プーチン皇帝 

プーチン皇帝

2030年まで大統領 任期更新


ますます 強固な独裁体制
民の自由 遠くなるのでは

世界とは 意地の張り合い

 


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 4/1-4/10

 

●プーチン氏「国民の読書時間でロシアは世界2位」、1位は中国―中国メディア 4/1
中国メディアの参考消息によると、ロシアのプーチン大統領はこのほど、トベリ州の文化関係者との会合で、ロシアは国民の読書時間で世界2位だが、前進する必要があると述べた。
プーチン氏は「国際機関の調査によると、もちろんそれは公正な統計だが、ロシアは現在、国民が読書に費やす時間で世界2位だ」と述べた。
プーチン氏は、中国が1位、スペインが3位だと指摘した上で、「私たちは前進しているが、それは非常に控えめだ。もちろん、より速いペースで前進する必要がある。私たちは間違いなくこれを実行する」と強調した。
プーチン氏は、インターネット経由での情報入手が容易になっていることにも触れた上で、読書の人気を高めるにはどうすればよいかという問いには、「それは家庭、学校、博物館、教育センター、図書館の問題だ」と答えた。
プーチン氏によると、ロシアで自宅に本を所有していない人の割合は、2020年は35%だったが、現在は15%にまで下がったという。
●ロシア大統領選プーチン氏圧勝 Forbes Russiaが見た「真実の意味」 4/1
ほぼ100%の投票を分析した結果によると、17日まで投票が行われたロシア大統領選挙ではウラジーミル・プーチンが87%以上の票を獲得し、記録的な投票率となった。ジャーナリストのグレブ・チェルカーソフ氏は、今回の選挙は意図された通り、事実上、現政権への信任を問う国民投票であったと話す。また、今回の選挙結果によって、プーチン氏が、ほとんどすべての決定を下すことが可能になったと指摘している。
ロシア大統領選の状況は、通常、投票結果集計後、数日で忘れ去られ始める。1996年のあの劇的な選挙の際にもそれは例外ではなかった。
16年後の2012年、退任するドミトリー・メドヴェージェフ大統領が突如、「ボリス・エリツィンはあの時の勝者ですらなかった」と発表したことで、この選挙はようやく人々の間ではっきり記憶されるようになったくらいだ。
選挙戦がロシア国民にすぐ忘れ去られてしまうのは、ロシアの大統領選挙の結果は「主要候補者が指名された時点ですでに決まっていること」が通常だからだ。そのため、終わった選挙戦の詳細よりも、その次に何が起こるか、勝者は勝利をどのように利用するのかの方が、はるかに国民の興味を引く。
大統領選は「忠誠心の全国的調査」だった
2024年の大統領選挙も例外にはなりそうにない。
今回の選挙戦は2022年2月に始まった。しかし、紛争が勃発した当初から、当局は「われわれに味方しない者はわれわれに敵対する者である」というメッセージを暗に伝えていた。そのロシア当局の暗示を明確にしたのは「2024年の大統領選挙は、選挙ではなく国民投票だ」というプーチン支持者の言葉にほかならなかった。
「公正なロシア」党首セルゲイ・ミロノフ氏は1月16日、次のように語っている。
「結局のところ、これは本質的に国民投票だ。ロシアの多国籍国民が、国家指導者である我が国の主要愛国者ウラジーミル・プーチンを支持するかどうかを問うものだ」
選挙運動の形態が変更されることはなかったが、要するに今回の選挙は、当局が追求する路線に対する「市民の忠誠心の全国的調査」として実施されたのである。実際に、現政界には真の反対者は誰1人残っておらず、投票用紙に載った他の候補者たちも繰り返し忠誠を誓っている。
このような状況では、投票結果は結果を保証する義務を負う個々の指導者の、現状の地位に対する適性さえ問うものとなる。たとえば中央選挙管理委員会は、大統領選への出馬を目指していた元下院議員ボリス・ナデジディン(ウクライナ侵略に反対の立場)について候補者登録を拒否し、ロシア最高裁判所もその決定を合法と認めた。
プーチン陣営は選挙戦のたびに、その強さと最終的な勝利への自信を示してきた。しかし今回は、過去の選挙戦と異なる点もあった。
誰にどう思われようが──
プーチン陣営は2004年と2018年にそれぞれ、給付金の収益化と退職年齢の引き上げという、明らかに国民に不評であろう措置を準備した。しかし、選挙期間中は、国民に不人気であろうそれらの政策については言及されなかった。 2018年と選挙後、ドミトリー・ペスコフ氏は「大統領は年金改革に関する議論に関与していない」と述べた。
そして 2024年、ウラジーミル・プーチン大統領は投票日前から税制改革の開始を発表したが、その改革が何を意図しているかは政治に疎い者にとっても明らかであった。国家は国民や企業からより多くの資金を集めようとしていて、これは明らかに支持を得るには程遠い政策である。事実として、歴史上、国民が増税を喜んだ例はない。
しかし今回の大統領選で、新たな財政政策の発表が最終結果に悪影響を及ぼすことはなかった。これにより、プーチン政権ができることの範囲が大幅に広がる。今回の選挙が信任を問う国民投票であれば、その結果に基づき、プーチン氏はほぼすべての決定を下すことが可能となる。
そして最も重要なことは、実際の給付金廃止の結果を国民が補償しなければならなかった2005年や、最終的に大統領が年金改革の条件緩和を発表した2018年のように、政策は後退しないと思われることである。
これまでの選挙戦において、プーチン陣営は選挙とその結果に対する外国の反応にはほとんど関心がないと強調していた。今までの選挙では、本当に関心がないのか疑問の余地があったかもしれない。
しかし、とりわけ2022年2月24日のウクライナ侵攻以降、ロシア当局は、自分たちが誰にどう思われようがまったく気にも留めていないようだ。今回の選挙も例外ではない。当局が、ロシア北極圏の刑務所内での反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏の急死について、またNATOとの衝突の可能性について語った言葉は、明らかにそれを裏付けるものだ。
それ以外はいつも通りの選挙だ。そして、我々はすでにその状況を忘れ始めている。
●ロシア、春の徴兵で15万人徴集 プーチン氏が法令に署名 4/1
ロシアのプーチン大統領が春の徴兵に関する法令に署名し、15万人が徴集されることが、31日に大統領府のウェブサイトに掲載された文書で分かった。
ロシアでは全ての男性は18歳から30歳までの間に1年間の兵役に就くか、高等教育を受けている間に同等の訓練を受けることが義務付けられている。
兵役義務の対象となる年齢の上限は従来27歳だったが、今年1月から30歳に引き上げた。
徴兵は年2回、春と秋に行われている。昨秋の徴兵では13万人、昨春は14万7000人が対象となった。
徴兵者はロシア国外には派遣されない。
●再選直後のプーチンに衝撃 防げなかった銃撃テロ…なぜロシアはイスラム過激派に狙われたのか 4/1
ウクライナ侵攻を続けるプーチン大統領に衝撃が走った。首都モスクワ郊外のクラスノゴルスクにあるコンサートホールで3月22日夜、迷彩服を着用した男たちがホール内に押し入り、現場にいた6000人あまりの観客らに向けて自動小銃を無差別に乱射し、これまでに140人以上が死亡した。
事件後、2010年代半ばごろにテロの猛威で世界を震撼させたあのイスラム国が犯行声明を出した。イスラム国はシリアとイラクで一時広大な領域(英国の国土に匹敵するほど)を実行支配していたが、2020年ごろには領域支配を喪失し、近年は目立ったテロは起こしていない。しかし、今回のテロではアフガニスタンを拠点とするイスラム国ホラサン州という地域支部の犯行が強く指摘され、国際社会は再びイスラム国の脅威に直面することになった。
この事件は、プーチン大統領にとっては大きな痛手となった。3月の大統領選挙では5選を果たし、国民からの政治的お墨付きを得たということで、今後ウクライナ侵攻をいっそう加速化させていこうとする最中に発生し、国内治安の脆弱性を内外に露呈することになった。
米国は事前に、ロシアに対してテロに注意するよう喚起していたというが、その中でテロを防げなかったことで、今後国民のプーチン政権への不満や怒りが高まる可能性もある。また、プーチン大統領は未だにウクライナの関与を指摘しているが、当然のごとくウクライナが関与しているわけでなく、これはプーチン政権への批判を交わし、ウクライナ侵攻を正当化するためのロジックでしかない。
では、なぜロシアは今回狙われたのか。イスラム国やイスラム過激派というと米国や欧州、イスラエルなどを第一の標的にしているようにも映るが、ロシアの優先順位は決して低くないのだ。
まず、イスラム国がシリアとイラクで領域を実効支配していた当時、ロシアはイスラム国と敵対するシリアのアサド政権を軍事的に支援し、ロシア自体もシリアにプレゼンスを強化。イスラム国に対する空爆などを行っていた。
また、ロシアは近年ニジェールやマリ、ブルキナファソなどアフリカへ軍事的な影響力を拡大。ロシアの民間軍事会社ワグネルが現地の軍事政権を支援し、現地で活動するイスラム国系武装勢力と対立関係にある。
さらに、プーチン政権は長年、ロシア南部チェチェンやダゲスタン、イングーシを拠点とするイスラム過激派への軍事的な締め付けを続けているが、プーチン政権を敵視するこのイスラム過激派の中からも多くの戦闘員がイスラム国に流入しており、もともとイスラム国はロシアを敵視していたと言える。
今回のテロに関与したとされるイスラム国ホラサン州は、拠点とするアフガニスタンでもロシア大使館を攻撃し、ロシア人2人が亡くなったことがある。今後、ウクライナ戦争と並行して、プーチン大統領はテロとの戦いを余儀なくされる可能性もあろう。
●ウクライナ戦争後に中国依存が高まったロシア「外貨保有に人民元不可避」 4/1
ロシア中央銀行が外貨準備高で中国人民元の比率を増やすしかないと診断した。ウクライナ戦争以降、中国に対するロシアの依存度が高まっているという分析だ。
ブルームバーグ通信によると、ロシア中央銀行は29日(現地時間)に発表した年次報告書で「ウクライナ戦争のため海外資産が(西側国家に)凍結されて以降、人民元以上の選択肢はない」と明らかにした。他の友好国の通貨は変動性が大きく、多くの国で資本移動も制限され、使用しにくいからだ。
過去のロシアの対外貿易で人民元決済の比率はわずかだった。現在では人民元が最も多く取引される通貨であり、米ドルの代わりとなっている。ウクライナ戦争以降、国際銀行間通信協会(SWIFT)がロシア大手銀行を追放し、ドル・ユーロ代金の決済が急減した影響だ。
ロシアの外貨準備高は22日基準で5901億ドル(約89兆円)と、2年間で400億ドルほど減少した。こうした外貨準備高のうち西側国家が凍結した資産は3000億ドルにのぼる。ブルームバーグは「ロシアのプーチン大統領が貿易方向を欧州からアジアに向けようと努力し、中国はロシア経済でますます重要な役割をしている」とし「中国との貿易はロシア経済が(西側の)制裁を克服するのに核心的な役割をしてきた」と強調した。
実際、中国は原油・ガス購買、消費財・工業製品供給を通じてロシア経済に寄与している。これに対しロシアは中国企業に自動車市場への進出を認め、ウラジオストク港など要衝地を中国に開放した。
両国間の貿易額は戦争前の2021年には1468億8000万ドルだったが、22年には1900億ドルを、23年には2000億ドルを超えた。
しかし多くの専門家はこうした関係がロシアにはむしろ「毒」になると分析した。対等な関係でなくロシアが中国に従属していく姿だ。
中国の人口(14億人)はロシアの人口の約10倍で、経済規模も比較にならない。中国が世界国内総生産(GDP)に占める比率は約20%であるのに対し、ロシアは2、3%にすぎない。ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は「ロシアはエネルギーと原材料のほかに中国に供給できるものがない」とし、両国関係のカギは中国が握っていると説明した。経済専門家らはロシアが人工知能(AI)など先端技術、大陸棚資源開発および液化天然ガス(LNG)装備などで中国の協力をどれだけ引き出せるか注目している。
西側国家はロシアと中国の密着を警戒している。英テレグラフは「習近平主席はプーチン大統領と権力を共有する考えがないため、なおさら危険だ」とし「中国の支援を受けて戦争が長期化する場合、ロシアが弱まるだけでなく、西欧も弱まって分裂するおそれがある」と懸念した。中国の覇権ばかりが強まり、西欧にはより大きな脅威になるという警告だ。
こうした中、人民元の流動性が高まっている。SWIFTによると、昨年11月の人民元取引比率は4.61%と、1年前の2%台から大き増えた。3.4%だった日本円も超えた。BRICs(ブラジル、ロシア、インド、、南アフリカ)が人民元の使用を増やしているからだ。
●教皇、復活祭で「戦争の即停止」訴える 4/1
世界に13億人を超える信者を有する世界最大のキリスト教派、ローマ・カトリック教会は31日、ローマ教皇フランシスコの主礼のもと復活祭(イースター)を祝った。復活祭は十字架上で殺害されたイエスが3日後に生き返り、弟子たちの前に現れたことを祝う日だ。キリスト教はイエスの誕生を祝う「クリスマス」から始まったのではなく、「復活したイエス」から始まった。
87歳の高齢のフランシスコ教皇は30日夜、復活徹夜祭をバチカン大聖堂内で行った後、31日午前には聖ペテロ広場で記念ミサを行い、同日正午に大聖堂の中央バルコニーから復活祭のメッセージを発信した。
復活祭当日のローマは生憎の曇り空で風が強い日だった。聖ペテロ広場には世界各地からおよそ5万人の巡礼者が詰めかけ、教皇のメッセージに耳を傾けた。
教皇はイエスの復活の勝利によって人類が神の下に帰る道が開かれたと強調。その後、ウクライナ戦争とイスラエルとパレスチナのガザでの戦闘に言及し、「如何なる戦争も解決をもたらさない。戦争は敗北を意味する。心を開き、対話し、和解することでしか問題は解決できない」と述べた。その上で、戦闘の即停止、人質の解放とガザ区への人道支援の履行を訴えた。
ウクライナ戦争では「国家の主権を尊重すべきだ」と述べ、ロシア側のウクライナ侵攻を間接的に批判し、「ロシアとウクライナは戦争囚人の交換を実施すべきだ」と語った。
スーダンの民族間の和平など世界各地の紛争地にも言及し、復活されたイエスがもたらす希望を全ての人々と分かち合うように求めた。また、紛争や、暴力、テロリズム、社会・経済的危機、社会的分裂や緊張のあるところに、平和と和解、安定がもたらされるよう、復活したキリストの光と希望をアピールした。その後、教皇はローマと世界に向けた祝福「ウルビ・エト・オルビ」を発信し、復活祭の全イベントを終えた。
2024年の復活祭で気になった点は、「聖金曜日」のイベント、ローマの円形闘技場遺跡コロッセオでの復活祭の行事にフランシスコ教皇が健康を理由に欠席したことだ。バチカン側は、「復活徹夜祭や復活祭のミサなどを控え、教皇の体調を整えるために聖金曜日の行事を欠席してもらった」と説明した。ただし、教皇の健康状況については「特別問題はない」と指摘、健康の悪化説を一蹴した。
ちなみに、フランシスコ教皇は変形性膝関節症に悩まされている。膝の関節の軟骨の質が低下し、少しずつ擦り減り、歩行時に膝の痛みがある。最近は一般謁見でも車いすで対応してきた。教皇は2021年7月4日、結腸の憩室狭窄の手術を受けた。故ヨハネ・パウロ2世ほどではないが、南米出身のフランシスコ教皇も体力的には満身創痍といった状況だ。
当方は、コロッセオでの聖金曜日の行事(イエスが十字架上で殺害された日)に教皇が欠席した本当の理由はイスラム過激派テログループの襲撃の情報が入っていたからではないか、と推測している。コロッセオ闘技場遺跡周辺の安全確保は容易ではなく、テロリストの襲撃を完全に防ぐことが難しい、という治安関係者からの警告があったからではないか。
ロシアの首都モスクワ北西部郊外で3月22日、開催予定のロシアのロックバンドのコンサート会場「クロッカス・シティー・ホール」にイスラム過激派テロリストが襲撃、集まっていたファンたちを銃撃し、火炎瓶を投げ会場に火をつけ、少なくとも143人が死亡したテロ事件が起きたばかりだ。犯行直後、イスラム過激派テロ組織「イスラム国」(IS)がSNS上で犯行を表明した。イタリア当局は3月25日、ローマを含む国内のテロ警戒レベルを引き上げている。
ところで、復活とは、元の状況に戻ることを意味する。人間の場合、「死」の状況から「生」の世界に戻ることを意味するとすれば、大多数の人はやはり「復活」を願う。人は誰でも幸せになることを願うからだ。人生で挫折した時、人は挫折する前の状況を取り戻そうと苦悩するし、愛する人を失った場合、その人との幸せだった日々を思い出そうとする。「復活イエス」は、死を超克した勝利者として敬慕され、その教えを信じる人々が出てきたわけだ。
イエス自身、「死」について2通りの解釈をしている。「生きているの名ばかりで、実は死んでいるのだ」(新約聖書「ヨハネの黙示録」第3章)とか、「たとえ死んでも生きる」(「ヨハネによる福音書」)と主張している。神の懐の中に生きる者はたとえ肉体的に寿命が尽きたとしても、神と共に永遠に生きる、という意味が含まれているのだろう。
●戦争犯罪ロシア兵100人超特定 ブチャ虐殺で、ウクライナ 4/1
ウクライナ国家警察は3月31日、ロシア軍の占領下で多数の民間人らが虐殺された首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで「戦争犯罪」を行ったロシア兵100人以上の身元を特定したと明らかにした。ウクライナメディアが伝えた。
ブチャはロシア軍の侵攻開始直後に制圧され、ウクライナが解放した後に民間人の虐殺や拷問などの実態が判明した。解放宣言から2年がたった3月31日、ゼレンスキー大統領はブチャで開かれた追悼式典に出席した。
ゼレンスキー氏は声明で「ロシアは自らの倫理観を破壊した上で、暴力と憎しみを信条とした。それを止められるのは、力と結束だ」と述べ、国際社会に連帯を求めた。
国家警察によると、ブチャは約1カ月にわたってロシア軍が占領し、ロシア兵による殺人、拉致、拷問、レイプなどが相次いだ。
国家警察は住民への聞き取りや監視カメラの分析などによって、ブチャに侵攻したロシア兵千人以上、うち戦争犯罪を行った100人以上の身元を特定したと主張した。部隊構成や指揮系統、武器の種類なども判明したと説明した。
●ブチャ虐殺から2年…犠牲者を追悼 子ども含む509人死亡 戦争犯罪のロシア兵100人以上を特定 4/1
ロシアによる軍事侵攻で多くの市民が犠牲になったウクライナの首都・キーウ近郊のブチャで、犠牲者を追悼する式典が行われた。
ブチャが奪還されて2年となった3月31日に行われた追悼式典で、ゼレンスキー大統領は「この戦いでの犠牲と、われわれが食い止めようとしている悪を忘れないでほしい」と訴えた。
ブチャは侵攻開始直後、ロシア軍に一時占拠され、多くの市民が残虐な方法で殺害されたことが判明し、子どもを含む509人が死亡したとされている。
ウクライナ国家警察は31日、ブチャで戦争犯罪を犯したロシア兵100人以上を特定したと発表した。

 

●モスクワ襲撃犯に武器提供か ロシア当局、南部で拘束の武装勢力 4/2
ロシア連邦保安局(FSB)は1日、ロシア南部のダゲスタン共和国で拘束した武装勢力のメンバーが、モスクワ郊外の襲撃犯に武器を提供したと供述した、と発表した。ダゲスタンでもテロを計画し、国外に逃走する計画だったとしている。
発表によると、3月31日、ダゲスタンのカスピスクでテロを計画していた外国籍の4人を拘束した。このうちの1人がFSBが公開した取り調べのビデオで、ダゲスタンの首都マハチカラから襲撃犯に武器を届けた、と話した。FSBは、男らが襲撃事件の資金調達にも関与したとしている。4人の国籍は伝えていない。
男らはカスピスクで手製の爆破装置を使って群衆を狙ったテロを計画。アパートには自動小銃のカラシニコフもあった。実行後はロシアから出国する計画だったという。
襲撃事件は3月22日、モスクワ郊外のコンサート会場で起こった。ロシア当局はタジキスタン出身の実行犯とする4人を含む計12人を逮捕・拘束。ウクライナの特殊機関などが関与したとみて捜査を進めている。
ただ、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明などを出したほか、米国もISを批判しており、米欧ではISによるテロとの見方が強まっている。 
● モスクワテロ巡り調査、ロシア人の過半数「ウクライナに責任」…プーチン氏が「最も信頼できる情報源」75% 4/2
英紙フィナンシャル・タイムズは3月31日、ロシアのプロパガンダを調べる研究機関「オープンマインド」が行ったロシア人対象の調査で、モスクワ郊外で発生したテロの責任は「ウクライナ当局にある」と考えている人が過半数を占めたと報じた。犯行声明を出したイスラム過激派組織「イスラム国」に責任があると回答した人は27%にとどまった。
米英や北大西洋条約機構(NATO)など「西側」に責任があると答えたのは6%だった。年齢別では、18〜30歳はウクライナ当局よりイスラム過激派組織に責任があると答えた割合が多かったが、30歳を超える年齢層では結果が逆だった。
テロに関してプーチン大統領を「最も信頼できる情報源」と考えている人は全体の75%に上った。
同紙は、ロシアでは言論統制が行き届き、ウクライナの関与を強調する露当局のプロパガンダが大きく影響しているとの専門家の分析を紹介している。
●「中央アジアのロシア離れ」は本当か?――ロシア・ウクライナ戦争が浮彫りにする地域秩序の複雑性 4/2
トカエフ・カザフスタン大統領が「『ドネツク人民共和国』『ルガンスク人民共和国』の『独立』を承認しない」と発言するなど、「ロシアの裏庭」と称されてきた中央アジア各国の対露姿勢に変化が生じているとの指摘がある。実際、対露制裁の影響回避や国際的なプレゼンス向上の観点では、ロシア依存を見直す必然性は高まっている。ただし、トカエフ発言はあくまでも従来からの全方位外交の範疇にあり、一足飛びに「ロシア離れ」を志向していると見るのは早計だ。中央アジア各国は対外的にも域内関係においても、一括りにできない固有の複雑性を抱えている。カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスの3カ国で行った現地調査の結果を中心に、ロシア・ウクライナ戦争下の情勢変化をレポートする。
2022年2月24日のロシアによるウクライナ全面侵攻(以下、「今次戦争」とする)開始以降、日本のメディアでは中央アジア諸国など旧ソ連圏の国々が「ロシア離れ」を進めており、ロシアが求心力を失っているといった論調が一部で見受けられる。しかしながら、中央アジアとロシアとの関係性は、外交においても安全保障においてもこれまで切っても切れないものであった。果たして中央アジア諸国は本当に今次戦争を奇貨として「ロシア離れ」を進めているのだろうか。
中央アジアの現状を現地で確認するべく、筆者は、2023年11月から12月にかけカザフスタン最大都市アルマティ及び首都アスタナ、ウズベキスタン首都タシケント、キルギス首都ビシュケクへの調査出張を実施した。
結論から述べると、少なくとも今回調査を行った上記3カ国に関して単純に「ロシア離れ」の状況にあると断ずるのはかなり不正確であり、誤解を招く表現と言わざるを得ない。また、今次戦争に限らず、各国はそれぞれ独自のスタンスを保ち、当然ながら個別の国内事情を抱えているため、多くの分野においてその「色合い」が全く異なるということにも留意すべきである。これら諸国をあらゆる文脈で一括りに「中央アジア」としてまとめて扱うことにも慎重であるべきだろう。
本稿では、今回の調査出張で得られた情報をもとに、今次戦争の影響を中心として現在の中央アジア情勢について見ていきたい。なお、調査出張の結果詳細に関してはROLESホームページに掲載のレポートも併せて参照頂ければ幸いである。
「ロシア離れ」では括れない現実
「ロシア離れ」の実例として日本や西側のメディアで取り上げられた事例の一つが、今次戦争の開戦直後、カスム=ジョマルト・トカエフ・カザフスタン大統領が、ウラジーミル・プーチン・ロシア大統領の面前で、ウクライナ東部の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の「独立」を承認しない旨発言したことである。
しかしながら、今回の調査では政府系有識者にも反体制派の有識者にも聞き取りを行ったが、立場にかかわらず一致しているのは、こうしたカザフスタンの対外的な姿勢は、ナザルバエフ時代から継続しているという見解だ。カザフスタンは従来から国連憲章の尊重を掲げており、所謂「自称国家」は一切認めない立場をとっている。アゼルバイジャンとアルメニアの間のナゴルノ・カラバフ問題においても「ナゴルノ・カラバフ共和国」の独立を認めずアゼルバイジャンの領土一体性を支持しているし、また同じ論理で台湾が中華人民共和国と不可分とする所謂「一つの中国」も支持する姿勢である。
たしかに、あえてプーチンの眼前で上記の発言を行った事実は象徴的に見えるかもしれないが、カザフスタンからすれば、今次戦争にかかわらず自国のこれまでの姿勢を保つことを改めて示したに過ぎない。カザフスタンは従前より「全方位外交」を掲げている。西側諸国と良好な関係性を保ち、ウクライナに対する人道支援も実施しているが、「全方位」ということはつまり、ロシアとの友好関係も維持するということにほかならない。カザフスタンと同様に全方位外交を掲げるウズベキスタンもウクライナに対する人道支援は行ったが、ロシアとの関係は少なくとも表向き上は変化していない。この2カ国に比して対外的な発言力の小さいキルギスも、ロシアへの姿勢を大きく変えたとは言い難い。キルギスでは2023年7月にロシア語を「公用語」としつつ、「国家語」たるキルギス語の公的機関での使用を義務付ける範囲を拡大する新たな「国家語法」が成立し、ロシア側から反発の声も上がったが、反露感情からというよりは、近年見られるキルギス・ナショナリズムの高まりを受けたものである可能性が高い。
これら中央アジア諸国にとって今次戦争の文脈で重要なのが、対露制裁と代替的物流ルートの確保である。ロシアが制裁対象となったことで、これまで物流において多く利用されてきたロシア経由のルートが使いづらくなったため、新たな選択肢として有力視されてきたカスピ海ルートやイラン方面のルートの開拓が本格化しつつあるとされる。しかしながら、内陸国である中央アジア諸国にとって物流の多角化は従来から優先課題であったことを考えると、物流においても今次戦争を受けて「ロシア離れ」が起こっているとは言い難い。
他方、今次戦争で中央アジア諸国、特に石油などロシア経由のルートを使用せざるを得ないカザフスタンにとって、自国が二次制裁の対象となることは絶対に回避すべき事態である。カザフスタン政府は西側の制裁に協力的であり、当局も様々な対策を採っているとされるが、ロシアとの間の長大な国境上で行われる地下取引の取り締まりには限界がある。また、開戦後にはロシア系企業の数が3倍ほどに増加しており、これら「ロシア資本によるカザフスタン登記企業」による取引も対策が難しいという。
今次戦争に対する各国の国民の反応は国によって大きく異なる。ウズベキスタンでは、政府が今次戦争を大きく取り上げておらず、また議論の対象としていないことから、国民の関心は非常に薄い。また、ウズベク語による自国制作のテレビ番組が増加しつつあるとはいえ、ロシアのテレビ番組がかなり視聴されていることから、ロシア寄りの考え方を持つ者が多いようである。
キルギスでは、開戦当初は世論が文字どおり二分され、親露・反露双方のデモが行われるなどし、また家庭内でもウクライナを支持する若者世代とロシア寄りの中年以降の世代とで…… ・・・
中央アジア域内協力の可能性と障害
今次戦争を機に中央アジア域内での各国の結びつきが強化されたかというと、微妙なところである。ロシアの現在の国際的立場に鑑みて、ロシアへの依存度を下げるべく中央アジア全体での協力を強化しようという考え方は従来より強くなっているようには見えるものの、障害も多い。
中央アジア全体での域内協力を妨げる要素の一つとして挙げられるのが、もはや「伝統的」とさえ言えそうな水資源問題である。中央アジアでは、水資源に恵まれる上流国のキルギス及びタジキスタンと、上流国からの水に頼るカザフスタン、ウズベキスタン及びトルクメニスタンとの間で、ソ連崩壊以降、水量や水質を巡る対立の構造が存在する。また、上流2カ国が資源に乏しく経済規模が小さいのに対して、下流国が化石燃料資源に恵まれ経済規模が比較的大きいことも、この対立構造に影響している。中央アジアを流れアラル海に注ぐシルダリヤ川とアムダリヤ川は、ソ連時代以降、綿花等の栽培において灌漑用水として使用されてきたが、上流国による水の消費が増加するにつれ、アラル海が急速に縮小するほど下流での水量が減少した。
上流国と下流国の対立事案はソ連崩壊後の三十数年の間度々表面化してきた。例えば1997年には、キルギスが自国水資源を「貿易財」とみなし、これによって経済的利益を得る決議を行ったことを受け、ウズベキスタンが10万名以上の軍部隊を対キルギス国境付近に派遣したほか、ウズベキスタンが更に下流の南カザフスタン州(当時)への水量の大幅な削減を決定したことで、下流国どうしであるカザフスタンとの間でも対立を生んだ。また、1999年には、タジキスタンがカイラクム貯水池から一方的に大量の放水を実施し、これによりカザフスタン南部の綿花農場が使用できる水量が減少した。この時には、キルギスもカザフスタンからの石炭供給に不備があることを理由に、カザフスタン南部への流量を削減する措置を取っている。このように、上流2カ国は、資源に豊富な下流国に対する政治的・経済的なレバレッジとして自国の水資源を利用してきたのである。
比較的近年の事例としては、タジキスタンのログンダムを巡る対立があった。ログンダムは完成すれば世界最大級のダムで、これによって流量に大きな影響を受けることになるイスラム・カリモフ大統領政権下のウズベキスタンとの間で深刻な対立を生んだ。ただし、ログンダムを巡っては、カリモフ大統領の急死により2016年に発足したシャフカット・ミルジヨーエフ大統領政権は建設を容認する姿勢を示しており、以降、二国間関係の改善が見られている。
このほかにも火種となっているのが、ウズベキスタン、キルギス及びタジキスタンの3カ国が抱える領土問題である。地図を開けば一見して明らかなように、フェルガナ盆地周辺でこの3カ国の国境は複雑に入り組んでおり、多くの飛び地が存在している。この地域には伝統的に商業や農業に従事するウズベク人が多く住んでいたが、1990年6月、キルギスのオシュでキルギス人とウズベク人の民衆が衝突し、治安維持を図る警察も巻き込んで「虐殺」とも呼ばれる暴動に発展した(「オシュ暴動」)。オシュでは2010年にも1000名以上の死傷者が出る暴動が発生している。
キルギスとタジキスタンの間では、タジク人住民を抱えるキルギスのバトケン州などで国境警備隊も巻き込んだ衝突が度々発生しており、2022年に発生した大規模衝突では多数の死者と13万名以上の避難民を出す事態に至った。
以上のように各国の間では水資源や領土を巡って深刻な対立があるほか、民族的にも、後述のとおりカザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、トルクメニスタンがテュルク系主体の国家であるのに対して、タジキスタンはペルシャ系と異なっている。そして、これは歴史的なステレオタイプではあるが、遊牧騎馬民族であったカザフ人、キルギス人、トルクメン人と農耕定住民族であったウズベク人、タジク人との間で気質も異なるとされる。民族系統として近いカザフ人とキルギス人の間でも気質が異なるとされ、これを指して「«понты» の無いカザフ人がキルギス人だ」や「カザフ人は «понты» 無しでは生きていけない」とも言われることがある。понтыとはロシア語のスラングで…… ・・・
●プーチン大統領、春季に新たに15万人を徴兵…ウクライナの発電施設を集中爆撃 4/2
ロシアのプーチン大統領が15万人規模の春季定例徴兵命令に署名したと、ロイター通信などが3月31日(現地時間)付で報道した。
ロシア大統領府のウェブサイトに掲載された徴兵命令によると、4月1日から7月15日まで18〜30歳の兵役対象者15万人がロシア軍に召集され、1年間軍服務を遂行することになる。昨年8月、正規兵の徴集上限年齢を従来の27歳から30歳に拡大することに連邦法を改正したことによる変化だ。ロシアで徴兵は毎年春と秋の2回行われ、義務服務期間は1年。昨年は春と秋にそれぞれ14万7千人、13万人が軍に召集された。
徴兵された軍隊はロシア国外に配置できないよう法律で定められている。2022年2月、ロシアのウクライナ侵攻で戦争が勃発した後も、徴集兵は作戦に動員されなかった。ただし、一部の兵力が誤って戦線に投入されたことはある。ロシア軍総参謀部のエフゲニー・ブルディンスキー徴集局長は先月29日、ロシアの日刊紙とのインタビューで、「服務のために召集された市民は『特別軍事作戦』に参加しない」と述べた。
ロシア国防省は、基礎訓練を終えた兵力の服務解除のニュースも伝えた。「DPA通信」は「訓練を受けた兵力はウクライナ戦争のために志願入隊できる」とし、「彼らが(入隊)申し込みをするよう圧力を受けているものとみられる」と付け加えた。
一方、ロシアはウクライナのエネルギー施設の破壊に戦力を集中させている。ロシアのクルーズミサイルがウクライナ西部のリビウ地域の基盤施設を攻撃し、男性1人が死亡した。AP通信が報じた。また、ウクライナのオデーサ地域では、ロシアのドローンの残骸がエネルギー施設に火災を起こし、数十万人に電力が供給されなかったと、ハルキウ州のオレ・シネグボフ知事が述べた。このような攻撃は先月22日、ハルキウ、ザポリージャ、スミ、ドニプロペトロウシク、オデーサなどでエネルギー基盤施設を狙ったミサイル発射とドローン150機余りの攻撃が行われた後も続いている。当時、ウクライナでは約120万人が停電の被害に遭った。
●ウクライナのドローン、国境から1千キロ以上のロシア西部を攻撃か 4/2
ロシア西部タタールスタン共和国のミンニハノフ首長は2日、同国内の2カ所がドローン(無人機)による攻撃を受けたと発表した。ウクライナ側はドローン工場を破壊したとしている。ウクライナとの国境からは1千キロ離れており、ウクライナによるロシア領への攻撃では、最も遠い地域とみられる。
攻撃を受けたのはエラブガとニジネカムスク。ウクライナとの国境からは約1千キロ、ウクライナ侵攻の前線からは約1200キロの距離だ。
エラブガの経済特区にある、労働者と学生のための宿泊施設などが被害を受け、学生13人が負傷したという。ニジネカムスクでは製油所が攻撃されたが、いずれも深刻な被害はなかったとしている。
● ウクライナ軍将校“弾薬足りず”初夏までに軍事支援を強調 4/2
ウクライナ東部の前線でロシア軍と戦闘を続けるアゾフ旅団の将校がNHKの取材に応じ、ウクライナ側は砲弾や弾薬の数が圧倒的に足りないとしたうえで、ロシア側が大規模な攻撃を仕掛けるとみられる夏の初めまでに、軍事支援が前線の部隊に届く必要があると強調しました。
ドネツク州の前線にいるウクライナ内務省傘下のアゾフ旅団の将校、イリア・サモイレンコ氏は、NHKのオンラインインタビューに答え、砲弾の数などの戦力について「ウクライナとロシアの比率は1対6だ。ときには1対10、もっと差が大きい時もある」と述べ、ロシア軍に比べて砲弾や弾薬が圧倒的に足りないと説明しました。
そのうえで「21世紀の今も数が重要だ。十分な量の砲弾がなければ、戦場で優位に立てない。砲弾の不足は兵士の死につながる」と強調しました。
砲弾などが足りない要因について、サモイレンコ氏は「敵の生産ラインはウクライナを支援する西側の国々を合わせたよりも強力だ」とし、加えて、最大の支援国アメリカで秋の大統領選挙をにらんだ政治のかけひきが続き、影響を受けていると指摘しました。
また、現地の状況についてサモイレンコ氏は「春になって暖かくなり、葉が生い茂ってきた。両軍ともスナイパーや熱探知のスコープ、ドローンを使っている」と述べ互いに動きを探り合い攻防が続いていると説明しました。
そして、ゼレンスキー大統領が、ロシア軍は5月末か6月にも大規模な攻撃を仕掛けるという見通しを示したことに触れ「この時期までに、われわれは備えなければならない」と述べ、夏の初めまでに砲弾などの軍事支援が前線の部隊に届く必要があると強調しました。
●ロシア軍 ウクライナ東部で防衛線突破ねらい攻勢強める 4/2
ウクライナ軍はロシア軍が東部の防衛線を突破しようと攻撃を仕掛けてきたことを2日、明らかにしました。ウクライナ側は撃退したとしていますが、東部で攻勢を強めるロシア軍に対し、ウクライナ側は弾薬不足などを背景に守りにまわっているとみられます。
ウクライナ軍は東部ドネツク州リマンやアウディーイウカなどの周辺で、ロシア軍から合わせて37回の攻撃を受けたものの、いずれも撃退したと2日、発表しました。
リマン周辺ではロシア軍は空からの支援を受けながら、ウクライナの防衛線を突破しようとしたとしています。
ロシア軍はことし2月に、東部の拠点、アウディーイウカを掌握し、その後も東部で攻勢をかけているのに対し、ウクライナ軍は弾薬不足などを背景に守りにまわっているとみられます。
また、ロシア軍は先月下旬以降ウクライナの発電所などエネルギー施設を狙った攻撃も繰り返していて、ウクライナ空軍などによりますと2日にはミサイル1発と無人機10機による攻撃がありました。
このうち無人機9機は撃墜したものの、中部キロボフラード州にある高圧変電所が被害を受けたということで、住民の暮らしへの影響も大きいエネルギー施設への攻撃に懸念が深まっています。

 

●ウクライナ、戦争損害賠償請求の受付へ…「凍結したロシア資金を使用すべき」 4/3
ウクライナ住民がロシアの侵攻で受けた戦争被害に対する損害賠償請求の受付が始まる。
2日(現地時間)、ロイターによると、ウクライナのドミトロ・クレーバ外相はこの日、オランダ・ハーグで開かれた「ウクライナの正義回復のための国際会議」で「ロシアのウクライナ攻撃による被害登録委員会」(RD4U・以下登録委)が稼動すると発表した。
登録委には欧州連合(EU)加盟国の大多数と米国・英国・日本など44カ国が参加した。これは2022年11月国連総会でウクライナ側の被害を取りまとめてロシアに賠償責任を問う国際機構を設置しようという内容の決議案が通過されたことに伴うものだ。韓国も決議案共同提案国だ。
クレーバ長官はこの日からウクライナ人なら誰でも被害内容を登録することができ、今のところ不動産の損害が中心だが、今後はその他物質的損失も含むことができるように拡大しなければなければならないと主張した。あわせて「凍結したロシア資産を没収して国際的な補償手続きを確立することが重要だ」と強調した。
今年2月、世界銀行(WB)と国連はウクライナの再建に今後10年間で4860億ドル(約74兆円)が必要だと推算していた。
●米中首脳が電話会談、台湾・ウクライナ情勢や貿易慣行巡り協議 4/3
バイデン米大統領と中国の習近平国家主席は2日、電話会談した。昨年11月に行った対面での会談以降初めて。台湾や南シナ海の問題などを巡り協議したほか、バイデン氏は中国の経済・貿易慣行に対する懸念を表明した。
ホワイトハウスによると、バイデン氏は「台湾海峡の平和と安定、および南シナ海における法の支配と航行の自由の維持の重要性」を強調した。5月の台湾新総統就任式に向け、緊張を緩和させる狙いがあるとみられる。
一方、新華社によると、習氏は米中関係が安定し始めているとしながらも「紛争や対立に陥る可能性がある」と指摘。また米国に対し「『台湾独立』を支持しないというバイデン氏のコミット」を具体的な行動に移すよう要請した。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は電話会談後の記者会見で、ブリンケン国務長官が数週間内に中国を訪問すると明らかにした。また、約2時間に及んだ電話会談について「実務的」だったと述べた。
バイデン氏は来週、日本の岸田文雄首相とフィリピンのマルコス大統領と会談する。
米政府高官は1日、米中両軍が週内にホノルルで海洋協議を開くと明らかにした。米国は南シナ海のセカンド・トーマス礁(フィリピン名・アユンギン礁、中国名・仁愛礁)周辺で中国海警局がフィリピン船に放水銃を使用したことに懸念を表明している。
中国とフィリピンの外交関係の緊張や海上での衝突がエスカレートする中、この問題は米中間の潜在的な火種となっている。
経済・貿易慣行に懸念
ホワイトハウスの声明によると、バイデン氏は電話会談で、米政府が「不公正」とみなす中国の「通商政策や非市場経済慣行」に対する懸念を表明した。
習氏は米国が中国の貿易と技術開発を抑制し、新たな企業を制裁リストに追加することで「リスクを軽減しているのではなく、リスクを生み出している」と警告した。
バイデン氏は「貿易や投資を不当に制限することなく、米国の先端技術が米安全保障を脅かす目的で利用されることを防ぐために必要な措置を引き続き講じると強調した」という。
また、中国系動画アプリ「TikTok(ティックトック)」に関する米側の懸念も習氏に伝えた。
両首脳はさらに、ロシアのウクライナ侵攻に対する中国の支持のほか、新疆ウイグル自治区における少数民族に対する人権侵害に関する懸念や朝鮮半島の非核化に関する協議も行った。
●国境から1000キロ超 ロシア中部をウクライナ無人機で攻撃か 4/3
ウクライナとの国境から1000キロ以上離れたロシア中部のタタルスタン共和国で無人機による攻撃があり少なくとも13人がけがをしました。ウクライナのメディアはウクライナ国防省の情報総局などによる攻撃だったと伝えています。
ロシア中部にあるタタルスタン共和国の当局は2日、共和国の2か所で無人機による攻撃があったと明らかにしました。
地元当局によりますと、工場が攻撃され、工場で働いている学生ら少なくとも13人がけがをしたということです。
また、製油所が攻撃され、火災が発生したということです。
ウクライナの複数のメディアは、今回の攻撃はウクライナ国防省の情報総局などが行ったもので、長距離を飛行できる無人機が使われたなどと伝えています。
タタルスタン共和国はウクライナとの国境から1000キロ以上離れており、ロシアメディアは、タタルスタン共和国が攻撃を受けたのはこれが初めてだとしています。
一方、ロシアもウクライナにあるエネルギー施設への攻撃を強めていて、ロシアのショイグ国防相は、2日、軍の幹部との会議で、ロシア軍が3月ウクライナのエネルギー施設に対しミサイルや無人機を使って192回の攻撃を行ったと述べました。
また、ショイグ国防相は、一方的に併合したウクライナ南部クリミアを拠点とするロシア海軍の黒海艦隊の司令官にセルゲイ・ピンチュク中将が任命されたと発表しました。 
●岸田首相がウクライナ戦争資金と復興支援「10兆円」を引き受ける“増税地獄” 4/3
国内政治で問題山積みの岸田文雄首相は、久々に胸を張れる晴れ舞台、国賓待遇でのアメリカ訪問が4月10日に迫る。迎える米バイデン大統領は岸田首相に7月に開かれるNATO首脳会議への参加を促しているが、狙いはウクライナ支援での日本の負担増という見方が浮上している。
バイデン大統領は秋の大統領選で激突が濃厚なトランプ前大統領の横ヤリにより、下院で多数を占める野党共和党がウクライナ支援予算約9兆円を通さないことに焦っている。ウクライナのゼレンスキー大統領も「5月にロシア大攻勢が始まれば金欠で砲弾が不足し今のままでは敗走だ」などと必死で米下院議長に泣きついている状況だ。
「バイデン大統領にすれば、ウクライナ侵攻でロシアが優勢になってしまえば面目丸潰れで、大統領選も危うくなる。そこで考えているのが、アメリカに大きくのしかかっていたウクライナ支援の一部を日本に肩代わりさせる案と言われているんです」(霞が関関係者)
ドイツのシンクタンク「キール世界経済研究所」の調査では、これまでのウクライナ支援の総額は、22年の侵攻開始から今年2月までで国別ではアメリカが断トツ1位の約11兆円、EU各国の総額で13兆円、そして日本は約1兆2000となっている。
日本のシンクタンク関係者が次のように指摘する。
「バイデン大統領は腹の中で、日本の援助額を5兆円前後にまで引き上げたいと密かに狙っている。そして自国負担割合をできるだけ引き下げ『アメリカ国内が困っているのにウクライナにそこまで支援しなくてもいい』という一部アメリカ国民を納得させて大統領選も有利にしたいとの思惑も透けてみえる。そのためのNATO首脳会議への参加呼びかけと見る」
もちろん、日本のNATO会議出席は22年から過去2回出席しているため今回もその延長という見方も多い。だが今回7月のNATO会議は重さが異なると指摘するのは、前出の霞が関関係者だ。
「今年のNATO会議はアメリカ主催、ワシントンで開かれ、さらに発足75周年記念大会。直後には大統領選も控えるタイミング。そこにNATO未加盟国の日本の岸田首相を招くのは、それだけ目に見える役割を期待しているということです」
今年2月にはウクライナの戦後復興について話し合う「ウクライナ経済復興推進会議」が都内で開催された。この復興には最低でも70兆円という莫大な資金が必要とされる。
「そのメインも日本といわれ、負担額6兆という数字が一人歩きしていますが、日本中心でカネを出せという各国からに暗黙の圧力がある中、ええ格好しいの岸田首相が6兆からの復興金を引き受けるのではと、財務省関係者らはブルッている。この復興支援と今戦争の不足資金補填と併せれば、日本の負担は10兆円という恐るべき額になる。日本国民にウクライナ税でも徴収しなければ到底無理な話です」(前出・霞が関関係者)
もはやアメリカのポチ、アメリカのATM化となりつつある「増税メガネ」に任せておいては、日本は滅びる。
●岸田首相とゼレンスキー大統領 ロシアの侵攻に連携対応で一致 4/3
ロシアによる軍事侵攻をめぐり、岸田総理大臣はウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談し、一貫して支援を継続していく考えを伝え、引き続き緊密に連携して対応していくことで一致しました。
電話会談は、ゼレンスキー大統領の呼びかけで、3日午後5時前からおよそ30分間行われました。
この中で、岸田総理大臣はロシアによる軍事侵攻に対する戦いを続けているゼレンスキー大統領と国民の勇気に敬意を示しつつ「日本がウクライナとともにあるという姿勢は揺るがない」と述べました。
そのうえで、ことし2月に東京で行われた「日・ウクライナ経済復興推進会議」での合意に沿って、地雷の除去やがれき処理、それに農業の生産性向上などの事業を着実に実施に移していくことを含め、日本として一貫してウクライナ支援を継続していく考えを伝えました。
これに対し、ゼレンスキー大統領からは日本のこれまでの取り組みに深い謝意が示され、両首脳は引き続き緊密に連携して対応していくことで一致しました。
ゼレンスキー大統領“支えてくれて感謝する”
ウクライナの大統領府は3日、ゼレンスキー大統領が岸田総理大臣と行った電話会談の内容について明らかにしました。
この中で、ゼレンスキー大統領は、ことし2月にウクライナの復興に向けた会議が東京で開催されたことをめぐり、岸田総理大臣が果たした役割に触れたほか、両首脳は会議で交わした50以上の協力文書について、できるだけ早く実現することで合意したとしています。
そして、120億ドル以上の財政支援など、これまでの日本側の支援に言及し「ウクライナの独立を守る戦いを支えてくれて感謝する」と伝えたとしています。
また、電話会談では戦況についても触れ、ロシア軍がことしに入り、1000発近くのミサイルやおよそ2800のイラン製無人機「シャヘド」、そして、およそ7000発の誘導爆弾などで攻撃したと説明したということです。
そのうえで、ロシアに対し制裁を強化して圧力をかける重要性などを強調したほか、ウクライナとしては、防衛拠点の構築や地雷除去に必要な特別な機械も必要としていると伝えたということです。
さらに、ゼレンスキー大統領は、岸田総理大臣と、2国間の安全保障をめぐる協定の協議の進捗(しんちょく)状況についても話したと明らかにしました。
●ウクライナ 動員の対象年齢引き下げへ 兵士不足解消のねらいか 4/3
ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナのゼレンスキー大統領は、動員の対象年齢を引き下げる法案に署名し、前線での兵士の不足が課題となる中、より多くの人を動員できるようにするねらいがあるとみられます。
ウクライナでは、ロシアによる軍事侵攻を受けて出された戒厳令などで、軍が動員できる対象について定めていますが前線の兵士の平均年齢は40歳をこえ、兵士の人数も不足していると地元メディアなどが伝えています。
ウクライナの議会にあたる最高会議は、2日、ゼレンスキー大統領が動員対象となる最も若い年齢を27歳から25歳に引き下げる法案に署名したと明らかにしました。
追加の動員をめぐってはゼレンスキー大統領が去年12月、軍が45万人から50万人が必要だとしていると明らかにしていて、今回の措置は、より多くの人を動員できるようにするねらいがあるとみられます。

 

●露仏国防相が1年半ぶり電話会談 ウクライナ情勢巡り公表内容に食い違いも 4/4
ロシア国防省は3日、ショイグ国防相とフランスのルコルニュ国防相が同日、電話会談を行ったと発表した。会談はフランス側の要望で行われたとしている。タス通信によると、露仏国防相の会談は2022年10月以来、約1年半ぶり。
露国防省によると、両国防相は首都モスクワ郊外で先月下旬に起きた銃乱射テロなどについて協議。ルコルニュ氏は哀悼の意を示した一方、テロにウクライナは関与していないと指摘した。ショイグ氏はウクライナ側がテロを組織した形跡があると主張した。
露国防省はまた、「ウクライナ情勢に関して対話の用意があると指摘された」とも発表した。ただ、ロイター通信によると、仏当局者は、電話会談がテロ対策を協議するためのもので、フランス側はウクライナ情勢に関していかなる対話の用意も示さなかったとし、露国防省の発表を「真実ではない」と否定した。
欧米諸国はウクライナの頭越しにロシアと停戦条件などを協議することはないとの立場を表明している。
●ワシントンが沈黙するのを待つプーチン、欧州にロシア勢力圏を築く好機か?――ギデオン・ラックマン 4/4
ベルリンの壁が崩壊した時、ウラジーミル・プーチンはソ連国家保安委員会(KGB)の任務で東ドイツに駐在していた。
2000年に出版された回顧録「First Person(邦題:プーチン、自らを語る)」で、ドレスデンのKGB本部を警護するよう近くのソ連軍部隊に依頼した時のことを振り返っている。
軍からの返答に衝撃を受けた。
「モスクワからの命令がない限り、我々には何もできない。モスクワは沈黙している」というのがその答えだった。
プーチンは後に、「あの時、もう国が存在しないような感じがした。国が消えてしまったかのようだった」と語った。
そのような強烈な体験は考え方を形作る。
プーチンが1989年の経験から引き出した教訓は、偉大な帝国は内部の政治的混乱のために崩壊し得る、というもののようだ。
モスクワが沈黙するのを見たプーチンは今、今度はワシントンが沈黙し、「アメリカ帝国」が崩壊するところを見たいと思っているかもしれない。
世界を揺るがす大国の混乱
モスクワから世界を眺めると、その可能性は魅惑的に感じるに違いない。ドナルド・トランプが再び米国大統領に選出されれば、西側の同盟に前代未聞のストレスがかかる。
例えばウクライナ支援の完全停止や米国の北大西洋条約機構(NATO)離脱など、トランプが着手するかもしれない政策変更は、ロシアの目標の達成に至る一つの潜在的ルートにすぎない。
あまり議論されていない2つ目の道筋は、ホワイトハウスの意識的な政策変更に依存しない。
このシナリオでは、トランプが再選を果たした後、米国の政府と社会が大混乱に陥る。内部の対立ばかりに目を奪われ、米国のエリート層は世界中に力を投影する意思や能力を失う。
この混乱期は、そう長く続かなくても世界を揺るがすような大きな影響を及ぼすかもしれない。
プーチンが後に振り返ったように、「我々が自信を失ったのはほんの一瞬のことだった。だが、それだけで世界の勢力バランスを崩すのに十分だった」。
米国での選挙後の混乱が引き起こす「自信喪失」の時期は、かなりあり得そうに思える。
トランプはすでに、勝った場合、政敵に対して復讐を果たす意図を明確にしている。民主党の大物や自身の政権の元高官さえをも背任や汚職の罪で裁判にかけろという呼び声を後押ししてきた。
標的には、ジョー・バイデンやヒラリー・クリントン、トランプ政権下で最も高位の軍人だったマーク・ミリーが含まれる。
ワシントンの麻痺が生む機会
トランプ派のシンクタンクでは、米政府の高官をパージする計画が策定されている。
米国防総省の幹部らは、米国の街頭に部隊を配備しろというトランプの要求に抵抗したために、米軍の最高幹部らが忠実ではないと見なされることを懸念している。
また、トランプが諜報機関と軍の要職に正真正銘の権威主義者を任命すること、さらには「MAGA(米国を再び偉大にする)」を支持する一般の軍人に発破をかけ、上層部に歯向かわせることを恐れている。
たとえトランプがバイデンに敗れたとしても、米国で政治的な混乱が生じる可能性は非常に高い。
トランプやその支持者が敗北を受け入れることを誰が信じられるだろうか。
2021年1月6日の反乱の再現――ただし今回は州レベルの政治家と裁判所からの支援も得た反乱――はかなりあり得る展開に思える。
こうした事態は米国内の混乱を生むレシピであり、ソビエトの文脈でプーチンが「権力の麻痺」と呼んだものの土壌になる。
そして麻痺した米政府は、ロシア、中国両政府にとってのチャンス到来を告げる。
この機会がどんな形を取るかは、事前には分からない。
1989年のソビエト帝国崩壊は主に、予想不能な出来事と場当たり的な対応をその特徴とした。
だが、プーチンにしてみると、1989年の屈辱を覆し、欧州に何らかの形のロシア勢力圏を再び構築する可能性は手が届きそうなほど近く感じるに違いない。
プーチンの死角
しかし、1989年の出来事に対するプーチンの見方――それゆえ2025年に向けた野望――には大きな死角が潜んでいる。
ソビエト帝国の崩壊の原因は、単なる混乱とモスクワの意思の欠如だけではなかった。より大きな理由は、ソビエトの支配が東欧で否定されたことだった。
ソビエト連邦は反体制派の運動を鎮圧するために、1956年にハンガリー、1968年にチェコスロバキアに戦車を送り込んだ。
東欧が抱く願望に対して3度目の弾圧に動かないことにしたミハイル・ゴルバチョフの決断は、道徳的な選択であって、プーチンが考えるような一時的な気の迷いではなかった。
2022年にウクライナ全面侵攻に乗り出した時にプーチンが手に入れようとしていたのは、古い暴力的なソビエト支配モデルだった。
だが、世界はプーチンが理解しなかった形で変わっていた。
ウクライナ人は反撃し、西側諸国はウクライナに武器を供与した。米国とその同盟国が傍観し、ソ連の軍事介入に反対しなかった1956年と1968年とは違った。
欧州における米国の同盟システムは、1989年のソ連圏とは異なり、合意に基づいている。
政治学者のゲイル・ルンデスタッドの言葉を借りるなら、この同盟は「招かれた帝国」だ。
ポーランドとチェコは1989年にソ連軍の撤収を切に望んだが、もし米軍が今日撤収したら、欧州連合(EU)諸国は愕然とするだろう。
様変わりした欧州、時計の針は戻せない
1989年以来、モスクワやワシントン、ベルリン、ワルシャワで大きな変化があった。だが、唯一変わらないことは、ロシアの支配に抵抗するヨーロッパ人の決意だ。
EU諸国は自分たちが米国の軍事力にいかに大きく依存するようになったかを痛感している。だが、これについて何らかの対策を講じる決意を固めている。
向こう1年で、ワシントンが沈黙することはあり得る。だが、それはモスクワが欧州の時計の針を1988年まで巻き戻せることを意味しない。
●暴力容認の風潮強まるロシア 4/4
ロシアによるウクライナ侵攻から3年目に入った。この間(かん)ロシア社会にも「取り返しのつかない変化」をもたらしたといわれている。それは、社会や家庭における「暴力の容認」つまり、暴力至上主義、問答無用の風潮である。これは大東亜戦争と呼んでいた第2次世界大戦下の日本でも顕著であったことは、経験上、否定しようがない。
言うまでもなく戦争は暴力の連鎖である。ロシアの社会学者や評論家によると、ウクライナ侵攻の影響から、ロシア国内で暴力を容認する空気が強まっているという。ロシアの社会、家庭、学校で暴力行為が蔓延(まんえん)し、「殺人は悪」という真っ当な感覚が鈍りつつあるというのだ。有識者らは、戦争の渦中にある社会の中で、大きな変化が起きている、ということを認識することが、決定的に重要だと指摘。戦争への態度いかんにかかわらず、ロシア社会で暴力が著しく増えており、さらに警戒すべきことに、暴力を容認する考え方が、ますます当たり前になっていると主張する。
軍や警察で拷問日常化
ロシアの独立系ジャーナリスト、クセニア・キリロワ女史によると、ロシア社会の暴力容認には幾つかの要因がある。第1に、戦争が続いていることが、人々の良識に存在する暴力に対する基本的なタブー視を掘り崩し、大量殺人という隠された目標が受け入れ可能であることを示した。心理学者らは、クレムリンのプロパガンダが行っているような、敵を人間ではないかのように見なす態度が、そうした殺人に対する人々の感覚を鈍らせている、と観察している。しかし、プロパガンダは、戦闘に直接関わっている人間だけではなく、全てのロシア人に影響を与え、暴力と殺人に対する盲従的な態度を助長している。
第2に、国家による抑圧のエスカレーションは、ロシア国民の心理に打撃を与える顕著な要因となっている。ロシア当局の強権的なシステムは、反対派に対する「スターリン主義的」な長期収監や政治的暗殺から、各警察署や流刑地での組織的な虐待に至るまで、野蛮な暴力を展開している。ロシアのさまざまな地域からの報告は、警察署やロシア連邦刑執行庁の各機関で、拷問が日常的に行われていることを示している。人権擁護活動家たちの説明では、法廷で拷問の犠牲者たちが正義を勝ち取るチャンスはゼロに近いという。そうした慣行は、個人の政治的な信条とは無関係に、必然的に社会に影響を与える。
第3に、ウクライナの前線からの歴戦の兵士の帰還が、社会における暴力のエスカレーションに大きく寄与している。このことは、早期に釈放されて、送り込まれた戦場から帰還し、盗みや殺人に再び手を染めている免罪犯罪者だけではなく、動員あるいは徴兵された一般の兵士にも、当てはまるという。
既に、ロシア軍の内部で暴力、拷問、超法規的な処刑が顕著に増大している、との報告がある。独立系ジャーナリストの報道によれば、そうした処刑は、前線では日常茶飯事となっている。絶望的な攻撃への参加を拒否した者らは性的暴行や殴打の対象となり、水や食料を与えられずに、死体と共に塹壕(ざんごう)の極寒の条件の下に放置される等といった、さまざまな残虐行為を受けている。こうした慣習が被害者と加害者の双方に、トラウマとなって残ることは、容易に理解できよう。
家庭内暴力・いじめ急増
ロシアの心理学者らは昨年春、「悪魔のような行為を当たり前だと思う」ことによる家庭内暴力の急激な増加を指摘した。これには、家庭内の殺人や殴打などの暴力行為が含まれている。専門家らは、不安定と脆弱(ぜいじゃく)性の時代において、人々は平時よりもずっと多くのことを自ら受け入れる、と指摘している。
一方で、国家は家庭内暴力から女性を守ることに及び腰となり、早くも2017年には家庭内での女性への暴力は、犯罪とは見なされなくなっていた。今では、女性による、自分たちの権利を守ろうとする全ての試みは、フェミニズムの烙印が(らくいん)押され、「伝統的価値」を毀損(きそん)する過激イデオロギーとして禁止される危機に直面しているという。
暴力の文化こそ絶対的な規範であるとの考えは、子供たちを含む社会のあらゆる部分に広がっている。クレムリンが統制している公式メディアでさえ、学校でのいじめと、ネットを通じたいじめがここ数カ月、顕著に増加している、と報道している。ウクライナ戦争のもたらすロシア社会への重大な影響は看過できない。
●「南方ルート」貿易に舵を切る露 ウクライナ戦争の経済制裁で脱欧州さらに進む 4/4
ロシアにとって、欧州との貿易は何世紀にもわたって経済の主要な柱だった。
ウクライナとの戦争がこれに幕を引き、西側諸国による制裁やその他の規制が、ますますロシアを欧州市場から切り離している。
こうした情勢に対処するため、ロシアは自国とのビジネス拡大に意欲的な国々との結び付きを強化してきた。東方の中国、そして南方ルートを経由したインドやペルシャ湾岸諸国との関係である。
南方ルートは現在、ロシアの政策立案者らが重点を置いている。西側諸国から永久に離脱するためのインフラを構築しようとしているのだ。
この取り組みは、資金調達をめぐる問題やロシアの新たなパートナーたちの信頼性に対する疑念、ロシアの貿易相手国を標的とした西側による制裁の脅威といった難問に直面している。
南方計画の主要部分は、17億ドルを投入して今年着工する予定の全長100マイル(約160キロ)の鉄道建設だ。
ロシアと、ペルシャ湾に面したイランの諸港を結ぶルートの最終連結点になり、インドの商都ムンバイのような地点へのアクセスを容易にする。ロシアはこのプロジェクトの資金として、イランに14億ドルを融資することで合意した。
アゼルバイジャンの首都バクーに拠点を置く輸送・物流の専門家ラウフ・アガミルザエフは南方ルートについて、「ロシアの伝統的な貿易ルートはほとんど封鎖されたため、他の選択肢に目を向けざるを得なかった」と指摘する。
ロシアは西側諸国による貿易制限を回避する方法をいくつも見いだしてきた。インドからは機械類を、イランからは武器を、そして多くの消費財はしばしば湾岸諸国やトルコから輸入している。ロシア政府は、戦時中であっても一定の生活水準を維持できることを国民に示すことが重要だとみているのだ。
ロシアでは、消費財の一部は相変わらず欧州から合法的に入ってきているが、輸入が制限されていたり、入手困難になっていたりする品々も広く出回っている。
フランス産のカキは第三国を経由して飛行機で運ばれ、モスクワのレストランで食べられる。欧州連合(EU)の禁輸対象になっているイタリア産のトリュフやフランスのシャンパンも、高級食料品チェーンで入手できる。
ロシア政府は、こうしたすべての輸入品の国内への流れを集中させ、迅速化するために、イラン経由の鉄道プロジェクトは不可欠とみており、トルコへのアクセスとなるもう一つの路線の復旧も望んでいる。また、それは経済にとって不可欠なロシアの天然資源の輸出を拡大するためにも重要なこととみられている。
(ロシアの)サンクトペテルブルクからムンバイへの貨物輸送に要する日数は現状だと30日から45日だが、ロシア大統領ウラジーミル・プーチンは、新ルートならわずか10日に短縮できると語った。ロシアの当局者は、これをスエズ運河に匹敵する「画期的で革命的なプロジェクト」と称している。
ロシア最大の貿易相手国である中国に向けた既存の貿易ルートはすでに輸送能力を超えているため、新ルートはそれを補完する役割も担う。
中国の統計によると、2022年2月にウクライナへの本格的な侵攻が始まる直前だった2021年と比較すると、2023年のロシアの対中貿易は約63%も急増し、2400億ドルを超えた。
インドとの貿易も急増しており、650億ドルに達している。2021年の4倍以上にもなる。ロシアの2021年の対インドおよび対中貿易の合計額は、2021年の対EU貿易額だった2820億ドルを超えた。
新しい鉄道は、アスタラとラシュトというイランの二つの都市を結び、北方でイランとアゼルバイジャンを結ぶ線路とつながり、そしてロシアの鉄道網へと連結する。
新路線の完成は2028年に予定されているが、そうなると「南北輸送回廊」は4300マイル(約6920キロ)以上にわたって途切れることなくつながる。西側諸国による制裁は及ばない。
ロシアの貿易業者らは、ペルシャ湾に面したイランの施設を経由してインドやサウジアラビア、アラブ首長国連邦、パキスタン、さらにはその先まで容易にアクセスできるようになる。
海事関連のニュースや情報サービスの専門会社「Lloyd’s List(ロイズリスト)」によると、カフカス地方と中央アジアを通り、カスピ海を横切ってイランに至る貿易ルートは、直近数カ月間ですでにロシアにとって重要な輸出ルートになっている。ロシアはまた、石油や原料炭、肥料といった製品を逆ルートで輸入している。
アルメニア最大の貨物輸送会社「Apaven(アパベン)」の社長ガギク・アガジャニャンによると、同社のトラック部隊は黒海に面したジョージアの港から鉄道で運ばれてきた消費財を積み込み、陸路で国境を越えて北方のロシアへと輸送することがよくあるという。
西側諸国が禁輸対象にしているようなより慎重さを要する商品については、彼は、アルメニアと国境を接するイラン経由で輸送できると言っている。イランの港からカスピ海を越えてロシアへと運ぶのだ。
「ジョージア人は『これらは禁制品だから、ロシアへは運ばせない』と言う」とアガジャニャンは取材に答えた。「すると、イラン人は言うのだ。『そんなこと、どうだっていい』と」
ロシアの経済担当第1副首相アンドレイ・ベロウソフの話だと、2023年のこのルートの貿易量は2021年に比べて38%増加したが、30年までには3倍に膨れ上がる可能性がある。
ロシアはイラン経由の路線に加え、アルメニアとアゼルバイジャンの飛び地・ナヒチェバンを通ってモスクワとイランやトルコを結んでいた旧ソ連の鉄道の復旧も望んでいる。この鉄道は、アルメニアとアゼルバイジャンとの間で紛争が勃発した1990年代初頭、廃線になった。
ロシアは、この鉄道を数年以内に再開させる意向だが、このプロジェクトは地域の複雑な地政学的事情の渦中にある。
アゼルバイジャンはこの鉄道の接続の完成を熱望しているのだが、アルメニアの方は自国領内を通る線路を誰が管理するのかに懸念を持ち、プロジェクトへの関与に消極的だ。旧ソ連時代、線路はアゼルバイジャン鉄道の管理下にあった。アルメニアは2020年、ロシアの治安当局に管理を委ねる協定に調印した。
しかし、かつてアルメニアと緊密な関係にあったロシアは、アゼルバイジャンとの友好関係を強めており、30年以上にわたってアルメニア系の分離主義者の支配下にあったナゴルノ・カラバフ地方をアゼルバイジャンが完全に支配下に置くのを実質的に傍観していた。現在、アルメニアはイランとの国境に戦略的に置かれたメグリの町を中心とする鉄道の連結部分を支配したいと考えている。
現状では、メグリの鉄道駅は旧ソ連時代の遺物そのままで、駅舎の中は古い鉄道路線図と切符を枯れ葉やほこりが覆ったような状態で放置されている。100年以上前、帝政ロシアによって建設された線路は、とうの昔に野菜畑になった。
アゼルバイジャンの鉄道会社は、2020年の紛争以前に占領していた領域を通ってアルメニアに通じる線路を完成させつつある。アルメニアがじゃましなければ、そこからはアルメニア経由かイラン経由のいずれかに延伸できる。
シンクタンク「ロシア国際問題評議会(RIAC)」のロシアの対中東政策専門家ニキータ・スマジンは、「ロシアはペルシャ湾やトルコへの鉄道ルートを獲得できる」と言っている。「かなり早くできる。最長でも2年だ」
アゼルバイジャンの鉄道会社社長ロブシャン・ルスタモフは、このプロジェクトのアゼルバイジャン側の事業は2024年末までに完了するはずだと言っている。彼によると、物流は、石油に代わってアゼルバイジャン経済にとって最大の推進力になる可能性がある。
アゼルバイジャンはまた、バクーの港がロシアと外の世界との間を、そして好都合にもロシアを迂回(うかい)してアジアと欧州との間を行き来する物資の戦略的拠点という新たな立場から、利益を得られることを望んでいる。
ロシアによるウクライナ侵攻が始まった後、バクー当局は予想された物資輸送量の急増に対処するため、港の第2段階の開発計画を早めた。
「以前実施した実現可能性調査では、拡張を急ぐ必要はないとされていた」とバクー港の港湾局長タレ・ジャドフは振り返る。「侵攻開始後、我々は新たな調査を行い、拡張の時期をおそらく2024年まで早める必要があるとわかった」と言うのだ。
ロシアの当局者は新貿易ルートを歓迎しているが、ビジネス界のリーダーのなかには疑問に思っている人もいる。
「これは、これまで事実に即した理由で見送られてきたにもかかわらず、今回強制された決断のようだ」とイワン・フェジャコフは指摘する。ロシアで現行の制限のもと活動する企業に、生き残り策を助言する市場コンサルタント会社「InfoLine(インフォライン)」を経営している。
貿易制限の回避を分析している会社「Publican(パブリカン)」のラム・べン・ツィオンは、「要するに、いま計画されているのは、社会ののけ者のための貿易ルートなのだ」と言っている。 
●NATO長期軍事支援検討で合意 外相理事会、ウクライナに 4/4
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は3日、ブリュッセルで開いた外相理事会で、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対する長期的な軍事支援の検討を進めることで加盟国が大筋合意したと明らかにした。理事会後の記者会見で述べた。7月にワシントンで開くNATO首脳会議までの合意を目指す。
11月の米大統領選で支援に消極的なトランプ前大統領が返り咲いた場合、米主催のウクライナ軍事支援の関係国会合が機能不全に陥っても、NATO主導で支援を続ける狙い。欧州メディアによると、実現には全加盟国の承認が必要。ハンガリーなど、難色を示す加盟国の説得が課題になる。
●フィンランドと安保協定、ウクライナ大統領「ロが30万人動員用意」 4/4
フィンランドのストゥブ大統領は3日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問し、同国との10年間の安全保障協定に署名した。
今年に入りウクライナと長期的な安全保障協力と防衛支援の協定を結ぶのは、北大西洋条約機構(NATO)加盟国で8カ国目。
ロシアと1340キロの国境を接するフィンランドは、1年前にNATOに加盟した。
ストゥブ氏は防空装備や大口径弾薬を含む1億8800万ユーロ(2億0300万ドル)規模の追加軍事支援を行うことも明らかにした。
ウクライナのゼレンスキー大統領は記者会見で、ロシアが6月初めまでに新たに30万人を動員する用意をしていると述べた。根拠は示さなかった。
ロシアの通信社によると、大統領府のペスコフ報道官はゼレンスキー氏の主張について、事実でないと述べた。

 

●銃乱射テロ2週間で「志願兵増」=ウクライナ黒幕説信用か―ロシア 4/5
ロシア国防省は3日、モスクワ郊外で3月に起きた銃乱射テロ後、国内でウクライナ侵攻の志願兵の採用が「大幅に増えた」と主張した。
プーチン大統領はテロについて「イスラム過激派が実行した」と認める一方、ウクライナに「黒幕」がいると発言。信じる国民は多く、政権のプロパガンダが志願を促している可能性もある。
死者140人以上の惨事から5日で2週間。政権が戦時の国内引き締めに利用する側面が浮かび上がっている。
国防省の発表によると、過去10日間で約1万6000人が志願兵に応募。その大半は「テロ犠牲者の復讐(ふくしゅう)」が動機だと述べたという。独立系メディアは、テロ発生直前、志願兵の採用数が昨年秋と比べて「20分の1」に激減したと伝えていた。
ウクライナはテロへの関与を否定。英紙フィナンシャル・タイムズが最近報道した世論調査では、ロシア国民の50%以上が「ウクライナ関与説」を支持。犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)を非難する人は27%にすぎない。
ウクライナのゼレンスキー大統領は3日、「ロシアが6月1日に30万人を動員する準備をしている」と指摘。独立系メディアは先に、ウクライナ北東部ハリコフ州占領のため「ロシア国防省が30万人派兵を計画中」と報じた。ただ、予備役招集は国内の反発が予想され、プーチン政権は志願兵を活用する方針とみられる。
●プーチンはロシアをプレイステーションやXboxの競争相手にしたいと考えている 4/5
ビデオゲーム機や携帯端末の現在の状況がすでに混雑していると思うなら、ロシア全土がそれについて言いたいことがあるだろう。 少なくとも、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は次のような命令を出したので、そうしている。 ロシアのビデオゲーム機の生産 PS5やXboxシリーズと競合するためにそこには少し難しい注文があります。
PS Plus、バックログを増やしてくれてありがとう
ロシア紙の報道によると、この命令はクレムリンによって「据え置き型および携帯型ゲーム機およびゲーム機の生産を組織する問題を検討する」ために発行されました。 コメルサント関係者がロシア全国紙に語ったところによると、同名のソーシャルメディアサービス「VK」を運営するロシアの大手テクノロジー企業、VKグループがこのプロジェクトの主な責任を負うという。 コンソールの製造は、以前はゼネラル・サテライトとして知られ、ロシアの単独最大のセットトップ・ボックス開発会社であるGSグループが担当する。
3月25日にロシア政府が出した発注の一環として、VKグループとGSグループは2024年6月15日までにロシアの消費者向けに家庭用ゲーム機とポータブルゲーム機の両方を生産する責任を負うことになる。需要はさらに高まっている。 ロシアはビデオゲーム産業への参入を試みてきたが、これはビデオゲーム産業への最初の一歩ではない。 昨年、ゲームコミュニティが「ハッキング」されたそして検討されたのは、 独自のゲームエンジンを作成する その前の年。 しかし、その最中にゲーム業界の大多数が国家との関係を断ち切ったので、これは顕著な変化を示している。 ウクライナ侵攻 2022年。ロシア政府は現在、独自のゲーム産業を効果的に立ち上げようとしており、おそらくこれらの制裁による経済的負担を相殺しようとしている。
ロシアの要請に対する追加措置として、これらの開発者には「ゲームやソフトウェアをユーザーに提供するためのオペレーティングシステムとクラウドシステムを作成する」という任務も与えられた。 繰り返しになりますが、政府とこれらの開発業者は、6月中旬までにこれを達成するよう命じられました。 今年から。 リモート プレイや PS3 ゲームの PS5 へのストリーミングなど、当社の機能的なクラウド サービスは依然としてつまずいており、数か月以内にこれを達成できる可能性はありません。
すべてのためのアナリストらはすでに、「独自の PlayStation や Xbox コンソールを製造する権限はなく、そのようなシステムをゼロから作成するには最大 10 年かかるだろう」と述べています。
●「迷惑だ」プーチンからの贈り物に北朝鮮国民ブチ切れ 4/5
ロシアのサンクト・ペテルブルグにあるオペラ、バレエの劇場のマリインスキー劇場は、チャイコフスキーの代表作「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」「白鳥の湖」が初演された劇場として、世界的に有名だ。沿海州のウラジオストクには別館もある。
そんなマリインスキー劇場に所属する芸術団が北朝鮮を訪問し、平壌の万寿台(マンスデ)芸術劇場で「眠れる森の美女」の公演を行った。武器取引などで北朝鮮との親密さを深める、プーチン大統領からの「贈り物」と言える。
ところが、平壌市民の反応は鈍い。いや、むしろ怒っている。めったに触れられない世界的なバレエのどこに不満があったのか。その裏には、現地におけるきわめて偏った「エンタメ事情」があると、デイリーNK内部情報筋が伝えている。
平壌市当局は、今回の公演がロシアとの友情を示す契機になる、観客席を埋めるのが(平壌市民の)使命だとして、観覧するように呼びかけた。「サクラになれ」ということだ。
また、企業所内にある朝鮮労働党委員会は、ロシアの社会と文化的特性を理解するに当たって、大切な参考になる文化活動だ、誠実に参加しようと宣伝した。
ところが、人々の反応はきわめて冷淡だ。
「言葉も文化も違うロシアの芸術への関心は微々たるもので、強制的な観覧に人々は不満を持っている」(情報筋)
ロシア渡航が難しい現状で、バレエファンのみならず、クラシックに関心のある人なら垂涎の公演で、コロナ前には日本や韓国からサンクト・ペテルブルグまで熱心に通う人もいたという。そんな世界的レベルのバレエを見た平壌市民の反応は、ひとことで言って「つまらなかった」というものだ。
「文化、芸術の本質的価値は、観劇する人に楽しみを与えるもので、強制観劇はそのような価値を阻害する行為だ」(情報筋)
要するに、つまらないものを、カネを払わされてまで観劇させられたことが不満ということだ。若者や学生たちは、職場や大学に割り当てられ、無理やりチケットを買わされ、大切なプライベートの時間を奪われたことに、「余計なことを。頭に来る」「迷惑だ」「なぜ国はここまでするのか」との反応を示した。
そもそも北朝鮮で暮らしていて、庶民がクラシック音楽を耳にすることはほとんどないとされる。表では金氏一家を称える歌ばかり聞かされ、裏ではK-POPやトロット(韓国の演歌)を聞いている。よほど感覚の優れた人でもない限り、知らないものを聞かされても興味が湧かないのは仕方のないことだろう。
●ウクライナ、「ロシアが30万人追加動員」主張…露大統領府は否認も「テロ後に志願入隊増加」 4/5
ロシアが戦争のために約30万人の兵力を追加動員する計画だと、ウクライナのゼレンスキー大統領が主張した。ロシアはこれを否認しながらも、モスクワのコンサートホールでのテロ事件以降ウクライナに対する報復を誓って志願入隊する人が増えたと明らかにした。
ロイター通信・モスクワタイムズなどによると、ゼレンスキー大統領は3日(現地時間)、ウクライナの首都キーウで行われたフィンランドのストゥブ大統領との共同記者会見で「ロシアは戦争を続けるため6月1日までに30万人の新たな兵力を動員する計画を持っている」と主張した。その後、動画の演説でも「我々はロシアが何を準備して望んでいるのか、軍隊が軍人を集めていることなどすべて把握している」と強調した。
ロシア独立メディアのビョルストカも先月、ロシアが公式的に動員令を出さないまま約30万人の兵力を募集する計画だと報じた。これに関連し英国防省傘下の国防情報局(DI)はロシアがウクライナ戦争のために毎月約3万人の軍人を募集していると明らかにした。
この日、ロシア大統領府のペスコフ報道官は「30万人動員」について「事実でない」と反論した。ロシアは2022年9月、部分的動員令を出して30万人を徴集したが、この過程で若い男性が近隣国に脱出するなど民心が動揺した。ロシア国防省の情報筋はモスクワタイムズに「動員令に対する国民の反発を懸念し、当局は依然として公式動員発表をためらっている」と明らかにした。
ただロシア国防省は、モスクワ公演場テロの後、報復を誓って志願入隊する人が増えたと明らかにした。この日、国防省は声明で「今年の初めから10万人以上が軍と契約して服務に入ったが、10日間で1万6000人が契約を締結し、その数が急増した」と伝えた。志願入隊が大きく増えたことについて、ロシア国防省は「大多数が入隊面接でテロで犠牲になった人たちのために『報復したい』と語った」と明らかにした。
先月22日にモスクワのコンサートホールで発生した無差別銃撃・放火で144人が死亡した。極端主義武装組織イスラム国(IS)は事件直後に「イスラム国ホラサン州(ISIS−K)」の組織員が今回のテロを行ったと主張したが、ロシアのプーチン大統領はウクライナが背後にあると見なした。
ロシアと2年以上も戦争中のウクライナも兵力不足に悩んでいる。ゼレンスキー大統領は2日、徴集年齢を現行の「27歳以上」から「25歳以上」とする内容の兵役法改正案に署名した。これを受け、ウクライナの男性は18歳以上から志願入隊でき、25歳から強制動員が可能になった。
これに先立ち昨年末、ウクライナも50万人動員説があった。ゼレンスキー大統領は当時の記者会見で「ウクライナが50万人をさらに動員する必要はない」とし「具体的な動員人員はまだ話せない」と話した。
●ドイツ軍が組織再編、国防相「戦争に適した形に再編成することが目標」ウクライナ情勢受け増強 4/5
ドイツのピストリウス国防相は4日、軍の組織再編計画を発表した。統合作戦司令部の新設や、陸海空軍にサイバー情報軍を加えて四つの軍種で編成する内容。ウクライナ侵攻を続けるロシアを念頭に、安全保障上の脅威に対処するため、能力向上を図る。
ドイツは冷戦後に軍備を縮小したが、ウクライナ情勢を受けて軍備増強に転じ、国防費の引き上げや軍の再編を進めている。
再編計画は、国内と海外の任務をそれぞれ担当する二つの司令部を統合し、一元的に指揮する統合作戦司令部を設ける。サイバー攻撃や情報操作によるハイブリッド攻撃に備え、既存のサイバー部門を強化、格上げしてサイバー情報軍とする。
ピストリウス氏は記者会見で「軍を戦争に適した形に再編成することが目標だ」と強調。「欧州の脅威は増大している」とし、「私たちを攻撃しようなどと誰も考えないようにしなければならない」と述べた。
●中国の和平案が最も合理的とロシア外相、ウクライナ戦争巡り 4/5
ロシアのラブロフ外相は、ウクライナ紛争を巡り中国が提示した和平案がこれまでのところ最も合理的な案だという見解を示した。国営ロシア通信(RIA)が4日に報じた。
中国は昨年2月、ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場を示す文書を公表。戦争終結に向けた一般原則を示した12項目の和平案を提示したが詳細には触れなかった。
中国の文書に対する当時のロシアとウクライナの反応はさえず、米国は中国がロシアの侵略を非難していないと批判した。
RIAによると、ラブロフ氏は「われわれにとって最も重要なのは中国の文書が、今起きていることの理由とその根本原因を取り除く必要性の分析に基づいていることだ」と記者団に語った。
「この計画は曖昧だと批判された。しかし、これは偉大な中国文明が議論のために提案した合理的な計画だ」と述べた。
ラブロフ氏は近く、中国の王毅外相と会談する予定。また、ロシアのプーチン大統領は先月、5期目となる新たな任期入り後、最初の外遊先として中国を検討する意向を示した。
●NATO、「ウクライナ15兆円基金」浮上の揺れる裏側 4/5
北大西洋条約機構(NATO)は、4月3〜4日にかけて外相会議を開催し、NATO独自の5年間で1000億ドル(15兆円)規模の対ウクライナ支援基金設立の検討に入った。
アメリカ議会がウクライナへの600億ドルの追加支援を下院議会で可決できない中、NATO独自の対ウクライナ支援基金を設立することで支援を継続するためだ。ウクライナへの支援縮小を宣言するアメリカのトランプ前大統領が今年11月の米大統領選で再選される「もしトラ」への懸念もある。
トランプ氏は「戦争を決着させる」と自信を示すが…
ポーランドのトゥスク首相は3月29日、欧州は「戦争前夜」にあると述べ、「ウクライナの敗北は欧州全体の安全を脅かす」と警告した。フランス国営テレビのフランス2は4月2日、「ロシアは5月にウクライナへの大規模攻撃を計画している」と指摘し、ロシア側はF-16戦闘機や長距離弾道ミサイルがNATO加盟国内から発射されれば、相応の対応をすると牽制する。
トランプ氏は3月10日、ロシアのプーチン大統領との特別のチャンネルを利用し、「大統領選に勝利した直後、大統領執務室に着く前に恐ろしい戦争を決着させる」と語った。彼独自の「ディール」に自信を示したわけだが、欧州で彼の発言を信じる者はいない。
それよりロシアがウクライナで一定の成果を出せば、ポーランド、チェコ、バルト3国、フィンランドなどが次の標的となる可能性が指摘されている。
その根拠は、アメリカを除けばNATOの財政力も軍事力も圧倒的にロシアより劣勢だからだ。NATOのストルテンベルグ事務総長は2月、加盟各国が防衛費を増額し、加盟31カ国(当時)のうち18カ国が、国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上に増やす目標を達成する見通しを明らかにした。わずか3カ国のみだった2014年からは6倍の水準になるとはいえ、ロシアとの戦争に対応できる戦力を持てていない。
またNATOは、ウクライナへの武器供与を調整するアメリカ主導のウクライナ防衛連絡グループ(UDCG=NATO加盟国を含む56カ国)をNATOに移管することも検討していて、7月のワシントンで開かれるNATO首脳会議での最終決定を目指している。
課題となっているUDCGの強化
ウクライナ紛争初期段階で立ち上げたUDCGは、ロシア軍の侵攻を阻止するうえで重要とされたウクライナへの数百億ドルの装備、武器、その他の援助を迅速化したとされている。
だが、武器供与の遅延が目立ち、ウクライナ側は日々、多くのウクライナ兵が命を失っていることに悲鳴を上げている。それに西側同盟国は国内の政治的状況変化から供給の安定性を確保できていない。そのため、今回の協議ではUDCGの耐久性強化が課題の1つとなっている。
トランプ氏のホワイトハウス復帰を欧州が懸念する中、UDCGのNATOへの移管は、当面のウクライナ戦争に対する西側の支持を固める重要な動きとなると専門家は見ている。
現在の状況では、アメリカの国内政治が影響して追加支援の確約が取れないだけでなく、ハンガリーなど、ロシア寄りの国はウクライナ支援に後ろ向きで、加盟各国の国内政治に振り回されている。
その意味でも、UDCGのNATO内格上げは重要な意味を持つと防衛専門家たちは見ている。
UDCGは欧州大西洋圏外の目的を同じくする他の約20カ国も含まれる。ドイツのラムシュタイン空軍基地で月に1度、バーチャルまたは対面で非公開会議を開催し、ウクライナに最新鋭の戦車からF-16戦闘機まであらゆる装備を整備するうえで中心的な役割を果たしてきた。
ウクライナは、ロシアの前線の奥深くにある目標を攻撃するため、数カ月間ミサイルの追加を要求してきた。さらにNATO軍の飛行機、ヘリコプター、無人航空機が黒海上空で再び発見され、クリミア半島攻撃の準備と見られ、前線から1300キロも離れたロシア南東部タタールスタン共和国の工業地域で4月2日、ウクライナのドローンによる攻撃もあった。
大きな岐路に差し掛かったウクライナ支援
アメリカ国防総省は3月、以前の契約で節約したコストを活用して、切望されていた防空装備を含む新たな3億ドルの援助パッケージをまとめたが、上院が可決したイスラエル、台湾を含めた950億ドル(約14兆2000億円)の追加支援パッケージが下院で可決されない以上、追加援助を送ることはできないとしている。
ウクライナのNATO加盟が実現すれば、NATOの対ロシア軍事行動は一変するが、ドイツとアメリカはウクライナの民主主義と安全保障の改革なしにNATOへの加盟はありえないとしている。
つまり、ウクライナ支援は大きな岐路に差し掛かっており、特に欧州全体が戦争に巻き込まれるリスクが本格化する中、トランプ新政権に左右されない新たな防衛の枠組みを構築することが急がれている。一方で、アメリカのニューヨークタイムズは、NATOがUDCG乗っ取りに動いていると否定的に報じており、7月にUDCGがNATOの完全傘下に入るかは不透明だ。
●フィンランド、ロシアとの国境を無期限閉鎖に 「安全保障に影響」 4/5
フィンランド政府は4日、ロシアと接する東側の国境について、無期限で閉鎖すると発表した。フィンランドはかねて、ロシアが意図的に移民を誘導していると非難しており、「この状況は長期的なものになる」と判断した。
フィンランド政府によると、ロシアは第三国から自国に入国した移民を「手段化」し、フィンランドに送り込むことで、欧州の安全保障や社会の安定に影響を与えようと試みている。ランタネン内相によると、国境付近には現在、ロシアに「利用」される可能性のある人が「数百人から数千人」の規模で存在するという。
フィンランドは昨年11月末までに、渡航者が陸路で行き来できる検問所8カ所を全て閉鎖。その後、ほぼ再開することなく、延長を重ねてきた。 ・・・ 
●ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施も、爆撃で「撃退」される...ウクライナ政府が動画公開 4/5
開戦から2年を超えたロシアとウクライナの激戦の中で、過去最大の規模とされるロシア軍の「戦車攻撃」が実施され、これをウクライナ軍が撃退したとウクライナ政府が発表した。ロシア軍機甲部隊を撃退するシーンだとされる映像もあわせて公開され、そこにはロシアの戦車が次々と爆撃によって破壊される様子が収められていた。
ウクライナ国防省が4月1日に発表したところによると、ウクライナ軍の第25独立空挺旅団に所属する空挺部隊が、東部ドネツク州アウディーイウカの真西に位置する村トネニケ近郊で、ロシアの「大規模」攻撃を阻止した。本誌はこの映像を独自に検証することができず、ロシア国防省にメールでコメントを求めている。
ロシア軍は2月半ば、戦略的に重要な都市アウディーイウカを制圧。以後、同都市の西側で激しい戦闘が続いている。ロシア政府は、アウディーイウカを支配下に置いて以降、周辺の村々を奪取したと発表しており、ウクライナを支援する国々の間では、ウクライナがロシア軍による西への侵攻を阻止できないのではないかと懸念する声が広がっている。
こうした懸念を払拭する狙いもあったのか、ウクライナ国防省は、ロシア機甲部隊による攻撃に第25独立空挺旅団が反撃しているところとみられる動画を公開しつつ、ウクライナ空挺部隊は、ロシア軍の戦車4台と歩兵戦闘車2台を破壊したと述べた。
第25独立空挺旅団「敵の車列を破壊した」
第25独立空挺旅団も4月1日にこの動画を公開し、同旅団の兵士が「敵の車列を破壊した」と述べた。その短い動画を見ると、何度か爆発が起きて、何台もの車両が火に包まれている。車列は、向かってくる砲火を逃れようとしていたようだ。実際にこの動画は、ウクライナ東部の領土獲得を目指すロシア軍が、どれほど多くの戦闘車両を失っているかを浮き彫りにするものと言えるだろう。
ウクライナのあるオープン・ソース・インテリジェンスのアカウントが3月31日に伝えたところによると、ウクライナは3月30日、トネニケ近郊で、ロシア軍の戦車36台、歩兵戦闘車12台による大規模攻撃を撃退した。
ウクライナ戦争の進展を日々追跡している米シンクタンク戦争研究所(ISW)は、トネニケ近郊におけるロシア軍の攻撃について、ロシアが2023年10月にアウディーイウカを攻撃し始めて以来「初となる大隊規模の機械化攻撃」だと述べた。ウクライナ紛争における戦車大隊は通常、戦車30台以上で構成される。
ウクライナのジャーナリスト、ユリー・ブトゥソフは3月30日の進軍について、機甲攻撃としては数カ月ぶりとなる規模だと述べた。
ロシアはこれまで控えていた戦車など装甲車の使用を再開
ロシアは、戦車やほかの戦闘車両を用いた大規模攻撃を周期的に仕掛けている。2023年はじめには、ウクライナ南部の村ヴフレダル周辺で、3週間にわたる攻撃を展開。ウクライナ当局はこれについて、2023年3月前半にニューヨーク・タイムズ紙に対し、「ウクライナ戦争が始まって以来、戦車による戦闘としては最大規模だ」と述べていた。
またロシア軍は、ウクライナ軍が拠点を置いていたアウディーイウカに対する初期の波状攻撃で、戦車と装甲車両を多数失っている。ウクライナはこの戦闘の最中に、破壊されたロシア軍用車が同都市周辺の草原に散乱しているとみられる映像を公開。米シンクタンクISWによると、ロシアは、アウディーイウカに対する1回目と2回目の波状攻撃後、「装甲車を温存するべく、歩兵隊主導の攻撃に切り替えた」という。
ウクライナの防衛シンクタンク、防衛戦略センター(CDS)は、3月30日のロシアによる攻撃直前に、ロシア政府はアウディーイウカ周辺において「戦車を含む装甲車の使用を再開した」と述べていた。
ウクライナ軍は今回の動画のように激しい抵抗を行っているが、それでもロシア軍はここ数日で、アウディーイウカの南西と西でさらに軍を先に進めたと、ISWは最新評価で述べている。
●ロシアの情報戦に揺れるフランス マクロン氏「五輪の妨害疑いない」 4/5
ウクライナ侵攻をめぐって、フランスがロシアの情報操作に揺さぶられている。両国の国防相が行った3日の電話協議では、双方の言い分が食い違う協議内容を発表する事態が起きた。仏側は、ウクライナ派兵の可能性を示唆したマクロン大統領の発言で、ロシアがフランスを情報戦の標的にしていると、警戒を強めている。
フランスのルコルニュ、ロシアのショイグ両国防相は3日、約1年半ぶりの電話協議を行った。ウクライナ侵攻が続くなか、西側諸国とロシアの政権幹部が直接意見を交わすのは異例だ。
4日にパリ郊外で記者団の取材に応じたマクロン氏は、仏国防相への自らの指示が協議のきっかけだったと明かした。
3月22日に140人以上が死亡したモスクワ郊外の襲撃事件の後、マクロン氏は犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)がフランスでも過去数カ月間にテロを計画していたとし、両国間での連携が必要との見方を示していた。そのため、3日の国防相協議では、関与が疑われるISの系列組織に関する「技術的な情報」を、夏に控えるパリ五輪に向けて交換することが目的だったという。
仏国防省は協議後の声明で、ルコルニュ氏が「テロの脅威とより効果的に戦うためにフランスには交流を拡大する用意があることを伝えた」と説明。ロシア側が主張する事件へのウクライナの関与を否定し、侵攻については改めて非難した。
一方、ロシア側からは、今回の協議を利用してフランスを揺さぶる意図が透けて見える。 ・・・
●戦禍の祖国・ウクライナを想うジンチェンコの決意「戦いに行くだろう」、軍の招集を受ければアーセナルよりも優先「僕たちは諦められない」 4/5
アーセナルでプレーするウクライナ代表DFオレクサンドル・ジンチェンコが、国からの要請があれば戦争に出向くと語った。イギリス『BBC』が伝えた。
シャフタール・ドネツクの下部組織出身のジンチェンコ。その後ロシアのウファでプレーしたところ、2016年7月にマンチェスター・シティに完全移籍。PSVへのレンタル移籍を経て、シティで主軸を務めた。
2022年7月にアーセナルへと完全移籍。左サイドバックとしてミケル・アルテタ監督のサッカーを体現。チームにとっても重要な役割を担っている。
一方で、ウクライナ代表ではキャプテンを務め、60試合に出場し9ゴールを記録。熱いハートはピッチ内だけでなく、ウクライナ国民にもしっかりと見せており、ユーロ2024への出場もプレーオフの末に掴んだ。
そのジンチェンコは、2021年に始まったロシアの軍事侵攻に関しても動き出し、100万ポンド(約2億円)をウクライナ国民のために寄付するなどしている。
そんな中、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ウクライナぐんの動員年齢を27歳から25歳に引き下げることを決定。さらに50万人の兵士が必要だと考えている中で、軍に多くの人員を召集することを目的とされている。
『BBC』はジンチェンコに対してインタビュー。プレミアリーグに残留するか、国のために戦うのかという質問には「答えは明白だと思う。僕は(戦いに)行くだろう」と答えた。
「つい最近まで、僕たちは同じ学校にいて、校庭やサッカー場で遊んでいたのに、今では彼らが僕たちの国を守らなければならないということを理解するのは難しい」
「そして、正直に言って、これを受け入れることはとても難しいことだけど、それが現実でもある。僕たちは諦めることはできない」
ロシアからの侵攻は止まらず、何も抵抗しなければ屈することになってしまうウクライナ。ただ、それだけは許すことはできないというジンチェンコ。国内の状況については「非常に厳しい」と語りながらも、「我が国の大統領を誇りに思う」と、ゼレンスキー大統領に信頼を寄せていると語った。
「一部の人が、僕にとってはウクライナにいるよりも、ここ(ロンドン)にいる方がずっと楽だと思うかもしれないということは承知している。僕はこの戦争が早く終わることを心から願っている」
ロシアでもプレーしていたことがあるジンチェンコだが、もうロシアにいる友人や元チームメイトとは話さないことにしているという。
「侵攻以来、僕にテキストメッセージやメッセージを送ってくれた人はほとんどいなかった。彼らを責めることはできない。これは彼らのせいではないからだ」
「僕は彼らに『みんな、外で抗議活動をしてくれ』とは言えない。なぜなら、彼らが刑務所に入れられる可能性があることを僕は知っている」
また、かつてはロシア人がウクライナ人を「兄弟」、「姉妹」と呼んでいたが、今回の侵攻により「僕たちウクライナ人全員が、もう彼らとは友達になれないということを示した」とコメント。子供たちに引き継いでいくことになるとした。
「彼らが僕たち、そして国民にしたことを決して忘れない。そして、それが僕が自分の子供たちに教えることになる。そして、僕の子供たちが自分の子供たちに教えることになる。これは受け入れられない」
怒りと悔しさに満ちるジンチェンコ。多くの犠牲者が出ており、親を亡くした何百人もの子供たちも知っているという。
「今の僕の義務はなんだろうか。自分の国、国民、これら全てにできる限り貢献するにはどうしたら良いだろうか」
「僕は今、ウクライナ人であることをこれまで以上に誇りに思っている」
「僕には、この戦争がすぐに終わり、僕たちが本当に望んでいるように、ウクライナを再建できるという夢がある」
今なお終わりが見えない戦争。平穏に暮らせる日が来るのはいつになるのか。心が休まることはまだないようだ。

 

●ロシア ウクライナに軍事侵攻 4月6日の動き 4/6
ウクライナ “ロシア軍の複数の軍用機を破壊” 現地メディア
ウクライナの複数のメディアは5日、ウクライナ当局の関係者の話としてウクライナと国境を接するロシア南部ロストフ州のモロゾフスク飛行場に対してウクライナの保安局と軍が共同作戦を行い、ロシア軍の軍用機、少なくとも6機を破壊し、8機を損傷させたと伝えました。
飛行場にはロシア軍の戦闘機などが駐機していたとしていて、「ロシア軍の戦闘能力を大幅に低下させる重要な特別作戦だ」としています。
この攻撃についてロシア国防省も5日、ウクライナ側がロストフ州を含む5つの州などで大規模な無人機攻撃を仕掛けてきたと発表し、ロストフ州の知事は8人がけがをしたとしています。
これに対してロシア側も5日、ウクライナのエネルギー施設や軍事施設に対して今週、39回にわたり、ミサイルや無人機による攻撃を行ったと国防省が発表しました。
ウクライナのシュミハリ首相はエストニアメディアのインタビューに対し「残念ながらロシアはエネルギーに対するテロを続けている。ここ数週間だけでも水力発電や火力発電で6ギガワット以上の施設が破壊された」と明らかにしていて、ロシアとウクライナの間で無人機などによる激しい攻撃の応酬が続いています。
ウクライナ高官 AI無人機の本格導入を急ぐ考え示す
ウクライナで無人機の製造や開発の政策を担う戦略産業省のフボズジャル次官は5日、首都キーウでNHKのインタビューに応じました。
フボズジャル次官は国内でおよそ200の企業が無人機の製造に取り組んでいるとした上で「ことしは、さまざまな種類の、200万機以上の無人機を製造する準備ができている」と述べ、無人機の製造能力が大幅に拡大していると明らかにしました。
また、ロシア軍による電波などを使った妨害をかいくぐるために、AIを利用した無人機の開発を進めているとして、「AIは無人機の飛行経路や標的を選ぶ上で役立つ。敵による妨害があっても正しく標的を攻撃する可能性を高めてくれる」と述べました。
さらにスウォームと呼ばれる複数の無人機が「群れ」で行動する技術の開発も進め、ことし中にもウクライナの企業が協力して行うプロジェクトを発表するとしています。
フボズジャル次官はAIを利用した無人機をすでに前線で試しているとしたうえで「開発のスピードが、より早い勝利をもたらす。それだけを考えている」と述べ、本格的な導入を急ぐ考えを示しました。
●5月に一斉攻撃か。攻撃準備を終えたロシアに滅ぼされるウクライナとプーチンに破壊される世界の安定 4/6
国際社会からの非難をものともせずに、ウクライナに対する侵略行為の手を緩めないプーチン大統領。ロシア軍は大規模な一斉攻撃の準備をすでに終えたとも伝えられ、ウクライナは実質的に消滅するとの見方もあるようです。ロシアがウクライナをこれほどまでに攻め立てる理由と、「ロシアの勝利」により国際社会が失うものについて解説。さらにプーチン氏が次に狙う国の名を挙げます。
恐怖が支配する国際情勢‐戦い続ける理由と再興の鍵
「相手は自分たちを破壊し尽くそうとしている」
このような極限の恐怖にとりつかれて、戦争が行われています。
戦争の現場・最前線にいないものにとっては、それは一種の被害妄想だと感じるかもしれませんが、これまで紛争調停に携わってきた際、ほぼすべてのケースにおいて交戦当事者たちが一度は口にする“恐怖”です。
「相手が自分たちを殺害、あるいは追放し、民族としての存在を終わらせたいと考えているに違いない」という恐れはそこに存在し、「今、戦っている相手は敵ではなく、常に自分の存在を危うくする脅威だ」という認識は、人たちを自己保存のための戦いに送り出しています。
30年近く国際社会から忘れ去られているコンゴの終わりなき内戦の当事者たちも、エチオピアで繰り広げられるティグレイ族への苛烈で執拗な攻撃も、ミャンマーで繰り広げられている戦いでも同じような恐怖が人々を支配し、武器を取らせています。
それはロシアとウクライナの戦いでも、イスラエルとハマス、パレスチナとの戦いでも同様です。
以前にも触れましたが、ロシア人の思考の根底には「我々が歩み寄っても誰もロシアのことを知ろうとせず、誰もロシアの悩みを分かってくれない。だから自らバウンダリーをどんどん広げて、自分自身で自分を守るほかない」というメンタリティーがあるそうです。
16の主権国家と国境を接し、180以上の民族を抱える多民族国家であるロシアは、常に陸続きでの他国・他民族からのプレッシャーに耐え続ける必要があると言われており、生き残るためには拡大していくほかないという独特の国家安全保障観があると言われています。
以前、テレビでプーチン大統領に直接質問できる番組があり、そこで観客の少年がプーチン大統領に「ロシアはどこからどこまでですか?」と尋ねた際、「ロシアの領土には果てがなく、どこまでも続くのだよ」とプーチン大統領が答えていたのが非常に印象的でしたが、これはプーチン大統領が抱くロシア帝国の再興・新ソビエト連邦の構築という野望と共に、ロシアがずっと抱き続ける恐怖を抑え込むために拡大あるのみというジレンマも透けているように思われます。
この独特の恐怖心が、疑心や裏切りという認識と重なるとその相手を徹底的にいじめ抜き、恐怖心を癒してくれる仲間(または従順な存在)であればとことん厚遇するという統治方法と外交戦略の基礎になっていると考えます。
もちろん領土欲や覇権の拡大という欲は存在するでしょうが、プーチン大統領とその取り巻きにとっては、ウクライナは欧米の力を借りてロシアの国家安全保障、そして存在を脅かすけしからん存在と映っているようです。特にロシア、ウクライナ、ベラルーシは、旧ソ連の中でも近しい存在と考えられていたため、半ば身内がロシアを裏切って“敵”と手を結ぶというように認識したのだと、ユーラシア問題を扱う専門家グループは分析しています。
恐れからの行動はウクライナにとっても同じです。旧ソ連の崩壊までウクライナは国ではなく、あくまでもソ連の一地域またはロシアの衛星国的な存在だと考えられてきましたが、時の混乱に紛れて、そしてロシア政府曰く、欧米諸国の助けを借りて独立を宣言し主権国家となりました。
独立時は、同じくロシア曰く、ロシアとベラルーシと非常に親密な関係を保ち、CISにおいても核となる存在でしたが、次第にオレンジ革命などを通じて親欧米路線が台頭し、国として成り立ち、かつ資本主義を取り込みたいという政策から欧米諸国に接近する戦略に出て、成長することにより、ロシアとイーブンの立ち位置を獲得して、対等の物言いができるようになりたいという望みが高まったようです。
ただしそれはプーチン大統領のロシアにとっては受け入れられない条件と映り、次第にロシアお得意の内政干渉と工作によってウクライナ政府を骨抜きにし、また汚職を蔓延らせることで欧米との距離を拡げる作戦が取られた結果、結局、ウクライナはロシアの衛星国に戻ってしまうという状況が続いていました。
「このままではウクライナという国は残っても、真の独立は果たせず、その内、プーチン大統領の気まぐれでウクライナが消されるかもしれない」という恐れを、2008年のジョージア(元グルジア)に対するロシアの軍事侵攻を見て抱いたと思われます。
その後、実際にロシアは2014年にはクリミア半島を併合し、そして2022年にはウクライナ東部への侵攻を行い、今に至ります。実際にもう10年以上にわたって、ウクライナはロシアの恐怖と戦っていることとなります。
2022年2月24日以降、ゼレンスキー大統領はずっと「このままではウクライナは地球上から消える。これは国家そして国民の生存のための決死の戦いだ。ロシアのこの蛮行を許せないと、同じく感じてくれるならぜひ助けてほしい。一緒にロシアをウクライナの地から追い出すのだ。しかし、もしウクライナが総崩れになり、ロシアの前に屈し、そしてロシアに全土が蹂躙されることとなれば、それはウクライナの敗北に留まらず、欧米型の民主主義の敗北を意味し、そして究極にはプーチン大統領の野望が欧州に迫ることを意味する」と国際社会に訴えかけ、ロシアに対する、そしてロシアによる恐怖を強調しています。
しかし、このところ欧米からの支援は滞り、ウクライナの弾薬数は多く見積もってもロシアの6分の1程度しかなく、前線の状況は非常に厳しく、ロシアに押し込まれている状況が鮮明になってきています。
そして十分な防空システムがなく、十分な武器弾薬がないことに付け込んで、ロシアは徹底的にウクライナ国内のインフラ設備、特に電力施設の破壊に勤しんでおり、その結果、ウクライナ国内の50%超の発電能力が削がれ、各地で停電が頻発し、国民の心理の破壊を行っています。
時期は前後するでしょうが、複数の分析を見てみると、5月ごろを目途にロシア軍は再度一斉攻勢をかける計画のようです。
18歳から30歳までの国民を対象に15万人の定期徴兵を行って国内の任務に充て、現在、国内の任務を担う兵士をウクライナ戦線に投入し、英国の国防省からの情報では、すでに10万人を超えたとされる契約軍人も投入してくる計画のようです。
加えて1,000両以上の戦車の投入や欧米による対ウクライナ供与量の3倍以上の砲弾生産能力を確保して、補給線・兵站もしっかりと築いてstand readyの状態に入っていると言われています。
ただ欧米諸国側には迅速に即効性のある武器を供与することは困難なようで、5月のロシアによる大攻勢でウクライナが総崩れになれば、ロシアにとって非常に有利な状況が出来上がることになり、戦争で決着するか、それともロシアの条件に従った“停戦”を受け入れることで、実質的にウクライナが消える可能性が出てきてしまいます。
それを見て、恐怖を一気に高めているのがスタン系の国々です。ウクライナの反転攻勢が始まった頃は対ロで強気な発言や態度が目立ったスタン系ですが、このところ“プーチンを怒らせたら、後で必ず報復される”という恐怖が高まっているようです。
ウクライナ戦争の“おかげで”軍事介入はしばらくないと思われますが、ロシアは政治的な介入・情報工作を行ってスタン系の国内政情を荒らしてくるのではないかと戦々恐々としています。
特にロシアと7,600キロメートルにわたって国境線を接し、人口の2割強がロシア系である地域最大の資源国カザフスタンは、一時期、ロシアと距離を置くスタンスをとっていましたが、ロシアが戦況優位になると再接近して、プーチン大統領の逆鱗に触れて基盤を失わないように躍起になっています。
昨年11月にはプーチン大統領がカザフスタンを訪問しましたが、その際、プーチン大統領が「カザフスタンとロシアは最も親密な同盟国だ」と発言したのは、実は「ロシアに対する配慮を決して忘れるなよ」というカザフスタンのトカレフ大統領への警告だったのではないかと考えられます。
ロシア、そしてプーチン大統領が周辺、特に旧ソ連の国々に対して発する恐怖は、ウクライナが敗北してしまうと、一気にユーラシア大陸全体に向けられることになりかねません。
まずはロシアと緊張関係にあるモルドバ(親欧米政権でEU加盟を目指しているが、国内に親ロシアの沿ドニエストル共和国を抱える)と南オセチアとアブハジア共和国を抱え、国交断絶中のジョージアをターゲットにし、両国で支配を取り戻しにかかると思われます。その後、スタン系を含む中央アジアと南コーカサスの掌握を狙い、旧ソ連圏を復活させることを目指すと思われます。
もしこれがうまく行き、新ソ連邦(プーチン帝国)が再興できれば、次は散々ロシアをコケにして、NATOの一員としてロシアに楯突く裏切り者のバルト三国をターゲットにしてとことん責め立てることになる可能性があります。
もちろん、ここでNATO憲章第5条が本当に発動されるか否かにとって結果に大きな差が出ますが、ウクライナでの戦いの行方は、ウクライナの将来はもちろん、ユーラシア大陸の未来図も大きく変え、世界の安定は著しく損なわれる恐れが高まると予想されます。
プーチン大統領とロシアが周辺に及ぼす恐怖の力を抑え込めなければ、ロシアの恐怖が覇権の拡大と、欧米の影響力の縮小に繋がりかねません。
イスラエルとハマスの終わりなき戦いと殺戮の応酬も、元をたどれば相互に対する非常に激しい恐怖心に端を発すると言えるかもしれません――。
●ウクライナ戦争の大義と欧州の再軍備 4/6
ブリュッセルで3日から2日間の日程で北大西洋条約機構(NATO)加盟国の外相会議が開催された。4日にはNATO創設75周年の祝賀会が挙行された。フィンランド、スウェーデンの北欧2カ国を加え、NATOは32カ国体制となった。創設75周年にはブリンケン米国務長官をはじめ、加盟国の外相が一同結集した。NATOは1949年4月4日に12か国が条約に署名して設立された。ストルテンベルグ事務総長は創設75周年を歓迎し、「我々は歴史上最も強力で最も成功した同盟である」と述べている。
NATOはロシア軍の侵攻以来、ウクライナを軍事支援してきた。外相会議では如何にウクライナを持続的に支援するかが焦点となった。ストルテンベルグ事務総長は会議前にウクライナへの軍事支援のために今後5年間で1000億ユーロの基金を設立させる案を発表した。
各外相が会議前後で国の立場、見解を記者団に述べたが、その中でベアボック独外相の発言が光っていた。同外相はNATOによる1000億ユーロ相当のウクライナ援助基金の提案に慎重な反応を示し、「NATOと欧州連合(EU)の約束が重複してはいけない。ここで個々の数字を議論しても意味がない」と強調。そのうえで、「信頼できる財政援助がウクライナに提供され続けなければならないことは明らかだ。自由と民主主義の保護は、次の選挙日までにのみ適用されるべきではない。私たちの子供たちの将来に関わるものだ。安全保障には信頼性が必要だ」と語っている。同外相によると、ドイツはすでにウクライナへの民事・軍事支援として320億ユーロを提供している。米国についで2番目の支援国だ。
ウクライナ軍は現在、弾薬不足と兵力不足に直面し、ロシア軍の攻勢に守勢を余儀なくされてきた。NATO外相会議に参加したウクライナのクレバ外相はロシア軍のミサイル攻撃、無人機対策のために「対空防衛システムの強化」を訴えた。なお、ゼレンスキー大統領は2日、動員年齢をこれまでの「27歳」から「25歳」に引き下げ、予備兵を徴兵できる法案に署名した。
ウクライナ議会では予備兵の徴兵年齢の引き下げ問題は昨年から議論されてきたが、ゼレンスキー氏は国民への影響を考え、最終決定まで9カ月間の月日を要したことになる。動員年齢引き下げが実施されれば、40万人が対ロシア兵役に徴兵される可能性が出てくる。ゼレンスキー氏は兵役の資格基準を調整する法律にも署名している。
なお、キーウの一人の中年の女性はドイツ民間ニュース専門局ntvのインタビューに、「自分は一人の息子しかいない」と述べ、徴兵年齢の引き下げに該当する息子が兵役に就くことに懸念を吐露していた。
ウクライナ支援問題がアジェンダとなる会議では常にテーマとなるのは、トランプ前米大統領が11月の米大統領選で勝利し、ホワイトハウスにカムバックした場合、NATOはどうなるか、ウクライナ支援はどうなるかだ。ストルテンベルグ事務総長が1000億ユーロ構想を提案したのは、NATOが米国から独立し、欧州の軍事力をアップさせるためだ。ちなみに、NATO諸国の国防支出レポートによると、過去75年間、米国はNATOの国防予算に21兆9000億ドルを拠出している。
ちなみに、米国は現在、ウクライナへの武器供与の調整を主導している。独ラインラント=プファルツ州のラムシュタイン米空軍基地やブリュッセルなどで定期的に会議を開催してきたが、トランプ氏が勝利した場合、米国がウクライナへの関与を大幅に縮小、あるいは停止する可能性がある。そこで軍事支援で各国の調整を行ってきたウクライナ防衛諮問グループ(ラムシュタイン・グループ)の仕事をNATOが主導していく計画が出てくるわけだ。
北大西洋軍事同盟NATO創設75周年を機に、ドイツ、フランス、ポーランドの3国、通称ワイマール・トライアングルの3外相(ベアボック外相、セジュルネ仏外相、シコルスキー・ポーランド外相)は共同書簡の中で、「米国は長い間、他の同盟諸国よりも大きな負担を背負ってきた。集団的防衛は共同の努力が必要だ。欧州は防衛力を強化し、大西洋横断の安全保障に貢献する必要がある」と記している。もはや国内総生産(GDP)の2%を防衛に費やすといった公約の域を超え、欧州の再軍備化宣言だ。
戦争が長期化すれば、欧米諸国でも国民経済が厳しく、ウクライナ支援への余裕を失う国が出てくるだろう。ハンガリーやスロバキアはウクライナ支援には消極的、ないしは拒否している。そのような中、NATO加盟国には「ウクライナ戦争は民主主義を守り、次の世代の安全のための戦いだ」という大義を見失わないことがこれまで以上に重要となってきている。
●東部ドネツク州でロシア軍じりじり前進...焦点は拠点チャソフヤールめぐる攻防戦 4/6
ウクライナ東部の拠点であるドネツク州チャソフヤール近郊で5日、ウクライナ軍とロシア軍が激しい戦闘を繰り広げた。ウクライナ側はロシア軍が同市に接近したことを否定している。写真は4月4日、ウクライナ東部ドネツク州の前線でロケット弾を発射するウクライナ兵(2024年 ロイター/Sofiia Gatilova)
ウクライナ東部の拠点であるドネツク州チャソフヤール近郊で5日、ウクライナ軍とロシア軍が激しい戦闘を繰り広げた。ウクライナ側はロシア軍が同市に接近したことを否定している。
ロシア軍は、2月にドネツク州の要衝アブデーフカを占領後、東部でじりじりと前進している。ウクライナ軍は砲弾の長期的な不足に直面しながらも何とか食い止めを図っている。
ロシア通信(RIA)は当局者の発言として、チャソフヤール郊外にロシア軍が入ったと報じた。
一方、ウクライナ東部軍司令部の報道官は、この報道は事実ではなく、戦闘は続いていると述べた。ただ、状況は「緊迫している」と語った。
●「韓国の砲弾340万発がウクライナを救うか」米有力シンクタンク 4/6
韓国で4月10日に行われる総選挙の結果によっては、同国軍が備蓄する数百万発の砲弾が弾薬不足に苦しむウクライナに送られ、ロシアとの戦いに影響を及ぼすことになるかもしれない。
米国有数のシンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)は先月22日、ウェブサイトで「韓国の105ミリ砲弾はウクライナを救えるか?」と題したレポートを公開した。
レポートは、韓国軍が備蓄する105ミリ砲弾は340万発に及んでおり、これが供給されればウクライナ軍にとって大きな力になる一方、韓国軍はすでに砲兵装備の主力を155ミリ榴弾砲に移行中のため、北朝鮮との対決に備える備蓄には影響を与えないだろうと分析している。
韓国政府はウクライナに殺傷兵器を提供しない原則を持っており、それは現在も堅持されている。
しかし韓国は昨年、ウクライナ支援で砲弾の備蓄を減らした米国の要請に応じ、数十万発の155ミリ砲弾を供給したことが米メディアの報道で明らかになっている。これは実質的に、米国を経由したウクライナ支援だった。
こうした前例があるうえに「韓国国民は広くウクライナに同情している。 2023年7月の尹錫悦大統領のウクライナ訪問は総じて高い評価を受けており、尹政権の支持者らは外交政策が尹氏の好業績の原動力となっていると指摘している。したがって、尹政権は105ミリ砲弾の交換協定を支持する可能性がある」と、レポートは論じている。
だが、現下の韓国の政治情勢を踏まえると、こうした見方はやや楽観的にすぎるかもしれない。
総選挙の投開票を目前に控え、与野党の支持率はきっ抗している。尹大統領が自由主義諸国との結束強化に重きを置いているのは確かだが、最大野党・共に民主党のウクライナ情勢に対する態度は冷ややかだ。同党の李在明(イ・ジェミョン)代表は今回選挙の遊説でも、「ロシアと反目すれば韓半島の安保環境が悪化する」との理由で、ウクライナ支援に反対する姿勢を鮮明にした。
尹政権は昨年と同様に米国を経由する方式ならば、議会の同意なしに弾薬供給を実行することが可能だ。
しかし総選挙で野党が勝ち、過半数を握った場合、政権は神経質にならざるを得ない。野党が内政を巡る駆け引きで政府の「独断専行」に対抗し、重要政策が停滞すれば、次期大統領選で不利な立場に追い込まれかねないためだ。
逆に与党が選挙で勝利すれば、尹政権は果敢に米国と共同歩調を取り、弾薬供給に応じる可能性が高い。さらに、ロシアが北朝鮮との軍事協力をいっそう深めるならば、それもまた、韓国がウクライナ支援に積極的になる動機として働く可能性もある。 
●“ロシア軍 救助隊到着後に再攻撃”ゼレンスキー大統領が非難 4/6
ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍はミサイルや無人機による攻撃を行い、東部ハルキウで、市民6人が死亡、南部ザポリージャでも4人が死亡しました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は救助隊がかけつけたあと、2度目の攻撃を受けるケースがあるとして、強く非難しています。
ウクライナ東部ハルキウでは6日、ロシア軍のミサイル攻撃で住宅街が大きな被害を受け、地元当局は、市民6人が死亡し、11人がけがをしたと明らかにしました。
南部ザポリージャでも5日、ロシア軍のミサイル攻撃があり、4人が死亡し、23人がけがをしたとしています。
ザポリージャでは最初の攻撃があった40分後に再び同じ場所が攻撃を受けたということで、クリメンコ内相はSNSで現場を取材していた地元のジャーナリストもけがをしたとして「敵は到着した警察や救助隊、ジャーナリストを狙ってくる」と非難しました。
ウクライナのゼレンスキー大統領はSNSで今月4日、ハルキウでも現場に救助隊がかけつけたあと、同じ場所に2度目の攻撃を受けたことがあったとして「ロシアの卑劣な戦術だ」と強く非難しています。
一方、ウクライナのメディアは5日、ウクライナと国境を接するロシア南部ロストフ州のモロゾフスク飛行場に対してウクライナの保安局と軍が共同作戦を行い、ロシア軍の軍用機、少なくとも6機を破壊し、8機を損傷させたと伝えました。
また、ロシア南部サラトフ州のエンゲルスの空軍基地のほか、南部クラスノダール地方、西部クルスク州のそれぞれの飛行場でもウクライナ側の攻撃があったとしています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は「少なくとも4つのロシアの空軍基地を標的にした最大規模の無人機攻撃が行われたと伝えられている」と指摘し、ウクライナ側に空爆を行うロシア軍の軍用機を標的に攻撃を続けているとみられます。

 

●誰がロシアを吹き飛ばすのか? 襲撃事件は不吉な予兆 NYTコラム 4/7
3月22日にモスクワ郊外のコンサートホールで発生し、少なくとも139人が死亡した(訳注:ロシア当局は29日、死者が144人になったと発表した)テロ事件については、二つのもっともらしい仮説がある。ひとつは、内部犯行、つまりロシアの治安機関によって画策されたか、あるいは少なくとも彼らの予見に基づいて実行されたというものだ。
二つ目は、そうではなかったということだ。
陰謀論は、開かれた社会では変人のためのものだが、閉ざされた社会では、政治現象を理解するための(常に正しいとは限らないが)合理的な方法なのだ。
1999年、当局がチェチェン人テロリストの犯行だと主張したアパート爆破事件で、300人以上のロシア人が死亡し、1700人が負傷した。この爆破事件は、第2次チェチェン戦争を開始する口実となり、(現ロシア大統領の)プーチン氏は、二級どころの役人から連邦保安庁(FSB)長官、首相へと急速に昇進した。
その後、奇妙なことが起こった。警察は、リャザン市のアパートの地下で、朝5時半に爆発するようにセットされた起爆装置とタイマーにつながれた、白い粉が入った三つの巨大な袋を発見した。初期の検査で、この粉には他の爆破事件でも使用されたRDX(ヘキソーゲン)という爆薬が含まれていることが判明した。
警察はすぐに袋を置いた犯人を逮捕したが、彼らはFSBの職員であることが判明した。後にロシア政府は、袋には砂糖が詰められており、訓練のために建物内に置かれていたと発表した。しかし、歴史家のデービッド・サッター氏らが記しているように、この主張は荒唐無稽に近い。そして、この事件を調査しようとした多くのジャーナリストや政治家が、毒殺されたり射殺されたりした。 ・・・
●「使命」果たした全豪終えての帰郷 続く恐怖、ウクライナの「日常」 4/7
番狂わせを演じたヒロインの喜びの声を聞こうと部屋に集まった記者は、私を含めてわずか3人だった。
テニスの全豪オープン女子シングルス1回戦で、予選から勝ち上がった世界ランキング93位(当時)、ダヤナ・ヤストレムスカ(23)=ウクライナ=が前年のウィンブルドン女王を破った。
ただ、大会側が指定した部屋は記者4人が入れば、ほぼ満杯の「インタビュールーム4」。
会見の進行役もいない。進行は、互いに顔なじみの私たち記者3人に委ねられた。
技術的な改良点などを聞いてから、話題は戦争のことになった。
実家はオデーサ。今なお、ロシアの爆撃が続く街だ。今年1月にも、祖母の暮らすマンションにロケットが直撃したという。
「一番怖いのは、こうした日常に慣れてしまうこと。そして、多くの人々が過去のことだと忘れてしまうこと」
自分がプレーすることで、母国に何か恩返しができたら。そんな思いを口にした。
「それは責任感から?」と聞かれると、「責任感とは考えたくない。スポーツでは勝つことも負けることもある。それは自然なこと。ただ、自分に少しだけ、より良い結果を残したいとプレッシャーをかける。だって、勝ち進めば、より多くの人に自分の声が届くから」。
有言実行の快進撃が始まった。
4回戦ではベラルーシ出身の元世界ランキング1位、ビクトリア・アザレンカ(34)を破った。
ロシアの協力国であるベラルーシの選手と戦った気持ちについて聞かれると、「この質問について私が答え始めたら、あなた方は私の答えを快く思わないはず。だからこの質問はパスしたい。あなたはウクライナ人にとって、ロシアとベラルーシの選手と戦うことが何を意味するか、わかるはず。だからそうした質問の仕方は好ましくない」。 ・・・
●政府がウクライナへ1492億円を拠出!「最終的に対ロシア戦争まで覚悟しているのか?」とのIWJ記者の質問に「自らの安全保障問題として対露制裁とウクライナ支援を行ってきた」と上川大臣!!〜 4/7
2024年4月5日午後2時30分頃より、東京都千代田区の外務省にて、上川陽子外務大臣の定例記者会見が開催された。
会見冒頭、上川大臣より、台湾東部地震について、「日本台湾交流協会を通じ、100万ドル規模の緊急無償資金協力による支援を行う」ことが表明された。
また、4月8日(月)から麻布台ヒルズにおいて、外交史料館の新しい展示室が一般公開されることが報告された。
続いて、上川大臣と各社記者との質疑応答となった。
IWJ記者は、ウクライナ情勢について、以下の通り質問した。
「日本は過去2年間、ウクライナに総額約1兆7000億円の支援をしてきましたが、さらに世界銀行を通じて、1492億円拠出すると報じられました。
ロシアから見れば、これは敵国への支援です。ロシアと米との緊張が高まっており、ウクライナ対ロシアの戦争は、西側諸国対ロシアの構図へと拡大しかねません。
日本はお金を出しているだけだとはいえ、軍事的緊張が最終段階にまで高まれば、日本も戦争に巻き込まれる恐れがあります。
上川大臣は、繰り返し、ロシアへの制裁に言及されており、即時停戦を求めてはいらっしゃいませんが、最終的には対ロシア戦争まで覚悟されてのご発言でしょうか。真意をお聞かせください」。
これに対し、上川大臣は以下のように答弁した。
「2022年2月、ロシアは平和的解決に向けた事前の各国からの働きかけを聞き入れず、ウクライナの非軍事化やまた中立化といった一方的なロシア側の要求を実現すべく、ウクライナへの侵攻に及んだところであります。
これは国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であると同時に、明白な国際法違反であり、改めて厳しく非難をいたします。我が国といたしましては、この欧州大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分であり、このような力による一方的な現状変更の試みはどこでも起こり得るとの認識のもと、国際社会全体の平和と安全のため、自らの問題としてこの問題に取り組み、侵略開始以降、一貫して対露制裁とまたウクライナ支援を強力に実施してまいりました。このような我が国の基本的方針、立場と方針は変わりませんし、引き続き、G7やグローバルサウスと呼ばれる諸国を含みます各国と連携しつつ、ウクライナに公正かつ永続的な平和を実現するべくリーダーシップを発揮してまいりたいと考えております」。
●ロシア軍 東部ハルキウにミサイル攻撃 市民8人が死亡 4/7
ウクライナ第2の都市、東部ハルキウでは6日、ロシア軍によるミサイル攻撃が相次ぎ、市民8人が死亡しました。ウクライナのゼレンスキー大統領は、防空能力の強化が重要だとして、改めて各国に支援を訴えています。
ウクライナ東部ハルキウでは6日、ロシア軍によるミサイル攻撃が相次ぎ、住宅街が大きな被害を受け、地元当局は、市民8人が死亡し、11人以上がけがをしたと明らかにしました。
ハルキウでは、今月4日もロシア軍の無人機攻撃によって4人が死亡しており、ゼレンスキー大統領は6日、SNSへの投稿で「ハルキウへの攻撃が続いている。この地域の防空能力を強化することが極めて重要だ」と述べ、改めて各国に支援を訴えています。
ゼレンスキー大統領は、アメリカ議会の代表団と5日に北部チェルニヒウで面会したことを明らかにし、前線の状況などを説明し、アメリカ議会がウクライナへの追加支援のための緊急予算案をできるだけ早く可決することが重要だと強調したとしています。
こうした中、ウクライナ軍のシルスキー総司令官は、6日、SNSで、ロシア軍と対じする前線の状況について「依然として厳しい」との認識を示しました。
特に、東部ドネツク州のバフムトやアウディーイウカの周辺などで困難な状況が続いているとしていて、ロシア軍がミサイルや砲弾などの数で優位にあることを利用し、ドネツク州全域の掌握をねらっているとして危機感を示しました。
●ロシアの飛行場攻撃 ウクライナでは7人死亡 4/7
ウクライナ軍などは4日夜から5日朝にかけて、ロシア領内の3カ所の飛行場を無人機で攻撃し、ロシア側の11人が死亡した。複数の軍用機を損傷させた。ウクライナ情報筋が共同通信に明らかにした。
●ロシア ウクライナに軍事侵攻 4月7日の動き 4/7
東部ハルキウでロシア軍によるミサイル攻撃 市民8人死亡
ウクライナ東部ハルキウでは6日、ロシア軍によるミサイル攻撃が相次ぎ、住宅街が大きな被害を受け、地元当局は、市民8人が死亡し、11人以上がけがをしたと明らかにしました。
ハルキウでは、今月4日もロシア軍の無人機攻撃によって4人が死亡しており、ゼレンスキー大統領は6日、SNSへの投稿で「ハルキウへの攻撃が続いている。この地域の防空能力を強化することが極めて重要だ」と述べ、改めて各国に支援を訴えています。
またゼレンスキー大統領は、アメリカ議会の代表団と5日に北部チェルニヒウで面会したことを明らかにし、前線の状況などを説明し、アメリカ議会がウクライナへの追加支援のための緊急予算案をできるだけ早く可決することが重要だと強調したとしています。
ウクライナ軍 総司令官「依然として厳しい」
ウクライナ軍のシルスキー総司令官は、6日、SNSで、ロシア軍と対じする前線の状況について「依然として厳しい」との認識を示しました。
特に、東部ドネツク州のバフムトやアウディーイウカの周辺などで困難な状況が続いているとしていて、ロシア軍がミサイルや砲弾などの数で優位にあることを利用し、ドネツク州全域の掌握をねらっているとして危機感を示しました。
●ロシア外相、8日に訪中=首脳会談地ならしか 4/7
中国外務省は7日、ロシアのラブロフ外相が8、9両日に訪中すると発表した。王毅共産党政治局員兼外相らと会談し、関係強化や、ロシアが侵攻を続けるウクライナ情勢について話し合う見通し。ワシントンで10日に行われる日米首脳会談、11日の日米比首脳会談を前に、中ロの結束をアピールし、米側をけん制する狙いもありそうだ。
ロシアのプーチン大統領は、5月の通算5期目となる大統領就任式後、初外遊先として中国を訪れ、習近平国家主席と会談するとみられている。ラブロフ氏の訪中はその地ならしも兼ねているもようだ。
●「全世界がわれわれの敵」…規模拡大して帰ってきたIS、さらに過激に 4/7
消えたと思ったスンニ派武装勢力のイスラム国(IS)が帰ってきた。ロシアのプーチン大統領が5回目の執権に成功し「21世紀のツァーリ」となるやいなやISはロシアの首都モスクワの真ん中で大型テロを起こし健在を誇示した。今夏にパリ五輪開催を控えたフランスなど欧州諸国がセキュリティを強化するなど世界に再び「IS警報」が発令された。
先月22日にモスクワのコンサートホールでテロが発生し、140人以上が死亡する惨劇が起きた。テロ直後にISは自分たちの犯行だと明らかにし、当初ウクライナを犯人としていたプーチン大統領も結局「急進イスラム主義者の仕業」と認めた。
モスクワでテロを起こしたのはISの分派である「イスラム国ホラサン州(ISIS−K)」だ。ワシントン・ポストは「今回の攻撃でISとその支部が中東だけでなく他の地域も攻撃する能力を備えているという事実を想起させた」と指摘した。
一時は英国相当の面積の土地を支配
2000年代初めにイスラム原理主義武装勢力アルカイダの分派として活動したISは、2010年代初めにシリアで現在の名前で勢力を拡大した。中東と欧州で残忍なテロと拷問、大量虐殺、そして人質・捕虜処刑を写した残酷な動画の流布などで悪名を駆せた。
2014年ごろからはシリアとイラクを占領し始め、名前通りに「国」を自任した。ISは一時英国の面積に相当する地域を統制するほど勢力が強かった。テロも継続した。2015年11月に130人以上の命を奪ったパリでのテロ、最小359人が死亡した2019年のスリランカでのテロなどが代表的だ。
結局米国が出た。オバマ元米大統領が2014年6月にISを相手にした軍事作戦を承認し、約70カ国が参加した米軍主導の国際同盟軍が殲滅作戦を広げた。厳しい戦いの末に2019年初めに国際同盟軍がISの最後の領土を奪還し、同年10月に指導者のアブ・バクル・アルバグダディを除去した。没落したIS隊員は散り散りになった。
しかしISの生命力は強かった。ISの残党は政局が混乱しイスラム教徒が多い地域に食い込んだ。ナイジェリアやニジェールなど西アフリカと、アフガニスタン、パキスタン、東南アジアの数カ国に隠れた彼らが再び勢力を伸ばし始めた。最近ワシントン・ポストは国連安全保障理事会委員会の報告書を引用しながら「ISは多くの国に領域を広げている。欧州まで脅かせる能力がさらに向上しているという意味」と指摘した。
ISIS−K、米軍離れたアフガンを足がかりに
特に強力な分派として西アフリカ支部とともに先月モスクワでテロを起こしたISIS−Kが挙げられる。ISIS−Kはイラン北東部一帯の昔の地名ホラサン(Khorasan)から名前を取った。ニューヨーク・タイムズは「2015年にパキスタンのタリバン(パシュトゥン人中心)に不満を抱いて組織されたISIS−K(タジク人、ウズベク人)は2021年に米軍がアフガニスタンで撤収した後にここを足がかりに成長した」と説明した。2019年以降イラクから離脱したIS隊員が大挙合流したりもした。現在アフガニスタンだけで4000〜6000人程度がいると推定される。 

 

●窮地に追い込まれ、戦慄の決断を下す…皇帝・プーチン大統領「NATO包囲網で核兵器投入」の現実味 4/8
旧ソ連の独裁的指導者スターリンの29年を超えることになった。3月17日開票の大統領選で通算5期目の当選を果たし、首相時代を含めると30年に及ぶ超長期政権となるロシアのプーチン氏(71)だ。
〈投票率77.4%、得票率87.3%〉
いずれもロシアで実施された大統領選では過去最高の数字である。プーチン氏は、本当に国民から圧倒的支持を得ているのだろうか。ロシア情勢に詳しい筑波大学名誉教授の中村逸郎氏は懐疑的だ。
「反政権的な人物が書類上の不備を指摘され選挙前に排除されるなど、実質プーチン氏が唯一の立候補者でした。スマートフォンのアプリで個人の携帯電話番号と投票所の場所がヒモづけられ追跡可能となり、国民に他の選択肢はなかったんです。北西部アルハンゲリスク州では、投票率を上げるため賞品が用意されました。抽選でマンションや自動車、電化製品がもらえるんですよ。今回の大統領選は、なんでもありの状況でした」
プーチン氏はウクライナ侵攻について「国民から圧倒的な支持を得ている」と公言してきた。前回(’18年)の得票率76.7%を下回れば説得力を失うため、「圧勝」を演出したかったのだろう。だがウクライナ情勢も、開戦から3年目を迎え膠着状態にある。東京大学先端科学技術研究センター准教授の小泉悠氏が語る。
「ロシアが今年の初めから優勢とみられますが、圧倒的に勝つことはできていません。ウクライナも苦戦しつつ、まだ抵抗できている。ロシアは戦争を引き延ばし、ウクライナや支援国が音を上げるのを待っているのではないかと思います」
さらにロシアを窮地(きゅうち)に追い込んだのが、北欧フィンランドとスウェーデンのNATO(北大西洋条約機構)への加盟だ。
「ロシアとフィンランドの国境は約1350qにおよびます。中立政策をとっていたフィンランドのNATO加盟で、ノーガードだった長い国境を守らなければならなくなる。従来はウクライナやベラルーシ方面を西部軍管区と一まとめにしていましたが、今年から二つに分割しました。フィンランドとスウェーデンに対応してのことでしょう」(小泉氏)
不気味なのはプーチン氏が最近、演説やメディアの取材で「核兵器投入」について言及していることだ。
「(NATOによる)ロシアへの新たな介入は、核兵器による大規模な紛争を引き起こす恐れがある」(2月29日)
「ロシアの核兵器はどの国よりも最新で戦争の準備はできている」(3月13日)
核使用をちらつかせたプーチン氏の脅しともとれるが、実際に投入される現実味もはらんでいるという。
「ウクライナが優位に立てば、ロシアは『ヨーロッパへの南の港』黒海を失うことになります。さらに北欧2ヵ国のNATO加盟で『北の港』バルト海を喪失することになる。ロシアにとってNATOが東へ進出するだけでなく、二つの海を失う大ダメージです。ロシアには、カリーニングラードというバルト海に接した飛び地があります。プーチン氏が『北の港』を死守するため、そこに配備されている核ミサイルを北欧2ヵ国に発射する危険性があるんです」(中村氏)
日本も他人事ではないという。
「ロシアの最大の脅威は米国でしょう。米国の軍事力を分散させるために、ヨーロッパから東アジアへ目を向けさせるかもしれません。5月の大統領再就任後、プーチン氏が比較的早期に訪問するのは最友好国・北朝鮮と思われます。金正恩総書記をけしかけ、日本や韓国にミサイル攻撃させる可能性がある。そうなれば核の使用も否定できないんです」(中村氏)
30年の統治で独裁者となったプーチン氏。追い詰められた「ロシアの皇帝」が「核のボタン」に手を伸ばしつつある。
●中欧スロヴァキア、大統領に親ロシア派のペレグリニ氏 4/8
中欧スロヴァキアで6日、大統領選挙の決選投票があり、ポピュリストのペテル・ペレグリニ元首相(48)が当選した。リベラル派のズザナ・チャプトヴァ氏の後任となる。
ペレグリニ氏は53%を得票し、親欧米の対立候補イヴァン・コルチョク元外相を破った。
ペレグリニ氏はロベルト・フィツォ首相に近い。同首相はロシアに穏健的で、ペレグリニ氏もそうした姿勢を共有している。
今回の結果により、フィツォ氏の勢力は議会、政府、大統領府のすべてを掌握することになる。
ウクライナ支援の声が消える
スロヴァキアはかつて、ウクライナの協力な支援国だった。しかし昨年10月、ウクライナへの軍事支援の停止を公約を掲げたフィツォ氏が首相に復帰した。
チャプトヴァ大統領はウクライナ支援を表明し続けたが、ペレグリニ氏が新大統領に就任することで、ウクライナは欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるスロヴァキアからの支持を決定的に失うことになる。
フィツォ氏はウクライナでの戦争をめぐり、同国への西側の軍事支援の停止、即時停戦、ロシアとの和平交渉を求めている。最近では、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「不当に悪魔化されている」と主張。ウクライナのNATO加盟は第3次世界大戦の始まりになると訴えた。
ロシアに好意的なこうした姿勢を、ペレグリニ氏は自身の選挙運動に反映。対立候補のコルチョク氏を、スロヴァキア兵をウクライナに送り込む主戦論者だと非難した。
ペレグリニ氏は7日、「スロヴァキアが戦争の側ではなく、平和の側にあり続けるようにする」と宣言した。
一方、コルチョク氏は、ペレグリニ氏の選挙戦術に対して怒りを表明。選挙結果を決定づけたのは恐怖であり、「その恐怖は国家の地位に隠れている人々が広めた」と主張した。
●金正恩氏がプーチン氏に見舞い電…ダム決壊による洪水被害めぐり 4/8
北朝鮮の金正恩総書記(国務委員長)が8日、ロシアで起きたダムによる洪水被害をめぐり同国のプーチン大統領に見舞い電を送った。朝鮮中央通信が同日、伝えた。
ロシア南部のオレンブルク州では川の水流をおさえることができず、2カ所でダムが決壊。洪水により少なくとも3人が死亡し、4000人以上が避難しているという。地元の検察は、ダムの決壊は不十分な保守管理が原因で犯罪としての捜査が開始されたという。
金正恩氏は見舞い電で、「大統領の指導の下、ロシア政府と人民が今回の自然災害が招いた悪結果を早いうちに克服し、被災地の住民が一日も早く平安を取り戻すようになることを心から祈願する」と述べた。
●ロシアのウラル川流域で大規模洪水、住民多数が避難 4/8
ロシア南西部のウラル川でダム決壊に伴う大規模な洪水が発生し、少なくとも1万世帯が浸水し、何千人もの流域住民が避難を強いられている。
洪水は過去数十年でも最悪クラスの大きさで、ここ数日間のうちに影響はウラル連邦管区からシベリア連邦管区、カザフスタン国境付近まで幅広い地域に及びつつある。
人口23万人のオルスク市は全域に洪水が押し寄せ、4000人余りが避難。国営タス通信によると、大人6人と子ども3人が入院したが、命に別状はないという。
ウラル川は5日、雪解け水により数時間で数メートル増水し、モスクワの東1800キロにあるオルスク市のダムが決壊した。
オルスク市市長によると、市内の別の川も決壊した。国内の複数通信社が伝えた。
地元当局によると、6100人以上が避難し、40校中15校が浸水した。
プーチン大統領はクレンコフ非常事態相に現地へ向かうよう指示。大統領府は7日、洪水の被害はクルガン州とチュメニ州でも避けられないと明らかにした上で、プーチン氏が当該地域の自治体トップと電話で協議したと付け加えた。
クルガン州の人口31万人の州都クルガンでは、当局が河川沿いの住民に緊急避難を命じ、洪水がすぐにもやってくると警告した。
オレンブルク州のパスレル知事は、今回の洪水は同州の記録に残る限り最悪だと説明し、その範囲は2400キロにわたるウラル川全域に広がっているとの見方を示した。
地元メディアがオレンブルク州当局の試算として伝えたところでは、地域の被害額は約210億ルーブル(2億2700万ドル)に達し、水が引くのは20日以降になるという。
朝鮮中央通信(KCNA)によると、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党総書記はプーチン大統領に見舞いの言葉を述べ、「北朝鮮国民は常にロシア国民とともにある」と伝えた。
●ロシア “ウクライナ南部の原発にウクライナ軍の無人機攻撃” 4/8
ロシアは、占拠を続けるウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所にウクライナ軍の無人機による攻撃があり、原発に異常はないものの、3人がけがをしたと主張しました。
IAEA=国際原子力機関は誰が行ったかは言及せず、こうした無謀な攻撃が重大な原発事故のリスクを高めるとして、直ちにやめるよう求めています。
ロシアが占拠を続けるウクライナ南部のザポリージャ原発について、ロシア国営の原子力企業「ロスアトム」は7日、原発に対しウクライナ軍の無人機による攻撃があったと主張しました。
6号機の屋根や食堂に隣接する場所が攻撃を受け3人がけがをしたとしています。
ただ原発に重大な被害はなく、原発とその周辺地域の放射線量の値に変化はないということです。
原発に専門家を常駐させているIAEAはSNSで、6号機の損傷は原発の安全性を損ねるものではないとしながらも無人機による攻撃が原子炉にも物理的な衝撃を与えたことを確認したと明らかにしました。
IAEAのグロッシ事務局長は誰が行ったかは言及せず「このような無謀な攻撃は重大な原発事故のリスクを著しく高めるものであり直ちにやめるべきだ」とする声明を出しました。
一方、ウクライナ国防省情報総局の報道官は、地元メディアに対し「ウクライナはザポリージャ原発の敷地で起きた、いかなる武力挑発にも関与していない」と否定しました。
ザポリージャ原発は相次ぐ砲撃などによって原子炉の冷却などに必要な外部からの電力の供給がたびたび途絶えるなど安全性への懸念が続いています。
●トランプ氏、終戦へ領土割譲案 クリミアやドンバス、米報道 4/8
米紙ワシントン・ポスト電子版は7日、ロシアのウクライナ侵攻を巡り、トランプ前米大統領がウクライナに南部クリミア半島や東部ドンバス地方(ドネツク、ルガンスク両州)の国境地帯をロシアに割譲するよう圧力をかけることで終戦に持ち込めると周囲に語ったと報じた。関係筋の話としている。
共和党のトランプ氏は11月の大統領選で返り咲けばロシアの侵攻を終わらせることができると豪語しているが、具体的な方法が報じられたのは初めて。外交専門家は実際に割譲すればロシアのプーチン大統領を利し、武力による領土侵犯を看過することになると懸念を示している。
トランプ氏は非公開の場で、ロシアとウクライナの双方が「メンツを保ちたいと考えており、解決策も求めている」と述べ、ウクライナの一部地域にいる市民はロシア領になってもかまわないと考えているとの見方を関係者に示したという。
トランプ陣営の報道担当者は「トランプ氏の計画に関する臆測は、状況を把握していない匿名の情報源から来ている」として報道は不正確だとの声明を出した。
●「米の追加支援なければ負ける」―ウクライナ大統領 4/8
ロシアによる侵攻が続くウクライナのゼレンスキー大統領は7日、米議会で追加支援予算案が可決されなければウクライナは戦争に負けると発言した。米国の約600億ドル(約9兆1000億円)の追加支援予算案には共和党が反対しており、数カ月にわたって審議が停滞している。
ゼレンスキー氏はビデオ会議の中で「米議会が支援してくれなければ、ウクライナは戦争に負ける」と強調。「ウクライナが負けたら、他の国が攻撃されるだろう」と訴え、強く支援を求めた。
●ウクライナ支援が平和回復の鍵、ドイツ首相が効果的抑止呼びかけ 4/8
ドイツのショルツ首相は6日、同国はロシアとの戦争に対するウクライナ支援への取り組みを弱めないと述べるとともに、西側による支援継続を求めた。
ブカレストで行われた会合で、ロシアと北大西洋条約機構(NATO)の衝突を含む事態悪化を回避する最良の方法は効果的な抑止だと指摘。「ウクライナでの戦争は(ロシアの)プーチン大統領が軍の撤退を決めた瞬間に終了する。だがその決定は、戦場では勝利できないと理解した場合にのみ下すだろう」と述べた。
その上で「われわれは誰も攻撃してこないよう、欧州として団結し自らの安全保障と防衛のために投資を強化していく。これは狭量な自国の利益をわきに置き、強固で真に欧州の防衛産業を構築することも意味する」と述べた。
●中国が対ロ支援強化、地理空間情報を提供−米国が同盟国に注意促す 4/8
米国は中国がロシアの対ウクライナ戦争を支援するため、地理空間情報の提供などロシアへの協力を強化していると同盟国に注意を促した。
事情に詳しい複数の関係者によると、中ロ間の軍事的連携が進展する兆しが見られる中、中国はロシアに軍事目的の衛星画像のほか、戦車用のマイクロエレクトロニクスや工作機械を提供しているという。
中国の支援には光学機器やミサイル用推進剤、宇宙計画での協力拡大も含まれていると関係者の1人は語った。
米国家安全保障会議(NSC)のワトソン報道官によれば、バイデン大統領は先週の習近平中国国家主席との電話会談で、工作機械や光学機器、ニトロセルロース、マイクロエレクトロニクス、ターボジェットエンジンなどロシアの防衛産業基盤に対する中国の支援について懸念を示した。
中国の祝日と週末を含む連休中に同国外務省にコメントを求めたが直ちに返答はなかった。
中国・香港経由 
重要なのは、ロシアが主に中国と香港経由で、兵器やその製造に必要な半導体や集積回路(IC)など規制対象技術を入手していることだ。米国と欧州連合(EU)は、こうした技術移転を可能にしているとして中国企業数社をリストアップしているが、このような取引がなくなる兆しはほとんど見られない。
非公開情報だとして関係者らが匿名で明らかにしたところでは、中国は対ロシア支援をここ数カ月の間に強化した。ブリンケン米国務長官は最近、欧州の同盟国に対し、中国の支援の範囲と重大性を説明し、その抑制に一段と取り組むことが必要だと伝えたと関係者の1人は話した。
また別の関係者によると、ブリンケン長官は同盟国に対し、直接中国にこの問題を提起し、中国の団体や企業に措置を講じるよう求めた。
北大西洋条約機構(NATO)加盟国との会合でのブリンケン氏の発言の一部については、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が先に報じていた。
米国と同盟国は今後、中国に懸念を伝え、同国によるロシア防衛産業支援の規制強化を目指すことになるだろうと関係者らは語った。
イエレン米財務長官も最近、中国も含めた企業がロシアの対ウクライナ戦争や軍産基盤への物質的支援を提供していることが判明した場合、「重大な結果」を招くと警告した。
●穀物輸出大国、ロシアとウクライナの戦争で小麦価格が下落している怪 4/8
戦争には莫大なお金がかかる。ウクライナでもロシアでも国庫から戦費として巨額の資金が流出している。戦車や軍用機をはじめ軍需品が途方もない規模で破壊されていて、その補充などの費用を賄う必要があるからだ。
もちろんこれは、日ごろ国際ニュースを読んでいる人なら誰でも知っていることである。だが、ロシアとウクライナの戦争が世界の穀物市場、なかんずく小麦市場に及ぼしている影響となると、よく知らない人も多いのではないか。
この影響が問題なのは、小麦価格がこのところ人為的に低く抑えられており、いつ反騰して物価を再び押し上げることになってもおかしくないからだ。
一部の専門家によると、小麦輸出市場の主要プレーヤーであるロシアとウクライナはいずれも現在、生産コストを下回る廉価で小麦を販売している。農産物市場の動向に詳しいショーン・ハケットはニューズレターにこう書いている。
「引き続き戦費を調達する必要に迫られているウクライナとロシアは、経済的に合理的でない価格で現物小麦を提供している。それをやめさせるには、何かが変わる必要がある」
両国がそうしているのはおそらく、相手側の勝利を阻めるのであれば、経済的に損失を出しても割に合うと判断しているからだろう。小麦を格安で売りさばいてでも現金を得られれば、補充品を調達して敵に対して用いることができる。
ハケットは、こうした状況は戦争報道などでは変えることができず、政府が規制するか生産者が販売を控えるでもしない限り、変わりそうにないとの見方を示している。
貿易ランキングサイト「World's Top Exports」によると、2022年2月末に現在の戦争が始まる前、小麦輸出市場でロシアとウクライナは金額ベースで29%を占めていたが、現在は14.3%まで縮んでいる。
シェアの急減には、両国で農産物を生産するための労働力やその他の資源が不足しているといった事情も絡んでいるだろうが、国庫収入の確保を優先して価格を引き下げる必要があったことも一因だ。
いずれにせよ、現在のような小麦市場がいつまでも続くはずはない。赤字で小麦をつくり続ければ、いずれ農家は破産してしまうからだ。
人々の目を覚まさせるには何が必要だろうか。それはどうやら、天候不順ということになりそうだ。ハケットによれば、向こう数週間で、ロシアとウクライナを不安にさせそうな天候不順が2つ訪れる見通しとなっている。
まず、米国では5月上旬の2週間ごろに遅霜(おそじも)が降りる可能性が高い。遅霜が発生すると作柄に響き、収穫シーズンに小麦の供給量の減少につながるおそれがある。
一方、黒海に近いロシア南部の小麦の主要産地ではすでに乾燥した天候が続いていて、それが天候不順によってさらに悪化する懸念が出ている。
調査会社トレーディング・エコノミクスのデータによると、小麦の国際価格の指標となる米シカゴ先物は足元で1ブッシェル5.65ドルほどと、昨年7月につけたピークの7.57ドルから大幅に下げている。
米国とロシアのどちらかが天候不順に見舞われた場合、小麦価格は再び上昇に転じると見込まれる。どちらとも天候不順になった場合は、さらに急激に上昇が進むことになるだろう。
とはいえ、天候を予測するのは難しい。投資家は柔軟に戦術を変えていく姿勢で臨みたい。
●ウクライナは北朝鮮ミサイルの「実験場」 米軍司令官が懸念表明 4/8
ロシアが北朝鮮製の弾道ミサイルをウクライナで使用していることについて、フリン米太平洋陸軍司令官は、ミサイルを実戦で試し、性能向上につなげる「戦地の実験場」を北朝鮮に与えているとして懸念を表明した。米ブルームバーグ通信が7日、伝えた。訪問先のソウル南方の米軍基地で述べた。
北朝鮮が弾道ミサイルの発射データをロシア側から入手し技術改良につなげる恐れは以前から指摘されており、フリン氏は米国は推移を注意深く見守っていると述べた。
ウクライナ検察によると、ロシアは昨年末から今年3月半ばまでに、ウクライナの首都キーウ(キエフ)、東部ハリコフなど各地に向け、北朝鮮製の弾道ミサイルを約50発発射した。短距離弾道ミサイル「KN23」と「KN24」で、計24人が死亡、100人以上が負傷した。 
●ロシア大規模テロを起こした「イスラム国ホラサン州」が中国をターゲットにする習近平への怒り 4/8
プーチン大統領が5選を果たした直後の3月22日、モスクワ郊外にあるコンサートホールに銃武装した4人組の男たちが押し入り、観客に向け銃を無差別に乱射。140人以上が犠牲となった。
ロシアではこれまでもイスラム過激派によるテロが発生してきたが、犠牲者が3桁に達するテロは近年では見られない。事件後、10年ほど前に各国で残忍なテロを繰り返し、世界を恐怖に陥れたあのイスラム国(シリアとイラクで活動)が犯行声明を出し、欧米当局はアフガニスタンを拠点とするイスラム国の地域組織、イスラム国ホラサン州(ISKP)が事件に関与したと断定した。
ISKPは2015年にアフガニスタンで台頭したが、もともと反ロシア的な感情を抱く戦闘員らが参加している。そのためロシアはイスラム国と敵対するシリアのアサド政権を支援し、自らもイスラム国へ空爆などを行ってきたことから、イスラム国がロシアを狙う理由は十分にあった。ISKPはアフガニスタンにあるロシア大使館を襲撃し、ロシア人2人が死亡したこともある。
一方、ISKPが狙うのはロシアだけではなく、定期的に発信する声明の中で中国への敵意を頻繁に示している。ロシアと違い中国は、アフガニスタンを支配しISKPと敵対するイスラム主義勢力タリバンと関係を強化、同国では経済的な影響力を強めている。ISKPはそれに対して強く反発し、2022年12月には、首都カブールにある多くの中国人が利用するホテルを狙った襲撃テロを起こして3人が死亡、中国人5人が負傷した。その後、ISKPは中国人を狙ったと犯行声明を出した。
また、習近平政権は中国西部の新疆ウイグル自治区でウイグル人(イスラム教徒)への監視の目を徹底し、強制労働に従事させたり、洗脳教育を行ったりと人権侵害が問題視させているが、ISKPはこれにも強く反発し、中国への敵対心を強く抱いている。
これまでにISKPが発信した声明を眺めると、ISKPはロシア以上に中国を敵視しているようにも映る。今回、ロシアでISKPが大規模なテロを実行したことで、中国もかなり神経を尖らせていることは間違いない。今後は、ISKPが中国国内、もしくは海外にある中国権益へのテロを起こす可能性が高い。
●バイデン政権 米国内でのTSMC最先端工場建設に約1兆円の補助金 4/8
アメリカのバイデン政権は台湾の半導体大手、TSMCに対し、アメリカ国内に最先端の半導体を生産する工場を建設するために日本円にしておよそ1兆円の補助金を出すと明らかにしました。
アメリカ、バイデン政権は8日、半導体の受託生産で世界最大手の台湾のTSMCに対し、最大で66億ドル、日本円にしておよそ1兆円の補助金を出すと明らかにしました。
TSMCは、アメリカ西部アリゾナ州で2つの工場の建設を進めていますが、補助金を受けて2つ目の工場では最先端の回路の幅が2ナノメートルの半導体を生産するということです。
また、2ナノに加え、さらに高性能な半導体の生産も行う3つ目の工場を新たに建設するということです。
これにより、TSMCのアリゾナ州の工場への投資額は合わせて650億ドル、日本円で9兆8000億円規模に上るとしています。
バイデン大統領は「国内で最先端の半導体を生産していないことでアメリカは経済や安全保障上の重大なぜい弱性にさらされてきたが、これでアメリカの半導体製造と雇用が戻ってくる」として意義を強調しました。
バイデン政権は3月、半導体メーカーのインテルにも最大で85億ドルの補助金を出すと発表しています。
バイデン大統領としては、秋の大統領選挙で再選を目指す中、最先端の半導体のサプライチェーンを強化して中国に対抗するとともに、国内の製造業への支援や雇用の創出をアピールするねらいもあるとみられます。

 

