には月10万円、13年は月5万円を家賃名目で、選挙区の埼玉から離れた都内の不動産会社に支出している。「週刊新潮」最新号によれば、土屋氏は過去にフラワーアレンジメント教室を都内で主宰。そのための家賃を政治資金で賄っていたというのだ。
この「3女性」は今後、岸田政権の足かせになる可能性が高い。
「総理は、女性閣僚の数を過去最多タイの5人にするために、ロクに“身体検査”せずに入閣させたのではないか、とみられている。このままでは、昨年末に起きた閣僚の『辞任ドミノ』の再来となる可能性もあります。とくに加藤さんの家族への政治資金還流は、辞任に追い込まれた寺田元総務相、秋葉元復興相の2人がやっていたことと全く同じです。放っておくと、岸田政権の火種になりかねません。自民党内はてんやわんやになっているようです」(官邸事情通)
誰が辞任第1号となるのか。
●愚策の嵐。名ばかり経済対策で39兆円をムダにした岸田 税金泥棒政権 9/21
昨年10月、「物価高克服、経済再生実現のための総合経済対策」として39兆円の総合経済対策を閣議決定し、「未来に向けて経済を強くしてまいります」と高らかに宣言した岸田首相。しかし1年近くが経過した今、ほどんどの国民がその効果を感じ取ることができていないのが現状です。そんな岸田政権の政策を「39兆円をドブに捨てたも同然」と一刀両断するのは、人気ブロガーのきっこさん。きっこさんは今回「きっこのメルマガ」で、そのように判断せざるを得ない理由を詳しく解説するとともに、「税金泥棒政権」に国民が実感できる経済対策などできるはずもないと厳しく批判しています。
何をやってもこの有り様。税金泥棒政権がドブに捨てた39兆円の血税
もう息が切れそうなほど続いている値上げラッシュですが、食料品や日用品だけでなく、多くの消費者が苦しんでいるのが、電気代やガス代などの光熱費です。そして、このメルマガでも、2022年11月2日配信の第189号で詳しく取り上げましたが、岸田文雄首相は昨年10月末、「総合経済対策」を閣議決定し、「物価対策と景気対策を一体として行なう」と宣言しました。
当事の岸田首相の説明では、「事業規模72兆円、財政支出39兆円の大型対策によって、GDPを4.6%押し上げ、消費者物価を1.2%以上引き下げる」とのことでした。しかし、約1年が経過した現在、GDPは実質で1.2%、名目でも2.7%しか伸びていません。そして、消費者物価に至っては「1.2%以上の引き下げ」どころか、シャレにならないほどの値上げラッシュが絶賛継続中です。
多くの経済学者が提言していたように、消費税を1年限定で減税していれば、どちらの目標も余裕でクリアしていた上、予算も半分で済んだのに、いかりや長介さんも草葉の陰で「ダメだこりゃ!」と嘆いていることでしょう…なんてのも織り込みつつ、この時に岸田首相が鳴り物入りで発表したのが、「電気・ガス・ガソリンの負担軽減策」で、その内容は「1家庭当たり総額4万5000円の支援をして国民の暮らしを守る」というものでした。具体的には、今年の1月から9月までの電気代とガス代を、全国すべての世帯に対して、1世帯当たり月額5000円、9カ月で計4万5000円ほど補助すると言うものでした。
しかし、その中身を細かくチェキしてみると、毎月5000円の補助の内わけは、電気代が約2100円、ガス代が約900円、ガソリン代が約2000円なのです。そして、これは、たくさん電気やガスを使っている4人世帯を基準としていたのです。そのため、あたしのような母さんとの2人暮らしとか、日本で最も多い単身世帯とかでは、補助額は大幅に低くなってしまうのです。
そして、車を持っていない世帯、持っていてもほとんど乗らない世帯は、毎月約2000円のガソリン代補助はまったく受けられません。しかし、それぞれの使用量に対して補助額が増減するというのは、ま、一応はスジが通っています。でも、あたしがどうしても納得が行かなかったのが、ガス代の補助でした。岸田首相は、ガス代の補助が受けられるのは「都市ガスだけ」と差別をしたのです。
資源エネルギー庁の公式データによると、全国の都市ガスの需要は約2900万世帯で全体の53%、プロパンガスの需要は約2500万世帯で全体の44%です。都市ガスのほうが若干多いとは言え、44%を占めるプロパンガス世帯を丸ごと無視しておきながら、岸田首相は一体どの口で「国民の暮らしを守る」などと抜かしたのでしょうか?
トリガー条項と二重課税の是正で31円も安くなるガソリン価格
ちなみに、あたしの実家は東京23区内にありますが、未だに都市ガスが整備されていないため、ずっとプロパンガスを使って来ました。そして、ここで母さんと2人暮らしをしていた時期は、過去20年に渡って、毎月のガス代はだいたい3000円前後でした。しかし、この2年間で、わが家が契約しているプロパンガス屋さんは3回も値上げをした上、使用しなくても払わなきゃならない基本料金まで2回も値上げしたため、現在は5000円前後になってしまいました。それなのに、都市ガスではないため補助はゼロです。
あたしは、少しでも電気代を節約するために、電気炊飯器は使わず、土鍋をガスに掛けてご飯を炊いています。でも、ここまでガス代が高くなってしまうと、炊飯は毎日のことなので、チリも積もればで、それなりの金額になってしまいます。そこであたしは、愛用のコールマンのツーバーナーを使い、庭先でご飯を炊くことにしました。このツーバーナーは、横に長い2口のガスコンロみたいなもので、土鍋でご飯を炊きながら、もう1つのバーナーでお味噌汁を作ったりできるスグレモノです。
もともとはホワイトガソリンが燃料でしたが、ホワイトガソリンはバカ高い上に手に入りにくいので、普通のレギュラーガソリンも使えるようにノズルを改造して、もう30年も愛用して来ました。でも、このツーバーナーでご飯を炊き始めたあたしを待っていたのが、毎月毎月のガソリンの値上げでした。岸田首相が「ガソリンの負担軽減策」を発表した昨年10月には、1リッター150円前後だったレギュラーガソリンが、今年6月から16週連続で値上がりし、先月にはとうとう185円に達してしまったのです。これじゃあ、プロパンガスを使おうがガソリンを使おうが五十歩百歩で、もはやあたしには手の打ちようがありません。
そして、このシャレにならないガソリン価格の高騰に対して、岸田首相が取った政策と言えば、「ガソリン補助金の延長」という、その場しのぎのショボすぎる愚策。これで10円ほど安くなり、170円台になると言われていますが、どうして岸田首相はトリガー条項を発動しないのでしょうか?トリガー条項とは、ガソリン価格が3カ月連続で160円を超えた際に、政府が租税特別措置法に基づきガソリン税を引き下げられる特別措置で、発動すれば1リッター当たり25円も安くなります。
さらには、現在のガソリン価格は、ガソリン自体の価格にガソリン税や石油税など複数の税金が課せられた上、そのトータルの金額に消費税が課せられると言う二重課税になっています。正確には二重課税とはちょっと違うのですが、この二重取りのイカサマを是正して、ガソリンの本体価格にだけ消費税を課すようにすれば、1リッター当たり約6円ほど安くなります。つまり、何兆円もの予算を投じなくても、トリガー条項と二重課税の是正で31円も安くなるのです。
あたしは、補助金によるガソリン価格の引き下げには反対で、あくまでも税制による引き下げを行なうべきだと思っています。それは、まったく恩恵を受けられない国民が数多くいるからです。ガソリン価格が引き下げになれば、大排気量の高級車を乗り回しているお金持ちは、毎月何千円もの恩恵を受けますが、自転車しか持っていない庶民には何の恩恵もありません。
何を期待してもムダな岸田「税金泥棒内閣」
細かいことを言えば、ガソリン価格は物流を通して商品価格に反映される場合があるので、「何の恩恵もない」とは言い切れません。でも、こういうのってエコカー減税と同じで、ものすごく不公平だと思うのです。たとえば、軽自動車や小型のEV車とかだけにエコカー減税が適用されているならまだしも、トヨタの最高級車、1台2000万円もするセンチュリーにもエコカー減税が適用されているのですよ。こんな車、庶民は誰も買えません。それなのに、あたしたち庶民から巻き上げられた税金が、こうした高級車をポンと買えるお金持ちの「割引」に使われているのです。ふ・ざ・け・ん・な!と言いたいです。
物価高騰を前提とした消費者への支援策を行なうのであれば、電気代はこうする、ガス代はこうする、ガソリン代はこうする…というような個別の対策ではダメなのです。それは、恩恵を受けられる人と受けられない人が出て来てしまうからです。政府の重要な仕事の1つとして「税の公平な再配分」がありますが、こうした支援策の原資も税金であることを踏まえれば、支援も公平でなければなりません。
そして、それには、「時限的な消費税の減税」という、もっとも効果が見込め、もっとも余計な予算が掛からず、もっとも消費者が実感できる完璧な政策があるのです。累進課税の減税は、貧困家庭から富裕層まで公平に恩恵を受けることができるだけでなく、消費者の購買意欲も刺激します。たとえば、時限的に1年間だけ消費税を10%から5%に引き下げれば、買うことをためらっていた高価な商品も次々と売れて行き、景気自体が上向きになります。
岸田首相は、39兆円もの莫大な予算を投じた「総合経済対策」で、GDPの成長にも消費者物価の引き下げにも失敗し、何の結果も出せませんでした。しかし、1年間だけ消費税を5%に引き下げるという時限的減税政策なら、その4分の1の予算、10兆円で大きな結果を出すことができたのです。
でも、赤ちゃんの紙オムツから女性の生理用品まで、贅沢品と同じ税率の消費税を課している「税金泥棒政権」ですから、消費税の引き下げなど議題にも上げないでしょう。それに、自民党の国会議員の多くが、国民から徴収した税金を「自分たちの海外旅行の費用」くらいにしか思っていないのですから、今の政権に国民が実感できる経済対策など、逆立ちしても無理でしょうね。 

 

●おぞましい発言は男性差別? 副大臣・政務官の女性ゼロ巡る物議 9/20
岸田政権の内閣改造で、副大臣・政務官計54人が全員男性だったことに「女性活躍への逆行だ」などと批判が相次いでいる。朝日新聞の論説兼編集委員の高橋純子氏は民放番組で「おぞましい」と述べた。一方、高橋氏の発言にも「男性差別だ」などと反発する声がインターネット上で多数出ている。なぜ、このような事態になるのか。
高橋氏は17日放送のTBS系報道番組「サンデーモーニング」に出演。副大臣・政務官への女性起用がゼロだったことについて、「54人全員スーツでネクタイの男性だけが並んでるって、非常におぞましいですね」と発言した。
さらに、男性だけが並んだ副大臣と政務官の映像について「あれを世界に流されるっていうことが、日本という国がどれだけ遅れた国なのかということを世界にアピールしてしまったと。非常に責任は大きいと私は思います」と述べ、岸田文雄首相を厳しく批判した。
これに対し、自民党の和田政宗参院議員は自身のX(ツイッター)に「女性が立候補しやすい環境づくりが重要であり、“おぞましい”は本質を見ない差別発言でしかない。極めて恣意(しい)的な発言だ」と投稿。1万7000以上の「いいね」がついた。
他にも「なぜスーツでネクタイ姿の男が並んでいる事が『おぞましい』のか。公共の電波を使ってこんな“差別発言”をしても問題にならないのか。逆ならどうなる? 男は我慢しろって?」などと発言を問題視する書き込みが並んだ。
「女性たたきのハードル、低くなった」
ジェンダー問題に詳しい作家の北原みのりさんに話を聞いた。高橋氏とは同世代という。
「『またか』という思いと、『この程度で?』という驚き。まず感じたのは、この二つです」。今回の事態について、北原さんはまずこう切り出した。
ジェンダー平等を女性が訴えると、それに対するバックラッシュ(反発)がこれまでも起きてきた。今回も同様の構図という意味で「またか」だという。
「でも、これぐらいの発言でも攻撃されるのかと。女性たたきのハードルが低くなっているように思えてならず、非常に恐ろしいと感じます」
「男性差別だ」という主張の裏には、男女間の格差解消やジェンダー平等を求める声を「自分への攻撃」と受け取る男性の存在がある、と指摘する。今回の批判コメントの中には、「女性ばかりになった時には『おぞましい』と言わないはずだ」というものもあった。
だがこうした仮定は「ファンタジーだ」と北原さん。「今、そういうことが起きてないし、起きうる状況でもない。そうした仮定を立てることに全く意味がありません」
「娯楽のように捉える風潮」
高橋氏に対しては、「思い上がりすぎ」「どれだけ自分を偉いと思ってるか知らないけど、偉くも無いのに偉そうに言うやつ大っ嫌い」などとコメンテーターとしての資質を問う批判もあった。
北原さんは「おぞましい」という言葉の選択について、「強い言葉だというのは、言葉尻だけを捉えれば、そうかもしれない」と話す。だが、あくまで男性ばかりが起用されている「状況」を指してのことであり、そうである以上、まっとうな批評だと指摘。そしてそれは文脈を踏まえれば明らかだという。
にもかかわらず、ネガティブなコメントが相次いだ背景には「女性たたき」をある種の娯楽のように捉える風潮があるのではないか、とみる。
例えば、と挙げたのが、高橋氏のコメントを報じたメディアの報じ方だ。あるスポーツ新聞は「嘲笑」という見出しをつけ、記事を配信していた。
「映像を見れば分かることですが、高橋さんはあの時、政府の姿勢にあきれ、悲しみ、怒っていました。しかし、それを『嘲笑』と言い換えることで、『大企業である程度の地位を得た女が意見を言うことへの嫌悪』みたいな空気をメディアも作っていないでしょうか」
また高橋氏が朝日新聞に所属していることも、攻撃的なコメントが多発した要因になっているという。北原さんいわく「『女性でリベラル』というのが一番たたきやすい構造になっている」からだ。
「仮に『おぞましい』と発言したのが男性だったり、あるいは保守的なメディアの人であったりすれば、ここまで攻撃的なコメントが増えることはなかったと思います」
「変わるべきは意識」
政務官・副大臣への女性起用がゼロだった一方、今回の内閣改造では過去最多となる5人の女性閣僚が誕生した。だが岸田首相が「ぜひ女性ならではの感性や共感力を十分発揮していただきながら、仕事をしていただくことを期待したい」と述べると、「時代遅れ」「ステレオタイプな考え方を助長する」などと批判が殺到した。
北原さんによると、ジェンダー平等に向け、制度面の整備は近年進んできた。だが、こうした首相の発言や今回の事態から浮かび上がるのは、人々の意識がまだ追いついていないという現実だという。
「変えなくてはならないのは制度だけではなく、それを運用する人たちの意識もです。ですが意識の方は、やっぱり時間がかかるのだということを改めて突きつけられた思いです」
●中国、日本のEEZ内勝手にブイ$ン置 発見から2カ月、「弱腰」公表遅れ 9/20
習近平国家主席率いる中国が、沖縄県・尖閣諸島周辺の日本のEEZ(排他的経済水域)内に勝手にブイを設置していた。松野博一官房長官が19日の記者会見で、今年7月に確認して中国に抗議したことを明らかにした。中国は2013年と18年にも同様の行動に出て、日本政府は抗議している。過去に見つかったブイは直径、高さとも10メートルと巨大で、アンテナを備えていた。海上自衛隊の潜水艦情報の収集・分析などが目的とみられていたが、今回発見されたブイの目的は何なのか。中国海警局船は連日のように尖閣周辺に侵入しており、黒い野望でも燃やしているのか。岸田文雄首相は13日、第2次岸田再改造内閣を発足させたが、ブイの存在公表が2カ月後だった「対応の遅さ」「弱腰」も批判を集めそうだ。
「わが国のEEZに同意なく、構造物を設置することは国連海洋法条約上の関連規定に反する」「関係省庁で緊密に連携し、警戒監視に万全を期す。毅然(きぜん)かつ冷静に対処していく」
松野氏は記者会見でこう述べた。中国には外交ルートを通じて抗議し、即時撤去を求めたという。
外務省などによると、ブイは尖閣諸島の魚釣島の北西約80キロにあり、日中中間線の日本側に位置している。黄色でライトが付いており「中国海洋観測浮標QF212」との表記があるため、中国が設置したと判断した。
海上保安庁は7月15日、船舶の安全確保のため、航行警報を出して注意を促した。
中国が、東シナ海の日本のEEZ内にブイを設置したのは、今回が初めてではない。13年と18年、尖閣に近い日中中間線付近の日本側に設置されているのが確認されている。
いずれも多数のアンテナを備え、18年に見つかったものは直径、高さとも約10メートルという「巨大ブイ」だった。アンテナの存在から、艦船の航行に影響する気象観測や、海中の音波を測定することで自衛隊の潜水艦を識別する固有のスクリュー音などの収集・分析を進めている可能性もあるとみられてきた。
今回発見されたブイの詳細は公表されていないが、読売新聞は18日、地球観測衛星の画像をもとに「直径10メートル程度のブイとみられる物体が確認できるようになった」と報じている。
中国の新たなブイをどう見るか。
東海大学海洋学部の山田吉彦教授は「ブイを用いて海流など海域の情報収集や、潜水艦情報を収集するソナーを設置することも可能だ。ただ、一番の目的は、ブイを設置することで、その周辺海域を『常時管理』しているという既成事実をつくることではないか。中国は現在、フィリピンやベトナム、台湾など、警戒する領域が増え、尖閣周辺に中国海警局船を満足に入れられていない状態だ。ブイはその代わりの役割を果たしている可能性がある」と話す。
中国は南シナ海の岩礁を軍事基地化するなどして、同海ほぼ全域で自国の権利を主張している。最近では、南シナ海のスプラトリー諸島(南沙諸島)周辺で、領有権を争うフィリピンと、ブイ設置の応酬を繰り広げている。さらに退役軍人らも加わる「海上民兵」を派遣して、周辺国を威圧している。今回の東シナ海での動きを警戒する見方もある。
中国事情に詳しい評論家の石平氏は「日本、米国、インド、オーストラリアによる戦略的枠組み『QUAD(クアッド)』や日米韓の関係強化など、中国包囲網による封じ込めが強まるなか、中国は海洋進出に向けて焦りを感じている。ブイの設置は、中国が権益拡大のため『既成事実をつくる』という一貫した方針の中での一つの動きだろう。『尖閣諸島領有化』の前段階として警戒しておくべきだ」と危険性を指摘する。
気にかかるのは、岸田政権の対応だ。
ブイを発見したのが7月にもかかわらず、公表したのは約2カ月後の9月である。岸田政権は、中国が尖閣諸島の領有権を主張するような新地図(8月28日公表)に抗議しておきながら、夕刊フジが取材をかけた翌日(今月5日)まで「抗議の事実」を公表しなかった。「中国を刺激しない」方針なのか。
山田氏は「今になってブイ設置が浮上したのは疑問だ。設置されたのは日中中間線の絶妙な位置とされ、中国としては日本が行動をとりづらい状態にする思惑もあったのかもしれない。ただ、日本は本来、確認された時点で即時撤去し、何が目的なのか、すみやかに調査すべきだった」と語っている。
●イギリス史上最悪の首相? お馬鹿な「最短命」首相が、表舞台に戻ってきた 9/20
「彼女ほど恥知らずな政治家はいない。あるいは芸術的に自己認識を欠いているとでも言うべきか。史上最低の英国首相という称号で人気者になることを想像してみてほしい。デービッド・キャメロン、テリーザ・メイ、ボリス・ジョンソン、リシ・スナクよりひどい。普通の感覚を持った人間なら永遠に石の下に隠れてしまうところだ」
左派系英紙ガーディアンの議会担当ジョン・クレイス記者は、約1年前の秋に財源の裏付けがない恒久減税策(ミニ予算)をぶち上げ、英国衰退のフタを開けた与党・保守党のリズ・トラス前首相がロンドンのシンクタンクで講演したことを容赦なくこき下ろした。確かに、ここまで自己認識を欠いた政治家は日本にもいまい。
「彼女のミニ予算が経済を破綻させ、国に数十億ポンドの借金、住宅ローンに数千ポンドを上乗せした。自党に屈辱的な辞任を求められるまで英国史上最短の49日間しか首相を続けられなかった彼女は何も後悔していない。すぐにでもすべてをやり直したいと思っている。ナルシシズムは最近の首相に見られる特徴だが、彼女の妄想は膨れ上がる」(クレイス氏)
英国の秋は各党の年次党大会が開かれる「政治の季節」だ。政党支持率で保守党は欧州連合(EU)離脱の悲惨な現実、コロナ後遺症、インフレ、エネルギー危機、ウクライナ戦争による困窮で最大野党・労働党に20ポイント前後の大差をつけられる。それでも賭けに出ず、安全運転を続けるスナク首相に対する保守党内の不満にトラス氏は火を放とうとしている。
「25年にわたる経済的コンセンサスが停滞を招いた」
トラス氏は演壇に立った理由について「自分が首相官邸に戻りたいからではない」と断ったものの、保守党内に再びEU強硬離脱派のマグマが渦巻いていることをうかがわせた。次期総選挙は2025年1月までに行われる。強硬離脱派が「政界の道化師」ジョンソン元首相やトラス氏を担いでスナク氏を引きずり下ろすタイミングはこの秋しか残されていない。
しかし保守党十八番の内輪もめは労働党のキア・スターマー党首を利するだけだ。トラス氏は「成長至上主義」を掲げて首相になり、無謀すぎる予算を組んでアッという間に国債市場から退場させられた。英国の政府債務は国内総生産(GDP)の100%を超える。海外の国債保有者やインフレ連動債(いずれも約25%)が多く、財政は脆弱だ。
英国財政の信認を支える予算責任局(OBR)のリチャード・ヒューズ局長は「政府が現在の政策を続ける場合、300%程度まで上昇する」との警鐘を鳴らし続けている。「インフレ税」による政府債務(対GDP比)の低減という究極の手段が使えない英国には「増税・歳出削減」という茨の道しか残されていない。
その教訓から学べなかった浅はかなトラス氏は「英国の平均的な国民は米国より9100ポンドも貧しい。このような問題を引き起こしたのは25年にわたる経済的コンセンサスが停滞を招いたためだ。将来さらに深刻な問題を避けるためには、経済的コンセンサスを打ち砕く必要がある」との持論を繰り返した。トラス氏の言う経済的コンセンサスとは何なのか。
競争に重きを置く米国は政府支出の割合が低い
「1980年代や90年代に比べて英国はよりコーポラティズム的な(競争より協調を重視する)社会民主主義国家へと移行した。政府支出はGDPの46%を占めるようになった。ギリシャとスペインを除けば、これほど国家支出が伸びた国は欧州にはない。規制の負担も昨年だけで100億ポンドと増大している」などとトラス氏はネオケインズ主義や環境主義を切り捨てる。
先進国では対GDP比の政府支出はフランス58%、イタリア57%、ドイツ50%、日本45%、米国37%(統計会社トレーディング・エコノミクス)。確かに競争に重きを置く米国では政府支出の割合が低く、協調を重視するフランスは高い。「西側が冷戦に勝利した後、私たちはみな楽観的で明るい未来に目を向け、自由市場から目を離した」とトラス氏は言う。
トラス氏が唱える「3つの矢」は(1)減税(2)構造改革(3)福祉の切り詰め、年金受給年齢の引き上げなど公共支出の抑制である。しかし高齢者の割合が大きくなる国が競争力を取り戻すのは難しい。公共サービスの効率性を上げることができない限り、年金・医療・介護の支出は膨らみ続け、教育や研究・開発への投資は抑えられるからだ。
元保守党上院議員の実業家マイケル・アシュクロフト氏が私財で実施している世論調査では72%が「英国は壊れている。人々はより貧しくなり、何もかもが適切に機能していない」と回答した。英国が壊れていくように感じるのは実質賃金がずっと上がらないことや、警察、原則無償で診療が受けられるNHS(国家医療サービス)の機能低下が主な原因だろう。
万引きが前年比37%も激増
エネルギー・生活費の危機で英国では万引きが前年比37%も激増。英紙デーリー・テレグラフは「食べ物を買う余裕のない人たちから注文を受けて盗みに入るプロまであらゆる種類の犯罪が起きている」と店員の眼の前で酒、菓子、剃刀、コーヒー、肉など転売価値のあるものなら何でも持ち去られる様子を伝える。NHSの待機患者数は過去最悪の768万人に達した。
世論調査会社Ipsosが7月19〜23日に実施したポリティカル・モニターでマーガレット・サッチャー以降の歴代首相が英国を良くしたか、悪くしたかを尋ねている。72%がトラス氏は英国を悪くしたと答え、良くしたと答えたのはわずか5%だった。62%がジョンソン氏は英国を悪くしたと回答、25%が良くしたと答えた。
英国を良くした首相ランキングは以下の通りだ。
(1) サッチャー46%(悪くしたとの回答は37%)
(2) トニー・ブレア42%(同36%)
(3) キャメロン29%(同45%)
(4) ゴードン・ブラウン28%(同33%)
(5) ジョン・メージャー26%(同19%)
(6) ジョンソン25%(同62%)
(7) メイ21%(同49%)
(8) トラス5%(同72%)
英中銀・イングランド銀行元総裁のマーク・カーニー氏は「民間部門での経験がほとんどなく、自由市場主義者の仮面をかぶった政治家人生を送ってきた人々は強い経済にとって使命、制度、規律の重要性を著しく過小評価している。極端な保守派には経済を動かすものに対する根本的な誤解がある」と厳しい。
総裁在任中、保守党の強硬離脱派から激しい攻撃を受けたカーニー氏は「EU離脱派は英国を『テムズ川のシンガポール(規制緩和で成功した国家)』にするという夢を達成するどころか、トラス政権は『英仏海峡のアルゼンチン(財政破綻した国家)』を実現した」と、脱炭素化経済への移行の妨げになりかねないトラス氏の主張を一蹴した。
●「100年に1度の危機」に合理性ある提言を試み尽力 尾身茂氏ら専門家 9/20
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の会長などを務め、政府に100以上もの提言をしてきた尾身茂氏(結核予防会理事長)ら専門家有志3人が9月14日、日本記者クラブ(東京都千代田区)で記者会見し、3年半余りのさまざまな活動を振り返った。
この日までにコロナ対策に関する政府関係の役職をすべて退任した尾身氏は「100年に1度の危機の中で(感染症対策の)経験を持つ人間が信じたことを言わないと歴史の審判に耐えられないと思った」「唯一、絶対の正解がない中で、できる限り科学的に合理性がある提言を試みた」などと語った。
政府は感染症対策の司令塔組織として「内閣感染症危機管理統括庁」を9月1日発足させ、「新型インフルエンザ等対策推進会議」の議長を務めた尾身氏を退任させるなど、メンバーや体制を一新した。現在流行拡大の「第9波」を迎えている最中の退任に、同氏は「第9波はまだピークに達していない。医療にかなりの負荷がかかっている」と懸念を示しながらも新体制に期待を寄せている。
会見に同席した川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は小児科医の経験から、子どもに対する配慮や感染防止の重要性を指摘。東京大学医科学研究所の武藤香織教授は医療社会学者の立場から、長いコロナ禍で偏見や差別にさらされた人が少なくなかったことに触れて、パンデミック(世界的大流行)時の人権擁護の大切さを訴えた。
2020年1月に新型コロナウイルスが国内で初確認されて以来、政府に助言、提言する専門家集団を率いてきた尾身氏。専門家の意見や提言と政府の政治判断との間には時に乖離(かいり)もあった。同氏らは政府の厳しい行動制限に科学的根拠を与えたとして時に誹謗(ひぼう)中傷も浴びた。会見を通じ3人の表情からは専門家として科学に基づいて行動、尽力してきたという自負のほか、激務から解放された安堵感もうかがえた。
社会経済負荷を最小限に、感染防止効果を最大限に
尾身氏は自治医科大学の1期生で1978年卒。僻地(へきち)・地域医療に従事した後、同大学助手などを経て90年代から世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局で感染症対策を担当し、2003年に中国などで重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した時は事務局長を務めた。20年から新型コロナウイルス感染症対策分科会長を務めてきた。
同氏は安倍晋三元首相(故人)や菅義偉前首相の記者会見に同席し、「政府の代弁者」と批判を受ける時もあった。一方、時に国会などで政府方針に対し率直な意見を述べ、厳しい注文を付けた。特に、国内旅行の費用を補助するGoToトラベルや東京五輪・パラリンピックを巡っては、尾身氏が最もこだわり重視してきた専門家と政治家のあるべき役割分担のイメージが崩れた時期でもあった。一部メディアでは「政府部内から『尾身を黙らせろ』との声が上がった」とも報じられた。その頃の同氏の苦悩は深かったとみられる。
「私たちは分科会も既に卒業しているので、記者会見でお話しするのは最後になります」。会見で尾身氏はこう前置きして用意した紙を読みながら所感を語り始めた。「今回の感染症対策は私が経験した中で最も難しかった。背景としてはウイルス側の要因に加え、人間や社会側の要因もあった。感染症対策に唯一、絶対の正解はない中で当初から社会経済への負荷を最小限にし、感染拡大防止効果を最大限にすることを目標にした」。政府とやり取りする中での具体的対策となると、一つの正解を見つけるのは極めて困難だったという。それでも「できる限り科学的に合理性があり、多くの人に理解、納得してもらうような提言を作ることを試みた」。
この試みが簡単でなかったのは、提言の根拠となるデータが不足していたこと、社会全体の共通認識が得られにくくなっていたこと、そして提言の内容や根拠が社会に伝わりにくくなったことの3つを挙げた。パンデミック初期は人々の未知ウイルスに対する不安もあり、「3密回避」などの行動制限に対してある程度、社会の共通認識はあった。新型コロナウイルスに関して当初は情報が限られていたが、次第に多くなった。そうなると人々の立場や価値観は多様になり、求められる対策に対する合意は得られにくくなったという。
専門家と政治家の役割分担、見えてきた課題
感染症対策と経済の再建との間で揺れた政府。そうした政府と専門家集団との危機感との認識のずれがあったのは間違いない。両者の認識の乖離は2020年夏に政府が始めたGoToトラベルを巡って顕在化した。
同年7月の参院予算委員会で尾身氏は「今の段階で全国的なキャンペーンという時期ではないと思います」と明言している。尾身氏が懸念した通り、同事業が始まる時期と合わせるように感染は全国に拡大していった。両者の意見の乖離、違いは21年夏に結局無観客で行われた東京五輪・パラリンピックの開催方式を巡っても見られた。
こうした経緯について尾身氏は「今回政府と専門家の役割分担について課題が見えてきた」と冷静な表現を使った。そして「政府と専門家がいつも同じ意見であるとは限らない。意見が異なることが時々あってもそれはむしろ健全で、これからの課題は専門家の提言を採用しない場合はその理由を(政府が)しっかり説明することで、それにより意思決定プロセスが明確になる」と述べた。
政治家や担当官僚とは立場は異なっても「この危機を何とか乗り越えよう」という思いは共通だったと強調している。
用意した所感の最後に「市民の皆さんにはそれぞれ大変なご苦労があった中で『接触8割削減』や『3密回避』などの感染対策に協力していただき心よりお礼をしたい」「感染症に限らず日本社会は今後もさまざまな苦難に直面することがあるだろう。その際に専門家の知見を社会でどのように活用していくのか、私たちの試みが反省も踏まえて今後のより良い対策に生かされることを祈念している」と結んだ。
やるべきことはやった経験を次世代に
3年半以上のコロナ禍を通じて尾身氏の「補佐役」だった岡部氏は小児科の出身だ。東京慈恵医科大学を卒業後、小児科医として臨床経験を積んだ。一般外来や乳児健診などに携わりながら感染症学やウイルス学の知見を深め、尾身氏より前にWHOの西太平洋地域事務局に入り、伝染性疾患予防対策課長を務めた。SARSが発生した2002年当時は、国立感染症研究所で感染症情報センター長として対策に必要な情報収集作業の前面に立っている。
岡部氏は2020年4月に政府が初めて出した緊急事態宣言について「最初は(強い行動制限に)慎重な姿勢だったが、医療の現場の友人から『重症患者や中等症の患者さんがどんどん入院してきて、このままでは医療の現場が危なくなる』と言われ、全体の医療が崩れると思って宣言に賛成した。それでもそういう形でいいのか自問自答を続けた」と振り返った。
「この病気の患者の中心は大人で、高齢者は特にリスクが高かった。専門会議のメンバーや対策に関わる人も大人の医療に関わる人が多く、対策も大人社会中心になった。このために子どもへの配慮に乏しい状況がしばしばあった。それでも(コロナ禍の一連の会議の)後半から入ってもらった小児科医による提言を生かした。子どもへの配慮もできるようになった」。子どもへの対策をどう考えるかは今後も課題として残ると訴えている。
同氏はさらに「対策に関して多様な考え方による議論が行われた。ベストアンサーがない中で多様なメンバーが誠心誠意やったとは思う。その結果、日本の死者数、致死率は高齢化社会にあっても世界的にも低く抑えられたのはいいことだったが、経済、教育の面で、また差別の問題など社会に影響が及んだ」。
所感の最後に「私たちはやるべきことはやったという思いはあるが、決して完璧ではなかった。今回の経験が次の世代(の研究者・担当者)に引き継がれて次のパンデミックに備えていくことが必要だ」と述べている。
差別や偏見の問題を改めて指摘
続いてマイクを持った武藤氏は東京大学大学院医学系研究科で博士号を取得。研究テーマは社会科学と先端医科学の相互作用で、米ブラウン大学などを経て2007年東京大学医科学研究准教授、13年から現職。医療社会学者の立場から尾身氏、岡部氏らとコロナ禍の当初から専門家会議や分科会に加わり、対策の倫理面などで独自の問題意識から積極的に発言、発信してきた。
「入ってくる情報が制限されて短時間で政策決定しなくてはならない現場だった。だからこそ生命倫理や公衆衛生倫理の原則や概念に立ち返って考えることが大事だと思った」。政策によって負の影響を受ける人、声を上げられない人の存在をできる限り想像して伝えることも役割の一つだったという。
現在は多くの人が新型コロナウイルスに感染し「ウィズ・コロナ」の社会になっている。しかし、感染者がまだ少なく、有名な芸能人が死亡するといったニュースが伝えられた頃は漫然とした不安が社会に広がり、「感染源」として感染者や濃厚接触者に対する目も厳しかった。流行初期だった2020年の初めごろ、多くの医療機関はさまざまな面で暗中模索の状況であり、院内感染や施設内感染に対する防止策は難しい時期だった。
「院内感染を起こしてしまったことに対する多くの批判が医療従事者やケア提供者らに出て、それが偏見や差別の原因になった。遊興施設でクラスターが発生するとこれも厳しい批判が出た」。武藤氏はコロナ禍の当初に見られた差別や偏見の問題を改めて強調した。
2020年7月に政府の新たな分科会ができた時に、武藤氏は差別や偏見に関する作業部会を作るよう尾身氏に要請した。その後報告書が出て新型インフルエンザ等特別措置法が改正され、同13条に国や地方公共団体の責務として「知識の普及や差別の実態把握、相談支援や差別や偏見防止のための啓発」が盛り込まれた。
「今後新たな感染症が流行した時は当初からこの法律の条文(13条)に基づいて活動が始まる。メディアの皆さんにも十分理解してもらった上で報道してもらいたい」。直接は言及しなかったが、コロナ禍のメディアの報道の仕方に反省点はなかったかどうかも検証するよう暗に求めた。
武藤氏は最後に「人工呼吸器や病床が不足した時の優先順位の決め方や、どんな時に面会やみとりの制限が正当化できるのかなど、難しい判断が求められた。多くの場合その判断は現場任せにされた。最終判断は地域や医療機関で異なるが、どのようなことを考慮して難しい判断をするかは国も(基準などを)早めに示すべきだった」と指摘し、今後の課題とした。
「第9波、冬にかけて気がかり」
尾身氏、岡部氏、武藤氏の3人が一通り、コロナ禍の3年半余りを振り返った後、大勢詰めかけた記者やオンラインで参加した記者らとの質疑応答に入った。
新型コロナウイルス感染症の感染法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ5類に移行してから4カ月以上が経過した。感染状況に関する公表が感染者の「全数把握」から週1回、全国約5000の定点医療機関からの「定点把握」に変わり、「流行状況」は分かりにくくなっているが、専門家は「明らかに流行の第9波だ」との見方で一致している。
現在の感染状況について問われた尾身氏は「第9波はピークに達していない。まだ多くの地域で感染者が増えている。医療の現場もかなり負荷がかかっている。冬にかけて気がかりだ」と述べた。そして「この病気は若い人や体力のある人が感染してもほとんど重症化しないが、(若い人でも)後遺症の問題がある。高齢者や基礎疾患がある人など、致死率が低いにも関わらず(感染者数は多いために)死亡者が増えている。コロナはまだ終わったわけではなく、しばらく続くので社会活動を維持しながら感染対策をとっていくことが大切だ」と強調している。
岡部氏はまだ感染の波が続いていることを前提に「我々がこのような会見をするのは我々の役割に区切りが付いたということであって、新型コロナが終わったと受け止めないでほしい」「5類になったからといってコロナという感染症がもう大丈夫となった訳ではない」と釘を刺した。
脅迫を受けながら「当然やるべき仕事だった」
「3年半余りの間、前面に出て発信してきたことで脅迫や誹謗中傷にもさらされてきたと思うが、提言を出し続けてきたモチベーションや思いはどうだったのか」。記者にこう問われて尾身氏は「多くのメンバーは感染症対策に直接関わってきた。(コロナ禍という)この大事な時に、また全ての人々が大変な思いをして不安があった時に、感染症対策の経験がある者が信じたことや言うべきことを言わないのでは歴史の審判に耐えられない、責任を果たせないという思いが当初から全員にあった。経験を持つ者が当然やるべき仕事と思っていた」。
「人的被害はなかったものの段ボール1箱ぐらいの手紙が届き、多くは批判の内容だった」という岡部氏は「やるしかないだろうと思った。他のメンバーとともに誠心誠意やってきた」と語った。武藤氏は「コロナ対策をめぐるさまざまな議論から下りるのは無責任だと思った」と述べている。
「コロナとの共存」「ウィズ・コロナ」を前提とした「新しい日常は確立しつつあるか」との質問に武藤氏は「テレワークの推進など確立しつつある面もあるが、(感染防止のために混雑したところには)なるべく一斉にどこかに行かないといった注意点ではコロナ前に戻っている」と指摘した。
尾身氏は「多くの日本の方々がいろいろ大変な思いをし、辛抱した。その結果、累積死亡者も欧米より少なかった。この間日本社会のいい面もあったし課題も出てきた。感染症のパンデミックは社会、経済の全てを巻き込み、オンラインの普及が進んだ半面、差別などの問題も生じた。さまざまな面で影響が出ることが今回分かった。今回の経験を『のど元過ぎれば』とせずに、それぞれの人がそれぞれの立場から振り返って今後どうすべきかを考える良い機会だった」。
まだ続くコロナ禍、しっかりした検証を
日本国内では現時点で3000万人以上が感染し、欧米などよりは少なかったものの7万5000人以上が既に亡くなっている。厚生労働省は9月15日、全国約5000の定点医療機関から4〜10日の1週間に報告された感染者数は計9万9744人で、1医療機関当たり20.19人だったと発表した。前週比はほぼ横ばいで第9波が続いている。国内ではオミクロン株派生型の通称「エリス」と呼ばれる「EG.5.1」の検出割合が増え、全体の過半数を超えている。コロナ禍は明らかにまだ続いている。
新型インフルエンザ等対策推進会議の議長は、尾身氏から国立成育医療研究センターの五十嵐隆理事長に代わった。尾身氏が長く会長を務めてきた感染症対策分科会や基本的対処方針分科会も廃止された。5類移行後も新型コロナウイルスは勢い失わず、今後の新型コロナを巡る医療体制に対する懸念や不安の声も少なくない。
記者からは「(尾身氏らが退任して)新体制移行により感染防止対策に問題はないと思うか」との質問も出された。尾身氏らは「しっかりやってもらえると信じているし、期待している」とエールを送った。その一方で「多くの資料が残っている。これまで対策に関わってきた者として支援は惜しまない」などと話し、今後は新しい体制のメンバーが中心になり、時間をかけてこれまでのコロナ対策の検証をしっかり行うことを求めた。
●中国要人相次ぎ動静不明 習氏権力基盤の歪みか 国際会議に姿見せず…9/20
習近平国家主席率いる中国がどうもおかしい。習氏は、インドネシアでのASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議(5〜7日)や、インドでのG20(20カ国・地域)首脳会議(9〜10日)を欠席したうえ、米国で11月に開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)への参加も疑問視されている。米紙ウォールストリート・ジャーナルは、米ニューヨークで19日から始まる国連総会一般討論に、中国外交トップの王毅共産党政治局員兼外相が欠席する見通しと報じた。中国人民解放軍や外交部の幹部が相次ぎ動静不明、更迭されている。ジャーナリストの長谷川幸洋氏が、習政権の異変に迫った。
中国の李尚福国防相が、公の席に2週間以上も姿を見せず、「更迭されたのではないか」という噂が流れている。事実なら、先の秦剛外相(国務委員)の解任や、ロケット軍司令官と政治委員の交代に続く異例の事態だ。
国際会議に姿見せず、11月APEC欠席の推測も
李氏は、8月29日に北京で開かれた中国アフリカ平和安全フォーラムに出席したのを最後に動静が途絶えた。米国のラーム・エマニュエル駐日大使は9月8日、X(旧ツイッター)に「習主席の閣僚体制は、いまやアガサ・クリスティの小説『そして誰もいなくなった』のようだ」と皮肉を込めて投稿していた。
李氏は65歳。2022年の中国共産党大会で中央委員に任命され、今年3月、国防相に就任したばかりだった。
中国は何も発表していないが、国防相就任前には軍装備を調達する部門の責任者を務めていた。中国のサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙は、ロケット軍司令官らの更迭を「汚職絡み」と報じており、李氏も汚職に関係していた可能性がある。
習近平氏をめぐる一連の「異常事態」は最近、世界で関心を集めている。
習氏は南アフリカで8月22日に開かれたBRICS(新興5カ国)首脳会議に参加しながら、ビジネス会合を欠席し、代わりに商務相が習氏の演説を代読した。続いて、9月9、10日にインドで開かれたG20首脳会議を欠席した。
本来なら、新興国のリーダーとして指導力をアピールする絶好の場だったはずだ。ところが、習氏の欠席で、主催国のインドが、アフリカ連合(AU)のG20加盟を主導するなど、ライバルであるインドの存在感を際立たせる結果になってしまった。
いまや、11月に米国で開かれるAPECも「欠席するのではないか」という憶測が飛び交っている。
焦りと動揺?国内の締め付け強化も
不動産バブルが弾けて、経済が崩壊の危機にある習氏は「外遊している余裕がない」という見方があったが、経済だけでなく、重要閣僚が相次いで失脚したとなると、習氏の権力基盤自体が揺らいでいる可能性もある。
要人更迭と歩調をそろえるように、習政権は国内の締め付けも強めている。
中国の国家安全部は8月21日、米中央情報局(CIA)に協力してスパイ活動をしていたとして、39歳の政府職員を逮捕した。米メディアによれば、彼は日本留学中にCIAにリクルートされ、帰国して政府に就職し、情報を盗むように唆(そそのか)された、という。
国家安全部は別の中国人もCIAに協力したスパイ容疑で逮捕している。彼はイタリア留学中にリクルートされ、中国の軍事企業に就職していた。さらに上海警察は8月、海外移住について助言する大手コンサルタント企業の女性経営者と従業員を逮捕した、とSNSを通じて発表した。国内では「移住を試みた顧客も摘発されるのではないか」という懸念が広がっている。
本欄で何度も指摘したように、正規の海外移住だけでなく、中国を脱出して、不法に米国に入国しようとする中国人も後を絶たない。一連の事態は習政権の焦りと動揺を物語る。「次に捕まるのは誰か」。政権の断末魔を見ているようだ。 
●岸田内閣の改造人事も日本の政治も、なぜ「驚くほどつまらない」のか? 9/20
改造しない方が対面を保てたのではないかと思える岸田内閣の改造人事が発表された。支持率は上がらないのに、岸田文雄首相にも自民党にも奇妙な安定感が漂っているのはなぜなのか。そして、なぜ日本の政治はここまで「つまらない」ものに成り下がってしまったのか。
特異な内閣改造人事 やらない方がよかったのでは?
先般行われた岸田文雄政権の内閣改造および自由民主党の幹部人事は奇妙であった。党内では麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長、萩生田光一政務調査会長が続投し、閣僚では松野博一官房長官、西村康稔経済産業大臣、河野太郎デジタル大臣、鈴木俊一財務大臣などの主な顔触れが留任した。その結果、改造人事を行ったことがほとんど目に付かないラインナップで再スタートした。
岸田首相に人事を大きく動かすだけの政治的なパワーがないことが露呈した。これなら改造を行わない方が体面を保てたのではないか。俗に「政権は、解散のたびに強くなり、改造のたびに弱くなる」と言われるが、その通りだと印象付ける人事だった。
主な人事で目立つのは、林芳正外務大臣を交代させて上川陽子氏を充てたことと、小渕優子氏を自民党の選挙対策委員長に任命したことくらいだ。
人事前から女性閣僚の起用が注目された今回の改造だが、既に閣僚経験があり、実務能力が豊富で胆力もある(オウム真理教事件の死刑囚の刑執行を行った法務大臣だ)上川氏が重職に就ける立場で残っていたことは幸いだった。個人的には、岸田氏の代わりに総理大臣をやってもらいたいと思う人材だ。来年の総裁選に出てもらえないものだろうか。
「ドリル優子」のみそぎは完了にはほど遠い…
小渕氏の起用は、先般逝去された故・青木幹雄元幹事長や、今も隠然たる影響力を持つ森喜朗元首相らの「推し」に応えた。だが、小渕氏は党内ではすこぶる評判がいいらしいが、過去の「ドリル問題」があって答弁の矢面に立つ場面の多い閣僚には起用できなかった。就任時の国民の反応を見ても「ドリル優子」の印象はいまだに強烈で、「みそぎ完了」にはほど遠いことがうかがえた。
ただし、小渕氏と同派閥の茂木氏への牽制(けんせい)にはなったのかもしれない。「あなたには、人気と人望がない」というメッセージだ。
なお、プライベートな問題が話題になって去就が注目された内閣府の官房副長官だった木原誠二氏は、党の幹事長代理と政調会長特別補佐を兼務するという特異なポストで処遇する方向で調整しているという報道があった。実現すれば、表に出ない形で政策に関わることになる。
木原氏は岸田内閣の重要政策のほとんどを実質的に仕切っていた。しかし、彼の代わりをこなせる「使える人材」が他にいないということは、日本の政治家集団の人材払底を象徴している。
また、今回の人事では、閣僚に女性を5人起用したものの、副大臣・政務官54人の中に女性が一人もいないという、端的に言って「大ちょんぼ」をやらかした。そもそも女性議員が少ないということはあっても、これでは次の閣僚候補が育たない。
また、将来の問題以前に、このラインナップではいかにもまずいと気が付いて岸田首相に進言できる側近が、政治家にも官僚にもいないとは、何とも寒々しい現状だ。
よし悪しは別として感想を言うと、日本にあって、政治家はこんなに魅力のない職業になってしまったのか、とあらためて思った。
首相補佐官に異例の人物を抜擢 狙いは組合か、国民民主党か
今回の改造人事の中で、一風変わった注目を浴びた人事があった。5人の首相補佐官の一人に、元国民民主党副代表で、現在は出身母体であるパナソニックの労働組合に戻っていた矢田稚子氏が起用されたことだ。矢田氏の担当は、岸田政権において経済政策上の最大の課題ともいえる「賃金・雇用」だ。
今や首相官邸は、ある意味では国会よりも自民党内よりも政策が実質的に決まる政権の中枢だ。この中に取り込むのだから、重要人事だ。
矢田氏は、政治経験と労働組合経験の両方を持つが、一民間人の立場であった。政権としては「能力と経験を買った」と言えばどうにでも説明がつくが、岸田政権が、矢田氏の起用を通じて産業別の労働組合(電機労連)とコネクションを持とうとしているのか、あるいは国民民主党との距離を近づけようとしているのか、その意図が注目されている。
特に政治的には、国民民主党を近い将来に連立政権へ取り込むための布石ではないかとの憶測を呼んでいる。
国民民主党は、政府の2022年度予算案に賛成した過去を持つ(23年度予算には反対)。また、先の代表選挙では、与党との政策面での連携に積極的な玉城雄一郎代表が、野党としての立場を重んじる前原誠司氏を抑えて代表続投を勝ち取ったところでもある。
国民民主党の連立政権入りはあり得るのだろうか?
国民民主の連立政権入りは「ない」 売り時はなかなか来ない
筆者は、国民民主党の連立政権入りは「ない」と考えている。理由は複数あるが、端的に言って「今は売り時ではない」し、「売り時はなかなか来ない」と思うからだ。
まず、自民党は連立与党である公明党も合わせた現有勢力で政治的な「数」が十分足りており、国民民主党の勢力を必要としていない。
自民党と公明党との関係は現在、まるで倦怠期の夫婦のごとき、きしみを見せている。しかし、公明党の支持母体である創価学会の選挙戦での組織力を考えると、公明党と別れて国民民主党と組むといった選択肢は、自民党における個々の議員の選挙事情を積み上げて考えると全く現実的ではない。
また、国民民主党が政権入りするとすれば、そのモチベーションは重要閣僚ポストを一つか二つ欲しいということだろうが、これは、無風状態での連立入りでは実現するとは考えにくい。
自公連立では過半数の確保が危ぶまれるような、自民党政権にとっての緊急事態が発生したときに、国民民主党を連立に取り込んで政権の維持を図る必要が生じて、国民民主党が「高く売れる」時が訪れるかもしれない。ただ、そこまでの状況にならないと、ポストや政策で国民民主党が連立政権内で張り合いのある存在感を持つことはできないだろう。
また、自民党との連立は、国民民主党における個々の議員にとって選挙にマイナスに働くのではないか。小選挙区で余裕を持って勝てるような個人的な地盤を持っている議員の場合には、「わが先生を大臣に」と支持者に力が入るかもしれない。しかし、彼ら以外の議員や候補者にとっては、有権者にとって自民党に対する批判勢力であることの意義が大きいのではないだろうか。
先般、日本維新の会の馬場伸幸代表が、共産党と立憲民主党について日本に要らないと言ったついでに、自党について「第2自民党でいい」と口を滑らせて以来、維新への支持が伸び悩んでいるように見える。
維新も国民民主も、有権者として見ると「自民党政権に不満と批判があるけれども、左翼政党に投票することには違和感がある」という政権批判票の受け皿として存在感を持っている。連立政権の閣内に取り込まれることは、国民民主党にとって選挙にプラスに働くまい。
加えて、自民党側から見るとしても、国民民主党が野党勢力の統一を妨げつつ、野党票を分断していることが、実は好都合である。
労働組合の中央組織である連合が、今や、野党の共闘を阻むことによって、実質的に自民党の有力な応援勢力になっている。国民民主党は、小さくてもその有力な実働部隊だ。連合の芳野友子会長も国民民主党の連立政権入りを否定している。
また、玉木代表本人に「あなたは、どれくらい大臣になりたいのか?」を聞いたことはないが、連立に加わっても有力大臣になれないなら、小党といえども党の代表として、自民党の中堅議員をはるかに超えるスポットライトを頻繁に浴びながら、11億7300万円に及ぶ政党交付金(23年)の差配をしている方が、政治家としては快適なのではないだろうか。
方々の関係者の個人の利害までさかのぼって考えると、国民民主党が、少なくとも「今」連立政権入りすることが合理的だとは思えない。
現在の政治システムを作った小沢一郎氏が犯した「設計ミス」
政治家それぞれに利害を発生させてインセンティブともブレーキともなっている小選挙区制や政党交付金を中心とする現在の政治システムを作ったのが、小沢一郎氏であることは衆目の一致するところだろう。制度に対する小沢氏の設計意図は、政権交代が容易に可能で、いわゆる金権政治を排することができる、緊張感があってクリーンな政治体制を作ることにあったのではないかと推察する。設計の意図は悪くないと言っておこう。
しかし、制度設計の前提として政治家が「政権を取る」ことに目的としても手段としてももっと大きな情熱を傾けるであろうと仮定したことが、現実に合っていなかった。
どうやら、起源は自民党が旧民主党から政権を奪還した辺りにさかのぼる。この時、政権を持つことのメリットを知る自民党は「もう下野するのは嫌だ」と民主党政権の仲間割れを反面教師に結束を固めるのと同時に、党内でも党外でも、ライバルをつぶす行動様式を身に付け始めた。
そして、選挙を前にした候補者としての政治家が典型的だが、政治家個人を子細に見ると、「政権にチャレンジして冷や飯を食うよりも、協力してポストや選挙に有利な環境を得ることの方が、自分にも自分の仲間にも好都合だ」という利害があることが発見された。
政治家は、支持者を巻き込んだビジネス体であり、同時に生活者でもある。特に昨今多い、2世、3世議員となると、何重にも身の回りの人間関係に縛られた存在だ。
すると、派閥内のポジションをキープすることや、一度は大臣と呼ばれること、野党第一党の幹部としてほどよい注目を浴びること、小党の党首が意外に心地よいこと、支持してくれる団体があればどこにでもあいさつに行くことなどが重要な、「小さな均衡」が方々に出来上がる。そして、個々の議員の利害と関心は「政権奪取」からどんどん離れていく。
故・安倍晋三氏が第2次政権にあってその形を完成した。有利なポジションに就いた者は、自らの積極的な強化よりも、もっぱらライバルをつぶすことによってポジションを維持するという戦略行動のパターンが出来上がった。
岸田政権もこれを受け継いだ。手段は冷遇、封じ込め、分断、牽制などさまざまだが、有力なライバルが育っていないという一点をもって、支持率は上がらないのに、岸田首相個人にも自民党にも奇妙な安定感が漂っている。
政権側には、今は不人気でも、個人の利害を考えると、政治家も広義のお仲間であるメディアも「いずれは『長いものに巻かれる』に違いない」と信じている余裕を感じる。
既存の大手メディアにはまだ政治部という大集団があるので、発信される情報量は多いのだが、正直に言って今は「政治」がまったくつまらない話題になってしまった。そして、このことも政権にとって好都合なのだろう。
●日本に対する「海外からの反応」は驚くほど変わった…岸田首相と安倍元首相 9/20
安倍晋三元首相が亡くなって1年を超える月日が流れた。安倍氏はどんな政治家だったのか。新著『安倍晋三実録』(文藝春秋)を書いた政治外交ジャーナリストの岩田明子さんは「安倍元首相はリアリストだった。たとえば『日本を守る』という最終目的のために緊密な日米関係を築く一方、中国やロシアなどあらゆる国との関係を深めた」という――。
議論の過程が見えない岸田政権
今年6月に上梓した『安倍晋三実録』は多くの反響があり、いただいた感想の中には「食事も忘れて一気に読んだ」といった声もありました。また、「安倍外交の真髄を知ることができた」と、特に外交の舞台裏について書いた部分を高く評価してくださる方もいます。
清和会の若手議員の一人からは「自分たちが安倍外交を引き継がなくてはいけないと思いを新たにした」とメールを頂戴しました。他方で、「われわれは理念に走りがちだけど、安倍さんのリアリストの面をもっと学ばなくてはいけないと思った」と話された議員の方もいました。重要な指摘だと思います。
ここ最近、率直に感じるのは、国際社会における日本の存在感の低下です。というのも、安倍政権の頃は、海外の新聞に“PM Shinzo Abe”とか“Japan”という文字を毎日のように目にしましたが、現在は“Japan”も“PM Kishida”もあまり見かけません。
内閣支持率の低下も気になります。異次元の少子化対策、防衛費倍増の財源など、結論は明確なのに、そこに至る丁寧な議論の過程が私たち国民に見えてこないことが原因かと思います。
物価上昇や、建築、救急車などでの人手不足問題など、社会機能の低下が肌で感じられるのに、政治が解決すべき国民生活に直結する課題は山積みのままです。
安倍氏が岸田政権について語ったこと
第2次安倍政権(2012年12月〜2020年9月)もゴールが見えてきた頃、安倍さんが後継となる首相について、電話で口にした一言が印象に残っています。
「安倍政権は、波風を立てながら、物事を前に進めていく、毒気の強い政権だったといえる。もしも岸田さんが総理になったら、少しほっとする感じの政権になるかもしれないね」
2021年9月、岸田政権がスタートすると内閣支持率は上昇、その後しばらく高支持率が続いていました。
安倍さんは「ご祝儀相場とはいえ、岸田さんの人徳なのかな」と不思議そうに話していました。
岸田総理は、総理に就任する前年、お母さまを亡くされています。「人が亡くなるときは、その人にとって大切な人の苦労も持って行く、という話を聞いたことがある。助けられた時こそ、徳をもって、謙虚に努めなければならないね」と安倍さんは話していました。
こうした類の言葉は、第2次政権がスタートした頃から、安倍さんの口から出てくるようになりました。「ポストや権力は天からの預かりもの」とまるで自戒するかのように、よく語っていました。岸田さんについても、謙虚さと「聞く耳」を忘れてはいけないと心配したのだと思います。
第1次安倍政権(2006年10月〜2007年9月)の頃は、安倍さんは“政界のプリンス”であり、若くしてトップに登りつめたと自負している印象がありました。ところが2007年に潰瘍性大腸炎の悪化で総理大臣を辞任。“雌伏の5年間”を経験してからは、まるで別人のように変貌を遂げました。
「つっけんどんな安倍さん」に食い込むまで
『安倍晋三実録』では、私が安倍さんとの距離を縮めていくプロセスが「仕事の参考になった」という感想もいただきました。
官房副長官だった安倍さんの番記者になったのは2002年のことです。当時の安倍さんは「掴みどころのない政治家」という印象で、対峙してもこちらを一瞥するだけで多くを語りませんでした。
他社の記者には親しげに話すのに、私にはつっけんどんに早口で話す。ご自宅に電話をかけ、昭恵夫人が取り次ごうとしても、「いないと言って!」と不機嫌そうな声が聞こえてくる。電話に出たときも「何?」と無愛想。1年近く距離が縮まらないことに焦って、上司に「担当を変えてほしい」と直訴したこともありました。
そんな私が安倍さんとの距離を縮めるきっかけになったのは、2003年に清和会(当時は森派)の議員が、政治資金規正法違反などで東京地検特捜部から捜査を受けたときでした。かつて法務省を担当していた経験から、今後の展開について私の“読み筋”を話すと「法務畑が得意分野だったんだね」と興味深そうに耳を傾けていました。
担当を外れても取材を続けた
それから安倍さんと会話が少しずつ増えるようになり、ご自宅の固定電話から、だんだん携帯電話を鳴らすようになりました。ただ素っ気ない態度は変わらず、電話をかけるたびに緊張していました。
第1次安倍内閣で安倍さんがあっけなく辞任し、雌伏の5年間では、人間的な側面や本音の部分に接する機会が増えました。自民党が下野し、民主党政権が誕生してから、私は安倍さんの担当を外れ、今度は菅直人副総理の担当として、政権を追いかけつつ、番記者のときと変わらず安倍さんに電話をかけ、ご自宅にもせっせと通いました。
安倍さんに限らず、権力の中枢へと階段を上っている政治家は、把握する機密情報が増え、多くの「番記者」が張り付くようになります。そのため口が堅くなり、取材のハードルは上がってしまうのがこの世界の常。一方、権力の座から降りると、ハードルが下がり、アクセスしやすくなる。
首相の間は、対面で会う機会が限られていましたが、第一次政権の退陣直後、珍しく、「サシ」で新橋の居酒屋に行きました。店長のサービスで、白魚の踊り食いが出てきたのを鮮明に覚えています。私が生きた白魚を箸でつまんで口に入れ、もぐもぐと食べると、安倍さんはびっくりしていました。店員さんに自分のお椀を渡して「かわいそうだから生け簀に戻してあげてください」と言ったときは、プリンスらしさを見たような気がしました。
「維新の党首になっちゃえばいいのに」
当時の私は、安倍さんが5年後に再び総理大臣になるとは想像だにしませんでした。むしろ、復権はないと確信していました。2012年に橋下徹さんや松井一郎さんが安倍さんに新党(日本維新の会)への合流を打診したと聞いたときは、「またとないチャンスでは?」と言ってしまったぐらいです。
病気が理由とはいえ、1年で総理大臣が交代する事態を招き、2年後には自民党が野党に転落したのですから、安倍さんは大きな十字架を背負ってしまったわけです。
他社の番記者が離れていく中、それでも私が取材を続けたのは、安倍さんが政治家人生を終える最後まで見届けるのが責務だと思ったからです。
「雌伏の5年間」による安倍氏の変化
安倍さんは雌伏の5年間で、様々な分野の人と会い、政策を練り上げ、人生観や人との接し方など、大きな変化を遂げました。かつてのつっけんどんな態度は消え、誰にでも親しみやすい印象を与えたと思います。取材を受ける場合も、自身の考えを一方的に話すのではなく、記者や質問の背景を知ろうとする姿勢が感じられました。
企業の経営者が集まる会議にもよく顔を出していましたが、ただ出席するだけではなく、一人ひとりのバックグラウンドや政治に求めることを知ろうと、安倍さんからいろいろ質問していました。次に会ったときも、相手の名前やストーリーを忘れておらず、安倍さんから「あれから業績はよくなったの?」などと個別に尋ねる。経営者の皆さんからは「安倍さんが自分の話を覚えていてくれた」という感想をよく耳にしました。
苦しい5年間で、人間としての幅や政治家としての厚みが増したのだと思います。
旧統一教会について話したこと
安倍さんとの電話は、たいてい夜でした。夕方以降は情報収集タイムと決めていたようで、毎晩のように誰かと会食し、帰宅してから政治家や記者などあちこちに電話する。夜は、情報収集をして世間で何が起きているのかを必死で探ろうとしている感じでした。
私に電話をかけてくるのはいつも午後10時から午前0時ぐらいの間でした。短いときは10分程度、長ければ1時間前後になることもありました。
初めは政治や外交の話題でも、どんどん脱線して最後は雑談というパターンもありました。日曜の晩にかけてきたから重要な話かと思ったら、大河ドラマの感想や俳優の演技に対する「突っ込み」だったことも……。
また安倍さんも私も無呼吸症候群を患っていましたので、CPAP(治療用具)の操作の仕方を問い合わせてきたり、私の体の調子を尋ねてくることもありました。
安倍さんが凶弾に倒れる前日は二度かかってきました。一度目の電話で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の話題が出ました。第1次安倍内閣で秘書官を務めた井上義行さんが、旧統一教会の“祝福”を受けたと聞いたので、安倍さんに確認したのです。皮肉なことに、旧統一教会について話すのは初めてのことでした。
嫌な予感がして私はつい語気を強めてどういうことなのかと問うたのですが、安倍さんは声のトーンを下げて「特に問題はないので。大丈夫だから。明日は朝早いから」と電話を切ってしまいました。でも後味が悪かったのでしょう、1時間ほどするとまた電話をかけてきました。今度はいつもの明るい調子で、「予定が急遽変更になり、奈良に応援にはいることになっちゃった」などと話し、電話は切れました。「また明日」という言葉だけが残り、まさか、これが最後の会話になるとは想像すらしていませんでした。
事件の第一報が入った瞬間、私はとっさに安倍さんの携帯電話を鳴らしましたが、つながりませんでした。コールバックを祈りながらスマホを握りしめている時間が、重く、悲しく、とてつもなく長く感じました。
政治に欠かせない「リアリスト」の顔
この1年あまり、安倍さんについて書いた本が何冊も出版され、雑誌の特集も組まれました。実にさまざまな立場から、安倍さんが語られています。
私は、『安倍晋三実録』では、ファクトを正確に残すことに腐心しました。安倍さんとのやりとりはたくさんありましたが、最高権力に上り詰め、そこから転落し、そして再び挑戦するという劇的な政治家人生を近くでウォッチできたことは、記者冥利に尽きる思いです。安倍さんの残した言葉を記録として残すことが、次世代を担う政治家の指針や、国民の判断材料として活きるのではないかと考えています。
「安倍さんの遺志を継ぐ」と話す政治家のなかには、安倍さんの理念にだけ目を向ける人が少なくありません。
しかし、安倍さんは理念を大切にしながら、リアリストの政治家として、戦略的な視点から実績を重ね、水面下では入念な根回しや議論を進めてきました。この視点を、本書にできるだけ盛り込んだつもりです。
「保守一辺倒」「リベラル一辺倒」ではない政治
例えば、安倍さんが採った外交戦略「地球儀俯瞰外交」は、日本を守ることが最終目的です。アメリカ一辺倒にならず、緊密な日米関係をうまく使いながら、多くの国と二国間関係を強化しました。さらに日米関係を、日本のためだけでなく、世界のために活用するという発想が安倍外交の特徴です。
日本が中国やロシアなど、多くの国とつながれば、アメリカにも強く出られる。中国に強く出るために、アメリカだけでなく、インドやオーストラリアともつながる。戦略的に日本のプレゼンスを高めていったのです。
だから日米関係、日中関係など、それぞれのシーンで見せる顔が違うのも当然です。最終目的にたどり着くために臨機応変な発想と戦略をとる、というのがリアリズムの政治です。保守一辺倒、リベラル一辺倒ではない政策決定を次々に進めた安倍さんのリアリストの顔。ここはみなさんに伝えたかったことの1つです。
●日本が原発をゼロにできない2つの理由、米国の反対と安保問題 9/20
日本はなぜ、原発をゼロにできないのか。理由は2つある。
一つは米国の反対である。もう一つは日本の安全保障上の要請である。
米国の反対については、8月31日のTBSの報道1930「日本が脱原発に踏み切れないワケ」の中で、米国が日本の原発ゼロに反対した事例を解説していた。その内容は後述する。
日本の安全保障上の要請とは、原発のもつ抑止機能である。
原発は単なる電力生産のための工場ではないと言われる。濃縮ウランを核反応させ、プルトニウムという核兵器の原料を生成する原発は、潜在的核兵器製造能力の淵源である。
すなわち核兵器を製造する潜在的能力を持っていると思わせることが抑止力にもなるのである。
言い換えれば、潜在的侵略国が、日本が短期間に核兵器を製造・保有できることを考慮して、日本への侵略を断念することである。
ところで、戦後を代表する政治家、中曽根康弘元首相は日本の原子力の生みの親としても知られる。
中曽根氏は1955年8月に、国連第1回原子力平和利用国際会議に出席した後、鳩山一郎首相への手紙の中で次のように述べている。
「国際政治の軸が文明的共存に移り、原子炉を有するや否や、即ち原子力の発達度合が国際的地位の象徴となってきたことが今度の会議ではっきりした」
「日本が国際的地位を回復するのには、中立的である、この科学の発達に割り込むのが最も他国を刺激せず、早い道である」
「日本が将来原子力国際機関の理事国にでもなれば、国際的地位回復の重要な足掛かりとなる」(出典:中曽根康弘回顧録『政治と人生』p171-172)
当時、中曽根氏は、原発を国際的地位の象徴と見ていたことは興味深い。中曽根氏が原発を抑止力として見ていたかどうかは筆者には分からない。
さて、今、日本の核燃料サイクルは、東日本大震災における原発事故(2011年)に伴う原発の廃止や稼働停止、高速増殖炉もんじゅの廃止(2016年)、再処理工場の建設の遅れなどにより破綻の瀬戸際にある。
最も深刻なのが、高レベル放射性廃棄物の最終処分場が決まっていないことである。このままでは、原発ゼロを目指す国民運動が盛り上がる可能性がある。
そのような中、岸田政権は原子力の積極利用に踏み出した。
2022年8月24日に開催された第2回GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議にリモートで出席した岸田文雄首相は、締め括りの挨拶において、原子力に関し以下の3項目を明言した。
1原子力規制委員会による設置許可審査を経たものの、稼働していない7基の原子力発電プラントの再稼働へ向け、国が前面に立つ。
2既設原子力発電プラントを最大限活用するため、稼働期間の延長を検討する。
3新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発/建設を検討する。
この岸田氏の原子力の積極的利用策は、米国の原発ゼロへの反対と我が国の国家安全保障上の要請を認識してのことであろうと筆者は見ている。
さて、本稿は、日本が原発をゼロにできない2つの理由について筆者の個人的な考えを述べたものである。
初めに、報道1930「日本が脱原発に踏み切れないワケ」の放送内容について述べる。次に、核の脅威に対する対応について述べる。
1.報道1930の放送内容等
1-(1)民主党政権が原発事故を受けて政策変更した当時の状況
1 2002年に成立した「エネルギー政策基本法」を受けて、政府は日本のエネルギー政策の基本的な方向性を示す「エネルギー基本計画」を策定し、約3年に1回、見直すことになった。
2003年に定めた「第1次エネルギー基本計画」では、「原子力の推進」を明記した。
2 2010年6月、民主党政権下の策定された「第3次エネルギー基本計画」では、「原子力の新増設」を明記するとともに「長期エネルギー需給見通し」の2030年のエネルギーミックス(電源構成比率)は、「原発5割」となった。
3 日本のエネルギー政策の大きな転機となったのは、東日本大震災に伴う原発事故(2011年)である。
2012年9月6日、民主党は、東京電力福島第一原発事故を受けて、将来の原子力発電への依存度に関する提言をまとめた。
提言では、「『原発ゼロ社会』を目指す」として「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」と明記した。
4 2012年9月12日、日本の原発ゼロに反対する米国は、米戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・ハムレ所長が日本経済新聞へ寄稿し、戦略の再考を促した。
ハムレ氏は寄稿の中で、次のように述べて中国の動向を睨み原発ゼロの再考を促した。
「国家安全保障上の観点からも日本は『原子力国家』であり続ける必要がある」
「今後30年間で、中国は75から125基の原子力発電所を建設する。日本はこれまで核不拡散問題において、世界のリーダーであり続けてきた」
「日本が原発を放棄し、中国が世界最大の原子力国家になったら、日本は核不拡散に関する世界最高峰の技術基準を要求する能力も失ってしまう」
5 また、同じ9月12日、政府は、原発ゼロ政策を説明するため、長島昭久首相補佐官と大串博志内閣府政務官を米国に派遣した。
両氏は、米エネルギー省や原子力規制委員会(NRC)幹部らと会談した。この時の米国の反応は次の(2)のアで紹介する。
6 9月14日、政府の「エネルギー・環境会議」は、2030年代に原発稼働ゼロを目指す革新的エネルギー・環境戦略を決定した。
その5日後の9月19日、政府は「今後のエネルギー・環境政策について」を閣議決定した。
その閣議決定では、「今後のエネルギー・環境政策については、『革新的エネルギー・環境戦略』(2012年9月14日エネルギー・環境会議決定)を踏まえて、関係自治体や国際社会等と責任ある議論を行い、国民の理解を得つつ、柔軟性を持って不断の検証と見直しを行いながら遂行する」というもので、「原発稼働ゼロ」という文言が消えていた。
7 2014年に定められた「第4次エネルギー基本計画」で、「原発依存度の低減」が明記され、原発縮小に転換した。
これを受け、2030年のエネルギーミックスでは、「原子力20〜22%」という数値になった。
ちなみに、2018年7月に策定された「第5次エネルギー基本計画」および2021年10月に策定された「第6次エネルギー基本計画」のエネルギーミックスは、共に従来の「原子力20〜22%」のままであった。
1-(2)報道1930「日本が脱原発に踏み切れないワケ」の放送内容
本項は、筆者が、ゲストの発言の要旨を書き起こしたものである。
番組のゲストは、元防衛大臣石破茂衆議院議員、笹川平和財団研究員小林祐喜氏であり、さらに、当時、日本の原発ゼロに反対する米国に説明に行った元内閣府政務官大串博志 衆議院議員がテレビインタビューでビデオ出演した。
   ア.大串博志氏のテレビインタビューでの発言
・米側の方からはいろいろな意見があったのは事実である。
・今後、原発ゼロにする一方で、稼働している原発から出た使用済み燃料を再処理すると、再処理の結果、余剰のプルトニウムが生まれることに関して、核不拡散の観点から国際安全保障上の問題があるという懸念が表明された。
・また、米国側から懸念があったのが、技術の面である。
原発ゼロの方向を打ち出した場合に、今後原発に関する技術者の育成などが困難になるのではないかという懸念が表明された。
・日本は唯一NPT体制の下で、核を持たない国の中で、核の再処理をフルセットで認められた唯一の国である。
その根拠は日米原子力協力協定の中に定められている。
原子力発電にしても、あるいは核政策についても米国との間で相当密接な関係の中で行われているという特別な立場にある。
そして、日米原子力協力協定の下で米国と相当すり合わせをしなければならないのは間違いない。
   イ.ゲストの笹川平和財団研究員小林祐喜氏の発言
・1979年のスリーマイル島原発事故で米国の平和利用の分野の原子力産業が一気に衰退し、再処理技術や原子力の基盤技術で日本に頼らなければならなくなった。
・今、原子力技術は大型軽水炉から次世代炉といわれる小型炉などに移行していくと言われている。
次世代の小型炉の場合はウラン濃縮に工夫がいる。
通常の原子炉の場合はウラン235の濃縮5%で良かったが小型炉や次世代炉の場合はウラン235の濃縮20%が必要となる。
米国には、ウラン濃縮用の遠心分離機を作るメーカーがないので、民生用のウラン濃縮用の遠心分離機をすべて輸入している。
どこが、民生用の遠心分離機を提供できるかと言えば、ロシアのロスアトム(ROSATOM)、欧州のユレンコ(URENCO)および日本の日本原燃(JNFL)しかない。
米国はエネルギーの自給あるいは同盟国間の供給体制の確立を目指して、エネルギー省が次世代用の濃縮ウランの助成事業を行っており、海外にも門戸を開いている。
ロシアのロスアトムはエネルギー安全保障上から除外されるので、エネルギー省の要望に応えられるのは、欧州のユレンコと日本原燃しかない。
このような状況下で、米国は日本の原発ゼロを認めないであろう。
   ウ.ゲストの元防衛大臣石破茂衆議院議員の発言
石破氏は、日頃から「日本は核兵器を持つべきでないが、核兵器を持つ能力を持っていると思わせることが抑止力となる」と主張している。
・日本が原発をやめることについて、原子力協力協定があるからやめられないとは論理的にはならない。そこを誤解してはいけない。
小林先生が言うように技術的問題、日本の技術がないと米国の原子力政策にとって具合が悪い。
あるいは、ハレム氏が言うように、日本の原子力技術者は、高給で中国、韓国に引き抜かれている。
どんどん日本から原子力技術者いなくなる。原子力技術が失われることはまずい。
日本が核武装することは認めないが、日本から技術者がいなくなることもまずい。
理解しにくいことであるが、そのようなことで米国は対応してきている。米国の一部に日本核兵器論があるが、主流ではない。米国の圧力があるから原発をやめられないというのは正しくない。
・私は原発のウエイトはどんどん落としていくべきだと思っているが、ゼロにすることに賛成はしない。
限りなく落としていくべきだと思う。ただし、原発のウエイトはどんどん落としていくが、原発の安全性(テロ対策等を含む)は高める努力を続けなければならない。
・安全保障上も日本の原発をゼロにすべきでない。ウクライナ戦争もある。中国も石炭があと40年でなくなる。
そうなると中国の原発依存度は高まる。ロシアも同じである。世界の原子力技術を中露が席巻することはエネルギー安全保障上からも好ましいことではない。
1-(3)筆者コメント
世界全体で、2023年1月1日現在では、39カ国・地域で431基の原発が運転中(運転可能炉を含む)で、72基が建設中で、86基が計画中である。
20基以上運転している国は、米国92基、フランス56基、中国53基、ロシア34基、日本33基、韓国25基、インド22基である。(出典:日本原子力産業協会「世界の最近の原子力発電所の運転・建設・廃止動向2023年1月1日」)
原子力の民生利用は、2011年の福島第一原子力発電所事故以降、日本を含む西側先進国で顕著な形で停滞する一方、新興国、とりわけ中国、ロシアが国策として原子力発電の輸出戦略を推進し、また中東各国など開発途上国での利用が拡大する傾向にある。
原子力の民生利用が世界において促進されることで、核物質や原子力技術、特に核燃料サイクルの機微技術(ウラン濃縮・再処理技術)の軍事転用がもたらす核拡散リスクが懸念されている。
とりわけ発展途上の地域においては、原発を新規に導入しようとする国を中心に、中国やロシアなどが積極的に輸出展開を図っている。
原子力の民生利用の分野への中国・ロシアの台頭により核拡散のリスクが懸念される中で、米国は、日本に対して、核兵器への転用が可能なプルトニウムの在庫管理、使用管理において日本が先導して厳しい国際規範を制定する、特に再処理・ウラン濃縮技術の輸出禁止など、機微技術の国際管理において先導的役割を果たすことを期待していると考えられる。
2.核の脅威に対する対応
日本は、現在、日本に対して友好的でない核保有国、すなわちロシア、中国、北朝鮮に取り囲まれている。
これらの国は、共通して、国際法を守らない、武力で恫喝する、理性的でない独裁者に支配されている。
2-(1)核の傘
戦後の日本は、核超大国・米国との同盟関係を軸に自国の安全保障を図ってきた。その象徴が「核の傘」である。
もし日本を核攻撃すれば、背後に控える米国から核兵器で耐えられないような報復攻撃を受ける。よって、日本への核攻撃を思いとどまらせるという考え方である。
ところが、ロシアのウクライナ侵略においては、米国のジョー・バイデン大統領はウラジーミル・プーチン大統領の核の恫喝の前に、米国としての軍事力の行使を完全に抑止された状態となってしまった。
このことは、米国が同盟国に提供する「核の傘」の信頼性を揺るがすことになった。
ちなみに、「核の傘」は通称で、本来は「拡大抑止」と呼ばれる。
「拡大抑止」とは自国だけでなく、同盟国が核・通常攻撃を受けた際にも報復する意図を示すことで、同盟国への攻撃を他国に思いとどまらせることである。
2-(2)韓国の対応
ここで、日本以上に北朝鮮の核の脅威に対峙している韓国の対応について述べてみたい。
韓国は自ら核武装はせず、米国の「核の傘」に入ることで安全保障を図ってきた。ここまでは日本と同じである。
ところが、核・ミサイル開発をやめない北朝鮮に対して、韓国国内では、米国の「核の傘」を含む戦力により韓国への攻撃を思いとどまらせる「拡大抑止」の信頼性を疑問視する声が大きくなってきた。
韓国の政治家たちは、北朝鮮に対して核兵器をいつ、どのように使用するのかという米国の計画について、韓国のさらなる関与を認めるよう、長らく米政府に要求してきた。
北朝鮮の核兵器の大型化・高度化が進むにつれ、韓国の人々はバイデン氏が何をきっかけに、自分たちに代わって核のボタンを押すことになるのか見当もつかない状況に警戒心を強めてきた。
米政府が韓国政府を見捨てるかもしれないとの不安から、韓国は独自の核兵器を開発すべきだとの声も上がっていた。(出典:BBC2023.4.27)
そのような中、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は2023年1月11日の国防部の年頭業務報告で、北朝鮮の挑発の水準が高まれば「大韓民国が戦術核を配備したり、独自の核を保有したりすることもありうる」とし、「もしそうなるとすれば、韓国の科学技術でより早期に韓国も(核兵器を)保有できるだろう」と述べた。
これに対して米ホワイトハウスは翌日、朝鮮半島の非核化を重ねて強調しつつ、韓国の核武装に否定的な考えを遠まわしに明らかにした。(出典:ハンギョレ新聞2023.01.14)
2023年4月26日、訪米した尹錫悦大統領は米国のバイデン大統領とワシントンで会談し、潜水艦派遣や核協議グループ(NCG)新設など対北朝鮮に対する拡大抑止強化で合意した。
この合意は「ワシントン宣言」と呼ばれる。
米政府は、同国の北朝鮮に対する核兵器使用の計画に、韓国が関与することを認めた。韓国はその見返りとして、自国の核兵器を開発しないことに合意した。
米国の拡大抑止に関連し、韓米はこれまで高官級の拡大抑止戦略協議体(EDSGC・次官級出席)、日米は拡大抑止協議(EDD・審議官級出席)など2国間枠組みを通じて協議を続けてきた。
韓米はさらに一歩進んで、2023年4月末の「ワシントン宣言」で、北朝鮮の核の脅威を管理するために両国次官補が四半期に一度会う「核協議グループ」の設立に合意したわけである。
尹錫悦氏の核武装宣言が本気だったのか、あるいは米国との交渉のための駆け引きだったのかは分からないが、筆者は後者であると見ている。
そして、尹錫悦氏は見事米政府から核協議グループ新設という譲歩を引き出し、日本より一歩先んじた。
2-(3)日本の対応
日本では、ロシア、中国、北朝鮮の核の脅威に対する反応が韓国とは異なる。日本では核武装せよという声は上がらない。
国民は米国の拡大抑止をそれほど信頼しているのであろうか。あるいは、いわゆる核アレルギーが核の脅威の対する感覚を鈍感にしているのであろうか。
   ア.核に関する4つの政策
1967年12月、当時の佐藤栄作首相が衆院予算委で、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」とする「非核三原則」を表明し、翌年1月の施政方針演説に盛り込んだ。
その後、「非核三原則」は、我が国の核政策の表看板として長く掲げられ、歴代内閣は同原則を堅持する旨表明している。
1968年1月、 佐藤首相は衆議院本会議において、「非核三原則」、「核軍縮の推進」、「米国の核抑止力への依存」、「核エネルギー平和利用の推進」という核に関する4つの政策を表明した。
「米国の核抑止力への依存」 が政府の政策であるとの見解を、 日本政府首脳が国民の前で言明したのは、 これが初めてのことであった。
そして、 この核に関する4つの政策の表明を契機として、 「米国の核抑止力への依存」 は日本政府の核・安全保障政策の柱として確立・定着したのである。
   イ.核兵器保有は憲法違反ではないとする国会答弁
次に、核兵器保有は憲法違反でないとする2人の首相の国会答弁を紹介する。
1つ目は、1957年5月7日、岸信介首相が参議院予算委員会での発言だ。
「憲法上の解釈としては、私はいわゆる核兵器と名前がつくものは全部憲法違反だという御説もあるようでありますけれども、それはこの技術と科学の発達につれまして、核兵器と言われるところの性格というもの、性質も、また兵器の種類もいろいろこれから出てくることでありましょうし、従って名前は核兵器とつけばすべて憲法違反だということは、私は憲法の解釈論としては正しくない」
こう答弁し、核兵器保有は合憲との認識を示した。(出典:国会会議録検索システム 第26回国会 参議院 予算委員会 第24号 昭和32年5月7日)
2つ目は、1973年3月17日、田中角栄首相は参議院予算委員会の答弁。
「いままで政府が統一見解で述べておりますものは、自衛の正当な目的を達成する限度内の核兵器であれば、これを保有することが憲法に反するものではないというのが、従来政府がとってきたものでございます」(出典:国会会議録検索システム 第71回国会 参議院 予算委員会 第5号 昭和48年3月17日)
   ウ.日米安全保障条約終了後の選択肢
ア項で見たように非核三原則は「米国の核抑止力への依存」が前提となっている。すなわち日米安全保障条約が存続し得る限り、日本は核武装しないということである。
しかし、何事にも終わりが来る。日米安全保障条約が終わるときを想像してほしい。
真偽のほどは不明だが、米ブルームバーグ通信は2019年6月25日、当時のドナルド・トランプ大統領が、日米安全保障条約を破棄する可能性について、側近に漏らしていたことが分かったと報じている。
将来、米国側から日米安全保障条を終了させる意志を通告するかもしれない。その場合には、この条約は、通告が行われた後1年で終了する。
日米安全保障条約終了後の防衛形態は、白紙的に述べれば、単独防衛、米国以外の新しい国との同盟、非武装中立などが考えられる。
どの防衛形態になるかはその時の日本を取り巻く安全保障環境次第であろう。
特に単独防衛の場合は、核武装を選択肢の一つとして残しておきたい。そのためには、将来も潜在的核兵器製造能力の淵源である原発が稼働されていることが必須である。
従って、安全保障上の観点から言えば、将来、潜在的核兵器製造能力(技術者も含む)を維持するために、少なくとも何基の原発の稼働が必要かを検討し、原子力政策に反映することも考えておく必要がある。
ここで、一つ逸話を紹介する。
バイデン米大統領が副大統領の時、中国の習近平国家主席に北朝鮮の核・ミサイル問題での協力を求めた際、「日本が明日にでも核を保有したらどうするのか。彼らには一晩で実現する能力がある」と発言している。
習近平氏が「中国軍は米国が中国を包囲しようとしていると考えている」と述べたのに対し、バイデン氏が日本に触れ、米中の連携がなければ日本の核保有があり得るとの認識を伝えたという。(出典:産経ニュース「「日本は一晩で核保有可能」米バイデン副大統領が習近平国家主席に発言」2016年6月24日)
上記のバイデン氏の話は、北朝鮮の核武装が日本の核武装を触発するという意味であろう。
そうならば、日本は、北朝鮮が核武装するなら日本も核武装を考えるとあえて主張し、米・中・露に本気になって北朝鮮の核武装を阻止するよう働きかけるべきであったと、今になって、筆者は思う。
おわりに
2009年4月には、米国のバラク・オバマ大統領とロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領による米露首脳会談が行われ、「核のない世界」への決意を確認し合った。
また同月には、オバマ大統領による核廃絶に向けたプラハ演説が行われた。それから、14年経ったが、期待したのとは全く違う世界となってしまった。
また、多大な戦禍をもたらした第2次大戦後の教訓に基づき、戦争を防止し、紛争を平和的に解決しようとして創設された国連の集団安全保障体制ももはや実質的に消滅してしまった。
今、国際社会は19世紀末の弱肉強食の世界に戻ってしまった感がある。
さて、危機管理の要諦は、最悪の事態を想定して万全の準備をすることである。
日米安全保障条約が終わるなどの最悪の事態を想定して、自分の国は自分で守る覚悟とそれを実現する手段が必要である。
今、考えられるその手段の一つが「核武装」である。
「核武装」というとおどろおどろしいが、それが現実である。世界の人口の半分近くは「核武装」した国に住んでいる。
筆者は、日米安全保障条約が存続し得る限り、日本は核武装すべきでないと考えている。米国も反対するであろう。
筆者の結論は、日米安全保障条約が終わるなどの最悪の事態を想定して、必要なときにいつでも「核武装」が選択できるように備えておくべき、ということである。
そのためには、エネルギー安全保障上の観点を別にしても、将来とも潜在的核兵器製造能力の淵源である原発の必要最小限の稼働が必要であると考える。
●「ドリル優子」と皮肉られても…小渕優子こそ“初の女性首相”の有力候補 9/20
2014年に政治資金規正法違反のスキャンダルが発覚し、経産相辞任を余儀なくされた小渕優子氏。その小渕氏が、自民党の役員人事で選挙対策委員長に任命された。約9年ぶりの要職復帰となる。だが小渕氏といえば、不祥事の発覚後に「証拠隠滅のためにパソコンのハードディスクをドリルで破壊した」という報道が飛び交い、いまだにネット上で揶揄(やゆ)されている状況だ。だがそれでも、筆者は小渕氏が「初の女性首相」になれる可能性を秘めていると考える。その理由とは――。
選挙対策委員長に小渕優子氏を起用の理由とは?
去る9月13日、岸田文雄首相が内閣改造および党役員人事を行った。今回の人事では、安倍派、麻生派、二階派、茂木派など、各派閥の人材を幅広く登用しているのが特徴だ。党内に“敵”を作らず、政権の基盤を安定させることを重視したとみられる。
すでに各所で詳しく報じられているため、本稿では全員の紹介は避けるが、閣僚19人のうち初入閣は11人。13のポストを入れ替えるなど、「派閥のバランス」を重視しながらもフレッシュな顔ぶれをそろえた。
岸田内閣・自民党は新体制の下で、「異次元の少子化対策」や防衛費の大幅増、マイナンバー制度の改善、経済安全保障体制の確立といった課題に取り組んでいくことになる。
筆者が今回の人事で注目しているのは、岸田首相が女性閣僚を内閣改造前の2人から5人に増やしたことだ。女性閣僚数としては、第1次小泉純一郎内閣、第2次安倍晋三改造内閣と並び過去最多である。
その面々を順に見ていくと、「ポスト岸田」の有力候補の1人である高市早苗・経済安全保障担当相は留任となった。高い専門性と実務能力を評価されての判断だろう(本連載第311回p3)。
そして、岸田首相が特に重視する外相には、元法相の上川陽子氏が起用された。上川氏は東京大学卒・ハーバード大学大学院修了で、法相在任時にはオウム真理教の元代表、麻原彰晃(本名:松本智津夫)元死刑囚らの死刑執行命令書にサインをした人物である。今回の人事でも、その度胸と手腕が評価されたとみられる。
日本はこれまで、女性の人権問題について国際社会から厳しく批判されてきた(第333回)。その中での上川外相の抜擢(ばってき)には、日本における女性政治家の活躍を国際社会に強くアピールする狙いもありそうだ。
また、副大臣を経験していない自見英子(じみはなこ)・前内閣府大臣政務官は地方創生担当相に、加藤鮎子・前国交大臣政務官はこども政策・少子化担当相に抜擢された。この二人の起用に関しては、岸田内閣の支持率低迷が続く状況を打開するために、政権の清新さをアピールする思惑があるのかもしれない。
そして、復興相には無派閥の土屋品子氏が初入閣した。土屋氏は聖心女子大学を卒業後、栄養関連の専門学校で学んだ異色の経歴を持つ。栄養士・製菓衛生師・調理師などの資格も保有しているとのこと。この人物の登用にも、「ジェンダー平等」をアピールする狙いがあると推察される。
一方、党役員人事に目を向けると、選挙対策委員長には小渕優子氏が起用された。この判断は、一連の女性閣僚の登用とは毛色が異なるものだ。
経産相在任時に不祥事が発覚 しばらく裏方に徹してきた小渕氏
というのも、過去の人事も含めて、自民党による女性政治家起用は(1)華やかさと人気を内閣支持率に取り込むこと、(2)「女性の社会進出」に積極的に取り組んでいると世間にアピールすること――の2点を主な目的としてきた。
もちろん、それは決して悪いことではない。女性を積極起用する中で、高市氏をはじめ、野田聖子・前こども政策担当相、小池百合子・現東京都知事など、手腕を身に付けて実績を上げる女性政治家が続々と台頭してきた。世間へのアピールにとどまらず、優秀な人材の輩出につながる効果もあったといえる。
だが、今回の小渕氏の起用は、こうした文脈からは逸脱している。それどころか、内閣支持率を下落させる懸念材料になりかねない。
小渕氏は知っての通り、第84代総理大臣である故・小渕恵三氏を父に持つ世襲議員だ。戦後最年少の34歳9カ月で初入閣し、内閣府特命担当相として少子化対策や男女共同参画などに従事。14年には経済産業相に就任し、順調なキャリアを積み重ねていた。
ところが、経産相在任時に政治資金規正法違反のスキャンダルが発覚し、辞任を余儀なくされた。嫌疑不十分で不起訴となったが、それ以降、小渕氏は閣僚に就いていない。党組織本部長など、どちらかといえば裏方といえる仕事で汗をかいてきた。
そんな「スネに傷持つ身」である小渕氏が、今回久しぶりに要職に起用されたわけだ。
だが小渕氏は、経産相就任前に文部科学大臣政務官や財務副大臣の経験はあるものの、それ以外は政治家として顕著な実績があるわけではない。経済安全保障の専門家として存在感を見せる高市氏や、こども家庭庁の設立に携わった野田氏と比べると見劣りする。
政治家としての「修羅場」の経験値も同様だ。悔しい結果に終わったものの、高市氏、野田氏は初の女性首相を目指して総裁選を戦った経験がある。特に野田氏は「郵政造反議員」として05年の郵政解散総選挙において小泉首相(当時)に反旗を翻し、選挙区に「刺客候補」を立てられる苦境を生き残った。
それに対して、小渕氏は元首相の令嬢として、政界の先輩からかわいがられてきた印象だ。最年少の閣僚起用や、経産相への抜擢は、能力や業績を高評価された人事というよりも、先輩方の寵愛(ちょうあい)が反映された結果だと思えてならない。
もちろん、高市氏や野田氏も21年に「NTTとの会食問題」が取り沙汰されるなど不祥事もあった。両名とて“清廉潔白”というわけではないが、やはり政治家としての実績・経験は小渕氏を上回っているとみてよいだろう。
そんな中で下された、今回の人事。小渕氏の抜擢は「参院のドン」と呼ばれた故・青木幹雄氏の「遺言」に基づくものだという見方が強い。だから筆者は「従来の女性登用の文脈から逸脱している」と述べたのだ。
今回の起用は小渕氏にとって飛躍のチャンス!?
青木氏は小渕恵三内閣の官房長官で、茂木派の長老として隠然たる影響力があった。小渕優子氏の“実質的な後見人”といえる立場だったが、今年6月に89歳で死去した。
一部報道によると、青木氏は生前「われわれの使命は小渕優子内閣を作ることだ」と公言していたという。そして、森喜朗元首相がその「遺志」を後押しした。
青木氏は小渕元首相が急死した際、森氏を後任に決めた人物だとされる。いわば森内閣の生みの親だ。青木氏に恩義がある森氏は、その「お別れの会」で「(小渕優子内閣を作るという)夢がかなうよう最大限努力してまいる」という趣旨の発言をしたと報じられている。
今回の小渕氏の選対委員長への起用にも、森氏の意向が反映されているようだ。それが事実ならば、またもや長老の寵愛による抜擢である。実力でもぎ取った要職だとは到底いえない。
ただし、岸田首相が小渕氏に任せたのは「選挙」の対策である。結果が数字として表れるため、その力量が可視化されてしまう難しい職務だ。「政治家は選挙に落ちたらタダの人」という言葉があるように、結果によって党員の人生が大きく左右されてしまう責任ある立場でもある。
この人事に鑑みると、岸田首相は小渕氏に対して「長老の意をくんでポストは与えるけれども、実力は自らの手で証明しなければならない」と示したようにも思える。
一方で、実力さえ証明できれば、今回の起用は小渕氏にとって飛躍のチャンスでもある。選対委員長として候補者一人一人の勝利に向けて汗をかき、結果につなげれば、派閥を問わず人望を得られるまたとない好機となるからだ。所属派閥である茂木派だけでなく、他派閥にも支持を広げられるだろう。
もし小渕氏が首相就任を本気で目指すならば、この党内での支持拡大が実現のキーポイントになり得る。先ほどの高評価とは矛盾するようだが、高市氏や野田氏は、自ら仲間を集め、若手の面倒を見て汗をかき、派閥を率いて総裁選に勝とうとしたわけではなかった。彼女らは「無派閥」のまま総裁選に出た。いわば、「初の女性首相候補」という神輿に担がれることで当選を目指したといえる。
これに対して、現段階の小渕氏には、神輿に担がれるだけの人望や実力はないかもしれない。しかし、長老から与えられた機会ではあるが、自ら汗をかき、泥をかぶって仕事をし、成果を出すことができれば、従来の女性政治家にはなかった「数の力」(=党内での支持基盤)を得られる立場についた。
その上、政府は衆参両院の候補者に占める女性の割合を25年までに35%にするとの公約を掲げている。公約実現に向けて女性候補者を育成し、立候補・当選させていけば、「小渕ガールズ」とも呼ぶべき自らの権力基盤となるグループを形成できるかもしれないのだ。
なにより、選対委員長として成果を出せば、茂木派の後継者として認められて「小渕派」を率いるポテンシャルも秘めている。
ただもちろん、これらはあくまで仮定の話であり、そう首尾よく事が運ぶとは限らない。岸田首相も、何度も総裁選に挑戦して煮え湯を飲まされるような経験をした後に当選した。小渕氏も根気強く挑戦し続ける必要があるだろう。
「ドリル疑惑」の払拭も避けては通れない
そして、総裁選と直接的な関係はないが、今後の小渕氏にとっては「国民からのマイナスイメージの回復」も重要な課題となる。
今回の党役員人事が発表された際、SNSの「X」(旧Twitter)上では「ドリル優子」という言葉が飛び交った。
14年のスキャンダル発覚時に、東京地検特捜部が小渕氏の後援会事務所などを家宅捜索すると、会計書類を保存したパソコンのハードディスクが電動ドリルで破壊された状態で見つかったという。このことを揶揄(やゆ)した小渕氏の異名だ。
この「証拠隠滅疑惑」に対する国民の視線はいまだに厳しい。だが、たとえ国民に不人気な政治家であり、長老の寵愛によって要職を与えられたにすぎなくても、小渕氏が大きな可能性を秘めていることに変わりはない。
繰り返しになるが、汗をかき、泥をかぶって「数の力」を得られれば、日本初の女性首相になれるかもしれないのだ。小渕氏は、自らに課せられた使命の大きさを知り、汚名返上に邁進すべきである。
●実は“タカリ”の被害者? ドリル優子が穴をあけてまで隠したかった大問題 9/20
9月13日に行なった内閣改造で、過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を入閣させた岸田首相。一方副大臣と政務官に目をやると女性はただの1人も選ばれず、対象的な結果となっています。その「原因」を考察しているのは、米国在住作家の冷泉彰彦さん。冷泉さんはメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で今回、岸田氏の女性観に問題があるわけではないとした上で、女性の副大臣・政務官ゼロという問題の背景に考えられる「本当に怖い話」を解説しています。
ドリル優子と「副大臣・政務官に女性ゼロ問題」を考える
どうも日本の政局には閉塞感が濃くなっています。別に岸田氏を降ろせとは言いませんが、国の成長力と生産性を確保するための必要な変更に取り組むように、何とか少しでもマトモな方向を向いて欲しいと思うばかりです。その準備として、3点ほど指摘しておきたいと思います。
1.西村康稔に加藤勝信。コロナ禍に責任回避を続けた政治
コロナ禍については、最新変異株の動向はあるにしても、社会的には出口から出てしまっています。そんな中で、尾身茂博士も委員会の解散により、政府のポジションからは解放されたようです。
尾身博士に関しては、コロナ対策に不満を持つ人々があれこれ悪口を言っています。アメリカでも同様で、功績のあったトニー・ファウチ博士は保守派を中心に散々な言われ方をしていました。
ですが、尾身博士もファウチ博士も感染症の専門家です。感染症の専門家のミッションというのは単純で、研究している感染症による死亡数を少しでも下げるのが、この方々のミッションです。
その一方で、対策等による社会的コストを考えて、最適解の政策を決定し、国民の協力を求めるのは政治家の仕事です。政治家が逃げ回っていて、また時には官僚組織の防衛に向かい、時には専門家と対立して経済優先に傾斜したり、あるいは経済への影響を専門家のせいにしたりしたのは、責任回避だと思います。
専門家はコスト100で死亡極小を主張するのが仕事です。一方で経済の専門家は、経済コストは極小で、死亡は許容範囲を主張するのでいいわけで、その中間にある最適解を決定して宣言し、国民に説明するのは政治の責任です。
コロナ禍の間、政治はずっとこの責任回避を続けてきました。例えばですが、西村康稔とか、加藤勝信というような方々は、「あれではダメだった」ということを、厳しく自戒すべきです。
2.ドリル優子がドリルを使ってまで消したかった問題
小渕優子氏の選対委員長就任が話題になっています。小渕氏については、2014年に関連する政治団体の政治資金収支報告書に虚偽の記載が発覚しました。その際に、東京地検特捜部による捜索が入る前に事務所のPCのハードディスクにドリルで穴を開けて、廃棄したのは有名な話です。このエピソードを受けて、同氏は「ドリル優子」というニックネームをつけられて、現在に至っています。
この事件の顛末として、小渕氏は経済産業大臣をクビになり、元秘書は有罪判決を受けました。ですが、大切なのは「ドリルで消したこと」ではありません。そうではなくて、「ドリルで消さなければいけないような問題」があったのが問題なのです。
ドリルで消さねばならなかった問題とは何だったのか、それは、90年代に様々な紆余曲折を経て成立した「小選挙区比例代表制による政治改革」が踏みにじられたということです。もっと言えば、政治改革が想定した、政治とカネの問題におけるカネの流れが逆流しているのです。
まず、政治改革の第一の狙いは、それまでの中選挙区制における「自民党候補同士の熾烈な選挙戦」が、多額のカネを必要としていたわけですが、これを断ち切ろうとしたわけです。具体的には、定数1の小選挙区を設定すれば保守同士の戦いはなくなり、政策本位の選挙戦になるというのが制度設計でした。
中選挙区制の時代には、例えば80年代に岡山に住んでいた私が聞いた話では、倉敷とか総社といったあたりでは、橋本龍太郎と加藤六月が熾烈な選挙戦をしていて、陣営は「今日はこっちは天丼、こっちはカツカレー」などと有権者を接待して買収していました。それこそ、カネが無限にかかるような話だったのです。
小渕氏の場合も、お父様の恵三氏の場合は、中選挙区で中曽根康弘、福田赳夫と常に厳しい選挙戦を闘っていたわけです。そんな中で、有権者をまとめるための「観劇ツアー」などが常態化していたのでしょう。明治座に昼食、お土産、往復バス付きで招待する、会費は格安で差額は買収という方法です。
問題は、小選挙区制度になったら、この「観劇ツアー」は要らなくなったわけです。それこそ、恵三氏から承継した小渕優子氏の選挙区は、無風区と言われて常に得票率は70%前後となっていました。野党は対立候補を立てるのから逃亡してせいぜい共産党の泡沫候補が出るだけで、現在に至っています。ですから小渕優子氏は将来を嘱望された有力議員として全国で応援演説をする立場であり、地元では選挙運動をしないで良かったのです。
にもかかわらず有権者は「格安観劇ツアー」をせびり続けた、これは買収ではありません。むしろ反対です。タカリであり、悪質な賄賂の要求です。全く理不尽なカネであり、その源泉が実は選挙が公営化されたために税金から(一部かもしれませんが)出ていたわけで、観劇に行った人は全員が収監されて公民権停止になっていいレベルの犯罪だと思います。
政治改革の目的を完全に踏みにじったドリル優子
今回文春がすっぱ抜いた、カネがファミリー企業に流れていたという問題も同様です。政治改革前に、政治家のファミリー企業が問題になるというのは、例えば田中角栄がそうでしたが、ファミリー企業で儲けたカネを政治に投じていた、これが「政治とカネの不正」だとして叩かれていたのです。
とにかく、カネを作って投入した奴が中選挙区で有利になる、これではカネで権力を買うようだから、これを防止するというのが70年代からの政治改革論議でした。小選挙区制と、選挙の公営化は、この問題を断ち切るためだったのです。
ですが、今回のスキャンダルは、ガソリン代などをチマチマとファミリー企業から買って、カネをそちらに回していたというのです。直ちに違法かどうかは不明ですが、まるで、セコい野党系の素人政治家が、身内を秘書にしたり、自分の家を事務所にしたりして摘発されるのと同じ構図です。
とにかく、小渕氏の問題は、90年代に国を挙げて必死になって実現した政治改革の主旨、つまりファミリー企業などで違法な政治資金を作って、これを「保守対保守の熾烈な選挙戦に投入するのを止めさせよう」という制度の目的を完全に踏みにじっているということなのです。
つまり、選挙区にライバルがいないのに、観劇ツアーをせびる有権者を黙らせられなかったとか、昔は政治資金を支えたはずのファミリー企業が、不景気になって反対にカネをせびる問題を断れなかったという「マネーの逆流」が起きていたのです。
情けないことに、小渕氏は支持者への説明に「2年間かかった」と言っています。このコメントを聞くと、「自分が政治資金問題で疑惑を招いて信頼を失ったので、支持者に許してもらうのに2年かかった」という風に聞こえます。ですが、本当はそうではないかもしれません。「先代の時は観劇ツアーがあったのに、お嬢になってから法律やなにやらで、できないというので、自分としてはガッカリだ」というタカリ構造の有権者に対して「もうできないんですよ」と「説得」するのに2年かかったのかもしれないのです。
ドリルでHDを破壊しなければならなかったのは、そうした内容であったと考えるのが自然です。
だとしたら、小渕氏は被害者なのかもしれません。ですが、仮にそうであれば、こんなセコい、そして違法な既得権益すら潰せない政治家には、巨大な抵抗勢力と戦って、日本経済をグローバリズムに適応した姿に変更するのは無理だと思います。この方への過大評価はもう止めにしたら良いのではないでしょうか。
ついでに言えば、小渕氏との政策の違いをしっかり打ち立てた対立候補をぶつけることから、逃亡し続けた立憲の泉代表には、少なくとも「ドリル優子」を面白おかしく批判する資格はないと思います。
3.「女性副大臣・政務官ゼロ」に透けて見えるコワい話
閣僚に5人の女性を起用したのはいいのですが、副大臣と政務官にはゼロだったということで、岸田氏の内閣改造には批判が出ています。全くもって、情けない話です。
では、岸田氏もしくは岸田政権が「女性に対して差別的」だとか「女性の活躍に否定的」なのかというと、必ずしもそういうことではないと思います。
問題はもっと深いところにあります。
1つは、とにかく党内基盤が盤石ではなく、当選回数と統治スキルを勘違いして、猟官してくる政治家を「抑えきれない」ということです。
2つ目は、総裁選から逆算して、味方を作り敵を封じるためには、人事のパズルには失敗できないということです。
3つ目は、仮に政権が強力で1番目の問題からも、2番目の問題からもある程度自由で、本当に適材適所人事ができる環境にあったとしても、核になる岸田氏自身に「やりたいことがない」あるいは「5年から10年レンジですら国家の大計がない」ということです。
たぶん、3が最大の問題であり、同時に政権が弱いので1と2も重くのしかかっているということなのでしょう。その結果として、あくまでパズルをこのように組むしかなかったのだと思います。
それにしても、3の問題は本当に心配です。今回更迭されたという木原誠二氏の書いたという「新しい資本主義」がいい例です。再分配強化と、景気対策の話と、経済安保の話という全く別方向の話が「ワンプレートに和洋中が乗ったチャンポン定食、しかも食い合わせは最悪」という格好で並んでいるだけです。
ここから透けて見える「何もない感」というのは恐怖でしかありません。しかしながら、もっとコワいのは「それよりマシ」な代替チョイスがないということです。
仮の話ですが、茂木とか萩生田というような人々が本気で「次」を狙っているのなら、今のうちから思い切り世論との直接対話を始めていただきたいのです。中期的な国家の方向性について「何か」考えている内容があるのか否か、そして菅義偉、麻生太郎のように世論との対話スキルが「決定的に欠落している」ことはないかどうか、とにかく今から自分をさらけ出して、世論の評価を求めていただきたいのです。
茂木氏は統率力、特に部下のモチベーション向上スキルが足りないという世評がありますが、それが間違いであることを証明していただきたいです。萩生田氏は、短期間に文科相と経産相を経験したわけですから、いかに現在の日本が必要としている教育と現実がズレているか分かるはずです。ですが、それでも文科にも「今でもいい顔」をしているのなら、全く信用できません。経産行政と文部行政の矛盾に気づかないか、気づいても放置するのであれば、そんな政治家は必要ありません。
話が脱線しましたが、女性の副大臣・政務官ゼロという問題の背景に考えられることは、本当に本当にコワい話だと思います。
●日韓に依然ある深い溝 日本の「不安」と韓国の「不満」 9/20
日本の外務省高官が「年末に岸田首相が今年もっとも多く会談した外国首脳は誰かと数えたら、間違いなく尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領になるはずだ」と驚きを込めて話していた。韓国が3月に徴用工問題の解決策を発表して以降の急速な関係改善は、それまでが悪すぎたこともあって戸惑うほどだ。
ただあまりに急激な変化であるだけに、相手の思いにまで目を向けるのが難しくなっている側面もあるのではないか。それを象徴するような言葉を先日、ソウルで開かれた民間対話「日韓フォーラム」で聞いた。あるセッションで司会者が「日本側には期待と不安があり、韓国側には期待と不満があるようだ」とまとめたのである。
尹錫悦大統領のリーダーシップ
30年ほど前から続く政治家や研究者、ジャーナリストらによる対話だ。現在の国際情勢を考えれば協力強化以外の選択肢がないことや、尹大統領のリーダーシップが大きな転換点を作ったことに異論は出なかった。
日本側からは、東京電力福島第1原発から出る処理水の海洋放出に対する韓国政府の姿勢への謝意も語られた。韓国が中国と一緒に反対に回っていたら、日本にとって大きな負担になっていたからだ。
にもかかわらず語られたのが「不安」と「不満」だった。日本側の不安は「次の大統領になっても続くのか」であり、韓国側の不満は「日本が相応の誠意ある呼応をしてくれない」というものだ。毎年のように参加し、個人的な親交を持つ人も多い場でもこうした認識ギャップが出てくることは軽視しない方がいいだろう。
日本はきちんと対応してくれない
それでも対話の基調は「不安」や「不満」より、「期待」に焦点を当てようとする明るいものだった。だが、終了後に尹政権の要人と会ってみると、やはり「不満」の強さを感じざるを得なかった。日米韓連携を進め、日韓関係を重視して努力しているのに、日本がきちんと応じてくれないと強い語調で語っていたからだ。
韓国世論を刺激しやすい歴史認識問題と関連しても、日本側の否定的な態度に依然として悩まされているのだという。8月の日米韓首脳会談を受けて、韓国外務省は世界各地の大使館や領事館に現地で日米との意思疎通を強化するよう指示を出した。だが、これも日本の反応が悪くて空回りというか、肩すかしをくらったような感じなのだとぼやくのだった。
後者については肩に力が入りすぎという気がしないでもないのだが、とにかく尹政権の意気込みは伝わってくる。それだけに日韓フォーラムで聞いた「不満」が思い出された。
なぜ釜山万博を支持してくれないのか
現場のレベルでも似たようなものである。韓国側が口をそろえて不満を語るのが2030年の万博誘致問題だ。韓国・釜山とサウジアラビアが有力候補で、今年11月に開催地が決まる。尹政権にとっては重大な関心事で日本に支持してほしいと頼んでいるのだが、日本は応じない。
万博開催で韓国を支持すると岸田文雄首相が言えば、それだけで韓国側は大喜びするのにやろうとしない。韓国政府関係者は「サウジの反応を気にして、経産省がストップをかけているようだ」と指摘する。
この関係者は「政権の方針があるから、われわれは日本とうまくやっていると取り繕わないといけない。でも、日本政府の反応が悪いのは万博に限らない」とこぼしていた。ソウルの同僚によると、韓国外務省の幹部からも「日本政府は韓国との関係はもう大丈夫と安心しきっているのではないか」という苦言を聞くという。
元東京特派員である韓国紙「朝鮮日報」の朴正薫(パク・ジョンフン)論説室長は9月2日のコラムで、大阪・関西万博誘致の際に当時の李明博大統領が支持を公言したのに、釜山への万博誘致の支持要請に日本が応じないのであれば「真心が疑われる」と批判した。
朴氏は「日本は学ぶべきところの多い大国だが、国力に似合った『大国外交』をする国ではない。価値・原則・大義よりも目の前の損益を計算する『そろばん外交』を駆使する」と書いた。さて、これにどう答えるのが適切なのだろうか。
●処理水放出は30年で終わらない!? 建前だらけ…原発廃炉への道筋 9/20
8月末に始まった福島原発の処理水の第一回目の放出。残念ながら、処理水放出は政府などが示すように今後30年程度で終わることは決してない。その年数は根拠のない建前の数字であり、関係者や専門家でそれを信じているものはまずいない。つまり今のままなら処理水は、その何倍、ひょっとすると何十倍もの期間にわたって生まれ続けることになる…。
「汚染水」と「処理水」の違い
確認事項として、汚染水と処理水が発生する仕組みを示しておいた。
下図のように、発生する汚染水をALPSで処理することで処理水と呼ぶことになっている。しかし、中国は全体を汚染水と言い続けていて、それが現在の騒ぎの原因となっている。
一方、ALPS通過後の処理水にトリチウムという物質が残ってしまうが、世界中の原発の通常運転でも発生したトリチウムを含む水を放出処理しているから大丈夫というのが、東京電力と政府の姿勢である。
   処理水発生のメカニズム
ここの議論は今回のコラムの主目的ではないが、一点だけ事実を記しておく。
福島のタンクにたまっている“処理水”のうち、そのまま希釈して放出できるものは全体の3分の1にすぎない。残り3分の2は、事故当初からの基準を超える様々な放射性物質が入り込んでいて、放出前に再度の処理をしなければならない。つまり、現存する“処理水”のうち多くは汚染水と言わざるを得ない。
国、東電はこれを隠してはいないが、知らない人も多い。まず多面的で積極的な情報公開が必要なのは言うまでもない。
もう一つの問題は、この放出がどのくらい続くのかということである。
処理水放出期間の「30年程度」に根拠なし
東電と政府によると「放出期間は30年程度に及ぶ見通し」とされている。これは、原発の廃炉が達成されるまでの期間と合致する。理屈は一応あっているが、では、この廃炉までの30年はどこから来ていて、どれだけ確実なものなのだろうか。
実は、ここから急にその根拠が揺らいでくる。
   廃炉に向けた中長期ロードマップの目標行程(マイルストーン)
上記の図が、いわゆる「廃炉工程表」である。
すでに何度か改訂され2019年12月のものが最新となっている。一番右の、「廃炉措置終了までの期間(30〜40年後)」が、廃炉までの年数にあたり、基準年は一番左の冷温停止状態達成の2011年12月なので、廃炉は2041年から2051年となる。
第2期の「燃料デブリ取り出し開始」の2021年12月は過ぎてしまい、まだ始まっていない。すでに遅れているのが分かる。今年の後半に試験的に取り出しを行うとしているが、グラム単位である。デブリの総量は880トンなので、廃炉までの残り20〜30年はどう見ても現実的でない。
では、もともとの30〜40年はどうやって決めたのであろうか。
実は、根拠はない。
当時の原子力委員長が、「準備に10年、炉心融解した3つの原子炉に10年ずつで40年だが、意味のない計算式」と語り、地元に配慮した政治家が(期間を)値切ったと政治判断を示唆している(朝日新聞2021年2月11日付)。
結局、処理水の放出期間30年程度も同様に何の保証もない。
ドイツの廃炉年数との近似性
筆者は、福島事故後の2011年から2012年にかけてドイツ東北部の原発廃炉の現場を取材し、テレビ番組にした経験を持つ。当時、東ドイツ最大の原発基地の廃炉が20年以上かけて行われており、近接地の中間貯蔵施設にも入った。
ドイツでは、原発が廃棄される場合、使用済み核燃料はガラス固化されてキャスクに収められ、解体された原子炉格納容器や蒸気発生装置などと一緒に中間貯蔵施設に収納される。この後、最終処分場へと運ばれるのだが、中間施設が“最終化”しないために、法律で保管の年限が決められている。これが40年間なのである。
世界最悪規模の原発事故の処理がどのくらいの時間で可能なのか、日本に限らず世界中で算定できる国や機関は当然なかったであろう。当時、えいやの政治判断なのか、ひょっとするとドイツの廃炉への年数を参考にしたかもしれない。
しかし、ドイツのケースは通常の原発の廃炉である。燃料デブリの取り出しにめどが立たず、これ以外にも激しく汚染された原子炉建屋や原子炉格納容器などを考えると、日本では100年単位の時間が費やされても何の不思議もない。
建前だらけ…日本の原発廃炉への道筋
一度決めたことを変えない。
決定にしっかりした根拠があり、信念を持ってことにあたると言うなら、それは良いことなのかもしれない。しかし、単なる建前や責任逃れのためであるなら、それは害悪でしかない。
こと原子力発電に関しては、この建前が多すぎる。
今回の廃炉への道筋も、建前だらけと言っても過言ではない。2019年の廃炉工程表の改定にあたって政府は、「2041〜51年に廃炉を終える目標を堅持した」とある。事故後の厳しい状況下はともかく、何年もたった後に、いまだに建前を守っている。できるはずのないことをできるということで、間違った結論が導き出される可能性が増している。そもそも目指す「廃炉の定義」さえ、示されていない。
建前が残る限り、処理水は30年後に出ないことにされる。また、廃炉に要する費用も極端に低くなる。これを都合が良いと考える人たちもいるのだろうが、いずれ違った現実を突きつけられるのは、私たち国民である。
事故後に作り上げられた建前はいったんチャラにして、合理的かつ現実的な数字を作っていくべきである。厳しい事実が待っているであろうが、それは乗り越えるしかない。
コラムの途中でドイツの中間貯蔵施設の例を挙げたが、これにはドイツの政治家の言葉がセットになって「落ち」としてついてくる。ドイツでも、日本と同様にいまだに最終処分場が決まっていない。
つまり、収納されている核汚染物が、40年で中間貯蔵施設から出ていく行き先がないのである。このことを、現地選出の国会議員に質問したが、答えは「保管期間を延長すればいい」であった。日本よりずいぶんましな制度だと思うが、ドイツの政治家も建前で生きているのである。
●最強の官庁“財務省”、罪は多々わかっていてもだれも罰することができない 9/20
恥ずかしながら、わたしは55歳過ぎごろまでまったくの経済(財政)音痴、政治音痴だった(いまもそれほど変わらない)。
「国の借金800兆円って、なんのことだ?」と思い、「国はいったいだれに借金してるんだ?」と思った。また「国民一人当たりの借金は数百万円になる」といわれ、ネットには「日本の借金時計」なるものがあって(今もある)、毎秒200万円ほど増え続けていて、このままだと国の財政はやがて破綻すると脅されていた。
その後、「国の借金」とは基本的に国債の発行残高のこと、正確には国の負債額だとわかったが(現在の額は約1230兆円)、考えてみれば、国の負債額と「国民一人当たりの借金」など、なんの関係もないのである。
国の借金だけをいい募り、その額を国民の頭数で割って、無意味に一人あたりの借金額を示して国民を不安にし、国家財政の危機を煽って増税の不可避性を植え付けたのは財務省である。
今年の10月から導入されるインボイス制度に関連して、ある友人がそれを推し進めているのは財務省であり、財務省はろくでもないことばかりやると憤慨した。わたしもインボイスは無関係ではないらしく、出版社から何通も通知がきていたが、めんどうだったのでほうっておいた。
しかしいよいよ期限が差し迫ってきたので、この際その制度についてすこし勉強してみようと思い、ついでだから財務省関係の本も読んでみようと思ったのである。
おあつらえ向きの読みやすそうな本があった。森永卓郎氏の『ザイム真理教』(フォレスト出版)である。
大蔵省と専売公社主計課は「隷属関係」
この本を読んで、官僚世界の支配構造の前近代性に驚いた。森永氏は、「私は大蔵省の『奴隷』だった」と衝撃的な告白をしていたのである。
森永卓郎氏は1957年生まれの66歳である。東京大学卒業後、氏は日本専売公社(現JT)に入社した。当時、大蔵省主計局と専売公社主計課の関係は「隷属関係」にあった。「大蔵省の言うことには、絶対服従」だったのだ。
予算編成の時期になると、森永氏は大蔵省主計局の前の廊下で「ずっと座っていること」が仕事だった。予算の査定をしている主査がなにかわからないことがあると、部屋のなかから「お〜い、もりなが〜」と叫ぶ。数秒以内に主査の前に駆け付けないと「怒鳴りつけられる」。専売公社は当時、大蔵省の“植民地”だったのである。
「自分の周りの人間が、誰しもひれ伏してくる。自分の命令には、みなが絶対服従だ。本当は、大蔵省の役人に頭を下げているのではなく、予算というお金に頭を下げているにすぎないのだが。それには気づかないのだ」
これはあらゆる権力の支配・被支配構造の本質である。だがそんな森永氏も、「大蔵省から予算を取った後、今度は工場や支社に予算を配分する立場に変わる」。すると今度は自分が「ミニ大蔵省」になって、下に威張り散らすのだ。これまたあらゆる権力の行使に共通する階段構造である。
関東支社の予算課員が入社一年目の森永氏に、忘年会をセットするから来ていただけないかと伺いを立てる。するとあの森永氏がこういったというのである。
「行ってもいいけどさ、女連れて来いよな」(そして当日、女性の予算課員がやってきた。それが現在の妻だという)。
ノーパンしゃぶしゃぶ接待花盛りだった時代のことである。「MOF担」というものがあるのを知ったのもこの時代。もし森永氏が大蔵省の役人だったら、自分は接待にずぶずぶになっただろうといっている。人間は弱いものだから、と正直である。
財務省に唯一洗脳されなかった財務官僚
高橋洋一氏の『さらば財務省! 政権交代を嗤う官僚たちとの訣別』と『財務省を解体せよ!』は、下手な小説を読むよりはるかに読み応えがあった。ほかにも同氏の『数字を読めない「文系バカ」が日本をダメにする』を読んだ。
高橋氏は、森永氏に“財務省に唯一洗脳されなかった財務官僚”といわれた稀有な人である。アメリカ占領軍に、「従順ならざる唯一の日本人」といわれた白洲次郎みたいな人である。氏は1955年生まれの68歳。
冒頭で触れた国の借金による財政破綻論のウソは、元大蔵(財務)官僚の高橋洋一氏によって突き崩されたのである。もう20年以上前になるか、テレビで高橋洋一氏が、次のように述べたのだ。
国の借金が何百兆円あろうと、それだけで国家財政が破綻することはない、なぜなら負債の反対側には国の充分な資産があるからだ。あたりまえのことじゃないか、という涼しい顔で高橋氏は語っていたものだ。
かれのこの説明は何回か聴いた。いつも早口でしゃべるあまり風采の上がらぬおじさん(失礼!)のようで、こんな正直な人が政府のなかにいるのかと不思議に思え、最初は、そういうものか、と半信半疑だった。
高橋氏がどういう人かはわからなかった。だがかれは自信満々だった。こんなことをはっきりいう人が政府内にいるのかと思った(かれは日本ではじめて国のバランスシートを作った)。
高橋氏もかつて大蔵省にいた。森永卓郎氏は東大経済学部卒だが、高橋氏はおなじ東大出身でも異色だった。理学部数学科卒である。
高橋氏の学生時代の将来の夢は数学者になることだった。理系の人間はふつう公務員試験をうけない。むしろ「理系にとっては公務員など眼中にない存在」だった。
「神童」なのか「変人」なのか
しかしたまたま試験を受けて合格した。「2年に1人は君のような人材がいてもいいんだ」と珍しがられ、「いわば変人枠」で大蔵省に勧誘されたという。上司たちは氏を最初は甘く見ていたのだろうが、高橋氏はただの「変人」ではなかったのだ。
わたしもあの早口おじさんが、まさか数学の神童だったとは知らなかった。中学のときは「主要教科の教科書は一日目で読み終わった」。暗記科目は「フォトメモリー」のように「読んだらほとんどが記憶に残った」。
なにより「数学はものすごくできて、中学生のときに東大等の大学入試の数学の問題は簡単に解けた。東大の数学問題なら百点はとれた」というのだ。中学生ですよ。「神童」ではないか。旺文社の全国模試は「常に数学は全国一位だった」。
この数学の才能が、財務省のなかで出る杭としても叩かれず、出過ぎた杭として引き抜かれもせず、だれからも一目も二目も置かれた秘密である。
ちなみにかれは「東大」などなんの評価もしない。「『東大がいい』という、くだらない価値観にごまかされないほうがいい」「東大に行こうが、三流大学といわれる大学に行こうが、ちょっとした差でしかない」と断言し、それどころか「大学に行く必要があるのかとすら思う」とまでいっている。
最高官庁といわれる財務省の官僚は日本最高のエリートだと思っているが、「それは完全に、東大法学部をはじめとする日本の文系社会におけるヒエラルキーの延長線上にあるイメージにすぎません」。だから「国際的に通用する人材、どこへ行っても他流試合ができる人は、財務官僚のなかの4分の1程度」しかいない。「東大など世界から見れば、お話にもなりません」
東大などはなから相手にしていない人だからいえる言葉ではあろうが、高橋氏はほんとうにそう思っている。
財務省はどうして「増税」にこだわるのか
高橋洋一氏は財務官僚についてこういっている。
財務省が「政治家やマスコミ、他省庁をひれ伏させ、“最強官庁”の名をほしいままにしてきた」のは「予算編成権と国税査察権」があるからだ。そのほかに、「天下り先のポストを差配する」人事権もある。財務省は「総理、官房長官、官房副長官のすべてに秘書官をだしている」)。
官僚にとって一番大事なのは国よりも省、とよくいわれる。要するに、「いかに多くの予算を確保し、OBを含めた自分たちの利益を確保できるか」という、いわゆる「省益第一主義」である。
しかし「財務官僚の場合、これに加えて『財政再建主義』という原則が加わります」。つまり「なるべく歳出を減らし、歳入を増やすことに固執する」。これを実現するための「最も有力な手段」が「消費増税」である。
財政再建主義は、財務省の絶対譲れない宗旨である。だから減税など決してしない。ガソリンがいくら高くなってもガソリン代の4割は税金だが、ガソリン減税はしない。財界には消費増税時に賛成してもらったので、企業の内部留保がいくら巨額になろうとも、「それへの課税は検討されることはありません」。日本新聞協会は消費税のとき、「租税特別措置」という餌を与えられて消費増税を免れたため、財務省批判ができない。
財務省はどうして「増税」にこだわるのか。「結局のところ、自らの権益を拡大するため」つまり「歳出権の拡大」だ、というのが高橋氏の見解だ。省の利益・権益のために国政を左右するのかと思うが、官僚たちならやりかねないのだ。
しかしそれでいて財務官僚たちは、自分たちは「国士」だと勘違いしているという。「国士とは身を投げうって国家を支える憂国の士ですが、悪者になってもいいから、あえて国民に不人気な増税という選択肢をわれわれは選ぶのだと思い込み、正当化している」
「予算編成」と「徴税」の組織を分けるべき
それだけではない。官僚は無謬説の上にたっているから、絶対に自分たちの政策の非を認めようとしないのである。
高橋氏は、文書改ざん、事務次官のセクハラ発言、平気でうそをつく不誠実な答弁、、財務官僚の傲慢さやおごりなど、最強がゆえにやりたい放題の財務省を改革するには「財務省解体」という荒業が必要だと主張する。財務省解体とはどういうことか。「歳入庁」の新設である。
「国税庁を財務省から切り離し、日本年金機構の徴収部門と合併させ」、「新たに税金と年金などの社会保険料の徴収を一括して行う『歳入庁』を新設すること。つまり、国税庁と日本年金機構の徴収部門を統合した組織をつくる」ことである。
現状は「他省庁は予算を求め、政治家は徴税を恐れ、マスコミはネタを求めて、財務省にひれ伏しています。世界を見渡しても『予算編成権』という企画部門と、『徴税』という執行部門が一体となっている財務省のような組織は例外的です」
財務省は税の入口と出口をがっちりと握って放さないのである。
現在、「年金保険料の徴収漏れは数兆円規模と推計」される。しかしこれは歳入庁を創設すれば減らすことができる、と高橋氏はいう。マイナンバー制度も「消費税インボイス」をやるのなら、歳入庁創設を前提にしなければ有効とはいいがたい。そうすれば「税・社会保険料で合計10兆円程度の増収になる可能性がある」
しかしできない。政治家は国税庁の上部組織の財務省主税局に頭があがらない。財務省も権力の源泉であり自分たちのポストでもある国税庁を死守する。国税庁長官は事務次官になれなかった人が最後につくポストで、東京・名古屋・大阪国税局長もキャリア官僚のポストだ。マスコミも国税庁の調査能力を怖れて議論をしない。
歳入庁の創設に財務省は徹底的に抵抗する。「国税庁は財務省の“植民地”になっており、国税権力を財務省が手放さないのです」
財務省の罪は多々わかっている。だがだれも罰することができないのだ。
財務省と戦った安倍元首相
わたしは安倍晋三首相をある意味、誤解していたところもある。
百億円単位の巨額を使って軽薄にアベノマスクを使った愚策や、伊藤詩織氏をレイプしたとされる元TBSワシントン支局長の山口敬之氏の不逮捕疑惑や、森友問題での国会答弁の曖昧さなどで、わたしは安倍首相が好きではなかった。国葬にも反対だった。
これらの点ではいまでも反省はないが、安倍首相が財務省と戦い、国民のための政治を本気でやろうとしていたとはじめて知ったのである。高橋氏は第一次安倍内閣のブレーンを務めた。財務省は財政再建・金融引き締めだが、安倍内閣は経済成長優先・金融緩和で対抗した。「増税ではなく経済成長による増収」を目指した。
安倍首相が財務省依存から脱して、消費増税の二度にわたる延期をし、財政出動ができたのも、日銀の副総裁に「金融緩和に積極的なリフレ派の岩田規久男氏を起用でき」、積極的な金融緩和に取り組めたからだという。
高橋洋一氏は第一次安倍政権で「旧社会保険庁を解体し、歳入庁を創設しようとした時」、財務省は「激しく抵抗」したという。理由は「国税庁を財務省の配下におけなくなると、財務省からの天下りに支障が出る」というばかばかしいものだった。
高橋洋一氏みたいな人に一回総理大臣をやらしてみたいと思う。近々『安倍晋三回顧録』も読むつもりだ。 

 

●「隙あらば増税」の影消えず…岸田政権 「大胆な経済政策」も変わらぬ 9/19
ガソリンやエネルギー、食品など物価高が続くなか、岸田文雄政権の優先課題は経済対策だ。だが、財務省の影響力は強いままで、「国民生活を応援する大胆な経済政策」が打ち出されても、その後の「増税・負担増」で国民にツケが回る懸念が強い。
岸田首相は13日の記者会見で、月内には閣僚に対し経済対策の柱立ての指示を行い、来月中をめどに取りまとめを目指す考えを示した。
「ガソリン補助金の継続を含め、国民生活を応援する大胆な経済政策を実行していく」と述べたが、ガソリン価格の「トリガー条項」の凍結解除や二重課税の解消に踏み込む姿勢はない。
第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは「経済政策に大きな変化はなく、財政規律重視の動きは続きそうだ。すでに出ている物価高対策でも、ガソリン価格のめどが当初の168円から175円に引き上げられた。電気・ガス料金対策も、補助金の規模が縮小されてから年末までの延長を決めるなど出口を意識する姿勢が目立つ。経済対策では特定分野への投資減税などが浮上する可能性もある一方で、国民負担を増やす可能性があることには注意が必要。昨年度の補正予算は真水で29兆円程度だったが、今回はさらに小規模になると見込まれる」と慎重だ。
閣僚の顔ぶれをみると、鈴木俊一財務相が留任。首相側近の官房副長官に財務省出身の村井英樹氏が就くなど、同省に近い人物も目立つ。
一方、「非緊縮派」では、初入閣の木原稔防衛相は、積極財政派と目される党の財政政策検討本部のメンバーだ。
上武大学の田中秀臣教授は「『増税・負担増』批判や保守派に配慮した人事もみられるが、全体的に財務省への依存度は強まったといえる。岸田首相の経済政策は党内勢力や支持率などの状況に左右されがちだ」と分析する。
首相が大規模な経済対策と補正予算を掲げても、その後の「負担増」路線に警戒が必要だと田中氏は話す。
「岸田首相が本当に『変化』を見せたければ、補正予算で少なくとも真水10兆円程度が必要だ。本来なら消費減税が望ましいが、難しいだろう。次期衆院選対策として大胆な策を打ち出したとしても、選挙後に『デフレ脱却宣言』をして財政再建に向けて動きだせば、ツケは必ず国民に回ってくる。国民は、政府が『隙あらば増税』と考えていることに意識を向けておくことが重要だ」
●内閣改造も政権浮揚に繋がらず… 与党内に新内閣を不安視する声 9/19
先週発足した「第2次岸田再改造内閣」ですが、改造後も支持率が伸び悩み、与党内からは早くも新内閣を不安視する声が上がっています。
けさ、内閣改造・党役員人事後、初めて開かれた自民党の役員会。岸田総理は「内外ともに正念場」だと訴え、“変化”を呼びかけました。
岸田総理「変化を力として閉塞感を打破し、“あすはきょうより良くなる”と誰もが思える国づくりを皆さんと進めていきたい」
内閣改造では、過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を起用するなど「変化を力にする内閣」と位置づけましたが、報道各社が改造後に行った世論調査では、内閣支持率は概ね「横ばい」と政権浮揚には至っていません。
野党からは… 国民民主党 玉木雄一郎 代表「そもそも、内閣改造で支持率を上げようとしたのかと。総裁選挙に向けた万全の布陣を考えた結果なのかなと」
5人の女性閣僚を起用する一方、54人いる副大臣・政務官への女性の起用はゼロ。「変化を力に」と謳う岸田総理ですが、自民党内からも“派閥の力学”を重視した旧来型の政治が続いているとの声が上がっています。
閣僚経験者「派閥の意見ばかり取り入れたジグソーパズル内閣だ」
内閣改造後も支持率が伸び悩む状況に、閣僚経験者は…
閣僚経験者「ご祝儀ムードで普通は支持率が上がるはずなのにね。スタートダッシュで支持率が上がらないと、今後も上がる要素がないな」
岸田総理「(内閣支持率に)一喜一憂するのではなく、先送りできない課題について取り組み、結果を出すことによって、国民の期待に応えていく」
きょう、国連総会に出席するためニューヨークに向けて出発した岸田総理。言葉だけでなく、行動でいかに結果を出していくのか、その手腕が問われています。 
●安保法成立8年 元に戻れなくなる前に 9/19
安全保障関連法の成立が強行されてから19日で8年。安保法の狙いは「日米同盟」強化で紛争を未然に防ぐ抑止力を高め、日本国民全体のリスクを減らすことだが、日本周辺の緊張は緩和されるどころか、むしろ高まっている。
「集団的自衛権の行使」を認めた安保法を起点に、「敵基地攻撃能力の保有」に至った防衛力の抜本的強化が、アジア・太平洋地域の緊張緩和に寄与しているのか、冷静に考えるべき局面である。
今年8月、台北市で開かれた国際フォーラム。自民党の麻生太郎副総裁から驚くべき発言が飛び出した。
「今ほど日本、台湾、アメリカなどの有志国に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時代はない。戦う覚悟だ。防衛力を持っているだけでなく、いざとなったら使う、台湾海峡の安定のためにそれを使う明確な意思を相手に伝えることが抑止力になる」
仮に中国が台湾を武力統一しようとする場合、日米などの民主主義国は台湾とともに戦う。その覚悟を示すことが中国に対する抑止力になる、という趣旨である。
国民に「戦う覚悟」迫る
麻生氏は以前にも、台湾有事は日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」に当たり得るとの見解を示したことはある。
今回の発言は戦争防止が目的であるとはいえ、日本国民に「戦う覚悟」まで求める内容であり、当然、見過ごしてはなるまい。
憲法9条は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又(また)は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と定めており、武力行使の可能性に言及して台湾問題という「国際紛争」を解決しようとすること自体が憲法に反するからだ。
しかも麻生氏は、岸田文雄首相=写真、2021年11月の自衛隊観閲式で=を支える政権首脳だ。台湾に同行した自民党議員も麻生氏の発言内容は首相らと調整済みと説明する。
もし政府が武力による威嚇を認めるなら憲法解釈の重大な変更に該当し、到底容認できない。首相は見解を明らかにすべきだ。
首相は昨年の国家安保戦略など3文書改定で「敵基地攻撃能力の保有」を容認し、防衛予算を「倍増」する防衛力の抜本的強化へと大きくかじを切った。殺傷能力を有する武器輸出にも踏み切ろうとしている。
憲法に基づいて歴代内閣が堅持してきた「専守防衛」のタガは緩み、9条の形骸化が一層進む。
その起点が15年、当時の安倍晋三政権が国会内外での反対論を押し切って成立を強行した安保法による安保政策の抜本的転換にあると言っても間違いはあるまい。
安保法の主眼は、日本が直接攻撃されていなくても、日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある「存立危機事態」に該当すると政府が判断すれば、集団的自衛権に基づいて他国への武力行使ができるようにすることだった。
当時の国会審議で、安倍首相はその意図を「紛争は予防され、日本が攻撃を受けるリスクは一層なくなっていく」と説明していた。
しかし、その後の日本周辺の国際情勢は緊張を増すばかりだ。
軍事重視が緊張高める
北朝鮮は核・ミサイル開発を進め、ウクライナに侵攻したロシアとの軍事的な協力関係を強めている。中国は軍備増強とともに海洋進出を強め、武力による台湾統一の選択肢を放棄していないとみられている。
台湾海峡の緊張は、日本が集団的自衛権を行使して参戦する可能性に現職政治家が言及するまでに高まっている。
中国の軍事的台頭を咎(とが)め、状況に応じて日本も防衛政策を適切に見直す必要性はあるとしても、安保法以来の軍事力重視の姿勢が地域の緊張を一層高める一因になっていないか。少なくとも軍拡競争を加速させる「安全保障のジレンマ」に陥っている現実から目をそらせてはなるまい。
集団的自衛権の行使を認めた安保法は憲法違反だとする安保法違憲訴訟で、最高裁は憲法判断をせず、原告側の上告を退けた。
しかし、今必要なことは、日本を再び「戦争をする国」にしないために、安保法の違憲性を正面から問うことではないか。
このままでは防衛力はどこまでも増強され続け、憲法の平和主義は完全に死文化する。破滅的な戦争に至ったように、一線を越えれば、もう元には戻れなくなる。私たちは自覚しなければならない。
●菅義偉氏 安倍晋三元首相は「最高の政治家」 9/19
前首相の菅義偉氏(74)が18日深夜、TOKYO FM「TOKYO SPEAKEASY」に出演。安倍晋三元首相について「最高の政治家」と評した。
昨年7月に奈良市で銃撃され、死亡した安倍氏。菅氏が事件の一報を受けたのは「車の中です。あのとき沖縄の選挙応援やってまして、羽田に行く途中だった」といい「それで車の中でいろんな状況を収集しながら、自民党全体として選挙運動はその日は中止。それで現場に駆けつけた。とにかく生きていてほしい、その一心でしたよね。残念な結果でしたけど」と声のトーンを落とした。
政治家としての安倍氏は「方向性をきちっと打ち出して。遠い日本の目標を進めていくとか。最高の政治家だったと思います」と回想。
プライベートでは「人の話を聞くのがうまかった。ほめて仕事をやらせる人だった。私もいっぱいほめられました」と懐かしんだ。
●政策正常化への植田日銀総裁の手法、「衝撃と畏怖」とは違うアプローチ 9/19
4月に総裁が交代した日本銀行内では安堵(あんど)感がある。植田和男総裁は、混乱を最小限に抑えながら金融政策の正常化に向けて歩みを進めるという、前任の衝撃的なデビューとは全く異なるアプローチだったからだ。
2013年、黒田東彦前総裁はデフレ脱却に向けて停滞する経済を刺激するため、「衝撃と畏怖」の異次元金融緩和策を導入した。足元でインフレ率が16カ月連続で日銀の2%目標を上回って推移する中、植田総裁は、世界で最も大胆な金融実験の出口へ地ならしをするために日銀内の多くが考え得る以上のことを成し遂げている。
事情に詳しい複数の関係者によると、植田氏の学者らしいコミュニケーションの取り方が黒田氏との最も明白な違いだと日銀当局者らはみている。黒田氏は、金融刺激策の必要性を繰り返し強調する決まったフレーズを使い、原稿に忠実だったのとは対照的に、植田氏は記者や政治家からの質問に対して詳細な説明をし、時にさまざまな角度から回答する特徴がある。
関係者らによれば、日銀総裁としては戦後初の学者出身である植田氏は、公の場でさまざまなシナリオを考察することをためらわないため、一部の日銀当局者を不安にさせることがあるという。だだ、こうした思考が植田氏にアイデアをもたらし、市場への影響を測るテストとして機能している。
日銀は今週の金融政策決定会合で現行政策の維持を決めるとみられているが、主要国では最後となるマイナス金利政策の解除に向けて市場とのコミュニケーションの環境整備は進んでいるもようだ。
日銀ウオッチャーの多くは、9日付の読売新聞が報じたインタビューにおける植田総裁の発言はこのプロセスの一環と解釈した。植田氏は、賃金と物価の好循環を見極めるのに十分な情報やデータが年末までにそろう可能性もゼロではないことに言及しており、これはマイナス金利解除の可能性を含む政策変更の条件の一つだ。
日銀総裁、賃金と物価の好循環のデータが年内にそろう可能性も−報道
事情に詳しい複数の関係者がブルームバーグに語ったところによると、総裁発言に関して日銀内では、従来と比べて踏み込んだ内容ではないと受け止められている。
ただ、この報道は多くのエコノミストがマイナス金利解除の予想時期を前倒しする要因となった。ブルームバーグ調査によると、エコノミストの半数が来年上期にマイナス金利の解除を予想している。 
   マイナス金利解除予想を前倒し
日銀の新体制発足から数カ月間で分かった別の重要な点として、植田総裁は予想以上に変化に寛容で、金融政策が為替に与える影響を進んで認めていることだ。
植田総裁の下で日銀はすでに、必要があれば利下げを行うという方針を破棄し、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の運用方針を大幅に柔軟化した。YCC政策は16年に黒田前総裁の下で導入された。
植田氏の4月の総裁就任当時、10年国債利回りは0.45%程度だった。足元では0.7%を上回る水準で推移している。
   薄れる関係性 | 植田総裁のYCC柔軟化で
黒田、植田両氏をよく知る元日銀審議委員の桜井真氏は、「植田総裁の下で日銀は過剰な金融緩和政策から実体経済の変化に対応した適切な緩和政策へ移行」を進めていると指摘。「予想をやや超える金融緩和変更の進展があった」と語った。 
植田総裁は、投資家をパニックに陥れたり、住宅所有者や有権者、企業経営者が自身を総裁に任命した岸田文雄首相に反発したりするのを避けるため、正常化に向けた環境を水面下で構築している。緩和の縮小ペースが遅過ぎれば円は安値を更新する可能性がある一方、急ぎ過ぎれば景気の腰を折り、デフレ不況を再び招く恐れがある。
世界の債券投資家は、超低金利を支える最後のグローバルアンカーを失うことを懸念している。日本からの証券投資エクスポージャーが相対的に大きくなり過ぎたオーストラリアやフランス、オランダの市場では、日本の金利が上昇すれば資金が逃げる可能性がある。 
   豪州やオランダ市場は日本の金利上昇に敏感
岸田首相が防衛力強化や少子化対策への支出増加を計画する中で金利が上がれば、債務の償還費や利払い費などの国債費がさらに膨らむ可能性がある。日本の債務残高は先進国で最も高い水準で、国債費はすでに年間予算の4分の1余りを占める。
もっとも、植田総裁が単に現状に固執すれば、為替介入の脅威を維持しながら数十年で最も強いインフレの影響緩和へ追加対策に頼らなければならない岸田氏の忍耐力を試す危険がある。
ブルームバーグ・エコノミクスの見方「植田総裁は論理的に話し、丁寧に質問に答えているが、戦略的なメッセージを送るという点では改善の余地がある。投機家は植田総裁が先に繰り返したハト派的な発言を受けて円を売った。市場はまた、7月の予期せぬYCC修正や読売新聞とのインタビュー内容から、植田総裁の真意を測りかねている」木村太郎シニアエコノミスト
日銀の過去の金融刺激策の取り組み具合を踏まえれば、緩和縮小には慎重なアプローチが必要だ。バランスシート上の資産は日本の経済規模を25%上回る水準に達しており、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)と比べてもはるかに大きい。
   米欧を上回る日銀の資産規模 | 中銀資産の対GDP比
植田総裁は10年国債金利のさらなる上昇を容認しながらも、ここまでは市場をおおむね落ち着いた状態に保つことに成功した。日銀は金融緩和を当面続ける必要があるとする一方、どのように緩和路線を進むかについて植田氏は柔軟性を示している。
植田総裁は、1990年代後半に日銀審議委員を務めていた当時から変わらず、物価と賃金、成長の好循環の実現に取り組む強い意志を示している。だが、黒田前総裁が作り上げた複雑な緩和策とは一定の距離を置いていることも示唆している。
日銀出身でUBS証券の足立正道チーフエコノミストによれば、物価安定の実現への決意という点で両氏に恐らく違いはないものの、植田氏の方が論理的で、より良いコミュニケーションを取っている。植田氏は経済の変化に合わせて政策を調整する能力を証明しているという。
足立氏は、「米国経済の先行きや春闘など不確実要因は多々ある」とし、「正常化する前にこういった項目を確認していかなければならない」と語った。
●安倍政権のジャニーズ政治利用、ジャニーズ事務所の政権利用も見逃すな 9/19
創業者ジャニー喜多川氏による性加害問題に蓋をしてきたジャニーズ事務所のタレントを広告に起用してきた企業や、番組に出演させてきたテレビ局の社会的責任が問われているが、もうひとつ見逃せない問題がある。ジャニーズ事務所と政治の密接な関係だ。
とりわけ憲政史上最長の安倍政権(2012年〜2020年)とジャニーズ事務所は濃密な関係だった。安倍政権はジャニーズのタレントの人気を政治利用し、ジャニーズ事務所は国家権力の威光を得ていたといっていい。
安倍氏とジャニーズの関係はざっと振り返るだけでも以下のような具合である。
・2019年9月に東京ドームで開催された故ジャニー喜多川氏のお別れ会で、安倍晋三首相の弔辞が代読された。「ジャニーさんへのエンターテインメントへの熱い思い、託したバトンは、必ずやジュリー(藤島景子)さん、滝沢(秀明)さんをはじめ、次の時代を担うジャニーズのみなさまへと、しっかりと受け継がれていくと私は確信しております」という内容だった。
・2019年11月には東京ドームであった嵐のコンサートを訪れ、ステージ裏でメンバーと面会した。
・2018年末に福島復興を支援してきたTOKIOのメンバーと首相官邸で懇談し、2019年5月にはピザ屋で会食して親密さをアピールした。
・2018年6月のG20大阪サミットの開幕前日には、関ジャニ∞・村上信五のインタビューを受けた。
・2020年元日にはラジオ新春番組でV6の岡田准一と対談した。
安倍氏はジャニーズのタレントと会うたびにインスタグラムなどで紹介し、好感度アップを図ってきたのだ。
一方、ジャニーズ事務所も「政治」へ接近した。桜井翔が日本テレビ系「news zero」のキャスターに、小山慶一郎が日テレ系「news every.」のキャスターに、国分太一がTBS系「ビビット」のMCに、東山紀之がテレビ朝日系「サンデーLIVE!!」に、中丸雄一が日テレ系「シューイチ」に出演。政治問題や社会問題についてコメントを重ね、世論形成に大きな影響力を持ち始めたのである。
ジャニー喜多川氏による性加害問題は2004年時点で週刊文春との裁判で真実だと認められていた。マスコミはジャニーズ事務所の影響力に怯えて報道を控えてきたが、政界、官界、財界では誰もが知る「常識」だった。それを承知で安倍氏はジャニーズ事務所と密接な関係を重ね、所属タレントと親密さをアピールして、政権浮揚につなげてきたのである。
安倍氏の政治責任に加え、それを追及してこなかったマスコミ各社の報道責任が問われる。安倍政権の長期化の背景にジャニーズ事務所を政治利用した世論誘導があったことは、政治史的にもしっかり検証されなければならない。
内閣改造後、政府内からはジャニーズ事務所との関係を見直す動きは出始めた。
武見敬三厚生労働相は記者会見で、厚労省広報などでジャニーズ事務所のタレントの起用について実態調査する考えを示したうえ、「結果が出てから適切に対応を検討する」と述べた。農林水産省は、農業情報を発信する「ノウフクアンバサダー」に任命したTOKIOの城島茂の活動を当面見合わせると発表した。当然の動きだろう。
重要なのは、これらの見合わせを急場しのぎの対応策に終わらせないことだ。さらには、政府がジャニーズ事務所のタレントを起用してきた経緯に不透明な経緯がなかったのか検証することも必要である。そのような総括なしにタレント起用を再開することは許されない。
●「隙あらば増税」の影消えず…岸田政権「大胆な経済政策」も変わらぬ 9/19
ガソリンやエネルギー、食品など物価高が続くなか、岸田文雄政権の優先課題は経済対策だ。だが、財務省の影響力は強いままで、「国民生活を応援する大胆な経済政策」が打ち出されても、その後の「増税・負担増」で国民にツケが回る懸念が強い。
岸田首相は13日の記者会見で、月内には閣僚に対し経済対策の柱立ての指示を行い、来月中をめどに取りまとめを目指す考えを示した。
「ガソリン補助金の継続を含め、国民生活を応援する大胆な経済政策を実行していく」と述べたが、ガソリン価格の「トリガー条項」の凍結解除や二重課税の解消に踏み込む姿勢はない。
第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは「経済政策に大きな変化はなく、財政規律重視の動きは続きそうだ。すでに出ている物価高対策でも、ガソリン価格のめどが当初の168円から175円に引き上げられた。電気・ガス料金対策も、補助金の規模が縮小されてから年末までの延長を決めるなど出口を意識する姿勢が目立つ。経済対策では特定分野への投資減税などが浮上する可能性もある一方で、国民負担を増やす可能性があることには注意が必要。昨年度の補正予算は真水で29兆円程度だったが、今回はさらに小規模になると見込まれる」と慎重だ。
閣僚の顔ぶれをみると、鈴木俊一財務相が留任。首相側近の官房副長官に財務省出身の村井英樹氏が就くなど、同省に近い人物も目立つ。
一方、「非緊縮派」では、初入閣の木原稔防衛相は、積極財政派と目される党の財政政策検討本部のメンバーだ。
上武大学の田中秀臣教授は「『増税・負担増』批判や保守派に配慮した人事もみられるが、全体的に財務省への依存度は強まったといえる。岸田首相の経済政策は党内勢力や支持率などの状況に左右されがちだ」と分析する。
首相が大規模な経済対策と補正予算を掲げても、その後の「負担増」路線に警戒が必要だと田中氏は話す。
「岸田首相が本当に『変化』を見せたければ、補正予算で少なくとも真水10兆円程度が必要だ。本来なら消費減税が望ましいが、難しいだろう。次期衆院選対策として大胆な策を打ち出したとしても、選挙後に『デフレ脱却宣言』をして財政再建に向けて動きだせば、ツケは必ず国民に回ってくる。国民は、政府が『隙あらば増税』と考えていることに意識を向けておくことが重要だ」
●岸田政権の「資産運用立国」構想は実質的な年金破綻宣言 9/19
岸田政権は、2024年から始まる新しいNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの制度改正をテコに、「資産運用立国」を目指す方針を大々的に打ち出している。だが、昨今の物価高で、投資どころか日々の生活に余裕がなくなっているという人も少なくない。そんな中で、政府が「資産所得倍増」を喧伝する背景には何があるのか。人口減少や経済活性化などの問題に詳しい作家・ジャーナリストの河合雅司氏が解説する。
金融庁が今後1年間の重要施策をまとめた「金融行政方針」を公表した。「資産運用立国」の実現に向け、具体的プランを年内に策定するという。
「資産運用立国」とは、2022年5月に岸田文雄首相が外遊先のロンドンで突然表明した「資産所得倍増プラン」が下敷きだ。政府は同年11月の「新しい資本主義実現会議」で、個人投資家を対象にした優遇税制「NISA」の普及や、資産運用会社の運用力を高めるための環境整備など「資産所得倍増プラン」を策定。5年間でNISAの総口座数(一般・つみたて)を現在の1700万から3400万へ、買付額は現在の28兆円から56兆円へと倍増させることなどを目標として掲げた。
政府が家計金融資産に狙いを定めて投資を促す狙いはどこにあるのか。内閣府の資料によれば、日本の家計金融資産は2007兆円(2022年6月末時点)だが、その半分にあたる1102兆円が現預金となっている。政府には、これが「有効に使われていない」と映っているのだ。
これだけのマネーの何割かでも投資に回れば、日本の株式市場は活況を呈すことだろう。持続的な企業価値向上の恩恵は、資産所得の拡大という形で家計にも及ぶ。人口減少が進む日本経済にとって、マネーを積極的に循環させることの意義は大きい。
だが、家計金融資産をどう使うかは個々の自由である。政府の理屈通りには回らない。事実、「貯蓄から投資へ」という大号令は岸田政権が初めてではない。これまで幾度となく唱えられてきたが、なかなか進んでこなかった。
“五公五民”を負担しながら投資できるか
日本の家計金融資産がなかなか投資に回らない理由については、内閣府の「2023年度年次経済財政報告」が分析しているが、「余裕資金がない」との回答が4割弱を占め、断トツだ。投資をしようにも、元手が無くてはやりようがない。
総務省の家計調査報告によれば、2人以上世帯における2022年の平均貯蓄額は1901万円である。だが、これはあくまで平均額であり66.3%はこれを下回る。100万円未満が9.7%で最も多く、100万〜200万円未満が5.4%、200万〜300万円未満が4.6%などとなっているのだ。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」によれば、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)が貧困線(中央値の半分)に満たない世帯員の割合を示す相対的貧困率(2021年)は15.4%にのぼる。
そうでなくとも税や社会保険料負担が上昇し「五公五民」と言われるまでになり、昨今の物価高も加わって生活に余裕のない人が増えている。SNSには「現在の可処分所得では投資したくともできない」「投資しろと言うなら、継続的な賃上げが先だろう」など、現実離れした「資産運用立国」構想には批判的な声が渦巻いている。
「政府の本音」と「国民の老後不安」
家計調査報告によれば、負債保有世帯が37.7%を占め、その91.3%が住宅や土地のための負債だ。住宅ローンなどの支払いに追われていたのでは投資に目が向かない。
年代別では、50歳未満の純貯蓄額(貯蓄現在高−負債現在高)はマイナスである。貯蓄現在高が負債現在高を上回るのは50代となってからだ。50代の純貯蓄額は1208万円、60代は2251万円、70歳以上は2321万円である。
50代になると住宅ローンの支払いが終わる人が出てくるということだろう。だが、50代といえば子供の大学進学や親の介護などでまとまったお金が必要というケースが増えてくる年代でもある。これらのデータを見る限り、投資を考える余裕が出始めるのは60代が中心と思われる。
政府もこうしたデータは把握しているだろう。その上で、国民に投資を促しているということは、ここに政府の本音が隠されていると見ていい。
60代以上の資産運用と聞いて思い出すのは、「老後資金2000万円不足問題」だ。2019年、金融庁のワーキンググループが、高齢夫婦無職世帯は年金収入だけでは毎月約5万円の赤字であり、30年で約2000万円の金融資産の取り崩しが必要になるとの試算を公表し、国民に大きな衝撃が広がった。
この報告書が述べたかったのは、もちろん「2000万円の不足」などではなく、投資などによって資産寿命を延ばすことの重要性だった。
「資産運用立国」においても、ここの部分は変わらないだろう。政府が「老後資金2000万円不足問題」の際と共通して託しているのは、「公的年金だけでは老後資金は不足するので、足りない分は自助努力で調達してほしい」というメッセージにほかならない。
「資産運用立国」とは、見方を変えれば、政府が実質的な年金破綻宣言をしているようなものである。急速な少子高齢化と人口減少を前にして、厚労省は有効な手立てを見つけ出せずにいることは多くの国民が知るところだ。
少しでも長く働こうという人が増えたのも老後不安があるからであり、資産運用による資産寿命の延長が有力な選択肢の1つになることもその通りだ。それでもあえて投資をしないできた人が多かったのには、それ相応の事情がある。60代以上にとって、投資というのは負担が大きいからだ。
「銀行預金が合理的」に思える理由
株式投資などというのは、大儲けする人がいる一方で、大損をすることもある。退職金を株式投資につぎ込んだ結果、大やけどを負ったという事例もたびたび耳にする。
若い頃ならば株価が長期低迷したとしても我慢して値上がりを待つという選択肢も取りやすい。だが、高齢になってからの投資はそうはいかない。
60代以上にもなると基礎疾患を持つ人が多くなる。元気そうに見えても、いつ大病を患うか分からない。若い頃に比べて死を意識しやすくもなる。人生の先がだんだんと見えてくるにつれて、元本割れしない金融商品を選んでおいたほうが無難と考える人が多くなるのは自然なことだろう。金融機関の販売ありきの姿勢に二の足を踏む人も少なくなく、現金のまま金融機関に預けることは決して「不合理な判断」ではないのである。
高齢者の1人暮らしや高齢夫婦のみの世帯が増えたことも、貯蓄を選ぶ大きな理由となっている。昔の高齢者と比べて、70代、80代になってから多額の出費を迫られる機会が増えたためだ。
例えば、住宅の大規模修繕である。子供世帯と同居するのが当たり前だった時代にはその費用を高齢者自らが全額負担することは少なかったが、いまや子どもがいない高齢者も増え自ら支払う人が珍しくない。定期預金や株式の期待収益率のほうが上回っていることが分かっていても、普通預金として持っておきたいというニーズは小さくないのだ。
銀行預金が減らないのは、それが多くの高齢者や高齢者予備軍の世代にとって合理的な資産運用法に思えているからである。
「資産運用立国」という構想自体を否定するつもりはないが、それを目指すには日本社会は少し年を取り過ぎたということだ。高齢化率はすでに3割である。
このまま政策を進めても、既存の投資家や富裕層を優遇するだけに終わりそうだが、それでも岸田首相が「資産運用立国」を推進するというなら、是が非でも若い世代の収入が持続的に上昇するようにすることである。
若い世代の多くが投資にもお金を回せる所得水準になったとき、はじめて「資産運用立国」が実現する。  

 

●岸田政権、皇位継承たなざらし 担当内閣参与が退任 9/18 
岸田政権下で皇位継承の議論がたなざらしになっている。今後も皇族数の減少が見込まれるなど喫緊の課題と位置付けられるが、自民党では保守派が女性・女系天皇の容認につながることを警戒。今月13日には、皇室制度を担当する山崎重孝内閣官房参与が退任し、ますます進捗(しんちょく)が見通せない状況となった。
「衆参両院議長の下で検討が行われている。国会の議論にコメントする立場にない」。松野博一官房長官は15日の記者会見で、政府として議論を促さない考えを改めて示した。
皇室典範は、父方が天皇の血筋を引く「男系男子」が皇位を継承すると規定。現在、皇位継承資格を有するのは、(1)秋篠宮さま(2)秋篠宮さまの長男の悠仁さま(3)上皇さまの弟の常陸宮さま―の3人のみで、安定的な継承には不安が残る。
皇室の構成も平成以降最少の17人にとどまり、悠仁さま以外の未婚の皇族はいずれも女性。婚姻などで皇族数がさらに減少すると、天皇が行う国事行為の臨時代行や、各種行事への臨席、被災地への慰問といった皇族の役割が果たせなくなる恐れもある。
上皇さまの天皇退位を受け設置された政府の有識者会議は2021年12月にまとめた最終報告書で、悠仁さまが皇位を継承する流れを揺るがせにしてはならないとし、その次代の議論は「機が熟していない」と明記。その上で、皇族数の確保策として、(1)女性皇族が結婚後も皇室に残る(2)旧宮家の男系男子が養子として皇籍に復帰する―の2案を提示した。
岸田文雄首相は今年2月の自民党大会で「安定的な皇位継承を確保するための対応は先送りできない課題だ」と述べたが、具体的な動きにはつながっていない。有識者会議の報告を受け設置された自民党の「皇室問題等についての懇談会」(座長・麻生太郎副総裁)も22年1月の初会合以降、音沙汰なしだ。
この問題に関わってきた政府関係者からは「首相は表で言うだけで、やる気がない」との不満が漏れる。ある閣僚経験者も「議論の機運が全く盛り上がっていない」と認める。
自民党内には保守派を中心に「女系天皇容認につながるのではないか」(安倍派幹部)との意見が根強い。一方で、21年の総裁選で野田聖子元少子化担当相が「女系天皇も選択肢の一つだ」と訴えるなど容認派も一定数いる。首相としては、党内が二分し政権基盤が揺らぐのを避ける思惑もありそうだ。  
●「女性ならではの共感性…」岸田発言ってどこがヤバいの? 9/18
9月13日岸田総文雄総理は、内閣改造および党役員人事を行った。
女性閣僚が5人起用されたことに注目が集まったが、副大臣26人と政務官28人の人事に女性はゼロ。全体のバランスを考えた適材適所の人事だとどこかで聞いたことがあるような言葉を述べていたが、2023年になってもこの男女比であることに落胆が隠せない。
さらに、総理が会見で話したある言葉について、多くの疑問の声が上がっている。
「女性ならではの感性や共感力を十分発揮していただきながら、仕事をしていただくことを期待したい」。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。
「女性ならではといいますが、すべての女性に共感力があるという科学的根拠はありませんし、逆に男性に共感力がないとも言えません。しかも、すべての政治家が共感力をもって任務を全うするのは当然のことです。そこにジェンダーはまるで関係ありません。また今回の発言、岸田総理は悪意があったわけではなく、むしろ女性を褒めるつもりで述べたつもりだと思いますが、それがさらに事態を悪化させている印象です」。
というと?
「女性が社会に出るとどうしても個人ではなく、ジェンダーを枕詞に語られることが多い。それは本人の実力ではなく、女性だからできているのだと言っているも同然です。また〇〇ならではという言葉は、その属性の特定のイメージや役割に人を閉じ込めてしまいます。多くの場面で悪意がなく使われているのが怖いところ。これは差別につながるマイクロアグレッションのひとつとも言えるでしょうね」。
マイクロアグレッションとは無意識の偏見や思い込み、無理解の言動で相手を傷つけることを表す言葉だ。人種やジェンダー、性的嗜好、宗教など、さまざまな場面で見られ、受け取った側が侮辱されていると感じる言動のことである。
もし、今回の岸田総理の発言を聞いてまるで違和感を持たないという人がいたのなら、その人はきっとマイクロアグレッションについてまるで知らないのだろう。もしかしたら、すでに加害者になっているかもしれない。今回は、ハラスメントの根底にあるマイクロアグレッションを繰り返す夫との決別を考えている女性に話を聞くことができた。
大澤恭子さん(仮名・49歳)はほかでもない、夫の発言について長年、心におりのようなものを貯めてきた。
「夫は人一倍、男性はこうあるべき、女性はこうあるべきという思想が強く、結婚前から薄々は気がついていましたが、歳を重ねるごとにその色合いがどんどんと濃くなっていると感じます。ひとつひとつの発言は、取り立ててひどく聞こえないかもしれませんが、私にとっては本当に辛いもので…。この先、どうやって一緒にやっていくか考えてしまうほどです。夫は私がそんな感情を抱いているなんて、1ミリも思っていないでしょうけど」。
恭子さんと夫は結婚23年。共働きの夫婦だ。
「私の仕事はグラフィックデザイナーです。かれこれ25年以上、フリーランスとして働いています。同時に結婚してから家事と育児は、私が中心になってやってきました。夫は在宅で仕事をする=時間に余裕があると思っているんです。でもそんなことはありません。もちろん通勤時間を省くことはできますが、それによって仕事をする時間と家事をする時間が莫大に増えるわけではありません。それなのに、掃除洗濯は毎日、料理は手作り、保護者会など子どもの行事はすべて妻が参加、これが夫の当たり前なんです」。
共働きでこの配分。ありえないバランスである。
「そもそも女性を下に見ているんだと思います。不思議なのは、夫が共働きの家庭で育っていること。専業主婦のお母さんに育てられて、それがルーツになっているんだとすればわかりますが、そうではないんですよね」。
確かに。具体的にはどんなことをされると辛い、苦しいと感じるのだろうか?
「あるとき、冷凍食品を出して痛い目に遭いました。仕事の締め切りの日でどうしても食事が作れないから、冷凍のグラタンで済ませて欲しいと言ったら、なんて言ったと思います?かわいそう、ですよ。愕然としました」。
冷凍食品を食べる自分と息子がかわいそうだというのだ。
「それ以来、冷凍のグラタンを見るだけでイラついてしまうほど、ショックな出来事でした。冷凍食品だけでなく、お惣菜なんかも同じ。さらに、前日のおかずにはひとつも手をつけません。それでいて、食後にお腹が空いたといって、カップ麺などを食べているので…。マイクロアグレッションだけでなく、もはやモラハラともいえるのかもしれませんが…」。
さらに恭子さんがゾッとするというのが、夫の声かけだ。
「私が家事をしていると変な褒め方をするんです。やっぱりママがやってくれると安心だとか。私が家事をしていることがえらいと言わんばかり。そもそもえらいという感情も上から目線ですし、夫がそういう発言をすればするほど、子どもたちはそれが当たり前だと思うわけじゃないですか。妻が家事をして、夫に褒められる構図…ホラーでしかありません」。
そのほかにも、立ってするか、座ってするかのトイレ問題、生活用品の買い足しや補充など、名もなき家事に対する配慮など、あげればキリがない。
「子どもが小さいときは忙しくて、夫の発言ひとつひとつに対して意見するようなパワーが残っていなかったんです。ところが子どもが大きくなって手が離れてくるとその発言が、以前より気になるようになってしまって…。その結果、喧嘩や言い合いも増えているのが現状です」。
最近でいうとどんなことで喧嘩になったのだろう?
「夫が会社の女性社員のことを何気なく、話していたときのことでした。その女性は感情でぶつかるタイプで、仕事場で少し疎ましがられているとのことでした。そのときの夫の発言がどうしても許せなくて…」
―女ってどうしてああ、感情論になっちゃうんだろうね?だから、雇うのは男の方がいいんだよね。
のぞみさんは、思わず立ち上がってしまったという。
「すべての女性が感情的であるとも思いませんし、逆に言えば男性が感情的でないとも思いません。個人個人、感情的になる部分やシーンはあるでしょうけど、それをジェンダーでひとくくりにするのはあまりにも乱暴じゃないですか?」。
さらに夫は続けた。
―特に40代以上の女って、すごい扱いづらくなるよね。
●処理水放出を巡る日本国内の「残念な反応」…リベラルは「中国の味方」 9/18
ALPS処理水海洋放出に伴う中国の海産物全面輸入禁止措置は、日本の水産業、特に中国や香港への輸出が大きな割合を占めていたホタテ、ナマコなどを中心とした生産者に大きな衝撃を与えた。
新たな販路開拓には時間が必要となり、出荷適齢期を迎えた養殖品を中心に大量の魚介類が行き場を失くしてしまった。
国内ではこれらを食べて応援しようとの機運が高まり、中国向けにホタテを多く輸出していた北海道別海町には8月24日以降「ふるさと納税」の申し込みが相次ぎ、寄付件数・寄付額ともに去年の同じ時期に比べて連日、5倍から8倍に急増したという。
農水省はX(旧ツイッター)で「#食べるぜニッポン」のハッシュタグと共に「日本産水産物の消費拡大に資する取組を実施します。特にホタテ、ブリ、鯛、マグロ、練り物。一人でも多くの方に、少しでも多く食べていただけると状況が劇的に改善します」と発信した。
公益財団法人国家基本問題研究所も9月6日、次のような意見広告を新聞各紙に掲載した。
〈 おいしい日本の水産物を食べて、中国の横暴に打ち勝ちましょう。
東京電力福島第一原発処理水の海洋放出を受けて、中国政府は日本の水産物を全面輸入禁止にしました。「福島の『核汚染水』から中国の消費者を守るため」と言っています。科学的根拠の一切ないひどい言いがかりです。それでいて中国は多くの漁船団を日本周辺海域に送り込み魚を取り続けています。私たち日本人はこんな不条理には屈しません。
中国と香港への日本の水産物輸出は年間約1600億円です。私たち一人ひとりがいつもより1000円ちょっと多く福島や日本各地の魚や貝を食べれば、日本の人口約1億2千万人で当面の損害1600億円がカバーできます。
安全で美味。沢山食べて、栄養をつけて、明るい笑顔で中国に打ち勝つ。
早速今日からでも始めましょう 〉
ところが、こうした機運に水を差す発信も少なくない。
雑誌編集者の早川タダノリ氏は、この意見広告に対して〈「食べて応援」が行き着くところはこんな地点であることがわかる。失政がもたらした惨事を、一貫してナショナリズムの動員によって穴埋めしようとするこいつら、そもそも「中国に勝とう」って言うが、勝者はどこにもおらん〉と発信した。
「失政」とは具体的に何を指すのか。
そもそも処理水の安全性は確保されている。これを保管し続けるため増え続けたタンクは廃炉作業と復興の大きな障害となり、地元自治体からは地上での継続保管に反対する要望が何度も訴えられ続けてきた。
9月14日付の拙稿『処理水放出を巡る世界の反応…中国の「核汚染水呼ばわり」「水産物禁輸」は結局、政治的な“情報工作”“外交戦”でしかない』で示したように、国際社会も総じて処理水海洋放出への理解や支持表明や日本産食品の輸入規制解除が相次ぐ中、中国や北朝鮮が事実と科学に背を向け逆行している状況だ。
こうした輸出入規制について言えば、中国はこれまでもたとえば2010年のレアアースであったり、日本以外にも台湾産パイナップル、フィリピン産バナナ、オーストラリア産石炭などに対して事実上の政治的報復として常習的に繰り返してきた“前科”が無数にある。
今回もその一例を重ねたに過ぎず、これは「風評問題」ではない。極めて政治的な問題であり、文字通りの外交・情報戦と言える。
このような状況で、「日本が汚染されている」かのような極めて侮辱的・差別的な中国の横暴を「失政がもたらした惨事」と日本側に責任転嫁して正当化し、理不尽な被害を受けた当事者の救済すら「ナショナリズムの動員」などと侮辱して邪魔することが一体誰のためになり、何に利するというのか。
アメリカ在住映画評論家の町山智浩氏(@TomoMachi)も同日、〈中国が買ってくれなくなった日本の魚を日本人が食べると中国に勝つことになるの? 中国にとって痛くもかゆくもないのに? 〉と発信した。
町山氏は前日9月5日にもこのような発信をした。
〈「福島県漁連によりますと、7日朝、いわき市の沖合8.8キロ、水深75メートルほどの漁場でとれたスズキから県漁連が自主的に設けた基準を超える放射性物質が検出されました」
いったん排水を止めて他の方法も検討してみて〉
しかし町山氏が共有したこのNHKニュースは約半年前の2月のものであった。
そもそも検出された85.5Bq/kgは主にセシウム由来であり、トリチウムが議論となった処理水とは何ら関係がない。ほぼ全ての魚介類が検出限界地未満の中で、米国の食品基準1200Bq/kgはおろか非常に厳しい国内の100Bq/kgすら下回る、リスクの議論上では意味を持たない「自主基準」超過が出た稀なケースに過ぎない。
ALPS処理水放出と無関係な過去のニュースを持ち出し、まるで近海の魚が汚染されたかのように「いったん排水を止めて」と訴えたこの投稿には、「『やり方は違えど国の事福島の事思ってやってる』事じゃないよね。ワザとデマを流して貶めようとしてる」「古い記事を引っ張り出して来てまで風評加害に勤しむ。なんでそこまで福島への憎悪を募らせてるんだろう…」などの批判が殺到している。
9月12日時点で町山氏からの訂正等は確認できず、投稿に返信できるアカウントは町山氏がフォローしているか返信した相手のみとする制限がかけられていた。
ここでとりあげた発信は氷山の一角に過ぎない。ジャーナリストの佐々木俊尚氏は9月6日のニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演し、こうした状況に疑問を呈した。
「(中国向け水産物の輸出額減少を受け)『だから処理水放出なんかダメだ』と騒いでいる人が左派を中心にたくさんいます。中国政府に言われたから処理水の放出をやめるなど、『中国政府に屈してどうするのだ』と思うのですが。少しおかしいですよね。もともと『リベラル』と名乗っていた人たちが、気がついたら処理水放出で中国の味方、独裁国家を味方しているという謎の構図になってしまっている。これは何なのだろうという」
●日本医師会元会長「けんか太郎」が父の武見厚労相、日医代弁者にならない 9/18
武見厚生労働相は17日のNHK番組で、父親が日本医師会(日医)の会長だったことに自ら触れ、「医療関係団体の代弁者になることは毛頭考えていない」と強調した。
武見氏の父・太郎氏は長く日医会長を務め、日医の意に沿わない場合、政府相手でも徹底抗戦し、「けんか太郎」の異名を取った。
武見氏はかつて日医の政治団体、日本医師連盟(日医連)の組織内候補だった。13日の内閣改造では、日医連の現在の組織内候補である自見地方創生相も初入閣した。日医は声明で両氏の入閣を「誠に喜ばしい限りだ」と歓迎した。
年末に向け、日医などと診療報酬改定の調整が本格化する見通しで、武見氏には「身内びいきになる」との懸念を打ち消す狙いがあったようだ。政府内では「日医が嫌がる政策に切り込めるか、今後力量が試される」との声が出ている。
●「TVタックル」で岸田文雄政権の外交力を疑問視 「外交の岸田って…」 9/18
17日放送の「TVタックル」で、大竹まことが岸田文雄首相の外交力を疑問視した。
内閣改造で外務相が交代
岸田首相が13日に行われた内閣改造でこれまで外務相を務めてきた林芳正氏に代わり、上川陽子氏を起用した話題を取り上げたこの日の『TVタックル』。
番組はこの交代劇について「悪化している日中関係の打開策になるか?」と問題提起をする。そして阿川佐和子が「林さん張り切っていたのにね。上川さんに代わったのは、東さんはどう思う?」と東国原英夫に意見を求めた。
東国原が理由を分析
東国原は「1回置こうということでしょうね。林さんは同じ岸田派ですので、 次の総裁選じゃなくてその次に林さんが出るんじゃないかなと思います。 来年の次の総裁選に」と持論を展開する。
話を聞いた阿川は「それはつまり、国内というか林さんの処遇をどうするかという計算で。外務大臣として今までしばらく積み重ねてきた諸外国との関係って、せっかく『林と仲良くなったのにさ』って思っている外国の人もいるのでは」と指摘。
この疑問に東国原は「ああ、外務大臣が代わっても変わりませんからね、外交は。外務省の役人がやるので」と話した。
大竹が岸田政権の外交力を疑問視
阿川が「上川さんはハーバードかなんか出ていらっしゃる」とつぶやくと、東国原は「岸田さんがずっと外務大臣をやっていて、今、首相じゃないですか。でも外交は全然変わっていませんよね。誰がなっても同じかな、じゃあ上川さんにしておこうという感じ」と解説する。
すると大竹が「でもそれはさ、 最初に外交の岸田って言ってたんだよ。じゃあ岸田さんはなにをやっていたんだと。それを林さんがうまく継いだわけじゃない。外交以外のパイプを日本はどれだけ持ってるのかと思ったら、意外とパイプがないんだね。日本って」と指摘した。
宮崎氏も持論
元衆議院議員の宮崎謙介氏は「岸田さんが外務大臣をやったころというのは安倍政権下で、あんまり中国とも仲良くできない状況だったというか、あんまりしなくてもいい、いいとまでは言わないですけど、それぐらいの状況だった」と指摘する。
そのうえで「岸田さんはそこまで中国とのパイプ 持てていなかった」とコメントしていた。 

 

