分断
団結
ジョー・バイデン第46代大統領
国民の結束に全霊を ・・・
■バイデン米大統領就任演説・・・ ■就任演説 / 報道・評価・評価1・評価2・評価3・・・ ■ドナルド・トランプ大統領 / 退任演説・報道・・・ ■ジョー・バイデン / 経歴・人物・日本との関係・家族と出自・政策と活動・疑惑・・・ ■大統領就任演説 / ワシントン[1]・ジェファソン[3]・ケネディ[35]・クリントン[42]・ブッシュ[43]・オバマ[44]・トランプ[45]・・・歴史に残る米大統領・・・ |
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●ジョー・バイデン米大統領の就任演説 「民主主義の大義を祝う」 | |
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米首都ワシントンで20日、大統領就任式が行われ、民主党のジョー・バイデン氏が第46代大統領に就任した。バイデン氏は就任演説で、アメリカが民主主義の危機に直面したことに危機感を示し、白人至上主義や国内テロを打倒すると述べた。その上で、アメリカ国民が連帯して「アメリカという物語」のために立ち上がり、新型コロナウイルスのパンデミックや気候変動など、厳しい時代の課題に応えようと呼びかけた。 | |
●民主主義の大義の勝利
ロバーツ最高裁長官、ハリス副大統領、ペロシ下院議長、シューマー院内総務、マコネル院内総務、ペンス副大統領、ゲストの皆さん、そして米国民の皆さん。今日は米国の日だ。民主主義、再生と決意の歴史および希望の日だ。長い試練を通じて、米国は繰り返し試練を経て、困難から立ち上がってきた。 我々は今日、一候補者の勝利ではなく、民主主義の大義の勝利を祝っている。人々の意思が響きわたり、人々の意思が聞き入れられた。我々は改めて、民主主義の貴重さを学んだ。民主主義はもろいものだ。しかし今この瞬間、それは勝利を収めた。 数日前に暴力が議事堂の土台を揺るがそうとしたこの神聖な場所で、我々は、神の下、分かたれることのない一つの国家として結集し、200年以上そうしてきたように平和的権力の移行を行っている。我々は、たゆまず、大胆で、楽観的という米国独自のやり方で未来に目を向け、実現可能かつ実現しなければならない国家を目標に掲げる。 出席くださった民主党、共和党両党の前任者の方々に心から感謝する。皆さんは米国憲法の復元力、国家の強さをご存じだ。カーター大統領もそれをよく知っている。カーター大統領は本日出席できなかったが、昨夜、話をした。大統領の生涯にわたる国家への奉仕に敬意を表したい。 これらの愛国者一人一人と同じように、私は今、神聖なる宣誓をした。ジョージ・ワシントン大統領が最初に行った宣誓だ。しかし米国の物語は、我々ではなく、より完全な結合を求める国民全体にかかっている。米国は素晴らしい国であり、我々は素晴らしい国民だ。何百年にもわたり、嵐と対立、平和と戦争を経て、ここまでやってきたが、まだ道のりは続いている。 ●白人至上主義、国内テロ打ち破る 我々はスピードと緊急性を持って前進する。なぜなら、危険と可能性に満ちたこの冬、やらなければならないことがたくさんあるからだ。修復し、復元し、傷をいやし、構築し、獲得しなければならないことがたくさんある。米国史の中で、これほど困難で試練に直面しているときはまれだ。 100年に1度のウイルスが、国家を静かに闊歩(かっぽ)している。この一年で、第2次世界大戦で亡くなった米国人と同じ数の多くの命を奪った。数百万の職が失われ、無数のビジネスが閉鎖された。約400年におよぶ人種間の平等を求める声が我々を動かしている。すべての人への正義の夢は、もはや先延ばしされることはない。 地球そのものからも生存を求める声が上がっている。その声は、かつてないほど切実で明白だ。政治的過激主義、白人至上主義、国内テロリズムが勃興しており、我々は立ち向かわなければならず、必ず打ち破る。 これらの試練を乗り越え、我々の魂を取り戻し、未来を確保するには、単なる言葉以上のもの、民主主義においてもっともつかみどころのない「Unity(結束)」が必要だ。結束。結束。1863年の新年に、アブラハム・リンカーン大統領は奴隷解放宣言に署名した。紙にペンを入れるとき、大統領はこう言った。「歴史に名を残すことがあるとすれば、この行為であり、ここに私の魂すべてが入っている」 私の魂すべてが入っている。大統領に就任した今日、私の魂すべては、米国を一つにすること、国民を結束させ、国を結束させること、このことに向けられている。そして、国民の皆さんに、この大義に加わってくれるようお願いする。怒り、恨み、憎しみ、過激主義、無法、暴力、病、職と希望の喪失という共通の敵と戦うために結束すること。結束することで、素晴らしいこと、大切なことを成し遂げることができる。 ●中間層を立て直し、皆にヘルスケアを 誤りを正すことができる。よい仕事をもたらすことができる。安全な学校で子供たちを教育できる。死をもたらすウイルスを克服できる。労働に報い、中間層を立て直し、皆がヘルスケアを得られるようにできる。人種間の平等を実現し、米国を再び、世界に善をもたらすリーダーにできる。 融和の話をするのは愚かな幻のように聞こえるのは分かっている。だが、我々を分断する勢力は奥深く実在するものだ。また、新しくもない。 我々の歴史では全ての人が平等だとする米国の理想と人種差別の醜い現実との闘争が繰り広げられてきた。その対立は永遠に続き、勝利も確実ではない。 南北戦争、世界大恐慌、第2次世界大戦や2001年9月11日に起きた米同時テロなどの争いで、苦闘、犠牲や後退を経験しつつも、必ず私たちの天使が勝利した。十分に人が団結し、みんなが前進できるようにした。それは今、私たちにもできることだ。 歴史、信仰、そして理性が導かせてくれる。敵としてではなく、お互いを隣人として敬意を持って接することができる。我々は団結できる。怒鳴り合うのをやめ、緊張感の温度を下げよう。 融和がなければ平和はない。憎しみと怒りだけで、進歩できない。激しい怒りは単に疲れるだけだ。国家はなく、カオスの状況が続くだけ。私たちは歴史的な危機と試練に直面している、この先の道は融和だ。米国として、この瞬間に立ち向かわなければいけない。そうしたら失敗しないと保証する。みんなが行動できたときに米国が失敗したことはない。 今日、この場所で、新たなスタートを切ろう。みんなで。お互いの話を聞き、お互いに敬意を見せ合おう。政治は通り道にあるもの全てを破壊するような燃える炎である必要はない。意見の相違が無制限の戦争につながる必要はない。また、事実を操作したり、製造したりする文化を拒否しなければならない。 米国は改善しなければいけない。米国は今の状況よりも良いところだと信じている。周りを見てみよ。連邦そのものが危うい状況だった南北戦争中に建設が完了した連邦議会議事堂のドームの影に私たちは立っている。我々は努力し、勝ち残った経験がある。 我々はここに立ち、キング牧師が夢について語ったナショナル・モールを眺め、108年前の就任式で、女性の投票権獲得のために抗議する勇敢な女性達を止めようと数千人規模の抗議デモが起こった場にも立っている。そして今日、米国の歴史上、初めて女性としてカマラ・ハリス氏が副大統領に就任する。何も変わらないとは言えないだろう。 ●真実を守り、虚構に打ち勝つ 我々を米国人として定義づける、米国人としての私たちが愛する共通の目標とはなにか。私たちは分かっていると思う。機会、安全、自由、品格、尊敬、敬意、そしてその通り、真実だ。ここ数週間、数カ月の出来事は我々に痛みを伴う教訓をくれた。真実があり、うそもある。権力と便益のためにつかれたうそだ。 そして我々各人が、国民として、米国人として、特に我々の合衆国憲法を尊重すると誓い、我々の国を守る指導者として、真実を守り、虚構に打ち勝つ義務と責任を負っている。私は多くの米国人が未来にいくぶんの恐れを抱いていることを分かっている。仕事のこと、家族を養うことを心配し、次に起こることに気をもんでいることを知っている。私は理解している。 だがその答えは内向きになることではない。派閥同士の競い合いになり下がってはならない。自分と行動が違う人、崇拝するものが異なる人、あなたと同じ情報源から情報を得ない人を不審に思うことではない。我々はこの不作法な、赤と青を対比し、地方と都市を隔て、保守とリベラルを分ける戦いを終わらせなくてはいけない。私たちが心を固く閉ざすことなく、開かれた精神を持てば、可能なはずだ。 我々がわずかな我慢と謙虚さをみせれば。すこしの間だけ、相手の立場に立って考えることをいとわなければ。なぜならそれが人生だからだ。あなたがどういう運命にさらされるかは分からない。 ●新型コロナウイルス対策で結束を いつかあなたが助けを必要とするときもあれば、我々が手を貸してほしいと呼ばれるときもある。それがお互いにあるべき姿だ。我々がこうした振る舞いをできるようになれば、我々の国はより強くなる。より繁栄し、より未来志向になる。 私の仲間、米国人たちよ。我々の今後の仕事では、互いを必要としあうだろう。我々はこの暗い冬を耐え抜くために我々のすべての力を必要としている。我々は新型コロナウイルスとの戦いにおいて、最も厳しく命懸けとなり得る時期に突入している。 我々は政治的な動きをやめ、このパンデミックに対して1つの国として向き合わなければいけない。私は約束する。聖書に書いてあるように、夜はよもすがら泣きかなしんでも、朝とともに喜びがくるのだ。我々は一緒にやり遂げるのだ。 ●同盟関係を修復 世界は今日、見ている。そしてこれが、国境を越えて世界に伝わる私の言葉だ。米国は試練にさらされてきたが、その分強くなってきた。我々は同盟関係を修復し、もう一度世界に関わっていくだろう。昨日の課題に応えるのではなく、今日の、あすの課題に向き合っていこう。そして私たちは単に力を持っていることを示して(世界を)導くのではなく、我々の事例そのものが力となるように導いていくのだ。我々は平和、発展、そして安全のために、強く信頼されたパートナーとなるだろう。 この国で我々は多くのつらい経験をしてきた。私の大統領としての最初の行動として、この1年間に(新型コロナウイルスの)世界的大流行で我々が失ったすべての人々、40万人の同胞の米国民ー母親、父親、夫、妻、息子、娘、友人、隣人、同僚たちーをしのび、私と共に黙とうをささげていただきたい。我々は、我々がなることができる、そしてなるべきと知っている国民と国家を実現することで、彼らを記念する。命を失った人々、残された人々、そして我が国のために黙とうをささげよう。 ●試練の時 アーメン。今は試練の時だ。我々は民主主義と真実への攻撃に直面している。猛威を振るうウイルス、広がる不平等、制度的人種差別の痛み、気候変動の危機。世界における米国の役割。これらのどの1つでも、我々に重大な挑戦をもたらすに十分だ。しかし事実は、我々はそれらすべてに同時に直面し、この国に最も重大な責任をつきつけている。 いま我々は取り組みを強化しなくてはならない。我々全員がだ。大胆さが求められる時だ。なすべきことが多くあるからだ。そしてこれは確実だ。我々、あなたと私は、この時代の連鎖的な危機をいかに解決するかによって判断されることになる。我々は難局で力を発揮するか?我々はこのまれな、困難な時期に打ち勝つだろうか? 我々は義務を果たし、子どもたちに新しい、よりよい世界を引き継ぐだろうか?そうしなければならないと信じている。そうすると信じている。そしてそのとき、米国の物語に次の1章を記すことになる。それは私にとってとても重要なある歌のような物語だ。「アメリカン・アンセム」という歌で、私にとって際立つ一節がある。 「何世紀にもわたる努力と祈りにより、今日の私たちがある。私たちのレガシーは何だろう?私たちの子供らはなんと言うだろう?私の時代が終わるとき、心の中で知る。アメリカ、アメリカ。私はあなたのために最善を尽くした」 これから語られる我が国の物語に、我々自身の努力と祈りを加えよう。そうすれば、我々の時代が終わったとき、我々の子どもたちと、その子どもたちは、私たちが最善を尽くしたと言うだろう。義務を果たしたと。壊れた国を癒やしたと。 我が同胞の米国民よ、私は今日、始めた所、神聖なる宣誓で締めくくる。神とすべての皆さんの前に約束する。常に皆さんに本当のことを話す。憲法を守る。民主主義を守る。米国を守る。権力ではなく可能性を、個人的利益ではなく公共の利益を考えて皆さんのために尽くす。そして共に、私たちは恐れではなく希望、分断ではなく団結、闇ではなく光の米国の物語を書き記す。礼節と尊厳、愛と癒やし、偉大さと寛容の米国の物語を。 これが私たちを導く物語とならんことを。我々を鼓舞する物語、今後長年にわたって我々が歴史の呼び声に応え、対処したと伝える物語を。民主主義と希望、真実と正義は我々のもとで死なず、栄えたと。米国は国内で自由を確保し、再び世界を照らす灯台となったと。それこそが、我々の先祖に、我々互いに、そして来る世代に負う責務だ。目的と決意を持って、確信によって粘り強く、信念に駆り立てられ、お互いと心から愛するこの国に献身し、我々はこの時代の務めに取り組む。 米国に神のご加護を。米兵たちに神のご加護を。アメリカよ、ありがとう。 |
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●報道 | |
●WHO脱退取り下げ マスク着用義務化 米大統領 1/21 | |
バイデン米大統領は20日、トランプ前政権が決定した世界保健機関(WHO)脱退の手続きを取り下げるよう命じる大統領令を出した。また、新型コロナウイルス感染防止策として、連邦職員や連邦施設来訪者にマスク着用を義務付ける文書に署名した。
記者会見したサキ大統領報道官によると、バイデン氏は20日、大統領令など15の文書に署名。新型コロナや地球温暖化対策、移民政策など幅広い分野にわたり、トランプ前政権の方針から脱却する姿勢を就任初日から打ち出した。 トランプ前大統領は昨年5月、新型コロナをめぐるWHOの対応を「中国寄り」と批判して脱退を表明し、同7月に正式に通知していた。サキ氏は、大統領の首席医療顧問を務めるファウチ国立アレルギー感染症研究所長が「21日にリモート開催されるWHO会合に参加する」と説明した。 バイデン氏はまた、子供時代に親などに連れられて不法入国した移民の救済措置について、国土安全保障省に強化を指示した。トランプ前政権は同措置の廃止を掲げていた。 さらに、不法移民防止策として前政権がメキシコ国境で進めていた壁の建設に関し、国家非常事態宣言を根拠とした予算転用を停止。建設を事実上、ストップさせる狙いだ。前政権の排外姿勢の象徴と見なされた一部のイスラム圏諸国などからの入国規制も、「憎悪と外国嫌いに基づく政策だ」(サキ氏)として中止する。 |
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●退任トランプ氏、バイデン新大統領に手紙残す 執務室に 1/21 | |