●ロシア南西部でダム決壊、大規模な洪水発生…1万戸超が浸水し数千人が避難 4/9
AP通信などによると、ロシア南西部のウラル川でダム決壊に伴う大規模な洪水が発生し、少なくとも1万戸超が浸水し、数千人が避難を強いられている。カザフスタンとの国境沿いにある人口約23万人のオレンブルク州オルスクでは市全域が水没したという。
全長約2400キロ・メートルのウラル川は、ウラル山脈南部からロシアとカザフスタンを通過し、カスピ海に流れこんでいる。気温上昇に伴う雪解け水の発生などで、オルスクのダムが5日夜に決壊した。下流にある人口約56万人のオレンブルクでも川の水位が上昇し、浸水地域が拡大する恐れがある。
被害の大きかったオルスクでは8日、約100人が行政庁舎前に集まり、地方当局に対して抗議した。「プーチン、助けて」などとプーチン大統領に支援を訴える声も上がったという。州政府によると、7日時点で洪水による被害総額は約210億ルーブル(約345億円)に上る。
●洪水被災者がデモ=プーチン氏に「助けて」―ロシア 4/9
ロシア・ウラル山脈の南に位置するオレンブルク州オルスクで8日、記録的な洪水に見舞われた住民が補償を求めて市庁舎前でデモを起こした。独立系メディアによると、参加者は数百人で「プーチン大統領、助けて」と声を上げており、あくまで地元当局への不満をあらわにした。
デモを受け、地元市長は通信アプリ「テレグラム」で「財産の補償ではなく、復興のための支援金」として被災者全員に1人当たり10万ルーブル(約16万円)を支払うと約束した。
●ロシア外相、北京で王毅外相と会談 「テロとの戦いで協力継続」 4/9
中国を訪問したロシアのラブロフ外相は9日、北京で王毅外相と会談し、関係強化の一環としてテロとの戦いで協力を続ける意向を示した。
ロシアの通信社によると、ラブロフ氏は「今年3月22日にモスクワで発生したテロ事件に関して中国側が哀悼の意を表し、ロシアのテロとの戦いを支援してくれたことに感謝する」と語った。
モスクワ近郊のコンサートホール「クロッカス・シティ・ホール」で発生した銃撃事件では、少なくとも144人が死亡。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出している。 もっと見る
ラブロフ氏はまた、プーチン大統領が圧勝した3月のロシア大統領選挙に中国がオブザーバーを派遣したことにも謝意を表明。
「われわれの指導者のおかげで、両国の包括的パートナーシップと戦略的交流は前例のない水準に達した」とし、「プーチン氏の再選によって関係強化の継続はさらなる保証を得ることになった」と述べた。
●アゾフ旅団 ウクライナ東部でロシア軍から奪った戦車1両を公開 4/9
ウクライナ東部でロシア軍との戦闘を続けるウクライナの部隊は、無人機による攻撃などで奪ったロシア軍の戦車1両を8日、メディアに公開しました。
首都キーウで公開されたのは、ウクライナ内務省傘下の部隊、アゾフ旅団が、東部ドネツク州の前線で奪ったロシア軍の戦車「T72」です。
アゾフ旅団によりますと、今月はじめ、ロシア軍が戦車など11両で進んできた際、無人機や砲撃で攻撃を仕掛け、ほとんどを破壊しました。
アゾフ旅団が当時の状況として提供した映像からは、このうち戦車1両が前の装甲車に衝突したあと動けなくなり、中から兵士が逃げ出す様子が確認できます。
この戦車は損傷がほとんどなく、ウクライナ側で修理を行い、1か月以内に前線で使えるとしています。
今回の攻撃に利用したのは、映像を見ながら操縦できるFPVと呼ばれる性能を備えた無人機だということで、弾薬などが不足するなか、無人機を利用して成果をあげていると強調した形です。
ただ、ウクライナ東部でのロシア側の攻撃は、このところ1日に5、6回と、冬の時期に比べて2倍に増えているということで、アゾフ旅団の20代の兵士は「ロシア側は頻繁に攻撃している。彼らは歩兵から始まり、戦車や大砲などあらゆる手段で攻撃してくる」と厳しい状況を語りました。
●トランプ氏のウクライナ終戦構想?…「ドンバスとクリミアはロシアに譲歩」 4/9
米国のドナルド・トランプ前大統領は、政権を奪還した際にはウクライナにドンバス地方とクリミア半島をロシアに譲らせ、戦争を終わらせる計画を持っている。このようなニュースが報じられた。
ワシントン・ポストは7日、トランプ前大統領が2年以上にわたるロシアのウクライナ侵攻戦争について、ウクライナの領土譲歩が解決策だと周囲に語っていることが把握されたと報道した。
トランプ前大統領は米大統領選挙の争点でもあるウクライナ戦争について、自身が当選すれば24時間以内に終わらせられると主張している。しかし、その方法については語っていない。同氏は先月、あるインタビューで「私は彼ら(ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領)それぞれに、他には言っていない特定のことを言うつもりだ」としつつ、終戦案をあらかじめ外部に公開することはできないと述べている。
匿名の消息筋はこれについて、トランプ前大統領が領土の一部を放棄するようウクライナに迫ると話していたと語った。トランプ前大統領の発言を直に聞いたという消息筋は、ロシアとウクライナが「メンツも守りたがっており、戦争からも抜け出したがっている」と前大統領が言っていたと語った。複数の消息筋は、トランプ前大統領とその側近たちの計画は、2014年にロシアが強制的に併合したクリミア半島と2022年2月末のロシアによる侵攻で始まった今回の戦争で占領した東部ドンバス地方をウクライナが譲歩するというものだと語った。
これは、休戦条件としてウクライナ領土の譲歩に言及しないバイデン政権の立場に反する。ウクライナ政府も、領土の割譲は絶対に不可能だとの立場だ。クレムリンは2022年9月に、ドンバスだけでなくその周辺地域もロシアが併合したと宣言している。
トランプ前大統領側のこのような構想は、彼がウクライナへの資金援助に反対し、共和党議員が同調して援助が途絶えるかもしれないという中で伝えられた。ホワイトハウスと民主党は昨年末から、ウクライナに610億ドル(約82兆ウォン)を支援することを内容とする法案に合意するよう共和党に要求している。しかし、先月マールアラーゴ・リゾートを訪れたハンガリーのオルバン・ビクトル首相は、トランプ前大統領はウクライナに「一銭も与えることはできない」として終戦を推進すると語ったと述べている。
ワシントン・ポストは、プーチン大統領に弱い姿勢を示してきたトランプ前大統領の終戦構想について、米国政府と政界で懸念が拡大するとみられると述べた。
ただしトランプ前大統領の選対は、ウクライナの領土譲歩が彼の立場だという話は「推測」だとし、「トランプ大統領は殺傷を止めることを語っているだけ」だと述べた。同氏のある側近は、オルバン首相の主張もトランプ前大統領の実際の発言ではないと述べた。
●敵か、味方か? 割れる旧ソ連諸国の方針 ウクライナ戦争の趨勢も左右か 4/9
フィナンシャルタイムズ紙コラムニストのトニー・バーバーが3月5日付け同紙に「ソ連崩壊後の隣国がロシアの軌道を航行している」と題する論説を書き、ウクライナ戦争の行方がベラルーシ、モルドバ、アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージアに重くのしかかっている様子を描写している。要旨は次のとおり。
1991年のソ連崩壊後、クレムリンは新たに独立した旧ソ連諸国との西側および南側国境を最重視する政策を取ってきた。この傾向は、2000年にプーチンが政権について以降、一層明白になった。その手法は、分離主義運動を支援するとともに、エネルギー、貿易、投資で隣国のロシアへの依存を確実にすることを柱とする。
ベラルーシ、モルドバ、アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージアにとり、ウクライナでの戦闘は将来に重くのしかかっている。現状、ロシアの影響力が強く残る国もあれば、弱まった国もある。
ロシア支配の最も顕著な例はベラルーシだ。ウクライナ戦争は同国をロシアに一層近づけた。とはいえ、ロシアは今のところ、ベラルーシを完全にロシアに統合する企てやウクライナ戦争に完全に組み込むような態度を見せていない。そうした動きは、ルカシェンコの独裁体制を不安定化させる要因になり得るからだ。
モルドバでは対照的に、ロシアのウクライナ侵攻以降、ロシアの影響力は低下した。これに対し2月、ロシアが支援する分離地域であるトランスニストリアの指導部が緊急議会を開催し、ロシアに庇護を求めるようなアピールを出した。
背景には、モルドバが初めて同地域の再統一化に本格的に乗り出した(昨年、モルドバ議会は、「分離主義」を刑事犯罪に指定し、モルドバ政府はトランスニストリア企業に対する税関管理を強化)ことがある。
モルドバは慎重に対処する必要がある。トランスニストニアの多くはロシア人なので、モルドバ政府が再統一の政策で不手際をすれば、彼らはモスクワの「トロイの木馬」になる可能性がある。
アルメニアにおけるロシアの立場は、クレムリンが、(昨年)9月のアゼルバイジャンによるナゴルノ・カラバフへの侵攻を防ぐために何もしなかったことから急落した。この事象により、ロシアが庇護者であるというアルメニア側の認識は崩壊した。しかし、アルメニアはエネルギーをロシアに依存し、ロシアはアルメニア領内に軍事基地を展開している。
一方、ナゴルノ・カラバフ侵攻はアゼルバイジャンと西側との関係を緊張させ、アゼルバイジャンをロシアに一層近づけた。
ジョージアでは、ロシアはアブハジアと南オセチアという2つの分離地域を通じて長期にわたり影響力を保持している。また、ジョージア政府はロシアに同調的な姿勢を頻繁に見せている。他方、多くのジョージア国民は欧州連合(EU)加盟国となることを強く望んでいる。
この地域全般にわたり、ロシアの威光と力は、3年前と比較しても低下している。他方、この地域はいまだ西側民主陣営に組み込まれてはいない。ロシアと西側の競争は、ウクライナ問題を主要な焦点として続く見込みである。
ロシア離れ≠フモルドバとアルメニア
この論説は、旧ソ連諸国におけるロシアの影響力の微妙な変化について、それぞれの国が抱える複雑な事情が詳細に説明されており、ロシアと旧ソ連諸国の関係を見る上で有益な分析となっている。以下では、いくつかの国につき補足説明をしておきたい。
モルドバは親欧州でEU加盟を目指しており、ロシアによるウクライナ侵略以降、ロシアとの関係がますます悪化している。トランスニストリアの指導部がロシアに庇護を求めるようなアピールを出した件は、西側に強い懸念を与えた。分離主義者がロシアに助けを求める構図はウクライナと同じだからだ。
モルドバは3月7日にフランスとの防衛協定に署名するなど、欧州との関係強化をますます鮮明にしている。モルドバ情勢は緊張が高まっており、注視する必要がある。
アルメニアは、18年にパシニャン首相が革命により政権を奪取する以前はロシアとの友好関係を維持し、政治、経済、安全保障の多くの部分をロシアに依存していた。他方、20年9月1月のナゴルノ・カラバフ戦争以降、ロシアがアゼルバイジャン寄りの立場を取り続け、結果として、23年9月のアゼルバイジャン軍によるナゴルノ・カラバフへの大規模攻撃に発展したことにより、ロシアが支援する野党などの一部国民を除いて、アルメニア政府およびアルメニア国民のロシアに対する信頼はほぼ消滅した。
アルメニア政府は非公式には「ロシア離れ」を決定しているともみられる。これを受け、米国とEUはアルメニアにおけるロシアのプレゼンスを排除すべく、政治、経済、安全保障面での関与を強めている模様である。しかし、欧米諸国がロシアに代わってアルメニアの安全保障と経済を保障することは困難のようにも思われる。アルメニア政府は欧米とは協調しつつも、一方でロシアとも適当に付き合って自国の安全保障と経済の安定を図り、「生き延びる」方途を検討する方が良いのかもしれない。
トルコ、イランの動きにも注目
アルメニアの敵対国、アゼルバイジャンについてはどうか。アゼルバイジャンの庇護者はトルコであり、20年のナゴルノ・カラバフ戦争でのアゼルバイジャンの勝利はトルコの支援によるところが大きい。ロシアは、ウクライナ制裁の「抜け道」としてトルコとアゼルバイジャンの協力を必要とすることから、ナゴルノ・カラバフ問題ではアゼルバイジャン寄りの立場を強めたとの見方が一般的だ。
一方、アルメニアと国境を接するイランはアゼルバイジャンのアルメニアへの侵攻の可能性を危惧しており、伝統的に良好な関係を維持しているアルメニアとの関係強化の姿勢を強めている。アルメニアとイランとの関係強化については、欧米諸国は神経質になっている。
南コーカサス地方においては、欧米とロシアに加えて、同地域と地政学的に直接の利害関係を持つトルコとイランの動向にも十分注視する必要がある。
●ロシア、ザポロジエ原発攻撃を再度非難 ウクライナ関与否定 4/9
ロシアは8日、ウクライナ南部でロシア制圧下にあるザポロジエ原子力発電所をウクライナ軍がドローン(小型無人機)で攻撃したとし、欧州の核安全保障が危険にさらされていると改めて非難した。ウクライナは関与を否定している。
ザポロジエ原発を管理するロシアの当局者はロイターに対し、ウクライナが8日、自爆型ドローンで同原発を攻撃したと明らかにした。ドローンは原発の上空で撃墜され、6号機の建屋の屋根に落下したとした。
ロシア国営原子力企業ロスアトムは、ウクライナが7日にドローンで同原発を3回攻撃したと主張。ロシア大統領府はウクライナによるこうした攻撃は極めて重大な結果をもたらす恐れがあると非難している。
ウクライナ情報機関の当局者は、ウクライナは攻撃に関与していないとし、ロシアによる自作自演と示唆している。
国際原子力機関(IAEA)は、同原発に対し7日に3回のドローン攻撃があったと確認したと発表。ただ、誰が攻撃したかは特定していない。
IAEAは8日にあったとされる攻撃について現時点で公式にコメントしていないが、グロッシ事務局長は声明で「ザポロジエ原発が直面する原子力安全と安全保障上の危険の重大なエスカレーションだ」とし、「このような無謀な攻撃は大規模な原子力事故のリスクを著しく高めるもので、直ちに停止されなければならない」とした。
一方、ロシアのミハイル・ウリヤノフ在ウィーン国際機関常駐代表は「ウクライナ軍によるザポロジエ原発による最近の攻撃と挑発行為に関し」IAEA理事会による臨時会合を要請したと短文投稿サイトのX(旧ツイッター)で発表した。
●ザポリージャ原発への攻撃めぐり ロシアとウクライナ主張対立 4/9
ロシアは、占拠を続けるウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所に2日続けてウクライナ軍の無人機による攻撃があったと主張しました。これに対しウクライナは、ロシアによる攻撃だと反発し、双方の主張が真っ向から対立しています。
ロシアは、占拠を続けるウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所のSNSを通じて8日、ウクライナ軍の無人機による攻撃があり、撃墜された残骸が6号機の屋根に落下したと主張しました。
ザポリージャ原発には、前日の7日もウクライナ軍が無人機で6号機の屋根などを攻撃し、3人がけがをしたとロシア国営の原子力企業「ロスアトム」が、発表していました。
いずれも施設に重大な被害はなく、原発とその周辺地域の放射線量の値に変化はないということです。
ロシア外務省は8日声明を発表し「ウクライナは、欧米によって支援され、核を使ったテロの道を進みだした。われわれは攻撃の責任者を特定し、訴追するつもりだ」としています。
これに対し、ウクライナ政府の「偽情報対策センター」は8日SNSで「ロシアは無人機でザポリージャ原発を攻撃し、原発の安全性への脅威がウクライナから来ていると装っている」と主張し、ロシア側の自作自演だと反発していて、双方の主張が真っ向から対立しています。
●ザポリージャ原発に無人機攻撃、原子炉の屋根焦げる…IAEA緊急理事会 4/9
ロシア軍が占拠するウクライナ南部ザポリージャ原子力発電所が7日に無人機の攻撃を受けた問題で、ロシアのミハイル・ウリヤノフ在ウィーン国際機関代表部常駐代表は8日、国際原子力機関(IAEA)の緊急理事会開催を要請したとSNSで明らかにした。
ロシアはウクライナ軍の攻撃と主張するが、ウクライナは関与を否定している。
IAEAの発表では、原発に常駐するIAEAの専門家が3か所で無人機の残骸を確認した。原子炉6基中1基は屋根が焦げており、監視・通信機器が標的となった模様だ。屋上視察の際、接近してきた無人機と露軍が交戦した後、原子炉建屋付近で爆発が起きたという。原子炉に深刻な損傷は出なかったが、ラファエル・グロッシ事務局長は「こんなことは、あってはならない」と強く非難した。
●米財務長官が訪中、過剰生産やロシア支援への懸念伝える 4/9
米国のイエレン財務長官が8日、就任後2度目となる訪中の日程を締めくくった。4日間の滞在中は北京や広州で中国首脳や、地元当局者、学者、企業経営者などと会談。米中間の貿易紛争激化への対処を念頭に置きつつ、中国による過剰生産について米国側の懸念を伝えた。また中国企業がウクライナでの戦争でロシアを支援する場合は「重大な結果を招く」と警鐘を鳴らした。
電気自動車(EV)や太陽光パネルといった主要な産業分野では、かねて中国による過剰生産の問題が表面化。通商面での世界的な対立を引き起こし、11月の米大統領選でも主要な争点となっている。
今回の訪中でイエレン氏は、この問題についての考えを何立峰(ホーリーフォン)副首相や李強(リーチアン)首相といった当局者らに再三伝えた。8日には記者団に対し、単純に中国の供給能力が巨大過ぎて世界がそれを吸収できていないと指摘。人為的に安く抑えられた中国製品が世界市場へ大量に出回る中、米国その他の企業の生存に疑問符がつく事態となっていると説明した。
中国外務省が公開した李氏とイエレン氏の7日の会談記録によれば、李氏は米国政府に対し、経済及び通商の問題を「政治化」しないよう強く要求。米国は生産能力の問題を市場経済やグローバルな視点から客観的に捉えるべきだと提言したという。
イエレン氏は8日の会見で、中国の過剰生産の問題が早期に解決することはないだろうと認めた。それでも今回の会談でのやり取りが,米国の懸念を今後提起する上での具体的な枠組みになっていくとの認識を示した。
一方、広州での何氏との会談では、ウクライナでの戦争における中国の対ロシア支援に言及。米財務省が公開した会談記録によれば、イエレン氏は中国企業がそうした物質的支援を行えば「重大な結果」に直面しかねないと警告したという。
ウクライナに侵攻したロシアに対し、米国とその同盟国は通商を打ち切り、経済制裁を科しているが、中国はそうしたロシアにとっての経済的な生命線として浮上している。中国政府は中立を主張し、紛争の平和的解決を呼び掛けているが、侵攻に対する批判は避け、経済、外交、軍事の面でロシアとの結びつきを深めている。
イエレン氏は8日、中国の当局者との国家安全保障をめぐる会談が困難なものだったと表明。中国企業がロシア軍の装備の調達に一定の役割を果たしている懸念が消えていないことを明らかにした。
イエレン氏のコメントについて問われた中国外務省の報道官は、「様々な領域における中ロ間の通常の協力は、干渉も制限もされるべきではない」との見解を示した。
●北朝鮮が舞い上がる「ウクライナ戦争特需」の注文主はロシア 4/9
先月26日、北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長(金正恩〔キム・ジョンウン〕総書記の妹)は言った。「日本の首相の政略的な打算に朝・日関係が利用されてはならない......日本側とのいかなる接触も交渉も無視し、拒否する」
これは、岸田政権が北朝鮮訪問、首脳会談実施の秋波を送ってきているが、拉致問題での北朝鮮の妥協を条件とする限り、受け入れられない、と公言したものだ。ただ、北朝鮮が韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権に見せた罵詈雑言はなかった。多分、日本カード、岸田カードを温存しておきたいのだろう。
今、北朝鮮は国内の権力基盤である諜報・公安当局を締め上げて拉致問題で譲歩をさせてまで、対日関係を進める必要を感じていない。「無理をして岸田来訪を受け入れたところで、日本は対米、対韓関係を害してまで、北朝鮮との関係樹立を急がない。2006年以降、国連安保理決議に基づいて取った制裁諸措置に反する経済協力をするはずもない」と、重々承知している。
加えて、北朝鮮の核ミサイルが質量とも完成の域に近づいていることで、米韓からの脅威は抑止できている。そして今は、日本よりはるかにリアルな金づるがある。それはロシアからの戦争特需だ。
ロシアは国防費を開戦前の2倍強に増やして兵器増産に励むも、戦闘時には1日5万発も使う砲弾の補充が間に合わない。そこで昨年7月にはショイグ国防相が訪朝して、北朝鮮の軍事技術を視察。9月には金正恩を極東のボストーチヌイ宇宙基地に招き、ぴかぴかに磨き立てたロケット組立工場でプーチン大統領自らにこやかに金を迎えて案内した。おそらくロシアはミサイル技術を提供し、推定300万発の砲弾などを手にした。
日本の「一時的政権浮揚」に使うな
これは、北朝鮮に「ウクライナ戦争特需」をもたらす。金正恩は舞い上がり、年末の党会議で軍需部門に増産への大号令をかけた。砲弾だけではなく、ミサイル、機関銃、被服などの注文も来ているだろう。
1950年の朝鮮戦争特需で日本経済がそれまでのデフレを脱し、高度成長に向けて離陸した時を思わせる。さらに古くは「ナポレオン戦争特需」もある。ナポレオンがフランス帝国建設の野望を遂げようとするのにイギリスが対抗。1797年には金本位制から一時逸脱して不換紙幣を増発。政府もGDPの数十%に上る支出を行った。これが、19世紀初頭のイギリスの工業急発展をもたらした。高付加価値の工業が急速に伸びたことが、産業革命を深めたのだ。
しかしウクライナ戦争特需は、これらとは違う。注文主は超大国ではなくロシア。戦後も北朝鮮を支える力はない。北朝鮮製砲弾がロシアの大砲の砲身を破壊する例も報道されている。大砲は高度技術の産物で、ロシアも年間50基ほどしか製造できない。ロシアと北朝鮮は、互いにばかにしながら、「これしかない」提携相手なのだ。
今、日本と韓国の関係は戦後最高と言ってもいい。これに水を差すような北朝鮮との関係改善を、拉致問題の放棄という代償を払ってまで進める必要はない。当面、日本国内での北朝鮮の利権のありかをよく調べ上げて、将来に関係樹立の交渉をするときの日本の立ち位置を良くしておくことだ。
そして北朝鮮によるテロ、サイバー犯罪などを未然に防ぐための法的・技術的な体制を築いておく。みすみす日本人の拉致を許してしまったのは、怪しい者を予防拘禁できない日本の法制の弱さにも原因がある。
北朝鮮問題は、第2次大戦の遺産だ。くしくも金与正が言うように、日本の一時的な政権浮揚に使うのでなく、もっとじっくり取り組まなければなるまい。
●新たな中東情勢下での原油価格の行方  4/9
米国のインフレが直近のピークであった2022年6月、消費者物価(CPI)上昇率が前年同月比9.1%に達するなか、エネルギーの寄与度は3.0%ポイントだった。その後、物価が安定方向へ動き出したのは、原油価格が低下、エネルギーの寄与度がマイナスになったからだ。足下、原油価格はじり高歩調となり、WTI先物価格は1bbl=80ドル台後半へ上昇している。ロシア、イランなど西側諸国の制裁を受ける産油国がフル稼働状態になり、相対的に割安な原油を調達してきた中国、インドなどが中東からの購入を増やさざるを得なくなったからではないか。ただし、サウジアラビアなど湾岸主要産油国には大幅な増産余力がある。従って、ファンダメンタルズ面から見れば、原油価格は75ドル中心から、85ドル中心へレンジを切りげたものの、さらに上値を追う状況にはないだろう。一方、中東情勢には注意が必要だ。イスラエルがダマスカスのイラン大使館領事部を爆撃したことなどから、地域の不透明感の高まりが、原油価格に影響する可能性が否定できなくなった。
エネルギーが物価の押し下げ要因
米国におけるCPIの中身を見ると、2022年6月、エネルギーの寄与度は+3.0%に達していた。新型コロナ禍からの経済正常化、ロシアによるウクライナ侵攻により、WTI原油先物価格が一時120ドル台に達していたからだ。足下、原油価格の低下によって、エネルギーの寄与度は小幅ながらマイナスに転じ、消費者物価全般の落ち着きに貢献している。エネルギーが米国のインフレに与える影響は大きい。
消費者物価のエネルギー指数は原油価格で概ね説明できる
過去20年間におけるCPI・エネルギー指数とWTI原油先物価格の相関係数は0.71と高く、当然ながら原油価格の変動はエネルギー指数を通じてCPI全体に影響を及ぼす。エネルギー指数のCPI総合指数に占めるウェートは、表面的には今年1月時点で6.64%に過ぎない。もっとも、電力やガス、運送費などの変動、その価格転嫁を通じて、コアCPIへの間接的なインパクトも無視できないだろう。
ウラル産原油は西側諸国の制裁措置で13ドル程度割安
ロシアによるウクライナ侵攻以降、西側諸国の制裁措置により、ウラル産原油の価格はサウジアラビア産の代表的油種であるアラビアンライトをバーレル当たり12〜20ドル程度下回るようになった。これは、制裁に加わっていない中国、インド、トルコなどにとっては、割安な原油を調達するチャンスとなった模様だ。これらの国々にとっては、ロシアへの支援ではなく、価格の引き差が極めて重要なのだろう。
中国は割安なロシア産原油の輸入を拡大
中国の場合、2021年と比べた2023年の原油輸入量は9.9%増加したが、ロシア産は34.0%の大幅な伸びになった。輸入全体に占めるウェートも15.5%から19.0%へ上昇している。ロシアに対する西側諸国の厳しい制裁措置にも関わらず、ウクライナ戦争開戦直後に急騰した原油価格が値下がりしたのは、中国の景気減速と共に、ロシアの原油輸出量が減らず、国際的な需給バランスが崩れなかったことが大きいだろう。
ロシアとイランは実質的にフル生産状態
国際エネルギー機関(IEA)によれば、今年3月、ロシアの産油量は日量940万bblだった。持続可能な生産水準が980万bblなので、余力は40万bblに止まる。ほぼフル稼働と言える状態だ。イランも同様であり、西側から制裁を受け、低価格で輸出せざるを得ない産油国の生産は限界に達している。その結果、中国、インドなどは割高な中東産原油の輸入を拡大する必要に迫られ、足下の原油価格が切り上がったと考えられる。
米国産シェールオイルの増産余地は乏しい
このところの米国の原油生産量は日量1,310〜1,330万bbl程度で推移している。既存のシェールオイルの事業者にとっては十分に利益が出る価格水準と見られるが、将来へ向けた需要の不透明感により、大規模なシェール開発にはリスクが高まった。11月の大統領選挙の結果にもよるが、少なくとも当面、原油価格が一段高になったとしても、米国の供給量が急増する可能性は小さいだろう。
OPEC+の生産余力は日量630万bbl
サウジアラビアの持続可能な生産余力は1,210万bblであり、米国と並ぶ世界最大級だ。ただし、3月の生産量は減産により900万bblだった。日本の需要量が日量330万bbl程度なので、それに匹敵する余力を抱えている。OPEC+全体での生産余力は630万bbl程度だ。原油需給が逼迫、価格がさらに上昇すれば、OPEC+は増産するだろう。ファンダメンタルズから見れば、原油がさらに上昇する可能性は低い。
前提条件はイランが大規模報復をしないこと
不透明要因は中東情勢だ。特にイランがイスラエルや米国関連施設を攻撃する場合、少なくとも一時的にペルシャ湾岸地域での緊張感が高まり、原油価格に影響する可能性がある。もっとも、イランは米国とのこれ以上の対立激化を望んでいない模様だ。従って、これは現段階ではリスクシナリオと言える。ただし、サウジアラビアの立場が微妙であることを含め、当面、不透明感を払拭するのは難しいだろう。
新たな中東情勢下での原油価格の行方:まとめ
ロシア、イランの原油生産が限界に近いなか、中国、インドなどは割高なサウジアラビア産などの調達を増やさざるを得ないと見られる。その結果、原油価格は75ドル中心から85ドル中心へレンジを切り上げたようだ。ただし、サウジアラビアなどペルシャ湾岸の主要産油国には十分な増産余力があり、ファンダメンタルズから見て、1bbl=100ドルを超えるような展開は考え難い。そうしたなか、リスク要因は中東情勢だ。イスラエルとイランの対立激化が周辺に波及すれば、原油価格も影響を受ける可能性がある。
●米英豪の安全保障「AUKUS」 先端技術分野で日本との協力を検討 4/9
アメリカのオースティン国防長官は8日、イギリス、オーストラリアの国防相とともに共同声明を発表し、3か国でつくる安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」の柱の1つである先端技術の分野で、日本との協力を検討していると明らかにしました。
アメリカのオースティン国防長官は8日、イギリスのシャップス国防相、オーストラリアのマールズ国防相とともに、3か国でつくる安全保障の枠組み「AUKUS」をめぐって共同声明を発表しました。
「AUKUS」は2つの柱で構成され、第1の柱は、オーストラリアへの原子力潜水艦の配備、第2の柱は、AI=人工知能や極超音速ミサイルの共同開発をはじめとする先端技術分野での協力を掲げています。
3か国は共同声明の中で「日本の強みと、3か国それぞれとの緊密な防衛上の協力関係があることを踏まえ、第2の柱において日本との協力を検討している」と明らかにしました。
アメリカのバイデン政権は、第2の柱について、日本を含む同盟国や友好国の参加に前向きな姿勢をとってきました。
AUKUSと日本との技術協力をめぐっては、バイデン政権高官は、今月10日の日米首脳会談でも協議が行われる見通しだと明らかにしています。
豪首相“AUKUS 日本をメンバーに加えることは想定せず”
オーストラリアのアルバニージー首相は、9日朝記者団に対し「日本が協力の候補にあがることは自然なことだ」と話しました。
ただ「AUKUSのメンバーを拡大することではない」と述べ、日本をメンバーに加えることは想定していないという考えを示しました。
木原防衛相「防衛力強化に資する取り組み 今後も進めていく」
木原防衛大臣は、9日の閣議の後記者団に対し「AUKUSの取り組みが促進され、防衛協力が強化されるのは、インド太平洋地域の平和と安定にとって重要であり、わが国として一貫して支持している。防衛省・自衛隊としては、AUKUSの重要性を認識しつつ、防衛力の強化に資する取り組みを今後も進めていく」と述べました。
林官房長官「AUKUSの重要性認識」
林官房長官は閣議の後の記者会見で「国際秩序の根幹が揺らぎ、地域の安全保障が一層厳しさを増す中、AUKUSの取り組みはインド太平洋の平和と安定に資するもので、日本は一貫して支持している」と述べました。
そのうえで、先端技術分野での協力については「今後AUKUS側で検討されることになる。日本としてはAUKUSの重要性も認識しつつ防衛力の強化に資する取り組みを今後も進めていきたい」と述べました。
●ロシア軍の車列が壊滅 上空から鮮明に捉えた映像をウクライナが公開 東部ドネツク州で攻撃失敗か 4/9
ウクライナ国防省は2024年4月5日、同国東部ドネツク州のノヴォミハイリフカ村付近で、ロシア軍の攻撃を撃退したと発表。ロシア軍の車列が壊滅する様子をドローンで撮影した映像を公開しました。
映像では、土煙を上げながら縦隊で進むロシア軍の戦車や歩兵戦闘車が猛攻撃を受け、次々と撃破されています。最終的にロシア軍の車列は壊滅し、黒焦げになった車両の残骸が散乱。攻撃が失敗に終わった様子が捉えられています。
映像はウクライナ軍の精鋭部隊とされる空中機動軍(空挺軍)の第79独立空中強襲旅団が撮影したとのこと。ウクライナ国防省は映像の公開に合わせて「ノヴォミハイリフカ村付近でのロシア占領軍による攻撃の失敗は伝統となっている。今回、敵は戦車3両と歩兵戦闘車3両を失った」とコメントしています。
イギリス国防省は2024年4月4日、ドネツク市南西部で報告されたロシア軍の攻撃が、3月に806回となり、2月の721回から増加して攻撃全体の38%を占めたと指摘。この努力にもかかわらず、ロシア軍はこの地域で目立った戦果を得ることができず、ノヴォミハイリフカのほか、ヘオルヒイウカやウロジャイネなどの小さな村で戦闘を続けていると分析しています。 
●洪水被災者 プーチン氏にSOS 4/9
ロシア・ウラル山脈の南に位置するオレンブルク州オルスクで8日、記録的な洪水に見舞われた住民が補償を求めて市庁舎前でデモを起こした。独立系メディアによると、参加者は数百人で「プーチン大統領、助けて」と声を上げており、あくまで地元当局への不満をあらわにした。
デモを受け、地元市長は通信アプリ「テレグラム」で「財産の補償ではなく、復興のための支援金」として被災者全員に1人当たり10万ルーブル(約16万円)を支払うと約束した。
●「プーチン暗殺計画」まで準備!イスラム過激派がロシアを恨む理由 4/9
通算5期目の大統領選当選を果たしたプーチン大統領に新たな大敵が現れた。
3月22日、ロシアの首都モスクワのコンサート施設で死傷者が約400人に上る銃乱射テロが起き、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が犯行声明を発表したからだ。
大手紙外信デスクが言う。
「4人とみられる実行犯はモスクワ北西部にある満員のコンサートホールに侵入。開演直前に引火性の液体をまいて火をつけ、観客に向けて銃を撃ち続けた。その後、ISは『戦闘員はモスクワ郊外に集まる多数のキリスト教徒を攻撃して数百人を殺傷した』などと犯行声明を発表したのです」
テロを防げず、面目をつぶされたプーチン大統領は「ウクライナがロシアへの越境攻撃や民間インフラに砲撃を続けている」と同国の関与を強調しているが、実はテロの裏にはISとの因縁≠ェ横たわっているといわれているのだ。
ロシアの報復作戦も始動
「実は、ISはシリア政府軍と組んだロシア軍に攻撃されたことがあり、プーチン政権を深く恨んでいる。モスクワでのテロ事件もアメリカから事前に危険性が指摘されていたのに、プーチン政権は対処しなかった。そうした批判をそらすために、ウクライナ関与説を強調しているのです」(軍事ジャーナリスト)
ただ、その一方でロシア政府は、タジキスタン国籍の実行犯の男4人をテロ罪で起訴したほか、実行犯に住居や自動車を提供したタジキスタン出身の男ら4人も同罪で起訴している。
「恥をかかされたプーチン政権は、ウクライナ侵攻と同時にISへの報復作戦を実施する可能性が指摘されている。ロシア国内外のイスラム教の拠点が標的になるとも噂されています」(前出・外信デスク)
これに対して、IS側も新たなテロを起こしかねないという。
「ISは首都モスクワのテロが成功したことで自信を深めている。政権中枢の人物や、さらにはプーチン大統領の暗殺まで計画しているといわれています」(前出・軍事ジャーナリスト)
今後は、血で血を洗う抗争に発展しそうだ。

 

●衛星写真で迫る ロシアの“核戦略” 4/10
3月、“圧倒的な得票率”で再選したロシアのプーチン大統領。ウクライナでの戦争が長期化する中で、支援を続ける欧米側などに対して繰り返してきたのが、核兵器による「脅し」です。その核を使って、プーチン大統領は今後どのような戦略を描いているのか。最新の分析から新たな動きが見えてきました。
衛星写真の分析などから、ロシア軍の実態に迫ってきた東京大学・先端科学技術研究センターの
小泉悠准教授です。
小泉さん「実際の核使用にはいかない形でどうやったら脅しのメッセージを出せるかということを、すごく一生懸命やっているように思います。いろんな核のメッセージングの方法はあるので、この意味でも冷戦時代に比べて想定すべき状況の幅は広がっている」
核兵器の使用を示唆する「脅し」とともに始まった軍事侵攻。その後、ロシアはアメリカとの核軍縮条約の履行を停止しました。去年3月には、局地的な戦闘での使用を想定した「戦術核兵器」をベラルーシに配備するという方針を発表。緊張を高める行動を繰り返してきました。
小泉さん「ひとつ怪しいと言われているのが、この弾薬庫。これはベラルーシのアシポビチというところにある、大きな弾薬庫なんです」
小泉さんが定点観測を続けているのが、ベラルーシの中央に位置する、こちらの弾薬庫。
最近、この場所で大きな変化があったといいます。
小泉さん「この辺は森で覆われているんですよ。ところが、最新のことし2月時点の画像をみてみると、切り開かれている。明らかにインフラの形態が変わったということですね」
一方、2月に撮影された写真では、弾薬庫に「新たな区画」が整備されたことがみてとれます。
さらに注目したのが、区画を囲う警備用のフェンス。
レーダー衛星が捉えた画像では、去年9月の時点で「2重」だったフェンスが、11月には「3重」へと強化されていたことがわかったのです。
小泉さん「ソ連時代からの特徴で、核弾頭なんかを保管している施設は、フェンスを2重ではなく3重にするという基準が設けられていたんですね。その点からしても、この施設は核弾頭か、それに準ずる重要なものが配備されたんじゃないかなと思っています」
着々と核戦力の増強を図ってきたとみられるロシア。去年11月には、あらゆる核爆発実験を禁止した「包括的核実験禁止条約」の批准を撤回しました。そして小泉さんが次なる段階として注視するのが…。
小泉さん「次の核のメッセージングとして、核実験に関する関する何らかの行動、ここをまず私は非常に注目しています」
いま観測に力を入れているのが、北極海に浮かぶ「ノヴァヤ・ゼムリャ島」です。かつてここは、カザフスタンのセミパラチンスクに継ぐ、ソビエト第2の核実験場があった場所。1990年まで、ここで130回を超す核実験が行われました。30年以上ほとんど変化がなかったこの島で、去年、新たな動きがあったといいます。
小泉さん「これは侵攻の前ですね。本部はここにある。かろうじて人間が住むための建物と研究をするための施設があって、本当は桟橋があったんですけど、たぶん嵐で半分になったやつが沈んじゃってますね」
ウクライナへの侵攻以前は、壊れていた港の埠頭。去年8月に撮影された写真では、埠頭は修繕され、船が横付けされている様子が見て取れます。
さらに、本部施設の建物にも、変化がありました。侵攻以後、新たに巨大な施設が建設されていたことがわかったのです。
こちらは、3月上旬、NHKが独自に入手した最新の写真。全体が雪に覆われている一方で、新たにできた建物周辺や道は除雪され、人が活動している形跡がうかがえます。除雪された道は、過去に核実験が行われた地下トンネルの手前まで続いていることが確認されました。
小泉さん「明らかに道路は除雪されている。これから先、核実験を行うテストサイトでも何かが起きる可能性は低くないと思うので、そこを注視していかなければいけない」
ロシアが核実験を再開するならば、その狙いはどこにあるのか。
小泉さん「ロシアが核実験をしたと言ったときに、西側の中でこれを非常に大きく受け止める声が間違いなくあると思うんですよ。ウクライナなんかに肩入れするせいで、ロシアと核戦争の危機になってしまう、どうしてくれるんだ、と。そういう政治的な狙いを持って、ロシアが例えば核実験をするとか、核実験の再開を宣言するとか、そういうことはしてもおかしくないと思いますね」
もし実験が再開されれば、核軍縮をめぐる国際的な枠組みは、ますます形骸化が進むと小泉さんは危惧しています。
小泉さん「核を持っていい5か国も、自分たちの核を削減するための誠実な努力を負う義務というのがある。核実験再開というのは、その誠実な努力をしてないんじゃないか、というふうに見えてしまう。その状態で、例えばNPT(核拡散防止条約)を盾に、イランや北朝鮮に核兵器を持つなと言っても、これは説得力がない。たがが外れてしまう可能性があるわけで、その意味でもこれは非常にまずい動きですよね」
小泉さんは、衛星写真を使ってアメリカや中国の核実験場跡地なども調べていて、この2か国でも新たな動きが確認されているということです。今後、核大国の水面下のにらみ合いも含め、注視していきたいと話していました。
●ロシアのラブロフ外相、北京で習近平氏らと会談「緊密な交流続ける」 4/10
中国を訪問中のロシアのラブロフ外相は9日、北京で中国の習近平(シーチンピン)国家主席、共産党の外交部門トップ・王毅(ワンイー)政治局員兼外相と相次いで会談した。中国国営中央テレビ(CCTV)が伝えた。習氏はプーチン大統領と「緊密な付き合いを続ける」と述べ、結束をアピールした。
中ロの外交は近年、親密さが目立つ。ロシアのタス通信によると、ラブロフ氏は、習氏とプーチン氏が今年、多国間協議などに合わせて少なくとも2回の会談を予定していると明らかにした。
中国側の発表によると、習氏はロシアがテロと戦い、社会の安全と安定を守ることに支持を表明したという。一方、ラブロフ氏は習氏のリーダーシップのもとで中国が注目すべき成果を上げているとして「深い称賛」を表明。あらゆる面で対中関係を強化することが「優先事項」だとし、中国やグローバルサウス(新興・途上国)とともに、「より公正で公平な国際秩序の形成に貢献する」と述べた。対立を深める米欧を牽制(けんせい)する狙いとみられる。
●中国・習主席、露外相と北京で会談 プーチン氏の訪中を協議か 4/10
中国の習近平国家主席は9日、ロシアのラブロフ外相と会談しました。ロシア外務省は習主席が、プーチン大統領の今年の訪中に向けた重要なステップとして歓迎したと発表しました。
習主席とラブロフ外相は9日、北京で会談し、「中露関係の発展を高度に重視している」と述べ、ともに対立するアメリカを念頭に協力強化を呼びかけました。
ロシア外務省は声明で、習主席がラブロフ氏の訪問を、「今年行われる予定のプーチン大統領の訪中に向けた準備の重要なステップとして歓迎した」と発表しました。訪問の時期は、明らかにしていません。
●習近平がもくろむ中国「戦時経済化」の悪夢…!まさかの好況「ロシア・プーチン」の悪魔のささやき 4/10
「デフレ輸出国」中国への怒り
米中の分断は、この貿易摩擦のなかで本格化するのかもしれない。筆者は、一抹の不安を両大国の貿易外交に感じるしかなかった。
4月5日、アメリカのイエレン財務長官が訪中した。その目的は、EVや太陽光パネルを筆頭に、政府の補助金が過剰な生産性を生み出しているとして、その改善を求めることだ。
イエレン長官は、広州市でスピーチした内容をブルームバーグはこう伝えた。
中国は「外国企業へのアクセスに障壁を課し、米企業に対して強圧的な行動をとるなど不公正な経済慣行」に関与してきたと指摘し、「私は今週の会合でこれらの問題を提起するつもりだ」と語った(「イエレン米財務長官、米企業への中国の「強圧的」動き非難−改革促す」4月5日)
中国国内で外資系企業の経済活動を規制し、不動産バブルの崩壊による内需低迷で過剰生産に陥ったEVやソーラーパネルを安価に海外に輸出する中国は、もはや世界経済にデフレを振りまいていると批判されている。
EVを作りすぎる中国
こうしたアメリカの苛立ちをイエレン長官はストレートに中国に伝えた模様だが、しかし、筆者はこうした外交は、むしろ中国の孤立化を招く方向に向かうのではないかと危惧している。
こうした中で、中国が向かいかねないのが、「軍事ケインズ主義」だが、その説明の前に、過剰生産性に陥った中国の現状を見ていこう。
中国ではあらゆる部門で供給過剰が顕在化している。電気自動車(EV)に次いで太陽光パネル業界も「冬の時代」に突入している。
世界最大の太陽光パネル企業である隆基緑能科技は3月中旬、「従業員を5%解雇する」と発表した。過当競争が災いして太陽光パネルの価格は急落しており、中国の太陽光パネル企業の業績は軒並み悪化している。
人口減少が進む中国では産業用ロボットの導入が急速に進んでいるが、この分野もすでに飽和状態になっている。米国のシンクタンクによれば、製造現場が必要とする12倍以上の産業用ロボットが中国で製造されているという(3月19日付RecordChina)。
中国では5G(第5世代移動通信システム)関連の設備投資が進み、普及率は50%を超えた(3月21日付RecordChina)が、5Gを利用するサービス需要が盛り上がっておらず、「宝の持ち腐れ」となっている。
内需があてにできなければ外需に頼るしかない。中国は新エネルギー分野を中心にハイテク産業の輸出をかけようとしているが、その矢先に米国から「待った」がかかったのだった。
ロシア大統領選に勝利し5選目を果たしたプーチン大統領 Photo/gettyimages
絶好調の「ロシア経済」
こうしてイエレン長官の訪中となったわけだが、彼女の目的は、中国のハイテク製品のデフレ輸出に圧力をかけることだ。イエレン長官は訪中前の3日、「(中国のデフレ輸出から)米国の新エネルギー産業を守るための追加措置を講ずる」との考えを示している。
筆者は「中国はお手本を隣国ロシアに求めるのではないか」と考えている。
足元のロシア経済は絶好調だ。3月のPMIが約18年ぶりの高水準を付けた。
ウクライナ侵攻から2年を超えて長期化しているが、欧米諸国の武器支援が停滞したこともあり、戦況でもロシアは盛り返している。そうしたなか経済も復調し、日本経済新聞は、プーチン大統領が5選目を果たした理由について「兵器工場などで前線で必要な武器のフル稼働を続けている点などが寄与し、ロシアの23年の国内総生産(GDP、速報値)は前の年に比べ3.6%増えた。プラス成長は2年ぶりだ」(3月23日)と伝えている。
また、ブルームバーグは、戦時経済がもたらす好況のおかげで「市民の不満はほぼ皆無」(3月15日付)と報じた。
この戦時経済は、軍事ケインズ主義と読み解いたとき、まさに苦境の中国がのどから手が出るほどに欲している政策ではないかと危惧するのだ。
軍事ケインズ主義の効果や中国が置かれている立場については、後編「習近平の「次の一手」がキナ臭い…!好調ロシア経済と中国の「戦時経済化」で緊張が走る「東アジア」悪夢のシナリオ」でじっくりとお伝えしていこう。
●イランから押収の武器・弾薬、ウクライナに譲渡 米軍 4/10
米中央軍は9日、イランから押収した数千丁の機関銃や狙撃銃、ロケット発射装置と数十万発の弾薬をウクライナに譲渡したと発表した。
ウクライナはロシアとの戦争で武器や弾薬の不足に直面している。米国は議会で支援法案が承認されるまで、自国の備蓄のなかからこれ以上の装備を送ることができない。
中央軍によれば、今回ウクライナに譲渡された兵器類は、約4000人で構成されるウクライナの1個旅団に小銃を装備させるのに十分な量だという。中央軍は声明で「これらの兵器はロシアの侵攻からウクライナを防衛するのに役立つ」と述べた。
中央軍によれば、今回ウクライナに譲渡した弾薬は元々、2021年5月22日から23年2月15日にかけて、船籍のない4隻の船から米軍らが押収したもの。米政府は昨年12月、米司法省による民事没収の手続きを経て、兵器類の所有権を得たという。
米国がイランの武装組織から押収した兵器類をウクライナに譲渡したのは今回が初めてではない。CNNは先に、米国が昨年10月、ウクライナ軍に対して、イランから押収した弾薬100万発余りを譲渡したと伝えていた。
米海軍は過去1年にわたり、イランがイエメンの反政府武装組織フーシに武器を輸送するために使用した船舶から、数千丁のイラン製の突撃銃や100万発以上の弾薬を押収している。こうした武器類の押収は、しばしば地域のパートナー国とともに実施され、過去にフーシへの武器密輸に使われてきた航路を利用する船籍のない小型の船舶を標的としている。
●苦戦するウクライナ軍 弾薬消費はロシアの6分の1?欧米の供与で兵器実験場化の懸念も 4/10
ロシア軍の侵攻に、ウクライナ軍の苦境が続いている。ウクライナ国営通信は3月29日、ウクライナ軍が使用している弾薬はロシア軍の6分の1に過ぎないとする、シルスキー総司令官のインタビューを伝えた。陸上自衛隊中部方面総監を務めた山下裕貴・千葉科学大客員教授は、ロシア軍が春に大規模な攻勢に出る可能性が高いと予測したうえで、ウクライナ軍に一刻も早く航空戦力や防空兵器を支援する必要があると指摘する。
――ウクライナを巡る現在の戦況をどうみていますか。
ウクライナ軍は、弾薬が圧倒的に不足しています。部隊の損耗も大きいようです。ウクライナ軍は「積極防衛」を唱えていますが、実際には防衛に徹せざるを得ない状況です。ロシア軍は人員や装備の補充も進めていて、補充のペースはウクライナ軍を上回っています。ロシア軍が春の攻勢に向けて着々と準備をしているというのが現状です。
――ロシア軍の攻勢はどのような動きになるでしょうか。
プーチン大統領は軍に対してドネツク、ルハンスクのウクライナ東部2州の完全占領を命じています。すでにルハンスク州はほぼ掌握していますが、ドネツク州の3分の1程度が依然、抵抗を続けています。
ロシアは東部2州に加えて、ザポリージャ、ヘルソンの南部2州の「併合」も宣言していますが、南部2州はロシアからの補給線が長く、数も少ないため、戦線を維持するのが簡単ではありません。ロシアはまず、ドネツク州の完全制圧を目指すために、この正面から攻勢に出るでしょう。
――ロシア軍のドネツク州での攻撃経路をどう予測しますか。
おそらく、制圧したアウディーイウカとバフムートを基点にして軍を進めようとするでしょう。
アウディーイウカの次に交通の要衝、ポクロフスクを狙い、さらに北に進んでドネツク州境を目指すと思います。バフムートから進むロシア軍は、コスチャンチニウカ、さらにクラマトルスク、スリャビャンスクを攻撃しようと考えていると思います。
これに対し、ウクライナ軍は今、アウディーイウカから撤退しましたが、近郊の川を防御線にして戦っています。ここからポクロフスクまで広がる丘陵地帯でロシア軍を止める必要があります。また、バフムート正面では、ウクライナ軍は近郊のチャシプヤールに要塞を作り、ロシア軍がコスチャンチニウカに向かうのを阻止しています。
――ウクライナ軍がロシア軍の攻撃を食い止め。攻勢に移るためには何が必要でしょうか。
ドネツク、ルハンスクの東部2州はもともと親ロシア勢力が多く、またロシア国境に接しているためにウクライナ軍の反転攻勢は容易ではありません。むしろ、ザポリージャ、ルハンスクの南部2州で攻勢をかける可能性があります。
現在、ウクライナの戦場は両軍による陣地の取り合いになっており、第1次世界大戦のような消耗戦の様相を見せています。ドローン(無人機)も大量に投入され、兵士の犠牲も増えています。
ウクライナ軍がロシア軍の攻撃を阻止し、攻勢に転移するためには、弾薬に加え、防空兵器が必要です。ロシア軍は最近、戦闘機が搭載した滑空誘導爆弾をウクライナ軍の対空ミサイルの射程外から発射して攻撃しています。迎撃するため、射程70キロ以上の対空兵器が必要になります。
また、攻勢のためには航空優勢の獲得が必要です。西側諸国が支援を表明しているF16戦闘機の一日も早い実戦配備が必要です。いずれにしても最大の支援国である米国の支援が不可欠になります。
――シルスキー総司令官もウクライナ国営通信とのインタビューで、ミサイルなど防空兵器の供与を訴えていました。
今、振り返ると、ウクライナ軍が2022年10月1日にドネツク州の要衝リマンをロシア軍から奪還したときがポイントでした。当時は、「スロビキン・ライン」と言われるロシア軍の防御線はすべて完成していませんでした。あのまま、ウクライナ軍が機動戦の利点を生かして攻勢に出ていれば、ドネツク州を取り戻すことができたのかもしれません。
しかし、西側諸国の支援は進まず、ウクライナ軍が反転攻勢を始めたのは2023年6月でした。西側諸国には「ロシア国内を攻撃したら、戦火がNATO(北大西洋条約機構)域内に及んだり、ロシアの核兵器使用を招いたりするかもしれない」という考えがあったのでしょう。
ウクライナの戦場では、高性能の新兵器が次々に投入されて、「新兵器の実験場」とも化しています。兵器の高性能化により、精度や破壊力が向上し、市民や兵士の犠牲も飛躍的に増加します。
私が現役だった当時、南スーダンを視察しました。そこで国連ミッションの軍関係者が「かつて、この地域での民族紛争で使われていた武器は槍と弓矢くらいだった。欧米が大砲や戦車、機関銃などを供与し、武器が高性能化されたことで、被害が格段に大きくなった」と語っていました。ウクライナでも今、兵器の高性能化によって人的・物的被害が拡大するという同じ悲劇が起きているのです。
●軍最高司令官が弱気を吐き出した時:ゼレンスキー氏の発言に欧米が衝撃 4/10
大統領は軍の最高司令官の立場だ。そのトップが「戦いは厳しい。ひょっとしたら敗北するかもしれない」と呟いたとする。軍関係者、側近たちはどのような反応をするだろうか。「大統領、大丈夫です。わが軍は必ず勝利します」と答えるだろうか、それとも「敗北した場合、われわれはどのようになるだろうか」といった後ろ向きの論議が飛び出すだろうか。
ウクライナのゼレンスキー大統領は7日、政府の資金集めイニシアチブであるユナイテッド24が主催したビデオ会議で、「米国からの更なる軍事援助がなければ、ウクライナは戦争に負けるだろう」と述べた。同大統領には「戦争に敗北する」といったシナリオはこれまでテーマにはならなかった。欧米諸国に武器の支援を要請する時も「戦いに勝つために・・」と説明するなど、強気を崩さなかった。その大統領が「米国の支援がなければ、ウクライナは敗北する」と嘆いたのだ。欧米諸国は大きな衝撃を受けている。
ゼレンスキー氏はオンラインネットワークで中継された演説で、「米議会の支援がなければ、われわれが勝利すること、さらには国として存続することさえ難しくなるだろう」と強調した。その上で「ウクライナが敗北すれば他の欧州諸国も(ロシア軍に)攻撃されるだろう」と警告している。
「戦略分析センター」議長の軍事専門家バルター・ファイヒティンガー氏は8日、ドイツ民間ニュース専門局ntvとのインタビューで、「大統領の表現は確かにドラマチックだが、内容自体は新しいことではない。ウクライナ戦争の勃発後、米国は欧州諸国と共にウクライナを支援してきた。最大支援国の米国が援助を止めた場合、ウクライナが厳しくなるのは明らかなことだ。ゼレンスキー氏はウクライナの戦場での現実を踏まえ、米国議会に再度、迅速な支援をアピールしただけだ」と解釈している。
米国に代わって欧州がウクライナ支援の主導権を握るという可能性について、同氏は「欧州諸国もウクライナ支援ではそれなりの役割を果たしているが、米国に代わることはできない」と説明、「欧州諸国は自国の軍事力をアップし、米国依存から抜け出すために努力しなければならない」という。
米議会の共和党は昨年以来、今年11月の再選を目指すドナルド・トランプ前米大統領の圧力を受けて、600億ドル(約550億ユーロ)相当の新たなウクライナ支援策を阻止してきた。目を戦場に移すと、ウクライナ軍はロシア軍の激しい攻勢を受け、守勢を強いられてきている。第26砲兵旅団のオレフ・カラシニコフ報道官は7日、ウクライナのテレビで、「激戦が続いているチャシフ・ヤル市付近の状況はかなり困難で緊張している」と証言している。
同時期、北大西洋条約機構軍(NATO)のストルテンベルグ事務総長はロシアと停戦交渉の可能性をもはや完全には排除しなくなった。同事務総長はこれまで「侵略国が報酬を受けるような和平交渉には絶対に応じるべきではない。和平交渉への条件はウクライナ側が決定することだ」と主張してきた。
ちなみに、紛争当事国が停戦や和平交渉に応じる場合、3通りの状況がある。1紛争国間の戦いが互角の場合、2紛争国の一方が圧倒的に強く、相手側を押している場合、3第3国が紛争国間の和平の調停に乗り出す場合だ。ウクライナ戦争の場合、昨年半ばまでは1だったが、現在はロシア側が戦場では有利に展開してきた。3の場合、米国、中国の2大国がウクライナとロシア間の和平交渉の調停役に乗り出すシナリオだ。
欧米の軍事専門家たちは「ロシア軍は今年5月以降から攻勢を再開する計画だから、その前の和平交渉は目下、考えられない」と見ている。「プーチン氏は国内の治安対策のためにも戦争が必要だ」というのだ。
ウクライナ戦争は長期化してきた。ロシア側だけではなく、ウクライナ側にも厭戦気分が漂ってきている。両軍とも兵力不足だ。ウクライナ側は動員年齢を下げる法令が採択されたばかりだ。ロシア側もこの夏以降、志願兵と新たな徴兵で兵力を増強する予定だ。戦時経済体制に再編したロシアには目下、武器、弾薬不足はないが、ウクライナ軍のフロントでは武器不足が深刻だ。
米紙「ワシントン・ポスト」によると、トランプ前米大統領が大統領選に勝利し、再選を果たした場合、ウクライナ側に圧力をかけ、領土の一部をロシア側に与え、迅速に和平を実現させるというのだ。ウクライナ国内ではトランプ氏の和平案に強い批判と反発の声が聞かれる一方、国力を削減する戦争を継続するゼレンスキー氏のリーダーシップに懐疑的な声も聞かれる。
いずれにしても、ゼレンスキー氏もプーチン氏も戦争の終結へのシナリオを描くことが出来ずにいる。その一方、両国国民の忍耐は次第に限界に近づいてきている。
●上川外務大臣「トルコなどの首脳と話してきて、日本への期待を感じました」 4/10
ウクライナ戦争、イスラエルとハマス等武装勢力との衝突、台湾問題…大きく揺れる世界情勢─。「いま世界は歴史の転換点にあるということを、外交の最前線に立ち日々実感している」と語るのは外務大臣の上川陽子氏。絡み合う国際情勢における日本の在り方について、「日米同盟を基軸にしながら途上国・新興国との連携を高め、そして国連を中心とした多国間主義で世界調和を目指すこと」が日本の基本スタンスであると国内外に強く訴える。世界平和への課題解決に向け日本に信頼と高い期待が寄せられる中、外交のあるべき姿とは─。
今後の日本の外交スタンス
── 世界はウクライナ、パレスチナにおける2つの戦争で、人々の混乱・分断の最中にあります。経済にも莫大な影響を及ぼしていますが、日本の外交の基本スタンスを聞かせてください。
上川 いま世界は歴史の転換点にあるということを、私は外交の最前線に立ち日々実感をしております。
冷戦終焉以降、グローバル化が進む中、開発途上国を含む国際社会に一定の安定と繁栄がもたらされましたが、まさにロシアによるウクライナの侵略は、これにあからさまな挑戦を突きつけたということであります。このロシアによる暴挙は、ポスト冷戦期の終焉を象徴するものと認識しています。
現下の国際情勢では、欧州・中東の地域、さらに東アジアの3地域のうち2つの地域において戦火が上がっている状況です。現在の国際社会において、この3地域は相互に複雑に絡み合っています。
東アジアの問題が欧州に影響を及ぼすのと同様に、ウクライナや中東の問題は遠く離れた場所での出来事ではなく、日本を含めた東アジアに影響を与える問題であると捉え、外交に臨んでいます。
日本外交が目指すのは、国際社会を協調に導くために、対話と協働を通じて、新たな解決策を共に創り出していくという「共創」です。
日本は、国の体制や価値観を超え、多様な国家が平和の中で共存共栄することができるように、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化を強く世界に訴え「人間の尊厳」を中心にした考えを打ち出しています。
── 具体的な行動としてはどう考えていますか。
上川 意識的に取り組んでいることは3つです。第1に日米同盟を基軸にしつつ、G7、日米韓、そして日米豪印といった同盟国・同志国との連携を深めていくこと。
第2は「グローバル・サウス」への関与強化。新興国、途上国、これをパートナーとして連携強化をし、国際社会を協調へと導きたいと考えています。オファー型協力などを駆使して、きめ細かな外交を展開し、国際社会の幅広い支持と協力を得ていく必要があると考えています。
第3は、国連を中核に据えた多国間主義の重視です。今回のウクライナ、中東情勢、北朝鮮の問題についても、国連を中心により機能を高め、改革を進めていくことが、日本の外交の方針です。
こうした考え方をもって、1月からの外交をよりギアを上げ取り組んでいる状況です。
── 11月のG7外相会合では議長をされましたが、手応えはどうでしたか。
上川 私自身これまでもG7や同志国と連携して、今後も強力な対ウクライナ支援の継続を一貫して訴えてきました。
会合でも今後も厳しい対ロ制裁と強力なウクライナ支援に取り組む姿勢は不変であると、G7各国と一致いたしました。
日本はウクライナと共にあるというこの姿勢は決して揺るがないということ。今般のキーウの訪問でもその姿勢を直接ウクライナ側に伝達し、国際社会に対し強いメッセージとして発信しました。
またウクライナ訪問の際には、ブチャの視察をし、女性やお子さんたちと直接話をする中で、WPS(Women, Peace and Security)という視点で取り組みが重要であるという認識を強くしたところです。
── ウクライナの経済復興に向けては何が望まれますか。
上川 これは民間企業の協力を得ることが極めて重要であると考えます。官民一体となった復旧復興を力強く推進したいと考えています。
同時に、これから開かれる「日・ウクライナ経済復興推進会議」は、支援に関する国際的な機運を盛り上げる機会として、避難民を受け入れたポーランドをはじめとする関係国や国際機関、また両国の関連企業、こういった方たちにも声を掛けて招待を行っていく考えです。
先般のウクライナ訪問時には、同会議の開催に向けて、シュミハリ首相とも具体的な意見交換も行わせていただき、民間セクターが関与する10本以上の協力文書に署名できるように取り組むことを伝達しました。
この会議の成果も踏まえて、引き続きウクライナに公正かつ永続的な平和を実現するべく、各国と連携しつつリーダーシップを発揮したいと考えています。
米との協力体制は…
── 今年は米選挙も行われますが、ウクライナ内政で米国との提携については?
上川 わが国は力による一方的な現状変更の試みを許さないというスタンスで、一日も早くロシアの侵略を止めるという立場に立っています。
先般、米国を訪問しブリンケン国務長官と会談した際にも、同長官との間でこの強力なウクライナ支援を継続していくという方針で一致をしました。
── トルコのエルドアン大統領とも会ってこられていますが、パレスチナ問題についてはどのようなスタンスですか。
上川 中東情勢については、日本のスタンスとして取り組んでいることは主に3つです。
1つは人道支援。そしてハマスのテロ攻撃については断固非難をいたします。攻撃から100日以上がたってもなお多数の人質の解放は実現していません。
同時にガザ地区では、連日にわたり多数の子どもたち、女性、高齢者の皆さんが亡くなっている状況です。その危機的な人道状況を深刻に懸念しています。
もう一つは、このガザの紛争が周辺の地域に波及することを絶対に避けなければいけないと考えています。このことについては、発生以来この周辺国あるいはG7と問題意識を共有して取り組んできました。
しかし残念ながら少し事態がそうした方向に傾きつつあることは非常に由々しき事態です。ホーシー派による紅海をはじめとするアラビア半島周辺海域において、航行の権利や自由を妨害する試みを断固非難をしております。
ガザの人道的な危機を一刻も早く終わらせるために何をすべきかについて、各国外相とは真剣に議論をし、共に取り組む決意を確認しています。
一連の訪問の成果も踏まえ、事態の早期沈静化、そして地域の安定化に向けて引き続き粘り強く積極的に取り組んでいきたいと考えています。
── 今回の訪問で様々な各国トップと対話する中で、各国からの日本への期待というのはかなり感じましたか。
上川 はい。今回そのことを一番強く感じて帰ってきました。日本に寄せる信頼と期待は強いものを感じました。
政治家を目指す原点
── 上川大臣が政治家を志す原点に米国留学時の経験があると聞いています。
上川 そうですね。米国にいたのは80年代で、日米関係が大摩擦の時でした。日本が『ジャパン・アズ・ナンバーワン』とエズラ・ヴォーゲルが表したあの時代に、日本の顔がなかなか見えにくいという状況を見まして、国益を守る、存在感を示す、発信型で積極的に、ということが課題であると。日本がもっとリーダーシップをとっていくことの重要性をその時にすごく感じたんですね。
また、各国の留学生と交流する中で、将来もしかしたら今まだそういう状況にないアジアの国々の人に、日本が取って代わられるかもしれないなという危機感を非常に強く感じたんです。
── 実際にGDP3位から4位に落ちていますね。
上川 数字だけではなく、実際にそのような国々のやる気、本気度ということをひしひしと感じ取りました。
日本は戦後、先人たちに頑張っていただいたことを持続する努力を惜しまずやらなければ、その延長線上に幸せや平和はあるものではないと。ですからいい時ほど注意深くやらないといけない。先のことを考えて、日本がどんどんと各国に抜かれていくリスクはやはりあるのではないかというのを緩みの中に見ました。
私自身も含めて戒めながら、しかし前に向かってどんどん攻めてぶつかって、挑戦していきたいなと思っています。
外務大臣として、これまで顔の見える日本≠ニいうことを意識して、積極的な発信をきちんと実行してきた点を、各国には支持をいただけたのではないかなと思います。
── 各国との対話の手応えは感じているということですね。
上川 はい。ものすごく大きな手応えがありました。各国から評価いただいたことを今後も大事にしていかなければいけないと思っています。
官民連携で世界に調和を
── 台湾総統選が1月に決まりましたが、中国は隣国として経済では切っても切れない関係、最大の貿易相手国です。外交を含め、今後の日中関係はどうあるべきだと考えますか。
上川 13日に行われた台湾総統選挙では頼清徳氏が選出をされました。私から、民主的な選挙が円滑に実施されたこと、そして頼氏の当選に対しまして祝意を表する談話を発表しました。
台湾はわが国にとって、基本的な価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人であります。
政府としては、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくとの立場を踏まえつつ、日台間の協力と交流のさらなる深化を図っていく考えです。
台湾をめぐる問題につきましては、対話により平和的に解決をされること、また地域の平和と安全に寄与することを期待するというのが、わが国の従来からの一貫した立場です。今後とも米国等の関係国とも緊密に意思疎通しつつ、状況の推移を注視してまいりたいと考えています。
日中関係については、日中両国間には様々な可能性と共に、数多くの課題や懸案があります。
わが国としては、「戦略的互恵関係」を包括的に推進すると共に、「建設的かつ安定的な関係」の構築を双方の努力で進めていく。この方針の下で引き続き中国との間で、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を図っていきたいと考えています。
── ウクライナ支援の中で民間企業との協力について触れていただいたが、企業へのメッセージはありますか。
上川 これまで、ウクライナ問題や開発途上国に対してODAを通じて、とりわけ企業の皆さんがそれぞれの地域で、例えばインフラ整備などを進んでやっていただいてきました。その中で、人材を養成しその国、地域、自らが自立することができるような支援をずっと続けてきたところであります。
そして、地球温暖化などの課題に対しても新しいエネルギーの開発、太陽光や風力、あるいは水素を使った社会システムの開発、温室効果ガス排出ネット・ゼロの組織をつくってゼロの運動が動いています。そこをやっていくためには、企業の力は不可欠であります。
DX・GXについては途上国も大変重要であると考えていますし、どの国も今それをめぐって科学技術の力をうまく生かして、これからの時代を切り開いていこうというところですので、ウクライナ・中東においても、新しい可能性とフロンティアがあることから、そういうものを一緒に取り組むことによって、平和と安定、繁栄がなし得ると強く思っています。
企業の皆さん、アカデミアも含めて積極的に持てる力を発揮していただいて、官民学連携で、新しい技術開発を一緒にするなど、様々なダイナミズムを興していくということが必要だと非常に強く感じています。
── 企業側も経済安全保障という概念をもって、経営をグローバル化しなければ存続できない時代ですので、官民一体というのは非常に大事ですね。最後に、上川大臣の座右の銘を聞かせてください。
上川 国会議員当選以来、「鵬程万里」という言葉を座右の銘としています。鳳は飛び立つと万里に向かってずっと飛び続けていく。高い理想を掲げて遠くを見つめるという事であります。
私は日々の外交活動において、日本外交への信頼や期待は非常に高いと実感しており、これに応えるため精力的に外交を率いてきました。
今年は3月に国連安保理議長として重要な責務も控えています。鵬程万里という言葉が示すとおり、自由で開かれた国際秩序を守り、平和を実現していくという高い理想を掲げ、様々な方面に目を配りながら指揮を執っていきたいと考えております。
●ロシア軍機が最前線でロケット弾攻撃始める 東部で新たな市街戦に突入か 4/10
ウクライナ空軍が昨年、より高性能な西側製防空兵器の配備を増やしたとき、ロシア側がとった対応は理にかなっていた。ロシア空軍はスホーイ戦闘爆撃機や攻撃機の武装を有翼の滑空爆弾に変更し、目標から最大40km離れた場所から攻撃できるようにした。これくらい離れていれば多くの防空兵器の射程圏外になる。
だが昨年10月、ウクライナへの米国の追加支援がロシアに融和的な米下院議員たちの手で阻まれると、ウクライナ軍の防空部隊は対空ミサイルが不足し始めた。
現在、ロシア空軍のスホーイの一部はもっと前線近くまで出てきて、射程40kmの滑空爆弾ではなく短距離ロケット弾で攻撃するようになっている。
ロシア軍が占領しているウクライナ東部ドネツク州バフムートのすぐ西にあるウクライナ側の拠点、チャシウヤール市の外れで最近あった激しい戦闘を撮影したドローン(無人機)の映像には、ロシア空軍のスホーイSu-25攻撃機4機が低空飛行しながら、ウクライナ側の陣地をわずか数km先からS-8ロケット弾で攻撃する様子が映っている。
別の映像では、ロシア軍機のパイロットがウクライナ側の携行式対空ミサイルに備えてフレア(赤外線誘導ミサイルを欺くための熱源となるおとり)を発射しているが、これは不要だった。地上からミサイルは飛んできていない。
ロシア軍はチャシウヤールに対する空襲を通じて、ウクライナ軍の第67独立機械化旅団や近傍の第23歩兵大隊など、この都市の守備隊への圧力を強めている。
ロシア軍は4日から5日にかけて、市郊外に配置されている第23歩兵大隊の陣地に突撃を繰り返した。例によって大きな損害を被りながらも、少なくとも少数の部隊が市の最も外側を走るゼレナ通り沿いに陣取った。ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)は5日の戦況評価で「チャシウヤールで近く市街戦が始まるかもしれない」と分析している。
チャシウヤールの守備隊を悩ませている最大の問題は砲弾不足で、これに関しては欧州の支援諸国が解決に奔走している。ただ、対空ミサイル不足もそれに次いで大きな問題だ。
「このままではミサイルが枯渇」とゼレンスキー大統領も訴え
前線で対空ミサイルが足りていないのは、ロシア側がウクライナの大都市に対する空襲を激化させているため、ウクライナ軍の防空部隊は最良の防空兵器をこれらの都市周辺に配置せざるを得なくなっているからだ。その結果、前線の防空に隙が生まれていて、ロシア空軍はその隙を突いている。
対空ミサイルがさらに減っていけば隙はますます広がるだろう。ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は先週末、「彼ら(ロシア)が過去1カ月してきたような攻撃を今後も毎日続ければ、われわれはミサイルが足りなくなるおそれがある」と訴えた。
米共和党のマイク・ジョンソン下院議長は、ウクライナへの新たな支援を手当てする予算法案について、遅ればせながら月内にも採決を行う意向を示している。可決されれば、米国防総省はチャシウヤールをはじめ、ウクライナの前線でロシア側の猛攻を受ける都市に対空ミサイルをもっと届けられるようになるはずだ。
ウクライナはその間、ロシア軍のスホーイを空中で迎撃するのではなく、ロシア国内の基地で地上にいるところを攻撃するという仕方で反撃を試みている。
ウクライナのドローン(無人機)は5日、ロシアの航空基地4カ所を一斉に攻撃した。うち1カ所はチャシウヤールから南へ200kmあまり離れたロシア南部クラスノダール地方のエイスクにある基地で、ここはSu-25の出撃拠点になっている。
このドローン攻撃でロシア軍機が損傷したり、破壊されたりしたのかは現時点ではっきりしない。それでも、最も必要とする兵器が届くまでの間、ウクライナ軍が手元にある兵器で反撃しようとしているのは確かだ。
●ロシア飛び地のバルト海、露海軍でミサイル艦が火災…作戦を実施した結果とウクライナ国防省 4/10
ウクライナ国防省情報総局は8日、欧州にあるロシア領の飛び地カリーニングラード州の露海軍基地で7日、バルト艦隊のミサイル艦「セルプホフ」で火災が発生し、通信機器などが破壊されたとSNSで発表した。同総局は英字ニュースサイト「キーウ・インディペンデント」に作戦を実施した結果だと認めた。ウクライナによるバルト海の露海軍への攻撃は初めて。
ポーランドとリトアニアに挟まれたカリーニングラードは露海軍のバルト艦隊の拠点で、ロシアは戦略的に重視している。ウクライナ国防省情報総局はSNSで、同州バルチースクの海軍基地で、ミサイル艦が火災を起こしている様子を映した動画を投稿した。
一方、ロイター通信によると、ウクライナ側は9日、露南部ボロネジ州にある航空機の修理を行う施設も無人機で攻撃した。ロシア領内の軍事関連施設などへの攻撃を強化している。
●ウクライナ、ロシア南西部の航空機工場攻撃=ウクライナ情報筋 4/10
ロシアのボロネジ州にある航空機工場の主要生産施設がウクライナ国防省情報総局(GUR)による攻撃を受けた。ウクライナの情報筋がロイターに語った。
ロシア国防省は、9日午前、同地域上空でドローン2機を撃墜したと発表した。同州ボリソグレブスク市の第711航空修理工場が攻撃を受けたもようだが、詳しい被害の規模については明らかにされていない。
今回攻撃の対象となったボリソグレブスク市は、北東部の前線から350キロ以上離れた場所に位置する。
●ウクライナで民間人死傷者が2割増、子どもは倍増…教育施設やインフラ攻撃 4/10
ロシアの侵略を受けるウクライナで活動する国連の人権監視団は9日、ウクライナで3月に戦闘に関連して死傷した民間人が、前月比20%増の604人に上ったと明らかにした。このうち、子どもが57人を占め、前月から倍増したとしている。
6日、ウクライナ東部ハルキウでロシアによる砲撃があり、数人が死亡した現場を調べる軍の専門家=AP
監視団は、露軍のミサイルや無人機を使った攻撃の強化や、破壊力の強い滑空爆弾の多用を主な要因として指摘している。教育施設やインフラ(社会基盤)などに対する露軍の攻撃で多くの被害が発生しているという。
ウクライナの防空ミサイルが不足していると指摘されており、米欧のウクライナへの支援停滞が民間人の犠牲拡大を招いている面もある。
●米、ウクライナへミサイル部品 売却承認、没収のイラン武器も 4/10
米政府は9日、ウクライナに提供した地対空ミサイル「ホーク」の機能強化に向け、1億3800万ドル(約209億円)相当の部品をウクライナへ売却することを承認し、議会に通知した。ロシアによるミサイルや無人機の攻撃が激しくなり、防空態勢強化が課題になっていた。
米中央軍は9日、米政府がイランから没収した武器もウクライナに提供することを明らかにした。2021年5月から23年2月にかけ、イラン革命防衛隊がイエメンの親イラン武装組織フーシ派に船で引き渡そうとする途中で、中央軍などが押収していた。5千丁以上の自動小銃AK47や弾薬50万発などが含まれる。 
●ロシアとカザフで大規模洪水 ダム決壊、2万人が避難 4/10
ロシア南部とカザフスタン北部で大規模な洪水が発生し、10日までにロシアで約1万2千人、カザフでは約1万人が避難を強いられた。タス通信などが報じた。
ロシア南部オレンブルク州オルスク市で5日、春の雪解け水で増水したウラル川のダムが決壊。市内の広範囲が水没した。同州内では10日までに7700人以上が避難。ロシア紙ベドモスチは同州では過去100年で最悪の洪水だと伝えた。クルガン州では10日までに約4500人が避難。チュメニ州などでも被害が出た。
カザフではロシア国境の北部各州で洪水が発生。ロシアのプーチン大統領とカザフのトカエフ大統領は9日に電話会談し、洪水対策での協力を協議した。
 4/11-4/20

 

●大統領選圧勝でも消えない「プーチン影武者説」 背後で囁かれる2つの謀略 4/11
3月のロシア大統領選で5選を決めたウラジーミル・プーチン氏(71)が独裁体制の強固さを印象付ける一方、実は、大統領は昨秋に死去しており、側近陣の企みで大統領の影武者が本物になりすまし国民を欺いている――との前提に立つSNSメディア情報が執拗に流れ続け、主に知識層に困惑を広げている。奇怪なのは、“プーチン死後の世界”を現実として喧伝する発信が政権から弾圧されることもなく行われ、その背後に有力な黒幕の存在がチラつくことだ。帝位継承者などを騙る「僭称者」が頻出した伝統を持つ露社会の歴史トラウマを逆手に取った、反プーチン派の謀略であるとの疑いさえ囁かれる。
“プーチン死後の世界”の到来を喧伝する発信源は、露対外情報庁(SVR)の高官OBが主宰するという触れ込みのSNSメディア「SVR将軍」と、クレムリン内の権力集団の後ろ盾を持つと公言する政治学者ワレリー・ソロヴェイ博士。SVR将軍もソロヴェイ博士も、特に、昨年10月末、プーチン大統領が末期ガンなどの闘病の末に死去した、との情報を発信したため、欧米日を含む世界各国のメディアからの注目度が高まった。
プーチン死亡情報以降も、政権ナンバー2であるニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記(72)らプーチン側近の意向により「ベラルーシ出身の大工で海兵隊の軍歴を持つ影武者」が整形手術を受け大統領の代役を演じている、との設定で、“プーチン死後のクレムリンの内情”などに関する発信を日常的に続けている。例えば、3月18日配信の「SVR将軍」は、同月15〜17日投票の大統領選で圧勝したのは「プーチンと称される某人物」つまり影武者であり、「偽大統領選の終了は、ロシア権力機構の深刻な危機の始まりに過ぎない」と、“プーチン死後”の真の権力をめぐるクレムリン派閥抗争の激化を予測した。 ・・・
●南部オデーサにミサイル攻撃、子供含む4人死亡 解放80周年の記念日に 4/11
ウクライナ南部オデーサ州で10日、ロシアによるミサイル攻撃があり、10歳の少女を含む4人が殺害された。
オレフ・キペル知事によると、他に7人が負傷し、うち1人は両脚切断となった。また、交通インフラに被害が出たという。
攻撃は10日午後6時から6時半の間にあり、弾道ミサイルが飛来した。何発だったのかは明らかにしていない。
この日は、オデーサが第2次世界大戦でナチスドイツから解放されて80周年の記念日に当たっていた。
ロシアはこのところ、ウクライナのエネルギー部門を狙った攻撃を続けている。
ウクライナ当局はロシア軍について、ミサイル攻撃の後、被弾した人々の救助に向かった人々を狙って2回目の攻撃を行う「ダブルタップ戦術」をとっていると非難している。
同日には北東部ハルキウ州でも、ロシアの攻撃で3人が殺されたと当局が発表した。
ハルキウ州への攻撃では、リプツィ村の薬局にミサイルが当たり、14歳の少女が殺されたと、オレフ・シネフボウ知事が発表した。
ロシアとの国境に近いハルキウ市では、ここ数週間で攻撃が激化している。
ウクライナ当局は、同市が今後、ロシアの攻撃の標的になるかもしれないとみている。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2022年2月に本格的なウクライナ侵攻を開始して以来、同国第2の都市であるハルキウは、数カ月にわたるロシアの砲撃で甚大な被害を受けている。
ウクライナはここ数カ月、戦場で挫折を味わっている。
ウクライナ軍は弾薬不足に陥っており、アメリカの重要な支援は、連邦議会でドナルド・トランプ前大統領の支持者によって保留されている。
米下院のマイク・ジョンソン議長は、ウクライナに600億ドル(約9兆900億円)の軍事援助を行う法案の採決を拒否し続けている。
アメリカのクリストファー・カヴォリ北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍最高司令官は10日に連邦議会で、アメリカの支援がなければウクライナは「かなり短期間で」砲弾と防空迎撃ミサイルを使い果たすだろうと語った。
カヴォリ司令官によると、ロシアは現在、ウクライナ軍が1発砲弾を発射するごとに5発の砲弾を発射している計算になる。この比率は近く1発対10発になる可能性があるという。
「我々の支援なしには、ウクライナ軍は勝てないだろう」と、同司令官は語った。
●ウラル川氾濫、ロシアとカザフで大洪水 10万人超が避難、状況さらに悪化か 4/11
欧州で3番目に長いウラル川が氾濫(はんらん)して大規模な洪水が発生し、ロシア南部と隣国カザフスタンで10万人以上が避難を強いられている。ロシアでは政府や自治体に対する抗議運動が巻き起こった。
ロシアのウラル山脈からカザフスタンを通ってカスピ海に注ぐウラル川は、雪解けのために増水し、両国の国境地域で堤防が決壊した。
カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領はこの洪水について、「規模や被害の大きさからみて80年以上ぶりの災害になるかもしれない」と語った。
地元当局が10日に明らかにしたところによると、ロシアのオレンブルク州では住宅など約1万3000棟が浸水し、7700人あまりが避難した。オレンブルク市の水位は996センチに達し、基準値の930センチを大幅に超えている。
ロシア政府のドミトリー・ぺスコフ報道官は10日、「予報は芳しくない。洪水の被災地では水位が上昇し続けている」と記者団に語った。
ロシア政府によると、ウラジーミル・プーチン大統領は大きな被害が出ているオレンブルク、クルガン、チュメニの3州の知事から10日に報告を受ける予定。クルガン州知事は、11日から14日にかけ、同地に大量の水が押し寄せる見通しだとして危機感を強めている。報道官によると、プーチン大統領が現地を訪れる予定はない。
住民は繰り返し大統領に支援を要請。SNSに投稿された動画には、オレンブルク州オルスクの市役所前で行われた抗議集会に数百人が集まって「プーチン、ヘルプ!」などと叫ぶ様子が映っていた。
隣国カザフスタンでは、政府の発表で9万6000人あまりが避難している。約3000人は浸水した地域から航空機で救出され、7600人あまりが仮設の避難所に身を寄せている。
●ロシア、カザフスタンで大規模洪水 10万人以上が避難 「過去100年で最悪」 4/11
ロシアとカザフスタンで雪解け水で川が増水するなどして大規模な洪水が発生し、両国で10万人以上が避難を強いられています。
ロシア南部オレンブルク州のオルスクで5日、雪解け水によって増水したウラル川の堤防が決壊。大規模な洪水が発生し、市内の広い範囲が水没しました。
オレンブルク州では10日までに7700人以上が避難し、ロシアメディアは「過去100年で最悪の洪水」だとしています。
また、ロシアと国境を接するカザフスタン北部でも洪水が発生していて、これまでに9万6000人以上が避難したとしています。
プーチン大統領とカザフスタンのトカエフ大統領は9日、電話会談を行い、洪水対策について協議を行いました。
被害地域周辺では10日に強い雨が降り、川の水位上昇がみられていて、被害拡大を懸念する声も出ています。
●ロシア反政権活動家の釈放要求 英外相、プーチン氏批判 4/11
キャメロン英外相は11日、ロシアの国家反逆罪などで懲役25年の実刑判決を受けた反政権活動家で、英国籍も持つウラジーミル・カラムルザ氏の即時釈放を要求した。逮捕から2年の節目に合わせて声明を発表し、ロシアのプーチン大統領の対応を批判した。
ジャーナリストでもあるカラムルザ氏は2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻を公然と批判し、軍に関する虚偽情報を拡散したなどとして逮捕、起訴された。
キャメロン氏は、プーチン氏が「カラムルザ氏を黙らせるために拘束した」と非難。「カラムルザ氏は刑務所内で非人道的な状況に置かれている」と懸念し、政治犯に対する「ロシアの下劣な対応を終わらせなければならない」と訴えた。
●プーチン氏、モスクワ襲撃「ウクライナ関与」主張 「敵意あおる」愚かさ 4/11
プーチン氏が5選を決めたロシア大統領選から5日後、モスクワ郊外で起きた襲撃事件。 過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出す中、ウクライナの関与を主張するロシア。愚かな思惑が透けて見える。
事件後、プーチン氏が初めて国民向けの動画で見解を示したのは、発生から19時間後のことだ。過激派組織「イスラム国」(IS)の犯行声明には触れずに、4人の容疑者について、以下のように語った。
「彼らは逃げてウクライナに向かおうとしていた。現時点での情報では、ウクライナ側は、彼らが国境を越えるための『窓』を用意していた」
プーチン氏がイスラム過激派による犯行だと認めたのは、事件から3日後の25日のことだった。それでもプーチン氏はISの犯行とは認めず、ウクライナ関与説を繰り返した。
「我々が関心を抱くのは、誰が犯行を依頼したかだ」
「これは誰の利益になるだろうか? この残虐な行為は、ネオナチであるウクライナ政権の手を使って2014年から我々と戦っている者による一連の試みのひとつではないか」
欧米がウクライナを利用してロシアを攻撃しており、ロシアは国を守るためにやむを得ず対抗しているというのは、ウクライナ侵略を正当化するためにプーチン氏が繰り出している理屈そのものだ。
ロシアにとって真の脅威を見誤った失態から国民の目をそらすだけでなく、それを逆手にとって戦争遂行を正当化するために利用しようとしているとしか思えない。
そもそもウクライナは、ISなどイスラム系の過激派から見ればロシアと同じ異教徒の国であり、敵視すべき相手だ。さらにガザ危機では、いち早くイスラエル支持を強く打ち出した。そんなウクライナから指示されてイスラム過激派が行動するという構図自体、無理がある。
アフガニスタンやチェチェンを舞台に、長期にわたって戦闘や政治工作の経験を積んできたロシアには、欧米も及ばないようなイスラム過激派の動向についての深く広い知見がある。今回のテロの真の構図を理解していないはずはないだろう。
衝撃受けるロシア市民
それでも、その後のロシアでは、何の根拠も示さないまま、プーチン氏の言説に沿った主張や報道が繰り返されている。
プーチン氏の側近で、国家安全保障会議の書記を務めるパトルシェフ氏は、ISとウクライナのどちらがテロに責任があるのかを問われて「もちろんウクライナだ」と即答した。
国内の治安対策に責任を負うロシア連邦保安庁(FSB)のボルトニコフ長官は、事件の背後に米英やウクライナがいたのかと問われて「我々はそう考えている」と語った。
今回のテロにロシアの人々は強い衝撃を受け、深い悲しみと怒りに包まれている。そうした感情をウクライナの人々に向けようとするロシアの言説は、極めて卑劣な世論誘導だ。
ロシア国防省は4月3日、事件後の10日間に、ウクライナでの軍事作戦に参加するために1万6千人が志願兵としての契約を結び、そのほとんどがモスクワ郊外で起きたテロの「犠牲者のあだ討ち」を志願動機に挙げたと発表した。
これがどこまで事実を反映しているかは不明だが、ウクライナへの敵意をあおり、それを戦争継続の原動力にしようとしていることだけは確かだ。
ウクライナの人々を殺戮(さつりく)するだけでなく、自国民まで欺いて、双方に互いへの敵意を植え付ける現状は、ロシアの侵略戦争の名状しがたい愚かさを浮き彫りにしている。
●ロシアに無知だったEUはソ連のように自壊する 4/11
チルチルとミチルの『青い鳥』で有名なベルギーのメーテルリンク(1862〜1949年)の戯曲に『盲目の人たち』(Les Aveugles)という作品がある。その1つは、こういう話だ。
ある盲目の老人が、「誰か部屋に来ていないか?」と何度も部屋の中の人たちに尋ねるのだが、そこにいるすべてのものが、「いや誰も来ていない」と答える。老人は、いや部屋には誰かいると不安げに何度も問いかけるが、また「誰もいない」と答える。
メーテルリンクの戯曲『盲目の人たち』
老人は娘の死の予感に苛まれ、誰か知らせに来ていないかと尋ねたのである。結局、老人の予感通り、それから数時間後、娘の死を知らせに1人の人物が現れる。
フランスで、シルヴィー・カウフマンという女性ジャーナリストが書いた『盲目にされた人たち―ベルリンとパリはなぜロシアに道を自由に開いたのか』(Les Aveuglés,Stock,2024)という本が、2024年初めにフランスでちょっと話題になった。
この本の主題は、この盲目の老人のように不安にならずに、「ロシアがヨーロッパに攻めてくる」などという予感を誰も感じなかったのはなぜか、という話だ。
本書はゴルバチョフ時代の1986年、反体制理論物理学者でノーベル賞受賞者のサハロフ博士が、流刑されていたゴーリキー市(現在のニジノノブゴロド市)から釈放されるところから始まる。
それからソ連の崩壊、そしてロシアの成立の時代が来る。その後のロシアは「西欧に近づき、西欧化するものだ」という予感に、ヨーロッパは満ちあふれていた。
ところが、実際のロシアはどんどん西欧の期待を裏切っていく。西欧は、ソ連崩壊と東欧のヨーロッパ化のユーフォリア(幸福感)に包まれた中で、ロシアが西欧に「われわれはヨーロッパではない」という最後通告を突きつけることに、誰も気づかなかったという内容が記されている。
一方で、2024年2月にアメリカFOXニュースの名物アンカーであるカールソンがプーチン大統領にインタビューしたときの内容をこの書物と照らし合わせてみると、話はまったく逆になっているのだ。
フランスのジャーナリスト、シルヴィー・カウフマンの著書『Les Aveuglés』
プーチンは、アイルランド出身の劇作家・小説家のサムエル・ベケット(1906〜1989年)が書いた『ゴドーを待ちながら』よろしく、ヨーロッパからの招待状を待っていたのだが、待ち人はとうとう来なかったというのである。
決定的な分かれ目は、2008年4月にブカレストで行われたNATO(北大西洋条約機構)首脳会議だという。西欧はプーチンのロシアに配慮しすぎ、ロシアが次第に反撃に出てくることに気づかず、ウクライナ問題について甘い判断をしてしまったのだという。
ロシア脅威論からロシアへの恐怖論へ
2024年になってウクライナの敗北が確かなものになり、ロシアの軍事力の強さが明らかになるにつれ、ロシア脅威論が再出現した。そして次第にそれは「ロシアへの恐怖」という形に変わりつつある。
それまでNATOの主役だったアメリカやイギリスが、ウクライナ戦争の後方に退き、フランスがウクライナ支援の矢面に立ちつつある。フランスはすでにオデッサ(オデーサ)や、前線に兵士を送り戦争への参加を決めているともいわれる。
歴史を振り返ると、1814年4月、ナポレオンを追ってロシア軍がパリに出現したとき、それまで漠然とあったにすぎないロシア脅威論が一気に現実のものへと変わった。フランスやドイツに残る「野蛮なコサック人」という話は、このときのロシア兵の傍若無人ぶりを表現する伝説的な話でもある。
これは、ときにはタタール人、そして13世紀にヨーロッパへ侵攻したモンゴル人の脅威へと組み替えられ、やがてアジア人という黄色人種への脅威、黄禍論へと変貌していく。
1812年のナポレオン侵攻当時、「ロシア人は最初から侵略的民族だ」とする内容の『ピョートル大帝の遺書』という書物が出され、後にこれは偽書であることが判明した。(『ピョートル大帝の遺書』については、2023年5月10日「ウクライナ戦争の停戦を邪魔する西欧のロシア観」を参照)
しかしこの偽書の内容が真実味を持ったのも、欧州がロシアに対して上記のような見方をしていたことが背景にあったためだ。しかし、ロシア軍がフランスになだれ込む原因をつくったのはフランス・ナポレオンのロシアへの侵略(フランスから見れば解放なのだが)だったことは、この話から完全に忘れられている。
ロシアから見れば、侵略的民族はフランス人、そして第2次世界大戦で攻めてきたドイツ人のほうであり、ロシア人ではないのだ。
皮肉な話だが、ヨーロッパとりわけ西欧が、西欧というアイデンティティーを持ち得たのは、このロシア脅威論があったからだともいえる。
ヨーロッパのロシアへの脅威は、自由と民主主義のヨーロッパという一種の信念によって、野蛮な民族から民主主義と人権という西欧がもたらした普遍的文明を守るという、ヨーロッパ人の自負とあいまって、ヨーロッパ中心主義を形成した。それがヨーロッパは統合すべきというEU(欧州連合)を生み出す力になったともいえるのである。
「西欧の統一」とロシアの脅威
ロシアの脅威がツァー体制として存在していた19世紀、共産主義のソ連として存在していた20世紀、それに対抗する西欧の統一というアイデンティティーは、あえて問う必要もないほど、確かなものに見えた。
ところが1991年のソ連邦崩壊、そしてその後のロシアのヨーロッパ接近とEUの拡大によって、ヨーロッパは末広がりとなりながら、ヨーロッパたる求心力を次第に失っていったのである。それは、ロシアという敵がいなくなったことで、自らのアイデンティティーが失われたからだ。
もしロシアがNATOそしてEUに入っていたらどうなっていたであろう。ヨーロッパがロシア人を「文明化し」、西欧の高みにまで引き上げていたら、そのときヨーロッパ人であることの意味は失われていたかもしれない。
ロシアが脅威であることにヨーロッパが気づかなかったのではない。脅威でなくなることを恐れたのである。
ロシアの脅威がなくなると、ヨーロッパはヨーロッパを1つにしていた「民主主義と人権」という意識を失うことになる。反面教師という言葉があるが、ヨーロッパはロシアを民主主義と人権の反面教師とみなすことで、つねに自らを振り返る鏡のような役割を求めていたのである。
だからロシアをヨーロッパの外に置くことを決めたのは、ロシアではなくヨーロッパなのだ。ロシアを脅威にしているのは、ロシア人ではなくヨーロッパ人である。だからこそ、ヨーロッパに入れてもらえると期待していたのに、それが実現できなかったことを嘆くのは、ロシア人のほうかもしれない。期待した「待ち人」は来なかったのである。
ロシアという脅威は、ロシアという地域に存在しているだけではない。ヨーロッパからすれば、ロシア以外にも中国、インド、中東などという「別のロシア」が存在している。もし、ロシアがEUやNATOに入っていたら、中国という次なるロシアを見つけねばならないはずだ。
ロシアを文明化した後は中国、中国を文明化した後はインドといった具合に、世界を西欧文明に巻き込み、その価値観を押しつけ続けるしかない。幸いにも彼らが抵抗してくれれば、それらの地域を野蛮な帝国と位置づけ、聖戦として戦うことで、ヨーロッパのアイデンティティーを確認すればいい。
ウクライナよりEUが崩壊する?
とはいえ、文明は1つではないし、歴史も1つの方向に進むものではない。西欧文明はあくまで西欧文明なのである。ロシアは西欧文明ではない。いわんや中国やインドは西欧文明ではない。それでいいのだ。
そうした伝統ある文明は、太陽系の中心の太陽のようにまわりの周辺文明を引きつける。だからそうした文明に挑戦すれば、やがてはその引力に引き寄せられ、引き裂かれて、その系の一惑星になる可能性がある。
ウクライナ戦争が始まったとき、まさにロシアという敵が出現したことで、米欧諸国は1つに団結できた。政府もマスコミもこぞってロシアを悪役としてあぶり出し、正義の同盟としてのNATOを鼓舞した。
しかし、西欧にとってロシアという敵は、本当はロシアだけではなく、「野蛮な」アジアやアフリカ諸国であることを知ったアジア・アフリカ諸国の多くは、NATOの側ではなくロシアの側に立ったのである。
そうした問題が起きれば起きるほど、西欧の団結よりもアジア・アフリカ諸国の団結が力を得てくる。そうした状況の中、西欧諸国の中には不安を持つ国が出てきている。
とりわけ少し前までソ連の衛星国であり野蛮の象徴であった東欧諸国は、1989年以降の西欧に引き寄せられた歴史を思い起こすはずだ。西欧諸国にとって東欧諸国は西欧の周辺諸国にしかすぎず、捨て駒なのだ。自らもウクライナになる可能性があるのだ。
今ここで西欧が再びロシア脅威論を声高に叫んでいるのは、ヨーロッパの中で起こりつつある仲間割れを防ぐためかもしれない。ウクライナはもうもたないであろう。すでに、インフラ設備は破壊され、電気もガスもない状態だ。戦える状態ではない。
しかし、その死に体のウクライナを支援し戦争を継続させるとすれば、ウクライナの消滅だけで済まなくなる可能性もある。EUの中でも、民衆と政治権力を握る特権エリートとの対立が起きている。まして戦争に加担するとすれば、EU諸国の民衆も黙っていないだろう。
大きな文明は周辺文明を引き寄せると述べたが、ロシア文明と中東文明は過去の2世紀の間、太陽の役割を果たしてきたヨーロッパ文明を引き寄せ、こなごなにするかもしれないのである。歴史を見れば、その可能性は強い。
崩壊するのは、EUかもしれないのだ。それは、ロシアによるというよりは、自壊といったほうがいいかもしれない。ソ連が自壊したように、EUも自壊していくのかもしれない。
●欧州第一審裁、EUの制裁措置を取り消す判決 オリガルヒ2人に対し 4/11
欧州第一審裁判所は10日、欧州連合(EU)がロシアのオリガルヒ(新興財閥)2人に対してとっている制裁措置を取り消す判決を言い渡した。制裁はロシアによるウクライナへの全面侵攻を受けたものだったが、原告が「根拠がない」として提訴していた。
原告はロシア最大の複合企業「アルファ・グループ」の共同創設者のミハイル・フリードマン氏と、グループ傘下の「アルファバンク」元頭取のピョートル・アーベン氏。2022年2月の全面侵攻を受けて、EUは「ロシアの意思決定者に金銭などを提供し、ウクライナの領土保全や主権を脅かす手助けをした」として、両氏を制裁リストに加えた。
制裁リストに載ると、EU域内にある資産は凍結され、EU 加盟国への入国もできなくなる。
しかし両氏は「EU側が示した制裁の根拠は、信頼できるものではない」と主張。裁判所は「EUの根拠は、両氏がプーチン大統領やその側近とある程度近い関係であることは立証した」とした一方で、「クリミア併合やウクライナの不安定化を進める意思決定者に物質的、経済的な支援をしたことまで示すものではない」として原告の主張を支持した。
EUは現在、ウクライナ侵攻に関わったとして、2千以上の個人や団体を制裁リストに加えている。
●ロシア富豪フリードマンとアベン、EU裁判で勝訴 制裁は不当 4/11
ロシアの大富豪ミハイル・フリードマンとピョートル・アベンが欧州連合(EU)による制裁は不当だと訴えていた裁判で、EU司法裁判所は10日、両者の訴えを支持する判決を下した。
裁判所は、フリードマンとアベンがロシアのウラジーミル・プーチン大統領やその他の政府高官らと結び付いていることを示す証拠はあるものの、これらの関係から「利益を得た」かについては証拠が不十分だと判断した。
同裁判所は、フリードマンとアベンを2022年2月〜23年3月のEUの制裁対象リストから除外するよう命じた。だが、EUは先月、制裁を6カ月間延長する決定を下したため、両者は依然制裁下にある。
ロシア国営タス通信は、同国大統領府(クレムリン)のドミトリー・ペスコフ報道官がこの判決を歓迎し、ロシア政府は、欧米の制裁はすべて「違法で不公平であり、破壊的」だと見なしていると述べたと伝えた。
一方、2月に獄中で死亡したロシアの野党指導者アレクセイ・ナワリヌイの側近レオニード・ボルコフは、フリードマンもアベンもこれまで「一度も公の場で戦争に反対する発言をしておらず、プーチンと対立したこともない」と指摘。EUの裁判所は「すべてお膳立てされた状態で、単に両者の望みを叶えただけだ」と批判した。
フリードマンとアベンは、先月EUが承認した制裁措置の延長を不服として上訴した。英ロイター通信が引用した裁判所の広報官によると、審理には数カ月かかるものとみられる。
フォーブスは、ロシア最大の非国営銀行アリファ銀行を設立したフリードマンの資産価値を131億ドル(約2兆円)と見積もっている。アリファ銀行を共同で所有するアベンは、43億ドル(約6600億円)相当の資産を保有している。
西側諸国は2022年のウクライナ侵攻開始以降、プーチン大統領やロシア政府と結び付いているとして、同国の複数の実業家や新興財閥オリガルヒに厳しい制裁を科している。フリードマンとアベンはEUのほか、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、米国、英国から制裁を受けており、これらの国では許可がない限り、資産の売却や譲渡を禁じられている。
ウクライナ出身のフリードマンは、ロシアによる軍事侵攻を「悲劇」と表現し、「戦争は決して答えにはなり得ない」と非難した。他方で、プーチン大統領を直接批判はしていない。
公認マネーロンダリング防止専門家協会(ACAMS)のジョージ・ボロシンは米紙ウォールストリートジャーナルの取材で、制裁はプーチン大統領に直接結び付くわけではなく、象徴的なものに過ぎないため、政策の観点から見ればあまり効果的ではないとの見解を示した。また、制裁は実業家を刺激し、ロシア政府に対する支援を強めるだけだと指摘する専門家もいる。
●ウクライナ大統領、トランプ氏の終戦案に「喜んで」耳を傾ける 4/11
ウクライナのゼレンスキー大統領は10日、ギリシャで開催中のデルフィ経済フォーラムでインタビューに応じ、トランプ前米大統領の終戦案に「喜んで」耳を傾ける考えを示した。一方で、この問題に慎重に対応する姿勢も示した。
報道によれば、これより前、トランプ氏は大統領に再選された場合、ウクライナに圧力をかけてロシアとの和平を実現すると表明。この過程でウクライナは領土を割譲することになるとの見通しを示していた。
ウクライナから動画でCNN特派員のインタビューに応じたゼレンスキー氏は、「まず何より、一連のシグナルは特定のメディアで発せられたものだ。トランプ氏から直接聞いたわけではない」と指摘。「トランプ氏と案について詳しく協議する機会はなかったし、戦争を終結に導く方法について協議したこともない」と明らかにした。
そのうえで「そうした機会があれば喜んで耳を傾ける。その後ならこのテーマについて協議できるようになる」と言い添えた。
デルフィ経済フォーラムでの発言に先立ち、ゼレンスキー氏はドイツ紙ビルトにトランプ氏をウクライナに招待したことを明らかにし、「自らの目で全てを見て、自分で結論を出してほしい」と述べていた。トランプ氏は招待の受け入れに関心がある旨を内々に伝えてきたという。
一方、トランプ陣営は10日、ゼレンスキー氏の発言は「不正確」だとして反論した。
トランプ陣営の関係者はCNNに対し、「ゼレンスキー氏からの打診はない。トランプ氏は最高司令官ではないため、現時点でウクライナを訪問するのは適切ではない」としている。
●ゼレンスキー氏、トランプ氏の領土割譲での終戦構想を「原始的な考え」と拒否 4/11
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は9日、米国のトランプ前大統領が11月の大統領選に当選した場合、ウクライナが領土の一部をロシア側に割譲する案で終戦させる構想があるとの報道を巡り「原始的な考えだ」と述べ、拒否する意向を示した。米政治専門紙ポリティコ(電子版)のインタビューで明らかにした。
ウクライナの領土を割譲すれば、露側のさらなる侵略戦争に道を開くだけだとゼレンスキー氏は指摘した。交渉による和平については、プーチン露大統領に「(侵略の)計画を完遂する余地を与えない」ものでなければならないと強調した。
ゼレンスキー氏は、仲介者を通じてトランプ氏をウクライナに招く意向を伝えたところ、同氏が関心を示したことも明らかにした。
●ウクライナ支援が台湾と韓国の議会を親中派に献上した 4/11
ウクライナ戦争での無計画なウクライナ支援が、台湾と韓国の国会の多数を親中派に差し出し、日本も風前の灯火だ。
韓国総選挙は三日前に予想したとおり、野党の大勝となったようだ。ずっと野党優位だったのが3月には与党優位に一時的に転じたのが、再逆転した。
逆転の原因は、美貌の大統領夫人と前国防相の国外逃亡(訴追されているのに大使に任命されて逃亡)、物価高などだ。系列政党を加えると憲法改正にもう一息の三分二近く。うっくりするとひっくり返される程度の差だ。憲法改正されたら尹錫悦ももたない。
台湾でも、総統は民進党が確保したが議会は野党にとられ、韓国がそれに続くことになった。日本も風前の灯火である。
日本、韓国、台湾の保守政権は、ウクライナを支援して総崩れとは皮肉だが、私の予想通りだ。ロシア制裁は物価高をもたらすし、外国に支援されて武器だけもらい、ウクライナ人のように戦うことを日本人も韓国人も台湾人も望みそうもないのは、紛争の最初から自明だった。
ロシアは国際法に違反しているが、ウクライナをEUやNATOにいれるのは相当な地政学的無理があり、いかに戦闘に勝とうが、いかに国際法をたてにとったとしても、それで長く安定することはあるまいし、安定しなかったら一時的には望んだようになっても、勝ったことにはならない。
ここが非常に大事なのだが、法律はそれを盾にとって戦う口実にはなるが、求める結果に無理があっては、満足できる結果は得られないということだ。仮に満洲独立が合法的に行われても、華北進出が国際法に違反しなかったとしても、大陸にそんな国を長く維持することが出来たとは思えない。日本が戦争に負けたのは、国際法で立ち場に無理があったからだけではない。
日本が欧米側につくのは当然で、反対でないが、いちばん後ろにつき、かつ、仲介出来る立ち場を失うべきでなかった。安倍さんならそうしただろう。
また、岸田政権の尹錫悦大統領へのてこ入れも不足だ。さらにあきれたのは、いわゆる保守派が韓国は政権がどうなろうと同じだからと冷たかったことだ。以前にも指摘したが、親韓派といわれる松川議員のちょっとした脇の甘さを大スキャンダルに仕立て上げたのもむしろ日本の保守派で、そこには韓国与党へのてこ入れを止める意図があった。
欧米がウクライナから引き上げる時に、日本が金だけ出すような羽目だけにはなりたくない。岸田首相にはワシントンで変なこと約束してこないでもらいたい。
●ウクライナ提唱の和平案 ハイレベル協議6月に開催 スイス発表 4/11
スイス政府は、ウクライナが提唱する和平案の実現を目指す各国の首脳などが参加するハイレベル協議をことし6月に開催すると発表し、今後ロシアも参加する和平プロセスに道筋をつけられるかどうかが焦点となります。
ウクライナは、ロシア軍の撤退や領土の回復など10項目からなる和平案を提唱していて、関係者によりますと、3月に首都キーウで開いた各国の政府高官などを集めた非公式協議の際、ことし6月にもスイスで首脳級の協議を開くことを提案しました。
これについてスイス政府は10日、各国の首脳などが参加するハイレベル協議を、ことし6月に中部のビュルゲンシュトックで開催すると発表し、アムヘルト大統領は記者会見で「協議の目的は和平プロセスを開始する可能性と方法を見つけることだ」と述べました。
スイス外務省はおよそ120か国を招きたいとしていますが、現時点でロシアが参加する見通しは立っていないとしています。
一方、ロシアのラブロフ外相は9日、中国の王毅外相との会談後の記者会見で「ロシアの立場を考慮しない、いかなる国際的な努力も無駄だということを中国側と確認した」と述べていて、今後ロシアも参加する和平プロセスに道筋をつけられるかどうかが焦点となります。
●イランとイスラエル 緊張高まる 4/11
ガザ地区の戦闘休止に向けた交渉に進展が見られない中、イスラエル軍は各地で攻撃を続けています。
一方、シリアにあるイラン大使館がイスラエルによるとみられる攻撃を受けたことをめぐり、イランとイスラエルの双方とも強硬な姿勢を見せていて、緊張が高まっています。
米報道“イランなどがイスラエル軍や政府施設へ攻撃の可能性”
アメリカのメディア、ブルームバーグは10日、複数の関係者の話として、イランやその支援を受けた勢力が近くイスラエルの軍や政府の関連施設に対してミサイルや無人機を使った大規模な攻撃に踏み切る可能性があると伝えました。
また、アメリカのニュースサイト「アクシオス」は10日、複数のイスラエル政府当局者の話として、中東地域を担当するアメリカ中央軍の司令官が11日にイスラエルを訪れ、イランなどから攻撃を受けた場合の対応について協議する予定だと伝えました。
バイデン大統領は10日の記者会見で「イランなどの脅威に対するイスラエルの安全保障へのわれわれの関与は揺るがない。イスラエルの安全のためにできるかぎりのことを行う」と述べ、イスラエルへの支援を強調しイランを強くけん制しています。
大使館への攻撃めぐりイランとイスラエル 対立深まる
ガザ地区では10日もイスラエル軍が各地で攻撃を続けていて、現地の保健当局はこれまでの死者が3万3482人に上ったと発表しました。
また、イスラム組織ハマスはSNSで、イスラエル軍の空爆でハマスのハニーヤ最高幹部の3人の息子と数人の孫が死亡したと、明らかにしました。
一方、シリアにあるイランの大使館が先週イスラエルによると見られる攻撃を受けたことについて、イランの最高指導者ハメネイ師は10日、「イランの領土への攻撃とみなされる。邪悪な政権は罰せられなければならない」と演説し、改めてイスラエルへの報復を誓いました。
これに対してイスラエルのカッツ外相は10日、「イランが自国の領土から攻撃してくれば、イスラエルはイランを攻撃するだろう」とSNSに投稿したほか、ガラント国防相もイスラエル北部の部隊を視察した際「われわれの領土を攻撃する者に対しては、中東のどこであっても迅速で断固とした行動をとる」と述べ、イランなどをけん制しました。
ガザ地区での戦闘休止に向けた交渉に進展が見られない中、イランとイスラエルの対立は一段と深まっていて、緊張が高まっています。
バイデン大統領「イスラエルの安全保障への関与 揺るがない」
中東のシリアにあるイランの大使館が攻撃を受け、イランがイスラエルに対し報復措置をとる構えを見せていることについて、アメリカのバイデン大統領は「イスラエルの安全保障へのアメリカの関与は揺るがない」と強調してイランをけん制しました。
4月初めシリアにあるイランの大使館がイスラエルによるとみられる攻撃を受け、イランはイスラエルに対して報復措置をとる構えを見せていて、緊張が続いています。
これについて、バイデン大統領は10日、記者会見で「ネタニヤフ首相に伝えている通り、イランやイランが支援する組織からの脅威に対するイスラエルの安全保障へのわれわれの関与は揺るがない。揺るがないと繰り返し言いたい」と強調しました。
そのうえで「イスラエルの安全のためにできるかぎりのことを行う」と述べ、イランをけん制しました。
一方でバイデン大統領は、ガザ地区の住民の保護などでイスラエル側の対応に変化が見られなければ政策を見直す可能性があるとも警告していて、ガザ地区への人道支援について「まだ十分ではない。ネタニヤフ首相が私との会談で約束したことについてどう対応するかみていく」と述べ、イスラエル側の対応を見極める考えを示しました。
●中国 3月消費者物価指数 去年同月比0.1%上昇 2か月連続プラス 4/11
中国の先月の消費者物価指数は、去年の同じ月と比べて0.1%上昇し、2か月連続でプラスとなりました。ただ、自動車の価格などは値下がりが続いていて、デフレへの懸念は依然としてくすぶっています。
中国の国家統計局が11日発表した先月の消費者物価指数は、去年の同じ月と比べて0.1%上昇しました。
中国の消費者物価指数は、ことし2月に6か月ぶりにプラスに転じていて、2か月連続でプラスとなりました。
これは、旅行需要の高まりで、関連するサービスなどが大きく値上がりしたことなどが主な要因です。
その一方、消費者の間で節約志向が強まっている影響で、自動車やスマートフォンなどの価格は引き続き値下がりしていて、デフレへの懸念は依然としてくすぶっています。
また、合わせて発表された、企業が製品を出荷する際の値動きを示す先月の生産者物価指数は、去年の同じ月と比べて2.8%の下落と、1年6か月連続のマイナスとなりました。
中国政府は内需の拡大に向け、自動車や家電製品などの耐久消費財の買い替えを促す対策を打ち出していて、こうした対策がどこまで効果をあげるのか注目されます。
●イスラエル首相、ラファ侵攻の日程決定と主張 米政権は「虚勢」と判断 4/11
イスラエルのネタニヤフ首相がパレスチナ自治区ガザ地区南部ラファへの軍事侵攻について日程が決定していると発言したことについて、バイデン米政権はネタニヤフ氏の国内での政治的立場が弱体化したことを受けた「虚勢」とみていることがわかった。政権高官がCNNに明らかにした。
ネタニヤフ氏は、イスラム組織ハマスの撲滅とイスラエル人の人質解放を見据えた停戦交渉の成立という大きな圧力のなかでバランスを取ることに苦慮している。イスラエル当局者は、ラファにはハマスの4個大隊が依然として存在しており、これを排除する必要があると主張している。
米政権の複数の高官は非公開の場で、ネタニヤフ氏の発言について虚勢と判断している。
米政府高官は公の場でも、ラファ侵攻の日程が決まったとの主張に疑問を呈している。米政府高官は、イスラエルがどのように侵攻作戦を実施するかについて、包括的な計画のようなものを目にしていないと繰り返し述べている。ラファへの侵攻にはまず、推計150万人とされる同地にとどまっている民間人の大部分を移動させる必要がある。
ブリンケン米国務長官は9日、ラファに侵攻する日について、米国はまだ知らされていないと述べていた。
情報筋によれば、イスラエルのガラント国防相は米国のオースティン国防長官に対し、イスラエルがラファ侵攻の可能性について計画をまとめ、準備を進めていると伝えたものの、作戦の日程が決定したとは明言しなかったという。
●イラン大使館攻撃でイランとイスラエルの対立一段と深まる 4/11
ガザ地区の戦闘休止に向けた交渉に進展が見られない中、イスラエル軍は各地で攻撃を続けています。一方、シリアにあるイラン大使館がイスラエルによるとみられる攻撃を受けたことをめぐり、イランとイスラエルの双方とも強硬な姿勢を見せていて、緊張が高まっています。
ガザ地区では10日もイスラエル軍が各地で攻撃を続けていて、現地の保健当局はこれまでの死者が3万3482人に上ったと発表しました。
また、イスラム組織ハマスはSNSで、イスラエル軍の空爆でハマスのハニーヤ最高幹部の3人の息子と数人の孫が死亡したと、明らかにしました。
一方、シリアにあるイランの大使館が先週イスラエルによると見られる攻撃を受けたことについて、イランの最高指導者ハメネイ師は10日に「イランの領土への攻撃とみなされる。邪悪な政権は罰せられなければならない」と演説し、改めてイスラエルへの報復を誓いました。
これに対してイスラエルのカッツ外相は10日、「イランが自国の領土から攻撃してくれば、イスラエルはイランを攻撃するだろう」とSNSに投稿したほか、ガラント国防相もイスラエル北部の部隊を視察した際「われわれの領土を攻撃する者に対しては、中東のどこであっても迅速で断固とした行動をとる」と述べ、イランなどをけん制しました。
ガザ地区での戦闘休止に向けた交渉に進展が見られない中、イランとイスラエルの対立は一段と深まっていて、緊張が高まっています。
●ロシア、ウクライナのエネルギー施設に大規模攻撃 20万人停電 4/11
ロシア軍は11日未明、ウクライナのエネルギーインフラに対してミサイルと無人機による大規模な攻撃を実施した。ウクライナ当局者らの発表によると、5つの地域において変電所と電力施設が損害を被り、緊急停電が発生したことで少なくとも20万人が影響を受けているという。
ロシアは先月、ウクライナのエネルギーシステムへの長距離弾による空爆を再開。今回は82発のミサイルとドローンが使われたという。
ゼレンスキー大統領は「われわれに必要なのは防空やその他の防衛支援であり、目をつむったり長い議論をしたりすることではない」として、防空ミサイルと大砲の在庫が減少する中、同盟国に支援を訴えた。
軍司令部によると、飛来したミサイルのうち18発と無人機39機を防空ミサイルで撃墜した。オデーサ(オデッサ)、ハリコフ、ザポロジエ、リビウ、キーウ(キエフ)で変電所と発電施設が被害を受けた。
内相によると、少なくとも10発のミサイルがハリコフを攻撃。同地域ではこれまでにもミサイルや砲撃の標的になり長時間の計画停電が実施されているが、今回の攻撃で20万人への停電を余儀なくされた。 
●ロシアが米ミサイル配備に警告 リャプコフ外務次官、アジア太平洋で 4/11
ロシアのリャプコフ外務次官は11日、米国がアジア太平洋地域への中・短距離ミサイル配備計画を進めれば、ロシアも対抗措置を取ると警告した。ロシアが停止しているミサイル配備を再開する可能性を示唆した。インタファクス通信が伝えた。
リャプコフ氏はロシアが中距離核戦力(INF)廃棄条約失効後にミサイル配備を自制している中で「米国は近年、条約で規制されていた分野で潜在力を高めようとしている」と記者団に述べた。
「抑止力には抑止力で対抗する」と強調し、対抗措置の一例として「中距離ミサイル配備を一方的に停止しているアプローチの見直し」を挙げた。
●アメリカ欧州軍の司令官が警告「ウクライナの砲弾間もなく枯渇、敗北も」 4/11
アメリカ欧州軍の司令官が、議会でウクライナはアメリカの支援がなければ砲弾が間もなく枯渇し、敗北する恐れがあると警告しました。
「この瞬間の深刻さはどれだけ誇張してもし過ぎることはない。我々が支援し続けなければウクライナは敗北する可能性がある」(アメリカ欧州軍カボリ司令官)
アメリカ欧州軍のカボリ司令官は10日、議会軍事委員会で証言し「現在、ロシア軍はウクライナ軍の5倍の砲弾を発射しているが今後、数週間で10倍に拡大するだろう」と指摘しました。そのうえで「アメリカの支援がなければ、ウクライナは間もなく砲弾やミサイルを使い果たし敗北する恐れがある」「これは仮定の話をしているのではない」と強調しました。
アメリカ議会下院では、共和党の議長がウクライナ支援の約600億ドルを含む予算法案の採決を拒否し停滞したままとなっています。

 

●プーチン氏、発電所攻撃はウクライナの「非武装化」目的 4/12
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は11日、最近のウクライナのエネルギー供給網に対する一連の攻撃について、ウクライナの「非武装化」を目指した作戦の一環だと発言した。攻撃の影響によりウクライナでは大規模な停電が起きている。
発言は、ロシア大統領府(クレムリン、Kremlin)で行われたベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領との会談でのもの。エネルギーインフラへの攻撃で「ウクライナの軍産複合体に影響を与えられる」とした。
10日未明にもウクライナ各地の電力施設を狙った無人機40機による攻撃があり、キーウ州の発電所が破壊された。
その一方で「われわれのエネルギー施設も攻撃を受けており、対応する必要があった」とし、報復の意味があることも示唆した。その上で、冬の間は「人道的見地」から電気関連施設への攻撃は控えていたと主張した。
会談では、スイスが今週発表した、6月に開催予定のウクライナ平和会議にロシアが招待されていないことについても言及。ロシアが不参加の会議は「むなしいものでなければ、奇妙なものになるだろう」と述べた。
ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は10日、「ロシア不参加の会議は無意味だと繰り返し指摘している」としていた。
会議は、スイス中部ルツェルンの高級リゾート、ビュルゲンシュトックでの開催され、最大100国が参加する予定。
スイスは、会議へのロシア参加の可能性を探り続けており、中国やその他の新興大国の参加についても模索している。
●なぜ、ロシアでイスラム国関連のテロが発生したのか? 4/12
大統領選挙で5選を果たし、これからウクライナ侵攻で攻勢を強めようとするプーチン大統領に衝撃が走った。3月22日、モスクワ郊外クラスノゴルスクにあるコンサートホールに武装した男たちが押し入り、現場にいた観客らに向けて自動小銃を乱射し、140人以上が犠牲となった。当時コンサートホールには6000人近くの観客がいたが、現場はすぐに悲劇の惨状となってしまった。
イスラム国ホラサン州が事件に関与か
事件後、シリアとイラクで2010年代にかけて広大な領域を支配し、世界をテロの恐怖に陥れたあのイスラム過激派イスラム国が犯行声明を出し、欧米の情報機関やメディアはアフガニスタンを拠点とするイスラム国ホラサン州が事件に関与したことを強く指摘しているが、プーチン大統領はウクライナの関与を強調していた。
対露闘争に参加するため、プーチン政権を長年敵視するロシア南部・カフカス地方のイスラム教徒らがウクライナ側で戦っていることも指摘されるが、ウクライナ当局が今回のテロに具体的に関与している可能性はゼロと言えよう。
ウクライナ当局にこういった市民を狙ったテロに関与するメリットはない。
なぜイスラム国がロシアでテロを起こしたのか
一方、なぜ今回ロシアでイスラム国関連のテロが発生したのか。これにはいくつかの政治的背景がある。まず、2010年半ばにイスラム国が広大な領域を支配していた時、ロシアはイスラム国と敵対するシリアのアサド政権を軍事的に支援し、ロシア自体もイスラム国に対する空爆などを行い、双方は敵対関係にあった。
また、イスラム国には数万人とも言われる外国戦闘員が流入したが、その中にはチェチェンやダゲスタン、イングーシなどコーカサス地方出身の戦闘員も数千人レベルで存在し、反ロシア的な感情はその当時からイスラム国にあったと言える。プーチン政権は分離独立を阻止するため、チェチェンなどへの容赦のない軍事攻撃を続けてきた過去もあり、モスクワへの反感は今でも根強い。
不穏な空気が漂うサヘル地域
さらに、近年ロシアはアフリカで軍事的プレゼンスを強化し、マリやブルキナファソ、ニジェールなどクーデターによって権力を奪取した軍事政権との関係を強化している。マリやブルキナファソがある一帯はサヘル地域と呼ばれるが、サヘル地域ではイスラム国やアルカイダなどを支持する武装勢力が活発に活動し、ロシアの民間軍事会社ワグネルは同勢力と対立関係にある。
今回のテロ事件において、米国は事前に大衆が集まる場所でテロの恐れがあるとしてロシア当局に注意するよう呼び掛けていたというが、それでもテロを事前に防止できなかったということで、ロシア国民のプーチン政権への不満や反発はいっそう強まったことだろう。
●電力インフラ攻撃は「報復」 スイスでの国際会合に「ロシア招待されず」 4/12
ロシアのプーチン大統領は11日、露軍がウクライナの電力インフラを標的とした攻撃を激化させていることについて、ウクライナ軍による露国内インフラへの攻撃に対する「報復」だと主張した。また、スイスが6月に開催するウクライナ主導の和平案「平和の公式」を話し合う国際会合に「ロシアは招待されていない」と明らかにした。
首都モスクワで行われたベラルーシのルカシェンコ大統領との会談での発言を露大統領府が発表した。
プーチン氏はウクライナの電力インフラへの攻撃について、電力需要が高まる冬季に露軍が「人道的見地からいかなる(電力インフラ)攻撃もしなかった」と主張。「しかし、露国内のエネルギー関連施設が相次いで攻撃され、報復する必要に迫られた」とした。
ウクライナ軍は過去数カ月間、ロシアの国力低下を目的に、露国内の石油精製所や燃料保管施設などをドローン(無人機)で相次いで攻撃した。一方、露軍は3月下旬以降、ウクライナの電力インフラを標的としたミサイルやドローンによる大規模攻撃を相次いで実施。ウクライナで複数の発電所や変電所が破壊されるなどし、同国の電力危機が深刻化している。
一方、「平和の公式」を巡る国際会合の開催はスイスが今月10日に発表。ウクライナや欧米のほか、中立的な第三国などが招待される見通し。これに対し、ペスコフ露大統領報道官は11日、「ロシア抜きでの協議は無意味だ」と述べた。
●「電力施設大規模攻撃は報復」 兵器産業弱体化狙いロシア大統領 4/12
ロシアのプーチン大統領は11日、ウクライナ5州の電力関係施設への攻撃はロシアの石油関連施設への連続攻撃に対する報復として必要だったと強調した。モスクワを訪問したベラルーシのルカシェンコ大統領との会談で述べた。
プーチン氏は、病院の運営などに支障が生じかねない電力施設への攻撃は「人道的観点から避けてきたが、対抗措置としてやむを得なかった」と説明。ウクライナの兵器産業の弱体化が目的だと正当化した。
ウクライナが提唱する和平案「平和の公式」を協議するスイスでの6月のハイレベル会合については「ロシア抜きの話し合いでは問題解決にならない」と指摘。「ろう人形館のようなものだ」とやゆした。ロシアは話し合いに応じる用意があるとも繰り返した。
ルカシェンコ氏は「ロシアの立場を全面的に支持する」と表明した。
ウクライナ各地には10日夜から11日朝にかけてミサイルや無人機による大規模攻撃があり、発電施設や変電所が破損した。首都郊外のキーウ(キエフ)州では同州最大の火力発電所が完全に破壊された。
●ロシア、ウクライナのエネルギー施設に大規模攻撃 「非軍事化」の一環 4/12
ロシア軍は11日未明、ウクライナのエネルギーインフラに対してミサイルと無人機による大規模な攻撃を実施した。ウクライナ当局者らの発表によると、5つの地域において変電所と電力施設が損害を被り、緊急停電が発生した。少なくとも20万人が影響を受けているという。
ロシアは先月、ウクライナのエネルギーシステムへの長距離弾による空爆を再開。今回は82発のミサイルとドローンが使われたという。
ロシアのプーチン大統領はこの日、ウクライナによるロシアの施設に対する攻撃への報復として、ウクライナのエネルギー施設への攻撃を余儀なくされているとの見解を表明。ロシア国内メディアによると、プーチン氏はベラルーシのルカシェンコ大統領に対し「ロシアのエネルギー施設が攻撃を受けているため、対応せざるを得なかった」と言及。こうした攻撃でウクライナの軍事産業が打撃を受けているとし、「ウクライナ非軍事化」を目的とする攻撃の一環だと述べた。
また、「人道的配慮」から冬季にウクライナのエネルギー施設への攻撃を実施するのは控えていたと語った。
ウクライナのゼレンスキー大統領は「われわれに必要なのは防空やその他の防衛支援であり、目をつむったり長い議論をしたりすることではない」として、防空ミサイルと大砲の在庫が減少する中、同盟国に支援を訴えた。
軍司令部によると、飛来したミサイルのうち18発と無人機39機を防空ミサイルで撃墜した。オデーサ(オデッサ)、ハリコフ、ザポロジエ、リビウ、キーウ(キエフ)で変電所と発電施設が被害を受けた。
内相によると、少なくとも10発のミサイルがハリコフを攻撃。同地域ではこれまでにもミサイルや砲撃の標的になり長時間の計画停電が実施されているが、今回の攻撃で20万人への停電を余儀なくされた。
エネルギー会社ナフトガスによると、地下の天然ガス貯蔵施設2カ所も攻撃されたが、施設は稼働を続けている。
米国のブリンク駐ウクライナ大使はハリコフ州だけで10発のミサイルが重要インフラを攻撃したとし、「ウクライナの状況は悲惨だ。一刻も無駄にできない」と語った。
ウクライナのクレバ外相はロシアの攻撃には6発の弾道ミサイルが使われたと指摘。これらは数分以内に標的を攻撃でき、撃墜するのがはるかに難しいと述べ、米国製の地対地ミサイルシステム「パトリオット」の供与を訴えた。
「ウクライナは弾道攻撃に直面している世界で唯一の国だ。現時点でパトリオットが必要な場所はほかにない」とX(旧ツイッター)に記した。
●トランプ支持者は「ヒトラー宥和政策」よりひどい…「プーチンは西側に粘り勝ち、帝国拡大を狙っている」 4/12
「ウクライナを巡る米国の正念場。米共和党はゼレンスキーを助けるか、トランプに忠誠を誓うか、厳しい選択を迫られている」と題した英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のエドワード・ルース米国エディターのコラム(4月10日付)を読んで背筋が寒くなった。
英国のデービッド・キャメロン外相(元首相)は4月8日、ウクライナ戦争、北大西洋条約機構(NATO)、緊迫度を増す中東情勢について話し合うため米フロリダ州のマー・ア・ラゴ・リゾートを訪れ、ドナルド・トランプ前米大統領と会談した。
英紙デーリー・テレグラフ(4月9日付)によると、キャメロン氏はトランプ氏に「英国が国防費にどれだけの予算をつぎ込んでいるかを知ってほしい」と第二次大戦以来の英米特別関係の「幅広さと強さ」を強調したという。9、10日にはバイデン政権高官や共和党議員とも会談した。
英国の重要閣僚がトランプ氏と会談するのは前大統領が2020年大統領選でジョー・バイデン氏に敗れて以来、初めてのことだ。さらにキャメロン氏はかつてトランプ氏のイスラム教徒入国禁止政策を「分裂的で愚か」とその保護主義や外国人・女性嫌悪の姿勢を批判したことがある。
ウクライナを支え続ける欧州
今年2月、キャメロン氏は米政治ニュースサイト「ザ・ヒル」に寄稿し、米上院がウクライナへの600億ドルを含む国家安全保障追加支援法案を可決したことを歓迎した。その上で「世界の安全保障のためにウクライナ支援の継続を」と米下院でも可決するよう求めた。
欧州はこれまでにウクライナ支援の半分以上に相当する総額1700億ドルの支援を提供している。欧州連合(EU)は独自に500億ユーロの複数年支援に合意した。ドイツは1月、ウクライナ軍事支援を倍増させた。英国はキーウと2国間安全保障協定を結んだ最初の国となった。
「ウラジーミル・プーチン露大統領は持久戦で西側に粘り勝ち、帝国を拡大することを願望している。彼は私たちが弱いと信じている。1930年代にヒトラーに見せたような弱さ(筆者注:宥和政策)を繰り返してほしくない」とキャメロン氏は言葉を重ねた。
宥和政策にはヒトラーを増長させたという批判のほか、英国は武器弾薬を生産する時間を稼げたとの見方もある。日本の真珠湾攻撃で米国が参戦していなかったら欧州はヒトラーに支配されていたやもしれぬ。米国なしで欧州の安全保障は成り立たないという構図は今も変わらない。
「英外相は私のお尻にキスでもしてろ」
ロシア産エネルギーを優先するあまり、核大国との摩擦を恐れるあまり、2008年にプーチンがジョージア(旧グルジア)に侵攻した時も、14年にクリミアを併合し、東部紛争に火をつけた時も、米国と欧州は、サーベルをガタガタ鳴らすプーチンに怯えて、付け入る隙を与えてきた。
キャメロン氏に対し、熱烈にトランプ氏を支持する共和党強硬派マージョリー・テイラー・グリーン下院議員は英スカイニュースに「キャメロンが何を言おうが、私には関係ない。彼は自分の国のことを心配していればいい。糞食らえ(私のお尻にキスでもしてろ)だ」と言い放った。
反ユダヤ主義、白人至上主義、極右陰謀論をまき散らすグリーン下院議員について、FT紙のルース氏は「20年に当選した当初は単なるジョーク扱いで相手にされなかった。しかし今やマイク・ジョンソン下院議長の座を脅かす存在だ」と警戒する。
グリーン下院議員は「ウクライナ政府はキリスト教徒を攻撃している。ウクライナ政府は司祭を処刑している。ロシアはそんなことはしていない。ロシアはキリスト教を攻撃していない。彼らはキリスト教を保護しているように見える」と発言している。
共和党強硬派「ウクライナは敵、ロシアは友」
今回、ジョンソン下院議長はウクライナ支援継続を求めて訪米したキャメロン氏との会談を拒否した。ウクライナは停戦と引き換えに東部ドンバスとクリミア半島をロシアに割譲すべきだとトランプ氏は漏らしている。ウクライナに武器を供給したいと考えている共和党員は少数派だ。
「共和党強硬派はウクライナを敵、ロシアを友とみなしている。それを孤立主義と定義するのは間違いだ。積極的親露派なのだ」とルース氏は指摘する。トランプ氏の推薦で共和党全国委員会委員長に選出されたマイケル・ワトリー氏は公然とウクライナを敵と呼んでいるという。
ルース氏によると、陰謀論の跋扈に絶望して政界を去った共和党議員の1人、ケン・バック氏はグリーン下院議員を「モスクワのマージョリー」と批判する。ウクライナが司祭を処刑しているという彼女のデタラメはクレムリンにつながる「偽情報トロール部隊」が震源地だ。
米紙ワシントン・ポスト(4月8日付)は「クレムリンにつながる戦略家やトロール部隊は米国の孤立主義を助長し、国境警備に対する恐怖を煽り、米国の経済的・人種的緊張を増幅させようとする捏造記事、SNSへのデタラメ投稿やコメントを何千と書いてきた」と報じている。
英誌エコノミストの大統領選予測では、バイデン氏はトランプ氏を44対43でリードする。「トランプ大統領が返り咲けば米国を孤立させるどころか、米国の外交政策をプーチンに有利な方向に転換させる」とルース氏は懸念する。
ウクライナ追加支援が米下院を通らなければ世界は悪夢を見ることになる。
●NZが対米関係強化へ、不安定な世界情勢踏まえ 外相表明 4/12
ニュージーランド(NZ)のピーターズ外相は12日、同国は過去数十年来で最も不安定な世界情勢に直面していると述べ、中東とウクライナの紛争を踏まえて米国との関係を強化するとの方針を示した。
米国、エジプト、欧州歴訪を終えて発表した声明で、「南太平洋の素晴らしい孤島という事実に安住し、独り善がりに気取ったことを言い、意見の合う国とだけ話をするような余裕はない」とした上で、「わが国が各場に出席し、あらゆる見方に耳を傾け、伝統的な友人たちと連携を強化することによって複雑な世界環境に適用することが不可欠だ」と訴えた。
ただ、米中が影響力を競うインド太平洋地域の一段の繁栄と安全保障に取り組んでいくが、ニュージーランドは引き続きより国内に近い所に注力すると言明した。
ピーターズ氏は11日、ワシントンでブリンケン米国務長官と会談した。これについて、太平洋地域における両国の協力を強化する方針で一致したと説明。「米国はオーストラリア、日本、欧州諸国と並んで最も重要な戦略的パートナー。太平洋地域のために共に取り組めば、個別に臨むよりはるかに多くを成し遂げることができる」と述べた。
●ロシア軍、ウクライナ東部チャシウヤールに照準 守備隊は「戦車の罠」仕掛ける 4/12
5カ月にわたる激戦の末にウクライナ東部ドネツク州アウジーウカを攻略してから8週間後、ロシア軍は同州で新たな都市の獲得を狙っている。すでに占領しているバフムートのすぐ西に位置し、かつて工業都市だったチャシウヤールだ。
大きな戦いが迫っている。その結果は、ロシアがウクライナで拡大して26カ月目に入る戦争の行く末に、重大な影響を与える可能性がある。
アウジーウカの場合は、ウクライナ軍の守備隊が撤退しても、必ずしも防御線が総崩れになったり、ロシア側にさらに深く突破されたりするわけではなかった。ところがチャシウヤールでは、仮にウクライナ側が退却を余儀なくされれば、ロシア軍が西へ一気に進撃する道が開かれてしまう。
「ウクライナ側がもしチャシウヤールの支配権を失えば、深刻な結果になりかねない。ロシア軍がドンバス(ドネツク州とルハンシク州)の主要都市に向けて前進する直接のルートが開けるからだ」。ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトはそう解説している。
ロシア軍がここ数週間でチャシウヤールの東の端まで前進してきていることが、ウクライナとその支援諸国にとって非常に懸念される事態なのはそのためだ。他方、ウクライナ軍がチャシウヤール郊外の重要な交差点に戦車などの「罠」を設けたことが、ウクライナとその支援諸国にとって非常に期待のもてる動きなのも、同じ理由からだ。
この罠は、ロシア軍の部隊がすでに占拠しているイバニウシケ村の前進基地から出撃していく際に、隘路となる場所にまたがって張られている。隘路というのは、イバニウシケ村の西から森を抜けて、チャシウヤール南部につながるT-0504道路の途中にある、小さな橋のことだ。
もしロシア側の部隊、おそらく、バフムートに配置されている第11独立親衛空挺旅団の部隊がこの橋を越えれば、森の中に姿をくらまし、ウクライナ側のドローン(無人機)や大砲からある程度隠れながら、チャシウヤールに忍び寄ることができるかもしれない。
一方、ウクライナ側の部隊、具体的には第42、第67両独立機械化旅団と近傍の部隊がこの橋に対して十分な火力を集中できれば、ロシア軍部隊を木々に紛れる前の段階でつぶし、チャシウヤール南部への攻撃を阻めるかもしれない。
これまでのところは、ウクライナ側が成功している。言い換えれば、ロシア側は失敗している。10日、ウクライナ軍の対戦車ミサイル要員かドローン操縦士、砲兵、あるいは連携したこれら3者が、橋を渡ろうとしていたロシア軍部隊のBMP歩兵戦闘車少なくとも1両を攻撃した。
BMPは大破し、現場には残骸が残された。戦車などの罠が仕掛けられている一帯にはほかにも、以前に撃破されたロシア側の車両数両が焼け焦げた状態で転がっている。
「キルゾーン」にできる可能性もあるが、それには十分な弾薬が必要
フロンテリジェンス・インサイトは、ロシア軍の部隊はこの橋を渡るのに苦労するだろうと予想していた。「チャシウヤールとバフムートを結ぶ道路には、水路と交差する地点に橋が何本か架かっている。(ウクライナ側が)適切に対処し、正しくリソースを配分すれば、チャシウヤールは進撃してくるロシア軍部隊にとってかなり手強い障害になる可能性がある」と8日に書いている。
もっとも、ウクライナ側に必要なリソースが常にあるのかと言えば、そうとは限らない。言うまでもなく、米国からの軍事援助が、米議会下院のロシアに融和的な共和党議員らによって半年以上も阻まれているせいだ。
実際、ウクライナ軍の守備隊は10日にはイバニウシケ村の橋に多くの火力を向けることができたものの、4日にはロシア軍の突撃部隊がチャシウヤールの東の外れにある運河地区まで侵入してくるのを、傍観せざるを得なかった。弾薬が枯渇し、なすすべがなかったのだろう。
新たな弾薬が届いたとみられるチャシウヤールの守備隊は、ロシア軍部隊が引き続き、この橋を含む、ミサイルやドローン、大砲のキルゾーン(撃破地帯)を通り抜けようとしてくれることを望んでいるに違いない。それを試みるたびに、ロシア側は装甲車両を1両か2両は失うことになるからだ。
ウクライナ側は、この橋を落として、南側からチャシウヤールに入る主要な経路を遮断するという手も試みている。もちろん、それは言うほど簡単ではない。この橋は破壊する目標としては小さいうえに、頑丈に造られてもいるようだからだ。
橋の中央には、ウクライナ軍が以前に行った砲撃でできたらしい穴がある。今月2日ごろ、ウクライナ側の創意ある兵士らは、遠隔操作する小さな自爆型の無人地上車両をこの穴に転がり落とし、起爆した。
残念ながら、この爆破で橋は落ちなかった。ただ、橋がおおむね使える状態で残ったおかげで、ロシア側にとって危険な隘路として立ちはだかる格好になっている。
●ウクライナ議会、兵士の動員解除計画を破棄 軍増強の法案可決 4/12
ウクライナ議会は11日、軍に所属する兵士の数の増強を意図した法案を可決した。前線で長期間戦っている兵士らに交代、帰国の機会を与える計画を破棄した形だ。
ウクライナ軍の兵士は本来、36カ月以上従軍すれば動員が解除され、帰国できることになっていた。しかし今回採決された法案からは、そうした条項が削除された。ウメロウ国防相とシルスキー軍総司令官による介入の結果だと、国会議員らは明かしている。
11日に賛成多数で可決した法案には、徴兵逃れをより困難にするなど、軍が強く求める兵員増強を目的とした方策が数多く盛り込まれている。同法を巡ってはこの数カ月間で議論が交わされ、4269件の修正が施された。
新法により兵士らの賃金は上がり、休暇期間も長くなるが、戦場での配備を義務づける期限は設定されなかった。「戒厳令下での軍要員の交代」を改善するには政府が新たに法案を提出する必要があると法律は定めていることから、動員解除の問題は今後も動く公算が大きい。
ウクライナ軍のソドル統合軍司令官は10日、国会議員らに対し「(ウクライナ東部での)敵の兵力は我が軍の7〜10倍。兵員が足りない」と発言。法案の可決を強く求めていた。
11日には議会の外に兵士の妻や親類数十人が集まり、法案の可決に対する抗議活動を実施。動員解除の期限を法案に盛り込むよう要求した。
夫が2022年2月のロシアによる全面侵攻開始直後に軍に志願したというアナスタシア・ブルバさんはCNNの取材に答え、ウクライナ軍の兵士らには従軍の条件が示されていないと指摘。「いつ家族の下に帰れるのか、全く分からない」「国の守護者たちが欺かれている。国全体の独立は彼らにかかっているというのに」と訴えた。
砲兵部隊に所属する兵士の1人もCNNに対し、軍の士気を低下させる決定だとして法案可決への怒りを吐露した。
●ウクライナ、限界近いとの懸念高まる−戦争開始後最も脆弱と当局者 4/12
ロシアがウクライナで攻勢を強めている。エネルギーインフラに対するミサイル攻撃、ウクライナ第2の都市ハルキウへの爆撃、戦線全体での前進が相次ぎ、ウクライナの軍事的抵抗が限界に近づいているとの懸念が高まっている。
1200キロに及ぶ戦線で弾薬と兵力が深刻に不足し、防空も十分でないウクライナは、2年余り続く戦争で最も脆弱(ぜいじゃく)な状態にあると、状況に詳しい西側の当局者は指摘した。
ウクライナの防御が崩壊し、戦争開始初期以降で初めてロシア軍の大幅な進軍が可能になるリスクもあると、当局者の少なくとも1人はみている。
戦争疲れが広がる中で、ウクライナにとって今後数カ月が最も苦しい戦いになる。とりわけ最近標的とされている東部のハルキウの状況は厳しい。
ロシア侵攻後にハルキウを脱出し、同市にその後戻ったクリスティナ・マリーイエワさんによると、戦前の人口が150万人にも上ったハルキウをロシア軍が制圧できるとは市民の多くは考えていないものの、予測不可能な攻撃が市民を恐怖に突き落としているという。
「ハルキウは今、極めて陰うつな雰囲気に包まれている」と、クロアチアと英国で1年を過ごし2023年にハルキウに戻ったマリーイエワさんは話す。「人々は昨年戻り始め、新しいレストランも開店したが、今また脱出が始まっている」と続けた。
ロシア軍は弾薬供給の優位を利用している。当局者によると、ロシアは生産強化と北朝鮮とイランによる供給で、600万発の砲弾を今年確保する見通しだ。
一方で、米国がウクライナ向けに準備する600億ドル(約9兆2000億円)規模の支援法案は、下院共和党とバイデン大統領の政争の具となり議会で滞っている。最も厳しい時期にあるウクライナにとって、この支援に代わるものはないと複数の当局者は語った。
ウクライナは昨年目標としていた被占領地の回復はおろか、進軍するロシア軍を止めることにも苦戦している。ゼレンスキー大統領は先週、ロシアは6月1日までに最大30万人を動員することが可能だろうとの見方を示した。
米国の分析では、ロシア軍がウクライナの防衛線を近く突破する兆しは全く見られていないと、匿名を条件に語った米当局者が明らかにした。それでも別の当局者によると、ウクライナ軍の士気は低く、軍が崩壊する可能性も排除できない。この当局者も匿名を要請した。
11日朝にはキーウ周辺で最大の発電所が破壊され、ミサイル攻撃に弱点があることを露呈した。攻撃の数時間後、ゼレンスキー大統領は防空システムの不足が「最大の課題」だと述べた。
●ウクライナ議会、「動員逃れ」防止など盛り込んだ法案可決 露との戦闘で兵力不足に対応 4/12
ロシアとの戦闘で兵力不足に対応するため、ウクライナの議会は11日、「動員逃れ」の防止などを盛り込んだ法案を可決しました。
ウクライナメディアによりますと、ウクライナ議会は11日、兵士の動員について定めた「動員法」の改正案を賛成多数で可決しました。
「改正動員法」では、対象となった人は60日以内に軍の事務所で自らのデータを登録する必要があり、これを怠れば罰金や運転免許のはく奪などの制裁が科されます。
また、ウクライナでは動員を逃れるため、国外への脱出をはかる人が後を絶ちませんが、軍への登録なしに、国外でパスポートが発給されないようにするなど「動員逃れ」を防止する内容となっています。
一方で、兵士たちの家族らからの要望が出ていて当初、改正案に盛り込まれていた長期間、従軍した兵士たちに除隊を認める条項は最終段階で削除されました。
深刻な兵力不足が指摘されるウクライナでは4月上旬、ゼレンスキー大統領が「動員」の最低年齢を27歳から25歳に引き下げる法案に署名するなど、兵力の補充を急いでいます。
●キーウ近郊の主要発電所、ロシアの攻撃で破壊される ウクライナ最大規模の電力供給源 4/12
ウクライナ・キーウ近郊で11日未明、主要な発電所がロシア軍の攻撃により完全に破壊されたと、ウクライナのエネルギー企業セントレネルゴが発表した。
ロシア軍の攻撃を受けたのは、キーウの南50キロに位置するトリピッリャ火力発電所。キーウ州を含む3地域における最大の電力供給源だったと、関係者は語った。
「恐ろしい規模の破壊だ」と、セントレネルゴのアンドリイ・ホタ会長は述べた。
ロシアはこれまで長い間、ウクライナのエネルギー・システムを意図的かつ組織的に標的にしてきた。
ホタ氏は、11日朝の攻撃で「変圧器やタービン、発電機が破壊された。彼ら(ロシア)は(発電所を)100%破壊した」とBBCに語った。
この大規模な空爆の後、トリピッリャ火力発電所のタービン工場で火災が発生した。
ホタ氏によると、発電所は複数のミサイルの標的にされた。当時勤務中だったスタッフは最初のドローン(無人機)攻撃から間もなく避難したという。
地元住民は自宅の窓を閉め、あらゆる機器を充電し、水を買いだめするよう指示された。
80発以上のミサイルとドローンが、11日未明にウクライナ各地の標的を狙った。その多くはエネルギー・インフラを狙ったもので、攻撃の3分の1近くがウクライナの防空網を突破した。
その数時間後、セントレネルゴはトリピッリャ火力発電所が使用できなくなったと認めた。ウクライナ国内にある同社の発電能力はすべて破壊されたと、ホタ氏は述べた。
ウクライナ最大規模の電力供給源
トリピッリャ発電所はウクライナ最大規模の電力・熱供給源の一つだった。セントレネルゴが運営していたハルキウ州内の発電所は3月下旬に破壊され、ドネツク州内の発電所は2022年にロシア軍に占拠された。
ホタ氏によると、ハルキウ州の発電所とトリピッリャ火力発電所はかつて、ウクライナの電力需要の約8%をまかなっていた。
トリピッリャ火力発電所が破壊されたことで、夏場は致命的な問題は起きないだろうが、冬場には「非常に大きな問題」が生じると、ホタ氏は考えている。
また、欧州からスペア部品の支援を受けて発電所を再建することはできるが、同盟国がウクライナに強力な防空網を提供しなければ、攻撃に対してぜい弱であることに変わりはないとした。
「修復はできる。不可能を可能にすることはできる。だが、我々には保護が必要だ」
複数発電所が「甚大な被害」、電力供給がさらにひっ迫
ウクライナ西部では一夜にして少なくとも2つの火力発電所が「甚大な被害」を受け、全国の電力供給はますますひっ迫した。
3月中の度重なる攻撃により、電力会社DTEKの発電能力はすでに20%にまで低下していた。
DTEKはこれらの「完全に民間の発電所」に対するミサイル・ドローン攻撃によって、送電網に重要な電力を供給するという任務がより困難なものになるだろうと、BBCに述べた。
「攻撃を行う毎に、ロシアはウクライナのエネルギー・システムを窒息させ、我々が苦労して手に入れた自由を奪おうとしている」
北東部ハルキウ州は3月下旬に複数の発電所が大きな被害を受けた。そして今再び、ひどい打撃を受けている。
ハルキウ市のイホル・テレコフ市長は「非常に厳しい」状況だとし、各家庭や企業にさらなる計画停電を行うと発表した。
ハルキウの地下鉄は11日、節電のため一時運転が停止された。その後、運行が再開されたが、電力供給が不安定なため列車は断続的にしか動いていない。
プーチン氏、攻撃「せざるを得なかった」
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は11日、ウクライナ政府がロシア側の標的を攻撃したため、ウクライナのエネルギー施設への攻撃というかたちで「対応せざるを得なかった」と述べた。
2年前に理由もなく戦争を一方的に始めたのはプーチン氏だが、「残念なことに、我々は最近、(ロシアの)エネルギー拠点に対する一連の攻撃を観測しており、対応せざるを得なかった」とした。
「強調しておきたいのは、人道的理由も考慮に入れて、我々は冬場にはいかなる攻撃も行っていないということだ。つまり、病院などの社会施設を停電させたままにしたくなかったからだ。しかし、我々の電力施設に対する一連の攻撃を受け、対応せざるを得なかった」
「エネルギーに対する攻撃」は、ロシアが掲げる「ウクライナの非武装化」という目的の一部であり、2022年2月の侵攻開始時の目標の一つだったと、プーチン氏は付け加えた。
南部都市ミコライウでは11日、日中に連続攻撃があり、4人が死亡、複数人が負傷した。昼間に攻撃が行われるのは珍しい。
ウクライナ軍南部司令部は、「陰湿な」攻撃で民家や自動車、産業施設が被害を受けたと、メッセージアプリ「テレグラム」に投稿した。
●ロシア、キーウ州最大の発電所にミサイル攻撃 4/12
ウクライナのキーウ州最大の発電所に11日未明、ロシア軍のミサイル攻撃があり、火災が発生した。死傷者はいない。
エネルギー会社「ツェントルエネルゴ」は、所有するトリピルスカ火力発電所が完全に破壊されたと明らかにした。同発電所はキーウ、チェルカーシ、ジトーミル各州の最大の電力供給源だが、今回の攻撃による停電は発生していない。
ソーシャルメディアに投稿された映像には、同発電所から煙が凄まじくのぼり、火災が発生している様子が映っている。
ツェントルエネルゴの声明によると、ハルキウ州にある火力発電所も先月22日に攻撃を受け、破壊された。また、2022年7月にはドネツク州の火力発電所もロシア軍に占領されており、今回トリピルスカ火力発電所が破壊されたことで同社は発電能力を全て失った。
11日にはウクライナの民間エネルギー最大手DTEKの発電所2カ所にもミサイルとドローン(無人機)による攻撃があり、「深刻な被害」が発生しているという。
同社は国内で使用される電力の20%を発電している。ロシアによる2022年の全面侵攻以来、最も深刻な攻撃をここ3週間受けていると明らかにした。運用する発電施設の約80%が攻撃で破壊されたとしている。
ウクライナ空軍によると、ロシアは10日夜から11日未明にかけて、極超音速ミサイル「キンジャル」6発を含む計82のミサイルとドローンで攻撃した。ウクライナはミサイル18発とドローン39機を撃墜したものの、キンジャルは迎撃できなかったという。
攻撃を受けてウクライナのゼレンスキー大統領は、防空システムの供与を同盟国にあらためて訴えた。
●ウクライナ支援 復興への理解深めたい 4/12
岸田文雄首相とバイデン大統領は、日米首脳会談でウクライナへの揺るぎない支援を確認した。ロシアへの厳しい制裁を続け、無条件で即時、完全に軍を撤退させるよう共同声明で要求した。毅然[きぜん]とした姿勢を国際社会に堅持するのは重要だ。しかし、ロシアは応じるべくもない。停戦への出口が見えないにもかかわらず、ウクライナはなぜ復興にも注力するのか。日本や本県の役割を含めて考えたい。
ロシアの侵攻開始から2年を経て、ウクライナの苦境が伝えられている。反転攻勢は強固な防衛線に阻まれ、米国の軍事支援は陰りも見える。領土の防衛、奪還は正念場にあるとされる。
過酷な情勢下、ウクライナの政府関係者は、本県をはじめ東日本大震災の被災地を幾度も訪れている。軍事侵攻で被害が出た都市や産業の復旧につなげる狙いがある。破壊された施設の復旧にいま着手したとして、再び標的にされれば水泡に帰しかねない。本来、復興に時間を割く余力はあるのかどうか。そんな危惧は浅はかだと、ウクライナのコルスンスキー駐日大使の発言で思い知らされた。
数万人の国民、数百人の子どもが戦火の犠牲になっている。平和な生活を経験していない、覚えていない世代が既に出ている。数百万人が国外に逃れ、子どもたちが現地の社会になじみ、現地の言語を身に付ければ、家族を含めて二度と帰ってこなくなる。復興に10年もの期間はかけられない。復興をいま語るのは、平和が訪れた直後、復興へ迅速に動き出す覚悟を表すためだと、今月開かれた共同通信社論説研究会で強調した。
戦時のウクライナと同列にはできないものの、復興を急ぐ事情は、震災と原発事故の未曽有の災禍から立ち上がる本県と重なる。切迫した苦悩は察するに余りある。
コルスンスキー氏は自ら本県に何度も足を運び、原発の廃炉作業も視察した。関東大震災以降の災害史や戦後復興の取り組みも学び、ウクライナにとって日本は重要な経験を蓄積していると理解したという。ウクライナとは震災後、数々の支援を受けた結び付きがある。戦況を傍観せず、戦下の人々の辛苦に思いを寄せ、本県が注げる復興支援の在り方を模索し続けていく必要があるだろう。
● ザポリージャ原発への攻撃「絶対に許されない」IAEA事務局長 4/12
ウクライナのザポリージャ原子力発電所に攻撃が相次ぎ、ロシア、ウクライナ双方が相手の攻撃だと主張するなか、11日、IAEA=国際原子力機関の理事会の緊急会合が開かれました。グロッシ事務局長は「原発への攻撃は許されない」と強い懸念を示し、自制を求めました。
ロシア軍が占拠を続けるウクライナ南部のザポリージャ原発を巡って、ロシア側は今月9日まで3日連続でウクライナ軍の無人機による攻撃を受けたと発表しました。
一方、ウクライナ側はロシアの自作自演だと反発し、ロシアによる攻撃だとしています。
こうしたなか両国の要請で、11日、IAEAの理事会の緊急会合がオーストリアのウィーンで開かれました。
会合の冒頭、IAEAのグロッシ事務局長は、今月7日の攻撃では原子炉がある建物の屋根を直撃したと説明し「原発への攻撃は絶対に許されない。攻撃は原子力の安全を危険にさらすことを意味する」と述べ、強い危機感を示しました。
また、今回の攻撃で原発の安全性が深刻に脅かされる事態は起きていないとしながらも「今後も同じであると考えるのは無責任だ」とも述べ、自制を求めました。
一方で攻撃がどの国によるものかは明言しませんでした。
ザポリージャ原発は砲撃などによって原子炉の冷却に必要な外部からの電力の供給が途絶える事態がたびたび起きていて、原発の安全性への懸念が続いています。
●ロシア正教会トップ議長の「世界ロシア人民評議会」、ウクライナ戦争を「聖戦」と宣言 4/12
ロシア正教会トップのモスクワ総主教キリルが議長を務める「世界ロシア人民評議会」(WRPC)は3月27日、ロシアのウクライナに対する軍事侵攻を「聖なる」試みと位置付け、正当化する宣言を発表した。宣言はこの戦争について、「犯罪者のキエフ政権」と西側の「悪魔主義」に対するロシアの戦いにおいて重要な位置付けにあるものだとし、「特別軍事作戦」と呼んでいる。
WRPCは公式にはロシア正教会とは別組織だが、メンバーには市民だけでなく、多くのロシア正教会指導者が含まれている。モスクワ総主教庁が発表したこの宣言(ロシア語)は、3月27日にモスクワの救世主ハリストス大聖堂で開催された臨時会合で発表され、承認された。
宣言はロシアの立法府と行政府に宛てられており、2022年に始まったウクライナ戦争は、「聖なるルーシ」の統一を守る霊的聖戦だと述べている。また、ロシアは西側の侵攻に対する擁護者だとしている。
宣言は「ルースキー・ミール(ロシア世界)」思想に詳しく言及しており、現在のロシアの国境を越えた霊的かつ文化的な重要性を強調している。また、ベラルーシ人とウクライナ人はロシアの亜民族として同化すべきだとしている。ロシア、ウクライナ、ベラルーシの領土を、キリスト教の三位一体の教理になぞらえていると読み取れる内容もある。
フランス・ロレーヌ大学のアントワーヌ・ニビエール教授(ロシア文明)は、同国のカトリック系日刊紙「ラ・クロワ」(国際版、英語)に対し、宣言は単なる声明ではなく、「一種の政治的プログラムを概説している」と指摘する。
「(宣言の)内容は、2000年にロシア正教会が採択した社会教理と完全に矛盾しています。社会教理は、聖戦という概念を特段に否定しており、政府がキリスト教の倫理的・神学的原則と矛盾する命令を出した場合、宗教指導者は反対すべきだと規定しています」とニビエール氏。「キリル総主教の立場を考慮すると、(ここに書かれたことで)尊重すべきものは一つもありません」と指摘する。
宣言は伝統的価値観を支持する人々がロシアに亡命することを提唱しており、ロシアの文明的価値観を反映した教育的・人道的改革を求めている。
キリル総主教は当初、ロシアの侵攻に躊躇(ちゅうちょ)する姿勢を示していたが、次第にウクライナと西側を非難しはじめ、この戦争に対して霊的な意味を見いだすようになったとされる。ロイター通信(英語)によると、ロシア正教会では現在、礼拝中にロシアの勝利を求める祈りをささげることが義務付けられており、従わない聖職者は制裁を受ける可能性がある。
宣言はロシアのウラジーミル・プーチン大統領の政治的スタンスと密接に一致しており、霊的権力と政治的権力を融合させ、西側のグローバリズムに対抗する世界的な保護者として、ロシアを擁護している。また、西側のイデオロギーを排除し、プーチン氏の教育政策に沿った民族主義的な教育改革を推進する内容になっている。
米ノースイースタン大学のサラ・リカルディスウォルツ助教授(宗教学・人類学)によると、キリル総主教はウクライナ戦争を、西側の近代社会に対する形而上学的な闘争として捉えており、ウクライナをその戦場として位置付けているという。
スワルツ氏は、同大が運営するメディア「ノースイースタン・グローバル・ニュース」(英語)に対し、キリル総主教のレトリックには、ロシアの軍事的努力を祝福し、戦争で亡くなった人々に霊的な報いを約束するものが含まれており、伝統的なロシア正教会の教理から乖離(かいり)していると指摘している。
ロシア正教会の歴史的な解釈では、ロシアは反キリストに対する霊的な擁護者と考えられており、それは、ロシア皇帝ニコライ2世(1868〜1918)の列聖と関連しているとリカルディスウォルツ氏は言う。この解釈は、モスクワを第三のローマ、キリスト教国の究極の拠点とする考えを支持するという。
欧州連合(EU)の情報を扱う「EUトゥデイ」(英語)によると、ロシアの新興財閥(オリガルヒ)の一人で親ロシア分離主義の支援者であるコンスタンチン・マロフェーエフ氏は、キリル総主教の代理としてWRPCで重要な役割を果たしている。マロフェーエフ氏の見解は、19世紀末から20世紀初頭の考えを反映したもので、絶対王政と国教を擁護しており、ルースキー・ミールがローマ帝国の遺産を引き継いでいるとする「第三ローマ論」に沿ったものだという。
リカルディスウォルツ氏は、今回の宣言はロシアの帝国主義的野心を正当化し、道徳化するものだと指摘している。
●ウクライナ、軍への動員法案可決 侵攻長期化、兵士確保へ再構築 4/12
ロシアの侵攻を受けるウクライナの最高会議(議会)は11日、軍への動員態勢を再構築する法案を可決した。侵攻長期化と死傷者増大でウクライナは兵士の早期確保を迫られている。ただ、動員された兵士を36カ月間で交代させるとの規定が、審議の最終盤で削除されたことへの不満も出ている。
新法は大統領が署名後に施行される。最高会議議員らによると、法案は(1)18〜60歳の男性に、軍当局への個人データの登録、関係書類の常時携行を義務付ける(2)動員の規則に従わない場合、車両の運転を禁止する(3)志願兵に経済的支援を与える―ことが盛り込まれた。
ただ新法でどの程度の追加動員が可能かははっきりしない。ゼレンスキー大統領は昨年12月、軍から45万〜50万人の追加動員を求められたと発言。シルスキー軍総司令官は3月、必要な動員数は「かなり減った」と述べたが、具体的な数字には言及しなかった。
法案は動員解除までの期間を定めなかった。当初の政府案では36カ月間とされたが、シルスキー氏の要求で削除された。
●米がイスラエル支援の姿勢 イランをけん制 4/12
中東のシリアにあるイラン大使館がイスラエルによるとみられる攻撃を受け、イランが報復措置をとる構えを示す中、アメリカはイスラエルの防衛を支援する立場を示し、イランをけん制しています。
米国防長官 イスラエル支援の姿勢強調
4月1日、シリアにあるイラン大使館がミサイル攻撃を受けたことをめぐり、イランはイスラエルによる攻撃だとして報復を宣言しています。
イランによる大規模な報復攻撃の可能性も伝えられる中、アメリカ国防総省は11日、オースティン国防長官がイスラエルのガラント国防相と電話で会談したと発表しました。
声明によりますと、オースティン長官は「イランの攻撃からイスラエルを守ることを、アメリカは全面的に支援すると約束した」としていて、イスラエルを支援する姿勢を強調することで、イランをけん制するねらいがあるとみられます。
米国務長官 イランと友好関係にある国と電話会談
アメリカ国務省のミラー報道官は11日の記者会見で、ブリンケン国務長官が、イランと友好関係にある中国の王毅外相のほか、トルコのフィダン外相、サウジアラビアのファイサル外相と電話で会談したことを明らかにしました。
会談では、中東のシリアにあるイランの大使館が攻撃を受け、イランがイスラエルに対し、報復措置をとる構えを見せていることをめぐって意見が交わされたということです。
ミラー報道官は「戦闘がこれ以上激化すると、イスラエルやイランだけでなく、世界中の国々にとって打撃となる。ブリンケン長官は、イランと関係のある国々に対し、対立を激化させるべきではないとイランに伝えることが自国の利益にもなると伝えている」と述べました。
イランやその支援を受ける勢力がイスラエルに対して大規模な攻撃を仕掛ける可能性も指摘される中、アメリカはこれ以上、中東地域の緊張が高まることのないよう、働きかけを強めています。
ネタニヤフ首相「危害を加える者には反撃」
4月1日、シリアにあるイラン大使館がミサイル攻撃を受け、イランの軍事精鋭部隊、革命防衛隊の司令官ら7人とシリアの市民6人が死亡し、イランはイスラエルによる攻撃だとして、報復を宣言しています。
これに対してイスラエルのネタニヤフ首相は、中部の空軍基地を視察し、「危害を加える者には反撃することになるだろう」と述べ、イラン側を強くけん制し、中東情勢の緊張が一段と高まっています。
エルサレムで抗議集会「いますぐラファへの地上作戦を」
イスラエル軍はガザ地区南部のラファでの地上作戦の準備のためなどとして、大半の部隊をガザ地区南部から撤収させました。
これについてエルサレム中心部では、市民による抗議の集会が開かれました。
集まった数百人の人たちは「いますぐラファへの地上作戦を」などと声をあげていました。
参加した男性は「イスラエルは人質を解放し、安全を取り戻すために、ハマスとの戦いを続けないといけない。部隊を撤収させたのは間違った判断だ」と話していました。 
●プーチン大統領、2年前の停戦交渉合意案に同意の意向示す 4/12
ロシアのプーチン大統領は11日、ウクライナ侵攻をめぐり、2年前にトルコで行われた停戦交渉の合意案に、同意する意向を示したとロシアメディアが報じました。
プーチン大統領は11日、モスクワを訪問した同盟国・ベラルーシのルカシェンコ大統領と会談しました。
この席で、ルカシェンコ大統領が、2022年3月にトルコのイスタンブールで行われた、ウクライナとの交渉で話し合われた停戦の合意案に立ち戻ってはどうかと提案したのに対し、改めてプーチン大統領が同意の意向を示したと、複数のロシアメディアが12日伝えました。
イスタンブールでの合意案は、ロシア軍が侵攻前の地点まで兵を撤退することや、ウクライナがNATO加盟を放棄し、代わりとして、関係国によるウクライナの安全を保障すること、クリミア半島の軍事的解決の15年間放棄などがウクライナ側から提案され、ロシア側も前向きに評価していました。
しかし、その後、両国による対面交渉は中断され、ロシア側は、「ウクライナが和平交渉を中止した」と批判していました。
●ザポロジエ原発攻撃、戦争が危機的段階にシフトも=IAEA 4/12
国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は11日、ロシアが占拠するウクライナ南部ザポロジエ原子力発電所について、攻撃をやめなければ戦争に極めて危険な段階をもたらす恐れがあると警告した。
ロシアとウクライナ双方の要請で、この日開催したIAEA理事会で述べた。
両国は原発への攻撃を巡って非難の応酬を繰り広げている。
7日のドローン(無人機)による攻撃では原子炉建屋が破損。2022年11月以来の深刻な被害となった。
グロッシ氏は「直近の攻撃により、戦争は極めて重大な局面に移った」と指摘。原発事故を防ぐため、攻撃しないことなどを含む原則を監視するIAEAの役割を全会一致で支持するよう理事会に訴えた。
ロシアのミハイル・ウリヤノフ在ウィーン国際機関常駐代表は、グロッシ氏がウクライナに攻撃の非があると指摘しなかったことを批判した。
ウクライナ側は声明で、偽情報を広めるロシアの活動の一環だとした。
●中国「対立あおり激化させるような行為断固反対」日米比会談に 4/12
日本とアメリカ、それにフィリピンの3か国の首脳による会談で、中国の動向を踏まえ海洋の安全保障協力を強化していくことなどで一致したことについて中国外務省は12日「対立をあおり、激化させるようないかなる行為にも断固反対する」として強く反発しました。
ワシントンで行われた日本とアメリカ、フィリピンの3か国の首脳による初めての会談では、中国の動向を踏まえ、3か国の海上保安機関による合同訓練を行うなど、海洋の安全保障協力を強化していくことなどで一致しました。
これについて、中国外務省の毛寧報道官は12日の記者会見で「対立をあおり、激化させるようないかなる行為にも断固反対する。中国に対する勝手な中傷と攻撃だ」などと述べ、強く反発しました。
また、これに先立ち、中国外務省は12日北京に駐在する横地晃公使を呼んで抗議しました。
中国外務省の発表によりますと、このなかで劉勁松アジア局長は日本とアメリカ、フィリピンの3か国による会談などについて、「深刻な懸念と強烈な不満を表明した」ということです。
これについて、日本大使館は「日本の立場を説明するとともに、中国をめぐる懸案について改めて申し入れた」としています。

 