●岸田政権、内閣改造後も「ロシア経済協力相」のポストを廃止せず 9/17
刷新性が無く、支持率アップに結び付かなかった岸田首相の内閣改造でしたが、一部界隈から新内閣でも「ロシア経済分野協力担当相」のポストが存続していることに批判が集まっています。
 ――「ロシア経済協力相」西村氏兼務 北方墓参再開見通せず:北海道新聞デジタル
北海道新聞によると、岸田首相が「ロシア経済協力相」を存続させている理由は、1)ロシアからのエネルギー供給が停止されること、2)領土交渉の進展に悪影響が出ることを恐れているからだそうです。
 ――日本政府は、対ロシア経済協力担当大臣の閣僚ポストを維持することを決定した。内閣改造にもかかわらず、このポストは引き続き西村経済産業大臣が務めている。日本は、もしこのポストを廃止すれば、ロシアがLNG供給を中断させることで報復するかもしれないと懸念している。また、ある日本外交筋は、「このポストの廃止は、領土交渉に対する日本の姿勢の後退と受け取られかねない」と語っている。
ロシアは憲法で領土の割譲を禁止しており、西側諸国の対ロシア経済制裁に参加した日本を非友好国として認定しています。そのような状況下でロシアと領土交渉を出来ると日本政府は本気で思っているのでしょうか?
 ――先日の番組で鈴木宗男さんが、「ロシアへの制裁をやめれば北方領領土が返ってくる!(可能性がある?)」と仰ってましたが、ロシアは2020年の憲法改正で「領土の割譲を禁止する」という項目がハッキリと明記されたので、それはあり得ないことはお伝えしておきたい。返還を検討する時点で違憲なんです。
 ――ロシアのプーチン大統領は26日までに、9月3日を「軍国主義日本に対する勝利と第2次大戦終結の日」と定める法案に署名し、成立させました。対ロシア制裁を発動した「非友好国」日本への対抗措置とされています。 — 時事ドットコム(時事通信ニュース)
ロシア経済協力相の存続は野党からも批判されています。ロシアへの経済制裁を担当している大臣が同ポストを兼任していることが矛盾していると指摘する野田元首相の指摘は妥当なものです。この矛盾が放置されることは他国から日本外交が「二枚舌」であるという批判を呼び起こす可能性があります。
 ――朝日「ロシア経済協力相」是非めぐり迫る野田氏 首相は廃止に慎重姿勢 / 立憲民主党の野田佳彦氏は「実務もないのに、なぜ大臣を置き続けるのか」と質問。経済制裁を担当する経済産業相が兼務していることの矛盾も指摘した / 制裁担当が経済協力も兼務!?日本無茶苦茶!
ロシアとの経済協力を通して北方領土を取り戻すという安倍政権の戦略は失敗に終わりました。しかし、日本政府はその総括を行っている様子がありません。
 ――対ロシア経済協力に6年間で200億円投入…「無駄だった」と官庁幹部 北方領土交渉は停止
 ――「ロシア経済協力担当大臣」って、岸田改造内閣でも廃止されてないし、西村康稔氏とか萩生田光一氏とか世耕弘成氏とか大臣経験者もいっぱいいるし、そもそも政府として対露外交を何にも総括してないし、陰謀論者とか反米主義者とかより何よりまずそっちだろ、って思うのは何か変なのかなあ
日本がウクライナ支援を行っている以上、日露経済協力の進展は見込めず、外交で北方領土が帰ってくることはありません。外交手腕に自信があるとされる岸田首相ですが、「ロシア経済協力相」が存続する限りはその手腕には信用が持てません。
●岸田内閣不支持率68% 内閣改造の影響乏しく 9/17
毎日新聞は16、17日の両日、全国世論調査を実施した。岸田内閣の支持率は25%で、8月26、27日実施の前回調査(26%)から1ポイント減の横ばい。岸田内閣としては過去最低だった2022年12月に並んだ。不支持率は8月調査と同じ68%。岸田文雄首相が13日に実施した内閣改造と自民党役員人事で岸田内閣への期待が高まったかについては、「高まっていない」が77%に上り、「高まった」は10%にとどまった。
内閣支持率は相次ぐマイナンバーのトラブルなどの影響で6月以降下落が続き、8月から横ばい傾向となっている。人事の「刷新」による政権の浮揚効果は限定的だった模様だ。これまで岸田内閣として過去最低の支持率だった22年12月は「政治とカネ」などを巡る閣僚の「辞任ドミノ」に見舞われていた。
内閣改造で女性閣僚が2人から5人に増えたことについてどう思うかを聞いたところ、「どちらとも言えない」の49%が最多で、「不十分だ」の28%、「十分だ」の23%が続いた。
14年に関連政治団体の政治資金収支報告書の虚偽記載などが発覚し、経済産業相を辞任した小渕優子氏を選対委員長として党執行部入りさせた人事については「評価しない」が56%に上り、「わからない」は23%、「評価する」は21%だった。
留任した河野太郎デジタル相にマイナンバー制度のトラブル解消を期待するかとの問いでは「期待しない」が47%で、「期待する」は40%だった。
岸田政権の物価高対策について「評価しない」が76%で、「評価する」は9%にとどまった。岸田首相にいつまで首相を続けてほしいかとの質問では、「早く辞めてほしい」の51%が最多で、「来年9月の自民党総裁任期まで」が25%、「できるだけ長く続けてほしい」「わからない」が各12%だった。
政党支持率は、自民党26%(前回25%)▽日本維新の会13%(同15%)▽立憲民主党11%(同9%)▽れいわ新選組5%(同6%)▽共産党5%(同4%)▽国民民主党5%(同6%)▽参政党3%(同2%)▽公明党2%(同3%)――などで、「支持政党はない」と答えた無党派層は25%(同26%)だった。
調査は、携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)機能を使う方式と、固定電話で自動音声の質問に答えてもらう方式を組み合わせ、携帯449件・固定581件の有効回答を得た。
●岸田政権のガソリン政策を疑問視「なんでトリガー条項を嫌がるのでしょう?」 9/17
お笑い芸人のほんこんが17日、「X」(旧ツイッター)を更新。トリガー条項を発動しない岸田政権に疑問の声を上げた。
ほんこんは「高松市内の某所のレギュラーガソリン価格は182円。まだまだ高い。補助を拡充したのに恩恵を実感できない。不十分だし非効率。6月20日、国民民主党は西村大臣に対して(1)現行補助の半年延長(2)トリガー条項発動(3)暫定税率や二重課税の廃止」と提言する国民民主党代表の玉木雄一郎氏の投稿を引用。
その上で「なんで岸田さんは トリガー条項を嫌がるのでしょうね?」と岸田政権の姿勢を疑問視した。
トリガー条項とはガソリン価格が3か月連続で160円を超えると、ガソリン税のうち上乗せ分の25・1円の課税を止めるというもの。現在もレギュラーガソリンの平均価格が180超という高騰が続く中、岸田政権に発動が期待されている。
●岸田政権、副大臣、政務官に女性ゼロの一因「自民党女性局のフランス研修」 9/17
フジテレビ政治部長で解説委員の松山俊行氏が17日、同局「日曜報道 THE PRIME」に出演。政府は15日の閣議で、第2次岸田再改造内閣の副大臣26人と政務官28人を決定し、女性は一人も起用されず、自民党が政権復帰した2012年の第2次安倍内閣以降、初めて女性ゼロとなったことに言及した。
再改造内閣の女性閣僚は過去最多に並ぶ5人としたものの、副大臣・政務官は全員男性で、政権が掲げる女性活躍と乖離した格好。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と接点があったのは副大臣12人、政務官14人の計26人に上った。
女性ゼロの人事に関し、岸田文雄首相は記者団に「適材適所でこのような老壮青、男女のバランスとなった。どの閣僚にどの副大臣、政務官を付けるのか、チームとして人選した結果だ」と述べた。
松山氏は「閣僚と副大臣、政務官を合わせて女性比率が7%弱ということで、かなり低い比率」と指摘。「背景には、本来、副大臣レベルで入ってもおかしくない方が今回、閣僚として何人か若手が入った。その分、副大臣の人数が足りなくなってしまったというのと、自民党の女性局のフランス研修、観光旅行だと批判されましたけれど、その影響で女性局の関係者が入りづらくなってしまった。あと派閥の推薦が上がってきて決めるわけですけど、その段階で選挙が近いことを懸念する議員、特に女性議員から今回は遠慮したいという声があったと聞いています」としつつ、「やっぱり54人の副大臣、政務官が全員男性というのは国際的にはどうなのかなと」と疑問を呈した。
●岸田政権、副大臣、政務官に女性ゼロ「国際社会で通用するのか…矛盾では」 9/17
元大阪市長で弁護士の橋下徹氏(54)が17日、フジテレビ「日曜報道 THE PRIME」に出演。政府は15日の閣議で、第2次岸田再改造内閣の副大臣26人と政務官28人を決定し、女性は一人も起用されず、自民党が政権復帰した2012年の第2次安倍内閣以降、初めて女性ゼロとなったことに言及した。
再改造内閣の女性閣僚は過去最多に並ぶ5人としたものの、副大臣・政務官は全員男性で、政権が掲げる女性活躍と乖離した格好。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と接点があったのは副大臣12人、政務官14人の計26人に上った。
女性ゼロの人事に関し、岸田文雄首相は記者団に「適材適所でこのような老壮青、男女のバランスとなった。どの閣僚にどの副大臣、政務官を付けるのか、チームとして人選した結果だ」と述べた。
橋下氏は「岸田さん、形だけ取り繕ったというか、日本社会に対しては、女性の指導者層30%を目指すというメッセージを出しています。閣僚については、岸田さんを除いた大臣は約26%が女性になっていますから一見30%に近いような形になっているんですけれども、副大臣と政務官、ここもリーダー層」と指摘。副大臣、政務官54人がそろった映像を見て、「ここにゼロで、この映像を見て、これ国際社会で通用するのか、日本社会に対して30%の女性の指導者層に広げていくんだと言っていること、全く相矛盾している。閣僚だけで取り繕ったなとしか僕は思えませんね」と自身の受け止めを話した。 
●自公過半数割れが「一つの前提」 政権入り巡り 国民・玉木代表インタビュー 9/17
国民民主党の玉木雄一郎代表は16日までに、時事通信のインタビューに応じた。同党の連立政権入りが取り沙汰されていることについて、「自公政権が過半数を割ることが一つの前提だ」との考えを示した。主なやりとりは以下の通り。
――党勢拡大の目標は。
大型選挙ごとに比例得票数を2割ずつ増やしていきたい。2020年代半ばには、公明党や共産党と同規模以上の勢力になりたい。
――国の最重要課題は。
持続的賃上げだ。喫緊の課題はガソリン代と電気代の値下げだ。当面は補助延長でもよいが、ガソリン税の暫定税率廃止に踏み込むべきだ。賃上げの環境整備として、消費税の時限的減税や、所得税減税も選択肢だ。
――防衛増税や社会保険料引き上げへの賛否は。
反対だ。安定財源は必要だが、タイミングを間違えないことだ。持続的賃上げを実現するまで、増税や金融引き締めはやるべきではない。
――将来的な連立入りの可能性は。
代表選で勝利し、政策本位で与野党を問わず連携する方針は承認された。その上で、(与党に)より近づくのか、遠目に見るのかは党内でよく議論したい。一般論として、連立を組むには、安全保障、エネルギー、憲法などの基本政策の一致と、選挙区調整という二つの条件がある。これを満たす政党は、現在どこにもない。
――前原誠司代表代行は、代表選で立憲民主党や日本維新の会との共闘を訴えた。
2大政党的な政権交代や、「非自民、非共産」を集めて何とか過半数を取るというのは古くなっている。新しいアプローチで権力をリシャッフル(再編)したい。
――連合は立民と国民の連携を求めている。
両党が協力できる環境をつくるために、連合から立民に働き掛けてほしい。共産党と事実上の政策協定を結んだり、原発ゼロをうたったり、(東京電力福島第1原発の処理水を)汚染水だと言う議員がいたりするところとは一緒にできない。
――仮に入閣するならどのポストがいいか。
首相だ。個別の閣僚より、一国を担い、「給料が上がる経済」「自分の国は自分で守る」「人づくりこそ国づくり」を主要課題とした政策を実現したい。まだ単独では難しいので、方向性が一致する政治家と新しい政権を担いたい。
――理想とする政権像は。
どこも過半数を取らない状況が生まれると、多数派も少数意見を丁寧に聞くようになる。多様化した価値観の中で民意をくみ取るためには、穏健な多党制にならざるを得ない。自公が過半数割れするということは一つの前提だと思う。自民党も今の形ではなくなるかもしれない。基本政策が一致すれば、今の自民党の一部を含め、与野党全ての政治家と一緒にやる可能性はある。その時に政権の一角を担えるよう、国民を大きくしておきたい。どこかと合流する気は全くない。 
●岸田政権の目玉政策「令和版デジタル行財政改革」…新組織を作る意義は? 9/17
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」。9月13日放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「『令和版デジタル行財政改革』で司令塔を設置 その狙いは?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
岸田文雄首相は、行政の効率化を目指す「令和版デジタル行財政改革」の推進に向け、司令塔となる新たな会議体を設置する方針を固めました。9月13日におこなわれた内閣改造で「デジタル行財政改革」の担当大臣を新たに設け、河野太郎デジタル大臣が兼務することも発表されました。
「令和版デジタル行財政改革」とは?
吉田:塚越さん、「令和版デジタル行財政改革」とは何なのか、改めて教えてください。
塚越:簡単に言えば、「国と地方の行政の効率化を、デジタル技術を使っておこなおう」というものです。政府・与党の関係者によれば、新たな組織を内閣官房に設置する予定で、50人規模で人選も進んでいるとのことです。
内閣官房は内閣、特に総理大臣を補佐する機関でもあるので、この新たな組織を総理直轄の司令塔とアピールすることで、支持率をアップさせるのが狙いと見られています。
吉田:「デジタル行財政改革」、どのような狙いがあるのでしょうか?
塚越:コロナ禍における国の対応において、特にデジタル領域に多くの問題があったということが背景にあります。給付金の支給に遅れが出たり、保健所業務もFAXを利用していたことなどが問題になっていました。こうした一連の問題について、岸田首相自身が「デジタル敗戦」という言葉を口にしたことも印象的です。
すでに今年6月の記者会見で岸田首相は、国がトップダウンで地方に命令するのではなく、国がデジタルによって地方を支える仕組みを目指すといった考えを示していました。「デジタル行財政改革」を内閣改造の旗印にすることも1つの狙いだと言われています。
デジタル基盤の共通化を狙う
ユージ:「デジタル行財政改革」とは、どのようなことが想定されているのでしょうか?
塚越:報道されているところでは、国と地方自治体のデジタル基盤を共通化させるとのことです。介護や教育、子育てなどの分野で人工知能を活用して、個々のニーズにあったサービスの迅速化を目指します。
具体的には、コロナの給付金やマイナンバーといった、国が実施する政策の問い合わせに地方自治体が忙殺されたので、全国一律の制度の対応は、国が人工知能を利用したチャットボット(=自動対話システム)などを導入するとのことです。自治体の負担を軽減して、自治体は本来の業務に集中してもらうという狙いです。担当閣僚を中心に、具体的な施策の検討を進める予定とのことです。
こうしたことは重要ですが、「デジタル基盤の共通化」という構想に対して、検討されているのが「チャットボットの導入」とは、影響があまりにも限定的かなと個人的には思います。地方に負担をかけないようにするということですが、それくらいなら既存の組織でもできるのではないか、ということが気になります。
すでに存在する「デジタル庁」…新たに組織を作る意義は?
ユージ:「令和版デジタル行財政改革」、塚越さんはどのようにご覧になっていますか?
塚越:聞いているリスナーさんも感じたと思いますが、日本にはすでにデジタル社会の実現に向けた「デジタル庁」があるわけです。他にも「デジタル田園都市国家構想」という、デジタル技術で地方と都市との格差を縮め、少子高齢化や過疎化を乗り越えようとする方針を政府が2021年に出しており、このための会議が内閣官房に設置されています。新しく組織をつくる必要が本当にあるのか? ということは問題です。
今回の組織は50人規模の人材で構成されるということですが、新たに人を雇うのであれ、今の省庁から併任するのであれ、結局はお金と時間、書類が増えるだけではないか、という疑念があります。同時に、本気でシステムを変えるならその程度の人数では話にならないかなと思います。
現時点で報道されているのは「チャットボットを作る」といった程度です。もし今回の組織が本当に必要なら、それ相応の理由と内容を岸田首相自身が説明する必要がありますが、現状ではふわっとしています。岸田政権の目玉政策という割には内容が不透明過ぎるので、内容はみんなでチェックしていかないといけません。
そして、担当は河野大臣ですが、彼はデジタル庁でマイナンバーの普及対応を急ぎ過ぎて問題になりました。この組織ではどう振る舞うのかを見ていく必要があるのではないでしょうか。
ユージ:デジタル庁と、今回の組織は別のものなんですよね?
塚越:はい。今回は内閣官房にできるということです。デジタル庁とはどのくらい連携するのか、この組織が本当に必要なのか、ということはこれからなので、我々はきっちり見ていく必要があると思います。
●10月に経済対策 「規模ありき」には陥るな 9/17
岸田文雄政権の第2次再改造内閣がまず取り組もうとしているのが、物価高を踏まえた経済対策である。
首相は先の記者会見で、9月中にその柱立てを閣僚に指示し、10月中をめどに対策を取りまとめる意向を表明した。併せて、財源を裏付けるための令和5年度補正予算案も編成する考えだ。
原油高騰や為替相場の円安基調で足元の物価はなお高水準である。大企業を中心に賃上げが広がってきたものの、物価高の勢いには追いついていない。
その点で政府が適切な施策を講じ、苦境に立つ家計や企業を支える必要性はある。減速する中国経済などの海外情勢も十分に見極めて、実効性の高い経済対策としなければならない。
注意したいのは、規模ありきの大盤振る舞いで対策の規模を膨張させることだ。これは従来の経済対策で常態化していた傾向である。新型コロナウイルス禍で一段と顕著になった。
だが、コロナ禍から本格的に回復してきた現在の経済は昨年までとは異なる。巨額の財政出動の論拠とされてきた深刻な需要不足もみられなくなった。むしろ、訪日客需要の高まりも相まって人手不足による供給制約が問題になっているほどだ。
そんな中で無節操に歳出を拡大すれば、インフレを助長することにもなりかねない。歳出圧力を強めがちな与党が特に認識しておくべきことである。
問われているのは対策の中身だ。想定されているのは、ガソリン価格の高騰を抑制する補助金の継続のほか、構造的な賃上げや投資拡大の強化、人口減少や災害の対策である。
具体化する際には、やみくもに財政資金をばらまくのではなく、低所得世帯や中小・零細企業などを重点的に支える工夫が求められる。賃上げ機運をさらに広げるため、税制を含む政策の強化で中小企業を後押しする取り組みも万全にしたい。
政府内では年末に向けて6年度当初予算の編成作業も行われている。5年度補正予算に盛り込むのは緊急性の高い施策に絞り、それ以外は当初予算で措置するのが筋である。ここをあいまいにしてはならない。
政府は今年の経済財政運営の指針「骨太の方針」で歳出構造を「平時」に戻す考えを盛り込んだ。岸田首相はその点を改めて銘記しておくべきである。 

 

●「自公国」連立へ首相布石 補佐官に異例の野党出身者―岸田政権 9/16
岸田文雄首相は15日、国民民主党副代表を務めた矢田稚子元参院議員を首相補佐官に抜てきした。野党出身者の補佐官起用は極めて異例で、自民、公明両党の連立政権に国民を加える「自公国」連立へ布石を打ったとの見方が与野党に広がる。ただ、国民を支持する連合は連立に反対で、構想の先行きは不透明だ。
「適材適所の考え方で首相が判断した。これ以上申し上げることは差し控えたい」。松野博一官房長官は15日の記者会見で、今回の人事は自公国連立への布石かと問われると、こう述べるにとどめた。首相官邸で同じ質問を記者団から受けた矢田氏も「私は関知していない」と語った。
自公国連立構想は菅政権時代に自民内の一部で浮上。昨年12月に機運が高まったものの、国民内で慎重派の意見が強まり、暗礁に乗り上げた。しかし、2日の国民代表選で与党寄りの姿勢が目立つ玉木雄一郎代表が再選されると自民内で再燃。13日の内閣改造では国民幹部を入閣させる案も取り沙汰された。
自民内で検討されているのは、「政策協議」「閣外協力」などと段階を追って国民との間合いを詰める案だ。矢田氏は連合に加盟する電機連合の元組織内議員で、関係者によると、連合の芳野友子会長と良好な関係にある。自民関係者は「今回の人事は連合とのパイプづくりが狙いだ」と説明。閣僚経験者は「将来の連立に向けた布石だ」と言い切った。
首相は14日、公明党の山口那津男代表に電話し、「矢田氏を補佐官に起用したい。ご承知おきください」とわざわざ伝えた。公明は国民の連立参加には慎重とみられ、修復の途上にある自公関係が再び悪化しないよう配慮したようだ。
国民の反応は割れている。玉木氏は15日、東京都内で記者団に、矢田氏は8日に国民顧問を退任したため補佐官就任は知らなかったとしつつ、「現場の声を届けてくれる」と期待感を表明。一方、連立慎重派の一人は「国民幹部が裏で動いたのではないか」と疑心暗鬼に陥っている。
立憲民主党は反発している。泉健太代表は15日、都内で記者団に「違和感がある。政治的人事と言われても仕方がない」と批判した。立民支持と国民支持の労組を抱える連合の関係者は「連合が壊れる」と悲鳴を上げた。
●初の「女性ゼロ」…副大臣・政務官は男性ばかりの記念写真 岸田政権 9/16
政府は15日の閣議で、第2次岸田再改造内閣の副大臣26人・政務官28人の人事を決定した。2001年に現行の副大臣・政務官制度が始まって以来初めて、内閣発足時の女性起用がゼロとなった。政府は「社会のあらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合」を20年代の可能な限り早期に30%に引き上げる目標を掲げている。目標に逆行する人事に、自民党内からさえも「さすがにひどすぎる」と批判の声が上がっている。 
旧態依然の「派閥推薦」重視の結果か
岸田文雄首相は今回の内閣改造で、閣僚には過去最多と並ぶ5人の女性を起用した。ただ、首相を除く閣僚・副大臣・政務官の「政務三役」の計73人で見ると、女性比率は7%弱にとどまる。国会議員全体での女性比率は約16%、自民の約12%にも届いておらず、政務三役への登用率の低さが際立っている。
計11人の副大臣・政務官が起用された昨年8月の内閣改造と対照的な人事となった背景には、党内の各派閥からの推薦を基に調整したためだとみられる。副大臣経験者の女性議員は「派閥推薦がそもそも男性ばかりだった」と指摘。「首相は当選回数を無視して女性閣僚を増やしたのに、副大臣・政務官の女性数を減らしたら意味がない」と不満を漏らす。
口をそろえて「適材適所」と説明 野党から疑問の声
女性副大臣・政務官ゼロの評価を記者会見で問われた鈴木俊一財務相は「適材適所でやった結果、女性がいなかったということだと思う。女性が活躍する場を持ってもらうことが望ましい」と言葉を選んで話した。加藤鮎子女性活躍担当相は会見で「副大臣・政務官の人事にコメントすることは控える」と述べるにとどめた。一方で「女性が有権者の52%を占めており、政策決定への女性参画が拡大することは、多様な国民の意見を反映させるために必須だ」と付け加えた。
野党からも「女性活躍を推進する気概が全く感じられない」(立憲民主党の西村智奈美代表代行)、「あれだけ人数がいても自民の女性議員が育っていない」(日本維新の会の藤田文武幹事長)と疑問視する声が上がっている。
首相は記者団に、「適材適所でご覧のような男女バランスとなった。チームとして人選した結果だ」と釈明。「女性ならではの感性」で職務に当たることを女性閣僚に求めたこともあり、一貫性を欠いた人事にさらに批判が高まりそうだ。(小椋由紀子、山口哲人)
東京家政学院大の野村浩子特任教授(女性活躍推進)の話 政治分野で女性リーダーの登用が著しく遅れるなか、女性大臣を5人増やして目立つ所を整えただけで、次の大臣候補となる副大臣・政務官が異例のゼロというのは女性活躍に逆行しており、考えられない人事だ。政府は東証プライム市場の上場企業に2030年までに女性役員30%以上を達成するよう求めているが、政治の世界こそ「隗より始めよ」だ。女性をリーダー層に積極的に引き上げていかないと、多様性のある意思決定は実現できない。
●銃撃事件追い続ける 統一教会問題を長年取材 鈴木エイトさん 9/16
安倍晋三元首相が奈良市で街頭演説中に凶弾に倒れて1年2カ月余り。霊感商法などが問題となった世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員らの関係が次々と明らかになり、多くの2世信者が教団による家庭崩壊を訴えだした。そうした報道があるたびに的確なコメントで注目されているのがジャーナリストの鈴木エイトさん(55)だ。
風変わりな経歴を持っている。滋賀県出身で日本大学に入学後、ミュージシャンを目指していた時期がある。「若気の至り」と言うが、パンク系のバンドを組み、ライブでは長髪をなびかせたボーカルとして、ちょっとした人気者だった。結局、メジャーデビューは果たせずに26歳で髪を切った。アルバイトをしていたビルの管理やメンテナンスの会社に就職した。
週5日勤務。作業着で空調機点検−といった業務をこなした。挫折感はあったが自分の選択。可もなく不可もない日々を送っていた。2002年、教団に関する特集番組を偶然、見た。「アンケート」「手相を勉強」と言って入信者を導く偽装勧誘を知った。東京・渋谷でそれを目撃。近寄って「これは問題の宗教団体の勧誘」と阻止した。
「強い正義感を持っていたわけではないが、ウソをついての勧誘は問題だし、無垢(むく)な人がはまってしまうのは見過ごせなかった」。毎週末、そんな阻止活動で渋谷のほか、新宿や池袋にも通うようになった。
「善良で真面目な人ほどはまりやすい」とは知っていた。実は姉が教団の信者。ちょっとしたきっかけで入信し、身内の不幸を突かれては「一族のメシア(救済者)が必要」とマインドコントロールされた。
「『姉の問題で阻止活動を始めた』と矮小(わいしょう)化されると困る。姉は家族の問題で、教団は社会の問題。誰だって何か問題に気付けば、できる範囲でやることをやるでしょう。私にできることが阻止活動だった」
教団から脅迫されたり、暴行されたりもした。それでも活動を続けた。教団を知れば知るほど問題意識は高まった。教団の被害者を救済する全国霊感商法対策弁護士連絡会や日本脱カルト協会とも連携。09年にはニュースサイト「やや日刊カルト新聞」に参加して、本業の傍ら副業のジャーナリスト活動を本格化した。
教団の霊感商法や合同結婚式は1980年代に社会問題化し、メディアが盛んに報じた時期があった。しかし、教団が信者による選挙応援を武器に自民党の政治家に近づくにつれて下火に。メディアの監視が働かない中、2012年末に首相に返り咲いた安倍氏は教団に接近。21年9月に教団関連の集会で安倍氏のビデオメッセージが流された。鈴木さんなどによる、ごく少数の報道によって山上徹也被告は安倍氏と教団の関係を確信。銃撃事件を起こしたとされている。
その事件でメディアが教団の問題を再び報じるようになり、20年間余りも孤独な闘いを続けてきた鈴木さんにもスポットライトが当たった。それまでは出版社に相手にされなかったが、著作が次々と出版されて日本ジャーナリスト会議(JCJ)大賞なども受賞。副業だったジャーナリスト活動がやっと本業になった。
しかし、心中は複雑だ。「安倍さんと教団の関係は問題だが、その代償で命を落としたのは何とも皮肉。それに、山上被告が犯行に至る経緯には私の報道の影響がある」と言う。
「安倍さんの死に大きな喪失感があった。選べるのなら、注目される今の自分より、無名のまま安倍さんを追及する自分を選ぶ」
教団の問題はヤマ場を迎えている。政府が解散命令を請求するかどうかだ。鈴木さんは「政治家が邪魔しなければ、10月には出る」と予測する。ただ、請求されても霊感商法の被害者救済や信者の社会復帰など、多くの問題は残る。教団と関係の深い大物政治家の問題も未解決のままだ。
「後に知ったが、事件前に山上被告は私に接触していた。もしかしたら、事件を止められたかもしれない。間接的とはいえ、私は事件の当事者の一人。最後まで事件を追及する責任がある」 
●歴代総理より一流企業の総合職のほうが高学歴…日本の政治家は低学歴 9/16
政治家にはどんな学歴が求められるのか。評論家の八幡和郎さんは「先進国の指導者の多くが輝かしい学歴の持ち主だが、近年の日本の総理大臣はそうではない。国内トップクラスの学歴と知力と専門知識、そして高度な国際経験を持つ人材が指導者でなければ、あらゆる分野で世界の最先端から遅れてしまうだろう」という――。
最後の「東大卒・元官僚」は宮澤喜一氏
大統領や首相など国の指導者は、すべての職業の中でも、最高の知力、専門知識、職業経験を必要とする仕事のはずである。実際、米国はハーバード大学、英国はオックスフォード大学、フランスはフランス国立行政学院(ENA)の卒業生が多い。
日本でも、戦前の首相は帝国大学出身の官僚か職業軍人が原則だったし、戦後も昭和が終わるまでは官僚、弁護士、ジャーナリストなどが多かった。
ところが、平成になると地方政治家が多くなり、やがて世襲政治家の天下になった。最後の東京大学法学部出身で元官僚の宰相は、1991年に就任した宮澤喜一である(93年に退任)。
それ以降、上智大学出身の細川護熙以降の最終学歴は、成城大(羽田孜)、明治大(村山富市)、慶應大(橋本龍太郎)、早稲田大(小渕恵三)、早稲田大(森喜朗)、慶應大(小泉純一郎)、成蹊大(安倍晋三)、早稲田大(福田康夫)、学習院大(麻生太郎)、東京大工学部(鳩山由紀夫)、東京工業大(菅直人)、早稲田大(野田佳彦)、法政大(菅義偉)、早稲田大(岸田文雄)だ。
トップクラスの知力の持ち主とは言いがたい
学歴が一人ひとりの知的水準をそのまま表しているわけではないにしても、全般的に見たとき、諸外国の指導者のほとんどが、自国におけるトップクラスの学歴と知力、一般教養、専門知識を持っているのとは大違いだ。上記の総理大臣の学歴リストは、たとえば、一流企業総合職採用の出身校の分布より低レベルなのではないか。
上記のなかで、知力では東京大学工学部卒の鳩山由紀夫が群を抜いているのだろうが、器用な受験勉強的秀才で、一般教養を深めた風情でない。細川護熙は近衛家の伝統につながる公家的で特殊な教養人だ。安倍晋三は地頭の良さは間違いないが、本当にまじめに本を読んで勉強したのは、第1次政権で大失敗して下野してからという印象がある。
これから詳しく分析するように、戦前から戦後にかけての歴代首相が、旧制高校から帝国大学、陸軍士官学校・海軍兵学校から陸軍大学・海軍大学、さらに、ほとんどが海外留学・勤務の経験を持っていたのと比べ、劣化が激しいのである。
江戸時代は恐るべき低学歴社会だった
歴史的経緯を振り返ると、江戸時代の日本には高等教育機関は存在しなかったし、科挙もなかったので、恐るべき低学歴社会だった。藩校も低レベルの漢学を教えて中国語の読み書きはできるようになったが、あとは、少しばかりの歴史や論理的思考をつまみ食いしていただけだ。
庶民が学べる中等教育学校はなく、家庭教師か私塾くらいしか学ぶ方法はなかった。ようやく幕末になって学問ブームが起き、適塾(大阪)、咸宜園(豊後日田)、松下村塾(萩)などが現れ、さらに慶應義塾に至って高等教育機関らしくなった。幕府、各藩が競って洋学校も設立した。
明治になると、帝国大学(最初は東京だけ)のほか、外国人教官を呼んで留学準備や初歩的な学問を教える学校、軍の学校が設立されたが、体系的な学校制度となったのは、1890年前後からだ。連続テレビ小説「らんまん」で主人公が帝国大学に出入りし始めたのは1884年で、そのころは、外国人教官が留学帰りの日本人に置き換わりつつある時期だった。
海外事情に精通していた明治時代の首相たち
明治時代の首相はいずれも維新の功労者であり、近代学校制度ができる前の人たちだが、伊藤博文をはじめ、海外留学や数カ月以上の長期視察で海外の事情をしっかり勉強した国際人ばかりだった。例外は、海外渡航経験ゼロの大隈重信だが、もともと長崎の英語学校出身だし、耳学問で世界に通じていた。
大正から終戦までは、首相は帝国大学出身の官僚か職業軍人ばかりとなり、私学出身者は慶應大学出身の犬養毅(ジャーナリスト。少し公務員経験もある)だけ、官僚経験がないのは、旧制一高から京都大学で学び、25歳で貴族院議員となった近衛文麿だけだ。そして、ほとんどが海外留学・勤務の経験者だった。
戦後は旧軍人が排除され、官僚出身者(幣原喜重郎、吉田茂、芦田均、岸信介、池田勇人、佐藤栄作、福田赳夫、大平正芳、中曽根康弘)が主体になった。そのほか、東京大学出身の弁護士(片山哲、鳩山一郎)、早稲田大学出身のジャーナリストだった石橋湛山、高等小学校卒で工務店経営者だった田中角栄、それに、明治大学在学中から長期の洋行を繰り返し卒業直後の選挙で代議士となった三木武夫がいた。
総理候補になるだけでも高いハードルがあった
このころ総理大臣候補になるには、たとえ学歴や官僚経験がなくとも、官僚出身者が多い政界で、十分に政策論で対抗する能力が必須であり、外務大臣、大蔵大臣、通産大臣のうちふたつを経験することが総理の条件と言われたこともあった。
だが、大平正芳が現職のまま死去して、妥協の産物として水産講習所(現東京海洋大学)出身で重要閣僚経験がない鈴木善幸が総理になってから、学歴も重要ポストの経験も問われず、政治的な駆け引きと大衆人気だけで総理が決まるようになった。
古典的な官僚出身者である中曽根康弘の後は、はじめての県議出身だった竹下登、同じく宇野宗佑、議員秘書出身の海部俊樹が続き、宮沢喜一以降は先述の通りだ。親が政治と関わりがなかったのは、村山、菅直人、野田だけである(菅義偉の父は町会議員)。
英国・フランスの指導者の「華麗なる学歴」
一方、海外ではどうだろうか。もっともエリート主義的なのは、英国とフランスだ。英国では、サッチャー以降の9人の首相のうち、7人が「THE世界大学ランキング」7年連続1位のオックスフォード大学卒で、例外は高校中退のメージャーとエディンバラ大学歴史学科のブラウンだけ。
フランスは、エリート官僚養成校であるENA(国立行政学院、現在は改組されてINSP)出身者が、ジスカールデスタンからマクロンまで6人の大統領のうち4人を占めている。例外はいずれも弁護士出身のミッテラン(ENA設立以前の世代)とサルコジ(ENAの登竜門であるパリ政治学院を終了できなかった)だけだ。
米国では、大学より大学院が問題だが、平成以降に就任した6人の大統領のうち4人(ブッシュ父子、クリントン、オバマ)が、エリート校であるハーバード大学、イェール大学や大学院に何らかの形で在籍していた。例外は、トップクラスのビジネス・スクールであるペンシルベニア大学ウォートン・スクール出身者のトランプと、中の下クラス(小室圭氏のフォーダム大学より下位に位置づけられる)であるシラキュース大学ロースクール出身のバイデンだ。
ドイツの場合、すべての大学が同じ基準で単位を与える仕組みなので、大学名からは学力・知力を判断できないが、コールとメルケルは博士、シュレーダーとショルツは弁護士である。
指導者の低学歴は日本の悪しき伝統
ゴルバチョフ以降のソ連・ロシアの指導者を見ると、ゴルバチョフは最難関であるモスクワ大学、プーチンとメドベージェフは名門レニングラード大学(現サンクトペテルブルク大学)の法学部。エリツィンはウラル工科大学の建築科、ミシュスチン首相もエンジニアだ。
中国の国家主席では、江沢民は上海交通大学、胡錦濤と習近平はいずれも清華大学出身のエンジニアである。首相も李鵬、朱鎔基、温家宝がエンジニアで、李克強は北京大学法学部、李強は農業エンジニアである。社会主義国ではエンジニアが経済運営の中心にあることの伝統を引き継いでいるといえる。
このようにまとめてみると、いかに日本の歴代総理の学歴が低レベルであるかが理解できるだろう。指導者の低学歴というのはこの国の悪しき伝統であり、政界に限った話ではない。
江戸時代の教育水準が高かったとかいう人がいるが、仮名(かな)というものがあるので低レベルながら読み書きができる人が多かっただけだ。武士は藩校で九九すら教えられなかったから、プロの官僚ないし軍人の役割は果たせず、勘定方とか兵法学者といった世襲の職人集団が担っていた。
日本人の留学熱、学習意欲はすっかり冷めている
戦前の旧制高校は一般教養を学ぶにはよかったが、帝国大学で初歩的な専門知識を得た後、官僚になってから仕事や海外勤務での見聞を通じて海外事情についての知識を補った。軍人も軍の大学で学部レベルの勉強はするが、その後、海外で武官として最新知識を得た。
戦後の官僚や企業幹部も、国内では大学院に進まず、大学院レベルの学びは海外留学に頼っている。経済産業省作成の資料によると、日米の時価総額上位100社の経営者のうち、日本では84%が学部卒で大学院修了は15%。米国は67%が院卒で、博士課程修了者も1割いる。
しかも、留学組が政界でも経済界でも優遇されているかといえばそうでもない。さらに、日本人の留学熱はすっかり冷めている。
明治初期は留学熱がすさまじかったのに、国内の教育体制が整備され、そこそこの勉強ができるようになると、それで満足してしまった。
日本が世界の最先端から遅れてしまった理由
そしていま、同じことが起きつつある。私(1951年生まれ)たちの世代から今世紀初頭までは留学熱が高く、競って海外の有名大大学院へ行ったし、留学先は喜んで「新しい超大国」になった日本人を官民問わず受け入れてくれた。
しかし現在、米中対立で少し歯止めがかかってはいるが、欧米の名門大学では日本人が減り、中国人など他のアジア系の学生だらけになっている。こんな状態では、日本はあらゆる分野で世界の最先端から遅れてしまう。
もちろん、日本では本人の能力や職歴より、誰の子どもかのほうが総理大臣の道に進めるかどうかの決め手になるから、政治家の子どもの留学熱が高いのは歓迎したい。だが、これまでは、箔付けと語学を学ぶことが主目的となり、修士や博士になることはオマケ扱いだった。小泉純一郎、麻生太郎、安倍晋三などがそうだ。
総理大臣の低学歴化が影響しているのではないか
内閣改造後の新閣僚では、河野太郎が日本でなく米ジョージタウン大学卒、上川陽子、西村康稔、伊藤信太郎、加藤鮎子が米国の大学院を修了している。総理候補と言われる茂木敏充、林芳正、小泉進次郎、玉木雄一郎なども同様だ。留学ブームだった世代が閣僚適齢期になった反映である。
「日本はもはや先進国ではない」と言われて久しいが、国の指導者である総理大臣の近年の低学歴化・海外経験の乏しさが影響しているように思えてならない。
「総理大臣はかつてのように東大卒を主にすべき」というわけでないが、激動の国際情勢や金融情勢についていくには、少なくとも国内トップクラスの学歴と知力と専門知識を持ち、さらには高度な国際経験を持つ政治家、あるいは、学歴はなくとも彼らと議論して負けない政治家が総理候補となるのが望ましいだろう。
●核軍縮・安保理改革訴え 岸田首相、国連総会へ19日出発 9/16
岸田文雄首相は国連総会に出席するため、19日に米ニューヨークへ出発する。一般討論演説で、ライフワークとする「核兵器のない世界」実現や、常任理事国ロシアのウクライナ侵攻で機能不全が指摘される安全保障理事会の改革を訴える見通しだ。ウクライナ情勢に関する安保理首脳級会合にも出席する。
首相は滞在中、高濃縮ウランやプルトニウムを対象とする核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)に関するハイレベル行事を主催。5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)でまとめた核戦力データの透明化を訴える「広島ビジョン」も踏まえ、核軍縮に向けた機運を醸成したい考えだ。
このほか、新型コロナウイルス禍を受けた国際保健、持続可能な開発目標(SDGs)をテーマとする会合に参加。ウクライナのゼレンスキー大統領との会談も調整している。22日に帰国する。
松野博一官房長官は15日の記者会見で、「国際社会が複合的な危機に直面する中、安保理改革を含め国連の機能強化の重要性を強調する」と説明。首相演説に関し、「分断や対立ではなく協調の世界を目指し、人間中心の国際協力を提唱する」と語った。
国連総会の関連会合には上川陽子外相も出席する。13日の就任後、外遊は初めて。18日(日本時間19日)にG7外相会合を開催し、議長を務める。 
 

 

●来年以降、政権を揺さぶる火種になる…岸田政権を待ち受ける"第2の爆弾" 9/15
「デジタル行財政改革担当相」は河野大臣が兼任
岸田文雄首相は9月13日に内閣を改造した。焦点のひとつだった河野太郎デジタル相は留任、改造内閣の看板になるかと思われた「デジタル行財政改革担当相」は新設されたものの、河野大臣の兼任となった。
当初は、マイナンバーカードへの健康保険証など情報の紐付けを巡る大混乱の責任を取らせてデジタル相を交代するのではないかと見られていた。結局、火中の栗を拾えるだけのデジタル化への知見を持った政治家が限られることから、今後さらなる炎上を抑えるためにも河野氏以外では難しいと判断したようだ。
さらに国民的な人気も高く、岸田氏にとっては潜在的に地位を脅かす存在である河野氏を、閣内で引き続き難題を抱えさせることで、抑え込もうという政治的な狙いもあるという解説も永田町では聞かれる。岸田首相は情報の紐付けミスの「総点検」を11月末までに行うよう指示しており、河野大臣に大きな重荷を背負わせている格好だ。
マイナンバーカードへの健康保険証の一体化については、野党のみならず与党内からも見直しを求める声が出ている。紐付けミスが相次いで発覚した6月以降、内閣支持率が大きく低下。NHKの世論調査では5月に46%だったものが、8月には発足以来最低に並ぶ33%にまで低下するなど、岸田内閣の足元が大きく揺らいだ背景にはマイナンバー問題があった。
父は「日本医師会のドン」という厚生労働相
首相周辺は、マイナカードと保険証を来年秋から一体化する方針を先送りする方向で動いたが、結局、8月4日の会見では一体化及び保険証の廃止の方針は堅持した。河野大臣と加藤勝信・厚生労働相(当時)の2人が先送りに強く反対したことが背景にあったとされる。今回の内閣改造で、日本医師会の推薦を受ける武見敬三氏が厚労相に就いたことで、この厚労省の姿勢がどう変わるのかが注目される。
武見氏はかつて日本医師会のドンと呼ばれた武見太郎氏の子息。今回の人事には「医師会が大臣になったようなもの」「あまりにも露骨」といった声が噴出しているが、保険証の廃止に慎重姿勢を取る医師会の声が今後の行政にどう反映していくことになるのか。武見大臣が医師会の説得に回って保険証廃止に突き進むのか、河野大臣との間でバトルを繰り広げることになるのか、大いに注目される。
11月末までに行われる総点検で、問題が解決するかどうかは首を傾げる。マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせたいわゆる「マイナ保険証」に他人の医療情報が紐付けされたミスの発覚件数は8月になっても増え続けている。8月8日段階で新たに1069件のミスが明らかになり、実際に他人の情報が閲覧されていた事例も5件確認された。累計の誤登録件数は8441件にのぼる。しかも、今後も誤登録の発見は増え続ける可能性があると報じられている。
「インボイス制度開始」という新たな難題
内閣改造が終わり、秋の臨時国会が始まれば、再び、マイナンバー問題の野党による追及が再開する。NHKの世論調査では9月の内閣支持率は36%と3ポイント改善、とりあえず一服状態だが、これがどう動くか。来年秋の自民党総裁選で再選を狙う岸田首相にとってマイナンバー問題はアキレス腱(けん)であり続ける。
そこにもうひとつ難題が加わる。消費税のインボイス制度が10月1日から開始されるのだ。「適格請求書発行事業者」として登録し、その番号や消費税額を明記した請求書を発行する仕組みで、モノやサービスを購入するために代金を支払った側はこの適格請求書(インボイス)が無ければ、その消費税分を税額控除することが原則できなくなる。飲食店なども登録番号などを明記した領収書(適格簡易請求書)を発行することになり、それをベースに税額控除を受ける。つまり、売り上げに伴って受け取った消費税(仮受消費税)から経費として支払った際の消費税(仮払消費税)を差し引いた金額を納税することになる。
インボイス制度は「増税策」であることは間違いない
すでに課税業者の多くは適格請求書発行事業者として登録を始めており、6月末時点でおよそ300万ある課税事業者のうち8割を超える事業者が登録を済ませたという。個人事業主の課税事業者も7割以上が登録している。
問題は、インボイスを発行できるのは、消費税の申告をする課税事業者に限られること。国内の事業者は個人法人合わせて823万あるとされ、その6割が「免税事業者」とされる。とくに個人事業主の過半数が免税事業者だ。こうした事業者の発行する請求書や領収書では税額控除を受けられなくなるため、免税事業者との取引を縮小するのではないか、という見方が広がっている。経費処理するのに簡単な課税事業者の店を利用しよう、ということになるのではないかというわけだ。
インボイス制度を導入する財務省の狙いは、結局のところ、免税事業者を減らし、課税事業者に変えていくことにある。免税事業者も売り上げが減っては困るので、自ら課税事業者になって適格請求書(領収書)を発行できるようになろうという動きが出ている。そうなれば当然ながら、国に入る消費税の額は増えるわけで、増税策であることは間違いない。
来年以降、政権を揺さぶる火種になる
消費税「率」を引き上げれば、国民の注目が集まり大きな反発を生む。ところが課税業者を増やす今回のインボイス制度では、なかなか反発が起きにくい。実際にどれぐらい税負担が増えるのかが見えにくいからだ。だが実際に増税負担を被ることになるのはこれまで免税されてきた個人や零細事業者ということになるだろう。もちろん、様々な経過措置や特例措置も設けられているが、事業者の負担が増えることは間違いない。
例えば非課税事業者が課税事業者に転換しても、実際に消費税を納税することになるのはまだしばらく先だ。その負担増を実感し始めるのは来年以降になる。まだ、その全体的なインパクトを予想するのは難しいが、政権を揺さぶる火種になることは間違いない。しかも不満が爆発するのが来年となると、総裁選前に爆弾が破裂することになりかねない。
インボイス制度や請求書や領収書の電子保存など、デジタル化の進展で、徴税漏れは大きく減っていくことになる。加えて、課税業者が増えていけば間違いなく消費税収は増える。国にとってはデジタル化の恩恵は大きい。
「何のためにデジタル化を進めるのか」国民の怒りが蓄積
一方で、国民側からすれば、何のために国のデジタル化を進めるのか、という憤懣(ふんまん)が蓄積しつつある。マイナンバーカードも「便利になる」と言って普及させる一方で、結局は個人の資産捕捉などに繋げて税収を増やすことが狙いだろう、ということになる。
そんな不満を解消するために、今回の内閣改造では当初、「デジタル行財政改革担当大臣」を新設し、デジタル化が行政コストの削減につながることをアピールするはずだった。総理直轄のデジタル行財政改革本部を設置することで、国が進めるデジタル化は行政改革のための手段なのだということを示す狙いだったのだ。菅義偉前首相がデジタル庁を創設した時に狙いとして示していたのは「縦割りの打破」。デジタル化が進めば行政コストが下がるというのがデジタル庁創設の謳い文句だったのだが、その理念を再度国民に訴えようとしたのだろう。
ところが蓋を開けてみれば、河野デジタル相が新設のデジタル行財政改革担当大臣を兼任することで終わり、斬新さはすっかり消えてしまった。
今後、マイナンバーのミス続発が止まらないまま、国民に不便さを押し付けることになる保険証の廃止に固執し続ければ、岸田内閣の支持率が再び低下を始めることになるかもしれない。さらに、それにインボイス制度への国民の憤懣が重なれば、岸田政権の足元を突き崩す「第2の爆弾」になるに違いない。
●次の自民総裁1位は小泉氏、2位石破・河野氏 首相6位 9/15
日本経済新聞社とテレビ東京は13、14日の緊急世論調査で、事実上の次の首相となる自民党総裁にふさわしい人を聞いた。小泉進次郎元環境相が16%で首位に立った。2位は15%の石破茂元幹事長、河野太郎デジタル相が続いた。現職の岸田文雄首相は6%で6位となった。
4位は8%の高市早苗経済安全保障相、5位は7%の菅義偉前首 ・・・
●「ドリル優子」も要職に…「説明責任を果たした」って本当? 9/15
13日に行われた内閣改造と自民党役員人事。メディアやネットで飛び交ったのが「説明責任」というキーワードだ。政治資金の資料をドリルで壊したり、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点が判明したりした議員が、果たしていない責任。記者会見で釈明しているケースもあるが、なぜ世論を納得させられないのか。「説明責任」のあるべき取り方とは。(曽田晋太郎、山田祐一郎)
13日の自民党選対委員長就任会見で、政治資金問題の説明責任を指摘された小渕優子氏。「十分に伝わっていない部分があれば、私自身の不徳の致すところ」と涙ながらに述べたが、ある自民中堅議員は「説明責任を果たしたとは言えない」と冷ややかに話す。
2014年、小渕氏の関連政治団体が支持者向けの観劇会費用などに関し、不透明な会計処理を行っていた疑惑が表面化。元秘書2人が政治資金規正法違反に問われ、執行猶予付きの有罪となった。東京地検特捜部が事務所を家宅捜索した際、会計書類を保存したパソコンのハードディスク(HD)がドリルで壊されていたことから、「ドリル優子」とも批判された。
「選挙の顔」の役割を果たせるのか
小渕氏は経済産業相を辞任した後、不起訴に。ただ、自身が依頼した第三者委員会の調査結果公表を待って地元・群馬で記者会見したのは1年後。これ以降公の場での説明はなかった。
13日の会見では「地元に戻り、700の(後援会)支部を2年以上かけて回った」と釈明。だが、前出の中堅議員は「『身内』だけでなく、国民に対して説明をしないといけない」。
選対委員長は定例記者会見がなく、国会で野党から追及を受けることもないため、これ以上傷口は広がらないとの見方もある。ただ、岸田文雄首相が期待する「選挙の顔」の役割は果たせるのか。自民若手議員は「選対委員長として表舞台に出る中で、これから何度も過去の問題がぶり返すのであれば、特に選挙が弱い若手は影響を受ける可能性がある」と吐露した。
全容うやむや、説明せず幕引きの印象
世論が納得しない理由について、企業の危機管理に詳しい「エイレックス」の江良俊郎社長は「政治家に限らず、影響力を持つ組織や個人の不正、行動に疑義がもたれた場合、当事者は十分な情報提供をし、丁寧に説明する義務と責任を負っている」と話す。小渕氏の場合、「HDをドリルで破壊するなど悪質な印象が強かったにもかかわらず、第三者の報告書公表や自身の会見が遅かった。会見でも『これ以上説明できない』などと全容を開示せず、メディアをはじめ社会に不満がくすぶっていた。経産相辞任で、説明せず幕引きした印象が強かったのでは」と語る。
一方、今回の人事では、妻が元夫の死亡を巡り警視庁から事情を聴かれたと週刊文春に報じられた木原誠二前官房副長官が会見を開かないまま退任した。「首相の側近として政策で党との調整を担うのに余人をもって代え難い」(岸田派議員)ため、党幹事長代理などで起用されるとの報道もあるが、小渕氏のように尾を引く恐れはないのか。
選挙プランナーの松田馨氏は「ネガティブなイメージが付き、今後の出世は難しいという声もある。ただ、木原氏の妻が日弁連に人権救済の申し立てをしており、テレビや新聞がほとんど取り上げておらず、大きな火種にはならないだろう」とみる。むしろ、「初入閣組を中心に大臣の失言やスキャンダルがあれば、政権への大きなダメージになる」という。
日本では情報開示の認識甘く
そもそも「説明責任」とはどういう意味か。青山学院大の八田進二名誉教授(会計学)によると、英語の「アカウンタビリティー」を訳したもので、責任ある立場に課せられる結果責任を指す。
「もともとは米国の会計の世界で『会計責任』『報告責任』という意味で使われてきた言葉。『アカウント・フォー』(〜を説明する、〜の責任を持つ)の意味から、近年は政治や行政、一般社会で広く『説明責任』として使われるようになり、2000年代以降は日本でも広まった」
業務を遂行する責任(レスポンシビリティー)とは異なり、「経営者が株主総会で経営成績をデータで示して承認を得るのが企業の説明責任」という。「海外では説明責任の意識が根付いているが、日本では混同されている場合が多く、説明責任への意識が脆弱ぜいじゃくなままだ」。政治家の説明責任については「冗舌に話すことで果たしたと勘違いしている。疑念や疑惑を払拭するには、事実を明確にして国民を納得させることが必要だ」と指摘する。
「旧統一教会と接点」組も複数起用
まさにそうした説明責任が求められているのが、旧統一教会との関係。だが今回の人事では、昨年自民党が実施した調査で、教団側とのかかわりを認めた国会議員が複数起用された。
留任した萩生田光一政調会長は教団関連の会合に出席したり、選挙で教団側からボランティア支援を受けたことが判明。それでも13日の会見では「今までも機会あるごとに説明を続けてきた。調査結果の内容を党に報告し、関係を絶っている。現段階で何か説明不足だという指摘は当たらない」と述べた。
関連団体の会合に出席するなどしていた木原稔防衛相も同日の会見で、教団関係団体との関係を絶っていると強調。「党の調査に回答している。それ以降、特に過不足はない」とした。
検証不足だから追及が終わらない
これで国民は納得できるのか。ジャーナリストの鈴木エイト氏は「萩生田氏は説明を尽くしてきたのか疑問だ。木原氏もそれなりの接点があった人物。いま関係を絶っているから大丈夫というのではなく、当時どうだったかという検証が足りないから、いつまでも指摘されることになる」と話す。
教団の解散命令請求の検討などを所管する文部科学相に就任した盛山正仁氏も、関連団体の会合であいさつする接点があったが、14日の就任会見で「現在、団体との関係は全くない」と述べた。鈴木氏は「解散命令請求に向けた岸田首相の意向を反映しやすい」とみるが、野党からは影響を懸念する声も上がる。
全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)事務局長の川井康雄弁護士は「そもそも昨年の党の調査自体、安倍晋三元首相を対象としないことに象徴されるように全く内容が足りていない」と指摘。この調査をもって説明を果たしたとする新閣僚らにくぎを刺す。岸田首相は「過去の関係いかんにかかわらず、現在は関係を一切有していないことを前提に任命した」と強調したが、川井氏は「改めて調査が必要だ」と訴える。
だんまりが当たり前に
岸田政権では昨年も8月の内閣改造後、旧統一教会との関係や政治とカネを巡り、4人の閣僚が相次いで辞任した。それなのに今回も追及必至の人事を繰り返したことに対し、政治ジャーナリストの泉宏氏は「説明責任を果たさないことが当たり前になってきている」と批判する。
「茂木派の小渕氏を党四役に登用したのは来年の総裁選をにらんだ動きだ。岸田首相としても小渕氏が追及されるのは計算済み。説明責任以上にメリットがあるから、普段会見がない選対委員長にした」と泉氏。国民の目を軽視する姿勢に「新内閣に期待する声は少ないだろう」と話した。
デスクメモ
首相は会見で「強固な実行力を持った閣僚を起用した」と説明したが、真に受けた人がどれだけいるのか。明治維新や戦後復興を引き合いに「明日は今日より良くなる」と言われても、根拠がなければ精神論だ。バラ色の政策を語るなら、裏付ける客観的事実の説明責任も問われる。
●インドによるインドのためのG20 9/15
G20(20カ国・地域)首脳会議に参加するため、議長国インドの首都デリーを訪れた外国要人やメディア関係者が目にしたのは、ビルの壁面やバス停、公共掲示板などを埋め尽くすG20のポスターと、モディ首相がほほ笑む無数の大型看板だった。「インドによるインドのためのG20」と形容するライターもいたが、インドにとっては「グローバル・サウス」、つまり新興国・途上国のリーダーとしての役割を国際社会にアピールする壮大な政治・外交ショーだったようだ。
激論避け会議の「成功」を優先
9月9〜10日にデリーで開催されたG20首脳会議では、ロシアのウクライナ侵攻や途上国の債務危機、環境、食糧、エネルギーなど国際社会が抱える様々な課題に先進国と新興国がどう取り組み、いかなる解決方法を示すかが注目された。習近平・中国国家主席とプーチン・ロシア大統領という2大巨頭を欠いたG20は会期初日に首脳宣言を出すという異例の展開となったが、ウクライナ侵攻を止める気配のないロシアや、周辺の係争地域をすべて自国領とした地図を発行するなど領土への非妥協的姿勢を露わにした中国とどう折り合いをつけるかが、会議運営の肝だった。
一方的な非難で彼らがへそを曲げれば、宣言はおろか会議自体が決裂し失敗に終わる恐れもあった。実際、今年2月、3月の財務相・中銀総裁会議や外相会議では中ロの反発などから共同声明すら出せないという危機的状況に陥っていた。
フタを開けてみれば、首脳宣言はロシア・ウクライナ問題を「侵攻」ではなく、より中立的かつ責任があいまいな「戦争」という言葉で総括。武力行使や威嚇に反対を示しつつも、ロシアへの非難という点では昨年のインドネシア・バリ島での首脳会議よりも一歩後退したと言わざるを得ない。
欧米諸国はロシアへの処罰感情が強く、非難の文言では譲れないとの観測もあったが、結果としてインドのメンツを考慮し、サミットの「成功」に協力したという形になった。インドとしてはウクライナ問題のせいで首脳会議そのものをつぶすわけにはいかなかった。根回しに駆け回ったインド外交官の苦労がしのばれる。
世界の課題をアピール
さらに首脳宣言では「G20は経済フォーラムであって、地政学的問題や安全保障を話し合う場ではない」といまさらのように開き直る文言も盛り込まれた。「紛争には首を突っ込みません」という意思表明だが、少々無責任ではないのか。
それでも、世界が直面する様々な課題について先進国と新興国・途上国の代表が一堂に会して解決策を模索し、「何とかしなければいけない」というメッセージを打ち出したことには意義がある。宣言ではエネルギーや環境、貿易、そして国際通貨基金(IMF)や世界銀行など国際金融機関の改革にも一歩踏み込んだ。
しかし、会議をしている間にも元利が膨れ上がる待ったなしの債務問題についてはザンビアやガーナ、エチオピア、スリランカなどにおける事態の進展に歓迎を表明しつつ、「債務問題への対応は重要」「引き続き努力していこう」という「掛け声」にとどまった。巨大債権国となった中国が全面協力しない限り債務問題は一歩も動かないことは万人が理解していたとはいえ、これには失望を禁じ得ない。
注目すべきは55カ国・地域でつくるアフリカ連合(AU)のG20加盟が承認されたこと。これにより深刻な債務を抱える国が多く、ガバナンスにも難があるアフリカ諸国に対し、加盟各国がコミットを強化していくという効果が期待できる。うがった見方をすれば、アフリカ市場開拓において単独ではスピードや資金面で中国には太刀打ちできないインドが、多国間でアフリカに関与することで有利に事を運べる、という思惑もありそうだ。
異論を抑えるクロスワード・パズル
議長国インドのシェルパ(首脳の補佐役)を務めたのは、エネルギッシュなキャラクターで知られたキャリア官僚OBで、日本とも関係が深いアミターブ・カント氏。彼はG20閉幕後、「(首脳宣言の)83項目すべてで全加盟国の支持を得られた、ただ一つの脚注もない」と自画自賛した。
しかし、首脳宣言の文言を読んでみれば、〇〇を「歓迎する」「留意する」「支援する」「支持する」「認識する」「再確認する」「求める」「コミットする」といった表現を巧みに使い分けていることに気づく。言葉のインパクトを最大にしつつ、すべての加盟国から異論が出ないよう、官僚や首相補佐官らが注意深く練り上げた労作と言っていいだろう。合意形成を最優先させた「シャンシャン総会」で、丁々発止の厳しい議論を今回はスルーしました、ということか。
また、宣言文の最終盤では「(G20は)宗教的及び文化的多様性に留意する」と明記、信教の自由や表現の自由の重要性を強調するとともに、「宗教的憎悪に基づく行為を強く非難する」としている。イスラム教徒多住地域であるカシミール地方の「併合」やイスラム教徒に差別的な「国籍法改正」が国際社会で問題視され、つい7月にはデリー郊外のハリヤナ州で7人が死亡する宗教暴動が起きたばかりの議長国インドにとってはいささか皮肉な中身となっている。
世界4番目の月面軟着陸成功を果たし宇宙開発の進展をアピールしたインドは、G20サミットの議長国を務め上げたことでグローバル・サウスの「盟主」に一歩近づいた。成長力を秘めた人口14億人超の巨大な市場や、豊富な理科系人材、地政学的重要性を兼ね備え、世界から注目されているインドは今回、外交面においても大きな得点を挙げたのは間違いない。ご祝儀ということはあったにせよ、加盟国首脳はこぞってインドを称賛している。
インド・モディ政権の究極の目標は超大国への仲間入りだ、といわれる。だとすれば、そのために必要なのは経済成長や政治の安定はもちろん、国際社会からの信頼と尊敬を勝ち取ることだろう。
G20首脳会議の開幕前、デリーにあるスラムの周囲は突然緑色の巨大な布で覆われた。スラムの住民男性は英国の公共放送「チャンネル4」のカメラに向かって「政府は世界中からやってくる要人たちに、我々のような貧しい人間を見せたくないのだろう」と苦笑い。また、米CNNはG20開催に伴う「美化キャンペーン」の一環として、会議場近くのスラムが破壊されたと報じたが、印政府当局はX(旧ツイッター)を通じて「最高裁の命令に基いて違法建築を撤去したもので、G20とは関係ない」と反論している。
貧困や不公正、腐敗などがついて回るのがグローバル・サウスの現実だが、途上国のリーダーを自任するインドとしても、自国の貧困は隠したかったようだ。
●内閣改造・自民役員人事「評価しない」50%、岸田政権 最低支持率… 9/15
読売新聞社は、第2次岸田再改造内閣が発足した13日から14日にかけて緊急全国世論調査を実施した。岸田内閣の支持率は、改造前の前回調査(8月25〜27日)と同じ35%で、今回の内閣改造・自民党役員人事は政権浮揚につながらなかった。前々回調査(7月21〜23日)から3か月連続で、岸田内閣発足以来最低の支持率となった。
内閣改造・自民党役員人事を、全体として「評価する」とした人は27%にとどまり、「評価しない」は50%だった。内閣の不支持率は前回調査と同じ50%だった。
女性閣僚を過去最多に並ぶ5人に増やしたことについて、「評価する」とした人は72%に上った。河野デジタル相の留任を「評価する」とした人は54%で、「評価しない」の34%を上回った。
一方、自民党役員人事への評価は厳しく、茂木幹事長の留任を「評価する」とした人は32%、「評価しない」は42%。小渕優子・元経済産業相を党四役である選挙対策委員長に起用したことを「評価する」とした人は37%、「評価しない」が44%だった。小渕氏については、関連する政治団体の政治資金を巡る問題で、説明責任を十分に果たしていないとの指摘があることなどが影響したとみられる。
岸田首相にどのくらい続けてほしいと思うかの質問では、「自民党総裁の任期が切れる来年9月まで」が54%(5月調査56%)で最も多く、「すぐに交代してほしい」が27%(同15%)、「できるだけ長く」が14%(同26%)だった。5月調査に比べ、長期政権を望む回答が減った。
岸田内閣に優先して取り組んでほしい課題(複数回答)では、「景気や雇用」87%、「物価高対策」86%、「少子化対策」69%、「年金など社会保障」68%、「福島第一原子力発電所の処理水と風評被害対策」66%などの順だった。
次の衆院選での比例選の投票先は、自民党32%(7月調査34%)、日本維新の会13%(同15%)、立憲民主党7%(同8%)などの順だった。政党支持率は、自民党が31%(前回30%)、維新6%(同6%)、立民4%(同3%)など。無党派層は41%(同44%)だった。
●内閣改造で暗躍した2人のドン、「ドリル優子」起用の内幕とは? 9/15
「変化を力にする内閣」ではなく「自分自身の防衛力強化内閣」
自民党役員人事の決定と第2次岸田再改造内閣の発足を翌日に控えた9月12日、JR高崎線宮原駅西口に、立憲民主党の枝野幸男前代表の姿があった。
「次元の異なる少子化対策とその財源」や「マイナンバーカードと保険証の一体化」、そして「防衛費増額に伴う財源とその使途」や「福島第1原発処理水放出の余波」など、この日、枝野氏が駅立ち(駅頭での演説)で指摘した問題のすべてが、とりもなおさず、岸田政権が抱える喫緊の課題になる。
では、岸田文雄首相が今回の自民党役員人事と内閣改造でこれらの課題に向け、まい進できるのか?と聞かれれば、その答えは「極めて難しい」と言うしかない。
岸田首相は人事を終え、9月13日夜の記者会見で、「この内閣は『変化を力にする内閣』だ。変化を力として『あすは、きょうより良くなる』と、誰もがそう思える国づくりを一緒に行っていく」と述べた。
ただ、党内第2、第3派閥の領袖、麻生太郎氏と茂木敏充氏、それに、最大派閥安倍派から、「5人衆」の中でも中心的存在の萩生田光一氏を、それぞれ自民党副総裁、幹事長、政調会長に留任させた党役員人事には、安倍、麻生、茂木の3派閥を取り込み、来年秋の総裁選を無風に近い形で乗り切ろうとする思いが透けて見える。
また、菅義偉前首相や二階俊博元幹事長に近い森山派会長の森山裕氏を、選挙対策委員長から総務会長に横滑りさせた点からは、なりふり構わず「総主流派体制で政権維持」という切羽詰まった感も読み取れる。
内閣改造で言えば、
(1)「女性登用を目玉に」の狙いどおり、女性閣僚が留任を含め、過去最多タイの5人
(2)初入閣組が、19人の閣僚のうち半数を超える11人
これら二つの点は、評価できなくもない。
とはいえ、「刷新」のイメージを打ち出すなら、誰よりも代えるべきだった官房長官を、岸田派の小野寺五典元防衛相や根本匠元厚労相、あるいは突破力がある萩生田氏あたりに交代させてもよかったのでは、と思う。
それを、萩生田氏と同じ安倍派「5人衆」の1人、松野博一氏留任で着地させた点、そして、2年前、総裁選で争った河野太郎氏と高市早苗氏を留任させた点は、「変化を力にする内閣」どころか、「変化させないことで首相自身の党内での防衛力を高めた内閣」とでも言うべきものだ。
岸田首相は、9月5日、ASEAN首脳会議とG20首脳会議に出席するため日本を離れる直前、側近に、「最後の人事にするつもりで自前の人事を行う」という方針を伝えている。しかし、結果を見れば、安倍派、麻生派、茂木派におもねる人事になってしまったと論評すべきだろう。
内閣改造に注文をつけた森元首相と麻生副総裁
人事を間近に控えた8月下旬から9月上旬、岸田首相に注文をつけていた人物がいる。一人は、今なお「安倍派のドン」として君臨する森喜朗元首相である。
森氏は、8月29日、東京プリンスホテルで開かれた青木幹雄元官房長官のお別れの会で、「心残りは小渕恵三さんのお嬢さんのこと。あなたの夢、希望がかなうように最大限努力する」と語っている。
その森氏は、同時期に岸田首相と電話で会談し、「『これなら衆議院解散・総選挙ができるよね』という顔触れにしたほうがいい」とアドバイスを送った。
もう一人は、麻生氏だ。9月7日、東京都内のステーキ店で茂木氏と酒をくみ交わした麻生氏は、「茂木幹事長交代」「代わりに茂木派の小渕優子氏を処遇」で調整しようとしていた岸田首相に、茂木氏を外さないよう強く迫った。
そもそも、86歳の森氏や82歳の麻生氏が今なお実権を握る政治に「刷新」など望むべくもないが、その森氏や麻生氏のアドバイスが、茂木氏留任と小渕選挙対策委員長就任の大きな後押しになった。
小渕氏に関しては、岸田首相の頭の中に再入閣もあったとされる。ただ、小渕氏には、2014年、政治資金問題で経済産業相を辞任した黒歴史がどうしても付きまとう。当時、証拠となるパソコンをドリルで壊したことで、今もなお「ドリル優子」と揶揄(やゆ)され続けている。
これに加え、「麻生氏のプッシュで留任した茂木氏が小渕氏の入閣には強く抵抗した」(自民党中堅議員)ため、選挙を取り仕切る責任者(実際には幹事長の茂木氏が最高責任者)に落ち着く形となった。
その小渕氏は、9月11日、自民党の総裁室に呼ばれ、岸田首相と面会した後、ある政治ジャーナリストに電話を入れている。「特にポストの打診はなく、政権への感想を聞かれただけ」と語ったそうだ。
実はこのとき、選挙対策委員長を打診されたとみられるが、就任後さっそく、「週刊文春」が、小渕氏の関係政治団体が、2015年以降、7年間で1400万円以上を自身のファミリー企業に支出していたとする疑惑を報じている。
「決して忘れることのない傷。今後の歩みを見ていただき、ご判断いただきたい」
9月13日、就任会見でこのように述べた小渕氏には、あらためて説明責任が問われる可能性がある。
党内の「求心力」は 人事後は「遠心力」に変わる
元来、内閣改造は必ずしも政権浮揚につながるとは限らない。むしろ勝負手である衆議院解散のほうが、2005年、小泉政権時代の「郵政民営化解散」や、2014年、第2次安倍政権下での「アベノミクス解散」のように、求心力を高める結果になるケースが多い。
2007年、第1次安倍政権で行われた内閣改造、あるいは、その翌年、福田政権で実施された内閣改造のように、人事を断行しても支持率が上がらず、1カ月前後で退陣に追い込まれた例も少なくない。人事は政権の体力を奪いかねない劇薬なのだ。
直前までは、大臣・副大臣待望組を中心に党内で保たれていた求心力が、終わった途端、「な〜んだ」と遠心力に変わる。
実際、「攻めの人事」どころか「守りの人事」となった今回、岸田首相を支える岸田派内では、「女性閣僚を重視したせいでうちが冷や飯を食わされた」との声が上がり、二階派内でも「要望していた顔ぶれと違う」と怒りの声が聞かれる始末だ。
以下、岸田首相が直面する諸課題を想定しながら、「旧統一教会と接点があった閣僚が多い」などの他メディアが報じていること以外に、危惧される問題を列記しておく。
<初入閣組が11人もいる点>
官房長官や文部科学相を歴任した河村建夫氏が、筆者にこう語ったことがある。
「閣僚になって1年は何もできない。省内を把握し幹部の名前や特性を理解するのに時間がかかり、覚えた頃に内閣改造で交代になる」
つまり、防衛、少子化、農林水産など、日本の今後を決める省庁の閣僚に初入閣組が就いたことは、一見、フレッシュには見えるものの何も成果を上げられない恐れがあるということになる。
また、10月半ばから始まると見られる臨時国会で答弁に窮したり、「政治とカネ」や「旧統一教会」関連の問題が浮上したりすれば、政権の命取りになる危険性もはらむ。
<マイナンバーよりインボイス制度のほうが面倒な点>
マイナンバーカードをめぐるひも付けミス以上に国民の間に不満と懸念が広がるのが、インボイス制度の10月1日からの導入だ。
これまでは事業者は領収書で税額控除できたが、今後は原則としてインボイス(品目ごとに消費税率と税額を明示する適格請求書)が必要になる。インボイスを発行するには課税事業者になる必要があり、発行できない場合、取引を打ち切られたり、消費税分の値引きを要求されたりする可能性があるため、「結局は税収を増やすのが目的」という政府への疑念が広がることになりかねない。
<防衛費増額や少子化対策に「痛み」を伴いそうな点>
年々増える防衛費が来年度予算の概算要求で過去最大の7兆7000億円を超えた。近い将来、増税で財源を確保しようとすれば、野党だけでなく自民党保守派からも批判を受ける。
少子化対策に関しても、経団連が9月11日、来年度の「税制改正に関する提言」で「消費税引き上げ」を選択肢として盛り込んだように、消費税増税が視野に入ってくるようであれば、支持率がさらに下落する。
そうでなくとも、補正予算で思い切った経済対策が打てず、ガソリンや物価高騰が続くようなら、支持率のV字回復は望めない。
岸田首相がもくろむ総裁選での再選
こうした中、今回の人事を受けて、東京・永田町では早くも「衆議院の解散・総選挙は近い」という声が広がり始めた。
「岸田首相は、盛山文部科学相を通して10月に旧統一教会への解散命令を東京地裁に請求し、補正予算を成立させた後、解散に踏み切るかも」(前述の自民党中堅議員)といった見方である。この場合、10月下旬解散、11月14日(大安)公示、同26日(これも大安)投開票となる。
最近では、2017年9月、「森友・加計問題」で批判の矢面に立っていた安倍首相が、「国難突破解散」と位置付け、勝負に出て圧勝した例がある。マスメディアがはじき出す支持率と選挙の勝敗の相関関係は思ったほど高くない。
そのため、岸田首相が解散権を行使する可能性は捨てきれないが、人事で出そろった顔ぶれを見ると、筆者には、岸田首相が来年秋の総裁選勝利を最優先に、自分自身の防衛力を強化するために配置した布陣に見えて仕方がない。
●意図不明の内閣改造で政局の焦点は11月総選挙へ 総裁再選のシナリオ 9/15
第15回のポリティコでは第2次岸田内閣と自民党の新執行部の顔ぶれを論評したうえで、政局の底流を流れる権力闘争の実相と来年の総裁選再選に向けた岸田政権のシナリオを紐解いた。
9月13日に発表された岸田新内閣では、大方の予想に反して林芳正外相が上川陽子元法相と交代となった。数日前にウクライナを訪問しゼレンスキー大統領に支援の継続を約束してきたばかりの林氏をこのタイミングで交代させた岸田氏の狙いは何だったのか。
組閣後の記者会見で外相の交代について聞かれた岸田首相は、外相は首脳外交を支える立場にあり、その役割を担える人材は党内にも林氏の他にもたくさんいると語った。素直に聞けば首相の首脳外交にかける強い思いを語ったようにも聞こえるが、見方によっては得意の英語とピアノを駆使して外相として国際舞台で存在感を示す林氏が外相のままでは、首相は思うような首脳外交が展開できないと言っているように聞こえなくもない。党の役員にも就かず事実上の無役となった林氏については、衆院に鞍替え直後に外相に就いたことで、地元の地盤固めや党内人脈を拡げる時間がなかったので、ここでひと休みさせて派閥の後継者になるための準備を進めてもらおうという首相の親心と見る向きもあるが、それは生き馬の目を抜く権力闘争の場である政治を甘く見過ぎだろうか。
執行部では、9年前に政治と金の問題で経産大臣を辞任して以来、政治の表舞台から姿を消していた小渕優子氏が党4役の一角である選対委員長の要職に就いた。政治とカネの問題が取り沙汰された際に、秘書がドリルでパソコンのハードドライブを破壊して証拠隠滅を図ったことの衝撃がまだ消えていない小渕氏ではあるが、小渕氏は不祥事に対する反省を示す意味で、この9年間、公的な役職を辞退し、永田町で言うところの「雑巾掛け」仕事に徹してきた。自民党内には他にも過去の不祥事を抱える議員は多くいるが、小渕氏に対する批判だけが未だに尾を引いているのはなぜか。首相を父親に持ち、父親の急死で若くしてテレビ局勤務から議員に転身し、そしてほどなく経産大臣の要職に就いた若い女性に対する妬み嫉みという側面もあるかもしれない。いずれにしても小渕氏にとっては、選対委員長という久しぶりの要職で次の選挙でどれだけ女性議員を当選させることができるかが、今後の政治生命を左右する重要な試金石となる。
今回の人事で今後の政局に大きく影響を与えるのが、茂木幹事長の留任だ。元々岸田首相は茂木幹事長を交代させたい意向だった。しかし、内閣改造直前の岸田、麻生、茂木会談で茂木氏の留任が決まったとされている。しかし、その際の交換条件が、来年の総裁選に茂木氏が出馬しないことだったとされる。幹事長留任が決まってハッピーなはずの茂木氏が、会談の後、とても不機嫌だったことが思い起こされる。
最後は秋本真利議員の逮捕について。秋本氏はもともと自民党内の通称再エネ議連の事務局長を務め、再エネ推進派であると同時に、反原発の急先鋒でもあった。再エネ議連は河野太郎氏や小泉進次郎氏らの反原発論者が幹部に名を連ね、先の総裁選でも河野氏を応援した議員が多く所属している、菅元首相を後ろ盾に持つ議連だ。そこに今年2月、何ともう一つの再エネ議連として再エネ社会実装議連なるものが設立された。発起人には麻生太郎氏や岸田文雄氏、鈴木俊一財務相ら岸田政権の中枢が丸ごと名を連ね、会長には今回の人事で総務会長に就任した森山裕氏が就いている。こちらの再エネ議連は永田町では「反原発ではない再エネ議連」と呼ばれ、河野氏らの「反原発の再エネ議連」とその点で一線を画している。とはいえ、自民党内に同じ目的をもった議連が2つできることは普通では考えられない。これは明らかに再エネというこれからの巨大市場をめぐる現在の政権主流派と、菅政権時の旧主流派の主導権争いになっていると見ていいだろう。
東京地検特捜部は秋本氏が業者からの賄賂の見返りに業者に有利になる国会質問をしたとして贈賄罪で逮捕しているが、そもそも秋本氏には自身の政治力だけで再エネ政策を変更させるだけの力はない。背後には河野氏、そして菅元首相の影響力が見え隠れする。言うまでもないことだが、政治家の逮捕の前には検察が官邸にお伺いを立てることが慣わしだ。そして、秋本氏の逮捕と元祖再エネ議連の力を削ぐことは、岸田首相にとって最大のライバルとなる河野氏の力を削ぐことにもつながる。しかも、今回は秋本氏に対する賄賂が馬主組合を経由して行われていたことを検察はメディアを使ってしきりとリークしている。馬主組合というのは、河野太郎氏の祖父の河野一郎元農林大臣の時代から続く、河野氏にとっては莫大な利権であることはよく知られている。
秋本逮捕も木原誠二官房副長官をめぐる捜査中止疑惑も、裏には権力闘争のにおいがプンプンする。政治には権力闘争がつきものかもしれない。しかし、問題は、検察はもとより警察までが、政権の意向で捜査をしたりしなかったり、中断したり再開することがあたり前になっていることではないか。日本では正義さえ政治の副産物になってしまったのかと思うと悲しくなる。
いずれにしても、今回の改造で今後の政局は、早ければ10月の臨時国会冒頭解散、11月中旬総選挙の線を睨みながらの攻防となる。維新の躍進で自民党は多少の議席減が避けられないとみられているが、多少の負けであれば、今回の人事で党内の敵を根こそぎ摘むことに成功した岸田首相を退陣に追い込める勢力は今のところ見当たらない。むしろ勢いを増す維新の選挙準備が整う前に解散総選挙を打っておきたいというのが、岸田政権の思惑のようだ。そうなると来年の総裁選でも岸田首相がそのままスムーズに再選される公算が大ということのようだが、果たして一寸先は闇と言われる政界でそのような安直な筋書き通りに事が運ぶだろうか。
●“茂木は次の次の総裁選でいい” 改造人事の真相は 9/15
総理大臣の岸田文雄は、9月13日、内閣改造と自民党役員人事を行った。今回の人事で岸田は何を狙ったのか。舞台裏でどのような駆け引きがあったのか。周辺にも心の内をなかなか見せない岸田の真意に迫る。
“なんだ、言わねえのかよ”
「いったい、総理はいつになったら言うのか」(自民党議員)
猛烈な暑さにようやく終わりが見え始めた9月初旬。永田町は、任期満了となる自民党役員の人事と、それにあわせた内閣改造がいつ行われるのかという話題で持ちきりだった。
岸田は、9月5日(火)から11日(月)までASEANとの首脳会議やG20サミットなどのためインドネシアとインドを、そして19日(火)からは国連総会に出席するためアメリカ・ニューヨークを訪問することになっていた。
この日程を踏まえれば、人事は、外遊の間の11日の週か、外遊が終わった9月下旬に行うしかない。
2週間ほどの違いだが、秋の臨時国会の召集時期や物価高などに対応する経済対策の検討期間に密接に関係してくるため、国会議員のみならず、各府省の官僚などを含め、多くの関係者が岸田の判断に注目していた。
9月4日(月)、自民党本部。自民党総裁でもある岸田、副総裁の麻生太郎、幹事長の茂木敏充の三者会談が行われた。
みずからが率いる派閥が党内第4派閥の岸田は、第2派閥会長の麻生と第3派閥会長の茂木の3人で緊密に意思疎通を図り、安定的な政権運営に努めてきた。
9月14日現在の自民党の派閥 安倍派100、麻生派55、茂木派54、岸田派46、二階派41、森山派8
定期的に意見を交わす3人だが、この日は「外遊前にどうしても会いたい」という岸田の強い要望でセットされたとされる。麻生と茂木は、岸田が人事の日程を示し、人選の根回しもあるだろうと見立てていた。しかし、岸田が口にしたのは「来週人事をやるなら今週中には決めます」というひと言だけだった。
翌5日の出国直前に行われた自民党の役員会でも、岸田は人事の時期に触れなかった。「なんだ、言わねえのかよ」役員会の出席者の1人は、麻生がこう口にしたのを耳にした。政権を支える麻生や茂木にさえ、人事の日程を伝えず海外に出発した岸田。
永田町の関係者たちは、その真意をはかりかねていた。
「日程すら早く言わないのは、人事をもてあそんでいるような雰囲気になりかねず、心配だ」(岸田派の閣僚経験者)
飛び交う臆測
日程を明かさない岸田のやり方に、さまざまな臆測が出た。
その1つが、国民民主党の連立政権入りに向けた調整が進んでいるのではないかというものだ。
まさに内閣改造の前、国民民主党では、9月2日の代表選挙で与党との協調も排除しない玉木代表が再選されていた。
真偽不明の情報が飛び交った。
「国民民主党の代表選挙を受けて、総理は、水面下の調整を注視しているのではないか」(自民党議員)
結局、実現することはなかった国民民主党の連立入り。
自民党や政権の幹部の1人はこう振り返る。
「3党連立が時期尚早であることは、総理も分かっていたはずだ。人事の時期を明言しなかったことと関係があったとは思えない」(自民党幹部)
「何事においても総理は慎重で、完全に決め切るまでは身内にも方針は明かさない。これが“岸田流”ということなんだろう」(政権幹部)
9月8日(金)。岸田は訪問先のインドから与党幹部に電話をかけて13日に人事を行う意向を伝えた。そして10日(日)の記者会見で、記者からの質問に答える形で初めて公にした。
「早ければ13日に自民党の役員人事と閣僚人事を行うことを考えている」人事を行う、実に3日前のことだった。
“茂木は次の次の総裁選でいい”
人事で注目が集まったのは、自民党の実質的なナンバー2である幹事長ポストだ。
留任した茂木は67歳。外務大臣や経済産業大臣、政務調査会長など、政府や党の要職を歴任し「ポスト岸田」の1人と目されている。岸田は、来年秋に予定される党の総裁選挙での再選を見据え、茂木を幹事長にとどめるかどうか思案していた。
とどめれば、総理・総裁を支える幹事長として総裁選挙には出にくくなるはず。しかし、その保証はない。幹事長として権力を握り、さらに力をつける可能性もある。
内閣支持率が低迷する中、こう岸田に進言した議員もいた。
「幹事長を代えて党のイメージを刷新すべきだ」(自民党議員)
その茂木も、思いを巡らせていた。茂木派は、かつて竹下登、橋本龍太郎、小渕恵三の3人の総理大臣を輩出した派閥の流れをくむ名門派閥だ。しかし、近年は、総裁選挙に候補者すら出せていない。派閥内の若手からは、次のような声が上がっていた。
「無役になって来年の総裁選挙で勝負してほしい」(茂木派の若手)
微妙な緊張感が漂う岸田と茂木。その2人に、1つの“解”を提示したのは麻生だった。
関係者によると、麻生は「幹事長は代えるべきではない」と岸田に幾度となく進言。3派の連携の重要性を説き、「来年の総裁選挙で再選するためにも、幹事長は茂木であるべきだ」と繰り返し茂木の留任を求めたという。一方、茂木に対しては「焦ることはないんだ。お前は次(来年)の次の総裁選挙でいいんだ」と説いたという。
9月11日(月)、自民党本部。午前7時すぎに帰国した岸田は、正午に党本部の総裁室に入り、夜にかけて派閥の幹部も務める党幹部ら、計8人と個別に会談した。異例の“リレー会談”だ。ここで茂木とも膝を突き合わせた。
そして、その場で幹事長留任を打診した。
茂木が来年の総裁選挙に立候補しないことを留任の条件にするとの観測も出ていたが、岸田が総裁選挙を話題にすることはなかったという。麻生を通じて自分の考えは伝わっていると考えたのかもしれない。幹事長を引き受けたあと、茂木は周辺に「幹事長である限り、総裁選挙に出るなんてバカなことはしない。岸田総理を支える」と述べた。
岸田、麻生、茂木による「三頭政治」とも呼ばれる党運営が当面続くことが決まった瞬間だった。
安定感と刷新感
岸田が行った人事には、さまざまな視点から練られた形跡がある。まず人事の特徴はこうだ。閣内では官房長官や財務大臣、党では副総裁、幹事長、政務調査会長といった政権中枢のポストはのきなみ留任。一方、閣僚19人のうち11人を初入閣させ、女性は過去最多に並ぶ5人を起用。
新体制の顔ぶれからは「安定感」と「刷新感」の両立を狙ったことが見て取れる。
来年の総裁選挙に向けた足場固めもうかがえる。
茂木を幹事長に留任させたことに加え、党の選挙対策委員長に同じ茂木派の小渕優子を起用した。
派閥内からは警戒感も出ている。
「茂木派を分断させて、茂木氏をけん制する狙いがあるのではないか」(茂木派の議員)
前回の総裁選挙を戦ったデジタル大臣の河野太郎、経済安全保障担当大臣の高市早苗は引き続き内閣に取り込んだ。党内では「ライバル封じだ」と話す議員が少なくない。
さらには、党内の各派閥の意向を最大限くみ取ろうとした形跡もある。外遊から帰国した日に異例の“リレー会談”で各派閥の意向も聴き取った岸田。
人事が行われたあと、派閥の幹部たちからは「100点満点だ」「要望した通りだ」などと満足そうな声が多く聞かれた。
一方で、“リレー会談”に幹部の姿がなかった派閥もある。岸田政権と距離があるとされる二階派だ。
関係者が、二階派の人事をめぐる内幕を明かした。当初、岸田は、これまで2人の閣僚を出していた二階派に1人の入閣を提示したという。
「1人だけなら、うちの派閥はもう結構です。1人も入閣させません」(二階派の議員)
二階派側は激怒し、こう回答した。岸田は改めて2人を入閣させたいと伝え、従来どおりの2人の入閣が固まった。
自民党派閥ごとの閣僚の人数 安倍派4、麻生派4、茂木派3、岸田派2、二階派2、森山派0、谷垣グループ1、無派閥2、公明党1
各派閥のバランスも考えながら腐心したあとがうかがえる今回の人事。しかし、党内では、「要望が聞き入れられなかった」として、人事への不満が出始めているという声も聞かれる。
「来年の総裁選挙に向けて対応を考えていかないといけない」(閣僚経験者)
焦点は解散時期
人事が終わり、焦点は、衆議院の解散・総選挙の時期に移る。衆議院議員の任期は10月末で折り返しを迎える。自民党内では次のような声も出始める。
「追い込まれ解散にならないよう早めに決断すべきだ」(自民党議員)
早いタイミングでの解散はあるのか。ポイントの1つは内閣支持率の行方だ。
今回の人事を受けて、ある自民党議員はこう話す。
「支持率が上がれば、秋の解散もあり得る」(自民党議員)
「これまでより年内解散の可能性があるという感じがする。総理はできるだけ、このタイミングでやりたいと模索しているのではないか」(派閥幹部)
しかし、去年の例をみると、改造後、4人の閣僚が、旧統一教会との関係や、失言、それに政治とカネの問題をめぐり辞任。秋の臨時国会で追及され、支持率は下落・低迷していった。
岸田が、この秋や来年の早い時期での解散を模索する場合、新閣僚が初めての論戦に臨む秋の臨時国会が1つの試金石となる。
一方で、次のように話す議員もいる。
「今回の人事は総裁選挙を見据えたもので解散するための布陣ではないのではないか」(自民党議員)
「総裁選挙で勝てそうだとなれば無理して解散する必要もない」(自民党幹部)
岸田が衆議院解散という“伝家の宝刀”を抜くタイミングはいつなのか。総裁選挙に向けた自民党内の駆け引きや、野党の動向、それに支持率の推移。変数が多く複雑な方程式を岸田はどう解くのか。
●副大臣・政務官に女性ゼロ 法務柿沢氏、財務神田氏 9/15
政府は15日の閣議で、副大臣26人、政務官28人の人事を決定した。女性は副大臣、政務官ともにゼロ。副大臣4人、政務官7人を起用した前回改造時に比べ、女性登用の観点からは大幅に後退。閣僚に5人を起用し女性活躍をアピールしただけに、政権の本気度が問われそうだ。
女性の起用ゼロについて、岸田文雄首相は首相官邸で記者団に「適材適所でこのような男女のバランスとなった。チームで人選を行った結果だ」と説明した。
副大臣では、法務副大臣に柿沢未途衆院議員、財務副大臣に神田憲次衆院議員を起用。政務官では、文部科学兼復興政務官に山田太郎参院議員を充てるなどした。 
●内閣改造のうわさ話 [9/11-9/15] 9/15
9/11 内閣改造、高市早苗氏留任か SC本格整備、保守層の取り込み狙い…
岸田文雄首相が13日に行う内閣改造・自民党役員人事で、高市早苗経済安保担当相を留任させるとの見方が強まっている。高市氏は現在、安全保障上の機密を扱う人を認定する「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度の整備を担当しており、続投は不可欠との指摘があった。保守色の強い高市氏を留任させることで、LGBT法の法制化で離反した保守支持層の取り込みを画策する狙いもありそうだ。
岸田首相は11日朝、G20(20カ国・地域)首脳会議など一連の外交日程を終え、政府専用機で羽田空港に帰国した。自民党の麻生太郎副総裁や、茂木敏充幹事長、公明党の山口那津男代表らと会談しながら、11、12両日で人選作業を進める。
こうしたなか、政権内で中国などに毅然とした姿勢を示してきた高市氏の処遇が注目されている。
中国は科学的根拠もなく、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を批判し、日本産水産物の禁輸など、常軌を逸した「反日」対応をしている。
高市氏は先月29日、「外交ルートの抗議申し入れで仮に効果を発揮しない場合、(中国に)対抗措置を検討していく段階」と語り、G7(先進7カ国)各国との連携や、WTO(世界貿易機関)への提訴などを含めた対応策を明示した。
自民党ベテランは「高市氏の提案は、『遺憾砲』に終始する岸田政権の外交姿勢とは一線を画した。G7各国との方向性とも合致する」と評価する。
岸田首相は8月28日、高市氏を官邸に招き昼食を共にした。高市氏は「人事の話はなかった」と語ったが、前回の党総裁選で激突した両者の関係はどうなりそうか。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「発足当初は高かった岸田内閣の支持率の約3割は、安倍晋三元首相を支えた保守層だったと見ている。安倍氏亡きあと、保守層は高市氏を支持している。岸田首相は、高市氏を閣内に置くことで、保守支持層を留めておく狙いだ。次期総裁選を見据え、高市氏の動きを抑えることにもなる」と分析した。
9/12 機密資格制度の重要性強調 時事通信イベントで高市経済安保相
経済安全保障に関するシンポジウムなどを行う「経済安全保障対策会議・展示会」(エコノセック・ジャパン実行委員会、時事通信社主催)が12日、東京都内で始まった。
高市早苗経済安全保障担当相が基調講演し、機密情報を扱える資格者を政府が認定する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度の重要性を強調した。
適性評価制度がなければ、日本企業の海外での活動に制約がかかる懸念があり、政府が創設に向けた検討を進めている。高市氏は「海外で日本の優れた技術を生かしていく意味では、幅広く経済・技術版のクリアランス制度をつくることが必要だ」と説明した。
資格者認定に際しては、機密情報の取り扱いを認める公務員や民間人を審査する仕組みが必要となる。審査では経済状況などの個人情報にも踏み込むため、高市氏は「調査の実施主体はしっかり国に設けるべきだ」と語った。
イベントは13日も行われる。会場は東京都中央区の時事通信ホール。民間企業や官公庁が出展し、サイバーセキュリティー関連サービスなどを展示する。 
9/13 “保守のスター”高市早苗氏を閣内に置いた岸田首相の狙い
岸田改造内閣での処遇が注目されていた一人、高市早苗経済安全保障担当相は留任となった。奈良県知事選での敗北、総務省の「行政文書」問題、岸田文雄首相との不仲説など様々な“問題”が出ていたが、岸田首相は閣内にとどめる選択をした。来秋の総裁選対策の一環という見方もある。
「安倍(晋三)元首相がお亡くなりになって保守のスターのような存在の高市氏。しかし、岸田首相とはギクシャクしていたので微妙ですね」と自民党の閣僚経験者は話す。
高市氏は、2021年の自民党総裁選では安倍元首相のバックアップを受け、候補者として岸田首相とも戦い、2位だった。
政権では経済安全保障担当相として存在感を示し、岸田首相とは政策面での違いも主張してきた。
   岸田首相も頭を抱える
昨年12月、高市氏は防衛費のための増税を巡り、<総理から突然の増税発言。反論の場も無いのかと、驚きました>と批判を展開。岸田首相との衝突を危惧する声が出るなか、記者会見で、「閣僚の任命権は総理にある、罷免をされるのであればそれはそれで仕方ない」と述べ、岸田首相との“溝”が明確となった。
そして、今年3月には、放送法の解釈について高市氏の発言内容が記録されている総務省の「行政文書」が問題となり、国会でも追及された。総務省が行政文書と認めるなかで高市氏は、「捏造だ」「当時、放送法の説明も受けていない」などと反論した。高市氏が強硬に「官僚が悪い」とかつての部下に責任を押し付ける姿勢に、岸田首相も頭を悩ませた。
さらに、4月の統一地方選では、総務相時代の秘書を奈良県知事の候補者に擁立した。しかし、県連会長として最も重要な候補者の調整に失敗し、保守分裂となった結果、維新候補に敗れたことで責任論も浮上した。
こんなこともあった。昨年8月、岸田首相から経済安全保障担当相としての入閣を要請された際には、前任者だった小林鷹之衆院議員の留任を懇願していたといい、SNSに、<入閣の変更が無かったことに戸惑い、今も辛い気持ちで一杯です>と投稿し、不満をあらわにした。
官邸関係者によると、「高市氏は政調会長から安全保障担当相になったことに不満を述べていました。小林氏のことを持ち出しているが、高市氏の本音は政調会長までやっているので、どうして格下のようなポストなんだ、という意味に聞こえます。岸田首相は保守の『スター』であることを認識した上で閣内に、と配慮して入閣させたと思いますが」とのことで、高市氏のSNSへの投稿に岸田首相は、「どうしてああいうことをするんだろう」とムッとした表情だったという。
   総裁選で高市担ぐ動きを警戒
岸田派のある衆院議員は、「高市氏は安倍元首相が後ろ盾になって総裁選に出馬できた人です。安倍元首相亡きあとも、根強い人気がある。支持率が低調ななか、高市氏が閣外に出ると保守層に逃げられかねない。また、会長が決まらない安倍派は、来年の総裁選候補は現在のところいません。そうなれば、安倍派の一部のメンバーが再度、『高市氏で』と早々に動くかもしれない。実際、そう言っている議員もいるし、高市氏も誰かに担いでほしいはず。岸田首相としてはウクライナ情勢や台湾有事を考えた際に政策の継続性も大切になるので、高市氏を閣内に置いて混乱を避けたかったようです」との見方を示す。
今回の人事を見ると、高市氏に加え、茂木敏充幹事長、河野太郎デジタル相も続投し、注目されていた茂木派の小渕優子氏も選対委員長に決まった。
「岸田首相は、来秋の総裁選で出馬しそうな人は軒並み処遇しました。総裁選に出たいということは、岸田首相への反発になります。出たいなら辞めて出てくれという無言の脅しのように思えますね」(前出・閣僚経験者)
そうした岸田首相の“ライバル”対策は昔からあったという。
   小渕氏と競わせる魂胆か
広島県の自民党関係者がこう打ち明ける。
「10年近く前です。岸田首相は地元の広島に戻ると、朝に事務所で会議を開くのですが、そこで『広島1区、誰かライバルになりそうなのはいるか』と最初に聞くのです。盤石でライバルなどいないのですが、気になってしょうがない。ある若手の地方議員の名前が周辺から上がったときは、外相か政調会長だったかで超多忙なのに、その議員を会食にまで誘って懐柔していました」
自民党で長く政務調査役を務めた政治評論家の田村重信氏は、今回の人事についてこう話す。
「来年の総裁選シフトのように、出そうな人をみんな閣内、党役員に取り込んだ岸田首相のうまさを感じます。高市氏に関しては、注目されてきた小渕氏と競わせたいという思いがあるのでしょう。支持率の下落も落ち着きつつあり、解散・総選挙はいつあってもおかしくないです」
ライバル対策も済ませ、支持率への影響はいかに。
9/13 ポスト岸田封じ込め人事…首相、総裁選再選へ布石 
岸田文雄首相(自民党総裁)が13日決めた内閣改造・党役員人事は、自身の来年秋の総裁選再選を強くにらんだものだ。「ポスト岸田」の1人である茂木敏充幹事長を留任させつつ、女性首相候補として名前が挙がる小渕優子元経済産業相を選対委員長に起用することで、茂木氏の台頭を牽制(けんせい)する狙いがある。前回総裁選を争った河野太郎デジタル相と高市早苗経済安全保障担当相も続投させ、政権内に取り込んだ。(田村龍彦)
「岸田政権をしっかり支えていきたい。それに尽きる」。茂木氏は13日の就任記者会見で、首相が総裁選再選を目指した場合の対応を問われ、こう答えた。
首相は一時、茂木氏の交代を検討した。「幹事長は誰がいいか」。自身に近い議員に尋ねることもあった。茂木氏は少子化対策や経済対策でスタンドプレーが目立つ。一方で、第3派閥の茂木派(平成研究会)を率いており、総裁選に出馬すれば脅威になりかねない。
ただ、首相の後見人で、第2派閥の麻生派(志公会)会長の麻生太郎副総裁が、茂木氏の続投を主張した。党幹部は「首相は麻生さんの言うことを聞いた」と語る。
その中で、首相が打った手が茂木派に所属し、党内で将来の首相候補に推す声もある小渕氏の選対委員長起用だ。茂木氏に批判的だった故・青木幹雄元参院議員会長が後ろ盾で、最大派閥の安倍派(清和政策研究会)に影響力を持つ森喜朗元首相も要職起用を望んだ。
茂木氏が反岸田で動いても派閥で付いていく議員は半分−。首相の頭にはそんな計算もあった。
安倍派については、萩生田光一政調会長ら「5人衆」と呼ばれる有力者を留任させた。各自がにらみ合い、新会長が決まらない状況は100人派閥の結束を鈍らせ、首相にはプラスに作用する。
前回総裁選に出馬した高市氏は改造前、党で政策立案や仲間づくりに取り組みたい意欲も周囲に見せていたが、留任。河野太郎デジタル相も懸案のマイナンバー問題にあたらせる。知名度が高い両氏の政権と異なる動きを封じる思惑が透ける。
「総裁選シフト以外のメッセージが伝わらない」。前回、河野氏を支援した閣僚経験者はつぶやく。
9/13 小渕優子選対委員長「全ての質問に答えた」就任会見「政治とカネ」釈明
自民党四役の一つ、選対委員長に新たに選ばれた小渕優子氏(49)は13日、党本部での就任会見でさっそく釈明に追われた。
2014年の不透明な政治資金を巡る「政治とカネ」の問題への説明責任を問われて「誠意を持って説明してきた。十分に伝わっていない部分があれば、私自身の不徳の致すところだ」と陳謝した。(柚木まり)
   言葉に詰まりつつ「私の今後の歩み見て」
小渕氏は会見で、記者から有権者や国民への説明責任を果たしているかを聞かれたのに対して「当時、地元をはじめ、関係者に大変な迷惑や心配を掛けた。心からおわび申し上げたい」と深々と頭を下げた。時折、言葉に詰まりながら「あの時に起こったことは、政治家として歩みを進めていく中で心に反省を持ち、決して忘れることのない傷。私の今後の歩みを見てもらい、判断いただきたい」と述べ、唇をかみしめた。
当時の状況に関しては「問題を自身で説明できなかった」と経済産業相を辞任した経緯を釈明。2015年に自身が依頼した第三者委員会の報告書を公表したとした上で「記者会見を開き、全ての質問に答えた。地元700の支部を2年以上掛けて回り、誠意を持って説明した」と語り、「私に必要な話があるということであれば言ってもらいたい」として、今後も説明に応じる姿勢を見せた。
   「ドリル優子」今も批判
小渕氏を巡っては、政治資金問題の発覚時、説明責任を十分に果たさなかったとの指摘が今も根強い。東京地検特捜部が小渕氏の後援会事務所を家宅捜索した際には、パソコンのデータを保存するハードディスク(HD)がドリルで破壊されていたことから、政界やネット上で「ドリル優子」と批判されている。
   小渕氏の「政治とカネ」問題 当時の説明は
小渕優子氏が依頼した第三者委員会は2015年10月、「小渕氏本人は不正に関与しておらず、法律上の責任はない。監督責任は軽いとはいえないが強く問うことにはためらいを感じる」と指摘した。
その翌日に会見した小渕氏は「おわびしたい」と何度も謝罪する一方で「すっかり秘書に任せていた」「今後の調査には限界がある」などと述べ、対応に批判が上がっていた。
小渕氏は茂木派。最近は自民党の組織運動本部長を務めていた。岸田文雄首相(自民党総裁)が13日の党臨時総務会で党四役人事を正式に決定し、選対委員長に選ばれた。
2014年に第2次安倍改造内閣で、経産相で2回目の入閣を果たしたが、支持者向けの観劇会の費用などに関して、収支報告書への虚偽記載や不記載が発覚。元秘書2人が政治資金規正法違反(虚偽記入)で執行猶予付きの有罪となった。
9/13 首相臨時代理、松野氏1位
政府は13日夜の初閣議で、岸田文雄首相不在時の臨時代理順位について、(1)松野博一官房長官(2)高市早苗経済安全保障担当相(3)鈴木俊一財務相(4)河野太郎デジタル相(5)新藤義孝経済再生担当相―とすることを決めた。 
9/14 「岸田首相、大丈夫?」 小渕氏のみそぎも萩生田氏の旧統一教会の説明もまだ 
9月13日、岸田文雄首相の内閣改造、自民党役員人事の顔ぶれが決まった。女性閣僚が過去最多タイの5人、初閣僚が11人と刷新感を出しながら、政権の中枢を担うポストは留任させ、支持率の回復と権力基盤の安定を狙ったと見られている。しかし、SNSでは早速、選対委員長に就いた小渕優子氏の起用に批判が噴出している。果たして今回の岸田首相の人事は吉と出るのか、凶と出るのか。東京新聞の望月衣塑子記者に聞いた。
――今回の人事の第一印象はどうか。
女性を登用し、刷新感もあり、注目されていますが、インパクトはそこまでないと思います。
今回入閣した女性5人のうち加藤鮎子氏、自見英子氏、土屋品子氏は世襲政治家です。女性活躍を掲げながら、「世襲でないと閣僚になりにくい」という印象が出てしまうのは残念です。
――注目の抜擢は?
外相に就く上川陽子氏は実力者だと聞いてます。首相になるためには、内政だけではなく、外交もできないといけないと言われています。選対委員長になった小渕優子氏が将来の首相候補として期待されている向きもありますが、上川氏のほうが一歩近づいたように思います。自民党内では対中強硬派の声が強まっていると言われてますが、それをいかに抑えて、中国との関係を正常化していくか、手腕が問われるところだと思います。
また、世襲議員ですが、こども政策担当相の加藤氏がジャニーズ問題でどこまで踏み込むか注目しています。前任の小倉将信氏は元所属タレントからヒアリングは行わず、消極的な姿勢を見せていました。
省庁ではジャニーズタレントを広告に起用しているところもあります。政府として無関係とはいえないでしょう。今回の事件は国際的にも問題視されており、加藤氏がこどもの性被害問題に積極的に取り組むことができるか問われていると思います。
――岸田首相の人事の狙いはどこにあると思いますか。
表向きは刷新感を出しながら、権力の中枢は派閥の会長や幹部が占めました。麻生派を率いる麻生太郎氏は副総裁に留任、茂木派トップの茂木敏充氏も幹事長留任が早々に決まりました。安倍派の幹部である松野博一官房長官、萩生田光一政調会長も留任となりました。これまでの政権の骨格は維持したかたちです。
今回の人事で、国民の支持率を回復に向かわせながら、足元の党内の基盤を整えたことで、次期衆院選や来年の総裁選に臨んでいこうとしているのだと思います
――支持率は上がるのでしょうか。解散のタイミングはいつが考えられるのでしょうか。
今回の人事で少し改善するとは思いますが、これまでの不人気を払しょくするほどではないでしょうね。これから出てくる経済対策でどのくらいインパクトを出せるかがポイントになってくると思います。
解散については、最短では、臨時国会を召集して、冒頭解散というシナリオが考えられます。北朝鮮がミサイルを飛ばし、金正恩総書記とロシアのプーチン大統領が会談をするなど国際情勢が厳しい中だと政権の支持率が上がりやすい傾向があります。そうしたなかで、今回の人事と経済対策などで国民の支持を高め、そして解散というシナリオですね。
臨時国会が始まってしまうと、支持率は下がるでしょう。原発処理水やマイナンバーカード、物価高対策など野党から厳しく追及される問題が山積しているからです。岸田首相としてはこのままズルズルとやって、任期満了で降ろされるというのは避けたいところでしょう。
――衆院選、総裁選を乗り越えると、宏池会で最も長く首相を務めた池田勇人氏の在職日数1575日が視野に入ってきます。岸田首相が池田氏と並ぶのは、26年1月と言われています。
岸田首相は池田氏を「尊敬している」と述べていますし、目標にしているところはあるでしょう。岸田首相は「これがしたい」という政策が見えてこないので、そうなると池田氏の在職日数を超えることが目標となってくるかもしれませんね。
――岸田首相は改造後に「思い切った経済対策を実行する」と述べていました。期待は?
支持率回復に向けて思い切った対策を出したいのでしょうが、これまでの政策を見ていると期待はしていません。「異次元の少子化対策」では、十分な対策を示し切ることができていませんでした。聞こえのいい言葉だけの政策に国民は飽き飽きしています。国民の生活は本当に疲弊しています。生活者に寄り添った政策を示せなければ、支持率は回復しないと思います。
――岸田首相の増税路線に対してSNSでは「増税メガネ」などと揶揄されています。今回の人事で、増税路線は変わらないでしょうか。
増税路線は変わらないと思います。今回の人事では官房副長官の木原誠二氏の後任として、岸田派の村井英樹氏が就きました。村井氏は財務省の出身です。財務省にとって岸田・木原は「やりやすい」と言われており、財務省の意向に沿って増税路線の政策が行われてきましたが、同じ路線でいくということでしょう。
先日、経団連が少子化対策などの社会保障制度の維持のための財源として消費税の増税が有力な選択肢の一つと提言していました。増税を進めたい政府を後押ししようとしているのだと見ています。岸田首相は、結局、国民を見た政策はしていません。国民の生活を助けるような「減税」という言葉は絶対に出てこないと思います。
――小渕氏、萩生田氏、木原氏は政治スキャンダル含みと言われています。
いずれも支持率に影響すると思います。
小渕氏は2014年に政治資金規正法違反が発覚した際、責任をとって議員辞職するべきでした。辞職して再選するといったプロセスを経て、みそぎを済ませるべきでした。事件から9年を経てもなお国民からの激しい批判を見ると、みそぎができたとはいえません。
萩生田氏は旧統一教会と深い関係について記者会見を開くことなく、説明責任を十分に果たしていないと指摘されています。しかし、昨日(13日)の就任会見で「今後も不備があれば、求めに応じていきたい」と言いながらも、「説明不足だというご指摘は当たらない」とも答えていました。メディアも厳しく質問して、追及していかなければなりません。
木原氏については、妻の元夫の死亡を巡る疑惑、愛人疑惑、違法デリヘル問題などで『週刊文春』の追及を受けていましたが、「留任するのでは」と見られていました。岸田首相は何とか留任させたいと考えていたようです。しかし、このような疑念のある人物を重用しようとするのには疑問があります。
現在、党の幹事長代理に就任するという報道が出ていますが、呆れますね。国民の目に触れにくい幹事長代理というポジションに逃げさせて、スキャンダルは見て見ぬふりとなれば、国民の支持は得られないでしょうね。
「岸田首相、大丈夫かな」という印象です。
9/15 2023年9月 電話全国世論調査 / 内閣改造
   ( )内の数字は前回8月25〜27日の結果
   あなたは、岸田内閣を、支持しますか、支持しませんか。
・支持する      35(35)
・支持しない     50(50)
・その他        2( 4)
・答えない      13(11)

   今、どの政党を支持していますか。1つだけあげてください。
・自民党       31(30)
・立憲民主党     4( 3)
・日本維新の会    6( 6)
・公明党       3( 3)
・共産党       3( 3)
・国民民主党     3( 3)
・れいわ新選組    1( 3)
・社民党       0( 0)
・政治家女子48党   0( 0)
・参政党       1( 0)
・その他       0( 0)
・支持する政党はない 41(44)
・答えない      5( 3)

   次の衆議院選挙の比例代表選挙では、どの政党に投票しようと思いますか。
・自民党     32
・立憲民主党   7
・日本維新の会  13
・公明党     5
・共産党     3
・国民民主党   4
・れいわ新選組  3
・社民党     0
・政治家女子48党 1
・参政党     2
・その他の政党  −
・決めていない  25
・答えない    5

   岸田首相は、内閣改造と自民党役員人事で、主な閣僚や党役員を留任させて、政権の骨格を維持しました。今回の人事を全体として、評価しますか、評価しませんか。
・評価する    27
・評価しない   50
・答えない    23

   自民党の幹事長に、茂木敏充さんが留任したことを、評価しますか、評価しませんか。
・評価する    32
・評価しない   42
・答えない    25

   自民党四役の選挙対策委員長に、小渕優子さんが起用されたことを、評価しますか、評価しませんか。
・評価する    37
・評価しない   44
・答えない    18

   デジタル大臣に、河野太郎さんが留任したことを、評価しますか、評価しませんか。
・評価する    54
・評価しない   34
・答えない    12

   女性の閣僚を、これまでの2人から、過去最多に並ぶ5人に増やしたことを、評価しますか、評価しませんか。
・評価する    72
・評価しない   18
・答えない    9

   岸田首相には、どのくらい首相を続けてほしいと思いますか。次の3つの中から、1つ選んでください。
・できるだけ長く 14
・自民党総裁の任期が切れる来年9月まで 54
・すぐに交代してほしい 27
・その他     0
・答えない    5

   今後、岸田内閣に、優先して取り組んでほしい課題を、次の中から、いくつでも選んでください。※
・景気や雇用            87
・物価高対策            86
・財政再建             58
・年金など社会保障         68
・少子化対策            69
・外交や安全保障          62
・原発などエネルギー政策      54
・福島第一原発の処理水と風評被害対策66
・マイナンバートラブルへの対応   50
・憲法改正             28
・その他               0
・とくにない             1
・答えない              0

   ジャニーズ事務所は、ジャニー喜多川元社長による性加害を認めて謝罪したうえで藤島ジュリー景子社長が引責辞任し、被害者に補償する方針を示しました。こうした対応で信頼を回復できると思いますか、思いませんか。
・思う      17
・思わない    72
・答えない    11

   
[調査方法] 9月13〜14日に、コンピューターで無作為に作成した固定電話と携帯電話の番号にかけるRDD方式( RDD「ランダム・デジット・ダイヤリング(Random Digit Dialing)」の略)で18歳以上の有権者を対象に実施。 
2023/9 閣僚の応接室席順、「2位」は変わらず高市氏 3位は鈴木氏 
第2次岸田再改造内閣のメンバーが閣議前に集まる首相官邸の応接室での席次が13日決まった。ナンバー2とされる岸田文雄首相の左隣には、改造前と同じく高市早苗経済安保相が座る。序列3位といわれる右隣は鈴木俊一財務相となった。
2023/9 国会席次、ナンバー3に鈴木財務相 
第2次岸田再改造内閣の衆参両院本会議場での閣僚席(ひな壇)の新たな席次が13日、決まった。議場から見て中央にある演壇左側に岸田文雄首相、その隣のナンバー3とされる席はこれまでの林芳正氏に代わり新たに鈴木俊一財務相となった。ナンバー2とされる演壇右側には高市早苗経済安全保障担当相が引き続き座る。
首相官邸の閣僚応接室での席次も、首相から見て右隣が鈴木氏、左が高市氏の席となった。
2022/8 岸田内閣「ナンバー2」は高市経済安保相、席次決まる…
第2次岸田改造内閣の閣僚応接室での席次が10日、決まった。「ナンバー2」とされる岸田首相の左隣には、首相と昨年の総裁選で争った高市経済安全保障相が座る。
内閣改造前は、同じく総裁選で戦った野田聖子・前少子化相が座っていた。首相の右隣はこれまで通り、岸田派所属の林外相が座る。席次は閣僚歴や議員歴などを踏まえ、首相が決定する。

 

●ガソリン価格「4カ月ぶり値下げ」でも184.8円… 9/14
9月11日現在、レギュラーガソリンの全国平均店頭小売価格は、1リットルあたり184円80銭と、前週に比べて1リットルあたり1円70銭の値下げとなった(経済産業省発表)。
「値下げになったのは、じつに4カ月ぶりです。9月4日時点では、186円50銭と2週連続で過去最高を更新していました。9月7日から国の補助金が拡充されたことが要因で、価格上昇に歯止めがかかった形です」(経済ジャーナリスト)
補助金効果で値下がりしたにもかかわらず、SNSからは手放しで歓迎する声はほとんど聞こえてこない。
《ガソリンの補助金ってもう出てるらしいよ!近所のGSは今日からガソリン値下げするってさ。しかし…助かるけどいつまでも続けられないよねこんなの。》
《いや、高いよ。去年の9月は小売価格169円だぞ。そもそも175円設定が高過ぎ。トリガー条項の発動で直ぐに150円台になるよ。岸田総理は「まずは足元の物価高に対応しなければならない。国民生活を応援する大胆な経済政策を実行していく」とか言ってたよ。ほな実行せえよ。》
《ガソリンの補助金じゃなくて円安対策が1番ガソリン価格が下がるわ》
9月14日、埼玉県内のガソリンスタンドで給油に来ていた人に話を聞いた。
「今日はガソリンが値下げしたというニュースを聞いたので給油に寄りましたが、わずか2円弱の値下げでは、まったく実感が湧きませんね。せめて、お盆の前に対応してくれたらよかったのにと思います」
「個人事業主として大手通販会社の下請けをしていますが、ガソリン代は自己負担です。前回、給油に来たときは満タンにせずに、補助金が価格に反映されるまで待っていました。これっぽっちの値下げじゃ、焼け石に水ですが……」
前出の経済ジャーナリストが語る。
「本来、補助金は9月末までの緊急対策でしたが、岸田政権は年末まで延長することを表明しています。しかし、補助金による値下がりを待つ買い控えが起こり、受給のバランスが狂いますし、ガソリン高騰の原因である円安が続く限り、根本的な解決にはならず、財政支出が膨らみ続けます。ガソリン価格が3カ月連続で160円を超えると、ガソリン税のうち、上乗せぶんにあたる25.1円の課税を止める『トリガー条項』の発動が期待されていますが、岸田首相が発動に踏み切る様子はありません」
ガソリン価格は、補助金の効果で10月末には約175円に下がるという。だが、2021年9月は150円台で推移していたことを思えば、国民が納得しないのも当然だろう。
●尖閣領有で「弱腰」の印象与えた岸田首相 中国にくみしやすい存在 9/14
岸田文雄首相は、インドネシアで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓)首脳会議で、中国が東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に反対して日本産水産物を全面禁輸するなど嫌がらせを強めていることに、「突出した行動を取っている」と名指しで批判した。
一方、中国が8月下旬に公表した「2023年版標準地図」に対し、ASEANや台湾、米国などが一斉に中国批判を展開したのに、岸田政権は当初、外交ルートで抗議したものの、公開を避けていた。
地図は、南シナ海ほぼ全域を中国の管轄権としたうえ、台湾の東側に新たな「段線」を設けた。そのラインの延長線上には尖閣諸島(沖縄県石垣市)が存在し、中国領に含まれる可能性があった。
フィリピンのマルコス大統領は地図について、「これ以上、緊張がエスカレートすることを許してはならない」「自制心を持ち、緊張や誤解を増大させるような一方的な活動を控えるよう求める」と中国を厳しく批判した。
岸田首相は中国を念頭に、「東シナ海で日本の主権を侵害する活動が継続されている」と述べたものの名指しは避け、中国との「建設的かつ安定的な関係」を目指すと説明した。
「日本は米国など『西側諸国』と歩調を合わせつつ、中国との極端な関係悪化を避けたい立場」(朝日新聞8日付)からの判断だったとされる。
処理水問題では批判をしながらも、領土問題では譲歩したかたちだが、中国は「岸田首相はくみしやすい存在だ」と思ったはずだ。しかし、これは物事の軽重を誤った判断ではなかったか。
処理水問題は、中国への輸出に依存していた日本の海産物業者には痛手だが、禁輸が1年続いても日本の国内総生産(GDP)への影響は0・03%と限定的だ。中国のインバウンド(訪日客)需要が減っても、やはり影響は限定的である。関連業者を支援しつつ、中国への依存から脱却していく。これらは取り返しのつく問題だ。
一方、領土は一度奪われると、戦争でもしなければ取り返せない。
ロシアが不法占拠する北方領土や、韓国が不法占拠する島根県・竹島がその例だ。だから実効支配は絶対に譲ってはならず、「譲らない」との国家の断固たる意志が必要だ。地図問題こそ、一層強い名指し批判が必要だったはずだ。
さらに、尖閣諸島は中国の台湾侵攻とも密接に関連する。侵攻の際に、中国が地対空ミサイルを設置するとみる軍事専門家もいる。「台湾有事」を避ける意味でも、尖閣諸島領有について日本政府の強い意思表示が必要だが、岸田首相の姿勢は「弱腰」との印象を与えたはずだ。
最近、気になるのは「台湾有事は起こらない」との言論が、日本国内で形成されつつあることだ。
●中国メディア、再改造内閣を分析「知中派の代表格だった林前外相が…」 9/14
第2次岸田再改造内閣の発足について、中国メディアは「知中派の代表格だった林前外相が交代した」と伝える一方で、日中関係への影響は少ないと分析しています。
中国メディアは内閣改造について、外相だった林芳正氏が中国との関係を重視する「知中派」の代表格だったと位置づけた上で、彼が交代したことが「中日関係への影響が大きいとは言えない」とする専門家の分析を掲載しました。
また、新たに就任した上川外相については「外交に関する実績と人脈はない。外交で自主性を発揮できなくなれば、疑問符がつく可能性もある」としています。
さらに、岸田政権が処理水放出で「国内の対立を引きおこした」と主張した上で、内閣改造がこれを薄めることができるとも分析しています。
●欧米に傾斜しすぎる日本、グローバルサウス争奪戦に参加せよ 9/14
「なぜ日本はウクライナ問題で欧米に過剰にコミットするのか、一体何が狙いなのか」、このような感想を筆者の欧米の知人から質問されることがある。ウクライナ戦線の現地からロシア軍との貴重な実戦データや戦訓といった見返りを十分に受けられず、欧州のようにエネルギーを第三国経由で入手しない日本を欧米人は非常に不思議に思っているから、こうした質問がされるのだ。
岸田政権の欧米寄りの外交方針
岸田政権が今年5月にG7広島サミットでゼレンスキー大統領を日本に招いた上、欧米諸国のリベラルな価値観を前面に押し出した「G7広島首脳コミュニケ」を取りまとめたことは記憶に新しい。
もちろん、西側欧米諸国の「不倶戴天の敵」はロシアであるため、彼らにとって岸田政権がウクライナ支援で欧米諸国に過剰に肩入れすることは望ましいことだ。そのため、「日本にそこまで期待していないよ」とわざわざ伝えてくる国はない。
たしかに、安倍政権以来の日本の外交努力もあって、近年では欧州諸国の艦艇が日本に寄港し、彼らの太平洋地域の秩序に対する関心が高まっていることは事実だ。NATOと自衛隊の情報共有も徐々に改善し、NATO最大の航空軍事演習への高官派遣時の情報共有やサイバーセキュリティ・宇宙空間・偽情報分野での情報共有などの協力関係も始まっている。これは歓迎すべきことだ。
そして、岸田政権がウクライナ支援にのめり込む理由は、中国の影響力拡大を抑止する観点から欧州各国からのコミットメントを確実にすることが狙いだ。だが、米国は日本の付属品であると思われていれば、日本と真面目に交渉する国など存在しない。2年前のニューヨークタイムズでは外務省から岸田首相が『チワワ』と綽名されていると中谷元元防衛大臣の発言が報じている。欧米の外交官から見れば、現状の岸田外交の振る舞いは行儀が良い『チワワ』という表現が的確だ。
岸田政権は一度立ち止まって、自らの立ち位置を再認識するべきだ。
日本の真の立場:欧米との関係性
日本人は勘違いしがちであるが、日本は欧米諸国の一員ではない。日本は極東アジアの一か国に過ぎない。NATO事務局は東京に連絡事務所を設置することを進めていたが、フランスのマクロン大統領が「インド太平洋は北大西洋ではない」と反対した。フランスと経済的な関係の強い、中国政府からの強烈な要請もあった結果と見做すべきだ。その結果として、同設置案は採択に必要な全会一致の賛成を得られず、今後の継続検討の課題となってしまった。そしておそらく設置されることはほぼないだろう。
本件は表面的にはフランスが反対したという形を取ったが、NATO加盟国には日本に対して同じ感想を持つ国が多いことは容易に想像できる。当たり前だが、彼らは日本との軍事協力を必要以上に深めて、東アジアで余計な戦線を持ち、中国共産党を刺激し中国市場と中国資本を失うほどお人好しではない。 岸田政権がロシアだけでなくグローバルサウス全体にまで説教をする態度をとり、全力でウクライナ支援にのめりこんでいるのとは対照的な冷徹ぶりだ。
しかも、ドイツとポーランドは今年6月までドルジバパイプライン経由でロシアのエネルギーを輸入しており、6月以降も第三国のエネルギーをロシア経由で輸入している。 また現在のドイツはイランからエネルギーを輸入しているが、その利益はイラン製自爆ドローンの量産に使われ、ロシアに供与されてウクライナ市民を殺害している。こうした冷徹でリアリスティックな姿勢や考え方が日本政府や日本人にはないのは大きな問題だ。
さらに、岸田政権はバイデン政権や欧州諸国の方針に過剰に合わせることで、何かを得るどころか、本来得るべきであった重要な信頼を失っている。それはグローバルサウスの国々からの信頼だ。
グローバルサウスとの関係:日本の外交の新たな焦点
これらの国の欧米やロシアに対するアプローチは、まったく日本政府とは違うからだ。 国連の発表では、2023年度中にインドが中国を抜いて世界1位となる。しかし、今後、人口が増える国はインドだけではない。インド、ナイジェリア、パキスタン、インドネシア、エジプト、を筆頭にグローバルサウスの国々が経済力上昇を背景とした生活環境の改善を通じて人口爆発を起こしている。東南アジア、南アジア、中南米だけでなく、アフリカからも大量の中間層が形成されることで、地球の南北のバランスは大きく変わることになるだろう。そしてこれらの国々の中ではすでに人々の収入が、日本人を大きく抜いている国も出始めている。
こうしたことの認識も日本政府にはない。 グローバルサウスの国々は、ウクライナ戦争がもたらす資源高・食料高を必ずしも望んでおらず、対ロシアの政策においてまったく欧州諸国を支持していない。国連で反戦決議を取れば賛成するものの、経済制裁に参加していないことからもこれは明らかだ。ロシアの行為を否定することと、経済制裁に参加せず自国民の経済を守ることは両立するということだ。 さらに、文化的・政治的に保守的な国も多く、バイデン政権や欧州諸国が押し付ける過剰にリベラルな価値観を受け入れることは決してない。
グローバルサウスの中心は中国、インド、ブラジル(及びロシア)だ。彼らはBRICsの枠組みを拡大することで、欧米抜きで自分たちの影響力を強めている。8月に南アフリカのヨハネスブルクで開催された第15回BRICS首脳会議のテーマは「BRICSとアフリカ−相互協力による成長、持続可能な開発、包括的な多国間主義のためのパートナーシップ」であった。同枠組みへの参加国は拡大する見通しであり、既に約20か国が公式に加盟申請し、さらに20か国以上が参加に関心を示している。
また、中国はサウジアラビア及びイランの手打ちを仲介して中東地域でのプレゼンスを伸ばしつつある。これは米国の中東に対するプレゼンスが相対的に低下していることの裏返しだ。(まして、安倍首相のイラン訪問中にタンカーが襲撃された日本外交とは大違いだ。) フランスの影響力が減退しているアフリカ諸国ではイスラム系テロリストに対抗するためにロシアを頼りにする向きも少なくない。欧米諸国の軍事支援は限定的である上、ロシアが支援の条件としてリベラルな価値観を押し付けないことは極めて重要な要素となっている。
インドにおいて開催されたG20の裏側で、2023年9月10日よりロシアのウラジオストクで東方経済フォーラムが開始された。ウクライナ侵攻で疲弊した大陸国家のロシアの国際会議にすら中国や北朝鮮やベラルーシといった国だけでなく、インド、ベトナム、カザフスタン、ラオス、ミャンマー、シンガポール、フィリピンといった国々が参加しているのが実態だ。今後、この国際会議にも参加国が戻ることはあっても減ることはないだろう。
日本の外交政策の誤解と修正の必要性
日本は欧米から見れば遠く離れた極東アジアの地にある異国に過ぎない。しかし、当の本人たちは自分たちが対等の立場の一員として扱われていると錯覚している。 特に岸田政権の外交政策の勘違いぶりは、日本の対グローバルサウス外交の強みを決定的に傷つけている。
具体例を挙げるなら、ODA大綱に2023年度に追加された『ジェンダー主流化を含むインクルーシブな社会促進・公正性の確保』の原則」が含まれたことが挙げられる。バイデン政権、欧州各国、人権団体は首肯するかもしれないが、その原則追加について援助対象国が本音で求めているかは疑問だ。日本の対外的な援助が欧米リベラル風に変化して、それを喜ぶ援助対象国など本当にあるのだろうか。表面上の援助歓迎姿勢と実際の本音の差が著しいように感じる。
欧米のリベラルイデオロギーを全面に受容した外交を展開しても、欧米もグローバルサウスも日本を真の友人として受け入れることはないだろう。日本外交は日本人としての知恵を絞ったものに一皮むける必要がある。 
●維新 馬場代表 選挙結果次第で国民民主との連立政権ありうる 9/14
日本維新の会の馬場代表は、衆議院選挙の結果次第では、政策や理念が近い国民民主党と連立政権を組むこともありうるという認識を示しました。
日本維新の会の馬場代表と国民民主党の玉木代表は13日夜、BSフジの番組「プライムニュース」に出演しました。
この中で馬場氏は「自民党と同じような保守的な二大政党で、ときどき政権が代わるようになれば、政治や政治家の緊張感がかなり高まる。国民民主党とは政策・理念が近く、衆議院選挙の結果次第では、両党の連立政権はできるのではないか」と述べました。
一方で、両党の選挙協力については、国民民主党の支援団体である連合との調整が必要だとして、難しいという認識を示しました。
また、玉木氏は、岸田総理大臣が13日夜の記者会見で国民民主党を連立政権に加える可能性を問われ、「いかなる政党であれ、政策議論を深めた上で、必要な連携を進めていく姿勢は大事だ」と述べたことについて、「賃上げも含め、あらゆることを提案したい。厳しいことも含め、聞く力を発揮してもらいたい」と述べました。
●政治家の情けないプレゼンテーションスキル 9/14
・自民党新4役会見で小渕優子選対委員長が質問に声を震わす。
・岸田総理は相変わらず単調な会見で、何がメッセージか伝わらず。
・政治家として「国民に訴えかける力」を持ってもらいたい。
きょう自民党新四役の会見とその後の岸田総理の会見を見て、2つ感じたことを記す。
1つ目は、小渕優子新選挙対策委員長の会見の対応のまずさだ。
驚いたのは、小渕氏が2014年に「政治とカネ」の問題で経済産業相を辞任した経緯を問われた時だ。「心に反省をもち、決して忘れることのない傷だ。私自身の今後の歩みをみてご判断いただきたい」と述べたが、その後、説明責任を果たしたと思うか、と畳みかけられると、言葉を詰まらせ、「十分に伝わっていない部分があれば私自身の不徳の致すところだ」と声を震わせた。新聞の中には「涙目で」とか「涙ぐむ」と見出しをとっているところもあった。
新人議員でもあるまいし、中堅どころか、次期総理を狙えるのではとの呼び声も出ている、と質問の中で話している記者もいた中での一幕だった。
この質問は100%記者から出ることはわかっていたはずだ。事前に想定問答のトレーニングを受けなかったのだろうか。
通常、民間で、新しくしかるべきポジションについた人は、インタビューのトレーニングを受けることが多い。聞かれたくない質問、想定外の質問、苦手な質問などに対して簡潔かつ適切に答えることが出来るまで模擬会見を行って練習するのだ。
茂木幹事長や萩生田政調会長は、よどみなく質問をさばききっていただけに、余計小渕氏の回答の稚拙さが際だった。
疑惑について改めて記者会見を開く考えがあるかを問われると、「必要な話があれば言って頂ければと思う」と小渕氏は答えたが、それまでにしっかりトレーニングを受けることをお勧めする。
ふたつめは、岸田総理の会見が相も変わらず国民の心を打たないものだったことだ。
そのわけは、彼の話し方の特徴にある。それは、
1 棒読み=抑揚がない
2 言葉をやたら区切る
3 「ん〜」、「え〜」、などという間投詞が多い
の3点に尽きる。
1と2だが、なぜそうなるかというと、官僚の作文をただ読んでいるだけだからだ。官僚の書く文章は「霞ヶ関文学(話法)」と揶揄されるが、その特徴は、臆面もなく官僚にしか通じない表現をちりばめることで、当たり障りのない内容にし、決して相手に言質を取らせないことだ。
そうした例は枚挙に暇が無いが、「喫緊の課題として」とか「緊張感(スピード感)を持って」とか「あらゆる可能性を排除せず」とか「関係省庁(各国)と緊密に連携をとって」とかいうやつだ。そう思ってないでしょ、と相手に思わせるに十分な、心のこもってない表現だが、書いている霞ヶ関の人達はそんなことはおかまいなしなのだろう。
総理だけではなく、官房長官、大臣、あらゆる政府関係者がこうした表現を乱発するものだからどの答弁も同じに聞こえてくる。それがそもそもの目的なのかもしれないが、それで国民の心を打つことは出来ない。
まして総理大臣である。何のための会見か。今日の会見はこれからの政策課題と内閣改造・党役員人事の意図の説明の場だったが、平坦な話しぶりが延々と続き、全く頭に入ってこなかった。強調すべき所は強調し、抑揚をつけてくれないと、人間は何が大事なのかわからない。延々と同じ調子で話されては一体この人は何を伝えたいのか、と人は感じてしまうものなのだ。
さらに、岸田総理の話が国民の心を打たない理由は、その話し方に加え、国民の実感と乖離している内容をえんえんと話すからだ。
岸田総理は、政権発足からの2年間を振り返り「新しい時代の息吹が確実に生まれつつある」と述べ、「経済でも外交でも世界での日本の存在感を高められた」と評価したが、「新しい時代の息吹」や「世界での日本の存在感」を感じている人がどこにいるのだろう?
新内閣を「変化を力にする内閣」と表現したが、お年寄りばかりでとても変化とはほど遠い陣容にしか見えない。代わり映えしなく、現状維持がせいぜいのところだろう。
極めつけは、「我々の前に流れている変化の大河はまさに100年に1回ともいえる時代を画するものだ」と述べたことだ。「大河(たいが)」と耳で聞いたときはすぐには分からなかった。あまりにこの言葉を繰り返すのでまさか「大河」ではないだろうな、と思って後で他社の記事を見たら本当に「大河」だった。私だったら、こんな誰も使わないような大仰な言葉を総理の演説には選ばない。
国民が今感じている変化は、食料品の値上げであり、電気・ガス・ガソリンの高騰であり、税金や社会保障費の重さである。つまり生活が苦しくなっているという負の変化だ。生活費を切り詰め、遊興費を減らし、日々を暮らしている。「変化の大河」などという陳腐な言葉は、庶民の感情を逆なでこそすれ、共感を得られるものではない。
自分の言葉で語らない、官僚の書いた作文を読まされているから必然的に棒読みになる。そして、目でプロンプターの文字を追っているから、時折変なところで区切って読むことになる。それが聞いている人に、ああ、自分で書いた文章じゃないんだな、と分からせてしまうのだ。
3は岸田総理のもともとのくせだ。考える時に口を一文字に結んで天を仰ぎ、「ん〜」とか「え〜」とかやる、あれだ。これを多発されると、聞いているほうは、どうしてもイライラしてくる。これも、質問に間髪入れずに答えるためのトレーニングをしていないからだろう。こうしたくせは直すことが出来るものなのだ。
官僚が総理や大臣に、「もう少し話す練習した方がいいですよ」、などというわけはない。政治家は自ら「話す力」=「国民に訴えかける力」を養ってもらいたい。
まさに、「言葉に権威あらしめよ」、だ。
●韓国で「福島原発処理水」反対デモが“大失敗”で、まさかの「ブーメラン」に… 9/14
韓国「反日ムーブメント」、またまた不発へ…!
韓国では文在寅政権時に「反日正義」を振りかざして大手を振るっていた勢力が、いま急速に力を失う中で、なんとか世論を喚起起用とデマまでまき散らすほどの醜態を演じている。その様子を見ていると、「この国の政治家は大丈夫なのか」と呆れてモノが言えなくなる。
いま尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の有言実行な行動のみが、何とか私が正気を保っていられる理由だ。そんな日韓関係改善に努力する日韓両国の動きの中で、日本政府が福島原発処理水の放出日を8月24日と決定した。だが、韓国野党はその発表の前に8月26日に大規模な集会「福島汚染水放水反対」を行うと決めていた。
もちろん処理水放出に向けた批判デモなのだが、24日の放出の知らせを聞いた民主党関係者は「予想より放出時点が早くて当惑する」と情けなく話したという。
韓国野党も支持者を巻き込み、これまで非科学的デマで国民を再び反日へ扇動しようと拡散運動を必死で行ってきたが、デマは政府の正論で打ち消され、不発に終わった。
やっと放水という現実的な批判ができると勇んで26日の大集会を予定していたわけが、それも「放出後の反対の意味は?」と肩透かしに終わったわけだ。
文在寅の「罪」
これまで韓国の政治家たちの「反日感情」の政治利用は保身からでしかない。政党の支持率のために竹島に上陸したり、嘘がバレそうになったら日本を批判したりとして来たわけで、そこに政治家としての一貫性はほぼないように映る。
国民もそれに対して異論を唱えれば左派勢力の圧力で社会的に抹殺されかねなかったのが、いまは嘘の様に何でも話せる様になった。日本に居ると「えっ、そうなの?」と思われがちだが本当にそうだったのだ。
そんな状況が文在寅政権まで続いていたことを、韓国メディアの報道では一度も見たことがない。韓国メディアもいまやっと文在寅前大統領が従北を貫くためにいかに人権を無視して来たか、当時の文在寅政権、政党がいかに嘘を言ってきたかを指摘し、報道をし始めている。
日本とばかり比較して恐縮だが、韓国が日本の平均年収を超えたと言うが、「何だろう、この貧乏感」はと思っていたことを日本で気付かされた。それは、目に入るもの耳で聞く物が「豊か」ではないのだ。
デタラメ、嘘、豊かさ…
私は日本から韓国に移り住んでいると、多くのことが「デタラメで嘘」に見えて聞こえてしまう。最近の左派の言動を見ていると、ますますその思いは強くなる。そういった中での生活はいくらおカネに余裕ができても、気持ちを「豊か」にしない。
日本で暮らしていた時には収入が多かれ少なかれ気持ちが殺伐とし、ストレスを抱えることはなかった。韓国ではどこに行ってもデモや政治的横断幕は目に入り、どの街に行っても一定の汚さを感じて、知らない間にストレスとして蓄積されている。無意識に日本と比べていたのだろう。
三つ星ホテルや高級輸入車のデーラーでさえ、よく見ると外観のガラス清掃はされておらず、汚れで曇っているということもよく目にする。心休まらない韓国でいくら景気の良い、評価が高い数字を知らされても、日常で感じる“雑さ”からそんな数字に信用性はないと第六感が思いっきり訴えてくる。
それはほんとうに私だけのことなのだろうか……と最近は思うのである。
●ジャニーズ事務所流「力の支配」が国家レベルで行われているのが今の政治 9/14
ジャニーズ会見があり、タブーの封印が解けたとばかりにさまざまな報道がなされた。厳しい意見もあるが、いまだに忖度、擁護記事も多い。
元シブがき隊・本木雅弘はなぜ潰されなかった? 奥山和由氏が明かしたメリー氏の「圧力」
性加害だけを見れば、その期間の長さ、被害者の数からして1人の人間が起こしたものとしては人類史上まれに見る猟奇的事件である。
「タレントに罪はない」といってもCMなどは対会社の契約であるから、世界的常識からすれば大企業ほど取引を解消するのはやむを得ないだろう。
私の予想通り新社長は東山氏になった。古くからの友人である。芸能界引退のケジメもいかにも彼らしい。演者の東山が見られないのは残念極まりないが、これからのいばらの道、頑張っていただきたい。
彼は社名変更なども早いうちから言及していたから、必ずしも今回の方針は本意ではないのかもしれない。社長なのだから少し時間をかけてでも改革に大ナタを振るって欲しい。
やはり分社化して名称は変更し、所属タレント全員と面談し、他事務所への移籍の自由を与え、移った者に対する圧力は一切かけないという誓約書を交わすぐらいが必要ではなかろうか。今のままだと、内部は前より何も言えない空気になっているのではないか。
マスコミにも責任はある
何も言わなかったマスコミの責任は確かにある。いや誰も何も言えない構造になっていた。それはジャニーズだけの問題ではない。事務所を辞めたタレントを「使うなら、うちの他のタレントは一切使わせない」などというやり方は、どこの事務所もやってきた。そしてマスコミは唯々諾々とそれに従ってきた。私も芸能界は力関係だと思い知らされていた。
いや芸能界だけではない。
木原官房副長官の醜聞も、萩生田氏の統一教会関係問題も、大手マスコミは全く記事にしない。これこそが極めて日本的な悪習ではないのか。
総理大臣の記者会見にフリーの記者が入れず、あらかじめ用意した質問に官僚が書いた答えを読み上げるだけ。もし先日のジャニーズ会見でこんな事が行われたら、どれほど非難されただろう。 それ
が国レベルで行われているのである。異常としか思えない。あのトランプでさえ、何十分もかけて自分の言葉で答えていたのに。
ジャニーズが範を示せば…
今回はこういった、日本特有の力関係のなあなあを、少しでも改善していくよい機会なのではないか。ジャニーズが範を示し、周りが影響されていく。そんな未来をヒガシ、イノッチ、ぜひお願いします。
●立民 泉代表「インパクトなく薄味な内閣改造だ」 野党各党の反応は 9/14
第2次岸田第2次改造内閣の顔ぶれについて、立憲民主党の泉代表は、「変えた人事にインパクトがあるかというとそうでもなく、薄味な内閣改造だ」と述べました。野党各党の反応です。
立民 泉代表「薄味な内閣改造」
立憲民主党の泉代表は、訪問先のアメリカの首都ワシントンで記者団に対し「変えた人事にインパクトがあるかというとそうでもなく、薄味な内閣改造だ。非常に重要な時期だけに交代によってさまざまな行政が停滞しないかということを心配している。少子化対策ではこども家庭庁ができていよいよという時に大臣が交代していちからのやり直しになるのではないかと懸念している」と述べました。
また、自民党の役員人事で、かつて政治資金をめぐる問題で経済産業大臣を辞任した小渕優子氏が選挙対策委員長に起用されたことについて「ドリルでパソコンのデータを破壊するというのは当時も前代未聞だったし、今も語り継がれるような証拠隠滅だ。大臣を辞めてそのまま、ほおかぶりをして今に至るのが残念だ。国民に説明責任を果たしてもらう必要はあると思う」と述べました。
また、衆議院の解散・総選挙をめぐっては「主要閣僚があまり動いていないということからも岸田総理大臣は十分、解散を考えているのではないかと認識してわれわれも準備する」と述べました。
立民 岡田幹事長「肩すかし内閣」
立憲民主党の岡田幹事長は「刷新を期待していた人は多いと思うが、内閣の骨格は変わらなかった。確かに女性の大臣は5人と増えたものの、それぞれの力量や何をしたいかが、なかなか伝わらない。ワクワク感のない『肩すかし内閣』という印象だ」と述べました。
また自民党の役員人事については「萩生田政務調査会長は、就任以来、旧統一教会についてほとんど説明していないし、小渕選挙対策委員長も改めてしっかり国民に向かって説明してもらいたい。それぞれ国民の納得いくような説明は全くなされていない」と指摘しました。
一方、衆議院の解散・総選挙をめぐっては「岸田総理大臣が、経済対策を打ち出すのであれば補正予算案を編成する形になると思うので、しっかりと審議する時間を作ってもらいたい。補正予算案をつくり、予算委員会で説明して、その上で解散ということなら受けて立ちたい」と述べました。
維新 馬場代表「適材適所と評価できるレベルでない」
日本維新の会の馬場代表は、「率直に印象を申し上げると『総裁選挙対策内閣』だ。派閥の順送りや、年齢や期数の重視もかなり見られ、適材適所と評価できるレベルではない」と述べました。
また、これまでで最も多い女性5人が入閣したことについて「男性だから女性だからと言うことはぼちぼちやめた方がいい。岸田総理大臣が、女性の入閣が内閣改造の目玉だと言うなら、お門違いであり、適材適所の配置に性別は関係ない」と述べました。
さらに、衆議院の解散・総選挙の時期については「今の日本の情勢を見ると、選挙により政治に空白期間を作るべきではない」と指摘しました。
一方、自民党の役員人事で、かつて政治資金をめぐる問題で、経済産業大臣を辞任した小渕選挙対策委員長が起用されたことについて「疑惑が残っているとすれば、説明責任を果たすべきだ」と述べました。
共産 小池書記局長「聞く耳持たない布陣」
共産党の小池書記局長は、「インボイス制度の導入やトラブル続きのマイナンバー問題など、国民的な批判が高く、政策転換が求められるところに聞く耳を全く持たない布陣で、『聞く耳持たずに突き進む内閣』だ。内閣改造ではなく『政治の改造』が必要で、ただちに臨時国会の開会を求めたい」と述べました。
また、自民党の役員人事で、かつて政治資金をめぐる問題で経済産業大臣を辞任した小渕選挙対策委員長が起用されたことについて「自民党が政治とカネの問題をいかに軽視しているかというあらわれではないか。問題点として指摘していきたい」と述べました。
国民 玉木代表「マイナスなことは徹底的に止める」
国民民主党の玉木代表は、「『賃上げ実現内閣』になってもらわなければならない。持続的な賃上げを実現することが日本の経済や社会にとり、最優先の課題になっているので内閣をあげてしっかり取り組んでほしい」と述べました。
また、政府・与党との関係については「われわれを応援している皆さんの声や考えはしっかり伝えていきたい。持続的な賃上げの実現につながることは協力し、マイナスのことは徹底的に止めるということで臨みたい」と述べました。
一方、自民党の役員人事で、かつて政治資金をめぐる問題で、経済産業大臣を辞任した小渕選挙対策委員長が起用されたことについて「多くの国民が十分な説明責任が果たされていないと考えていると思う。国民の信頼を得るための説明責任は引き続き果たしていくべきだ」と述べました。
れいわ 山本代表「ほぼ何もしないメンバー」
れいわ新選組の山本代表は「現在の物価高には減税や給付金の対応がすぐに必要だが、これまで通りほぼ何もしないメンバーが発表されただけだ。自民党を倒すしかない」とするコメントを出しました。
社民 福島党首「内向き延命内閣」
社民党の福島党首は「岸田総理大臣の、岸田総理大臣による、岸田総理大臣のための『内向き延命内閣』で、国民に対して、どのような人が必要で何をやるかよりも、重要なところは続投させて政権を安泰にし、新しい人は派閥の論理で入れて安定を図っている。不適材不適所内閣だ」と述べました。
●女性閣僚が最多の5人、刷新感を狙うも継続性に課題−岸田内閣 9/14
岸田文雄首相は13日行った内閣改造で、歴代最多と並ぶ5人の女性閣僚を誕生させた。来年の自民党総裁選に向けての態勢立て直しと位置付けられた人事で刷新感を打ち出したが、今後も継続して女性を要職に登用し、多様性を取り込む糸口とできるかが課題となる。
外相には約20年ぶりの女性起用となる上川陽子元法相、こども政策担当相に当選3回の加藤鮎子衆院議員を抜てきした。このほか、地方創生担当相に自見英子参院議員、復興相に土屋品子衆院議員を充てた。初入閣の加藤、自見、土屋の3氏はいずれも父親が閣僚も経験した国会議員だった。高市早苗経済安全保障担当相は留任した。
エマニュエル駐日米国大使は上川外相について「非常に有能」と評価し、就任を歓迎した。民間企業でも指導的地位への女性登用が遅れている日本にとって「前向きの大きな一歩だ」と指摘した。ブルームバーグの電話インタビューで語った。
女性閣僚5人は2001年4月に発足した第1次小泉純一郎内閣と14年9月発足の第2次安倍晋三改造内閣に続き、3回目。いずれも一時的な登用で次の内閣では女性閣僚は減少しており、政権が多様性を取り込むきっかけとはなっていない。小泉内閣の5人は民間人2人も含まれていたが、20年たった現在も自民党の国会議員に占める女性の割合は衆参を合わせても約12%で他党に比べても少ない。
元民主党衆院議員で早稲田大学教授の中林美恵子氏は「民間企業も同じだが、リーダーシップを発揮できる可能性のある女性社員がいなければ女性役員の誕生は難しい。政界では衆院の方が大臣となる機会は多いが、それでも基本的に女性の数が少な過ぎる」と指摘する。
日本では首相のほか、重要閣僚と位置付けられる財務相も女性が務めたことはない。官房長官も1989年から90年にかけて第1次海部俊樹内閣で森山真弓氏が務めて以来、30年以上、男性が占めてきた。自民党役員では幹事長に登用された女性議員はゼロだ。 
岸田首相は13日夜の記者会見で、「自民党は女性活躍を最重要課題として掲げている」とした一方で、女性閣僚に対しては「女性としての、女性ならではの感性や、あるいは共感力、こうしたものも十分発揮していただきながら仕事をしていただくこと」を期待していると述べた。 
14日行われた就任記者会見で、上川外相、加藤こども相は女性の政治参画の遅れに関して発言した。上川氏は「ジェンダーギャップの課題は大変大きい。女性閣僚の1人として位置を占めることになった意味を重く受け止めている」と強調。加藤氏も、「非常に問題だ。内閣の一員としてより多くの女性の声が政権の中で反映されるように頑張っていきたい」と意欲を示した。
政治への女性参画遅れる日本
世界的に女性の政治参画が進む中、日本の取り組みの遅れが指摘されている。世界経済フォーラムが6月に公表した2023年版のジェンダーギャップ指数で、日本は146カ国中125位で、前年から9ランク下落。政治分野のスコアでは、146カ国中138位だった。
韓国やアフリカ諸国など世界130以上の国で議席の一定数を女性に割り当てるクオータ制度を採用している。日本では18年施行の「政治分野における男女共同参画推進法」で、各党に男女同数の候補者擁立を求めているが、努力義務にとどまっている。 
内閣改造に先立って行った自民党役員人事では、小渕優子氏を選挙対策委員長に抜てきした。岸田首相は会見で、女性議員を「より増やしていかなければいけない」と指摘。同氏について選挙対策への知見が高く、「候補者の発掘やきめ細かい支援など女性議員3割に向けて力をふるってもらう」ことを期待していると述べた。
女性候補擁立で基本計画
今年4月に行われた衆参五つの補欠選挙で自民党からは2人の女性が立候補し、当選した。6月に茂木敏充幹事長や幹事長代理を務めていた上川氏らが中心になってまとめた女性議員の育成・登用に関する基本計画では、今後10年で党の女性国会議員比率を30%に引き上げると明示した。
同計画は選挙区での候補者選定を原則的に公募で行うことや、衆院の比例代表では女性を上位にし、参院の比例代表でも積極的に女性を擁立するとしている。茂木氏は13日の記者会見で、同計画の実行など「さまざまな取り組みを前に進めていきたい」と語った。
クレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストは、改造人事では「クオータ制を意識した」ことが見て取れると分析している。3人が初入閣であることに触れ、「閣僚経験を積ませることも含めて、育成と活用の両輪を狙っているのではないか」と述べた。
●防衛費増が招く「増税」「国債」「債務危機」3つの罠 9/14
持続的経済成長は続くのか
この記事のタイトルから、現在の日本の財政政策に対する批判を期待された読者もいらっしゃるかもしれない。だが、ここでの議論は、経済学の前提に対するもっとも根源的な批判となるのではないかと思われる。その批判とは、持続的経済成長とは、単なる「神話」ではないかということなのだ。
私たちは、経済が成長し続けるのは当たり前のことだと考えている。しかしそれは、せいぜいここ数世紀間のことにすぎない。もしかしたら、それはあらゆる社会システムと同じく、いつか消滅するものだと考えられないのだろうか。私が『戦争と財政の世界史: 成長の世界システムが終わるとき』の執筆にあたって、つねに考えていたのはそういうことであった。
ここ20年間ほど、私の頭を悩ませ続けてきた問題があった。それは、近代経済は、18世紀後半のイギリスで誕生したのか、それとも17世紀のオランダで誕生したのか、どちらなのかということである。
イギリスからはじまった産業革命により近代経済が誕生し、それが世界中に広まったというのが一般的な見方であろう。それは、資本=賃労働関係にもとづく資本主義システムが、世界を覆い尽くしたということを意味する。イギリスから、持続的経済成長がはじまったとされてきた。
それに対し最近提示されているのは、持続的経済成長は17世紀のオランダではじまったというものである。それは、「近代世界システム」を提唱したアメリカの社会学者ウォーラーステインが主張したことで有名になった説である。
この2つのどちらが正しいかということは、経済史を研究し続けてきた私にとって非常に大きな問題であり、ウォーラーステインの説を基本的には支持していたものの、確実にそうだと言い切るには、なお、一抹の不安があった。
その不安を解決したのが、『戦争と財政の世界史』の執筆であったといってよい。
経済が成長し続けていたので借金の返済が容易になった
ヨーロッパの経済史研究によれば、近代的な財政システムは、火器の発明を中心とする「軍事革命」により戦費が増大したことから生まれた。戦費の調達のために国債(公債)を発行し、それを長期的に返済するというシステムこそ、近代的財政システムの元になったというのである。そして、それを開始したのがオランダだったというわけだ。だからこそ、オランダは、いわば近代的財政システムをもつ最初の国として誕生した。オランダ史の近年の研究をまとめるなら、このように主張することができよう。
当時のオランダは7つの州が公債を発行し(国債は発行されなかった)、戦費を調達した。オランダは、1人当たりの税負担がヨーロッパでもっとも多い国であった。それが返済できたのは、持続的経済成長を成し遂げたので、公債の返済が容易になったからである。
それに対し、18世紀のイギリスは、対仏戦争を遂行していく過程で、イングランド銀行が巨額の国債を発行し、その返済を議会が保証するというファンディング・システムを構築した。このような形態での債務返済こそ、現代にまで通じる近代的な財政システムなのである。
オランダであれ、イギリスであれ、長期的にはなんとか借金を返済することができた。それは、経済が成長し続けていたので、借金の返済が容易になったからだ。
18世紀の対仏戦争は、イギリスに巨額の借金を負わせた。そのため19世紀初頭イギリスの公債発行額の対GDP比は200%近くに達したが、大きな戦争がなく、しかも経済成長をしたので、19世紀末には比率は30%程度にまで減少した。19世紀後半のイギリスは、綿織物の輸出もあったが、むしろ海運業や金融業の収入により、世界経済のヘゲモニーを握るようになった。しかもイギリスは、植民地、とくにインドを収奪することで国債(公債)依存度を減らしたのである。
しかし、第1次世界大戦のために公債発行額の対GDP比は大きく上昇し、両大戦間期は大不況の影響もありそれはあまり低下することはなく、さらに第2次世界大戦がはじまると、この比率は急速に上昇し、終戦時には、250%近くに達した。戦後になって、経済成長のために(たとえ先進国のなかでは、アメリカに次いで低かったとしても)、イギリス政府は借金を返すことができた。しかし、1990年代以降、公債発行額の対GDP比は上昇傾向にある。
日本の国債残高
日本の国債発行残高は、現在、1000兆円を超えている。これは、とてつもない額だといわざるをえない。それは、戦争とは関係がなく増えていった。
日本は諸外国と同じく、国債の発行により戦費を調達した。日露戦争のときに高橋是清が活躍し、欧米の外債市場で国債の調達に成功することで戦費を調達したからこそ、日本はこの戦争に勝利することができたのである。それは最終的には1986年になってようやく返済できたほどに、巨額の借金であった。
アジア・太平洋戦争期にも巨額の国債を発行し、その多くを日銀引き受けとすることによって、ようやく戦争を継続することができた。戦後、インフレーションによって日本国政府の実質的な借金返済の負担は減った。さらに高度経済成長により、日本の公債発行額の対GDP比は大幅に減少した。
しかし、1970年代半ばから、とめどもなくという修飾語句が適切なほどに、日本の公債発行残高は増えている。それは、社会保障費の増加がもっとも大きな要因である。
そもそも国家に、「社会保障」という考え方はなかった。国家がおこなう最大のことといえば、戦争であった。だが、戦争でたくさんの人が死ぬと、国家はその家族への補償を考えるようになった。それが、社会保障の1つの起源になったのではないだろうか。
社会保障に関して有名なものは、1880年代にドイツのビスマルクが導入した医療保険法、災害保険法、養老保険である。イギリスで同様の制度が導入されたのが1911年であったことを考えるなら、ビスマルクの先見の明は明らかである。
だが、欧米の先進諸国で社会保障費が誰の目にも明らかに上昇するようになったのは、1980年代のことであり、その勢いはなかなか止まらない。公的支出のGDP比を増やすことは簡単だが減らすことは難しい。日本ほどではないにせよ、多くの国々でこの比率は、どちらかといえば上昇傾向にある。
戦争は、いつもあるというものではない。たまにとまではいかなくても時々戦争になり、国債(公債)を発行して戦費を調達し、それを平時に返済する。それに対し、現在、国家予算の多くの部分を占めるのは社会保障費であり、それを減らすことはきわめて難しい。今後、世界的に老齢人口が増えると予想されるのだから、それはなおさらだろう。国家は、戦争国家から福祉国家へと変貌し、国債(公債)発行の要因が短期的な戦費から、恒常的に必要な社会保障費へと変化している。
そのような状況下でCOVID-19のような緊急事態が生じると、国は国債を発行する。したがって、国債の発行額はなかなか減らない。しかし、経済が成長しないなら、その返済は著しく困難になる。そういう事態が発生しないと、誰が断言できるのだろうか。
成長の世界システムの終わり
オランダやイギリス、そして世界中の国々が国債(公債)を発行できたのは、持続的経済成長を前提としていたからである。国債は次世代に負担を負わせるといわれることもあるが、経済成長があれば次世代の負担は少なくなる。そして彼らは、さらに次世代へと負担を転嫁する。その次の世代も負担を転嫁していけばいい。経済が成長する限りは。
日本の経済成長は人口増大よりも技術革新の寄与が大きかったという説もあるが、技術革新による経済成長は、増大する人口に支えられていたとはいえないか。今後、そう遠くない将来に人口が減少するなら、技術革新による経済成長がどの程度期待できるのだろうか。地球の資源問題を考えるなら、世界の人口増はどこかでストップし、やがて人口減少へと至るだろう。それでも、持続的経済成長を期待することができるのだろうか。
最近の人口増が急激すぎることは、多くの人が知ることであろう。太平洋戦争期に、「1億玉砕」と喧伝されたが、日本で生まれた日本人は私の記憶では7,000万人であり、残りの人々は植民地の人々(ないしは植民地生まれの日本人を祖先としない人々)であった。それから80年間ほどで、日本人は5,000万人も増えた。少子化の問題が取り沙汰される昨今だが、戦後、日本人の数はこれほどに増えたのである。
拡大を基調とし、持続的経済成長を前提とする「近代世界システム」は、終焉を迎えつつある。それは、すぐにというわけではなくても、あまり遠くない将来におこるのではないか。そのとき、われわれは持続的経済成長を前提としない新しい経済システムの誕生を目にすることになる。そうなったとき、われわれは国債を発行できなくなるかもしれない。
『戦争と財政の世界史: 成長の世界システムが終わるとき』は、そのような可能性を示唆した書物なのである。 

 

●小渕優子氏 マスコミが踊った9年ぶり2回目の「幹事長するする詐欺」 9/13
岸田文雄首相(66)は、9月13日に内閣改造と党役員人事を実施した。
注目の的になっていたのが小渕優子衆院議員(49)の“新ポスト”だ。新聞やテレビの事前報道では、しきりに「幹事長起用説」が流されたものの、結局、就任したのは党4役とはいえ幹事長よりは「軽い」ポストである選対委員長だった。
自民党担当記者が話す。
「じつは、9年前にも同じようなことがあったのです。そのときとそっくりだなと思いましたね」
2014年9月3日、当時の安倍晋三首相が内閣改造と党役員人事をおこない、当時40歳だった小渕氏が経済産業相に抜擢された。小渕氏にとっては、2008年の麻生太郎内閣での少子化担当相以来、2回目の入閣となったのだが――。
たしかに当時の報道を見ると、今回と同じく新聞などが相次いで「小渕優子幹事長」誕生の可能性を報じているのだ。
《小渕氏の処遇をめぐっては一時、幹事長起用説も流れた》(2014年7月19日・産経新聞)
《統一地方選、衆院選向けに党四役への抜てきが取り沙汰されるのは小渕優子元少子化担当相だ。幹事長に就任すれば女性初となる》(2014年8月26日・下野新聞)
《安倍首相が9月3日に行う内閣改造・自民党役員人事では、首相が目玉人事として検討している小渕優子・元少子化相の幹事長起用が実現できるかどうかが焦点だ》(2014年9月1日、東京読売新聞)
自民党関係者が話す。
「政治家としての力量という点では、2014年当時、まともに大臣を務められる自民党女性議員は、小池百合子氏と野田聖子氏の2人しかいませんでした。それだけ自民党は人材難だったんです。にも関わらず、“小渕優子幹事長”という人事情報がまことしやかに流されたのは、いまだ力量不足だった小渕氏を世間に大きく見せるための“仕掛け”だったと聞いています」
だが結局、小渕氏は経産相就任の直後に、自身の政治資金規正法違反を「週刊新潮」に報じられ、2カ月ともたずに辞任した。
そして、今回も流された「幹事長起用説」について、前出の自民党担当記者はこう話す。
「小渕氏はすでに当選8回。今年50歳になるということで、それだけを見れば幹事長になってもおかしくはないのですが、“ドリル優子”のイメージが悪すぎる。
2019年に自民党群馬県連会長に就任し、ようやく表に出て来始めましたが、要職の経験がまだまだ足りていない。しかし、一部では彼女を将来の総裁候補として期待する声も出ている中で、今回またも『幹事長起用説』が流されたのは、改造人事に乗じて前回以上の“大物感”を演出するための仕掛けだったと見ています。
まあ、9年前に比べたら、今回はやや現実味がありましたけどね」
政治部デスクは、小渕選対委員長誕生の裏側について、こう言う。
「小渕氏の起用は今回の改造人事の目玉です。岸田総理は、故・青木幹雄さんから生前に直接『小渕さんを頼む』と言われたことを明かしています。
青木氏が死去した際に弔問に訪れた自宅でも、同席した森喜朗氏から『(青木氏の)遺志を生かしてくれ』と言われたそうです」
9月13日の党4役の就任会見では、過去の不祥事を問われて、涙を流した小渕氏。
「官邸は早い段階から、小渕氏に対して『閣内での起用は難しい』という認識でした。“ドリル問題”の説明責任を果たしていないとの声は多く、国会答弁を強いられる閣僚として『人前に出すのは難しい』との考えです。
もうひとつ、小渕選対委員長の人事には、岸田総理の“重大な意向”が秘められています。次の総裁選でライバルになると目される茂木幹事長をけん制することです。
幹事長は選挙での『公認権』を握っていることで絶大な力を振るえますが、選挙については今後、小渕氏を通じて官邸からの指示を出すことで、茂木幹事長の好きなようにさせたくないのでしょう。
総理周辺に聞くと、総理は“11月解散”を視野に入れはじめました。小渕氏は地方での街頭演説には定評があり、選対委員長として、全国をまわらせることで“客寄せパンダ”にする狙いも込められていると思います」(同前)
前出の自民党関係者も「解散総選挙は近い」とし、こう続ける。
「10月中旬に臨時国会が召集されますが、早ければ10月末から11月頭にかけて、岸田さんは衆議院を解散する可能性が大きい。理由は2つ。新閣僚に何らかの問題が発覚しないうちにやりたい。もうひとつは、躍進が予想される日本維新の会に準備期間をできるだけ与えたくないということ」
ハリボテを大きく見せようとする人間にロクなやつはいないけれど――。
●「女性政治家として海外にも発言し信頼を得る努力を」上川陽子氏が外相に 9/13
9月13日の内閣改造で衆院静岡1区選出の上川陽子議員(70)が外務大臣として入閣しました。20年ぶりに誕生した女性の外務大臣。上川さんが選ばれた理由とは?
上川陽子衆議院議員「上川でございます。お世話になります」
上川さんは13日午後、東京の議員会館で総理官邸からの連絡を受けました。
上川陽子衆議院議員「伺います。よろしくお願いいたします。では、いまから官邸に行ってまいります」
外務大臣に任命され、総理官邸へと向かいました。
上川さんは、2000年の衆議院選挙で初当選し、現在7期目。2007年、第1次安倍改造内閣で内閣府特命担当大臣に任命され、当選3回で初入閣しました。
2014年には法務大臣に任命され、再犯防止策の取り組みを学ぶため、静岡刑務所を視察しました。
上川陽子法務大臣(当時)「鏡を磨いて、磨いて、磨いて、磨いて、慎重にも慎重な検討を重ねた上で、死刑執行命令を発したものでございます」
2度目の法務大臣を務めていた2018年7月、地下鉄サリン事件などオウム真理教の一連の犯行に関わったとして、教祖だった麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚ら13人の死刑執行を命じました。法務大臣を3度務め、着実にキャリアを積んでいきました。
松野博一官房長官「外務大臣、上川陽子」
今回務める外務大臣は、女性議員としては歴代3人目で20年ぶりです。
上川陽子衆議院議員「国のため、世界に向けてしっかりと発信し、日本の存在を高めていくことができるように少しでも前進する」
今回の内閣改造で岸田総理は、上川さんをはじめ、女性の積極的な起用に踏み切りました。岸田総理は、高市早苗経済安全保障担当大臣の留任を決めたほか、こども政策担当大臣に加藤鮎子衆議院議員、復興大臣に土屋品子衆議院議員、地方創生担当大臣に自見英子参議院議員を初入閣させ、女性閣僚は現在の2人から5人に大幅に増えることになりました。
TBS・後藤俊広政治部長は5人の中でも「上川さんを外務大臣に任命したことが1番のサプライズだった」と話します。
TBSテレビ 後藤俊広政治部長「失敗の類がない非常に手堅いタイプの政治家、ベテランの女性議員であるということで、今回の目玉候補になるだろうなという予想はあったんですが、そのポストが外務大臣ということは想定しづらかったのは確かです。岸田さんが外交を進める上での地ならしをどんどん進めてもらうという積極的な役割を期待しているんじゃないかと思います」
岸田総理は、政権の骨格は維持しつつ、女性の活躍を世界にアピールしたい考えです。地元選出の議員が外務大臣になったことについて、静岡市の難波市長は…。
静岡市 難波喬司市長「上川先生のような難題から逃げない姿勢と温かい心、温かいまなざしを持った政治家が外務大臣として活躍されることは本当に素晴らしいことだと思います。大いに期待しています」
上川陽子衆議院議員「外交の舞台では、日本の国益とともに、世界の平和に日本がどこまで貢献できるか。女性の政治家という形で海外にも発言をし、信頼を得ていくための努力をしていきたい」
ロシアによるウクライナ侵略など課題が山積する外交問題…上川外務大臣の手腕が問われます。
●維新 「汚染水、汚染魚と堂々と口に出す政党、政治家は猛省を」 9/13
日本維新の会の馬場伸幸代表(58)が13日、国会内で会見し、岸田文雄首相の内閣改造と自民党役員人事について「総裁選対策内閣。派閥の順送りであるとか、非常に隅々まで配慮した、目配りした布陣になっている」と述べた。
12日の島根県内での会見では、内閣改造について「適材適所の布陣を期待している」と話した馬場氏。新内閣発足に「すべてがそうとは言いませんけれども、かなり派閥順送り。年齢重視、期数重視な部分も見受けられますので、そういった評価ができるレベルではない」とした。
馬場氏は、岸田首相が外交を通じて東京電力福島第1原発の処理水海洋放出について説明していることに「度重なる国際会議の場において、世界中に説明を行っているというのことがG20でも功を奏した。中国も処理水についてはG20の場では言及ができなかったということがそれを示している」と評価した。
一方で「国内の政治家とか政党が、科学的な見地に基づかない汚染水であるとか汚染魚であるとか、堂々と口に出して発信をしているというのは非常に残念。何を目的にそういうことをされているのか全く理解できませんが、そういった政党、政治家の皆さん方には猛省を促したい」と批判した。
次期衆院選広島6区に共産党公認で立候補予定だった元広島県福山市議の女性が、X(旧ツイッター)で「汚染魚」と不適切投稿し、同党が公認を取り下げたことに触れた馬場氏は「IAEAが処理水放出にGOサインを出しているわけですから、その水について汚染水であるとか、汚染魚という表現は非常に遺憾」と話した。
共産党の小池晃書記局長は11日の会見で「汚染水」という表現は続けるとしたが、馬場氏は「汚染魚という発言をされた立候補予定者の擁立をやめたわけですから、この際、汚染水という言い方も辞められたほうが国民からの理解は得られるのではないか」とした。
●拉致被害者家族 「日本の平和を考え、声を上げて」 拉致問題担当相は留任 9/13
13日の内閣改造で、松野博一氏が官房長官に留任し、引き続き拉致問題担当相も兼務することが決まった。北朝鮮による拉致被害者の有本恵子さん(63)=拉致当時(23)=の父、明弘さん(95)は、拉致問題が解決に向かわないことについて、いらだちをあらわに。「政治家である限り、現在の世界秩序の維持や将来の日本の平和を考え、声を上げてほしい」と述べ、北朝鮮としっかりと向き合う覚悟を要求した。
●組閣日にも野党の虎党アレ$S待ち 維新は道頓堀ダイブ自重呼びかけ 9/13
岸田文雄首相の内閣改造と自民党役員人事を受け、野党各党は13日、国会内で会見などを行ったが、プロ野球で阪神の18年ぶりのセ・リーグ優勝が間近に迫っていることもあり、虎党で知られる日本維新の会の馬場伸幸代表(58)や社民党の福島瑞穂党首(67)はアレ≠ノ興味津々だった。
馬場氏は、記者団から阪神の優勝が近いことについて問われ「あまり政治家がプロ野球の話をするのはよくないと先輩から教えられてきまして…公の場であまり野球の話はしないようにしておりましたが、大の阪神ファンであります」と説明。「今年はもう、かなりの確率でアレ≠するいうことは間違いないと思っております。ここ数日以内にアレ≠するように期待をしたい」と笑顔で話した。
21年ぶりのセ制覇、日本一になった1985年(昭和60)当時、大阪でコックをしていたという馬場氏は「歓喜ぶりというんですか…私も仕事を終えてからなんば(大阪の繁華街)に繰り出しまして、大騒ぎしたのを覚えています」と振り返った。大阪の中小企業の倒産件数が、ここ数カ月増加しているとして「識者によると、1000億円近い経済効果があるのではないかという風に言われている。そういった皆さんの力になれば非常にいいなと考えている」と景気浮揚を期待した。
馬場氏は「大阪の皆さんにおかれては、ハメを外さないように、度を超えたことをやらないようにお願いをしたい。あの川は非常に危ない川ですからケガをしたり、命を落とす可能性もありますので、事故につながる危険な行動については控えてほしい」と、道頓堀川へのダイブ自重を呼びかけた。
福島氏は定例会見後に「大学時代から周りに阪神ファンが多く、社会党、社民党の阪神ファンの大筆頭は土井たか子さんだった。甲子園で一緒に街頭演説をしたことがある。判官びいきの社民党、社会党に阪神ファンはめちゃくちゃ多い。政治は変えられる。野球のアレ≠熾マえられる」と阪神愛を語った。
2005年の優勝もよく覚えているといい「周りはみんなすごく喜んだ。政権交代もそれから。やっぱり1強≠ヘ良くない。金の力で何でもやれるといったらそれは違う」と、猛虎を政治の世界に投影させる。「もちろんみんなの力ですが、岡田監督の力量も大きい。うれしいです。頑張ってください」とアレ≠フ瞬間を心待ちにしていた。 
●女性初入閣が3人とも「世襲」、5人入閣は「最多タイ」…改造内閣の人事 9/13
岸田文雄首相が13日に実施した内閣改造で、女性閣僚は首相を含む20人のうち5人となり、過去最多に並んだ。改造前の2人から大幅に引き上げることで女性活躍に取り組む姿勢をアピールする狙いがあるが、識者は「女性の顔が一時的に利用されることがないように」とくぎを刺す。一方、初入閣の3人全員がいわゆる「世襲」議員で、女性議員が少ない上に世襲率が高い自民党の現状も浮き彫りになった。
今回入閣した女性閣僚は上川陽子外相(70)、土屋品子復興相(71)、自見英子地方創生担当相(47)、高市早苗経済安全保障担当相(62)、加藤鮎子こども政策担当相(44)の5人。衆院当選8回の土屋氏、同3回の加藤氏、参院2回の自見氏が初入閣となった。
改造前の女性閣僚が2人だけだったことには、自民党内外から「女性をもっと起用すべきだ」との声が上がっていた。世界経済フォーラムが今年6月に発表した23年のジェンダーギャップ指数では、日本の政治分野は146カ国中138位と、経済や教育など他分野に比べて特に低い。
上川氏は13日、記者団に対し、こうした指標を例に挙げて「女性の政治分野の活躍が極めて低いのは日本の課題だ」と強調。閣僚の女性比率が今回、25%まで上がったことについては「数値目標としては3割以上が一つの大きな国際標準。女性の政治家として対外的にもしっかり発言し、信頼を得るための努力をしていきたい」と語った。
女性閣僚5人は、2001年4月の第1次小泉内閣発足時と14年9月の第2次安倍改造内閣発足時と並ぶ過去最多タイだ。
「自民党が女性人材を育ててこなかった」
これに対し、お茶の水女子大の申h栄シンキヨン教授(政治学)は「世界では男女同数内閣の国も増えている。いまだに01年の小泉内閣の記録を超えられないのは、自民党が女性人材を育ててこなかった結果だ」とみる。野党からも「驚くべき数字ではないし、もっと増やせば良かった。適材適所かどうかは問われるだろう」(立憲民主党の岡田克也幹事長)との声が上がる。
自民党は女性国会議員比率が11.8%(6月時点)に留まり、今後10年間で30%まで引き上げることを目標に掲げたばかりだ。
岸田首相は13日、内閣改造後の記者会見で、5人の女性閣僚を登用したことについて「適材適所だと思っている。経済、社会、外交・安全保障、この3つの柱を中心に政策を進めていくために、ご活躍いただける方を選んだ」と述べた。
求められるのは、イメージを覆す「結果」
また、初入閣の3人がいずれも、父親が国政で要職を担った世襲議員である点にも注目が集まっている。
加藤氏は、官房長官や自民党幹事長などを歴任した故・加藤紘一氏の三女。自見氏の父は自見庄三郎・元金融担当相、土屋氏の父は参院議長や埼玉県知事を務めた故・土屋義彦氏だ。交流サイト(SNS)上では「女性活躍ではなく世襲活躍」などと皮肉る向きもあり、3人にはこうしたイメージを覆すような「結果」も求められる。
申教授は「自民党は男女問わず世襲議員の比率が高い上、そもそも女性議員の母数が少ない。初起用の女性閣僚は若い世襲議員になる傾向がある」と指摘。その上で「岸田首相が女性閣僚を増やしたことは、トップリーダーの重要なメッセージになる。女性の顔が政権刷新や選挙対策のために一次的に利用されることなく、自民党の体質を改めるための持続的な努力の一環となることを期待したい」と話した。
●旧統一教会問題はうやむや…「接点」公表議員を次々起用 9/13
岸田文雄首相(自民党総裁)は13日、第2次岸田再改造内閣を発足させた。新閣僚では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令請求の検討など、一連の問題を所管する文部科学相に、教団側と接点のあった盛山正仁氏(69)を充てた。同日決定した党役員人事でも、教団側との接点を認めた萩生田光一政調会長(60)を再任。教団と党所属国会議員に関する問題をあいまいにした形でスタートする。
旧統一教会を巡っては、昨年9月に党が公表した調査結果で、教団側と何らかの関わりがあった国会議員が180人に上っている。このうち、会合に出席してあいさつや講演をしたなどとして、125人の実名が公表された。
今回就任した閣僚や党役員などでは、盛山、萩生田両氏のほか、木原稔防衛相(54)や伊藤信太郎環境相(70)、村井英樹(43)、森屋宏(66)両官房副長官、平井卓也党広報本部長(65)の計7人が実名公表の対象だった。
首相は13日の会見で「過去の関係いかんにかかわらず、現在は当該団体との関係を一切有していないことを前提に任命した」と強調。教団への対応に関し「しっかりした結論を出すべく、最終の努力を進める。宗教法人審議会の意見を伺いながら、法に基づき最終的に判断する」と話した。
ただ、岸田政権が旧統一教会と党国会議員を巡る問題に厳しい態度で臨んでいるとは言い難い。教団側との接点が相次いで発覚し、昨年10月に経済再生担当相を事実上更迭された山際大志郎衆院議員や、教団トップを「マザームーン」とたたえたとして批判された山本朋広衆院議員は、次期衆院選の公認候補に内定している。
立憲民主党の岡田克也幹事長は13日、記者団に「旧統一教会の問題はこれから本格的なバトルが政府との間で始まる。それに耐えられる内閣なのかが問われる」と指摘。共産党の小池晃書記局長も、盛山氏の文科相起用について「(解散命令請求の検討などで)手心を加えることが絶対にあってはならない」と訴えた。
●女性閣僚5人、最多タイ 11人初入閣、平均63.5歳―第2次岸田再改造内閣 9/13
13日発足の第2次岸田再改造内閣では、女性の積極登用が目立った。閣僚19人のうち、初入閣3人を含む5人が女性。2022年8月の前回改造時の2人から大幅に増えた。これまで最多の第1次小泉内閣(01年4月)、第2次安倍改造内閣(14年9月)に並んだ。
今回初入閣したのは11人で、多くは自民党の各派が推した「入閣待機組」。過半数を入れ替えて刷新感を出す一方、政権の要である松野博一官房長官や鈴木俊一財務相ら6人が留任した。安定感に定評のある上川陽子外相と新藤義孝経済再生担当相の閣僚経験者2人が再入閣した。民間からの登用はなかった。
派閥別の人数は、前回改造時から大きく変わらず、最大勢力の安倍派と第2派閥の麻生派が最多の4人、第3派閥の茂木派が3人で続いた。前回3人だった総裁派閥の岸田派は1減の2人で、二階派や無派閥と並んだ。谷垣グループは1人、森山派からの起用は前回に続きなかった。
参院からは武見敬三厚生労働相と松村祥史国家公安委員長、自見英子地方創生担当相の3人が入った。
岸田文雄首相を含む平均年齢は63.5歳で、前回改造時の62.7歳から0.8歳上がった。最年長は武見氏、土屋品子復興相、公明党の斉藤鉄夫国土交通相の71歳。最年少は44歳の加藤鮎子こども政策担当相で、子育ての現役世代として「異次元の少子化対策」を担う。
衆院の当選回数は首相と同じ10回の鈴木、斉藤両氏が最多。最少は加藤氏で、3回での抜てきとなった。 

 

