「ジパング」神話もあと10年

困ったときの円買いドル売り 
日本の最後の切り札「円の価値」 
 
国家が安定している証明 
大震災の打撃にも堪えました 
この切り札の有効活用方法はないでしょうか 
 
国際的迷信 「ジパング」神話もあと10年で終わるでしょう
 


生活保護者急増の舞台ウラ
 
 
国家の安定 
素人政治屋でもどうにかなっています
  
国家の成長 
とりあえず低空飛行を維持
  
国家の活力 
惰性の最後で取り繕っています
   
 
 
政治不信 
目前の少子高齢化  
増税
 
 
 
 
 
 
 
  
社会文化 
世代間文化の寸断 
人の絆が十分に薄められました
  
生活保護受給者 209万人 負担総額4兆円に迫る (2012/2) 
  
  
  
企業文化 
格差社会が否定されたら 
がんばっても報われなくなります
 
  
  
教育文化 
覇気の大事さ捨てました 
「競争」は悪者扱いを受けてきました

 
2012/5  
 
 
生活保護者“急増”の舞台ウラ
消費税増税の前に、政府の歳出削減を求める意見は多い。中でも、生活保護費予算が3・7兆円にまで膨れ上がった背景について、与野党が「年金や最低賃金 より生活保護の受給額が高いため、生活保護に流れる」「医療費の自己負担がないため、医療費が激増している」などとモラルハザードを指摘している。病気や 障害などでやむを得ない事情がある受給者も多い。だが、「働いたら負け」の社会になりつつあるとすれば、これを放置することは許されない。  
「東京都では、圧倒的に年金加入よりも生活保護の方が得。医療費無料など、さまざまな特典がある。年金保険料を払わずに好き放題やって、最後は生活保護に行くというのが一番安易な道だ。(年金保険料を)払った人の方が恵まれるようにならないといけない」  
民主党の桜井充参院議員は、4日の参院予算委員会で、こう政府に詰め寄った。桜井氏が示した「特典」とは、別表の通りだ。  
生活保護受給者は、月額6万6000円を切った国民年金受給者よりも手取りが多い。介護や医療費は原則無料で、NHK受信料、住民税なども免除されてい る。このほか、地域ごとに上限が定められている(最大5万3700円)家賃も受け取れるうえ、光熱水費の減額や母子家庭なら加算もある。  
厚労省によれば、今年1月時点で、全国の生活保護受給者は、戦後混乱期の1951年度(月平均)の204万6646人を突破して、209万1902人で過去最高を記録した。  
2012年度予算の生活保護費予算は3兆7000億円で、同年度の税収見込みが42・3兆円だから、ほぼ約9%に上る。全国最多は、橋下徹市長の大阪市で、18人に1人が生活保護を受給している。  
世帯主が「働ける層」(15−64歳)の生活保護受給が急増しているのも大きな問題だ。リーマン・ショック前の08年8月には、この層の受給割合は9%だったが、11年3月には21%にまで急増している。  
1000万人いるという年収200万円以下の「ワーキングプア層」は、年収200万ならば月収は16万7000円ほどになる。家賃や税金、社会保険料を支払えば、生活保護受給者に比べて可処分所得が下回るケースもある。「生活保護の方が得」となってもおかしくはない。  
自民党生活保護プロジェクトチーム座長の世耕弘成参院議員は「自民党時代は若者が申請に来ても受けなかった。09年に民主党政権になって、これが一変した。年越し派遣村の村長・湯浅誠氏が内閣参与に入った。厚労省が通達で『窓口に来た人は、できるだけ早く認めよ』と出して、タガが外れた。09年度の生活 保護費は2兆8000万円だったが、12年度は30%も増えた」と話した。  
同党の片山さつき参院議員は先月末の参院予算委員会で、生活保護受給者の中で、在日外国人への支給率や増加率が増えている実態を明らかにした。人口比で見ると、支給率は3倍以上になる。  
膨れ上がった生活保護費予算のほぼ半分、1兆8000億円超は医療費だ。1人当たり医療費(年額)は、09年度のデータで81・5万円。国民健康保険(国保)加入者は45万円だから、1・8倍となる。  
医師でもある民主党の桜井氏はこの点を問題視して、こう追及した。  
「医療費の自己負担がないので、好き放題とは言わないが、(本当に)必要な医療だけなのか。大阪市では生活保護の人以外は看ていない病院が34ある。新薬を処方してもらったうえで、ネットで販売する貧困ビジネスもあると聞く。ここにメスを入れていかないと、相当、不公平感がある」  
厚労省保護課は夕刊フジの取材に対し、11年7−9月の段階で、国保と後期高齢者を除く、外来または入院の患者がすべて生活保護受給者だった医療機関が、全国で何と104もあることを明らかにした。  
自民党の世耕氏は「生活保護の患者は、取りっぱぐれがないので病院にとっては最高のお客様だ。大きなモラルハザードが起きている」と指摘する。財務省の政務三役経験者も「4500億円は削れるはず」と話した。  
生活保護の「家賃補助」が、「不正受給」の温床になっているとの指摘もある。  
「貧困ビジネス」(幻冬舎新書)の著書があるエコノミスト、門倉貴史氏は「ホームレスを1カ所のアパートなどに囲い込んで生活保護を受けさせ、ピンハネするというビジネスもある。これが暴力団の資金源になっている場合もある」と話した。  
下手をすれば国を食いつぶしかねない生活保護だが、一体、どうすればいいのか。  
小宮山洋子厚労相は4日、「仕組み横断的にやる」と述べ、具体策は今後に委ねた。自民党は給付水準を10%下げたり、住宅や食事を現物支給することを次期衆院選の公約に盛り込む方針だ。  
消費税と並ぶ、大きな論点となりそうだ。
生活保護 (中略)自治体・家族構成・年齢によって保護を受け られる基準額は違い、例えば、東京都杉並区の50代の単身世代の基準額は13万5310円となっている。  
 