●ウクライナは今年、負けるかもしれないと英軍元司令官 それはどのように 4/13
英統合軍の元司令官、サー・リチャード・バロンズは、ウクライナが2024年にロシアに対して敗北するかもしれないとBBCに話した。
バロンズ将軍は、ウクライナが今年負ける「深刻なリスク」があるとBBCに述べた。「自分たちは勝てないと、ウクライナが思うようになるかもしれないからだ」と、将軍は理由を説明した。
「その状態にウクライナが達した時点で、守り切れないものを守るだけのために戦い、死ぬことを、大勢が望むだろうか」
ウクライナはまだその状態に達していない。
しかし、ウクライナ軍の持つ砲弾や人員や防空能力は、危機的な状態まで枯渇(こかつ)しつつある。大いに期待された昨年の反転攻勢は、ロシア軍を占領地域から追い出すには至らず、ロシア政府は今や今年夏の攻勢に向けて準備を本格化させている。
では、ロシアの夏の攻勢はどういうものになるのか。その戦略上の目的は、何になるのか。
「想定されるロシア軍の攻勢がどういうものになるのか、それはかなりはっきりしている」と、バロンズ将軍は言う。
「前線のロシア軍は銃弾、砲弾、人員の数で5対1の比率で相手に勝っている。それに加えて、新しめの兵器の導入で、優勢が強化されている。これを利用してロシア軍は徹底的に(ウクライナ軍を)たたいている」
「新しめの兵器」には、FAB滑空爆弾も含まれる。旧ソヴィエト連邦時代の無誘導爆弾を改良したもので、安定翼やGPS誘導装置を備え、爆薬1500キロを積み、ウクライナ軍の防衛態勢を大混乱に陥れている。
「今年の夏、ロシア側がある時点で、大規模な攻勢を仕掛けると予想される。わずかに相手をたたいて前進するだけでなく、ウクライナ軍の前線を本格的に突破しようとするかもしれない」と、バロンズ将軍は話す。
「もしそうなれば、ロシア軍が突破侵入し、ウクライナ軍がそれを阻止できない位置までウクライナ領内に入り込み、それを拠点にして利用しようとするかもしれない」
しかしそれはどこなのか。
ロシア軍は昨年、ウクライナがどこから攻めてくるか、正確に予想していた。南部ザポリッジャからアゾフ海を目指す方向だ。これを正確に予想し、適切に備え、そしてウクライナの前進阻止を成功させた。
今度はロシアが攻勢に転じる番だ。ロシアは軍勢を集約しているが、次の攻撃局面がどこになるのかウクライナ政府は推測するしかない状態だ。
   ウクライナ占領地の地図
イギリス王立防衛安全保障研究所(RUSI)の上級研究員、ジャック・ワトリング博士は、「どこに部隊を集中させるか、ロシアには選択の余地がある。これはウクライナが抱える難題のひとつだ」と説明する。
「前線はとても長い。そしてウクライナはそのすべてを防衛しなくてはならない」
もちろんそんなことは無理だ。
「ウクライナ軍は地歩を失うことになる」と、ワトリング博士は言う。「問題は、どれだけ失うのか。そしてどの人口密集地がそれによって影響を受けるのか、だ」。
ロシア軍の参謀本部が、どの方向に勢力を集めるのかまだ決めていない可能性もかなりある。しかし、大まかに言って、3つの場所が可能性として考えられる。
ハルキウ
「ハルキウはもちろん、かなり危険な状態にある」と、ワトリング博士は言う。
ロシアとの国境に危ういほど近いウクライナ第二の都市は、ロシア政府にとって魅力的な目標だ。
現在は連日、ロシアのミサイルに砲撃されている。ドローン、巡航ミサイル、弾道ミサイルという殺傷力の高い組み合わせを阻止できるほどの防空力が、今のウクライナにはない。
「今年の攻勢は、ドンバス地方から飛び出すことを第一目標にすると思う」と、バロンズ将軍は言う。「そして、ロシア国境から約29キロにあるハルキウを手に入れられれば、大きな成果となる。それだけに、ロシア軍はハルキウに注目しているだろう」。
もしもハルキウを失ったとして、ウクライナはまとまった単一国家として機能し続けられるだろうか。それは可能だと、多くの専門家は言う。しかしそれでも、国民の士気と国の経済にとって、悲惨な打撃になるはずだ。
ドンバス
「ドンバス」と総称されるウクライナの東部地域は、2014年以来ずっとロシアと戦っている。ロシア政府に後押しされた独立勢力が当時、「人民共和国」を自称して以来のことだ。
2022年にはロシアが、この「ドンバス」を構成するドネツク州とルハンスク州の両方を違法に併合した。この1年半というもの地上戦のほとんどは、この地域で行われてきた。
ウクライナはこのドンバス地方で、まずはバフムート、続いてアウディイウカという二つの町を失わないようにするため、膨大な人員や資源を防衛戦につぎ込んだ。
その作戦には異論も多く、結果的に両方の町だけでなく、ウクライナ軍有数の優れた兵士を多く失った。
そうした批判に対してウクライナ政府は、自軍の徹底抗戦によってロシア軍は不相応なほど多くの兵士を失ったと反論している。
それも事実だ。この地域での戦場は「肉ひき機」とまで呼ばれている。
しかし、ロシア側には戦場に送り込める兵士がまだまだ大勢いる。ウクライナ側にはいない。
アメリカ欧州軍のクリストファー・カヴォリ司令官は10日、米下院軍事委員会で証言し、アメリカがウクライナへの兵器・砲弾供給をかなり急がなければ、ウクライナ軍は戦場で10対1の劣勢に立たされると警告した。
物量は重要だ。ロシア軍は戦術も指揮系統も装備も、ウクライナ軍のそれに劣るかもしれない。しかし、(砲弾の数を含めて)数字の上であまりに優勢なので、たとえ今年ほかに何もしなかったとしても、ウクライナの村をひとつまたひとつと制圧し、ウクライナ軍を西へ西へと後退させることは最低限のデフォルトとして可能だ。
ザポリッジャ
ここもまたロシア政府にとって、魅力的な手柄だ。
ウクライナ南部ザポリッジャは、平時の人口は70万人以上。そして、ロシアの前線に危険なほど近い。
ザポリッジャはロシアにとって厄介なとげでもある。違法に併合したザポリッジャ州と同じ名前の州都だが、それでもいまだにウクライナ領で、住民は自由に暮らしているからだ。
しかし、ロシア軍自身が昨年、ウクライナ軍の攻勢ルートを正確に予測してザポリッジャ南部に強大な防衛線を築き上げたことが、今ではロシア軍の前進を難しくしている。
三重に設置された防衛線からなる、いわゆる「スロヴィキン・ライン」の周辺には世界最大の地雷原が広がる。今や世界で最も徹底的に地雷が敷設された場所だ。ロシアはこれを部分的に解体することもできるが、そうした準備作業はおそらく探知される。
ロシアの今年の戦略目標は、領土ですらないかもしれない。ただウクライナの戦意を喪失させ、ウクライナ敗戦はもはや決まったも同然だと西側諸国を説得さえすれば、ロシアにはそれで充分なのかもしれない。
「もはや望みはないという感覚を生み出すこと」がロシアの目標だろうと、ワトリング博士は考えている。
「今年のロシアの攻勢で、双方がどうなるとしても、この紛争を決定的に終結させるようなものにはならない」と博士は言う。
バロンズ将軍も同意見だ。確かにウクライナ軍はいま厳しい状況にあるが、ロシア軍がその優勢をてこに決定的な前進を果たせるかどうかは疑わしいと、将軍は見ている。
「ロシアは一定の戦果を得るものの、突破はできないというのが、おそらく最もあり得る結果だと思う」と将軍は話す。
「(ドニプロ)川まで一気に前進できるだけの、規模と能力の部隊はロシア側にない。(中略)それでも戦況はロシア有利に転じることになる」
確かなことがひとつある。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ侵攻をやめるつもりなどまったくない。
ポーカーの勝負で、手持ちのチップをすべてかけているプレイヤーのようだ。ウクライナが防衛に必要な装備を、西側は提供しない――それがプーチン氏にとって頼みの綱なのだ。
北大西洋条約機構(NATO)でどれだけ首脳会議が開かれても、どれだけあちこちで会合が開かれ、感動的な演説が相次いでも、プーチン氏の計算通りになる可能性がある。
●米との軍事協定破棄のニジェール、ロシアの兵器と軍事教官到着 西アフリカで影響力拡大 4/13
西アフリカ・ニジェールの国営放送RTNは11日、ロシアが「最新鋭防空システム」の提供につながる軍装備品をニジェールに引き渡したと報じた。
RTNによると、今回の装備品は10日、ロシアの軍事教官100人とともにニジェールの首都ニアメに到着した。軍事教官は防空システムの設置やニジェール軍の訓練に当たる予定。
ロシア国営メディアのRIAノーボスチも12日早朝、ロシアの軍事教官が「現地部隊の訓練やテロとの戦いのため」到着したと伝えた。
RIAノーボスチの特派員は12日、「これはロシアがアフリカに戻ってきたことを意味する」と現地からリポート。北大西洋条約機構(NATO)の兵員が中部アガデスへの乗り継ぎ便を利用する目的でニアメ入りしたとも伝えた。アガデスには「現在約1100人の米兵が駐留している」という。
軍事教官の到着に先立ち、ロシアのプーチン大統領とニジェールのチアニ将軍は先月26日の電話会談で、「治安の確保とテロとの戦い」について協議していた。
ニジェール軍政は昨年のクーデターで権力を奪取して以降、ロシアとの軍事関係を強化する一方、米国とフランスから距離を置く姿勢を示してきた。
軍政は先月には、米軍要員と国防総省の文民職員にニジェールでの活動を認めてきた米国との協定を終了すると表明した。
ニジェールの旧宗主国であるフランスは昨年末に軍隊を引き揚げている。
やはり軍が実権を握るマリとブルキナファソもロシアに軍事支援を求めており、欧米諸国の間では、クーデターやイスラム主義者の反乱が長年続くサヘル地域でのロシアの影響力拡大に懸念が深まっている。
マリにはロシア民間軍事会社ワグネルの請負業者が軍政の招きで駐留し、反乱勢力との戦いを支援。ブルキナファソにも今年、フランス軍の追放から数カ月後のタイミングでロシア兵の一団が到着した。
●ドイツの過半数が徴兵制再導入を支持 4/13
ロシアのプーチン大統領がウクライナに軍を侵攻させて以来、北大西洋条約機構(NATO)加盟国はウクライナに武器を支援する一方、NATOの国境警備を強化。北欧の中立国、フィンランドとスウェ―デンを加盟国に迎え、NATOは32カ国体制となった。
NATO加盟国の中でも米国に次いでウクライナへ軍事支援をするドイツで徴兵制の再導入の声が高まっていることはこのコラム欄で報告済みだ(「ドイツで徴兵制の再導入議論が浮上」2024年3月7日参考)。
ところで、ドイツ民間放送RTLとニュース専門局ntv共同の要請を受けて世論調査研究所「フォルサ」が徴兵制の再導入に対する国民の是非を聞いた。それによると、ドイツ国民の52%は徴兵制の再導入を支持、反対は44%だった。
徴兵制の再導入に反対しているのは、ショルツ連立政権の与党「緑の党」や自由民主党(FDP)の支持者のほか、兵役の対象となる30歳以下の国民が多い。兵役義務の再導入を最も強く支持しているのは、野党第1党中道右派「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)、極右政党「ドイツのために選択肢」(AfD)、そして左派ポピュリスト政党「ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟」(BSW)の支持者に多い。ショルツ首相の与党第1党「社会民主党」(SPD)の支持者は意見が分かれている。
世論調査結果で興味を引く点は、「プーチン大統領はウクライナ戦争に勝利すれば、NATO加盟国に侵攻すると思うか」という質問に対し、54%は「ロシアはNATO加盟国を侵略する」と答え、「NATO加盟国への攻撃は考えられない」は39%に過ぎなかったことだ。
党支持別の動向を見ると、SPD、緑の党、FDP、CDU/CSUの支持者の大多数は、「プーチン大統領はウクライナに勝利すれば、NATO諸国に侵攻する」と信じている。一方、AfDとBSWの支持者の大多数は、「ロシアの攻撃は問題外だ」と考えている。ショルツ連立政権の3与党と野党第1党のCDU/CSUの支持者はロシアのNATO諸国への攻撃を現実的なシナリオと感じる一方、AfDとBSWの支持者は「侵攻はあり得る」と答えたのは25%に過ぎなかった(データは、RTL Deutschlandの要請を受け、市場世論調査機関ForsaがRTL/ntvトレンドバロメーターのために4月5日と8日に収集したもの。回答者1009人)。
ドイツでは第2次世界大戦終了後、連邦軍は職業軍人と志願兵で構成されたが、兵士が集まらないこと、旧ソ連・東欧共産ブロックとの対立もあって1956年から徴兵制を施行、18歳以上の男子に9カ月間の兵役の義務を課してきた。兵役拒否は可能で、その場合、病院や介護施設での社会福祉活動が義務付けられた。
その徴兵制は2011年、廃止された。徴兵の代行だった社会奉仕活動制度もなくなった。冷戦時代が終了し、旧東独と旧西独の再統一もあって、連邦軍は職業軍人と志願兵に戻り、連邦軍の総兵力は約25万人から約18万5000人に縮小された。旧ソ連・東欧共産政権が崩壊していく中、ドイツを含む欧州諸国は軍事費を縮小する一方、社会福祉関連予算を広げていった。
その流れが大きく変わったのはやはりロシア軍のウクライナ侵攻だ。ショルツ独首相は2022年2月、「時代の転換」(Zeitenwende)を宣言し、軍事費を大幅に増額する方向に乗り出した。連邦軍のために1000億ユーロ(約13兆円)の特別基金を創設して、兵員数の増加、兵器の近代化、装備の調達などの計画が発表された。そして国防予算は国内総生産(GDP)比2%に増額する一方、軍事大国ロシアと対峙するウクライナに武器を供与してきた。
参考までに、ピストリウス独国防相は未来の徴兵制として「スウェーデン・モデル」を考えているといわれている。スウェーデンでは2010年に徴兵制が停止されたが、ロシアのクリミア併合を契機として、2018年1月から徴兵制が再導入された。スウェーデンの徴兵制は、兵役、一般役務、民間代替役務から構成され、18歳以上の男女を対象としている。
ちなみに、世論調査機関フォルサは今年2月、「戦争が発生したら武器を持って戦う用意があるか」という質問を聞いた。その結果、59%の国民は「武器を持って戦う考えはない」と答えている。「戦う」19%と「おそらく戦う」19%を合わせても38%の国民しか「武器をもって戦う」と答えていない。
世論調査の結果はその時のトレンドを理解する上で役立つが、矛盾する結果が出てくることもあるし、出てきた数字をどのように解釈するかによって全く異なった受け取り方も可能だろう。ドイツ国民は地理的に近いこともあってロシア軍のウクライナ侵攻をシリアスに受け取っている。徴兵制の重要さは次第に国民に理解されてきていることが分かる。
●ロシア、ウクライナのエネルギー施設を攻撃…キーウ近郊の大型発電所を破壊 4/13
ロシアがウクライナ各地のエネルギー施設を攻撃し、首都キーウ近くの大型発電所が完全に破壊され、第2都市ハルキウでは大規模な停電が発生した。ロシアは今回の攻撃について、今年に入りウクライナ軍がロシア内のエネルギー施設を攻撃したことに対する報復であり、ウクライナの非武装化の試みの一部だと明らかにした。
ウクライナの首都キーウと近隣地域に電気を供給する国営トリピルスカ火力発電所は11日(現地時間)、ロシア軍のミサイルとドローン攻撃で完全に破壊された。AP通信などが報じた。この攻撃で変圧器と発電機が破壊され、発電所の建物で火災が発生した。
国営の発電所運用会社セントレネルゴのアンドリー・ホタ監査委員会議長は、ロシア軍の最初のドローンが発電所に接近すると、労働者は緊急避難し、発電所に火災が広がるのを手の付けようもなく見守ったと伝えた。彼は「すべてが破壊された」とし、残骸の中に残っていた人を探すための捜索作業が攻撃後数時間続いたと話した。
この発電所から電力を供給される300万人の住民は、電力供給網の転換のおかげで停電を免れた。だが、東部に位置するウクライナ第2都市ハルキウでは、電力施設が10回以上攻撃を受けた影響で電力供給が途絶え、住民20万人が被害を受けた。
電力供給網運用会社のウクレネルゴは、西南部の黒海沿岸のオデーサ、中部のザポリージャ、西部のリビウなどにある発電施設と変電所も攻撃を受けたと明らかにした。ロイター通信によると、北東部のロシア国境付近の地域であるスミの火力発電所も同日午後に攻撃を受けた。天然ガスを貯蔵する地下貯蔵所2カ所も攻撃されたが、運営が中断されることはなかったとエネルギー会社ナフトガスが明らかにした。
ウクライナ空軍は同日、ロシア軍が82機のミサイルとドローンを動員して攻撃し、このうち18機のミサイルと39機のドローンを撃墜したと発表した。
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ソーシャルメディアへの投稿で、この日の空爆をテロと規定し、西側諸国に向けて「我々に必要なのは、目をつぶって長期間討論することではなく、防空支援だ」と訴えた。
ドミトロ・クレバ外相も同日、スロバキアを訪問した席で「何を討論する案件があるのか。問題は一つだ。我々に(米国製の)パトリオットミサイルを送ってほしい」と訴えた。
ロシア国防部は今回の攻撃について、ウクライナによるロシアのエネルギー施設攻撃に対する報復だと明らかにした。ウクライナ軍は1月21日、サンクトペテルブルク近くの港にあるエネルギー施設をドローンで攻撃するなど、今年に入ってロシアのエネルギー施設を10回以上攻撃した。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はこの日、ベラルーシのルカシェンコ大統領と会い、「我々のエネルギー施設に対し最近相次いだ攻撃に対応する義務があった」とし、「エネルギー施設の攻撃はウクライナの非武装化という目標と関連したもの」だと述べた。
●「ロシアを止めろ」チェコが砲弾80万発 支援に奔走なぜ? 4/13
「ロシアの帝国主義的な野望はしばらく眠っていただけで今は完全に目覚めている」
こう話すのは、50年以上前に旧ソビエトに侵攻されたチェコ(当時はチェコスロバキア)の政府高官です。
そのチェコがいま、砲弾不足が深刻なウクライナの支援に奔走しています。いったいなぜなのか。現地を取材しました。
「80万発の砲弾を見つけた」
「ウクライナ向けに155ミリ口径の砲弾50万発と122ミリ口径の砲弾30万発を見つけた」
ことし2月、チェコのパベル大統領の発言が大きな注目を集めました。
国際シンポジウムの場で突如「ウクライナにすみやかに送ることができる砲弾80万発がある」と明らかにしたのです。
EU=ヨーロッパ連合は、ことし3月までにウクライナに100万発の砲弾を供与するという目標を掲げてきましたが、実際にはその半分程度しか確保できていません。
にもかかわらず、80万発もの砲弾をどこで、どうやって“見つけた”というのか。チェコ1か国でそんなことができるのでしょうか。
その理由を突き止めようと、チェコ政府に取材を申し込むと、ウクライナのための砲弾確保を担当している高官がインタビューに応じるという連絡がきました。
「ヨーロッパだけでなく…」
人口およそ1000万の東ヨーロッパの国、チェコ。
首都プラハで取材に応じたのは、チェコ政府でウクライナ問題特使を務めるというトマーシュ・コペチニー氏です。
握手を求めると、「こんにちは!」と日本語で挨拶を返してきたコペチニー氏。
「いったいどうやって80万発の砲弾を見つけたのか」と尋ねると「世界中で砲弾を探した」と説明しました。
チェコ ウクライナ問題特使 コペチニー氏「私たちは、ヨーロッパで生産されている砲弾だけを調べているわけではない。世界に目を向けた瞬間、もっと柔軟になることができ、たくさん手に入れることができる。ただ、言うのは簡単だが、実際には非常にデリケートで難しいことだ」
砲弾80万発 なぜチェコに可能?
中世の面影を残す美しい町並みで知られ、多くの人が訪れる観光地として有名なチェコですが、実は自動車、そして兵器や砲弾の生産が盛んに行われてきた工業国でもあります。
チェコ最大の防衛企業の広報責任者によりますと、国内には大小あわせて10以上のメーカーがあるということです。
チェコ(当時はチェコスロバキア)の兵器生産は東西冷戦の頃から盛んでした。
冷戦終結後、ヨーロッパでは多くの国が国防費への支出を減らす中、チェコの防衛産業は、アフリカやアジア、中東など世界各地へ輸出することで存続。生産される砲弾などの実に90%以上が輸出されていると言います。
このため、チェコの企業には、取引先である世界各地の軍の在庫や企業の生産能力についての独自の情報が蓄積されています。
そして、この情報が今回のウクライナ向けの砲弾確保に活かされたというのです。
CSGグループ広報責任者 チルテック氏「砲弾のありかや交渉相手を公表することはできないが、世界中に砲弾(155ミリ口径)の在庫を持つ軍隊があり、連絡を取ることができる。
だから我々はこれらの砲弾を購入しウクライナに供給することができるのだ。チェコの防衛産業の特徴は、世界中に広がっている取引先とのコンタクトだ。
わが社だけではなく複数の企業がウクライナへ砲弾を送るために政府と連携している」
具体的な調達先はどこなのか?
チェコはどの国で砲弾を見つけたのか。
地元メディアではトルコや南アフリカ、そして韓国といった国の名前が挙がっています。ただ、これについては、チェコ政府も企業も固く口を閉ざしています。
答えられない事情は何か?
チェコ政府で各国との交渉の窓口も務めるコペチニー氏に聞くとー。
コペチニー氏「国名について答えられないのは、その国の内部的な理由、政治的な理由もあるし、あるいは、その国とロシアとの地政学的な関係、安全保障上の関係もある」
ソビエトによる侵攻の記憶
そもそもチェコはなぜウクライナ支援のために奔走するのか。
その理由として、多くの人が真っ先に上げるのが「1968年」の苦い記憶です。
この年、冷戦で東側陣営に属し、旧ソビエトの影響下に置かれていたチェコスロバキアでは民主化運動「プラハの春」が起きていました。
そのチェコスロバキアにソビエトが侵攻し民主化運動を武力で弾圧。
「50年以上たった今も、ソビエトによる暴力の記憶は、国民の間で受け継がれている」
コペチニー氏は、それこそが、チェコがウクライナのために砲弾を確保する理由だと言います。
コペチニー氏「私たちはロシアとは何かを知っている。1968年に侵略された苦い経験があり、チェコスロバキアで20年間、何百、何千という兵士の駐留に苦しんだ経験もある。そして、ロシアの帝国主義的な野望はしばらくの間眠っていただけで、今は完全に目覚めていることも知っている。もしロシアがウクライナを粉砕し、完全な支配権を手に入れたら、ロシアはそれだけでは終わらないということもわかっている。ロシアがヨーロッパの都市で虐殺を行っていないのは、ウクライナがロシアをくい止めてくれているからだ」
“草の根”の軍事支援も
何もしなければ、次は自分たちだと感じているチェコの人たち。
そうした思いから、ウクライナへの“草の根”レベルの軍事支援も行われています。そのひとつが、市民の有志グループが募った寄付金で無人機を製造し、ウクライナ軍に送る取り組みです。
グループのメンバーは、俳優や市民団体の代表から、趣味で無人機を飛ばしている人、それに現役の軍人などさまざまです。
集まった寄付金はすでに10億円。1万4000機の無人機を現地に送ることを目標に、去年11月から作業を進めています。
製造した無人機が少しでもウクライナ軍の役に立つように、チェコ政府も全面的に後押しをしています。
無人機はすでにウクライナの前線に送られ始めていますが、刻々と変わる前線のニーズに応えられるよう、政府ルートでいまどんな機能が求められているかを聞き取り、新たにつくる無人機に頻繁に改良を加えているということです。
マルティン・クルーパさん「ロシアのウクライナ侵攻から2年が過ぎ国民の熱意は侵攻直後と同じとは言えませんが、『何かしなければ』という機運はまだあります。自由を手に入れるためには代償が伴います。いま、その代償を払っているのはチェコ人ではありません。ウクライナ人です。ウクライナ人は命をかけて戦っているのです。私たちはそれを支えているにすぎません」
深刻な砲弾不足 カギは支援のスピード
ロシア軍との間に大きな差が生じているウクライナ軍の砲弾不足。その実態はどんな状況なのか。
ロシア軍と激しい戦闘が行われている東部ドネツク州の前線にいるウクライナ内務省傘下のアゾフ旅団の将校が3月、取材に応じ、厳しい現状を説明しました。
イリア・サモイレンコ氏「ウクライナとロシアの砲弾の数の比率は1対6だ。ときには1対10、もっと差が大きい時もある。十分な量の砲弾がなければ、戦場で優位に立てない。砲弾の不足は兵士の死につながる」
ウクライナへ80万発の砲弾を送るために、いま最も必要とされているのは各国からの資金の拠出です。
チェコ政府の高官によりますと、これまでにヨーロッパのおよそ20か国が支援を表明、3月の時点で80万発のうち30万発は資金の確保にメドがつき、3か月以内にウクライナへ送ることができるということです。
ただ、残りは50万発。
世界中から砲弾を見つけることのできるノウハウがあるチェコですが、大量の砲弾を調達する資金はありません。
しかも、政府の高官は、ロシアも世界で砲弾を探していると指摘し、各国のすみやかな支援がカギを握ると訴えました。
チェコ ウクライナ問題特使 コペチニー氏「世界で砲弾を探し回っているのは、チェコだけではない。ウクライナへ急いで砲弾を送るには時間が重要だ。代金の到着が遅れれば、発送も遅れることになる。ウクライナを支援する世界の国々が、すみやかに砲弾の確保に移ることが重要だ」
取材を終えて
「自分たちはウクライナを支えているにすぎない」
この言葉は、ロシアの脅威を強く感じ、ウクライナへの支援が自分たちの安全保障に直結すると考えるチェコならではの言葉だと強く印象に残りました。
しかし、ヨーロッパでは、チェコやバルト3国、ポーランドなどロシアを強く警戒し、ウクライナを積極的に支援する国がある一方で、ロシアとの距離が遠くなればなるほどその警戒感は薄いとされ、一部では支援疲れも表面化しつつあります。
いま、ウクライナ側はロシアがことしの春以降にも前線での攻撃を激化させると警戒を強めていて、ロシア軍の前進を防ぐため砲弾の必要性は高まるばかりです。
チェコが見つけた大量の砲弾がそのウクライナに届くかどうかは、ウクライナを支援し守ることが自国の安全保障につながるというチェコの思いが、どれだけほかの国にも共有されるかにかかっているともいえます。
●信じているのは平和ボケした日本の評論家だけ。「プーチンの狙いはルガンスクとドネツクだけ」という大ウソ 4/13
かねてから「自身が大統領になれば24時間でウクライナ戦争を終わらせることが可能」と豪語してきたトランプ前大統領。先日、国際社会が注目していたその案が明らかになりました。今回のメルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、海外有力メディアが伝えたトランプ氏の「和平案」を詳しく紹介。その上で、仮にトランプ氏主導で終戦が実現したとしても、ウクライナの平和が長く続かないであろう理由を解説しています。
トランプの「ウクライナ和平案」は何が問題なのか?
全世界のRPE読者の皆様、こんにちは!北野です。
トランプさんが大統領になったら、ウクライナ戦争はどうなるのでしょうか?わかりませんが、こんな報道がでています。『毎日新聞』4月9日付。
アメリカのトランプ前大統領が一部の領土をロシアに譲るようウクライナに圧力をかけることで戦争を終わらせられると内輪の場で語ったと、アメリカのワシントン・ポストが報じました。
これは、ワシントン・ポストが事情に詳しい関係者の話として報じたもので、トランプ氏の案はロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島や東部ドンバス地方の「国境地帯」をロシアに譲るようウクライナに促すものだということです。
この報道が正しければ、トランプさんの和平案は、「ウクライナが、クリミア、ルガンスク、ドネツクをロシアに譲ること」だそうです(@ロシアが一方的に併合したザポリージャ、へルソンには言及なし)。
また、この件で直接議論した人物の話として、トランプ氏が「ロシアもウクライナも面目を保ちたい。解決策を探していると思う」とし、地域の人たちもロシア領に組み込まれることは問題ないだろうとの考えを示したと伝えています。
トランプさん「ロシアもウクライナも面目を保ちたい。解決策を探していると思う」だそうです。しかし、トランプさんの和平案で、ウクライナは自国領のクリミア、ルガンスク、ドネツクを失うことになる。これで、「なぜウクライナが面目を保てるのか?」さっぱりわかりません。
ちなみに、この報道、「情報筋からの話」なので、「ホントかどうかわからない」という意見もあるでしょう。その通りです。しかし、もう一つ情報加えることで、トランプさんの傾向は見えてきます。
トランプさんは3月8日、ハンガリーのオルバン首相と会談しました。この会談についてオルバンさんは、こんなことを語っています。『毎日新聞』3月12日。
ハンガリーのオルバン首相は10日放送の地元メディアのインタビューで、トランプ前米大統領が11月の大統領選で返り咲きを果たした場合、ロシアの侵攻を受けるウクライナに「(トランプ氏は)一銭も払わない。だから、戦争は終わる」と述べた。ロイター通信が報じた。
オルバン氏は8日に米国でトランプ氏と会談したばかりだった。トランプ氏は、仮に自身が就任すれば「24時間以内に戦争を終わらせる」と主張しているが、具体策は明かしておらず、オルバン氏の発言は波紋を広げそうだ。
オルバンやトランプが、ウクライナには【1銭】も払わないとは言わないでしょう?英語の記事で確認してみると、【1ペニー】も払わないとなっていました。
たとえばBBC(「Trump will not give a penny to Ukraine – Hungary PM Orban」)は「トランプ氏は、ウクライナに1ペニーも払わない。だから戦争は終わる」そうです。これ、オルバンが、「想像で」語っているわけではないでしょう。オルバンとトランプの会談で、そういう発言があったに違いありません。もしオルバン発言が、トランプの主張と矛盾しているなら、トランプは「オルバンの言っていることはフェイクだ」と否定しているはずです。
実際、アメリカは今、共和党が多数を占める下院が原因で、ウクライナ支援をほとんどできない状態がつづいています。そして、下院の共和党議員は、トランプの影響下にあるので、反対しているのです。
トランプは、「24時間以内にウクライナ戦争を終わらせる」と公言しています。問題は、「どうやって?」ですね。トランプと会談したオルバンは、「トランプ氏は、ウクライナに1ペニーも払わない。だから戦争は終わる」と言いました。この話は、上の
アメリカのトランプ前大統領が一部の領土をロシアに譲るようウクライナに圧力をかけることで戦争を終わらせられると内輪の場で語ったと、アメリカのワシントン・ポストが報じました。
と整合性が取れています。
トランプさんの和平案は、
   ・ウクライナ支援を止める
   ・ゼレンスキーに、「ロシアが併合を宣言した領土を、ロシアに譲れ!」と圧力をかける
というものであるらしいことがわかります。
「トランプ和平案」の問題点
トランプさんの「和平案」が上のようなものと仮定すると、どうなのでしょうか?
大きな問題があります。まず、国際秩序に深刻な影響を与えるということです。
プーチンは、「ルガンスク、ドネツクで迫害されているロシア系住民を救う!」などと言ってウクライナ侵略を開始。ルガンスク、ドネツクだけでなく、ちゃっかりへルソン、ザポリージャも奪ってしまいました。それを、トランプ・アメリカが容認することになる。
このことが国際社会に与えるメッセージは、「大きな国、力の強い国は、小さな国、力の弱い国からなんの根拠もなく領土を奪っても許される」というものです。当然、他の相対的な大国は、他の相対的な小国から、「欲しい!」という理由だけで、領土を奪うようになっていくでしょう。中国は、大いに喜ぶでしょう。ロシア・プーチンとアメリカ・トランプは、「悪しき先例」を作ることになります。
もう一つの問題は、「プーチンはクリミア+2州で満足しないだろう」ということです。つまり停戦に同意しても、それは、「軍を休ませ、経済を復活させ、武器弾薬を生産し、動員を進め」、要するに「次の侵略に備える準備期間」になってしまうことでしょう。なぜ?
「プーチンの狙いはルガンスク、ドネツクだけ」というのを信じているのは、「平和憲法さえあれば日本の安全は安泰だ」などと信じている、「平和ボケ」日本の評論家ぐらいです。上の話が本当なら、なぜプーチンは2022年2月24日に侵略を開始した際、ウクライナの首都キーウへの進軍を命じたのでしょうか?これはあきらかに、「首都を陥落させ、ゼレンスキー政権を転覆させ、ウクライナ全土を支配する」という試みでした。失敗しましたが。
もう一つ、既述ですが、「ルガンスク、ドネツクのロシア系住民を救うのが目的」と言いつつ、なぜまったく無関係のザポリージャ、へルソンを併合したのでしょうか?
そして、プーチンの狙いが、「ウクライナ全土の制圧」であること、彼の子犬メドベージェフ前大統領が公言しています。『ロイター』3月5日付。
ロシアのメドベージェフ安全保障会議副議長は4日、ウクライナは「明らかにロシアの一部」との認識を示した。
この日はロシア南部ソチで開かれた若者を対象としたフォーラムに参加し、ロシア帝国とソビエト連邦を賞賛した上で、ウクライナの指導者が屈服するまでロシアは「特別軍事作戦」を遂行すると表明。
「ウクライナはロシアではないと語ったウクライナの元指導者がいたが、こうした概念は永遠に抹消されなければならない。ウクライナは間違いなくロシアの一部だ」とし、歴史的にロシアの一部であるウクライナはロシアに「帰還」しなければならないと語った。
「ウクライナ間違いなくロシアの一部だ」
「歴史的にロシアの一部であるウクライナはロシアに「帰還」しなければならない」
そうです。
つまり、プーチン政権は「全ウクライナ制圧」を狙っているのです。
独裁国家ロシアでは、プーチンの意向に反して好き勝手に語ることはできません。だから、プーチンの子犬メドベージェフも、プーチンの意志に沿った話をしているのです。
というわけで、トランプさんが大統領になって、仮に彼の和平案が実現しても、「平和は長くなかったね」となる可能性が高いのです。
●ロシア軍、エネルギー施設に大規模攻撃…プーチン氏「冬場は攻撃控えた」と報復を示唆 4/13
ロイター通信によると、ロシア軍は11日、キーウ近郊の火力発電所などウクライナ各地のエネルギー施設にミサイルや無人機で大規模攻撃を行った。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が「テロ」と非難したのに対し、ロシアのプーチン大統領は「(ロシアの)エネルギー施設への攻撃が相次ぎ、対応する必要があった」と述べ、報復行為だと認めた。
同通信は、キーウ南方にあるトリピルスカ火力発電所が攻撃を受け、発電所が炎上した結果、「完全に破壊された」と関係者が語ったと報じた。ウクライナ軍司令官によると、露軍の攻撃は82のミサイルと無人機が使われ、東部ハルキウや西部リビウ、南部オデーサ各州など全土で電力施設などが被害を受けた。
プーチン氏は11日、モスクワでベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領と会談した。ウクライナのエネルギー施設への攻撃を強めたことを報復だと示唆し、「冬場は人道的配慮から攻撃を控えた」と主張した。露軍は3月下旬以降、ウクライナ各地のエネルギー施設を相次ぎ攻撃し、発電所や変電所などが被害を受けている。ウクライナ側も無人機で露国内の石油施設などを攻撃していた。
●バイデン氏、イランのイスラエル攻撃は近くあり得ると予想 大使館空爆めぐる報復懸念 4/13
アメリカのジョー・バイデン大統領は12日、イランは「いずれではなく、もっと手前で」イスラエルを攻撃する可能性があり得るとの見解を示した。イランは、軍幹部が死亡した4月1日の在シリア・イラン大使館施設への空爆はイスラエルによるものだったと見ている。そのため、イランによる報復攻撃への懸念が周囲で高まっている。
バイデン氏はイランに対し、「(攻撃は)やめておけ」と警告した。「我々はイスラエルの防衛に注力している。我々は、イスラエルを支援する」とバイデン氏は述べた。
「我々はイスラエルの自衛を助ける。イランは成功しない」
シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館の領事部を攻撃したことを、イスラエル政府は認めていない。しかし、同国が関与したと広く考えられている。
BBCがアメリカで提携するCBSニュースは、イスラエルへの大規模攻撃が今にも起こりそうだと複数の米当局者が語ったと報じた。
イスラエルは、自衛の用意はできているとしている。
一方のイランは、パレスチナ自治区ガザ地区でイスラエルと戦うイスラム組織ハマスや、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなど、イスラエルを頻繁に攻撃しているいくつかのグループを含む、その地域全体で活動する様々な代理グループを支援している。
ヒズボラは12日、レバノンからイスラエルに向けて「数十発」のロケット弾を発射したと発表した。イスラエル国防軍(IDF)の報道官は、ミサイル約40発と爆発物を搭載したドローン2機が発射されたとした。死傷者の報告はなく、ほかの集団の関与は示唆されていない。
米政府関係者はCBSに対し、この集中砲火は予想されるイランの対イスラエル攻撃とは別物だと述べた。
わざと中東や米政府をかく乱
イランはわざと中東と米政府をかく乱し、攻撃時期をあれこれ予測させているのだと、BBCのフランク・ガードナー安全保障担当編集委員は言う。
イスラエルは、イランがダマスカスを拠点に、レバノンとシリアにいるイランの代理勢力に対して、武器をひそかに供給しているとみている。
そしてそのダマスカスでは1日にイラン大使館施設が攻撃され、イラン軍幹部など複数人が殺害された。以来、イランの安全保障当局は対応について議論を重ねてきた。
何より大事なのは、程度だ。攻撃が強すぎれば、イスラエルは破壊的な力で対応するだろう。反対に軽すぎれば、イランは弱くて非力だとみなされる危険がある。戦術的な観点からすると、中東全域が厳戒態勢にあり、アメリカが世界に対して何を予想すべきかを伝えている今、イランがただちに対応することに意味はない。
イランのテヘランとコムでも、実利を重視する政府幹部は自制を促すだろう。対して、高齢の最高指導者アヤトラ・アリ・ハメ師らタカ派は断固とした対応を要求するだろう。
しかし、イランも、湾岸地域のアラブ近隣諸国も、全面戦争は望んでいない。湾岸地域の各国政府は、すでにイランに自制を求めている。では、イランでタカ派かハト派のどちらが最終的に勝利するのか。これが現時点での疑問だと、ガードナー安全保障担当編集委員は指摘する。
イスラエルへの渡航を警戒
緊張の高まりを受け、アメリカやイギリス、インド、オーストラリアなどはイスラエルへの渡航について注意喚起している。ドイツはイランから出国するよう、自国民に呼び掛けた。
米国務省もまた、イスラエルにいる外交官とその家族に対し、テルアヴィヴやエルサレム、ベエルシェバ以外への移動を禁止している。
こうした警告が相次ぐなか、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は戦時内閣のメンバーと協議した。
イスラエル市民の中には、イランの攻撃の可能性について心配していないと話す人もいる。
「私たちは東西南北を敵に囲まれている」と、エルサレムの市場を訪れていた市民はAFP通信に語った。「私たちは恐れていない。そう誓える。周りを見てください。みんな外出しているでしょう」。
イスラエルの従来のガイダンスは、水や3日分の食料、必須医薬品(世界保健機関が、国民の優先的な医療ニーズを満たすと定めているもの)を備蓄するよう国民に促している。イスラエル政府はこれ以外のガイダンスを、特に追加していない。
しかしイスラエルのラジオ局は、地方自治体が公共シェルターの準備状況を評価するなど、起こり得る攻撃に備えるよう指示を受けていると伝えた。
IDFは先週、戦闘部隊の帰国休暇を取りやめて防空体制を強化し、予備役を招集した。
イランが実際に攻撃を開始すれば、中東地域をこれまで以上に幅広く巻き込む地域紛争につながりかねないとの不安が広がっている。複数の国の関係者は、イランに攻撃を思いとどまらせようとしている。
アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は中国、サウジアラビア、トルコの外相と会談し、イランに対してもつ影響力を使うよう説得を試みた。
イスラエルのヨアヴ・ガラント国防相は12日、米中央軍司令官との会談後、この脅威によってイスラエルとアメリカの絆が強まったと述べた。そして、「どう対応すべきか我々は承知している」と話した。
ガザ地区での戦争は、昨年10月7日にイスラム組織ハマスがガザ地区に近いイスラエルの集落を襲撃したことで始まった。ハマスは民間人を中心に約1200人を殺害し、250人以上を人質にした。イスラエル政府は、ガザに残る人質130人のうち、少なくとも34人がすでに死亡したとしている。
ハマスがガザ地区で運営する保健省によると、イスラエルによるその後の攻撃で、ガザ地区では3万3600人以上が殺害された。そのほとんどが民間人だという。
この紛争の一環として、イスラエルは北側国境越しにほぼ連日、レバノンの武装勢力ヒズボラと砲撃の応酬を交わしている。他方、イラクやイエメンでイランが後押しする勢力は、イスラエル領を攻撃するほか、イラクとシリアで米軍基地を攻撃している。
さらに、イエメンの親イラン武装組織フーシ派は紅海を通過する船舶攻撃を続けており、これを受けて米英両軍がイエメン領内のフーシ派拠点を攻撃している。
●ロシアの兵器生産拡大、中国の支援が大きく寄与 米当局者 4/13
中国がロシアによる国防産業基盤の強化を大々的に支援しており、ウクライナとの戦争を続けるロシアはソ連時代以来となる野心的な軍事生産拡大に乗り出していることが分かった。バイデン政権高官が明らかにした。
中国が提供している支援には、大量の工作機械やドローン(無人機)、ターボジェットエンジン、巡航ミサイル向けの技術、超小型電子部品、ロシアが兵器の推進剤に使用しているニトロセルロースなどが含まれる。
当局者の一人によると、中ロの企業もロシア国内でドローンの共同生産に取り組んでいるという。
中国の支援がウクライナにおけるロシアの継戦能力に大きな影響をもたらす一方、ウクライナ軍は装備品や兵器の不足に悩まされているのが現状だ。米連邦議会の共和党議員が新たな対ウクライナ軍事支援案の採決を妨害し続けている状況も、ウクライナの問題を一段と悪化させている。
米欧州軍のカボリ司令官は今週の議会証言で、ロシアは2年あまり前のウクライナ侵攻以降、軍の再建に「相当程度成功」しており、その能力はおおむね侵攻前の水準に戻っていると明らかにしていた。米当局者は今回、中国がこうした急速な軍備増強に大きく寄与していることを明確にした形だ。
中ロの協力関係の深化を示す数字としては、2023年にロシアが輸入した超小型電子部品の9割が中国製だった点が挙げられる。2人目の当局者によると、ロシアはこうした超小型電子部品をミサイルや戦車、航空機の生産に使用しているという。
ロシアの砲弾生産の急速な拡大も、中国から輸入したニトロセルロースによるところが大きい。CNNは今年、ロシアの砲弾生産量はこのままいけば米欧の3倍近くに達するとみられると報じていた。
国防兵器だけにとどまらず、中国はウクライナで使用される人工衛星その他の宇宙能力でもロシアを支援しており、ウクライナ戦争で使う画像も提供しているという。
ウクライナ戦争の開始当初、ロシアの国防産業は米国の制裁や輸出管理で大きく後退したが、中国からの支援がこの穴を埋めている状況だ。
バイデン米大統領は今月、中国の習近平(シーチンピン)国家主席との電話会談でロシアの国防産業基盤への中国の支援に懸念を表明。他の当局者も同様の懸念を中国側に繰り返し提起している。
●ロシアの戦車はあと1年で枯渇か、死傷者も年30万人ペース ウクライナ正念場 4/13
ロシアがウクライナで拡大した戦争が3年目に入るなか、戦場は主に3つのダイナミクスで形成されている。
1. ロシアは政治、産業、軍事のリソースを総動員している。だがこの動員は、ロシアの再生不可能なリソースを著しく消耗している。なかでも重要なのは、冷戦時代の古い兵器の在庫が払底しつつあることだ。
つまり、ロシアは強いが脆い。
2. ウクライナもリソースを動員しているが、喫緊の財政的ニーズや軍事的ニーズを満たすのには依然として外国の援助に頼っている。そして、この援助の決定的に重要な部分は、米議会下院のロシアに好都合な共和党議員たちの手で阻まれている。
3. ウクライナの戦術はロシアの戦術より優れており、ウクライナ軍部隊がはるかに規模の大きいロシア軍部隊を打ち破る一因になっている。だが、ウクライナ軍の弾薬が欠乏している場合は、戦術自体が意味をなさなくなる。
およそ1000kmにわたる戦線の一見ちぐはぐに見える現在の状況は、これら3つのダイナミクスの相互作用によって説明できる。
ウクライナ軍はロシア軍による攻撃をおおむね撃退し、徐々に装備が貧弱になってきているその突撃部隊に途方もない損害を与えている。それでも、ロシア軍はたえず部隊を繰り出し、優勢に立っている。ロシア軍の進撃を止められるのは共和党のマイク・ジョンソン米下院議長だが、これまでそうするのを拒んでいる。
ジョンソンはただ、ウクライナに600億ドル(約9兆2000億円)規模の援助を送る法案を採決にかけるだけでいい。この法案は米国民から圧倒的に支持されている。この援助で新たな弾薬を入手できれば、ウクライナ軍はロシア軍の前進を押しとどめられるだろうし、その間にロシア軍は冷戦期の古い兵器の備蓄を使い果たすことになるだろう。
ロシア軍はウクライナ軍との2年2カ月あまりにおよぶ激しい戦いで、戦車、歩兵戦闘車、榴弾砲など各種装備を1万5300点あまり失った。人員も数十万人損耗した。ウクライナ軍の損害はその3分の1ほどにとどまっている。
ウクライナは勝利に必要な3倍のペースでロシア軍の人員を損耗
一方で、ウクライナに進駐しているロシア軍の規模はかつてないほど大きくなっている。米欧州軍の司令官で北大西洋条約機構(NATO)の欧州連合軍最高司令官を兼任するクリストファー・カボリ米陸軍大将は10日、米下院軍事委員会で「ロシア軍の規模は(2022年2月に)ウクライナに侵攻した時点よりも15%拡大している」と証言した。「この1年で、ロシアは前線の兵員数を36万から47万に増やした」
そうできたのは、ロシア政府が志願兵への報酬を増額したのに加え、2022年後半に約30万人を動員したからだ。さらに、新兵をウクライナの戦線に迅速に投入するために、ロシア軍が基礎的な訓練を短縮しているという事情もある。
しかし、こうした訓練不足の新兵は前線で長く生き残ることはできない。ウクライナ国防省の発表では、ロシア軍はこのところ1日に800〜1000人の人員を失っている。
ロシア兵はウクライナに到着するとすぐに死ぬ。エストニア国防省は昨年の研究で、ウクライナ側が今年、ロシア軍に10万人の死者・重傷者を出させれば、ロシアの動員努力を崩壊させるとまではいかなくとも、それに恒久的なダメージ与えられると分析していた。
現在、ウクライナは年30万人のペースでロシア軍の人員を損耗させている。ロシアはこれほどの人的損失には持ちこたえることができない。
車両の損害についても同様だ。ロシアの産業界による戦車の新造数は年500〜600両、その他の戦闘車両の新造数もおそらく1000両かそこらにとどまる。それに対して、ロシア軍がウクライナで失っている戦車は年1000両超、それ以外の戦闘車両の損失も2000両近くに達する。しかも、損失ペースはますます加速している。
つまり、戦闘車両の損失数と新造数には大きなギャップがある。それを埋め合わせるために、ロシアは1970年代、さらには1960年代や1950年代までさかのぼる老朽化した戦闘車両を長期保管施設から引っ張り出している。だが、こうした古い車両の在庫も無限にあるわけではない。繰り返せば、ソ連産業界の全盛期に生産されたこれらの車両を新規生産分で補うことはできない。
ロシアの戦車の在庫は早ければ来年半ばに底をつく
ロシアにとって不吉なことに、最新の予測によれば、ロシアの古い戦車の在庫は早ければ2025年半ばにも底をつく。エストニアの軍人で軍事アナリストのアルトゥール・レヒは「ロシアに残された時間は少ない」と述べている。
ロシア軍の戦闘車両の不足を示す証拠もある。装甲のない貨物用トラックなどに乗り込んで戦闘に臨む部隊の姿だ。なかには、ゴルフカートのような中国製車両を使う部隊もある。
車体の前も横も開放されたゴルフカートじみた車両が、たとえば、ウクライナ軍の怒りをたぎらせた対戦車ミサイルチームや、最も腕のたつドローン(無人機)操縦士との戦闘で長くもたないのは、わざわざ言うまでもないだろう。ロシア軍がウクライナに30万人、40万人の人員を投入しようが、何も防護を与えなければ役に立たないのだ。
ウクライナ軍が応射すらできない場合もあるほどの弾薬不足に陥っていなければ、ロシア軍の脆さはもっとあらわになっていただろう。
ウクライナ軍による2023年の反転攻勢は、結局わずかな前進しか遂げられず、年後半に頓挫した。その後、ロシア軍が主導権を握り、戦線全体で攻勢に転じた。
これはウクライナ側にとって最悪のタイミングで起こった。ほぼ同じ時期の昨年10月中旬、米国ではジョー・バイデン大統領がウクライナ支援向けの600億ドル強を含む予算案を議会に提示したが、同月下旬に下院議長に就任したジョンソンは採決を拒んだ。
ジョンソンはドナルド・トランプ前大統領の側近だ。トランプは2019年、ウクライナ政府に政敵のバイデンと息子の汚職疑惑について捜査するよう圧力をかけた問題で弾劾訴追された。トランプは以来、ウクライナに対して領土の一部をロシアに割譲するよう促している。
ジョンソンやその背後にいるトランプによって砲弾数十万発や地対空ミサイル数千発を奪われるかたちになったウクライナ軍は、十分な火力があれば保持できていたかもしれない陣地からの撤退という厳しい選択を余儀なくされている。
ウクライナ軍の東部での防御拠点だったアウジーウカがそうだった。2000人規模の守備隊は、攻撃してくるロシア軍部隊を撃退し続け、5カ月ほどの間に数万人の損耗を被らせたが、2月中旬、弾薬が枯渇するなかでついに撤退に追い込まれた。現在、同じく東部のチャシウヤールを防御する2000人規模の守備隊も、運河地区で同様の深刻なジレンマに陥っている。
ウクライナ側は発電所などエネルギー施設の被害も相次ぐ
ウクライナが保有する最も優れた防空システムも、米国製のミサイルが足りないために鳴りをひそめるようになっている。首都キーウ、東部のハルキウ、南部のオデーサといった大都市は、ロシアが増やしているミサイル攻撃や砲撃、自爆型ドローン攻撃などに対する防御が薄くなってきている。
ウクライナでは3月、こうした空襲によって子どもを含む民間人600人が死亡した。4月11日未明には、ミサイル攻撃でキーウ州最大の発電所が破壊され、多数の世帯や重要な兵器の工房が暗闇に包まれた。米国のブリジット・ブリンク駐ウクライナ大使は「もっと多くの防空システム、そしてわが国の支援が、今すぐ必要です」と訴えている。
ウクライナ軍は劣勢に立たされている。だが優勢なロシア軍はと言えば、兵士はろくな訓練を受けておらず、車両は大昔のものだ。つまりウクライナ軍が劣勢なのは、たんに弾薬が不足している結果なのだ。
カボリ大将は「(ウクライナが)現在保持している領土と領空を守る能力は、米国の継続的な支援がなければ急激に低下するだろう」と議会で警告した。逆に言うと、米国の支援があればウクライナ軍は弾薬や武器を回復し、ロシア軍による空襲から都市を守り、近代的な兵器を急速に失っているロシア軍に対して、火力面で優位に立つことができるだろう。
悲劇的なのは、どちらになるかはウクライナ自身では決められないということだ。それはひとりの米国人にかかっている。米下院で、わずかな差で多数派を占める共和党のリーダー、ジョンソンその人だ。
ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、米国のウクライナ支援をめぐる政治的な事情も、この支援に何が懸かっているかもよくわかっている。
12日、エストニアのカヤ・カッラス首相に宛てたメッセージのなかで、ゼレンスキーはこう述べている。
「ウクライナのパートナーたちが断固とした行動をとれば、わたしたちはロシアのテロをこれ以上広がる前に打ち負かせる。わたしはそう確信しています」
●岸田首相の議会演説…議員から好評の一方、ウクライナ支援には共和党から冷めた反応 4/13
岸田首相の米議会での演説。参加議員からは概ね高評価の声も聞かれたが、特にウクライナ支援を訴えた場面では共和党議員から冷めた反応も。
首相の議会演説…スタンディングオベーションは十数回
日本の首相としては9年ぶり2人目となる、米上下両院合同会議での議会演説。35分のスピーチを英語で行い、議員が起立して賛意を送る十数回のスタンディングオベーションを受けた。終了後、議員から首相は記念撮影やサインを求められる姿も見られた。演説はどう受け止められたのか?
会場の米議員からは高評価…一方で、厳しい意見も
会場で演説を聞いた議員らからは…。
共和党 アンディ・バー下院議員「アメリカが単独で行動することを求められることはないというメッセージは、民主主義を単独で守るという責任を負いたくないと思うアメリカ人の心に響く」
共和党 ナサニエル・モラン下院議員「(岸田首相は)日本とアメリカのようなパートナーシップが自由と民主主義のために共に立ち上がることがこの世界に必要だということを思い出させてくれた」
取材に応じた議員からは概ね好意的な反応が示された。一方、首相が「アメリカのウクライナ支援」に言及した場面で、支援に慎重な野党・共和党員は拍手をしなかった。米議会の「分断」が浮き彫りになった形だ。
首相の議会演説…専門家「共和党員の共感を得られたか?」
演説の評価について、米国政治に詳しい明海大学の小谷哲男教授は「ポイントは議会の半分を占める共和党と、トランプ支持層が多い党員にいかにアピールするか。ルールに基づく国際秩序に関心のない人たちに、ルールの重要性を説けば、民主党と同じと見られてしまう」と言及。さらに、ウクライナ支援については「単に支援を続けるという言い方ではなく、アメリカ国内産業の利益と雇用を生み出すからと言えれば…」と指摘した。
政府関係者からは「歴史的な演説だった。日米同盟の強固さを米議会で超党派でアピールできた」と評価する声が相次いだ。一方で、政府関係者の1人は「9年前の安倍首相演説と比べると、アメリカへの“寄り添い”を意識しすぎるあまり、中国・ロシアを批判し、さらなる分断を生みかねない中身となっている」と指摘した。
●NYダウ 中東情勢緊迫化の懸念で株安 一時500ドル以上値下がり 4/13
12日のニューヨーク株式市場では、中東情勢が一段と緊迫化するという懸念から売り注文が膨らみ、ダウ平均株価は、一時、500ドル以上値下がりしました。
12日のニューヨーク株式市場、ダウ平均株価の終値は前日に比べて475ドル84セント安い、3万7983ドル24セントでした。
イランがイスラエルによるとされる大使館への攻撃に対する報復を近く行う可能性が伝えられたことで、中東情勢が一段と緊迫化するという懸念から売り注文が膨らみました。
市場関係者は「根強いインフレを受けてFRB=連邦準備制度理事会の利下げが遅れ、現在の高い金利水準が続くことへの警戒感が広がっている中で、中東情勢への懸念が高まりリスクを避けようとする投資家が増える展開になった」と話しています。
●ロシア外務次官“日米の軍事協力 安全保障脅かす” 日本大使に 4/13
ロシアのルデンコ外務次官は、モスクワに駐在する日本の武藤大使との会談で「日本とアメリカの軍事協力が北東アジア地域の安定と安全保障を脅かす傾向にある」と主張しました。
ロシアのルデンコ外務次官は12日、ロシア外務省で、モスクワに駐在する日本の武藤大使と会談しました。
ロシア外務省によりますと、この中でルデンコ次官は「日本とアメリカの軍事協力の発展が北東アジア地域の安定と安全保障を脅かす危険な傾向にある」と主張したということです。
ロシアが日本や北東アジア地域をめぐる政策を決める際には、この点を考慮するとしています。
アメリカを訪問している岸田総理大臣がバイデン大統領と会談し、防衛協力などの分野で連携強化を確認したことを受け、日本の動きをけん制した発言だとみられます。
一方、モスクワの日本大使館によりますと、武藤大使は会談で日ロ関係が悪化していることについて「ロシアのウクライナ侵略に起因する」と述べた上で「ロシアが侵略をやめてすべての部隊を撤収することが問題の早期解決につながる」と伝えたということです。
また、アジア太平洋地域における安全保障環境の変化に対して、日本はアメリカなどとともに対応する必要があると述べたとしています。
●オランダ、1600億円拠出へ=対ウクライナ追加軍事支援 4/13
オランダのルッテ首相は12日、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの軍事支援として、年内に10億ユーロ(約1600億円)を追加で拠出するとX(旧ツイッター)で明らかにした。オランダは今年分として既に20億ユーロの支援を決めている。
ルッテ氏は2025年も30億ユーロを拠出する方針を示した。ルッテ氏は侵攻後、西側諸国による米国製戦闘機F16の供与を主導。北大西洋条約機構(NATO)の次期事務総長の最有力候補となっている。 
●ロシア、電力インフラに集中攻撃 迎撃ミサイル枯渇恐れ 4/13
ウクライナ中部キーウ(キエフ)州最大の火力発電所が11日朝、ロシア軍の攻撃を受けて全ての発電能力を失った。ロシアがウクライナ各地の電力インフラを集中的に攻撃する一方、ウクライナは迎撃用の防空ミサイルを「近く使い果たす」(米軍高官)恐れが指摘される。ゼレンスキー政権は防空支援の拡充を訴えている。
前面が焼け焦げた建物の一部がえぐられるように倒壊し、周辺の窓ガラスはほぼ全て割れていた。キーウ中心部から南に約40キロに位置する「トリピリスカ火力発電所」を12日に訪れると、巨大な施設が無残な姿をさらしていた。
●ロシア、ウクライナのエネルギー施設を攻撃…キーウ近郊の大型発電所を破壊 4/13
ロシアがウクライナ各地のエネルギー施設を攻撃し、首都キーウ近くの大型発電所が完全に破壊され、第2都市ハルキウでは大規模な停電が発生した。ロシアは今回の攻撃について、今年に入りウクライナ軍がロシア内のエネルギー施設を攻撃したことに対する報復であり、ウクライナの非武装化の試みの一部だと明らかにした。
ウクライナの首都キーウと近隣地域に電気を供給する国営トリピルスカ火力発電所は11日(現地時間)、ロシア軍のミサイルとドローン攻撃で完全に破壊された。AP通信などが報じた。この攻撃で変圧器と発電機が破壊され、発電所の建物で火災が発生した。
国営の発電所運用会社セントレネルゴのアンドリー・ホタ監査委員会議長は、ロシア軍の最初のドローンが発電所に接近すると、労働者は緊急避難し、発電所に火災が広がるのを手の付けようもなく見守ったと伝えた。彼は「すべてが破壊された」とし、残骸の中に残っていた人を探すための捜索作業が攻撃後数時間続いたと話した。
この発電所から電力を供給される300万人の住民は、電力供給網の転換のおかげで停電を免れた。だが、東部に位置するウクライナ第2都市ハルキウでは、電力施設が10回以上攻撃を受けた影響で電力供給が途絶え、住民20万人が被害を受けた。
電力供給網運用会社のウクレネルゴは、西南部の黒海沿岸のオデーサ、中部のザポリージャ、西部のリビウなどにある発電施設と変電所も攻撃を受けたと明らかにした。ロイター通信によると、北東部のロシア国境付近の地域であるスミの火力発電所も同日午後に攻撃を受けた。天然ガスを貯蔵する地下貯蔵所2カ所も攻撃されたが、運営が中断されることはなかったとエネルギー会社ナフトガスが明らかにした。
ウクライナ空軍は同日、ロシア軍が82機のミサイルとドローンを動員して攻撃し、このうち18機のミサイルと39機のドローンを撃墜したと発表した。
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ソーシャルメディアへの投稿で、この日の空爆をテロと規定し、西側諸国に向けて「我々に必要なのは、目をつぶって長期間討論することではなく、防空支援だ」と訴えた。
ドミトロ・クレバ外相も同日、スロバキアを訪問した席で「何を討論する案件があるのか。問題は一つだ。我々に(米国製の)パトリオットミサイルを送ってほしい」と訴えた。
ロシア国防部は今回の攻撃について、ウクライナによるロシアのエネルギー施設攻撃に対する報復だと明らかにした。ウクライナ軍は1月21日、サンクトペテルブルク近くの港にあるエネルギー施設をドローンで攻撃するなど、今年に入ってロシアのエネルギー施設を10回以上攻撃した。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はこの日、ベラルーシのルカシェンコ大統領と会い、「我々のエネルギー施設に対し最近相次いだ攻撃に対応する義務があった」とし、「エネルギー施設の攻撃はウクライナの非武装化という目標と関連したもの」だと述べた。 
●プーチン氏「核戦争の準備はできている」…特異な世界観とロシアの核戦略 危ぶまれる「核軍縮」の期限 4/13
ロシアのプーチン大統領が「核の脅し」を強めている。2022年2月のウクライナ侵攻から戦闘が3年目に突入する中、核兵器の使用を何度もほのめかし、米国や欧州との対立は冷戦期以来、最悪の局面にある。ロシアがウクライナなどと一つの国を構成していた旧ソ連時代を含め、核戦力を絶対視する事情を探った。
「あらゆる手段で自国領を守る」
プーチン氏は侵攻開始から4日目、米国や欧州、日本の「非友好的な態度」を理由に、核抑止部隊を厳戒態勢へと移行させた。同年9月にはウクライナ東・南部の4州全域を「併合」し「あらゆる手段」で自国領を守ると宣言した。
ロシアの軍事ドクトリンは、大量破壊兵器による攻撃を受けた場合や、通常兵器による攻撃で「国家存亡の危機」に立たされた場合などに核兵器の使用を限定。今般の核威嚇は、ウクライナに対する米欧の兵器供与を止める狙いとみられる。
ロシアが想定するのは出力の小さな戦術核の局地利用だが、徹底抗戦を掲げるウクライナが降伏する公算は小さい。一方、広島・長崎原爆以来の核使用となれば、国際社会の「核の規範」が揺らぐ。ロシアに中立的態度を示してきた中国やインドすら対ロ強硬に転じかねない。
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は同年秋、ロシアが核を使用すれば「深刻な結果をもたらす」と警告。NATOがミサイルなどで「懲罰」に出た場合、ロシア軍の報復は必至だ。小型核でもロシアがひとたび使用に踏み切れば、米欧との間で全面核戦争を引き起こす恐れもある。
「もしトラ」米大統領選にも注目
ロシアで核のボタンを握るのは大統領、国防相、軍参謀総長で、発射には少なくとも2人の合意が必要。全面核戦争では弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)、戦略爆撃機、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「核の3本柱」が主役になる。
11月の米大統領選の行方も注目だ。核軍備拡張の必要性を説く共和党のトランプ前大統領は在任中の18年、旧ソ連と結んだ中距離核戦力(INF)廃棄条約からの離脱を表明。同条約は翌年失効した。核の3本柱や戦略核弾頭数を制限する米ロ間の新戦略兵器削減条約(新START)の期限が26年2月に迫る中、米ロ間で核軍縮交渉を再開できるかが危ぶまれている。
「プーチン氏の考えは軽すぎる」
核を持たない国を「弱者」とみなすプーチン氏の世界観もあらわになっている。
22年8月、プーチン氏は「核戦争に勝者はなく、戦ってはならない」と声明を発表。「核戦争に勝者なし」は東西冷戦期、米ソ首脳が宣言した原則だが、プーチン氏は「米欧がウクライナ情勢に介入すればロシアとの核戦争になる」と本来の不戦の意味をゆがめて用いる。「世界の破滅」をちらつかせ、米欧をけん制する情報戦だ。
核使用に言及する指導者は世界的にも珍しく「プーチン氏の核に対する考え方は軽すぎる」(ロシアの科学記者)と、以前から懸念されてきた。
プーチン氏は20年9月、国連演説で、核兵器を保有する安全保障理事会常任理事国(米英仏ロ中)を「五つの核大国」と呼び、世界秩序をリードする存在と定義。ウクライナ侵攻後には「米国はドイツ、日本、韓国を占領し続けている」と発言し、核の非保有国は「真の主権」を持たないとの持論を示した。
「ヒロシマ・ナガサキ」で核戦力を信奉
ロシアが核戦力を信奉する背景には、1945年の米国による日本への原爆投下がある。
当時のソ連指導部は米国の核使用に衝撃を受け、4年後に長崎型をコピーした原爆の製造に成功した。一方、広島で被爆して死んだ少女、佐々木禎子さんを悼む折り鶴づくりをソ連の教育現場に広め、国民に反米感情を植え付けてきた。
ウクライナはソ連崩壊後、自国にある核兵器をロシアに集約する見返りに領土保全の約束を得る「ブダペスト覚書」を米英ロと締結。だがロシアは2014年以降、ウクライナを段階的に侵略しており、核放棄した国の主権をどのように守るのか、国際社会に課題を残した。
ウクライナと同じく、ソ連崩壊後に核放棄したベラルーシでは、ロシアが小型の戦術核の配備を進めており、NATOと、ロシア・ベラルーシの間で軍事的緊張が高まっている。
●占拠原発の再稼働計画か ロシアがIAEA通告と報道 4/13
米紙ウォールストリート・ジャーナル電子版は12日、ロシアのプーチン大統領が、占拠するウクライナ南部ザポロジエ原発を再稼働させる計画だと国際原子力機関(IAEA)に対して通告したと報じた。欧州最大のザポロジエ原発を巡っては戦闘に巻き込まれて大事故が発生することが懸念されている。
IAEAのグロッシ事務局長が3月にロシア南部ソチでプーチン氏らと会談した際、再稼働するのかどうかについて質問すると、プーチン氏は、間違いなく再稼働させると回答したという。
IAEAは同原発に派遣している専門家から最近、ロシア側が年内にも原発を再稼働させようとしているとみられるとの報告を受けた。
●軍事侵攻続くウクライナの前線「花びら地雷」の被害深刻に 4/13
ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナの前線では、「花びら地雷」と呼ばれる対人地雷によるウクライナの兵士の被害が深刻になっています。
地雷が埋められるなどした可能性 国土の4分の1余りに
ウクライナの非常事態庁によりますと、ロシアによる軍事侵攻で、地雷が埋められるなどした可能性がある面積はおよそ15万6000平方キロメートルで、国土の4分の1余りに相当するということです。地雷による兵士の死傷者数は明らかにされていませんが、被害は甚大だとみられています。
また市民にも被害が及んでいて、非常事態庁によりますと、今月の時点で、地雷などの爆発物で亡くなった人は258人、けがをした人は626人にのぼるということです。
特に戦闘の前線では、対人地雷による被害が深刻になっています。
無差別な被害を与える対人地雷は、国際条約で使用や製造が禁止されていて、ウクライナを含む160以上の国と地域は加盟しているものの、ロシアは加盟していません。
「花びら地雷」12センチほどと小型 空中から散布
中でも「花びら地雷」と呼ばれる対人地雷は、12センチほどと小型で、ロケット弾に仕込まれて空中から散布されます。
地面に落ちた数分後に起動しますが、草むらなどに紛れて見つかりにくく、踏んだり、つかんだりすると、中に入った液体が漏れ出て爆発する仕組みです。
非常事態庁によりますと、広範囲に散布されるのも特徴で、ロケット弾1発につき300個以上が搭載され、多連装のロケット砲であれば1度の発射で5000個近くが散布され、その範囲は150ヘクタールに及ぶとしています。
去年、ウクライナ軍が反転攻勢を進める中、ロシア軍が大量に使用したとされ、東部ドネツク州や南部へルソン州などの前線でウクライナ軍の兵士の被害が相次ぎました。
地雷除去部門の責任者 「花びら地雷」の脅威を強調
ウクライナの非常事態庁で地雷除去部門の責任者をつとめるイワン・シェペリエフさんは、「最も危険でこうかつな地雷が『花びら地雷』です。兵士1人がこの地雷を踏めば、助けようとする仲間もその周囲にたくさんある地雷の危険にさらされるのです」と話し、前線で連鎖的に被害を拡大させるとして、「花びら地雷」の脅威を強調しています。
ウクライナ軍の兵士 右足の一部を失う大けが
ウクライナ軍の兵士、ドミトロ・ミハイロフスキーさん(40)は去年9月、東部ドネツク州バフムトの前線で「花びら地雷」を踏み、右足の一部を失う大けがを負いました。
ミハイロフスキーさんは、ロシア軍に見られないよう真夜中に移動を命じられ、足元が見えないなか、無線機の誘導を頼りに暗闇に歩みを進めた瞬間、踏んだのが「花びら地雷」だったといいます。
ミハイロフスキーさん「爆発音ではなく『ポン』というこもった音がしました。衝撃はなく、ただ痛みだけがありました。倒れていると『足がなくなっている』と言われました。そこで『花びら地雷』だったと気がついたんです」
ミハイロフスキーさんは、被害にあった日の日中、ロシア軍がロケット弾を発射し、その一部から「花びら地雷」がまかれるのを見ていました。その直後には、周辺で行動していた別のグループから悲鳴が上がるのも聞いていたということです。
ミハイロフスキーさんが地雷によってけがを負い、治療のために運ばれたときには、同じように足の一部を失った兵士が2人いたということです。
ミハイロフスキーさんは戦線から戻されたあと、足の失った部分と義足が適応するために、6回もの手術を必要としたということです。いまは、日常生活を送るために、西部ビンニツァ州の施設でリハビリに取り組んでいます。
ミハイロフスキーさん「何よりも悲しいことは若い世代の地雷の被害が多いことです。戦争が続くかぎり、同じように傷つく人たちが増えていくばかりでしょう」
「花びら地雷」で手足の一部を失う人が相次ぐ
ウクライナでは「花びら地雷」など対人地雷によって、手足の一部を失う人が相次いでいます。
西部・ビンニツァ州にある義肢の製作やリハビリ支援を行う施設では、ロシアによる軍事侵攻の前は事故や病気などで足を失った人の利用がほとんどでしたが、施設の責任者バレンティン・サルマノフさんによりますと、今では訪れる人の3割近くが地雷による被害を受けた人だということです。
特に去年、ウクライナ軍が反転攻勢を仕掛けてからは、足などを負傷して施設を訪れる兵士が増え、その多くが「花びら地雷」の脅威を口にしたということです。
サルマノフさん「前線が攻勢に転じるとき、兵士たちはざんごうから出て敵の陣地を攻撃します。兵士たちから聞いた話では、敵の陣地には地雷が大量に仕掛けられた場所があり、そこで被害にあうのです」
施設の医師 部分的なけがに適応する義肢を作ること難しい
また「花びら地雷」による被害では、けがの程度にも特徴があるといいます。
施設の医師によりますと、「花びら地雷」は致命傷を負わせるほどの威力はないものの、つま先やかかとなど、体の一部分が失われるなどの大けがを負わせるということです。
こうした部分的なけがに適応する義肢を作ることは難しく、歩くための義足をつけるために切断手術などを余儀なくされることも多いということです。
ボロディミル・ダニリュク医師「義肢は種類がそれほど多くありません。けがをした部分に適切な義肢を選び、適応させるのは簡単ではないのです」
日本 地雷除去の取り組みを主導的に支援
ウクライナは国際社会の支援を受けながら「花びら地雷」など地雷除去のための取り組みを進めています。
中でも日本は、レーダーで地中の様子が分かる高性能の金属探知機や、短時間で除去ができる大型の地雷除去機といった先進的な機材の提供をはじめ、地雷の被害が長く続くカンボジアにウクライナの地雷除去の作業員を招いて技術を伝える研修を行うなど人材育成も進めていて、主導的に支援を行っています。
今月4日には、地雷対策の国際デーに合わせて、日本の支援でUNDP=国連開発計画を通じて、地雷探知機570台や防護服475着などが供与されました。
広範囲にわたる地雷除去にかかる時間は数百年に及ぶという試算も出ていて、日本は、今後はウクライナ国内で必要な機材の生産や人材の育成が進められるよう技術協力を進めていく方針です。
松田邦紀駐ウクライナ大使「地雷の探知や除去は日本が最も経験やノウハウがある分野だ。今後はウクライナ国内でも機材の開発や生産を共に行えるよう新たな分野の支援に挑戦していきたい」
●イラン革命防衛隊がホルムズ海峡で船舶拿捕か 「イスラエルと関連」 4/13
イラン国営通信は13日、イランの革命防衛隊がホルムズ海峡で、イスラエルと関連のある貨物船をヘリコプターで急襲して拿捕(だほ)したと報じた。大使館が空爆を受けたイランによるイスラエルへの報復攻撃が懸念されるさなかの作戦で、両国のさらなる対立激化が懸念されている。
今回の拿捕と、イランが宣言してきたイスラエルへの報復が直接関係しているのかどうかはわかっていない。ロイター通信によると、貨物船の乗組員は25人で、所有する会社がイスラエルの実業家と関連があるという。
国営通信によると、革命防衛隊の特殊部隊がヘリで急襲し、貨物船「MSC ARIES」を拿捕した。貨物船はイランの領海に向けて移動させられているという。国営通信が報じた映像には、複数の人物がロープを使って船舶に向けて下降する様子が映っている。 ・・・
●自衛隊車両の発送完了=木原防衛相、ウクライナ側に伝達 4/13
木原稔防衛相は12日、ウクライナのウメロフ国防相とテレビ会議形式で会談した。ロシアの軍事侵攻に対する支援として昨年5月に表明した自衛隊車両約100台の提供について、発送を完了したと説明。「一日も早く平和を実現するべく支援に取り組んでいる」と強調した。ウメロフ氏は日本の取り組みに謝意を示した。
●ロシア支配地域に砲撃10人死亡 ザポロジエ州要衝トクマク 4/13
ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ南部ザポロジエ州のロシア側行政府のバリツキー知事は13日、同州中部トクマクに対する12日夜のウクライナ側からの砲撃で子どもを含む10人が死亡したと明らかにした。タス通信などが報じた。
同行政府幹部によると住宅地に多連装ロケット砲が撃ち込まれ、住宅数軒が崩壊。約20人が負傷した。
ザポロジエ州の約70%はロシア側の実効支配下にある。トクマクは同州中部に位置する交通の要衝で、ロシア側が堅固な防衛線を築いているとされる。ロシア政府系テレビ「第1チャンネル」は13日、現地から「周辺に軍事施設などはまったくない」との住民の証言を伝えた。

 

●「ウクライナ派兵」をぶち上げたマクロン仏大統領はNATOの旗手か、それとも単なる目立ちたがり屋か 4/14
ウクライナ支援に消極的だった“君子”が豹変
ウクライナ戦争勃発から2年が経過した2024年2月26日、フランスのマクロン大統領が、対ロシア軍事戦略を話し合う国際会議で、「欧米の地上部隊をウクライナに派兵する可能性を排除しない」と爆弾発言し、NATO(北大西洋条約機構)に激震が走った。
米英独など加盟主要国は即座に否定し、ロシアのプーチン大統領が「西側が参戦か」と勘違いして、第三次大戦に発展しないよう火消しに大わらわだった。
プーチン氏は、数日後の年次教書演説(内政・外交の基本方針を国内外にアピール)の場を借りて、「介入する者にとり、悲劇的な結末につながる」と暗にマクロン氏にすごんだ。また、プーチン氏の側近も「1812年のロシア侵攻で敗北したナポレオンの大軍と同じ轍を踏む」と、「冬将軍」に大敗したフランスの英雄を引き合いに出して警告した。
欧州外交に詳しい外交専門家は、「マクロン発言は、『NATOから脱退するかもしれない』『大統領に再選すれば戦争は24時間で終わらせる』など、センセーショナルな言葉が大好きなトランプ前米大統領のお株を奪うほどだ」と舌を巻いた。
マクロン氏率いるフランスは、これまで西側主要国の中でも、ウクライナ支援に消極的だった。それだけに「君子豹変す」ならぬ「マクロン氏豹変す」である。
「NATOのウクライナ支援は米英主導だが、米・露に並び『第三極』としての大国意識が伝統的に強いフランスは、アングロ・サクソンに“右へ倣え”ではプライドが許さない、との対抗意識も見え隠れする」(前出の外交専門家)
実際、独キール世界経済研究所の集計では、2021年1月〜2023年10月のウクライナ支援額は、アメリカがトップで約780億ドル(約11.5兆円)に上り、全体のほぼ半分を占める。以下ドイツ約230億ドル(約3.5兆円)、イギリス約140億ドル(約2.1兆円)と続き、日本も約74億ドル(約1.1兆円)で第5位にランクする。
これに対しフランスは約18億ドル(約2700億円)とケタ外れに少ない。もちろん、情報提供や人材・兵員教育などソフト面で多大な支援を行っているが、それでもNATO主要国の1つで国連安全保障理事会の常任理事国、しかも核兵器保有国の“大国”とすれば少な過ぎだろう。
実際、他のNATO諸国からも、「フランスからリーダーシップは感じられない」との不満が出ているようだ。ある軍事ジャーナリストは、ウクライナに対する軍事支援に関して「これまでは積極的とは言い難かった」と指摘し、こう続ける。
「フランスのやり方は“口は出すがカネは出さない”の典型。米英独はもちろん、スペインやポーランド、チェコなどは戦車を提供するが、フランスはAMX-10RCという、一見戦車に見えるが装甲の薄いタイヤ式装甲車の供与でお茶を濁している。
フランスは『カエサル』という高性能のトラック車載式155mm自走砲を20台以上送ったとアピールするが、あまりにも少ない。貴重な実戦データを取得し、今後の兵器開発にフィードバックするのが真の狙いで、いわば“試供品”感覚でウクライナに供与しているのでは、と勘繰る声すらある」
「もしトラ」を意識しつつ、消極姿勢を一転させた
ところが、2023年の秋ごろからフランスの風向きが急変した。きっかけは「もしトラ」(もしトランプ前米大統領が返り咲いたら)だ。
ウクライナにとって最大の支援国であるアメリカは、トランプ氏率いる共和党の猛反対により、対ウクライナ援助がストップし、約600億ドル(約9兆1000億円)が宙に浮いたままだ。
このため、弾薬不足のウクライナ軍は劣勢を強いられ、次善策も講じないまま、この状態がずるずると長引けば、ウクライナ全土がロシア軍に占領されてしまう恐れもある。しかも「NATOは張り子の虎」と確信したプーチン氏が味をしめ、NATO陣営のバルト三国やポーランドにも触手を伸ばしかねず、そうなればフランスの国土も危険にさらされる。
周囲を海に囲まれる島国の日本人にはピンとこないかもしれないが、フランスとロシアは地続きで、意外に近い。「Google Map」を見れば一目瞭然で、パリ〜モスクワは約2500km、仏国境〜ベラルーシ国境(ロシアの同盟国)は約1200kmで、それぞれ根室〜那覇、東京〜奄美大島ほどの距離しかない。欧州大陸は案外狭く、こうした視点・意識は地政学上非常に重要である。
そこで、マクロン氏は消極姿勢を一転、「もしトラ」を意識しつつ、ウクライナ支援を活発化させる。
爆弾発言の直前には、ウクライナのゼレンスキー大統領との会談に臨み、ウクライナの安全を長期間確保する安保協定を締結。今年中に最大30億ユーロ(約4800億円)の追加軍事支援も約束した。
過激発言にも拍車がかかり、今年3月の仏テレビ局のインタビューでは、「プーチン氏は約束を何ひとつ守らない人物で、ウクライナで侵略はおしまいだ、などと信じる者はいない」と挑発した。
そして直後には、大型武器援助も決意。タイヤ式のVAB装甲車数百台や、「フランス版パトリオット」と呼ばれる、長距離地対空ミサイル「アスター30」(最大射程120km)などを、2025年初めまでにウクライナに届けると断言した。
NATOでの影響力を高めたいマクロン氏の思惑
また連動するように、NATO自身も、「もしトラ」をにらんだ対応を急ぐ。
今年4月初めのNATO会議では、5年間に1000億ユーロ(約16兆4000億円)のウクライナ援助案を話し合うことが決まった。これは従来のように加盟国がそれぞれ独自に行う援助とは別に、NATOが基金を設けて加盟国が資金を拠出。“NATO名義”で一括して援助する仕組みである。
同様に「ウクライナ防衛連絡グループ」(UDCG)も体制替えが行われる模様だ。同グループは別名「ラムシュタイン・グループ」と呼ばれ、NATO加盟国を中心に、親欧米諸国の56カ国で構成され、ウクライナへの武器支援を具体的に調整する役目を果たす。
援助額が最多のアメリカが主導するが、前述のNATO基金創設後に、主導権をNATOに移管するというものらしい。「もしトラ」が現実となり、トランプ氏がウクライナ支援をストップしようとしても、これを難しくするのが狙いだが、前出の軍事ジャーナリストはこんな推測をする。
「トランプ氏再選後の悪影響を危惧する、バイデン政権率いる米民主党や共和党の一部、米軍幹部制服組などが中心になりNATOの“もしトラ対策”が進められているようだが、マクロン氏もこの機に乗じてNATOでの影響力を高めようと積極的に動いていると聞く」
トランプ氏の“欧州嫌い”を助長した張本人か
このように、NATOやフランス率いるマクロン氏は「もしトラ」対応策を急ぐが、欧州外交の専門家は、「本をただせば、そもそもマクロン氏がトランプ氏の『欧州・NATO嫌い』を助長したようなものだ」と指摘する。
きっかけは、2023年4月にマクロン氏が中国を訪問した際の発言である。
西側メディアのインタビューに対し、マクロン氏は台湾有事にはEU(欧州連合)の利害などなく、「最悪なのは、われわれがアメリカのリズムや中国の過剰な反応に合わせ、追従すべきと考えることだ」と強調した。
しかも、欧米から多数の批判が上がると、マクロン氏は負けじと、「(アメリカの)同盟国は“下僕”ではない」と応戦する始末だった。
これに対しトランプ氏は、「私の友人・マクロン氏は、中国のご機嫌取りに励んでいる」と、皮肉交じりに批判した。
2023年7月には、NATO首脳会議で東京事務所開設の話が持ち上がる。中国の軍事的脅威に対抗するため、日本と欧米の結束強化をアピールする狙いだが、マクロン氏は「NATOはあくまでも北大西洋地域に重きを置くべき」と反対し、結局計画は先送りになった。これに関しても、中国に対決姿勢で臨もうとするトランプ氏は、不快感をあらわにしたという。
もともとトランプ氏は大統領在任時代からマクロン氏と「水と油」の関係だったが、
「2023年のマクロン氏訪中は、トランプ氏にとっても分岐点だったのでは。対中戦略でもNATOは一枚岩だと思いきや、マクロン氏は逆に中国との親睦ぶりをアピールする策に出た。これが遠因にもなり、『欧州の問題は欧州が解決すべきで、ウクライナ支援も欧州が主体になるべき』と言うトランプ氏のスタンスは、ますます頑なになっている」と、欧州外交専門家は読み解く。
米英主導に我慢できずNATO脱退の「前科」も
ただし前出の軍事ジャーナリストは、「西側が結束しようという時に、あえて独自路線を歩むのは、いわばフランスのお家芸で、冷戦時代もそうだった。それを考えればマクロン氏の振る舞いは特別ではなく、むしろフランスのDNAではないか」と述べる。
実は「NATO脱退」に関しては、フランスの方が先輩だ。冷戦たけなわの1960年代、西側の主要国であるフランスは突然、NATOからの脱退を宣言した「過去」がある。
第二次大戦終結後、社会主義を掲げる旧ソ連に対抗するため、1949年に米英仏を中心に欧米はNATOを結成し同盟を強める。だが、伝統的にアングロ・サクソンにライバル心を抱くフランスは、米英による核兵器独占に反発。“大国意識”をむき出しに、当時仏大統領だったドゴール氏は核開発を推進し、ついに核兵器保有にこぎ着ける。
その後も、NATOの核戦力を統合運用したい米英と、断固反対のフランスとの溝は埋まらず、ついに1966年フランスはNATOの軍事機構を脱退する。
ちなみにNATOからの完全脱退ではなく、自国軍がNATO軍の指揮下から抜けるなど、軍事関連部門の不参加で、政治・経済関連の理事会などには籍を置き、軍事的な連携は続けている。
完全復帰は比較的最近で、2009年のサルコジ大統領時代だが、現在もフランスは核兵器の独自運用にこだわり、NATOの指揮下に核兵器は置いていない。
ロシアに最新鋭の“準空母”を売却する寸前だった
時としてフランスは、西側にとって「利敵行為」とも思えるような、スタンドプレーをすることもある。
2000年代初め、フランスは当時最新鋭の国産強襲揚陸艦「ミストラル」級(満載排水量2万1500トン、全長210m、ヘリコプター16機と兵員900名を収容可能)を、自国海軍向けに2隻建造し実戦配備した。艦首から艦尾までフラットな飛行甲板を持つ、見た目が空母に似ていることから“準空母”とも呼ばれる大型艦で、上陸作戦で威力を発揮する。
当時は西側と親密で主要国首脳会議(サミット)のメンバーでもあったロシアは、「仲間のよしみ」とばかりに、「ミストラル」級2隻を新造しロシア海軍に配属したいとフランスに打診。当時、造船不況にあえぐフランスは、「渡りに船」とばかりに快諾し、2011年に正式に契約を結んで建造がスタートした。
だが、3年前の2008年にロシアは隣国のジョージア(旧グルジア)に軍事侵攻を実施。当時のジョージアは旧ソ連邦の一員ながらも親欧米派の政権を握り、NATOに軍事支援を求めていた。
まさに現在のウクライナ情勢に酷似した状況で、ロシアに対する西側の警戒の目も急速に厳しくなり始めていた。当然、フランスは他の西側諸国から憂慮が投げかけられたが、意に介さず国内の失業対策や経済効果を優先して建造を続行する。
その後2隻は「ウラジオストク」「セバストポリ」とそれぞれ命名され、前者は太平洋艦隊に配属され、日本や米第7艦隊と対峙する任務に、後者は黒海艦隊への配属が予定された。
2隻は2015年、2016年にそれぞれロシアに引き渡される手はずだったが、2014年にロシアによるクリミア侵攻とウクライナ東部への侵攻が発生すると、さすがにフランスは引き渡しの一時延期を決意せざるを得なかった。
これに対しプーチン氏は引き渡しを猛烈に要求、一方で欧米側は「利敵行為だ」と猛反発する。板挟みとなった当時の仏大統領オランド氏は、「ウクライナ情勢が改善されなければ引き渡しできない」と表明し、最終的に2015年8月ロシアへの移転は正式に中止となった。そして、フランスはロシアに建造費用約11億ユーロ(当時レートで約1500億円)を全額返金した。
その後2隻はエジプトに売却されたが、フランスが“宿敵”ロシアに強襲揚陸艦を売却する寸前だったという事実に対し、欧米のメディアは、「自国が金銭的に儲かれば、同盟国・友好国の安全が脅かされようがお構いなしという、『フランス的例外』の典型」と酷評した。
「仮に同艦がロシアに配備され、ウクライナ戦争で使用されれば、強襲揚陸艦の実力を発揮し、今ごろウクライナのオデッサはロシアのものになっていた可能性が高い。ウクライナは海の玄関を失い、経済的にもさらに困窮しているはず。そればかりか侵略軍は。モルドバまで進撃していたかもしれない」(軍事ジャーナリスト)
マクロン氏の豹変は、仮に「もしトラ」が現実になっても、欧州が主体になってウクライナへの軍事支援を続けるという覚悟の表れなのか。あるいは「目立ちたがり屋」の性格からくるパフォーマンスに過ぎないのか──。トランプ氏より一回り以上若い46歳の「西側の若きリーダー」の真価が問われる。
●独、パトリオットを追加供与 ウクライナに防空強化支援 4/14
ドイツ国防省は13日、ウクライナに地対空ミサイルシステム「パトリオット」を追加供与すると発表した。ドイツは既に2基を送っており、追加の1基も早期に引き渡す。ピストリウス国防相は声明で「ロシアによるウクライナの都市やインフラへの攻撃は計り知れない苦しみをもたらしている」と指摘した。
ウクライナは欧米に防空支援の強化を繰り返し要請してきた。ゼレンスキー大統領は今月の地元メディアとのインタビューで、全土防衛にはパトリオットが25基必要との考えを示していた。
ゼレンスキー氏は13日、ドイツによるパトリオットの追加供与に謝意を表明し「他のパートナー国の指導者もドイツに続いてもらいたい」と訴えた。
一方、ウクライナ軍のシルスキー総司令官は13日、東部前線の戦況について「最近数日間で、かなり厳しくなっている」と述べた。ロシアのプーチン大統領が勝利した3月の大統領選の後、ロシア軍が攻勢を強めているとの見方を示した。
●中国、イランのイスラエル攻撃に「深い懸念」 緊張緩和求める 4/14
中国外務省は14日、イランのイスラエル攻撃について報道官談話を発表し、「事態がエスカレートしていることに深い懸念を示す」と表明した。
談話は、関係各方面に対し「冷静さと自制を保ち、緊張した情勢がさらにエスカレートすることを避けるよう呼びかける」と緊張緩和を求めた。その上で国際社会や「影響力を持つ国」に対して「地域の平和と安定を守るために建設的な役割を発揮する」よう呼び掛けた。
●米下院、イスラエル支援法案審議へ イラン報復攻撃受け 4/14
米議会下院のスカリス院内総務(共和党)は13日、イランがイスラエルに対する報復攻撃を開始したことを受け、イスラエルを支援し、イランの責任を追及する法案を来週審議すると表明した。
「下院はイスラエルを強く支持する。このいわれのない攻撃の報いが必要だ」と声明で述べた。詳細は追って発表するとした。
検討する法案が、イスラエルを支援する単独の法案なのか、それとも、ウクライナへの610億ドルの支援、台湾支援なども含む950億ドル規模の法案なのかは不明。
950億ドル規模の法案は2月に上院で可決されたが、共和党が多数派を占める下院では、対ウクライナ支援に反対する議員が多く採決のめどが立っていない。
上院共和党トップのマコネル院内総務は13日夜に公表した声明で、950億ドル規模の法案は「イスラエルおよび米国の軍事力の資源として不可欠」だとして下院に早期審議・可決を呼びかけた。
●岸田首相がウクライナ戦争資金と復興支援「10兆円」を引き受ける“増税地獄” 4/14
4月3日〜4月9日の1週間にAsageiBIZで配信し、多くのアクセスを集めた記事をBEST5まで紹介する。第4位は、アメリカを公式訪問した岸田首相の手形乱発に強い懸念を示した内容。「ウクライナ支援」の美名のもとに引き受けた巨費は、当然われわれ国民が担うことになる。
国内政治で問題山積みの岸田文雄首相は、久々に胸を張れる晴れ舞台、国賓待遇でのアメリカ訪問が4月10日に迫る。迎える米バイデン大統領は岸田首相に7月に開かれるNATO首脳会議への参加を促しているが、狙いはウクライナ支援での日本の負担増という見方が浮上している。
バイデン大統領は秋の大統領選で激突が濃厚なトランプ前大統領の横ヤリにより、下院で多数を占める野党共和党がウクライナ支援予算約9兆円を通さないことに焦っている。ウクライナのゼレンスキー大統領も「5月にロシア大攻勢が始まれば金欠で砲弾が不足し今のままでは敗走だ」などと必死で米下院議長に泣きついている状況だ。
「バイデン大統領にすれば、ウクライナ侵攻でロシアが優勢になってしまえば面目丸潰れで、大統領選も危うくなる。そこで考えているのが、アメリカに大きくのしかかっていたウクライナ支援の一部を日本に肩代わりさせる案と言われているんです」(霞が関関係者)
ドイツのシンクタンク「キール世界経済研究所」の調査では、これまでのウクライナ支援の総額は、22年の侵攻開始から今年2月までで国別ではアメリカが断トツ1位の約11兆円、EU各国の総額で13兆円、そして日本は約1兆2000円となっている。
日本のシンクタンク関係者が次のように指摘する。
「バイデン大統領は腹の中で、日本の援助額を5兆円前後にまで引き上げたいと密かに狙っている。そして自国負担割合をできるだけ引き下げ『アメリカ国内が困っているのにウクライナにそこまで支援しなくてもいい』という一部アメリカ国民を納得させて大統領選も有利にしたいとの思惑も透けてみえる。そのためのNATO首脳会議への参加呼びかけと見る」
もちろん、日本のNATO会議出席は22年から過去2回出席しているため今回もその延長という見方も多い。だが今回7月のNATO会議は重さが異なると指摘するのは、前出の霞が関関係者だ。
「今年のNATO会議はアメリカ主催、ワシントンで開かれ、さらに発足75周年記念大会。直後には大統領選も控えるタイミング。そこにNATO未加盟国の日本の岸田首相を招くのは、それだけ目に見える役割を期待しているということです」
今年2月にはウクライナの戦後復興について話し合う「ウクライナ経済復興推進会議」が都内で開催された。この復興には最低でも70兆円という莫大な資金が必要とされる。
「そのメインも日本といわれ、負担額6兆という数字が一人歩きしていますが、日本中心でカネを出せという各国からに暗黙の圧力がある中、ええ格好しいの岸田首相が6兆からの復興金を引き受けるのではと、財務省関係者らはブルッている。この復興支援と今戦争の不足資金補填と併せれば、日本の負担は10兆円という恐るべき額になる。日本国民にウクライナ税でも徴収しなければ到底無理な話です」(前出・霞が関関係者)
もはやアメリカのポチ、アメリカのATM化となりつつある「増税メガネ」に任せておいては、日本は滅びる。
●ドイツのショルツ首相が訪中、首脳会談へ ウクライナや中東情勢協議 4/14
ドイツのショルツ首相が14日、中国の重慶に到着した。首相としての訪中は2022年11月以来で2度目。中国国営中央テレビが伝えた。16日には北京で習近平国家主席や李強首相と会談する。首脳会談ではロシアのウクライナ侵攻や中東情勢が議題に上る見通し。
エズデミール食糧・農業相やウィッシング・デジタル・運輸相ら閣僚3人の他に、経済界の代表団も同行。訪中は16日までの日程で、重慶や上海でドイツ企業も視察する。ドイツは最大の貿易相手国である中国との関係を重視していると指摘される。
●イラン、イスラエルへ波状攻撃か…弾道ミサイル発射は「第一波」との報道 4/14
イラン国営通信は14日、精鋭軍事組織「革命防衛隊」がイスラエルに向けて発射したミサイルが弾道ミサイルで、イスラエルの内部深くの標的に向けられた「第一波」だと報じた。関係筋の話としており、事実とすれば、波状的な攻撃になる可能性がある。
●イランがイスラエルへ「ドローン発射」、大使館空爆への報復開始…到達まで数時間か 4/14
イラン国営放送は14日未明(現地時間)、精鋭軍事組織「革命防衛隊」が、イスラエルに向けて多数のドローン(無人機)をイスラエルに向けて発射したと報じた。1日にシリアのイラン大使館領事部が空爆されたことへの報復としている。
イランはシリアの大使館領事部ビル空爆がイスラエルによるものと主張し、報復を宣言していた。
ロイター通信によると、ドローンがイスラエルに到達するのに数時間かかるという。
●イスラエル 関係の船舶拿捕でイランを非難“海賊行為” 4/14
イランの国営通信が、イスラエルに関係する船舶をイランが拿捕(だほ)したと伝える中、イスラエルのカッツ外相は、イランに対して「国際法に違反して海賊行為をしている」と非難しました。イスラエル北部では、イランの支援を受けるイスラム教シーア派組織ヒズボラが攻撃を行うなど、中東地域の緊張が続いています。
イスラエル軍は13日、ガザ地区で軍事作戦を続け、各地の標的30か所以上を空爆したとする一方、ガザ地区の保健当局は、過去24時間でさらに52人が死亡し、これまでの死者は3万3686人になったと発表しました。
こうした中、イランの国営通信は13日、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ海上交通の要衝、ホルムズ海峡付近で、イランの軍事精鋭部隊・革命防衛隊の海軍が、イスラエルに関係のある船舶を拿捕したと伝えました。
イラン側は、これまでのところ正式な声明などは出していませんが、シリアにあるイラン大使館を攻撃されたことへの報復措置の一環である可能性があります。
これに対して、イスラエルのカッツ外相はSNSでイランに対し「ハマスの犯罪を支援するばかりか、国際法に違反して海賊行為をしている」と非難した上で、国際社会に対し、イランに制裁を科すよう呼びかけました。
一方、イスラエル北部では前日に、イランの支援を受けるヒズボラが複数の攻撃を行ったのに続き、13日も、イスラエル北部で防空警報が断続的に出されました。
イスラエル軍は「ヒズボラの無人機2機がレバノンから飛来し、爆発した」として、レバノン南部を砲撃したとしています。
こうした状況の中、イスラエル軍のハガリ報道官は13日、声明を発表し、「イランがこれ以上、事態を緊迫させる選択をするなら、その責任を負うことになる。イスラエル軍は同盟国とともに、必要な措置を取るだろう」と、警告していて、中東地域では緊張状態が続いています。 
●出発点は何ごとも危機感 4/14
平時にこそ…
「全て問題の根本は、平時にあるということです。有事の際に、的確に行動できるのか、あるいはウロたえて状況に流されるのか。それは平時にどんな心構えで臨んでいるのかにかかります」
国際政治が専門で、危機管理・安全保障に詳しい研究者は平時の生き方≠ェ問われる時代だと語る。
ウクライナ戦争はまだ続き、イスラエルとイスラム軍事組織・ハマスとの戦いも依然先の見えぬまま、中東全体がキナ臭い。各地で紛争は止まず、南米アルゼンチンは物価上昇200%台と猛烈なインフレに見舞われている。
日本を取り巻く東アジアも、北朝鮮はミサイル発射を繰り返し、米中対立の中で台湾問題も流動的だ。
平時に予測できる危機にどう備えるかということ。地震のように突発的に起きる天変地異にしても、向こう30年間に関東大震災並みの大地震が起きる可能性が大きい─といった予測を踏まえて、どう備えるか。
要は、そうした有事や緊急事態にどう対応するのかという危機感を国全体で、あるいは組織全体で持っているのかどうかということ。
出発点は、何ごとも危機感だと思う。
トランプ再選の場合は
米国大統領選(今年11月)は、もしトラ≠ゥらほぼトラ≠フ可能性が高まってきたといわれる。
トランプ前大統領(共和党)とバイデン現大統領(民主党)の対決の様相が深まり、米国内の世論調査では、トランプ氏がわずかの差ながら優位を保っている。
トランプ氏は、『アメリカファースト』(米国第一)を掲げ、何より自国優先主義で、NATO(北大西洋条約機構)問題でも過激な発言で物議を醸す。「自国の防衛費の支払いが不十分な国がある。米国はそうした国々の面倒を見る責任はない」といった趣旨の発言で、場合によっては、米国のNATO離脱をほのめかす。
米国は依然、世界一位の経済大国であり軍事大国だが、かつての超大国≠ニいう影は薄れている。第2次世界大戦(1945年に終了)後の国際秩序づくりを主導してきた米国だが、今、その余裕はない。
プーチンのロシア≠ニ対峙する欧州の安全保障を維持するために発足したNATO。過去、長い間、戦火を経験してきた欧州各国はEU(欧州共同体)を構築し、安全保障ではNATOを築いてきた。
ロシアと国境を接し、辛酸をなめてきたフィンランドもNATO加盟を果たし、永世中立国を謳ってきたスウェーデンもまた、紆余曲折をたどりながら最近、加盟にこぎ着けた。
そうしたNATOも、トランプ氏の言動に揺さぶられるのが現実だ。どう動いていくべきか─。
問われる日本の交渉力
「確かに、トランプ氏は過激な言動を繰り広げていますが、8割方は交渉によって解決可能な問題提起だと思います」と元経済官庁のトップはトランプ氏をこう評し、次のように述べる。
「アメリカファーストは交渉手段として使っているし、安全保障問題にしても、各国は応分の負担をすべきという考えですよね」
言ってみれば、米国は当然のことながら自らの国益を大事にして、他の国の運営に身銭を切ってまで尽くすことはないという論理。自分の国は自分で守る─ということをトランプ氏は言っているに過ぎないというのである。
米国の国力低下
確かに、米国は第2次世界大戦後の国際秩序づくりに積極的に動いてきた。IMF(国際通貨基金)や世界銀行の設立、NATO創設をはじめ、アジアやその他地域の途上国支援も推進してきた。
自由主義陣営のリーダーとして、旧ソ連や中国主導の社会主義陣営と対立し、冷戦構造下では、自由主義・市場主義陣営の旗振り役として振る舞ってきた。
『ベルリンの壁』が崩壊(1989)し、大半の社会主義国が自由・市場主義へとなだれ込み、旧西側(自由主義)の1人勝ちの様相となった時が、米国の勢いが最高潮だったのかもしれない。
それから30数年が経った。米国も余裕をなくし、国内だけで精一杯というのが現状である。
USスチール問題に思う
今の米国は、格差問題や移民問題などを抱え、まさに内向きの時代≠ノ入った。内向きの米国とどう付き合っていくか。
日本製鉄が昨年末、約2兆円もの投資で米USスチールを買収すると発表して以来、米国内では、「買収反対」の声が高まる。
USスチールは米国でも名門の鉄鋼会社。鉄鋼王といわれたアンドリュー・カーネギーが創設し、米国のみならず、世界で存在感を示してきた。
同社の本拠地、ピッツバーグ(ペンシルベニア州)では、労組を中心に、『買収反対』の声があがる。
トランプ氏は、「絶対に日本製鉄の買収を阻止する」と息巻く。
保守層の多い同州では、米国の名門企業とされるUSスチールが外国の企業に買収されることに対する嫌悪感が強い。バイデン現大統領もそうした空気に気押されて、日鉄の買収案に否定的だ。
日本製鉄側は、CO2を大量に吐き出す現在の高炉方式を止め、電炉方式や他の製造方法を取り入れるなど、USスチールの経営改革を進める考えで、社員や労組と協議しながら、現在の赤字体質を改善していく方針。
となると、丁寧な説明と対話で社員や労組、地域の関係者を説得していくほかはない。経営者も、こうした視界不良の時代≠切り拓いていく覚悟が求められる。
日本の再生
世界中が内向きになり、共存共栄の道が狭くなりつつある。その中を日本はどう生き抜くかという課題。
「米国や欧州は移民問題を抱えていますが、日本は東京一極集中をどうするかという課題」として、地方の再生を掲げるのは三菱総合研究所理事長の小宮山宏さん。
「地方の衰退というのは本質的に言って、第一次産業の衰退から来ています。農林水産業(の産出額)は10兆円。今の日本のGDP(国内総生産)から見て2%いかない。これでは地方を維持できない。この現状をどうするかという課題です」
小宮山さんは続ける。
「いま日本は資源を輸入している。ところが再生可能エネルギーをつくり、都市鉱山を活用すれば、資源エネルギーの自給ができる。農林業に関連してバイオマスの成長を見込むとかね。エネルギーだけでも年間50兆円近くを輸入。これを風力、太陽光、水力、地熱、バイオマスに替えていく。この投資を進めていけば地方に成果がはね返ります」
10兆円の農林水産業が50兆円の一次産業に─。こうしたビジョンづくりが必要。国の針路づくりを担う政治が漂流する現状は実に情けない。緊張感が求められる。

 

●LMEでアルミとニッケルが急伸、英米がロシア産金属の取引規制 4/15
ロンドン金属取引所(LME)のアルミニウム価格が15日に急伸し、過去最大の上昇を記録した。米英の新たな制裁措置により、13日以降に生産されたロシア産の引き渡しが禁止されたことにトレーダーは反応した。
プーチン大統領の軍事資金調達能力の抑制を目的とした新たな規制は、ロシアの販売を止める可能性は低いものの、ウクライナ侵攻の余波ですでに形勢が変化している金属市場に大きな不確実性をもたらす。
アルミニウムは一時9.4%高と、1987年に現在の契約形態が始まって以来最大の上昇。ニッケルは同8.8%急伸。ブローカーがサプライチェーンの大きな混乱に身構えていることを示唆した。流動性が比較的高く、ここ数週間の世界経済動向にけん引されている銅相場はより控えめな動き。
ロシアは重要な金属生産国で、世界供給に占める割合はニッケルで6%、アルミで5%、銅で4%。今回の新たな規制により、国際指標価格が設定されるLMEとシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)では新しいロシア産品の引き渡しが禁止される。これら3つの金属はこれまで、天然ガスや原油、石炭のサプライチェーンを動揺させたような直接的な規制を免れていた。
今回の取引規制は、チリで毎年開催される世界の銅業界の会合を目前に控えたタイミングで報道されたため、ビジネスクラスの機内などでも話題となった。LMEが本拠を置くロンドンでは多くのトレーダーらが日曜日の夜にスクリーンにくぎ付けになっていた。
ただ、金属トレーダーは2022年3月にLMEを大きく揺さぶったニッケルのショートスクイーズ(踏み上げ)や、ロシアのアルミ生産会社UCルサールへの制裁を受けた18年の大混乱を経験しており、乱高下などには慣れている。
トレーダーや業界幹部の間では、新たな規制が最終的にこれら2つの出来事ほど劇的な影響を与える可能性は低いとの声も聞かれる。ロシアの2大金属企業であるルサールとMMCノリリスク・ニッケルは、西側の金融システムとの絡みが戦争前に比べてはるかに減っている。
●もはやプーチン「皇帝」か 大統領選の歴史的な圧勝劇、くすぶる不満 4/15
3月に行われたロシア大統領選は、プーチン大統領が87%の得票率で圧勝した。「終身大統領」としての地位をほぼ確実にしたとも言えるが、盤石に見える体制の裏側では、政権への不満や社会の閉塞(へいそく)感が色濃く漂っている。
大統領選の初日、モスクワの投票所に入って驚いた。投票箱が透明のプラスチックで、しかも投票用紙の多くが折られておらず、誰に投票したのか丸見えだったからだ。
自らを「ロックスター」と名乗るアレクサンドルさん(59)は、プーチン氏に印をつけた投票用紙を自分の顔と並べてスマホで撮影し、投票箱に入れた。「投票したとブログに投稿したかった。私は愛国者なんだ」
今回の選挙は、事前にプーチン氏当選という結果が出るのが明らかだった。緊張感に欠け、投票先を誰かに隠す必要もない、ロシア社会の空気を如実に表していた。 ・・・
●ウクライナ軍 “ロシア軍 戦勝記念日に向け東部拠点掌握狙う” 4/15
ウクライナ軍の総司令官は、ロシア軍がプーチン大統領が重視する来月9日の第2次世界大戦の戦勝記念日に向けて、東部ドネツク州の拠点の掌握を狙っているという見方を示し、警戒を強めています。
ロシア軍は、ウクライナ東部で攻勢を強めていて、東部ドネツク州のバフムトの西側にある拠点チャシウヤルに向けても攻撃を続けています。
ウクライナ軍のシルスキー総司令官は14日、SNSで「ロシア軍の最高指導部は5月9日までにチャシウヤルを占領する任務を部隊に命じている」と投稿し、ロシア軍は第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した戦勝記念日にあたる5月9日に向けて、チャシウヤルの掌握を狙っているという見方を示しました。
プーチン大統領は国威発揚のため戦勝記念日をとりわけ重視しています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」も13日、ロシア側はアメリカの軍事支援の遅れによってウクライナが十分な防衛作戦ができないなどと判断し、先月からチャシウヤルの掌握に向けた動きを強めていると指摘しました。
そのうえで、ロシア軍がチャシウヤルを掌握すれば、ここを足がかりにしてドネツク州のクラマトルシクなど、ほかの重要都市に対する攻撃の機会を与えることになると分析しています。
●ロシアに指名手配されても「動揺しない」赤根智子さんが語る「失敗を恐れず外へ」 日本人初の国際刑事裁判所長 4/15
世界で最も重大な犯罪に取り組む国際刑事裁判所(ICC)=オランダ・ハーグ=の所長に3月、赤根智子(あかね・ともこ)判事(67)が就任した。任期は3年で、日本人の所長は初めて。「世界がこれほど急激に変化し、大きな戦争や事件が続く中、非常に難しいかじ取りを求められるが、自分のできる限り頑張っていきたい」。赤根さんにオンラインで、今後の抱負や、女性の社会進出などを語ってもらった。
アジア発のリーダーシップを発揮したい
—所長選に立候補した理由は。
「アジア太平洋の若い人たちに力を与え、後に続いてほしいという思いがあった。日本は最大の拠出国(2023年の分担金は約37億5000万円、分担率15.4%)。お金だけではない貢献をしなくてはならない、という気持ちがあった」
「ICC加盟国・地域は124で世界の3分の2にとどまり、アジア太平洋の加盟国は国連加盟国の比率で4割に満たない。アジア発のリーダーシップを発揮することが必要と考えた」
—拠出額に比べ日本人職員は少ない。アジアでの存在感アップをどう図るか。
「広報活動拠点となる東京事務所設置を実現したい。今どんな事件を扱い、裁判がどう進められているか、アジア、日本の人たちに具体的に知ってもらい、インターン、ボランティアなどで働くことによって、ICCを身近に感じてもらいたい。そこから次のステップとしてICC本体で働く意欲を養っていきたい」
—日本への期待は。
「アジア太平洋のリーダー的存在として、当該地域の加盟国を増やす努力を期待したい。ICCの警備強化や職員の保護という観点から、特別信託基金へのさらなる財政的支援のほか、日本の関係省庁から情報の共有などもお願いしたい」
プーチン氏に逮捕状を出したら報復で指名手配
—ウクライナ侵攻に絡み、多数の子どもを連れ去った戦争犯罪の疑いでロシアのプーチン大統領に逮捕状を出した。ロシアはICCに加盟していないため身柄の引き渡しは難しい。
「特定の事件に言及できないが、ICCは正義がなければ持続的な平和・秩序はないとする原則に基づいて設置されている。重大な犯罪に対して責任を追及しなければ、復讐(ふくしゅう)と暴力のサイクルをさらに助長する。持続的な平和は、法の支配によってのみ築かれると信じる。時効はないので最後まで遂行に向け努力する」
—赤根さん自身、ロシアから報復措置として指名手配された。
「ローマ規程締約国と締約国会議が、ロシアの措置をICCの業務を妨害する許容できない行為として強く非難したことは留意したい。ICCの判事や職員の安全、および裁判業務を維持するための努力を所長として継続していきたい」
「私自身も、あまり外出をしないよう心がけるようになった。自分の安全のためだけではなく、自分に何か起きれば裁判所自体への脅威にもなり得る」
判決まで7~8年は長すぎ 改善していく
—機構改革にどう取り組むか。
「判決まで平均7〜8年かかり長すぎるという批判に対し、裁判の効率化・迅速化に向けて努力を重ねていかなければならない。今の手続きを改善していけば短くなるのではないか。改善はすでに英語(kaizen)にもなっている。日本人として地道なプロセスが期待されていると思う」
—具体的には。
「今は非常に多くの争点を長い時間かけて裁判している。その中で何が一番重要か、弁護人と信頼関係を構築し、話し合いによって争点を絞ることが必要だと思うし、検察官の間でも争点を絞って最も重要な証人に限定して尋問する。その中身も焦点を絞れば尋問時間を減らすことにつながるのではないか」
「女性には就職の壁があった」時代に検察官に
赤根さんは東京大法学部を卒業した後、1982年に検事に任官した。当時は男女雇用機会均等法が施行される前で、「普通に就職しようとすると、当時の女性には大きな壁があり、資格を持って社会に出ることが大事だった。正義の実現に自らかかわっていくことに魅力を感じ、検事を目指した」という。
函館地検検事正や最高検検事などを歴任。「検察官として、女性だから差別を受けたということはない」と振り返る一方、「どこに行っても男性だけの職場だったな、とは思った」と話した。
「日本の女性法曹には、日本はまだまだ男女が平等でないとの不満がたまっているのではないかと感じる」とも。今後、世界で活躍を目指す女性に「海外で働くと壁にぶつかることもあると思うが、それが成長の糧になる。失敗を恐れずに外に出てほしい」とエールを送った。
上川陽子外相は、国際機関の女性トップ就任を歓迎。平和構築に女性参画やジェンダー平等の視点で取り組む「女性・平和・安全保障(WPS)」の推進に向け、赤根さんと連携していく考えを示している。
動物の動画でリラックス
赤根さんは愛知県立旭丘高で学んだ高校時代を振り返り、「自由を満喫したが、そこで学んだのは、自由には責任が伴うこと。みんないつも自問自答していた」と話す。所属した硬式テニス部の仲間たちとは「結束が固く、今でも何人かと付き合っている」という。
激務が続く中、「気分転換にスマートフォンで猫や犬の動画を見て笑っています」。伊坂幸太郎さんの小説が好きで「最近割と読んでいる。いろんな驚きがある」とも語った。座右の銘は「人間(じんかん)到(いた)る処(ところ)青山(せいざん)有り」。大望を果たすためには故郷にこだわらず広く世に出て活動すべきだ、という趣旨で今、その道を究めようとしている。
「話をしたい学生に取り囲まれていた」教員時代
赤根さんは2005〜07年度、名古屋大法科大学院で、検事の実務家教員として教壇に立った。当時を知る名大教員らは「学生の憧れになる」と喜ぶ。
「赤根さんはいつも、話をしたい学生たちに取り囲まれていた」。刑事訴訟法が専門の小島淳教授(50)は、07年度にあった司法試験合格者の祝賀会や懇親会での様子をこう振り返る。
同大学院の理念は「広い視野と国際的関心を持つ法曹の養成」。「まさにその姿を体現する赤根さんに続く学生を輩出できるように、学生たちに活躍を伝えたい」と語った。
鮎京正訓(あいきょう・まさのり)名誉教授(73)は昨年12月、東京の会合で、一時帰国した赤根さんと顔を合わせた。ロシアが赤根さんを指名手配したことに触れ「大丈夫か」と聞くと、笑顔で「まったく動揺していない」と答えたという。
ICC所長は18人の判事の互選で決まる。赤根さんと07年度から1年間、研究室が隣で、国際法に詳しい水島朋則教授(53)は、「普段一緒に仕事をする中で信頼を得たということ。手堅い仕事ぶりだったので、赤根さんが選ばれるのは理解できる」とうなずいた。
●イスラエルとイラン、全面戦争をアメリカや西側は防げるのか=BBC国際編集長 4/15
イスラエルの戦時内閣は、イランに対する次の一手について、おなじみの言い方で説明した。「我々が選ぶ時期に、我々が選ぶ方法」で反応するというものだった。
イスラム組織ハマスによる昨年10月7日のイスラエル奇襲を受けて、組閣された戦時内閣に参加した野党代表のベニー・ガンツ氏は、イスラエルに協力する西側諸国とイスラエルがいかに一致団結してまとまっているかを強調した。
「イスラエル対イランとはすなわち、世界対イランだ。それが今の結果だ。この戦略的成果を我々はてこにして、イスラエルの安全保障のために活用しなくてはならない」
ガンツ氏の言葉は、イランの標的をまた攻撃する可能性を排除していない。あるいは、イラン国内に初めて公然と攻撃する可能性も、排除していない(イスラエルはすでにイランの核開発計画を、サイバー攻撃や当局者・科学者の暗殺などを通じて、繰り返し攻撃している)。
しかし、ジョー・バイデン米大統領は西側の最も裕福な主要7カ国(G7)に、会合に参加するよう求め、外交的な対応を協議するとした。その外交的な対応が実施されるだけの猶予はあるのかもしれない。
ハマスのイスラエル攻撃を機に始まった戦争は、2週間前に一気に激化した。シリア・ダマスカスのイラン公館をイスラエルが4月1日に攻撃したためだ。この空襲でイランの軍幹部とその副官、そして補佐官たちが死亡した。
この攻撃は、事前にアメリカと調整したものではなかった。イスラエルは、イラン革命防衛隊の幹部を殺害する機会を得て、リスクをとるに足る好機だと判断したのだろう。
イスラエルは表向き、こう主張している。在外公館の敷地内に複数の軍幹部がいたため、その建物は正当な標的となったと。あまり説得力のない言い分だ。それよりも、イランがこの空襲を自国領への攻撃と受け止めたことの方が大事だった。
イランが何かしら反撃するだろうと、すぐに予想できた。イランの反応は、それとなく察しろというようなおぼつかないものではなく、最高指導者アリ・ハメネイ師からの歴然とした声明という形をとったからだ。
イスラエルとアメリカと他の同盟・協力諸国が、準備する時間は十分にあった。バイデン大統領は週末を地元デラウェア州で過ごしていたが、ホワイトハウスに戻るだけの時間があった。イランは攻撃をいきなり超音速の弾道ミサイルで開始するのではなく、飛行速度の遅いドローンから始めた。発射されたドローンが目標に接近するまで、2時間もの間、その航跡はレーダーに捕捉されていた。
イスラエルにとって最大の仇敵からの反撃が、これほどの規模になるなど、多くのアナリストにとって予想外だった。それだけにイスラエルでは多くが、自分たちの国が何かしら反応するはずだと思っている。
イランは初めて、自国領からイスラエルに武器を撃ち込んだ。ドローン、巡航ミサイル、弾道ミサイルが計約300ほどだ。そのほとんどは、イスラエル独自の強力な防空システムと、それを支援するアメリカとイギリスとヨルダンの協力によって、撃墜された。
14日の夜、アメリカを筆頭に協力国各国はイスラエルを大いに支援した。そしてバイデン大統領はネタニヤフ首相に、次のことをはっきり伝えた。イランの攻撃は阻止した。イスラエルは勝った。なので、事態をこれ以上悪化させるな。イラン領内に軍事攻撃を加えたりするな――と。
西側諸国の外交幹部は私に、これ以上の事態悪化を防ぐため、これ以上はならぬと線を引くことが今では何より大事だと話した。
イランも、そうした線引きを望んでいる様子だ。イスラエルがダマスカスに仕掛けた攻撃には、今回の攻撃をもって対応したと、イラン側は述べている。もしまた攻撃されれば、事態は悪化の一途をたどると。イスラエルによる在ダマスカスの公館攻撃で始まった2週間の危機と脅しの連鎖を、イランは鎮静化させたい様子だ。
イランは今回の攻撃で、実はもっとイスラエルに被害を加えたかったのかもしれない。あるいは、イスラエルに反撃の理由をあまり与えないのが狙いだったのかもしれない。
イランは、自分たちは敵の攻撃を抑止できるという感覚を、イスラエルが在ダマスカスの公館攻撃で失ったため、その感覚を復活させたかった。しかし、発射した武器のほとんどすべてが、イスラエルとその同盟諸国に途中で迎撃されてしまったため、抑止力の回復は難しい。
イランが今回仕掛けたのは、イスラエルに対する全面攻撃ではなかった。イランはもう何年も、ロケット砲やミサイルの備蓄を積み上げている。もっと大量の武器を使うこともできた。レバノンの武装勢力ヒズボラは全面攻撃に参加しただろうが、今回はそうしなかった。ヒズボラはレバノンの軍事勢力であると同時に、政治運動でもある。そして、大量のロケット砲とミサイルを持つヒズボラは、イランにとって最大の協力者だ。
イスラエルのネタニヤフ首相は、イランの攻撃によってガザ地区の状況が世界のニュースのトップから外れたことをある程度、歓迎するかもしれない。ガザで人道的危機が続き、人質解放とハマス壊滅という戦争目的をイスラエルがいまだ実現できずにいることから、世間の注目がしばし外れたことで、ネタニヤフ氏は一息をつく猶予を一時でも得た。
数日前まで世界は、イスラエルのガザ封鎖が引き起こす飢饉(ききん)について、バイデン氏とネタニヤフ氏が対立していることに注目していた。しかし今では、両者の連帯が話題になっている。
ネタニヤフ氏は今や、自分は力強く合理的な指導者で、国民を守っているのだと打ち出すことができる。実際にはイスラエル国内で多くの政敵が、首相の失脚を望んでいるのだが。ネタニヤフ氏の政敵たちは、昨年10月7日以前に彼が続けた無謀で安全とは程遠い政策の数々のせいで、イスラエルは弱いとハマスが信じるに至ったのだと批判している。
しかし、アメリカは依然として、全面的な中東戦争に至る状況悪化を阻止するため、何か方法を見つけようとしている。それは変わっていない。確かに、越えてはならない一線は越えられてしまった。イスラエルが在外公館に攻撃した。イランはイスラエルに直接攻撃した。イスラエルの右派からは直ちに、報復するよう求める声が上がった。その要求は止まらないはずだ。
G7の外交官たちは、中東地域がさらに広範囲に被害をもたらす紛争に突入しないように取り組まなくてはならない。ハマスがイスラエルを攻撃してからというものこの半年間、地域戦争への傾斜は緩やかだが、確実に一つの方向へ、つまり大惨事へと向かっている。
反撃するなというバイデン大統領の助言を、もしイスラエルが聞き入れるなら、中東はしばし一息をつくことができるかもしれない。この危険な事態がこれで終わったかどうかは、まったく定かではない。
●中国、ロシアにミサイルや無人機の部品を大量供給−米政府高官 4/15
中国はロシアに巡航ミサイルや無人機の製造に必要な部品や、戦車・装甲車用光学部品を大量に供給しており、そのおかげでロシアは対ウクライナ戦争で用いる兵器の増産が可能になっていると複数の米政府高官が語った。
米当局者が12日に匿名を条件に記者団に明らかにしたところでは、ホワイトハウスは中国企業にロシアへの支援をやめるよう促しているほか、欧州同盟国に対し、供給の終了を求める圧力を中国政府にかけるよう働きかけている。ロシアに部品を提供している中国企業は武漢高芯科技や武漢同昇科技、杭州海康威視数字技術などだとした。
中国が殺傷兵器を提供していることを示す証拠はないが、米情報機関の評価に詳しい複数の関係者は中国からの輸入品がなければロシアの軍事産業基盤は困難に直面することから、中国製部品の重要性は殺傷兵器に劣らないと指摘した。
一方、中国当局者は、中ロ首脳の結びつきは強いものの、中国はロシアとウクライナの戦争に関して中立の立場を取っていると主張している。また、一部の技術は軍民両用だと指摘してきた。
しかし米情報機関に詳しい関係者の一人は中国によるロシア支援が急増していると語った。
複数の米政府高官によると、中国企業の支援には、ロシアが兵器の推進剤製造に使用するニトロセルロースが含まれている可能性が高い。また、米国が入手した情報によれば、中国の複数の企業がロシア国内で無人機の製造に取り組んでいるという。ただこうした見解の根拠となる資料は示されなかった。
事情に詳しい関係者は、ロシアは中国の支援に対し代価を支払っているが、この支払いを取り扱う銀行は実質的にロシア軍を支えることになるため、米国の制裁対象になり得ると指摘した。
●米国製「パトリオット」、ドイツがウクライナに追加供与へ…ゼレンスキー氏「パートナー国が続くよう強く望む」 4/15
ドイツのショルツ首相は13日、ロシアの侵略を受けるウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話会談し、米国製地対空ミサイルシステム「パトリオット」をウクライナに追加供与する方針を伝えた。独政府が発表した。
ロシア軍はウクライナのエネルギー施設などに対する攻撃を強めており、追加供与で防空能力を強化する。ウクライナの要請に応じた措置で、独軍の在庫から直ちに引き渡すという。ドイツはこれまでにパトリオット2セットを供与している。
ゼレンスキー氏は会談後に投稿したSNSで「危機的な時期」の支援に謝意を示し、「他のパートナー国が続くよう強く望む」と訴えた。
●「暴力のスパイラル」招く行動回避を、ローマ教皇が講和で呼びかけ 4/15
ローマ教皇フランシスコは14日、「暴力のスパイラル」を助長する行動は中東を一段と深い衝突に陥らせる恐れがあるとして、イランとイスラエルにそうした行動の回避を求めた。
教皇は、サン・ピエトロ広場に向けて行った講話で、ドローン(無人機)とミサイルによるイランのイスラエル攻撃のニュースを懸念と痛みを持って見ていると述べ「暴力のスパイラルの助長につながりかねない行動は、中東をさらに大きな対立に陥らせる恐れがある。そのような行動を止めるよう、心から呼びかける」と訴えた。
また「誰も他者の存在を脅かすべきではない。全ての国は平和に取り組み、イスラエル人とパレスチナ人が二つの国家として安全に共存するため手助けすべき」と述べた。
さらに、パレスチナ自治区ガザの休戦と人道支援の許可に向けた交渉、パレスチナのイスラム組織ハマスが拘束しているイスラエル人の解放を求め「戦争も攻撃も暴力も、たくさんだ。対話と和平に賛成だ」と述べた。
●ロシア、5月9日までにチャソフヤール占領目指す──ウクライナ総司令官 4/15
ウクライナ軍のシルスキー総司令官は14日、テレグラムに投稿した声明で、ロシア軍の最高指導部が5月9日までに東部ドネツク州チャソフヤールを占領する任務を部隊に課したとの認識を示した。
チャソフヤールが占領されれば、ウクライナが西側の軍事支援減速に直面する中で、ロシア軍の勢いが強まっている状況が示されることになる。ロシアでは5月9日は対ナチス・ドイツ戦勝記念日で、モスクワ中心部の「赤の広場」で大規模な軍事パレードが予定されている。
チャソフヤールは、ロシアが昨年5月に制圧したバフムトから5−10キロメートルの場所にあり、東部の激戦地で重要な拠点となった。
ゼレンスキー大統領は14日、ドネツク州での情勢が一段と厳しくなったとの見方を示した。
●G7首脳がイラン制裁など協議 声明で「最も強い言葉で明確に非難」 4/15
主要7カ国(G7)の首脳は14日、イランによるイスラエルへの攻撃を受けてテレビ会議を開いた。会合後に出した首脳声明では「直接的かつ前例のない攻撃」について、「最も強い言葉で明確に非難」した。米政府高官によると、複数の国がイラン革命防衛隊(IRGC)をテロ組織に指定することを検討しているほか、各国で協調した制裁についても協議したという。
会議は議長国イタリアのメローニ首相が主催した。首脳らは声明で「イスラエルとその国民に対する全面的な連帯と支援を表明し、イスラエルの安全保障に対する我々の関与を再確認する」とした。イランは「地域の不安定化をさらに一歩進め、制御不能な地域の緊張激化を引き起こす危険を冒している」と非難し、G7として事態の安定と緊張激化の回避に向け努力を続けると表明した。 ・・・
●ウクライナ軍 “ロシア軍 戦勝記念日に向け東部拠点掌握狙う” 4/15
ウクライナ軍の総司令官は、ロシア軍がプーチン大統領が重視する来月9日の第2次世界大戦の戦勝記念日に向けて、東部ドネツク州の拠点の掌握を狙っているという見方を示し、警戒を強めています。
ロシア軍は、ウクライナ東部で攻勢を強めていて、東部ドネツク州のバフムトの西側にある拠点チャシウヤルに向けても攻撃を続けています。
ウクライナ軍のシルスキー総司令官は14日、SNSで「ロシア軍の最高指導部は5月9日までにチャシウヤルを占領する任務を部隊に命じている」と投稿し、ロシア軍は第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した戦勝記念日にあたる5月9日に向けて、チャシウヤルの掌握を狙っているという見方を示しました。
プーチン大統領は国威発揚のため戦勝記念日をとりわけ重視しています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」も13日、ロシア側はアメリカの軍事支援の遅れによってウクライナが十分な防衛作戦ができないなどと判断し、先月からチャシウヤルの掌握に向けた動きを強めていると指摘しました。
そのうえで、ロシア軍がチャシウヤルを掌握すれば、ここを足がかりにしてドネツク州のクラマトルシクなど、ほかの重要都市に対する攻撃の機会を与えることになると分析しています。
●イスラエル イランの攻撃に対抗措置協議 ガザ地区でも緊張続く 4/15
イランによる大規模攻撃を受けてイスラエルでは戦時内閣の閣議が開かれ、ロイター通信は、対抗措置をとる方針は支持されたものの時期や規模については意見が分かれたと報じました。
一方、ガザ地区をめぐりイスラエルのメディアは、戦闘休止の交渉が進展しない中、イスラエル軍が今後南部のラファへの地上作戦に踏み切るという見通しを伝え、ガザ地区でも緊張が続いています。
イランは13日から14日にかけてイスラエルに向けて多数のミサイルと無人機を使った大規模な攻撃を仕掛け、イスラエルはアメリカなどの協力も得て、そのほとんどを迎撃したとしています。
イランによる攻撃を受けて、イスラエルでは14日、ネタニヤフ首相が戦時内閣の閣議を開いて対応を協議しました。
閣議の内容は明らかにされていませんが、ロイター通信によりますと、イランに対して対抗措置をとる方針は支持されたものの、時期や規模については意見が分かれ、協議が続けられる見通しです。
イランへの対応の一方、イスラエル首相府は14日、ガザ地区での戦闘の休止と人質の解放をめぐる交渉について「イスラム組織ハマスが、仲介者が示した提案を拒否した」と発表しました。
またイスラエル軍は14日、ガザ地区での作戦のために、新たに予備役の部隊を招集することを明らかにしました。
イスラエル軍は4月上旬、南部のハンユニスから部隊を撤収させたばかりです。
イスラエルのメディアは、戦闘休止の交渉が進展しない中、イスラエル軍が今後、ガザ地区南部の150万人近くが身を寄せるラファへの地上作戦に踏み切るという見通しを伝えていて、ガザ地区でも緊張が続いています。
林官房長官「沈静化へ あらゆる外交努力行う」
林官房長官は、午前の記者会見で「今回の攻撃は現在の中東情勢を一層悪化させるものであり深く懸念し、このようなエスカレーションを強く非難する。わが国としてイランに対し事態の沈静化を強く働きかけてきており、ハイレベルでのさらなる働きかけを含め必要なあらゆる外交努力を行っていく」と述べました。
また現時点で、現地に滞在する日本人の被害は確認されていないと説明しました。
●“イスラエル 戦時内閣の閣議で対抗措置 支持” 4/15
イランによる大規模攻撃を受けてイスラエルでは戦時内閣の閣議が開かれ、ロイター通信は、対抗措置をとる方針は支持されたものの時期や規模については意見が分かれたと報じました。
イランは13日から14日にかけてイスラエルに向けて多数のミサイルと無人機を使った大規模な攻撃を仕掛け、イスラエルはアメリカなどの協力も得てそのほとんどを迎撃したとしています。
イランによる攻撃を受けて、イスラエルでは14日、ネタニヤフ首相が戦時内閣の閣議を開いて対応を協議しました。
閣議の内容は明らかにされていませんが、ロイター通信によりますと、イランに対して対抗措置をとる方針は支持されたものの、時期や規模については意見が分かれ、協議が続けられる見通しです。
イラン大統領「敵のイスラエルに教訓を与えた」成果強調
イランは13日から14日にかけてイスラエルに向けて多数のミサイルと無人機を使った大規模な攻撃を仕掛け、イスラエルはアメリカなどの協力も得てそのほとんどを迎撃したとしています。
イランはこの攻撃について今月1日にシリアにあるイラン大使館がイスラエルの攻撃を受け、革命防衛隊の司令官らが殺害されたことへの報復だとしていて、ライシ大統領は声明で「敵のイスラエルに教訓を与えた」として成果を強調しました。
一方で革命防衛隊のサラミ総司令官は「作戦は限定的でイスラエルがわれわれの大使館への攻撃で使った能力と同じレベルに抑えた」と強調し、これ以上の事態の悪化は意図していないという姿勢をにじませました。
イスラエル前国防相「代償を支払わせる」
イスラエルの戦時内閣に入っているガンツ前国防相は「適切な時期に、正しい方法で、イランに代償を支払わせる」と述べていますが、いつどのような反撃に踏み切るのかは明らかにしていません。
また、ガラント国防相も声明を発表し、「イランの脅威に対抗するため、戦略的同盟を立ち上げるときだ」として、各国と協力してイラン包囲網を構築するべきだと主張しています。
   15日の動き
米高官「イスラエルのいかなる対抗措置にも参加しない」
アメリカのバイデン政権の高官は14日、記者団に対し、イランによる報復攻撃を受けてイスラエルがどのような対応をとるかはイスラエル自身が決めることだと述べました。
その上で「われわれはイスラエルがとるいかなる対抗措置にも参加しない」と述べ、対抗措置にアメリカが加わることはないと強調しました。
また、バイデン大統領が13日に行ったイスラエルのネタニヤフ首相との電話会談の中で「イスラエルの防衛への支援を伝えるとともに、事態がエスカレートすることのリスクについて慎重に、かつ戦略的に考慮しなければならないと明確に伝えた」としています。
国連安保理 双方に自制求めるも 互いを激しく非難
国連の安全保障理事会で日本時間の15日に緊急会合が開かれ、グテーレス事務総長は冒頭、「中東の複数の戦線で大規模な軍事衝突につながりかねないいかなる行動も避けることが極めて重要だ。中東にとっても世界にとってもこれ以上の戦争は許されない」と述べ、イランとイスラエルの双方に最大限の自制を求めました。
会合ではこのあと多くの国からも、中東情勢のこれ以上の緊張を防ぐため、イランとイスラエルの双方に自制を求める意見が相次ぎました。
しかし、イスラエルのエルダン国連大使はイランを激しく非難し「今回の攻撃は越えてはならない一線を越えた。イスラエルには報復する法的権利がある」と主張し、対抗措置をとる可能性を示唆しました。
これに対してイランのイラバニ国連大使は「安保理決議や国際法の義務を無視してより残虐な犯罪を犯しているのはイスラエルだ」と反論し、双方が互いを激しく非難しました。
イスラエル軍 無人機やミサイル迎撃の映像公開
イスラエル軍は、イラン側から発射されたミサイルや無人機を迎撃した戦闘機からとらえたとする映像を公開しました。映像には、無人機やミサイルだとする黒い物体に照準が合わされたあと、物体が次々に爆発する様子が写されています。
イスラエル軍は「数十機の空軍の戦闘機が戦略的パートナーの国々と協力して領空を守る任務にあたった」としています。
一方、イスラエル南部のアラドではミサイルや無人機の破片が落下したとみられていて、自治体が公開した写真からはミサイルの部品のような複数の物体が歩道などに落ちているのがわかります。
イスラエルの救急当局によりますと、アラド近郊では7歳の女の子が重傷を負い病院で治療を受けていて警察が詳細を調べているということです。
イラン外相 “攻撃前に一部の国に通告”
イランのライシ大統領は14日、声明を出し、「イラン国民の利益に反するいかなる試みも、より激しい対抗措置を招き、後悔することになるだろう」として、イスラエルをけん制しました。また軍全体のトップ、バゲリ参謀総長も、「作戦は成功裏に完了し、すべての目的は達成された」とアピールしました。
一方革命防衛隊のトップ、サラミ総司令官は「われわれは限定的な作戦を実施した。この作戦はもっと大規模に行うこともできたが、イスラエルがわれわれの大使館を攻撃するのに使った能力と同等のレベルまで抑えた」と述べ、攻撃は抑制的に行ったと主張しています。
さらにアブドラヒアン外相は会見で「作戦のおよそ72時間前にわれわれは周辺国などに対し、イランの対抗措置が正当な自衛の枠組みの中で確実に行われることを伝えていた」と述べ、大規模攻撃について事前に一部の国に通告していたことを明らかにしました。
G7首脳声明「前例のない攻撃 最も強い言葉で非難」
G7=主要7か国の首脳は14日、オンラインで首脳会合を開き、議長国のイタリアが首脳声明を発表しました。
それによりますと「イランによるイスラエルへの直接的、かつ前例のない攻撃を最も強い言葉で非難する」とした上で、「イスラエルと、その国民に対する全面的な連帯と支持を表明し、その安全保障に対するコミットメントを再確認する」と指摘しています。
その上で「イランの行動により地域は不安定化に向けてさらに踏み込み、制御不能な地域情勢のエスカレーションを引き起こす危険性がある」として、事態の悪化を避けるため情勢を安定させる努力を続けていくことを確認しました。
また「イランとその代理勢力に対し攻撃を停止するよう要求する。われわれはさらなる不安定化への行動に対して措置を講じる用意がある」として、イラン側をけん制しています。
トランプ前大統領「アメリカが弱さを見せたからだ」
秋のアメリカ大統領選挙で返り咲きを目指す共和党のトランプ前大統領は13日、東部ペンシルベニア州で演説し、イランがイスラエルに対する報復攻撃を行ったことについて「アメリカが大きな弱さを見せたからだ」と述べて、バイデン政権の姿勢がイランによる攻撃を招いたと批判しました。
そのうえでトランプ氏は「われわれが政権に就いていればこんなことは起きなかった」と主張し、「われわれは強さによって世界に平和を取り戻す。国内外でのアメリカの強さを復活させる」と訴えました。
米大統領補佐官「緊張をさらに高めること望んでいない」
アメリカ・ホワイトハウスのカービー大統領補佐官は14日、ABCテレビのインタビューで「イスラエルへの前例のない攻撃はイスラエルだけでなくアメリカやパートナーの国々によって対処された。イスラエルは自国の防衛に成功し、アメリカはそれを支援するという約束を確かに果たした」と述べました。
またバイデン大統領は13日夜の電話会談でネタニヤフ首相に対し、改めてイスラエルの自衛を支援し続けると伝えたとした上で「バイデン大統領はイランとの戦争を望んでいないことをはっきりと表明してきておりアメリカはこの地域の緊張をさらに高めることも望んでいない」と強調しました。
またガザ地区での戦闘休止などをめぐる交渉については、情報交換が続いているとしてイスラム組織ハマスの対応次第で人質の解放や人道支援の拡大に向けた戦闘休止が可能になるという認識を示しました。
●国連安保理 イランとイスラエルに自制求めるも 双方激しく非難 4/15
イランがイスラエルに対して無人機やミサイルによる大規模な攻撃を行ったことを受けて、国連の安全保障理事会で日本時間の15日、緊急会合が開かれました。国連のグテーレス事務総長や各国の代表はイスラエルとイランに最大限の自制を求めましたが、双方の国連大使は互いを激しく非難しました。
安保理の緊急会合はイスラエルの要請で開催され、現地時間の14日午後、日本時間の15日午前5時すぎから始まりました。
会合に出席したグテーレス事務総長は冒頭、「中東の複数の戦線で大規模な軍事衝突につながりかねないいかなる行動も避けることが極めて重要だ。中東にとっても世界にとってもこれ以上の戦争は許されない」と述べ、イランとイスラエルの双方に最大限の自制を求めました。
会合ではこのあと多くの国からも、中東情勢のこれ以上の緊張を防ぐため、イランとイスラエルの双方に自制を求める意見が相次ぎました。
しかし、イスラエルのエルダン国連大使はイランを激しく非難し「今回の攻撃は越えてはならない一線を越えた。イスラエルには報復する法的権利がある」と主張し、対抗措置をとる可能性を示唆しました。
これに対してイランのイラバニ国連大使は「安保理決議や国際法の義務を無視してより残虐な犯罪を犯しているのはイスラエルだ」と反論し、双方が互いを激しく非難しました。
●中東諸国「最大限の自制」訴え 地域紛争発展に危機感 4/15
中東アラブ諸国は14日、イランのイスラエルに対する大規模攻撃に「深い懸念」を表明し、両国に「最大限の自制」を呼びかけた。パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとハマスの戦闘が地域紛争に発展することに危機感を強めた。
イスラエルの隣国ヨルダンは、軍事行動の激化は「疑いなく危険な結果につながる」として、両国に「規律と責任感」を持って対処するよう強く求めた。また、領空に入った飛翔体の一部を撃墜し、破片が複数箇所に落下したと明らかにした。
エジプトは、対立激化はガザや地域での軍事行動の結果だと指摘。地域の不安定化を回避するため全当事者と連絡を取り合うと強調した。
●岸田首相らG7首脳「前例のない攻撃、明確に非難」イランによるイスラエル攻撃で声明「激化を避けなければならない」 4/15
イランによるイスラエルへの攻撃を受けて、G7(主要7カ国)の首脳は14日、オンラインで会合を開き、「最も強い言葉で明確に非難する」との声明を発表した。
会合はG7の議長国イタリアが呼びかけ、アメリカのバイデン大統領や岸田首相らが参加し、対応を協議した。
会合後の声明で、イランに対し「イスラエルへの直接的かつ前例のない攻撃に、最も強い言葉で明確に非難する」としたほか、イスラエルへの全面的な連帯と支援を表明した。
さらに、「イランはこの地域をさらなる不安定化に向かわせ、制御不能な地域の激化を引き起こすおそれがある。これは避けなければならない」と強調した。
今回の攻撃についてアメリカ政府高官は、記者団に対し「攻撃目標などへの事前通告はなく、イランは明らかに死傷者を出すつもりだった」と説明した。
そのうえで、「衝突を望んでいるわけではないが、イスラエルの防衛を支援するために、われわれは行動をためらうことはない」とけん制した。 
●ウクライナ東部の村で攻防激化…プーチン政権、対独戦勝記念日前に「戦果」誇示狙いか 4/15
ロシアによるウクライナ侵略で、ウクライナ東部ドネツク州の村チャシフヤールをめぐる攻防が激しさを増している。露軍は同州全域の掌握を目指して攻勢をかけており、ウクライナ軍は危機感を強めている。
ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は14日、SNSで「露軍司令部は5月9日までのチャシフヤール制圧を兵士に命じた」と明らかにした。5月9日は旧ソ連の対独戦勝記念日で、プーチン政権の「戦果」として誇示することを狙っている可能性がある。
チャシフヤールは、露軍が昨年5月に制圧した要衝バフムトから西に約15キロ・メートルに位置する。露軍に制圧されれば、スラビャンスクやクラマトルスクといった他の主要都市が攻勢にさらされかねない。
シルスキー氏は「弾薬、無人機、電子戦装備で部隊を大幅に強化した」と強調したが、頼みの綱である米国の追加軍事支援が到着する見通しは立っていない。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は14日夜のビデオ演説で、「特にドネツク州の前線で状況が悪化している」と強調した。
一方、独政府の発表によると、ドイツのショルツ首相は13日、ゼレンスキー氏と電話会談し、地対空ミサイルシステム「パトリオット」を追加供与する方針を伝えた。独軍の在庫から直ちに引き渡すという。ドイツはこれまでに、パトリオット2セットを供与した。

 

●ウクライナ大統領 武器供与改めて要請 同盟国に団結呼びかけ 4/16
ウクライナのゼレンスキー大統領は15日、ロシアとの戦争を巡り、最前線の行動や同盟国からの兵器供給について軍司令官らと検討を行った。
ゼレンスキー氏はビデオ演説で、都市やインフラに対するロシアの攻撃を防御するため防空システムが必要だと改めて強調。イランによるイスラエル攻撃の防衛で示したような団結を、ウクライナへの支援でも示すよう同盟国に呼びかけた。
また、ロシアが占拠した東部バフムトの西に位置するチャソフヤール、さらに西のポクロフスク、北方のクピャンスクの3地域でウクライナ軍が困難な状況にあると説明した。
武器や電子戦システムの供給、ロシアのミサイルやドローン(無人機)による攻撃で数週間にわたって打撃を受けたインフラを守る方法について報告を受けたと明らかにした。
ロシアによる新たな攻撃に関する情報当局の報告もあると指摘。「あらゆる敵の行動に備えなければならない。ロシアの狂気は依然として強く、占領者たちは進撃を強めようとするだろう。われわれは対応する」と語った。
●「ウクライナはロシアの一部」がトランプの考え 元米高官が暴露 4/16
ドナルド・トランプ前米大統領は在任中、ウクライナは「ロシアの一部でなければならない」との考えを口にしていたと、元トランプ政権高官が近刊書に採録されたインタビューで語っていることがわかった。ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのウラジーミル・プーチン大統領の考え方と通じる見解だ。米議会では、トランプ派の共和党議員らの妨害でウクライナへの追加支援法案が滞っている。
この元高官は、トランプ政権で国家安全保障会議(NSC)の欧州・ロシア担当上級部長を務めたフィオナ・ヒル。英紙ガーディアンによると、米紙ニューヨーク・タイムズのデービッド・サンガー記者の新著「New Cold Wars: China's Rise, Russia's Invasion, and America's Struggle to Defend the West(仮訳:新たな冷戦─台頭する中国、侵略するロシア、そして西側の防衛に苦慮するアメリカ)」(16日発売)で、トランプが「ウクライナ、そしてもちろんクリミアも、ロシアの一部でなければならないと考えていることを非常に明確に示していた」との発言が引用されている。
トランプが明らかにしたとされる考えはプーチンの立場と一致するものだ。プーチンは3月の演説でも、ロシアがウクライナで占領した領域は「新しいロシア」の一部だと主張した。
フォーブスは11月の米大統領選に向けて共和党の候補指名を確実にしているトランプの陣営にコメントを求めたが、すぐには返答がなかった。
プーチンをたびたび称賛しているトランプは、大統領に復帰すれば24時間以内にロシアとウクライナの戦争を終わらせると主張。その際、ウクライナがロシアに領土の一部を割譲することが条件となる可能性を示唆している。ウクライナ側は、そうした取引はあり得ないと繰り返し言明している。
トランプは2月、北大西洋条約機構(NATO)への防衛費拠出が不十分な加盟国に対して「ロシアにやりたいようにやるよう勧める」と発言したことを明かし、広く反発を買った。
米国のウクライナ追加支援は、下院共和党のトランプ派議員らの抵抗で停止しており、実現は見通せない。共和党のマイク・ジョンソン下院議長は支援法案への支持を表明しているものの、右派議員から圧力を受け、いまだ下院を通過させられずにいる(編集注:ロイター通信などによると、ジョンソンは14日、イスラエル支援予算案の可決を今週中にめざす意向を示したが、法案にウクライナなどへの支援分も盛り込まれるのかは明言しなかった)。
12日に発表されたギャラップの世論調査によれば、米国のウクライナ支援が過剰と考えている米国民は36%にとどまり、不十分と考えている人の割合(41%)が上回った。昨年11月の調査では過剰という回答が41%、不十分という回答が25%で、米国民の間ではウクライナへの支援拡大を求める声が強まっている。
ヒルはトランプの1回目の弾劾裁判で重要な証人になった。証言では、2016年の選挙に干渉したのはロシアではなくウクライナだったという共和党の主張の嘘を暴いたほか、トランプがウクライナ側に圧力をかけてジョー・バイデン現大統領の息子、ハンター・バイデンを捜査させようとした疑惑を裏づけた。
●騙され、見捨てられ... ウクライナ戦線から脱走するロシア兵たちの数が増大 4/16
ロシアによるウクライナ侵攻は泥沼化の一途を辿っている。当初はわずかな期間で家に帰れると言われていた兵士たちも一向に終結の気配の見えない侵攻に嫌気がさしたのか、戦線を抜け出す兵士の数も増える一方だ。
●ナワリヌイ氏の妻、英・キャメロン外相と会談 4/16
極北の刑務所で死亡したナワリヌイ氏の妻で、ロシアの反体制派指導者ユリア・ナワリナヤさんが、イギリスのキャメロン外相と会談しました。
ユリア・ナワリナヤさんは15日、キャメロン外相と会談し、非常に建設的な内容だったとSNSに投稿しました。ユリアさんは投稿で、「『プーチンはロシアではない』ということをイギリスが理解してくれて嬉しい」と述べました。そのうえで、「本物のロシアは戦争に反対し、政権交代を支持している。私たちロシア人はどこにいようとも、この独裁的で犯罪的な政権と闘い続ける」と強調しました。
キャメロン外相は「アレクセイ・ナワリヌイ氏はプーチン体制の腐敗を暴露し、ロシア国民のために人生を捧げた。ユリア・ナワリナヤさんが闘いを続けている」と投稿しました。
ユリアさんはナワリヌイ氏の死後、アメリカのバイデン大統領やEUのミシェル大統領らと会談を重ねています。
●「NATO拡大はプーチンの失策。だが戦争は続く」 4/16
3年目に突入したウクライナ戦争。欧州の結束が試されている。
2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの全面侵攻は3年目に突入した。戦争は欧州の勢力図をどう変えるのか? 停戦の可能性は? 鶴岡路人・慶応大学准教授に聞いた。
──23年後半以降、両軍が対峙するラインに大きな変化がなく、膠着状態になっています。
確かに領土奪還という点で23年後半以降、ウクライナに成果は乏しかった。だが実際の前線では激しい戦闘が行われている。ウクライナは犠牲の多い防衛戦を強いられていて、どうにか持ちこたえているのが実状だ。自然に均衡しているのではなく、これを膠着状態と表現すべきではない。
開戦当初は、ウクライナがこれほど持ちこたえるとは誰も想定していなかった。米欧も悲観的だったし、ロシアは短期決戦で勝てると考えたので全面侵攻に踏み切ったのだろう。ウクライナが抵抗を継続できるのは西側の支援があるからだ。しかし最近では武器弾薬の不足が深刻になっている。最大の理由は米国からの支援の停滞だ。
停戦する動機がない
──戦争終結の可能性は。
ロシアの戦争目的は公式の言説としては変化していない。ウクライナの非ナチ化、非軍事化、中立化だ。現在の占領地域で満足しているという証拠はない。ロシアは武器弾薬の供給体制をどうにか確立したとみられ、戦闘継続が可能である。しかも今後は西側諸国のいわゆる「支援疲れ」が本格化するとロシアは考えている。時間が経過すればするほど自分たちが有利になると考えている。ロシアには停戦する動機がない。
他方、ウクライナ側では領土奪還の要求が強い。中途半端な停戦では、ロシアに休養を与えるだけだと考えている。ともにまだ戦えると考える限り、戦争は終わりにくい構造だといえる。
ある時点までは別の厄介なシナリオもあった。ウクライナ東部・南部の占領で一定の目的を達成したとして、ロシアが一方的に停戦を宣言することだ。ロシアは和平を求めているとアピールでき、米欧諸国のウクライナへの武器供与をやめさせる力にもなりえた。
しかしロシアは、そのような策には出なかった。やはりロシアはこの戦争に本気であり、一部領土の獲得のみで満足するつもりがないのだろう。あくまでもウクライナの属国化を追求するつもりにみえる。ウクライナが領土の一部割譲を認めれば停戦が可能との議論は楽観的すぎる。
戦争は長期化する
──となると、双方に犠牲が生じつつ戦争が続きますか。
両国の戦争は長期化するとみている。しかし歴史上、永遠に続く戦争はない。現時点で正式に和平を結ぶことは考えにくいが、戦闘が散発的になり、大きな展開がなくなるような可能性もある。それが「凍結された戦争(紛争)」と表現されるものだ。
これはウクライナにとっては避けたいシナリオだ。というのも、戦争状態にある限りはNATO(北大西洋条約機構)やEU(欧州連合)への加盟が困難だからだ。とくにNATOの場合、戦争中の国を入れてしまうと、ロシアとの戦争になりかねない。戦争継続によってウクライナのNATO加盟を阻止できるのであればロシアにとっては都合がよい。
あるいは、何らかの形で停戦したとしても、ロシアがウクライナの非ナチ化や非軍事化などの戦争目的を放棄しない限り、再び侵攻される懸念が残る。それを防ぐ仕組みが不可欠で、これがウクライナの求める「安全の保証」である。
23年7月の主要7カ国(G7)による共同宣言を受け、24年1月以降、英国、ドイツ、フランス、デンマーク、カナダ、イタリア、オランダ、フィンランドなどがすでにウクライナとの2カ国間の安全保障協力協定に署名した。ロシアによる再度の侵攻の際の協議や武器の供与などを定めている。
──ウクライナはEUやNATOへの加盟を切望しています。これの実現可能性はどうですか。
戦争前には加盟の可能性は限りなくゼロに近かった。EUやNATOにとってウクライナは域外にある歴史的にもロシア寄りの国で、加盟問題は真剣に検討されていなかった。だが今回の戦争が何らかの形で終結した後に、ウクライナの安全を保証し、欧州の平和と安定を得るには、ウクライナのNATO加盟以外に持続的な解決策がないことが明らかになった。
カギを握るのはウクライナのNATO加盟に慎重な姿勢の米国の動向だ。今は加盟国間でコンセンサスがない。しかし「加盟などありえない」という侵攻前の状況からは大きく変化したのも事実だ。
欧州で高まるロシア勝利への懸念
──西側のいわゆる「支援疲れ」はどうでしょうか。
武器供与などのウクライナ支援にコストがかかる以上、「疲れる」こと自体は自然だ。しかしこれまでのところ、疲れながらも歯を食いしばって支援し続けている国がほとんどだ。24年の欧州主要国の支援額は前年を上回る予定だ。EUは500億ユーロ(約8兆円)の支援パッケージで合意したし、ドイツの今年の武器供与は71億ユーロが予定されている。
米国からの支援の停滞や、仮にトランプ政権が誕生した場合の波乱を見据え、長期にわたる安定的な支援の確保が模索されている。NATOでは、今後5年間で1000億ドル(約15兆円)という大規模支援の提案がなされている。
今年2月、フランスのマクロン大統領は「ウクライナへの派兵を除外しない」と述べた。戦場でのロシア優位が伝えられる中で、ロシアが「勝利」してしまうことへの懸念が欧州で高まっている。
──23年4月にフィンランドが、24年3月にスウェーデンが加盟し、NATOは32カ国体制になりました。結果としてロシアは敵対する相手を増やしています。
ロシアはNATOの拡大を自ら招いてしまった。完全にプーチン大統領のオウンゴールだ。ロシアとの関係に留意しNATO加盟を控えてきた両国が、加盟に踏み切った意味は大きい。
欧州の「脱ロシア化」は本気
──ロシアの23年実質GDP(国内総生産)は3.6%増で堅調な経済成長です。西側諸国が科した経済制裁は効果を上げていません。
健全な経済成長ではなく、戦時経済として国防部門に資源を集中的に投下した結果にすぎない。
それでも、エネルギーと食糧を有するロシアはなかなか倒れない。さまざまな経済制裁は実施していても、経済封鎖とは異なる。ロシアの石油や天然ガスが国際市場に供給されないと、G7諸国を含めた国際社会が困る。制裁と国際的なエネルギー供給とのバランスを取った結果が今の制裁策だ。
ただし、エネルギーにおける欧州の「脱ロシア化」は本気だ。この2年で相当なコストを払って推進してきた。この本気度は侮れない。また、脱炭素としての、再生可能エネルギーへのシフトもこの一環だ。戦争が終わったからといって、元に戻るわけではない。ロシアは欧州の顧客を長期的に失うことになった。
それにロシアは西側の高度な技術を用いてLNG(液化天然ガス)などの採掘をしてきた。制裁で西側の技術が使えないことが、やがてはボディーブローのように効いてくるだろう。
●時々刻々と迫るロシア軍大攻勢、それでも小田原評定続ける西側のジレンマ 4/16
ロシア・ウクライナ紛争の戦局に関する報道が減っているのは、中東紛争の煽りで脇に追いやられたからだけではあるまい。
戦線でのウクライナ側の劣勢と後退が目立ち始め、西側メディアにとって意気上がるような話題が乏しくなっていることも一因だろう。
ウクライナ大統領、V.ゼレンスキーは依然として領土の完全奪還を断固主張している。だが、ここ1〜2か月の主要な諸報道を拾い上げると、いずれもがその目標の現実味に暗い影を落としているかのようだ。
昨年10月から現在に至るまで、ロシア軍は505平方キロのウクライナ領を奪取し、鳴り物入りで始まった昨年のウクライナ軍による反転攻勢の成果は、緩慢ながら帳消しにされつつある。
米国からの援助に事欠くようになったことから、ウクライナ軍が撃てる砲弾の数はロシア軍のわずか6分の1にまで減り、この状況はさらに悪化すると軍総司令官自らが認める。
ウクライナも西側も、5月から6月にかけてのロシア軍大攻勢を口にし始めている。その通りなら、ウクライナへの援助再開が間に合わなければ、2024年の戦況は同国政権にとって不幸なものになりかねない。
米国防長官は、ウクライナが存亡の危機にあるとまで発言し、反ロシア宣伝省の役割を担ってきた英国防省も、次第にロシア軍の前進を認めざるを得なくなっている。
その英国の軍人からも、今年中のウクライナ敗北を口に出す向きが出てくる始末だ。一部の西側首脳の発言は、以前の「ロシアをどう敗北させるか」から「ロシアにどう勝たせないか」へと変わってきている。
ゼレンスキーの発言も、「このまま援助が復活しないならウクライナ軍の後退もやむなし」から「ウクライナは敗北する」へと、悲観色を増している。
さらに、援助なら何でも、となり、これまで選好しなかった(無償ではなく)融資による援助でも構わないとまで言い出した。もはや背に腹は代えられない。
ウクライナ政権内では軍総司令官の首のすげ替えに続いて、国家安全保障・国防会議書記、A.ダニロフ書記も先月になって辞任に追い込まれた。
その理由が何であれ政府要職トップの相次ぐ交替が、政権内での不一致や綻びであることは否定できない。
そして、大きくは報道されていないものの、敗色を意識してか、ウクライナ軍の士気もかなり低下してきている模様だ。
世論調査では領土の完全回復を信じるウクライナ国民も5割を切るようになった。
ドイツのクリミア大橋爆破計画が漏洩
こうした報道は、西側の危機意識を再度高めて対ウクライナ援助を加速させる狙いもあるのだろうが、諸刃の剣でもある。
戦況悪化を認めてしまうことで国民の戦意喪失を加速したり、援助する側で、これ以上注ぎ込んでももはや無駄ではないのか、という諦めにも似た気分を増幅したりしかねない。
それでも世の継戦派は、放っておいてロシアの勢力を拡大させたなら、それへの対峙のコストは膨大なものになり、そればかりかウクライナが突破されたなら次は旧ソ連諸国、さらには欧州自体がロシアの侵略の標的になる、と声を大にする。
この主張に乗るかのように仏大統領、E.マクロンは、2月末にNATO(北大西洋条約機構)軍のウクライナへの派遣について、「その合意はないが、何事も(選択肢から)排除すべきではない」と発言した。
これに対してドイツ他のNATO加盟国は、今のところウクライナへの軍派遣は考えないとの見解を示し、対ロシア強硬派のNATO事務総長・J.ストルテンベルクも、紛争の発生直後から述べていた「NATOがウクライナに兵を送ることはない」との方針に変更がないことを再確認している。
こうした反応をマクロンが事前に予測できていなかったとは考え難く、それゆえに彼の発言の真意が謎とされるのだが、今停戦したならロシアの西に向けての野心がさらに拡大する、と本気で懸念し始めた可能性も否定はできない。
ストルテンベルクはNATO全体による5年間で1000億ユーロの対ウクライナ支援案を提唱しており、それは欧州の指導者に潜むこうした懸念の延長線上にもあるのだろう。
とは言え、欧州諸国が団結してどこまでロシアとの対峙に踏み切れるのかは、上記の仏以外の反応でも窺い知れるように、未知数の部分多々である。
また、国家間での見解不一致だけではなく、一国内でもこの点での見解の相違は顕在化してきている。
ポーランドは首相のD.トゥスクがウクライナへの派兵を否定したものの、外相のR.シコルスキーは「考えられないことでもない」と発言し、閣内で意見が割れていることを示唆した。
ドイツでは、長距離ミサイル「タウルス」のウクライナへの供与や、クリミア大橋爆撃計画が一部の軍幹部により内部協議されていた。
先月初めにこれがロシア諜報部門により探知・暴露され、ドイツもその事実を認めざるを得なくなる。
ドイツ議会はこのミサイル供与を巡り、今年1月に野党(CDU/CSU)の承認決議案を大差で否決している。
首相のO.ショルツも供与には反対の姿勢を示しているから、軍内部に政治に反対してでも、という考えが存在することを露呈したことになる。
どこまでウクライナ支援に直接踏み込むのか、踏み込めるのかを巡っての国内での意見対立は、それが過熱したなら同盟国間の協力も迷走に巻き込みかねない。
そうした欧州の動きをよそに、戦局の帰趨を制するカギとなる米国議会での対ウクライナ援助予算審議・承認は、相変わらずその目途が立っていない。
イスラエルとイランの交戦状況いかんでは、ウクライナがさらに後回しにされる可能性もあろう。
そして、米政権内では先月初めに国務省次官補のV.ヌーランドが辞任している。
背景に就いて多くは語られていないものの、対露強硬派の急先鋒だった彼女の退任は、少なくともJ.バイデン政権が対ロシア強硬策をさらに深めようとの兆候とは受け取れないものとなる。
戦況不利でも停戦協議には後ろ向き
グローバルサウスに向けては、6月半ばに開催が予定されるスイスでのウクライナ和平会議で、ウクライナは自国支持への国際世論形成で起死回生を図ろうとしている。
だが、その成否への影響が注目される中国の参加がはっきりしない。
その中国は、ロシアが称賛する和平案を掲げ続けている。そして他国と一緒になって、中国企業を含む対ロシア取引企業のブラックリスト(「戦争支援者」)をウクライナに撤回させている。
中国をどこまで当てにできるのかは、ウクライナにとって不安要素として残ったままだ。
再度の欧州大戦への懸念が漂い始めているならば、まだその影がぼんやりとしているうちに一刻も早く掻き消さねばならない。
だが、残念ながらロシアとの停戦論はまだ西側論調の主流にはなっていない。
反対派は、主として以下の2点を理由に停戦に懐疑的となっている。
(1) 停戦してもロシアはいずれそれを破って再度侵略を始めるから意味がない。
(2) ロシアにウクライナ領を占領させたまま停戦すれば、侵略を止められないという悪しき事例を国際社会に残し、例えば中国が台湾に向けて武力行使に踏み切る際のハードルを下げてしまう。
前者は、ロシアの狙いが少なくともウクライナ全土の占領に置かれているとの推測から出ているようで、これが上述のように、ウクライナに続いて旧ソ連諸国や欧州へロシアが侵略を行うといった恐露症へと拡大発展する。
しかし、相手を信用できないという前提を置いてしまうなら、その相手とは何を話しても無駄ということになり、まともな交渉はあり得なくなってしまう。
解決策は、相手を完全に叩きのめして戦意を喪失させ、こちらの隷属下に置くといった形しかなくなる。
それが現状から見て現実的な策になり得るのかという問いに、懐疑派はどう答えるのだろうか。
後者については既にこのコラムでも触れているので詳細は避けるが、ロシア・ウクライナ紛争の帰結いかんが中国の台湾問題への姿勢を左右するとはいささか考え難い。
習近平国家主席が君臨する限り台湾併合は中国の不動の目標であり、中国はその実行での様々な選択肢を練っているはずである。
その際の最大の関心事項は米軍の出方であり、ロシア・ウクライナ紛争に米軍が出兵しなかったからといって、だから台湾でも出て来ないと結論付けるほど中国も単細胞ではあるまい。
NATO兵士の存在は公然の秘密
一方、ロシアの側では大統領、V.プーチンが先月の大統領選に先立つ2月から3月にかけて、ロシア・ウクライナ紛争やその出口について自らの考えを多々述べている。
彼はT.カールソン(米ジャーナリスト)やD.キセリョフ(ロシア国営通信「ロシア・セヴォードニャ」CEO)とのインタビューをこなし、年次教書演説も行った。
いずれもその後の大統領選を意識した施政方針開陳となっている。
それらの中のロシア・ウクライナ紛争に関わる部分を概観すると、力点はもっぱらにロシアの安全保障確保の必要性と、その保障を脅かす米国以下の西側への強い不信感に置かれている。
ロシアの安全が保障されるならいつでも停戦に応じると彼は述べ、その条件の骨子は煎じ詰めればウクライナの非武装中立ということになる。
一度はこの線で2022年3月にロシア・ウクライナ間の交渉がまとまりかけていたところ、これが西側の横槍で御破算にされている。これによってプーチンの西側への不信感は決定的なものになってしまったようだ。
2時間にわたる年次教書演説では、冒頭の20分ほどをウクライナとの紛争と国際関係に充て、「ナチズムを根絶」することでロシアの国家としての主権と安全を守るという目標を従来通り繰り返した。
そして、ロシアがウクライナを越えて欧州へ攻め込んで来るといった西側での取り沙汰をバカげた妄想として切り捨てている。
後刻、別の機会でも彼は、NATOへの攻撃など考えていないと語ってこの点を念押ししている。
総じてプーチンは現状をロシア国家の存亡の危機と捉え、それを守り抜くためなら、さらなる動員も最終兵器の使用も辞さないという姿勢を示している。
キセリョフとのインタビューでプーチンは説く。
「(現下のロシア・ウクライナ紛争は)米国にとっては世界や欧州での自国の戦術的地位の改善問題に過ぎないのだろうが、我々にとっては死活問題なのだ」
特殊軍事作戦は戦争ではなくウクライナとの事変だが、ウクライナに武器を供与し、非公式に兵員まで送っている西側諸国に対しては、ロシアも表立って「戦争」というこれまで忌避してきた表現を使わざるを得なくなった。
西側では、ウクライナ内にNATO軍兵士が既にいることは公然の秘密とまで発言する向きもおり、プーチンもこれを既知の事実と見なしている。
上述のマクロンの発言に関連して、ロシアのFSB長官・S.ナルイシキンは、真偽のほどはともかく、フランスが兵員2000人のウクライナへの派遣準備に入っているとまで述べている。
プーチンの後ろにいる交戦好きの面々
危機意識は高まってくる。
プーチンにとってこの戦いに負けるということは、独立国家としてのロシアの終わりと捉えられ、その危機が迫るなら、動員令も核の使用もやれるし、やるだろう、という覚悟の程を表に出してくる。
核の使用は西側で表現されているような脅しなどではなく、状況いかんという但し書き付きであろうと、本気の話なのだ。
これらを額面通り受け取るなら、プーチンにとってはロシアの防衛が第一義であり、ロシアに編入したウクライナの領土はロシア領として認められ、要求通りのウクライナ非武装中立化が達成できるなら、その時点で戦闘終結も受け入れ可能ということになる。
西側の論者から見れば、突っ込みどころ満載だろう。
何をどう説明しようと、先に正規軍を国境越しに進めたのはロシアの側だった。その落とし前はどうつけるつもりなのか。
また、ロシアの安全保障ばかりが論じられるが、ではウクライナのそれはどうなるのか。ロシアはウクライナの安保にどのような保証を持ち出せるのか。
そして、根深い対西側不信感の中でまともな欧米との交渉をこなせる用意など本当にあるのか。
さらにはプーチンが防衛主体の思想を持っていると信じるにしても、いつかは彼も政治の舞台から退場する。彼の後継者が彼の考え方を間違いなく踏襲するという保証はどう得られるのか。
ロシア安全保障会議副議長のD.メドヴェージェフ(元大統領)は、ウクライナ全土をロシア領と非武装中立地帯とし、暫定議会を招集して対ロシア賠償支払いを決議させると唱えている。
ロシア国内にその種の対外強硬派が存在することは間違いなかろう。
それがロシアの政権を握って対外侵略路線に走るという危険を今からどう取り除けるのか。それが見通せなければ、紛争終結後のロシアとどう付き合うのかの判断を西側もなしようがないではないか・・・等々。
議論は尽きない。
プーチンを怒らせたモスクワのテロ事件
問題は結局最後には、プーチンの真意をどう正しく理解できるのかに行き着く。そして、それには彼やロシアとの直接交渉を持った上で検証と確証を重ねていく以外に方途はない。
今月初めにS.チャラップとJ.シャピロが共著でこの点に関して米誌に寄稿している。
紛争終結と和平を目指すなら、まずは相手との話し合いを始めねばならない、さもなければその相手の意図を掴むことは不可能と論じている。その通りだろう。
もしプーチンとの交渉なり話し合いなりを始めないなら、西側にロシアの安保を考慮する気がないという判断をプーチンの側が一層強め、ウクライナ領内の占領地拡大に向かう公算大となる。
その場合、取り沙汰されるロシア軍の大攻勢については、ロシアの専門家の中にも自国軍の兵員や兵器の不足を理由に、その可能性を疑う向きもいる。
また、その大攻勢が、西側とウクライナの戦意喪失をもたらすのか、逆に西側の危機感を昂じさせて対ウクライナ援助の加速や近い将来のNATO諸国の直接介入を招いてしまうのかの読み次第で、打つ手は左右される。
これらに加えて、自国の経済状況やウクライナ国民の継戦支持の度合い、そしてウクライナ現政権の安定度での耐性も見ながら、ロシアは進軍の塩梅を図ることになるのだろう。
これに対してウクライナの打つ手は限られてくる。
戦線での後退を何とか最小に抑えながら、ドローン(無人機)によるロシア領内の兵站・産業設備や海洋艦艇への攻撃を繰り返し、援助再開へと希望をつなぐしかなくなる。
そこで下手に自暴自棄に陥れば、ロシア領内への攻撃をさらに大きく広げることもあり得るし、少なくともロシアはそれを警戒している。
周知の通り、プーチンが5期目の当選を圧勝で果たした大統領選からわずか5日後の3月22日に、150人近くの犠牲者を出すモスクワ市内のテロ事件が発生した。
プーチンの選挙での圧勝を屈辱に塗り替える意図で行われたことは明らかだ。
この不幸な事件へのウクライナの関与の有無を巡って、西側・ウクライナとロシアとの間で批判の応酬が続いた。
どちらの側も論証の決定打を欠いて不明瞭な点を残し、真相は当面解明されずに終わるのかもしれない。
だが、ロシアがウクライナ関与への疑いを解消しない限り、今後ウクライナのロシア領への攻撃が拡大すれば、ロシアの反応はこれまで以上に苛烈を極めてくるだろう。
双方の報復が繰り返されることで、終わりなき戦闘が続くのみとなる。
その愚をこれ以上続けるべきではない。プーチンが頂点に居座る限りロシアと交渉せずという大統領令をウクライナはまずは撤回すべきだろう。
対露抗戦の精神規定がウクライナ自らの動きを縛ってしまっている。
プーチンの治世が順当に行けばさらに6年間続くことが決まってしまった以上、自縄自縛を解くことが結果的に今のウクライナにとって、これ以上の犠牲を抑えるために最善の策となるのではなかろうか。
●ウクライナ大統領、近代的な防空システムが「命を救う」 4/16
イランがイスラエルに対して実行したドローン(無人機)やミサイルを使った大規模攻撃を受け、ウクライナのゼレンスキー大統領は14日、イランの攻撃によって、近代的な防空システムが人々の命を救うことが証明されたと述べた。
イスラエル軍によれば、イランやイランの代理勢力によってイスラエルに向かって発射された約170機のドローンや120発の弾道ミサイルを含む300発余りの飛翔体(ひしょうたい)の大部分が防空システムや同盟諸国によって迎撃された。
ゼレンスキー氏は「近代的な防空システムは人命を守ることができる。このことは、航空機や防空がイランのミサイルやドローン『シャヘド』を迎撃した中東で実証された」と述べた。
ゼレンスキー氏は先週、米議会がロシアからの侵攻を防ぐのに必要な軍事支援を承認しなければ、ウクライナは戦争に負けると述べていた。
米議会では数カ月にわたり、ウクライナ軍事支援の関連法案がたなざらしになっており、ウクライナは弾薬不足に陥っている。
米上院は2月、ウクライナやイスラエルへの軍事支援を盛り込んだ953億ドル(約14兆7000億円)の法案を可決した。下院のジョンソン議長はこれまでのところ、法案可決のための採決を拒んでいる。
ゼレンスキー氏は、米議会での遅れはロシアの自信を強めるとし、「これ以上、時間を無駄にすることはできない」と語った。
●ショルツ独首相、貿易やウクライナ巡り中国主席と話し合う−首脳会談 4/16
北京を訪れているドイツのショルツ首相は16日、中国の習近平国家主席との会談で貿易やロシアがウクライナで続けている戦争、気候変動問題を取り上げると述べ、両国が取り組むべき課題が増え続けていると強調した。
同首相は他の世界貿易機関(WTO)加盟国と共に「われわれはルールに基づく世界貿易のシステムを強化し、さらに発展させることにコミットする」と表明し、「ウクライナの公正な平和にどう貢献できるか」についても話し合うと首脳会談直前に明らかにした。
●スーダン紛争2年目、死と苦しみに終わりなし 4/16
エジプト、カイロ: 現在進行中の他の紛争に比べ、2年目を迎えたスーダンの危機は、中東やウクライナにおける地政学的に重要な戦争の影に隠れて、忘れ去られた災難である。
アブドゥルファッターフ・アル・ブルハン将軍率いるスーダン軍と、モハメッド・ダガロ将軍率いる即応支援部隊(RSF)の権力闘争は、単にスーダンを混乱に陥れただけではない。
昨年のラマダン(断食月)期間中、競合する2つの軍閥間の戦いとして始まったことは、世界最大級の人道的災害を生み出した。
かつてスーダンの民主化政権をともに倒した戦友であった彼らは、RSFの軍への統合をめぐって意見が対立することになった。
昨年4月15日に首都ハルツームで戦闘が勃発すると、戦場はダルフールや他の脆弱な州にまで拡大した。攻撃、空爆、砲撃、銃撃は他のいくつかの地域にも響き渡り、スーダンのすでに緊迫していた平和を打ち砕いた。
紛争が勃発したとき、スーダンは重なり合う危機に揺れていた。1年後、国際移住機関によれば、スーダンの人口4,500万人のうち900万人近くが国内避難民となり、さらに170万人が海外に避難している。
戦争による食糧不足が飢饉を引き起こす恐れがあるため、国土の半分以上が人道支援を必要としている。
スーダン全土で通信が遮断されているため、これらの数字の多くは過小評価である可能性がある。
スーダン人アナリストのダリア・アブデルモニエム氏はアラブニュースに、「紛争疲れから固有のバイアスに至るまで、スーダン紛争は他の世界的危機の雑音を打ち破るのに苦労している」と述べ、メディア関係者が立ち入ることを禁じられているため、ソーシャルメディアに頼ることが包括的な報道と認識を妨げる諸刃の剣になっていると指摘した。
彼女は、スーダンの危機にもっと国際的な注目を集めようとする努力は、その複雑さによって妨げられており、その結果、スーダンの民主的再生の可能性や人道的ニーズが軽視されていると述べた。
スーダンの経済的重要性が世界的に低下していることも一因だ。国連の推計によれば、紛争初期の数週間で、経済活動は3分の1以上減少し、その結果、90億ドルの損害と、さらに400億ドルの略奪された財産や商品が生じたという。
スーダンのジブリル・イブラヒム財務相は、2023年のスーダン経済は40%縮小し、2024年にはさらに28%の縮小が予測されると述べた。国家収入は80%減少し、国際貿易は2023年に23%減少した。
経済的な打撃に加え、スーダンの農地の60パーセント以上が使用不能となっている。
アブデルモニエム氏は、スーダンで活動する援助機関が直面する課題にも光を当てる。渡航許可やビザの問題から、援助隊の安全保障の欠如まで、”援助提供の道は障害に満ちている”。という。
しかし、最近、戦場では重要な進展があった。2月中旬、スーダンの戦争は、国内最大の都市であるオムドゥルマン中心部での軍の大幅な躍進により、新たな局面を迎えた。これは、工兵隊として知られる軍事地区での10カ月にわたる包囲戦の終わりを告げるもので、現在進行中の戦争におけるSAFの最初の大きな攻撃的成功を意味する。
スーダン・リサーチ&コンサルタンシー・グループのスーダン人アナリスト、アーメド・カイル氏はアラブニュースに語った。
「SAFがオムドゥルマンで勝利を収めれば、RSFは軍事的にも政治的にも弱体化することは間違いない」
SAFとRSFはともに、国際機関から戦争犯罪で告発されている。この内部抗争は、地政学的な分野だけでなく、スーダンの社会構造にも影響を及ぼしている。専門家や活動家によれば、スーダンの静かな危機は世界の注目を集め、世界のヘッドラインを左右する優先順位の再評価を促している。
これまでのところ、国際社会はスーダンの期待を裏切り、必要な人道支援のほんの一部を提供しているにすぎない。このため、スーダンの人々はさらに北へ移住し、危険な地中海の道を選ばざるを得なくなるかもしれない、とアナリストは警告している。スーダン人の逃亡は今回が初めてではない。
2003年、迫害されていたファー族出身のスーダン人、ハフィズ・ユセフ・アダム氏は、スーダン政府軍による拷問や嫌がらせを経験し、シリアとトルコを経由してギリシャへの移住を決意した。
現在はアテネに住んでいるが、アダム氏はアラブニュースに対し、「ギリシャ当局は彼のような人のために行政的なハードルを設けている」とし、「ヨーロッパにはスーダン難民のための統合措置がない」と語った。
最近の戦争が勃発する数日前にスーダンを訪れたとき、彼は街角で広範な略奪と進行中の軍事化を目にした。
「私の家族と国全体のために、軍による支配が終わることを祈っています」
彼は鍛冶屋としての職を見つけることができたが、亡命希望者は書類の認証や言葉の習得に苦労することが多い。
ノルウェー難民評議会(Norwegian Refugee Council)の特別顧問であるパル・ネッセ(Pal Nesse)氏はアラブニュースに語った。「多数の難民が、まともな生活を営み、生活費を稼ぐのに苦労している」。
これとは対照的に、ウクライナ難民はヨーロッパ諸国では暖かい歓迎を受けており、EUの移民政策が人種差別主義に染まっているかどうかという議論につながっている。
他の専門家は、政治家が繰り返し言うように、欧州の資源はまったく逼迫しておらず、欧州大陸は移民対策にもっと力を入れるべきだと主張している。「ヨーロッパは豊かな大陸です」と、ノルウェーの人道支援団体『ドロップ・イン・ザ・オーシャン』の運営責任者ジャン・バティスト・メッツ氏はアラブニュースに語った。
「EU加盟国の能力と責任を改善する方法は間違いなくある」
難民の統合が受け入れ国と難民自身の双方に利益をもたらす可能性があることは、これまでの研究で明らかになっている。2013年、デンマークは労働力不足に悩む職業に難民を訓練して雇用する政策を採用し、成功を収めた。
将来、スーダン難民は、困難な復興期に必要とされる新しい技能や人脈を身につけて祖国に戻ることができるだろう。
ネッセ氏は、「難民と亡命希望者のための、より多くの代替的な法的経路を確立すべきだ」と助言した。また、必ずしも保護を求めるのではなく、主に雇用を求める移民のための代替的な経路も設けるべきだという。
しかし、ヨーロッパの政治は、経済危機から失業、犯罪にいたるまで、さまざまな問題を難民のせいにしている。
ネッセ氏は、スーダンの停戦と和平プロセスを支援することで、西側諸国が当面のニーズと長期的なニーズの両方に対処することを望んでいる。
「さらに、人道支援、開発資金、有利な貿易・関税規制が極めて重要です」
●ウクライナ軍への無人機納入、既に昨年全体の3倍に=司令官 4/16
ウクライナ軍に今年納入された無人機(ドローン)の数は、既に2023年全体の3倍に達している。無人機部隊を率いるスハレフスキ大佐が13日に開催されたウクライナ製の陸海空無人機、電子戦用システム、装甲車の展示会で明らかにした。
ウクライナはロシアに対抗するため国内での兵器製造と革新的な技術の利用を強化している。
スハレフスキ氏はウクライナ軍が使用する無人機の99%は国産だと説明するとともに、ウクライナとロシア間の砲兵火力の不均衡に言及。「一人称視点(FPV)型と(爆弾)投下型などのドローンによってわが国の砲兵資源の不足が補われていることは周知の事実だ」と述べた。アナリストらは砲兵火力について、6対1でロシアが有利だとみている。
ウクライナとロシア双方の無人機の使用拡大により、戦争は前線から互いの軍事、エネルギー、輸送インフラへの攻撃に移行している。
ウクライナのカミシン戦略産業相は、国内兵器メーカーによって同国の軍事的・経済的が進歩していると発言した。
同国の活況を呈する軍産複合体は23年の国内総生産(GDP)成長率約5%のうち、1.5%相当の押し上げに寄与している。
カミシン氏は今年、この寄与度が2倍の3%なると確信していると表明しつつ、ウクライナ政府が国産兵器を全て買い上げる余裕はないと警告した。
同氏によると、ウクライナは国内メーカーからの兵器購入について、資金不足を補うために世界の同盟国と協議を進めているという。
●「原発事故に近づいている」ザポリージャ原発への攻撃で 国連安保理 4/16
ロシア軍の占領下にあるウクライナ中南部ザポリージャ原発への攻撃が相次いでいる事態を受け、国連安全保障理事会は15日、公開会合を開いた。国際原子力機関(IAEA)が原発事故のリスクを訴えるなか、ロシアとウクライナはそれぞれの関与を否定した。
IAEAのグロッシ事務局長は、6号機の上空でドローンが撃墜され、訓練施設や酸素・窒素製造施設への攻撃が確認されたとも報告した。事故にはつながらなかったものの、昨年11月以来の原発施設への攻撃に懸念を表明。「無謀な攻撃は直ちにやめなければならない。私たちは原発事故に危険なほど近づいている」と警告した。
●G7外相会合、中東・ウクライナ巡り戦争終結の道筋議論へ 4/16
イタリア南部カプリ島で17日から3日間の日程で開く主要7カ国(G7)外相会合について、議長を務めるタヤーニ伊外相は15日、中東とウクライナでの戦争を終わらせる取り組みが議論の中心になるとの見通しを示した。
G7外相は一致団結してパレスチナ自治区ガザでの停戦とイスラエルとイラン間の緊張緩和を呼びかけると同時に、ロシアの侵攻を受けるウクライナを全面的に支援する立場を改めて示す見通し。
タヤーニ氏は「この状況下で簡単なことではないが、外交は極めて重要」とロイターに語った。「われわれの国際的な立場は非常に明確だ。われわれは一致団結しており、これが極めて重要」とした。
同氏によると、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長とウクライナのクレバ外相も出席してウクライナ情勢を話し合う。
同氏は、西側諸国だけでは戦争終結に向けロシアに十分な圧力をかけられないと指摘し、中国が関与する必要性に言及した。
また、西側諸国が凍結している3000億ドル相当のロシア資産をウクライナ支援に回すという米国の提案について「政治レベルでは反対していないが、それが可能かどうかを検討する必要がある」と指摘。「法的根拠がなければ、先に進めるのは間違い」との見解を示した。
●対外支援法案を週内採決 米下院、中東情勢緊迫で転換 4/16
ジョンソン米下院議長(共和党)は15日、ウクライナやイスラエル、台湾を支援するための追加予算を盛り込んだ法案を週内に分割して採決すると表明した。ジョンソン氏はウクライナ支援に難色を示し、法案採決を拒否してきたが、イランによるイスラエル攻撃で中東情勢が緊迫したため方針を転換した。
先に上院で民主、共和両党の賛成多数で可決された法案は、ウクライナ、イスラエル、台湾などへの支援を一つにまとめていた。下院では、支援対象となる国・地域ごとに四つの法案に分割し、それぞれ採決する。このため、民主党の対応を含め、今後の展開には不透明な部分が残る。
ジョンソン氏は「米国が同盟国のために、また国益のために立ち上がるかどうかを世界が注目している」と記者団に強調。19日にも投票が行われるとの見通しを示した。
●供給網、経済制裁を協議=日米韓財務相が初会合へ―米高官 4/16
米財務省高官は15日、記者団に対し、米首都ワシントンで今週、日米韓財務相会合を初めて開くと明らかにした。「(ウクライナ侵攻を続ける)ロシアに対する制裁、サプライチェーン(供給網)強化、太平洋島しょ国支援を含め、多くの問題を協議する」と説明した。
国際通貨基金(IMF)・世界銀行の春季会合や20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議など一連の国際金融会議に合わせて開催する。
会合では、金利上昇に伴う債務負担の増大に直面しているフィジーなどの太平洋島しょ国への支援や、ロシアや北朝鮮に対する経済制裁での連携を議論。G20会議での協力も確認する。
●米中高官 関係安定化で一致も 南シナ海情勢で中国が米をけん制 4/16
アメリカと中国の外交当局の高官が北京で会談し、両国関係のさらなる安定化で一致するとともに、近く予定されている米中外相会談に向けた調整も行われたとみられます。一方で中国側は南シナ海情勢などをめぐってアメリカ側をけん制しました。
中国外務省の馬朝旭次官は、アメリカ国務省で東アジアなどを統括するクリテンブリンク国務次官補と15日、北京で会談しました。
中国外務省によりますと、この中で双方はあらゆるレベルで交流を維持し、両国関係をさらに安定させ、発展させることで一致したということです。
バイデン政権の高官は、ブリンケン国務長官が近く中国を訪問する予定を明らかにしていて、ブリンケン長官と王毅外相との会談についても調整が行われたとみられます。
一方、中国側は、アメリカと日本、フィリピンの3か国の首脳会談を念頭に「小さなグループをつくって南シナ海情勢をかき乱している」とアメリカ側をけん制しました。
その上で、アジア太平洋地域の平和と安定を破壊しないようアメリカ側に求めるとともに、台湾情勢や、経済などの問題について中国側の立場を明らかにしたということです。
中国としては、米中外相会談を前に南シナ海や台湾情勢などをめぐって関与を強めるアメリカ側に改めてくぎを刺すねらいがあるとみられます。
●路上に繰り出し歓声上げるイランの人々…国旗を手に「イスラエルに死を、米国に死を」と叫ぶ 4/16
イランではイスラエルに対する報復を受け、14日未明から各地で人々が路上などに繰り出し歓声を上げた。国旗を手に「イスラエルに死を、米国に死を」と叫ぶ模様が国営テレビで繰り返し放送されている。ただ、無人機やミサイルが迎撃された情報は報じていない。
首都テヘランのパレスチナ広場には14日朝、イスラエル国旗をかすめてミサイルが飛び交う巨大な絵がビル壁を覆うように飾られた。絵にはペルシャ語で「次の一撃はもっと強力だ」、ヘブライ語で「次に過ちを犯せば偽りの国は終わりだ」と書かれている。
●イスラエル首相「危害加える者には反撃」…戦時内閣はイランへの対抗措置で一致 4/16
イランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」は14日未明、イスラエルに対する攻撃に踏み切った。イスラエル軍は攻撃に使われたドローン(無人機)とミサイルの大部分を迎撃したと発表した。イランがイスラエルを直接攻撃したのは初めて。中東情勢は一段と緊迫しており、イスラエルがイランに報復攻撃を行うかが焦点となる。
革命防衛隊は、1日に行われた在シリアのイラン大使館領事部ビルに対する空爆への報復だとしている。ホセイン・サラミ司令官は14日、イスラエルの軍事施設を標的とした「限定的な作戦だった」と強調した。
イスラエル軍報道官によると、攻撃には無人機約170機や巡航ミサイル30発以上、弾道ミサイル120発以上が使われた。合わせて約350に上り、爆発物の量は60トンに達したという。イランだけでなくイラクやイエメン領内からも発射された。イスラエル軍は「99%」を迎撃し、弾道ミサイルの一部が着弾したと発表した。
米ABCニュースによると、少なくとも弾道ミサイル9発が着弾し、ネバティム空軍基地など2か所の基地に落下した。輸送機1機や使われていない滑走路などに軽微な被害が出たという。イスラエルメディアによると、南部では少女がミサイルの破片で重傷を負った。
米中央軍は80以上の無人機と少なくとも6発の弾道ミサイルを破壊したと明らかにした。米紙ニューヨーク・タイムズによると、米軍は戦闘機や地中海東部に展開した駆逐艦、イラクに駐留する防空部隊が迎撃した。英BBCやロイター通信などによると、英軍の戦闘機は地中海のキプロスから出撃し、イラクやシリア上空で無人機を迎撃したほか、フランスも迎撃作戦を支援した。ヨルダンはイスラエルに向けて飛行中に自国の空域に入った飛行物体を撃墜した。
イランに対し、イスラエルが報復攻撃を行えば、中東情勢のさらなる不安定化は避けられない。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は声明で「我々に危害を加える者には誰であろうと反撃する」と強調した。イスラエルの戦時内閣は14日、対応を協議した。ロイター通信などによると、イランへの対抗措置を取る方向性では一致しているが、時期や方法などを巡って意見が分かれているという。
こうした動きに対し、イランの最高安全保障委員会は声明を発表し、イスラエルが攻撃すれば「10倍の反撃を食らうだろう」とけん制した。
●東部でロシア砲撃、5人死亡 4/16
ウクライナ東部ドネツク州の知事は15日、ロシア軍が14日に州北部セベルスクを砲撃し、36〜86歳の男性4人が死亡したと明らかにした。同州ポクロフスクの郊外でもロシア軍の空爆などがあり、地元当局によると、67歳の女性が死亡し、2人が負傷した。
ロシア軍は対ナチス・ドイツ戦勝記念日の5月9日までにドネツク州チャソフヤールを占領するため、攻勢を強めているとみられる。ウクライナのゼレンスキー大統領は前線の戦況について「最近はドネツク州で特に悪化している」との認識を示し、欧米に防空能力の強化を支援するよう求めていた。 