トランプ米大統領は20日午前8時15分(日本時間午後10時15分)ごろ、ホワイトハウスを大統領専用ヘリコプターで出発した。バイデン氏の就任式には出席せず、メリーランド州のアンドルーズ空軍基地で大統領専用機に乗り換え、フロリダ州の邸宅に到着した。空軍基地で行われた退任式では「素晴らしい4年間だった。我々は共に多くのことを成し遂げた」と成果を強調した。
トランプ氏は家族や支持者らの前で約10分演説し、「米軍を再建し、宇宙軍を創設した」「米国史上、最大の減税を行った」「新型コロナウイルスのワクチンを9カ月で開発した。今後、数カ月で良い数字を見ることになるだろう。(感染者数などは)急速に減るだろう」などと自らの実績を自賛。そのうえで「新政権の素晴らしい幸運と成功を祈る。目覚ましいことをできる基盤ができている」と語ったが、バイデン氏の名前には言及しなかった。 トランプ氏は「私はあなたたちのために闘い続ける。我々は何らかの形で戻ってくる。またすぐに会いましょう」と演説を締めくくり、政治活動を続けることに意欲を示した。 現職大統領が後任の就任式を欠席するのは、南北戦争後の1869年のジョンソン大統領以来、152年ぶり。一方、トランプ氏はホワイトハウスの執務室にバイデン氏にあてた手紙を残していた。バイデン氏が記者団に明らかにした。近年、退任する大統領が手紙を残すのは恒例になっているが、トランプ氏の手紙の内容は「私的なこと」として説明しなかった。 |
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●政府、バイデン大統領の同盟国重視・国際協調を歓迎 1/21 | |
日本政府は、米国のバイデン大統領が就任演説で同盟国重視や国際協調を訴えたことを歓迎している。日米同盟の一層の強化を確認するため、菅首相は近くバイデン氏と電話会談する方向で調整している。
首相は21日、首相官邸で記者団に対し「新大統領と国際的な課題について、緊密に連携しながら取り組んでいきたい」と述べ、新型コロナウイルス対策や気候変動問題などでもバイデン氏と協力していくことに意欲を示した。就任演説については「国民に結束を訴えた大変力強い演説だった」と感想を語った。 日本政府は、予測が困難な言動が目立ったトランプ前大統領に比べ、「バイデン氏は国務省や国防総省などの意見を重視するオーソドックスな外交・安全保障政策に回帰する」(外務省幹部)とみている。 バイデン氏は当面、新型コロナ対策など内政を優先するとみられ、首相の訪米は難しい見通しだ。日本としては、まずは首脳電話会談で、同盟強化や日米共通の構想になっている「自由で開かれたインド太平洋」を引き続き推進することを確認したい考えだ。 首脳の信頼関係を構築するのにあわせ、茂木外相が首相に先立って訪米し、国務長官候補のアントニー・ブリンケン氏と会談することも検討している。 |
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●「米国を修復する」 バイデン新大統領が就任演説 1/21 | |
バイデン米大統領は20日の就任演説で「きょうは米国の民主主義にとって歴史的な日だ。民主主義が勝った」と宣言した。演説のなかで「すべての米国人のための大統領になる」と強調。6日の米連邦議会議事堂の占拠事件など深刻さを増す国民間の分断に「終止符を打たなければならない」と述べ、爪痕の修復に臨む意向を示した。
●「内戦に終止符を」団結呼びかけ 46代目の大統領として宣誓した後、新型コロナウイルスの感染防止策として人数を限定した式典参加者に向け約20分演説した。「(米国には)根深い分断の力が働いている。米国の歴史は理想を追い求める闘争の繰り返しで、恐怖の悪魔は長年わたしたちを引き裂いてきた」と米国社会の断絶に言及。「敵としてではなく隣人として、尊厳と敬意を持ってお互いを扱うべきだ。赤(共和党)対青(民主党)、農村対都市、あるいは保守対リベラルの間で繰り広げられる内戦に終止符を打たなければならない」と表明した。 バイデン氏は「すべての米国人のための大統領になる。私を支持しなかった人々のために懸命に戦うことを約束する」としたうえで、「意見の相違が戦争を引き起こす必要はない」と抗議デモの暴徒化などに苦言を呈した。「事実が操作されたり創作されたりする文化を拒否しなければならない」と述べ、選挙不正をめぐる主張や陰謀論などの広がりに懸念を示した。 ●「ウイルスを克服」コロナ収束を約束 6日の米連邦議会議事堂の占拠事件については「この神聖な地で数日前、暴力がわれわれの基盤を揺さぶろうとした」と語り「平和的な権力の移譲を実現するために1つの国家として団結した。我々は前を向いている」と融和を呼びかけた。 新型コロナウイルスの感染拡大の影響について「1世紀に1度のウイルス。第2次世界大戦と同じくらい多くの命が失われ、何千ものビジネスが閉鎖された」と述べた。米国の死者が40万人を超えるなかで「米国の歴史のなかで、これほど困難な時期を経験した人はほとんどいない。恐ろしいウイルスだが克服できる」と、収束にむけて取り組むことを誓った。 ●「同盟関係を再構築」国際協調に転換 トランプ政権下で諸外国との関係が揺れ動いた。バイデン氏は「世界が米国に注目している。同盟関係を再構築し、再び世界に関わりを持っていく」と強調。「米国第一主義」から国際協調路線に回帰する方針を鮮明にした。「米国は試練にさらされている。安全保障における平和を進展させるため、強力で信頼できるパートナーとなる」と語り、同盟国との連携や国際的枠組みへの参加に取り組む考えを示した。 一方、米国で広がった「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)」運動などを念頭に「人種的正義を求める叫びがある。 400年以上の歴史が私たちを突き動かしている。全ての人のための正義を今こそ実現すべきだ」と語り、構造的な人種差別の是正に取り組む決意を改めて示した。 |
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●バイデン氏、第46代米大統領に就任−演説で「結束」呼び掛け 1/21 | |
米国の第46代大統領にジョセフ・ロビネット・バイデン・ジュニア氏が20日、就任した。多数の死者を出している新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)や長引く失業、急速に高まりつつある社会不安といった困難に見舞われる中、近年の米国史で最も険悪となった政権移行を乗り越えて国家を主導することになる。
バイデン氏は同日正午(日本時間21日午前2時)少し前、連邦議会議事堂前でロバーツ連邦最高裁長官を前に大統領の就任宣誓を行った。ちょうど2週間前、大勢のトランプ前大統領支持者がバイデン氏の大統領認定を阻止しようと集まった場所だ。 78歳のバイデン氏は歴代大統領で最高齢での就任となった。 バイデン大統領は就任演説の冒頭で「きょうは米国の日であり、民主主義の日だ」と発言。さらに「歴史と希望、再生と決意の日だ。米国は新たに試され、困難に立ち向かっている」と明言した。 バイデン氏の大統領就任は、有権者が前任者と正反対といえる人物に国政を託したことを意味する。一度も公職に就いたことのなかったトランプ氏による混乱の4年間を経て、今度はデラウェア州選出の上院議員として36年間、オバマ元大統領政権での副大統領として8年間と計40年余りワシントンでの経験を持つ人物が選ばれた。 演説でバイデン大統領は、選挙結果を覆そうとしたトランプ氏の動きに言及し、「民主主義は貴重であり、もろいということを、われわれはあらためて学んだ」と指摘。「きょうこの日、民主主義が勝利した」と言明した。 バイデン氏は女性が参政権を求め、そうした運動がこの日カマラ・ハリス氏の米国初の女性副大統領就任に至った経緯にも触れ、「物事は変えられないという話は私には通用しない」と述べた。ハリス氏は黒人として、またインド系米国人としても米国初の副大統領。 さらに、「赤(共和党)と青(民主党)、地方と都市、保守とリベラルの間で繰り広げられる無意味な争いを終わらせなければならない」と語るなど、約20分の演説は大統領選での訴えと同様に国民の結束を強く呼び掛ける内容となった。 バイデン氏の演説はミット・ロムニー上院議員ら一部の共和党議員からも称賛された。トランプ氏を批判してきた同議員は、与野党50議席ずつで勢力が拮抗(きっこう)する上院でキャスチングボートを握る存在になるとみられる。 民主党のクロブシャー上院議員と共に大統領就任式を取り仕切った共和党のブラント上院議員は「われわれがここで何をするか、世界中の人々が見ており、見ることになる。今は分断ではなく、結束の時だ」と語った。 バイデン氏の結束の呼び掛けは、閣僚候補の指名承認や新型コロナ禍に対応する追加経済対策案を巡る交渉など一連の試練に早速直面することになる。 新型コロナ感染症(COVID19)による米国の死者は40万人を超えており、多くの地域では感染率が上昇している。バイデン氏は演説中、「大統領としての最初の行動」として新型コロナ犠牲者に黙とうをささげた。 バイデン氏はまた、就任後直ちにトランプ前政権下での移民や気候問題などに関する政策の巻き戻しに着手する。演説では「危険と大きなチャンスに満ちたこの冬、われわれにはやるべきことが多くある。スピードと緊急性をもって前に進む」と述べた。 しかし、バイデン氏は共和党との溝を埋めるだけでなく、同氏の中道的傾向で構造改革の機会が失われると懸念する民主党内の進歩派にも配慮した政権運営が求められることになる。 |
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●米 バイデン氏が新大統領に就任「国民の結束に全霊を」 1/21 | |
アメリカの第46代大統領に民主党のジョー・バイデン氏が就任しました。バイデン新大統領は就任演説で「民主主義が勝利した。分断は深く現実のものだが、国民の結束に全霊をささげる」と訴えました。大統領就任式は日本時間の21日未明、首都ワシントンの連邦議会議事堂の前で行われました。就任式は新旧大統領が顔をそろえるのが恒例ですが、トランプ前大統領は欠席し、ペンス前副大統領や歴代の大統領夫妻が参列するなか、民主党のジョー・バイデン氏が宣誓して第46代大統領に就任しました。バイデン新大統領は78歳、歴代大統領では最高齢となります。
バイデン新大統領は就任演説でまず「きょうはアメリカの日であり、民主主義の日だ。民主主義が勝利を収めた」と述べました。その上で「分断は深く現実のものだ。私は国民と国家の結束に全霊をささげる。すべての国民に加わってほしい」と訴えました。さらに「共和と民主、地方と都市、保守とリベラルという無意味な争いをやめなければならない。相手に心を開けばできるはずだ」として「私はすべての国民の大統領になると誓う。私を支持してくれた人だけでなく、支持しなかった人のためにも同じように懸命に闘う」と強調しました。またバイデン新大統領は「同盟を修復し、再び世界に関与する」と述べ、国際協調を重視する姿勢を示しました。演説では終盤、新型コロナウイルスの犠牲者に黙とうをささげたあと、「今は試練の時にある。民主主義と真実への攻撃、猛威をふるうウイルス、格差の拡大、人種差別、気候変動に直面している。すべてに同時に向き合い、かつてないほど大きな責任を果たさなければならない」と指摘した上で「恐怖ではなく希望、分断ではなく結束、暗闇ではなく光の物語をともに紡ごう」と呼びかけました。 ●厳戒態勢の中の就任式 就任式は、今月6日、トランプ氏の支持者らが首都ワシントンの連邦議会議事堂を一時占拠する事態が起きたことを受けて、首都ワシントンをはじめ、全米各州の議事堂などでも厳重な警備態勢がとられる中で行われました。これまでのところ、ワシントンをはじめ全米各地でも、過激な抗議行動といった大きな混乱は伝えられていません。バイデン新大統領はこのあと新型ウイルス対策や気候変動、移民政策などを巡る文書に署名し、トランプ前政権からの転換を打ち出す見通しですが、トランプ前大統領の支持者らの反発は強く、多くの難題にどう向き合うか、早くもその手腕が問われることになります。 ●ネット上で「バーチャル・パレード」 今回の就任式では新型コロナウイルスの感染対策のため連邦議会からホワイトハウスまでの間で行われてきた恒例のパレードは実施されず、代わりにインターネット上で「バーチャル・パレード」と題した催しが行われました。「バーチャル・パレード」では全米各州で撮影された映像が流され、市民らはマーチングバンドやダンスで新しい大統領の就任を祝いました。また、新型コロナウイルスに立ち向かう医師や軍の兵士らをたたえる動画も放送されました。さらに、先住民やラテン系アメリカ人、中国系アメリカ人がそれぞれの民族に伝わる楽器や踊りで新政権の発足を祝うなど、「バーチャル・パレード」はアメリカの多様性を強調した内容となりました。 ●菅首相 ツイッターで祝意を投稿 アメリカのバイデン新大統領の就任を受けて、菅総理大臣は、21日午前2時すぎ、みずからのツイッターに、お祝いのメッセージを投稿しました。メッセージは「バイデン大統領、ハリス副大統領、ご就任おめでとうございます。 日米は普遍的価値を共有する、強い絆で結ばれた同盟国です。日米同盟の強化や『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向け、今後バイデン大統領と協力していけることを楽しみにしています」と、日本語と英語でつづっています。 ●台湾の大使にあたる代表が就任式に招待される 台湾の蔡英文総統は(さい・えいぶん)バイデン新大統領の就任式をうけて、祝福のメッセージをツイッターに投稿しました。この中で蔡総統は「あなたの政権がすべてにおいて成功を収めることを願っています。台湾は一緒に働く準備ができています」と述べました。台湾当局の代表機関「駐米台北経済文化代表処」は、蕭美琴代表が(しょう・びきん)バイデン新大統領就任式の実行委員会から招待を受けたと発表しました。台湾の与党・民進党によりますと、台湾の大使にあたる代表が正式な招待を受けて就任式に出席するのは1979年にアメリカと外交関係がなくなってから初めてだということです。蕭代表は就任式が始まる前、会場の連邦議会議事堂を背にして「民主主義は私たちの共通の言語であり、自由は私たちの共通の目標だ。次の政権と協力して互いの価値と利益を高めていくことを楽しみにしている」と話す動画をツイッターに投稿しました。 ●ロシア 核軍縮条約「新START」条約の延長呼びかける バイデン新大統領の就任に関連してロシア大統領府のペスコフ報道官は「ロシアはこれまで通りアメリカとの良好な関係を求め続ける。それに対応する政治的な意志があるかどうかはバイデン氏と彼のチームにかかっている」と述べ、トランプ前政権との間で悪化した関係を改善させられるかどうかはアメリカの出方次第だと強調しました。