生活保護制度の課題と解決方法 
生活保護制度は、憲法上の「生存権」にもとづき、生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じて生活費の支給や医療費・教育費の無償化などの必要措置を行って最低限度の生活を保障し、またその自立を援助する制度です。  
国民の安定した生活を保障する諸制度の中で、生活保護は最後の最後の「セーフティー・ネット(安全網)」と言われるもので、近代国家にとっては不可欠の制度となっています。しかし今日、この制度をめぐって、主として二つの大きな問題点が浮上し、制度改革への気運が高まっています。その一つは、受給者の急増による国・地方の財政への圧迫という問題。もう一つは、生活保護に関する不正受給や不適切な受給が依然として続いているという問題です。  
以下、生活保護制度の現状と課題、そして現在、検討されている改革の方向などについて述べます。  
一、生活保護制度の現状と問題点  
1、生活保護の受給者増と財政問題  
現在の生活保護制度の支給実態は、本年2月時点で次のようになっています。  
○受給者数        209万7401人  
○受給世帯        152万1484世帯  
○世帯内訳  
   高齢者世帯        42.4%  
   傷病者世帯        21.3%  
   障害者世帯        11.5%  
   母子世帯          7.7%  
   その他の生活困窮世帯  17.1%  
○支給総額(2010年度決算ベース) 
   総 額        3兆3000億円  
   国 負担      2兆5000億円 
   地方負担         8300億円  
○支給内訳(2010年度決算ベース)   
   「医療扶助」    1兆5,700億円 (47.2%)  
   「生活扶助」    1兆1,600億円 (34.7%)  
   「住宅扶助」      5,000億円 (15.0%)  
受給者数については、現在、過去最大を更新し続けています。受給者が100万人を突破したのが1999年、さらに、東日本大震災が起きた昨年3月には200万人を突破しましたが、基本的には、長引く不況によって国民の貧困化が構造的に進んでいる状況が伺えます。  
一方、支給額についても、受給者数の増加に伴って急増し、平成21年に3兆円を突破し、平成24年度は国・地方で3兆7000億円が予算として計上されています。これが国・地方の財政を大きく圧迫するようになったわけですが、さらに現行制度のままでは、さらに財政支出が膨張することが予測され、いまや生活保護費の増大は全国的な問題になってきているのです。  
また、受給者の属性をみますと、高齢者世帯(60歳以上)が4割以上になっています。高齢者世帯の割合は、1980年度(昭和55年度)では全体の30.2%でしたので、近年の急激な伸びが目立っています。その背景としては、無年金・低額年金の高齢者の増加と高齢者の雇用状況が一段と厳しくなっていることが挙げられるでしょう。この高齢者世帯が増加する趨勢は今後とも続いていくものと思われます。  
生活保護の支給の内訳を見ますと、医療扶助が半分近くを占めています。まさに生活保護制度が、医療保険制度や高齢者医療制度などを代替・補完する役割を果たしているのです。このことは、生活保護制度の改革を論じる場合は、医療保険制度など社会保障制度全体の改革の中で議論していかないと問題解決はしないという実情を示しています。  
2、不正受給の問題  
最近は、生活保護費の不正受給の問題がマスコミで大きく取り上げられています。正確に把握されたものだけを見ても、2010年度の不正受給額は128億円に上り、過去最多となっています。この不正受給の問題は、制度的な不備や業務管理体制の不完全さから生じてくるものですが、制度の不備をついて意図的に不正な受給申請をするケースも後を絶ちません。  