 

●ロシア・イラン首脳、「悪化」した中東情勢を協議 4/17
ロシアのプーチン大統領とイランのライシ大統領が中東情勢について協議を行ったことがわかった。イランは先ごろ、自国からイスラエルに対して初めて直接的な攻撃を実行していた。
イランが週末に実施した攻撃では、イスラエルと同盟諸国がイランのミサイルを迎撃していた。ロシアはこれを受けて、状況が悪化していると指摘した。イラン政府は週末の攻撃について、在シリア・イラン大使館に対して行われたイスラエルによるものとみられる空爆への報復と説明している。
プーチン氏は、全ての当事者が理性的な自制を示し、中東地域全体にとって破滅的な結果をもたらすような新たな対立を許さないことを期待すると述べた。
ロシア大統領府によれば、ライシ氏はこれに対し、イランの行動は強制されたものであり、限定的なものでもあったと指摘し、イランがこれ以上緊張を高めるつもりはないと強調した。
●イラン大統領「緊張の激化は望んでいない」 プーチン大統領は自制促す 4/17
ロシアのプーチン大統領とイランのライシ大統領が電話で会談しました。ライシ大統領は、緊張の激化は望んでいないと述べたということです。
ロシア大統領府は16日、プーチン大統領とイランのライシ大統領が電話で会談したと発表しました。
ロシア大統領府によりますと、イスラエルへの攻撃をめぐりライシ大統領は、イランの行動は本質的に限定的なものだったと述べ、イランは「さらなる緊張の激化を望んでいない」と強調したということです。
一方、プーチン大統領は新たな対立を生まないよう自制を促したということです。
●プーチン氏にライシ氏「これ以上の緊張に関心ない」…報復攻撃のイラン、理解求め外交攻勢 4/17
イラン政府はイスラエルに対する14日の報復攻撃について、各国の理解を得ようと外交攻勢をかけている。対立の激化は望まないと主張する一方で、イスラエルから反撃を受けた場合に再び報復する可能性も示唆している。
イランのエブラヒム・ライシ大統領は16日、ロシアのプーチン大統領と電話会談した。露大統領府によると、ライシ師は「イランの行動は限定的であり、これ以上、緊張を高めることに関心はない」と強調した。プーチン氏は当事者が自制し、新たな対立を防ぐことを望むと表明した。
ロシアによるウクライナ侵略以降、イランは大量の無人機を露側に供給していると指摘され、両国は軍事面や経済面での関係を強めている。
イランのホセイン・アブドラヒアン外相は15日、前日に続いて各国外相らとの電話会談を重ねた。14日以降に会談したのは、友好国ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相や中国の王毅(ワンイー)外相、アントニオ・グテレス国連事務総長らで、計20か国・機関に上る。
イラン側の主張は、イスラエルへの攻撃が国連憲章51条に基づく自衛権の行使で、地域の平和と安定のために緊張の拡大防止が重要だという点だ。しかし、イスラエルが報復に出る可能性を考慮し、イランの反撃にも言及した。
イランのイスラエル攻撃を非難したドイツのアンナレーナ・ベーアボック外相との電話会談では、「イスラエルが冒険主義を続けるなら、即座に大規模なカウンターパンチが出る」と述べ、さらなる報復を警告した。
国軍報道官は、14日を上回る報復を行う方針を示し、「米英仏独の指導者はイスラエル支援をやめよ」と主張した。
意義深い防衛「同盟」…イスラエル元副首相 ダン・メリドール氏
数百ものミサイルが日本に飛んできたことを想像してみてほしい。イランの攻撃は、イスラエルにとっても前代未聞の重大な事態だ。イランはドローンとミサイルでイスラエルを直接攻撃し、局面は新たになった。イスラエルには優れた防衛システムがあり、被害を最小限に抑えることができた。
攻撃は、明らかな国際法違反だ。イランは地域の安定を脅かす存在であることが明白となった。従来、イスラム教シーア派組織ヒズボラなどの代理勢力を通じて攻撃してきたが、公然と表に出てきた。
イスラエルは報復のためでなく、抑止のためにイランを攻撃するだろう。イスラエルには、対抗措置を取る権利と正当性がある。国際社会は、貿易の停止や外交関係の見直しなどの制裁でイランに敗北したことを悟らせなくてはならない。
今回、イスラエルを防衛するために米英仏に加え、ヨルダンなどのアラブ諸国で「同盟」が作られたことは意義深い。イランを封じ込めるため、秘密裏に長年準備してきたのだろう。
この「同盟」によって、戦いの構図は、イスラエル対アラブ・イスラム諸国でなくなった。レバノンやシリア、イエメンで影響力を拡大してきたイランに、アラブ諸国が脅威を感じていた証しだ。この仕組みは、パレスチナ自治区ガザでの戦闘後の統治でも生かせるはずだ。(聞き手・エルサレム支局 福島利之)
1984年に右派リクードからクネセト(国会)議員に当選。2009〜13年、ネタニヤフ政権で副首相兼情報相を務めたが、右傾化する同政権とは距離を置く。現在、イスラエル外交評議会理事長。
中東の新しい対決構造…静岡産業大名誉教授 森戸幸次氏
イランがイスラエルを初めて直接攻撃したことで、湾岸の大国イランとガザ戦争の主役イスラエルが正面から対峙(たいじ)するという、新しい中東の対決構造が形成され、域内に組み込まれた。
中東には、パレスチナの土地を巡るイスラエル・アラブ紛争と、湾岸での石油を巡る覇権争いという二つの大きな対立軸が存在してきたが、地理的にも離れ、根本原因も異なるため、これまで一緒に結びつくことはなかった。イランが対イスラエルで表舞台に登場したことで、それが同時発生しかねない状況が生じたと言える。
イランは45年前のイスラム革命後、イスラエル国家の壊滅を公言し、核開発を水面下で進めてきた。イスラエルはイランの核武装化を阻止するため、同国の核技術者や軍事指導者を暗殺。イランもイスラム教シーア派組織ヒズボラやイスラム主義組織ハマスなどの代理勢力を駆使して、イスラエルを間接的に攻撃する「影の戦争」を続けてきた。
今回のイスラエル直接攻撃により、この「影の戦争」は初めて公然化した。
影響は計り知れない。とりわけ、イランがハマスの後ろ盾として目に見えてイスラエルに対抗する形となり、ガザ戦争を巡る力のバランスは、軍事的にも政治的にも大きく変化する可能性が出てきた。
ハマスにとっては待望の「援軍来たる」で、攻勢に転じ、停戦や人質解放の交渉などでも強気に転じる公算が大きい。
●フランス、ノルマンディー上陸作戦80周年にプーチン氏を招待せず…70周年行事には出席 4/17
フランス政府が今年で80周年を迎えるノルマンディー上陸作戦の記念式典にロシア側に招待状は送るが、プーチン大統領は招待しないことにした。
16日(現地時間)、AFP通信などによると、記念行事を主管するフランス軍事省傘下「解放任務団」(以下、任務団)は6月6日に開かれるノルマンディー上陸作戦80周年記念式典にロシアも招待すると明らかにした。
任務団は「現状況を考慮すると、プーチン大統領は招待を受け取ることはできないだろう」としながら「ソ連国民の献身と犠牲、1945年勝利に対する寄与を称えるためにロシア代表団は招待する」と話した。
ロシア要人のうち誰を招くかは具体的に言及しなかった。
●「ミサイルが枯渇」、ロシアによる発電所攻撃受け ウクライナ大統領 4/17
ウクライナのゼレンスキー大統領はこのほどインタビューで、首都キーウで最大の発電所が破壊された先週のロシアの空爆に触れ、ウクライナは防空兵器不足で攻撃を阻止できない状況だったと明らかにした。
ゼレンスキー氏によると、ロシアはトリピリスカ発電所に11発のミサイルを発射した。ウクライナの防空システムで最初の7発を迎撃したものの、その後の4発が発電所を破壊したという。
ゼレンスキー氏は15日放送の米公共テレビPBSのインタビューでその理由に答え、「我々にはミサイルがないからだ。ミサイルが全て枯渇した」と明らかにした。
ゼレンスキー氏は協力国に対し、ロシアが最近ウクライナのエネルギーインフラへの攻撃を再開する中、ウクライナの防空システムは危険なほど手薄になっていると繰り返し警告していた。ただ、米連邦議会では切実に必要とされる軍事支援策がもう何カ月も下院共和党の妨害に遭っている。
ゼレンスキー氏はイランのイスラエル攻撃が阻止されたことにも触れ、西側諸国は同盟国の空を守ることができたと指摘。イランはイスラエルに対して300発以上の飛翔体(ひしょうたい)を発射したが、この攻撃は米国や英国、フランス、ヨルダンの防空支援で食い止められた。
●ウクライナ大統領、兵士動員の改正法案に署名 4/17
ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、兵士の動員を強化する改正法案に署名した。
法案は先週、議会で可決されていた。
新法は18〜60歳の男性全員に軍への登録と、登録書類の常時携行を義務付ける内容。政府は兵力補充の効率と透明性を高めるのが目的としている。
海外にいる対象年齢の男性は、最新の登録書類を提示しなければ、領事館でパスポートの更新ができなくなる。
長期にわたって戦闘に参加した兵士の動員を解除する条項は盛り込まれなかった。議会ではこの数カ月、動員期間の長い兵士を交代で一時帰宅させるかどうか、ロシアが再び攻勢を強めるなか、疲弊した兵士の休養は認められるかどうかなどをめぐる議論が続いていた。
●NATOと中東 共通の安全保障のためにさらなる関与を 4/17
今年は、NATOがアルジェリア、バーレーン、エジプト、イスラエル、ヨルダン、クウェート、モーリタニア、モロッコ、カタール、チュニジア、アラブ首長国連邦とのパートナーシップにより構築してきたプラットフォームである地中海対話とイスタンブール協力イニシアティブの記念すべき年である。
何十年もの間、我々は、ユーロ大西洋地域、地中海、湾岸地域、そしてそれ以外の地域に影響を及ぼす共通の安全保障上の関心事について協力してきた。
小型武器や軽兵器、即席爆発装置への対処、危機管理、テロ対策、市民への備え、レジリエンス、女性・平和・安全保障の課題などの分野において、長年の協力はすべての人々にとって有益なものであった。
NATOは、軍事訓練や教育の経験、軍事力の相互運用性の強化など、防衛・安全保障分野における貴重な専門知識を提供してきた。その一方で、パートナー諸国は、地域の安全保障上の課題に対する我々の理解を深めるのに役立ってきた。
私たちは、安全保障が地域的なものだけでなく、ますますグローバルなものとなっている、より危険で競争の激しい世界に生きている。ロシアのウクライナに対する侵略戦争はその一例であり、ウクライナに計り知れない損害をもたらし、ヨーロッパに第二次世界大戦後最大の難民危機をもたらした。
中東、北アフリカ、サヘル地域の紛争と不安定性の持続も大きな懸念材料だ。NATOはガザ紛争に関与していないが、個々のNATO同盟国は停戦を達成し、人道援助を提供するために精力的に活動している。
私たちは今、ガザ紛争がより広範な地域紛争にエスカレートするという見通しに直面している。イランとその代理勢力は、地域情勢を不安定にする永続的な要因であり、イラクのNATO同盟国や紅海の海洋安全保障に深刻なリスクをもたらしている。
ロシアと中国が中東と北アフリカ全域で存在感を増していることは、この地域の安全保障にとって良い兆候ではない。モスクワは反欧米、反NATOの考えを広め、傭兵を使って不安を煽り、イランとの関係を強化している。テヘランは、ウクライナにおけるプーチンの手腕を強化するために武器を供給している。一方、北京はアフリカでの経済的影響力を強め、軍事的プレゼンスを拡大し、重要なインフラを買収して、この地域への支配力を強めている。
グローバルな課題にはグローバルな解決策が必要だ。そのためNATOはグローバルなアプローチを採用し、中東や北アフリカを含む世界中のパートナーとより緊密に連携している。
我々が構築できることはたくさんある。NATOは2018年からイラクに駐留しており、イラク人の治安部隊と制度の強化を支援する使命を担っている。NATOはクウェートにも駐在しており、NATO同盟国と湾岸諸国をより緊密に結びつける地域センターがある。ヨルダンにはNATO連絡事務所を設置するための作業が進行中である。
「今後、私たちはNATOの中東・北アフリカへの関与をさらに拡大したいと考えている。」ミルチャ・ジョアナ
地中海対話の30周年とイスタンブール協力イニシアティブの20周年を迎えるにあたり、われわれはより良く、より強く、より安全な世界をともに構築するための努力を倍加したいと考えている。
今後は、中東・北アフリカに対するNATOの関与をさらに拡大したいと考えている。我々は、各国、国際機関、その他の関連アクターとの対話と緊密な協力の機会を模索している。テロ対策、海洋安全保障、気候変動、サイバーセキュリティ、地雷除去などは、私たちがより多く、より良く協力することが可能であり、またそうしなければならない実践的な分野の一部である。
7月にワシントンで開催される首脳会議で、NATO首脳はパートナーに対する安全保障の提供を強化するための具体的な勧告に合意する。これは、現在そして将来にわたって、われわれが共有する安全保障にとって重要なことである。
●米大統領選の行方を握る“宗教票” 4/17
米国で今年11月、大統領選挙が実施される。現時点では、民主党から現職のバイデン大統領、共和党からはホワイトハウスのカムバックを目指すトランプ前大統領が競っている。4年前の大統領選の再現だ。
既成のキリスト教会離れが進む欧州の選挙戦とは異なり、米国では宗教票が依然大きな影響を持っている。候補者が如何に多くの宗教票を獲得するかで、その当落が決定するといわれている。それだけに、バイデン氏もトランプ氏も米福音派教会や米カトリック教会の信者たちに対し熱心に自身の公約を売り込む選挙戦を展開している。
米国最大の宗教コミュニティーのカトリック教会は信者数(成人会員)約5200万人を抱えているが、その数は次第に減少している。2007年には米国人のほぼ4人に1人がカトリック教徒だったが、有名なピュー・リサーチ・センター(ピュー研究所)の最新調査によると、現在は5人に1人に過ぎない。
以下、バチカンニュース(独語版)14日付に配信された「米国のカトリック教会の信者動向」を報告する。
4年前の大統領選ではカトリック教徒の票はドナルド・トランプ氏(49%)とジョー・バイデン氏(50%)にほぼ二分したが、そのバランスは共和党に有利に変化してきている。有権者登録をしているカトリック教徒の52%は現在トランプ氏の共和党を支持し、 44%は民主党支持に傾いている。
注意しなければならない点は、カトリック教徒を一つの支持層と受け取ることはできないことだ。例えば、白人カトリック教徒とヒスパニック系カトリック教徒では世界観や政治信条は大きく異なるからだ。白人の10人中6人が共和党寄りだが、同じ割合のラテン系アメリカ人は民主党に共感している、といった具合だ。
前回の大統領選でも明らかだった。白人のカトリック系はバイデン氏(カトリック教徒)よりもトランプ大統領を15%多く支持した。一方、ヒスパニック系カトリック教徒は35%の差で民主党を支持した。
信仰コミュニティー内の人口動態の変化を見ると、米国全体の人口と同様に白人の割合は減少傾向にあり、対照的にヒスパニック系とアジア系のカトリック教徒の数は増加し続けている。2007年と比較すると、カトリック教徒に占める白人の割合は8ポイント減少し、現在はわずか57%だ。これに対し、ラテン系アメリカ人は4ポイント増加して33%となっている。米国のカトリック教徒に占めるアジア人の割合は、同じ期間に2%から4%に倍増した。
カトリック教徒の平均年齢は他の社会よりも高い。58%は50歳以上だ。この年齢層に属する人は総人口のうち48%と大幅に少ない。教会に所属する50歳未満のカトリック教徒の57%はラテン系が大部分を占めている。50歳以上の人のうち、ほぼ70%が白人だ。
地域によっても変化がある。米国南部におけるカトリック教徒の増加(国内のカトリック教徒全体のほぼ30%が住んでいる)は、ヒスパニック系人口の増加によって説明される。そして今日の米国西部では、カトリック教徒の2人に1人以上(55%)がラテン系アメリカ人だ。
また、教育水準でも違いがある。統計によると、白人のカトリック教徒(39%)は米国人口全体と比較してかなり高い教育を受けている。米国の全カトリック教徒と比較すると、大学の学位を持っているカトリック・ヒスパニックはその半分(16%) に過ぎない。
宗教的実践にも違いがある。米国のカトリック教徒全体の4分の1強(28%)は日曜のミサに出席する。約2人に1人(52%)が毎日祈っている。46%は「宗教が自分の人生において意味がある」と考えている。フランシスコ教皇の支持率は75%で、前任者のベネディクト16世の値をわずかに上回っているが、前任者のヨハネ・パウロ2世(93%)とは20ポイント近くの差がある。
中絶問題に関しては、ピュー・リサーチ・センターの調査は以前の調査結果を裏付けている。すなわち、カトリック教徒の態度は一般の平均的なアメリカ人の態度とほとんど変わらない。米国の教会は中絶との戦いを最優先課題としているが、信者の約60%はほとんどの状況下で中絶への合法的なアクセスを支持している。中絶の禁止令や厳格な期限制限は18の州に存在しており、カトリック教徒の28%が支持している。
ちなみに、当コラム欄で「欧州人が理解できなない『トランプ人気』」(2024年3月16日)を書いた。欧州人はトランプ氏が4件の刑事裁判のほか、数多くの民事裁判を控えているにもかかわらず、11月の大統領選で再選される可能性があるという米国の現実に首を傾げているのだ。
トランプ人気を理解する上で興味深い点は、米国福音派(プロテスタント)の対応だ。彼らはトランプ氏を熱烈に応援している。トランプ氏が中絶に厳格に反対し、イスラエルの米大使館をエルサレムに移転させたことを評価し、「トランプ氏は神が遣わした大統領」と称賛しているほどだ。トランプ氏は1月末、支持者にビデオを送り、そこで「私は神が遣わした者だ」と宣言している(独週刊誌シュピーゲル2024年3月9日参考)。
カトリック教徒や米福音派信者たちの宗教票の動向は第47代大統領選の行方に大きな影響を与えるだろう。
●「戦争反対」書き込んだロシアの女性ブロガーが起訴 ドレスコード「ほぼ裸」パーティーを主催し騒動も 4/17
ロシアのウクライナ侵攻を批判して軍の信用を傷つけたとして、ブロガーのロシア人女性が起訴された。
ブロガーのアナスタシア・イブレーワさんは、ロシアがウクライナに侵攻した2022年2月24日、自身のSNSにウクライナとロシア国旗のイラストを投稿して「戦争反対」と書き込み、軍の信用を傷つけた罪で、4月16日までに起訴された。
モスクワの地方裁判所で、4月25日に審議が行われる予定。
イブレーワさんは2023年12月、モスクワのナイトクラブでドレスコードを「ほぼ裸」とするパーティーを主催し、歌手や俳優などロシアの著名人が下着姿で楽しむ姿がSNSで広まり、プーチン大統領も批判するなど大きな騒動となった。
●パリ五輪の聖火が採火された…「戦争時期の希望の象徴」 4/17
2024年パリ・オリンピック(五輪)の聖火がギリシャで採火された。今年7月、五輪開幕に向けた聖火リレーを始める。
16日(現地時間)、古代五輪発祥の地、ギリシャの古代オリンピア遺跡のヘラ神殿で巫女が聖火トーチに火をつけた。巫女役はギリシャの女優メリー・ミナさんが演じた。通常、聖火は凹面鏡で太陽の光を集めて採火するが、この日は天気が曇ってあらかじめ準備しておいた予備の火を代用した。
国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は、「戦争と葛藤が増加するこの困難な時期に、人々は毎日の憎悪や攻撃、否定的なニュースに疲れている」とし、「われわれは一つにするもの、希望を与えるものを切望している」と演説した。同時に「今日、私たちが明らかにするオリンピック聖火はまさにこの希望の象徴」と強調した。
IOCはウクライナでの戦争にもかかわらず、ロシアとベラルーシ選手が五輪に出場できるように許可した。ただし、彼らは国旗や国歌なしに中立国の選手として参加しなければならない。
古代ギリシャの時も五輪期間には休戦して武力衝突を中断するのが慣行だった。前日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ロシアが五輪期間中にウクライナで休戦することを求めると明らかにした。しかし、クレムリン報道官はこの日、ウクライナがこの時期を「再整備と再武装の機会にする可能性がある」と反論した。
聖火リレーは慣例によってギリシャの五輪漕艇チャンピオンのステファノス・ヌトゥコスが第1走者を務め、短いリレー以降、開催都市の代表であるフランスの五輪水泳3大会メダリストのロール・マナドゥが引き継いだ。聖火は11日間ギリシャ全域を回った後、26日に1896年初の近代オリンピックが開かれたアテネのパナシナイコスタジアムでパーリオリンピック組織委員会が公式に引き継ぐ。
その後、3つのマストを持つ大型帆船「ベレム」に乗ってフランスに渡り、5月8日にマルセイユに到着する。聖火リレーは計68日間行われ、7月26日のパリオリンピック開幕式で聖火点火を最後に止まる。パリで夏季五輪が開かれるのは1900年、1924年に続き、今回が100年ぶりで3回目だ。
今回の採火式のように多くの観衆が集まって完全に開かれたのは、2018平昌(ピョンチャン)冬季五輪以来初めてだ。先の2020東京夏季五輪と2022北京冬季五輪の時は、新型コロナウイルス(新型コロナ)の影響で観衆なしで採火式を行った。
●ドイツ企業の「脱対中リスク」、一定成果の一方で…―独メディア 4/17
2024年4月12日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、ウクライナ戦争以降ドイツ企業の間で進んでいる脱中国依存の取り組みが一定の成果を上げていることが調査によって明らかになったと報じた。
記事は、ドイツのIfo経済研究所が今年2月に実施したアンケート調査で、工業や貿易において中国産の原材料や商品に依存しているドイツ企業の割合が40%を下回り、ウクライナ戦争が勃発する前だった前回調査時よりも大幅に低下したことが明らかになったと紹介。
中でも依存度低下が目立ったのが家具製造業と自動車製造業だったと伝えた。
一方で、化学工業産業では「脱リスク」ができていないどころか、中国への依存度がさらに高まっていると指摘。調査対象企業の46%が中国からの供給に頼っていると答え、22年の調査から5ポイント増加したと紹介した。また、ドイツ経済研究所(IW)が先日発表した報告書でも、ドイツ企業は化学製品や電子製品の分野で対中依存度を下げられていないと指摘されたとした。
さらに、中国に自ら設置した生産拠点より重要な中間製品を得ているドイツ企業の割合も22年と比べてほとんど変わっていないことも注目に値するとしたほか、中国の代替となりうる欧州以外の供給地域がますます注目を集める一方で、ドイツ本土や欧州内部における選択肢が検討されるケースが少ないとIfo経済研究所が指摘したことを伝えている。
記事はまた、Ifo研究所が「ドイツの工業企業による対中直接投資が、中国からの輸入をある程度促進する要因になっている点に注目すべきであり、ドイツ政府が貿易の多様化を推進したいのであれば、対外直接投資にも目を向ける必要がある」と評したことを紹介した。
●バイデンでもトランプでもなく、ロバート・F・ケネディJrを応援しようよ! 4/17
第35代大統領ジョン・F・ケネディの甥
私はアメリカ大統領選に立候補しているロバート・F・ケネディJr(下の写真)のファンである。彼は、第35代大統領ジョン・F・ケネディの甥であり、そのもとで司法長官だった弟ロバートの息子である。
なぜ彼を遠い日本から応援しているかというと、リベラル・デモクラシーを推進するために民主主義を世界中に輸出しようとする結果、そこら中で戦争を引き起こすことに躊躇しないジョー・バイデン大統領や、アメリカの介入主義を批判しながらも、自分の個人的利益を最優先しながら嘘ばかりついているドナルド・トランプ前大統領よりも、少しだけまともであると思うからだ。
ファンになったのは最近ではない。2023年6月1日付で、拙稿「私たちは第35代大統領ジョン・F・ケネディの甥の主張に耳を傾けなければならない」という記事を公表した。
ここでは、ケネディJrの主張を紹介することで、アメリカ大統領選への関心を喚起したいと思う。『潮』6月号には、拙稿「地政学からみたアメリカ大統領選」が収載予定なので、そちらも参考にしてほしい。
ケネディJrのツイートに注目
2023年6月20日のケネディJrのウクライナ戦争に対するツイートに注目しなければならない。それはつぎのような内容である。
「私はバイデン大統領に二つの謝罪を求める。第一に、アメリカ国民を欺き、偽りの口実で醜い代理戦争を支持させたこと。第二に、より重要なことだが、ウクライナ国民に対し、米国の(想像上の)地政学的利益のために、ウクライナをこの戦争に巻き込み、国を破滅させたことを」
ケネディJrは、ウクライナ戦争がロシアによって引き起こされた侵略戦争であるという一面だけに注目するのではなく、その戦争の引き金となった米国政府のウクライナでのやり口にしっかりと目を向けたうえで、バイデン大統領を批判しているのだ。
The Economistが興味深いことを書いているので紹介しよう。彼が8歳だった1962年、米国はキューバ・ミサイル危機を迎えた。ケネディJrがこの危機から得た教訓は、大統領だったJFK(ジョン・F・ケネディ)がソ連の指導者ニキータ・フルシチョフに対して行ったように、「平和を望むなら、相手の立場に立って考えることができなければならない」ということだった。
つまり、米国主導で北大西洋条約機構(NATO)を東方に拡大させたことに対して、ロシアがどう危機感を募らせたを、米国は注意深く想像しなければならなかったのだ。しかし、米国は「ロシアの立場に立って考える」ことがないまま、ウクライナを支配下に置こうと、2014年のウクライナのクーデターを支援し、その後も東方拡大を継続しようとした。このため、「アメリカは2022年のロシアの侵攻を誘発したとケネディ(Jr)は考えている」とThe Economistは指摘している。
このケネディJrの見解は、外国に民主主義と自由が広がれば、アメリカの安全保障にもつながるとみなすリベラル・デモクラシーの主張を否定するものだ。実は、米国では長くこのリベラル・デモクラシーに基づく外交が民主党出身の大統領だけでなく、共和党出身の大統領によっても継続されてきた。
しかし、第二次世界大戦後に確立された法律、規範、多国間機関のシステムは、労働力、商品、資本の自由な移動を可能にし、だれにとってもより平和で豊かな世界をもたらすという話が「神話」にすぎなかったのである。
米国の富裕層はますます富み、労働者はますます貧しくなった。もはや「アメリカン・ドリームは消失した」のだ。ケネディJrはこの事実に目を背けていない。この認識は基本的にトランプと同じである。
懐疑主義者のケネディJr
ただし、彼は環境保護派であり、トランプとは正反対だ。ケネディJRは、薬物犯罪で摘発される代わりに、環境保護デモで何度も逮捕された。
2001年には、米海軍が砲撃練習のために使用していたプエルトリコの一部であるビエケス島で、市民的不服従の罪で1カ月間服役した。服役中に末っ子のエイダンが生まれ、ケネディJrは面会日にはじめて息子と対面したという。
ケネディJrの懐疑主義の次の焦点はワクチンだった。この問題をつなぐ糸は水銀だった。彼は魚に含まれる水銀の存在に心を痛め、過去に小児用ワクチンに使用された水銀について、苦悩する母親たちから聞いた話に悩まされた。
2005年、彼は『Rolling Stone』誌と『Salon』誌に、防腐剤としての水銀の使用が「小児神経障害の蔓延」につながっていると主張する記事を掲載する。しかし、この記事は科学者たちから非難と信用を失い、最終的には撤回された。
2015年、ケネディJrは「ワールド・マーキュリー・プロジェクト」に参加し、その後「Children's Health Defense(CHD)」となり、現在も会長を務めている。ケネディJrとそのグループは、ワクチンが自閉症を引き起こす可能性があるという話を広めてきた。その他にも、ケネディJrは学校での銃乱射事件と抗うつ剤の使用、飲料水中の化学物質と性同一性障害の関連、「携帯電話の放射線」とガンの関連などを指摘している。
こんな彼には、「陰謀論者」という非難がついて回っている。しかし、「私は証拠をみる」とケネディJrは主張する。「推測はしない」という。「政府の発表に疑問を呈することは厭(いと)わない。そして、それは人々にとって脅威であり、その脅威に対処する方法として、彼らはあなたを陰謀論者だというのだ」というケネディJrの発言は、権力をもつ政府への深い懐疑を物語っている。
「すべてを疑いなさい」
「だからこそ、「すべてを疑いなさい」といいたくなったのである。といっても、この教えはぼくの専売特許ではない。あのマルクスが自分の娘らに施した教育方針である。
マルクスといえば、共産主義の元祖であり、悪玉の権化のようにみなす人もいるかもしれない。あるいは、神聖なる神のようにあがめる人もいるかもしれない。社会主義ソ連の崩壊後、マルクスはもう過去の人になってしまったのかもしれない。
しかし、マルクスは優れた思想家であり、いまこそ、イデオロギーを超えて、マルクスの思想に耳を傾けるのに適した時期ではないか。ぼくらの時代の自民党寄りの御用学者、加藤寛さえ、ぼくに面と向かって何度もこう強調していたくらいだから、この主張は正しいはずだ。そう思うぼくは、マルクスの教えを大切に守ろうと心に決めている。
そこで、「すべてを疑いなさい」というタイトルの本を書くことにした。もちろん、疑うだけではダメだ。疑ったあとに、何ものかを信じて、それをもとに予測すること。そうしなければ、「先を読む」ことはできない。いわば、人生を豊かに、かつ、しなやかに生き抜くための出発点として、「すべてを疑う」ことからはじめなさいと言いたいのだ」
こんなことを書いた以上、私はいまでも「すべてを疑いなさい」という教えを繰り返したいと思う。だからこそ、ケネディJrの懐疑主義に強く惹かれる。どうか、ケネディJrに関するニュースに関心をもって、温かい目で見守ってほしい。
●イスラエルへミサイル・無人機攻撃を仕掛けたイラン、アイアンドームによる迎撃も「計算の内」 4/17
イラン国内からイスラエルを攻撃するのは初
イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)航空宇宙軍は4月13日、イラン国内からイスラエルへの大規模な自爆ドローン(無人航空機)とミサイルの攻撃を行った。イスラエルの空爆によりシリアで精鋭コッズ部隊の上級司令官を殺害されたことに対する報復だ。
米シンクタンク「戦争研究所」のまとめによると、イスラエルは同月1日、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館につながる建物を空爆。IRGCの対外工作機関「コッズ部隊」の上級司令官モハマド・レザ・ザヘディ准将と部下数人を殺害した。
ザヘディ准将はレバノン、ヨルダン、シリア、パレスチナ自治区における「抵抗の枢軸」の作戦を指揮していた。空爆はイラン領土への攻撃と同じとしてイランはザヘディ准将の仇討ちを宣言。イスラエルは昨年12月にもダマスカス郊外でIRGCのラジ・ムサビ准将を殺害している。
イスラエル国防軍のダニエル・ハガリ報道官は「イスラエルは同盟国からの援助を得て、イランが発射した200機の自爆ドローンや、巡航ミサイル、弾道ミサイルの大半を迎撃した」と述べた。弾道ミサイルは120発だった。イランが同国からイスラエルを直接攻撃するのは初めてだ。
イランの攻撃は99%無力化された
イスラエル、米国、英国、ヨルダンはイスラエル領空外でドローンとミサイルを迎撃した。米英が撃墜したドローンは100機以上。ウクライナ戦争におけるロシア軍の空爆と同じように、イランは自爆ドローンや巡航ミサイル、弾道ミサイルを織り交ぜた攻撃を試みたように見える。
しかし戦闘機やイスラエルの防空システム「アイアンドーム」の迎撃によりイランの攻撃は99%無力化され、到達した弾道ミサイルは数発程度だった。今のところ被害は、破片の落下で7歳の少女が重体となり、イスラエル南部の軍事施設が軽い損害を受けたという報告にとどまる。
「抵抗の枢軸」のレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラはゴラン高原にあるイスラエルのミサイル・大砲基地に向け自走式多連装ロケット砲カチューシャを発射したと発表した。イランに支援されたイラクの民兵組織もイスラエルを標的とした攻撃に参加した。
IRGC海軍は13日、ホルムズ海峡でイスラエルに関連するポルトガル船籍の商業船を拿捕した。イスラエルは、イエメンの親イラン武装組織フーシ派の船舶攻撃を迂回するためヨルダン、サウジアラビア経由でアラブ首長国連邦(UAE)を結ぶ陸上ルートへの依存を強めている。
イランの参謀総長「この作戦を継続する考えはない」
イスラエルに関連する商業船の拿捕にはホルムズ海峡でイスラエルに圧力を加える狙いがある。紅海とホルムズ海峡の航行に支障を来たすようになると、イスラエルだけでなく、インフレ再燃の懸念が出始めた世界経済にも死活的な影響を与える。
イランはイスラエルがイランを攻撃するために自国の領空や領土の使用を許可するいかなる国に対しても「断固として対応する」と警告した。その一方で、イラン軍のモハマド・バゲリ参謀総長は国営テレビに「作戦は成功裏に完了し、すべての目的を達成した」と語った。
バゲリ参謀総長によると、情報センターと、ザヘディ准将を殺害したイスラエルのステルス多用途戦闘機F-35が飛び立った空軍基地を攻撃。両施設は著しく破壊され、機能しなくなった。このため「この作戦を継続する意図はない」と攻撃をエスカレーションさせない考えを示唆した。
リシ・スナク英首相は「イスラエルに対する無謀な攻撃は緊張を煽り、地域を不安定化させる危険がある。わが国はイスラエルと、ヨルダンやイラクを含む地域のすべてのパートナーの安全保障のために行動し続ける。これ以上の流血は誰も望んでいない」と表明した。
イスラエルの安全保障への米国の鉄壁の関与を再確認
英軍海兵隊は中東から数千人の英国国民を避難させる準備を整えている。レバノンの海岸線に沿って偵察を行い、海上での救出作戦の可能性に備えている。「第二次大戦開戦時、フランスに取り残された英軍を避難させるダンケルクの戦いを彷彿させる」(英大衆紙デーリー・メール)
ジョー・バイデン米大統領は「イランと、イエメン、シリア、イラクで活動するその代理人がイスラエルの軍事施設に前例のない空爆を行った。イスラエルを支援するため、米軍は航空機と弾道ミサイル防衛駆逐艦を移動させ、ドローンやミサイルを撃墜するのを助けた」と表明した。
「イスラエルの安全保障に対する米国の鉄壁の関与を再確認するため、ベンヤミン・ネタニヤフ首相と話したところだ。主要7カ国(G7)首脳を招集し、イランの攻撃への統一的な外交対応を調整する。国民(在外米軍)を守るため必要な行動をとることを躊躇しない」と強調した。
「自衛権の範囲を逸脱している」と国際的な批判が高まるパレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルの軍事作戦でバイデン、ネタニヤフ両氏の関係はギクシャクしている。しかしイランの増長を抑えなければならないバイデン氏はイスラエル支援の姿勢を崩すことはできない。
「純粋に面子を保つためイスラエルに攻撃を仕掛けた」
米英両国は年内にそれぞれ大統領選と総選挙を控え、バイデン氏もスナク氏も紛争のエスカレーションは望んでいない。国内向けには強硬姿勢を見せなければならないイランにも、イスラエルと米英両国を怒らせて、直接戦闘に巻き込まれ自滅するのは得策ではないとの計算が働く。
英軍の情報活動を指揮した経験を持つフィリップ・イングラム氏はデーリー・メール紙に対し「イランの攻撃はアイアンドームによって撃ち落とされることを想定していたことをうかがわせる。攻撃を効果的なものにするにはいくつかの攻撃を連動させることが必要だった」との分析を示す。
イスラエルの被害は極めて限定的なことから「純粋に面子を保つためイスラエルに攻撃を仕掛けた。これでイラン国民にはIRGCの仇を討つためにできることはすべてやったと言うことができる」(イングラム氏)という。
国際社会は世界経済の安定を損なう紛争のエスカレーションを望んでいない。その隙にウラジーミル・プーチン露大統領がウクライナでの侵略を拡大するのは絶対に避けたい。米英の指導者は非常に微妙で複雑な外交的、政治的バランスを求められている。
凌遅刑モデルを好むイラン
元米国防総省上級顧問で英シンクタンク、王立国際問題研究所(チャタムハウス)中東・北アフリカプログラムのビラル・サーブ研究員も「イランのジレンマは『抵抗の枢軸』における立場を維持しつつ、自国が敗北する恐れの高いエスカレーションを引き起こさないような対応を見つけることだ」と指摘する。
サーブ研究員によると、イランはイスラエルに損害を与えることよりもこの地域で得た戦略的利益を守ることに重点を置いている。イラクやシリア、レバノン、イエメンにおける政治的影響力の増大や湾岸諸国、ロシア、中国との関係の強化が含まれるという。
「イランは地域支配に執念を燃やす政権によって運営されているが、自滅的な行動をとったことはほとんどない。イランは自国の限界を知っているからだ。イランはエスカレーションを避ける“凌遅刑(りょうちけい)”モデルを好む」(サーブ研究員)
凌遅刑は迅速な斬首刑と異なり、人間の肉体を少しずつ切り落とし、長時間苦痛を与えながら死に至らしめる処刑方法だ。イスラエルの出方を見極める必要はあるものの、中東全域への紛争拡大という悪夢のシナリオになる可能性は今のところ低いと言えそうだ。
●ロシア西部のレーダー設備破壊 無人機攻撃とウクライナ 4/17
ウクライナ保安局(SBU)は16日、ロシア西部ブリャンスク州のレーダー設備を無人機7機による攻撃で破壊した。SBUの情報筋が共同通信に明らかにした。ロシアの監視能力を低下させたことで、ウクライナ軍はロシアへの無人機攻撃などを実行しやすくなると主張した。
レーダーはブリャンスク州と接するウクライナ北部を監視範囲にしていたという。情報筋によるとSBUは、ロシア西部ベルゴロド州でも同型のレーダー設備を破壊した。
ゼレンスキー大統領は15日公開の米公共放送(PBS)とのインタビューで、米国などに防空態勢の強化を支援するよう訴えた。
●イスラエルのイラン報復、米は「限定的」と分析か…IAEAは核施設の標的に強い懸念 4/17
イランの攻撃を受けてイスラエルが検討している対抗措置について、複数の米メディアは16日、軍事的な報復をする場合には標的や規模は限定的になると米政府が分析していると報じた。イスラエル政府内では軍事的報復を求める声は根強いが、米国などが自制を求める中で慎重に検討している。
米NBCニュースによると、イスラエルはイランの攻撃前、被害の程度に応じた対抗措置の手段や規模について様々なシナリオを米側に説明していた。米高官はNBCに対し、イランの攻撃による被害が比較的軽微だったことから「あまり強硬ではない対応になり得る」と話した。米CNNは米情報筋の話として「イラン国内の限定された範囲での攻撃」をイスラエルが検討していると報じた。
また、イスラエルのイスラエル・カッツ外相は16日、32か国に書簡を送り、イランのミサイル開発への制裁と、攻撃を行ったイランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」のテロ組織指定を呼び掛けたことを明らかにした。
一方、国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は15日、イスラエルによる報復攻撃でイランの核施設が標的になる可能性に強い懸念を示し、「最大限の自制」を求めた。
イランは対立激化を望まない姿勢を強調している。エブラヒム・ライシ大統領は16日、ロシアのプーチン大統領と電話会談した際、イスラエルに対する攻撃を正当化する一方で、「これ以上緊張を高めることに関心はない」と述べた。露大統領府が発表した。
●IMF “世界経済上方修正も 情勢緊迫化で物価上昇などリスク” 4/17
IMF=国際通貨基金は、世界経済の最新の見通しを発表し、ことしの世界全体の経済成長率は3.2%と、これまでより0.1ポイント上方修正しました。一方、ウクライナ情勢や中東情勢の緊迫化による物価の上昇などを、今後のリスクだと指摘しています。
IMFが16日に発表した最新の見通しによりますと、ことしの世界の経済成長率は3.2%とし、前回1月時点より0.1ポイント引き上げました。
アメリカで予想を上回る経済成長が続いていることなどが要因で、アメリカのことしの成長率は2.7%と、こちらも前回1月時点より0.6ポイント引き上げました。
一方で、IMFは、ウクライナ情勢や中東情勢の緊迫化による物価の上昇や、インフレによる金利の上昇などを今後のリスクだと指摘しています。
国別では、中国の成長率は4.6%で、前回から据え置きましたが、「問題を抱えている不動産市場に関する包括的な対策を打たないかぎり成長が鈍化する可能性があり、そうなれば貿易相手国が打撃を受ける」としています。
日本の成長率は、前回と同じで去年の1.9%から0.9%に鈍化すると予想しています。外国人観光客の急増という一過性の要因が薄れるためだとしています。
このほか、ロシアの成長率は3.2%と、前回から0.6ポイント引き上げられました。労働市場のひっ迫を受けて賃金が上昇し、民間消費が好調なことなどが堅調な経済の要因だとしてきましたが、来年は、こうした効果が薄れ、1.8%に鈍化するとしています。
●ドイツ首相「習主席にロシアへの影響力行使求めた」 4/17
中国を訪れていたドイツのショルツ首相は16日、現地で記者会見を開き、ロシアにウクライナ侵攻をやめさせるため、習近平国家主席に影響力を行使するよう求めたと明らかにしました。
また、中国との経済関係については過度な依存の解消を目指しながらも、今後も重視する考えを強調しました。
ドイツのショルツ首相は16日、中国 北京で習近平国家主席や李強首相と会談した後、李首相と共同会見を開きました。
ショルツ首相はウクライナ情勢をめぐり「プーチン氏がこの悲惨な戦争を終わらせるよう、習主席に影響力を行使するよう求めた」と述べ、ロシアと関係の深い中国にさらなる行動を求めたと明らかにしました。
またショルツ首相は、中国の補助金政策によってEV=電気自動車の過剰生産を引き起こしていると、ヨーロッパで懸念が広がっていることを念頭に「中国の一方的な経済政策が、ドイツとヨーロッパの企業に構造的な難局を生み出している」と述べ、対応を促しました。
一方で「中国に今後も経済的に成功してほしい」とも述べ、最大の貿易相手国である中国との過度な依存の解消を目指しながらも、経済の結びつきは今後も重視する考えを強調しました。
これに対し李首相は「中国は、より質の高いドイツの製品を輸入することを望んでいる」と述べ、アメリカと安全保障や先端技術などをめぐって対立が続く中、ドイツとの関係強化を通じて中国包囲網ともいえる動きを弱めるねらいがあるとみられます。
中国を訪れていたドイツのショルツ首相は16日、習近平国家主席や李強首相との一連の会談を締めくくる北京で開いた会見で、イランによるイスラエルへの大規模攻撃についても会談で取り上げたとした上で「この状況の中であらゆる国がこれ以上のエスカレーションを止めるため行動することが特に重要だ」と述べ、緊張の緩和に向け中国の役割にも期待を示しました。
一方、中国外務省によりますと、習主席とショルツ首相が中東パレスチナのガザ地区の情勢について事態の拡大を防ぐべきだという認識で一致したということです。
ドイツ外相 中東の緊張緩和のためイスラエル訪問へ
中東情勢をめぐってドイツのベアボック外相は16日、首都ベルリンで開いた記者会見で中東地域の緊張を緩和するためとして、イスラエルを訪問することを明らかにしました。
ドイツ外務省によりますと、ベアボック外相は17日、ネタニヤフ首相やカッツ外相などと会談を予定しているということです。
●「ロシアは占領諦めず」と知事 ハリコフ州、防衛拠点の増強急ぐ 4/17
ロシアが連日の攻撃を続けるウクライナ東部ハリコフ州のシネグボフ知事は17日までに「ロシアはハリコフの占領を諦めていない」と強調し、防衛拠点の増強を急いでいると明らかにした。ウクライナ第2の都市、州都ハリコフで共同通信のインタビューに応じた。ロシア軍の電力インフラへの集中攻撃で、州内の20万人以上への電力供給が滞っていると述べた。
ウクライナのゼレンスキー政権は、ロシアが5月末か6月初旬に大規模攻勢を仕掛ける可能性があると指摘。ハリコフ州が侵攻目標になるとの見方があり、塹壕や戦車止めなどによる防衛拠点の構築が進められている。
シネグボフ氏によると、州内では最近、1日平均で18〜20の人口密集地がミサイルや無人機による攻撃を受けている。「ロシアがハリコフ州方面で新たな攻撃を仕掛けてくる可能性は無視できない」と指摘し、「間断なく防衛拠点の構築を続けている」と語った。同州は22年2月のロシアの侵攻開始後に一部を占領されたが、同年9月のウクライナ軍の反攻で、ほぼ全域の支配を回復した。
●イスラエル軍“イランの攻撃に対応しないわけにはいかない” 4/17
イランによる大規模攻撃を受けてイスラエル政府は16日も閣議を開き、対抗措置について検討を重ねているとみられます。対抗措置をめぐってはイラン国内だけでなく国外のイランが支援する勢力への攻撃など、さまざまな選択肢が取り沙汰されていて、予断を許さない状況です。
イランがイスラエルに向けて多数のミサイルと無人機を使った大規模な攻撃を仕掛けたことを受け、イスラエルでは16日も戦時内閣の閣議が開かれ、対抗措置について検討を重ねているとみられます。
イスラエル軍のハガリ報道官は16日「イランの攻撃に対応しないわけにはいかない。われわれが決めた時期と場所で行動をする」と述べて、あくまでも対抗措置を辞さない姿勢をアピールしました。
アメリカのNBCテレビはアメリカ政府の当局者の話として、シリアにあるイランが支援する勢力の軍事施設を攻撃する可能性があるという見方を伝えています。
一方でCNNテレビは関係者の話としてイスラエルがイラン国内への限定的な攻撃を検討しているという情報があると伝えるなど、さまざまな選択肢が取り沙汰されていて、イスラエル側がどのような対応をするか予断を許さない状況です。
一方、ガザ地区での戦闘の休止や人質の解放をめぐる交渉について、イスラエルのメディアは、イスラム組織ハマスが、戦闘休止と引き換えに解放する用意ができている人質の数を、20人以下と主張していると報じました。
仲介国などからハマス側に提示された案では40人を解放するとされていたことから「ハマス側は合意を望まず、地域紛争の激化を求めている」とするイスラエル当局者の話などを伝えています。
ハマスは、イスラエル軍のガザ地区からの撤退などを伴う完全な停戦を求めていて、双方の立場は隔たったままで、交渉の行方は一層不透明さを増しています。
世論調査 7割が「同盟関係を損なうなら反対」
イスラエルの複数のメディアは16日、ヘブライ大学の世論調査の結果として、イランによる大規模攻撃へのイスラエルの対抗措置について、回答者の74%が同盟関係にある国々との関係を損なうのであれば反対すると答えたと伝えました。
「タイムズ・オブ・イスラエル」によりますと、この世論調査はヘブライ大学が今月14日と15日にインターネットと電話で実施し、1400人余りが対象となったということです。
イランへの対抗措置について、同盟関係にある国々との関係を損なうのであれば反対すると答えた人は74%にのぼったとしています。
一方、同盟関係にある国々との関係を損ねたとしても対抗措置に賛成すると回答したのは26%だったとしています。
また、持続可能な防衛態勢を確保するため、同盟関係にある国々からの政治や軍事面の要求に積極的に応じるべき、と回答したのは56%にのぼったとしています。
英首相 ネタニヤフ首相と会談“冷静さ保つべき”
イギリスの首相官邸はスナク首相が16日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話会談したと発表しました。
それによりますと、スナク首相はイスラエルの安全と周辺地域の安定を支持すると伝え、これに対してネタニヤフ首相は、イランがイスラエルに向けて発射した無人機をイギリス軍の戦闘機が撃墜したことに感謝の意を示しました。
さらにスナク首相は、イランは今回の攻撃で国際的に孤立を深めたと指摘するとともに、ネタニヤフ首相に対し事態をエスカレートさせる行為は誰の利益にもならず、中東の治安を悪化させるだけで、冷静さを保つべきだと強調したということです。
一方でスナク首相は、パレスチナのガザ地区の人道危機について重大な懸念を抱いているとした上で、支援物資を搬入するための新たなルートをできるだけ早く開けるなどの対応をとるようイスラエル側に注文をつけたということです。
●イスラエル、ラファ侵攻延期か イラン対応に集中―報道 4/17
米CNNテレビ(電子版)は15日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ最南部ラファへの軍事侵攻を延期したと報じた。イスラエルの複数の関係筋の話としている。イスラム組織ハマスの最後の拠点があるとして、ネタニヤフ政権はラファに侵攻することを計画していたが、イスラエルへの大規模攻撃を実施したイランへの対応に集中しているためだという。
ラファには約150万人の避難民らが身を寄せているとされる。ネタニヤフ首相は、ハマス最後の大隊があるとして、地上侵攻すると繰り返し明言。だが、米国は民間人の犠牲が拡大することを懸念し、強く反対している。
CNNによれば、軍は15日に地上侵攻の準備として退避を呼び掛けるとみられるビラを空からまく予定だったが、イランによる攻撃後、延期を決めた。イスラエル当局者の一人はCNNに、ラファ侵攻を実施する方針を変えていないものの、民間人の退避時期などは未定の状態だと語った。
AFP通信によると、イスラエル軍のハガリ報道官は14日夜、「イランから攻撃を受けている最中でも、ガザの人質救出という重要な任務を見失うことはない」と指摘。イランへの対応と並行してハマスへの軍事作戦を続けると示唆した。
一方、イスラエルとハマスの戦闘休止に向けた交渉で、ハマスが最新の休戦案を拒否したことに関して、米国務省のミラー報道官は15日、「イスラエルは重要な動きを見せた。獲得したいと思っている多くの条件を提示されたのに、ハマスは受け入れなかった」と明らかにした。その上で、米政府としてあくまで最低6週間の休戦実現を目指すと強調した。
●イスラエル軍トップ“反応するだろう”イランの大規模攻撃受け 4/17
イランによる大規模攻撃を受けてイスラエルの対応が焦点となる中、軍のトップが「反応することになるだろう」と述べ、対抗措置をとる考えを示しました。一方、イランのライシ大統領は、「イランの国益に反するいかなる措置に対しても厳しく対処する」と述べ、緊張した状況が続いています。
イスラエル軍トップのハレビ参謀総長は15日、イランの弾道ミサイルが着弾した南部のネバティム空軍基地を訪れ、「われわれは次のステップを検討している。イスラエル領内への数多くのミサイルや無人機による攻撃には反応することになるだろう」と述べ、イランの攻撃に対して、何らかの対抗措置をとる考えを示しました。
一方、イランのライシ大統領は15日、カタールのタミム首長と電話で会談し、イスラエルの対抗措置を念頭に「イランの国益に反するいかなる措置に対しても厳しく、大規模に反応することを明確にしておく」と述べ、イスラエルをけん制し、両国の間で緊張した状況が続いています。
アメリカのNBCニュースは、アメリカ政府の当局者の話として、イスラエル国内の被害が限定的だったことから、イスラエルは、イランの国内ではなく、シリアにあるイランが支援する勢力が武器などを保管する施設を攻撃する可能性があるという見方を伝えています。
こうした中、IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は、15日、記者団からイスラエルの対抗措置の標的がイランの核施設になる可能性を問われたのに対し「常にその可能性を懸念している。最大限の自制を呼びかけている」と述べました。 
●「イスラエルは反撃決めた」と英外相 自制求める調停外交続く 4/17
キャメロン英外相は17日、イランの大規模攻撃を受けたイスラエルを訪れ、紛争拡大回避に向けて高官らと協議した。キャメロン氏は、イスラエルがイランに反撃することを決めたとし、「できる限り緊張を激化させない方法」で行うよう望むと述べた。17日にはベーアボック独外相もイスラエルを訪れており、同国に自制を求める調停外交が本格化している。
イスラエルのネタニヤフ政権は16日もイランへの対応を協議した。米CNN放送(電子版)は、イスラエルはイラン国内に限定的な反撃を行う方向に傾いているとの情報があると伝えた。
イスラエルのカッツ外相は16日、イランのミサイル開発計画に制裁を科すよう求める書簡を32カ国に送ると述べた。イエレン米財務長官も近くイランに新たな経済制裁を科すと表明しており、「イラン包囲網」構築の動きが広がっている。
一方、イランのライシ大統領は16日、国益を脅かすどんなに小さな行動であっても「広範囲の、痛みを伴う反撃」を行うと述べ、攻撃しないようイスラエルに警告した。
ライシ師はまた、プーチン・ロシア大統領との電話会談で、イランがイスラエルに行った攻撃は限定的で、緊張を激化させるつもりはないと述べた。プーチン氏は「中東全体に破滅的な結果」をもたらすとして全当事者に自制を求めた。露大統領府が16日に発表した。
イスラエル軍は16日、隣接するレバノン南部を空爆して親イラン民兵組織「ヒズボラ」の司令官を殺害した。軍はイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ北部でも軍事作戦を始めた。

 

●ロシア、米大統領選で情報工作 ウクライナ支援への反対狙う 4/18
米マイクロソフトは17日、11月の大統領選に向けロシアの偽情報拡散などの工作が2カ月ほど前から活発化したとの報告書を公表した。マイクロソフトの脅威分析センターが70以上の工作主体を追跡。ウクライナをおとしめて米世論を支援反対に導き、侵攻を有利に進める意図があると分析した。
大統領選で再選を狙うバイデン大統領はウクライナ支援継続を訴えるが、対立候補となるトランプ前大統領は支援に消極的で米国第一主義への回帰を懸念する声がある。
報告書によると、ロシア大統領府が工作を推進し、情報機関や企業を使った過去の事例よりも政権中枢が直接関与する傾向が強まっている。人工知能(AI)で精巧な動画作成を試みるより、偽のニュース映像に報道機関のロゴを付けるなど単純な加工で効果を上げてきた。
内部告発者やジャーナリストをかたって偽情報の動画をネットに投稿し、数日から数週間にわたり別のサイトで取り上げられると、米国民が情報源に注意を払わず拡散させ始めた事例も確認した。
●「誰が誰を救うのか」 海外メディアも嘲弄…英国「レタス首相」の新刊 4/18
英国史上最短期在任という不名誉記録を更新したリズ・トラス前首相がまた論議を呼んだ。自叙伝の性格を帯びた新刊『西側世界を救う時間は10年』を出したからだ。
トラス氏は現リシ・スナク首相の前任だ。外相などを務め、ロシアのプーチン大統領を訪ねて単独会談をするなど、勢いと実力を兼ね備えた政治家と見なされたが、首相に就任してからは力を全く発揮できなかった。結局、在任49日で終わった。当時、英国では「レタス首相」と呼ばれた。すぐに傷むレタスのように在任期間が短かったということだ。
トラス氏は今回の著書で環境問題などを取り上げながら「わが国、そして世界のために同僚保守政治家が生活を変えなければいけない」とし「私たちの政治が間違った道を歩んできたことを直視しよう」と書いている。続いて「私が敗れた戦闘から得た教訓」とし「世界の進歩勢力が強調する素晴らしく見えるアイデアが、世界を滅ぼし、経済と文化の自由を侵害している」と主張した。
これに対して進歩性向のガーディアンは「リズ・トラスが親切にも『世界を救う』というが、いったいリズ・トラスは誰が救うのあ」と15日(現地時間)と辛らつな評価を下した。経済紙フィナンシャルタイムズ(FT)さえもコラムで「トラスは知っていることが非常に多いため限度を越えた」と皮肉った。
しかし彼女の著書全体を蔑むのは公正でないという見方もある。BBCは同日、トラス氏へのインタビューを放送し、彼女の首相在任当時の悩みを伝えた。トラス氏は「私が首相をした当時(ロシア戦争、エリザベス2世の逝去など)仕事が多かった」とし「なぜ今、よりによって私が首相なのかと思ったこともあった」と伝えた。
トラス氏はエリザベス2世が会った英国の最後の首相でもある。女王は首相として自分に会いに来たトラス氏にこう助言したという。「あなたのペースを見つけて動揺せずしっかりと進めばよい」。しかしトラス氏はペースを見つける前に退くことになった。
トラス氏が今でも話題になっている理由の一つは、彼女がトランプ前米大統領を支持しているからだ。反トランプ情緒が強い人たちの間で反発が激しい理由だ。トラス氏がトランプを氏支持する理由は何か。
トラス氏はBBCに「トランプ氏は中国やロシアに対して強い(制御)政策を使うことができ、さらに攻撃的」とし「西側世界が誤った方向に進むのを正すことができる」と主張した。続いて「トランプ氏が米大統領だった当時、この世界はさらに安全なところだったと考える」とも話した。
●なぜ「欧米から経済制裁」のロシア経済がV字回復しているのか…中国にすべてを握られたプーチン政権の末路 4/18
経済をV字回復させた穏健な技術官僚
3月のロシア大統領選で圧勝したプーチン大統領は、5月7日の就任式で5期目に入る。大統領は就任後、新内閣を組閣するが、手堅い経済運営を進めるミシュスチン首相は続投し、小幅改造にとどまりそうだ。
ミシュスチン首相をめぐっては、中国が高く評価し、続投をロシア側に求めたとの情報がある。同首相はウクライナ侵攻には沈黙し、戦時下の経済政策に没頭してきた。
経済の立て直しに向け静かな国際環境を望む中国は、冒険主義のプーチン氏より、穏健なテクノクラート(技術官僚)であるミシュスチン首相の影響力拡大を望んでいる形跡がある。
習近平主席との会談はプーチン氏よりも多い
ミシュスチン首相は昨年、習近平国家主席と3回会談している。
昨年3月に訪露した習主席はロシア政府庁舎を訪れ、ミシュスチン首相と個別に会談。「中国は複雑な国際環境の中でも、健全な成長の勢いを維持したい」とし、中露の貿易経済関係拡大、エネルギー協力、サプライチェーンの安定を訴えた。
5月にはミシュスチン首相が中国を公式訪問。習主席は人民大会堂で会談し、中国の「一帯一路」とロシアが主導する「ユーラシア経済同盟」の相乗効果を高め、より開かれた地域市場と安定したグローバル協力を進めたいと述べた。
首相は12月にも訪中。習主席は会談で、「中国経済には強力な回復力、潜在力、余力がある。質の高い発展と対外開放を進め、ロシアなどにも機会を提供する」と語った。
中国側の発表では、習主席はウクライナ戦争には言及せず、必ず「産業とサプライチェーンの安全・安定」の重要性を強調したという。「複雑な国際環境」という表現で、暗にロシアのウクライナ侵攻が中国の経済発展の妨げになると苦言を呈した。習主席は昨年、プーチン大統領と2度会談したが、首相との会談回数のほうが多かった。
中国が格下のロシア政府人事に介入している
クレムリンの内部情報に詳しいとされる謎のブロガー、「SVR(対外情報庁)将軍」は今年4月4日、ロシアのSNS「テレグラム」で、「中国はロシア指導部に対し、ミシュスチン首相を続投させるよう強く要請した。中国指導部は、他の誰よりも現首相と仕事をすることを望んでいる」と伝えた。
3月20日の投稿では、「中国指導部はミシュスチン政府の舵取りを評価している。習近平はミシュスチンと個人的に連絡を取り、発言などを好感している」「中国は格下のロシア指導部に対し、決定を押し付けることができる」と指摘した。
1月23日には、「在ロシア中国大使館がロシア指導部の意思決定の中に入りつつある。中国はロシア指導部に対し、人事を事前に中国側に報告するか、調整するよう求めている」と書いた。
これが事実なら、政府人事介入により、プーチン氏が最も重視する国家主権が中国によって脅かされていることになる。
習、ミシュスチン両者の蜜月関係については、ウクライナのテレビ局「24TV」が昨年5月、「習近平指導部はミシュスチンを敬愛し、プーチンの後継者になることを望んでいる」としながら、「プーチンは側近を恐れ、誰も信用しない。後継者の登場を許さないだろう」と分析していた。
軍需産業をフル稼働、国内経済を好転させた
経済制裁下にあるロシア経済をV字回復させたミシュスチン首相とは、一体何者なのか。
ミシュスチン首相は1966年、モスクワ郊外に生まれ、大学院でシステム工学の学位を取得。長年、税務局に勤務し、徴税システムの効率化を進め、税務局長官時代は税収のデジタル化に貢献。無名ながら、2020年にプーチン大統領によって首相に抜擢された。
22年のウクライナ侵攻後は、戦時経済の運営委員会委員長も兼務し、軍需産業をフル稼働させ、中央銀行と連携してマクロ経済を好転させた。この間、ウクライナ戦争の是非について発言することもなく、国民生活の安定に努めた。
世論調査では、メドベージェフ前首相の支持率は後半、30%前後だったが、ミシュスチン首相の支持率は70%台と高い。
2月の製造業成長率は13.5%の増加
首相は4月3日、下院で年次経済報告を行い、「昨年の経済成長率は前年比3.6%増で、製造業は同7.5%増だった。今年2月の製造業成長率は13.5%と記録的な数字だ」「供給重視の経済が、インフラを改善し人材を育成する」などと実績を誇示した。
製造業の成長は、軍需産業への国家予算大規模投入が理由だが、「独立新聞」によれば、議員からは、「内閣の仕事は印象的」「ソ連時代にもなかった高成長」といった賞賛の声や、首相続投論が噴出したという。
「深刻な医師不足」「先端技術専門家の欠如」「コンサートホール襲撃テロの不手際」といった批判は、かき消された。
ロシア指導者を採点するSNS「後継者」も4月7日、「エリート層の確執が拡大する中、首相は他の利権グループとの対立を避け、システム全体を機能させ、均衡を保った」と評価し、ミシュスチン首相がポストにとどまる可能性は「100%に近い」と伝えた。
台頭は嫌だが、かといって更迭もできない
実は、「後継者」のサイトは昨年11月、「大統領選後にミシュスチン首相が退陣し、別のポストに異動する可能性が政権内で強まっている」とし、後継首相候補として、1フスヌリン副首相、2ソビャーニン・モスクワ市長、3マントゥロフ副首相兼産業貿易相――ら9人を挙げていた。
「SVR将軍」(3月20日)も、「実力者のパトルシェフ安保会議書記のビジョンには、首相続投は含まれていない」と伝えた。政権内最強硬派のパトルシェフ書記は、長男のドミトリー・パトルシェフ農相の大統領後継を切望し、その一歩として首相に就かせたい思惑があるといわれる。
首相は憲政上のナンバー2で、大統領が職務執行不能になった場合、大統領代行に就任し、3カ月後の大統領選挙を統括する。プーチン氏は71歳とロシア人男性としては高齢だけに、首相ポストの行方は、プーチン後を探る上で重要な意味合いを持つ。
後継者を養成しないことは長期政権の秘訣であり、プーチン氏はミシュスチン首相の台頭を快く思っていない可能性がある。とはいえ、国民や議会、それに中国の支持が高い首相の更迭はリスクを伴う。
中国側は「ミシュスチン政権」を期待している?
プーチン大統領は5期目の最初の外遊先として中国を公式訪問する予定で、ラブロフ外相が4月に訪中し、事前準備を行った。国際的に孤立するロシアは、中国との経済・外交協力を強化し、ウクライナ侵攻への直接、間接の支援を得たい意向だ。
しかし、ショルツ独首相の4月の訪中に続いて、習主席は5月末、フランスなど欧州連合(EU)諸国を訪問する計画で、ロシアを公然と擁護できない。不動産不況や低成長、失業増に直面する中国は、EUとの経済協力を最も必要としており、「戦狼外交」も各国の反発を受けて中止した。
中国の一部企業がロシアの軍需産業を支援する動きがあるが、バイデン米大統領は4月2日、習主席との電話協議で、中止を要求し、経済制裁を示唆した。
中国は米国の対露経済制裁に伴う二次制裁を警戒しており、中国の大手銀行はロシア金融機関との取引を一部停止した。日中が参画する北極圏の液化天然ガス(LNG)プロジェクトでも、日本と同様、参加凍結を検討中と伝えられる。
中国にとって、ロシアは不可欠な反米パートナーであり、独占進出する重要市場ながら、シロビキが主導するプーチン政権の保守強硬路線には内心、手を焼いているかにみえる。穏健で経済優先の「ミシュスチン政権」の登場を密かに期待するかもしれない。
●プーチン氏圧勝≠フ噓 ロシア大統領選、3割以上が得票水増しか 国民支持の虚構「史上最大の不正選挙」に 4/18
3月中旬に実施されたロシア大統領選で、中央選管が投票率の数字を引き上げ、ウラジーミル・プーチン大統領の得票数を2200万票以上も水増しする選挙結果の大幅な改竄(かいざん)を行った疑いが、ロシアの独立系の選挙監視団体やメディアの検証で明らかになった。プーチン氏が「圧勝」と発表された選挙は官民総ぐるみの「史上最大の不正」が行われ、同氏の得票約7627万票のうち3割以上が水増しされた可能性が強い。
国民支持の虚構
選挙結果の大幅改竄疑惑を抱えて通算5期目に入るプーチン独裁体制は正統性を欠き、ウクライナ侵略戦争を進めるプーチン氏への「国民の支持、団結」が示されたとの体制の主張は虚構に過ぎない。
中央選管によると、投票率は77.49%、プーチン氏は得票率87.28%で7627万7708票を獲得した。しかし、選挙監視団体ゴロスなどの検証では、実際の投票率は約55%でプーチン氏の得票率は40%超、約5000万票を獲得したに過ぎないという。
大統領選の投票結果の検証は、中央選管が公式サイトで公表した、各地区選管の時間ごとの開票作業報告に基づいて行われた。全国の投票所の約98%に当たる9万3000カ所のデータを検証した。
検証で使用されるのは物理学者で選挙データ分析専門家のセルゲイ・シピリキン氏が2000年代に開発した方法だ。開票作業の推移を分析すると、地区選管がある時点から人為的に投票率を引き上げ、政権側候補の得票を水増しした経緯が浮かび上がる。今回大統領選でも、投票率の不自然な上昇開始とともにプーチン氏の得票が伸びる同一現象が各地区選管の記録で確認された。
●米、新たな対中関税も 鉄鋼過剰生産に対抗 4/18
米通商代表部(USTR)のタイ代表は16日、米議会下院の公聴会で証言し、鉄鋼や太陽光パネルなどの過剰生産が問題視されている中国に対し、新たな関税を含む通商手段で対抗することも選択肢だと示唆した。
相手国の不公正貿易に対する一方的な制裁を認めた米通商法301条に基づく新たな措置や、従来の制裁関税を見直す用意があるとし「中国に立ち向かう」と述べた。
タイ氏は中国が非市場的な政策により「米国の産業や労働者に壊滅的な打撃を与えてきた」と非難。中国やロシアを念頭に「供給網で重大な影響力を持つ国々が、気に入らない政策に経済的威圧をかけていることを強く懸念している」と述べた。
●ロシアがウクライナ各地に大規模攻撃…北部の町では17人死亡 4/18
ウクライナ軍は17日、ロシアがウクライナ各地に大規模な攻撃などを行ったと明らかにしました。北部の町では、これまでに17人が死亡しています。
ウクライナ軍によりますと、ロシアは、この24時間でウクライナ各地に向け、2発のミサイル攻撃と64回の空爆を行い、地上からは、軍と人口密集地に向けて、多連装ロケット砲を75回発射したと発表しました。
ロシアと国境を接するチェルニヒウ州の州都では、地元市長が「市のほぼ中心部にロケット弾3発が撃ち込まれた」とSNSに投稿しました。
公開された救出活動の映像では、建物が大きく壊れていて、国家警察によると、これまでに17人が死亡、61人がケガをしました。
また、「がれきの下にはまだ人がいる」と被害者が増える可能性を示唆しました。
●ウクライナ北部にミサイル攻撃、14人死亡 4/18
ウクライナ北部チェルニヒウに17日、ロシア軍のミサイル攻撃があり、14人が死亡、61人が負傷した。同国のゼレンスキー大統領は防空システムが供与されていれば攻撃を防ぐことができたと指摘し、同盟国に改めて支援を訴えた。
当局によると、負傷者には子ども2人も含まれる。がれきの中に生存者がいないか、捜索が続けられている。
首都キーウの北に位置するチェルニヒウ郊外にミサイル3発が着弾し、複数の建物や病院、教育施設などが被害を受けた。CNNは被害を受けた建物の一つが8階建てのホテルだったことを確認した。
病院内をとらえた映像には煙が充満した廊下を職員が避難し、ベッドの周りにガラスが砕け散り、扉が蝶番(ちょうつがい)から外れている様子が映っている。別の映像では、遠くで煙が上がり、別のミサイルが建物を直撃する中、市民がバス停の横で身を守っている。
ゼレンスキー氏はここ数カ月、防衛に必要な防空システムを欠いていると西側諸国に警告し、支援を求めていた。同氏は「ウクライナが十分な防空システムを受け取り、ロシアのテロに立ち向かうという世界の決意が十分なものであったなら、このような事態は起こらなかった」と述べた。
15日に放送された米公共テレビPBSのとのインタビューでゼレンスキー氏は、先週の発電所へのロシアの空爆について、ウクライナはミサイルが枯渇し攻撃を阻止できない状況だったと明らかにした。この空爆ではキーウ州最大の発電所であるトリピルスカ火力発電所が完全に破壊された。
●上川外相がウクライナ外相と緊密な連携を確認「支援の結束揺るがず」 4/18
G7(先進7カ国)外相会合のためイタリアを訪問中の上川外相は18日、ウクライナのクレバ外相と会談した。
会談で、上川外相はロシアによる侵攻が続くウクライナの状況について、「厳しい状況が続いているが、ウクライナの国民の勇気と忍耐強さにあらためて心からの敬意を表したい」と述べたうえで、「岸田首相の訪米やG7外相会合においても、ウクライナは主要なテーマであり、今後もあらゆる機会でウクライナを支えるわれわれの結束は揺るがないことを示していく」と伝えた。
これに対し、クレバ外相は、G7の場を含めて日本との協力について議論したいと述べ、日本からのこれまでの支援に対し、あらためて深い感謝の意を示した。
またクレバ外相から、現在のウクライナの状況に関する説明があり、両者は引き続き緊密に連携していくことで一致した。
●イラン制裁、ウクライナ支援を協議 G7外相会合が開幕 4/18
日米欧など先進7カ国(G7)外相会合が17日、イタリア南部ナポリ沖合のカプリ島で3日間の日程で開幕した。日本からは上川陽子外相が出席。イスラエルを攻撃したイランへの制裁が最大の焦点で、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援も協議する。会合は最終日の19日に声明を採択して閉幕する見通しだ。
初日のワーキングディナーに続き、18日は中東情勢を討議。G7のうちキャメロン英外相とドイツのベーアボック外相は会合に先立ってイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相らに対してイランへの報復で中東地域の不安定化をさらに拡大させないようくぎを刺した。
ネタニヤフ氏は「イスラエルは自衛権を保持する」と応じたが、キャメロン氏は英スカイニューズ・テレビに、たとえイランに反撃するにしても「可能な限り紛争を拡大させない」ようにすべきだと強調。イスラエルに自制を促すには「G7が協調してイランに制裁を科す」ことが重要だと訴えた。
●ウクライナへ「揺るぎない支援」=G7財務相声明、為替合意を再確認―G20も開幕 4/18
先進7カ国(G7)は17日午後(日本時間18日午前)、当地で財務相・中央銀行総裁会議を開き、ロシアの軍事侵攻が続くウクライナに対し「揺るぎない支援を再確認する」との共同声明を発表した。ロシアに対する経済制裁でも各国が結束していく方針で一致した。
日本からは鈴木俊一財務相と日銀の植田和男総裁が出席。会議にはウクライナのマルチェンコ財務相も参加した。声明はロシアによる戦争を非難し「即時の終結を求める」と強調した。
円やウォンのほか幅広い新興・途上国通貨が、対ドルで大幅に下落している為替市場の動向については、「為替の過度な変動が経済に悪影響を与え得る」とした2017年5月のG7財務相・中銀総裁会議の声明を再確認した。
財務省の神田真人財務官はG7終了後、記者団に「日本の主張を踏まえてG7の政策対応に関するコミットメントが再確認された」と話した。
また、イランによるイスラエル攻撃で混迷が深まる中東情勢がエネルギー価格など世界経済に及ぼすリスクへの懸念を共有。声明では「イランの武器の獲得、生産、輸送能力を削減するために緊密に連携する」と表明した。
G7に続いて、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議も開幕した。議長国のブラジルはウクライナや中東の情勢など参加国の意見が割れるテーマは主要議題とせず、国際開発金融機関(MDBs)の機能強化や、気候変動対策の資金課題などの議論に注力したい考え。共同声明は出さない方向だ。
●EU諸国、ミサイル迎撃システムをウクライナに送るべき=ボレル氏 4/18
欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は18日、ウクライナの防空体制を強化するため、EU加盟国が自国のミサイル迎撃システムをウクライナに送るべきだと発言、ウクライナ支援を米国だけに頼るわけにはいかないと述べた。
ボレル氏はイタリアのカプリ島で開催されている主要7カ国(G7)外相会合で記者団に「われわれはパトリオットを保有している。ミサイル迎撃システムを保有している。万が一に備えて保管しているだけであり、兵舎から運び出して、激しい戦争が起きているウクライナに送るべきだ」と発言。
「そうしなければ、ウクライナの電力システムが破壊される。住宅、工場、オンラインでさまざまな目的に使用される電力がなければ、どの国も戦えない」と述べた。
また、米国でウクライナ支援法案の可決が「内政」問題により遅れているのは遺憾だとした上で「米国だけに頼ることはできない。われわれは(自らの)責任を果たし『米国がやってくれる』と言うのをやめなければならない」と述べた。
ドイツ政府は17日、EUと北大西洋条約機構(NATO)にウクライナの防空体制を強化するよう呼びかけた。この問題はG7外相会合の重要な議題になっている。
●中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿 4/18
ウクライナ戦争はロシアの敗北に終わる──中国のロシア専門家がそう予測し、大きな反響を呼んでいる。
北京大学の馮宇軍教授は、英誌エコノミストに寄せた論説で、ロシアの敗北を予測する一方、中ロ関係の今後についても冷ややかな見解を述べている。国際情勢に関する中ロの利害は乖離じつつある、というのだ。
中国政府は建前上、中立の立場を取りつつ、西側の対ロ制裁に反対し、国内のソーシャルメディアでロシア批判を禁止するなど、ロシアのウクライナ侵攻開始時から密かにロシアの肩を持ってきた。
馮の分析は中国政府がこれまで打ち出してきた公式見解とは異なるものだけに注目される。
馮は、「ロシアの最終的な敗北を不可避にする」主要な要因を4つ挙げている。
1つ目は「ウクライナの抵抗と国民の結束レベルが今に至るまで並外れたものである」こと。
2つ目は、ウクライナが「今なお広範な」国際的支援を得ていること(ただし馮も認めるように、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、西側の支援は不十分だと訴えている)。
真実を知らされないプーチン
3つ目の要因は「現代の戦闘の性質」だ。馮によれば、そこで問題になるのは、「産業力と、指揮、統制、通信及び情報システム」を合わせた力だ。
その意味でロシアの戦争マシンは不利だと、馮はみる。ロシアはソ連崩壊に伴う「劇的な産業の空洞化」から完全に立ち直っていないからだ。
4つ目のロシアの決定的な欠陥は、クレムリンの最高レベルの政策決定者たちが十分な情報を得ていないこと。馮によれば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と安全保障担当顧問らは「情報のコクーン(繭)」に囚われている。正確な情報が上がってこないため、失策に気づかず的確な軌道修正ができない。
その点ではウクライナ政府のほうが「より臨機応変に効果的」な対応ができると、馮は述べている。
本誌は中国とロシアの外務省に見解を求めたが、今のところ回答は得られていない。
馮はまた、ロシアにとって思いもよらぬダメージとなった動きとして、ウクライナ侵攻をきっかけにヨーロッパにおける対ロ包囲網が一段と強まったことに言及している。
ロシアの「特殊軍事作戦」は図らずもNATOの結束を強める結果となった。スウェーデンとフィンランドの加盟により、東ヨーロッパにおけるNATOの軍事的プレゼンスは拡大。加えて、NATO加盟国32カ国の大半が、ロシアの侵攻開始後に防衛予算の増額を決めた。
さらに、「鋭い観測筋」は中国の対ロ姿勢の変化にも気づいているはずだと、馮は述べている。中国の習近平国家主席は侵攻開始直前に訪中したプーチンに「限界のない」パートナーシップを約束したが、今は非同盟・中立の原則的な立場に後退しつつある、というのだ。
「中国の対ロ関係は固定的なものではない。当然ながら過去2年間に起きた出来事に影響されてきた」と、馮は述べている。
この論説が発表される前日、中国を訪れたロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が中国の王毅外相と会談。アメリカとその同盟国が構築している「ブロックに基づく」安全保障同盟に反対する考えを共有し、NATOの影響力に対抗できる「ユーラシア大陸における新たな安全保障の枠組み」について協議した。
二次制裁の効果も
中国は多額の対ロ貿易・投資を行い、孤立したロシア経済を支えてきたが、ロシアの戦闘能力の維持に直接的な貢献はしていないと主張している。だがAP通信が先週伝えたバイデン政権スタッフの話によれば、ロシアは戦車や軍用機、ミサイルの建造に必要な工作機械と電子機器の圧倒的多くを中国から輸入している。中国製のドローン(無人機)とその部品もウクライナの戦場で使われているという。
もっとも最近では、中国の銀行と企業は米政府が発動した二次制裁を回避するため、取引先を慎重に見極めているとも伝えられている。ロシアの防衛産業とつながりがある貿易業者との取引には歯止めが掛かるだろう。
●トランプ氏、ポーランド大統領と会談−ウクライナや中東巡り意見交換 4/18
トランプ前米大統領とポーランドのドゥダ大統領は17日夜、ニューヨークのトランプタワーで2時間半の会談を行い、ウクライナでの戦争や中東紛争について話し合った。
ドゥダ氏は記者団に対し、会談は「友好的」で「いい雰囲気」で行われたと語った。トランプ氏はドゥダ氏が「素晴らしい仕事をした」と述べ、2人は「一緒に素晴らしい4年間を過ごした」とし、「また一緒に仕事をしなければならないかもしれない」と付け加えた。
トランプ氏は今年の米大統領選で共和党の指名獲得を確実にしている。
ロシアがウクライナでの戦争を2022年2月に始めると、ドゥダ氏はウクライナのゼレンスキー大統領と親密な関係を築き、西側諸国に対し弾薬や防空手段の不足に苦しむウクライナを支援するよう求めた。
トランプ氏のオフィスが電子メールで配布した発表文によれば、北大西洋条約機構(NATO)加盟国は国防支出を国内総生産(GDP)の3%相当に引き上げるべきだとするドゥダ氏の提案についてもトランプ氏は議論した。
●中国とインドネシア、地域の平和と安定維持望む=王毅外相 4/18
中国の王毅外相は18日、インドネシアのルトノ外相とジャカルタで会談した後、両国は地域の平和と安定の維持を望んでいると述べた。
また、パレスチナ自治区ガザ問題に関わる全ての当事者に自制を求め、米国はガザの即時停戦を求める国連安保理決議を支持すべきと述べた。
王氏は「われわれは、ガザの戦闘で生じている人道危機に怒りを表し、国連安全保障決議は無条件かつ全面的に順守されなければならないとの見解で一致した」と述べた。
中東紛争の激化に対する懸念が高まる中、米国に対して「国際社会の声に耳を傾ける」よう促した。「国連安保理は集団的な安全保障機構であり、特定の国に利用されてはならない」と指摘した。
ルトノ氏は、両国は関係を強化していくとし、インドネシアはエネルギー移行、インフラ、下流産業において協力の強化と投資を検討していると述べた。
中国のインドネシアへの投資は昨年74億ドル超に達したとも述べた。
●米下院、20日にウクライナ支援法案を採決へ 4/18
ジョンソン米下院議長は17日、ウクライナ支援などの法案を20日に採決にかけると明らかにした。対外支援法案については米政府や外国から早期の採決を求める声が上がっていた一方で、一部の共和党員が強く反発していた。
ジョンソン氏は下院議員にあてたメモで、これまでの議論を踏まえてイスラエル、インド太平洋地域、ウクライナの地域別に分割した三つの法案の内容を間もなく公表し、20日午後に採決を取る予定だと説明した。
三つの法案の総額は約950億ドル(約14兆6600億円)で、上院が2月に可決した法案と同額。ただし、下院の法案ではウクライナへの経済援助の100億ドルは融資という形をとっている。この融資は戦争下にあるウクライナ政府の機能維持を目的に直接支払われる。
米国は融資するにあたって、ウクライナ政府と返済について合意する必要がある。情報筋によると、政権が債務を帳消しにすることも可能だという。
法案にはまた、パレスチナ自治区ガザ地区などを含む世界の紛争地域への人道支援にあてる90億ドル強も含まれる。
ジョンソン氏は15日に、自身が所属する共和党の保守強硬派の議員らの要求を受け、イスラエルとウクライナへの支援を盛り込んだ法案を分割して採決にかけると表明していた。だがこの件に詳しい情報筋によると、最終的には法案は一つのパッケージにまとめられて上院に送られる見込みという。
対外支援法案をめぐっては、共和党の一部の議員が国境問題への対処を優先させるべきなどと主張して採決に反対する姿勢を見せていた。
ジョンソン氏が20日に採決を取る方針を示したことについて、同党の一部の議員からはすでに反発の声が上がっている。
●G7「過度な為替変動は悪影響」と再確認 4/18
先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁は17日(日本時間18日)、共同声明を発表し「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得る」とする従来の合意事項を再確認した。
●世界経済のリスク議論=為替、中東情勢など―G20、G7財務相会議開幕へ 4/18
20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が17日夜(日本時間18日午前)、米ワシントンで開幕する。
イランのイスラエル攻撃による中東情勢の一段の悪化を受けたエネルギー価格の上昇や、各国通貨に対するドル高による途上国経済への悪影響など、世界経済が直面する課題について意見を交わす見通しだ。各国が成長へのリスクについて認識を共有し、協調できるかが問われる。
G20に先立ち、先進7カ国(G7)の財務相・中銀総裁会議も17日午後(日本時間18日早朝)に当地で開かれる見通し。一連の会議には、日本から鈴木俊一財務相と日銀の植田和男総裁が出席する。
G20の開幕を前に、国際通貨基金(IMF)は16日発表した世界経済見通しで、米経済の好調などを背景に2024年の成長率予測を上方修正した。一方、パレスチナ自治区ガザでのイスラム組織ハマスとイスラエルの紛争拡大、紅海での攻撃の長期化、ウクライナで続く戦争をリスクに列挙。これらが食料やエネルギー、輸送などの価格高騰を招くと警鐘を鳴らした。
米国経済は、堅調な雇用情勢などを背景に底堅く推移しており、インフレの鈍化ペースが遅れている。このため米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測は後退。日本の円をはじめ多くの国の自国通貨が対ドルで下落している。新興国での物価上昇や成長減速などドル高の悪影響が懸念されており、鈴木財務相は今回参加する一連の会議で、為替の問題について「話題にはなると思う」との認識を示した。
G20の議長国ブラジルは、各国の見解の差が大きいウクライナや中東の危機を主要議題とせず、国際開発金融機関(MDBs)の機能強化や、気候変動対策の資金課題などの議論に注力したい考えだ。共同声明の取りまとめは見送る。
G7議長国イタリアは、ウクライナ支援や対ロシア制裁などでの連携を確認し、共同声明の取りまとめを目指す考え。イエレン米財務長官はイランへの追加制裁に前向きな姿勢を示しており、一連の会議でどこまで議論されるかも注目される。
●G7外相、中東・ウクライナ情勢議論 イスラエル報復警戒が影落とす 4/18
主要7カ国(G7)外相会合が17日、イタリア南部カプリ島で3日間の日程で開幕した。イスラエルがイランに報復するとの警戒感が会合に影を落としている。
議長国イタリアはパレスチナ自治区ガザでの停戦と中東情勢の緊張緩和を働きかけているが、イスラエルは欧米の自制要求もむなしく、イランによる前週末のミサイルと無人機(ドローン)の攻撃に報復する構えを見せている。
米国は16日、イランによるイスラエルへの攻撃を巡り数日内に新たな対イラン制裁を講じる方針を明らかにし、同盟国にも追随を求めた。
タヤーニ伊外相はこの問題をG7で協議すると述べた。
欧州連合(EU)も17日の首脳会議後、対イラン制裁を拡大する方針を示した。
ロシアのウクライナ侵攻も主要議題として取り上げる見通しで、ウクライナのクレバ外相と北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長が18日の協議に加わる予定。
ドイツは17日、G7外相がウクライナの防空体制強化について話し合うと明らかにした。
西側諸国が制裁で凍結した約3000億ドルのロシア資産をウクライナ支援に活用する方法も主要議題となる見通し。
●“確認できたロシア兵の死者5万人超” 英BBCなどの独自調査 4/18
ウクライナへの侵攻後、確認できたロシア兵の死者の数が5万人を超えたとイギリスの公共放送BBCが独自調査の結果として伝えました。
イギリスの公共放送BBCは、ロシアの独立系メディア「メディアゾナ」と独自の共同調査を行った結果、おととし2月に始まったウクライナ侵攻以降、ロシア兵の死者の数が5万人を超えたことを確認したと伝えました。
このうち侵攻2年目は、1年目を上回る2万7300人以上が死亡したとし、ロシアが兵士の犠牲をいとわずに攻撃し、占領地を広げていると指摘しています。
調査は、新たに作られた墓で戦死者の名前を確認したほか、報告書や報道、SNSなどの公開情報をもとに行ったとしています。
ロシア軍の死者数についてロシア国防省はおととし9月の時点で5937人と発表しましたが、それ以降、更新していません。
一方、ウクライナ軍の死者についてゼレンスキー大統領はことし2月、3万1000人に上ったと明らかにしています。
こうした中、ウクライナ北部チェルニヒウでは17日、市の中心部にロシア軍のミサイル攻撃があり、ウクライナ当局によりますとこれまでに17人が死亡し、60人がけがをしました。
この攻撃についてゼレンスキー大統領は「ウクライナが十分な防空システムを受け取ることができ、世界がロシアのテロに立ち向かう決意があればこうしたことは起きなかった」として、欧米各国に防空システムを強化するための支援を呼びかけました。
NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は17日、記者会見し、ゼレンスキー大統領も参加して19日に会議を開き、ウクライナの防空能力の強化に向けた支援などについて協議すると発表しました。
●EU首脳会議 イランへの制裁強化の方針で一致
EU=ヨーロッパ連合は首脳会議を開き、イスラエルに大規模攻撃を行ったイランに対し制裁を強化する方針で一致しました。
一方、会合後に発表した声明では「すべての当事者に対し、最大限の自制を求める」としています。
EU ミシェル大統領「制裁追加はわれわれの明確なシグナル」
EUは17日、首脳会議をブリュッセルで開き、イランへの制裁を強化する方針で一致しました。
EUのミシェル大統領は会合後、記者団に対し、イランの無人機やミサイルの関連企業が制裁の対象になるとしたうえで「制裁の追加はわれわれが送りたい明確なシグナルだ」と主張しました。
そして「民間人を守るためにあらゆることを行いたい」と述べました。
一方、会合後に発表された声明では「すべての当事者が最大限の自制を行い、地域の緊張を高めるような行動を慎むよう強く求める」としています。
バイデン大統領 イスラエル支援予算案の早期可決求める
アメリカのバイデン大統領は17日、有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿し「イラン政府は世界で唯一のユダヤ国家であるイスラエルを地図上から消し去ろうとしている」とイランを非難しました。
そのうえで「イランがイスラエルへの攻撃を大幅に強めることに成功すれば、アメリカも巻き込まれる可能性がある」と危機感を示し、アメリカ議会に対しイスラエルへの軍事支援に関わる予算案を早期に可決するよう求めました。
独と英 イスラエル首相に自制求めるも強硬姿勢崩さず
イランによる大規模な攻撃を受けたことに対しイスラエル政府は連日、閣議を開いてイランへの対抗措置の検討を続けています。
こうした中で、17日、ドイツのベアボック外相とイギリスのキャメロン外相がイスラエルを訪れて、ネタニヤフ首相と会談しました。
このうちドイツのベアボック外相は会談後の記者会見でイランを強く非難し、さらなる制裁を科す考えを示したうえで「地域が完全に予測できない状況に徐々に陥っていくことはあってはならない。いまは皆が慎重に責任を持って行動すべきだ」と述べ、イランだけでなくイスラエルに対しても自制を求めました。
これに対して、イスラエルのネタニヤフ首相は会談後に開かれた閣議で「提案や助言は感謝するが、自分たちのことは自分たちで決断する。自衛のために必要なことは何でも行う」と述べるなど強硬な姿勢を崩していません。
イスラエル北部ではヒズボラとの戦闘も激化
一方で、イスラエル北部では隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの戦闘も激化していて、イスラエル軍は16日、ヒズボラの幹部を空爆で殺害したと発表しました。
これに対して17日にはヒズボラがイスラエル北部に報復攻撃を行い、イスラエル軍は14人がけがをしたと発表しました。
ガザ地区での戦闘休止の見通しが立たない中、各地で戦闘が拡大する懸念が広がっています。 

 

●ウクライナ、追加支援なければ今年末までに敗北も 米CIA長官が警告 4/19
米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は18日、米国による追加の軍事支援がなければ、ウクライナはロシアとの戦争に今年末までに「敗北する」可能性があると警告した。
ウクライナ情勢に関してバイデン政権が発したコメントとしては、これまでで最も厳しい内容。米連邦議会は、先延ばしになっているウクライナ向け支援パッケージを承認するかどうか議論している。
ほんの1カ月前、バーンズ氏は上院情報委員会での証言で、追加支援の承認がなければウクライナは著しく形勢が不利になる公算が大きいと警鐘を鳴らしていた。
ところが18日の発言では、ウクライナが全面的な降伏に追い込まれかねないと警告。「極めて現実的なリスクとして、ウクライナは2024年末までに戦場で敗北する可能性がある。あるいは政治的解決の観点から、プーチン(・ロシア大統領)が命令を下す側に立つ恐れもある」と述べた。
「敗北」の具体的な定義について、バーンズ氏は18日の時点で明かさなかった。西側の諜報(ちょうほう)に詳しいある情報筋がCNNに語ったところによれば、支援パッケージが承認されなくても、当局者らはロシアがウクライナ全土を制圧する公算は小さいとみている。
それでもロシアは追加の領土を相当程度取り戻し、その後事実上の停戦に持ち込む可能性がある。14年にクリミア半島を併合した際と同様の措置で、実現すればこれも一つの「敗北」と見なされることになる。
●CIA長官「ウクライナ、米国の支援なければ今年ロシアに敗戦も」 4/19
米情報当局が、ロシアの侵攻戦争に対抗するウクライナが米国の軍事支援を受けることができなければ今年末に敗戦する可能性がある、と診断した。
米政治専門サイトのポリティコによると、ウィリアム・バーンズ米中央情報局(CIA)長官は18日(現地時間)、米テキサス州ジョージ・W・ブッシュ大統領センターで開かれた行事で議員らにウクライナ安保支援法案の通過を促し、このような分析を公開した。
バーンズ長官は「ウクライナが軍事支援を受ける場合、実質的、心理的な増強効果とともに自国を全体的に防御し、時間が味方というプーチン(ロシア大統領)の傲慢な見方をつぶすことができるだろう」と話した。
ウクライナ支援法案が否決される場合については「状況ははるかに悪い」とし「ウクライナが2024年末に戦場で敗れたり、少なくともプーチンが(ウクライナ戦争の)政治的解決条件を強制する立場を確保する可能性がある」と述べた。
ロシアは2022年2月にウクライナ侵攻を始めた後、西側のウクライナ軍事支援のため苦戦したが、戦列再整備に成功して占領地拡大のための春季大攻勢を準備している。
バーンズ長官のこの日の発言は、共和党所属のマイク・ジョンソン米下院議長がウクライナに対する610億ドル(約9兆4000億円)規模の支援案を表決すると明らかにした中で出てきた。
米国のウクライナ軍事支援は民主党と共和党の政争の中で昨年から中断されてきた。安保専門家らは、プーチン大統領は今年11月の米大統領選挙で孤立主義性向のトランプ前大統領が勝利してウクライナから事実上手を引くことを望んでいる、と観測している。
ウクライナ支援案は民主党が掌握した上院を今年2月に通過したが、共和党が多数党の下院に阻まれている。ウクライナは昨年下半期以降、米国と同盟国の軍事支援が減り、弾薬など武器不足に直面している。
●キリル1世のロシア正教会は「テロ組織」 4/19
イスラム過激テロ組織「イスラム国」(IS)やパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム過激組織「ハマス」はテロ組織だが、それではロシアのプーチン大統領のウクライナ戦争を聖戦と呼び、プーチン氏の指導を無条件に支持するキリル1世が主導するロシア正教会モスクワ総主教庁はテログループかといえば、意見が分かれるところだろう。バルト3国の一国、エストニアのラウリ・レーネメッツ内相はモスクワに本拠を置くロシア正教会モスクワ総主教庁を「テロ組織」に指定したい考えを表明し、エストニアのロシア正教会の反発を受けるなど、物議を醸している。
レーネメッツ内相は「ロシア正教会モスクワ総主教庁の言動を見ると、イスラム過激派テロ組織と同様にテロ組織と認定せざるを得ない。他の選択肢がない」とエストニア公共放送(ERR)で述べている。同内相は、バルト3国の正教会コミュニティーについて言及し、「これはコミュニティーに影響を与えず、教会が閉鎖されることを意味するものではないが、モスクワとの関係が断たれることを意味する」と明確に述べている。同内相によると、「モスクワ総主教庁は現在、基本的に世界のテロ活動を指揮しているプーチン大統領に従属していることを理解する必要がある」というのだ。
ちなみに、ロシア正教会の最高指導者、モスクワ総主教のキリル1世は西側情報機関によると、KGB(ソ連国家保安委員会)出身者だ。キリル1世はロシアのプーチン大統領を支持し、ロシア軍のウクライナ侵攻をこれまで一貫して弁護し、「ウクライナに対するロシアの戦争は西洋の悪に対する善の形而上学的闘争だ」と強調してきた。ウクライナ戦争は「善」と「悪」の価値観の戦いだから、敗北は許されない。キリル1世はプーチン氏の主導のもと、西側社会の退廃文化を壊滅させなければならないと説明してきた。神の愛を説く聖職者が民間人や子供たちを殺害する戦争犯罪を繰り返すプーチン大統領のウクライナ戦争を全面的に支持するのは、キリル1世のアイデンティティーは聖職者ではなく、KGBだということを端的に証明しているわけだ。ロシア正教会は旧ソ連共産党政権時代から政権と癒着してきた。
欧州連合(EU)の欧州委員会ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は2022年5月4日、対ロシア制裁の第6弾目の内容を表明したが、その中で個人を対象とした制裁リストの中にロシア正教のモスクワ総主教キリル1世が入っていたことが明らかになって、大きな衝撃が広がった。
レーネメッツ氏によると、エストニアにはモスクワに直接影響を受けていないさまざまなコミュニティーがあるが、モスクワへの従属はエストニアの安全保障に脅威を与える。同氏によると、バルト3国にあるモスクワ総主教庁の管轄下のエストニア正教会には10万人を超える信者がいる。イスラム教のテロ組織は西側世界の価値観に対して聖戦を呼び掛けているが、ロシア正教会のキリル1世も同じように反西側スタンスを維持し、「堕落する西側世界を打倒しなければならない」と常に主張してきた。モスクワ正教会総主教庁はイスラム・テロリストと何ら変わらないというわけだ。
ERRの報道によると、モスクワ総主教庁下にあるエストニア正教会(MPEOC)の代表者は記者会見で、「MPEOCはモスクワ総主教庁に直接従属していない。ウクライナ戦争へのロシア正教会の発言にも同意していない」と強調する一方、「ロシア正教会から完全に離脱する意向はない」と述べている。
ロシア軍のウクライナ侵攻、それを支持するロシア正教会モスクワ総主教府に抗議して、ロシア正教会離れが進んでいる。キリスト教東方正教会のウクライナ正教会は2022年5月27日、ロシア正教会のモスクワ総主教キリル1世の戦争擁護の言動に抗議して、ロシア正教会の傘下から離脱した。
ウクライナ正教会は本来、ソ連共産党政権時代からロシア正教会の管轄下にあった。同国にはウクライナ正教会と少数派の独立正教会があったが、ペトロ・ポロシェンコ前大統領(在任2014〜19年)の強い支持もあって、2018年12月、ウクライナ正教会がロシア正教会から離脱し、独立した。その後、ウクライナ正教会と独立正教会が統合して現在の「ウクライナ正教会」(OKU)が誕生した。ウクライナにはモスクワ総主教のキリル1世を支持してきたウクライナ正教会(UOK)が存在してきたが、モスクワ総主教区から独立を表明したわけだ。
UOKはモスクワ総主教区傘下から離脱した動機として、「人を殺してはならないという教えを無視し、ウクライナ戦争を支援するモスクワ総主教キリル1世の下にいることはできない」と説明している。その結果、ロシア正教会は332年間管轄してきたウクライナ正教会を完全に失い、世界の正教会での影響力は低下、モスクワ総主教にとって大きな痛手となった。
●ロシアの“ゾンビ戦車”が戦場へ 質よりも量を優先、戦車供給から見るプーチン・ロシアの今 4/19
「ガールズ&パンツァー」、通称「ガルパン」という日本のアニメ作品がある。ウィキペデイアの説明を引用させていただくと、「戦車同士の模擬戦が伝統的な女性向けの武道として競技化され、戦車道と呼ばれて華道や茶道と並ぶ大和撫子の嗜みとして認知されている世界を舞台に、戦車戦の全国大会で優勝を目指す女子高生たちの奮闘を描くオリジナルアニメ。兵器である戦車を女子高生たちが運用するという、男性のアニメファンにアピールするようなミリタリーと萌え要素を併せ持ちつつも、死者の出ない戦闘とスポーツものの約束事を踏襲した物語が描かれ、戦争と死といった背景から切り離された戦車戦を描いている」。
個人的には、この作品をごく断片的にしか観たことがないのだが、戦車同士が実戦さながらに砲撃を交わしながら、不思議と死傷者は出ない設定になっているようである。
思えば、我が国においては、戦乱の時代が去り、太平の世となった江戸時代以降に、戦闘の技術や精神を純化・様式化させる形で、武道が確立されていった。それと同じように、ガルパンも戦争のない平和な世界を前提として、殺傷を伴わない武道としての戦車競技を描いているのだろうと、推察する。
逆に言えば、今日のように、戦車による破壊と殺戮が毎日のようにニュースで流れる時代状況だったら、ガルパンのような作品は生まれていたかどうか。いや、実際には戦争はいろんな形でずっと続いてきたわけだが、少なくとも、戦車同士が正面からぶつかり合って命をやり取りするような古典的な戦争は過去のものというイメージが、しばらく前まではあったように思う。だからこそ、ガルパンの世界観は成立していたのではないか。
ロシア・ウクライナ戦争には、二面性があると思う。確かに、ドローン戦など、「新しい戦争」の要素も重要になっている。その一方で、「古い戦争」、すなわち戦場で野戦軍同士がぶつかり合うという古典的な戦争の様相も、非常に色濃い。
プーチン政権のロシアが仕掛けたのは、戦車道とは対極の、戦車非道、戦車邪道と呼ぶべき所業である。それだけ、プーチンはとんでもない時代錯誤を始めたということだろう。
ただ、国際社会から2万件近い経済制裁を科せられているロシアが、いつまでもこんな無茶を続けられるものだろうか。本稿では、戦車の供給体制という観点から、考察を試みてみたい。
ウクライナをルーツに持つロシアの戦車工場
かつて社会主義の超大国ソ連で、3大戦車工場と呼ばれたのが、ロシア・ウラル地方のスヴェルドロフスク州ニジニタギル市に所在するウラル鉄道車両工場(以下では単に「ウラル工場」と略記)、ロシア・シベリアに位置するオムスクトランスマッシュ工場、そしてウクライナのハルキウにあるマルィシェフ記念工場だった。このうち、今日でも戦車の新規生産を続けているのは、ウラル工場だけである。
ウラル工場は、鉄道車両工場と銘打っているだけあって、1930年代に元々は純然たる鉄道貨車の生産企業として発足した。しかし、第二次世界大戦中の1941年にナチス・ドイツがソ連への侵攻を開始すると、ソ連政府はヨーロッパ地域から多くの企業を内陸奥深くに疎開させ、その一環としてウクライナのハルキウにあった前出のマルィシェフ記念工場が当地に疎開してきて、それによりウラル工場での戦車生産が始まったのだった。
ハルキウから機械設備が運び込まれただけでなく、技術者・労働者も家族とともに移住し、戦後も多くがこの地に留まったという。そうした来歴を持つ工場が、現在はロシア唯一の戦車工場として、ウクライナ侵略に加担しているのだから、歴史の皮肉としか言いようがない。
ウラル工場は、以前からプーチン政権との繋がりが深い企業だった。同工場で技師としてたたき上げたホルマンスキフ氏が、2012年大統領選で下からのプーチン支持運動を組織すると、プーチン大統領は再選後の12年5月に、同氏をウラル連邦管区大統領全権代表として大抜擢した。
そして、22年2月にロシアがウクライナ侵攻を開始すると、政権幹部がしばしばウラル工場に出向き、戦車の大増産を求めて檄を飛ばした。今年2月には、大統領選に向けた行脚の一環として、プーチン大統領も直々にウラル工場を視察している。
ちなみに、16年の時点では、ウラル工場の生産に占める民需・軍需の割合は、2対8であるとされていた。同社としては、民需生産を拡大し、30年までに民需・軍需を半々にしたいという意向であった。しかし、ウクライナ侵攻で戦車増産の大号令が国からかかり、現状ではますます圧倒的に軍需に傾斜していることだろう。
新車か旧車か、それが問題だ
22年2月24日にプーチン体制のロシアがウクライナへの全面軍事侵攻を開始して以降、ロシアの軍需産業の稼働状況につき、さまざまな憶測が語られてきた。当初は、国際的な制裁で、半導体をはじめとする重要部品を入手できず、開店休業状態に陥っているといった見方が優勢だった。
しかし、ここ半年ほどは、ロシアの政権幹部が軍需の増産に関し手応えを口にする場面が増えてきた。たとえば、昨年12月にロシア国防省で恒例の拡大幹部評議会が開催された際に、ショイグ国防相が軍需産業の成果を列挙している。
国防相によれば、22年2月の開戦後に各品目の生産は、戦車:5.6倍、歩兵戦闘車:3.6倍、装甲兵員輸送車:3.5倍、ドローン:16.8倍、弾薬:17.5倍に拡大したという。また、23年に軍に納入された兵器の数は、航空機・ヘリコプター:237機、ミサイルシステム:86基、近代的な多目的潜水艦:4隻、軍用艦:8隻、戦車:1530両、歩兵戦闘車・装甲兵員輸送車:2518両に上ったとのことであった。ただし、ここで注意すべきは、ショイグ国防相が戦車に関しては、「新規の、そして更新された戦車が1530両」という微妙な言い回しをしていることである。
情報筋によると、ウラル工場は22年2月の侵攻開始直後に、国防省から400両の戦車の発注を受け、可及的速やかに納入するよう求められたとされる。しかし、同社の新規生産能力はせいぜい年間200〜250両止まりである。こうした事情から、ロシアは大量にストックされている旧式戦車を修復・更新して、戦場に送り出すという作業を強化することになった。
ウラル工場は、新規生産と並行して、旧戦車のリストア(修復)も手掛けている。それ以外に再生作業に従事している代表的な工場としては、前出のオムスクトランスマッシュ、サンクトペテルブルグ近郊に所在する第61装甲戦闘車修理工場、極東のザバイカル地方にある第103装甲戦闘車修理工場が挙げられる。
これらの工場は、それぞれ年間200両ほどの旧戦車のリストアをこなすことができるようだ。また、22年9月には、ロストフ州カメンスクシャフチンスキーとモスクワ州ラーメンスコエに新たに装甲戦闘車修理工場を建設する計画も明らかになった。
ちなみに、オムスクトランスマッシュは、10年にウラル工場の傘下に入っている。また、第61、103をはじめとする7つの装甲戦闘車修理工場も、プーチン大統領の決定により13年にウラル工場系列に入ったということである。
これは後述の最新鋭戦車アルマータT-14がロシアとしては画期的な長いライフサイクルの利用を想定していたことから、そのサービス体制を充実させるための措置だったと言われている。もっとも、ウクライナ侵攻が始まると、実際には装甲戦闘車修理工場は、新型戦車アルマータの整備という当初の想定とは異なり、廃戦車の復元を生業とすることになったという逆説がある。
ゾンビ戦車の供給源
そして、ロシアには何箇所か、退役した戦車が解体されるのを待つ戦車の墓場のような場所があり、旧戦車の供給源となる。中でも最大と言われる極東のブリヤート共和国ウランウデ郊外のヴァグジャノヴォ保管場には元々、3840両の旧戦車が保管されていた。それが、衛星画像の解析によると、23年5月には2270両にまで減少しており、この時点までに1570両ほどが再利用のために運び出されたとみられている。
ちなみに、ウクライナ侵攻以前は、ロシアは保管場に置かれていた旧式戦車を定期的に解体処理していた。14年から22年までに、35件の解体処理契約が締結された。
ところが、契約数は17年に減少し始める。国防省の担当者は当時、計画されていた1万両ではなく、4000両のみが解体されることを明らかにし、残りの戦車は「国際情勢の変化次第で」役に立つかもしれないと含みを持たせた。そして22年、国防省は戦車解体の契約締結を全面的に停止した。
上述のとおり、ショイグ国防相は誇らしげに、23年に1530両の戦車が納入されたと語った。しかし、そのうち新車であるT-90M「プロルィフ」、T-72B3Mは、どんなに頑張っても300両くらいであろう。残りは、廃戦車が保管場から運び出され、ゾンビのように甦って、現役復帰したものと考えられる。
廃戦車を再生するにしても、新たに据え付けるコンポーネントの調達は必須であり、国際的な制裁網に直面するロシアにとっては試練となる。『日本経済新聞』の調査報道により、19年にロシアがミャンマーに輸出した戦車用の照準望遠鏡6775台とカメラ200台を、ウラル工場が22年12月に2400万ドルで買い戻したことが明らかになった。こうした事例を含め、おそらくロシアはあの手この手で、コンポーネントや部品をかき集めているのであろう。
現場からの証言によると、戦場に引っ張り出されてきたアンティーク戦車には不具合が目立ち、役に立たないことも多いという。しかし、今のロシアは質よりも量を重視している。また、旧式の個体は主力戦車というよりも、歩兵戦闘車的に使われることが多いようだ。
廃戦車が大量にストックされているロシアとはいえ、年式の比較的新しいもの、状態の良いものには限りがある。1970年代のT-72はまだいいが、ロシア軍は22年末には60年代のT-62をウクライナ戦線に投入し始め、さらに23年夏以降は50年代のT-55すらも戦場に引っ張り出しているという。
ロシア軍はウクライナでの戦闘で、23年末までに2500両以上の戦車を失ったと言われ、その後も損失は続いている。ゾンビ戦車の投入作戦により、「量」の面ではある程度補充できても、「質」の面では劣化が進んで行く公算が大きい。
新型戦車アルマータに見る内情
ロシアという国の特徴として、国家主導で高度な製品を開発・設計することはできても、それを安定した品質と許容可能なコストで量産することが苦手という傾向がある。
戦車もその例に漏れない。最新鋭戦車T-14アルマータが、15年の戦勝記念日軍事パレードでお披露目され、20年までに2300両を生産するという構想が示された。しかし、その生産は軌道に乗っていない。ちなみに、15年の軍事パレードのリハーサルでアルマータがエンジントラブルで停止してしまい、他の戦車に牽引され撤収する羽目になって、関係者が顔を青くしたのは、有名な話だ。
ウラル工場では、アルマータを組み立てる最新の作業場を建設するはずだったものの、まったく進捗していない。購入した設備や高価な輸入機械は、何年も木箱の中で死蔵されている。
アルマータがより重く大型のモデルにもかかわらず、それに対応した設備はない。結局、アルマータはウラル工場の既存の建屋で、T-90やT-72と同じラインで、ごく少量が試験的に組み立てられただけのようである。現時点で、アルマータはウクライナ戦線には一切投入されていない。
ウクライナの「ディフェンス・エクスプレス」というメディアによると、23年には29両のアルマータが生産されるはずであったが、結果はゼロであったという。24年には同じく29両の生産を計画しているが、ウラル工場がT-90MやT-72B3Mの量産を求められている中で、実現するかは不透明だ。
ロシアでは、「ロステク」という国営コングロマリットが、ウラル工場を含む軍需工場を束ねている。そのロステクのチェメゾフ総裁は先日、「言うまでもなくアルマータは、既存の戦車よりもはるかに性能が高い。だが、価格が高すぎるので、ロシア軍が使うことはあるまい。お馴染みのT-90を買う方が簡単である」と、何やらサジを投げたような発言をした。
かくして、ロシア軍需産業の粋を集めた最新鋭戦車アルマータは、実戦用ではなく、軍事パレード用の出し物に留まっているわけである。幸い(というか何と言うか)、16年以降の軍事パレードではエンジントラブルは起きていないようである。
●ウクライナの領土割譲では割に合わない…プーチンが粘り勝ちしてもロシアが喜べない地政学的理由とは 4/19
プーチン大統領の人気は揺るぎないものに
ロシアがウクライナに軍事侵攻してから2年が経過した。前線の戦況は予断を許さないが、大局的には行く末が見えてきた。ロシアとウクライナ、両方が「敗戦国」になる未来だ。
敗戦と言ったが、現在、ロシアのプーチン大統領は我が世の春を謳歌している。3月15〜17日に行われたロシア大統領選挙で、プーチン氏は7627万票を獲得。得票率は87.28%で、圧倒的な支持を集めて再選を果たした。
従来、ロシアの大統領は一任期が4年間で、務めることができるのは連続2期までと規定されていた。現に、ボリス・エリツィン氏の後を継いで2000年に大統領に就任したプーチン氏は、規定に従って08年に首相へ退いた。
しかし、プーチン氏は首相在任中に、傀儡のメドベージェフ前大統領を使って次期大統領以降の一任期を6年に変更した。そして、12年に大統領に再登板したプーチン氏は、20年に憲法を改正し、大統領を務めることができるのを通算2期までとする一方、現職者である自分は対象外としたのだ。
憲法改正の結果、プーチン氏は24年の大統領選挙の出馬が可能となり、先に述べたような大勝利を収めた。今回の任期は30年までで、次の大統領選挙にも出馬が可能であることから、もはや終身大統領である。
憲法さえも自由に改正するプーチン氏にとっては、選挙も思いのままだった。反プーチンの急先鋒だったアレクセイ・ナワリヌイ氏を獄中死に導いたうえに、政権に批判的な候補予定者の立候補を認めなかった。「圧倒的勝利」が力ずくで演出されたことは明らかだ。
ただ、下駄を履かせたからといって、本当はプーチン大統領に人気がないと考えるのは間違いだ。
ロシアは前身のソビエト連邦の時代から貧しかった。ゴルバチョフ氏の改革でソビエト連邦が解体したあと、エリツィン氏が大統領に就任。ロシアの市場経済への移行を目指したが、インフレの加速が止まらず、ルーブル紙幣の価値が紙くず同然になった。
インフレは、年金額が変わらない高齢者の暮らしを直撃する。その窮地を救ったのが、エリツィン氏に引き上げられて年金改革をしたプーチン氏だった。多くのロシア国民にとって、今のプーチン大統領は自分たちを貧困から救い出してくれた恩人なのである。
ただ、国内問題を解決したものの、西側諸国との経済格差は依然として大きかった。さらに子分のような存在だった中国が急成長して、ロシアの先を行くようになった。
そこで、00年に大統領に就任したプーチン氏は、ある決心をする。ロシア帝国繁栄の象徴であるピョートル大帝の「帽子」をかぶり、国民国家の枠組みを破壊して、版図を広げようとしたのだ。そのひとつが、14年のクリミア併合で、現在のウクライナ侵攻はその延長だ。プーチン大統領は、西側諸国に対する経済的な劣等感の裏返しでおかしくなったのだ。
これに対して、西側諸国はウクライナを軍事的に支援し、ロシアに対しては経済制裁を行った。経済制裁の結果、ロシア国民の生活が苦しくなれば、プーチン大統領の失脚もありえた。
しかし、実際はどうだったか。アメリカ企業の「スターバックス」がロシアから撤退したが、その店舗はほぼ同じロゴデザインで「スターズ・コーヒー」と名前を変え、普通にコーヒーを売っている。また、トヨタや日産、ルノーなど外資の自動車メーカーが相次いで工場を撤退させたが、自動車はかわりに中国が売ってくれる。
いまのロシアは、経済全体も悪くない。輸出の柱だった原油と食料は、インドを筆頭にグローバルサウスが継続して買ってくれる。また、中央銀行が優秀で、侵攻直後に暴落したルーブルはすぐに持ち直していた。GDPで見る限り、西側の経済制裁は効果がなかったという評価が妥当であり、ロシアの粘り勝ちのシナリオが見えてきた。
3月31日、あらたに15万人をロシア軍に徴兵する大統領令にプーチン大統領が署名した。今後、ロシア軍に戦死者が増えて徴兵が常態化すると、国内の不満が溜まっていく可能性は残る。しかし、現時点では国民の生命や財産がある程度守られている。国民の支持は引き続き高く、プーチン大統領は余裕綽々で選挙結果を聞いたに違いない。
国内でも海外でも評価を下げているゼレンスキー大統領
国内で盤石のプーチン大統領に対して、ウクライナのゼレンスキー大統領は急速に支持を失っている。
ゼレンスキー氏が大統領選挙に初当選したのは19年。ウクライナ大統領の任期は5年で、平時なら今年の3月に大統領選挙が行われるはずだった。
しかし、ゼレンスキー大統領は国内での求心力が低く、今選挙をすれば再選が危うい。結局、政府は戒厳令を理由に選挙を延期した。対戦相手のロシアが大統領選挙をしたのだから、やってやれないことはなかったはずだ。
国民からの支持を失っているのは、戦況の厳しさも影響している。ウクライナ軍がドローン攻撃で勝利したというニュースが盛んに流れてくるが、あれは散発的な勝利をおおげさに伝える「大本営発表」で、第二次大戦末期の日本でもよく見られた光景だ。敗色が濃いことを知ってか、徴兵逃れも横行。侵攻以降、徴兵対象の男性2万人以上が国外に脱出し、若者は徴兵免除を目的に続々と大学に入学している。
ゼレンスキー氏は海外からの支持も低下している。実は、ウクライナは汚職大国だ。第2代大統領のレオニード・クチマ氏をはじめ、ウクライナの歴代の大統領や首相は、国民のことよりも自身の保身と蓄財に執心していた。喜劇役者出身のゼレンスキー氏が大統領になれたのは、ドラマ「国民の僕」と実際の選挙の両方で反汚職を掲げたからであり、汚職の一掃には海外からも期待が高まった。ところが、ゼレンスキー政権が誕生しても、役人の汚職体質はまったく払拭されていない。
西側諸国はロシアの暴走を止めるため、これまで積極的にウクライナを支援してきた。しかし、お金や武器、物資をつぎ込んでも、汚職が横行していては、正しく使われているのかよくわからない。大統領になって4年も経つのに汚職体質を正せないのは指導力不足。ウクライナに支援を続けるとしても、ゼレンスキー大統領ではダメというのが西側諸国の本音である。
国内でも海外でも評価を下げているゼレンスキー大統領は、もう後がない。選挙せざるをえなくなって負けるか、米大統領に返り咲く可能性があるトランプ氏に「クビだ」と通告されるのか。いずれにしても、ゼレンスキー劇場は近いうちに終わるだろう。
ゼレンスキー大統領が辞任し、今後両国の停戦が合意するとしたら、当然ロシア側に譲歩した内容になる。あるいは、混乱に乗じてロシアがウクライナの首都キーウまで侵攻するシナリオも考えられる。いずれにしても、打たれ強かったロシアの粘り勝ちである。
ただ、粘り勝ちといっても、短期的・局地的な勝利にすぎない。長い目で見れば、ロシアはすでに負けている。
勝者なき戦争の悲劇的な末路とは
一番の敗北は、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟である。両国はロシアのウクライナ侵攻直後の22年5月にNATOへ加盟を申請。フィンランドは23年4月に加盟を承認され、スウェーデンも24年3月に続いた。
サンクトペテルブルク出身のプーチン大統領にとって、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟は痛恨の極みだ。サンクトペテルブルクはバルト海にそそぐネヴァ川の河口の街だ。バルト海はロシアにとって世界につながる玄関口で、軍事的にも特別な意味を持つ。しかし、最新鋭の潜水艦を持つスウェーデン、そしてよりロシアに近いフィンランドがNATOに加わったことで、この玄関口が閉ざされた。内陸でドネツク・ルガンスク両州を獲れても、これでは割に合わない。
また、西側諸国に経済制裁されたことで、ロシア経済の中国依存が進んだ。それ自体は直接的に害があるものではないが、かつての子分に依存するのは気分がいいものではない。今回の侵攻で、西側先進国への劣等感は多少解消されたかもしれないが、かわりに中国へのコンプレックスが膨らんでいる。兵器と兵員の不足を補うために北朝鮮にまで“お世話になる”有り様だ。
ロシアはウクライナとの戦いが終わったときに、プラス5点の成果を得るかもしれないが、その他のところでマイナス100点だ。差し引きすれば、敗戦である。戦争は例外なく悲惨なものだが、両方の当事者が敗戦国となる今回は、輪をかけて益がなかった。
領土を奪うという19世紀的発想は、崩壊後のソビエト連邦にとっては意味がない。奪った領土にくっついてくる人々の年金債務のほうが、新領主にとっては遙かに重い。領土を奪って破壊した都市を再建すると、年金・福祉などの債務が増える、というのが21世紀の現実なのだ。プーチンはそのことを自国での経験からよく知っているはずなのに、奪いたいウクライナを破壊している。正気の沙汰とは思えない。
日本は西側諸国の一員として、今後もウクライナ支援を続けるだろう。戦争の末路がわかってきた以上、物資の支援で戦火を拡大させずに、難民の受け入れなどお金をあまり使わない方向で存在感を発揮してほしいものだ。
●ウクライナ G7前に防空システムへの支援強化求める 4/19
ロシアによる攻撃でウクライナ各地のインフラ施設などに被害が相次ぐなか、ウクライナのクレバ外相は18日、G7=主要7か国の外相会合への出席を前に、欧米などに対し防空システムへの支援の強化を求めました。
イタリアで開かれているG7外相会合は18日、ウクライナのクレバ外相やNATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長も出席してウクライナ情勢について協議が行われました。
これを前にクレバ外相はメディアに対し「私がここに来たのは、ウクライナに防空システムやミサイルを供与するよう話すためだ。G7にはそれを行う能力がある」と述べ、欧米などに対し防空システムの支援の強化を求めました。
ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は先月中旬以降、発電所などのインフラ施設を標的にした攻撃を激化させ、各地で深刻な被害が出ています。
ゼレンスキー大統領は、キーウ州にある最大の火力発電所が今月11日、ミサイルの攻撃を受けた際に防空システムのミサイルが枯渇していて撃墜できなかったと明らかにするなど防空能力のぜい弱性を重ねて強調し、欧米側に支援を訴えています。
一方ロシアは18日、占拠を続けるウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所の訓練施設にウクライナ軍の無人機による攻撃があったと主張しました。
施設に被害はなくけが人もいないとしています。
●ロシア、5─8年でNATO攻撃の準備整う公算=ドイツ軍トップ 4/19
ドイツ軍トップのカルステン・ブロイアー連邦軍総監は、ロシアがウクライナ戦争の影響を受けた軍を再建すれば、5─8年以内に北大西洋条約機構(NATO)加盟国を攻撃する軍事的準備が整う可能性があると述べた。
ブロイアー氏は訪問先のポーランドで17日遅く、記者団に対し「攻撃されるとは言っていないが、可能性はある」とした上で、「5─8年後に脅威がある」と指摘。「ロシアは大量の軍需物資を生産しているが、その全てをウクライナの前線に投入しているわけではない。このため、われわれは2029年までに準備を整えなければならない」と述べた。
NATO加盟国32カ国のうち、ノルウェー、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランドの6カ国がロシアと国境を接している。
ロシアがNATO加盟国を攻撃する可能性があるとの西側諸国の示唆をロシアは常に否定。プーチン大統領は先月、NATO加盟国を攻撃する意図はないと改めて表明している。
●欧州はウクライナにもっと資金投入すべき トランプ氏 4/19
ドナルド・トランプ(Donald Trump)前米大統領は18日、欧州はウクライナにもっと資金を投入すべきだと訴えた。
トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「誰もが同意するように、ウクライナが存続して強くあることは、われわれよりも欧州にとってはるかに重要なはずだ。もちろんわれわれにとっても重要だ! 欧州を動かせ!」と投稿。
「なぜ米国はウクライナ戦争に、欧州よりも多い1000億ドル(約15兆4000億円)以上を投じているのか。われわれは海で隔てられているのに!」「なぜ欧州は、(支援を)切実に必要としている国を助けるために、米国が投じた額に匹敵する資金を出せないのか」と続けた。
米下院は20日、610億ドル(約9兆4000億円)規模の対ウクライナ追加軍事支援を含む緊急予算案を採決する。11月の大統領選でジョー・バイデン(Joe Biden)大統領と対決するトランプ氏は現在公職に就いていないが、支援承認を遅らせている共和党議員の多くを厳しく統制している。
●中国、ロシアに軍民両用製品供給の兆候=欧州委高官 4/19
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長は18日、中国が兵器製造に使用される可能性のある部品をロシアに供給している兆候が見られるとし、ウクライナ戦争に反対する西側の決意が弱まれば、中国が出荷を増やす懸念があると表明した。
ワシントン訪問中に米議員らと会談し、米国のウクライナ支援を承認することの重要性を強調すると述べた。
複数の米政府高官は先週、中国が工作機械や超小型電子機器、ドローン、巡航ミサイルなどの軍事兵器を大量供給することで、ロシアの対ウクライナ軍事行動を支援していると語った。
ドムブロフスキス氏は米外交問題評議会のイベントで、EUは米国と協力して対ロシア制裁逃れの取り締まりに取り組んでいると語った。詳細には言及しなかった。
「中国は状況をどのようにしてうまく利用するか、様子をうかがっているが、残念ながら最近ロシアに部品やあらゆる機器を供給している兆候も見られる」と述べた。
実際の武器ではなく軍民両用の製品だが、この動きは西側がウクライナ支援への決意を強める重要性を示すと指摘。「ロシアの侵略阻止や対ロシア制裁、ウクライナ支援で西側が必要な決意を示さなければ、非常に危険で悪い結果をもたらす」と語った。
●イスラエルがイランを攻撃か、中部イスファハンなどで爆発 4/19
イスラエルが19日早朝、イランを攻撃したと、BBCがアメリカで提携するCBSニュースが、アメリカ当局の話として報じた。
米NBCとCNNは、複数の匿名アメリカ政府筋の話として、イスラエルは今回のイランへの攻撃について、事前にアメリカ政府に通知していたと報じた。「(イスラエルによる)その反応を我々は支持しなかった」と、CNNは米政府筋の話として伝えている。
CBSニュースによると、アメリカの政府高官2人が、イスラエルのミサイルがイランを攻撃したことを認めた。
米政府高官2人は、攻撃はイスラエルからだとメディアに語ったが、イスラエルは今のところ自分たちによるものとは認めていない。
しかしその後、イランの宇宙機関関係者がミサイル攻撃はなかったと、ソーシャルメディアで直接否定した。
ホセイン・ダリリアン 氏は、「中部イスファハンやその他の地域に対する国境外からの空からの攻撃はない」と説明。「イスラエルは クアッドコプター(無人機)を飛ばそうという屈辱的な試みで失敗しただけだ。クアッドコプターも撃墜された 」と述べた。
また、ロイター通信はイラン高官の話として、「イランはイスラエルに対して直ちに報復する計画はない」と報じた。
この高官は匿名を条件に、「事件に関する国外の情報はまだ確認されていない。我々は外部からの攻撃は受けておらず、攻撃というより侵入の方向に議論が傾いている」と語った。
ロイター通信は、イラン国営テレビの報道内容として、現地時間午前3時ごろに、イスファハンの上空で3機のドローン(無人機)が観測され、同国の防空システムが作動したと伝えている。防空システムがドローンをいずれも破壊したという。
これに先立ち、イランのファルス通信は、イスファハンの国際空港付近で「爆発音」が聞こえたと報じていた。
イスファハン州には、大規模な空軍基地、主要なミサイル製造施設、いくつかの核施設がある。
イラン国営放送IRIBは、「信頼できる情報筋」の話として、イスファハンの核施設は「完全に無事」だと伝えている。
また、イランの最高国家安全保障会議(SSC)の報道部が「緊急会議が開かれたという外国メディアの報道を否定した」と報じた。
国際原子力機関(IAEA)も、イランの核施設に被害がないことを確認した。
IAEAのラファエル・グロッシ事務局長はソーシャルメディアで、核施設は軍事衝突の標的になってはならないと強調し、「すべての人に極度なまでの自制」を促した。
アメリカのマーク・キミット元国務次官補は、BBCニュースの取材で、イスファハンの重要性と、イスラエルがイスファハンを攻撃場所に選んだ理由について次のように語った。
「イスファハンは、訓練、研究、そしてイランの核能力の開発という点で、イランの核開発計画の中心地だ」
「イスラエルが最も恐れているのは、現時点でミサイルが発射され続けることではなく、明日の核開発能力なので、そのためイスファハンを狙った可能性がある」
イランの国営放送IRIBは、攻撃の報道を大きく扱っていない。
IRIBはメッセージアプリ「テレグラム」に、記者の一人がイスファハン市中心部のビルの屋上に立っている動画を投稿。
「街は安全で、人々は普通に生活している」、「数時間前、上空で音が聞こえた。我々が知る限り、複数の小型無人機がイスファハンの上空を飛行中に狙われたようだ」と、記者は報じている。
記者はまた、「これまでのところ、州当局からは何の情報も得られていない。一部の報道は、イスファハンの核施設が狙われたと言っていたが、我々が調べたところ、この情報は誤りで、狙われた場所はない」とも述べている。
国営メディアはまた、イスファハン州の陸軍高官の話として、被害の報告はないと伝えた。
このほか、イスファハン、シラク、テヘランを含むイランの主要都市上空で、民間航空機の飛行が一時停止したと、ロイター通信が伝えた。
また、中東を拠点とする航空会社エミレーツ航空とフライ・ドバイの航空機が早朝、説明もなくイラン西部の上空で迂回(うかい)を始めたという報道もある。
イランの国営通信IRNAはその後、テヘランのイマーム・ホメイニ国際空港で運航が再開されたと報じた。
イランの革命防衛隊は今月1日、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館の領事部がイスラエルによって攻撃され、将官7人が死亡したと発表した。
イランは14日、イスラエルに向けてドローンやミサイルを発射。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はその後、イランに報復攻撃を行うと表明しており、中東地域でのエスカレーションが懸念されている。
19日の報道から数時間前、イランのホセイン・アミール=アブドラヒアン外相は米CNNの取材に対して、イスラエルによるいかなる報復に対しても、自国の対応は「即時かつ最大レベル」になると警告していた。
同外相は今週初めにも、14日に行ったイスラエルへの攻撃は、「正当な防衛権の行使」に相当すると述べていた。
イスラエルの反撃はきわめて限定的の様子――フランク・ガードナー安全保障担当編集委員
イスラエルは先週末、イランによるドローンとミサイルの「大群」攻撃に何らかの形で対応することを明らかにしていたが、どうやらそれが実現したようだ。
これが本当にイスラエルの対応の始まりで終わりだとするなら、その規模と範囲は非常に限定的なものになりそうだ。
今朝のイスファハンは平常に見える。
イスラエルの西側の同盟国、特にアメリカやイギリスは、イランのミサイル攻撃に対して大規模な対応を取らないよう、イスラエル政府に働きかけ続けてきた。
イランによる攻撃は劇的なエスカレーションではあったが、そもそも4月1日にイスラエルがダマスカスのイラン領事館を空爆し、2人の将軍を含む13人を殺害した前代未聞の事態に対する報復だった。
今後の展開は、イスラエルの攻撃がこれで終わるのか、そしてイランが反撃に転じるのか、この2点にかかっている。
●トランプ氏「ウクライナの存立、欧州にはるかに重要だが米国にも重要」 4/19
米国のトランプ前大統領がウクライナ支援に対して融和的な発言をし、注目を集めている。大統領選挙で中道層の票を意識して発言の程度を調節しているという見方が出ている。
トランプ氏は18日(現地時間)、SNS「トゥルース・ソーシャル」で「誰もが同意するようにウクライナの生存と力(軍事力)は我々より欧州にはるかに重要でなければいけない」としながらも「しかし我々にも重要だ」とコメントした。
そして「米国はウクライナ戦争に1000億ドル(約15兆円)以上を投入している」とし「欧州は助けを必要とする国のために米国と同じ金額を支援することができないのか」と主張した。また「私が大統領だったならこの戦争は始まらなかったはず」と従来の主張を繰り返した。
全般的に欧州主要国に対してウクライナを支援するよう圧力を加えるトーンだったが、米国のウクライナ支援自体に反対しなかったという点で異例という評価が出てきた。依然としてトランプ氏の支持層の間で「ウクライナにこれ以上支援する必要はない」という主張が強い状況で出てきた発言だったからだ。
これに対し「トランプ氏が大統領選の結果を決定する競合州の中道層を引き込むためにこうした融和的なジェスチャーを見せている」という分析が出ている。バイデン大統領が中道層獲得争いでトランプ氏に不利な中絶イシューなどを争点化すると予想される中、極端な発言を自制する戦略を駆使するということだ。
トランプ氏は先月19日、英放送GBニュースのインタビューでも「NATO(北大西洋条約機構)の欧州加盟国が『公正な負担』をすれば米国はNATOに100%留まる」と述べるなど、過去と異なるニュアンスで外交的な発言を続けている。これは「欧州が十分な費用を支払わず米国の軍事力に依存する」という「安保ただ乗り論」と脈絡は同じだが、「NATO脱退」を強調していた以前とは異なる姿だ。一部では「トランプ氏がプーチン大統領と関係を誇示し、むしろ『あまりにも親ロ的』という批判を受けたため、態勢を変えるのでは」という声も出ている。
一方、トランプ氏のアキレス腱となっている刑事裁判(不倫口止め疑惑)は3日目のこの日、陪審員12人の選任が終わったと、NBCなどが伝えた。当初、陪審員の選任に2週以上かかると予想されたが、早期に終わったことで、22日から本格的に裁判に入るとみられる。
●ロシアが占拠するウクライナ南部ザポロジエ原発にドローン攻撃...ロシアは「軍事的自制を求める」と批判 4/19
国際原子力機関(IAEA)は18日、ロシアが占拠するウクライナ南部ザポロジエ原子力発電所の訓練施設に無人機(ドローン)攻撃の試みがあったと、ロシア側の職員から報告を受けたと明らかにした。
同様の試みが約2週間前にあったばかり。ロシア側の職員はウクライナの関与を主張。無人機は訓練施設の上空で破壊されたという。また、施設に被害はなく、負傷者も出ていないとした。
IAEAのグロッシ事務局長も負傷者や施設の損傷はないとし、原発に常駐するIAEA職員が、ロシア側の職員が攻撃を報告したのと同時に爆発音を聞いたと声明で述べた。
「誰が関与したにせよ、重大な原子力事故という現実的な脅威を回避するために最大限の軍事的自制を繰り返し求める国際社会の声を無視する」攻撃だと批判した。
同氏によると、IAEA職員は標的になったとされる訓練施設への立ち入りを安全上の理由で拒否された。
●ウクライナ首相、米・緊急予算案可決なら“数週間以内に軍事支援” 4/19
ウクライナのシュミハリ首相は18日、アメリカ議会でウクライナ支援の緊急予算案が可決されれば、数週間以内に軍事支援が開始されるとの見通しを示しました。
アメリカ議会下院のジョンソン議長は、ウクライナを支援するおよそ9兆円の緊急予算案を20日に採決することを目指しています。こうした中、アメリカを訪問しているウクライナのシュミハリ首相が18日会見し、アメリカ政府当局者が「法案が可決されれば数週間以内に軍事支援が開始される」と保証したと明らかにしました。
また、経済分野の支援は融資の形をとることになることについて、歓迎する意向を示しました。
シュミハリ首相「どのような形であれ、米政府の財政支援に感謝している。わが国の予算を支えるものだ」
また、シュミハリ首相は日本からの支援について「G7=主要7か国で存在感を示し、ウクライナを資金面で支えている」と述べ、謝意を示しました。
●ウクライナ中部にロシアミサイル攻撃、8人死亡 重要インフラ被害 4/19
ウクライナ中部ドニエプロペトロフスク州でロシアによる大規模なミサイル攻撃があり、少なくとも8人が死亡、25人以上が負傷し、重要インフラが被害を受けた。地元当局が19日午前、明らかにした。
ゼレンスキー大統領は州都ドニプロ(ドニエプル)の鉄道駅や住宅が被害を受けたとし、防空強化が必要だと主張。「ロシアはテロ行為に対して責任を負わなければならない。全てのミサイル、全てのシャヘド(無人機)を撃ち落とされなければならない」とし「世界はこれを請け合うことができる。われわれのパートナーは必要な能力を持っている」と述べた。
国営鉄道会社は、ロシアが今回の攻撃で意図的に同社のインフラを標的にし従業員を負傷させたと表明。ドニプロの駅を閉鎖し、同市を通過する列車の運行区間を変更したことを明らかにした。
●G7外相会合 ウクライナめぐり討議 上川外相“支援を継続” 4/19
イタリアで開かれているG7=主要7か国の外相会合はウクライナ情勢をめぐって討議を行いました。上川外務大臣は、ロシアに対する厳しい制裁とウクライナへの支援を継続していく方針を強調しました。
イタリア南部のカプリ島で開かれているG7の外相会合は、日本時間の18日夜遅くから19日未明にかけてウクライナ情勢をテーマにした討議を行い、ウクライナのクレバ外相やNATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長も出席しました。
上川外務大臣は「『きょうのウクライナはあすの東アジアかもしれない』という問題意識で取り組んでおり、ウクライナとともにあるという日本の立場は揺るがない」と述べ、ロシアに対する厳しい制裁とウクライナへの支援を継続していく方針を強調しました。
会合の中でクレバ外相が、ロシア軍によるインフラ施設への攻撃で深刻な被害が出ているとして防空システムへの支援の強化を求めたのに対し、上川大臣はNATOの基金に3700万ドル、日本円でおよそ57億円を拠出しドローン攻撃を検知するシステムを供与したことを紹介しました。
そして会合では、G7として公正で永続的な平和の実現に向けて引き続き取り組むことで一致しました。
●中東情勢悪化、世界経済に大きなリスク=独財務相 4/19
ドイツのリントナー財務相は18日、中東情勢の悪化は世界経済にとって大きなリスクになると述べた。
リントナー氏は、ワシントンでナーゲル独連銀総裁と行ったパネル討論会で「中東情勢の悪化は、特に貿易の流れに影響することから、世界経済の発展を脅かす長大な危険をはらんでいる」と述べた。
主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、イランによるイスラエル攻撃を非難した。 
●ロシア軍の戦略爆撃機「ツポレフ22M3」を初撃墜 ウクライナ軍が発表 4/19
ウクライナ空軍のオレシチュク司令官は19日、同国軍の防空部隊がロシア軍の戦略爆撃機「ツポレフ22M3」を撃墜したと発表した。オレシチュク氏によると、同機の撃墜はロシアによるウクライナ全面侵攻後で初めて。オレシチュク氏はウクライナ各地の都市に対するミサイル攻撃の一翼を、同機が担っていたと指摘した。
ウクライナ国防省情報総局高官のユソフ氏は、撃墜場所がウクライナ国境から約300キロ離れた露領内だったと明らかにした。ウクライナメディアが伝えた。
一方、タス通信によると、露国防省は同日、ウクライナ国境に近い南部スタブロポリ地方で、戦闘任務を完了して基地に帰投中だったツポレフ22M3が「技術的故障」により墜落したと発表した。少なくとも乗員1人の死亡が確認されたという。
●習近平主席が画策する「ポスト・プーチン大統領」に2つの好都合 4/19
中国の習近平国家主席が、北京市でロシアのラブロフ外相と会談を行ったのは4月9日のこと。両国は国交樹立から今年で75年。会談の中では両国間の密接な交流継続と安定した前向きな関係の発展について、両国間での同意があったと伝えられている。
全国紙国際部記者が語る。
「ラブロフ外相は同日、中国外交トップの王毅外相とも会談を行い、その後の共同会見で、『同盟を組まず、対抗せず、第三者に向けず、という原則を堅持する』『協力の中で広く行き渡る利益と、ウィンウィンを追求する』などといった『5つの終始一貫』が必要だとする王氏に対し、ラブロフ氏も、ロシア外交の優先事項は対中関係を全面的に確かなものにすることだとして、プーチン大統領の再選により両国関係の連続性が保証されたと述べています。ただ、中国情報筋によれば現在、習主席がロシアで最も信頼しているのは、プーチン氏ではなくミシュスチン首相のほうで、その証拠に両者は昨年3回も会談している。いかに隣国の首相とはいえ、習主席が同じ相手と1年に3回も会談することは異例のこと。そんなことから、ミシュスチン氏の“ポスト・プーチン説”が再浮上しているんです」
3月のロシア大統領選で圧勝したプーチン氏は、5月7日の就任式を経て5期目に入ることになるが、ロシアメディアによればミシュスチン首相の続投はほぼ確実で、内閣改造も小幅なものになる予定と伝えている。
習主席がミシュスチン首相を高く評価する理由の一つが、同氏の戦時下における経済立て直しの手腕だ。同氏は無名ながら20年にプーチン氏によって首相に抜擢され、22年のウクライナ侵攻後は戦時経済の運営委員会委員長も兼務。軍需産業と銀行とをうまくリンクさせながらマクロ経済好転に大いに貢献し、ロシア下院の年次経済報告によれば、今年2月の製造業成長率を13.5%アップさせるなど、制裁下にあるロシア経済をV字回復させた立役者でもある。
「しかも、ウクライナ侵攻に対して一切沈黙してきたことも、表向き仲裁する立場をとっている中国としては具合がいい。ゆえに中国側は今後のミシュスチン政権に大きな期待を寄せているとも伝えられています」(同)
近年の世論調査でも、ミシュスチン首相の支持率は70%台と抜群に高く、ロシアでは首相が憲政上ナンバー2になるため、仮に大統領が体調不良などで職務執行不能になった場合、大統領代行に就任し、3カ月後には大統領選挙を統括することになる。
「つまり、プーチン氏にもしものことがあれば、ミシュスチン氏が大統領になる、という可能性もあるということ。ただし、長期での独裁経験を目指すプーチン氏は後継者選びに極めて消極的とされ、意に沿わなければ鶴の一声で即更迭、ということもあり得ますからね。正直、こればかりは蓋を開けるまでわからないといったところ」(同)
昨年にはウクライナのテレビ局「24TV」も、「習近平指導部はミシュスチンを敬愛し、プーチンの後継者になることを望んでいるが、側近すら信用しないプーチンは後継者の登場を許さないだろう」と報じ、話題になったこともあるが…。出る杭は打たれる。「習主席お気に入りの首相」を独裁者がどう操っていくのかを、中国側は注視している。

 