また、ロシア外務省はコメントを発表し、来月に失効が迫るアメリカとロシアの核軍縮条約「新START」をめぐって「前提条件なしに延長することは可能で、最長5年の延長が望ましい」として、条約の延長を呼びかけました。プーチン政権としては、「新START」をめぐる交渉をきっかけにバイデン新政権との対話を進める機運を高めたい考えとみられます。ただ、バイデン氏はこれまでプーチン大統領を「独裁者」などと呼んで繰り返し批判していて、ロシアではバイデン新政権がヨーロッパとの結束を取り戻しロシアに対していっそう強硬な政策をとるのではないかと警戒する見方が出ています。 ●英 ジョンソン首相 「ともに取り組む共通の課題」 イギリスのジョンソン首相は20日、地元メディアとのインタビューでバイデン新大統領とハリス新副大統領に祝意を示した上で、「われわれはともに取り組んでいく共通の課題がある。新型コロナウイルスで受けた影響からの回復に向けて、国際社会がまとまっていく必要がある。気候変動への取り組みも重要だ」と述べました。またジョンソン首相は、バイデン新大統領がヨーロッパとの関係を重視しているという認識を示した上で、アメリカとの緊密な関係を築くことはイギリスの首相にとって重要な職務だと強調しました。一方、ジョンソン首相はツイッターにも「気候変動や新型コロナウイルス対策など私たちに関わる重要な課題についてアメリカのリーダーシップは不可欠だ。バイデン新大統領とともに仕事ができることを楽しみにしている」と投稿しました。 ●仏 マクロン大統領「パリ協定への復帰を歓迎 お帰りなさい」 フランスのマクロン大統領はみずからのツイッターで「アメリカのパリ協定への復帰を歓迎する。お帰りなさい」と投稿し、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に復帰する方針を示すバイデン新大統領が就任したことを歓迎しました。その上で「現代の課題はともに取り組むことで解決できる。ともに地球のために行動をとることが気候変動の結果を変えることができる」と述べてアメリカと連携を深めることに期待を示しました。 ●イタリア コンテ首相「共通の国際的な課題に取り組む」 ことしのG20サミット=主要20か国の首脳会議で議長国を務めるイタリアのコンテ首相はみずからのツイッターで「きょうはアメリカ国内にとどまらず民主主義にとって偉大な日だ。イタリアはアメリカとともに共通の国際的な課題に取り組む準備はできている」と投稿してバイデン新大統領とハリス新副大統領の就任を祝福しました。 ●インド モディ首相「両国の戦略的パートナーシップを」 インドのモディ首相はバイデン新大統領の就任についてツイッターで祝意を示し、「両国の戦略的パートナーシップを高めるためにともに働くことを楽しみにしています」と述べました。また、母親がインド出身でインドにゆかりのあるハリス新副大統領についても「ハリス氏の副大統領就任おめでとうございます。歴史的な出来事です。両国の関係をより強固なものにするために交流することを楽しみにしています」と祝福しました。 ●茂木外相 「日米同盟をさらに強化」 茂木外務大臣は、21日午前7時ごろ、みずからのツイッターに日本語と英語でお祝いのメッセージを投稿しました。このなかでは「アメリカの大統領、副大統領に就任された ジョー・バイデン氏とカマラ・ハリス氏に心からお祝い申し上げます。バイデン新政権との間で日米同盟をさらに強化するとともに、『自由で開かれたインド太平洋』の実現や新型コロナ、気候変動などへの対応に関し、協力を深めていくことを楽しみにしています」としています。 |
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●バイデン新大統領 “パリ協定復帰” 署名 政策転換をアピール 1/21 | |
アメリカの第46代大統領に民主党のジョー・バイデン氏が就任しました。バイデン新大統領はさっそく、トランプ政権下で離脱した地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に復帰するための文書などに署名し前政権からの政策の転換をアピールしました。今後10日間でまずは新型コロナウイルス対策や経済、人種問題など喫緊の課題での具体策を示し、対応を急ぐ方針です。アメリカの大統領就任式は、連邦議会の乱入事件などを受けて、厳戒態勢がとられる中、首都ワシントンで20日行われ、ジョー・バイデン氏が宣誓を行い第46代大統領に就任しました。就任演説でバイデン新大統領は、大統領選挙後の混乱などを念頭に「民主主義が勝利を収めた」と述べた上で、「国民と国家の結束に全霊をささげる」と訴え、分断が進むアメリカ社会の融和を呼びかけました。
●初日は大統領令など15の文書に署名 その後、大統領として初めてホワイトハウスに入ったバイデン新大統領は、さっそく執務を開始し、大統領令など15の文書に署名しました。この中にはトランプ政権下で離脱した地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に復帰するための文書やWHO=世界保健機関からの脱退の撤回を命じる大統領令、新型コロナウイルス対策として連邦政府の施設でマスクの着用を義務づけるよう命じる大統領令などが含まれています。このうち、「パリ協定」への復帰について、ホワイトハウスのサキ報道官は初めての記者会見で「アメリカが世界で指導的役割を果たそうとするものだ」と述べその狙いを説明しました。トランプ政権はアメリカ第一主義を掲げ、環境対策よりも経済を重視する姿勢を示したほか、新型コロナウイルスをめぐっては脅威を軽視したとも批判されましたが、バイデン新大統領は政権発足初日から政策の転換をアピールすることでトランプ前大統領との立場の違いを鮮明にした形です。ただ、こうした政策をめぐっては前大統領の支持者らからの反発が強く、融和と結束を訴えるバイデン新大統領としては難しいかじ取りを迫られることになりそうです。 ●就任2日目には新型コロナ対応策を示す予定 ホワイトハウスによりますとバイデン新大統領は就任2日目の21日には喫緊の最重要課題、新型コロナウイルスの感染拡大への対応策を示すということです。バイデン新大統領は新型コロナウイルス、経済危機、気候変動、人種問題をアメリカが直面する「4つの危機」だとしていて、今後10日間でまずはこれらの問題に対する具体策を示し、対応を急ぐ方針です。また外交では21日にはWHOからの脱退の撤回を受けて、新型ウイルスの対策を担うファウチ博士がWHOのオンライン会合に参加するほか、22日にはカナダのトルドー首相と新大統領就任後初めての首脳会談が行われる予定です。バイデン新大統領は就任演説で国際協調を重視する姿勢を示していて、外交面でもトランプ前大統領のアメリカ第一主義からの転換をはかる方針です。 ●パリ協定 来月19日に復帰へ バイデン新大統領は気候変動を安全保障上の脅威とみなし、その対応を新政権の最優先課題の1つに位置づけて取り組みを強化する方針を示しています。その上で再生可能エネルギーへの投資を拡大するとともに100日以内に国際会議を開き、各国への働きかけを強める考えを明らかにしていて、今回の署名により国内外に新政権の姿勢を示すとともにトランプ前政権からの転換を印象づける狙いもあるとみられます。新政権はアメリカ政府としての復帰のための文書を20日付けで国連に提出し、国連は同じ日にグテーレス事務総長が文書を受理したことから、協定の規定に基づいて30日後の来月19日に、復帰することになり、今後、国際社会で再び指導力を示すことができるかが問われることになります。 ●連邦政府の建物内 マスク着用を義務化 バイデン新大統領は新型コロナウイルスの感染対策として連邦政府の建物のなかで、大統領の権限でマスクの着用を義務づけることを命じる文書に署名しました。バイデン新大統領は、政権発足から100日間に新型コロナウイルスへの対策に集中して取り組む考えを示していて、アメリカ国内でワクチンの1億回分の接種を目指す方針を掲げると共に、日本円で200兆円規模の追加の経済対策の実現に取り組むとしています。 ●トランプ前政権の入国制限措置を撤回 アメリカのバイデン新大統領は、トランプ前政権がテロ対策などを理由にイスラム教徒が多い国からの入国を制限していた措置について、大統領の権限で撤回を命じる文書に署名しました。バイデン新大統領はトランプ前大統領が不法移民対策として取り組んだメキシコとの国境沿いの壁の建設を中止することや、子どもの頃に親に連れられ入国し、アメリカで育った「ドリーマー」と呼ばれる移民に市民権を与えることを公約に掲げていて、トランプ前政権の強硬な移民政策から転換をはかる方針です。 ●サキ報道官が初めて会見「透明性を取り戻そう」 バイデン新政権の発足とともに就任したホワイトハウスのサキ報道官は初めての会見を開き、「大統領とは真実と透明性を記者会見室に取り戻そうという話をした。みなさんとは意見がぶつかることがあるかもしれないが、それも民主主義の一環だ」と述べました。その上で「アメリカ国民との信頼を築き直すのがわれわれがもっとも大切にしていくことだ」と述べ多くの主要メディアと対立してきたトランプ政権とは異なるアプローチをとる考えを強調しました。バイデン新大統領が就任初日に、トランプ政権下で離脱した地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に復帰するための文書に署名したことについては、「野心的な合意目標を前に進めるために、アメリカが世界で指導的役割を果たそうとするものだ」と述べその狙いを説明しました。また、WHO=世界保健機関からの脱退の撤回を命じる大統領令に署名したことに関連して、新型コロナウイルス対策の大統領首席医療顧問のファウチ博士が21日にWHOとのオンライン会合に参加すると明らかにし、新政権としてウイルス対策で国際機関と協調していく考えを示しました。そして今月22日にバイデン新大統領がカナダのトルドー首相と外国の首脳とは初めてとなる電話会談を行うと明らかにしました。 ●新ファースト・レディー ジル夫人がメッセージ バイデン氏が新大統領に就任し、ファースト・レディーとなったジル夫人は、国民に向けたビデオメッセージをツイッターに投稿しました。この中でジル夫人は「アメリカにとって輝く新たな1章の始まりで、わたしたち全員が1つの政府のもと、1つのアメリカとして団結する時です。そして私たちは、就任式のなかで、希望を目の当たりにしました。この特別に困難な年に、何千人もが協力して素晴らしいものを作り上げたのです。私たちの就任式を国の誇りと約束を反映したものにしてくれた人たちに感謝します。そして、彼らを支援してくれた家族や、この都市で歓迎してくれた皆さんに感謝します。就任式をジョーと私にとって、そして何よりもアメリカの人たちにとって特別なものにしてくれてありがとう」と話しています。 ●就任演説 「バイデン氏らしい」 専門家 バイデン陣営で東アジア政策のアドバイザーを務め、バイデン新大統領が上院議員時代にスタッフを務めたフランク・ジャヌージ氏はNHKのインタビューに対し、「就任演説の内容は、共和党との協力を常に試みてきたバイデン氏の政治人生そのもので、結束と癒やしを訴えたことは、時宜にかなっているだけでなくとてもバイデン氏らしい」と述べました。そして、「最優先課題は新型コロナウイルスへの対応や経済再生だが、同盟関係を修復することも就任当初から取り組んでいくという決意も感じられた」と話していました。そして、同盟国などとの外交関係についてジャヌージ氏は、「バイデン大統領の中国に対する姿勢は当初から国際規範を守らせる一方で、国際社会の一員として迎え入れるというもので、そのバランスがアジア太平洋地域の外交政策の中心になるだろう。日本だけでなく、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、タイ、フィリピンといった国と協力して、中国が参加できる規範作りを行っていくことになる」と述べ、バイデン政権が日本などの同盟国と協調して中国に対応していくという見方を示しました。 ●バイデン政権の閣僚人事 初めて承認 アメリカ議会上院は20日、本会議を開き、バイデン新大統領が新政権の国家情報長官に指名していたアブリル・ヘインズ氏を賛成多数で承認しました。バイデン大統領が指名した閣僚人事が承認されたのはこれが初めてです。国家情報長官はCIA=中央情報局やNSA=国家安全保障局などアメリカの情報機関を統括する閣僚級のポストで、女性が就任するのは初めてです。ヘインズ氏は51歳。ニューヨーク市の高校を卒業したあと、日本に1年間滞在して柔道を学んだことでも知られています。その後、NSC=国家安全保障会議の法律顧問などを経て、オバマ政権時代の2013年から2年間、CIAの副長官を務めていました。ホワイトハウスのサキ報道官は20日の記者会見で、速やかに国家安全保障の態勢を築く必要があるとして、議会に対し、外交・安全保障を担う閣僚の早期の承認を呼びかけました。 ●就任に合わせ特別番組放送 アメリカでは、就任式の日の夜、舞踏会が催されるのが恒例となっていますが、今回は新型コロナウイルスの感染が拡大しているため、代わりにバイデン新大統領や人気歌手らが出演する特別番組が主要テレビ局で放送されたほか、インターネットでも配信されました。番組の司会は俳優のトム・ハンクスさんが務め、歌手のジョン・ボン・ジョヴィさんやケイティ・ペリーさんらが歌を披露しました。また、最前線で新型コロナウイルスの患者の治療にあたる医療従事者らの姿なども紹介されました。番組の中でバイデン新大統領は「今は新型コロナウイルスの感染拡大や経済や気候の危機、民主主義への脅威といった課題があるが、私たちが力を合わせれば解決できないことはない」と述べました。そして、番組の最後には、バイデン大統領とジル夫人がホワイトハウスのバルコニーから見守る中、首都ワシントンの夜空に花火が打ち上げられました。 |
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●大統領就任演説の評価 | |
●バイデン就任演説から見えた5大注目ポイント 1/21 | |