摘発される不正受給の手段は、収入があるにもかかわらず、これを申告しない所得隠しによるものが大半です。例えば、所得税の源泉徴収をしない雇用主から現金払いで給料をもらう場合、親族などからこっそりと仕送りをしてもらうケース、他人の名義を借りた不正な就労、ギャンブルの賞金や配当金、株や先物取引での儲けなどの収入が隠されるケースなどです。本来ならば、これらの収入は正確に申告しなければならず、制度上はこれらの収入分を差し引いた金額が受給される仕組みになっているのです。  
また、制度的にグレ−ゾーンになっているのが、別居の扶養義務者(3親等以内)の支援の問題です。扶養義務者が実際は生活費を補助できる状況にあるにもかかわらず、さまざま事情を理由にして援助を回避して、結果的に生活保護の受給が認定されるケースです。この問題に関して、小宮山厚労大臣は「扶養義務者に扶養が困難な理由を証明する義務を課する」という方針を打ち出し、今後、関係審議会で検討されることになっています。ただし、親族の扶養義務問題、とくに自立した子の老親への保護義務・扶養義務ついては、民法との関連を含めた制度運営上の歴史的経過があり、扶養義務者に新たな義務を課す施策は慎重に検討すべきだと考えます。  
かつては、不正受給の問題は暴力団員によるものが主でしたが、昭和50年代後半に、当時の厚生省が保護規準の適正化を進め、保護を求める世帯の資産や収入を厳しくチェックするよう福祉事務所への指導を強化しました。この対策により、受給者は約4割減少しましたが、この措置が適正化のためのものであったにもかかわらず、一般の生活困窮者の申請に対しても、簡単には認可しない「締め付け策」として機能した経過があります。  
不正受給対策が、結果的に受給対象者を締め出すことにならないよう、制度の本来の目的に立ち返った改革議論が期待されます。 
二、制度改革の方向と課題 
1、財政問題への対応  
生活保護費は、本年度の予算額が3兆7000億円ですが、厚生労働省の試算では、2015年度は4兆1千億円、2020年度に4兆6千億円、2025年度に5兆2千億円に達するとしています。高齢化にともない、年金・医療・介護などへの公的な負担の増大が見込まれる中で、この生活保護費の増大は国と地方の財政に一段と大きな重荷を課すことになります。  
すでに、政府・民主党は「社会保障制度と税の一体改革」を進めつつあり、社会保障制度の安定化のための財政対策を中心に、関連法案を国会に提出していますが、生活保護費の増大傾向は、これらの社会保障制度全体の改革論議にも大きな影響を与えることになります。生活保護は、憲法にもとづく生存権を保障する最終段階の制度ですが、国民全体の生活を守り健康を保持する社会保障システム全般を安定的に運営していくためには、ある程度は生活保護費の財政的効率化をはかるべきだ、とする意見が出てくるのも当然です。  
その方法は、短期的なものと中長期的なものに分かれます。中長期的な展望のもとで取り組まれるべき政策は、就労促進策など受給者自立を促す施策や、年金制度や最低賃金制度の見直しを含めた最低限の生活を保障する社会保障制度全体の再編策です。これらの施策は後述しますので、まず、短期的な対応策について述べます。 
(1)支給額についての再検討  
生活保護の支給額は、1住んでいる地域、2年齢、3家族構成、4病気や障害の有無、5介護の必要性など、個別の基準によって個々に判定されます。その基準(生活保護基準)は、必要とされる食費、光熱費、住居費などについて最低限の生活が送れる水準から算定されます。  
例えば、東京都の特別区では、41歳から59歳の単身者の場合、生活扶助が81,610円、住宅扶助が53,700円で合計135,310円が毎月の生活保護基準となります。収入がなければ全額、また本人や扶養義務者などの収入があれば、基準額から収入分を差し引かれた金額が支給されます。  