●まるで民間企業?日本維新の会“政党らしくない”プロモーションの裏側に迫る 9/12
「堅苦しい」「難しい」といったイメージを持たれがちな政治の世界。実際、政治や政治家を遠い存在のように感じている人も少なくないことでしょう。
そんな中、国政政党「日本維新の会」は、政治をもっと身近に感じてもらおうと、YouTubeチャンネルの活用や、タレントを起用した対談企画、ビジネスセミナーへの登壇など、多彩な手法でプロモーションに取り組んでいます。その広報活動は、まさに民間企業さながら。
今回は、そんな日本維新の会を統括する藤田文武幹事長と、広報分野で指揮を執る柳ヶ瀬裕文総務会長を突撃取材。政党プロモーションのキーマンを直撃し、“政党らしくない”プロモーションの裏側について話を伺いました。
Profile
藤田文武さん / 1980年、大阪府寝屋川市生まれ。筑波大学体育専門学校群卒業後、オーストラリア、ニュージーランド留学を経て、スポーツ関連のベンチャー企業へ。役員として経営全般に携わった後、独立起業。スポーツ・健康・医療・介護・福祉・教育・ITの分野で事業を展開。2019年4月、衆議院議員補欠選挙に初当選し、2021年10月の衆議院議員総選挙で2期目の当選。2021年11月、日本維新の会 幹事長に就任。
柳ヶ瀬裕文さん / 1974年11月8日、東京都大田区生まれ。海城高等学校を経て、早稲田大学卒業。筑波大学大学院人間総合科学研究科・博士前期課程在学中。(株)ジェイアール東日本企画で7年間にわたり勤務し、参議院議員公設第一秘書となる。その後、2007年に大田区議会議員にトップ当選。2009年には、東京都議会議員に初当選を果たし、3期10年務める。2019年、参議院議員選挙で比例当選。2021年11月、日本維新の会 総務会長に就任。
政治の世界で、本音を伝える。常識を覆すプロモーションに込める想い
日本維新の会がプロモーションに注力し始めたのは、2021年11月に執行部が刷新されたことに端を発します。若くして幹事長と総務会長にそれぞれ抜擢された藤田幹事長と柳ヶ瀬総務会長は、これまでの常識を覆すプロモーションに取り組む方針を打ち出しました。
当時、大阪以外の地域ではまだまだ認知が広がっていませんでした。選挙応援で全国を回ると、「日本維新の会って、大阪の党でしょ」といったような声をよく耳にしたものです。
私たちは政策にこだわり、それらが必ず日本をより良くすると信じています。だからこそ、プロモーションに力を入れて私たちのほうから国民の皆さまに近づくことで、まずは日本維新の会について知っていただきたいと考えました。
これまでのプロモーション活動は概ね国政選挙に合わせた限定的なものでしたが、藤田幹事長主導のもと、その前例を取っ払って予算を大胆に割き、継続的なプロモーションの実施を決定。民間の広告会社で勤務していた経験を持つ柳ヶ瀬総務会長が、チームを率いることになりました。
「やれることは全部やろう」という意気込みでプロモーションに臨んでいます。
意思決定が極めて早く、チャレンジングな取り組みに前向きなのは、日本維新の会ならではです。
プロモーションに正解はありませんので、トライ&エラーを続けていかなければなりません。
「民間では当たり前にやっていることを私たちも積極的に取り入れていこう」というのが基本的なスタンスです。
幅広い年代に日本維新の会を知ってもらうため、民間と同様、あらゆるチャンネルを駆使している日本維新の会。ただ、試行錯誤を重ねながらも、共通して課している“ルール”があると柳ヶ瀬総務会長はいいます。
戦略として“生感”や“ざらつき”を強く意識しています。従来の政党プロモーションは、綺麗に包んで見せるのが常套手段でした。しかし、国民の皆さまは見透かしていますし、それに飽きています。
私たちは多少いびつだったとしても、なるべくありのままを届けることを心がけています。そのほうが、より身近に感じていただけるのではないかと考えているからです。
藤田幹事長も「建て前が横行しがちな政治の世界で、本音を伝えるカウンターカルチャーを大切にしたい」と力を込めました。
都度反省もある? 失敗を恐れず王道かつ斬新な手法に挑戦
既存の政党プロモーションの枠にとらわれず、多角的に情報を発信しているという藤田幹事長と柳ヶ瀬総務会長。ここからは、具体的なプロモーション事例について、どのような意図で展開されているのか、ご紹介しましょう。
これまでの政党CMと同じようなものは作りたくありませんでした。広告会社に勤めていた経験から思うのは、「CMは見る人の興味を引かなければいけない」ということ。
ちょうどコロナ禍が終息しつつあるタイミングだったので、「社会は変わろうとしているのに政治はいつまでも変わらない」という国民の皆さまのモヤモヤをストレートに表現し、そのうえで「維新はやる」とメッセージを伝えました。
特にマスメディアを活用したプロモーションに関しては、国政選挙の時期に集中させるのが政界では通例でした。地方選挙では、他党の露出が減る傾向にあるため、多くの人に見てもらいやすくなるチャンスが生まれます。
私たちは今年の春の統一地方選挙に背水の陣で臨んでいたので、この好機に国政選挙並みの予算をかけ、全国での認知拡大を目指しました。
統一地方選挙後の効果検証の結果、閲覧数は主要政党内で群を抜いていたとのこと。その事実に確かな手応えを感じているそうです。
予算をかけて広告を出稿していましたが、それ以上の反響をいただけたのは、WebCMの内容が政治の世界では目新しく、多くの人に刺さったからではないかと自負しています。
藤田幹事長の発案で、民間企業の採用活動のように候補者募集に重きを置くことになりました。この国会議員候補者募集ムービーは、その一環で制作したものです。
「政治家として生まれた人はいない。条件は、ただ変えたいという想いだけ」とのメッセージで、多様なバックグランドを抱えた人材を募る私たちの姿勢を伝えています。
「ただ変えたい」と立ち上がった馬場代表と吉村共同代表のヒューマンストーリーに共感していただける人に立候補してもらいたい。そんな想いで作りました。
政策や政治性はもちろん、どんな人が政治に携わっているのかを知ってもらう必要があると考えました。
20代への認知不足が課題でしたので、若い方々にアプローチする狙いで番組を作りました。
ゲストの皆さまには「若者を代表して、疑問や不安を率直にぶつけてください」とお願いしていましたが、たまに吉村共同代表が困った表情を見せたりするのが“生感”があっておもしろかったように思います。
「オープンであること」を心がけているのが日本維新の会の特徴です。
こうしてプロモーションの裏側を公開したり、質問がなくなるまで記者会見を続けたりしているのも、正直に本音を伝えることで信頼していただきたいからに他なりません。
ベンチャー企業での勤務経験があり、自身でも事業を展開してきた藤田幹事長のキャラクターは、ビジネスパーソンとの親和性が高いのではないかと考えました。
ビジネス分野のオピニオンリーダーに私たちが民間感覚を持った政党であることを伝えるため、異例ではありましたが、藤田幹事長に登壇をお願いしたのです。
政治の世界は何事も遅れているのが実情です。しかし、私たちは最先端のスキルやテクノロジーをどんどん取り入れようとしています。
日本維新の会は民間企業に近いカルチャーや風土を持ち、民間のノウハウを計画的に取り入れながら成長してきています。その過程を包み隠さずに伝えて理解してもらうのは、やはり信頼していただくうえで非常に価値があることだと思います。
その他、馬場代表が飲食店の大将に扮するYouTubeトーク番組「馬場食堂」も好評だそうです。同番組の評判は海を渡り、アメリカ・ニューヨークを視察した際に「馬場食堂、見たよ」と声をかけられたというほど。好意的に受け止められている様子に笑みがこぼれました。
これまでの手法では届かなかった層にまでリーチできている実感はあります。
王道と斬新の匙加減は難しく、都度反省はしていますが、チャレンジを後押してくれるので、失敗を恐れずにチーム一丸となって取り組めています。
私たちは近い将来、責任政党になることを視野に入れています。
これからも明確な戦略に則り、王道でありながらも斬新な情報発信に挑戦していきます。
人材発掘でも民間感覚を追求! さらなるプロモーションで、信頼される政治を取り戻す!
スピード感を持ち、次々に新しいプロモーションを仕掛ける日本維新の会。その姿はまるで、民間企業さながら。藤田幹事長は、民間感覚の重要性を強調します。
政治家が決める法律や条例の影響を最も受けるのは民間の方々です。その政治家に民間感覚が欠如していたら、社会は大変なことになってしまうでしょう。それに、成長する組織というのは、どれだけ他業種・他分野からアイデアやノウハウを吸収できるかが鍵を握ると考えています。
政党も例外ではありません。まだまだ発展途上ではありますが、さまざまな面において民間感覚が当たり前の政党にしていきます。
民間感覚が当たり前の政党へ。その想いを「人材発掘」の面でも体現した際たる例が「エントリー説明会」です。
「政治家というキャリアを転職の選択肢に」というスローガンを掲げ、全国各地で開催しています。「政治家を職業にするのか」といったご批判はありますが、多種多様な人材が参画するのが本来の政治の姿です。
培ってきた知識やスキルを用いて公に奉仕したいと考える人たちの受け皿となるために門戸を開き、カジュアルな雰囲気で私たちと心合わせをする場所として機能しています。
最近では、未来を担う若者から政策へのアドバイスを求める「リバースメンター制度」をスタート。議員と意見交換し、政策提言する18歳〜34歳までのリバースメンターを募集しました。
40代の私と柳ヶ瀬総務会長は政界では若手に分類されますが、一般社会では若者といえる年齢ではありません。20代や30代の人たちの感覚とはズレているはずですので、本気でキャッチアップしないと、若者のための政治から遠ざかってしまうのではないかと危惧しています。
常に自分たちを客観視して、民間感覚を大切にしていきたいと思っています。
「エントリー説明会」や「リバースメンター制度」にも反映されているように、“政党らしくない”プロモーションにも共通している民間感覚を重視する姿勢。最後に、今後の展望についてお伺いしました。
社会構造や人々の価値観が変わっている今、政治が変化するためには政党が牽引しなければなりません。
私はプロモーションを担っていますので、変わろうとしていることを国民の皆さまにしっかりと伝え、信頼される政治を取り戻したいと考えています。
私たちは政策や政治姿勢に自信を持っていますが、それも伝わらなければ意味がありません。
さらにプロモーションに力を注ぎ、日本維新の会へ期待を抱いていただけるよう、政治家に対する信頼感につなげていきます。
●維新・馬場代表は民主主義の基本をわきまえていない 政治家として致命的 9/12
7月に、ネットテレビで、日本維新の会の馬場伸幸代表が、「共産党はなくなった方がいい」と発言した。抗議を受けたが、「政治家として信念、理念を持って発言している」として、謝罪や撤回には応じなかった。その際に、「(共産党は)破防法に基づく調査対象団体、政府が危険な政党と見ている」と付け加えた。
私は、この発言に接した時に、言葉を選ばずに言えば、「知性の欠如」だと思った。
まず、「共産主義」を標榜する暴力革命(ロシア=1917年と中国=1949年)しか知らなかった日本国が1952年に破壊活動防止法を制定したのは正当であった。しかし、その後70年以上、暴力革命の兆候もなかった日本共産党に今、前述のような批判を向けることは、知的に不誠実であろう。
さらに、それ以上に、今回の馬場発言は、日本国憲法が保障する民主主義の意味を理解していない点で、政治家として致命的だと言わざるを得ない。
わが国は国民主権国家である(憲法1条)。人間は皆、先天的に個性的で、正確には人間の数だけ異なった意見が存在する。だから、全ての人に「等しく」(14条)思想・良心の自由(19条)と表現の自由と結社の自由(21条)と参政権(15条)が保障されている。その上で、自由な討論と選挙を経て政治的決定と変更を重ねて漸進して行く仕組みが、民主主義である。
そのような日本の政治の中で、公党の代表が、他党に対して、「なくなった方がいい」と言い放って恥じず、それを自分の「信念、理念」だと開き直る。この政治家は「信念」「理念」の意味を知らないのではないか?
あれは、最初の発言直後に「不用意で言い過ぎでした。撤回して謝罪します」と言っておけば済んだ話である。
●神宮外苑再開発の「スクラップ&ビルド」は時代遅れ 9/12
「再開発では、CO2排出削減に非常に逆行するようなことが行われているのです。都知事が今の段階で切り替えることには、歴史的な意味があるのではないかと思います」
神宮外苑再開発をめぐり、420名の建築や都市計画、造園、環境や経済の専門家からなる有志団体が9月11日、施行認可の撤回を求める要請書を東京都の小池百合子都知事宛に再提出した。
要請書では、環境影響評価審議会の柳憲一郎会長に対して、環境アセスメントの再審査も求めている。
専門家有志は、3月8日にも同様の要請書を都知事、都議会議長、環境影響評価審議会会長に提出している。
しかし、9月11日に東京都庁で記者会見した有志代表で元日本大学教授の糸長浩司氏によると、これにまでに要請書に対する回答はない。
糸長氏らは要請書を再提出して、専門家や市民の意見に耳を傾けるよう改めて小池都知事に求めた。
専門家有志が指摘する9つの問題点
専門家有志が要請書で指摘しているのは、再開発を巡る次の9つの問題点だ。
・緑地の一部が破壊される
・風致地区制度をないがしろにした計画である
・歴史的価値のある建築物が失われる
・都市防災拠点が縮小する
・公園まちづくり制度を誤用している
・都市公園区域に超高層ビルが建設される
・環境影響評価の進め方に問題がある
・膨大なCO2が排出される
このうち、環境影響評価の進め方については、日本イコモス国内委員会が2023年1月に事業者の提供した環境影響評価書には「誤りや虚偽がある」と指摘し、再審査を求めていた。
これに対し、審議会で事業者が説明をする場が設けられたが、問題を指摘した日本イコモスの出席は認められず、専門家から「事業者の説明や審議会の進め方に問題がある」などの声があがっていた。
糸長氏は「審議会は事業者が出した評価書を止める、もしくは再度提出させることができたにもかかわらずしてこなかった。都知事も別の専門家を入れて事業者とディスカッションする場を設けることができるのにしなかった。その結果、疑義を提示していたイコモスの同席もなく事業者の一方的な説明になってしまった」と記者会見で批判した。
「スクラップ&ビルド型」の問題点
糸長氏は、CO2排出の観点から、今回の再開発が「スクラップ&ビルド型」であることが問題だとも語った。
再開発では、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えて建て替えるほか、伊藤忠商事本社ビルも、今の2倍となる190メートルの高層ビルに建て替える。
しかしスクラップ&ビルドだと、建物を建てる時だけではなく、壊す時にもCO2が排出される。
糸長氏は、その解体時のCO2排出量は環境影響評価書に書かれていないと述べる。
「こういったやり方は時代遅れです。東京都は脱炭素に取り組むと言っており、再開発にかかるすべてのCO2排出量を計算しなければいけない。しかも再開発で緑の量も減るので、CO2吸収量も減ることになります」
「再開発では、CO2排出削減に非常に逆行するようなことが行われているのです。都知事が今の段階で切り替えることには、歴史的な意味があるのではないかと思います」
新建築家技術者集団会員の若山徹氏も「本当に神宮外苑に超高層ビルはいるのか」と疑問を投げかけた。
「ここは本来、建物の高さを制限し、自然環境を守るために風致地区(良好な自然的景観)に指定された地域です。そこで再開発をやるということが、根本的におかしい」
「その歴史的な経緯を踏まえれば、施設は改修リニューアルを中心に考えた方がいいのではないかと思います」
千葉商科大学学長の原科幸彦氏は「公共空間を、企業の利益だけに使うという考えが、そもそも間違っている。みんなが100年かかって残した土地を使わせるというのは、経営者の倫理にもとる」 と述べた。
専門家有志が3月8日に要請書を提出した後も、1年以上にわたり見直しを求める署名活動やデモが続いている。
坂本龍一さんや村上春樹さんら著名人も反対を表明し、サザンオールスターズの桑田佳祐さんは、9月18日リリースの新曲「Relay〜杜の詩(リレー〜モリノウタ)」が、神宮外苑再開発をテーマにした曲だとラジオ番組で明かした。
さらに、世界的な学会「国際影響評価学会(IAIA)」日本支部が6月に停止を勧告したほか、ユネスコの諮問機関である国際イコモスも9月に「遺産危機警告(ヘリテージアラート)」を出した。
糸長氏は「市民や専門家の熱い思いがうねっている中で、都知事は相変わらず業者任せで、自分たちのやっていることは間違いないという主張をしており、討論の場を一切開こうとしない。(討論の)場を広く設けることが、政治家、事業の最終決定責任者としての役割ではないのか」と述べた。
事業者は、再開発に対する市民からの質問に対しプロジェクトサイトにQ&Aのページを設けて、回答している。
糸長氏は、東京都や事業者は疑問にきちんと回答しようという姿勢があるならば、こういったページだけではなく、専門家や市民も交えたディスカッションの場を設定してほしいと求めた。
●小泉進次郎氏は「アホ」か「天才」か、処理水の安全性をサーフィンでアピール 9/12
《今日は福島県南相馬市の坂下海岸で地元の子どもたちとサーフィンをしました》
9月3日、自民党の小泉進次郎元環境相が福島県を訪れ、地元の子どもたちとともにサーフィンを楽しんだ(冒頭は小泉氏のインスタグラムより)。その狙い、理由は……。
「8月22日、日本政府は東京電力福島第一原発にたまる“処理水”の放出開始を決定。24日より放出が始まりました。中国政府は処理水を“核汚染水”と呼んで放出に反対。日本産の水産物の輸入を全面的に停止しました」(政治担当記者)
その後、中国の日本人学校に石や卵が投げ込まれる事件なども発生。そんな“処理水は危険”という風評に対しての小泉流の応援が今回の福島県訪問だった。
SNSでは称賛の声が
小泉氏はサーフィンを楽しむ姿に加え、中国が輸入を停止している日本産の魚(福島県常磐沖で取れたヒラメ)を味わい、《#三陸常磐の海の幸》《#魚を食べよう》というハッシュタグをつけて投稿。安全性をアピールしている。
《パフォーマンスだと言われても構いません》
小泉氏はインスタグラムでそう言い切った。SNSでは彼の今回の行動に対して称賛の声が数多く上がっている。
《スーツ又は作業着を着て遠くから見ているだけの議員よりも、体を張ってアピールしているのは良い事だと思う》
《進次郎氏、サーフィンだけでここまで局面変えられるの天才過ぎるだろ!》
否定の声も承知の上
元総理大臣を父に持ち、“小泉ジュニア”として鳴り物入りで政界入り。女性人気も高かったが、近年彼の発言は“小泉構文”として揶揄される対象に。中身がなかったり、同じことを繰り返したり、当たり前のことをさも自分だけがたどり着けた答えかのように説明する小泉氏の姿に、“アホ”“頭が空っぽ”という評価をする人は少なくなかった。しかし、今回の行動で久しぶりに称賛を集めた。彼はアホなのか、天才なのか?
「実際の政治的な評価や実績は別として、SNSを含めたメディア発信はほかの政治家と比較して秀でていると思います。今回の行動は“福島の海を訪れて安全性をアピールする行動力がすごい”、“サーフィンという誰もが思いつかない発想”と評価する人がいる一方、小泉構文などから“アホがサーフィンしてる”と否定的な人もいる。小泉さんは肯定的な評価だけでなく、否定的な声も出ることをわかってやっていると思います」(ITジャーナリスト)
良いことも悪いこともすぐに広まってしまうSNS社会。
「処理水についていくら科学的な説明をしても民衆の耳目は悲しいことにサーフィン以上には集まらない。メディアの取り上げ方も同様。小泉氏のサーフィンは大してうまくないのでどこか間抜けな姿に見えました。肯定的な人には楽しい絵面に見えますし、アンチはよりバカにする。SNS社会は肯定と否定という“両輪”があるほうが、どちらか一方だけより拡散されやすい。そもそも何をやっても炎上もせず、話題にもならない議員なんて山ほどいるわけですから」(同・ITジャーナリスト)
小泉氏の好きな言葉は「意志あるところに道はある」。拡散を狙う意志のもとにメディア・SNSという道を使うのが誰よりも上手なのかもしれない。もちろん政治家としての評価はそれだけではいけないのだが。
●まるで米国のパシリ、「日本の外交」劣化の行く末 9/12
インドでG20首脳会議が行われている最中の9月9日、林外相がウクライナを初訪問した。日本政府のウクライナ政府への支持を確認したという以外に特に目新しいものは見当たらないが、そもそも外交的にどのような意義がある訪問だったのか、あえて検討してみたい。
G20のタイミングで訪問したワケ
まずはそのタイミングだ。G20首脳会議がインドで開催されている中で行われた訪問だった。岸田首相のG20参加と同時期に林外相が中東と東欧を歴訪しており、外交の観点から非常に積極的である。確かに国会閉会中の9月は外交日程をこなすにはいいタイミングである。これから国連総会も始まる。
しかし、あえてこのタイミングでウクライナを訪問したのは、それ以外に外交的に重要な意味がある。それは、G20サミットにウクライナが招待されなかったことに関係している。
日本が議長国を務めるG7サミットにはゼレンスキー大統領が電撃的に現れて話題となったのに対して、G20議長国のインドはウクライナを招待しなかった。G20は、ロシアや中国のほか、ブラジルや南アフリカ、トルコなど、ウクライナ侵攻に関して中立的な国々がメンバー国となっており、西側色の強いG7とは色合いが異なっている。
G7での議論では、ウクライナ支援を強化するためにグローバルサウスを取り込むことが重要だと言われてきたわけだが、まさにグローバルサウスが集合しているのが、このG20なのだ。
だからこそ、ウクライナ支援政策(すなわちロシアの孤立化)をグローバルサウスに広げるためにも、ウクライナのG20への招待が期待されていたわけだが、その期待が見事に裏切られた形となった。
つまり、このタイミングでのウクライナ訪問は、G20サミットにウクライナが招待されなかったことを補うという隠れた意味があった。G7議長国として、日本がその役割を担わざるを得なかったということだ。
アメリカに追随した格好
しかし、もちろん日本の責任感だけではなかろう。直前の9月6日、7日には、アメリカのブリンケン国務長官がやはりウクライナを訪問して、劣化ウラン弾の供与を含む10億ドル規模の新たな支援を約束している。
林外相のウクライナ訪問は、ブリンケン国務長官と歩調を合わせた形だ。そこまでアメリカに追随する必要があるのかと思ってしまうが、それが岸田外交の「基本方針」ということなのだろう。
林外相の訪問のおかげで、ウクライナ側のメンツは何とか保たれたかと思いきや、G20サミットの共同宣言がウクライナは気に入らなかったようで、「誇るべきものは何もない」とコメントした。
自らがメンバーでもないG20の首脳宣言に対して水を差すとは非常に挑発的だが、さすがは強気のウクライナ、というほかない。ウクライナからしてみれば、ロシアを名指しで非難しないような宣言には何の意味もない。
反対に、欧米と中露の対立による分断の深まりを回避し、なんとか宣言をまとめようと尽力したインドにしてみれば、部外者から水をかけられて不愉快だったろうが、「ロシアの侵略から世界を守っている」ウクライナには、そんな国際的儀礼にかまってはいられない。
ウクライナの反転攻勢は、西側諸国からの莫大な支援にもかかわらず、目に見える結果を出せていないのだが、ウクライナは、軍事支援が足りないからだとして、さらなる支援を世界に要求している。9月7日に訪日したウクライナのステファンチュク最高会議議長は、何を思ったか日本に対してパトリオットシステムや砲弾の供与を求めることまでしている。
そんな中、G20に招待もされず、首脳宣言でも明示的なウクライナ支持を獲得できなかったのである。ウクライナが望んでいるような「戦場での勝利」が得られない中で、国際政治での支持も得られないとなれば、そろそろ停戦の潮時だ、という声が高まることになるだろう。ゼレンスキー大統領が恐れているのは、まさにこの状況なのだ。
影響力を持ち始めているG20
ちなみにG20のGDPはEUを除いても世界の約8割を占め、G7の2倍弱となっている。経済規模だけで見れば、G7よりもG20のほうが、はるかに比重が重い。しかも、中国やロシアがおり、政治的な意味合いでも、G7より包括的で重要性が高いと言える。つまり、G7よりもG20での合意形成のほうが、国際政治における実態を表現していると言っていい。
もちろん、当事者であるロシアや、その支援者である中国がいることから、首脳宣言での表現が弱められたのだ、という言い方もできる。しかし、そのこと自体が、中露が国際政治において決して無視できない大きな影響力を持っていることを示しているのだ。
確かにウクライナの現状には同情の余地がある。NATOは事実上のロシアに対する軍事同盟であるが、ウクライナはメンバーにも入れてもらえていないにもかかわらず、その最前線に立たされてしまっている。
その代償として、NATO諸国がこの状況に対して責任を負っているのは明らかであり、何らかの形でウクライナを支援しなければならないのはよく理解できることだ。
しかし、ひるがえって我が国日本はどうだろうか。さすがに同情心で外交政策を決定しているわけではあるまい。では、法の支配に基づく国際秩序を擁護するためだとでも言うのだろうか。どう転んでも日本にそんな大それたことをもくろむ国力はない。
口でどれだけきれいごとを主張しても、結局のところ国連常任理事国ですらなく、むしろ「旧敵国」にすぎないというのが、国際政治における我が国の立場なのだ。
日本は第2次大戦で無条件降伏して以来、韓国、台湾、フィリピンと並んで、アメリカの極東政策の前線基地となってきた。つまり、中露を大陸に閉じ込めておくための防波堤である。
ヨーロッパ方面の矢面にも立たされている?
それが今やヨーロッパ方面でも矢面に立たされようとしているのだろうか。まさかとは思うが、アメリカの対露、対中包囲網の前線に立たされようとしている、などということがあるとすれば、空恐ろしい話ではないだろうか。
このシナリオはただのうがちすぎの妄想とは言い切れない。なにしろ、常識的に考えれば、ブリンケン長官に続いてウクライナを訪問すべきだったのは、むしろNATOのヨーロッパ諸国の外務相だったはずであるところ、意表をついて世界の東端から日本の外務相がはるばるやってきているのだ。
それにつけても心配なのは日本である。ただただ、対米追従の戦略なき外交を続けていれば、自らの生き残りをかけた選択肢をますます少なくしてしまうだろう。G7はGDPでもG20の約半分、国の数では半分以下だ。EUどころかNATOの中でも対露姿勢に温度差がある。いわんや、BRICSやグローバルサウスの国々をや、だ。
日本政府には、G7以外にも数多くの国々があり、それぞれの立場があるという当たり前のことに目を向け、多様な意見に耳を傾けて、射程の長い外交を進めてもらいたい。
●応じないと非国民? 岸田政権が旗を振る「国民運動」に違和感 9/12
東京電力福島第1原発事故に伴う処理水の放出開始後、中国の禁輸の影響で、日本産水産物の売り上げ減が懸念されている。国内の消費拡大に躍起になるのが岸田政権。閣僚が試食し、「食べて応援」をアピールするだけではない。市井の人々を取り込む「国民運動」も進める。これには釈然としない思いが湧く。水産業界の苦境を招いたのは岸田政権なのに、国民が駆り出されるのか。応じないと非国民扱いされないか。
自衛隊で食材利用、自ら試食、自民党ではホタテカレー
「政府全体として日本産水産物の国内消費拡大に取り組んでいきたいと思っており、わが国の水産物の消費拡大にご協力願いたい」
野村哲郎農相は8日の記者会見でこう述べ、省庁の食堂で日本産ホタテなどを使用したメニューを追加するよう閣議で協力を求めたと明らかにした。
浜田靖一防衛相も同日に記者会見。全国の自衛隊の駐屯地や基地で提供する食事に日本産水産物を積極活用する考えを示した。
消費拡大に躍起になるのは他の面々もだ。
岸田文雄首相や西村康稔経済産業相、渡辺博道復興相らは東京・豊洲市場や被災地を訪れるなどし、主に福島県産の魚を試食して安全性をアピール。経産省福島復興推進グループ総合調整室の担当者は「日本産水産物の消費を全国に広げる活動の一つ。首相や大臣が発信することに意味がある」と強調する。
小泉進次郎元環境相は、福島県南相馬市の海岸で子どもたちとサーフィンをした後、地元で水揚げされた魚を試食と報じられた。5日にあった自民党の水産部会・水産総合調査会合同会議では、北海道産ホタテを使ったカレーが昼食として提供されている。
さらにCMなど予定「現時点で具体的な費用をはじくのは難しい」
そもそも岸田政権は、海洋放出前から国内消費拡大の方策をまとめていた。
8月22日の関係閣僚会議では行動計画を改定。テレビCMやネット動画などを活用したPR、学校現場で文部科学省の「放射線副読本」を使った理解醸成、インフルエンサーや著名人、日本サーフィン連盟に協力を依頼しての情報発信などを盛り込む。
それぞれの費用が気になるところだが、経産省資源エネルギー庁原子力発電所事故収束対応室の担当者は「各省庁が今後こんなことをやるという計画段階の方針。予算から逆算しているものでもない。現時点で具体的な費用をはじくのは難しい」と話す。
対策1番目が「国民運動」…担当者は「あくまで協力要請」と説明
本日の昼食は、ALPS処理水放出後の8月25日に福島県いわき市で水揚げされたスズキを使った塩焼き御膳です。福島県産のあおさ入り味噌汁もいつも食べています。漁業者の皆様の思い、誇り、自信が詰まった美味しい三陸常磐ものを噛みしめました。中国の嫌がらせ電話などに負けないよう応援していきます。…
水産物の輸出額のうち、中国と香港の合計で4割を占める。年額でいえば1600億円。海洋放出に伴う全面禁輸の打撃は甚大だ。そんな中で岸田政権は今月4日、「『水産業を守る』政策パッケージ」を発表。その最初の項目には、国内消費拡大に向けた「国民運動」の展開が掲げられた。
国民運動とは果たして何を意味するのか。
経産省福島復興推進グループ総合調整室の担当者は、ふるさと納税の返礼メニューの活用などを挙げた上で「国内での消費拡大の機運を高め、その流れを全国に広めるのが狙い」と説明する。「特定の国への輸出に依存していた部分が大きい日本産水産物を国内で消費し、水産業を守る取り組みの一環。あくまで協力要請」と述べる。
国民運動については、5日の自民党部会でも盛り上げるべきだとの声が上がった。出席した議員の一人は「風評被害が起きないように皆で正しく理解しようとする方策だ」と語る。
別の議員は「日本は正しいことをしていると世界にアピールする活動の一つだ」と説明する。
「海洋放出も『食べて応援』されるのも勝手に決められたこと」
水産業の苦境を考えれば、日本産水産物を食べて応援したい気持ちが生まれるのも分かるが、政府が強く旗を振り、国民を駆り出すのは釈然としない。
福島原発事故の問題を取材しているフリーライターの吉田千亜さんは「海洋放出も、『食べて応援』されるのも、福島の人たちからすれば勝手に決められたこと。理不尽だという思いが募っている。でも政府のキャンペーンに疑問を呈せば『非国民』『風評加害者』とみなされるので、被害者は黙るしかない」と物言えぬ福島の空気を憂える。
日本政府は今月5日、日本の水産関係者を支援する経費として本年度の予備費から207億円を支出すると閣議決定した。風評被害対策300億円、漁業継続支援500億円の基金と合わせ計1007億円の対策となる。
被害も負担も国民が引き受ける? 識者「東京電力に求償すべき」
大島堅一・龍谷大教授(環境経済学)は「中国の禁輸で、全国の漁業者が被害を受け、その支援を税金でまかなうことになる。さらに国民全体で被害も負担も引き受けるというのは筋違い」と指摘し、事業者の責任を定める原子力損害賠償法に基づき、国は事故を起こした東電に求償すべきだと述べる。
さらに「環境の影響を受ける他国などとの協議は国際原子力機関(IAEA)の国際安全基準でも定めている」と述べ、7月に公表された包括報告書でもその旨が記されていると解説。「中国の反発を『想定外』としながら、『食べて応援』を呼びかけるのは不誠実だ」と話す。
日本の魚を食べて中国に勝つ?
協議の乏しさが露呈する中、複数の全国紙の今月6、7日付朝刊では「保守派の論客」とされるジャーナリスト、桜井よしこさんが理事長を務める公益財団法人の意見広告が掲載された。
「日本の魚を食べて中国に勝とう」
そんな大見出しに続き、中国の禁輸を「科学的根拠の一切ないひどい言いがかり」「不条理に屈しない」と強調。「安全で美味。沢山食べて、栄養をつけて、明るい笑顔で中国に打ち勝つ。早速今日からでも始めましょう」と訴えた。
「『日本スゴイ』のディストピア」の著書がある編集者、早川タダノリさんは「『食べて応援』の行き着くところはこんな地点」と受け止める。中国の理解を得られなかった外交の失政を「被害を受けるかわいそうな日本」にすり替え、中国に勝つという言葉で排外主義とナショナリズムをあおっていると懸念する。
「意見を調整できないまま、陳腐なキャンペーンで社会を分断」
そもそも物価高で、国内の消費は厳しい。総務省が発表した7月の家計調査によると、1世帯(2人以上)当たりの消費支出は28万1736円。物価変動の影響を除く実質で前年同月を5.0%下回った。支出の3割ほどを占める「食料」の支出も切り詰められ、魚介類は前年同月比11.9%減と落ち込んだ。「国内で魚の消費を増やすのは現実的でない。勝者なんてどこにもいない」(早川さん)
食の思想を研究している藤原辰史・京都大准教授(歴史学)は「食べる行為は個人の感情を揺り動かすとともに、社会とつながるパブリックな行為」と語る。
今回の処理水放出と中国の禁輸も「食の問題」と捉えられる。「社会的な文脈が深く関わる問題。食べることは個人の自由として済ませられる問題でもないし、科学的に安全だから了解、というのも単純すぎる」
国内外の関係者間で討議をして決めるべき重大な課題だったが「意見を調整できないまま、これまでの原発政策と同様に、陳腐なキャンペーンと税金の投入で社会を分断した」と嘆く。
「処理水放出は解決済みの問題ではないと認識した上で、放出する日本の側が、意見を交わす国際的な場を設定することが大切だ」
デスクメモ
関係者の理解を得ずに話が進む。唐突に国民運動が始まる。政府の非は棚上げされたまま、運動の目的として「他国に勝つ」が掲げられる。私たちは何に巻き込まれているのか。わけが分からぬ状況。こうして戦時動員されるのか。まだ歯止めはかけられる。国民が良識を示さねば。
●改造人事、総裁選を意識 実力者取り込み、刷新感カギ―岸田政権 9/12
岸田文雄首相が本格調整に入った内閣改造・自民党役員人事には、党内各派の実力者を取り込んだ「総主流派」体制を構築することで、来年秋の党総裁選を乗り切ろうとの思惑がにじむ。ただ、党内対策に偏れば新味に乏しい人事となりかねず、政権浮揚へ刷新感をどう打ち出すかが焦点だ。
首相は11日朝、外遊先から帰国後、萩生田光一政調会長をひそかに公邸へ呼び込んだ。13日の人事について協議したとみられる。萩生田氏は森山裕選対委員長とともに要職での起用が有力となっており、永田町には「萩生田官房長官」説が駆け巡った。
首相は午後に党本部で再び萩生田氏と会ったほか、森山氏や続投させる方向の茂木敏充幹事長、麻生太郎副総裁とも相次ぎ会談。幹事長や官房長官といった「骨格の人事は固まったのか」との記者団の問いかけには応じなかった。
萩生田氏は最大派閥・安倍派で空席が続く会長ポストの有力候補と目される。茂木、森山両氏はそれぞれ派閥トップ。麻生派領袖(りょうしゅう)の麻生氏は首相の後見役を自任する。政権の要所に有力者をつなぎ留めようとの思惑は明らかだ。
政権内では、2021年の前回総裁選で首相と争った河野太郎デジタル相と高市早苗経済安全保障担当相の留任案も浮上。総裁選出馬への意欲を隠さない西村康稔経済産業相の要職起用も有力で、石破茂元幹事長についても閣内での処遇が取り沙汰される。政府関係者は首相の人事方針について、「総裁選に向け、ライバルに力を蓄えさせないことを意識しているのだろう」と指摘する。
党内には、低迷する内閣支持率を再浮上させるには「若手、女性を大胆に登用し、新たな改革志向を打ち出すのが最も大事だ」(党関係者)との声も上がる。首相は政権基盤の安定と人事の浮揚効果のバランスをどう取るかで苦慮しそうだ。
●財務省のしょうもない計算ミス≠ニ動きが鈍い岸田政権 9/12
日本の消費の悪化が続いている。原因は庶民のおカネの不足だ。総務省が5日に発表した7月の家計調査では、実質消費は5カ月連続の減少だ。昨年11月以降、実質消費が増加したのは2月だけで、他はすべてマイナスである。しかも前月に比べて悪化傾向を強めている。消費の低迷といっていい。
7月の猛暑日地点の数は、気象庁が統計を取り始めてから2番目に多かった。もちろん8月に入ってもその勢いは止まらず、まさに異常気象といってよい。そのためエアコンや夏物衣料、そして光熱費が消費増加に寄与した。他方で、自宅のメンテナンスやリフォームへの支出が大きく減少した。
また魚介・肉類など食品は10カ月連続の減少で、しかも消費減少への寄与度も大きい。建築資材の高騰もあり、リフォーム代などは高止まりし、契約数がかなり減少している。構造的な人手不足も深刻で、それが人件費を引き上げてもいる。また食料価格も相変わらず高いままで、前年同月比で8%以上にもなる。
いろいろなモノが高くて、庶民の暮らしを直撃している。そのため買いたくても買えない状況だ。だが、エアコンを使わないと生命にかかわるので、電気代がかさんでいる。これも所得を圧迫して、ちょっとしたぜいたくもできない。
岸田文雄政権の動きは鈍い。生活必需品の価格が高くなっても積極的な消費支援策を打ち出していない。例えば、ガソリン代はレギュラーが1リットル当たり200円を超えた地域もあった。だが、岸田首相はガソリン価格を抑制するための補助金の延期をなかなか決めなかった。理由は財務省の「しょうもない計算」がある。
財務省のしょうもない計算とはこういう理屈だ。モノの価格が高くなると、そのため消費が低下する。消費が低下するので、モノを売る方は価格を下げる。これが経済全体で始まれば物価は自然と低下していく、という理屈だ。
こんな財務省のしょうもない計算は見事に外れている。物価はなかなか下がらず、高止まりしたままだ。物価が高いので消費が低迷している。生活が苦しいからだ。ここが岸田首相や財務省にはわからない。
消費低迷の特効薬はある。消費税減税だ。だが、これに対しても財務省やその影響にある政治家や専門家たちは反対している。理由はこれまたしょうもない理屈だ。消費減税を決めると国民が減税まで買い控えるというものだ。バカらしい。一時的な消費の減少を打ち消すだけで、それ以降は消費拡大が続くだろう。減税しないための屁理屈は大概にすべきだ。
●「吹っ切れた」岸田文雄、解散に向けて怒りの猛進…喧嘩師で勝負師? 9/12
内政では「新しい資本主義」とか「デジタル田園都市国家構想」など一度聞いただけでは分からないことを言う割に、国民生活に直結する懸案事項では、かなりの喧嘩師ぶりを発揮しています。特に、外交では福島のALPS処理水批判を世界的に展開していた中国の首相・李強さんをASEANの会場で発見すると敢然と声かけ。これを呼び水に中国を国際会議での公式会見の場で名指しで批判してしまいます。
いいぞ、俺たちの岸田。
漢・岸田文雄の真骨頂
思い返せば、「やる」となったら周囲の反対を押し切ってでもやろうとするのが岸田流とも言えます。さすがは東京大学二浪の男。悲運の横死を遂げてしまった安倍晋三さんの国葬を断行したのも、キーウ電撃訪問も、G7広島サミットでの各国首脳の原爆資料館立ち寄りも、「やる」となったらど真ん中を突っ切ろうとする御大将こそ漢・岸田文雄の真骨頂と言えます。
ネットでは岸田批判として「息を吐くように増税」と揶揄され、国民生活が厳しさを増す怨嗟の声が響き、岸田内閣の不支持率は50%を超えてしまっています。支持率こそ下げ止まりましたが、こんなんで夏に解散総選挙を打とうと真面目に検討していたのも事実なんですよ。正直やんなくて良かったですね。
ただ、実は岸田政権はなにひとつ増税はしていません。むしろ、経済対策でカネをばら撒こうとしていますね。
「海外にカネをばら撒いている」という批判も、蓋を開けてみればほぼ全額が円借款、すなわち開発援助の貸付であり、しかもその援助で潤うのは日本企業という仕組みになっています。批判者が考えるほど岸田さんは馬鹿ではない、ということになりましょうか。
岸田さんがその死を泣いて嘆いた安倍晋三さんが手がけたアベノミクスで、デフレ対策の名のもとに大胆な金融緩和を行って確かに雇用が生まれたのは事実です。しかしながら、結果的に長年の低金利で円安に誘導され、いまや「安い日本」が当たり前になってしまいました。
海外から観光客が押し寄せるのも、ガソリン代がリッター188円とか法外な値段になっているのも、電力代が上がり続けるのも単純に日本の国力が衰退したからというよりはゼロ金利によるデフレ脱却にこだわり過ぎたアベノミクスの副反応とも言えます。
さらに、1990年代から少子化対策をしないとまずいよねと言い続けてきたものの、ついに日本の人口は大きく減少するフェイズに入ってしまい、高齢者の割合が増えすぎて社会保険料が上がりまくっております。こりゃもう、どうにもならん。働いて納税する少ない若者の数で、大量の高齢者を養うなんて無理な話ですから、年収によっては、納税額よりも納める社会保険料のほうが高いという事態もあり得ます。
これをどうにかするための、旧民主党政権最後の野田佳彦さんと安倍晋三さんとの解散での合意が2012年「社会保障と税の一体改革」だったはずなんですけどね。あれからもう10年ですか、改革なかなか進まないまま。
やる気です、岸田さん。
そういう体たらくにした自民党政治が悪いのだから、いまの岸田政権が責任を取るべきというのも理屈ではそうなんですけど、岸田さん自身がなんか悪いことをしたわけでもないんですよね。公私混同が酷いかなぐらいかな。政府役職関係に身内・親族を使うのはやめたほうがいいですね。
あと、自民党女性局の子連れフランス視察旅行とか風力発電の口利きで競走馬なんてマジ最悪でしたからね。せっかく真面目に働いて他でポイント稼いでも、しょうもないスキャンダルで全部吐き出すのを繰り返しているのは残念なことです。
で、そんな岸田さん、ついに9月13日に内閣改造と、党役員人事に着手するよと言い始めました。おー。さらに、大型の経済対策を次の国会冒頭で議論するよって話になり、さらにさらに、長年の懸案だった統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の解散命令請求を10月中旬にはするよとまで言い始め、さらにさらにさらに、東京都では余計なことを言って公明党さんをブチ切れさせ東京での選挙協力関係の解消まで突き付けられたところから岸田さん自身の介入で元鞘に収めてもらっています。これはもう11月に選挙をやるための各種の布石としか言いようがありませんですよ。やる気です、岸田さん。
自民党内の議論でも、一部の自民党議員からは相変わらず統一教会の解散請求は見送るべきという議論がもっぱらで、その意を受けた統一教会も「岸田政権は解散請求は進めない」と踏んでいた節が強くありました。しかしながら、岸田政権が解散請求に踏み切ったのは、要するに統一教会から支援を受けて議員バッジをつけてる自民党議員もろとも落選していただいて結構という斬り捨てなのでしょう。
実際、夏に選挙するかどうかで騒いでいたときも、かなりはっきり統一教会から支持を強く受けていた議員は落選するであろう予測は出ていました。安倍さんを殺した事情でもあった統一教会に依存している議員は、自民党であってもけじめをつけろ、という。
その意味では、ちゃんとした政府広報というか、国民との対話が行われているならば、無い無いと言われていた岸田政権のテーマ性、メッセージ性は実はちゃんとあるわけです。無能とか検討使とかボロカスに言われがちな岸田さん、仕事はしっかりやっています。岸田さんの決断を支える官僚も頑張っています。
ただ口下手なのかアピール能力がないのか知りませんが、国民には岸田政権が自分ごととして対応してくれているという実感がないという評価が出ていて、これはもったいないなとも思うのです。
各種調査でも、岸田さんの人柄については支持者も不支持者も歴代自民党政権の中では評価されており、支持率が低くても「岸田さん自体は好き(嫌いではない)」なのです。調査が始まって以降、歴代の自民党総理、とりわけ森喜朗さんや麻生太郎さんの壮絶な嫌われぶりからすると、支持率がそこまで下がり切らない理由は岸田文雄という人格の高潔さと割と清潔感のあるイケメン中年だからだろうと思います。
自公政権は、いつの間にか中道左派的な政策を実現する存在に
他方で、安倍政権を支えた岩盤支持層的な保守層からは、かなり自民党は離脱されてしまっており、これらはテーマ性の塊みたいな日本維新の会に流れていってしまっています。今年4月の統一地方選挙でも東京では自民党は大敗と言っていい惨状になっており、得票予測でも右派は維新に流れ、都市部は立憲民主党に奪われる状況になると、せっかく岸田さんがやる気になっても完敗となりどっかと政権交代しなければならなくなるかもしれません。
保険として、ちょっと前まで何故か国民民主党との与党連立に含みを持たせる話が流通していましたが、そもそもが連合(労働組合)を支持母体とする国民民主党がたまたま政策協議で話の分かる玉木雄一郎さんが代表だからと言っていきなりご一緒するのは公明党さんも容認しなかろうと思います。
そういう話が出るのも、岸田文雄さん率いる自公政権は、いつの間にか中道左派的な政策を実現する存在となり、経済対策も経済的弱者に対してガソリン代や電気代、批判も多かった働き方改革の断行、果ては子ども養育費の扶助といった、大きい政府、高い負担で高い福祉・生活保障へと舵を切っているからに他なりません。総体的に支持率が立憲民主党や日本共産党が埋没するのも、実際に左派的な政策はおおむね自民党に先取りされてしまってやることが無くなっているからLGBT関連とか不同意性交罪のようなネタしか残されなくなっており、都市部の左翼票頼みになっていく局面になってきました。
逆に、日本維新の会が脅威になっているのは文字通り日本土着の新自由主義とも言うべき「働かざる者、喰うべからず」の精神で小さな政府、低負担、低福祉の政治軸を明確に打ち出し、社会保障とか支える役所とか全部予算切っちまえよという割り切った政策が、負担増が続く社会保険料で悩む勤労世帯のハートをつかんでいるとも言えるわけですよ。本来なら、自民党こそがそういうことを言って旧社会党から怒られるという旧55年体制を見てきた人たちからすると寂寥感すらある事態だとも言えるんですけどね。
岸田さんがとるべき手段は?
岸田さんが、このままの政策方針で日本全体をどうにかしよう、日本人全員を分け隔てなく良い生活を送れるようにするのだという路線であるならば、今回の解散総選挙以降の岸田さん最大の敵はこの「日本土着の保守思想である維新の会そのもの」になってきます。各種世論調査でも、実質的に野党第一党はもはや維新である一方、都市型選挙区では立憲はまだまだ強く、その両方から挟まれる自公政権が失う議席をどれだけ最小限にとどめられるのかが、解散に打って出る岸田文雄さんの担うべき責務と言えましょう。
働かない誰かを斬り捨てて活躍できる人たちにもっと配分しようという維新は活力を前面に出し、それに対抗するには岸田さんが国民全体で安心・安全な社会を作るための改革を断行しますよというしか方法はないんですよね。
その辺を上手く言葉にできて選挙に強かったのが安倍晋三さんの本質であったとするならば、その後継となる岸田さんがアベノミクスを反省し、統括する別の何かを打ち出さないとせっかく選挙になっても勝てないんじゃないの、岸田さんの気持ちは分かるけど選挙はやめようよってなるのではないかと思います。 

 

●内閣改造、高市早苗氏留任か SC本格整備、保守層の取り込み狙い… 9/11
岸田文雄首相が13日に行う内閣改造・自民党役員人事で、高市早苗経済安保担当相を留任させるとの見方が強まっている。高市氏は現在、安全保障上の機密を扱う人を認定する「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度の整備を担当しており、続投は不可欠との指摘があった。保守色の強い高市氏を留任させることで、LGBT法の法制化で離反した保守支持層の取り込みを画策する狙いもありそうだ。
岸田首相は11日朝、G20(20カ国・地域)首脳会議など一連の外交日程を終え、政府専用機で羽田空港に帰国した。自民党の麻生太郎副総裁や、茂木敏充幹事長、公明党の山口那津男代表らと会談しながら、11、12両日で人選作業を進める。
こうしたなか、政権内で中国などに毅然(きぜん)とした姿勢を示してきた高市氏の処遇が注目されている。
中国は科学的根拠もなく、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を批判し、日本産水産物の禁輸など、常軌を逸した「反日」対応をしている。
高市氏は先月29日、「外交ルートの抗議申し入れで仮に効果を発揮しない場合、(中国に)対抗措置を検討していく段階」と語り、G7(先進7カ国)各国との連携や、WTO(世界貿易機関)への提訴などを含めた対応策を明示した。
自民党ベテランは「高市氏の提案は、『遺憾砲』に終始する岸田政権の外交姿勢とは一線を画した。G7各国との方向性とも合致する」と評価する。
岸田首相は8月28日、高市氏を官邸に招き昼食を共にした。高市氏は「人事の話はなかった」と語ったが、前回の党総裁選で激突した両者の関係はどうなりそうか。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「発足当初は高かった岸田内閣の支持率の約3割は、安倍晋三元首相を支えた保守層だったと見ている。安倍氏亡きあと、保守層は高市氏を支持している。岸田首相は、高市氏を閣内に置くことで、保守支持層を留めておく狙いだ。次期総裁選を見据え、高市氏の動きを抑えることにもなる」と分析した。
●各党の支持率は NHK世論調査 9/11
各党の支持率です。
「自民党」が34.1%、「立憲民主党」が4.0%、「日本維新の会」が5.8%、「公明党」が2.2%、「共産党」が2.3%、「国民民主党」が1.9%、「れいわ新選組」が0.9%、「社民党」が0.4%、「政治家女子48党」が0.2%、「参政党」が1.0%、「特に支持している政党はない」が42.8%でした。
「自民党」の支持率は、先月から横ばいの34.1%で岸田内閣の発足後では、最も低い水準となっています。
一方「特に支持している政党はない」、いわゆる無党派層の割合は、岸田内閣発足後、初めて40%を超え42.8%に上っています。
また「立憲民主党」の支持率は4.0%で、「日本維新の会」の5.8%が上回りました。 
●日本は「戦う覚悟」を持てるのか 9/11
先日、自民党の麻生太郎副総裁が訪問先の台湾で講演し、台湾有事の際には台湾防衛のため防衛力を行使する考えを表明、賛否両論が渦巻いた。
講演で、麻生副総裁は、中国が台湾への軍事的な圧力を強めていることについて、「台湾海峡の平和と安定は、日本はもとより、国際社会の安定にとっても重要だ。その重要性は、世界各国の共通の認識になりつつある」と指摘した上で、「今ほど日本、台湾、アメリカをはじめとした有志の国々に非常に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時代はないのではないか。戦う覚悟だ。いざとなったら、台湾の防衛のために防衛力を使うという明確な意思を相手に伝えることが抑止力になる」と強調した。
講演の最後にも、「台湾の人たちの生活、幸せ、繁栄を維持するため、現状を守り抜く覚悟を蔡英文総統の後に総統になられる方にも持っていただき、同じ価値観を持つわれわれと一緒に戦っていただけることを心から期待する」と連帯を呼びかけた。
麻生副総裁が述べたとおり、日本には、台湾や米国などの有志国とともに、戦う覚悟〞が求められている。8月10日付「産経新聞」朝刊の「主張」(社説)を借りよう。
「戦争を防ぐには、戦う態勢と覚悟を伴う抑止力を相手に示さなければならないという逆説の実行が大切である―が安全保障の世界の常識といえる。/麻生氏は副総理兼財務相当時の令和3年7月にも「日米で台湾を防衛しなければならない」と語っている。「力の信奉者」である中国を自制させるには、日米台などが連携して抑止力を向上させ、同時に外交努力を尽くす必要がある。」
翌9日付の台湾大手紙「自由時報」は一面に「台湾海峡の安全を守る決意を示す」との見出しを掲げて、講演を紹介。加えて二面と三面にも関連記事を掲載した。麻生副総裁が、台湾でも人気の漫画「ワンピース」を取り上げ、「主人公のルフィは友達を裏切らない」と発言したことを、「日本は台湾を裏切らない意味だ」とも論評した。
果たして、そのとき、日本はルフィ〞になれるのだろうか。しっかり、台湾の期待に応えられるのだろうか。
不安材料には事欠かない。事実、在日本中国大使館は、「身の程知らずで、でたらめを言っている」とする報道官談話を発表。談話で「台湾は中国の台湾であり、台湾問題の解決は完全に中国の内政問題だ」と指摘。「もし日本の一部の人々が中国の内政問題と日本の安全保障を結びつけるならば、それは再び日本を誤った道に導くことになるだろう」と非難した。
中国当局の反発に加え、台湾メディアでも、中国寄りの「中国時報」は「戦争をあおっている」、「台湾への善意が感じられない」などと麻生講演を批判した。
日本国内でも、案の定、野党幹部らが記者会見で以下のとおり批判した。
立憲民主党の岡田幹事長「外交的に台湾有事にならないようにどうするかが、まず求められる。台湾有事になったとしても、アメリカは、はっきりと軍事介入するとは言っておらず、含みを持たせている。最終的に国民の命と暮らしを預かっているのは政治家なので、軽々に言う話ではない」
共産党の小池書記局長「『戦う覚悟』という発言は、極めて挑発的だ。麻生氏は、明確な意思を伝えることが抑止力になると言ったが、恐怖によって相手を思いとどまらせることは、軍事対軍事の悪循環を引き起こすものだ。日本に必要なのは、戦う覚悟ではなく、憲法9条に基づいて絶対に戦争を起こさせない覚悟だ」
野党だけではない。連立与党の公明党からも、同八月末、山口代表の中国訪問を控えていたこともあり、「中国を明らかに刺激している。本来なら避けて欲しかった発言だ」との党幹部発言が報じられた。
台湾有事は極東有事であり、日本有事ではない。私は昨年上梓した『ウクライナの教訓 反戦平和主義が日本を滅ぼす』で、そう述べた。「保守」陣営からの反発も招いたが、その一方、同書は「咢堂ブックオブザイヤー2022大賞」に選ばれた。
きちんと同書を読んでいただければ、避けられた誤解だったが、「台湾有事は極東有事であり、日本有事ではない」が、同時に、けっして台湾有事は他人事ではない。むしろ日本は当事国となる。その趣旨で「台湾有事は日本有事」と言っても許されるかもしれないが、それでは、日米間の「事前協議」問題や、中国による核恫喝のリスクを含めた重要な論点が雲散霧消してしまう(拙著参照)。私を批判するだけの「保守」陣営には、そのリスクが見えていない。
麻生副総裁が述べたとおり、「戦う覚悟」は必要である。だが、すでに現職総理でもなく、閣僚ですらない自民党副総裁が、そう講演しただけで内外から反発や批判が噴出するのだ。そのとき、本当に「戦う覚悟」を持てるのか。小谷哲男教授(明海大学)のX(旧ツイッター)投稿を借りよう。
「「戦う覚悟」発言、究極的には日本国民が持つべき覚悟を意味する。しかし、台湾有事に介入すれば東京を核攻撃すると言われてもその覚悟を持てるのか。日本が攻撃されてなくても、台湾海峡を渡る中国艦船を自衛隊の対艦ミサイルや潜水艦で攻撃する覚悟はあるのか。日本国内でまず議論すべき問題。」
●処理水「理解が一層広まった」 首相 中国との応酬に変化も 9/11
岸田首相は、まもなくインドから帰国する。
同行しているフジテレビ政治部・高橋洵記者の報告。
福島第1原発の処理水を海に放出して以降、初めての国際会議で岸田首相は、30近くの国々に日本の立場への理解を訴えた。
岸田首相「多くの国から、処理水放出のプロセスが安全で透明性の高いものであると。理解がいっそう広まったものと感じている」
岸田首相は、インドネシアで日本産水産物の輸入停止を行う、中国の李強首相との立ち話で、措置の撤廃を直接訴え、会議では「突出した対応だ」と名指しで批判した。
これに対し、中国は「責任ある方法で核汚染水を処理すべきだ」と厳しい主張で応じた。
しかし、続くインドのG20で李強首相は一転、日本批判や「汚染水」発言を控え、呼応する形で岸田首相も、中国の名指し批判は避けた。
中国の変化は、会議で日本への理解が広まる一方、中国への賛同はなく、孤立化を避けた中国が、いったんは主張を控えたともいえる。
ただし、今回は習近平国家主席が欠席し、日中首脳会談も実現せず、輸入停止の撤廃の実現に向けた駆け引きはこれからとなる。
●岸田首相 森山選対委員長を政権の要職で起用する方向で検討 9/11
岸田総理大臣は訪問先のインドから帰国し、13日行う内閣改造と自民党の役員人事に向けて調整を本格化させます。
これまでに自民党の森山選挙対策委員長を、政権の要職で起用する方向で検討を進めています。
G20サミットなどへの出席のため、インドを訪れていた岸田総理大臣は、一連の日程を終え、午前7時すぎ、政府専用機で羽田空港に帰国しました。
岸田総理大臣は10日夜、現地で行った記者会見で「関係の方々と調整を進め、早ければ13日に自民党の役員人事と閣僚人事を行うことを考えている」と述べ、13日、内閣改造と自民党の役員人事を行う意向を表明しました。
12日にかけて与党幹部らと会談するなど、調整を本格化させます。
岸田総理大臣は、自民党の麻生副総裁と茂木幹事長を留任させる方向で検討しているほか、森山選挙対策委員長も政権の要職で起用する方向で検討を進めています。
森山氏は、農林水産大臣や党の国会対策委員長などを務めた経験があり、与野党に幅広い人脈があることで知られています。
今回の人事では、政権の骨格をどの程度維持するかや、全体の規模、それに女性閣僚が増えるかどうかなどが焦点となります。
●処理水問題”中国がこうなることはわかっていた”対応策ゼロの岸田外交 9/11
元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏は「東京電力福島原発の処理水について中国がいちゃもんをつけてきた問題の発端は、早くから手を打たなかった岸田外交にある」と一喝する――。
原発処理水をめぐって、中国との情報戦が始まった
東京電力福島原発の処理水を巡って、問題は中国との情報戦の様相を見せ始めている。外務省資料から、これまでの経緯をまとめると以下のようになる。
8月24日、海洋放出が開始されると、中国外交部は、日本の海洋放出開始に対して「断固たる反対と強烈な非難を表明し、誤った行為の中止」を求める報道官談話を発出した。
同日、呉江浩(ご・こうこう)駐日中国大使から日本の岡野正敬外務事務次官にも同様の申し入れがあった。同日、中国海関総署(税関)は、日本からの水産物輸入の全面的な停止を発表した。その後、中国からの嫌がらせの電話が日本中の飲食店や役所に寄せられた。
放出するトリチウムの量だけを見れば、より危ないのはむしろ中国の原発の方だ
改めて言うまでもないが、日本が海洋に放出した処理水は、汚染水をALPS処理し、さらに海水で100倍以上に希釈したものだ。規制基準(6万ベクレル/L以下)を満たし、WHOの飲料水基準(1万ベクレル/L)を満たす、1500ベクレル/未満にまで濃度が下がったものである。規制基準の1/40、飲料水基準の1/7ということになる。
他方、中国の原発では、1年間に液体で、紅沿河原発は87兆ベクレル、寧徳原発は98兆ベクレル、陽江原発は107兆ベクレル、泰山第三原発は124兆ベクレルのトリチウムをそれぞれ海洋や河川等に放出している(出典:『(参考)世界の主要な原発におけるトリチウムの年間処分量』)
日本の福島では、「ALPS処理水」を海洋放出するにあたり、放出するトリチウムの年間の総量は、事故前の福島第一原発の放出管理値(年間22兆Bq)を下回るように設定されている。数字だけ見れば、むしろ危ないのは中国である。
トリチウムは、人体にも数十ベクレル、降り注ぐ雨にも220兆ベクレル/年、水道水にも1ベクレル/L含まれているものだ。ごく弱い放射線だが、体内に入っても蓄積されず、水と一緒に排出される。これらの点は、国際原子力機関(IAEA)の包括報告書でも、「人及び環境に対し、無視できるほどの放射線影響となる」と結論づけられている。
中国国民の9割が処理水放出を危険と感じていたが、岸田首相は不安払拭のための外交努力をしてこなかった
無視できるほど無害な処理水に対して、ヒステリックな反応をしている中国だが、これには伏線があった。まず、去年(2022年)3月に、東京大学の関谷直也准教授(災害情報論)が行った調査があり、この結果が読売新聞(2023年2月14日)に掲載されている。日本、韓国、中国、台湾、シンガポール、ロシア、ドイツ、フランス、英国、米国の計10か国・地域の大都市でインターネット利用者計3000人(20〜60歳代)を対象にしている。「その結果、『海洋放出が行われた場合、福島県産食品の安全性をどう思うか』との質問に対し、『とても危険だ』と『やや危険だ』との回答の合計が日本は36%だった。一方、残る9か国・地域はいずれも6割を超え、高い順から韓国93%、中国87%、ドイツ82%、フランス77%、台湾76%、米国74%と続いた」という結果が出たという。
つまり、中国では、9割に近い人たちが処理水放出後の福島県産品について危険だと感じていたのだ。そもそも、2021年4月13日には、関係閣僚会議で「処理水の処分は、福島第一原発の廃炉を進めるにあたって、避けては通れない課題だ。基準をはるかに上回る安全性を確保し、政府をあげて風評対策の徹底をすることを前提に、海洋放出が現実的と判断した」と述べ、海洋放出を決定しているのである。
その後、菅前首相は退陣し、岸田文雄首相へとバトンタッチした。2年近い在任中に、処理水放出に危険を感じる隣国の中国や韓国に対して、きちんと説明をする外交努力をしていたとは到底思えない。
習近平は処理水を「放射能汚染水」と表現してプロバガンダ
その象徴と思われるのが、2023年3月21日の、中国の習近平主席とロシアのプーチン大統領との首脳会談と共同声明だ。
当時は、ウクライナ問題に対する両国の立場の違いが浮き彫りになったが、この中で「日本に対しては、昨年発表した共同声明に続き福島第一原発の処理水問題を挙げ、海洋放出計画への深刻な懸念を表明。『日本は周辺国などの利害関係国や関係国際機関と十分な協議を行わなければならない』と強調した」(朝日新聞・3月22日)ことだ。声明では、処理水を「放射能汚染水」と表現している。
プーチン大統領が、これまでのところ福島の処理水について、大きな動きをしていないことを考えると、この声明を持ち出したのは、習近平主席本人ということになる。習近平主席が強い意志で、この日本への全面禁輸を仕掛けているのである。
岸田外交の失敗。中国包囲網を築きながら親中をアピールする滑稽さ
この動きにまったくの鈍感にしか動けなかったのは、岸田外交の圧倒的な失敗であろう。岸田首相は、この強いメッセージが理解できず、自分や外務大臣である林芳正氏が親中派であるという自負から、中国包囲網を続けていった。
サミットではヨーロッパ諸国が中国への配慮をにじませていることに歩調を合わせていたが、中国包囲網以外の何物でもないQUAD(日米印豪)を嬉々として開催し、その後、韓国大統領とアメリカを訪れ、日米韓の首脳会談を行ったのである。
中国やロシアは外交的メッセージを盲信することはない。実際に自分たちに対してどういう行動をとっているかで「冷たく判断」していくわけである。
ロシアが他の西側諸国と比較して日本に対して怒りを発していないのも、ウクライナに武器を送らず、期限切れしそうな自衛隊メシ、ヘルメット、必勝しゃもじ程度のものしか供与してない点だ。
逆に、中国が怒っているのは、いくら親中派の外務大臣がどうとりつくろうとしても、やっていることは中国を刺激することばかりだったということだ。
習近平が仕掛けてきた以上、処理水問題はしばらく長引く
もしも世界一狡猾で、賢かった安倍政権、安倍外交であれば、日米韓の会談のその足で、北京へ赴くことぐらいしたであろう。何もせず、習近平主席の怒りを察知することができなかったのだ。習近平主席は、これまで使えるものは何でも使ってきたし、表情には出さず静かに政敵を葬ってきた経歴がある。また中国の体制から考えて、習近平主席が自ら日本の処理水を問題視しているとなれば、周囲は完璧な忖度をし、その線に沿った情報しか習近平主席へあげなくなっている可能性がある。
今、岸田首相が、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に出席のためインドネシアを訪問していて、9月6日午後、ASEANプラス3(日中韓)首脳会議の開催前に、中国の李強(リーチアン)首相と短時間、接触したが、何の改善ももたらさらないであろう。
習近平主席が言い出した問題である以上、解決まで時間が長引くことは覚悟しなくてはいけない。
やはり、安倍首相のもとで、外務大臣をちょっとやっていったからといって、「外交の岸田」などと自負をはじめるような人物の外交がうまくいくことなど、期待してはいけなかったのだ。国難に際して、中国へ土下座外交を開始し、漁師にカネをばらまくだけの惨状には目を覆いたくなる。
日本には、いくつか外交オプションがあった。例えば、中国の全面禁輸に対抗して、こちらも禁輸する。WTOに提訴する。これらは、禁輸については中国側のさらなる対抗処置を恐れて、WTOについては時間がかかることから見送られている模様だが、押せば引くと思われればさらに押してくるというのが外交である。どうせ解決には時間がかかるのだから、日本は国家としての矜持を見せなくてはならないときだ。
●麻生氏に反対され断念 岸田首相の「茂木切り」〜得をしたのは麻生氏だけ 9/11
岸田文雄首相は9月の内閣改造・自民党役員人事で、茂木敏充幹事長を交代させるつもりでいたが、土壇場で麻生太郎副総裁に反対され、茂木氏を留任させることにしたーーマスコミ各社はおおむねそのような方向で報じている(FNN『幻となった「茂木はずし」 麻生氏進言で首相、葛藤の決断』)。
岸田首相はポスト岸田への意欲を隠さない茂木氏への警戒感を強め、両者の間にはすきま風が吹いていた。菅義偉前首相や二階俊博元幹事長と親密な公明党も茂木氏との関係はぎくしゃくし、東京では自公の信頼関係が「地に落ちた」(石井啓一・公明党幹事長)と言われるほど一時は悪化していた。
私も、岸田首相が茂木氏を交代させ、菅氏や二階氏に近い森山裕選挙対策委員長か、あるいは茂木派の次世代ホープである小渕優子元経済産業相を幹事長に据え、「茂木外し」を進める可能性は十分にあるとの見方を示してきた。
一方で、茂木氏を幹事長にねじ込んだ麻生太郎副総裁が茂木氏続投を強く主張していることから、茂木氏交代で麻生氏を説得できるかどうかが大きな焦点となるとも指摘してきた。
茂木氏を留任させるか交代させるかは、岸田首相が今後の政権運営で、麻生氏を引き続き最大の後ろ盾とするのか、菅氏や二階氏との連携に舵を切るのかを見定める最大のポイントだったのである。
これまでのマスコミ報道によると、結果は茂木氏留任に。つまり、岸田首相は麻生氏に軍配をあげた。つまりは麻生氏に茂木氏留任を迫られ、決然と振り切ることができなかったのである。
岸田首相は最終決断を下さすに外遊に飛び立った。帰国後に茂木氏と会談して最終決定する考えだが、首相不在の間に麻生氏主導で「茂木氏留任」の外堀は埋まっており、帰国後にひっくり返すのは至難の業だろう。
これにより、第二派閥・麻生派ー第三派閥・茂木派ー第四派閥・岸田派を主流派とする現体制は維持され、菅氏と二階氏は引き続き非主流派となる。最大派閥・安倍派の後継会長が決まらない状況に乗じて、岸田首相は安倍派を分断しながら、来年秋の自民党総裁選で過半数の支持を獲得する戦略を進めていくことになろう。
それでは、岸田首相はなぜ麻生氏に軍配をあげたのか(なぜ麻生氏を振り切れなかったのか)。
もちろん麻生氏は「岸田政権の生みの親」であるというのが大きな理由なのだが、麻生氏も高齢で影響力が低下しつつあり、麻生氏頼みで来年秋の総裁選を勝ち切れるのかという不安もあったことだろう。だからこそ、茂木氏交代を画策したのだ。
岸田首相が麻生氏を切れなかったのは、以下の理由があると私はみている。
1 麻生氏や茂木氏が窓口となって交渉してきた国民民主党との連立構想が浮上したこと。これは麻生氏らが自ら煽ったフシがあるが、それでも国民民主党の連立入り交渉を水面下で続けるとなれば、窓口役の茂木氏を幹事長から外しにくい。麻生氏や茂木氏はそれを狙って国民民主党との連立構想を流布し、外堀を埋めたとみられる。
2 公明党との関係が修復に向かったこと。これも茂木氏留任の環境を整えるため、麻生氏や茂木氏が公明党との関係修復に急いだ結果とみていい。
3 菅氏側近の秋元真利衆院議員が東京地検特捜部に再生エネルギー事業をめぐる受託収賄罪で逮捕されたこと。この事件は原発推進のための「国策捜査」との見方があるが、それに増して菅氏への政治的牽制と側面もある。麻生氏や茂木氏と検察東京の関係は定かでないが、内閣改造・党役員人事直前の強制捜査が麻生・茂木ラインに有利に働いたのは間違いない。
4 福島第一原発の海洋放出への対抗措置として中国が日本の水産物の全面禁輸に踏み切り、日本国内で反中感情が高まったこと。岸田首相は当初、中国との関係改善に向けて親中派の二階氏に訪中を打診したが、中国政府の対応が硬いうえ、国内で反中感情が高まったことを受けて、対中強行姿勢を示して支持率回復につなげる姿勢に転じた。麻生氏は台湾有事などを煽って対中強行姿勢を示してきた経緯があり、日中関係の悪化も麻生氏の追い風になったとみていい。
以上の理由に加え、私は、麻生氏が岸田首相に対し、土壇場で「来年秋の自民党総裁選で茂木氏が岸田首相を引きずり下ろして出馬することはない」と約束し、警戒感を解いたのではないかとみている。
これは岸田首相と麻生氏の二人だけの極秘やりとりでウラを取るのは難しいが、そのくらいの「約束」がなければ、岸田首相が茂木氏留任を受け入れるのは難しかったのではないか。
岸田首相は帰国後に茂木氏と会談して、来年秋の総裁選への対応を確認するつもりだろう。だがその場で茂木氏が「総裁選に出馬します」と伝えるとは思えず、「岸田首相を支えます」と言われたら切り捨てることはできまい。
政界の一寸先は闇である。岸田内閣の支持率がさらに低下すれば、茂木氏が「口約束」を破って来年秋の総裁選で岸田首相に対抗して名乗りをあげる展開もゼロとは言えない。そのときに「約束が違う」と言っても、後の祭りだ。
とはいえ、茂木氏は留任後、少なくとも当面は政権を支える姿勢をみせるだろうし、内閣支持率が回復すれば岸田首相に対抗して出馬するのは難しくなるのも事実である。その意味で政治家同士の「口約束」の効果はゼロとは言えない。
麻生氏は茂木幹事長の続投を強く主張していただけに、交代となればメンツが丸潰れである。それに増して政敵の菅氏や二階氏に近い森山氏が幹事長に就任すれば、麻生氏の影響力も大幅低下するところだった。茂木氏留任は絶対に譲れない一線だった。
それに比べ、首相の座を狙う茂木氏にとって留任が正しい選択だったかどうかはわからない。
茂木氏は来年秋の総裁選時には69歳になる。岸田内閣の支持率が回復すれば総裁選で「岸田続投」となり、茂木氏に首相の順番は回ってこなくなる可能性が高い。さりとて、岸田内閣の支持率が低下し、「岸田勇退」となれば、岸田政権失速の責任を幹事長として共有することになり、党内で「茂木支持」が広がるのは難しい。
どちらに転んでも、茨の道だ。
茂木氏は自らを幹事長に引き立てた麻生氏のメンツを守るために留任したことで、最後は自らの首相への道を狭めたーーそんな構図も十分に成り立つのである。 

 

●原発処理水問題で露呈した岸田政権の政治術不在 9/10 
岸田政権の原発処理水に関する説明は十分だったのか。中国に策謀の機会を与えたのは政治術不在ゆえだ。
はるか昔の学生時代、京極純一先生の政治学の講義で、政治の世界で紛争を処理するときには、「盗人にも三分の理」という心構えが必要という話を聞いた。不当な主張をしているように見える側にもそれなりの言い分があり、それを聞いたうえで妥協点を探るのが政治術だという意味だった。
いわゆる処理水の海洋放出をめぐる岸田政権の稚拙な対応を見て、このエピソードを思い出した。もちろん海洋放出に反対する人々は盗人のような不当なことをしているわけではなく、むしろ三分の理しかないのは政府の側であろう。
自国の原発事故に起因する放射性物質を含有する水を太平洋に流すなら、もっと肩身の狭そうな態度で国内関係者や各国に平身低頭してお願いしたうえでなければならない。中国がこの問題を政治的に利用していることは明らかだが、中国にそのような策謀の機会を与えたこと自体、岸田政権における政治術の不在の帰結である。
たまり続ける処理水対策としての海洋放出を国民や諸外国に支持してもらうには、それが唯一可能で安全な方法であること、または可能な選択肢の比較の結果、最善の方法であることを論証しなければならない。岸田政権はその義務を果たしたとは言いがたい。 ・・・ 
●日本の政治家、モロッコに哀悼のメッセージを送る 9/10
岸田文雄首相は、アズィーズ・アハヌーシュ・モロッコ首相に、1,000人以上の人々が死亡した壊滅的な地震に対する哀悼の意を表すメッセージを土曜日に送った。
「モロッコ王国の中部での地震災害で多くの貴重な命が失われ、多くの人々が影響を受けたことを深く嘆き悲しんでおります」と岸田首相は述べた。「亡くなられた方々に深く哀悼の意を表し、彼らのご家族に心からお悔やみ申し上げます。影響を受けた方々の速やかな回復と、影響を受けた地域の迅速な復興を心よりお祈り申し上げます」。
「また、現地のニーズに基づいて、日本は可能な限りの支援を提供する用意があることをお伝えしたいと思います」と、述べた。
林芳正外務大臣もモロッコのナースィル・ブリタ外務大相にメッセージを送った。「カイロでの私たちの会合の直後に、モロッコ王国の中部で地震災害が発生し、多くの貴重な命が失われ、多くの人々が影響を受けたことを深く嘆き悲しんでおります」。
「亡くなられた方々に深く哀悼の意を表し、彼らのご家族に心からお悔やみ申し上げます」。林大臣はまた、日本ができる限りの支援を提供する用意があり、復興に協力する用意があることも述べた。
●秋本衆院議員逮捕 政治とカネの徹底解明を 9/10
東京地検特捜部が秋本真利衆院議員=自民党を離党=を逮捕した。日本風力開発側から提供された総額6100万円の資金を巡る受託収賄容疑だ。「政治とカネ」は政治不信に直結する問題であり、疑惑を徹底究明すべきだ。
洋上風力は、再生可能エネルギー拡大の「切り札」として政府が位置付ける。石油燃料が高騰し続ける中、輸入に頼らざるを得ない日本にとって洋上風力への期待は大きい。政治家と業者の癒着が疑われれば、国民は再生エネルギー自体に懐疑的な感情を抱きかねない。
東京地検特捜部は8月4日に収賄容疑で東京・永田町の議員会館事務所を家宅捜索した。この1カ月あまりの捜査で立件できる材料がそろったとみたのだろう。
秋本容疑者は家宅捜索直後に外務政務官を辞任したが、政府の要職に就いていた政治家が収賄容疑の捜査対象となったこと自体、政府は深刻に受け止めるべきだ。
秋本容疑者は2012年に初当選した当時から脱原発を主張していた。17年8月に安倍内閣の国土交通政務官に就任し、同年秋には自民党内の再生可能エネルギー普及拡大議員連盟の事務局長となった。国会質問で洋上風力について質疑し、入札で事業者を選定する際の基準の見直しなどを訴えていた。
東京地検は、日本風力開発が事業参入に有利になるよう秋本容疑者に国会で質問するよう依頼し、秋本容疑者はその見返りに謝礼を受領したとみている。本格的な聴取はこれからだが、秋本容疑者が、資金提供を受けた特定の企業が入札で有利になるよう配慮して国会質問していたとすれば、公平性や透明性が求められる政治家として失格である。直ちに辞職すべきだ。
秋本容疑者に資金提供した日本風力開発側は贈賄容疑を認めているとされる。当初は資金は秋本容疑者と社長側が共同運営する馬主組合などに充てたものと主張し、賄賂性を否定していたという。
今年になり、2019年参院選広島選挙区の買収事件で東京地検特捜部の検事による供述誘導の疑いが浮上した。あくまで証拠に基づいて資金提供の背後にある構図の究明に徹してほしい。
再生エネルギーの開発促進は、脱炭素社会とエネルギーの自給率向上に向け避けては通れない重要課題だ。とりわけ洋上風力発電は周囲を海で囲まれている日本で本格的な普及が期待されている。
政府は18年に施行した再エネ海域利用法に基づき、対象海域の指定や事業者の選定を進めているが、透明性の確保は急務だ。
外務政務官を辞任はしたものの、秋本容疑者の任命責任は岸田文雄首相について回る。衆院解散を見据えた小手先の内閣改造で支持率の浮揚を狙うより、重要課題であるエネルギー政策への疑念を払拭することが先決だ。
●自公連立政権入りに含み残す 国民・玉木代表「与野党超えて協力」 9/10
国民民主党の玉木代表は、10日朝のフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」に出演し、自公連立政権入りの可能性について、「政策本位で与野党超えて協力する」と述べた。
国民民主党・玉木代表「政策本位で国民にとって国にとって必要な政策を進めるためには、与野党超えて連携・協力していきましょうということをやっていますから」
玉木代表は、国民民主党の自公連立政権入りが取り沙汰されていることについて、「われわれから何か言ったことはない」と沈静化を図った。
一方で、「政策本位で与党でも協力するところはする」と先々の連立入りに含みも残した。
また処理水をめぐり、野党の一部から政府と異なる見解が出ていることについて、玉木代表は「政治家は科学に基づく発言をすべきだ」と批判し、自民党の佐藤正久元外務副大臣は、「中国を利することになる。絶対に慎んでほしい」と慎重な対応を求めた。
●中国首相が処理水めぐり日本批判せず G20サミット 9/10
インドで開幕したG20サミットの会議で、中国が処理水を巡り日本への批判をしていなかったことが分かりました。現地から報告です。
(政治部・千々岩森生記者報告)  政府関係者によりますと、岸田総理より先に順番が回ってきた中国の李強首相からは処理水に関する発言も、そして、日本を批判する言葉も聞かれませんでした。
岸田総理は9日の会議で、中国を念頭に「突出した行動を取っている」と述べ、(日本の)水産物の輸入停止を批判しました。
ただ、李強首相が日本を批判しなかったため、岸田総理も中国を名指しすることは避け「一部の国が」との表現にとどめました。
李強首相は、6日には「核汚染水」という言葉を使って日本を強く批判しましたが、7日はトーンを下げてきていました。
輸入停止がすぐに解除される可能性は低いものの、日本政府は、中国の出方に変化が表れるのかどうか慎重に分析する方針です。
●岸田政権は世論への対応がうまい? 内閣改造から「木原隠し」の解散総選挙 9/10
「外遊から帰国すれば、内閣改造、党役員人事で一色だ。どんなサプライズを考えているのか、そして解散総選挙に突っ込むか。党内では2人寄ればそんな話ばっかりだ」と自民党のベテラン議員がつぶやく。
現在、外遊中の岸田文雄首相は9月11日に帰国すると、すぐさま内閣改造と自民党の役員人事に着手するとみられている。9月13日が濃厚だ。
早くも、麻生太郎自民党副総裁や茂木敏充幹事長の留任が内定したというニュースが駆け巡る。
安倍派の「5人衆」では、松野博一官房長官と萩生田光一政調会長が、重要閣僚か自民党の有力ポストで決まったかのような報道もある。
岸田首相はこれまで、内閣改造や党役員人事について、「適材適所で決める」と述べるにとどまっているが、内閣支持率が低迷している中でメンバーを一新して国民にアピールし、政権の求心力を高めるのが最大の狙いとなろう。
今回の人事の最大の焦点
自民党の政務調査役を長く務めた田村重信氏は、「麻生氏、茂木氏を早々に留任として麻生派と茂木派をガッチリおさえた。安倍派5人衆にも処遇、配慮するニュースもある。3つの派閥を軸に今後の政権運営をし、安定感を第一に考えていることは透けてみえます」
岸田首相は、まず政権の安定感を優先するという戦略のようだ。
その安定感において、焦点となりそうなのが木原誠二官房副長官の処遇だ。 
岸田首相の右腕で、「影の首相」とも呼ばれ、岸田政権の「要」でもある木原氏。内閣改造での入閣が濃厚とされていたが、週刊文春の報道で状況が変わった。
週刊文春は、木原氏の妻の前夫は自殺したとされているが「不審死」であり、木原氏の妻が関与していたのではないかとスクープした。また、警視庁が「不審死」について再捜査に乗り出し、木原氏の妻が捜査対象になると、木原氏が警察サイドに「圧力」をかけたのではないかという疑惑も報じている。
渦中の人物となった木原氏の処遇はどうなるのか。官邸関係者がこう打ち明ける。
「内閣改造では木原氏は交代で、党本部のポストでほとぼりをさましてから復活させる、という話が流れていた。しかし、岸田首相が木原氏は外せないと決断したようです。官房副長官留任はほぼ決まり。岸田首相は外遊の真っただ中ですが、しっかり木原氏が同行しています。アメリカや中国の首脳が集うインドでのG20サミットに同行させるというのは、留任が前提にあるからです」
立憲民主党は8月、週刊文春の報道をもとに木原氏の問題について警視庁からヒアリングをした。その際、木原氏にも出席を求めたが、「週刊文春を刑事告訴した」という説明がなされ、木原氏は姿を見せなかった。
立憲民主党は秋の臨時国会で徹底追及の構え
立憲民主党の幹部は、内閣改造後の10月にも開かれる見込みの臨時国会を見据えて、こう話す。
「木原氏が官房副長官に留任となれば、そりゃあ徹底的に疑惑追及することになる。週刊文春の記事からも明らかに不審死であり、木原氏は国会議員という立場からしても、全面的に協力すべき。なのに、捜査に圧力、妨害をかけたと書かれているのですから、こんな大きな問題はありません。臨時国会の最大のポイントが木原スキャンダルです」
故ジャニー喜多川氏の「性加害」問題や、贈収賄事件での衆院議員の秋本真利容疑者の逮捕、京都アニメーションの青葉真司被告の裁判など大きなニュースが続き、印象が薄れつつある木原氏のスキャンダルだが、「再炎上させて、火の手をあげたい」と立憲民主党の幹部は意気込む。
スキャンダル炎上を止めるには…
一方、岸田首相はスキャンダルの再燃は避けたいところ。
「木原氏のスキャンダル炎上を止めるには解散総選挙しかないでしょう。臨時国会の冒頭でやれば、野党の追及の場はなくなります。木原氏を守るためなら岸田首相は打って出るかもしれない」と自民党の幹部が漏らす。
前出の田村氏も、「世論調査で自民党の支持率は低下してきているとはいえ、維新や立憲民主党も大きくアップしているような状況ではない。自民と公明で過半数がとれると決断すれば、岸田首相は解散総選挙をやってくるのではないか。ジャニーズの会見日に秋本容疑者逮捕というタイミング。岸田政権は世論への対応がうまいし、運が強い。松川るい参院議員のエッフェル塔炎上など、他にもスキャンダルがあるが、解散総選挙になるとマスコミも、選挙妨害を意識してスキャンダル報道はある程度自制してくる。木原スキャンダルを追及させない解散総選挙は十分あり得るでしょう」と話す。
木原氏を手放せないという岸田首相は周辺に、「一部で大きく報じられているが、なんの確証もない。なぜ木原がこんなにたたかれなきゃいけないのか。警察もシロと言っているではないか」とこぼしているという。
内閣改造から「木原隠し」の解散総選挙に突っ走るのか? 

 

●中国のSNS情報操作、米世論誘導狙い Microsoft調査 9/9
米マイクロソフトは8日までに、サイバー攻撃に関する調査報告書を公表した。SNS上で中国の工作員とみられる偽アカウントが生成AI(人工知能)を使い、米国の世論を誘導しようと試みている可能性があると指摘した。2024年の米大統領選に向け、情報操作への警戒感が強まりそうだ。
報告書によると、3月ごろから銃規制や特定の政治家など論争になりやすいテーマに焦点を当てた誤情報が増えたという。生成AIで目を引く画像をつくって発信しているのが特徴だ。
いずれもアカウントはインフルエンサーや著名人を偽装しているケースが多い。調査対象にしたSNSの詳細は明らかにしていないが、X(旧ツイッター)やフェイスブックとみられる。
例えば自由の女神が銃を持つ画像に「暴力の女神」とキャプションをつけた投稿があった。自由の女神は指が6本以上ある不自然な画像で、生成AIによってつくられたことを裏付けているという。
米国の有権者になりすました投稿があったとも指摘した。米司法省が中国の公安当局の工作グループによるプロパガンダ情報だと指摘した手法と類似していると述べた。
報告書は「(生成AIを使った)比較的質の高いビジュアルコンテンツは、SNS利用者から高い注目を集めている」としている。より目を引く加工画像を使って拡散力を高めている実態が明らかになった。
マイクロソフトの脅威分析センターのゼネラルマネジャー、クリント・ワッツ氏は「いつ大規模に導入されるかはわからないが、中国がこうした技術を時間をかけて磨いていることが予想される」とコメントしている。
SNS上の偽情報やプロパガンダへの警戒感はロシアの介入が報じられた16年の米大統領選をきっかけに強まった。近年では急速に生成AIの商用サービスが広まったことで複数の言語への翻訳や自由な画像作成が容易となり、悪用が懸念されている。
●秋本議員逮捕 「利権」の構図、徹底解明を 9/9
海に囲まれた日本で、再生可能エネルギーを拡大する切り札となるのが洋上風力発電だろう。その事業が汚職事件の舞台となったのは由々しき事態だ。東京地検特捜部が衆院議員の秋本真利容疑者を、受託収賄容疑で逮捕した。
逮捕容疑は贈賄側の日本風力開発の前社長から総額で約6100万円を提供された秋本容疑者が「請託」を受け、同社の意向に沿う国会質問をした、というものだ。
秋本容疑者は「国会質問は自身の政治信条に基づく」と容疑を否定したが、党内で再生エネルギーの「族議員」を自任するなど、洋上風力発電の業界と密接な関係を持っていたことは疑いない。
本人は8月に事件が表面化した直後に外務政務官を辞任し、説明責任を果たさないまま自民党を離党した。しかし比例南関東で党を代表して選出された議員であり、即時に議員辞職するのが筋だろう。同時に言えるのは個人の問題だけでなく政権の看板政策の在り方も問われることだ。
洋上風力発電は1兆円規模の市場に成長すると予想されている。この事件で新たな利権が浮き彫りになったとの見方もある。事業の仕組みが成熟しない中、業界と癒着した政治家の「介入」が起きる余地があるのかもしれない。
今回、収賄罪より重い受託収賄罪の立件に検察が踏み切ったのも競走馬に関する資金の名目で現金が動き、恣意(しい)的な国会質問が行われたとする構図に強い自信があるからだろう。前社長は贈賄の意図を認めたと伝えられる。
象徴的なのが昨年2月の国会質問である。秋田県沖の事業参入を巡る前年末の入札では、売電価格の安さから大手商社などの企業連合が独占的に落札し、選外の日本風力開発は不満を抱いたようだ。秋本容疑者は「売電価格より運転開始の早さを評価すべきだ」と政府にただした。
既に次の公募が始まっていた段階なのに政府が異例の評価基準見直しを表明し、やがて新基準が公表される。同社側から賄賂の一部とされる現金が議員会館で渡ったのは、その直後だ。政府側は政策変更の手続きに問題はないと言うが、本当にそうなのか。
洋上風力発電のイメージダウンが、早くも懸念されている。この事件で普及の流れを停滞させてはならない。政治家の思惑で再生エネルギー政策がゆがめられることがないよう、関係省庁は一連の経緯を十分に検証すべきだ。
もう一つ指摘したいのは国会質問の重みだ。国権の最高機関で議員に認められた権利であり、職務権限とする司法判断は定着している。リクルート事件、KSD事件など国会質問が受託収賄罪に問われた事件は過去にもあった。
金をもらって質問する―。それがまかり通れば議会政治の根幹が揺らぐ。検察の見立てが正しければ岸田政権でも相次ぐ「政治とカネ」の問題の中で特に深刻であり、任命責任うんぬんの話にとどまらない。秋本容疑者の逮捕に、ひとごとのような反応をする政府・与党は事の本質をどこまで認識しているだろう。
●統一協会と自民党 深い癒着を曖昧にはできない 9/9
文部科学省は7日、宗教法人法に基づく質問権行使への統一協会の対応が不適切だとし、東京地裁に過料を科すように通知しました。同省が今後、解散命令の要件を満たすと判断すれば、宗教法人審議会を開き、地裁に解散命令を請求することになります。被害拡大防止、被害救済のために解散請求を速やかに行うことが必要です。
一方、岸田文雄政権は統一協会と自民党の癒着の解明に背を向けています。関係の深さを批判された党議員を次の衆院選の公認候補に決めるなどしました。疑惑の幕引きは絶対に許されません。
統一協会は「質問権行使自体の違法性を含め徹底的に争う」と主張しています。多額献金で家庭崩壊を招くなどの重大な被害に全く反省がなく、責任逃れに躍起です。同協会の違法行為を断罪し、被害根絶、被害者・家族の救済・支援を強めることが不可欠です。
統一協会は、正体を隠して信者を集め、高額献金や霊感商法などの被害を広げました。自民党を中心とする政治家が統一協会と親密な関係をつくり、同協会の「広告塔」となり、お墨付きを与えたことが被害を深刻化させました。
長期にわたる深い癒着関係は、昨年7月の安倍晋三元首相の銃撃事件で大問題になりました。安倍氏は統一協会関連団体の集会に敬意を示すビデオメッセージを送っていました。安倍氏には国政選挙で自民党候補者に統一協会の組織票を差配した疑惑もあります。
統一協会と表裏一体である「国際勝共連合」を1960年代末に日本に引き入れたのは岸信介元首相(安倍氏の祖父)らです。自民党と統一協会の癒着の中心は、安倍氏が会長を務めた派閥「清和会」ですが、岸田首相は故人であることを理由に安倍氏の調査を拒みました。同派会長だった細田博之衆院議長についても本人の説明任せに終始し、究明を妨げています。
自民党は昨年、同党国会議員の約180人が統一協会と接点があったと公表したものの、議員の自主申告の集計で済ませました。首相が強調する関係断絶は説得力がありません。統一協会関連施設を訪問するなどしていた萩生田光一氏が政調会長という要職に就いているのも無反省を象徴する一つです。山際大志郎経済再生担当相は統一協会系行事に繰り返し出席していたことが発覚し、閣僚辞任に追い込まれました。ただ、癒着の真相については本人も自民党も口をつぐんだままです。
自民党は山際氏を神奈川18区に擁立することを決めました。統一協会の韓鶴子総裁を「マザームーン」と呼び親密さが指摘された山本朋広・元防衛副大臣も同4区に擁立します。全容解明を置き去りにして、関係議員を次々公認する動きは国民の声に反します。
統一協会の名称変更が2015年の安倍政権下で文化庁に認められた経過も依然闇の中です。
都倉俊一・文化庁長官が1984年、国際勝共連合の集会に参加するなどしていたことも判明し、統一協会の調査をはじめ宗務行政を統括する長官としての立場が問われています。
統一協会の反社会的行為の一掃のためには、政治が関係を断ち切り、毅然と対処することです。解明を終わらせてはなりません。
●国民は限界だ…ガソリン高騰、補助金地獄! 9/9
元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏は「ブライダル産業活性化のためとされている補助金の一部が、実は、森まさこ首相補佐官の地元への利益誘導のために使われている」と指摘する――。
ブライダル補助金で炎上中の森まさこが今度は官邸の私物化
週刊文春(2023年9月14日号)「岸田“公邸忘年会”報道からわずか3カ月で…森まさこ首相補佐官(59)が娘と友人たちを首相官邸ツアーに招待していた! 『官邸の私物化』と波紋広げる」において、2023年8月末に司法修習生の長女とその友人一行を首相官邸に招待し、“見学ツアー”をしていたことが報じられている。文春は、「首相補佐官の立場を使った私的利用ではないか」との指摘を受けている。
森まさこ首相補佐官については、これまでにも、SNSに、「ブライダル補助金」事業の成果を書き込み、さらには、ブライダル大手から100万円の献金を受けていたことも発覚し、ネットで炎上しているところだ。
12億円もの補助金が海外カップルが日本で結婚式を挙げるために使われていた
森氏がアピールした「特定生活関連サービスインバウンド需要創出促進・基盤強化事業」は、少子化や新型コロナ禍が直撃したブライダル産業活性化のため、海外のカップルを呼び込み、日本で結婚式を挙げさせて、産業や地域を活性化するものだった。2022年度補正予算案で12億円が計上されている。
識者たちからの批判は様々であったが、「税金が特定の団体へと消えていく」「外国人に対する補助で、日本人は恩恵を受けない」というものが主だったものだ。
しかし、この「特定生活関連サービスインバウンド需要創出促進・基盤強化事業」で、つくられた資料を読み込むと、その闇はますます深いものであることがわかる。「特定生活関連サービスインバウンド需要創出促進・基盤強化事業費補助金説明会」(2023年6月16日)と題する資料だ。詳細を知りたい人は、調べてアクセスしてみてほしい。
森まさこの「地元限定」の補助金だった
P33「補助金の活用事例」において、補助事業名「みちのく和婚の外国人カップル向けウェディングツーリズムの開発」とあり、実施概要には、「海外在住の日本人の国際結婚カップル・外国人カップル、および日本文化に多大な興味を抱いているインバウンド層を主なターゲットにし、東北の様々な歴史的建造物、および地域資源、文化財を活用した日本古来の伝統的な結婚式・挙式の広告宣伝、インバウンドウェディングのサービスを展開する」とある。今、問題になっている補助金事業である。
読んでいて気になることが、外国人、業界団体というキーワード以外になかっただろうか。私にはあった。「東北の様々な歴史的建造物、および地域資源、文化財を活用した」というところ。もっといえば「東北」に限定した補助金である点だ。
さらに、この「特定生活関連サービスインバウンド需要創出促進・基盤強化事業」の中には、「福島和婚の海外発信による日本伝統文化と福島への啓蒙促進事業」という事業も採択されている。今度は「福島」である。
種明かしをすれば、森まさこ氏の地元は、東北の福島県である。業界団体への誘導だと怒りを感じていたら、実態はさらにひどいことになっている。採択された事業を見る限り、これは、ただの地元の企業への補助金だ。地元のために、税金を放り込んだだけ。これぞ、自民党政治家の面目躍如だ。地元支援者たちは、拍手喝采だろう(当然ながら、その地元においても何の恩恵にもあずかれない大多数の有権者が存在し、彼らには税負担増の未来が待っていることには留意が必要だ)。
異次元の子育て対策の費用が、外国人が結婚式をするための補助金に使われる矛盾
しかもその審査基準として「少子化対策に貢献できる事業か。少子化対策に貢献することは、海外需要のみならず、国内需要創出への裨益を狙う観点でも重要」と示されているのを考えると、これは、岸田政権の「異次元の少子化対策」予算に含まれているということだ。
莫大な税金を投入して、異次元の子育て対策といっているが、実態は、外国人の結婚式の補助金に使われていた。これでどうやって日本の出生率が改善されるのか。あまりのデタラメを前にして、私は、ただただ虚しい。
何か社会的な課題が持ち上がると、補助金をバラまいて、対策をしたふりをする。対策をしたことで、すでに自民党にとっては「実績」となってしまう。小学生の野球チームが、大谷翔平のストレートが打てないからと、バットを短く持てと指導されたとして、打てるだろうか。打てるわけがないのである。しかし、自民党にとっては、対策をとった時点で、仕事は終わったと勘違いしている。大谷を前にして、小学生にバットを短く持てとという指導をしました。とりあえず、記念撮影しときましょう、というのがトンチンカンな自民党政治である。
外国人が日本で行う結婚式に、補助金を与えて何の意味があるのだろうか。まさしく、ムダの一言である。こんなことにお金をつぎ込んでいたら、いくらお金があっても足りないだろう。増税をする前に、まずは補助金政治をやめさせることが肝心だ。
ガソリン税中抜き体制の責任は岸田首相にある
これは、ガソリン税でも同じことがいえる。「石油元売りに支払われる補助金はすべて卸売価格に反映させているので、直接的には収益に影響を与えない」と政府は主張している。しかし、補助額と小売価格の実態を調査した小嶌正稔桃山学院大学経営学部教授によれば、「(2022年)7月12日には累計で1リットル当たり45.2円分、8月9日には累計で1リットル当たり46.2円分が消費者に還元されなかった」(ダイヤモンドオンライン・2022年9月9日)という。
石油元売りの収益を決めるのは、元売り間と小売市場、二つの取引結果である。いくら石油元売にじゃぶじゃぶと補助金(税金のこと)を注ぎ込んだところで、クルマユーザーがガソリンを購入する際には、値段は結局高いままということになる。 
このつぎ込んだ税金の多くが雲散霧消をする現象は、この政策を採用する岸田文雄首相、与党自民党の責任ということになる。もし、これが補助金という形態をとらず、減税という形をとったなら、「中抜き」は一切発生しないことになる。
安易にバラマキ政治を続ける自公政権。どうでもいいことに補助金(=税金)を使うな
世界中で、減税することは常識的に行われているのにも関わらず、日本では「減税をすると社会保障が無くなる」「国家が機能しなくなる」などと、わけのわからない議論が勃発する。
これは米国共和党の強い影響力を持つ全米税制協議会のグローバー・ノーキスト氏から聞いたが、アメリカでは減税に反対する勢力は、もっともメディアが取り上げられやすいことを狙って「減税するとワシントンの行政機構を閉鎖することになる」などと脅すのだという。
どうでもいいいことに使っている補助金は莫大な金額となっており、これを止めさせるには、「寄生虫たちが使える予算を減税によって絞り、寄生虫同士で食い合いをさせるのが一番良い」と話をしていた。
今回のケースで言えば、『寄生虫』とは、つまり、森まさこ氏やブライダル業界であり、減税を頑なに拒否する自民党税制会長・宮沢洋一参議院議員のことだ。宮沢氏は、どうみても非合理な石油元売りの合併を経産大臣時代に進めた、石油価格が高い原因をつくった張本人である。
国民はこれがムダだ、あれがムダだと指摘を続け、さらには政治家に歳出を絞らせればよい。国民生活は厳しさを増している。すべては国民負担率を釣り上げ続け、いまなお「まだ負担は上がっても大丈夫」「消費税は20%までは安い水準と言える」などと考え、安易にバラマキ政治を続ける自公政権の責任である。
●記者会見の政治利用 公権力と報道は対等 表現の自由は市民の権利 9/9
地方自治体の首長パフォーマンスが目立つ時代だ。1月には馳浩・石川県知事が県政を扱った地元放送局の映画の内容をきっかけに、記者会見に当該社の社長の出席を求めたり、定例の記者会見を取りやめたりする事態となった。7月には広島県安芸高田市の石丸伸二市長が会見で地元新聞社を詰問することも起きている。いわば、会見の場を自身の主張を一方的に開陳する(できる)場であると理解し、政敵と認定したメディアを攻撃する機会と捉えているようにみえる。
これまで県内でも政治家や政党が、記事内容に抗議をするとともに当該社の取材を拒否したりすることはあったし、関西でも首長がメディアに対し逆質問をして、やり込めることが常習化する状況が起きて久しい。東京では政党がとりわけ選挙時に、政治的公平さを求めて放送番組内容に干渉したり、出演を取りやめたりするなどの取材・報道妨害を行うことは珍しくなかった。
しかし、公式な記者会見を自らのパフォーマンスのために利用することは、かつての「大本営発表」にも通じるものであって明らかに問題がある。ただし残念なことにネット上では「威勢がよい首長」を支持する声の方がむしろ大きいといえ、それに政治家の側が後押しされ、ますます勢いを増しているようだ。
主催者は誰か
最初に確認する必要があるのが、記者会見の位置付けである。基本構造は、公権力(公的機関)が市民・有権者に対しアカウンタビリティー(説明責任)を果たすための場で、読者・視聴者を代表する記者が市民の知る権利を代行する形で会見の場に臨んでいるというものだ。報道団体である日本新聞協会も、2002年見解で「公的機関が主催する会見を一律に否定するものではないが、運営などが公的機関の一方的判断によって左右されてしまう危険性をはらんでいます。その意味で、記者会見を記者クラブが主催するのは重要なことです」としている。
閉鎖性や非公開性、権力側との癒着など、厳しい批判の対象である「記者クラブ」の存在を前提とした議論に、違和感のある向きもあろう。ただし、対公権力との関係で圧倒的に弱い立場にある報道機関が、互角に対峙(たいじ)するための制度的な工夫として、ここでは考えておきたい。あくまでもポイントは、会見は取材先である公権力側と報道側との間の、対等な緊張関係のもとで行われるものでなくてはならないという点だ。
以前の97年見解では、公的機関の記者クラブがかかわる記者会見について、「原則としてクラブ側が主催する」としていたものを、新見解では、ネット社会到来という時代状況等を踏まえ公的機関が主催する記者会見を一律に否定しないことに変更した。しかしその解説では、「当局側出席者、時期、場所、時間、回数など会見の運営に主導的にかかわり、情報公開を働きかける記者クラブの存在理由を具体的な形で内外に示す必要がある」と指摘している。
悪しき慣習
本来は、会見の場で政治家が一方的に自説を開陳し、質問を受け付けないとか、特定の記者(社)の出席を拒否したり質問を認めなかったりするという行為は許されるものではない。ただし残念ながら実態は、会見を実質的に政治家の側が仕切る状況が一般化している。たとえば首相の官邸会見はその典型例で、出席者の数や顔ぶれに始まり、司会を官邸が行い、事前に質問を提出させ、それに従って質問者を指名し、さらに追加質問は認めないという運用がなされている。公権力側が一方的かつ圧倒的な主導権をもって実施している実態は、最低でも「主催権は両者で共有する」が、完全に崩壊していることを示している。
そうした悪しき慣習が当然視され、地方自治体レベルの会見においても我が物顔の首長が登場することになっている。その延長線上で、「説明責任」は公権力側にあるにもかかわらず、報道側に、批判するなら理由を面と向かってこの場で言えなどと、会見の場で「報道機関の説明責任」を求めるという、逆転した事態が生まれてしまっているわけだ。
もちろん報道機関も、紙面や番組等で問題を指摘する場合に、きちんとした理由を述べることが求められるが、それは読者・視聴者に対する責任であって、政治家に対してではない。弁が立つ政治家は、会見の場で記者をやり込めることで、自分の主張を正当化しがちだが、こうした「画」を利用し有権者へのアピール効果を狙うような会見の使い方は間違っている。
少し異なる文脈だが、放送法で定められた政治的公平さの政府解釈で、公平かどうかを判断するのは政府であるとしているが、これも放送局に、違法でないことを公権力に対して説明する責任を負わせるという意味で、通底する考え方である。一般的な学説では倫理規定であるとされており、法が求めているのは「視聴者に対する約束事」であって、放送局の説明義務は公権力ではなく市民に対してのものだ。
報道機関の課題
同様に、近年は国会答弁のなかで首相が、「私にも言論の自由がある」と言う時代ではあるが、会見パフォーマンスを行う首長も、それが自身の表現の自由の行使であると思っている節がある。しかし表現の自由は市民の権利であって、政府はあくまでもそれを保障する役割であって、個人と同じ意味での表現の自由は、政府にはない。
もちろん、公務員である教師が教授の自由として、講義で自説を述べることにはじまり、政府がワクチン接種を奨励する広報を行ったり、原発推進の政策メッセージを発信したりするような、「政府言論」は存在する。ただしこれらも無制約に認められているわけではない。政府や政治家が、中継(とりわけネット生配信)でする表現行為は、憲法で保障されている自由な表現行為とは似て非なるものであるということだ。
したがって報道機関は、会見の場面で首長に応答する義務はないし、もし説明するのであれば自身の媒体で、市民向けに説明することになる。とりわけ今日において、報道機関自身にも「見える化」が求められており、取材過程の可視化は課題だ。政治家に対してきちんと対峙し、市民代表として真っ当な質問で真実性の追及をしているか、事件・事故の取材で市民に対して横柄な態度をとっていないかなど、社会から見られていることを十二分に意識し、個々のジャーナリストが、その社会的責任を果たす必要がある。
報道過程の可視化としては、記者の名前を表記すること(署名記事)や、顔写真を掲載することなどが行われてきている。これらは新聞と読者との距離を縮めるための方策でもあるが、これも報道機関の説明責任の取り方の一つであり、まさに信頼関係の醸成のためといえるだろう。
会見における政治家のパフォーマンスを許しているのは、一般市民のネット上の喝采であろうが、もし報道機関の首長に対する遠慮があるとしたら、それは読者・視聴者の期待を裏切ることだ。あるいは会見に同席するライバル社への“いじめ”に対して見て見ぬふりをする報道機関に、知る権利の代行者を語る資格はなかろう。

 

●国民民主の政権参加見送り 9/8
岸田政権は自民、公明両党の枠組みに国民民主党を加える「自公国」連立を見送る。国民の玉木雄一郎代表の再選を受け、自民内に連立論が浮上したが、国民や支援組織の連合内に支持が広がらなかった。玉木氏も明確に否定した。岸田文雄首相(自民党総裁)は8日、内閣改造・党役員人事の13日実施を目指す意向を外遊先のインドから複数の政権幹部に電話で伝えた。従来通り自公連立内閣とする。政府、与党関係者が明らかにした。
内閣改造日程は中下旬の2案あったが、首相は13日実施へ調整を開始。公明の山口那津男代表には「13日を目指し、内閣改造・自民党役員人事を行えるよう準備を重ねている」と伝えた。自公国連立が困難になったことが早期人事を後押ししたとみられる。
国民民主は8日の両院議員総会で新執行部体制を了承した。代表選で「非自民・非共産」勢力結集を唱えた前原誠司氏も代表代行に再任された。玉木氏は議員総会後、国民からの入閣の有無を記者団に聞かれ「そんな話はない」と明言した。
●入札敗れ「政治の力」商社に対抗 ルール変更要請 9/8
周囲を照らす極彩色の巨大な武者人形が夜道を練り歩き、威勢のいい「ラッセラー」の掛け声が響いた。
8月上旬、青森市で行われた「青森ねぶた祭」。桃太郎をかたどった山車の台座に、青森・陸奥湾の洋上風力発電事業への参入を目指す日本風力開発(日風開)の名前があった。昨年、初めて祭り参加者のスポンサーとなり、今年も社員ら数十人が現地入りしていた。「地域貢献」の一環だった。
所有者のいない海に設置される洋上風力発電の施設は、国が整備する区域を事前に指定する。「準備区域」「有望区域」「促進区域」の順に段階が進み、最後は入札で開発事業者を選ぶ仕組み。区域の指定には地元の反応も考慮されるとされ、候補地に食い込もうとする企業は多い。
ただこの時、日風開の前途には暗雲が垂れこめていた。ねぶた期間中の8月5日、社長(当時)の塚脇正幸(64)が洋上風力発電事業を巡り衆院議員の秋本真利(48)に賄賂を贈った疑いがあるとして、本社が東京地検特捜部の家宅捜索を受けたからだ。
令和2年、首相(当時)の菅義偉が2050(令和32)年までに脱炭素社会を達成する「カーボンニュートラル」を宣言。洋上風力発電は目標達成の切り札とされ、国は2040(令和22)年までに発電能力で3千万〜4500万キロワットを導入すると掲げる。
平成31年4月には事業推進のための「再生エネ海域利用法」が施行され、区域の指定も順次開始されたが、特徴は事業規模の大きさにある。小型のものだと数億円で建設できる陸上風力発電と違い、洋上風力のそれは数千億円以上だ。
最も「地元」に食い込んだ業者が、事業を受注する−。関係者によると、風力発電業界には長年、こうした慣習があった。だが令和3年12月、この慣習を打ち破る出来事が起こった。
洋上風力発電で初となる大規模入札で、三菱商事のグループが日風開を含む既存の風力発電業者などを抑えて秋田県沖と千葉県沖の計3区域を全て落札。圧倒的な低価格が勝因だった。
予想外の結果は「三菱ショック」と呼ばれ、業界は騒然となった。外資系の最大手と組み、うち2区域の入札に参加して敗れた日風開にとっても、衝撃は大きかった。同社関係者は「最低、1つは取れるとみていた」と打ち明ける。
焦った塚脇は資本の力ではなく、「政治の力」で入札の審査条件そのものを変えることを志向した。業界団体や旧知の大学教授に働きかけ、価格だけでなく、地元への密着度や事業開始時期の早さなどを条件に加えるべきだと論陣を張った。
そして頼ったのは、同じ法政大出身で脱炭素を掲げた菅を「オヤジ」と慕う「再エネ族議員」の秋本だった。
4年2月17日の衆院予算委員会。既に2回目の入札公募が1回目と同じ基準で始まっていたが、秋本は「2回目から評価の仕方を見直してもらいたい」と、経済産業相(当時)の萩生田光一に迫った。
その翌月、萩生田は2回目の入札を停止。審査基準を見直してから再開すると公表した。半年後の10月、実際に審査基準は変わった。
価格重視である点は変わらず、霞が関でも基準の変更自体は「穏当なもの」と受け止められたが「多少とも有利になったのは間違いない」(検察幹部)。その翌日、日風開社員が衆院議員会館の秋本の事務所を訪れた。持っていた袋の中にあったのは、現金1千万円の束だった。
「洋上風力は結局、政治家の力に頼らざるを得ない。(塚脇は)仮にカネがかかっても、プロジェクトが取れるなら安いものだと思ったのだろう」。ある業界関係者は、こう打ち明けた。 
●政権浮揚かけ岸田内閣改造へ、「最後のチャンス」との見方も 9/8
岸田文雄首相は9月中にも内閣改造・自民党役員人事を行う。内閣支持率が低迷する中、来年秋の自民党総裁選や衆院解散戦略を左右する政権浮揚をかけた判断となる。
春闘の賃上げは30年ぶりの高水準だったが、物価高で実質賃金は減少が続く。マイナンバーカードを巡るトラブル、ロシアのウクライナ侵攻や福島第1原子力発電所の処理水放出で悪化した日中関係など課題は山積している。
ピクテ投信投資顧問の市川真一シニア・フェローは、「内閣改造で変化の兆しを示せば、市場の期待感が株価に影響し、上向きのスパイラルが支持率を押し上げる」と指摘。逆に変化がなければ岸田首相の下での解散・総選挙は難しくなるとして、今回の改造を「総裁選に向けた最後のチャンス」との見方も示した。
内閣改造は13日にも実施する方向と共同通信が報じたが、岸田首相は7日の記者団の取材では明言しなかった。市場関係者らの見方を交えて人事の注目点を探った。
1.ポスト岸田候補
最大の焦点は、茂木敏充幹事長や2021年の総裁選を争った河野太郎デジタル相、高市早苗経済安全保障担当相ら「ポスト岸田」候補の処遇だ。
茂木氏を巡っては、7月の北国新聞によるインタビューで麻生太郎副総裁が「間違いなく仕事をしていて評価も高い」と述べたのに対し、森喜朗元首相が8月の同紙で、「麻生さんは茂木幹事長を留任させたいようだが、彼は能力があるから財務大臣も外務大臣でも何でもできる」と応じている。
市川氏は「茂木氏の処遇で総裁選の構図が透けて見える」と語る。現職が再選を目指した総裁選で閣僚や幹事長が立候補した例は少ない。石破茂氏は要職から外れていた18年に当時の安倍晋三首相に挑戦したが、閣僚だった15年は出馬しなかった。
NHKは8日、岸田首相が麻生副総裁と茂木幹事長を留任させる方向で検討していると報じた。
2.安倍派5人衆
岸田派は党内第4派閥にすぎない。首相は政権基盤の弱さを補うため、最大派閥・安倍派の松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、萩生田光一政調会長、高木毅国対委員長や世耕弘成参院幹事長の「5人衆」と呼ばれる幹部に協力を仰いできた。
ただ、岸田首相が増税で一部を賄う方針を示した防衛財源を巡っては、萩生田氏らがNTT株売却の可能性を探り、主導権を確保しようとする動きも見せる。安倍派は先週、塩谷立元文部科学相を座長とする新体制を発足させた。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、恒久財源をつけられない政策は先行き不透明感を生み、企業が先行投資を控えるとして安倍派の有力者をどのポストに配置するか注視していると述べた。
3.経済閣僚
クレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストは、鈴木俊一財務相について「日本銀行や財務省に近い印象がある」として、交代すれば市場へのメッセージになるとの見方を示した。一定の距離を保てる閣僚になれば成長優先の印象が高まるとし、茂木氏もその候補になり得ると述べた。
岸田氏は緊縮財政派との印象が強く、経済成長を優先する姿勢が市場に伝わっていないと指摘。経済再生担当相のポストに積極的な発信ができる人材を登用することも一案だと述べた。現在の後藤茂之氏は旧大蔵省出身だ。
4.女性・若手
閣僚19人のうち、女性は高市氏ら2人。40歳代以下は小倉将信少子化担当相1人だ。市場関係者は政治にも多様性とイノベーションを求め始めており、会田氏は、女性に限らず若手の登用がどこまで進むかも、今後の経済成長に影響するとみている。
女性議員では茂木派の小渕優子氏や岸田派の上川陽子幹事長代理らの処遇が焦点だ。森元首相は小渕氏の幹事長起用を提案している。若手では週刊誌でスキャンダルが報じられた木原誠二官房副長官の去就も注目される。
5.公明党
公明党が10年以上担ってきた国土交通相の人事は自公両党の今後の関係にも影響を与える可能性がある。朝日新聞などは自民党内に国交相ポストの奪還論が浮上と報じたが、公明は引き続き確保したい考えだ。両党は衆院選の候補者調整で対立して東京での選挙協力が一時解消されたが、岸田首相と山口那津男代表が修復に動いた。
6.デジタル、少子化
内閣改造は首相が今後の政策の優先順位を示す機会にもなる。日本総研の石川智久調査部長は「実務能力のある閣僚を据えた上で、首相から何をやり遂げるかのメッセージが聞きたい」と語り、注目分野にデジタルや少子化対策を挙げた。
マイナカードのトラブルは、デジタル化の足かせになっている。政府は11月末までデータの総点検作業を行うが、24年秋の健康保険証廃止とマイナカードへの一体化を推進してきた河野デジタル相が留任するかどうかで政権の取り組み姿勢が分かる。
少子化対策で、政府は30年代までに現在の倍となる10兆円の予算確保を目指している。小倉担当相の下でまとめた具体策は給付拡充など経済支援策が中心だ。7月のNHK世論調査では、政府の少子化対策に期待していない人は「あまり」「まったく」を合わせると60%を超えた。
●インボイス制度は「消費税増税」の布石だ! 巨額財政支出の穴埋め 9/8
円安と原油高のダブルパンチで政府のガソリン補助金など物価高対策費は膨れ上がる見通しだ。加えて、長期金利の上昇を受けて国債の利払い費もかさむ。巨額の財政支出のツケはいずれ国民に回ってくる。財務省と一体の岸田政権が、密かに消費税増税を企んでいるのは間違いない。10月からスタートするインボイス制度も増税のための布石とみられている。
経産省が6日に発表したレギュラーガソリンの全国平均価格(4日時点)は186.5円となり、過去最高値を更新した。政府は段階的に縮小してきたガソリン補助金を7日から拡充。当面は1リットル=180円未満に抑え、10月5日から年末までは175円を超えないようにする。
「足元の原油価格は1バレル=88ドルを付け、100ドルも視野に入ってきた。為替も、年末に1ドル=150円と予測する金融機関やエコノミストも増えています。さらなる円安と原油高によりガソリン補助金は、想定外の巨額な財政支出を要することになりそうです。ガソリンや電気・ガスの補助金を来年末まで継続すれば、累計の支出は20兆円程度に上るとみられています」(市場関係者)
さらに、財政を直撃しそうなのが国債の利払いだ。来年度概算要求の利払い費は、今年度予算に比べ、12.8%増の9.5兆円に膨らんだ。日銀の金融政策の修正により、長期金利がわずかに上昇していることが影響している。
いずれ、岸田政権は増税に動き出すとみられている。立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏(税法)が言う。
「巨額支出の穴埋めに浮上しそうなのが消費税増税です。政府は税率を一律に上げるのではなく、複数の税率を設けて、国民に“配慮”する“ポーズ”を取るとみられます。10月から始まるインボイス制度によって複数税率がやりやすくなる。必要性が乏しく、批判を浴びながらも、インボイス制度を強行するのは、消費税増税の布石と言っていいでしょう。しかし、複数税率にしたところで大増税に変わりはありません」
“増税請負人”を首相秘書官に起用
岸田政権は人事面でも増税シフトを敷いている。岸田首相は7月4日、“増税請負人”と称される一松旬氏を首相秘書官に起用した。
「一松氏は1995年に旧大蔵省に入り、主計局主計官などを歴任。省内でも10年に1人と言われる“超エース級”の財務官僚です。社会保障政策に精通し、防衛増税の制度設計にも関わった。物価高対策や国債の利払いの巨額支出に対応するため、一松氏が中心となって消費税増税を推し進めてもおかしくありません」(財務省関係者)
総務省の家計調査によると、7月の実質消費支出は前年同月比5%も減った。岸田政権が消費税増税に動けば、節約志向は加速し、日本経済はボロボロだ。
●岸田政権がぶち上げた「第3次国土形成計画」とは? 9/8
生活圏人口10万人を目安にした「地域生活圏」構想。7月28日、政府は2050年を見据えた国土づくりの方向性を示す「第3次国土形成計画」を閣議決定した。同計画はこれまで、第1次が08年、第2次が15年と続き、今回は8年ぶりとなる。
日本はいま、人口減少と少子高齢化がもたらす地方生活の危機、気候変動や巨大災害リスクの切迫といった課題に直面している。一方でコロナ禍による働き方の多様化が急速に進んできている。こうした流れを受け、新時代に地域力をつなぐ国土形成計画として今回新たに策定されたのが「地域生活圏」構想だ。国土交通省総合計画課の担当者が説明する。
官民連携で、縦割りや枠をとっぱらう
「人口減少で危ぶまれる地域社会に、自治体と民間が市町村の枠にとらわれず、独自にデザインする生活圏を設定するというものです」
そして、こう続ける。
「前回、前々回は30万人規模の地域圏を想定していましたが、人口減少が進むなか、今回新たにデジタル活用を踏まえ10万人規模の地域圏を想定しました」 
「人口10万人規模の地域生活圏」に欠かせない要素として挙げるのが、「民間視点を最大限取り入れた官民連携のパートナーシップ。デジタルの徹底活用で、生活者、事業者の利便性を最適にするため、自動運転、ドローンによる物流、遠隔医療・オンライン教育などのサービスを加速させる。そして縦割りではない、横割りの発想です」。
今回の構想に沿った動きはすでに始まっているとして次の事例を挙げる。岩手県宮古市では安定電源の確保に向けた取り組みとして「スマートコミュニティ推進協議会」を設立。市内のエネルギー発電事業者や地元企業が一体となり発電、売電資金を教育・公共施設に使用している。
鳥取県の米子市と境港市は地元企業5社との出資でエネルギー自立を目指した地域エネルギー会社「ローカルエナジー梶vを設立、公共施設での消費が始まっている。香川県三豊市では地元事業者12社の共同出資で「暮らしの交通梶vを設立、AIを使った交通サービス「mobi」の運用を開始している。
こうした地域生活圏構想は、岸田政権が進める「デジタル田園都市国家構想」を具体化するものといえる。人口減少などの地域課題をデジタル実装により解決し、成長産業の創出、交通、物流確保、教育機会や医療・福祉を充実させ、雇用拡大し、地域創生を図るというものだ。
結局、国頼みかと疑問の声も
今回の地域生活圏構想について、地域経済に詳しい神戸国際大学経済学部の中村智彦教授は「中身的に新鮮味はありません」と冷めた目を向ける。
「人口減少と高齢化が急激かつ深刻で妙案がないことを示しています。地方の小さな自治体でも国に頼らず、新たな取り組みに挑戦し、成果を上げています。国の施策より一歩前にという機運がすでにある。今回の計画も高齢政治家が過去の手法にこだわる姿が明らかです」
岸田首相は8月3日、第14回デジタル田園都市国家構想実現会議の開催で群馬県高崎市を訪れた。選挙対応の地方行脚という声もあるのだが。

 

●岸田首相も使用!「仮定の質問には答えられない」政府の常とう句 9/7
「仮定の質問にはお答えできない」
政治家の国会答弁をはじめ、首相や大臣の記者会見で頻出するこの言葉。耳にしてモヤっとすることはないだろうか。
8月8日、自民党の麻生太郎副総裁が訪問先の台湾で「“戦う覚悟”を持つことが地域の抑止力になる」と爆弾発言。これを受けて、記者から「台湾有事の際に日本は軍事介入するのか」と問われた松野博一官房長官は、「仮定の質問には答えない」と回答した。
他にも用例はたくさん。2021年1月7日、首都圏に二度目の緊急事態宣言の発出を伝える記者会見で、記者から「この宣言を延長する場合、今回と同様に1カ月程度を想定しているか」と問われ、菅前首相は「仮定のことについては私からは答えを控えさせていただきたい」と回答している。
岸田首相も、今年3月、日韓政府で合意を得た徴用工訴訟の問題で、“今後、韓国で政権交代が起これば、問題が再燃するのではないか?”と記者に問われ、「仮定に基づいた質問には答えない」と回答した。
こうした政治家たちの姿をみて、「『仮定の質問』というものには答えないでもいいのだ」と思っている人も多いだろう。だが、神戸学院大学法学部教授で政党国家論などが専門の上脇博之さんは、こう指摘する。
「いずれも、的を射た質問だったので、政府の側に〈答えたくない〉という判断があって、その逃げ口上として“仮定の質問”などと言ってごまかそうとしているのでしょう。
『仮定』は2つに分類されると思います。一つは、政府が関係ない、本当に荒唐無稽な仮定の質問です。そうであれば答えようがないが、当然、政府として想定しておくべき問題もある。たとえば、上の台湾に関する質問は明らかに後者ですから、答えて当然の『仮定の質問』になります」
確かに、“明日、宇宙人が攻めてきたらどうするか?”、“突然、すべての水が固形化したらどうするか?”と問われても、政府も回答のしようがないだろう。だが、台湾有事も、緊急事態宣言の延長も、政権交代による韓国の方針変更も、十分に考えられる“仮定”だ。政府はこうした仮定の質問に対して、真摯に対応するべきだと、上脇さんは指摘する。
「想定していないなら〈大変重要な指摘なので、後日想定して回答します〉と答えるべきです。外交的な配慮など理由があって、答えない方がいいというのなら、そう説明するべきでしょう。なぜなら、政府は国民に対して説明責任を負っているからです」
政府が説明責任を負う理由はふたつあるという。
「ひとつは、憲法21条に明記されている国民の“知る権利”を保障するため。もうひとつは、民主主義国家では、権力者の取り巻きだけで政治を行う君主制とはちがって主権が国民にあるからです。
主権者である国民が正しい判断を下すためには、正しい情報や重要な情報を知らされなければならない。国会議員や報道機関は国民に代わって質問しているので、政府は聞かれたことに対する説明責任があります。知っていたら、その政権を支持しなかったということも十分ありえますから」
しかし、これまで政治家は、「仮定の質問」を根拠にした不誠実な答弁が繰り返し、国民は正しい情報を知る機会を逃してきた。
「突拍子もない質問ならともかく、いずれも政府として想定しておくべきことです。『仮定の質問には答えられない』というのは、たいていの場合は、逃げ口上だと言わざるをえません。知る権利を保障し民主主義を実現するためにも国民は説明を求め続ける必要があります」(上脇さん)
「仮定の質問なので答えられない」。政治家のそんな常とう句を聞いたとき、それが“荒唐無稽な仮定”なのか、“ありうる仮定”なのか考えてみるといいかもしれない。
●高市早苗氏が強い意欲、セキュリティー・クリアランス制度創設 9/7
日本列島を覆う酷暑は月が変わって少しずつ収まりそうですが、永田町は「内閣改造・党役員人事」や、「解散総選挙ありやなしや」と政局がヒートアップしてきました。
そんな折、高市早苗経済安全保障相が、政局ではなく政策の話でシブく記事になっていて、この方らしいなと思いました。
高市氏は8月24日配信のラジオNIKKEIのポッドキャスト番組で、2024年の通常国会に経済安保推進法の改正案を提出すると明言したのです。その要点は、1安全保障上の機密を扱う人を認定する「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度を定める2機密情報の漏洩(ろうえい)に「懲役10年以下」程度の罰則を設ける方向―というものです。
セキュリティー・クリアランスとは、安全保障上の機密を扱う政府職員や民間人らに情報へのアクセス資格を付与する制度です。政府が個人の身辺や民間企業の情報管理体制などを審査し、適格性を評価します。
すでに6月に有識者会議の中間報告が出されていて、高市氏はその際、法案提出の時期は未定としていました。
今年2月に有識者会議を立ち上げる際、岸田文雄首相から「今後1年程度を目途に」と指示されていましたから、予定に沿うものなのでしょう。
約2年前に岸田政権が発足し、高市氏は当初、政調会長として党側から政権を支える立場となりました。私はその直後、22年1月にインタビューしましたが、すでにこのセキュリティー・クリアランス制度構築に意欲を示していました。
当時、経済安全保障関連法案が党内で検討されているタイミングでしたが、中心はサプライチェーンの強靱(きょうじん)化や、基幹インフラの安全性確保でした。セキュリティー・クリアランスは必要だとは言われていたものの、野党やメディアの反対を恐れて盛り込まれませんでした。とにかく、法律をつくることを優先したのです。
インタビューの中で、高市氏はセキュリティー・クリアランス制度について、「本来でしたら、できるだけ急いでつくらなければならないもの」と危機感をあらわにし、「世界の情勢に応じて、必要な条文を付け加えていくという作業は、ずっと続けていかなければならない」と、法改正に意欲を示していました。
この制度に関しては、経済安保関連法の採決の際、法案に盛り込まれていなかったのにも関わらず、野党から反対の声が上がっていました。
「研究者・民間企業も対象とした秘密保護法制の拡大につながり、プライバシー・学問の自由の侵害、労働者の不利益取り扱いを含め深刻な人権侵害が生じかねず、認められません」(共産党・塩川鉄也議員の反対討論)
今回も与野党対決法案になることは避けられません。担当大臣の覚悟は見えても岸田首相に覚悟はあるのか? 支持率に右往左往しないことが求められますが…。
●岸田政権「水産業支援策」にSNSは冷ややか…“やっているフリ”? 9/7
「わが国の基本的な立場を説明した」
インドネシア・ジャカルタで開かれている東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に出席している岸田文雄首相(66)が6日、中国の李強首相(64)と立ち話を行い、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出について理解を求めた。
福島原発処理水の海洋放出を受け、中国は日本の水産物の全面禁輸措置を決定。日本の水産業者は地元の福島だけでなく、全国規模で影響を受ける深刻な事態が続いている。
中国の対応が見えない中、日本政府は、水産業支援のための「政策パッケージ」を公表。水産物輸出の中国依存リスクを抑えるためとして、中国への輸出割合が大きいホタテ貝などの販路開拓や加工設備の国内導入などを支援するというのだが、ネット上では《対処療法では無意味》といった冷ややかな意見に加え、《安倍政権と同じゴマカシ、やっているフリ感の手法》といった声もチラホラ見られる。
場当たり的な対策を揶揄!?
岸田政権は今回、支援策について予備費から207億円を支出。支援額は既存の基金との合計で総額1007億円になる見込みで、岸田首相は「水産業を守る」ための5本柱を策定した──と胸を張っていたが、《ゴマカシ、やっているフリ感の手法》との指摘でみられるのは、こんな理由だ。
《安倍政権もあったよね、総額をまずどーんと打ち出すやり方。GDP600兆円とか、緊急経済対策億円とか。でも金額の意味あるの》《単純な短い言葉で訴える。安倍政権では「3本の矢」だったけれど、今回は「5本柱」》《仕上げは、何となくやっているフリ感を表す「パッケージ」の言葉を使う。安倍政権でも聞いた「経済政策パッケージ」》
福島原発からの処理水海洋放出は30〜40年続くとされ、岸田政権が掲げる水産業の支援策が今後も続くとは限らない。SNS上では、そんな政府の“場当たり的”な対策を揶揄する意味もあるようだ。
●岸田政権でまた「カネ」の不祥事 秋本真利衆院議員、受託収賄容疑 9/7
岸田政権で外務政務官を務めた衆院議員秋本真利容疑者(自民党を離党)が7日、受託収賄容疑で逮捕された。岸田文雄首相は安倍、菅両政権で相次いだ「政治とカネ」に絡む問題を断ち切るとしてきたが、昨年後半の4閣僚の「辞任ドミノ」では2閣僚がこの問題に起因して交代。首相は「こうしたことが再び起こらないよう取り組む」と強調していたにもかかわらず、問題は繰り返された。
与党では2020年6月、自民の河井克行元法相と妻の案里参院議員が公選法違反で逮捕され、それぞれ実刑、有罪判決が確定。公明党の遠山清彦元財務副大臣は、日本政策金融公庫の融資を違法に仲介したとして、貸金業法違反罪で有罪判決が確定した。
岸田政権の閣僚では昨年11月、政治資金規正法を所管する寺田稔総務相が、政治資金収支報告書に故人の名前を会計責任者として記載した問題などで事実上更迭された。秋葉賢也復興相も、自身の政治団体事務所の賃料を妻らに支払ったとされる問題などが発覚。首相は昨年末、交代に踏み切った。
自民の薗浦健太郎元首相補佐官は、政治資金収支報告書に政治資金パーティーの収入などを実際よりも少なく記載したとして略式起訴された。
秋本容疑者の逮捕を受け、立憲民主党の泉健太代表は国会内で記者団に「許されず、議員辞職すべきだ」と批判。秋本容疑者が岸田内閣で外務政務官を務めていたとして「首相の任命責任が問われる」と指摘した。共産党の小池晃書記局長も東京都内で記者団に「自民党が責任を持ち議員辞職を迫るべきだ」と語った。
松野博一官房長官は記者会見で「国民に不信を持たれないよう、常に襟を正す必要がある」と述べた。
薗浦健太郎氏に続いて千葉で「また不祥事」
秋本容疑者が逮捕された7日、千葉県佐倉市の地元事務所を昼に訪れると、ポスターなどもなく閑散としていた。
「選挙の時しか姿を見なかった。地元の要望を熱心に聞かず、馬主としての私利私欲で政治をゆがめたとしたら許せない」。事務所近くを通った無職男性(76)はそう語気を強めた。
県内では昨年12月、衆院千葉5区の薗浦前衆院議員が、政治資金収支報告書へのパーティー収入過少記載で議員辞職し、今年4月に補選があったばかり。男性は「付き合いで投票するのではなく、候補者がどんな政治家かを見極めないと」と強調する。
秋本容疑者は再生可能エネルギーを推進し、脱原発を訴えてきた。市内で衣料品店を営む女性(76)は「本当に政策として実現したかったのか。お金目的だったのではと疑ってしまう。地元として恥ずかしい」と嘆息する。
過去4回、衆院選挙区で議席を争った立憲民主党県連代表の奥野総一郎衆院議員は「政治とカネの問題の連続で、国民の政治不信につながる恐れがある。再生可能エネルギーが利権のように使われたのなら普及にもストップがかかりかねない」と語った。
自民党県連幹部の一人はこう危機感を募らせた。「不祥事が続いている。選挙も控え、困ったとしか言いようがない」 
●「台湾有事」に備えて「戦う覚悟」があるのか…誤解されがちな麻生副総裁 9/7
自民党の麻生太郎副総裁が訪問先の台北市で、日本、台湾、米国が「戦う覚悟を持ち、相手に伝えることが抑止力になる」と発言し、中国などから批判を浴びている。政治ジャーナリストの小田尚さんは「麻生氏は、日本も台湾防衛に関与するという意思を台湾政府に伝えるとともに、米国も積極的に関与すべきだとの考えを示している。これは台湾有事を回避することにつながる政治的言動だと受け止めるべきだ」という――。
岸田政権の中枢からのメッセージ
自民党の麻生太郎副総裁(元首相)が8月7〜9日、台湾を訪問し、台北市内での講演で、大事なのは台湾海峡を含むこの地域で戦争を起こさせないことで、そのためには「抑止力」を機能させる必要があり、日本や台湾、米国にはいざというときに「戦う覚悟」が求められる、と主張した。岸田文雄政権の中枢から発せられたこのメッセージの意義は小さくない。
麻生氏は、さらに、蔡英文総統と会談した後、記者団に対し、「来年1月の台湾総統選の結果は、日本にとっても極めて大きな影響が出るから、『次の人を育ててもらいたい』と蔡英文総統に申し上げた」と述べ、中台関係の「現状維持」路線を推し進めてきた、民進党政権の継続が望ましいとの考えを明らかにした。
自民党からは昨年12月に萩生田光一政調会長、世耕弘成参院幹事長が相次いで台湾を訪問しているが、党No.2に当たる副総裁の訪問は、1972年の日台断交以来、初めてとなる。
「台湾海峡の平和と安定が重要だ」
NHKなど日本メディアの報道によると、麻生氏は8月8日、台湾外交部(外務省)など主催の国際フォーラムでの基調講演で、中国が台湾への軍事的な圧力を強めつつあることについて、「台湾海峡の平和と安定は、日本はもとより、国際社会の安定にとっても重要だ。その重要性は、世界各国の共通の認識になりつつある」と指摘した。
そのうえで、麻生氏は「今ほど日本、台湾、アメリカをはじめとした有志の国々に非常に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時代はないのではないか。戦う覚悟だ。防衛力を持っているだけでなく、いざとなったら使う、台湾の防衛のために使う、台湾海峡の安定のためにそれを使う明確な意思を相手に伝える。それが抑止力になる」と強調した。
「懲罰的抑止」を成立させる3条件
極めて常識的な発言である。「抑止力」の定義から見ても、的を射ていると言える。
例えば、神保謙慶大教授(国際政治学)は2017年5月、読売新聞への寄稿の中で、「抑止力」について、こう解説している。
「抑止力とは『相手の有害な行動を思いとどまらせる』一般作用を指す。抑止力には様々な形態があるが、その中核を占めるのは、有害な行動に対する報復を予め示す『懲罰的抑止』である。懲罰的抑止を成立させるためには、1相手に対する(堪え難い)報復能力の保持、2相手に対する報復意思の明示、3相手が12を理解すること、という3条件を満たすことが必要となる」
神保氏が説く「報復意思の明示を相手が理解すること」が、麻生氏が言う「戦う覚悟、防衛力を使う明確な意思を相手に伝えること」に相当するのだろう。
麻生氏は講演の中で、抑止力が機能せずに戦闘に至った事例として、1982年の英国とアルゼンチンによるフォークランド紛争を挙げた。当時、英国はアルゼンチンの侵攻をほとんど予想せず、武力によって奪回するという報復意思も明示しなかったとされる。
野党幹部の的外れな批判コメント
これに対し、立憲民主党の岡田克也幹事長は、8月8日の記者会見で、「外交的に台湾有事にならないようにどうするかが、まず求められる。台湾有事になったとしても、米国は、はっきりと軍事介入するとは言っておらず、含みを持たせている。最終的に国民の命と暮らしを預かっているのは政治家なので、軽々に言う話ではない」と批判した。
共産党の小池晃書記局長は8日の記者会見で、「『戦う覚悟』という発言は、極めて挑発的だ。麻生氏は、明確な意思を伝えることが抑止力になると言ったが、恐怖によって相手を思いとどまらせることは、軍事対軍事の悪循環を引き起こすものだ。日本に必要なのは、戦う覚悟ではなく、憲法9条に基づいて絶対に戦争を起こさせない覚悟だ」と語った。
こうした野党幹部のコメントは、国際情勢、抑止力をめぐる議論への理解が乏しく、的外れというほかない。
麻生発言は「政府と調整した結果」
中国は、予想通り反発した。中国外務省は翌9日、「一部の日本の政治家は、台湾海峡の緊迫した状況を誇張して対立をあおり、中国の内政に乱暴に干渉した」との報道官談話を発表した。在日中国大使館も同じ日の報道官談話で、「身の程知らずで、でたらめを言っている」「日本の一部の人間が執拗しつように中国の内政と日本の安全保障を結びつけることは、日本を誤った道に連れ込むことになる」と激しい口調で反論した。
だが、麻生氏の発言は、衆院議員個人のそれではない。麻生氏に同行した自民党の鈴木馨祐政調副会長(元外務副大臣、麻生派)は9日夜のBSフジ番組で、「当然、政府の内部も含めて、調整した結果のことだ」「岸田首相とも極めて密に連携した」と説明している。首相がどこまで関与したかは明らかではないが、その後も政府関係者から麻生氏の見解への異論はうかがえない。
安倍氏の「台湾有事は日本有事」発言
想起されるのは、安倍晋三元首相の「台湾有事は日本有事」という発言だ。報道によれば、安倍氏は2021年12月、台湾で開かれたシンポジウムに日本からオンラインで講演し、新しい日台関係について「日本と台湾がこれから直面する環境は緊張を孕んだものとなる」「尖閣諸島や与那国島は、台湾から離れていない。台湾への武力侵攻は日本に対する重大な危険を引き起こす。台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある。この点の認識を習近平(中国)国家主席は断じて見誤るべきではない」との見解を明らかにした。
確かに、台湾と与那国島は110kmしか離れていない。戦闘機なら、7分前後で到達する距離だ。台湾海峡の安定が損なわれる事態になれば、必ず日本に波及し、その影響は計り知れないだろう。
麻生氏の台湾での講演での発言は、安倍氏の講演の延長線上にあるともいえる。なぜ、このタイミングだったのだろうか。
安全保障環境は「平時から非常時に」
ひとつは、麻生氏に、東アジアの安全保障環境が「平時から非常時に変わりつつある」との認識があるからだ。
昨年8月にナンシー・ペロシ米下院議長(当時)が台湾を訪問したことに中国が猛反発し、台湾周辺で軍事練習を展開し、弾道ミサイルのうち5発を日本の排他的経済水域(EEZ)内の海域に撃ち込んだことがその一例だ。中国軍の目標の一つが与那国島の陸上自衛隊のレーダーだった、と一部で報じられている。
台湾有事が発生すれば、日本が「当事者」になる恐れが大きいこと、台湾に隣接する島嶼部が攻撃されることを想定しなければならないことを意味する。
中国が米国の軍事介入を考慮し、始めに在日米軍基地をサイバー・ミサイル攻撃することもあり得る。米軍が介入し、日本がそれを支援することで巻き込まれるのではなく、いきなり日本の個別的自衛権行使の話になるのである。
その後、習近平国家主席が昨年10月、3期目に入った第20回中国共産党大会で、台湾統一をめぐって、「決して武力行使の放棄を約束しない」「祖国の完全統一は必ず実現しなければならず、必ず実現できる」と強調したことも、台湾有事のリスクをさらに高めている。防衛省筋によると、「必ず実現できる」と述べたのは初めてで、党大会で「武力行使を放棄しない」とうたったのは今世紀に入って初めてだという。
「2027年までに台湾侵攻の準備を」と習氏
ウィリアム・バーンズ米中央情報局(CIA)長官は今年2月、ワシントンでの講演で、習主席が「2027年までに台湾侵攻の準備を整えるよう軍に命じたことを指すインテリジェンス(情報)を把握している」と述べ、内外に警戒を呼び掛けている。27年は習政権の3期目が終わる年に当たる。
こうした緊迫した中台情勢に、麻生氏は、日本も台湾有事に関与(コミット)するという意思を台湾側に伝えるとともに、米国もきちんと台湾防衛に積極的に関与すべきだ、と迫っているとも言えるだろう。
ジョー・バイデン米大統領は、中国が台湾を武力統一しようと図った場合、米国としてどう対応するかを明らかにしないという歴代政権の「曖昧戦略」を踏襲している。それによって、中国による台湾侵攻を抑止すると同時に、台湾が独立を目指そうとする動きを防止する狙いがあるとされている。
米国は犠牲を払ってまで台湾を守るか
バイデン氏は、21年8月から4回にわたって、台湾有事に軍事的に関与する意思を明示しながら、その都度、「米国の政策に変わりはない」とし、関与を否定してきている。
麻生氏の狙いは、バイデン米政権に曖昧戦略から脱却し、台湾防衛への関与を明確にするよう求めることだが、簡単ではない。米国が台湾を守るのは、台湾関係法(1979年制定)によるオプションに過ぎず、台湾に対する協定上の義務はないからだ。米国が多大な犠牲を払ってまで台湾を守るのか、との疑念は残っていくだろう。
「我々民進党の主張は現状維持だ」
だが、曖昧戦略のもう一つの目的である、台湾独立の動きを防ぐことについては、その可能性は極めて低くなっている。
蔡総統は21年10月、建国記念日の祝賀式典で演説し、「我々の主張は現状維持だ。(中台)両岸関係の緊張緩和に期待する」と述べ、統一圧力を高める中国にあらがっている。
台湾の民意は、現状維持派が独立志向派よりも多い。22年6月の台湾政治大学の世論調査によると、「永遠に現状維持」が29%、「現状維持、将来再判断」が28%で、現状維持派が大半を占める。「どちらかといえば独立」は25%、「今すぐ独立」が5%で独立派が3割、「どちらかといえば統一」「今すぐ統一」の統一派は1割に満たない。
もう一つ、麻生氏訪台の時期にかかわる、来年1月の台湾総統選の出馬予定者にも、独立志向派は見当たらない。民進党の候補予定者の頼清徳副総統は、かつて独立派を標榜していたが、現状維持派に転じている。
頼氏は今年1月、民進党主席就任の記者会見で、蔡総統の対中路線を継承する方針を表明し、「中台は互いに隷属しない」「台湾は実質的に独立した主権国家だ。改めて独立を宣言する必要はない」とも語った。
「覚悟」がなければ何も始まらない
麻生氏は8月8日の頼氏との昼食会の冒頭、「台湾の総統となる方の、いざとなった時に台湾政府が持っている力を台湾の自主防衛のために、きっちり使うという決意・覚悟というものが、我々の最大の関心だ」と述べた。頼氏との会談では、抑止力をめぐって議論を深めたという。
麻生氏は同日の記者会見では、総統選について、「台湾はきちんとした人を選ばないと、急に中国と手を組んで儲け話に走ると、台湾の存在が危うくなる」と述べ、中国寄りの国民党の候補予定者の候友誼・新北市長を牽制するなど、台湾内政に際どく踏み込んだ。侯氏は「両岸の交流を強化し、対立を減らす」と中国との関係改善を訴えている。
台湾有事を起こすかどうかは、独裁者・習氏の判断であり、抑止を成立させるには日本、台湾、米国が「戦う覚悟」を示し、習氏がそれを理解することにほかならない。覚悟がなければ、当局間の情報交換、住民避難計画、共同軍事演習も始まらないではないか。
●「岸田政権は正気の沙汰とは思えません」森永卓郎氏 トリガー条項発動ナシ 9/7
ガソリン価格が高騰している。SNSなどではガソリン税を軽減する「トリガー条項」に踏み切るべきという声が上がるが、政府は比較的効果が少ない「ガソリン補助金」で対応することを決めた。背景にはどんな考えがあるのか。経済アナリストの森永卓郎さんに聞いた。
――トリガー条項に踏み切らない政府の背景にはどういった事情があるのでしょうか。
トリガー条項を発動させない理由は二つあると見ています。一つは、岸田文雄首相は予算をなるべく使いたくないという財務省の考えに染まっているのでしょう。岸田首相率いる自民党「宏池会(岸田派)」は、大蔵省(現財務省)出身者が多い。
今回、延長が決まった、石油元売り各社への補助金の内容は、レギュラーガソリンの場合、9月7日から年末までは、1リットルあたり185円を超えた部分は全額補助。一方で、168円から185円までの部分は10月4日までは30%、10月5日から年末までは60%を補助します。全国平均で175円程度を目指すとしています。
しかし、去年の夏まで実施していたガソリン補助は、168円以上になれば、最大補助額35円、さらなる超過分も50%を補助するという内容でした。これに比べれば、今回の補助はだいぶ絞ったことがわかります。
今回のガソリン補助金はは昨年度(22年度)の第二次補正予算から出すとしています。つまり、昨年度の二次補正予算をこれまで使ってきましたが、2兆円ほど残っており、その残りで済まそうとしているということです。
ちなみに23年度の補正予算は予備費として5.5兆円計上されており、その内4兆円が新型コロナ対策や原油・物価高対策を目的にしたものになっています。こちらには手をつけないということです。
昨年度予算の範囲内でやるから限界がある。逆算するとこの程度の補助しかできないということです。
トリガー条項を発動させてないもう一つの理由は、財務省の利権にかかわるからですね。
税金として徴収し、それを補助金として元売りなどにばら撒くことで、利権が生まれる構造があります。財務省としては税収も減り、利権にもつながらないトリガー条項の発動をやろうなどとは絶対に思わないでしょう。
――国民の生活が厳しくなっているなか、岸田首相の経済政策についてはどう見ていますか。
いま岸田政権は激しい緊縮財政を敷いています。安倍政権のときの2020年度の基礎的財政収支は80.4兆円の赤字でした。積極財政をしていたということです。その後、政府は赤字額を大きく減らしていまして、今年度予算の基礎的財政収支は10.8兆円の赤字にまで減っています。
赤字を減らすと聞くと、良いことのようにも聞こえますが、ここで意味するところは、景気が悪くなっているときに、政府は支出を切り詰めているということです。安倍政権と比較すると岸田政権は70兆円も支出が少なく、これは国の1年分の収入と匹敵する額です。
背景にあるのは財務省の思想です。財務省は「日本は借金まみれ」のような印象を与える主張をしています。しかし、それは間違いです。財務省が発表している20年度の政府の連結貸借対照表を見ると、1661兆円の負債がありますが、資産も1121兆円あります。差し引き540兆円の借金となります。ただ、日銀が保有する資産と負債もあわせて考えると、日本の借金はわずか8兆円になります。今年度末には借金がゼロになって、黒字になっている可能性が高いです。
それにもかかわらず、国民にお金を出さず、逆に増税する岸田政権は異常です。正気の沙汰とは思えません。岸田首相の判断は冷静な経済的、財政的判断ではなく、「財政を均衡させてなくてはいけない」という「財務省の教義」に捕らわれているのだと思います。
経済が厳しく景気をよくしていく必要がある中で緊縮財政を実施するなど経済政策としてあり得ません。財務省の主張はもはやカルトです。私は財務省のことを「ザイム真理教」と呼んでいます。
――トリガー条項を発動すると国民の生活に混乱が生じる、というのが政府の立場のようです。
混乱なんて生じるわけありません。ルール通りにやればいいだけです。トリガー条項は、レギュラーガソリンの1リッターあたりの価格が160円を3ヶ月連続で超えたら、臨時増税分の25.1円の課税を止め、価格を下げる。そして、130円を3か月連続で下回れば、課税を戻すというとてもシンプルなルールです。混乱のしようがありません。
混乱が生じることがあるならば、対策を講じておけばいいだけです。「混乱が生じる」という政府の答弁は9年前から同じと報道されていました。ルール通りにやっていれば、今ごろガソリン価格は、150円半ばくらいでしょう。国民もその効果を実感できたはずです。
ちなみに、9月使用分の電気・ガス料金が各社で値上がりします。政府はこれまで1キロワットあたり7円の補助金を出していましたが、9月使用分から半分の3.5円に減らします。9月に入っても暑い日が続いているので、10月にびっくりするような請求書が来ると思います。
岸田首相は「国民が効果を実感できるような物価対策を講じる」、「岸田内閣の最優先課題の一つは物価高対策」といったようなことを言っていますが、実際にやっていることは、セコイことしかしていません。
アメリカから米国製巡行ミサイル「トマホーク」を400発購入すると岸田首相は言っていましたが、それを購入するよりも、ガソリン代や電気・ガス代を下げる施策に力を入れたほうが、国民の暮らしを守ることにつながると思いますね。
――生活が苦しくなる中で、消費税減税を望む声も出ています。
私は消費税を減税することはできると思います。ゼロにすることも大丈夫だと思います。
財務省はこれまで日本が大赤字になると、国債と円が暴落し、ハイパーインフレが起きると危機感を煽ってきました。しかし、安倍政権時の20年度に80兆円の赤字を出しても国債の暴落も円の暴落も起きませんでした。私はこのことは安倍政権が実施した画期的な実験だったと思います。
――緊縮財政はこのまま続くのでしょうか。
少なくとも岸田首相がいる限りは続くでしょう。解散にいつ出るかわかりませんが、岸田首相が1年後の自民党の総裁選を乗り切ると、宏池会出身の首相の中で最長の在任期間である池田勇人元首相の1575日を抜く可能性も出てきます。岸田首相がここに色気を出し始めたら、国民の生活はより一層ボロボロになるでしょう。
安倍元首相は回顧録の中で、財務省は「省益のためなら政権を倒すことも辞さない」と批判していました。財務省の官僚は政治家に対して「ご説明」にまわっており、自分たちの教義を受け入れる信者を増やしています。自民党に限らず、立憲や共産党といった野党も信じている、メディアも国民も信じている状況です。
やはり国民の怒りがもっと高まらないといけないと思います。もし「日本は借金だらけで増税もしかたない」「いま減税できないのも仕方ない」などと思っているようであれば、それは財務省の教義に洗脳されています。早く目を覚ますべきだと思います。
●岸田首相に忍び寄る“中国・ファーウェイ”、英米では「スパイ活動疑惑」批判 9/7
中国政府とのつながりという不信感を拭い去れない中国の通信大手ファーウェイは、米国を中心に大いに警戒されている。そんなファーウェイが岸田政権に忍び寄っている。
米国がスパイ活動の懸念を表明してきた中国通信大手のファーウェイ
中国の巨大通信企業、ファーウェイ(中国語表記:華為技術、英語表記:HUAWEI)は、5G(第5世代移動通信システム)技術とスマートフォンの世界的なリーディングカンパニーである。
中国の深センに拠点を置くファーウェイは、国内外に製品を販売してきた。1987年に、同社のCEOである任正非(ジン・セイヒ、Ren Zhengfei)が設立。同社のサイトによれば、20万人以上の従業員を抱える「独立した民間企業」であるとしているが、例えば米トランプ政権においては「ファーウェイは最終的に中国共産党に支配されており、海外に設置された同社の機器がスパイ活動を助長するために使用される可能性があると主張」された。ファーウェイはこれを否定している。
米国をはじめとする多くの国では、ファーウェイにはスパイ行為や知的財産の窃盗の恐れ・可能性があると指摘されてきた経緯がある。そして米国、英国などでは、ファーウェイをはじめとする中国のテクノロジー企業に厳しい規制を課してきた。
米国の政府・議会関係者は、ファーウェイを中国共産党(CCP)の商業的延長と見なしていて、同社が国際制裁に違反し、知的財産を盗み、サイバースパイを行う可能性があるとして、米国の国家安全保障を脅かしていると主張してきたのだ。
ファーウェイの5G機器には、中国政府が大量のデータを収集・集中管理し、通信ネットワークや公共事業を攻撃するために必要なアクセスを中国・北京に与えるバックドアが含まれている可能性も懸念されている。
米国の六つの情報機関トップが「ファーウェイ製品を使うな」と注意喚起
米議会がファーウェイに関する警告を受け始めたのは2012年のことだ。米下院情報特別委員会の報告書は、ファーウェイと同じく中国の通信企業であるZTEについて、2社が製造した機器を使用することは、「米国の核心的な国家安全保障上の利益を損なう可能性がある」と結論付けた。
また18年には、米中央情報局(CIA)と米連邦捜査局(FBI)、米国家安全保障局(NSA)を含む六つの情報機関のトップが、ファーウェイ製品を使用しないよう米国人に注意を促し、同社が「検知されないスパイ行為」を行う可能性があると警告した。
さらに、米シンクタンクの外交問題評議会のサイトでは、今年の2月8日に「Is China’s Huawei a Threat to U.S. National Security?(中国のファーウェイは米国の国家安全保障に対する脅威か?)」と題した記事が掲載された。
「中国政府は、中国の民間企業に対し、中国共産党支部の設立を法的義務化するなど厳格な規制と、国が援助する投資を通じて、強い影響力を持っている。アリババの共同創業者であるジャック・マー氏や、文化大革命時に人民解放軍でエンジニアとして活躍したファーウェイの創業者であるレン氏など、多くの大企業の幹部は中国共産党員だ」
「習近平国家主席の指導下で、政府と民間の境界がますます曖昧になっている。専門家によれば、中国共産党は特にハイテク企業に対する影響力を拡大しようとしているという。最近では、国有企業や地方政府が民間企業への投資を増加させている。外国の報道機関は、政府がハイテク企業に対して、中国共産党が直接保有する株式を提供し、党員が経営においてより大きな役割を果たすよう圧力をかけ始める可能性があると報じている。ファーウェイでそのようなことが起きた証拠はないが、北京は動画共有サービス大手TikTokの親会社であるByteDanceの株式を取得している」
ファーウェイはスパイ活動疑惑を繰り返し否定するが…
西側諸国でファーウェイへの不信感が高まる中、ファーウェイは中国共産党と距離を置き、自社の機器がスパイ活動に使われたことはないし、今後も使われることはないと繰り返し主張し、ファーウェイは政府からの諜報活動の要請には答えないとしている。
ただし、中国においては国家安全法(15年)、国家情報法(17年)が制定され、国民と企業には「国家の安全を維持する責任と義務」があり、中国企業は中国の情報収集当局を「支援、援助、協力」しなければならない。これらの法律の存在もあって、西側諸国の懸念を払拭するには至っていない。
19年以降、米国ではサプライヤーが輸出ライセンスなしにファーウェイに製品を販売することを禁止し、同社が半導体チップを設計・製造する際に米国の技術を使用することを禁止した。これらの規制導入後、ファーウェイの売り上げ、利益、市場シェアは急落。かつては世界最大の販売台数を誇っていた同社の携帯電話事業は壊滅的な打撃を受けた。
米国の制裁によって半導体チップを入手できないため、5G携帯電話の製造中止を余儀なくされた。そんな事情もあり、ファーウェイの携帯電話端末市場における世界シェアは、20年の一時期には20%近くに達して米アップルや韓国サムスン電子を上回っていたが、22年にはわずか4%にまで落ち込んだのだ。
しかし、今、そんな厳しい制裁でどん底に突き落とされたファーウェイは復活を遂げようとしている。
まず、「中国政府は、22年にファーウェイに前年比2倍の65.5億人民元(約1300億円)相当の政府補助金を支給。さらに特定の研究プロジェクトに関連する条件付き資金として、2021年の3倍となる55.8億人民元(約1100億円)を受け取った」(英紙「Financial Times」、23年5月3日)という。
結果、米国による制裁措置により、プロセッサー・チップやその他の技術へのアクセスが制限されているにもかかわらず、ファーウェイは23年上半期の売上高が前年比で3%増加を果たした。
ファーウェイによると、ICTインフラ部門の売上高は1672億元(約3.3兆円)に達し、コンシューマー部門の売上高は1035億元(約2.1兆円)に上った。電気自動車向けにネットワーク技術などを提供する自動車部門の売上高は10億元(約200億円)だったという。
復権を狙うファーウェイは岸田政権に忍び寄る
ファーウェイは虎視眈々(こしたんたん)と世界市場での復権を狙っているようだ。その手始めが日本の岸田政権だ。岸田文雄首相は、8月11日から16日まで、夏休みを取ったが、8月14日に、東京・本郷の東京大学へ行き、松尾豊教授の研究室で生成AI(人工知能)に関する講座に参加したことを記憶している人もいるだろう。
この松尾氏が理事長を務める一般社団法人日本ディープラーニング協会は、スポンサー(GOLD賛助会員)に、ファーウェイの関連企業である華為技術日本(ファーウェイ・ジャパン)が名を連ねる組織だ。
また、20年に中国の「上海展覧中心(上海EXPOセンター)」で開催された「HUAWEI CONNECT 2020」において、松尾氏はリモートで講演を行っている。このイベントでは、日本ディープラーニング協会の理事である江間有沙東京大学未来ビジョン研究センター特任講師(当時)もリモート講演を行っている。
そしてその松尾氏と江間氏は、AIの活用に向けた政府方針について有識者と議論する政府の「AI戦略会議」の構成員名簿に名を連ねている。松尾氏に至っては同会議の座長を務めている。つまり、政府のIT分野の大方針を決める重要人物だ。
米国を中心に、世界中から締め出しを食らっているファーウェイの狙いは一つだろう。
●「国民を馬鹿にしている」エッフェル姉さん・松川るいは雲隠れで火消しに成功 9/7
支持率下落に悩む岸田文雄首相が起死回生のため近く内閣改造・自民党役員人事に踏み切る。「ポスト岸田」を狙う茂木敏充幹事長や河野太朗デジタル相らの処遇が焦点となっているが、もう1つの注目点は重要ポストへの女性起用だ。ジェンダーギャップ指数が世界最低水準にある日本は女性閣僚が全19人中2人にとどまっており、高市早苗経済安保担当相の交代論もくすぶる。
経済アナリストの佐藤健太氏は「『エッフェル姉さん』『ニョッキ松川』『松川るい16世』などとさまざまな異名がつけられた松川るい参院議員には、従来重要ポスト起用が期待されていたが、今回の騒ぎで遠ざかった。首相にとって大胆な女性起用は賭けになるだろう」と指摘する。
フランス研修炎上を受けた松川るいは女性局長を辞め、火消しにとりあえず成功
8月22日、自民党は女性局ニュースのトップに「女性局フランス研修について」と題した一文を掲載し、お詫びの言葉を並べた。女性局長だった松川参院議員や今井絵理子参院議員といった女性局メンバーら38人が7月下旬にフランスを訪問し、エッフェル塔を背に松川氏ら3人が両手を頭の上で合わせる「エッフェル塔ポーズ」を笑顔でとっている写真をSNSに投稿。「税金で観光旅行に行っているのか」「国民感覚とはかけ離れている」などの批判が殺到したことを受けてのものだ。
女性局名の“謝罪文”には「今般のフランス研修につきまして、不適切な情報発信等により国民の皆様、党員の皆様の信頼を損なう事態となりました。ここに国民の皆様、全国でお支え頂いている皆様にあらためてお詫び申し上げます。今後、女性局として、頂いている様々なご意見、ご批判を真摯に受け止め、地道に活動を積み重ねながら、信頼回復につとめてまいる所存であります」と記されている。
松川氏は8月21日に女性局長の辞表を党執行部に提出し、女性局役員のページからは松川氏の名が消えている。表舞台から姿を消したことなども影響してか、JNNの世論調査では内閣支持率が上昇。岸田政権としては“火消し”にひとまず成功した形だ。
現役外務省幹部「松川るいは将来の首相候補だったが、残念だ」
ある外務省幹部は悔しさをにじませる。「松川氏は外務官僚出身で、夫は現職の幹部。外交・安全保障分野に強い与党議員として防衛政務官や党国防部会長代理を歴任し、将来の宰相候補として入閣が期待されていただけに残念だ」。昨年夏の参院選大阪選挙区で2回目の当選を果たし、一時は高市経済安保担当相の後任として名があがっていた才女の“失点”は高くついたとの見方が広がる。
自民党内の女性議員は受け止めが複雑だ。「男性、女性に関係なく、国民が困窮する中であのようなポーズ写真をSNSに投稿すれば国民から批判されても仕方ない」と冷静な声があがる一方で、「『やっぱり女性だから・・・』と言われることになれば悲しい」などと岸田首相が女性登用を躊躇するきっかけになることへの懸念もある。
高市経済安保担当相は岸田首相に異論をぶつけた経緯から、次の組閣で抜ける可能性が高い
岸田内閣には高市経済安保担当相、永岡桂子文部科学相という女性の閣僚2人がいるが、政権内では高市氏の交代は「織り込み済み」となっている。前回の自民党総裁選で首相のライバルだった高市氏は安倍晋三元首相の支持を得て保守層を取り込み善戦した。影響力拡大を警戒した岸田氏は閣内に取り込んだが、昨年末の防衛費大幅増に伴う増税プランを決定する際には首相方針に異論を唱え、「罷免されても仕方がない」と啖呵を切った経緯がある。
最終的には首相の説得に応じたものの、「何を言い出すかわからない」(政府関係者)と警戒心がくすぶる。ただ、後ろ盾だった安倍氏を失ったことで「もう高市氏は党総裁選に出られないのではないか」(別の政府関係者)との声もあり、閣内に取り込んでいる必要はなくなったとの見方が広がる。
もう1人の永岡文科相については、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐり政府は10月中にも解散命令を裁判所に請求する方向で検討に入ったと報じられている。松野博一官房長官は9月4日の記者会見で宗教法人法に基づく対応を問われ、「文科相が報告徴収、質問権の行使などを通じて着実に進めている」と述べており、9月に実施予定の内閣改造で永岡氏を交代するのは適切ではないとの声が根強い。
次の女性大臣二人の最有力候補
当初、次の内閣改造では女性閣僚の大幅増が予想されてきた。その理由の1つに世界経済フォーラムが6月に発表した2023年版「世界男女格差報告書」がある。日本のジェンダーギャップ指数は調査対象となった146カ国中125位で過去最低となり、特に「政治参加」の評価は138位と最も低いレベルだったからだ。岸田政権には国会議員(衆院議員)の男女比に加え、閣僚の女性の数を改善していく機運が高まっていた。
だが、7月末の「エッフェル姉さん」の失点によって首相が大胆な起用を躊躇する可能性は高まる。それでも現在2人の女性閣僚がいることを考えれば、「最低2人」は確保したいところだ。では、高市氏が交代濃厚の今、他には誰が候補となりえるのか。
最有力候補は、上川陽子党幹事長代理と小渕優子党組織運動本部長の2人だ。上川氏は東大卒業後、三菱総合研究所研究員を経てハーバード大学大学院に留学(政治行政学修士)というキャリアを持ち、政治家としても実務能力の高さに定評がある。少子化担当相や法相を歴任し、首相が率いる「宏池会」(岸田派)に所属している点も入閣に追い風となる。
もう1人の小渕氏は、早くから将来の女性宰相候補として期待されてきた人物だ。父親の小渕恵三元首相と近かった青木幹雄元官房長官や森喜朗元首相の寵愛を受け、党や閣内で要職を重ねてきた。2014年に「政治とカネ」問題によって経済産業相辞任に追い込まれたものの、地道に汗を流す姿勢には共感も広がる。
小渕を選ぶか茂木を選ぶか…岸田首相の大きな賭け
とはいえ、小渕氏が所属する派閥「平成研究会」(茂木派)を率いるのは茂木敏充幹事長であり、党三役のうち2人を茂木派から起用するわけにはいかない。党内最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)が党三役の1つを確保することを考えれば、小渕氏は茂木氏が執行部を外れる以外に重要ポストにのぼりつめることはできないのだ。上川氏を入閣させる場合にも岸田派の閣僚数を増加させることになれば、他派閥からの批判が予想される。普通に考えれば、岸田派の閣僚を1人辞めさせる必要が生じる。
小渕氏を選び、来年夏の自民党総裁選でライバルとなり得る茂木氏を無役にするのか。政権の安定を重視し、茂木幹事長続投を決めるのか。あるいは「第3の道」でのサプライズを見せるのか。内閣支持率の続落が止まらない中、首相が断行する内閣改造・党役員人事は政権の行方を左右する大きな賭けになることは間違いない。

 