( 厳重な警戒体制の中、バイデン大統領の就任式が1月20日に終了しました。筆者は、1月15日付の記事『バイデン1/20就任演説で外せない7大ポイント 危機的なアメリカをどう一致団結させるのか』において、1演説の対象(国内)、2演説の対象(国外)、3対立構造、4ビジョン、5世界観、6価値観、7セルフブランディング(ポジショニング)という7つのポイントにおいて、トランプ前大統領の4年前の就任演説分析とバイデン新大統領の就任演説予測を行いました。バイデン大統領の就任演説は、上記で示した7大ポイントについて、ほぼ予測どおりの内容となりました。もっとも、ここで重要なのは、就任演説予測がほぼ予測どおりだったということではなく、バイデン大統領やその就任演説の予測可能性が高かったということなのです。そして、この点が、これから詳細を見ていくように、バイデン政権の今後を占ううえでも最重要ポイントの1つになると考えられます。また1月15日付の記事において、筆者は、米議会3誌の1つであるThe Hillの記事の中から、「バイデンの就任演説は、リンカーンの高潔な理想主義とルーズベルトの明確な実利主義を組み合わせる必要がある」という指摘を紹介し、バイデン大統領が就任演説で提示していくべき内容についても考察しました。今回の記事では、以上の内容を踏まえて、前回記事で示した7大ポイントの実際を分析していくのとともに、実際の就任演説結果からバイデン政権の今後を占っていきたいと思います。)
●『バイデン就任演説の7大ポイント』はどうなったか? 「今日は民主主義の日だ」。バイデン大統領の就任演説の冒頭部分での最重要メッセージです。 これは、4年前のトランプ大統領の就任演説では、「民主主義」という言葉が一度も使われなかったのとは対照的でした。バイデン大統領は「一大統領候補の勝利ではなく、民主主義の勝利」とも述べていますが、演説全体を通して、「民主主義」がこれまでアメリカが直面した脅威に何度も勝ってきたこと、そしてこれからもアメリカは「民主主義」のもとに結束すべきであることを強調しています。 それでは、冒頭でも述べた7つのポイント――1演説の対象(国内)、2演説の対象(国外)、3対立構造、4ビジョン、5世界観、6価値観、7セルフブランディング(ポジショニング)――に従って、バイデン大統領の実際の就任演説を分析していきます。 1 演説の対象(国内) 筆者は、前回の記事で、バイデン大統領就任演説は国民全員に向けられたものになると予測しました。バイデン大統領は、勝利演説で「私は分断ではなく統合を目指す大統領になることを約束する」と宣言していましたが、実際の就任演説でも「すべてのアメリカ国民の大統領になる」「私を支持しない国民のためにも、私を支持する国民のためにと同様に、懸命に闘っていく」と述べています。また、演説の中で団結や結束を意味する「Unity」という単語が多く使われ、分断の様相が依然際立つ状況下で、「分断から団結へ」が強く訴えかけられました。 2 演説の対象(国外) 筆者は、バイデン新大統領就任演説の対象は、トランプ大統領就任演説はもとより、従来の大統領就任演説にも増して、他国やその市民も意識されたものになると予測しました。実際の就任演説でも、「世界が私たちを注視している」「国境を超えた国外の人々への私のメッセージ」と述べたあと、「私たちは同盟関係を修復し、もう一度世界と一緒に関与をしていく。過去の挑戦ではなく、現在、そして未来の挑戦へ向き合っていく」と明快に世界へとメッセージを発しました。 そして実際にも、大統領就任当日において、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰やWHO脱退の撤回等、世界との協調を裏付けるような大統領令に署名したとされています。 ●バイデンが示した「敵」は? 3 対立構造 演説の対象や聴衆を巻き込んだり味方に引き入れたりする最もシンプルなコミュニケーション手法は、対立構造を創り出すことです。 トランプ大統領は、選挙戦中「親トランプvs.反トランプ」「“赤い州”vs.“青い州”」といった扇動的な対立構造を創り、就任演説では対立軸の相手を「エスタブリッシュメント」「ワシントン」と表現しました。一方で筆者は、バイデン大統領は、分断から統合への機運を高めていくためにも、党派や階層、利益集団といった人で対立構造を創り出すことを回避し、新型コロナウイルスや人種差別といった概念やモノが対立軸の相手として明示されると予測しました。 実際の演説でも、バイデン大統領は、明確に「敵」という表現を使った部分において、その「敵」としては、怒り、恨み、憎しみ、過激主義、無法、暴力、病気、失業、絶望を挙げ、それらに全国民が結束して戦っていくという構図を示しました。 4 ビジョン トランプ大統領就任演説で掲げられたのは、明快な「アメリカ・ファースト」というビジョンです。トランプ政権下では、このビジョンにそってアメリカの国益が最優先される政策が展開されました。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」や環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱したこともこのビジョンに沿ったものでした。 それに対して、筆者は、バイデン新大統領就任演説では、やはり国際協調や統合、「分断から団結へ」が政権運営におけるビジョンとして打ち出されると予測しました。そして実際にも、これまで述べてきたように「全国民を一致団結させる」というビジョンを示したことに加え、アメリカ外に対して、国際協調してさまざまな課題に対処していくことを示したのです。 ●必ずできるという可能性のある世界 5 世界観 トランプ前大統領は、就任演説で「母親と子どもたちは貧困にあえぎ、国中に、さびついた工場が墓石のように散らばっている。教育は金がかかり、若く輝かしい生徒たちは知識を得られていない。そして犯罪やギャング、薬物があまりに多くの命を奪い、可能性を奪っている。このアメリカの殺戮は、今、ここで、終わります」と述べました。「アメリカの殺戮」という過激な表現を使い、超絶暗い過去から明るい未来へという世界観を提示したわけです。 一方で、バイデン新大統領就任演説で示されると筆者が予測した世界観は、必ずできるという可能性のある世界です。バイデン次期大統領は、大統領選挙勝利演説で「私は、アメリカは一語で定義することができる、と常に信じている。それは“可能性”である。アメリカでは、誰もが、自分の夢と神から与えられた能力がある限り、行き着けるところまで行く機会が与えられなければならない」と述べています。 そして、実際の就任演説でも、全国民の一致団結という大きな目標に対して、「必ずできるという可能性ある世界観」を提示するのに相当の時間を投資しました。「状況が変わる」「状況は変えられる」ということを示していくのに、キング牧師が夢を語ったのと同じ場所に女性初の副大統領となったカマラ・ハリス氏が立っていることをその成功例として紹介したのです。 6 価値観 多様性が重視されるアメリカでは、これまで同国がどのような価値観を大切にしてきたのか、これから新政権はどのような価値観を大切にしていくのかといったことを国内外に示すことが非常に重要です。 トランプ大統領就任演説では、本音、正直、変化という価値観が提示されました。それに対して、筆者は、バイデン新大統領就任演説では、正義、礼節、公平という価値観が打ち出されると予測しました。これらは明らかにトランプ大統領が欠いていたものです。実際の就任演説においても、これらの価値観に加えて、歴史、信仰、理性が同時に提示されるとともに、寛容さ、謙虚さ、愛などが強調されたことが、新たな政権誕生を大きく印象付けたと思います。 7 セルフブランディング(ポジショニング) トランプ大統領は、大統領就任演説で自らを「強くて×本音」の大統領というセルフブランディングにポジショニングしました。ヒラリー・クリントン大統領候補との選挙戦に挑むに際し「強さ」が求められ、オバマ政権下の「ポリティカル・コレクトネス」で白人中間層が過ごしにくい社会となった中では「本音で生きられること」が支持者からは求められました。 それに対して、筆者は、バイデン新大統領が就任演説で自らを「正義をもって×よりよい復興を実現(Build Back Better)」にポジショニングすることを予測しました。「正義(Justice)」は、パンデミック(新型コロナウイルス)、経済危機、人種差別、気候変動という「4つの歴史的危機」およびそれらを解決していくための政策を語る際にもバイデン大統領がこれまで多用してきた言葉でした。 そして、「よりよい復興を実現」は、選挙戦中は「トランプ大統領を信任しない」「不信任である」という想いが込められていましたが、就任演説では先に挙げた「4つの歴史的危機」に対する重点政策においてよりよい復興を実行していくという強い決意を示してくるのではないかと予測しました。 実際の就任演説においては、正義は、「すべての人のための正義という夢は、もう先送りすることはできません」等の重要な箇所で使われました。「正義という夢」と表現したことについて、私は本音と正義という誰もが双方をもっている価値観がそれぞれの人の中で戦っていることを感じました。「よりよい復興を実現」については、よりよくなるという表現がいろいろと使われていた一方、演説の最後において、「これからのアメリカの物語」について、「恐怖ではなく希望の物語」「分断ではなく約束(の物語)」「暗闇ではなく光明(の物語)」 にしていくという部分に「よりよい復興を実現」していく強い決意を表明しました。 ●今後を占う就任演説からの注目5大ポイント それでは次に、前回記事で示した7大ポイントの実際の分析を踏まえて、実際の就任演説結果からバイデン政権の今後を占っていきたいと思います。 1 「結束×必ずできるという可能性ある世界観」が最大ポイント 前回記事のサブタイトルが「危機的なアメリカをどう一致団結させるのか」であったように、そして、「必ずできるという可能性ある世界観」を提示するのが中核になると予測したように、「結束×必ずできるという可能性ある世界観」がバイデン大統領の就任演説での最大ポイントであったと分析されます。あとで述べるように「リンカーンの理想主義」側に傾斜した就任演説のストーリー展開の一方、「結束×必ずできるという可能性ある世界観」をいかに早期に少しずつでもいいので具体的な成果をもって示していけるかがバイデン大統領には問われていると思います。 2 予測可能性が高いことが長所・短所 冒頭で述べたとおり、バイデン大統領の就任演説は、前回記事で示した7大ポイントについて、ほぼ予測どおりの内容となりました。もっとも、ここで重要なのは、就任演説予測がほぼ予測どおりだったということではなく、バイデン大統領やその就任演説の予測可能性が高かったということなのです。そして、この点がバイデン政権の今後を占う上でも最重要ポイントの1つになると考えられます。 実際に、バイデン政権が予測可能性の高い運営になっていくことは、同政権の特徴であり、また長所にも短所にもなり得るものだと思います。 長所としては、コロナ禍、デジタル化の進展、脱炭素社会など、環境が激変している中で、政権運営の予測可能性が高いことは、政策を確実に実行していくうえではプラスに働くことが期待されます。それは、予測可能性が高いことは制度やシステムの円滑な運用において重要であるからです。 一方で、予測可能性が高いことは、交渉戦略上は大きな短所として作用します。親トランプの過激派筋やテロ組織等には攻撃の材料を提供しやすいことを意味するのです。もっとも、オーソドックスで正義をもって事に当たろうとしているバイデン大統領は、後者のデメリットを熟知しながらも、自らの価値観とともに正々堂々として言動を続けてくるのではないかと考えられます。 ●分断の危機に対する団結を優先して訴えた 3 「リンカーンの理想主義とルーズベルトの実利主義」の後者が示せなかったこと 前回の記事において、筆者は、米議会3誌の1つであるThe Hillの記事の中から、「バイデンの就任演説は、リンカーンの高潔な理想主義とルーズベルトの明確な実利主義を組み合わせる必要がある」という指摘を紹介し、バイデン大統領が就任演説で提示していくべき内容についても考察しました。 南北戦争の最中においてアメリカが最大の分断の危機を迎えていたのに対して団結を訴え実行していったリンカーン大統領。バイデン大統領の就任演説は前者の部分に大きなウエイトを割き、全国民の一致団結を訴えたわけです。 その一方で、ルーズベルト大統領の就任演説については、大恐慌の最中にアメリカが置かれた状況をありのままに評価し、問題解決への政策を指し示すことで国民が持っていた恐怖を和らげたと評価されてきましたが、その「ルーズベルトの実利主義」部分について、バイデン大統領は自らの演説では期待されていたことを実行できずに終わったというのが率直なところではないかと思います。 これは、やはりアメリカが南北戦争以来とも言える危機的な分断の状況にあるなかで、結束を訴えるための「リンカーンの理想主義」部分を優先せざるを得なかったからではないかと考えられます。もっとも、ここは、バイデン大統領自身が、「必ずできるという可能性ある世界観」の提示を就任演説の大きなテーマに選んだなかで、実利主義的部分を示すことで同世界観が映えることになったのではないかと思っています。 4 「意見の相違は必ずある」としつつも、反対側意見に耳を傾ける姿勢は示さなかった 分断が存在していること自体はこれまでもあったことという言葉とともに、「意見の相違は必ずある」「意見が違うのが民主主義」であると述べたこともトランプ前大統領とは対照的であったと思います。もっとも、より重要なことは、「意見が違う場合にどのように対処するのか」であり、「違う意見にも耳を傾け、話し合っていく」ことなのではないかと考えらえます。 したがって、バイデン大統領は、「意見が違うのが民主主義」と述べるだけではなく、実際に親トランプ派の主張の中で少なくとも自分自身も共感できる部分には共感を示し、その主張に対してどのように対応していくのかを述べることが重要だったのではないかと思います。 大統領選挙戦中も、トランプ支持層とバイデン支持層では、主要論点が大きく異なることはたびたび指摘されてきたことです。安全保障などトランプ支持層の最大関心事項には触れず、自らが掲げてきた4大危機・4大政策だけを述べたのは、演説の最大目標だった一致団結という点からも最も不十分なところであったのではないかと思います。 ●「結束×必ずできるという可能性ある世界観」 5 「結束×必ずできるという可能性ある世界観」を早期に実行していくことが重要 5つの最初のポイントとして述べたとおり、「結束×必ずできるという可能性ある世界観」が演説の中核であった中で、バイデン政権にはそれを早期に実現することが求められていると思います。 アメリカが南北戦争以来の分断の危機を迎え、トランプ前大統領は退任演説で「何らかの形で必ず帰ってくる」と述べました。つまりはこれからの4年間でもアメリカに大きな影響力を行使し続け、4年後の大統領選挙にも出馬してくる可能性が高い中で、実行の遅れは、分断をさらに拡大させることに直結するのではないかと考えらえます。 今回の就任演説が、わかりやすくシンプルで明快な言葉で展開されたことは、確実にトランプ支持層を意識してのものであったと思います。もっとも、上記で述べたとおり、トランプ支持層に踏み込んで共感を示したり、その主要論点に触れたりすることもなかったなかで、結束を実際にはどのように早期に実現していけるのかの具体策には乏しい就任演説だったのではないかと思います。 