●EU大統領、ウクライナ支援めぐりトランプ氏に反論「事実は正確に」 4/20
ドナルド・トランプ前米大統領が欧州はウクライナにもっと資金を投入すべきだと主張したのを受け、欧州連合(EU)のシャルル・ミシェル欧州理事会常任議長(EU大統領)は19日、「事実を正確に把握してほしい」と反論した。
ミシェル氏はX(旧ツイッター)でトランプ氏に対し、「(ロシア大統領のウラジーミル・)プーチンに屈してはならない。われわれは屈していない」と呼び掛け、「事実を正確に把握してほしい。数字が物語っている。EUの対ウクライナ拠出額は1430億ユーロ(1500億ドル、約23兆5000億円)だ」と訴えた。
米下院での610億ドル(約9兆4000億円)規模の対ウクライナ追加軍事支援を含む緊急予算案の採決を20日に控える中、トランプ氏は18日、ウクライナ支援に欧州を「動かせ」と呼び掛けた。
トランプ氏は、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「誰もが同意するように、ウクライナが存続して強くあることは、われわれよりも欧州にとってはるかに重要なはずだ。もちろんわれわれにとっても重要だ! 欧州を動かせ!」と投稿。
「なぜ米国はウクライナ戦争に、欧州よりも多い1000億ドル(約15兆4000億円)以上を投じているのか。われわれは海で隔てられているのに!」「なぜ欧州は、(支援を)切実に必要としている国を助けるために、米国が投じた額に匹敵する資金を出せないのか」と続けた。
11月の大統領選でジョー・バイデン大統領と対決するトランプ氏は現在公職に就いていないが、共和党議員の多くを厳しく統制。共和党がメキシコ国境での不法移民対策を優先するべきだと主張してウクライナへの追加支援承認を遅らせているため、同国軍は弾薬と防衛兵器が不足し、ロシア軍に苦戦を強いられている。
ウクライナへの支援を追跡するキール世界経済研究所(IfW)によれば、年初時点でEUと加盟国が拠出を約束している1441億ユーロ(約23兆7000億円)は、支援額で最多。続いて米国の677億ユーロ(約11兆1000億円)となっている。ただし、EUは向こう数年間にわたって提供するとしており、これまでに拠出されたのは772億ユーロ(約12兆7000億円)にとどまる。
●「プーチン圧勝」や「ほぼトラ」は何を意味する? 崩れ始めた「文明が進歩に向かっているという前提」 4/20
今年11月にアメリカの大統領選挙が行われます。トランプ前大統領が再選するかどうかに注目が集まっており、「もしトラ(もしかしたらトランプ)」から「ほぼトラ(ほぼトランプ)」と言われるような状況になっているとされます。
建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、こうした状況について「これまで信じていた何ものかが崩れていくような感覚があるのではないか」といいます。若山氏が独自の視点で語ります。
世界が崩れはじめた
いろいろと不正があったと報道されているが、プーチン氏はロシアの大統領選挙で圧勝した。ウクライナ戦線においてもロシアの攻勢が伝えられ、長期的な戦闘力でもロシアがウクライナを圧倒しているようだ。
一方、アメリカの大統領選挙においては、共和党の予備選でトランプ氏が勝利を続け「もしトラ」から「ほぼトラ」がささやかれている。そして世界のあちこちの国で、極右政党が躍進している。また米軍は1987年の中距離核戦力(INF)全廃条約の締結以来初めての中距離ミサイルをアジア太平洋地域に配備するという。
何かが崩れているような気がする。
僕だけではないだろう。世界中の多くの人が、これまで信じていた何ものかが崩れていくような感覚があるのではないか。
何を信じていたのか。もちろん宗教や民族や社会体制によって価値観が異なることは認めるにしても、われわれがなんとなく信じていた普遍的な価値、すなわち平和主義、民主主義、人道主義、個人の自由、法の支配、科学的真実の力といった、人類に共通する価値が存在し、紆余曲折はあるにせよ、結局歴史はその方向に向かう、というぼんやりした楽観があったのではないか。冷戦時代のソビエトも、社会主義がもつ歴史的普遍性の力(唯物弁証法)をもって、旧来の資本主義体制と戦おうとしていたのだ。
しかし今、その普遍的価値観が崩れている。
僕はもともと「科学技術は時とともに進歩しているが、社会制度はどうなのだろう、複雑化はしても進歩はしていないのではないか」という疑問をもっていた。それでも一般には、社会制度も含めて人類の文明は進歩に向かっているという前提があったような気がする。この「普遍的価値観の崩れ」が意味するものは、人類の文明の暗転ではないか。ひょっとしてわれわれは「闇の時代」に向かっているかもしれない。
人類は時とともに都市化するがそこには波がある
「人類は不可逆的に加速度的に都市化する」というのが、建築様式の研究からくる僕の基本認識である。
不可逆的とはいえ、常態的に直線的に都市化が進むわけではない。都市には発展する時代と衰退する時代がある。都市化には大中小の波があるのだ。前にも書いたことだが、都市化の小波は景気循環的な、10〜30年ほどの波である。都市化の中波は政治転換的な、80〜100年ほどの波である。都市化の大波は文明史的な、500〜1000年ほどの波である。もちろんこの数字は目安であって周期というようなものではない。
今われわれは、バブル崩壊後の経済停滞(これは単なる景気循環ではなく、日本の社会変化による中波というべきだろう)と近年の円安株高の経済的「小波」の上にあり、また戦後民主主義という政治体制の「中波」の上に、さらに16世紀以降の西欧文明と19世紀以降の近代文明の「大波」の上にある。そして文明史的な波はロングスパンなので、これまで僕は、この波の変化を論じる機会はこないだろうと考えていた。しかし最近、異常気象の問題や世界の政治体制の右傾化などによって、現代が、都市化の大波が崩れる、文明の暗転期にあるように思えてきたのだ。
世界システムと産業革命の普遍性
16世紀、西欧の特に海洋国が経済の「世界システム」(アメリカの経済史家イマニュエル・ウォーラーステインの言葉)をつくりだして以来、人類の歴史とその思想は「普遍性」に向かってきた。
マゼランやコロンブスによる「外洋航海」は、人間(特に西欧人)が生きる場に「世界」という空間的普遍性の概念を生み出した。ルターやカルバンによる「宗教改革」は、教会に独占されていた神の国を個人の内面に発見しようとして、精神的普遍性に向かった。ガリレイやニュートンによる「科学革命」は、事実と真理の認識基準を論理性と実証性に求めようとして、知的普遍性を志向した。
19世紀に進行した「産業革命」は、世界の人々を、量産される普遍的な商品(=製品)の力で圧倒した。その「普遍的商品力」を最大限発揮させるシステムが「資本主義」であり、それが拡大主義の国家体制に組み込まれたときに帝国主義が生まれ、またその資本主義の矛盾を乗り越えるシステムとしての社会主義が模索された。
16世紀以降の西欧文明から19世紀以降の近代文明への変化は、古代地中海世界のギリシャ文明からローマ文明への変化に似て、精神的な普遍性から物質的な普遍性への変化を感じさせる。僕はこのギリシャ・ローマ文明から西欧・近代文明へのつながりを人類の都市化のメインストリーム(主流)であると考えてきた。
そして今、その西欧・近代文明の中核にあった普遍性の崩れが感じられるのだ。二つの世界大戦はその前兆ともとらえられる。
文明は誕生し滅びるのか
イギリスの歴史家アーノルド・J・トインビーは、人類の歴史を国家単位でなく文明単位で理解することを提唱し、シュメール、エジプトなどの古代文明に始まり、西欧、日本など現代文明に至る、数十に及ぶ文明の興亡を論じた。文明は誕生し、成長し、衰退し、滅亡し、あるいは周囲に衛星的な文明を生み、また次世代の文明に引き継がれるという考え方である。西欧の人が西欧文明の価値を相対化したかたちだ。
そこで、かつて幾多の文明が滅んだように、西欧文明、近代文明も滅ぶという想定が成り立つ。しかし僕は、たとえ西欧中心の時代が終わったとしても、加速度的な発展を続ける近現代の科学技術文明が衰退し滅亡に向かうことはないのではないかと考えていた。象形文字や楔形文字がなかなか解読できなかったような「知の断絶」をともなう文明の滅亡が今後も起きるとは考えにくいのだ。ちなみに文明とはシビライゼーション(civilisation)の訳であるが、集団的な都市化の体現としてもいい。
ポール・ケネディの『大国の興亡』(1987)では、スペイン・ハプスブルグ帝国から大英帝国、アメリカ帝国を経て、日本が次の世界の覇権を握るかのように書かれている。しかしこの本は、日本経済のバブルが弾ける寸前に刊行され、そのあとの日本の長期的凋落と中国の台頭が計算に入っていない。今日の状況は著者にとっても「まさか!」という以外にないだろう。
とはいえ本論の趣旨はそのような、大国(=帝国)の興亡論でもなければ覇権交代論でもない。本論では、この「普遍的価値観の崩れ」を人類全体の文明に関する問題としてとらえようとしている。
光の時代と闇の時代
結局、文明というものに、生物に似た性質があることを認めざるをえないのではないか。生物の遺伝情報は伝えられていくにしても、生物の個体あるいは群落や集団は、滅びることがあるように、科学技術という知の種子は伝承され進化を続けていくにしても、国家や社会制度は衰退しあるいは滅亡することがあるということである。
人間の知的普遍性を讃美するタイプのヨーロッパの知識人は、古代と近代の科学技術志向時代を「光の時代」とし、中世の宗教時代を「闇(暗黒)の時代」とした。しかし詩人で建築家で社会運動家であったウィリアム・モリスのように、近代(工業社会としての)より中世(手仕事社会としての)を思慕する思想家もいる。実際、近代という光の時代が、全人類にとって本当に幸せな時代であったのかどうかは疑問の余地があるのだ。
一条の光は、この暗転を西欧の普遍性から人類の普遍性への転換の始まりととらえることだが、それはまた遠い旅路となりそうだ。
●ゼレンスキー氏、NATO会合で演説 防空システムや砲弾などの追加供与要請 4/20
ロシアの侵略を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は19日、ウクライナと北大西洋条約機構(NATO)の臨時会合でオンライン演説した。ゼレンスキー氏は、同国の電力インフラを標的とした露軍の空爆が激化しているほか、前線の状況も容易ではないと強調。地対空ミサイルシステム「パトリオット」や砲弾、長射程ミサイルなどの追加供与を求めた。
ゼレンスキー氏は、露軍が今年だけでミサイル計1200発や自爆ドローン(無人機)計1500機以上をウクライナに発射し、電力インフラを破壊していると強調。現在は欧米側の軍事支援が限定的となっている上、露軍に航空優勢を握られており、ウクライナ軍は地上戦で限られた力しか発揮できないと訴えた。
その上で「欧米側(の支援)が鈍化すれば、プーチン(露大統領)は行動を起こそうとする」と述べ、「自由を守るための戦い」への欧米側の関与の継続を求めた。
ゼレンスキー氏は早急に必要な支援として、パトリオットなどの防空システム7基▽欧米側が約束済みの砲弾100万発▽長射程ミサイル▽戦闘機−などを挙げた。
ウクライナメディアによると、NATOのストルテンベルグ事務総長は会合後の記者会見で加盟国が防空システムの追加供与で合意したと発表。他の支援要請に関しても各国が検討するとした。
●米国人、ウクライナ東部ロシア支配地域で殺害される 報道 4/20
ウクライナで2014年と17年に親ロシア派側に付いて戦ったことで知られる米国人ラッセル・ベントレー氏(64)が、ウクライナ東部ドネツク(Donetsk)州のロシア支配地域で殺害された。ロシアメディアが19日、報じた。
ロシアの政権寄りテレビ局RTトップのマルガリータ・シモニャン(Margarita Simonyan)氏は、「『テキサス』として知られるラッセル・ベントレー氏は、通称通りテキサス州出身の正真正銘の米国人で、ドネツクで殺害された」「彼はわれわれ同胞のために戦っていた」とソーシャルメディアに投稿した。だが、死亡の経緯について詳細は明らかにしなかった。
ベントレー氏が所属していた「ボストーク(Vostok)」大隊も、同氏の死亡を認めた上で、「ラッセル・ベントレー氏を殺害した者への極刑」を求め、ウクライナの攻撃によるものではないことを示唆した。
ドネツク州の警察は今月8日、ベントレー氏について、ウクライナの攻撃による犠牲者の救助に向かったまま行方が分からなくなったと発表していた。
一方、ベントレー氏の妻リュドミラ氏はテレグラムで、夫がロシア戦車大隊の兵士らに「拉致」されたと訴え、解放するよう呼び掛けていた。
共産主義者を自称するベントレー氏は、2014年にウクライナの親ロシア派武装勢力に加わり、政権側と戦った。ロシア国籍も取得していた。
●IMFCのサウジ議長、世界的危機の影響を認め、他のフォーラムで議論すべきと発言 4/20
国際通貨金融委員会は金曜日、ワシントンDCで年2回の会合を開き、現在の紛争が世界のマクロ経済と金融に与える影響について討議した。
IMFCメンバーは、ウクライナにおける戦争、ガザにおける人道的危機、紅海における海運の混乱に焦点を当てたと、同委員会の議長であるサウジアラビアのムハンマド・ビン・アブドゥラー・アル・ジャダーン財務相は述べた。
アル・ジャダーン氏によると、IMFCのメンバーは、これらの危機が世界経済に大きな影響を及ぼしていることを認めたが、IMFCは地政学的・安全保障的問題を解決する場ではなく、他の場で議論すべきだと付け加えた。
「IMFCの役割は、国際通貨金融システムの監督と管理について助言し、報告することです。これには、システムを混乱させる可能性のある出来事への対応も含まれる」
「もちろん、世界とIMF(国際通貨基金)自身はここ数年、世界的な混乱に何度も直面してきた。見通しが改善されつつあることは非常に好ましいことですが、数多くの課題が残っており、私たちは用心深く、それらに対処する準備を整えておく必要があります。今日の時代は戦争や紛争の時代であってはならない」
サウジアラビアの大臣は、IMF理事会の政策諮問機関であるIMFCの議長を務めており、IMFと世界銀行の春季総会の委員会会合の中で発言した。
IMFCは、退任するナディア・カルヴィーノ議長のリーダーシップに感謝し、後任としてアル・ジャダーン議長を歓迎した。
アル・ジャダーン氏は次のように述べた: 「世界経済の軟着陸は近づいているようだ」「経済活動は、国によってばらつきはあるものの、世界の多くの地域で予想以上に底堅いことが証明された。しかし、現在進行中の紛争が世界経済に負担をかけ続けているため、中期的には弱い成長見通しとなっている」
アル・ジャダーンは言う: 「供給ショックの解消と金融引き締め政策の効果により、ほとんどの地域でインフレ率が低下しているとはいえ、その持続には注意が必要だ」「見通しに対するリスクは現在、ほぼ均衡しているが、インフレと金利、資産価格と金融の安定、財政政策、地政学的展開の当面の道筋に左右される下振れリスクは残っている」
気候変動、債務の脆弱性の増大、格差の拡大、地政学的分断のリスクなど、他の差し迫った課題も世界経済に影響を及ぼしている。
サウジアラビアの大臣は次のように述べた: 「このような背景から、我々の政策の優先事項は、物価の安定を達成し、財政の持続可能性を強化し、金融の安定を守るとともに、包括的で持続可能な成長を促進することである」
「我々は、最も脆弱な人々を保護し、成長を促進する投資を行いながら、各国の状況に合わせた行動を注意深く取りながら、財政バッファーの再構築を進めていく」
アル・ジャダーン氏は、中央銀行は引き続き物価安定の達成に強くコミットしており、負の波及を抑えるために政策目標を伝え続けていくと述べた。
また、「我々は、金融セクター、特にノンバンク金融機関におけるデータ、監督、規制のギャップに対処するために引き続き取り組んでおり、システミック・リスクを軽減するためのマクロプルーデンス政策ツールを展開する用意がある」と付け加えた。
また、IMFは世界経済と国際通貨システムの回復力を向上させるための国際協力の重要性を強調し、加盟国は「各国固有の状況を考慮しつつ、気候変動や人工知能を含むデジタル移行を支援するため、適宜、集団的に行動する」と付け加えた。
IMFのクリスタリナ・ゲオルギエワ専務理事が出席して行われた会議で、アル・ジャダーン氏は、為替レート、過度な世界的不均衡への対処、ガバナンス、保護主義的措置の回避に関するIMFのコミットメントを繰り返した。
同氏は次のように述べた: 「我々はまた、グローバルな金融セーフティネットを強化し、グローバルな債務の脆弱性に対処し、脆弱な国がその脆弱性に対処し、資金調達ニーズに対処するための改革を実施する際に、脆弱な国を支援するために協力し続ける」
アル・ジャダーン氏はまた、IMFは「加盟国が国際収支問題に対処し、経済の安定と包括的な成長を達成するのを支援するため、金融支援を提供するという重要かつ触媒的な役割」を継続すると述べた。
また、サハラ以南のアフリカ地域の代表と全体的なバランスを改善するため、11月にサハラ以南のアフリカ地域を担当する新たな25番目の理事長を迎えることを検討していると付け加えた。
「我々は、既存の優先分野や新たな優先分野を支援する人材を惹きつけ、育成するためのIMFの強化された取り組みを支持するとともに、職員の多様性と包摂をさらに改善し、2022-23年度多様性と包摂に関する報告書で特定された具体的な課題に対応する」
また、次回のIMFC24メンバー会議は10月に開催される予定であることも発表された。IMF代表は通常、世銀・IMF基金年次総会と春季総会の年2回会合を開き、IMFの業務プログラムに関するアジェンダ案の概要を説明する。
●イスラエルの「過越の祭」と報復攻撃 4/20
英語ではパスオーバーと呼ばれるユダヤ人の祝日「過越の祭」(ヘブライ語でペサハ)が今月23日から29日まで1週間続く。米メディアでは、イスラエルは「過越の祭」が終わる今月末まではイランへの報復攻撃を控えるのではないかという観測報道が流れていたが、イラン国営メディアによると、19日早朝(現地時間)、イスラエルからイラン中部イスファハンにミサイルの攻撃があったという。
イスファハン州の軍事施設近くで3回の爆発音が聞こえたほか、複数のドローンが撃墜されたという。被害状況や攻撃の規模については報じられていない。
イスファハン州には軍事基地や無人機製造施設のほかウラン濃縮活動を行うナタンツの核施設があるが、ウィーンに本部を置く国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は19日、「核関連施設は攻撃を受けていない」と述べた。
「過越の祭」は、ユダヤ人の指導者モーセがエジプトで奴隷生活をしてきたイスラエルの民を率いて神の約束の地カナンに向かって出エジプトをする話の中で登場する。モーセがエジプト王ファラオにイスラエルの民を出国させよと求めるが、ファラオはそれを拒否。神は裁きとして長子を全て殺すと警告。同時に、イスラエルの民には家の戸口に羊の血で印をつけるようにと命じた。その結果、エジプトの家庭の長子は悉く殺されるが、戸口に子羊の血が塗られている家は無事だった。イスラエルの民はその後、神に感謝し、家族が揃ってゼーダーと呼ばれる特別な食事を楽しむ祝日となった。パン種を用いずに焼かれたマツォットと呼ばれるパンを食べる。
一方、イスラム教徒はイスラムの5行の一つ、ラマダン(断食月)を終えたばかりだ。聖なるラマダンの期間、パレスチナでイスラエル軍とガザ地区のイスラム過激テロ組織「ハマス」間の戦闘が休戦するのではないか、と一部で期待された。同じように、ユダヤ民族の主要祝日「過越の祭」が始まる今月23日を控え、イスラエル側はイランへの報復攻撃を控えるのではないかという憶測情報が一部で流れた。 
シリアの首都ダマスカスのイラン大使館が今月1日、イスラエル側の攻撃によって破壊され、イラン革命防衛隊(IRGC)の准将2人と隊員5人が犠牲となったことを受け、テヘランは13日から14日にかけ、300発以上のロケット弾、巡航ミサイル、無人機でイスラエルを攻撃した。イラン国営メディアによると、「エマド」や「ケイバルシェカン」などの中距離ミサイルや巡航ミサイル「パヴェ」が発射された。そしてシャヘド136と呼ばれる「神風無人機」が攻撃に加わった。同無人機はロシア軍がウクライナとの戦いでも使用している。
イラン当局の説明によると、イラン革命防衛隊(IRGC)はイスラエルに対する大規模な攻撃では最新鋭のミサイルを使用しなかった。タスニム通信は、IRGC航空宇宙軍司令官アミール・アリ・ハジザデ准将の発言として、「われわれは最小限の強度の旧式兵器を用いてシオニストの敵に対して行動した」と伝えた。イラン当局がイスラエルとの正面衝突を回避するため報復攻撃を抑制したものと受け取られている。
イスラエルのイラン核関連施設への攻撃を恐れ、イランはナタンツのウラン濃縮関連施設を地下深い場所に移動し、今日まで活動を継続している。イランは2015年7月、国連安保理常任理事国5カ国にドイツを加えた6カ国と核合意を締結し、イランの核開発計画は核エネルギーの平和利用と主張してきた。しかし、トランプ米前政権が2018年5月、イランが核合意の背後で核開発を続行しているとして核合意から離脱後、イランは順次に核合意の内容を破棄し、IAEAの査察活動を制限する一方、ウラン濃縮活動を加速し、高濃度ウランの増産を進めている。イランの核開発計画を外交交渉で解決する道はもはや難しくなってきている。イランは近い将来、核兵器を製造し、世界で10番目の核兵器保有国に入るのは時間の問題だ。
イランが核兵器を所持すれば、イランが軍事支援するパレスチナ自治区ガザの「ハマス」、レバノンのイスラム根本主義組織「ヒズボラ」、イエメンの反体制派民兵組織フーシ派などに核拡散する危険が高まる。イスラエルは国の安全を脅かすイランの核兵器開発の阻止を最重要課題としている(イスラエルは2007年9月、シリア北東部の核関連施設「ダイール・アルゾル施設」を爆破)。
西側の軍事専門家は「イスラエルの無人機がイスファハンまで飛行してきたことにイラン側はショックを受けている。イスラエル側が大量の無人機を動員すれば、イランの防空システムではイスラエルの無人機を全て撃ち落とすことはできない」と予想している。
イスラエルは今日、民族の存続を脅かす宿敵イランと直接対峙している。ネタニヤフ政権がどのような戦略を下すかは「過越の祭」が終わる今月末までには明らかになっているだろう。
●尹大統領、G7サミットに招待されず…「G7プラス外交」色あせる 4/20
6月にイタリアで行われる主要7カ国首脳会議(G7サミット)に、韓国は招待されなかった。
外交筋は19日、「イタリアのプーリア州で6月13〜15日に行われるG7サミットの招待国リストに、韓国は含まれていない」と伝えた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は「グローバル中枢国家」を掲げ、国際的地位にふさわしい主要7カ国(G7)のパートナーとしての位置づけを得るとして「G7プラス外交」を推進してきた。
「G7」は米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本の主要7カ国の会議であり、その年の議長国が議論に貢献すると思われる国を自国の裁量で首脳会議などに招待する。韓国政府は今年のG7サミットに出席するため、議長国であるイタリアとの協議を続けてきたが、イタリアは招待国リストに韓国を入れなかったという。
イタリアは今年のサミットで、自国の主要議題である難民問題の解決策をはじめ、アフリカ開発支援、ウクライナ戦争や中東問題などを集中的に議論すると公言しており、このような議題に貢献しうる国を中心に招待国を決めたという。ロイター通信は先日、アルゼンチン、エジプト、チュニジア、ケニア、アルジェリアと、主要20カ国・地域(G20)会議で昨年から来年までの主催国であるインド、ブラジル、南アフリカなどが今年のG7サミットに招待される計画だと報じている。
韓国は2020年以降、G7サミットに3度招待されている。米国が議長国だった2020年、英国が議長国だった2021年、日本が議長国だった2023年だ。尹錫悦大統領が米国をはじめとする西側諸国と積極的に連帯する外交を展開してきたにもかかわらず、今年の首脳会議に招待されなかったことで、政府が強調してきた「グローバル中枢国家」、「G7プラス」という外交目標が色あせたと評価される。
大統領室の関係者はハンギョレに「まだ議長国であるイタリアの公式発表はない」とし、「今年イタリアは国内政治にかかわるアフリカ・地中海の移民問題と関連づけて招待対象国を選定すると認識しているため、7カ国協力の強化の可否を示す変数とは考えていない」と述べた。
●IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解に相違 4/20
国際通貨基金(IMF)は19日、中東とウクライナ情勢を巡る見解の相違から国際通貨金融委員会(IMFC)の共同声明を取りまとめることができず、紛争がもたらす経済的リスクに対する認識を示す議長声明を代わりに発表した。
議長声明は「ウクライナの戦争、パレスチナ自治区ガザの人道危機、紅海の海運の混乱などの戦争や紛争で、世界的なマクロ経済と金融が受ける影響について討議した」とし、「IMFCは地政学や安全保障の問題を解決する場ではないとしながらも、このような状況で世界経済が重大な影響を受けるとの認識を示した」とした。
IMFC議長を務めるサウジアラビアのジャドアーン財務相は記者会見で、世界経済の地政学的分断は総じてマイナスの影響をもたらしているとしながらも、こうした傾向の一環として起きている供給網の多様化で一部の国が恩恵を受けているとの認識を示した。
フィンランドのリイッカ・プッラ財務相は議長声明発表後、記者団に対し、ロシアについて明確に言及されていないとして、北欧諸国は共同声明の採択に全会一致で反対したと指摘。「ウクライナで戦争を起こし、世界中にあらゆる経済的影響を及ぼしているロシアについて、明確かつ直接的に言及していない共同声明を承認することは不可能だった」とした。
●戦闘による経済影響を懸念 IMFが議長声明 4/20
国際通貨基金(IMF)は19日、米ワシントンで開いた運営方針を決める会合後に議長声明を公表し、ロシアが侵攻したウクライナでの戦闘などが「世界経済に重大な影響を及ぼす」と懸念を示した。共同声明は地政学的な問題を巡る文言で折り合わず、採択を見送った。
会合は国際通貨金融委員会(IMFC)で、毎年春と秋に開かれる。声明ではウクライナでの戦闘の他にパレスチナ自治区ガザでの人道危機や、イエメンの親イラン武装組織フーシ派の攻撃による紅海での船舶輸送の混乱にも触れ「今の時代に戦争や紛争があってはならない」と非難した。
日本からは鈴木俊一財務相と植田和男日銀総裁が出席。
●G7が中国に強く警告、ロシアの侵略戦争支援をやめるよう要求 4/20
主要7カ国(G7)外相は中国に対し、ロシアのウクライナ侵攻を手助けするのをやめるよう警告した。中国への警告としては、これまでで最も強い部類に入る。
ブリンケン米国務長官は19日、イタリア南部カプリ島でG7外相会合終了後に記者団に対し、「ロシアがウクライナ侵攻に使用する兵器を供給するべきではない。これは中国に対して、また他の多くの国に対しても、われわれは極めて明確にしている」と語った。
そのような兵器供給が「ロシアのウクライナ侵攻継続を可能にし、ロシア軍とその防衛能力の全体的な再建を助けている」と指摘した。
ロシアのウクライナ侵攻について中国はほぼ中立であるとの立場を示そうとしているが、習近平国家主席とプーチン大統領が2年前に「制限のない」友好関係を表明した両国は、深く連携している。
米国を含むウクライナ支援国は、中国がロシアに光学機器や硝酸化合物、マイクロエレクトロニクス、ターボジェットエンジンを供給し支援していると非難。ブルームバーグは今月、中国はロシアに軍事目的の衛星画像のほか、戦車用のマイクロエレクトロニクスや工作機械を提供していると報じた。
G7は共同声明で「ロシアが軍事生産促進のため使用する軍民両用品や兵器部品が中国の企業から移転されていることに、われわれは強い懸念を表明する」とし、「これによりロシアは防衛産業基盤を再構築し、活性化することが可能になり、ウクライナおよび国際的な平和と安全保障に脅威をもたらしている」と続けた。
ドイツのベーアボック外相も同日、「不法な侵略戦争を遂行するロシアと中国がかつてない緊密な関係を築くなら、容認できない」とカプリ島で記者団に発言。「われわれは中国に、プーチン氏に対する影響力を行使するよう求める。プーチン氏の戦争マシーンに火力を与えるような国は、世界のどの国であってもわれわれは容認しない」と語った。
ウクライナのゼレンスキー大統領は19日、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の国防相と会談し、追加的な防空支援を要請する見通し。ウクライナへの防空支援については、欧州連合(EU)加盟国の外相と国防相も22日に協議する。
●イスラエルとイラン、どちらも相手を理解できていないことがあらわに=BBC 4/20
イスラエルによるイラン攻撃は、アメリカのジョー・バイデン大統領をはじめとする西側諸国の首脳が恐れた激しいものではなかった。
バイデン大統領たちはイスラエルに、シリア・ダマスカスにあるイランの在外公館を4月1日にイスラエルが攻撃し、複数の軍幹部を殺害したことがきっかけで始まった危険な事態の連鎖に、区切りをつけるよう働きかけていた。
イスラム組織ハマスがイスラエルを奇襲攻撃してから6カ月以上がたち、ガザ地区では戦争が続く。そして、レバノンとイスラエルの国境の両側へ、そして湾岸地域へと拡大した。
中東全域が全面戦争の寸前にあり、その危険は地域だけでなく世界全体へ及ぶと、大勢が懸念している。
他方でイランは、イスファハンで起きたのは大したことではないという印象を与えようとしている。
最初のうちは、攻撃などなかったという情報が続いた。のちに、国営テレビでアナリストが、「侵入者」が発射したドローンを防空システムがすべて撃墜したと述べた。
国営メディアは小型ドローンをネタにした面白おかしい写真を投稿している。
イランは現地時間14日未明、イスラエルに向けてドローンやミサイルを発射した。今回のイスラエルの攻撃は、これに対する反撃だった。
イランとイスラエルは何年も対立し、互いを脅しあってきた。しかし1979年にイラン・イスラム共和国が成立して以来、イランが自国領内からイスラエルを直接攻撃したのは、14日が初めてだった。
14日の攻撃でイランは300発以上のミサイルやドローンを、イスラエルに撃ち込んだ。そのほとんどが、米英とヨルダンの支援をうけたイスラエルの防空システムによって破壊された。
この攻撃にあたってイランは、自国の意図を明示した。イスラエルとその協力国に準備する時間的猶予を与え、ニューヨークの国連代表部を通じて速やかに、これにて自分たちの反撃はおしまいだと宣言した。
バイデン大統領はこの結果を「勝ち」として受け入れるようイスラエルを説得しようとしたが、イスラエル側は必ず反撃すると譲らなかった。
この危機は当初から、イランとイスラエルの相互理解がいかに不足しているかを露呈した。相手をよく理解していない両国は互いに計算を誤り、危機を悪化させた。
イスラエルは、ダマスカスでイラン革命防衛隊の幹部、モハマド・レザ・ザヘディ准将を殺害したことについて、イランは激怒する以上の反応をしないはずだと思っていたかのようだ。
イスラエルの空爆によって、ダマスカスのイラン外交施設にある領事館は全壊した。准将のほかに、さらに1人の将官を含む6人が殺された。
この攻撃をイラン領への攻撃とみなすと、イランは宣言した。対するイスラエルは、イラン革命防衛隊の存在によって領事館は軍事拠点に変化していたため、外交関係に関する条約や慣習の保護対象ではないと反論していた。
イスラエルは建物の属性を一方的に変更しようとしたが、イランだけでなく、イスラエルに協力する西側諸国も、この言い分を受け入れなかった。そしてイラン政府は、自分たちの反撃をもってイスラエルがこの事態には区切りがついたすることを期待していた。
これもまた、重大な誤算だった。
もしもイスラエルによるイスファハン攻撃を受けて、イランが反撃しないならば、目下の緊張関係は緩和する。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、バイデン米大統領との関係をこれ以上悪化させずに、反撃する方法を模索した可能性がある。19日未明から早朝にかけてのイランへの攻撃が、その表れだったのかもしれない。
イスラエルがもし今回以上にイランに反撃しないのならば、ネタニヤフ戦時内閣にいる元軍幹部たちがそれで納得するのか、それが疑問となる。イスラエルが抑止力を回復するには、大規模な反撃が必要だ――というのが、元将軍たちの理屈だっただけに。
ネタニヤフ首相を支える連立勢力に参加する過激なナショナリストたちも、イスラエルは激烈に反撃すべきだと力説していた。
イスラエルの極右政党を率いるイタマル・ベン=グヴィル国家安全保障相は、イスラエルは「狂乱」状態になって反撃する必要があるとまで主張していた。そして、イスラファンへの攻撃については、ソーシャルメディアにヘブライ語で「弱腰」とだけ書いた。
西側諸国の政府に言わせると、中東地域にとって最善の選択肢は、イランとイスラエルの双方が今回の事態に区切りをつけることだった。
しかし、仮に今日の攻撃がこの一連の危機の現時点での区切りになるとしても、新しい前例が作られてしまった。
イランはイスラエルを直接攻撃した。そして、イスラエルはそれに自らも直接攻撃で反応したのだ。
イランとイスラエルの対立が長年続くこの地域で、しばしば対立を律する「ゲームのルール」と呼ばれるものが、変わったことを意味する。
両国が隠然と続けてきた長い戦争は、ついに陰の世界から表舞台に出てきた。
そのプロセスを通じてイランもイスラエルも、互いに激しくこだわり続けている割には、どちらも相手の意図を読むのが上手でないと、露呈してしまった。
一触即発の地域でのことだけに、それは安心材料とは程遠い。
●NATO、ウクライナへの防空システム追加提供で合意=事務総長 4/20
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は19日、NATO加盟国がウクライナに追加の防空システムを提供することで合意したと述べた。
ウクライナのゼレンスキー大統領も参加したNATO国防相特別会合後、記者団に対し「地対空ミサイルシステム『パトリオット』のほか、ミサイルシステム『SAMP/T』など加盟国が提供できる兵器はあり、提供可能なシステムを持たない他の多くの国々もウクライナによる兵器購入に向けた財政支援を確約している」とした。
ウクライナが受け取ることになる新たな防空システムの基数などの詳細は明かさなかったが、「非常に近い将来にさらなる支援が発表されると期待している」と述べた。
ゼレンスキー大統領は会合で、ウクライナがロシアの空爆に対応するためにパトリオットもしくは高性能防空システムが少なくとも7基必要と指摘。ウクライナへの軍事支援強化を求めた。
●ウクライナ、東部で空爆受け子供など8人死亡…その後に超音速爆撃機を初めて撃墜 4/20
ウクライナの検察当局は19日、東部ドニプロペトロウシク州でロシア軍の空爆や無人機攻撃があり、子供2人を含む8人が死亡したと発表した。
ロイター通信によると、露軍の攻撃には、核兵器を搭載できる超音速長距離爆撃機「Tu(ツポレフ)22M3」が参加した。ウクライナ軍は同機が攻撃を終えた後、ウクライナ国境から約300キロ・メートル離れた露側で撃墜したと発表した。ウクライナ侵略開始後、同機の撃墜は初めてだという。ロイターは、撃墜には旧ソ連の地対空ミサイルS200が使われたと報じている。
タス通信によると、露国防省は19日、Tu22M3が戦闘任務終了後、露南部スタブロポリで墜落したと発表した。機体の不具合が原因で、乗員4人のうち1人が死亡したという。
●アメリカ下院、ウクライナ軍事支援案を採決へ 民主党が共和党議長案を支持 4/20
アメリカ連邦議会の下院は数カ月もの膠着(こうちゃく)を経て、ウクライナやイスラエルなどに総額953億4000万ドル約(約14兆7000億円)規模の支援を提供する緊急予算案を20日にも可決する見通しとなった。
野党・共和党が僅差で多数を占める下院では、どちらへの軍事支援にも声高に反対する勢力があり、下院通過には民主党と共和党の超党派の協力が必要となる。
マイク・ジョンソン下院議長(共和党)は、ウクライナに608億ドル(約9.4兆円)、イスラエルに264億ドル(約4兆円)、台湾を含むインド太平洋地域に81億ドル(約1.2兆円)の支援を提供する緊急予算案を、採決にかけると決定した。
上院が2月にいったん可決した包括支援予算案を、下院本会議では項目ごとに分割し、採決する。このため、すべての内容が一度に可決されるとは限らない。
下院の緊急予算案について18日深夜、ジョンソン議長を支援する共和党議員たちに民主党議員たちが加わり、本会議での採決に至るよう、下院規則委員会での手続きを通過させた。
さらに19日朝には本会議で両党の議員たちが賛成316、反対94で、最終的な審議と採決を20日午後に行うと決定した。この時点で賛成が圧倒多数のため、最終的な予算案も可決され、民主党多数の上院に送られる見通しだ。上院では速やかに可決され、ジョー・バイデン大統領の署名をもって成立することになる。
ジョンソン下院議長は、新しい移民制度改革法案も提出すると表明。ウクライナ支援に強硬に反対する共和党内右派を、これで納得させようとする動きとみられている。
ジョンソン議長はこれまで、党内右派と異なる動きをしてこなかったが、今回は「正しいことを」をするのが自分の目標だとして、支援案を採決へと進めた。
しかし、マージョリー・テイラー・グリーン下院議員(ジョージア州選出)を筆頭とする共和党内の強硬右派からは、ジョンソン議長のこうした動きを受けて、議長辞任を求める動きが出ている。
下院議長が政策推進に必要な票数を得るのに、自分の党ではなく野党議員の支援を必要とする事態は、現代の連邦議会では異例。
民主党のハキーム・ジェフリース下院院内総務(ニューヨーク州選出)は19日、記者団に対して、ジョンソン議長が「非常に横暴」な共和党議員をまとめなくてはならず、大変な思いをしてきたと述べ、ウクライナ支援案をようやく下院採択に持ち込んだ議長の手腕をたたえた。
ウクライナは昨年後半以来、アメリカを中心とする西側諸国の早急な追加支援を強く求めてきた。ウクライナ東部の戦場ではロシアが前進を続けており、武器の不足や士気の低下が深刻視されている。
米中央情報局(CIA)のウォルター・バーンズ長官は25日、「2024年末までにウクライナが戦場で敗れるか、少なくともプーチンが政治的合意の内容を一方的に押し付けられる状態に至る危険は深刻」だと、演説の中で警告した。
他方、民主党内では、パレスチナ自治区ガザ地区攻撃でのイスラエルの行動に批判的な左派勢力が、イスラエルによる人権侵害にアメリカがこれ以上加担することを認めないと主張している。今回の緊急予算案のイスラエル支援には、人道支援の予算90億ドルが盛り込まれているため、これで一部の民主党議員は賛成に回る可能性がある。
さらに、採択を個別項目ごとにすることで、ジョンソン議長は部分的にでも支援案を下院通過させたいかまえを示している。
●ウクライナ支援9兆円の追加予算案、米下院通過へ前進…7割超が賛成 4/20
米下院は19日、ウクライナ支援に向けた約610億ドル(約9兆4000億円)の追加支援予算案を含む4法案の審議を進めるための議案を、賛成多数で可決した。20日に追加予算案の採決が予定されており、下院通過に向け一歩前進した。
採決では、全議員431人の7割超にあたる316人が賛成した。賛成票の内訳は共和党151、民主党165だった。共和党の保守強硬派などが反対に回ったが、米メディアは「下院を通過する可能性が高まった」(ワシントン・ポスト)と報じた。
4法案は総額約953億ドルの一括追加予算案を分離した下院の修正案で、イスラエルやインド太平洋の同盟国などへの支援を強化する関連予算案を含んでいる。
●中東情勢緊迫化、景気リスクに 米大統領選にも言及―FRB報告書 4/20
米連邦準備制度理事会(FRB)は19日、金融安定報告書を公表した。ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化が「エネルギーや商品市場の持続的混乱につながり、世界景気のリスクになる」との懸念を示した。また、11月の米大統領選を控え、市場では政策の先行き不透明感がリスクとして挙げられていると指摘した。
●G7外相会合閉幕 中東情勢 自制求める共同声明 採択 4/20
イタリアで開かれていたG7=主要7か国の外相会合が閉幕し、共同声明が採択されました。イスラエルがイランを攻撃したとの報道を受けて緊迫する中東情勢についてすべての当事者に対し、さらなる事態の悪化を防ぐため自制するよう求めるとしています。
イタリア南部のカプリ島で行われていたG7外相会合は19日、共同声明を採択して閉幕しました。
声明では、イスラエルがイランを攻撃したとの報道を受けて「すべての当事者に対し、さらなるエスカレーションを防ぐために取り組むよう強く求める」として、自制を求めています。
そのうえでイランに対して「さらなる不安定化をもたらす行動に応じて制裁を科したり、そのほかの措置をとったりする用意がある」としています。
また、ガザ地区の情勢をめぐっては「ハマスはすべての人質を即時かつ無条件に解放しなければならない」と訴えています。
一方、ウクライナ情勢については、軍事侵攻を続けるロシアに対し、ウクライナの領土から即時に無条件で撤退するよう改めて求めるとともに「人命を救い、重要なインフラを保護するために、特にウクライナの防空能力を強化する決意を表明する」として、防空システムの供与に連携して取り組む考えを強調しました。
イタリア外相「アメリカは直前に知らされていた」
イタリアで開かれていたG7=主要7か国の外相会合のあと、議長国を務めるイタリアのタヤーニ外相が記者会見を行いました。
この中で、イスラエルがイランを攻撃したとの報道に関連して「アメリカは直前に知らされていた」と述べ、イスラエルがアメリカ側に対し、直前に通告していたことを明らかにしました。
また、中東情勢について「私たちは中東全域の緊張緩和に向けてこれまでも行動してきたし、これからも行動していく」と述べ、G7として引き続き緊張緩和に取り組む考えを強調しました。
上川外相「G7として緊密に連携していく」
イタリアで開かれたG7外相会合に出席した上川外務大臣は、日本時間の20日午後7時半ごろ、記者団の取材に応じました。
アメリカの複数のメディアが政府当局者の話として、イスラエルがイランを攻撃したと伝えたことについて、「わが国としては現在の中東情勢を深く懸念し、事態のエスカレーションにつながるいかなる行動も強く非難する」と述べました。
その上で「きょうの会合では、事態のさらなる悪化を防ぐためG7としてあらゆる外交努力を尽くし、緊密に連携していくことで一致した」と述べました。
また、上川大臣は今回の外相会合について、「分断や対立ではなく協調の世界に向けて、G7がいかにリードしていくか議論を深めることができた」と述べました。
海洋進出強める中国の“力による現状変更の試み”に反対
G7=主要7か国の外相会合は、インド太平洋地域の情勢をめぐって討議を行い、海洋進出の動きを強める中国については、力による現状変更の試みに反対する一方、懸念事項では対話を続ける必要があるという認識を共有しました。
そして、台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて確認しました。
北朝鮮については上川外務大臣が「核・ミサイル開発を深刻に懸念しており、同志国の間で連携して断固とした姿勢を示すことが必要だ」と訴えるとともに、拉致問題の解決に向けたG7各国の協力に謝意を示しました。
その上で、ヨーロッパとインド太平洋の安全保障は密接に結びついているとして「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて連携していくことで一致しました。 
●中国、「無限の協力関係」の中でロシア極東の一部を静かに乗っ取り? 4/20
ロシアがウクライナ侵攻後、中国との関係をより深める中、米誌「ニューズウィーク」は「無限の協力関係をけん伝する中国が、ロシア極東の一部を静かに乗っ取ろうとしている」と報じた。さらに「中国と国境を接する極東ロシアに流入する中国農民が地元住民を圧倒し、人民元依存で経済のかじ取りができない」とも伝えた。
ニューズウィークは日本メディアの記事を引用して「極東の沿海州(プリモルスキー州)の国境地帯では中国人農民が急増しており、その経済的影響力は地元住民を圧倒している」と紹介。「1860年に清朝がロシアに割譲したこの地域は中国の政策立案者やナショナリストの関心の的となっている。昨年、中国は国内の地図に沿海地方の行政の中心地であるウラジオストクの中国語名である海参崴のほか、七つのロシア極東部の中国語名を記載するよう定めた」と続けた。
さらに「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナは常にロシア国家市の一部だったと主張するのと同じように、中国の習近平国家主席は失われた領土の回復を『中華民族の偉大な復興』の最優先課題に挙げている」と指摘。「ロシア国境と接する中国東北部黒竜江省の鶴崗市はかつて石炭の産地として栄えたが、経済の先行きは暗い。そんな中で、これからも多くの中国人農民がロシアに向かうかもしれない」と予測した。
米シンクンタンク、スティムソン・センターの中国プログラム責任者ユン・スン氏は「ロシア極東地域における『黄禍論』的な不安は今に始まったことではない。何世紀とは言わないまでも、それが何十年も存在してきたのは国境の両側の人口バランスが大きく崩れているためだ」と説明。「中国人の流入はロシアの支配を脅かしかねない。まだ主権の問題が交渉のテーブルに上る段階ではないと思うが、現地の中国人農民をどう管理するかは厄介な問題になるだろう」とした。
学術雑誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・エコノミクス・アンド・ソシオロジー」に掲載された2021年の研究では、中国人農家の存在や中国人所有企業との取引がロシアの地元農家の所得を押し上げるケースもあることが分かったという。
ウクライナ侵攻で西側から経済制裁を受け、銀行の国際決済網SWIFT(スイフト)から排除されているロシア経済を戦時需要とともに支えているのは中国との貿易だ。
ロシア経済省によると、2023年上半期、ロシアは中国との貿易高の4分の3、その他の国との取引の4分の1を人民元で決済した。米ブルームバーグ通信によると、ロシアの中央銀行は3月29日に発表した年次報告書の中で「外貨準備に関して人民元に代わる良い選択肢がない」と言及。ニューズウィークは「中露間に外交的緊張や貿易摩擦が生じた場合、『従属的なパートナー』であるプーチンは窮地に立たされ、中国が直面する経済的課題の悪影響を受けることになる」との見方を示した。
●「ロシア恐怖症」を克服すれば韓国はプーチンに無視されなくなる 4/20
3月28日に国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会専門家パネルの任期延長決議案がロシアによる拒否権行使で否決された。これはロシアと北朝鮮の関係が一層緊密化したことを示す象徴的な出来事だった。米ニューヨーク・タイムズは「専門家パネルの無力化はロシアと北朝鮮との関係、そして北朝鮮の核問題における新たな分岐点になりかねない」と分析している。その上で同紙は「過去10年間、米国とロシアが共通の大義名分を掲げることができたプロジェクトは北朝鮮による核兵器拡大阻止だったが、もはやこれも崩壊に至った」とも指摘した。
米戦略国際問題研究所(CSIS)は「ロシアによる拒否権行使は国連の北朝鮮制裁体制弱体化を目指す組織的な努力の第3段階」と説明した。国連安保理による北朝鮮制裁決議の中断(第1段階)、そして北朝鮮による弾道ミサイル発射に対する新たな安保理制裁の阻止(第2段階)に続く、いわば北朝鮮制裁体制の永久解体が始まったというのだ。
なぜこんな事態になったのか。ロシアはウクライナ戦争の長期化で困難な状況に追い込まれたため、北朝鮮から武器支援を受けるため恥も外聞もなく北朝鮮を擁護するようになった。ロシアは1950年の6・25戦争以来、北朝鮮とは最高レベルの連携を続ける一方で韓国にもさまざまな形でシグナルを送ってきたが、韓国政府はこれを外交安全保障における最優先課題とは認識しなかった。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が昨年ロシアの宇宙基地を訪問し、プーチン大統領と首脳会談を行うなど両国関係の緊密化は以前から進んでいたが、それでもロシアに対する韓国の外交面での「レッドライン」は逆に後退してきたのだ。
ロシアのラブロフ外相は昨年11月、北朝鮮との武器取引で「ロシアは国連の北朝鮮制裁に違反した」と非難を受けた際、「国連安保理が制裁を行った」「抗議は安保理にやれ」という前後のつじつまが合わない発言を行った。ロシアは安保理常任理事国として過去に10回以上北朝鮮制裁決議案に賛成したが、今後はこれを記憶しないという発言だった。
今年に入ってジノビエフ駐韓ロシア大使はあるインタビューで韓国を「非友好国」、北朝鮮を「友好国」と呼んだ。ジノビエフ大使は「韓国がロシアの非友好国から友好国に戻る最初の事例になることを希望する」と述べた。これは事実上の脅迫であり、大使として駐在国に対して守るべき一線を越えたとも言える。ロシアは韓国の宣教師を国交回復以来初めて「スパイ容疑」で身柄拘束した。ロシアと北朝鮮は昨年後半から今年2月までの約6カ月間、6700個のコンテナで8000発以上の砲弾と物資を交換した事実も公表された。
今年2月に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が北朝鮮を批判した直後、ロシア外務省のザハロワ報道官は「ぞっとする」と批判したが、これは絶対に黙認すべきでない。尹大統領は「北朝鮮政権は全世界で唯一、核兵器の先制使用を法制化した非理性的な集団だ」と述べたのだが、これにロシアは「明らかに偏向している」と反論したのだ。これはロシア外務次官の来韓中にロシア・メディアが報じた内容だが、事前にプーチン大統領の指示あるいは黙認がなかったらこんな発言はできなかっただろう。プーチン大統領はモスクワで北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外相に訪朝を約束したが、ザハロワ報道官による尹大統領批判は「訪朝を約束したプーチン大統領が金正恩総書記に代わって韓国に抗議した」とも受け取れるものだった。
尹大統領による北朝鮮批判にいわばロシア外務省の報道官が反論したわけだが、これは単なる外交面での非礼にとどまらない。今後北朝鮮が何か事を起こした場合、ロシアはこれに同調することを明確にしたのだ。北朝鮮とロシアの軍事協力がさらに緊密化し、韓半島を危険な状況に追い込むというシグナルとも受け取るべきだ。ところが韓国政府は「常日頃やや過激な発言をする女性外交官だ。無視してもよい」「ロシアとは水面下で互いに一線を越えないことで話はついている」とコメントし、深刻には受け取っていない様子だった。
しかし結果的にロシアが国連の北朝鮮制裁パネルを無力化したことで、ロシアと北朝鮮との関係はさらにレベルアップした。この問題は非常に深刻だったため、韓国政府も2日に異例の対抗措置に乗り出し、北朝鮮とロシアの間で軍事物資を運搬したロシア船籍の貨物船2隻、そして北朝鮮労働者の送り返しに関与したロシアの2機関と2人の個人を独自制裁の対象に指定した。
韓国外交部(省に相当)による今回のロシアへの対応が消極的だった背景には「ロシア・フォビア(恐怖症)」の存在がある。20年以上前に韓国では2人の外交部長官がロシアとの外交問題が原因で更迭された。1998年に当時の朴定洙(パク・チョンス)外交部長官は韓国とロシアによる互いのスパイ追放事件の影響で更迭された。また2001年には韓ロ首脳会談の共同声明に「米国が破棄を主張した弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約の維持・強化の文言があった」との理由で当時の李廷彬(イ・ジョンビン)外交部長官が辞任に追い込まれた。韓国とロシアの対立でロシア担当局長が突然更迭されるケースもあった。そのため韓国外交部ではロシアに対して可能な限り対応や対立を避ける雰囲気が強くなっているのだ。
先日千英宇(チョン・ヨンウ)元外交安保首席があるコラムで「ロシアと北朝鮮の緊密な関係があからさまになり、状況は根本から変わった」「今後は対ロシア政策、そしてウクライナに対する武器供給自制の方針を全面的に再検討すべきだ」と主張した。これに対してロシアの韓国大使館に赴任経験のある「モスクワ・スクール」の外交官OBたちから批判が相次いだ。ある外交官OBは「千元首席の発言はそれらしく聞こえるが、果たしてそんなネガティブなアプローチがロシアに通じるだろうか」と指摘し、別の外交官OBは「ロシアは国連安保理の常任理事国でありながらウクライナを侵攻し、何かあれば核兵器の使用をちらつかせている。そんな国を無駄に刺激する必要はない」と主張した。韓国野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は「ゼレンスキーは政治家として素人で、ロシアを刺激する外交政策を行った。そのため両国は衝突するようになった」と述べ、ウクライナ戦争への不介入を主張するかのような立場を明確にしている。
主権国家としてやるべきことを必要な時に、それも毅然(きぜん)とやらなければ奴隷のように生きるしかないのが国際社会だ。しかし上記の主張はこの厳然たる事実から完全に顔を背けている。ロシアと北朝鮮による最近の関係強化は、韓国に対して「ロシア・フォビア」を克服すると同時に、ロシアとの関係を根本から見直し再設定を迫るものとなった。北朝鮮は毎日のようにミサイルを発射し挑発を続けているが、ロシアがその北朝鮮を露骨に後押しするのであれば、「何か問題があるかもしれないが、取りあえず良さそうに見えるからまあいいだろう」という形の従来の対ロシア政策には終止符を打たねばならない。世宗研究所の李容濬(イ・ヨンジュン)理事長は「ロシアは北朝鮮と堂々と武器を取引し、あらゆる外交問題で北朝鮮を後押ししている。そのため韓国だけが外交で中立を守るべき理由はもはや存在しない」「主権国家同士の関係では相互主義が重要だ。そのためロシアに対してそれ相応の対応を取らなければ、プーチン大統領をけん制することはできない」と指摘した。
●イランへのミサイル攻撃、イスラエルとイランが発表せず…報復の応酬避ける 4/20
複数の米メディアは19日、米高官の話として、イスラエル軍機が同日未明のイランへの攻撃で複数のミサイルを発射していたと報じた。標的は核関連施設の防御を担う中部イスファハン近郊の防空レーダー施設だったという。イラン側はミサイル攻撃を受けたと認めておらず、報復の応酬を避ける意図があるとみられる。
バグダッド南郊の軍事基地で大規模な爆発、7人死傷…米中央軍「イラクで空爆を行っていない」
ABCテレビによると、発射されたミサイルは3発で、イスファハン近郊のナタンツにある核関連施設を守るために配備された防空レーダーを攻撃した。イスラエルのエルサレム・ポスト紙は19日、軍用機がミサイルを発射してイスファハンの空軍基地を攻撃したと伝えた。
ただ、イスラエル、イランの双方とも攻撃について公式には発表していない。イラン側は19日、無人機3機を撃墜したとし、「侵入者」が無人機を使っていたと主張した。
国連での会議に出席するため米国を訪問中のイランのホセイン・アブドラヒアン外相は米NBCテレビのインタビューで「イスラエルによる攻撃かどうかは不明」とした上で、「無人機というより、子どもが遊ぶおもちゃのようなものだった」と主張した。「イスラエルが我々の国益を脅かす新たな行動に出ない限り、我々が対抗することはない」と述べた。
一方、イスラエルのタイムズ・オブ・イスラエルは攻撃に関し、イスファハンの空港近くにある防空施設の損傷が衛星画像で確認できたと伝えた。米CNNは衛星画像の分析で空軍施設で大きな被害は確認されなかったと報じており、どの程度の損害があったかは不明だ。
イスラエル軍の元高官は地元メディアに対し、「大規模な破壊が攻撃の目的ではなく、イランの機微な施設まで攻撃できることを示す狙いがあった」と分析した。
●ロシア軍 “滑空爆弾”で攻撃か ウクライナ東部で被害相次ぐ 4/20
ロシアとの国境や前線に近いウクライナ東部の自治体では、ロシア軍が使用した滑空爆弾で攻撃されたとみられる被害が相次いでいます。
このうち、ウクライナ東部ハルキウ州の、ロシアとの国境から30キロほどのところにあるデルハチでは、地元当局によりますと、先月25日と今月11日、滑空爆弾による攻撃を受けたということです。
市の広報をつとめるオレクサンドル・クリクさんは、NHKの取材に対し、先月の攻撃の際には、滑空爆弾が落ちてくる様子を目撃したと証言しました。
目撃者「飛行機が飛んでいると思った」
クリクさんは「最初、飛行機が飛んでいると思ったが、音が次第に大きくなり、だんだんと近づいてきた。音がする方向を見て、ミサイルか無人機かと思ったがそのあと、とても大きな爆発音が聞こえた。そして、その瞬間、地面に倒れた。爆発音から無人機ではなく、ミサイルか、もっと大きなものだとわかった」と話し、当時の緊迫した様子を振り返りました。
着弾した場所から400メートルから500メートルほど離れていたものの、爆風を感じたとしています。
そして、現場に着くと、巨大な穴があいていたのがわかったとして「5メートルほどの深さで、幅は10メートルから15メートルくらいあった。ものすごい破壊だった」と話し、その威力の大きさを語りました。
クリクさんによりますと、滑空爆弾が落ちたのは空き地だったということですが、その衝撃や爆風などで4人がけがしたほか、周辺のおよそ10棟の住宅や車に被害が及んだということです。
そのうえで「この地域に軍の部隊はいない。つまり、攻撃は、民家やインフラを狙ってきたものだった。恐怖を植え付け、パニックを引き起こして、地元住民の心をくじこうとしているんだと思う」として、ロシア軍が意図的に市民を狙っていると訴えていました。
“グライダーのように滑空” 滑空爆弾とは
滑空爆弾は、翼を備えているためグライダーのように滑空し、通常の爆弾より遠方にある目標を爆撃できるのが特徴です。
ロシア軍は、保有している通常の爆弾に誘導装置と翼を装着することで滑空爆弾に改良したものを多く使用していると指摘されています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、ロシア軍がことし2月に掌握したウクライナ東部の拠点アウディーイウカでの戦闘に関して「前進する歩兵部隊を支援するため初めて大規模に滑空爆弾を投下した」として滑空爆弾がロシア側の攻勢を支えたと指摘しました。
アメリカのCNNテレビは、滑空爆弾について「ウクライナの防衛線を壊し、前線のバランスを崩している」としてウクライナ軍にとって大きな脅威になっていると伝えています。
ロシアメディアによりますと、ショイグ国防相は、先月下旬、ロシア国内の軍需工場を視察した際、重量最大3トンに及ぶ爆弾の大量生産を開始したという報告を受けるなど空爆を強化する姿勢を強調しました。
ロシア側は、滑空爆弾であればウクライナ側の防空システムから離れた場所から投下できるため、戦闘爆撃機などが撃墜される危険性も低下するとして今後も各地で大量の滑空爆弾を使用するとの見方が出ています。
一方、ウクライナ側は、防空システムのミサイルが枯渇しているとして防空能力の強化に向けた支援を欧米側に求め続けています。
欧米のメディアは、滑空爆弾を投下するロシア軍機に対処するため、ウクライナ側でアメリカのF16戦闘機の供与を望む声もいっそう高まっていると伝えています。
着弾した地面には巨大な穴 住民「とても怖かった」
先月25日に滑空爆弾で攻撃されたとみられるウクライナ東部ハルキウ州のデルハチの着弾現場を撮影した写真や映像からは、その威力の大きさがうかがえます。
着弾した地面には、ぽっかりと巨大な穴があいています。周囲には、覆いが吹き飛ばされ骨組みがあらわになった建物や、壁が大きく壊れたり屋根がなくなったりした建物、また、樹木が大きく傾いている様子も確認でき、衝撃の大きさがわかります。数十センチの長さの爆弾の破片とみられるものもうつっていました。
滑空爆弾により自宅が被害を受けた女性は「窓、ドア、屋根もすべて被害を受けた。門は、なくなってしまった。誰も亡くならなかったのはよかった。とてもとても怖かった」と話していました。
デルハチのザドレンコ市長は「敵は軍事基地を破壊しているように見せかけているが、実際は人道的な大惨事を引き起こしている」と話し、強い口調でロシア軍を非難しました。
軍事専門家「数十の滑空爆弾 低出力の戦術核兵器に匹敵」
滑空爆弾について、ウクライナの元海軍大将で軍事専門家のカバネンコ氏は、NHKの取材に対し「ロシアの航空機1機で複数の爆弾を搭載でき、集団の航空機で多くの被害をもたらすことができる。数十の滑空爆弾の威力は、低出力の戦術核兵器にも匹敵する」と指摘しました。
また、標的から距離をとって投下できるのが特徴だとして、その距離は50キロから70キロに及び、対抗できるのは、より高性能な地対空システム「パトリオット」などに限られるとしています。
そして「爆弾を迎撃するのは簡単ではない。高速で感知しづらく、大量に使われるからだ。迎撃できる防空システムもあるが、ウクライナには足りていない」と述べ、現状では、滑空爆弾の攻撃から守るのは難しいという見方を示しました。
その上で「滑空爆弾は深刻な破壊をもたらす。ロシア軍はウクライナ軍の部隊だけでなく市民や住宅地に対しても使っている。ロシアによるウクライナへのテロ行為そのものだ」と述べ、ロシア軍は大量の滑空爆弾で無差別な攻撃を続けているとして市民にとっても大きな脅威になっていると指摘しています。
●南部インフラ施設に攻撃 港湾やパイプライン損傷 4/20
ウクライナ南部のオデッサ州とザポロジエ州で20日、工業インフラを狙ったロシア軍のミサイル攻撃があった。ウクライナメディアが伝えた。地元当局が被害を調べている。19日にはオデッサ州の港湾施設がミサイル攻撃を受け、1人が負傷。ヘルソン州でも砲撃で1人が死亡し、ガスのパイプラインが損傷した。
ゼレンスキー大統領は19日、東部ドニエプロペトロフスク州の州都ドニプロを訪れ、ロシア軍の攻撃を受けた現場を視察した。多くの犠牲者に哀悼の意を表明し「パートナー国が保管している防空システムは、まさにここで命を守るために必要だ」と支援を訴えた。
●ウクライナを攻撃後にロシアに帰還した超音速長距離爆撃機、撃墜される… 4/20
英BBCウクライナ語版によると、ウクライナ国防省のキリロ・ブダノフ情報総局長は19日、ウクライナを攻撃した後に露国内に帰還した超音速長距離爆撃機「Tu(ツポレフ)22M3」を国境から約300キロ・メートル離れた露側で撃墜したと明らかにした。露軍による侵略開始後、長距離爆撃機の撃墜は初めてとみられる。ロイター通信などは、旧ソ連の地対空ミサイルS200が使われたと報じた。
タス通信によると、露国防省は19日、Tu22M3が露南部スタブロポリで墜落したと発表した。機体の不具合が原因だと主張している。
一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は19日、SNSで東部ドニプロペトロウシク、南部オデーサなど5州が露軍による攻撃を受けたと明らかにした。検察当局によると、ドニプロペトロウシク州では子供2人を含む8人が死亡した。
 4/21-4/30

 

●中国の銀行がロシアと取引停止 米国の圧力、電子部品など輸入激減か 4/21
中国の銀行が3月以降、相次いでロシアとの貿易決済を停止している。ウクライナ侵攻を継続するロシアへの包囲網を強めたい米国の圧力が背景にあり、中ロの貿易にも影響が出ているという。他の友好国でもロシアとの取引を停止する銀行が相次いでおり、回復傾向にあるロシア経済への打撃となる可能性もある。
「(今の中ロの銀行取引には)問題がある。二国間の貿易・経済関係を損なわない選択肢を探すため、(中国と)緊密に対話している」
ロシアのペスコフ大統領報道官は17日、米国の対中国制裁の脅威について報道陣に問われ、両国関係の懸案になっていることを認めた。 ・・・
●ブリンケン米国務長官、24〜26日に中国訪問−ロシア巡り懸念伝える 4/21
ブリンケン米国務長官は24−26日に中国を訪問する。米国務省が発表した。同長官はウクライナで戦争を続けているロシアへの中国企業による支援に対し米国が重大な懸念を抱いていると伝える一方、米中関係の悪化を避けるという難しい責務を担う。
中国は武器・弾薬供給でのロシア支援という米国の言う「レッドライン」を越えてはいないが、上海と北京を今週訪れるブリンケン長官は、米国とその同盟国が中国の役割への反対で結束していると警告する。
米政府高官の1人は匿名を条件に、同長官は欧州の安全保障に与える影響について述べると明らかにした。
バイデン米大統領と中国の習近平国家主席は昨年11月、サンフランシスコ近郊で会談。両首脳は緊張が高まっていた米中関係の修復で合意しており、そうした取り組みの一環として米政府高官の訪中が続く中、ブリンケン長官も中国入りする。
●アメリカ下院、ウクライナ軍事支援案を圧倒多数で可決 近く上院でも可決の見通し 4/21
アメリカ連邦議会の下院(定数435)は20日、数カ月に及ぶ膠着(こうちゃく)状態が続いた挙句、ウクライナに追加軍事支援を提供するための緊急予算案を、超党派の賛成多数で可決した。数日中に上院でも可決され、ジョー・バイデン大統領が署名する見通しになっている。
野党・共和党が僅差で多数を占める下院では、ウクライナに608億ドル(約9.4兆円)の軍事支援を提供する予算案を、賛成311、反対112の賛成多数で可決した。
共和党の議員は112人が反対、101人が賛成、1人は出席したうえでの棄権。与党・民主党は、出席した議員210人全員が賛成した。
賛成派の中には、本会議場でウクライナ国旗を振る人たちもいた。
共和党内の強硬右派の一部はウクライナ支援に強く反対し、マイク・ジョンソン下院議長(共和党)を更迭しようとする動きを見せているが、ジョンソン議長はウクライナ支援の重要性を強調し、超党派合意をまとめ上げた。
この日の予算案可決を受けて、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「アメリカ下院と両党、とりわけマイク・ジョンソン下院議長が、歴史を正しい道に沿って進ませようと判断したことに、感謝する」とソーシャルメディアに書いた。
「世界にとって常に、民主主義と自由は重要なもので、それを守るためにアメリカが協力し続ける限り、決して失墜しない」とも、ゼレンスキー氏は強調した。
「下院が本日可決したアメリカの支援案は不可欠なもので、戦争の拡大を防ぎ、何万人もの命を救い、両国をさらに強くする」とも、ゼレンスキー氏は書いた。
下院での採決を受けてホワイトハウスは、バイデン大統領の声明を発表。バイデン氏は「私が署名して法律として成立させられるよう」上院が支援予算案を速やかに可決するよう促し、「そうすれば我々は、ウクライナが戦場で喫緊に必要としている武器や装備をすぐに送ることができる」と呼びかけた。
これに対してロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、アメリカがウクライナに軍事援助を提供していることは「テロ活動を直接支援」しているに等しいと批判した。
ロシアは2022年2月にウクライナ全面侵攻を開始。昨年後半からウクライナは武器や人員などの不足から、東部や南部で苦戦を強いられている。最新防空システムの追加提供を西側に要求しているゼレンスキー大統領は、アメリカの軍事支援がなければウクライナは敗北すると再三警告していた。
これに対して共和党では、強硬右派を中心に、外国に資金を送るよりもアメリカとメキシコの国境管理強化と不法移民対策を優先させるべきだとの声が高まったことから、ウクライナ支援が滞っていた。
下院はこの日、ウクライナ支援のほかに、イスラエル支援に264億ドル(約4兆円)、台湾を含むインド太平洋地域に81億ドル(約1.2兆円)の支援を提供する緊急予算案を、それぞれ可決した。イスラエル支援には人道活動支援のための予算が盛り込まれている。
さらに下院は、動画投稿アプリ「TikTok」について、中国の親会社バイトダンスがアメリカでの事業を360日以内に売却しなければ、全米でアプリ配信を禁じる法案を超党派で可決した。下院は今年3月に同種の法案を可決したが、売却期限などについて上院で懸念が出ていたため内容を修正し、今回の外国支援予算案と結び付けて上院に送ることにした。
●米下院、ウクライナ支援法案可決 9兆4000億円、武器供与再開にめど―イスラエル・台湾も 4/21
米下院は20日、ロシアの侵攻を受けるウクライナを支援するため、約608億ドル(約9兆4000億円)の追加資金を盛り込んだ関連法案を民主、共和両党の賛成多数で可決した。停滞するウクライナ支援の再開に向け、最大の関門を突破した。上院でも可決されるのは確実で、バイデン大統領の署名を経て成立する。
米国による支援が滞っているため、ウクライナは弾薬・武器の不足に直面し、劣勢に立たされている。支援再開のめどが立ったことで、戦局にも影響しそうだ。
ジョンソン下院議長(共和党)は記者団に「ロシア、イラン、中国は協力して世界を脅かしている。目を背ければ、結果は壊滅的になる」と可決の意義を強調した。バイデン氏は声明で「上院は早急に可決してほしい。すぐに署名し、ウクライナに迅速に武器を送る」と述べた。
●ウクライナ支援緊急予算案をアメリカ議会下院が可決 ロシアは「さらに破滅」と反発 予算案は上院でも採決の見通し 4/21
アメリカ議会下院はロシアの侵攻が続くウクライナを支援するための緊急予算案を可決しました。ロシアは反発しています。
アメリカ議会下院は20日、ウクライナ支援のための、日本円で9兆円を超える緊急予算案を超党派の賛成多数で可決しました。支援の一部は、返済義務のある融資の形となっています。
支援予算をめぐっては去年末に底をついて以降、与野党の対立で審議が進んでいませんでした。
ウクライナ ゼレンスキー大統領「ロシアのテロに苦しむ人々や最前線の兵士にとっても、とても重要な予算案です」
可決を受け、ウクライナのゼレンスキー大統領は「命を救う決定だ」と謝意を表明しました。
一方、ロシア大統領府は「ウクライナをさらに破滅させることになるだろう」と反発しています。
予算案はこのあと、与党・民主党が多数を占める上院で23日にも採決される見通しです。
●「ウクライナをさらに破滅させる」「テロへの直接的支援」アメリカ議会下院ウクライナ支援予算案可決にロシア反発 4/21
アメリカ議会下院でウクライナ支援の緊急予算案が可決されたことを受けて、ロシアのペスコフ大統領報道官は「ウクライナをさらに破滅させ、死者を増やすことになるだろう」と反発しました。タス通信が報じました。
また、ロシア外務省のザハロワ報道官は「ウクライナへの軍事支援はテロ活動への直接的な支援だ」とSNSに投稿。イスラエルと台湾などを支援する緊急予算案がそれぞれ可決されたことを含め、「危機を深めるものだ」としています。
●NATO事務総長が歓迎“欧米がより安全に” 米議会下院のウクライナ支援予算案可決受け 4/21
アメリカ議会下院でウクライナ支援の緊急予算案が可決されたことについて、NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長はSNSに、「ウクライナはNATO加盟国が提供した武器でロシアの戦闘能力を破壊している。これにより、欧米がより安全になる」と投稿し、歓迎しました。
●米下院、ウクライナ支援法案可決 9兆4000億円、武器供与再開にめど―イスラエル・台湾も 4/21
米下院は20日、ロシアの侵攻を受けるウクライナを支援するため、約608億ドル(約9兆4000億円)の追加資金を盛り込んだ関連法案を民主、共和両党の賛成多数で可決した。停滞するウクライナ支援の再開に向け、最大の関門を突破した。上院でも可決されるのは確実で、バイデン大統領の署名を経て成立する。
米国による支援が滞っているため、ウクライナは弾薬・武器の不足に直面し、劣勢に立たされている。支援再開のめどが立ったことで、戦局にも影響しそうだ。
ジョンソン下院議長(共和党)は記者団に「ロシア、イラン、中国は協力して世界を脅かしている。目を背ければ、結果は壊滅的になる」と可決の意義を強調した。バイデン氏は声明で「上院は早急に可決してほしい。すぐに署名し、ウクライナに迅速に武器を送る」と述べた。
●ウクライナ支援予算案可決 ゼレンスキー大統領「感謝している」 4/21
米下院がウクライナ支援の緊急予算案を可決したことを受け、ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、X(ツイッター)に「米下院、(民主・共和)両党、そして歴史を正しい軌道に乗せ続ける決断をしたジョンソン議長に感謝する」と投稿した。
ゼレンスキー氏は「米国が守ろうとする限り、民主主義と自由は負けることはない」と述べ、予算案の可決は「戦争の拡大を防ぎ、何千もの命を救い、我々両国が強くなるのに役立つだろう」と展望を語った。
ゼレンスキー氏は先月下旬、米下院のジョンソン議長と電話協議し、自ら予算案の可決を訴えていた。
●ロシア各地に無人機攻撃 国防省「50機迎撃」 4/21
ロシア国防省は20日、19日夜から20日未明にかけてロシア西部の各地に飛来したウクライナの無人機計50機を迎撃したと発表した。ウクライナ情報筋によると、同国の情報機関と軍による共同作戦だった。情報筋は、ロシアの軍需産業を支えるインフラを標的にした攻撃で、成功したと主張した。
ロシア国防省によると、26機をベルゴロド州、10機をブリャンスク州、8機をクルスク州で迎撃した。
ウクライナ国境のロシア西部ベルゴロド州のグラトコフ知事は20日、屋外にいた妊婦がウクライナ軍の攻撃で重傷を負い、搬送先で死亡したと通信アプリで明らかにした。胎児も助からなかった。 
●米でウ支援案可決 露が反発 4/21
ロシアのプーチン政権は20日、米下院によるウクライナ支援法案可決に反発した。ザハロワ外務省情報局長は通信アプリ「テレグラム」で、ゼレンスキー政権の「テロ活動の後押し」に当たると言い張った。
台湾やイスラエル支援を計上した関連法案について、ザハロワ氏は「世界的な危機を悪化させる」と主張。「中国への内政干渉、(中東)地域における前例のない事態悪化につながる」と批判した。
ロシアはウクライナ侵攻開始後、中国と関係を深めるとともに、イスラエルと対立する友好国イランからドローンの供与を受けている。
●ロシア、移民に逆風強まる テロ1カ月、労働力依存も 4/21
140人以上が死亡したロシア・モスクワ郊外のコンサートホールでの銃乱射テロから22日で1カ月。過激派組織「イスラム国」が犯行声明を出し、実行犯とされた中央アジア・タジキスタン人4人らが起訴された。外国人への警戒感が強まり、治安当局は不法移民の取り締まりを強化。ただロシアはウクライナ侵攻の長期化で労働力が不足しており、移民が欠かせないという事情も抱えている。
「テロ後は検査ばかりでうんざりだ」。モスクワの空港の出国ゲートで3月末、妻と子2人と共に書類不備を理由に足止めされたタジキスタン人男性が嘆いた。出稼ぎの建設労働者として10年勤め、帰国しようとしていた。
不法移民を取り締まるため、当局は移民労働者を抱える企業に立ち入り多数を摘発。モスクワの大学では移民の居住や市民権取得に必要なロシア語能力証明書の発給を巡る不正で職員が拘束され、学長が解任された。
ロシア科学アカデミー経済研究所によると、侵攻が始まった2022年以降に労働者不足が深刻化し、23年末時点で480万人の人手が足りていない。
●鬼滅やNARUTO、コスプレ楽しむロシア若者 1千人の熱気 4/21
「鬼滅の刃」や「ONE PIECE」に「進撃の巨人」――。ロシアでは多くの若者たちが、これらのアニメや漫画のコスプレを楽しんでいる。ウクライナ侵攻をめぐり日本や米欧と激しく対立するロシア。なぜ「非友好国」のコスプレが人気を維持できるのだろうか。
ロシア極東のウラジオストクで昨年12月2日に開かれたコスプレフェスティバルの会場には、日本のアニメや米ハリウッド映画などの華やかなキャラクターに扮した若者ら約1千人の熱気があふれていた。
日本の人気アニメ「NARUTO」(ナルト)のコスプレをした息子(7)と参加したアンゲリーナさん(33)は子どものころ、「美少女戦士セーラームーン」を見て、日本のアニメに夢中になった。
●世界の潮目が変わったのか? 4/21
米下院、ウクライナ支援の緊急予算案を可決
「もしトラ」の可能性が高まっていると報じられて久しい。
トランプは大統領に返り咲けば、アメリカはウクライナ支援から手を引くと明言している。トランプを支持する共和党も概ねこれに賛成で、だから民主党のバイデン大統領が推進しようとする「ウクライナ支援」の予算案の通過を阻止していたのだが。
米下院はウクライナへの追加軍事支援の緊急予算案を、イスラエル、インド太平洋地域への支援と抱き合わせの形で可決した。何が起こったのだろうか?
民主党が全員賛成に回ったのは当然として、共和党も112人が反対したものの、101人が賛成に回ったことで可決した。
下院は日本でいう衆議院であり、下院で通過すれば参議院に当たる上院での法案通過も確実とされる。あとはバイデン大統領がサインするだけだ。
これで、ウクライナには608億ドル(9兆4000億円)の軍事支援が行われることになる。今年2月にEUは500億ドルのウクライナへの軍事支援を決めているが、アメリカの軍事支援はこれを上回る。ウクライナ戦争において、まさにターニングポイントになりそうだ。
なぜ、アメリカはこう言う決断をしたのか?一つは、国際情勢がかつてなく悪化していることがあっただろう。
イスラエルはネタニヤフ政権が自身の生き残りのために、中東戦争を起こしかねない情勢となっている。アメリカのイスラエルへの軍事支援は、米国内からも強い批判を浴びている。米国民の批判をかわすためにバイデン政権は異例なことにネタニヤフ政権に制裁を科すことを決めたが、それとともにウクライナ支援を決めることで、追加のイスラエル支援を通過させたのだろう。中東情勢では、アメリカの民主、共和の利害はそれほど対立していない。
さらに中国は、台湾が独立志向の強い頼清徳政権になることで、東南アジアに対し露骨な示威活動を行うようになった。インド太平洋地域の支援は、対中国対策に他ならない。
ウクライナには来月にも追加の追加の弾薬が届くと言う。ウクライナ、そして西側諸国にとっては間違いなく朗報ではあるが、同時に「世界戦争」へ向けて新たなフェーズになったということもできる。核戦争の危機がかつてなく高まったのかもしれない。
これでロシア側が明らかに劣勢になれば、トランプ大統領の目はなくなるのではないか。
●モスクワはウクライナの無人機50機を撃墜したと発表 4/21
ウクライナは夜通しロシア全土にドローンを集中砲火し、同国を標的としたとみられる攻撃を行ったとモスクワの国防省が土曜日に発表した。
防空部隊はロシアの8地域上空で50機の無人機を撃墜し、その中にはウクライナ国境に近い同国西部のベルゴロド地域上空で26機の無人機が含まれていた。 ベルゴロド州のヴャチェスラフ・グラドコフ知事はソーシャルメディアに、夜間の爆撃で爆発により自宅で火災が発生し、足を骨折した女性と彼女の世話をしていた男性の2人が死亡したと書いた。
同氏は、土曜日後半の爆撃で妊婦と胎児も死亡したと付け加えた。
伝えられるところによると、ロシア西部と南部のブリャンスク、クルスク、トゥーラ、スモレンスク、リャザン、カルーガ地域とモスクワ地域上空で無人機が破壊されたという。
ロシア国防省は、ウクライナのスホーイSu-25戦闘機を撃墜したと発表した。 詳細は提供されておらず、これらの申し立てを独自に検証することはできません。
ウクライナ当局者は通常、ロシア領土への攻撃についてコメントを拒否している。 しかし、ドローン攻撃の多くはロシアのエネルギーインフラに向けられたものとみられる。
カルーガ地域の首長であるウラジスラフ・シャプシャ氏は、ドローン攻撃により変電所で火災が発生したと述べ、ブリャンスク州のアレクサンダー・ボゴマス知事とスモレンスク州のワシリー・アノーヒン知事も燃料・発電施設で火災が発生したと報告した。
ここ数カ月、ロシア領土への攻撃激化の一環として、ロシアの製油所と石油ターミナルがウクライナのドローン攻撃の優先標的となっている。
ウクライナの無人機開発者らは数か月間兵器の範囲を拡大しており、キエフはそれを補おうとしている 戦場の欠陥 兵器と軍隊において。 ウクライナが米国のさらなる軍事援助を待っている間、無人航空機も手頃な価格の選択肢である。
モスクワは金曜夜、2014年から2017年にかけてウクライナでクレムリン支援の分離主義者と戦ったことで知られるアメリカ国民がロシア占領下のドネツク地域で死亡したと発表した。
64歳のラッセル・ベントレー氏はもはや軍事作戦には関与しておらず、以前はロシア国営通信社スプートニクで働いていた。 彼の死は、彼の元大隊と国費のRTテレビチャンネルの責任者であるマルガリータ・シモニャンによって確認され、彼を「本物のアメリカ人」と評した。 彼はコールサイン「テキサス」を使用し、米国を離れる前に麻薬密売の罪で刑務所で過ごした。
ベントレーさんの死因に関する情報は明らかにされていないが、地元警察は先に4月8日にアメリカ人が行方不明になっていると報告していた。
一方、ウクライナ空軍が土曜日に発表した発表によると、ロシアはミサイル7発でウクライナを夜間攻撃し、防空部隊はミサイル2発と偵察無人機3機を撃墜した。
ウクライナ・オデッサ地域のオレフ・キペル知事は、弾道ミサイルが一夜にしてインフラを破壊したと述べたが、それ以上の詳細は明らかにしなかった。 ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、金曜の黒海都市への前回の攻撃で2つの食料輸出ターミナルを含む港湾インフラが破壊されたと述べた。
ウクライナ・ハリコフ州のオーレー・シニョポフ知事は、ロシアの爆撃によりヴォフチャンスク市でも81歳の退職者を含む男性2人が死亡したと述べた。
同氏は、9階建て住宅ビルが爆撃を受け、60歳の女性が負傷したと付け加えた。
地元知事のセルヒー・ライサク氏は、ドニプロペトロウシク地域でも54歳の男性が砲撃で死亡したと述べた。
攻撃に加えて、ウクライナ警察は、同国のヴィーンヌィツャ地域の検問所で警察官を殺害したウクライナ兵2人を捜索していると発表した。
土曜日の早朝、マキシム・ザリツキーさん(20歳)が定期点検のため車を止めた後、部隊が発砲した。 ザレツキーさんのパートナーは負傷したが、攻撃は免れた。
ウクライナ地上軍司令部はソーシャルメディアへの声明で、2人が軍人であることを認めた。 彼らはザレツキーさんの死を「取り返しのつかない損失」と表現し、彼の殺害の罪を犯した者は「厳罰に処せられる」べきだと述べた。
さらに「地上軍司令部は包括的かつ公平な捜査にあらゆる支援を提供する」と付け加えた。
●情勢緊迫で迂回ルート余儀なくされる日欧勢に対し 中国の航空・海運会社が優位に 4/21
中東やウクライナの情勢を受け、紅海やシベリア上空を通航できなくなった日本や欧州の会社に対し、最短距離を選択できる中国の航空や海運会社が優位に立っていることが分かりました。
ヨーロッパとアジアを結ぶ船の輸送ルートは、これまではエジプトのスエズ運河を通り、紅海を航行するルートが最短、最速でしたが、武装派組織フーシ派による攻撃や乗っ取りが相次いだことで、日本やヨーロッパの海運会社はアフリカの最南端・喜望峰を迂回するルートを余儀なくされています。
このため、輸送にかかる時間や燃料コストも大幅に増えています。
一方、中国の貨物船はフーシ派の標的になっておらず、従来のルートで荷物を運べるため、最近、中国の貨物船を利用する荷主が増えています。
イギリスの海運情報会社「ロイズ・リスト・インテリジェンス」によりますと、今年1月に紅海を通航した貨物船のうち、中国船の割合は去年12月が15%前後だったのに対し、28%にまで増えたということです。
また、空の便でも日本やヨーロッパの航空会社はロシアのウクライナ侵攻以降、シベリア上空を通過できず、北極圏や中央アジアなどを大きく迂回(うかい)するため飛行時間が2時間余り、余計にかかっています。
これに対し、中国の航空会社はシベリア上空を最短距離で飛行できることから、航空運賃の競争においても優位に立っていることが浮き彫りになっています。 
●ロシア、米のウクライナ支援に反発 ザハロワ情報局長「一般のウクライナ人は『大砲の餌食』として死を強要される」 4/21
米下院でウクライナ支援緊急予算案が可決したことを受け、ロシア外務省のザハロワ情報局長は21日「米国の支配層は党派を問わず、ウクライナの政権に武器を与えて最後の一人まで戦わせるのだ」と反発した。「ロシアに対するハイブリッド戦争への深い介入は、米国にとってベトナムやアフガニスタンと同様の大失敗に終わる」とも警告した。
米国の支援によって「ゼレンスキー(ウクライナ大統領)らの苦悩は長引き、一般のウクライナ人は『大砲の餌食』として死を強要される」と主張。ロシアの「特別軍事作戦の目標は完全に達成される」と強調した。
●米議会ウクライナ支援へ前進 対ロシアの態勢立て直しは時間との戦い 4/21
米下院で停滞していたウクライナ支援の法案が20日、ようやく可決された。
最大の支援国である米国からの武器・弾薬提供が止まり、窮地に追い込まれていたウクライナでは安堵(あんど)が広がるが、この間、ロシア軍は一気に攻勢を強め、ミサイル、ドローン(無人機)攻撃は激化する一方だった。昨年来の劣勢を立て直すには相当な時間がかかると見られる。
ウクライナのゼレンスキー大統領は20日のビデオ演説で、「米国のリーダーシップは、国際秩序維持のため決定的に重要だ。我々はこの戦争を終わりに近づける」と歓迎した。北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は同日、Xに「欧州と北米の全体がより安全になる」と投稿。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長も同日、「大西洋を越えた同盟は自由と民主主義を支持することで団結している」とXに投稿した。
今年に入って、ウクライナは戦場でも、前線から離れた都市部でも、厳しい状況に立たされてきた。米国はウクライナ支援の予算を使い果たし、2022年2月のロシアの侵攻開始以来、ほぼ隔週のペースで続いてきた軍事支援は昨年末で途切れた。今年は3月に、直近に必要とされる武器・弾薬が在庫から届けられただけだ。前線では使える砲弾の量がロシア軍の10分の1にまで減ったとされ、都市部ではロシア軍のミサイル、ドローンに対抗する迎撃弾が足りず、住民の犠牲が増えていた。
●9兆円超のウクライナ追加支援予算案、米下院が超党派の賛成多数で可決…軍事支援再開の見通し 4/21
米下院は20日、ロシアの侵略を受けるウクライナ支援のための約610億ドル(約9兆4000億円)の追加予算案を超党派による賛成多数で可決した。慎重論が根強い野党・共和党が多数を占める下院の審議を突破したことで、米国のウクライナへの軍事支援が再開する見通しになった。
法案は近く、民主党が主導権を握る上院でも可決される見込みだ。バイデン大統領は20日の声明で、速やかに署名・成立させる考えを示した。
採決は全議員431人のうち賛成311、反対112、棄権などが8だった。民主党は投票した全員が賛成した。共和党のマイク・ジョンソン下院議長が採決を主導したが、共和党は半数超が反対した。
追加予算は、弾薬や兵器の供与などに充てられる。ウクライナへの経済支援約100億ドルについては、共和党のトランプ前大統領の主張を採り入れ、返済免除も可能な融資とする規定が盛り込まれた。
約260億ドルのイスラエル支援予算案や、台湾を含むインド太平洋地域の同盟国やパートナーに約80億ドルを支援する予算案など他の3法案も可決された。上院では総額約953億ドルの一括追加予算案として可決されていたが、下院では4法案に分割された。

 

●ウクライナ大統領、米国に「感謝」 支援案の下院可決で 4/22
ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、米下院でウクライナ支援を盛り込んだ予算案が可決したことを受けて、SNS「テレグラム」への投稿で、米国に謝意を示した。
ゼレンスキー氏の投稿の前には、米下院でウクライナ支援法案が賛成311票、反対112票で可決していた。ウクライナ支援法案は、イスラエルやインド太平洋地域への支援を盛り込んだ950億ドル(約14兆7000億円)規模の外国支援パッケージの一部。ウクライナに割り当てられた追加予算は約610億ドル。
ゼレンスキー氏は今回の決定によって、「歴史は正しい方向に進む」と述べた。
ゼレンスキー氏は「民主主義と自由は常に世界的な意義を持ち、米国がそれを守る手助けをする限り、破綻(はたん)することはない」と指摘。下院で可決された予算案が戦争の拡大を防ぎ、多くの人々の命を救い、両国の関係を強化するだろうなどと語った。
米下院では過去数カ月にわたり、一部の共和党員の抵抗によって、ウクライナ支援法案の審議が滞っていた。今回の予算案の通過は、ウクライナとロシアとの戦いの転換点になる可能性があるとの見方も出ている。
ウクライナのクレバ外相は下院での採択の後、CNNの取材に答え、欧州でより大規模な戦争が勃発する危険性が下がったと述べた。クレバ氏は、ロシアのプーチン大統領がウクライナで敗北することは米国の安全と繁栄を守ることにつながると言い添えた。
●ウクライナ支援予算案の米下院可決、ゼレンスキー大統領「勝利するチャンス出てくる」 4/22
ロシアの侵略を受けるウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は21日、米NBCニュースのインタビューで、ウクライナ支援のため約610億ドル(約9兆4000億円)の追加予算案が米下院で可決されたことについて「必要な兵器が手に入れば、ウクライナが勝利するチャンスが出てくる」と述べ、歓迎した。上院での法案可決と速やかな支援実施も訴えた。
ゼレンスキー氏は、ウクライナ軍が保有する兵器の射程外から攻撃する露軍に対抗するため、「長射程の兵器と防空ミサイルが優先的に必要だ」と強調した。自国の領土の一部をロシアに割譲する形での停戦案については「プーチン(露大統領)を信じてはならない」と述べ、拒否する考えを改めて示した。
一方、露国防省は21日、露軍がウクライナ東部ドネツク州の村ボフダニウカを制圧したと発表した。米国の軍事支援がウクライナに届く前に露軍が攻勢を強める可能性が指摘されている。
●プーチン氏の逮捕状も審理 日本人初のICC所長、赤根智子氏の決意 4/22
戦争犯罪など重大な犯罪に関与した個人を訴追する国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)の所長に、3月、日本人で初めて就任した赤根智子氏(67)が朝日新聞のインタビューに応じた。紛争が多発する世界での司法の役割、日本が世界に果たせる役割などを聞いた。
――もとは日本の検察官です。なぜICCの「裁判官」に選ばれたのでしょうか。
ICCは2002年設立で、日本は07年の加盟後、2人続けて裁判官を出していました。3人目を出すとなったとき、ICCとしても扱う事件が増えていて、刑事事件の実務家を、となったのだと思います。
――ICCの所長は候補者から18人の裁判官の互選で選ばれます。なぜ立候補を決断したのでしょう。
以前から私を所長として推してくれる人がいましたが、なかなか決断できない状況が続いていました。一番は語学の問題です。裁判官のほとんどは英語と仏語が堪能ですが、私は英語しかできず、それもネイティブではない。大変なことがたくさんあります。
決断したのは就任の7、8カ月前だったと思います。理由は二つ。今、世界で耳目を集める戦争犯罪や人道に対する罪が増えています。ICCがすべてを解決できるわけではありませんが、検察官の経験を持つ自分だから貢献できる部分があるのではないかと思いました。 ・・・ ロシアのウクライナ侵攻、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘などを抱える国際社会。ICCが戦争犯罪にどう向き合うのか、プーチン氏への逮捕状発行を審理したことでの生活の変化 ・・・
●ロシア モスクワ郊外のテロ事件から1か月 治安対策も課題に 4/22
ロシアの首都モスクワ郊外で140人以上の市民が死亡したテロ事件から22日で1か月となります。この事件では、中央アジアの出身者が実行犯として起訴され、プーチン政権は、こうした国々からの不法移民の大規模な取締りを行うなど、政権基盤を揺るがしかねないテロや治安への対策に神経をとがらせています。
ロシアの首都モスクワ郊外のコンサートホールで先月22日に起きたテロ事件では、140人以上の市民が死亡し、ロシアで過去20年で起きたテロ事件で最悪の被害となりました。
過激派組織IS=イスラミックステートの戦闘員による犯行とみられ、ロシアの治安当局は、実行犯として中央アジアのタジキスタン国籍の4人を起訴しました。
ロシアでは、テロへの脅威を感じる人が増えているという調査結果も出ていて、NHKがモスクワの中心部で市民に話を聞いたところ「警察は常に目を光らせてほしい」と訴える女性など、中央アジアからの移民への対策を強化すべきだという声が相次ぎました。
内務省は、今月10日、モスクワにある建設現場などあわせて1万か所以上を対象に不法移民の取締りを行ったと発表しました。
先月の大統領選挙で圧勝したプーチン大統領にとって、来月7日から通算5期目となる新たな任期が始まりますが、政権基盤を揺るがしかねないテロや治安への対策に神経をとがらせています。
市民からは移民への取締り強化すべきとの声
ロシアの首都モスクワ郊外で起きたテロ事件の実行犯が中央アジア出身のイスラム過激派とされることから、モスクワの市民からは、当局は移民への取締りを強化すべきだという声が聞かれました。
男性は「国境警備隊は警備を続けているが、それでもイスラム過激派との戦いは起きているしこれからも続くのだろう」と述べ、テロの脅威が続いていると懸念を示しました。
そして治安当局の対応は十分ではなかったとした上で「少なくともウクライナへの特別軍事作戦が始まってからは移民は退去させるべきだった」と述べ、移民対策を強化すべきだと訴えました。
また、テロが起きた当時、現場に友人がいたという男性は「友人は幸いにも生き延びたが負傷した。移民政策のルールはより厳しくするべきだ」と話していたほか、女性は「警察は秩序を保ち何かが起きた時だけでなく常に目を光らせてほしい」と話すなど、移民への取締りを強化すべきだと訴えました。
一方、別の女性は「なぜ普通の人々がこんな虐殺に巻き込まれたのか本当に理解できない」と涙ぐみながら話す一方、当局が移民対策を強化することについては「ロシアは異なる多くの民族がいるので取締りを厳しくすることは危険で恐ろしいことだと思う。われわれは多民族国家でありいつも良好な関係を築いてきた」と述べ、国内の民族間であつれきが生じかねないと懸念を示していました。
●アメリカの追加支援で、ウクライナはロシアの進攻を遅延できるか 4/22
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は21日、米連邦議会下院がウクライナに追加軍事支援を提供するための緊急予算案を可決したことについて感謝を述べた。この支援が数千人の命を救うと話した。
米下院は20日、数カ月に及ぶ膠着(こうちゃく)状態の後、ウクライナに608億ドル(約9.4兆円)の軍事支援を提供する予算案を、超党派の賛成多数で可決した。
一国の未来が政治家によって決定されることは珍しくないが、国の存亡そのものが、8000キロ以上も離れた場所での議決に左右されるというのは、異常としか言いようがない。
ウクライナにとって、この軍事パッケージを待つ半年間は、不満がたまるだけでなく、犠牲もかさむものだった。
弾薬不足によって、多くの命と領土が奪われた。
ウクライナ政府にとって朗報が少なくなっているだけに、アメリカの支援再開は大きな出来事だ。アメリカの兵器が到着すれば、苦戦するウクライナ軍は、持ちこたえるだけでなく、それ以上の成果を出せるだろう。だが、アメリカの援助は全てを解決する魔法の決定打にはならない。
では、この軍事支援はどのような意味を持つのか。
支援には防衛システムや、中長距離ミサイル、砲弾が含まれるとみられている。
ウクライナでこうした兵器が不足していたことから、ロシア軍は数百キロ平方メートル以上の領土を奪取していた。
支援が到着すればウクライナは、空からの攻撃で優位に立つロシアに挑戦できるかもしれない。補給線を妨害し、部隊の前進を遅らせることも可能かもしれない。
BBCがキーウの中心地でたまたま出会った兵士のヴィタリーさんは、前向きな材料に集中するのが重要だと話した。
「1セント1セントに意味があります」
「本当に必要だ。何もかもが。弾倉1個、1セント、前向きな考え一つ、こうしたものすべてが」
私たちが今年3月に東部ドネツク地方を取材した際、砲撃音のほとんどはロシア側から聞こえると兵士たちは話していた。コスチャンティニウカやクラマトルスクといった街は、これから起こるかもしれない事態に備えていた。今回の援助がこうした街を救うかもしれない。
支援を得ても、ウクライナがたちまち占領地域を次々と解放しロシアを押し戻せるようになるわけではない。しかし、領土解放とロシア後退という将来的な可能性の、余地を作れるようになる。
ウクライナとアメリカの両政府は、アメリカの助けがなければウクライナは敗北するという認識で一致している。
「ないよりは遅れた方がまし」
雨の日曜日午前、キーウの地下鉄構内はいつでも外より暖かい。私たちはそこでマキシムさんと話した。アメリカの支援がやっと可決されたことに喜んでいた。
「本当にうれしい。これほど時間がかかったのは少し残念だが、何はともあれ、まったくないよりは遅れたほうがましです」
マキシムさんは特に、ウクライナは領土と引き換えにロシアと和平交渉をすべきかという議論が広がっていたことにいらだっている。
「ロシアは交渉などしたがらない」と、マキシムさんは理由を説明した。
「ロシアは、ヨーロッパやアメリカがこの戦争を終わらせるために考えているような、妥協は望んでいません。ロシアはすべてを欲しがっています」
私たちは、息子の手を引いて電車を降りてきたウィタさんとも話した。
「援助なしでどうやってウクライナが生き延びられますか?」と、ヴィタさんは問いかけた。
「無理です。そんな軍隊や兵器はウクライナにはありません」
それからヴィタさんは声を震わせて、「不可能です。子供たちが生き延びるために、本当に助けを必要としています。だから待っているんです」と話し、息子の方を見てうなずいた。
この6カ月間で明らかになったのは、ロシアの優位性だけではない。欧州がアメリカと同水準の支援を提供できないという事実も、あらわになった。
ウクライナ国立戦略研究所のミコラ・ビエレスコフ氏は、「我々は、アメリカの次の援助パッケージが通らないかもしれないという仮定について考える必要がある」と話した。
「だからこそ、イギリスや欧州大陸がウクライナの要請に見合うよう、兵器製造を拡大するかが重要です」
ウクライナの現実的な今年の目標は、このアメリカの支援によって前線を安定させることだと、ビエレスコフ氏は述べた。
西側諸国の結束が戻ってきたとはいえ、救援が実際に到着するまでには時間がかかる。それはウクライナが常に抱える問題だ。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、軍事費に関してこれほど多くの政治的ハードルを交渉する必要がないのは確かだ。
民主主義側の遅れは、ウクライナ国外の同盟国に限った話ではない。ウクライナ国内には、自国の戦争努力のために十分な兵士を動員するという問題がある。先には、議論を呼ぶ徴兵法が、数カ月にわたる議論と修正の末に可決されたばかりだ。
ゼレンスキー大統領にとっての現在の課題は、政治と戦闘を切り離して考えることだ。ゼレンスキー氏は今後、アメリカからの最新支援が実際に実を結ぶよう、結果を出さなくてはならないという圧力にさらされることになる。
●世界経済の「分断化」、実はインフレ長期化の要因では…ウクライナ危機以降に深刻化とIMF 4/22
国際通貨基金(IMF)が4月16日に発表した春季の「世界経済見通し(World Economic Outlook)」は、2024年の世界経済(実質GDP)成長率を前回の予測値から0.1ポイント引き上げ、3.2%とした。
今回の見通しには、「安定かつ緩慢:まちまちな様相の中、強靭性も(Steady but Slow: Resilience amid Divergence)」とのサブタイトルが付された。
インフレの高止まり、欧州および中国の低迷、二つの地域にまたがる戦争の継続など逆風が吹き荒れているにもかかわらず、大崩れすることなくパンデミックからの回復、その先の成長へと向かう世界経済の近況を端的に表現していると、筆者は感じた。
ただし、大崩れを回避できている主な要因は、アメリカの底堅い経済成長であることには留意しなくてはならない。
アメリカの2024年の成長率は2.1%から2.7%へと(1月発表の前回の世界経済見通しから)3カ月で0.6%ポイントも引き上げられている。
それに対し、ユーロ圏の成長率は0.9%から0.8%へとマイナス0.1%ポイント、日本は0.9%で横ばい、中国も4.6%で横ばいと、アメリカ以外の国々は世界経済の見通し上方修正にはほとんど貢献できていない。
身も蓋もない言い方だが、アメリカだけであれば「安定」ですっきり説明できるところを、他国の状況も勘案すると「緩慢」を付け加えざるを得ない、そんな世界の実情がある。
やはり「スローバリゼーション」に向かう世界
1年前、2023年4月の世界経済見通しでは、地政学リスクを背景に海外直接投資の流入する国と流出する国の「分断化」が進み、世界全体として見た時にアウトプット(生産量)が減っていくとの問題意識が示された。
そうした展開は言ってみれば「グローバリゼーション(globalization)」の「スローダウン(Slowdown)」であり、IMFは造語を使ってそれを「スローバリゼーション(slowbalization)」と表現した。
今回の見通しではスローバリゼーションという造語こそ使われていないものの、最初のコラム(Box 1.1)に「分断化は国際貿易にすでに影響を及ぼしつつある(Fragmentation Is Already Affecting International Trade)」と題した分析が登場する。
同コラムの共同執筆者、アンドレア・プレスビテロ氏(IMF調査局シニアエコノミスト)とペティア・トパロヴァ氏(同アドバイザー)はまず、世界経済を二つの仮想ブロックに分けた。
一つはオーストラリア、カナダ、EU(欧州連合)、ニュージーランド、アメリカから成るブロック、もう一つは中国、ロシアおよび2022年3月の国連総会でロシア側についた(=非難決議に反対した)国からなるブロックで、それぞれについてロシア・ウクライナ戦争の前後での貿易変化率を算出し、減少幅を比較した【図表1】。
   図表1 ロシア・ウクライナ戦争前後での貿易成長率の格差 / ロシア・ウクライナ戦争前後での貿易成長率の格差。戦前は2017年1Qから2022年1Q、戦後は2022年2Qから2023年3Qについて、両期間の四半期ごとの貿易変化率(前期比)の平均を算出し、格差を割り出した。
上の図表に示したように、貿易全分野(青の棒グラフ)の変化を見ると、ブロック内(左)とブロック間(右)の減少幅には倍以上の開きが見られる。
ロシア支持の国々と西側諸国の間での貿易は、それぞれのブロックに属する国同士の貿易以上に大きく落ち込んだことになる。
また、同じ変化を戦略分野(機械や化学製品など、橙の棒グラフ)だけに限って見ると、両ブロック内の貿易の変化率はマイナス1ポイント以下とほぼ変化が見られないのに対し、ブロック間のそれは大幅な減少を記録している。
ロシア支持の国々と西側諸国の間での貿易の冷え込みは、戦略分野において特に顕著というわけだ。
なお、上記のコラムは米中間の貿易関係が弱くなっていることにも特に言及している。アメリカの輸入総額に占める中国のシェアは2017年の22%から2023年の14%へとおよそ8ポイント減少したという。
2017年を比較の起点としているのは、トランプ政権発足後に米中対立が包括化、加速した経緯を受けてのものだ。
同コラムは、アメリカが中国に有していた拠点が2017年から2022年の間にメキシコやベトナムなどと再配置された結果、サプライチェーン(供給網)が間延びし、効率性が低下した可能性があるとも指摘する。
筆者は2023年4月のBusiness Insiderへの寄稿で、以下のように分析している。
「企業が海外直接投資のリロケーション(再構築)の検討を進める中で、企業が本拠を置く国(多くは先進国)と政治的に距離がある国(多くは新興国)は、直接投資の流出に見舞われやすくなる。専門家でなくとも直感的に想像される展開ではないか。結果として、海外直接投資が『流入』する国と『流出』する国の分断化が進み、世界全体として見た時にアウトプット(生産量)が減って貧しくなっていくというのが(2023年春季世界経済見通しの)第4章で展開されるIMFの問題意識だ」
IMFの1年前の懸念通り、世界経済の分断と減速は進展している、そう評価せざるを得ない現状がある。
世界経済の分断が生む「生産性の低下」
今回発表された最新の世界経済見通しでは、前節で紹介したコラム以外にも「分断」のフレーズが頻出する。全体を検索してみると、全202ページに計45カ所も出てくる。世界経済を説明する上で重要なファクターとなっていることは間違いない。
例えば、世界経済の数あるダウンサイドリスクの一つとして、「地経学的な分断の強まり(Geoeconomic fragmentation intensifying)」が挙げられている。IMFはその帰結を次のように明記している。
「証券投資および直接投資のフローが削減され、技術革新や新しい科学技術の採用も遅れる。また、資源取引も制限されるため、生産量や資源価格の乱高下につながる」
これも1年前の見通しで再三懸念されていた点であり、IMFは上記の記述部分に、2023年の春季世界経済見通しやその翌日に同基金が発表した「国際金融安定報告書(Global Financial Stability Report)」を参照せよと付記している。
貿易や直接投資のような国境を越えた経済活動の効率性が低下し、従来以上に時間やコストをかける必要が出てきていることが、世界各国の中央銀行による努力も虚しく思い通りに制御できないインフレの背景にあるのではないか。
従来以上に時間やコストをかける必要が出てきたというのは、煎じ詰めれば生産性の低下を意味する。経済活動において生産性が損なわれれば、価格は抑制されず、上昇方向の圧力が生じる。
そのようにインフレや高金利が構造的に粘着性を持ち始めているのだとすれば、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに踏み切るまでの道のりは投資家の期待とは裏腹にまだまだ長く、ついに利下げに至ったとしても大きな下げ幅は期待できないのかもしれない。
円安に悩む日本にとってはますます頭の痛い話だ。
日本にとっては「追い風」な面も
ここまで述べてきたような世界経済の変化は、西側陣営に属する日本から見れば、ブロック内(つまりは西側諸国から)の直接投資を引き込みやすい国際環境が生まれていると、ポジティブに理解することもできる。
実際、昨今の直接投資の動きを見ると、グーグルが1000億円、アマゾンが2兆2600億円(クラウド部門のAWS経由)、マイクロソフトが29億ドル(約4400億円)、さらに最近発表されたオラクルの80億ドル(約1兆2000億円)など、クラウド大手が軒並みデータセンター増強に向けた日本投資を発表している。
なお、グーグルは日米太平洋諸国間のデジタル接続の信頼性を向上させることを目的に、近ごろさらに10億ドル(1500億円)を投じて海底ケーブルを敷設する構想も発表した。
本稿で指摘したような世界経済の変容も踏まえ、容易に終焉まで導けそうにない円安をニューノーマル(新常態)と仮定し、「円安を活かす」カードとして対内直接投資を促進していく戦略は、有力かつ不可欠の選択肢と筆者は考える。
すでにその胎動は見られ始めており、そのあたりの議論は前回寄稿で詳述したのでぜひご参照いただきたい。
●ロシア軍がNATO加盟国へ攻撃準備、ドイツ軍トップが警戒「5〜8年以内に」プーチン大統領、新たな侵攻に打って出る恐れ 4/22
ロシア軍のウクライナ侵攻開始から約2年2カ月が経過したが、プーチン大統領はさらに戦線を拡大するのか。ドイツ軍トップは、「ロシア軍が5〜8年以内に北大西洋条約機構(NATO)加盟国を攻撃する準備が整う」と述べた。
ロイター通信などによると、ドイツ軍トップのカルステン・ブロイアー総監は17日、訪問先のポーランドで記者団に対し、「(ロシア軍に)攻撃されるとは言わないが可能性はある。私たちが見据えるのは5〜8年後の脅威だ」と述べ、ロシアがウクライナ戦争の影響を受けた軍を再建すれば、5〜8年以内にNATO加盟国を攻撃する軍事的準備が整う可能性があると述べた。「ロシアは大量の軍需品を生産しているが、全てをウクライナの前線に投入しているわけではない」とも指摘した。
NATO加盟国32カ国のうち、ノルウェー、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランドの6カ国がロシアと国境を接している。欧州諸国はロシアへの抑止力強化で軍備増強を進めている。
米国は、ロシアが中国や北朝鮮、イランとの結び付きを通じて兵器生産を強化していると警戒している。バイデン米大統領は昨年12月、「もしプーチン氏がウクライナを取れば、そこで止まらない」と述べ、ロシアがウクライナに勝利すればNATO加盟国を攻撃する恐れがあると発言した。
これに対しプーチン氏は、「ロシアがNATO加盟国と戦う理由や利益は経済的にも軍事的にも地政学的にもない」と侵攻の意図を否定している。一方で昨年12月には、ロシア軍を最大17万人増員して132万人に増やす大統領令に署名するなど軍の増強を続けている。
今年2月には北欧のスウェーデンがNATOに加盟した。バルト海をNATO加盟国が取り囲む形となり、同海に拠点のひとつを置くロシア海軍が封じ込められる可能性が指摘されている。
プーチン氏は3月の大統領選で「圧勝」し、5月の就任式で正式に次期大統領に就く。任期は2030年までの6年間ある。ドイツ軍トップが警戒するように、プーチン氏は任期中に新たな侵攻に打って出る恐れもある。
●ウクライナの被害建物からアスベストを検出 日本企業が分析 4/22
ロシアの攻撃で破壊されたウクライナの住居などの建材に、発がん物質のアスベスト(石綿)が高確率で含まれている危険性があることが判明した。理科学機器メーカー「日本電子」(東京都昭島市)が現地の建材など10点を特別な許可を得て輸入、分析したところ、全てから検出された。専門家は「建物の修復などウクライナの復興には石綿対策が不可欠だ」と訴えている。
ウクライナはかつて、世界有数の石綿輸入国だった。近隣のロシアやカザフスタンで産出されるうえ、寒冷地のため、断熱材などとして使われたケースが多いとみられる。2022年9月には石綿の使用を禁じる石綿禁止法令が成立。同年2月のロシアによる侵略を受け、石綿を禁じる欧州連合(EU)への加盟をにらんだ条件整備の一環だったとされる。
破壊された建物の石綿の調査に乗り出したのは、国連機関の依頼を受けて建物の修復を進めてきた米国の災害復旧コンサルタント会社「ミヤモト・インターナショナル」(MI)。首都キーウ(キエフ)や東部ハリコフなどの4地点にある集合住宅や学校の屋根材、地下建材、パイプなど10点を収集した。
これらの分析を日本電子が無償で担当。日本では石綿含有製品の輸入が禁止されているため、国際的な「試験研究」を目的に労働基準監督署に「石綿分析用試料等輸入使用届」を提出して許可され、23年11月に試料が届いた。
外部の分析機関とも協力し、今年2月まで2種類の電子顕微鏡を使うなどして精査した結果、現地で広く使われていたとされるクリソタイル(白石綿)が10点全てから検出された。試料に含まれていた石綿の割合は重量比で5%前後が多く、ハリコフの集合住宅の屋根材は7・8%の濃度だった。日本では石綿が0・1%以上の物を製造・使用禁止の対象にしている。
石綿被害に詳しい高橋謙・産業医科大名誉教授は「今回の分析結果は、現地で働く人や住民に石綿に対する注意喚起、対策措置をとってもらう根拠となる。復興作業を進める際には石綿対策の費用が必要だと国際機関などに認識してもらう必要もある」と話している。
MIは集合住宅など7000世帯以上の修復を実施したが、石綿の含有を予想して、がれき処理の際の注意点をまとめたガイダンス(ウクライナ語)を作成して臨んでいた。宮本英樹社長は「被災建物の再建計画を立案する上で大変有益な情報になった。ガイダンスが普及するきっかけになれば」と話している。
●米議会、イスラエル支援などに4兆円 パレスチナ「戦争拡大」と反発 4/22
米下院は20日、イスラエル支援やパレスチナ自治区ガザへの人道支援などを盛り込んだ法案を超党派の賛成で可決した。イスラエル軍が攻撃を続けるガザでは3万4千人以上が死亡しており、イスラエルに対する米国の武器支援には国内外から批判の声が出ている。今回の支援は、どのようなものなのか。
米下院が可決したイスラエル支援法案は、総額約264億ドル(約4.1兆円)。「イランやその代理勢力から身を守ろうとするイスラエルを支援する」として、防空システムの強化や先進的な兵器の調達などに必要な費用が盛り込まれている。
主な項目は、「アイアンドーム」などの防空システム強化に40億ドル▽先進的な兵器や装備品などの調達に35億ドル▽最近の中東情勢に応じた米軍の作戦に24億ドルなどだ。食料や避難所の提供を含むガザなどへの人道支援にも、92億ドルを計上した。
法案はさらに、パレスチナ難民を支援する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への送金を禁止している。UNRWAは、一部の職員が昨年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃に関与した疑いがもたれ、米欧の批判を浴びていた。
●世界の軍事費、最高額を更新 中東情勢、ウクライナ侵攻が影響 4/22
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は22日、23年の世界の軍事費(支出、一部推計)が前年比6・8%増の2兆4430億ドル(約377兆7610億円)だったと発表した。9年連続の増加で、SIPRIがまとめ始めた1988年以降で最高額を更新。ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢が影響した。上位10カ国は、いずれも前年から軍事費を増やしており、世界の軍縮の流れは大きく後退している。
上位5カ国は米国、中国、ロシア、インド、サウジアラビアで、合計が世界全体の61%を占めた。SIPRIは欧州とアジア・オセアニア地域、中東で増加が顕著だったとして「前例のない軍事費の増加は、世界の安全保障環境の悪化を反映している」と分析した。
ウクライナは前年比51%増の648億ドルで前年の11位から8位となった。イスラエルは24%増の275億ドル。日本は11%増の502億ドルで10位だった。479億ドルの韓国が11位で続いた。3位のロシアは24%増の推計1090億ドルとなった。
●世界の軍事費支出過去最大の377兆円 9年連続の増加 ウクライナや中東情勢影響 4/22
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は22日、2023年の世界の軍事費支出(推計含む)が前年比6・8%増の2兆4430億ドル(約377兆7610億円)だったとする年次報告を発表した。9年連続の増加で、SIPRIが報告をまとめ始めた1988年以降で最高額を更新した。
ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢が支出増の要因とされ、09年以来15年ぶりに世界全域で支出が増加。特に欧州とアジア・オセアニア、中東で増加が目立ったとしている。
軍事費の支出が増えた上位5カ国は米国、中国、ロシア、インド、サウジアラビアで、5カ国合計で世界全体の61%を占めた。
米国は前年比2・3%増の9160億ドルで、北大西洋条約機構(NATO)加盟31カ国(23年当時)の合計1兆3410億ドルの68%を占めた。
ウクライナを侵略したロシアの脅威をにらみ軍備増強に力を入れる欧州のNATO加盟国の軍事費支出が加盟国全体に占める割合は28%で、過去10年間で最大となった。
一方、ロシアは前年比24%増の推計1090億ドル。ロシアがウクライナのクリミア半島を併合した14年比では57%増となった。23年の軍事費は政府支出の16%、国内総生産(GDP)の5・9%を占めた。
対するウクライナは前年比51%増の648億ドル。ウクライナは加えて、米国からの254億ドルを含む少なくとも350億ドルの軍事支援を外国から提供された。軍事費支出と軍事支援の合計額は、ロシアの軍事費支出の91%に相当する額に上ったことも分かった。
中国は推計2960億ドルで29年連続増加した。日本は前年比11%増の502億ドル。台湾も11%増の166億ドルで中国の脅威をにらんで周辺国・地域が防衛態勢を強化している実態が浮き彫りとなった。
●ECBの6月利下げ、中東情勢が影響することはない=仏中銀総裁 4/22
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのビルロワドガロー仏中銀総裁は21日、緊迫する中東情勢がエネルギー価格を押し上げる可能性は低く、ECBの6月利下げ開始計画に影響を与えることはないとの認識を示した。
経済紙レゼコーとのインタビューで「サプライズがなければそれほど長く待つ必要はない」と指摘。「それに続いて現実的なペースでさらなる利下げが行われるはずだ」とし、今のところ中東情勢が来年までにインフレ率を2%まで低下させるという目標を脅かすことはないと述べた。
●インド、23/24年の所得税収が17.7%増 富裕層や企業の収入拡大 4/22
インドの直接税中央委員会(CBDT)は21日、2023/24年度(24年3月終了)の所得税税収が前年比17.7%増の約2350億ドルだったと明らかにした。超富裕層の所得や企業の利益が増加したことが背景にある。
個人が収めた所得税は前年比約25%増加し、10兆4400億ルピー(1253億ドル)だった。これには株式や投資信託などの有価証券の取引に課される証券取引税が含まれる。
法人税の納税額は前年比10.26%増の9兆1100億ルピー(1093億ドル)だった。
デリーのジャワハルラール・ネルー大学元教授で経済学者のアルン・クマール氏は「これは良いニュースだ」と指摘した上で、この数字は「所得格差拡大の兆候」でもあると述べた。
所得税の増加分は主に比較的裕福な個人と大企業によるもので、税収増は富裕層の所得や株式投資などから得た利益が拡大したことを反映している。
エコノミストによると、年間の非課税枠である30万ルピー(3599ドル)を超える所得がある世帯は全体のごく一部で、自給自足が多い農業従事者の大半は所得が非課税枠に収まっているという。
クマール氏は、労働者の90%近くは中小企業で働いたり農業に従事しているが、そうした労働者の賃金の伸びははるかに低かったと指摘した。
●戦況切迫、米議長決断 ウクライナ支援 下院可決 身内・共和の反論押し切る 4/22
米下院のウクライナ支援予算案は20日、採決を巡り強い権限を握る共和党のマイク・ジョンソン議長が主導して可決にこぎ着けた。バイデン政権や国際社会からの圧力が高まる中、戦況の分析を考慮して決断した。ただ、党内の反対論を押し切った代償は大きく、今後の議会運営に影響を与えるのは必至だ。
姿勢を転換
採決結果が判明した瞬間、全員が賛成した民主党の議席では、議員がウクライナ国旗を掲げ「ウクライナ」「ウクライナ」と歓声を上げた。一方、賛成101、反対112と割れた共和党の議席は沈黙に包まれた。
「ロシア、イラン、中国の敵対国が自由主義諸国を脅かす中、米国のリーダーシップが必要だ。我々が背を向ければ、結果は壊滅的なものになる」
ジョンソン氏は記者団に対し、採決に踏み切った理由をこう説明した。「批判も、完璧な法案ではないことも承知している」と弁明し、一部を融資に切り替えたことなど下院での修正の意義を強調した。
2月に支援法案が上院を通過した後、ジョンソン氏は党内の反発を恐れて判断を保留してきた。採決に突き動かしたのは、米国の軍事支援抜きで戦うウクライナ軍の戦況だ。
米政治専門紙ポリティコによると、それまでも継続的に戦況を伝えてきたホワイトハウスが数週間前、ジョンソン氏側に、真の正念場を迎えているとの切迫した分析を伝えた。同様の情報をつかんだ親ウクライナの同僚議員からの圧力も強まり、ジョンソン氏は姿勢を転換させた。
トランプ氏意向
最大のハードルは、ウクライナ支援に慎重な姿勢を示してきたトランプ前大統領だった。党内で絶大な影響力を誇る同氏が、ジョンソン氏批判に回れば一気に求心力を失う。
ジョンソン氏は12日にフロリダ州の邸宅「マール・ア・ラーゴ」にトランプ氏を訪ね、議会運営を相談した。ウクライナ支援の一部融資への転換についても意見交換したとみられ、トランプ氏は18日のSNSへの投稿で「ウクライナの存続と強さは米国にとっても重要だ」とトーンを変えた。
トランプ氏の支持者にはウクライナ支援に消極的な意見が根強いが、ジョンソン氏を擁護する声もある。20日、ノースカロライナ州でのトランプ氏の集会は悪天候で中止となったが、会場を訪れたリンダさん(75)は「ウクライナより国境対策に予算をかけるべきだが、下院議長を交代させる必要もない。今は党が団結するときだ」と語った。
100人超造反
それでも、党内から100人超の造反を出したことは、ジョンソン氏にとって大きな政治的ダメージとなったのは間違いない。3月22日にジョンソン氏の解任動議を提出した保守強硬派のマージョリー・テイラー・グリーン氏は採決後、記者団に「米国のために何もならない対外戦争支援のために、ばかげたことをした」と厳しく批判した。
昨年10月には同じく保守強硬派が出した動議に民主党が賛成し、共和党のケビン・マッカーシー前議長が解任に追い込まれた経緯がある。下院の現在勢力は共和党218、民主党213と伯仲する。採決された場合、解任を回避するには民主党に頼らざるをえない。
ジョンソン氏は議会運営で「不安定な立場に追いやられた」(ポリティコ)との見方が広がっている。
●イスラエル首相 パレスチナ側への攻勢強める姿勢 改めて示す 4/22
イスラエルのネタニヤフ首相は、イランとの対立を深める一方で「今後、数日間でハマスへの軍事的・政治的圧力を強めていく」と述べるなど、パレスチナ側への攻勢も強める姿勢を改めて示しました。
ネタニヤフ首相は21日の演説で、イスラム組織ハマスが人質の解放に向けた提案を拒否してきたと主張したうえで、「今後、数日間でハマスへの軍事的・政治的圧力を強めていく。なぜならそれが人質を解放する唯一の方法だからだ」と述べ、ハマスへの攻勢を強める姿勢を改めて強調しました。
こうした中、イスラエル軍は21日もガザ地区南部のラファの中心部などを空爆し、現地にいるNHKのカメラマンが市街地から煙が上がる様子を撮影しました。
ガザ地区の保健当局は21日、この24時間でさらに48人が死亡し、これまでの死者は3万4097人にのぼったと発表しています。
また、イスラエル軍はパレスチナ暫定自治区、ヨルダン川西岸のトルカレムにも18日から3日間にわたって侵攻して武装勢力と激しい戦闘となり、パレスチナ暫定自治政府は14人が死亡したと発表しました。
トルカレムで撮影された映像では、住宅地が大きく破壊されブルドーザーでがれきの撤去を進めている様子が確認できます。
ヨルダン川西岸へのイスラエル軍による攻撃について、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のラザリーニ事務局長は「ヨルダン川西岸の状況は日に日に悪化している。イスラエル側の最近の作戦は人命の損失に加え、家屋や公共サービスに深刻な被害をもたらした」とSNSに投稿して、被害状況への懸念を示しました。
●イスラエル首相 “ハマスへの圧力強める” 4/22
イスラエルのネタニヤフ首相は、イランとの対立を深める一方で「今後、数日間でハマスへの軍事的・政治的圧力を強めていく」と述べるなど、パレスチナ側への攻勢も強める姿勢を改めて示しました。
ネタニヤフ首相 ハマスへの攻勢強める姿勢改めて強調
ネタニヤフ首相は21日の演説で、イスラム組織ハマスが人質の解放に向けた提案を拒否してきたと主張したうえで、「今後、数日間でハマスへの軍事的・政治的圧力を強めていく。なぜならそれが人質を解放する唯一の方法だからだ」と述べ、ハマスへの攻勢を強める姿勢を改めて強調しました。
ヨルダン川西岸へのイスラエル軍による攻撃について、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のラザリーニ事務局長は「ヨルダン川西岸の状況は日に日に悪化している。イスラエル側の最近の作戦は人命の損失に加え、家屋や公共サービスに深刻な被害をもたらした」とSNSに投稿して、被害状況への懸念を示しました。
亡くなった妊婦から赤ちゃん生まれる
AP通信などによりますと、ガザ地区南部のラファでは20日から21日にかけてイスラエル軍による空爆があり、子ども18人を含む22人が死亡しました。
死亡した中には妊娠30週間だった妊婦もいて、病院に搬送されたときすでに亡くなっていましたが、医師らが緊急手術をして帝王切開を行い、女の子の赤ちゃんが生まれたということです。
女の子の容体は安定しているということですが、体重は1400グラムしかなく、現地からの映像には、医師らが女の子を布にくるみ、口から酸素を注入している様子が映っています。
空爆では女の子の母親だけでなく父親と3歳の姉も亡くなっていて、病院の医師は「女の子は生まれながらにして孤児になってしまい、大きな悲劇だ」と話していました。
ハメネイ氏が演説 対抗措置には言及せず
イランの国営テレビによりますと、21日、最高指導者ハメネイ師が軍の司令官らを前に演説し、イランからの攻撃について「相手は発射されたミサイルの数や命中した数、外れた数を気にしているが、大切なことはイランの国民と軍が世界に向け意志の力を示したことだ」とたたえました。
一方でイスラエルによるとみられる対抗措置についての言及はなく、今のところイランとしてさらなる反撃に出て緊張を高める考えはないことを示唆しているとみられます。
ただ、イランとイスラエルの間に位置するイラクでも20日、イランの支援を受ける民兵組織の基地で原因が明らかでない爆発がおきたと伝えられ、中東情勢の緊張が続いています。
イスラエル軍 ガザ地区などへの攻勢続ける
イランとの対立のかたわらで、イスラエル軍はパレスチナ側への攻勢も続けていて、21日もガザ地区南部のラファの中心部などを空爆し、現地にいるNHKのカメラマンも市街地から煙が上がる様子を撮影しました。
ガザ地区の保健当局は21日、この24時間でさらに48人が死亡し、これまでの死者は3万4097人にのぼったと発表しています。
また、イスラエル軍はヨルダン川西岸のトルカレムにも18日から3日間にわたって侵攻して武装勢力と激しい戦闘となり、パレスチナ暫定自治政府は14人が死亡したと発表しました。
トルカレムで撮影された映像では、住宅地が大きく破壊されブルドーザーでがれきの撤去を進めている様子が確認できます。
パレスチナの旗を蹴り倒し爆発「信じられない」
イスラエルやパレスチナのメディアは21日、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地に近い道路脇に立てられていたパレスチナの旗をイスラエル人の男性が蹴り倒したところ、仕掛けられていた爆発物が爆発する様子をとらえた映像を、一斉に伝えています。
映像ではまず、男性が茂みを歩いて旗の方に向かう後ろ姿と、撮影者とみられる女性が「ここに存在しない国のぼろきれを倒しに行く」と話す声が記録されています。
そして男性が旗を蹴り倒した瞬間、爆発が起きて男性が倒れ、女性が「地雷が仕掛けられていた。信じられない」と悲鳴を上げています。
地元メディアは爆発物は地面に埋められており、男性は軽傷ですんだと伝えています。
この映像がいつ撮影されたのかは明らかではありませんが、去年10月にガザ地区でイスラエル軍とイスラム組織ハマスとの戦闘が始まってからは、ヨルダン川西岸でもイスラエル軍の兵士やユダヤ人入植者による住民への暴力事件などが相次いでいます。 
●ウソ広告でインド人を騙して、「ロシア兵」として前線に送る…新興国の若者を狙う「プーチンの罠」恐怖の手口 4/22
貧しい若者をだまして、外国人を最前線に送り込む
ウクライナ侵攻の長期化で兵員喪失に悩むロシア軍が、インドやネパールなど南アジアの人々を騙し、軍への入隊を強制している。海外メディアが相次いで報じ、その実態が明らかになった。
募集はTikTokやYouTube、Facebookなどのソーシャルメディアの広告で好待遇を売りにして若者の興味をかき立ている。南アジア現地にはリクルーターも存在し、ロシア送りの一端を担う。多くは「食料配達係」や「ウクライナ戦線から遠く離れた安全な警備職」、「軍事ヘルパー」などの甘言で釣り込んでいる。
英BBCやカタールの国営衛星テレビ局アルジャジーラが実例を報じている。南部ケララ州、のどかな漁村に生まれた漁師の男性(24歳)は、ロシア軍に騙されトラウマ級の日々を体験。生死の狭間をさまよったという。
男性は地元の斡旋業者に立ち寄り、ヨーロッパでの職を探していると告げた。だが、業者はロシアへの渡航を勧める。聞けば、負担の少ない警備員の募集で、月給20万ルピー(4月13日時点のレートで約37万円)の好待遇だという。
参考までに、インド求職サイトのグラスドアは、インドの平均年収を85万ルピー(約156万円)としている。年収5割増し以上をねらえる好機だ。
「それまでは銃を持ったことすらなかった」
男性の地元では、気候が不安定になり、海に出られる日数や漁獲量が減っていた。そのうえ、他に仕事はほとんどなかった。貧困から逃れるために男性は1月、男性は募集に飛び乗り、ロシア移住を決意した。
ロシアへは観光ビザで入ることになる。渡航ビザを工面するため、友人たちがひとり70万ルピー(約130万円)ずつを支援した。平均月収10カ月分にあたる大金だ。
安全な職種との触れ込みだったが、後になってまんまと嵌められたことに気づく。ロシア支配地域であるウクライナ東部ドネツクの戦線に派遣され、25人グループの一員として戦闘を命じられた。訓練はわずか3週間。手持ち式ロケット弾発射機のRPG-30などを持たされ、戦闘に駆り出されたという。「それまでは銃を持ったことすらなかった」と後に彼は言うが、後の祭りだ。
いよいよ戦地送られた、まさにその初日。いざ戦闘と身構えたわずか15分後、至近距離からの銃弾が左耳下の部分を貫いた。
婚約者に「結婚前に家を建てよう」と約束していたが…
男性の周囲にはあたり一面、ロシア兵の死体が転がっている。気味が悪いなどと言っている余地もなく、その上にドサリと倒れ込んだ。
「ショックで動けませんでした。夜が明けて1時間ほど経つと、今度は別の爆弾が爆発しました。左足に重傷です」
血を流しながら塹壕の中で一夜を明かすと、翌朝になって前線から離脱。その後数週間、いくつもの病院をたらい回しにされたという。青年はインド大使館に連絡し、仮パスポートの発給を受けて出国。インドへと帰還した。
命だけは助かったが、男性の人生設計はすっかり変わってしまった。「村を出たとき、村に住む女性と婚約していたんです。お金を持って戻ってくるから、結婚する前に家を建ようね、と約束しました」
いまはビザ費用に充てたローンだけが残る。生活を再建するため、婚約はもう2年後ろ倒しとなった。一緒に渡航した2人の漁師仲間とは、いまも連絡が取れず、行方不明の状態だ。
YouTubeの広告動画に人生を狂わされたネパール人男性
ネパールからも多くの被害者が出ている。英ガーディアン紙によると、ネパール中西部、貧困地域のロルパ出身の男性は、YouTubeの動画広告に騙され人生を狂わされたという。
男性が見た動画広告は、ドイツで働くことができるという夢のような内容だった。応募したところ、担当になったエージェントは、経由のためロシアに一度飛ぶ必要があると告げた。悪夢の始まりだった。
男性はモスクワで拘束され、軍事キャンプ送りとなった。形ばかりの銃の訓練を受け、ウクライナ東部のバフムート送りに。ほかにインド人2人とネパール人4人が一緒だったという。
雪の夜、武器を運搬していると、ウクライナのドローン攻撃に巻き込まれた。男性はガーディアン紙に対し、「ドローン攻撃があるなどとは聞かされていませんでした」と語る。「足、太もも、右手を破片にやられました」。
その後、ロシア語もわからないまま、ロシア各地の病院を転々とする日々が続く。戦闘員仲間も複数が入院し、1人は行方不明。別の1人は脱走に失敗し、収監されている。
入隊は卑劣な手段で強要される。あるインド人兵とネパール人兵は、同紙に対し、ロシア語で書かれた、内容不明の契約書にサインするよう強要されたと証言している。後になって判明したが、ロシア軍に1年間拘束され、脱走を試みれば何年も刑務所に入れられる内容だった。
サインと同時に、パスポートは取り上げられた。兵士としての訓練は2週間に満たず、そのままウクライナ戦争の前線に送られたという。
外国人をだまして兵士不足を補うロシア軍
ロシアがこうした強硬手段を展開するのは、窮地の裏返しでもある。開戦以来ロシア軍は、兵士死亡による戦力損失に苛まれている。ロイターは昨年12月、機密解除された米情報機関の報告書をもとに、ロシアの死者数は31万5000人にのぼるとの分析を報じた。
ロシアとしてはこの損失を、国外からの兵士調達で穴埋めしたい考えだ。AFP通信は今年2月、「リンゴ農家、航空会社向けの機内食製造業者、就職できなかった新卒者」など、職歴を問わず戦闘員を募集していると報じた。
国外から集められたこうした人材は、ロシア全土の採用センターを通じて軍へ送られる。モスクワの兵士採用センターで働く通訳のインド人男性はAFPに、「外国人に対応するリクルートセンターが、(ロシアの)あらゆる都市に存在します」と明かす。この通訳男性だけで、これまでに70〜100人程度のインド人の入隊を担当したという。ネパール人についてはさらに多い。
採用元はインドやネパールに限らない。あるアナリストはAFPに、こうした国々は「世界的な勧誘活動の一環に過ぎない」と語る。
家族を支えると意気込んだ兄は、帰らぬ人となった
ロシアに騙され、悲惨な戦争に巻き込まれる南アジアの人々は絶えない。衣料品店で平穏に働いていた30歳のインド人男性は、ロシアのエージェントに騙され、ロシア軍に入隊させられた。
きっかけは、ドバイを拠点にする人材派遣会社が投稿したYouTube動画だった。ロシア永住権が約束され、収入が何倍にもなるとの触れ込みだった。昨年12月にロシアへ渡航したが、わずか3カ月後の今年3月、家族のもとに訃報が舞い込む。
男性の弟は、米公共放送のボイス・オブ・アメリカに、「(エージェントが)兄を騙したのです」と憤る。エージェントは男性に、ウクライナ戦線に送られることはないと保証していた。「家族の将来を安泰にできる方法を見つけた」と色めき立ち、母国・インドを後にした兄の笑顔が脳裏から消えない。
戦地では、ロシア兵よりも劣悪な状況に置かれる。英スカイニュースは、ネパールから2000人ほどがロシアによってウクライナ戦線に送られたとの見方を示したうえで、その一環として駆り出された35歳男性の事例を伝えている。
「まるで犬のように扱われた」
男性は、モスクワ郊外の陸軍士官学校(アバンガルド訓練センター)に2週間連行された後、4カ月半、ウクライナ東部ドネツクで戦闘に加わった。ネパール人兵士たちが大砲の注意をそらす「餌食」にされ、「まるで犬のように扱われ」たと証言する。「本隊のロシア兵は、我々の後ろにいるのです。前線に立たされるのは、(私たち)傭兵でした」
「恐怖です。人と人、銃弾と銃弾の戦いではないのです。私たちは(上空から)ドローンで攻撃されます。それはそれは恐ろしいことでした」
この男性の場合、もともとドイツの隣のルクセンブルクでの職のあっせんを希望していたが、母国のエージェントにロシア行きを勧められたという。母国の11倍の月収を約束され、ローンを組んで計1万4000ポンド(約270万円)ほどを支払った。
だが、予想だにしなかった戦地送りに。大金を失った挙げ句、投獄を覚悟で3度逃亡を図り、命からがら脱出する結果に終わった。
自らロシア軍の傭兵を志願する人もいる
カタールのアルジャジーラは、外交政策アナリストによる分析や現地人コミュニティの情報をもとに、主にスリランカ、ネパール、インドの人々が騙されロシアに送られていると報じる。各国からそれぞれ数百人ないし1000人規模の人々が、ロシア軍に従軍しているという。
南アジアが兵士採用のターゲットにされる背景に、経済事情がある。スリランカの政治アナリストであるガミニ・ヴィヤンゴダ氏は、アルジャジーラの取材に対し、スリランカの厳しい内情を語る。
スリランカでは経済危機と政治的混乱により、2022年から翌2023年にかけて大規模な飢餓の危機が生じた。法外な対外債務と加速するインフレで、燃料、医薬品、食料などあらゆる物資が不足した。
ロシアに従軍する匿名のスリランカ出身兵は、アルジャジーラに、スリランカの経済的混乱を鑑みれば、ロシア軍で命を失う危険性の方がはるかに懸念が少ないと語る。
広告通りの収入が得られないケースも
だが、経済的利益を求め命をかけて戦地へ赴いた南アジアの人々に、厳しい現実が迫る。ソーシャルメディアで目にした広告では、月給4000ドル(約61万円)を謳うが、広告通りの待遇を受けている者がいるかは怪しい。ある匿名の兵士は、税金控除後の月給はわずか65ドル(約1万円)だと明かした。
フォーブス誌インド版がインドシンクタンクのCMIEのデータをまとめたところによると、インドの失業率は改善傾向にあるものの、昨年10〜12月期には高い数字を記録していた。20〜24歳の若者の失業率は44.49%と、半数近くに達している。
インド・マドラス開発研究所のA・カライヤラサン助教授(経済学)は、英インディペンデント紙の取材に「紛争地帯に必死に行く人々は、単純により明るい未来を夢見て渡っているわけではなく、極端な絶望に突き動かされて赴いているのです」と語る。
動画に映ったロシア軍の虚像に騙される
被害者たちの一部は、地元の職業あっせん業者を通じてロシア行きの運命をたどった。ほか、多くの人々がYouTube動画やソーシャルメディア上の広告を視聴して興味を惹かれ、エージェントに接触している。
インド人男性が運営するYouTubeチャンネル「Baba Vlogs」(チャンネル登録者約30万人)は動画を通じ、ドバイでのウェイターに加え、ロシアで“食品配達”を行う「軍事ヘルパー」を募集していた。ボイス・オブ・アメリカがこうした動画の存在を指摘していた。チャンネル主催者は動画に虚偽の内容はないと説明していたが、チャンネルは現在、すべての動画を削除している。
TikTokの動画を見る限り、ロシアでの兵士生活は悪くない。動画では、楽しそうに訓練を積む新兵たちの生活が描かれている。だが、ロシアの戦地へと連れ去られた前掲の35歳ネパール人男性は、スカイニュースに対し、「私なら行かないように言うでしょうね」と語る。
「TikTokでは、派手な軍服を着て、派手な銃を持った兵士たちを見ることができます。でも、現実はそんなものとはまるで違うのです」
ついにインド政府も動き始めた
ロシアは国内でも兵士募集に必死だ。ニューヨーク・タイムズ紙は昨年夏、ロシア国防省が2023年春から広告キャンペーンを展開していると報道。戦地に赴くことの「男らしさ」と、月20万4000ルーブル(約33万5000円)の高給で誘い込んでいるという。
事態はインド政府も認識するところとなった。AP通信は今年3月、「自国民の一部がロシア軍に騙されて働いているとインドが発表」と報じた。インド中央捜査局は、少なくとも35人のインド人が、人身売買ネットワーク経由でロシアに送られたと発表している。
当局はネットワークを壊滅したと発表しているが、動画広告と現地のエージェントさえあれば、兵士採用はいつでも再開できる。ウクライナ戦争が続く限り、ロシアは新たなエージェントを雇う可能性があるだろう。
兵士確保のためならロシアは手段を選ばない
ウクライナへと領土を広げたいロシアは、なりふり構わない行動に出ている。30万人を超えるともいわれる自軍の死者数を補うため、これまでは国内の徴兵や兵士採用の強化を行ってきた。ついにその手は、南アジアへと伸びることになった。現在はインドやネパールなどを中心に誘い込んでいるようだが、同じアジアに位置する日本として、不快な印象は拭えない。
日本の給与所得者の平均年収は、国税庁によると458万円(令和4年)となっており、まだまだ南アジアの国々より高い水準にある。だが、円安が進行し非正規雇用も広がるいま、ロシアでの“食料配達”の仕事に魅力を感じる日本の若者が出ないとも限ら。ソーシャルメディアの動画は、好むと好まざるにかかわらず、国境を越えて伝播する。考えたくもないが、他人事と言い切れない現実がそこにはある。
ロシアによるウクライナ侵攻は、物流の混乱や物価高をはじめとし、数え切れない混乱を世界にもたらした。人命という最も尊い存在を他国民から奪うことのないよう、欺瞞に満ちた戦地への誘導行為を許してはならない。
●ロシア、アゼル首脳が会談 ナゴルノカラバフ協議か 4/22
ロシアのプーチン大統領は22日、アゼルバイジャンのアリエフ大統領とモスクワで会談し、2国間協力の発展や、地域の安全保障情勢を協議した。ロシア大統領府が発表した。アゼルバイジャンが昨年支配下に置いたアルメニアとの係争地ナゴルノカラバフ情勢も話し合ったとみられる。
ロシアのペスコフ大統領報道官は17日、ナゴルノカラバフに派遣していたロシアの平和維持部隊が撤退を始めたと明らかにした。ロシアは2020年のアゼルバイジャンとアルメニアの大規模衝突後に停戦を仲介し、部隊を派遣した。
紛争に敗れナゴルノカラバフの実効支配を失ったアルメニアのパシニャン首相はロシアを批判し、ロシア主導の「集団安全保障条約機構(CSTO)」からの脱退を示唆している。

 

●ロシアの柔らかい脇腹とは? テロ事件があぶり出すロシア経済のアキレス腱、プーチンが切れない°激\連最貧国との関係 4/23
モスクワ郊外で起きた大規模テロ事件を契機に高まった中央アジア移民排斥の風潮に、ロシアのプーチン政権が苦慮している。ウクライナ侵攻を受けた徴兵増や、若年層の国外脱出で国内の労働者不足が深刻化するなか、移民労働者の減少はロシア経済の回復に打撃となるためだ。
移民規制はテロ実行犯の出身国であるタジキスタンの政治・経済に打撃を与え、親ロシアのラフモン政権を揺るがしかねない。ロシアの柔らかい脇腹≠ニも称される中央アジアの不安定化は、過激主義に傾倒する若者をさらに増大させ、ロシアを一層のテロの脅威にさらす危険性もある。
殺害予告
「一体、どうしていいのか分からない。私は妊娠をしているのに、怖くて外に出ることもできない」 
ロシア西部の都市イワノボで、理髪店を営む女性は現地メディアの取材にそう打ち明けたという。彼女の店では、テロ事件の実行犯とされるタジキスタン出身の容疑者が働いていた。男を雇っていた事実を恨まれ、女性の家には彼女の殺害を予告する脅迫電話が鳴り続けた。
テロ実行犯として拘束された4人の男は皆、旧ソ連・タジキスタン出身者だった。当局により拘束された男はいずれも、顔が腫れ上がるなど拷問によるものと思われる跡があった。右側の耳に、大きな包帯を当てていた容疑者の一人は、当局による尋問のさなかに、片耳を切り落とされていたとの報道もある。
そのような姿をあえてさらしたのは、当局が強硬な姿勢で取り締まりを行うことをアピールする狙いもあったもようだ。モスクワ市民が広く知る人気のコンサートホールで銃を乱射し、140人以上が犠牲になった今回のテロ事件。そのような蛮行の発生を食い止められなかった当局が、少しでも国民の支持を回復するには、犯人らへの苛烈な取り締まりをあからさまにさらすほかはなかった。
怒りは当然、一般市民にも広がった。タジク人が運転するタクシーが乗車拒否されたり、暴行される事態も発生したほか、タジク人が経営する店舗が放火されるなどのケースも報じられている。
労働移民に対する警察の尋問が強化されただけでなく、警官が労働者から、金品を巻き上げるケースもあったという。ネット上では、有力ブロガーらが労働移民の徹底排除を要求する主張を繰り広げ、「殺害しても構わない」などの過激主張も行われた。政界でも移民規制強化を求める声が上がった。
移民に依存するも、低位に見るロシア社会
ただロシアにとり、安易な移民規制強化は決して容易ではない。ロシア経済は中央アジア諸国出身者の労働力に、深く依存しているためだ。
ロシアでは、約1億4000万人の人口のうち、約5%にあたる700万人あまりが外国からの移民とされ、さらにその8割はタジクやウズベキスタン、キルギスなど中央アジア出身者とされる。多くは、労働目的の移民とみられ、タジク出身者は100万人程度とされる。相当な規模を占めているのが実情だ。
「ロシア経済における多くの分野は、移民に深く依存している。それらの分野は彼らなしで、安定的な展開は見込めない」。ドイツを拠点とするカーネギー・ロシア・ユーラシア・センターの中央アジア専門家、チムール・ウメロフ氏は米メディアにそう断じた。
実際、モスクワなどの大都市では、店舗や清掃、ドライバー、また理髪店など、どこでもタジクなど中央アジア出身者を見かける。ロシア経済を底辺で支えているのが、中央アジア出身の移民労働者だ。
一方で、彼らはロシア人と共存しているように見えるが、実際には多くのロシア人は、彼らが社会の低位にいるとみなしている。今回のような事件が発生すれば、即座に民族的な憎悪の対象となることは不思議ではない。
深刻な労働者不足
ただ、ロシアの労働力はすでに、深刻な不足に陥っている。ウクライナ侵攻を受け、ロシアではIT分野の専門家や弁護士、芸術家、デザイナーなど、今後成長が期待される分野を中心に、若年層の国外脱出が相次いだ。侵攻開始直後に非営利団体が実施した推計では、これらの業態の従事者を中心に、約30万人がロシアを脱出したとされる。
同時期に脱出できたのは、資金面で余裕がある限られた層であり、その後も一定規模の脱出が続いた可能性が高い。海外生活で資金が底をつき、やむなく帰国したケースもあるが、外国でも収入を得られる術があるロシア人の多くが、海外移住を希望していることは従前から知られている。
加えて、徴兵の拡大がある。侵攻開始から約半年が過ぎた段階で、ロシアは「部分動員」との名目で、約30万人の若者を追加動員した。徴兵は特に、人口が希薄なシベリアや極東など地方を中心に実施されたとみられ、このような動きは特に、地方経済にとり打撃になる。
ロシア科学アカデミーによれば、同国では2023年に約480万人の労働者不足が発生していたという。ロシア経済は、中国やインド向けなど、欧米諸国の制裁を回避して行われた原油などの資源輸出増や、軍需産業への投資とみられる公共投資の拡大などを背景に、制裁による経済の落ち込みを抑え込んだ。すでに、回復フェーズに入っているが、労働力不足は新たな経済発展の芽を摘む結果につながるのは必至だ。
持ちつ持たれつのタジキスタンとの関係
ただ、ロシアによる移民規制の動きは、ロシアでの出稼ぎ収入に依存するタジク経済や、同国を率いるラフモン政権に厳しい打撃を与えかねない。さらに同国の不安定化は、ロシアを標的とするイスラム国(IS)などのテロ集団の伸長につながりかねない矛盾をはらんでいる。
タジキスタンは1991年に旧ソ連から独立したが、独立後に内戦が激化し、和平に至ったもののイスラム系野党は活動が禁じられた。90年代から続くラフモン政権は独裁体制を強め、深刻な汚職体質も指摘されている。タジクの1人当たりの国内総生産(GDP)は約1000ドル(約15万円)と、旧ソ連で最低水準にとどまっていて、GDPの約3割は、ロシアなど海外からの出稼ぎ労働者による送金とも指摘されている。
そのように経済基盤がぜい弱なタジクにとり、ロシアによる労働移民の規制強化は深刻な脅威となる。ロシアは移民受け入れでタジク経済を事実上支えているほか、ロシア陸軍がタジク国内に駐留するなど、軍事・経済両面で深い関係を持つ。プーチン政権は、事実上ラフモン政権の後ろ盾といえ、そのような政権を窮地に追い込むことは、プーチン氏にとっても得策ではない。
さらに、タジク経済の一層の悪化は、同国の不安定化を招き、ISのさらなる伸長と、ロシアへの流入増を招きかねない。ただ移民規制を強化しなければ、結局はそれも、ロシアへのISの流入増を引き起こす結果につながる。
タジクなど中央アジアやロシア南部のカフカス地方はもともと、ソ連の柔らかい脇腹≠ニ呼ばれ、ロシアにとり慎重な対応が求められる地域だ。ロシア経済は欧米の制裁網をかいくぐり成長が加速しつつあるが、戦争を背景にした労働力減少という思わぬ弱点をさらけだした格好だ。
●「打倒プーチン」の狼煙に?獄中死したナワリヌイ氏の「遺言」が今秋出版、妻ユリア氏を軸に反体制派は集結できるか 4/23
・ロシア反体制派の活動家、ナワリヌイ氏が獄中で死亡してから2カ月が過ぎた。妻ユリア氏は同氏の遺志を継ぎ、西側諸国の首脳らと会談するなど精力的に活動を続けている。
・国外に散らばる反体制派がユリア氏を軸に結集することを期待する声もあるが、ユリア氏の政治手腕は未知数だ。
・そうしたなか、ナワリヌイ氏の回顧録が今秋出版される。「プーチン打倒」の一石となるだろうか。
ロシア・プーチン大統領の汚職疑惑などを長年追及し、反体制派の急先鋒で活動家だったアレクセイ・ナワリヌイ氏(享年47)が極北の刑務所で死亡してから2カ月が過ぎた。この間、プーチン氏は3月の大統領選で「圧勝」し、通算5期目の当選を果たした。
選挙前に執り行われたナワリヌイ氏の葬儀には、戦時下の厳戒態勢で集会などが禁じられ、参列すれば逮捕の危険があったにもかかわらず、数万とも言われる人々が押し寄せた。同氏を支持する層の大きさを物語る一幕だったであろう。
その後も終わりの見えないウクライナとの戦闘は続き、モスクワ市内では先月、テロで140人以上もの人が犠牲となった。ナワリヌイ氏は生前「美しいロシア」を目指して活動していた。戦争や汚職を無くし、公正な選挙と言論の自由の保障された国のことだ。政治家として、そして一人のロシア国民として、同氏が終生思い描いたその理想とは程遠い現実が続いている。
ナワリヌイ氏の死後、同氏の生前の言葉として数多く引用された言葉がある。昨年、米アカデミー賞・長編ドキュメンタリー賞を受賞した『ナワリヌイ』の中で、「もしもあなたが殺された場合、ロシアの人々へのメッセージは」という問いに答えたものだ。
「あなた方に諦めることは許されない。もしも彼らが私を殺すなら、それは私たちがとてつもなく強いことを意味する」「邪悪なるものが勝利するために必要な唯一のことは、善良な人々が何もしないことだ」(ナワリヌイ氏)
この言葉を発した際、後に現実となった自身の死をどの程度実感として意識していたかはわからない。しかし、結局はこうした言葉が同氏の「遺言」となってしまった感は否めない。
妻ユリア氏の政治手腕は未知数
ナワリヌイ氏の死後、同氏が率いてきた「反汚職基金」は、リトアニアで活動を続けてきたが、カリスマ的な指導者の死が反政権活動にとって打撃となったのは間違いないだろう。精神的支柱の喪失に、活動の存続さえ危ぶまれた。
同氏の妻、ユリアさん(47)が夫の意思を引き継ぐ決意を表明したのは訃報からわずか3日後のことだ。SNSを通じて、ロシア国民、そして自身の2人の子供達のために、自由で平和なロシアを人々と共に作りたいと熱弁した。
政治学者で、反汚職基金の諮問機関に名も連ねるフランシス・フクヤマ氏は2月、英フィナンシャル・タイムズ紙の取材に対し、ナワリヌイ氏の後を継げるのは妻のユリアさんや、長女のダリアさんくらいだろうと述べた。
ユリアさんは夫の死後、息つく暇もなく欧州や米国を駆け巡り、バイデン大統領など西側の首脳や大物政治家らと次々に会談。ロシア大統領選前には、プーチン政権に反対の意思を表明する人々に投票最終日の3月17日正午、一斉に投票所に姿を表せるよう呼びかけた。
国内外で数千もの人々が行列を作り、無言の抵抗を示した。この行動により、激しい圧政のもとでもプーチン政権に異を唱える人々が数多く存在することを世界に知らしめた。
しかし、ユリアさんの政治家、あるいは活動家としての手腕はまだ未知数だ。加えて、プーチン氏に公然と異を唱える人々が次々とロシアからの出国を余儀なくされる中、ユリアさんも例外ではない。安全上の理由から、現在はドイツに暮らしていると見られている。大統領選の際は、ベルリンの在独ロシア大使館で投票を行った。
ナワリヌイ氏の側近、襲撃され大怪我
ナワリヌイ氏が何者かにより猛毒のノビチョクで暗殺未遂にあったのは2020年のことだが、ユリアさん自身もそれ以前に同じ物質によって襲撃された可能性もある。休暇先で突然具合が悪くなり、その時の症状が自分とそっくりだったと、後にナワリヌイ氏が語っている。
ナワリヌイ氏は暗殺未遂後、ドイツでの治療を経てロシアに戻り、即逮捕された。一方ユリアさんが反政権を訴えながらも国外で活動せざるを得ない状況下で、ロシア国内にとどまる市民の心を掴み切ることができるかは、今後の動向にかかってくるだろう。
カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシア・センターのタチアナ・スタノバヤ上級研究員は2月、米ポリティコに対し、国外で活動するユリアさんへのロシア国民の視線が、必ずしも好意的でない可能性を指摘した。ユリアさんが、西側勢力によるプーチン打倒のために利用されているというイメージが付きまとうのだという。
また、ユリアさんはしばしばプーチン大統領を評して「血塗られた怪物」「組織犯罪の首領」などと強い言葉で批判を繰り返し、夫を殺害したとも公言している。国外にいても安全が保証されるとは言い切れないだろう。
実際、ナワリヌイ氏の側近だったレオニード・ボルコフ氏は3月、亡命先のリトアニアで何者かにハンマーで襲撃され、大怪我を負っている。ユリアさんは最近の米タイム誌とのインタビューで、不本意ながらも護衛付きで行動せざるを得ない事情を明かしている。
回顧録で「打倒プーチン」の勢いは増すか
ユリアさんの他にも、ロシア国外に著名な反体制活動家は存在する。英国には元石油王のミハイル・ホドルコフスキー氏、イスラエルには元政治家でインフルエンサーのマクシム・カッツ氏などがいる。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は4月16日の紙面で、ナワリヌイ氏の死後こうした亡命活動家たちが一致団結して体制を倒せるか分析している。
戦略としては、まずロシア国内で徐々に不満を募らせ、現体制に反対する1割から2割の国民の支持を取り付けること。さらには、国内で起こり得る騒乱を利用し、抗議活動のリーダーを担ぎ出して、街頭活動や集会などを引き起こすことだという。
しかし、現状国外に散り散りになった反体制派がまとまって体制を動かせるかは不透明だろう。やはり、ナワリヌイ氏の意思を受け継ぐユリアさんに期待が高まってもいるという。ユリアさんは4月17日、米タイム誌で今年の「世界で最も影響力のある100人」の一人に選ばれている。
同誌のインタビューでユリアさんは、ロシアの多くの人々にとって自身が希望の象徴であると言われていることについて「重責であり、人々を失望させないように尽力する」と述べている。さらに、プーチン大統領は夫を殺した敵であり、正しいことのために戦うと宣言した。
戦闘開始を告げたばかりのユリアさんに、強力な援護射撃を行う人物がいる。亡くなったナワリヌイ氏本人だ。暗殺未遂が起きた2020年から同氏が秘密裏に書き綴り、逮捕ののち刑務所で完成させた回顧録「Patriot(愛国者)」の出版が今月発表された。11ヶ国語に訳され、今秋世界同時発売の予定であるという。
同著についてユリアさんは「アレクセイ(ナワリヌイ氏)の人生だけでなく、彼が独裁政権との戦いにその命を含め、すべてを捧げた揺るぎない決意の証だ」「正しいことのために立ち上がること、そして、本当に大切な価値を決して見失わないというインスピレーションを人々に与えるだろう」と語っている。
米デイリー・ビーストは回顧録出版に関する記事に「墓の中からプーチン大統領に最後の一撃を放つナワリヌイ」と見出しをつけている。妻と共に、死してなお戦い続けるナワリヌイ氏の「遺言」は、プーチン政権打倒の一石となるのだろうか。
●トランプ当選で、NATOが形骸化? ほくそ笑むプーチン、ロシア撤退の「日本車メーカー」は今後どうなる 4/23
大手自動車メーカー、ロシア撤退相次ぐ
ロシアによるウクライナ侵攻から2年以上が経過しているが、日本の大手自動車メーカーの間ではロシアからの撤退が相次いだ。
侵攻から半年あまりが経過した2022年9月、トヨタ自動車はサンクトペテルブルクにある工場を閉鎖し、ロシアでの生産から撤退すると発表し、その後同工場はロシア産業貿易省傘下にある「自動車・エンジン中央科学研究所」へ譲渡され、国有化された。
その翌月には日産自動車もロシア事業からの撤退を表明し、現地の子会社であるロシア日産自動車製造会社の全株式を自動車・エンジン中央科学研究所に1ユーロで譲渡する方針を明らかにした。
その後、同年11月に全株式の売却が完了し、日産のサンクトペテルブルク工場は自動車・エンジン中央科学研究所への譲渡後、ロシアの乗用車最大手アフトワズが2022年末から自動車生産をその工場で開始した。
マツダも11月、ロシアからの撤退を表明し、ロシアで製造を手がける大手自動車メーカー「ソラーズ」との合弁会社の株式を同社に1ユーロで譲渡することを明らかにし、いすゞ自動車も2023年7月、トラックの生産や販売などのロシア事業からの撤退を発表し、子会社の株式を現地の自動車大手ソラーズに譲渡したと発表した。
大手自動車メーカーの間で生じたドミノ現象的な脱ロシアの背景には、この政治的緊張が長期的に続くことが避けられないとの判断があったことは想像に難くない。
そして、その判断どおり、今日のウクライナ戦争は長期化が間違いない状況だ。3月の大統領選挙で5選を果たしたプーチン大統領は最近、追加で15万人を動員する大統領令に署名し、今後ウクライナでの攻勢をいっそう強めていく構えだ。
一方、ウクライナ側の劣勢は顕著で、ゼレンスキー大統領は米国からの軍事支援が停止されれば戦争に負けると繰り返し主張し、両国が置かれる状況は全く異なる。
安全保障の不確実性
ウクライナがロシアによる侵攻を許したひとつの背景に、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟していないことがある。
NATOはその条約第5条で1加盟国への攻撃は全加盟国への攻撃とみなすと規定し、要は集団的自衛権を認める集団防衛体制となっており、仮にウクライナがNATOに加盟していれば、ロシアはNATO加盟31か国(当時のNATO加盟国数にウクライナが加盟していたとして)を敵に回すことになるので、プーチン大統領も侵攻という決断を下していなかった可能性が高い。
ウクライナ周辺には同じく旧ソ連圏を構成してきたバルト3国があるが、リトアニアもエストニアもラトビアもNATOに加盟しているが、ウクライナのように加盟していなければ侵攻の対象になっていた可能性は排除できない。スウェーデンとフィンランドがNATO加盟を急いだのも、それによって自国の安全保障を担保しようとしたからだ。
しかし、NATOの傘下に入ればロシアによる脅威から完全に身を守れるかといえば(海外進出企業の観点でいえば、ロシアと距離的に遠くないNATO諸国であれば社員は安全に仕事できるか)、最近不穏な空気が漂う。
米国では秋に大統領選が行われるが、トランプ氏は2月、
「NATO加盟国が軍事費を適切に負担しなければ、ロシアからの攻撃があっても米国は支援せず、好きにやるようロシアにけしかける」
などと発言し、大きな物議を交わした。これに警戒感を抱いたのか、その後フランスのマクロン大統領は、
「ウクライナ戦争でロシアを打倒することは欧州の安全保障にとって不可欠であり、西側諸国の地上部隊をウクライナへ派遣することで合意はないものの、その可能性を現時点で排除するべきではない」
と一歩踏み込んだ発言をした。これも大きな物議を醸し出すことになり、ドイツのショルツ首相やNATOのストルテンベルグ事務総長らは、NATO加盟国の兵士が戦場に派遣されることはないとマクロン大統領の発言を強く否定したが、オランダやリトアニアなど一部のNATO加盟国からはマクロン発言に同調するような言及もある。
マクロン大統領は3月にも、ロシアがウクライナに勝てば次は欧州だと警告する発言もしている。
NATOと揺れる欧州
仮にトランプ氏が勝利すれば、NATO内での混乱や分断が先鋭化する恐れがある。
前述のとおり、NATOが集団防衛体制であることがロシアに対する大きな抑止力となってきたが、共同で対処するものの、どんな対抗措置を具体的に取るかは結局のところ最後は各国政府の判断であり、自国の軍隊を最前線に送ることはマストではない。
トランプ氏が大統領になると、こういったNATOの一体性にほころびが生じ始め、NATO自体が「形骸化」してしまうリスクが考えられる。それこそがプーチン大統領の狙いであり、NATOの形骸化はロシアを大きく利することになり、それを警戒する欧州諸国とロシアとの軍事的緊張が高まるになろう。
欧州、特にロシアと距離的に近い東欧諸国に進出する日本企業としては、このリスクを長期的な視野で捉えておく必要がある。今すぐロシアの脅威がウクライナ周辺の欧州諸国に拡大するわけではない。しかし、プーチン大統領がどこまで拡大するかは未知数であり、NATOの形骸化により欧州とロシアとの間で軍事的緊張が高まるリスクは排除できない。
大手自動車メーカーなど日本の大手企業でもポーランドやチェコ、フィンランドなどに進出したり、新たな開拓先と選定したりする動きもあるが、長期的視野でウクライナ戦争を捉える必要がある。
●バイデン氏「ウクライナ支援、迅速に提供」 ゼレンスキー氏に伝達 4/23
バイデン米大統領は22日、ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領と電話協議した。ホワイトハウスによると、ウクライナ支援の緊急予算案が20日に米連邦下院で可決されたことを受け、バイデン氏は「新しい安全保障支援パッケージを迅速に提供する」と伝えた。
緊急支援法案は総額約608億ドル(約9兆4000億円)で、近く上院も通過する見通し。バイデン氏の署名を経て法案が成立すれば、2023年末で途切れていた支援が再開されることになる。バイデン氏は協議で、ウクライナへの支援を続ける決意も強調した。
●ウクライナ東部のテレビ塔破壊 ロシア軍攻撃、ミサイルか 4/23
ウクライナ東部ハリコフ州で22日、ロシア軍の攻撃によりテレビ塔が破壊された。けが人は確認されていない。州内でテレビ映像に障害が発生した。ウクライナ検察はミサイルを使った攻撃との見方を示した。ゼレンスキー大統領は「都市を居住不能にするという明確な意図がある」と非難した。
ウクライナ国防省のブダノフ情報総局長は英BBC放送のインタビューで、前線の戦況や国内の政治状況について「5月中旬から6月にかけて非常に困難な時期になる」と語った。ただ、壊滅的ではないとし、どのような対応を取るのかが鍵になるとの見方を示した。
インタビューは今月19日に行われた。
●英がウクライナに最大規模の兵器供与、ミサイル1600発など 1千億円の追加軍事支援も 4/23 
英政府は22日、スナク首相が23日からポーランドを訪問し、ロシアに侵略されたウクライナに対する5億ポンド(約956億円)の追加軍事支援を表明すると発表した。今年に入って表明済みの25億ポンドと合わせ、直近の追加支援の規模は30億ポンドとなる。
英政府は加えて、空中発射巡航ミサイル「ストームシャドー」を含むミサイル1600発以上と、多用途歩兵機動車「ハスキー」160両などの軍用車両400両以上、小火器用の銃弾約400万発、小型舟艇60隻を柱とする、英国として過去最大規模のウクライナへの兵器供与を実施することを明らかにした。
スナク氏は23日、ワルシャワでポーランドのトゥスク首相、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長と3者会談を行い、ロシアの脅威をにらんだ安全保障連携の強化策について話し合う。
また、スナク氏とトゥスク氏の2国間会談では、英空軍のタイフーン戦闘機の部隊を来年ポーランドに派遣し、NATOの枠組みによる同国の領空警備を実施する方向で調整する。
スナク氏は、プーチン露大統領がウクライナ侵略戦争に勝利すれば次はポーランド侵攻を狙ってくるとの見方を示し、「英国は欧州安保の先頭に立って役割を果たす」と強調した。
●EU、ウクライナ防空強化急ぐ パトリオット供与確約に至らず 4/23
欧州連合(EU)は22日、ルクセンブルクで会合を開き、ウクライナの防空強化策を緊急に検討する姿勢を示した。ただ、ウクライナが最も必要としている米国製地対空ミサイル「パトリオット」の供与を確約するには至らなかった。
欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は会合後、ウクライナ支援を強化する必要性について全ての加盟国の理解を得ようとしているとし、「パトリオットは各加盟国が保有しており、(EU本部がある)ブリュッセルにはない。決定は各国次第となる」と述べた。
EU加盟国の中でウクライナに対するパトリオット追加供与を表明したのは、これまでのところドイツのみ。
ギリシャ、オランダ、ポーランド、ルーマニア、スペイン、スウェーデンなどもパトリオットを保有しているが、政府関係者によると、パトリオットは国防の重要な一部であるため、手放すのは難しいという。
●ウクライナ支援を強める日本、ロシアとの関係がますます疎遠に―独メディア 4/23
2024年4月21日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、日本がウクライナの支援を強化していることでロシアとの関係がますます疎遠になっていると報じた。
記事は、米国の政界でここ数カ月、ウクライナへの軍事援助問題をめぐる論争が絶えず、数十億ドルに上る新たな援助金の承認が遅れていると紹介。一方で日本などがウクライナへの援助額が大幅に増加しており、ウクライナのシュミハリ首相が2月に訪日した際、日本から援助された資金と援助を約束された資金が合計120億ドル(約1兆8600億円)に上ることを明らかにしたほか、独キール大学世界経済研究所の統計では今年1月現在、日本がウクライナに世界で6番目に多い70億ドル以上(約1兆800億円)を援助していることが分かったと伝えた。
また、ウクライナが最も緊急に必要としているのは武器と弾薬であり、日本企業は平和憲法の制約を回避するため、米国向けにパトリオット対空ミサイルを一括生産し、米国がウクライナに譲渡する行動に出る可能性があるとし、これに対しロシアは「日本製のミサイルがウクライナで出現すれば、日ロ関係に影響を生じることになる」と警告していることを紹介した。
その上で、テンプル大学ジャパンの日ロ関係専門家であるジェームズ・ブラウン氏が「ウクライナを支援し、ロシアの侵略への抵抗に協力する日本の真の狙いは、現状を変えるための武力行使を防ぐ国際システムを維持することだ」とし、中国による台湾海峡の現状変更阻止が念頭にあると指摘したことを伝えた。
記事は、14年にロシアがクリミア半島の一方的な併合を行った際に黙認した日本が、22年のウクライナ戦争勃発後はロシアに対するスタンスを激変させたという日本のロシア専門家の解説を紹介した上で、その主な理由には、ロシアの侵略行為が「国連憲章のあからさまな違反」であったことと、ブチャなどでロシア軍の「非道な振る舞い」が明らかになったことがあるとした。
さらに、ブラウン氏が日本の首相が交代したことも、日本の対ロ姿勢にも影響を与えたと指摘し、安倍晋三政権時代には日ロ間の領土問題の解決と平和条約の締結につながる日露パートナーシップの発展が模索されていたものの、22年以降は日本政府が「優先事項はもはや日ロパートナーシップを築くことではなく、ロシアがウクライナに対する侵略戦争で敗北を喫するようにすることだ」と認識を改めたとの見解を示したことを伝えた。
記事はその一方で、日本はロシアとの関係を完全に断ち切ったわけではないとし、ガスプロムが主導するサハリン2石油・ガスプロジェクトに日本がなおも参画していることに言及。その背景には日本国内の石油・天然ガス資源が乏しく、天然ガス供給をロシアに依存しなければならないことがあるとした。
●ガザの病院敷地内から200人の遺体、イスラエル軍が3月下旬から包囲・攻撃 4/23
AFP通信によると、パレスチナ自治区ガザの民間防衛当局は22日、南部ハンユニスのナセル病院の敷地内から最近3日間で約200人の遺体が見つかったと明らかにした。イスラエル軍に殺害された後、埋められたと説明している。
当局が身元確認を進めながら、遺体回収作業を続けているという。イスラム主義組織ハマスの報道担当者は、病院で発見した遺体が283人に上るとした上で「市民への犯罪に関する国際的な調査を求める」と訴えた。ナセル病院では、ハマスの戦闘員が集結しているとしてイスラエル軍が3月下旬から周辺を包囲し、激しく攻撃していた。
一方、イスラエル軍は22日、昨年10月のハマスの奇襲を防げなかったことを理由に参謀本部 諜報 局のアハロン・ハリバ局長が辞任すると発表した。主要紙ハアレツによると、奇襲を巡り軍高官が引責辞任するのは初めて。ハリバ氏は辞表で「戦争の責任を永遠に負う」と表明した。後任が決まり次第、交代する。
イスラエルではハマスの奇襲で約1200人が死亡したほか、拘束された人質約250人のうち、今も約130人が戻っていない。奇襲を事前に察知できなかった情報機関の責任を追及する声が上がっていた。
●ウクライナ軍事支援協議 防空兵器要望も新たな発表なし―EU 4/23
欧州連合(EU)は22日、加盟国の外相と国防相が出席した閣僚理事会をルクセンブルクで開き、ロシアの侵攻が続くウクライナへの軍事支援を中心に協議した。同国が防空兵器の供与を求める一方、加盟国から新たな支援に関する発表はなかった。
ウクライナでは、侵攻長期化で防空兵器の不足が深刻化している。AFP通信によると、オンラインで参加したウクライナのクレバ外相は「具体的かつ大胆な決断が必要だ」と支援を促した。
EUのボレル外交安全保障上級代表(外相)は理事会後の記者会見で、支援の「緊急性は明白だ」と指摘。複数の加盟国が防空兵器を支援する用意があると話したと明らかにした。ただ、詳細には踏み込まず、「決断を下すのは加盟国だ」と述べるにとどめた。
●ロシアがウクライナに無人機攻撃、南部オデーサで7人負傷 4/23
ウクライナ軍当局者が23日明らかにしたところによると、ロシアが南部オデーサと首都キーウ(キエフ)を無人機(ドローン)で攻撃した。オデーサでは7人が負傷し、このうち2人は子どもだった。
オデーサ州のキペル知事はメッセージアプリのテレグラムで、複数の集合住宅が攻撃を受け火災が発生したと明らかにした。当局によると少なくとも14棟が被害を受けた。
ウクライナ空軍によると、ロシアは攻撃型無人機16機と短距離弾道ミサイル2発を発射した。
空軍はテレグラムで、防空システムがオデーサ、キーウ、ミコライウ、チェルカスイの上空で無人機15機を破壊したと発表。ミサイルについては明らかにしていない。
またキーウ当局者は、同市に向けて発射された無人機は全て破壊され、被害や負傷者の報告はないとテレグラムに投稿した。
ミコライウ州のキム知事によると、墜落した無人機の残骸で商業インフラのビルが損傷した。 
●ロシア軍のテレビ塔攻撃、ゼレンスキー氏「通信と情報を制限しようとする脅し」…迎撃ミサイル支援要請 4/23
ロシア軍は22日、ウクライナ東部の同国第2の都市ハルキウにあるテレビ塔を攻撃し、ロイター通信によると、約240メートルの高さのテレビ塔の上部が折れて地上に落下した。地元当局によると、巡航ミサイル「Kh59」が使われた模様だ。ロシアがウクライナへの侵略を開始して24日で2年2か月となる。
破片で近隣の建物が損傷したが、負傷者はいなかった。テレビ放送が中断し、復旧作業が行われている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は22日夜、「街全体に恐怖を感じさせ、通信と情報入手の手段を制限しようとする脅しだ」と非難した。攻撃を防ぐため、地対空ミサイルシステム「パトリオット」が必要だと改めて強調した。米政策研究機関「戦争研究所」は、露軍が「住民が街を放棄して逃げ出すよう、パニックを起こそうとしている」と指摘した。
一方、英字ニュースサイト「キーウ・インディペンデント」によると、ウクライナ軍報道官は22日、2万〜2万5000人の露軍が東部ドネツク州チャシフヤールの郊外に展開していると明らかにした。チャシフヤールは露軍の当面の攻略目標とされ、報道官は「状況は困難」との認識を示した。
●「ロシア、クリミア半島に100キロメートルの防衛線設置…遺跡まで掘り返す」 4/23
ロシアがクリミア半島に大規模防衛線を構築しているという分析が出てきた。クリミア半島はロシアが2014年に強制併合したウクライナ領土だ。ウクライナ政府行政組織である「クリミア自治共和国ウクライナ大統領代表部」は22日、報告書を通じて「ロシアがクリミア半島の黒海沿岸に最近構造物を増やしている。2〜3月に新しく建てた構造物の長さだけで100キロメートルを超える」と明らかにした。
報告書によると、ロシアは防衛線を構築して自然保護区域と遺跡などの観光地を掘り返した。セベルネ村に残っている古代定着地の上に海岸防衛要塞が作られたと強調した。ロシア海軍がクリミア半島周辺海域で潜水艦やサボタージュ(破壊工作)対応訓練を頻繁に実施しているとも付け加えた。
ウクライナはクリミア半島に特殊部隊と無人機(ドローン)を動員したゲリラ式攻撃を続けてきた。ウクライナ軍は21日、クリミア半島に駐留するロシアの黒海艦隊所属救難艇を攻撃し作動不能状態にした。
17日にはクリミア半島北部の飛行場を爆撃し、ロシア軍のS400対空ミサイル発射台4基を無力化した。先月24日にはロシア軍黒海艦隊司令部があるセバストポリ港に大規模ミサイル攻撃を加え揚陸艦2隻を破壊した。昨年7月に爆発物を搭載した無人艇(水上ドローン)でクリミア半島とロシア本土をつなぐクリミア大橋を打撃したりもした。
プーチン氏「南北輸送回廊、関心がある国招待」
一方、ロシアのプーチン大統領はこの日バイカル・アムール幹線鉄道(BAM)着工50周年行事で、国際南北輸送回廊「INSTC」の開発に関心がある国をすべて招くと明らかにした。プーチン大統領はこの席で「BAMがソ連の全共和国の利益に向けた建設プロジェクトになったように、国際南北輸送回廊も最も広い国際協力の模範とならなければならない」と強調した。
BAMはシベリア横断鉄道幹線のひとつで、東部シベリアと極東地域を結ぶ。INSTCはインド、イラン、ロシアの3カ国をインド洋とペルシャ湾、カスピ海などを利用する水路と鉄道などを利用して連結する複合輸送回廊構想だ。
この日の行事にはアゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領が参加した。アリエフ大統領の父のヘイダル・アリエフ前アゼルバイジャン大統領は旧ソ連時代にBAM建設を監督したことがある。
プーチン大統領は「BAMとシベリア横断鉄道をアップグレードする事業に参加するパートナーに急速に成長するアジア太平洋地域市場に対するアクセス性を提供する準備ができた」としてアゼルバイジャンがこの事業に参加していると話した。また、BAMのおかげでシベリアと極東地域を開発する大きな機会を得られるようになったと付け加えた。
プーチン大統領は行事に先立ち、アリエフ大統領とロシア大統領府で会い、コーカサス地域(ロシア南西部、アゼルバイジャン、アルメニア、ジョージア一帯)の安全保障問題を話し合った。両国の首脳会談は17日にロシア大統領府がアゼルバイジャンとアルメニアの紛争地であるナゴルノカラバフでロシア平和維持軍が撤収中だと公式に確認した後に行われて関心を集めた。
ナゴルノカラバフは国際的にはアゼルバイジャン領だが、アルメニア系が約30年間占有していた地域だった。昨年9月にアゼルバイジャンの大々的な空爆により住民の大部分がアルメニアに離れた。
プーチン大統領は会談を始めながら「われわれは地域安保を保障する側面で状況を話すもの。扱わなければならない敏感な問題が多い」と話した。アリエフ大統領は「地域安保問題はいつもわれわれの議題にあり、われわれはそれが解決された方式に満足している。ロシアはコーカサスとそれより広い地域の安保で核心的な国」と強調した。