●岸田総理の目玉政策「令和版デジタル行財政改革」で新たな組織を立ち上げへ 9/6
岸田総理大臣が目玉政策に掲げる「令和版デジタル行財政改革」を推進するため、新たな組織を立ち上げることが分かりました。
岸田総理が打ち出した令和版デジタル行財政改革は、デジタル技術を使って国と地方の行政の効率化を目指すものです。
複数の関係者によりますと、新たな組織は内閣官房に置かれ、50人規模となる見込みで、すでに人選が進められています。
岸田政権の新たな目玉政策として総理直轄の司令塔を設けることで、支持率アップにつなげる狙いがあるとみられます。
担当閣僚も新設される見通しですが、デジタル庁やデジタル田園都市国家構想実現会議事務局など、デジタル関連の組織はすでに複数あり、「これ以上、組織を増やしても混乱を招くだけだ」との声も上がっています。
●岸田首相「人事は適材適所」で麻生氏も木原氏も続投報道…SNSで批判殺到 9/6
岸田文雄首相は、9月中に実施を予定する内閣改造・党役員人事で、麻生太郎・党副総裁を留任させる意向を固めた。また、最側近の木原誠二官房副長官を続投させる方向だという。9月6日、朝日新聞が報じた。
岸田首相は5日、インドネシアとインド歴訪に先立ち、官邸で記者団に「適材適所に尽きる。タイミングはまだ決まっていない」と述べるにとどめていた。
「麻生派は55人が所属する党内第2派閥。8月の派閥研修会で麻生氏は『岸田政権のど真ん中でしっかり支える』と語るなど、一貫して岸田首相を支持してきました。
ただ、8月末に徳島市内での講演で、岸田首相の防衛費増額、原発再稼働の実績をあげたうえで、『支持率なんかあてにならない』と述べた際は、激しい批判を浴びてもいます。
岸田首相は、2021年8月、党総裁選前に、『党役員は1期1年、連続3期までとすることで権力の集中と惰性を防ぎたい』と党改革を訴えていたこともあり、麻生氏の留任は『内向き』ととられかねません」(政治担当記者)
木原官房副長官に関しては、妻が元夫の死亡をめぐり警視庁から事情聴取を受けたことや、木原氏が、本番行為をさせる違法デリバリーヘルス(派遣型風俗店)の常連だったことを「週刊文春」が報じている。
そのためか、麻生副総裁留任、木原官房副長官の続投の意向が報じられると、SNSでは批判的な声が多くあがった。
《麻生さん、今年83歳でしょ?そろそろ退いて頂いた方がいいのでは?いつまでも日本が変わらない気がする》
《麻生を留任しスキャンダル渦中の木原を続投させる意向、加えて処理水の中国関連では未だ二階に頼りきりとは。岸田にはリーダーシップも決断力もない》
《これって最悪の選択じゃないの》
茂木敏充幹事長の処遇も焦点となっている。9月5日の記者会見で、茂木氏は2024年秋の党総裁選への対応を問われ、「少なくとも今、幹事長だ。幹事長として、内外の課題が山積するなか、政権をしっかり支えていく。これが私の仕事だ」と述べた。
「この発言は、幹事長続投に意欲を示したものとみられます。茂木氏を幹事長から外せば、党総裁選に出馬しかねない。無風での総裁再選を目指す岸田首相の悩みどころです。
とはいえ、9月3日に発表されたJNNの全国世論調査では、『大幅に替えるべき』が51%で、『あまり替えるべきではない』の34%を上回っています。
内閣支持率の低迷に悩む岸田首相にとって、ここで『大幅な刷新感』を出さなければ、支持率回復は見込めません」(同前)
8月30日、岸田首相は二階俊博元幹事長と党本部で会談し、近く内閣改造・党役員人事に着手する方針を伝えたが、二階氏は「好きにやったらいい。全面支援する」と応じたという。内閣改造・党役員人事で、岸田首相は支持率を回復できるだろうか。
●岸田政権「対中弱腰」 台湾が「台湾省」と記された中国「新地図」に抗議も… 9/6
中国が領有権を一方的に主張する新地図を公表して、アジア各国が猛反発している。中国とASEAN(東南アジア諸国連合)は6日、インドネシアの首都ジャカルタで首脳会議を開くが、激しい議論も予想される。実は新地図では、日本固有の領土である沖縄県・尖閣諸島も、中国名「釣魚島」と表記され、新たな境界「十段線」の中国側に組み込もうとする意図が感じられた。外務省は外交ルートで抗議していたが、岸田文雄政権は「中国を刺激しない」方針なのか、夕刊フジが取材をかけた翌日(5日)まで「抗議の事実」を公表していなかった。識者からは、岸田政権の弱腰、危機意識の欠如を懸念する声が噴出している。
問題の地図は、中国自然資源省が8月28日に公表した「2023年版標準地図」だ。同省のHPでは、「中国地図」や「世界地図」が、さまざまな図法で複数公表されている。
これらの地図の中には、習近平国家主席率いる中国が南シナ海の大半を勝手に囲い込んだ境界「九段線」に加え、台湾の東側まで拡大した「十段線」が記されていた。台湾は「台湾省」と記されていた。フィリピンやベトナム、マレーシア、台湾などが公表直後から猛烈に抗議している。
前述したように、尖閣諸島を、中国名・中国呼称の「釣魚島」「Diaoyu dao」などと表記している。
さらに不穏な兆候もある。
台湾の東側まで拡大した「十段線」のラインを延長すると、尖閣諸島を中国側に含む可能性があるのだ。
外務省によると、地図の公表直後、一連の事実を把握し、在日中国大使館に対し、課長級のルートで「独自の主張は受け入れられない」などと抗議した。北京の日本大使館ルートでも抗議した。十段線の意図についても、「中国側に詳細に事実確認をした」という。
ところが、岸田政権は「抗議の事実」について、すぐに公表しなかった。松野博一官房長官が5日午後の記者会見でやっと、外交ルートを通じて厳重に抗議し、即時撤回を要求したと明らかにした。夕刊フジが、外務省に取材した翌日である。
外務省は声明などを出さなかった理由について、「事案により判断している」というが、アジア各国が強烈に反発しているのとは対照的だ。
福井県立大学の島田洋一名誉教授は「中国共産党が重視するのは『実効力』であり、現実の伴う『行動』だ。日本の国益に反する中国の主張に対して、明確かつ即座に『ノー』と通告し、国内外に発信しないと意味がない。岸田首相や閣僚、外務省幹部などが繰り返し、『尖閣諸島は日本領土である』と意思表示し、中国の暴挙に抗議を伝えないと、中国は意に介さない。事なかれ主義の対応は、日本を軽視させる誤ったメッセージになる。日本の反応は国際社会にまったく伝わらず、中国側の主張を認めたと受け止められかねない」と危機感を示す。
ちなみに、中国が地図を公表した直後の8月31日、フィリピンは「中国の主権を正当化しようとする試みで何の根拠もない」と声明を発表した。南シナ海での中国の主権主張を退けた2016年の仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)裁定の順守を求めた。
ベトナムも同日、「ベトナムの海域に対する主権、管轄権を侵害している」と非難したほか、台湾の外交部(外務省に相当)報道官は「(台湾は)絶対に中国の一部ではない」と猛反発した。
中国事情に詳しい評論家の石平氏は「アジア各国が次々と反論したのは主権国家として当然であり、日本の『沈黙』はことさら目立った。はっきり主権を主張しなければならない局面なのに、岸田政権の弱腰は何に忖度(そんたく)しているのか」と語気を強めた。
島田氏「自国領」現実化のための軍事行動に警戒
ところで、中国が公表した新地図から、どんな「意図」「野心」が読み取れるのか。
島田氏は「中国は国家として『宣言』したことを必ず実行しようとする。新地図で宣言した『自国領』を現実化するために、軍事を含めた行動に踏み出す懸念は極めて高い。台湾を含めて、有事に備えた具体的な準備が必要だ」と警鐘を鳴らす。
石平氏は「中国の野望を図面化したところで得るものはなく、むしろ近隣諸国の反発と警戒を招き、関係を悪化させただけだ。共産党政権は意思統一を欠き、各部局が習氏に忖度し、身勝手な行動をする傾向が強まっている。党中央も事態の収拾に追われている」と語る。
ASEAN関連首脳会議の後、インドでもG20(20カ国・地域)首脳会議(9、10日)が行われる。問題の新地図では、インド北東部のアルナチャルプラデシュ州が、中国領「南チベット」として記載されていた。G20議長国で同州を実効支配するインドでは、会議直前の地図公開を「円滑な議事進行の妨げ(で敵対行動)」との受け止めが広がっているという。
ともかく、余計な刺激を避けようと、明確な主張をしなければ、岸田政権の弱腰ぶりを見透かされるだけだ。中国の主張はエスカレートして、既成事実を積み重ねられてしまう。岸田政権に日本を任せられるのか。 
●「大阪万博は国家事業」って維新のご都合主義では? …責任はどこへ?  9/6
パビリオン建設が遅れる2025年大阪・関西万博。そもそも開催できるのか、日に日に疑問の声が高まる中、強力に旗振りしてきた日本維新の会から、首をかしげたくなる発言が相次いで出た。「万博は大阪の責任ではない」「国家事業だ」。開き直りや自己保身にも聞こえる言葉。この期に及んで国頼みをあらわにするのは、ご都合主義が過ぎないか。
「大阪の責任ではなく…」
「国のイベントなので、大阪の責任ではなく、国を挙げてやっている」
発言の主は日本維新の会の馬場伸幸代表。万博の海外パビリオン建設が遅れている問題を巡り、8月30日の党役員会でこう述べた。
同じ日に記者会見に臨んだのが藤田文武幹事長。馬場氏と歩調を合わすように「(万博は)国家事業」と主張。さらに「与野党の別なく一丸となって結束し、成功に向けて取り組むべきだ」と強調した。
万博に関して「国」を前面に押し出す維新幹部の2人。ただ万博といえば、大阪府と大阪市が深く関与してきたのではないか。
さかのぼること9年前。大阪府の万博推進局によると、大阪維新の会の府議団などが2014年8月、にぎわいづくりの一環として万博の誘致を提案した。
15年には、府が設立した検討会が誘致の可能性検討状況について報告書をまとめ、16年に府の別の会議が基本構想を策定。17年に府市、地元経済界などが主体となって「日本万国博覧会誘致委員会」を設立すると、25年万博への立候補を経て、18年11月に大阪が開催地に決まった。
19年1月には、開催準備に当たる「日本国際博覧会協会(万博協会)」が国主導で発足した一方、協会は府の咲洲庁舎内に事務所があり、府市の職員が派遣されているほか、幹部の副会長には府知事と大阪市長が名を連ねる。費用負担の面でも府市は深く関与しており、協会によると、万博の会場建設費1850億円のうち、国と府市、経済界で3分の1ずつを負担する。
維新は選挙公約に「万博の成功に向け」
大阪が地盤の日本維新の会も万博推しだ。
そもそも府市のトップは維新の幹部が務めてきた。昨年の参院選の選挙公約でも「万博の成功に向け、国と開催都市、官民が強力に連携して国内機運の醸成に努めます」「関連事業は会場周辺のみならず大阪府全域を始め、関西や全国へと拡大・展開します」とうたっている。
大阪在住のジャーナリストの吉富有治氏は「もともと万博の誘致で一生懸命旗を振ってきたのは府市であり、維新だ。大阪開催が決まってから最近の選挙まで『誘致に成功したのは維新の功績だ』と大々的に宣伝してきた。地元では万博イコール維新という認識に揺るぎはない」と説く。
その万博を巡っては、最近になってパビリオン建設の遅れが顕在化した。労働規制の緩和を画策しているとも報じられ、強い批判の声が上がっている。
逆風下で維新幹部から出てきたのが冒頭の発言だ。
吉富氏は「もともと旗を振り、会場として夢洲ゆめしまを選んだなど『舞台装置』を整えたのに、今になって責任を逃れようとする姿勢はひきょうだし、つじつまが合わない」と批判する。
神戸大の小笠原博毅教授(社会学)も「国政でさらに上を目指す維新にとって浮動票の確保は生命線。市民から支持されないと思ったら、頭の向きを変える政党の体質が現れている」と述べ、開き直りを想起させる姿勢を非難する。
高速道路も液状化対策も
維新幹部の発言で気になるのは「万博は国家事業」という部分もだ。この言葉を聞くと、費用面の懸念が浮かんでくる。
会場建設費は先に触れた通り、国と府市、経済界が3分の1ずつ負担する。当初は計1250億円だったが、1850億円に。既に1.5倍だが、資材高騰は高止まりしており、さらに上振れするリスクもある。
万博関連費を巡る問題はこれだけではない。
万博へのアクセスとして使う高速道路の整備では、工法の見直しなどによって2度、工費が増額され、当初1162億円だった整備費は2957億円と倍以上に。この整備は国が55%、市が45%を負担する。
万博開催地の夢洲の跡地にはカジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)が予定されているが、用地の土壌汚染と液状化への対策で、市は約790億円の負担を決定している。
そんな中で飛び出したのが「万博は国家事業」という言葉だった。
なぜ夢洲でなければいけなかったのか
前出の小笠原氏は「ポピュリズム政党として短期的には無責任だと批判されても、国からの支持と援助を最大限に引き出し、大阪・関西圏の傷を最小限に食い止めて成功にこぎつけたとシナリオを描く維新関係者はいるだろう」とみる。
膨らむ万博関連費を見るにつけ、「地盤に難がある夢洲をなぜ活用しようとするのか」と疑問が湧く。
かつてごみが埋められ、「負の遺産」とも言われた人工島・夢洲を巡っては、2011年の大阪府知事・市長のダブル選後、市のトップになった橋下徹氏が夢洲へのカジノ誘致を検討していることが表沙汰に。今はIRの整備構想が進む。
万博はカジノをつくる大義名分にすぎない?
帝塚山学院大の薬師院仁志教授(社会学)は「維新にとっては、もともと夢洲にカジノをつくることが目的。万博はその整備を進めるための大義名分に過ぎない。もっといえば、夢洲の開発そのものを目的にしているように見える。バブルの過剰投資と同じ。維新の理屈は当初から変わっていない」と語る。
維新によって役割の重さが強調された国は最近、どう振る舞っているのか。
8月31日に官邸で開かれた万博に関する会合で、岸田文雄首相は「成功に向けて政府の先頭に立って取り組む決意だ」と表明した。
内閣官房の万博担当者は取材に「関係者が一体となって加速化するという会合だった」と話した。しかし、新しい方策を尋ねても具体的な回答はなかった。
政治評論家の有馬晴海氏は「岸田首相は自分が万博誘致を決めたわけでもなく、思い入れはあまりないだろう。ただ、突き放すことはできないから、あくまで型通りの対応をしただけでは。岸田氏をはじめ、多くの自民党の政治家にとって、『今更泣きつかれても』というのが本音ではないか」と推察する。
どこまで必要なのか、議論して中身を練ったのか
とはいえ、国が今以上の役割を担うとなると、追加費用が必要になった場合、さらなる国費が投入される可能性も否定できない。その財源は当然ながら、国民の税金ということになる。
駒沢大の山崎望教授(政治理論)は「維新は党のカラーとして対立構図をつくるのが得意だが、議論や調整は苦手な印象がある。大阪での万博開催ありきで、どこまで日本に必要なのか、議論して中身を練ったのか疑問だ」と指摘する。
このままでは、広く国民の理解は得られないとして、山崎氏はこう提言する。
「現実に今の予定のままの万博ができるとは思えない。計画を縮小し、お金がかからないものにして、合意を広げるしかないのではないか。それができないのなら、撤回を含めて考え直すべきだ」
デスクメモ
岸田氏は処理水放出で自らの非を棚上げする。「地元理解なし」を顧みずにいる。維新も万博を巡って自らの責任を棚上げする。第2自民党を体現するのかと皮肉を語る場合ではない。今を放置すれば権力者がやりたい放題に。それを甘受するのか。私たちに問いが突き付けられている。
●ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか 9/6
いかにも岸田政権らしい補助金延長の「ぐずぐず」
ガソリン価格が上昇している。原油価格や円安の影響もあるが、政府の補助金が予定通り縮小されていることの影響が大きい。このままだと1リットル当たりで200円を超えてくる可能性がある。
補助金の縮小は「予定通り」であり、これに伴いガソリンの小売価格が上昇することは国民に周知されていたはずなのだが、ここにきて不満が高まっている。「対策」を求める声があり、岸田文雄首相は、9月で終了するはずだった補助金の年末までの延長を決め、さらに補助金をかさ上げすることにした。そして、今後、補助金はさらに延長される可能性が大きい。
自民党内では、国民がメリットを「実感できる」措置、効果が「目に見える」補助金を求める声が上がっていて、報道ベースでは、「低迷する内閣支持率を気にする」岸田政権という文脈の注釈が付く。
政治家が国民の支持を気にすることは必ずしも悪いことではないが、補助金を下げて、戻して、様子を見るという推移は、いかにも岸田政権らしい「ぐずぐず」の展開だ。政策として一貫性があまりにない。周囲の官僚たちは「混乱しているのは政治家さまで、われわれは振り回されています」と言いたいかもしれないが、両方まとめて無能なのではないか。
「超」複雑なガソリン価格とトリガー条項
ガソリン価格の仕組みは税金と補助金が絡んで複雑であり、政策論として複数の論点をはらんでいる。
元売り業者が、原油を輸入して精製し、保管・輸送してさらにマージンを乗せた元売り価格に、ガソリン税が乗るが、ガソリン税は本則の税率に加えて暫定的な特例税率が上乗せされている。それぞれが小売価格では1リットル当たり20円台後半の金額だ(現在本則28.7円、特例25.1円)。さらに、石油石炭税(2.8円)が加わって、これにガソリン小売業者のマージンが乗って小売価格が形成され、そこに消費税が掛け算されて追加された金額が、ガソリンスタンドでユーザーが目にするガソリン価格になる仕組みだ。
さらに、分かりにくく、補助金と並んで議論になっているのが、暫定税率=特例税率を巡る「トリガー条項」を巡る事情だ。暫定税率は、道路整備のために財源が必要だとして1970年代に導入されたものだが、2010年に道路整備は一段落したとしてこれが廃止された。ところが、同時に同額が特例税率として残って一般財源化された。
ただし、この時にガソリン価格が3カ月連続で160円を超えた場合には特例部分を減税する「トリガー条項」が導入された(発動後、価格が130円を3カ月連続して下回れば税率が元に戻るルールだ)。
ところが、このトリガー条項が11年の東日本大震災の復興財源の確保を理由に凍結されて現在に至っている。
新たな補助金制度を作るよりトリガー条項の凍結解除を検討せよ
制度の趣旨を素直に解釈すると、トリガー条項は、資源価格高騰などやむを得ない事情でガソリン価格が急激に上昇した場合に、これに対応しきれない業者や生活者を救済する激変緩和措置として設けられたものだろう。まさに今の状況がそれに当たるので、この凍結解除、すなわち自然な発動が求められるのではないかと思われるのだが、その気配は全くない。
新たな補助金制度を作るよりも、元々ある制度の趣旨を生かす方が自然だし、制度をシンプルに運用できる。しかし、政府の意向は、暫定税率=特例税率による税収は固定化して守りたいということであるらしい。
そもそも、お金に色は着いていないので、「○○による税収は、××に支出する特定の財源だ」という決め事に実質的な意味はない場合が多いはずだ。「××に対する支出」が一般財源からも支出されなければならない重要度の高いものなら、この支出に充当された税収の分だけ、一般財源に余裕ができるので、「○○の税収」は実質的に一般財源として流用されたのと同じだ。
「○○は××の特定財源だ」という呪文は、専ら「○○税」を創設するために、一定数いる知恵の回らない国民を納得させるための方便にすぎない。このことは、民主党政権時代に一部の政治家も含めて丸め込まれた「消費税は社会保障のための財源」との説明を思い出すとよく分かる。
ただし、税金が実現してしまうと、その金額分を特定の財源に充てたことにしなければならない建て付けは時に不便だ。道路整備が進んだときに暫定税率を特例税率にすり替えて一般財源化した際に、財政当局はうまくやったと思ったかもしれない。しかし、その際に付けたトリガー条項を凍結するに当たって震災の復興財源という別の方便が必要になり、今になってみるとその方便がまた古くなった。
トリガー条項の凍結解除は、もともと野党側(特に国民民主党)から出てきた話なので、自民党は乗りにくいかもしれないが、新たな補助金制度を作るよりは、同条項の凍結解除を先に検討すべきだろう。
「価格への補助」はもうやめた方がいい
政府にやる気がないトリガー条項の凍結解除も含めて、現在および目下検討中の「ぐずぐず補助金」も、広い意味では、ガソリン価格を引き下げるための補助金の性質を持つ。そして、この補助の適切性には大いに疑問がある。
まず、資源配分の効率性と価格メカニズムの観点で考えると、原油をはじめとする諸コストが上昇して価格が上がっているのなら、消費者はまずガソリン使用の抑制を考えるべきだ。
世界的に資源価格が上がっている時に、資源の相対的な希少性が増しているのだと考えることは自然だ。
加えて、地球環境に対する配慮の観点から化石燃料の使用抑制がかねて求められていた。
つまり、ガソリンや電気料金の値上げに対して、国民はそれぞれの立場から、ガソリン消費の抑制や節電を考えることが経済合理的であり、近年の社会運動にも合致する方向性なのだ。補助金を使って価格をゆがめることは、経済政策として適切ではない。
とはいえ、ガソリンを多く使うビジネスで急には消費量を減らせない業者や、同じくガソリンの使用を減らすことが短期的には難しい生活困窮者がいるはずだ。彼らに対しては何らかの所得補助措置を考えるべきだろう。もちろん、所得の補助を受けた業者や生活者も、ガソリンの使用抑制に工夫すべきではある。そして、「急には対応できない」というユーザーのために、トリガー条項が存在していることは前述の通りだ。
金持ちの高級車のガソリン代を税金で補助する必要があるのか
高所得者・富裕層のガソリン代、電気代を補助しないで済むとするなら、困窮者向けの所得補助に必要な金額は、国民全体が使用するガソリン代、電気代の価格抑制に必要な補助金の額を大きく下回るはずだ。
また、言わずもがななことかもしれないが、価格抑制による補助の分配効果を考えると、富裕層が乗る高級車のガソリン代は低所得者が乗る車のガソリン代を大きく上回るだろうし、大邸宅と小ぶりなアパートの電気代は比較してみるまでもない。価格抑制で得るメリットは、絶対額で見て富裕層の方が大きいのだ。
もちろん、最終的に将来の税金で負担するにせよ、インフレを通じて間接的に負担するにせよ、補助金分の財源を誰が負担するかという問題を併せて考えないと、再分配の効果を確定して論じることはできない。ただ、直接の補助を考えるときに、価格に対する補助が相対的に、より富裕な者をより多く補助していることの分配論上の問題点も認識しておくべきだろう。
街に出ると、いかにもお金持ちが乗っていそうな高級車を目にすることがあろう。あの車のガソリン代を税金で補助する必要があるのか、と考えてみることは無益ではない。
経済的なロジックとしては、価格を抑えるために補助金を投入する政策はもうやめる方がいい。
不合理が実現する合理的な理由
筆者が考える、ガソリン価格に関わるあるべき政策の優先順位を大まかに言うと、
(1). ガソリン価格への補助をやめて、困窮者への所得補助を充実させる、
(2). (1)の早急な実現が不可能で激変緩和措置が必要な場合、トリガー条項の凍結解除を補助金よりも優先する、
というものだ。現実的には、まずトリガー条項の凍結解除からということになるだろう。シンプルでかつ合理的ではないだろうか。
しかし、筆者の案が実現しないと信じるに足る、残念で強力な現実が存在する。その根源は一人一票を大原則とする民主主義と個人の経済合理的判断だと言うと穏やかではないが、以下のような事情だ。
まず、困窮者の所得を補助する政策は困窮者とされた国民には直接メリットがあっても、多数のそうではない国民にとってメリットが見えにくい。多数の国民が、ガソリン価格の高騰を眺めつつガソリンの使用を抑制する工夫を考えなくてはならない現実に直面して、不満に思うだろう。
これに対して、補助金による価格抑制は、個々の効果は小さくても直接的なメリットを感じる国民の数が多い。政権支持率に効くのはこちらの方だろう。
また、困窮者の所得補助は一度仕組みを決めるとそれでガソリン価格も電気代もガス代も価格メカニズムに任せることができる効率の良さがあるが、この効率性は、政治家や官僚にとっては、個々の品目と関連する業界に対して政策を「やっている感」を醸し出す上ではむしろ邪魔になる。
ガソリン価格の上昇が生活者の不満と共に報じられて政府が右往左往することは、政府の当事者にとってはまんざら悪いことでもないのだ。
直接的で近視眼的な賛否を超えて合理的な状態を実現するためには、国民が政策の立案・実行を委託する政治家や官僚に良識と能力が必要だが、どうやらわれわれはそのような政治家や官僚の養成に不熱心だった。
「これが日本国民のレベルなのだ」と言われたら返す言葉がないが、目を背けたくなるような現実がそこにはある。 

 

●「戦後日本の骨格を作り替えた大政治家であった」菅元総理が安倍家の墓訪問 9/5 
安倍元総理が亡くなって1年2ヶ月。
菅義偉元総理が、きょう(5日)初めて長門市の安倍家の墓所を訪れ、花を手向けました。
菅元総理は地元の人に改めて安倍元総理の功績を伝えたということです。
関係者によりますと、菅元総理が安倍昭恵さんに墓参りを希望していることを打診し、今回、初めて実現しました。
きょうは、山口4区選出の吉田真次衆議院議員の他、江原長門市長、それに地元の支援者らが見守る中、安倍元総理が眠る墓に花を手向けました。菅元総理は、安倍政権下で長く官房長官を務め、安倍元総理が退陣した後の政権を引き継ぎました。
花を手向けた後、安倍元総理の功績を語る様子を参列者が撮影していました。
菅元総理「振り返りますとまさに戦後日本の骨格を作り替えた私は大政治家であったと思っています」
参列者は「本当に会いに来たという印象で 心情尽くして心尽くして墓参りしているなという印象を受けました感動的でした」
安倍晋三元総理は去年7月に奈良県で選挙応援中に銃撃され亡くなり、ことし7月、納骨されました。
菅元総理は墓参の後、帰京したということです。 
●安倍政権もジャニタレを徹底利用 政治家に問われるダンマリの重大責任 9/5
ジャニーズ事務所創業者のジャニー喜多川氏の性加害を認定し、藤島ジュリー景子現社長の早期退任を提言した、同事務所設置の「再発防止特別チーム」。しかしその責任を問われるのは、ジャニーズ事務所の関係者のみにとどまらないようです。今回のメルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』では著者の伊東さんが、1960年代から報じられてきた喜多川氏の「性加害の実態」を振り返るとともに、同事務所がいかにしてメディアに圧力をかけてきたかを紹介。さらに所属タレントを政治利用し続けた安倍政権の責任についても考察しています。
プロフィール:伊東 森(いとう・しん) / ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。
ジャニーズ事務所を政治利用した安倍政権に沈黙貫いたメディア / ジャニー喜多川氏「性加害」の責任を問われるべき面々
ジャニーズ事務所創業者であり、前社長のジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害問題について、外部専門家による「再発防止特別チーム」は29日、喜多川氏が多数のジャニーズJr.に対し、長期間にわたり性加害を繰り返していたという事実を認定したと発表。
特別チームは、喜多川氏が事務所内では1970年代前半から2010年代半ばまで、ジャニーズJr.の少年たちへの性加害を繰り返したとし、少なくとも数百人の被害者がいるとの複数の証言を得たとする。
信憑性については、チームのメンバーで精神科医の飛鳥井望氏が、「その時の状況をある程度詳しく聞き、真実性があると判断した」と説明する。
ジャニーズJr.は、CDデビューを目指す未成年が多くを占める。調査報告書では、性加害の根本原因が、喜多川氏の性嗜好異常にあり、「一方的な強者・弱者の権力勾配のある関係性」の下で未成年に行ったとする。また、喜多川氏の姉で事務所名誉会長だった藤島メリー泰子氏(2021年死去)が喜多川氏による性加害を知りながら、「徹底的な隠蔽を図ってきた」と組織の在り方にも言及し、事務所も、「見て見ぬふり」をしてきた指摘する。
取締役、代表取締役を務めたメリー氏は2021年に死去しているため、ジャニー氏の性加害を認識していたかを直接確認することはできない。
しかし、調査報告書によると、メリー氏はジャニー氏の性加害問題を認識していたと推認するのが合理的かつ自然であるとしている。メリー氏と戦前から懇意にしていた新芸能学院の名和太郎氏の夫人は生前、「ジャニー氏は、小さい頃にジャニー氏がやってきたようなことと同じような性加害を受けて育ったから、一種の病気なんだ」と話していたという。
ジャニーズ性加害の主な経緯
1965〜67年 「初代ジャニーズ」メンバーも所属した芸能学校での、ジャニー喜多川氏による少年へのわいせつ行為を、一部週刊誌が報道
1988年 フォーリーブスのメンバーだった北公次さんが、著書で喜多川氏の性行為強要に言及
1999年 週刊文春が喜多川氏によるジャニーズ事務所所属の少年へのわいせつ行為などを報じる
2003年 週刊文春の記事をめぐり、事務所などが起こした訴訟で、東京高裁がセクハラ行為の真実性を認める。翌年確定
2019年 喜多川氏が死去
2023年
 3月 英BBCが喜多川氏の性加害を報道。以降、元所属タレントらの告発が相次ぐ
 5月 事務所の藤島ジュリー景子社長が動画と文書で謝罪
 8月4日 国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会、日本政府に被害者救済を要請
 8月29日 事務所が設置した再発防止特別チームが調査結果と提言を発表
「再発防止特別チーム」調査報告書の骨子
ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長は多数のジャニーズJr.に対し、長期間にわたって性加害を繰り返した。
姉の藤島メリー泰子氏が性加害を知りながら徹底的な隠蔽を図り、事務所も見て見ぬふりをして被害拡大を招いた。
性加害問題をマスメディアが取り上げてこなかったことで事務所は隠蔽体質を強め、被害が拡大した。
同族経営の弊害を防ぐため、藤島ジュリー景子氏は辞任すべきだ。
事務所は性加害を事実と認め、被害者への真摯な謝罪と救済に乗り出すとともに、適正な補償をするために「被害者救済制度」を構築すべきだ。
確実に存在していたジャニーズ事務所からの圧力
再発防止特別チームは、「マスメディアの沈黙」という言葉を使い、マスメディアが性加害を知りながら、メディアが正面から報道しなかったと指弾する。
会見の翌日、ジャニーズのタレントを長年取材してきた日刊スポーツの記者がコラムを書いている。
報告書では「メディアの沈黙」も指摘された。世間でイメージされるような「圧力」を認識したことはないが、記事の性質上、日々の取材ではタレントの生の声、素顔を読者に伝えることに終始して、「密室」での出来事に思いが至らなかったというのが正直なところだ。「気付き」がなく、幾度かのタイミングを失した点で、改めて襟を正す必要を感じている。
「圧力はなかった」とする日刊スポーツ。しかし同紙は、2年前にメリー氏が死去した際、メリー氏が日刊スポーツに乗り込んできたことを伝えている。
それは「日刊スポーツ・ドラマグランプリ」が初めて開催された翌年の1998年のこと。第1回は記者と評論家の「審査員票」と「読者投票」で各賞を決め、票の比重は半々だった。メリー氏はこの審査方法に抗議したという。
元ジャニーズ担当記者がこう綴っている。
「応対した私に『あなた、全部のドラマ見ているの?』と聞いてきた。私は『見られる限りは、録画してでも…』としどろもどろに答えた。『見られないのに(記者や評論家が)審査するのはおかしいですね』とズバッと指摘された。そして『やはり視聴者に任せるべきです』。言外に『そうしないとジャニーズのタレントは出さない』のニュアンスを感じたが、メリーさんは純粋にドラマグランプリのことを考えてくれていたと思う。第2回から読者投票だけに切り替え、今年の第25回の節目につながっている」(日刊スポーツ・2021年8月18日付)
そもそも、文藝春秋に対する訴訟の東京地裁判決でも、週刊文春の記事において、「原告事務所〔注:ジャニーズ事務所を指す〕は怖く、当局〔注:在京の民放テレビ局を指す。〕でも事務所にネガティブなことを扱うのはタブーである」「マスコミ対応を委ねられているメリー喜多川は、ドラマの共演者が気に入らないと、その放送局の社長に直接電話をかけ、外すよう要求することもあった」とあった。
ジャニーズ事務所を徹底利用した安倍政権の責任
「政治の責任」も問わなければならない。
「ジャニーさんへのエンターテインメントへの熱い思い、託したバトンは、必ずやジュリー(藤島景子)さん、滝沢(秀明)さんをはじめ、次の時代を担うジャニーズのみなさまへと、しっかりと受け継がれていくと私は確信しております」
これは、2019年9月に東京ドームで行われた喜多川のお別れ会で代読された、安倍晋三首相(当時)の弔辞の一節だ。安倍氏もまた、ジャニーズ事務所を徹底的に政治利用してきた。
2018年末には、福島復興を支援してきたTOKIOのメンバーと首相官邸内で懇談し、2019年5月には行きつけのピザ店で会食している。
翌月のG20大阪サミットの開幕前日には、首脳会談の合間をぬって、関ジャニ∞の村上信五のインタビューを受け、2020年の元日にはラジオの新春番組でV6の岡田准一と対談。
2019年11月には、嵐の東京ドームのコンサートに足を運び、ステージ裏でメンバーと面会している。この数日前には、嵐が天皇即位を祝う「国民祭典」で奉祝曲を披露していた。
そもそも安倍長期政権の時代は、ジャニーズタレントの「報道進出」の時期と重なる。日本テレビでキャスターを務める桜井翔をはじめ、同じく日テレ系「news every.」のキャスターに小山慶一郎が。
TBSのMCには国分太一が抜擢された。
現在でも「サンデーLIVE!!」(テレビ朝日)に東山紀之が、「シューイチ」(日テレ系)に中丸雄一が出演と、所属タレントが政治を扱う報道・情報番組に出演中だ。
要は、安倍氏のジャニーズ接近は、民放の政権批判を封じ込めようとする狙いもあったかもしれないのだ。
一方、SNSでは性被害当事者らへの誹謗中傷がエスカレートしている。これらは、尊厳を踏みにじる二次被害であり、専門家は、「加害に当たる投稿を正当な批判と思い込んでいることが多い」と指摘する。
●自公が東京での選挙協力を復活 党首会談で正式合意 9/5
自民・公明両党は、次の衆議院選挙における東京での選挙協力を復活させることで正式に合意した。
岸田首相と公明党の山口代表は、両党の幹事長を交えて会談し、合意文書に署名した。
候補者調整をめぐる対立から、公明は東京での選挙協力を解消するとしたが、今回の合意により、次の衆院選で東京29区の公明の候補者を自民が推薦し、東京の残りの選挙区は、個別の事情をふまえ、協力体制が整えば公明が自民の候補者を推薦する。
また、次の次の衆院選で、公明が東京で2議席を獲得できるよう取り組むことでも合意した。
岸田首相「政策を前に進めていくうえで大きな力になると思っている」
山口氏は、「信頼関係を崩すのは一瞬だが、建設するのは死に物狂いの努力が必要だ」と述べている。
●首相「政権運営に協力願いたい」 9/5
岸田文雄首相は5日の自民党役員会で「9月は外遊が多くなり日程が窮屈だが、引き続き政権運営に協力を願いたい」と求めた。新たな経済対策について「物価高から国民の生活を守る強い決意で検討を進める」と強調した。月内に踏み切る内閣改造・党役員人事の時期には触れなかった。
その後官邸で記者団の取材に応じ、人事に関し「適材適所に尽きる。タイミングはまだ決まっていない」と述べた。
首相は役員会で次期衆院選を巡り、公明党との間で正式合意した東京都での選挙協力復活に言及し「自公の強固な連立の下、政権を運営していく」と語った。
●自民・茂木氏 来秋の総裁選問われ「幹事長として岸田政権支える」 9/5
(来秋の自民党総裁選の対応について問われ)少なくとも私はいま、党幹事長です。平成研究会(茂木派)の会長もやっている。幹事長として、内外の課題が山積する中で、岸田政権をしっかり支えていく。これが私の仕事だと思っている。
(国民民主党との連立の可能性について)国民民主とは賃上げ、経済対策、安全保障問題、憲法改正など重要な政策について、我が党の方針と一致する部分も多いと受け止めてきた。
我が国が直面する内外の諸課題の解決に向け、今後も前向きな政策提言には誠実に対応しつつ、さまざまな取り組みを前に進めていきたい。 

 

●処理水と日中関係 冷静に対話できる土台築け 9/4
あまりに過剰な対応だ。東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出が始まった日、中国政府は日本の水産物輸入を全面的に停止した。海に接しない地域を含めており、科学的根拠を示してもいない。
呼応して、中国発の日本への嫌がらせ電話が、無関係の施設や飲食店に多数かかっている。悪口や罵倒が目的のような例も多い。中国の交流サイト(SNS)では、フェイク情報や日本製品の不買を呼びかける投稿が目立つ。
こうした行動をとる中国国民は一部かもしれない。政府や国営メディアが流す「汚染されている」との一方的な情報で、不安や反日感情をあおられたと見える。当局は放置せず速やかに対処すべきだ。互いの国民感情を悪化させ、深刻な経済損失を招く。
中国政府は海洋放出への批判を政治利用したと言える。反対を明確にした2021年春は、米国のバイデン新政権が中国の台湾侵攻に警戒感を打ち出した頃だった。日本は米国に歩調を合わせ、安全保障に加え、半導体製造をはじめ経済でも中国への対抗策を強めた。その動きへのけん制と捉えることができよう。
似たような「経済的威圧」を多用してきたのが中国だ。南シナ海の領有権問題で対立したフィリピンに輸入バナナの検疫を強化、新型コロナウイルスの発生源調査を迫ったオーストラリアにはワインに高い関税をかけた。国際的な信用を得られない手法だ。
その上で日本政府に問いたいのは、海洋放出の判断によって結局、漁業者にしわ寄せがいく現状である。日本の水産物輸出額は22年は3873億円で、輸出先のトップは中国だ。10都県の水産物輸入を禁止した香港を合わせると40%超を占め、禁輸が長引く影響は計り知れない。
政府は風評被害などに備えた基金800億円のほか、新たに200億円程度の支援を予定する。別の輸出先の確保や水産物の加工支援を想定するようだが、急ぐべきだ。
そもそも習近平体制の下で強硬策を辞さない中国に対し、日本政府の読みは甘過ぎた。農林水産相が全面禁輸を受けて「驚いた」「全く想定していなかった」と述べたが、理解し難い。
いかに日中が自国の言い分を声高に主張し合うだけで、科学に基づく協議ができず、相手の出方もつかめない状況だったかを物語る。政治家による外交努力を尽くし、解決策を模索した跡は見えない。日中は切っても切れない経済関係にある。全体の利益を計る視点、長期を見据えた対話が欠けていないか。
冷静に交渉ができる土台を速やかに築く必要がある。首脳レベルの対話は必須だ。
処理水を巡っては、国際原子力機関(IAEA)が「国際的な安全基準に合致している」と評価したと殊更に強調するだけでは、好転しない。トリチウム以外の放射性物質も含まれる点や、その長期的な影響など、重ねて検討が必要な要素は多い。海洋放出が妥当なのかを検証しつつ、責任を持って説明を続ける姿勢が日本政府には求められる。
●麻生氏「明らかに政治の話」中国の水産物全面禁輸を批判 9/4
自民党の麻生副総裁は、福島第一原発の処理水が海に放出されたあとの中国による日本の水産物の全面的な輸入停止について、「明らかに政治の話だ」と中国の対応を批判しました。
「トリチウムなんてものは全く出ていませんとはっきりしていてもだめなんだから。これは明らかに政治の話なんであって、科学的な話でも何でもないということははっきりしているでしょうが」(自民党・麻生副総裁)
そのうえで麻生氏は「漁業関係者だけでなく、経営者とか政治家、役人も含めてどう対抗するか考えてやっていく必要がある」として、中国に依存しない輸出体制の強化の必要性を指摘しました。
また、次の衆議院選挙について「岸田総理大臣が選挙をするという話は少なくともこの半年間、聞いたことがない。『そんなに近いのか』と正直、私は思っている」と述べ、早期の衆議院の解散には疑問を呈しました。
●中国の政治的意図による過激な反応 9/4
石破茂です。
福島原発からの処理水排出開始から一週間、中国の政治的意図による過激な反応には閉口するしかありませんが、あれほどまでに非科学的な主張をヒステリックに繰り返すところを見ると、共産党の統治体制に何らかの不安があるのかもしれません。
人口の急減と急速かつ大規模な高齢化、地域間や階層間の格差拡大、脆弱な医療福祉体制、不動産バブルの崩壊などの経済不安等々、中国が抱える課題は山積しています。あくまで共産党の軍隊である人民解放軍による国民の抑圧と、メディア統制を駆使した共産党一党支配体制は絶大な効果を発揮してきましたが、それも「経済は成長し、国民は豊かになる」という実感があってのことであり、これが怪しくなってくるといかに強権的な支配を行なっても、鬱積した人民の不満が爆発して共産党が最も怖れる「易姓革命」が起こりかねません。
日本としては、中国の姿勢にいちいち過敏に反応することなく、国際社会に向けて「やはり中国の主張はおかしい」と思うよう、着々かつ淡々とあらゆる効果的な手法を用いるべきです。
昨年11月、IAEAの福島視察が発表された際には、中国は「日本はIAEAの厳格な基準に従うべき」と言っていたはずなのですが、日本の主張を認める判断が下ったら、それについて一切言及しないのはどういうわけなのか。
IAEAに対して異議を申し立てるなり、第2位である資金拠出を停止するなりしてもよさそうなものですが、そうはせずに一方的に日本の批判ばかりしているのはどういうことなのか。
2016年、南シナ海仲裁裁判所において、フィリピンとの間で南シナ海の島嶼部の領有権をめぐり、自国に不利益な裁定が出た際、「あのような裁定は単なる紙屑」と言い放った国ですから、隣国である我が日本は、今後一層心して対応していかねばなりません。
処理水の安全性について、自民党水産総合調査会としてもこれ以上ないほどに丁寧な周知に努めてまいります。また、一切の責任が無い漁業者が受ける損害に対しては、迅速に補償がなされるようよく注意してまいります。
故意によるものかどうかはともかくとして、一部報道で、まるで海に処理水をそのまま流しているかのような映像が使われているのは是非とも改めていただきたいものです。日本のメディアでありながら、中国の主張を利するようなことにならないか、いささか気がかりです。
処理水は海底トンネルを通して1キロ先の海中に放出されており、陸から水が流れるような映像の方法は採っておりません。諫早干拓の水門開門の是非が争われた裁判についての報道でも、水門閉鎖の映像が事ある毎に放映され、その印象によって干拓事業に対するネガティブなイメージが広まる結果となりました。
今日から9月、この時期になって、赤坂議員宿舎周辺の樹々からつくつく法師の鳴き声が聞こえないのは、赤坂宿舎に住んで20年近くになりますが初めてです。
8月も終わり近くになると、それまでのミンミンゼミやアブラゼミに代わってつくつく法師が一斉に鳴き始め、夏の終わりの寂寥感を感じるとともに、まだほとんど手付かずの夏休みの宿題(特に読書感想文と自由研究)を仕上げねばならない焦燥感に駆られたものでしたが、この齢になっても同じような思いが致します。
子供の頃、焦燥効果絶大なあの鳴き声を聞く度に「うるさい!鳴くな!」とばかりに蝉捕りの網を持ち出して,一匹残らず捕ってしまおうかとの凶暴な思いに取り憑かれたものでした。
先週に引き続き、今週も台風7号による鳥取県内の被災地を廻ってまいりました。政府にも誠心誠意対応して頂いておりますが、現場に行くほどに被災の大きさに愕然とする思いです。早急な復旧のために更に微力を尽くします。
台風で樹園地への土砂流入や落果等の影響を受けたものの、今年の20世紀梨はかなり良い仕上がりとなっています。見た目も青々と美しく、味も爽やかな鳥取の20世紀梨を御賞味頂けれは大変幸いですし、新品種の「新甘泉(しんかんせん)」も人気です。何卒よろしくお願い申し上げます。
関東大震災から百年の節目となりました。災害の激甚化と多発化の昨今、防災省の設置につき更に思いを強くしております。
また、朝鮮人虐殺についても、これを風化させることなく、真摯な検証が必要です。安全保障や処理水問題について、韓国の現政権が厳しい国内批判を浴びながらも日本に理解のある姿勢を維持している中、日本もこれに誠実に応えなければならないと思っております。吉村昭の「関東大震災」(文春文庫)をもう一度読み返してみたいと思っておりますし、今週読んだ「関東大震災がつくった東京」(武村雅之著・中公選書)からも幾多の示唆を受けました。
鹿児島県徳之島に所在する伊仙町犬田布(いぬたぶ)岬にある戦艦大和の慰霊塔が老朽化し、伊仙町役場が中心となって修復に向けたガバメントクラウドファンディングを行なっています。日本一の出生率を誇り、世界自然遺産の島でもある徳之島伊仙町は、平和祈念の町でもあります。多くの方々のご賛同を心よりお願い申し上げます。
残暑厳しい折、皆様どうかご健勝にてお過ごしくださいませ。
●「半導体確保は政治的問題」大統領が動くアメリカと出遅れる日本の差 9/4
かつては水産物の争奪戦で中国に敗れ問題になった「買い負け」。しかしいまや、半導体、LNG(液化天然ガス)、牛肉、人材といったあらゆる分野で日本の買い負けが顕著です。7月26日発売の『買い負ける日本』は、調達のスペシャリスト、坂口孝則さんが目撃した絶望的なモノ不足の現場と買い負けに至る構造的原因を分析。本書の一部を抜粋してお届けします。
買い負けの現代的背景(1)政府の動き
ホワイトハウスでは2021年4月、ジョー・バイデン大統領が「CEO Summit on Semiconductor and Supply Chain Resilience(半導体のCEOサミット)」と名付けた決起集会を開いている。これはホワイトハウスと半導体・IT関連企業のトップを集めて開いたものだ。
ホワイトハウスのホームページでも内容を確認できるが、YouTubeで当日のバイデン大統領の様子を見ると、わざわざ半導体のウエハーを左手で取り関係者に「これがわれわれのインフラストラクチャーであり、多額の投資を行う」と宣言している。
石油や鉱物が眠っている場所は神様が決めたかもしれない。ただし、どこで半導体を生産するべきかは人間が政治的に決めるのだ。
さらに2021年9月23日に米国の商務長官であるジーナ・レモンド氏は半導体不足がボトルネックであるとし、代表的な半導体メーカーにたいして透明性を図るように伝えた。これは各社に需要量や在庫量などを開示するように求めたのだ。当然ながら契約情報などは機密にあたる。大きな反発は当然だった。
しかし、米国は世界の中心であり、強引な手法であっても世界の半導体メーカーの注意を米国に向けさせ、もし歯向かったら何が起きるかわからない、と思わせるにはじゅうぶんだった。
なおこの動きは一例で、他にも米国政権が半導体業界を牽制すると、ただちに米国の自動車メーカーが米国政府の姿勢に賛同し半導体各社に早急な納入を求める動きが多々見られた。官民が一致していた。
さきにも紹介した装置メーカーのサプライチェーン統括者は感心するように、そして呆れるように「米国政府は世界の半導体各社に米国優先の圧力をかけていた。あれだけプッシュするんだから強いですよ」と述べている。
同時に米国政府は、次々に半導体への投資を決定していった。研究や工場誘致、減税など、円換算で3〜5兆円規模が次々に可決され、過激なほどだった。ただ半導体誘致にはそれほどの狂気が必要なのかもしれない。
時計の針を進めるが、米国での新工場設立に際し、2022年12月にTSMCが発表したアナウンスは示唆的だ。アマゾン、AMD、アップル、ブロードコム、NVIDIAといった名だたる企業らがTSMCの米国工場建設について賛辞を連ねている。
そのいっぽうで、TSMC会長のマーク・リュウ氏は「米国に連れてきてくれて(has brought us here)ありがとうございます」と述べているのが印象的だ。自ら望んで進出したわけではないけれども、米国に呼んでくれてありがとうと。中国に配慮した内容だったかもしれない。経済合理性ではなく、政治的な色彩が濃かったと暗に述べているように私は思う。
TSMCは日本と米国に工場を設立している。ただ、先端の技術はさすがに台湾に残しているので、台湾の重要性は残るはずだ。この意味でTSMCは米国に完全に抱き込まれたわけではない。
いっぽうで日本はどうか。2021年の記者会見では、梶山弘志経済産業大臣(当時)は「自動車用の半導体の供給不足が生じていることは承知をしております。政府としては、日本台湾交流協会を通じて自動車業界と連携した上で、台湾当局に対し、メーカーの増産に向けた働き掛けを行っているところであります」とし、政府高官が台湾に渡って、台湾政府とTSMCにたいして日本向けの半導体製造を増産するよう要求した、と明かしている。
もちろん日本側も努力はしたと思う。ただ、ここで明らかになるのは、日本と違って米国は大統領が直々に半導体を確保するよう動いている点だ。それ以前にも、トランプ前大統領が中国の半導体を封印しようとしていた姿勢は記憶に新しい。
それに対して日本には、首相ができることはなんでもやる、という狂気は見られなかった。
買い負けの現代的背景(2)日本企業の認識のズレ
まったく個人的な話だが、私は自動車メーカーの研究所で働いていた経験がある。自動車メーカーでは調達担当者が工場に出社して、製造ラインが止まっているときほど恐怖する瞬間はない。それは「あってはならないこと」が起きたのであり、さらに自分の担当している部材が原因ならば大問題だ。
自動車は数万点の部品で成立している。たった一つの部品であっても、なければ生産が止まる。ささいな部品であっても、重要部品であっても、止まる意味では等価だ。製造ラインが止まるのは、めったになかったことだから「寿命が縮まる」といっていた人もいた。
逆にいえば、それだけ「納期通りに部材が入って当たり前」の世界だ。自動車産業は自身を中心に仕入先が回る“天動説”的な考えをもっている。自動車産業では垂直統合といって、自動車メーカーがピラミッドの頂点として君臨していた。
ただし、自動車産業は半導体メーカーとソリが合わない点がある。
一つ目は、商習慣だ。
自動車産業では、確定発注数量が決まる前に、事前情報を仕入先に提示する。現実にはこの内示を把握した瞬間に動き出さなくてはならない。
自動車メーカーは、ジャスト・イン・タイムで仕入先から納品してもらっている。直接、自動車メーカーに納品するこの仕入先をティア1と呼ぶ。このティア1が半導体を購入し、部材を組み立て自動車メーカーに供給する。自動車メーカーが数量の見通しをティア1に伝え、その見込みが甘いとティア1は半導体の注文をキャンセルせざるをえない。コロナ禍などで不景気になると調達した半導体が在庫として積み上がってしまい、経営にダメージを与えるからだ。
つまり半導体の調達は自動車産業とそもそも相性が悪いといえる。自動車メーカー側はギリギリに発注して、ジャスト・イン・タイムで納品されるのに慣れているし、それができる環境に甘んじてきた。
ただこの甘えは、自動車産業に限った話ではない。私たちは半導体のサプライチェーンなど真剣に考えてこなかったし、半導体が命運を握るとまで考えた人はいなかった。かつて日本は製造業大国で、かつ右肩上がりだった。購入量は世界随一。ただし、現在では中国などのアジア各国が力をつけてきた。必然的に日本の相対的なシェアは下がる。さらに日本は少子高齢化と経済成長の停滞で、ここから購入量が上がるとは考えにくい。
アロケーション(配分比率)については、結局のところ、販売する企業が、誰に販売するかを決める。複数の関係者は「アロケーションに関わる責任者にとって日本企業は魅力的に映っていない」とする。
二つ目は、使用している半導体の回路幅だ。
半導体は微細化技術が肝だ。小さな面積のなかに多くのトランジスタを配置する。微細化ができるほど高性能になり商品の差別化につながっていく。
現在、世界先端の微細化技術を有するのはTSMC、次に韓国サムスンだ。米国のインテルが次順位につける。微細化の先端度合いを回路幅のナノで表現する。直観的にはナノ数が小さいほど半導体回路の同一面積に多くの回路を詰め込める。現在、自動車産業で使われる半導体は40ナノていどだ。しかし、スマートフォンでは7ナノといった高性能品が使われる。スマートフォンは一台に100億以上の微細なトランジスタを組み込んでいる。
またTSMCは2ナノの開発や、1ナノの研究を進めるなど、業界内では独走している。新型コロナウイルスは100ナノメートルだから半導体の微細技術の凄さがわかる。
ここでTSMCの2022年第4四半期産業別売上高を見てみよう。
   ・ハイパフォーマンスコンピューティング:42%
   ・スマートフォン:38%
   ・IoT:8%
   ・自動車:6%
   ・デジタル消費電気機器:2%
   ・その他:4%
こう見ると、自動車向けはたったの6%にすぎない。しかもこれは自動車産業を主とする各国高官からのプレッシャーによって上昇した結果だ。少し前には4%しかなかった。しかしそれでも6%だ。つまり、自動車など、TSMCにしてみればささやかな比率にすぎない。
車載用の半導体は利益が稼げないわりには品質要求が高い。周りを見渡せばスマートフォンやコンピュータなど、もっと半導体を高く購入してくれる業界がある。“天動説”の自動車産業から見える光景とは違い、ファウンドリーからすれば、単価が安く質には口うるさい顧客と映る。さらに売上比率も高くはない。これまで自動車産業は景気が悪くなればただちに内示数量を減らし、景気が浮揚すれば「早くもってこい」と催促する需要家だったが、現在では半導体を中心とする“天動説”の世界が広がっているのだ。
なお、これは日本の自動車メーカーだけが旧世代の半導体を使用しているわけではないため日本の失策のように書くのは逡しゆん巡じゆんする。どの自動車メーカーも人命にかかわるため慎重になる。ただ、日本のお家芸たる自動車は相対的な地位を下げている。
さらにTSMCに製造を委託する企業の約7割は米国企業であるだけではなく、アップルをはじめとして、未来の先端半導体の開発を依頼するのも米国企業だ。これは日本との差を考える際に示唆的だ。新製品を描けるビジョナリーな企業は日本ではないとすれば、半導体メーカーは、どこを向いて営業するだろうか。
日本の奮闘は実るか
なお、昨今の状況をまとめておこう。半導体は経済安全保障における重要な戦略物資だ。そこで日本政府からの熱心な要望を受けてTSMCの熊本への進出が発表されたのは2021年10月だった。投資額は1兆円を超える。最先端の回路幅ではなく自動車産業向けの旧世代が中心になるものの、供給の安定に寄与する。
サムスン電子も日本の横浜に半導体開発拠点・試作ラインを置くと決めた。またマイクロン・テクノロジーやソニーグループも日本での工場の新設を相次いで発表した。
半導体を巡る危機感は全世界で共有されており、米国が主導するIPEF(インド太平洋経済枠組み)では、半導体など参加国の重要物資入手を強化する協定に合意した。これには日本やアジア諸国など14カ国が参加する。中国は参加していない。この協定により合意国内での調達拡大が目指されるほか、品不足に苦しむ国への対応を協議する。
欧州19カ国も2020年12月に「欧州半導体イニシアチブ」を宣言し、最先端半導体の製造への投資を計画する。日本勢も負けずとトヨタ自動車、NEC、ソニーグループ、ソフトバンクらが出資したラピダスが2025年までに先端半導体を試作できるように動いている。さながら半導体戦争の様相を呈している。
これから半導体の潜在ニーズはさらに高まる。諸企業の日本への投資も結局は日本市場が魅力的であり続けるかにかかっている。買い手の日本企業にも改善が必要だ。そうでなければ日本進出等のきらびやかなニュースも空騒ぎに終わる可能性を秘めている。
●国民はもう限界だ…鬼の岸田政権 ”所得倍増計画に騙された国民” 9/4
昔から「人の噂も七十五日」と言われるが、岸田文雄首相についた負のイメージはそう簡単には消えることがなさそうだ。数々の増税プランを机上にのせる岸田政権は、物価高や円安対策などへの感度が鈍く、内閣支持率の続落を見ても国民の怒りが拡大していることがわかる。SNS上では「増税メガネ」なる不名誉な異名をつけられ、行財政改革に切り込むことなく膨張させる予算への不安も尽きない。経済アナリストの佐藤健太氏は「首相は国民の不満を受けとめておらず、目を逸らすために『外敵』を設定し、先のことばかりを論じている」と指弾する。
最低賃金1500円に!…でそれってどうやって実現するんですか…
またも“岸田流サプライズ”が飛び出した。首相は8月31日に開いた新しい資本主義実現会議で「2030年代半ばまでに全国加重平均が1500円となることを目指す」と表明し、最低賃金(最低限の時給)を1500円にアップさせていくことを強調したのだ。もちろん、政府による目標設定は重要だろう。ただ、国民が足元の物価高に困窮するタイミングで「2030年代半ば」と中長期ビジョンを語る姿に疑問を抱いた人々は少なくないはずだ。
毎年見直されている最低賃金は10月から全国平均が1004円になり、初めて1000円台を突破する。ただ、最低賃金の全国平均は20年前の2002年度は663円で、2022年度の961円と比べて298円のアップにとどまる。にもかかわらず、首相はこれを「2030年代半ばまで」の十数年間で約500円上昇させるというのだから、よほど明確なビジョンをお持ちなのだろう。
思い出されるのは、首相が発してきた数々の「迷言」だ。2021年9月の自民党総裁選の際、岸田氏は「分配なくして次の成長はなしだ」と訴え、小泉純一郎政権からの新自由主義的政策を否定してみせた。いまだ中身が見えない「新しい資本主義」を掲げ、令和版「所得倍増計画」をスローガンとして打ち出したのは記憶に新しい。
所得倍増計画は一体どこにいったんだ!
だが、政権発足後は「所得倍増」と言葉が消え、いつの間にか「資産所得倍増」に変わった。そのための施策は少額投資非課税制度(NISA)の拡充・恒久化にとどまり、要するに「自分の老後資金は自らの投資運用で稼ぎましょう」という投資促進策だ。
2022年1月の経済団体の会合では、子育て・若者世代の世帯所得の倍増を可能とするような制度改革にも取り組むと表明したが、今年6月にまとめた「こども未来戦略方針」の中身は児童手当の拡充など目新しさはほとんどない。
威勢良くキャッチフレーズを並べる一方で、その財源は必ずしも明確にしていない点も岸田政権の特徴だ。倍増させると豪語していた子ども予算は2024年度から3年間は年3兆円台半ばと中途半端で、2028年度までに安定財源を確保するとしている。不足分は国債を発行し、国民には実質的な追加負担を求めないというものの、お金に色はない。実質的な予算の付け替えや他の増税で収支を合わせることが本当にないのかは注視する必要があるだろう。
北朝鮮に対する“遺憾砲”だけはめちゃくちゃスピーディ
昨年末に首相が決定した防衛費大幅増に伴う増税プランのスケジュールも不明確だ。防衛費は2027年度までに4兆円増となるが、歳入手段は2025年以降の議論に先送りされている。政府は2024年度予算の概算要求で脱炭素化に向けてGX(グリーントランスフォーメーション)分野に2兆円超を要求し、10年間で20兆円規模の資金を拠出する方針だが、これには2028年度以降に企業からの賦課金などを見込んでいる。
つまり、岸田政権による施策は「実現が先のもの」か、増税などの「痛みが先のもの」が多いのである。史上最長政権を築いた安倍晋三元首相のように、長期政権を担う気が満々と評することもできるだろうが、自民党総裁の任期は3年で連続3期まで。さすがに「2030年代半ば」は首相(党総裁)を退任しているはずで、最後まで岸田路線が継承されていくのかは不透明と言える。
岸田首相は弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮には「断じて容認できない」などとスピーディーに“遺憾砲”をみせるものの、足元の物価高には鈍感であると疑いの目が向けられている。2022年から続く物価上昇に加え、8月30日に発表されたレギュラーガソリンの全国平均価格は1リットルあたり185.60円と15年ぶりに最高値を更新した。
岸田首相が絶対にやりたくない「トリガー条項」の発動
止まらない価格上昇に首相はようやく全高平均小売価格を10月中に175円程度まで抑制する方針を表明したものの、遅きに失した感は否めない。加えて、普通に考えればガソリン補助金で国民は何か得するわけではない。これまで通り、ガソリン税をとられていた分の一部を補助金という形で“還元”されるだけなのだ。ガソリン価格の約4割は税金であるため、税の一部を軽減する「トリガー条項」を発動すれば国民負担をより軽減できるはずだが、首相はこれだけ長い時間をかけても減税策などを決断できずにいる。
鈴木俊一財務相はトリガー条項を発動する場合、大きな価格変動に伴って買い控えや駆け込み需要が生じ、販売・流通に影響があると見ているが、それでは何のために「条項」があるのか。ちなみに、レギュラーガソリン1リットルあたりの小売価格は、ロシアによるウクライナ侵略が始まった直後の2022年3月初め時点で約174円だった。一部地域はハイオクで200円の大台を突破しており、仕事や日常生活にマイカーを使用する人々の負担は膨れ上がっている。
生活に密接な飲食料品や電気料金の値上げも著しい。民間調査会社「帝国データバンク」が8月31日発表したデータによれば、今年1〜9月末までの飲食料品の値上げは2万6490品目に上り、さらに12月末までに4500品目超の価格上昇が見込まれている。電気料金は大手電力10社が10月請求分(9月使用分)を値上げし、平均的な家庭で前月と比べ642円から1024円高くなるという。
「取れるところから取る」という岸田政権
2022年度の国の税収が過去最高の71兆円台に上っても減税策が実施されるわけでもなく、来年度予算の概算要求は過去最大の114兆円超に達するというのだから、政権と国民には乖離があるのは間違いないだろう。マンション価格が高騰を続ける中、9月から適用される住宅ローン金利(10年固定)も引き上げられ、庶民のマイホーム購入は遠くなるばかりだ。
岸田首相の諮問機関である政府税制調査会は、サラリーマンの退職金や通勤手当などの課税見直しも机上にのせており、「先送りしてきた代替財源の穴埋め」(政府関係者)を探すことに躍起となっている。加えて、自治体間の財源の偏在を調整するための地方交付税では足らないと見るや、東京都など大都市の税収を剥奪して“国税化”する偏在是正措置も強行しようとしている始末だ。机上にのるサラリーマン増税プランや、地方自治に逆行する国主導の愚策に共通するのは「取れるところから取る」という岸田政権の姿勢だろう。
岸田首相は、かねて「理念や国家観がない政治家」と永田町で言われてきた。だが、1つだけ明確になってきたものがある。それは「新しい主義は、新しい社会主義である」ということだ。後先のことを考えず、とにかく成長よりも分配を優先して追い求める。そうした姿勢に苦言を呈してきたとされる安倍元首相が亡くなった今日、「岸田カラー」はいよいよ色濃くなってきている。 

 

●衆院解散・総選挙「この半年、聞いたことがない」 自民・麻生副総裁 9/3
(岸田政権の発足から)10月で2年が経過するので、衆議院の選挙が近いんじゃないかとオタオタしたりザワザワしたりしている人がいっぱいいらっしゃいますけど、「岸田総理が選挙をする」というような話は少なくともこの半年、聞いたことがありませんので、「そんなに近いのかね?」と私どもは正直思っている。
今、日中の間で話が込み入ってきて、いわゆる漁業の収穫物、魚だ、ホタテだ、ナマコだ、いろんなものが輸入禁止になってきた。表向き、福島(第一原発)の処理水の問題があるからということになっているが、これは明らかに政治の話であって、科学的な話でもなんでもないことははっきりしている。
となれば、これが解決してもまた(輸入禁止を)やられるかもしれないと思っておかねばならん。向こう(中国)は輸入して加工し、アメリカに輸出している。じゃあ(日本が)加工して、中国を経由しないでアメリカに売ればいい。「中国よりもっとうまく加工しますよ」ということができるようにして初めて交渉が成り立つと思う。こういった問題があった時、対抗するためにどうするのかは、漁業関係者だけじゃなく、経営者、政治家、役人を含めて考えていく必要があるんじゃないでしょうか。 
●大炎上「ブライダル補助金」問題の本質とは? 「予算を決めた後に使い道」 9/3
自民党の森まさこ参院議員が自身のX(旧ツイッター)で、ブライダル業界への補助金事業の進捗を報告したことが波紋を呼んでいます。少子化対策として確保された予算をブライダル業界への補助金として使うことの是非に加え、森氏が業界から献金を受けていたと報道されたこともあり、利益誘導なのでは? という声も上がっています。
このケースでは、本人がわざわざSNSでアピールしたことから、多くの人に知られることになりましたが、多くの政治家が国家全体のためというよりも、自身を支援してくれる組織のために動いています。
国会議員は選挙で選ばれますから、有権者に票を入れてもらわなければ、そもそも議員でいることができません。連続して当選できる議員のほとんどは、熱心に支持してくれる組織や団体を持っており、こうした人たちの基礎票がないと、安定して政治活動ができないというのが現実です。
しかし、特定の政治家をいつも熱心に応援してくれる有権者というのはそう多くありません。議員の誠実さや政策に賛同して支持するのが理想的ですが、熱心な支持者の多くは、やはり何らかの利益を期待しているわけです。そうなると議員は、自らの支持者の利益になるような政策ばかり立案することになりますから、お金の争奪戦となってしまいます。
政府が何らかの対策を行うために予算をつける際、中身が定まらないまま、先に金額だけが決まるというパターンをよく目にします。こうした予算の作り方に対しては、なぜ内容を固めずに金額ありきで物事を進めるのかといった批判が寄せられるのですが、こうなってしまう最大の理由は、それぞれの議員が自身の支持基盤に対して予算の分捕り合戦を行っているからです。
岸田政権は防衛費の大幅な増額を決定しましたが、これについても5年間で43兆円という金額が決まっているだけで、中身については明確になっていません。防衛費の増額については賛否両論がありますが、積極的に賛成していない人であっても、日本の防衛力が強化されるのであれば仕方がないと考えている人も少なくないと思います。しかし現実には、増額された予算が本当の意味での防衛力強化につながるとは限りません。
防衛費の増額が決定されて以降、永田町では増えた予算をめぐって予算獲得競争が行われており、とても防衛に関係するとは思えないものまで「防衛関連予算」として次々と要求が出てきている有様です。
景気対策も同様で、先に金額が決まり、その後、各省からは政治家の意向を受けた予算要求が次々と出てきますが、景気対策とはほど遠い予算もたくさん含まれているのが現実です。
政府が予算を策定する際には、各省が予算要求を行い、財務省がその予算が妥当なのかを査定していきます。要求された予算が本当に政策目的に合致したものなのか、便乗予算ではないのかなど、ひとつずつチェックしていくわけですが、100兆円を超す巨額予算すべてについて目を光らせるのは困難です。
また、一部の予算については議員の力が強く、財務省が予算をカットしようとしても政治的圧力でひっくり返ることがザラにあります。
政治というものが、基本的に何らかの経済的利益に沿って動いている形態のことを「利益誘導型政治」と呼びますが、残念ながら日本は昔も今も、政治形態の基本は「利益誘導型」です。
日本は民主主義の国であり、最終的に誰を議員に当選させるのかを決めるのは国民自身です。加えて言うと公務員というのは、国民の代表である政治家が望む政策を、実務家として遂行するのが仕事ですから、政治家が望む政策を勝手に変更したり、その予算を阻止するということはあってはなりません。
そうなると、特定の人にしか利益が行き渡らない社会を作るのか、そうではない公平な社会を作るのかは、全て政治家次第であり、ひいてはその政治家に票を入れる私たち行動にかかっていることになります。選挙に行って、投票で意志を示すことがまずは大事ですが、できることはそれだけではありません。
身近な問題であっても、このお金の使い方はおかしい、ということがあれば、多少の軋轢があったとしても、しっかりと声を上げていく姿勢が大事でしょう。世論が大きくなれば政治家はその声を無視できなくなります。
人は自分の身近な人たちが関わっていると、おかしいと思ってもなかなか声を上げません。ムラ社会的な雰囲気が色濃く残る日本の場合、周囲に忖度することが日常茶飯事となっています。しかし、こうした行為こそが特定の利権を生み出す原因にもなっていますから、利益誘導型政治を生み出している責任は、私たち国民にもあると言えるのです。
社会を変えていくには、やはり身近なところから取り組むことが重要でしょう。
●政治家にこそ「学び直し・リスキリング」を課すべきだ 9/3
民間にばかり要求する無責任
成長分野への円滑な労働力の移動などを促すための「学び直し(リスキリング)」を岸田政権は重要政策と位置づけ、5年間で1兆円を投入するという。衰退産業から成長産業への人材移動が必要なことは間違いない。
日経新聞が「リスキリングサミット2023」を開き、岸田首相、茂木自民党幹事長がメッセージを寄せています。二人の発言を聞いて、「学び直しは政治家にも求められていることを自覚していない」と失望しました。
日本経済が2、30年も停滞しているのは、適切な財政・金融政策を取らず、ポピュリズムの政策を連発してきた政治の責任も大きい。政治家の政策判断の間違い、政治倫理の軽視、政治家そのものの人的な劣化が目に余ります。
一般企業は様々な研修の機会を設けているのに、政治家にはそうした場がまずない。当選すれば、「みそぎを受けた」ことになり、問題があっても免罪になる、不問に付すという次元の世界です。政界版の「学び直し」を誰かが要求すべきです。
定年まで会社にしがみつかず、新しいスキル、知識を身に着け、転職や起業を試みていくことは必要です。日経(8月31日夕刊)の見出しは「首相『学び直し、官民挙げ』」とあり、「首相が掲げる『新しい資本主義』は人への投資が基盤になる」とも書いています。
見出しが「官民挙げ」なので、政治家自身もその気になっているのかと想像したら、民間企業にだけ学び直し(リスキリング)を求めています。私は「それは違うだろう。政治家自身の学び直しは必要だろう」と違和感を覚えました。政治家自身の刷新、政治の改革などは念頭にない。
日経は9月2日朝刊で「学び直し、問われる効果」という大きな解説記事を載せました。「リスキリングを成長につなげるために官民の緊密な連携も欠かせない」と指摘しています。
緊密な連携のためには、「民のリスキリング」も「政のリスキリング」が求められていることを指摘してほしかった。経済記事は経済記者、政治記事は政治記者という伝統的な役割区分から抜け出していません。メディア、特に政治ジャーナリズムのリスキリングも求めたい。
識者の談話もあり、「リスキリングは単なる研修の充実ではない。経済構造の大きな変革を伴う」(柳川範之・東大教授)とあります。政治家も基本的な研修(学び直し)から始め、政治構造の変革を目指してもらいたい。
政治家の劣化を示す事例はいくらでもあります。自民党所属の国会議員(4人)、地方議員(38人)がフランスに海外研修にでかけ、幼児教育の義務化、政治分野における女性活躍を学び、上下院の議員と意見交換しました。先進的な海外の事例を学ぶことは必要です。「観光旅行のようだった」などと、文句をつけてはいけません。息抜きの観光は許される。
問題はエッフェル塔を背景に「はい、ポーズ」の写真をとり、それを誰かがネットに投稿した。どのような反応が起きるか想像もしていない。こどもじみた行動です。「こんなばかばかしいことで世間をにぎわすな」と叫びたい。代表団の国会議員が女性局長を辞任した。
政治家の行動がどのように受け取られ、どんな反応が起きるかといった程度の想像力は持っていてほしい。ネット時代になってから特にそうなった。こんなことで解任など、語るに落ちる。
福島原発の処理水を「汚染水」といった農相もネット時代でなければ、言い直せばそれで済んだ。情報ネット化時代における政治家の行動、発言の仕方について、政治家は専門家から「学び直し」の指導を受けたらよい。
秋元衆議院議員(再生エネルギー議連事務局長)が風力発電の会社から3000万ー6000万円を受領していたことが発覚した贈収賄事件で、東京地検特捜部から事情聴取を受けています。馬好きで中央競馬会に馬主登録(19年)をしていたとか。国会議員が馬主登録するなんて語るに落ちる。
馬主になって共同経営の形をとり、資金提供の受け皿にしたのかもしれない。資金を提供した会社の社長が「国会質問の謝礼だ」と、特捜部に供述しているそうですから、クロでしょう。政治倫理、政治規範の基礎を学び直してほしい。嘘はいけないにしても、巧妙な嘘のつき方を練習しておかないと、中国やロシアの情報戦略にしてやられる。
政治は経済原則をもっと勉強してほしい。ガソリン価格が1g180ー190円に高騰し、自民党がガソリン補助金の削減を撤回し、年末まで延長する意向です。「ガソリン・ポピュリズム」と呼ばれています。
価格の高騰は原油価格の反転、円安、補助金の削減に原因があります。政治が知るべきは「価格高騰は消費を減らせ」という市場のシグナルなのです。補助金などをつけるから、計画通りに段階的撤廃をしようとすると、値上がり要因になり、継続の要求がでてくる。
ガソリン補助金を年末まで延長(累計6兆円)すれば、どうなるか。市場は「消費を減らせ」といっているのに、補助金が復活させれば、消費は減らない。減らないどころか、22年度の国内販売量は7年ぶりに増加に転じています。これが岸田首相の唱える「新しい資本主義」の一断面です。
補助金でガソリン価格を値下げして、消費を奨励するようなものだから、脱炭素にもが逆行する状況を生む。政府の介入(補助金の投入)は市場の価格形成をゆがめ、正しい消費行動をとれなくする。
政界構造では、自民党の場合、首相、閣僚などの主要ポストの8割は世襲議員によって占められている。小選挙区制になってますますその傾向が強まっている。世襲政治は地盤(後援会組織)、看板(親子代々からの知名度)、カバン(政治資金)に支えられ、小さな選挙区ほど有利になる。
政界は家内制手工業のような世界を形成している。新しい政治人材が政界に参入しにくい。民間企業でそうなったら衰退していくのに対し、政界ではますます繁盛し首相への道が開けてくる。
ここにも「学び直し」、構造変革の問題があるのに、政治ジャーナリズムは取り上げない。せっかく築いた人脈が途切れてしまうことを恐れている。岸田政権が「リスキリング」の看板を掲げた時、「政界もリスキリングを」と政治ジャーナリズムは声をあげたでしょうか。
●「鬼門」の農相ポストが再び時の政権を追い詰める? 野村農相「汚染水」発言 9/3
海洋放出が始まった東京電力福島第1原発の処理水を「汚染水」と発言し、4時間あまりで謝罪と発言撤回に追い込まれた野村哲郎農相(79)の資質問題が、処理水をめぐる中国の日本産水産物輸入の全面停止という強硬な対応に追われる岸田政権を直撃した。野村氏は「言い間違え」を主張し、首相や政権幹部らも「言い間違え」で足並みをそろえるが、言い間違えても許されることと、そうではないことがあるのが、世の常だ。
今回、野村氏が発言したタイミングは、岸田首相が東京・豊洲市場を視察し、水産事業者への支援策を発表した日。結果的に、支援策のニュースをかき消すような形になった。支援策には多くの漁業関係者が注目しているはずだし、首相のメンツも丸つぶれ。「言い間違え」ですむ問題でないことは、一目瞭然だ。
東日本大震災から12年が経過するが、被災地では今も震災前の生活に戻っておらず、特に原発事故の影響はなお続いており、政府には言葉も行動も合わせた支援継続が求められている。それを崩しかねない今回の出来事、しかも中国の主張をなぞるような発言を、言い間違えであっても水産事業者の担当閣僚が口にしてしまったという事実は、重いのだと思う。
直近では第2次安倍政権で、震災に関連した失言をした2人の大臣は、発言直後に更迭された。岸田文雄首相は野村氏の更迭を否定したが、岸田政権で昨年秋から冬にかけて起きた「辞任ドミノ」では、問題を抱えた閣僚の処遇に対する、後手後手の対応が露呈したことは記憶に新しい。今週9月8日に予定される、処理水海洋放出をめぐる衆参両院での閉会中審査に野村氏が出席予定で、この場で再び「炎上」するようなやりとりが起きれば、再び首相の判断にも批判が高まることになる。
野村氏の発言後、取材した政府関係者の言葉には、うなずくしかなかった。「まさかの鬼門復活だよ…」。
「鬼門」とは、かつて安倍晋三政権(第1次も第2次も)で不祥事やスキャンダルで交代が相次いだ、農相ポストのこと。第1次安倍政権では、2007年5月から9月までの約4カ月間に、当時大きな批判を浴びた事務所費問題などで農相が3人交代し、第2次政権でも2015年2月、政治とカネの問題で農相が辞任した。第1次政権では、この農相ポストをめぐる「負の連鎖」が、安倍氏を退陣に追い込む一因になった。その役職が再び、首相の足を引っ張るような形になったのが今回の問題のもう1つの側面だ。
野村氏は昨年8月の内閣改造で、当時78歳で初入閣を果たした。当選4回の参院議員。JA出身の農水族である一方、当選回数が適齢期となった「大臣待機組」の1人として、念願の入閣を果たした経緯がある。
「政策に詳しいことと大臣の資質は、必ずしもリンクしない」(関係者)といわれる。野村氏は「汚染水」以外にも、全面輸入停止に踏み切った中国の対応を「想定は全くしていなかった」と素直に驚いて危機感のなさを露呈。6月の記者会見時にかりゆしシャツで臨んだ際には「遊び人みたいな感じ」などと述べ、沖縄ではかりゆしが正装という認識が不足しているとの指摘を受けたこともあった。今回、発言の不安定さがあらためて露呈しただけに、野党議員からは「岸田首相は本当にこのまま続投させるのだろうか」と、首をひねる向きもある。
岸田首相が今回、野村氏の更迭を否定したのは、漁業者への支援策のとりまとめが迫ることに加え、近く内閣改造・自民党役員人事が予定されることも、影響しているとの見方が強い。更迭でダメージを負うより、内閣改造で何もなかったかのように退任させるのではないか…との見立てだ。
首相動静によると、岸田首相は8月に入り、各閣僚と昼食を取っている。1回に2閣僚が出席しているが、永田町では、この場が、内閣改造を前に「大臣再任か退任かの『面接』になっている」との見方がある。8月28日には、ともに去就が注目される河野太郎デジタル相と高市早苗経済安保相が昼食の場に参加したため、さまざまな臆測が流れた。野村氏は8月2日、現在の処理水問題にともに取り組む西村明宏環境相とともに、首相との昼食に参加している。今回の発言問題のかなり前ではあるが、この時の「面接」も含めて、野村氏の処遇が判断されることになる。久しぶりに岸田首相の「人事眼」が問われるシーズンが迫ってきた。
●増税岸田が日本を壊す!米共和党のドンが怒り爆発… 9/2
「出生率をあげるために政府がお金を使うと、出生率が下がる」
そう語るのは、共和党に多大な影響力を持つ保守系ロビー団体の代表、グローバー・ノーキスト氏だ。
日本の国民負担率は50%近く、いわゆる「五公五民」状態にもかからわず、自民党議員、特に幹部たちの共通見解は「消費税をあげる余地がある」「防衛費、少子化対策、そして将来の社会保障費増に備えて増税をお願いしたい」であるのが現状だ。そうした現状を打破するにはどうすればよいか。選挙に強く、そして近代的な共和党に生まれ変わった方法について、作家の小倉健一氏が「共和党のドン」に直撃した。
日本のように税金が高い国では出生率は下がる
ノーキスト氏は、レーガン大統領の要請を受けて1985年に設立した納税者擁護団体「全米税制改革協議会」(ATR)の議長である。ATRは、政府の規模とコストを制限し、連邦、州、地方レベルでの増税に反対するために活動している。ATRは「納税者保護誓約書」を組織し、連邦および州議会の全候補者に対し、すべての増税に反対することを米国民に文書で確約するよう求めている。ノーキスト氏は、あまたある保守系の団体をまとめ上げていき、強力なネットワークを構築していった。トランプ政権下では「トランプの影に、この男あり」とまで言われていた。来日したノーキスト氏をインタビューした。
――日本の岸田政権は、防衛費を倍増し、異次元の少子化対策と称して莫大な予算を子育て支援につぎ込む構えです。岸田首相は、政策をぶち上げた当初、増税によってそれらの財源を賄う考えでしたが、国民からの強烈な反対にあい、支持率が低迷していることからいったん断念しました。しかし、お金は自然に湧いてくるものではありませんから、当然、増税か国債の発行によって負担が追加されることになります。増税が経済に負の影響を与えることは論を待ちません。例えば、「国民負担率+1%ポイント上昇で潜在成長率を0.11%ポイント押し下げる」ことは、エコノミスト(永濱利廣氏)の研究によって明らかになっており、他にも同様の研究結果があります。
ウクライナ戦争の影響によって増えた予算は、増税を正当化するものでは決してない。何かやむを得ない理由で支出が増えたのなら、他の支出を減らせばいい。税金が高い国において出生率が低い理由の1つは、政府が子どもを産むのにお金がかかるようにしているからだ。政府が子どもを産むためだとしてお金をつぎ込めば、つぎ込むほど、税金が上がってしまい、結果、お金がないせいで、子どもを産むことができなくなるということだ。出生率を上げるためにお金を使おうとすると、出生率が下がるのだ。経済が成長し、政府が教育費を負担して子供を産ませることを不可能にしていないと人々が感じていれば、人々はより多くの子供を産むだろう。
政府のコストを減らせば(減税すれば)、経済成長する
――日本では、減税を訴える国政政党は皆無と言っていい状況です。また、減税を主張すると、社会保障費がなくなり人が死ぬ、ということを真顔で語りだす経済評論家が存在し、しかも、社会的なコンセンサスを、幸いにして一部ですが、得ているような状況にあります。
アメリカで減税に反対する勢力が、好んで用いるプログラムがある。もし、予算を削減しなくてはならない局面になったら、減税に反対する勢力が、最初にすることはワシントンの政府機関を閉鎖してしまうことだ。これはものすごくナンセンスでありながら、人々の注目を集めると思っているのだろう。日本でもきっと人々の注目を集めるために、そうしたナンセンスな主張をしているのだろう。反対派は、人々がもっとも注目を集めるものから切ろうとする。
しかし、私たちがやらなくてはならいことは、(政府の)総支出を減らすというシンプルな一点だ。なぜなら、政府のコストを減らせば、経済成長するからだ。
最初は少しだけでもいい。それが結局大きな節約になっていく。現在の100のものを90にすることだけに拘る必要はない。100から110へと予算を増やそうという計画を、105にするだけでも大きな一歩だ。ムダなことにお金をつぎこまないこと。総支出を減らし、成長のために減税をする。財政の足かせを減らすのだ。
●「アリラン」を共に歌った…朝鮮人虐殺追悼式、日本の政治家が初めて出席 9/2
1日午前11時58分、会場内に集まった約400人全員が黙祷した。100年前の1923年9月1日、マグニチュード(M)7.9の大地震が東京一帯を襲ったその時間だ。この日、東京千代田区国際フォーラムで開かれた「第100周年関東大震災韓国人殉難者追念式」には韓国・日本の政治家と在日韓国人らが集まり、当時死亡した英霊を慰めた。
100年前に発生した関東大震災では約10万5000人が死亡した。地震による混乱の中で「朝鮮人が暴動を起こした」「井戸に毒をまいた」などのデマが広がり、約6000人と推定される朝鮮人が日本の警察・在郷軍人・民間人に残酷に殺害された。日本内閣府中央防災会議が2008年に作成した報告書には「大地震当時にデマが広がり、各地で結成された自警団が日本刀、斧などで武装しながら、在日朝鮮人を片っ端から尋問し、暴行を加えて殺害した」と書かれている。
今年100年を迎え、在日本大韓民国民団(民団)が主催して在日韓国大使館と在外同胞庁が後援する大規模な追念式が開かれた。尹徳敏(ユン・ドクミン)駐日大使はこの日の追悼の辞で「関東大震災当時、韓国人が悔しく犠牲になったという事実は誰も否定できない歴史」とし「こうした不幸な過去は二度と繰り返してはならない」と述べた。
続いて「ありのままの歴史を直視して相互理解を深めれば、自由民主主義・人権・法治など普遍的価値を共有するパートナーの韓国と日本は真のパートナーとして未来志向的な協力を継続できるだろう」と強調した。李寿源(イ・スウォン)民団東京本部団長も「未来を眺めて着実に努力を続け、韓日両国の平和、安寧、より良い共存共栄の平和な世界構築に力を注ごう」と述べた。
この後、歌手チャン・サイクさんが舞台で「アリラン」「春の日は過ぎゆく」を歌った。行事に参加した在日韓国人と政治家も「アリラン」を静かに共に歌った。チャン・サイクさんは公演の後、「今日の私の歌が亡くなった方々に少しでも慰めになり、同胞の皆さんに力になることを望む」と語った。
日本の政治家10人出席、菅前首相は弔花
この日の行事には鳩山由紀夫元首相、山口那津男公明党代表、福島瑞穂社会民主党党首、逢坂誠二立憲民主党代表代行、武田良太日韓議員連盟幹事長ら10人余りの日本の政治家が出席し、朝鮮人犠牲者を追悼して献花した。韓国からは鄭鎮碩(チョン・ジンソク)韓日議員連盟会長と尹昊重(ユン・ホジュン)幹事長、「賢鎮(ペ・ヒョンジン)国民の力議員らが出席した。
自民党議員など日本の政治家が民団主催の追念式に出席したのは今回が初めてであり、最近の韓日関係の変化を表している。ただ、日本政府が朝鮮人虐殺を認めていない現実を反映するかのように政府関係者の追悼の言葉はなかった。日韓議員連盟会長を務める菅義偉前首相はこの日の行事に弔花を送った。
鳩山元首相はこの日の行事後、記者らに対し「日本政府が今からでも朝鮮人虐殺に関する事実を把握し、間違ったことに対してはきちんと謝罪する気持ちを持たなければならない」とし「申し訳ない」と述べた。
小池知事、今年も追悼文を送らず
この日の同じ時間、東京墨田区の横網町公園でも日朝協会などが主催する追慕祭が開かれた。30度を超える残暑の中で数百人の市民が出席し、100年前の虐殺で犠牲になった朝鮮人と中国人を追悼した。
この日の行事を主催した「関東大地震朝鮮人犠牲者追悼式実行委員会」(以下、実行委)は1974年から横網町公園で毎年9月1日に追悼式を開いている。石原慎太郎元知事氏、舛添要一元知事ら過去の東京都知事はこの行事に追悼文を送ってきたが、小池百合子現知事は2017年から追悼文を送っていない。
実行委は100年を迎えて小池知事に何度か追悼文を要請したが、今回も追悼文はなかった。「関東大震災朝鮮人虐殺の国家責任を問う会」事務局長の田中正敬氏はこの日の行事で「(朝鮮人)虐殺はその間の調査と研究で知られている歴史的な事実」とし「東京都知事と日本政府は過去を直視して犠牲者と真摯に向き合って責任を果たさなければいけない」と述べた。 
●直木賞作家・今村翔吾が現代の政治家に思うこと 9/2
「すでにお金持ちでありながら、これ以上お金を増やすことか歴史に名を残すことなら、どうして後者を選ばないのか」
ピンチに発動してきた日本の免疫力
テレビに出演すると、日本の政治についてコメントを求められる機会がたびたびあります。
正直なところ政治については門外漢ですし、日本の政治家の頑張りが足りないなどと偉そうに語るつもりもありません。ただ、昔と今で政治家の質が大きく変わっているのは感じています。
決定的な違いは、腹の括り方にあります。
明治から戦前の時代までは、現代と比べて暗殺事件の発生件数も多く、政治家にはいつ死んでもおかしくないという緊張感がありました。緊張感を抱きつつ、たとえ非難をされようが、国民を生かすためにすべきことをやり抜いていました。
大久保利通は、初代の内務卿(現代でいうと総理大臣)でしたが、公共事業に私費を投じ、多額の借金を作っていたという逸話があります。しかも、債権者たちは大久保の借金の使い道を知っていたので、死後は遺族に対して返済を求めなかったといいます。
今も国民のために仕事をしている人がいるとは思いますが、戦後から大きく政治のあり方が変わり、政治とカネのような問題が頻出するようになったのは事実でしょう。
私が現役の政治家にぶつけたいのは、「それ以上お金を得てどうするつもりなのか」という疑問です。今の政治家は、国民の平均所得と比較すれば多額の給与にあたる歳費以外に、月100万円も支給される「調査研究広報滞在費」(旧・文書通信交通滞在費)などの経費も支給されています。しかも、民間ではあたり前の「領収書」は不要ですし、「残金の返却も不要」というルールになっています。
すでにお金持ちでありながら、これ以上お金を増やすことと歴史に名を残すことのどちらを目指しているのか、どうして後者に興味を持たないのかと思うのです。
今後、本当に明治の元勲と同じくらいの覚悟で政治に取り組む人が出てきたら、日本の政治は大きく変わっていくはずです。それを期待する反面、もはや無理なのではと冷静に捉えている自分もいます。
ただ、一つだけ希望があるとすれば、これまで日本がピンチに陥ったときには、救世主となる人材がいきなり登場してきたということです。
日本を一体の生き物だとすれば、これまで本当に生存本能が脅かされたときには、特別な免疫機能を発揮して病巣や傷を治療して回復させるような現象が何度となく起きているのです。
そういう特別な免疫力が日本に残っていたら、という希望は持っています。今の日本に免疫力が働いているようには見えませんが、もしかすると日本はまだ本気で追い詰められていないのかもしれません。
歴史を踏まえて日本の教育を考える
今、日本では教師不足と教師の過重労働が大きな問題となっています。文部科学省の「令和3年度公立学校教職員の人事行政状況調査」によると、精神疾患で休職した教師の数は5897人で、過去最多となっています。
教師の長時間労働の原因はさまざまですが、公立学校の教員に残業代を支払われないと定めた法律や休日の部活動などにより、定額働かせ放題〞の状況が野放しになっている現状が問題視されています。
日本はもともと教育大国であり、待遇が良くなくてもやりがいを求めて教師を目指す若者がたくさんいました。しかし、過酷な勤務実態はなかなか改善されず、今や若者が教師になりたいと思えないような国になっています。
歴史を見れば、教育に力を入れない国は確実に衰退しています。どうにかして日本の教育を復興させる必要があります。
そこでヒントとなるのが私塾の存在です。日本には近世から近代初期にかけて、私塾が教育の一端を支えていました。
私塾とは江戸時代に儒学者・国学者・洋学者などの民間の学者が開設した私設の教育機関。武芸や技芸を教える塾もあり、身分にかかわらず自由な教育が施されていました。
江戸前期には中江藤樹の藤樹書院、伊藤仁斎の古義堂、中期には荻生徂徠の蘐園塾など儒学の教育が主流でしたが、中期になると本居宣長の鈴屋のような国学の塾が現れます。
そして、後期にはシーボルトの鳴滝塾、緒方洪庵の適塾に代表される洋学塾が見られるようになり、幕末には吉田松陰の松下村塾のように政治的な教育を行う塾も登場しています。
現代では「塾」というと受験のための学習塾のイメージが強いですが、これだけ多様性がうたわれているのですから、もっといろいろな塾があってもいいと思います。
昨今は会社の定年を迎えた人が、大学で学び直すケースも増えていると聞きます。勉強熱心なのは素晴らしいですが、社会で何かをやり遂げた人が教える側に回ることも必要ではないでしょうか。
シニア世代には「私たちの知識はもう通用しない」という遠慮もあるでしょうが、本の読み方や問題解決の仕方など、若者に受け継ぐべき知的資産は少なくないはず。
歴史小説には、前述した『世に棲む日日』のように、私塾をとり上げた作品も多数あります。過去の教育法をヒントに、日本の教育を立て直す動きが盛り上がればと期待しています。
●大阪の人以外はよくわからない日本維新の会、どれくらい信頼できる政党か 9/2
今年4月に行われた統一地方選挙で、他の候補に大差をつけて当選し、大阪府知事の続投を決めた日本維新の会の共同代表を務める吉村洋文氏。大阪市長選挙でも、維新の横山ひでゆき氏(元大阪府議会員)が当選した。
吉村氏は会見で、「府民のみなさんと約束したことを必ず実行する」と語ったが、維新政治の矛盾を指摘する声も少なくない。「維新政治は嘘ばかり」と語る日本城タクシー株式会社、代表取締役の坂本篤紀氏に真意を聞いた。
──坂本さんは維新政治をどう見ていますか、維新政治の特徴や政治手法について感じていることを教えてください。
坂本篤紀氏(以下、坂本):私はよく「維新に批判的」などと言われます。維新を支持する方々の中でも、反対意見に聞く耳を持たない、議論にもならない維新の信者、通称「イシンジャー」には、私の意見は批判的に聞こえるのかもしれませんが、私の感覚では、ごく普通のことを指摘しているに過ぎません。
年収が2億5000万円あるわけではないし、イーロン・マスクみたいな稼ぎ方をしているわけでもない。そんな私からすると維新の政治感覚は肌に合わない。
たとえば、維新が謳う「教育の無償化」などがそうですが、彼らは平気で前言を翻す。
「完全無償化ですよ」「私立高校にただで通える」などと言い切っていましたが、実際には「上限」や「所得制限」などについて、いまだに議論している最中だという。「なんや、やってなかったんかいな」という話です。
しかも、この10年で公立学校を10校以上閉鎖している(昨年8月の時点で、大阪府は10年間で15校の高校を廃校にする計画を立てている。廃校が検討されている学校も含めると、2014年度から2023年度の間に廃校する学校の数は17校になる)。
もともと入学金も授業料も安い公立を閉めて、「私立に行きなさい」は政策としておかしい。
──維新と言えば新自由主義というイメージがあります。大阪でもいろんなことを民営化してきました。
維新流・民営化の評価
坂本:「民営化がどうして必要なの」と問いたい。国鉄の民営化だって、何がどうよくなったというのか。残った二十数兆円の借金を国民にかぶせて、その分不景気になり、地方では鉄道が走らない状況になってしまった。
民営化で無くしていいものと悪いものがある。
学校に利益を求める。ごみ収集を民間に委託しようとする。民営化しても、儲かるとはとても思えないし、儲からなかったらゴミを回収してくれないようになってしまう。お金にならないことをするのが公の仕事でしょう。
大阪市の場合は、交通局を民営化するという馬鹿げたことをやりました。
横浜の市営バスの運転手さんの年収は740万円ですが、大阪はバスの運転手さんの給料が400万円台になってしまった(大阪市は民営化により、大阪運輸振興への業務委託を進め、運転手の給与が引き下げられた)。たくさん黒字を出してほしいわけではないけれど、これはおかしい。
公立病院が赤字だから閉めるというが(橋下徹氏の知事時代、行政の無駄を省くとの号令のもと、公立病院の数を減らした)、患者が良い医療を受けて、それに払う対価が安かったから公立病院が赤字になっているわけでしょう。診察を受けた患者で言えば黒字や。誰のために政治をしているのか。
中央区の一等地にあった大阪市立東商業高等学校は分かりやすい例で、3年連続定員割れしたという理由で廃校にされ、その後に建てられたのがタワーマンションとスーパーマーケットです。それで、入学金の高い私立に行きなさいというのが今の大阪の政治です。
「大阪の成功を全国へ」と言っていますけど、実際には失敗している。
──維新は大阪のビジネス界とどんなつながりを持っているのでしょうか?
最初のころの話と違う大阪万博
坂本:一般社団法人大阪青年会議所(JCI大阪)との関係があるのではないかと思います。大阪は自民党からの鞍替えも多い。自民党はもともと大阪では選挙で弱かった。このままじゃ泥船だからということで維新に寝返った。
維新は世襲議員を目の敵にして「自分たちにはしがらみはない」というけれど、大阪の府議会議員や市議会議員を見たら、ほとんど2世です。3世という人までいる。
──2025年大阪万博が近づいていますが、あまり準備が進んでいないことなどが話題になっています。
坂本:あれは沼万博です(笑)。もともとゴミを焼いた灰や浚渫で掘った道頓堀川のヘドロで埋め立てて作ったのが夢洲。なんであんなところで万博しようと考えたのか理解できない。
チケットを企業に押し付ける。学校にも万博へ行けと求める。予算に関しても、「1250億円でいける」なんて言っていたのに1850億円に引き上げられる。全然話が違う。
最近の吉村知事の囲み取材を見たら、「万博は国の行事ですから博覧会協会を通じて急がせます」なんて言って、「なんだったら手伝いましょうか」という態度に転じ始めている。「鶴見区あたりの陸地でやります」と言って謝ればいいのに。
しかも、統一地方選挙が終わるまで万博の工事の遅れを口にしなかった。夢洲と結ぶ橋の構想も嘘、橋の新設も見送りにして、もともとあった夢舞大橋だけでやることになった。最初のころの話と全然違う。
「身を切る改革」の本質
──笹川理府議が5月末に、別の大阪維新の会の女性市議にセクハラやパワハラをして離党しました。梅村みずほ参院議員も今年5月、名古屋出入国在留管理局で病死したスリランカ人女性・ウィシュマさんについて、「ハンガー・ストライキによる体調不良で亡くなったのかもしれない」と発言し、日本維新の会から党員資格停止6カ月の処分を受けました。
昨年8月には、福岡市の堀本和歌子市議会議員が、別の元衆議院議員の男性の名前で「旧統一教会の式典で韓日トンネルへの賛意と、祝辞を述べさせていただきました」などと記したビラを博多区内で配ったとして、警察から任意で事情を聞かれ、10月に日本維新の会を離党しています。
ビックリするような問題行動を起こす議員が次々と維新から誕生しています。
坂本:維新議員の不祥事を真面目に読み上げたら2時間くらいかかる。「身を切る改革」が口癖ですが、身内には甘いのが維新の実情で、身内の義理を果たすという意識だとしたら、ほとんどヤーサンの世界です。
「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」と書いて問題になった長谷川豊という人もかつて維新にいましたが、維新に一番欠けているのは当事者意識です。
ただのポピュリズムとも少し違って、方向性としてはトランプに近いものを感じる。自分たちの利益につながる強固な2割くらいの有権者の支持を固めて、そっちを向いてだけ政治をする。そうすると、当日の投票率が4割だったら大阪では確実に過半数が取れる。
大阪都構想をなぜ住民投票にしたのか。議会で通そうとしたら半分以上の支持を集めなければならないから無理だと考えたということです。

 

●うっかり間違えただけ、それでも野村哲郎農水相には国益のために辞めて 9/1
朴訥ながら農政には詳しい人
野村哲郎農水相は農協職員から政治家になった人。国会答弁を何度か聞いたことがあるが、受け答えは朴訥ながら農業の現場については詳しく、いい人が大臣になったなと思っていた。
だが今回の「汚染水」発言は言い間違いとは言えダメだ。野村氏は中国が日本の水産物の禁輸を打ち出した際も「全く想定していなかった」と述べて「危機感がない」と批判された。
少し弁護すると、このとき野村氏は「中国はこれまで10都県を輸入停止していたので、10都県は対象になるのかなと思っていた。すべてなのかどうかは全く想定していなかった」と言ったのであって、「全く想定していなかった」わけではない。だが中国からしてみれば「しめしめ。日本の農水相がビビってる」と思ったことだろう。
すると中国国内では、日本人学校に投石したり、日本の魚屋さんに脅迫電話をかけたりして騒ぐ者が相次いだ。これらの行動を起こしたのが何者かは明らかになっていないが、反日教育を受けた人や、社会に不満を持っている人、SNSでフォロワーを増やしたい人達も多い。いずれにせよ中国政府はそれらを放置、黙認している。
中国との情報戦に勝利しろ
専門家によると中国は経済の悪化で国民の不満が増大しており、今回の日本たたきは憂さ晴らしになっている側面があるという。
一方で中国政府としては、反日行動を隠れ蓑に反政府行動が起きることを最も恐れている。また米国との対立、経済の悪化を考えると日本企業の全面撤退は困る。だから2012年の尖閣国有化のときのような大きな騒ぎにはならないだろうという見方が多い。
つまりこれは中国との情報戦なのだ。相手は官も民もいろいろな方法で仕掛けてくる。こちらは冷静にそれに対抗する。時には強い言葉も必要だ。
日本は科学的根拠に基づき、IAEAのお墨付きももらって安全な処理水を放出した。それに対して「核汚染水」などと非科学的な表現を使って非難しているのは世界中で事実上中国だけだ。
敵のスローガンを口にするな
ロシアはウクライナ侵略で中国に借りがあるので透明性の確保を日本に求めているが実はこの件にはあまり関心がない。韓国政府は処理水放出を容認した上で、先日首相が「汚染水が放出されるわけではない」と述べ、「汚染水」と呼ぶのを事実上やめた。
大事なことを忘れていた。日本の一部野党とメディアはなぜかいまだに「汚染水」と呼び、放出に反対している。すなわち世界中が処理水の安全性を認めているのに、中国と日本の一部の人たちだけがいまだに「汚染水」という言葉を使って騒ぎ続けているのだ。
この状況において、日本の農水相が「汚染水」と言ってはイカン。野村氏は79歳と高齢だ。前回に続き、今回もうっかり言ってしまったのだろう。そんな人を責めるのは心苦しい。だが我々は今、中国との情報戦という「戦争」を戦っている。そんな時に敵のスローガンを間違えて口にしてしまう人が日本の農林水産の司令官であってはいけない。
岸田文雄首相は直ちに野村農水相を罷免すべきだ。
●関東大震災の朝鮮人虐殺 東京で追悼式典開催=韓日国会議員ら出席 9/1
在日本大韓民国民団(民団)東京本部は1日、東京都内で関東大震災当時に起きた朝鮮人虐殺の犠牲者を追悼する「殉難者追念式」を開催した。
関東大震災から100年を迎え、在日韓国大使館と在外同胞庁が後援した今年の式典には初めて韓日の政治家が出席し、例年に比べ大きな規模で開かれた。
朝鮮人虐殺を公式に認めていない日本政府の関係者の姿はなかった。
韓国からは超党派の国会議員でつくる「韓日議員連盟」の会長を務める与党「国民の力」の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)議員と幹事長である最大野党「共に民主党」の尹昊重(ユン・ホジュン)議員、幹事である国民の力の「賢鎮(ペ・ヒョンジン)議員が出席した。
日本からは鳩山由紀夫元首相、山口那津男・公明党代表、福島瑞穂・社民党党首、逢坂誠二・立憲民主党代表代行、額賀福志郎・日韓議員連盟前会長、武田良太・日韓議員連盟幹事長らが会場を訪れた。
献花台の両側には、日韓議員連盟会長を務める菅義偉元首相と韓悳洙(ハン・ドクス)首相からの花輪が並べられた。
民団は「関東大震災当時の韓国人に対する大量虐殺の悲劇は天災であると同時に人災だった」と指摘。数千人の韓国人が虐殺されたが、国を奪われた状態だったため抗議はもちろん調査を要求することもできなかったと強調した。
民団東京本部の李寿源(イ・スウォン)団長は「悲惨な受難の歴史は絶対に忘れてはならない」として犠牲者に哀悼の意を表した。
また、日本政府の中央防災会議が作成した関東大震災の報告書に「過去の反省と民族差別の解消の努力が必要なのは改めて確認しておく」と明記されているとして、韓日両国の平和と共存に希望を示した。
尹徳敏(ユン・ドクミン)駐日大使は、犠牲になった韓国人の正確な数は確認されていないとしながら「数字を問わず、関東大震災当時に韓国人が無念に犠牲となった事実は誰も否定できない歴史だ」と述べた。
続けて、不幸な歴史は二度と繰り返されてはならないとし、「ありのままの歴史を直視すれば、韓国と日本は真のパートナーとして未来志向的協力を持続し、世界平和と繁栄に共に寄与できるだろう」との考えを示した。
一方、尹大使と李団長は約6000人が命を奪われたと推算される朝鮮人虐殺を認めない日本政府に明確に真相究明を求めることはせず、犠牲者の追悼と両国の相互理解を強調した。
鳩山元首相は追悼式に出席後、記者団に対して日本は朝鮮人虐殺をきちんと調査し、過去の過ちに対して謝罪の気持ちを持たなければならないと述べた。
●関東大震災での朝鮮人虐殺「記録ない」 日本に「必要な措置検討」=韓国 (8/31)
韓国外交部の任洙ソク(イム・スソク)報道官は31日の定例会見で、日本政府が1923年の関東大震災当時に起きた朝鮮人虐殺について「記録が見当たらない」としたことについて、「韓国政府はこれまでさまざまな機会に日本に対して過去を直視するよう促した」として、政府として必要な措置を引き続き検討するとの立場を示した。
また、政府は関東大震災に関して日本側に真相調査の必要性を提起し、真相究明のための資料提供を要請したと説明した。
日本の松野博一官房長官は30日の記者会見で、朝鮮人虐殺について「政府内において事実関係を把握する記録が見当たらない」と述べた。また、災害の発生時に国籍を問わず全ての被災者の安全と安心を確保するために努力することが非常に重要な課題だと認識していると述べたが、反省や教訓という言葉はなかった。 
●デジタル化は何をもたらすか 与野党の“通”に聞く 9/1
デジタル庁が発足して9月1日で2年。政府の“司令塔”として社会のデジタル化を推進している。一方で、マイナンバーカードをめぐるトラブルが相次ぎ、不安を感じている国民が少なくないのも実情だ。立法に関わる国会議員は今後をどう展望しているのか。デジタルに精通する2人の与野党議員に聞いてみた。
与党代表“デジタル族”平将明  
自民党の平将明衆議院議員。自他ともに認める与党きってのデジタル通だ。取材のため議員会館の事務所を訪問した際、平の指に目がとまった。白と黒の見慣れぬ指輪。何やら意味ありげなものに思え、尋ねてみた。
「白い方は決済用。クレジットカードとひも付けてあって、コンビニなどでカードみたいに水平に当てて支払いができる。黒い方は生体情報の管理。睡眠の質や脈拍数、血中酸素濃度をモニタリングしている」
デジタルで行政改革を
生活にデジタルを積極的に取り入れている平。現在は、党のデジタル社会推進本部で、AIを社会でどう活用するかを検討する作業チームの座長を務めている。平は、行政改革の観点からデジタル化を進めることが急務だと主張する。
「人手不足のため、デジタル化しないと役所はパンクする。ほとんどの人がマイナンバーカードを持ち、それで手続きができるなら圧倒的にランニングコストを下げ、満足感を上げられる」
デジタルが苦手な人たちはついて行けるのか。取り残されはしないのか。率直な疑問をぶつけてみた。
「全員が無理にデジタルに入ってきて下さいと言っているわけではない。デジタルでできる人が入ることで『勘弁してよ』っていう苦手な人を支援するのに人を割くことができる」
マイナのトラブルをどうみるか
政府がデジタル化を急ピッチで進めようとする中、マイナンバーカードをめぐるトラブルが後を絶たない。政府が8月に公表した中間報告では、カードと一体化したマイナ保険証に他人の情報が登録されていたケースが累計で8441件にのぼっている。この事態を平はどう受け止めているのか。
「政府の対応は90点。デジタル庁って10か月でつくり、デジタル人材と官僚という全然違う人たちをひとつの器に入れている。正直よくやっていると思う。ただミスは起きていいわけではないので、どう減らしていくかもう少し考える必要はあった」
そして、一連のトラブルによってデジタル化の流れを止めてはいけないと強調した。
「いまがデジタル化の胸突き八丁だ。苦しいけど、ここさえ抜ければ山の頂が見える。これだけ大きな国でデジタルをやっている国は少ない。マイナカードの申請も9000万以上の申請があって素地はできている。AIも最大限活用すべきで、勝ち筋はやはりデジタルだ」
野党代表“デジタル族”中谷一馬
野党にもデジタル化をめぐる見解を取材しようと“デジタル通”を訪ねた。立憲民主党の中谷一馬衆議院議員。党のデジタル政策のプロジェクトチームで座長を務めている。ことし3月の衆議院内閣委員会では、実験的に生成AIがつくった質問を岸田総理大臣に行った。また8月にはシンガポールを訪問し、デジタル先進国の取り組みを視察している。中谷の事務所はデジタルであふれていた。まず、大きな滝が映し出されたパネル。よく見ると、水が流れているではないか。何でも「デジタルアート」というんだとか。机の上にある観葉植物は鉢ごとクルクル回転しながら浮いている。
政府のマネジメントにマイナス100点
近未来的な空間の中でインタビューを行うと、中谷は政府のマイナンバーカードをめぐるトラブルへの対応を強く批判した。
「政府のマネジメントサイドにマイナス100点。そして、マネジメントサイドに振り回されながら現場で日々奮闘し、努力している方々に100点を差し上げたい。なので、トータルで0点ということになる」
厳しい評価の理由をさらに尋ねた。
「保険証を廃止する時期ありきで進めたことは愚の骨頂だ。そもそもマイナンバーの制度は何のために導入するのかや、国民にどんなメリットがあるのかが共有されない状況のまま進められた、戦略的なミスだ」
なぜ、こうした事態を招いたと考えるのか。中谷は、専門的な知見と意思決定のあり方がかみ合わなかったためだと指摘した。
「極めて頭のよいド素人がそれっぽい理屈を組み立てて、政策決定をすることが霞が関や永田町では散見される。専門的な知見をもっていないので、要所要所でミスが起き、それに対するリカバリーがまったくできない」
デジタル化は“急がば回れ”
政府の対応を酷評する一方、中谷自身も社会がデジタル化を進めることについては賛成の立場だ。今後、どのようにデジタル化を進めていくべきかを問うた。
「デジタル化が遅れているのも事実で、速い流れの中で進めていかなければならないが、“急がば回れ”であり、急に無理やり進めようとしても進まない。皆で合意形成をしながら、なおかつ一歩ずつ歩んで積み上げていくことでしか時代は変わらない」
デジタル化の展望は
行政改革のためデジタル化を急ぐべきだと主張する平に対し、国民との合意形成を図りながら一歩ずつ歩むことが結果的に近道になると訴える中谷。これから社会がどう変わっていくと考えるか、2人に聞いてみた。
まずは、平。
「これからの日本は、圧倒的に人手不足となる。AIで一元的に対応する行政のコールセンターをつくりたい。10年ほどでつくれるのではないか。政府、都道府県、自治体の“縦割り”や“横割り”もなくなる」
その上で、政治の役割について、こう語った。
「技術革新と規制のバランスを考えると、日本は資源がないからイノベーションで戦うしかない。早め早めに規制の整備をして前のめりでやるしかない」
一方の中谷。
「フランスの小説家、ジュール・ヴェルヌが残した『人が想像できることは、人が必ず実現できる』という名言がある。10年後ぐらいには、自動運転車や空飛ぶ車もほぼでき上がり、自動運転の車の移動時間が仕事をしたり、オンライン診療を受けたりする時間に変わるかもしれない」
今後もさまざまな技術によってわれわれの生活の利便性は高まると指摘した上で、こう力を込めた。
「時代の変化に非常にわくわくし、未来に展望を抱いている。一方で、ルールや制度を整えていく衆議院議員の1人として緊張感を持っている。グローバル社会の中でリスクになる部分をどうコントロールしていくかに尽力したい」
デジタル化という時代の変革を国民の利便性向上や行政の効率化、ひいては日本の成長につなげることができるのか。政治家の担う役割は大きい。
●「処理水」政治キャンペーンで既に負けている日本 9/1
8月30日、中国外務省次官補・報道官・華春瑩(ホア・チュンイン)はX(旧ツイッター)に英語で4連続投稿をし、「なぜ日本はトリチウムの希釈ばかりを強調するのか。福島の放射能汚染水には60種類以上の放射性核種が含まれているが、残りの放射性核種の処理はどうなるのか」「もしその水が本当に無害であるなら、なぜ日本は700億円を費やして宣伝キャンペーンを始めようとしているのか。なぜ日本は関係者による福島の放射能汚染水と海水のサンプル収集を拒んだのか」「この水が無害ではないと判明した場合、近隣諸国や他の多くの国が海洋放出しないよう勧告する中で、日本は海洋放出を続けられるのか。これが誠実で責任ある国の振る舞いなのか」「中国と日本には『覆水盆に返らず』ということわざがある。『こぼれた水は二度と元の盆に戻らない』という意味だ。受けたダメージは元に戻せない。日本は手遅れになる前にやめるべきだ」と畳みかけた。
21年4月、政府は処理水の海洋放出を決めたが、科学的根拠を国際原子力機関(IAEA)に求めたのは7月になってから。それが「科学的」と言われる根拠だ。だが中国のこの政治的キャンペーンの背景には米国のいうことは無条件に受け入れるのに中国の声は聞き入れないというメッセージがある。加えて福島第1原発事故以降、今日までの東京電力と日本政府の原発処理は日本国民と世界に誠実だったかを問うている。
福島の事故以降、欧州は原発推進機運がうせ、世界最大の原子力産業会社「アレバ」も今では「オラノ」に変わった。その縮小された部分を中国がこの10年担ってきた。米・ウェスティングハウスの原発をベースに中国が独自開発した第3世代原発に中国は自信を持つ。中国製第3世代原発は海外輸出も進み、今では中国は世界第2位の原発大国だ。その国に向かって「科学」を説いた日本政府の国内外への説明戦略と外交戦略が正しいと思うだろうか。既に日本は政治キャンペーンで敗北しているのだ。
●処理水問題:中国の理不尽な輸入禁止や迷惑電話扇動に断固たる措置を 9/1
米国人が一人でも拉致されると米国はすかさず対抗措置を取り、相手を外交交渉に誘い出して被害者を取り戻す。
民間団体の調査によると800人近くが拉致されている可能性のある日本ではわずかに5人しか取り戻していない。
無辜の国民が国家主権を侵害されて連れ去られたのを取り返せない不甲斐なさ、外務省と同省を統括する外相(さらには首相)は、当初の問題処理を誤ったのではないかと詰問したい。
ここでは拉致問題は扱わないが、いまだに解決しないことから得られた教訓だけは生かさなければ、誤りを繰り返し国益を毀損し続けるだけである。
拉致問題で得られた教訓は何か?
それは遺憾の意を示すことや飴玉を与えながらの交渉では、国民の意向を考慮する必要がない全体主義の国に対しては問題解決にはつながり難いということだ。
政治問題や経済問題で理不尽かつ不利益をもたらす言動を相手が行なっても、日本(政府)は馬鹿の一つ覚えのように「遺憾である」と繰り返すだけなので、「遺憾砲」と揶揄さえされている。
米国や英国などG7に属する国は言うまでもなく、日本よりもはるかに小さな国力しかないとされる国でも、中国が理不尽な、あるいは国益に反すると見られる制裁などを行った時には、非難の声明を出すとともに同等か同等プラスαくらいの対抗措置をとって対処することがしばしばである。
例えばある人物がスパイとして拘束された時には、まず非難するが、前後して類似した業務に従事する人物を拘束する。
相手が何かを理由に総領事館を閉鎖したときは、こちらも相手により打撃を与える総領事館を閉鎖するなどする。
数百万人しかいない国でも中国漁船に拿捕された人物や船を取り返すために、中国の他の船を撃沈さえする。
国家とは領土、国民、主権(の擁護者)とされ、国の大小とは関係ない。どのような国も国益や主権の侵害に対しては必死で最大限の努力をしている。
憲法の呪縛
日本はG7の一員でもあり、人口は米国に次いで大きい。
しかし、日本には国益や主権の観念がないのではないかと思われる行動をとることが多い。
国際社会は日本の憲法が前提するような正義を重んずる善人の集まりばかりではない。
むしろ、性悪説を前提にした方が大部の場合は問題の解決に結びつくのではないだろうか。
極端な話であるが、日米は同盟関係にある。しかし、どこまでも米国は自国の国益増進を目的にしており、交渉においては少しでも自国に有利になるように日本に要求してくる。
日本も主権国として国益の視点から主張すべきであるが、「米国が日本を守ってくれている」という恩義の感情や、「相手の国を慮る」という日本的習性から、必ずしも主張しないことが多いと仄聞した。
日米安保条約下の地位協定においても日本は米国の他の同盟国よりも主権をかなり譲歩している。言うなれば国家の体をなしていない「半」国家か擬似国家の為体(ていたらく)である。
特に中国はことあるごとに日本製品の輸入禁止や制限、不買運動、あるいは理由もなく日本人を拘束するなどしてきた。
しかし、日本はほとんどの場合、しかるべき対処行動はとらずに抗議するだけであった。
「日本」の代表という立場を忘れて、「自分がいい子」になりたがっている一面があるのかもしれない。
しかしそれ以上に憲法の前文を信じ(込まされ)、諸外国は「正義の国」だから「善意」を持つ「平和愛好国」で、交渉ごとで過大な要求などしているはずがないと思い込んでいるのかもしれない。
実態は全く異なり、国益丸出しで取れるものは何でも取ってやれ、その成果が自分の地位向上にも役立つとしか思っていない者ばかりである。
日本では相手に楯突いた人は「喧嘩好き」として嫌われ、譲歩した人は「心が広い」として歓迎される風潮がある。
日本の伝統が根っこにあることは言うまでもないが、憲法がさらに思考の幅を狭めている。
しかし、国際社会は凸型思考(口論し合う)が一般的で、凹型思考(譲り合い)は日本国内でしか通用しないことを知る必要がある。
国際社会に日本型思考で対処していたのでは国益を減ずる結果をもたらす危険性が大きい。
日本の対処は生ぬるい
処理水の海中放出はIAEA(国際原子力機関)による調査で安全基準をクリアしており、国際社会の多くの国は問題視していない。
そうした中で中国のみが輸入禁止の措置をした。
しかし、日本は対抗措置をとっていない。政府が例によって「遺憾」であると抗議しただけである。
しかし、中国共産党の意図を受けたとみられる偽メールが無関係のところにも来襲し、また在中国の日本人学校や多くの日本関係施設が嫌がらせを受けるなどし始めた段階で、政府(外務省)は駐日中国大使を外務省に招致して「極めて遺憾」と抗議した。
抗議のレベルを上げたが依然として「口先だけ」の抗議に変わりはない。
こうした日本の外交上、あるいは貿易上の不手際が日本の選択肢を狭めてきたのではないだろうか。
自衛隊や海上保安庁の巡視船の行動が厳しく制限されているために、尖閣諸島の領海に我が物顔で侵入を繰り返すと同様に、口頭だけの「遺憾砲」も空砲でしかないことを相手はとっくに見透かしてきたわけである。
中国(共産党指導部や政府)は自国の主張が合理的でないことを100%知った上で反対している。
国内経済の悪化で不満が蓄積しつつあるとされ、日本への団体旅行を許可したのはガス抜きの一環ともされる。
今回の「核汚染水」の捏造も国民の関心を逸らすことであり、もう一つは日本の国際的な評価を落とすことであると見られている。
中国が利益圏と見ていたアフリカで日本は国家の信頼性を引っ提げて食い込みを図ろうとしている。
そうした日本の信頼性に疑問を抱かせることは紛れもなく中国の国益につながる。
日本の処理水は国際基準の安全性をクリアしていることを承知の上で、中国は反日行動をそそのかしている。
そうしたなかで日本が馬鹿の一つ覚えで「処理水は安全」「国際基準をクリアしている」などと主張してデータを公表し、また大臣が周辺で水揚げされたばかりの魚の刺身を試食したところで、効き目が限定されていることは言うまでもない。
ウイグル綿などの輸入制限を仄めかせ
処理水の海上排出については、核の国際機関であるIAEAが日本以外の数カ国の専門家で検査し、安全であることを保証した。
それがIAEAの安全宣言という形で国際社会に発信されており、決して日本が独自に秘密裏で行った宣言などではない。
処理水の安全レベルは国際的な安全基準をも大きく上回ってさえいる。
IAEAの宣言は控えめすぎるとさえ思うくらいであるが、日本政府はあえてそのことを強調したりしないで「安全基準をクリア」していると控えめな表現で訴えている。
このように周到に日本が対応し、理論的、科学的に安全性が確認されているにもかかわらず、中国は「核汚染水」と国際社会に喧伝してやまない。
まさしく政治的な反日キャンペーンでしかないことが分かる。
中国は自国の原発周辺から「汚染水」を垂れ流している。日本の処理水どころの話ではない、まさしく「核汚染水」である。
中国は日本の処理水が国際基準をクリアしていることを知っている。言うまでもなく、中国の汚染水よりもはるかに安全であることも知っている。
そうした中国に日本(政府)がいくら「科学的に安全性が確認されている」「国際基準をクリアしている」と外交ルートで依頼しても聞く耳を持たないのは当然である。
にもかかわらず、「遺憾」「極めて遺憾」と繰り返したところで変わらないであろう。相手は民主主義国家ではなく人民の意見などに耳を傾ける国ではないのだ。
風評被害を補償するのは当然としても、それ以前に風評被害を抑えることに尽すべきであり、それは対中圧力である。
かねて中国はウイグル人の人権を抑圧していると国際社会で批判されている。ウイグル綿の生産はそうした人権無視で行われているとも言われてきた。
しかし、日本の某企業は確たる証拠がないとして活用し続けている。
ともあれ疑惑が持たれている綿の輸入制限、或いは禁止するなどの対抗措置がこの際は有効ではないだろうか。国際社会の共感も得やすい。
おわりに
今後、安全保障上で大きな問題となってくるのが、外国人、中でも中国人や中国資本による日本の土地買い占めである。
土地の買い占めは自衛隊施設の近傍、港湾を見渡せる地域、無人島、あるいは天皇が行幸された記念碑を包含するなど、決して個人的な趣味でなく国家意思の介在が読み取れる。
中国の国家意思が明確に見えるのは、大使館や総領事館などの外交施設が所在する土地の保有である。
外交では相互主義が基本である。米国の大使館も総領事館も日本からの借地に存在し、借地料が払われている。
日本の在米大使館や総領事館も米国の土地を借用して建てており、借地料を支払っている。
英国もフランスもドイツも、いや中国を除くすべての国の大公使館や総領事館等の外交施設は日本の借地や借家に存在している。
そればかりではない。米英仏などの国に所在する中国の大使館や総領事館もすべて当該国からの借用地に存在する。
中国では土地を買うこと(すなわち所有)ができないことに基づく相互主義である。
日本においてだけ、しかも中国だけが東京にある大使館や大阪などにある総領事館の用地を買い上げて「所有」している。
異常な話はさらに続く。
中国大使館用地は同盟関係にある在日米国大使館用地よりも広い。驚くことはさらにある。
総領事館はビザの発給くらいが主な仕事で1部屋や2部屋くらいで十分と言われるが、中国の総領事館の多くは大使館よりも広い土地を所有していることが分かっている。
土地問題は従来はさほど問題視されなかったが、中国が国防動員法などを制定し、習近平主席が台湾奪回のために「戦争準備」を指令して以降、中国やその影響下にある中国系資本による土地の買い占めが安全保障の観点から注目され、危険視されるようになってきた。
処理水を「核汚染水」と呼び国際社会に喧伝することは、日本をその問題に集中させ、その間にさらに土地を買い占める、あるいは、日本に譲歩する取引材料にするためなどいろいろ考えられる。
政府が遺憾砲の発射と漁業への補償で乗り切ろうとしている裏で、中国はもっと大きな網を張り巡らせていることを忘れてはならない。
●海洋放出めぐる中国の反日活動、無策の岸田政権は見限られるかも… 9/1
中国政府は、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出について、日本産の水産物の輸入一時停止などの対抗措置を決定。8月28〜30日に予定されていた公明党の山口那津男代表の訪中を「適切なタイミングではない」と延期した。
呉江浩・駐日中国大使は8月30日、筆者の取材に対し、日本側が期待する9月の日中首脳会談について「日本側と協議した事実はない。流動的だ」と語り、実現に否定的な見通しを示した。
日中関係は今後どのような展開を見せるのか。
2012年の尖閣諸島国有化をめぐる中国側の対応と比較しながら観測すると、中国が岸田政権を見限り、政権交代まで首脳会談に応じない「最悪シナリオ」も浮上してくる。
「なぜ一時停止と書かないのか」と駐日大使
海洋放出が始まった8月24日以降の日中関係の推移を振り返る。
放出開始をめぐり、中国から日本への苦情や嫌がらせ電話は東京電力だけで6000件超に上り、中国にある日本人学校には石や卵が投げ込まれた。
ネット上では日本製化粧品の不買呼びかけも出はじめ、外務省は8月27日に中国への渡航者に注意を呼びかけるなど、日中関係は悪化の一途をたどっている。
呉大使は筆者らとの懇談の中で「嫌がらせ電話はよくない。私のオフィスにも嫌がらせとみられる無言電話がかかってきている」と明かした。
中国側では、8月30日に「極端な情緒をあおる言動は慎むよう」沈静化を求める中国紙の社説が出た。同日、日本では高市早苗・経済安全保障担当相が、中国の禁輸措置に対し世界貿易機関(WTO)への提訴を検討すべきと訴え、対立をあおった。
WTOへの提訴については、韓国政府が福島第一原発事故の発生後、福島はじめ8県産の水産物の輸入を禁止したことを不当として日本政府が提訴したものの、2019年4月に日本側が逆転敗訴(WTO上級委員会は韓国の措置が妥当と最終判断)した経緯から、自民党内にも消極論がある。
中国側にも妥協の余地がある
呉大使は日中関係について、「問題をこじらせてはならないと考えて対処している。しかし日本メディアは、中国税関総署が『原産地を日本とする水産品の輸入を全面的に一時停止すると決定』と発表しているのに、『全面禁輸』と書き続けている」と指摘。メディアは「日本政府に洗脳されているのでは」と批判した。
日本メディアの多くが「禁輸」の表現を使うのは、中国の強硬姿勢を際立たせるためだろう。
一方で、中国税関総署があえて「一時停止」という表現を使っているのは、中国側に妥協の余地があることを示していると筆者は考える。
呉大使は8月28日に岡野正敬・外務事務次官と会った際、「海洋放出のモニタリングに中国の専門家を立ち会わせては」と提案したが、外務省側は「検討する」としただけで、同意を得られなかったという。
中国の専門家をモニタリングに参加させる選択肢は、今後の局面打開のヒントになるかもしれない。
呉大使は、中国政府が日本向け団体旅行を解禁したのに続いて、「日本人のノービザ渡航の回復も了承しているが、いつ回復するかは海洋排出問題の処理にかかっている」と語り、当面は海洋放出が関係改善の障害になるとの見方を示した。
「尖閣諸島を思い出す」と経団連会長
中国側の対抗措置を見て、日本経済団体連合会(経団連)の十倉雅和会長は8月28日の記者会見で、「尖閣諸島(を国有化した2012年ごろ)を思い出す」と指摘した(朝日新聞、8月29日付)。
日本政府による尖閣諸島の国有化に抗議して中国各地で反日運動が行われた2012年9月のように、今回の処理水海洋放出問題でも同様の、あるいはそれ以上の反日運動が繰り返される可能性はあるのか。
当時は、国有化直後から北京や上海など中国の主要都市で大規模デモが発生。一部の参加者が暴徒化し、日系スーパーや工場を破壊・放火する暴力的運動が数日続いた。
ただし、その動きには伏線があった。
中国の温家宝首相(当時)はデモが暴徒化する前、北京の講演で「中国政府と国民は、主権と領土の問題で半歩たりとも譲歩しない」と強い姿勢を示していた。この発言は、当時の大規模デモが中国政府の主導で行われていた可能性が高いことを示している。
一方、今回の海洋放出問題では、李強首相や中国外交を統括する王毅外交部長(党政治局員)ら政府当局者は発言を一切控えている。外交部も2012年のように日本を非難する声明は発表していない。
汪文斌副報道局長は8月28日の記者会見で、中国国内の日本人学校などへの嫌がらせについて「承知していない」と、当局による「あおり」を否定した。
尖閣国有化時との「相違点」
2012年と2023年、中国側の対応の違いは明らかだが、それは何に起因するのか。
第1に、尖閣諸島をめぐる問題は、日中双方が領有権を主張して対立し、主権と領土という核心的利益に関係する重大な問題だ。
日本政府による尖閣国有化の決定を、中国側は国家による「現状変更」とみなした。
第2に、中国が当時抱えていた政治状況が挙げられる。
国有化のわずか2日前にロシア・ウラジオストクで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、胡錦濤・国家主席は野田佳彦首相(いずれも当時)と立ち話をした。
中国側によれば、胡氏はその際、日本側の国有化について「全て不法、無効なものであり中国側は断固反対する。日本側は誤った決定をせず、中日関係の発展の大局を守るべき」と警告した。
ところが、その警告は2日後の国有化発表であっさり無視されることとなり、胡氏は完全にメンツを失った。
当時、中国共産党は総書記を胡氏から習近平氏にバトンタッチする微妙な時期に当たっていた。北京の中国研究者も「権力交代に入った時期だけに、処理を誤れば党内矛盾が顕在化しかねない」と、日本への強硬な対応の背景を分析した。
一方、今回の海洋放出問題は、中国の主権や領土といった核心的利益に関わる問題ではなく、中国側の利益を直接的に侵害しているわけではない。そこに大きな違いがある。
日中首脳会談は「望み薄」
公明党の山口那津男代表の訪中について、中国側が「適切なタイミングではない」と延期を求めてきたのは、今後の日中首脳交流を占う上で無視できない要因だ。
公明党は歴史的に中国と友好的な関係にあり、岸田政権も山口訪中に期待を寄せていた。岸田氏は山口氏に首相親書を託し、山口氏自身も習会談に意欲を見せていた。
しかし、山口氏の訪中延期が決まったことで、岸田政権が期待していた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議(9月4日〜7日)での岸田・李強首脳会談、その直後の9月9日〜10日に予定されている主要20カ国・地域首脳会議(G20)での岸田・習首脳会談の実現に、黄信号が灯った。
冒頭で紹介した呉大使の「日本側と協議した事実はない。流動的だ」との発言はそれを裏付けるものだが、呉大使は「秋に予定される与野党議員による訪中に変更はない」とも述べており、対日交流には「是々非々」対応で臨む姿勢を示している。
山口氏の訪中延期の理由については、岸田親書の内容が海洋放出を決定した日本政府の判断の正しさを繰り返す内容だったため、と指摘する声もある。中国側は親書の内容について、事前に「内容のあるものを期待する」と注文を付けていたとされる。
岸田政権が9月の日中首脳会談に強い期待を寄せていたのは、デフレ懸念や不動産をめぐる過剰な債務問題で中国経済の冷え込みが続いているため、中国側は対日関係の改善に動くという判断からだった。
米中関係の悪化が続く中、習政権は対日関係まで悪化させることを望んでおらず、海洋放出問題については「やがて矛(ほこ)を収める」という分析だ。
しかし筆者はそうは思わない。
日本政府が菅政権以降の2年間、アメリカとともに台湾問題で中国を仮想敵とし、徹底した対中軍事抑止政策をとってきたことに対し、中国は何らかの「対抗措置」を検討していたと筆者は考えている。
この解釈が正しければ、中国側が海洋放出問題でただちに妥協する可能性は低い。
妥協重ねて首脳会談実現した安倍氏。岸田氏は…
では、日中関係のこう着状態はいつまで続くのか。
それを考える上では、先述した尖閣国有化問題の「後処理」を振り返るのが参考になる。
2012年末、国有化を決定した野田政権が衆議院解散後の選挙で敗北して退陣、第二次安倍政権に交代。安倍氏は対中関係改善に向けた工作を開始した(以下の肩書きはいずれも当時のもの)。
まず、福田康夫元首相による2014年7月の極秘訪中で、安倍氏訪中のお膳立てが行われた。
福田氏訪中を受け、谷内正太郎国家安全保障局長が同年11月、楊潔篪国務委員と北京で会談。その翌日、日中両国は尖閣周辺の情勢をめぐり、「見解の相違を認め、対話と協議を通じて不測の事態を避ける」ことで一致したとする合意文書を発表。
こうして、北京でのAPEC首脳会議の際、日中首脳会談が実現したのだった。日本側の政権交代を経て、尖閣問題で日本側が妥協し安倍・習会談が実現するまで、およそ2年かかった。
ただ、首脳同士の交流は再開したものの、この時は「会談」と言うより、国際会議を舞台にした「接触」と言うべきものだった。正規の首脳会談実現までには、さらに4年を要した。
2017年5月、習近平国家主席が提唱するシルクロード経済圏構想「一帯一路」に関する国際会議が北京で開かれ、日本からは自民党の二階俊博幹事長と安倍氏側近の今井尚哉・政務秘書官が出席。両氏は現地で習氏と面会し、首脳の相互訪問実現を求める首相親書を手交した。
親書を読んだ習氏は、「(一帯一路に対する)日本の積極的態度を表している」と評価したのだった。
親書の内容は今日まで公開されていないが、今井氏が親書を「一帯一路に協力する」という表現に「独断で書き換え」それが「黙認された」ことを、複数の政府関係者が証言している。
この二階氏と今井氏の訪中を受け、翌2018年に北京での(正規の)日中首脳会談がようやく実現した。
上で述べたように、日本側は中国との関係改善を実現するため、尖閣をめぐる見解の相違を認める合意文書を発表し、首相親書で「一帯一路」への協力を表明するなど、妥協を重ねた。
日中の経済力逆転を背景にした、中国外交の強みとしたたかさを見せつけられた。
おそらく今回も、首脳会談再開に向けて中国側は海洋放出問題での日本側の妥協を迫るだろう。それに加え、環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)加盟問題で、台湾より優先的に中国を加盟させる要求を絡める可能性もある。
岸田政権の弱さは、バランス感覚を持ったブレーンがいないことだ。首脳会談の実現には、政権交代まで待たねばならないかもしれない。岸田氏にとって最悪のシナリオは、決して非現実的な観測ではない。

 

●夏の終わりに没した日本最大の大怨霊「崇徳院」。その本当の姿とは? 8/31
暑かった8月も終わろうとしています。長寛二(1164)年の旧暦8月26日(現在の暦法で9月14日)、第75代天皇の崇徳院 (崇徳天皇/崇徳上皇 諱・顕仁 1119〜1164年)が、配流先の讃岐(香川県)で没した日とされます。
崇徳院は、世にいう日本三大怨霊の一柱に数えられ、今なお怖い怪異譚を新たに生み出しています。しかし遺された御製の和歌は小さな命に心寄せる優しさをたたえたもの。崇徳院は本当に大怨霊だったのでしょうか。
院政が生み出した呪われの皇子・崇徳院の生涯
古よりドロドロとした権力闘争を繰り返し、魔都とも呼ばれる京都。治暦四(1068)年即位した後三条天皇により凡そ100年間続いた藤原氏による摂関政治(幼帝を立て、補佐役の臣下摂政・関白が政治の実権を掌握する政治体制)は実質終わりをつげ、後三条帝の意思を継いだ白河天皇が譲位後も政務を取り仕切って、上皇(太上天皇)による政治支配を特徴とする院政時代が始まりました。
白河上皇(後に受戒して法皇に)の院政下にあり天皇に即位した一人が鳥羽天皇で、白河院の孫にあたります。白河院には出自の怪しい祇園女御なる愛妾がありましたが、この祇園女御に、父を七歳の時に亡くした藤原璋子(ふじわらのしょうし)を養女として預け、自身も代父となって孫の鳥羽天皇の后として入内させます。この璋子の産んだ第一皇子が顕仁親王、後の崇徳院でした。ところがこの璋子は白河院のお手付きの愛人であったため、皇子顕仁の本当の父は白河院であると人々は公然と噂し、父の鳥羽天皇もまたそれを信じて顕仁親王を憎み、疎みました。そして白河院は鳥羽帝を退位させ、保安四(1123)年には当時五歳の顕仁親王(崇徳天皇)を即位させてしまうのです。
治天の君こと白河院にいいようにされてきた鳥羽上皇ですが、白河院が崩御すると、いよいよ自身の院政政治で権力を振るい始めます。
鳥羽上皇の寵姫に保延五(1139)年に男子が生まれると、2年後には当時23歳の崇徳天皇を退位させ、幼い躰仁親王(近衛天皇)に帝位を践祚(せんそ)。さらにこの幼帝が十代で夭折すると、崇徳院の実弟である雅仁親王(後白河天皇)を帝位に。兄弟の即位は、自身の実子の帝位の道が断たれたことを意味し、崇徳院はこのとき実質政治権力の埒外にはじきだされたのでした。
鳥羽法皇の院政下で、権力を再び掌中にしようとする摂関家による暗躍が活発化する中、鳥羽法皇が病に倒れます。後白河院を抱き込んでの権力掌握を目論む摂関家にとって、後ろ盾の鳥羽法皇の危篤は、排除したはずの崇徳院の勢力の盛り返しを危惧させました。
そこで後白河院勢は近衛天皇の崩御は崇徳院の呪詛であるという中傷を流しました。さらに臨終の床にある鳥羽法皇の見舞いに訪れた崇徳院に、面会すら許そうとはしませんでした。
こうして鳥羽法皇が崩御すると、崇徳院と実弟の後白河院との対立は一気に抜き差しならないものとなったのでした。
鳥羽法皇の崩御の三日後には、後白河院勢は崇徳院に謀反の動きありと難癖をつけ、平清盛ら北面の武士集団を集めます。身の危機を感じた崇徳院は近従たちとともに居場所を転々としながら、何とか反後白河勢の仲間を募りますが、平清盛、源義朝らに率いられた後白河勢が崇徳院の居館を急襲、鴨川一帯を火の海にして激しい戦闘が繰り広げられます(保元の乱)。数で劣勢の崇徳院勢は一夜で敗北、崇徳院は投降します。この反乱(実質的には朝廷ー後白河院勢による弾圧粛清)は武士集団、特に平清盛の台頭を招き、連綿と続いた王朝政治の終焉を招いた事件となりました。
投降した崇徳院は四国讃岐に配流となり、二度と京都に戻ることはできませんでした。『保元物語』(作者不詳 13世紀ごろ)によれば、配流地で崇徳院は乱により命を落とした者の慰霊のため、自らの指先から取った血をもって五部大乗経を書写し、京都の石清水八幡宮に奉納するよう使者に託しました。しかしその経には呪詛が込められていると後白河院は恐れ(実際血で書いた経文は気味が悪いものですが)、讃岐に送り返してしまいます。父法皇の臨終にも立ち会えなかったこともあいまって、崇徳院の悲憤は遂に限界を超え、「この上は我、大魔縁となりて、皇を取って民となし民を取って皇となさん」と王朝を呪う言葉を舌先をかみちぎった血により書き記し、後は蓬髪となって生きたまま怨霊悪鬼と化した、と伝わります。
崇徳院は長寛二(1164)年、讃岐で崩御します。諡号(天皇が死後に贈られる正式な天皇名)は侮蔑の意を込めて異郷の地名「讃岐」とされました。後白河院は喪に服することもなく、崇徳院(讃岐院)は配流地の讃岐白峯に葬られたままでした。その状況が変わったのは、死後11年経った頃、後白河院の最愛の女御である平滋子が死去。続いて中宮(皇后・皇太后・太皇太后の総称)、そして二条天皇の皇子六条天皇(既に譲位して上皇に)の死去が相次ぎ、この頃からこの相次ぐ不幸は何者か、いや間違いなくあの無辜の崇徳院の怨霊による災禍であるという噂がささやかれていました。さらに都の三分の一を焼失させたといわれる1177(安元三)年の安元の大火、翌1178(治承二)年の治承の大火と災害が相次ぎ、朝廷は浮足立ちます。既に朝廷はこの頃、平清盛により院政を骨抜きにされ、権力を握られていましたが、その清盛にも不幸が相次ぎます。1179(治承三)年には娘の盛子、さらには嫡子重盛が急死。そしてその2年後には清盛自身が病没します。
朝廷は、崇徳院の呪いを鎮めるために讃岐で法要を行い、また諡号も「讃岐」を「崇徳」に改め(実際に崇徳院となるのはこのときから)、京都のゆかりの地に慰霊廟を建てるなどなどの慰霊に努めました。しかし決してその御霊を京都に戻すことはありませんでした。崇徳院の京都への帰還が果たされたのは、明治天皇により京都上京区に建設された白峯神宮に本尊を遷座した慶應四年の崇徳院の命日、何と明治改元の前日のことでした。
王朝末期の抒情詩人。崇徳院の歌の世界
では崇徳院の和歌のごく一部を見ていきましょう。崇徳院は幼い時より和歌に親しみ、帝位についてからは多くの歌会を催した、当代きっての優れた歌人でした。勅撰和歌集には八十一もの美しい歌が採られ、自らも勅撰和歌集『詞花和歌集』を編みました。藤原定家の百人一首に選ばれ、その中でも指折りの人気を誇る一首がこれです。
瀬をはやみ 岩にせかるる滝川の われても末に 逢はむとぞおもふ (詞花和歌集)
この歌、初出の『久安百首』では「ゆきなやみ 岩にせかるる滝川の」となっており、「瀬をはやみ」としたのは崇徳院自身による改変であろうと思われます。急流は岩にぶつかって二つに分かれてしまっているが、引き裂かれた二つの流れはいつか再び一つになるであろう、という強い意思に貫かれた清冽な印象を与える歌。仲を引き裂かれた男女の激しい恋情の歌として解釈されるのが一般的ですが、崇徳帝の悲劇の生涯を見るにつけ、さまざまな解釈が可能な意味深な内容です。
花は根に鳥はふる巣にかへるなり春のとまりを知る人ぞなき (千載和歌集)
春咲いた桜はやがて根に戻り、鶯は故郷に戻るのに、春という季節の帰るところはあるのだろうか、という抽象的なメタファーが独特で、個性的な一首です。晩春の日暮れ、各家に灯がともる、心うずくひととき。鳥も人も皆温かい家へと帰っていく。けれども「私には帰宅を待ってくれている家などどこにもない」と、実の親に憎まれ続けた崇徳院は自身の悲しい境遇を「春」にたくしたと解釈することができます。
このごろの鴛鴦(をし)のうき寝ぞあはれなる 上毛(うはげ)の霜よ 下のこほりよ  (千載和歌集)
近頃の寒い季節にオシドリが水に浮いて寝ている姿が不憫だ。羽には霜がつき、足元は凍っているではないか。凍えながら耐える野鳥のオシドリに心を寄せる一首です。「霜よ」「こほりよ」と畳みかける重韻は、現代詩やポップスの歌詞にも通じる、現代人にも訴求力のある名歌ではないでしょうか。
恋ひ死なば 鳥ともなりて 君がすむ宿の梢にねぐらさだめむ (久安百首)
鳥となって愛する人のところへ飛んでいきたい、というモチーフは、古今東西共有されてきたものです。崇徳院の和歌はこのようにけれん味がなくわかりやすいものが多く、本来明るく、素直な心根の人物であったことをうかがわせます。それにしても、「ねぐら」「ふる巣」「帰る」「うき寝」など、心休まる帰るべきところに安らいたい、という切ない願望が随所にあらわれ、胸をつかれます。
秋ふかみ たそかれ時のふぢばかま 匂ふは名のる心ちこそすれ (千載和歌集)
秋の黄昏時、薄闇の中で、フジバカマの花の香りがにおってくる。まるでフジバカマが私はここよ、と語りかけてくるようだ、という一首。ささやかで可憐な歌です。
いかがでしょうか。これほど優しい歌を歌う人物が、本当に大怨霊だったのでしょうか。
近代に再び繰り返された崇徳院の呪い?人喰い地蔵の怪
さて保元の乱で後白河院側が襲撃し、崇徳院の居館のあった鴨川の東岸、春日河原に寿永三(1184)年、崇徳院の霊を祀る崇徳天皇廟である粟田宮が設置されています。しかし、室町期の応仁の乱の騒乱などで廟は荒廃、廃絶。唯一本尊となる地蔵尊のみが修験者(霞衆)の総本山である聖護院の広大な森に移動され、安置されたと伝わります。当時の京都は地蔵信仰と六地蔵巡りが盛んで、崇徳院ゆかりの一帯にも多くの地蔵の野仏が安置されていたようです。現在では京都大学・京大病院の敷地になっているこの地で大正時代、京大理学部建設の折に五十体ほどの古い地蔵菩薩の石像が出土しました。工事人足たちが「地蔵さんじゃ漬物石にも使えない」と、路傍に放り出して休憩の椅子代わりにするなどの粗雑な扱いをしていたところ、やがて工事請負業者の社長や人足、建物の大工の棟梁、出入り商人、大学の建築部長などが相次いで急死する事態が発生。誰ともなく「石地蔵をぞんざいに扱うから祟られたのだ」と噂が広がり出したのです。有名な稲荷下げ(民間の霊能力祈祷師)に伺いを立てると、「地蔵様の本地仏である大日如来が大変なお腹立ちで、このままではなお六人の命が取られる。それから地蔵には霊力のある狸の霊も憑いている(崇徳院の死没地讃岐は狸霊の本場です)ので、すぐに地蔵菩薩と狸を丁重に祀り、毎日供物を欠かさないよう」と諫言されます。しかし、それを聞いた大学側の教授は非科学的だと取り合いませんでした。するとその教授が4〜5日後に突然亡くなってしまいます。
こうなってくると大ごとだと、大学側も出土した石地蔵を全て並べて祠を設置し、地蔵盆の八月二十八日には盛大に例祭を行うこととしました(『天狗の面』)。それに先立つ明治末期、現在京大理学部キャンパスのある聖護院吉田村の畑で石地蔵が出土、その地蔵を庭石代わりにしていたところ、その一家全員が亡くなるという出来事が発生。大正末期に地蔵は京大病院敷地内に祀られました。
これらは現在、京大病院と京大医学部の敷地にそれぞれ「祟り地蔵」として祀られています。そしてそれらのすぐとなり、東大路通を挟んだ聖護院の一院家である積善院凖堤堂には、崇徳院地蔵、別名「人喰い地蔵」が祀られています。「すとくいん」をもじり、いつしか人の命を喰らう「ひとくい」へと変質したと伝わります。これらの地蔵は崇徳院を祀る崇徳天皇廟、その信仰圏の民間の地蔵が散逸し埋もれたものだと考えられます。
病院や学校という怪談が生まれがちなシチュエーションということもあるのか、戦後にも猟奇的な事件が発生したり、怪異現象の起こる場所として有名でもあります。京都の人々にとっては崇徳院はなお生々しい恐ろしい祟り神「御霊」として、恐れられているのです。
けれどもその実像は、残された御製の歌の数々、そして薫陶を受けた僧・西行の挽歌などを見ても、並み外れて繊細で心優しく、また才に恵まれた魅力的な人物であったと読み取ることができます。本当に怖いのは、排除した者を怨霊として悪鬼化し、遠ざける側の猜疑心なのかもしれません。
●維新・馬場代表、中国と一部左派野党や政治家の暴論・暴挙と対峙 8/31
日本維新の会が、東京電力福島第1原発の処理水放出をめぐり、「風評被害解消」に乗り出す。中国は処理水を「核汚染水」と呼び、理不尽な抗議や日本産水産物の禁輸を始めた。維新はこの件では、政府与党と足並みをそろえて、科学的根拠をもとに暴論・暴挙と対峙(たいじ)していく。処理水を「汚染水」と発信する一部左派政党や政治家との対決姿勢も鮮明にした。
「われわれも堂々と処理水放出については応援をしていく」
維新の馬場伸幸代表は30日の党会合でこう語った。独自の風評被害対策として、東北の食材を使ったイベントの検討を指示した。
IAEA(国際原子力機関)や、WHO(世界保健機関)は日本の放出計画を評価しているが、中国は「核汚染水」と批判している。日本でも共産党や社民党は「汚染水」「毒」などと表現。立憲民主党の泉健太代表は「処理水」が党の公式見解というが、一部の所属議員は「汚染水」と発信している。
維新の藤田文武幹事長は党会合後、「民間の方が(汚染水と)言う分には自由だが、責任ある政治にかかわる、特に議員については非科学的な、フェアじゃない態度で不安をあおるようなことがあってはならない」「(一部左派政党や政治家が)政治的に足を引っ張ってやろうみたいな思惑の中でやっているのだとしたら、こんな情けないことはない。次の衆院選では『無責任な勢力』に権力を持たせない。維新が新しい政治構図を作るために頑張りたい」と語った。
維新の姿勢をどうみるか。
ジャーナリストの石井孝明氏は「維新幹部の発信を聞き、真っ当な野党として政府与党と連携する姿勢は、非常に評価できる。一部の左派野党や政治家が、処理水を『政争の具』にして、中国や韓国の左派野党と同様の主張をしていることは理解に苦しむ。左派野党の低迷を見ても、国民も古い体質を理解しているのではないか」と語った。
●「国民生活は他人事」岸田首相 “2030年代半ばに時給1500円”宣言 8/31
岸田文雄首相(66)が新たに表明した賃上げ方針。国民を鼓舞しようとの目標と思われるが、かえって絶望を招いてしまったようだ。
8月31日、「新しい資本主義実現会議」で最低賃金の引き上げを表明した岸田首相。2030年代半ばまでに時給1500円にすることを新たな目標とするという。各メディアが報じた。
これまでも、最低賃金の引き上げを目標に掲げてきた岸田政権。10月から適用される、2023年度の都道府県別の最低賃金額の全国平均は、前年比43円増の1004円となった。
しかし、消費者が直面する物価高は深刻だ。7月の消費者物価指数の前年比上昇率は3.3%。「生鮮食品を除く食料」に至っては9.2%と大幅に上昇している。8月28日にはレギュラーガソリンの小売価格(全国平均)が過去最高を更新。8月30日には、電力大手10社が10月分の電気料金を発表し、全社で642円から1024円の値上がりとなることも明らかになった。
賃上げは物価高に追いついておらず、8月8日に公表された、物価変動を考慮した6月の実質賃金は前年同月比1.6%減。15カ月連続でマイナスとなっており、生活が楽になる気配は一向にない。
また、OECD(経済協力開発機構)が7月11日に発表した「2023年雇用見通し」では、日本の最低賃金の伸び率は、OECD加盟国平均の3分の1であることが指摘されている。海外の最低賃金を見ると、最も高いオーストラリアは23.23豪ドル(約2194円)、ドイツでは’24年1月から12.41ユーロ(約1970円)に引き上げが決まっており(現状12ユーロ)、フランスは11.52ユーロ(約1828円)だ。(※為替レートは8月31日時点)
今後も継続的に物価が上昇するとなれば、10年後の1500円の価値は今よりも大幅に下がってしまうだろう。そんななか、“1500円”まで上げるのに約10年かけるという岸田首相。目先の生活についても不安を抱える人が多いなか、掲げた日本の未来まで“ショボイ”ことに絶望する人が相次いでいる。
《10年後?15年後?ほんとマジで岸田に殺される》《前向きそうに見えて『そのペースじゃ間に合わない……』と絶望感を与える発言になってしまったな。1500円あげるのに10年以上かけるってことだからな……まあ良くて年間5%。使えるお金は年に2,3%は上がるかも知れんが、物価はもっと上がるだろうね》《10年後には日本円の価値がさらに下落しているだろう。その時に時給1500円というのはちょっと待ってよの話。いつまで経っても豊かになれないこの日本》《2030年代半ばって、まだ10年以上先の話でしょ。 何か夢も希望ない話だなぁ そもそも、岸田さん、おるんかいな。。。》《緊急課題なのに、のんきなことを国民生活は他人事って明言してますね》 
●なぜ日本だけ「統一教会問題」被害が大きいのか 8/31
安倍元首相殺害事件に端を発し、統一教会の人権侵害と不法行為が露わになり、それを支えてきた政治家たちとの関係が問われるようになった。多くの事実関係が明らかになっているが、このような事態が生じるに至った歴史的経過については必ずしも十分に示されてきたとは言えない。同時に、統一教会は世界各地に広がっているが、日本以外では大きな被害が生じたことはない。どうしてこのような事態が生じたのか。
「解散命令」の可能性も含め日々報道がなされている「統一教会問題」を、歴史的・国際的文脈から多角的に論じた『これだけは知っておきたい 統一教会問題』の編者で宗教学者の島薗進氏が解き明かす。
統一教会問題の広がり
解散命令が求められるような教団だから悪を具現したような存在と決めつけてよいのか。日本の宗教史から見ていくと、社会からの激しい非難を浴びた教団の処遇というと、戦前の大本のように「宗教弾圧」という視角から捉えられた時期が長かった。1995年にオウム真理教地下鉄サリン事件が起こって、「危険な宗教の取り締まりは当然」というような考え方が主流になっているようだが、それよいのだろうか。
宗教2世の窮状が問われているが、宗教団体に属する家庭で育った子どもたちが一様に苦難を負っていると捉えることでよいのだろうか。また、統一教会がジェンダー・バックラッシュを進める宗教団体の代表のように扱われているが、それは妥当だろうか。宗教団体の家族重視の姿勢は広く見られるものであって、とくに際立ったものではないのではないか。広く新宗教にも家族を重んじる考え方は見られるのではないか。
『これだけは知っておきたい 統一教会問題』は上記のような問題を取り上げているが、力点は以下の問いにある。
〈統一教会は世界各地に広がっているが、日本以外では大きな被害が生じたことはない。どうしてこのような事態が生じたのか〉
この問いに答えていくには、統一教会の信仰の内実を問い、どのような特徴があるのかを理解する必要がある。また、この宗教団体の急速な拡大の背景となった韓国と日本の宗教史、政治史にも注意を向けておく必要がある。さらに、この時代の韓米日の国際関係についての理解が求められる。1960年代から1990年代までの統一教会の信仰や宗教活動のあり方と、それをめぐる宗教史、政治史、国際関係史について見通しをもつ必要がある。
1970年代から1990年代の統一教会
そもそも日本とそれ以外の地域でこれほど大きな違いが生じたのはいつ頃だろうか。たとえば合同結婚式で多くの女性が韓国の男性と結婚する「韓日祝福」はどうか。7000人とされる日本の若い女性が教祖・教団の意思によって韓国に嫁いでいった。韓国の男性は信仰をもっていないが、配偶者を得ることができないような貧しさやその他の事情をもった人が多かった。それは1984年頃から始まったことだ。
「霊感商法」はどうか。統一教会が巨額の金を市民からむしり取るために、「霊感」を装って弱みをにぎり、途方もない額の費用を求めるようになったのは1977年か1978年のことだ。これを『朝日ジャーナル』が取り上げ、批判したのは1986年から1987年、全国霊感商法対策弁護士連絡会が結成されたのは1987年のことだ。
多くのマスコミが統一教会の被害や合同結婚式の問題を取り上げたのは1992年であり、ソ連が解体し東西冷戦体制が崩壊した後のことだ。この頃、すでに坂本弁護士一家殺害事件が起こっており、その3年後にはオウム真理教地下鉄サリン事件が起こっている。1990年代の後半になるとすでに霊感商法はおおっぴらにできなくなっている。全国の民事裁判で統一教会に不利な判決が出ていき、2000年代になると刑事事件でも立件されるようになった。
以上のように統一教会の被害をめぐる歴史を概観すると、1970年代の半ばから1990年代の初めにかけてが、被害の発生と増大のカギとなる時期であることが見えてくる。この時期の統一教会は、日本においてだけは甚だしい人権被害を起こし、多大な被害者を生み出すような活動を継続できたのだ。
日本だけでこれほどの被害が生じた理由
ひるがえって1960年代から1970年代の前半までを見れば、統一教会は日本伝道にだけ力を入れたわけではない。とくに1960年代はアメリカ伝道に多大な力を注いでいた。韓国国内の伝道もヨーロッパ諸国の伝道も重視されていた。この時期は日本が資金提供源として特定されるようなことはなかった。
ただ、1960年代にはアメリカでの政界工作にきわめて大きな比重が置かれていた。そしてその背後には、1961年に成立した韓国の軍事政権があった。ベトナム戦争が進むなかで、反共を掲げる朴正煕の軍事政権とアメリカのニクソン政権との間には深い連携関係があり、日本の自民党政権もそれにからみ、韓米日の連携が強化されていたのだ。
ところが1970年代の半ばまでに、大きく事情が変わる。ベトナム戦争でアメリカが敗色濃厚になる。ウォーターゲート事件でニクソン政権が崩壊する。他方、世界的に「カルト」問題が注目されるようになり、統一教会の政界工作や強引な布教による信徒隔離のあり方が問題にされるようになってくる。
韓国、アメリカやヨーロッパの諸国では、この時期以降、統一教会は人権侵害の及ぶような伝道活動や資金集めはできなくなった。日本だけでそれが可能になり、日本は教祖と教団全体のために資金集めを使命とする国と見なされるようになった。
どうしてそんなことになったのか。『これだけは知っておきたい 統一教会問題』はこの問いへの答えを示そうとしている。こうしたことが二度と起こらないために何が必要か、その問いに答える手がかりも、本書のなかから見えてくるはずだ。
●2%の「物価安定の目標」と「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」 8/31
2%の「物価安定の目標」
日本銀行法では、日本銀行の金融政策の理念を「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」としています。
物価の安定が大切なのは、それがあらゆる経済活動や国民経済の基盤となるからです。
市場経済においては、個人や企業はモノやサービスの価格を手がかりにして、消費や投資を行うかどうかを決めています。物価が大きく変動すると、個々の価格をシグナルとして個人や企業が判断を行うことが難しくなり、効率的な資源配分が行われなくなります。また、物価の変動は所得配分にゆがみをもたらします。
こうした点を踏まえ、日本銀行は、2013年1月に、「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定め、これをできるだけ早期に実現するという約束をしています。
長短金利操作付き量的・質的金融緩和
日本銀行は、2016年9月の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証を行い、その結果を踏まえて、金融緩和強化のための新しい枠組みである「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入しました。
この「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の政策枠組みは、2つの要素から成り立っています。第1に、金融市場調節によって長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」、第2に、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」です。
   (1)イールドカーブ・コントロール
「総括的な検証」で示したとおり、2013年4月に導入した「量的・質的金融緩和」は、主として実質金利低下の効果により経済・物価の好転をもたらし、日本経済は、物価の持続的な下落という意味でのデフレではなくなりました。これを踏まえ、実質金利低下の効果を長短金利の操作により追求する「イールドカーブ・コントロール」を、枠組みの中心に据えています。
その手段としては、2016年1月のマイナス金利導入以降の経験により、日本銀行当座預金へのマイナス金利適用と長期国債の買入れの組み合わせが有効であることが明らかになりました。これに加えて、指値オペや連続指値オペといった手段を備えることで、長短金利操作の円滑な実施を図っています。
   (2)オーバーシュート型コミットメント
日本銀行は、「オーバーシュート型コミットメント」で、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続することを約束しています。これによって、2%の「物価安定の目標」の実現に対する人々の信認を高めることを狙いとしています。
日本銀行は、2018年7月、強力な金融緩和を粘り強く続けていく観点から、政策金利のフォワードガイダンスを導入することにより、「物価安定の目標」の実現に対するコミットメントを強めるとともに、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の持続性を強化する措置を決定しました。
2021年3月には、2%の「物価安定の目標」を実現するために、「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」 [PDF 4,217KB]を行いました。その結果を踏まえて、持続的な形で、金融緩和を継続するとともに、情勢変化に対して、躊躇なく、機動的かつ効果的に対応することができるよう、「貸出促進付利制度」の創設などの政策対応を行いました。
2022年12月には、緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図り、より円滑にイールドカーブ全体の形成を促していくため、長短金利操作の運用を一部見直すことを決定しました。
2023年4月には、先行きの金融政策運営に関する方針を改めて整理・明確化しました。
こうした対応を含め、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとでの決定事項等は、「金融政策に関する決定事項等」からご覧いただけます。
(参考)イールドカーブ・コントロール導入前の取組み
日本銀行では、2013年4月に、「量的・質的金融緩和」を導入しました。その後、2014年10月には「量的・質的金融緩和」の拡大、2015年12月には「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置の導入、2016年1月には、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入、2016年7月には「金融緩和の強化」を行いました。 

 

●百田尚樹氏と有本香氏が「百田新党」立ち上げ準備を本格化 8/30
ベストセラー作家で保守論客としても知られる百田尚樹氏と、ジャーナリストの有本香氏が、保守新党(いわゆる『百田新党』)の立ち上げ準備を本格化させているようだ。2人が生出演するネット番組「百田尚樹・有本香のニュース生放送 あさ8時!」(あさ8)で29日、「9月1日のSNS開設」が明らかにされた。夕刊フジの公式サイトzakzakなどで速報したところ、多くの期待の声が集まった。
「待望の保守新党が立ち上がる」「期待しかない!」「日本人の普通の気持ちが百田さん、有本さんから伝わります。応援します」「推せる政治家政党いなくて困ってる人も、仕方なく自民党に入れてた人沢山いたと思います!」
zakzakや、夕刊フジ編集局X(旧ツイッター)には29日、このような意見が次々と書き込まれた。
一方で「サプライズがないと失敗する」「保守同士で票の取り合いになるのが心配だ」など厳しめの意見もあった。
有本氏は29日の「あさ8」で、新党について「9月1日にSNSなどで発信を開始します」と発表した。党名発表は、まだ先という。
百田、有本両氏が新党立ち上げを決断した背景には、保守政治≠ゥら逆行するような自民党の動きがあった。
岸田文雄政権の発足後、財務省主導の増税路線や、韓国への前のめりな外交が顕在化したが、百田氏が特に反発したのが、LGBT法の拙速な法制化だった。
当初から法案に反対していた百田氏は6月10日、自身のユーチューブ放送で、「決意表明です『LGBT法案が成立したら、私は保守政党を立ち上げます』」と発信し、「百田新党」結成の意向を表明した。
百田氏は、安倍晋三元首相が昨年7月に暗殺されてから保守政党だったはずの「自民党のタガが外れた」「自民党を消極的に支持していたが、保守政党ではないことが明らかになった」と断じた。
「百田新党」には、保守陣営などから期待の声があがる。
人気作家でジャーナリストの門田隆将氏は月刊誌「WiLL」で、百田氏と対談し、「国民は新しい風を求めている。大暴れを期待します」とエールを送った。
福井県立大学の島田洋一名誉教授も29日、自身のXに「何となくレーガン、サッチャーを思い出すのは私だけではないだろう」と、期待を書き込んだ。
●党勢拡大に向け、玉木雄一郎候補と前原誠司候補が大激論! 8/30
選挙ドットコムちゃんねるでは8月28日、国民民主党の代表選挙候補者討論会を生放送しました。立候補している玉木雄一郎衆議院議員と前原誠司衆議院議員に登壇していただき、次の衆議院議員選挙を見据えた野党共闘に関する方針、党勢拡大のための支持率向上に向けた方策などを伺いました。この記事はその生放送でのやり取りを要約したテキスト版です。9月2日の投開票に向けて、両候補が訴えたこととは?そして、その差異はどこにあるのでしょうか?
立候補者2人の基本プロフィール
2020年9月に現在の国民民主党が結党して以来、2回目となる今回の代表選挙。立候補したのは現代表の玉木雄一郎衆議院議員と、現代表代行の前原誠司衆議院議員の2人です。有権者は国会議員(21人)や地方議員(271人)、党員・サポーター(3万6682人)です。代表選は、有権者の種別ごとに与えられたポイントを得票数に応じて各候補に配分して、獲得ポイント数が多い候補を選出する仕組みです。
8月21日に告示され、8月29日に郵便投票・8月30日正午に電子投票が締め切られました。9月2日の臨時党大会で投開票が行われ、新代表が選出される予定です。新代表の任期は3年間です。
   玉木雄一郎(たまき・ゆういちろう)候補のプロフィール
玉木候補は1969年5月1日生まれ、香川県出身。選挙区は香川2区で、現在5期目です。
東京大学を卒業後、大蔵省(現 財務省)に入省し、行革大臣秘書や専門官などを経て、政治家の道に入ります。
初めて立候補した2005年衆院選では落選しましたが、その次の2009年衆院選で初当選を果たして以降は5回連続で当選しています。
2018年5月から旧・国民民主党代表(共同代表含む)を務め、現在の国民民主党が結党した2020年9月以降、代表を担い続けてきました。YouTubeでの情報発信が盛んな政治家としても知られ、公式チャンネル「たまきチャンネル」に登録者数は17万人(2023年8月30日現在)を超えています。
   前原誠司(まえはら・せいじ)候補のプロフィール
前原候補は1962年4月30日生まれ、京都府出身。選挙区は京都2区で、現在10期目です。
京都大学を卒業後、松下政経塾に8期生として入塾し、1991年京都府議会議員選挙に初当選しました。1993年衆院選で京都1区から出馬して当選を果たし、以降は10回連続で当選を重ねています。
国会議員として、民主党代表や民進党代表、国土交通大臣や外務大臣など党や内閣の要職を歴任してきました。現在は、国民民主党代表代行を務めています。
自他ともに認める、政界屈指の「鉄オタ」の顔も。自身のTwitterでは、訪れた先々で撮影した車両や車窓からの風景などを投稿されています。
選コム討論会で両候補が語った野党共闘への姿勢の違いとは?
Q(TO 玉木候補)
ガソリン価格高騰の際に減税できるトリガー条項の発動に首相が理解を示す答弁をしたことで、玉木候補は昨年度の当初予算に賛成をしました。 しかし、結果的にトリガー条項の発動には至っていません。当時、自民党や公明党とはどこまで握れていたのでしょうか?
玉木雄一郎候補(以下、玉木候補):
我々は2年前の衆議院選挙で一番の主要公約に「トリガー条項凍結解除によるガソリン値下げ」を掲げて戦ったので、何としても実現したいと考えていました。
特に、昨年2月以降はロシアのウクライナ侵攻で、国際的にも原油価格が高くなった。これは国益にも資するだろうということで、引き下げを交渉したわけですね。ただ、我々は小さな政党ですから、普通のことをやっていたのでは見向きもされない。そこで、予算案への賛成をテコに、岸田文雄総理、そして公明党の山口那津男代表に交渉のテーブルについていただいて、トリガー条項凍結解除の議論を始めました。
これはもう現にそうだったし、実は公明党さんも、トリガー条項凍結解除に行こうということでした。しかし、仕入れ時にすでに「蔵出し税」と呼ばれる税金がかかってるので、高くなったものを安く売ることで損が生じてしまう。課税の時期とかタイミングをどのように円滑にするのか、その具体的な対応案をもうまく出せない中で対策は急務だったため、結果として補助金になってしまいました。そこは、未だに非常に残念だし、引き続き(凍結解除を)求めています。
ただ、結果として、最大リッター35円を超えるレベルまで補助水準が拡充しました。リッター168円以下にしようという当時の約束は一応は守られたことになります。100点満点ではないのでご批判もいただいてますけれど、一定の実現には繋がったと思います。
Q (前原候補へ)
現在の党の路線では自民党から利用されてしまうと警鐘を鳴らされていますが、(前原候補が訴えている)立憲民主党や日本維新の会との選挙協力では利用される恐れはないと言えるでしょうか?
前原誠司候補(以下、前原候補):
そうならないように、しっかりと交渉します。お互いギブアンドテイクなので、我々もプラスになるように交渉するので、私はあまり心配していないですね。
Q(前原候補へ)
民主党政権が終わってから10年が経ちますが、最初の5年間は民主党と民進党という「大きな塊」で、支持率は残念ながら低迷を続けました。 前原候補は民主党代表も務められていましたが、今回トライされていることは同じ失敗にはならないでしょうか?
前原候補:
私が民進党代表だった1ヶ月もなかったんですが、一つの反省は、希望の党との合流をめぐる情報管理です。
安全保障法制には全員が賛成していたにもかかわらず「踏み絵」と言われ、党首を経験した人はダメだという「排除リスト」なるデマや怪文書まで流れ、疑心暗鬼に陥りました。野田さんが排除されていましたが、小池さんは野田さんのことをすごく高く評価されていたので、排除されるはずがありません。
もし今回私が代表にならせていただいて野党協力や大結集を進めていく際には、しっかりと平時から備えておきます。
Q(玉木候補へ)
前原候補の立憲・維新との調整などのお話について、玉木候補のお考えはいかがでしょうか?
玉木候補:
百歩譲って、国民民主党と立憲民主党、国民民主党と日本維新の会で、何かできるのはイメージができます。しかし、野党第1党の立憲と第2党の維新が、現に次の衆議院選挙に向けて70以上の選挙区で重なっています。うちと立憲なら4選挙区でしか重なっていなくて、現職(の選挙区)では全くだぶってないです。
この70以上の選挙区で候補者調整をするのは相当なことです。それに、今の支持率を見ると、比例では維新が野党第1党になる可能性もある中で、小選挙区で負けても立てることの意義が維新側にはあるので譲らないと思うんですよね。例えば、長崎1区や埼玉14区で調整に応じるとは思えない。
そういう中で「大きな塊」と言っても、まず野党第1党と第2党が自公に対して、一枚岩で向き合う体制がとれるかということに私は極めて懐疑的なんですね。うちだけが候補者をおろす・おろさないを調整するということになれば「労多くして益なし」になります。
だから次の衆議院選挙は、我が党として陣営を固め、比例と小選挙区の組み合わせで最大化できるような候補者の立て方や戦略的な取り組みが現実的だと考えています。党を強く大きくすることに集中することが必要です。
Q(前原候補へ)
こうしたお2人の考え方の違いはどのように生じていると考えていますか。
前原候補:
信頼関係ですよね。維新の馬場伸幸代表や藤田文武幹事長と、候補者調整を含めたディープな話ができるのは国民民主党には私以外にいません。
仲間を批判しているのではありません。総支部長や比例復活で当選した1回生の方々は人生を懸けて出馬してくださる。そうした人たちのために、今後のことも含めて立憲や維新としっかり話ができるのは私しかいません。
候補者擁立の考え方、進め方は?
Q(玉木候補へ)
単独路線での党勢拡大を考えると、今の制度ではできる限り小選挙区に候補者を立てることになりますが、その一方で落選するリスクも増えます。どのように考えていますか。
玉木候補:
一つの目安は、全国11のブロックごとに現職を含めて3人立てること。1人は確実に小選挙区で取ってもらって、1人は比例復活して、もう1人は次に向けてと考えています。
もちろん「カカシを立てる」つもりはないので、1人1人を大切にしつつ、でも比例と小選挙区を組み合わせながら、最大限の議席をどう確保していくのかです。
前回は27人立てて、比例5議席と小選挙区5議席を獲得しました。2割ずつ比例票を確実に増やすという目標を達成するには、次の衆院選では380万票の比例票を取る必要があります。そのためには、当然立てる総支部長の数も27から、最低でも2割増の30強を一つのめどに立てていきたいと思っています。積極的に擁立していくっていうのは必要だろうと思ってます。
Q(前原候補へ)
次期衆院選の具体的な数字目標はありますか。
前原候補:
党勢を拡大するなら、やっぱり支部長を立てなきゃ駄目なんですよ。玉木さんは2割2割増やすとおっしゃるけども、他党も必死で、立憲は150人、維新は130人、そして参政党は50人擁立しているのに対し、うちは23人なんですよね。2割ずつ増やすと言われても現実味がないんですよ。
ですから、私はとにかくまず私が代表にならせてもらえればこの総支部長をどうやって増やすか考えなければなりません。具体的な数字目標は現在のオファーの状況なども踏まえて考えなければなりませんが、50人ぐらいでないとね。
Q(前原候補へ)
れいわ新選組と参政党は、枠組みの中に入りますか。
前原候補:
れいわ新選組は入らないですよ。参政党は話をしてみなきゃならないと思っています。
どうする政党支持率?
Q (両候補へ)
国民民主党の現在の支持率の受け止めと、今後の展望をお願いします。
玉木候補:
最近の上昇傾向は、メディア露出に一定程度比例していると考えています。
国政選挙もそうなんですけど、やっぱり地方選挙への候補者擁立も含めて、露出を高めて受け皿を作りたいです。全国で国民民主党を認識していただく機会を作っていくことが一番大事だと思いますね。
前原候補:
皆様のおかげで国民民主党を取り上げていただいてるということが大きいとは思いますが、それでもまだまだ低いですよね。これだとなかなか展望を開けないというのが私の率直なところです。やはりどこかで大きな転換をしなくてはなりません。
Q(両候補へ)
今後の支持率についてのお考えをお願いします。
玉木候補:
来年の通常国会が終わった頃には、立憲民主党の支持率を上回ってると思っています。皆さん笑うかもしれませんけど、色々なトレンド分析をしていると、そういう可能性もある。次の代表任期の2025年までのその間の責任を負うということなので、その次の任期の終わり頃にはですね、今、支援いただいている4つの民間産別が安心して、我が党で擁立しても大丈夫だと思ってもらえるような党勢・支持率にすることが最優先です。
そのためには、まずしっかり総支部長立てていくことと、常日頃から全国で旗を立てて活動していくことです。
前原候補:
党を大きくしていく、支持率を高めていくことはお互いが目指しているところです。 ただ、やはり大変だなと思うのは1人1人の総支部長のサポートです。
そういう意味でも、立憲と維新とも調整が不可欠で、どれだけできるかはまさに交渉力にかかります。や一緒に政権を担おうという呼びかけのもとで、信頼関係を持って、ある程度の選挙区調整・枠組み作りっていうのはやっていかないと、私は総支部長候補がなかなか出てこないんじゃないかという気がしますね。
玉木候補:
そのときに問題なのが、立憲民主党さんの先に日本共産党さんがいることです。政権を担おうという自負があるから、憲法、安全保障、そして原発を始めとしたエネルギー政策は現実的にやらないといけない。
私は、原発ゼロを綱領に掲げている立憲に変わっていただかなくてはと考えています。
前原候補:
我々のレゾンデートルである政策は大事です。2020年の8月に旧国民民主党の多くは、立憲民主党に行かれたんですね。そこからまた人を集めた原点はやっぱり政策です。政策を横に置いて数を増やすことには与しないという原点を絶対に忘れてはなりません。
憲法改正や原発の安全利用、日米同盟の堅持は必要だし、教育予算の倍増や、農業・エネルギーの自給率を高めることが政策目標です。そして、賃上げにも徹底的に我々はこだわってきました。政権を取ることを考える上でも、こうした価値観を共有できる方々に一緒にやりませんかと呼びかけていきます。
個別質問:党名変更は?単独党勢するなら?
Q(玉木候補へ)
党名変更について、現在はどうお考えですか。
玉木候補:
変更については賛否両論あります。決めうちではなくて、皆の意見を聞いて判断していきたいと思っています。
Q(前原候補へ)
仮に、単独で党勢拡大するとしたら方策はどう考えますか。
前原候補:
現職の全員当選と、総支部長できるだけ上乗せしていくことに力を入れたいと思いますね。
人生かけて総支部長になってくださった方々をどれだけ当選させられるかは代表としての責務です。誤解を恐れずに言うと、新たにこれから総支部長になってくださる方は「カカシ」でもいいという人を選んでいくしかないと思っています。国政選挙後の地方選挙を見据えた候補者擁立など、色々なことをしっかり話をしながら総支部長を選んでいきます。
討論会を終えて…選挙ドットコム編集長より
今回の国民民主党の代表選では、他のメディアでも多くの討論会が開催されていたため、選挙ドットコムの討論会は、政策よりも選挙に焦点を当てた議論を行いました。両候補には真摯にお答え頂きまして、心より感謝申し上げます。
●「五輪汚職と神宮外苑再開発」 田原総一朗と上杉隆が語る 8/30
政府が国策として推し進めている再エネ事業を巡って、収賄の容疑で自民党の秋本真利衆院議員が逮捕された。マイナンバー問題の対応で国民の不信感が募るなか、岸田政権にとっては大きな打撃となっている。だが、巨額の資金が動く国を挙げた大きなプロジェクトは、時に深い「闇」を生むのも事実だ――。
今回、五輪汚職と神宮外苑再開発の“接点”に光を当てた単行本『五輪カルテル』が話題のジャーナリスト・上杉隆氏と、政権の浮沈を見届けきたテレビジャーナリズムのパイオニア・田原総一朗氏が激論を交わした。
「五輪汚職と神宮外苑再開発」の意外な関係
田原 岸田内閣の支持率が下がっているね。マスコミ各社の世論調査でも前月よりさらに低下し、支持率は30%前後と、政権発足以来の最低水準まで落ちてしまった。
上杉 ただ、7月の広島サミットでは、G7首脳が揃っての原爆資料館の訪問を初めて実現させています。
田原 岸田総理は、世界で初めて原爆が投下された広島出身。「核兵器のない世界」の実現に向けて目に見える成果が期待されたが、むしろ「核抑止力」を認める姿勢を示した。「核廃絶」への試みは後退してしまったね。
上杉 岸田総理は外相だった2016年、伊勢志摩サミットで来日したオバマ大統領(当時)の広島原爆資料館訪問を実現させています。米国大統領の訪問は史上初で、一定の成果を挙げたものの、滞在はわずか10分。しかも、被爆の実相をテーマとする「本館」には足を踏み入れず、「東館」のロビーに立ち入っただけでした。
田原 広島サミットではどうだったか?
上杉 原爆を投下した米国はもちろん、核保有国である英・仏の首脳も「本館」の訪問を拒んでいた。そこで、岸田総理は「東館」に「本館」の展示物を秘かに持ち込んだのです。こうして、初めてG7首脳が揃っての原爆資料館訪問を実現し、彼らの瞼に原爆被害の実相を焼き付けることに成功した。
そのうえ、世界2位の核保有国・ロシアと戦っているウクライナのゼレンスキー大統領の対面参加も実現したのだから、見事な手腕です。あの時点で解散総選挙に打って出れば圧勝だったのに、なぜしなかったんですかね?
田原 自信があったんだろうね。当時は、マイナンバーを巡る不祥事がこれほどの大ごとになるとは思ってなかっただろうし。だが、今は違う。マイナンバー問題に加えて、「総理の右腕」と言われる木原誠二官房副長官周辺でもスキャンダルが出てきた。今、政権の課題は木原問題と河野太郎デジタル担当相の処遇……。だが意外にも、自民党幹部は河野を辞めさせないほうがいいと言う。河野がいなくなると総理に直に批判が集中するから、だそうだ(笑)。
上杉 河野さんは“弾除け”ですか(笑)。マイナンバーの問題はもちろん、今年に入って逮捕者が出始めた再エネ事業を巡る問題も、国を挙げて強引に推し進めたプロジェクト。大きな事業はとかくブラックボックス化しやすいが、政治を巻き込む構図は一連の五輪汚職も同じです。
――目下、『週刊文春』が一大キャンペーンを張って追及しているスキャンダルの渦中の人・木原官房副長官は、“永田町の政商”と呼ばれた矢島義也氏が率いる大樹総研にも繋がる。矢島氏は政界人脈をテコに官界に食い込み、大樹総研は再エネ関連の新興企業に政官への対策をコンサルティングして、莫大な利益を上げていた。
木原氏は、議員落選中に大樹総研に特別研究員に迎えられ禄(ろく)を食(は)んでおり、矢島氏との関係の深さが取り沙汰されている。2019年に秋元司前衆院議員が日本のIR参入を目指す中国企業・500ドットコムから賄賂を受け取った容疑で逮捕された件でも(一審で実刑判決。現在、控訴中)、500社は大樹総研の顧客だった。
さらに、国際政治学者・三浦瑠麗氏の夫・清志氏が逮捕されたメガソーラーを巡る横領事件でも、清志氏は矢島氏と関係が深いJCサービスから7億円の融資を受けた過去があり、大樹総研には東京地検特捜部の強制捜査が入っている。
今や再エネの推進は国策事業で巨額のカネが落ちているが、そこに生まれた利権の「闇」に有象無象が群がる構図は五輪汚職にも重なる。
田原 三浦瑠麗さんの夫は、原発推進派にやられたんだよ。
そうそう、上杉さんの書いた『五輪カルテル』を読みました。僕は1970年代、東京12チャンネル(現テレビ東京)の社員で、雑誌に『原子力戦争』という記事を連載していた(後に書籍化)。取材を進めると、原発推進派の運動のバックに電通がいることがわかる。
そのことを連載に書くと、会社(テレビ東京)から「連載をやめてくれ」「連載をやめないなら、会社を辞めてくれ」と言われた。おそらく、あらゆる方面から圧力がかかったんだろうね。テレビ東京はまだ小さな放送局だったので仕方がない。
上杉 それで田原さんはどうしたんですか?
田原 連載も会社も辞めなかった(笑)。それどころか、連載を原作にした映画までつくったんです(映画『原子力戦争』=1978年公開 監督/黒木和雄 主演/原田芳雄 製作・文化企画プロモーション/ATG)。すると、僕が所属する部署の局長が処分されると発表があり、会社を辞めざるを得なくなった。
退社してフリーになって数年後、朝日新聞から本を書いてくれと依頼があって、電通について書きたいと言ったんです。せっかく取材するのだから連載記事にしようということで、『週刊朝日』で連載することになり、1回目の原稿を出すと次の日、「全部書き直してくれ」と連絡が入った。たった1日しか経っていないから、本当のところはわからないが、どこかからストップがかかったのでしょう。
上杉 当時はそれほどのタブーだったんですね。でも、今はタブーというより、メディアの側が萎縮して、勝手に自主規制している側面のほうが強い。
田原 確かに。僕はそのとき、思い切って当時、電通の広報を取り仕切っていた小暮剛平さん(のちに同社社長、会長を経て相談役)に直談判しに行った。すると、なぜか小暮さんは僕のことを面白がってくれて、「今、電通は多くの問題を抱え、来たるべきマルチメディアへの対応など、今後進むべき道を迷っている」と言う。そして、こうしたことも含めて「自由に取材して、自由に書いてくれ!」と言ってくれたんだ。当時、こうしたタブーに斬り込む本はなかったから、連載をまとめた『電通』(朝日新聞。1981年)を出版するとベストセラーになった(笑)。
上杉さんもかなりギリギリのところまで書いているけど、大丈夫なの?
上杉 まぁ、担当編集がクビになるくらいでしょう(笑)。
五輪汚職の話をすれば、先ほど秋本衆院議員の逮捕の話が出ましたが、“バッジ”(国会議員)の逮捕を主導したのは、森本宏・東京地検特捜部長(当時)でした。その森本氏が次席検事に就任したタイミングで、一連の五輪汚職の捜査が始まったんです。
田原 汚職事件の中心人物・高橋治之元五輪組織委理事は逮捕され、当初は高橋を重用した森喜朗元五輪組織委会長の逮捕も噂されたが、現実には逮捕には至らなかった。
僕は、当初から検察は森さんを逮捕する気などなかった、と思っている。木原問題にしても、検察に圧力をかけて捜査を止めたなどと報じるメディアもあるが、そんな事実はない。検察が木原を恐れているだけだよ。
上杉 高橋元理事の逮捕は、最終的に森さんに辿り着くための捜査の“階段”だった。そもそも高橋氏の事件は、五輪スポンサー企業に選定する代わりに賄賂を受けた個人による単純な贈収賄事件。捜査は終了し、すでに司法の場に移っています。
でも、五輪テスト大会、本大会の運営事業の受注を巡る官製談合の捜査は、今もまだ続いる。事件の筋が悪いので逮捕まではいかないだろうといわれているが、やはり特捜の狙いは森元総理です。実際、森さんは少なくとも5回事情聴取を受けているし、側近は7回も東京地検に呼ばれている。
ただし、僕の取材では、森さんの逮捕まで事件が伸びる可能性はかなり低くなっています。逮捕があるとすれば、来年の2月まででしょうね。というのは、森本次席検事の任期が満了する予定だからです。森本氏のほかに総理経験者の逮捕まで視野に入れて動く人材は、今の検察には見当たりません。
田原 かつて検察は、その強大な権勢から“今太閤”と呼ばれた田中角栄元総理を、1976年のロッキード事件で逮捕している。いつから検察は力を失ったのか?
上杉 清和会(現安倍派)政権ができて以降、潮目は変わっていきます。まず2002年に小泉純一郎内閣が発足すると、党本部から総理官邸に権力が集中していきました。そして、安倍政権発足後の2014年に内閣人事局がつくられ、時の政権が官僚の人事権にも深く関与するようになる。「官邸官僚」と呼ばれる勢力が力を増したのもこの頃からで、これに歩を合わせるように、検察が政治家の不祥事に手を突っ込むことは減っていった。それは、東京五輪汚職が火を噴く2022年まで続きます。
田原 東京五輪招致に成功しながら、任期途中で失脚した猪瀬直樹元都知事(現在は参院議員)は著書『東京の敵』で、「自分は森喜朗元首相に失脚させられた」と明言している。
神宮外苑に巨大利権を生み落とした“錬金術”
――猪瀬元知事は当時、五輪開催都市のトップとして、組織委会長に民間からトヨタの張富士夫会長を招聘したかった。だが、医療法人「徳洲会」グループから借り入れた5000万円を政治資金収支報告書に記載していなかった資金提供問題で失脚している。猪瀬氏はこの問題について、都知事就任後、速やかに5000万円を返却しようとしたが、当時、徳洲会には公職選挙法違反で強制捜査が入っており、「今、来てもらっては困る」と拒まれ、返金できなかったとしている。
田原 徳洲会問題で足元をすくわれた猪瀬さんは、その後辞職に追い込まれた。そして、組織委会長に就いたのが森元総理だった。
上杉 当時、都議会では自公のなかに反猪瀬の動きがあり、特に公明党は参院議員宿舎の変更や、猪瀬都知事の独断専行に反発していた。五輪を巡っても、開催都市のトップが就くことはできない組織委会長に自ら収まろうとして、森元総理の逆鱗に触れたのです。
田原 トヨタの張会長を招聘する前は、上杉さんが言うように猪瀬さん自らが組織委会長に就こうとしていたという話もあったらしいね。
上杉 その後、資金提供問題が発覚したとき、都議会総務委員会で知事は吊し上げられます。議会では、カネを借りたときに使ったとされるものと同様の鞄が用意され、この鞄に現金5000万円を模した発泡スチロールを必死に詰め込もうとするが、なかなか入らず、汗だくになって苦しむ猪瀬都知事(当時)の姿が、ニュースで繰り返し流されました。
ただ、僕の得た情報では、この直前、都議会の公明党控室で鞄に現物の5000万円と同等の容量の発泡スチロールを用意してそれが入らないよう細工が施されていたといいます。このときのニュース映像が猪瀬氏の評判を落とすのに絶大な効果を挙げた。これが決定打となり、都知事辞任を余儀なくされます。
このときの議会の追及は苛烈を極め、後に猪瀬氏はこれを法律によらず私的に断罪する「人民裁判」だったと批判しているほどです。
田原 仮に森元総理が逮捕されれば、1976年のロッキード事件の田中角栄元総理以来となる総理経験者の逮捕になる。森さんの逮捕があるとすれば、どういうケースだろう。
上杉 東京五輪の汚職は2030年冬季五輪の札幌招致に影を落としています。「これ以上捜査を続けると招致活動に悪影響を及ぼす」と懸念する声も内部にあり、検察は一枚岩ではなくなってしまった……。
ただ一方で、「ここまで捜査したからには、森を捕(と)らないと世論の批判は避けられない」という声もあります。つまり、森元総理の逮捕は世論の後押しが条件になる。ところが、官製談合をメディアは報じない。ロッキード事件のときは、メディアは朝から晩まで繰り返し報じたが、現在、五輪の大会運営を巡る官製談合を報じるメディアはほとんどない。ロッキード事件では田中角栄元総理が受け取った賄賂は5億円。これに対して、官製談合の受注額は少なくとも200億円を上回る。しかも、これらの原資は公金です。
戦後有数の一大疑獄事件といっても過言ではないにもかかわらず、メディアが沈黙するのは、テレビや新聞、雑誌社までが五輪スポンサーに名を連ね、メディア自身が「五輪カルテル」に加わっているからです。
田原 特に、許認可事業のテレビは政府の中にいるようなもので、カルテルの最たるものと言っていい。動かないだろうね。それでも、僕はそうした縛りの中で、権力とどこまでケンカできるかが面白いと思うんだ。
上杉 現在、神宮外苑の再開発に伴い3000本の樹木が伐採の危機に瀕していますが、実は、この再開発は五輪招致を契機に動き出したのです。
明治神宮は100年前に明治天皇・皇后を崇敬するために、全国の有志によって造営され、日本中から選りすぐった樹木が植樹された。つまり、再開発によっていま樹齢100年を超える巨木を含む木々が伐採されようとしている。
都市の緑は非常に大事であり、一度伐ってしまったら、その姿は永遠に失われてしまうでしょう。だから、米国人実業家のロシェル・カップ氏や作家の村上春樹氏、作曲家の故・坂本龍一氏などがこぞって反対の声上げたわけです。ところが、保守から反対の声が聞こえてこない。明治天皇を崇敬する外苑の樹木伐採には、本来、保守が真っ先に反対して然るべきでしょう。
田原 日本の保守は米国との戦争に敗れて以降、本来の姿から完全に捻じれて親米保守と化した。一方で、リベラルが反米となり、こちらも捻じれている。今の日本の保守は現状肯定だから、対米従属にも何ら疑問を抱かない。現状肯定のはずの保守が外苑再開発に反対しないのは、一方で経済成長を重視しているからです。
上杉 保守を自認していた故・石原慎太郎元東京都知事は、2016年の五輪招致に際して、外苑には手を着けようとしなかった。実際、IOC(国際オリンピック委員会)に提出した「招致立候補ファイル」でも、メインスタジアムは臨海地区の晴海に新設する構想で、神宮外苑に巨大な新国立競技場を建てる考えはなかったのです。
田原 石原さんの思い描いた東京五輪とは、どんなものだったのだろう。
上杉 1度目の五輪が「世界クラブへのデビュー」だったのに対して、2度目の五輪は「アジアの都市のリーダーとして、成熟を訴える」と考えていました。だから、石原の五輪は、レガシーを活用して総予算4500億円に抑えるコンパクトなものだったのです。
ところが、石原都知事の後を継いだ猪瀬直樹、舛添要一、そして小池百合子と都知事が変わっていくにつれて、石原さんの思い描いた五輪は大きく姿を変えていった。招致に立候補したとき7340億円と見積もった大会経費は、最終的には3兆7000億円に膨れ上がり、石原の五輪はまったく異なる姿になっていた……なぜなのか? そんな疑問が本を書こうと思った出発点でした。
田原 石原さんとは彼が国会議員の頃、ある月刊誌の対談で大ゲンカをしたことがある。彼は「今の日本は対米従属で、自立した国家にならなければいけない。そのためには、憲法を改正し軍隊を持つべきだ」と主張した。
僕は「アンタの言っていることは正論だ。でも、日米同盟を辞めろとは言わないじゃないか! それで、あんたの主張する自主憲法制定なんてできっこない!」「自前で軍隊を持てば、防衛費は3、4倍にも膨らむ。アンタの話はリアリティがない!」と言ったら、石原さんは答えられなかった。
上杉 そんなことを正面切って言うジャーナリストなんて、田原さんくらいしかいませんよ(苦笑)。石原さん、相当、怒ったんじゃないですか?
田原 ところが、対談記事が載った雑誌が発売されて1週間後、石原の秘書から電話がかかってきて『あの対談を後援会の冊子に転載してもいいか』と申し出てきたんだ(笑)。なんと、あの大ゲンカの記事を石原が面白がっている、という。
彼は意見が違う人間を否定せず、耳を傾けていた。その懐の深さに驚きました。それ以来、彼とはとても仲よくなった。当時、自民党にはハト派と呼ばれる政治家がいたが、彼らは石原さんを怖がって付き合いなんてない。
すると石原さんが『ハト派の連中が何を考えているかさっぱりわからない。田原さん、俺に紹介してよ』と言ってきた。それで、加藤紘一、羽田孜、小渕恵三あたりを紹介したんだ。だけど、3人とも石原さんにやられっ放し(笑)。僕はハト派を全面的に応援したけど。
上杉 話を神宮外苑再開発に戻せば、そもそも外苑は日本初の風致地区に指定され、高さ15mなど厳しい建築制限が課されていました。
田原 ところが、その神宮外苑に高さ200mに迫る三井不動産や伊藤忠の超高層ビルが建とうとしている。
上杉 外苑の大地主である明治神宮は100年先までの安定した運営を目指して、財政の立て直しを図っています。ただ、最大の収入源の神宮球場は老朽化し、建て直すにも莫大なカネがかかる。そこで、球場の上空を利用する権利「空中権」を売却して建設費を調達したのです。一方、「空中権」を買った側は超高層ビルの建設が可能になった。
超一等地の外苑の空中権は総額1000億円超ともいわれる。まさに“現代の錬金術”で、これに明治神宮と三井不動産の思惑が一致した。そして、都が建築規制を大幅緩和した結果、巨大利権が生み出されました。実は、こうした「絵」は五輪招致が決定する1年以上前に、森元総理と都庁幹部によって描かれていたのです――。
東京五輪は外苑再開発のために招致されたのか? 神宮の杜の静けさが、再開発を巡る喧噪にかき消されようとしている。
●岸田文雄氏、政治リーダーの資質 8/30
異様な言葉
ついに「処理汚染水」の海洋放出が始まった。
政府のやり方はとても無責任だと思う。
政府と東京電力はこれまで「地元関係者の理解を得ないで、いかなる処分も行わない」と言ってきた。これは、政府が国民と交わした「重大な約束」である。どんなことがあっても、それを反故にしてはいけない。約束と信頼とは、政治におけるもっとも大切な事柄である。だが、岸田首相は、あっさりとその約束を踏みにじった。
岸田首相は「処理汚染水の海洋放出」について、次のように言っていた(TBS「報道特集」8月26日)。
「約束は、現時点では果たされていないが、破られたとは考えていない、こうした声をいただきました…。」
さすがにぼくも、この発言にはぶっ飛んだ。こんな言葉が、日本国のリーダーの口から出てくるは思いもしなかった。ほとんど日本語としても成立していない。無内容な官僚が書いた文章を、いつも抑揚もなく読むだけの岸田首相だが、それにしたって、これはひどい、ひどすぎる。
責任を取りたくないためか、「…こうした声をいただきました…」と、他人に下駄を預けている。腹が立つより、呆れてしまう。
また、同じ「報道特集」では、西村康稔経産相の言葉も紹介していた。
「今の段階では、約束を、私の立場で申し上げれば、果たし終わったわけではなくて、守り続けている状況…」
なんじゃ、これ? アホらしくてコメントする気にもならないが、「どうしても放出したいのなら、せめて“約束を果たし終わってから”にすればいいじゃないか」と突っ込まれたら、西村さんはどう答えるつもりなのだろう?
これらが、悲しいかなこの国のリーダーの言葉なのである。
政治的リーダーとは、国家運営の責任を持ち、国民をきちんと納得させながら、様々な施策を行っていくものと、ぼくは理解しているのだが、こんな言葉を発する人をリーダーと認めることができようか。
もうひとつ呆れたのが、野村哲郎農林水産大臣である。この人も一応は大臣なのだから、日本のリーダーのひとりには違いないのだが、あまりのいい加減さに声も出ない。
処理汚染水の放出に抗議しての中国の日本産水産物の禁輸措置に対して、8月25日の記者会見で「たいへん驚いた。まったく想定していなかった」と、あっけらかんと述べてしまったのだ。
しかしこれは、野村農水相だけのことだろうか。岸田内閣の右往左往ぶりを見ていると、政府自体がこれほどの中国側の態度硬化を予測できていなかったように見える。つまり、政府が政治的リーダーシップを失っていたのではないか。
福島、沖縄の地で
岸田首相のリーダーシップを疑わざるを得ない言動は、様々な場面で頻出する。最近の例では、福島を訪れた際のことだ。
アメリカから帰国してすぐのことだから、疲れていたというのは理解できる。しかし、20日にせっかく福島を訪れながら、東電幹部らと面会し、汚染除去装置ALPSの視察などをしただけで東京へトンボ返りしてしまった。
多分、この福島行ではもっとも大切であったはずの「地元漁業者たちと面会して意見を聞く」ということはせずに、そっけなく帰京した。ぼくはほとほと、この人の酷薄さ、薄情さ、冷酷さを感じたのだ。
もっとも困っている人たちには会わず、意見も聞かず、ただ「行ってきました」という行為だけのパフォ−マンス。そこに人間の体温は感じられない。現地の漁業者たちが「首相、誠意ない」(毎日新聞21日)と怒るのも当然だろう。
同じことを沖縄でもやっている。
8月25日、岸田首相は沖縄を訪問した。そこでやったことといえば、まず沖縄で開催中のバスケットボールW杯の試合観戦。翌26日には、焼失後の復元工事中の首里城を視察。そして、観光業者たちとの車座集会…。
別にそれらのことに文句を言うつもりはない。だが、せっかく那覇市まで脚を運びながら、なぜ玉城デニー沖縄県知事とは会おうともしなかったのか。なぜ安保関連の場所を訪れなかったのか。沖縄で最大の政治的焦点になっている辺野古基地工事現場を、せめて上空からヘリで視察するくらいのことを、なぜしなかったのか。那覇からヘリを飛ばせば15分足らずで辺野古上空に到達する。
時間がなかった、などとは言わせない。最初から、岸田首相には、そんな気は毛頭なかったのだ。
それにしても、ぼくは岸田首相という人はつくづく「愚かな宰相」だと思う。せっかく政治の焦点である場所を訪れながら、かえって批判を浴びるような行動をする。
どんなに批判を受けようが、福島へ行ったら現地の漁業者の意見を聞けばいいし、沖縄へ行ったら主張が対立する玉城知事に会って、意見を交わせばいいと思う。岸田首相の得意のセリフ「聴く力」を、たとえパフォーマンスでもいいから、なぜ演じて見せようとしないのか。不思議だ。
いかに無内容でも、せめて「やってる感」を国民に見せるために行動するくらいの演技力は、政治家として必要なのではないか。
岸田首相の懐刀と言われているのが木原誠二官房副長官であることは、ジャーナリストたちの一致した見方である。しかし、例の「文春砲」の直撃を受けて、さすがの知恵袋も空っぽになってしまったのか。
政治的演出家としては、木原氏はもはや失格である。
無責任体質
マイナンバーカードに至っては、岸田首相のリーダーシップは無きに等しい。
ひたすら突っ走るだけの河野太郎デジタル相にすべてを押し付け、岸田首相は「総点検を命じた」などと言うだけ。これだけの疑問が続出し、医療現場や自治体窓口からの悲鳴が届いているにもかかわらず「総点検を命じた」だけで、どんな対策をとるのかには触れない。
毎日新聞(8月28日夕刊)「特集ワイド」で、経済学者の金子勝さんが、こんなふうに怒っていた。
・・・ 「本質はヒューマンエラーではなく、国内産業の衰退 / 深刻、マイナ敗戦 / 無責任国家のなれの果て
(略)金子さんはミスの件数よりも、ヒューマンエラーを強調する岸田政権の姿勢に対して怒り心頭だ。それは、人為的なミスを防げないマイナカードのシステムそのものを問題視するからだ。金子さんはこの問題をクレジットカードに置き換えて説明する。
「例えば、インターネットで買い物してカード決済する場合、番号や名前の入力を間違えたらエラーが出ますよね。一方、間違えてもそのまま登録できてしまうマイナカードって、システム自体に問題があるとは思いませんか? なのに岸田政権はトラブルの責任を入力した自治体職員やカード利用者に押しつけています」(略)
「マイナ問題で誰か辞めた人はいましたか? 首相や河野太郎デジタル相、富士通の社長もトップのままです。混乱を招いたと謝罪はしますが、誰も責任を取りたくないから失敗を認めないのです」(略)
「自らの失敗を認めることになるので、岸田さんは保険証廃止の撤回は絶対しないと思う。批判をかわそうと資格確認書をどんどん発行し、ほとぼりが冷めるのを待つのでしょう。結果的に、日本のデジタル化はますます遅れるのです」(略)
「マイナ問題は、この国の無責任体質のなれの果てです。図らずも、それが浮き彫りになったということです」 (葛西大博)」 ・・・
金子さんの言うように、この国の無責任体質は、来るところまで来た感がある。それをもっとも象徴しているのが、岸田文雄首相なのだろう。
この国のリーダーの資質が問われている。
朝貢外交
まるで何をやっているのかわけの分からない岸田首相だが、その彼がただひとつ躍起になるのは、バイデン米大統領への朝貢外交である。
国民には何も知らせずに、「新型迎撃ミサイルの日米共同開発」などを、唐突に決めてきてしまう。これは迎撃困難といわれる「極超音速兵器」への対処能力を向上させようというもの。一歩ずつ、アメリカの対中強硬政策に組み込まれていく。
その見返りなのかどうかは定かではないが、バイデン氏は「日本の『処理水放出』は科学的であり、米国としては納得している」とお墨付きを与えた。
さらに、政府与党は「殺傷可能兵器の輸出」を認める方向で動き出した。ここにも岸田氏の意向が見える。
日本がともかくも守ってきた「武器輸出3原則」を根底から否定するものであるにもかかわらず、あっさりと、これもお得意の「閣議決定」で済ましてしまうのか。ますます危ない場所へ脚を踏み入れていく。
この人は、ずうーっと東の彼方を見てばかりいるようだ。
おーい、自分の国のことも考えてくれよう…と心の内で呟いてみる。
●急速に悪化する内閣支持率、政治日程から読む内閣改造と解散時期 8/30
・岸田政権の内閣支持率が急低下している。内閣支持率と与党第1党の政党支持率を足し合わせた、いわゆる「青木率」も危険水域と目される50%を割り込んだ。
・「年内解散は困難」との見方が広がっているが、年内解散の可能性が消えたわけではなく、解散時期は1年内、2来年秋の自民党総裁選まで、3自民党総裁選後の3パターンが考えられる。
・年内解散を目指す場合のシナリオとして考えられるのは、内閣改造・党役員人事におけるサプライズ演出であり、財政健全化の先送り、ないしは拡張的な財政政策であろう。
5月をピークに急速に悪化する内閣支持率
内閣支持率は2023年に入り回復方向にあったが、5月頃をピークに急速に低下している。NHK世論調査によれば、昨年11月に33%まで低下した内閣支持率は今年5月に46%まで上昇したが、8月に再び33%まで低下した。この間の不支持率は46%→31%→45%と推移している。
昨年後半の支持率低下は、旧統一教会を巡る問題が主因とみられる。今年前半の支持率上昇は、旧統一教会を巡る問題への世論の関心が薄れる中、マスク着用基準緩和やコロナ「5類」移行などウィズコロナが進展したことが背景だろう。
足元の支持率低下については、原因としてマイナンバー問題がよく指摘されるが、保守層の離反や一部議員の不祥事など複合的な要因が影響しているとみられる。
支持率から不支持率を差し引いたスプレッドは今年8月に12%ptまでマイナス幅が拡大した。菅政権末期の2021年8月に記録した23%ptにはまだ距離があるものの、岸田政権下で最悪となった昨年11月の13%ptや、安倍政権末期の2020年8月に記録した13%ptに近づいている。
危険水域に近づく「青木率」って何?
内閣支持率と与党第1党の政党支持率を足し合わせた、いわゆる「青木率」も落ち込んでいる。青木率は今年5月に82.5%まで持ち直したが、8月には67.1%まで下落した。岸田政権下では昨年11月につけた70.1%を下回って最低水準を更新だ。
菅政権末期の2021年8月に記録した62.4%を上回っているものの、安倍政権末期の2020年8月に記録した69.5%を下回っている。政権運営が不安定化しつつあることを示唆する。
なお、8月の時事通信調査では、「青木率」が危険水域と目される50%を割り込んだことが永田町界隈で注目を集めた模様だ。
もっとも、内閣支持率が昨年11月並みに低下し、「青木率」も昨年11月を下回っているにもかかわらず、政治情勢には当時ほどの切迫感がない。
昨年終盤は、旧統一教会を巡る問題への関心が高まり、早期に内閣総辞職に追い込まれるとの観測もあった。足元では、支持率低下を受けて、主要各紙から「年内解散困難」との観測が相次いでいるが、内閣総辞職に至るとの観測は特段みられない。
支持率が急速に低下している割には、自民党内で「岸田おろし」を画策するような動きも特段みられない。
その背景としては、主に3つが考えられる。
第1に、菅政権末期と異なり、自民党総裁選や衆院任期満了まで時間的な猶予があるため、差し迫って選挙の「顔」を選ぶ必要がない。
第2に、最大派閥である安倍派が、会長を選出することができない状況であり、政局を仕掛ける余裕がない。
第3に、来年秋の自民党総裁選に向けて、有力な対抗馬を欠いている。
8月に実施された産経・FNN調査や共同通信調査、JNN調査では、いずれも石破元幹事長が「ポスト岸田」の首位となったほか、河野デジタル相や小泉元環境相の人気も高い。
だが、石破元幹事長や小泉元環境相は党内の国会議員の支持に広がりを欠く。河野デジタル相もマイナンバー問題の矢面に立っている。逆に、主要各紙が有力候補として取り上げる茂木幹事長や林外相、高市経済安保相は、世論調査における支持率が相対的に低い。
解散時期で考えられる3パターン
今年6月に岸田首相が早期解散見送りを表明した頃に比べて、内閣支持率は低迷している。主要各紙から「年内解散困難」との観測が相次いでいるほか、与党幹部からも早期解散に慎重な意見が出始めている。
岸田首相に近いと目される、自民党の遠藤総務会長は8月22日に衆院解散について「慌てる必要はない」と言及した。また、公明党は元々今年秋の解散に前向きだったとみられるが、8月23日に石井幹事長は「岸田首相も決断しにくい状況になっている」との見方を示した。
支持率動向を踏まえれば、年内解散の可能性は遠のいたとみて良いだろう。ただ、年内解散の可能性が消失したわけではない。
では、衆院解散・総選挙の時期はいつになるであろうか。大まかに分けると、1年内、2来年秋の自民党総裁選まで、3自民党総裁選後の3パターンが考えられる。
1年内:秋の臨時国会冒頭(10月下旬頃)のほか、窮屈な日程になるが、臨時国会終盤(12月頃)が解散時期の候補として挙げられる。
自民党と公明党の関係が修復されつつあり、野党の選挙協力が進まないうちに解散に打って出るという可能性は残されている。何よりも、岸田首相にとっては、来年の自民党総裁選前に支持率低迷で解散が封じられる事態を防ぐため、なるべく早期の解散を模索する動きが続くだろう。
ただ、既述の通り、足元の支持率動向から考えれば、年内解散は難しくなっている。解散に踏み切る場合は、支持率を好転させ得る何らかの大きな材料が必要になる。
2来年秋の自民党総裁選まで:来年の通常国会冒頭(1月中)、2024年度当初予算成立後(3〜4月頃)、通常国会終盤(6〜7月頃)が候補として挙げられる。
仮に支持率が好転するタイミングがあれば、岸田首相は解散に踏み切ることになろう。だが、支持率が低迷ないしは一段と低下する場合、解散を打ちたくても打てない状況に追い込まれ、「岸田おろし」の動きが生じるリスクが高まる。
3自民党総裁選後:解散が自民党総裁選後に後ずれするケースは2通りある。
まず、岸田首相が解散に踏み切らずとも総裁選を乗り切った後に、頃合いをみて解散に踏み切るケースが考えられる。ただ、その場合は、繰り返しになるが支持率動向次第で「岸田おろし」のリスクを背負うことになる。
もう1つは、岸田首相が総裁選で敗れるなど退陣して、新首相が早期解散に踏み切るケースが考えられる。
「攻め」か「守り」か、内閣改造の姿勢で見える解散時期
歴代の首相がそうであったように、岸田首相は政権の長期化を狙っている。その際、年内を含めてなるべく早期の解散を目指す可能性と、解散に踏み切らずとも総裁選を乗り切ることを目指す可能性の両方が考えられる。
岸田首相がどちらを志向しているかを見極める上では、内閣改造・自民党役員人事がヒントになる。
早期解散を志向するのであれば、サプライズ人事を狙うだろう。
過去をみれば、小泉政権が2003年9月の自民党役員人事で、当時の安倍官房副長官を幹事長に抜擢した結果、主要各紙調査で内閣支持率が10〜20%ポイントほど急上昇したという例がある。
ただ、よほどのサプライズ人事でなければ、支持率上昇のカンフル剤としては機能しづらい。
内閣改造・党役員人事の最大の注目点は「ポスト岸田」候補の処遇であろう。
主要各紙では、茂木幹事長や林外相、河野デジタル相、高市経済安保相の4氏が有力候補として取り上げられる。最大派閥の安倍派では、萩生田政調会長が候補として取り沙汰される。また西村経産相は、岸田首相が出馬しなければ、という条件付きで名乗りをあげている。
これら「ポスト岸田」候補は、大臣もしくは党3役を現在務めているが、引き続き留任もしくは横滑りにより政権幹部にとどまるか否かが注目される。
基本的には、大臣や党3役は現職の総理・総裁に反旗を翻して総裁選に出馬しづらい。「ポスト岸田」候補が軒並み政権幹部にとどまるようであれば、解散を打たないまま、岸田首相が総裁選の無投票再選を目指すというシナリオもみえてくる。
その場合は、支持率次第で「岸田おろし」が生じ、内閣総辞職や総裁選出馬断念を迫られるリスクを背負うことになる。
まとめれば、内閣改造・党役員人事が、サプライズを演出して早期解散に向けた「攻めの姿勢」になるのか、それとも「ポスト岸田」候補を政権幹部にとどめる「守りの姿勢」になるのか注目される。
当面の政治日程から読む内閣改造の時期
なお、9月中は岸田首相の外遊が相次ぐため、内閣改造の日程は絞られる。9月11〜13日が有力視されているが、14〜15日に岸田派の夏季研修会が設定されたため、副大臣や政務官人事も含めて3日間で一気に決める必要が出てきた。
日程が窮屈になるため、8月10日付の時事通信や8月11日付の産経新聞は、内閣改造が9月最終週へ後ずれする可能性を報じている。9月最終週の場合、産経新聞によれば、臨時国会召集は10月後半にずれこむ模様だ。
9月最終週の内閣改造の場合、政治日程が窮屈になるため、年内解散の可能性が一段と低くなるという見方につながりやすい。確かに、衆参補欠選挙が予定されている10月22日に合わせて総選挙に踏み切る可能性はなくなるだろう。ただ、年内解散が必ずしも不可能となるわけではない。
早期解散を目指す場合のシナリオ
仮に岸田首相が年内を含めた早期解散を目指す場合、支持率を好転させるための何らかの大きな材料が必要になる。
その一つは、内閣改造・党役員人事におけるサプライズ演出であり、もう1つは財政健全化の先送り、ないしは拡張的な財政政策であろう。
年末に向けての補正予算編成や当初予算編成、税制改正議論において、財政健全化が進むか否か、以下4つのポイントが注目される。
1補正予算で30兆円前後の計上が続いている経済対策の規模を縮小させるか否か
2当初予算で5兆円の計上が続いている予備費の規模を縮小させるか否か
3防衛増税の時期を決定するか否か
4少子化対策の財源を手当するか否か
【早期解散の場合】
岸田首相が早期解散を志向する場合、これら4つのポイントの多く、もしくはすべてが先送りとなりそうだ。
まず注目されるのは、補正予算編成であろう。
岸田政権は、8月末までにガソリン補助金の延長を取りまとめた後、9月中に電気代・都市ガス代の負担軽減策の延長を取りまとめる見込みだが、その9月の経済対策が大型になると、8月23日付の読売新聞と時事通信が報じている。30兆円に近い規模が打ち出されるか否かが注目される。
補正予算編成の後は、税制改正議論が注目される。
振り返れば、安倍元首相は2度にわたって消費増税延期を打ち出し、国政選挙を乗り切ってきた。岸田首相も、この例に倣う可能性があるのではないか。かつて防衛増税の信を問うため解散との観測が出ていたが、むしろ防衛増税「延期」の信を問うて解散に踏み切る可能性が考えられる。
解散先送りの場合のシナリオ
【解散先送りの場合】
岸田首相が解散に踏み切らずに総裁選を乗り切ることを志向する場合、早期解散ケースに比べれば財政健全化にある程度配慮したポリシーミックスとなろう。
例えば、補正予算の規模は縮小へ向かう可能性がある。ただ、物価高騰が続く中、かつ税収増が続く中では、増税に対して慎重化すると見込まれる。
増税に距離を置くスタンスは既に表面化しつつある。
6月末に政府税調が中期答申「わが国税制の現状と課題−令和時代の構造変化と税制のあり方−」を取りまとめた際、巷間では「サラリーマン増税」との受け止めが広がった。
対して岸田首相は、7月25日に自民党の宮沢税調会長と面会したが、宮沢氏は異例にも首相とのやり取りを披露し、岸田首相が増税を全く考えていないことを強調した。
いずれにせよ、支持率低下により、岸田政権では財政健全化が進みづらくなり、むしろ拡張的な財政政策が採られ得る状況となっている。当初は財政健全化に前向きと目された岸田政権だが、「黄金の3年」を活かせそうにない。 