このように、「結束×必ずできるという可能性ある世界観」を最大テーマとして、「リンカーンの理想主義」的ストーリー展開となったバイデン大統領の就任演説ですが、バイデン政権がこれからすぐに対峙していかなければならない「現実の世界」には、本当に大きな課題が山積みになっています。 1月6日の連邦議会議事堂への乱入事件を受けてトランプ前大統領への弾劾の動きが民主党内で加速した中で、バイデン大統領が弾劾自体に静観してきたのは、就任演説で全国民に結束を訴え、それを実行することが求められていることを誰よりも理解していたからに他なりません。 民主党側では、トランプ前大統領を二度の弾劾に追い込むことは、その政治生命を絶ち、4年後の大統領就任可能性を排除しておきたいという思惑が大きいものと指摘されています。もっとも、新政権誕生後の重要なタイミングで弾劾の手続きを進めていくことは、すでにある巨大な分断をさらに拡大させ、新政権の重要施策実行を遅らせる可能性もある諸刃の剣ではないでしょうか。 南部7州がアメリカ合衆国を脱退したことで始まった南北戦争ですが、トランプ大統領がバイデン大統領就任式の当日に同式には参加せずフロリダに移り、支持者から熱烈な歓迎を受けたことは、当然にトランプ大統領の戦略の一環だったのではないかと分析されます。 ●トランプファミリーが次期リーダー候補となるかも トランプ前大統領自身が仮に法的な要因等で次の大統領選挙に出馬しなかったとしても、トランプ支持層はトランプファミリーの中から自らの次期リーダーを担ぎ出す可能性も高いのではないかと思います。 実際に、議会3誌の1つであるPOLITICOにおいては、1月15日付の「イヴァンカの政治的将来が大きな焦点になっている(Ivanka’s political future comes into sharper focus)」という記事において、トランプ前大統領の資金的な支援者たちが同氏の長女であるイヴァンカ・トランプ氏に政界入りを強く望んでいること、さらにはトランプ前大統領のシニアアドバイザーだったジェイソン・ミラー氏が「イヴァンカは政治的に強力な存在である」(Ivanka is a political powerhouse)と述べたことなどが紹介されています。 バイデン大統領が就任演説で述べたとおり、「意見の相違は必ずある」「意見が違うのが民主主義」だと思います。だからこそ、バイデン大統領には、相手側の意見にも耳を傾け、実直に対話を続けていくことこそが求められているのではないかと思います。そこまで踏み込んでやっていくことで、バイデン大統領が就任演説の冒頭で述べた「今日は民主主義の日」が真に到来するのではないかと期待しているのです。 |
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●バイデン大統領は本当にアメリカを統一できるのか 1/22 | |
●政治家にとって言葉は極めて重要
政治家にとって“言葉”は大切である。ある意味で、言葉は政治家の“生命”である。特にアメリカでは、それが際立っている。アメリカの学校では、「デベート(討論)」と「スピーチ(演説)」を教えるのが普通である。言葉で議論し、言葉で相手を説得するというのが、民主主義の原則である。「沈黙は金でる」とか、「言わなくてもわかるはずだ」という日本的な常識は通用しない。日本では、周囲の人が気配りし、言葉を使わなくても対応してくれる。だがアメリカでは明確に自分の主張をしない限り、相手にしてもらえない。雄弁であることは、政治家の重要な資質である。これに対して日本では「語らない」、「語れない」という政治家があまりにも多すぎる。。 1月20日、バイデン大統領の就任式が行われた。議事堂の前にあるモールと呼ばれる広場は、通常、人で埋め尽くされる。新大統領の就任演説の言葉に反応し、喝采する。その度に演説が途切れる。今回のバイデン大統領の就任式は、広場は観衆の代わりに国旗で埋め尽くされた。そのためバイデン大統領の就任演説も盛り上がりに欠けた。大統領就任演説は、国民に対する重要なメッセージであり、大統領の理念や思想を語り掛ける場所でもある。では今回の大統領就任演説でバイデン大統領は国民に何を語り掛けたのだろうか。 ●“政治的対立”の和解を求めたジェファーソン大統領 バイデン大統領の就任演説を評価する前に、歴史に残る大統領の就任演説を見てみよう。アメリカ政治は党派対立の歴史でもある。最初の政党は「フェデラリスト党」で、強力な政府を作り、産業を振興することでアメリカを豊かにし、欧州列強の干渉を排除しようとした。同党の指導者は初代財務長官のアレキサンダー・ハミルトンであった。これに対して強力な中央政府は個人の政治的自由を奪うとして、州をベースとする政治体制(共和制)の確立を主張する「民主共和党」が結成された。その指導者は初代国務長官のトーマス・ジェファーソンである。1800年の大統領選挙はフェデラリスト党が推すジョン・アダムス大統領と民主共和党の推すジェファーソンの闘いとなった。壮絶な選挙を経てジェファーソンが勝利する。1801年にジェファーソンは大統領に就任するが、その時の演説の最も有名な言葉は「私たちは皆、共和党員であり、皆民主党員である(We are all Republican, we are all Federalist)」であるというものだ。その発言の趣旨は、党派的対立を止め、平和的に政権移譲をすることを呼びかけたものである。 ジェファーソン大統領の言葉は、2020年の大統領投票が終わった11月8日にバイデン候補が語った「私は分断を求めてるのではなく、統一を求める大統領になることを誓う。赤い州と青い州を区別するのではなく、合衆国だけを見る大統領になることを誓う」という発言と呼応する。「赤い州」とは共和党を支持する州であり、「青い州」は民主党を支持する州である。バイデン大統領は大統領就任演説の中で、「私は皆さんに誓う。私はすべてのアメリカ人の大統領だ」と、同じ趣旨の発言をしている。 ちなみにフェデラリスト党の地盤は東部、共和党の地盤は南部であった。アメリカの党派や地域の分断は建国当初から存在していた。現在も、その対立構造に基本的な変化はない。 ●南部の連邦離脱を恐れたリンカーン大統領 フェデラリスト党はやがて共和党へと変わって行き、民主共和党は民主党へと変わって行く。共和党は東部を地盤とし、奴隷制度に反対した。他方、民主党は南部を地盤とし、奴隷制度の維持を主張した。1861年に大統領に就任したのがリンカーンである。当時、南北対立が先鋭化し、戦争が勃発する懸念があった。南部の離脱を食い止めるのがリンカーン大統領の大きな課題であった。就任演説でリンカーン大統領は「奴隷州の奴隷制度に干渉しない」「我々は敵ではない。友人である。敵になってはならない」と、連合から離脱の動きを示していた南部諸州に自重を呼び掛けた。日本ではリンカーン大統領は奴隷制度を廃止した大統領と教えられているが、この時点では奴隷制度は州政府の権限であり、連邦政府は干渉しないというのがリンカーン大統領の立場であった。だがリンカーン大統領の呼びかけに南部諸州は応えず、南北戦争が始まった。ここでも地域対立と党派対立が政治の焦点であった。 ●アメリカ社会を根底から変えたルーズベルト大統領の言葉 少し時代を飛んで、1933年に大統領に就任したフランクリン・ルーズベルトの就任演説を見てみよう。大恐慌のさなかに誕生した新政権である。ルーズベルト大統領は、将来に悲観する国民に向かって「最初に皆さんに私の確固たる信念をお伝えする。私たちが唯一恐れなければならないのは恐れそのものである。恐れとは、後退を前進に変えるために必要な努力を麻痺させてしまう名状しがたく、不合理で、根拠のない恐怖である」と訴えた。ルーズベルト大統領は大恐慌から脱するために大規模な政府支出を伴う「ニューディール政策」を実施に移した。筆者が好きな就任演説の言葉は「愚かな楽観主義者だけが現在の暗い現実を否定することができる(Only a foolish optimist can deny the dark realities of the moment)」というものである。バイデン大統領は選挙運動の中で、新型コロナウイルスによる経済の低迷から脱するために「ニューディール政策」に匹敵する大規模な経済政策を発動すると語っていた。 ●新自由主義への道を開いたレーガン大統領の言葉 ニューディール政策はアメリカ社会を根底から変えた。レッセフェール(自由放任)の世界から、政府が大きな役割を果たす福祉国家へと変わっていった。この流れを断ち切ったのが、戦後最悪の不景気の中で1981年に大統領に就任したロナルド・レーガンである。彼は就任演説で「現在の危機のもとでは政府は私たちの問題の解決策にはならない。政府が問題だからだ」と、ニューディール政策以降続いていた「大きな政府」からの脱却を主張した。レーガン大統領は「新自由主義政策」を始める。その具体的な政策には、「小さな政府」、「市場での自由競争促進」、「規制緩和」、「減税」などである。新自由主義は世界を席巻していく。民主党も、その波に巻き込まれる。民主党のクリントン大統領は1996年の「一般教書演説」の中で「大きな政府の時代は終わった」と語っている。 ●国民の「統一」を訴えたオバマ大統領 リーマン・ショック後の大不況の最中の2009年に誕生したオバマ大統領は就任演説で「今日、私たちがここに集っているのは、私たちが恐怖よりも希望を、対立よりも統一を選んだからだ」と国民に訴えた。「統一(unity)」は、バイデン大統領が就任演説で繰り返し使った言葉である。さらに続けて「我が国経済は非常に弱っている。それは一部の人々の貪欲さと無責任の結果である。・・・・今、私たちに必要なのは、新しい責任の時代(a new era of responsibility)である」と訴えた。大統領就任演説ではないが、オバマ大統領は「人種的和解」を訴えた。だが、世の中はオバマ大統領の願いとは逆の方向に動き、白人至上主義が頭をもたげ、人種対立はより激しくなった。 ●“忘れられた人々”に向かって訴えたトランプ大統領 トランプ大統領の就任演説は15分と極めて短いものであった。その中でトランプ大統領は「母親と子供は貧困に囚われている。錆に覆われた工場は全国至るところで墓石のように放置されている。犯罪やギャング、ドラッグが多くの人の命を奪い、アメリカの可能性を奪っている。こうした大虐殺はまさにここで止めよう(The American carnage stops right here)」と訴えた。共和党大統領に共通にみられる「法と秩序」の主張である。 トランプ大統領を当選に導いたのは白人労働者であった。彼らはワシントンの政界を牛耳るエリートから「忘れられた人々」であった。トランプ大統領は、そうした人々に向かって、「あなたたちは再び無視されることはない」と呼び掛けた。ポピュリズムの原点である。さらに「一緒にアメリカを再び強い国にしよう。再び豊かな国にしよう。再び誇り高い国にしよう。再び安全な国にしよう。一緒にアメリカを再び偉大な国にしよう」と訴えた。そしてトランプ大統領を支持する人々が「Make America Great Again(MAGA)」という組織を作り、積極的な活動を展開した。 ●バイデン大統領の就任演説は国民に何を訴えたのか 今まで大統領の就任演説を紹介した。それぞれ歴史に残る発言をしている。では、バイデン大統領の就任演説は国民に何を訴えたのか。どんな言葉が歴史に残るのだろうか。就任演説で語られている内容は「統一(unity)」、「民主主義」、「アメリカン・ストーリー」、「トランプ批判」、「課題」に要約できる。アメリカのメディアで最も議論されているのは、バイデン大統領が主張する「統一」の必要性である。トランプ政権のもとでアメリカ社会が分断され、様々な局面で対立が深まった。そうした事実を踏まえれば、バイデン大統領が繰り返し「統一」を訴えるのは当然かもしれない。 では「統一」に関して、バイデン大統領はどのような発言をしているのか。最初の部分で「私たちは平和的な政権移行を実行するために、神のもとで、分裂することのない国家として、一つにならなければならない」と訴えている。そして「私のすべての思いは、アメリカを統一し、人々を統一し、我が国を統一することだ」と語る。「統一について語ることは、一部の人にとって馬鹿げたファンタジーのように聞こえるかもしれない」としながらも、「私たちを分断した力は深く、その力が現実のものであることを知っているからだ」と、「統一」の必要性を説く。現在のアメリカには「国家は存在せず、ただ消耗するような怒りがあるだけだ。国家は存在せず、混迷した状況があるだけだ。危機と挑戦の歴史的な機会である。統一が先に進む道である」と、「統一」の必要性を訴える。 そして「赤対青、田舎対都市、保守対リベラルを対立させる野蛮な戦争(uncivil war)を終わらせるべきである」と主張する。ここで、なぜ「uncivil war」という言葉を使ったのか分からない。「civil war」は「内戦」を意味する。したがって、極めて強い意味の「civil war」を使うのを避け、不毛な戦争という意味合いで「uncivil war(野蛮な戦争)」という言葉を使ったのではないかと思う。 次のバイデン大統領の言葉は、アメリカ人にとって厳しい指摘かもしれない。「アメリカの歴史には、私たちが平等に作られているというアメリカン・ドリームと、私たちを長い間分裂させてきた人種差別、排外主義、恐れ、極悪非道な行動である残酷で醜い現実の間で常に戦いが行われてきた」。トランプ大統領を支持した人々は、まさに人種差別主義者であり、排外主義者であり、人々に対して忌まわしい行為をしてきた人々であった。 ●「私は民主主義を守る」 バイデン大統領の就任演説では「民主主義」も重要な言葉になっている。演説の最初の部分で、「私たちは再び、民主主義が貴重であることを学んだ。民主主義は脆弱である。だが民主主義は打ち勝った」と、大統領選挙でのトランプ陣営との戦いを想起させるように語っている。そして「私たちは民主主義と真実に対する攻撃に直面した」として、攻撃の内容を列挙する。すなわち「猛威を振るう新型ビールス」「不平等の拡大」「組織的な人種差別の棘」「危機に瀕する気候」「世界でのアメリカの役割」である。そしてバイデン大統領は、こうした問題に対処して、「私は民主主義を守る」と決意を語る。 ●激しいトランプ批判の言葉 演説の中で際立っているのが、トランプ大統領批判である。ただトランプ大統領について一度も直接名前に言及してはいない。「私たちは政治的過激主義の台頭、白人至上主義、民主主義に対するテロ行為に立ち向かい、打ち破らなければならない」と極めて強い口調で、トランプ陣営を批判している。「私たちは事実を操作し、事実を勝手に作り出すような文化は拒否しなければならない」と、平気で嘘をつき、嘘を広げるトランプ大統領や陰謀論者を糾弾する。