さて、問題は、この生活保護基準が水準的に妥当かどうかという点にあります。現在、財政の効率化をはかる観点から、この基準額を引き下げる方向で見直そうという考えが野党からも出されています。その根拠として持ち出されるのが、地域の最低賃金との関係や国民年金との関係です。  
最低賃金に関しては、例えば、東京都では現在、時給で837円になっており、1日8時間労働で月に20日間働いた場合、月の総収入は約14万円になります。しかし、これから税金・国民健康保険料・国民年金の保険料が差し引かれますと、手取り額は11万円程度にしかなりません。一生懸命に働いても、手取額は生活保護より低くなります。また国民年金は、40年加入の満額支給の場合でも、本年度における支給月額は約6万5500円で、大都市の単身者の生活保護の半分にもなりません。  
これでは、「無理をして働かない方がいい」、「国民年金に加入しなくても老後は生活保護で暮らせる」とする考え方が出てくるとともに、生活保護の水準を最低賃金以下の水準まで引き下げても大丈夫である、という考えも成り立ってくるのです。しかし、ほとんどの生活保護受給者は、働けない厳しい事情や貧困に至った深刻な事情を抱えており、給付額を一方的に引き下げることは、生命的な危機を招くおそれもあります。  
基礎年金や最低賃金とのバランスを考慮して生活保護基準のあり方を考えることも必要でしょうが、あくまで最低限の健康的な生活が保障されることを優先し、保護基準の引き下げについては慎重な検討を行う必要があると考えます。  
(2)医療費扶助の見直し  
生活保護費の約半分を占める「医療扶助」については、2012年度で1兆7000億円が見込まれ、さらに2025年度には2兆6000億円に急増することが試算されています。  
生活保護世帯は高齢者が多く、また病気や怪我で働けないという世帯も多いため、当然、医療費への支給は増大します。一方で、指摘されているように、診療にかかわる自己負担が無いため、過剰受診を招きやすいという側面も否定できません。  
また、医療機関の方でも、生活保護者相手にした過剰診療が行われている事例が発覚しています。厚生労働省が最近行った調査では、2日に1回以上の高頻度で3ヶ月以上にわたり通院する生活保護者の人数が、全国で1万8271人にも及ぶことが判明しました。入院・通院患者の全てが生活保護の受給者で占められていたという医療機関も存在します。  
このため、生活保護者への過剰診療による医療扶助の増大を防ぐ方法として、次のような施策が地方自治体を中心に政府に要請されています。  
1 指定医療機関に対する指導強化。さらには不適切な診療を行っている病院に対する指定医療機関の取り消し。  
2 後発医薬品(ジェネリック)の利用促進と、その義務付け。  
3 翌月償還を前提とした一部自己負担の導入。  
ムダな受診や投薬を減らすべきだとするこれらの要求は、生活保護者のみならず国民全体の医療費抑制に必要なものですが、生活保護に限って言えば、医療機関への指導強化は、医師が福祉事務所に提出する「医療要否意見書」などを通じて、結果的に過度の受診抑制をもたらす可能性も出てきます。医療扶助費の支出を抑える施策としては、このことも配慮して検討していく必要であると考えます。 
(3)不正受給の防止策の強化  
不正受給は、受給資格要件を満たしていないにも関わらず、さまざまな偽装をして生活保護を認定してもらうケースと、収入などを隠すことによって支給されるべき金額以上の保護費を不正に受給するケースに分かれます。  
これらの不正受給を見過ごすことは、国・地方の財政問題をより深刻化させるばかりでなく、国民の納税意識をも揺るがすことにもなり、しっかりとした対応が望まれます。  
不正受給を防止するために、これまでも様々な対応がされてきましたが、大きな効果をもつ対応策は、生活保護を担当する部署のマンパワー強化策です。  