 

●国防次官を収賄容疑で拘束 ロシア 4/24
ロシア連邦捜査委員会は23日、チムール・イワノフ国防次官を収賄容疑で拘束したと発表した。詳細は明らかにされていないが、国営メディアは、ウクライナへの侵攻を続ける中での高官の拘束は異例としている。
国営メディアによると、イワノフ氏拘束はウラジーミル・プーチン大統領に報告された。反腐敗活動家らは長年、プーチン政権下で腐敗が広がったと批判してきた。
有罪となれば、イワノフ氏には重い罰金か10年超の拘禁が科される可能性がある。
イワノフ氏は欧州連合(EU)から、軍事施設建設を統括する国防省の責任者として制裁を科されている。
一方、刑務所で死亡した反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が創設した「反腐敗基金」は2022年、ロシア軍が制圧したウクライナ南部マリウポリでの建設事業でイワノフ氏が利益を得ていたとして、調査対象としていた。
同基金は、イワノフ氏は妻と離婚し、妻がEUの制裁を回避できるようにしたとしている。
●ロシア・イワノフ国防次官が収賄の疑いで拘束…約166万円以上受け取ったか 軍の資産管理や住宅・医療支援を担当 4/24
ロシアのウクライナへの軍事侵攻が長期化するなか、ロシア国防省の官僚トップが収賄の疑いで拘束された。
ロシア連邦捜査委員会は23日、イワノフ国防次官を収賄の疑いで拘束したと発表した。
国営タス通信は、イワノフ氏が少なくとも100万ルーブル(約166万円)の賄賂を受け取った疑いがあると報じている。
イワノフ氏は、23日午後にモスクワで開かれた国防省の理事会に出席後拘束されたとみられ、プーチン大統領やショイグ国防相は、事前に報告を受けていたという。
イワノフ氏はショイグ国防相の側近で、国防省の傘下企業のトップを経て、2016年に国防次官に任命され、軍の資産管理や住宅・医療支援を担当していたという。
ロシアメディアは、イワノフ氏が「ロシアで最も裕福な官僚のひとり」と伝えている。
●ロシア国防次官を収賄容疑で拘束 プーチン大統領には事前に連絡 4/24
ロシア連邦捜査委員会は23日、イワノフ国防次官を収賄の疑いで拘束したと発表した。容疑の具体的な内容は明らかにしておらず、必要な捜査を行っているとしている。ロシア通信によると、最長で懲役15年の刑が下される可能性がある。
インタファクス通信などによると、イワノフ氏は2016年5月に国防次官に任命され、ロシア軍の財産管理などを担当していた。拘束された当日も国防省の会議に出席していたという。ペスコフ大統領報道官は、イワノフ氏の拘束について、プーチン大統領やショイグ国防相には事前に伝えられていたと述べた。
●トランプ当選で、NATOが形骸化? ほくそ笑むプーチン、ロシア撤退の「日本車メーカー」は今後どうなる 4/24
大手自動車メーカー、ロシア撤退相次ぐ
ロシアによるウクライナ侵攻から2年以上が経過しているが、日本の大手自動車メーカーの間ではロシアからの撤退が相次いだ。
侵攻から半年あまりが経過した2022年9月、トヨタ自動車はサンクトペテルブルクにある工場を閉鎖し、ロシアでの生産から撤退すると発表し、その後同工場はロシア産業貿易省傘下にある「自動車・エンジン中央科学研究所」へ譲渡され、国有化された。
その翌月には日産自動車もロシア事業からの撤退を表明し、現地の子会社であるロシア日産自動車製造会社の全株式を自動車・エンジン中央科学研究所に1ユーロで譲渡する方針を明らかにした。
その後、同年11月に全株式の売却が完了し、日産のサンクトペテルブルク工場は自動車・エンジン中央科学研究所への譲渡後、ロシアの乗用車最大手アフトワズが2022年末から自動車生産をその工場で開始した。
マツダも11月、ロシアからの撤退を表明し、ロシアで製造を手がける大手自動車メーカー「ソラーズ」との合弁会社の株式を同社に1ユーロで譲渡することを明らかにし、いすゞ自動車も2023年7月、トラックの生産や販売などのロシア事業からの撤退を発表し、子会社の株式を現地の自動車大手ソラーズに譲渡したと発表した。
大手自動車メーカーの間で生じたドミノ現象的な脱ロシアの背景には、この政治的緊張が長期的に続くことが避けられないとの判断があったことは想像に難くない。
そして、その判断どおり、今日のウクライナ戦争は長期化が間違いない状況だ。3月の大統領選挙で5選を果たしたプーチン大統領は最近、追加で15万人を動員する大統領令に署名し、今後ウクライナでの攻勢をいっそう強めていく構えだ。
一方、ウクライナ側の劣勢は顕著で、ゼレンスキー大統領は米国からの軍事支援が停止されれば戦争に負けると繰り返し主張し、両国が置かれる状況は全く異なる。
安全保障の不確実性
ウクライナがロシアによる侵攻を許したひとつの背景に、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟していないことがある。
NATOはその条約第5条で1加盟国への攻撃は全加盟国への攻撃とみなすと規定し、要は集団的自衛権を認める集団防衛体制となっており、仮にウクライナがNATOに加盟していれば、ロシアはNATO加盟31か国(当時のNATO加盟国数にウクライナが加盟していたとして)を敵に回すことになるので、プーチン大統領も侵攻という決断を下していなかった可能性が高い。
ウクライナ周辺には同じく旧ソ連圏を構成してきたバルト3国があるが、リトアニアもエストニアもラトビアもNATOに加盟しているが、ウクライナのように加盟していなければ侵攻の対象になっていた可能性は排除できない。スウェーデンとフィンランドがNATO加盟を急いだのも、それによって自国の安全保障を担保しようとしたからだ。
しかし、NATOの傘下に入ればロシアによる脅威から完全に身を守れるかといえば(海外進出企業の観点でいえば、ロシアと距離的に遠くないNATO諸国であれば社員は安全に仕事できるか)、最近不穏な空気が漂う。
米国では秋に大統領選が行われるが、トランプ氏は2月、「NATO加盟国が軍事費を適切に負担しなければ、ロシアからの攻撃があっても米国は支援せず、好きにやるようロシアにけしかける」などと発言し、大きな物議を交わした。これに警戒感を抱いたのか、その後フランスのマクロン大統領は、「ウクライナ戦争でロシアを打倒することは欧州の安全保障にとって不可欠であり、西側諸国の地上部隊をウクライナへ派遣することで合意はないものの、その可能性を現時点で排除するべきではない」と一歩踏み込んだ発言をした。これも大きな物議を醸し出すことになり、ドイツのショルツ首相やNATOのストルテンベルグ事務総長らは、NATO加盟国の兵士が戦場に派遣されることはないとマクロン大統領の発言を強く否定したが、オランダやリトアニアなど一部のNATO加盟国からはマクロン発言に同調するような言及もある。
マクロン大統領は3月にも、ロシアがウクライナに勝てば次は欧州だと警告する発言もしている。
NATOと揺れる欧州
仮にトランプ氏が勝利すれば、NATO内での混乱や分断が先鋭化する恐れがある。
前述のとおり、NATOが集団防衛体制であることがロシアに対する大きな抑止力となってきたが、共同で対処するものの、どんな対抗措置を具体的に取るかは結局のところ最後は各国政府の判断であり、自国の軍隊を最前線に送ることはマストではない。
トランプ氏が大統領になると、こういったNATOの一体性にほころびが生じ始め、NATO自体が「形骸化」してしまうリスクが考えられる。それこそがプーチン大統領の狙いであり、NATOの形骸化はロシアを大きく利することになり、それを警戒する欧州諸国とロシアとの軍事的緊張が高まるになろう。
欧州、特にロシアと距離的に近い東欧諸国に進出する日本企業としては、このリスクを長期的な視野で捉えておく必要がある。今すぐロシアの脅威がウクライナ周辺の欧州諸国に拡大するわけではない。しかし、プーチン大統領がどこまで拡大するかは未知数であり、NATOの形骸化により欧州とロシアとの間で軍事的緊張が高まるリスクは排除できない。
大手自動車メーカーなど日本の大手企業でもポーランドやチェコ、フィンランドなどに進出したり、新たな開拓先と選定したりする動きもあるが、長期的視野でウクライナ戦争を捉える必要がある。
●米政府、中国の銀行への制裁を検討 対ロシア貿易決済巡り 4/24
米政府は、対ロシア貿易の決済を行う中国の銀行に対する制裁を検討している。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが23日報じた。
制裁の背景には、中国とロシアの貿易に対する懸念がある。米政府は、中国がロシアの軍事力の回復を助け、ウクライナとの長い消耗戦に拍車を掛けているとみているのだ。ウクライナ侵攻開始以降、中国はロシアに武器を輸出していないが、半導体や電子回路、機械、工具といった民生用と軍事用の両面で利用可能な製品の輸出が、ロシアの軍需産業を下支えしてきたと米政府は考えている。
制裁の内容について、同紙の取材に匿名で応じた米政府筋は、対象となる銀行を国際金融システムから切り離すことを想定していると説明。ただし、問題解決に向けた外交努力が失敗した場合にのみ適用される「選択肢」だとしている。
制裁が適用された場合、対象となる金融機関は米ドルでの決済ができなくなる。そうなれば、国際貿易の決済に支障をきたすとともに、標的となった銀行は破綻の危機にさらされ、顧客も打撃を受けることになるため、その影響は計り知れないものとなる。制裁が発動されれば、新型コロナウイルスの流行以降、低迷を続ける中国経済の回復が遅れ、膨れ上がる債務にも悪影響が及ぶ可能性がある。
米国務省は、アントニー・ブリンケン長官が24日から中国の北京と上海を訪問し、中東危機やウクライナ侵攻、台湾や南シナ海を含む国際問題を幅広く協議すると発表した。同長官はロシアへの輸出を巡り、中国政府をけん制するものとみられる。だが、厳しい制裁をちらつかせることで、中国側にロシアとの貿易を思いとどまらせる効果があるかどうかは未知数だ。
米政府はここ数週間、中国の対ロシア輸出に懸念を表明してきた。先週イタリアで開催された主要7カ国(G7)外相会合の後、米外交筋は、ロシアの防衛産業を支える最大の力は中国だと名指しした。ブリンケン長官は、工作機械や半導体などの軍民両用品が中国から流入しているため、ロシアの軍需産業は制裁や貿易規制の影響を十分に受けていないと指摘。中国が欧州をはじめとする国々と良好な関係を築きたいのであれば、冷戦終結以来、欧州の安全保障上最大の脅威となっている問題を刺激するべきではないと警鐘を鳴らした。
また、今月上旬に北京を訪問したジャネット・イエレン米財務長官は、中国企業がロシアの軍事調達に関わっている実態に懸念を表明。ロシアの防衛産業に軍事品や軍民両用品を流すような重大な取引を手助けする銀行は、米国の制裁の対象となると警告していた。
●中国はふたつの戦争をどう見ている? 混沌のうちに世界の覇権を握る魂胆か 4/24
アメリカが嫌いで、ロシアの友で、第三世界の親分で、って雑なとらえ方でいいの? 中国の習近平主席は戦乱の世をどう見ているのか――
3年目を迎え、泥沼状態にあるロシア・ウクライナ戦争。イランの報復攻撃でさらに不安定化するイスラエル・ハマス戦争。欧米諸国が、ロシアをやり玉に挙げ、イスラエル軍を支援する一方、中国は、ロシアに経済制裁は科さず、イスラエル軍を非難する。狙いはビジネスチャンスか、イメージアップ戦略か、あるいは。
冷戦後の平和な世界が中国を経済大国にした
ロシア・ウクライナ戦争と、イスラエル・ハマス戦争。ふたつの戦争が国際社会を揺るがし続ける中、いまひとつ見えてこないのが、すでにアメリカと世界を二分する大国となりつつある中国の姿勢だ。
特にロシア・ウクライナ戦争では、アメリカを中心とした欧米諸国がウクライナへの武器供与やロシアに対する経済制裁などで結束した行動を取る中、中国は一貫してそこから距離を取り続けてきた。
そのため、中国の姿勢を「背後からプーチンのロシアを支えている」あるいは「中国は衰退するロシアを利用して覇権主義を強めようとしている」と批判したり、さらには、アメリカと対立する立場の中国とロシアを一体の仮想敵のように見なして、これを「新たな冷戦時代の始まり」ととらえている人も少なくない。
だが、本当にそうなのだろうか? ウクライナやガザの戦争は、"中国の視点"からどのように見えているのか?
「ロシア・ウクライナ戦争に関していえば、この戦争は中国にとって迷惑以外の何ものでもなく、『プーチンはなんてよけいなコトをしてれたんだ!』というのが習近平の本音だと思います」と語るのは、中国事情に詳しいジャーナリストの高口康太氏だ。
「忘れてしまった人も多いかもしれませんが、そもそも、ロシアのウクライナ侵攻が始まったのは、北京五輪が閉幕し、パラリンピックが始まる直前の時期でした。せっかく中国が国を挙げて『平和の祭典』をやっている最中に、そのメンツを潰すようなことをプーチンが始めただけでも習近平政権にとっては喜ばしくない。
しかも、この侵攻によって、かつての冷戦時代のように西側と東側の対立が強化されることを中国政府はまったく望んでいませんでした」
それはなぜ?
「この30年余りの中国の経済成長を支える原動力となったのが、米ソ冷戦時代の後に訪れた"平和な世界≠セったからです。東側・西側の壁が崩れて世界が貿易で一体化してゆく、そうしたグローバリゼーションの大きな波に乗って中国経済が台頭したことを、中国自身もよく理解している。
ですから、ロシアのウクライナ侵攻で新たな冷戦状態や東西対立が生まれることも、エネルギーや食料価格が高騰したり、グローバルなサプライチェーンのリスクに対する警戒感が高まったりすることも望んでいないのです」
ではなぜ、中国はほかの欧米諸国と共に「反ロシア包囲網」に加わらないのか?
「西側諸国が武器供与などを通じて『ウクライナが戦い続けること』を支援しているのに対して、中国の基本姿勢は一貫して『即時停戦』です。
また、中国はロシアによるウクライナ侵攻を明確な国際法違反だと指摘する一方で、『NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大がこうした事態を招いた要因のひとつ』という主張や、『戦争の長期化やロシアへの経済制裁の影響によるエネルギー価格と食料価格高騰によって、苦しんでいるのは弱い立場にあるグローバルサウスの新興国や途上国』という主張も一貫しており、これらの点でも欧米諸国とは立場を異にしています」
つまり、中国にとって戦争はグローバルなビジネスへの弊害であり、第三世界のリーダーとして大切なビジネスパートナーを守るために、ロシアの立場にも一定の理解を示しながら即時停戦を訴えている、という側面もあるのだ。
味方というより商売先のロシア
しかし、そんな中国に対して、アメリカを中心とした欧米諸国や日本がロシアに行なっている経済制裁でも「ロシア側に抜け道を与え、さらに西側諸国が撤退したロシア貿易で大きな利益を得ている」という批判もある。
「まず、武器を含めた軍需物資に関しては『紛争当事国であるロシアにもウクライナにも戦争に関する物資は売らない』というのが、建前としての中国政府の基本姿勢です。
その上で、アメリカや欧州諸国からは『中国から第三国を経由してロシアに軍需物資が転売されている』とか『中国から輸出された冷蔵庫の汎用半導体がロシア製の戦車に使われている』といった批判があるわけですが、真偽はわかりません。
ただ、中国が輸出先である第三国の転売規制に積極的でないのは事実ですし、もともと中国は国内市場でも転売が多いため、中国に住む民間人が中国の物をロシアに転売しているケースもたくさんある。
例えば、スマホのファーウェイとかシャオミも、ウクライナ戦争が始まった初期の段階でロシア市場から撤退するって話だったんですけど、ロシアのネットショッピングで普通に売ってる......みたいなコトも多くて。これは中国政府の意図というより、中国社会の"緩さ"ゆえだと思います。
一方で、非軍需製品の貿易統計に目を向けると、中国の対ロシア輸出が大きく伸びているのは事実です。最も典型的なのが自動車で、昨年、中国の自動車輸出台数は約490万台で世界一になったのですが、そのうち約80万台がロシアに輸出されている。
もともとロシアの自動車市場は韓国、日本、ヨーロッパが強かったのですが、それを全部、中国メーカーがかっさらった形ですから、当然、『中国が戦争で漁夫の利を得ている』といった批判はあるでしょう。
では、中国企業は世界の批判を顧みず、平気でロシアと商売しているのかというと、そうでもなくて。例えば、ドローンで有名なDJIなど、西側の先進国相手にちゃんと商売ができている企業は、風評被害を恐れて、日本企業と同じような形でロシアへの輸出を自粛しています」
ここでも、中国が重視するのは「どの市場を大切にすることが商売にとって重要か?」という商売第一の現実的な視点のようだ。
中国は世界の覇権を狙っているのか?
では「ガザ問題」についてはどうか? 高口氏が続ける。
「ガザに関しても、中国の主張は当初から一貫して『即時停戦』です。中国も中東地域からのエネルギー輸入に依存しているため、この地域の平和と安定が重要だという点では日本と同じ思いですし、中国にとって中東諸国はお互いにイデオロギーや人権に関する問題をあまり気にせずに商売できる相手でもある。
ですから、例えば日本でも最近話題の激安通販『SHEIN』なんかも、日本に来るずっと前から中東ではやっていたりと、民間レベルでも深いつながりがあります。
また、イスラエルとも、テクノロジー関連分野の産業での協力関係や投資も多いので『戦争なんかされると商売がやりづらくて迷惑』という気持ちは、ロシア・ウクライナ戦争と同じでしょう」
しかし、ロシア・ウクライナ戦争のときとは大きく異なる点がある。
「ガザの問題に関しては国連などの場でも『イスラエルのハマスに対する反撃は自衛権を超えている』と非常に強く批判しており、イスラエルの後ろ盾になっているアメリカへの批判もかなり厳しいものがあります」
この点に関しては、ガザへの無差別攻撃を続けるイスラエルをかばい続け、即時停戦を求める国連安保理の決議に何度も拒否権を行使してきたアメリカよりも中国の主張のほうが国際世論に近いようにも思える。
しかし、その背景に、習近平主席がブチ上げた「一帯一路」構想のために中東が肝心だからでは、と中国の下心を指摘する声もあるが?
「正直、一帯一路は誰も実態がよくわかっていない状況で(苦笑)、150ヵ国ほどが参加していて『どこが帯なんだ?』という状態。しかも、そのうまみがイマイチ実感できず、参加国が離脱し始める始末。中国が秘密裏に世界の覇権を握ろうと動いているという言説が多いですが、実際にはそんなうまく立ち回りはできていません」
それなら、ふたつの戦争を止めるキープレイヤーとして、中国は信用できるかも?
「ただし問題は、中国がアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国になった今も、こうした国際紛争の解決に関して、自らが仲介者として積極的な役割を果たそうとする意思や、その経験が不足しているという点でしょう。
ロシア・ウクライナ戦争でも、一度、ロシアによる占領地域の問題を棚上げにする形で、即時停戦と戦後の復興に関する中国主導の提案がありましたが、まったく相手にされませんでしたし、中国が経済的にも政治的にも大きな影響力を持つアフリカのエチオピア内戦ですら『中国が戦争を止めた』といった話は聞かない。実際、何もできていないんです。
中国は世界第2位の大国になったわけですが、この先、アメリカを倒して世界を支配する......といった壮大な野望を抱いているとは思えません。むしろ中国経済の繁栄が国際社会の平和と安定に支えられていることも理解している。
大国としてはまだまだ未熟で、自分たちが国際社会に対してどのような責任があり、大国として何を求められているのか、それにどう対応するべきなのかといった学びが足りていないのが、今の中国の実情なのかもしれません」
もちろん、現実として覇権主義的な大国中国の脅威が存在するのは事実だろう。しかし、だからこそ冷静に「中国の視点から見た世界」にも目を向ける必要があるし、その中国もまだ未熟な大国であるということを、心に留めておくべきなのかもしれない。
●閉ざされた北方領土交渉 平均88.5歳の元島民試練 「命あるうち返還困難か」 4/24
日本の北方領土返還に向けた政策は身動きが取れない状態が続いている。ウクライナに軍事侵攻したロシアが日本の制裁に反発し、日ロの平和条約交渉は対話の窓口さえ閉ざされた。厳しさを増す国際環境の狭間で、平均年齢88歳を超えた北方領土の元島民たちは試練の時を迎えている。
表情曇らせる北方領土元島民
知床連峰の麓、北海道東部の羅臼町。北方領土を間近に見渡せるこの街に住む、国後島出身の脇紀美夫さん(83)は「ロシアのウクライナ侵攻後、北方領土返還交渉は全く進まなくなり、北方領土の元島民にとってはトンネルの出口を見失った感覚だ」と吐露する。
脇さんは北方領土元島民らによる団体「千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)」の理事長を昨年5月まで8年間務めた。今年2月7日、「北方領土の日」を記念した根室市での「住民大会」にも参加し、750人の参加者とともに「北方領土を返せ!」とシュプレヒコールを繰り返した。
北方領土の日は、1855年に千島列島のウルップ島と択捉島との間に国境線を引いた「日ロ通好条約」調印の日に由来する。「住民大会」は地域最大級の返還運動の催しだが、根室市によると今年の動員は昨年比100人減。ロシアのウクライナ侵攻後、日ロ間の対話が滞るようになった現状に元島民の表情は曇る。
同じ2月7日、都内では政府などが「北方領土返還要求全国大会」を開いた。岸田文雄首相は「ロシアのウクライナ侵攻によって日ロ関係は厳しい状況にある」と前置きしたうえで、「政府として領土問題を解決し、平和条約を締結する方針を堅持していく」と返還実現への決意を語ったが、具体的な展望としては「北方墓参など四島交流事業の再開が最優先」と元島民の高齢化などに配慮を示すにとどめた。
北方領土は、北海道東部の根室地方の東側に広がる択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島からなる。面積は最大の択捉島が鳥取県とほぼ同じ3168平方キロメートル、2番目の国後島は沖縄本島を超える1490平方キロメートルある。
日本がポツダム宣言を受諾した後の1945年8月末から9月上旬にかけて、旧ソ連軍は北方四島を占領。当時の状態が現在も続いている。これに対し、日本外務省は「1855年の日ロ通好条約で択捉島とウルップ島の間に国境が確認された。北方領土は一度も他国の領土となったことがない、日本固有の領土」と位置付けている。
制裁に反発、交渉継続拒否
ロシアが2014年にウクライナ南部のクリミアを併合した後、安倍晋三政権はロシアとの平和条約交渉を優先し、米国などから難色を示されながらも早期に対話を再開した。一方、22年2月に始まったウクライナ侵攻後、岸田文雄政権は欧米各国と足並みをそろえて経済制裁に踏み切った。
制裁に軸足を置いた対ロ外交について、岸田首相は昨年5月の先進7カ国(G7)広島サミットを前にした寄稿文で「(ロシアの)力による一方的な現状変更の試みが行われている現実を目の当たりにし、『ウクライナは明日の東アジアかもしれない』との強い危機感を覚えた。だからこそ、厳しい対ロ制裁と強力なウクライナ支援によって侵略に毅然(きぜん)と対応する決断を行った」と説明。背景には、東アジアの安全保障環境悪化の中で、ロシアの行動を放置すれば中国や北朝鮮の活動を勢いづかせてしまうという危機感もある。
ロシアは日本の制裁発表直後の3月、領土問題を含む平和条約交渉の継続を拒否。1992年から続いてきた北方四島のロシア人島民と日本人のビザなし交流なども停止した。それから2年余り。ウクライナの戦況は膠着(こうちゃく)し、日ロ政府間の領土・平和条約に関する公式の対話は途絶えたままだ。
前のめり外交との落差
元島民たちが対ロ制裁に理解を示しながらも落胆しているのは、プーチン大統領と首脳会談を繰り返すなど前のめりな対ロシア外交を展開した第2次安倍晋三政権の時代(2012年12月〜20年9月)と、現状との落差が大きいからだ。
「安倍時代」の北方領土返還交渉を振り返っておこう。16年5月、当時の安倍首相はロシア・ソチでの首脳会談で北方領土、平和条約に関して「新しいアプローチ」で交渉を進める方針を打ち出し、プーチン大統領と合意。さらに18年11月のシンガポール首脳会談では「平和条約を締結した後、歯舞群島と色丹島を引き渡す」とした1956年の「日ソ共同宣言」を基礎に交渉を加速することでも一致した。事実上、「北方四島返還」を原則にしてきた日本が北方領土交渉の方針を「二島返還」へとかじを切った瞬間だった。
『安倍晋三回顧録』によると、18年9月にプーチン大統領から「年末までに前提条件なしに平和条約を結ぼう」と提案された安倍氏は、同年11月のシンガポール会談に向け「思い切って勝負しよう」「(共同宣言の)原点に戻ろう」と心に決めたという。その戦略は、プーチン大統領との個人的関係を軸に、共同経済活動にも取り組みながら北方領土・平和条約交渉を活発化させるものだった。『回顧録』によれば、安倍氏は「本気で領土の返還を実現しようとするならば、まずは向こうが関心を示す案を示さなければならないのです」と語っている。
元島民たちは「四島返還」の枠組みが崩れることへの懸念を示しつつ、首脳同士の個人的関係も含めた交渉進展に大きな期待感を抱いた。前述の国後島元島民の脇さんは、政府への要請活動を通じて複数回にわたり当時の安倍首相と対話した経験から「安倍さんの北方領土問題解に対する思い入れは相当大きかった」と振り返る。
ただ、ウクライナ侵攻前から、対ロ交渉が行き詰まっていたのも事実だ。プーチン大統領は18年12月には、平和条約締結後に北方領土に米軍が展開する可能性への懸念を示唆。ロシア側は、北方領土は第2次世界大戦の結果によりロシアが合法的に獲得した、と認める必要性を改めて指摘した。20年7月には憲法改正により、領土の割譲禁止を明記。ロシアに対する譲歩を見せた上、得るものが少なかった安倍政権の対ロ外交について「失敗だった」とする指摘もみられた。こうした動きなどを踏まえ、安倍政権を引き継いだ菅義偉首相(当時)、岸田首相は、ロシアとの交渉に積極的な態度を見せなくなっていた。
入国禁止、 灯台に国旗・・相次ぐけん制
ウクライナ侵攻後、ロシアは交渉の停止だけでなく、北方領土に絡み目に見えるけん制も続けている。2022年5月には岸田首相ら政府関係者や北方領土返還運動関係者らを入国禁止とし、23年4月には千島連盟を「好ましくない組織」に指定した。
北海道最東端の納沙布岬沖3.7キロ、肉眼でその姿を確認できる歯舞群島・貝殻島では、「実効支配を誇示」(元島民関係者)する動きもあった。23年夏、ロシア側が日本の領有権を無視するかのように、日本人が建てた灯台で国旗掲揚や壁面の色の塗りなおし、ロシア正教会の十字架設置などを行った。
関係者にとって深刻なのは、北方四島への渡航が事実上できなくなっていることだ。ロシア側は「ビザなし交流」と「自由訪問」の政府間合意の効力を停止。人道的観点から枠組みを残している「北方領土墓参」も、元島民が多く加入する千島連盟を「好ましくない組織」に指定したことで、ハードルを高めた。
特に墓参は、中断を経ながら60年前から続いてきただけに元島民の落胆は大きい。22年からは船上から島に手を合わせる「洋上慰霊」で我慢をせざるを得なくなっている。
「交渉の糸口を」
北方領土の元島民は、平均年齢は88.5歳と残された時間はわずか。元島民は今年3月末時点で5135人となり、第2次世界大戦終結時の1万7千人に比べ約3割にまで減った。高齢化が進んだ元島民には「生きている時代の北方領土返還は難しいのでは」との悲観論も広がる。地元で活動を続け、今年87歳となる歯舞群島・勇留(ゆり)島出身で千島連盟根室支部長の角鹿泰司さんは「ロシアへの怒りは当然ある。日本政府が交渉の糸口を見つけられないのも残念だ。ただ、怒ってばかりいても前に進まない。日ロ関係が改善しなければ領土交渉は難しいので、これ以上お互いを刺激するような行動は控えてほしい」と苦渋の表情で語る。
北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの岩下明裕教授は「いずれ訪れるウクライナ戦争の停戦が、本格的な対話再開のチャンスになる。隣国同士の日ロは、対立していても災害や海の安全、漁業など2国間のさまざまな分野に加え、北東アジア地域全体に関する協議も必要で、コンタクトは取らざるを得ない。今はできることから連絡を密にして、次の機会に備えるべきだ。北方領土返還交渉を再び活発化させるには大きな壁ができているが、将来的な交流や墓参の再開はあり得ると思う」と指摘している。
●英、2030年までに国防費GDP比2.5%達成=首相 4/24
英国のスナク首相は23日、2030年までに国防費の国内総生産(GDP)比を2.5%に引き上げると表明した。
スナク首相は訪問先のワルシャワでポーランドのトゥスク首相のほか、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長らと会談。ストルテンベルグ氏との共同記者会見で、英国は向こう6年間で軍需品とドローン(小型無人機)の生産を増やすため750億ポンドを追加支出すると表明した。これによりNATO加盟国で2番目に国防費が多い国になるという。
その上で、ロシアによるウクライナ全面侵攻を受け、各国が軍需品の備蓄を一段と増強し、迅速に補充する能力を持つ必要があることを学んだとし、「冷戦終結以降、最も危険な世界において油断できない」と言及。ロシアのプーチン大統領は勝利したとしてもそこにとどまることはないため、全力を尽くしてウクライナを支援しなければならないと語った。
同時に「危険を誇張してはならない。われわれは戦争の瀬戸際にいるわけではなく、戦争を求めているわけでもない」と述べた。
●米上院、ウクライナとイスラエルの戦争支援に950億ドルの援助法案を承認 4/24
ワシントン:大規模な対外援助パッケージは、数ヶ月の遅れを経て火曜日遅くに米国議会を容易に通過し、ロシアの侵攻軍による前進とキエフの軍需品不足の中、新たなウクライナ支援への道を開いた。
上院は土曜日に下院で可決された4つの法案を79対18で承認した。下院の共和党指導者たちが先週突然方針を転換し、ウクライナ、イスラエル、台湾、インド太平洋におけるアメリカのパートナーに対する軍事援助を中心とした950億ドル規模の法案の採決を許可したためである。
上院では、4つの法案が1つのパッケージに統合された。
最大のものはウクライナに610億ドルの資金を提供するもので、2番目はイスラエルと世界中の紛争地域の民間人への人道支援に260億ドル、3番目はインド太平洋における「共産主義中国への対抗」に81億2000万ドルの資金を提供するものだ。
先週下院が追加した4つ目の法案には、中国が支配するソーシャルメディアアプリ「TikTok」の禁止、ウクライナに押収されたロシア資産の移転措置、イランへの新たな制裁などが含まれている。
バイデン氏は、この法案がバイデン氏の机に届き次第、署名することを約束し、バイデン政権はすでにウクライナに対する10億ドルの軍事支援策を準備している。
上院の民主・共和両党の指導者たちは、ウラジーミル・プーチン大統領をはじめとする外国の敵対勢力に対し、ワシントンがウクライナやその他の外国のパートナーへの支援を継続することを通告することで、議会が曲がり角に差し掛かったと予測した。
「これは歴史の変曲点だ。西側の民主主義は、おそらく冷戦終結以来最大の脅威に直面した」と、民主党のチャック・シューマー院内総務は上院で述べた。
ホワイトハウス、下院、上院の3分の1が改選される11月の選挙が終わるまでは、この支援策がウクライナのために承認される最後のものになるかもしれない。
上下両院における安全保障支援への反対の多くは、ウクライナ支援に懐疑的なドナルド・トランプ前米大統領と関係の深い共和党議員からで、彼は2期目を目指して「アメリカ・ファースト」政策を強調している。
上院共和党のミッチ・マコネル党首は、ウクライナ支援の強力な支持者だが、ロシアが2022年2月に本格的な侵攻を開始して以来、ワシントンがキエフのために承認してきた1130億ドルにさらに追加することに共和党の強硬派が反対したことが主な原因で、この遅れについて遺憾の意を表明した。
マコネル氏は記者会見で、「孤立主義的な動きは一段落したと思う」と語った。
ウクライナの資金の一部(100億ドルの経済支援)は、トランプ大統領が提案していた融資の形で提供される。しかしこの法案では、大統領は2026年から融資を放棄することができる。
人道的懸念
武器の流入は、キエフがロシアの侵略による東部での大躍進を回避する可能性を向上させるはずだが、援助がバイデン氏が昨年要請した時期に近ければ、より役立っただろう、とアナリストは述べた。
イスラエルへの資金援助がガザ紛争にどう影響するかは、すぐには明らかにならなかった。イスラエルはすでに毎年数十億ドルの安全保障援助を受けているが、最近ではイランによる初の直接空爆に直面している。
援助支持者たちは、人道的援助がガザのパレスチナ人の助けになることを望んでいる。ガザは、1200人の死者を出した10月7日の攻撃に対する報復として、イスラエルがハマスに対して行ったキャンペーンによって荒廃している。
ガザ保健当局によると、このキャンペーンにより、パレスチナ自治区では3万4000人以上の市民が死亡したという。
民主党率いる上院が、ウクライナ、イスラエル、インド太平洋地域への安全保障援助を可決したのは今年2度目である。ヶ月以上前の前回の法案では、共和党と民主党から70%の支持を得た。しかし、共和党が支配する下院の指導者たちは、先週まで対外援助に関する投票を許可しなかった。
この法案の進捗状況は、ウクライナや他のアメリカのパートナーに装備品を供給するために、アメリカの防衛企業が大きな契約を結んでいることから、産業界が注視している。
ロッキード・マーチン社、ゼネラル・ダイナミクス社、ノースロップ・グラマン社など、政府との契約を受ける他の大手企業とともに、今回の追加支出によってRTX社の受注残が増加すると専門家は予想している。
下院は311対112でウクライナ支援金を可決したが、「反対」票を投じたのはすべて共和党議員で、その多くはキエフへのさらなる支援に強く反対していた。共和党の賛成票はわずか101票で、マイク・ジョンソン下院議長は民主党の支持に頼らざるを得なくなり、下院議長の座を追われることになった。
しかし、下院は1週間の休会期間中にワシントンを離れ、ジョンソン議長を解任する投票は行われなかった。
●米上院、14.7兆円の予算案可決 ウクライナ支援盛り込む 4/24
米議会上院は23日、ウクライナとイスラエル、台湾への支援を盛り込んだ950億ドル(約14兆7000億円)の予算案を可決した。予算案をめぐっては、議会で数カ月間にわたり、審議が停滞していた。
予算案はバイデン大統領の署名を経て成立する。予算案の通過はバイデン氏や民主党員、上院共和党トップのマコネル院内総務にとって大きな勝利となった。マコネル氏は、党内の右派がウクライナ政府への支援についてますます後ろ向きな姿勢を示すなかでも、支援を後押ししてきた。
今回の予算案は20日に下院を通過していた。予算案は、ウクライナに約610億ドル、イスラエルに260億ドルあまり、インド太平洋地域に80億ドルあまりの支援を認める内容。
今回可決されたものと似たような予算案は今年に入り、上院を通過していたが、この予算案については、下院のジョンソン議長が採決を拒んでいた。
●米大学でガザ攻撃への抗議デモ続く 各地に拡大 4/24
アメリカの大学で、パレスチナ自治区ガザ地区での戦争に抗議する行動が広がっている。当局はこれを鎮めようと対応を強化している。
抗議行動は東部のコロンビア大学やイェール大学で目立っていた。ニューヨーク市にあるコロンビア大では18日、学生ら100人以上が警察に逮捕された。
22日夜には、ニューヨーク大学の抗議行動にも警察が割って入り、多数を逮捕した。
イェール大(コネチカット州)でも同日、学生ら数十人が逮捕された。コロンビア大はこの日、教室での授業を中止した。
これらの大学で見られる、キャンパスにテントを張って野営場所を設営する動きは、西部のカリフォルニア大学バークリー校、東部のマサチューセッツ工科大学(MIT)など、各地の大学にも広がっている。
昨年10月7日にイスラム組織ハマスがイスラエルを襲撃して以来、双方の間の戦争と言論の自由をめぐり、デモと激論がアメリカ中のキャンパスを揺るがしている。
ハマスの襲撃では、イスラエル人や外国人など約1200人が殺された。その大半が民間人だった。イスラエルによると、ハマスは253人を人質としてガザ地区に連れ去っている。
イスラエルはこの襲撃後、ハマス破壊と人質解放を目標に、これまでにない激しい戦争をガザ地区に仕掛けている。ハマスが運営する同地区の保健省によると、これまでにイスラエルの攻撃で、女性や子供を中心に3万4000人以上が殺されている。
アメリカでは、親イスラエル派と親パレスチナ派の両方の学生らが、反ユダヤ主義とイスラモフォビア(イスラム嫌悪)の事案が増えているとそれぞれ指摘している。
ジョー・バイデン大統領は22日、大学での抗議運動について、「反ユダヤ主義の抗議」と「パレスチナ人に何が起きているかを理解しない人々」を非難すると述べた。
キャンパス内にテントを張って抗議
キャンパスでの抗議運動は先週、ニューヨーク市警察がコロンビア大学のキャンパスに出動し、多数のデモ参加者を逮捕したことで、世界的な注目を集めた。
コロンビア大学は22日、今学期のすべての授業をバーチャルで行うと発表。ミノウシュ・シャフィク学長は、「威圧的で嫌がらせのような行為」があったと述べた。
シャフィク学長は、キャンパス内の対立について、「コロンビア大学とは無関係の人物が、自分たちの目的を追求するためにキャンパスにやってきて、それを利用し、増幅させている」のだと話した。
ニューヨーク大学では、デモ参加者らが経営大学院(MBA)スターン・スクール・オブ・ビジネスの敷地の各地にテントを張った。
他のいくつかの大学と同様、抗議者らは同校に対し、「武器メーカーやイスラエル占領に利害関係のある企業からの資金と寄付金」の開示と放棄を求めている。
22日夜には、警察がニューヨーク大学で抗議者の拘束を開始。133人ほどが逮捕された。
23日には、同大学近くのワシントン・スクエア・パークに数百人の抗議者たちが集まり、市警と大学の対応を非難した。
コネチカット州ニューヘイブンにあるイェール大学では22日、50人近いデモ参加者が逮捕された。
同大学によると、身柄を拘束された人々は、退去を求める「複数の要請」を無視したという。
このほか、カリフォルニア大学バークリー校、MIT、ミシガン大学、エマーソン大学、タフツ大学でも抗議のキャンプが設置された。
ハーヴァード大学は同様の抗議行動を懸念し、キャンパスへのアクセスを制限している。
キャンパスでの抗議活動については、反ユダヤ主義だとの非難も出ている。
たとえば、コロンビア大学近郊でデモに参加していたの一部の人々が、イスラエルへのハマスの攻撃を支持する様子を映した動画が、インターネット上に投稿された。
22日にコロンビア大学を視察した民主党のキャシー・マニング下院議員は、そこでイスラエルの破壊を求めるデモ隊を見たと語った。
コロンビア大学のユダヤ教超正統派グループ「チャバド」によると、ユダヤ人学生が罵声や暴言を浴びたという。
コロンビア大学に所属するラビ(ユダヤ教指導者)が、300人のユダヤ系学生にメッセージを送り、「状況が劇的に改善」するまでキャンパスから離れているよう警告したとも報じられている。
抗議の参加者らは反ユダヤ主義を否定し、自分たちの批判はイスラエル国家とその支持者にのみ向けられたものだと主張している。
23日に発表された声明の中で、「パレスチナに正義を求めるコロンビア学生の会」は、「いかなる形の憎しみや偏見も断固拒否する」と述べ、「私たちを代表しない扇動的な個人」を批判した。
連邦議員らが懸念を表明
コロンビア大学のシャフィク学長は声明で、「この危機に解決をもたらす」作業部会を設置したと発表した。
シャフィク学長は先週、反ユダヤ主義に対する取り組みについて議会委員会で証言した。コロンビア大学は、この状況の解決を迫られている。
エリズ・ステファニク下院議員(ニューヨーク州選出、共和党)が率いる議員団は22日、「ユダヤ人学生に対するテロ行為を呼びかける学生や扇動者の暴徒に終止符を打てなかった」として、シャフィク学長に辞任を求める書簡を公表した。
一方、ニューヨーク大学の抗議運動については、キャシー・マニング議員、ジョシュ・ゴットハイマー議員など、民主党の下院議員たちが言及している。
ゴットハイマー議員はまた、コロンビア大学についても、ユダヤ人学生が大学に受け入れられ、安全だと感じられないならば、大学は「その代償を支払う」ことになると指摘した。
下院の教育委員会のヴァージニア・フォックス委員長(共和党)は、「コロンビア大学が秩序と安全の回復に失敗し続けている」ことは、連邦政府の援助が条件としていた義務を超えたものであり、「直ちに是正」されなければならないと、インターネットに投稿した。
コロンビア大学の卒業生で、現在はアメリカンフットボールのプロリーグNFLの「ニューイングランド・ペイトリオッツ」のオーナーもロバート・クラフト氏は、この抗議行動を受けて、「是正措置が取られるまで」大学への支援を停止すると警告した。
しかし、大学の一部の教員は、コロンビア大学の抗議行動への対応や警察を呼んだことを非難している。
コロンビア大学の権利擁護団体「ナイト・ファースト・アメンドメント・インスティチュート」は、22日にBBCに宛てた声明で、「早急な軌道修正」が必要だと述べた。
同団体は大学の規則を引用し、外部当局が関与すべきなのは、「人や財産、あるいは大学の各部門の実質的な機能に対する明白かつ差し迫った危険」がある場合に限られると主張した。
「たとえ無許可であったとしても、野営や抗議行動がどのようにそのような危険をもたらしたかは、我々には明らかではない」
ガザ地区での戦争をめぐっては、アメリカ各地でも大規模なデモが起きている。
親パレスチナの抗議デモは、米各地で主要道路を封鎖するなどの形で起きている。コロンビア大での抗議デモの数日前には、シカゴのオヘア国際空港、シアトル・タコマ国際空港、サンフランシスコのゴールデン・ゲート・ブリッジ、ニューヨークのブルックリン・ブリッジなどへのアクセスが制限された。
●米軍の支援到着前に…ロシア、ウクライナ第2の都市に侵攻 4/24
ロシア軍が、ウクライナに対する米国の追加の軍事支援の前に戦争で確固たる優位を確保するため、猛攻撃を続けている。ウクライナ第2の都市ハルキウを無力化するための空爆作戦と、東部ドネツク州での地上戦の要所を占領するための大規模兵力の投入に集中している状況だ。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は22日(現地時間)、ロシア軍が東北部の国境近くの都市ハルキウを人が住めないところになるまで空爆を続け、この日は高さ240メートルの放送送信塔が破壊されたことを明らかにした。ロイター通信などが報じた。
ウクライナ特殊通信局は、送信塔にロシア軍の空対地巡航ミサイルKh59が当たり、塔の上部が破壊されたとして、これによってテレビ放送の送出が一時中断されたと明らかにした。ハルキウ州のオレグ・シネグボウ知事は、送信塔で働く職員は待避所に避難しており、人命被害はなかったと述べた。送信塔の破片が落ちて周辺の建物も大きく破損したとロイターが報じた。
ゼレンスキー大統領は、SNSのテレグラムに「この都市を人が住めないところにしようとするロシアの意図は明らかだ」と投稿した。同大統領はさらに、同日夜の演説で、今回の攻撃が「都市全体に恐怖を広げるための明白な脅迫の試みであり、ハルキウの通信と情報へのアクセスを抑制しようとする試み」だと規定した。
ハルキウは首都キーウに次ぐウクライナで2番目に大きい都市で、人口は130万人だ。ハルキウはロシア国境から30キロメートルほど離れており、ロシア軍は最近、ミサイルとドローンでハルキウを集中攻撃している。ロシアでは安全保障のために国境近くのウクライナ地域に「緩衝地帯」を設ける必要があるという主張が出てきており、ハルキウへの集中攻撃が緩衝地帯構築の試みの一部である可能性も提起されている。
ロシア軍は、東部ドネツク州での地上戦闘で優位を確保するため、この地域の中心的な橋頭堡であるチャシブヤールへの攻撃も強化している。ウクライナ軍はこの日、ロシア軍がチャシブヤール占領作戦に2万〜2万5000人の兵力を投入していると明らかにした。東部司令部のナザル・ボロシン報道官はこのように報告しつつも「この地域周辺の状況は難しいが、状況は統制可能な水準」だと述べた。
チャシブヤールは、ロシア軍が昨年5月に占領したこの地域の主要都市であるバフムトから西に5〜10キロメートル離れた高地帯であり、ロシア軍に占領された場合、ウクライナ軍が守るドネツク州西部地域も危険になる可能性がある。ロシア軍は、自国の第2次世界大戦の勝利記念日である5月9日までにチャシブヤールを占領しようと試みている。
米下院が20日に608億ドル規模のウクライナ支援予算案を通過させ、米国の追加軍事支援が差し迫るなか、欧州連合(EU)の追加軍事支援は遅れている。EU加盟国は22日、ルクセンブルクで外務・国防相会議を開き、パトリオットミサイルシステムの支援を議論したが、合意には至らなかった。
EUのジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表はこの日の会議の後、「ブリュッセル(EU本部)にはパトリオットミサイルはなく、各国の首都にある。決定は彼らにかかっていた」と述べ、EUレベルでの支援の合意が失敗に終わったことを示した。
●ロシア夏季攻勢、予想外の場所になる可能性も=ウクライナ 4/24
ウクライナ国家警備隊司令官は23日、ロシア軍はウクライナでの夏季攻勢時に前線の予想外の地域を攻撃し、東部の都市ハリコフへの進撃を試みる可能性があると述べた。
同司令官は「われわれは準備を進めており、予想もしない地域への攻撃を受けたとしても敵が目的を達成することはない」と語った。
ウクライナ当局は、ロシア軍が春の終わりか初夏に攻撃を開始すると予想しており、対ナチスドイツ戦勝記念日である5月9日までに、ウクライナ東部の戦略上の重要拠点であるチャソフヤールを占領したいと考えているのではないかとみている。
●米支援で息吹き返すウクライナ、兵力不足はなお課題 4/24
米議会で半年近く論争が続いたウクライナ支援がようやく実現しようとしており、これは前線で消耗し切っているウクライナ軍にとって救いの神になるとともに、戦局を一変させる力になる可能性を秘めている。ただし、効果が表れるにはかなりの時間がかかるかもしれない。
米下院が総額610億ドル(約9兆4388億円)のウクライナ支援緊急予算案を可決したことを受け、今週中には上院を通過し、バイデン大統領が署名して成立する見通しだ。
ウクライナ東部クプヤンシク近郊でロシアの攻勢を食い止めるための戦いで疲弊している軍兵士の1人からは「(もっと早く)可決してくれれば事態を劇的に変えられた」との恨み言も聞こえる。この兵士は、砲弾不足で歩兵の支援火力が弱まり、人命と領土の双方で犠牲を強いられたと話す。
ロイターが取材した軍事アナリスト2人やウクライナの元国防相、欧州の安全保障当局者らは、米国から武器弾薬が届けばウクライナが東部でロシアの大規模攻勢を阻止できるチャンスは高まる、と口をそろえる。
とはいえ、ウクライナは引き続き前線兵力の不足に直面しているほか、ゼレンスキー大統領が警告するようなロシアの夏季攻勢があった場合、1000キロに及ぶ広大な前線に沿って築かれた防衛陣地がどれだけ強固なのか疑念も残る。
ポーランドのロチャン・コンサルティングのコンラッド・ムジカ所長は「ウクライナの最も重大な弱みは兵力が足りないことだ」と指摘する。
ゼレンスキー氏が今月16日に署名した徴兵制度改革法は、動員の速度や効率性などを改善することを目指すもので、5月に発効する予定だ。しかし、新規入隊者は数カ月間の訓練を経なければ前線に配置できず、この空白はロシアが攻勢に動く機会になるとムジカ氏は解説。「向こう3カ月は(ウクライナ側にとって)恐らく事態が悪化し続ける。だが動員が計画通りに進み、米国の支援が実行されれば、秋以降は事態が良くなるはずだ」と予想した。
ロシア優位の戦局
ロシアは2月に長い激戦を経てウクライナ東部ドンバス地方の要衝アブデーフカを制圧して以降、戦局を優位に進めている。ロシア軍はゆっくりと前進し、投入する兵力や砲弾も増やしているところだ。
現在は戦略的に重要なチャシウヤールを圧迫しつつあり、ここをロシア軍に掌握されれば、ウクライナ側がなお保持するドンバス地方の幾つかの都市にも接近を許すことになる。
ゼレンスキー氏は先週、ロシア軍の今の砲兵火力はウクライナ軍の10倍に達していると述べた。ウクライナ軍将官の1人も今月、東部におけるロシア軍とウクライナ軍の兵力は10対7でロシアが有利だと懸念を示している。
ウクライナ軍情報部門の報道官は、ロシアがドンバス地方の完全掌握に注力しており、アブデーフカ西方と、クプヤンシクからリマンにかけて、バフムト西方という3つの戦線で攻勢をかけていると付け加えた。また昨年ウクライナが奪回したロボティンにも圧力を加えているという。
今年になってウクライナの陣地は、制空権を握るロシア軍機からの何千発にも上る爆弾で叩かれ、防御力が弱ってきている。
ウクライナのアンドリー・ザゴロドニュク元国防相は、米国などから地対空ミサイルシステムが供給されれば防衛力を強化できるし、年内にもウクライナが受領する予定のF16戦闘機はロシア軍機を完全に駆逐してくれると期待する。
ザゴロドニュク氏は、砲弾が補充されればウクライナとロシアの砲兵火力の格差縮小にもつながると話す。
米国だけでなく、欧州連合(EU)もチェコが主導する形で6月に155ミリ砲弾のウクライナ向け供与を開始する。
欧州の安全保障当局者はロイターに、ウクライナが米国とEUから新たな支援を得れば、ロシアが向こう12カ月で戦線に大きな突破口を開けるのを防げる確率は「かなり高い」との見方を示した。
守りを固めて攻勢準備へ
一方、ロチャン・コンサルティングのムジカ氏は、ウクライナ軍が全戦線にわたってロシア軍の前進を食い止める上で必要なのは「大規模な」兵力の投入だと主張し、個別に志願兵を入隊させる取り組みでは兵力不足解消には不十分だと付け加えた。
先の欧州の安全保障当局者も、ウクライナは動員を強化しなければならないと認めている。
ウクライナ軍情報部門の報道官によると、同国領の18%を占領するロシア軍がウクライナに展開している兵力は45万―47万人で、これに3万5000人の国境警備隊や、空軍と海軍の作戦兵力が加わる。
ウクライナ側は以前、保有兵力は約100万人だと明らかにしていた。
ゼレンスキー氏は昨年12月、新たに最大50万人の新兵を動員したいと表明していたが、今年2月に就任した新総司令官は、国内の資源を見直した結果として必要な兵力数の見積もりを大幅に減らしたと述べた。
英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の軍事科学ディレクター、マシュー・サビル氏は今年のウクライナ軍の状況について、防衛陣地はできる限り十分強固に構築されているが、恐らく一部の地域をロシアに奪われるだろうと分析。これは昨年のウクライナ軍の反転攻勢がロシアの前線に重大な穴を開けることができず、ロシア側が兵力集中に動き、米国の軍事支援が非常に遅れた結果だと述べた。
サビル氏は「(ウクライナにとって)目下の大きな課題は(各戦線で)同時に強固な防衛態勢を築き、来年の攻勢を準備することだ」と話す。
●アメリカ ウクライナ軍事支援再開へ 議会上院で予算案可決 4/24
アメリカ議会上院は23日、ロシアによる侵攻が続くウクライナへの追加の軍事支援を含む緊急予算案を賛成多数で可決しました。バイデン大統領は今週中にウクライナに武器や装備品を送り始めたいという考えを示し、滞っていたアメリカによる軍事支援が再開されることになりました。
アメリカ議会上院は23日、ウクライナへの追加の軍事支援を盛り込んだ緊急予算案の採決を行い、賛成79票、反対18票の賛成多数で可決しました。
予算案は総額953億ドル余り、日本円にして14兆7000億円余りで、ウクライナへの支援におよそ608億ドルを充てるとともにイスラエルにおよそ263億ドル、台湾などインド太平洋地域におよそ81億ドルを充てています。
ウクライナへの支援の一部は返済義務がある借款の形をとるとしていますが、一定の条件のもと、大統領の権限で返済を免除することも可能だとしています。
また、制裁によって凍結したロシアの資産をウクライナ支援に活用することを可能にする内容も盛り込まれています。
バイデン大統領は声明を出し、「民主主義と自由のために独裁や抑圧に断固として立ち向かうというメッセージを世界に示した」として歓迎したうえで今週中にウクライナに武器や装備品を送り始められるよう、24日に予算案の成立に必要な署名を行うと明らかにしました。
ウクライナの最大の軍事支援国となってきたアメリカは、与野党の対立から追加の支援のための予算が承認されない状態が続き、軍事支援が滞っていましたが、近く支援が再開されることになりました。
一方、可決された予算案には中国の企業が運営する動画共有アプリTikTokについて、アメリカ国内での事業を売却しなければ、アプリの配信などを禁止するとする条項も含まれています。
ゼレンスキー大統領「重要な支援の承認に感謝」
ウクライナのゼレンスキー大統領はSNSに「アメリカ議会上院がウクライナへの重要な支援を承認したことに感謝する。この採決は民主主義を導き、自由世界のリーダーであるアメリカの役割を強化する」と投稿しました。
その上でウクライナの防空能力や長距離の攻撃能力などが「公正な和平を早期に実現するために欠かせない手段だ」として追加の軍事支援がすみやかに届くことに期待を示しました。
●世界の軍事費 軍拡の流れを断たねば 4/24
世界の軍事費が過去最高を更新した。ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫が反映された。軍備拡張の流れを断ち、地球温暖化など共通の課題にこそ国際社会が協力して取り組むべきだ。
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が公表した2023年の報告書によると、世界の軍事支出総額は前年比6・8%増の2兆4430億ドル(約378兆円)。比較できる1988年以降の最高額だ。
各国の軍事支出=表=を比較するとロシアは前年比24%増、ウクライナは同51%の急増で、軍事費は政府支出総額の58%を占める。ガザへの攻撃を続けるイスラエルも前年比で24%増えた。
80年代の冷戦期をも上回る各国の軍事支出は、多くの市民を死傷させ、数え切れない避難民を生み、街の破壊につながる。
戦闘地域だけでなくアジアでも軍事費の伸びは著しい。中国の軍事支出増は29年連続で世界最多の米国の3分の1に迫る。中国の脅威は東アジアの軍拡競争を招き、日本は前年比11%、台湾も同11%の防衛・軍事費を積み増した。
SIPRIの研究員は「軍事力優先は、不安定な地政学と安全保障情勢の中で、行動と反動のスパイラルに陥る危険がある」と指摘する。武力衝突を避けるための軍備増強が、紛争を誘発することは避けなければならない。
地域紛争でも世界への影響が大きいことは、穀倉地帯のウクライナへの侵攻が世界の食糧危機と物価高騰を、中東情勢の不安定化がエネルギー危機を招いたことを見れば明らかだ。軍拡競争はいずれ偶発的な大規模紛争を起こし、人類の存在をも脅かしかねない。
東アジア情勢の緊迫化に対応するため、岸田文雄内閣は国内総生産(GDP)比1%程度に抑えてきた防衛費を、関連予算を含めて2%に倍増する方針を決めるなど専守防衛の転換を進める。
しかし、平和憲法を有する日本の役割は軍拡競争に参加することではなく、国際社会の先頭に立って、軍拡の流れを断ち、平和への道を粘り強く説くことである。 

 

●金正恩・プーチン両氏の初会談から5年 北朝鮮「協調の熱意はさらに加熱」 4/25
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)とロシアのプーチン大統領による初の首脳会談から5年となることを受け、北朝鮮の任天一(イム・チョニル)外務次官(ロシア担当)は25日、「朝ロ関係を最重大視し、深く根ざした親善の伝統を発展させることは共和国(北朝鮮)の一貫した立場」とする談話を出した。
談話は両国が2019年と23年の首脳会談の結果を踏まえ、「帝国主義者の軍事的威嚇と挑発を踏みつぶすための共同戦線で戦略・戦術的な協同を一層緊密にし強力に連帯」しているとして、「今年に入り、双方の協調の熱意はさらに加熱している」と表明。「ロシアが対ウクライナ特殊軍事作戦の目標を必ず達成することを信じる」とし、「国家の主権的権利や安全・利益を守るための正義の闘いに乗り出したロシア軍隊と人民と常に一つの塹壕(ざんごう)の中にいる」と強調した。
金氏とプーチン氏は19年4月25日、ロシア極東ウラジオストクで初の首脳会談を行った。昨年9月にはロシア・アムール州の宇宙基地で2回目の会談を開き、関係を急速に強化している。
●米がウクライナ向け軍事支援パッケージ発表、防空システム強化…射程300kmのミサイル供与 4/25
米国のバイデン大統領は24日、上下両院で可決されたウクライナへの約610億ドル(約9兆5000億円)の支援を含む追加予算案に署名し、予算は成立した。これを受け米政府は24日、総額10億ドルのウクライナ向け軍事支援パッケージを発表した。過去最長となる射程300キロ・メートルの地対地ミサイルを供与していたことも公表した。
バイデン氏は署名後にホワイトハウスで演説し、「ウクライナを支援するのは、プーチン(ロシア大統領)が米国や欧州を戦争に巻き込もうとするのを阻止するためだ。我々は同盟国から離れない。独裁者には屈しない」と強調した。
今回の軍事支援は、ウクライナ軍に不足が目立つ弾薬や、市街地などをミサイル攻撃から守る防空システム、装甲車両、対戦車兵器などが中心となる。バイデン氏は演説で「数時間後に装備を送り始める」と述べた。数日後にはウクライナに引き渡される見通しだ。
一方、ジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官は24日の記者会見で、射程300キロ・メートルの長射程地対地ミサイル「ATACMS」の供与を3月に開始していたことを初めて明らかにした。ニューヨーク・タイムズ紙など米メディアは、ウクライナ軍が先週、南部クリミアの露空軍基地などへの攻撃に使ったと報じた。
長射程ミサイルの供与には米政府内で慎重論もあり、これまでは旧式の射程165キロ・メートルのATACMSの供与にとどめていた。
サリバン氏は長射程のATACMS供与に関し、露軍が北朝鮮製の弾道ミサイルをウクライナに使用したことへの対抗措置だと指摘し、「このタイミングで供与を始めるのが適当だ」と強調した。ウクライナが米国に対し、露領内の攻撃に使用しないと確約したとも明らかにした。
● 日米の宇宙非核決議案、否決=ロシア「策略」と拒否権―国連安保理 4/25
国連安全保障理事会は24日、日米が共同提出した宇宙空間に核兵器を配備しないよう各国に求める決議案を否決した。全15理事国のうち13カ国が賛成したが、ロシアは「(日米による)身勝手な策略だ」として拒否権を行使した。中国は棄権した。
米メディアによると、ロシアは人工衛星の破壊を目的とした核兵器を開発中とされる。ロシアは疑惑を否定しているが、決議案採択を阻んだことで「(開発中だという)深刻な疑念を抱かせる」(米政府高官)結果となった。
決議案は、1967年発効の宇宙条約が定めている核兵器や大量破壊兵器の宇宙空間への設置禁止を再確認し、宇宙の平和利用を促す内容。同案は、地球周回軌道への配備を想定した核兵器開発も禁じていた。宇宙条約は安保理常任理事国である米英仏中ロを含む100カ国以上が批准している。
トーマスグリーンフィールド米国連大使は否決を受けた演説で「(ロシアの)プーチン大統領は核兵器を宇宙に配備するつもりはないと公言している。なぜそれを再確認する決議案を支持しないのか」と批判。山崎和之国連大使も「現在、そして未来の人々に送りたかった重大なメッセージを沈黙させた」とロシアを非難した。
これに対しロシアのネベンジャ国連大使は「(日米は)われわれが国際条約を守っていないかのように見せようとしている」と反発。宇宙空間の利用に関する独自の安保理決議案を近く提出すると明らかにした。
●戦術核使用条件明文化せず ベラルーシ大統領 4/25
ベラルーシのルカシェンコ大統領は24日、同国内に配備されたロシア戦術核兵器の使用条件は明文化されておらず、プーチン・ロシア大統領と協議して決めると述べた。タス通信が伝えた。
ルカシェンコ氏は、国防の基本文書である軍事ドクトリンに核使用のメカニズムは「書かれていない。われわれがプーチン氏と決めることだ」と述べ、使用に制約を設けず、同盟国ロシアと合意すれば使えるとの考えを示唆した。ウクライナ侵攻などを巡ってロシアやベラルーシと対立する欧米へのけん制とみられる。
ルカシェンコ氏によると配備は昨年10月に完了した。
●ロシアとウクライナが双方の子ども計48人返還で合意 カタール仲介 4/25
ロシア政府で子どもの権利を担当するリボワベロワ大統領全権代表は24日、ウクライナ側との交渉で、ロシアにいる子ども29人をウクライナに、ウクライナにいる子ども19人をロシアに帰すことで合意したと発表した。ノーボスチ通信などが伝えた。
対面の交渉は仲介したカタールで行われ、ウクライナとロシアに滞在し、互いの国にいる家族と再会するべき子どものリストを確定させたとしている。
ロシアはウクライナ侵攻後、占領地域から子どもをロシア領に強制的に連れ去ったと批判されている。ウクライナ政府は1万9500人以上としているが、最大で30万人にのぼるとの見方もある。リボワベロワ氏は記者会見で、「ロシアに1万9500人のウクライナ人の子どもがいるのはウソだ」と述べた。
これに関連し、国際刑事裁判所(ICC)は昨年3月、子どもを連れ去った疑いで、ロシアのプーチン大統領とリボワベロワ氏に逮捕状を出した。これに対し、ロシア側は「子どもを安全な地域に避難させた」と主張している。
●米、長距離ミサイル「ATACMS」をひそかにウクライナに供与 当初は拒否 4/25
米国防総省は24日、バイデン大統領からの指示で今月ウクライナに長距離ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」を供与したことを明らかにした。バイデン政権は当初、ATACMSの供与を拒んでいた。
バイデン氏は2月、ウクライナ領内で使用するATACMSミサイルの供与をひそかに承認した。国防総省の報道官によると、その後ATACMSミサイルは3月12日に発表された3億ドル(現在のレートで約467億円)規模の支援パッケージに内々に盛り込まれ、今月に入り最終的にウクライナに供与されたという。
報道官は「ウクライナ側の要請に応えて作戦上の安全性を維持するため、当時はウクライナにこの新兵器を供与することを発表しなかった」と説明。ウクライナ軍にとってのATACMSの有用性についての質問ははぐらかした。
バイデン政権は準備態勢の懸念もあり、長距離ミサイルの供与を拒んでいた。強力なATACMSの生産には時間や複雑な部品が必要になる。ATACMSミサイルを製造するロッキード・マーチンの広報担当は昨年9月、フルペースで生産を進めており、1年に約500基を製造する予定だと明らかにしていた。
米国は購入するATACMSの量を増やしたり、米軍の在庫を補充したりすることで、水面下で準備態勢への懸念に対処。「その結果、我々の軍の現在の即応態勢を維持しつつ今回のATACMSの供与を進めることができた」としている。
●米国務長官、中国要人との協議開始−不公正な貿易慣行への懸念示す 4/25
ブリンケン米国務長官は訪問先の上海で、中国における不公正な貿易慣行にへの懸念を表明した。同長官は24日に中国入りし、26日には北京で中国高官との会合を行う予定。習近平国家主席と会談する可能性もある。
ブリンケン長官は25日、上海市トップの陳吉寧・市共産党委員会書記と会談し、「われわれは国民に対して、世界に対して、責任を持って両国関係を管理する義務がある」と述べた。
米国務省のミラー報道官によれば、同長官は米企業には中国での公平な競争条件を必要だと強調し、中国の「非市場的な経済慣行」について取り上げた。
陳氏はブリンケン長官に対し、米中は「協力か対立か」の選択を迫られており、その結果は「人類の未来」に影響すると語った。
同長官は北京に向かう前、上海に駐在している米企業幹部らと面会する予定。米企業の間には中国が外国企業に対し不公平な扱いをしているとの不満が広がっている。
米政府の高官1人によると、ブリンケン長官はロシアの防衛産業に手を貸す貿易を停止するよう中国側に求める方針。ウクライナで戦争を始めたロシアに対し、欧米は制裁を発動したが、ロシアの防衛産業は機能し続けている。
同高官はまた、中国の台湾を巡る主張や南シナ海の領有権問題も議論されると話した。
●ウクライナ、国外の召集年齢男性への圧力強化 広範な動員規定見直しの一環 4/25
ウクライナが、国外で暮らす召集年齢に達した男性に対し、領事館の業務を一時停止することで圧力をかけている。他方国内では、ロシアの侵攻に対する防衛を強化するべく大幅な動員規定の見直しが行われている。
クレバ外相は23日、ソーシャルメディアへの投稿で領事館業務の一時停止を発表。徴兵に対する「公正な姿勢を取り戻す」上で必要な措置だったと述べた。
「ロシアによる全面侵攻という状況下で、主な優先事項は母国を破壊から守ることだ」とクレバ氏は指摘。国外にいることで母国への義務が軽減されるわけではないと付け加えた。
「召集年齢で国外へ行く男性からは、国の存亡を気にかけていない態度が見て取れる。それでも領事館へやって来て、国からのサービスを受けたがる。そんなやり方は通用しない。我が国は戦争中だ」(クレバ氏)
ウクライナ外務省は24日、改めて当該の措置の詳細を発表した。声明によれば業務停止の対象となるのは一時的に国外にいる18〜60歳の男性。ただウクライナへ帰国するための身分証明書を申請している場合は対象外となる。
一時的な業務停止の措置は23日に発効した。
召集年齢の男性に対する領事館の業務は、彼らの軍への登録データがウクライナ国内の徴兵センターで更新された後、有効な登録文書の発行をもって完全な形で提供されることになる。
軍への登録に関するデータを更新、認証する仕組みについては「現在確定中」だとしている。
当該の措置に関しては、一部のウクライナの議員から法的な位置づけが十分ではないとの批判の声も上がっている。
ウクライナの非政府調査団体、経済戦略センターの最新の推計によると、今年1月末の時点で戦争を理由に国外で暮らすウクライナ人の数は約490万人。このうち圧倒的多数を女性と子どもが占めているという。
●ついに大型爆撃機まで撃墜? ロシア軍はどれだけ航空機を失ったのか ウクライナ侵攻で損害かさむ 4/25
イギリス国防省は2024年4月20日、ロシア空軍のTu-22M3爆撃機がウクライナ軍のS-200地対空ミサイルによって撃墜されたとの見解を発表。ロシア軍は、ウクライナへの全面侵攻を開始した2022年2月から現在までに、少なくとも100機の固定翼航空機を喪失した可能性が高いとの分析を明らかにしました。
Tu-22M3は、ロシア空軍が運用する大型爆撃機で、可変翼構造が特徴。核兵器や極超音速ミサイル「キンジャール」の搭載も可能です。日本ではNATO(北大西洋条約機構)が付与したコードネーム「バックファイア」の愛称でも知られています。
ウクライナ国防省は4月19日、Tu-22M3の撃墜に初めて成功したと発表。国防省傘下の情報総局と協力し、地対空ミサイルによって撃墜したことを明らかにしています。ウクライナ軍の地対空ミサイルが大型爆撃機を撃墜するのは初のケースで、ロシア南部に位置するスタヴロポリ地方で墜落した模様です。
SNS上では、同機が空中で制御を失い墜落する映像が拡散されました。ロシア国防省は、Tu-22M3が墜落して乗員の捜索・救助活動を実施したことは認めたものの、原因は機体の技術的な不具合であり、ウクライナ軍による撃墜ではないとしています。
イギリス国防省によると、撃墜されたTu-22M3は、4月19日にウクライナ南部を目標とした攻撃を行っていたそう。攻撃には1960年代に旧ソ連が開発したS-200地対空ミサイルが用いられ、これは2024年2月23日にロシア空軍のA-50早期警戒管制機を撃墜したのと同じ兵器システムである可能性が高いと指摘しています。
今回、ウクライナ軍は大きな戦果を上げたものの、防空兵器は不足しており、全体的に見ると厳しい状況にあるようです。アメリカのシンクタンク・戦争研究所(ISW)は4月19日、「ウクライナの防空能力は依然として限られ、低下しているため、ロシアの航空機は前線の重要な地域で脅威を受けることなく自由に活動することができる」と分析しています。
●米国からの軍事支援待つウクライナ、ロシアは東部戦線で一段の前進 4/25
米国が相当量のウクライナ向け軍事支援引き渡しを準備する中、ウクライナ東部からの報告によれば同国軍の戦場での命運は依然下降の一途をたどっている。
ロシア軍が引き続きオチェレティネと呼ばれる村落に注力しているのは明白だ。ウクライナの監視グループ「ディープステート」は、ほぼ毎日ロシア軍が高地に沿って西進する模様を伝えている。
この戦域はウクライナの防衛線にとって核心的に重要であり、ロシア軍の主要な標的となっている。同軍が2月に約16キロ離れた工業都市アウジーイウカを制圧して以降、そうした状況が続く。
ディープステートが作成した最新の前線地図によれば、オチェレティネ中心部は鉄道駅を含めロシア軍の手に落ちている。またウクライナ軍はすぐ南に位置する別の村でも地歩を失っていると、ウクライナ人の軍事ブロガー、ボーダン・ミロシュニコフが明らかにした。
さらに隣接する二つの村に対してもロシア軍が攻勢をかけているのが確認できると、複数の報告が示唆している。
ディープステートによれば、オチェレティネからの稜線(りょうせん)に沿った一段の西進は、ウクライナ軍の反撃で首尾良く食い止められた。しかし、ウクライナ軍が米軍による軍事支援の一刻も早い到着を必要としているのは明白だという。
ウクライナ軍東部方面司令部のある将校は先週、CNNの取材に答え、ロシア軍がオチェレティネの制圧に成功すれば、3カ所の軍事拠点をつなぐウクライナ軍の重要な兵站(へいたん)ルートがロシア軍の砲撃を受ける状況になると示唆していた。この将校は、記事用の発言が認められていないとの理由から氏名の公表を控えるよう求めた。
●ロシアが宇宙核配備防ぐ決議案に拒否権 米国「何かを隠している」と疑念あらわ 中国は棄権 国連安保理 4/25
国連安全保障理事会で24日、日本と米国が起草した宇宙空間への核兵器と大量破壊兵器の配備を防ぐ決議案にロシアが拒否権を発動し、同案は否決された。安保理15理事国中13カ国が賛成し、中国は棄権した。
プーチン露大統領は否定するが、ロシアは宇宙空間に配備する対衛星核兵器を開発中と伝えられる。ロシアの拒否権行使に関して米国のウッド国連次席大使が「何かを隠していると疑わざるを得ない」と疑念をあらわにした。米国は中国についても「無責任なロシアを『ジュニア・パートナー』として擁護した」と痛烈に皮肉った。
ロシアの対衛星核兵器開発疑惑が注目されるのは、ウクライナ戦争で使用中のドローンなど、軍事力が宇宙空間に配備された人工衛星と接続して運用されているためだ。ロイター通信によれば、米国の情報当局者は「ロシアは核兵器を宇宙空間に配備して爆発させ、その電磁波で衛星ネットワークを無力化する能力を持っている」とみている。
衛星ネットワークは気象や農業など民生分野にも利用されており、攻撃を受ければ、社会経済活動が広範囲で混乱する。
日米の決議案はこうした事態を防ぎ、宇宙空間の平和利用を促す内容。日米を含む65カ国が共同提案国となった。山崎和之国連大使は「重要な決議案に対して一致できないのは理解に苦しむ」とロシアを批判。中国代表は「米国の非難には根拠がない」と反論した。ロシアは近く独自の決議案を提出する方針。
中国は、決議案の交渉過程でロシアと足並みをそろえ、24日にはロシアと共に「宇宙空間へのあらゆる兵器の配備を防ぐ」とする修正提案を行った。修正提案は、採択に必要な票数を得られず否決されたが、アルジェリアやガイアナ、エクアドル、シエラレオネが賛成に回り、中露の「グローバルサウス」を引きつける力を印象づけた。
●金正恩委員長、イランに経済使節団派遣…セールスに入った「闇の武器商」 4/25
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が伝統的な友邦でありイスラエルと事実上戦争中のイランに経済使節団を送った。「反米連帯」で外交的孤立から抜け出す一方、ロシアに続いて中東地域でも「闇の武器商」として武器セールスに入ったという分析だ。
変わった「戦争のルール」…「中東特需」狙いか
朝鮮中央通信は24日、「対外経済相の尹正浩(ユンジョンホ)同志を団長とする対外経済省代表団がイランを訪問するため(前日)飛行機で平壌(ピョンヤン)に出発した」と報じた。
北朝鮮の高官級がイランを訪れるのは2019年の朴哲民(パク・チョルミン)最高人民会議副議長以来。新型コロナ期間を勘案しても5年ぶりの訪問は異例だが、時期も今月初めからイランとイスラエルが軍事的報復と再報復を交わした直後であり意味深長だ。
イスラエルとイランはその間、相手を攻撃しても責任を回避できる余地を残したり代理勢力を前に出す形で数十年間にわたり「影の戦争」をしてきた。しかし今月に入って互いに本土を攻撃するなど、これまでとは異なる様相となっている。昨年から「国防経済事業」という言葉まで作って「NK(北朝鮮)−防衛産業」セールスに熱を上げる金正恩委員長としては、このように中東地域で「戦争の規則」自体が変わる状況を好材料として受け止める可能性がある。
また、この機会にイランとの軍事協力を確認し、パレスチナのハマスのほか、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派、シリア政府軍など親イラン代理勢力の「抵抗の枢軸」も潜在的な顧客として念頭に置いている可能性がある。
峨山政策研究院のヤン・ウク研究委員は「北がイランルートに入り込んで軍事協力をした後、イランが友好国に武器・軍需品を支援することで『抵抗の枢軸』に間接支援ができる」とし「イランとの協力さえうまくいけば金正恩は背後で中東地域の紛争に介入できるということ」と話した。
核−ドローン「危険な直取引」懸念も
実際、北朝鮮とイランの軍事取引はすでに1980年代から始まった。イランは1987年から北朝鮮のスカッドB型とC型、ノドンミサイルの技術移転を受けた。
その後、直取引は減ったが、ウクライナ戦争が始まってロシアを媒介に両国の武器・技術交流が再開された可能性がある。イランのドローンと北朝鮮の砲弾・ミサイルが共にウクライナの戦場で使用されている。
13日(現地時間)にイランがイスラエル本土に向かってミサイルとドローン300個を発射した当時も、北朝鮮のミサイル部品と技術が使用されたという見方が出てきた。ジョン・ボルトン元ホワイトハウス国家安保補佐官は23日(現地時間)、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)のインタビューで「弾道ミサイル分野で北朝鮮とイランの協力は確実になっている」とし「両国の協力が核やドローンなど他の分野につながっているかどうかがカギ」と指摘した。
特に北朝鮮が優位の「核技術」とイランが優位の「ドローン技術」が潜在的な取引対象となるおそれがある。イランはウラン濃縮施設をはじめ核プログラムを進めてきたが、まだ北朝鮮のように核実験を通した武器化の峠を越えていない。半面、北朝鮮は6回の核実験を経て独自の「核保有国」と主張している。
朴元坤(パク・ウォンゴン)梨花女子大北朝鮮学科教授は「北がイランに核技術まで移転する場合、国際不拡散体制に今とは次元が異なる脅威となる」とし「米国とイスラエルが最も警戒するのもこのような点」と指摘した。
イランが北朝鮮に与える反対給付も懸念される。すでにロシアがウクライナ戦場で使用されているイラン製無人攻撃機(シャヘド136・131)が北朝鮮に流入し、対南用に変わるという指摘もある。
またイランは13日のイスラエル空襲で「極超音速ミサイル数発を発射し、標的に命中した」と主張した。極超音速ミサイルは北朝鮮が2021年1月の第8回党大会で公開した「国防発展および武器体系開発5カ年計画」の核心課題の一つだ。最近は各種試験発射を通じて開発に注力しているが、北朝鮮が主張する側面機動能力などは確保していないというのが韓国軍の判断だ。北朝鮮としては砲弾供与の対価としてロシアの支援を受けながら衛星打ち上げに成功したように、極超音速ミサイル分野で進んでいるイランの技術移転を望んでいる可能性もある。
金与正副部長、訓練列挙して韓米日を非難
一方、金与正(キム・ヨジョン)労働党副部長はこの日、朝鮮中央通信で発表した談話で「今年に入って今まで米国が下手人と共に実施した軍事演習は約80回、韓国傀儡が単独で敢行した訓練は約60回にもなる」とし、韓米連合訓練を非難した。続いて「圧倒的な最強の軍事力を備蓄していく」と脅迫した。
特に金与正副部長はこの日、1月から今月まで実施された韓米、韓米日訓練を一つずつ列挙したが、それだけ北朝鮮を狙った同盟・友邦の安保協力に圧力を感じている傍証と解釈される。昨年8月のキャンプデービッド韓米日首脳会議合意に基づき3カ国軍の合同訓練が定例化して以降、金与正副部長がこのように直接的に反発したのは初めてだ。
この日、外務省報道局対外報道室長も談話を出し、「米国と大韓民国は無責任で懸念される武力示威行為を直ちにやめるべき」とし、韓米連合訓練の中断を要求した。
これを受け、北朝鮮が近いうちに最近の韓米連合訓練を口実にした武力挑発をする可能性があるという懸念の声も出ている。外交部当局者はこの日、「北の政権は核・ミサイル開発を続け、核先制打撃、戦術核運用訓練など我々に対する核の脅威を露骨化し、韓米の正当な防御的訓練に責任を転嫁する世論糊塗を続けている」と指摘した。
●米ウクライナ支援法、成立 バイデン氏「数時間以内に武器輸送」 4/25
バイデン米大統領は24日、ロシアと戦うウクライナへの軍事支援などを盛り込んだ法案に署名した。防空システムの弾薬などの兵器輸送が「数時間以内」に始まると明らかにした。
総額950億ドル(約14兆7000億円)の同法案は前日夜に上院が可決した。ウクライナ向けの約610億ドルのほか、イスラエル向けの260億ドル、インド太平洋地域向けの80億ドルが含まれる。
バイデン氏はまた、対外支援法案のパッケージに含まれていた、中国系の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を米国全土で禁止する可能性のある法案にも署名し、成立した。
署名後にホワイトハウスで演説したバイデン氏は、支援法の成立は米国やウクライナのみならず世界の平和に貢献するものと意義を強調した。
ウクライナへの支援をめぐっては下院与党である共和党の議員の間で反対が根強く、下院での支援法の採決にこぎ着けるまでに数カ月を要した。最終的に20日に可決し、上院に送られた。バイデン氏は「厳しい道のりだった」と認めつつも、米国は最後に団結したとの認識を示した。
バイデン氏の署名後すぐに、国防総省はウクライナ向けの10億ドルの支援パッケージを発表した。米国からの軍事支援が途絶えていたため、ウクライナ軍は現在、兵器が不足し、戦場で劣勢に立たされている。
今回の支援パッケージには高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」用の弾薬や大砲、歩兵戦闘車「ブラッドレー」、対空ミサイル「スティンガー」などが含まれる。また、物資輸送や戦術に用いる車両や対装甲システムなども送られる。
●ロシア軍 最新戦車「レオパルト2A6」を鹵獲か?「ウクライナで最強の“ヒョウ”を捕まえた」と発表 4/25
在南アフリカロシア大使館は2024年4月22日、ドイツからウクライナ軍に供与された「レオパルト2A6」主力戦車を鹵獲(ろかく)したと思われる動画を公式X(旧Twitter)で公開しました。
Xの動画では、戦車運搬車に乗せられ運ばれていくレオパルト2A6が映されており、在南アフリカロシア大使館は「NATOからウクライナに引き渡されたゲームチェンジャーとされた『ヒョウ(レオパルト)』のうち1頭が捕獲された。ほかにも多くの車両が破壊された。これはウクライナが配備した『最も強力な』戦車であるレオパルト2A6」とコメントしています。
実はほかにも、レオパルト2A6が捕獲されている動画が4月21日頃からSNSで拡散されており、同ロシア大使館の主張が決して虚偽の報告ではないことを示しています。
レオパルト2A6はウクライナに供与されているレオパルト2シリーズの中でも最新のタイプで、ドイツ陸軍でも現役で使用されています。ドイツは同戦車を18両ウクライナに供与していますが、今回の鹵獲車両はそのうちの1両とみられます。
●データ上も進む世界経済の分断と減速、IMFの世界経済見通しで再び注目されるスローバリゼーション 4/25
4月16日、IMF(国際通貨基金)から公表された春季世界経済見通し(WEO)は、米国経済にけん引される世界経済の脆さが浮き彫りとなった。
今回のサブタイトル「Steady but Slow: Resilience amid Divergence(安定かつ緩慢、まちまちな様相の中、強靭性も)」はインフレ高止まり、欧州および中国の低迷、2つの地域にまたがる戦争の継続といった逆風にもかかわらず、大崩れすることのない世界経済の近況を良く表している。
米国だけであれば「steady(安定)」だったところ、他国も合わせると「slow(緩慢)」というのが世界経済の実情である。
ところで、1年前となる2023年4月のWEOでは地政学リスクを背景に世界の直接投資行動が分断化(fragmentation)しており、それはグローバリゼーションの巻き戻し、さしずめ「スローバリゼーション(slowbalization)」であるとの議論が展開されていた。
1年前の本コラムでも「貧しくなる世界にIMFが警告、本格化する『スローバリゼーション』の時代とは」と題し、詳しく取り扱った経緯がある。
今回、スローバリゼーションというフレーズこそ使われていないものの、最初のBOX欄で「国際貿易に既に影響を与えつつある分断(Fragmentation Is Already Affecting International Trade)」と題した分析が披露されている。
ここでの分析ではまず、世界経済を2つブロックに分けている。
一つは仮想的なブロックAとして「オーストラリア、カナダ、欧州連合、ニュージーランド、アメリカ合衆国からなるブロック」、もう一つは仮想的なブロックBとして、「中国、ロシア、および2022年3月2日の国連総会でロシアに味方した国々からなるブロック」に分けている。
そして次ページの図表1にあるように、それぞれのブロックについて、ロシア・ウクライナ戦争前後に関する貿易変化率を算出し、減少幅を比較している(期間は図表1の注釈を参照)。
IMFの分析通りに分断と減速が進む世界経済
図表1に示されるように、貿易全体で見た場合、ブロック内とブロック間では減少幅が倍以上違っており、特に戦略分野(機械や化学製品など)の貿易に限れば、ブロック内ではほとんど減少が見られないのに対し、ブロック間では大幅に減少している。
ロシア・ウクライナ戦争に端を発する分断は世界貿易を確実に分断しており、後述するように、目下、収まることのないインフレ高進の背景としても一考に値するのではないかと思われる。
   【図表1】
なお、BOX欄では、特に米中の貿易関係が弱くなっていることにも言及があり、米国の輸入総額に占める中国のシェアは2017年の22%から2023年は14%へ約8%ポイントも減少したことが指摘されている。
2017年が起点とされているのは当然、トランプ政権発足に合わせたものであり、今年11月に再選を果たせば、この動きがさらに加速するということも意味する。
ちなみに、米国が有していた中国拠点は2017年から2022年に間にメキシコやベトナムなどへリバランスされており、サプライチェーンが間延びし、効率性が犠牲にされているとの指摘もある。
こうした直接投資の引き揚げと再構築を巡る動きに関し、1年前のWEOに絡めて本コラムでは以下のように記述していた:
そうして企業がFDI(海外直接投資)の再構築(relocation)を検討する際、直接投資を行う国(多くは先進国)に対して政治的な距離がある国(多くは新興国)はFDIの流出に見舞われやすくなる。
結果的に、FDIが「流入する国」と「流出する国」の分断化が深まり、結果的に世界全体で見ればアウトプット(生産量)は減り、貧しくなっていくのではないかというのがIMFの問題意識である。
実際、当時のIMFの分析と懸念通りに世界経済の分断と減速は進展しているのが現状と言わざるを得ないだろう。
スローバリゼーションとインフレの関係
今回のWEOにおいては、BOX欄以外でも「分断(fragmentation)」のフレーズは頻出しており、報告書全体で検索すると202ページで計45回も登場する。世界経済を語る上での重要な事実となっているのは間違いない。
例えば、数あるダウンサイドリスクの一つとして、「地形学的な分断の強まり(Geoeconomic fragmentation intensifying)」が挙げられており、これによって「証券投資および直接投資のフローが削減され、技術革新や新しい科学技術の採用も遅れる。また、資源取引も制限されるため、生産量や資源価格の乱高下に繋がる」と明記されている。
こうした点も、1年前のWEOで再三懸念されていた経済現象である。実際、ダウンサイドリスクが記述されている部分には、「昨年のWEOや国際金融安定報告書(GFSR)を参照にせよ」とも付記されている。
こうして貿易や直接投資のような国境を越える必要のある経済活動が効率性を失い、今までもよりも時間やコストをかける必要が出てきてしまったことが、思い通りに制御できないインフレの背景にあるのではないか。
これらは煎じ詰めれば生産性の低下を意味する。
経済活動における生産性が損なわれれば、価格は抑制されず、上昇する方向に力がかかる。今年に入ってから米国の中立金利の水準がシフトアップしているという議論が起きているが、これもスローバリゼーションの一環として起きている現象という考え方もある。
構造的にインフレや高金利が粘着性を持ち始めているのだとすれば、米国の利下げへの道のりは大分遠く、あったとしても大きな利下げ幅は期待しかねるという含意になる。円安に悩む日本にとっては頭の痛い議論である。
スローバリゼーションは日本にとって「追い風」
一方、西側陣営に属する日本にとっては、直接投資を引き込みやすい国際環境になっているという前向きな理解も可能ではあろう。
昨年以降の動きを踏まえれば、既にグーグル、アマゾン、マイクロソフトそして日本オラクルとクラウドサービス大手が軒並み日本におけるデータセンター増強のために投資を決断したことが報じられている。
終わらない円安を新常態と仮定した時に、「円安を活かすカード」として対内直接投資促進は有力不可欠な選択肢である。既にその胎動は見られ始めている。
友好国の中で相互投資が行われるフレンドショアリング(近しい関係にある国に限定したサプライチェーンを構築する動き)は日本への「追い風」と見て間違いないだろう。
なお、日本の対内直接投資戦略を国・地域・業種別に検討する議論に関しては相応に紙幅を要するため、別の機会に本コラムで議論させて頂ければと思う。
●米、支援遅れの挽回図る=ウクライナに1550億円 4/25
バイデン米大統領は24日、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの追加予算を盛り込んだ法律に署名した。米政府はその直後、ウクライナへの約10億ドル(約1550億円)の軍事支援を発表した。数カ月に及んだ支援の停滞をようやく抜け出し、挽回を目指す姿勢を鮮明にした。
バイデン氏は24日の演説で「この法律が私の机に届くまでの道のりは困難なものだった。もっと早く届くべきだった」と議会の対応の遅れをあてこすった。さらに「共和党の保守強硬派が何カ月も支援を妨害している間に、ウクライナは弾薬を使い果たした」とも嘆いた。
バイデン氏が予算編成権を持つ議会に、ウクライナなどへの追加資金の承認を求めたのは昨年10月。議会は約6カ月の迷走の末にようやく可決したが、ウクライナはこの間苦境に立たされた。ロシア軍は東部で激戦地アウディイウカを2月に陥落させ、今は要衝チャソフヤルに迫っている。
●徴兵対象のウクライナ帰還に協力 「どんな支援も可能」―ポーランド国防相 4/25
ポーランドのコシニャクカミシュ国防相は24日、ロシアと戦う母国を支えさせるため、ポーランド国内に滞在する徴兵対象年齢のウクライナ人男性の帰国を促す方針を明らかにした。具体的な協力方法には触れなかったが、「どんな支援も可能だ」と強調した。
コシニャクカミシュ氏はニュース専門局ポルサットに対し「ウクライナ支援のためにわれわれがどれだけ力を尽くさねばならないかを耳にする中、ウクライナ人の若者をホテルやカフェで見かければ、多くの国民が憤りを覚えると思う」と述べた。
欧州連合(EU)によると、今年1月時点で、約430万人のウクライナ人が域内に滞在しており、うち約86万人が成人男性。ポーランドはドイツに次ぐ95万人を一時保護している。
●ロシア情報機関、国防次官を拘束…業務関連契約で不正な利益を得ようとした疑い 4/25
ロイター通信によると、ロシアの情報機関「連邦保安局」は23日、ティムール・イワノフ国防次官を収賄の疑いで拘束したと発表した。ロシアの裁判所は24日、拘束を認めた。イワノフ氏はセルゲイ・ショイグ国防相の側近の1人とされる。ロシアがウクライナに侵略する中での高官拘束は異例だ。
イワノフ氏は軍関連の建設部門の担当者だった。裁判所によると、イワノフ氏は第三者と共謀し、国防省業務に関連する契約で不正な利益を得ようとした疑い。イワノフ氏は容疑を否認しているという。
独立系メディア「バージヌイエ・イストリイ」(重要な話題)は、収賄は表向きの容疑でイワノフ氏は国家反逆の疑いが持たれていると報じた。タス通信によると、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は報道を否定している。イワノフ氏はかねて富裕な官僚として知られる。露軍が占領するウクライナ南東部の港湾都市マリウポリの開発事業でも多額の利益を得たと報じられている。
●米 ウクライナに射程の長いミサイル供与「領内で使う」 4/25
アメリカ政府高官はロシアからの軍事侵攻が続くウクライナに対して、精密な攻撃が可能とされる射程の長いミサイルを供与していたことを明らかにしました。一方で、ミサイルはウクライナ領内で使用するためのもので、ロシア領土への攻撃を目的としたものではないと強調しました。
アメリカ、ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は24日、記者会見で、ウクライナが求めていた精密な攻撃が可能とされる射程の長いミサイル、ATACMSについて「バイデン大統領が2月に相当な数を供与することを命じた」と述べ、先月発表したウクライナへの軍事支援の中に含まれていたことを明らかにしました。
ミサイルはすでにウクライナに届いたということで、今後も供与を続けていくとしています。
一方でサリバン補佐官は、ミサイルについて「ウクライナ領内で使うためのものだ」としてロシア領土への攻撃を目的としたものではないと強調しました。
アメリカのメディアはこのミサイルについて、最大射程がおよそ300キロのものだとしていて、仮にウクライナ南部のヘルソン市から発射した場合、ロシアが一方的に併合した南部クリミアの軍港都市セバストポリも射程に含まれることになります。
アメリカでは、議会での与野党の対立から、ウクライナ支援のための予算案が通らず、資金が底をついたとされてきましたが、今回のミサイルの供与が含まれていた軍事支援については、既存の予算からコスト削減によって捻出した資金を活用したものだとバイデン政権は説明しています。
●バイデン大統領、緊急予算案に署名 ウクライナ支援再開へ 4/25
アメリカのバイデン大統領は24日、ウクライナ支援のための緊急予算案に署名し、予算が成立しました。武器や弾薬など、滞っていた支援が再開されることになります。
バイデン大統領「数か月ものトランプ支持の共和党員の妨害で、ウクライナは砲弾や弾薬を使い果たしていた。すぐにでも(支援物資の)出荷を開始するつもりだ」
バイデン大統領は24日、約608億ドル、日本円で9兆円を超えるウクライナへの支援を含む緊急予算案に署名しました。野党・共和党の反対により長らく滞っていた軍事支援が再開されることになります。
バイデン大統領は「アメリカと世界を安全にし、アメリカの世界におけるリーダーシップを継続させる」と強調し、早速、第一弾として砲弾や対空ミサイルなど、10億ドルの軍事支援を承認しました。今後、数時間以内に支援物資の輸出を開始するとしています。
●米 ウクライナへ追加軍事支援予算成立 10億ドル相当の支援発表 4/25
ロシアによる侵攻が続くウクライナへの追加の軍事支援のための予算がアメリカで成立し、滞っていた軍事支援が再開されることについて、ウクライナは速やかな支援に期待を示す一方、ロシアは無意味だとしてけん制しています。
ウクライナの最大の軍事支援国となってきたアメリカで、24日、ウクライナへの追加の軍事支援を含む緊急の予算がバイデン大統領の署名を経て成立し、滞ってきた軍事支援が再開しました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、SNSに「いま重要なのはスピードだ。われわれの兵士たちに武器を供与するという合意を実行するスピードだ」などと投稿し、追加の軍事支援が速やかに届くことに期待を示しました。
一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官は「戦場での状況はすでに明らかだ。われわれは、新たな兵器が前線の状況を変えることはないと言い続けている」と述べ、アメリカの軍事支援は無意味だとしてけん制しています。
こうした中、ロシア西部のスモレンスク州の知事は、24日、州内の2か所で燃料施設がウクライナ軍の攻撃を受け、火災が発生したと明らかにしました。
これについてウクライナメディアは情報筋の話としてウクライナの保安局が無人機攻撃を行ったと伝えています。ウクライナ軍はこのところロシア国内の燃料施設を狙った攻撃を強めています。
アメリカではロシアによる侵攻が続くウクライナへの追加の軍事支援のための予算が成立し、バイデン政権は防空用のミサイルなど、10億ドル相当の新たな軍事支援を発表しました。
アメリカのバイデン大統領は議会上院がウクライナへの追加の軍事支援を含む緊急の予算案を可決したことを受けて、24日、署名し、予算は成立しました。
これを受けて国防総省は新たに、
   ・防空用のミサイル
   ・高機動ロケット砲システム=「ハイマース」に使われるロケット弾
   ・装甲車の「ブラッドレー歩兵戦闘車」
など総額で10億ドル、日本円にしておよそ1550億円相当のウクライナへの軍事支援を発表しました。
アメリカは与野党の対立から追加の支援のための予算が承認されない状態が続き、軍事支援が滞ってきましたが、再開しました。
会見したバイデン大統領は軍事支援について「アメリカをより安全にするし世界を安全にする。そして、世界におけるアメリカのリーダーとしての地位を継続させる」と訴えました。そして「われわれは独裁者に立ち向かう。誰に対しても屈しないし、プーチンに対してももちろん屈しない」と述べてウクライナを全面的に支援していく考えを強調しました。
●米、4カ月ぶり本格軍事支援 ウクライナに防空能力など1550億円 4/25
バイデン米大統領は24日、米議会が可決した約610億ドル(約9.4兆円)のウクライナ支援法案に署名し、成立させた。直ちに、防空ミサイルや砲弾など緊急性の高い約10億ドル(約1550億円)相当の軍事支援を実施すると発表。昨年末から続いた米国政治の停滞はひとまず打開されたものの、ウクライナがこの間に余儀なくされた戦場での後退を挽回(ばんかい)するのは容易ではない。
「数時間以内に装備品をウクライナに発送し始める」。24日朝、前夜に米上院が可決した法案に署名したバイデン氏は、演説で支援を急ぐ意向を強調した。 ・・・
●米ウクライナ支援法、成立 バイデン氏「数時間以内に武器輸送」 4/25
バイデン米大統領は24日、ロシアと戦うウクライナへの軍事支援などを盛り込んだ法案に署名した。防空システムの弾薬などの兵器輸送が「数時間以内」に始まると明らかにした。
総額950億ドル(約14兆7000億円)の同法案は前日夜に上院が可決した。ウクライナ向けの約610億ドルのほか、イスラエル向けの260億ドル、インド太平洋地域向けの80億ドルが含まれる。
バイデン氏はまた、対外支援法案のパッケージに含まれていた、中国系の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を米国全土で禁止する可能性のある法案にも署名し、成立した。
署名後にホワイトハウスで演説したバイデン氏は、支援法の成立は米国やウクライナのみならず世界の平和に貢献するものと意義を強調した。
ウクライナへの支援をめぐっては下院与党である共和党の議員の間で反対が根強く、下院での支援法の採決にこぎ着けるまでに数カ月を要した。最終的に20日に可決し、上院に送られた。バイデン氏は「厳しい道のりだった」と認めつつも、米国は最後に団結したとの認識を示した。
バイデン氏の署名後すぐに、国防総省はウクライナ向けの10億ドルの支援パッケージを発表した。米国からの軍事支援が途絶えていたため、ウクライナ軍は現在、兵器が不足し、戦場で劣勢に立たされている。
今回の支援パッケージには高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」用の弾薬や大砲、歩兵戦闘車「ブラッドレー」、対空ミサイル「スティンガー」などが含まれる。また、物資輸送や戦術に用いる車両や対装甲システムなども送られる。
●イスラエル軍 ガザ地区南部ラファへの地上作戦 強行する構え 4/25
イスラエル軍は多くの住民が身を寄せるガザ地区南部のラファへの地上作戦を強行する構えを見せています。
ロイター通信は24日、イスラエルが住民の退避に向けて大量のテントを調達したなどと報じていて、地上作戦の開始に向け具体的な準備を進めているとの見方が出ています。
イスラエル軍は24日もガザ地区各地への攻撃を続け、ガザ地区の保健当局は、これまでに3万4262人が死亡したとしています。
こうした中、ロイター通信は24日、イスラエル当局者の話としてイスラエルの国防省が南部のラファの住民を別の場所に退避させるために4万張りのテントを調達したと報じています。
これはイスラエル軍が南部ラファへの地上作戦を始める準備の一環で、今後2週間以内に戦時内閣の閣議を開いて退避計画を承認する見通しだと伝えていて、地上作戦の開始に向け具体的な準備を進めているとの見方が出ています。
また、イスラエル軍は24日、ガザ地区に2つの旅団を新たに配置すると発表し、一部のイスラエルメディアはこれについてもラファへの地上作戦を視野に入れた動きだと伝えています。
ラファには、避難者などおよそ120万人が身を寄せていて、同盟関係にあるアメリカを含め各国が強い懸念を示すなかイスラエルの今後の対応が焦点となっています。 

 

●サハリン「間宮海峡に橋」プーチン氏が意欲 帝政期から迷走続く議論 4/26
サハリンとロシアの大陸部を隔てる間宮海峡(タタール海峡)をめぐって今月初め、興味深い動きがあった。3日にサハリン州のリマレンコ知事とオンライン会談をしたプーチン大統領が、間宮海峡にかける橋の建設に意欲を示したというのだ。
海峡の最狭部の幅は7・3キロで、深さも最浅部で数メートルしかない。すでに19世紀末の帝政ロシアで、堤防をつくる計画が提案された。ソ連時代の1920年代末にも橋またはトンネルの建設が調査されたが、地域での地震の危険性などから破棄された。
戦後の50年になり、独裁者スターリンのもとで鉄道用の地下トンネルの建設が実行に移された。しかし、53年の独裁者の死を受け、「国民経済にとって喫緊の必要性がない」との理由から工事はうち切られた。その後、73年に海峡を結ぶ鉄道車両も搭載するフェリーが就航、両岸の物流を担ってきた。 ・・・
●プーチン大統領「中国を来月訪問」 4/26
ロシアのプーチン大統領が5月に中国を訪問する計画だと25日(現地時間)明らかにした。
プーチン大統領はこの日、ロシア産業・企業家連盟会議で「5月に中国を訪問すると予想される」と述べた。
プーチン大統領が来月中国を訪問する場合、昨年10月の中国一帯一路正常フォーラム出席以来7カ月ぶりの訪中となる。3月のロシア大統領選以降、プーチン大統領の最初の海外訪問でもある。
これに先立ちロシア大統領府のペスコフ報道官はこの日、プーチン大統領の訪中日程を中国側と共に適時に発表する方針だと明らかにした。
中国の習近平国家主席は来月7日前後にセルビア、ハンガリーなど欧州訪問を控えていて、プーチン大統領の中国訪問はその後になるとみられる。
●プーチン氏が5月に訪中、習近平氏と会談へ 欧米との対立で中露連帯をアピール 4/26
ロシアのプーチン大統領は25日、5月に中国を訪問し、習近平国家主席と会談する予定だと明らかにした。経済関連の国内会議での発言を露国営テレビが放映した。プーチン氏は具体的な日程に言及しなかったが、ロシアは5月7日にプーチン氏の通算5期目となる大統領就任式、9日に第二次世界大戦の対ドイツ戦勝記念式典を控えており、訪中は一連の行事後になるとの観測が強い。
プーチン氏は欧米諸国との対立を念頭に、新任期で初となる外遊先に中国を選び、中露の連帯を強調する思惑だとみられる。中国はロシアの侵略が続くウクライナ情勢でロシア寄りの立場を示し、欧米主導の経済制裁下にあるロシアを貿易を通じて支援している。
プーチン氏の訪中と習氏との直接会談は昨年10月以来となる。昨年3月には習氏が訪露してプーチン氏と会談した。
●プーチン氏、5月に訪中 習氏と会談か 5期目大統領就任後初の外遊 4/26
ロシアのプーチン大統領は25日、5月に中国を訪問すると明らかにした。5月初旬の大統領就任式を経て、新たな任期開始後初の外遊となる見通し。
ロイターは3月、プーチン大統領が5月に訪中し、習近平国家主席と会談する予定と報じていた。
プーチン氏が最後に訪中したのは2023年10月。22年2月のウクライナ侵攻直前の訪中では、プーチン大統領は習氏と「無制限の」協力関係を表明している。ウクライナ侵攻後、西側諸国からの制裁によって包囲網が狭まっているプーチン氏にとり、中国との外交・貿易関係強化の重要性は増している。
●ベラルーシにロシアの戦術核兵器を数十発配備…ルカシェンコ氏、使用条件は「プーチン氏と協議」 4/26
ロイター通信などによると、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は25日、同国にロシアの戦術核兵器が数十発配備されていると議会で明らかにした。
ルカシェンコ氏は、ベラルーシが北大西洋条約機構(NATO)の脅威に直面していると主張し、核抑止力を持つに至ったと強調した。核兵器配備を正当化する意図があるとみられる。タス通信によると、ルカシェンコ氏は24日、核兵器の使用条件が明文化されておらず、プーチン露大統領と協議して決めると述べた。
プーチン氏は昨年3月、ベラルーシに戦術核を配備する方針を表明した。戦術核の搬入は同10月までに完了したとされる。ウクライナ侵略で対立する米欧をけん制する狙いがある。
一方、ベラルーシの議会では、情報機関トップがNATO加盟国リトアニアの無人機攻撃を防いだと報告した。しかし、リトアニア軍は25日、「他国に敵対的な行動をしたことはない」と攻撃を否定した。
●プーチンが望むNATOの形骸化 4/26
モスクワ郊外で発生したコンサートホール襲撃テロで動揺が続くなか、プーチン大統領は3月末、新たに15万人を徴兵する大統領令に署名した。今回は4月1日から7月15日の間に15万人が徴兵される予定で、18歳から30歳が対象になるという。
プーチン大統領、目障りなNATOをけん制
今日、ウクライナでの戦況は圧倒的にロシア有利な状況にあり、昨年夏の反転攻勢が失敗に終わったウクライナの高官たちは、米国からの支援がなくなれば戦争に負けると繰り返し嘆いている。今後のウクライナ情勢では11月の米大統領選挙の行方がポイントになるが、ロシアはそれまでの間に攻勢を強めていく可能性が高い。
2030年までの大統領任期を得たプーチン大統領は、ウクライナ侵攻を中長期的視野で進めていくことになろうが、今日プーチン大統領はNATOの形骸化を強く望んでいることだろう。
プーチン大統領が長年不満に思ってきたことの1つがNATOの東方拡大で、ウクライナ侵攻の1つの目的はNATO諸国をけん制することだった。NATOは1加盟国に対する攻撃は全加盟国への攻撃とみなす集団防衛体制であり、NATOに加盟しているバルド3国やポーランド、ルーマニアなどにはプーチン大統領としても手を出せない。
ロシアにとって格好の標的となったウクライナ
ウクライナ侵攻以降、ロシアと国境を接するフィンランドとスウェーデンがNATOへの加盟を急いだのも、それによって自国の安全保障を担保しようとしたからである。しかし、ウクライナは核を持っておらずNATOにも加盟しておらず、プーチン大統領にとって周辺諸国では唯一侵攻のハードルが高くなかったのがウクライナだったと言えよう。
だが、今日NATOは形骸化への道を歩むリスクを抱える。米国大統領選ではトランプ氏が再選するシナリオも十分に考えられ、同氏は「NATO加盟国が十分に防衛費を費やさないと守らない、ロシアに自由にやらせる」などと言及し、欧州諸国から強い不信感を買っている。
トランプ氏米大統領再選で米国と欧州の分断も
トランプ政権が本当にNATO加盟国を守るかどうかは別にして、トランプ政権の再来は米国と欧州との間で新たな政治的分断を生むことは間違いないだろう。
また、トランプ再選リスクを想定してか、マクロン大統領は欧州諸国の軍隊をウクライナに派兵する可能性を排除しない姿勢を示したが、これについてNATO事務総長やドイツのショルツ首相はその可能性を否定した一方、リトアニアやエストニア、オランダはマクロン大統領に同調するような声明を発表している。
ウクライナへの派兵はロシアと直接衝突することになろうが、これについて欧州各国で意見に相違が見られる。
こういった状況の長期化は、NATOの形骸化に繋がりかねない。NATOが集団防衛体制であったとしても、トランプ発言などはその一体性を損ない、多くの加盟国は「ロシアから攻撃があっても本当にNATOが協力してくれるのか」と懐疑的になるだろう。
確かにNATOは集団防衛体制であるが、その条約には“必ず加盟国は共同で軍事的に応戦する、自衛する”ことは義務として明記されておらず、どのように対応するかは結局はその国、政権の判断に委ねられている。
プーチン大統領としては、各国が共同で軍事的に対応してくる可能性があるのでNATO加盟国を挑発しにくいが、NATOが形骸化していけば、今後いっそうNATO加盟国へ圧力を掛けてくるだろう。
●「欧州は消滅の危機」 マクロン氏、米ロ依存からの脱却促す 4/26
フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は25日、パリのソルボンヌ大学(Sorbonne University)で演説し、欧州に世界情勢の変化に立ち向かう姿勢を促す中で「今日の欧州は消滅の危機に直面している」と警告した。
マクロン氏は「欧州は消滅する可能性がある。(回避できるかは)われわれの選択に懸かっている」と述べ、「ゲームのルールが変化した」世界において、欧州は「直面するリスクに対する備えができていない」と警告。「今後10年間で(欧州が)弱体化する、あるいは退潮するリスクは計り知れない」と語った。
また、欧州はエネルギー面ではロシアに、安全保障面では米国に過度に依存する「戦略的弱者」から脱却すべきだとも主張した。
特にウクライナ侵攻以降のロシアは「やりたい放題」だと批判。欧州の安全保障にとっての「必須条件」は、「ロシアがウクライナでの侵略戦争に勝利しないこと」だと明言した。
さらに、「われわれ自身のために、信頼できる欧州防衛の戦略構想を練る必要がある」と述べた上で、欧州は米国に「隷属」してはならないと付け加えた。
●米中外交トップ会談王毅氏「レッドライン踏むな」 4/26
中国の外交トップ王毅政治局員とアメリカのブリンケン国務長官が北京で会談しました。王毅氏は「中国のレッドラインを踏み付けてはならない」と強調しました。
中国の新華社通信によりますと、会談は26日午前、北京の迎賓館で始まりました。
そのなかで王毅氏は、去年11月の米中首脳会談をきっかけに「積極的な対話や協力が増えた」と評価しました。
一方で「マイナス要因が蓄積され、中国の核心的な利益が挑戦を受けている」と指摘しました。
また、台湾や南シナ海問題などを念頭に「中国の主権や安全のレッドラインを踏み付けてはならない」と牽制(けんせい)しました。
会談は現在も続いていて、ロシアとウクライナの戦争や経済分野などについても突っ込んだ話し合いが持たれるとみられます。
●英国、イスラエル攻撃後にイランに新たな制裁措置 4/26
英国は木曜日、米国及びカナダと共に、イランのドローン及びミサイル産業に対する新たな制裁措置を発表した。
テヘランは、ダマスカスのイスラム革命防衛隊のメンバー7人を殺害した4月1日の空爆(広くイスラエルのせいとされている)に対する報復として、イスラエル領土への初の直接的な軍事攻撃を開始した。
イランの大規模な攻撃には300機以上の無人機とミサイルが使われたが、そのほとんどはイスラエルとワシントンやロンドンを含む同盟国によって撃墜され、被害はほとんどなかった。
米国と英国は先週、イランの無人機産業に関わる個人や企業を標的に、イランに対する広範な制裁を発表した。
英連邦対外開発庁によれば、今回の制裁は、イランのドローン製造ネットワークに深く関与している2人の個人と4つの企業を対象とするという。
イランに対する貿易制裁は、ドローンやミサイルの生産に使用される部品の輸出を新たに禁止することによっても拡大されるだろう、と同庁は付け加えた。
「イラン政権によるイスラエルへの危険な攻撃は、何千人もの民間人を犠牲にし、この地域をよりエスカレートさせる危険性がある」
「我々のパートナーとともに、イランがこのような致命的な兵器を開発し輸出する能力に対する網を引き続き強化していく」
英国はすでに400以上の制裁をイランに課しており、その中にはイスラム革命防衛隊全体とイスラエル攻撃の責任者の多くに対する指定も含まれている。
米財務省は木曜日、イランの軍事用ドローンプログラムにも制裁を科し、イラン国防省への無人航空機(UAV)の秘密売買を「促進し、資金を提供する」上で重要な役割を果たしたとする10以上の個人、企業、船舶に制裁を科した。
「イラン国防省は、ロシアのウクライナ戦争への支援、イスラエルへの前代未聞の攻撃、テロリストの代理勢力へのUAVやその他の危険な軍事機器の拡散によって、地域と世界を不安定化させ続けている」と、ブライアン・ネルソン米財務省テロ・金融情報担当次官は声明で述べた。
「米国は、英国やカナダのパートナーとの緊密な連携の下、イランの不安定化する活動に資金を提供しようとするものと戦うために、利用可能なあらゆる手段を使い続ける」と彼は付け加えた。
●ロシア・イラン・北「3国軍事協力」:中国が加われば世界は新「戦国時代」に 4/26
ジェイク・サリバン米国家安全保障担当大統領補佐官は24日(現地時間)、「イランと北朝鮮に対するロシアの防衛提案は西アジアとインド太平洋地域をさらに不安定化させる可能性がある」と主張し、イラン、ロシア、北朝鮮の軍事協力に懸念を表明し、「われわれは過去数年間、イランと北朝鮮の軍事協力を目の当たりにしてきたが、過去2年間のイランとロシアの協力による無人機の大規模な開発は新しいものだ」と語り、「米国はロシアの軍事提案を注意深く監視しており、ロシアがイランに武器を供与すれば中東が不安定化するだろう」と警告を発している。
サリバン補佐官が述べた「ロシアの防衛提案」とは、イラン国家安全保障最高評議会のアリ・アクバル・アフマディアン書記がロシアの安全保障会議書記ニコライ・パトルシェフ氏と会談し、安全保障分野での覚書に署名したことを指すものと思われる。
イラン国営IRNA通信は25日、サリバン米大統領補佐官の発言に言及し、「米国は英国および欧州連合(EU)と協調してイランをさらに孤立させ、圧力を強めようとしている」と早速かみついている。
サリバン大統領補佐官が指摘したように、ロシア、イラン、そして北朝鮮の3カ国間の軍事協力は急速に強化されてきている。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は2019年4月12日、ロシア外務省所属「外交アカデミー」年次集会で「西欧のリベラルな社会秩序に対抗する新しい世界の秩序が生まれてきている」と、「新しい世界の秩序」を高らかに宣言したが、ロシア・イラン・北朝鮮の軍事協力はその展開というのだろうか。
ロシアと北朝鮮の軍事協力はウクライナ戦争の行方を左右するほど影響を与えてきている。プーチン大統領と金正恩総書記は昨年9月、首脳会談で両国間の軍事協力の強化などで合意した。その最初の成果は北朝鮮の軍事偵察衛星「万里鏡1号」の打ち上げ成功だろう。過去2回、打ち上げに失敗してきた北朝鮮はロシアから偵察衛星関連技術の支援を受け、昨年11月21日の3回目の打ち上げに成功した。ロシア側の軍事ノウハウの提供と食糧支援の代わりに、北朝鮮は弾薬をロシア側に供与している(北朝鮮は7000個のコンテナに弾薬、約250万発をモスクワに輸送)、ウクライナのクレバ外相は「ロシアとウクライナ戦争の行方はここにきて北朝鮮が握っている」と発言した。関係者にとっては想定外の展開だからだ。
それだけではない。3月28日、北朝鮮に対する制裁決議の実施を監視する国連安全保障理事会専門家パネルの任期延長に関する決議案が、安保理理事国の過半数の支持にもかかわらず、ロシアの拒否権によって否決された。北朝鮮はロシアを味方につけている限り、国連安保理での対北決議案をもはや恐れる必要がなくなったわけだ。中国共産党政権が金正恩総書記のロシア急傾斜を懸念してきた、という情報も頷ける。
ロシアはイランから無人機を獲得し、兵力、武器不足に悩むウクライナ軍に対し攻勢に出てきている。イランは今月13日から14日にかけ、イスラエル軍の在シリアのイラン大使館空爆に対する報復攻撃で数百の無人機、弾頭ミサイルをイスラエルに向かって発射したが、イランのミサイルや無人機に北朝鮮製部品が使用されている疑いが表面化している。また、パレスチナ自治区ガザを2007年以来実効支配しているイスラム過激テロ組織「ハマス」がイスラエル軍との戦闘で使用している武器には北朝鮮武器、部品が見つかっている。そして「ハマス」を武器支援しているのがイランだ。イラン・北朝鮮・ハマスの3者がつながるわけだ。なお、朝鮮中央通信(KCNA)が24日報道したところによると、尹正浩対外経済相を団長とする北朝鮮代表団がイランを訪問している。
ところで、北朝鮮とイラン両国は弾道ミサイルと核技術分野で協力しているのではないかという噂が絶えない。イランで外相や原子力庁長官などを歴任したアリー・アクバル・サーレヒー氏が駐ウィーンIAEA(国際原子力機関)担当大使だった時、当方は「イランは北朝鮮と核関連分野で情報の交流をしているのか」と尋ねたことがある。すると大使は侮辱されたような気分になったのか、「私は核物理学者としてテヘラン大学で教鞭をとってきたが、北の科学技術に関する専門書を大学図書館で見たことがない。核分野でわが国の方が数段進んでいる」と強調し、ミサイル開発分野での北朝鮮との協調については「知らない」と答えたことを思い出す。
聯合ニュース日本語版は17日、「米国防総省傘下の国防情報局(DIA)が2019年に公表した報告書によると、イランの弾道ミサイル『シャハブ3』は北朝鮮の中距離弾道ミサイル『ノドン』を元に開発され、『ホラムシャハル』は北朝鮮の中距離弾『ムスダン』の技術が適用された。国情院は今年1月、イスラム組織ハマスが使用した武器の部品にハングルが書かれた写真を公開し、ハマスが北朝鮮製の武器を使用しているとの分析を明らかにした」と報じている。
ちなみに、イランは今日、ウラン濃縮活動を加速し、核兵器用の濃縮ウラン製造寸前まできている。ロシアから核開発で技術的支援を受ければ、イランの世界10番目の核保有国入りは時間の問題だろう。ロシア・イラン・北朝鮮の3国の独裁専制国家が核・ミサイル開発で手を結び、核保有国となった日、米国を中心とした西側同盟は大きな危機に遭遇する。中国共産党政権が3国の軍事同盟に加わり、西側に挑戦状を突きつければ、世界は文字通り、新「戦国時代」に突入する。
●「国家存続できない」 ベラルーシのルカシェンコ大統領がウクライナに対露停戦交渉求める 4/26
ロシアの同盟国ベラルーシのルカシェンコ大統領は25日、ロシアの侵略を受けるウクライナに「いま交渉を始めなければ国家として存続できなくなる恐れがある」と警告し、直ちにロシアとの停戦交渉を開始すべきだと主張した。首都ミンスクで開かれた国家の意思決定機関「全ベラルーシ人民会議」で発言した。
ルカシェンコ氏はウクライナ国内の戦況に関し、露軍がやや優勢なものの、両国軍とも「手詰まり」に陥っていると指摘。だが、ウクライナ軍では兵員不足が進んでいるとし、膠着(こうちゃく)状態にある今こそが和平合意に最も適したタイミングだと主張した。
また、ウクライナ支援予算案を成立させたバイデン米政権が長射程の地対地ミサイル「ATACMS」の供与を含む追加軍事支援に乗り出すことは「紛争を激化させる要因となり、危険だ」と指摘。米国や北大西洋条約機構(NATO)がウクライナを戦争に駆り立てているとも主張した。
一方、タス通信によると、ベラルーシ治安当局は25日、バルト三国リトアニアからミンスクを標的としたドローン(無人機)攻撃が最近あったが、阻止したと主張した。真偽は不明。
●ハンガリー中銀、予想通り0.5ポイント利下げ―今後も利下げペース鈍化を示唆 4/26
ハンガリー中央銀行は23日の金融理事会で、主要政策金利であるベース金利(準備預金への付利金利)を0.50ポイント引き下げ、7.75%とすることを決めた。市場の大方の予想通りだった。
また、中銀は他の主要政策金利についてもベース金利の上下幅(コリドー)の下限を示す翌日物預金金利を6.75%、また、上限を示す翌日物有担保貸出金利も8.75%と、それぞれ同率引き下げた。
中銀はウクライナ戦争の勃発(22年2月24日)でインフレが加速したため、22年9月会合まで17会合連続で利上げを実施したが、利上げ幅が計12.40ポイントに達し、金利水準も22年9カ月ぶりの高水準となったため、22年10月会合から据え置きに転換、23年9月会合まで12会合連続で据え置いた。しかし、最近のインフレの鎮静化を受け、同10月会合で、コロナ禍の20年7月以来、3年3カ月ぶりに利下げに転換、今回で7会合連続となった。
中銀は今後の金融政策について、「ハンガリー経済のディスインフレは続いているが、外需と内需の圧力は依然として低いままだ」とした上で、「こうしたインフレ見通しを踏まえると、以前よりも緩やかなペースでさらに金利を引き下げる必要がある」、また、「国内のディスインフレの持続的な継続を巡るリスクにより、今後数カ月は金融政策に慎重かつ辛抱強く取り組む必要がある」とし、引き続き、利下げペースを減速する方針を示した。
市場では過度な追加利下げが通貨フォリント安を進行させるため、今後も中銀は利下げペースを遅らせ、6月までに最終金利を6.50−7.00%にすることを目指していると見ている。今後、毎月0.50ポイントの利下げをあと2回実施する可能性がある。
利下げペースをめぐって、政府は景気刺激のため、中銀に対し、より大幅な利下げを求めているが、年央に通貨安による輸入インフレの上昇やベース効果で一時的にインフレが加速、最近のディスインフレ傾向が反転するリスクがあるため、6月まで利上げペースは鈍化、その後は利下げの一時停止の可能性がある。
次回の金融政策決定会合は5月21日に開かれる予定。
●米追加支援に期待大 苦戦続くウクライナ 4/26
米政府が追加軍事支援を行うウクライナは、ロシアの侵攻に対して苦戦が続いていた。ロシア国防省は21日、東部ドネツク州の要衝チャソフヤルに近い集落を掌握したと発表。チャソフヤルが陥落すれば、ロシアが州全域を占領するシナリオが現実味を帯びる。ウクライナのゼレンスキー政権の危機感は強く、支援による戦局打開への期待は大きい。
チャソフヤルは、2014年にロシアが軍事介入した東部紛争を受け、標高約250メートルの高台にウクライナ軍が陣地を築いた町。昨年5月にロシアの民間軍事会社ワグネルが激戦の末に制圧したバフムトの約10キロ西方に位置する。
さらに北西にゼレンスキー政権がドネツク州の臨時州都とするクラマトルスクが控え、ウクライナ軍はバフムトを失った後もチャソフヤル防衛を重視してきた。しかし、防空兵器などが枯渇する中、空爆を併用するロシアに前線の主導権を奪われつつあった。
ロシアは今回、チャソフヤルの北東隣のボグダノフカを制圧。3月下旬には南東隣の集落イワノフスコエを掌握しており、要衝攻略に向けて二つの侵攻ルートを確保した形だ。しかし、いずれも標高はチャソフヤルより約100メートル低く、「高地はウクライナ軍が維持している」(ロシア軍系メディア)ため、占領は容易でないとみられている。
ウクライナ軍のシルスキー総司令官は最近、ロシアが対ドイツ戦勝記念日の5月9日までに「チャソフヤル占領を目指している」と警戒。米シンクタンク戦争研究所は今月中旬、防空兵器などが不足する現状に鑑みれば、陥落は近いと悲観的な見方を示した。軍事支援が前線に行き届くには一定の時間を要するもようで、ロシアに大規模攻勢の形で先手を打たれる可能性もある。
●インド総選挙、2回目の投票始まる 与党優位揺るがず 4/26
インドで26日、下院総選挙の2回目の投票が始まった。与野党は宗教差別や積極的差別是正措置(アファーマティブアクション)、税金などに焦点を当て、白熱した選挙戦を繰り広げている。
投票は6月1日まで7回に分けて行われる。開票は6月4日。
世論調査ではモディ首相が率いる与党インド人民党(BJP)が容易に過半数を獲得すると予想されており、モディ氏は異例の3期目に入る見込み。
2回目の投票は13の州と連邦準州が対象で、下院543議席のうち88議席が争われる。有権者の数は1億6000万人。
議席の半数以上を南部のケララ州とカルナータカ州、北西部のラジャスタン州が占める。
最大野党・国民会議派のラフル・ガンジー元総裁も今回の投票の候補者の一人。ケララ州から立候補しており、インド共産党やBJPなどの候補者と対決する。
1回目の投票では投票率が約65%と19年の約70%から低下した。夏の暑さや結婚式シーズンによる投票率低下が懸念されている。
●台湾や南シナ海巡り米中外相激論…王毅氏「内政に干渉すべきでない」、ブリンケン氏「責任を持って管理」 4/26
米国のブリンケン国務長官と中国の 王毅 外相(共産党政治局員)は26日午前、北京の釣魚台国賓館で会談した。台湾や南シナ海、ロシアのウクライナ侵略を巡り、激論が交わされたとみられる。ブリンケン氏はこの日、 習近平 国家主席とも会談する予定だ。
王氏は会談冒頭で、中国が自らの一部とみなす台湾を念頭に「米国は中国の内政に干渉すべきでない」と主張した。ブリンケン氏は米中関係について「責任を持って管理する必要がある」と強調した。
米政府は、中国が軍事転用可能な製品をロシアに輸出している問題を率先して取り上げる方針で王氏との会談に臨んだ。中国の一部銀行への制裁をちらつかせて、支援中止を要求する構えだ。米政府関係者によると、中国が問題を認めない場合、証拠となる衛星写真を公開することを視野に入れる。
これに対し、中国の最優先事項は台湾問題だ。5月に台湾・民進党の 頼清徳 氏が総統に就任するのを前に、米国が明確に「台湾独立」を支持しないという言質を求めるとみられる。
米中関係は、長期的な対立構造に変化はないが、現時点では対話継続で一致している。バイデン米大統領と習氏が昨年11月に米国で会談し、流れが固まった。両首脳は今月2日にも電話で会談した。今月上旬にはイエレン米財務長官が訪中したほか、16日に国防相がビデオ会議を行うなど閣僚級の交流が続いている。
●米中外相が緊張緩和へ会談 安保・経済で対立、露のウクライナ侵略や台湾情勢で応酬も 4/26
ブリンケン米国務長官は26日、中国の王毅外相と北京で会談した。安全保障や経済分野で対立が続く中、対話推進で一致した昨年11月の米中首脳会談を踏まえ緊張緩和を図る。ロシアのウクライナ侵攻や5月に新政権発足を控える台湾情勢などの主要議題で双方の溝は深く、応酬も必至。習近平国家主席がブリンケン氏との会談に応じるかどうかも注目される。
ブリンケン氏は24日から3日間の日程で中国を訪問。王氏との会談では、半導体など軍事転用可能な物資をロシアに輸出しないよう求める。日米欧が制裁を科すロシアの防衛産業の再建を中国が下支えし、ウクライナ侵攻継続を可能にしていると強く懸念している。
米国は軍事支援するウクライナの反転攻勢を後押ししたい考え。ただ、ロシアと友好関係を保つ中国は中露間の経済活動が制限を受けるべきではないと反発している。
●北朝鮮から露に武器輸送の露貨物船が浙江省に寄港 中国のウクライナ侵略支援浮き彫りに 4/26
英紙テレグラフ(電子版)は25日、北朝鮮からロシアに武器を輸送しているとみられるロシアの貨物船が中国の港に停泊していることが、英政策研究機関「王立防衛安全保障研究所」(RUSI)の入手した衛星画像で判明したと伝えた。国連安全保障理事会決議違反となる北朝鮮による武器輸出を中国が支援している実態を裏付けるもので、中国への国際的批判が改めて高まるのは必至だ。
ウクライナを侵略したロシアは武器や弾薬の不足を解消するため北朝鮮から弾道ミサイルなどの供給を受けていると指摘される。
衛星画像には、露貨物船「アンガラ」が今年2月から中国東部浙江省にある中国最大級とされる造船所に停泊している様子が写っている。同船は昨年8月以降、北朝鮮の武器や弾薬が入っているとみられるコンテナ数千個をロシアの港に輸送したとされる。
中国の造船所では修理や機器のメンテナンスをしているとみられるという。
同紙によると、米国務省報道官は同船が中国に停泊し係留されているという情報を認識しているとした上で、中国当局にこの問題を提起したことを明らかにした。中国を訪問中のブリンケン米国務長官と中国高官との会談でも議題の一つになる見通しであることも示唆した。
国連安保理決議2397号は、北朝鮮との貿易を規制し、関連の違法行為に関与した船舶の登録抹消を義務付けている。
●米 ウクライナ軍事支援巡り ロシア側からけん制する発言相次ぐ 4/26
ウクライナへの軍事支援を巡りアメリカ政府が射程の長いミサイルをウクライナに供与したと明らかにしたことに対し、ロシア側からけん制する発言が相次いでいます。
アメリカ政府は24日、精密攻撃が可能とされる射程の長いミサイル、ATACMSをすでにウクライナに供与し、現地に届いたことを明らかにしました。
射程の短いATACMSは2023年供与されていますが、アメリカのメディアは今回提供されたものは、最大射程が2倍近いおよそ300キロだと伝え、今後の戦況への影響が注目されています。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は25日「アメリカはより長い射程の兵器を送りこの紛争に直接関与している。これで特別軍事作戦の結果が根本的に変わることにはならない」と強調しました。
また、今回のアメリカの軍事支援には制裁によって凍結したロシアの資産をウクライナ支援に活用することを可能にする内容も盛り込まれています。
ロシア外務省のリャプコフ外務次官は国営のロシア通信に対し「外交関係のレベルを下げることは一つの選択肢だ」と述べ、ロシアの資産が使われた場合は対抗措置に乗り出す考えを示すなどけん制する発言が相次いでいます。
一方、ロシアと同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領は25日、ウクライナや欧米側が挑発的な行為を続けていると主張しました。
そしてプーチン政権との間で合意されたベラルーシ国内へのロシアの戦術核兵器の配備について「すでに数十の最も近代的な核兵器がある」と述べ、核戦力の配備を強調し、欧米側をけん制しています。
ウクライナ 前線兵士不足で国外男性に帰国促す措置
ウクライナ政府は24日、前線の兵士不足に対応するため、国外に住む18歳から60歳までの男性に対し、在外公館でのパスポートの発給を停止すると発表しました。
ウクライナ国内でしかパスポートが発給されなくなるため、国外に長期間、滞在することが難しくなり、事実上、帰国を促す内容です。
発表に先立ちクレバ外相は23日、SNSに「国外にいるからといって自国に対する義務を免れるわけではない」と投稿し公平を期すための措置を講じたと強調していました。
ウクライナでは、5月18日に、軍の動員に関する改正法が施行されるなど動員逃れを防ぐ措置の強化が進められています。
●イラン企業などに追加制裁 米 4/26
米政府は25日、イランのドローン(無人機)の製造や販売に関与したなどとして、イラン企業などを含む24の個人・団体を制裁対象に指定したと発表した。船舶や航空機なども含め、資産凍結の対象となる。無人機はウクライナでの戦闘に使用するため、ロシアに移送されたという。
制裁対象には、テヘランを拠点とするイラン企業「サハラ・サンダー」などを指定した。同社はイラン国防軍需省のフロント企業としてドローンの製造開発などに携わったとされる。英国やカナダも対イランの追加制裁を発表した。
●中国の銀行へ制裁辞さず ロシア物資調達関与警告―米財務長官 4/26
イエレン米財務長官は25日、ウクライナへの侵攻を続けるロシアの軍需物資調達に関与した中国の銀行に対し、「必要があれば、権限を行使する用意がある」と語り、制裁発動を辞さないと警告した。ロイター通信とのインタビューで述べた。
イエレン氏は今月上旬に訪中し、中国政府高官と会談した際、ロシアへの物資供給を巡って意見交換したと説明。「中国は立場を理解していると考えている」と語った。
●中国 習主席 米ブリンケン国務長官と会談へ 中国国営メディア 4/26
中国の国営メディアは、習近平国家主席が、26日午後、アメリカのブリンケン国務長官と北京の人民大会堂で会談すると伝えました。
ブリンケン長官は、26日、王毅外相との会談を行っていて、習主席との会談では、両国関係の安定化を確認できるかどうかが焦点です。
●米 ガザ地区に仮設ふ頭建設開始 海から物資搬入へ 4/26
イスラエルとイスラム組織ハマスによる戦闘の影響でガザ地区で深刻な人道状況が続く中、アメリカ国防総省は、ガザ地区に海から食料などの支援物資の搬入に使う仮設のふ頭の建設を始めたことを明らかにしました。
バイデン政権としては、人道状況の改善に取り組む姿勢をアピールする狙いがあるとみられます。
人口約220万のガザ地区 深刻な人道状況続く
人口およそ220万とされるガザ地区は、イスラエルとハマスによる戦闘の影響で、深刻な人道状況が続いています。
アメリカ政府高官は、25日、このうち北部について「人口の半数以上がひどい食料不足に陥っている。子どもの30%近くは深刻な栄養失調の兆候が見られる」と説明しています。
米国防総省 仮設ふ頭の建設開始 海から支援物資搬入へ
アメリカ国防総省のライダー報道官は、25日の記者会見で「アメリカ軍の艦艇が、仮設のふ頭の建設を始めた」と述べ、ガザ地区への食料などの支援物資の搬入を増やすため、海からの搬入に使う仮設のふ頭の建設を始めたと明らかにしました。
また、アメリカ軍の幹部は記者団に対し「われわれは、5月はじめに、海からガザ地区への物資の輸送を始める予定だ」と述べ、来月からふ頭の運用を始め、段階的に支援物資の搬入量を増やすとしています。
アメリカ軍は、これまで、ふ頭の運用が完全に始まれば、一日に200万食以上の食料をガザ地区に提供できるようになると説明しています。
アメリカでは、イスラエル軍によるガザ地区への攻撃をめぐって各地で学生の抗議デモが続く中、イスラエルを支援するバイデン政権に対する反発の声も出ています。
バイデン政権としては、仮設のふ頭の建設開始を発表することで、人道状況の改善に取り組む姿勢をアピールする狙いがあるとみられます。
イスラエル軍 120万人が身を寄せるラファ 地上作戦“準備完了”
イスラエル軍は25日もガザ地区に空爆などを行っていて、ガザ地区の保健当局はこれまでに3万4305人が死亡したと発表しています。
また、ベルギー政府は25日、前日に行われたガザ地区南部のラファへのイスラエル軍の空爆でベルギーの援助機関のスタッフとその7歳の息子が死亡したと明らかにしました。
ラファには多くの避難者を含むおよそ120万人が身を寄せていますが、イスラエル軍はイスラム組織ハマスの壊滅に向けラファへの地上作戦を強行する構えを見せています。
イスラエルの有力メディアハーレツは25日、イスラエル軍がガザ地区北部や中部に展開していた部隊を南部に移動させるなど地上作戦に向けた準備を完了したと政府に報告し、作戦開始のタイミングは、政府の決断次第となっていると伝えています。
その上で、地上部隊による侵攻は住民を避難させたあとに始まるとしていて、ラファの住民を別の場所に避難させるには数週間かかるとの見方を示しています。
ラファへの地上作戦に対してはアメリカが繰り返し懸念を伝えているほか、ラファと境界を接するエジプトも「破滅的な事態となる」と警告していて、イスラエル政府がどのような対応を示すかが焦点となっています。
エジプト“関係断絶につながる可能性 平和条約危うくする” 警告
イスラエル軍がガザ地区南部のラファへの地上作戦を強行する構えを見せる中、アメリカのニュースサイト、アクシオスはイスラエル軍や情報機関の高官らがラファと境界を接するエジプトの情報機関の高官らと24日、カイロで会談を行ったと伝えました。
それによりますと、エジプト側はラファへの地上作戦が強行されれば、避難民の流入で治安が悪化するおそれがあると懸念しているということで、会談ではイスラエルとの関係断絶につながる可能性があり、両国の平和条約を危うくすると警告したということです。
これに対して、イスラエル側は、軍事・外交面でのエジプトとの緊密な連携はラファの地上作戦での基本的な条件だと伝えたということです。
また、アクシオスによりますとイスラエル軍はアメリカ国防総省に対し、ラファへの地上作戦について、全域におよぶ全面侵攻ではなく、地区ごとに分け段階的に進めていく計画だと伝えたということです。
18か国首脳 ハマスに対し “人質即時解放”求め 共同声明
アメリカなど18か国の首脳は25日、イスラム組織ハマスに対してガザ地区で拘束している人質を即時に解放するよう求める共同声明を発表しました。
声明はアメリカのほか、ドイツやタイ、それにアルゼンチンなど、ハマスに自国民が拘束されているとする国々がまとめました。
声明では、人質たちは200日以上にわたってガザ地区で拘束されているとして、国際的な懸念事項だとしています。
その上で「われわれは自国民を連れ戻すための仲介努力を強く支持する」とした上で人質の解放に向けた交渉で提示されている案は、ガザ地区での即時かつ長期的な停戦をもたらし人道支援の増加を促すと強調しています。
イラン革命防衛隊 イスラエル攻撃で使用の武器 NHKに公開
イランの軍事精鋭部隊、革命防衛隊はNHKの取材に対して4月、イスラエルへの大規模な攻撃で使ったとするミサイルや無人機を公開し、軍事力を誇示するとともに、イスラエルが今後、イランへの攻撃を行わないようけん制しました。
イランはシリアにある大使館が攻撃されたことへの報復として4月13日から14日にかけてイスラエルへの大規模攻撃に踏み切り、その後、19日には、イラン中部で爆発があり、イスラエルの対抗措置だったと伝えられています。
イスラエルへの攻撃を行ったイランの革命防衛隊は25日、首都テヘラン郊外にある国産のミサイルや無人機などの兵器の展示施設をNHKに公開しました。
施設のトップで、みずからも長年、ミサイル開発に携わってきたアリ・バラリ准将は、展示されている兵器のうち射程1700キロの弾道ミサイル「エマド」と、巡航ミサイルの「パベ」、それに、2000キロ以上の飛行が可能だとされる自爆型無人機「シャヘド136」などを今回の攻撃に使ったと説明しました。
一方、事態のエスカレートを防ぐため最新鋭のミサイルは投入せず、限定的な作戦にとどめたとした上で「攻撃されないための抑止力を持った戦略を立てそれは達成された。仮に全面戦争となれば、イスラエルは想像もできないまったく異なる光景を見ることになるだろう」と述べ、軍事力を誇示しました。
そのうえで「彼らがもう過ちを犯さず、われわれが一発のミサイルも撃たずに済むことが理想だ」と述べ、イスラエルが今後、イランへの攻撃を行わないようけん制しました。
●米財務長官 為替市場介入 “極めてまれで例外的な状況でのみ” 4/26
アメリカのイエレン財務長官は25日、ロイター通信のインタビューでほかの国による為替の市場介入について「極めてまれで例外的な状況でのみ認められる」と述べ、慎重な姿勢を示したうえで実施する場合は事前に相談することが望ましいとの考えを示しました。
インタビューのなかでイエレン財務長官は、主要な国の為替レートは市場で決定され、それがG7=主要7か国の取り決めだという考えを示しました。
その上でほかの国による市場介入について「極めてまれで例外的な状況でのみ認められる。それが適切だ。市場の混乱や過度な変動があった場合のみまれに行われる」と述べ、慎重な姿勢を示しました。
そして、市場介入を実施する場合は事前に相談することが望ましいとの考えを示しました。
一方、イエレン長官は「円の適切な価値がどれぐらいなのか言及するつもりはない」と述べ、円相場の水準についてはコメントは避けました。
外国為替市場では円相場は多くの投資家が節目として意識していた1ドル=155円を突破して、25日もおよそ34年ぶりの円安水準を更新しています。
市場では日本の政府・日銀による市場介入への警戒感が一段と強まっています。 
●中露へのくさび狙う米国 中国はプーチン氏訪中控え「距離」演出 4/26
ブリンケン米国務長官の訪中で主要な焦点となったのは、ウクライナを侵略するロシアと中国の関係を巡るせめぎあいだ。露防衛産業を中国が支えているとみなす米側は、中国に支援をやめさせ中露間にくさびを打ち込むことを狙う。中国側は、米への対抗でロシアとの密接な関係を維持しながら自国の経済利益などを確保するため、ウクライナ侵略とは一定の距離を保っていると演出することに腐心している。
米側は、中国がロシアに対し、軍事転用可能な製品の輸出などを通じて侵略継続を可能にしていると批判している。ブリンケン氏の訪問で、中国に対露支援を再考させ、ウクライナの反転攻勢を支援したい構えだ。
中国外務省の北米担当責任者は22日に中国メディアを通じ、「中国はウクライナ危機を作り出した者でも、当事者でもない。常に客観的で公正な立場を堅持している」と主張した。その上で「中露の正常な国家関係を攻撃、中傷するのをやめるべきだ」と反発した。
中国は、米国との対立は今後も長期に及ぶと見込んでおり、対抗軸としてロシアとの関係を重視している。5月にはプーチン露大統領が通算5期目に入って初の外遊として中国を訪問し、協力関係を確認する見通しだ。
一方で、ウクライナ侵略に関して中国は、対露制裁に巻き込まれることへの警戒から距離を保とうとしてきた。米紙ウォールストリート・ジャーナルは、米政府が中露の取引に関わる中国の一部銀行を国際金融システムから締め出す内容の制裁を検討していると伝え中国は米国の姿勢に敏感になっているとみられる。
欧州との関係安定化へも外交攻勢をかけており、習近平国家主席はフランス訪問を控えている。ウクライナ問題でロシア寄りの立場が際立てば欧州との関係に不協和音が生じる恐れもある。
北京の外交筋は「中国はロシアと一体と見られて不利益が多くならないよう振る舞おうとしている」と指摘する。
●「プーチンおやじ」の機嫌を取り、「張り子のクマ」ロシアと抱き合う中国の本音 4/26
「ロシアは中国に何か与えたのか? 科学技術? 資本? 市場? 文化?......いいえ、正解は『父の愛』だ」。これは今のロシアと中国の関係を反映した中国SNS上のジョーク。アメリカと対抗するため、今の中国はかなり「プーチンおやじ」の機嫌を取っている。
ロシア側が「大祖国戦争」の勝利を記念するため、2018年にかつて「海参崴」と呼ばれ清朝の領土だったウラジオストクで軍事パレードを行ったとき、新華社をはじめ中国の官製メディアは抗議せず、むしろ好意的に報道した。そもそもウラジオストクは「東方を支配する町」を意味するのに。
今年3月にロシア側がダマンスキー島事件55周年の記念活動を行ったときも、中国政府は沈黙を保った。日本の政治家が靖国神社を参拝したら、即時断固抗議する「戦狼外交」とは全く違う態度、「双標(ダブルスタンダード)」である。
先日、ハバロフスクで起きた放射能漏れ事件も同じだ。アムール川を挟んだハバロフスクの対岸30キロは中国領だが、ロシア政府が非常事態宣言を出したときでさえ、中国当局は「中国国内には何の問題もない」と宣言し、放射能漏れの詳細についての報道もほぼなかった。
福島第一原発の処理水海洋放出のときに、政府から国民まで激しく反応したのと正反対だ。
今の中ロの親交ぶりは、かつての日中蜜月期を想起させる。こんな話がある。1970年、江西省高安県は戦時中の日本軍による虐殺についての証言や事実資料をそろえ虐殺記念館を建てたが、「日中友好を破壊する」という理由で4年後、県政府に取り壊された。
その頃の中国は文化大革命でボロボロになった経済を改革開放で立て直すため、海外資本を呼び込むのに必死で、日米など資本主義国家にかなり友好的態度を示していた。
ただし中ロの親交は、日中蜜月期と本質的に違う。ソ連の政治遺産を相続した社会主義中国にとって、価値観が全く違うアメリカや日本との付き合いは、ただのご都合主義。西側先進国と抱擁するのは経済を発展させ、共産党独裁政権を強化するため。
ソ連崩壊が中国で再現しないよう、習近平(シー・チンピン)国家主席はプーチン大統領と抱き合って温め合う必要がある。相棒が「張り子のクマ」でも構わない。
ポイント
海参崴 / ハイシェンウェイ。満州語の中国語音訳。1689年のネルチンスク条約で清の領土と明記されたが、清の国力低下で1860年にロシアに割譲され、ウラジオストクに。不凍港として知られる。
ダマンスキー島事件 / 珍宝島事件。中ソ対立以来、緊張関係が続いた両国が1969年3月にウスリー川の中州で軍事衝突。ヘリコプターや戦車が投入される本格的な戦争に発展し、同年9月まで続いた。
●トランプ前大統領 欧米の保守勢力に対し選挙での連携呼びかけ 4/26
アメリカとヨーロッパで、ことし重要な選挙が行われるのを前に、トランプ前大統領を支持する双方の保守勢力がハンガリーで大規模な集会を開き、ビデオメッセージで参加したトランプ氏が選挙に向け連携を呼びかけました。
これはハンガリーの保守系シンクタンクが、アメリカのトランプ氏を支持する全米最大規模の保守系集会と25日から2日間にわたって開いたもので、アメリカの野党・共和党の議員やトランプ氏の元側近、そしてヨーロッパ各国の右派や極右政党の議員などが参加しました。
集会では、トランプ氏がビデオメッセージを寄せ「われわれは共にあらゆる邪悪な勢力から国家を解放する闘いに参加している」と主張し、ことし6月に行われるEU=ヨーロッパ連合の議会にあたるヨーロッパ議会選挙、そして、ことし11月に行われるアメリカ大統領選挙に向け連携を呼びかけました。
また、ロシア寄りの姿勢などをめぐりEUと対立する一方、トランプ氏支持を公言するハンガリーのオルバン首相も演説し、左派勢力がEUを支配して混乱をもたらしているなどと主張し、選挙を通じてヨーロッパに変化を起こそうと訴えました。
ヨーロッパ議会選挙では、各国でインフレなどへの国民の不満を背景に右派や極右政党の勢力拡大が予想されています。
ただ、こうした勢力はグローバリズムや国際協調への反対姿勢や反移民の主張も目立ち、連携の動きには警戒感も広がっています。

 