さらに「人々に沈黙を強い、民主主義の機能を止めるために、この神聖な場所から私たちを追い出すために暴力を使うことができると考える暴徒たちに立ち向かわなければならない」と、厳しい口調で2週間前に起こったトランプ支持派の暴徒の議事堂乱入事件を批判する。その批判はそこで留まらず、「権力と利益を得るために嘘がつかれた」「真実を守り、嘘を打ち破らなければならない」と続く。 外交に関する発言が一か所ある。「私たちは、もう一度、アメリカを永遠に世界の指導者にすることができる」と語っている場所である。ただ具体的な政策は語られていない。 ●新しい「アメリカン・ストーリー」を語る バイデン大統領は、演説の中で「アメリカン・ストーリー」を語っている。「私たちは恐怖ではなく、希望に満ちたアメリカン・ストーリーを書かなければならない。分裂ではなく、統一の、暗黒ではなく、光の満ちたアメリカン・ストーリー。品位と威厳をもったアメリカン・ストーリー、愛と癒しのアメリカン・ストーリー、偉大さと善性に溢れたアメリカン・ストーリー。これは私たちを導いてくれる物語である」と訴えている。「アメリカン・ドリームは失われた」と語られ始めて、随分、時間が経つ。アメリカを導いてきたのは、将来に対する希望の物語であった。バイデン大統領は、アメリカン・ドリームの復活を願っているのだろう。貧富の格差が限界を超える水準まで拡大し、大学を卒業しても、生涯、学生ローンの返済に追われ、十分な医療保険がないために、多くの人が新型コロナウイルスで死んで行く現実の中で、どのような希望に溢れる夢を作り上げることができるのだろうか。 ●バイデン大統領の就任演説は歴史にのこるだろうか 上で歴史に残る就任演説を紹介した。バイデン大統領の演説は、人々の心に残るだろうか。観衆のいない場所での演説は、多くの美しい言葉が散りばめられているにもかかわらず、感動的とは言えなかった。改めて文章で読んでみると、余りにも繰り返しが多いというのが最初の印象であった。分裂したアメリカ社会を統一したいという思いは痛いほど感じられた。だが記憶に残っている印象的な言葉やフレーズはない。思いつく言葉は「統一」である。だが、これは歴代大統領が直接的、間接的に常に使ってきた言葉である。内容が抽象的なのは仕方がない。具体的な政策に言及する「一般教書演説」とは違う。5つ星で評価すれば、3つ星といったところか。 ●共和党議員はどう反応したか:一部の議員から祝福のメッセージが届く トランプ大統領に最も忠実だったが、土壇場で反旗を翻したミッチ・マコーネル上院共和党院内総務は「協力できるあらゆる問題で一緒に働けるのを期待している」とツイッターで祝福のメッセージを送っている。最初のトランプ大統領の弾劾裁判で共和党議員としてただ一人、弾劾賛成の票を投じたミット・ロムニー上院議員も「バイデンの演説は非常に力強く、必要とされたいたものだ。事実が語られ、アメリカの原則を守るために戦うことができる指導者なら、私たちは国家として協力できる」と語っている。 共和党のスーザン・コリンズ上院議員も「バイデン大統領が統一を呼びかけたのは正鵠を射ている。私たちに自分たちがアメリカ人であることを思い出させた。私たちは協力できる。そうすれば我が国が直面する問題を解決できる」と語っている。 17人の共和党議員が連名でバイデン大統領に祝福の書簡を送っている。その中には1月6日の大統領選挙の議会の両院合同会議での認証の際、異議を申し立てたトランプ派の共和党議員も含まれている。書簡の中には次のような文章が含まれてい。「新政権、新大統領、おめでとうございます。私たちは、これからの4年間に、新政権と第117議会は多くの挑戦と成功をもたらすものだと信じています。また私たちはイデオロギーの違いがあるものの、私たちが奉仕するアメリカ国民のために協力できることを願っています」「アメリカ人は党派対立によって行き詰まっており、通路の両側にいる指導者がアメリカの家族、労働者、企業家にとって重要な課題で協力する姿を見たいと願っています」と、バイデン大統領に極めて融和的なメッセージを送っている。 そして「私たちは私たちをアメリカ人として結びつけるものは、私たちを分断させた事柄よりもはるかに重要だと堅く信じています。私たちはすべてのアメリカ人にとって意味のある変化をもたらす事柄について交渉し、世界で最高の国として合衆国を維持することを願っています」と書かれている。80年代以降、続いた党派対立が夢のような希望を持てる書簡が、共和党議員からバイデン大統領のもとに届いたのである。 ●バイデン政権のもとで“超党派の協力”は可能となるのだろうか バイデン大統領の「統一」の訴えは国民の心に響き、受け入れられたことは間違いない。だが政権が変わったからと言って、世界が急に変わるわけではない。トランプ支持派の共和党議員が突然態度を変えると考えるのは楽観的すぎる。まだ多くの共和党議員はトランプ前大統領の影響下にある。直接名指しはしなかったものの、トランプ前大統領に対する厳しい批判にトランプ支持派の人々は間違いなく反発するだろう。リベラル派と保守派の間には妥協しがたい世界観の違いが存在している。それは容易に妥協できる問題ではない。ある共和党支持者は「共和党は保守主義が主張する問題に対して闘い続ける」と語っている。中絶問題や宗教的自由の問題、政府の役割に関する問題など、アメリカを分断してきた倫理的、社会的問題を克服して国民を統一することは至難の業である。さらに人種問題、移民問題も簡単に和解の成立する問題ではない。 バイデン大統領が分裂したアメリカを“統一”するにしても、それには時間を要るだろう。その前提条件は、新型コロナウイルスの感染を完全に抑え込むことだ。その見通しもまだ立っていない。 バイデン大統領は執務を始めた最初の日に17に及ぶ大統領令を出して、トランプ政権時代の政策を一気に転換した。だが、それはあくまでトランプ時代の否定であって、バイデン時代の幕開けを示すものではない。 |
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●大統領就任演説にちりばめられた美辞麗句の空しさ 1/22 | |
民主党のジョー・バイデン新大統領が1月20日の就任式で、「団結」や「結束」などインクルーシブな美辞麗句で飾られた演説を行い、「私に投票しなかった人たちも含めた、すべての米国民の大統領になる」「国民の結束に全身全霊を注ぐ」と宣言した。
だが、演説の内容はバイデン氏が当選した2020年11月から繰り返されてきた「民主党も共和党もない」という抽象的な団結や包摂というメッセージの豪華版に過ぎず、7400万の「私を支持しなかった有権者たち」の心に響くことも届くこともない。事実、バイデン氏が公明正大に当選した事実に納得しない勢力の一部は1月6日、今回の大統領就任式が挙行された米連邦議事堂に乱入する事件まで起こしている。 なぜバイデン新大統領の包摂の呼びかけは、人口のおよそ半数の米国人に受け入れられないのだろうか。彼らが真の大統領と仰ぐドナルド・トランプ前大統領自身が敗北を認めないこと、リベラルと保守の人々が互いに心を開いて話さないところまで分断がすでに進んでいること、彼らが信じる情報の多くが「フェイクニュース」とリベラル派にレッテルを貼られる陰謀論であり、その世界観や人間観からして民主党の包摂言説を信じられないこと、などが識者によって指摘されている。 しかし、より重要な理由として挙げられるのが、団結や包摂という言葉の美しさと、バイデン新大統領と民主党が推進する実際の分断的な政策の間に存在するギャップである。この記事では、就任演説に頻出したキーワードの分析を通して、バイデン新大統領が「本当に伝えたかったこと」を読み解く。 ●トランプ党を倒すのが「結束」「団結」 たとえば、バイデン新大統領は就任演説で、「私は、結束について話すことが、最近ではばかげた空想のように聞こえることを知っている。私は、私たちを分断する力が深く、現実のものであることを知っている」と認めた上で、「修復し、回復し、癒やし、構築し、獲得する」ことを任期中の課題として挙げた。さらに、「今、私たちは結束することができる」とも述べた。 では、具体的にはどうすれば、その結束や団結が達成されるのだろうか。バイデン新大統領は演説で、「対峙しなければならず、打ち負かすべき政治的過激主義の台頭や白人至上主義、国内テロがある」と明確にし、「私たちが直面する敵、怒り、恨みと憎しみ、過激主義、無法、暴力」という言葉を用いながら、「事実そのものが操作されたり、捏造されたりする文化を拒否しなければいけない」と言明した。 民主党、共和党、トランプ党、中道派、左派、極右などすべての聴衆にとり、バイデン氏の「打ち負かすべき敵」が誰を指していたのかは明々白々であった。それは、非リベラルであり、トランプ党であり、陰謀論者であり、ツイッターやフェイスブックにアカウント停止されるような人々である。つまり、民主党やリベラルエリートの政敵だ。 バイデン氏のメッセージに「結束」「団結」と、「打ち負かすべき敵との対峙」が矛盾する形で混在した理由は、自らの政敵であるトランプ党に対する戦いに国民を「参戦」させ、同じ敵を叩くことにより、彼が意図する「結束」と「団結」がもたらされることを説きたかったからである。 事実、バイデン新大統領は、「私の魂のすべては、米国をまとめること、国民を一つにまとめること、この国を結束させることにある。すべての国民に、この大義に参加してもらいたい」と志願を訴え、同時に、非リベラルやトランプ党を意味する「打ち負かすべき政治的過激主義の台頭や白人至上主義、国内テロ」「敵、怒り、恨みと憎しみ、過激主義、無法、暴力」の打倒を誓っている。 ●バイデン大統領の吹いた「犬笛」 バイデン新大統領は、「私たちを支援しなかったすべての人たちよ、言わせてほしい。もしなおも反対するのであれば、そのままでいい。それが民主主義だ。それが米国だ。私たちの共和国の枠の中で平和的に異論を唱える権利。それがおそらくこの国の最も偉大な強さだ」と民主主義に対する一応のリップサービスはした。 しかし、非民主的なテック大手のプラットフォームによりそれらの人々の異論が、暴力的でないものも含めて予防的・拡大解釈的に排除されていることは、非難しなかった。法的には問題ないものの、救済措置や有効な代替もなく、プラットフォームによって言論の場や政治活動の機会を実質上奪われるという、反民主主義的な裏口手法を民主党やリベラルエリートは心の底から欲し、支持している。 バイデン演説においてそのような現実に対する非難が見られなかったのは、法律の力が及ばない民間企業が、非民主的な手法で政敵弾圧をしてくれることを、新大統領が歓迎しているからであろう。自ら手を下さずに政敵をつぶし、黙らせたいからだ。 実際にバイデン氏は就任演説で、「真実を守り、嘘を打ち倒す義務と責任」について言及している。民主党の熱烈な支持者にはわかる「犬笛」であり、テック大手のプラットフォームやニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、CNNなどのメディアは、非リベラルやトランプ党をつぶし、黙らせることにますます邁進するであろう。それが、リベラルの考える「民主主義」「言論と表現の自由」なのである。 こうしたことから、バイデン氏の演説内容である「私に投票しなかった人たちも含めた、すべての米国民の大統領になる」「お互いの声を聞こう。お互いを見よう。お互いに敬意を示そう」は美しい嘘だとわかるのだ。 バイデン新大統領は、就任当日にトランプ前大統領に対する意趣返しの大統領令を発出し、オバマ路線への復帰を印象付けた。これからの「最初の100日間」で明らかになるのは、民主党首長が中心となって推進した効果の薄いロックダウンで傷つき、疲弊し、困窮した庶民の救済が後回しにされ、政敵であるトランプ前大統領とその「残党」の弾劾や訴追に血道をあげる民主党政権と議会民主党の姿である。 民主党エリートの「ロックダウンをすれば、より効果的に新型コロナウイルスの感染が押さえられ、より早く経済が回復する」との約束は「動くゴールポスト」と化し、どれだけロックダウンをかけても感染者数や死者数は増加するばかりである。そうした中、2000万人以上の米国人が失業し、さらに多くの人々が収入減に見舞われた。毎日の食事にさえ困る人が多い。 調査企業の米ムーディーズ・アナリティックスの推計によれば、家賃を支払えなくなった1280万人が、12月31日時点で総額700億ドル(約7兆2570億円)の未払い家賃の負債を抱えている。コロナ第3波が襲来して感染者や死者が急増する中、立ち退きによるさらなる感染拡大から人々を守るため、米疾病予防管理センター(CDC)が2020年9月に発出した住まいからの強制退去の猶予・禁止特例措置が1月31日で失効する。 バイデン新大統領は演説で、「人々はベッドに寝ながら、医療保険は維持できるだろうか、住宅ローンは支払えるだろうかと不安になっている。家族のことや将来のこともだ」と理解を示し、「あなたがたに確言しよう、私はわかっている」と語りかけた。 新政権は実際に発足当日、立ち退き猶予・禁止特例措置を大統領令で3月末まで延長した。また、1兆9000億ドル(約200兆円)規模の追加景気刺激策を打ち出し、国民1人あたり1400ドル(約14万5000円)の直接給付を含む1兆ドル(約104兆円)の家計支援のほか、4150億ドル(約43兆円)の新型ウイルス対策支援や4400億ドル(約46兆円)の中小企業支援を盛り込んだ。米議会の承認待ちである。 だが、民主党ロックダウン政治のサバイバーたちにとり、これらの対策は一時的な救済や問題の先送りでしかない。連邦最低賃金を、新政権の提案通り15ドルに引き上げても、生活は改善しない。数カ月間の政権移行準備期間があったのに、何をしていたのだろうか。 ●トランプ党台頭の根源はさらに悪化 庶民の生活安定化の抜本的対策となる雇用の質の向上のためには、新自由主義や自由貿易を否定し、脱グローバル化をしなければならない。さもなくば、米労働者たちは無防備なまま、海外の低賃金労働者との競争にさらされ続ける。彼らの雇用主は労働条件を悪化させ、いつでもクビにでき、給与も抑え続けられるからだ。 そもそも4年前のトランプ政権誕生の大きな要因となったのは、そもそも4年前のトランプ政権誕生の大きな要因となったのは、バイデン大統領が上院議員や副大統領として先頭に立って推し進めたボーダーレス化による雇用の流出や仕事の質の劣化による、国内情勢の不安定化だ。米議会への乱入事件も、大元をたどればグローバル化による白人中間層の没落が大きな役割を果たしている。 だが、資本家の党である民主党にとり、新自由主義や自由貿易、グローバル化は党是であり、政策の根幹であるため、引っ込められない。だから、バイデン政権は一時しのぎの政策の繰り返しに終始し、中間層はさらに没落し、内政の不安定化に拍車をかけることになるだろう。バイデン新大統領が就任演説で言及した「未開で野蛮な内戦(uncivil war)の終結」の呼びかけは、空虚なものでしかない。 バイデン大統領の、「恐怖ではなく希望の、分断ではなく結束の、闇ではなく光の米国の物語を書いていこう」との語りかけは、分断に対する抜本的な解決である中間層の再興はもたらさず、「未開で野蛮な内戦」は悪化するに違いない。 |