近年、生活保護の申請者と受給者が増大している中で、各自治体の生活保護を担当するケースワーカーが大きく不足し、申請に対しても、また日常的なフォローについても十分な対応ができていない事態があります。国が示すケースワーカー1人当たりの標準受け持ち世帯数は80世帯ですが、現在は100世帯を超えることは当たり前のようになっています。これでは、不正受給を発見することは困難になります。  
国も地方自治体もマンパワー強化のために努力を続けています。しかし、予算的な制約がある上に、社会福祉主事の資格者を増やし、職員に十分な経験を積ませることは簡単ではなく、なかなか目標の数字に達しないのが現状です。とくに生活保護事務は自治体職員にとって事務処理が膨大であることや、申請者から恫喝や脅迫まがいの圧力を受けることから敬遠されがちな業務の一つになっており、このため、比較的に新人職員が配置される傾向にあります。このことも不正受給を摘発するマンパワーの強化に繋がっていかない要因になっています。  
今後は、福祉事務所が不正追及を徹底的に行うことが担保される法令的根拠の整備や不正受給に対する罰則強化、あるいは警察との連携も強化しながら、働きやすい職場づくりに努めていくことが重要だと考えます。  
一方、生活保護の対象者をお客として対応する「貧困ビジネス」という業態が増えています。例えば、ホームレスの人に生活保護を受けさせ、自前の宿泊施設に泊め、その生活の面倒をみるわけですが、支給される生活保護費を全額管理し、「経費」としてそれをピンハネするようなことがあれば、このビジネスは本来の制度の目的に沿ったものではないと考えます。  
今後は、これらの事業を行う団体については、届出制の対象としたり、不正行為があった際の立入検査や行政処分の対象にするなど、適切な対策を講じていく必要があると考えます。  
2、中長期的な政策課題
(1)社会保障制度全般からの制度見直し  
現在、急増している高齢者の生活保護受給は、多くは年金制度との関係から生じています。勤労収入や仕送り収入がなく、かつ年金が無年金または低額年金の高齢者が貧困状態に陥り、生活保護に頼らざるを得なくなっているのです。  
この無年金・低額年金は、国民年金の保険料未納や保険料免除によって生じてきます。平成21年度末で、国民年金保険料が2年以上未納になっている人が321万人、未加入者は9万人にも上っています。また、低収入などによる保険料免除者は335万人にのぼっていますから、これからも無年金者や低額年金者が増えていくことが予想されます。さらに、現在の国民年金加入者の6割は非正規雇用労働者か無職の人で構成されていますので、今後とも経済が成長軌道に乗らない場合は、保険料未納や免除者がさらに増大していくことも十分に考えられます。  
現在の日本社会は、公的な年金制度や雇用保障制度が生活補償という点で完全に機能していないために、生活が困窮化した場合、多くの人が最後のセーフティー・ネットである生活保護になだれ込むという実情があります。このため、生活保護制度の見直しに関しては、年金制度や雇用政策などとの関連で論じていく必要があるのです。  
そこで、まず、求められる政策は、誰もが最低限の老後生活を送ることができる年金制度を確立することです。現在、政府・与党は、全国民を対象に、消費税を主な財源とする月額7万円程度の「最低保障年金」の創設を検討しています。給付水準や負担の問題で色々と議論があるところですが、将来的に生活保護に頼らない老後の生活を補償する制度として、この最低保障年金は非常に有効に機能すると考えます。当然、他の収入や住宅を含めた資産がなければ、この年金だけでは暮らしていけませんが、しかし、この年金の受給によって生活保護費の支給額は大幅に減額できるはずです。  