●ロシアで元囚人の帰還兵による凶悪犯罪相次ぐ 2年間で市民100人超死亡 4/27
ロシアのオンラインメディア「ビョルストカ」は26日、ウクライナ侵略に従軍した後に帰還した元兵士が、殺人や傷害致死事件、交通事故などにより過去2年間で少なくとも市民ら107人を死亡させたと報じた。殺人事件の多くは、一定期間の従軍と引き変えに恩赦で釈放された元囚人による犯行だったという。
ビョルストカは、集計は報道や裁判記録など公開情報のみに基づくもので、実際にはさらに多いのは確実だとした。
ロシアはウクライナの前線に送る兵員を確保するため、恩赦による釈放を見返りに凶悪犯を含む多数の囚人を軍に勧誘した。今回の報道は、恩赦で釈放された元囚人らが帰還後に露社会の治安を悪化させている実情を浮き彫りにした。
ビョルストカによると、帰還兵が起こしたことが確認された殺人事件は計55件で、被害者は計76人。うち36件が元囚人による犯行だった。帰還兵による傷害致死事件も18件あり、18人が死亡。さらに、帰還兵は交通事故で11人を死亡させたほか、薬物事件でも2人を死亡させたという。
●聖職者の資格と役割が問われる時代 4/27
神に仕える一方、この地上を支配する‘この世の神’に仕えることはできない。2つの神に同時に仕えることはできないからだ。また、イエスは「富んでいる者が天国に入るのはラクダが針の穴を通るより難しい」と諭した。
ところで、聖職者と呼ばれる人間は自身の生涯を神に献身することを決意した人であり、それだけ信者からは一定の尊敬を受けてきた。その聖職者のステイタスが近年、堕ちてきた。誰のせいでもない。聖職者自身が神に仕えるという志を忘れ、この世の神が治める世界に引きずられていったからだ。例えば、世界最大の宗派のローマ・カトリック教会では聖職者の未成年者への性的虐待事件が多発し、神の宮の教会は汚されている。
今回のテーマに入る。聖職者でありながら国の政治に深く関与している宗教指導者がいる。例えば、ロシア正教モスクワ総主教キリル1世、イランの精神的指導者ハメネイ師とライシ大統領はその代表だろう。
キリル1世についてはこのコラム欄でも何度か書いてきた。同1世はロシア正教会の最高指導者だ。同1世はプーチン大統領が始めた、ロシアとウクライナ間の戦争を「聖戦」と呼び、若きロシア兵たちを戦場に駆りたてている。ウクライナ戦争を「西洋の悪に対する善の形而上学的な戦闘」と意義付けている聖職者だ。
そのキリル1世は、2月に亡くなった反体制派活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏の追悼礼拝を行った聖職者を停職処分している。モスクワ総主教区は23日、ディミトリ・サフロノフ神父をモスクワの教区指導者から解任し、3年間聖職から外したと発表した。
サフロノフ神父は、ナワリヌイ氏の死の40日後、正教会の教えに基づいて同氏の墓で追悼礼拝を行った。そのビデオはインターネットで大きな注目を集めた。「戦争に反対するキリスト教徒」イニシアティブは、サフロノフ神父がモスクワ総主教から停職処分を受けたのは、拷問で死亡したナワリヌイ氏の墓前で追悼の祈りを捧げたからだと説明している。
ちなみに、故ナワリヌイ氏のユリア夫人は停職処分されたサフロノフ神父と彼の家族のための寄付を呼びかけている。未亡人は24日夜、ショートメッセージサービスXに「神父の死者への祈りに非常に感謝しています」と書いている。ナワリヌイ氏は2月16日、収監先の刑務所で死去した。47歳だった。同氏は昨年末、禁錮19年を言い渡され、過酷な極寒の刑務所に移され、そこで亡くなった。
モスクワ総主教庁は、ウクライナ領土のロシアによる併合と隣国への攻撃戦に反対した聖職者に対して聖職を剥奪している。キリル1世は2009年にモスクワ総主教に就任して以来、一貫してプーチン氏を支持してきた。それに対し、世界教会評議会(WCC)は、ロシアによるウクライナ攻撃を「聖戦」と呼ぶことに強く反対している。
一方、イランではイスラム革命後、45年余り、イスラム聖職者による統治政権が続いてきた。聖職者政権は今日、国民経済の大部分を支配下に置いている。例えば、ハメネイ師が管理するセタードは数十億ドル規模のコングロマリット(複合企業)を率いて中心的な役割を果たしている。ハメネイ師の経済帝国は、重要な石油産業から電気通信、金融、医療に至るまで、多くの分野をその管理下に置いている。一方、ハメネイ師の支持を得て大統領に選出された強硬派のライシ大統領はイラン最大の土地所有者の経済財団を主導している、といった具合だ。
イラン聖職者統治政権は、パレスチナ自治区ガザを支配する「ハマス」だけではなく、レバノンのヒズボラ、イエメンの反政府武装組織フーシ派などイスラム過激テロ組織を軍事的、経済的に支援し、シリア内戦ではアサド独裁政権をロシアと共に軍事支援してきた。そしてライシ大統領はそれらの活動をイラン革命45周年の成果として誇示する一方、イスラエル壊滅を呼び掛けているのだ。同大統領は聖職者であり、ハメネイ師の亡き後の有力な後継者だ。
聖職者はどのような人だろうか。少なくとも神の召命を受けた人だろう。燃え上がる使命を感じて歩む聖職者もいるだろう。過去には、聖人と呼ばれた聖職者がいた。現在も義人、聖人ともいえる聖職者がいるはずだ。彼らは自身の命を捨てても他者のために生きる。‘地上の星’というべき人たちだ。義人、聖人の存在は同時代に生きる人々に希望を与えてくれる。キリル1世、ハメネイ師、ライシ大統領の看板は聖職者だが、和解と許しを説くのではなく、憎悪を煽っている。和平の代わりに聖戦と叫び、人殺しを呼び掛けている。
世俗化した社会、国では「政教分離」が施行されているが、独裁専制国家では宗教が統治手段となったり、国民を宗教の名で圧政したりするケースが見られる。共産主義社会では「宗教はアヘン」と呼ばれてきたが、ロシアやイランでは今日、宗教が積極的に悪用されている。中国共産党政権でも共産主義による国民の統治が難しくなってきたことを受け、愛国主義教育が奨励されてきたが、その際も宗教が一定の役割を果たすように強いられている。
ウクライナ戦争、中東紛争と世界は激動の時代に突入してきた。宗教指導者の役割は大きい。それだけに似非宗教者、聖職者も出てきた。聖職者の資格が問われる時代だ。
●「秘密音響兵器」でアメリカ諜報部員の脳細胞を損傷!プーチンが仕掛けた「ハバナ症候群」の戦慄現場 4/27
つい最近、ロシアの独立系メディア「インサイダー」が「衝撃的な事実」を明かした。世界各国でアメリカの外交官らが「ハバナ症候群」と呼ばれる原因不明の健康被害を訴えていた問題について、プーチン大統領率いるロシア軍参謀本部情報総局(GRU)が「秘密音響兵器」で攻撃していた可能性が極めて高い、と報じたのだ。
一連の事実は、アメリカCBSテレビのドキュメンタリー番組「60ミニッツ」と、ドイツのニュース雑誌「シュピーゲル」の共同調査で明らかになったもの。
報道によれば、在外アメリカ大使館の外交官、職員、諜報部員らを狙った攻撃現場付近で、GRUに所属する「29155部隊」工作員の姿が目撃された。この秘密部隊の複数の幹部が、秘密音響兵器開発の論功行賞として、異例の昇進を遂げていたというのだ。
ハバナ症候群は、2016年にキューバの首都ハバナにあるアメリカやカナダの大使館の外交官らがめまい、吐き気、頭痛、聴覚障害などの健康被害を訴えて問題となった、謎の突発性シンドロームだ。
同様の健康被害はドイツやジョージア(旧ソ連構成国)にある在外アメリカ大使館でも報告されている。アメリカに敵対するキューバやロシアの関与が疑われていたが、2023年3月、アメリカ国家情報長官室は「外国の敵対勢力が関与している可能性は非常に低い」との調査結果を公表していた。
それが今回の衝撃報道によって、完全に覆されたことになる。
問題の音響兵器は、マイクロ波と超音波によって脳細胞の損傷や内耳の障害などを誘発する秘密兵器とされ、「インサイダー」は「攻撃はアメリカの諜報部員らの無力化を狙った可能性が高い」と報じている。
ロシアのペスコフ大統領報道官は「根拠のない中傷だ」と報道内容を即座に否定したが、もはや疑惑は事実の域に達しつつある。ロシアの諜報活動に詳しい専門家も、次のように指摘している。
「ハバナ症候群の被害者らは、秘密音響兵器による攻撃の前後に29155部隊の工作員らの姿を目撃しており、それらを写真に収めて同部隊の関与を特定しています。また、GRUの傘下にある軍事医学アカデミーが、秘密音響兵器による健康被害をめぐる臨床研究を秘かに進めていたこと、さらには29155部隊の主要幹部らが、秘密音響兵器の開発契約をクレムリン(ロシア大統領府)と交わしていたことなども明らかになっている。一連の攻撃が独裁者プーチンの仕業であることは、誰の目にも明らかなのです」
ちなみに、ハバナ症候群による被害者は、少なくとも数百人に上るとされている。
●ロシア軍、ウクライナ東部で前進加速 米支援到着前に攻勢強化か 4/27
ロシアによるウクライナ侵略で、英国防省は26日、最前線の一つである東部ドネツク州アブデーフカ西方で、過去1週間に露軍の前進が加速していると指摘した。米シンクタンク「戦争研究所」も25日、露軍がアブデーフカ北西で攻勢を強化していると報告。同州全域の制圧を狙う露軍が、米軍事支援の再開でウクライナ軍が戦力を回復させる前に、可能な限り占領地域を広げようとしているもようだと分析した。
アブデーフカはロシアの実効支配下にある州都ドネツク市の近郊に位置し、露軍が2月に制圧。露軍の主な狙いは、アブデーフカ周辺からウクライナ軍を遠ざけてドネツク市の安全を高めることだとみられている。
戦争研究所はまた、露軍がアブデーフカ方面とは別に、戦略的により重要な同州バフムト西方の小都市チャソフヤルの制圧を狙って攻勢も強化していると指摘した。露軍はチャソフヤルを制圧することで、ウクライナ側が保持する同州の重要都市クラマトルスクやスラビャンスク方面への前進ルートを確保したい思惑だとみられている。
ウクライナメディアによると、ウクライナ軍はチャソフヤルへの露軍の進軍を防ぐため周辺で防衛戦を展開。だが、ウクライナ軍は火力で露軍に劣っている上、露軍の激しい空爆にもさらされており、厳しい戦闘を強いられているという。
●ロシアが欧州で秘密工作を活発化か、過激なサッカーファンも動員し反プーチン派を襲撃 ゼレンスキー暗殺計画関与も 4/27
・ロシアが欧州域内で秘密工作を活発化させている懸念が出ている。ポーランドではウクライナのゼレンスキー暗殺計画を支援した疑いのある男が確保された。
・ドイツでもスパイ容疑で軍用インフラなどへの攻撃計画を立てた疑いでロシアとの二重国籍の男らが逮捕されている。
・欧州域内に逃れた反プーチン派の活動家の安全も脅かされている。兵役を逃れたロシア人が大量に欧州に流入しており、安全保障上のリスクになっているとの見方もある。
ポーランドのドゥダ大統領は22日、北大西洋条約機構(NATO)が東部強化のためポーランドに核配備を行うと決定した場合、受け入れる用意があると表明した。
ロシアが隣国のベラルーシに戦術核兵器を配備し、ポーランドやリトアニアと国境を接するロシア領カリーニングラードには核兵器搭載可能なミサイルを配備したことなどに対抗する措置とみられる。ドゥダ氏はポーランドの日刊紙「ファクト」との22日付インタビューで「我々はNATO同盟国であり、この点からも義務を負う」と話した。
現状ではポーランドは核保有国ではなく、米国も同国に核兵器を配備していない。だがポーランドは昨年、NATOの核共有計画への参加希望を表明。モラウィエツキ首相は昨年6月の会見で、「プーチンがさまざまな脅しをエスカレートさせている中で、手をこまねいている訳にはいかない」と述べた。
これに対しロシアは即座に、同国軍が状況分析を行い「(ロシアの)安全確保のため、必要なあらゆる対抗措置を講じる」(ペスコフ大統領報道官)と反発した。
両国の緊張の高まりは軍事面にとどまらない。4月に入り、ロシアの諜報機関の命を受けたとみられるポーランド国籍の男数人が、ポーランドで相次ぎ逮捕されている。
17日、ロシアのエージェントによるウクライナのゼレンスキー大統領暗殺計画の支援を申し出たとして、ポーランド人1人が確保された。男はロシア側に対し、ウクライナ国境に近いポーランド南東部にある空港の詳細を伝えようとしたとされている。
この空港は現在米軍の管理下にあり、ゼレンスキー氏も頻繁に使用しているという。英ガーディアン紙によれば、この空港はウクライナへの軍事・人道支援物資を運ぶ玄関口でもある。
ポーランド検察庁は、この男がロシアの「軍事諜報機関のために行動する用意があると宣言し、ウクライナ戦争に直接関与しているロシア国民と接触したことが判明した」との声明を出している。
19日にはポーランドのトゥスク首相が、ロシアがらみの事件に関わったとして別のポーランド人2人の逮捕を発表した。ロシアの反体制派指導者で2月に獄死したアレクセイ・ナワリヌイ氏の側近レオニード・ボルコフ氏が、先月リトアニアで襲撃された事件の実行犯であるという。
ボルコフ氏は亡命先であるリトアニアの自宅付近でハンマーによる襲撃を受け、腕を骨折するなど重傷を負った。リトアニア当局の声明によると、2人は4月3日、ポーランドの首都ワルシャワで確保された。
トゥスク氏はさらに、ロシアの命を受けて襲撃を指示したベラルーシ国籍の人物も逮捕したとしている。
ロシアが各国で諜報活動を強化か
着目すべきは、ボルコフ氏襲撃に関わったポーランド人の男らが、極右的思想や暴力的行為などと結び付けられることもある熱狂的なサッカーファン「ウルトラス」に関連していた事実であろう。米ニューヨーク・タイムズ紙は、一連の逮捕劇は、ロシアの息のかかった勢力が欧州連合(EU)域内にどの程度浸透しているのかを、欧州各国の当局が調査している中で起きたと分析している。
こうした勢力は、ロシアの反体制派を威嚇、あるいは襲撃するために暗躍している可能性があるという。ロシアのスパイや暗殺者らが欧州の国々で組織犯罪、あるいは過激なグループなどに属する「人材」を雇い上げ、どの程度のネットワークを作り上げているのかが懸念されている。
こうした逮捕劇が相次いだのはポーランドだけではない。ドイツでも17日、ドイツとロシアの二重国籍の男ら2人が、ロシアのスパイとして活動していた容疑で逮捕された。ドイツ連邦検察当局は声明で、男らのうち1人は昨秋以来、ロシアの諜報機関と接触し、ドイツによるウクライナへの軍事支援を弱体化させるための意見交換を行なってきたとしている。
具体的には、ドイツ国内の軍用インフラや工業用地に対する、爆発物や放火を伴う攻撃を計画。もう1人の男は今年3月からその計画を支援してきたという。
攻撃対象には、米軍関連施設も含まれていた。独シュピーゲル誌の独自情報によれば、男らが注視していたのは南部バイエルン地方の米軍施設で、米軍によるウクライナ兵の訓練などに活用される極めて重要な施設だという。 
ベアボック独外相はこの事件に絡み、プーチン大統領がドイツを攻撃するために同国内でエージェントをリクルートしている疑惑は極めて深刻だと述べ、「プーチンのテロをドイツに持ち込ませることなど許さない」と強く反発した。
兵役逃れのロシア人大量流入が安全保障上のリスクに
ガーディアン紙はベアボック外相が急遽在独ロシア大使を召喚し説明を求めたことに触れ、その異例の速さはドイツ当局が、こうした計画とロシアとの関連性について明白な証拠を有していることを示唆すると報じた。ロシアはこの男たちに関する情報はないとし、ドイツ当局による発表についてのコメントを避けた。
米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は18日の紙面で、ロシアによるウクライナ侵攻以来、ドイツが国内でのロシアによるスパイ活動の取り締まりを強化してきたにもかかわらず一連の逮捕劇が起きたのは、ロシアがスパイ網を再構築した可能性を示唆するものだとしている。
同紙はまた、ドイツの治安当局者が、ロシアによるプロパガンダなどによるドイツに暮らす350万人ものロシア語話者への影響を懸念しているとも報じた。ロシア語を話す層の一部が支配する犯罪組織とロシアの諜報機関が、密接な関係にある疑いも生じているという。
ガーディアン紙は、近年ドイツに暮らすロシア人の多くが、兵役を逃れた亡命者であることに着目している。こうしたロシア人の大量流入が安全保障上の脅威になり得る可能性について、議論が活発化しているという。
近年ドイツでは、極右の台頭により移民・難民への視線が厳しくなっている。ウクライナとの戦争に伴うロシア人の流入が、一層の社会不安につながらないとも限らない。
前稿でも述べたように、欧州各地にはロシアの弾圧を逃れて国外に暮らすことを余儀なくされた活動家などが数多くいる。反体制派の象徴となりつつある故ナワリヌイ氏の妻、ユリアさんもその一人だ。欧州はいつまで、域内に逃れてきたプーチン政権と対峙する人々を守り切ることができるのだろうか。
●ロシアと中国 国防相会談 軍事分野での協力関係強化の姿勢誇示 4/27
ロシアと中国の国防相が会談し、軍事分野での協力関係を一層強化していく姿勢を誇示しました。ロシアとしては、来月にはプーチン大統領の中国訪問も予定しており、中国との連携を深めて欧米と対抗していく考えを示しています。
ロシアのショイグ国防相と中国の董軍国防相は26日、両国が主導する枠組み、上海協力機構の国防相会議が開かれたカザフスタンの首都アスタナで会談しました。
ロシア側によりますと、会談でショイグ国防相は「現在の世界秩序と差し迫った国際問題について、ロシアと中国のアプローチは一致している」と強調し、軍事分野で中国との協力関係を一層強化していく姿勢を誇示しました。
これに対し、中国の董国防相は「国際情勢が変化する中で、両国の軍の関係が活動的であり続けることが特に重要だ。われわれの交流は世界の安定にとって大切だ」と述べたということです。
ロシアのプーチン大統領は来月、中国を訪問する計画を明らかにしていて、習近平国家主席と会談するものと見られます。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は26日、大統領の訪問の準備が始まっているとしたうえで「ロシアと中国は西側から圧力を受けているが、この圧力に耐える自信がある」と述べ、中国との連携を深めて欧米と対抗していく考えを示しています。
●米、ウクライナに9480億円規模の長期軍事支援 過去最大 4/27
オースティン米国防長官は26日、60億ドル(約9480億円)規模の対ウクライナ長期軍事支援を発表した。支援規模はこれまでで最大。これにより、米国は国内の防衛産業がウクライナ軍向けに生産した新たな装備品を購入できるようになる。
オースティン氏は記者会見で、「我々がこれまでに供与した安全保障支援パッケージの中で最大規模となる。『パトリオット』や『NASAMS(ネイサムス)』防空システム向けの重要な迎撃兵器、対ドローン(無人機)システム、支援装備品、大量の砲弾、空対地兵器、維持整備支援が含まれる」と説明した。
米国は今回の発表に先立ち、米国の在庫から迅速に装備品を供与する10億ドル規模の対ウクライナ支援策を発表していた。これはバイデン大統領が24日に950億ドル規模の追加支援法案に署名したことを受けた措置。
バイデン氏は法案署名の直後、数時間以内にウクライナ支援の輸送が始まると述べていた。ただ、今回発表された60億ドル規模の支援策に基づく装備品は到着までにもっと時間がかかる見通しだ。
米国の在庫から直接装備品を引き出すパッケージとは異なり、26日に発表された支援は国防産業と契約する「ウクライナ安全保障支援イニシアティブ(USAI)」に基づく。USAIにはウクライナに長期的に兵器や装備品を供与する狙いがある。
オースティン氏と会見に臨んだブラウン統合参謀本部議長は、USAIに基づく支援策はウクライナに「さらなる柔軟性」を提供するものになると説明した。
オースティン氏とブラウン氏の記者会見に先立ち、26日午前にはウクライナ防衛コンタクトグループのオンライン会合も開催された。ドイツでの最初の会合から2年となる。
ウクライナのゼレンスキー大統領は会合開始前に協力国向けの演説を行い、支援に感謝の意を表明しつつも、防空システムをはじめとする追加支援の供与を訴えた。
●米国防長官、ウクライナに9500億円相当の軍事支援表明 4/27
アメリカのオースティン国防長官は、ウクライナに対し60億ドル相当の軍事支援を行うと表明しました。
「ウクライナの結果は、我々の時代の方向性を決定づける。もしプーチンがウクライナで勝利すれば、安全保障にもたらす結果は重大かつ世界的なものとなる」(オースティン国防長官)
オースティン国防長官は26日の記者会見で、アメリカ政府として60億ドル(=日本円で約9500億円)相当の軍事支援を新たに行うと表明しました。この支援は過去最大規模で、防空迎撃ミサイルや対ドローンシステム、弾薬や砲弾などが含まれています。
国防総省によりますと、今回の支援はアメリカ軍の在庫から軍備品を取り崩して送るものではなく、長期的な支援を目的に企業と新たに契約を結び調達するもので、ウクライナに届けられるまでには時間がかかる見通しです。
バイデン政権は、24日にも1550億円規模のウクライナ支援を発表していて、こちらは順次、軍備品の送付が始まっているものとみられます。
●アメリカ、ウクライナに60億ドルの軍事支援発表 パトリオット・ミサイル提供「急ぐ」と国防長官 4/27
アメリカのロイド・オースティン国防長官は26日、防空ミサイル「パトリオット」や砲弾をウクライナに速やかに届けるため「直ちに対応」する方針を示した。
アメリカ政府は24日、610億ドル(約9兆6000億円)規模の対ウクライナ追加軍事支援予算を成立させた。バイデン政権は同日にすでに、対空ミサイルや砲弾など10億ドル規模の緊急兵器支援を発表している。
これを受けてオースティン長官は26日、チャールズ・ブラウン統合参謀本部議長と共に記者会見し、ウクライナに対して単体としては過去最大となる60億ドル(約9460億円)規模の追加支援を発表。「パトリオット」迎撃ミサイル、中高度防空ミサイル・システム「NASAMS」用のミサイル、高機動ロケット砲システム「ハイマース」用の弾薬、対ドローン・システム、相当量の砲弾などが含まれると説明した。
支援内容には、パトリオット・ミサイルの発射機は含まれていなかった。
オースティン長官はこの発表に先駆け、関連各国当事者の連絡会議「ウクライナ防衛問題コンタクトグループ会合(ラムシュタイン会合)」を主催。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領もオンラインで参加したという。
この会合の前にゼレンスキー大統領は、ロシアによる空からの攻撃の脅威が増している状況で、ウクライナはパトリオット・ミサイルを喫緊に必要としていると強調していた。パトリオット・ミサイルは「今すぐ人命を救えるし、そうなるべきだ」と、大統領は述べていた。
オースティン長官は今回の追加支援について、「(ウクライナが)必要とするのはパトリオットだけではない、ほかの防衛システムや迎撃ミサイルも必要だ。パトリオットだけを万能薬扱いするべきではない」と指摘した。
長官はさらにウクライナの状況について、「ウクライナと欧州とアメリカにとって、どういう危険が迫っているのかを理解する必要がある」、「もしプーチンがウクライナで勝利すれば、欧州は私たちが生まれてこの方、経験したことのない安全保障の危機に直面する。ロシアはウクライナでやめたりしない」と強調した。
アメリカが提供する援助がウクライナ軍を守るのかとの質問に、オースティン長官は、アメリカの取り組みは「具体的で現実的で相当」なものだが、「瞬時に実現するわけではない」と答えた。
「ウクライナに届いて配備されるには、それなりの時間がかかる。ウクライナ側はこれまでも、守りを維持してきた。追加の武器が手に入れば、ウクライナ軍はさらに良く戦える」とも、オースティン長官は話した。
ウクライナが現在保有するパトリオット・システムはわずかで、西側製の他の防空システムのほか、旧ソヴィエト連邦時代の地対空ミサイルシステム「S-300」の残りなどを使用し、ロシアの砲撃を防いでいる。
パトリオット・システム1基の値段は約10億ドル、パトリオット・ミサイル1発は約400万ドル。
ドイツはすでにパトリオット・システムの追加供与を約束しており、ドイツ政府は今月初めに他の欧州諸国にウクライナ支援を急ぐよう呼びかけた。
ただし、ギリシャ政府は自国のパトリオット・システムやS-300は自国の防空に不可欠で、ウクライナに回す余裕はないという姿勢。報道によると、スペイン政府はパトリオット用のミサイルを提供するものの、発射機などを含むシステムそのものは提供しないという。
●ウクライナ支援のため ロシア資産どう没収するか 4/27
米議会がやっと608億ドルのウクライナ支援予算案を可決した。下院共和党の強硬派の抵抗で半年以上もめ、プーチン・ロシア大統領をほくそ笑ませてきた。まずはよかった。
ここでは同予算案に含められたREPO法案(差し押さえたロシア資産を没収し、ウクライナ支援のため移転する法案)の部分に注目したい。それは経済制裁の重要な一環で学者、言論人の多くも賛成しているが、反対論も少なくない。欧州連合(EU)は全面的没収には不賛成だ。そこでこの問題の成り行きも気になる。
2022年のロシア軍侵攻開始後、西側で凍結されたロシア資産は総額3000億j前後(欧州連合〈EU〉で2100億j以上、米国で500億j以上)。それをどうするか。米国では政府や上院でREPOが検討され、今年1月上院外交委がそれを承認した。トランプ氏に近いジョンソン下院議長も3月から、REPOを盛り込むことで強硬派を何とか抑え、ウクライナ予算案可決に向け汗をかいた。
この問題では2月に、日米欧の国際法学者ら10人(濱本正太郎・京大大学院教授ら)が「ロシア資産をウクライナのため活用することは合法だ」との書簡を各国政府に送付した。「国際法の根本原則に違反したロシアへの対抗措置は認められる」。サイモン・ジョンソン・マサチューセッツ工科大教授も「こんな酷い侵略は許されないというシグナルを世界に発信する」手段としての重要性を強調した。
だが一方、上院外交委で強硬に反対したランド・ポール委員(共和)らは、1ロシアと完全な経済戦争に突入してしまう。ロシアは推計2880億jもの西側資産を没収できるといい、大没収合戦になる。凍結資産は今後の交渉の取引材料に残しておくべきだ。2米国の最大の戦略資産=国際基軸通貨ドルの信頼性を大きく損う。世界で外貨準備を他通貨に移す動きが広がるだろう――などと主張している。
そして米国の数倍の凍結ロシア資産を抱える欧州は同様の懸念から、その利益分(利子や資産価値上昇分)だけをウクライナに回す、より慎重な案を先に打ち出している。ただこれだと年30億j程度だから、ウクライナ支援の必要額に比べ少額だ。
ロシア政府は全体没収はもちろんEU案にも猛反発、脅しカードを切って言う。「国際基準の前例のない違反、盗人の所業だ。我々は関わった国と個人を今後数十年追及し続けるだろう」。強盗・殺人的所業の主がよく言うよだ。
凍結対象になる外貨準備・資産をこれ程有している国が侵略戦争をしたのは初めてといい、凍結資産がどう処理されるか、中国を初め多くの国々が注視している。ドルやユーロの信用にどれだけ影響が出るかは分からないが、強権国家指導者らが資産没収を恐れて今後侵略を控えるようになれば、抑止力として成功だろう。
今後米欧間、また日本なども含めた話し合いで、REPOはどうなるだろうか。米大統領選で「もしトラ」が実現したらどうなる?
大国相手の経済制裁は本当に難しい。史上最も厳しい経済制裁を課されても、ロシアの23年の成長率は3・6%。国際通貨基金(IMF)は、24年の成長見通しを1・1%から2・6%へ大幅上方修正した。原油輸出がどっこい頑張り、軍需産業が大忙しなのが大きい。中国とインドでロシアの原油輸出の90%近くを引き受けている。インドは以前の14倍も輸入しているという。
経済制裁という武器をこれ以上無力化させず、今後の抑止力とするためにも、ロシアの報復脅しをはねつけ、たとえ限定的でもREPOをどんどん実施してほしい。「もしバイ」でも「もしトラ」でも。
●中国、ロシア、北、イラン。戦時協力を高める“戦争の枢軸”が狙う「国際秩序の破壊」と新しい統治の形成 4/27
ウクライナ戦争や中東地域の混乱など、緊張と混迷が深まる国際社会。そんな中にあって、欧米主導の世界秩序を破壊し新たな統治の形を生み出そうとする「試み」が確実に存在するようです。
「戦争の枢軸」が敢えて作り出す混乱と恐怖。中ロが世界にもたらす負の連鎖
皆さん【XXの枢軸(Axis of XX)】と聞かれて何を想像されるでしょうか?
1930年後半に構築された日独伊の枢軸同盟でしょうか?
それとも9-11の同時多発テロ事件を受けて、当時のアメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュ氏が用いたAxis of Evil(イラン、北朝鮮、イラク)でしょうか?
または、イスラエルとハマスの戦いを機に、再度、注目されたイラン主導の抵抗の枢軸(Axis of Resistance)でしょうか?
そのどれであったとしても共通するのは、【非民主主義体制であり、米英と対抗する国々・組織】を枢軸と欧米諸国とその仲間たちが呼んでいることです。
ここで気をつけないといけないのは、【誰の目から見て邪悪で抵抗する存在なのか】という見解・アングルの見極めです。
欧米諸国とその仲間たちから枢軸と呼ばれている国々や組織の側から見ると、枢軸という名称を使うかどうかは別として、欧米諸国とその仲間たちこそが邪悪であるという見方をします。
今回、このコーナーでお話ししたいのは“どちらが正しいか・悪いか”ではなく、現在、いくつもの大きな戦争が世界で起きている最中、欧米主導の国際秩序に対して楔を打ち込もうとしている新しい枢軸と言われている【戦争の枢軸(Axis of Wars)】が引き起こしかねない混乱についてです。
この戦争の枢軸の構成国は、【ロシア、中国、イラン、北朝鮮の4か国】がメインと言われていますが、現在、中東危機に世界の目が向けられている事態に乗じて、ロシアと中国が核となり、他地域でも強気な行動に走り、それが欧米主導のこれまでの国際秩序の在り方を激しく揺さぶり、混乱と恐怖を通じて、新しい統治の形を作ろうとしているのではないかという懸念が生まれています。
これは私もご招待いただいたイスラエルのシグナル・グループが先週に開催したオンライン会議で多くの参加者から寄せられた懸念を整理したものですが、実際の状況を分析してみると、確かにこれら戦争の枢軸の国々の間での戦時協力が高まっている姿が浮かび上がってきます。
例えば、ウクライナに侵攻し、その後もウクライナの東南部を一方的に編入し、クリミアを死守しつつ、ウクライナ全土への影響力拡大を狙うロシアに対して、イランは大量のドローン兵器を提供していることが分かっていますし、北朝鮮も、金正恩氏のロシア訪問後、100万発を超える砲弾と“弾道ミサイル”をロシアに提供して、ロシアによるウクライナ侵攻に加担しています。
世界中を火の海にする可能性が指摘される「戦争の枢軸」
中国については、現時点までは殺傷兵器をロシアに提供しているという事実はないようですが、武器弾薬の生産のための工作機械や電子部品をロシアに提供し、かつ無人機もロシアに提供しているという情報が寄せられています。
一応、表面的には習近平国家主席と政権はこれに加担しておらず、中国企業があくまでも“ビジネス”として行っている商業行為とのことですが、実際のところ、共産党政権の許可なくこのような大それたことをすることはできないだろうと考えられますので、中国もバランスを取りながらではありますが、独自の方法でロシアによるウクライナ侵攻を、時折、仲介役を申し出ているにも関わらず、後押ししている状況が覗えます。
ロシアは北朝鮮に対して核ミサイル・弾道ミサイルの開発支援を行っており、最近、ロシアの軍事技術者が派遣され、北朝鮮に常駐して指導しているという情報もあります。また今後、ロシアと北朝鮮の協力関係が深化していった場合、最新鋭戦闘機のSU35もロシアから北朝鮮に提供されるのではないかという分析も存在します。
そしてロシアはイランに対して戦略的パートナーシップ協定の下、北朝鮮に対するのと同じように軍事的な技術やノウハウを移転し、イランの軍事力の向上に多大な貢献をしているようですし、中国は同じく戦略的パートナーシップ協定の下、イランとの経済関係の強化と技術開発の協力を進めています。
この戦争の枢軸国が、今、混乱を極める国際社会において、同時並行的に行動を起こし、主導することで、戦争の連鎖が起きて、世界中を火の海にする可能性が指摘されています。
ロシアがウクライナとの戦争を進める中、中国は台湾への脅威をカモフラージュにして、南シナ海における支配権を強め、広めようとしています。そして北朝鮮はミサイル実験を異例の頻度で実施し、“核反撃訓練”と称して4月23日にも核弾頭搭載可能とされる短距離弾道ミサイル(超大型放射砲と呼んでいる)を東シナ海および日本海に向けて発射することで、アメリカと韓国、そして日本にプレッシャーをかけ、アジア地域に釘づけにし、アメリカの戦力とフォーカスを分散してアジアに引き付けています。
そしてイランは、ご存じの通り、イスラエルとの緊張を高めつつ、自らが主導する抵抗の枢軸をactivateして、従来通りの親イラン派抵抗組織による対イスラエル・同盟国攻撃に加え、エスカレーションを回避しつつ、1979年来初めてとなるイスラエルへの直接攻撃も行うことで、中東地域にアメリカを引き戻し、再度張り付けて戦力とフォーカスを分散させることに一役買っています。
このようにしてロシアのウクライナ侵攻と並行して、中東紛争、そしてアジア危機(北朝鮮のミサイル実験と発射に加え、中国による南シナ海での強硬な威嚇行為の連鎖)というように、違った地域で起きている緊張・危機に対して同時に油を注ぎ、緊張を一気に高めることで、これらの紛争・緊張が互いに反応・反響しあい、動きがそれぞれ加速して強度が増すという負の連鎖を引き起こすのではないかと懸念されます。
何としても防がなければならないロシアの勝利と中東全面戦争
今、この脅威に対抗するためにアメリカ軍を軸に、日米韓の軍事協力やAUKUSの強化、そしてアメリカとフィリピンのミサイル配備訓練を含む高度の軍事演習などをアジアで行って中国による脅威に対峙していますが、アメリカは現在、派兵はしていなくても、ウクライナ戦争にどっぷりと浸かっていますし、戦略的同盟国であるイスラエルの後ろ盾として中東危機にもコミットしており、多方面での対応を強いられています。
2010年代に入るころまでは“世界の警察官”として7つの海すべてをカバーし、同時に2つ以上の紛争に対応できる体制を敷いていた米軍ですが、オバマ政権以降、大きな方針転換を行い、2010年代後半以降、1つの大紛争に対処する能力しか持てなくなっています。
NATOやAUKUSなどを含む米軍主導型の同盟関係サイドは、早期にアメリカ・アジア・欧州の同盟国間で、同時進行型の大紛争に対する対応策を構築して確立する必要が喫緊の課題として挙げられます。
もし、協議に手間取り、綱引きを行った結果、その場対応に陥ってしまった場合、欧州各国とアジア諸国、そして中東各国も、戦争の連鎖の前に慌てふためき、結果として、アジアと欧州がアメリカの戦力を奪い合うという、同盟内での内紛が勃発する危険性が現実のものに替わってしまいます。
そのためにはロシアによる勝利と、中東地域における全面戦争を何としても防がなくてはならないのですが、どちらのフロントもあまり有利な望ましい状況とは思えません。
ロシア・ウクライナ側のフロントにおいては、先述の通り、608億ドルの緊急支援予算が米議会を通過して1週間から2週間ぐらいの間に、武器弾薬の第1陣がウクライナに届けられるはずですが、そこにはゼレンスキー大統領が要求する重火器や長射程のミサイルなどが含まれるかどうかは未定で、5月から6月に予想されるロシアからの大規模攻勢に対抗するためのタイミングに間に合うかどうか微妙です。
またウクライナ軍の戦略では、5月から6月に起こると言われているロシアによる大規模攻撃を耐え、2025年春までには対ロ反転攻勢に出たいと考えているようですが、これらもすべて欧米からの支援頼みであり、以前、NATOが合意した武器生産に対する支援などがそのタイミングまでに間に合うかどうかも不透明だと言われているため、捕らぬ狸の皮算用にならないかとても心配です。
ロシア政府のペスコフ大統領報道官は「ウクライナはさらに荒廃し、キーウ政権の愚かな行動のために、さらに多くの犠牲がウクライナにもたらされることになる」と警告していますが、ロシア側では戦時経済体制がすでに安定的に稼働し、武器弾薬の生産体制と、戦争の枢軸国との戦時協力体制が確立していることから、すでに5月から6月の大規模攻撃に加え、数段階に分けてウクライナを徹底的に叩くための作戦と体制を整えているようだとの情報もあります。
一部で囁かれる戦術核の使用については、個人的には、いろいろな状況に照らし合わせて非常に非現実的であると考えていますが、実際にはすでに臨戦態勢には入っているようで、十分、核兵器による脅しは効いているように思います。
心配なのは、ロシア政府内・議会内の強硬派の勢力と発言力が増しており、2030年までのマンデートを獲得したプーチン大統領も、強硬派の意見を取り入れがちであると言われていることから、強硬派からの要求のガス抜きのための使用は否定できないのではないかと懸念しています。
「相手に止めを刺すのは自国」の信念が強いイスラエルとイラン
そのロシアは、アジアサイドの攪乱のために、北朝鮮に対して核兵器開発の指南をし、外交的なチャンネルもフルに活用して北朝鮮の時間稼ぎに手を貸していますし、中国とは(北朝鮮の核開発には難色を示しつつも黙認)互いの背中を守り合う態勢で、中国による南シナ海方面と太平洋方面での強硬な動きを後ろからサポートして、アジア太平洋(インド太平洋)地域における緊張の高まりを促進させる働きをしているようです。
そして中東地域においては、イランを先頭に立て、イスラエルとの緊張関係を煽りつつも、レッドラインを越えないように細心の注意を払ってイラン政府に忠告しつつ、中国は経済面を、ロシアは軍事面をサポートする形で強力な抵抗体制を支えています。
イスラエルとイランの緊張については、お互いにミサイルを報復攻撃の形式で打ち合ったことで、現時点では手打ちしていますが、イランには親イランの抵抗組織の集合体である抵抗の枢軸(Axis of Resistance)(シリア、レバノン、ヒズボラ、フーシ派など)を通じた間接的なイスラエルへの攻撃をいつでも加えられるという脅威をちらつかせることで、イスラエル軍のフォーカスを分散させ、イスラエルを支援するアメリカ軍と英国軍のフォーカスも分散させています。
イスラエルもイランも互いに“相手に止めを刺すのは自国でないといけない”という信念が強く、緊張が高まり沸点を超えると我慢(自制)の箍が外れる可能性があります――
●米誌のロシア人記者 極東で拘束 「ブチャ民間人殺害」記事SNS投稿で 4/27
アメリカの雑誌フォーブスのロシア人記者が、ロシア極東で拘束されました。
拘束されたのは極東ハバロフスクに住む、雑誌フォーブス・ロシア語版の記者、セルゲイ・ミンガゾフ氏です。
弁護士が26日、明らかにしたもので、ミンガゾフ氏はウクライナの首都キーウ近郊ブチャでの民間人殺害に関する他のメディアの記事を自らのSNSに投稿したことで、ロシア軍に関する虚偽情報を広めた疑いが持たれているということです。
ブチャでの民間人殺害をめぐっては、ウクライナがロシア軍による虐殺だと非難しているのに対し、ロシア側は関与を否定する主張を続けています。
●徴兵対象者の帰還に支援表明 ウクライナに近隣国 4/27
ロシアによる侵攻の長期化で兵員確保を急ぐウクライナに対し、近隣国のポーランドとリトアニアが両国に住むウクライナの徴兵対象年齢の男性帰還を支援する可能性を示した。ロイター通信によると今年1月時点で欧州連合(EU)加盟国には避難民らウクライナ人430万人が滞在し、うち86万人が成人男性。ポーランドには20万人のウクライナ男性がいるとの推計もある。
総動員令が出ているウクライナでは、18〜60歳の男性の出国が原則禁止されている。
ウクライナメディアなどによると、同国政府は最近、国外に住む徴兵対象年齢の男性への旅券発行など一部の領事サービスを停止した。
ポーランドのコシニャクカミシュ国防相は24日、地元メディアで「ウクライナ人が徴兵逃れで国外に出た人たちに不満を持つのは正当だ」と指摘。ウクライナからパスポート期限が切れた徴兵対象者の帰還を求められた場合、「あらゆる支援が可能だ」と述べた。
リトアニアのカシュウナス国防相も25日、ポーランドの対応を「正しい方法だ」と述べ、追従する考えを示した。
●2年前の露・ウクライナ和平合意案判明、独紙が報道 中立国化、一部領土譲渡など規定 4/27
ウクライナとロシアのメディアによると、ドイツ紙ウェルトは、ロシアによるウクライナ侵略の開始直後の2022年春に行われた両国の停戦交渉で作成された和平合意の草案を入手し、26日に内容を報じた。草案にはウクライナが「永世中立国」となる一方、ロシアは侵略後に占領した地域から撤兵することなどが定められていたという。
和平合意は最終的に、ウクライナ北部ブチャで露軍の残虐行為が発覚したことなどを受けてウクライナ側が交渉停止を表明し、成立しなかった。
ウェルトは、草案作成当時のウクライナが現在よりロシアに対して有利な立場にあったと指摘。結果的に和平合意が当時成立していれば、無数の人命が失われずに済んでいたはずだと評価した。
報道によると、ウクライナ側は草案で、永世中立国化の容認▽核兵器の保有と外国の軍隊の受け入れの否定▽外国との合同軍事演習の不実施−などを約束。ロシア側は、ウクライナへの攻撃の停止▽関連諸国によるウクライナの安全の保証▽東部ドンバス地域(ドネツク、ルガンスク両州)の一部と南部クリミア半島のロシアへの事実上の譲渡−などを盛り込んだ。
両国はまた、戦後のウクライナ軍の保有戦力についても協議。双方の主張に相違があったが、両国大統領が会談して折り合いをつけることが想定されていたという。
●米国務長官 習主席らと会談も“中国に追加制裁の用意がある” 4/27
アメリカのブリンケン国務長官は26日、訪問先の中国で習近平国家主席らと会談し、対話を継続し両国関係の安定化に努めることで一致しました。一方、ブリンケン長官はウクライナ情勢をめぐり、中国がロシアを支援しているとして追加で制裁を行う用意があるとも伝えていて、両国関係がどこまで安定化に向かうのかは不透明です。
中国を訪れたアメリカのブリンケン国務長官は26日、中国の王毅外相や習近平国家主席と相次いで会談し、対話を継続し、両国関係の安定化に努めることで一致しました。
両国は、利用が進むAI=人工知能をめぐる政府間対話を開催することで合意したことも明らかにし、双方が新たな分野で協力を模索する姿勢を強調しました。
一方、中国外務省によりますと、習主席は会談で「協力は双方向であるべきだ。また競争はともに進歩するためにあるべきものだ」と述べ、経済分野で中国に圧力をかけ続けるアメリカの姿勢をけん制しました。
また、台湾や南シナ海をめぐる情勢を念頭に、日本やフィリピンなどと連携を強めるアメリカ側を批判しました。
これに対し、ブリンケン長官は26日夜の記者会見で、南シナ海をめぐっては「フィリピンに対する防衛上の関与は揺るがない」と述べ、アメリカの立場を明確にしたほか台湾海峡の平和と安定の重要性を強調したとしています。
さらに、ブリンケン長官はウクライナ情勢をめぐり、中国が軍事転用可能な部品などをロシアに提供しているとして深い懸念を示し、中国が対応しなければ追加で制裁を行う用意があると伝えたと明らかにしました。
一連の会談では、双方の立場に隔たりがある分野をどう管理していくのか具体的な進展は見られず、両国関係がどこまで安定化に向かうのかは不透明です。
●モスクワの飛行場でヘリ破壊 ウクライナ国防省情報総局 キーウでは病院から患者が緊急避難 4/27
ウクライナ国防省は、ロシア軍の支援に使われていたヘリコプターをモスクワの飛行場で破壊したと発表しました。
ウクライナの国防省情報総局は、「26日の夜にモスクワにあるロシア国防省の飛行場で敵のヘリコプターが破壊された」として映像を公開しました。
ヘリコプターはウクライナ侵攻を続けるロシア軍の支援に使われていたとしています。
ウクライナ側は17日にも、ロシア中部サマラ州にある基地で武器や兵士の輸送に使われていたヘリコプターを破壊したとしていました。
一方、ウクライナの首都キーウ市の当局は26日、2つの病院から患者を緊急避難させていると明らかにしました。1つは小児病院で、「病院にウクライナ兵が潜んでいるためにロシア軍が攻撃するとの予告がある」とする動画がインターネット上で拡散しているためだとしています。
当局は兵士がいるとの主張は「完全なウソ」だと非難しています。 
●ロシア極東の裁判所 米経済誌の記者に自宅軟禁の措置命じる 4/27
ロシア極東の裁判所は、アメリカの経済誌のロシア語版の記者に対し、うその情報を広めたとして自宅軟禁の措置を命じました。プーチン政権が、ウクライナへの軍事侵攻が始まって以降、情報統制を一段と強めていることが改めて浮き彫りになった形です。
ロシア国営のタス通信は27日、極東の都市、ハバロフスクの裁判所がアメリカの経済誌フォーブス・ロシア語版の記者が、軍に関するうその情報を広めたとして、自宅軟禁の措置を命じたと伝えました。
記者は26日、身柄を拘束され、具体的な理由について、この記者の弁護士は、多くの市民が犠牲になった、ウクライナの首都キーウ近郊のブチャに関する他者の投稿を、みずからのSNSに再度投稿したことだとしています。
2年前のウクライナ侵攻開始以降、ロシアでは「ロシア軍の信頼を失墜させたり、軍の活動をめぐってうその情報を拡散したりすること」を刑罰の対象とする法律が成立しています。
プーチン政権が、情報統制を一段と強めていることが改めて浮き彫りになった形です。
一方、ウクライナでは、27日にかけてもロシア軍による激しい攻撃が続いていて、ウクライナのエネルギー省によりますと、東部ドニプロペトロウシク州などにあるエネルギー関連施設が破壊され、施設の職員がけがをしたということです。
ロシア軍は、ウクライナの発電所などのエネルギー関連施設への攻撃を強めていて、ウクライナのハルシチェンコ・エネルギー相は、今月8日、火力発電所のおよそ80%、水力発電所の50%以上が数週間の間に、集中的な攻撃を受けたと明らかにしています。
●トランプ再選でゼレンスキー大統領が迫られる「強制停戦」 4/27
ロシア侵攻でウクライナが劣勢に立たされる中、米国では総額608億ドル、日本円で9兆4000億ドルにのぼるウクライナへの追加支援を可能にする予算が成立した。バイデン大統領はただちに10億ドル分の緊急支援を行うと表明。対戦車ミサイル「ジャベリン」や地対空ミサイル「スティンガー」、防空弾や装甲車などがすぐ送られるという。
ゼレンスキー大統領はこの日をどんなに待っていたことだろうか。米国からの軍事支援が滞り、「米国からの支援がなくなるとウクライナは戦争に負ける」と何回も嘆いていた。ロシアも軍事予算の増額を図り、プーチン大統領が15万人の追加動員を可能にする大統領令に署名したことで、今後いっそう攻勢をエスカレートさせることは間違いないからだ。
ただ専門家の間では、ウクライナが米国から軍事支援を受けたとしても、それによってロシア軍をウクライナ領土から追いやるには至らないとの見方が大筋だ。今日でもロシアは兵士や軍備品を積極的にウクライナ領内に送り込んでいる。そのため米国からの支援のみで全領土を奪還することは難しく、いかにして攻勢を食い止め現状を維持できるかといった具合だ。
そして、今後懸念されるのがトランプ再選だ。ウクライナへの追加支援では608億ドルが割り当てられたわけだが、これを今後いつどう使うかは米国次第。バイデン政権が続けばさらに4年間は軍事支援を受けられるだろうが、トランプ再選となれば追加支援が滞る可能性がある。トランプ氏はウクライナ戦争を24時間以内に終わらせる、最優先でウクライナ支援を停止するなどと言及している。それだけにトランプ政権となればバイデン政権が費やした支援額以上のことはせず、お金を費やすより停戦を優先し、現状で妥協しろと強制的な停戦案をゼレンスキー大統領に持ち掛ける恐れがあろう。
ウクライナへの追加支援予算が成立したことは良いのだが、戦況の行方はやはり、秋の大統領選の行方が大きなカギを握るだろう。
●戦闘続くスーダン 武力衝突から1年 避難生活送る人は 4/27
国連によりますとスーダンでは4月26日現在少なくとも870万人が住む場所を追われて国内外での避難生活を余儀なくされています。
隣国のエジプトには50万人が身を寄せていますが、戦闘が続く中、スーダンへの帰国を諦める人がいる一方、危険を承知で帰国を決める人も出てきています。
エジプトに逃れたモダッセルさん “当面スーダンに戻らない”
首都カイロ近郊で避難生活を続けるモダッセル・フセインさん(28)は、去年12月、62歳の母親と24歳の妹を連れて首都ハルツーム近郊からエジプトに逃れてきました。
いまは、同じく戦闘を逃れて避難してきたスーダン人が開いた喫茶店で働いていて、わずかな給料を得て暮らしています。
状況が落ち着けばスーダンに戻りたいと考えていましたが、ハルツーム近郊の自宅は破壊され、家財道具もすべて持ち去られたということで帰る場所はありません。
モダッセルさんは現地では今も戦闘が続いているとして「教育も医療も何もない。スーダンには通りには死体が散乱している。もう何も残されていない」と話し、当面、スーダンに戻らないことを決めたといいます。
帰国決めたマリアムさん “安全ではなくても戻るしかない”
一方、危険を承知で帰国を決めたという人もいます。
マリアム・アワドさん(32)はハルツーム近郊で暮らしていましたが去年10月、戦闘が激化し、子どもたちの安全を確保できないとして5歳から10歳の3人の子どもを連れてエジプトに逃れました。
もともとエジプトで暮らしていた姉夫婦の狭いアパートの部屋を間借りし、6畳ほどの部屋に4人で暮らしています。スーダンでは小学校の教師として働きながら子どもを育てていましたが、エジプトでは仕事を見つけることもできず、生計は姉夫婦に頼るしかありません。
ただ、姉夫婦の収入もわずかで、支援を願い出ようとNGOなどに電話してもつながらず、支援も受けられないなか、暮らしは厳しさを増す一方です。
子どもたちを学校に通わせて教育も受けさせることもできず、ただ、耐えるだけの日々に、マリアムさんは、危険を承知でスーダンに戻る決意を強くしています。
マリアムさんは「安全ではなくてもスーダンに戻るしかありません。スーダンで戦争が起きていることを世界の人たちは忘れてしまったのだと感じています」と涙ながらに話していました。
スーダンからの留学生などが研究 鳥取大学乾燥地研究センター
鳥取市にある鳥取大学乾燥地研究センターではスーダンの研究機関などと共同で厳しい乾燥や高温に耐えられる小麦の新たな品種を開発するプロジェクトを5年前から続けていて、現在、スーダンからの留学生や研究者が8人がセンターを拠点に研究しています。
任期迫る研究員イザットさん“状況何としても改善してほしい”
おととしから客員教授として大学で研究をしているイザット・タヒルさんは武力衝突が起きたことを受けて去年5月、スーダンに住んでいた妻と大学生の息子と娘を鳥取に呼び寄せました。
スーダンの自宅近くでも激しい戦闘が起き情勢は悪化しているため帰国できる見通しはたっておらず、イザットさんは2人の子どもの将来に懸念を深めています。2人の子どもは現在、センターでの研究を手伝ったり日本語の勉強をしたりして過ごしています。
娘のアーヤさんはスーダンの大学で医学部に在籍していましたが日本で勉強を継続することは難しく滞在期間が1年近くになるなか不安な気持ちを抱えながら生活を続けています。
アーヤさんは「母国の情勢がここまで悪化するとは思わず日本に来るときに教材を持ってこなかった。周りにあったものが突然すべて消えてしまいとても悲しいです」と話しています。
イザットさんの鳥取大学での任期はことし9月末に迫っていて「次の半年間で状況が何としても改善してほしい。もしそれが実現しない場合何をすればいいのか分からなくなってしまう」と話しています。
博士課程アミールさん“現地の家族に何もしてあげられない”
おととしから鳥取大学の博士課程に所属するアミール・エマムさんは現在、鳥取市内で妻のラシータさんと暮らしています。
アミールさんの親族には戦闘に巻き込まれて亡くなった人もいるほか現地では食料品や日用品も不足していて家族や親族は厳しい生活を送っているということです。また現地の通信状況が悪いことから家族と連絡を取ることも難しい状況が続いています。
アミールさんは「武力衝突が始まったときは、すぐに収まると信じていましたが、いつ終わるか分からず心配が大きくなっています。現地の家族とはお金があるとき、身の安全を確保できるときにしか連絡を取れません。話をしても家族に何もしてあげられず悲しくなります」と話しています。
また去年10月には長女ラワンちゃんが産まれました。妻のラシータさんは衝突が収まればラワンちゃんとスーダンに戻る予定でしたが、そのめどは立っていません。
ラシータさんは「状況が良くなって娘の顔を家族に見せれることを願っています」と話していました。
スーダンにある研究機関の地域も戦闘が 共同プロジェクトが中断
武力衝突から1年がたつなか鳥取大学乾燥地研究センターがスーダンの研究機関などと共同で進めている暑さや乾燥に強い小麦の品種を開発するプロジェクトにも大きな影響が出ています。
このプロジェクトでは鳥取大学とスーダン中部のワドメダニにある国立の研究機関の施設で必要な研究が行われていました。しかし去年12月に、この研究機関がある地域にまで戦闘が広がり現在、施設は準軍事組織に占拠された状態が続いているということです。
このため研究も中断せざるを得なくなり、現地の研究者たちは別の地域に避難して、できるかぎりの研究や農民向けの研修を行うなどの活動を継続しています。
鳥取大学でもイザット客員教授を始めスーダンの研究者や留学生はプロジェクトのリーダーを務める鳥取大学の辻本壽名誉教授らと研究を続けています。また週に1回、避難生活を続けているスーダンの研究者たちとオンラインミーティングを行って現地の情勢について情報を共有するとともに今後の研究方針などについて協議を続けています。
イザット客員教授は「日本の人たちに支援してもらっていることが私たちが研究を続けるための支えとなっています。人々に食糧を提供して助けることができるかぎりこの研究を続けていきます」と研究を継続していく決意を述べました。
また、辻本名誉教授は「戦争は起こっても食糧は一番重要なので、私たちの食糧生産のプロジェクトを止めるわけにはいきません」と述べた上で、「日本の大学とスーダン人との間にある強い信頼関係を大切にするべきだと思っています。治安がよくなったら現地の農民と一緒にスーダンの復興に貢献したい」と話しています。

 

●プーチン氏、ナワリヌイ氏の殺害命じず 米紙報道 4/28
ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が2月に北極圏の刑務所で死亡したことについて、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は27日、ウラジーミル・プーチン大統領が最終的な責任を負うが、その時期に殺害を命じていなかった可能性が高いと米情報機関が判断したと報じた。
同紙によると、米情報機関は事実の分析や機密情報に基づき、こうした見解に至った。その事実の一つとして、ナワリヌイ氏が死亡したタイミングが挙げられている。ナワリヌイ氏が死亡したのは2月半ばで、約1か月後のプーチン氏の再選に影を落とした。
同紙が消息筋の話として伝えたところによると、ナワリヌイ氏の死に対するプーチン氏の責任を疑うものではないが、「その時期」には殺害を命じていなかった可能性が高いと中央情報局(CIA)などの米情報機関は分析している。
この見解を伝えられた欧州当局者の一部からは、現在のロシアが厳しく統制されていることから、プーチン氏に知られずにナワリヌイ氏が標的にされた可能性を疑問視する声も上がっている。
●露、ロイター通信プロデューサーを起訴・勾留 反体制派を支援した罪 最長6年禁錮刑も 4/28
ロシアで2月に急死した反体制派指導者ナワリヌイ氏の団体の活動を違法に支援したとして、露当局が英ロイター通信のプロデューサー、コンスタンティン・ガボフ氏を過激派組織への参加罪で拘束、起訴していたことが今月27日、分かった。首都モスクワの裁判所が同日、ガボフ氏に対する2カ月間の勾留を決定し、発表した。裁判所はガボフ氏の国籍を明らかにしていない。
裁判所によると、ガボフ氏は、ナワリヌイ氏が創設した団体「汚職との戦い基金」が運営するユーチューブチャンネルに写真や動画を提供した。ロシアは同団体を一切の活動が違法となる「過激派組織」に指定している。ガボフ氏は有罪となれば最長6年の禁錮刑が科される可能性がある。
ロシアはウクライナ全面侵攻後、政権や軍への批判を事実上禁止。違反した露報道関係者ら少なくとも数十人が訴追された。ガボフ氏の勾留は、ロシアが外国報道機関に対しても言論圧力を強めている実情を示した。
実際、今月26日には極東ハバロフスクで、米経済誌フォーブス・ロシア語版の男性記者が軍に関する「虚偽情報」を拡散した容疑で拘束され、27日に起訴された。3月にはスペイン紙ムンドのモスクワ特派員で、反戦運動を取材していた男性記者がビザ(査証)の更新を認められず、事実上の国外退去処分とされた。
●ウクライナ軍、アウジーウカ西方面で危機的状況に 撤退に失敗すれば総崩れの恐れ 4/28
ウクライナ東部ドネツク州アウジーウカ市の西方でウクライナ側の防御線を突破してから6日後、ロシア軍部隊は、前線のウクライナ側地域にナイフを突き刺したような長さ8kmほどの突出部を徐々に広げている。ナイフの先はアウジーウカ市北西のオチェレティネ村に到達している。
この方面に配置されているウクライナ軍部隊にとって、状況は絶望的だ。ロシア側がオチェレティネ方面につくり出した攻勢軸の周辺で、ウクライナ側が複数の村を失うのは避けられそうにない。
だが、本当に危険なのは、ウクライナ軍の「タウリヤ」作戦戦略部隊集団(アウジーウカ市の西方面の部隊を統括する司令部)が「損切り」をする、つまり西へ数km後退し、オチェレティネ村の北から南西に走る新たな防御線を固める以外に手がなくなることだ。
撤退を強いられれば、ウクライナ側は数十〜数百平方kmの領土をロシア側に明け渡し、住民数百人が避難するか、ロシア軍による過酷な占領下での生活を送ることを余儀なくされるだろう。
だが、それにとどまらないかもしれない。撤退は、うまく進めなければ、ロシア側に局所的な攻撃を強化し、第2、第3、第4の突破口を開く機会を与えかねない。その結果、この方面のウクライナ軍は連鎖反応的に総崩れになる恐れもある。
撤退は、それが最良の選択肢である場合ですら、きわめて危険だ。規律ある軍隊はだからこそ、後退作戦を、攻撃作戦と同じくらい、あるいはそれ以上に入念に立案する。「どんな指揮官、どんな軍隊にとっても、撤退は最も難しい作戦である」と歴史家のアンドルー・O・G・ヤングは『Armies in Retreat: Chaos, Cohesion and Consequences(仮訳:軍隊が撤退するとき──混沌、結束、結果)』という本に書いている。
ロシア軍が4月第3週の週末、アウジーウカ西方のウクライナ側の防御線をどのように突破したのかについては、ウクライナの政府や軍の首脳部でも、ロシアがウクライナで拡大して2年2カ月あまりたつ戦争のおよそ1000kmに及ぶ戦線の各方面でも、激しい議論を呼んでいる。
ウクライナ側は兵力が3分の1以下で爆撃にもさらされている
観察者のなかには、ウクライナ軍の第115独立機械化旅団に責任があるとする向きもある。第115旅団は別の旅団との入れ替えでオチェレティネ村の陣地に配置されたが、すぐさまロシア軍の第30独立自動車化狙撃旅団に圧倒された。
ただ、その第115旅団については、装備が不十分で、ウクライナ軍のほかの部隊と同様、弾薬が枯渇しているという指摘もある。弾薬の枯渇は、米議会のロシアに好都合な共和党議員らが、ウクライナへの新たな支援を半年にわたり滞らせていた結果だ。
いずれにせよ留意しておくべきなのは、ウクライナ軍のどの旅団もロシア軍の容赦のない爆撃にさらされており、防御陣地の保持に苦労しているという点だ。ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)は25日の作戦状況評価で、ロシア側は「航空および火砲の面で優位に立っており、タウリヤOSG(作戦戦略部隊集団)の陣地をほぼ継続して攻撃している」と報告している。
戦闘が激しさを増すにつれて、火力の不均衡は決定的なものになる可能性がある。ロシア軍の指揮官たちは好機と判断し、さらには自分たちが有利だと確信しているとみられ、第15、第74両独立親衛自動車化狙撃旅団のほか、第90親衛戦車師団の一部、特殊部隊をオチェレティネ村方面の突出部に押し込んだ。
これに対して、ウクライナ側は少なくとも7個旅団と1個独立大隊が反撃している。具体的には第23、第25、第47、第100、第115各独立機械化旅団、第25独立空挺旅団、第3独立強襲旅団、第425独立強襲大隊である。ただ、各旅団が一度に投入するのは1個大隊だけなのが普通だ。
ロシア側が突出部の中や周辺に展開させた兵力は1万人あまりにのぼるとみられる。対するウクライナ側は、CDSの推定が正しければ総勢わずか3000人程度だ。
もっとも、攻撃よりも防御のほうが容易だというのは、攻撃側が火力で優位に立つ場合も当てはまる。だから、ロシア側がこの戦いに勝利し、ウクライナ側を撤退に追い込めるという保証はない。
ロシア側にも「アキレス腱」があると指摘されている
CDSは、ロシア側にとって大きな危険をもたらしている点をひとつ強調している。「オチェレティネを突破した敵(ロシア)の第30自動車化狙撃旅団の先陣部隊への補給は、この(補給)ルートに対する火力統制を完全に保持しているウクライナの防衛部隊によって実質的に阻まれている」
ウクライナ側に8kmほど侵入し、この方面で最も西側に出てきたロシア軍部隊は、基本的に孤立しており、主要な補給線から遠く離れている。つまり、脆弱な状態にある。ウクライナ側は、ロシア側が増援をさらに送り込んで突出部を広げ、兵站を固める前にその補給を断てば、この戦いにまだ勝てるかもしれない。
とはいえ、これはあくまで、オチェレティネ村方面で兵力、火力ともに劣るウクライナ側にとって楽観的な結果ということになる。現実的な結果は、戦いながら西への撤退を図るというものだろう。
だが、ウクライナ側は撤退を必死に避けようとしている。それはあまりに危険だからだ。
●「ロシアに蹂躙された失地を回復する」「ネオナチにウクライナが支配されている」ウクライナvsロシア「SNSいいね戦争」にみる両国のSNS運用の決定的な違い 4/28
ウクライナとロシアは情報戦をどう戦っているか
ロシア・ウクライナ戦争開戦から2年――軍隊以外に、民間軍事会社、戦争PR会社、フェイクニュース製造工場、ハッカーなどが戦場の内外で熾烈な戦いを行なっている。
防衛省情報本部分析部主任分析官を長く務めた情報分析のプロが、目に見えない情報をめぐる戦いに迫った書籍『ウクライナとロシアは情報戦をどう戦っているか』(並木書房)より進化するSNS上の「いいね戦争」」について一部抜粋してお届けする。
誰もが情報戦争の戦闘員…さらに進化するSNS上の「いいね戦争」
2022年11月10日午前の記者会見で松野博一官房長官(当時)は、ウクライナで日本人義勇兵が死亡したとの情報がSNSなどで拡散されていることについて「情報があることは承知している。現在、在ウクライナ日本大使館が事実関係の確認を行なっている」と述べました。
翌11日午前の記者会見では、戦闘に参加していた20代の邦人男性が現地時間9日に死亡したと語りました。ロシアのウクライナ侵攻による日本人の死者は初めてとみられます。このように、SNSの情報は既存の報道よりも早く伝わり拡散することが多いのです。SNSは、報道関係者が入り込めないような危険な地域も含め、世界各地に特派員を派遣しているようなものです。
しかし、情報を安易に発信、拡散できるため、正しい情報だけでなく虚偽の情報も拡散しています。ここでは、SNSを活用した戦い「いいね戦争」と「ナラティブの戦い(バトル・オブ・ナラティブ)」について紹介したいと思います。
「いいね戦争」とは、軍事研究とSNS研究の第一線で活躍するP・W・シンガーとエマーソン・T・ブルッキングが、多数の事例をもとに新たな戦争の実態を解明した本のタイトルにもなっています。
米国大統領選挙、イスラム国の動向、ウクライナ紛争(2014年)、インドの大規模テロ、メキシコの麻薬戦争など国際政治から犯罪組織の抗争まで、SNSは政治や戦争のあり方を世界中で根底から変えてしまいました。
インターネットは新たな戦場と化し、そこで拡散する情報は敵対者を攻撃する重要な手段となりました。誰もが情報戦争の戦闘員になり得ます。そして、その「いいね!」や「シェア」が破壊や殺戮を引き起こすのです。
いまやこの戦場で人々の注目を集めるべく、政治家やセレブ、アーティスト、兵士、テロリストなど何億人もが熾烈な情報戦争を展開する事態になっています。ロシア・ウクライナ戦争で「いいね戦争」は、さらに進化しています。
世論を味方につける「ナラティブの戦い」
SNSの発信においては「ナラティブの戦い」も併せて行なわれています。ナラティブとは、「物語」と訳されることが多いですが、安全保障の枠組みでは、「人々に強い感情・共感を生み出す、真偽や価値判断が織り交ざった伝播性の強い通俗的な物語」のことです。その特徴は、「シンプルさ」「共鳴」「目新しさ」です。そのため、状況や相手に応じて柔軟に変化するのも特徴です。
ロシア・ウクライナ戦争では、ロシア側は「ネオナチにウクライナが支配されている」「ロシア人が迫害されている」そのため「抑圧されるロシア系住民を救出するための特別軍事作戦」を実施すると世界に発信しました。
これらのナラティブはロシア国内やウクライナのドンバス地域の住民など東部の一部の人には受け入れられたものの、世界的には受け入れられませんでした。
その後、ロシア占領地域において従来になかった工作活動らしきもの(弾薬庫の爆破、クリミア橋の破壊など)が起こってくると非難の矛先を「ネオナチ」から「テロリスト」へとあっさりと変更しています。より受け入れられやすい物語であれば、過去との整合性など関係ない柔軟なというよりはむしろ無節操な変化が見て取れます。
一方、ウクライナ側は「自国をロシアに蹂躙され失地を回復する」ことをスローガンとし、ゼレンスキー大統領は各国の議会などにおいて、それぞれの国に受け入れられやすい国民感情を揺さぶるような表現を使って、そのナラティブを世界に向けて訴え始めました。
たとえば米国では「パールハーバー」、わが国に対しては「原発事故」「復興」などをキーワードとして、オンラインで訴えかけました。誰もが知る歴史や社会集団の記憶に根差すナラティブは特に拡散しやすい可能性が高いのです。その結果、西側各国からは、ウクライナへの軍事的、経済的支援がすぐに集まりました。
ウクライナ側が語るナラティブも、必ずしも正しいわけではありません。たとえば2月24日のズミイヌイ島(ウクライナの南西沖にある、面積0・17平方キロメートルの小さな島)での戦闘では、ウクライナ政府筋は13人の国境警備兵がロシア軍への降伏を拒否し玉砕したと発表し、その悲惨さとロシアの残虐性をアピールしました。しかし、通信が途絶し、玉砕の前に警備隊が自ら投降して捕虜になったというのが事実のようです。
ウクライナとロシアのSNS運用の違い
SNSによるウクライナ側の情報の発信は、ナラティブを世界に伝え、国際世論を味方にするうえでも大きな役割を果たしています。
ロシアのウクライナ侵攻直後、ゼレンスキー大統領が自国を捨てて逃げたとするロシア側の発表に対して、ゼレンスキー大統領は、SNS上ですぐさま反応し、「私たちはここにいる」と主要閣僚とともに、キーウから動画を発信しました。
このことは、ウクライナ国民の愛国心を高揚させ、国際社会によるウクライナへの支援を取りつけました。ウクライナ人から発信されている写真や動画情報は極めて多く、それらは地域におけるロシア軍の残虐な行為を世界に知らしめるとともに、地域住民がロシア軍の動向に関する情報を軍に提供する役割も果たしています。
これまでも戦場の様子などがSNS上に流れることはありましたが、このような意図的な行動はありませんでした。これは、戦場がウクライナ国内であり、一般市民がスマートフォンなどで撮影した画像をSNSに気軽に投稿することができる環境が整っていることも理由の一つでしょう。
ただし、このような市民による行為は、ロシア側にとっては、いわばスパイ行為であり、このことが、ロシア側が地域住民を逮捕して拷問などを行なっている行為につながっている可能性もあります。
SNS投稿を全面禁止したロシア軍
ウクライナ側がSNSを多用する一方で、侵攻したロシア軍の兵士からと思われるSNSへの投稿はあまり見られません。兵士の投稿を厳しく規制しているからです。ロシア軍で、このような規制が徹底されたのは、2014年のロシアによるクリミア併合の教訓によるものです。
2014年当時は、クリミアでは「リトル・グリーンマン」と称される徽章をつけていない覆面の武装集団が主要施設を次々と占拠していきました。ロシアはハイブリッド戦の一環として、親ロシア派の集団がウクライナ政府に反旗を翻してそのような行動をとっていることにしたかったのです。
しかし、これらの兵士の中には、スマホで自撮りしてSNSに投稿する者がいました。そのため、それらの写真からリトル・グリーンマンの中にロシア軍の現役の兵士が含まれることが次第に判明し、ロシアの工作活動の実態が明らかになりました。その教訓から、ロシア軍ではスマホの使用に制限が設けられました。
2019年2月には、その制限がさらに厳しくなり、兵士の軍務中におけるスマートフォンやタブレットの使用禁止、軍に関する話題をSNSへ投稿したり軍の話題をジャーナリストに話したりすることなどが禁止される法律が策定されました。さらにこのような情報統制は一般人にも拡大しています。このようにウクライナとは対照的にロシアはSNSを活用するよりも情報を統制する方法をとっています。
国民には情報を統制する一方で、プーチン大統領は自らメディアに向け発信したり、『RT』や『スプートニク』といったメディアの活用、IRA(インターネット・リサーチ・エージェンシー)といった民間会社による偽情報の作成により、ナラティブを発信・拡散しています。
悪意のないフェイク動画の拡散
SNSの中でも特に世界に10億人超のユーザーがいるティックトック(TikTok)はニセの動画拡散にも大きな役割を果たしています。
たとえばロシア・ウクライナ戦争に関連してロシア国旗とともに投稿された軍用機の離陸シーンのティックトック動画は300万回近い閲覧数ですが、その軍用機自体がそもそもロシアのものではありません。その動画は2017年頃にユーチューブ(YouTube)に投稿された米海軍の展示飛行隊ブルーエンジェルスのビデオに銃声の音が重ねられたものだと判明しています。
そして、これらの動画を広めているのが一般人であり、多くの人はそれらを拡散することに悪意はないとみられます。
ネット上で動画の真偽をわざわざ見極めたうえで拡散する人は少ないでしょう。むしろ一般報道されない画像であればあるほど、むしろ確認せずにすぐに反応してリツーイトするので拡散が多くなるのです。
米ワシントン大学の研究者レイチェル・モランは、ウクライナにおける拡散行為について、ウクライナにおける激しい戦況を前に人々はもどかしさを募らせており、無力感をやわらげたい心理行為が拡散行為に拍車をかけているのだと分析しています。
ウクライナでの爆撃の様子とされた動画は600万回近い閲覧数を記録しましたが、実際は国外で撮られた映像に2020年にレバノンで起きた爆発事故の音声を重ねたものだったとされます。
わが国においても、悪意のない、いやむしろ善意の情報の拡散の例が見受けられます。たとえばコロナ禍において、トイレットペーパーが不足するということがありました。東京大学の鳥海不二夫教授の調査によれば「トイレットペーパーが不足するというのはデマだから騙されないで」というむしろ善意の情報の拡散のほうが急速に広がり、そのためトイレットペーパーを買いだめする人が多くなったとしています。
普通に考えれば、「それはデマだ」という善意の情報がより多く拡散したことにより、トイレットペーパーが不足するとはあまり思わないものです。しかし騙される人が多くいて、もしかしたら不足するかもしれないので「念のために」買っておこうという心理がトイレットペーパーの買い占めを招いたと同教授は分析しています。
●ウクライナで「ドローン同士」の戦闘が発生 ロシア軍の陸上ドローンが撃破される 凄まじい爆発も 4/28
ウクライナ国防省は2024年4月、1人称視点での操作が可能な「FPVドローン」が、ロシア軍の陸上ドローンを撃破する映像を公開しました。
映像では、爆弾を抱えたFPVドローンが、ロシア軍の陸上ドローンに突入し、大きな爆発が起こっています。ロシア軍の陸上ドローンは、地雷のようなものを搭載していることが映像から確認でき、地雷を散布するドローンだった可能性があります。
FPVドローンは、小型の陸上ドローンに正確に突入しており、ウクライナ軍のドローンオペレーターの高い技量が伺えます。
ウクライナの戦場では、双方がドローンを大量に投入。車両への攻撃や、偵察など幅広い用途で使用されています。ドローン単体の攻撃力は比較的小さいため、砲兵と連携して砲撃を誘導する役割で最も威力を発揮します。
陸上ドローンは、地雷の散布のほか、敵陣地の破壊などに投入されている模様。戦場でドローンはますます必要不可欠になっているようです。
●ウクライナのエネルギー関連施設に大規模ミサイル攻撃 4つの発電所に被害、一方ロシアでは製油所などにドローン攻撃、インフラ施設への攻撃の応酬激化 4/28
ウクライナのエネルギー関連施設にロシアのミサイルなどによる大規模な攻撃があり、4つの発電所が被害を受けました。一方、ウクライナもロシア南部の製油所などをドローンで攻撃していて、双方によるインフラ施設への攻撃の応酬が激化しています。
ウクライナのエネルギー省などによりますと、26日夜から27日未明にかけて、中部ドニプロペトロウシク州や西部リビウ州などのエネルギー関連施設に攻撃がありました。
ウクライナの電力会社によりますと、4つの火力発電所が深刻な被害を受け、発電所の作業員1人がケガをしたということです。
ゼレンスキー大統領は27日、ロシアが様々な種類のミサイルで攻撃を行った、として非難。各国に対し、地対空ミサイルシステム「パトリオット」が「最低でも7基必要だ」と改めて訴えました。
一方、ロシア国防省は、26日夜、ウクライナから発射されたドローンを南部のクラスノダール地方で66機撃墜したと発表しました。また、ロシアが2014年に一方的に併合したクリミア半島でも2機のドローンを撃墜したとしています。
ロシア国営のタス通信などによりますと、クラスノダール地方では27日未明に製油所がウクライナのドローン攻撃を受け、火災が発生。部分的に操業が停止されたということです。
ロイター通信は、ウクライナ当局者の話として、ウクライナ保安局がロシアのクラスノダール地方の2つの製油所と、軍用飛行場にドローン攻撃を行ったと報じています。
●ロシア軍 ウクライナ軍 双方がエネルギー関連施設を攻撃 4/28
ウクライナのエネルギー関連施設への攻撃を激化させているロシア軍は、27日にかけてウクライナの発電所に被害を与える一方、ウクライナ軍はロシア国内の製油所を攻撃しました。
ウクライナのエネルギー省などによりますとロシア軍は27日にかけてウクライナ東部のドニプロペトロウシク州などを攻撃し、4つの発電所が深刻な被害を受けたということです。
一方、ロシアの通信社によりますとロシア南部のクラスノダール地方の製油所が27日にかけてウクライナ軍の無人機による攻撃を受け、一部で操業ができなくなったということです。
ウクライナメディアは情報筋の話としてウクライナの保安局が無人機攻撃を行ったと伝えています。
ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、ロシアの独立系メディア「ビョルストカ」は25日、ウクライナからの帰還兵による凶悪犯罪が相次いでいると伝えました。
それによりますと、報道や裁判記録といった公開情報をもとに独自に集計した結果、過去2年間に帰還兵が起こした殺人事件は55件で、76人が殺害されたとしています。
被害者のうち44人は、従軍を条件に恩赦を受けた元受刑者の帰還兵による犯行の犠牲になったということです。
ロシアでは、民間軍事会社「ワグネル」が、受刑者に対し「半年間戦えば恩赦を受けられる」などと言って兵士になるよう勧誘していたとされています。
「ビョルストカ」は、実際に起きている事件の数は、さらに多いとみられるとして、元受刑者の帰還兵が再び犯罪を犯している実態が明らかになったと伝えています。
●米中の会談 危機への責任を果たせ 4/28
二国間の対立を制御し、国際秩序の安定に資する協調を広げる。米中外相が会談で言及した両国の重い責任を履行できるかが今後、問われる。
ブリンケン米国務長官が訪中して王毅(ワンイー)外相と会談、習近平(シーチンピン)国家主席とも会った。昨年11月の首脳会談以降、両国が要人クラスの対話を重ねてきたことは歓迎したい。
11月に大統領・議会選を控える米国では、与野党が対中強硬姿勢を競い合う。内向きな政争で外交論議が過熱しがちな時こそ、両国間の冷静な対話を保つことが重要だ。
中国は、景気回復の足取りがおぼつかない状況の下、米国の企業家らを盛んに招いている。「封じ込め」を少しでも緩めたいところだろう。
米中の覇権争いは避けがたいとしても、国際情勢の安定化を先導することが、両国が果たすべき務めであると心得るべきだ。
米側は今回の会談で、ウクライナ侵略を続けるロシアへの中国の半導体輸出などに強い懸念を示した。中国企業への新たな制裁の可能性も示唆したようだ。
確かに中国の対ロ貿易は大きく伸びており、侵略を間接的に後押ししている。主権尊重や領土の保全など国連憲章を守るというのであれば、中国はロシアへの支援を停止すべきだ。
ただ、米側もむやみに通商を外交のテコに用いてはなるまい。米政府は今月、中国からの鉄鋼・アルミ製品への一部関税を3倍にする方針を示したが、貿易の国際ルールをゆがめる懸念が拭えない。
東アジア地域の情勢も憂慮すべき状態が続いている。
最近緊張が高まるのは南シナ海だ。岩礁の領有権を争う中国とフィリピンの対立が激化している。日米がフィリピンを交えた首脳会談で連携した動きに中国側は強く反発。会談でも「『小グループ』をつくるべきではない」(習氏)と批判した。
だが、そもそも中国が国際法を無視して南シナ海域の岩礁を軍事拠点化したことが問題だ。台湾に対しても、来月の新政権発足を前に、中国は軍用機を接近飛行させるなど圧迫を強めている。
中国は自らの強引な行動こそがフィリピンや台湾を米国頼みに追い込んでいると悟るべきだ。米国も力による対抗一辺倒ではなく、堅実な対中対話を続けてほしい。
中国はロシアに、米国はイスラエルに影響力をもつ。戦火が続くウクライナや中東の問題に限らず、紛争・戦乱の拡大と世界経済の停滞を防ぐための協働の道を両国は探らなくてはならない。
●ロシアに連れ去られた子供たち 4/28
軍事侵攻から2年を迎えるウクライナで大きな社会問題になっているのが、戦時下における子供たちの心の問題だ。なかでも、占領地からロシア本国に連れ去られた子供たちの現状は分からない部分が多く極めて深刻だ。
こうした問題に果敢に取り組んできたNGOがある。2014年に設立された「セーブ・ウクライナ(SAVE UKRAINE)」だ。キーウに到着して3日目の2月15日、市内にあるこの団体の事務所を訪ねた。風邪で体調を崩しているという代表のミコラ・クレバに代わって、法務主任のミロスラバ・ハルチェンコが取材に応じてくれた。
団体の活動内容は多岐にわたる。戦闘地域からの住民の保護、安全地域でのシェルター収容、食料支援やカウンセリングなどだ。その中でも特に力を入れているのが、占領地で暮らす子供たちを保護し、ロシアに連れ去られた子供たちを奪還する活動だ。
「占領地に暮らす子供たちはロシアへの忠誠を誓わされ、ウクライナ語を話すと殴られることもあります。安全な場所で豊かに感性を育んでいくべき多感な時期に、彼らは普通の子供の生活を送れないでいるのです。」
ミロスラバは時おり涙を流しながらインタビューに答えてくれた。子供たちの状況に思いをはせていたのかもしれない。
事務所の壁には占領地で保護した子供たちの描いた絵が飾られていた。意外に思ったことがあった。私自身、紛争地で子供たちが描いた絵を世界中で見てきた。それらは戦車や兵士、死体などが描かれているものが多かった。人権団体やNGOが子供の心の傷を強調し募金を集めるためにこうした絵をあえてメディアに見せようとするケースも少なくない。ところが、この日見た絵のほとんどは花や動物、家族など希望を感じさせるものだった。この団体では、子供たちのケアがうまくいっていることを示しているのかもしれない。
別れ際、ミロスラバに「ロシアに連れ去られその後奪還された子供に会えないか」と聞いてみた。戦争が始まってから、ロシア軍占領地域から本国に連れ去られた子供はウクライナ政府の発表では1万9千人以上に上るという(2024年2月現在)。団体では親たちと協力しながらこれまでに276人の子供たちをウクライナに連れ戻してきた。こうした子供たちに会ってじかに話を聞いてみたい。そういう思いだった。
彼女は「ちょっと待っていて」と別室に消え、しばらくすると戻ってきて住所を書いた1枚のメモをくれた。所在地は公表できないが、団体が運営する子供たちのリハビリ施設だという。
翌日、キーウ郊外にある施設を訪れた。「希望と癒しの家」と名付けられたこの2階建てのアパートのような建物には、占領地から保護された子供たちと、ロシアから奪還された子供たち50人ほどが暮らしているという。概観の撮影は安全上の理由で控えるよう言われた。それは納得できる要請だった。
中に入ると、廊下に子供たちが大勢集まっていた。聞けば、これから近くの運動場に乗馬を体験しに行くのだという。子供たちはみな明るく笑顔で走り回っていて元気そうだ。
子供たちが出ていった後、施設のスタッフに案内され2階の個室を訪ねた。ドアを開けるとポリーナと名乗る中年の女性が出迎えてくれた。6畳ほどのワンルームにキッチンとベッドとソファーが置かれている。ベッドの上に、男の子が寝転がってスマートフォンのゲームで遊んでいる。男の子はボリーナの孫で、名前はニキータ。10歳になるという。ニキータはウクライナ南部のヘルソンで暮らしていたが、母親がエジプトに出稼ぎ中にロシア軍に占領され、父親と引き離されクリミア半島にあるロシアが運営する施設に送られたという。
「『ロシアは子供たちを盗んでいる』というSNSの投稿で孫の写真を見つけてショックでした。その後ロシア本国のクラスノダールの施設に移送されたことがわかりました。」
ポリーナは孫をなんとか取り戻そうとSAVE UKRAINEに連絡し、出生届やDNA鑑定など様々な書類を提出してようやく8か月後にニキータを帰還させることができたという。この施設に来てまだ5日目だという。
ニキータに話しかけてみる。
Q「ロシアでは何をしていたの?」
A「何もしてないよ」
Q「ロシアは楽しかった?」
A(首を横に振る)
ポリーナによれば、会わなかった8か月でニキータの性格はすっかり変わってしまったという。
「彼は神経質で常に苛立っています。いやなことはやろうとしません。以前はそうではありませんでした。帰ってきた直後からずっとこんな感じで戸惑っています。」
セーブ・ウクライナではこれからゆっくりとニキータにカウンセリングを行い、彼がまた元の明るい少年に戻れるようサポートしていく計画だという。
乗馬に行っていた子供たちが戻ってきたというので、1階にある娯楽室を訪ねた。女の子たちが粘土で料理を作るままごとをして遊んでいた。男の子たちはゲームに夢中だ。僕が日本人だとわかると、女の子たちは「SUSHI」を握ってご馳走してくれた。
この部屋にいる子供たちの多くはロシア軍占領地から保護され、ロシア本国に連れ去られてはいない。そこに、先ほどのニキータがドアを開けて入ってきた。祖母のポーリンからは、彼はほとんど部屋に閉じこもっていて他の子共たちと遊ぶことはないと聞いていたので、驚きながらも注意深く見守った。
ニキータは部屋には入ったものの、持ってきた自分のぬいぐるみに話しかけてひとりで遊んでいて誰とも交わろうとはしない。他の子供たちもそんなニキータに話しかけることを躊躇しているようだ。10分ほど経っただろうか。ニキータは突然立ち上がり、誰にも挨拶もせずにドアを開けて走って出て行ってしまった。
それは彼の心の傷の深さを現した行動と私には思えた。「とても切ない気分」としか言いようのない思いで胸を締め付けられた。
長引く戦争の影で、今日も子供たちが心に傷を負っている。このような事態が続けば、戦争が終わった後にも国の将来に暗い影を投げかけるだろう。戦争という暴力のいちばんの被害者は子供たちだ。こうした子供たちのためにも、一刻も早い戦争の終結が必要だと強く感じた。
ここで原稿を終えようとしたが、その後の4月中旬に、帰国した私に通訳のセルヘイからメッセージが届いた。寝具やおもちゃなどの支援物資を持って、再びニキータの元を訪れたのだという。2ヶ月ぶりに会うニキータは以前に比べかなり明るく積極的になり、笑顔も見せるようになっていたそうだ。きっとポリーナやNPOのスタッフが親身になって彼と向き合い、少しずつ心を解きほぐしていった結果なのだろう。嬉しい報告に僕の心の重荷もひとつ解けた思いがした。ニキータの将来が明るいものとなることを心より祈りたい。
●ウクライナ軍総司令官「速やかに武器供給を」 支援国との会合で訴え 4/28
ロシア軍と戦うウクライナ軍のシルスキー総司令官は27日、ドイツ西部のラムシュタイン米空軍基地で開かれたウクライナ防衛支援の関係国会合に参加し、前線の戦況は困難で「作戦は複雑さを増している」と訴えた。ミサイルや弾薬の供給が急を要するとして速やかな支援を求めた。
ゼレンスキー大統領は動画声明で、地対空ミサイルシステム「パトリオット」が「最低でも7基は必要だ」と改めて主張した。
両州や西部イワノフランコフスク州の発電所がロシアの空爆で損傷。ウクライナもロシア南部クラスノダール地方の製油所を無人機で攻撃した。双方のインフラ施設への応酬が激化している。 

 

●ロシア人記者ら2人拘束、「ナワリヌイ氏側の動画チャンネルに協力」 4/29
AP通信などは、2月に北極圏の刑務所で収監中に亡くなったロシアの反政権派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の団体が運営していたユーチューブチャンネル向けにビデオ素材などを準備したとして、ロシア人ジャーナリストら2人が27日までにロシア当局によって拘束された、と伝えた。
ナワリヌイ氏の団体はロシアで「過激派組織」とされており、2人には組織への参加の疑いがかけられているという。
AP通信によると、拘束されたのは、コンスタンチン・ガボフ氏と、セルゲイ・カレリン氏。ガボフ氏はロシアのテレビ局のほか、ロイター通信などで勤務した経験があるという。カレリン氏はAP通信などで勤務した経験があり、2022年2月まではドイツの国際公共放送ドイチェ・ウェレでカメラマンとして働いていたという。AP通信によると、2人は容疑を否定している。同通信はカレリン氏の拘束について「非常に憂慮している」との声明を出した。
ロシアではウクライナへの全面侵攻をめぐって反政権派の声を抑えこむため、ここ数カ月、独立系メディアなどへの圧力が強まっているとされる。
外国人ジャーナリストへの監視も厳しくなり、23年3月には、米紙ウォールストリート・ジャーナルの記者もスパイ容疑で拘束されている。
●ウクライナ総司令官、東部前線「状況悪化」 ロ軍攻勢で後退 4/29
ウクライナ軍のシルスキー総司令官は28日、東部戦線で部隊が3つの村から新たな陣地に後退したと明らかにした。
通信アプリのテレグラムで「前線の状況は悪化している」と述べ、2月にロシア軍が制圧したアブデーフカの北西およびマリンカの西側が「最も困難」な状況だとした。
ゼレンスキー大統領は28日に米民主党のジェフリーズ下院院内総務と会談し、防空システム「パトリオット」が早急に必要だと強調した。
シルスキー氏によると、部隊はアブデーフカの北の2つの村と、マリンカに近い村に新たな陣地を構えた。これらの地域では、ロシア軍が制圧には至っていないものの「戦術的に一定の成功」を収めているという。
ロシア軍は要衝アブデーフカを制圧後、じりじりと進軍している。
シルスキー氏は、新たな要衝となっているチャソフヤールとその北東の村が「最もホットな場所」とした。ロシア国防省は、チャソフヤール付近でウクライナの反撃を退けたと発表した。
シルスキー氏はさらに、北東部の第2の都市ハリコフへのロシア軍増派を注視していると述べた。ロシアが北部攻勢を準備する兆候はないとしたものの、ウクライナ軍の態勢を強化したと説明した。
●ウクライナ東部前線の「状況悪化」、部隊が後退と軍総司令官 4/29
ウクライナ軍の総司令官オレクサンドル・シルスキー将軍は28日、ロシア軍の複数の攻撃を受け、前線でのウクライナ軍の状況が悪化していると述べた。
シルスキー総司令官によると、ウクライナ軍部隊はウクライナ東部ドネツク州の陣地から後退したという。
ウクライナ軍は、アメリカから武器が追加供与されるのを待っている。ロシアはウクライナ軍が追加の武器を手に入れる前に、人員と大砲の数で優位に立とうとしている。
アメリカ政府は24日、610億ドル(約9兆6000億円)規模の対ウクライナ追加軍事支援予算を成立させた。
ロイド・オースティン米国防長官は26日、防空ミサイル「パトリオット」や砲弾をウクライナに速やかに届けるため「直ちに対応」する方針を示した。
しかし、アメリカからの追加支援はまだ前線には届いていない。前線にいるウクライナ部隊はこの数カ月間、弾薬や兵員、防空能力の不足に苦しんでいる。
ウクライナ軍、東部で後退と
シルスキー総司令官は28日、「前線の状況は悪化している」とメッセージアプリ「テレグラム」に投稿した。
ロシアが2月に東部の要衝アウディイウカを占領した後、ウクライナ軍部隊は防衛線を確立した。その防衛線上にある複数の拠点からウクライナ軍が後退したことを、シルスキー氏は認めた。
戦闘の大半は現在、ドネツク州クラマトルスクに近いチャシウ・ヤル周辺で起きている。ロシア軍はアウディイウカ占領後、ウクライナが支配するチャシウ・ヤルを目指してきた。
ウクライナ軍は複数の地域で西へ後退して、新しい防衛線を設けた。シルスキー将軍は、前進するロシア軍に領土を奪われたことを認めた。
また、ロシア政府が「いくつかの分野で戦術的成功」を収めたとも述べた。
シルスキー将軍は、チャシウ・ヤル周辺で痛手を負った部隊に代わり、休憩済みのウクライナ軍旅団が現地入りしていると付け加えた。
ロシア国防省は28日、ロシア軍がアウディイウカの北約10キロに位置するノヴォバフムチウカ村を占領したと発表した。
シルスキー将軍は2月、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領との関係に亀裂が生じたとの憶測が浮上したヴァレリー・ザルジニー氏の後任として、ロシア軍総司令官に就任した。
シルスキー将軍は今月13日にも、東部戦線の状況がここ数日で「非常に悪化した」と述べていた。
23日には、ウクライナ国家警備隊のオレクサンドル・ピヴネンコ司令官が、ロシア軍は今後、国境に近いウクライナ第2の都市ハルキウを目指すだろうと話している。
ドイツのキール世界経済研究所によると、アメリカが2022年2月から2024年1月までの間に提供した対ウクライナ軍事支援の総額は400億ドル(約6兆3400億円)を超える。
●ウクライナ軍総司令官、苦戦認める 「ロシア軍が複数方面で戦術的成功」 4/29
ロシアによるウクライナ侵略で、ウクライナ軍のシルスキー総司令官は28日、「露軍があらゆる前線で活発な攻勢を展開し、いくつかの方面で戦術的成功を収めている」とSNS(交流サイト)で発表し、自軍の苦戦を認めた。同氏は「過去1週間、各前線で激戦が続き、戦局は劇的に動いている」とも述べた。
米シンクタンク「戦争研究所」は25日、「米国の軍事支援が到着してウクライナ軍が戦力を回復させる前に、露軍が攻勢に出ている」と分析。シルスキー氏の発表はこれを裏付けた形だ。
シルスキー氏は、東部ドネツク州アブデーフカの北西方面が「最も困難な状況」にあるとし、この方面でウクライナ軍が後退していることを認めた。一方で、露軍のさらなる前進を防ぐために損耗した部隊の交代を進めていると説明した。
シルスキー氏は、現在の最大の焦点となっているドネツク州チャソフヤル方面も「激戦地のままだ」と述べた。チャソフヤルは、ウクライナ側が保持する同州の主要都市クラマトルスクやスラビャンスクを守る防衛線の一角。露軍がチャソフヤルを制圧した場合、主目標とするドネツク州全域の制圧に近づく。
シルスキー氏は、東部ハリコフ州や南部ザポロジエ州の戦況も緊迫しているものの、両方面では露軍に目立った前進を許していないとした。
ウクライナは現在、米軍事支援や今後の追加動員で戦力を回復させ、将来的な反撃につなげたい構えだ。ただ、専門家の間では、ウクライナはこれらの措置で劣勢を相当程度解消できるものの、優勢を得るまでには至らないとの見方が強い。
●マクロン氏「核抑止力の議論」を提案 4/29
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、27日掲載されたメディアグループ「エブラ」とのインタビューの中で、欧州共通の防衛における核兵器の役割(核の抑止論)について議論を呼び掛けた。ロシア軍のウクライナ侵攻という事態が生じなかったならば、マクロン大統領とはいえ、公の場では提案できるテーマではなかっただろうが、ウクライナ戦争によって欧州の安保情勢は急変した。それを受けて、核兵器の役割について堂々と語ることができるようになったわけだ。
ジョージ・W・ブッシュ米大統領時代の国務長官だったコリン・パウエル氏は、「使用できない武器をいくら保有していても意味がない」と主張し、「核兵器保有」の無用論を主張したが、マクロン大統領は今、「核兵器有用論」を展開しているのだ。冷戦時代終了直後のパウエル氏とは違い、第2の冷戦時代に突入したといわれる今日、核兵器の価値は再認識されてきたわけだ。
マクロン大統領はインタビューで、「ミサイル防衛、長距離ミサイル能力、そして米国の核兵器を保有する人々、あるいは国内に核兵器を保有する人々らと共に討論会を開きたい。全てをテーブルの上に置いて、私たちを本当に確実に守ってくれるものは何かを考えてみたい。フランスは欧州の防衛のために更に貢献する用意がある」と表明している。
欧州での独自の核の抑止論を主張しているのはマクロン大統領一人ではない。第60回ミュンヘン安全保障会議(MSC)の開催(2月16日〜18日)に先駆け、ドイツのジグマ―ル・ガブリエル元外相は独週刊誌シュテルンに寄稿し、「欧州には信頼できる核の抑止力が不可欠だ」と語っている。同氏は、「このテーマを考えなければならない時が来るとは思ってもいなかったが、欧州の抑止力を高めるためには欧州連合(EU)における核能力の拡大が必要な時を迎えている。米国の保護はもうすぐ終わりを告げる。欧州の安全の代案について今すぐ議論を始めなければならない。私たちがこの質問に答えなければ、他の国が答えてしまうだろう」と指摘し、欧州の自主的な核抑止力の強化を強調している。
同氏は「欧州の安全保障を強化するにはドイツとフランス、理想的にはイギリスと協力した大規模な戦略的攻撃力を構築することだ。例えば、トランプ氏が再びホワイトハウスの住人となった場合、米政権がウクライナへの支援を拒否した時、欧州はどのようにしてウクライナを支援するかについて明確にする必要がある。ドイツを含め、欧州はそのような脅威についてまだ真剣に認識していないのではないかと懸念する」と述べている。ガブリエル氏の論調はマクロン大統領とほぼ同じだが、マクロン氏の場合、欧州の防衛はあくまでもフランス主導、といったニュアンスが払拭できない。
欧州では英国のEU離脱(ブレグジット)以来、フランスが唯一、核保有国だ。もちろん、北大西洋条約機構(NATO)加盟国には米国の核兵器がイタリア、ベルギー、オランダ、ドイツのラインラント・プファルツ州のビューヒェルに保管されている。すなわち、欧州は米国の核の傘下にあるわけだ。
ところで、マクロン大統領は今月25日、パリのソルボンヌ大学での講演の中で欧州防衛の強化を訴えたばかりだ。同大統領は大統領選出直後の2017年9月にもソルボンヌ大学で共通の防衛軍を持つ自立したEU像を描いている。2回目のソルボンヌ大学での演説はその意味で同じ路線だが、トーンは異なっていた。オーストリア国営放送(ORF)のプリモシュ・パリ特派員は「マクロン氏の7年前の演説は決して楽観的ではないにしても、まだ情熱的で明るさがあったが、2回目のソルボンヌ大学での演説では、悲観的なトーンがあった」と解説していた。
実際、マクロン大統領は演説の最後に、「現代の世界で楽観的になることは難しい。ヨーロッパ人は将来の危険な進展を予測し、対処するために、明確な思考が重要だ」と述べている。7年前のようなエネルギッシュな情熱は失われ、説教者のような雰囲気がある。
マクロン氏が2017年に要求した共同防衛政策は、ロシアのウクライナ侵攻が始まって以来、EUの最優先課題の一つとなってきた。同氏は「民主主義秩序の敵に対して、自分自身を主張できる唯一のチャンスは、共通の防衛を更に発展させることだ」と信じている。しかし同時に、右派ポピュリストが台頭し、主権国家を強調し、欧州の舵取りを奪おうとしている。マクロン氏は「ヨーロッパの夢が破れる可能性がでてきている。ヨーロッパは死ぬかもしれない」と警告を発している。
ウクライナ戦争ではNATOの地上軍のウクライナ派遣を提案し、武器問題でも米国製の武器ではなく、メイド・イン・ヨーロッパの武器が必要であり、そのために生産拠点を確立していかなければならない。すなわち、欧州の防衛産業の構築だ。ロシアとの直接な軍事衝突を恐れるドイツは「マクロン氏の提案はウクライナ戦争をエスカレートさせる危険な提案」と受け取っている。
ウクライナ支援問題でもEU27カ国は結束していない。ハンガリーやスロバキアは武器供与には反対だ。そのような現状で、欧州軍、地上軍の派遣、欧州独自の核抑止力といった論議はEU内の分裂を更に加速させる危険性が出てくるが、マクロン氏の欧州防衛論、核の抑止力強化は欧州が生き延びていくために避けて通れないテーマとなってきた。
●ドイツ滞在のウクライナ兵2人刺殺、容疑者はロシア人か 4/29
ドイツ南部バイエルン州ムルナウのショッピングセンターで27日、ウクライナ人兵士2人が刃物で刺されて死亡する事件があり、ロシア人とみられる容疑者が逮捕された。
ドイツ警察によると、刺された2人のうち36歳の男性は現場で死亡が確認され、23歳の男性は搬送先の病院で死亡した。
2人ともバイエルン州ガルミッシュ・パルテンキルヘン在住のウクライナ人で、リハビリ治療のためドイツに滞在していた。
この事件で、ロシア人と思われる57歳の容疑者が、現場からそれほど遠くない自宅で逮捕された。
ウクライナ外務省も、ドイツ・ムルナウのショッピングセンターで1987年生まれのウクライナ人男性と2001年生まれのウクライナ人男性が刺殺されたと発表した。2人ともドイツでリハビリ治療を受けている兵士だったとしている。
●ロシア軍がドネツク州で攻勢、米支援が届く前に占領地拡大を図ったか 4/29
ウクライナを侵略するロシア軍が東部ドネツク州で攻勢を強めている。再開が決まった米国の軍事支援が前線のウクライナ軍に届く前に、占領地の拡大を図っているとみられる。
英字ニュースサイト「キーウ・インディペンデント」によると、ウクライナ軍報道官は27日、露軍が2月に制圧したドネツク州アウディーイウカの北西約15キロ・メートルにある村オチェレティネの一部を占拠したと認めた。報道官は「敵軍を押し返す措置が取られている」と強調した。露軍はウクライナ軍の3倍の兵力を投入しているという。米政策研究機関「戦争研究所」は27日、今後数週間で同州で露軍が相当程度、前進する可能性が高いと指摘した。
露軍は27日、ウクライナ各地にミサイル攻撃を行った。ウクライナ軍は34発のミサイルのうち21発を撃墜したが、キーウ・インディペンデントなどによると、東部ドニプロペトロウシク州、西部のリビウ州、イバノ・フランキウシク州などのエネルギー施設で被害が出た。ウクライナ最大の民間エネルギー企業DTEKも四つの火力発電所が大きな損傷を受けた。同社は露軍の攻撃で3月に火力発電能力の8割を失っており、電力事情がさらに悪化する可能性がある。リビウ州知事は、住民に節電を呼びかけたという。
ロイター通信などによると、ウクライナ軍も露南部クラスノダール地方の軍用飛行場や複数の製油所に無人機攻撃を行った。一部の製油所では火災が発生し、施設の稼働が中断した。
●北朝鮮が米国批判、ウクライナへの長距離ミサイル供与巡り 4/29
北朝鮮は、米国がウクライナに長距離ミサイルを供与したことを批判した。国営の朝鮮中央通信(KCNA)が29日、国防省の声明を伝えた。
米政府当局者は24日、米国がウクライナに対し最大射程300キロの地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」をここ数週間で供与したと明らかにした。ウクライナはこのミサイルを2度使用したという。
KCNAによると、国防省高官は28日付の声明で「米国はウクライナに長距離ミサイルを秘密裏に供給し、国際社会の不安と懸念をあおっている」と指摘。
「どのような最新の兵器や軍事支援をもってしても、米国は英雄的なロシアの軍隊と国民を打ち負かすことは決してできない」と述べた。
北朝鮮とロシアは軍事関係を強化しており、米国と同盟国は朝鮮半島の緊張をエスカレートさせていると指摘している。
●ガザ戦闘、イスラエルとイランのミサイル応酬…戦火が絶えない中東「悲劇の構図」 4/29
イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘が始まって半年以上がたった。停戦への見通しが立たない中、今度はハマスを支援するイランとイスラエルが互いに相手をミサイル攻撃するなど、戦火は収まる気配がない。シリアの専門家・東京外国語大学の青山弘之教授(現代東アラブ政治、思想、歴史)は「中東では日本の戦国時代のように紛争が次々と起き、片端から忘れられていく」と語る。ガザの戦闘も同じ道をたどるのか。
広大な地域、複雑な利害関係…紛争の「再生産」「忘却」「矮小化」
――中東で次から次に紛争が起きるのはなぜか。
「まず、中東(Middle East)が、西アジアから北アフリカに達する広大な地域を指すことを知っておく必要がある。アラビア語を話す国々やイスラム教徒の国々が中心だ。民族や宗教、歴史的経緯や利害関係が複雑にからみあっており、この地域の紛争に様々なプレーヤーが登場する一因になっている。いわば、大名や豪族、朝廷、宗教勢力など多数の当事者が入り乱れていた日本の『戦国時代』が再現されているようなものだ。中東でも、イスラエルと近隣アラブ諸国、米露英仏などの大国、イスラム過激派、民族主義組織、外国の支援を受けた武装勢力など多数の関係者が、その時々の状況や利害関係で離合集散し、外交や駆け引き、同盟や裏切り、暗闘や陰謀などを展開している」
   中東(西アジア・北アフリカ)地図(青山教授作成)
――中東の紛争に特有な点とは。
「一つ目は『戦争や内戦、軍事紛争などが次々に再生産される』こと。21世紀以降を見ても、2001年のアフガニスタン紛争、03年のイラク戦争、06年のレバノン紛争、11年の『アラブの春』に端を発したシリア、イエメン、リビアの内戦などが次々に起きている。二つ目は『新しい紛争が起きると、前の紛争がどんどん忘れられてしまう』こと。世界やメディアの関心が低下し、過去の問題がすべて解決したように受け止められることがずっと続いてきた。最後は『世間の見方は限定的で、紛争の背景まで目を向けない』こと。ガザでの軍事衝突でも、日本では当初、『ハマスとイスラエルの問題』『紛争はガザだけで起きている』などと狭い視点でとらえられ、物事がすごく 矮小 化されていた」
イスラエルとハマスそれぞれに支援勢力…ガザの戦闘は西側VSアラブ
――現在、ガザで起きているイスラエルとハマスの戦闘をどう捉えるべきか。
「西側諸国とアラブ諸国の戦いでもある。イスラエルを軍事支援するのは米国で、後ろには英国やフランスがいる。ハマスを支援しているのはシリアや、米国と長年対立しているイランで、他のアラブ諸国やイスラム勢力も控えている。レバノンにはイスラム教シーア派組織ヒズボラ、イエメンには反政府武装勢力フーシがいるが、それぞれイランなどの支援を受けている。これらの組織は共通の敵イスラエルに対して、同志のような協力関係にある。だから、イスラエルとハマスが戦闘状態に入ると、ヒズボラも攻撃を開始した。フーシも紅海で米艦船や商船を狙い、無人機やミサイルでの攻撃を行った。イスラエルのヨアブ・ガラント国防相も『ガザ地区、ヨルダン川西岸、レバノン、シリア、イラク、イエメン、イランの7正面と戦っている』と述べており、世界中のパレスチナ支援の軍事勢力との戦いとの認識を示している」
即時停戦が実現しない理由…中東最強の軍事国家、アラブ側の積年の恨み
――なぜ、即時停戦が実現しないのか。
「これまでの長い歴史的経緯や憎しみの連鎖があるからだ」
「イスラエルは『常に後がない戦いをしている』ので、軍事的妥協がしにくい。建国直後に起きた第1次中東戦争から一貫して、敵対するアラブ勢力に取り囲まれ、どこにも逃げ場がない。必死で戦うので戦争には強いが、負けたら国家が崩壊する危機感がある。現在は世界トップレベルの軍事国家で、陸軍でも空軍でも、中東では圧倒的に強い。米国から軍事援助を受け、核兵器の保有も半ば公然と表明している」
「一方、アラブ側は19世紀末から、大国に何度も裏切られ、 蹂躙 されてきた。英国が、アラブ人にパレスチナを含む中東一帯にアラブ人国家の独立を約束する『フセイン・マクマホン協定』を締結する一方で、欧州のユダヤ教徒にはパレスチナにユダヤ人国家の建設を約束する『バルフォア宣言』を出した『二枚舌外交』は有名な史実だ。アラブ諸国の恨みが集約されているのがパレスチナ地域で、聖地エルサレムもイスラエルに占領されている。だから、今回のようなことが起きれば、積年の恨みが噴出する」
「イスラエルは病院や学校を空爆し、子どもを含む民間人に多数の死者が出ている。ガザ地区を封鎖し、電気・水・食料の供給を止めたほか、国連の食糧支援の搬入も制限しているため、住民の半数にあたる約110万人が、必要な食料の入手さえ困難で餓死者が出る「壊滅的飢餓」に陥っているという。欧米諸国はウクライナ侵略では『人道主義』を唱え、ロシアを批判するが、イスラエルの行動は強く非難しなかった。これもアラブの人々を怒らせる原因だ」
イスラエルの狙い…ガザ地区完全制圧とハマスの無力化
――ガザに侵攻したイスラエルは最終的に何を目指しているのか?
「イスラエルはガザ地区を軍事的に完全制圧して、ハマスの主力を排除したいのだと思う。1982年、イスラエルは、対立していたPLO(パレスチナ解放機構)の勢力をそぐため、本部があったレバノンの首都ベイルートまで侵攻して、PLOの力をそいだ成功体験がある。ハマスの根絶は無理でも、無力化することで、ガザ地区がイスラエル攻撃の温床にならないように、数十年間は非武装地帯にしたいのだと思う。しかし、イスラエルに強い恨みを持つ住民はそのまま現地に残るので、また敵対勢力が復活するかもしれない」
根本にパレスチナ問題…「2国家解決」は可能か
――パレスチナ問題の負の連鎖を断ち切るような根本的解決策はないのか。国際社会が後押ししている、ヨルダン川西岸地区とガザ地区と東エルサレムにパレスチナ国家を樹立し、イスラエルと共存させる「2国家解決」はどうか?
「この問題の根底には、パレスチナの土地や領土の問題が根深くある。イスラエルは『神から与えられた土地』と主張するが、パレスチナ人にしてみれば、『先祖代々住み続けてきた土地』だからだ。結論から言えば、今、この案を持ち出すことはイスラエルに有利になるかもしれない」
「ヨルダン川西岸地区では、『ここは自分たちの土地だ』と考えるイスラエルが、国際法に違反して建設しているユダヤ人入植地が年々増加している。虫食いのように広がる入植地を維持するため、軍隊を派遣し、検問所を作り、パレスチナ人居住地と分ける壁まで建設した。国家を作るには、領土と国境線と国民が必要だ。『領土』で言えば、パレスチナ国家を作ろうとしても、イスラエルが多額の投資をして建設した入植地を手放すだろうか。イスラエルの占領下にある東エルサレムを完全に自国領土にできるだろうか。『国境線』についても、あちこちに数多くある飛び地のような入植地を避けて、国境線を引くことは困難だろう。最大の難題は、中東戦争で故郷を追い出された何百万人ものパレスチナ難民の帰還問題だ。『国民』としてどのくらいの人数を、どこにどうやって戻すのか、具体策はまったくない。あくまで『2国家解決』を目指すなら、入植地の多い地域や東エルサレムの一部を外さなければ、パレスチナ国家は実現できないかもしれない。パレスチナ人には屈辱的な案になりかねない」
「忘却」されたシリアの悲劇…1670万人に人道支援が必要
――青山さんの専門のシリアについて聞きたい。シリア内戦は結局どうなったのか。
「『今世紀最悪の人道危機』『近年、最も難民を出した戦争』と言われ、多くの悲劇を生んだが、すっかり過去の出来事のようだ。『アラブの春』によるアサド大統領の支配への抗議運動に端を発し、民主化を求める反体制派への弾圧から、11年に内戦が始まった。当初、アサド政権にロシアとイラン、反体制派にトルコや米国が加勢し、代理戦争の性格を持った。その後、反体制派でイスラム過激派のイスラム国が台頭。広大な地域を支配下に収め、状況は 混沌 となっていった。結局、内戦は20年3月、ロシアと、反体制派の後ろ盾となっているトルコが停戦に合意し、シリア政府が反体制派に対して優位な状態で停戦した。その後、大規模な軍事衝突はなくなった。『反体制派が住民とともに強権的なアサド政権を倒す』といった勧善懲悪的な結末を迎えることもなく、国土はシリア政府、反体制派、クルド民族主義勢力、トルコや米国の支配地域に分割され、次の火種を残したままだ」
「最大の被害者は、化学兵器の攻撃を受け、最終的には反体制派にも切り捨てられたシリア住民だ。シリアでは、1670万人以上が人道支援を必要としている。住む場所を追われた『国内避難民』は680万人、国外への『難民』も501万人に上る。これらはまったく解決していない」
シリアとロシアのウクライナ侵略を結ぶ線
――シリア内戦は、国際情勢にどのような影響を与えたのか?
「内戦を通じて、ロシアとトルコが接近し、結果的にロシアがウクライナ侵略をしやすくなった。ウクライナ攻撃の際、北大西洋条約機構(NATO)に属しているトルコと対立する懸念がなくなったからだ。トルコにしてもロシア寄りの姿勢を示すことで、アメリカをけん制し、自国の立場を強化できた」
――モスクワ郊外で今年3月に起きた銃乱射事件で、イスラム国を名乗る犯行声明が出た。イスラム国は消滅したのでは?
「イスラム国は15年、フリージャーナリストの後藤健二さんと湯川遥菜さんを殺害したことで、日本でも悪名が高い。銃乱射事件では、アフガニスタンに本拠地を持つイスラム国の一派が犯行声明を出した。シリア内戦中のロシアや米国の掃討作戦で弱体化したが、完全に消滅したわけではない。ガザの軍事衝突以降、活動を活発化させていた。犯行の動機は、プーチン政権がシリアでイスラム国をターゲットにした軍事介入を行なったことに対する恨みだとの見方もある」
イスラエルともアラブとも対話できる日本…中東での貢献は国益にもかなう
――日本が中東で果たすべき役割とは。
「日本は中東で積極的に仲介役を果たすべきだと思う。国際平和への貢献と同時に国益も保つことができる。二つの理由があって、(1)中東は日本の経済的安全保障に深く関わっており、(2)日本はイスラエルにもアラブ諸国にも全方位に関係を持っている。G7の欧米諸国にはない強みだ。(1)で言えば、日本は石油の90%以上を中東に依存している。中東情勢が不安定になれば、エネルギーの確保だけでなく、欧州航路の商船などシーレーンにも大きな影響が出る。実際、フーシによる輸送船攻撃で紅海経由の物流網が寸断されたほか、昨年11月には日本郵船が運航する輸送船の 拿捕 事件も起きた。日本は海外に派兵して軍事力を行使する選択肢がない。中東情勢によっては、これまで行なってきた多額の借款、援助、投資による権益を失う事態も起きかねない以上、日本が紛争仲介役を果たすなど独自色を出して、現地での存在感を高めておくことが必要だ。たとえば、10年、中東で有数の埋蔵量を誇るイランのアザデガン油田開発から、日本が撤退を表明した後、代わりに中国企業が権益を握った事例もある」
「(2)では、日本はアラブを侵略したことがなく、親日感情も強い。パレスチナにODA(政府開発援助)で医療や教育、インフラ支援を続けてきた経緯もある。パレスチナ情勢を短期的に解決できる見通しがないなら、イスラエルの後ろ盾である米国と連携しながら、恒久平和を話し合うプラットフォームを作るべきだ。両者が敵対関係にあっても、話し合いが続いている間は苛烈な戦闘は起きないものだ。日本が双方にとって良き理解者となることで、和平への道づくりをする努力が求められているのではないか」
●ハマスがエジプトで協議へ 交渉の進展が焦点 4/29
激しい戦闘が続くガザ地区で、中東の衛星テレビ局アルジャジーラはイスラエル軍が南部ラファを空爆し、これまでに19人が死亡したと伝えました。
29日にはイスラム組織ハマスの代表団がエジプトで人質の解放などに向けた協議を行うとも伝えられていて、交渉の進展が焦点となっています。
“イスラエル軍が南部ラファを空爆 19人が死亡”
ガザ地区ではイスラエル軍による攻撃が続いていて、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、イスラエル軍が地上侵攻を行う構えを見せるガザ地区南部ラファで3棟の住宅に空爆があり、これまでに19人が死亡したと29日、伝えました。
国際的なNGO「ワールド・セントラル・キッチン」活動再開
ガザ地区で深刻な人道状況が続く中、4月初め、ガザ地区での食料支援の活動中にイスラエル軍による攻撃でスタッフ7人が死亡し、活動を中断していた国際的なNGO「ワールド・セントラル・キッチン」は28日、活動を再開すると発表しました。
NGOは、「飢餓の危機の中、活動を終わらせるのか、支援活動の関係者や民間人が脅迫され、殺されていることを知りながら、活動を続けるのか決断を迫られた。人々に食料を提供するという私たちの使命を継続していかなければならない」としています。
また、今後およそ800万食分の食料を載せた276台のトラックをラファ検問所から搬入する準備をしているほか、海上からの輸送も行う予定だということです。
バイデン大統領 ネタニヤフ首相と電話会談で戦闘休止など交渉
アメリカ・ホワイトハウスは28日、バイデン大統領がネタニヤフ首相と電話で会談したと発表しました。
このなかで、イスラエルとイスラム組織ハマスの間で行われている、ガザ地区での戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉について検討が進められたということです。
さらに、イスラエル軍がガザ地区での今後の作戦計画を承認し、ラファへの地上作戦の準備を進めているとみられる中、バイデン大統領は、自身の立場を改めて明確にしたということです。
バイデン大統領はこれまでも地上作戦の実施に深い懸念を示していて、今回の会談でもそうした懸念を伝えたものとみられます。
米国務長官が中東に出発 関係国と協議へ
アメリカのブリンケン国務長官はガザ地区での戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉をめぐり関係国との協議を進めるため、28日、中東に向け、首都ワシントン郊外の空軍基地を出発しました。
5月1日にかけてサウジアラビアやヨルダン、それにイスラエルを訪問し、イスラエルとイスラム組織ハマスの間で戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉が続く中、関係国と協議を進めることにしています。
ハマス側の代表団も29日にエジプトを訪れ、戦闘休止と人質解放などについて協議をすると伝えられていて、交渉の進展が焦点となっています。
ホワイトハウスのカービー大統領補佐官はABCテレビのインタビューで「ハマスは交渉を完全に拒否したわけではない。イスラエル側からの提案を検討中だ」と述べた上で「交渉がまとまれば、6週間、ガザ地区で南部ラファを含め戦闘が止まる。その後、それが長く続くことを期待している」と述べ、恒久的な停戦を目指す考えを改めて示しました。
一方で、ガザ地区で深刻な人道状況が続くなか、アメリカが海からの食料などの搬入に使う仮設のふ頭の建設を始めていて、イスラエル軍は27日、その建設現場だとする映像を公開しました。
イスラエル軍はアメリカ中央軍などとともに準備を進めているとしていて「人道支援物資を増やすために全力を注いでいる」とアピールしていますが、WFP=世界食糧計画はガザ地区北部で住民の70%が壊滅的な飢餓に直面しているとみられると懸念を示すなど、食料支援が急務になっています。 
● 「反プーチン」のロシア人記者2人拘束、理由はナワリヌイ氏への協力や西側記事の転載 4/29
ロイター通信によると、ロシアの裁判所は27日、2月に獄死した反政権運動指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の団体の活動に関与したとして、ロシア人記者2人の拘束を認めた。プーチン政権下で、政権に批判的なメディアの締め付けが強まっている。
拘束されたのは、ロイター通信などで勤務経験があるフリーランス記者のコンスタンチン・ガボフ氏と元AP通信記者のセルゲイ・カレリン氏。露当局が「過激派組織」と認定するナワリヌイ氏の団体が運営するユーチューブ向けとして、動画や写真素材を用意したことが罪に問われている。
一方、ロシア通信は27日、米誌フォーブスロシア版の記者、セルゲイ・ミンガゾフ氏が約2年前に露軍に関する「虚偽情報」を流したとして拘束され、自宅軟禁を命じられたと報じた。ロイター通信によると、ミンガゾフ氏は自身のSNSにウクライナの首都キーウ近郊ブチャで露軍が多数の民間人を虐殺した事件に関する西側メディアの記事を転載したという。
露政府はブチャの虐殺を認めていない。当局が露軍に関する「虚偽情報」を拡散したと見なせば、最長で禁錮15年の刑が科される。
●米高官が「あと数週間でロシア軍が勝利する」明言したウクライナ戦争「最悪の結末」 4/29
ロシアによるウクライナ攻撃が激化している。4月20日、米議会はウクライナへの追加支援のための緊急予算案を可決したが、それまでは与野党の対立から支援が滞り、ロシアの圧倒的火力の前にウクライナ軍は退却を余儀なくされていた。バイデン政権の中にはウクライナの存立が風前の灯と断ずる意見もあった。

2月1日、欧州連合(EU)のウクライナへの追加支援が全会一致で合意された。加盟国は2027年までの間、500億ユーロ(約8兆円)を支援する。
EUの発表によれば、追加支援する500億ユーロのうち、330億ユーロは融資で、残り170億ユーロは凍結されたロシアの資産から生み出される可能性のある「返済不要の支援」であるほか、EUへの加盟を希望するウクライナの準備資金として使用されるという。全国紙国際部記者が解説する。
「ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから丸2年が経ちます。一時は大規模な反転攻勢で一気に情勢がウクライナ有利に変わるのでは、との希望的観測もありましたが、結局、膠着状態は続いたままで、その間にもウクライナの弾薬は枯渇する一方。 EUの推計によると、1日あたり2万発以上の砲弾を撃ち込んでいるロシアに対し、ウクライナの砲弾発射数は23年夏の反転攻撃時でも1日あたり8000発。その数も徐々に減少していて、昨年12月にウクライナ軍のタルナフスキー司令官が発表した1日当たりの砲弾の数は約2000発でした」
しかも、同国の頼みの綱だった米政府による610億ドル(約9兆円)の支援も、米議会での承認手続きの見通しが立たず停滞したまま。そんな中、今回のEUによる追加支援は、ウクライナにとって喉から手が出るほど待ち望んでいたものだった。ただ、この支援に疑問を呈する専門家は少なくない。
「1月にNATO(北大西洋条約機構)は、ウクライナに対し数十万個単位の155ミリ砲弾を生産するという11億ユーロ(約1760億円)規模の契約を結んだと発表している。しかしNATO本部で会見したストルテンベルグ事務総長は『納品までに要する時間は24カ月〜36カ月になる予定』と述べています。つまりウクライナへ砲弾が届くのは27年になってしまうということ。今回のEUの決定においても追加支援は27年までとなっており、そこまでウクライナが持ちこたえられるかが最大の問題です」(前出・記者)
弾薬が枯渇しているウクライナとしては、明日にでも「現物」での支援が欲しいところだろう。一方で米バイデン政権の軍事支援担当者は「米議会が動かなければ、あと数週間でロシア軍が勝利する」と明言している。さらに1月25日に米ブルームバーグ通信は、プーチン大統領が昨年12月、仲介人を通して米政府当局者とウクライナ戦争の終戦に向けた対話をする用意があるかどうかを非公式で打診した、と報じた。
当然ながらウクライナの敗北は、EU、NATO、そしてアメリカの敗北という最悪の結果を意味する。戦争はいよいよ最終局面に入ってきているようだ。
●ロシア、凍結資産の接収に警告 「欧米経済は終わりだ」 4/29
ロシアのペスコフ大統領報道官は28日、欧米諸国がウクライナ侵攻への制裁で凍結したロシア資産を接収しウクライナ支援に活用すれば欧米の投資環境に深刻なダメージになると警告し、ロシアは法的手段で「最後まで争う」と強調した。
国営テレビの取材にペスコフ氏は、資産を接収すれば投資者の信用は失われ「欧米経済は終わりだ。信用回復には数十年かかるだろう」と指摘。「今の戦況を見れば結果は決まっている」とし、侵攻作戦の勝利に自信を示した。
ロシア外務省のザハロワ情報局長も28日、凍結資産の接収は「盗み」だと批判。「厳しく対抗する」と報復を示唆した。

 

●【ウクライナ敗北は恐怖の始まり】21世紀型の戦い方を習得したロシアが晒す欧州への脅威 4/30
2024年4月11日付の英Economist誌が、ウクライナが戦争に負ければ何が起きるのかを論じるコラムを掲載し、恐怖が欧州に浸透することとなろうと述べている。
昨年のウクライナの反転攻勢の希望は失せ、このところ支配するのは恐怖である。
もしウクライナが敗北すれば、それは西側にとって屈辱的となろう。米国と欧州は、過去2年、道義的・軍事的・財政的支援をウクライナにしてきた。この支援の提供を時に躊躇したことが事態を悪化させた。
ウクライナの領土がロシア領に塗り替えられれば、力は正義なりという理念が固まるであろう。元北大西洋条約機構(NATO)事務局長ジョージ・ロバートソンは「もし、ウクライナが敗れれば、われわれの敵が世界秩序を決めるであろう」と警告した。特に台湾の人々にとっては不幸なことになろう。
ウクライナの隣国による支援の速度は米国よりも遅かった。しかし、ゆっくりだが着実に、彼等は可能な限り要望に応えた。
武器を届け、ウクライナの財政を支え、数百万の避難民を受け入れ、何度も対ロシア制裁を課し、ロシアからのガス・パイプラインを断ち、欧州連合(EU)は当初可能と思われたことの限界を超えた支援をした。目下、EUにはタカ派の東部周辺とその他の間に分断が存する。もし、ウクライナが負ければ、分断は相互の非難と憤りに発展するであろう。
ウクライナの敗北の地政学的な影響は和平合意の形に依存するであろう。翻って、それは軍事の力学にかかって来る。もし、弾薬不足のウクライナ軍が崩壊し、ロシアが東部だけでなくベラルーシ型の傀儡政権の下で国全体を支配するならば、ロシアはEUと追加的に1000キロメートルを超える国境を接することになる。
EUの将来の形は変わるであろう。ウクライナへのEU拡大の約束は包括的な勝利を前提としていた。西バルカン諸国のEU加盟申請も放置されることとなろう。
罪と恥の感情を超えて、恐怖が欧州に浸透するであろう。更なる攻撃があれば、それはNATO加盟国に対するもので同盟国の行動を強いるものか。
プーチンはバルト三国におけるナチズムに言及し、ウクライナ侵攻の際に用いた口実を繰り返したことがある。もしロシアが勝利すれば、プーチンは戦闘で鍛えられ領土を奪取する21世紀型の戦闘技術を備えた唯一の戦闘集団を指揮することとなろう。
たとえウクライナが勝つにしても、欧州は変わる必要がある。NATOは今月75周年を祝うが、欧州がその領土の一体性の米国による保証のよすがとするNATOの将来は不確かである。冷戦後の平和の配当の収穫の数十年を経て、より大きな国防費が必要となる。
「もし、ウクライナが負ければどうなる?」という問題に対する欧州の答えは依然単純である――「ウクライナは負けてはならない」というのが答えである。
欧州はすでにロシアに備える時
ウクライナ戦争は、ウクライナの負けと決まった訳ではないが、このまま推移すれば、ロシアを22年2月24日の線まで押し戻すというウクライナの半分ほどの勝利も覚束ない。仮に、ウクライナが負ける場合、何が起きるかを考えておくことは必要で有益である。その場合、欧州を支配するのは屈辱と恐怖であろう。
欧州は結束して行動した。ロシアの戦闘能力を削ぐべく累次の制裁によりロシアに懲罰を課し、ウクライナの自衛努力を助けるべく軍事的・財政的に多大の支援を提供している。けれども、欧州は、ウクライナの戦場で鍛えられ21世紀型の戦い方を習得したロシア軍の脅威に向き合うことになる。
仮に、ロシアとの和平合意に持ち込めたとしても、それは幻想の安全を提供するに過ぎず、欧州はロシアがNATO領域、特に、バルト三国など東部領域に次なる侵略を企てる脅威への対処を迫られるであろう。加えて、核を含む米国の拡大抑止の信頼性が、ドナルド・トランプの言動によって揺らいでおり、それが欧州の不安を煽っている。
重要なことは、ウクライナの命運がこの先どう決するかにかかわらず、欧州が防衛努力を各段に強化し、ロシアに備えることであり、7月のワシントンにおけるNATO首脳会議はそのための重要な機会となろう。
ロシアは軍事能力を高めている。ロシアの軍事予算の国内総生産(GDP)比は本年6%に達すると見込まれている。ロシアの軍事産業は拡大しつつある。
NATOはこれに対抗し、抑止と防衛の能力を強化せねばならない。国防費のGDP比目標を現行の2%から2.5%に引き上げることも意義があろう。より重要なことは、ウクライナ戦争においてドローン(情報収集・偵察および自爆型の攻撃)、低軌道衛星(通信・目標設定・情報収集・監視)、AI、水中ドローン、電子戦等により具現化したハイテクによる戦闘の革命的な進化をNATOの作戦計画に組み込むことであろう。
ウクライナができること
ウクライナ自体については、敗北が限定的で、ロシアに占領された部分を除く残余の領土で国として機能するとしても、果たして活力ある国として生き残れるのかの疑問がある。多くの国民が国を離れ、国が空洞化するかも知れない。
この記事には、「ウクライナへのEU拡大の約束は包括的な勝利を前提としていた」とある。そうだったのか承知しないが、少なくとも、打ちひしがれたウクライナをEUが抱きかかえることは出来ないかも知れない。
NATO加盟はあり得ないこととなろう。この記事が結論的に述べているように、「もし、ウクライナが負ければどうなる?」という問題に対する唯一の答えは「ウクライナは負けてはならない」であろう。
●バイデン氏、WSJ記者の解放要求 記者夕食会で2年連続 4/30
ジョー・バイデン米大統領は毎年恒例のホワイトハウス記者協会主催の夕食会で、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のエバン・ゲルシコビッチ記者(32)を解放するようロシアのウラジーミル・プーチン大統領にあらためて要求した。
報道の自由をたたえる27日夜のイベントで演説し「プーチン氏はエバンを解放するべきだ」とし、「われわれは全力を尽くしている」と語った。バイデン氏は昨年の記者夕食会でもゲルシコビッチ記者の解放を求めていた。
ゲルシコビッチ氏は2023年3月29日にスパイ容疑でロシア当局に拘束された。本人、WSJ、米政府は容疑を断固として否定している。
ゲルシコビッチ氏の家族はWSJの招待客として夕食会に出席した。総立ちの拍手喝采を受ける中、NBCニュースのホワイトハウス特派員で協会トップを務めるケリー・オドネル氏はスピーチで、「われわれは常にあなた方と共にある」と話した。
バイデン氏は元米海兵隊員で民間企業のセキュリティー担当幹部、ポール・ウィーラン氏の解放も呼びかけた。ウィーラン氏もスパイ容疑でロシアの刑務所に収監されている。バイデン氏は「彼が帰国するまであきらめない」と語った。
●NATO事務総長がキーウ訪問 支援遅れは「深刻な結果」 ゼレンスキー大統領と共同会見 4/30
NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長がウクライナを訪問し、加盟国による支援の遅れが「深刻な結果」をもたらしていると訴えました。
NATO ストルテンベルグ事務総長「ウクライナは数か月間、劣勢に立たされている。弾薬を節約せざるをえないため、ロシア軍のミサイルやドローンを撃ち落とせなくなっている」
ストルテンベルグ事務総長はゼレンスキー大統領とキーウで会談した後、共同会見に臨み、今月、支援予算が成立したアメリカやヨーロッパ諸国の「支援の深刻な遅れ」が戦地での「深刻な結果」をもたらしていると指摘しました。
一方で、「ウクライナが勝利するのに遅すぎることはない」として、アメリカやイギリスなどが新たに発表した支援を歓迎。さらなる支援に期待を示しました。
ゼレンスキー大統領も、「ロシア軍はウクライナが支援を求めて待っている時間を利用しようとしている」と指摘。武器などが届き始めているとする一方で、「スピードアップしなければならない」と訴えました。
●イギリス王室のソフィ妃がウクライナを訪問しゼレンスキー大統領と会談 多数の民間人殺害のブチャでは追悼 4/30
チャールズ国王の弟、エドワード王子の妻・ソフィ妃がウクライナを訪問した。
イギリス王室は29日、ソフィ妃がウクライナの首都キーウを訪れ、ゼレンスキー大統領夫妻と会談したほか、市民と交流したと発表した。
ソフィ妃はまた、ロシア軍によって多数の民間人が殺害されたキーウ近郊のブチャを訪れ、犠牲者を追悼した。
訪問はイギリス外務省の要請を受けたもので、「戦争の影響をうけた女性や子供たちとの連帯を示す目的で行われた」という。
ロシアによる侵攻以降、イギリス王室のメンバーがウクライナを訪問するのは初めて。
●ロシア軍、ウクライナ東部で着実に前進 4/30
ロシア軍がウクライナ東部の前線の少なくとも3カ所で、さらに進軍を続けていることがわかった。この中には、北東部ハルキウ州での数カ月ぶりとなる前進が含まれており、ウクライナ政府が米国や同盟諸国からの弾薬や武器を必要としている状況を改めて浮き彫りにしている。
ロシア軍の日々の戦術的な前進は、今年2月に東部の要衝アウジーイウカが陥落して以降の戦場の新たな速度を反映している。
ロシア軍の領土の奪取は、数百メートルから最大で1キロ程度と控えめではあるものの、通常は一度に複数の場所で発生している。
ロシア軍が注力している前線の一つがドネツク州だ。前線の情報を伝えているウクライナの監視グループ「ディープステート」によれば、ロシア軍は24時間のうちに、前線の20〜25キロに沿った八つの異なった地点で前進している。
ロシアとウクライナ双方の軍事ブロガーによれば、ロシア軍は水路を越えて、セメニウカとベルディチの集落を制圧した。ウクライナ軍トップのシルスキー司令官も28日、SNSへの投稿で、ロシア軍による制圧を確認した。シルスキー司令官によれば、ロシア軍は同地域に最大4個の旅団を展開している。
そこから数キロ北部の集落もロシア軍が制圧したとの報告があるほか、南部でもロシア軍が工業都市クラスノホリウカへ前進している。
北へ約180キロ離れた戦場では、ロシア軍がハルキウ州へ侵入する前線の一部で、約3カ月ぶりの成功を収めた。
ウクライナ軍が2022年の夏季にハルキウ州の広大な領土を奪還して以降、ハルキウ州の前線は全体的に最も安定している。
ウクライナ側の撤退と失地が続くなか、軍事ブロガーからは、ウクライナ軍の公式の発表をめぐり、軍が戦場から、ますます非現実的な情報更新を行っているとの批判の声が出ている。
ディープステートはSNSへの投稿で、ドローン(無人機)攻撃によってロシア軍の兵士が死亡する凄惨(せいさん)な動画を公開しつつ、単独の事案が大局を覆い隠してしまうことがあるとして、ウクライナ軍が同様のことを行っていると非難した。
多くの西側の専門家はウクライナ当局者と同様に、ロシア軍の現在の進行速度の増加は、春の後半の大規模な攻勢の前兆であるとみている。ロシア政府が、約半年にわたる政治的な膠着(こうちゃく)状態を経て承認された米国からの支援が前線に届く前に、弾薬面での大きな優位を活用したいと考えているともみられる。
米シンクタンク「戦争研究所(ISW)」は、戦略的に大きな敗北はないものの、短期的な後退は増えるとの見通しを示している。
ISWは、ウクライナが米国からの軍事支援が前線に到着するのを待っているため、ロシア軍は今後数週間、大きな戦術的前進を遂げる可能性が高いものの、依然としてウクライナ軍の防衛を圧倒する可能性は低いと指摘した。
ウクライナのもう一つの重要な量の面での弱点は人員だ。ウクライナでは動員に関する新たな法案が来月にも施行され、徴兵のための手続きが改善されるとみられている。ウクライナ政府は実際に何人の兵士が必要なのか明確にすることを避けているが、ロシア政府は兵士の人員を増やし続けている。
米シンクタンク「外交政策研究所」の専門家はSNSへの投稿で、ロシア軍兵士の質はさまざまだが、量的な優位は深刻な問題だと指摘。ロシア軍の人員面での優位性がなければ、砲兵や空軍力の優位性は戦場で領土を獲得するには十分ではないとし、特にロシアが毎月2万から3万人の採用を維持できれば、相対的な兵士数の状況が戦争の行方を左右する最も重要な要素となる可能性が高いとの見通しを示した。
●「もしトラ」 どうする日本 4/30
前代未聞の米大統領選挙
まず米国大統領選挙については、周知の通り、候補者は民主党のバイデン大統領、共和党はトランプ前大統領で事実上決定しており(正式決定は7月開催の両党の全国大会で)、目下11月の本選に向けて両者が激しく争っています。
最新の各種世論調査によれば、まさに互角の戦いで、どちらが勝つか予測できません。共に高齢であるというハンディキャップのほかに、様々な問題点を抱えているからです。
とくにトランプ氏については、2か月前の本欄で触れたとおり、連邦議会議事堂襲撃事件、脱税疑惑、女性スキャンダル(不倫相手のポルノ女優への「口止め」料支払い問題)など4件の刑事裁判の被告になっています。
本人は、相変わらず「これは民主党による政治的な魔女狩りだ」として全面的に無罪を主張していますが、裁判の行方は不透明。いずれにせよ、大統領経験者がこのような裁判の被告になるのは米国でも前代未聞のことで、我々日本人の感覚ではとても考えられませんが、そこがまたアメリカという国の不可思議なところでしょう。
実は私は、8年前の大統領選挙の直前、2016年10月にも訪米しました。母校のハーバード大学法科大学院の卒業後50周年の同窓会に出席するのが主目的でしたが、その際に旧友たち(その多くは法曹界や政財界の要職経験者)に、トランプと民主党のヒラリー・クリントンのどちらを支持するか尋ねたところ、クリントン支持と答えた人が圧倒的に多数でした。ワシントンでも後輩の駐米日本大使や新聞社の特派員たちの意見を訊くと、ほとんど全員がクリントンの勝利を予想していました。
ところが、東京に帰ってすぐ、大方の予想を裏切ってトランプ当選の報に接し、びっくり仰天。と同時に、アメリカの国内政治の複雑さをつくづく再認識させられました。直接投票ではヒラリーが僅かながら勝っていたのに、州ごとの選挙人獲得数でトランプが逆転勝利したわけで、トランプ陣営がいかに選挙戦略に長けていたかがわかります。
アメリカ人の本音を代弁
しかし、それだけではなく、番狂わせの最大の原因は、「隠れトランプ支持者」が非常に多かったということです。後で判ったことですが、知的にも経済的にもエリート層に属する人ほど、表向きは当然のように民主党のヒラリー支持だと答えますが、内心ではトランプに共感していたようです。
例えば、移民問題については、トランプのようにメキシコ国境に万里の長城のよう壁を築くのはやり過ぎだと言いながら、腹の中では、不法移民が大量に入って来ると治安が悪くなるし、保護するためには莫大なコストがかかる、だから壁は必要だ。
また、社会保障制度については、不法移民や貧乏人たちまでカバーするとなると我々の経済的負担が増えるからオバマ・ケア(国民皆保険制度)には反対だ。しかし、そんなことは言いたくても公には言いにくいが、トランプはずばり代弁してくれている。だから彼の「米国ファースト」には大賛成だーーというのが本音なのではないかと思います。
「アメリカ第一主義」
今振り返ってみると、確かに、民主党のオバマ政権時代の政策(「核なき世界」、パリ協定、イラン核合意など)は国際的には大変好評でした。
しかし、トランプ支持者たちに言わせれば、そういったオバマの国際的なパーフォーマンスは米国の利益にはなっていない。現在の米国にはかつてのように「世界の警察官」になる余裕はないのだから、もっと国内利益最優先の現実的な政策を打ち出すべきだということでしょう。
さらに言えば、ウクライナ戦争やパレスチナ(ガザ)紛争も、トランプ政権なら起らなかっただろうし、ロシア、中国、北朝鮮、イランなどが世界各地でのさばることもなかっただろう。もし大統領に再選されたら、これらの戦争や紛争はあっという間に解決するとトランプ自身が豪語しています。
「第2次トランプ政権」の政策
さて、半年後に迫った大統領選挙の結果について現時点で予測することは甚だ困難ですが、トランプ政権再登場の可能性がある以上、私たち日本人も今のうちからある程度心の準備をしておく必要があると思います。
もし第二次トランプ政権になったら、第一次政権の時より、もっと大胆かつストレートに“トランプ流”を打ち出すだろうと思われます。とくに外交政策は大きく変わる可能性が考えられます。差し当たり注目されるのは、ロシアによる侵攻が続くウクライナ戦争とパレスチナ(ガザ)紛争にどう対応するかです。
ウクライナ戦争については、戦争の長期化に伴い、ウクライナを支援する米欧諸国に「援助疲れ」が目立ってきています。最大の軍事支援国である米国では、野党・共和党が多数を占める議会下院で、これ以上のウクライナへの支援は継続すべきではないという意見が高まっています。そのため、与野党の対立から追加支援のための予算が承認されない状態が続いており、昨年末以来資金が枯渇して軍事支援が滞っています。
ウクライナ戦争支援
これに対し、ゼレンスキー・ウクライナ大統領の必死の要請を受け、バイデン政権は懸命に支援の継続を訴え、議会工作を行っています。
その結果、下院は4月20日、ウクライナへの追加の軍事支援のための緊急予算案を超党派の賛成多数で可決しました(賛成311票、反対112票)。予算案は、総額およそ608億ドル、日本円にしておよそ9兆4000億円となっていて、支援の一部は返済義務がある借款の形をとることになっています。
この予算案はその後、4月23日、民主党が過半数を占める上院でも超党派の多数で可決され、直ちにバイデン大統領の署名によって成立しました。ゼレンスキー大統領は「ありがとう、アメリカ!」というメッセージを発表して謝意を表明しました。
これでウクライナの継戦能力は確保されましたが、逆に言えば、それだけ戦争が長引くことになり、ウクライナ市民の苦難と犠牲は増え続けることが懸念されます。
中東紛争の拡大の惧れ
他方、パレスチナ(ガザ)紛争については、イスラエル軍の「過剰反撃」に国際的な批判が高まっていますが、米国はイスラエルに自重自制を求めつつも、基本的にはイスラエル支援の立場を堅持しており、状況は極めて微妙になっています。とくにトランプ氏は、以前からイスラエル贔屓で知られるので、大統領に復帰したらどう対応するか、状況がどう変わるか、大いに注目されます。
さらに気になるのは、今まで不倶戴天の敵同士として激しく対立しながらも直接対決は避けていたイランとイスラエルの間でも、この数日来、ミサイルやドローンによる攻撃が繰り返されていることです。ただ今(4月23日)現在、攻撃の応酬は一定のレベルに抑えられているように見えますが、双方が核兵器(またはその能力)を持っているだけに、今後の成り行きによっては、大変な事態になる惧れがあります。
さらに、この機に乗じてロシア、中国、北朝鮮などが何らかの形でイラン支援を加速すると、紛争は中東地域に留まらず、一気にグローバルな紛争にエスカレートする危険性もあります。
日本はどう対応するか
こうした最悪の展開の可能性も排除されない複雑微妙な国際情勢の中で、もしトランプ政権の再登場となったら、どうなるか。現時点ではあまり先走った議論は避けるべきですが、米国と同盟関係にある日本としては、対岸の火事では済まなくなるので、今のうちから日本外交の進むべき道について、しっかりした検討を進めておく必要があります。
それに関連した1つの重要な課題として、日本の防衛費増加(対GDP比2%)の問題があります。周知のようにトランプ氏はかねてからNATO諸国や日本、韓国などの同盟国に対して防衛負担コストの拡大を求めており、それに応じなければ、米国は防衛義務を果たすつもりはないと公言しています。
ちなみに、日本の防衛費は1976年の三木武夫内閣以来、おおむね1%以内を目安としてきましたが、この10年ほどで着実に増えており、23年度は過去最大の6兆8000億円余りとなりました(GDP比で1%超)。
今後政府は、新たな「防衛力整備計画」で23年度からの5年間に現在の1.6倍にあたる43兆円程度(GDPの約2%)に増額することにしています。さらに、様々な手段による「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の強化も行うことにしています。
国土を守る基本姿勢を明確に
これらは決して戦争を仕掛けるためではなく、あくまでも抑止力強化のためであり、また米国に言われてやるものではなく、日本の防衛のために自らの判断でやるものです。そして、そうした観点からみて最も重要なことは、日本の国土は日本人自身の手で守るのだという基本姿勢を憲法で明記することだと思うのですが、これについては、本欄ですでに何度か触れていますので、今回は省略します。
最後に一言付け加えれば、日本の安全保障の確保には防衛力強化などのハードウェア面だけでなく、外交や文化交流などあらゆる手段を総動員すべきであることは申すまでもありません。
●ゼレンスキー大統領、米欧の武器弾薬供給「スピードアップが必要だ」…NATO事務総長に訴え 4/30
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は29日、首都キーウで、北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長と会談した。侵略を続けるロシア軍がウクライナ東部などで攻撃を強めており、ゼレンスキー氏は米欧による武器や弾薬の供給の迅速化を求めた。
ゼレンスキー氏は会談後の共同記者会見で、ウクライナが米欧から兵器が届くのを待っている現状をロシア軍が攻勢に利用しているとの見方を示し、「迅速に(兵器が)供給されることは前線の安定化を意味する」と述べた。米国からの追加支援の一部は既に受け取っているとしつつ「スピードアップが必要だ」と訴えた。「ロシアはさらなる攻撃を準備している。我々は味方の国々とともに、ロシアの攻勢を止めなければいけない」とも強調した。
ストルテンベルグ氏も記者会見で、「(ウクライナ軍の)弾薬不足はロシア軍が前線で前進することを可能にしている」と指摘し、各国が供与を発表した兵器をできるだけ早くウクライナに届けるよう呼びかけた。
ロシア軍による都市部へのミサイル攻撃も続いている。英字ニュースサイト「キーウ・インディペンデント」によると、29日には南部オデーサが攻撃を受け、少なくとも4人が死亡、32人が負傷した。
●ヨーロッパで徴兵制復活の動き、ドイツ国防相「兵役停止は誤りだった」…デンマークなどは女性も対象 4/30
欧州各地で長く停止していた徴兵制を復活させたり、兵役の対象者を拡大したりする動きが広がっている。ドイツで兵役再開の是非が議論されているほか、すでに再開した国もある。ウクライナ侵略を続けるロシアへの警戒感に加え、北大西洋条約機構(NATO)の同盟国である米国への信頼低下が背景にある。
定員割れ
ドイツのボリス・ピストリウス国防相は今月4日、ドイツ連邦軍の組織改革に関する発表の中で、若年層の新規入隊拡大へ向けた方策を検討していると明らかにした。
ドイツではかつて18〜27歳の男性を対象に、原則として兵役が義務付けられていたが、2011年に停止され、現在は軍の定員割れが常態化している。
ピストリウス氏は兵役の停止について、「誤りだった」とした上で、徴兵制を維持している北欧諸国の兵役の仕組みに関心があると表明した。何らかの形で義務的な兵役の再開を目指す意向とみられる。
すでに徴兵を再開した国もある。旧ソ連バルト3国の一つであるラトビアは今年1月、18年ぶりに徴兵制を復活させ、18〜27歳の男性に原則として11か月間の兵役を義務付けた。
旧ユーゴスラビアのクロアチアでは、09年のNATO加盟直前に兵役が停止されたが、地元メディアによると、再開へ向けた調整が進んでいる。
トランプ氏
各国に共通するのは、ロシアとNATOの間で軍事衝突が起きた場合、現状の兵力ではロシア軍の侵攻を防げないという危機感だ。欧州では冷戦後、大半の国が兵員規模を縮小させてきた。ロシアのウクライナ侵略をきっかけに各国が軍備増強に転じる中、いかに兵員不足を補うかが喫緊の課題となっている。
訓練中の徴集兵と言葉を交わすデンマークのフレデリクセン首相(左、3月)=ロイター
NATOの盟主、米国の動向も欧州の焦りに拍車をかけている。欧州防衛への関与に否定的な発言を繰り返す共和党のトランプ前大統領が11月の大統領選で勝利し、返り咲く可能性がある。NATOの抑止力低下に直結しかねず、欧州としては看過できない問題だ。
女性も対象
すでに徴兵制がある国でも、制度の強化と拡充の動きが見られる。
バルト海を挟んでロシアと向き合う北欧デンマークは今年3月、26年から女性を徴兵対象に加えると発表した。英BBCによれば、欧州で女性に兵役を義務付けるのはスウェーデンとノルウェーに続いて3か国目だ。デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は「戦争をしたいからではなく、避けたいから再軍備するのだ」と抑止力強化の意図を強調した。
ただ、兵役再開や拡大の効果に関しては、「技術的に洗練された現代の軍隊で徴集兵に何ができるのか定かではない」(英誌エコノミスト)と疑問視する声もある。
国民の支持も国によってまちまちだ。フランスではマクロン大統領が17年の大統領選で兵役再開を公約したが、対象となる若者らの反発で今も実現の見通しは立っていない。
徴兵制とは…自由の制限巡り反発も
Q 徴兵制とは。
A 国家が国民に一定期間の兵役を義務付ける制度で、志願制と区別される。18歳前後の男性を数か月から年単位で徴集するのが一般的だ。軍に必要な人員を確保し、組織的な行動や兵器の操作に習熟させることで、有事の防衛力を高める狙いがある。
近代では、18世紀末のフランス革命時に革命政府が導入したのが始まりとされる。第1〜2次大戦期には米、英、ドイツを含む多くの国で、国民に兵役を義務付けた。日本では1873年(明治6年)に導入され、1945年の終戦まで続いた。
Q 今も徴兵制があるのはどういう国か。
A ロシアやイランなど専制国家もあれば、フィンランドやエストニアなど民主主義国もある。永世中立国スイスは、徴兵制を基盤とする徹底的な国民皆兵制度で知られる。アジアでは韓国、北朝鮮、ベトナム、タイ、シンガポールなどに兵役義務がある。
米ピュー・リサーチ・センターによる2019年時点の調査によれば、制度として徴兵の仕組みが存在するのは世界83か国。そのうち60か国で実際に施行されていた。
Q 反発はないのか。
A 国民の行動の自由が制限され、若者の人生設計に多大な影響を与えるので、どの国にも反対意見はある。韓国ではスポーツ選手や芸能人の兵役免除について、しばしば論争が起きている。
一部の国は宗教上の事情などを理由に「良心的兵役拒否」を容認し、社会奉仕への従事などを義務付けている。一方で、徴集兵は技能と規律を身につける間に衣食住が約束され、給与も支払われるため、兵役が事実上の職業訓練や失業対策の役割を果たしている場合もある。
●NATO事務総長 “欧米諸国は約束した軍事支援を速やかに” 4/30
NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は、訪問先のウクライナで記者会見しウクライナへの軍事支援の停滞がロシア軍の前線での進軍を許したとした上で、欧米諸国は、約束した軍事支援を速やかに実施する責任があると強調しました。
NATOのストルテンベルグ事務総長は29日、ウクライナの首都キーウでゼレンスキー大統領と会談しました。
会談後の記者会見で、ゼレンスキー大統領は、アメリカなどから約束された追加の軍事支援について「わが軍へのタイムリーな支援という点では私はまだ何も前向きなものは見ていない。物資の供与はわずかに始まっているが、これを加速させる必要がある」と述べ、支援の早期の実施を求めました。
これに対しストルテンベルグ事務総長は、軍事支援が停滞したことで、ウクライナ軍が弾薬不足となり、ロシア軍の前線での進軍を許したとの認識を示しました。
そのうえで「いま、より多くの支援が送られているところで、ウクライナの勝利のためにはまだ手遅れではない。われわれの責任は、供与すると発表された武器や弾薬を一刻も早く、実際に届けられるようにすることだ」と述べ、欧米諸国は、約束した軍事支援を速やかに実施する責任があると強調しました。
ウクライナ軍は、深刻な弾薬不足や防空システムのミサイル不足を背景に、東部の前線でロシア軍の進軍を許すなど厳しい状況が続いていて、欧米側の支援がいかに迅速に届けられるかが焦点となっています。
●ウクライナ大統領、武器供与の加速訴え NATO事務総長と会談 4/30
ウクライナのゼレンスキー大統領は29日、首都キーウ(キエフ)で北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長と会談した。戦況は西側諸国からの武器供給のスピードに左右されるとし、ロシア軍が一部戦線で攻勢を強める中、ウクライナへの武器供与加速を訴えた。
ゼレンスキー大統領は会談後の共同記者会見で、ウクライナ軍への迅速な支援という点において「現時点でポジティブな兆候は見らない」とし、小規模の武器供与が始まったものの、「このプロセスを加速させる必要がある」と要請した。
米国では先週、ウクライナへの610億ドルの支援法が成立し、ウクライナへの兵器輸送が始まっているもよう。
ストルテンベルグ氏はNATO加盟国がここ数カ月、軍事支援の約束を果たせていないことを認めた上で、武器や弾薬の供給は今後増加する見通しとし、米国の支援に加え、英独首脳がウクライナ支援へのコミットメントを示しているほか、オランダも支援を拡充したことを指摘。追加支援が「戦況の好転に寄与するだろう」と述べた。
●ゼレンスキー氏、武器供与を急ぐよう要求 「ロシアが遅滞につけ込んでいる」 4/30
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は29日、西側からの武器の供与が遅れており、ロシアがそれにつけ込んで攻勢に出ているとして、支援を急ぐよう求めた。
アメリカ政府は24日、610億ドル(約9兆6000億円)規模の対ウクライナ追加軍事支援予算を成立させた。
ゼレンスキー氏はこの日、支援の一部は届き始めているが、もっと急ぐ必要があると述べた。
この発言は、北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長とキーウで会談後の、共同記者会見で出た。
ゼレンスキー氏は、「私たちがパートナーから、とりわけアメリカから物資を待っている状況に、ロシア軍がつけ込もうとしている」と主張。
「それこそまさに、物資の迅速な供給が前線を安定させる理由だ」と述べた。
ゼレンスキー氏は特に、砲弾と防空システムが必要だと強調。「ウクライナのパートナーはそれらを保有している。ロシアのテロリストの野望を打ち砕くため、それらはウクライナで使われているべきだ」と訴えた。
そして、「ロシア軍はさらなる攻撃を準備している」と付け加えた。
NATOトップはまだ勝利できると
ストルテンベルグ氏は共同会見で、「何カ月間かウクライナは装備で劣勢にあり、弾薬を配給せざるを得なくなっている」と説明。武器が必要だとするウクライナの主張に同調した。
そして、アメリカの支援が半年遅れたことが「戦場に深刻な結果」をもたらしたとした。
ただ、武器が届けられればその流れは変わると楽観していると表明。「ウクライナの勝利はまだ遅過ぎではない」との見方も示した。
そのうえで、「私たちの友好国は、これまで以上に何ができるか検討しており、近いうちに新たな発表があるだろう。ウクライナの緊急のニーズに応えるため、私たちは懸命に努力している」と述べた。
ストルテンベルグ氏はまた、ウクライナが望んでいるNATO加盟はいつか実現すると強調した。一方で、7月に米ワシントンで開催されるNATO加盟国の首脳会議に正式招待される可能性は低いと付け加えた。
南西部や東部で爆撃
ウクライナでは29日、黒海に面した南西部の港湾都市オデーサでロシアのミサイル攻撃があった。
現地当局によると女性3人と男性1人の計4人が殺害され、32人が負傷した。負傷者には4歳と16歳の子どもや妊婦が含まれているという。地元で「ハリー・ポッターの城」と呼ばれていた建物も損壊した。
一方、ロシアは同日、ウクライナ東部での攻撃で、セメニウカ村を占拠したと発表した。2月に占拠したアウディイウカの北に位置する。ロシアは28日にも、近くのノヴォバフムティウカ村を掌握したとしていた。
ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は28日、ロシアの複数の攻撃を受けて前線の状況は悪化していると説明。東部ドネツク州で陣地から部隊を引き上げたと述べた。
●ウクライナ南部オデーサの教育施設にミサイル、5人死亡 負傷者多数 4/30
ウクライナ南部オデーサに29日、ロシアからのミサイル攻撃があり、地元の当局者によると、教育施設で少なくとも5人が死亡し、32人が負傷した。
オデーサ州のキペル知事によると、負傷者には子供と妊婦が含まれ、4歳の子どもを含む8人が重体となっている。
ウクライナ海軍のプレテンチュク報道官は、クラスター弾頭を搭載した弾道ミサイル「イスカンデルM」による攻撃を受けたとしている。
ロイター・テレビの映像には、攻撃によりほとんど破壊された法律学校の屋根が映っていた。一部でまだ火が燃えており、消防士らが消火活動を続けた。
生徒の一人はミサイルが撃ち落とされたときに火災が起きたとロイターに述べた。
ネットに投稿された写真には建物が燃え、煙が立ち上る様子が写っていた。路上で治療を受ける人々を映した動画も見られた。
●バイデン大統領 人質解放に向けエジプトとカタールに協力要請 4/30
イスラエルとイスラム組織ハマスの間で人質の解放や戦闘の休止に向けた交渉が行われる中、アメリカのバイデン大統領は交渉の仲介役を務めるエジプトとカタールの首脳と相次いで電話で会談し、人質の解放の実現に向けた協力を要請しました。
イスラエルとハマスの間では、人質の解放や戦闘の休止に向けた交渉が行われていて、イスラエル側は、人質が解放されれば戦闘の終結について協議する用意があるとの姿勢を示していると伝えられています。
こうした中アメリカ・ホワイトハウスは29日、バイデン大統領がエジプトのシシ大統領、そして、カタールのタミム首長と相次いで電話で会談したと発表しました。
会談ではイスラエルとハマスの間の交渉についてそれぞれ意見が交わされ、バイデン大統領は交渉の仲介役を務めるエジプト、カタールの両国とともに交渉で提案されている内容が完全に履行されるよう取り組んでいくことを確認したということです。
そのうえで、バイデン大統領は「今、即時停戦とガザの民間人の救済に向けた唯一の障壁となっているのが、人質の解放の問題だ」として両首脳に、人質の解放の実現に向けて、あらゆる手段を尽くすよう要請したとしています。
バイデン大統領は現在、ブリンケン国務長官を中東に派遣し、交渉の進展を目指して、関係国との協議を活発化させています。
●ウクライナ支援 内向きの米国への憂い 4/30
米国で、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援を盛り込んだ緊急予算が成立した。米議会内の対立を経て、4カ月ぶりに支援を再開したが、米国が内向きとなれば、武力による一方的な現状変更が横行しかねないか危惧する。
独キール世界経済研究所によると、2022年にロシアによる侵攻が始まって以降、米国からウクライナへの支援は718億ドル(11兆円超)。国内総生産(GDP)比では欧州諸国よりも低いが、額としては突出する。
支援予算が枯渇してきた昨年10月、バイデン大統領は追加の予算案を示し、議会に可決を要請したが、議会下院の多数派を握る野党・共和党が「ウクライナより米国内を重視するべきだ」と反発したため可決できず、昨年末で資金が尽きた。
戦費不足に陥ったウクライナ軍は苦戦を強いられ、市民を含めた死傷者は増えている。
共和党の反対は「米国第一」を掲げ、支援に反対するトランプ前大統領の影響だ。米政府は今回、融資による支援というトランプ氏の案を一部反映させて可決にこぎつけたが、それでも共和党の保守強硬派は反対した。
軍事支援をいつまでも続けることはできないし、「自分たちの税金は自国に」という保守派の主張ももっともではある。
しかし、ロシアは08年にジョージア、14年にはウクライナのクリミア半島に侵攻。当時の国際社会の甘い対応が今回のウクライナ侵攻につながったことは否めない。
イスラエルはパレスチナ自治区ガザへの攻撃を続け、中国は台湾への軍事圧力を強めている。北朝鮮はミサイル発射を繰り返す。
無法を放置すると、武力による一方的な現状変更を禁じた国連憲章を空文化させ、暴力が幅を利かせる世界を招来しかねない。それは米国にも脅威になるだろう。
トランプ氏が大統領に再選すれば、対外支援は削減される可能性が高く、国際情勢の不安定化を招き、その影響は米国にも及ぶ。国際法への挑戦には毅然(きぜん)と立ち向かう米国であるべきだ。眼前の人気取りに拘泥してはならない。
●G7 気候・エネルギー・環境相会合の閣僚声明案が判明 4/30
イタリアで行われているG7=主要7か国の気候・エネルギー・環境相会合の閣僚声明案が明らかになりました。温室効果ガスの削減対策が取られていない石炭火力発電について、2030年代の前半をメドに段階的に廃止することなどを盛り込んでいます。
イタリアのトリノで行われている今回の会合では、去年のCOP28で世界全体の気候変動対策の進捗を評価した「グローバル・ストックテイク」を受けて、温室効果ガスの削減対策などを議論しています。
明らかになった閣僚声明案では、世界全体で削減を進めるため、G7以外の各国に対し、2030年以降の温室効果ガスの新たな削減目標を来年のはじめまでに提出するよう働きかけるとしています。
また、削減対策が取られていない石炭火力発電について、2030年代の前半か、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えるための目標に沿う形で段階的に廃止するとしています。
さらに再生可能エネルギーでは、2030年までに世界全体の発電容量を3倍に引き上げるため、蓄電池などによる電力の貯蔵量を今の6倍以上の1500ギガワットにする方針を盛り込みました。
自動車の脱炭素化では、多様な方法で排出量を削減し、電気自動車の充電インフラを強化する方向です。
海洋汚染につながるプラスチックごみでは、分布状況を把握するさまざまな手法を取り入れながらデータを集めるとしています。
●ウクライナ、勝利まだ可能 NATO事務総長 4/30
北大西洋条約機構(NATO)のイエンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)事務総長は29日、ウクライナの首都キーウを訪問し、同国がロシアに勝利することは「まだ可能」だとの認識を示した。
ストルテンベルグ氏はウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領との共同記者会見で「ウクライナはここ数か月間は劣勢に立たされ、弾薬の使用も制限を余儀なくされた。それでも、ウクライナが勝利を収めることはまだ可能だ」と述べた。
同氏は、米国の追加軍事支援の決定が何か月も遅延したことで「戦場に深刻な影響があった」と認めた上で、NATO加盟国はさらなる支援を検討しており、「近日中に新たな発表がある」との見通しを示した。
ロシア軍はここ数週間、米国からの武器・弾薬の追加供与分がウクライナの前線に到着する前に攻勢を強めている。
この日は黒海(Black Sea)に面したオデーサ(Odesa)で、ロシア軍のミサイル攻撃により少なくとも4人が死亡、27人が重軽傷を負った。 
●国連安保理の「宇宙非核化決議案」を拒否したプーチンが訪中で企む「中露宇宙支配構想」 4/30
またもや、ロシアと中国との間に不穏な動きが見え隠れしはじめた。
4月24日に開かれた国連安全保障理事会において、日米両国が共同提出した「宇宙空間での軍拡競争を阻止する」とする決議案に対し、ロシアが拒否権を行使、中国も棄権したことで、結果的に理事国15カ国中2カ国の賛成が得られず、決議案が否決された。
1967年に締結された宇宙条約は、地球の周回軌道上に核兵器など大量破壊兵器を配備することを禁じている。今回提出された決議案は同条約の順守義務を確認し、各国に協力を求めるというものだった。
「ところが、ロシアは『(日米による)身勝手な策略だ』という理由で拒否権を行使したのです。宇宙条約は安保理常任理事国である米英仏中露を含む100カ国以上が批准しています。プーチン大統領自身も、宇宙空間での核兵器配備には反対を表明している。にもかかわらず、今回の決議案に賛成しないのは、裏に何かあると勘繰られても仕方ないでしょう。実際、米メディアは『ロシアが人工衛星の破壊を目的とした核兵器を開発中』と報道してもいますからね。そして、そんなロシアとの関係を再構築しようとしているのが、今回、常任理事国で唯一棄権に回った中国です」(国際部記者)
中国とロシアとの間には深く長い結びつきがあるのは言をまたない。ただ、近年の北朝鮮によるロシアへの急接近で、両国の関係がギクシャクしているとも言われていた。
「中国としては、アメリカに対抗するため、なんとしても宇宙空間を支配したいという思いがあり、そのためにはロシアの協力が必要不可欠なのです。一方、ロシアにしても、ウクライナ戦争を通じ、軍事、経済を含め中国の協力なしでは成り立たないことを痛感した。そんなお互いの利害関係を背景に、改めて関係強化を確認するため行われるのが、5月のプーチン氏による訪中だとみられています」(前出・記者)
両首脳の会談が実現すれば、2023年10月に北京で開催された直接会談以来だ。2人が「宇宙の覇権」について実際に意見を交わすのか、世界中が関心を高めている。
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●プーチン氏、「予測不能」警戒か=トランプ再選シナリオに―米大統領選 5/1
ロシアのプーチン大統領は、11月の米大統領選で共和党のトランプ前大統領が返り咲くシナリオに一定の警戒感を抱いているもようだ。
「親ロシア」とされるトランプ氏だが、問題なのは行動や発言が読みにくい「予測不能」な面。ウクライナ侵攻でロシアが主導権を握りつつある現在、民主党のバイデン政権の継続が有利と判断している可能性もある。
「(ロシアにとって望ましいのは)バイデン氏。より経験豊富で予測可能な昔ながらの政治家だ」。プーチン氏は2月の国営テレビの取材で、選挙戦に関する質問に初めて口を開いた。
「米国民が選んだ指導者と協力する」と中立を装ったが、バイデン氏の方が「扱いやすい」という意味にも捉えられた。手ごわい相手ということになったトランプ氏は「最大の賛辞だ」と歓迎。プーチン氏はその後、肩入れと受け取られかねない発言を封印した。
ロシアによる2014年のウクライナ南部クリミア半島「併合」と22年の全面侵攻は、米国が民主党政権時代に起きたという共通点がある。対立する西側諸国の盟主・米国の動きが予測可能だとロシアも作戦を立案しやすいが、反対に予測不能な場合、慎重にならざるを得ない。
16年米大統領選では、プーチン氏に近い実業家だった故プリゴジン氏の企業が偽情報を流し、トランプ氏の勝利につながるよう工作したとされる。ただ、ロシアは基本的に民主、共和両党の両にらみ。党派対立を先鋭化させて米国に分断をもたらすことが、自らの国益にかなうと判断しているとみられる。
もっとも、トランプ氏が再選すれば、最大限「利用」する公算が大きい。プーチン氏は2月、西側メディアの取材を原則拒否する中、米保守系FOXテレビの看板司会者だったカールソン氏のインタビューに特例で対応。視聴する共和党支持者に働き掛けた。トランプ氏がウクライナ支援に難色を示しているのを念頭に「武器供与をやめよ。数週間で戦争は終わる」とけしかけた。
●ジョージアでデモ隊と警察衝突、「外国の代理人」法案に抗議 5/1
旧ソ連構成国ジョージアで30日、外国から資金提供を受けている団体を規制する「外国の代理人」法案に抗議するデモが行われ、治安部隊が催涙ガスなどを使ってデモ隊を排除した。野党や西側諸国は同法案がロシアの影響を受けていると批判している。
ロイター記者は一部の警察官が瓶などを投げたデモ隊に暴行し、催涙ガスや放水銃などを使って議会周辺から排除するのを目撃した。
法案は資金の20%以上を国外から受けている団体に外国の代理人として登録を義務付ける内容。反対派はロシアで同様の法律が言論弾圧に使用されているとし、「ロシアの法律」と呼んで反発している。
米英や昨年12月にジョージアに加盟候補国の地位を与えた欧州連合(EU)も法案に批判的で、EUは統合に向けた進展が滞る可能性があるとしている。
17日に法案が第1読会を通過して以降、数千人のデモ隊が連夜トビリシ中心部の通りを封鎖している。
「ジョージアの夢」など与党勢力が支配する議会は法案を可決する可能性が高い。
●トランプ氏、WSJ記者の解放呼び掛け 5/1
ドナルド・トランプ前米大統領は、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のエバン・ゲルシコビッチ記者(32)はロシアの刑務所から解放されるべきだと語った。
トランプ氏は4月30日に掲載された米タイム誌とのインタビューで「この記者は解放されるべきで、実現するだろう」と話した。インタビューは4月12日に行われた。
ゲルシコビッチ氏は2023年3月29日、記者として取材中にスパイ容疑でロシア当局に拘束された。本人、WSJ、米政府は容疑を断固として否定している。
共和党の大統領候補指名を確実にしたトランプ氏は、これまでゲルシコビッチ氏の窮状について公の場で発言したことがなかった。
なぜもっと早くゲルシコビッチ氏の釈放を求めなかったのかとのタイム誌の質問に、「他にも取り組んでいることがたくさんあるからだ。何百もある」と回答した。
「私はおそらく彼を非常にほめてきた」とし、「報道されなかったのかもしれない。彼はとても勇敢な若者だと思う」と続けた。また「私とバイデン氏の違いはここだ。私なら彼を釈放させる」とし、「(ロシア大統領のウラジーミル・)プーチン氏は彼を釈放するだろう」と語った。
●「もしトラ」で米「核の傘」頼れない…ドイツに核武装論が浮上 欧州核抑止、求める声も 5/1
11月の米大統領選を前に、ドイツで独自の核武装論が浮上した。ウクライナ戦争でロシアが勢いづく中、米国で同盟軽視のトランプ政権復活の可能性が浮上し、「米国の『核の傘』に頼れなくなる」という不安が現実味を帯びたためだ。
政府重鎮が爆弾発言
ドイツは北大西洋条約機構(NATO)の核共有の枠組みで、国内に米国の核爆弾を貯蔵している。NATO欧州で独自に核兵器を持つのは英仏2国だけだ。
リントナー独財務相は2月、「トランプ前大統領再選」を視野に、英仏と核協力を結ぶ選択肢に触れた。
独紙フランクフルター・アルゲマイネに寄稿し、「英仏が戦略能力をわれわれの集団安全保障に用いる場合、どういう政治、経済条件を付けるだろう。われわれは、どこまで貢献できるか。欧州平和がかかっており、困難な問題を避けるべきではない」と主張。間接的表現ながらドイツ核武装の可能性に踏み込んだ。リントナー氏は、ショルツ政権の第3与党「自由民主党(FDP)」党首でもある。
ショルツ首相の与党、社会民主党(SPD)の重鎮カタリーナ・バーリー欧州議員も、欧州連合(EU)としての核武装を考慮すべきだとの立場を示した。トランプ政権が復活すれば「米国は頼れなくなる」と警鐘を鳴らした。
ショルツ氏は「現状では重要な話ではない」と核論議に距離を置く。だが、核抑止力への不安はウクライナ支援に表れている。
ウクライナのゼレンスキー大統領は4月、ショルツ氏が「ドイツが核武装していない」ことを理由に長射程ミサイル供与を拒んだと明かした。ウクライナは英仏から長射程ミサイルの提供を受け、ロシアが併合したクリミア半島で露軍施設を攻撃している。核兵器を持たないドイツは英仏と異なり、ロシアの報復に強い懸念を抱いているということだ。
ドイツの核論議は4年前、1期目のトランプ政権時代にも浮上した。米欧同盟に亀裂が入り、フランスのマクロン大統領が「我が国の核兵器を欧州の集団安保に役立てる用意がある」と述べ、協議を呼び掛けたのがきっかけだった。当時のメルケル独政権は結局、応じなかった。背景には、米国のドイツ離れを招くという懸念があった。
「米国から1000発買うべき」
今回はウクライナ戦争で、欧州安保の自助努力は待ったなしの課題となった。トランプ氏が2月、同盟国が十分な防衛負担をしなければ「ロシアに『好きにやれ』とけしかける」と発言したことで、核論議に火が付いた。バイデン大統領が再選されても、米国は中国対策でアジア重視に傾き、「欧州離れ」は止まらないとの見方も強い。
ドイツの著名な政治学者、マキシミリアン・テルハレ氏は独紙ウェルトで、ドイツの核武装を主張し、英仏独3国で核抑止体制を作るべきだと訴えた。英仏の核弾頭は合わせて550個で「ロシアに対抗できない」と現状を評価。「米国から核弾頭を1000発買えばよい」とも述べた。
ドイツの東隣ポーランドでは、ドゥダ大統領が米国の核配備受け入れに意欲を示した。「NATO東翼の強化になる」と訴え、核共有国になりたいと名乗りをあげた。一方でマクロン氏は、再び欧州諸国に核兵器をめぐる協議を呼び掛けた。トランプ再選のシナリオを視野に、各国が動き出している。
NATOの核共有で、欧州で米国の核爆弾配備を受け入れているのは現在、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、トルコの5カ国。1970年代、ドイツ(当時は西独)では核配備への抗議運動が広がり、東西冷戦後も核廃絶を求める声は強かった。核武装が中央政界で真剣に論じられるようになったことは、安全保障観が様変わりしたことを示している。
●ガザ南部ラファ侵攻、休戦合意の「有無にかかわらず」実施 イスラエル首相 5/1
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は4月30日、イスラム組織ハマスとの戦闘休止合意の有無にかかわらず、パレスチナ自治区ガザ地区南部の街ラファへの侵攻を開始すると述べた。
イスラエルとハマスの間では、ガザ地区での戦闘休止と、イスラエル人人質の解放をめぐる合意が模索されている。
しかし、ネタニヤフ首相は人質の親族と面会した際、「合意の有無にかかわらず」侵攻すると述べた。
アメリカは先に、民間人が適切に保護される計画のないラファ侵攻には反対だと、イスラエルに改めて警告していた。
米ホワイトハウスの声明によると、ジョー・バイデン米大統領は4月28日にネタニヤフ氏と電話会談し、ラファについて「明確な立場を繰り返し伝えた」という。バイデン氏は以前、ラファへの侵攻は「レッドライン(越えてはならない一線)」だと述べていた。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は30日、ラファへの攻撃は「耐えがたいエスカレーション」になるだろうとし、「イスラエルに対して影響力を持つすべての人々が、それを阻止するために全力を尽くす」よう求めた。
ラファには現在、ガザの人口250万人の半数以上が集まっている。他の地域での戦闘から逃れてきた人たちで街は過密状態で、家を追われた人々は食料や水、薬が不足していると話している。
パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区を拠点とするパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は29日、ラファ侵攻は「パレスチナ人の歴史上最大の大惨事」となるだろうと述べた。
合意すれば「侵攻見送り」とも報じられる中
イスラエル情報筋が29日にロイター通信に語ったところによると、ハマスとイスラエルとの戦闘休止合意が成立すれば、ラファ攻撃計画は見送られ、「平穏持続期間」が優先されるという。
28日には、イスラエルのイスラエル・カッツ外相が、「合意が成立すれば、我々は(ラファ)作戦を中断する」と述べていた。
ところが、ネタニヤフ氏は30日、イスラエルがラファですべての目的を達成するまで戦闘は続くと主張した。
「すべての目標を達成する前に戦闘を停止するという考えは論外だ」
イスラエル首相官邸の声明は、「我々はラファに入り、完全な勝利を達成するために合意の有無にかかわらず、そこ(ラファ)にいるハマスの大隊を排除する」としている。
また、人質の家族はネタニヤフ氏とツァヒ・ハネグビ国家安全保障顧問に対し、強まる国際的圧力を無視して戦いを続けるよう求めたという。一方で、別の多くの人質家族は、いかなる犠牲を払ってでも愛する人を取り戻すための合意に応じるよう、政府に対して公然と抗議している。
昨年10月7日のハマスによる前例のないイスラエル攻撃では、253人が人質とされた。このうち約130人がいまも行方不明で、少なくとも34人は死亡したと推定されている。
アントニー・ブリンケン米国務長官は29日、イスラエルの「極めて寛大な戦闘休止の申し出」をハマスが受け入れることを望むと述べた。
こうした中、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は、迫りくる侵攻がラファの人々を「絶え間ない心的外傷性ストレス障害」の状態に陥れていると警告した。
「人々はまだ、ラファからの避難を求められていないが、今週中に合意に至らなければそうなりかねないという雰囲気がある」と、ラザリーニ氏は記者団に語った。
「現地にいる私の同僚たちからは、人々が絶え間なく心的外傷を受けていると聞いている」
ICC、イスラエル関係者に逮捕状を準備か
ネタニヤフ氏は、オランダ・ハーグにある国際刑事裁判所(ICC)がイスラエル政府の複数の指導者や軍司令官に対し、ガザでの戦闘に関連した容疑で逮捕状を発行する準備を進めている可能性があるとする最近の報道について、「歴史的規模のスキャンダル」だと非難した。
「一つはっきりさせておく。ハーグでもほかのどこかでも、いかなる決定も、この戦闘におけるすべての目標を達成するという我々の決意を損なうことはない」
「イスラエルは自由世界の指導者たちが、このスキャンダラスな手段に、イスラエルだけでなく世界のすべての民主主義国家の自衛能力を損なう手段に、強く反対することを期待している」と、ネタニヤフ氏は述べた。
これまでのところ、ICCのカリム・カーン検察官からの発表はないが、同検察官の事務所は2014年6月以降、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区、東エルサレム、ガザ地区における戦争犯罪疑惑について正式な調査を行っている。昨年10月7日のハマスの攻撃と、それに続くガザでの戦闘も調査対象になるとカーン氏は認めている。
ICCの設置法「ローマ規程」は、国際犯罪の責任を負う者に対して自国の刑事裁判権を行使することが、すべての国の義務だと定めている。イスラエルは「ローマ規程」に批准したことが一度もない。ネタニヤフ氏はICCには「何の権限もない」と主張している。しかしICCは2015年、パレスチナ側が批准しているためICCには管轄権があると判断した。
ホワイトハウスのカリーン・ジャン=ピエール報道官は29日、アメリカはICCに管轄権があるとは考えておらず、調査は支持しないと述べた。アメリカはイスラエルと同様に「ローマ規程」に批准していない。
●ミサイル攻撃で死者5人、「ハリー・ポッター城」にも被害 ウクライナ南部 5/1
ロシア軍によるミサイル攻撃が4月29日、ウクライナ南部の港湾都市オデーサにあり、ウクライナ当局によれば、少なくとも5人が死亡、30人以上が負傷した。
ウクライナ検事総長室が公開したこの攻撃の映像には、海辺に近い地域で数十発の小型爆弾が数秒のうちに爆発する様子が映っていた。
当局が公開した他の動画や写真には、教育機関の円すい形の塔や屋根が炎に包まれる様子が映っている。この建物はその外観が似ていることから、地元では「ハリー・ポッター城」と呼ばれている。
ウクライナ当局は、ロシアが弾道ミサイル「イスカンデル」とクラスター弾を使用して攻撃を行ったとみている。
ウクライナのコスチン検事総長は「攻撃現場から半径1.5キロ以内で金属片とミサイルの破片が回収された」と述べ、ロシア軍が多数の犠牲者を出す目的でクラスター弾を使用したと信じるに足る根拠があると付け加えた。
この攻撃で負傷した30人の中には、子ども2人と妊婦1人が含まれているという。
20棟近くの住宅やインフラ施設が被害を受けた。
一方、ロシア当局はウクライナ南部クリミア半島の防空システムがウクライナによる大規模なミサイル攻撃とドローン(無人機)攻撃を迎撃することに成功したと発表した。
ロシアの軍事ブロガーによると、標的は飛行場だという。
クリミア半島とロシアを結ぶ橋は、戦争に必要な物資を供給するための重要な輸送路であり、一時的に通行止めとなったが、その後再開された。
ロシア当局によると、この攻撃には主に、米国が提供した長距離ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」6発が使われた。防空システムによってすべてのミサイルの撃墜に成功したという。
ウクライナはコメントしておらず、CNNはロシアの主張を確認できない。撃墜による爆発を捉えた映像や画像はほとんど出てきていない。
●ロシア軍 全土を目標に市街地への攻撃と占領地の拡大進める 5/1
ウクライナ東部のハルキウでは30日、攻撃によって死傷者が出るなど、ロシア軍は、全土を目標にした市街地への攻撃を続けるとともに占領地の拡大も進めています。
ウクライナ東部ハルキウ州の知事によりますと30日、中心都市のハルキウに攻撃があり男性1人が死亡したほか、9人がけがをしたということです。
ロシア軍は、東部や南部などウクライナ全土を目標にした攻撃を続けていて、ウクライナのコスティン検事総長は30日、南部オデーサ州で29日にあった5人が死亡した攻撃について殺傷能力が高いクラスター弾を搭載した短距離弾道ミサイル「イスカンデル」が使用されたと明らかにし非難しました。
一方、ロシア軍は東部の前線でも攻勢を強め占領地の拡大を進めています。
ロシア軍が重視している1つがドネツク州バフムトの西側にある拠点チャシウヤルです。
アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは、29日、ウクライナ当局者の話としてチャシウヤルの掌握に向けてロシア軍が兵員2万5000人を投入して攻勢を強めていると伝えました。
高台にあるチャシウヤルをロシア軍が掌握した場合ウクライナ側の補給拠点が攻撃範囲に入るとしていて「欧米各国の支援が早期に前線に届きロシアの前進を食い止められるかは依然として不透明だ」と指摘しています。
●南部攻撃にクラスター弾 検事総長、ロシアを非難 5/1
ウクライナのコスチン検事総長は4月30日、南部オデッサで29日にあったロシア軍のミサイル攻撃について、クラスター(集束)弾が使われたと発表した。クラスター弾は親爆弾から多数の子爆弾を広範囲にまき散らす。コスチン氏は「可能な限り多くの民間人を殺害しようとした」と非難した。
コスチン氏によると、弾道ミサイルの弾頭にクラスター弾が使われ、半径1.5キロにわたって金属片が飛び散った。オデッサの攻撃では5人が死亡し、30人以上が負傷した。
ロシアは2022年2月の侵攻開始の直後からクラスター弾を多用。一方のウクライナも、米国供与のクラスター弾を実戦に投入している。
●NYダウ3営業日ぶり値下がり、終値570ドル安の3万7815ドル 5/1
30日のニューヨーク株式市場でダウ平均株価(30種)は3営業日ぶりに値下がりし、終値は前日比570・17ドル安の3万7815・92ドルだった。
30日午前に米労働省が発表した雇用関連指標が市場予想を上回り、根強いインフレ(物価上昇)圧力への懸念が広がった。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ開始時期が遠のくとの見方が強まり、投資家心理が悪化した。
個別銘柄では、建設機械大手のキャタピラーや航空機大手ボーイング、IT大手マイクロソフトなどの下げが目立った。
IT企業の銘柄が多いナスダック店頭市場の総合指数の終値は325・26ポイント安の1万5657・82だった。
●ウクライナのNATOへの信頼低下、武器納入の遅れで=事務総長 5/1
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は、ロシアが侵攻したウクライナではNATO加盟国に対する信頼が「低下している」との見解を示した。ロシアとの戦闘に向けた武器納入の遅れなどが要因という。
ウクライナ訪問後にロイターの取材に応じたストルテンベルグ氏は29日夕、ウクライナに対する国際的な軍事支援の調整を再構築する時期に来ていると指摘。「予測可能性と一層の説明責任、負担分担を確保するためには、より強固で組織化された支援の枠組みが必要だ」と訴えた。
NATO加盟国の支援が不十分だった例として、米議会が約600億ドルのウクライナ支援策を可決するのに6カ月かかったことや、欧州諸国が約束よりもはるかに少ない砲弾しか提供しなかったことを挙げた。これらが戦場で大きな影響を及ぼしてロシアが先手を取り、弾薬不足のウクライナ軍は守勢に回ることを迫られている。
ストルテンベルグ氏は「約束したものを提供していないということは信頼を低下させた」と言及。一方でウクライナは今もNATO加盟国を信じており、加盟国が支援を提供するかどうかにかかっているとの認識を示した。
●ウクライナ、米国製長距離ミサイルでクリミア攻撃 ロシア迎撃 5/1
ロシア当局は30日、ウクライナがクリミアに向けて発射した米国製の長距離ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」を迎撃したと発表した。
ATACMSは射程が最大300キロメートルの地対地ミサイル。米国は先週、ウクライナに引き渡したと明らかにしていた。 もっと見る
ロシア国防省は6発のATACMSを迎撃したと発表。国防省は迎撃した場所は明らかにしていないが、ロシアが一方的に併合したクリミアの親ロシア派トップ、セルゲイ・アクショーノフ氏は、ATACMSはクリミア半島上空で撃墜されたとしている。
●米バイデン大統領 “ハマスが妨げ” 合意実現に全力あげる考え 5/1
イスラエルとイスラム組織ハマスの間で戦闘の休止や人質の解放に向けた交渉が行われる中、アメリカのバイデン大統領は「ハマスが唯一の妨げになっている」と指摘し、仲介国とともに合意の実現に全力をあげる考えを示しました。
イスラエルとハマスは、戦闘の休止や人質の解放に向けた交渉を行っていて、ハマス側が先月29日にエジプトで協議した内容を持ち帰り、対応を検討していると伝えられています。
この交渉についてアメリカのバイデン大統領は先月30日、SNSに投稿し、交渉の仲介役を務めるエジプトやカタールの首脳と前日に行った電話会談で「ガザ地区での即時停戦と人質を解放するための合意に向けて話し合った」としました。
そのうえで「ハマスが唯一の妨げになっている」と指摘し、エジプトなどと協力して交渉で提案されている内容の完全な履行を確かなものにし、人質を解放するために全力をあげる考えを示しました。
バイデン大統領は現在、ブリンケン国務長官を中東に派遣し、交渉の進展を目指して、関係国との協議を活発化させていて、ブリンケン長官は訪問先のヨルダンで「あとはハマスに委ねられている。もう遅れや言い訳は許されない。行動する時は今だ」と述べました。
ブリンケン長官はこのあとイスラエルでネタニヤフ首相とも会談する予定です。
●米アマゾン 3月まで3か月間決算 AI需要の高まり背景に増収増益 5/1
アメリカのIT大手、アマゾンのことし3月までの3か月間の決算は、AI需要の高まりを背景にクラウド事業が好調だったことなどから増収増益となりました。
アマゾンが4月30日に発表したことし1月から3月までの3か月間の決算によりますと、▽売り上げは前の年の同じ時期と比べて13%増加して1433億1300万ドル、日本円でおよそ22兆6000億円、▽最終的な利益は前の年の同じ時期の3.3倍の104億3100万ドル、日本円でおよそ1兆6400億円と増収増益となりました。
AI需要の高まりを背景に生成AIを活用したクラウド事業の売り上げが前の年の同じ時期と比べて17%増加しました。
また、広告事業の売り上げも好調で業績を押し上げました。
ジャシーCEOは決算説明会で「顧客企業は生成AIを活用して事業を変革することを期待している」などと述べたうえで、クラウド事業に力を入れていく方針を示しました。
アメリカのIT大手の間ではマイクロソフトや、グーグルの親会社のアルファベットもAI需要の高まりを背景にこの期間の決算が増収増益となっていて、各社の間で生成AIの開発や活用の競争が一段と激しくなっています。
●ケニアで発生の大規模洪水 48人が死亡 大統領が被災者見舞う 5/1
東アフリカのケニアで先月(4月)29日、大規模な洪水が発生し、これまでに48人が死亡したとしてルト大統領は、現地で被災者を見舞うとともに雨がさらに続くとみられるとして避難を呼びかけました。
ケニア西部のマイマヒウで先月29日、洪水が発生して住宅や車などが流され、ルト大統領は、これまでに48人が死亡したとしているほか、行方不明者の捜索が続いています。
AP通信が29日に撮影した映像には、根元からなぎ倒された多数の流木が積み上がる中、被災した住宅の片づけをする住民の様子が写っていて、被害の大きさがうかがえます。
この洪水について当初、ダムの決壊が原因とされていましたが、水・衛生・かんがい省は、声明を発表し、水路にがれきが詰まり、たまった水が一気に流れ下ったという見方を示しました。
ルト大統領は30日、現地を訪れ、被災した人を見舞うとともに雨がさらに続くとみられるとして避難を呼びかけました。
ルト大統領によりますと、3月から相次ぐ豪雨や洪水により、ケニアでは死者があわせて171人に上っているということです。
●米大統領「ハマスが妨げ」 合意に全力挙げる考え 5/1
イスラエルとイスラム組織ハマスの間で戦闘の休止や人質の解放に向けた交渉が行われる中、アメリカのバイデン大統領は「ハマスが唯一の妨げになっている」と指摘し、仲介国とともに合意の実現に全力を挙げる考えを示しました。
米バイデン大統領 仲介役のエジプトなどと電話会談
イスラエルとハマスは、戦闘の休止や人質の解放に向けた交渉を行っていて、ハマス側が先月29日にエジプトで協議した内容を持ち帰り対応を検討していると伝えられています。
この交渉についてアメリカのバイデン大統領は30日、SNSに投稿し、交渉の仲介役を務めるエジプトやカタールの首脳と前日に行った電話会談で「ガザ地区での即時停戦と人質を解放するための合意に向けて話し合った」としました。
そのうえで「ハマスが唯一の妨げになっている」と指摘し、エジプトなどと協力して交渉で提案されている内容の完全な履行を確かなものにし、人質を解放するために全力を挙げる考えを示しました。
バイデン大統領は現在、ブリンケン国務長官を中東に派遣し、交渉の進展を目指して関係国との協議を活発化させていて、ブリンケン長官は訪問先のヨルダンで「あとはハマスに委ねられている。もう遅れや言い訳は許されない。行動する時は今だ」と述べました。
ブリンケン長官はこのあとイスラエルでネタニヤフ首相とも会談する予定です。
イスラエル首相 ハマスの壊滅 目指す姿勢強調
戦闘を続けているイスラエルとハマスは、エジプトなどの仲介で戦闘の休止や人質の解放に向けた交渉を行っていて、ハマス側が先月29日にエジプトで協議した内容を持ち帰り、対応を検討していると伝えられています。
この交渉についてイスラエルのネタニヤフ首相は30日、人質の家族などとの面会の場で「すべての目的を達成する前に戦争をやめるという考えは論外だ。合意の有無にかかわらず完全な勝利に向けガザ地区南部のラファへ部隊を進める」と述べ、あくまでハマスの壊滅を目指す姿勢を強調しました。イスラエル軍は、多くの住民が避難するラファへの地上作戦の準備を進めていますが、イスラエルのカッツ外相は、27日、交渉によって人質が解放されれば、ラファへの地上作戦を見合わせる考えを示していました。
これに対しては、政権内の極右勢力などから批判の声が上がっていて、ネタニヤフ首相の発言はこうした批判が背景にあるとみられます。一方、ハマスは、人質解放の条件として、あくまで完全な停戦の実現を求めています。
中東の衛星テレビ局アルジャジーラは「ネタニヤフ首相の発言は交渉全体を踏みにじるものだ」とのパレスチナ人の識者の見方を伝えていて、ハマス側が反発し、交渉に影響を与える可能性も出ています。
“病気や飢えで死の危険に直面”
イスラエル軍がガザ地区に激しい攻撃を続ける中現地で医療活動を続ける国際NGO「国境なき医師団」は29日、ガザ地区南部ラファの厳しい医療状況についての報告書を発表しました。
報告書は「ガザの静かなる殺害」とのタイトルがつけられており、医療システムが崩壊したガザ地区で人々は病気や飢えで死の危険に直面しているとしています。
具体的にはラファの2か所の診療所で週平均およそ5200件の外来診療を行っているとしていて、劣悪な衛生環境の影響とみられる下痢、気管支や皮膚の症状を訴える患者が多いとしています。
さらに、ことし1月中旬までは栄養失調の症例を確認できなかったものの、その後、急速に増加し、3月末までには5歳未満の子どもで中等度または重度の栄養失調となっている症例が216件確認されたとしています。
イスラエル軍による攻撃が続き、深刻な食料不足が住民の健康悪化につながっていることがうかがえます。
また報告書では、妊娠7か月になるまで検査や診察を受けられず、出産予定日すら知らなかった女性や、出産できる場所がなくトイレで出産したものの、赤ちゃんが亡くなっていた事例があったとしています。
国境なき医師団はこうした状況を改善するためにラファへの地上作戦の停止と一刻も早い停戦を訴えています。
“ICCがイスラエル政府高官に逮捕状の可能性”報道
イスラエル軍のガザ地区での軍事作戦をめぐって捜査を続けているICC=国際刑事裁判所がイスラエル政府の高官に逮捕状を出す可能性があるとする報道が、イスラエルやアメリカのメディアで相次いでいます。
これについてイスラエルのネタニヤフ首相は30日の声明で「ICCはイスラエルに対して何の権限も持っていない。戦争犯罪の疑いで軍の司令官や国の指導者に逮捕状を出すことは、歴史的に恥ずべきことだ。もし実際に逮捕状が出されれば人類にとって消えない汚点となる」と強く反発しました。
またヘルツォグ大統領も30日、「イスラエルの基本的権利を否定するためにICCなどの国際機関を悪用するいかなる試みにも反対する」とする声明を出しました。
アメリカのニュースサイト、アクシオスは、ネタニヤフ首相が28日に行ったアメリカのバイデン大統領との電話会談の中で、ICCが逮捕状を出すのを阻止するよう依頼したとも伝えていて、イスラエルがICCの動きに警戒を強めていることをうかがわせています。
米国務長官「あとはハマスに委ねられている」
アメリカのブリンケン国務長官は30日、訪問先のヨルダンで、記者団に対し、イスラエルとイスラム組織ハマスの間で行われている戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉について「イスラエルは強力な提案を交渉のテーブルの上にのせ、譲歩する意思があることを示したため、合意に至ることが可能だと考えている」と述べました。
そして「あとはハマスに委ねられている。もう遅れや言い訳は許されない。行動する時は今だ」と述べ、ハマスに対し提案に応じるよう強く求めました。
一方、ガザ地区への人道支援について、ブリンケン長官は「重要な進展は見られるが、まだもっとやるべきことがある」とした上で、このあと、イスラエルでネタニヤフ首相などと会談すると明らかにしました。
国連事務総長「攻撃阻止へ全力を」
国連のグテーレス事務総長は30日、ニューヨークの国連本部で記者会見し、イスラエル軍がガザ地区南部ラファへの地上作戦の準備を進めていることについて、「ラファへの軍事攻撃が行われれば、耐え難いエスカレーションとなり、さらに何千人もの民間人が殺害され、何十万人もが避難を余儀なくされるだろう。ガザ地区のパレスチナ人に壊滅的な影響を及ぼし、ヨルダン川西岸、そしてより広い地域に深刻な影響を及ぼすだろう」と強い危機感を示しました。
その上でグテーレス事務総長は「イスラエルに影響力を持つすべての関係者に対し、攻撃を阻止するために全力を尽くすよう求める」と訴えました。
そしてイスラエルとイスラム組織ハマスの間で戦闘の休止や人質の解放に向けた交渉が行われていることについて、「ガザの人々のため、人質にされている人々とイスラエルで待つその家族のため、そしてより広い世界のため、わたしはイスラエルとハマスが合意に達することを強く求める」と述べ、これ以上の事態の悪化を防ぐために交渉で合意に至るよう双方に呼びかけました。
米大統領補佐官「ラファでの大規模な地上作戦は望んでいない」
アメリカ・ホワイトハウスのカービー大統領補佐官は30日、ガザ地区南部ラファへの地上作戦をめぐり、記者団からネタニヤフ首相の発言に対する見解を問われたのに対し「ネタニヤフ首相自身に語ってもらいたい」と述べるにとどめました。
一方で「われわれはラファでの大規模な地上作戦は望んでおらず、避難してきている人たちの安全を考慮しない作戦は見たくない。そのことはイスラエル側に伝えてある。彼らはわれわれの懸念を理解している」と述べ、ラファへの大規模な地上作戦を支持しない立場を改めて示しました。
また、カービー補佐官はイスラエルとイスラム組織ハマスの間で行われている戦闘の休止や人質の解放に向けた交渉について「テーブルの上には新しく、いい提案がある。ハマスがそれを受け入れることが本当に重要だ」と述べました。
そして「提案はイスラエルが誠意をもって交渉したもので、この取り引きを成立させようとするイスラエル側の真剣さに疑いの余地はない。この取り引きによって人質は解放され、6週間、どこにも戦闘がなくなることになる」と強調しました。
米国防長官「戦闘地域の住民保護に必要なことを」
ガザ地区南部のラファへの地上作戦をめぐって、アメリカのオースティン国防長官は30日、議会下院軍事委員会の公聴会で「彼らは、戦闘地域にいる住民を保護するために必要なことを行わなければならない。もし、作戦を行うのであれば、住民たちの安否を確認し、望むべくは、戦闘地域から移動させなければならない」と述べ、イスラエル軍が住民の保護を十分に考慮せず、無計画に突入することには反対だという考えを重ねて示しました。
その上で「彼らが言うところでは、作戦は順を追って行われ、住民たちを考慮し、危険な場所から避難させるとしている」と述べました。
一方、仮に、イスラエルが無計画に突入した場合、アメリカがイスラエルへの軍事支援を停止する可能性については「それは大統領が決めることだ」と述べるにとどめました。
●徴兵逃れのウクライナ人「保護しない」 ポーランド高官 5/1
ポーランドのアンジェイ・シェイナ(Andrzej Szejna)外務次官は4月30日、自国に滞在している徴兵を逃れたウクライナ人を「保護」しない意向を表明した。ポーランドはこの問題について、欧州連合(EU)に対応を求めている。
ウクライナはロシアによる侵攻が2年以上に及ぶ中、兵員の補充に力を入れている。最近では、軍の動員対象年齢の下限を27歳から25歳に引き下げ、徴兵逃れを取り締まる法律を改正。
先週には、国外在住の18〜60歳の男性を対象に、パスポートの発給を停止する法令を発布し、ポーランドなど国外に滞在する対象者の反発を招いた。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、今年2月時点でポーランドでは95万2104人のウクライナ人が難民登録されており、このうち16%に当たる15万2656人が徴兵対象年齢に当たる。
シェイナ氏は公共放送ポーランド・テレビに対し、「わが国が徴兵忌避者を保護することは決してない」と主張。
徴兵対象年齢のウクライナ人男性の扱いについて、現時点でウクライナから正式な要請は受けていないとした上で、「要請があれば、国内法と欧州法にのっとって行動する」と述べた。
ポーランドとリトアニアは先週、それぞれ自国に滞在している徴兵対象年齢のウクライナ人男性の帰国を支援する用意があると表明した。
ポーランドのブワディスワフ・コシニャクカミシュ(Wladyslaw Kosiniak-Kamysz)国防相は、ウクライナから徴兵対象者の移送支援を要請された場合、ポーランドは同意するかとの質問に対しては「すべては可能だ」と回答。4月30日には、この問題に関して「欧州の解決策」を求めた。
●明日の世界はマトリックス?米で発禁のロシア思想家に元FOX司会インタビュー 5/1
FOXニュースの元看板司会、タッカー・カールソン氏は29日、ロシアの政治思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏のインタビューを公開した。
カールソン氏は昨年FOXニュースを解雇された後、自身のストリーミングサービス「タッカー・カールソン・ネットワーク」を中心に活動している。以前から親ロシア的だとして批判を浴びることのあったカールソン氏は、今年2月、プーチン大統領との単独インタビューを実施している。
ドゥーギン氏は2015年に初めて米国の制裁対象とされた。当時の発表によると、ウクライナの平和や領土保全を脅かす政策に関与したほか、ユーラシア青年同盟の指導者で、ドネツク地方の自称ドネツク人民共和国で戦う人材を採用していた。ロシアのウルトラナショナリストのプラットフォームで西側を標的とした偽情報を拡散したウェブサイト「Geopolitica」を管理しているとされる。
カールソン氏は冒頭、英語圏で「プーチンのブレーン」として知られるドゥーギン氏は、ロシアでは政治的立場の人物ではなく、哲学者だと紹介。2022年8月に起きた娘の暗殺事件に触れつつ、危険思想だとして米国では著書が発禁になったと前置きし、「英語メディアが極右と描く」ドゥーギン氏の考えについて、視聴者に判断を委ねると述べた。
約20分間のインタビューで、カールソン氏の言うところの西側で起きている「自滅的」な状況について見解を求められたドゥーギン氏は、「誤った人間理解」に基づく個人主義から始まっていると主張。個人主義はリベラルイデオロギーの中心コンセプトに置かれ、そのリベラリズムは、すべての集合的アイデンティティからの解放のプロセスだと考えを語った。
解放のプロセスは、集合的アイデンティティとしてのカトリック教会の否定からはじまり、国家主義への反乱、共産主義やファシズムに対するリベリズムの勝利を経て、今はジェンダーからの解放に至ったと主張。性が選択となった後に残る最後のステップは、「人間のアイデンティティからの解放」だと語った。
人間になることから自由になること、人間になるかどうかを選択できることが明日の政治アジェンダであり、それが自身のアングロサクソン世界に対する見方だと述べたほか、そうした世界は、マトリックスやターミネーターといったハリウッドSF作品にすでに描かれているとも語った。
●ウクライナ戦争で「北の経済が回復」…背後には「ロシア」が 5/1
「2022年から2年にわたり続いているウクライナ戦争が、北朝鮮の経済回復の基になっている」という報道が伝えられた。
英国経済紙のフィナンシャルタイムズ(FT)は28日(現地時間)、消息筋からの話を引用し「北朝鮮の経済状況はここ数か月間、ロシアからの食糧や原資材および石油の供給によりかなり改善している」と伝えた。
北朝鮮の工場の多くは最近、生産能力を超えるほど稼動している。
北朝鮮がロシアとより密着するようになった背景には、2022年に始まったウクライナ戦争がある。韓国の民間研究所“セジョン(世宗)研究所”のピーター・ワード研究委員は「ウクライナ戦争は、北朝鮮に大きな恩恵をもたらした」と語った。
ロシアは先月、北朝鮮に対する国連安保理制裁決議の履行を監視する国連専門家パネルの任期延長案に関して、拒否権を行使し否決させた。このことについてFTは「事実上、対北制裁の中心軸が崩壊した」と伝えた。
FTは「米政府の制裁リストにあげられた北朝鮮船舶は、数十万バレルの石油を積載するためロシアの港を利用している」とし「これはウクライナとの戦争で、北朝鮮がロシアに武器を供給したことへの代価だとみられる」と説明した。
ことしの2月から北朝鮮はロシアに対し、これまで新型コロナウイルス感染症事態により中断していた団体観光を再開した。また、北朝鮮駐在ロシア大使館は「北朝鮮当局と、モスクワ-ピョンヤン(平壌)間の鉄道・フェリー・自動車路線ついて話し合っている」と明らかにした。
韓国のシン・ウォンシク(申源G)国防相は「北朝鮮の経済状況はここ数か月間、ロシアの食糧・原資材および石油の支援によりかなり改善した」と語った。
●「グローバルサウス」代弁=安保理改革含め日本と協力―邦人記者団と会見・ブラジル大統領 5/1
ブラジルのルラ大統領は4月30日に行われた邦人記者団との会見で、貧困や飢餓、気候変動、国際機関改革などに積極的に取り組む方針を示した。新興・途上国「グローバルサウス」の代表格として課題を代弁した格好で、日本との協力に強い意欲を見せた。
グローバルサウスとの連携を重視する岸田文雄首相は3日、ブラジリアでルラ氏と会談する。外遊出発に当たり「2国間関係、国際場裏での連携を確認したい」と表明した。
ルラ氏は会見で、世界では昨年1年間で軍事費として2兆ドル(約315兆円)以上が支出されたと指摘し、「食料や雇用創出に使われていたら世界はずっと良くなっていた」と嘆いた。「人類の生活水準を改善するやり方を検討し始めなければならない」と述べ、ブラジルが今年の議長国を務める20カ国・地域(G20)などで議論を進める方針を示した。
また、ウクライナなど各地での紛争激化を受け軍事費が膨らんでいる背景には、国連安全保障理事会の機能不全があると強調。その上で「今回の(ウクライナでの)戦争は、国連が無力であることを示した。安保理に他国の代表がもっといれば、こうした争いは回避できる」と訴えた。
安保理改革では、日本やドイツ、インドと共に「G4」の枠組みで常任理事国入りを目指す方針を改めて示したほか、他の中南米諸国や50カ国以上あるアフリカ諸国などの参加を通じた安保理の拡大にも支持を表明。「現在の国連に欠けている地政学を反映させる」狙いがあると語った。
日本に対しては、ルラ政権が看板政策として掲げるアマゾン熱帯雨林の保護で協力を求めたほか、ブラジルの再生可能エネルギー分野などへの投資を呼び掛けた。日本はブラジルと同様に平和主義を掲げているとし、「地理的にはとても遠いが、人道主義的な考えや感覚は非常に近い」と親近感をアピールした。 
●トランプもバイデンも結局同じか。 アメリカ覇権が後退し続ける混沌世界の到来 5/1
バイデンは歳のせいか、弱気も弱気
バイデンは、ときとして激しくプーチンを非難し、対ロシア強硬発言をする。しかし、そのバックのネオコンを排除してしまえば、今後、それは口先だけになるだろう。「私が大統領になれば即座にウクライナ支援をやめる」と言ったトランプと同じ路線になりかねない。オバマ、トランプとアメリカの世界覇権を弱め、世界を混沌とさせてきたが、バイデンもまたそうしよとしている。
ウクライナにいつまでたっても、最大射程300キロの地対地ミサイル「ATACMS」や戦闘機「F16」を供与せず、制空権をロシア優位にさせているのを見ると、バイデンはただの臆病者にしか見えない。弱気も弱気で、戦争勃発当初から、プーチンの「核の脅し」に怯んでいる。年のせいだろうか。
かつて、若きケネディはソ連の脅しにけっして怯まなかった。
現在、ロシアは無傷のクリミアや領土内からウクライナのインフラを狙ったミサイル攻撃や航空機爆撃を繰り返している。モスクワでの大規模テロもウクライナと西側が関与したとして、プーチンは攻勢に出ている。
イスラエルの強硬姿勢で迷走するワシントン
ネオコンを排除せずとも、バイデンはハナから優柔不断で、アメリカ覇権を後退させてきた。イスラエルーハマス戦争を見れば、これは歴然で、アクセルとブレーキの2本立て外交を行っている。
イスラエルが、ガザ地区南部ラファへの地上作戦を行うと宣言したら、これを止めに入った。世論調査でイスラエルの軍事作戦を「支持しない」とした人間が55%を超えたため、人権と世論に配慮したからという。
イスラエルーハマス戦争が起こってからというもの、ワシントンの迷走ぶりはひどくなった。3月18日、バイデンはネタニヤフに対しラファ作戦への懸念を表明し、それに替わる作戦を協議するために代表団の派遣を要請した。ところが、安保理の停戦決議で、アメリカが拒否権を行使しなかったためネタニヤフは怒り、代表団派遣を中止した。
アメリカとイスラエルの関係からいって、こんなことは過去になかった。
いったい、バイデンはどうしたいのだろうか? 
自由、民主主義、人権、そして市場経済を守るには、それを重視しない勢力への法厳守の要請と交渉だけでは不可能である。バイデン外交は「抑止と協力の2本立て」と言うが、いったん始まった戦争においてそんなことが成立するわけがない。
ロシア優勢は表面だけで内実は異なる
最近の西側と日本の報道を見ていると、ウクライナ戦争もイスラエルーハマス戦争も、即時停戦すべき。停戦はやむを得ないといった論調が目立つ。
その理由は、ウクライナ戦争においては、ロシアが優勢であること、イスラエルーハマス戦争においては人権が顧みられていないことという。
しかし、ウクライナ戦争におけるロシアの優位は、単に西側の支援が減っただけ。ロシアが勢力を増しているからではない。一部メディアは、ロシアへの経済制裁は効かず、ロシア経済は持ちこたえていると報道しているが、そんなことは見せかけにすぎない。
プーチンはフェイク選挙で大統領になったとたんに、首都で反ロシアの大規模テロを起こされた。さらに、必死になってキーウやハリクウの攻略を目指そうと、新たに15万人を徴兵する大統領令に署名したが、各地で抵抗運動を起こされている。
●プーチン大統領の「核戦争宣言」を実現に向かわせる岸田首相の恐ろしい“訪米土産” 5/1
ロシアのプーチン大統領が「核戦争の準備ができている」と明言している。
これは、ウクライナやNATO(北大西洋条約機構)加盟国への脅しと評判だが、プーチン政権が危機に直面した場合、核を使用する可能性は「極めて高い」とみられているのだ。
「プーチン大統領が核戦争発言≠ノ及んだのは今年3月に行われた国営メディアのインタビューでした。『ロシアの主権が脅かされれば核兵器を使用する用意がある』と明言。ただ、『現時点では差し迫った状況ではない』としたものの、『米国がロシア領やウクライナに派兵すれば戦争への介入と見なす』とも指摘し、核の使用を示唆したのです」(外信記者)
プーチン大統領は、米国が核実験を実施すれば、ロシアも行う可能性があるとも強調。実際に準備を進めているという。
安全保障に詳しいアナリストが解説する。
「実際、北極圏の核実験場では、核爆発を伴わない臨界前核実験の準備を進めているとみられています。さらに、4月12日にはロシアで核戦力を運用する戦略ロケット軍が、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射試験を成功させているんです」
日本が“米国の盾”にされる!?
ちなみに、ロシアは現在米国を上回る世界最多、約6000発もの核弾頭を保有しているとされる。
「戦略核戦力としては、新型のICBM『サルマト』や潜水艦発射弾道ミサイル『ブラバ』搭載の原潜配備を進め、核弾頭搭載可能な地上発射型ミサイル『イスカンデル』や、空中発射型弾道ミサイル『キンジャル』なども保有しています」
しかも、これらの戦略核兵器が、わが国に向けられる度合いが急速に高まっているというのだ。
「4月上旬に訪米した岸田首相は、バイデン大統領と『グローバルパートナーになる』と宣言したが、これは米国の先兵≠ニして世界の紛争地域に駆り出される意味を持っている。米国が今以上にウクライナ侵攻に介入すれば、核保有国である米国を攻撃できないロシアが、日本を標的にすることも十分あり得るのです」(軍事ジャーナリスト)
日本が米国の盾≠ノされてしまうかもしれない。
●ウクライナ オデーサでロシアのミサイル攻撃相次ぐ 5/1
ウクライナ南部のオデーサでは、今週に入ってロシア軍によるミサイル攻撃が相次いでおり、複数の死傷者が出ています。ロシア側は攻勢を強めていて、ロシアの国防相は攻撃のペースを維持するために部隊にさらに兵器を供給する必要性を強調しています。
ウクライナ南部オデーサ州の知事はSNSで1日、ロシア軍の弾道ミサイルによる攻撃で民間の施設が損傷するなどし、3人が死亡し、3人がけがをしたと明らかにしました。
オデーサ州では今週に入って、先月29日にもロシア軍によるミサイル攻撃で5人が死亡しています。
この攻撃について、ウクライナのコスティン検事総長は30日、殺傷能力が高いクラスター弾を搭載したミサイルが使用されたとして、非難しています。
一方、ロシア国防省は1日、ショイグ国防相がウクライナの前線の状況について現場の司令官などから報告を受けたと発表し、この中で「必要な攻撃のペースを維持するために、部隊に供給する兵器の量と質を上げる必要がある」と述べたということです。
ロシア軍は、ウクライナ東部の前線で攻勢を強めている一方、ウクライナ軍にはアメリカの追加の軍事支援が決まったことで、近く兵器が供与される見通しです。
こうした中でのショイグ国防相の発言は、ウクライナ側が兵器を増強するのに対抗して、ロシアとしても態勢を一段と強化しようというねらいがうかがえます。
●米国の支援再開の中、ロシア中枢で権力闘争か?国防次官逮捕 ウクライナは動員強化へ 5/1
アメリカは、半年ほどの議会の混乱の末、4月24日に約610億ドル(日本円で約9兆4000億円)のウクライナ支援予算を可決し、砲弾や兵器の供与が再開された。
ウクライナ軍は戦線を立て直し、主導権を取り戻すことができるのかが注目される。
一方、ロシア国内ではウクライナ侵攻のキーマンであるショイグ国防相の側近の国防次官が逮捕された。ロシアの権力中枢で、いま何が起きているのか?
1) イワノフ国防次官逮捕 ショイグ国防相の影響力低下?
4月23日、ウクライナ侵攻を担うロシアのイワノフ国防次官が、国防省が発注した契約で多額の賄賂を受け取った疑いで勤務中に逮捕された。
「賄賂を受け取った疑い」とされるが、実は「反逆罪」の疑いから逮捕されたとも報じられている。
ロシア独立系メディアは、FSB(ロシア連邦保安庁)に近い情報源の見解として「賄賂は国民への口実だ。国家反逆罪は大スキャンダルなので、まだ公にはしたがらないようだ。」「汚職の罪で彼を拘束する人は誰もいなかっただろう。クレムリンの誰もがずっと前から彼の汚職を知っていた。プーチン大統領はこれが「反逆事件」だと確信して初めて命令を出した」と報じた。
逮捕されたイワノフ国防次官は、ショイグ国防相が2012年にモスクワ州知事に就任した当時からの側近で、最も近い人物の一人だとされる。
アメリカのコーネル大学の歴史学者シルビー准教授は、「ショイグ国防相が次に逮捕されたり、あるいは突然引退したりしても驚かない。強力であればあるほど、独裁者にとっては存亡の脅威となる」と、真の狙いはショイグ国防相だと指摘している。
イワノフ国防次官の逮捕について、駒木明義氏(朝日新聞論説委員、元モスクワ支局長)は、次のように述べる。
本当に反逆罪だったか実態は現時点ではまだわからないが、彼が非常に汚職を働いていて、ものすごいお金を使っているというのは皆知っているので、内部でそういう話が出ているということはうなずける。プーチン政権批判の急先鋒だった故ナワリヌイ氏のチームも、彼の汚職を調査し動画で発表していた。特にイワノフ氏の元妻が、南仏の保養地に非常に豪華な別荘を毎年借りて贅沢なパーティーを開いたり、ヨットを借りて、費用はマリウポリの復興を担当する企業に付け回ししていた、など非常に噂の絶えない人物であり、いつ逮捕されてもおかしくない状況ではあった。
今回、逮捕に踏み切ったのは何らかの権力闘争があると思われる。ショイグもイワノフも、もともと軍人ではない。ショイグが国防相になって、政敵に囲まれる中で信頼のおける副官として連れてきた人物がイワノフであり、本当の腹心として庇護を与えてきたからイワノフは自由に行動できた。しかし、今回の立件はその庇護が役に立たない状況になっているということであり、ショイグ国防相はすでに大きなダメージを受けていると言っていい。おそらくこの立件の本丸はショイグ国防相ではないかと思う。
駒木氏は、プーチン大統領とショイグ国防相の関係について次のように分析した。
これまで2人は個人的に関係が良かったとされ、夏期休暇で一緒にシベリアに釣りに行く様子がわざわざ報道されるほど、プーチン大統領からの信認は非常に厚いと見られていた。そういう関係を持っている閣僚というのは、他にあまりいない。それほどの側近だからこそ今回の件の衝撃は大きい。信任が厚い国防相が影響力を失うような捜査にプーチン大統領がゴーサインを出したということが何を意味するのか。この件を画策した人物が、ショイグ国防相の影響力を削り取ろうとしたことは間違いないだろう
2) ついに動員強化措置に踏み出したウクライナ
アメリカによる支援再開で、今後の戦況に注目が集まる中、もう1つ重要なポイントとされるのがウクライナの「動員」の問題だ。ゼレンスキー大統領は軍の要望を受け入れる形で動員を強化するための措置に踏み切った。
4月25日のロイター通信の報道によると、ウクライナ国内では動員に関する法改正が可決され、徴兵年齢を27歳から25歳に引き下げ、動員された兵士が3年後に動員を解除されるという条項も軍の要望を受けて削除された。
さらに、海外の領事館の業務を一時停止し、24日には、兵役の対象年齢にある男性国民が国外でパスポートを申請することを一時的に禁止する規則を承認したと発表し、海外在住の徴兵対象者にも圧力をかけている。
ウクライナの動員強化措置について、渡部悦和氏(元陸上自衛隊東部方面総監)は以下のように分析する。
俗に3点セットというのがあり、1つ目は、兵器・砲弾の数。2つ目が兵員の数で、動員と関わる。3つ目が築城でしっかりとした陣地をつくりロシア軍を迎え撃つことだ。動員については、前総司令官も、40から50万という単位で必要だと発言していた。今回の措置だけでそれだけの兵員を動員できるかは疑問であり、ゼレンスキー大統領や議会にとっても、これだけの大規模な動員は政治的に大きなリスクとなるだろう。しかし、2年以上にわたり休みなく戦っている兵士を交代させるためにも大量動員は必要となる。ウクライナがアメリカなどに対して兵器の追加を要求しているのと引き換えに、兵士の数を増やすことを求められている。いずれにしろ非常に困難な状況であり、全体として戦いの激化は避けられないだろう。
今回のアメリカからの兵器等の支援によって、ウクライナ側がやっと戦える状況になる。しかし、兵器・砲弾、兵員の数、築城の3点セットをしっかりと整えて戦わないと、ロシア軍の攻勢を今年1年間、防ぎきることができないだろう、という危機感を私自身は感じている。
3) アメリカの支援再開の中、米中欧はどう動くのか?
アメリカの支援再開をプーチン大統領はどのように受け止めているのか?末延吉正氏(元テレビ朝日政治部長、ジャーナリスト)は以下のように分析する。
アメリカは最大規模の軍事支援をしたが、パトリオットについてはヨーロッパではドイツ以外のNATOの国がなかなか供与しない。ウクライナは防空能力を高めない限り、長期戦となると有利な状況をなかなか作っていくことはできない。
一方で、プーチン大統領は米国の支援再開は織り込み済みだろう。ロシアのやることははっきりしている。11月のアメリカ大統領選までに、国際世論などを含めた介入や様々な工作を続け、アメリカの大統領がトランプ氏に代わってもらいたいという狙いを続けるだろう。また来月、アメリカ側の中国訪問が発表された。ロシアは中国から全面的な支援を受け、北朝鮮からは弾薬を購入している。米中の間でこの戦争をどうするのかという話が進んでいかないと、先行きはなかなか見えてこない。今のロシアは自ら中国のジュニアパートナーに成り下がってしまったので、中国なくしては現在の状況を継続することはできない。大国間の外交も注目すべきポイントとなるだろう。
駒木明義氏(朝日新聞論説委員)は、以下のように述べた。
ウクライナ側がいま徐々に押されている中で、兵力を増強しようという流れは、国民からの反発も強まっていくだろう。見通しのない戦いに動員されるということになれば、当然反発も大きくなる。ロシアが戦いをやめることを模索しなければならないと、どこかで思わない限り、この戦争は終わらない。そのためにも、ロシアが少しずつ押している状況をいかに食い止めて、ベクトルを逆に向けていくことができるのか、ということが今後の焦点になってくるだろう。
●ロシア同盟国アルメニアの離反にいらだち 縮む影響圏、係争地から部隊撤収 5/1
南カフカス地方の旧ソ連構成国、アルメニアに対する同盟国ロシアの影響力が急速に低下している。ロシアは4月、アルメニアが係争地ナゴルノカラバフを巡る紛争でアゼルバイジャンに敗北したのを受け、カラバフに駐留させていた停戦維持部隊の撤収を余儀なくされた。アルメニアはロシアとの同盟解消を示唆する一方、欧米への接近を加速。ロシアはアルメニアの「離反」にいらだちを募らせている。
停戦維持部隊の撤収はペスコフ露大統領報道官が4月17日に発表。ペスコフ氏は理由を「地政学的現実の変化」だと説明した。
カラバフはアゼルバイジャン領だが、現地で多数派のアルメニア系住民がソ連末期に帰属変更を求め、両国が30年間以上にわたって対立してきた。2020年秋に両国の大規模衝突が起きた際、停戦を仲介したロシアは停戦維持部隊の現地駐留を両国に認めさせ、「勢力圏」とみなす南カフカスで影響力を拡大することに成功した。
しかし昨年9月、トルコの支援で軍備を増強したアゼルバイジャンが電撃的な作戦でカラバフを制圧。これによって露停戦維持部隊の存在意義は失われた形となっていた。
アルメニアのパシニャン首相は、加盟国支援の義務を果たさなかったとして露主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)とロシアを繰り返し批判。昨年11月のCSTO首脳会議を欠席した。
今年2月には「アルメニアはCSTOへの参加を凍結した」と述べ、ロシアのウクライナ侵略について不支持も明言。4月22日には「なぜ同盟にとどまる必要があるのかという国民の質問に私は答えられない」と、アルメニアがCSTOから離脱する可能性を示唆した。
パシニャン氏はロシアから距離を置く一方で欧米への接近を強めている。4月5日にはブリンケン米国務長官、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長らとブリュッセルで会談した。EUはアルメニアに今後4年間で2億7千万ユーロ(約453億円)を支援すると発表した。
こうした動きにロシアは反発している。露外務省のザハロワ報道官は4月、パシニャン氏の対露非難を「無根拠だ」と批判。アルメニアと欧米が軍事協力でも合意したとの報道があるとし、「アルメニアはロシアに釈明すべきだ。理想は(合意の)取り消しだ」と述べた。「欧米の狙いはロシアとアルメニアの関係破壊だ」とも主張した。
露下院のスルツキー国際問題委員長も4月、「パシニャン氏はアルメニアにウクライナの道を歩ませている」と述べ、ロシアがアルメニアに武力行使する可能性さえちらつかせた。