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●ドナルド・トランプ | |
●トランプ大統領退任演説 1/20 | |
親愛なるアメリカ国民諸君
「われわれの国家を再建し、その魂を甦えらせ、そして国民への奉仕の心を、政府に取り戻させる」われらすべての国民が、この壮大な事業を開始したのは、4年前のことになる。すなわち我々は、すべてのアメリカ国民にとり、アメリカを再び偉大にする、その任務に着手したのである。 第45代アメリカ大統領としての任期を終える今、私は諸君の前にいて、我々がともに成し遂げたことを、実に誇りに思っている。我々はここに来たときやるべきだった仕事、そしてそれ以上の成果をあげた。 今週、わが国には新しい政権が発足する。アメリカを安全で繁栄する国にするため、新政府の成功を祈る。国民諸君には幸福を。そして新政権が、重要な言葉だが、幸運に恵まれることを、心から願う。 まずはじめに、我々に道を開いてくれた幾人かの方々に感謝したい。まず、われらがファーストレディ、メラニアの愛情と支援に対し、多大な感謝の気持ちを表したい。また、娘のイヴァンカ、義理の息子ジャレド、そしてバロン、ドン、エリック、ティファニー、ララに、心から感謝したい。君たちがいてくれてこそ、私にとってこの世界は、明るく楽しいものになった。 またマイク・ペンス副大統領とカレン夫人、そしてご一家の全員に感謝したい。さらにマーク・メドウズ首席補佐官にも感謝を述べる。献身してくれたホワイトハウスのスタッフ、そして閣僚諸君に。そして国家のため、全身全霊をもって頑張ってきた、政府のすべての人々に。 また、シークレットサービスの諸君にも一言感謝を述べたいと思う。彼らは実に卓抜した集団であり、私と家族はこれからも長く、諸君への感謝を忘れることはないであろう。 ホワイトハウス警護室のすべての諸君、マリーン・ワンとエアフォースワンの運営チーム、アメリカ全軍の将兵、そして全国の、州や地域の法執行機関の諸君にも、心から感謝する。 そして何よりも、アメリカ国民である諸君に感謝したいと思う。諸君の大統領であったことは、言葉で語れない名誉であった。この格別な栄誉に対し、心からお礼を言いたい。これこそ真に、偉大な名誉という言葉そのものだろう。 我々は、忘れてはならぬ。国民のあいだには見解の相違があったとしても、アメリカとは寛大で善良、平和を愛する国民たちの国である。そして国民は、わが国が豊かで繁栄し、大きな成功をおさめてゆく、よりよい国であることを望んでいる。この国は実に、すばらしい国なのだ。 議事堂での狼藉には、全国民が恐れを感じた。政治的暴力は、われら国民が尊重するすべてに対する攻撃であり、決して許されることではない。いま我々は、共有する価値観を一つにし、党派的対立を乗り越え、共同の運命を紡いでゆく必要がある。 4年前、私は大統領選挙に勝った者の中では唯一、本当のアウトサイダーとして、ここワシントンにやってきた。私は1人の政治家として過ごしたのではない。開かれた地平線を見、そこに無限の可能性を構想する、1人の建設者として過ごしてきたのである。 私が大統領に立候補したのは、そこに新たな高みが、アメリカのため開けているを知っていたからである。アメリカを最優先に考えていれば、わが国の可能性は、無限なのである。そのことが、私にはわかっていた。だからこそ私はそれまでの生活を後にし、つらい戦いの場に足を踏み入れた。そこは過酷ではあっても、正しくことを行えば、あらゆる可能性に満ちた場所だったのである。アメリカは私に多くのものを与えてくれた。だから私は何ごとかを、アメリカに報いたかったのである。 懸命に働く、わが国を愛する何百万人もの諸君とともに、われらは史上最大の政治運動を開始した。そして、世界史上最高の好景気を作り出した。これはアメリカ第一主義に関連する。われわれ皆が「アメリカを再び偉大に」を望んでいたからこそである。 「国民に奉仕するために国家は存在する」我々は、この大原則を甦らせた。我々の目的は、右派でも左派でもなく、また共和党でも民主党でもなかった。国に良かれということであり、それは国家全体を意味するものである。 アメリカ国民の祈念と支援があって、我々は誰もできないと思っていた以上のことを成しとげた。我々には手が届かないと、誰もが思っていたことを。 我々は、アメリカ史上最大規模の、一連の減税と改革法案を通過させた。我々は、これまでどの政権よりも多く、雇用を損なう規制を大幅に緩和した。我々は欠陥のある貿易協定を修正し、お粗末な環太平洋パートナーシップ協定、達成不可能なパリ気候協定から撤退し、一方的な韓国との協定を再交渉した。またNAFTAを画期的なUSMCA協定、つまり対メキシコ・カナダ協定に更新した。これは非常に円滑に機能している。 また、これは重大な件だが、わが国は中国に対し、歴史的に記念すべき関税措置を課した。中国とは、新たな貿易協定を結んだ。しかし署名のインクも乾かぬうち、中華ウイルスがわが国と全世界を襲った。数十億ドルが流入していたわが国の貿易関係は急変し、わが国はウイルスのため、方向転換することになった。 全世界が被害を受けたが、アメリカ経済のパフォーマンスは他国を上回り続けた。わが国の築きあげた、絶好調の景気のためである。基礎と基盤なしに、このようには行かなかっただろう。わが国の経済指標のあるものは、過去最高を記録していた。また、エネルギー資源採掘禁止を解除し、石油、天然ガスでは世界一の生産国となった。 これらの政策の力により、我々は世界史上最大の好景気を創出した。また我々は、アメリカの雇用を回復させた。アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系市民、女性、あらゆる人々の失業率が記録的に低下した。収入は増大し、賃金が急上昇し、アメリカンドリームが戻ってきた。数年のうち、何百万人もが貧困から抜けだすことができたが、これは奇跡的なことである。株式市場は次々と記録を破り、短期間に148回の新高値を記録し、全国の勤勉な国民の退職金と年金を膨らませた。401k年金は、かつてない水準にある。我々は、今までなかったほどの数値を目にすることができた。コロナ禍の以前にも、以後にもである。 我々はアメリカの生産拠点を復活させ、何千もの新工場を稼働させ、「メイドイン・USA」という言葉を取り戻した。 勤労家庭の生活向上に、我々は児童扶養控除を2倍にし、育児と発育のため、史上最大規模に拡大させた予算に署名した。我々は民間と協力し、1600万人以上のアメリカ労働者を、次世代の職業のために訓練する取組みを確実なものとした。 わが国がコロナ禍に陥ったとき、我々は最速で1種のみならず、2種のワクチンを開発し、さらに後からも出てくるだろう。わが国は不可能といわれたことを為しとげた。それが出来れば医学上の奇跡だろうと言われたが、今まさにそれは、医学上の奇跡と呼ばれているのである。別の政権ならワクチンの開発に3年、4年、5年、ことによると最大10年かかったかもしれないが、我々は9ヶ月でやりとげた。わが国は、すべての犠牲者を追悼する。そして、この忌まわしいコロナ禍を一掃することを、彼らの面影に誓う。 ウイルスが世界経済に大きな爪痕をもたらしたとき、我々はわが国が目にした中で最速の景気回復に取りかかった。我々は4兆ドル近くの経済対策案を通過させ、5,000万人以上の雇用を救済し、支援し、失業率を半分にまで減らすことができた。これらはわが国が、かつて眼にしたことがない数値である。 我々は医療保険制度の選択肢と価格透明性をもたらし、多くの点で大手製薬企業とは対決することになった。特筆すべきは、世界で最も安い価格で処方薬を提供する、優先国条項を加える試みである。また退役軍人医療選択法、退役軍人処遇責任法、新治療選択権を成立させ、画期的な刑事司法改革案を通過させた。我々は、3名の最高裁判事を新任した。我々は憲法を字義どおり解釈する、300名近くの連邦判事を任命した。 国民は何年も、国境の安全性を確固たるものにするようにワシントンに要請してきた。我々はその願いにこたえ、史上最も安全な国境を完成させことを喜ばしく思う。我々は国境警備隊と移民関税執行局の勇敢なる諸君に、さらに任務を遂行し、法律を施行し、国の安全を保つために必要な手段を提供した。 我々は、かつて実施された中で、もっとも堅牢で強力な国境警備措置を次の政権に引き継ぐことを誇りに思う。これは450マイルを超す、新しく堅固な国境壁をはじめ、メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルとの歴史的合意が含まれる。 我々は、国内ではアメリカのパワーを、海外ではアメリカのリーダーシップを取り戻した。世界は再び、わが国に敬意を払うようになった。その敬意が失われないよう望む。 我々は、国連において、アメリカのために立ち上がり、国益に資することのなかった、一方的な協定から脱退し、わが国の主権を回復した。またNATO諸国は現在、私のやってくるわずか数年前に比べ、数千億ドル多くを負担している。我々は全世界の費用を負担していたのであって、はなはだ不公平であった。現在では、世界が我々を支援している。 またおそらく最重要な点は、3兆ドル近くをもって我々は、アメリカ軍の完全な再整備を行った。それらはすべて、国産装備による。我々は75年ぶりの米軍の新部門である宇宙軍を創設した。そして去年の春、私はフロリダのケネディ宇宙センターに立ち、アメリカの宇宙飛行士がじつに久ぶりに、アメリカのロケットで再び宇宙に向かうのを目におさめた。 我々は同盟関係をふたたび活性化し、世界の国々を結集して、中国にこれまでになく対抗するようになった。我々はイスラム国を殲滅し、創設者で指導者であるアル・バグダディをあの世に送った。我々はイランの抑圧的な政権と対決し、世界一の大物テロリストであるイランのカセム・ソレイマニに引導を渡した。 我々はエルサレムをイスラエルの首都と認定し、ゴラン高原に対するイスラエルの主権を承認した。 我々の大胆な外交政策、原則を守った現実主義の結果、中東では一連の歴史的な平和条約が成立した。これは、誰も可能と信じていなかったことである。アブラハム合意は、暴力と流血ではない、平和と協調の未来に扉を開いた。それは新しい中東の夜明けであり、いまわが国の兵士たちは、家に戻りつつある。特に私は、新たな戦争を開始しなかった、何十年ぶりかの大統領となったことを誇らしく思っている。 なによりわが国は、アメリカでは政府が人々に責任を負う、聖なる思想を再確認した。われらを導く光、われらの北極星、われらの揺るぎなき信念とは、我々がここにいるのは日々、尊厳あるアメリカ国民に奉仕するためだということである。我々の忠誠は、特定の利権、企業、もしくは世界団体に対するものであってはならない。それは我々の子供たち、わが国民、そしてわが国、それ自体でなくてはならない。 大統領として、私が最優先とし、常に考慮していることは、アメリカの労働者とアメリカの家庭の最善の利益であった。私は最も安直な道を探すことはなかった。実際のところ、それははるかに困難な道だった。私は最も批判を招かない方法を求めることはしなかった。私は辛い戦い、最も困難な闘争、最も難しい選択をした。私は、そのためにこそ諸君に選ばれたからである。諸君の求めることこそ、私の最初で最後の、ゆるぎない目的であった。 以下が我々の残す、最大の財産になることを願う。我々はともに、国民を再び、わが国の担い手に戻した。我々は、みずからの政府を取りもどした。我々は、アメリカでは誰も忘れ去られてはならぬ、なぜならそれはすべての者に価値があり、すべての者が声をあげることができるからだという思想を復活させた。われらはは皆、神によって平等に創られていて、すべての国民は等しい尊厳、等しい待遇、平等な権利を与えられているという原則のために、我々は戦ってきた。すべての者は、敬意を持って扱われ、話を聞いてもらい、政府に耳を傾けてもらう権利がある。諸君は自身の国に忠実であり、私の政権は常に、諸君に忠実であった。 我々は、すべての国民がよい仕事につくことができ、家族を支えてゆける国を作るために働いた。我々は、すべての国民が安全に暮らせ、すべての子供が学べる学校のために奮闘した。我々は、法律が守られ、偉人は尊敬され、歴史が保存され、法を重んじる国民が決して軽視されない風潮を推進した。国民は、われらがともに達成したすべてのことに、大きな満足を持ってしかるべきである。それは実に、驚くべきことなのだった。 今、ホワイトハウスを去るにあたり、私は我々全員の共有する、貴重な資産を脅かす危険について考える。世界最強国として、アメリカは他国からの絶え間ない脅威と挑戦に直面している。しかし、我々が直面する最大の危険は、我々自身の自信喪失、偉大なるわが国のへの信頼の喪失である。国家は、その精神と同等の力のみを持つ。わが国のダイナミズムは、わが国のプライドと等しい。わが国は、国民の心にある信念と、同じだけの活力を持つのである。自らの国の価値観、歴史、偉人たちへの信頼を失う国は、長く繁栄することはない。これらは、わが国の団結と活力の根源なのである。 アメリカが過去の大きな困難にうち勝ち、勝利を可能にしてきたのは常に、わが国の高潔さ、歴史における独自の役割に対する、揺るぎない、隠すところなき信念であった。我々はこの信念を、決して失ってはならない。我々はアメリカへの信念を決して放棄してはならないのだ。 国家の偉大さの要所は、わが国が共有する国家的アイデンティティを維持し、深めてゆくことにある。それは、我々が共有しているもの、つまり我々全員が共有する、過去からの資産に焦点を当てることを意味する。 この資産の中心には、表現の自由、言論の自由、そして開かれた討論に対する確固たる信念が、また存在するのである。アメリカで政治的検閲とブラックリスト作成が認められる時は、我々が何者であるか、そしてどのように今があるかを忘れた場合だけだ。それは、考えられないことである。自由で開かれた議論の停止は、わが国の核心的価値観、もっとも長い伝統に反する。 アメリカでは、絶対の同質性が主張されたり、厳格な正統性や懲罰的な言論規制が強制されたりはしない。わが国は、そういうことをしないのである。アメリカは、意見をともにしない者たちから精神を飼い馴らされなくてはならぬ、柔弱な国家ではありえない。それではわが国が、わが国であるとはいえない。わが国がそうなることは、決してないであろう。 250年近くものあいだ、アメリカ国民はあらゆる困難に直面しながら、常に我々の並びない勇気、信念、そして強固な独立心を発揮してきた。これはかつて何百万もの普通の人々を導き、大陸の荒野を越えさせ、大西部で新生活を切り開かせた、不可思議な特徴である。それは、わが国の兵士たちを戦闘に、宇宙飛行士を宇宙に向かわせたのと同質の、神の与えた深遠なる、自由を愛する心であった。 過ぎた4年間を振り返れば、他の何よりもある一つのイメージが心に浮かぶ。私がどこかに出かけるとき、常に沿道には、何千もの人々がいた。彼らは我々が通るときにその場にいられるよう、家族と一緒にやってきて、われらの偉大なる星条旗を誇らしげに振っていた。私がそれで感銘しなかったことは、ただの一度もなかった。私にはわかっていたが、彼らは私への支持を表明するために出てきたばかりではない。彼らは、国家への支持と国家への愛を表明するため、そこにいたのである。 この地は、アメリカこそ史上最も偉大な国家であるという、共通の信念によって結束した、誇りある人民の共和国である。わが国は、希望、光明、そして世界に輝く栄光の地であったし、常にそうであろう。これは、我々がいかなる時も守ってゆかねばならぬ、貴重な財産である。 この4年間、私はまさにこれを実践すべく働いてきた。リヤドのイスラム指導層の大会堂から、ポーランドのワルシャワの広場まで。韓国議会の議場から、国連総会の演壇まで。そして北京の紫禁城から、ラシュモア山の引く影の中まで、私は諸君のため、諸君の家族のため、われらの国のために戦ってきた。何よりも私は、安全、強さ、誇り、そして自由という、アメリカのよって立つ、すべてのもののために戦ってきた。 いま私は、水曜日の正午、新政府に政権を委譲する準備をしているが、我々の始めたムーブメントは、まだ始まったばかりであることを知っていてほしい。こういうものは、かつてなかった。国家は国民に奉仕すべしという信念は衰えることはなく、日々に強まってゆくばかりである。 アメリカ国民がその心に、国への愛を持っている限り、この国が成し遂げられないことは何もないだろう。わが国の各地域は繁栄し、わが国民も繁栄するだろう。我々の伝統は重んじられる。我々の信念は強固になってゆく。そしてわが国の未来は、これまで以上に明るくなる。 私は心には忠誠と明るさ、精神には楽観性、そしてわが国と子孫にとって最高の時代は、まだこの先にあるという、揺るぎなき自信を持って、この壮麗な建物から出てゆくことにする。 諸君には感謝を、そしてお別れを言おう。諸君に神の祝福を。そしてこのアメリカ合衆国にも、神の祝福を。 |