また、高齢者の医療保険については、現在、後期高齢者医療制度の廃止を含めた制度改革の議論が行われています。この場合、できるだけ高齢者の患者負担を減らしていく方策をとっていけば、財政負担をどのようにするのかという議論が残りますが、生活保護における医療費扶助を大幅に減らしていくことが可能になってきます。  
また、雇用保険制度の充実、最低賃金の引き上げ、パート労働者や派遣労働者の保護政策の拡充など、雇用対策を積極的に推進することで、一部の労働者の貧困化を防ぐことができると考えます。さらに、高齢者、病気を抱える人、失業者などが貧困に陥らず、なんとか自活できるような共助のシステムを行政が積極的に支援していくという「新しい公共」を重視した政策を展開していくことも重要であると考えます。 
(2)自立に向けた就労促進  
働いて自立できる能力がありながら、仕事を得るチャンスがなかったり、いくら働いても貧困から抜け出せない、いわゆるワーキングプアになり、最終的に生活保護を申請する事態に追い込まれる労働者が増えています。このような窮乏化する労働者を増やさず、また生活保護受給者の自立を促す実効性ある雇用政策が求められています。  
まず、緊急的な措置として、現在、求職者支援制度が活用できるようになっています。この制度は、失業手当が切れた人、雇用保険の適用が無かった人、加入期間が足りず雇用保険の給付を受けられなかった人、自営業を廃業した人などを対象に、無料の職業訓練(求職者支援訓練)を実施し、また本人収入や世帯収入及び資産要件等で一定の受給要件を満たした場合は受講中に給付金を支給するというものです。まさに、生活費を補償してもらいながら、次の就職に向けて安心して職業訓練を受けることができるというものです。この制度は、前制度の「基金訓練制度」で多くの不正受給が発覚したため、給付金の支給要件のチェックが厳しくなっていますが、この制度の活用によって多くの人が生活苦と将来への不安から救われることになります。  
問題は、本当に次の就職に結びつく職業訓練が行われるかどうかです。訓練コースには、IT、営業、医療事務、介護など色々なコースが設定されていますが、訓練のほとんどが民間の専修学校などに委託されていることもあり、実際は、ワードやエクセルを学ぶパソコン講座が多数を占めています。当然、安定した仕事に結びつくケースは稀であり、また他の訓練コースも地域のニーズに応じたものになっていないことが多く、さらなる改善をはかっていかなければなりません。  
政府の調査でも、訓練を受けた人の就職率は約7割と公表していますが、実質的には就職した人のほぼ3分の2がパートやアルバイトなどの非正規雇用に就業しており、さらに介護など実践的な訓練コースを受講した人も、就職した人の約半数が、受けた訓練とは関係のない仕事に就いていたという実態が明らかになっています。  
生活保護受給者の自立に向けた支援策の雄は、なんと言っても職業訓練と職業紹介にあるわけですので、今後は、地域のニーズにあった職業訓練のコースの多様化や訓練内容の充実をはかっていくことが重要です。すでに、国と地方自治体は、1ハローワークの就労支援員の増員、2福祉事務所とハローワークの連携強化、といった対策方針を打ち出し、予算措置を含めた自立支援政策を展開しています。この施策により実効性を持たせるためにも、訓練コースの紹介から就業までの全プロセスにおける細かいフォローアップや追跡調査などを確実に実施していく必要があると考えます。  
また、生活保護の受給者には、勤労意欲を失っている人や社会から孤立している人が多いため、職業訓練などの経済的な自立支援策に加え、精神的な自立を支援する体制も必要となってきます。現在、自治体によっては、NPOや社会福祉法人、あるいは社会貢献事業を行う企業の強力を得ながら、農作業の手伝いや地元の企業・商店での体験労働などしてもらい、これを通じて社会とつながりを持たせる取り組みが行われています。このような取り組みは、労働能力のある生活保護受給者の一部には必要とされますので、今後とも積極的にこれらの事業を推進すべきだと考えます。