 

●なぜ「政権交代」は響かない言葉になったのか…枝野幸男 8/29
岸田文雄内閣の支持率が低迷している。だが、野党第1党である立憲民主党の支持率も伸びていない。なぜ立憲は世論の受け皿になっていないのか。2017年に立憲を結党し、21年まで代表を務めた衆院議員の枝野幸男氏(59)に、ジャーナリストの尾中香尚里さんが聞いた――。
「枝野幸男」と「菅直人」は体質が違う
今年で政治家生活30周年を迎えました。ついこの間、初当選したばかりのような気がします。「あっという間だったな」という印象です。
30年間の仕事の中で、政治家としての今の私を形作ったのは、新人議員時代に取り組んだ薬害エイズ問題です。あの時は「自社さ」の橋本政権で、私はさきがけ所属の与党議員でした。(危険な非加熱製剤を多くの血友病患者に投与し、HIVに感染させてしまった)製薬会社や厚生省(現厚生労働省)の追及はもちろんでしたが、被害者の皆さんのニーズに応えてどう現実を動かすか、という仕事に、1年生議員として取り組みました。
「言う(問題を追及する)だけでは済まされない」仕事です。それを、あれほど国民の注目を集めた大きな仕事でいきなりやらせてもらえたことが、その後(の政治家人生)に大きく影響していると思います。
私は30年間、良くも悪くも「与党体質」です。野党にいる時も「どうしたら結果を動かせるか」ということを、強く意識していました。
薬害エイズ問題に一緒に取り組んだ菅直人さん(当時厚相、現立憲民主党最高顧問)は市民運動から政界に入り、キャリアを重ねたところで結果を出しましたが、私は初めから「運動」「要求」という世界とは違う生まれ育ちをしてきました。ここが菅さんとの決定的な違いだと思いますが、それは私の利点であり、弱点でもあります。政治は権力闘争の側面もあるので、もっと野党的に割り切れた方が楽なことは多いかもしれないですね。
2021年に立憲代表を退いた2つの理由
2017年に立憲民主党を結党し、衆院選を経ていきなり野党第1党となりました。代表として2021年の衆院選を戦いましたが、議席を減らし、代表を辞任しました。
辞任の理由は2つあります。
「枝野個人商店」からの脱却が必要だった
ひとつは、立憲民主党は野党第1党、つまり「公器」になりました。「公器」としての役割を果たすためには「枝野個人商店」と呼ばれる状況から脱しなければいけない、と考えたのです。結党してから私がずっと代表を続けていれば、そういう揶揄(やゆ)から逃げられません。どこかで一度は私が引いて、他の人が代表を務める必要があります。いいタイミングだと思いました。
もうひとつは、2017年に立憲民主党が、希望の党騒動という経緯のなかでバタバタと結党され、さらに「1度の選挙で最大野党になる」という想定外のことが起きてしまったため、私自身いろいろな「準備」が整っていませんでした。というより、それまでの「準備」では足りなくなったのです。
準備とは「首相になる準備」のことです。私は、立憲民主党の結党直前にあった民進党代表選(2017年9月)に立候補しているので、その時点で首相になる準備自体はできているつもりでした。でも、立憲民主党という新しい「器」を政権政党に育てるための準備と、私自身のさらなるインプットが必要だと考えました。
それは結党の時から訴えてきた「草の根民主主義」であり「ボトムアップの政治」の実践です。草の根の皆さんの声に耳を傾けることを、代表の仕事と両立させるのには限界がありました。
サイレントマジョリティーの声を聴く
代表を辞めた後、この2年近くの時間は、そのインプットの部分にかなりエネルギーを注いできました。非常に有意義な時間を過ごせたと思っています。
常に意識していたのは「サイレントマジョリティーの声に耳を傾ける」ことです。
代表をやっていると「ノイジーな意見」はたくさん聞けます。非常に声の大きい、特定の意見が、どうしても耳に入りやすいのです。
でも、政治に対して積極的に声を上げられない人たちがいます。政治と、自分の抱えている問題が、つながっていることに気づいていないのです。そういう人たちの声をいかに感じるか、ということを、一貫して意識してきました。
例えば地方の視察で、質疑応答の時間があります。代表時代もゼロではありませんでしたが、ものすごく慌ただしい。今なら30分とか1時間とか、長い時間が取れます。
大事なことは、実際に意見を言ったり、質問したりする人たちだけではありません。それ以上に大切なのは「その人たちの意見や質問を聞いている人たちがどんな反応をしているのか」を見ることです。そこにサイレントマジョリティーの声があると思います。
そんな中で感じたことは、3つあります。
「政権交代」だけではもはや国民には響かない
1つは、多くの国民は今の政治を肯定していないこと。国会では自民、公明の与党が圧倒的多数だし、また日本維新の会に勢いがあると言われていますが、ほとんどの人はそんな政治に納得していない。みんな現状にいら立ち、諦めてしまっています。
2つ目は、「政権交代」という言葉はなかなか響かない、ということ。あれは2009年(民主党政権の誕生)で終わったのです。
「自民党政権はダメだから、政権交代しよう」ということで、2009年に民主党政権が誕生しました。でも、民主党が期待に応えきれなかったのは間違いありません。
今は永田町以上に、国民の方が「ただ政権が変わればいい、というものではない」ことを、よくわかっています。だから「政権交代」だけを掲げても、全く反応しません。
では求めているのは何か。それが3つ目に感じたことなのですが、国民が不満を抱いている本質は、目の前の一つひとつの政策課題についてではない、ということです。
例えば今だったら「紙の保険証の廃止に反対」という声があります。でも、単にそのことに対応すればそれでいいのか、というと、そうではありません。国民は、保険証問題に象徴される社会構造にいら立っているのです。だから、個別のテーマに振り回されても、国民のニーズに応えたことにはなりません。
国民が求めているのは各論ではなくビジョン
もちろん保険証廃止のような個別のテーマもやらなければいけませんが、単発の問題に一つひとつパッチワークのように対応するだけでは、国民の期待は集まりません。「この国全体をどうしてくれるのか」という問いに、自民党は答えていないし、われわれも答えを伝えきれていません。だから国民は自民党に不満を抱いているし、一方でわれわれがいくら「政権交代」を叫んでも反応しません。
国民が求めているのは各論ではなく、理念であり、ビジョンなのです。
私は立憲民主党の結党以来、理念やビジョンを語ることの大切さを強く訴えてきました。2年前の2021年には『枝野ビジョン 支え合う日本』(文春新書)という著書も発表しました。でも、それらは私が期待したほどには伝わっていませんでした。発信の仕方に問題があったのです。
理念を訴えることを、もっと徹底しなければいけなかった。それが、代表を辞めた後の2年間の実感であり、反省点です。
「私たちは何者なのか」ということ、つまり党のアイデンティティー、理念やビジョンを、もっともっと繰り返し強く発信しないといけません。
こういうことは既存のメディアではなかなか取り上げられません。報道は「新しいこと」を追うのが仕事なので、同じことを繰り返し言っても、ニュースにはならないのです。
それでも、例えばテレビのニュースで発言が15秒くらいで切り取られる時、そこで使われやすいフレーズを、普段から繰り返し使っていかなければいけませんでした。
われわれがこれまで掲げてきた理念そのものが間違っていたとは思いません。伝える手段、伝える能力、伝える意欲に問題があったと考えています。
党名にも掲げた「立憲主義」とは何か
そもそもわが党は、党名こそが理念そのものです。立憲民主党。党の綱領も「立憲主義」という言葉から始まります。ものすごく分かりやすい。
ただ「立憲主義」という言葉には多くの意味が含まれているし、国民の間にも十分に知られた言葉ではありません。「立憲主義とは護憲のことだ」と勘違いしている人もいます。「われわれの基本理念は立憲主義」と言うだけでは足りないのです。
では、立憲主義とは何か。それは「個人の尊厳」と「健康で文化的な生活」の2点です。日本国憲法の13条と25条です。
われわれは一人ひとり、他人に迷惑をかけない限り自由であり、自らの価値観に基づいて生きられる。この憲法13条こそが日本国憲法の基礎です。さらに、政治が国民に対して、健康で文化的な生活を保障しなければならない。これを明記したのが25条です。生活保護や教育の無償化など、国民の生活を下支えすることに政府が責任を持つという考え方は、この条文から出ています。
全ての国民は個人として尊重され、健康で文化的な生活を営む権利を持っている。このことを実現することがわれわれ、立憲民主党の存在意義であり、理念です。
自民党は憲法改正を主張していますが、つまり今の憲法の「価値」を変えたいんだと思います。現行憲法がうたう「個人の尊重」という理念は、自民党のそれとは明確に違う。自民党が目指す個々の政策を見ても、個人よりも家族、家族よりも企業、そして何よりも優先されるのが国家です。
立憲民主党は「国家を構成しているのは個人なのだから、個人を大事にしなければ、国を大事にすることにはならない」という考えに立ちます。自民党とは明確に価値観が違うと思います。
いかにして「まっとうな未来」をつくるか
こうした理念に基づき、どんな社会を目指すのかというビジョンですが、やはり、われわれが結党当時から訴えている「まっとうな政治」という言葉に行きつくと思います。でも「まっとうな政治」は、目指すべき社会をつくるための前提条件に過ぎません。
われわれが目指すのは「まっとうな政治」を行うことで「まっとうな社会」と「まっとうな経済」を取り戻すこと。「まっとうな社会」「まっとうな経済」「まっとうな政治」の三つによって「まっとうな未来」をつくることです。
では「まっとうな社会」とはどういう社会なのか。それが「支え合う社会」です。ここで言う「支え合い」は「あなたと私が個人で支え合う」こととは違う。「政治の力で公共サービスを充実させ、社会全体で互いに支え合う」ことです。
「まっとうな経済」とは、安心を生み消費を活性化させる経済です。富の再分配によって公共サービスの担い手を支えることで、国民一人ひとりが安心して暮らすことができ、結果として消費を生み出し、お金を循環させることができます。「まっとうな社会」と「まっとうな経済」がつながるのです。
そして、公共サービスを充実させるには、政治に対する信頼を取り戻すことが欠かせません。今は国政も地方政治も、議会によるチェック機能が働かなくなり、お金の流れが見えなくなっています。政策決定のプロセスを透明化して、議会のチェック機能を回復させることで、公正で信頼できる「まっとうな政治」を取り戻さなければなりません。
「まっとうな政治」がベースになければ、富を再分配するために今大きく稼いでいる国民から税金をいただくことはできませんからね。
●なぜ日本は子育て世代にダメージのある政策ばかり講じてきたのか… 8/29
晩婚化、非婚化は多くの先進国で見られる共通の現象だ。その中でなぜ日本では最速のスピードで少子高齢化が進むのか。元国税調査官の大村大次郎さんは「日本は子育て世代にダメージのある政策ばかりを講じてきた。教育費は上がり、消費税の負担が重くなり、非正規社員が激増している。児童手当だけでは全く足りない」という――。
日本の少子化は人災か
ご存じのように現在、日本は深刻な少子化問題を抱えている。
出生率は先進国では最悪のレベルであり、世界最悪のスピードで高齢化社会を迎えつつある。
この少子化については、「日本人のライフスタイルが変わったから」と考えている人も多い。確かに、ライフスタイルの変化によって晩婚化、非婚化が進んだという面もある。
しかし、晩婚化、非婚化は、女子教育の進んだ先進国ではどこにでも見られる現象である。日本が先進国の中で最も少子化が進んでいる理由にはならない。
よく知られているが日本が他の先進国と比して著しく少子化が進んだのは、「政治の無策」という面も大きいのである。
日本では半世紀近く前から、「このままでは少子高齢化社会になる」ということがわかっていながら、有効な対策を講じてこなかった。
子育て世代にダメージのある政策ばかり講じた
半世紀前、日本よりもはるかに深刻な少子化に陥っていたヨーロッパ諸国は、この50年間、さまざまな子育て対策を行い、現在、出生率は持ち直しつつある。
しかし、日本はむしろ子育て世代に最もダメージのある政策ばかりを講じたのである。たとえば、国立大学の授業料はこの50年間に、15倍にも高騰している。また平成元(1989)年に導入され、たびたび税率が上げられてきた消費税は、子育て世代に最もダメージが大きい税金である。国はこの50年間、子育てがしにくくなるような政策ばかりを講じてきたのである。
現在、政府は「次元の異なる少子化対策」に力を入れようとしているが、まだ全然、問題解決にはなっていないレベルである。
半世紀前は、父親一人が働いていれば、多くの家庭で子ども2人くらいは育てることができた。しかし、現在は、夫婦共働きであっても、子ども1人を育てるので精いっぱいという家庭が多い。
日本はいったいなぜそういう国になったのか? 
日本はどうすれば少子化問題が解消できるのか? 
子育てや教育に関する国際データをもとに検証していきたい。
日本の衰退は免れない
ご存じのように昨今、日本は急激な少子高齢化に見舞われている。
このまま進めば、どれほど企業が頑張ったところで、日本の衰退は免れない。その事実は、どんな楽観論者も否定できないはずだ。
そして、少子高齢化というのは、いま何も手を打たなければ、必ず進んでいく。つまり、いま何も手を打たなければ、日本は必ず衰退するのだ。
南海トラフ地震のような大災害は、もしかしたら、この数十年のうちには起きないかもしれない、もしかしたら100年くらい起きないかもしれない。
しかし、少子高齢化は、地震のような不確定な要素はまったくない。このままいけば、必ず避けられないものなのである。
厚生労働省の発表では、2022年の出生数は80万人を割りこみ77万747人だった。出生数が80万人を下回るのは1899(明治32)年の統計開始以来、初めてのことである。1970年代には200万人を超えていたこともあったので、この落ち込み方はすさまじい。
わざわざ少子高齢化を招いたとしか言いようがない
先ほど触れたように、日本人のライフスタイルが変わったことは、晩婚化や少子化の一因となった。が、これほど急激な少子高齢化が起きたのは、政治の失策が大きな原因となっているのだ。
というより、ここ20〜30年の政治は、わざわざ少子高齢化を招いているとしか言いようがないほど、お粗末なものなのであった。
実は少子化という現象は、日本だけのものではなかった。
「女性の高学歴化が進んだ社会は少子化になる」ということは、かなり前から欧米のデータで明らかになっていた。
そして、欧米では、日本よりもかなり早くから少子高齢化の傾向が見られていた。日本の少子化は1970年代後半から始まったが、欧米ではそのときにはすでにかなり深刻な少子化となっていた。
そして1970年から75年くらいまでは、欧米のほうが日本よりも出生率は低かった。つまり、40年以上前から少子高齢化は、先進国共通の悩みだったのだ。
が、その後の40年の歩みが、日本と欧米ではまったく違うのである。
ほかの先進国は少子化対策にお金をかけた
この40年間、欧米諸国は子育て環境を整えることなどで、少子化の進行を食い止めてきた。
図表1は、先進主要国における家族関係社会支出のGDP比である。これを見ると、日本はヨーロッパ主要国に比べて、かなり低いことがわかるはずだ。ヨーロッパ主要国は少子化を食い止めるために政府がそれなりにお金と労力をかけているのだ。
欧米諸国のほとんどは、1970年代の出生率のレベルを維持してきた。だから、日本ほど深刻な状況にはなっていない。
1974年の時点で、日本の合計特殊出生率はまだ2を少し上回っていた。
フランスは日本より若干高いくらいだったが、イギリスもアメリカもドイツも日本より低く、すでに出生率が2を下回っていたのだ。
しかし、フランス、イギリス、アメリカは、大きく出生率が下がることはなく、2017年は出生率は2近くになっている(図表2)。
一方、日本は70年代から急激に出生率が下がり続け、現在は1.4を切っている(2020年時点で1.33)。もちろん、出生率が2に近いのと、1.4以下とでは、少子高齢化のスピードがまったく違ってくる。
なぜ先進国の間でこれほどの差がついたかというと、日本はこの40年間に、子育てを支援するどころか、わざわざ少子高齢化を招き寄せるような失政を犯してきたからである。
30代前半の非正規男性で結婚しているのは2割のみ
少子化問題は経済問題でもある。
データを見る限りでは、現在の少子化を招いた原因として、経済も非常に大きい要素を占めている。
男性の場合、正社員(30〜34歳)の既婚率は約60%だが、非正規社員の既婚率は約20%である(「令和4年版 少子化社会対策白書」)。
非正規社員の男性のうち、結婚している人が2割しかいないということは、事実上、非正規社員の男性は結婚が困難、ということである。
これは何を意味するか? 
ジェンダーをめぐる認識が急速に変化しているとはいえ、男性はやはりある程度の安定した収入がなくては結婚できない、という考え方は根強い。だから派遣社員などでは、なかなか結婚できないのである。
つまり、「派遣社員が増えれば増えるだけ、未婚男性が増え少子化も加速する」ということである。
男性の非正規雇用が激増している
そして、日本では近年、男性の非正規雇用が急激に増加している。
図表3は、パートタイム労働者のうち男性に絞って主要先進国と比較したものである。これを見ると日本の男性のパートタイム労働者はこの15年で激増しているのがわかる。
もちろん、パートタイム労働者だけではなく、非正規雇用に枠を広げると、その人数は非常に多くなる。
現在、日本では働く人の約4割が非正規雇用である。その中で男性は、700万人近くもいる。20年前よりも倍増したのだ。つまり、結婚できない男性がこの20年間で300万人以上も増加したようなものである。
現在の日本は、世界に例を見ないようなスピードで少子高齢化が進んでいる。このままでは、日本が衰退していくのは目に見えている。どんなに経済成長をしたって、子どもの数が減っていけば、国力が減退するのは避けられない。
いまの日本にとって、経済成長よりもなによりも、少子高齢化を防がなければならないはずだ。
「非正規雇用が増えれば、結婚できない若者が増え、少子高齢化が加速する」
これは、理論的にも当然のことであり、データにもはっきり表れていることである。
なのに、なぜ政治家や官僚はまったく何の手も打たなかったのか、不思議でならない。
なぜ日本の非正規雇用者数が近年激増したかというと、政界と財界がそれを推進したからである。
バブル崩壊後、財界は「雇用の流動化」と称して、非正規雇用を増やす方針を打ち出した。たとえば1995年、日経連(現在の経団連の前身団体の一つ)は「新時代の“日本的経営”」として、「不景気を乗り切るために雇用の流動化」を提唱した。
こんなことを30年も続けたら国家が破綻しかかって当然
「雇用の流動化」というと聞こえはいいが、要は「いつでも首を切れて、賃金も安い非正規社員を増やせるような雇用ルールにして、人件費を抑制させてくれ」ということである。
これに対し政府は、財界の動きを抑えるどころか逆に後押しをした。
1999年には、労働者派遣法を改正した。それまで26業種に限定されていた派遣労働可能業種を、一部を除いて全面解禁したのだ。
さらに2004年にも、同法は改正され、1999年改正では除外となっていた製造業も解禁された。これで、ほとんどの産業で派遣労働が可能になった。
同法の改正が、非正規雇用を増やしたことは、データにもはっきり出ている。90年代半ばまでは20%程度だった非正規雇用の割合が、98年から急激に上昇し、現在では30%を大きく超えている。
また裁量労働制などの導入で、事実上のサービス残業を激増させたのである。
労働者の生活を極限まで切り詰めさせて、一部の大企業、富裕層の富を増大させてきたのがバブル崩壊後の日本である。こんなことを30年も続けていれば、国家が破綻しかかって当然である。
現在、岸田政権は、さすがにこのことに気づいて労働環境の改善に取り組もうとはしている。しかし、日本衰退のスピードに比べると、あまりに遅すぎるというのが著者の気持ちである。
先進国最悪レベルの子どもの貧困
図表4は、OECD34カ国における子どもの相対的貧困率である。
相対的貧困率は、その国民の平均所得の半分以下しか収入を得ていない人たちの割合である。
この子どもの相対的貧困率は、日本がOECD34カ国中ワースト10に入っているのだ。
このデータは「相対的貧困率」とは言うものの、日本は現在、先進国の中で平均所得は低いほうである。そのため、この数値が高いということは「子どもの絶対的な貧困者の割合」もそれだけ多いと考えていいだろう。
ひとり親家庭に厳しい日本
図表5は、OECD33カ国における「一人親世帯」の子どもの相対的貧困率である。ご覧のように、このランキングでは日本はワースト1位なのである。
日本は子どもの相対的貧困率も低いが、それ以上に「一人親世帯」の相対的貧困率が低いのだ。
内閣府の令和3年度「子供の貧困の状況と子供の貧困対策の実施の状況」によると母子家庭の親の就業率は83.0%であり、父子家庭の親の就業率は87.8%となっている。
つまりは、ひとり親家庭のほとんどの親は、就業している。
しかし、ひとり親家庭の「正規雇用」の割合を見てみると、母子家庭50.7%、父子家庭71.4%となっている。ひとり親家庭の正規雇用率は著しく低い。
非正規雇用の増加が貧富の格差を招いたことは前述したが、子どもの貧困に関しても同様に、非正規雇用の増加が大きな影響を与えているのだ。
消費税が少子化問題を悪化させた
次に認識していただきたいのが、「消費税は子育て世代への負担が最も大きい」という事実である。
前述したように消費税は平成元(1989)年に導入され、この30年間にたびたび増税されてきた。少子高齢化が進んでいく時期とリンクしている。
消費税は、収入における消費割合が高い人ほど、負担率は大きくなる。
たとえば、収入の100%を消費に充てている人は、収入に対する消費税の負担割合は10%ということになる。
が、収入の20%しか消費していない人は、収入に対する消費税の負担割合は2%でいいという計算になる。
収入に対する消費割合が低い人は、高額所得者や投資家である。彼らは収入を全部消費せずに、貯蓄や投資に回す余裕があるからだ。こういう人たちは、収入に対する消費税負担割合は非常に低くなる。
では、収入における消費割合が高い人はどういう人かというと、所得が低い人や子育て世代ということになるのだ。
人生のうちで最も消費が大きい時期というのは、大半の人が「子どもを育てている時期」のはずだ。そういう人たちは、必然的に収入に対する消費割合は高くなる。
ということは、子育て世代や所得の低い人たちが、収入に対する消費税の負担割合が最も高いという現実があるのだ。
児童手当はまったく足りない
子育て世帯に対しては、「児童手当を支給しているので、負担は軽くなったはず」と主張する識者もいる。
しかし、この論はまったくの詭弁(きべん)である。
児童手当というのは、だいたい1人あたり月1万円、年にして12万円程度である。
その一方で、児童手当を受けている子どもは、税金の扶養控除が受けられない。
そのため、平均的な会社員で、だいたい5〜6万円の所得税増税となる。
それを差し引くと6〜7万円である。つまり、児童手当の実質的な支給額は、だいたい年間6〜7万円にすぎないのだ。
しかも、子育て世代には、消費税が重くのしかかる。
子ども1人にかかる養育費は、年間200万円くらいは必要である。食費やおやつ、洋服代、学用品などの必需品だけでも平均で200万円くらいにはなるだろう。
ちょっと遊びに行ったり、ちょっとした習い事などをすれば、すぐに200〜300万円になる。
子どもの養育費が200万円だとしても、負担する消費税額は概算で20万円である。
児童手当では、まったく足りないのだ。
つまり子育て世代にとって、児童手当よりも増税額のほうがはるかに大きいのである。
少子高齢化を食い止めるためには、子育てがしやすいように「支給」しなければならないはずなのに、むしろ「搾取」しているのである。
●「日本を信頼」が92%でトップ フィリピン、「最大の脅威」は中国 8/29
フィリピンの政治コンサルタント会社パブリカス・アジアは、フィリピン人の外国や地域連合に対する信頼度を調べた世論調査の結果を発表した。日本を「信頼する」と答えた人は92%でトップだった。一方、79%が中国を「最大の脅威」に挙げた。南シナ海で海洋進出を強める中国への不信感が浮き彫りとなった。
調査結果によると、日本を「とても信頼する」と答えた割合は55%で、設問で挙げられた計12の国・地域連合の中で単独トップ。「かなり信頼する」の割合を合わせた信頼度は92%に上り、フィリピンが加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)と並んで最も高かった。日本を「あまり信頼しない」は8%、「全く信頼しない」は1%にとどまり、フィリピン人の親日ぶりが表れている。
「とても信頼する」の割合ではASEANが45%、カナダが44%と続いた。歴史的に関係が深く、安全保障面でつながりを強める米国は39%と、韓国やオーストラリアと同等の高さだった。対照的に、中国は9%、ロシアが14%だった。
一方、「フィリピンにとって最大の脅威は」との問いには、79%が中国と答え、米国が9%、ロシアが6%と続いた。中国への警戒感は群を抜いており、南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)周辺での緊張の高まりが背景にあるとみられる。
外交政策についての質問では、南シナ海問題に対するマルコス政権の姿勢に6割以上が賛成を示した。マルコス政権は中国との経済関係は重視しつつ、南シナ海問題では中国への強硬な姿勢を貫き、米国との安全保障協力を強めている。
パブリカス・アジアは「中国に屈しないこと、領土問題の外交的解決を模索していることなどが支持されている」と説明した。
調査は米国の市場調査会社の協力を得て、フィリピン全国から無作為に抽出した1500人を対象に、3月2〜6日に実施した。結果は今月17日に公表した。
●総額2兆円!巨額のマイナンバー予算を懐に納める「巨大企業」の実名 8/29
一度走り出したら、立ち止まることも間違いを認めることもできず、破滅まで突き進む—。そんな日本の悪しき性が、また鎌首をもたげている。くり返される失敗の深層には、この国の宿痾があった。
保険証廃止は実現困難
〈該当する資格がありません〉
マイナンバーカードを端末にかざすと、そんなエラーが表示された。持ち主はパニックだ。
「どうなってるの? 保険適用じゃなくなるの?」
困惑する患者をなだめ、すぐさま役所に問い合わせる—大阪府の北原医院では、マイナンバーカードを保険証として使えるようにするシステムを導入した今春から、こんな光景がたびたびくり広げられている。同院の井上美佐院長が語る。
「エラーが出る原因は、大きく分けて2つ。マイナンバーカードに記されている名前の漢字や住所といった情報が、保険証にある登録内容と合致せずハネられてしまうケースと、結婚・離婚などで苗字が変わったり、勤務先が変わって社会保険から国民健康保険に切り替わったけれど、役所の側の情報更新が追いついていないケースです」
呆れたのは、地元の自治体に問い合わせた際、こう言われたことだ。
「役所で使っているパソコンが古くて、その患者さんの名前の漢字を正しく表示できない。申し訳ないが、今まで通り紙の保険証を持って来てもらってください」
岸田政権は来年'24年の秋をめどに「保険証の廃止」そして「マイナンバーカードへの完全移行」を強行しようとしている。だが、こんな体たらくではとうてい不可能だろう。井上氏が続ける。
「紙の保険証がなくなってマイナ保険証だけになれば、エラーが出た人が健康保険に加入しているかどうか、簡単にはわからなくなるでしょう。患者さんに『被保険者資格の確認がとれないので、とりあえず診療費を10割払ってください』なんて言ったら、揉めごとになるに決まっています」
国の無策に振り回されて
これまで「住民票をコンビニで発行できる」「マイナポイントがもらえる」という程度だったマイナンバーカードの使い道を、いきなり急拡大させる。そんな拙速な判断を政府が下したせいで、大混乱が起きていることはご存知の通りだ。
宮崎県では7月、県の職員が、障害者の持つ療育手帳のデータをマイナンバーと関連づける「紐付け」作業中に、パソコン上の個人情報を1行ズレた状態でコピーし、2336名の県民に別人のマイナンバーが関連づけられる事故が起きた。
このミスは、たった一人の職員が長時間作業にあたっていたために起きたと言われる。各地の役所も、同じような極限状況だ。千葉県の某中規模自治体の幹部が明かす。
「マイナンバー関連の作業はコロナワクチン接種と同様、国は指示するだけで、実務は自治体や関係機関に丸投げです。
日本人の名前や住所は表記がまちまちで、漢字・カナ・異体字が交じっているため、目視で書き写して何度も確認しないといけない。何万人分ものデータをくり返しチェックするわけですが、秘密を守るために、認証の済んだ少人数のスタッフが作業せざるを得ません」
目を血走らせながら、来る日も来る日も手作業で膨大なデータの入力・確認に明け暮れる—こうした現状は行政の現場でデスマーチ(死の行進)と言われている。
2兆円を費やす
自治体だけではない。マイナ保険証のトラブルは、約4000万人の健康保険のデータを管理する全国健康保険協会、通称「協会けんぽ」の内部でもデスマーチが常態化しているために起きているのだ。8月16日には、同協会の加入者40万人分の保険情報とマイナンバーが紐付けできていないことが判明した。保険証関連のエラーは、週に数千件にのぼる。
「制度の発足当初、保険証を完全にマイナンバーカードで代替するなんて計画はなかった。河野太郎デジタル大臣が去年の10月、ほとんど思いつきで言い出した話で、我々は国の行き当たりばったりに振り回される日々です」(前出・自治体幹部)
'16年の導入から7年が過ぎ、日本はいま「マイナンバー敗戦」に突き進んでいる。その恐るべき実態を見ていこう。
「健康保険、年金、運転免許、介護保険と、これまで日本では複数の『番号制度』がバラバラに運用されてきました。マイナンバーは当初、'03年から稼働している住民基本台帳ネットワークシステム、いわゆる『住基ネット』レベルの情報とだけ連携するという話でしたが、後付けで他の諸制度とも連携することになった。
マイナンバーを導入すれば、並立する制度を一つにスッキリまとめられるのではないかと思うかもしれませんが、実態は逆です。日本の公的システムは増改築を繰り返して巨大化した旅館のように、複雑怪奇な構造になりつつある」(ITジャーナリストの佃均氏)
これまでマイナンバーのシステム構築、ほかの行政サービスとの紐付け、カード発行・交付、マイナポイントをはじめとする普及促進策などの諸政策に費やされた予算は、2兆円を超える。
表沙汰になりにくい
中でも、巨額の費用が渡っているのが「5大ベンダー(=ITシステム開発会社)」と呼ばれる企業群だ。富士通、日立製作所、NTTデータ、NEC、日本IBMの5社で、日本の行政をシステム面から牛耳る存在である。神奈川県の某自治体の元首長が証言する。
「今春にも、マイナカードを使ってコンビニで住民票を発行したら他人のものが出てくるトラブルがありましたが、原因は富士通の子会社『富士通Japan』が開発したシステムの不備でした。
とりわけ富士通は日本の自治体に最も食い込んでいて、各地の役所のサーバー室の管理を請け負ったり、社員を送り込んだりして、自分たち以外は公共システムをいじれないようにする。機器やシステムを維持管理する利権さえ確保すれば、あとは安泰ですからね。この構造が非効率な仕事の温床になっている」
何十万人、何百万人もの個人情報を扱う行政のITシステムは、いわば巨大な「バーチャル書庫」のようなものだ。しかし、道路やホールのように目に見えるわけではないから、そこにムダと非効率、寡占・独占があっても批判されづらい。
国民の目が届かないところで、まるで平成期に談合で槍玉に上がった建設業界とそっくりな、「もたれ合い」の構造が温存されてきたのである。
●「誰得」なマイナンバー制度、政治家がゴリ押すウラにある「不幸な日本の未来」 8/29
一体、マイナンバーって誰が得するんだ? 国民はみんなそう思っているのに、「もう決まったことだから」と開き直るそぶりすら見せる政治家たち。その裏で、「現場」である役所や医療機関では大パニックが起こり、関与する大手企業は莫大なマネーを懐に収めている。<総額2兆円! 巨額のマイナンバー予算を懐に納める「巨大企業」の実名>に続いて、なぜこのような「怪物」が生み出されたのかを検証する。
必死にプラスイメージを作る
「ベンダーにとってマイナンバーのような巨大システムは、開発・維持・手直しと三重に業務が発生する美味しい仕事です。しかも、マイナンバー関連業務の入札は8割以上が随意契約や一者応札で企業間の競争がなく、発注先が大手ベンダーに偏っていることが判明しています」(ITジャーナリストの佃均氏)
前述した5社のうち富士通、日立、NTTデータ、NECの4社は自民党の政治資金団体「国民政治協会」に多額の献金を行ってもいる。終わりなき増改築と保守点検が求められるマイナンバーはまさに、彼らにとって夢のような「完成することのない大聖堂」であるといえる。
「本当は、マイナンバーカードもマイナポイントも、『便利そう』とか『トクしそう』というプラスイメージを作るための手段でしかありません。だって、マイナンバーの本質は『国民の背番号』なんですから」
ある財務官僚はこう声を潜める。驚くべき言い草だが、実はこれが政府と霞が関の本音である。
多くの国民が勘違いしていること―それは、「マイナンバーとマイナンバーカードは別物」という事実だ。マイナンバーカードを受け取らないことや返納することはできるが、マイナンバー付与を拒否することはできない。好む好まざるにかかわらず、すでに役所や税務署はマイナンバーを使って国民の納税状況や保険給付を把握・管理している。
もう後戻りはできない
「そもそも、マイナンバーは当初『社会保障・税番号』という名前で、国民のカネの動きを効率的に捕捉することを念頭に起案されました。推進してきた政治家には財務省と関係が深い人物が多く、民主党政権では大蔵省出身の古川元久元官房副長官らが、その後の第二次安倍政権では麻生太郎元財務大臣などがいます。
特に麻生氏は'19年、『将来的にはマイナンバーカードで買い物の決済をできるようにして、ポイントをつければいい』と発言している。レジのPOS(販売時点情報管理)システムのように、全国民の購買情報を把握して、架空経費計上や所得隠しを防ごうという構想が透けています」(経済ジャーナリストの磯山友幸氏)
巷では「マイナンバー制度の言い出しっぺは民主党政権だ」「いや安倍政権だ」という「起源論争」に明け暮れる人々もいるが、実際には'60年代から「国民番号制度」の議論は始まっていた。'80年には元大蔵官僚の総理・大平正芳氏が「納税者番号制度法案」を成立させてもいる(導入前に頓挫)。マイナンバーとは、半世紀にわたる財務省・霞が関の悲願がついに結実したものなのだ。
しかし、そんなお上の都合を国民が簡単に受け入れてくれるはずもない。そこで冒頭の官僚が言うように、捻り出されたのが「マイナンバーの書かれたカードを作れば、便利でトクしますよ」と喧伝する策だった。
カード製造やシステム構築が必要になるから、前章で触れたベンダーをはじめ、関係業界に予算を配って仕事と権益を生み出すこともでき、霞が関にとっては一石二鳥だ。デジタル庁を発足させた菅義偉前総理は、マイナンバーカードを「デジタル社会のパスポート」として流れを加速させた。
「ですが、日本では行政システムの縦割りが強すぎるうえ、それぞれのシステムとマイナンバー・マイナンバーカードをつなぐ仕組みの開発は、ベンダーの能力不足で困難だとわかった。官僚が余計な仕事を増やした結果、進むことも引くこともできない窮地に陥ってしまったのが現在の状況なのです」(磯山氏)
「敗戦」の失敗を繰り返す気か
現行の仕組みですら座礁しかけているにもかかわらず、政府は懲りることなく、'26年にアップデートを施した「次期マイナンバーカード」への移行を画策していることも付記しておこう。
かつての日本は役人や軍人の暴走で自滅の道をたどり、悲惨な敗戦を迎えた。今まさに、同じような失敗を犯そうとしているのかもしれない。
「国として、統一した個人認証システムを作ろうという方針自体は正しいと思います。しかし、問題はあまりにも設計が稚拙で、実際の運用方法も練られていないことです。
マイナカードには名前・住所・顔写真が印刷されていますが、落とせば即、個人情報がダダ漏れになる。付属のケースで目隠しするというのも奇妙な仕様だと思います。'13年のマイナンバー法成立時点で、すでにスマホは国民の3割台まで普及していたのですから、セキュリティ面を考えても、カードではなくスマホを中心にした仕組みを設計すべきだったのではないでしょうか」
こう指摘するのは、ソフトウェア開発会社「サイボウズ」社長の青野慶久氏だ。
世界の主要国には、日本よりはるか前に番号制度を導入した国が多い。アメリカやイギリス、フランスなど欧米諸国では1930〜'40年代に、韓国や台湾でも'60年代に制度が確立している。
こうした国々では日本と違って、すでに「生まれた時から自分の番号を持っている」国民が大部分を占めるため、番号制度自体の是非が問題になることはない。そして、個人情報は「漏れて当たり前」というのが常識だ。
個人情報がダダ漏れ
アメリカでは、マイナンバーにあたる「社会保障番号」とそこに紐づいた与信情報は長い間ダダ漏れ状態で、クレジットカードのなりすまし被害が多発している。'17年には大手信用情報会社がハッキングに遭い、国民の半数近い1億4000万人分のデータが盗まれた。
人口約5200万人の韓国にいたっては、過去に少なくとも1億3000万件の住民登録番号が漏洩している。全国民が平均3回近くも漏洩被害に遭っている計算だ。
情報セキュリティの専門家で、情報安全保障研究所首席研究員の山崎文明氏が言う。
「行政手続きがすべてオンラインで可能なデジタル先進国と言われるエストニアでさえ、'17年に国民の個人情報を特定するための秘密鍵(暗号通信を解読するための数字)が漏洩し、80万人分の個人カードを作り直す事態に見舞われました。
日本は番号制度の後発国なのですから、こうした先例を踏まえて、たとえばカードへの記載は顔写真と氏名にとどめ、本人識別のためのICチップだけを搭載するといった形にもできたはずです」
'18年には、日本年金機構がマイナンバーや年金番号を含む個人情報501万人分の入力作業を民間企業「SAY企画」に委託したところ、同社がデータを中国の業者に丸投げして大問題になった。第1章でも触れたように、マイナンバーと各種個人情報の紐付け作業はあまりに作業量が膨大なため、まだ向こう数年は終わらないはずだ。ただでさえ人為的ミスが多発する中、どんな思わぬルートから情報が漏れるかわからない。
政府の狙い
日本中を震え上がらせた「ルフィ強盗団」は、闇市場で出回る個人情報名簿をもとにターゲットを物色していたとされる。個人番号導入の「最後発国」である日本のマイナンバーは、犯罪者にとっては、いわば手付かずの宝の山だ。もはや国民にできるのは、腹を括ることだけである。
今年6月、デジタル庁が公表した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に関する資料には、こう書かれている。
〈2025年度 運転免許証とマイナンバーカードの一体化〉〈2026年度 介護保険証のペーパーレス化 全国実施〉
つまり、健康保険証の廃止は序章にすぎない。向こう数年の間に、さまざまな本人確認書類をマイナンバーカードに統合する。さらには、交通系ICカードやクレジットカードと同等の機能をも持たせ、支出や移動履歴、病歴などのあらゆる個人情報を集約する「究極のカード」をめざす―これはすでに、政府内では既定路線なのである。
しかし、保険証廃止だけでも国民の猛烈な反発を招き、内閣支持率は30%台前半まで急落した。運転免許証、介護保険証の廃止にまで手をつければ、与党が瀬戸際に追い込まれるのは確実だ。
なぜ政府は、これほどまでにマイナンバーとマイナカードの浸透・普及を急いでいるのか。
「本当の目的」として囁かれているものが二つある。まずは、すでに触れたカネの流れの把握、特に富裕層に対する資産課税である。エコノミストの田代秀敏氏が言う。
「いま富裕層の間では、『これほど政府がマイナンバーと資産などの情報の紐付けを急いでいるのは、日本が万が一、財政破綻をきたした時に備えているのではないか』という憶測が広がっています。財務省の官僚たちは国の財政破綻を本気で憂えていますから、『その日』が来たら富裕層の口座を封鎖し、資産に税を課して財源を調達するつもりなのではないか、と」
国の形が変わってしまう
そしてもうひとつは、古今東西、国民番号制度が裏に秘めてきた重大な目的―有事の備えだ。
韓国、エストニアなど番号制度の先進国と言われる国々には、冷戦構造下で周辺国と鋭く対立してきた歴史がある。こうした国では、国民に番号を付与することは反逆者やスパイを炙り出し、いざというときの動員をスムーズにするための仕組みでもあったのだ。
「これほどの混乱が生じても突き進む政府の様子には、どうしてもマイナンバーとマイナカードをすぐ定着させたいという思惑を感じます。それは、日本が明日をも知れぬ状況に陥った時の備えのためだ―と考えるのは、穿ち過ぎでしょうか」(田代氏)
われわれはもう、後戻りするには大きすぎるカネと労力をマイナンバーに費やしてしまった。いずれにせよこの先、日本はこれまでと全く異なる国になってしまうことだけは、間違いなさそうだ。 

 

●勢いづく日本維新の会 野党第一党を狙うが失速の懸念も 8/28
日本維新の会の勢いがとまらない。「全国政党化」を目論む中で脆弱だった東北での足場固めも進む。この秋にも衆院解散・総選挙があると囁かれているだけに、維新執行部は強気の言動を繰り返している。立憲民主党や共産党などの野党だけでなく、与党の自民、公明両党ともガチンコ対決≠フ構えだ。さながら現代版「大阪夏の陣」。秋まで勢いは続くのか、それとも失速してしまうのだろうか。
「第2自民党」で波紋
「地方議員が空白だった地域に議員が誕生することは国政選挙にとっても、もちろんプラスだ」
日本維新の会幹事長・藤田文武は8月2日の記者会見で、そう語った。7月30日に投開票された仙台市議選(定数55)で、擁立した新人5人の全員当選を果たした。支持基盤の弱い東北エリアでの躍進は次期衆院選での「全国政党化」実現に弾みになる。
藤田は記者会見で「地方議会はどこも古い体質で、様々なしがらみの中で政治力学が決まっている。それをぶち壊してくれるのは日本維新の会だと好感を持って受け入れられているのだろう。仙台のみならず、各地で感じる」とも強調した。
日本維新の会は昨年3月、政権奪取に向けた「中期経営計画」を発表している。2022年7月の参院選での議席倍増がホップ≠ナ、23年4月の統一地方選で地方議員600人以上を確保することがステップ≠ニ位置づけた。そして、次期衆院選での「野党第一党」をジャンプ≠ニする具体的な目標を掲げている。
ホップ、ステップはクリアしたため、次期衆院選が最大の焦点となる。ジャンプを勢いづかせるためにも「大阪から始まった維新の改革を全国に拡げていくためには地方組織の強化は必須課題」だった。
日本維新の会は現在、東北の衆院議員は21年10月の前回衆院選で復活当選した早坂敦しかおらず、事実上の「空白」エリアだった。今回の仙台市議選で躍進したことから、党執行部は今春の統一地方選の勢いを維持しているとみて、各地に頻繁に足を運び地方議員らとのコミュニケーションを重ねることで、地方組織を固めていく方針だ。
主要な報道機関の7月の世論調査で日本維新の会の政党支持率をみると、いずれも野党第一党の立憲民主党を上回っている。NHK=5.1%(立憲民主党5.1%)▽朝日新聞=7%(同4%)▽毎日新聞=16%(同9%)▽読売新聞=9%(同4%)―といった数字だ。
次期衆院選での比例代表の投票先を尋ねても同じ傾向となる。30%前後ある自民党には大きく引き離されているが、ホップ、ステップに続くジャンプ(野党第一党)もクリアできそうな流れが続いている。
代表の馬場伸幸は強気な言動を繰り返す。7月23日のインターネット番組では「第1自民党と第2自民党との改革合戦が政治を良くする。立憲民主党がいても日本は良くならない」と語った。共産党に対しても「日本から無くなったらいい政党。言っていることが世の中ではありえない」と切り捨てた。
これには立憲民主党代表の泉健太は「維新は党名を『第2自民党』に変えた方が分かりやすい」と反発。共産党委員長の志位和夫も「第2自民党では与党第2党になるだけだ」と批判し、「無くなったらいい」発言の撤回を求めた。
それでも馬場は、発言の真意を問われると「政治家として信念、理念を持って発言している」と語る。
自公とも全面対決
日本維新の会がターゲットとするのは野党だけではない。自民党と連立を組む公明党とも全面対決する構えをみせる。
これまで看板政策の「大阪都構想」を実現させるためには、住民投票に賛成してきた公明党は必要な存在だった。ただ、今春の統一地方選で日本維新の会が大阪府議会、大阪市議会ともに過半数を獲得したことで状況は一変。公明党への配慮から候補者擁立を見送ってきた衆院大阪3、5、6、16区と兵庫2、8区の関西6選挙区に候補者を立てることを決めた。
党内で議論を重ねた結果だとされるが、次期衆院選で野党第一党を奪取するには、全国に289ある小選挙区すべてに候補者を立てることが必要で、公明党との協力関係も「清算」することは避けられないと判断した。
昨年夏の参院選で、公明党は「比例で800万票獲得」という目標を掲げたものの「618万票」にとどまり、組織力にもかげりがみえることも決断を後押ししたという。
公明党は「いま維新は非常に勢いがあるから厳しい戦いになる。我々はいま政権与党にいるからこその政策実現力をしっかりと訴えて、勝利を期していきたい」(幹事長の石井啓一)など受けて立つ構えだが、勢いのある日本維新の会には警戒感が強まる一方だ。
公明党だけでなく、自民党も危機感を募らせている。先の衆院選では、大阪に19ある小選挙区のうち15を日本維新の会に確保され、「全敗」したからだ。残る4つは日本維新の会と住み分けをした公明党が獲得している。
このため、日本維新の会に圧倒される大阪を立て直そうと「大阪刷新本部」を立ち上げ、次期衆院選の候補者を公募で選び直すという異例の対応に出た。大阪を地盤とする元議員らからは不満、批判の声があがり、党本部に幹事長、茂木敏充を訪ねて直接抗議したが、公募の決定は覆らなかった。
茂木は8月2日、公募した10の小選挙区のうち、8つの小選挙区の立候補予定者を発表した。新人は会社員の大辻沙耶(11区)やヒット曲『無錫旅情』で知られる演歌歌手・尾形大作(18区)ら5人。3人は前回衆院選に立候補し落選した元職が再任された。
「人が変われば新しくなる面もあるが、人間ですからやはり自分が変わるということもあると思っている」。茂木は強調したが、狙ったようなイメージ刷新にはつながらず、日本維新の会にどこまで対抗できるかは不透明なままとなった。
日本維新の会は安倍晋三、菅義偉両政権とは蜜月関係にあったが、岸田文雄政権になると疎遠になっている。岸田政権は現在、マイナンバーカードのトラブル対応などで逆風にあり、性的少数者(LGBT)への理解増進法の対応を巡っても「岩盤保守層の自民党離れが進んでいる」(自民党中堅)とされる。日本維新の会が保守層の受け皿になる可能性が高く、今後、自民党との溝はさらに広がりそうだ。
失速の懸念材料も
ただ、日本維新の会にとって懸念材料がないわけではない。そこには自公連立政権との関係が影を落とす。
日本維新の会が主導してきた大阪・関西万博は、工事の遅れなどで25年4月からの開催が危ぶまれているのだ。万博には153カ国・地域が参加を表明しており、そのうち約56カ国・地域が独自に形状やデザインを設計・建設することを希望している。特色ある各国のパビリオンは万博の目玉となる。
ところが、建設業者が決まっているのは8月上旬の段階で6カ国にとどまっている。多くの国・地域は設計・建設の相談もない状況だという。建築資材や人件費の高騰が背景にあるとされるが、日本国際博覧会協会(万博協会)の準備不足のほか、政府と大阪府・市、参加各国との調整不足があることも否定できない。
そうなる状況を懸念した大阪府知事で日本維新の会共同代表の吉村洋文が首相・岸田に支援を要請したのは、開催まで2年を切った5月29日のことだった。岸田は「万博を成功させるために大阪府知事、大阪市長とともに一緒に頑張りましょう」と吉村に伝えた。
準備が加速するとみられたが、自民党内には「維新はあれだけ自分たちが誘致したとアピールしていたのだから、遅れたのは維新の責任だ」と冷ややかな見方があり、パビリオン建設が加速することはなかった。
もっとも、東京五輪・パラリンピックに続き、経済再生の「起爆剤」になるとされた万博も延期になれば、日本経済に与えるダメージは大きい。「政府には万博相もいる。最終的には国の事業なのだから国が主導しなければ、いずれ首相に矛先が向くことになる」との見方が広がった。
そのため、経済産業省は8月2日、建設資材の高騰などに伴う代金未払いなどのリスクを軽減する「万博貿易保険」を新たに設けることを決めた。参加国のパビリオン建設を受注した国内の会社を対象に、代金が支払われない場合などは政府が補償する仕組みだ。
さらに、経産省は前事務次官で現顧問の多田明弘を万博担当にする異例の人事に踏み切った。準備加速に向け建設業界などとの調整役を担う。局長級の幹部を専従で博覧会協会のサポートにあたらせることも決めた。
しかし、今も与党内には「ドバイ万博も1年遅れたのだから、大阪・関西万博も遅れる理由を丁寧に説明すれば理解を得られるのではないか」との声がくすぶる。そうなれば日本維新の会も逆風は避けられない。
強気の姿勢が逆に・・・
強気の姿勢も「もろ刃の剣」となっている。
これまで日本維新の会は、野党と与党の中間に位置する「ゆ党」とか、「自民党別動隊」などと揶揄されてきた。だからこそ、国会議員の定数削減や調査研究広報滞在費(旧文通費)見直しなど自民党との違いをアピールしてきた。そうした中での馬場による「第2自民党」発言は、国民にとって自ら第2自民党だと認めてしまったように映る。
しかも、安倍・菅政権からハト派とされる岸田政権になり、不満をもつ自民党支持層を引き付けようと、より保守色を打ち出すために安全保障政策や憲法改正などを前面に掲げれば、自民党の基本政策と重なってしまう。ジレンマを抱えるだけに、今後の対応によっては勢いが失速する可能性がある。
それでも日本維新の会は強気だ。政権奪取に向けた「中期経営計画」に沿って、あくまでも単独政権を目指す構えを崩していない。
馬場は8月6日に放送されたラジオ番組で、自公連立政権に参加する可能性について「選挙を経て自公両党で政権を維持できない場合、いろいろな余地が出てくる」と語り、次期衆院選で自公両党が過半数割れしたときは連立入りも排除しない考えを示した。自公政権を揺さぶる狙いがあったとされる。
次期衆院選で野党第一党の座を獲得し、永田町で影響力、発言力を強めることができるのか。日本維新の会は社会保障改革と税制改革、成長戦略を一体的に取り組む政権構想を掲げているが、「第2自民党」にならないためにも党として骨太の国家観を語るべきときにきている。 
●なぜ国民は声を上げない? 株や不動産など“日本の資産”が暴落する未来 8/28
私は日本の将来に対して強い危惧を抱いている。それは恐怖と言っても良いものだ。今後、高齢化がさらに進展するため、社会保障財政がひっ迫し、日本経済の生産性は低下する。そして対外収支も悪化する。だが政治家は目先のばらまき政策にしか関心がない。それでもなぜ、国民は声を上げないのか。
世界初の「超高齢化社会」で何が起きるのか?
日本はこれから超高齢化社会に突入する。それは、世界のどの国も経験したことがないものだ。医療や介護の需要が激増することは、目に見えている。また、年金財政の悪化も避けられない。
支給開始年齢が引き上げられる事態も十分あり得る。そうなれば、老後資金の準備が十分でないために、生活保護を申請する高齢者世帯が急増するだろう。こうした事態の対処が急務であるにもかかわらず、何の手当ても準備もなされていない。
高齢者が多くなれば、労働人口は増えない。そのため、日本経済の生産性は現在よりもさらに低下する。
医療や介護分野での人手不足は、ますます深刻化する。外国人に頼ろうとしても、日本の国際的な地位が低下してしまうので、人材を集めることもできない。それだけではなく、日本の若い人々が、高賃金を求めて海外に流出する。
2022年以降の急激な円安の中で、こうした動きはすでに現実化している。そのため、要介護状態になってもケアを受けられない高齢者が続出するだろう。
こうした状況の中で、不満が鬱積して凶悪事件が多発し、治安が悪化する危険もある。その兆候はすでに現れているのかもしれない。
日本が賞賛された時代は“夢”だったのか…?
一方で、こうした状態に対処するための技術が開発されている。デジタル技術の進展によって、リモート医療が可能になった。世界では、コロナ下でリモート医療に向けての大きな進展があった。しかし日本では、医師会の反対によって進展していない。
新しい技術への日本の不適応さは、医療だけでなく、他の分野でも著しい。世界経済が大きく発展する中で、日本は古い産業構造から脱却できず、国際的な地位が低下している。
さまざまな国際ランキングで、日本の位置は最下位から数えた方が早くなってしまった。かつて、「ジャパンアズナンバーワン」と賞賛された時代があったことなど、夢のようだ。
そして、状況は悪化の一途を辿っている。5月22日と6月5日の本欄で触れたように、2000年の沖縄サミット時にG7の中で最も豊かな国だった日本は、2023年の広島サミットでは最も貧しい国になった。
日本衰退の原因:政治家
日本の衰退を加速させる原因は、経済政策の誤りだ。私はこうした問題をこれまで多くの機会に指摘してきた。しかし、いくら指摘しても十分ではない。政治家は次の選挙のことしか頭になく、人々の目先の歓心を買うための政策しか行わない。
「産業政策」と称するものは、特定企業への補助金だ。そして、対象となる産業は衰退産業だ。こうした補助金によって産業が復活するはずはない。実際、2000年代になってから、製造業、特に半導体や液晶関連企業の救済のための補助策が増えたが、これらの産業が衰退する流れは変わらなかった。
一方、年金、医療、介護などの制度改革についての議論は、ほとんど行われていない。税制の根本的な見直しについても、そうだ。岸田内閣は、少子化対策と称して効果の疑わしい給付金を増加させようとしている。しかも、それに対する財源を準備しているわけではない。
政治家が特定の集団との利益関係に影響されるのは、やむを得ないことだ。しかし、それだけであっては、単なる利権ブローカーになってしまう。
戦後の日本の政治は、特定の集団の利害に大きく影響されてきたものの、長期的な視野に立っての政策も忘れられなかった。この10年間程度の大きな問題は、そうしたことがほとんど考慮されなくなってしまったことだ。
日本衰退の原因:日銀
日本の金利は日本銀行の低金利政策によって、非常に低い水準に抑えられている。それによって円安が進み、国内の物価が上昇して、国民生活が圧迫されている。それにもかかわらず、日本銀行は円安を放置している。
長く続いた低金利政策の結果、日本企業は低金利でないと生き延びられない状態になってしまった。そして、生産性が低下し、国際競争力を失った。
日本の異常な低金利は、政府の資料の中では、今後修正されることになっている。財政収支試算や公的年金の財政検証では、名目長期金利が中長期的に3%程度まで上昇することが想定されている。
しかし、それは資料の中だけのことであって、実際の金利が正常化される見通しは、立っていない。したがって、日本経済が低金利と低生産性の状態から脱却していくとは考えにくい。企業は存続のために、政府に補助金を求めることしか考えないだろう。
円・株・不動産など資産価格が「暴落」する未来
日本企業の生産性が低下するため、日本の対外収支は悪化していく。その兆候は、すでに現れている。日本の貿易収支は恒常的な赤字になる可能性が高い。それだけでなく、経常収支も赤字化する危険がある。そうなれば、対外資産の取り崩しを余儀なくされる。
こうした事態が将来に予測されれば、それが現実にならなくても、金融市場は反応してしまう。経常収支が赤字化するのは10年先のことかもしれないが、それを予測して、いま金融市場でキャピタルフライト(資本逃避)が生じてもおかしくない。しかも、一旦始まったキャピタルフライトが加速してしまうこともある。
すると、金利が急上昇し、株価も不動産価格も暴落する。要するに、日本国内のすべての資産価格が暴落する。円の価値も暴落する。
そうなったとき、どうすればよいのか? 個々の家庭の場合、蓄えがなくなって生活資金が尽きれば、生活保護を申請することができる。国も生き延びるために、IMF(国際通貨基金)に緊急融資を求めることができる。
これは、1990年代末のアジア通貨危機の中で、韓国が実際に行ったことだ。しかし、経済規模が大きい日本に対しては、IMFといえども十分な措置をすることができるかどうか、わからない。では、日本はどうやって生き延びればよいのか?
日本は“沈没しそうな”豪華客船
今の日本はたとえてみれば、かつて世界の七つの海にきらびやかさを示した豪華客船のようなものだ。あらゆるものが世界最先端だった。しかし、その後の修理が十分でなかったために、さまざまなところで損傷が著しい。
浸水が始まり、このままでは沈没することが目に見えている。本格的な修理が必要だと誰もが思っているが、そのことを口にしない。そして、見かけだけを取り繕って浸水の状況を見えなくし、やりくりしている。
船長の頭にあるのは、豪華なダンスパーティーで船客を満足させることだ。そうすれば、船長の地位は安泰だ。誰もがおかしいと思いながら、この状態をどうすることもできない。
経済復活に何が必要か? 国民は議論し声を上げよ
最も問題なのは、国民がこうした状態に対して声を上げないことだ。忙しい日常生活に追われ、国の問題には目を向けられないのか? しかし、声を上げることが必要だ。これまで述べた問題は日本全体の問題であり、国民1人ひとりの生活に直接影響するからだ。
高齢化が進む中での生産性回復は困難ではあるが、不可能ではない。ただ、自然には解決しない。それには、経済政策の大転換が必要だ。
選挙は国民の声を示す基本的な方法だが、それ以外にも意見を示す方法はある。私たちは、現在の日本の状況に対する意見を述べ、議論する機会を作るべきだ。
声を上げるにしても、「私にも補助金を」というのでは、事態を悪化させるばかりだ。まずは、日本衰退の原因をはっきりと把握する必要がある。すでに述べたように、経済政策の誤りが基本的な原因だと私は考えている。しかし、そうではないという意見もあるだろう。こうした問題について、徹底的な議論を行うことが必要だ。
●ガソリン価格高騰で瀕死の国民にムチを打ち続ける鬼の岸田政権…  8/28
岸田文雄首相の“社会主義化”が止まらない。小泉純一郎政権からの新自由主義的政策が「持てる者と持たざる者の格差と分断を生んだ」と主張する岸田首相は、主要政策として「新しい資本主義」を唱え、成長よりも分配に重きを置く。だが、その実態は取れるところから奪った果実を国が配るもので、想定される増税プランや社会保険料アップなどを見れば、飛び出す杭を打って「全国一律の金太郎飴」を作ろうとしているだけのように映る。
経済アナリストの佐藤健太氏は「岸田首相は大都市から財源を収奪し、『金太郎飴』をつくるために再分配しようとしている。やっていることは『新しい資本主義』ではなく、『新しい社会主義』そのものだ」と厳しい評価を下す。
経済成長を重視しない岸田政権に対して橋下徹「社会主義になってしまうのではないかと危機感」
岸田政権発足から2年近くが経過した。岸田氏は2021年9月の自民党総裁選時から分配政策の重要性を唱え、首相就任後初めての記者会見となった10月4日には「私が目指すのは、新しい資本主義の実現です」と強調。「成長だけで果実がしっかりと分配されなければ消費や需要は盛り上がらず、次の成長も望めません。分配なくして次の成長はなしです」と訴えた。
経済成長を重視する小泉政権や安倍晋三政権と比べて、分配をより重視するのは政策の転換だ。金融所得課税の強化などを打ち出し、成長を軽視するかのような岸田氏の姿勢に安倍元首相は懐疑的だったとされ、岸田氏にも直接・間接で苦言を呈してきたという。
近年の選挙で躍進を続ける日本維新の会の“創業者”である橋下徹元大阪市長も2021年12月5日のフジテレビ系番組で、岸田政権のスタンスを「どうも政治・行政が金を分配する話ばかりで、社会主義になってしまうのではないかという危機感を持っている」と指摘したことがある。分配を前面に打ち出すことには経済界にも不安の声が上がってきた。
木原誠二「成長も分配も」は本当か?法人税、所得税増税が迫っている
これに対して、首相最側近の木原誠二官房副長官は「『成長も分配も』だ。我々は企業がしっかり分配できるように、まず国がやり、法人税の減税をしながら企業に促していく。成長、規制改革もしっかりやる」と反論している。
だが、政権発足後の歩みを見ればどうだろう。首相は昨年末に防衛費大幅増に伴う増税プランを決めているが、その財源を賄うために法人税、所得税、タバコ税の3つの税目で増税などの措置をとることを決定している。
首相は自らが旗を振る「官製春闘」で、大手企業の賃上げ率が3.91%と30年ぶりの高水準となったことを誇る。たしかに、東京商工リサーチの「賃上げに関するアンケート調査」(2023年度)を見ても、賃上げは企業の84.8%が実施(予定含む)するなど機運は高まっている。
ガソリン小売価格は13週連続上昇。さらにそこに退職金課税見直しで国民を追い込む岸田政権
だが、その一方で2022年から続く物価上昇は国民生活を追い込んでいる。レギュラーガソリン小売価格は13週連続で上昇し、全国平均で1リットルあたり181.90円と高騰している。それにもかかわらず、政府は6月から石油元売り会社に対する補助金を段階的に縮小、原油高と円安が追い打ちをかける。さらに汗水流して長年勤め上げたサラリーマンの退職金にも課税見直しの動きがあることなどを見れば、取れるところから奪って国が全てを決めると言っているようにも映る。
そもそも資本主義国が「官製」の賃上げを実施しているのには違和感がある。「格差是正」と言えば聞こえが良いかもしれないが、機会の平等を整えるのではなく、結果の平等に重きを置いて国が追求していけば、それは社会主義でしかない。
驚かされるのは、海外には100億円、1000億円単位の資金拠出をスピード決定し、過去最高の税収を確保する一方で、その“果実”を減税策などで国民に還元するわけでもなく、「財源がない」という姿勢が目立つことだ。
岸田政権の社会主義化は総務省の動きからも見えてくる
8月12日付の毎日新聞朝刊1面トップには「分権は『出来レース』 総務省、OB使い『裏工作』」という記事が掲載された。中身を読むと、東京都などの大都市の税収を国が収奪し、他の自治体に再配分する「偏在是正」措置を強化するため、全国知事会が7月7日に開催する地方税財政常任委員会で議題にするよう総務省幹部が提言案を作成していたという。しかも、国と地方が「対等・協力関係」にある中、総務省が裏で「箸の上げ下げ」をしていると思われることを嫌い、総務省側は一部の県幹部に「知事会がやりたいテイで」と裏工作していた、と掲載されている。
同じような記事は「デイリー新潮」が7月14日に配信し、「AERAdot.」も8月19日に「全国知事会は総務省の『シナリオ通り』に」という記事を出している。もし、これらの報道が事実ならば岸田政権の“社会主義化”を象徴するようなものだろう。
2008年10月に創設された偏在是正措置は、大都市の法人事業税と法人住民税の一部を国が奪い、自治体間の税収格差をならすために再配分する仕組みだ。ただ、近年は全体の財政状況が改善し、格差そのものが縮小しているとされ、偏在是正措置を行う必要はなくなったとの指摘も根強い。
石原慎太郎「国は地方分権の流れに逆行したことをしている」
本来ならば、困窮する自治体側が「格差是正を」と求めるのだろうが、そうした声が上がらなかったことに偏在是正措置を実施したい総務省が困惑し、裏工作をしていたのならば茶番でしかない。ちなみに、過去に見られた偏在是正措置を振り返ると、当時の石原慎太郎都知事は国主導のシナリオをこのように糾弾していた。
2007年12月7日の記者会見で、石原都知事(当時)は「国は、自分自身は行財政改革を満足にも進めていませんな。そういう責任というものを履行せずに、それを棚に上げてね、相変わらず地方間の財政調整によって地方に責任を押しつけようとしている」と痛烈に批判している。その上で「東京都は、法人2税の見直しが地方税の原則に反する。地方自治体の税源涵養努力を無にするという、地方分権に逆行する極めて乱暴な、愚かしいものだということを主張してきた。東京は昼間(流入)人口が一番多いときは370万人。単一の地方自治体の中で一番人口の多い横浜市の人口に匹敵する訳ですよ。そういう人たちが東京にやってきて、そのためのライフライン、水や電気あるいはアクセスや治安も含めて、それを都の行政として賄っている訳だから。そういった非常に特異な東京の実情を全く斟酌せずに、東京は税収の量が一番多いから何とかしろというのは、とにかく言語道断」と説明した。
何もしない自治体であっても財源が「天」から降ってくることになる
そして「国の権限で一方的にこういうことを地方に押しつけて、何でもまかり通るというのはどういうことなのかね。国の権限でやるんだから黙ってついてこいということじゃないでしょう」と厳しく批判し、「地方自治の死を招きかねない」「子供の財布に親が手を突っ込むみたいな。親はもうちょっと働けという話だ」と語気を強めている。
こうした石原氏の主張は、今の岸田首相にも聞いてもらいたいものだ。自治体間の財源の偏在を調整するための地方交付税は何なのか。財源が足りないという国は行政改革や財政改革をどのようにやってきたのか。地方創生と言いながら、自治体はどれだけ創意工夫をしてきたのか。「子供の財布に親が手を突っ込む」状態が続いていれば、何もしない自治体であっても財源が「天」から降ってくることになり、分権改革なんて進むことはないだろう。
そもそも偏在是正措置の「目標」はどこにあるのかが分からない。全ての自治体が税財源を均一にすれば納得するのか。そんなことをすれば努力をしたところが損をする仕組みになる。「一緒に手を繋いでゴールしよう」というシステムは、日本国内だけで成立するものであり、世界の都市間競争から遅れをとるのは自明だ。
結局新しい資本主義は社会主義じゃないのか
謎なのは、東京選出の国会議員たちは何をしているのかという点である。自民党の宮沢洋一税調会長は与党が税制を決めるものだと繰り返しているが、毎日新聞などの報道を見れば総務官僚が全国知事会に関与している疑いがある。仮に事実であれば、選挙で民意を経ていない官僚が知事を中央からコントロールしていることになる。明らかに官僚としての「則」を超えている行為と言えるだろう。
自民党の萩生田光一政調会長は同党都連会長で、公明党の山口那津男代表も東京選挙区だ。行財政改革の重要性を掲げる維新の音喜多駿政調会長も東京選出である。臨時国会においては、名が上がる総務省幹部に事実関係を確認すべきだろう。
2021年10月の就任会見で岸田首相は「一人一人の国民の皆さんの声に寄り添い、そして多様な声を真摯に受け止め、形にする。こうした信頼と共感が得られる政治が必要です」と語った。首相は自らの内閣を「新時代を共に創る、共創内閣」とうたっていたが、そこに「競争」はない。目立つのは「結果の平等」という社会主義的なものばかりだ。地方の偏在是正措置は、いまだ見えない「新しい資本主義」が実態としては社会主義であることを感じさせるには十分と言える。
●経済アナリスト・森永氏が岸田政権を斬る!「日本は借金国家ではない!」 8/28
「今後の増税予定を知って、怒りを通り越して愕然としました。税金を多く払ったのに、庶民の暮らしは、さらに悪くなるんですね」(会社員=40代)
たとえば10月から始まるインボイス制度。これは請求書の書式に新しいルールを導入するものだが、売り上げが1000万円以下の小規模業者を倒産の危機に追いやる制度だと、現時点ですでに予想されている。
さらに同月には、酒税法も改正される。ビールの価格は下がるものの、発泡酒と新ジャンルの税金はアップするという。
「そもそもビールなんて、税率が下がっても手が届きません。今、飲んでる新ジャンルも2日に1回になりそうです」(自営業・50代)
現在検討中の増税を含めて、ゴーサインが出されたら、まさにお先真っ暗なのだ。
そんな中、獨協大学経済学部教授で、経済アナリストの森永卓郎氏が出した著書『ザイム真理教』がベストセラーとなっている。
「書名はSNSで話題となった言葉で、オウム真理教をもじったものです。ザイム=財務省がうたう緊縮財政、増税推進は、カルトの教義と同じくデタラメ。増税しなくても、日本経済は大丈夫だという、我ら庶民にとっては、溜飲が下がる内容です」(経済誌記者)
同書のデータを基に作成した、左の表『昭和と令和家計の比較』を見てほしい。消費税導入前の1988年より、2021年の「手取り額」は、384万円から366万円へと18万円も減っているのだ。しかも、物価上昇分は含まれていないという。財務省の言いなりに増税した結果、我々の暮らしは確実に苦しくなっているといえる。
実は日本は借金国家ではない
「財務省が金科玉条のごとく信奉する“均衡財政主義”という教義は、ざっくり言えば、国債などに頼らず、税金だけで予算をやりくりすることです。財務省は文字通り、国債を“国の借金”と捉えている。国債が増えれば、財政破綻を招き、ハイパーインフレや国債・為替の暴落が起きるというのが、彼らのよく使う脅し文句なんです」(前同)
詳細は、『ザイム真理教』を読んでもらうとして、簡単に言うと、現在、日本の債務残高(対GDP比・2022年)は米国の2倍以上とされる。国債の借金額だけだと987兆円、すべての借金の合計は1661兆円(20年度末の財務省資料)。国民一人あたりに直すと、1329万円強だ。
一方、日本の保有資産は1121兆円もあり、差し引くと、実際の国民一人当たりの借金は432万円ほど。財務省のうたう他の先進国に比べて、飛び抜けた借金国家ではないと、同書は指摘している。
国の借金など恐るるに足らず。著者の森永氏は『週刊大衆』の取材に、こう答える。
「20年度に、日本は年間80l兆円の基礎的財政収支の赤字を出しましたが、為替の暴落も、国債の暴落も、ハイパーインフレも起きませんでした。私は、年間100兆円程度の財政赤字を永久に出し続けても、大丈夫と考えています」
経済評論家の杉村富生氏が補足する。
「そもそも、自国通貨建ての借金で破綻した通貨発行権を持つ国などないんです」
一般の家庭や企業と、国家は分けて考えるべきなのだ。
●日米韓首脳会談で「海洋放出」を決めて中国に反発される岸田外交の稚拙〜 8/28
福島第一原発「ALPS処理水」の海洋放出について、政府や大手マスコミがいかに非科学的態度であるかは前回記事『海洋放出の是非を見極めるポイントは「処理水か、汚染水か」「濃度か、総量か」〜非科学的な大本営発表を慣れ流すマスコミ報道にウンザリ』で解説したが、今回はそれに続いて、岸田政権の政策のチグハグさを指摘したい。
岸田政権は海洋放出後、中国と香港が日本のからの水産物の全面禁輸に踏み切ったことに猛反発している。昨年の水産物の輸出総額は3873億円で、輸出先の1位は中国、2位が香港、3位が米国。中国と香港をあわせた輸出額は1626億円にのぼり、水産物輸出総額の42%を占める。日本の水産物業界にとって大打撃だ。
岸田首相は中国の禁輸措置に心外な様子をみせているが、外交ルートを通じて海洋放出に踏み切れば禁輸などの強行措置で対抗されることは十分に承知していたはずである(その感触さえつかんでいなかったとしたら外務省の大失態である)。
しかも岸田首相は解放放出決定に先駆けて米国を訪問して日韓首脳会談に臨み、米韓首脳には海洋放出について理解を得ていた。この背景には、米国主導で日米韓の連携を強化して「中露包囲網」を強化するバイデン政権の思惑が見えていた。
米中の覇権争いが強化するなかで、あえて日米韓首脳会談で「海洋放出」への理解を得る政治的パフォーマンスをした以上、中国が反発して対抗措置に踏み切ることは当然予想されたことである。
つまり、岸田政権は中国の全面禁輸措置による日本の水産業への大打撃を覚悟したうえで、海洋放出に踏み切ったとみていい。今さら意外感を見せて抗議するのは政治的パフォーマンスとしかいいようがない。
さらにチグハグなのは、岸田政権がコロナ後の「インバウンド復活」を日本経済再生の切り札に掲げながら、国際社会が批判する海洋放出に踏み切ったことだ。
コロナ前は中国人旅行客の「爆買い」を中心としたインバウンドが日本経済を下支えしていた。コロナ禍で観光業界が大打撃を受けると、政府は「GOTOトラベル」や「全国旅行支援」に莫大な税金を投じて観光業界を全面的に支援。コロナ後は円安が加速して国民生活がエナルギーや穀物の物価高で困窮するなか、円安によるインバウンドによる経済刺激策に重点をおいてきた。
今月には中国旅行客の団体旅行が解禁され、外国人旅行客はコロナ前に迫る勢いで回復しつつある。観光業界は円安の追い風も受けて大盛況だ(ガソリン高騰で苦しむ国民生活と対照的である)。
そこへ海外の「日本熱」を冷やす「海洋放出」である。一方で中国人旅行客をはじめ海外から人を呼び込むインバウンド支援に巨額の税金を注ぎ込みながら、一方で日本渡航への「不安」をかき立てインバウンド効果を帳消しにしかねない「海外放流」に踏み切る。実にチグハグな政策実行としかいいようがない。
なぜこのようなことが起きるのか。岸田政権の政策執行が縦割りだからである。
インバウンド支援を進めるのは国土交通省(観光庁)や観光族議員(二階俊博元幹事長ら)である。一方で、海洋放出を進めるのは経済産業省や東京電力である。それぞれが自分の足元の利益しか考えず、自分たちの都合で政策を進めているから、インバウンド支援と海外放流が同時進行で進むのだ。
裏を返せば、岸田官邸が政権運営の旗印を明確に掲げて政策全般を調整することなく、各省庁から上がってくる政策テーマをそのまま受け入れてばかりいることを映し出しているといえるだろう。
内政・外交全般を仕切ってきた木原誠二官房副長官が文春の疑惑報道で立ち往生し、内閣支持率も急落して岸田首相の求心力が落ちるなか、岸田官邸の機能不全はますます深刻になっていく可能性がある。その先行きを示唆するかのような海洋放出劇である。 

 

●「支持率なんかあてにならない。皆さんの目で」自民・麻生太郎副総裁 8/27
この岸田政権になってから取り巻く国際情勢は、台湾海峡もきな臭くなってきた。「台湾は必ず中国領土である。そういうものにする」と堂々と表明している人がとなりの中国大陸にいるわけですから、そういった状況に合わせて日本の国防費は大きなものにしていかざるをえない。
予算もいままでとは全く状況が違いますので、倍増させていただきます。国内総生産比で言えば、従来三木武夫内閣では1%だったものを、2%にしますという法案を我々は通しました。
安倍晋三が夢にまで見ていた法案を、岸田(文雄)は1年半で成し遂げていますよ。財源を獲得するための法案を今年の6月、無事通させていただいております。
原発再稼働なくして、太陽光だ風力だけで電力は賄えませんよということで、原子力発電というものを当分の間使えるようにという話も、岸田内閣で通りました。
法案として数々の難しいものを通していながら、支持率は上がらねえ。政策はきちんとやったにもかかわらず、支持率は上がらない。っていうことはあまり支持率なんかあてにならないってことですよ。
なんとなく世論調査なんて名前がついているんでえらい立派なものに見えるけど、実際は何を誰がどうしてきているかという点だけはこういった機会に見直してみて、みなさんの目で見ていただければ、というのが率直な願いです。(徳島市内の会合で)
●理不尽な水産物全面禁輸に「ポーズ」ばかりの岸田政権 8/27
東京電力福島第1原子力発電所の処理水海洋放出への対抗措置として、中国政府は8月24日、科学的根拠を示さないまま、日本産水産物の全面輸入停止措置を決めた。
同日夜、岸田文雄首相は、「外交ルートで、中国側に対して即時撤廃を求める申し入れをおこなった」と明らかにした。
中国への水産物の輸出は2022年、国・地域別1位の871億円で、全体の約22%を占める。措置が続けば、国内水産業への打撃は避けられない。
8月25日、松野博一官房長官は、記者会見で、風評被害などに備えて準備した300億円の基金も活用して、中国以外の販路開拓を支援する考えを示した。
だが、日本の放出計画は国際原子力機関(IAEA)も「国際的な安全基準に合致する」と評価しているもの。そしてそもそも、中国の原発施設は、福島第1原発の最大6.5倍ものトリチウムを放出している。
国民民主党の玉木雄一郎代表は8月26日、自身のX(旧Twitter)にこう書きこんだ。
《英仏とも、処理水放出計画が安全でかつ国際原子力安全基準と合致していることを示す国際原子力機関(IAEA)の報告書を歓迎する旨発表している。中国の全面禁輸の対応はこうした国際社会の主張とは全く異なる科学的根拠を欠くものであり、政府はWTOに提訴するなど毅然とした対応を取るべきだ》
福島市の木幡浩市長は同日、市役所などに中国語での迷惑電話が相次いでいると自身のFacebookに書き込んだ。
《市役所では、確認できているものだけで、2日間で約200件。小中学校にもかなり来ているようです。飲食店やホテル・旅館も多く、多いところは1事業所だけで100件以上も。多くは+86(中国)発信で、中国語。我が身の所業をわきまえぬ困った国です。福島は、原発事故の被害に加え、事後処理の負担も負わされている立場。政府には、この状況を早々に伝え、対応を求めます。》
理不尽な日本産水産物の全面輸入停止と、相次ぐ中国語での迷惑電話。一方で、即時撤廃を申し入れる岸田政権の生ぬるい対応に、SNSでは、WTOへの提訴を求める怒りの声が広がっている。
《放出容認が世界の趨勢であり、科学的にも何ら問題がないのであれば、禁輸措置を取った中国をWTOに提訴すべき。中国が自主的に折れることは当面考えられないのに「抗議」と言っているだけなら、ガス抜きのための国内向けポーズと言わざるを得ない》《中国が日本の海産物を全面禁輸したみたいだけど、こんなの科学的根拠ないし、日本がWTOに提訴したら中国大恥かくんじゃないの?》《中国がここまで、とは思わなかった。もう呆れるしかない。粛々とWTOに提訴した上で、中国リスクについて考え直すしか無い。孤立してるのは中国なので、ここで引いてはいけない》
岸田首相は中国に対して、WTOへの提訴という断固とした措置を取ることができるだろうか。 
●迷惑電話で中国側に遺憾伝達 外務省局長「憂慮している」 8/27
外務省の鯰博行アジア大洋州局長は26日、在日中国大使館の楊宇次席公使に対し、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を巡り、中国からとみられる電話や嫌がらせが多数発生しているとして「極めて遺憾で憂慮している」と伝えた。
迷惑電話を巡っては、東京都江戸川区の区総合文化センターに中国の国番号「86」で始まる番号からの着信が相次いだ。日本政府関係者によると、日本の医療機関や飲食店にも電話があった。中国の動画投稿アプリでは日本へ抗議の電話をするよう呼びかけられている。
日本大使館は短文投稿サイト、微博(ウェイボ)の公式アカウントで、商業施設への迷惑電話は経済損失を招く可能性があり、医療機関であれば人命に関わると指摘。こうした電話は「犯罪行為だ」と批判した。
日本大使館近くの日本料理店では従業員が「店への嫌がらせがあるのではないか」と不安を漏らした。広東省広州市の日本総領事館が入る施設では24日から警察官が警戒に当たるようになった。
●処理水放出に時間がかかった背景にマスコミの影響 8/27
東電福島第1原発の処理水について、24日に海洋放出が始まった。放出開始までに時間がかかった背景はなにか。風評被害をなくすためには何が必要なのか。
この問題を考える上で、「安全」と「安心」が重要だ。「安全」とは客観性に基づくもので、根拠は科学に依存することが多く、その反対概念は「危険」である。「安心」とは、主観に基づくもので、人によってさまざまだが、その反対概念は「不安」である。
先に達成すべきは安全であり、その後、安心が形成されていく。行政でできるのは安全までで、安心には時間と説得が必要なので、マスコミの影響が大きい。安全であるにもかかわらず、不安があるときに風評被害が起こる。
これで思い出すのが、豊洲市場への移転をめぐる小池百合子都知事のかつての発言だ。「安全基準」と飲用にできる「環境基準」を混同し、合理的でない安全基準以上の無理難題を求めつつ、安心という感覚に行政が依存し、時間を浪費した。
今回、行政はそこまでぬかっていなかった。処理水についてはかなり早い段階で科学的な安全性が確保されているという説明がなされ、国際原子力機関(IAEA)の最終確認も取られた。安全性の確認も慎重な手順で行われ、処理水放出はあえて急がず、処理タンクが満杯になるギリギリまで時間を使ったのだろう。
安心に対する調査も継続的に行われている。消費者庁による「風評に関する消費者意識の実態調査」では、福島産品の購入を放射性物質を理由にためらう人の割合が2013年2月の第1回調査で19・4%だった。その後、ほぼ一貫して低下し続けて、今年1月の第16回調査では過去最少の5・8%まで低下している。ただし、この結果について、メディアではほとんど報道されていなかった。
また、福島県は今でも食品の放射性物質検査を行っており、検査結果も公表されている。その結果をみても福島産について安全性の問題はないが、これもあまり報道されない。
一方、中国が日本からの水産物の輸入について不合理な規制強化を行うと大々的に報道する。安心につながる報道はなされないが、不安になるような報道がなされるというメディアの非対称によって、安全であるが不安がなかなか解消されないという状況になっている。
ここでの出番は政治だ。和田正宗参院議員が発言しているが、政治家が処理水を飲んで安心をアピールするというパフォーマンスがある。この方法は、中国が政治的に難癖をつけているのでその撃退にもなるという一石二鳥の策だ。
2011年当時にも内閣府政務官が処理水を飲んだことがあるが、いまも健在だ。今回は外相が飲むと同時に、中国の外相にも自分のところで放出している処理水を飲めといえばいい。中国の外相が四の五の言って飲まなければ政治的に負け、飲んでも日本の主張を認めたことになるので、いずれにしても日本にとって不都合ではない。
●原発処理水放出 「漁業関係者、周辺諸国に根回しなし… 政治家の仕事は」 8/27
「青汁王子」こと実業家・三崎優太氏(34)が27日までに自身のSNSを更新を更新。東京電力福島第1原発処理水の海洋放出開始について言及した。
中国の国家市場監督管理総局は25日、処理水の海洋放出開始を受け、食品業界の経営者に対し、日本の水産物の加工や調理、販売を禁じると発表した。食の安全を確保するためと主張している。中国税関総署が24日に日本産水産物の輸入を全面的に停止したのに続き、日本産水産物を徹底的に排除する措置を打ち出した。
一方、世界保健機関(WHO)報道官は25日、「処理水放出についての日本の規制基準は、国際的な放射線の安全基準に基づいている」と述べ、日本の対応に問題はないとの見解を示した。
三崎氏は「国内の漁業関係者への根回しもなければ、周辺諸国への根回しもなし。政治家の大切な仕事って調整だよね。処理水の海洋放出が必要なのは理解できるけど、誰も納得してないのに強行ってどうなの?」と私見をつづった。 

 

●中国水産物禁輸「まったく想定していなかった」野村農相の発言に集まる驚き 8/26
8月25日、野村哲郎農相は閣議後記者会見で、中国が日本産水産物を全面的に輸入停止すると表明したことについて、「たいへん驚いた。まったく想定していなかった」と述べた。「日本からの食品輸入規制を緩和・撤廃する国際的な動きに逆行するもので、極めて遺憾だ」と述べ、即時撤廃を申し入れたことを明らかにした。
中国政府はこれまで、東京や福島を含む10都県産の食品を輸入停止(新潟県産の精米は除く)していたため、「10都県は対象になるのかなと思っていた。どのぐらい拡大していくかは、まったく想定していなかった。われわれも一昨日の中国の発表で驚いているところだ」と述べた。
中国への水産物の輸出は2022年、国・地域別1位の871億円で、全体の約22%を占める。品目別では、ホタテ貝が467億円、なまこ(調製)が79億円、かつお・まぐろ類が40億円となっている。
野村氏は、日本政府が農林水産物・食品の2030年の年間輸出額5兆円達成を目指していることについては「全体の輸出が減少することは、間違いなく避けられない」と述べた。
また、対策として、「海外でのプロモーションや商談会の開催、新たな輸出先の開拓等」をあげ、「中国が輸入を禁止した分を、どこに振り向けていくのか政府全体でも検討していく」と述べた。
タレントのフィフィは8月25日、自身のX(旧Twitter)にこう書きこんだ。
《お花畑ですよね。中国は今や日本の敵国のスタンスです。日本が半導体の輸出規制もしている中でこうした嫌がらせをされる事も想定できないんですかね。台湾有事への危機が高まればもっと増えますよ。だから中国依存型経済からの脱却なんです!》
ジャーナリストの江川紹子氏も同日、自身のXにこう書きこんだ。
《ということは、何の準備もしてないのでしょう。こういうことを、記者会見であっけらかんと公言しちゃうのにも驚きです》
野村氏はラ・サール高校を卒業後、JA鹿児島県中央会で35年間務めたのち、参院議員に。自民党の農林部会長、農林水産政務官などを歴任した農水族議員だ。2022年8月の内閣改造で、78歳にして初入閣を果たした。
4月には、岸田文雄首相が花粉症対策の関係閣僚会議を開く考えを示したことについて、「農水省としてはまったく『知らぬ存ぜぬ』でびっくりした。総理がおっしゃった以上はやらなきゃいけない」と述べたこともある。
だが、中国が日本産水産物を全面的に輸入停止するのを「まったく想定していなかった」と発言されてはたまらない。
SNSでは、野村氏の発言に対し、批判的な声が多く上がっている。
《こうした発言そのものが安全保障上のリスクなんですが》《おいおい想定範囲内では無いのか。こうしたリスクは事前に洗い出しをしておいて対応策を準備しておくもの。昨日から与野党政治家の発言を見聞きしていると、あまりに危機管理レベルの低さに失望するばかり》《この程度の予想も出来ないような人間を、大臣のポストに置かざるを得ないほど、岸田内閣は人材不足だということ》《岸田文雄が任命した岸田内閣閣僚も、どいつもこいつもホントに無能で無神経で無責任だな…》
871億円にのぼる水産物の輸出先を、日本は見つけることができるだろうか。
●原発処理水 放出開始 言掛かりつけ中国が欲しいのは日本の「政治的譲歩」 8/26
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が8月25日、ニッポン放送に出演。福島第一原発の処理水放出について解説した。
原発の処理水、8月24日から海への放出を開始
福島第一原子力発電所にたまる処理水について、東京電力は政府の方針に基づき、基準を下回る濃度に薄めた上で、8月24日午後1時ごろに放出を始めた。放出完了には30年程度という長期間が見込まれる。
飯田)初回は17日間で7800トンあまりが放出されます。
宮家)コロナ禍の前に福島第一原発を見学する機会がありましたが、当時も既にタンクがたくさんあって、「そろそろ限界なのです」という話を伺いました。しかし、話を伺えば伺うほど、トリチウムは基本的に自然界にもあるものですから、取り除けないのは仕方ないことなのです。
処理水放出はいつかはやらなければならないこと 〜政治家が政治判断で行う
宮家)ALPS処理水は、いずれ出さなければいけない。科学的根拠もあるし、各国みんなやっていることですから、科学的に反対できる人はいないと思います。
飯田)そうですね。
宮家)もちろん心配する人もいますし、風評被害が出るのは大変なことです。いくら「放水はどうですか?」と聞かれても、賛成できる人は少ないでしょう。特に漁業関係の方は心配ですからね。
飯田)風評被害が出た場合は。
宮家)いつかはやらなければいけないけれど、政治家が政治判断で行う必要がある。そして菅総理(当時)が決断され、岸田総理の時代にその時期がきたということです。
態度を変え、理解を示す韓国
宮家)言い方が難しいのですが、私はこの処理水を飲めばいいのではないかと思っています。実際に「飲ませて欲しい」と頼んだのだけれど、いろいろな不純物があるからダメだと言われました。
飯田)不純物があるから。
宮家)問題は「トリチウムがいかに安全か」ということですから、「不純物を取り除き、トリチウムを含んだものを飲ませてください」と言ったのですが、これも難しくて未だに飲めていません。でも、私は飲んでも平気だと思っています。
飯田)自然界にあるものだから。
宮家)韓国ですら態度を変えたのですよ。尹大統領は定期的なモニタリングを行うべしと言っていますが、我々もそう思っているわけです。日本の方がはるかに影響は大きいわけですから。
政治的譲歩が欲しいため日本に言い掛かりをつける中国 〜モニタリングをして常にトリチウム濃度を公表するべき
宮家)しかし、そこで中国が言い掛かりをつけてくる。科学的に見れば、中国の原発から出ている処理水の方がトリチウム濃度は高いぐらいです。「それにも関わらず、なぜ中国は科学的根拠もなく、あのような言い掛かりをつけてくるのか」と誰かに聞かれました。
飯田)なぜ中国はあのようなことを言うのか。
宮家)日本もそうですけれど、日中関係は現在のままでいいわけがないので、対話しなければいけない。しかし、彼らは前提条件なしに対話する気はないわけです。いまは日米韓がタッグを組んでいるので、中国は日本にもう少し譲歩させたい。政治的譲歩が欲しいから言い掛かりをつけ、「日本が降りるのだったら少し黙っていてやろうか」と言っているのです。
飯田)政治的譲歩が欲しいために。
宮家)そういう状況にまでなってきている。しかし、こんなことをやっていたら逆効果になりますよ。
飯田)逆効果に。
宮家)中国の人から輸入禁止にするを言われたので、私は「よく考えてごらん。そんなことをやれば、日本はますますアメリカや韓国と一緒になるから逆効果だよ」と話しました。
飯田)中国人の方に。
宮家)そう言ったら黙っていましたけれど、黙っても、禁輸はやめられないでしょう。墓穴を掘ることをわかった上で中国は文句を言ってくる。科学的根拠に基づき、IAEAが「安全だ」と言っているわけです。我々も漁業関係者の方々が言うように、とにかく透明性を持って、しっかりとモニタリングを行い、常に濃度を公表していく。それに尽きると思います。
中国が日本産水産物の全面禁輸を発表 〜これが日中関係にとっていいことなのか
飯田)中国政府は日本産水産物を全面禁輸すると発表しました。それに対して、岸田総理は即時撤廃を求めています。漁家の方々にとっては大変なことですよね。
宮家)正当な抗議であれば私も「なるほど」と考えますけれど、中国の批判は言い掛かりに近いものです。処理水の問題を過度に政治化することが、本当に日中関係にとっていいことなのか、彼らには考えてもらいたいですね。
中国の狙いは日米韓を分断すること
飯田)水産物を主要な産業にしている自治体はたくさんあります。「X」(旧ツイッター)などでも「いまこそ、ふるさと納税で日本が(福島を)支えましょう」と書かれています。
宮家)中国が政治的な動きとして何を狙っているかと言うと、日本国内に言い掛かりをつけ、日米韓を分断しようとしているのです。そうならないためにも、我々が自分たちで支えられる部分は支える必要があると思います。
飯田)かつて台湾がパイナップルを禁輸されて困ったときは、日本や世界が支えました。
宮家)泣き寝入りはいけません。理不尽なことを言ってくる人がいたら、戦えるときは戦わないといけないのです。
●小池都知事も「グッドです」相次ぐ政治家の「福島産魚PR」に殺到する疑問 8/26
8月24日に福島第1原発の処理水の海洋放出が始まったことを受け、東京都の小池百合子知事は8月25日、都庁の食堂で職員との昼食会に参加。福島県産の魚などを使った定食を食べる様子を報道陣に公開した。
この日のメニューは、福島県産のスズキや宮城県産のカツオ、ヒラメなどの刺し身、三陸産イワシのフライなど。刺し身を口にした小池知事は、「グッドです。フレッシュです。みなさんもぜひ召し上がってください」と話し、笑顔を見せた。
東日本大震災で被災した岩手や宮城、福島の魚介類や農産物の消費喚起に向けた取り組みの一環。水産物は、福島第1原発の処理水が海洋放出される前の、24日午前までに水揚げされたものだという。
小池氏は食事後の記者会見で、中国が日本の水産品輸入を全面禁止したことを聞かれ、「国のほうでしっかり対応してもらいたい」と述べる一方、「農水産物の大消費地の東京で復興を、あと押ししていきたい。福島県産の食材を食べて、復興支援に協力してほしい」と呼びかけた。
8月23日には、西村康稔経済産業相が、都内で開催されている魚や水産加工品の国際見本市に出席。福島産のサンマを使った干物や東北の魚介類で作った海鮮丼などを試食し、「最高ですよ、これはもう本当に。きょう、お昼も夜もいらないですね」と感想を語ったが、処理水放出前のパフォーマンスに「茶番」などの批判があがっていた。
福島第1原発の処理水放出をめぐっては、ニュースキャスターの辛坊治郎氏が、「私が原発担当相なら、処理水を全世界のメディアの前で飲む」と語るなど、政治家の発信力不足を嘆く声も多い。
小池氏の言動にも、SNSでは批判的な声が多く上がっている。
《この人も無意味な事やってるよ 汚染されてても味は変わらんよ そもそも昨日の今日なら放出前の魚だろ 本当に食べてPRしたかったら数十年食べ続けるしかないよ》《政治家が福島産水産物を食べるパフォーマンスが流行りだが、なんの意味があるんだ なんで放出処理水を飲まないのか》《放出口周辺で採れた魚食わんと意味ないやろ》《こういう“やってみせ”、何度見てきたことか》
8月24日、中国は日本産の水産物輸入全面停止という対抗措置に踏み切った。魚を食べるよりも、処理水を飲む様子を中国に示す政治家は、日本に出てこないのだろうか。
●習政権が隠蔽する「金融時限爆弾」 爆発すれば世界的ショックへ… 8/26
中国で「金融危機」が拡大しつつある。不動産バブル崩壊加速に伴い、中国最大級の投資ファンドと傘下企業が売り出した「信託商品」の支払いが滞っているとして、投資家たちがSNSで情報発信し、各地で抗議活動を行っているのだ。「中国版リーマン・ショック」に拡大する可能性が指摘される今回の金融危機について取材を続けてきた産経新聞特別記者の田村秀男氏は、危機についての情報隠しを図る習近平政権とSNSでの発信を続ける投資家との「闘い」をリポート。今後、日本経済にも甚大な影響を与える恐れがあるとして、厳重警戒を呼び掛ける。
チクタクと進む時限爆弾と格闘する主人公が爆発寸前に止めるというのは、ハリウッドのサスペンス・アクション映画の定番である。だが、中国となると全く違った展開になる。強権の習政権は「時限爆弾」の情報をひたすら隠蔽し、あたかもその事実はないかのようにメディアに強いる。
そう、中国のノンバンク(非銀行)大手の「中植企業集団」とその傘下の「中融国際信託」による支払い停止問題に対する習政権の対応がまさにそれである。本欄はこの金融危機勃発以来、連続で詳報してきたが、今回は習政権の情報隠しに焦点を合わせてみる。
現地のSNSなどの情報によると、中植・中融の信託商品の元本総額は日本円換算で約20兆円に上るが、満期が到来しても元利や配当の支払いが7月から途絶えた。中植・中融からは「払えない」としか返答がないという。こうした状況にもかかわらず、中国共産党と政府が統制する中国国内のテレビや新聞は1行も報じなかった。
抗議の投資家に公安警察が脅し
8月11日になって、中融の信託に投資していた中国の上場企業3社が規定に従って情報開示したことから、問題の一部が露見した。それでも、習政権下の国家金融監督管理総局は何のアクションもとらないし、主要メディアが記事にすることもない。
15万人に上るという投資家たちはそこで、スマホのチャットアプリ「微信」(ウイーチャット)上で上海、北京など各地ごとにグループを結成し、抗議運動を始めた。
各地の投資家たちは8月15日、中融国際信託が翌16日に事情説明すると聞き、微信で北京集結を決めた。すると、15日深夜から翌日早朝にかけ、地元公安警察の幹部が首謀者格の投資家の自宅を突然、訪問した。「あなたの身のためには北京には行かないほうがよい」。椅子に座った幹部は、組んだ片方の脚を揺すりながら投資家にこう勧めた。この光景は隠し撮りされ、微信に流れた。
人工知能(AI)を使った習政権のネット監視技術は、微信で発信する投資家の身元をただちに把握し、警察権力を使って脅迫するといわれる。なりふり構わぬ恐怖政治だ。それでもめげずに、一部の投資家は16日、北京の中融ビル前に集結した。
中融の社員たちは「警察」と書かれたメガホンを使って解散を呼びかける。社員の背後には、警察官たちの姿があった。これ以来、同じような抗議は上海、西安など各地で連日行われたが、中植・中融、政府とも無視するばかりだ。中融の北京ビルは周りをブロック柵で閉鎖した。
だが、いくら隠しても時限爆弾は時を刻んでいる。
グラフは、不動産投資の資金源の推移である。信託などノンバンク系が関与する「融資」「自己調達」は激減している。不安に駆られた預金者や投資家は資金の回収を急ぐ一方で、香港に押しかけて銀行で口座を開設するため行列をなしていると現地メディアが伝えている。香港では人民元を香港ドルや米ドルに換えられるからだ。
人民元も株も売り一色だ。中国の国内金融の規模は米国を凌駕(りょうが)している。情報不足のなかで中国金融爆発が及ぼす世界へのショックは計り知れない。日本の投資家にとって「対岸の火事」どころではないだろう。見えにくい中国の動きを注意深くウオッチする必要がある。 

 

●「国民を馬鹿にする政治家」松川るいに大阪・枚方自民がブチぎれた! 8/25
フランスの議員研修中にエッフェル塔前でポーズ写真を披露した自民党女性局のメンバーが批判にさらされている。矛先が向かうのは松川るい参院議員や今井絵理子参院議員らで、ネット上では「エッフェル姉さん」「ニョッキ松川」「松川るい16世」などと異名がつけられている状況だ。
“擁護派”には議員研修であっても「観光」は許容されるべきとの声があがるが、作家の佐藤健太氏は「問題視されているのはそこではない。本質は岸田文雄首相の翔太郎前政務秘書官と同じ」と厳しく指弾する。
松川るいらの「エッフェル塔ポーズ」は生活が厳しい国民たちの感情を逆撫でした
批判が殺到したのは、松川氏や今井氏といった自民党女性局メンバーら38人が7月下旬にフランスを訪問し、その記念撮影をSNSに公開したことだった。その中の一枚にはエッフェル塔を背に松川氏ら3人が両手を頭の上で合わせる「エッフェル塔ポーズ」を笑顔でとっている写真があった。
こうしたSNS上の発信に「税金で観光旅行に行っているのか」「感覚がずれているのではないか」といった批判が相次いだのだ。松川氏は「SNS上の発信について不適切なものがあった。多くの誤解を与えたことについて反省している」と語り、「誤解されてはいけないと思い、(投稿を)削除させていただいた」と説明した。自民党は小渕優子組織運動本部長が「注意」したのだという。
松川るいはなぜ自分がこれだけ批判されているのか、わかっていない。国民の声がわからない
だが、これは「誤解」と言えるのか。普通に考えれば、誤解というのは「事実や言葉などを誤って理解する」という意味になる。だが、「エッフェル塔ポーズ」写真への理解は誤解しようがない。たしかに“擁護派”が主張するように、たとえ議員研修中であっても、プライベートな時間は確保され、観光や好きな時間に充てることは自由だ。思い思いの写真を撮影するのも良い。エッフェル塔を背にポーズ写真を撮った日本人は何も松川氏らだけではない。だが、釈明して投稿を削除した松川氏を含め、問題視されているのは「そこではない」ことを理解していないこと自体が問題なのではないかと感じる。
松川氏の投稿に関し、公明党の山口那津男代表は「それがどのような受け止められ方をするのかということは、しっかり見通した上で責任を持って対応すべきだ」と指摘。国民民主党の玉木雄一郎代表も「喜々としてアップ(投稿)するかどうかは、もう政治家としてのセンスの問題なので有権者に選挙で判断していただくもの」と手厳しい。
松川るいの空気の読めなさは、岸田首相の長男・翔太郎氏を思い出させる
たとえ議員研修であっても「観光」や「自由な写真撮影」は許容されるものの、それをSNSにアップするかどうかは別問題であるということだ。批判の矛先が向かったのは「国民感覚とのズレ」にあることを、国民の声に耳を傾けるべき要職にある者として「誤解」しないでいただきたい。
思い出すのは、岸田首相の長男で首相秘書官(政務)を務めていた翔太郎氏だ。首相の外遊中に翔太郎氏が公用車を使って「観光」や「土産物購入」をしていたと報道され、昨年末には首相公邸で親族と「忘年会」を開催。写真撮影にも興じていたことが報じられ、首相が事実上の更迭に踏み切った。
政治家としての感覚が疑われるのも無理はない
翔太郎氏の「観光」報道が飛び出した際、首相最側近の木原誠二官房副長官は今年1月27日の記者会見で「不適切な行動はなかった」と擁護した。さすがに公邸での写真撮影には「報道にあるような行為は適切さを欠く」(松野博一官房長官)との声が上がり、最終的に父親である岸田首相が更迭せざるを得なくなった。もちろん、何か法律を犯したわけではない。だが、そのような行為をすれば国民がどのように受け止めるのかという視点が翔太郎氏にも、松川氏にも欠落しているのは間違いないだろう。
フランス研修の費用は参加したメンバーの自費や自民党費で賄われ、税金が投じられていないとの“擁護”にも疑問符がつく。松川氏ら議員や翔太郎氏には「給与」という形で公金が入っているからだ。翔太郎氏の「記念撮影」がどこから流出したのかは謎だが、松川氏は自らSNSにアップしている。もはや政治家としての感覚が疑われるのも無理はないだろう。
2022年から続く物価高に困窮する国民は、生活防衛に必死になっている。足元の電気代・ガス代高騰に加え、レギュラーガソリンの全国平均価格は13週連続で値上がり。政府の補助金が減少し、15年ぶりの高値が続いている。コロナ禍を脱し、そろそろ行きたいと思っていても海外はおろか、国内旅行も「自粛」せざるを得ない人は少なくない。
国民生活が物価高で苦しむ中、松川るいは「上級国民」の態度を改めよ
大阪選挙区を地盤とする松川氏には、足元の自民党枚方市支部が8月7日に選挙区支部長の更迭を茂木敏充幹事長に申し入れた。“維新旋風”に押され、大阪の自民党を抜本的に再生しなければならないという危機感を抱く中での「ニョッキ松川」には嫌気がさしたのかもしれない。
1971年生まれの松川氏は東大卒業後に外務省に入省し、ジョージタウン大国際関係大学院修士号を取得。2016年7月の参院選大阪選挙区で当選し、2020年9月には防衛政務官に就任した。2022年7月の参院選大阪選挙区で2期目の当選を果たし、外交・安全保障や女性活躍などの分野で活躍が期待されてきた一人だ。自民党では女性局長や外交部会長代理、2025年大阪・関西万博推進本部事務局長などを務めている。キャリアを見れば、将来を嘱望されていた優秀な人物であることは間違いない。
ただ、キャリアで優秀な「上級国民」だからこそ、公金を得ている以上は人一倍どのように映るのかは意識しておくべきポイントだろう。自身の長所に「柔軟な発想」をあげる松川氏は、短所を「細かいことが苦手」としている。これ以上、華麗なキャリアに傷をつけないためにも、重要なことは「細部に宿る」点を忘れず、国民感覚とのズレを縮めてもらいたいと願う。
というのも、今日本国民の生活は大変なことになっている。令和版「所得倍増計画」はどうなったんだ
というのも今日本の国民の生活は大変なことになっている。
資源エネルギー庁が8月16日に発表したレギュラーガソリンの全国平均価格は181.9円(同14日時点)となり、前週から1.6円も値上がりした。13週連続の値上がりで、過去最高値だった2008年8月(185.1円)に迫るレベルだ。一部地域ではハイオクガソリン価格が200円を超えるガソリンスタンドも現れている。識者の中には来月末にはレギュラーガソリンの全国平均価格が200円近くになると主張する人もいる。
背景には、原油価格の高騰や円安がある。だが、その負担感を増大させているのは政府による補助金の縮小だ。国は2022年1月、石油元売り会社の「ガソリン補助金」を通じてガソリン平均価格を抑えてきた。だが、今年から上限額や補助率を段階的に縮小しており、9月末で終了する予定としている。
実質賃金は15カ月連続でマイナスが続いている
加えて、ガソリンには揮発油税と地方揮発油税、石油石炭税などの税金がかかり、販売価格の4割強を占めている。「ガソリン税」に消費税が課されるという“二重構造”になっており、その税負担は決して小さくない。一部からは税率を一時的に下げる「トリガー条項」を発動すべきだとの声があがるが、岸田政権は「財政への影響がある」などと消極的だ。
所得環境が好転しない中で、物価が上昇していけば生活が楽になるわけはない。8月15日発表された4〜6月の国内総生産(GDP)は、物価変動を除いた実質で3期連続のプラスとなった。前期と比べてプラス1.5%、年率換算で6.9%の伸び率になっている。
ただ、好調が目立ったのはインバウンド需要だ。円安効果に加えて、コロナ禍の落ち着きから外国人観光客の消費が増加し、旅行者数は回復傾向にある。その一方で個人消費はマイナス0.5%と3期ぶりのマイナスとなっている。実質賃金は15カ月連続でマイナスが続いており、家計の消費マインドは低迷したままだ。
日本国民がおかれているこの状況下でのインスタ投稿と批判に対する松川氏からの反論は、まさしく国民を馬鹿にしているといえよう。
●「水産物汚染の張本人は政治家・マスコミ・エセ専門家たちだ」 韓国漁師たち 8/25
日本が福島原発汚染水の海洋放出を始めた24日、韓国沿岸漁業人中央連合会が声明で、「韓国の海と水産物を汚染する張本人は汚染水海洋放出を政治に利用する政治家・マスコミ・エセ専門家たちだ」「国際機関や著名な科学者たちが明らかにした通り、韓国の海・韓国の水産物は安全だ」と述べた。そして、「水産業界の未来が原発汚染水『怪談(デマ)』で壊されてはならない」と訴えた。
科学者たちは「『福島汚染水海洋放出により韓国国民が食する水産物が放射能に汚染される』という主張は誇張などというレベルではなく、捏造(ねつぞう)に他ならない」と説明している。福島汚染水海洋放出による放射線被ばく量は、レントゲン撮影時の1000万分の1だという。2011年の福島原発事故直後、海に流れ出た汚染水は、現在海洋放出している汚染処理水よりも、核種によって600−3万倍を超える放射性物質が含まれていた。だが、この12年間、韓国の海と水産物に何の影響もなかった。それにもかかわらず、水産市場の買い物客は大幅に減ったという。
既に福島周辺のすべての水産物は輸入禁止となっている。韓国政府は全国200の海域で海水を採取・検査し、卸売市場や養殖場など水産物生産段階で2次検査を行っている。市場やスーパーなどで水産物を流通させる直前に韓国食品医薬品安全処が3次検査を行っている。2011年の福島原発事故発生後、7万5000件の水産物に対して放射能検査が行われたが、基準値を超えたことはない。一言で言えば、韓国の水産物は安全だということだ。福島の水産物の輸入を再開した欧州はバカではない。福島の海洋放出水が韓国より先に到達する米国・カナダではいかなる「怪談」もない。駐日米国大使は福島に行ってその水産物を食べると言った。彼らもバカではない。
それにもかかわらず、一部の消費者たちが水産物を避けるのは、韓国国会を掌握している野党・共に民主党とテレビ番組が「水産物を食べれば放射能に汚染される」との主張を毎日繰り返しているためだ。政治的に政権を攻撃するためのものだが、その被害を受けるのは韓国の水産業界だ。15年前の狂牛病(牛海綿状脳症〈BSE〉)デモの時も同じだった。このデモを主導した人物は「当時、狂牛病の事実関係について会議をしたことはない。李明博(イ・ミョンバク)政権退陣にどのように利用できるかという次元だけで話が交わされた」と告白した。今回も同じだろう。
今回の「怪談」は狂牛病怪談よりも早く消えるだろう。今後、韓国の海水と水産物を採取して放射能を調査すれば、問題ないことが明らかになるからだ。しかしその間に罪のない漁業関係者たちが被害を受ける。良識のある国民たちが立ち上がり、水産物の消費をこれまでより増やすなどして、「怪談」が消えるまで水産業界を助けてほしい。そして、韓国政府は月1・2回の海水放射能調査を大幅に増やすべきだ。
●福島原発「処理水海洋放出」開始に韓国の市民・政治家・メディアの反応 8/25
ソウルの人気寿司店で聞いた話
8月の初め、土砂降りの雨の中、韓国の若者たちに人気の寿司“おまかせ”専門店を訪れた。ソウル市麻浦区に位置するこのおまかせ専門店は、ソウル全域に4つの店舗を有している。店員によると、人気の理由は手ごろな値段だ。江南やホテルのおまかせは、夕食コースが20〜30万ウォン(2〜3万円)程度の店が多いが、ここの夕食は8万ウォン。筆者が食べた昼食コースは5万ウォンだった。
平日のランチでも予約がいっぱいという人気店だが、その日は雨のせいか比較的空いていた。カウンターに座って板前さんとあれこれ世間話を交わす中、福島原発の処理水放出が話題に上がった。
板前さんは、「常連さんの中には福島の汚染水が放出されれば寿司を食べないという方が結構いらっしゃるので困っている」と打ち明け、「うちには日本産のネタはないが、韓国海域で獲れる水産物もなぜか敬遠されている。政府がいくら安全だと強調しても不安感は消えないようだ」とため息をついた。
そして24日、実際に日本政府による福島第一原発の処理水の放流が始まったことで、あの日聞いた板前さんの心配はより現実味を帯びてきた。
前日の23日、経済紙『韓国経済』のインターネット版は「高飛車だったおまかせ店も半額割引……商売をやめるべきか」という記事を掲載し、「日本福島厳罰汚染水の放出問題で韓国のおまかせ熱風が折れた」と伝えた。
同紙によると、福島原発の汚染水放出で水産物全般に対する消費者の不安心理が高まり、これまで高飛車だった江南の高級おまかせ専門店も客誘致のために価格を半額に下げるなど全力を尽くしているが、それでも客足は途絶えてしまったそうだ。
これまで予約がいっぱいでなかなか訪問できなかった特急ホテルの和食レストランも、今では予約は難しくないという。
一例として、韓国のグルメ族の間で評判が高かった新羅ホテルの和食レストラン「有明」は、今やいつでも予約可能な状態だといい、同じホテル内の「ラヨン」(韓国料理)や「八仙」(中華料理)などは1ヵ月以上も予約がいっぱいなことと比べ、明確に人気が落ちていると報道した。
韓国政府の水産物消費増進策
韓国の主要日刊紙やテレビなどは、韓国各地の水産市場を訪ねて商人と市民の生の声を伝えた。韓国最大のニュースエージェンシー『聯合ニュース』は22日、福島原発の処理水放出決定の直撃弾を受けた釜山のチャガルチ水産市場のルポ記事を掲載した。
記者のインタビューに応じた商人たちは一様に、不安と怒りが入り混じった反応を見せている。
「結局飢え死にしろと言うことだ」「売り上げが3分の1に減った。新型コロナウイルス感染症の時より大変だ」「今週末の予約もまったくなく、お客さんもいない」「科学者が(安全だと)言っても、お客さんは日本が釜山に近いので何かと影響があると信じている」「政府が乗り出して水産業者が飢え死にしないようにしなければならない」 (22日記事「今もお客さんいないのに……汚染水放流決定でチャガルチ市場の‘ため息’」)
日本政府の処理水放出決定で韓国の水産業界が大きな打撃を受けるということはすでに予想されていた。
今年4月、消費者市民の会という市民団体が消費者525人を対象に実施した調査によると、回答者の92.4%が「汚染水放流以後、水産物消費者を減らす」と答えている。
2022年には、自治体政府傘下の済州研究院が、日本の福島汚染水放流によって韓国の水産業界が被る被害額は3兆7千億ウォンに達すると警告していた。
韓国政府は今後、水産物の安全検査を強化し、消費減少を最大限防ぐという考えだという。
まず、日本政府が行っている処理水放出の安全性を常に「3重チェック」すると発表した。IAEAが運営する福島原発現場事務所に韓国側専門家が定期的に訪問し、情報を常時共有する一方、日本政府が運営する放射能関連リアルタイム情報ホームページには韓国人のために韓国語を提供、放出過程で異常が感知されれば直ちに韓国側に通知することを約束した。 このほか、韓国の海洋水産部も独自に放射能チェックに乗り出す。
海洋水産部は福島県など8県の水産物の輸入禁止措置を維持しながら、水産物の放射性物質に対する検査と韓国海域の放射能モニタリングを強化するとした。
従来92ヵ所で行っていた放射能モニタリングを200ヵ所に増やし、福島近隣の公海上の8ヵ所で毎月放射能調査を実施。水産物消費増進のための各種割引イベント、消費クーポン発行などに加え、2000億ウォン規模の漁民支援金を用意する方針を決めている。
「政府の対策はキャンペーンに過ぎない」
しかし、政府の対策の実効性については、早くも疑問が提起されている。特に、韓国の水産物委託取引の30%を占める釜山地域の有力紙は、韓国政府の対策を強く批判している。
釜山の最大日刊紙『釜山日報』は24日、「汚染水放流開始、政府の水産物被害対策に呆れる」という社説を通じて、漁民と商人たちのための直接的な支援策作りを促した。
「(韓国政府は)水産物消費の活性化のために企業共生協力を進めていると明らかにしているが、直接的な支援対策はなく、漁民の反発は避けられない見通しだ。
国民の力は党政協議を通じて漁民経営安定のための2000億ウォンの予算編成を推進するという。しかし、これも油類費支援や融資などの間接支援であり、漁民の実質的被害補填にははるかに及ばない水準だ。
日本政府は自国漁民の反発が激しくなると、8000億ウォンの支援対策をまとめ、漁民支援と新たな漁場開拓に乗り出した。国際的には汚染水の放流が安全だといいながらも、自国漁民への支援は強化している。
しかし、韓国政府の水産業被害対策は水産物消費促進など、まだキャンペーン水準に過ぎない。同じ被害を受けている韓国漁民は支援からは疎外されている。漁民被害の原因提供者である日本政府を相手に被害補償でも要求しなければならない状況だ。
汚染水の放流が現実化しただけに、被害漁民と商人に対する政府の綿密な支援対策が伴わなければならない」
「汚染水被害の憂慮を怪談として片付けるな」
また『国際新聞』も「水産生態系を守るきめ細かい汚染水対策を出さなければならない」という社説を通じて政府と与党に特別法の用意を促した。
「水産業界が百尺竿頭に置かれているが、政府の具体的な対策は不十分でもどかしいばかりだ。
釜山は国内最大の遠洋漁業と近海漁業基地に代表される水産業中心地だ。水産業は、関連事業体数が2万6000社、従事者も10万人に達する地域経済の核心軸だ。
(汚染水の放流決定で)水産物の消費が萎縮すれば、漁業と水産業だけが影響を受けるわけではない。観光分野と地域経済までその影響が及ぶ可能性がある。
韓国政府は汚染水放流対策として今年3693億ウォンの予算を編成したが、大半が水産物備蓄と販路確保などに割り当てられる。原発汚染水の放流による被害支援策は非常に不足している。
国会立法調査処からは、水産業など関連産業被害対策特別法を作って支援しなければならないという指摘が出ている。正義党は、水産物消費減少をはじめ、放射能検査と行政人材投入で韓国が害を被ることになったとし、日本政府に求償権訴訟を起こすことにした。
政府は汚染水被害の憂慮を怪談として片付けるのではなく、水産生態系を守る現実的な対策を打ち出すべきだ」
共に民主党は反日・反尹錫悦扇動に全力
水産業界の危機感が高まる中、韓国国会の第1党である共に民主党は、むしろ国民の不安感を刺激している。
李在明(イ・ジェミョン)代表は福島原発水の放流を「第2の太平洋戦争」「国民安全非常事態」「人類に対する犯罪」と糾弾し、反日・反尹錫悦扇動に総力を傾けている。
23日、国会でのろうそく集会を皮切りに、26日までの「100時間緊急行動」に出る場外闘争に突入した。多数議席を占めている国会で「福島原発汚染水対応特別安全措置4法」を立法する方針だが、これには放射能汚染被害を漁業災害に含め、被害支援基金を造成するために日本政府に求償権を請求できるよう法的根拠を設ける内容が盛り込まれた。
これまで韓国では多くの原子力専門家や海洋専門家などの科学者らが前面に出て、今回の放流が韓国の海や水産物に及ぼす影響が極めて軽微だということを説明してきたが、韓国人は依然として不安感を払拭できずにいる。
日本との関係改善を推進している尹錫悦政権にとって、今回の処理水放出開始は、大きなヤマ場になるかもしれない。
●処理水海洋放出に抗議の声 ソウルの日本大使館前で 8/25
東京電力は8月24日、福島第一原子力発電所にたまったトリチウムなどの放射性物質を含む処理水を、政府の方針通り基準を下回る濃度に薄めて海への放出を始めたが、処理水の海洋放出に反対する韓国の活動家グループが、ソウルの日本大使館前で抗議集会を行った。
海洋放出が始まってから1時間もたたないうちに、韓国の韓徳洙首相は、処理水放出が韓国に到着する食品の安全性に影響を与えることはないと国民向けのメッセージを発表した。
韓国政府が日本の計画を支持したことをめぐり、激しい政治的対立が勃発している。
リベラル派の批評家たちは、尹錫烈大統領率いる保守政権が、国民の健康を犠牲にして、日本との関係改善を推し進めていると非難。
多くの外国人専門家は、放出が環境や人体に与える影響はごくわずかだと指摘。また、国際原子力機関も、放出が計画通りに行われるよう、現地に専門家を配置している。
●歴史は日本の海洋放出の罪を追及することになる CRI 8/25
日本政府は2023年8月24日午後1時、多くの人が反対するにもかかわらず、福島原発事故の汚染水の海洋放出を強行した。海の生態系と人々の健康への「攻撃」だ。この日は世界の海洋環境にとって厄災の日となった。日本政府は生態環境の破壊者、世界の海洋汚染者に完全になり下がり、歴史にまた一つ、拭えない汚点を残した。
原子力関連事故の汚染水が人為的に海洋に放出されたのは、人類が原子力を平和利用して以来、初めてのことだ。公認された処分の基準はない。この行為が国際社会を大きなリスクにさらすことは間違いない。東京電力の計画によると、17日間で7800トンの汚染水を排出する。2023年度内には約3万1200トンの排出を見込む。専門家は、日本には現在、約130万トンの汚染水があるので、排出期間は30〜50年に及ぶと予測している。関連研究のシミュレーションによると、核汚染水は2026年11月に北太平洋のほぼ全域を覆って北米沿岸に到達し、2030年2月にはインド洋に到達し、10年後には太平洋のほぼ全域に拡散すると見られる。
12年前はすでに、福島原発事故により大量の放射性物質が海洋に放出され、深刻な災害がもたらされた。日本は12年後になり、何の証明もなしに、核汚染水の浄化装置が長期的に信頼でき、何の証明もなしに、海洋放出が海洋環境と人類の健康にとって安全で無害であるとして、利害関係者と十分に協議することもなく、海洋放出を強行して現地の人々、ひいては世界の人々に二次被害を与えることになった。中でも真っ先に被害に遭ったのは漁業従事者だった。
日本政府が独断専行で海洋放出を決めたことを受け、日本では漁業関連などの各界から「次世代に災難をもたらす」として政府に中止を求める抗議が相次いだ。日本の多くの主要メディアも、日本政府は誠意に欠け、無責任であり、急いで海洋に排出することは「未来に一層の禍根を残す」と批判した。韓国は24日、日本の福島産水産物の輸入禁止措置を維持すると発表した。中国は8月24日から、日本を原産地とする水産物の輸入を全面的に一時停止すると発表した。これらの事態をもたらした当の本人は、私利私欲に走った日本政府だ。
自分自身が問題を引き起こし、他人をひどい目に遭わせる――。そんな日本が世界を警戒させている。日本の岸田文雄首相は、放射能汚染水の海への放出計画について「全責任を負う」と言明した。事前対策も保険もなく、実害が分かったからといって引き返すこともできないこの「襲撃」に対して、日本の政治家はいったいどのようにして「全責任」を負うのだろうか。どのようにして子孫に説明するのか。
「覆水盆に返らず」と言う。日本政府は2023年8月24日、歴史の恥辱に改めて自らをくぎ付けにした。直面するのは、世界の強い非難と各国の厳しい抵抗、そして国際社会が求める損害賠償だ。歴史は日本に対して、海への汚染水排出の罪を追及することになる。
●電気・ガス料金の支援延長要請 自公党首会談で公明・山口代表 8/25
長引く物価高への対策をめぐり、岸田首相に対し、公明党の山口代表が、電気・ガス料金の支援を延長して行うよう求めた。
電気やガス、ガソリン代などの政府の支援策は9月末が期限だが、岸田首相は22日、ガソリンなどの燃料価格対策について与党で取りまとめるよう指示していた。
24日午後、首相官邸を訪れた山口氏は、電気・ガスについて10月以降も支援を続けるべきだと求めた。
公明党・山口代表「9月で(支援が)終わることに対する国民の不安が強く表れているわけだから、電気代・ガス代を除くとか、ガソリン代に限るとか、国民の不安に応えることにならない」
一方、野党からは、ガソリン税を軽減する「トリガー条項」の発動を求める声が上がっている。
立憲民主党・長妻政調会長「歴史的な高騰ですよね、このガソリン価格。一時的とはいえ、『トリガー条項』の凍結解除、発動というのは必要だと」
「トリガー条項」の運用は現在、法律で凍結されている。
●日本が処理水海洋放出を開始し隣国憤怒、懸念は「科学」「政治」―独メディア 8/25
2023年8月24日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、東京電力福島第一原子力発電所の汚染処理水の海洋放出が始まることについて中国や環境保護団体から反発が出ている一方、専門家からは「ベストな方法」との見方が出ていることを報じた。
記事は、東電が24日、当日より17日間かけて合計約7800立方メートルの処理水を海洋放出すると発表したことを紹介。海洋放出をめぐっては国際原子力機関(IAEA)が安全性を支持する報告を発表したものの、日本国内や東アジアの近隣諸国、および漁業関係者からは「日本政府は海洋放出の影響を意図的に過小評価しており、30年にわたる放出が太平洋の環境破壊を引き起すのではないか」といった懸念や反発の声がなおも出ていると伝えた。
そして、1カ月前に日本の10都県産の食品輸入を停止したばかりの中国税関総署が24日、日本全国の水産物の輸入を即日停止すると発表したことに言及。税関総署のデータによると中国は2022年に日本から5億ドル(約730億円)以上の水産物を輸入しており、日本の漁業にとっては大きなダメージになることを伝えたほか、中国外交部も同日に海洋放出に断固として反対し、日本側に厳正な抗議を行ったことを明らかにしたとしている。
また、環境保護団体グリーンピース日本事務所の原子力専門家が「日本政府はトリチウムに焦点を当てて処理水に害はないと主張することで、メディアや国民の目をそらすことに成功している。しかし、原子力発電所の廃水には、ストロンチウム90をはじめ人体や環境に有害であることが知られている多くの放射性物質が含まれている」と主張したことを伝えた。
一方で、放射線の生態学的影響の専門家であるウィーン工科大学のゲオルク・シュタインハウザー教授が「希釈してゆっくり海に流す限り、トリチウムが人間や環境に大きな危険をもたらすことはない。また、福島から計画されている放出量は、以前に大国が行った核兵器実験によって海に残されたトリチウムの量よりもはるかに少ない」と述べ、現状では海洋放出が「最良で最も安全な方法」と評価したことを伝えた。
また、独ユーリッヒ研究センター(FZJ)の放射線防護部門の責任者であるブルクハルト・ホイエル・ファビアネク氏も海洋放出について「放射線学的に無害」との認識を示し、「仮にトリチウムが人体に入ったとしても、そのリスクは極めて小さい。トリチウムはいわば水の一部であり、すぐに体外に排出される」と語ったことを紹介している。
さらに、一部の海洋放出反対派が「日本は単にエネルギーと費用を節約するために原子力発電所の廃水を海に流すことを選択した」と主張し、巨大な容器に処理水を流し込んで保管するといった代替案を提起していることについて、シュタインハウザー氏が「処理水を保管するための巨大な容器が漏れた場合、地中に染み込んだトリチウムを希釈することは難しく、結果として地元の地下水が汚染される。だからこそ私は海に流すことが最適かつ安全な解決策だと考えている」と指摘したことを伝えた。
記事は、処理水の海洋放出の危険性がどれほどのものなのかという疑問を解決するのは単純なものではないとしつつ、それ以前の大きな問題点として「2011年の津波で福島第1原発の炉心が溶融する事故が発生して以降、事業者である東電による透明性の低い姿勢が外部からの信用を著しく低下させた。そして、自国の原子力産業と癒着した日本政府も、この問題における信用度が低い」と指摘している。 

 