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●トランプ氏、大統領退任演説の動画公開「成功を祈る」 1/20 | |
トランプ米大統領は19日午後、約20分間にわたる退任演説の動画を公開した。新政権発足に際し「成功を祈る」と述べたが、バイデン次期大統領の名前には言及せず、大統領選での自身の敗北にも触れなかった。
トランプ氏は演説で、米国の利益を最優先する「米国第一」によって「世界史上最も偉大な経済を確立した」などと主張。「我々はだれもが想像していた以上のことを成し遂げた」と自画自賛を続けた。一方、米国史上初となる2回目の弾劾訴追を受ける原因となった、トランプ支持者による連邦議会議事堂襲撃事件については「(政治的な暴力は)決して容認されない」としたが、自身の責任については語らなかった。 トランプ氏は演説の最後に「私は水曜日(20日)正午、新政権に権力を移譲する準備をしているが、我々の始めた運動は始まったばかりだ」と述べ、次の大統領選出馬も含めた自身の政治運動を今後も継続していくことを示唆した。 現職大統領は平和的な政権移行をアピールするため、次期大統領の就任式に出席するのが慣例だが、トランプ氏は欠席する。20日午前、ホワイトハウスを出て、メリーランド州のアンドルーズ空軍基地で大統領専用機に搭乗前、退任式を行う予定。その後、邸宅のあるフロリダ州に向かう。 現職大統領の就任式欠席は、南北戦争後の1869年のアンドリュー・ジョンソン大統領以来。一方、米メディアによると、ペンス副大統領はトランプ氏の退任式には出席せず、バイデン氏の就任式に参加するという。 |
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●トランプ氏、支持者前に「また会おう」 就任式は欠席へ 1/20 | |
トランプ米大統領は20日午前8時15分(日本時間同午後10時15分)ごろ、ヘリでホワイトハウスから出発した。メリーランド州のアンドルーズ空軍基地で大統領専用機に搭乗前、退任式を行い、邸宅のあるフロリダ州へ向かった。現職大統領が後任の就任式を欠席するのは、南北戦争後の1869年のアンドリュー・ジョンソン氏以来となる。
トランプ氏は退任式で、支持者らを前に約10分間演説した。「米国は世界で最高の経済」などと実績を自賛し、「あなた方の大統領でいられて最高の名誉だった。何らかの形で戻ってくる。また会いましょう」と締めくくった。 トランプ氏は、支持者が連邦議会議事堂を襲撃した事件を扇動したとして、13日に下院から弾劾(だんがい)訴追されており、上院での弾劾裁判が今後行われる。19日に公開した退任の演説動画では「(政治的な暴力は)決して容認されない」と語ったが、自身の責任については触れなかった。共和党上院トップのマコネル院内総務は19日、「(暴徒たちは)トランプ氏に挑発された」と述べた。 ホワイトハウスは20日、トランプ氏がスティーブン・バノン元大統領首席戦略官=詐欺罪で起訴=ら73人に恩赦を与え、70人の刑を減刑したと発表した。トランプ氏は自身や家族らの恩赦も検討したとされるが、対象には含まれなかった。 極右ニュースサイト「ブライトバート」の会長だったバノン元戦略官は、2016年の大統領選でトランプ陣営の最高責任者を務め、政権発足時に大統領首席戦略官に就任した。政権内の確執から17年8月に解任された後も、メディアを通じてトランプ氏を積極的に擁護していた。20年8月、メキシコとの国境の壁建設を訴える政治運動の資金集めで、多額の金をだまし取ったとして詐欺などの罪で起訴された。 |
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●トランプ氏 退任演説 「戻ってくる」 1/20 | |
アメリカでは日本時間21日未明に大統領就任式が始まり、バイデン新大統領が誕生します。就任式には出席しないトランプ大統領はすでにホワイトハウスを後にしています。最後に何を語ったのでしょうか。
152年ぶりに就任式を欠席するトランプ大統領はワシントン近郊を出発し、およそ1時間半後にフロリダに到着する予定です。そして、退任後は向こうに見える別荘で生活する見通しです。トランプ氏は日本時間の午後10時半すぎから退任の式典に出席しています。 「新政権の幸運と成功を祈ります。私たちは何らかの形で戻ってきます」(トランプ大統領) 演説は9分間と短く、いつものような攻撃的な内容はありませんでしたが、何らかの形で戻ってくる、と最後までトランプ流を貫きました。 Q.トランプ大統領、退任後はどうするんでしょうか?政治的影響力は残るのでしょうか? 政界への復帰を視野にいれていることは間違いなさそうです。具体的には、2024年の大統領選挙への再出馬や「愛国者党」という名前の新しい政党の立ち上げを検討していると伝えられています。ただ、民主主義の象徴である連邦議会議事堂での暴動を扇動したとして、2度目の弾劾訴追を受け、歴史に汚点を残したトランプ氏に対しては、身内の共和党上院トップからも批判の声が挙がっていまして、有権者の支持や政治的な影響力が維持できるかは不透明です。国内では分断と対立を深め、国際社会からの信用も失墜させた4年間のトランプ劇場は大きな負の遺産を残したまま、まもなく幕を閉じることになります。 こちらバイデン氏の大統領就任式が行われるワシントンの連邦議会議事堂前では厳戒態勢が続いています。本来であれば党派を超えて新しい政権の誕生をお祝いする日のはずなんですが、むしろ街は閑散としていましてお祝いムードはまったく感じられません。 バイデン氏は、けさ、宿泊していた迎賓館のブレアハウスを出発し、教会へ向かいました。これまでは、新旧大統領が引き継ぎを兼ねて懇談し、そろって就任式に出席して、権力が平和的に委譲されたことを内外に示すのが慣例でしたが、バイデン氏はトランプ氏と一切接触しないまま、新たな政権をスタートさせます。 就任の宣誓に続く演説では国民の団結を訴える見通しです。バイデン氏が4年の任期を通じて、あきらめずに理想を掲げ続け、ワシントンに落ち着きを取り戻せるのか、問われることになります。 |
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●トランプ氏が退任演説 「想像以上のことを成し遂げた」 1/20 | |
アメリカのドナルド・トランプ大統領は退任前日の19日、お別れのビデオメッセージを公開し、「我々は想像されていた以上のことを成し遂げた」と述べた。
ユーチューブに投稿された動画の中で、トランプ氏は自分は「厳しい闘い、最も困難な闘い」に挑んだ、「そうするよう、あなた方が私を選んだからだ」と述べた。 トランプ氏は昨年11月の大統領選で民主党のジョー・バイデン氏に破れたが、この結果をいまだ完全に受け入れてはいない。 大統領選の結果をめぐっては6日、結果認定が進められていた連邦議会議事堂に、選挙結果を受け入れないトランプ氏支持者らが乱入し、死者が出る事態となった。トランプ氏退任までの2週間は、襲撃に関与した人物が逮捕されるなど、この事件の余波が広がった。 トランプ氏は「政治的暴力は、我々がアメリカ人として大切にしている全てのものへの攻撃だ。決して許されるものではない」と述べた。動画の中でバイデン次期大統領の名前には触れなかった。バイデン氏は20日に新大統領に就任する。 米下院は13日、議事堂襲撃事件で「反乱を扇動」したとして、トランプ氏を弾劾訴追する決議案を可決。トランプ氏は退任後に上院で弾劾裁判を受けることとなる。有罪評決が出れば、同氏は再び大統領職に就くことが禁止される可能性がある。 トランプ氏は任期中に2度の弾劾訴追を受けた、米史上初の大統領となった。同氏は2019年に下院で弾劾訴追が決議されたが、上院で無罪となった。 政治的動機による暴力行為は、新型コロナウイルスのパンデミックで死者数が増加するアメリカに影を落としている。同国ではこれまでに40万人以上が新型ウイルスによって死亡し、2400万人以上が感染している(米ジョンズ・ホプキンス大学の集計、日本時間20日午前)。 動画の中でトランプ氏は、自身の政権が「世界史上最高の経済」を構築したと述べた。 米株式市場は新型ウイルスのパンデミックの影響から回復し、ハイテク銘柄が多いナスダック総合株価指数は昨年に42%上昇、S&P総合500種も15%上昇した。 しかし、そのほかの面ではさらなる苦戦を強いられている。昨年12月には雇用が削減され、一連の雇用増加に終止符を打った。失業者が増加する中、小売売上高はここ数カ月間減少している。 「我々のアジェンダ(政策目標)は右か左かではなく、共和党か民主党かということでもない。これは国のため、つまり国全体のためのものだった」とトランプ氏は述べた。 トランプ氏の現在の支持率は34%と、退任間際の大統領としては過去最低となっている。 |
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●トランプ氏が退任演説「何らかの形で戻ってくる」 1/21 | |
米国のトランプ前大統領は20日、4年間の在任期間を終えてホワイトハウスを後にした。バイデン大統領の就任式を欠席し、ワシントン郊外で独自の退任式典を開いたが、トランプ氏を支えた主要閣僚らは姿を見せず、さみしい幕引きとなった。
20日、アンドルーズ空軍基地に到着したトランプ氏(左)とメラニア夫人(AP)20日、アンドルーズ空軍基地に到着したトランプ氏(左)とメラニア夫人(AP) トランプ氏は20日朝、メラニア夫人とともにホワイトハウスから大統領専用ヘリコプターに乗り込む際、記者団に「私は別れを告げるが、長きにわたる別れにならないよう期待している。また会おう」と語った。 アンドルーズ空軍基地に場を移して行われた退任式の演説では、経済分野での実績を並べ立てたほか、「大統領選では、現職大統領として史上最多の得票を獲得した」と誇示した。娘婿で大統領上級顧問を務めたクシュナー氏らトランプファミリーや支持者らが最後の舞台を見守った一方、ペンス前副大統領ら政権メンバーのほとんどは参加しなかった。 演説の途中、珍しく言葉に詰まり、支持者から励まされる場面もあった。トランプ氏は、「何らかの形で戻ってくる」と宣言し、大統領専用機に乗り込んだ。 約2時間後には約900マイル(約1440キロ)離れたフロリダ州パームビーチに到着した。空港からトランプ氏の別荘「マール・ア・ラーゴ」に向かう沿道には数百人以上の熱心な支持者が駆けつけ、「サンキュー、トランプ」などと連呼した。トランプ氏が車内から手を振ると、何度も歓声が上がった。 |
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●トランプ大統領“勝手に退任式” 礼砲21発、軍楽隊も登場 1/21 | |
4年の任期を終えたトランプ米大統領は20日午前(日本時間同夜)、ワシントン郊外の空軍基地で“勝手に退任式”を開いた。終了後には、空軍基地から大統領専用機エアフォースワンで別荘のあるフロリダ州へ。新旧大統領が同席することが慣例の新大統領就任式を、事前に表明していた通り欠席。現職の欠席はアンドリュー・ジョンソン以来、152年ぶりの珍事で、最後までトランプ節を貫き首都・ワシントンを去っていった。
式典は21発の礼砲も発射され、軍楽隊が登場するド派手なセレモニーとなった。家族や集まった支持者を前にした演説で、トランプ氏は「この4年間で成し遂げた仕事は素晴らしいものだった」と述べ、経済再建や新型コロナウイルスのワクチン開発など実績を自画自賛。最後には「この国の未来はより良い未来になる。新政権の成功を祈っている」とバイデン新大統領にエールを送ったものの「素晴らしい土台を引き継ぐことになるのだから」と皮肉を込めた。続けて「何らかの形で必ず戻ってくる。すぐに再会しよう」と締めくくり、4年後の大統領復帰の可能性を示唆。メラニア夫人と手をつなぎ専用機に乗り込んだ。 17年の劇的な就任劇以降「米国を再び偉大に」のスローガンを掲げて政策を推し進めてきたトランプ氏。退任前日の19日に発表したお別れのビデオ声明では自身の実績をひたすら列挙。自身の支持者らによる連邦議会襲撃事件により首都ワシントン中心部には多数の州兵や装甲車が展開したが「党派間の憎しみを超えなくてはならない」と訴えた。襲撃事件については「我々が米国人として大切にするもの全てへの攻撃で決して許されない」と人ごとのように語った。 任期満了ギリギリのタイミングで最側近だったバノン元首席戦略官ら73人に恩赦を与え、70人を減刑したと発表。保守層に支持されるバノン氏の恩赦により右派を取り込み、4年後の大統領選へ向け、影響力維持に動いたとの見方が流れた。 |
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