●原発の処理水 海への放出開始 国内外の反応は 8/24
福島第一原子力発電所にたまるトリチウムなどの放射性物質を含む処理水について、東京電力は政府の方針に基づき、基準を下回る濃度に薄めた上で、24日午後1時ごろ、海への放出を始めました。
事故の発生から12年余りを経て、懸案となってきた処理水の処分が動き出しますが、放出の完了には30年程度という長期間が見込まれ、安全性の確保と風評被害への対策が課題となります。
福島第一原発では、事故の直後から発生している汚染水を処理したあとに残るトリチウムなどの放射性物質を含む処理水が1000基余りのタンクに保管され、容量の98%にあたる134万トンに上っています。
政府は22日、関係閣僚会議で、基準を下回る濃度に薄めた上で、24日にも海への放出を開始することを決めました。
これを受けて東京電力は放出に向けた準備作業を始め、大量の海水と混ぜ合わせた処理水を「立て坑」と呼ばれる設備にためた上で、トリチウムの濃度を確認していました。
分析の結果、トリチウムの濃度は1リットルあたり43から63ベクレルと、国の基準の6万ベクレルを大きく下回り、放出の基準として自主的に設けた1500ベクレルも下回っていて、想定どおり薄められていることが確認できたということです。
モニタリングを行う船を出すための気象条件にも問題はないとして、東京電力は24日午後1時3分に海への放出を始めました。
放出作業は、原発内の免震重要棟という施設にある集中監視室で、作業員が画面を操作してポンプを動かし、処理水を海水と混ぜた上で「立て坑」に流し込みます。10分後の午後1時13分には、「立て坑」から沖合1キロの放出口につながる海底トンネルに流れ込んで海に放出されたということです。
また24日午後3時すぎから4時すぎにかけて原発周辺の海域で海水を採取したということで、現在、トリチウム濃度を分析していて、25日午後に結果が出るということです。
東京電力によりますと、これまでのところ、放出設備などのトラブルは報告されていないということです。
最初となる今回の放出は、7800トンの処理水を海水で薄めた上で17日間の予定で連続して行うとしていて今年度全体の放出量はタンクおよそ30基分の3万1200トンを予定しているということです。
ただ、処理水が増える原因である汚染水の発生を止められていないことや、一度に大量の処理水を放出できないことから、放出期間は30年程度に及ぶ見込みで、長期にわたって安全性を確保していくことが重要な課題になります。
岸田首相「政府として緊張感を持って全力で取り組む」
岸田総理大臣は、総理大臣官邸で記者団に対し「IAEAとしても連日高い頻度での原子力発電所からのモニタリングデータのライブ配信をはじめ、国際社会が利用できるさまざまなデータの公表など、透明性の向上に資する取り組みを実施していく予定だと承知している。先日、福島第一原発を訪問した際には、私自身、IAEAが常駐する予定のスペースも確認した。日本政府として緊張感を持って全力で取り組んでいく」と述べました。
東電 小早川社長「風評対策や賠償 全社を挙げて」
放出が開始されたあと、東京電力の小早川智明社長は、記者団の取材に対し、「きょうから処理水の放出を開始したが、引き続き、緊張感を持って対応していく。処理水の放出は、廃炉が終わるまで長い時間がかかるので、その間、安全性を確保し、地元の人たちの信頼に応えていく必要がある。風評対策や迅速かつ適切な賠償などについて、全社を挙げて持続的に対応し、風評を生じさせない、県民の信頼を裏切らない、という強い覚悟のもと、社長である私が先頭に立って対応にあたっていく」と強調しました。
IAEA事務局長 監視と評価活動続ける方針を強調
IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は、放出の開始を受けて24日、声明を発表し、「IAEAの専門家は国際社会の目の役割を果たし、放出活動がIAEAの安全基準に合致していることを保証するため現地にいる」として、監視と評価活動を続ける方針を改めて強調しました。
IAEAは福島に事務所も設けていて、さらに声明では、専門家が最初に放出される水のサンプルを採取し、放出される水に含まれるトリチウムの濃度は東京電力が放出の基準として自主的に設けた1リットルあたり1500ベクレルをはるかに下回る値だと確認したと説明しています。
《国外の動き》
   中国 日本の水産物輸入を全面的に停止
東京電力が処理水の放出を始めたことを受けて、中国の税関当局は日本を原産地とする水産物の輸入を24日から全面的に停止すると発表しました。中国の税関当局は、発表の中で「福島の『核汚染水』が食品の安全に対してもたらす放射性物質による汚染のリスクを全面的に防いで中国の消費者の健康を守り、輸入食品の安全を確保する」としています。
また、税関当局は「日本の食品の汚染リスクの確認を続け、日本から輸入される食品に対する監督管理を強化する」としていて、水産物以外の食品の輸入にも影響が及ぶおそれがあります。
中国ではすでに先月から各地の税関当局が日本産の水産物を対象に放射性物質の検査が強化されていて、先月、日本から輸入された水産物は去年の同じ月と比べて金額にしておよそ3割減ったことが明らかになっています。今回の措置で日本の漁業に影響が出ることは避けられず、今後の日中関係のさらなる悪化も懸念されます。
中国外務省の汪文斌報道官は24日の記者会見で「断固たる反対と強烈な非難を表明し、日本にはすでに厳正に抗議した。間違った行為を日本にやめるよう求める。日本の行為は全世界にリスクを転嫁し、痛みを子や孫世代に与え続けるもので、日本は生態環境の破壊者、そして海の汚染者となる。日本は長期にわたって国際社会の非難を受けることになるだろう」と述べました。
岸田総理大臣は、総理大臣官邸で記者団に対し、「外交ルートで中国側に即時撤廃を求める申し入れを行った。科学的根拠に基づいて専門家同士がしっかり議論していくよう中国政府に働きかけていく。風評被害をはじめ水産業者が海洋放出によって損害を受けることのないよう基金の活用や東京電力による賠償なども含め、万全の対応をとっていく」と述べました。
   中国のSNSで反発の声 根拠のない投稿も拡散
処理水の海への放出をめぐっては、中国の多くのメディアが速報で伝えました。このうち、国営の中国中央テレビのリポーターは、インターネット向けの配信で、放出開始とともに福島第一原発の近くから中継し、日本国内では放出に反対の声もあるなどと伝えていました。
中国のSNSウェイボーでは放出開始をめぐる話題が一時、検索ランキングのトップにあがり「今後日本料理は食べない」とか「仕事はせずに日本に抗議する」といった日本への反発の声がみられました。なかには、「福島で放射線量が瞬時に上がった」などといった根拠のない投稿も拡散していました。
一方で「刺身が本当に好きなのにどうすればいいのか」といった投稿もあり、中国で日本の水産物が食べられないことを懸念する声もあがっていました。
   中国 複数の原発から福島第一上回るトリチウム放出も
福島第一原発では、トリチウムの年間の総放出量は、22兆ベクレルとなっていますが中国の原発の運転状況などをまとめた、「中国原子力エネルギー年鑑」によりますと、2021年、中国国内の原子力発電所のうち少なくとも13か所で、これを上回る量のトリチウムが放出されていたということです。
このうち、東部浙江省にある秦山原発ではおととし1年間で218兆ベクレルと、福島第一原発の年間総放出量のおよそ10倍にあたるトリチウムが放出されたということです。
ただ、中国政府は、福島第一原発の処理水は、事故で溶け落ちた核燃料を冷やすために使われたとして、「データの真実性や正確性が証明されていないうえ食品の安全や健康への長期的な影響が証明されていない」などと主張しています。
   事故後の規制 一時55の国や地域に
東京電力福島第一原発の事故をきっかけにした日本からの食品の輸入停止などの規制の動きは、一時、世界の55の国や地域に及びました。これまでに48の国や地域で規制は撤廃された一方、7つの国や地域では規制が続き、このうち、中国や韓国、香港など5つの国と地域はいまも輸入停止の措置を行っています。
・中国はすでに日本から輸入する食品に対する検査を厳しくていて、日本から輸出された水産物などが中国各地の税関当局でこれまでより長く留め置かれていることが確認されています。さらに東京電力が24日、処理水の海への放出を始めたことを受けて、中国の税関当局は原産地が日本の水産物の輸入を24日から全面的に停止すると発表しました。
日本から中国への水産物の輸出額は去年871億円にのぼります。さらに農林水産物や食品をあわせた輸出額では去年およそ2782億円にのぼり、中国は日本にとって最大の輸出先です。
また、放出決定を受けて、
・香港政府は24日から東京、福島、千葉、宮城など、10の都県からの水産物の輸入を禁止することを明らかにしました。日本から香港への水産物の輸出額は去年755億円となっているほか、農林水産物や食品をあわせた輸出額は、去年およそ2086億円で中国に次ぐ2位の輸出先です。
・マカオ政府も東京、福島、千葉など10都県からの水産物や、肉や野菜などの輸入を禁止すると発表しています。
   香港の日本料理店 日本の食品離れを懸念
福島や東京を含む10の都県からの水産物の輸入を禁止にした香港の繁華街にある日本料理店では、日本から朝、空輸した新鮮な魚を、夕方に受け取り、刺身として提供して人気を集めてきました。
この日も、愛媛産のたいが届き、料理人がさばいていました。この店では、香港政府が輸入を禁止した10都県以外から魚を仕入れて対応するとしていますが、客が産地に関係なく日本の食品を避けるようになるとして懸念を強めています。
経営者の陳強さんは「日本が処理水を放出すれば、お客さんは心配して、日本料理を食べなくなる。そうすれば売り上げが影響を受け、大変な問題になる」と話していました。
店を訪れた男性は「週に2、3回は日本料理を食べていたが回数は減ると思う」と話していました。
   韓国首相「過度に心配の必要ない」
韓国のハン・ドクス首相(韓悳洙)は、東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水の放出開始からおよそ30分後の午後1時半ごろ、国民に向けた談話を読み上げ、「科学的基準と国際的手続きに従って放出されるのであれば、過度に心配する必要はないというのが世界中の専門家の共通意見だ」と指摘しました。
そして、「韓国政府は、関連する情報を確保して徹底的にモニタリングし、同時に水産業を守るためのさまざまな支援策を展開する。日本産水産物の輸入規制も維持していく」と述べました。
さらに、「国民を最も脅かしているのは、科学に基づかない偽ニュースと政治的利益のための虚偽の扇動だ。誤った情報で国民を混乱させてはならない」と強調しました。
   韓国 最大野党は強く非難 ソウルで抗議集会も
韓国の国会で過半数を占める最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表(李在明)は、党の緊急会議で、「国際社会の懸念と反対にもかかわらず、日本は人類最悪の環境災害の道を選んだ。第2次世界大戦のとき、銃と刀で太平洋を踏みにじったとすれば、いまは放射性物質で人類全体を脅かす形だ」と強く批判しました。
その上で、「『核汚染水』を投棄する犯罪に免罪符を与えたユン・ソンニョル政権(尹錫悦)は、非難を避けられない。私たちは最後まで戦う」と述べました。
このほか、ソウルの中心部では、環境運動の市民団体などが集会を開き、「放射性物質の投棄は、海を汚す非文明的行動であり、直ちに中止すべきだ。日本の放出を擁護するユン政権も共犯だ」などと批判しました。
また、韓国メディアは、放出に反対する大学生ら16人がソウルにある日本大使館に入ろうとして警察に取り押さえられたと伝えています。
   台湾外交部「国際的な基準に合致する放出を引き続き促す」
台湾外交部の劉永健報道官は「科学的な問題では専門家を尊重する」とした上で「日本側に対し、国際的な基準に合致する形で放出を行うよう、引き続き促していく」と述べました。
台湾の原子力委員会が福島第一原子力発電所の事故後10年間の海流のデータをもとにシミュレーションしたところ、処理水は主にアメリカ西海岸の方に向かって流れ、一部が放出のおよそ1年から2年後に台湾付近の海域に到達する見通しだということです。
そして、放出の4年後にトリチウムの濃度が最大値に達するものの、台湾の海域に自然に存在するトリチウムの濃度の平均値よりもはるかに低く、安全面の影響は無視できる程度だとしています。
   北朝鮮“人類に核の災難もたらすことためらわない犯罪行為”
東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水の海への放出が始まったことについて、北朝鮮外務省は24日、国営の朝鮮中央通信を通じて報道官の談話を発表し放出の中止を強く求めています。
談話では「国内外の強い抗議と反対を無視したまま、『核汚染水』を海に放出することこそ、人類に核の災難をもたらすこともためらわない犯罪行為だ」と非難しました。
そのうえで「破局的な結果に対する責任はすべて日本が負うことになる」と強調していて、北朝鮮としてはみずからの後ろ盾である中国とロシアの対応を念頭に足並みをそろえる思惑があるとみられます。
   ロシア外務省「完全な透明性を示し、すべての情報の提供を期待」
ロシア外務省のザハロワ報道官は24日、国営のロシア通信に対し「状況の推移を注意深く監視している。日本政府は、放出した水が環境に及ぼす影響について、完全な透明性を示し、すべての情報を提供することをわれわれは期待している」と述べました。
ロシア政府はこれまで中国とも連携しながら処理水の放出に対して懸念を示していて、ロシアの国営テレビの記者は現地からリポートを行い、「放出が始まった。国内外で抗議活動が活発に行われているにも関わらず日本側はこうした措置をとった」などと伝えています。
ロシアの衛生当局は先月、放射性物質を含む水産物がロシア国内に流通するのを防ぐためだとして、日本産の水産物や加工品について「輸入する際の検疫や流通の管理を強化するよう各地の機関に指示した」と発表しています。
   フィリピン外務省「IAEAの技術的専門性を認識」一定の理解示す
フィリピン外務省は、東京電力による福島第一原子力発電所にたまる処理水の放出について、「フィリピンはこの問題については、科学的かつ事実に基づいた観点から、この地域の海洋への影響を引き続き注視していく。島しょ国家として、フィリピンは海洋環境の保護と保全に最大の優先順位を置いている」とするコメントを発表しました。
その上で、放出計画の安全性を検証してきたIAEA=国際原子力機関が、海洋放出を国際的な安全基準に合致していると結論づけたことを踏まえて、「この問題に関するIAEAの技術的専門性を認識している」とコメントし、一定の理解を示しました。
   中国のねらいは?専門家「国際社会全体の信頼維持が重要」
日本政府が処理水の海への放出を開始したことを巡り、中国が反対する姿勢を示すねらいについて国際政治学や原子力政策に詳しい一橋大学の秋山信将教授は次のように話しています。
秋山教授「中国が強硬に反対する表向きの理由は環境汚染に対する懸念だが、中国は日本に対して海洋放出を認めないという姿勢を貫くことによって、外交的に優位な立場を取りたいという思惑があるのだろう。特定の国や地域の反発に気を使うというよりは、国際社会全体に対しての信頼を維持していくことが重要だ。科学的に安全性が証明されたからもうコミュニケーションは不要だと言うことではなく、科学的な安全性と社会的な安心の両方を獲得する必要がある。日本政府は多くの国が反対しないという姿勢に満足せず、相手の立場に立って知りたい情報を根気強く提供することが重要だ」
   IAEA リアルタイムで知らせるウェブサイト公開
IAEA=国際原子力機関は24日、東京電力福島第一原子力発電所で、トリチウムなどの放射性物質を含む処理水を基準を下回る濃度に薄めて海へ放出する活動が計画どおり行われているかをリアルタイムで知らせるウェブサイトを公開しました。
IAEAが公開したウェブサイトでは福島第一原発で処理水を薄めて海に放出するまでの作業がイラストで説明されています。
このなかでは作業の段階ごとに数値と印が表示されていて、計画どおり進んでいれば緑の印、東京電力による対応が必要な異常な数値が示されている場合は赤の印で知らせる仕組みとなっています。
ウェブサイトでは海に放出される水に含まれるトリチウムの濃度も確認することができます。
示されている情報は東京電力からIAEAに提供されたものだということです。
IAEAのグロッシ事務局長は24日、動画メッセージを公開し、みずからウェブサイトを説明した上で、IAEAとして放出作業に引き続き関与し、国際社会への情報公開に取り組む姿勢を強調しました。
《国内の動き》
   西村経産相「廃炉に向け大きな一歩 踏み出した」
西村経済産業大臣は、処理水の放出を始めたことについて、記者団の取材に対し、「福島第一原子力発電所の廃炉を成し遂げること、そして福島の復興を実現していくことは最重要課題だ。海洋放出が始まることで、廃炉に向けた大きな一歩を踏み出した。漁業者の皆さんの思いに寄り添いながら、データを透明性高く公表していくことで安全安心を確保し、なりわいの継続に向けた支援に全力で取り組んでいく」と述べました。
   林外務相「中国側に措置の即時撤廃を求める申し入れを行った」
林外務大臣は、長野県駒ヶ根市で記者団に対し「IAEAの包括報告書には、処理水の海洋放出は国際安全基準に合致しており、人および環境への影響は無視できる程度であるという結論が示されている。中国が現行の輸入規制に加えて新たな措置を導入したことは、国際的な動きに逆行するもので極めて遺憾だ。中国側に対して、科学的根拠に基づかない措置はまったく受け入れられず措置の即時撤廃を求める申し入れを行った」と述べました。
   外務省事務次官 駐日大使と電話会談 輸入停止措置の撤廃求める
中国の税関当局が日本を原産地とする水産物の輸入を全面的に停止すると発表する中、24日午後、外務省の岡野事務次官は、中国の呉江浩駐日大使と電話で会談しました。
この中で呉大使が放出に反対する立場を伝えたのに対し、岡野次官は日本の立場を改めて説明するとともに、科学的根拠に基づく冷静な対応を行うよう求めました。
そして中国側による輸入停止措置について、国際的な動きに逆行するもので極めて遺憾だとして、早期に撤廃するよう強く求めました。
   立民 泉代表「政府は地元の理解や風評被害対策にもっと注力を」
立憲民主党の泉代表は、兵庫県尼崎市で記者団に対し「IAEA=国際原子力機関の報告書により、一定の安全性は担保されたにせよ、地元の漁協も政府の対策や取り組みが不十分だと言っており、そういう声に正面から応えてこなかった岸田政権の対応は批判されてしかるべきだ。政府は、地元の理解や風評被害対策にもっと力を入れて全国民に説明していく必要がある」と述べました。
その上で「国会での説明は当然で、私たちは予算委員会の開会を要求している。2015年に政府は福島県漁連に対し『関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない』と約束しており、岸田総理大臣がその約束を果たしたと考えているのか、問わねばならない」と述べました。
   漁業者「若い漁業者の将来はどうなるんだと悲しくなる」
福島県相馬市の漁業者、四栗久光さんは原発事故の4年後に漁を再開し、おもに刺し網漁を行い、カレイやヒラメなどを水揚げしてきました。
処理水の放出に反対し続けてきたということで、午後1時すぎ、自宅のテレビで、処理水を薄めた上で海への放出が始まったことを伝えるニュースをじっと見つめていました。四栗さんは、「今までみんなで訴えてきたことが通らず放出されてしまい悔しい」と、涙を浮かべて話していました。
相馬市の漁業者は原発事故のあとは回数を制限して漁を行っていて、四栗さんの水揚げ量は今も事故が起きる前の4割ほどにとどまるということです。
四栗さんは、「処理水の放出は長期間にわたり続くということで、その中でもしも問題が起きたらと思うと、若い漁業者の将来はどうなるんだと悲しくなります。早く当たり前に漁ができるようになって欲しい」と話していました。
   都内の鮮魚店 福島県産の海産物 検査で問題なければ販売続ける
都内で鮮魚店など9店舗を運営する食品流通会社は、4年前から福島県産の海産物を現地から仕入れて販売していて、このうち目黒区にある店舗では23日に福島県沖で水揚げされたヒラメやタイが販売されていました。
親潮と黒潮がぶつかるプランクトンが豊富な海で育った福島県産の魚は味がよく、客からも好評だということで、この会社では福島第一原発にたまる処理水が薄められて海に放出されたあとも検査で問題がなければ販売を続けることにしています。
食品流通会社「フーディソン」の山本久美恵さんは、「今後も変わらず、基準値を下回った魚は取り扱いを続け、福島県産の魚のおいしさをお客様に伝えることで漁業者の力になっていきたい」と話していました。
店舗を訪れた70代の男性は、「処理水はあまり気にしておらず福島県や太平洋沿岸の魚をこれからも買うつもりです」と話していました。
   豊洲仲卸会社 風評による実害も「ケアの説明、丁寧に」
東京・江東区の豊洲市場から20あまりの国や地域に水産物を輸出している仲卸会社は、ウニやキンメダイ、ノドグロといった高級品を香港やマカオに輸出しています。しかし、処理水の放出を前にした23日、20年近く取り引きしている香港の飲食チェーンから、24日に予定していた出荷をとりやめて欲しいと連絡が入ったということです。
香港政府は東京や福島など10の都県の水産物について、24日から輸入を禁止するとしています。
取引先からは現地の輸入規制の運用に不透明な部分があり、規制の対象となっていない地域の水産物も含めて、確実に入荷できる見通しが立たないと伝えられたということです。
この仲卸会社はおよそ500万円分の水産物をすでに仕入れていたことから急きょ、代わりの出荷先を探すなどの対応に追われ、仕入れ値を下回る価格での取り引きを余儀なくされたということです。
仲卸会社「山治」の山崎康弘社長は「風評による実害がまさかきょうのきょう、出るとは思っておらず困っている。処理水の放出についての政府の説明には納得していたが、実際に実害が出た以上、理解とは別の問題だ。仕入れの支払いも迫っているので、東京電力や政府には、実害をどうケアするのか、丁寧に説明してもらいたい」と話しています。
   全漁連 「風評被害すでに発生 速やかな対応を」
処理水の海への放出が始まったことを受けて、全漁連=全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長はコメントを発表しました。
坂本会長は「我々が処理水の海洋放出に反対であることはいささかも変わりはない。国が全責任を持って放出を判断したとはいえ、今、この瞬間を目の当たりにし、全国の漁業者の不安な思いは増している。我々、漁業者は安心して漁業を継続することが唯一の望みだ」としています。
そのうえで、「国には安全性の確保や消費者の安心を得ていく取り組みなどを通じて『漁業者に寄り添い、必要な対策を取り続けることをたとえ今後数十年にわたろうとも、全責任を持って対応する』との岸田総理大臣の約束を確実に履行して頂きたい。加えて、現在、すでに発生している風評被害への可及的速かな対応を強く求める」としています。
   風評問題 専門家「買ってくれると自信をもって生産を続けて」
風評の問題に詳しい筑波大学の五十嵐泰正教授は、風評被害を抑えるためのポイントとして、「風評被害は、起こると思うと現実に起こってしまうという性質を持っている。流通業者が『消費者や小売業者が買わなくなる』と思えば、萎縮してしまってその産地の水産物が流通のルートに乗ってこなくなる。消費者の間では、処理水やトリチウムに関しては大分浸透してきた部分もあるので、科学的な判断で冷静に購買行動を続けてもらいたい」と話しています。
また、漁業者など生産者側に対しては「消費者が買ってくれないかもしれないと思って生産量を下げると、加速度的に流通構造の中から閉め出されてしまう。よいものを検査して出すのであれば消費者は買ってくれると、自信をもって生産を続けてほしいし、国もそれをしっかり守っていく姿勢を示し続けてほしい」と話していました。
その上で、国の情報発信については「科学的な安全性を示す上で、事実を伝えることに加えてもう一つ大事なのは発信する主体が信頼されているかどうかだ。政府への信頼感がなければ、どんなに正しい情報でも伝わらなくなってしまう。信頼醸成に正解はなく、丁寧に理解を求めていくしかない」と指摘しました。
   福島 内堀知事 「日本全体の問題 国が前面に立って」
処理水の放出が始まったことを受けて、福島県の内堀雅雄知事はコメントを発表しました。
この中で内堀知事は、まず東京電力に対して「処理水の取扱いは、長期間にわたる取組が必要で、安全性の確保が大前提だ。東京電力は、『廃炉と汚染水・処理水対策の実施者である』という意識を常に持ち、安全や安心が確実に担保される体制を構築するなど、万全な対策を徹底的に講じるよう求める」としています。
その上で、国に対しては「処理水の問題は、福島県だけではなく、日本全体の問題であり国が前面に立ち、関係省庁がしっかりと連携し、政府一丸となって万全な対策を徹底的に講じ、最後まで全責任を全うすること」などと求めています。
   宮城 村井知事「安全安心であること分かってもらえるように」
宮城県の村井知事は、記者会見で「IAEAが科学的に問題ないことはしっかりと立証しているが、安心につながっていないことが風評の引き金になる。安全ということが、安心であるということを国民や諸外国に分かってもらえるように、東京電力だけでなく、政府を挙げてしっかりと説明責任を果たしてもらいたい」と述べました。 
●中国の全面禁輸「想定外」 政治問題化する処理水放出…不信募る日本 8/24
東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を受け、中国が切ったカードは日本産水産物の全面禁輸だった。日本からは「想定外」「異常な対応」との声が上がるが、今後の経済的な影響は小さくない。両国関係が上向かず、政治的解決の糸口も見えない状況だ。
24日までの2日間、上海では「国際漁業博覧会」が開かれた。オーストラリア産マグロの解体ショーなどで盛り上がりを見せた会場には、約30カ国から4千社超が出展。だが、日本企業はわずか数社程度だった。
そのさなか、日本産の水産物の全面禁輸が発表され、関係者には衝撃が走った。「冷凍は在庫があるけれど、今後取引先がどう反応するかわからない」。日本の冷凍マグロを扱う業者の担当者は顔を曇らせた。
農林水産省によると、昨年の中国への水産物の輸出額は、国・地域別で最も多い871億円。このうち467億円と品目別最多で、刺し身などが人気なのがホタテだ。日本の冷凍ホタテの卸業者は肩を落とす。「放出前ですら取引のある数十店からやめたいと言われている。今後が怖い」
ALPS処理水を「汚染水」と呼び、放出に反対し続けてきた中国。中国政府と国営メディアの論調は、「危険」「無責任」一色のため、市民の間では不安が高まっている。これまでは様子見の市民も多かったが、スーパーやネットショッピングで塩が品薄になるなど、過剰ともいえる反応まで出ている。
中国は海洋放出が近いとみられた6月から批判の度合いを強め、「(海洋放出は)コストの安さを見込んだ方法だ」として見直しを求めてきた。
計画が「国際的基準に合致する」とした国際原子力機関(IAEA)の調査報告書が出た直後の7月には、2011年の原発事故から禁止されてきた10都県以外の水産物などへの放射能の検査を強めると発表。通関に2週間〜1カ月程度かかるようになり、鮮度が保てないため冷蔵(チルド)の鮮魚は事実上、輸入が止まっていた。
今回の全面禁輸は全国が対象で、冷蔵や冷凍を問わず、魚類や貝類、甲殻類、海藻なども幅広く適用されるとみられる。
中国にとって、水産物輸入額(20年)トップ10に日本は入っておらず、経済的損失は大きくないとの判断もあったとみられる。香港も24日から10都県を対象に水産物の輸入を停止した。昨年の輸出額は755億円で中国に次ぐ2位。日本にとっては影響は小さくない。
外交上のはたらきかけも目立った。
日本側の協議呼びかけ「何度ドアたたいても返答なし」 ・・・
●日本は尖閣諸島を守れるのか?結局誰かが住むしかない? 8/24
島国日本にとって、海こそが外国との接点だ。その海がこのごろキナ臭い。8月20日放送の「そこまで言って委員会NP」では「ニッポンの海について考える」のタイトルで、福島第一原発の処理水放出問題や北朝鮮のミサイル落下など、海を巡る様々な課題を取り上げた。中でも際どい議論が展開されたのが、尖閣有事に日本の防衛は十分か不十分かを問うもの。
ほとんどの論客が「不十分」と答えたが、田嶋陽子氏(元参議院議員)だけが「十分」と回答。
「中国がいろんなことをやっても日本は海上保安庁しか出していない。それだけの対応で十分ということ。海上自衛隊が出るようになった時は大変だが。」
すかさず山田吉彦氏(東海大学海洋学部教授)が実態を明かす。
「それは表面的なことだけ。近くに潜水艦もいるし、東シナ海周辺に陸上自衛隊の拠点も形成され、自衛隊も動いてどうにか今、均衡が保たれている。」
田嶋氏が質問。「なぜ政治家たちはそういうことを整理して中国と政治をやらないのか。」
これに久々に出演した辛坊治郎氏(元読売テレビ解説委員長)が反応する。「政治の問題が非常に大きい。日中国交回復の時に、中国側から尖閣領有権問題を棚上げにしようと言われて、それをそのまま続けてきた責任が極めて大きい。」
竹田恒泰氏(作家)が付け加える。「しかも民主党政権の時に尖閣諸島を国有化したのもやりすぎだった。せっかく東京都が持とうとしたのに。」
山田氏が解説する。「今考えると尖閣諸島の国有化は、中国のレールに乗ってしまった。東京都が買った場合、中国は政府に物を言っても東京都の所有地であればそれ以上言えない。私はずっと、政府には海洋調査をお願いしてきた。6年ほど前にお願いした時は、許してもらえなかった。2021年に交渉したところ、菅政権でようやく、海洋調査を始めようと納得してもらった。」
番組議長・黒木千晶アナがその背景を聞くと、山田氏はこう続ける。「それだけ中国の進出の歯止めが利かなくなっていることと、中国海警局が準軍隊化してきて脅威の度合いが変わってきたことがある。」
ここで辛坊氏が自分の体験を語る。「日本政府はトラブルを抑えたいから、日本人が島に行こうとするだけで必ず止める。今、自分が乗ってる船を岡山の小さな工場で整備してたら、 海上保安庁の人がわざわざ見に来て『この船ですか、辛坊さんが尖閣に行こうとしてるのは』と言われた。その意図があるなら、船舶検査証出さない、というぐらいの勢い。」
門田隆将氏(作家・ジャーナリスト)が補足する。「日本の政界には親中派が満ち満ちている。とにかく中国の機嫌を損ねないようにしてくれとの意思がものすごく強い。尖閣の灯台の電池交換をしても、そのことすら隠す。」
須田慎一郎氏(経済ジャーナリスト)が隣の小松正之氏(生態系総合研究所代表理事)のパネルを見ながら言う。「小松氏の意見が過激だ。漁業者を居住させ水産加工場を作るとある。」
小松氏が当然のように言う。「だって戦前は日本人が住んでいた。尖閣には漁業権も設定されていたし、漁港もあった。実態がないのに日本の島だと言うのは空虚だ。人がいて、経済活動や社会活動をやらない限り、そのうち中国が上陸して、竹島みたいになってしまう。」この時小松氏が竹島の名を思い出せず、「韓国の独島、日本ではなんだっけ?」と聞いたので笑ってしまった。
山田氏も人がいるべきとの主張。「今がチャンスだ。実は中国側は今、体制を整え直さざるを得ない 。例えば今年の1月に海洋調査に行った。その時中国側は4隻の 海警船プラス2隻、76ミリ速射砲を積んだ軍艦並みの船が来ていた。これに対し日本の海上保安庁は調査を守るために20隻体制をとった。完全にシャットアウトして、下には自衛隊もいた。」
辛坊氏が山田氏を煽る。「上陸したらよかった。そしたら中国が武力で山田氏を排除しに来るかどうか見ものだ。」
だったら辛坊氏と二人で上陸をと黒木アナが促したが、辛坊氏は船で連れて行くことならできると逃げた。
竹田氏がさらに乗っかって言う。「漁民に扮した日本人が難破を装って尖閣に上がり、それを海上保安庁が救助しに行って、寝かさなきゃと簡易テント立てて、お医者さん呼んで病院を・・・」
収拾がつかなくなり、黒木アナが話を戻して山田氏に聞く。「誰かが住まないと守れない?」
山田氏が結論づけて言う。「やはり無人島のままではダメ。」
須田氏が掘ろうとする。「障害になってるのは?」
山田氏がしどろもどろになりつつ言う。「極めて中国と仲がいい勢力。政治家の中にいる・・・」
開き直って政治家の名前を挙げたようだが、さすがに番組がサイレン音を入れてごまかした。防衛力も大事だが尖閣を守るなら誰かが住むしかないようだ。問題は、それが誰かだが。 
●中国の行方を探るうえでのカギは、習近平の「思考の枠組み」の理解 8/24
若者の失業率が過去最悪を更新している中国で、その最高指導者の習近平は最近、次のような言葉を発表した。「祖国と人民が最も必要としている場所で光と熱を発せよ、さすれば悔い無き青春の記憶を残せる……」。若者たちが冷笑したことは想像できるが、目の前の現実とかけ離れたこの文革時代の輝ける記憶も、間違いなく習近平体制の行動原理の一部なのだ。
そもそも習近平とは誰なのか、その思想と権威は何を求め、何を恐れているのだろうか。体制の外交が抱える米中対立の火種は、いずれ全面衝突へと向かうのか――。対中外交の最前線を熟知する元駐中国特命全権大使・宮本雄二氏の近著『2035年の中国 習近平路線は生き残るか』から、東京大学法学部の高原明生教授(現代東アジア政治)が中国を理解するための「思考の枠組み」を紹介する。
今や、どこのどういう立場で仕事をしているとしても、中国の動向から目を離すことはできない。習近平政権と中国の行方が世界に大きな影響を及ぼすことは間違いない。しかし、相変わらず中国政治の奥の院は分厚い帳に閉ざされている。昨年の党大会閉幕式での胡錦濤前総書記の途中退席や、今般の秦剛外相の突然の更迭が明瞭に示すのは、相変わらずの中国の不透明性にほかならない。
日中国交正常化から50年以上が経ったが、国民の間の相互理解はどれほど進んだと言えるだろうか。昨今の日本では、中国を批判し、その否定的な面をあげつらうことを目的にしたような本が書店に多く並んでいる。インターネット上でも読むに堪えない感情的な議論が横行する。こうした知的状況下で、果たして国民の代表である国会議員は正しい政策方針を議論し、決定することができるだろうか。
このような時代に頼りになるのは、その道一筋のプロフェッショナルだ。宮本雄二氏は、長年にわたり対中外交の最前線で活躍した経験をもとに、中国および日中関係に関する深く、かつ冷静な解説を世の中に向けて発信し続けている。私のような研究者を含め、日本社会はそれから大いに裨益してきた。
もちろん、習近平政権下の中国は政治面でも経済面でも大きな変貌を遂げた。過去の中国に関する知識、いわば中国専門家の常識が通用しなくなっている面も確かに多い。だが宮本氏の優れた点は、思考を続け、外交の現場で練り上げられてきた中国理解のための「脳内ソフト」を新しい情報を加味しながら修正し、精緻化してきた点にある。
根本的に重要なのは「人物」の理解
著者は本書において、第3期に突入した習近平政権が直面し、今後の中国を理解する上で鍵となる諸問題を余すところなく取り上げて俎上に載せている。新書にもかかわらず、内容は包括的で掛け値なく読み応えがある。
そもそも習近平とは誰か、どのような人物なのか。習近平という、ほとんど独裁的と言える程の権威と権力を獲得した指導者を理解することが、中国の行方を探る上では根本的に重要な課題であることは間違いない。
習近平の人格や思想に影響を与えた要因は何か。本書は、党と自分の信念に忠実に生きた父親、習仲勲元副総理の影響や、青年時代に陝西省の農村に下放されて幹部として務め、統治機構の末端を支えた経験、そして福建や浙江、上海といった沿海地方を指導した際に政治、イデオロギーを重視した経歴などにつき紹介している。
確かに、文化大革命についての習近平の評価は、当時反党分子として吊るし上げられた父親とは異なるように思われる。息子は貧しい農村に下放されて苦労したのだが、その艱難辛苦を乗り越えて自分を鍛えることができた、といった成功体験として文革をとらえているのだろう。
7月10日の『人民日報』が掲載した評論記事は、青年たちに次のような呼びかけを行った。西部地域や農村など、「祖国と人民が最も必要としている場所で光と熱を発せよ、さすれば悔い無き青春の記憶を残せるのみならず、現場での錬磨から一生ものの精神的な富を得ることができる」――就職難にあえぐ今の若者たちに対し、正しい職業観を持てと呼びかけたのだが、事実これが最高指導者の青春の記憶なのだろう。中国のネット民たちは、この評論に冷笑を浴びせたと伝えられるのではあるが。
中国で盛んに学習されるようになった習近平思想とは何か。本書は、習近平思想の特徴として、政治とイデオロギーの重視、党の指導の強調、党組織の強化、国粋主義的なナショナリズムを挙げている。そして問題はこうした思想を掲げてどのような実績が上がるかであり、国民の反応によっては将来路線闘争が起こる可能性もあると指摘する。
まさにその通りであろう。かつてケ小平は、文革の反省から集団指導制を導入し、指導者の個人崇拝を厳しく戒めた。その際の敵役が華国鋒であり、毛沢東の指示と決定の堅持を唱えたが、それよりも実践の結果が大事だと主張したケ小平らに打倒された。習近平も、いつかその轍を踏む日が来ないとも限らない。
習近平につきまとう「統治の正当性」への不安
では、習近平政権の安定性がこれから揺らぐことはあるのか。本書は、選挙のない中国で習近平は「統治の正当性」の欠如を意識しており、国民の支持を失うことを恐れていると指摘する。これまでは生活水準の向上によってその支持をつなぎとめてきたが、次第にそれだけでは国民は満足しなくなる。
習近平は反腐敗闘争や環境の改善を進め、現時点では国民はまだ政権を支持している。しかし、昨年までの厳しいゼロ・コロナ政策と国民生活への管理と締め付けの強化に国民は不満を募らせた。オミクロン変異株の流行、ロックダウンへの抗議活動の広がり、そして準備なき制限措置の解除により、習近平の指導者としての権威に陰りが生じたことは否定できないと本書は指摘する。
さらに著者が問題として取り上げるのは、中国共産党の経済ガバナンスだ。第一に、中国は大きいので政策の微調整が難しい。第二に、市場化に乗り出してから、まだ40有余年しか経っていないのに経済は日本の1970年代か80年代の水準に達している。この経済実態に官僚機構は追い付けていない。そして第三に、官僚たちが指導者の優先順位を忖度して動く結果、多くの政策目標を予め検討し、調整して同時に追求することが難しい。さらに第四には、統制の強化と「経」から「政」にガバナンスの重点がシフトしたことが影響を及ぼしているという。
これらも大変興味深い指摘だ。どの国の官僚機構もそうかもしれないが、中国のそれが特に苦手としているのが部門間協調だ。共産党の大きな役割が実はそこにあるのだが、なかなかうまくいかず矛盾が起きる。
例えば、経済発展のために対外交流を盛んにすべきなのに、国家安全のためと称して外資企業の社員を拘束してしまう。そして統制の緩和と強化のサイクルは、政治と経済との矛盾という、社会主義市場経済の孕む根本的な矛盾の所在を指し示す。すなわち、経済活性化のために統制を緩めると、私営企業が強大化する一方、共産党の力が相対化される。それに不安を募らせ、やがて統制を強化すると、その結果として経済が活力を失う。
次の指導者は統制緩和に舵を切るだろうが、それまで中国の社会安定はもつのだろうか。社会がより自由だった江沢民時代の方が安定していたという本書の指摘は大変興味深い。
本書で一貫する「誰がどのような行動を取ればよいか」の考察
では、習近平政権の外交は如何なものか。日本人は忘れがちだが、内政の安定のためには外交の安定が欠かせない。日本と同様、中国にとっても最も重要な国は米国だ。本書は、現在の中国指導部の対米観は甘いという。米国議会は「一つの中国」の原則を否定する方向に動き、中国側の外交的レッドラインを試している。それに対し、中国は軍事演習の強化や戦闘機による台湾海峡の中間線越えなどで米国の軍事的レッドラインを試している。
だが中国自身が米国の地位を脅かしている今日、米国が譲歩する可能性は少ない、しかし中国の国粋主義的ナショナリズムは強く、米中は衝突への道を歩んでいると本書は憂う。
軍事力の増強を最重要課題とする中国の、軍拡のペースは2027年までは落ちないと著者は予測する。だが経済の減速もあり、中国が米国を相手に圧倒的優位に立つことはできない。
本書によれば、中国は米国と軍備管理、軍縮の話し合いに入り、東アジアで安全が保たれる仕組みの構築に尽力すべきであり、日本もそのための環境整備に努め、中国外交の路線修正を促す外交を強化すべきだ。日中関係については、それを競争的共存関係と捉え、中国との間に平和で安定した協力関係を築くことが日本の国益に資するという基本的な考え方は依然として正しい、中国との関係がもたらすマイナスを最小化し、プラスを拡大する「普通のあるべき外交」をしっかりやっていくのがよいというのが宮本氏の主張である。
外交に関する本書の分析を読んで感嘆するのは、それが単なる評論ではなく、事態の改善のために誰がどのような行動を取ればよいか、現実的な政策の考察が常に行われていることだ。プロの外交官にとっては当然のことかもしれないが、現状分析に当たる学者はこの姿勢をよく学ぶ必要がある。
対外政策決定に関し、現状に鑑みて、日本と中国に共通することが二つあるように評者には思われる。一つには、どちらも一方における競争と、他方における協力を同時に進めなければならない。そしてもう一つだが、競争と協力という矛盾する政策を巧みに同時進行できるかどうかには、どちらの国でも内政の事情が強く反映される。
安全保障の観点からは、相手を強化することになるので協力の追求はナンセンスだ。だが、協力せずに経済が衰弱すれば、競争は不可能になる。二つの相矛盾する真実の間で調整を図り、対外関係を安定的に運営できるかどうかは、ひとえに指導者の政治的な力量にかかっている。外交の基本も内政にある。
本書は内政と外交の全体をバランスよく捉えた著作である。ここで示される思考の枠組みを押さえておけば、次々と新たに発生する事象を分析し、政策を考える上でも役に立つ。優れた現状分析は、未来の事象を理解するためにも大いに活用されるべきであり、長きにわたって大きな価値を有するものなのだ。
●結婚式離れに喘ぐブライダル業界を補助金で救う必要は…税金の無駄遣い 8/24
森まさこ首相補佐官が自身のXで投稿した「ブライダル補助金」が物議を醸している。経済評論家の渡邉哲也さんは「ブライダル業界はコロナ以前から淘汰の波にさらされていた。そんな業界をあえて補助金で救う必要があるのか、ということがこの問題の本質だ」という――。
少子化対策のようにみえるが全くそうではない
森まさこ首相補佐官の「ブライダル補助金」に関するツイート(X)が炎上している。
内容的には、「先日、経産省サービス産業課よりレクを受けました。議連の要望が叶い新設されたブライダル補助金の第一次、第二次公募の結果について報告を受け、夏の概算要求に向けた対応も説明を受けました。これを受けて秋に議連を開いて議論して参りたいと思います」というものである。
ブライダル補助金は一見、少子化対策の一環のようにみえるが、実はそうではない。ブライダル業界を支援するものであり、インバウンドを支援するもので「外国人による日本での挙式を促す補助金」である。確かに結婚式場などウエディング業界には恩恵があるが、外国人への補助金政策ともいえるものなのだ。
特定の業界だけが優遇されてはいけない
また、これに関係して、森まさこ補佐官の政党支部が、結婚関連企業大手テイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)から100万円の献金を受けていたことも、大きな批判の的になっている。状況次第では贈収賄が成立する案件でもある。
この問題であるが、政治家が業界団体などからの陳情を受けることは当然の話であり、憲法で定義された請願権の一部といってよい。ただし、そこに特定の業者との癒着や金銭の授受があってはいけないわけだ。同時に陳情を受けたとしても、それが国民全体の利益になっていなくてはいけない。特定の業界だけが優遇されてはいけないのである。
そもそも、ブライダル業界を救う必要はあるのか
確かにウエディング業界は、コロナで大きな影響を受けただろう。ただし、それはウエディング業界だけの話ではなく、多くの業界に共通するものである。
また、コロナがなくとも、結婚式というものの在り方が大きく変容しており、「なし婚」「地味婚」が増え、結婚式場での派手な結婚式を行うカップルは減少し続けていた。この問題の本質は、核家族化が進み、職場などの人間関係も希薄化しており、派手な披露宴を無駄と考える人が増えたことであると考える。つまり、ブライダル業界はコロナ以前から淘汰の波にさらされていたわけだ。そんな業界をあえて補助金で救う必要があるのかという問題なのだ。
これはウエディング業界だけの話ではない。かつて、百貨店と銀行はつぶれないといわれていた時代もあった。しかし、バブル崩壊以降、百貨店の数は大きく減少し、銀行も淘汰の波にさらされ続けている。これは時代の変化によるものであり、受け入れざるを得ないものである。
大学や高校などの学校も同様であり、外国人留学生と巨額の補助金で学校を維持するのは本末転倒であり、日本人の税金が無駄に使われている実例といえるのだろう。
省庁と議員による利権構造
なぜ、このような無駄が許されるかといえば、各省庁と議員による利権構造がそこに存在するからといえる。
多くの学校法人は文部科学省からの天下りを受け入れ、学校は各種補助金獲得のために奔走する。令和4年度の私立大学等経常費補助金だけで約3000億円であり、他にもさまざまな補助金が支給されている。また、外国人留学生制度の予算は264億円程度となる。それは本当に必要なのかということなのだ。
確かに大学には研究機関としての役割もあり、それが日本の発展を支えている側面があるが、それは一部の大学であり、ただ単に学位を得るだけの場になっている大学も多い。
学生から選ばれなくなった大学をわざわざ補助金で救う必要があるのか、という問いは、今回のブライダル補助金とまったく同じ構造になっている。
誰も注目しない「予算決定までのプロセス」
これらの問題の根幹にあるのは、省庁別の縦割りと政官民が一体となった利権構造ということになる。法整備面ばかりが注目されるが、国の基本は予算である。年一度の通常国会では予算審議を行い、予算を決定する。国が行う事業はほぼすべてこの予算で決まり、予算が執行されることでさまざまな事業が行われるわけだ。
だが、予算の決定までのプロセスに関しては、ほとんどの人やメディアは注目していない。ここに大きな問題があるといえる。1月の通常国会が始まり予算案が提出されると、翌年度の予算編成が始まる。各省庁が翌年度以降の事業について、有識者や業界団体などを呼んで、編成作業を開始する。そして、7月には「骨太の方針」が決定する。
実は「経済財政運営と改革の基本方針」通称骨太の方針が一番の予算の肝であり、ここに入っている文言が予算に反映されるわけだ。これは各省庁と自民党の「部会」、政調会で調整され、総務会で機関決定。これらを自民党と政府の間で調整し、閣議決定する仕組みになっている。
国益に反していてもゴリ押しで通ってしまう
良くも悪くも、ここに長年政権を担ってきた自民党の正と負が存在するのである。国会は17の委員会で構成され、各専門分野別に個別の委員会となっている。財政金融や厚生労働、外交防衛など専門別に分けられているわけだ。どうしても、国会中継が入る予算委員会ばかりが注目されるが、それは最終的な調整のための委員会であり、根本は個別の委員会で決定するのである。
そして、自民党には各委員会に合わせ部会制度というものがある。部会には役人も出席し、予算や事業についてのレクチャーを受けるとともに各議員の陳情案件などを審議するわけだ。これを平場の議論と呼ぶ。部会には各部会の議員(一般的に族議員と呼ばれる)以外でも自民党国会議員であれば誰でも参加できる。一般的に国会は9時から始まるため、部会は国会の準備を兼ねて8時から始まる仕組みになっている。実はここで政策と予算のほとんどが決まってしまうのである。
問題は、ここに役人たちの利権と議員の陳情案件が多く含まれることであり、それが国益に反していてもゴリ押しで通ることがあることにある。
国民感情に反した政策や予算が連発される理由
さらに、予算は基本、前例踏襲であり、時代にそぐわなくなっても、無駄になってもなかなか削られないことも問題だ。自らの省庁の予算を増やすことが役人の手柄であり、族議員はそれを後押しするとともに自らの実績にするわけだ。これらが間違った方向で出ているのが、国民感情に反する各種政策や予算ということになる。
議員は選挙で選ばれる。そして、役人と異なり各分野の専門知識を持つ人は少ない。議員を育てるのが部会制度であるが、同時に長年のなれ合い構造による問題も生じるのである。そこで、政権交代でこれを壊すという話になるが、過去の政権交代の例を見てもわかるように、それは簡単ではなく、逆に議員側が素人集団の集まりになってしまうため、役人たちに牛耳られることになる。
コロナ禍に新たな利権が生まれ、暴走している
また、コロナは予算を大きく変えたことも大きい。景気対策、雇用対策等で膨大な新規の事業計画が生まれ、それを個別に丁寧に精査することなく、緊急性を優先する形で即時予算化された。ここに、新たな利権が生まれ、それが暴走しているともいえる。その最たるものが森補佐官の「ブライダル補助金」であるといえる。
今回、森まさこ首相補佐官の不用意なツイートで発覚したこの問題であるが、先述のようにこれはブライダルだけの問題ではない。すべての分野で同様の案件があり、時代にそぐわなくなっても続いている補助金が多数存在する。本来、このような問題を指摘し改善を求めるのが野党の役割といえるが、それが機能していないのが日本の最大の問題であり、またメディアの役割でもあるといえる。
●9月結成「百田新党」は岸田自民党や日本維新の会を駆逐する「巨大爆弾」か 8/24
作家の百田尚樹氏とジャーナリストの有本香氏が9月に「百田新党(仮)」を結成するべく、準備を進めている。知名度抜群なだけに、自民党に不満を持つ層や、日本維新の会、参政党への支持にも影響を与えることになりそうだ。
作家による新党では、石原慎太郎元都知事が結成した「次世代の党」などがあるが、長続きはしなかった。ベストセラー作家であり、ネット番組では舌鋒鋭く事象を解説する百田氏は、政治家としては素人。それだけに「長続きはしない」(自民党閣僚経験者)との冷ややかな見方もある。
百田氏は自身のYouTube番組で、LGBTなど性的少数者への理解増進法が成立すれば、社会の根幹を形成する家庭や皇室制度が崩壊し、日本が破壊される恐れがあるとして「保守新党を新たに立ち上げる」と宣言した。さらに、岸田文雄総理が法案成立に向けて動いているとして、支持できない、との立場を鮮明にしている。
本気度を疑う見方は強かったが、LGBT理解増進法が成立したことで、百田氏は「衆院選、候補者を立てます」と断言。
焦点となるのは、百田氏が自ら党首として陣頭指揮に立つかどうかだ。ネット番組でのやりとりでは、有本氏が「私、党首やりませんからね」と言うと、百田氏は「ワシは雑用係や」と応じるなど、けむに巻いている。
教訓とすべきは、小池百合子都知事が立ち上げた「希望の党」だ。2017年の衆院選では台風の目とされたものの、小池氏自身が衆院選への出馬を見送ったことで、求心力を失った。さらに小池氏の「排除」失言もあり、235人の候補を立て、わずか50議席の獲得で惨敗した。
百田氏には、党首として衆院選に出馬する覚悟があるのか。その言動は、岸田総理の発言以上にニュースになることだろう。
●公務員の給料は「政治主導」でもっと上げていい 8/24
国家公務員の初任給を1万円以上引き上げるよう、人事院が内閣・国会に対して勧告した。大卒・高卒の初任給をともに1万円超引き上げるのは、33年ぶりのことだという。しかし今回に関しては、公務員の給与アップのスピードを政治的にさらに加速することが適切だったのではないか。(経済評論家 山崎 元)
国家公務員の給与改定は 人事院勧告にプラスαが欲しかった
人事院は、8月7日に2023年度の国家公務員の給与改定に関して、内閣と国会に勧告を行った。勧告文書は川本裕子総裁から岸田文雄首相に手渡しされた。
国家公務員の給与は人事院の勧告に基づいて国会で承認されて決まり、勧告はある程度以上の規模を有する民間企業の給与水準を参考にして決定されるのが大まかな仕組みだ。
今回の人事院勧告では、国家公務員を志望する学生が減っている近年の傾向に鑑みて、大卒で1万1000円、高卒で1万2000円の初任給引き上げを行ったことが、ニュースの見出し的には「目玉」になっている。勧告後の大卒の初任給は24万9640円だ。
全体として、若手の給与の伸びを大きくするバランスになっていて、全体の平均で見たベースアップはプラス0.96%だ。金額では月額3869円に相当する。また、ボーナスが年間4.40月分から4.50月分に0.10カ月分増額され、増額分は期末手当の増と勤務の評価に基づいて支給される勤勉手当分に二分されている。
人事院の資料によると、モデルケースで試算した定期昇給分を加えると月収で約2.7%、年収で約3.3%の増加率になるという。
しかし、昨今の3〜4%程度の消費者物価指数ベースのインフレ率を考えるとしても、定期昇給込みでもインフレによる生活費の上昇をカバーできるかが危ぶまれる。加えて、そもそも、物価上昇率と比較すべきはベースアップ率なので、国家公務員の報酬は物価上昇に全く追いついていない。
これでは「官庁の中の官庁」とも呼ばれる財務省の職員をはじめとして、国家公務員が「デフレ好きの、インフレ嫌い」になるのは無理もないことであるように思われる。天下国家の観点から政策を論じる公務員も、天下国家の議論以前の生活実感に無意識のうちに影響を受けることがあるのではないか。貧乏が身につくと、周囲も貧乏にと、すなわちデフレを望むようになる。
「安いニッポン」解消の トリガーは賃上げ
今年から来年にかけてはマクロ経済政策上、デフレからの脱却を果たし、賃上げとマイルドなインフレの好循環を確立できるか否か重要な岐路に立つ重要な時期だ。
公務員の給与は、純然たる公務員だけでなく多くの職場で参照され影響力が大きい。現在のような仕組みだと、インフレの環境下では公務員の給与の伸びは参照される民間企業の給与の伸びを後追いする形になるので、公務員は「賃上げとマイルドなインフレの好循環」を実感するのが1年遅れることになる。
人事院の勧告は、現在の仕組みではこの程度で仕方がないとして、今回に関しては、政治的に特別にインフレ対応加算を考えてよかったのではないか。人事院に追加の勧告を求めるような形で公務員の給与アップのスピードを政治的に加速することが適切だったのではないか。
「賃上げ」が十分に行われて国民が年率2%程度のインフレを「常態」だと感じてくれるようになれば、日本銀行にも現在の金融緩和政策を見直す余地が生まれる。すると、為替レートの円高を通じて国民の生活費の抑制にもつながるような好都合な波及効果を生む可能性がある。「安いニッポン」を解消するトリガーは明らかに賃上げにある。政治が動かせるのは、公務員の賃金だ。
主には来年の春の民間企業の賃上げが、手取りベースで物価上昇を上回る「実質賃金の上昇」を実感させるものであるかどうかに当面の日本経済の行く末が懸かっているが、岸田政権はその気になれば、公務員の給与の特別加算を通じて賃上げの流れをつくることができるはずだ。
東大生の「公務員離れ」 若手優秀層に不人気な職場に
公務員の報酬水準がいかにあるべきかは、古くから論じられていて、なかなかスッキリした結論の出ない難しい問題だ。
今回の報告資料を見ると、人事院が20代から30代の若手人材において公務員離れとも呼ぶべき傾向に強い危機感を持っていることがうかがわれる。
ここ十数年くらいの傾向だが、上級職を目指すような学業優秀層が、職場として国家公務員を選ばなくなっている。端的に分かる現象は、上級職公務員の採用者の中の東京大学卒業者の比率が下落していることだ。
東大の卒業生が公務員に向いているとも限らないし、出身校や性別などが多様化するのは職場の一般論として好ましいことだ。しかし、事実上どこにでも就職できるような競争力とその背景にある問題処理能力を持った人材が集まらなくなることには損失がある。この間、組織としての官庁が得たものはあったけれども、重要な何かを失ったことも間違いあるまい。
職場としての公務員が不人気になったことの影響があるのだろう。東大では、学部に進む際の進路振り分けで法学部の人気が低下しているという。同学部のかつての威光を思うと隔世の感がある。
加えて、国家公務員にあっては、20代後半から30代半ばにかけての年代で離職者が増えていて、過去(人事院の文書では10年前)との比較で、この年代の人数比率が大きく低下している。
かつてコンサルティング会社に在職したこともあり企業の人事に詳しい川本総裁は、官僚組織が「最優秀層の学生が集まらなくなって、若手の離職者が増えている会社」のような、危機的な状況だとみているはずだ。企業なら、大規模な人事コンサルティングプロジェクトが必要な状況だ。
今回の勧告でも、20代後半から30代前半にかけての公務員の処遇が民間企業と比べて劣後することを解決しようとする努力の跡があるのだが、全体の年代別の給与構造を変えずにこの年代の条件アップを試みることには限界がある。
20代後半から30代前半が、お金を使って「人生を楽しむ能力」が最も高い年代に当たるとの意見があるくらいで(例えば書籍『DIE WITH ZERO』を参照)、この年代で十分お金が使えない給与カーブは痛い。
優秀な官僚を維持して 「政治主導」へのカウンターパワーを作れ
もっとも、国家公務員が優秀層の人材にとって魅力的な職場ではなくなった理由は、経済条件だけではあるまい。
民主党政権が成立する前後から盛んになった官僚バッシングは、形を変えつつ今日に引き継がれていて、官僚はかつてほど「尊敬される職業」ではなくなった。
大臣・副大臣・政務官などの少数の政治家が乗り込んで大きな官庁を差配しようとした、経営的に「無理ゲー」であった民主党型の政治主導は、首相官邸の権限を強化して官僚の幹部人事に介入する形にバージョンアップされて安倍政権・菅政権に引き継がれ、今日の自民党型の政治主導を形作った。このように官僚の政治家に対する立場が弱体化したことは、職場としての官庁の魅力を削いでいる。
ただし、政治主導が一概に悪いとは言えない。国民が官僚をコントロールできるのは政治を通じてだし、政治家の側がレベルアップするともっとうまく機能するはずだと考えることはできる。しかし、現実の政治と政治家を考えたときに、若手官僚や官僚志望者の信頼を得ることは容易ではなさそうだ。
官僚は、民間企業よりも雇用が安定しているし、相対的には先の見通しが立ちやすい職場だ。若手の官僚人材を確保するためには、初任給など目先の経済条件の改善だけでは限界がある。将来、どのような仕事ができるのかが大切だ。
また、官僚がよき公僕であり続けるためには、それを支えるに十分なプライドを持てることが必要だ。優秀層の人材は元々競争意識の高い人たちなのだから、広く社会的にもアピールできるステータスを設計する工夫が必要だ。官庁内の人事だけをモチベーションに「頑張れ」というのでは無理がある。
誰が優秀なのかが外部にも分かりやすく伝わる仕組み、政策に関わった官僚個人の名前がオープンに伝わる仕組みなどの工夫が必要なのではないか。
また、「決まったことは絶対に忠実に実行する」ことを条件に、「決まるまでは、官僚個人が政策に意見を言っていい」という慣例作りが必要であるように思う。論文を発表するなり、メディアで発言するなりを、官僚個人の責任で行うといい。意見の出ない官僚は、論文を書かない学者くらい無益だと思われるくらいでいいのではないか。
国民は、その問題の当事者である官僚の知見を知りたいだろう。また、官僚の意見は、政策面での政治家の暴走を防ぐ上でも有効だろう。この国の政策には議論が圧倒的に不足している。
日本の国民が、行政に全く素人の政治家を受け入れ、選挙を一種の人気投票のようなものとして許容してきた背景には、「政治(家)は頼りなくても、日本の官僚は優秀だ」という信頼があった。しかし、今その信頼が崩れようとしている。官僚組織の存在意義に関わる危機ではないか。
公務員の賃上げを祝う 「ムード作り」が政治家の仕事
高邁(こうまい)な政策的理想の追求は必要なのだが、何事もお金で評価されやすい今日にあって、お金の問題はやはり重要だ。
例えば、ざっと3000万円前後と推定される事務次官の年収は、カテゴリーチャンピオンの報酬としていかにも安い。上場企業の経営者の年収が不況でもデフレでも上がり続けてきた今日、あまりに大きな差が付いた。これでは、部下たちも力が出まい。
人事院的な用語では「勤勉手当」に相当するのかもしれないが、少なくとも局長級以上の官僚は、業績や能力の評価によっては、給料収入を凌駕するようなボーナスがもらえる仕組みがあっていいのではないか。
また、民間の優秀な人材の引き抜きも、期限付き・権限なしでお金だけ払って、まるで動物園が珍獣をレンタルするような形で雇うのではなく、十分な権限と立場とを与えた上で行うべきだろう。
公務員の人事制度については、根本的なコンサルティングプロジェクトが必要な大問題なので、話題にきりがないが、当面、公務員の賃金を思い切って引き上げることは大いに望ましい。この点は、はっきりしている。
すでに、税収は毎年の政府見通しに対して上振れしているが、「賃金の上昇を伴うマイルドなインフレ」となれば、人件費の増加に見合う分の相当部分が税収として戻ってくるはずだ。もちろん、賃上げは将来にわたって収入が増えることが予見できる給料を中心に行うべきだ。ケチな一時金では、貯め込まれてしまって消費に十分回らないことは過去の給付金で経験済みだろう。
各種の学校の先生、自衛官、福祉の仕事の関係者など、公務員の給料に連動して賃上げを提供したい関係者は数多存在するし、公務員人材の質的・量的確保は喫緊の課題だ。
「民間企業も、当然後に続くだろう」という前提の下に、まず公務員から率先して「実質手取りでプラス」の賃上げを当面「政治主導で」行うといい。その間に、報酬のベンチマークの決め方も含めて、公務員の人事制度を根本的に見直すといい。元々はコンサルティング業界のご出身である川本総裁には、そのための道作りを期待したい。
一方、岸田首相に期待するのは公務員の給与を当面追加で5%くらい上げる政治主導の官製賃上げだ。官民双方で賃上げを祝うムードづくりが政治家の仕事だ。小手先の対策よりも少子化に歯止めをかける上で効くだろうし、国力の向上を通じて、米国から旧式の武器を高値で買うよりも長期的にはよほど国防の役にも立つのではないか。
お金は「人に対して」有効に使いたい。
●安倍元首相襲撃事件と「政治の力」 有田芳生氏が語る自民党と教団の関係 8/24
2022年7月の参院選期間中に安倍晋三元首相を襲撃・殺害した山上徹也被告(42)は、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の熱心な信者の息子だった。教団への恨みが犯行の原因で、安倍氏は、教団との関係が深かったことで標的とされた。旧統一教会の問題を40年にわたって取材してきたジャーナリストで前参院議員の有田芳生氏(71)は、宗教で崩壊した家庭に育った「宗教2世」の問題をこれまでも取材してきたが、なぜ、事件は防げなかったのか。有田氏に、教団と政治との関係について聞いた。
国会議事堂の西側には、衆参両国会議員の活動拠点となる地上12階建ての3棟のビルがある。有田氏が現職時代に使っていた北側の参院議員会館事務所からは、自民党本部が見渡せた。安倍元首相が銃撃された後の雨の日に事務所の窓から見た光景は、今でもはっきりと覚えている。
「自民党本部の敷地内に設けられた献花台に長い列ができ、母親に連れられた子どもたちも並んでいました。安倍さんも、まさか旧統一教会の問題で白昼に暗殺されるとは思ってもいなかったでしょう。不幸な亡くなり方をされたと思います」
裕福な家庭に生まれた山上被告を一変させた旧統一教会
複雑な思いもあった。ジャーナリストとして長年、宗教問題を取材し、旧統一教会の霊感商法や過剰な献金の問題を追及してきた。2010年に参院議員に当選してからも、国会の質疑で旧統一教会の被害者問題を取り上げてきた。それでも、国が抜本的な対策に動くことはなかった。
殺人などの罪で起訴された山上被告は、兄と妹を持つ3人きょうだいの次男として育った。もともとは裕福な家庭だったが、父親が亡くなった後に母親が旧統一教会の熱心な信者になり、生活が一変した。母親は家族の財産を次々に売却し、最後には家族が住んでいた自宅も売ってしまった。献金の総額は1億円を超えるという。多額の献金が原因で、02年には破産宣告を受けた。生活は困窮を極め、山上被告自身も大学進学を諦めた。
山上被告の兄は病を抱えていた。兄の医療費を工面するため、05年に死亡保険金の受取人を兄にして自殺未遂をしたこともある。その時は一命を取り留めたものの、自らの命を捨ててまで助けようとした兄は、15年に自殺した。
「山上被告の家庭は不幸でした。私は旧統一教会問題に関する講演を全国各地でしていますが、山上被告のことを話すと、泣きながら聞いている人もいます。だからでしょう。山上被告には、大事件を起こした犯人であるにもかかわらず、全国からたくさんの食料品や現金の差し入れが届いています」(有田氏)
尾行、脅迫、暴行… 取材中に受けた嫌がらせ
有田氏が旧統一教会を取材するようになったのは1980年代半ばからだ。後に、週刊誌「朝日ジャーナル」の旧統一教会霊感商法追及キャンペーンにつながる。
「もともと旧統一教会は、花、ハンカチ、靴下などを販売して教団の資金を稼いでいました。しかし、それでは大した額にはなりません。75年7月に文鮮明(ムン・ソンミョン)教祖から日本の組織に送金命令が出され、そこから霊感商法に移っていきました」
霊感商法に使われたのは壺、多宝塔、印鑑、ペンダント、指輪など。何ということもない商品が、原価の数十倍で販売されていた。記事が掲載され始めると、有田氏は嫌がらせを受けた。
「自宅への無言電話、尾行も受けました。地下鉄の階段で殴られて『俺の顔、覚えとけよ』と言われたこともありましたね。脅迫の手紙にはカッターナイフが仕掛けられていて、封を開けると指が切れる仕組みになっていました」
有田氏が統一教会を取材し始めたのは、日本経済がバブル景気に沸いていた時代だ。それも90年代初めに終焉し、その後に訪れた不景気は様々な社会問題を引き起こした。人々の心に不安が広がっていったころ、旧統一教会の問題がテレビで話題になり始めた。92年、人気歌手の桜田淳子さんがソウルで開かれた教団の合同結婚式に参加したことは、雑誌やテレビの芸能ニュースで繰り返し取り上げられた。93年には、新体操の元選手の教団脱会騒動も話題になった。
「私も、92〜94年の間に旧統一教会に関する記事を100本以上書きました。しかし、新聞やテレビニュースでは結局は芸能ネタ扱いでした。霊感商法が社会問題として取り上げられることは、ほとんどありませんでした」(有田氏)
オウム真理教事件で変化した報道
一時は世間を騒がせた旧統一教会も、次第に関心が失われていった。特に、95年にオウム真理教による地下鉄サリン事件が起きてからは顕著になった。14人が死亡、約6300人が被害に遭った世界初の化学兵器テロに、ニュースはオウム一色になった。旧統一教会の問題は話題にすらのぼらない。有田氏への仕事依頼も、オウム真理教に関するものがほとんどになる。「週刊誌に旧統一教会のネタを売り込んでも通らず、編集者からは『オウムに比べるとね…』と言われるばかりでした」。
しかし、教団はこの後からだんだんと、自民党議員との関係を深めていったとみられている。2022年9月に自民党が公表した調査結果によると、所属する国会議員379人の半数近くにあたる180人が旧統一教会と何らかの接点があった。21年の衆院選や22年の参院選でも、旧統一教会の友好団体は自民党の候補者と「政策協定」を結んでいたことが報道された。その内容は、憲法改正、安全保障の強化、家庭教育支援法などの制定、LGBT問題や同性婚合法化の慎重な取り扱いなどを求める内容だ。こういった政策への賛同を明記した「推薦確認書」に署名を求めていた。
自民党と旧統一教会の関係を、有田氏は歴史的にこうひもとく。
「1954年に韓国で設立された旧統一教会は、58年に密航してきた信者が日本で布教を始めました。米国でもそのころから布教を始めています。68年には、『国際勝共連合』を韓国と日本で設立しています。宗教団体として政治家に接近したら怪しまれるだけだから、『共産主義に勝つ』という目的を掲げることで接近していったのです。安倍さんの祖父である岸信介元首相とも、国際勝共連合を通じて関係を深めていきました」
安倍家と旧統一教会の深いつながり
安倍氏と旧統一教会の関係も、祖父の代から続くものだ。有田氏は、自民党の大臣経験者から「旧統一教会と自民党の関係は安倍さんの仕切りだった」と聞いたという。
教団も、安倍氏を重宝していた。安倍氏は2021年9月、韓国で開かれた旧統一教会の関連団体であるUPF(天宙平和連合)の集会に、約5分間のビデオメッセージを寄せた。山上被告は、この動画を見て犯行を決意したと言われている。その中で安倍氏は、このように語っていた。
〈こんにちに至るまで、UPFとともに、世界各地の紛争の解決、とりわけ、朝鮮半島の平和的統一に向けて、努力されてきた韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁をはじめ、みなさまに敬意を表します〉
韓鶴子氏は創始者である文鮮明氏の妻で、現在の旧統一教会の教祖である。教団側にとっても、首相退任後も自民党に強い影響力を持つ安倍氏は、重要な存在だった。
それでも有田氏は、安倍氏と教団の関係について不思議に思っていることもある。
「安倍さんが03〜04年に自民党の幹事長を務めていた時、私が『旧統一教会が近づいてくるでしょう?』と聞いたら、『しょっちゅう来ますよ』と言っていました。『お会いになるんですか?』と聞いたら、『会わないようにしています』と。そのころはまだ、自民党の政治家は教団と距離を置いていたんです。教団からすると、イベントに祝電ももらえない時期もありました。それが霊感商法を問題視する声が風化していったことで、安倍さんは自らビデオメッセージを出すほど安心して付き合うようになっていました」
有田氏はオウム真理教などの取材を通じて、警察幹部たちとも関係を持っていた。ある警察幹部から聞いたあるフレーズが、今でも耳に残っているという。
「オウム事件の捜査終了直後、警察幹部は『次は統一教会だ』と張り切っていました。しかしその後、何の動きもなく、10年ぐらいたった時に、この幹部に摘発できなかった理由を尋ねました。すると、『政治の力だよ』と言っていました」
政治の力⁉ 安倍氏の事件は、「政治の力」で抑えきれなかったものが、山上被告の犯行を生み出し、その標的が「政治の力」の象徴だった安倍氏になったということなのか。
いまだ解決までは遠い宗教2世問題
旧統一教会の「被害者救済法」は22年12月、国会で成立した。今後は教団の宗教法人格の取り消しに発展していくかが注目されている。一方、対策は不十分だとの声もある。
「宗教法人格が剥奪されると、税法上の優遇措置がある程度は失われます。それでも、任意団体としての旧統一教会は残ります。国境を超えて携帯電話で送金できる時代に、献金を止めることも難しい。教団内部では『これは宗教弾圧だ』と批判することで結束を固めるでしょう」
有田氏は23年4月、安倍氏の死去に伴い、実施された衆院山口4区の補欠選挙に出馬したが、落選。現在、教団からはテレビ番組での発言が名誉毀損にあたるとして訴訟を起こされている。訴えられた途端にテレビへの出演は一切、なくなった。有田氏は、5月に開かれた支援集会で、こう決意を語った。
「訴えられてなんぼのもんじゃという気持ちでやっていく。徹底的に戦う。生きてるうちは戦う」
●「尹大統領は卑怯…汚染水に関し世論気にして次官に発表させるのか」 8/24
与党「国民の力」のユ・スンミン前議員は23日、前日に国務調整室のパク・クヨン第1次長が日本の福島第一原発の汚染水放出に関する後続措置を発表したことについて「国民の健康、海の安全に関する問題は尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が自ら発表すべきだった。卑怯(ひきょう)だ」と述べた。
ユ前議員は23日、CBSラジオの番組で「日本の首相の前では尹錫悦大統領が自ら(汚染水の放出に)賛成しておきながら、国民の前では民意が良くないから大統領、首相、長官ら、このような人々はみな逃げてしまい、一介の次官が出てきてこのように発表するのか」と述べつつ、上のように語った。パク第1次長は前日のブリーフィングで「日本の放出計画に科学的、技術的問題はないと判断した」と語った。
ユ前議員は「尹大統領は7月12日にリトアニアでのNATO首脳会議で韓日首脳会談を行った。その際、岸田文雄首相の前で「計画通り放出を履行するならば」と表現したことは、事実上放出に賛成して帰ってきたもの」だとし、「大韓民国の大統領が日本の首相の前で放出に賛成したため、そのままゲームオーバーとなったと私は考えた」と語った。
尹大統領は岸田首相との首脳会談で、「原子力安全分野の代表的な傘下国際機関である国際原子力機関(IAEA)の発表内容を尊重する」としながらも、「計画通り放出の全過程が履行されるかどうかについての情報をリアルタイムで韓国と共有するとともに、放出の点検過程に韓国の専門家も参加させてほしい」と述べた。
またユ前議員は、「『(日本との関係において)我々が得るものは何か』という根本的な問いを提起すべき時がすでに来ている」とし、「強制徴用問題も譲歩し、福島第一原発の汚染水も賛成し、そのようにして我々が得るものは何か」と述べた。  

 

●垂秀夫駐中国大使、処理水イチャモン 「核汚染水」表現の中国一蹴 8/23
岸田文雄政権は22日、東京電力福島第1原発の処理水をめぐる関係閣僚会議を開き、海洋放出を24日に開始する方針を決定した。岸田首相は「国が全責任を持つ」といい、風評被害対策や漁業者支援に全力を挙げる姿勢を強調した。これに対し、中国の習近平政権や、韓国と日本の一部左派野党は処理水を「汚染水」と呼び、結果的に風評被害を拡散させている。こうしたなか、中国政府に呼び出された日本の垂秀夫(たるみ・ひでお)駐中国大使は、中国の抗議に毅然(きぜん)と反論し、「核汚染水」という表現の変更まで求めた。識者は、「中国が警戒する男」といわれる垂氏の姿勢を評価し、岸田政権全体の覚悟と行動を求めた。
東電は22日、政府の決定を受けて処理水の海洋放出に向けた準備作業を始めた。まず、放出予定の処理水に含まれる放射性物質トリチウムの濃度を測定し、国の基準値を下回っているかを確認する。結果に問題がなく、天候や海の状況が穏やかならば、政府が決定した24日に海への放出を始める。最初に放出予定の約7800トンは、約17日かけて放出する。
福島第1から2023年度に計画する処理水の海洋放出量は約3万1200トンで、トリチウムの総量は年間上限とする22兆ベクレルの4分の1以下となる約5兆ベクレルとした。保管タンク約10基分を減らすことができるという。
トリチウムの濃度は、国の規制基準の40分の1、世界保健機関(WHO)の飲料水基準の7分の1に希釈する。
放出計画に関わった省庁幹部は「処理水のレベルに問題がないかの検証や、トンネルを通した沖合への放出システムなど、時間をかけて方策を練り、高度な安全性を担保できる形を提示した。実行後もモニタリングを継続していく。官邸には、地元住民や、諸外国への丁寧な説明を重ね、しっかりと信頼を得てほしい。結果として、そうした積み重ねが、いわれのない『批判』を防ぐことにもなる」と語った。
国際原子力機関(IAEA)も「国際的な安全基準に合致する」と評価している。
こうした科学的根拠を示しているのに、中国は猛反発してきた。
中国外務省の汪文斌副報道局長は22日の記者会見で、「深刻な懸念と強烈な反対」を表明し、「日本が誤った決定を正し、核汚染水の海洋放出計画を撤回することを強く促す」と述べた。さらに中国の孫衛東外務次官は同日、駐中国大使の垂氏を呼び出して、抗議してきた。
これに対し、垂氏は「(中国が)科学的根拠に基づかない主張を行っていることは残念だ」と述べ、中国が日本産水産物などに対する事実上の輸入規制を敷いたことにも「科学的根拠に基づかない措置は受け入れられない」と、真っ向から反論した。
垂氏はさらに、中国側が処理水を「核汚染水」と呼んでいることについても、「日本が海洋放出するのは『汚染水』ではなく、『ALPS(多核種除去設備)処理水』であり、中国側はこの用語を使うべきである」と強く求めた。
まさに正論である。
垂氏は、京都大在学中はラガーメンとして鳴らし、1985年に外務省に入省した。いわゆる「チャイナスクール(中国語研修組)」だが、国益重視の気骨あふれる外交官として知られた。中国・モンゴル課長や駐中国公使などを歴任し、中国での人脈の広さと情報収集能力の高さに定評があった。
第一次安倍晋三政権の対中外交理念である「戦略的互恵関係」を編み出した。第二次安倍政権時代の2020年9月に駐中国大使に起用された際には、「中国側が人事に同意しない」との見方も出たほどだ。
垂氏の対中姿勢をどう見るか。
京都大学の先輩にあたる福井県立大学の島田洋一名誉教授は「垂氏は外務省のチャイナスクールには珍しく、中国にしっかり言うべきことを言う外交官として若いころから注目されてきた。大使として赴任した後の言動も信頼できる。現地にいる垂氏が頑張って発信を行っているのは、日本人の士気を鼓舞する意味でプラスになる」と話す。
ただ、日本の左派野党には、処理水放出に反対する向きもある。
共産党の志位和夫委員長や社民党の福島瑞穂党首は22日、X(旧ツイッター)で放出に反対を表明し、処理水を「汚染水」と呼んで政府の対応を批判した。
岸田政権は今後、どうしていくべきか。
島田氏は「処理水問題で、中国が日本産水産物の輸入規制を行っているのは、日本が半導体などハイテク分野で米国に歩調を合わせて中国への輸出規制を行っていることへの報復だろう。岸田首相が議長を務めた広島G7(先進7カ国)サミットでは、中国の経済的圧迫に対してG7が結束して対抗措置を取ることを決めており、G7に対抗措置を呼びかけるべきだ。日本で風評被害を生み出している政治家に対しても、法的措置を含めた対応を取った方がいい」と語った。 
●辞める必要は? 松川るい議員の女性局長辞任に西田亮介氏 8/23
「昔あるいは現役の政治家も海外で無茶苦茶なことをしていた。今回の行動はそこまで軽率だったのか?」
自民党女性局のフランス研修が「観光旅行だ」などと批判されている問題で、松川るい参議院議員が女性局長の役職を辞任したことについて、東京工業大学准教授の西田亮介氏が22日の『ABEMAヒルズ』で見解を述べた。
西田氏は「辞任は本人の意思であり、解散の可能性もちらつくなかで自民党も早く幕引きするためにもやむを得ないと判断したのだろう。しかし、本当に辞任する必要があったかどうかについては疑問だ」とコメント。一方で、「物価高や円安、それからコロナで長く海外に行きづらかった事情もあり、不満の蓄積した国民感情に配慮が足りなかったとは言える。むろん経費精算については透明性を確保し、国費が直接の遊興費に使われていないかチェックできることが大事だ」と指摘する。
今回の件で、“炎上させれば辞任させられる”という既成事実を作ってしまったことにはならないか。西田氏は「その通りだ」と回答。そして、「昔の政治家や現役の政治家の手記には、海外で大使館を巻き込みながら無茶苦茶をしていたことをちらつかせる記述もある。それと比較して、今回の松川議員をはじめとする自民党議員たちの行動がそこまで軽率だったのかというとそうともいえず、穏当だ」との考えを示した。
最後に、「海外視察は産官学民どこでも物見遊山的な性質が強いが、それでしか広げられない『幅』もあるはずだ。そんなことはみんなわかっている。日本が“貧すれば鈍する”と泥縄式に見聞や視野を広めることをやめようとならないことが大事だ」とした。
●82歳の麻生太郎・副総裁に続き、84歳の二階俊博・幹事長も 「ドミノ引退」 8/23
麻生太郎・自民党副総裁が引退の意向を固めたという情報が流れている。麻生氏の後継者と自他共に認める長男の将豊氏は、いつでも総選挙に出馬できる準備が整っているという。政界では、どれほどの実力政治家でも、「引退」が決まった途端にたちまち力を失っていく。
かつて郵政選挙に大勝して自民党内に圧倒的な力を持った小泉純一郎・元首相でさえ、「総裁選不出馬」を表明した途端、現職首相のうちに求心力が低下して後継者争いが激化した。
政界実力者と呼ばれた野中広務・元幹事長も政界引退を表明すると急速に力を失い、野中氏が仕切っていた自民党最大派閥の橋本派も東京地検特捜部の日歯連闇献金事件【※】捜査を受けて壊滅的打撃を受けた。
【※2001年に都内の高級料亭で野中氏を含む旧橋本派の政治家らが日本歯科医師連盟(日歯連)から1億円の小切手を受け取ったが、政治資金として届け出をしなかった闇献金事件(2004年に発覚)。村岡兼造・元官房長官らが逮捕され、有罪判決を受けた】
政権を一手に支えてきた麻生氏の引退が秒読みとなること自体が、岸田首相の政権基盤に大打撃となるのは間違いない。
政治評論家・有馬晴海氏が語る。「麻生さんは文字通り岸田政権の大黒柱。副総裁として党内に睨みを利かせ、政策面では前財務大臣として岸田政権の予算バラマキを財務省に認めさせてきた。外交もそうです。とりわけ岸田派、麻生派、茂木派の主流3派体制は麻生さんの存在でなんとか持っている。その麻生さんの引退が見えてきて力を失えば、主流3派体制は崩壊に向かう。麻生派では総裁候補の河野太郎・デジタル相と麻生さんの義弟の鈴木財務相との跡目争いが予想されるし、次の総裁選を狙っている茂木幹事長は麻生さんという重しがなくなるとわかれば首相に反旗を翻しやすくなる。最大派閥の安倍派でも、有力な次期会長候補の萩生田光一・政調会長が首相の政策に批判を強めており、来年の総裁選に向けて自民党内で反岸田の動きが加速するのは間違いないでしょう」
それに拍車をかけるのが自民党実力者の引退ドミノだ。
解散・総選挙が来年にずれ込めば、82歳の麻生氏に続いて84歳の二階俊博・幹事長も地盤を三男に譲って引退するという見方が強い。
「二階派のベテラン議員の中には二階氏と一緒に引退しそうな議員が多い。そうなると二階派でも跡目争いが始まるでしょう」(有馬氏)
自民党の5大派閥を見ると、後継者争い真っ最中の最大派閥・安倍派に加え、麻生派、二階派、そして茂木派でも茂木幹事長を支持する衆院側と小渕優子・元経産相を支持する参院側が一触即発の状況にある。
麻生氏の引退表明をきっかけに、自民党の各派閥で本格的な跡目争いが激化し、派閥分裂や再編という自民党大動乱に突入する可能性が強いのだ。
そんな政界激震の中で、党運営を麻生氏に丸投げしてきた支持率ジリ貧の岸田首相が政権を保つのは容易ではない。麻生氏の“電撃引退表明”が、瀕死の岸田首相にトドメを刺すことになるかもしれない。
●天下の愚策 都会人の“罪の意識”を利用した「ふるさと納税」が日本を滅ぼす 8/23
2008年に開始され、昨年度は実に890万人もが利用したふるさと納税。いまや地方自治体にとって貴重な財源ともなっていると伝えられていますが、この寄附金税制に対しては賛否両論が巻き起こっているのもまた事実です。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、ふるさと納税を「都会人の愚かな罪の意識をターゲットにしたロクでもない政策」と一刀両断。同制度を終わらせなければならない理由を徹底解説しています。
「上京してすみません」都会人の罪の意識につけ込む、ふるさと納税
1980年代からジワジワと日本経済を蝕んできた競争力低下、そして1990年代以降のバブル崩壊と国際化対応失敗で、国力の決定的な衰退が続いています。その原因の1つに、地方の活力低下があるし、その地方の活力の足を引っ張っているのは都会の側ではないか、そのような観点を考えてみたいと思います。
1つ思い浮かぶのは、1970年代の「列島改造論」でした。田中角栄の提唱したこの「改造論」ですが、ダーティーな手段で集めたカネを選挙資金として派閥内にバラまくという、文字通りの金権政治を行った人物です。せっかくの「改造論」も、角栄というキャラクターと一緒に「悪印象」をベッタリ貼られて歴史の彼方に消された印象があります。
この「改造論」ですが、簡単に言えば、
「工業を地方へと再配置すると同時に、交通・情報通信の全国的ネットワークの形成をテコにして、人とカネとモノの流れを巨大都市から地方に逆流させる“地方分散”を推進する」
というものです。地方がどんどん衰退してゆく現在から考えると、何とも素晴らしい政策に見えます。勿論、100点満点ではありませんし、この改造論がそのまま実現したとしても、日本経済の衰退を食い止めることができたかというとそれは違うと思います。例えば、製造業の時代は限りがある中で、地方が知的産業によって活性化するという文化・文明的な観点は「改造論」には欠落していました。
ある意味では、中身つまりソフトウェアよりも、ハードつまりハコモノ行政に偏った政策論であったのは事実で、21世紀には限界を露呈していたと思います。また、交通ネットワークにしても、ストロー効果、つまり便利な交通システムで地方と都市を直結すると、経済も人も都市の方へ「吸い上げられてしまう」という逆効果についての思慮は不足していたと思います。
ですから、両手を挙げて賛成とは行きませんし、何よりも金権政治によって自民党の派閥抗争を勝ち抜こうという角栄の政治手法に関しては、全くもって戦後日本の政治における「黒歴史」に他ならないと思います。
そうではあるのですが、とにもかくにもこの「改造論」というのは、「GDPを地方に分散せよ」」というのが、その核にある主張であり、その必要性、その先見の明ということについては、不滅の輝きを持っていると思います。以降、様々な政治家が様々な政治スローガンを掲げましたが、ここまで国家の大規模な中長期見通しについて明確なビジョンを持った主張はなかったと思います。
「列島改造論」を潰したトンチンカンなセンチメンタリズム
ですが、この「改造論」はあっけなく潰されました。この石油ショック+金権批判という周囲の問題に加えて、「改造論」そのものへの批判といいますか、反発も強かったからです。批判は主として2つの点に関してでした。
1つは、改造論で地方経済が拡大するのなら、地方の土地を買っておこうということで、様々なマネーが流れ込んで、地方の主要都市の地価が上昇したことです。これに対して激しい批判が起きました。
もう1つは、産業を地方に拡散することは、公害も同じように拡散して、地方の美しい自然が破壊されて環境が汚染されるので反対というものです。
どう考えても、これはイチャモンとしか言いようがない話でした。地価の上昇については、例えばですが、主要都市の駅前とか商業地区などに投機的なマネーが入ってきただけで、別に盛岡とか富山、釧路といった中核都市の住宅地全体が当時の言い方を借りるのなら「狂乱地価」になっていたわけではありません。
もっと言えば、静かな住宅街となっているシャッター通りに「商業地区としての高額な評価額と担保価値」がくっついていて、その実勢価格との調整ができていない現在と比べますと、地方の地価が上昇したということは、それだけ地方の経済について経済界が明るい見通しを持っていたということです。
にもかかわらず、「土地が高くなるというのは要するに家が買えなくなることだ」「だから庶民には苦痛でしかない」「そんな地下上昇を地方にまで輸出するというのは、都市の住民に取っては申し訳ない」というトンデモ感情論が渦巻いてしまったのでした。
もう1つの公害の拡散懸念というのも、合理的な理由はありません。70年代の公害問題は、50年代から60年代の技術や設備を60年代の規制で運用する中で発生したわけです。ですが、強烈な反省とともに、70年代の中期には環境フレンドリーな生産技術がどんどん実用化していましたし、環境規制も厳しくなっていました。
ですから、経済の地方拡散イコール公害の拡散にはなるはずもなかったのです。ですが、「産業化は公害を伴う」「その公害を自然の美しい地方にも輸出するというのは、都会の人間として申し訳ない、あるいは許せない」というセンチメンタルなロジックが拡散すると、それが世論の大勢になって行ったのでした。
つまり、石油ショックと金権批判という環境だけでなく、「列島改造論」は都市の感情論、それも「地価上昇を輸出して申し訳ない」とか「公害を輸出して申し訳ない」という「すみません感情論」によって潰されたのです。ネーミングも多少問題があり、「改造論」というと、それこそ「コンクリートをバラまく」イメージが伴ったと言うこともあります。ですが、中核にあったのは「罪の意識」、それも一方的でトンチンカンな、センチメンタリズムでした。
その当時を振り返ってみると、この「罪の意識」というのは本当でした。都市の人々は、本当に地方の地価が上がるのは悪いことで、申し訳ないと思っていました。公害についても、「地方は都会の人間が余暇を楽しむために、自然を残しておいて、自分たちのレジャーランドになって欲しいし、それ以外は望まない」などという偽悪的なあるいは利己的な感情はそれほどなかったのです。
70年代の都会人は本当に素朴に「地方に産業が移転すると、公害も拡散してしまうので、それは申し訳ない」と思っていたのです。何という浅はかさであり、何という愚かさでしょう。これでは、悪意のある差別のほうがまだ「まし」というものです。「善意とヒューマニズムに酔い潰れて真実を見失った感情論」が起こした悲喜劇と言っても過言ではありません。
未だ政策を左右する「都会人の愚かな罪の意識」
もう一度申し上げますが、
「産業の地方への拡散によって、都市と地方の経済格差を是正する」
この考え方は全く間違っていません。と言いますか、先見の明のある、そして日本という国が生き延びていくために最低限必要な原則だと思います。ですが、その大事な原則が、都市の人々による全くの勘違いによる「罪の意識」によって潰されたのです。
では、この勘違いによる「罪の意識」によって国の政策が歪められるというのは、70年代の日本人だけが「やっちまった」ミスなのかというと、問題はそうではないということです。
21世紀に入って四半世紀が過ぎようという現在でも、この「都会人の愚かな罪の意識」というのは健在であり、それが政策を左右しています。と言いますか、70年代より悪質なことに、この「都会人の罪の意識」をそのまま政策として取り入れたシステムが稼働しているのです。
他でもない「ふるさと納税」です。
自分は都会に住んでいて都会に地方税を納税しているが、自分の「ふるさと」が衰退してゆくのには「心を痛めている」ので、何とか「地方の役に立ちたい」、これが「ふるさと納税」が「付け込んでいる」都会人の精神状態です。つまり70年代に改造論を潰した際の意識と、全く同質でありながら、より明確な感情としての「自分は地方に役立ちたいのに、都会に住んでいて申し訳ない」という「罪の意識」、そのものをターゲットにした政策以外の何物でもありません。
どうしてこの「ふるさと納税」がいけないのかというと、理由はいくらでも挙げることができます。
1)地方税制を歪める。経済規模に応じて地方政府の行政サービスは必要になるのに、都市の自治体に入るべき金が地方に流れてしまう。特に、東京は今後、引退世代の単身家庭が激増するので金を貯め込んでおく必要があるのに、コロナで知事がバラマキを行った結果、財政規律はユルユルになっており、「ふるさと納税」など一刻も早く止めないと、近未来に破綻自治体になってしまう。
2)正規の税収でない「お土産物を倍の値段で売った」上がりの半額を、地方の自治体は手にするが、それで地方経済が復活するわけでも、地方の消滅可能性都市が延命するわけでもない。ゾンビはゾンビなのに、かえって整理統合を先送りするだけ。
3)仮に大都市は「ふるさと納税」で税収が流出しても「やって行ける」のであれば、リストラして「小さな政府」にすることで、税率を下げるべき。とにかく税制と、歳出のコントロールということがセットで政策論争を経て、実施されるべきスキームが、メチャクチャになっている。
4)例えば子どもが2人とか3人などいて、教育をはじめとした地域のサービスを受けているとか、高齢世帯で地域の福祉に頼っている場合でも「ふるさと納税」で、その地域の納税を部分的に回避するというのは、全くのモラルハザード。
他にもあると思いますが、とにかくロクな政策ではありません。一刻も早く止めるべきなのですが、驚いたことに菅義偉前総理は、この8月19日に長野市で講演し、自分が総務大臣の時代に提唱した「ふるさと納税」の規模について、「総額2兆円という目標は必要だ。自然にそうなっていくことが望ましい」と述べたそうです。
報道によれば、ふるさと納税制度に基づく2022年度の寄付総額は9,654億円だったそうですから、2兆円を目指すというのは、今から更に倍増させるということです。これはもう異常としか言いようがありません。
終わりにすべき「自分にお歳暮が届いてラッキー」的なお遊び
人気取りになるというのは、分かります。住民税の負担に嫌悪感を持っている都市の住民、特に現在すでに「ふるさと納税」をしていて、制度上の上限アップがあればいいと思っている人には「とりあえずトク」だということになるでしょう。また「税収がダメダメ」だが「ふるさと納税」で何とか自治体の財政をまかなっている地域では、額が増えるのは大歓迎だと思います。
ですが、全体としてはもう無理なのです。大都市はやがて人口高齢化で税収が枯渇し、歳出が激増します。地方の多くの地域では、鉄道を剥がしてもバスの運転手がいないので、人が住めない地域が出てきます。橋の架替えや水道管の総取り替えなども、大変で、人口減の中では多少「ふるさと納税」のカネが入っただけでは、どうしようもない自治体も増えます。
とにかく、都市にはもう余裕はありません。そして地方の多くの自治体は、役場だけでなく、居住地の統合と集中へと進むフェーズに入っています。そんな中で、税収については、納税地と行政サービスの還元を一致させて、成立しない部分は切る、成立する部分、どうしても守らねばならない部分は守るということを、真剣にやっていかなくてはなりません。
これからは、1年毎に「ふるさと納税」のデメリット、つまり都市も地方も自治体が財政破綻へ向かうという事実は悪化するばかりです。「自分にお歳暮が届いてラッキー」的なお遊びはもう終わりにしなくてはいけません。
そもそも、菅義偉氏が、この制度を推進しているというのも、あまりいい気持がしません。菅氏の場合、秋田県で生まれて、いちご農家を継がずに、教職を目指したが進学先の関係で上京して、現在に至っているようです。奥さまは奥さまで静岡のいちご農家に関係しているようですから、恐らく「いちご農家を継がなかった」ということへの「罪滅ぼし」をしたいという気持ちを、意識的に、あるいは潜在的にお持ちということは想像できます。
本当の心の中はともかく、この骨の髄まで政治家である方としては、「上京者の持つ、故郷への複雑な思い」を幅広くアピールすることで、政治的な求心力に使おうと考えているということはあるに違いありません。
ですが、こうした発想はやっぱりダメだと思います。国政を担う人間が、故郷を捨てて上京したことを、一種の原罪のように思って、それを「返礼品ごっこ」の奇怪なシステムでチャラにしようというのは、やはり安易ですし、末期的です。
もしも、菅氏が本当に心から「いちご農業」のことを考えているのなら、まず「いくらプレミアム化しても儲からない」仕組みにメスを入れて、大規模化、栽培技術、栽培設備の高度化などを取り入れて、ハッキリと「持続可能な高収益産業」に切り替えていく仕組みを提案すべきです。また、必要に応じてその改革にカネを投入すべきです。
そうした正攻法で地方の問題に切り込むことなく、安易な「返礼品ごっこ」で曖昧なカネを動かし、それが地方問題に関する政策だというのは、やはり止めた方がいいと思います。この制度によって、地方の財政的自立が損なわれるばかりか、納税とその対価としての行政サービスのバランスに民意を働かせるという、地方自治という民主主義の根幹が腐ってしまう、これは大変なことです。 

 

●中国の根拠のない処理水批判に反論した政治家が1人もいない日本の現状 8/22
ジャーナリストの有本香が8月22日、「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。福島第一原発の処理水の海洋放出について解説した。
24日にも処理水放出か 〜22日の関係閣僚会議で決定へ
東京電力福島第一原発から生じる処理水について、岸田総理大臣は8月21日、全国漁業協同組合連合会の会長らと総理官邸で会談し、風評被害などの対策に「国が全責任を持つ」と伝えた。早ければ24日に海洋放出を開始する方針を固めた。22日の関係閣僚会議で決定する。
岸田総理「坂本全漁連会長を始め、漁連の皆様方とお目にかかり、率直な意見交換をさせていただきました。本日のやり取りを踏まえ、22日朝に関係閣僚会議を開催し、政府全体で安全性の確保や風評対策の取り組み状況について改めて確認し、東京電力によるALPS処理水の放出の具体的な日程を決定することにいたします。」
西村大臣の福島第一原発「処理水」に関するSNS「ショート動画」がわかりやすい 〜政府広報としてCMなどで積極的に流すべき
飯田「もともと「日米韓首脳会談のあとにこれを決める」と言われていました。」
有本「本当はもっと早くてもよかったと思いますが、評価したいです。何より重要なのは、政府がもっと積極的に風評を抑え込み、否定することです。」
飯田「政府が。」
有本「21日に西村経産大臣のSNSで、ショート動画のようなものがアップされていました。これが非常にわかりやすいのです。私たちの日常生活のなかでも、自然界から受ける放射性物質の影響があるではないですか。」
飯田「そうですね。」
有本「それが大体2.1ミリシーベルトくらいです。今回の処理水で言われている影響は、その100万分の1〜7万分の1くらいです。さらに今後、放出後もしっかりとモニタリングしていく予定なので、「これ以上何が必要ですか?」という話です。それ自体がわかりやすい事実なのですが、この短くまとめられたショート動画を、政府は「政府広報」という形で流せばいいのではないでしょうか。」
飯田「政府広報として。」
有本「西村大臣のSNSをフォローしているのは10万人足らずなので、これでは不十分です。メディアでのCMなどを使い、流していく必要があります。」
政府は風評被害を防ぐためにも「科学的に問題ない」ということを積極的に言っていくしかない
有本「何よりも漁業関係者の方々が困っているのは、輸出が減ってしまって魚価が上がらないことです。」
飯田「漁価が上がらない。」
有本「国内の需要喚起を積極的に行う必要があると思います。ただ、全漁連の坂本会長が政府と対立しているように煽っているメディアもありますが、コメントを拝見していると、必ずしもそうではない。科学的な安全性については理解を深めてきているという話もされています。」
飯田「そうですね。」
有本「国民もそうだと思います。政府は「科学的に問題ない」ということを積極的に言っていくしかないと思います。」
安心をつくり出すのが行政の役割
飯田「漁業者の方々も、海が汚れて魚が食べられなくなることを心配しているわけではない。」
有本「風評被害を心配しているのですよね。風評を封じ込めるには、科学的に問題なく「安全」であることを広めるしかありません。」
飯田「風評を封じ込めるには。」
有本「いつもそうなのですが、「安全」よりも「安心」ということを先に言いますよね。以前、東京では築地から豊洲へ魚市場を移転するときに、あろうことか知事が「安全はあるけれども安心はない」と言ってしまったのですが、あれは大きな間違いです。安全であるならば、安全であるということを過剰なくらい言って、安心をつくり出すのが行政の役割です。政治の役割としては今後、「いかに安全であるか」を言うしかない。」
中国の処理水への根拠のない批判に反論した政治家が1人もいない日本の現状 〜大人しすぎる日本の政治家
有本「処理水の海洋放出について、いろいろと文句を言っている中国などは、トリチウムに関しても濃度が大体日本の6〜7倍とされていますよね。「何を言っているのだ?」ということを、「誰か1人でも有力政治家が言ったのか」という話なのです。」
飯田「いませんね。」
有本「このようなときは、相手の言っていることに対してきちんと反駁しなければならない。それを国民は見ています。「あなたの言っていることは違いますよね?」と言うだけの政治家がおらず、あまりにも大人しすぎます。」
飯田「大人しすぎる。」
有本「間違ったことを言われても言われっぱなしというのは、国際的にはもちろん弱いと思うのですが、国内でも外国から訳のわからない風評のようなものを広められていることに対して、きちんと対抗していない状態を国民は見ています。」
飯田「国際原子力機関(IAEA)が専門家たちを引き連れて調査し、報告書を出しました。そのなかで科学的な安全性は担保されているのだと。IAEAも継続してモニタリングしていくと言っています。」
有本「「何の問題があるのか?」という感じですよね。なかには、「処理水を薄めて政治家が飲むパフォーマンスをすればいいのだ」と言う人もいますが、それも中国が飲んでみろと言ったからそれに乗るような話になるので、そのような馬鹿馬鹿しいことをやる必要はありません。本来は飲むものではないのだから。」 
●韓国が忌み嫌った「アベ」が亡くなったことに、韓国人はなぜ困惑しているのか 8/22
日韓外交に絶大な影響を及ぼしてきた故安倍晋三元首相と韓国の反日勢力の関わり合い。「ポスト安倍」時代の日韓関係はどうなっていくのだろうか。『日韓の決断』よりお届けする。
「極右政治家」の象徴
第26回参院議員選挙の投開票日まであと2日と迫った22年7月8日、元首相の安倍晋三は奈良県での演説中に銃撃され、帰らぬ人となった。
この訃報が韓国に伝わると、一介の日本人記者である私にまで韓国の知人からお悔やみの言葉がいくつも届いた。その姿に、個人の問題を国民全体の問題としてとらえがちな韓国の集団主義文化を感じつつ、この国にとって「アベ」を失ったインパクトの大きさを肌で感じた。
韓国で「アベ」は特別な響きをもつ。だからこそ標的にもなりやすい。
保守系与党「国民の力」に羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)という裁判官出身の著名な女性議員がいる。日本にも度々訪れ、筆者も東京で開かれた国際会議で席が隣同士になり言葉を交わしたことがある。
国内では舌鋒(ぜっぽう)鋭く革新政党を追及するため保守層に人気があるが、大統領時代の文在寅を「金正恩の首席報道官」とからかったときは革新層の反発を招き、逆に親日派と攻撃され「安倍の首席報道官」とか、羅の名前を安倍(アベ)と掛けて「ナベ」などと呼ばれた。
韓国人の一般的な安倍観は、A級戦犯容疑者だった元首相、岸信介の孫であり「歴史修正主義者」「極右政治家」とのレッテルに代表される。国民にもメディアにも安倍は右傾化する日本政治の象徴であり、巨大な存在だった。さらにジェンダーや性的マイノリティーへの差別的な表現が批判を受けた議員を重用したことも韓国内で安倍のイメージを悪くした。
摩擦が経済、安保に波及
日韓関係が「国交正常化後で最悪」といわれたピークは、おそらく19年8月22日、文在寅政権が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めたときではないだろうか(後に「日本への破棄通告の効力を停止」に変更)。
これに先立ち日本政府は日本企業に対する元韓国人徴用工への賠償命令を確定させた大法院判決への事実上の対抗措置として、半導体材料の対韓輸出管理の厳格化措置に踏みきっていた。日韓間の摩擦が歴史問題から経済、さらに安全保障分野まで波及した点で極めて深刻な事態に陥った。
筆者はGSOMIA破棄決定のニュースに韓国で出くわした。日韓関係の立て直し策を話し合う国際会議に参加していたソウルで大きな衝撃を受けた。
この直前に取材した韓国外務省幹部は「破棄だけはあり得ない」とはっきり否定していたし、国際会議の韓国側メンバーも青瓦台の決定に「想定外だ」「考えられない」と一様に動揺を隠せないでいた。
そのうちの1人に北朝鮮情勢と安全保障が専門の尹徳敏(ユン・ドクミン)(尹錫悦政権で駐日大使に就任)がいた。「日米韓の3カ国協力を揺さぶるような決定を喜ぶのは北朝鮮の金正恩だけだ。理解に苦しむ」。
こうした尹徳敏のコメントを載せた急ごしらえの記事を翌日付の日本経済新聞1面用に仕立てて東京に送ったのを思いだす。
韓国社会が「反日」で一枚岩になった瞬間
日本の輸出管理厳格化措置を契機に、それまで文在寅の経済運営や外交政策を厳しく批判してきた保守系メディアも矛先を日本に転じ、韓国社会が「反日」で一枚岩になった。
「経済戦争が全面化」「破局へ追いやるアベ」――。首相として同措置を最終決定した安倍を批判する言説が韓国メディアにあふれた。
左派系の市民団体や労働組合などの反政権勢力が結集して「民心」と呼ばれる国民感情をあおり、政権を突き上げるかたちで日本との2国間の取り決めを覆す。あのときと同じだ――。
日韓GSOMIA破棄決定の一報に筆者は、15年末以降にソウルで目の当たりにした日韓慰安婦合意をめぐる騒動を思いだしていた。
この年の春、筆者にとって2度目の韓国勤務がスタートした。慰安婦問題をめぐり日韓の対立が泥沼化しているさなかだった。
韓国の報道・ニュース番組で「アベ」という言葉を聞かない日はないと言っていいほどだった。そのほとんどが「首相」や「氏」などの敬称を付けず「アベ」と報じていた。革新系勢力が国内を反日で束ねるために「アベ」を積極的に利用したのが実態だった。
海外の政治家の中でも抜群の知名度をもつ安倍は、韓国で政治家やメディアの関心を一身に集め、元慰安婦の女性らを顧みない「極右政治家」の象徴に目されていた。
当時は朴槿恵大統領時代だったが、朴政権発足の直前に、安倍が米国で「次期大統領の朴槿恵さんのお父さんは私の祖父(岸信介元首相)の親友でもあった」と紹介したことも韓国内でやり玉にあげられた。
安倍にとっては日韓修復に努める考えを示す発言だったが、韓国では朴父娘の親日ぶりを証明するエピソードとして野党からの攻撃材料に使われたのだ。結局、朴父娘は2人とも在任中に一度も訪日できない大統領となった。
日韓にようやく訪れた「春」は短かった
日韓は冬の時代が長く続いたが、15年11月に雪解けを迎える。
安倍が日中韓首脳会談に出席するため韓国を訪問し、朴と日韓2国間では約3年半ぶりとなる首脳会談を開いた。翌12月に日韓両政府は慰安婦合意を交わした。このときだけは韓国メディアも「アベ」と呼び捨てでなく、「安倍首相」や「安倍総理」と呼んだ。
安倍が日韓首脳会談後に随行者と食事したソウル市内の焼肉屋を後に何度か訪れたことがある。安倍が利用した部屋や席が一目で分かるようになっており、「客寄せ」に使われていた。
日韓にようやく訪れた「春」は短かった。反保守と反日を結びつけた慰安婦合意の抗議運動が各地で繰り広げられるなか、大統領選で政権交代が起こると、新たに大統領に就いた文在寅のもとで慰安婦合意はあっさりと白紙化されてしまった。
安全保障より「自尊心」
「重大な挑戦だ」「2度と日本に負けない」「政府が先頭に立つ」――。19年の韓国で、日本による対韓輸出管理の厳格化措置に対抗する反日運動の旗を振ったのは大統領の文在寅自身だった。
米国の反対を押し切ってGSOMIA破棄決定に突っ走った選択は、韓国の安全保障には明らかにマイナスだったが、文の信任が厚い青瓦台国家安保室第2次長、金鉉宗(キム・ヒョンジョン)の記者団への説明には仰天し、常識では測れない韓国政治の恐ろしさを体感した。
金鉉宗は8月15日の文の光復節演説を持ち出して日本をこき下ろした。
「われわれは日本に対話の手を差し伸べ、演説発表前には日本側に内容を知らせたのに、日本側は何の反応も見せず、『ありがとう』の言及すらなかった」「日本の対応は単なる拒否を超え、韓国の『国家的自尊心』を傷つけるほどの無視で一貫するなど外交的欠礼を犯した」――。
その言葉は、自国民の生命や安全を守る安全保障よりも、国家、民族のプライドの方が大事だ、と言わんばかりだった。
「自尊心」を守った韓国政府の決定は国民に支持されると考えたのだろう。確かにこのとき市民団体など反政権勢力が用いた「経済戦争」というワーディングは、韓国の基幹産業である半導体が日本に標的にされた国民の心に突き刺さった。ソウル中心部で展開された反日デモで「NO! 安倍」と書かれた巨大な横断幕が登場したのもこのときだった。
なぜ安倍と文は交われなかったのか。
実は2人は日韓が小泉純一郎、盧武鉉両政権時代にそれぞれ官房長官、秘書室長という最も首脳に近い補佐役の立場で首脳外交の失敗をつぶさに見ていた。
両国内で保守と革新を代表する力のある政治家同士が教訓を生かして手を結べば日韓に新たな時代をつくれるのではないか、「小泉・盧」は必ずしも悪い組み合わせではない。筆者はかつてコラムにこう書いたことがある。
水と油だった安倍政権と文政権
実際にはそうならなかった。文政権発足直後の17年7月、ドイツ・ハンブルクでの初の出会いこそ悪くはなかった。
このとき筆者も文に同行取材したが、首脳会談の冒頭、安倍は「アンニョンハシムニカ」と第一声に韓国語を用いて会場の笑いを誘った。前夜の米大統領、トランプを交えた夕食会でも、安倍と文が相手の腕に手を添え満面の笑みで握手する写真が韓国メディアに載った。安倍周辺が「歴史問題を切り離す文は前大統領の朴槿恵より話しやすい」と語っていたほどだ。
だが、互いに角突き合わせるまでそう時間はかからなかった。
日韓で対立する歴史問題と安全保障や経済などの協力を分離するとした文政権の「ツートラック」政策が破綻したからだ。
「未来のために過去をたださなければならない」とあくまで「過去」の歴史にこだわった文と、「過去を断ち切らなければ未来は訪れない」と考える安倍の信念はまさに水と油で最後まで溶け合わなかった。
何より「北朝鮮」をめぐる2人の対立は決定的だった。
南北融和を最優先する文は北朝鮮指導部を敵視し圧力強化の必要性を訴え続けた安倍を、自らが主導する対北朝鮮政策と米朝対話にブレーキをかける張本人とみなした。
安倍にとっても日本人拉致をはじめとする北朝鮮問題はライフワークだ。2人にとって絶対に譲れない一線が北朝鮮だったのだ。
「嫌韓」「反日」の流れを止められない?
日韓関係の破局を食い止める「安全装置」も機能しなくなって久しい。
現大統領、尹錫悦の外交ブレーンである国立外交院長の朴母、は日韓関係が「国交正常化後で最悪」と呼ばれていた19年の日本記者クラブでの講演で、最近の日韓関係について、1政府当局間を含めて意思疎通のパイプが極めて細くなった、2ともに「自分が正義、相手が悪」という善悪二元論に陥っている、3相手の価値を軽視し、「嫌韓」「反日」の流れを止められない――と指摘。「日韓関係が難しくなった」と話した。
超党派でつくる議員連盟や自民党の外交部会・外交調査会は一昔前まで、政府間交渉が行き詰まると韓国との議員間のパイプを使って独自に解決策を探り、軟着陸に導く緩衝材の役割を果たしてきた。
なかでも日韓議連は首相経験者ら大物政治家が会長ポストに就いてきた議連の名門で政府間の窮地を幾度となく救ってきた。しかし、自民党内の世代交代や政府機構改革などによって党の存在感が低下し、日韓議連もすっかり影響力を失った。
こうしたなか、今後の日韓関係を占う意味で日本でも注目される人事があった。
23年3月、日韓議連の新たな会長に前首相の菅義偉が就任した。首相経験者の会長就任は13年ぶりだ。安倍首相時代に内閣の要である官房長官を長く務め、韓国との外交の酸いも甘いも知る菅は徹底したリアリストでも知られている。
菅会長について韓国政府高官は筆者に「(22年11月の)麻生太郎元首相が訪韓し尹大統領と会談したのに続く日韓関係への良いシグナルだ」と評価してみせた。
安倍を「極右政治家」と蛇蝎のごとく嫌った韓国が「アベ喪失」に複雑な波紋
「日韓は経済的にも、安全保障上も極めて大事な隣国だ。両国の友好発展に取り組む」と決意を語った菅は日韓外交のキーパーソンになり得る。
日韓外交で岸田が思い切った決断に踏みきり、党内や支持層を抑えなければならないときにこそ菅の真価が試される。
それでも党内を束ねるうえで安倍の代わりになるのは難しいだろう。
韓国は安倍を「極右政治家」と蛇蝎のごとく嫌った。一方で自民党最大派閥を率い、日本の保守層をまとめられる安倍の抜きんでた実力を認め、対日外交の羅針盤にしていた。大統領選に当選した尹が就任前に日本に派遣した政策協議団が安倍との面会を強く希望したのもそのためだ。その際は安倍も面会に応じた。
安倍に限らず、日本の政治家による韓国への厳しい言葉遣いに「もう少しうまい言い方があるのではないか」と思ったことは1度や2度ではない。
一方で、安倍があれだけ強く押し込んだからこそ韓国が日本の本気度や事の重大性に初めて気がつき、その結果として尹政権による様々な対日政策の転換につながったとみることもできる。
「アベ」の喪失は韓国にも複雑な波紋を広げている。「日本で実際に外交・安保の議論をリードしているのは誰か」「誰と話せば岸田首相に届くのか」――。安倍の死後、韓国のあちこちでこうした戸惑いの声が漏れている。
安倍構想への追随もためらわず
尹の大統領就任はアベにとらわれてきた韓国政治に風穴を開けた。
22年12月28日に公表された韓国初の包括的な外交・安全保障指針「自由・平和・繁栄のインド太平洋戦略」は、「台湾海峡の平和と安定が、朝鮮半島の平和と安定に重要」と明記し、韓国で台湾と朝鮮半島のリスクを結びつけた初めての文書である。
台湾有事に備え、自由や人権を重んじる国々と手を携える決意や、台湾海峡および近海の安定が自らの平和に欠かせないとする韓国自身の問題認識を盛り込んだ。
「インド太平洋戦略」という名称を使ったこと自体が韓国政府の大きな変化を物語る。「自由で開かれたインド太平洋戦略」という言葉の生みの親は日本の安倍であり、米国によって広まった概念だ。「台湾有事は日本有事」と語っていた安倍は国際社会に同調を呼びかけた。
安倍と激しくやり合った文大統領時代は同構想と距離を置きたいとの意識が韓国政権内に浸透していた。その点、尹は日本や安倍へのわだかまりが全くない。
文前政権はインド太平洋戦略に対し「中国囲い込み」と猛反発する中国政府に配慮して終始、消極的だったのに対し、尹政権は韓国独自の外交文書で堂々と打ちだした。
感情よりも戦略を重視する尹らしい決断だ。岸田文雄政権時代に日韓両首脳の手を結ばせたのは、緊迫する安全保障情勢への危機感だが、日本側も尹の覚悟を認めるほかなかった。
●孤軍奮闘で旧統一教会と自民党の蜜月を暴いたジャーナリスト・鈴木エイト氏 8/22
日本の憲政史上、最も長く首相を務めた安倍晋三元首相が2022年7月8日、選挙演説中に銃撃されてから1年が過ぎた。事件を機に、自民党を中心とする政治家と旧統一教会の関係がクローズアップされるようになった。その端緒となったのが、ジャーナリストの鈴木エイト氏がコツコツと積み重ねてきた調査報道だった。長年、孤軍奮闘だった鈴木氏は、大手メディアが教団の問題を取り上げなかったことについて、どう見ていたのだろうか。
教団に対する解散命令の行方は⁉
旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の「解散命令」をめぐる動きは現在、表面上は静かだが、鈴木氏は水面下でずっと動きがあり、この夏からいよいよ本格化する可能性が高いと見ている。
「文部科学省はちゃんと動いているので、あとは岸田文雄首相の決断だけにかかってきますね」
文科省はこれまでに宗教法人法の質問権を計7回行使し、教団側から資料を提出させてきた。だが、裁判所に解散命令請求を提出するには至っていない。
「文科省の質問権の行使に対し、教団側が、自分たちが不利になるような資料を出してくるわけがないので、文科省側が独自に入手した資料と照らし合わせ、念には念を入れているために時間もかかっているのでしょう。私は、岸田首相は決断すると思っています。今秋までには、解散命令請求をし、政府は一歩踏み出すと見ています」
もし、解散命令が出れば、教団は宗教法人格を奪われ、税制上の優遇措置も受けられなくなる。
振り返れば、安倍氏が銃撃された翌週、メディア関係者の間で、ある文書の存在が話題になった。そこには、旧統一教会の関連団体が主催するイベントに出席、あるいは祝電を送っていた国会議員の名前がリストになってまとめられていた。名前が書かれていた政治家は100人以上。一部に野党議員もいたが、その多くは自民党に所属する国会議員だった。
リストの作成者名には「鈴木エイト」と書かれていた。他のメディアの記者たちは、このリストをもとに各議員への取材を開始した。すると、議員たちは判で押したように「(旧統一教会の関連団体とは)知らなかった」「記憶にない」などの苦しい弁明を繰り返した。これが国民の反発を招くことになる。同時期には、安倍氏を銃撃した山上徹也被告(42)の母親が旧統一教会に1億円以上の献金をしていて、家族が崩壊していたことが報道されていた。教団の広告塔となっていた自民党の国会議員に対して厳しい目が向けられるようになった。
コツコツ取材してきたリストを記者たちに公開
一方、鈴木氏が主筆を務めるニュースサイト「やや日刊カルト新聞」には、このリストそのものは公開されていない。その理由を、鈴木氏はこう説明する。
「自分たちが運営するサイトに掲載するよりも、大手メディアの記者たちにリストを渡したほうが動きやすいだろうなと思ったんです。旧統一教会の問題を私一人で抱え込み、スクープを連発しようなんて野心はありませんでした。それは今も同じです。情報はどんどんオープンにして、みなさんで一緒に取材しましょうよ、というスタンスでした」
その影響は鈴木氏の予想を上回るものだった。朝日新聞の調査によると、事件直後に57%あった岸田政権の内閣支持率が、わずか1カ月で10ポイントも急落し、その後も下がり続けた。批判にさらされた自民党は、所属する政治家と旧統一教会の関係について点検を開始。2022年9月8日、旧統一教会と何らかの関わりがあった所属国会議員は半数近くに当たる180人だったと公表した。ちなみに、点検はアンケート形式で実施されたため、結果はあくまで自己申告である。旧統一教会と関係していた自民党の国会議員はさらに多いとみられている。
「私が調べきれていなかった部分を、記者の人たちが次々に解明してくれました。その点でも、リストをみなさんにオープンにしたのは良かったと思います」
今でこそこう言えるが、鈴木氏が地道に重ねてきた取材が実を結ぶまでには、長い時間がかかった。旧統一教会の調査を始めたきっかけは02年にさかのぼる。大学時代はアルバイトとバンド活動に明け暮れ、卒業後はビル管理会社の契約社員として働いていた。その頃、旧統一教会の信者が、教団の名前を隠して、道ゆく人に声をかける「偽装勧誘」の現場を目撃した。
「JR渋谷駅の改札を出たところでした。『手相の勉強をしています』『顔に気になる相が出ています』などと言って、声をかけている勧誘員が多数いました。興味を持ったり、不安に思ったりして応じた人に『今、あなたは人生で最大の転換期です』などと言う。次々にいろいろな言葉をかけて、最後には教団系の施設へ連れていくという手口でした」
熱心な信者は善意ある人が多い
「手相の勉強」のほかにも、「意識調査のアンケート」の場合もあったという。いずれも、興味を持って話を聞いた人を教団が信者に運営させる「ビデオセンター」に連れていくのが狙いだった。ビデオセンターでは、教義に関心を持たせるための映像を視聴させていた。
「そのあとは勧誘を毎日のように続けて、徐々にマインド・コントロールをかけていく。最後は教団主催の合宿に参加させて、新たな信者を育てていました」
これは問題だと感じた鈴木氏は、偽装勧誘を阻止する活動を始めた。基本的に単独の活動で、時には、偽装勧誘を阻止された信者から暴行を受けたり、尾行されたりすることもあったという。その一方、活動中に新たに気づいたこともある。会話を交わした信者は、優しい人が多かったことだ。
「そもそも、手相の勉強に善意で協力する人に悪い人はいないですよね。むしろ、善意のある人のほうが信者になって、勧誘活動も熱心なんです。そのことは、信者の人たちと話をして初めて知ったことでした」
善意のある人ほど新興宗教にはまってしまうという現実。そこに至るまでの知られざるマインド・コントロールの手口。信者引き留めの内部統制の手段として使われる有力政治家の存在。鈴木氏は、これらの事実を広く知ってもらうためにメディアに何度も企画書を出した。ところが、結果は散々だった。
「当時はほとんど相手にされませんでした。編集者は『政治家のネームバリューがない』とか『統一教会は旬じゃない』と言うばかり。ずっとそんな扱いでした」
そんな中、興味を示してくれたのが、「週刊朝日」だった。14年4月11日号に「安倍帝国vs.宗教」というタイトルで掲載され、当時の安倍政権と自民党議員、統一教会について詳述した。
「その後も1年に1回ぐらいは週刊朝日で書かせてもらいました。でも、編集部には記事に対するクレームのほか、『フェイクニュースを書いている鈴木エイトに書かせるのはおかしい』などという意見が寄せられていたそうです」(鈴木氏)
訴訟の連発が報道を萎縮させていた
メディアが新興宗教に関連する社会問題を取り上げなくなったのには、別の理由もあるという。
「旧統一教会に限らず、問題が指摘されるほかの宗教団体でも記事が出るとすぐにクレームが入る。訴訟も多い。次第にメディア側に『面倒くさいニュースは取り上げたくない』という空気が生まれてしまった」(鈴木氏)
一方で、多くの新興宗教は、豊富な資金を背景にメディア対策を強化していた。記者にお中元やお歳暮を贈る。海外で開催されたイベントに日本のメディアを招待する。そんな中で、旧統一教会の問題が報道で取り上げられることはなくなっていったという。
それでも、鈴木氏はジャーナリストの藤倉善郎さんが09年に立ち上げた「やや日刊カルト新聞」で調査報道を続けた。
追及の手を緩めない鈴木氏に対し、怪文書が出回ったこともある。〈ハゲタカジャーナリスト 鈴木エイト〉とタイトルが付けられた文書には、こう書かれていた。
〈本業は大工? 普段の彼はジャーナリストらしからぬ風貌で、作業服を着、古くさい軽トラに乗って朝早く現場に向かう。『取材』の時はスーツに着替えるが〉
〈もう八十歳を過ぎた実母を……働かせている〉
すべて事実無根の作り話だ。
「軽トラに乗って朝早く出かけたのは、不動産の仕事もしていて、賃貸物件をいくつか持っているためです。当時、保有する物件のリフォームをしていたので、木材を積んで早朝出ていったところを見たのでしょう。母親も自分の好きなように働いているだけです。給料の一部を私がもらうこともありませんよ」(鈴木氏)
鈴木氏は、文書を作成した人物が誰かも、その目的も分かっているという。
「そのビラが作られたのは3年ほど前です。安倍氏の事件後に私がテレビに出演するようになったので、一時期、永田町にも出回るようになりました。私が信用できない人物だと触れ回りたかったのでしょう」
国は事件の調査と正式な報告書の作成を
岸田内閣は、22年末に旧統一教会の問題を受けて被害者救済を図るための新法を成立させた。しかし、「新法ができたからといって根本的な解決になったわけではない」と鈴木氏は言う。また、事件が起きた背景について、国が正式な調査を実施すべきだと訴える。
その鈴木氏が、次に追及する政治家は誰なのだろうか。
「自民党には、安倍氏にすべてをおっかぶせて逃げようとしている政治家が複数います。そこはきっちり検証していきたい」
そして、メディアの責任についてこう語った。
「再び、メディアが報じなくなったら、元のサヤに収まるのは明白で、こうした教団を生き永らえさせてきた政治家の問題はまったく報道されなくなってしまう。教団も政治家も報道が沈静化すれば元に戻ると思っている。幕引きさせないのがメディアの責任だと思います」
●麻生太郎氏、岸田政権の支持率低下で引退カウントダウン 8/22
「岸田首相の後見人」の麻生太郎・自民党副総裁が引退を決意したという情報が流れている。皮肉にも、そうした麻生氏の背中を押したのは岸田文雄・首相の解散先送りだった。
麻生氏の後継者と自他共に認める長男の将豊(まさひろ)氏(38・麻生商事社長)は、父は元首相、父方の曾祖父は吉田茂・元首相、母方の祖父も鈴木善幸・元首相というウルトラサラブレッド。現在、父も経験した日本青年会議所(JC)の会頭を務めており、JC全国大会の挨拶では「日本を取り戻す」という安倍内閣と同じスローガンを掲げるなど、政界入りを強く意識していることがわかる。
実は、将豊氏のJC会頭就任は、父から出された後継者になるための条件だったという。麻生家に近いメディア関係者の話だ。
「麻生さんは自分が経営者時代にJC会頭を務め、そのときに全国にできた仲間たちが政治家になってからも支えてくれたことから、将豊さんに『政治家を目指すなら、その前にJC会頭になって全国に仲間をつくれ』と“宿題”を出していた。将豊さんは今年1月にJC会頭に就任し、年内いっぱいで任期を終えます。会頭を退いた来年1月1日以降は“宿題”もクリアして、いつでも総選挙に出馬できるわけです」
仮に解散・総選挙が年内に行なわれた場合、現職のJC会頭である将豊氏は途中で辞任して総選挙に出馬するのは難しかった。だが、岸田首相は通常国会終盤の6月解散を見送ったうえ、支持率急落や相次ぐ政界スキャンダルで秋の解散も事実上、困難になったと見られている。
政治評論家の有馬晴海氏が指摘する。
「岸田総理は秋の解散を視野に入れているとの見方もありましたが、現在の支持率では無理です。解散・総選挙のタイミングはどんどん先送りされ、来年以降になるのは間違いないでしょう。そうなれば麻生さんの引退が決まる。今年6月や年内の解散であれば、後継者の長男がJC会頭在任中で出馬できないから麻生さんは自らもう1期やったのでしょうが、総選挙が来年になれば代替わりになる。岸田首相が年内解散できないという状況になったことで、麻生さんの引退のカウントダウンが始まったわけです」
主の引退を見越したように、麻生事務所では代替わりに備えた体制作りが行なわれているという。
「この1、2年の間に麻生さんに長く仕えてきた公設秘書が相次いで定年を迎え、若手スタッフへの引き継ぎも進んでいます。古参スタッフに囲まれていては、息子もやりにくいだろうと。これもご自身の引き際を意識した息子を想う親心と言えます」(ジャーナリスト・藤本順一氏)
●金子恵美「議員は襟を正して行動を」自民党女性局の海外視察に思うこと 8/22
元衆議院議員の金子恵美さんと、身近な話題から政治を考えていく今回は、未だ炎上やまない自民党女性局メンバーによる「フランス研修旅行」に見る「議員視察の意義」について。議員の視察とは本来、何をしに行きどんな成果を得るものなのでしょうか。そのフィードバックはどのようになされ、どこに生かされるのか。金子さんが解説します。
議員は何のために視察に行く?
自民党女性局の海外視察が話題になっています。様々な議論が繰り広げられていますが、批判が8、9割といったところでしょうか。国民感情を逆撫でする軽率な行動とその後の対応に、党内からも擁護の声はほとんど聞かれません。今回はこの「議員視察」に焦点を当てたいと思います。
視察を通して、議員は何を得るのでしょうか。
視察の目的とは、市民・国民の声を代弁するために現場で何が行われていて、どのようなことが起こっているのかを知るためです。
例えば、エネルギー問題で原発の議論をするとします。原発施設の構造や、事故が起きた際の原因が何であったのか、それをどのように克服し改善しているのかを現地に赴き目で見て確かめることで、腹落ちしたり新たな気づきが得られます。その知見を議会での発言に活かすなど、政治活動に反映させることができるのです。
先進的な農業政策、イノベーティブなスタートアップ企業、安心安全のための防災、逼迫した貧困問題の現場、沖縄の基地問題の現状と本音、充実した教育システム……など、ありとあらゆるテーマについての視察が可能です。
事実、国民の声を政治に反映させるために、これまで「視察」がとても重要な役割を果たしてきました。私自身も、議員時代は多くの視察に行き、現場の皆様の努力と成果と課題を生で伺うことができて、その後の議員活動に大きく影響を及ぼしたことが何度もありました。まさに「百聞は一見にしかず」で、机上の空論にならないように視察をする意義は非常に大きいものと実感していました。
現在騒がれている自民党女性局の視察の問題は、それが「視察なのかどうか」という点に尽きると思います。国民の目から見て、3泊5日で実質の「真面目な視察」と見られる時間が合計で6時間だった、というところがメインの争点でしょう。「税金で旅行に行っている」と思わせてしまったことが問題なのです。格差が広がっていると言われて久しい現代の日本。物価高も続き、苦しい生活を強いられている方々が多い中で、エッフェル塔での記念写真が「国会議員の特権」の象徴に映ったことは、残念ながら庇いようもありません。
ただ、このことによって、議員の視察そのものが「旅行」とみなされてしまうのは、政治家の今後の活動としては非常に大きなダメージとなりました。私の知る限りでは、この夏に難民キャンプへ赴き、現場の悲惨な状況を視察している議員もいます。志を持って閉会中の時間を有意義に生かし、知見を広げるため現地に足を運び、自分の今後の議員活動の幅を広げるために頑張っている議員もいます。なので、一緒くたに「海外視察」=「悪」と烙印を押されることはよろしくないと危惧します。
以前の記事にも書きましたが、議員が海外の要人と交流をする「議員外交」も非常に重要です。国と国の関係は、日ごろから温め合いながら作られていくものです。国境を越えても人と人の仲を深めていくのは、綿密で頻繁な交流なのです。視察を通して、議員外交をすることは日本のために他なりません。それを途絶えさせてしまうことは、絶対に避けるべきだと私は思います。
視察に求められる「準備」と「結果」
さて、私はどうだったかというと、いくつか事例を挙げたいと思います。3つほどご紹介しますね。
まず、日韓の交流です。日韓議員連盟の中に女性国会議員同士が交流する会があり、そのメンバーで訪韓しました。歴史問題で関係が悪化している中でも対話のチャンネルをしっかり作っておくべきと考え、私はこの会に参加し、時には激しい議論を交わしてきました。私は親韓の議員だと言われてきましたが、文化は好きなものの、政治的にはツッコミどころ満載な韓国には厳しいスタンスでした。なので、特に逆上する韓国人国会議員にも冷静な議論で対峙してきました。
大統領が交代して今でこそ親日的な流れができつつありますが、当時は日韓友好を謳いながらも実態は程遠いものでした。
さまざまな感情はありましたが、「交流を続ける」「パイプを作る」ことに意義があると思い、地方議員の時代から始めて、国会議員になってからも継続していました。地方議員のときの渡航費用は「政務活動費」として計上していました。つまり税金です。振り返ってみても、この活動が国民の期待を裏切るような「旅行」ではなかったと断言できます。
2つ目は、「委員会視察」です。国会議員時代に私は予算委員会に所属していました。委員会視察は所属委員が派遣されるかたちで視察が行われます。目的を掲げ、それを達成するために現地に向かいます。与党だけではなく、野党も一緒に参加します。私が派遣されたのは「地方創生の現場視察」で島根県の出雲市に行きました。出雲大社の神門通りを視察し、現地の関係者からインバウンドの反響や今後の展望、現在抱えている課題について説明を受けました。続いて松江市での会議で、政府のすすめる地方創生の問題点など地元の方から意見を聴取しました。
これらの視察内容は、後日委員会内で必ず報告するので、会議録でご覧いただけます。余談なんですが、出雲大社で先輩議員から「うちの娘はここのお守りをもらってから、縁談が決まったんだよ」と、当時独身の私にお守りをくださいました。このお守りは効果テキメンで、翌年私は結婚しました(どうでもいい話ですね笑)。この先輩はご自身の2つ折りの財布からお金を出して払っていましたし、領収書ももらっていませんでした。したがって、自費で払われていました(笑)。ただ、この往復の旅費、昼食の費用などは衆議院の負担だと記憶しています。
そして3つ目。日本の職人さん達の処遇改善を目標に、参考になるドイツの「マイスター制度」を学びに行きました。マイスター制度と言うのは、その資格がないと独立開業ができないという仕組みです。ドイツではその資格を取得するための教育システムが確立しており、マイスターの称号は社会的地位となっています。日本の匠、職人の社会的地位の向上、担い手確保の仕組みづくりのヒントを得るべく、有志の同僚国会議員5人で渡航し、ドイツのナンバーワンマイスターに選ばれた方からお話を伺ったり、ドイツの経済産業省にあたる省庁に行き意見交換をしてきました。
後日聞いた話では、翌日のドイツの経済系新聞に「日本の国会議員団が、マイスター制度を視察に来た」との記事が掲載されたそうです。これは完全に有志での海外視察なので自費で行きました。航空券代、宿泊代、飲食代、等含めて1,000,000円近くかかった記憶があります。ただ、この企画の発案者である宮崎謙介(現在の夫)が企画書を持って重鎮の先生たちに説明をし、資金援助をしてもらい、いくばくかは安くなったと記憶しています。もちろんその後、レポートを書いて重鎮の議員に報告に行きました。ちなみに自費で視察に行く場合には、民間からの資金援助を取り付けていくこともあります。
国会議員である以上(地方議員も同様)、国民の代表として常に国民から見られていますし、今の時代はさらにその目が厳しくなっています。だからこそ、常に襟を正して行動すべきですし、もしも「視察」に行って説明責任を問われたならば、堂々とレポートを示せるくらいの準備と結果を示さなければならないことを自覚してほしいものです。
●立憲・泉代表は党を割れ!政治学者が「小沢氏と決別すべき」と指摘する理由 8/22
岸田文雄内閣の支持率が20〜30%台に低迷している。だが、本来ならこれを好機と捉え、「倒閣」に動くべき野党にも覇気がない。小沢一郎氏が最後の戦いに乗り出している立憲民主党は、党内の足並みがそろわない。急成長していたはずの「日本維新の会」では、馬場伸幸代表が自らの党を「第2自民党」と評する発言をし、批判を呼んでいる。両党はこれからどうすべきか。
岸田内閣が支持率低迷も 立民は混迷、維新は「第2自民党」騒動
岸田文雄内閣の支持率が下落している。各種世論調査の中には、危険水域と呼ばれる2割台にまで落ち込んだものもある。政界の常識では、内閣支持率が危険水域を切れば「倒閣」の動きが出てくるものだ。
だが、岸田首相にはあまり危機感がないように思える。本来であれば支持率低下を「政権交代の好機」と捉えて勝負に出るべき野党側も混乱し、迷走しているからだろう。
迷走ぶりが特に目立つのは立憲民主党(以下、立民)だ。立民では、かつて自民党政権を2度倒して政権交代を実現し、「剛腕」「政界の壊し屋」の異名を取った小沢一郎氏が「最後の戦い」に動いている。
小沢氏が呼びかけ人に名を連ねる「野党候補の一本化で政権交代を実現する有志の会」には、立民の衆院議員95人のうち約60人が賛同した。その背景には、立民の泉健太代表が、共産党との選挙協力を否定する発言を繰り返してきたことへの反発があるとみられる。
泉代表はこの動きを受けて、共産党との候補者調整を進める方針に転換せざるを得なくなった。だがその一方で、共産党への拒否感が強い「連合」(日本最大級の労働組合)や国民民主党との連携は進まなくなった。“全方位外交”は難しいのである。
このように、立民は党内が分裂し、迷走している印象を国民に与えている。勝負に出るべきタイミングにもかかわらず、立民の政党支持率も低迷したままだ。
また、立民に代わって野党第1党の座を奪おうという勢いの日本維新の会(以下、維新)でも、その快進撃に水を差す出来事があった。
馬場伸幸代表が今夏、「第1自民党と第2自民党の改革合戦が政治を良くする」という発言をし、波紋を呼んだのである。野党の代表が、自らが率いる党を「第2自民党」と認めたのは初めてだ。言わずもがなだが、馬場代表は党内外から厳しい批判を浴びた。
ただ実際のところ、維新は国会で「第2自民党」的な位置付けではある。憲法審査会では改憲を主張し、「改正マイナンバー法」「改正入管難民法」に賛成した。「LGBT理解増進法」が成立した際は、自民党との修正協議に応じるなど協力した。
その一方で、維新の党内には「第2自民党」であることに違和感を抱く層も出てきた。
音喜多駿政調会長の下で今夏開催された「マニフェスト・ブートキャンプ」という勉強会では、経済、社会保障、安全保障など402項目の政策を総点検。自民党との対立軸となる「改革路線」の目玉政策を探った。
「第2自民党」と言ったり、自民党との違いを探そうとしたり、維新幹部の言動は右に左に揺れて迷っているようだ。
迷走する野党が気付いていない 対立軸の“古さ”とは?
立民・維新の迷走の背景には、一つの共通点がある。それは「右派VS左派」「保守VS革新(リベラル)」という対立軸の“古さ”に気付いていないということだ。
本連載で何度も指摘してきたが、そもそも安倍晋三政権以降の自民党は「左傾化」している。本来であれば左派野党が取り組むべき政策を次々と実行し、立民や共産党など左派野党をのみ込んできた。
「全世代への社会保障」「子育て支援」「女性の社会進出の支援」「教育無償化」、そして「新しい資本主義」――。
いわば自民党は、所得の格差を是正し、全国民の生活を安定させるための「社会民主主義的政策」を次々と打ち出してきた。こうなっては、左派野党はお株を奪われたも同然である。左派野党はいまや、自民党の「補完勢力」になり下がっているというのが筆者の考えだ。
では、その状況下における「新しい対立軸」が何かというと、「デジタル・イノベーション党VS社会安定党」である(第294回)。いずれも筆者の造語なので順に解説していこう。
デジタル・イノベーション党はもはや政党ではなく、「市場での競争に勝ち抜いて富を得ようとする人たちの集団」である。具体的には、SNSで活動する個人、起業家、スタートアップ企業やIT企業のメンバーなどだ。
彼らは政治への関心が薄い。「勝ち組」を目指す人たちにとって、社会民主主義的な「格差是正」「富の再分配」は逆効果になるからだ。
彼らの関心事は、日本のデジタル化やスーパー・グローバリゼーション(第249回・p2)を進めることである。
そして彼らは、政治を動かす必要があると判断すれば、現政権を批判する政党を時と場合に応じて支持する。その支持政党が「野党」となる。
立憲・泉代表は小沢氏と決別すべきだ
一方の社会安定党とは、自民党・公明党の連立与党を、立民・社民党・共産党・れいわ新選組などが補完するグループだ。この中に含まれる左派野党は、前述の通り自民党にのみ込まれ、実質的に「同じグループ」を形成してしまっている。
もう少し踏み込んで説明すると、自民党は英国の「保守党」と「労働党」を合わせたような「包括政党(キャッチ・オール・パーティー)」という特徴を持つ。
いわば、自民党は日本国民のニーズに幅広く対応できる、政策的にはなんでもありの政党だ。野党との違いを明確にするのではなく「野党と似た政策に予算を付けて実行し、野党の存在を消してしまう」のが自民党の戦い方である。
現在の岸田内閣も、左派野党が「弱者救済」を訴えれば「野党の皆さんもおっしゃっているので」と躊躇(ちゅうちょ)なく予算を付けて実行できる。その場合、もちろん自民党の実績となる。だから、左派野党は事実上の「自民党の補完勢力」から抜け出せないのだ。
今後は左派野党が望むと望まざるとにかかわらず、この対立軸が主流になっていくだろう。
だが立民や維新は、いまだに政治を「左と右」の古い対立軸で見ているのだろう。立民が共産党との共闘に踏み切ろうとしている背景にも、「自民党=保守」という“化石”のような発想が根強く残っているように思えてならない。
維新も「右か左か」という旧来型の考え方にとどまり、自民党が再び右寄りになることを恐れている印象だ。維新は「デジタル・イノベーション党」からの支持を得るという手もあるはずだが、政治の外側に自らの活路があることに気付いていないのだろう(第329回・p5)。
では、立民と維新は、現状打破のためにどうすべきか。
まず立民の泉代表は、共産党との共闘を模索する小沢氏などの党内左派と決別し、党を割るべきではないか。国民民主党や維新との合流を念頭に置き、連携を進めるのも手だ。維新側も、泉代表が労組と縁を切れば、連携への障害はないはずだ。
もしこの案が実現すれば、2017年10月総選挙時の「希望の党」の再現となる。17年以降動きが止まった日本政治が、ようやく動き始める時だ。泉代表は変化の潮流をつかみ、今こそ行動すべきである。
一方、維新は自民党に代わる「国家像」を国民に提示すべきだ。
維新が「政権政党」に成長するための道とは?
その一つが、自民党の中央集権体制に代わる「地方分権体制」である。維新の会は「道州制」を打ち出してきたが、それをより具体的かつ詳細な国家戦略として練り上げ、国民に提示するのだ。
それは単に、国から地方への権限移譲を進めるだけでない。これからの時代は、地域同士が国境を越えて直接結び付き、経済圏を築く「コンパクト・デモクラシー」が当たり前になっていく。その動きを加速させるのだ。
例えば、関西・九州・四国などの地方都市に経済特区を設け、外資を呼び込み利益を上げる。日本の各都市が、シンガポール・香港・上海といった成長著しい国や地域と直接結び付けば、経済成長のスピードは加速するはずだ。
また、あくまで昨今のロシア情勢を度外視した仮説だが、北海道が将来的に、サハリン・シベリアと石油・天然ガスの取引を直接行っても面白いかもしれない。
その実現可能性はさておき、現在の日本では当たり前の「中央政府が地方を規制で縛り付け、全てが首都に集中する経済システム」に疑念を呈する活動を、もっと大々的に行ってもよいのではないか。
また、中央政府についても、従来筆者が主張している「参院を改革し、知事・市長や地方議会の代表が直接国会議員になれる連邦国家型上院の導入」(第69回)という統治機構改革を打ち出せば、憲法改正に関する維新独自の「目玉」を作れる。
17年の総選挙で、維新の代表は松井一郎大阪府知事(当時)、希望の党の代表は小池東京都知事だった。国政政党の代表が国会議員ではなかったというのは、いささか異常な状況だが、この改革が実現すれば解消できる。そして今以上に、地方の意思を国会の決定に反映しやすくなるだろう。
維新に関しては、一つ一つの政策をボトムアップ式に見直しつつ、国家のグランドデザインに丁寧に落とし込んでいけば、国民に訴えるべき政策がおのずと見えてくるはずだ。そこに、維新が政権政党に成長する道があると筆者は考える。 
 
 

 

●「ブライダルまさこ・木原副長官文春砲」説明なし 自覚欠いた自民 8/21
岸田文雄政権の「説明責任」はどうなっているのか。政権中枢などに次々と疑惑や問題が炸裂(さくれつ)しているが、国民の理解を得ようとする様子はない。最近も、森まさこ首相補佐官(女性活躍担当)に、「ブライダル補助金」と100万円の献金問題が直撃して大炎上しているが、森氏は沈黙したままだ。岸田首相は18日(日本時間19日)、米ワシントン近郊の大統領山荘キャンプデービッドで日米韓首脳会談を行った。衆院解散を見据えた外交成果にしたいようだが、都合のいいアピールばかりでは、一部で「危険水域」に突入した内閣支持率のさらなる低下もありそうだ。
5月の広島G7(先進7カ国)サミット以降、岸田政権では疑惑・問題が相次いでいる=別表。
特に、岸田首相の懐刀である木原誠二官房副長官側には、週刊文春が1カ月以上、連続で疑惑を報じた。
党内外から「木原氏自身が堂々と説明すべきだ」との声が上がったが、木原氏は目立つ政務を控え、日弁連に人権救済の申し立てを行い、刑事告訴も行ったとして、疑惑を解消するための記者会見を開こうともしない。
「岸田首相はあえて説明をさせず、表舞台に立たせないことで沈静化を図った」(自民党ベテラン)というが、政権中枢を担う副長官が機能不全≠ノ陥ったのは明らかだった。
首相補佐官である森氏に浮上した「ブライダル補助金」問題も、似たような道をたどりつつある。
森氏は先週末、自身のX(旧ツイッター)やフェイスブック(FB)に、「ブライダル補助金」事業の成果を書き込んだ。正式には「特定生活関連サービスインバウンド需要創出促進・基盤強化事業」で、2022年度補正予算案で12億円が計上された。
SNSでは、ブライダル補助金が少子化対策になるとも読み取れたため、当初は「無駄遣い」「ピント外れ」などと批判が殺到した。実際は、外国人の結婚式を日本に呼び込み、業界や地域の活性化を図る内容だったうえ、業界大手から森氏が代表を務める「自由民主党福島県参議院選挙区第四支部」に100万円が寄付されていたことも発覚した。ネット上は、森氏を「ブライダルまさこ」と命名して大炎上している。
夕刊フジでは今週、東京や福島にある森氏の事務所に何度も連絡を入れているが、お盆期間なのか、まったく連絡がつかない。
日本維新の会の音喜多駿政調会長は「森氏の『ブライダル補助金』問題は、企業献金の抜け道を悪用した癒着≠ニみなされ、国民の怒りは当然だ。血税の使い方は徹底的な情報公開、説明責任が必須で、国会議員の責務だ。長期政権による自民党の慢心、よどみは深刻といえる。維新は率先してコンプライアンス(法令遵守)の強化に取り組み、国民の信頼を獲得したい」と強調する。
若狭弁護士 政治倫理上完全に「アウト」
岸田政権の相次ぐ疑惑・問題発覚と、説明責任の欠如は極めて深刻だ。
評論家の屋山太郎氏は「最近の不祥事は『行儀の悪さ』が目にあまり、国民は『政治家の質の低下が加速している』と受け止めている。そして、岸田政権は常に『説明責任』を欠いている。不祥事が起きても、政治家が信念を持って誠実に説明し、行動すれば、信頼は戻ってくる。ところが、岸田政権は筋の悪い対応に終始している。岸田首相は『政治への決定的不信』につながりかねない危機的状況を直視すべきだ」と語った。
岸田内閣の支持率低下が止まらないなか、自民党内の危機感は高まっている。
党中堅は「岸田政権の政策は世情をくみ取れていない。増税路線が露骨だから、物価高対策なども一時しのぎの弥縫策と見透かされている。加えて、自覚を欠いた言動が連発したら、選挙で大惨敗する」と肩を落とす。
森氏の問題では、さらなるリスクを指摘する声もある。
元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「陳情を受けて便宜を図り、直後に献金を受けたなら、政治倫理の観点からは完全に『アウト』だ。捜査当局は『興味深い案件』と食いつくのではないか。弁護士出身で法相も務めた森氏は、リスクや問題を感じなかったのか。首をかしげざるを得ない」と語っている。
G7サミット後に岸田文雄政権に直撃した問題
・「公邸忘年会」問題で、長男の翔太郎秘書官を更迭
・LGBT法の拙速な成立で、保守派や女性団体が反発
・木原誠二官房副長官側に「文春砲」が直撃
・マイナンバーカードをめぐる相次ぐトラブル
・自民党女性局のフランス研修中の写真投稿が大炎上
・自民党の秋本真利外務政務官に風力発電会社から不透明資金提供疑惑
・森まさこ首相補佐官の「ブライダル補助金」と100万円献金
●自民党女性局フランス研修では、きっと見ていないフランスの少子化問題 8/21
日本で自民党女性局がフランスに海外研修に来て、観光旅行さながらの写真をSNS上に掲載して大炎上した。これを見て、この日本の政治家の方々がわざわざ研修にいらっしゃるフランスでの子育てや少子化対策などについて、私がフランスで子育てしてきた経験と私の知る範囲のフランスの教育について、少し書いてみようと思います。
日本よりはマシだけど、フランスでも少子化は進んでいる
フランスでの少子化対策の一環として、一番大きなものは、子供を育てている人に対しての税制優遇と、子育てにかかる費用や施設の援助であるのではないかと思っています。この税制優遇にしても、子育ての援助にしても、共通するのは、親の収入に応じて金額が異なっており、援助が必要な人により多くの援助が行き渡るように配慮されているものだと思われます。したがって、両親が働いている場合、一人親の場合、子供の人数などにより、その援助の金額は異なります。
フランスでは3歳から16歳までが義務教育となっているので、公立の学校に通う限り、必要なのは、学校での特別な行事や旅行のための費用が主です。給食費に関しては親の年収に応じて金額が異なります。年度初めには、新年度に必要なものを揃えるための準備金として、親の収入によって括りはありますが、子供の年齢に応じて一人につき398ユーロ(約6万3千円)〜434ユーロ(約6万9千円)が支払われます。これは、今年9月からの新年度が始まる前、8月中に支払われる金額で、毎年金額は変動します。今年は該当する300万世帯に向けて、この準備金が支払われることになっています。
子供を持つことによる税制優遇措置は、特に3人以上になると格段に有利になるという話で、娘の友人たちなどを見渡すと3人兄弟姉妹という家族が結構多い気がします。また、子供の数は年金のポイントにも加算されます。
しかし、それが功を奏していたのも一時期までの話で、2010年を境にフランスの出生率はグングン下がっています。2010年には832,799人生まれていた子供が、2022年には723,000人にまで減少し、急激な下降線をたどっているのです。
現実は厳しく、フランスだって、いいところばかりでもない
子供を持つことで色々な優遇措置があるとはいえ、現実はそう簡単ではありません。出産のための休暇や育児休暇があるとはいえ、その後も女性が仕事を続けていくためには子供を預ける場所が必要になりますが、その保育所とて妊娠した時点で予約しなければ、安心できる保育所のスペースは確保できないという話もよく聞く話です。
また、子供を持つことでもらえる児童手当をあてにして、子供を産めるだけ産み、親は働かずして(親の収入が少ないほど児童手当は多い)、子供を虐待しながら児童手当で生活するような者まで出てきます。
公立の学校にやれば始終ストライキに悩まされ、子供の預け場所に右往左往する始末。犯罪の低年齢化にもアクセルがかかり、子供が一日の大半を過ごす学校はその子の人生を大きく左右することになります。昨今の低年齢化するフランスの未成年の犯罪は家庭さえしっかりしていれば……などという生易しいものではなく、少しでも安全・安心な教育の場所と考えるとどうしても私立の学校を選びたくなってしまいます。
我が家の場合、幼稚園(幼稚園もエコールマテルネルと呼び、学校扱い)までは娘を公立の学校に通わせていましたが、1カ月近くも学校のストライキが続いたことに、もう心底ウンザリして是が非でもストライキのない私立へ!と小学校からは私立に入れました。それさえも、入学試験というものがなかったために(今はわかりませんが、当時の娘の学校では)、気がついて、申し込みをしたところがもう遅く、娘の幼稚園(幼稚園とはいえ学校扱いなので成績表があります)の成績表を送ってみたり、策を講じてようやくギリギリ滑り込めた感じでした。
フランスは格差社会と言われるだけあって、学力とて優秀なほんの一握りの人々と、まずまずの中間層、下は限りなく下で、最近のINSEE(国立統計経済研究所)の調査によると、フランスの16歳35,000人は読み書きができないという衝撃的な数字が出ており、この年齢の5%に相当します。日本では、きっとあり得ない数字だと思います。
隣ではないけど、隣の芝生は青く見える……のか、良いところばかりがピックアップされて伝わりがちで、ましてや政治家が公式に視察に来られたりしても、フランス側は良いことしか言わないだろうけれども現実はそんなに甘くはないのです。
フランス人が発するもう一つの少子化対策への提言 La vie est belle(人生は美しい)
フランスでの少子化が再び叫ばれ始めてから(今年の初め頃だったか?)あるフランスの大手新聞社に掲載された記事がなかなか興味深く、まさに少子化といえば日本……と言わんばかりに日本やその他の国を引き合いに出し、少子化対策への提言をしていたことがありました。
ここでは、少子化に向かっている日本についての具体的な数字を示しながら、「日本はその小さなサイズにもかかわらず、経済的および文化的に非常に重要な役割を果たしてきました。私たちは日本人が団結することに期待したいと思います!」と事実だけを客観的に述べて大変危機的な状況を説明しながらも、日本を腐すことなく「頑張れ」と比較的ソフトにしめていました。
加えて、フランスもなかなかな警告ラインに達している現状について説明し、「……にもかかわらず、私たちの国の指導者たちは、十分な数の子供がいなければ国の将来を確保することは困難であることを忘れている!」と手厳しく述べています。
そして現在、大家族を持つことはかなり質素に生活することを意味しており、家族手当はある程度の規模で存在するものの、生活水準の低下を補うにはほど遠い。養うべき人数が増加し、両親のフルタイムの仕事が困難または不可能になる場合もある。国の手当は子供の数が増えても相対的な貧困に陥らないようにするために必要なレベルにはほど遠いものであると指摘しています。
つまり、政府の対策はまだまだ充分ではないということです。
しかし一方では、これから子供を産み育てていく世代に向けて、「あらゆる困難にもかかわらず人生は美しいものです。楽観的に生きましょう!」「la vie est belle(ラ・ヴィ・エ・ベル)」と呼びかけています。これは、いかにもフランスらしい言い方でもあるし、きれいごとのように聞こえないでもありませんが、一面では、結構真実を突いているような気もするのです。
人生にとって何が楽しいことなのか? 何が有意義で価値のあることなのか? そのあたりの価値観が実はけっこう大きな起動力でもある気もするのです。
フランス、ましてやパリといえば、キラキラなイメージがあるかもしれませんが、そんなキラキラな生活を送っている人はごくごく一部です。日常の生活はけっこう質素でシンプルで、家族で過ごす時間をとても大切にしています。フランス人のバカンス好きは有名ですが、それもほぼ子供を含めた家族で過ごす時間です。フランス人はそのバカンスのために生きているといっても過言ではないほどです。(しかし、そのバカンスにさえ行けない人が増えているのですから、子供どころではない人も大勢いるということでもあります)
その人の人生において何に重きを置くか──そんな家族とともに過ごすバカンスのために、子供を持って自分の家族が欲しい!そうして充実した人生を送りたい!と思うことほど大きな動機もないのではないかとも思うのです。
私が前々から感じている日本でいう「家族サービス」という奇妙な言葉はフランスにはありません。家族で過ごすことは、家族みんなが一緒の時間を楽しむことであって、一方的にサービスするものではないからです。
たしかに出産も子育ても本当に大変ですが、過ぎてしまえばむしろ大変だったことの方が良い思い出になっている気さえします。子育て中は本当に大変でしたが。
自民党女性局はフランス研修で何を学んだのか
今回、私がこの記事を書くきっかけになった自民党女性局のフランス研修についてですが、サイトを見ると、フランスの3歳からの義務教育の目的や効果、少子化対策、政治分野における女性の活躍等が書かれており、保育所などを視察されたそうですが、そもそも7月24日〜28日という時期的は夏休み期間で学校もお休み。
パリで生活する人があまりパリにいないタイミングです。百聞は一見にしかずとも言いますし、また、直接話を交換することに意味があるとは思いますが、どうにもモヤモヤしないでもありません。
今回のフランス研修で彼女たちが間違いなく学習したであろうことは、不用意なSNSへの投稿はご法度だということ。
政治分野における女性の活躍云々以前に、性別関係なしにフランスの政治家は、SNSの発信にも自分たちの行動が国民の目にどう映るのかにも大変気を配っています。 
●日本から「韓国」に移り住んで「こんなデタラメな国はない」と“確信”したワケ 8/21
「こんなデタラメでいいのか」と…
韓国で、私が文在寅政権時代に多くの痛い目を見たことは著書『それでも韓国に住みますか』にも綴っているが、「こんなデタラメな国」はないと私は思っている。
というのも、政権が変わった途端、我々庶民の生活に大きな影響が出てしまうのだ。
実際、2019年から「反日・不買」が始まった際には、その波は一気に韓国国民全体を飲み込んだ。その結果、それまで日韓ビジネスを行って来た者たちはどれほど苦しめられた4年間だったか……思い出すだけでも吐き気がしてくる。
私もそれまで進めていたプロジェクトが幾つかあったが、すべて白紙になり、大きな損害を被った1人だ。
それでもいまだに韓国の左派たちが福島原発の処理水をめぐってデマやフェイクを垂れ流している。彼らは自分たちが調子の良い時には判決や科学的機関のデーターが正しいといい、都合が悪くなるとそれまで言い放ったことを忘れたかの様に反対のことを言い出したりしている。
そんな相変わらずぶりが変わらないのが、いまの韓国野党であり、左派市民団体なのだ。
「デマ」と「呆れ」
そんなデタラメ思想に賛同してしまう日本の政治家が一部にいるが、いったい何が目的なんだろうと、参政権がないにもかかわらず私は恥ずかしさを感じずにはいられない。
このデマのおかげでどれだけの関係業者が迷惑し、怒っているかを知るべきと思うのだ。
今回、必死な左派の活動を見ていると、すでに「ローソク集会」や「反日・不買運動」が何の意味も持たなかったことに気づいている韓国国民には、何一つ響いてないことがよくわかる。
そんなデマがいくら撒き散らされても、韓国では居酒屋、寿司屋は繁盛し続けているし、訪日韓国人も相変わらず多い。
私は先日、日本のテレビ局に協力して韓国取材を段取りし、韓国の若者たちに取材をしたが、ここでも若い世代の韓国人たちは歴史と文化を分けて考え、日本文化楽しんでいることがハッキリとわかった。
韓国の未来
それにもかかわらず、韓国左派は北従思想、共産思想、社会主義擁護が露呈し、その方向性を国民が否定しだしていることになぜ気づかないのか、あるいは知っていて知らん顔なのか、まだ世間を騙し通せると思っているのだとすれば呆れてモノが言えない。
だが、今の尹政権はハッキリと日韓問題(歴史観)に決着をつけると大統領自ら明言している。その影響で若者が文化を楽しむことを優先し、歴史観は二の次にしだしたのだ。
尹政権がそういった雰囲気を作ったことで、左派が流すデマに事実上大きな被害は出ていないが、業者を含めた韓国民はこのデマを見て聞くたびに嫌気と怒りしか感じていないだろう。
そこに韓国左派思想の未来が見え始めているのかも知れない。
●「韓国国民の本音」の“意外な中身”と、韓国で起きている「巨大異変」の中身 8/21
韓国「反日の現場」でほんとうに起きていること
韓国の弘大(ホンデ)地区は、有名大学もあり、若者が集まる場所としても有名だ。
そんな場所で、これまで大学生や高校生と話す機会が何度かあったが、いまや彼らから「反日的」な雰囲気を感じ取れることは皆無になっている。
そんな時、あえて彼らに「反日」な考えはないのかと聞いてみたとき、少し驚く答えが返って来た。
というのも、大学生、高校生の共通した答えが「一部のおかしな人はいる」と言うのだ。そして「私たちもそうした人たちとは接しない」と言い、「その思考を理解するのが難しい」と言うのだ。
もちろん学校でそう言った質問を授業中に受けたなら体裁上、教育に沿った答えを真面目にするという。
が、普段は「反日」というようなことはまったくなく、むしろ「楽しければそれでいい」というのが本音のようだ。
そういった意見を聞いたあと、週末の光化門の「反日デモ」を見ていると、この国には「反日」という意識がほんとうはどこにあるのか理解に苦しむのだ。
ユニクロを買う「反日女子」
韓国で根っこに「反日思想」がある若者は、実際には光化門でしか見られないのではないのかと、思わざるを得ない。
光化門は韓国のデモの「中心地」と位置付けられている場所だが、私はソウルではこの場所以外で「反日」を見たことがないのだ。
「反日・不買」ムーブメントが盛んだった時でも、ソウルの至る場所に日本式の居酒屋が並び、そこのお客には「反日」は他人事と思える様だった。
カンナムのカフェでは日本への対応を話しあうビジネスマンが多くいたり、知り合った大学生からは「反日女子」がヒートテックを買っていると連絡が来たりと、私にとって韓国の「反日」とは光化門(半径3キロ圏内くらい)という限定的な地区だけの話の様に思えてならない。
逆に言えば、光化門だからこそ「反日」を叫べるのかも知れない。
「光化門」という場所
光化門とは韓国の大手、中堅新聞社が集中する場所でもある。そうしたメディアは日々こういったデモを取り上げるには都合の良い場所にいるわけだ。
韓国の聯合ニュースのビルは、いつでも大使館前の水曜集会を見下ろせる場所にある。慰安婦像から十数メーター離された正義連は、いまは聯合ニュースビル前で集会を行っている。朝鮮日報、東亜日報も、まさに光化門のデモを見下ろせる大通りに位置する。すぐ近くにアメリカ大使館もあって反米活動も取材しやすい。
中央日報は数年前に引っ越して、いまは光化門から離れているが、ソウル新聞や名の通った新聞社の多くがここに位置するわけだ。
そういった場所からの報道であれば、直に内容が伝われることも多いだろう。一方で、そこに集まる人達は、韓国全土の中では「一部の人」であると認識しないと見間違えてしまう恐れがある。
弘大やカンナムでは「反日」を他人事の様に捉えている。日本文化を楽しむ韓国人が、デモに集まる韓国人以上にいることを認識しないといけない。
●岸田政権を支える麻生太郎氏、長男へのバトンタッチは既定路線 8/21
収束の気配のないマイナンバーカードを巡るトラブル、自民党議員に相次ぐスキャンダル、そして20%台の“危険水域”にまで転落した岸田内閣の支持率……。9月中旬にも内閣改造・自民党役員人事を行なうとみられる岸田文雄・首相にとっては、まだまだ酷暑が続く。そこに来て、岸田首相の最大の後ろ盾にも、ある異変が起きていた。
支持率ジリ貧の岸田政権にあって、ひとり気を吐いているのが「岸田首相の後見人」の麻生太郎・自民党副総裁だ。
「今ほど日本、台湾、アメリカをはじめとした有志の国々に非常に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時代はないのではないか。戦う覚悟だ。いざとなったら、台湾の防衛のために防衛力を使うという明確な意思を相手に伝えることが抑止力になる」
麻生氏は8月8日に自民党ナンバーツーの副総裁として初めて台湾を訪問して蔡英文・総統と会談し、現地の講演で台湾有事についてそう発言して国際的に大きな波紋を呼んだ。
また、韓国も2回にわたって訪問、尹錫悦(ユンソンニョル)・大統領と長時間会談して日韓関係改善の道筋をつけてきた。
外交だけではない。
8月14日には岸田首相との関係冷却化が伝えられる茂木敏充・幹事長と2人で会食。秋の内閣改造では茂木氏の幹事長交代が取り沙汰されているが、「麻生さんは岸田派、麻生派、茂木派の主流3派で政権を支える体制を維持するために、茂木さんが次の総裁選に出馬せずに岸田首相の総裁再選を支持すれば、幹事長に留任できるようにすると説得している」(麻生派幹部)という。
岸田首相はマイナ問題や側近の木原誠二・官房副長官のスキャンダル報道に加えて、秋本真利議員の洋上風力汚職まで発覚してまさにボロボロの状態だが、「それを麻生さんがたった1人で懸命に支えている」(同前)という状況だ。
「最後の仕事だという覚悟」
だが、ここに来て、“政権の大黒柱”である麻生氏が引退を決意したという情報が飛び込んできた。
麻生家に近い地元・福岡のメディア関係者の証言だ。
「麻生家も後援会も、次の総選挙で長男の将豊氏(38、麻生商事社長)にバトンタッチするというのは既定路線で、それを前提に準備を進めている。もちろん、麻生先生もすでに引退する腹を固めています。麻生派会長の座は義弟(千賀子夫人の実弟)である鈴木俊一・財務大臣に譲って、政界入りする将豊さんの将来を託すつもりです。
今、麻生さんが韓国との関係修復に力を入れているのも、台湾で踏み込んだ発言をしたのも、現役のうちに自分がやっておかなければならない最後の仕事だという覚悟を強く感じる。引退表明は近いのではないか」
麻生氏を長年取材してきたジャーナリストの藤本順一氏も同じ見方だ。
「麻生さんが今期限りの引退を考えているのは、最近の政治的な言動からしてまず間違いないでしょう。外交でいえば、麻生さんは政界入りする前の日本青年会議所会頭時代から韓国や台湾との交流に積極的に取り組んできた。いわば、麻生さんのライフワークであり、思い入れが強い。とくに台湾については、かつて日本が中国の主張する一国二制度を受け入れたことにも忸怩たる思いがあり、今回の『戦う覚悟』発言につながった。そういう意味で一連の外遊は政治家人生の締めくくりを強く意識したものと言えます」
麻生氏が外交面や党内政治に積極的に動いているのは、引退を意識しているがゆえの行動だという指摘だ。
“これでもう思い残すことはない”
自民党副総裁として台湾で積年の思いを語った麻生氏はそんな心境だと見られているのである。
●「現地を見た方がいい」予定になかった首相の福島第1原発訪問 8/21
処理水タンクが立ち並ぶ福島第1原発構内。「(放出する沖合)1キロ先とは、かすんでいる辺り?」「ずっと配管が行って、海底において放出する?」。海を臨む展望デッキに立った岸田文雄首相は、処理水の放出設備を見渡しながら東京電力幹部に矢継ぎ早に質問した。最後に「大きな課題に取り組んでいる現場の皆さんには、緊張感を持って引き続きやっていただきたい」とハッパをかけた。

今夏の海洋放出開始へ最終局面に入った処理水問題。首相直々の原発視察で「政治決断」の地ならしが極まった。ただ漁業者の理解を得られるかは依然不透明で、中国が対抗措置を強める恐れも拭えていない。
首相側近によると視察は当初、政府の段取りに含まれていなかった。「放出するならば、現地に足を運んで原発の現状を見たほうがいい」。秘書官たちの進言を受けて決まったという。
米国での日米韓首脳会談から19日深夜に帰国し、翌日の強行日程。現場に赴いた上での最終決断を演出したい思惑はあからさまで、側近も「首相自身が最後に自分で判断するためだ」と解説する。だが、首相の置かれた状況は厳しい。

首相は21日にも全国漁業協同組合連合会長と面会し、海洋放出を妥当とした国際原子力機関(IAEA)の報告書を基に放出への理解を求める考えだ。その一方「漁業者との信頼関係は少しずつ深まっている」とする首相に対し、福島県漁連の野崎哲会長は「何を捉えて理解が進んでいると言っているのか分からない」とすれ違う。そもそも、漁業者は処理水の安全性よりも風評被害への懸念が強く、前向きな返答を引き出せる見通しは立っていない。
加えて共同通信社の世論調査では、放出を巡る政府説明が「不十分」や、風評被害を懸念する回答がいずれも8割を超えた。当事者のみならず、世論の理解を得ているとは言い難い。

国外批判も大きい。処理水を「核汚染水」と主張し反発を強める中国は、日本産水産物への全面的な放射性物質検査を始めており、流通停滞など実害も表面化。放出開始により措置がエスカレートし、農産物の輸出全般に波及する可能性もある。「説明の場を設けると常に言っているが応じてくれない」と官邸幹部。
安倍晋三政権が先送りした処理水問題に自ら決着をつけようとする岸田首相。ただ、広がる一方の内外の批判に政府内には手詰まり感が漂っている。 

 

●洋上風力発電は「安全保障上の喫緊の課題」と小野寺氏 8/20
自民党の小野寺五典元防衛相(党安全保障調査会長)は20日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』に出演し、「日米韓協力の新時代」を打ち出した18日の日米韓首脳会談の意義について、「韓国が政権交代しても、前のようにちゃぶ台返しやゴールポストを移すことが簡単にはできなくなる」との認識を示した。
小野寺氏は防衛相だった頃に日本のイージス艦と米国のイージス艦を視察した際、日本のイージス艦内の情報画面には韓国軍の情報が反映されていなかったのに対し、米国のイージス艦内の情報画面には韓国軍の情報が反映されていたことを明らかにした。その上で今回の日米韓首脳会談を経て日本と韓国が情報共有できるようになれば、「日本の安全保障にもとても大きいプラスになる」と述べた。
元外交官の宮家邦彦氏(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)は、今回の日米韓首脳会談の意義に関し「(日米、日韓の)二国間の同盟はあるが、NATO(北大西洋条約機構)のような多国間(の集団安全保障体制の創設)は絶対に無理だ。二国間以上で多国間以下のものをどうつくっていくかということが(首脳会談の)ポイントだった」との見解を示した。
一方、離島や防衛関係施設周辺等での土地の所有・利用をめぐる安全保障上の懸念を受けて、去年(2022年)施行された「重要土地等調査法」に関し、小野寺氏は「まだまだ不十分だ」との認識を示した。「ウクライナ戦争を見ても、重要インフラは基地と同様に重要な拠点ということがはっきりした」として、外国人や外国企業による重要インフラ周辺の土地所有規制を「強化していきたい」と強調した。
さらに小野寺氏は、洋上風力発電に関し「(設置)場所も、どの国(の企業)がつくっているかという資本もよく確認することがいま一番喫緊の課題だ」と話した。「いろんなところの申請が出ているが、風力発電が私どもとして困る場所につくられる(と問題がある)。例えば、レーダーを阻害する。あるいは、他の国の製品が使われていると、そこからどんな情報を日本から取っているかも分からない」と指摘した。
以下、番組での主なやりとり。
松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員): 歴史上さまざまな大きな会談が行われてきたアメリカ・キャンプデービッドで開かれた日米韓首脳会談だが、終了後の記者会見でバイデン大統領は、日米韓の防衛協力を「前例のないレベルに引き上げる」と述べた。
小野寺五典氏(元防衛相・自民党安全保障調査会長): アメリカは今までは一国で「君たちをしっかり守るよ」と言えたが、だんだん力が低下する中で、私どもが意識する周辺国が力をつける中で、連携して対応しないと持たないという別の一面もあるのではないか。
宮家邦彦氏(元外交官・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹): (米国としては)日韓関係改善のスピードをもう少し早めなければいけない(と考えた)。ヨーロッパでウクライナ戦争が起きている。中国も何か企んでいるかもしれない。いま何かやらなければいけない。ところが、(日米、日韓の)二国間の同盟はあるが、NATO(北大西洋条約機構)みたいなもの、多国間(の集団安全保障体制の創設)は絶対無理だ。だから、二国間以上で多国間以下のものをどう作っていくかということが(首脳会談の)ポイントだった。その核心は日韓だ。
橋下徹氏(番組コメンテーター・弁護士・元大阪府知事): 韓国で有事が起きた時に韓国を支援するのは日本に駐留する在日米軍と、場合によっては(横田基地に所在する)朝鮮国連軍後方司令部だ。もうすでに(日韓は)同盟と言わなくても準同盟関係にあるのではないか。
小野寺氏: 日本にある在日米軍基地は、韓国の支援のために相当の役割を果たすことになっている。本来であれば日本に対してその基地負担についても「日本に感謝する」と韓国から言ってもらうのが普通であり、以前はそういうことを発する韓国の政治家もいた。最近どうも日韓関係が悪くなって互いにあまりこの問題について本質を議論しなくなった。在日米軍基地はかなりの部分、そして(日本に駐留する)朝鮮国連軍後方司令部も、いざという時のためのものだ。日韓、日米韓の関係をしっかりすることは、日韓両国の安全保障にとって重要だ。一番大きいのは、例えば、私が防衛大臣のとき、日本のイージス艦で日本の周辺はどうなっているかという情報を画面で見るのだが、日本のイージス艦で見ている映像と、たまたまアメリカのイージス艦に入って同じ映像を見ると、出てくる絵が違う。なぜかというと、アメリカのイージス艦は韓国の情報も入った上での一つのピクチャー(画像)で、周辺の状況が出てくるから。本来日本もこれを持つことは、日本の安全保障にもとても大きいプラスになる。今回、安全保障面で見れば、日韓、日米韓の関係は日本にとってもプラスになる。日韓関係は文在寅前政権時にかなり悪化した。(韓国海軍駆逐艦が自衛隊哨戒機に対して行った)レーダー照射問題や、(韓国側による一方的な)GSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)の破棄表明でギクシャクした。こういったことを完全に水に流せるのか。
小野寺氏: 現場で任にあたっている隊員からすれば、非常に危険な状況に一時あったわけで、この問題についてはこれからも累次、防衛当局が確認する必要がある。今までは韓国の政権が代わると日本に対して急に違う対応をされることがあった。ところが、日米韓三か国が組んで今後新しい枠組みでやっていくとなれば、この対話のチャンネルは崩せないので、韓国の政権が代わったとしても前のようなちゃぶ台返しやゴールポストを移すことは簡単にできなくなる。そういう意味で、この三つでグリップすることは大事だ。
松山キャスター: (外国人や外国企業による土地購入の)経済活動としての部分と、安全保障上の問題は切り分けて考える必要があると思う。安全保障上の問題について具体的に動きだしているのが、共和党の大統領候補デサンティス知事のフロリダ州だ。7月1日から重要インフラ施設から10マイル(約16km)以内にある不動産について、中国、ロシア、イラン、北朝鮮などの個人・企業に対して購入・所有を禁止した。具体的な国名を上げて禁止する動きが出ている。今の日本の法整備ではここまで踏み込んでいないが、小野寺さんはこの動きをどう受け止めるか。
小野寺氏: 本来あるべきだと思う。ただ、日本の場合、憲法の規定もあり、できる範囲で今ギリギリやってるのが「重要土地等調査法」だ。まずは重要インフラ周辺の土地所有者は誰で、どういう目的で取引が行われるのか監視し、万が一の場合には国が取得する等、いろんなことをようやくできるようになった。ただ、まだまだ不十分だ。まずは現行憲法下でこれをもっと規制すべきだ。実際、いまウクライナ戦争を見ても重要インフラは実は基地と同様に重要な拠点ということがはっきりした。安全保障上、私どもはしっかり監視をするし、外国人、あるいは外国企業がその周りの土地を所有して、逆に日本の安全保障が脅かされることがあれば本末転倒だから、ここは強化していきたい。
橋下氏: フロリダ州のデサンティス知事の考え方は、国名をあげてこの国の人に対しての取引を規制するということだが、僕はこれは違うと思う。重要施設だから、重要インフラだから、相手の国籍がどうであれ、重要インフラの周りの土地は買ってはいけないよと。国名や国籍で何か規制するというわけではないですよね。
小野寺氏: 国名で規制すると、(買っても)いい国の人の名義を使って買って、結局それが別の国の資本で運用されてしまうこともある。だから国名で規定しても実効性はない。むしろ国がしっかり管理をする形を取っていく。国名は別として、その方が実効性はある。
宮家氏: 日本で在日米軍基地の周りの土地が買われてしまって、しかもどこの国とは言わないが、間違いなくやってるだろうなという人たちがいる。そういうのを考えると、デサンティス氏のやり方がいいとは思わないが、やはりもう少し日本のレベルを上げないといけない。
小野寺氏: 例えばいま、風力発電がある。洋上風力発電でいろんなところの申請が出ているが、実は、風力発電が私どもとして困る場所に作られると(問題だ)。例えば、レーダーを阻害する。あるいは、風力発電にほかの国の製品が使われ、そこからどんな情報を日本から取っているかもわからない。風力発電一つとっても、安全保障上管理する必要がある。(設置)場所も、どの国が作っているかという資本もよく確認することがいま一番喫緊の課題だ。 
●ウクライナ — 即時停戦の必要性信じる日本の政治家 8/20
東京:日本維新の会所属の政治家鈴木宗男氏によるロシアのウクライナ侵攻をめぐる発言が、日本国内で物議を醸している。
昨年2月の侵略以来、鈴木氏は侵略の責任はウクライナにもあると主張し、即時停戦を求める声明を繰り返してきた。鈴木氏の立場は、ロシア軍の完全かつ無条件撤退を求める日本政府の立場とは大きく異なる。
鈴木氏は北海道・沖縄開発庁長官、外務政務次官などを歴任。長年ロシアとの交渉に携わってきた。
鈴木氏は共同通信のインタビューで、ウクライナ情勢について「ロシアとウクライナには明らかな国力の差がある」とし、「ウクライナは(西側諸国の支援なしでは)単独で戦うことはできない」と語った。
更なる流血の事態を想定し、双方とも停戦が必要であり、これ以上高齢者の犠牲者を増やさないためにも、一刻も早く停戦を実現することが重要だ」と述べた。
ポリティコによると、マーク・ミリー統合参謀本部議長は昨年11月、ニューヨークでの会合で、ウクライナの軍事的勝利は難しい可能性があると述べ、この冬はロシアと交渉を開始する良い機会だと付け加えた。
鈴木氏も同様の考えを持っており、近年存在感を増しているグローバル・サウスと呼ばれる発展途上国が双方に停戦を求めていると指摘した。
鈴木氏は、約40カ国と国際機関の代表が参加した今月初めにジェッダで開催された国際平和会議に感銘を受けたとも述べた。
●「これからの日本について、日本はダメじゃない。その可能性について」 8/20
在仏20年になる父ちゃんだが、20年前、パリの空港からパリ市内に入る高速道路の左右はすべて日本企業の巨大看板で埋め尽くされていた。
まさに、シャルルドゴール空港からパリへの道はジャパニーズゴールデンゲートだった。
実際、日本は世界一と自負するほどの経済大国であった。
その日本経済の求心力が低下しはじめ、逆に、中国や韓国企業の看板が目立ちはじめ、今、日本の会社の看板と言えば「ダスキン」くらいしかしかないのだ。マジで。
それに急速な円安、日本にいると気づかないが、日本の円ではまともに買い物が出来ない状態が続いている。父ちゃんは外貨を稼がないとならなくなった。
じゃあ、もう日本に未来はないのか、ということをぼくはずっと考えてきた。
トヨタなどの大手自動車会社はまだ力があるが、将来的にも、そういう日本の基幹産業がトップでいられるかどうか、微妙な感じを受ける。
デザイン力、将来を見通す力、とくに政府の支援の仕方も含め、日本は長期的な戦略において、ここのところ元気のいい国々と比較すると、ちょっと弱い。
西側という古い幻想はもうない。BRICSのようなものがどんどんこのバランスを崩して来るだろう。もの凄い勢いで。ドルなんて、もしかすると・・・。
世界一と胡坐をかいていた間にぐんぐん抜かれているのは間違いない。
そもそも資源がない。ロシアがあれだけの戦争をやっても、まだ、大国でいられるのは、十分な資源を握っているからである。
でも、しかし、今回の日本滞在で、日本没落か、と思って心配してきたこの20年の考え方にちょっと変化が出はじめた。日本にはもの過ぎ資源があるじゃないか!
その資源というのは、日本人そのもの、なのである。
笑われるかもしれないが、やっぱり、日本人は、他の国の人々とはくらべものにならないほどの真面目さ、勤勉さが国民の根底にあるということだ。
これは世界で暮らせばよくわかる。凄いことなのだ。
ぼくは20年フランスで暮らしたし、アメリカでも暮らしたことがあるので、ちょっとはわかる。
驚くべき斬新さはないのだけれど、国民全体が一つの力になっている。
なので、来日する度に、その底力、安定感に、驚かされる。
とくに今回は、空港から、タクシーから、街並みから、あらゆることに、目を見張った。もはや、父ちゃんの目は外国人の目なのであーる。ぎろぎろ。
異論はあるだろう。
個性は強くないかもしれない、向こう見ずなエネルギーも弱いかもしれない。
ワーカホリックな国民性、政府がそれを利用している、など、不安材料はそれなりにある。
でも、責任感や、目的に向かう力、集中力はやっぱりすごい。問題は、ジョブスとか、ほら、いろいろといるような経営者、ああいう発想を持ったリーダーになる存在が、かなり薄いということだ。
若い起業家の人たちはメディアで立派なことをおっしゃっているが、世界規模じゃないし、現実の大樹を見てない。そこが、今、急激に成長している新興国の起業家たちと違う点なのである。
これは、政府のやり方に、大きな問題があって、外から見ていると、残念でならない。
ビジョンが「今」を基準にしているので、5年後、10年後が全く見えない投資ばかりがなされ、うだつの上がらない「金貸し」という印象で、しかもメッキがはげかけている。
ただ、島国で、他国と繋がっていないので、その利点は、可能性を秘めている。
ぼくにはたくさんの日本復活へのアイデアがあるのだけれど、この紙面では語り切れないし、ぼくはご存じのように実業家ではないし、ジャーナリストでもないし、政治的人間でもないので、個人的アートへ向かうことで精一杯、なので、この話はまたいつか、ということにしましょう・・・。
ただ、もったいないなぁ、と思う。
同じく、資源のないフランスと比較しても、フランス人は個性的で面白い人間たちだけれど、勤勉さは日本人の方が圧倒的に上で、しかし、なぜ、フランスが強いのか、というと、政治力があるからだ。
EUを束ね、あの規模感(日本の半分の人口)の国なのに、世界の政治のかじ取りをうまくやる。
フットワークが政治にある。もしも、日本の政権が、まともなフットワークを持つことが出来たら、国民資源がこの国を強く再生させることが出来るだろうと思う。
もう少し、日本の政治家は、外を知り、外から学ばないとならない。内を大切にするべきだ。
政治家を育てバンバン排出するフランスのエナのような特別な学校を創設するようなところから、はじめなとならないのだけれど、こういうこと、言っても、ハぁ、ですよね? 
実に、もったいない話なのである。
●重度の「感染症依存症」に陥った日本人に飲ませる“特効薬”は永久にない 8/20
コロナ騒動を終わらせたくない人々
7月29日、4年ぶりの隅田川花火大会が行われ、103万人が参加した。すると途端に元気になるのがコロナ騒動を終わらせたくない人々である。
82万人が訪れた京都の祇園祭宵々山(7月14〜16日)の時もそうだったが、「マスクをつけてない人が多い! メガクラスターが発生するじゃないか!」とツイッターで人の楽しみに難癖をつける。そして毎度「2週間後は地獄になる!」と煽り、ならなかったら次のターゲットを探す。
7月24日〜30日の1医療機関あたりの陽性者数は全国平均が15.91人。京都は16.54人。もっとも多いのは佐賀県で31.79人となっている。佐賀で京都の祇園祭宵々山レベルの祭なんてこの時期にやっていない。
そして、8月7日〜8月13日の全国平均は14.16人になった。祭あっても減ってるじゃねーかよ。
もう世の流れが「コロナ? 何それ?」に向かうのは止められない。ワクチン接種を推奨し続けてきた日本医師会の釜萢敏理事(政府分科会メンバーでもある)も、ワクチン接種について方針転換してこう述べた
「65歳以上の人や基礎疾患がある人以外が重症になる割合はそれほど高くはない。全体の感染を抑えるために無理をして接種してもらうというよりも、個人で選択してもらう時期に入った」
メディア・政治家・専門家・ツイッターの医クラ(医療クラスター)・コロナ脳らが恐怖を煽り続けたことをシレッとなかったことにしようとしているが、そうはさせない。私は本稿にて、この3年半に及ぶ歴史的騒動をしっかりと記録しておく。
コロナを終わらせたくない人々の手口はだいたいこうだ。

1) 「第〇波」が開始しそうだ、「水面下で始まっている」などと警鐘を鳴らす。
2) 基本的な感染対策の徹底と気の引き締めを要求する
3) 陽性者が増えると「指数関数的に増加する」と言い出し、「だから自粛をしマスクをしてワクチンを打て」と言う
4) テレビが「マスク警察」となって「アーッ、マスクをしていない人がいます!」とヒステリーに叫ぶ。知事や各地の医師会が「おじいちゃん、おばあちゃんに会う時はマスク着用を」と言う
5) 陽性者数が減り、「第〇波」が終わったと判断されると「まだ普通の病気ではない。引き続きマスクの着用とワクチンの追加接種を」と専門家が警鐘を鳴らす
6) マスク様とワクチン様を信仰する人は「民度の高い日本は大多数がマスクをし、ワクチンを打ったからこの程度の被害で済み、収束した」と言い、引き続きの自粛と感染対策を要求する
7)以下、1〜6をループさせる。なお、2023年3月13日以降「マスクは任意」と政府が方針を発表して以降、メディアは「マスクをしている人は東京駅で94%」や「これからもマスクを着用する意向の人は80%」などと煽りをやめない

よくもこんな茶番を8回もやってきたものだ。そして今、9回目をなんとか続けようと必死な勢力がいる。貴殿らは邪魔。もう、喋るな。そしてこれから糾弾されろ。なんの権限があって人々に行動制限を課し、国民総我慢大会を強いたのだ。
欧米各国は2022年初頭には「対策しても無駄。もう気にしていられない。昔に戻ろう」とばかりにこのバカ騒動から撤退。アフリカ諸国はそもそもほぼ気にしていなかった。「もっとヤバい感染症、時々流行るんですよ……」という気持ちもあったかもしれない。
それなのに日本は「対策をすればコロナは撲滅できる」という根拠レスな根性論で対策を続けた。その際、専門家と政治家とメディアとコロナ脳が見事な連携で上記 1)から6)を繰り返した。
尾身茂氏は相も変わらずワクチン推奨
2023年8月、そんなコロナ界隈にも「なんとなく終わった」感が漂っている。結局、すべては人々のマインドの問題だったのだ。あとはメディアが過度に煽らなくなっただけの話だ。社会の空気感が変わったから専門家もトーンダウンした。
分かったのは、コロナは壮大なる“社会ヒステリー実験”であり、儲かる者がその利権を固持し、他人が楽しい様を恨む人々、潔癖過ぎる人々、幼稚な死生観の人々、「経済より命」「PCR検査の無償化を要求します」「学校に空気清浄機を!」と叫ぶ“自称ヒューマニスト”がなんとしても終わらせたくなかっただけ、ということだった。
政府分科会会長だった尾身茂氏が6月26日、「第9波の入り口」にあることを発表。そのうえで、お得意の「高齢者を守れ」発言をし、「(5類移行で)接触の機会が増え、感染者の数がある程度増えることは織り込み済み」と述べた。
そして、そして、お決まりのワクチン接種を呼びかけたのである。現在6回目絶賛進行中で、7回目も準備はできている。大丈夫、無料のものが大好きな日本人は接種してくれますよ。
本稿では、日本のコロナ政策、そして人々の行動様式に多大なる影響を与えた「自説を曲げず軌道修正ができぬ頑固過ぎる専門家」、そして彼らを盲信する「(どんなバカなものでも)ルールはルール!」「政府や自治体や専門家が言うことは絶対に正しい!  そこに異論を挟むヤツは反社会的人物!」と考える多数の日本国民について書いてみる。
ちなみに、コロナの5類化開始の5月8日を前にした4月19日、厚労省の専門家会合に参加した脇田隆字座長は、第9波の可能性を示唆し、高齢者が多い状況で推移する「可能性」を述べていた。私はこの発言を、政治家と国民に対して「お前ら本当に5類に賛成するんだな、死んでも知らないからな。今だったらまだ引き返せるぞ」というメッセージと捉えた。
それにしてもラクな仕事である。「第〇波の可能性」「次の波は前の波を超える被害が出る可能性」「マスク着用など基本的な感染対策は継続すべき」「ワクチンの追加接種が必要」を定期的に言っておけば「ありがたやー」とメディアが記事にしてくれる。
それを読んだコロナを恐れる人々は「専門家様もこう言ってるゾ!  5類移行は時期尚早だった!  特効薬がないのにあまりにも乱暴だ!  マスクをしない不届き者も増えている。だから陽性者が増えたんだ!」と勢いづかせるのである。
ちなみに風邪にもインフルエンザにも特効薬は存在しない。コロナに特効薬ができるのも現代の科学では無理だろう。
またいつもの光景が始まった…
6月20日頃、沖縄で新型コロナウイルス陽性者が激増し、「医療が逼迫している!」とメディアやツイッターで医師が危機をしきりと伝えるようになったが、「またいつもの光景が始まったわ……」と暗澹たる気持ちになった。
尾身氏は沖縄の陽性者が増えたことについて、「コミュニティーを大切にする生活様式や、比較的低いワクチン接種率も影響している可能性があると指摘した」(共同通信・6月26日)と分析。第6波の時(2022年1月1日〜3月31日)と言ってることが変わっていないのである。
尾身氏は「人流を抑えれば感染は抑えられる」「マスクを含めた感染対策には効果がある」「子供・若者が高齢者に移して高齢者を殺す」「ワクチンが救世主」という論を一切変えず、政府に対しても3年間同じ提言ばかりしている。
ならばなぜ、日本の超過死亡が2021年・2022年と激増し、2022年には17週間にわたって世界一の陽性者数を叩き出したのだ? 貴殿の提言、まったく効果なかったでしょうに。それに、沖縄についての話も印象論に過ぎない。
沖縄は毎度気の毒である。何かといえば「大酒飲み」「家族やコミュニティーを大切にするから集いが多い」「ワクチン接種率が他の都道府県より低いから感染しやすい」といった印象論でやり玉にあげられるのだから。
もう一つの要素は米軍の存在だ。第6波は沖縄で一早くスタートしたが、その理由は「マスクをしない米兵が日本に来たから」とされた。この件については、基地反対派が政治的意図をもって言いふらした説という面も強いだろう。
確かに沖縄のみワクチン2回接種率が70%を下回るのは事実だが、人口100万人あたりコロナ死者数は全国平均が597.6人。もっとも高い大阪府が977.4人、2位は北海道の896.7人。沖縄は8位の692.1人である。
この「100万人あたり〇人死亡」というヤツは厄介で、情弱を怖がらせるための有効な表現手法でもある。全国平均の「100万人あたり597.6人」は別の言い方をすれば「致死率0.05976%、生存率99.94024%」である。全国平均より高い沖縄は「致死率0.06921%、生存率99.93079%」だ。
その後、10万60歳という超後期高齢者のデーモン閣下が自身の公演で観客へのマスク着用を要求し、高校野球鹿児島大会ではインフルエンザやコロナが増えているということで開会式が中止に。おなじみの光景がやってきた。
未だ「感染症を恐れることこそ人生でもっとも大切なこと」といったモードから日本人は抜け出せていないのである。そして、その空気を生み出したのは、この3年半、専門家が扇動するコロナの恐怖と、それを拡散する政治家・メディアである。
このメディア・専門家によって拡散された恐怖から、末端の組織人や家族人が従業員、客、そして家族に過度な感染対策を押し付け、「他人はばい菌である」「他人を見たらコロナと思え(元は岡田晴恵氏の発言)」という空気感を作り出したのだ。
多くの日本人が陥った「感染症依存症」
感染症分類が5類になって以降、マスクを外す人が増え、コロナ報道も減った。だが、専門家とコロナ脳たちは相変わらずで、「ウイルスの性質が変わったわけではない」「基本的な感染対策は必要」を言い続け、定点観測での陽性者数が増えたら「第9波はこれまでよりもヤバくなるかもしれない」などと煽り発言をやめようとしない。
だから、変な話だが、日本人の多くは「感染症依存症」という何が何やら分からないヘンテコな精神状態に陥っているのだ。メディアも同様で、かつてはそれほど危険視していなかったRSウイルス、インフルエンザ、ヘルパンギーナ、手足口病の流行を深刻ぶって報道。これらは数年前までは「風邪」「夏風邪」などと称されていたものである。
これらについてもいつもの「感染症煽り医」がメディアに出演し、事態の深刻さと感染対策の重要性を説いている。最近では、松本哲哉氏や伊藤博道氏といったお馴染みのメンバーが再びテレビで活躍をし始めた。そうした効果もあり、ついには上記風邪・夏風邪の増加を問題視し、挙句の果てには「子供達が風邪で熱が出る」までニュースとして出すようになったのだ。
「ヘルパンギーナにワクチンなし」という当たり前の話なのに、さらに言うと過去には誰も気にしていなかったようなことまで6月下旬、ニュースとしてテレビは報道する始末。「謎の風邪」という言葉も一時期ツイッターのトレンド入りした。社会全体で「風邪」を恐怖の病気扱いするようになったのである。
この3年半、感染症の専門家とされる人々は、新型コロナについてハッキリ分かっていないにもかかわらず、すべてを把握しているかのように振る舞った。
「マスクが防ぎます」「ロックダウンをすれば封じ込められます」「酒を2時間以内に切り上げればリスクは減ります」「酒類を提供しなければ防げます」「4人以上の会食はいけません」「県をまたぐ移動はいけません」などなど、思い込みを元に人々に生活スタイルの強要と行動制限を課した。そして日本人は羊のように従った。
「感染症の専門家」はいつしか「新型コロナの専門家」としても扱われ、その一言一言が政治家に影響を与え、そして一般人が拡大解釈して各施設や学校では過度な感染対策が行われた。
そこまで恐怖に陥れたら、なぜか医師免許を持っているだけの人物が「専門家」扱いされるようにもなる。なんで貴殿らは新型コロナウイルスのこと、ワクチンのこと何でも知っているんだ? 
ツイッターには「医クラ」と呼ばれる人々多数存在したが、救急医、内科医、歯科医らがこぞってコロナの恐怖と医療従事者の頑張りとマスクとワクチンの素晴らしい効果について連日ツイートを続け、信者が「ありがたやー!」と崇めた。そして異論を呈する者に対しては、これら教祖が犬笛を吹いて「こいつを攻撃しろ!」と暗に焚きつけ、異論を呈した者に一斉に襲い掛かり、罵詈雑言を浴びせた。
こうなってくるともはや医クラは万能感MAX状態になり、「マスクの専門家は医者だ」、と述べる者まで登場した。いや、マスクの専門家はマスクメーカーの従業員であり、不織布メーカーの従業員である。
ツイッターユーザー「えれこーど」氏(現・Mr.NoWaven)は不織布メーカーの従業員である。そんな同氏が自社製品にとって絶好のチャンスだというのに、不織布マスクはウイルス対策のためではなく、その性能が誇大解釈されていると説明。それなのに「お前は嘘つきだ!」と「マスク真理教」の信徒からは猛烈に批判された。
いや、えれこーど氏こそが教祖だろうよ。だが、「不織布マスク」という神を冒涜した堕落した教祖、という立場に同氏は落とされてしまったのである。
結局、日本人は、テレビに出る医者やツイッターでフォロワーの多い医クラといった「権威」の言うことを素直に信じ過ぎ、それに従って対策を続けたため、異論に対して噛みつきたくなるのである。何しろマスクの効果に疑問を呈する者は、素晴らしい教義を貶める邪教の信者なのだから。
専門家が作り上げた「設定」の数々
さて、ここからは、専門家が作り上げ一般人が信じ込んだ「設定」について見ていこう。まずは【医療崩壊】である。
元々2020年4月の緊急事態宣言は、医療体制を充実化させるための時間稼ぎ、という目的で人々は自粛をし、飲食店は営業を休止した。その後も度重なる緊急事態宣言とまん延防止等重点措置(マンボウ)は発出され、医療業界は何度も体制を変えるチャンスはあったというのに、2023年6月、「沖縄が医療逼迫している!」とメディアと医クラは大騒ぎ。そして「感染症依存症」の人々は仰天しパニックに陥った。
あのな、貴殿らが「コロナ陽性で熱が出ると私は死ぬ!  私の母は基礎疾患があるからうつしては絶対にならない!  病院様〜、診てください!」と慌てるのがいけないの。本来自宅で休んでおけばいいだけの人まで救急車で病院に来るから、貴殿らのいうところの「医療崩壊」が起きていたのである。
沖縄県医師会は6月29日、県庁で緊急会見を開き、県民に感染対策を呼び掛けた。会見では、県内の入院患者が950人を超え、重点医療機関の医療従事者のうち565人が休職していると発表。病床・人員不足を懸念する会見だった。
この休職者についてだが、実際に医療体制に影響はもたらしている。たとえば、沖縄県立中部病院は以下の制限をした。
「小児の夜間休止」「心臓血管外科患者の紹介・救急受け入れ」「新規外来紹介患者、救急紹介患者」「消化器内科診療」「耳鼻咽喉科診療」。6月22日の発表では、患者25人、職員19人の陽性が明らかになっていたのだ。こうした制限の理由は以下の通り。
〈 新型コロナウィルス感染症の増加に伴い、職員の感染・濃厚接触者増加によるマンパワー不足のため通常医療が提供できない状況となっております。(中略・ここでは各科の制限状況を説明)。皆様にはご不便、ご迷惑をおかけいたしますが、科の体制がひっ迫している現状をご理解頂き、ご協力を賜りますようお願い申し上げます 〉
5類になったというのに、いまだにいわゆる「濃厚狩り」を行い、休職者を増やしているのである。まさに「セルフ医療逼迫」とでもいえよう。
本当に体がツラい人だけが休めばいいのに、元気な濃厚接触者まで休職させられた。「患者さんを救いたいのに……」と考える休職者もいることだろう。それなのに病院の方針として、闇雲に検査をした結果、医療逼迫を招く結果となった。
ちなみに、沖縄が医療崩壊したと言われた6月21日の重症化病床は27床中5床の使用。これが医療逼迫の実態だ。
そして、7月1日、沖縄のラジオ局・琉球放送がイオン名護で行ったイベントには大勢の人々が密集する写真が掲載された。マスク着用率は約半分。ここにコロナ脳は噛みついた。「マスクしろ、密を避けろ、こんなイベントを今やるな、沖縄は医療崩壊しているんだぞ!」というのが基本線である。
コロナ脳と医者にとっての希望の星が沖縄なのである。ここでも沖縄はコロナを終わらせたくない人々に利用されている。ちなみに、8月7日〜13日の一医療機関あたりの感染者数は日本全体では14.16人だが、沖縄は日本で最も少ない6.72人だった。
ただの「夏風邪」が「重篤な症状」に
こんなことだから、医者たちは、いかに自分たちが大変で社会にとって有益な仕事をしているかをアピールし、そして庶民は自分たちに感謝すべき存在、という考え方にすっかり染まってしまった。秋田大学医学部附属病院長の6月23日のツイートが象徴的である。
〈 コロナも5類になって少し落ち着いたような気もするでしょうが、その時傷ついた看護師達の心は未だ癒えてません。コロナが下火になっても、コロナの前からも、#看護師 は24時間患者さんに寄り添ってくれています。仕事とは言え本当に大変な職業です。彼女彼らに激励の #応援メッセージ をください。〉
いや、院長、貴殿が看護師の待遇を上げてあげればよいだけでは? しかも、貴殿の病院、コロナの外来診療していないじゃないですか。
今はインフルやRSウイルスの診断で大変だったってことですか? 2019年までだって、両方で多くの患者来ていたでしょうに。看護師だって「応援メッセージなんかよりカネと休みをくれ」と思ってるんじゃないですか? 
子供を持つ親からすれば、ヘルパンギーナを含めた「夏風邪」はよくある症状だった。それなのにコロナ騒動が3年半続いた現在、「よくある症状」は「重篤な危険をもたらす症状」ということになってしまった。医師会らはヘルパンギーナも2類相当にしたいのか? もう医療崩壊どころか健康皆保険制度崩壊まっしぐらだ。
ツイッターユーザー・鈴木兆氏は医師が騒ぎまくっている医療崩壊について6月24日にこうツイートした。
〈 俺も孫が幼児の時小児科に連れて行ったことがあるが、当時PCからネット予約して通院しても診察まで1時間待ち、待合室はごった返していた。孫は39度くらいあって、他の子は知らないがみんな普通に動き回る。それがデフォルトだった。その良し悪しは置いておくが、今はそれを医療崩壊と言うそうだ。〉
私も喉を時々やられ、猛烈に痛くなることが2014年〜2020年まで、2年に一度くらいあったため、その際は腕の良い医師のいる耳鼻咽喉科を受診したが、ネット予約開始と同時に予約を取ろうとするも、なかなかアクセスできず、再アクセスを試み続けると数分後にいきなり「43番目です」と出る。受診できる目安は8時30分の受診開始から2時間半後の11時なんてこともあった。
早く受診できることを期待し、仕事をするためパソコンを持って10時30分に行くと待合室はビッシリで私の番まであと13人、なとど出ている。多いのは子供と高齢者だった。それだけ腕の良い病院というのは混んでいるものなのだ。
ツイッターユーザー・あーぁ氏は医療崩壊についてこうツイートした。医療側の人間は常に「大変だー大変だー!」と言い続けていることを皮肉っているツイートだ。
〈 あのね、2類相当以上の時もずーっと医療逼迫って騒いでて、5類になってからも医療逼迫って騒いでるんだからもう放っとけばいいんだよ 〉
だが、人々は医療従事者に「いつもありがとうございます」と激励のメッセージを送る。そう、この3年半は、社会が「医療従事者は常に大変」「医療こそもっとも崇高な仕事」と思い込んでしまったのである。
実際、2020年12月21日、当時日本医師会会長だった中川俊男氏は「医療はあらゆる産業で一番重要だと私は思っている」と発言。また、町田市医師会の佐々木崇氏は、「不要不急の商売は次々と潰れていく」というコラムを町田医師会報第553号に掲載。理容院の感染対策が同氏的にはなっていないと感じ、「素人でもできる不要不急の商売は次々と潰れていく」とこれまたゴーマンな意見を述べたのだ。
結局、医者の選民思想に全国民が付き合わされたのがコロナ騒動だったのである。
●未だに「マスク」と「ワクチン」を崇め奉る日本人は、いつまで“コロナ禍プレイ”を 8/20
専門家は年中「気を抜くな」と言い続ける
ここからはさらに個々の設定を見ていこう。
【コロナには油断できる月は一切ない!】
まるで『日本全国酒飲み音頭』が毎月酒を飲む理由を探すかのように、専門家は毎月のように「気を抜くな」と言い続ける。1〜12月の理由と、その他、「〇〇が危険です!」と言われたものについて振り返る。
   1月:正月と成人式でコロナになるぞ
   2月:入試で人が動き、集まるからコロナになるぞ
   3月:送別会と卒業式でコロナになるぞ
   4月:花見と入学式でコロナになるぞ
   5月:ゴールデンウィークでコロナになるぞ
   6月:梅雨で室内にこもるからコロナになるぞ
   7月:夏休み開始と海の日の連休と花火大会でコロナになるぞ
   8月:お盆の帰省でコロナになるぞ
   9月:新学期開始とシルバーウィークの移動でコロナになるぞ
   10月:祭りや行楽シーズン、ハロウィンでコロナになるぞ
   11月:気温が下がり始めるからコロナになるぞ
   12月:クリスマスと忘年会と年末の帰省でコロナになるぞ
「危険設定」されたものは以下の通り。
屋形船が危険/タクシーが危険/ライブハウスが危険/パチンコ屋が危険/夜の街が危険/県をまたぐ移動が危険/ゴミが危険/宅配業者・郵便配達人が危険/東京五輪が危険/高校野球が危険/音楽フェスが危険(特に愛知県常滑市のNAMIMONOGATARI)/学校行事(入学式、遠足、修学旅行、体育祭、文化祭、運動会、合唱コンクール、林間学校、卒業式)が危険/帰省が危険/親戚同士集まるのが危険/大学が危険(小中高が対面になってもリモートを継続した大学が多かった)/給食が危険/K-1が危険/阿波踊りが危険/岸和田の「だんじり」が危険/接待を伴う会食が危険/正面で向かい合って食事をすると危険、斜めにすべき/公共施設における椅子をすべて使うと危険/2時間以上飲食をすると危険/5人以上で食事をすると危険/子供は高齢者にとって危険な存在/祇園祭が危険/隅田川花火大会が危険
茨城県で行われていた「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」は、2021年に茨城県医師会の反対により中止に追い込まれ、翌年からは千葉で実施されることになった。2019年には33万7000人が訪れた大規模フェスが消えたのだ。
しかし、2022年、地元・茨城放送が「LuckyFes 2022」を開催。この時は茨城の医師会は反対をしなかった。反対していたらどうなったのか? 同フェスのHPには『「茨城のフェス文化の灯を消すな!」を合言葉に、LuckyFM Green Festivalがこうして立ち上がりました(通称LuckyFes)』とある。
あのさ、自分らの県の判断でフェス文化の灯を消しといて何言ってるの? ロッキンオンは東京の会社主催だから苦々しかっただけなの? luckyFesは地元企業で関係者に知り合いも多いから許したの? としか思えない。
「楽しいもの」を悪者にする一方で
次に、どう考えても腑に落ちない「謎設定」を振り返っていく。
【なぜか悪者にされない存在】
満員電車/高齢者施設/病院/役所/郵便局/選挙/国会/全国の議会/県知事や総理大臣への表敬訪問/テレビ番組/風俗店/マッチングアプリ/ラブホテル/AV撮影/相撲
これらでクラスターが発生したり、これらが原因で陽性者が続出したという報道は寡聞にして知らない。基本的には娯楽・祭・学校行事・各種式典・花見・会食(飲み会)という「楽しいもの」を悪者にし、規制をかける。
相撲が悪者にならない理由はよく分からない。激しくぶつかり合う力士はマスクしてないではないか。要するに勝手に専門家とメディアがこれらが危険な場所である、という「設定」にしただけなのだ。
それは初期の頃「不要不急の外出は避けてください」と散々アナウンスされたものだから、娯楽的なものは「欲しがりません、勝つまでは」状態になったのだ。
一方、上記【なぜか悪者にされない存在】は、必要火急だから悪者にするわけにいかなかった。一時期電車はガラガラになったが、さすがにリモートを延々続けるわけにもいかず復活。仕事のためには電車に乗らざるを得ないため、悪者にできなかったのだ。「窓を開ければ大丈夫」という謎の条件を付けることが免罪符となった。
政治や役所業務の中止も社会の停滞をもたらすためこれらも悪者にはされない。ただし、役所の宴会や議員のキャバクラ通いは糾弾の対象となった。
超濃厚接触であるラブホテルや風俗関連は専門家やメディアが口にするのが恥ずかしいからか【なぜか悪者にされない存在】になった。
なお、2021年3月24日、厚労省老健局老人保健課の職員23人が会食をしていたことが分かり批判された。19時15分に開始し、24時近くまで残っていた者が十数人いたという。この頃は都の要請で飲食店には21時までの時短営業となっていたが、幹事は23時まで開いている店を探していたのだという。
このニュースが出た時、「厚労省職員、大宴会が問題ないこと分かってるんだったらそのこと早く言い、コロナ騒動終わらせろ!」と思ったが、結局謝罪をし、厳正な処分をすると述べるだけだった。
テレビ番組が悪者にならなかった理由は、「コロナの危険について教えてくれる大切なもの」であることと、自分達で自分達のビジネスを否定するわけにはいかなかったからだ。一社ぐらい「我が局は大勢の人が働いています。クラスターになる可能性があるので、緊急事態宣言明けまで番組は流しません」ぐらい言えば良かったのにそんな局はなかった。
そして、テレビ番組のスタジオで出演者は妙なアクリル板を間には置いていたものの、マスクをしていない。この矛盾を述べるとコロナ脳は「スタジオは換気が良く、出演者は番組ごとにPCR検査をしているから安心だ」とくる。そしてドラマでは『孤独のグルメ』(テレビ東京系)ではマスクを着けていたが、大多数のドラマではマスクは外していた。ほぼすべての連続ドラマも主要キャストが欠けることなく無事オンエアを終了した。
『ワールドビジネスサテライト』(同)では、大江麻理子キャスターをはじめとした出演者が一時期マスクをしていたが、いつしかシレッと外していた。とにかくすべてが一貫しておらず「設定」が空気によってつくられていき、その設定に合致していれば悪者にはならなかったのだ。
また、「テレビ出演者は毎晩組の前にPCR検査をし、スタジオの換気は良い」という説が、出演者のマスクナシの根拠とされたが、これは真っ赤な嘘である。私はコロナ期間中、何度もテレビに出たが、レギュラーで出る番組では一度もPCR検査を要求されなかった。
2021年8月、イレギュラーで出た番組では検査を要求されたが、「それならば出ません」と伝えたところ、「中川さんを中心に据えた流れになっているので、ならば受けないでいいです」と言われ、ズッコケた。
換気についても嘘である。スタジオというものは室内にある。せいぜいドアを開けている程度である。「換気扇が優秀なのだ」という説もあるが、換気扇を回せばマイクが音を拾ってしまうため、換気扇を全開にすることなどできない。
不思議なのは、テレビ局も鉄道会社も上記のようなことを積極的に言わないのに、コロナ脳が勝手に擁護してくれる点である。
「なぜ出演者はマスクをしていないの?」「なぜ満員電車ではクラスターが発生しないの?」と矛盾点を突かれると、勝手にテレビ局と鉄道会社を一斉に擁護し始めるのである。航空会社は「機内の空気は3分で入れ替わるので安心です」と言うものの、結局は最高峰に厳しいマスク警察の業界になっていた。これも首尾一貫していない。
クラスター発生源の不都合な真実
このように【悪者】と【悪者にならない存在】を見てきたが、ここで補足が必要だ。
彼らが言うところの【悪者】とは、「クラスターが発生しそうな場所」であるが、2023年4月24日〜30日の「全国における施設別のクラスター発生割合」は以下の数字だった。
高齢者施設:65.52%、障がい者施設:5.75%児童施設:2.3%、学校施設:5.75%、医療機関:19.54%、飲食店:1.15%、事業所等:0%、その他:0%
高齢者施設と医療機関を合わせると85.06%で、【悪者にならない存在】の代表格である両施設がまさに「悪者」なのである。しかも高齢者施設など100%がマスクし、ほぼ全員がワクチンを規定の回数を打っているだろうに、クラスターの最大の発生源ではないか。こう指摘するとまた推測を元にした屁理屈が来る。
「高齢者施設の入居者は認知症の方もおり、マスクを適切につけられないケースもある」
いやいや、マスクを適切に着けている人間なんてほぼいない。不織布マスクを着用したうえで、四辺をビニールテープで密閉し、さらにその上からN95マスクを着けるのが「適切なマスクの着用」でしょうよ。認知症の人を悪者にするなよ。
マスクに関する設定も謎が多過ぎた。日本医科大学の北村義浩特任教授は「マスクはパンツのようなもの」「マスクにはワクチンと同等の効果がある」などと述べ、マスク神話の普及に貢献した。
だが、マスクの隙間は5μmで、30μmの花粉からは守ってくれるものの、PM2.5の2.5μmよりも大きい。ましてや0.1μmのウイルスをどのようにして防いでくれるのか。「飛沫を飛ばさないためだ」と言うのだろうが、それは元々咳が出る人間が周囲への配慮のために着用していたものであり、健康な者が着けることは想定していなかった。もはや口と鼻から出る「息」でさえ「飛沫」扱いされたのである。
WHOも含めた世界の見解の趨勢が空気感染になり、マスクの無意味さが分かっても相変わらず「飛沫恐怖症」の人々は多い。飲食店の店員がマスクをしていないだけで恐怖だったとツイッターに書き、「飛沫トッピングなど頼んでいない!」とキレるのである。空気感染にマスクは意味がない、と言っても「それでも着けないよりはマシだ」と来る。凄まじい信心である。
多くの国ではマスクの義務化は2022年初頭には終了。欧米でマスクをする者は稀である。東アジアと東南アジアではまだマスクを着けている者は多いが、互いに干渉はしあわなくなっている。
私は今年2月から5月までタイ・バンコクとラオス・ルアンパバーンにいたが、マスク着用を求められたのはバンコクのTシャツ屋と金を売る店だけであった。ドアに近付くと中から店員がやってきて「マスク!」と叫ぶのである。よく見たら入口には「マスクの装着を」と書いてある。これ以外では一切なかったし、ラオスではマスクをしている人など滅多に見なかった。
だが、同時期の日本は店内アナウンスや交通機関で「他の方の安心・安全のため、鼻まで覆うマスクの着用をお願いします」と何度も流された。実質的な強要である。
「マスク信仰」が定着した最大の理由
このマスクについても奇妙な設定が多数あったので振り返ってみよう。
知事・閣僚・総理は喋る時に外す
ただしマスクを外した総理が喋る場では閣僚は装着
飲食店店員は装着し客は外し楽しく会話
客は飲食店に入店する時、便所へ行く時、会計時、外へ出る時は装着。仲間と同じテーブルにいる時は不要
TVで芸能人・専門家・コメンテーターは不要で一般人は装着
G7の歓談・娯楽時は不要。ただし日本人の随行員は皆マスク
マスク警察は2重にすればいいのにそれをせず素顔の者に「マスクしろ!」とキレる。1+1=2ではないのか?
TVの収録中やドラマ・映画撮影中、演者はマスク不要。収録・撮影が終了したらすかさず演者も装着
卒業式等の集合写真では、「※撮影時だけマスクを外しています」の注意書きが流行る
会見が始まると政治家や社長等は「やれやれ」とばかりにマスクを外し始める。「それまで着けていました」アピールが重要
銭湯・温泉では、パンツを脱ぐまではマスク。最後に外すのがマスク
コーヒーのカップやペットボトルを持っていれば顎マスクはOK
新幹線で弁当を食べている時はマスクを外してOK
海外に行くと日本人であっても外してOK。ただし、日本に戻ったら装着(帰りの飛行機でも装着)
総理や知事、閣僚が海外に行き会談をすると外してOK、ただし日本に戻ったら即装着
総理が海外に着いた際、飛行機のタラップでは装着していないが、帰国時のタラップでは装着
プロ野球・高校野球ではスタメンの選手はベンチで外してOK、他の選手・監督・コーチは着用
前出・集合写真を撮り、ネットに公開する時の「※撮影時のみマスクを外しています」は、妙なマナーとして一時期定着した。
ただし、成人式の後にその会場から陽性者が複数名出ると「そういえば集合写真を撮影した時にマスクを外した。その時にうつった」ということになる。また、普段からマスク着用を呼びかける人物がマスクを外した写真をSNSに公開すると、そのダブルスタンダードっぷりへの批判が集まる。
マスク着用を訴え続けた医クラの一人に上松正和氏がいる。同氏が医師の峰宗太郎氏と一緒にネット中継をした際、2人がマスクを外した笑顔写真を公開。これを批判されると上松氏はこう答えた。
「マスクは感染対策の一つのなので、状況に応じてするものです。共に3回目の接種を終えて、日頃の感染対策も信頼できる人と2人でいる場合はその必要性は薄いです」――新たな謎設定の爆誕である。
上松氏か峰氏のどちらかがワクチン接種2回だった場合は「共に2回目の接種を終えて」という設定にしていたことだろう。とにかく彼らは自分にとって都合よく設定を作り、自己正当化をするのである。
また、マスクを重視し続けた福島県いわき市の内田広之市長は、Jリーグの試合会場の外で、妻と球団マスコットとの記念撮影をツイッターに公開したところ、当然ダブスタを突っ込まれた。この時の言い訳が秀逸だ。「撮影時のみ息を止めていた」と状況を説明。ああそうですか。でも今、そのツイート、削除していますよね。
ここまで「マスク信仰」というものは凄まじいのだ。その原点となったのは「マスクを外して15分以上一緒にいたら濃厚接触」という設定である。
濃厚接触認定されてしまうと営業停止・出勤停止に追い込まれるため、なんとしてもそれを避けるべく、マスクを常に着けるよう各施設やイベントは従業員と利用者に要求した。それが拡大解釈され、「マスクを外した瞬間があったらその時が感染のタイミング」「気が緩み、適切に着けていなかったため感染してしまった」ということになったのだ。
なお、「15分」は小学生に対して虐待にも近い扱いを生み出した。「簡易給食」の誕生である。14分59秒以内に給食を食べなくてはいけないため、「菓子パン+ジュース」といった栄養価の低過ぎる給食を提供したのである。
某小学校の教諭はこの簡易給食を食べた生徒が「おいしかった」と言ったことに対して「ほっこりした」とツイッターで書いた。そこは「こんな健気なことを言わせて申し訳ない」が本来言うべきことだ。何が「ほっこりした」だ!
なお、尾身氏は飲食の際、口にものを入れる時は片耳にマスクをかけ、口の中に入ったらマスクをすかさず着用する食べ方を提唱。「尾身食い」と呼ばれるようになったこの不潔な食べ方は、テレビの食レポでは大活躍だった。
コロナ脳が抜きたがる「伝家の宝刀」
そして、謎設定の本丸は何と言ってもワクチンだろう。
【ワクチンの設定が変化し続ける件】
河野太郎ワクチン担当相(当時)が「ワクチンを打てばそもそも感染しない説」を言い出し、これが「思いやりワクチン」という謎の概念に繋がった。岸田文雄首相も動画で「感染を防ぎます」と主張した。ワクチンの効果について、厚労省が2021年5月6日のアドバイザリーボード提出資料(更新・一部修正)を公表しているが、ここには以下のような記述がある。
〈 ○ファイザー社のワクチンやモデルナ社のワクチンについては、発症予防効果については、臨床試験において、95%程度のワクチン有効率が得られている。
※基本的に、感染予防効果については、臨床試験においては十分に示されていない。
○加えて、諸外国で実施されている疫学研究等により、徐々に感染予防効果を示す研究結果も報告されてきている。結果の解釈については、研究デザインの違いや、研究実施上の様々なバイアスを考慮する必要があるものの、複数の疫学研究等において、感染予防効果に関して、90%台のワクチン有効率が報告されている 〉
また、2023年7月1日でも見られる厚労省はワクチンのQ&Aコーナーでは、効果についてこう述べている。
〈 日本で接種が行われている新型コロナワクチンは、新型コロナウイルス感染症の発症を予防する高い効果があり、また、感染や重症化を予防する効果も確認されています。時間の経過とともに感染予防効果や発症予防効果が徐々に低下する可能性はありますが、重症化予防効果は比較的高く保たれていると報告されています 〉
岸田首相が6回目のワクチン接種をする動画を首相官邸のツイッターIDが公開したが、「皆さまや身近な人を守るため、ワクチン接種のご協力をお願いします」の文面が添えられた。
これらをまとめると、ワクチンの効果は2023年7月現在でも「感染しにくくなる」「感染しにくくなるから他人にも感染させない」「感染しても発症予防効果がある」「発症しても重症予防効果がある」「追加でとにかく打て」ということになる。なんという万能薬なのだ。
だが、2022年に日本は17週にわたって世界一の陽性者数を叩き出し、死者数も激増。コロナ死者数は2021年1月1日段階で累計3513人、2022年1月1日は18385人、2023年1月1日は57727人、そして5類化前日の5月7日は74669人だった。
「あきらかにワクチン打ってから陽性者も死者も増えていますよね。感染予防効果も重症予防効果もないじゃないですか?」と疑問を挟むと、すかさず伝家の宝刀が抜かれる。
「もしも打っていなかったらもっとひどいことになっていたのだ!」
「手を洗う救急医Taka」こと木下喬弘氏は元々河野太郎元ワクチン担当相に助言をしたり、mRNAワクチンを「神」と表現するなど、ワクチン推進を続けた人物だが、最近になって新たな名言を動画で発表した。
「ワクチンて実は水道水とか電気みたいな本当に大切な社会インフラなんよ。みんな電気使うやろ? 水も飲むやん? それと同じように当たり前にワクチンを受け入れて欲しい。だからワクチンの話ばっかしてるんよ」
その後に動画では「ワクチンすげ〜」のテロップが入り、「検索 こびナビ」と自身の所属する団体のサイトへの誘導を呼びかけた。
マスクについても同じである。「マスクを着けても陽性者増えまくったじゃないですか?」と言うとこう返ってくる。
「マスクをしていなかったらもっと被害は大きかったはずだ! 100%の効果とは言えないかもしれないが、被害を減らす可能性があるだろ! マスクをしない人間を我々が守ってあげているんだ! マスクはシートベルト! マスクはヘルメット! あなたは雨が降っていても傘をささないのですか?」
この「〇〇しなかったらもっとひどかった(かもしれないだろ)論法」というものはもはや反証不能なのだ。
この手の人々に、アメリカのマスク義務州かつ経済規制州であるノースダコタ州と、義務ではなく経済規制ナシ州である隣接したサウスダコタ州の10万人あたり陽性者数がほぼ同じカーブを描いている様を見せてもまったく話が通じない。「それでもマスクは効果があるんだ!」としか言わないのである。
もはや布を崇める奇妙な宗教としか考えられない。そしてコロナ脳は悶絶的に比喩がヘタクソである。
厚労省の情報改竄を許してはいけない
厚労省は2022年4月10日まで発表してきたワクチン未接種・2回済・3回済者の人口10万人あたりの感染者数を改竄していた。それまでは未接種者の感染者数が大幅に多くなる数字だったのが、4月11日以降、途端に未接種者の感染者数が激減。中には接種者よりも少ない世代も出るほどだった。
突然変わった理由は、4月10日以前は、「接種歴」の欄に記入をし損ねた2〜3割を「未接種」に含めていたからなのだ。すでに8割が2回打っていたわけだから接種者が記入漏れをする例も多数あっただろう。厚労省はワクチン接種の絶大なる効果を見せるためにこのような情報改竄をしていたのだ。
なぜ、集計方法を変えたかといえば、名古屋大学の小島勢二名誉教授から指摘されたからである。小島氏は、オミクロン株誕生以降の各国のワクチン効果と比べ、日本だけが突出して効果が高いことになっていることに疑問を抱いた。そして、厚労省にその不審を問い合わせたところ、厚労省は改竄を認めたのだ。ただし「意図的ではない」とのこと。
厚労省のデータが専門家や知事を含めた政治家によるワクチン推奨の根拠だったのだが、これが根本から覆ったのである。いつしかこの接種回数別10万人あたり陽性者数の発表もやめた。都合が悪い結果が出てしまったのでは、と疑いたくなる。
さらに、ワクチンの使用期限が延び続けるのも意味不明である。ファイザーの従来型の場合、当初-90℃〜-60℃の冷凍庫で保管し、6ヵ月の有効期限だった。しかし、2021年9月10日に9ヵ月となり、2022年4月22日に12ヵ月に。2022年年8月19日は15ヵ月に延長。2023年1月25日には18ヵ月、そして2023年6月29日に24ヵ月になったのである。
医療従事者のツイートを見ると、薬は使用期限があり、1日でもその日を過ぎると廃棄にするものだと呆れていた。なぜかこのワクチンだけは通常の薬とは別の扱いになっているのだ。
また、厚労省は2022年10月、2022年10月6日、「初回接種(1・2回目接種)がまだお済みでない方へ 年内に1・2回目接種を完了することをご検討ください」と呼びかけた。
資料では「(1)1・2回目接種に使用している従来型ワクチンは、年内で国からの供給を終了する予定です」「(2)オミクロン株対応2価ワクチンは、1・2回目接種が完了しないと接種できません」とある。さらには11月18日にも念を押すかのようにこの件をツイッターに投稿。
「お前ら、年内に打たないと一生ワクチン打てないからな、さっさと打てよ!」と脅しにかかってきたわけだが、それまで差別にめげず、自分の頭で「こりゃ不要だ」と考える人間がこんな呼びかけで打つわけがない。非接種者からは「どうぞどうぞ、早く終了してください」や「やったー、これで金輪際新コロワクチン打たないで済む!」といった喜びの声があがった。
なんでこんなにコロコロ変わるのか
しかし、その後厚労省は内村航平もビックリのアクロバティックウルトラCを見せる。
「初回接種(1回目・2回目接種)についてのお知らせ」という更新日不明のページには、「接種を行う期間は、令和3年(2021年)2月17日から令和6年(2024年)3月31日までです」とあったのだ! いつの間にか、2022年12月31日までではなくなっていたのである。なんと1年3ヵ月も延びたのだ!
さらに、2023年4月26日の「新型コロナワクチン 令和5年春開始接種についてのお知らせ」という資料では、2023年度のワクチン接種のスケジュールを年齢別に分けて表にしている。
この表の中の2つの項目を見ておったまげた。「6か月〜4歳」については「初回接種(1〜3回目接種)従来型ワクチン」とあり、当然2023年9月以降も従来型ワクチンを打てることになっているのだ。そりゃあ、2024年3月31日まで打てるのだから当たり前だが。
続いて「初回接種がまだの方」という項目を見ると「初回接種(従来型ワクチン)は5月8日以降も引き続き受けられます。まずは初回接種を受けてください」とある。「まずは初回接種を受けてください」部分は黄色のハイライトをしている。それだけこの一言が重要なのだ。
というか、2022年12月31日で従来型ワクチンは接種できなくなるはずじゃなかったのか? なんでこんなにコロコロ日付が変わるんだ? 完全に無茶苦茶である。すべて、厚労省と専門家が「設定」を変えればどうとでもなるようなものだったのだ。
賞味期限改竄や、誤表記をした食品は回収・謝罪・返金、さらには営業停止に追い込まれるのが世の常だが、新型コロナウイルスワクチンについては何でもアリなのである。
国民も疑問を抱かず「やったー、6回目も無料だ!」と大喜び。そしてもうすぐ高齢者は7回目が、若者も9月から6回目が開始する。第一三共の国産ワクチン(武漢株対応)も承認された。非接種者の中に「国産でなくては怖い」と思ってる人間がいるとでも厚労省は思っているのか?
そして武漢株対応にした点が実にこすい。要するに「武漢株対応から初めないとまともな抗体がつきません。物事には順番がありまして、オミクロン株対応や二価ワクチンを打つためには武漢株対応の接種が必要です」というロジックを崩したくないのである。
と思ったら、8月に入ると初回接種者もオミクロン株対応ワクチンを打てることとなった。もう何が何やら分からない。
情報が人々を狂わせ、社会を狂わせる
コロナの無茶苦茶な設定については延々に書き続けられるのでこの辺で最後にする。
【副反応は効いているサイン】
前項の続きになるが、なぜ6回も打つのか? 2回目までは分かる。2021年秋の空気感からすれば、ワクチンパスポートの議論もあったことから、もはや仕事をする条件であり、移動をする条件のようなものになっていたのだから。
3回目でやめた人も百歩譲って「まぁ……浅はかだが当時貴殿は怖かったんですね」と思う。だが、4回目以降打つ人間はもう知ったこっちゃない。散々ワクチン後の体調不良を訴える声がネットには書き込まれていたというのに疑いもなく打つのだから、もはやワクチンが大好きな人という認定で構わない。
Yahoo!リアルタイム検索で「ワクチン 打たなければ良かった」「ワクチン もう打ちたくない」「ワクチン 副反応 つらい」「ワクチン 5回目 もう打たない」「ワクチン 後悔」などと検索してみると人々が悶絶している様を見ることができる。かなり気の毒な状況にある人もいるし、ツイッターのプロフィールには「〇年〇月〇日、ワクチンを打ってから体調不良で」などと書く人もいる。
それでも打つ理由は「コロナが怖い。死にたくない」「周囲の人にうつしたくない」「念のため」「無料だから」という、情報弱者的感覚か過度な心配性かケチかのどれかである。まぁ、上記のような検索はせず、テレビの言ってることを鵜呑みにしているだけだろうが。
薬を飲むことにより発生する体の異変は「副作用」と呼ばれるが、ワクチンの場合は「副反応」。これはよく考え抜かれた言葉である。「副作用」であれば「薬のせい」だが、「副反応」は「あなたの体のせい」なのだ。この副反応をめぐっては、初期の頃、集団パニックともいえる状況だった。
テレビに出る専門家や、ツイッターの医クラが「副反応はワクチンが効いている証拠。あなたは超人になろうとしているのです!」という信仰を初期の頃生み出し、ワクチン信者は「副反応がキツければキツいほどコロナに対して強固な鎧を得ることができる」と信じた。
1・2回目の頃のツイッターのブームは、ワクチン接種後の体温計の示す温度を紹介することだった。38℃台であれば甘っちょろく、39℃台はなかなかの有段者、40℃台は黒帯、といった感覚で人々は「高熱自慢合戦」をしていた。
「キタキタキターーーーーー! 40.2℃! ワクチンが働いている! これでオレは超人だァァァ!」的に自慢する者が続出した。
さらにはワクチン接種に備え「スポーツドリンクと冷えピタとカロナール用意しました!」といったツイートも多かった。その後は実況中継のように「腕が痛い」「倦怠感がすごい」「こんなだるいの初めて」「3日間寝込んでる」「金曜日の接種にしてよかった」といった感想がツイッターには多数書かれた。
一体何のSMプレイだよ? としか私のような一度もワクチンを打っていない者は思う。
「6回目のワクチン、これまでの副反応よりはマシかな……」といった感想もあるが、私のようにまったく熱も出ない人間からすれば「なぜ自ら進んで熱を出しに行くの? その注射、あなたに合ってないんじゃないの?」と思うのである。まぁ、他人事だからどうでもいいが。
その中でも究極的なケースが「オトナサローネ」というメディアの編集者・星雅代氏(1976年生まれ)が執筆した『コロナワクチン6回目接種「過去でいちばん辛かったかも」毎回大苦労の編集者が実感したこととは』という記事だ。壮絶な記録である。
6回目を打ってから4時間後に37.3℃の熱が出て腕が痛くなるのを皮切りに、悶絶の記録が並ぶ。59時間後には36.5℃になるものの、〈いつもなら3日目には普通に仕事していた記憶があるのですが、今回は30分もパソコンに向かうと、もうクタクタ。しかも、いつもやっているのと同じ作業なのに時間がかかり、ベッドで休みながらしか仕事できない状態です〉という状態に。
私も編集者だが、こんな状況で仕事などできるわけがない。結局同氏は接種後9日、37.5℃前後の熱が出たというのだ。そして、締めはこうなっている。
〈 今回の副反応は、体力的にも精神的にも、本当にきつかった! 編集部の会議で経過を話したら、「星さん、それもうコロナかかっちゃったほうが楽なんじゃないの」と言われましたが、「いえ、重症化して死にたくないので」と答えました(後遺症も怖いですからね……)。
今回の結論:何回も打っていても、副反応はツライ。でも、また秋に接種が開始されれば、迷わず予約をとると思います。〉
本人の選択だからとやかく言う気はないが、最後の編集部メンバーの助言に対する同氏の決意を見ると、もはやコロナは精神に悪影響をもたらすウイルスだったのではないだろうか。
要するにコロナ禍とは、『コロナ論』著者の小林よしのり氏が2020年の初期に喝破した「インフォデミック」である。情報が人々を狂わせ、社会を狂わせるということだ。まぁ、でも、この編集者はまた打てばいいと思います。
日本はいつまでやり続けるのか
さて、厚労省が6月9日に発表した「疾病・障害認定審査会 感染症・予防接種審査分科会 新型コロナウイルス感染症予防接種健康被害審査第一部会 審査結果」という資料は、ワクチンが健康被害を与えたと認定し、医療費や医療手当を出すことを決定したものである。
中には以下の疾病名・障害名が並び、10代・20代・30代の若者も多数含まれている。その資料の1ページ目(全8ページ)から見てみよう。
免疫性血小板減少性紫斑病(43歳)、頻脈性不整脈・急性心筋炎(38歳)、IgA血管炎(33歳)、ギラン・バレー症候群(34歳)、痙攣発作(19歳・49歳)、急性心膜心筋炎(26歳・17歳・34歳・16歳・20歳・20歳・19歳・16歳・27歳)、右突発性難聴(46歳)、肺動脈血栓症・大腿静脈血栓症(47歳)、左上肢運動障害(18歳)、無菌性髄膜炎・帯状疱疹(33歳)、中毒疹(34歳)、気管支喘息発作(45歳)、多形痒疹・左上肢腫脹・疼痛・発赤(38歳)、末梢神経障害・頭痛(43歳)、急性咽頭炎・急性喉頭炎(39歳)
なにやら恐ろしげな病名が並びまくるが、これがその後の7ページも続くのである。
「ワクチンはメリットがデメリットを上回る」「若い人にとっては自分のためというよりは周囲の人のために打つ」(忽那賢志医師の発言)「思いやりワクチン」「ワクチン打とうぜ!」(福岡県のキャッチフレーズ)などに流された人々が上記のような被害を受けたのだ。これら被害はワクチン接種を推進した厚労省が認めたものである。
さて、日本はいつまで“コロナ禍プレイ”をやり続けるのか、この3年間、私自身相当なバッシングを受けながらコロナ騒動を批判してきたが、まぁ、当然の帰結だわな。結局、私のようなコロナを怖がらず、感染対策にもワクチンにも意味はないしウイルスは根絶できないという現実主義者のことをデイドリームビリーバーは理解できないのだろう。
貴殿らは永遠にコロナを恐れ、マスクをし続け、2050年に61回目のワクチンを接種してください。その時もオミクロン型であったとしても、疑問を抱かない人はもう処置なしだ(この皮肉が分からない人は一生分からない)。
●処理水放出「韓国は大人の対応、中国は政治的に利用」 小野寺元防衛相 8/20
福島第一原発の処理水を海に放出する日本政府の方針をめぐり、自民党の小野寺五典元防衛相は、20日のフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」で、「韓国は大人の対応。中国は政治的に利用している」と述べた。
岸田首相は、20日に福島第一原発を視察した後、全国漁業協同組合連合会の会長らと面会した上で、週内に関係閣僚会議を開いて放出開始の時期を決める方向で調整している。
小野寺氏は、韓国政府は国際安全基準に合致しているとの見解を示したIAEA(国際原子力機関)の包括報告書を尊重する考えを示していることを指摘し、「大人の対応をしてもらっている」と述べた。
一方、「中国は政治的に利用している」と述べ、科学的根拠を示さず処理水放出に反発している中国の対応に懸念を示した。
さらに小野寺氏は、「危険だ、危険だと言っているが、中国や台湾の漁船は大挙してサンマを獲りに来ている」とした上で、「言っていることと、やっていることが全く違う」と述べた。
そして、「外交的にこういう矛盾を言って、政治的にしっかり対応すべきだ」と訴えた。 

 

●泉房穂氏 岸田政治≠ノズバリ「異次元なんて言葉遊び」「まやかしだ」 8/19
元兵庫県明石市長の泉房穂氏が19日、自身の「X」(旧ツイッター)を更新し、自身の誕生日に決意表明≠行った。
この日X(旧ツイッター)で誕生日を祝う風船が飛んだことについて「日付が変わり『風船』がいっぱい上がってきた。素直に嬉しい」と喜ぶと「昨日までの60年間、自分なりには精一杯生きてきた。人生1周目≠ェ終わり、いよいよ今日から人生2周目≠ェ始まる。皆さん、これからも引き続き、よろしくお願いいたします」とつづった。
また誕生日を祝うコメントが多く届けられていることに「皆さん、「『お誕生日おめでとう』と『お祝い』をしていただき、ありがとうございます」と感謝の気持ちを明かすと「『明石の街を、やさしくしてみせる』との10歳の誓いを、人生1周目をフルに使ってやってきた。今日から人生2周目。『国の政治も、やさしく変える』との60歳の誓い。さて、変えるまでに何年必要なんだろう…」と投稿。60歳という節目に新たな誓いを立てたようだ。
さらに、やさしく変える≠ニ誓った「国の政治」について「私は日本に政治がないと思う。ほんとの政治をしてほしいと思う。みんなは驚いて総理を見る。今の総理を選んだのは、昔ながらの汚い派閥政治だ。異次元なんて言葉遊びも、やってるフリのまやかしだ。私は国民の負担を気にしながら思う。国民のために、官僚や業界の反対を押し切ってでも決断して実行するのがほんとの政治だと思う」と自身の見解を示すと、ユーザーから大きな反響が寄せられている。
●中国人民が習近平政権に見切り%本の不動産爆買い 共産党不信 8/19
中国経済が深刻な状況に追い込まれてきた。経営再建中の中国不動産開発大手「中国恒大集団」は17日、米連邦破産法15条の適用をニューヨーク連邦破産裁判所に申請した。複数の米国メディアが速報した。不動産危機が「影の銀行(シャドーバンク)」問題に飛び火し、巨大な金融危機に発展しかねない状況だ。景気悪化を示す統計も次々と公表されている。背景の1つとして「習近平総書記(国家主席)率いる中国共産党が、人民の信頼を失っている」と指摘する専門家がいる。日本の不動産を爆買いするなど、海外に資産を移して国外逃亡を狙う中国人たち。ジャーナリストの長谷川幸洋氏による最新リポート。
中国経済が変調をきたしている。7月の消費者物価は前年同月比で0・3%下落し、内需の強さを示す指標の1つである輸入も、同じく前年比12・4%減少した。不動産バブルが崩壊して以来、いよいよ本格的な景気後退とデフレが始まったようだ。
多くのエコノミストは「ゼロコロナ政策の終了でV字型回復」を予想したが、それが完全に間違っていたどころか、いまだに間違えた理由もよく説明できていない。
そんななか、新型コロナ政策の暴走によって、「中国の国民が共産党と政府に対する信頼を完全に失ったことが、景気失速の本当の理由だ」とする論文が8月2日付で米外交誌「フォーリン・アフェアーズ」に登場した。
論文は「国民の信頼失墜は政府のマクロ経済政策を無効化し、それによって経済は一段と不安定化する一方、財政政策を乱発すれば、政府の債務問題は、さらに深刻化する」とも予想している。
筆者は、ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン会長である。同氏は英中央銀行・金融政策委員会の外部投票メンバーなども務めた有識者だ。「中国経済の奇跡の終焉(しゅうえん)」というタイトルが問題の深刻さを物語っている。
一体、ポーゼン氏は何を指摘したのか。
問題の核心は、習近平政権の新型コロナ政策にある。習政権は厳格な都市のロックダウン(封鎖)を断行したが、それによって、国民は何カ月にもわたって外出を禁じられ、生活の糧を失う人々が続出した。飲食店など零細事業者は、やむなく事業を閉じざるを得ず、倒産した。
ところが、昨年11月に人々が白紙を掲げて抗議する「白紙革命」の運動が全国に広がると、習政権は一転して、ゼロコロナの終了を宣言し、一挙に感染者が激増したのは、ご存じの通りだ。
ポーゼン氏は、右から左へ極端に揺れ動く政策を目の当たりにして「多くの中国人が党と政府を信用しなくなった」。その結果、人々は「自分の身を守るのは自分しかない」と理解して、自動車や耐久消費財、不動産といった資産の購入を控え、ひたすら貯蓄に励むようになった。「過剰な貯蓄と過小な投資こそが、中国経済停滞の真因」と指摘している。
私は、一読して「目からウロコ」の思いがした。
7月14日発行の本コラムで指摘したが、昨年から中国を「脱走」して、米国への不法入国を試みる中国人が激増している。中国を逃げ出せない中国人たちは、貯蓄するしか「身を守る術」がないのだ。
かつては、「政治に口を出さなければ、暮らしは保証される」という暗黙の了解があった。ところが、新型コロナ政策は「共産党こそが生殺与奪の権を握っている」と国民に知らしめてしまった。
その結果、政府が財政支出を拡大しようが、金利を引き下げようが、人々は反応しなくなった。信頼できないからだ。そうなると、政府は景気調節手段を失い、経済はますます不安定化する。
中国の国家統計局は15日、若者(16歳から24歳)の失業率の発表を停止してしまった。まさに、「都合の悪い数字がなければ、問題はない」という姿勢なのだ。これが、いまの中国である。
ポーゼン氏は「中国人は、ますます海外資産に逃亡する」とも指摘している。日本は、中国人や中国系企業による不動産の購入を制限する防衛策が急務だ。 
●フランス「物見遊山」視察で注目「いますぐ辞めてほしい女性国会議員」 8/19
自民党女性局のメンバーら38人のフランス視察が「観光旅行のようだ」と批判を浴びるなど、女性議員への注目度が高まっている。
そこで本誌は緊急アンケート調査を実施。「いますぐ辞めてもらいたい」と思う女性国会議員は誰かを、全国の30代から60代の女性500人に聞いた。対象としたのは、メディアなどで注目度の高い女性議員18人だ。それでは「いますぐ辞めてもらいたい」トップ5から見ていこう(敬称略)。
【第5位】30票 福島みずほ(社民・参院)
社会民主党党首。人権派弁護士として注目を浴び、1998年の参院選で初当選。「辞めてもらいたい」理由は
「かつての慰安婦問題や、今の原発処理水にしても、韓国の肩ばかり持つ人。日本の為にはならない」(40代・パート・神奈川県)
「言っていることすべて論理が破綻。本当に弁護士なのかと思う。党自体も存在意義なし」(30代・教員・東京都)
【第4位】33票 辻元清美(立民・参院)
学生時代に国際交流NGO「ピースボート」を設立。1996年の衆院選で初当選。2001年、当時の小泉純一郎首相に「ソーリ、ソーリ!」と連呼したことでも注目を集めた。
「何を言いたいのかわかりにくいうえに、自己主張が強すぎ。人の話を聞くことができない」(40代・会社員・北海道)
「とにかく人に対して感情的、攻撃的で人としてどうかと思う。人を批判する割には、自分自身の問題(反社組織との関係などの噂)について何も話さないのはおかしい」(60代・主婦・大阪府)
【第3位】34票 杉田水脈(自民・衆院)
会社員、市役所勤務を経て政治の道へ。「LGBTは生産性がない」など、発言がたびたび批判されている。
「LGBTに関する発言、女性蔑視の発言など、問題発言があまりに多い。国会議員としての資質に疑問を感じる」(40代・派遣社員・奈良県)
「根本的に思想に問題があるのでは。国民のことを考えているようには思えない」(60代・パート・福岡県)
【第2位】60票 生稲晃子(自民・参院)
元おニャン子クラブのメンバー。2022年の参院選に出馬し初当選。
「統一教会とのかかわりについて、最後まですっきりしなかった印象。何をやりたくて政治家になったのかよくわからない」(30代・アルバイト・大阪府)
「元アイドルはいいとして、当選してあれだけ注目されたのに、いまだに何をやっているのかがさっぱりわからない。何してるの?」(40代・パート・京都府)
【第1位】200票 今井絵理子(自民・参院)
全体の4割の票を集め、ぶっちぎりの1位になったのは元SPEEDの今井議員。フランス研修の批判に対しては「無駄な外遊ではありません」「党からの支出と、参加者の相応の自己負担によって賄われています」と反論している。
「元市議と不倫して手つなぎの写真を撮られたり、今回のフランスのことも、とにかくモラルがない」(30代・医療関係・大阪府)
「障害のあるお子さんを育てたのは立派だと思います。しかし妻子ある相手と不倫して、その人の家庭を壊したような人が国会議員を続けているのは疑問に感じます」(60代・主婦・北海道)
「不倫はするわ、フランスの騒動では偉そうな態度で反論するわで、議員としての資質に欠けている。一刻も早く辞めてほしい」(50代・主婦・東京都)
「初当選のとき池上彰さんに沖縄の基地問題のことを聞かれ『これから勉強します』と答えたことは忘れない。あれから何かやったのですか? 自分の出身地のことすら考えられない人間が、国のことを考えられるわけがない」(40代・派遣社員・大阪府)
200票のうちの、4割が30代からの票。子どものころに見たアイドル時代との落差にがっかりしているのか……。
第6位以下は、次のとおり。
【第6位】23票 蓮舫(立民・参院)
「他人に厳しく自分に甘い。揚げ足取りしかできない人」(30代・会社員・神奈川県)
【第7位】21票 大石晃子(れいわ・衆院)
「やってることがめちゃくちゃ。日本の将来に悪影響」(60代・会社員・茨城県)
【第8位】17票 松川るい(自民・参院)
「パリの件で印象が悪すぎる。一度辞めて勉強し直す手もあるのでは」(40代・会社員・福島県)
【第9位】14票 三原じゅん子(自民・参院)
「自民のタレント議員たちのリーダーだから」(60代・主婦・神奈川県)
【第10位】13票 高市早苗(自民・衆院)
【第11位】12票 田村智子(共産・参院)
【第12位】11票 稲田朋美(自民・衆院)
【第13位】8票 小渕優子(自民・衆院)
【第13位】8票 森まさこ(自民・参院)
【第15位】5票 丸川珠代(自民・参院)
【第16位】4票 梅村みずほ(維新・参院)
【第17位】2票 野田聖子(自民・衆院)
【第17位】2票 石垣のりこ(立民・参院) 

 

●内閣改造で支持率は上がらないよ ハルキを読む岸田首相の夏休み 8/18
岸田文雄首相が夏休み用の本に、村上春樹の新作『街とその不確かな壁』(新潮社)を買ったと知り、春樹ファンとしてはうれしくなった。筆者もまだ半分くらいまでしか読んでないが、世捨人のような主人公が、初恋の少女の思い出に浸りながら「他人の夢を読む」という、いかにもハルキっぽい小説だ。日本の最高権力者がこの本を読んで何を思うのか、感想を聞いてみたい。
さて、岸田首相の夏休みは、15日の戦没者追悼式などの公務の合間を縫って、10冊の本を読んだり、ゴルフをしたりして英気を養っているのだが、「秋以降の政局」についても思いをこらしていることだろう。
最初の関門は、9月11〜13日の間に行われるとみられる内閣改造・自民党人事。焦点は、1河野太郎デジタル相の交代2木原誠二官房副長官の交代3小渕優子元経産相ら女性抜擢(ばってき)―の3つだ。
自民党の麻生太郎副総裁の発言を読む限り、河野氏は交代のようだが、小渕氏の党4役などへの抜擢については異論もあるようだ。
問題は、木原氏の処遇だ。文春報道については、木原氏が日弁連に人権救済の申し立てをしており、筋としては残すべきだとは思う。だが、ここまでいろいろ書かれると、さすがに職務続行は難しいかもしれない。
内閣改造というのは、メディアが「これで支持率が上がるかも」と毎回煽るのだが、筆者にはその理由がよく分からない。支持率は政治家が行った結果に対して、それを国民が評価すれば上がるものではないのか。
「改造すれば支持率が上がる」と、政治家や政治記者が信じているとすれば、それは国民をバカにしているのではないかと思うのだ。
直近の内閣支持率は、時事通信が4ポイント減の27%、NHKが5ポイント減の33%で、あまり解散したくなるような数字ではない。もし、岸田側近の誰かが、「この低い支持率を派手な改造で上げて解散だ!」などと、のんきなことを考えているのなら、やめた方がいいと思う。
正直言って、岸田政権には安倍晋三政権ほどのキレはない。木原氏への文春砲や、自民党女性局の仏ウキウキ研修旅行など、突っ込みどころも満載だ。だが、安全保障やエネルギー政策への取り組みを見る限り、最近30年間の歴代政権に決して劣らない安定感があると思う。
これから秋にかけて与党内から早期解散圧力がかかるが、「今はその時にあらず」だろう。解散したら政権は失わなくても議席はかなり減るのではないか。内閣改造などの「飛び道具」に頼らず、地道に政策を実現して国民の支持を得た方がいいと思う。
●安倍政権でさえ忘れる日本...我々は歴史から学べないのか 8/18
安倍晋三元首相が亡くなってから7月で1年を迎えた。この間、私にとっての驚きは1年の節目が安倍政権とは何だったかという議論よりも、手製の銃で安倍氏を撃った――現段階では厳密に言えば「撃ったとされる」だが――山上徹也被告の近況や、山上被告の母親が入信している旧統一教会の話題がメディア上での主要なトピックになったことだった。
それ以外ではせいぜい自民党の最大派閥で保守色の強い旧安倍派を今後、誰が束ねるのかが話題になっていたぐらいだろう。今の日本社会において亡くなってしまうということは、存在そのものが過去になってしまうという現実をまざまざと見せつけられた。
安倍氏は日本の憲政史上、最も長く権力の座に就いた政治家だ。それも正統かつ民主的な選挙を重ねて選ばれてきた。その功罪の議論が盛り上がらず、過去になっていくのは忍びないものがある。
政策的にリベラルな面もあった
生前に長時間インタビューを重ねて出版された安倍氏の回顧録は順調に増版し、ベストセラーになってはいる。だが、それを基にして「アベノミクスの功罪」「集団的自衛権の解釈変更の是非」にまで議論を発展させている論客は限られるし、マスメディアが適切に議題を設定できているとは言い難い。
私個人の見解で言えば、安倍氏がアベノミクスで進めた金融緩和は労働市場にも好影響を与え、明らかに良い効果があった。デフレ脱却という面から見れば、欧米ならリベラル、左派政党が主張するスタンダードな政策だ。むしろ旧民主党政権がこの方向に舵を切れなかったことが、同政権や下野した旧民主党系勢力への幻滅を生んだ一因になっていると考えている。
だが、税率が5%から8%、10%になった消費増税は金融緩和というアクセルと同時に景気のブレーキを踏むようなものだったし、効果的な財政出動も十分とは言い難かった。ここは野党が突くべき論点なのに、一部を除き相変わらず漠然とした「アベノミクスか否か」ということばかり議論している。
また、集団的自衛権を認めるのならば、真正面から改憲を問うのが筋だったのではないかと思う。東日本大震災からの復興、新型コロナ禍での政治......。安倍氏に問えることはもっとあったし、安倍氏自身も語りたいことがたくさんあっただろう。
野田佳彦元首相が追悼演説で語ったように「安倍晋三とはいったい、何者であったのか。あなたがこの国に遺したものは何だったのか」を問うことは今でも必要だ。長期政権から教訓を引き出し、学ぶという意味でも。そして政治家に限らず、人間は暴力によって命を奪われてはいけない。この点を忘れないためにも、私も安倍政権という歴史を問うていきたいと思う。  
●尾辻秀久参院議長の追悼の辞から考える「政治家の言葉」の重要性 8/18
「聞く力」と「丁寧な説明」を掲げる岸田首相。だが、マイナンバー制度に伴う健康保険証の廃止方針をはじめ、政策について十分に説明できているとは言い難い状況だ。8月18日、RKBラジオに出演した元サンデー毎日編集長・潟永秀一郎さんは、全国戦没者追悼式での尾辻秀久参院議長の追悼の辞を紹介しながら「政治家の言葉」の重要性についてコメントした。
小学生の手紙に答えない岸田首相
8月17日の毎日新聞朝刊に、東京・世田谷区の小学6年生が、岸田首相に送った手紙の話が載っていました。書き出しは概ねこうです。
―――「戦争は怖いし、絶対にやってはいけないと思っていたのに、ニュースで、防衛費をあげようとしていることを知りました。そこで、岸田首相に『ぜひ聞いてみたい』と、クラスのみんなで手紙を書きました」―――
そうして「なぜ軍事費を増やしているのですか?」など、率直な問いが記されています。2月に首相官邸あてに送られましたが、返信はなく、そのことを知った記者からの質問に、首相はこう述べました。「一つ一つにお返事を出すことは困難でありますが、安全保障政策については、国民の皆さんのご理解を得られるよう努めていきます」――これ、答えていませんよね。
「聞く力」と「丁寧な説明」を掲げる岸田首相ですが、この防衛費の件にせよ、マイナンバー制度に伴う健康保険証の廃止方針にせよ、なぜなのか、何のためなのかを十分に説明できていないと感じるのは、私だけではないと思います。内閣支持率は毎日新聞の調査などですでに3割を切りましたが、それは「この国をどうしたいのか」という思いより、政権を維持する、その思いの強さが透けて見えるから、でもあるでしょう。
「自分の言葉」で語った尾辻秀久参院議長
そんな、もやもやとした空気の中、心に響く政治家の言葉がありました。終戦から78年を迎えた15日、日本武道館で開かれた全国戦没者追悼式。天皇陛下のおことばに続く「追悼の辞」で、尾辻秀久参院議長が述べた言葉です。
―――「本日ここに、天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、 全国戦没者追悼式が執り行われるにあたり、 謹んで哀悼の誠を捧げます。父も32歳で戦死をいたしましたので、私は今日、参議院議長として、また、遺族のひとりとして、ここに立たせていただいております。私たちは、焼け野原の中、お腹を空かせて大きくなりました。「一度で良いから、お腹いっぱいご飯を食べたい」と思っていました。母が元気なころ、軽口で「親バカだなあ」と言いましたら「私が親バカでなければ、父親のいないあなたは生きていなかった」。母に諭されたことを忘れることはできません。その母も41歳で力尽きた時、戦没者の妻の皆さんが母親代わりになって下さいました。遺骨収集でご一緒しました時、その中のおひとりがご遺骨に語り掛けられました。「子供達をしっかり育てるという、あなたとの約束は、ちゃんと守っていますよ」私たちは、生きるか死ぬかという中を、肩を寄せ合って生き抜いて参りました。平和で豊かな国を作り上げました。いま、私たちがしなければならないことは 「犠牲となられた方々のことを忘れないこと」 と、「戦争を絶対に起こさないこと」であります。平和を守るために、私の経験を次の世代に語り継いで参りますことを戦没者の御霊(みたま)にお誓いを申し上げて、 追悼の言葉といたします。」―――
参院議長の追悼の辞は、メディアにほとんど取り上げられないんですが、思いのこもった「自分の言葉」ですよね。だから、胸を打ちます。
実は尾辻議長、前年もやはりご家族のことに触れて、「母は、残された私と妹を、女手ひとつで、必死に育ててくれましたが、41歳で力尽きてしまいました。母も戦死したと思っております」と、語っています。
15年前には「議会史に残る名演説」も
尾辻さんの言葉については2年前にラジオ番組でも話したことがあって、その時は、現職の国会議員が亡くなった時に行う「哀悼演説」でした。2008年に旧民主党の山本たかし参院議員が亡くなった際の尾辻さんの哀悼は「議会史に残る名演説」と言われ、与野党の違いを超えて認め合い、尊敬しあう間柄を、今の政界にも思い出してほしいという趣旨でお話ししました。簡単に振り返ります。
山本議員は末期がんの身を押して「がん対策基本法」と「自殺対策基本法」の成立に奔走し、当時、厚生労働大臣だった尾辻さんも「同志」として、共に取り組みました。哀悼演説は、時に言葉を詰まらせ涙をぬぐいながら「あなたは参議院の誇りです。社会保障の良心でした」という言葉で締めくくられます。これ、ネットで「山本たかし」「追悼演説」と検索すると動画がありますので、ぜひご覧いただければと思います。
就職で言われたひとことが政治家としての原動力に
戦没者追悼式の話に戻りますが、とりわけ私が胸打たれたのは、母親代わりになってくださった戦争未亡人の一人が、収集した遺骨に向かって語りかけた言葉。「子供達をしっかり育てるという、あなたとの約束は、ちゃんと守っていますよ」です。
実は尾辻さん自身、お母さんを亡くした後、防衛大をやめて郷里の鹿児島に戻り、働いて妹さんを大学に出しました。この時の話が、母校・鹿児島玉龍高校での講演に残っているので、少しご紹介します。
―――「とにかく仕事を探さなきゃいかんと思って、一生懸命、仕事を探したんだけれどもね、その頃、片親というだけで就職は絶対にだめでしたからね。ましてや両親がいない私が、就職できるわけがない。あんまり腹が立つから、会社で言ったことがありますよ、『何でおれを雇ってくれないんだ』と。その時言われたのは、『うちは慈善事業ではありません』と、はっきり言われました。今、私が政治の世界で生きているのも、その一言ゆえと言ってもいいと思います」―――
私も母子家庭でしたが、ここまで露骨な差別はなく、一世代上の苦労を初めて知りました。
その後、尾辻さんは一念発起して東大に進むんですが、世界を放浪して中退し、政界に進みました。同郷の私は、中学校時代にその放浪記「ボッケモン(鹿児島弁で無鉄砲なやつ)世界を行く」を読んだ当時から存じ上げていますが、記者になってからは「日本会議」や「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」といった活動から、正直、距離を感じていました。
ただ一方で、「発達障害の支援を考える議員連盟」や「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」の会長や、「イクメン(育児・子育てをする男性)議員連盟」の顧問なども務め、選択的夫婦別姓導入には「どちらかと言えば賛成」、日本の核武装は「将来にわたって検討すべきでない」とし、原発の海外輸出には反対――というのも、尾辻さんらしいというか。
自らを「保守」「右翼」と言いながら、そこを支持基盤とした安倍さんとは相容れず、総裁選では二度、対立候補を支持して、以後、大臣や党の要職に就くことはありませんでした。多くは言いませんが、少なくとも損得で物事を決めない、そういう方です。
国会議員にも受け止めてほしい言葉の重み
さて、今日最後にご紹介するのは、その尾辻さんが山本議員の哀悼演説の中で語った、こんなエピソードです。
―――「質疑の中で、私が明らかに役所の用意した答弁を読みますと、先生は激しく反発されましたが、私が私の思いを率直にお答えいたしますと、幼稚な答えにも相づちを打ってくださいました。先生から、『自分の言葉で自分の考えを誠実に説明する大切さ』を教えていただきました」―――
これなんです。『自分の言葉で、自分の考えを、誠実に説明する大切さ』。政治家の言葉は、こうあるべきだと、改めて思います。
そうして、「戦争をする覚悟」ではなく、戦争体験者であり遺族である尾辻さんが語った「いま、私たちがしなければならないことは『犠牲となられた方々のことを忘れないこと』と、『戦争を絶対に起こさないこと』であります」という言葉の重みを私自身胸に刻み、国会議員の方々にもしっかり受け止めてほしいと願ったお盆でした。
●日本の政治は制度疲労と時代の変化にどう対応するのか?  8/18
夏のこの時期は国会がない一方、政治家が様々な活動をする時期でもあります。かつてお盆の頃は政治家の外遊は当たり前のようなものでした。コロナ明けで外遊復活となった途端、自民女性局38名のフランス研修旅行がSNSに掲載された奇妙な写真が発端で大炎上しました。旅費に誰がいくら払ったか、という話はタブロイド紙のお得意分野ですのでそちらにお任せしますが、この手の研修旅行はまるで農協の団体旅行のようであまり格好よくありませんね。
研修旅行がやりにくくなった背景もあります。その一つはオンブズマンが細かいチャチャを入れるからで現地のこと細かい行動やその支払額などが報告され、追及のネタになります。当然ながら庶民感覚とかけ離れた食べ物を食べたり、観光なのか研修なのかわからないような場合には厳しく責められます。
私も以前、同様の研修旅行の現地案内人としてお手伝いしたことがありますが、その団体はかなり真面目でレポートもしっかり作っていました。座長の意識の問題でありましょう。その点からは自民女性局はネジが4-5本飛んでいた、ということです。「自らに甘い」典型ですね。
さて、座長といえば自民党清和政策研究会、通称安倍派の会長席が不在のまま、2人+5人の集団指導体制となっていましたが、今般、塩谷立氏が「座長」という称号を得ました。会長ではなく、座長であり、あくまでも集団指導体制の中の意見とりまとめ役という形であります。では7人衆の中でなぜ、塩谷氏だったのかといえば彼が10期務めており、7人衆では一番長いうえに、ドン森からのお墨付きを頂いたこともあります。ちなみに下村博文氏は9期、他の5人衆は5−8期です。長老を祭り上げただけであり、実力や将来を見据えたものではありません。塩谷氏と対立していた下村氏の去就も気になります。
この清和政策研究会は自民の中では本来は傍流でした。保守本流は宏池会や平成研究会ですが、清和政策研究会が反吉田茂路線で親米、憲法改正、再軍備などのタカ派的なところがあり、自民党好きのおじさま方にはたまらない響きなのであります。
これは実は共産党の話にもつながります。志位和夫委員長は日本のプーチンか、と言いたくなるほどの長期政権で既に22年を超えています。志位さんは東大物理工学科を卒業した相当頭が切れる人物とされます。「Youはなぜ、そんなに委員長が好きなの?」と聞けば「それがなぜ悪い?俺は何一つ、悪いことをしていない」と返します。そして共産党の自慢は「戦前戦後を通じてずっと同じ政党の名前を貫いているのは私たちだけです」といかにも由緒正しいニッポンの本流(になれない)政党というわけです。
ここではっと気がつく方がいらっしゃるかもしれませんが、自民の清和政策研究会もそもそもは岸信介氏の日本自由党が源流であり、岸氏は先日のブログで記載した通り戦前と戦後をつないだ人物の一人であり、ある意味日本社会のフィクサーでもあるわけです。つまり、日本は歴史を重んじ、戦争という断絶期間があっても脈々と続いていることに特別の価値観を置くようです。繰り返しますが私はそれを善悪の括りでは判断しません。それが日本の特筆すべき社会構造なのです。
しかし、日本が民主主義でかつ、与党に一定の刺激を与えるためには野党には頑張ってもらわねばなりません。その中で立憲民主党の不甲斐なさが報じられ、泉代表が次の選挙でケツを割りそうなニュアンスの発言をする中で「志」がない点、同じ「志」が名前につく「志位」さんはブレない点ではまともなのかもしれません。
さて、野党が野党を貫くのか、与党にすり寄るのか、大事な一戦を控えるのが国民民主党であります。党代表選挙を9月2日に控えますが、現代表の玉木氏に対して前原誠司氏が打って出ます。その主義主張は好対照ですが、基本的に前原氏は前科があり過ぎてベテランほど彼になびかないとみています。玉木氏有利というのが現状ではないかと思います。前原氏は京大で学者になるほど頭脳明晰ではなく、外交官になりやすかった東大でもない、母子家庭で苦労したので選択したのが松下政経塾で箔をつけるでした。
前原氏の話はこのブログで書ききれないほどあると思いますが、皆さんもご記憶にあろうかと思いますので控えます。むしろ、「昔の名前でやっています、前原誠司」が敗者復活戦に挑むのか、王者、玉木雄一郎が防衛を果たすのか、このタイトルマッチはある意味、後楽園ホールでやってもらいたい試合であります。
よもやま話なので何をどうまとめるか、難しいのですが、日本の政治も全体的に制度疲労と時代の変化に今後、どう対応するのか、という大きな課題が残りそうです。政治家は法律を作る人ですが、その政治家を取り締まる仕組みがないのは規律監督の機能欠落である点は掲げておきます。
●日本の「EV敗戦」 その要因は「国交相が長年、公明党議員 利権官庁」 8/18
キャスターの辛坊治郎が8月17日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。国土交通省のトップ、国交相のポストを長年にわたり公明党の議員が務めていることを巡り、「日本は『EV敗戦』を迎えようとしている。国交省は利権官庁であり、トップの定期的な人事異動は社会の常識だ」と苦言を呈した。
ベトナムの電気自動車(EV)メーカー、ビンファストがナスダック市場に上場した。取引初日の終値で評価した時価総額は850億ドル(約12兆円)を超え、ドイツのフォルクスワーゲンやアメリカのフォードなど自動車大手を上回った。
辛坊)今、明らかに日本は「EV敗戦」を迎えようとしています。その大きな要因は、国土交通省のトップである国交相を長年、同じ政党の議員が務めていることです。
国交相のポストは10年以上にわたり、公明党の議員が務めています。最近、自民党内に国交相のポストを奪還しようとする動きがあることがニュースになりました。しかし、これは自民が取り戻すとか取り戻さないとか、そういった次元の問題ではありません。
国交省は典型的な利権官庁です。その利権官庁のトップを10年以上も連続で同じ政党に任せておくというのが問題なのです。どれだけクリーンな政党、勢力、政治家であろうが、権力は腐敗します。ですから、こうした利権官庁に関しては、定期的な人事異動を行うのが社会の常識です。今、求められているのは「岸田政権、そこはどうなっているんだ」という視点なのです。
確かに、自民に政権を任せるというのは有権者の判断です。しかし、利権官庁の最たるところの国交省のトップ人事に関しては、有権者は決められません。ですから、政治の責任として、しっかりと国交相人事をローテーションすべきです。
●関東大震災100年…東京都知事、「朝鮮人犠牲者追悼文」またもや拒否 8/18
小池百合子東京都知事が関東大震災100年を迎える今年も、朝鮮人犠牲者追悼式典に追悼文を送らない方針だという。これは2017年以来7年連続のことであり、関東大震災当時、日本軍や警察などが加担した朝鮮人虐殺自体を否定するのでないかという批判の声が上がっている。
東京新聞は17日付で、東京都が来月1日、東京都墨田区の都立横網町公園で行われる関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典と関連し、小池知事の追悼文を送ってほしいという主催者側の要請を断る意思を伝えたと報じた。
「日朝協会」など日本の市民団体は1974年から毎年、関東大震災当時に日本軍、警察、自警団によって虐殺された朝鮮人犠牲者のために追悼式典を行っている。行事を主催する「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会」は先月31日、東京都を訪れ、「今年は関東大震災100年になる年だ。過去から学び、次の世代に伝えることが重要だ」とし、追悼文の送付を重ねて要請した。しかし東京都は「(都知事が)大震災で犠牲となったすべての方々に哀悼の意を表しており、個々の行事への送付は控える」として、この要請を断った。
関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会の宮川泰彦委員長は東京新聞に「全くもって遺憾。知事は朝鮮人虐殺の歴史的事実から目を背けている。歴史的事実を否定しているとも捉えられる姿勢だ」と批判した。
これまで極右政治家とされる石原慎太郎をはじめ、猪瀬直樹、舛添要一など2006年以降の歴代東京都知事らは追悼文を送ってきた。朝鮮人虐殺は自然災害で死亡した人々とは性格が全く異なるためだ。小池知事も就任したばかりの2016年には追悼文を送ったが、翌年の2017年から突然送付を取りやめた。
小池知事のこのような対応は「朝鮮人虐殺」を歪曲する極右勢力の歴史認識と脈を共にするものとみられる。日本の極右団体は関東大震災の朝鮮人被害者数が誇張されており、虐殺も当時朝鮮人が起こした暴動に対する正当防衛だったと主張している。
小池知事は2月、東京都議会で関東大震災朝鮮人虐殺と関連して「何が明白な事実かについては、歴史家がひもとくものだ」とし、虐殺に対する明確な答弁を避けた。小池知事は追悼文送付を取りやめた2017年3月、都議会でも追悼文に否定的見解を表わした経緯がある。自民党所属の議員が「追悼碑に書かれた『朝鮮人犠牲者6千余名』は根拠が希薄だ」という質疑に対し、小池知事は「慣例的に(追悼文を)送付してきたものであり、今後は私自身がよく目を通したうえで、適切に判断する」と答弁した。
関東大震災は1923年9月1日午前11時58分に発生したマグニチュード7.9の大規模災害で、10万5千人余りが死亡または行方不明になった。当時、不安な社会雰囲気と相まって「朝鮮人が暴動を起こした」、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマが広がった。この過程で日本の警察と軍隊、自警団が朝鮮人、中国人、日本人社会主義者などを虐殺した恐ろしい事件が起きた。大震災後、日本政府が事件を隠蔽したことで、朝鮮人犠牲者数や原因などが正確に把握されていない。
ただし、日本内閣府中央防災会議は2008年、国家機関では初めて虐殺事件を分析した報告書を通じて「関東大震災時には、官憲、被災者や周辺住民による殺傷行為が多数発生した。殺傷事件による犠牲者の正確な数はつかめないが、震災による死者数の1〜数パーセントにあたり、朝鮮人が最も多かった」と明らかにした。これを根拠に犠牲者数を数千人と推算している。当時、独立新聞は朝鮮人犠牲者を661人と報道しており、日本の著名な学者である立教大学の山田昭次名誉教授は記録などを根拠に6千人を超えると推算した。
●デジタル庁より「デジタル監視庁」を創設せよ 8/18
マイナンバー騒動が 「人為的ミス」で片付けられる怪しさ
マイナンバーカード問題が、岸田政権の存続の可能性まで揺さぶっています。
断っておきますが、私はマイナンバー制度一本化に基本的に賛成しています。これが全国民に普及すれば、時として差別につながりかねない戸籍制度などを撤廃できます。本人が住んでもいないところに知らない人の住民票が置かれたままになっているといったこともなくなるでしょう。何よりも、コロナ禍のときのような緊急事態に、国家的補償をする時間が短縮されるはずです。
しかし、残念ながら、現行のマイナンバーカード制度は一度白紙に戻すべきではないか、と考えます。
毎日のように、誤作動や間違った紐付けのケースが報道されます。カード擁護論者は、「そんなことは大きなシステムでは0.01%以下の誤差の範囲内」などと弁明しますが、果たしてそうなのでしょうか。
私はこうしたシステムの事故が人為的ミスとして片づけられることが、まず怪しいと思います。人為的ミスが起こらないように設計することこそ、巨大システムの根本的な設計思想のはずだからです。
たとえば、前の人物がナンバーを打ち込んでいて途中で止めたところ、それが次の登録者のナンバーになってしまったといったミスを人為的ミスとしていますが、次の人物が登録作業に入った瞬間に、前の数字を自動的に消去するシステムにしておくことなどは、巨大システムの常識でしょう。
そして、一番政府に真剣に考えてほしいのは、マイナポイントなどの特典をつけても、なぜ国民の多数が参加しないのか、ということです。この事態こそ、政治家、官僚は胸に手を当てて深刻に考える必要があります。
私に言わせれば、国民が政府を信用していないからです。もし事故が起こって、個人情報が流出し、それによって自分の預金が盗まれたり、病気などの個人情報が漏れたりしたとき、政府はどんな補償をしてくれるのでしょうか。いや、その情報漏れが政府によって起きたことを認めるのでしょうか。
なぜ、そんな疑問を持つかというと、政府や自治体で個人情報漏洩事件が起きても、官僚や政治家が処分を受けたり、逮捕されたりしたなどという話を聞いたことがないからです。
横浜市の個人情報漏洩事故 に見る「処罰」の甘さ
たとえば3年前、横浜市が大量の個人情報データを廃棄処理する会社に委託したところ、情報の入ったCDは廃棄されるはずだったのに、その会社がデータを消去しないまま、つまりCDを破壊しないまま中国に売っていたということが報道されました。
私はこれについて調べましたが、中国にデータを売った会社への処分や懲罰は報じられているものの、個人情報を適切に処分できる事業者としてこの会社を選んだ役人、さらにその役人を責任者に任用し、結果的にその会社に横浜市民全員の個人情報を託した林文子市長の責任や処罰は、まったく発表されていません。こんないい加減なことをする会社が、どういう経緯で横浜市の処理を依頼されたのかもわかりません。
横浜市のケースは子細にはわかりませんが、大方、政治家や官僚が知り合いの会社に仕事を頼むといった杜撰なことが行われていたように感じます。入札があるといっても、この手の入札に談合やインサイダーは付き物だからです。
もともとマイナンバーカードに近い政策は何度も試みられました。たとえば、住基ネット。現在の住民基本台帳は、1967年に制定された住民基本台帳法に基づいて運用されてきました。その後、コンピューター利用も進み、1980年からは漢字オンラインシステム、ICカードによる氏名や保険証番号の個人基本情報を記録する保健医療福祉カードを導入。1991年には住民票の写しの自動交付システムを導入しています。
さらに、大きな変革をもたらすはずの改正住民基本台帳法は1999年8月に公布され、2002年8月から運用が開始されています。
しかし、住基ネットで交付されたカードを使用した経験は私にもありませんし、マイナンバーカード交付時には「廃棄してください」とあっさり言われてしまいました。この制度の導入にどれだけ税金がつぎ込まれたかも明らかになっていません。また、この制度の導入にあたった政治家と官僚は、莫大な予算がフイになった責任をとったという話しも聞いたことがありません。
それより以前には、 グリーンカード制度というのもありました。少額貯蓄等利用者カードという名目で、大平内閣当時の昭和55年3月に導入され、少額貯蓄や郵便貯金の利子非課税制度の乱用・悪用を防ぎ、利子・配当所得の総合課税を目指して、昭和59年1月から実施することになっていました。
要するに税金逃れを許さないために、すべてのカネの出入りを政府が把握するという制度です。これは、米国などからの依頼もあり、マフィアなどが、マネーロンダリングで資金洗浄をして蓄財することを国際的に監視するのがその目的でしたが、最終的には、金丸信を中心とした自民党政治家の暗躍で法案は骨抜きにされました。
当たり前です。反対派の旗振り役、自民党副総裁の金丸信が逮捕され、自宅にガサ入れが入ったとき、家には金塊がゴロゴロあったと、逮捕に臨んだ熊崎勝彦特捜部長は、のちに私に語ってくれました。逮捕理由も、日債銀の無記名割引債を申告せずに大量に保有していたことでした。
自分たちが裏金で集めた政治資金を国家に把握されてはかなわない。税金など払いたくない。そんな人種が政権中枢にいるのですから、この手の制度は抜け道ができるに決まっています。
「明らかにおかしい」 政治と業者の癒着を疑う国民
いまでも、全国の企業で個人情報漏洩事件は起こっています。必死で防衛してもフィッシッグなどにかかってしまうケースもあれば、ロシアや北朝鮮のように、国家的にハッキングしている国もあります。そして民間会社には、補償や懲罰が下されています。しかし、マイナンバーに関する今の日本政府の体たらくを見る限り、国家ごと個人情報を外国に盗まれる危険さえ感じてしまいます。
そして、相も変わらず自治体や政府機関からも個人情報漏洩事件は続いています。しかし、すべて担当した業者が悪者にされ、業者を任用した役人と政治家の責任は追及されていません。
これは明らかにおかしい。国民はこれを疑っているのです。今までの情報漏洩に関わった業者はたいてい、あまり聞いたことがない会社(有名な会社が安全というわけではありませんが)。横浜のケースのように、ハードディスクを中国に売るなどという姑息なことまでして商売をしないと経営基盤が厳しいという零細企業に依頼する神経が理解できません。
しかし、横浜市民には、なぜこんな企業に委託したのか公表されていません。調べれば、多分政治がらみの話しがでてくるのでしょう。
国会議員の私設秘書という仕事があります。たいていの場合、給料はなし。給料は自分で代議士の名前を使って口利きをし、その上前をハネテいるのです。超大物議員の秘書たちに聞くと、びっくりするような話しが返ってきます。
たとえばA元総理の自宅で、突然、押し入れの扉が壊れて中身が飛び出してきた。それが、全部札束だった……。B元幹事長には、業者からの陳情が多く、国会の議員会館に送られてくる贈り物が自室には入り切らず、別室を借りて、荷物部屋になっている……。
こんなケースを山のように私は聞いてきました。そして多くの日本人も、程度の差こそあれ、議員への口利きの話を耳に挟んでいるはずです。安倍晋三・菅義偉と、国会審議を重視せず、司法にまで介入するような政権が長く続き、国政選挙にさえ勝てば何をしてもいいという状態が続きました。
それを否定し、二階幹事長を厳しく批判してスタートしたはずの岸田政権も同じ道をたどっています。日本国民のほとんどは、特に若い人ほど報道の力を信じません。選挙でこの国が変えられるとも思っていません。私は大学で若い学生と接する度に、彼ら、彼女らのこの国への不信感を感じ続けてきました。
真のデジタル化を進めるなら 「デジタル監視庁」を創設せよ
せめて、報道機関がしっかりして、マイナンバーカードの欠陥を糾すことはできないのでしょうか。私は、財務省の力を抑えるために金融庁を設けたように、デジタル化を進めるために「デジタル監視庁」のような組織を設け、国や政権から完全に独立した捜査機関として、個人情報漏洩を厳しく追及するべきだと思います。
マイナンバーで大失敗や隠蔽をやっている人間たちを律し、法で裁けるようにすれば、国民は安心して、マイナンバーに登録すると考えます。たとえば、アメリカでは大量の個人情報流出があって、連邦政府のキャサリン・アーチュレタ人事管理局長が辞任しています。中国のサイバー攻撃により政府職員などの大量の個人情報が盗まれた事件の責任を取り、辞任という形を取りましたが、実際には野党やマスコミの追及が激しく、辞任させるしか鎮静化の方法がなかったからでした。日本にも、こうした厳正さが必要です。
どうして自民党政府は、こんな簡単なことがわからないのでしょうか。それはそうでしょう。戦後の政権のほとんどは自民党政権でした。つまりは行政と立法が同じ人間に支配され、安倍政権では司法さえ支配しようとして、検察のトップ人事にまで介入しかけていました(黒川検事長事件)。
それがいけないことだという自覚さえない議員が多いことに、国民は気付いています。野党は、国民のこの気持ちに配慮した国会運営、選挙戦略を立てるべきなのです。揚げ足取りだけでは、選挙で絶対勝てません。
●経産省が出てきた時点でアウト… 「日本の半導体の凋落原因」 8/18
なぜ日本の半導体産業は凋落してしまったのか。半導体産業コンサルタントの湯之上隆さんは「『技術で勝って、ビジネスで負けた』と理解されることがあるが、それは間違っている。端的に技術で敗北したのだ」という――。
日本の半導体メモリは韓国企業に駆逐された
2021年6月1日午前9時、筆者は、衆議院の分館4階第18委員室の参考人席に着席していた。衆議院の「科学技術・イノベーション推進特別委員会」から、半導体の専門家として参考人招致を受け、「日本半導体産業の過去を振り返り、分析、反省し、その上で将来どうしたらいいか?」について、意見陳述を行うよう要請されたからだ。
筆者は20分強の意見陳述で、主として次の3点を論じた。
1 日本のDRAM産業は、安く大量生産する韓国の破壊的技術に駆逐された
2 日本半導体産業の政策については、経済産業省、産業革新機構、日本政策投資銀行が出てきた時点でアウトとなった
3 日本は、競争力の高い製造装置や材料を、より強くする政策を掲げるべきである
以下では、これらの要点について説明する。この意見陳述は、衆議院が作成した動画をYouTubeにアップしている。
筆者は、意見陳述のタイトルを、『日本半導体産業をどうするべきか? ――希望は製造装置(と部品)&材料――』として、自己紹介から話を始めた(図表1)。
筆者は、日本がDRAMで約80%の世界シェアを独占していた頃の1987年に、日立製作所に入社して半導体技術者となった。その後、DRAMのシェアの低下とともに技術者人生を送ってしまい、日本がDRAMから撤退すると同時に、早期退職勧告を受けて、本当に辞めざるを得ない事態に至った。
しかし、転職先探しに時間がかかってしまい、辞表を出しに行ったときには早期退職制度が終わって1週間ほど経っていた頃で、部長から「撤回はなしだよ」と辞表をもぎ取られ、自己都合退職となってしまい、早期退職金3000万円はもらえず、退職金はたったの100万円になった。
1980年には世界シェアの80%を独占したが…
日立を辞めた後、紆余(うよ)曲折の末、辿り着いたところは、経営学研究センターが新設された同志社大学だった。今でいうところの特任教授(当時は専任フェローと呼んだ)のポストに就き、約5年間の任期で、「なぜ、日本のDRAM産業が凋落したのか?」を研究した。その分析結果を要約すると、次のようになる。
日本が強かった1980年代半ば頃、そのDRAMはメインフレーム(汎用(はんよう)の大型コンピュータ)用に使われていた。その時、メインフレームメーカーは、「壊れないDRAM」として25年の長期保証を要求した。驚くことに、日本のDRAMメーカー各社は、本当に25年壊れない超高品質DRAMをつくってしまったのである。それで、世界を席巻し、1980年の中期には世界シェアの80%を独占した。これは、技術の勝利だった。
ところが、1990年代にコンピュータ業界にパラダイムシフトが起き、メインフレームの時代は終焉(しゅうえん)を迎え、パーソナル・コンピュータ(PC)の時代がやってきた。そのPCの出荷額の増大とともに、韓国のサムスンがDRAMのシェアで急成長してきた。
この時、サムスンは、「PC用に25年保証は必要ない。5年も持てばいい。それよりも、PC用DRAMは安価でなければならない。その上、PCの出荷台数が桁違いに多いから、そのDRAMは安価に大量生産しなければならない」という方針でDRAMを製造し、日本を抜き去ってシェア1位に躍り出た。
ビジネスだけでなく、技術面でも負けてしまった
この時、筆者は日立の半導体工場でDRAMの生産技術に関わっていたが、筆者も、日立も、日本の他のDRAMメーカーも、誰もがPCの出荷額が増大していること、サムスンのDRAMのシェアが急成長していることを知っていた。
しかし、そうであるにもかかわらず、相変わらず日本のDRAMメーカーは25年壊れない超高品質をつくり続けてしまっていた。その結果、サムスンの安く大量生産する破壊的技術に駆逐されたのである。
日本のDRAM敗戦について、「技術で勝って、ビジネスで負けた」という人がいるが、それは間違っている。日本は、韓国に、技術でもビジネスでも負けたのである。もっと言うと、技術で負けた要因が大きい。
それは、日本が撤退する直前の64メガDRAMのマスク枚数を見てみれば、一目瞭然である。おおむね微細加工の回数を表しているマスク枚数を比較すると、日立29枚、東芝28枚、NEC26枚だったのに対して、韓国勢は20枚くらい、米マイクロンに至っては約半分の15枚でPC用DRAMをつくってしまった。
当然マスク枚数が多いほど、工程数も多くなり、高額な微細加工装置の台数も多くなる。それ故、製造装置の原価がかさみ利益が出ない。その結果、日本のDRAMメーカー各社は大赤字を計上し、撤退に追い込まれていったのである。これは、明らかに、技術の敗北である。
意味なく「超高品質」を目指してしまった
日本の半導体産業は、1980年代に、メインフレーム用に超高品質DRAMを製造して世界シェアの80%を独占した。この時、DRAMメーカー各社の開発センターや工場に、極限技術を追求し、極限品質をつくる技術文化が定着した。1980年代には、それが正義だったため、日本は世界を制覇できたわけだ。
ところが、1990年代になると、コンピュータ業界が、メインフレームからPCへパラダイムシフトした。DRAMの競争力は、「超高品質」から「安価」であることに変わった。しかし、ここで日本は、DRAMのつくり方を変えることができなかった。結果として、過剰技術で過剰品質をつくることになり、大赤字を計上し、撤退するに至った(図表2)。
さらに、1社残った日立とNECの合弁会社のエルピーダは、この高品質病がもっとひどくなり(2005年頃には、マスク枚数は50枚を超えていた)、2012年にあっけなく倒産してしまった。
一方、サムスンはPC用に、適正品質のDRAMを安価に大量生産することに成功し、シェア1位となった。これは、ハーバード・ビジネススクール教授だったクリステンセンが言うところの「イノベーションのジレンマ」の典型例である。超高品質で世界一になった日本が、そこから自らを変えることができなかったため、それより信頼性が劣るサムスンのDRAMに駆逐されていったからだ。
なぜ日本の半導体産業は凋落したのか
問題は、日本がDRAMから撤退し、大規模なロジック半導体(SOC)へ舵を切っても、この高品質病は治らず、より悪化し、重篤化していったことにある(図表3)。DRAMを含む日本のすべての半導体のシェアは、1980年代半ばに約50%でピークアウトして、凋落の一途を辿った。
そのシェアの低下を食い止めようと、主として経産省が主導し、国家プロジェクト、コンソーシアム(共同企業体)、エルピーダやルネサスなどの合弁会社を設立したが、全て失敗した。何一つ、シェアの低下を食い止めることはできなかった。
それはなぜか? その主たる原因は、診断が間違っていたことにある。人は、「咳が出る、熱がある、身体がだるい」という症状が出たら、病院に行って医師の診察を受ける。昨今なら、コロナなのか、インフルエンザか、単なる風邪か、という診断を受け、それをもとに処方箋を出してもらう。
日本の半導体産業も、各社のトップ、産業界、経産省、政府などが、病気の診断を行い、それに基づいて処方箋を作成し、実際に処方した。しかし、全て失敗した。その理由は、診断が間違っていたからである。そのため、その処方箋も的を射ていなかったわけだ。
「過剰技術・過剰品質」にこだわり過ぎてしまった
日本の病気の本質は「過剰技術で過剰品質をつくってしまう」ことにあった。しかも、時代が変わっているにもかかわらず、過去の成功体験を引きずり、「今でも自分たちの技術が世界一」と己惚(うぬぼ)れていた。
誰もこの病気に気がつかなかったばかりか、より過剰技術で過剰品質をつくることに、各社、産業界、経産省、政府が注力した。その結果、病気は治らずより悪化し、エルピーダなど死者もでた。そして、SOCビジネスも壊滅的になってしまった。
日本の半導体産業は挽回不能である。特に、TSMCが世界を席巻しているロジック半導体については、日本のメーカーは2010年頃の40nmあたりで止まり、脱落してしまった。いったん、微細化競争から脱落すると、インテルの例でわかるように、先頭に追い付くのはほとんど不可能である。
したがって、日本がいまさら、最先端の7〜5nmを製造することなど(まして2nmなど)、逆立ちしたって無理である。ここに税金を注ぎ込むのは無駄である。歴史的に見ても、経産省、産業革新機構、政策銀行が乗り出してきた時点でアウトなのだ。
半導体材料や製造装置には希望がある
では、日本に希望の光はないのかというと、まだ、ある。それは次の3点である。
1 ウエハ、レジスト、スラリ(研磨剤)、薬液など、半導体材料は、日本が相当に強力である
2 前工程で十数種類ある製造装置のうち、5〜7種類において、日本がトップシェアである
3 欧米製の製造装置であっても、数千〜十万点の部品のうち、6〜8割が日本製である
つまり、半導体デバイスそのものには期待できないが、各種の半導体材料、前工程の5〜7種類の製造装置、そして、装置が欧米製であっても各装置を構成する数千点の部品の内の6〜8割が日本製であり、ここに日本は高い競争力を持っている。
アジアを俯瞰(ふかん)すると、明確な役割分担が見えてくる(図表4)。
「強いものをより強くすること」が重要
サムスンとSKハイニックスを擁する韓国は、メモリ大国となった。台湾には言うまでもなくTSMCがある。ファウンドリーで世界シェア1位、微細化でもぶっちぎりのトップを独走する、世界の半導体のインフラだ。中国には、ホンハイの大工場群があり、世界の半導体の35%以上を吸収し、各種電子機器を組み立てる世界の工場となった。
これに対して、日本は、韓国にも、台湾にも、そして欧米にも、半導体製造装置(およびその部品)と半導体材料を供給している。装置、部品、材料、その中の一つでも供給が止まれば、韓国も、台湾も、欧米も、半導体を製造できない。そのような重要な役割を日本は担っている。
世界中のファブレスが殺到するTSMCが注目されている。しかし、そのTSMCといえども、日本製の装置(とその部品)や材料なくして、最先端プロセスで半導体を製造することはできない。その装置の半分弱が日本製であり(部品レベルでは6〜8割が日本製)、材料の7〜8割が日本製なのだ。
したがって「強いものをより強くすること」を第1の政策に掲げるべきである。これが、日本半導体産業に対する筆者の提言である。
意見陳述は政策にまったく生かされなかった
意見陳述の時間は15分だったが、筆者は5分以上超過してしまった。しかし、筆者の意見陳述を止めるものは誰もいなかった。衆議院議員からは、大ブーイングが来ることを覚悟していた。これまでの政府および経産省の政策を全否定したからである。
ところが、意外なことに拍手喝采を受けてしまった。そのため、意見陳述の後に、不思議な気持ちになるとともに、もしかしたら、筆者の主張が議員の胸に届いたのかもしれないという実感も湧いた。
しかし、残念なことに、筆者のこの意見陳述が、その後の半導体政策に生かされることは、全くなかったのである。それどころか、日本半導体産業は問題だらけで、無謀かつ無意味な方向へと突き進み始めていった。 

 

●大炎上℃ゥ民党女性局フランス研修、国民との「信頼」「共感」が欠如 8/17
フランスの少子化対策や子育て支援を研修するため、7月下旬にパリを訪問した自民党女性局が大炎上している。
女性局長の松川るい参院議員らが、エッフェル塔の前でおどけたポーズで撮影した写真をSNSにアップし、次長の広瀬めぐみ参院議員も、宿泊先のホテルや料理の写真を投稿して批判を浴びたのだ。
女性局の5年ぶりの海外視察には、党職員や議員秘書を含めて38人が参加した。政治家が、海外の制度を学ぶことは悪いことではない。「国民のための政策立案の参考にする」という使命が存在する。
彼女らも研修目的を理解しているはず。写真の投稿も、軽い冗談のつもりかもしれないが、それが炎上したのはなぜか。
国会議員は主権者である国民の信託を受け、全国民を代表して法律の立案や、国会の審議に当たる。
国民と議員の間には、「この人なら国家や国民のために仕事をしてくれる」という信頼∞共感≠ェなければならない。
今回、それらが欠如していたのではなかったか。
松川氏が所属する自民党大阪府連には多数の抗議が寄せられた。党枚方市支部は、松川氏に参院選挙区支部長の辞任を要求した。かつて松川氏の選挙事務長を務めて身内≠ニもいえた花谷充愉元府議は「議員辞職」を求め、SNSで辛辣(しんらつ)な批判を加えた。
興味深いのは、松川氏や広瀬氏、そして今井絵理子氏ら写真騒動で炎上したのは2022年の参院選当選組であることだ。参院任期は6年だ。「これから5年間は少々の問題があっても議員の身分は安泰」との油断があったのか。
国民の期待から外れることはもちろんだが、昨年の参院選で72万5243票を得て当選し、衆院へのグレードアップ≠狙っていたとされる松川氏には、地元関係者からの不満が大きい。
そもそも、参院選では、有名タレントでもなければ自分の「人気」で当選することは、まず不可能だ。ひたすら所属政党のネームバリューと、小選挙区を単位に構成される支援者たちの「汗」と「涙」に支えられた地元活動がものを言うのだ。
自民党大阪府連はこの問題を議論するために、まず「総務委員会連絡会」の開催を決定した。さらに一部幹部に限定した「役員会」を開くことにしたが、すぐに中止した。
松川氏に批判が集中することが予想されたため、党本部が開催中止を促したと噂されている。
だが、「ガス抜き」や「総括」の機会を逃した意味は小さくない。これでは、国民の「共感」を得ることは困難だろう。日本維新の会の躍進に直面する自民党が進む道のりは、ひたすら険しい。
●「ブライダル補助金」と100万円献金 炎上の森まさこ首相補佐官 8/17
昨日、夕刊フジが1面で報じた森まさこ首相補佐官の「ブライダル補助金」炎上、一向に収まる気配がない。
最初は、森氏のズレっぷりが国民を怒らせた。まるでこの補助金が「少子化対策」の一策であるかのようにSNS投稿したためだ。
おさらいになるが、あえて、森氏のフェイスブック(FB)投稿を引用しておく。
「私が会長をつとめる#自民党少子化対策議連の要望により経産省に新設されたサービス産業課内のブライダル担当からレク。そして、こちらも議連の要望が叶い新設されたブライダル補助金の第一次、第二次公募の結果について報告を受け…」
炎上も当然と思われる文面だ。森氏と議連メンバーが本気で、「ブライダル業に補助金を出せば、若者が喜んで結婚し子供が増える」と考えたのなら、全員、国会議員を辞めた方がいい。
どうしたら、こんなバカバカしい「少子化対策」が浮かぶのか、とあきれていたら、どうやら真の理由は「バカ」なせいではなく、「カネ」にあったとみられる。
一部週刊誌が報じたとおり、森まさこ氏(「三好雅子」名義)が代表を務める「自由民主党福島県参議院選挙区第四支部」が、令和3(2021)年4月30日に、ブライダル大手「潟eイクアンドギヴ・ニーズ」から100万円の寄付を受け取っている。これは同支部の政治資金収支報告書で確認できる。
森氏のブログによれば、令和3年4月16日に「ブライダル業界の方より私へSOSのメールが届きました」とあり、翌17日には「ブライダル業界の方と打ち合わせ」、その6日後の23日には「官房長官との面会をセット」とまさにトントン拍子に話が進んでいる。
この官房長官との面会の1週間後に「潟eイクアンドギヴ・ニーズ」からの献金があったという時系列だ。
典型的な「口利き政治」だが、ここまでは理解する。
なぜなら、当時は前年からのコロナ禍の下、ブライダル業界はまさに瀕死(ひんし)の状況にあったからだ。ワラをもつかむ思いで政界への働きかけを行ったことだろう。
その様子が、業界紙「ブライダル産業新聞」のバックナンバーに書かれている。
「森議員がいなかったら、確実に営業自粛になっていた」(ブライダル産業新聞・令和3年8月1、11日号)
同紙で森氏は、自身への献金の贈り主といっていいテイクアンドギヴ・ニーズの野尻佳孝氏と対談し、こう力強く語っている。
「今は婚活だけでなくブライダルにも力を入れないとなりません。(中略)今回骨太(の方針)に入れた結婚支援をどう政策に反映させていくのかを、業界の皆さんにも楽しみにしてもらえれば。結婚式をする二人への補助金、式場への支援、税制優遇なども含めて、新しい支援の形を作っていきます」
ここから感じられる意図は少子化対策というより、業界対策だ。この対談から3カ月後に、森氏は新たに発足した岸田文雄政権で内閣総理大臣補佐官の座に就く。これで、「業界の皆さんに楽しみにしてもらえるよう」な補助金策に弾みがついたに違いない。
一連の動きについて、「贈収賄」を疑う声もネット上にはある。もちろん現段階では、合法な献金であり、法的には問題ないと見える。
しかし、最近の自民党には再エネ疑惑(洋上風力発電疑惑)で、東京地検特捜部の家宅捜索を受けた秋本真利衆院議員(自民党離党)の件もあり、現職の首相補佐官である森氏が不審の目で見られるのも致し方なかろう。
また、最近の政治家絡みの「炎上」では、過日の「自民党女性局パリ視察」のように、日がたつにつれ鎮火に向かうのではなく、新たな事実がどんどん暴かれ、延焼するケースも目立つ。
まったくの余談だが、自民党のブライダル関連といえば、東京都の小池百合子知事が衆院議員時代に「ブライダル議連」を立ち上げたことを思い出した。
今後、「ブライダル森」事案が思わぬ飛び火につながらないともかぎらない。しっかりウオッチして参りたい。 
●まるで政治家の財布のようにバラ撒かれる税金 8/17
政府は国民から税金を預かっていて、それを国民に代わって必要なところに使うという意識がありません。財政効率が低下しており、その要因として政治権力によるバラマキが大きくなっていることが挙げられます。オリンピックや万博の名のもとに、大きな金を動かし、その中間マージンを政治家やIOCなどの主催者、政府と親しい企業が「抜く」ことで「漏れ」が大きくなります。
日本の政府債務は深刻
日本の政府債務をグロスで見るか、資産を差し引いたネットで見るかでその評価は分かれます。
グロスの債務は1,500兆円を超え、GDPの2倍を優に超えますが、資産900兆円余りを差し引けばGDPをやや超える程度で、欧米並みとなります。
市場の失敗、弱者救済に財政は必要です。経済に需要不足があれば、財政需要の追加も正当化されます。
しかし、その規律のなさが展望の開けない財政危機の不安を強めているのも事実です。先に債務上限問題で市場を脅かした米国よりも、むしろ日本のほうが規律のなさという点では深刻な状況にあります。
景気調節機能が低下
社会保障、道路建設など市場機能に任せられない分野に財政出動が必要なことは論を待ちませんが、これまで大きな柱となってきたケインズ主義的な財政による景気調節機能は低下してきました。経済が成熟して道路やインフラ整備による公共事業の呼び水効果が低下したこともあります。
近年はむしろ景気対策には金のかからない金融政策に委ねる面が世界的に高まりました。
実際、景気対策の乗数効果が低下し、投下資金当たりの成長支援効果は年々低下しています。そのやり方にも問題があり、財政資金が介在する政治家やあっせん企業のマージンに消える分が大きくなり、投下資金の割に「真水」が少なくなっていることもあります。
実際、中央政府だけで年140兆円もの支出を続けながら、政府支出も、民間需要への波及も限られ、低成長が定着しています。
政治権力による支出性向
その裏で、財政効率を低下させている要素として、政治権力によるバラマキが大きくなっていることがあります。
オリンピックや万博の名のもとに、大きな金を動かし、その中間マージンを政治家やIOCなどの主催者、政府と親しい企業が「抜く」ことで「漏れ」が大きくなります。
当初予算よりはるかに拡大した五輪予算が国や東京都の財政を圧迫しましたが、60年前のような「五輪景気」は実現しませんでした。
またさらに大きな権力で日本を動かす米国政府や企業が、5年で43兆円もの防衛費を日本に求め、その多くが米国製の兵器購入に充てられ、負担だけ増えて日本経済には貢献しません。イージス艦や戦闘機の整備も日本は手を出せず、米国任せです。いざというときに米軍が日本のために戦う保証もありません。
防衛費増税への国民の批判が強まると、これをかわすために今度は「異次元の少子化対策」として富裕層にも児童手当がばらまかれ、その財源負担の議論が封印されたままです。まずは支出ありきで、その政策により、少子化にどんな成果が期待できるのか、その目標さえ示されない無責任さです。
コロナ・ワクチンも国民に新型ウイルスの不安を抱かせたうえで、欧米のワクチンをほぼ強制的に接種させ、大金を欧米医薬品業界に払いました。その副作用で亡くなった人や副反応の大きさと、コロナ感染回避のメリットの比較も検証されていません。
単年度主義対個別予算型
政府は国家権力を利用して財政を政治家の財布のように使いまくっていますが、これを許す要因の1つになっているのが、予算の単年度主義です。
米国の個別案件ごとに歳入を基にした歳出をセットで提示するのではなく、歳出を別に議論し、その財源は年度の税収、国債発行などで「どんぶり勘定」になるので、個別案件の歳出に対して財源問題が制約になりません。
今回の異次元少子化対策も、歳出だけでなく、その大規模な児童手当をだれがどう負担するのか、同時に議論させれば、このようないい加減な歳出計画にはならなかったと思われます。
日本も米国のように個別案件ごとに歳入歳出を同時決定する形にしてはどうかと思います。
法的縛りのない日本
また、欧米では政治家による財政資金の乱用を避けるために、法的な縛りを設けていますが、日本は野放図となっています。
EUでは毎年の財政赤字をGDP(国内総生産)の3割以内と決め、政府債務残高についてもGDPの6割までと決めています。コロナ禍や金融危機に際しては猶予を認めますが、平時に戻ればこれが適用されます。
一方米国では連邦政府債務の上限が決められていて、これが歳出の大きな制約になっています。コロナやウクライナ戦争などで歳出が膨らみ、国債の利払いもできない状況になれば、さすがに官邸は議会に債務上限引き上げを求めますが、議会も無条件ではこれを飲まず、今回も今年来年の歳出を強く制限する条件のもとで上限が引き上げられました。
日本にも何らかの法的な縛りが必要です。
金利による市場の警告を排除
さらに財政規律を緩めてしまったのが日銀によるゼロ金利政策、YCCです。
通常、政府が財政赤字を拡大し、国債の増発懸念が出れば、債券市場では国債の需給悪化を読んで長期金利が上昇します。まして今の様なインフレが重なれば、長期金利は3%程度になっていてもおかしくありません。それが政府に暗黙の圧力となります。
ところが、日銀が国債の過半を買い上げ、国債需給が実態を反映しなくなり、債券市場からの財政悪化に対する「警告」が発せられなくなりました。
長期金利は一時マイナスとなり、YCCの弾力化を決めた後でも依然として1%を大きく下回っています。インフレ率が3%を超えているだけに、実質金利は2%を超える大幅マイナスとなっています。
このため、政府内や政府に近いエコノミストからは、金利コストが低いうちに国債を大量発行してでも歳出を拡大し、成長を高めるべきとの議論が飛び出します。
国民から税金を預かっているという意識が欠如している
政府は国民から税金を預かっていて、それを国民に代わって必要なところに使うという意識がなく、政治権力により、政治家の自由な判断でいくらでも使える、という意識が「異次元少子化対策」に反映されています。
以前から指摘しているように、すでに子を持つ世帯に児童手当を厚くしても、出生率は上がりません。問題は結婚したくても経済的制約で結婚できない人が増え、これが少子化に結び付いていることですが、的外れな少子化対策に大金をつぎ込もうとしています。今からでも白紙撤回して、無駄遣いを排除してもらいたいものです。
政治家に規律が働ないのであれば、制度面から財政規律を設け、これに従ってもらうしかありません。今のプライマリー・バランス2025年黒字化も、掛け声だけで何ら縛りがなく、これを実現しようとの努力も見られません。
信頼できない政府には大きなお金を預けることはできません。規律の回復までは「小さな政府」でリスクを最小化するしかありません。
●SDGsが掲げる「17の目標」日本政府はひとつとして実現してない 8/17
もう皆さんにもお馴染みだと思うが、SDGsという言葉がある。なんの意味か今更聞けない人には説明する。
サステナブル・ディベロップメント・ゴールズ=持続可能な開発目標という意味だ。こういう海外からの動きには日本も必ず遅れまいとする。新しい横文字大好き小池百合子氏も「東京オリンピックを開催する東京都が目指す社会のあり方と、SDGsの精神は、同じだと考えています」などと過去に言っている(弁当30万食も廃棄して何が持続可能だ)。
政府もSDGsを考えている。まず指針を打ち出し、SDGsを実現した団体を表彰する組織をつくり(これがまた役人の天下り先になります)、少しの補助金を出す。たったこれだけ。自分たちでは何もやらない。
翻って現実はどうか。神宮の森を伐採して再開発するという。しかもあそこには超高層商業ビルが立つらしい。いったいそんなものがなぜいるのか。
SDGsには17の目標がある。その15には「陸の豊かさも守ろう」「森林の持続可能な管理」と書いてあるではないか。さらに国は国立劇場を建て替えると言っている。しかし現在の国立劇場のデザインは素晴らしい。それを残して改修することはできないのか。アメリカなどではよくやられている。それこそSDGsではないのか。
他にも目標はある。
   1 貧困をなくそう
   5 ジェンダー平等を実現しよう
   8 働きがいも経済成長も
   16 平和と公正をすべての人に
なんだよ。ひとつとして実現してないじゃないか。新しい言葉にのっかるだけ。そのたびに天下り先が増えるだけ。やってるフリばかりの日本の官僚と政治家。スクラップ&ビルドはもういらない。よいものは残してくれ。保険証もな。 
SDGsとは?
SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年9月の国連サミットで全会一致で採択された「持続可能な開発目標」です。キーワードは「Leave No One Behind(誰一人取り残さない)」。2030年を期限とする世界共通の17の目標を設定して、貧困や飢餓、暴力を撲滅し、地球環境を壊さずに経済を持続可能な形で発展させ、人権が守られている世界を実現することを目指しています。 

 

●沖縄・玉城デニー県知事の訪中と、習近平の「琉球」発言の政治的メッセージ 8/16
中国で歴史は生々しく今を生きている。
「中国の夢」を掲げて14億人を束ねようとする習近平政権のもと、歴史を背負う「中華」はどう拡散し、深化しているのか。
沖縄の玉城デニー県知事が7月初旬、訪中した。コロナの渡航制限が緩和されて以降、日本から初めての大型経済ミッションの一員として、李強首相など指導部とも面会した。
さらに、琉球王国時代に深い縁があった福建省福州市へと足を延ばした。中国メディアは連日、「玉城丹尼」の動向を報じた。
沖縄県知事の訪中は初めてではない。翁長雄志氏も何度か訪問している。今回いっそう注目されたのは、習近平国家主席が自らの言葉で、「琉球」と中国との深い縁に触れたばかりだったからだ。
習氏は6月初め、「中華文化の遺伝子バンク」(国営新華社通信)とも呼ばれる中国国家版本館の北京本館を訪れた。古代から近代までの出版物の版本1600万冊を収蔵、1万点以上を展示している。天安門広場から数十キロ離れた燕山の麓にある。
中国共産党機関紙人民日報1面(6月4日)によれば、足を止めた習氏に対して、案内係は「重要な政治的な役割を果たしている古書」として、明代16世紀に皇帝が琉球へ派遣した「册封使」が残した記録『使琉球録』を紹介した。
「釣魚島(尖閣諸島の中国名)とその付属諸島が中国の版図に属することを記録している」と説明した。中国は500年近く前の古文書も歴史の檻から出して、現在の外交に動員する。
習氏は島をめぐる問題には直接答えず、こう応じた。
「私は福州(福建省)で働いていたとき、琉球館と琉球墓園があり、琉球との往来の歴史がとても深いと知った。あのころ、『閩(びん)人三十六姓』が琉球へ渡った」
琉球館は、貢ぎ物を明の皇帝に届けるために琉球王国から海を渡ってきた人々が滞在した拠点だ。柔遠駅とも言われた。柔遠という中国語には、遠方からの訪問者を優遇し、朝廷の懐柔政策を示すという意味がある。
習氏の発言は、中国と琉球は「冊封関係」、つまり、中国側から見ると宗主国と従属国の関係にあったことを想起させる。
玉城氏は琉球人墓地を訪ねて、那覇から持参した「平御香(ヒラウコー)」と呼ばれる線香とお盆などに祖先に持たせるための紙ウチカビを供えて手を合わせた。いずれも中国由来の沖縄独特の風習である。
中国メディアは琉球王国の時代から沖縄は「中国はじめアジア諸国との平和的な交流で繁栄した」(人民日報傘下の環球時報)という知事の言葉を伝えた。
「琉球回収、沖縄解放」
北京特派員時代に取材した2010年から12年にかけての「官製」反日デモで、そんなスローガンを書いた垂れ幕を見た記憶が甦る。
習氏は、沖縄の人々に親しみをアピールしたのか。それとも、台湾問題をめぐって関係がぎくしゃくする日本政府に対して、沖縄の帰属問題で揺さぶりをかけようとしているのか。
琉球と交流の歴史を持つ福建省は、習氏にとって1985年のアモイ市副市長から始まり、17年も駐在したゆかりの地だ。足を止めても不自然ではない。中国政府自身は沖縄返還後、日本の沖縄の主権に異議は唱えていない。
では、沖縄の人たちの対中意識をみるとどうであろうか。沖縄復帰50年にあたって朝日新聞社などが実施した世論調査(2022年3〜4月)によれば、日本にとってより重要な関係として、アメリカをあげた人の比率が77%だったのに対して、中国は7%に過ぎない。
別の世論調査でも、対中感情は本土の日本人以上に悪いという結果もある。仮に、習氏の発言が、米軍基地問題で日本政府の政策に不満を持つ沖縄の人々を取り込もうとするプロパガンダ工作だったとしても、どこまで有効かは未知数だ。
それでも、人民日報1面で報じたこと自体、強い政治的メッセージを放つ。トップに対する忖度ともあいまって、中国の政策当局者、研究者や世論の方向性に大きな影響を与える。
中国は国力の増強につれて、自国民を束ねる道具として利用してきた「五千年」の歴史の効用を国外に対しても臆面なく用いるようになった。
今回の習氏の発言をめぐって日本にざわざわと波紋が広がったように、日本の世論の分断や混乱につながりかねない琉球をめぐる議論は今後、必ず増える。
中国側の意図を、日本社会はどこまで深く読み取れるだろうか。
習氏のアーカイブ館の見学は、文化伝承発展座談会に出席し、演説することとセットだった。習氏は中華文明を「中断されたことのない唯一の文明」と位置づけ、次のように語っている。
中華文明には際だった統一性があり、中華民族は各民族の文化が一つに融合し、たとえ重大な挫折になっても固く結集することを決定づけ、国土は切り離せず、国家は乱れず、民族はばらばらにならず、文明は断たれないとういう共通の信念を決定づけ、国家統一が永遠に中国の核心的利益の核心であることを決定づけ、強固で統一された国家が各民族の運命にかかわることを決定づけている、と。
アステイオン98号の特集「中華の拡散、中華の深化──「中国の夢」の歴史的展望」で、責任編集を担った岡本隆司氏が「中国の夢」について、「長くとれば百年以上も以前から背負い、となえてきた課題であるとともに、現代・現状も解決をみておらず、なればこそ「夢」と表現せざるをえない」と指摘している。
習氏の中華文明に関する演説もさかさまに読めば、中国が抱え続ける課題が見える。
中国という国家や中華文明は、そのパワーの及ぶ範囲で広がったり縮んだりしてきた。習氏の中国は、中華を、その見果てぬ夢を拡散するベクトルにある。
その伸縮に応じて影響を受けてきた日本には、歴史という縦軸に地理的な横軸を加えた「中国と関係を有した国々・地域それぞれの「中華」観・「中国」論」(岡本氏)が必要だ。
この特集では、中華・中国に、ときにとりこまれ、ときに周縁となり、ときに外部として存在した朝鮮半島、琉球、台湾、香港、チベット、新疆、ベトナム、モンゴルを主語にして中国を論じていた。
それによって、「連続性」「統一性」「包摂性」を主張する習氏率いる、現代の中国・中華が語る歴史の欺瞞や矛盾を照射している。
岡本氏のこの問題意識は、西洋の視点で編まれた世界史をユーラシアから捉え直す『世界史序説──アジア史から一望する』(ちくま新書)や、現代中国が生まれる過程を日本、琉球、ベトナム、朝鮮半島、モンゴルなどの視座からとらえた『中国の誕生──東アジアの近代外交と国家形成』(名古屋大学出版会)から一貫する、主語を逆転させる試みだと感じた。
中国と直接のかかわりを持ってきた国や地域は中国をどう見ているのか。自らの歴史にどう位置づけているのか。
たとえば、中国が仕掛ける「琉球」をめぐる議論に対峙するにも、日本の本土に欠如する沖縄そのものに対する理解はもちろん、台湾や米国などさまざまなアクターの認識を知ることが欠かせない。
中国の見果てぬ「夢」に向き合わざるを得ない立場を共有する者どうし、地域の安定に向けて相互に理解を育みたい。
中国・中華の視点から見た「周縁」と「外部」が連帯することによって生まれる未来の可能性もまた、そこに潜んでいる。 
●韓国野党代表、尹大統領の光復節演説を批判…「日本との無条件軍事協力」 8/16
韓国最大野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の8・15光復節(解放記念日)演説を批判しながら「過去を少しも反省しない(日本との)無条件軍事協力はあり得ない」と強調した。
李代表は16日午前、国会で開かれた最高委員会議で前日の光復節演説について「いわゆる自由と人権を共有する日本との軍事協力強化を宣言する慶祝辞が朗読された」とし「私が今まで参加したどの光復節行事よりも長くて大変だった」と吐露した。
李代表は15日に梨花女子大大講堂で開かれた光復節慶祝式で、尹大統領の演説中に目を閉じて聞く姿がカメラに映ったりもした。李代表は「同じ時間に日本の多くの政治家が靖国神社を参拝していた。本当にあきれる状況」と批判した。
8日に米国キャンプデービッドで開催される韓日米首脳会談に関しては「韓日軍事同盟の扉をぱっと開くという報道が多い」とし「解放以前に戻す敗着をしてはいけない。全面的な再検討を強く促す」と明らかにした。
先月の豪雨による行方不明者者を捜索中に殉職した海兵隊所属の故チェ上等兵の事件については「事件が発生してから1カ月が経過するが、無念の死に対してどこの誰も責任を取らない」とし「この政権は人を、人の命を大切に考えないようだ」と批判した。
特に、パク・ジョンフン元海兵隊捜査団長が「チェ上等兵事件の捜査結果を民間警察に移牒するな」という指示を破って集団抗命をした容疑で立件されたことに関連し「無念の死を隠そうとすることこそが国民抗命罪だ」と声を高めた。
李代表は「特別検察官を通じて客観的に糾明するべき」とし「国防部次官、法務管理官など外圧疑惑が浮上した人たちに対する速やかな職務排除を求める」と述べた。
また、投資銀行(IB)8行が来年の韓国の成長率を1%台と予測した点に言及しながら「すでに不況の影が見えている」とし「現在の経済状況と合わない新自由主義財政基調を全面転換し、来年の予算拡張編成、補正予算編成に取り組むべきだ」と主張した。
●「平和を守るのは武器ではなく国民の意志」 しみる政治家の一文 8/16
終戦の日に合わせて与野党は談話を発表した。自民党は「わが国は、唯一の戦争被爆国として、『核兵器のない世界』の実現に向け、国際社会の機運を高め、一歩一歩、現実的かつ実践的な取り組みを進めていく」。公明党は「11月の核兵器禁止条約締約国会議への政府によるオブザーバー参加を改めて強く求める。『核の先制不使用』の議論を、今こそ日本が主導すべきだ」とした。自民は現実の政治と逆行、公明は野党のごとくのもの言いだ。
野党に至っては立憲民主党が「わが国を取り巻く安全保障環境が緊迫している。こうした時こそ必要な防衛力を整備しつつ、国際協調と対話外交、多国間連携を深め日本周辺の平和を守り、地域の緊張を緩和させる努力を続けねばならない」と与党のような振る舞いだし、日本維新の会は「わが国の主権と国民を守り抜くための積極防衛力を抜本的に強化、整備することは、私たちの喫緊かつ重大な責務、使命だ」と陸軍省の談話のようだ。どの党も終戦の談話になっていない。
その中でしみる政治家の一文を見つけた。「戦争とは人間が生み出した地獄。前線で闘った方々の多くは餓死。紙切れ一枚で招集、補給は絶たれ、飢えと渇きにのた打ち回りながら、苦しんで亡くなった。戦争末期には狂った特攻兵器が考えられ、あまたの若者が命を落とした。そして、敗戦直後、指導者達は責任逃れのため書類を燃やした。『ここまで来たらやめられない』と。官邸、陸軍、海軍が相互に責任を押し付け合い、戦争を止められなくなっていた。常に国民の命より政府の体面や利権が重視された。戦争を知る世代がほとんどいなくなりつつある今、『政治の大罪』について我々は深く考えないといけない。いま本来、冷静であるべき政治が、戦争の危機を盛んに訴え、武力増強のため、巨額の税金を国民に課そうとしている。こんなことが許されているのは敗戦からの時間の経過による。平和を守るのは武器ではなく国民の意志。繰り返さないということを固く誓う日としたい」小沢一郎。 

 

●超党派の議員連盟メンバー67人「終戦の日」に靖国神社を参拝 8/15
「終戦の日」の15日、超党派の議員連盟のメンバー67人がそろって靖国神社に参拝しました。
超党派の議員連盟「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」は、毎年、春と秋の例大祭と、8月15日の「終戦の日」に靖国神社に参拝しています。
新型コロナの感染拡大の影響で「終戦の日」に一斉参拝するのは4年ぶりで、15日午前10時すぎ、自民党や日本維新の会などの国会議員あわせて67人がそろって参拝しました。
このうち岸田内閣からは副大臣と政務官あわせて8人が参拝しました。
参拝のあと議員連盟の副会長を務める自民党の逢沢 元国会対策委員長は記者会見し「過酷な歴史、戦争の記憶などの風化はあってはならない。若い世代に戦争の悲惨さや平和の尊さを受け止め考えてほしいという祈りや思いを込めて参拝した」と述べました。
また、現職の総理大臣の参拝見送りが続いていることについて「日本国民を代表する重い立場の方が戦争とどのように向き合い行動するか、まさに政治家の真価が問われる。ことばや行動を通じ国民が納得のいく行動をとることを心から願っている」と述べました。
●処理水放出 外務省が韓国ネットメディアの報道に反論 8/15
福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する計画をめぐり、韓国のインターネットメディアが「放射能濃度が基準を超えたため、希釈を加速させ安全基準を満たそうとしている」などと報じたとして、外務省は「事実無根だ」と反論しました。
外務省によりますと、韓国のインターネットメディアは14日、公電だとする文書を掲載したうえで「処理水の放射能濃度が基準を大幅に超過したため、バラスト水の交換によって希釈を加速し、安全基準を満たすことが検討されている」などと報じました。
これに対し、外務省はホームページなどで「公電とされる文書は偽物で、内容は事実無根だ」と反論しました。
このメディアは、ことし6月にも「日本政府がIAEA=国際原子力機関に多額の政治献金を行った」などと伝えていて、外務省が公式に反論したのはこの時に続いて2回目です。
外務省国際原子力協力室は「悪意のある偽情報の拡散は民主主義に対する脅威であり、被災地の感情も大きく傷つけるもので断固反対する」として、今後も科学的根拠に基づいた情報発信に努めていくことにしています。
官房長官「悪意ある偽情報 普遍的価値への脅威」
松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「手段を選ばない悪意のある偽情報の拡散は、われわれの社会が基盤を置いている自由や民主主義といった普遍的価値に対する脅威であるほか、被災地の復興を妨げ、復興に向けて努力する被災地の人々の感情をも大きく傷つけるものだ。政府として偽情報やその流布に断固として反対する」と述べました。
一方、中国の国営メディアが処理水の放出計画への反対キャンペーンを展開していることについて「中国では事実に反する内容を含む発信がなされていて、累次にわたり反論を行うとともに、科学的根拠に基づいた議論を行うよう強く求めてきている。適切な理解が深まるよう努めていく」と述べました。
●ロシア軍艦 日本接続水域内 数日航行 防衛省「極東での活発な活動継続」 8/15
太平洋から津軽海峡を抜け、日本海に入ったロシア海軍の情報収集艦が、北海道から北陸にかけての沖合で、数日にわたり日本の接続水域を航行した。
防衛省によると、北海道の渡島大島の南西およそ40kmの海域で8月6日に確認されたロシア軍の情報収集艦が、9日にかけて津軽海峡の西側の接続水域を南北に動き回った。
その後、南下した情報収集艦は、接続水域やその周辺を航行し、11日に石川県の能登半島の北で接続水域を出た。
防衛省は、「ロシア軍は極東での活発な活動を継続しており、今後も動向を注視していく」としている。 
●国家の劣化はたった1人の政治家が引き起こす 8/15
2023年8月15日、また今年も終戦記念日がやってきた。戦後80年近くにもなろうとしている。もはや戦争を知る戦中世代のほとんどが鬼籍に入りつつある中で、形骸化した終戦記念日が伝統行事のように繰り返されている。
一方で豊かであったあの日本は風前の灯火で、日本の疲弊がはじまって久しい。それを衰退というか、堕落というか。表現はまちまちであろうが、いかに外見を繕ってみたところで、日本が今没落しつつあることは、残念ながらだれも否定できない事実である。
もちろん、これは日本だけに限らない。先進国といわれる国々は、どこも大同小異同じ運命を辿りつつあるのかもしれない。
モンテスキューも嘆いた政治の堕落
2016年にフランスで、ニコラ・バベレという人の『ベナン人の手紙』という小説が出版された。その内容は2040年のフランスの話で、フランスは国家衰退の危機に瀕し、IMF(国際通貨基金)から派遣されたアフリカのベナン人が、その衰退したフランスの様子を妻に手紙で語るというものだ。
これは2040年という近未来の話で、その頃はアフリカの国々が勃興し、政治、経済、モラル、文化、あらゆる面で先進国となっていて、フランスは、すべての点で後進国になりさがっているというのである。
その冒頭に、フランスの哲学者であるモンテスキュー(1689〜1755年)の『ペルシア人の手紙』(1721年)の154番目の手紙の一節が引用されている。その文章はこうである。
「君も御存じのように僕は長い間インドを歩きまわった。そのくにでは、私は一人の大臣の示した悪例のおかげで、生まれつき寛大な国民が一瞬のうちに最下級の国民から最上級の人たちまで堕落したのを実見に及んでいる。寛大、清廉、無邪気、信仰の徳が永年の間国民性となっていた国民が突然、最下等の国民になってしまった。つまり、弊風が伝搬し最も神聖な人たちさえそれに染まり、最も有徳の人が悪事を働き、ほかの連中もやっているとつまらぬ口実にかくれて、正義の第一原則を破って顧みなくなったのを私は見て来た」。
18世紀のモンテスキューも、フランス社会の危機を憂い、ペルシア人の名を借りて当時のフランス王政の堕落を批判したのである。一国の衰退は、政治の悪化で一気に進んでいくというのだ。政治の悪化が、国民のモラル低下を導き、だれもが悪徳の民となり、国は衰退の一途を辿るのである。
この後起こるフランス革命という嵐の中、フランスはその衰退を免れ、再び繁栄の基礎を築いたのだが、その代償はあまりにも大きなものであった。現在のフランスは、どうであろう。政治や経済の混迷とともに、あらゆるものが狂い始めている。今のところ、この衰退を救ってくれる白い騎士たるすぐれた政治家が現れていない。
そのフランスという西欧を範としてきた日本の衰退は、フランス以上に疲弊しているともいえる。政治のモラル低下や腐敗は、もはや事件として取り上げる気も起こらないほど頻繁化し、それとともに経済分野における日本の地盤沈下もとどまることを知らない。
その一方で、日本礼賛論が巷で横行し、国民は相変わらず経済成長日本の時代の夢から出ることができないでいる。
未来の世代を苦しめる国家の劣化
こうした衰退を、国家劣化ともいう。モンテスキューによれば、国家劣化は1人の悪徳政治家によって簡単に起こると述べているが、国家は人間と違い1つの世代で死に絶えるのではなく、その次の世代、またその次の世代とずっと受け継がれていくのであるから、ある世代による国家の衰退は次の世代の人々をずっと苦しめ続けるのである。
その意味で、ある世代のたった1人の政治家による悪行は、末代まで影響するといってよい。
ハーバード大学教授のニーアル・ファーガソンは『劣化国家』(櫻井祐子訳、東洋経済新報社、2013年)の中で、この世代間に継続される劣化した国家の問題を、やはり18世紀のイギリスの思想家エドマンド・バーク(1729〜1797年)の『フランス革命についての省察』(1790年)の有名な言葉を使って、「世代間の協働事業(パートナーシップ)の崩壊」と述べている。
このバークの言葉とは、次のような言葉である。
「というのは国家は、ただひととき存在して滅んでいく(人間という)粗野な動物的存在だけに役立っているものではないからです。国家はすべての学問についての協働事業によって、すべての技芸についての協働事業によって、すべての徳とすべての完璧さについての協働事業によって作られるのです。こうした協働事業の目的は何世代続いても実現できないものなので、生きているひとびとだけが結ぶ協働事業ではすみません。それは生きているひとびととすでに死んだひとびととの間で、またこれから生まれてくるひとびとの間で結ばれる協働事業なのです」
なるほど、多額の赤字国債の発行や、国民の財産の多くを破壊する戦争などを、ある世代の政治家が気まぐれに行えば、そのツケは末代まで及ぶといってもよい。だからこそ、今のわれわれの世代だけに国家を劣化させる権利はないのである。すべての世代に豊かな世界をその後の世代に伝える義務が、すべての世代にあるのだ。
これと同じような趣旨のことを、日本を代表する経済学者の1人であった森嶋通夫(1923〜2004年)も、『なぜ日本は没落するか』(岩波書店、1999年)と『なぜ日本は行き詰ったか』(同、2004年)という2つの書物で、われわれにすでに20年前に語ってくれていた。
森嶋は2004年に亡くなっているので、この2つの書物は彼のわれわれに残した遺書とも言うべきものである。戦中世代として、われわれ戦後世代に彼が伝えたかったことは、まさにこの「協働事業」という問題である。長い間イギリスで暮らしていた森嶋は、まさにバークの見解に似たことを述べている。
森嶋は、『なぜ日本は没落するか』の中で、2050年の日本を予想している。彼は当時の13歳から18歳の子供たちの様子を見て、50年後日本を背負っている彼らが日本をどう動かしているかという発想から、2050年の日本を予測しようというのだ。
国家は世代によって引き継がれていく。戦後は戦争を遂行した戦前世代が牽引し、そして戦中世代、戦後世代にバトンタッチしてきた。だから今の豊かさは前の世代の豊かさでの結果であり、今の世代は次の世代にその豊かさをバトンタッチしなければならない。こうして連綿と歴史は、世代間で引き継がれていく。
森嶋は、この戦後のバトンタッチこそ大きな問題点を含むものであったという。戦後アメリカによる教育改革は、戦前世代との断絶を生み出したと指摘する。アメリカによる急激なアメリカ流教育は、民主教育を非民主的な戦前、戦中世代が教えるというちぐはぐな問題を生み出した。
それによって戦後民主主義は形骸化し、また戦後世代はそれまであった日本の伝統的儒教的教育を受けられなかったことで、戦後世代はアジア的伝統とも断絶することになったという。戦後世代とは、私のような昭和20年代生まれの世代のことである。そして 2050年を担う世代とは、その戦後世代の子供たちや孫の世代のことである。
国際的評価を得られない「哲学なき政治家」
菅義偉、安倍晋三、岸田文雄といった政治家はすべて戦後世代である。この戦後世代に欠けているものを、森嶋はエリート意識の欠如、または精神の崩壊といっている。価値判断をもたない無機的な人々を生み出したのは、この戦後の中途半端な教育にあったと述べているが、あながち間違いではない。それが顕著に現れるのは政治という舞台の上である。
政治家は国を代表し、対外折衝をするがゆえに、自ずと国際的評価の対象となる。しかし、日本の政治家の中にそうした国際的評価を得るレベルの政治家が少ないのも、事実である。
私はこうした政治家を「哲学なき政治家」と呼ぶ。森嶋は、政治、産業、教育、金融あらゆる部門にわたって、日本の荒廃を分析しているが、政治家の様子を見ただけでも、日本の荒廃のおよその検討はつく。
冒頭のモンテスキューの言葉が示す通り、1人の悪徳政治家が存在したおかげで、それまで続いた豊かな国家もたちどころに疲弊していったとすれば、そうした政治家にあふれている日本に豊かな未来はないであろう。森嶋は、こう結論づけている。
これは重い言葉だ。森嶋は教育者であり、こうした悲惨な未来を避けるために教育改革を盛んに訴えているが、それには私も賛成だ。
「政治が悪いから国民が無気力であり、国民が無気力だから政治は悪いままでおれるのだ。こういう状態は、今後50年は確実に続くであろう。そのことから私たちが引き出さねばならない結論は、残念ながら、日本の没落である。政治が貧困であるということは、日本経済が経済外的利益を受けないと言うことである。それでも「ええじゃないか、ええじゃないか」と踊り狂うしか慰めがないとしたら、私たちの子供や孫や曾孫があまりにも可哀想だ」。
偏差値型ロボット教育(受験勉強)と価値判断を欠いた無機的教育(問題意識の欠落)を一刻もはやくなくさねばなるまい。とりわけ海外、欧米偏重ではないアジアとの交流をにらんだ教育体系の確立であろう。日本はアジアから孤立しているばかりではない。憧れている西欧からも利用しやすい愚かなアジアの国としてしか、相手にされていないのだ。
今後世界の中心となるアジア・アフリカの中で活路を見いださねば、未来はないであろう。次の世代のために今こそ立ち上がるべきときである。  
●自民党女性局フランス研修では、きっと見ていないフランスの少子化問題 8/15 
日本で自民党女性局がフランスに海外研修に来て、観光旅行さながらの写真をSNS上に掲載していたことで大炎上していたのを見て、この日本の政治家の方々がわざわざ研修にいらっしゃるフランスでの子育てや少子化対策などについて、私がフランスで子育てしてきた経験と私の知る範囲のフランスの教育について、少し書いてみようと思います。
日本よりはマシだけど、フランスでも少子化は進んでいる・・
フランスでの少子化対策の一環として、一番大きなものは、子供を育てている人に対しての税制優遇と、子育てにかかる費用や施設の援助であるのではないかと思っています。この税制優遇にしても、子育ての援助にしても、共通するのは、親の収入に応じて、金額が異なっており、援助が必要な人により多くの援助が行き渡るように配慮されているものだと思われます。したがって、子育ての環境が二人の両親が働いている場合、一人親の場合、子供の人数などにより、その援助の金額は異なります。
フランスでは3歳から16歳までが義務教育となっているので、公立の学校に通う限り、必要なのは、学校で行う特別な行事や旅行のための費用が主です。給食費に関しては親の年収に応じて金額が異なります。年度初めには、新年度に必要なものを揃えるための準備金として、親の収入によっての括りはありますが、子供の年齢に応じて、子供一人につき398ユーロ(約6万3千円)〜434ユーロ(約6万9千円)が支払われます。これは、今年9月からの新年度が始まる前、8月中に支払われる金額で、毎年、金額は変動します。今年は、該当する300万世帯に向けて、この準備金が支払われることになっています。
子供を持つことによる税制優遇措置は、特に3人以上になると、格段に有利になるという話で、娘の友人たちなどを見渡すと、3人兄弟姉妹という家族がけっこう多い気がします。また、子供の数は、年金のポイントにも加算されます。
しかし、それが功を奏していたのも一時期までの話で、2010年を境にして、フランスの出生率はグングン下がっています。2010年には、832,799人生まれていた子供が2022年には、723,000人にまで減少し、急激な下降線を辿っているのです。
現実は厳しく、フランスだって、いいところばかりでもない・・
子供を持つことで、色々な優遇措置があるとはいえ、現実はそう簡単ではありません。出産のための休暇や育児休暇があるとはいえ、その後も女性が仕事を続けていくためには、子供を預ける場所が必要になりますが、その保育所とて、妊娠した時点で予約しなければ、安心できる保育所のスペースは確保できないという話もよく聞く話です。
また、子供を持つことでもらえる児童手当をあてにして、子供を産めるだけ産んで、親は働かずして(親の収入が少ないほど児童手当は多い)、子供を虐待しながら、子供の児童手当で生活するような者まで出てきます。
公立の学校にやれば、始終、ストライキに悩まされ、子供の預け場所に右往左往する始末。犯罪の低年齢化もアクセルがかかり、子供が一日の大半を過ごす学校は、その子の人生を大きく左右することになります。昨今の低年齢化するフランスの未成年の犯罪は、家庭さえしっかりしていればなどという生易しいものではなく、少しでも安全、安心な教育の場所と考えるとどうしても私立の学校を選びたくなってしまいます。
我が家の場合は、幼稚園(幼稚園もエコールマテルネルと呼び、学校扱い)までは、娘を公立の学校に通わせていましたが、1ヶ月近くも学校のストライキが続いたことに、もう心底ウンザリして、是が非でもストライキのない私立へ!と小学校からは、私立に入れました。それさえも、入学試験というものがなかったために(今はわかりませんが、当時の娘の学校では・・)、気がついて、申し込みをしたところがもう遅く、娘の幼稚園(幼稚園とはいえ、学校扱いなので、成績表があります)の成績表を送ってみたり、策を講じて、ようやくギリギリ滑り込めた感じでした。
フランスは格差社会と言われるだけあって、学力とて、優秀なほんの一握りの人々と、まずまずの中間層、下は限りなく下で、最近のINSEE(国立統計経済研究所)の調査によると、フランスの16歳、35,000人は読み書きができないという衝撃的な数字で、これはこの年齢層の5%に相当します。日本では、きっとあり得ない数字だと思います。
隣ではないけど、隣の芝生は青く見える・・のか、よいところばかりがピックアップして伝わりがちで、ましてや政治家が公式に視察に来られたりしても、フランス側は、よいことしか言わないだろうけれども、現実はそんなに甘くはないのです。
フランス人が発するもう一つの少子化対策への提言 La vie est belle(人生は美しい)
フランスでの少子化が再び、叫ばれ始めてから、今年の初め頃だったか?あるフランスの大手新聞社が書いていた記事がなかなか興味深く、まさに、少子化といえば、日本・・と言わんばかりに、日本やその他の国を引き合いに出して、少子化対策への提言をしていたことがありました。
ここでは、少子化に向かっている日本についての具体的な数字を示しながら、「日本はその小さなサイズにもかかわらず、経済的および文化的に非常に重要な役割を果たしてきました。 私たちは、日本人が団結することに期待したいと思います!」と事実だけを客観的に述べて、大変危機的な状況を説明しながらも、日本を腐すことなく、頑張れと比較的ソフトにしめていました。
加えて、フランスもなかなかな警告ラインに達している現状について説明し、「・・にもかかわらず、私たちの国の指導者たちは、十分な数の子供がいなければ、国の将来を確保することは困難であることを忘れている!」と手厳しく述べています。
そして、現在、大家族を持つことは、生活水準が仕事から同じ収入を持つ人々が得る平均よりも低くなることを見て、かなり質素に生活することを意味しており、 家族手当は、ある程度の規模で存在するものの、生活水準の低下を補うにはほど遠く、養うべき人数が増加し、両親のフルタイムの仕事が困難または不可能になる場合もあり、国の手当は、子供の数が増えても相対的な貧困に陥らないようにするために必要なレベルにはほど遠いものであると指摘しています。
現在の少子化の主な原因は、子供たちを世に送り出し、可能な限り育てることが、特に公的機関によって、不可欠な責務として感じられていないためであると言っています。
つまり、政府の対策は、まだまだ充分ではないということです。
しかし、一方では、これから子供を産み、育てていく世代に向けて、「あらゆる困難にもかかわらず、人生は美しいものです。楽観的に生きましょう!」「la vie est belle(ラ・ヴィ・エ・ベル)」と呼びかけています。これは、いかにもフランスらしい言い方でもあるし、きれいごとのようにも聞こえないでもありませんが、一面では、結構、ある意味、真実を突いているような気もするのです。
人生にとって何が楽しいことなのか?何が有意義で価値のあることなのか? そのあたりの価値観が実はけっこう大きな起動力でもある気もするのです。
フランス、ましてやパリといえば、キラキラなイメージがあるかもしれませんが、そんなキラキラな生活を送っている人はごくごく一部のことで、日常の生活は、けっこう質素でシンプルで、家族で過ごす時間をとても大切にしています。フランス人のバカンス好きは有名ですが、それも、ほぼ、子供を含めた家族で過ごす時間です。フランス人はそのバカンスのために生きているといっても過言ではないほどです。(しかし、そのバカンスにさえ行けない人が増えているのですから、子供どころではない人も大勢いるということでもあります)
その人の人生において、何に重きを置くか?そんな家族とともに過ごすバカンスのために、子供を持って、自分の家族が欲しい! そうして充実した人生を送りたい!と思うことほど、大きな動機もないのではないかとも思うのです。
私が前々から感じている日本でいう「家族サービス」という奇妙な言葉はフランスにはありません。家族で過ごすことは、家族みんなが一緒の時間を楽しむことであって、一方的にサービスするものではないからです。
たしかに、出産も子育ても、本当に大変ですが、過ぎてしまえば、むしろ、大変だったことの方がよい思い出になっているくらいな気さえします。それも、過ぎてしまえば・・の話ではあり、子育て中は本当に大変でした。
自民党女性局のフランス研修は何を学んだのか?
結局、今回、私がこの記事を書くきっかけになった自民党女性局のフランス研修は、そのサイトを見ると、フランスの3歳からの義務教育の目的や効果、少子化対策、政治分野における女性の活躍等が書かれており、保育所などを視察されたそうですが、そもそも、7月24日〜28日という時期的には、夏休みの期間で学校もお休み。パリで生活する人はあんまりパリにいないタイミング。百聞は一見にしかずとも言いますし、また、直接、話を交換することには、意味はあるとは思いますが、どうにもモヤモヤしないでもありません。しかし、今回のフランス研修で間違いなく彼女たちが学んだであろうことは、不用意なSNSへの投稿はご法度で、国民から政治家がどう見られるか?ということには、充分に気を配らなければならないということだったと思います。
政治分野における女性の活躍云々以前に、男性、女性関係なしにフランスの政治家は、SNSの発信にも、自分たちの行動が国民の目にどう映るのかにも、大変、気を配っています。 

 

●中国軍のハッカーが日本を攻撃、システムに侵入されていた 米は再三警告 8/14
日本のサイバー防御は大丈夫なのか―。米国が2020年以降、中国軍のハッカーによる日本の防衛ネットワークへの侵入を複数回通報・警告していると、米紙ワシントン・ポスト(電子版)が報じた。日本政府の対策は不十分だと伝えている。ロシアによるウクライナ侵攻では、物理的な武力攻撃と、サイバー攻撃を組み合わせた「ハイブリッド戦」が展開されている。中国にも約3万人のサイバー専門部隊がおり、他国の政府機関や企業への侵入を繰り返しているとされる。「平時」も「有事」もないサイバー戦の現実。ジャーナリストの長谷川幸洋氏が迫った。
中国軍のハッカーが日本の防衛機密を扱うコンピューター・システムに侵入していたことが、ワシントン・ポスト(8月7日付)の報道で明らかになった。防衛省は情報漏洩(ろうえい)を否定している。いったい、何が起きていたのか。
同紙によれば、米国家安全保障局(NSA)が中国軍の侵入に気付いたのは、2020年秋だった。米国の軍事関係者は匿名で「それは衝撃的なほど、ひどかった」と同紙に語っている。
NSAとサイバー軍の責任者、大統領副補佐官だったマシュー・ポッティンジャー氏らは日本を訪れ、防衛相に報告した。驚いた大臣は「首相との面会をアレンジした」という。相手が安倍晋三氏だったか、菅義偉氏だったか、は記していない。
問題はここからだ。
日本側は対応策を講じたが、米側は21年初め、問題が解決するどころか「逆に悪化している」と危機感を強めた。日米の専門家チームが協議を始めたが、日本側は米国の協力受け入れを渋った。いくら米軍とはいえ、他国にネットワークの内側を詮索されたくなかったからだ。
結局、日本は国内の民間企業にシステムの脆弱(ぜいじゃく)性を検証してもらい、両国が対応策を検討することで折り合った。
だが、21年秋になると、中国軍の侵入は一層激しくなって、日本の対応が追いついていないことが判明する。同年11月に米国の責任者が来日し、協議したが、日本側には、むしろ「米国が日本のシステムを監視している」という不信感があった。
日本は米国にハッキングの事実を指摘されながら、米国の協力を仰ぐことに抵抗感を抱いていたのだ。結果的に、それが対応の遅れにもつながった。
日本はなぜ抵抗したのか。
米国の調査を認めれば、「ますます将来の監視を許してしまう」と心配したからだろう。建前を言えば「主権侵害につながりかねない」という懸念もあったに違いない。
だが、日本の対応が不十分なら、情報が中国に筒抜けになりかねない。米国はじめ「ファイブ・アイズ」(=米国と英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの5カ国による機密情報同盟)と呼ばれる西側の同盟・友好国が、日本への情報提供に慎重になるのは、当然だ。
日本が「米国に監視されたくない」などと言ったところで、現実に監視されていたからこそ、ハッカー攻撃が分かったのだから「空疎なプライド」ではないか。日米のサイバー軍事力に差があるのは、厳然とした事実である。
その後の岸田文雄政権は防衛費を大幅に倍増し、日米の防衛協力強化をうたっているが、どうも腹が据わっていないように見える。
それは、浜田靖一防衛相のコメントにうかがえる。
浜田氏は記者会見で、「秘密情報が漏洩した事実は確認していない。サイバー攻撃によって、任務の遂行に影響が生じる事態は生じていない」と述べた。浜田氏はハッカー攻撃や日米協議の事実を否定していない。百歩譲って、情報漏洩は免れたとしても、中国のマルウエア(悪意あるソフト)が長期間、システムに残っていただけで大問題だ。
ここは、つまらぬプライドは捨てて、米国との連携を強化するしかない。
●唯一の被爆国だからこそ、政治家と左派メディアは核廃絶議論をやめろ 8/14
広島市長の「発言」に左派は賛同
お盆の季節、わが国ではさまざまな式典が毎年執り行われる。8月15日には、全国戦没者追悼式が行われる。
広島市の松井一実市長は、8月6日の平和記念式典で「核による威嚇を行う為政者がいるという現実を踏まえるならば、世界中の指導者は、核抑止論は破綻しているということを直視し、私たちを厳しい現実から理想へと導くための具体的な取り組みを早急に始める必要があるのではないでしょうか。」と述べ、日本は核兵器禁止条約の締約国へなるべきだとした。
この発言は、「政府批判」ともとれる。だが、立憲民主党、共産党、そして中国も特に意見を述べることもなく、左派マスコミを中心に賛同的な報道をしている。
ただし、今年は例年と違った政治家もいた。自民党の麻生太郎副総裁は8日、訪問先の台湾で講演し、「台湾有事」を念頭に、「日本、台湾、米国をはじめとした有志国には戦う覚悟が求められている」「いざとなったら台湾防衛のために防衛力を使う」などと訴えた。
麻生氏の訪台・発言に対し、中国は9日、「強烈な非難」を表明して反発した。国内においても、立憲民主党の岡田克也幹事長は8日、麻生氏の講演発言を軽率であると批判した。共産党の小池晃書記局長も8日、極めて挑発的な発言と非難した。左派マスコミも、中国、立憲民主党、共産党に同調している。
結論をいえば、こうした左派の反応は、すべて抑止論に対する誤解や無理解からきている。本稿では、抑止論とその背景を考えてみよう。
戦争の確率を減らす
筆者が、国会参考人陳述などの機会で繰り返して述べていることのひとつに「戦争の確率を減らすこと」の重要性がある。かつて2015年7月20日付け本コラム「集団的自衛権巡る愚論に終止符を打つ! 戦争を防ぐための「平和の五要件」を教えよう」では、より一般的なフレームワークから戦争確率を減少させることを書いている。
なお、今日的な問題では、そのうち(1)相手国が非民主主義国であること(2)防衛力のアンバランス(3)同盟国がない、という事実が重要だろう。
日本を当てはめると、北西方に、ロシア、北朝鮮、中国という核保有かつ非民主主義国がある。これはいかんともいがたい。そこで、防衛力のアンバランスをなくしつつ、日米同盟を強化するしかない。防衛力のアンバランスをなくすために今年度から始まった防衛費のGDP比2%までへの引上げ、日米同盟強化のためには部分的な集団的自衛権行使を容認した2015年の平和安保法制がある。
次の手順として、防衛力と同盟を前提として相手国に正しいメッセージを伝えて、戦争を予防することが重要だ。それが抑止論だ。
その理論的基礎はゲーム理論であるが、2005年のノーベル経済学賞を受賞したトーマス・シェリングはその先駆者だ。
トーマス・シェリングは1960年の『紛争の戦略』でそのオリジナルの萌芽があるが、ゲーム理論の現実社会への応用分析をしており、そのキモは、互いに相手の出方を考えながらそれぞれの行動が変わりうるというものだ。この研究により、トーマス・シェリングは2005年にのノーベル経済学賞を受賞した。
トーマス・シェリングは、抑止論において重要なのはコミットメントであるとし、コミットメントをはっきりさせることで、相手国にメッセージを送り、これが戦争抑止につながるというわけだ。
簡単に言えば、やられたら、倍返しするというメッセージを伝えるのだ。まさにこれこそが外交である。古くからの格言にも「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ」というのもある。
核抑止論と国際関係
今のロシア、ウクライナ、アメリカについていえば、バイデン米大統領がウクライナに米軍を派遣しないと言ったことが、ロシアに対する誤ったメッセージになり、結果としてロシアのウクライナ侵攻につながった。
この抑止論から言えば、麻生氏の発言は政府とも調整済みの正しい外交的メッセージだ。
シェリングは、抑止論においてコミットメントが重要だと言ったが、同時に信頼の重要性も指摘している。覚悟があっても、それを裏付けるものがないと信頼できないのだ。
そこで、確固たる防衛力、日米同盟の信頼性が問題になるが、政府は防衛費のGDP比2%に向けて動き出したし、反撃能力についても閣議決定し、戦後からの「専守防衛」から一歩出ようとしてる。これらは正しい方向なので、それらをさらに加速しなければいけない。
抑止論を核問題まで広げると、いわゆる核抑止論がある。それは、核兵器による反撃を恐れさせることで攻撃を思いとどまらせるという理論だ。
冷戦下で重要とされた重要な戦略に「自動反撃機能」があった。これは、相手が核を発射したらこちらから核を自動発射するということにすれば、共倒れとなるので米ソ両国は先制攻撃を控える、というものだ。
この応用問題で、核保有国と非保有国なら、保有国が脅せば非保有国はなすすべがないばかりか、窮地に陥った非保有国を助けようとする核保有国もうかつに手出しが出せなくなる。まさに、今のロシア、ウクライナ、アメリカの関係そのものだ。
「お花畑議論」はやめよ
抑止論が破綻しているというなら、それこそノーベル賞ものだ。むしろ抑止論のロジックは今の状況である程度妥当であると、ウクライナの例でもわかるだろう。ウクライナは核保有国だったが、非保有国になったために、今日の悲惨が生じているのだ。
アメリカとロシアにおいては、アメリカが通常兵器を惜しみなくウクライナに投入すれば、ロシアを撃退できるだろう。アメリカがそれをやらないのは、ロシアが核兵器を保有しているからだ。
さらに、この実例で、ウクライナを日本に置き換えるとどうなるのか。また、ロシアを中国や北朝鮮に置き換えてもいい。
広島市の松井市長は、これでも日本が核兵器禁止条約の締約国になるべきだというのか。なお、市長は平和記念式典でガンジーの非暴力主義を例示したが、約50年前からインドは核保有国だ。
日本において、もう相手国の出方を無視した「お花畑議論」はすべきでない。原爆の日に毎年繰り返される核抑止論の否定は、はっきり言って平和への貢献にならないと筆者は考える。もっとリアルに状況を見るべきだ。
ゲーム理論からの平和のための最適解は、日本も核兵器を保有する、もしくは核共有だ。中国、ロシア、北朝鮮という核保有国に囲まれ、日本と似た状況の韓国では、既に国民の大多数がそう考えている。
日本は被爆国だからこそ、同じような、またはもっとひどい惨禍を二度と起こさないために、核保有か核共有の議論を避けてはならないし、そう主張する権利がある。
安全保障は軍事分野だけにとどまらず、食料やエネルギーなど有事への備えは心許ない。海洋国家日本にとって、シーレーンの安全保障は最重要課題であるが、台湾有事になったら日本のシーレーンの一部は寸断される。その備えも行っておくべきは言うまでもない。 
●中国が「台湾有事」で日米壊滅計画 8/14
外事警察関係者、米は岸田首相に「中国と内通している政治家を排除しろ」と要求 
ジョー・バイデン米大統領が10日、西部ユタ州の選挙イベントで語った「中国は時限爆弾だ」という発言が注目されている。習近平国家主席率いる中国経済への深刻な懸念を伝えたとされる。中国国家外貨管理局も同時期、外国企業による4〜6月期の対中直接投資は49億ドル(約7100億円)で、前年同期比87・1%減と過去最大となったと発表した。ただ、岸田文雄政権の動向も含めて、別の見方をする情報当局関係者もいる。ジャーナリスト、加賀孝英氏が最新情報に迫った。
「悪い人たち(=習主席以下、中国共産党幹部)が問題を抱えると、悪いことをする」
バイデン氏は10日の選挙イベントで、冒頭の「時限爆弾」発言に続き、中国をこう激しく批判した。
米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は翌日、「中国国内のあつれきが世界に及ぼす影響を指摘したものだ」と説明した。だが、バイデン氏の本音はまったく違う。
「バイデン氏は、中国のサイバー攻撃などに、ブチ切れている。米国は、中国による『台湾侵攻極秘作戦計画』の詳細を握っている。第1戦闘作戦がサイバー攻撃だ。次が武力総攻撃だ。米中はすでにサイバー戦闘状態に突入している」(外事警察関係者)
中国のサイバー部隊について、防衛省関係者は「最強だ。総員17万人超。中核は約3万人の攻撃専門部隊だ。さらに、政府が司令塔となる民間サイバー部隊があり、日本への攻撃も行っている。中国は『台湾有事』の際、台湾と日本、米国をサイバー攻撃で壊滅状態にする計画を立てている」と語った。
対立激化は、次の事実で明らかだ。
17月中旬、中国当局とつながりのあるハッカー集団が、米国の国務、商務両省を含む約25組織のメールアカウントに不正侵入していたことが発覚した。ジーナ・レモンド商務長官や、ニコラス・バーンズ駐中米国大使、ダニエル・クリテンブリンク国務次官補(東アジア・太平洋担当)など、対中政策要人が標的とされていた。
27月29日、米紙ニューヨーク・タイムズが、米領グアムの米軍基地を支える水道、通信など基幹インフラ深部にマルウェアが仕掛けられていたと報じた。米政府は、中国のハッカー集団の仕業と断定し、撤去に乗り出した。「台湾有事」直前に起動し、米軍の出動を妨害する目的とみられる。
38月初め、米連邦捜査局(FBI)は、中国の情報機関に軍事機密を提供した疑いで、海軍兵士2人(中国系米国人)を逮捕した。漏洩(ろうえい)した情報は、米海軍艦船の設計図や、兵器システム、「台湾有事」を想定した大規模軍事演習の作戦計画、在沖縄米軍基地のレーダーシステムの電気系統図や設計図…などだった。
こうしたなか、米紙ワシントン・ポスト(電子版)が7日、米国が2020年以降、中国軍のハッカーが日本の防衛機密を扱うネットワークに侵入していたことを複数回通報・警告していたと報道した。
米国側は「近年で最も深刻なハッキング」と日本側に指摘したというが、日本側は情報漏洩を否定している。
何が起きていたのか。この連載「スクープ最前線」は次の事件を報告している。
・20年8月、防衛省は「中国軍が海上民兵の乗る漁船1万隻に『(沖縄県)尖閣諸島へ出撃せよ』と命令を出したという極秘情報を入手した。急遽(きゅうきょ)、米国と協議し、周辺海域で日米軍事演習を実施して、尖閣強奪を阻止した。
・21年4月、警視庁公安部は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)など約200の団体・組織がサイバー攻撃を受けた事件で、中国人2人を書類送検した。バックに中国軍サイバー部隊「61419部隊」がいた。
・21年12月、共同通信が「台湾有事で(日米)共同作戦計画の原案策定」というスクープ記事を報じた。台湾有事の際、「米軍は南西諸島に臨時拠点を築く」というものだが、米国は「日本の政府関係者が漏らした」とみている。
前出の外事警察関係者は「ワシントン・ポストの報道は、米国の岸田首相に対する警告だ。米国と機密情報共有を可能にするサイバー・セキュリティーの強化とともに、『中国への機密情報漏洩を遮断しろ=中国と内通している政治家を排除しろ』という要求だ」と語った。
さらに、中国軍が暴走する危険がある。
「軍強硬派の一部が、習氏に『台湾侵攻の早期決断』を進言している。自民党の麻生太郎副総裁が8日、台湾の講演で、台湾有事を念頭に『日本、台湾、米国をはじめとした有志国には戦う覚悟が求められている』『いざとなったら台湾防衛のために防衛力を使う』と語り、中国側を激怒させた」(日米情報当局関係者)
事態は深刻だ。岸田首相の「国家と国民を守る」断固たる決意が求められている。機密情報漏洩の放置は同盟国への裏切りだ。米国は、岸田首相の覚悟、決意を疑っている。
●中日平和友好条約締結45周年記念大集会 東京で開催 8/14
中日平和友好条約締結45周年記念大集会が10日、東京で開かれました。集会には300人を超える日本の友好人士が参加し、日本の鳩山由紀夫元首相、中国の呉江浩駐日大使が登壇しました。
鳩山元首相はあいさつで、日中平和友好条約は今もなお重要な意義があり、その有効性はいささかも失われてはいないとした上で、「しかし、日本にはいわゆる『台湾の有事は日本の有事』と騒ぎ立てる政治家がおり、平和友好条約の重要な理念が日本側の一部の人によって損なわれつつあることに危機感を抱いている」と述べました。そして、日本政府に対し、日中共同声明や日中平和友好条約などの文書で定められた立場に速やかに立ち返るよう呼びかけました。
呉大使は、「中日平和友好条約は両国間の恒久的な平和友好関係を発展させることを双方共通の義務として法的に定めた。内政に対する相互不干渉、すべての紛争の平和的手段による解決、覇権を確立しようとするいかなる国による試みにも反対するなど一連の基本原則を規定している。しかし、45年後の今日、日本では歴史の教訓を忘れたかのように、『中国脅威論』を騒ぎ立て、『抑止力の強化』が必要とまで言い出す人が出てきている。これらの危険な言論に惑わされれば、日本は再び誤った歴史の道に踏み込むことになりかねない」と指摘しました。
集会を主催した日本の「村山談話を継承し発展させる会」(村山談話の会)の藤田高景理事長は、「日中平和友好条約締結の目的は友好関係を強化し、両国の発展を促進することである。中国は日本の敵ではない。日本は中国との平和関係を全力で構築すべきだ。これはアジア全体の平和、安定、発展のためだけでなく、日本の未来のためでもあるのだ」と述べました。
●日大の林理事長と岸田首相「マイナス会見」の共通項、「危機意識の弱さ」 8/14
今回の会見は「危機管理広報」
筆者は在京メディアの記者として、幾度となく政治家や企業の不祥事で当事者による記者会見を取材してきた。事件や事故、不祥事やトラブルを受けての会見は、個人や組織へのダメージを最小限に抑え、事態を収拾させるために行うもので、「危機管理広報」などと呼ばれている。
数年間、職場のラジオ局で、リスクマネジメントの要ともいえる危機管理広報を担い、番組や番組出演者、あるいは社員が関わった諸問題に対応していた時期がある。
「新商品発表」や「新企画指導」といった攻めの広報とは異なり、守りが主になる危機管理広報では、1記者会見を開くまでのスピード、2情報開示度の高さや透明性、3正直で誠実な態度、という3つの要素が重要になることを実感してきた。
その点からすれば、8月8日に日本大学がアメリカンフットボール部の部員が違法薬物所持で逮捕されたことを受けて開いた記者会見、それから、ひも付けミスが続出しているマイナンバーカードに関して岸田首相が行った8月4日の記者会見は、「不合格」だったと言わざるをえない。
日本大学本部で林真理子理事長、酒井健夫学長、それに元検事で競技スポーツ担当の澤田康広副学長が顔を揃えた記者会見は、2時間15分あまりに及んだ。著名な理事長が会見するとあって、テレビや新聞、ラジオ、フリーランスなどの記者が大挙して押し寄せ、筆者が数えただけでも、実に170近い質問が飛んだ。
日大側はこれに応じたが、本来であれば、記者会見で問題の火消しを図らなければならないところを、逆に炎上させる結果を招いてしまった。では、どこが良くなかったのか、そして、どうすれば良かったのか整理しておこう。
日大会見問題点のまとめ
(1)トップが組織全体を掌握できていない
林理事長自らが質問に答えたのは、わずか27回。澤田副学長に説明を任せたり、澤田副学長が林理事長の言葉をさえぎり答弁したりする場面も多かった。
記者会見の後半で「スポーツ部には遠慮があった」と漏らした点は、理事長就任1年あまりでは、まだまだ現場の状況把握に踏み込めていない現状をうかがわせる形となってしまった。
(2)巨大組織として平時から備えができていない
2018年5月にあった悪質なタックル事件もそうだったが、「教職員と学生を合わせ8万人もいれば何か問題が起きるかもしれない」というリスクの洗い出しが不十分で、有事=問題が生じた際の初動も遅い。
今回に関しては、2022年11月下旬、アメフト部員が「大麻のようなものを吸った」と申告してきたのであれば、なぜその時点から徹底調査をしなかったのかという疑念が残る。ただ、記者会見では、「警察に相談したが、事実かどうか確認できないと言われた」などと、当事者意識を欠くコメントに終始した。
(3)会見に臨む首脳陣のメディアトレーニングができていない
「隠蔽では?」との質問に、林理事長が「隠蔽という言葉をお使いになるのは非常に遺憾」と語気を強めて反論したり、澤田副学長が、ブツ(押収物)、パケ(覚醒剤などを小分けにした袋)など、検察や警察当局が使う専門用語を用いて釈明したり、記者からの追及に居丈高に答える場面が見られた。
これは、記者の向こうに視聴者や読者がいることを忘れた行為で、メディアトレーニングができていない。記者から厳しく追及されたとしても、視聴者や読者の存在に留意して受け答えをすること、そして、話した内容の「どこを切り取られて報道されるか」が世論を左右するため、冷静に対応することが重要である。
日大の記者会見で想起されるのは、2018年5月23日に開かれたアメフト部の悪質タックル事件の会見を受けてのものだ。当時、司会を務めた広報担当の男性が、「もう会見を打ち切ります。これ以上やってもキリがないです」と、強引に記者からの質問を打ち切ったことは、日大の体質を物語るものとして批判を浴びることとなった。
今回の林理事長らの会見は、質問の打ち切りこそなかったものの、部員の申告を受け、警察関係者に相談した件や、7月6日、日大側がアメフト部の寮から錠剤や植物片を見つけ、部員に自首を勧めた件で、会見直後から、警視庁側が確認している事実との食い違いも表面化している。
この先、薬物の入手経路などが判明すれば、事件はさらに広がりを見せるかもしれない。そうすれば、林理事長らは再度、記者会見を開かなければならなくなるだろう。
振り返れば、林理事長は、理事長に就任して間もない2022年7月、芥川賞と直木賞の選考委員を務めた際、窪美澄さんの『夜に星を放つ』を直木賞に選んだ際、「困難なテーマから逃げなかった」と、選考理由を語っている。
今は、日大のトップとして批評される立場にある。今度は、林理事長自身が何事にもひるまず、すべての事実を明らかにし、「理事長は逃げなかった」と評価を高め、日大のイメージ回復につなげることが求められる。
岸田首相の会見、失敗の要因
マイナンバーカードをめぐるトラブルに関する岸田首相の記者会見も、「危機管理広報」としては、お粗末というほかない。
岸田首相は記者会見で、来年秋に健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化させる方針について、「マイナンバーカードと一体化した保険証を持っていない人すべてに資格確認書を発行する」「資格確認書の有効期限は5年を超えない期間とする」などと述べた。
これが、「予定どおり健康保険証を廃止する」、もしくは「皆さんの不安を払拭するため、私の責任で一体化を延期する」という記者会見なら理解できる。
しかし、岸田首相は、国民がもっとも知りたいと思っている「健康保険書を廃止するのか、それとも廃止を延期するのか」については明言しないまま、一体化の予定はそのままに、資格確認証という“オプション”を示した。それも、希望すればマイナンバーの利用登録を解除して、資格確認書を使えるようにするというのだ。
これでは、国民や自治体はさらに困惑する。第一、マイナンバーを推進する意味が薄れ、不安や「もやもや感」が最大5年も続くことになる。
しかも、岸田首相は政府による普及の進め方について、「瑕疵があったとは考えていない」と主張した。政治ジャーナリストの後藤謙次氏はこの会見の印象を、「何が言いたいのか曖昧で、国民の不安を払拭できないまま終わった」と語る。
記者会見は、事態収拾に加え、ピンチをチャンスに変える機会になる。マイナンバーカードに関する会見でいえば、これまでのミスを認め、「一体化における問題点を明らかにして予定通り進める」と述べて頭を下げるか、あるいは「一体化の時期を1年延期する」と発表するか、であれば、岸田政権の誠実さを広く社会に示す好機となったはずだ。
しかし、この日の記者会見は以下の点で「不合格」だったと筆者は見る。
(1)会見の内容が具体的な方針を示せていない
このケースでは、ステークホルダー(利害関係者、この場合は国民や自治体)に十分な説明を行うことが不可欠であるにもかかわらず、ポジションペーパー(問題発生から現在までの経緯、調査で判明した結果、および今後の対応方針を明確にした資料、もしくはそれに代わるもの)すらない。
中身を充実させたいのであれば、8月8日に開いた総点検本部の結果の公表を待ってからでもよかった。
(2)責任者(岸田首相)が前面に出てくるのが遅い
問題が大きくなるまで、所管する河野デジタル相に丸投げしてきた感が強い。デジタル化に邁進する河野デジタル相と岸田首相との間に温度差も感じられ、誰が総責任者なのか、窓口も一本化できていない印象を与え続けた。
今頃になって「私自身先頭に立ってやっていきたい」というのでは、あまりに遅い。
(3)誠実さに欠ける
冒頭、陳謝からスタートしたのは日大と同じだが、「普及の進め方について瑕疵はなかった」と述べた点は反発を招く。瑕疵があったからこそ、別人とのひも付けミスが後を絶たない、とは国民の多くが感じている。
「危機管理広報」5つのポイント
こうして考えれば、メディアを通じ、経緯や対策などを示す場となる記者会見には、冒頭で述べた3つを含め、以下の5つの要素が重要になる。
1 記者会見を開くまでのスピード=追い込まれてからでは遅い
2 情報開示度の高さ=不透明さは「隠蔽」との疑念を生む
3 誠実な態度=記者や「世間」を敵に回さない、「対応は適切だった」とか「瑕疵はなかった」などと開き直らない
4 事実関係の把握と対策の確定=調査を急ぎ事実を詳細に把握したうえで、どうけじめをつけるか対策を(最低でも方向性を)決める
5 自衛に走らない=腹をくくる、当事者意識を持つ
筆者は、日大の林理事長らによる会見、そして、岸田首相のマイナンバーカードに関する会見ともに、上記のいずれもが不十分という共通項があったと感じている。
事件や事故、不祥事やトラブルは、気をつけていても起きてしまうことがある。筆者が身を置くラジオ業界でも、出演者の失言が思わぬ波紋を広げるケースがある。そしてその多くは、生放送であるため事前に避けようがない。
思いがけず問題が生じた場合、事態収拾には「危機管理広報」がいかに大事かを思い起こしてほしい。そして、記者会見や職場内で報告会などを開く際には、本稿で挙げた記者会見を「反面教師」や「他山の石」として対処していただけたらと思う。
●ホワイトハッカー確保へ佐藤氏、「政治主導」で公務員給与の壁を破る 中谷氏 8/14
自民党の佐藤正久参院国対委員長代行(元外務副大臣)と立憲民主党の中谷一馬政調副会長(党デジタル政策PT座長)は13日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」(日曜午前7時30分)に出演し、脅威が増すサイバー攻撃への対処などをめぐり議論した。
ホワイトハッカーなど高度な技術を持つ人材不足が指摘される中、佐藤氏は事務次官級の年収(約2300万円)レベルでは優秀な人材が確保できないとの認識を示し、政治主導で公務員の給与制度の壁を破りたいとの考えを示した。
「AI(人工知能)や量子、サイバーはこれから軍民融合の国家安全保障の中心になる分野だ。給与部分の壁があるから(高度人材を)採用できないというのは本末転倒だ」と強調した。
一方、政府が昨年12月に閣議決定した安保関連三文書で、重大なサイバー攻撃で未然に攻撃者のサーバー等への侵入・無害化を可能とする「能動的サイバー防御」の導入を打ち出したことについて、中谷氏は「攻撃的な視点を持って防衛力を高めていくことは政府全体として考えていく必要が視点としてはある」と述べ、前向きに対応していく考えを示した。
立憲民主党内の今後の議論についても「総論に関してはみな理解すると思う」と述べた。
一方で、サイバー攻撃について防衛省などがなかなか情報を出さないことを指摘。
「憲法でも秘密会は認められている。情報共有してもらえれば、もっと建設的な議論ができる」と話し、政府側の姿勢に苦言を呈した。
サイバーセキュリティに関する情報発信や提供を続ける松原実穂子氏(NTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト)は、サイバー攻撃を受けた名古屋港や米国の石油パイプラインがシステム障害に陥った事例に触れ、「一箇所を狙った金銭目的の犯罪であっても経済や安全保障に十分打撃を与える事例がもうすでに出てきている」と指摘。
「(能動的サイバー防御の導入方針は)そういう事例に対してもちゃんと脅威を認識して、日本政府が民間企業と一丸となって対処するという強い決意を示した戦略だと評価している」と語った。
以下、番組での主なやりとり。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員): 日本企業がサイバー攻撃を受けて、欧米企業のように身代金を実際に払ってしまうケースもあると聞く。
松原実穂子氏(NTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト): アメリカのサイバーセキュリティ企業プルーフポイントによれば、2021年時点でランサムウェア攻撃の被害を受けた日本企業のうち20%が身代金を払ったと言われている。ただし、ここで注意していただきたいのは、アメリカやイギリス、フランス、オーストラリアについても調査したところ、なんと6割から8割の被害組織が身代金を払っている。日本の方がいまのところランサムウェア攻撃の被害も抑えられているし、身代金支払いの率もかなり低く抑えられている。ここは脅しに屈せず、バックアップデータを使うことで業務を復旧させることが一番大事だ。というのも、身代金を払ってしまうと、それは次の攻撃の資金として使われてしまう。
また、実際に身代金を払っても、全部のデータが戻ってくる割合はわずか8%しかない。しかも身代金を払うと、くみしやすい企業だとして8割の企業が再びまた攻撃を受けている。
松山キャスター: なるほど。サイバー攻撃に関する(政府への)報告については、個人情報の漏洩などがあった場合にのみ報告義務があるとされる。
中谷一馬氏(立憲民主党政調副会長・デジタル政策PT座長): EU(欧州連合)はサイバーレジリエンス法というものを整備していて、問題が起きたときに可及的速やかな報告を求めている。そもそも設計段階からセキュリティ部分をしっかりと強化をしなくてはならないことを法律で定めている。違反には罰則も設けられ、ルール整備が進んでいる環境がある。(サイバー被害は)火事と同じようなもの。自分のところだけが燃えるわけではなく、延焼してしまう。脆弱性があって自分のところがダメージを受けると、親会社や子会社、取引先などにも影響を及ぼしてしまう恐れがある。サイバー人材の育成も含めて、日本でも法整備を検討していく必要がある。
松山キャスター: ハッキングを防止するためには、ある程度高い給料で精鋭部隊、人材を確保して対応しなければならない。海外では優秀なホワイトハッカーに1億円以上の報酬を提示する企業もあるという。官僚トップレベルの年収、あるいはそれ以上の報酬が必要という指摘もあるが、実態としてはできていない。
佐藤正久氏(自民党参院国対委員長代行・元外務副大臣): 非常に問題だ。自民党からはもっと高い報酬を提示しないと(人材が)集まらないと言っているが、防衛省ではやはり事務次官が最高年収で、それを超えた形での給与体系は非常に難しいとのことだ。
実際、去年ある防衛産業が初任給2000万円でサイバー人材を集めようとしたが、全然集まらなかったという現実がある。事務次官の給与の壁により、日本の安全保障が担保できないというのは本末転倒だ。この事務次官の給与の壁をぶち破ることを政治主導でやらないと、人事院との調整で防衛省から事務次官の給料を超えたものでお願いしますと言うのは難しい。政治主導だ。これは安全保障の話だ。AI(人工知能)、量子、サイバーはこれから軍民融合の国家安全保障の中枢になる分野だ。その給与部分で壁があるから採用できないというのは本末転倒だ。そういう観点も大事だ。
中谷氏: 先ほど佐藤さんから、アクティブ・サイバー・ディフェンス(能動的サイバー防御)の話があった。攻撃的な視点を持ってディフェンス力を高めていく、防御力を高めていくことは政府全体として考えていく必要が視点としてはあると思っている。そのためには人材が必要だ。サイバー犯罪の国際協力を担当するインターポール(国際刑事警察機構)GlobalComplexforInnovation(IGCI)総局長だった中谷昇氏と人材確保の件で話をしたことがある。3000万円の給料を出しても、1億円もらっている人からすれば給料が下がることになる。下がるのだけど、それでも国防にモチベーションを持ってきてくれる人たちはいるかもしれない。給料が3分の1、あるいは2分の1になったとしてもいるかもしれない。その人たちをどうマネジメントする組織をつくるか。そういうトップガンの人たちが働きやすい環境をどう作り、インフラを含めこの日本のサイバー環境を守っていくか。こっちの方が重要な課題ではないかと思っている。
佐藤氏: 中谷氏にぜひお願いしたいことが二つある。武力攻撃事態法は20年前に(当時の)民主党と一緒に作った。サイバーや宇宙分野がまったく盛り込まれていないため改正しないといけないので協力してほしい。アクティブ・サイバー・ディフェンスは自民、公明が一緒になって閣議決定した。日本維新の会もアクティブ・サイバー・ディフェンスには多分賛成だろう。立憲民主党が賛成してくれたら、議論はかなり加速化されて、この危機的な状況を早く埋められる、手当てをすることができる。ぜひ立憲民主党も前向きに取り組んでほしい。
中谷氏: はい。我が党でも篠原豪議員を中心に安保PTなども含めて議論を進めている。攻撃的な視点を持って防御力を高めていくという総論に関しては皆理解をすると思う。一方で、各論になった時、どのレベルのことまでするのかというのはやはり国会で慎重に議論していかなければならない。浜田防衛相の答弁もそうだが、対応能力が明らかになるから対外的には情報を出せないということが非常に多い。私たちはそもそも内実が分からない。憲法でも秘密会は認められている。そもそも今どういう状況なのかを本質的に私たち野党側にも情報共有していただけることがあれば、もっと建設的な議論ができるのではないか。
松山キャスター: 松原さんに聞く。能動的サイバー防御について日本では法整備が十分進んでいない。これはどれぐらい必要だと考えるか。
松原氏: 今回の防衛三文書に入ったのは非常に良かった。というのも従来の戦略だと、武力攻撃相当ではないサイバー攻撃は想定がされていなかった。例えば、人を殺傷する、あるいは建物などの財産を破壊するなどの武力攻撃相当のサイバー攻撃でないと対応しない。
でも、エネルギー企業が1週間操業を停止してしまう、港湾が2日間余り操業を停止してしまうというように、一箇所を狙った金銭目的の犯罪であっても経済や安全保障に十分打撃を与える事例がもうすでに出てきている。そういった事例に対しちゃんと脅威を認識して日本政府が民間企業と一丸となって対処するという強い決意を示した戦略だと私は評価している。 

 

●「武力行使」を煽る日本政治家は台湾の人々を再び危機に追い込むのか 8/13
日本自民党副総裁の麻生太郎元首相はこのほど、台湾地区を訪問し、台湾に「抑止力が必要で、日米や台湾には戦う覚悟が求められる」と述べ、大陸との戦争準備を煽り、各界から強い批判を浴びた。台湾の島内世論は、麻生氏が過去の日本による台湾植民地支配を謝罪しなかったばかりか、武力発展や戦争準備を促し、台湾の民衆を「火の中に追い込んだ」と批判している。沖縄県の玉城デニー知事は10日、麻生氏の発言は「従来の政府方針に反するという指摘がある。政府は誤った受け取られ方をしないよう、中国側と丁寧な対話を重ねてほしい」と述べた。
今回の麻生氏の台湾訪問は公然と「武力行使」を煽り、日本軍国主義の亡霊にとりつかれた危険な傾向を露呈した。麻生氏の「武力行使論」を聞いて、びくびくしたと語る島内の人々がいるのも無理はない。麻生氏の発言は、台湾が日本に植民地支配された半世紀の痛ましい歴史を思い起こさせるものだ。
日本は台湾の植民地化と中国侵略で重大な犯罪を犯したことから、1972年に発表された「中日共同声明」で、「日本側は過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」、「日本国政府は中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認し」、台湾が中国領土の不可分の一部であるという「中華人民共和国政府の立場を十分に理解し、尊重する」と表明した。
日本の元首相である麻生氏が、日本政府が中国側にした約束を知らないはずはない。だが、麻生氏の動きは流れに逆らうもので、植民者の傲慢な気持ちで台湾の事柄にあれこれ口出しし、一つの中国の原則と中日の四つの政治文書の精神に背く危険な発言をし、中日関係により多くの面倒を引き起こした。その背景には、「植民地コンプレックス」のほかに、現実的な意図もある。
昨年12月、日本は「安保3文書」を採択して米国とのベンチマーキングを積極的に追求し、台湾問題を誇大宣伝することで、防衛費を増やし、武力拡張するための口実を探った。今年7月に発表された新版「防衛白書」は、台湾海峡の緊張をさらに誇張し、防衛力強化について「国民の理解」を求めた。「台湾カード」が、日本の平和憲法からの脱却、軍事大国の夢の復活、日米同盟強化の重要な手段になっていることは容易にわかる。
日本の与党自民党の副総裁である麻生氏の今回の台湾訪問での「パフォーマンス」は間接的に日本政府のある動きを表しており、日本の右翼勢力が歴史を否定し、悔い改めるのを拒否する態度を代表している。だが、彼らは現在の国際情勢とパワーバランスを見落としている。現在は21世紀の第三の十年であり、中国はもう1895年の「馬関条約」(下関条約)に署名した清朝政府ではなく、日本側に台湾問題についてとやかく言う資格は全くない。もし日本の一部政治家の認識が100年以上前のままで、植民者のように中国の内政に手を出したなら、いずれ「火遊びの炎に包まれる」ことになるだろう。中国が国家の完全な統一を実現することは、阻むことのできない歴史的大勢である。
●「失敗」はない。経験と自信がグローバルリーダーをつくる 8/13
日本の企業が世界に出るときに足りないものは何か。そのひとつが“クリエイティビティ”だとしたら、どうしたら乗り越えていけるのか。
未開拓の日本の可能性を世界と繋ぐことをミッションとするKitchen & Companyの中道大輔がナビゲートするPodcast「VISION TO THE FUTURE」とForbes JAPANがコラボレート。国内外で活躍する“視点”のあるゲストとともに、考え、発信していく。
配信は、前回に引き続きOsborn & Mori Partners のPartner & Representative Director Henry Osborn。前編で彼は、日本企業がグローバル化して生き残るには、若い世代に責任を持たせ新しいことに挑戦しやすい企業風土を醸成する必要があると語った。今回のテーマは日本の可能性について。
中道:前回に引き続きOsborn & Mori Partners のPartner で Representative Director のHenry Osbornさんをお招きしています。
前回はいかに日本が変わらなければいけないかについてお話しました。いろいろと課題はありますが、私はまだ日本には可能性があると信じています。経済規模はまだ世界の中でも上位の方ですし、豊かな歴史的背景や文化的背景を持ち、それが教育や人々の考え方、行動様式につながっています。日本の平均的な生活水準は世界でもトップレベルです。
ヘンリー:まったくそのとおりだと思います。日本に来ている外国人旅行者と話をすると、物事は時間どおりに動くし、すべてが清潔で、物価はかなり安くリーズナブルな値段でおいしいものが食べられる。他の国と比べて非常に安全だと言います。
しかし、統計を見ると、2050年までに日本の人口の3分の1が65歳以上になると言われています。また、世界のGDPに占める日本の割合は、20年前は14.5%でしたが、現在は4%で、今後15年以内に3%程度まで下がると予測されています。経済が縮小し人口が減少するなか、日本企業のリーダーや政治家たちが視野を広げ新しい考え方のもとで変革を起こさない限り、切迫した状況に直面することになるでしょう。
先日、岸田首相は「人口減少は危機的状況にある」と言っていました。しかしこれは20年も30年も前から言われ続けてきたことです。結局のところ、日本が世界とともに成長していくためには、日本という国が世界と一体化していく必要があります。そして、そのために何を行い、何を変えていかねばならないのかを問わねばなりません。日本がこのまま孤立し続けるなら、日本を支えるだけの経済力は失われ、社会はうまく機能しなくなるでしょう。
どんな意図で日本から一歩踏み出すのか?
中道:多くの日本人は、日本は素晴らしい場所だと思っています。美しく清潔で安全、おいしいものもたくさんあります。でも日本の人たちは、外国の人たちが日本についてどう考えているのかを知りません。それを知るために、また日本人というものをより理解するためにも、一生に1度か2度は日本の外に出るべきだと思っています。
ヘンリー:日本の文化は独特です。日本ではほとんどの人が同じ社会習慣を持っているので、人々はとても似ています。だからこそ、日本人としてのアイデンティティを明確にするには、日本から一歩踏み出す必要があります。その時に、どんな意図で国外に出るのか、一歩引いて考えてみる必要があります。
最近、学生時代にニューヨークに行ったことのある2人のリーダーと話をする機会がありました。1人は学者で、ニューヨークでは英語で学ばなければいけないので勉強についていくのがとても大変だったそうです。彼は1年間アパートの自室で勉強し、帰国します。その時「ああ、ニューヨークも日本と同じだった」と思ったそうです。その後、彼は日本企業に入社し、グローバルへの興味を失ってしまいました。
もう1人のリーダーはサッカー選手で、大学生くらいの年齢でニューヨークに出て、地元のサッカークラブに入りました。週末には試合に出て、そのあとは仲間と酔っぱらっていました。彼はギターを弾いたので、バンドにも参加しました。バンドの人たちから他のキャンパスでの活動も紹介されました。彼は英語の勉強にあまり時間を割きませんでしたが、現地の友だちがたくさんいたおかげで英語が得意になりました。
それから25年ほどが過ぎ、1人は今グローバルリーダーとして大成功を収めていますが、もうひとりは正直言ってかなり平凡でした。このように結果をわけたのはマインドセットの問題だと思います。
日本の外で素晴らしい経験をして自分を成長させ、その経験によって、地球市民に近づくことができるか。交換留学生制度で留学しても、企業がグローバルな経験をさせるため社員を海外に派遣しても、問題は彼らがそこで何を身につけてくるかということです。英語も現地の言葉も学ばず、ただ日本のコミュニティの中で数年業務に携わるだけでは、何の成長もないまま帰国することになるでしょう。
中道:グローバルの場では、人と一緒に楽しむ能力は本当に重要ですよね。音楽でもスポーツでも何でもいい、共通のものがあれば、そのことについておしゃべりを始めることができますから。
ヘンリー:僕はグローバルな視野を持った日本人のリーダーをどう育成するかという課題に対して、日本のグローバルリーダーたちがどのような共通体験をしているのかを研究するプロジェクトを立ち上げました。
グローバルリーダーたちの共通体験
ヘンリー:実際に成功を収めている25人の日本人のCEOにインタビューし、長い時間をかけて彼らの幼少期の人生経験を掘り下げていくと、25人中20人以上の人がスポーツをやっていました。サッカーで県代表になったり、野球で甲子園に出場したりしていて、彼らはその経験を通して、成功・失敗・チームワーク・自己同一性・他者の同一性・コミュニケーションのとり方・勝ち負けについて学んでいました。
10代でドイツに行った人は、ドイツ語はまったく話せなかったけれど、サッカーで人とつながり、友だちをつくりました。さらに彼はいろいろなことに興味を持ち、その興味がさまざまな経験、人との出会いを導きました。そして現地の人とつながるために英語が必要だと気づくのです。その後、何年もバックパッカーとして旅を続け、今では世界的なブランドのリーダーになりました。つまり経験を積み重ねることがマインドセットへとつながっていくのです。
また、成功したリーダーは共通して幼少期から明確な目標を設定していたことがわかりました。学校一かっこいいギタリストになりたい、市長になりたい、戦闘機のパイロットになりたいといった目標です。目標があれば、たとえ自信がなくても、飛び込んでやってみようとします。失敗しても乗り越えることができます。日本人がグローバルで成功できるかどうかはマインドセットの問題です。
中道:とても興味深い指摘ですね。
ヘンリー:多くの人は、リーダーは生まれつきのものだと思い込んでいます。実際に研究でも、リーダーシップ遺伝子というものが存在することがわかりました。しかし、リーダーシップの遺伝的要素は30%ほどで、残りの70%は経験によるそうです。人生の早い段階で多くの経験を積めば積むほど、その効果は高くなることがわかっています。特にそれが国際色豊かな経験であればあるほど、偉大なグローバルリーダーになる可能性が高まります。つまり大事なのは、世界に関心を持ち、他人を尊重し、傲慢にならず、自分に自信を持つことです。
中道:なるほど。自信のなさは日本人にとって大きな問題かもしれません。日本は自信を持たせるような教育をしていませんから。
ヘンリー:そうですね。日本の教育は間違いを避けようとしますよね。だから英語を話す能力があったとしても、文法的に正しい文章が書けたとしても、誰かが英語で駅までの道を教えてほしいと話しかけたら、ミスを恐れて固まってしまう。
中道:大学時代のイタリア人の友だちは、あまり英語は話せなかったけれど、ナンパする時はイタリア語でとても積極的に自信を持って女の子に話しかけていました。それがイタリア人としての強みなのでしょうね。今回とても興味深かったのは、「経験」と「自信」というキーワードでした。このエピソードが何か行動をするためのヒントになればと思います。
ヘンリー:グローバルマインド以前に、日本で育った若者へ重要なメッセージが一つあります。それは「失敗というものはない」ということです。このマインドセットを持てば、「自分に何ができるか」とポテンシャルを考えることにつながっていきます。 
●麻生氏の台湾訪問、時代錯誤で人心を得ず 8/13
日本の自民党副総裁で元首相の麻生太郎氏がこのほど中国台湾地区を訪問し、蔡英文(さい・えいぶん)、頼清徳(らい・せいとく)らと会い、台湾海峡情勢の緊張を誇張し、対立と対抗をあおり、中国の内政に乱暴に干渉した。北京大学国際関係学院の帰泳濤(き・えいとう)副院長は11日、新華社のインタビューに応じ、訪台を通じて政治的注目を集めようとする麻生氏の試みは、中日関係の安定回復を一定程度妨げる近視眼的な行為との見方を示した。
帰氏は、中国が最近日本への団体旅行を再開したことについて、両国の民間の緊密な関係を反映するものだとした上で、台湾問題での麻生氏の立場は日本国民の大多数を代表するものではなく、大多数の支持を得ることもできないと指摘した。
「台湾問題は一部の日本の政治家だけでなく、米国の政治家、特に国会議員が扇動の材料にしており、麻生氏の訪台も米国の動向に迎合するためである」。帰氏は、麻生氏が日本で自民党副総裁として大きな政治的影響力を持ち、日本の国会における対中強硬派の政治的傾向を代表していると説明。麻生氏の訪台は政治ショーであり、台湾問題を利用して日本の政界に再び中日対立ムードを引き起こそうとする試みとの認識を示した。
清華大学国際関係学部の劉江永(りゅう・こうえい)教授も、麻生氏は頑として訪台して妄言を放ち、台湾は日本や米国と同様のいわゆる「有志国」だと強調し、強い抑止力が必要だと公言して、本性をあらわにしたと指摘。麻生氏の言動は「中日共同声明」や「中日平和友好条約」など中日間の四つの政治文書の精神を踏みにじるものだとし、「中日平和友好条約には、両国間のいかなる紛争も武力による威嚇に訴えずに解決すると明記されている」と述べた。
1972年の中日共同声明には「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」と明記されている。
劉氏は、多くの困難を乗り越えて締結された平和条約を守るため中日両国の人々が団結し、日本の右翼政治家の時代錯誤の行為に断固として反対すべきだと訴えた。
●自民女性局のフランス研修旅行が大炎上 「リーダーの劣化」 8/13
松川るい参院議員ら、自民党の女性局メンバーによるフランス研修旅行が大炎上しています。政治家に限らず、いわゆるエリートと呼ばれる人たちが、自身への批判に対してさらに反感を買うような対応を行い、炎上が止まらなくなるケースが増えています。これはリーダーが国民に対してどう振る舞えば良いのかわからなくなっているという証左であり、深刻な人材劣化の問題があるように思えてなりません。
松川氏らは7月下旬、少子化対策などの実状を学ぶため、フランスに研修旅行に出かけました。その中で松川氏らはエッフェル塔など観光地で写真を撮ったのですが、その写真があまりにも行楽気分丸出しだったことから、国民から大きな批判が巻き起こりました。
それだけならよくある話なのですが、松川氏がその批判に対して取った対応が最悪だったことから、炎上がさらに拡大する事態となっています。
松川氏は一連の批判に対して、「私のSNS投稿のせいで、中身のある真面目な研修なのに誤解を招いてしまっており、申し訳なく思っております」と、国民に対してではなく、同僚の議員や自民党に対して謝罪するような言い方で、まるで誤解した国民の方が悪いと言わんばかりの対応を行いました。
同じく旅行に参加していた今井絵理子議員も「旅費についても党の活動ですから党からの支出と、参加者の相応の自己負担によって賄われています。先のベトナム訪問についていえば税金を原資としたお金は1円も支出していません」など、国民感情を逆なでする発言を行っています。
説明するまでもなく議員歳費はすべて税金であり、政党の収入も多くが政党助成金ですから私たちの税金です。この事実を両議員が知らないわけがありませんから、あえて国民に喧嘩を売っているとしか思えません。
今回の件に限らず、政治家など社会のリーダーが国民からの批判にさらされた際、火に油を注ぐような対応をして、さらに状況が悪化させるケースが後を絶ちません。近年、日本のリーダーの質が低下しているという指摘をよく耳にしますが、今回の松川氏らの対応を見ていると、やはりそうした事態が進展していると思わざるをえない状況といえるでしょう。
今回の研修旅行については、一部報道ではほとんどが観光であり、研修になっていないとの指摘も出ているようですが、多くの国民は研修旅行そのものを全否定してるわけではありません。自身の振る舞いが、他人にどのような印象を与えるのかについて認識が欠如していることを国民は嘆いているのですが、本人たちにはどうもその感覚が理解できないようです。
仕事の一環として旅行に出かけている以上、観光気分丸出しの写真を嬉々としてSNSに載せることが不適切であることは、政治家に限らず社会人として当たり前の常識です。
筆者もサラリーマンをしていた当時、会社の費用で海外出張に行ったことは何度もありましたし、空いた時間に観光したこともあります。しかし、日本にいる関係者に対して、観光地で撮った、楽しげなポーズを決めた写真ばかりを見せびらかせば、どのような反応が返ってくるのかは想像しなくても分かるはずです。仕事で海外に出かけているにもかかわらず、こうした写真をSNSに息を吸うようにアップしてしまう感覚がまず大問題といえます。
写真をアップしたことについては百歩譲って、その写真が批判された時、どう対応するかというのが次の問題です。
一般的な社会常識があれば「自分の行動は少々軽率だった」と考え、即座に「決して遊びに行ったわけではありませんが、この写真は非常識でした。国民の皆様にお詫びを申し上げるとともに、研修の成果は仕事でしっかりとお返ししていく所存です」とコメントを出せば、ここまで炎上することはなかったでしょう。
ところが近年のリーダーたちは、こうした批判を受けると感情のコントロールが効かなくなり、上から目線で猛然と反論し、事態をさらに悪化させてしまいます。おそらく背後には、自分は特別な立場であり、庶民とは違うのだという強い感情があると思われます。
では、かつてのリーダーたちに、そうした感覚はなかったのでしょうか。筆者はそうは思いません。
過去のリーダーにも、庶民とは異なる生活を送っている人はたくさんいましたし、自分を特別だと思っていた人もたくさんいました。今のリーダーとの最大の違いは、一般庶民と自身の違いを理解した上で、批判された時に、どのように国民を説得すればよいのか分かっていたことです。
筆者は、リーダーになる人物は、私たち庶民と同じような質素な生活をしていなければならない、とは思いません。しかし、社会のリーダーとして人の上に立つ以上、国民がどのような状況にあるのか理解し、説得する能力は絶対的に必要なものだと考えます。
近年、増大しているエリートの劣化は、人間性に問題があるのではなく、社会の状況を把握し、国民を説得するというリーダーにとって不可欠な能力が欠如しているという点に尽きると思います。
政治家が選挙で選ばれる以上、能力のある人物を選び出すのは私たち国民の責任ですから、事態を嘆いているだけでは何も改善しません。 リーダーとしてふさわしい能力を持つ人物を選挙を通じて選び出していく努力が必要でしょう。
●国債格下げでも独り勝ちの米国経済、中国の先行きと日本の将来は? 8/13
8月1日、フィッチ・レーティングスが米国債の格付けをAAAからAA+に格下げした。経済の好調を背景に上昇していた米国の株価に、冷や水を浴びせた格好だ。一方で、中国経済はゼロコロナ政策をやめた後も低迷し、デフレ化・日本化が取り沙汰されている。
クレジット市場の専門家で、世界のマネーの動きをウォッチしているみずほ証券の大橋英敏氏に、米国、中国、日本を長期的な視点でどう見るか、話を聞いた。
AAAとAA+の実質的な差はほとんどない
──コロナ禍への対策として大規模な財政拡張を実施した米国。今年5月には債務上限問題への対応を巡って民主党と共和党の対立が先鋭化したこともあり、フィッチが格下げに踏み切り、金利が上昇して(債券価格は下落)、株価が下がりました。金融市場への影響は残るのでしょうか。
大橋英敏氏(以下:大橋):格下げ自体は予想されていました。債務の対GDP(国内総生産)比が上昇したうえに、債務上限問題によって市場の緊張が高まったこともあって、格付け会社がお灸を据えたという側面があります。
2011年にS&Pが格下げしたときには逆に金利が下がって(債券価格は上昇)、株価が下がり、これが数カ月程度続きましたが、結局、大した話ではないということになりました。
今回は、同時期に米国債の発行計画が出てきたこともあって、マスコミ主導で市場心理が動揺した。ただし、ドルは他の通貨に対して上昇しており、ドルへの不安が出ているというわけでもありません。
コロナ対策による財政出動で米国の債務の対GDP比が上昇したことは事実ですが、財政出動の効果もあってGDPも増えており、債務の対GDP比の上昇は鈍化する方向です。
もちろん、コロナ前の水準には戻っていないし、基調として債務比率の上昇が続けば、格付け機関のネガティブな反応は今後も起こりうる。そうした歯止めがない日本などよりはマシだとの評価もある一方で、債務上限の引き上げが続いていることを懸念する見方もあります。
それでも、専門的な話をすれば、AAA格とAA+では信用力評価上はほとんど差がありません。AA+へのワンノッチの引き下げは象徴的な意味しかなく、実際の金融取引には影響がない。それに、大半の人はフィッチよりもムーディーズやS&Pを見ています。
ドルについては基軸通貨であることが大きく、皆、決済上、ドルを持たないわけにはいきません。それでは、なぜ基軸通貨なのかといえば、背景にあるのは国力。国力とは、経済力とか人口が多い、資源が豊富、技術力がある、軍事力がある、金融も強い──といったすべての実力です。
米国は1990年代に製造業で日本に負けた局面もありましたが、政治力を駆使して叩き、その一方で他の産業をおこしてきた。インターネットがそれで、プラットフォーマーが育ってきました。
米国は常に、新しい技術の一角を占めており、例えば、コロナワクチンもすぐに開発できた。こういうものが国力のわかりやすい例です。
中国が人民元による決済をアジア・新興国で広げているという話はありますが、中国自体がさまざまな問題を抱えていることもあり、ドルを脅かすような話ではまったくなく、ドル基軸通貨制は盤石です。ロシアのウクライナ侵攻で、よけいに米国の独り勝ちは強まっています。
「共同富裕」で失われた中国の活力
──中国は1990年代の日本と同様に、米国から貿易・投資規制などで叩かれて包囲網ができつつあります。不動産投資による不良債権を背景に、デフレ化・日本化が見えてきている感じですね。
大橋:まず、なぜ、中国経済が厳しいことになっているかというと、習近平が導入した「共同富裕」という政策により、活力が失われてきているのではないでしょうか。
「再分配」という名目で、アリババやテンセントなどの新興企業を標的にして規制を強化したり、多額の罰金を科したりした。ジャック・マーが事実上の国外逃亡を余儀なくされ、アリババ傘下の金融会社アント・グループのIPO(新規公開)は阻まれ、結果的に時価総額は上がらなくなった。
こうしたことが、活力を奪っているのではないでしょうか。
中国経済がなぜここまで成長したかといえば、ケ小平以降の改革開放政策が大きかったことに加えて、国民が成長に資するだけの平均的能力の高さを持っていることや、かつての日本人以上にグリーディー(貪欲)であったことなども寄与しました。
2000年頃に中国に行って感じたことは、おしゃれをしている人がたくさんいることでした。何を言いたいかというと、皆が格好良く、また美しく振る舞うことがメリットをもたらすと考えているということで、これは資本主義的な社会の特徴です。
かなり田舎のレストランに行っても、皆が金持ちになりたいと話していた。こうした活力は、この国を大化けさせるのではないかと感じました。
しかし、共同富裕はこれとはまったく逆の思想です。
改革開放で活力が爆発した結果、日本の比ではない大きな格差が生じてしまい、社会主義の国なのにおかしいじゃないか、という批判が広がった。この批判は中高年にものすごくウケている。習近平は高齢層からは人気があり、若者には不人気です。
不動産売買の停滞が地方政府に与える影響
──中高年は昔の社会主義時代を懐かしんでいる?
大橋:その通りです。だから、もしかすると日本よりもひどいことになるかもしれません。
今、不動産はかなり危機的な状態になりつつあるとみています。中国語の「鬼城」はいわゆるゴーストタウンですが、山のようにあります。
以前に、そうしたところの誰も住んでいないマンションを4000万円で買い、6000万円で転売するという商売を目の前で見たことがあります。当時は、10%とか8%とか経済成長しているから、そんな取引があった。
でも、こうした取引を正当化してきた高い経済成長という条件が、共同富裕では失われます。3%や2%の低成長に移行したら、このような取引はバブルでしかありません。
中国は不動産の評価を、今までの価格から2割とか3割とか大きく下げなければ、不動産の売買は進みませんが、そうすると金融機関は不良債権の処理を迫られ、金融危機につながる。かつての日本と同じです。
今はそれを避けて価格維持政策をやっているから、誰も不動産を買わない。
中国は固定資産税がなく、不動産を売買することで地方政府に収入が入るという仕組みなので、地方財政も危機に陥りつつあります。国が支援して地方債を発行しているという状況です。
どこかで「含み損」処理に踏み切るのか、やらないままいくのではないでしょうか。
そんな状態なので、コロナ禍から脱したにもかかわらず、消費も落ち込み、若者の失業率は20%を超えています。実態は30%超えていると言われています。
清華大学や北京大学を出ても必ずしも就職先があるわけではないようで、優秀な若者は外国へ出ています。今の中国は「活力が失われた」の一言で表現できます。
米国にいじめられているという話よりも、中国が自分で沈んでいる。経済や金融の専門家は習近平政権のこうした政策を非難しているけれども、中国国民、主に中高年齢層が支持しているのだから変えるのは難しい。
「日本化」を研究してきた中国で「日本化」が始まる皮肉
──いずれは本格的な金融危機になる?
大橋:このままだとそうなると思いますが、日本も不動産融資総量規制(1990年)から金融危機までに8年ほどかかりました。
中国も、2021年の「3レッドライン(三道紅線)」と呼ばれる不動産融資規制から本格的な金融危機になるまでには時間がかかると思います。今年や来年、金融危機等の相場のイベントに発展する可能性は低いのではないでしょうか。
この問題は長期化するため、活力のない低成長・デフレが続くと思います。ただ、ちょっとした金融緩和や財政出動はこの問題の解決策にはなりません。
また、中国は経常黒字が続いてきたにもかかわらず、国内貯蓄が必ずしも潤沢ではないとみられます。これは国際収支上の誤差脱漏とされる資金流出が続いてきたためです。この点は日本とは異なります。
中国は日本と同様にエネルギーを輸入に頼っているので、貿易収支は厳しい。経常収支まで赤字になってくると、外貨調達に頼らざるをえなくなる問題が起こります。実際に、民間企業も国営企業も外貨調達が増えています。
日本の過去を学んで「日本化」を避けると言ってきたにもかかわらず、日本の轍を踏む可能性は高まっている。部分的には日本よりも先に悪いことが進んでしまっている面もあります。
日本は技術力で追いついていけるのか
──最後に、日本はどうなるのでしょう。以前に、EV(電気自動車)で日本が遅れていることを指摘されていました。電機に続き、最後の砦の自動車でも敗北し、技術力で劣る、稼げない国になってしまうのでしょうか。
大橋:そこは懸念点です。中国のBYD(比亜迪)の強さは際立っていて、BEV(バッテリーEV)の世界を席巻するのは目に見えています。ユーザーインターフェースが良く、航続距離もあって、たった数年でテスラも駆逐してしまうような勢いです。
ただし、EVもすべてが決まってしまったわけではありません。
EVにはメリットもデメリットもあります。充電ステーションがどうなるのかという問題もありますし、再生可能由来の電気が不足しているなど、結局は環境にとってプラスなのかマイナスなのかという議論も残っています。
5年や10年で急速なBEV(Battery Electric Vehicle)化を支える再生可能由来の電力供給が十分に確保されるか否かも不明です。
廃車になるときにどのくらい環境を汚すのかという懸念もあり、中古車の価値も安定しません。
でも、EVはユーザーインターフェースが勝負を決める。トヨタもソフトウエアの会社になるといっていますが、世界でソフトウエアに強い会社はたくさんあります。オープンソース化で進化のペースが級数的に加速するなかで、日本の自動車メーカーが本当についていけるのかどうかまだわかりません。
経常収支の構造にリスクは出てきているが……
──日本は政府債務が膨大なので、いずれ経常収支が赤字化して「成熟した債権国」から「債権取り崩し国」になると危ない、ということがずっと言われてきました。
大橋:コロナ後に明らかになったのは、貿易赤字の国になったということであり、その他サービス収支の赤字、いわゆるIT赤字などが目立つようになったということ。日本の経常収支構造にリスクが出てきたことは明らかです。
経常収支の構造から言うと、所得収支がまだ黒字で、外で稼いでくれているのでなんとか保ててしまう。すぐにダメにならないから、危機感が高まらないまま、技術力がどんどん落ちてしまっています。
でも日本でも、大谷翔平や藤井聡太に象徴されるように若い世代は、上の世代がなしえなかったことをしているわけで、50代以上の人間が邪魔をしないように規制緩和して、シードマネーを出していくことが重要です。
岸田政権もそうしたことはわかっているようで、半導体の国産化を目指すRapidus(ラピダス)の設立に動いたり、ベンチャー企業を後押しする政策を打ち出したりしています。
でも、本来なら政治や役所が出張るのではなく、しっかりとした規制緩和とシードマネー供給に徹し、もっと民間に任せるべきだと思います。
シードマネーの候補の一つとされるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)も、サラリーマン体質を脱した「目利き力」を発揮できるのか。旧来の仕組みでベンチャー企業支援をするのではなく、若い力に任せるべきです。
──結局、年寄りが出張って、利権だらけなので、優秀な日本の若者は外へ出てしまう……。
大橋:若者で日本が好きな人はいっぱいいますが、規制や頭の固い上司が邪魔してしまいがちで、日本でできないから出て行ってしまう。ゾンビ企業や事業の淘汰をしないとか、労働基準法に象徴されるように人材の流動化をさせないとか。こうしたことは、明らかにイノベーションを妨げている。
──技術力がどんどん落ちて、円安を材料に観光業で稼ぐ、イタリアやスペインのようになって、遊びに来た外国人に奉仕するというのでは、いかにも寂しいとも感じます。
大橋:イタリアやスペインのようになっても生きてはいけます。一方で、いずれ今の高齢世代がいなくなって、否応なく雇用が流動化する事態になれば、日本も変わってくるんじゃないか、と期待している若者もいます。
●サイバー人材確保「『給与の壁』を政治主導でぶち破れ」 8/13
13日の「日曜報道 THE PRIME」では、「能動的サイバー防御」やサイバー人材の確保などをめぐって与野党の論客が議論した。
「能動的サイバー防御(アクティブサイバーディフェンス)」とは、サイバー空間での安全保障を強化するため攻撃者を監視して先手を打つなどの対抗措置を取ることで、2022年12月に政府が閣議決定した「国家安全保障戦略」などに明記されている。
自民党の佐藤正久元外務副大臣は、「サイバーは、攻撃側が圧倒的に有利だ。守る方は大変だ」とした上で、「日ごろから怪しいと思ったら、そこを見ておく。1回攻撃を受けたら攻撃側を特定し(場合によってはマルウェアを送って)無力化しないと、二の矢、三の矢を防ぐことができない」と指摘した。
そして、能動的サイバー防御の法整備の必要性を強調し、「立憲民主党が賛成したら、議論は加速化される」と述べた。
これに対し、立憲民主党でデジタル政策PT座長を務める中谷一馬衆院議員は、「攻撃的な視点を持って防御力を高めるという総論は、みんな理解すると思う」とする一方、「各論については、国会で慎重に議論しないといけない」と述べた。
その上で、「対応能力がばれるので情報を出せないというのが非常に多い。憲法でも秘密会が認められているので、野党側に本質的な情報を共有してくれれば建設的な議論ができる」と述べた。
一方、ホワイトハッカーをはじめとするサイバー人材の確保について、佐藤氏は、「自民党は高い報酬を提示しないと集まらないと言っているが、事務次官が防衛省で最高年収という状況を超えた給与体系は非常に難しい」とした上で、「『事務次官の給与の壁』で、日本の安全保障が担保できないのは本末転倒だ。政治主導で壁をぶち破らないといけない」と強調した。
また中谷氏は、「給料が2分の1、3分の1になっても、国防にモチベーションを持って来てくれる人はいるかもしれない。そういうトップガンの人が、働きやすい環境をどう作るかが重要な課題だ」と述べた。 

 

●日本政府のセキュリティー問題「技術者ではなく政治家のせい」 8/12
実業家のひろゆき氏が12日にツイッターを更新。日本政府のセキュリティー問題について、見解をつづった。
米紙ワシントン・ポストは7日、中国軍のハッカーが2020年秋に機密情報を扱う日本の防衛省のシステムに、不正にアクセスしていたと報じた。11日放送のABEMA「Abema Prime(アベプラ)」で、ひろゆき氏は「もうちょっと日本人、騒いだ方がいいんじゃないかなって思う」などと意見を述べていた。
この日は同番組での発言についてのネットニュースを引用し、「日本政府のセキュリティがガバガバなのを『日本人は優秀な技術者が居ない』とか言われますが、winnyの金子さんを逮捕したり、検索エンジンを違法にして国内開発を出来なくしたり、エンジニアを使いこなす側のホリエモンを収監したりとか、技術者ではなく政治家のせいですよ」と投稿した。 
●続く政治家の不祥事と岸田氏の不人気:小粒である点は否めない自民党幹部 8/12
ハワイ、マウイ島のラハイナの街が焼け消えてしまいました。原因は少雨高温化と同地の地形的特性で風が山から海に吹き降ろすことで被害が広がったとのことでした。ハワイに限らず今年も世界各地で山火事は発生しており、カナダも400か所ぐらいで燃えています。消火活動が追い付かないし、キリがない状態です。一方、少雨で大バンクーバー地区は第二次取水制限となっていてスプリンクラーなどの使用が禁止されており地面はカラカラ。自然豊かなバンクーバーの環境もこれでは干上がってしまいやしないかと心配です。
原油高が水を差す景気回復
原油の価格が着実に上昇しています。チャート的にはレンジバンドの80jを抜けて現在83jを伺う水準ですので次の節目は90j程度になります。価格上昇はサウジやロシアなどの減産という政治的理由とアメリカの景気が軟着陸できそうだという楽観論が台頭しているためです。その上、アメリカは昨年の原油高の際に備蓄放出を行いましたが、その補充は70jを切った時点としていました。結局、ほとんど補充出来ないまま相場が反転反騰してしまっています。
日本はガソリン補助金が9月末に切れる上、円安が止まらないのでここから価格上昇が更にひどくなりそうです。原油産出国のカナダ、バンクーバーのガソリンがリッター2jなので日本のガソリンが200円を超えても物価水準としては何一つおかしくありません。政府はこのところの支持率低下もあり、補助金延長を打ち出す可能性もありますが、施策としては良くないのでむしろ、日銀に緩和を止めさせ円高誘導した方がよい気がします。さもないと日本の物価高が深刻な影響をもたらします。
アメリカも景気の軟着陸というそんな浮かれ気分には見えません。株式市場の動きが非常に緩慢で腰が引けている動きも続いています。夏休みの閑散期ということもありますが、しっくりきません。航空会社の決算期待が剥離しており、ブランド物の購買力も落ちているというデータもあります。コロナ補助金をいよいよ使い果たす状況にあり、小銭稼ぎのミーム株の派手な動きもほとんどなし。ということは消費力減退を意味しており、本当に軟着陸できるのかという疑問が私の頭からは離れません。
無謀なバイデン氏の大統領継投策。混迷する24年大統領選
24年大統領選に向け、本命はバイデン対トランプの再試合とされますが、個人的には両方とも無理だとみています。トランプ氏についてはジョージア州の不正選挙に絡む4つ目の起訴が秋にもあり、来年の大統領選真っただ中に起訴案件の検察とのバトルが行われるため、世論が大きく揺れる公算があります。一方、ミニ トランプとされたデサンティス候補は過激だけで支持率は着実に下落、回復の見込みがありません。今の状態だと共和党の芽はないように感じます。
ではバイデン氏は大丈夫でしょうか?仮に2期目当選となればその時点で82歳で86歳まで大統領をやることになります。アメリカは本当にそれを望んでいるのでしょうか?それほど適正な候補者が他にいないのでしょうか?バイデン氏は10日のユタ州での政治資金演説で中国批判を繰り返しましたが、その内容が事実とかなり離反している状況だったと報じられています。盛り過ぎたのか数字を忘れたのかわかりません。また数か月前には習近平氏を「独裁者」と称しましたが、自己陶酔なのか言葉の使い方を忘れたのか、客観的にみても危険な状態に見えます。
バイデン氏が大統領になる前、ボケや認知症の心配がありましたが、実際に加齢によるシャープさが欠けてきているとみた方がよいでしょう。特に大統領は実務面において極めて重要な判断が続きます。気力と体力の維持を考えると現在は出馬表明をしていますが、有力候補が出れば降りる気がします。ではいるのか、と言われるとケネディJr氏が取り沙汰されていますが、彼はポピュリズムの塊で共和党に近い考えの部分もあります。民主党がそれで我慢するとも思えず、24年大統領選はこのままでは相当混迷する気がします。
続く政治家の不祥事と岸田氏の不人気
岸田首相の動きが鈍くなってきました。支持率低迷に打ち勝つ意欲が全然見えなくなってきています。その足を引っ張るように自民党を離党した秋本議員が日本風力開発から更に3000万円、合計6000万円をもらっていたことが判明し、社長が贈賄を認める供述をしています。秋本議員がさっさと外務政務官も自民党も辞めた理由は本人が分かっていたからでした。また木原誠二副官房長官もさっぱり公務が出来ず、秋の内閣改造ではすげ替え確定とされます。
政治家の不祥事はいつの時代も多いのですが、第二次安倍政権の初期は閣僚が極めて安定しており長期政権の原動力だったと思います。とすれば現在の閣僚や自民党幹部が小粒である点は否めないでしょう。また岸田氏の手の内が読まれていることも不利です。サラリーマン増税をしないと断言していますが、本心とは思えないのです。マイナカード問題も不人気の河野氏に押し付け、それが逆効果で岸田氏の評価を下げてしまいました。
私は岸田氏は長期政権になると申し上げました。21年10月からですからもうすぐ2年です。2年をどうとるかですが、近年の首相では安倍、小泉両氏以外では96年から2年半やった橋本政権に次ぐ長さなのです。秋の内閣改造を踏まえれば来年春までに首相を交代する気はしないので相当長いと言えます。ただ、このところ海外が日本の政治をスルーしているように見えるのです。外交はしているけれど響かない外交で、海外の首脳もそこは読み取っているでしょう。現状、支持率回復の気配もないけれど何も変わらないのなら近い将来、政権交代が絶対にないとも言い切れない気がします。
●今週の野党 窮地の立民、泉代表が言及した挽回策とは 8/12
選挙戦略や党運営、重要政策を巡る方針と、さまざまな懸案に関する野党幹部らの発言を採録した「今週の野党」をお届けします。
ツイッターやめたら支持率アップ? / 立憲民主党・泉健太代表
立憲民主党の議員全員が(「X」に改称した旧)ツイッターをやめたら、もしかして支持率が上がるんじゃないかという説がある。(6日のインターネット番組、政治家のSNS活用法に関して)
軽々に言う話ではない / 立憲民主党・岡田克也幹事長
まず、外交的に台湾有事にならないようにどうするかが求められる。米国ははっきりと「軍事介入する」とは言っていない。含みを持たせている。それが外交だ。国民の命と暮らしを預かっているのは私たち政治家なので、軽々に言う話ではないと思う。(8日の記者会見、台湾有事を念頭に置いた麻生太郎自民党副総裁の「有志国には戦う覚悟が求められている」との発言を巡り)
省庁間の情報共有ルールを / 立憲民主党・長妻昭政調会長
臨時国会が秋に始まる。必ず大きな焦点の一つになる。私は保険業法に穴があると思うし、いつも言われることだが(消費者庁が)他の省庁と(情報を)共有する法的な枠組みなりルールなりをぜひ提示してほしい。(7日の党会合、ビッグモーターによる自動車保険金の不正請求問題について)
どちらになっても切磋琢磨 / 日本維新の会・藤田文武幹事長
外野からどうこう言うのは大変僭越だ。それぞれキャリアも実力もある2人だから、どちらになっても、友好関係、ライバル関係にある政党として切磋琢磨できるようにしたい。(9日の記者会見、国民民主党代表選に立候補を届け出た玉木雄一郎代表と前原誠司代表代行について)
岸田首相に任命責任 / 国民民主党・玉木雄一郎代表
離党で済む話ではない。外務政務官に任命した岸田文雄首相には任命責任があり、しっかり説明してもらいたい。それができなければ今後の政権運営も厳しくなるし、次期衆院選の戦略や時期にも大きな影響を与えるだろう。(6日に記者団に、自民党を離党した秋本真利衆院議員が日本風力開発側から多額の資金を受領したとされる事件に関して)
専守防衛に反する発言 / 共産党・小池晃書記局長
「戦う覚悟」という発言は極めて挑発的だ。抑止力とは相手に恐怖を与えることであって、軍事対軍事の悪循環を引き起こす。麻生氏の発言は、抑止という考え方の危険性を赤裸々に語っている。そもそも、台湾防衛に防衛力を使うと言ったわけで、専守防衛に明らかに反する発言ではないか。(8日の記者会見、台湾有事を念頭に置いた麻生氏の発言を巡り)
●韓国大統領夫妻も野党代表も狙われる…テロを呼んだ「憎悪」政治 8/12
政治家を狙った脅迫が続いている。
7日未明、「ヤマオカ・ユウアキ」という日本人名のメールがソウル市の公務員らに送られてきた。「9日午後3時34分まで李在明(イ・ジェミョン)共に民主党代表を殺害しなければソウル市所在の図書館に設置した時限爆弾を爆発させる」という内容だった。翌日の8日午後4時46分ごろ通報があり、国会では緊張が高まった。この日、李代表は国会を出る際、国会防護処の警護を受けて退勤した。李代表は9日、「大韓民国が一瞬にして無差別テロ対象国になった」とし「誰もが突然テロにあうのではと心配する状況になった」と懸念を表した。
政治家に対するこうしたテロの脅迫が最近増えている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と金建希(キム・ゴンヒ)夫人に対するテロの脅迫も何度かあった。
昨年8月、40代の男が「無能な尹錫悦、金建希、首を切って斬首」という書き込みをして送検された。また金建希夫人の写真を載せて「いっそのこと自殺しろ。第2の安倍晋三になりたくなければ静かに生きるべきだ。このままではお前も銃弾を浴びることになる」と書いた。
昨年6月にはある青年が金建希夫人のファンコミュニティーに「2022年6月3日6時に尹大統領の自宅にテロをします」と書き込んで警察に捕まった。昨年4月にも40代の男がオンラインコミュニティーに「尹錫悦を殺して第2の4・19を完成させよう」と題した脅迫文を載せ、懲役1年を言い渡された。男は実際に自宅で空き焼酎瓶を使って火炎瓶を作っていた。
こうした脅迫が実際のテロにつながった事例も少なくない。昨年の大統領選の2日前の3月7日、宋永吉(ソン・ヨンギル)元民主党代表はソウル新村(シンチェン)の遊説現場で70代のユーチューバーにハンマーで頭を殴られ、縫合手術を受けた。2006年5月には当時の呉世勲(オ・セフン)ハンナラ党ソウル市長候補の遊説場を支持訪問した朴槿恵(パク・クネ)ハンナラ党代表が50代の男にカッターナイフで顔を切りつけられた。この男は当初、朴槿恵氏ではなく呉世勲候補を狙っていたと警察で供述した。
海外でも過激なテロが続いている。9日(現地時間)には南米エクアドルの大統領選に出馬した野党のフェルナンド・ビジャビセンシオ候補が体育館で選挙遊説を終えて移動する間、銃で撃たれて死亡した。昨年7月には安倍元首相も選挙支援演説中に銃撃された。
専門家らは政治家を対象にしたテロについて「憎悪の政治から始まった」と評価している。徳成女子大のチョ・ジンマン政治外交学科教授は「嫌悪という感情の政治が強まり、日常生活にまで入り込んでいる」とし「まずは政治家が相手を敵と規定してはいけない」と指摘した。チャン・ソンホ元建国大行政大学院長は「政治無用論から生じた憎悪が相手をなくすべきという行動までもたらす様相」と分析した。
警戒心が強まる中、テロと誤認するハプニングもあった。
3月に李在明代表の祖先の墓に誰かが「風水テロ」をしたという疑惑が浮上した。李代表はSNSを通じて「一種の黒呪術で、墓の四方に穴を掘って凶物などを埋める儀式、墓の穴をふさいで子孫や家門が滅びるよう呪うものだ」と明らかにした。しかし「李代表が大統領選挙で落選した後、仁川桂陽(ケヤン)国会議員補欠選挙でも苦戦しているので応援しよう」という知人から連絡を受けたある高齢者が「李代表の祖先の墓地に石を埋めた」と明らかにし、事態はハプニングに終わった。
●永田町に閉塞感、維新だけ元気だが「第2自民党」には期待できず 8/12
内閣支持率低下の原因はマイナンバーのトラブル
岸田内閣の支持率が低迷している。マスコミの世論調査によると、7月の内閣支持率よりも不支持率のほうが各社で高い。支持率・不支持率の順に並べてみよう。NHK(調査期間7月7〜9日)が38.2%・40.6%、共同通信(14〜16日)が34.3%・48.6%、朝日新聞(15〜16日)が37%・50%、読売新聞(21〜23日)が36%・52%、日経新聞(28〜30日)が40%・51%である。
8月になって、4〜7日に行われた時事通信世論調査によると、内閣支持率は26.6(−4.2)%と、3カ月連続で下落した。不支持率は47.4(+8.1)%である。政党支持率は、自民党が21.1%で、内閣支持率との合計は47.7%と50%以下である。これは「青木の法則」では政権崩壊である。まさに赤信号が点っている。
この不人気の最大の理由はマイナンバーカードのトラブルへの対応である。岸田首相は8月4日に記者会見し、健康保険証を廃止してマイナンバーカードに一本化する時期に関して、来年の秋としている廃止時期を延期するかどうかを決めるのは今年の秋以降に先送りするとした。どう対応すべきかについては、与党内でも意見が割れており、判断できない状況になっているのである。
8日には、政府は、マイナンバーの「ひも付け」に関する中間報告を公表したが、健康保険証とのひも付けミスが新たに1069件見つかったという。これまでのミスと合わせて合計8441件である。また、処方された薬など個人情報のひも付けを間違い、他人に閲覧された件が新たに5件見つかり、合計15件である。さらに、共済年金のひも付けミスが118件あった。また、障害者手帳でも2883件のミスが発見されている。
総点検は11月末までに完了すると言うが、中間報告でこの数であるので、どこまでミスが拡大するか不明である。マイナンバーカード登録関連の作業は自治体が行っているが、担当者の業務負担が増え、人為的ミスが起こるのは当然だという声もあがっている。
マイナンバーでトラブルが続出するのは、既存の情報システムとその活用に不備があるからである。住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)にナンバーを照会する際には、氏名、性別、生年月日、住所の4情報で照会することになっているが、たとえば住所を確認しないでも回答が出るようになっている。同姓同名など数多くあり、それがミスを生んだ。地方公共団体情報システム機構(J-LIS)を通じて行うが、システム改修が必要である。
いずれにしても、日本のデジタル化の遅れを如実に示す恥ずかしい例である。海外ではこのようなミスは聞かない。
マイナンバーのトラブルに加えて、8月4日、東京地検が秋本真利外務政務官に対して、収賄容疑で捜査に乗り出したことが報じられた。洋上風力発電事業を巡って、日本風力開発から多額の資金を受領したとされる疑惑である。業者選定基準の見直しについて、国会質問を依頼した見返りだとみられている。秋本議員は、政務官を辞職し、自民党を離党した。今後は検察の捜査を注視するしかないが、この件も岸田政権にとっては大きなマイナスとなっている。
自民党最大派閥の安倍派は、安倍晋三元首相が死去してから1年以上が経つのに、まだ後継会長を選出できていない。幹部の間の権力闘争が原因であるが、この清和会の内紛も自民党に対する支持率を低下させる要因となっている。
岸田首相は、9月中旬に内閣改造を行い、それを契機に支持率の回復を図ろうとしているが、その思惑通りになるかどうかは分からない。
自民党政権を継続させる野党
7月のNHK世論調査で政党支持率を見ると、自民党が34.2%、日本維新の会が5.6%、立憲民主党が5.1%、公明党が3.9%、共産党が2.1%、国民民主党が1.1%、れいわ新選組が0.7%、社民党が0.6%となっているが、無党派は38.7%である。
選挙で無党派層がある方向に大きく動けば、政治の地殻変動が生じようが、今のところ、そのような気配はなく、自公政権は安泰のようである。
そのような中で注目すべきは、日本維新の会が立憲民主党を抜いて、野党第一党になったことである。旧民主党から分立した立憲民主党や国民民主党が民主党という古いイメージを引きずっているのに対して、維新は何か「新しさ」を有権者に印象づけているのかもしれない。
立民、国民、共産に維新が加われば、大きな塊となるが、維新の馬場伸行代表には全くその気がない。
維新は「第2自民党」でいい
7月23日、「ABEMA的ニュースショー」に生出演した馬場は、あるべき政界の構図として「(現在の自民党が)“第1自民党”、(維新が)“第2自民党”でいいんです。第1、第2自民党の改革合戦が政治を良くすることにつながる。立民がいても日本は何も良くならない」と述べ、立民との連携は「未来永劫ない。やるか、やられるかの戦いだ」と明言した。
そして、自民党との違いについては、「自民は現状維持の保守、維新は改革していく保守」と説明した。
また、共産党については、「無くなったらいい政党だ」と酷評した。立民や共産は、これらの発言に猛反発したが、馬場は信念だとして発言を撤回しなかった。
維新と公明党を比べれば、政策的に自民党により近いのは維新のほうである。自民党と公明党の関係にも隙間風が吹き始めており、自民党が連立のパートナーを公明から維新に組み替えるという選択肢も理論的にはありうる。
議席数をみると、衆議院は、自民261議席、立民96議席、維新41議席、公明32議席、国民10議席、共産10議席、参議院は自民118議席、立民40議席、公明27議席、維新21議席、国民13議席、共産11議席となっている。今のところ、自公で過半数を維持しているが、それができなくなった時に、維新も連立に加わる可能性について、馬場は6日のラジオ番組で言及している。しかし、公明に代わって自民の連立相手となるという考えは示していない。
公明に対する維新の配慮も終了?
自公連立が20年以上も続いているのは、小選挙区下での選挙協力である。自民党議員の中には、公明票がなければ当選できない議員が多数いる。連立の見返りとして、自民は公明に大臣ポスト1つを与えれば済む。安上がりである。
最後は自民党に妥協するとして、「踏まれても蹴られてもついていきます下駄の雪」と揶揄されたかつての公明党も、最近は小選挙区での当選者を増やそうと躍起である。
「1票の格差」を是正するために、衆議院の小選挙区の区割りを見直す公選法が昨年末に施行された。25都道府県の140選挙区が対象だが、15都県で選挙区数が変わる。これが「10増10減」と言われるもので、増えるのは1都4県で、東京都5増、神奈川県2増、埼玉、千葉、愛知各県が1増である。逆に減るのは宮城、福島、新潟、滋賀、和歌山、岡山、広島、山口、愛媛、長崎の10県で、それぞれ1減る。そのような状況で、公明党は増えた小選挙区に積極的に候補を擁立する方針を貫きはじめたのである。
また、維新は、これまで公明党に配慮して候補者を立てなかった選挙区でも、次回は候補を擁立する可能性があり、維新と公明の対立が深まりそうである。
2009年の政権交代
私が自民党の閣僚だった2009年夏、総選挙で自民党は民主党に大惨敗を喫し、野に下った。苦い思い出である。
2007年夏の参議院選挙は、年金記録問題で自民党は逆風にさらされて敗北した。その結果、参議院は民主党が多数派という「ねじれ国会」となってしまった。
参議院自民党の政策審議会長だった私は、参議院選挙前に同僚の世耕弘成、茂木敏充、塩崎恭久議員らとチームを組み、年金記録問題解決への処方箋を準備した。安倍首相は、選挙敗北の後、私を厚生労働大臣に任命し、この問題の解決に当たらせた。
しかし、安倍は持病の腹痛が悪化し、首相を辞任する。その後、福田内閣、麻生内閣と続くが、私は厚労大臣の座にとどまり、山積する諸課題の解決に奮闘した。とくにねじれ国会での政治運営は難しく、野党の主張を一部取り入れるなどして、法案を成立に導いたのである。
参議院の支配権を握っていることを強みに、民主党は次の総選挙での政権交代を目指して大攻勢をかけてきた。私たち自民党政権の努力にもかかわらず、政権交代を求める有権者の声は高まっていった。そして、ついに2009年夏の総選挙で、民主党は大勝し、9月17日、麻生内閣は総辞職した。そして、鳩山由紀夫の民主党政権が誕生した。
民主党は、「非自民、非共産」を掲げ、「政権交代」の4文字で選挙を戦った。選挙前から、自民党の惨敗は既定事実となっていたのである。私は、仲間の候補者のために全国を応援行脚したが、どこに行っても敗色濃厚であった。
今の政治状況と異なるのは、野党が民主党という大きな一つの塊となっていたことである。また、「非自民」は当然として、「非共産」を掲げていたことも有権者に大きな安心を与えた。
ところが、今や、野党は小党分立、野党第一党が「第2自民党」を自称する有様である。共産党との連携についても不明である。これでは、政権交代に賭けようという有権者はいないであろう。
民主党政権は、東日本大震災もあって、3年余で政権を失った。その後は、安倍長期政権となり、民主党は分裂し、政権交代など夢想すらできない状態になってしまった。
そのような状況は健全な民主主義の発展のためには好ましくない。野党は、日本の政治を劣化させているという反省の上に、政権交代への具体的な歩みを始めるべきである。
●巨大市場「中国」高まる政治リスク 日中平和友好条約45年、日系企業? 8/12
日中平和友好条約の締結から12日で45年となる。経済的な結び付きが、政治的に不安定な日中関係の土台を支える構図が続いてきたが、近年は変化しつつある。中国企業の成長にともない競争が激化したのに加え、米中対立の長期化によって政治リスクが高まったためだ。ハイリスク・ハイリターンの巨大市場と向き合う日系企業の活路とは―。
4億人が消費、外資引きつけ
上海で7月に開かれた中国最大級のゲームイベント「China Joy」では、ソニーのゲーム機PS5のブースに若者が殺到した。目当ては中国製ゲームソフトの新作発表。李さん(23)は4時間並んで新作を試したが、「中国作品は3D映像で優れているが、臨場感はまだ日本製にかなわない。日本のゲームが世界一だ」と中国に辛口だ。
MUFGバンク(中国)によると、中国事業の直接投資による収益率は2020年以降、小売りや通信など非製造業が製造業を上回る。4億人の中間層を抱える消費市場は多くの外資企業をひきつけ、サイゼリヤやニトリなどの日本ブランドが存在感を放つ。
しかし中国勢の追い上げは激しい。ゲーム分野でも中国勢が台頭し、イベントでのソニーブースの目玉は中国製ソフトだ。李さんも「中国のゲームが日本の水準を上回れば、当然中国のゲームをやる」と話す。
条約締結からの45年間は、中国の改革開放政策と切り離せない。条約は1978年8月に調印され、同年12月の中国共産党の重要会議が改革開放路線への転換を決めた。これを機に製造業を中心に日本からの対中投資が本格化した。中国は外資の投資をテコに、90年代までに「世界の工場」へと成長した。
極端な政策変更、予見難しく
しかし近年、日本の製造業は中国でより厳しい競争に直面している。中国企業が技術力を獲得し、「外資を必要とする分野が狭まった」(北京の経済関係者)ためだ。その象徴が、政府主導で普及が進む電気自動車(EV)。日系の自動車部品メーカー幹部は「出遅れた日系の自動車メーカーはもはやEVで中国企業に追いつけない」と断じる。
人件費高騰も著しいが、従業員の解雇には多額の補償金が必要なため、中国撤退は難しい。打開策は見当たらず、この幹部は「中国にしがみつくしかない」と苦しい状況を語る。
さらに習近平政権は米中対立を見すえて対外強硬姿勢を鮮明にし、政治リスクが経済交流を脅かす。日本人など外国人の拘束や改正反スパイ法の施行などが重なり、在北京のアジア外交筋は「唐突で極端な政策変更は中国市場の予見性を低下させ、投資しにくくしている」と指摘する。
日本優位の分野で高付加価値化を
一方、中国はなおも「もうかる市場」だ。中国事業の収益率は19.4%と、全世界の12.5%より高い。北京の経済関係者は「原材料の調達や制度・インフラ面で中国に匹敵する国はアジアにない」と話す。
環境や医療・介護には日系企業がなおも優位にある。企業の中国進出を支援する愛知県上海事務所の浅井一志所長は、米中対立を念頭に「投資リスクを低減するには、中国企業との協業によって自社製品の高付加価値化や販路開拓を考える必要がある」と話す。

日中平和友好条約 / 1972年の日中共同声明に基づき78年8月12日に北京で締結され、同10月23日に発効した。国連憲章の原則に従って紛争の平和的解決を図ること、覇権を求めないこと、経済・文化・民間交流を発展させることなどを規定した。78年から昨年までに中国の国内総生産(GDP)は330倍に増えた。 
 
 

 

●中日平和友好条約締結45周年記念集会、東京で開催 8/11
中日平和友好条約締結45周年記念集会が10日、東京で開かれた。日本の鳩山由紀夫元首相と中国の呉江浩(ご・こうこう)駐日大使が出席してあいさつしたほか、中国と親交の深い日本の関係者300人余りが参加した。
鳩山氏はあいさつで、日中平和友好条約は今日に至るまで依然として重要な意義を持ち、その有効性はいささかも失われていないとした上で、日本にはいわゆる「台湾有事は日本有事」と騒ぎ立てる政治家もいると指摘し、平和友好条約の重要な理念が日本の一部の人によって徐々に損なわれることへの懸念を示した。鳩山氏は、日中平和友好条約には紛争の解決に武力による威嚇に訴えないことが明記されていると強調し、日本の当局に対し、日中共同声明と日中平和友好条約などの文書の立場に速やかに立ち返るよう求めた。
呉江浩大使はあいさつで、中日平和友好条約は両国間の恒久的な平和友好関係を発展させることを双方共通の義務として法的に定め、内政に対する相互不干渉、全ての紛争の平和的手段による解決、覇権を確立しようとするいかなる国による試みへの反対など、一連の基本原則を規定していると指摘。45年後の今日、日本では一部の人が歴史の教訓を忘れたかのように「中国脅威論」を騒ぎ立て、抑止力強化を公言しているが、これは危険な言論であり、日本がそのような方向に導かれていけば再び誤った歴史の道に踏み込みかねないと述べた。
集会を主催した日本の「村山談話を継承し発展させる会」の藤田高景理事長は、日中平和友好条約締結の目的は友好関係を強化し、両国の発展を促進することにあると指摘。中国は日本の敵ではなく、日本は中国との平和関係を構築するためにあらゆる努力をすべきであり、それはアジア全体の平和と安定、発展のためだけでなく、日本の将来のためでもあると強調した。
集会では、日本の専門家や学者、中国と親交の深い「友好人士」が中日関係や両国間の経済貿易などについて講演し、中日平和友好条約の初心の精神に立脚した両国関係の健全な発展の促進を呼びかけ、強調した。
●張鼓峰事件は対ソ侵略企て 停戦85年で日本を非難 ロシア 8/11
ロシア外務省のザハロワ情報局長は11日、1938年夏に当時の日本軍とソ連軍が、日本のかいらい国家だった満州国(現中国東北部)国境で衝突した「張鼓峰(ハサン湖)事件」(7月29日〜8月11日)について、対ソ侵略を企てる「軍国主義日本」の挑発だったと主張した。
停戦合意から85年を迎え、非難する声明を出した。
事件は、日本が満州国の領域と見なした丘陵(張鼓峰)にソ連軍が入ったことで勃発。双方にそれぞれ数百人の戦死者を出したとされる。
プーチン政権は、第2次大戦時のナチス・ドイツと日本を同列に扱い、ソ連は張鼓峰事件や39年の満蒙国境紛争「ノモンハン事件」で日本の侵略を受けたという歴史観を展開。45年8月のソ連の対日参戦とその後の北方領土支配の正当化を試みている。
ザハロワ氏は声明で、日本の政治家に対し、北方領土占領を含む「第2次大戦の結果」を認めるとともに、今月15日の終戦記念日や前後に「軍国主義の象徴である靖国神社」を参拝しないよう注文を付けた。 
●洋上風力発電疑惑と利権構造 「再エネ賦課金」ばらまきで事業者に動機 8/11
日本風力開発が、秋本真利衆院議員(自民党を離党)に資金提供をした疑いがあるとして、東京地検特捜部が強制捜査を行った。
まず再生エネルギーを取り巻く制度を説明しておこう。再エネのコストは高いので、導入のために固定価格買い取り制度がある。
2011年8月に成立した「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」に基づき再エネで発電した電気を、電力会社は定められた料金で、定められた期間買い取ることになっている。
電力会社が電気を買い取る際に発生する費用を、電気を使う国民が出し合うとして「再エネ賦課金」がある。
具体的に、23年度をみると、電気事業者の再エネ買い取り費用総額は4・7兆円、これから電気事業者が再エネ電力を買い取る際に電力調達を免れる費用3・6兆円を差し引いた1・1兆円が再エネ賦課金として電力料金に上乗せされ、国民が負担している。
この再エネ賦課金が、再エネ利権の根源になりうる。ただし、筆者のような個人も、自宅の屋上に太陽光パネルを設置し売電しているので、再エネ賦課金の一部の恩恵があるが、政治家や官僚が介在しているわけでなく、利権構造はない。
大きな再エネ発電施設を持つ事業者なら買い取り価格が多額になり、おおむね利益相当分は再エネ賦課金になるので、自社を有利に取り計らってもらうために政治家や官僚に利益供与するインセンティブが働くだろう。
つまり、再エネ賦課金がどのような再エネ業者にばらまかれるかが、いわゆる利権構造のキモだ。
再エネ賦課金は12年度からスタートしたので、新しい分野だ。そのため、再エネ賦課金の奪い合いでいろいろな業者がでてきており、利権も発生しやすかった。
ここで問題となるのは、職務権限だ。国会議員ではなく、業者に便宜を図る許認可権限のある行政府職員であれば、古典的な贈収賄になる。しかし、国会議員は本会議や委員会で質問するだけでは許認可権限はない。
もっとも、特定の業界・業者の資金提供を受け、その意向を受けて質問して受託収賄罪に問われた例はある。1985年の撚糸工連事件での民社党(当時)の横手文雄衆院議員、88年のリクルート事件での公明党の池田克也衆院議員で、ともに有罪が確定している。
秋本議員の場合、資金提供は再エネ業者社長との共同事業という名目であるが、国会質問により結果として便宜を図ったかどうか、資金の賄賂性が今後問われることになるだろう。
再エネ賦課金に関わる利権と考えれば、発電方式は洋上風力に限らず、太陽光など他の再エネにも波及しうる。
秋本議員と似たような政治活動をしていた国会議員は少なくないので、今後、捜査の対象となるのは秋本議員にとどまらないかもしれない。 

 

●国家存亡の危機。優秀な若者の「官僚離れ」で立ち行かなくなる亡国ニッポン 8/10
国家公務員を希望する“若者”は増えるのでしょうか。
人事院は7日、国家公務員の今年度の給与について、大卒・高卒の初任給をいずれも1万円以上引き上げるとともに、月給とボーナスも引き上げ、さらには「週休3日」の働き方を可能にするよう内閣と国会に勧告しました。
上級国民という言葉が社会を闊歩する中、国家公務員の処遇改善には批判的な意見も少なくありません。一方で、不夜城と揶揄されるほど霞ヶ関の働き方は異常です。
「仕事だけが人生じゃない」という価値観を、ごくごく当たり前に共有する若い世代にとって、低賃金、長時間労働のブラックな職場は敬遠されるのは自然なこと。今回の処遇是正が、学生、正確には東大生のキャリア官僚離れにどれほど効果があるのか定かではありませんが、時代の流れの一貫としての「処遇改善」としては大賛成です。
しかし、本気でキャリア官僚になりたい!という学生を増やしたければ、政治家との関係性の見直しが必要不可欠です。
「誰のために働いているのかわからなくなる。上司のためなのか、議員のためなのか?」
「政治家の理不尽な要求に応えるために、官僚の道を選んだわけじゃない」
「議員のために働いて、それが国のためになればそれでもいい。しかし、今の腐敗しきった政治家たちを見るにつけ、もはや官僚でいる意味はないと悟った」
…私はこれまでこういった“声”を聞いてきました。
学生の時には「官僚になって日本を変えたい」と夢を語り、意気込んでいた彼ら、彼女らが、政治家との関係に嫌気がさし、やめてしまうのです。官僚への切符を手に入れたときに抱いていた崇高な気持ちが、日々の業務によって心身が蝕まれていく…それが官僚離れの真の問題ではないでしょうか。
戦前の日本は公務員が多く、官僚の政治的権力も強い「官僚天国」でした。その結果、他国より無駄が多く財政赤字が深刻化し、日本は行政改革をいち早く進めることになった。つまり、通常、経済成長に伴い公務員は増えるものですが、日本は公務員を増やさないことでコストを抑え込み、その結果、公務員が少ない国になりました。
橋本龍太郎内閣が進めた「票」に繋がる官僚のスリム化
30年近く前のことなので、忘れてしまった人も多いかもしれませんが、1996年の最大の政治課題は「行財政の構造改革」でした。
当時、橋本龍太郎内閣は消費税増税も含めた包括的なプラン作りに取りかかり「行政改革・財政改革・社会保障改革・金融システム改革・経済構造改革・教育改革」という6大改革の方針を発表し、中央官庁のスリム化を進めました。
この官僚のスリム化は、まさに“票”につながる政策。キャリア官僚のさまざまな問題が露呈し、毎日のようにテレビでは官僚バッシングが行われました。政治主導という言葉は…結構魅力的だったんですよ。
本来であれば、国の人口構成が急速に変わり、公務員が必要なのに、人手不足問題は完全にスルー。待遇面ばかりがクローズアップされ、数少ない公務員を余計に追いつめたことになってしまったのです。
経済協力開発機構(OECD)の“Goverment at a Glance 2017”のデータを使って大阪大学の北村亘教授らが調べたところ、日本の公務員の1人当たりの仕事量は他の先進民主主義国に比べて圧倒的に多く(政府全体の歳出を公務員数で割った数で比較)、中央政府の人件費が中央政府全体の支出に占める割合も低いことがわかっています。
そして、人手不足を補うために非正規雇用を増やすことで対応し続けている。政治家との関係性を見直すことなく、ただただ非正規を増やしているのです。
国家公務員は、正規職員26.5万人余に対して非常勤職員は7.8万人余(2017年)。非正規率は22.7%で、省庁別に見ると厚生労働省が圧倒的に多くて3.4万人、52.6%と半数以上が非正規公務員です。
繰り返しますが、今回の国家公務員の処遇改善には大賛成です。しかし、政治家との関係、非常勤職員問題など、問題は山積しています。このままで本当にいいのか、ニッポン?!
●内閣支持率26.6%、過去最低水準 時事世論調査 8/10
時事通信が4〜7日に実施した8月の世論調査によると、岸田内閣の支持率は前月比4.2ポイント減の26.6%だった。3カ月連続の下落で、5カ月ぶりに政権維持の「危険水域」とされる2割台に転落。岸田内閣で最低だった今年1月(26.5%)に匹敵する数字となった。
不支持率は同8.1ポイント増の47.4%で、政権発足以来最高を記録した。マイナンバーカードを巡り、個人情報のひも付け誤りや個人情報漏えいなどのトラブルが相次いでいることなどが影響したとみられる。
マイナカードのトラブル対応で「岸田文雄首相が指導力を発揮していると思うか」と尋ねたところ、「発揮していない」が69.0%に上り、「発揮している」の8.3%を大きく上回った。「どちらとも言えない・分からない」は22.7%。
河野太郎デジタル相の対応に関しては「評価しない」が52.5%に達し、「評価する」は18.2%。「どちらとも言えない・分からない」は29.3%だった。
内閣を支持する理由(複数回答)は、「他に適当な人がいない」が13.1%で最多。「首相を信頼する」5.1%、「首相の属する党を支持している」4.6%と続いた。支持しない理由(同)は、「期待が持てない」(28.8%)、「政策がだめ」(21.4%)、「首相を信頼できない」(17.2%)の順に多かった。
政党支持率は自民党が21.1%(前月比2.5ポイント減)。岸田内閣の発足以降、最低だった。次いで日本維新の会4.2%(同1.0ポイント減)、公明党4.1%(同0.5ポイント増)、立憲民主党3.3%(同0.1ポイント増)の順。以下、共産党1.3%、国民民主党1.2%、れいわ新選組1.1%、参政党0.7%、社民党0.6%と続いた。政治家女子48党はゼロだった。
調査は全国18歳以上の2000人を対象に個別面接方式で実施。有効回収率は60.3%。
●麻生氏「戦う覚悟」を中国外務省が非難 「台湾の人々を奈落の底に...」 8/10
自民党の麻生太郎副総裁が2023年8月8日に台湾・台北市内で行った講演で、いわゆる「台湾有事」を念頭に「戦う覚悟」に言及したことについて、中国外務省は8月9日付で麻生氏を非難する報道官談話を出した。
談話では、台湾は中国の一部だという従来の立場を踏まえて、麻生氏の発言を「外部からの干渉」だと非難。清が台湾を日本に割譲することを決めた下関条約まで持ち出して、今の中国は清とは違うと主張。その上で「なぜこの日本の政治家は、台湾についてこのような不当な発言をできる立場や自信があると思っているのだろうか」と罵倒した。
「一帯一路の原則と日中間の4つの政治文書の精神に著しく違反」主張
麻生氏は講演の中で、台湾有事について
「今ほど日本、台湾、アメリカをはじめとした有志の国々に非常に強い抑止力というものを機能させる覚悟が求められている、こんな時代はないのではないか。戦う覚悟だ」などと発言。この後、蔡英文総統と会談した。
中国外務省の談話では、一連の行動を「一帯一路の原則と日中間の(1972年の日中共同声明や78年の日中平和友好条約など)4つの政治文書の精神に著しく違反」していると批判。台湾問題は中国の内政問題だとする従来の主張を繰り返した上で、日本は台湾を統治している間「台湾の人々の抵抗を残虐に弾圧し、非道な犯罪を犯した」と主張した。これを受ける形で「中国に対して犯した歴史的犯罪の責任を負う国として、日本はより一層、歴史から教訓を得て、慎重に行動する必要がある」とした。
「台湾海峡が混乱しないことを恐れているかのようなポーズをとり...」
こういった主張に反する行動を取っているのが麻生氏らだというのが中国の立場で、次のように改めて非難した。
「台湾に渡航した日本の政治家たちは、常に戦争の話をし、台湾海峡が混乱しないことを恐れているかのようなポーズをとり、台湾の人々を奈落の底に突き落とそうとしている。現在の中国は、1895年に清国が下関条約に調印したときのような国ではない。なぜこの日本の政治家は、台湾についてこのような不当な発言をできる立場や自信があると思っているのだろうか」
下関条約は日清戦争の講和条約。清国が朝鮮の独立を確認し、遼東半島・台湾・澎湖列島を日本に割譲、日本に2億テールを賠償することなどが骨子だ。 
●麻生氏の台湾での発言に厳正申し入れ 中国外交部 8/10
中国外交部の報道官は9日、日本の麻生太郎元首相が台湾を訪問し、妄言を吐いたことについて記者の質問に答えた。
記者:報道によると、日本の自民党副総裁で元首相の麻生太郎氏がこのほど台湾を訪問し、蔡英文(さい・えいぶん)、頼清徳(らい・せいとく)らと会った。現地で行った講演では、台湾海峡と地域で戦争は起きてはならないとし、強い抑止力を機能させる覚悟と戦う覚悟が必要だと主張した。中国はこれにどうコメントするか。
報道官:日本の一部の政治家は中国の断固たる反対を顧みず、中国台湾地区をかたくなに訪問して勝手な議論をした。台湾海峡情勢の緊張を誇張し、対立と対抗をあおり、中国の内政に乱暴に干渉した。この行いは「一つの中国」原則と中日間の四つの政治文書の精神に重大に違反し、国際関係の基本準則を甚だしく踏みにじるものである。中国は既に日本に厳正な申し入れを行い、強烈に非難した。
台湾は中国領土の不可分の一部である。台湾問題は純粋に中国の内政に属し、外部の勢力の干渉は許されない。日本はかつて、台湾で半世紀にわたる植民統治を行い、台湾人民の抵抗を残酷に鎮圧し、書き尽くすことのできない罪を犯した。中国に対して重大な罪科を負っており、一番にしなければならないのは我が身を顧みて反省することであり、言行を慎むことである。日本の政治家が台湾で口を開けば戦争に言及し、台湾海峡の平穏を恐れる姿勢を示すのは、台湾の民衆を奈落の底に突き落とそうと考えているからである。中国は1895年に馬関条約(下関条約)を締結した清国政府とはすでに異なる。日本の一部の政治家のどこに台湾問題であれこれ言う資格と余裕があるのか。
祖国の完全統一実現は中華の子女全体の共通の願いであり、妨げることのできない歴史の大勢であることを強調しておく。いかなる者であれ、国家主権と領土保全を守る中国人民の強固な決意とゆるぎない意志、強大な能力を過小評価してはならない。われわれは日本に対し、侵略の歴史を深く反省し、「一つの中国」原則と台湾問題におけるこれまでの約束を厳守し、いかなる形であれ中国の内政に干渉せず、いかなる形であれ「台湾独立」分裂勢力を後押ししないよう厳粛に促す。われわれは台湾当局に対しても、「台湾独立」は完全な袋小路で、日本にへつらい、台湾を売り渡すことは台湾の民衆に災いをもたらすだけであり、外部勢力と結託して独立を図るいかなる挑発的行為も失敗する定めにあると警告する。
●中国と分断を図るのではなく「関与」こそ必要だ 8/10
──台湾有事が叫ばれています。
台湾有事への懸念は、別に今に始まったわけではない。1970年代、米国は中国と国交を正常化する一方で台湾関係法を成立させた。台湾の防衛に関与するとしつつ、いざというときには「とるべき適切な行動決定」をすると、あいまいな表現にした。中国には軍事行動を起こさぬよう、そして台湾には独立を言わぬよう、双方にメッセージを送った格好だ。
この状態は当時から変わっていないのに、なぜ今台湾有事か。ウクライナ戦争が始まって以降、東アジアでも同じことが起こるかもしれないと親台、右派政治家を中心に問題提起するようになった。
だが台湾の世論調査を見ると「独立」を求める人は少なく、大半は「現状維持」を望んでいる。台湾が独立に向けて舵を切ることがなければ、中国が直ちに軍事侵攻することにはならないだろう。
──中国の国力はピークを迎えて下降を始めており、今のうちに台湾を併呑しなければ永遠にその機会を失うという「ピーク・チャイナ論」を挙げる人もいます。
中国の経済成長率目標は5%台に落ちた。若年層の失業率は20%超。中国共産党が政権を維持するには経済成長の維持が不可欠であり、中国のファーストプライオリティーは経済だ。米国の軍事介入を招くかもしれない台湾侵攻を行い経済展望を大きく傷つけることは、当面は躊躇せざるをえない。他方、中国は2049年の中華人民共和国100周年までに台湾統一に向けさまざまな手は打つだろう。
──米中対立の中で日本はどんな外交安全保障戦略が取れますか。
米国がいつも正しいというわけではない。00年以降の戦争は正しかったとはいえまい。米国の覇権争いの片棒を担ごうと追随するだけでは、日本の針路を誤らせる。
米中関係は対立だけではない。4つの側面があることを見失ってはならない。1軍事的対立、2政治的競争、3経済的依存、4協力だ。2について米国は「民主主義 対専制主義」を掲げるが、この二項対立に賛同する国は少ない。3については22年、米中貿易額が過去最高を更新した。
この7月、気候変動問題担当のケリー米大統領特使が訪中した。気候変動問題で両国は協力を模索している。これが4に当たる。
では、日本は中国とどういう関係性を築けるのか。1つには台湾侵攻に踏み切れば失うものが大きいと唱え続けること。そのうえで、台湾問題のソフトランディングが可能な国際秩序作りに汗をかくべきだ。環太平洋経済連携協定(TPP)に中国を加盟させるのも手だ。分断を図るのではなく、エンゲージメント(関与)こそ大切だ。
●マイナ保険証のIT現場は「死の行進」…日本が「デジタル敗戦」を繰り返す原因 8/10
なぜこんなにも日本はダメなのか
マイナンバーカードをめぐってトラブルが続出している。国民の不安や反発を増幅しているのは、現在の健康保険証を来年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に移行すると政府が言い続けていることだ。
岸田文雄首相は8月4日に記者会見し、「マイナ保険証の不安を払拭する。デジタル敗戦を二度と繰り返してはならない」と強調したが、なぜ日本はこんなにデジタル化に弱いのか。根本から考えることも必要だ。
今年春以降、マイナンバーカードに関わるトラブルが次々と明るみにでた。
「コンビニで他人の住民票が発行された」「マイナンバーカードと一体化された健康保険証に、他人の情報が登録されていた」「マイナンバーカード取得者向けサイト『マイナポータル』で他人の年金記録を閲覧できた」「公金受け取り口座に別人が登録された」など。
いずれも政府が「マイナンバーカードを使えばこんなに便利になる」と、大々的にアピールしてきた分野だけに、衝撃は大きい。
政府が急ごうとするほど国民は不安になる
マイナンバー制度が2015年に導入された当時は、「マイナンバーは個人情報であり、絶対に他人に知られてはいけない」などと言われ、保管用金庫の売れ行きが伸びるといった騒ぎもあった。なのに、他人の目に情報をさらすようなことが続出しているとは。なんともショッキングだ。
コンビニでの誤発行は、富士通の子会社が開発したシステムに問題があった。健康保険証は、健康保険組合などがマイナンバーを紐づける際に入力ミスをしたことが原因だった。公金受け取り口座の誤登録は、自治体の支援窓口での操作ミスによって引き起こされた。
政府は、こうしたトラブルは、マイナンバー制度の根幹にかかわるものではないと考えている。6月末に「マイナンバー情報総点検本部」を設置し、「マイナポータル」で閲覧できる年金や税など29項目の情報の点検・修正、情報漏洩の有無の調査などを秋までに行うと決めた。
点検本部発足時には、中間報告を8月末にまとめると発表したが、岸田首相の指示で8月8日の公表に前倒しした。
前倒しは、普通ならやる気を示すと受け止められるが、今回は、逆に人々の不安をかきたてた面がある。急がせることによって、新たなミスやトラブルを誘発したり、何か本質的な問題を見過ごしたりしないかという心配があるからだ。
現場では「デスマーチ」が起きている
点検・修正作業を担うのは、地方自治体や関係機関の人々で、ひとつひとつ確認し、結びつけていく。全国知事会が7月、「業務を担う地方自治体の負担を鑑み、現場の声を丁寧に聞きながら、点検を進めていただきたい」という要望書を松本剛明総務相に提出するなど、現場が疲弊している様子がうかがわれる。
点検・修正に関する政府の進め方には、コンピューターのソフト開発などでよく言われる「デスマーチ(死の行進)」になりつつあるのではないかという不安も感じさせる。
「デスマーチ」とは、1990年代以降、コンピューターのソフト開発の関連でよく使われるようになった。上に立つ人が甘い見通しやメンツにこだわり、不可能と思われる締め切りに向けて、十分なマネジメントやリソース配分をしないまま、現場に負担を押し付けて、乗り切ろうとすることを指す。プロジェクトが失敗したり、現場が疲弊しきってしまったりする恐れがある。今回の騒ぎを見ていると、そうならないか心配になる。
新型コロナであぶり出された日本のデジタル化の遅れのひとつとして、接触確認アプリ「COCOA」の問題がある。2020年に政府が導入したが、接触したことが通知されないなどの不具合が多発したため、目指したほど利用が広がらず、昨年11月に機能を停止した。
「日本を最先端国家に」20年たっても…
今年2月に政府がまとめたCOCOAに関する統括報告書は、「導入を急ぐあまり、開発・保守運用などの体制整備が十分になされなかった」ことなどを問題点として指摘した。マイナンバーカードをめぐって起きていることと重なる面がある。
ここに、日本のデジタル化がうまく進まない原因が凝縮されていると思う。
日本政府がデジタル化に力を注ぐと表明したのは、2000年の森喜朗首相(当時)の時だ。
国会の所信表明演説で、「5年後には、わが国を世界の情報通信の最先端国家にする」と打ち出した。
当時、日本のインターネット普及率は2割強と低く、通常の電話回線を使ってネットに接続する方式が大半を占めていた。超高速通信ネットワークの必要性などが指摘され、電子商取引や電子政府を推進することなどが目標に掲げられた。
ただ、世界最先端の情報通信国家とはどういうものかについて、政府内でも専門家の間でも共通認識はなかった。その意味では青写真が明確にされないまま、動き出した。
その後、超高速通信ネットワークの整備や電子商取引は広がったものの、電子政府に関しては曖昧な状況が続き、進まずにいた。
新型コロナウイルスの定額給付金のオンライン申請をめぐって、日本のデジタル化の遅れが指摘された際に、「そういえば、世界最先端のIT大国を目指すという話があったよね。あれどうなったんだっけ」と話題になるまでは、忘れられていた。
デジタル敗戦する4つの根本原因
今回のマイナンバーカードのトラブルを含めて、日本のデジタル化への動きには、共通する構図がある。
1.まず政治家や官僚などが、海外動向を見て「日本も負けてはならじ」と走り出す。
2.しかし、政治家も官僚も十分な知識がないため、的確に注文をつけたり、指導力を発揮したりすることができない。
3.司令塔が不在のまま、自治体やメーカー任せになる。各省庁もばらばらに進めるので、官庁ごとのシステムが温存される。長年続く省庁間の縦割りの壁が、デジタルでも続く。
4.政治家などが思いつきで注文をつけ、開発などの現場をいっそう混乱させる。
こうして時間が過ぎる間に、デジタル化が遅れていく。
使い手への配慮不足もある。
多くの人々が使うということは、どんな使われ方をされるかわからないということだ。そのために製造業やIT業界では、「fool proof(フール・プルーフ)」が重視される。間違った使い方ができないように設計することで、日本では、「ポカよけ」とか「バカよけ」と言われたりする。
例えば、今回、自治体の支援窓口の端末を使って口座登録をした時に、ログアウトを忘れた人のマイナンバーに、次に使った人の口座が登録されてしまうトラブルが続出した。ログアウトしないと警報が鳴るなどの仕組みを設けていれば、防げたと思われる。他にもミスを誘発するものはないか、使い手側の視点で点検する必要がある。
エンジニアを下請けのように見なしてきた
省庁縦割りの弊害も強く残る。
日本の公的制度は、いろいろな官庁が担当している。システムもそれぞれの官庁にとって使い勝手が良いようになっている。
その問題を根本から解決することなく、いろいろな制度を紐づけようとしたことから問題が深刻化したとみられる。
例えば、マイナンバーやマイナンバーカードには、氏名の読み方・フリガナが登録されていない。戸籍に記載されていないためだ。これが間違いを誘発する土壌となった。法改正により来年から戸籍に読み方も記載されるが、旧字や異体字、住所表記などの課題は残る。
8日の中間報告では、政府が統一的なマニュアルを策定しないまま、現場に対応を丸投げしたため、紐づけ機関によって手続きがバラバラだったという実態も判明した。
ルールの作成や、入力したデータの見直し・点検作業に十分な時間をかけることも欠かせない。こうした問題の背景には、長年にわたって日本の組織では、コンピューターのシステムエンジニアなどを、下請けのように見なしてきた影響もあるだろう。組織の上層部の「自分はコンピューターのことはよくわからないが、エンジニアが意をくんで、ふさわしいものを作るだろう」という発想だ。「ど根性でやればできるはず」という考えも生み出した。
オムレツを出せば「目玉焼き」を指示される状況
あるベテランのシステムエンジニアが以前、こう表現したことがある。
「上層部の人が注文の時に『卵料理』としか言わないので、オムレツを出すと『食べたいのは目玉焼きだ』とシステム担当者に文句を言う。そんなことが頻繁に起きている。コンピューターは人間のように忖度(そんたく)しない。上に立つ人は、何をどうしたいかを明確に伝えないと、われわれも最適のシステムを作ることができない」
使い手にとってわかりやすいものにする努力も、もっと必要だろう。マイナンバーカードには役所用語がふんだんに使われている上、混乱を誘う要素が目につく。
例えば、「署名用電子証明書」「利用者証明用電子証明書」「住民基本台帳用」「券面事項入力補助用」の4つのパスワードを設定しないといけないが、いかにもとっつきにくい。
有効期限も2つある。カードに記録されている電子証明書の有効期限は、発行日から5回目の誕生日まで。カード自体の有効期限は発行日から10回目の誕生日まで。1枚のカードでありながら、別々の有効期限が設定されていることが混乱を誘う。
本当に使い手のことを考えているのか
取得時に未成年だった場合は、カードの有効期限は5回目の誕生日までとなっていることや、引っ越しで住所が変わった場合などには、期限内にマイナンバーカードの変更手続きもしないと失効してしまうなどの条件がある。ネットには、そうした「落とし穴」に落ちた人の体験談が寄せられているが、気づかなければ慌てることになる。
セキュリティーを高めるために設けられた仕組みだというが、使い手側の視点で見直し、よりわかりやすく、使いやすいものにする努力や説明を重ねることが必要だろう。
先に述べたCOCOAも、接触通知を受けた場合の対応は本人任せで、どう活用すべきかの位置づけが曖昧だったことが混乱を招いた。
使い手あってこそのマイナンバーカード。デジタル敗戦国から脱出するためには、その精神が問われているのだと思う。
●日本への団体旅行 10日から解禁 中国政府が伝達 8/10
中国政府が、日本への団体旅行を10日から解禁すると日本政府に文書で伝達したことがわかった。
中国政府は、2023年に入って中国人の海外への団体旅行を段階的に解禁し、およそ60カ国が対象となっているが、日本への団体旅行は禁止されたまま。
複数の政府関係者によると、東京の中国大使館が日本の外務省に対して、文書で“10日から日本への団体旅行を解禁する”と伝達したという。
中国はこれまで個人の海外旅行は認めており、6月には、中国から20万人余りが来日したとみられる。
中国からの団体旅行客が、実際にいつから来日するかはまだわからないが、今後、新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだ訪日旅行需要の回復につながる可能性がある。  

 

●松本総務相 マイナ総点検で自治体支援を指示「国民の信頼回復できるよう」 8/9
マイナンバーカードをめぐる総点検について、松本総務大臣は、自治体の作業をサポートするよう幹部に指示した。
8月8日の中間報告発表を受けて関係幹部を集めた会合で、松本総務相は「個別の機関の事情に配慮しながら、原則として11月末までに個別データの点検を実施する」との方針を改めて確認した。
また、「自治体において円滑に作業が実施できるよう、必要な助言を行うようお願いしたい」と述べ、総点検を進める上での自治体の課題を丁寧に把握する一方、「進捗管理のための体制整備」や「点検作業に対応するための人事的配慮等」などを例示して助言を行うよう指示した。
さらに、総務省として自治体との連携の必要性を強調し、マイナンバー制度について「できるだけ早く国民の信頼が回復できるよう」努める考えを強調した。 
●日本再生に向けた重要課題解決に求められる岸田首相の覚悟 8/9
首相の岸田文雄が先の通常国会での衆院解散を見送った途端に「9月解散」論が浮上し始めた。2023年後半の最大の焦点となる。ただ、岸田政権の看板政策である「次元の異なる少子化対策」と「防衛力の抜本的強化」を実現させるための財源の議論が本格化する時期とも重なる。国民の負担増に直結しやすい財源論は岸田の体力をじわじわと奪っていく。解散戦略とあいまって難しい判断を迫られる局面が続きそうだ。
1枚のカレンダー
通常国会の閉幕からほどなくして、永田町に1枚のペーパーが出回った。題名はなく、今年8月から24年1月までのカレンダーが記されていた。
8月下旬の欄に《8〜9月 党役員人事・内閣改造》と記されており、9月下旬には《9月末召集・臨時国会冒頭》とある。冒頭とは衆院解散のタイミングにほかならない。
そして、衆院選の日程として「10月10日公示―22日投開」「10月17日公示―29日投開」という2つのパターンが書かれていた。そのほかにも、衆院解散の時期として、24年1月に通常国会が召集された直後の「1月解散」と24年度予算が成立した後の「3月解散」、そして次期通常国会の会期末にあたる「6月解散」の3つが点線に囲まれて付記されている。
岸田が今年6月の衆院解散を見送ったことから、次の解散時期が一気に注目を集めている。解散の前提といえる内閣改造・自民党役員人事のタイミングも焦点だ。
「解散カレンダー」にあるように自民党内では8〜9月に内閣改造を行い、人心刷新による「ご祝儀相場」が冷めないうちの「9月解散」説が有力視されている。
しかし、不安材料がないわけではない。岸田内閣の支持率は6月に入って下落傾向に再突入している。
毎日新聞(6月17〜18日実施)の世論調査で、内閣支持率は33%と前回5月の調査から12ポイント下落し、不支持率は58%(前月比12ポイント増)となった。さらに読売新聞(23〜25日実施)では、支持率が41%となり、前月比で15ポイントも急落した。政権内に衝撃が走った。
その他の報道機関の6月調査をみても、NHK43%(前月比3ポイント減)▽朝日新聞42%(同4ポイント減)▽日経新聞39%(同8ポイント減)▽産経新聞46.1%(同4・3ポイント減)─と軒並み下落している。多くの調査で不支持率が支持率を上回っている。
5月は新型コロナウイルスの感染症法上の「5類」引き下げや、ウクライナのゼレンスキー大統領が電撃参加した先進7カ国首脳会談(G7広島サミット)の成功などで上昇に転じていたことから、支持率急落で岸田政権内に大きな衝撃が走った。
政権の目玉政策も…
官房長官の松野博一は記者会見で「一喜一憂はしないが、国民の声を真摯に受け止め政府の対応に生かしていく」と平静を装った。原因は明らかだった。
マイナンバーカードを巡り、公金受取口座が他人名義の口座に紐付けされていたり、マイナ保険証で他人の医療情報が表示されたりするトラブルが続出したことと、首相秘書官を務めていた岸田の長男、翔太郎による首相公邸での不適切な行動などだ。
岸田は得意とする外交で政権浮揚を進めてきたが、あっさり帳消しになった格好だ。ある与党幹部は「6月21日に閉会した通常国会の会期末に衆院解散・総選挙に突き進んでいたら自民党は厳しい戦いを強いられていた」とつぶやいた。
しかも、岸田政権が最重要課題に位置付ける「次元の異なる少子化対策」も世論調査では不評だ。
政府は6月13日、所得制限なしで高校卒業まで支給する児童手当の拡充などを柱にした「こども未来戦略方針」を発表した。岸田は「少子化は我が国の社会経済全体に関わる問題で、先送りのできない待ったなしの課題だ。2030年までがラストチャンス。不退転の決意を持って経済成長と少子化対策を車の両輪とし、スピード感を持って実行していく」と訴えた。
それでも国民は冷ややかな視線を送る。1人の女性が生涯に産む子供の推計人数を示す合計特殊出生率は05年に史上最低の1..26を記録した。07年に少子化対策担当相が新設され、以来、歴代20人以上の閣僚が様々な対策に取り組んできた。
人口維持のためには2.07〜2.08が必要とされるが、22年は過去最低と並ぶ1.26を記録した。どんな政策を打ち出しても、多くの国民は抜本的な解決策になるとは受け止めていないのが現状といえる。
先送りのツケ
再び内閣支持率を上昇に転じさせることができるかどうかは、岸田の解散戦略に直結する。ただ、なかなか容易ではない。
相次ぐマイナンバーカードのトラブルを受け、岸田はデータの総点検を秋までに行うよう関係閣僚に指示。その後、8月末としていた中間報告の時期を前倒して、8月上旬にまとめるように改めて指示した。あわせて国民の不安を取り除くための再発防止対策もまとめるよう求めた。
ただ、岸田が「新型コロナ対応並みの臨戦態勢」で取り組むという総点検の作業で、新たなトラブル、不具合が発覚することは避けられない。政府は来年秋に今の健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化する方針を崩しておらず、「全ての問題を洗い出してきちんとした対策をうてなければ大きなダメージになる」(与党関係者)といった懸念が広がる。
少子化対策を巡っては、こども未来戦略方針を実現させるため24年度から毎年3兆円台半ばの予算を確保することを打ち出したものの、その財源の議論は年末まで先送りしている。安定的な財源を確保した上で、実効性のある対策を確実に進めることが必要であるにもかかわらずだ。
もっとも、岸田は「歳出改革などを通じて財源を確保する。歳出改革の内容は毎年の予算編成を通じて具体化していく。実質的に追加負担を生じさせないことを目指す方針は揺るぎない」と強調する。医療と介護の給付抑制や高齢化に伴う保険料抑制、歳出改革といった財源論を年末に向けて加速させる構えだ。
さらに、もう1つの看板政策である防衛力の抜本的強化を巡っても、財源が固まっておらず、財源議論が焦点となる。
政府は5年間の防衛費を43兆円規模にすることを決めており、先の通常国会では税金以外の収入を積み立てて複数年度かけて防衛費に当てる仕組みを整備した。税外収入などで足りない分は、法人税や所得税、たばこ税の増税で賄うことになる。
これまで政府は防衛費に関する増税時期について「2024年度以降の適切な時期」としてきた。ところが、今年6月の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」では「2025年以降のしかるべき時期とすることも可能となるよう柔軟に判断する」と明記し、事実上の後ろ倒しを示唆した。それでも増税の是非について年内に判断することになる。
岸田は、マイナンバーカードに関する国民の不安払拭に加え、少子化対策と防衛力強化に伴う国民への負担増の判断という重いテーマを抱え込んだ。
しかも、9月末に電力・ガス料金支援策「激変緩和対策事業」が終わり、電気料金などは再び値上がりすることが懸念される。
政府は事業継続を検討しているものの、当面は食品などの値上げが続きそうだ。負担増が家計を直撃すれば、その不満はそのまま岸田に跳ね返ることになる。
「岸田政権は先送りできない課題に1つひとつ結果を出していくことを使命としている。『信なくば立たず』。その言葉を胸に今年下半期の政権運営にも全力であたっていく」。岸田は記者会見などで、そう訴える。
負担増の秋
様々な課題の先行きが見通せない中にあっても、今年6月に「解散風」が吹き荒れたときのように「伝家の宝刀」と呼ばれる解散権をちらつかせて野党を牽制しつつ、与党を引き締めることはもはや難しい。
立憲民主党や日本維新の会などの野党勢力に選挙態勢を整える時間を与えてしまっただけでなく、国民負担の議論という口撃″゙料を与えてしまったからだ。与党議員に国民世論の厳しい批判を避けたいという心理が強く働けば、岸田の求心力は一気に低下しかねない。
岸田が「6月解散」を見送った際、政権幹部は「衆院を解散する大義がない」「衆院議員の任期4年がまだ折り返していない」などと口にした。では、秋になれば大義ができるのか。衆院議員の任期は今年10月に折り返し点を迎えるが、それまでの約3カ月間で重要政策の結果が出せるのだろうか。
疑問符が付きまとうだけに、すでに「9月解散」に慎重意見が出始めている。「党内基盤の弱い岸田首相には、防衛力強化と少子化対策の財源論をさらに先送りするか、衆院解散を先送りするかの二者択一しかない」(自民党中堅)のだという。
自民党ベテラン議員も「(LGBTなど性的少数者への理解増進を目指した)LGBT理解増進法を強引に押し進めたことで、岩盤保守層が自民党から離れた。今秋にやったら確実に議席を減らすだろう」と語る。
永田町に流布された「解散カレンダー」は単なる観測気球か、それとも政権内で練られている解散シナリオなのか。
岸田は「今年の夏は政権発足の原点、政治家・岸田の原点に立ち返って全国津々浦々におじゃまし、改めて皆さまの声をうかがう」と宣言した。最近は全く聞かれなくなった「聞く力」を取り戻したいようだ。
いずれにせよ、岸田が国民の信頼を得るためには、たとえ選挙で多くの議席を失うことになろうとも、日本の将来に必要な重要課題から逃げずに立ち向かい、乗り越えようとする覚悟が必要だ。それが国民に伝わらない限り、今夏以降に「伝家の宝刀」を抜くタイミングはないだろう。
ただ、政局ばかりに固執していては真の日本再生は実現できない。与野党も含めた政治家が自らの覚悟を示す時に来ている。
●日本維新の会の馬場氏「連立入りの余地」発言 自民政治支える告白 8/9
日本共産党の小池晃書記局長は8日の記者会見で、日本維新の会の馬場伸幸代表が、総選挙で自民、公明両党で過半数割れした場合、連立入りも「考える余地がある」と6日のラジオ番組で発言したことについて問われ、「『維新』が、自民党政治を変えるどころか、自民党政治を支える政党であることを告白したもの」と語りました。
小池氏は、馬場代表が、「共産党は日本からなくなったらいい政党」という暴言を、撤回せずに繰り返し、暴力革命の政党だなどと破綻済みのデマ発言を続けていることを批判。「自民党政治を支える政党だから、自民党政治をもとから変える共産党が邪魔なのだろう」と語りました。
その上で小池氏は、「国会議員は全国民の代表であり、自分の支持者だけでなく他党に一票を投じた国民の声にも耳を傾ける必要がある。馬場氏の発言は、民主主義の土台を否定するものだ」と重ねて批判し、撤回を求めました。 

 

●イラン外相が、日本との文化・経済・政治関係促進の必要性強調 8/8
アミールアブドッラーヒヤーン・イラン外相が、日本の岸田首相との会談において、両国間の長期的協力のためのロードマップ策定を歓迎しながら、相互の政治、経済、文化関係促進の必要性を強調しました。
イルナー通信によりますと、アミールアブドッラーヒヤーン外相は7日月曜午後、岸田首相と会談しました。
同外相はこの会談で、「昨年の国連総会に合わせて岸田首相とイランのライースィー大統領が会談し話し合ったことは、両国関係を発展させようという両国の意志の表れである」と述べました。
そして、日・イ関係や地域情勢について岸田首相が高い知識・認識を持っていることは、両国の協力・交流のレベル向上にとって貴重な資本になるとしました。
一方、イランがペルシャ湾地域のエネルギー安全向上において、高い役割を果たしていることを強調しながら、地域における新たな動きが、安定、安全保障、発展、包摂的繁栄を促進するための域内協力の深化を伝える吉報であるという考えを示し、「このプロセスを支援する日本の役割は、重要なものである」と述べました。
同外相はさらに、ウクライナ危機にあたりイランが取る、政治的解決が必要という基本姿勢について説明しました。
一方の岸田首相も、ライースィー大統領との昨年の会談を重要なものだったとしながら、日本とイランの関係を価値あるものだと強調しました。
また、ペルシャ湾岸地域で新たにみられる前向きな動きを喜びながら、「日本として、恒久的な安全保障の向上に向けた地域協力を支援していく」と語りました。
さらに、「我が国は、核合意内責務の完全履行を目指すイランとその他当事国との間の協議再開を支持し、これを支援する用意がある」としました。
岸田首相は最後に、IAEA国際原子力機関とイランとの間の前向きな関係の継続を歓迎しました。
●中国と断絶しても耐えられる経済体制を日本は築け、「切り札」になり得る同盟 8/8
米中関係がさらに悪化すれば日本が“割を食う”リスク大
中国はこの8月から、ガリウム・ゲルマニウム関連製品を輸出規制の対象に加えた。これらはいわゆるレアメタル(希少金属)であり、半導体・太陽光発電パネル・光ファイバーなどの製造に使用されている。
産業において極めて重要な素材だといえるが、他国は8月以降、これらを中国から調達する際に中国政府の承認が必要となる。
この措置は、米国が22年10月に打ち出した「先端半導体の対中輸出規制」に対抗したものだ。今後も米中の経済対立が激化し、米国による中国への規制・制裁がさらに強化されれば、中国からの対抗措置もエスカレートするだろう。
ここで懸念されるのが、“割を食う”形での日本経済への悪影響だ。日本はガリウムの輸入を中国に依存してきたことから、今回の輸出規制によって不利益を被る可能性がある。
今後もこうした事態が続くようなら、日本企業の経営には大打撃となる。それは避けたいのが企業の本音だろう。
日本の政治家・財界人には、中国と良好な経済関係を保とうとする「親中派」が少なくない。彼らが岸田文雄政権に「慎重な対応」を強く求めていけば、日本政府は今後、米国と一枚岩で中国への規制・制裁を進めていくのは難しいかもしれない。
では「親中派」のもくろみ通り、日本が中国と良好な経済関係を築けばよいのかというと、決してそうではない。それが逆にリスクになる可能性もある。これが対中関係の難しいところだ。日本における最先端の技術が中国などに流出し、国の安全が脅かされる「経済安全保障」の問題が付きまとうのだ。
中国では「国家情報法」「会社法」「中国共産党規約」などの法律や規約によって、国民が国家情報工作に協力することを義務としている。この義務の下、日本の企業や大学、研究機関などから最先端技術が盗まれ、中国における兵器開発に使われているという疑惑もある。
さらに難しいことに、中国は7月から「改正反スパイ法」を施行し、外国人などによる自国へのスパイ行為の取り締まりを強化している。これにより、中国に在留する日本人の安全が一層脅かされると不安視されている。
というのも、かねて中国では、日本人がスパイ行為に関わったなどとして拘束される事例が相次いできた。スパイ行為の定義が拡大されたことで、取り締まりがさらに強化される懸念がある。
要するに、中国への過度の経済的依存は、有事の際に日本の防衛力や安全保障体制の機能不全を引き起こす恐れがある。機密情報の保持や、中国に在留する日本人の安全保護が難しくなるリスクもある。
では今後、日本は中国との関係をどうしていくべきなのか。
日本が取るべき方針は「デリスキング」ではなく「デカップリング」?
ここで米国の対中戦略に目を向けると、現在の彼らの手法は、中国リスクの低減を図りながら関係を維持する「デリスキング」だ。米国内や欧州、日本の経済界からの「中国との経済関係を維持したい」という意向に配慮したものだ。
しかし今後、中国との経済的な分断を図る「デカップリング」へと米国の戦略が変化する可能性も否定できない。その時、日本はどう行動すべきかが問題となるだろう。
この連載では、日本政府は「デカップリング」を行い、中国との関係を絶ち切っても経済的に十分やっていける体制を築くべきだと提案してきた(本連載313回)。前述の通り、中国への過度の経済的依存には深刻な問題につながるリスクがあるためだ。
もちろん簡単な話ではないが、ここでカギとなるのが英国の存在だ。日米同盟を「日米英」の強力な同盟へと進化させ、日本・米国・英国・英連邦諸国を股にかけた巨大な経済圏を構築すれば、日本による「デカップリング」も不可能ではなくなってくる。
中国のGDPは約15兆ドルに拡大している(2020年度実績、以下同)。2010年に日本を抜き、現在は日本の約3倍の規模に達している。この事実に日本人は臆してしまいがちだ。また、日本企業が生き残るためには中国の巨大市場が必要不可欠という思い込みがある。
だが、日本・米国・英国・英連邦が一つの経済圏となれば、GDPの合計は約37兆ドルとなり、中国をはるかに上回る。まずは単純に経済規模で中国を凌駕できることが、日本人の心理には重要である。
日本の味方になれば心強い「英連邦」とは?
ここで基礎知識について簡単に触れておくと、英連邦(コモンウェルス)とは、旧英国植民地など56カ国で構成される国家連合体だ。加盟国は、ニュージーランドやマレーシア、パプアニューギニアなど多岐にわたる。
このうちオーストラリア・カナダ・ジャマイカなど15カ国は「英連邦王国」(コモンウェルス・レルム)と呼ばれ、英国の君主を自国の国家元首としている。政治には直接関わらないが、これらの国々の君主は英国王チャールズ3世だ。
またチャールズ3世は、共和制国家を含む英連邦全体の連帯を象徴する元首でもあり、世界の4分の1近くの国家・地域に元首として君臨している。
このように、英連邦は巨大な経済圏だ。世界の国土面積の21%を占め、総人口(24億人超)は全世界の人口(約77億人)の3分の1弱を占めている。GDPの合計値は11兆ドル超で、米国の約21兆ドル、EUの約18兆ドル(英国含む)、中国の約15兆ドルに次ぐ経済規模である。
英連邦の重要性は規模だけではない。加盟国には、資源大国であるカナダ・オーストラリア・南アフリカ・ナイジェリアが含まれる。
世界で2番目に人口が多く、ハイテク国家としても知られるインドをはじめ、マレーシア・シンガポールなど東南アジアの多くの国も含まれている。そして、今後「世界の工場」となることが期待されるアフリカ諸国の多くも英連邦だ。
政治的には、カナダはG7、インドや南アフリカは新興国の雄「BRICS」の一角だ。オーストラリアやシンガポールなどは、それぞれの地域で主導的立場にある。
要するに、加盟国が政治的・経済的に多様な特徴を持ち、その規模以上に巨大なパワーを持つ経済圏を形成しているのが英連邦の特徴である。
従来の日米同盟に加えて、この英国および英連邦の政治的・経済的なパワーを取り込むことができれば、日本が中国からの「デカップリング」を果たす基盤となるはずだ――。これが筆者の考えだ。
そうした「日米英同盟」が持つポテンシャルを、レアメタル・レアアースを題材に考えてみたい。
日本は中国に依存せずとも レアメタルを調達できる!?
中国はガリウムで世界生産の90%、ゲルマニウムで60%を占める。このうちガリウムはボーキサイトからアルミを精錬する際の副産物として採取される。つまり、アルミの生産国である英連邦のインド・カナダなども、条件が整えばガリウム生産国になることも不可能ではないはずだ。
ゲルマニウムは、世界の埋蔵量が8600トン。そのうち米国の埋蔵量が3870トン、中国が3500トンだ。現在、米国は自国資源保全を理由にゲルマニウムを生産していない。だが再生産に踏み切れば、中国への対抗が可能となるはずだ(ニューズウィーク日本版『ガリウムとゲルマニウム輸出規制の影響は?』)。
続いて、電気自動車(EV)のバッテリーやスマートフォンの製造など先端技術に欠かせないレアアース(希土類)を考える。中国の生産量は昨年21万トンであり、世界シェアの約7割を占める。2位は米国で4万3000トン(シェア約14%)、3位はオーストラリアで1万8000トン(同6%)だ(朝日新聞『中国のレアアース、世界シェア7割 G7も危機感、EV普及なお依存』)。
中国の圧倒的優位は揺るがないが、2位の米国は同盟国であり、3位のオーストラリアも英連邦の一員だ。そして、レアアースは地球の広い範囲で埋蔵が確認されている。
また、19年とやや古い報道になるが、ロイター通信によると、インド・南アフリカ・カナダといった英連邦諸国でもレアアースが採掘されているという(ロイター通信『アングル:米国が怯える中国の切り札「レアアース砲」とは』)。英連邦諸国がレアアースの生産を加速させれば、供給源を多角化できる余地がある。
レアメタル(希少金属)全体を見ても、日米英同盟には大きな可能性がある。レアメタルはオーストラリア・カナダ・アフリカ諸国などに幅広く埋蔵されており、アングロアメリカン・リオティント・BHPなど「鉱物メジャー」と呼ばれる資源多国籍企業の多くは英連邦系の企業だ。各社は今後もレアメタルの生産に莫大なリソースを投入していくだろう。
このように見ていくと、日本が日米英同盟のネットワークを生かして、中国に頼らずレアメタル・レアアースを調達するルートは十分あるように思える。
そして、多大なるポテンシャルを秘めた同盟の中でも、やはり「英国および英連邦」のメリットとスケール感は非常に大きい。その証拠に、日本以外に目を向けても、旧英国植民地ではないにもかかわらず英連邦に入りたがる国々がここ15年ほどで増えてきた。
具体的には、旧英国植民地ではないルワンダが2009年に加盟した。加えて、同じく旧英国植民地ではないガボンとトーゴも2022年に新たに加盟した。パレスチナ自治政府や南スーダンも加盟に前向きだ(第330回)。
新たに加わりたい国・地域が今も存在する理由は、独裁政権を倒して民主化を果たした小国(主にアフリカ諸国)や、新しく誕生した国家でも加盟しやすいからだ。
そして国際連合よりも、国際社会で発言する機会を得やすい。英系グローバル企業とのネットワークによる、経済成長を期待する国もある(第20回・p5)。
さらに、EU離脱後の英国の新しい国家戦略「グローバル・ブリテン」に沿った施策として今年5月に行われたチャールズ3世の戴冠式にも、多数の外国の国家元首や王族が参列した。英国からの援助や投資、英国との経済関係強化、安全保障関係強化を狙ってきたのだ。
そこで、あらためて提言したい。日本は英国および英連邦との関係を強化して日米英同盟を形成すべきだ。そして、中国との関係を絶ち切っても経済的に十分やっていける体制を構築すべきだ。さらにその一環で、英連邦への新しい形での加わり方を検討するべきだ。
そのままの加盟は難しくても新しい道を模索すべき
ここで「新しい形」としたのには理由がある。日本の皇室は世界最長の歴史を持つことなどから、英王室と同格以上の存在だという説があるためだ。
天皇陛下と英国王の序列関係から、英国王を象徴とする英連邦に日本がそのまま加わるのは難しいだろう。しかし「英国と同格のオブザーバー」としての参加など、別の形での加盟は検討の余地があるはずだ。
現在、英国のTPP11加盟が実現することになり、事実上の「日英自由貿易協定」が成立する見通しだ。米国主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」も交渉が始まっている。
これらの動きがある中で、日本が何らかの形で英連邦に加われば、グローバルサウスの多くの国々と事実上の「国家連合体」を形成できる。これが実現すれば、中国をはるかにしのぐ巨大な経済圏が出来上がる。
もちろん、現状すぐに中国との関係を断絶し、事を荒立てる必要はない。しかし、中国との関係をいつでも切れる政治的・経済的・安全保障体制を構築しておくことは、中国に対抗する政治的パワーを格段に高めることになる。そのための“切り札”が英国および英連邦との連携強化なのである。 
●日本人の23%が総理大臣の交代を「即時」に望んでいる 8/8
日本の有権者に対する調査によると、回答者のうち23%が、現在の日本の首相である岸田文雄氏を「即座」に、保守派のベテラン政治家・石破茂氏に交代することを望んでいる。石破茂氏は日本政治の中で最も人気のある候補とされている。
14%の回答者は、岸田氏が「可能な限り長く」今の地位にとどまることを望んでおり、57%は岸田氏が、来年まで自民党の総裁の任期が終了するまでその地位にとどまるべきだと考えている。
調査では、次期日本の首相になる最も人気のある政治家は石破茂氏であり、JNNテレビネットワークが8月5日と6日に行った世論調査では、16%の支持を受けている。
石破茂氏はかつて国防大臣を務め、与党の幹事長も務めたベテラン政治家で、トップのポストに何度も挑戦してきましたが未だに成功していない。彼は一般市民には人気があるが、自民党内ではあまり支持されていないようだ。また、現在のデジタル大臣である河野太郎氏も石破茂氏とほぼ同じくらいの支持を受けている。
調査で14%の支持を得たのは、元総理大臣小泉純一郎の息子であり、かつて環境大臣を務めた小泉進次郎です。彼は多年にわたり一般市民に人気があり、若くて顔立ちも良く、フランス人ハーフの有名なニュースキャスターと結婚しているが、まだ同僚の政治家たちを納得させるには至っていない。
経済安全保障担当大臣である右派の政治家・高市早苗氏は、6%の支持で4位となり、現職の首相である岸田文雄氏はわずか5%の支持を受けた。
また、2%の支持を得たのは3人の自民党の政治家で、岸田文雄氏と交代するために最も野心的な自民党幹事長の茂木敏充氏、少子化担当大臣である野田聖子氏、外務大臣である林芳正氏が含まれている。
●麻生副総裁「戦う覚悟」強調 台湾で講演 8/8
自民党の麻生太郎副総裁は8日、訪問先の台湾で講演し、軍事的圧力を強める中国を念頭に「強い抑止力を機能させる『戦う覚悟』が求められている」と述べ、台湾海峡の平和と安定に強い抑止力が必要との認識を強調した。
講演で麻生氏は、ロシアによるウクライナ侵攻に触れた上で、「同じような深刻な状態が将来、インド太平洋地域、とりわけ東アジアにおいて発生する可能性も否定できない。日本は第二次世界大戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境の中にある」と述べ、「台湾海峡の平和と安定は、日本はもとより、国際社会の安定にとっても重要だ」と強調した。
さらに麻生氏は、「最も重要なことは台湾海峡を含む地域で戦争を起こさせないことだ。今ほど強い抑止力を機能させる『戦う覚悟』が求められている時代はないのではないか。お金をかけて防衛力を持っているだけではダメだ。それをいざとなったら、台湾の防衛のため、台湾海峡の安定のために使うという、明確な意思を相手に伝えることが抑止力になる。日本が率先して中国を含めた国際社会に発信し続けることが極めて重要だ。この毅然とした態度は岸田政権のもとでもそれ以降も、これからも変わらない」と語った。
一方で、世界的に不足する半導体の問題についても触れ、「台湾は半導体の製造において間違いなく一時代を担い、その力を明確に示しており、現代では欠かすことのできないものだ。世界の半導体の約7割を製造している台湾と、半導体のトップクラスの技術を持つ日本が手を携えることは、経済安全保障の面でも極めて重要だと思っている」と述べた。
講演は台湾側の招待によって行われた。
自民党のナンバー2である麻生副総裁による講演は異例で、自民党として、台湾海峡の平和と安定に向けた姿勢を最大限に示した形だ。
●麻生太郎氏また失言! 台湾で「戦う覚悟」の“リップサービス”に批判殺到 8/8
自民党の麻生太郎副総裁は8日、台北市内で講演した。](旧ツイッター)では「台湾訪問中」がトレンド入りし、世間の関心を集めたのは講演での“リップサービス”だ。
中国が軍事的圧力を強めるなか、台湾海峡で戦争を未然に防ぐためにも、日本や台湾、米国は「戦う覚悟」を示す必要があり、それが抑止力になると主張したからだ。
麻生氏は「有志の国々に非常に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時代はないのではないか」などと鼓舞したつもりだろうが、戦いとは無縁であろう日本人政治家からのメッセージ。台湾の若者にも迷惑だろうといった批判の声が相次いでいる。
《闘うのは我々現役世代。勝手なリップサービスは迷惑極まりない。戦争を防ぐべく政治家は存在している》《すでに中国に機密情報ダダ漏れですし。。台湾もいい迷惑だと思う…》《アジア諸国に迷惑かけるな》《本当に迷惑なジジイやね。自分が竹槍持って戦う分には勝手にしろだが。他人を巻き込まないでほしい》
同日、松野博一官房長官は、麻生氏の台湾訪問について「政府としてコメントすることは差し控えたい」と話したが、台湾の人たちには余計なお世話だろう。
●今井絵理子議員は令和のマリー・アントワネットか… 8/8
自民党議員らのフランス研修が「観光旅行のようだ」と批判を集めている。PR戦略コンサルタントの下矢一良さんは「今回の炎上劇の背景には、権力者が陥りがちな『勘違いの構図』がある。具体的には『業界の当たり前に浸り、世間の常識を見失う』『自分には人気があると勘違いしてしまう』『自分を諫める存在がいない』という3つの落とし穴が見て取れる」という――。
海外研修で羽目を外している様子を「自ら」投稿
松川るい参議院議員や今井絵理子参議院議員らがX(旧ツイッター)に投稿した写真が批判を浴びている。自民党女性局の海外「研修」でフランスを訪問したのだが、どう見ても観光旅行にしか見えない写真の数々を投稿したのだ。
松川議員はエッフェル塔のポーズで記念撮影、今井議員も他の参加者と一緒にバスの車中で笑顔で撮った写真などをあげていた。当然、X(旧ツイッター)では「国民は物価高や重税に苦しんでいるのに、税金でフランス観光か」といった批判が殺到した。その結果、自民党女性局長の松川議員が「大変軽率だったと反省している」と、報道陣の前で謝罪せざるを得ない事態となったのだ。
今回の炎上劇だが、海外「研修」で羽目を外している様子を週刊誌や観光客などに盗撮されたわけではない。本人が「自ら」進んで投稿した結果、批判を浴びているのだ。本人は炎上するまでは、炎上どころか「応援してもらえるはず」と思い込んでいたのだろう。
なぜこのような本人による勘違いが生じてしまうのだろうか。実はこの「勘違いの落とし穴」は、国会議員だけに限ったものではない。経営者や管理職などでも陥りがちなものなのだ。
かつてはテレビ東京経済部の記者として、現在は企業の広報PRを支援する立場として、数多くの有名経営者に接してきた経験から権力者ほど「勘違いの落とし穴」に嵌まる構図を解き明かしてみたい。
国会議員の海外視察はどれほど多いのか
落とし穴、その1:「業界」の当たり前に浸り、「世間」の常識を見失う
夏休みシーズンに政治家の海外「視察」が相次ぐというのは、少しでも永田町に関わったことがある者には「常識」だ。どれほど海外「視察」が多いのか、コロナ禍で海外渡航が困難になる前の2019年を例にみてみたい。「衆議院の動き」という衆議院が発行している冊子の「議員海外派遣」の項目に詳しく書かれている。
これによると2019年は全17回、議員団が派遣されている。そのうち、実に13回が8月に集中、8月は70人近い議員が派遣されている。衆議院の正式な議員団だけに、与野党の混成部隊だ。自民党では森山裕氏(現・選挙対策委員長)、高木毅氏(現・国会対策委員長)、立憲民主党では辻元清美氏、野田佳彦氏(元総理)、海江田万里氏(現・衆議院副議長)など、「大物議員」も含まれている。
夏の海外渡航は「業界の常識」
所属政党だけではなく、行き先も多岐にわたっている。「南部アジア各国における政治経済事情等調査」では「インド・ブータン・ミャンマー」、「欧州各国における財政金融経済事情等調査」では「ポルトガル・スペイン」、「欧州各国における教育、文化芸術及びスポーツ振興に関する調査」は「イタリア・バチカン・ポルトガル・英国」、「イタリア共和国等における議会制度及び政治経済事情調査」は当然「イタリア・バチカン」といった具合だ。期間は概ね1週間から10日となっている。
衆議院の公式派遣だけで、70人近いのだ。参議院、さらに政党や議連などでの派遣まで含めれば、その数は大幅に増える。つまり「夏の海外渡航」は国会議員のあいだでは「みんながやっていること」であり、いわば「常識」なのだ。
海外で羽を伸ばす国会議員とは対照的に、一般的な有権者の置かれた状況は厳しい。厚生労働省が先月発表した5月の実質賃金は前年同月比で1.2%減っている。マイナスとなるのは14カ月連続という惨状だ。
国会議員にとって海外渡航は「常識」でも、一般の有権者の眼には「自分たちの収めた税金で遊んでいるのか」と映ってしまう。「業界の常識」に浸るあまり、一般有権者の眼にどう映るか、想像が至らなかったのではないか。
「不人気総理」の登場に大歓声が上がる理由
落とし穴、その2:自分には人気があると勘違いしてしまう
私は記者として、最も長い時間を費やしたのは企業取材だが、スタートは政治部だった。テレビの政治部記者は、まず総理大臣を担当する「総理番」となるのが定番だ。
「国の最高権力者をなぜ駆け出し記者が取材するのか」と思われるかもしれない。だが、総理大臣の動静を追うのは、実は最も簡単な取材なのだ。なにしろ総理大臣といえば公人中の公人。「隠密行動」が取りにくいので、経験の浅い新人記者でも十分に対応可能なのだ。
私が総理番として担当することになったのが、当時の森喜朗総理だった。口の悪い週刊誌からは「サメの脳みそ・ノミの心臓」などと揶揄され、内閣支持率も8%まで低迷。まさに「歴代屈指の不人気総理」だった。
そんな不人気極まりない森総理の地方視察に同行取材したときのことだった。「きゃーっ、森さーん‼」。大勢の女子高生たちが、大声で森総理に呼びかけているのだ。まるで「国民的アイドルが町にやって来た」ような大騒ぎだ。森総理もまんざらでもないようで、笑顔で呼びかけに応じていた。
別に好きだから歓声を上げるわけではない
私は森総理を担当後、当時、政治家として全盛期を迎えていた亀井静香自民党政調会長の番記者に担当替えとなった。当時の亀井氏は「強面」で鳴らす「自民党有数の権力者」だが、決して「国民的人気」を持つ政治家ではなかった。だが、亀井氏の地方視察に同行したときも、森総理同様、やはり若い女性たちの熱狂的な歓声を受けるのだ。
なぜ「歴代屈指の不人気総理」や「強面の有力政治家」が、行く先々で若い女性の歓声を受けるのか。しばらくは謎のままだったのだが、あるとき私の疑問は氷解した。同行取材の際、ついさっきまで歓声を上げていた女子高生たちの、政治家が去った後の会話を耳にしたからだ。
「テレビで見るのと同じだったね」。彼女たちはそう、嬉しそうに話していた。「この歓声は『テレビで見たことがある有名人』の来訪に対する驚きであって、別に好きだからというわけではない」という「当たり前の事実」に、私は気がついたのだった。
「支持者のような人々」に囲まれやすい職業
番記者として「歴代屈指の不人気総理」や「強面の有力政治家」と話していて、驚いたことがある。「マスコミには不人気かもしれないが、自分を支持する人たちは多い」。そんな自信が言葉の端々に溢れているときがあるのだ。
「内閣支持率」という客観的な証拠があるのだから、不人気であることは疑いようがない。だが東京を離れれば、女性たちの熱烈な歓声を受ける。この倒錯した2つの事実を前に、孤独な政治家は「自分を支持してくれる人は少なくない」という「事実」のほうに「すがりたくなる」のだろうか。
昔話が長くなったが、国会議員とは仮に圧倒的不人気で鳴らしていたとしても、「支持者のような人々」に囲まれやすい職業なのだ。不人気で知られ、普段から最も批判を浴びる総理大臣や自民党の政調会長ですら、「自分はそれなりに人気がある」と信じてしまう。そうであれば、元トップアイドルの国会議員が「相当数の人に支持されている」と勘違いするのは無理からぬことではないか。
筆者が自民党本部で見た女性議員の困難な状況
落とし穴、その3:自分を諫める存在がいない
国会とは「超」が付くほどの「男社会」だ。衆議院の場合、女性議員の割合は1割程度に過ぎない。今回の炎上を引き起こした「女性局」なる部門が昔から存在するほど、女性は「特別な位置付け」にあると言える。
この「超・男社会」で、私は女性議員の困難な状況を垣間見る機会があった。今から約20年以上前に私が政治記者だった頃、自民党本部を歩いていたときのことだ。党本部の廊下で野田聖子議員とかなり高齢の男性議員が立ち話をしている。この高齢の男性議員、なんと野田議員と話している最中、ずっと野田議員の手を握っているのだ。握手ではなく、両手で包み込むように手を握りしめている。この間、野田議員は特に嫌な顔もせず、平然と会話をしている。
この高齢の議員だが、派閥の長、幹事長といった権力者ではない。なので、野田議員が権力者に媚びて手を握らせていたということは、決してない。ただの「スケベ親父」による、若い女性議員へのセクハラなのだ。さすがに今ではここまで露骨なセクハラはないだろうが、立法府にあるまじき、お粗末極まりない「職場環境」ではないか。
会社での上司にあたる「教育役」が存在しない
このように国会とは男性優位にして、女性が不利益を被りやすい「職場環境」と言える。
会社には自分の上に必ず上司や先輩がいる。上司は部下を教育する責任を負っている。それゆえ、会社に勤めていれば「教えられる機会」は多い。だが国会議員には「誰かに教えてもらう機会」というのは、少ない。というのも、国会議員には会社での上司にあたる「教育役」が存在しないからだ。国会議員とは各々が独立した個人事業主、あるいは零細企業の社長と言ってもよいかもしれない。
男性議員同士であれば、酒の席などでざっくばらんに先輩が助言することもあるだろう。男社会では、仕事の本音の話は男同士で語られることがほとんどだ。圧倒的な男社会にあって、女性議員が先輩からストレートな忠告を受ける機会はほとんどないのではないか。
議員として発信すべき情報、逆に発信を避けるべき情報。こうした振る舞い方を日常的に指導する先輩がいれば、このような炎上は起きなかったかもしれない。
「広報上手」の経営者が共通して持っているもの
ここまで勘違いによる炎上が発生する構図を見てきた。「業界の当たり前に浸り、世間の常識を見失う」「自分には人気があると勘違いしてしまう」「自分を諫める存在がいない」。これらは何も国会議員だけに当てはまるものではない。むしろ企業の経営者や部長以上の管理職のほうが、より陥りやすい構図ではないか。
私が経済記者として取材してきた「広報上手」の経営者には共通点がある。それは「自分を客観視する仕組み」を持っているということだ。
例えば「日本で最も広報上手な経営者」であるソフトバンク・孫正義社長はX(旧ツイッター)で一般の批判者ともよく絡んでいた。あるいは「目上」である渡邉恒雄・読売新聞グループ本社代表取締役主筆、あるいは異業種の著名人、中国のEC最大手アリババグループを創業したジャック・マー氏のような海外の有力企業の経営者など、「自分に忖度(そんたく)しない相手」とも積極的に交流していることで知られる。
今回の国会議員によるSNSでの炎上劇。企業の経営者や部長以上の管理職は「自分を褒め称えてくれる快適な空間」に止まることなく、炎上の根本的原因を「他山の石」とし、自らを諫めたいものだ。 

 

●官僚離れは人事院だけでは改善できない 8/7
若者の国家公務員離れが進んでいる。中央省庁は待遇や働き方の改善が遅れ、不規則な国会対応も敬遠される要因になっている。若者の官僚離れは、行政の質を低下させかねない国家的な課題だ。与野党は旧態依然とした国会運営を見直し、負担軽減の範を示してもらいたい。
人事院は7日、2023年度の国家公務員給与を大幅に引き上げるよう国会と内閣に勧告した。若手を中心に月例給やボーナスを引き上げ、初任給増額や在宅勤務手当新設も盛り込んだ。過去5年の平均に比べ約10倍のベースアップになるという。民間の大幅な賃上げを考えれば妥当な内容だ。
働き方改革の報告では、選択的週休3日制の導入や勤務間インターバルの確保など、多様な働き方を可能にする制度を打ち出した。民間に近い形で柔軟に働ける制度的な受け皿はだいぶ整ってきたと評価できる。
ただそれだけでは国家公務員が敬遠される現状に歯止めをかけるのは難しい。今春の総合職試験の申込者は1万4372人と過去2番目に少なく、合格倍率は過去最低の7.1倍だった。入省10年未満の退職者の増加も目立つ。
官僚離れには複合的な要因がある。政策決定で政治主導が進み、予算効率化で仕事の外部委託も増えた。幹部人事に首相官邸の関与が強まり、行きすぎた「忖度(そんたく)」も指摘される。国家運営を担う官僚としてのやりがいを損なっている面は否めない。
一方、霞が関の働き方改革の障害になっているのが国会審議などへの対応業務である。
与野党は1999年に国会の質問内容を事前に伝える質問通告について、質疑の「2日前の正午まで」と申し合わせた。それでも質問通告は遅れがちで、官僚に深夜・未明の答弁作りや早朝の閣僚説明を強いてきた。
6月の衆院議院運営委員会の理事会でも、改めて質問通告の迅速化とデジタルツールの利用を確認した。実効性を高めるには議員名と通告時間、内容や連絡手段を公表するのも一案だろう。
緊急時ならまだしも、平時に公務員が昼夜を問わず働くのは当然だという意識が人材獲得を阻んでいるとすれば大きな問題だ。霞が関の働き方改革は、人事院や各省の取り組みだけでは進まない。国会議員が甘えと前例踏襲を排して一歩を踏み出すべきだ。
●風力発電事件 秋本議員、受領金を競走馬購入に 辛坊治郎が苦言 8/7
キャスターの辛坊治郎が8月7日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。元外務政務官の秋本真利衆院議員(47)=比例南関東、自民党離党=が洋上風力発電開発を手掛ける電力関連会社「日本風力開発」側から計約3000万円を受領したとされる事件を巡り、このうち議員会館で受領した1000万円の大半が競馬馬の購入に充てられていたとされることについて、「政治家たる者の心構えの根本は先憂後楽だ」と苦言を呈した。
秋本真利衆院議員が洋上風力発電開発を手掛ける電力関連会社「日本風力開発」側から計約3000万円を受領したとされる事件で、秋本議員が昨年2月、国会で事業者の審査基準の見直しに言及した前後に同社から繰り返し陳情を受けていたことが分かった。基準変更を求める内容だったとみられる。また、受領額のうち1000万円を議員会館で受け取っていたことが分かっているが、これは基準が見直された直後だったという。
辛坊)秋本真利衆院議員が馬主になって競馬を楽しむのはいいですよ。しかし、政治家たる者は民衆に先駆けてつらいことを体験し、世の中の人が皆、楽しめる状態になってから自分で楽しむというのが本来の心構えですよ。「先憂後楽」「李下に冠を正さず」といった言葉もあります。
日本の政治家は、こうした政治家の根本を忘れています。私の個人的な感覚ですが、つい先日もフランス研修中に撮影した写真が投稿先の交流サイト(SNS)上で「観光旅行のようだ」と批判を浴び、参院議員である自民党の松川るい女性局長が党から注意されました。フランスへ観光旅行に行きたいのなら、政治家を辞めて行けばいいんです。馬主になって競馬を楽しみたいのなら、政治家を辞めて馬主になればいいんですよ。
●処理水放出は政治が決断を 福島に委ねるな 8/7
政府が今月末にも予定する東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を巡り、東電が平成27年に福島県漁業協同組合連合会に示した文書が焦点になっている。文書は「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」としているが、「理解」を「了承」と読み取れば、漁連に放出判断の責任を負わせることになりかねない。東日本大震災からの復興と日本のエネルギー政策を左右する決断は、業界団体に委ねるのではなく、政治が担う必要がある。
文書は27年当時、処理水の取り扱いを議論した経済産業省の有識者会議の検証結果に関し、「漁業者をはじめ、関係者への丁寧な説明など必要な取り組みを行う」「こうしたプロセスや関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず」としたものだ。あくまでも検証結果を説明した内容に対する「理解」と読める。
政府は言及を避けるが、放出に反対する県漁連の野崎哲会長は今年4月、メディアのインタビューでヒント≠示している。
「(放射性物質の)トリチウムの性質や事業の進め方の説明は受けている。こうした内容について理解した上で、懸念を発信していきたい。ただし了解することはできない。理解と了解は違う」
野崎氏に限らず、「理解」を口にする関係者は少なくない。背景には、ある計画を巡るトラウマが指摘される。原発の建屋に流れ込む地下水を周辺のサブドレン(井戸)からくみ上げ、浄化処理してから海洋に放出する計画だ。
27年の文書は、この計画に県漁連の了承を得る過程で示され、漁連は了承に転じた。だが、「海は漁業者だけのものではない」といった非難の声が相次いだ。漁連が計画の実行を後押ししたと映った形だ。
現状、処理水を保管するタンクの容量は限界に近付きつつあり、放出時期は原発の廃炉工程の進展を左右する。
「政権が吹き飛ぶ可能性があっても、政治が責任を持たねばならない」
ある閣僚は周囲にこう語る。政治家は復興を進めるため、決断を避けてはならない。風評被害対策に加え、漁業者を守ることもまた政治の使命だ。 

 

●今井絵理子・松川るいが参加した「パリ視察」全スケジュール… 8/6
研修はわずか6時間、セーヌ川クルーズ、シャンゼリゼで買い物
自民党女性局長の松川るい参院議員(52)、局長代理の今井絵理子参院議員(39)が、7月下旬のフランス視察中にSNSに投稿した写真が、まるで観光旅行ではないかと批判され、炎上している。
松川議員は8月1日、党本部で謝罪したが、視察に次女を同行させていたことが本誌報道で明らかになった。自民党中堅議員が、こうぼやく。
「松川さんの謝罪が、いかにも歯切れが悪かったうえに、直後に次女の件が明らかになった。世間が納得しないのは当たり前で、松川さんも後ろめたいことがないなら、自分から説明をするべきだった」
批判を浴びた議員たちはSNSで反論している。今井議員は、「無駄な外遊ではありません」と強弁。さらに、視察に参加した長崎県議のごうまなみ氏は、《地方の視察より過酷でほぼ自由時間もなく》と投稿し、エッフェル塔の滞在時間は、わずか10分程度であると主張した。松川議員自身も、SNSに《非常に真面目な内容ある研修であった》と記している。
だが、本誌が今回入手した旅程表によれば、事実はまったく異なる。
「令和5年女性局フランス研修 研修ノート」と題された冊子には、出発(7月24日)から帰国(28日)まで3泊5日の日程が記載されているのだが、純粋な研修に充てられていたのは、たったの6時間。
ガイドツアーや、在仏日本大使らとの食事会を含めても、10時間にしかならないのだ。ここからは詳細にスケジュールを見ていこう。
初日は、入国手続を終えてホテルでの結団式となっているが、食事にうるさいセンセイ方のためだろうか、そこにはわざわざ「肉料理」と記されている。
2日めは朝食の後、10時からは国民教育・青少年省の担当者からブリーフィング(簡潔な説明)を1時間。なんと、午前中の予定はこれで終了だった。昼食として一行は、「魚料理」を堪能している。
「1949年創業の老舗レストランです。ランチは30ユーロ(約4700円)からコースが食べられます」(現地駐在員)
午後にはフランスの国会議員2組と1時間ずつ面会が設定されているが、“お仕事” はここまで。リュクサンブール宮殿(国会議事堂)をガイドツアーで見学し、「10分程度」とされるエッフェル塔での観光には、旅程表では30分が割かれていた。
そして夜こそが、この日の目玉だったのかもしれない。2時間の自由行動の後、20時半からセーヌ川で、2時間半の優雅なディナークルーズが組まれていた。
3日めは、さらに観光色が強い。国会議員らには午前中に1時間の保育園視察があるものの、他の参加者は14時40分まで研修はない。国会議員らも早々に合流し、シャンゼリゼ通りでの自由行動が2時間以上。旅程表には「ショッピング等をお楽しみください」とわざわざ書かれ、はしゃぎっぷりが伝わってくる。
元自民党職員で政治アナリストの伊藤惇夫氏は、この「実働6時間」の旅程表を見て、「“観光旅行” と受け止められても仕方がない」と思ったという。伊藤氏が続ける。
「これだけ自由時間がある視察を見たことがありません。この日程を決めた人物は、視察の目的がこれで果たせると、なぜ考えたのか。団長の松川さんは、党費を使ったことは認めているので、党員に説明する責任があります」
そして、この「研修ノート」には、さらなる問題が隠されていた。視察の参加メンバーが掲載された「団員名簿」では、同行していた松川議員の次女が、38人の派遣団員に含まれているのである。
松川議員は、SNSに投稿した釈明文にこう記している。
《38名の参加者は、全国の女性局所属の地方議員及び民間人で女性局幹部となっている方々》
自民党に入党できるのは、満18歳以上だ。松川議員の次女は小学4年生で、当然その資格はないはずだが――。
自民党関係者によれば、今回のフランス視察で、国会議員以外の派遣団員の自己負担額は20万円だったという。もちろんこの金額で渡仏できるわけもなく、つまり次女の渡航費にも、党費が使われた可能性があるのだ。
「党本部は、報道で初めて松川氏の次女が視察に同行していることを把握したようです。松川氏は次女の渡航費について帰国後、党に実費を追加で支払うことになったといいます」(自民党関係者)
さらに松川議員は、初日の結団式で乾杯の音頭を取って以降、旅程表にその名前が登場していない。
「自分が知る限り、視察中の食事会で乾杯の音頭を取るのは、常に責任者である団長でした。松川さんが別行動を取り、研修を欠席していた可能性があります」(伊藤氏)
地方行脚で支持率回復を目指す岸田文雄首相は、この “物見遊山” への批判が拡大していることに、激怒しているという。 

 

●岸田首相、石破元幹事長と会食 世論めぐって非主流派と意見交換か 8/4 
岸田文雄首相は4日夜、東京都内の日本料理店で石破茂元幹事長と会食した。首相と非主流派の石破氏とは距離があるが、マイナンバー問題などで内閣支持率が低迷する中、政権運営などで意見交換し、石破氏の視点を取り込む狙いもありそうだ。
会食には首相に近い遠藤利明総務会長も同席した。首相は、9月中旬を軸に内閣改造や党役員人事などを検討する中、石破氏と世論の動向などについて意見を交わしたとみられる。石破氏は会食後、記者団に「いろいろ話をした」とだけ語った。
石破氏は、首相が自民党岸田派(宏池会)の会長を兼務していることに「(首相が)派閥を離れることは自民党の良識みたいなものだった」などと苦言を呈することもあった。 

 

●なぜ日本に女性政治家が少ないか 票ハラ・セクハラ怪文書・ストーカー被害」 8/3 
「女性が活躍できる社会へ」「女性の力を成長に」「男女共同参画社会の実現」──働く女性が圧倒的多数になった現代では、女性のさらなる飛躍が求められている。しかし、旗振り役となっている政界や経済界を見渡してみると、それが上辺だけであることは明らかだ。
6月末、スイスに本拠地を置く世界経済フォーラムが「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2023」を発表した。男女平等の度合いを示すもので、日本は146か国中125位で、2022年の116位からさらに順位を落として過去最低を記録した。
とりわけ深刻なのは、政治分野で、順位は138位と世界最低レベル。その大きな要因は女性の国会議員の少なさで、衆議院における国会議員の女性比率はわずか10.3%にとどまる。
ジェンダーギャップ指数は、「政治への参加と権限(政治)」、「経済活動への参加と機会(経済)」、「教育の到達度(教育)」、「健康と生存率(健康)」という4分野、14項目のデータに基づいて作成される。
日本が政治分野で極めて低いスコアとなった要因は、前述した国会議員の女性比率に加えて、閣僚に占める女性の割合の低さや、これまで女性首相がひとりも誕生していないことと分析される。
今回の発表を受けて、本誌「女性セブン』は衆参両院の全女性国会議員114人に緊急アンケートを行い、約半数の56人から回答を得た。
「女性の政治参加は他国に比べて遅れていると思いますか」との質問には100%が「思う」と回答。また、「女性であることを理由に困難な局面に遭った経験」の有無を尋ねると、約7割の女性議員が「ある」と答えた。
日本で初めて女性が参政権を行使したのは、終戦翌年の1946年4月に行われた第22回衆議院議員総選挙だった。国土に敗戦の傷痕が生々しく残るなか、復興を求めて82人の女性が立候補し、約1380万人の女性の投票によって39人の女性国会議員が誕生した。
当時の全議員数は466人であり、女性議員の割合は8.4%。それからおよそ80年が経過したが、前述の通り、現在の衆議院の割合は10.3%で、ほぼ横ばいだ。2003年の小泉政権下で自民党は「2020年までに『指導的地位』における女性の割合を30%にする」と打ち出した。しかし2022年現在、企業における女性の管理職はわずか9.4%(帝国データバンク調べ)と目標は遠く及ばない。政財界がいかに“女性参画”に及び腰かがわかるだろう。
「普通の女性」にとって選挙はハードルが高すぎる
なぜ日本では女性議員が一向に増えないのか。
「そもそも日本の政界は女性が立候補することが難しい」と指摘するのは、女性と政治に詳しいジャーナリストの大門小百合さん。
「国政選挙に立候補するには政党の後ろ盾が必要ですが、“普通”の新人にはそれを獲得することは非常に難しい。現にいまの自民党の衆議院議員の3割ほどが『世襲』です。
また、“永田町の慣習”として、時に業界団体の意向をくむことが求められますが、そうした業界のドンと“普通”の女性が渡り合うことはそう簡単なことではありません。経験ある男性が力を握る構造のなか、女性は政治のスタートラインに立つことすら厳しい状況です」(大門さん)
実際に立候補の難しさを肌で感じたというのは、国民民主党の伊藤孝恵参議院議員だ。伊藤議員はリクルートに在職中の2015年、次女の耳の障害をきっかけに、民主党の候補者公募に応募。2016年の参議院選挙に出馬した際は、1才と3才の子供を育てており、育休取得中に国政に挑んだ女性は史上初めてだった。
「育児出馬への批判のみならず、義理の父と母は『子供が不幸になる』と立候補に反対でした。そして選対(選挙対策本部)には昼夜を問わない選挙戦に備え、ひとりホテル住まいをするよう指示されました。それが“選挙戦のセオリー”なんです。でも、授乳中だった私は子供と離れることなど物理的にも精神的にも不可能で、結局、選挙期間中も家から通い、街宣車の中で授乳したりトイレで搾乳したりして乗り切りました」(伊藤議員・以下同)
資金面でも大きな壁が立ちはだかっていたという。
「全県区の参院選は人件費や宣材費を含めると5000万〜1億円の費用がかかります。もちろん党からの援助はありますが、足りない分は20年間の会社員生活の貯金と借金、なけなしの資産売却で何とか捻出しました。お金はかかるし、選挙のイロハはわからない。徹夜で演説内容を考えながら乳幼児2人を育てる毎日は、明らかにオーバーワークでした。でも、それを受け入れなければスタートラインにも立てない。政治未経験の母親が選挙に出る厳しさを実感しました」
家事や育児は「女性の役割」としながら、「男女平等」の御旗のもと、男性と同じように働くことが求められるのが現代を生きる女性だ。そうした社会のオーダーに対し、「全部こなしてやる」と意気込むエネルギッシュな女性候補者は、応援どころか批判にさらされることがある。伊藤議員が続ける。
「選挙活動中は『母親なのに何で選挙に出るの』と批判されます。あるとき、子供を抱いて走っていたら高齢女性に足を引っかけられて転び、その女性に『このバカ親が』と言われました。初めての国会質疑では『1才と3才の子がいるんだろ? 母親だったら家で育児しとけよ!』とヤジられて、悲しさと悔しさで指先が震えました」
心無い声は決して男性からだけではなく、女性からもある。
自民党所属時代はいくつもの要職を歴任し、外交で名をはせた鈴木宗男参議院議員を父に持ち、盤石な“サラブレッド”である自民党の鈴木貴子衆議院議員は、2017年に第1子を妊娠した際、こう批判された。
「国会議員が任期中に妊娠するなんていかがなものか」
鈴木議員が振り返る。
「『公人としての自覚がない』『職務放棄か』という声もありました。私ですらそう言われるのだから、世の女性はもっと大変な思いをしているのだろうと思い至り、自分の言葉で説明したいと夢中でブログを綴ったことを思い出します。“政治は男のものだから女はかかわるな”という意識が性別や世代を問わず根強いことが、日本の大きな課題です」
女性候補者を苦しめる「票ハラ」の正体
伊藤議員や鈴木議員が体験したように、女性政治家へのハラスメントが非常に多いことも大きな問題だ。
「日本は“票ハラ”といわれる、立候補者に対する有権者の嫌がらせがとても多い。選挙に立候補すると自宅の住所が公開される場合もあり、ストーカー行為を受けたり、『○○をやらないと票を入れないぞ』と脅されることも日常茶飯事に起きています」(大門さん)
本誌アンケートでも多くの女性議員が被害を訴えた。その一部を紹介する。
〈セクハラとも受け取れる下品な怪文書を多数配布された。例:○○氏の愛人など〉(自民党・高市早苗衆議院議員)
〈国会議員になりたての頃、自民党の男性議員に「みずほちゃん、女の子なんだからおとなしくしていなさい」と言われたときはびっくりした〉(社民党・福島みずほ参議院議員)
〈ストーカー被害で警察に届けを出し、問題解決に協力いただいた〉(れいわ新選組・櫛渕万里衆議院議員)
〈トラブルがあったとき、正か否かではなく「女なんだから謝らなイカン!」と理不尽なことを言われることも多くある〉(日本維新の会・岬麻紀衆議院議員)
キャスターや女優としても活躍した日本維新の会の石井苗子参議院議員もさまざまな嫌がらせを受けてきた。
「政治家になった途端、男性議員から『化粧が濃い』と言われました。続けて、『女の政治家は汚くていいんだ』とも。最初こそ気にしていましたが、あるとき“もういいや”と吹っ切れた。同時に、女性こそきちんと主張していかなければと気持ちが強くなりました。女性議員だからこそいえる自分の意見を主張し、ポリシーを持っていまも活動しています」(石井議員)
伊藤議員は永田町には旧態依然とした固定的性的役割分担意識がはびこっているという。
「子育ては“家内”に任せて、自分の子供の成長には目もくれず、『地元の盆踊り大会を50件ハシゴした!』、『連日深夜まで続く会合で政局論争!』など、24時間365日働くことを是とする“男のロマン政治”はいまだにあります。ある議員のお連れ合いの女性から、『夫に子育てしてほしいといったら、国会議員は国会や地元で天下国家を語らねばならないから家には帰れないものだ』といわれたと聞いてため息が出ました。これだから国会の子育てや介護に関する政策は的外れなのです」 

 

●松川るい議員、フランス外遊に娘を同行させていた! 8/2
大使館が「子どもの世話」外務省関係者が明かす “家族旅行” の内幕
フランス研修の様子をSNSに投稿し、「ただの観光旅行だったのではないか」などと炎上している問題について、自民党・松川るい参院議員は、8月1日、党本部で「軽率だったと反省しています」と謝罪した。小渕優子組織運動本部長から注意を受けたとも明かした。
宏池会に属する自民党中堅議員は、松川議員の対応に、こうあきれ返る。
「小渕議員の名前を出したのは、幹部に叱責されたことで、『処分は受けたからこれで幕引きにする』と言いたいわけです。でも、松川議員と小渕議員はもともと親しい飲み仲間ですから、注意がどこまで本当なのかわかりません。それに、小渕議員には、本来、党の処分を下す権限がありません」
松川議員は「研修自体は有意義だった」と述べ、エッフェル塔の前で撮った記念写真を削除したことについては、「誤解されてはいけないし、本意ではない」と、あくまで「誤解されないこと」を理由にしている。
しかし、本誌は、まだ松川議員が語っていない研修の実態をキャッチした。じつは、松川議員は次女をフランスに同行させていたというのだ。
「研修に参加した今井絵理子議員のSNSにも次女は写っていて、その写真も現在は削除されています。松川議員の “公務中” は、次女をホテルに一人で残すわけにもいかないので、日本大使館に預けられていました」(外務省関係者)
本誌は、別の家族写真で、今井議員が投稿した写真の少女が、松川議員の次女であることを確認している。
さらに、このフランス研修では、まだ登場していない彼女の家族の存在がある。前出・外務省関係者が、松川議員の “家族旅行” の裏側をこう明かす。
「松川議員も外務省出身ですが、ご主人の新居雄輔さんは国際情報統括官という局長級の手前にいる幹部です。今回の研修では、日本大使館が世話をするように、指示が出ています。
30人以上の世話は大使館にとっておおごとですし、『そのうえ子供の世話までさせるのか』と不満は出たようですが、議員と幹部の家族ですから、仕方ないとなったようです」
外務省幹部の手前、いち議員の子供の世話までしたという大使館。政治アナリストの伊藤惇夫氏は、「党の研修旅行に家族を同行させるなんて聞いたことがない」として、こう憤る。
「松川議員は自己負担に加え、党費から出したと主張していますが、党費と政党助成金の収入割合は3対7くらいで、そもそも資金報告書にも収入としてまとめられているので、助成金(税金)をまったく使っていないというのは、ちょっと苦しいと思います。
松川議員も家族ぶんは自費でしょうが、たとえば民間企業の出張で、費用を出して家族を同伴させることが認められるんでしょうか」
海外の場合、ホテルの宿泊費は何人泊まっても同額の室料である場合が多い。仮に松川議員が次女と一部屋を使ったなら、費用分担をどうしたのか、これひとつだけでも再度の説明が必要になるだろう。先の自民党中堅議員もこう語る。
「報告を受けた岸田首相は無反応だったようです。まあ、欧米訪問時、秘書官だった息子さんが公用車で観光していたことを蒸し返されるのを案じたんでしょう。
いずれにせよ、松川議員は大ポカです。じつは松川議員は次の総選挙で衆院への鞍替えを狙っているという話もありました。ですが、今回の炎上で、状況は相当苦しくなりました」
本誌は、松川議員に、今回の研修旅行に次女が同行していた事実や、自腹と党費の負担の内訳等について質問した。回答は以下だ。
「今般の幼児教育や少子化対策についての意見交換などを目的とした研修については、育児中で預けることが困難な子どもがいる女性議員の参加も可能となるように、子どもの参加も認めることとしました。なお、研修の経費については、全額自己負担としています」
いまだ非難が冷めやらぬフランス研修問題。松川議員にとっては、図らずもよい “研修” となったようだ。
 
 

 

●自民党女性局の議員、フランスへの「研修」で“エッフェル塔ポーズ”写真 8/1
自民党の女性局の議員らによるフランス研修に批判的な声が高まっている。松川るい議員がSNSに投稿した“エッフェル塔ポーズ”をする写真に、ネット上で「観光旅行のようだ」との声が出ているのだ。作家の甘糟りり子さんも議員らの行動に疑問を投げかける。
Twitter改め Xでアトランダムにいろいろな投稿を流し読みしていたら、ある投稿に目が止まった。
「女性局メンバー38名、無事にフランス到着!! #フランス #自民党 #女性局」。自民党の今井絵理子議員が7月24日に投稿したものだ。秋田や福岡の被災地ではいまだに生活がままならない人がたくさんいる今、旅費の高い時期にわざわざ大規模な暴動が起きているパリまで大勢で何をしに行ったのだろうと不思議に思った。続けてスクロールしていると、同じく自民党の松川るい議員の投稿が現れた。それにはエッフェル塔の前、赤い文字で「自民党 女性局」と書かれた横断幕とともに30人ほどで記念撮影した写真、女性3人がエッフェル塔の前で笑いながら、塔に見立てて両手を頭の上で合わせている写真があった。
これ、観光旅行ではなく研修旅行の模様だそうである。国会議員4名と地方議員、民間人の女性幹部による「研修」とのこと。
ちなみに、記念写真の横断幕には「女性局」の文字の他、ハートマークのような赤いロゴもあって、「女性=赤、ハート」みたいな旧態依然としたセンスを女性側が押し付けられないようと動く組織ではないことがわかる。むしろ嬉々としてそれを受けいれている人たちかもしれない。
研修という名の親睦旅行?
研修旅行というからには、旅費は税金から支払われているのだろう。受け取る側は当然そう思う。仮にエコノミークラスとして JALだとシャルル・ド・ゴールと羽田の往復便で約20万円、38人分だと空港税は別として飛行機代だけで最低760万円だ(単なる偏見だけれど、国会議員はエコノミークラスには乗らないような気がする)。帰国は28日だったようで、円安の折3泊分の宿泊費や滞在中の食費など、38人分の旅費がいくらかかったのかとつい考えてしまう。
電気代の高騰で酷暑の中エアコンを使うことためらって熱中症で命を落とす高齢者や値上げの嵐で食費にも困る母子家庭がいるのに、はっきりいって急を要するわけでもない研修という名の親睦旅行に行き、嬉々として楽しそうな様子をSNSにアップする政治家ってどうなのよ。Twitter改めXの画面を見ながら、そんなことを思った。
同じように感じた人は多く、当然のことながら批判の嵐となった。今井絵理子議員がまずしたことは、自分宛に送られてきた「税金使って旅行はどうですか? 早く死んでほしいです」というDMのスクショをわざわざあげて、「(自分はいいけれども)世の中にはその言葉に悩み、苦しみ、思い詰める人もいます。SNSの発言には気をつけなければいけないですね」と投稿することだった。死んでほしいなどとは誰に対してでもいうべきではないのは当たり前けれど、そこをピックアップして自分への批判をずらそうとしているようにしか思えない。 SNS の発言には気をつけた方がいいのは誰なのか。
続けての投稿には、「(フランスの議員と会って)女性参画についての意見交換」とあったが、自分がどんな意見を持っていてどういう政策が必要なのかは一切なし。挙句に、国会議員の仕事で重要なのは「外交」とおっしゃる。外交! これは38人による日仏外交旅行だったのか。
松川るい議員は、観光気分丸出しのエッフェル塔での3人の写真を削除はしたが、「問題だとは思っておりません」だそう。5年に一度程度、海外視察に行き、課題についての見聞を広め、政策や今後の活動に活かすことが目的で、旅費は党費と参加者の自腹で捻出しているという。本当に必要な「外交」「研修」なら正々堂々と税金で行けばよいし、自費も出しているなどといいわけする必要もない。しかし「見聞を広げる」なんて曖昧なこと言われたら、全部自腹にしてプライベートで行ってもらいたいのが一国民である私の本音だ。
家庭こども庁が進める“少子化対策”への疑問
少し前、家庭こども庁の「若者の子育て家庭訪問」「 Jリーグとコラボ」が話題になった。前者は文字通り、若者が子育てをしている家庭を訪れて話を聞くという取り組みで、「家族留学(これは家庭こども庁による単語)」することで、若者に家族や子供と暮らすことはどういうことかを知ってもらうという目的だそう。後者は、子供をJリーグの試合に招待する取り組み。これでほんの少しでも少子化に歯止めがかかると本気で思っているのだろうか。どうして数あるスポーツの中からサッカーに絞るのか。
同庁はゴールデン・ウィークには「ファスト・トラック」と称して、公の施設で子供を優先するレーンを設ける取り組みも行っているが、こうしたことにかかった金額は5兆円。それだけの予算があるのなら、直接貧困家庭の補助に回す、もしくは出産費用の補助に回した方が、産みたくても経済的事情で迷っている人の後押しになるのは? と普通の感覚なら思う。
自民党女性局のフランス旅行も、家庭こども庁の取り組みも、困っている人(=国民)は他人事というところが共通だ。自分たちの「やってます」感ばかりが優先されている。
政治は本来、弱い者を助けることを最優先にすべきだ。弱いものを助けるために自分たちが強くならなければ、という理屈もあるけれど、もう待ったなしの人たちがたくさんいるのが今の日本である。そういう人たちへの視線と取り組みがなければ、子供は増えるわけがないし、子供が増えなければやがて国も朽ちていくだろう。
こうしたことを書くと、すぐに「左巻き」だのなんだのいちゃもんをつけてくる人がいるが、私は支持政党などないし、はっきりした思想もない。自民党議員の方に本の帯を書いてもらったことはあるけれど、政治にそれほど関心はない。できればずっと無関心でいたかったけれど、それがいよいよ怖くなってきた。気がつくと増税の嵐、その一方、世界の中でも報酬が高い日本の国会議員たちは優雅にフランス旅行したり、ズレまくった政策に大金を投じたり。微々たる小さな声でもあげていかないと取り返しがつかなくなりそうな気がする。

 

●岸田首相、誕生日を迎え「原点に戻ります」発言にネットで集まる「減点だよ」 7/29
7月29日、岸田文雄首相が66歳の誕生日を迎えた。
「偶然にも、立憲民主党の泉健太代表、共産党の志位和夫委員長が同じ誕生日です。それぞれ49歳、69歳になります。ほかにも、亡くなられた橋本龍太郎元総理、江田三郎氏、羽田雄一郎氏などがいます。これだけ同日生まれの政治家が多いのも珍しいですね」と政治担当記者は語る。
岸田首相は28日、担当記者団に「多くの方々に支えられて年を重ねることができた。感謝申し上げる。今年の夏はあらためて政権発足の原点に戻り、現場の声、さまざまな声を聞く取り組みを進めている。こうした声を大事にしながら、結果を出すべく努力を続ける」と述べた。
この1年は、岸田首相にとって「支持率との戦い」だったのではないだろうか。
「振り返ると、支持率下落につながる出来事ばかりでした。2022年は、誕生日直前の7月8日に安倍晋三元首相が銃撃されましたが、9月におこなわれた国葬は国論を二分し、内閣支持率は前月比12.0ポイント減の32.3%(時事通信・以下同)と、政権発足後、最低になりました。その後は旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と、多くの自民党議員との深い関係が問題視されました。閣僚がドミノ辞任した10月は27.4%と、政権維持が危ぶまれる30%を割り込み「危険水域」に突入しました。
その後、G7広島サミットで評価された時期もありましたが、2023年6月、公邸での親族との忘年会と、不適切な記念写真撮影が発覚。長男の秘書官が更迭され、岸田首相自身も参加したことが報じられ、支持率は35.1%と上昇分が“帳消し”されたかたちになりました。
そして、マイナンバーカードのトラブルが頻発した7月上旬の調査では、30.8%でした。この支持率低空飛行から抜け出せる明るい材料は見当たりません」(政治ジャーナリスト)
誕生日を前に、決意を新たにしたようだが、大雨災害に見舞われた福岡入りが、発生から約2週間後だったことなどで批判も浴びている。
ネットのニュースサイトには、誕生日とは思えない辛らつな書き込みが目立っていた。
《あなたの誕生日なんてどうでもいいですから》
《「感謝してる」って言ってる奴がここまで国民を苦しめるかね?》
《原点に戻る?じゃなくて貴方の行動は全て減点ですよ》
この夏は全国行脚をして、車座対話をする岸田首相。国民の暮らしをよくする「結果」を早く出してほしい。
●支持率低下が示す政治不信 7/29
岸田文雄内閣の支持率が続落しています。東京新聞は十九日の社説で「岸田文雄首相はマイナンバー問題をはじめ国民が懸念を抱く課題を巡り説明を尽くしてきたとは言い難い。国民の不安が見えず、傲慢(ごうまん)な政権運営を続けるなら、支持率回復は到底、望めまい」と指摘しました。
社説執筆時、共同通信による最新の世論調査で内閣支持率は六月の前回調査から6・5ポイント減の34・3%。岸田内閣支持率の過去最低は昨年十一、十二両月の33・1%ですので最低に迫る数字です。
その後、発表された読売、毎日新聞による世論調査でも支持率はそれぞれ下落しています。異なる調査ですので単純に比較はできませんが、支持率が下落傾向にあることは間違いないようです。
理由の一つに挙げられるのが、マイナンバーカードを巡る混乱です。
共同通信の調査では、現行の健康保険証を来年秋に廃止してマイナカードに一本化する政府方針に76・6%が延期や撤回を求め、74・7%が政府による総点検では「解決しない」と答えています。
マイナ保険証は、希望しない人に交付されたり、他人の情報がひも付けられたりするなどトラブルが相次ぎ、国民が不安を募らせています。
にもかかわらず、政府はマイナ保険証に一本化する方針を変えていませんし、首相をはじめ政府側が説明を尽くしてきたとは言えません。支持率が落ち続けて当然です。
首相の独善的な政権運営はマイナ保険証に限りません。
安全保障政策を巡っては、国会や国民の間での幅広い議論を経ず、歴代内閣が認めなかった「敵基地攻撃能力の保有」を容認し、防衛予算の倍増と、長射程ミサイルの整備など防衛力の抜本的強化にかじを切りました。
首相は、厳しく制限してきた殺傷能力を持つ武器輸出の解禁に向けた協議も与党に急がせています。
いずれも長年、国会や国民が積み上げてきた議論を一方的に反故(ほご)にするものです。
支持率がすべてではありませんが、政権への信頼度を示す指標として、誠実に受け止めなければなりません。
「信なくば立たず。信頼こそが、政治の一番大切な基盤であると考えてきた」。国会でこう演説したのは、首相自身ですから。 

 

●日本の人口51万人減少し1億2541万6877人に 減少幅は過去最大 7/26
日本の人口について、去年1年の日本人の減少幅が過去最大を更新する一方、外国人は3年ぶりに増加に転じたことがわかった。
総務省が、住民基本台帳をもとに発表した2023年元日現在の日本の総人口は、1億2541万6877人で、1年で51万人余り(51万1025人)の減少となった。
日本人人口は、約80万人(80万523人)減少し、調査開始以来最大となる一方、コロナ禍で停滞していた外国人人口は約29万人(28万9498人)増で、最大の増加幅となった。
増加数が多いのは、東京、次いで大阪と大都市圏だが、増加率でみるとトップは大分、次いで長崎と、九州圏などが上位となっている。 

 

●内閣支持率最低 政治の信頼をどう回復するか 7/25
支持率が低迷し続ければ政策遂行に支障が出かねない。岸田首相は政治の進め方を見直し、信頼の回復を急ぐべきだ。
読売新聞社の全国世論調査で、岸田内閣の支持率が35%となり、内閣発足以降で最低となった。5月の調査から2か月で20ポイント以上急落した。
マイナンバーを巡るトラブルで、首相が指導力を発揮していると「思わない」との回答は80%に達した。政府の物価高対策を「評価しない」も79%に上った。
マイナンバーに他人の情報が 紐付 ひもづ けられるミスなどが相次いだため、政府は今秋までにマイナンバーカードのデータを総点検するとしている。だが、実務を担う自治体からは「業務量が膨大で間に合わない」との反発が出ている。
調査では、総点検によってトラブルが解決すると「思わない」との回答が78%あった。政府が自治体に過度な負担をかけているようでは、ミスはなくならないとみられているのだろう。
岸田政権は発足以来、防衛力の強化や少子化対策など難しい課題に取り組んでいる。にもかかわらず国民の評価が低いのは、政策決定の手法に一因があるようだ。
マイナカードを巡っては、自治体など現場の実務や作業の実態を考慮せず、昨秋、一方的に健康保険証の廃止を決め、先の国会で法整備も図った。
防衛費増額のための増税は、自民党との調整が不十分だったため、時期を決められずにいる。
自民党支持層に限ると、安倍内閣当時は支持が9割前後あったが、今回は69%だった。十分な議論もなく、性的少数者(LGBT)への理解増進法を成立させたことで保守層が離反したのだろう。
年代別でみると、18歳から39歳の若い世代の支持率が、中高年世代より低い傾向がみられる。
政府は少子化対策で、児童手当を拡充する方針を決めたが、その財源探しの一環で、16〜18歳の子どもがいる家庭の扶養控除の見直しも検討している。
これでは若い世代で、対策への期待より、将来の負担増への不安感が先に立つのも無理はない。
いずれの課題についても、政策決定プロセスは不透明感が拭えない。議論が煮詰まらないまま、結論が一方的に示されているような印象を与えていることにも、問題があるのではないか。
日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。人口減少への対策も急務だ。首相は政権基盤を固め直す必要がある。

 

●共産 小池書記局長「許しがたい発言」維新 馬場代表の批判に 7/24
日本維新の会の馬場代表が、共産党を「無くなったらいい政党だ」などと批判したことについて、共産党の小池書記局長は「許しがたい発言で、断固抗議する」として撤回を求めました。
日本維新の会の馬場代表は、23日出演したインターネット番組で、共産党について「日本から無くなったらいい政党で、言っていることが世の中ではありえない」などと批判しました。
これについて、共産党の小池書記局長は、24日の記者会見で「許しがたい発言だ。民主主義は互いの違いを認めつつ尊重するのが原理で、ほかの党の存在を否定することは民主主義の否定だ。断固抗議し、発言の撤回を求める」と述べました。
また、同じ番組で馬場氏が「第1自民党と第2自民党が競い合うべきだ」と述べて自民党と維新の会が政権の座をかけて争うべきだという考えを示したことについて、小池氏は「維新の会は、自民党政治を変えるつもりはなく、『自民党馬場派』だと認めたことになるのではないか。維新の会がいくら大きくなっても日本の政治は変わらない」と指摘しました。
●台湾有事に備えたシェルター整備を疑問視「日本の政治家の外交の失敗」 7/24
お笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔(42)が24日、ツイッターを更新。政府が台湾有事を念頭に、南西諸島で、住民が避難するシェルターの整備について協議していることに疑問の声を上げた。
松野官房長官は22〜23日に沖縄県の石垣島や与那国島を訪問。台湾有事に備え、シェルターの整備について地元自治体と協議。今後は地元の要望を踏まえ検討していくという。
村本はこの経緯を報じる記事を引用し「こう言う時に攻められるのは中国でもなく、北朝鮮でもなく、基本的に、シェルターまで作ることになった日本の政治家の外交の失敗」(原文ママ)と外交政策の失敗がこうした事態を招いたという見解を示した。
その上で「飛ばされた時の対応じゃ手遅れ、飛ばされないための、シェルターを作らないために、中国や北朝鮮に出向き、信頼関係を作ってきたらいい」とあくまで、外交で攻撃されない状況を作ることの重要性を訴えた。
●岸田首相“やるやる詐欺”が過去の発言でハッキリ 7/24
岸田内閣の支持率低下が止まらない。
読売新聞社が21〜23日に実施した全国世論調査によると、内閣支持率は前回(6月23〜25日調査)から6ポイント下落して35%となり、2021年10月の内閣発足以降最低となった。毎日新聞社が22〜23日に行った世論調査でも、支持率は28%で、2月調査(26%)以来となる20%台に落ち込んだ。
「政権発足の原点の姿勢を大事に、積極的に現場の声を聞かせてもらう」
支持率回復を図ろうと、岸田首相は21日から車座集会などで地元の住民と対話するための地方行脚をスタート。同日、栃木県足利市の障害者支援施設を視察した際、改めて狙いについて説明していたが、ネット上では《本当に「現場の声」を聞く気があるのか疑問》《今ごろ慌てたところで遅い。国民は岸田さんの正体を見抜いている》といった懐疑的な声が少なくない。これでは信頼回復も程遠いが、無理もない。というのも、岸田首相は首相就任時の国会答弁でも同様の発言をしていたが、政権がいざ始まってみれば全く違っていたからだ。
ちなみに2021年10月8日の衆院本会議で、岸田首相はこう断言していた。
「この度、私は、第100代内閣総理大臣を拝命いたしました。(略)私が書きためてきたノートには、国民の切実な声があふれています。一人暮らしで、もしコロナになったらと思うと不安で仕方がない。テレワークでお客が激減し、経営するクリーニング屋の事業継続が厳しい。里帰りができず、一人で出産。誰とも会うことができず、孤独で、不安。今、求められているのは、こうした切実な声を踏まえて、政策を断行していくことです」
「国民に納得感を持ってもらえる丁寧な説明を行うこと、常に最悪の事態を想定して対応することを基本とします。(略)国民の皆さんと共にこれらの難しい課題に挑戦していくためには、国民の声を真摯に受け止め、かたちにする、信頼と共感を得られる政治が必要です。そのために、国民の皆さんとの丁寧な対話を大切にしていきます」
「我々が子供の頃夢見た、わくわくするような未来社会を創ろうではありませんか」
すべてが口先ばかりで「お先真っ暗の未来」
果たして国民の切実な声を書き留めたという「岸田ノート」は今、どうなっているのだろうか。「切実な声を踏まえた政策」に本気で取り組んでいると言えるのか。「国民に納得感を持ってもらえる丁寧な説明」は、これまでの国会答弁や記者会見でみられただろうか。
SNS上でも、《政権が本格的に始まってからの言動を振り返る限り、すべてが「口先ばかり」ではないか》《今度の地方行脚もポーズだけでしょ。期待しない》との投稿が目立つ。
「わくわくするような未来」どころか、報じられる内容は、退職金や通勤手当に対する新たな課税案といった「サラリーマン増税」の話題ばかり。肝いりの少子化対策も具体策や財源が不透明で、「お先真っ暗の未来」としか思えない。
一方、この間の岸田首相が積極的に取り組んだことと言えば、敵基地攻撃能力の保有を含めた防衛力の強化と防衛予算の拡大だ。
米国のバイデン大統領は6月にカリフォルニア州で開いた支持者集会で、日本の防衛費の大幅増額は自分が岸田首相に働きかけた成果だ、とアピールしていたが、岸田首相は外相時代の衆院外務委員会(2014年5月)でこう発言していた。
安倍政権下で進んだ集団的自衛権の行使容認をめぐり、日本が米国の言いなりになるのではないかと懸念を示された時だ。
「仮に集団的自衛権の行使を認めると仮定した場合、あくまでも我が国は主体的に判断するわけですので、ノーと言うべきときにはしっかりとノーと言う、このことについては改めて申し上げたいと存じます」
岸田首相は今回、バイデン大統領から防衛費の増額を求められた際、主体的に考えたのか。「しっかりとノー」と言ったのだろうか。
「やる」と言ったことは何もせず、「やらない」という姿勢を強調したことをどんどん進める。これでは国民の信頼は得られないのではないか。 

 

●「日本」とは一体なんだろう…政治家や権力者などが切り捨ててきたもの 7/23
『忘れられた日本人』で知られる民俗学者・宮本常一とは何者だったのか。その民俗学の底流にある「思想」とは? 
「宮本の民俗学は、私たちの生活が『大きな歴史』に絡みとられようとしている現在、見直されるべき重要な仕事」だという民俗学者の畑中章宏氏による『今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる』が2刷重版出来、話題となっている。
なぜ「庶民の歴史」なのか?
全国すみずみまで歩いて、多くの人びとから話を聞いた宮本常一。
なぜ、庶民の歴史を構想するようになったのだろうか。
〈歴史に名前を残さないで消えていった人びと、共同体を通り過ぎていった人びとの存在も含めて歴史を描き出しえないものかというのが、宮本の目標とするところだった。また「進歩」という名のもとに、私たちは多くのものを切り捨ててきたのではないかという思いから歴史を叙述することを試みた。〉(『今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる』より)
「大きな歴史」から零れ落ちたり、それが切り捨ててきたものがある。
宮本は、「小さな歴史」の束から、世間や民主主義、多様な価値、さらには「日本」という国のかたちをも問いなおしたのだった。
「共同体の民俗学」から「公共性の民俗学」へ
では、宮本常一の思想とは、具体的にどのようなものだろうか――。
『今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる』では、「『共同体の民俗学』から開かれた『公共性の民俗学』へという意志と思想が潜在しているのではないか」と指摘されている。
〈宮本は庶民の歴史を探求するなかで、村落共同体が決して共同性に囚われてきただけではなく、「世間」という外側と絶えず行き来し流動的な生活文化をつくってきたことも明らかにする。そしてそれは、公共性への道が開かれていたと解釈することができるのだ。また近代を基準にみたとき、さまざまな面で遅れているとされてきた共同体の生活、あるいは慣習のなかに、民主主義的な取り決めをはじめ、民俗的な合理性があったことも裏づける。〉(『今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる』より)
〈宮本常一の民俗学には閉ざされた「共同体の民俗学」から開かれた「公共性の民俗学」へという意志と思想が潜在しているのではないか。成員を統合する価値だけで結びつくのではなく、絶えず外側から価値を導入し、変化していくのだ。また主流に対する傍流を重視すること、つまりオルタナティブの側に立って学問を推し進めていったことも特筆すべきであろう。〉(『今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる』より)
つづく「日本全国「80歳以上の老人たち」の話が教えてくれたこと…幕末生まれと明治生まれの人の「決定的な差」」では、宮本のフィールドワークの手法にはどのような特色があったのか、それは彼のどんな体験から編み出されたものだったのか、「よい老人」とは誰か、などについて掘り下げている。

 

●20年前、すり替えられた道州制構想 政治家は「国のあり方」語れ 7/22
20年前、地方と国のあり方が変わるチャンスがあった。「道州制」の北海道での先行導入だ。しかし、国によって議論はすり替えられ、幻になった。なぜこの国は変わらないのか。北大公共政策大学院の小磯修二客員教授は、日本の政治家の決断力の欠如だと嘆く。
――コロナ禍は、地方分権を考える契機になりました。
「長時間、過密な状態で通勤する都市生活を不合理だと感じる人が増えました。ITの発達で地方でできることも増え、中央に集中する仕組みが効率的という考え方も見直されました。感染症対応では、国が全権限をもってコントロールしようとしたが、個別省庁の権益にこだわりすぎました。全てのリーダーがよかったわけではありませんが、任されれば、地方は十分対応できる。分権後の地方に統治能力があることを試す機会になりました。人々の意識が変わってきたいまこそ、分権を進めるチャンスです」
――地方分権がなぜ必要なのですか。
「日本は近代国家になって150年余り。中央集権型の仕組みは欧米に追いつくために必要でした。戦後、憲法で地方自治がうたわれましたが、経済復興は中央主導でした。身近な生活に関わる保健や医療、教育といった政策は次第に目が行き届かなくなっており、人口減時代は一層きめ細かさが求められます。住民との距離が近い行政サービスを担う人々が自らの裁量と権限を持ち、向き合うべきです。しかし社会の隅々まで中央集権型の仕組みが残り、分権が進みません」
――2014年から国は地方創生を打ち出しました。
「出生率の低い東京に若者を・・・
●政策決定「賢い政治を」 岸田首相、トップダウン巡り 7/22
岸田文雄首相は22日の令和臨調集会で、政策決定に当たる「政と官」の関係性について、トップダウン方式とボトムアップ方式に言及し「どちらが良いという問題ではなく、課題やケースによって、しっかり使いこなせるのが賢い政治だ」と説いてみせた。
自らが政策決定を主導するだけでなく、官僚らの意見にも耳を傾ける姿勢を示した形。この手法を「使い分けることが国家公務員のやりがいにつながる」と強調した。
 
 

 

●日本の政治家は「中学生レベル」...で怒るのはだれか 7/21
「政治家のレベル」とあるニュース番組でコメンテーターが、「今の政治家のレベルなど、中学生と変わらない」と発言したが、政治家がこんなことを言われてしまうのは、とても悲しいことである。このような社会状況は極めて深刻な事態である。
翌日、全国の中学校で抗議デモが起きたことは、もっと深刻な事態である。

自民党の高野光二郎参院議員は、居酒屋で秘書に暴力を振るい、鼻から出血させたとの理由で議員辞職。手の甲で鼻をたたいたという。
なるほど、私が中学生の頃は「校内暴力」の時代だったが、その当時は教室や部室でしばしばこんな光景が見られた。しかし、最近の中学校ではだいぶ減っただろう。
立憲民主党の田島麻衣子参院議員は、参院経済産業委員会の場で「手当」を「てとう」と誤読して連呼。漢字の間違いくらい目くじらを立てる必要もないと思うものの、「手当」はさすがに中学生でも読めるレベルである。
日本維新の会の猪瀬直樹参院議員は、参院の地方デジタル委員会で大あくび。さらに、他の議員の発言中にはスマホの音が。委員会室での携帯電話などの使用は禁止されているため、審議は一時中断となった。中学校の教室か。
ちなみに私は今から10年以上前、とある文学賞の授賞式の場で、猪瀬氏から一喝された経験がある。友人の物書き連中と楽しく話していたら、「おまえら、うるさい!」とものすごい形相で怒鳴られたのである。
今となれば良き思い出として喜んでいるのだが、私とて国会で大あくびする議員には一喝してみたいものだ。
品格も良識も常識もない
れいわ新選組の山本太郎代表は、参院法務委員会で委員長席に向かって飛びかかるという「ダイブ」を敢行。自民党議員にけがを負わせたとされる。
とてもではないが、全国の子供たちに見せられる光景ではない。今後、各地の中学校の学級会で「気に入らないから」との理由で「ダイブ」する子供が出ないことを祈る。
さらにこの件に関しては懲罰動議が出されたものの、結局、懲罰は見送り。これについて、れいわ新選組の大石晃子共同代表はSNSで「懲罰粉砕しました」と発言。
懲罰が見送られた理由を自民党の石井準一議院運営委員長は「山本氏からの反省の言葉があった」としていたが、大石氏は「最後っ屁かまして逃げて行きよったなー。自民、公明、立憲らは。本人『反省』なんかしとらんで」と書き込み。
もはや国会には品格どころか、良識も常識も存在しない。議会制民主主義とは、かくも惨めなものなのか。
岸田政権は「異次元の少子化対策」を掲げながら、やっていることは「異次元の増税政策」。そんな与党に対し、野党は愚にもつかない体たらくだ。与党は無慈悲、野党は無能。やっていることは、学芸会かプロレスか。
こう書けば、プロレスラーから抗議デモが起きる。
●ジェンダー指数、挽回は 7/21
日本で男女格差の是正が進まない。世界経済フォーラムが6月に発表した2023年の日本の「ジェンダー・ギャップ指数」は過去最低の125位(対象は146カ国)だった。このままでは日本は女性が活躍しにくい国との国際的なイメージが定着する。
指数は男女平等の度合いを示す。内閣府の20年の資料は「指数が高い、男女格差が少ないほど出生率は高まる傾向」と分析する。少子化にも関係する。
初めて公表された06年以降・・・

 

●立ちすくむ政権と引きこもる野党、日本政治の正念場 7/20
安倍晋三元首相が街頭演説中に銃撃されて亡くなって1年がたつ。自民党には依然、安倍政治を懐かしむ空気は根強く、命日の7月8日を中心に新聞や雑誌には安倍氏の在りし日の写真や安倍政治を振り返る記事が躍った。
ただ、歴代最長、第2次政権以降の7年8カ月にそれに見合うだけの長さを感じないのも事実である。2012年末の発足以降、地方創生、一億総活躍、働き方改革など色々な新機軸に手をつけたはずだが、いずれも十分に実を結ばず、どこへもブレークスルーできないままの退陣だったからである。
翻って岸田文雄首相。会期末に衆議院の解散があるかもしれないとの臆測が駆け巡った通常国会が終わってひと月、マイナンバーカード制度のトラブルへの対応は迷走し、政権への信頼は大きく損なわれた。政権にもはや新味はなく、さりとて岸田カラーは鮮明ではない。G7広島サミットで上がった内閣支持率も再び低下した。秋以降は何が起こるか見通せないまま、この政権もブレークスルーできないまま立ちすくんでいる。
立憲民主党以下の野党もまた、安倍時代の呪縛にとらわれている。国際情勢の変化にもかかわらず、安保法制反対を言い募り、激変する国際経済へのマクロ分析が足りぬまま、減税や配分を主張する。新しい状況への対応に踏み出さない「政策的引きこもり」に他ならず、与党の発想を超える新しい政策を掲げ、各党を束ねて選挙協力を実現し、政権交代を狙う姿勢は見られない。
いったんは消えた解散風が再度、吹くことが予想される秋を前に、与党、野党の現在地と日本政治が抱える課題について考えたい。
「政策革新」を打ち出せない岸田政権
安倍氏というアイコンを失い、自民党右派の存在感は希薄になった。かつての嫌韓・嫌中はSNSの中にとどまっているようで、岸田政権による韓国との外交関係改善を歓迎する世論に、嫌韓・嫌中派からの反発はほぼかき消された。また、憲法改正は人々の関心を引かないまま宙づりである。ナショナリズムがいかに安倍氏一人を頼りにしたかが浮き彫りになった形である。
であれば、本来リベラル色が濃い岸田首相の本領発揮かといえば、そうはなっていない。そこには政権が抱える構造的な条件がのしかかり、コロナ危機・ウクライナ戦争という複合危機も大きな制約となっている。さらに2020年から続くコロナ禍を経て変わりつつある社会構造を、この政権はとらえきれていない。
民主党から政権を奪還した2012年から10年以上が経つなかで、政策形成の行き詰まりがいよいよ顕在化している。アベノミクスによる円安と潜在的な財政危機は国民に大きな不安を与えている。自民党総裁選で岸田氏が「新しい資本主義」を打ち出したのは、アベノミクスの先を構想する狙いもあったのだろうが、それは放棄されたと言わざるを得ない。また、人口減対策、イノベーション促進、働き方改革など、安倍政権に引き続き取り組むべき課題にも、岸田政権ならではの新味はない。「政策革新」を打ち出せないというのが、現政権の性格になっている。
経済学者を活用して新自由主義的な政策を進めた小泉純一郎政権のように、国民から新しい「専門知」を引き出し独自のビジョンを打ち出すといった、かつての政権が試みた方法を岸田政権はとれなかった。コロナ感染拡大やウクライナ戦争といった内外の危機への受動的対応に忙殺された岸田政権に、その余裕はなかったからだ。
そもそも岸田政権は官邸を支えるスタッフの層が厚くはない。松野博一官房長官や栗生俊一官房副長官などの官邸組織は手堅いが、政務は木原誠二官房副長官がほぼ1人で対応していて、「政策革新」には不十分だ。要は、戦略を立てる「ストラテジスト」が不足している。
安倍政権においては、政務秘書官や首相補佐官をつとめた今井尚哉氏がその役割を担い、杉田和博官房副長官などの「官邸官僚」も一定の役割を果たしていた。ただ、安倍政権は岸田政権ほどの危機に見舞われなかった。今の複合危機には、安倍政権の態勢でも対応できないであろう。
目指すのは手堅いリーダー?
複合危機を乗り越えコロナ後の社会と向き合うには、「政策革新」が不可欠である。そのためには、安倍政治など過去からの「脱却」を声高に唱えるしかない。自公政権内の疑似政権交代が必要なのである。とはいえ、岸田政権がそこまで跳躍するには、あまりに過去にとらわれすぎているように見える。
安倍政治のままでいたいとい・・・

 

●日本の政治力、アラブでは期待薄 「あくまでビジネス」技術に関心 7/17
サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールの中東3カ国を歴訪中の岸田文雄首相は17日、2カ国目の訪問先のUAEでムハンマド大統領と会談するなど外交日程をこなした。2021年の政権発足以降、中東は岸田外交の「空白域」となっており、脱炭素エネルギー分野での協力をテコに関係強化を狙う。一方、3カ国を含むアラブ諸国にとって日本の高い技術力は魅力だが、複雑化する中東情勢における日本の政治的な役割への期待感は低いようだ。
ウクライナ侵攻で高まった重要性
「産油国と消費国というこれまでの日本とサウジのエネルギー関係から脱皮し、脱炭素の時代の新たなグローバルパートナーシップへと深化させる」。サウジアラビア西部ジッダで、同国首相のムハンマド皇太子との会談を終えた岸田首相は17日、記者団に、両国の新たな関係構築に向けた意気込みを語った。
岸田首相にとっては3カ国首脳とは初の対面での会談となった。外務省幹部は首相の出発前、今回の歴訪について「3カ国は資金が豊富で、新しい経済に移行しようとしている地域だ。グローバルサウス(新興国・途上国)への関与とは違った意味で、重要な訪問となる」と強調した。
日本にとって中東諸国の重要性を大きく高めたのはロシアによるウクライナ侵攻だ。エネルギー供給が不安定化し、原油の中東依存度は2022年7月に1950年1月の統計開始以降、過去最高の97・7%を記録。今年2月には98・1%に達し、現在も95%前後で高止まりしている。ウクライナでの戦闘に収束の見通しが立たないなか、中東諸国との間で良好な関係を維持することは日本にとって「まさに生命線」(首相周辺)となっている。
米国とサウジの関係悪化もあり、日本政府内には「中東が中露を向いてしまったら危ない。そのために何ができるか」(首相周辺)との危機感も生じていた。岸田首相は昨年から中東訪問を模索。同年8月のアフリカ開発会議(TICAD)出席に合わせ、カタールとUAEを訪問する予定だったが、自身の新型コロナウイルス感染で取りやめとなった。サウジ訪問も模索したが日程面で折り合わず実現しなかった。
実現までには時間を要した。日本は・・・

 

●近代日本政治に現れた解きがたい謎 7/16
近現代史への関心は高く書物も多いが、首を傾げるものも少なくない。相当ひどいものが横行していると言っても過言ではない有様である。この連載「近現代史ブックレビュー」はこうした状況を打破するために始められた、近現代史の正確な理解を目指す読者のためのコラムである。 橋川文三再評価の声は高いが、代表的な論考を集めた著作として現在入手できるのは拙編『昭和ナショナリズムの諸相』だけである。
こうした中、著作集には未収録の原稿も収めた本書出版の意義は大きい。以下、日本人とドイツ人の政治観についての論考を見ていくことにしよう。
ナチス・ドイツからの亡命作家トーマス・マンは、戦後、ドイツに対する深刻な自己批判の講演「ドイツ及びドイツ人」を行った。マンは、良きドイツと悪しきドイツという二つのドイツがあるのではなく、ただ一つのドイツがあるという。
ドイツ敗戦後、マンは決して「ザマを見ろ」という気持ちになれなかったという。悪霊的で、醜悪なドイツが高貴にして深遠なドイツと決して別のものではないことを、芸術家としての直観と、政治と歴史の批評家としての見識によって見抜いていたからである。
ドイツと日本のパターンは類似していると橋川は言う。全ての忌まわしいものは全くその反対の美しいもの、「繊細な心の深さ、俗化されない勤勉さ、自然への敬虔さ、思想と良心の至純の厳粛さ、要するに気高い抒情詩に含まれるあらゆる本質的な特性」から生まれているからである。
マンはドイツ音楽とその源流のロマン派について多くのことを述べ、それが人類に与えた偉大な貢献のことを繰り返し強調している。にもかかわらず、そうしたドイツ人の魂の深さから、遂にはナチスに象徴される「ヒステリックな蛮行、倨傲と犯罪への陶酔と発作」が生み出されたことこそがマンの主題であった。そこには「錯乱的な逆説」がある。
日独で類似する「逆説的」結び付き
それは深くドイツの宿命の根源をついており、それだけにまた悲痛感にも溢れている。そして、橋川は優美な心とその政治的発現形態の錯乱的な醜悪さとの逆説的な結び付きというテーマは、近代日本にも当てはまるという。
日本人もまた、すぐれて繊細な心情の持ち主であり、勤労そのものへの先天的な敬虔さ、自然への愛、清潔な生活感覚を持っていた。それらは何も日本人の自惚れというには当たらないのであって、古くから外国人がしばしば指摘したことである。
しかも少なくとも近代日本の政治に現れた限り、そこにはほとんど謎のように解きがたい日本人の卑小な倨傲さ、頑迷なエゴイズムの様相が濃厚に現れているところがある。ある場合には、甚だしいシニシズムとマキャベリズムも見られた。
この逆説について多くの自己評価が戦後試みられてきたが、マンのようなものはなかったのではないか。丸山眞男の優れた分析があったが、それはやはり「よき日本」と「悪しき日本」の二分法によっており、同時存在の逆説がそのままに問題とされたのではない。
ここからさらに、マンのいう、ドイツ人は政治を妥協と見ることになじめず不潔なものとし、かえって政治に関わる時は悪魔にならねばと思い込むという指摘が日本人にも当てはまるという魅力ある考察が進む。以後は読者自身で読まれたい。
橋川を借りて言えば、私の好きな日本で非常に受けのよいある歴史小説家の近代日本観もこういう二分法によっている気がする。「よき日本」と「悪しき日本」の二分法が、明治の日本と昭和の日本に当てはめられているのである。それだけに橋川の問題提起の意味は大きく、自分を「よき日本」の側に位置づけて過去を裁断することによって近代日本を片付けるような思考からは、これまでもそうだが何も生み出されることはないであろう。近頃まれに見る深く考えさせられる書である。
 
 

 

●日本の低迷と大局を見ない政治 7/12
日本は冷戦終了後30年以上、低迷を続けている。
1990年の統計数字と比べてみると一目瞭然だ。国内総生産(GDP)は世界第2位で米国の50%を超える規模だったが、2010年に中国に抜かれ、今や米国は日本の6倍、中国は日本の4倍だ。
1人当たりGDPに至っては90年には北欧諸国などに次いで世界8位で、アジアでは群を抜いて豊かだったが、今や世界で30位、アジアでもシンガポールや香港に抜かれ韓国や台湾と肩を並べる水準に後退している。
労働生産性や財政の健全性など、そのほかの多くの経済統計でも軒並み主要7カ国(G7)の最下位に低迷している。
このような数字に一喜一憂すべきではないが、深刻に受け止めなければならないのは、ほとんどすべての分野において日本の数字は下降し続けていることだ。すなわち、この30年以上、進化がないことになる。
数字に出ていること以外で進化していると議論する人もいようが、国力の急速な衰えは否めない。日本の政治の劣化に原因があると言えるのではないか。
ポピュリスト的な・・・
 
 

 

●安倍元首相銃撃1年 「分断」が招いた壊れゆく政治 7/8
安倍晋三元首相が銃撃された事件から8日で1年。自民党の最大派閥を率いる政治家が突然の暴力によって命を絶たれた後、日本の政治はどう動いてきたのか。安倍元首相の不在がもたらしたものとは何なのか。政治家らの口述記録を歴史研究に生かす「オーラルヒストリー」の第一人者で、政治学者の御厨貴さんに聞いた。
激動なく、奇妙に「行政化」した政治
――安倍元首相が暴力によって命を絶たれて1年になります。
「あの瞬間、日本の政治が大きく変わる激動の1年を迎えるのではないかと予測しました。しかし、そうはなりませんでした。自民党最大派閥のトップでもあった政治家が突然亡くなったのですから、ある意味、首相を含めてどの政治家がいなくなるよりも衝撃が大きく、権力の中枢に穴が開いたようなものです。日本の政治が混沌(こんとん)とするんじゃないかと当初は思いました」
「しかし、自民党の安倍派の後継争いが激化して分裂したり、政治権力をめぐる激しい闘争が起こったりすることもありませんでした。確かに安倍氏という存在はいなくなったけれど、そのまま政治は凍結されているようです。岸田文雄首相のもとで政治が奇妙に『行政化』され、躍動感が失われた結果だといえるでしょう」
――政治の「行政化」ですか?
「良きにつけ、あしきにつけ、安倍氏の政治は、彼なりのイデオロギーや思い入れに深く彩られていました。その根っこにあったのは、戦後体制を否定することでした。首相退任後も政治に影響力を保っていました。それに対して岸田氏は状況追従型でやらなければならないことをただ進めているようです。そこには情熱も深い思い入れも見えません。これは理想を掲げる本来の意味での政治ではなく、行政のやり方です。岸田氏自身がどこまで意識しているのかは分かりませんが、政治的な動機をむき出しにせず、まるで大きな政治課題ではなく小さなことをやっているような形で、あまり力を込めずに説明を繰り返します。安倍氏も菅義偉前首相も、思いがあるだけに、つい力を込めて言い募ってしまうんですが、岸田首相にはそれがありません。淡々と説明して打ち切りますね。秀才タイプなのかもしれません」
――岸田首相は官僚との関係が良好とされる派閥「宏池会」の会長職に首相就任後もとどまっています。
「いま派閥の会長ということを彼以上に意識し、誇りに思っている政治家はいないでしょう。保守本流の宏池会からの5人目の首相ということがとても大切なことなんでしょう。岸田氏の発言のそこかしこにそれがあらわれます」
「以前、宏池会はリベラル左派で平和を重視していたはずなのに変わったのではないかと岸田氏に聞いたことがありますが、平和主義の理念は変わらないが状況が変わったのだという答えでした。転向したのではなく、状況が変わったんだから、と自ら納得しているのでしょう。ハト派のはずが戦後日本でかつてなかった防衛費の大増額を進め、野党もメディアもそんな岸田氏をあぜんとして見つめ、追い詰めることができませんでした」
――会長だった安倍元首相を失った安倍派はどうですか。
安倍氏を失った「最大派閥」のいま
「安倍氏の生前から指摘して・・・
 
 

 

●「日本の政治家は幸せ者」デーブ・スペクターさんが語るテレビ報道 6/25
放送現場など様々な場で飛び交う「政治的中立性」や「政治的公平性」という言葉。自由な言論空間を息苦しくしているようにも見えるが、米国生まれの放送プロデューサー、デーブ・スペクターさんから見たいまの日本の状況は。

何十年と日本のテレビの仕事をしてきて、正直、偏った報道はないと感じています。
アメリカをみてください。保守系のFOXテレビは恥ずかしいぐらいトランプ前大統領寄りの立場で、民主党バッシングばかりやっていました。一方で、NBC系列の24時間ニュースチャンネルMSNBCは、完全に民主党寄りの放送をしています。社会もメディアの中にも分断が生まれて大変です。
それに比べて日本のテレビ局はフェアですよ。中立で公正。キャスターはきちんとしているし、サラリーマンの局アナが変なことを言うわけがない。BSの報道番組では各局、与野党の政治家や様々な立場の論客をそろえ、多角的に政治・政策の報道をしています。恵まれた環境を作ってもらい、日本の政治家は幸せ者ですよ。地上波TBS系列の「サンデーモーニング」のように、メッセージを正面から出し、政権批判をする番組が存在することをうれしく思った方がいい。・・・  
 
 

 

 
 

 

 
 
 
 
 

 

 
 

 



2023/7-


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