 

●ロシア大統領選挙 出馬阻止された女性が“新党”設立へ 5/2
ロシア大統領選挙への出馬を阻止された女性候補が、新たな政党の設立を目指しています。事実上の「反プーチン」勢力となります。
モスクワ郊外で1日、大統領選で立候補を阻止された元地方議員のドゥンツォワ氏が率いる政党「ラススベート」の設立大会が開かれ、ロシア全土50の地域から148人の代表者が集まりました。
「(なぜこの政党に参加を?)社会が平和を強く求めているからです」(出席者の男性)
政党として正式に登録し、9月の統一地方選に候補者を擁立したい考えです。今後、法務省が認めるかが焦点となります。
●プーチン氏、「予測不能」警戒か=トランプ再選シナリオに―米大統領選 5/2
ロシアのプーチン大統領は、11月の米大統領選で共和党のトランプ前大統領が返り咲くシナリオに一定の警戒感を抱いているもようだ。
「親ロシア」とされるトランプ氏だが、問題なのは行動や発言が読みにくい「予測不能」な面。ウクライナ侵攻でロシアが主導権を握りつつある現在、民主党のバイデン政権の継続が有利と判断している可能性もある。
「(ロシアにとって望ましいのは)バイデン氏。より経験豊富で予測可能な昔ながらの政治家だ」。プーチン氏は2月の国営テレビの取材で、選挙戦に関する質問に初めて口を開いた。
「米国民が選んだ指導者と協力する」と中立を装ったが、バイデン氏の方が「扱いやすい」という意味にも捉えられた。手ごわい相手ということになったトランプ氏は「最大の賛辞だ」と歓迎。プーチン氏はその後、肩入れと受け取られかねない発言を封印した。
ロシアによる2014年のウクライナ南部クリミア半島「併合」と22年の全面侵攻は、米国が民主党政権時代に起きたという共通点がある。対立する西側諸国の盟主・米国の動きが予測可能だとロシアも作戦を立案しやすいが、反対に予測不能な場合、慎重にならざるを得ない。
16年米大統領選では、プーチン氏に近い実業家だった故プリゴジン氏の企業が偽情報を流し、トランプ氏の勝利につながるよう工作したとされる。ただ、ロシアは基本的に民主、共和両党の両にらみ。党派対立を先鋭化させて米国に分断をもたらすことが、自らの国益にかなうと判断しているとみられる。
もっとも、トランプ氏が再選すれば、最大限「利用」する公算が大きい。プーチン氏は2月、西側メディアの取材を原則拒否する中、米保守系FOXテレビの看板司会者だったカールソン氏のインタビューに特例で対応。視聴する共和党支持者に働き掛けた。トランプ氏がウクライナ支援に難色を示しているのを念頭に「武器供与をやめよ。数週間で戦争は終わる」とけしかけた。
●「ロシア法」めぐり対立激化 旧ソ連のジョージア、連日の抗議デモ 5/2
旧ソ連構成国だったジョージアで、外国から資金提供を受ける団体への規制法案をめぐる対立が激化している。野党などは、政権の意に沿わない団体の活動が制限され、民主主義がないがしろにされると反発。デモを連日開くが、政権は月内の成立へ強硬姿勢を貫く構えだ。
4月30日夜に首都トビリシ中心部で開かれたデモは、数千人の参加者が議会前の通りを封鎖。「ノー、ロシア法」などと声を上げた。
深夜近くになると、周囲を警備していた警察が、催涙ガスや放水銃を使用し、一部の参加者を拘束。デモ隊も瓶を投げるなどして抵抗し、混乱が続いた。AFP通信によると、同社カメラマンもゴム製の警棒で殴打されたという。 ・・・
●ロシア軍、降伏したウクライナ兵を処刑 5/2
ロシア軍は、2023年12月初旬以来、投降しようとしたウクライナ人兵士少なくとも15人を処刑し、さらに投降中あるいは投降した6人を処刑したと見られると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した。一連の出来事は戦争犯罪として捜査されなければならない。
「ロシアがウクライナに全面侵攻して以来、ロシア軍は多くの凶悪な戦争犯罪を行ってきた」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの危機・紛争局副局長ベルキス・ヴィレは述べた。「降伏しようとしている負傷したウクライナ兵を冷酷に銃撃する超法規的処刑や殺人は、国際人道法(戦時国際法)で明確に禁じられている。これもまたこれまでの恥ずべき行いの列に加わるものである」。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ウクライナ兵少なくとも12人が明らかに超法規的に処刑された3つの事例を調査対象とし、2023年12月2日と27日、また2024年2月25日にソーシャルメディアに投稿されたドローン撮影による動画を検証・分析した。3つの事例すべてで、兵士たちは明確な降伏の意思表示を行っており、もはや敵対行為に参加していないため、国際人道法では戦闘外にあるとみなされ、攻撃の対象となってはならない。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、これら3件のうち2件の現場を映像から特定した。しかし残りの1件は、動画に詳しい地理情報が含まれていなかったため、正確な場所の特定には至らなかった。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、これら3件の事例で映像を撮影したドローンをロシアとウクライナのどちら側が運用していたのかを確認することはできなかった。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは4つ目の事例の調査として、2月19日にソーシャルメディアに投稿された動画を分析した。ロシア兵2人が降伏した非武装のウクライナ兵3人を処刑する様子を映したものだ。動画を投稿したアカウントは事件の場所を明記しているものの、ヒューマン・ライツ・ウォッチはその場所を独自に確認できていない。
5番目の事例の調査は、ウクライナ兵1人へのインタビュー、2月18日にあるテレグラム・チャンネルに投稿された動画、犠牲者の1人の家族へのインタビューを含む詳細な報道をもとにした。これらの情報は、この事件で兵士6人が処刑されたことを示唆するものの、当時の状況はあまりはっきりしていない。
これら5件のうちの1つ、2月25日の事例では、X(旧ツイッター)などネット上で広く共有された検証済みのドローン動画によると、少なくともウクライナ兵7人が2つの畑の間に生える木々に掘られた塹壕を出て、防弾服を脱いでいて、少なくとも兵士1人はヘルメットも取っていた。その上で、ウクライナ兵全員はロシア兵(腕と脚にまいた赤色のテープで識別できる)5人に銃口を向けられてうつ伏せになっていた。その後、ロシア兵3人が明らかに降伏したウクライナ兵に向かって背後と両側から発砲したのである。
ウクライナ兵のうち6人はうつ伏せのままだったが、銃撃された衝撃の反動で明らかに身体が動いた。残りの1人はもう一度塹壕に入ろうとしたが、再び銃撃された。事件はドネツク州イヴァニフスケ(Ivanivske)村付近で起きた。発生現場はGeoConfirmedのボランティアであるEjShahidによってまず特定され、その後ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査員らによって確認された。
処刑とみられるこれらの事例は、例外的とはみられない。ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた、2024年2月5日に投稿された、別の戦場での光景を捉えたロシアのドローン動画も確認している。この事件では、ウクライナ兵が降伏したかどうかはヒューマン・ライツ・ウォッチには判別できなかったものの、動画に収められた男性の声は本物だと見られるが、ドネツク州の戦場でロシア兵に命令しているようだ。その声はロシア語で「捕虜を取るな、全員射殺せよ」と言っている。動画の視聴覚分析は、ドローンがロシア製であるとの結論を裏付けている。
国連ウクライナ人権監視団が2023年3月に発表した報告書には、全面侵攻発生から1年間でロシア軍とワグネル・グループが15人のウクライナ人捕虜を処刑したことが記録されている。2023年2月から7月までを対象とする定期報告書では、国連はウクライナ人捕虜6人の超法規的処刑を記録している。2024年3月に発表されたフォローアップ報告書は2024年1月から3月について、捕虜または戦闘外に置かれている者少なくとも計32人を対象とする12件の超法規的処刑の報告があったことを確認している。国連はこのうち、ウクライナ兵7人を対象とする3件について独自に裏付けを行った。
4月9日、ウクライナ検事総長室は、54人のウクライナ人捕虜の処刑に関する27件の捜査を進めていると発表した。また、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、これらの事件に関する詳しい情報を提供することはできないと回答したが、超法規的処刑の容疑でロシア兵に3通の嫌疑通知を出しているとした。うち1通は欠席裁判ですでに判決が出ており、最近の文書では4通目があるとした。国連ウクライナ人権監視団は、全面侵攻中にウクライナ軍がロシア人捕虜を虐待した事例を記録している。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは4月22日、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相に書簡を送り、上記の事件の詳細と、降伏したウクライナ兵を捕らえるのではなく殺害するようロシア軍に命令した事実があるか尋ねた。現時点で回答はない。
国際人道法は、国際武力紛争の当事者に対し、戦闘外にあるか、捕虜となった武装勢力をいかなる状況であっても人道的に待遇することを義務づけている。こうした勢力を故意に殺害、虐待、拷問することは戦争犯罪だ。捕虜の殺害を命じたり、降伏する兵士を捕らえるのではなく処刑するようにと命じたりすることは、「助命しないことを宣言すること」にあたり、国際人道法で固く禁じられている。こうした命令は、ロシアの国際人道法上の義務はもちろん自国の軍事法規にも反するものであり、このような命令を出すことも実行することも戦争犯罪である。
ロシア政府は、国際人道法に拘束されることはもちろん、市民的及び政治的権利に関する国際規約(市民権規約)の締約国でもある。同条約では超法規的殺害が固く禁じられている。
ロシア政府はまた、国際人道法により、自国軍によるか、自国の支配領域でなされた戦争犯罪の疑いを調査し、訴追する義務を負う。しかし、30年以上にわたりヒューマン・ライツ・ウォッチが広範に収集してきたチェチェン、ジョージア、シリア、ウクライナでの国際人道法違反行為に関する情報は、ロシアが自国軍による戦争犯罪をはじめとする国際法違反行為の訴追の意思がなかったことを明確に示している。
「どの事例もおぞましいものだが、おそらく最も明確に犯罪行為を示唆するのは、少なくとも1つの事例で、ロシア軍が兵士の降伏を許さず、殺害するようはっきり命じていることを示す証拠だ。これは戦争犯罪の是認である」と、前出のヴィレ副局長は指摘した。
●米UCLAで親パレスチナ派に親イスラエル派が暴力 州知事は警察対応の「遅れ」批判 5/2
パレスチナ自治区ガザ地区での戦争をめぐり、学生らがイスラエルなどへの抗議の野営を続ける米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で1日未明、親イスラエル派の覆面集団がパレスチナ支持の学生らに暴力をふるった。警察が介入したが、対応が遅かったと批判する声が上がっている。
親イスラエル派集団と親パレスチナ派の学生の衝突は、1日に日付が変わるころに起きた。州当局と大学幹部は発生後直ちに、抗議の野営地となっているディクソン・プラザに警備員を配置したとしている。
一方、現場にいた人たちは、警察が十分に迅速に行動しなかったと指摘している。学生新聞「Daily Bruin」は「夜遅くになっても(両者の間をとりもつ)動きはなかった」と書いた。
「警察は芝生の端に立っているだけで、我々が助けを求めて叫んでも動こうとしなかった」と、抗議の野営に参加していたグループ「UC Divest at LA」は声明で主張した。
カリフォルニア州のギャヴィン・ニューサム知事は、警察の「限定的で遅れた」介入は「容認できない。これについて回答を求める」と述べた。
抗議者たちは親イスラエル派集団の襲撃が始まってから約2時間後に現場を離れ始めた。1日の夜明けごろに警察が現場を制圧し、現在は厳重な警備態勢が敷かれている。
アメリカの大学では、ガザ地区での戦争に抗議する行動が広がっており、ニューヨーク市のコロンビア大学では4月30日、学生が占拠していた建物に警察が突入し、抗議者が排除された。
コロンビア大で数週間前から始まった反ガザ戦争デモは、大学の規模や、公立か私立かを問わず、20以上の州の大学で学生らが同様の行動を起こすきっかけとなった。
抗議者たちは大学側に「ジェノサイド(集団虐殺)から資金を引き揚げ」るよう要求。武器製造企業や、イスラエルによるガザ攻撃を支援するその他の産業に大学基金を投資し運用するのをやめるよう訴えている。
パレスチナ支持の抗議者を襲撃
UCLAは1日、ウェストウッド・キャンパスの中央広場で高まる緊張を和らげようと、抗議を休講にする措置を取った。
同大は前日の4月30日、キャンパス内のロイス・ホールの陰に設置されたパレスチナ支持の野営地は、不法集会にあたると宣言した。
親イスラエル派集団はここ数日、この野営地の周辺で親パレスチナ派に対抗するデモを行っている。両者は、バリケードで囲まれた狭い緩衝地帯で隔てられている。
当局は当該エリアの警備を拡大したが、「おおむね平和的な」デモだと認識し、これを妨害することを控えたとしている。
オンラインで見られる動画では、1日に日付が変わるころ、黒い服装に白いマスクを着けた親イスラエル派の大規模集団がパレスチナ支持の野営地に到着し、バリケードを取り除こうとしている様子が確認できる。
夜空には花火や催涙ガスが飛び交った。覆面集団は棒やバットを使って野営地の抗議者を殴った。さらに、催涙ガスやクマ除けスプレーを浴びせ、パレスチナ支持派の看板やボードを破壊した。
親イスラエル派が「エスカレート」
「今夜、彼ら(親イスラエル派)はまったく新しい段階にまでエスカレートし、暴力行為を扇動し始めた」と、パレスチナ支持の学生活動家の1人はBBCに語った。
この学生活動家は、自分たちのグループは数日間にわたり「しつこい」攻撃を受けてきたと訴えた。
パレスチナ支持の学生カイア・シャー氏はロイター通信に対し、友人の1人は「ここにいた時に殴られて、後頭部に大きなたんこぶができた」と語った。
「彼ら(親イスラエル派)がここまでエスカレートするとは思ってもみなかった。私たちの抗議行動が、私たちに対抗する集団の攻撃を受けるなんて。私たちは彼らになにもしていないのに、彼らは私たちを暴力的に傷つけ、私たちに苦痛を与えている」
学生新聞「Daily Bruin」のディラン・ウィンワード記者によると、親パレスチナ派に対抗する集団は「花火やスクーター、水の入ったボトル、催涙ガス」などを投げたり噴射するなどした。
また、大学側が任命した警備チームは緩衝地帯を「安全に維持」できなくなったと考え、衝突が起きる前に撤退したと、ウィンワード氏は述べた。
同紙は、1日の早い時間に記者4人が襲撃者に暴行を受け、スプレーを浴びせられたと、ソーシャルメディアに投稿した。記者は当時、衝突の様子を携帯電話で記録していたという。
UCLAのメアリ・オサコ副学長は1日早朝に「恐ろしい暴力行為」があり、警察やそのほかの第一対応者が野営地に呼び出されたと述べた。
「我々は、この無意味な暴力にうんざりしている。これは終わらせなければならない」
ロサンゼルスのカレン・バス市長は、「まったく忌まわしい、許しがたい」衝突だと非難した。
日中になると、現場には厳重な警備線が敷かれ、一握りの抗議者たちが野営地の防備を固めていた。
夜間の混乱に関わった人々、とりわけ親イスラエル派側の人々のうち何人が、UCLAの現役学生だったのかは今も分かっていない。
米イスラム関係評議会(CAIR)のロサンゼルス支部は、今回の暴力行為は「親イスラエル過激派の暴徒」によるものだと非難した。
また、UCLAは「学生が攻撃に直面することなくガザでのジェノサイド(集団虐殺)に平和的に抗議し続けられる」ようにする必要があるとした。
「もはや言論の自由ではない」
こうした中、ロサンゼルスのユダヤ人連盟は、「学生が危険を感じるような環境が何カ月にもわたってつくられる」ことを容認したとして、UCLAの学長を非難した。
同連盟は、野営地を排除し、UCLAがユダヤ人コミュニティーのリーダーと面会することを要求した。
UCLAの学生イーライ・ツィヴス氏(19)は、暴徒は学生仲間の一員ではないとし、暴徒の行動を非難した。
ただ、結果として警察が出動したことは歓迎すると、BBCに語った。野営地の抗議者を逮捕し、キャンパス内での反ユダヤ主義的攻撃を調査するよう当局に求めているという。
「これはもはや言論の自由の問題ではない」と、この学生は述べた。「彼らは法を破っているので」。
親パレスチナ派の抗議行動は全米に広がり、外部の扇動者たちは関与を拡大しているようにみえる。こうした中、大学の指導者たちに対して親パレスチナ派の抗議行動を抑制するよう求める圧力が強まっている。
ニューヨーク市のエリック・アダムス市長は1日、コロンビア大で逮捕された約300人のうち数人について、平和的な抗議行動を「利用」した「外部の扇動者」だったと主張した。
●ウクライナ、今冬のガス貯蔵量60%引き上げへ 5/2
ウクライナ国営ガス会社ナフトガスのチェルニショフ最高経営責任者(CEO)は、外国企業と貿易業者に供給するガスについて、今冬は前年比60%増の約40億立方メートルを貯蔵したい意向を示した。
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、欧州はロシア産ガス輸入を削減した。ウクライナがガスを貯蔵することで、欧州への供給に柔軟に対応できる上、ウクライナの収益確保につながる。
チェルニショフCEOはロイターに対し、ナフトガスのエネルギー施設は3月以降、5回もロシアからの攻撃を受けたと説明。地下貯蔵施設は被害を受けていないが、生産施設は陸上にあり、より攻撃を受けやすいことから、防衛体制を強化していると述べた。
地下貯蔵施設は、大半がウクライナ西部にあり、貯蔵能力は310億立方メートル。これは、ウクライナの年間ガス消費を十分に賄える水準。欧州から供給される余剰分のガスを貯蔵し、北半球で需要がピークに達する冬場に放出できる。
チェルニショフ氏は、ガス貯蔵契約で外国の貿易業者と約100件の契約を締結したと話した。ロシアは、ウクライナとの契約で、同国経由での欧州向けガス供給を続けているが、この契約は今年12月に期限切れになる。ウクライナは、契約更新する予定はないとしている。
●米政府、ロシア防衛産業支援で制裁=中国企業など300団体・個人 5/2
米政府は1日、ウクライナ侵攻を続けるロシアの防衛産業の支援に関与したとして、中国やトルコなどの300近くの団体・個人を新たに制裁対象に指定したと発表した。制裁逃れを容認しない姿勢を示し、ロシア防衛産業の弱体化を図る。
イエレン米財務長官は声明で「防衛産業基盤や制裁逃れのネットワークを標的とし、ロシアの戦争の取り組みを一層阻止する」と強調した。
制裁には、ロシアの防衛産業の再建支援で主要な役割を担っているとして、バイデン米政権が懸念を深める中国や香港を拠点とする企業が約20社含まれた。金融機関は含まれていないもよう。
●米、中国拠点企業にも制裁 対ロシアで資産凍結 5/2
米政府は1日、ロシアによるウクライナ侵攻に絡み、ロシアなどの約300の団体や個人に制裁措置を講じると発表した。中国やアラブ首長国連邦(UAE)などに拠点を置く企業も、ロシアに重要技術や装備を提供しているとして資産凍結の対象に加える。
財務省は、中国や他国に拠点を置く団体がロシアの軍産基盤に重大な貢献をしていることを「懸念している」と説明した。イエレン財務長官は今回の措置により「ロシアの戦争能力をさらに低下することができる」とコメントした。
●米、新たな対ロシア制裁発表 中国企業を狙い撃ち 5/2
米政府は1日、ウクライナ戦争を巡るロシアへの新たな制裁措置を発表した。中国企業などを通じた制裁迂回を狙い撃ちにしている。
財務省が200近い対象に制裁を発動し、国務省は80以上の制裁対象を指定。中国と香港に拠点を置く企業は20社がターゲットとなった。
イエレン米財務長官は「財務省は一貫して、ロシアの戦争に物質的な支援を提供している企業は重大な結果に直面すると警告してきた」とする声明文を出した。
在米ロシア大使館からは今のところコメントを得られていない。
在米中国大使館の報道官は、中国政府は法規に従ってデュアルユース(軍民両用)品の輸出を監督しており、中ロ間の通常の貿易・経済的交流は世界貿易機関(WTO)の規則と市場原則にのっとっていると主張。「米国の違法な一方的制裁に断固反対する」と述べた。
●ロシア、ウクライナで化学兵器使用 禁止条約に違反=米国務省 5/2
米国務省は1日、ロシアがウクライナ軍に対して条約で禁止されている化学兵器を使用していると指摘した。
国務省によると、ロシア軍はクロロピクリンという窒息剤や暴動鎮圧剤を戦争の手段として使用しているという。
クロロピクリンは化学兵器禁止機関(OPCW、本部オランダ)によって禁止されている。OPCWは1993年の化学兵器禁止条約(CWC)に基づき査察を行うために設立された機関。
国務省は、クロロピクリン使用がCWCに違反していることを議会に報告すると説明した。
また、ウクライナ軍に対するクロロピクリン使用を促した専門部隊など、化学・生物兵器プログラムと関連があるロシアの3つの政府機関に制裁を科すと発表した。
●「戦争に巻き込まれたくない」「軍事的協力は最低限に」という「日本だけの都合と願望」がもはや通用しない理由 5/2
戦後日本は、アメリカとの同盟関係に守られてきた。しかし中国の台頭や北朝鮮の挑発など、日本を取り巻く地政学的な環境は危機の時代を迎えている。
日本はアメリカの庇護の下に平和を享受してきたため、日本だけが平和であればいいという「一国平和主義」や、戦力の不保持を規定した憲法第9条から、自衛のための実力は常に最小限であるべきという「必要最小限論」に過度にとらわれてきたのではないか。
防衛研究所の研究者である千々和泰明さんは、このような姿勢を「日本的視点」と呼び、安全保障の現実とのギャップを埋める「第三者的視点」が必要だと警鐘を鳴らす。千々和さんの新刊『日米同盟の地政学 「5つの死角」を問い直す』から要点を紹介しよう。

戦後日本は、安全保障の基軸を日米同盟にすえた。
日米同盟の根拠となっている日米安全保障条約は、1951年9月8日にサンフランシスコ講和条約とほぼ同時に署名され、その後1960年1月19日に改定されて、今日に至っている。日米同盟は、同条約を中心として、様々な制度や法律などの仕組み、あるいは思考様式によって支えられている。
一方こうした仕組みや思考様式は、日本側の「こうあってほしい」という願望や、国内政治上の都合によってかたちづくられている側面があるといえないだろうか。日本が欲しないアメリカの戦争に巻き込まれないようにしておきたい。日本によるアメリカへの軍事的な協力は最低限にとどめたい。日米同盟によって戦争を抑止することが第一なので、万が一抑止が破れたあとのことまでは考えない。
このような日本側の願望や都合にもとづく視点を、本書では「日本的視点」と呼ぶ。
日本的視点が生じるのには、主に二つの背景があると考えられる。
第一に、「一国平和主義」である。一国平和主義とは、日本と日本以外のあいだで線引きができる、との前提に立ち、日本の責任と関与は前者のみに限定すべきだ、とする戦後日本独特の安全保障観である。たとえば、「日本が戦争に巻き込まれなければそれでいい」とする考え方がこれにあたる。
第二に、「必要最小限論」という憲法解釈である。よく知られる通り、憲法第9条は「戦力」の不保持を規定している。その下で自衛隊のような実力を保持するためには、自衛隊が「戦力」でないといえなければならない。そこで、自衛隊は「自衛のための必要最小限の実力」であって「戦力」ではないため、憲法違反ではない、と公式に解釈されている。これが必要最小限論である。
この解釈に従えば、自衛のための実力は保持できるとしても、必ずどこかで「ここより内側が必要最小限」という「一線」を引かなければならないことになる。典型的なのは、国際法上認められる自衛権のうち、自国への攻撃に対する自衛権である「個別的自衛権」と、自国と密接な関係にある他国への攻撃に対する自衛権である「集団的自衛権」のちがいを、「必要最小限」という概念とひもづけ、集団的自衛権の行使は必要最小限を超えるので憲法違反とみなす解釈である。
だがこうした背景から生じてくる日本的視点は、必ずしも安全保障の現実と整合しているとは限らない。
たとえば、アメリカ軍が日本の基地から朝鮮有事に直接軍事介入するような場合、アメリカは日本政府と事前に協議しなければならない仕組みがある。日本が日本と関係のないアメリカの戦争に巻き込まれないようにしておくためであるとされる。
ところが実際には、事前協議をバイパスできる日米両政府間の「密約」が存在していたことが明らかになっている。日本が事前協議でアメリカ側の要請を拒否するなどすれば、アメリカによる韓国防衛が成立しなくなるおそれがあるからである。
日米同盟に批判的な論者は、こうした実態を「欺瞞」だとして厳しく非難する。たしかにこれは一面において正しい。
ただ、こうした批判は、ある意味で問題の矮小化になってしまっているともいえる。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増すなか、日本的視点にこだわり、このような視点に現実を従わせることがますますできにくくなってきているからである。先の例で言えば、日本が事前協議でノーの立場をとってアメリカによる韓国防衛が成立しなければ、結局日本自身の安全も脅かされるだろう。
そこで、日米同盟の抑止力を高め、平和を維持するために、「第三者的視点」を取り入れる必要がある。
日本的視点が、日本側の願望や都合に依拠するものであるのに対し、第三者的視点とは、日本以外の国ぐにの見方も踏まえつつ、現状を歴史的背景あるいは地域全体のなかに置いて俯瞰する見方で、戦略的・地政学的視点ともいえる。
今後は、日本的視点でかたちづくられ、あるいは評価されてきた日米同盟をめぐる仕組みや思考様式を、これまでの歴史も含めて第三者的視点から点検していく必要がある。日本的視点と安全保障の現実とのギャップをあぶり出し、そのようなギャップを埋めていく努力をしていかなければならない。
●全米の大学でイスラエル抗議デモ、1600人以上が拘束…震源地はコロンビア大 5/2
米ニューヨークのコロンビア大とニューヨーク市立大でイスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃に対する抗議デモが4月30日夜から激化し、警察隊と衝突した両校の学生らの拘束者数は1日までに約300人となった。抗議デモは全米の大学に拡大し、米メディアによると、これまでに1600人以上が拘束された。
一連の抗議デモの震源地となったコロンビア大では4月30日深夜、大学側の要請を受けて警察隊が構内の建物「ハミルトンホール」に突入し、占拠していた学生ら109人を拘束した。ニューヨーク市立大でも、構内を占拠した学生ら173人を拘束した。
西部のカリフォルニア大学ロサンゼルス校では30日夜から1日未明にかけてパレスチナを支持するグループに対し、反対派のグループが襲撃するなどして、15人が負傷し、このうち1人が入院した。同大は1日、休校措置を取った。
抗議デモは4月18日、警察隊がコロンビア大の構内に突入し、学生ら100人以上を拘束したことをきっかけに広がった。米紙ニューヨーク・タイムズによると、1日時点でエール大やプリンストン大など約40校で抗議デモが起きたという。
●疲弊したウクライナ軍第47旅団が死闘、ロシア軍の進撃抑える 米は補充急送 5/2
1週間あまり前、ウクライナ東部アウジーウカの北西数kmに位置するオチェレティネ村付近でウクライナ側の防御が崩れたとき、ウクライナ軍は危機に見舞われた際の慣例になっている対応をとった。
ウクライナの調査分析グループ、コンフリクト・インテリジェンス・チーム(CIT)の言葉を借りれば、ウクライナ軍の「緊急対応旅団」である第47独立機械化旅団を投入したのだ。志願兵だけで構成される第47旅団は北大西洋条約機構(NATO)の教官の訓練を受け、米国製のM1エイブラムス戦車やM2ブラッドレー歩兵戦闘車、M109自走榴弾砲を配備されている部隊だ。
第47旅団は先週、ロシア軍の第30独立自動車化狙撃旅団がオチェレティネを制圧し、ウクライナの支配地域にナイフにように突き刺さる長さ8kmほどの突出部を獲得するのは阻めなかった。それでも、求められたことはしっかりやった。緊急事態に対処し、この突出部が南へ大きく広がるのを食い止めたのだ。
とはいえ、2000人規模の第47旅団もこれまでに非常に大きな犠牲を払っており、休息や補充、再編を切実に必要としている。
実のところ、第47旅団は4月20日前後、休息のため戦線から離脱して後方に移動していた矢先に、元の陣地にロシア軍の第30旅団から攻撃を仕掛けられたのだった。オチェレチネを含む作戦区域の旅団を統括するドネツク戦術集団は、第47旅団に引き返して戦闘に復帰するよう命じた。
第47旅団のミコラ・メリニク中隊長は「仕事に戻りました」と報告している。旅団はいつものように、機動力の高いM2を走らせ、ロシア側の陣地に25mm機関砲を撃たせているようだ。
だが、メリニクは旅団が疲れ切っていることも強調し、部隊は「回復に専念するつもりでした」と吐露している。
第47旅団は昨年6月、南部反攻作戦を主導したが、ロシア側の稠密な地雷原にぶつかり、甚大な損害を被った。メリニクは片足を失った。
4カ月後、第47旅団は150kmかそこら東へ移動し、弾薬が枯渇してロシア軍に攻囲されつつあったアウジーウカの守備隊を増援した。今年2月、おびただしい血が流れた5カ月にわたる激戦の末、アウジーウカが陥落した際には、守備隊の撤退を掩護した。
その後、第47旅団は西へ移動し、オチェレティネの南方面を増強した。休息は先延ばしに、もしかすると無期限に先延ばしになり、旅団は現在もオチェレティネ付近で防御線を保っている。「あと1カ月で、1年間交代がないことになります」とメリニクは書いている。
第47旅団の戦闘大隊の兵士たちに関して特筆すべきは、たんに1年足らずの間に3つも大きな戦役で戦ってきただけでなく、旅団指導部の異常と言っていいレベルの混乱、不始末に耐えながらそうしてきたことだ。
ウクライナ国防省は、戦闘部隊を不必要に危険にさらす無謀な指揮判断をしたとして、第47旅団の指揮官(旅団長)を昨年9月以降3人更迭している。ウクライナ軍の部隊の動静を追っている調査分析サイト「Militaryland.net」は、第47旅団について「続投させるに値する指揮官を見つけるのに苦労している」と指摘している。
第47旅団の指揮官には最近、評価の高い第56独立機械化旅団を率いていたヤン・ヤツィシン大佐が任命された。第47旅団にとって過去7カ月間で4人目の指揮官だ。ともあれ、第47旅団は事実上、休みを求めていると言っていいだろう。
第47旅団はこれまでに数百人の人員を損耗している。また、オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)分析サイト、オリックス(Oryx)の集計によれば、200両あったM2歩兵戦闘車は76両が損害を被り、うち40両は撃破されるか鹵獲されている。31両あったM1戦車も、これまでに5両失ったもようだ。
第47旅団は重量69tのM1がロシア軍のドローン(無人機)の攻撃でさらに失われるのを懸念しているらしく、最近、残っているM1をいったん前線から引き揚げている。その間に部隊長たちが戦術を練り直せるようにする狙いだろう。
それには供与国の米国も協力する意向だ。米軍のクリストファー・グレイディ統合参謀本部副議長(海軍大将)はAP通信に、「ウクライナ側のパートナーや現地のその他のパートナーと協力して、(M1を)どのように使えるか考え出せるようにする」と語っている。
米国はまた、重量33tのM2を運用し、第47旅団で最も過酷な戦闘の大半を担っている強襲大隊の再建も支援する。
米議会のロシアに好都合な一部共和党議員による半年にわたる妨害のあと、米国が先週ようやく再開した対ウクライナ支援の第1弾には、M2が含まれていた。数両は公表されていないが、おそらく数十両だろう。ウクライナ軍でM2を使用しているのは第47旅団だけだ。
第47旅団は新たな指揮官のもとで指揮・統率問題を解決できるかもしれない。また、新たな戦術を考案できれば、M1を被害を抑えながら運用できるだろう。そして新たなM2が届けば、強襲大隊の車両の損失を補充できると考えられる。
だが、第47旅団がいま本当に必要としているものは、戦闘からしばし離れて休むことなのだ。
ドネツク戦術集団はオチェレティネ方面の新たな防御線を強化するために、新たな部隊を投入するとも伝えられる。そうなれば第47旅団はようやく休息をとれるかもしれない。
少なくとも短期間、あるいは次の緊急事態が起こるまでは。
●ネタニヤフ首相 “戦闘終結は受け入れられない” 5/2
イスラエルとイスラム組織ハマスの間で戦闘の休止に向けた交渉が続く中、イスラエルメディアは1日、ネタニヤフ首相がアメリカのブリンケン国務長官に「戦闘の終結を含む合意は受け入れられない」と述べたと報じました。完全な停戦を求めるハマスの主張と相反する立場で、今後の交渉は予断を許さない状況となっています。
●米 戦闘休止交渉提案 ハマス側に応じるよう迫るも“返答なし” 5/2
イスラエルとイスラム組織ハマスの間で戦闘休止に向けた交渉が続く中、イスラエルを訪問したアメリカのブリンケン国務長官は、双方が合意すれば恒久的な停戦につながる可能性を示唆したうえで、ハマスに対し交渉で示されている提案に応じるよう迫りました。アメリカのホワイトハウスはハマス側からの返答はまだないとしています。
イスラエルを訪問したアメリカのブリンケン国務長官は1日、ネタニヤフ首相と、イスラエルとイスラム組織ハマスとの間で続く戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉などについて協議しました。
そしてガザ地区への人道支援を届けるトラックが通行するケレム・シャローム検問所などを視察しました。
一連の日程を終えたブリンケン長官は記者団の質問に応じ、交渉について「合意にいたり、停戦と人質の解放が実現すればさらに長期に持続できる対応を模索することでイスラエル側と一致している」と述べ、今回、双方が合意すれば、恒久的な停戦につながる可能性も示唆しました。
そのうえでハマスに交渉で示されている提案に応じるよう改めて迫りました。
アメリカ・ホワイトハウスのジャンピエール報道官は1日、記者会見で、ハマス側からの返答はまだないと述べました。
また「ハマスが提案を直ちに受け入れるよう、あらゆる努力を尽くす必要があり、地域のパートナー国にも伝えている」として関係国と協力し、合意の実現に向けて全力をあげる考えを示しました。
米国防長官 イスラエル国防相と電話会談 住民避難の必要性強調
こうした中、アメリカ国防総省は1日、オースティン国防長官とイスラエルのガラント国防相が電話で会談したと発表しました。
オースティン長官は、イスラエル軍がガザ地区南部のラファで地上作戦を行う場合「住民を避難させ、人道支援物資の搬入を維持するための信頼できる計画を盛り込む必要がある」と強調したとしています。
●下院議長の解任動議提出へ 支持少なく、続投見通し―米共和強硬派 5/2
米共和党の保守強硬派でトランプ前大統領に近いグリーン下院議員は1日、ジョンソン下院議長(共和党)の解任動議を来週正式に提出すると表明した。しかし、党内の多数派に加え、民主党もジョンソン氏に協力する方針。動議は否決され、議長は続投する見通しだ。
グリーン氏は記者団に「ジョンソン氏は議長職にふさわしくない」と述べた。グリーン氏はウクライナ支援に反対しており、ジョンソン氏がウクライナへの追加予算を盛り込んだ法律を採決したことに反発していた。
これに対し、ジョンソン氏は「この動議は共和党にとっても国にとっても間違っている」と批判。民主党下院トップのジェフリーズ院内総務は声明で「共和党保守強硬派の過激主義に強く反対する。グリーン氏の動議は成功しない」と述べ、ジョンソン氏への協力を明言した。
●米FRB 政策金利「据え置き」決定 早期利下げ慎重姿勢 5/2
記録的な円安水準が続くなか、円相場に影響を及ぼすアメリカのFRB=連邦準備制度理事会の金融政策を決める会合が開かれ、1日、政策金利を据え置くことを決定したと発表しました。FRBが金利を据え置くのは6会合連続です。
「2%物価目標に向けた進展みられない」
FRBは今月1日までの2日間、金融政策を決める会合を開きました。
1日に公表された声明では「経済活動は堅調なペースで拡大している。インフレ率はこの1年で和らいでいるが依然として高い水準だ」としたうえで、新たに「この数か月間、2%の物価目標に向けたさらなる進展はみられない」との文言を盛り込みました。
そして会合の結果、政策金利を現在の5.25%から5.5%の幅と、およそ23年ぶりの高い水準のまま据え置くことを決定しました。FRBが金利を据え置くのは6会合連続です。
パウエル議長は会合後の記者会見で「インフレ率が持続的に2%に向かっているという確信が得られるまでは、利下げをすることは適切でないと考えている。ことしに入ってからのデータからは確信が得られていない。確信を得るには、以前の予想よりも時間がかかると思われる」と述べ、早期の利下げに慎重な姿勢を見せました。
一方、インフレの抑制に向けて国債などの金融資産の保有を減らしていく「量的引き締め」については、6月以降縮小のペースを減速させることを決めました。国債の保有を減らす上限を月に600億ドルから250億ドルに引き下げるとしています。
パウエル議長 会合後の記者会見
「確信には以前の予想より時間かかる」
会合後の記者会見でFRBのパウエル議長は、「インフレ率が持続的に2%に向かっているという確信が得られるまでは利下げをすることは適切でないと考えている。ことしに入ってからデータからは確信が得られていない。インフレ率は予想を上回っている。確信を得るには、以前の予想よりも時間がかかると思われる」と述べ、利下げに慎重な姿勢を見せました。
「確信持てない場合、利下げ見送ることが適切」
今後考えられる金利政策のシナリオについて、「もしインフレが予想以上に持続し、雇用が堅調を維持していたとする。(インフレ低下の)大きな確信も持てない。このような場合、利下げを見送ることが適切となるだろう」と述べました。
「次に利上げの可能性は低い」
「今の政策は十分金融引き締め的だと思う。それは今後、データが示してくれるだろう。次に政策金利が引き上げられる可能性は低いと考えている」
「第1四半期には(インフレ低下の)進展みられず」
また記者から、もう5月なのに、ことし中に3回利下げを行う余裕はあるのかと問われたのに対して、「もっと確信が必要だということだ。会合参加者と私がきょう言ったのは第1四半期には(インフレ低下の)進展がみられなかったということだ。確信に達するまでにはまだ時間がかかりそうだ。確信が得られたら利下げが視野に入ってくるが、それが正確にいつかは分からない」と述べました。
「利上げには説得力のある証拠が必要」
利上げに踏み切る条件については、「そのために何が必要か?インフレ率を2%まで引き下げるためのわれわれの政策が十分金融引き締め的でないという説得力のある証拠が必要だ。その質問に答えるためにはデータを総合的に見ることになる」と述べ、利上げの可能性は低いとの認識を示しました。
「スタグフレーションにはならない」
アメリカ経済の現状については、「今は3%の経済成長があり、どの指標から見てもかなり堅実な成長だと言える。今後、インフレ率も2%に戻り、スタグフレーションにはならないだろう」と述べ、物価上昇と景気後退が同時に進む、いわゆる「スタグフレーション」には陥らないとの見方を示しました。
円相場一時153円まで値上がり 政府・日銀の市場介入の見方も
1日のニューヨーク外国為替市場では、FRB=連邦準備制度理事会のパウエル議長の記者会見のあと、円高方向に大きく振れ、円相場は一時、1ドル=153円ちょうどまで4円以上、値上がりしました。
市場では日本政府・日銀がドル売り円買いの市場介入を行ったのではないかとの見方が出ています。
1日のニューヨーク外国為替市場ではFRBのパウエル議長が金融政策を決める会合のあとの記者会見で「次に政策金利が引き上げられる可能性は低いと考えている」などとと述べたことを受けて、FRBがインフレを抑え込むためにさらなる利上げを行うことへの警戒感が和らぎました。
このため、日米の金利差が当面、拡大しないという見方から、円を買ってドルを売る動きが出て、会見の最中に円相場は一時、1ドル=157円台前半まで値上がりしました。
パウエル議長の会見のあと、円相場は一時、1ドル=157円台半ばまでやや値下がりしましたが、日本時間のきょう午前5時すぎには一転して円高方向に大きく振れ、1ドル=153円ちょうどまで4円以上、値上がりしました。円相場はその後も荒い値動きとなっています。
市場では、日本政府・日銀がドル売り円買いの市場介入を行ったのではないかとの見方が出ています。
市場関係者は「パウエル議長の記者会見の後というタイミングで円高が急速に進み、多くの投資家が不意をつかれた形となった」と話しています。
このほか、ニューヨーク株式市場はパウエル議長の発言を受けて買い注文が増え、ダウ平均株価は前日に比べて一時、500ドルを超える大幅な値上がりとなりました。しかし、その後は、パウエル議長が利下げには慎重な姿勢を見せたことなども背景に値上がり幅が縮小し、終値は前日に比べて87ドル37セント高い3万7903ドル29セントでした。
為替の動き 神田財務官「ノーコメント」
為替の動きについて、現時点で財務省など日本の通貨当局からの正式な発表はありません。
外国為替市場で円相場が一時、1ドル=153円ちょうどまで値上がりしたことについて、財務省の神田財務官は「ノーコメントだ」と述べました。
為替トレーダー “市場介入の可能性高い”
外国為替市場で急激に円高が進んだことについて為替のトレーダーからは市場介入の可能性が高いという声が上がっています。
このうち首都ワシントンに拠点を置く「マネックスUSA」の為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏はNHKのインタビューに対し、「市場介入について議論するときトレーダーが着目するのは2円以上の振れ幅で、今回はその基準値を大幅に超えている。率直にいって今回の市場介入とみられる動きは賢明なタイミングだったと思う。ヨーロッパとメキシコの市場が休場であり、FRBがどちらかというとハト派的(金融緩和的)なスタンスだったため、大きな影響を与えるだろう」と述べ、市場介入が事実とすればいいタイミングだったとの見方を示しました。
一方で「日本経済の基礎的な条件は依然として弱く、GDPの成長率はとても強いわけでもない。日銀は少なくとも秋までは利上げはしないだろうし、その場合でも日米の金利差はかなり開いたままだろう」と述べました。
そのうえで仮に市場介入があった場合の効果について「短期的には一定程度の効果はあるものの、今から1年後に円安が止まるとは必ずしも思わない」と述べ、金利差が開いた状況では円安の流れを止めることは難しいとの認識を示しました。
また今後のFRBの金融政策については「パウエル議長はインフレに注目していると発言したがインフレ率が再び上昇しているとは認めようとはしなかった」と述べFRBが年内に2回の利下げを行うだろうとの見通しを示しました。
日米金利差 なぜ円安要因に?
なぜ日米で金利差があると円安になるのでしょうか。
基本的にお金は金利の低いところから高いところに流れる性質があります。高い金利で資産を運用したほうが利益が見込めるからです。
例えば金利5%の債券に1万円投資すれば、1年間で500円を受け取ることができます。金利1%の債券だったら100円しか受け取れません。
アメリカ・FRBの政策金利は5.25%から5.5%。日銀はマイナス金利を解除しましたが、政策金利は0%から0.1%です。投資家は金利が高いドルに投資したほうが多くの利益が得られると考え、円を売ってドルを買う動きにつながるのです。
さらにFRBは去年12月の会合で会合参加者の政策金利の見通しを示し、ことし、年3回の利下げが想定される内容を明らかにしました。
アメリカが利下げに踏み切れば日米の金利差は縮むことになりますが、このところインフレの根強さを示す経済指標が相次ぎ、市場では利下げに踏み切る時期が遅れ、回数も減るのではとの観測が強まっています。
金利差は縮まらないとの見方から、円安圧力が続いているのです。
FRBの金融政策 これまでの経緯
FRBが利上げを開始したのはおととし3月。それまでのゼロ金利政策を解除して、金融引き締めへと転換します。
金融引き締めによって景気を冷やすことで、インフレを抑えこむねらいでした。
しかし、その後もインフレに収束の兆しは見えず、おととし6月の消費者物価指数は前の年の同じ月と比べて9.1%の上昇と、およそ40年ぶりの記録的な水準となりました。このためFRBは、おととし6月から11月の会合まで4回連続で0.75%という大幅な利上げに踏み切りました。
これまでの急速な利上げの影響を受けて、去年3月から5月にかけては「シリコンバレーバンク」や「ファースト・リパブリック・バンク」など3つの銀行が経営破綻しました。
こうした中でもFRBはインフレ抑制を優先にする姿勢を示し、去年3月と5月にそれぞれ0.25%の利上げを決定しました。
続く6月の会合ではそれまでの金融政策の影響を評価するためなどとしておととし3月以降、初めて利上げを見送りましたが、去年7月の会合ではインフレの要因である人手不足が続いていることなどから0.25%の利上げを決定。これで政策金利は5.25%から5.5%の幅と、2001年以来、22年ぶりの高い水準となりました。
FRBの利上げはこれでおととし3月以降、あわせて11回に及びました。
去年9月からことし3月の会合では物価の上昇が落ち着き、インフレの要因となっていた人手不足に改善の兆しが見られたことなどから5会合連続で利上げを見送り、FRBがいつ利下げに踏み切るかが焦点となっていました。
しかしその後、インフレの根強さや経済の堅調さを示す経済指標が相次いで発表され、FRBのパウエル議長も繰り返し「利下げを急ぐ必要はない」という認識を示しました。
市場ではFRBの利下げが当初、市場が見込んでいた時期より大幅に遅れるという見方が一段と強まっていました。
●ウクライナにドローン兵器や防空システムなど100億円追加支援 5/2
オーストラリアのリチャード・マールズ副首相兼国防相は4月27日、ウクライナに1億豪ドル(約102億円)の追加支援を行うと発表した。訪問先のウクライナでデニス・シュミハリ首相と会談し、支援策の内容を明らかにした。
このうち5,000万豪ドルは、オーストラリアの国防産業を通した直接支援で、ドローン兵器(3,000万豪ドル)、ヘルメットやゴムボート、ブーツ、火災マスク、発電機などの装備品(1,500万豪ドル)を含む。また、残りの5,000万豪ドルは、低高度防空システム配備の予算に充てる。
これにより、ロシアが2022年2月にウクライナに侵攻して以来、オーストラリアによるウクライナ支援額は累計10億豪ドル以上。このうち軍事支援は8億8,000万豪ドルに達した。
マールズ副首相は訪問中、シュミハリ首相のほかイワン・ハブリリュク国防副大臣らと会談。ウクライナ軍の訓練や国防産業を視察した。また、副首相は隣国ポーランドも訪問。同国のブワディスワフ・コシニャック=カミシュ副首相兼国防相と会談し、オーストラリア空軍が派遣した早期警戒管制機への支援に謝意を示した。
副首相は「オーストラリアはウクライナによる自力の紛争解決を引き続き支えていく」と述べた。その上で副首相は「ウクライナ国民は2年以上にわたるロシアの全面侵攻に耐え、高い士気を保っている。シュミハリ首相との会談で再認識した」と語り、今後もポーランドなどの友好国とともにウクライナ支援を続ける考えを強調した。
●ウクライナ、製油所を無人機攻撃 モスクワ南東州で火災発生 5/2
ウクライナ軍は1日、モスクワ南東リャザニ州とロシア南部ボロネジ州の製油所を無人機で攻撃した。地元メディアに明らかにした。リャザニ州では敷地で大きな火災が発生した。ウクライナはロシアの石油関連施設を標的にしており、範囲を拡大する方針を示している。
ロシア国防省は1日、未明までに両州と西部のベルゴロド州とクルスク州でウクライナの無人機計6機を迎撃したと発表した。
ウクライナ東部ハリコフ州の集落に1日、ロシア軍の砲撃があり、78歳の女性が死亡した。 
●立民・亀井亜紀子氏、ウクライナ侵略は「代理戦争」2年前のXに駐日大使「間違っている」 5/2
ロシアの侵略にさらされるウクライナのコルスンスキー駐日大使は2日、X(旧ツイッター)で衆院島根1区補欠選挙で当選した立憲民主党の亀井亜紀子衆院議員がかつて「ウクライナ戦争はロシア対NATOの代理戦争」などと持論を述べていたことについて「残念だ。ウクライナの戦争について発言する前に、全体像を見るべきだ」と投稿し、亀井氏にウクライナの現状視察を勧めた。
亀井氏は議員ではなかった令和4年8月2日、ウクライナ侵略の背景について「地理的に離れた米国がウクライナ軍を増強し、欧州に戦争を持ち込んだという恨み節も現地で出ている」とXに書き込み、台湾有事の際に日本が巻き込まれない必要性に言及した。
コルスンスキー氏はXで「選挙で選ばれた公職者として、亀井さんは意見を述べる権利がある」とした上で、「彼女の意見が間違っていて、自分の党の公式見解とさえ矛盾している」と指摘。ロシア軍の攻撃を受けたウクライナ南部オデッサ州や東部ハリコフ州を挙げ、「彼女にウクライナに行って、人々と話すことを強く勧める。そこには日本語を話す人がたくさんいる」と書き込んだ。
立民はロシアによるウクライナ侵略について、「わが国を始め国際社会が侵略と戦うウクライナを引き続き継続して支援していくことの重要性を強調する」との声明を出している。
亀井氏の投稿については自民党の務台俊介衆院議員も「ロシアの代弁者のようですね」とXに書き込んだ。
●補選制した立憲・亀井氏に早くも試練......ウクライナ戦争は「代理戦争」、持論発掘→駐日大使が「苦言」 5/2
2024年4月28日に投開票された衆院島根1区の補欠選挙で当選した、立憲民主党の亀井亜紀子衆院議員の過去のX投稿(ツイート)が波紋を広げている。
「巻き込まれないポイントは、台湾有事で集団的自衛権を行使しないこと!」
亀井氏は28日の衆院補選で自民党候補との一騎打ちを制し、3年ぶりの国政復帰を果たした。5月1日には島根県庁を自ら訪れ当選証書を受け取った。
報道陣に対し、「島根県からやっぱり選んでいただいて、東京にね、永田町に色んなことを物言いに行くんだぞ」と決意を新たにしていた。
Xのプロフィール欄でも「衆院1期・参院1期の即戦力で島根から国を変える!」と使命感に燃えている亀井氏だが、SNSでは過去の投稿が波紋を広げている。
波紋を広げているのは、亀井氏が22年8月2日に投稿したポストだ。22年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻について、「ウクライナ戦争はロシア対NATOの代理戦争」などと持論を述べたものだった。次のような内容だ。
「地理的に離れた米国がウクライナ軍を増強し、欧州に戦争を持ち込んだという恨み節も現地で出ている。ペロシ米下院議長の台湾訪問で米中間の緊張が高まれば、今度は日本が同じ状況になる。巻き込まれないポイントは、台湾有事で集団的自衛権を行使しないこと!」
投稿は約2年前のものだが、当選したことで投稿が拡散されると「何を寝とぼけたことを」「主権国家に対する侵略戦争に対して、どの様な法的視点でこの発言をされているのか」などとする批判が相次いだ。
「彼女の意見が間違っていて、自分の党の公式見解とさえ矛盾しているのは残念だ」
セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使も5月2日、これに反応。亀井氏の投稿を引用し「選挙で選ばれた公職者として、亀井さんには意見を述べる権利がある」と一定の理解を示した上で、「彼女の意見が間違っていて、自分の党の公式見解とさえ矛盾しているのは残念だ」とした。
「私は彼女にウクライナに行って、オデサやハリコフの人々と話すことを強く勧める。そこには日本語を話す人がたくさんいる。ウクライナの戦争について発言する前に、全体像を見るべきだ」と批判している。
コルスンスキー氏は、務台俊介衆院議員(自民)の「ロシアの代弁者のようですね」とする返信をはじめ、「この議員の主張は完全に間違っています」「亀井議員のポストは自分たちの意思で、主権を守るために戦っているウクライナの人々に失礼極まりないもの」など、ウクライナ戦争に関する投稿をリポスト(拡散)し、亀井氏への反感をあらわにしている。
なお、亀井氏がXでウクライナ戦争に関する投稿を行ったのは、23年8月15日の「今日は終戦記念日。先の大戦で亡くなられた全ての方々のご冥福をお祈りいたします。ウクライナ戦争の長期化は一度始まった戦争を終わらせることの難しさを示しています。日本が戦争に巻き込まれることのないよう心して政治に取り組んでまいります」とするものが最後とみられる。
●ソフィー妃がウクライナ訪問 侵略後、英王室のメンバーでは初めて 5/2
英王室は2日までに、チャールズ国王の弟、エドワード王子の妻ソフィー妃がウクライナを訪問したと発表した。英王室メンバーがロシアによる侵攻後にウクライナ入りしたのは初めて。
英王室は、訪問の目的を侵略による性的暴行や拷問の被害者への同妃の連帯の気持ちを示すためのものとした。ソフィー妃は、英国の「性的暴力防止イニシアチブ」や国連の「女性・平和・安全保障アジェンダ」の活動にも普段、力を入れているとされる。
英バッキンガム宮殿によると、同妃はウクライナで性的暴行や拷問の被害者と会った他、ロシアが両親から強制的に切り離したとされる子どもたちとも面会した。
また、侵略の初期段階でロシア軍が一時占領し、虐殺行為が起きた首都キーウ(キエフ)近郊ブチャも訪れ、犠牲者を弔った。ウクライナのゼレンスキー大統領夫妻とも会談し、性的暴行の被害者への支援策などで意見交換。効果的かつ長持ちするウクライナ復興策を実現させる上での女性の役割についても話し合ったという。
英王室ではウィリアム皇太子が昨年3月、ウクライナと隣国ポーランドの国境線周辺を訪れ、警戒などに当たる英軍とポーランド軍の兵士を励ましたことがある。
●「ロシア軍部隊からネパール人が集団脱走」ウクライナの情報機関が明らかに 5/2
ウクライナの情報機関がロシア軍の部隊からネパール人兵士が集団で脱走しているとの分析を明らかにしました。
ウクライナ国防省情報総局は1日、ロシアが実効支配するウクライナ東部ルハンシク州のロシア軍部隊からネパール人兵士が集団で脱走しているとして資料を公開しました。
脱走の理由としては、犠牲を顧みない「肉弾攻撃」や死が確実な命令を拒否した際に行われる超法規的な処刑、給与の不払いなどが挙げられています。
ウクライナ国防省情報総局は、ネパール人兵士らが母国に戻ったとしてもロシア軍の一員としてウクライナへの敵対行為に参加したことで訴追される可能性があると指摘しています。
ネパールでは、山岳民族出身の「グルカ兵」が協定で認められたイギリス軍やインド軍に所属する以外は、国民が外国の軍隊に入ることは禁止されています。
ネパール外務省はロシアに対し、兵役に就いているネパール人兵士を帰国させることや新たな採用をやめることを求めています。
イギリスBBCによりますと、ロシア軍に入隊したネパール人は少なくとも数百人に上るとみられています。
また、ウクライナとの戦争が長期化するなか、ロシア軍はネパールのほかにもジョージアやシリア、リビアなどからも兵士を集めているとされています。
●OECD 世界経済の成長率予測 0.2ポイント引き上げ 5/2
OECD=経済協力開発機構は、最新の世界経済の見通しを公表し、インフレ率の低下などを背景にことしの世界全体の成長率の予測を、これまでより0.2ポイント引き上げました。
フランスのパリで2日から始まるOECDの閣僚理事会にあわせて発表された最新の見通しでは、ことしの世界全体の経済成長率について3.1%と、ことし2月時点の予測から0.2ポイント上方修正しました。
背景についてインフレ率が予想よりも早く低下したほか、アメリカと多くの新興国の成長率が従来の予測より高かったとしています。
また、来年の成長率についても、各国がインフレ抑制のために維持している今の水準の政策金利が下がるとみて、見通しを0.2ポイント上方修正し、3.2%としました。
一方、今後の短期的なリスクとして中東における地政学的な緊張の高まりに伴うエネルギー市場の混乱がインフレを再燃させる可能性をあげています。
日本の経済成長率についてことしはプラス0.5%で、これまでの見通しから0.5ポイント下方修正しました。
一方、実質賃金の上昇や一時的な減税によって内需が下支えされ、来年はプラス1.1%になるとしています。
国別 経済成長率の予測
OECDが2日に公表した国別の経済成長率の予測です。
いずれもプラス成長の見通しで、日本はことしが0.5%、来年が1.1%、アメリカはことしが2.6%、来年が1.8%、中国はことしが4.9%、来年が4.5%、ドイツやフランスなどユーロ圏はことしが0.7%、来年が1.5%
となっています。
●OECD 閣僚理事会 中国など念頭に「経済的威圧」対応など議論へ 5/2
OECD=経済協力開発機構の閣僚理事会が、フランスのパリで始まりました。中国などを念頭に輸出入の規制などで相手国に圧力をかける「経済的威圧」への対応や、急速に普及が進む生成AIの規制のあり方などについて、議論が交わされる見通しです。
日本や欧米など38か国が加盟するOECDの閣僚理事会は、2日からパリで始まりました。
ことしは、加盟から60年となる日本が議長国を務め、岸田総理大臣のほか、上川外務大臣や齋藤経済産業大臣らが出席しています。
会合では、自由で公正な貿易を維持していくため、中国などを念頭に、輸出入の規制などで相手国に圧力をかける「経済的威圧」にどう対応していくかや、脱炭素社会の実現に向けた各国の協力のあり方などについて、議論が交わされる見通しです。
また、急速に普及が進む生成AIの活用と規制のあり方や懸念が高まっている偽情報の拡散を防ぐ対策も主な議題となっていて、各国で連携していくことの重要性を確認するものとみられます。
会合は、3日まで開かれ、議長国の日本としては議論の成果を閣僚声明として取りまとめたいとしています。
岸田首相が演説「自由で公正な経済秩序が重要」
閣僚理事会の開会式には、岸田総理大臣が議長国として出席し演説しました。
この中で岸田総理大臣は、多くの紛争や新興国の台頭で国際社会の多様化が進み、一致した意見を持つことが困難になっていると指摘する一方「時代の変化や困難は、より豊かな暮らしを実現するためのチャンスでもある」と述べました。
その上で「日本はOECDの専門性と知見を活かし、課題の解決を新たな成長のエンジンに変えるべく取り組んでいる。力強い賃上げや、史上最高水準の設備投資を一層加速させ、日本の稼ぐ力を復活させる必要がある」と述べ今後もOECD各国と連携していく意向を示しました。
またWTO=世界貿易機関を中核とした、ルールに基づく自由で公正な経済秩序の維持・拡大が重要だとして、強じんな経済や経済安全保障の強化に向け同志国などとの連携を進めていく考えを強調しました。
さらにOECDが最も強みを発揮できるのがデジタル分野だとして安全・安心で信頼できるAIの実現に向け、協力を呼びかけました。
岸田総理大臣は、国際社会の不透明さが増す中、非加盟国への関与も必要だとした上で「各地域との連携強化はOECDが進むべき未来だ。日本は数少ないアジアの加盟国としてこれからも地域の架け橋となりOECDが将来にわたって世界経済を主導するために貢献していく」と述べました。
●ゼレンスキー大統領 米と2国間協定含む安全保障協定の文書準備 5/2
ウクライナのゼレンスキー大統領はウクライナのNATO=北大西洋条約機構への加盟が認められるまでの間、アメリカなどと2国間の安全保障協定を結ぶことで、自国の安全保障を強化していく考えを示しました。
これはゼレンスキー大統領が1日に行ったビデオ演説で明らかにしたものです。
この中でゼレンスキー大統領は「アメリカとの2国間協定を含む、7つの新たな安全保障協定の文書を準備している」と述べました。
そのうえで「これらの協定はウクライナの安全保障の柱として、NATOに加盟するまでの間、今後、数年にわたり私たちを支えるものになる」と述べ、当面は2国間の協定を結ぶ国を広げることで安全保障を強化していく考えを示しました。
この安全保障協定は、ウクライナの長期的な安全を確保するために、2023年のG7=主要7か国の共同宣言に基づいて、各国が個別にウクライナと締結しているもので、これまでにイギリスやフランス、ドイツなどが署名しています。
一方、ロシア軍による軍事侵攻が続く中、ウクライナによるロシア国内への反撃も相次いでいて、ウクライナのメディアによりますと無人機が中部リャザン州やウクライナと国境を接する西部ボロネジ州の製油所を攻撃しました。
ロシアのメディアはリャザン州の製油所では火災が発生したと伝えていて、ウクライナ側は国境を越えたロシア側のインフラ施設を狙った攻撃を強化しています。

  

●ロシア、北朝鮮に石油精製品を輸出 制裁違反の規模か=米高官 5/3
米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は2日、ロシアが北朝鮮に対し、国連安全保障理事会の制裁に違反するとみられる規模の石油精製品を密かに輸出していると明らかにした。対応に向け、新たな制裁を科す可能性も示唆した。
1日には、対北朝鮮制裁の履行状況の調査に当たってきた安保理の専門家パネルが解散。ロシアがパネルの任期延長に拒否権を発動したことが背景にある。
カービー氏は記者団に対し「ロシアが専門家パネルの任期延長を拒否すると同時に北朝鮮に石油精製品を輸出していた」と語った。3月だけでも、16万5000バレル超の石油精製品を輸出したとみられるという。
安保理の制裁決議の下、北朝鮮の石油精製品の輸入上限は年間50万バレルに定められている。
カービー氏は、米国は「ロシアと北朝鮮間の武器や石油精製品の移転に関与する者に対し」制裁を継続すると強調。制裁に際しては、パートナー国との調整を続けるとも述べた。
ロシアと北朝鮮の国連代表部からコメントは得られていない。
また、北朝鮮はロシアに武器を供与しているもよう。国連制裁監視団によると、ウクライナ東部に今年1月着弾したミサイルの破片を調査したところ、北朝鮮製の弾道ミサイルだった可能性が確認された。
●ウクライナ戦争すぐに終結の公算小さい=米国家情報長官 5/3
米情報機関トップのヘインズ国家情報長官は2日、ロシアのプーチン大統領は国内外の情勢がロシアにとって有利に進んでいると見ているためウクライナで攻撃的な戦術を推し進める可能性が高く、戦争がすぐに終わる可能性は低いとの見方を示した。
ヘインズ長官は上院軍事委員会で行った証言で、プーチン大統領がウクライナの電力インフラなどに対する攻撃を激化させていることについて「戦闘を続けることで被害が増大し、勝利への道筋はないとウクライナに印象付ける狙いがある」と指摘。ロシアはこうした攻撃的な戦術を続ける可能性が高く、戦争がすぐに終わる可能性は低いとの見方を示した。
中国については、習近平国家主席は米国との関係が将来的に不安定になると予想していると言及。ただ、中国は不安定な経済への取り組みを最優先としているため、対米関係の安定化を図っていくとの見通しを示した。
●ロシアに戻る出国者、戦時経済を押し上げ−プーチン氏は宣伝に利用 5/3
ロシアのウクライナ侵攻後最初の1年で、100万人ものロシア人が外国に移住した。だが、いまや数千人がロシアに戻り、プーチン大統領のプロパガンダと戦時経済の押し上げに寄与している。
戦争がまだ続き、戦争を開始した張本人であるプーチン氏が任期をさらに6年延ばす中で、多くのロシア人が難しい選択を迫られている。外国で仕事を確保し資金を移転することの困難さ、滞在許可の更新拒否、ロシア人を依然歓迎してくれる移住先が限定されているなどの問題に直面し、事実上の亡命生活に終止符を打つことを選ぶ人たちがいる。
モスクワで政治コンサルタントとして働いていたアレクセイさん(50)は反戦集会に参加し拘束された後で、ジョージアに移住した。移住先では起業を目指したが、「うまくは行かなかった。実際のところ、誰もロシア人を歓迎していない」と語った。事業用の資金が尽き、ロシアに戻ってきたという。アレクセイさんのほか、この記事でブルームバーグのインタビューに応じた全員が、安全上の理由で姓は伏せるよう要請した。
2022年2月のウクライナ侵攻後、ロシアではソ連崩壊以降見られていなかった規模の人口流出が発生した。戦争反対や、動員への恐れが理由だ。プーチン氏が同年9月に30万人の予備役を招集する部分動員令をかけると、さらに数十万人が国外に脱出した。
人口流出は反転していないまでも、ペースが鈍化した。ロシア当局は昨年6月、戦争開始当初にロシアを出国した半数が既に帰国したと胸を張った。これは移住先として人気のある国々や引っ越し業者のデータなど入手可能なデータにも表れている様子で、モスクワの引っ越し業者フィニオンの顧客データに基づくと、22年にロシアから移住した40−45%はこれまでに戻ってきたと、同社の責任者、ビャチェスラフ・カルタミシェフ氏は語った。
プーチン氏は実業家や起業家、高度専門人材の帰国を「良い傾向」だと称賛。実際の帰国理由には触れない一方、ロシア人が「帰属意識を持ち、何が起きているか理解している」証拠で、自身の政策に対する支持を示していると主張している。
政治コンサルタント会社Rポリティク創業者でカーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのシニアフェロー、タチアナ・スタノワヤ氏は、西側の「ロシア嫌い」を裏付けるプロパガンダに帰国の話が積極的に利用されていると指摘。プーチン氏にとっては「自身を盛り立て、自分が正しいという証拠を強める材料」であるため、この問題は重視されているとの見解を示した。
数千人の帰国者はロシアが戦争による制裁を乗り越え、堅調な経済成長を果たす助けにもなっている。ブルームバーグ・エコノミクスの試算によると、ロシアの国内総生産(GDP)は昨年3.6%増加したが、移民の逆流が0.2−0.3ポイント程度押し上げた公算が大きい。
ただ、帰国者は推定で雇用者数全体の0.3%を占めるに過ぎない。ひっ迫する人手不足の緩和にはほど遠いものの、経済活動への寄与は人数の割に並外れて大きい。
ロシアは人材難に陥った専門職を呼び戻そうとしているため、戦争開始前よりも好待遇の仕事を本国で見つけられる人もいる。ITプログラマーのエフゲニーさんはカザフスタンのアルマトイで1年過ごしたが、「以前なら夢でもかなわない」給料と条件を提示され、帰国することにしたという。
ロシア人の帰国の流れは続く公算が大きい。イタリア・フィレンツェにある欧州大学院(EUI)の政治学者、エミル・カマロフ氏とイベッタ・セレゲーエワ氏を中心とする調査によると、移住先での地位が安定している、またはやや安定していると回答したロシア人移民は41%に過ぎず、一部の国ではこの割合が16%でしかなかった。25%は現地の市民や機関から差別を受けた経験があると報告し、不安に拍車をかけている。
ロシア人移民を調査するソーシャル・フォーサイト・グループの社会学者、アンナ・クレショワ氏は、移民らは「世界が文字通り反ロシアで結集している」と感じ、「『結局のところプーチンはそれほど間違っていなかった。われわれは本当に嫌われている』との感覚と恨みを持ってロシアに帰ってくる」と分析した。
戦争への反対から出国した多くのロシア人にとって、いったん帰国すれば別の問題が待ち受ける。アゼルバイジャンに移住したものの家族が現地になじめず、ロシアに戻ってきた銀行系ITを専門とするアレクサンドルさん(35)は、ロシアの大手銀行に就職した。だが、同僚の大半はプーチン氏を支持し、戦争を巡るプロパガンダを信じているという。
この問題で同僚と言い争うことはしないとアレクサンドルさん。「同僚を説得しようとするのは安全ではない。この悪夢が終わることを待っている」と語った。
●二つの戦争と平和憲法 市民の力で破壊止める時 5/3
歯止めのきかない国家の暴力が市民の命と尊厳を押しつぶす。中東と欧州で「二つの戦争」が続き、世界の分断が深まる中、77回目の憲法記念日を迎えた。
イスラエル軍がイスラム組織ハマスを攻撃するパレスチナ自治区ガザ地区では女性や子どもを含む3万4000人以上が死亡した。ロシアのウクライナ侵攻は3年目に入り収束の見通しが立たない。
破壊されたのは人命や家屋、インフラだけではない。「他国を侵略しない」「民間人を攻撃しない」という国際法の規範も破られた。
国連開発計画(UNDP)によると、コロナ禍前でも世界の7人中6人が「安全でない」と感じていた。紛争や迫害で故郷を追われた難民・避難民らは1億人を超す。
全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する――。日本国憲法の平和主義の理念が今、国際社会の現実によって脅かされている。
許されない国家の横暴
世界の平和と安全に責任を持つはずの国連安全保障理事会は機能不全に陥っている。懸念されるのは、軍事力をたのむ国家の論理が幅をきかせている現状だ。
イスラエルはガザ攻撃を「自衛戦争」と主張し、プーチン露大統領はウクライナ侵攻を「祖国を守る戦い」と正当化する。
ロシアの脅威に直面するスウェーデン、フィンランドは北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、守りを固めた。「安全保障環境の厳しさ」を理由に日本を含む各国が抑止力の強化に走っている。
ストックホルム国際平和研究所によると、2023年の世界の軍事費は前年より実質6・8%多い総額2兆4430億ドル(約380兆円)と過去最高を記録した。
だが、軍事力は安定だけでなく破壊をもたらす。戦争で日々、人命が失われる状況下、手をこまぬいているわけにはいかない。
「『国家の論理』のために『個人の人権』が犠牲になっても構わない、との理屈は通用しない」。宇野重規・東京大教授は「法の支配と人道」の早期実現を訴える。
重要なのは「人間の安全保障」の視点である。軍事力で領土を守る「国家安全保障」に対して、人々の命と暮らしを多様な脅威から守るという考え方だ。
日本政府も「人間の安全保障」を開発協力政策の基本に据える。いま問われているのは、理念を実際の行動に結びつける外交力だ。
冷戦後、日本が独自の平和外交を展開した時期がある。カンボジア和平である。当時、外務省担当課長として尽力した河野雅治・元駐伊大使は「対米追従ではなく、『米国ができないことを日本がする』気概だった」と振り返る。
日本政府は長年、パレスチナを支援する一方、イスラエルとの政治・経済関係を強化してきた。だが、ガザ危機を前に動きは鈍い。
「双方から信頼されている日本は役割を果たせるはずだ」。埼玉県在住のイスラエル人平和活動家、ダニー・ネフセタイさん(67)は「平和憲法を持ち、核兵器の痛みを知っている国なのに、平和の発信が足りない」と嘆く。
まず人間の安全保障を
注目されるのは、ロシアを敵視して経済制裁を科す一方、イスラエルには強く出られない米欧の「二重基準」に対する異議申し立てが内外で強まっていることだ。
国際司法裁判所(ICJ)が今年1月、イスラエルにジェノサイド(集団虐殺)を防ぐ措置を取るよう命じると、「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国から一斉に歓迎の声が上がった。
米国の大学ではイスラエルと、軍事支援するバイデン政権への抗議が広がる。日本でも、学生と在日パレスチナ人らが連携して即時停戦を求めるデモを繰り広げる。
企業も動き始めた。ICJ命令などを受け、伊藤忠商事はドローンなどを製造するイスラエルの軍事企業エルビット・システムズとの協力関係を2月末で終了した。
生前、パレスチナとの「2国家解決」を訴え続けたイスラエルの作家アモス・オズは大火事を前にした人々の反応を分類した。
全速力で逃げる逃走型、責任者の免職を求める批判型、そして「バケツがなければコップで、コップがなければティースプーンで水を火にかける」行動型である。
スプーン一杯は焼け石に水かもしれない。だが、集まれば惨禍を止める力となるはずだ。求められているのは国家、企業、そして何よりも市民の行動する力である。
●ロシア ウクライナ東部、ドネツク州の村を掌握と発表 5/3
ウクライナ東部で攻勢を強めているロシアは、新たにドネツク州の村を掌握したと発表しました。
ロシア国防省は2日、ウクライナ東部ドネツク州のベルディチ村を掌握したと発表しました。国営メディアは「物資補給ルートにあたるベルディチ村を掌握したことで、ウクライナ軍は混乱している」と報じています。
ロシア軍は2月に要衝アウディーイウカを掌握して以降、ドネツク州で14の集落を掌握したと主張していて、ウクライナ側もドネツク州の3つの地域から撤退したことを認めています。
また、ウクライナ軍のシルスキー総司令官は、ロシアが戦勝記念日を迎える今月9日までに重要拠点のチャソフヤールを攻略するよう、部隊に指令が出ているとの見方を示しています。
ロシア側は戦勝記念日で戦果をアピールするため、攻勢を強めている可能性があります。
●英外相、ロシア領内へ反撃に理解 ウクライナへの供与武器巡り 5/3
英国のキャメロン外相は2日、ロシアの侵攻を受けるウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問した。記者団に「(英国が)供与した武器をどう使うかはウクライナが判断する」と述べ、ロシア領内への反撃に理解を示した。欧米はロシアとの戦闘拡大を懸念し、供与した武器をロシア領内に向けて使用しないようこれまで求めてきた。
記者団には「ロシアがウクライナを攻撃した。ウクライナにはもちろんやり返す権利がある」とも話した。
キャメロン氏は、スナク首相が4月下旬にゼレンスキー大統領に対して5億ポンド(約960億円)の追加軍事支援を約束したことを受け、ウクライナを訪問した。
●マクロン仏大統領がウクライナ派兵に再び言及 核兵器めぐる議論も 5/3
フランスのマクロン大統領は2日までに英誌エコノミストのインタビューに応じ、ロシアによる侵攻が続くウクライナへの地上部軍派遣の可能性にあらためて言及した。「ロシアに勝利させないためには、何ごとも除外するべきではない」と強調。核戦略を含む欧州の安全保障の枠組みの必要性も示唆した。
2日付で配信されたエコノミストのインタビュー記事によると、マクロン氏は4月29日、フランス大統領府でインタビューに応じた。
ウクライナへの地上軍派遣について、「ロシアが最前線を突破し、ウクライナから要請があった場合には自問する必要がある」と発言。「ロシアに対する抑止力の観点から、事前に(地上軍派遣の可能性)を除外するのは間違っている」と述べた。 ・・・ 
●ウクライナ侵攻800日 ロシア軍 東部ドネツク州で攻勢強める 5/3
ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始してから3日で800日となります。ロシア軍は東部のドネツク州で攻勢を強めていて戦略的に重要な高台の掌握を狙っているとみられ、現地からの映像では激しい攻撃によって町全体が荒れ果てている様子が確認できます。
ロシア国防省は2日、ロシア軍がウクライナ東部ドネツク州の集落の1つを新たに掌握したと主張するなど、東部の前線で攻勢を強めています。
ウクライナの警察によりますと、ロシア軍がドネツク州で行ったミサイルなどによる攻撃は、5月1日も1900回余りに上って市民4人が死亡するなど、連日2000回前後の攻撃が繰り返されているということです。
焦点となっているのは、ドネツク州バフムトの西側にある高台の要衝、チャシウヤルで、ウクライナ軍のシルスキー総司令官は、ロシア軍が5月9日の第2次世界大戦の戦勝記念日に向けて、掌握を狙っているという見方を示しています。
4月27日から28日にかけて無人機で撮影されたチャシウヤルの映像では、人けがほとんどなく、激しい攻撃によって多くの建物が崩れたり骨組みだけになったりしているなど、町全体が荒れ果てている様子が確認できます。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は1日、ロシア軍が南部にいる部隊を東部に再配置する可能性を指摘し、ウクライナ軍にアメリカからの軍事物資が届く前にチャシウヤルへの攻勢をさらに強めるだろうと分析しています。
●“ロシア軍が化学兵器使用 条約無視” 米が資産凍結などの制裁 5/3
アメリカのバイデン政権は、ロシア軍がウクライナ軍に対し化学兵器を使用したなどとして、化学兵器の使用や調達に関わったとする部隊や研究機関を対象に資産凍結などの制裁を科したと発表しました。
アメリカ国務省が1日、発表した声明によりますと、ロシア国防省の傘下で化学物質や放射性物質の除去を担当する部隊が、ロシア軍によるウクライナ軍に対する化学兵器の使用を促したとしているほか、ロシアの政府系の研究機関が化学物質の調達に関わったとしていて、これらを対象に資産凍結などの制裁を科したということです。
その上で、ロシアが化学兵器の開発や使用の禁止などを定めた化学兵器禁止条約を批准していることを踏まえて「ロシアは条約の義務を無視し続けている」と厳しく非難しました。
この問題をめぐってウクライナ軍は、ロシア軍による毒性のある化学物質を含んだ弾薬の使用が、侵攻が始まったおととし2月以降で465件に上ると、去年12月に発表していました。
これについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は2日、記者団に対し「発表はまったく根拠のないもので、何の裏づけもない。ロシアはこの分野で国際法上の義務を果たしているし、これからも果たし続ける」と述べ、アメリカ側の主張を否定しました。
●ウクライナ提唱の和平案目指す国際会議 スイス 6月開催と発表 5/3
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く中、スイス政府は、ウクライナが提唱する和平案の実現を目指す国際会議を6月中旬に開催すると正式に発表しました。会議には160以上の国に参加が呼びかけられましたが、ロシアについては招待していないとしています。
ウクライナは、ロシア軍の撤退や領土の回復など10項目からなる「平和の公式」と名付けた和平案を提唱しています。
この実現に向けてスイス政府は2日、各国の首脳などが参加する「平和サミット」を、6月15日と16日に中部のビュルゲンシュトックで開催すると正式に発表しました。
この国際会議には160以上の国に参加が呼びかけられましたが、ロシアについては参加に関心を示してこなかったことから、招待していないとしています。
ただ、スイス政府は「ロシアなしでの和平プロセスは考えられない」としていて、会議のあとにロシアの関与を促していく考えを示しました。
会議についてウクライナのクレバ外相は、1日に公表されたアメリカの外交専門誌のインタビューで「ロシアが誠実に行動するような状況にもっていくには、戦場で成功を収めるか、原則的な立場を共有する国々で連合を組むかしかない」と述べました。
一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官は「ロシアが参加しない会議に真剣に期待することは絶対に不可能だ。結果を求めていない取り組みだ」と強調しました。
●ロシア抜きのウクライナ和平協議、「意味ない」=ロ大統領報道官 5/3
ロシアのペスコフ大統領報道官は2日、ウクライナでの和平実現を目指して6月半ばにスイスが開催するハイレベル会合について、ロシアが招待されていないため、開催の意味はないとの見解を示した。
スイスはウクライナのゼレンスキー大統領の要請を受け、同会合を開催。スイス政府はこの日、現時点でロシアは招待国に含まれていないと明らかにした。
ペスコフ報道官は記者団に対し「ロシアの参加なしにどのような成果を期待できるのか」と述べ、ロシア政府は同会合を信頼できる取り組みと見なしていないとの見解を示した。
●英外相、ウクライナ訪問 「必要な限り」支援継続を確約 5/3
英国のキャメロン外相は2日、ウクライナを訪問し、「必要な限り」年間30億ポンド(37億4000万ドル)の軍事援助を行うと確約した。また、供与した武器がロシア国内で使用されることに反対しない意向を示した。
キーウ(キエフ)でロイターのインタビューに応じ、ウクライナにはロシア国内の標的を攻撃するために英国が提供した兵器を使用する権利があり、そうするかどうかはウクライナ次第だと述べた。
キャメロン氏によると、今回の援助は英国からとしてはこれまでで最大。
●スイス会合に「不参加」呼びかけ ロシア「中立性欠く」と主張 5/3
ロシア外務省のザハロワ情報局長は2日、ウクライナが提唱する和平案「平和の公式」について話し合うためスイスで6月半ばに開かれるハイレベル会合に参加しないよう各国に呼びかけた。ウクライナを支援するスイスに関し、中立性を欠いていると主張。ロシアはスイスでの同種会合には招待されても参加しないと断言した。
タス通信によると、ロシアのペスコフ大統領報道官も2日、ロシア抜きの会合に「意味ある結果は期待できない」と批判した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は4月24日、ロシアが会合を妨害しようとしていると非難していた。
●ドネツク要衝、壊滅的被害 激戦地の空撮動画 5/3
AP通信は2日、ロシアによるウクライナ侵攻で激戦地の一つとなっている東部ドネツク州の要衝チャソフヤールを無人機で空撮した動画を入手したとして公開した。ロシアの猛攻にさらされ、街全体が壊滅的な被害を受けている。
ほぼ全ての建物が全壊か損傷し、集合住宅とみられる建物の一群は外壁に巨大な穴が開いたり、黒焦げになったりしていた。ロシアはドネツク州のバフムトやアブデーフカなどでも、街全体を徹底的に破壊する焦土作戦を展開した。
チャソフヤールは高台にある。ロシア軍が制圧に成功した場合、ウクライナが維持しているクラマトルスクやスラビャンスクといったドネツク州の主要都市に対して攻撃が一気にしやすくなる。ウクライナは東部前線の重要拠点と位置付け、戦局の焦点となっている。
●外務省に「AI報道官」 ウクライナ、声明読み上げ 5/3
ウクライナ外務省は1日、同省の声明を読み上げるため、人工知能(AI)を活用した架空の人物を作り上げたと発表した。実在するウクライナ人女性歌手の姿形で、領事関係の発表を担う。地元メディアは「AI報道官の登場」と伝えた。
発表によると、クレバ外相はAIの活用について「時間と資源を節約するためだ。外交官は、任務により集中できる」と説明した。
AI報道官は「ビクトリア・シー」と名付けられた。侵攻を続けるロシアに勝利(ビクトリー)するという意味を込めたという。ビクトリアが自己紹介をする動画が公開され「確認された外務省領事部門の情報を公に伝えることが仕事だ」とあいさつした。
●日本とEU “半導体などの調達 特定の国に過度に依存しない” 5/3
日本とEU=ヨーロッパ連合は、経済分野の課題を協議する閣僚級の会合をフランスのパリで開催しました。経済安全保障上の戦略物資である半導体や重要鉱物の調達にあたっては、中国などを念頭に、特定の国や地域に過度に依存しないことの必要性などで一致しました。
2日、パリで開かれた「日EUハイレベル経済対話」には、日本から上川外務大臣と齋藤経済産業大臣が、EUから経済政策などを担当するドムブロフスキス上級副委員長がそれぞれ出席しました。
今回の会合では、半導体や重要鉱物、蓄電池など経済安全保障上の戦略物資の調達にあたって、中国などを念頭に特定の国や地域に過度に依存しない、サプライチェーン=供給網の構築が必要だという認識で一致しました。
その上で、特定の国の不当に安い製品が、競争上、優位になっている現状を踏まえ、価格以外の環境対応や情報セキュリティといった要素も重視するよう、市場に働きかけていくことなどで合意したということです。
日本は4月、アメリカとの間でも重要物資のサプライチェーンの分野などで連携していくことを確認していて、今後日米両国とEUで共通のルール作りなど協力の具体化を検討していく方針です。
齋藤経済産業相「G7やその他の同志国と緊密に連携」
EUとの閣僚級会合のあと、齋藤経済産業大臣は記者団の取材に対し、「透明かつ強じんで持続可能なサプライチェーンの構築を日本とEUが推進するとともに、同志国への拡大に共に努力していくことで合意できたことは大きな成果だ。今後も日米欧だけでなく、G7やその他の同志国と緊密に連携し、今回の合意の具体化に大きな役割を果たしていきたい」と述べました。
●ハマス 停戦の提案 前向きに検討も 交渉進展するかは不透明 5/3
イスラエルとイスラム組織ハマスの間での戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉をめぐり、ハマスは仲介役のエジプトなどに対して「停戦についての提案を前向きに検討している」と伝えたことを明らかにしました。ただ、イスラエルのネタニヤフ首相はガザ地区南部ラファへの地上作戦を強行する構えを崩しておらず、交渉が進展するかは不透明な情勢です。
イスラエルとハマスの間での戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉についてハマスは2日、SNSで声明を発表し、それによりますと、ハニーヤ最高幹部が、仲介役のエジプトとカタールに対して「停戦についての提案を前向きに検討している」と伝えたということです。
そのうえでハマスの交渉団は、進行中の交渉を完了させるためできるだけ早くエジプトに向かうなどとしています。
これについて中東の一部のメディアは2日、情報筋の話として、ハマスの交渉団が2日以内に首都カイロに到着すると報じています。
ただ、イスラエルのネタニヤフ首相はあくまでハマスの壊滅を目指すとして、多くの避難者などおよそ120万人が身を寄せるガザ地区南部のラファへの地上作戦を強行する構えを崩しておらず、交渉が進展するかは不透明な情勢です。
一方、ガザ地区では2日もイスラエル軍による攻撃が各地で続き、地元のメディアは子どもを含む数十人が死傷したと伝えていて、保健当局はこれまでに3万4596人が死亡したと発表するなど、死傷者の数は増え続けています。
●OECD閣僚理事会 インドネシアの加盟に向けた審査始まる 5/3
OECD=経済協力開発機構の閣僚理事会で、インドネシアの加盟に向けた審査が始まりました。加盟が実現すれば東南アジアでは初めてで、いわゆるグローバル・サウスとの経済連携の強化が期待されています。
日本や欧米など38か国が加盟するOECDの閣僚理事会が2日からフランスのパリで始まり、開会式でインドネシアの加盟に向けた本格的な審査が始まったことが発表されました。
このなかでインドネシアのアイルランガ経済担当調整相は「2045年までに先進国になるという国家目標を達成するための一歩だ」と加盟の意義を強調しました。
これに対しOECDのコーマン事務総長は「インドネシアとOECDの双方にとって大きな利益をもたらす」と歓迎しました。
経済先進国が加盟し、経済や貿易のルールなどを作り上げてきたOECDをめぐっては、新興国や途上国などグローバル・サウスの成長を受け世界全体における経済規模が低下していると指摘されてきました。
加盟に向けた審査には数年かかる見通しですが、東南アジア最大のおよそ2億7000万人の人口と経済規模を持つインドネシアの加盟が実現すれば、OECDとグローバル・サウスの経済連携の強化につながると期待されています。
OECDの加盟に向けてはタイも申請していますが、すべての加盟国の承認を得て実際に審査が始まったのは、東南アジアではインドネシアが初めてです。
●ロシア、22年7月以降で最大となる領土奪取 ウクライナの火砲不足につけ込む 5/3
ロシア軍が昨年12月以降、ウクライナの防御の妨げとなっている火砲不足を利用して、アウジーイウカ付近の東部戦線で開戦当初以来となる進撃をみせていることが分かった。ロシア軍の前進を受け、ウクライナ軍の幹部からは、東部の兵たん線や補給拠点に脅威が及ぶ可能性を警戒する声が出ている。
5月下旬にはロシアの攻勢も予想される。東部ドネツク州に展開するウクライナ軍や、占領下にある港湾都市マリウポリ付近に向かう奪還した領土にとって脅威となる可能性もある。
ロシアは東部前線各地でウクライナの防御が薄い地域にリソースを大量投入しており、アウジーイウカ西郊の重要拠点であるポクロフスク、バフムート近郊にある戦略高地のチャシブヤール、南西にあるクラホウェの3拠点に向けて進軍している。
ウクライナは2月17日、10年あまり戦闘が続いていた町アウジーイウカからの撤退を発表。ロシアは同町奪取に当たり兵員数百人を犠牲にしたとみられている。
ただ、ロシア軍の進軍はそこで止まらなかった。CNNの地図やウクライナの監視団体「ディープステートマップ」の分析によると、その後10週間、ロシア軍はアウジーイウカの西方の複数の村を徐々に奪取した。
ウクライナ軍のシルスキー司令官が一連の村の陥落をようやく認めたのは4月28日のこと。CNNの分析によると、この結果、ロシア軍はわずか2カ月の間に2022年7月以降で最大かつ最速の進撃を遂げたことになった。
●米大学デモ、バイデン氏「秩序が優先」 トランプ氏は警察を称賛 5/3
米国各地の大学で広がっているパレスチナ自治区ガザを攻撃するイスラエルへの抗議活動について、バイデン大統領は2日、「秩序が優先されるべきだ」と語り、破壊行為を批判した。バイデン氏はこの問題をめぐり、ここ数日、見解を述べていなかった。
バイデン氏は2日午前、ホワイトハウスで演説し、「言論の自由と法の支配のどちらも支持されなければならない」と語った。「平和的な抗議行動は重要な問題に対応するための米国の最良の伝統だ」としながら、「無法な国ではない。秩序が優先されなければならない」とした。
米国の大学内では、大学と関係のない人も含め、デモ参加者が逮捕される事例が相次いでいる。バイデン氏は「不法侵入や窓ガラスの破壊、キャンパスの閉鎖、授業や卒業式を中止させることは、どれも平和的な抗議ではない」と過激化した各地の抗議活動を容認しない姿勢を示した。
これらの抗議活動によって、米政権のイスラエルやガザへの政策を考え直す意向があるかを問われると、「ノー」とだけ答えた。 ・・・  
●ミャンマー 外国就労希望する男性の渡航許可 軍が一時停止に 5/3
ミャンマーで実権を握る軍は、外国での就労を希望するミャンマー人男性の渡航許可証の発行を一時的に停止したことを明らかにしました。徴兵制の導入で出国する若者が増える中、徴兵逃れを防ぎ、兵員を確保するねらいがあるものとみられます。
ミャンマーの独立系メディアや日本大使館によりますと、軍の統制下にある労働省が、今月1日から外国での就労を希望する男性の渡航許可証の発行を一時的に停止したことを明らかにしたということです。
ただ、理由の詳しい説明はなく、停止の期間や再開する時期も示されていないということです。
ミャンマーでは3年前のクーデター以降、実権を握る軍と民主派勢力などとの間で戦闘が激しくなっていて、軍は、戦闘による兵員不足を補うためことし2月、18歳以上の国民を対象に徴兵制の導入を発表し、招集を始めています。
これを受けて、隣国のタイなどに出国したり、民主派勢力側の武装勢力に加わったりする若者が相次いでいて、ミャンマー軍としては、国外への渡航を制限することで徴兵逃れを防ぎ、兵員を確保するねらいがあるものとみられます。
一方、今回の渡航制限は、新たに日本での技能実習を希望する男性も対象となることから、今後の影響が懸念されます。
●4月の米雇用統計 就業者は前月比増も市場予想大きく下回る 5/3
円相場に影響を及ぼすアメリカの4月の雇用統計が発表され、農業分野以外の就業者は前の月より17万5000人増加しましたが市場予想を大きく下回りました。インフレの要因となってきた労働市場のひっ迫がいくぶん緩んだことを示す内容となりました。
アメリカ労働省が3日発表した先月の雇用統計によりますと、農業分野以外の就業者は前の月と比べて17万5000人増加しました。
24万人程度を見込んでいた市場の予想を大きく下回りました。
また失業率は前の月から0.1ポイント上昇して3.9%となりました。
インフレに結びつくデータとして注目される労働者の平均時給は、前の年の同じ月と比べて3.9%、前の月と比べて0.2%それぞれ増加しましたがいずれも市場予想を下回りました。
アメリカでインフレの要因となってきた人手不足など労働市場のひっ迫がいくぶん緩んだことを示す内容となりました。
統計の発表前、市場ではFRB=連邦準備制度理事会の利下げが当初の想定より大幅に遅れるという見方が大勢を占めていましたが、今回の統計で重要な項目がいずれも市場予想を下回ったことで利下げを始める時期が遅くはならないとの観測も出ています。
FRBの金融政策を見通す上で今月中旬に発表される消費者物価指数の内容に関心が高まりそうです。

 

●プーチン大統領 訪中か 「両国関係の重要性を強調」 5/4
ロシアのプーチン大統領が5月15日から中国を訪問する予定だとアメリカメディアが報じました。通算5期目に入って最初の外遊となりそうです。
ブルームバーグ通信によりますと、プーチン大統領の中国訪問は5月15日〜16日の日程で調整が進められているということです。日程が変更される可能性はまだあるものの、プーチン氏にとっては7日に大統領として5期目に入った後、早々の外遊となり、ブルームバーグ通信は「両国関係の重要性の高まりを強調するものだ」と指摘しています。
ただ、3月の中国からロシアへの輸出は前の年に比べて16%近く減っていて、首脳会談ではプーチン氏から「両国間の貿易量を強化する必要性を提起する可能性がある」と伝えています。
●プーチン大統領、今月15日から16日を軸に訪中予定 米報道 5/4
アメリカのブルームバーグは、ロシアのプーチン大統領が今月15日から16日の日程を軸に、中国を訪問する予定があると報じました。期間中、習近平国家主席との会談が行われるとしています。
中国訪問の予定は前後する可能性もあるとのことですが、今月7日に通算5期目の大統領就任式を迎えるプーチン氏にとって、新しい任期で最初の外遊になるとみられています。
プーチン氏は4月下旬の会合で「5月に中国を訪問する予定だ」と発言していました。
またブルームバーグは、「今年3月の中国のロシア向け輸出が、前年の同じ月に比べ16%ほど減少していて、プーチン大統領は習主席との会談で、両国の貿易拡大を呼びかける可能性がある」とも伝えています。
●「プーチンに質問したせいで、夫は脅迫された」 ロシア語編集部セルヴェッタズ記者 5/4
ロシア語編集部のエレナ・セルヴェッタズ記者が、プーチン政権をめぐる取材活動で表現の自由を制限された自身の体験を語る。
ウラジーミル・プーチン政権と初めて直接対決したのは16歳のときだった。2度目は29歳、3度目はごく最近、39歳だった。
1回目と3回目の対決で、私は失職した。2回目の対決は家族が脅迫された。
それでも私は怖くなかった。
最も怖かったのは2012年7月。フランスのラジオ局で駐仏ロシア大使にインタビューした後、シリア外務省から受けた脅迫だった。
初めから振り返ろう。時は2000年3月。ウラジーミル・プーチンが政権を握ったこの年、私は16歳で、ロシアの小さなテレビ局で10代向けのニュースと娯楽番組を担当していた。自分で台本を書き、題材も選んだ。大統領選の日にカメラマンと投票所に向かい、陸軍大将に選挙についてカメラの前で質問した。
その答えは驚くものだった。「私は昨日、全兵士を集めるよう命令した。そしてウラジーミル・ウラジーミロビッチ・プーチンの伝記を読んだ。そして『さあ、誰に投票すべきか分かっているな?』と尋ねた」
もちろんスクープだった。自由な選挙などありえないことを悟った。投票所が閉まった後に現地ルポを放送した。翌日、編集者が市当局に呼び出され、脅迫を受けた挙句に番組は打ち切られた。このエピソードは数年後、英日刊紙タイムズに掲載された。
2000年、私はモスクワ大学ジャーナリズム学部に入学した。私のクラスは、ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領の後援を受けていた。
プーチン政権との2度目の対決は、ラジオ・フランス・インターナショナル(RFI)で働いていた2013年に訪れた。特派員として、フランソワ・オランド大統領(当時)の初のロシア国賓訪問に同行した。
クレムリンでの記者会見で、私は当然ながらフランスのジャーナリストらしくフランス語でオランド大統領に質問をした。質問は同時通訳され、イヤホン越しにプーチン氏の耳に届いた。
私の質問はこうだった。「人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチによると、昨年は人権にとって近代ロシア史上最悪の年だった。これをどう思いますか、オランド大統領?もしプーチン氏もコメントしてくれるならありがたい」
この質問は、仏AFP通信社の記者が書いたオランド氏の公式伝記に残っている。だがそれ以外にはほぼ誰にも知られていない。
オランド氏の回答は非常に外交的なものだった。そしてプーチン氏は、あなたはフランス人だからロシアの選挙プロセスを理解していないと答えた。
パリに戻ると、当時の夫は明らかな脅迫を受けた。夫はロシアのバイコヌール宇宙基地から外国の衛星を打ち上げる欧州企業で働いていた。
ロシアの国営宇宙機関「ロスコスモス」のトップが夫の上司に電話をかけてきたのだ。「これからも部下にバイコヌールに出張させたいなら、大統領に質問しないよう奥さんをなだめろと伝言してくれ」
米紙ニューヨーク・タイムズなど世界中の主要紙が私の質問について報じた。それでもフランスの編集者が当時、私を支持しなかったのには驚いた。
私は当時、モスクワの著名ラジオ局「エコー」のパリ特派員も務めていた。そこの編集長、アレクセイ・ヴェネディクトフ氏が私のために働きかけてくれた。「やつらは君に危害を加えようとしているだけだ!私たちが公表しよう。私がなんとかする」。彼がロスコスモスに何と言ったか正確には分からない。いずれにせよ、脅迫は止んだ。
3回目の対決は、それほど良い結末を迎えていない。まずロシア検察庁は、私が携わっていた国際プロジェクトを妨害した。
それは反政府活動家ミハイル・ホドルコフスキー氏に関するプロジェクトだった。ロシア当局はそのいくつかを「望ましくない」として、ホドルコフスキー氏との関連を理由にロシアのメディアを遮断した。人命を危険にさらすのを防ぐため、同氏は2021年に活動を中止した。
ロシアがウクライナに大規模な軍事侵攻を仕掛けた直後の2022年3月1日、エコーは放送を打ち切られた。
ロシア検察はエコーのウェブサイトも閉鎖するよう要請した。エコーのウェブサイトは「ウクライナ領内での特別軍事作戦に関する虚偽の情報」や戦闘方法、ロシア兵の死者、銃撃戦、民間人の死傷者に関する情報を含んでいる、というのが理由だった。ロシアのテレビ局「ドシチ」も遮断された。
2022年夏、私はSWI swissinfo.chに転職した。翌年1月、ウクライナでのロシアの戦争犯罪に関するインタビューシリーズを掲載すると、swissinfo.chのウェブサイトもロシアからアクセスできなくなった。
●英がウクライナに供与の武器でロシア領内攻撃、英外相が容認か 5/4
イギリスのデイヴィッド・キャメロン外相は2日、ウクライナ・キーウを訪問し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談した。キャメロン外相は、イギリスが供与した武器をどのように使うかはウクライナ次第だと述べ、ウクライナにはロシア領内の標的を攻撃する権利があると主張した。
キャメロン外相は、イギリスは年間30億ポンド(約5800億円)規模の支援を、必要な限り続けると述べた。
「ロシアがウクライナ領内を攻撃している以上、ウクライナが確実に自国を防衛しなくてはと思うのはよく理解できる」
そして、ウクライナに攻撃を仕掛けたのはロシアの方で、ウクライナには「ロシアに反撃する権利が間違いなくある」と述べた。
キャメロン氏の発言について、ロシアは「またしても非常に危険な発言」だと非難した。
クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官は、「ウクライナでの紛争をめぐる緊張を直接的にエスカレートさせるもので、欧州の安全保障に脅威を与える可能性がある」と述べた。
ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、西側諸国がロシア政府への「ハイブリッド戦争」に関与していることを認めるに等しい発言だと述べた。
キャメロン氏はイギリスの武器がロシア領内の標的攻撃に使用されることを、直接支持したわけではない。
しかし、イギリス政府はこれまで明言しないまでも、長距離ミサイル「ストームシャドウ」などの武器はウクライナの主権領内でのみ使用されるべきとの考えだと、一般的に受け止められてきた。ロシア占領下のウクライナ南部クリミアでは、ロシア黒海艦隊への攻撃など、ストームシャドウの使用が成功した例はいくつかある。
ところが今回、リシ・スーナク英首相がウクライナに当面の間、年間30億ポンド規模の軍事支援を行うと約束したことを受け、この支援をどう扱うかはウクライナ次第だと、キャメロン氏は強調したかったようだ。
アメリカは紛争の激化を恐れ、ロシアの石油精製所に対する攻撃を中止するようウクライナに求めたと報じられている。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は今週、「ロシア軍が前線を突破した場合、そしてウクライナから要請された場合」、ウクライナへの地上部隊派遣を西側諸国は「合法的に」検討しなければならないと述べた。
ロシアのペスコフ報道官は、英誌エコノミストに対するマクロン氏のこうした発言について、「非常に危険な傾向」の一環だと批判した。しかしマクロン氏は、ロシアがウクライナで勝利すれば、欧州の安全はなくなると、インタビューで言明している。
ロシア軍、ウクライナ東部で攻勢強める
ロシア軍は最近、ウクライナ側の武器や人員が不足している状況につけ込み、ウクライナ東部でいくつかの村を占領した。
ウクライナの情報当局はまた、ロシアが北東部ハルキウ州やスーミ州での今夏の攻撃に備えているとみている。
ウクライナ国家警備隊のオレクサンドル・ピヴネンコ司令官は最近、ロシアが「不愉快な不意打ち」に備えてひっそりと、月に3万人を兵士として採用していると警告した。
ハルキウ市のイホル・テレホフ市長は、3日にロシア軍の空爆があり、高齢の女性が自宅で死亡したほか、乗客を乗せた路面電車も攻撃を受けたと述べた。
ウクライナ軍によると、ロシア軍の当面の目標は、壊滅的被害を受けた東部の町バフムートの西15キロにあるチャシウ・ヤルだという。この町は戦略的に重要な高台にある。
ウクライナ政府関係者は、ロシア軍がチャシウ・ヤルを掌握した場合、クラマトルスクやスラヴャンスクといった東部の主要都市への攻撃が可能になると考えている。ロシア軍は5月9日の第2次世界大戦の対独戦勝記念日を前に、ぜひともチャシウ・ヤルを掌握したいと考えている可能性がある。
しかし、ウクライナ軍の報道官は、ロシア軍がチャシウ・ヤル郊外のシヴェルスキー・ドネツク・ドンバス運河まで達した事実はないとしている。
ロシアは3日、この2週間でウクライナ東部の3つの村を占領したと主張した。ロシア軍報道官のナザール・ヴォロシン中佐によると、同軍はオチェレティネ村に足場を築いたが、ウクライナ兵が追い出そうとしているという。
ロシアが2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始して以降、イギリスはウクライナに戦車や精密誘導ミサイル、防空システムに至るまで、数十億ポンド相当の軍事支援を行ってきた。
1年前には、射程が250キロ以上の長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」の供与を始めたことを認めた。
こうした中、ウクライナのデニス・シュミハリ首相は、ロシア軍の度重なるミサイル攻撃で大きい被害を受けたウクライナのエネルギーインフラの復旧支援を、キャメロン外相に要請したことを明らかにした。
●ウクライナ軍、ATACMSでロシア兵100人超を殲滅 過去最悪級の人的損失に 5/4
ウクライナ東部ルハンシク州のクバニ村は、ロシアがウクライナで拡大して2年3カ月目に入った戦争の前線から100kmほど離れている。ウクライナ軍のほとんどの対人兵器の射程から十分外に位置するため、占領しているロシア軍にとってかなり安全な場所だった。
5月1日かその前日、クバニ付近の野外に大勢のロシア兵らが堂々と集まっていたのも、そうした安心感からだったのだろう。もしかすると数百人いたかもしれない兵士らは、訓練のために集合していたようだ。
だが、ロシア軍にとって問題になるものがあった。米国からウクライナに供与されたATACMS戦術弾道ミサイルである。精密誘導されるこのミサイルはモデルによっては射程が300kmに達し、内蔵している擲弾(てきだん)サイズの子弾を数百個から1000個近くばらまく。
ロシア兵らが白昼、クバニ付近の原っぱを公然とうろつく様子は、ウクライナ軍のドローン(無人機)によってかなり高い上空から監視されていた。そこに、重量2tのATACMSが4発、猛スピードで飛来した。1発は起爆しなかったが、3発は上空で炸裂し、致死的な子弾が飛散した。3発はそれぞれ直径340mの円状のエリア(約10ha)を、ほとんど逃げ場所のないキルゾーンに変えた。
うち1発は、無防備なロシア兵ら116人前後の真上で炸裂した。米ワシントンD.C.にあるシンクタンク、戦争研究所(ISW)によれば、雨のように注いだ子弾によってその全員が死亡したもようだ。
ATACMSを用いた今回の攻撃は、一度の攻撃としてはこの戦争で過去最多の死傷者を出したもののひとつになった可能性がある。それはまた、ロシア軍の指揮官たちによる備えのずさんさもあらわにした。彼らは、このような攻撃が最近可能になっていたこと、さらには実施される可能性も高いことがわかっていたはずだ。米国からATACMSを取得し、それによってロシア軍の脆弱な後方地域をたたくことは、ここ数カ月、ウクライナ側の軍事上の最優先事項のひとつだったからだ。
ウクライナはこの強力なミサイルの供与を米国に繰り返し求めていた。米国は遅ればせながら、それに応じた。
米議会が先月下旬、ロシアに好都合な少数の共和党議員の抵抗をようやく乗り越えて、およそ610億ドル(約9兆3000億円)の新たな対ウクライナ支援法案を可決する少し前、ジョー・バイデン政権は、以前に承認されていたウクライナ向け兵器契約を見直すことで3億ドル(約460億円)を捻出した。
ホワイトハウスはその大半をATACMSの緊急供与に充てた。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、供与数は100発超にのぼったもようだ。さらに、議会で新たな支援法案が可決された翌日、ホワイトハウスがウクライナに急送した10億ドル(約1530億円)相当の兵器にもATACMSが含まれていた可能性がある。
ロイド・オースティン米国防長官は先週、議会の公聴会で、国防総省はウクライナにATACMSを「できる限り多く」譲渡すると証言している。米国の兵器庫にはATACMSが数千発ある。多くはロケット燃料の劣化にともない使用期限が迫っているため、米国は急いで手放そうとするかもしれない。
ロシアはウクライナに新たなATACMSが届くことを知っていた。そのうえ、ウクライナ軍がそれをロシア軍の最も脆弱な集中地点(訓練場を含む)に向けて発射するだろうという警告も十分あった。実際、ウクライナ軍は2月の恐怖の1週間に、今回のATACMSより短い射程のミサイルを少なくとも3回、訓練や上官による閲兵のために野外に集合していた大勢のロシア兵らに向けて撃ち込み、伝えられるところでは100人以上を殺害していた。
ウクライナ軍は昨年秋、ATACMSを初めて少数入手すると、さっそくロシア軍の飛行場2カ所に向けて発射し、ヘリコプター約20機を破壊したり損傷させたりした。また、おそらく先月上旬、ATACMSの新たな供与分の第一弾が届くと、これもあまり間をおかずロシア空軍の貴重なS-400地対空ミサイルシステムへの攻撃に用い、発射機少なくとも4基を破壊した。
ロシア占領下クリミアのS-400に対するこの攻撃は、ロシア側にはATACMSを確実に迎撃できる防空兵器がないこともあらためて示した。その含意は明らかだった。4月時点で、ロシア軍部隊が前線から300km以内で露出した状態になれば、ウクライナ軍が在庫を増やしているATACMSによる攻撃を受けやすくなっていたということだ。
その危険を顧みず、ロシア軍はクバニ付近の野外に多数の兵士らを集めた。案の定、そこにATACMSの一撃が加えられ、100人以上が死亡する結果になったようだ。
●8兆円のウクライナ支援検討=G7、凍結資産活用で―米報道 5/4
米ブルームバーグ通信は3日、先進7カ国(G7)が経済制裁の一環で凍結したロシアの資産を活用し、ロシアの侵攻を受けるウクライナに最大500億ドル(約7兆6000億円)の追加支援を検討していると報じた。6月にイタリアで開かれる首脳会議(サミット)での合意を目指し、緊密な協議を進めているという。
報道によると、米国が6月の合意を積極的に働き掛けているが、協議は難航しており、さらに数カ月かかる可能性もある。
●ウクライナ情報機関、モスクワの空港で「放火」工作を展開…ヘリに火をつける「隠密行動」動画が拡散中 5/4
ウクライナ国防省情報総局(GURMO)は4月末、ロシアの首都モスクワ郊外にあるオスタフィエボ空港でロシアの多目的ヘリコプターKa32が破壊されたと発表した。同情報総局がテレグラムの公式チャンネルに投稿した動画を見ると、何者かが夜の闇に紛れてKa32ヘリの機内に「放火」し、みるみるうちに炎が燃え広がっていく様子が捉えられている。
動画にはヘリコプターのキャビン(客室)内に火が放たれた様子が映っているが、この火災でヘリがどの程度の損傷を受けたのかは明らかにされていない。情報総局は、このヘリは「黒焦げになった」としている。また同局は動画に、「破壊されたヘリコプターは、侵略国家であるロシアが軍の作戦を支援する目的で使用していたものだ」と説明を添えた。
情報総局はまた声明の中で、オスタフィエボ空港はロシアの国営天然ガス企業「ガスプロム」の傘下にある航空会社「ガスプロムアビア」が共同で運営しているとも説明した。ガスプロムもガスプロムアビアも、ロシアによるウクライナへの本格侵攻に関連してアメリカによる制裁の対象となっている。
ウクライナのメディア「MV」は情報総局関係者から得た情報を引用し、破壊されたヘリコプターはロシア国防省が所有していたものであり、物資輸送や戦闘員の撤退作戦などを行ってロシア軍を支援するのに使用されていたと報じた。
ロシア国内への越境攻撃は「避けられないプロセス」
ウクライナの情報機関はモスクワを含むロシア深部へのドローン攻撃や破壊工作に関与しており、今回の攻撃が事実と確認されれば彼らが関与した新たな攻撃ということになる。
ウクライナは特にこの数カ月、ロシアのエネルギー施設に対する攻撃を強化し、ロシア軍による効果的な作戦展開を妨害している。また一連の攻撃により、世界のエネルギー価格への影響を懸念する声も高まっている。
ウクライナの当局者らは、ロシア国内での攻撃について関与を認めることはあまりないが、ウクライナからの越境攻撃については繰り返し、自分たちにはその自由があると擁護してきた。アメリカをはじめとする国際社会は越境攻撃に反対を表明している。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2023年夏にモスクワに対するドローン攻撃があった後、「戦争は徐々にロシアの領土、ロシアの象徴的な中心地や軍事基地に戻りつつある。これは避けられない自然な、そしてまったく公正なプロセスだ」と述べていた。
このような攻撃は過去1年の間に増加傾向を見せている。たとえば4月16日には、ウクライナ国防省情報総局がロシア東部にある爆撃機の製造工場へのドローン攻撃に関与したことを認めた。
空軍基地や飛行場を優先的に攻撃するウクライナ
また4月5日未明には、ウクライナとの国境から約96キロメートル離れたロシアのモロゾフスク空軍基地を標的とした攻撃が行われた。ここにはロシア軍がウクライナ国内の複数の前線で攻撃に使用してきたスホーイSu24とSu34などの戦略爆撃機が駐留していたという。
空軍基地や飛行場はウクライナ軍にとって優先的な「標的」となっている。2024年はじめには、ウクライナ空軍はクリミア半島の西端に位置する港湾都市セバストポリの近くにあるベルベク飛行場をミサイルで攻撃したと明らかにした。2022年8月には、クリミア西部にあるロシア軍のサキ空軍基地で複数の爆発が発生し、ロシア軍の戦闘機が多数損傷した。
ウクライナ軍は2024年に入ってからこれまでに、ロシア軍の多数のSu34戦闘爆撃機、Su35戦闘機と少なくとも1機のA50早期警戒管制機を破壊したと主張。2022年2月の戦争開始以降、これまでに撃墜したロシア軍の航空機は347機にのぼるとしている。
●ウクライナ東部に攻撃、4人死亡 ハリコフ市とドネツク州 5/4
ウクライナメディアによると、東部ハリコフの住宅地で3日、ロシア軍の誘導爆弾による攻撃があり、82歳の女性が死亡し、男性2人が負傷した。東部ドネツク州でもロシア軍の砲撃で市民3人が死亡、5人が負傷した。
ハリコフでは路面電車も被害を受けたが、死傷者はなかったという。
●ロシア軍 東部ドネツク州で激しい攻撃 高台の要衝めぐり攻防 5/4
ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は、3日もウクライナ東部のドネツク州で激しい攻撃を続けています。
ウクライナの地元当局によりますと、ドネツク州にある高台の要衝、チャシウヤルで3日、ロシア軍の無人機による攻撃があり住民1人が死亡するなど、州全体であわせて3人が死亡し、5人がけがをしました。
チャシウヤル周辺の地域に展開するウクライナ軍の部隊のナザール・ボローシン報道官が3日、NHKの単独インタビューにオンラインで応じました。
このなかでボローシン報道官は、ロシア側にはドネツク州全域を支配するという目標があり、高台にあるチャシウヤルを押さえたうえでさらに北西にある都市などに進軍する狙いがあると述べました。
ただ、前線ではウクライナ軍の部隊も反撃していると強調し「チャシウヤルの街の中には入れていない」と説明しました。そのうえでロシア軍は砲撃や空からの攻撃を続けているということで、ボローシン報道官は「ウクライナ軍が防御できる場所がなくなるよう街を徹底的に破壊している」との見方を示しました。
さらにロシア軍が、いま攻勢を強めている理由についてボローシン報道官は今月9日の第2次世界大戦の戦勝記念日に向けて戦果をあげたいという思惑のほか「ウクライナに海外から軍事支援が届く前に、前線であらゆることを試みている」という見方を示しました。
一方、ロシアのショイグ国防相は3日、軍の司令官らとの会議で「ロシア軍は前線の全域で敵の拠点を破壊し続けている。ウクライナ軍はいくつかの地点で持ちこたえようとしているものの、われわれの圧力に耐えかねて後退している」と述べ、ロシア軍が優勢な状況だと強調しました。そのうえで「ことしに入ってからロシアは新たに547平方キロメートルの土地を掌握した」と戦果を誇示しました。
●中東・ウクライナに懸念表明 日伯首脳、気候変動で連携―共同声明、「中国」触れず 5/4
岸田文雄首相は3日午前(日本時間同日夜)、ブラジルのルラ大統領と首都ブラジリアの大統領府で会談し、共同声明を発表した。領土保全や武力行使禁止など国連憲章の原則を順守する重要性を強調し、中東情勢に「深刻な懸念」、ウクライナ情勢に「重大な懸念」を表明。地球温暖化対策での連携を打ち出した。
パレスチナの国連正式加盟を支持する方針も示した。ウクライナ関連では核の使用や威嚇を認めず、「公正かつ永続的な平和」に向けた外交努力を訴えた。
一方で、日本が懸念を強める中国の覇権主義的な動きへの直接の言及はなかった。海洋秩序を定めた国連海洋法条約を支持する立場は明記したが、「中国」や「南シナ海」といった文言は入らなかった。中国はブラジルの最大の貿易相手国で、密接な関係を持つことが背景にあるとみられる。
●米下院議長の決断が開いた突破口 ウクライナ支援に職を賭した代償は 5/4
数カ月にわたる党派対立を経て、米議会は4月にウクライナへの軍事支援を再開させた。立役者の一人が、バイデン政権と鋭く対立してきた共和党のマイク・ジョンソン下院議長だ。トランプ前大統領の影響下にあった党内の強硬右派からの反対を押し切り、採決に踏み切った。その結果、一部議員から解任を突きつけられており、今後の去就が注目されている。
「ジョンソン氏は勇気を見せた」「彼は歴史の正しい側に立とうとした」。4月20日に下院でウクライナ支援の法案が可決されると、普段はジョンソン氏に厳しい論調が目立つ米メディアにも、好意的な言葉が並んだ。
重要法案の成立より、党派争いが優先される。そんな迷走が続いてきた米議会だが、ここにきて少し変化の兆しがみえてきました。なかでも混乱を生んできた強硬右派の失速ぶりについて、記事の後半で解説しています。
半年以上にわたり、米国のウクライナ支援は党派的な国内政治と結びつき、迷走していた。 ・・・
●ウクライナ東部の要衝「陥落は避けられない」…高官が分析、露軍が制圧すれば主要都市が砲撃対象に 5/4
ロシアの侵略を受けるウクライナ国防省情報総局のバディム・スキビツキー副局長は2日の英誌エコノミストのインタビューで、露軍が制圧を狙う東部ドネツク州の要衝チャシフヤールに関し、陥落は避けられないとの見通しを示した。「我々には武器がない」とも述べ、米軍の軍事支援が再開されても当面は苦境が続くとの認識を示した。
チャシフヤールを巡る情勢に関し「陥落は時間の問題だ」と悲観的な分析を明らかにした。陥落時期については「今日か明日の話ではないが、我々の備蓄と物資次第だ」と述べた。チャシフヤールは高台に位置しており、露軍が制圧すればウクライナ政府が管理するドネツク州の主要都市が砲撃対象となる。
スキビツキー氏は露軍が5月末〜6月に着手すると取りざたされている大規模な攻勢に向け、約51万4000人の兵士を投入しているとの見方も示した。東部ハルキウ州などへの攻撃が考えられるという。州都ハルキウに露軍が迫るシナリオもあり得ると指摘した一方で、完全な占領には露軍の「兵力が不十分だ」と分析した。
●カナダでシーク教徒指導者殺害 容疑者とインド政府の関係捜査 5/4
カナダで去年、インド北部の独立運動を支援していたとされるシーク教徒の指導者が殺害された事件で3日、インド国籍の3人が事件に関わった疑いで逮捕され、警察は「インド政府とつながりがあるかどうか捜査している」と明らかにしました。
カナダ西部で去年6月、シーク教徒の指導者でカナダ国籍の男性が銃で撃たれて殺害された事件をめぐっては、トルドー首相がインド政府が関与した疑いがあると指摘していました。
カナダの連邦警察は、3日に記者会見を開き、インド国籍の20代の男3人が事件に関わった疑いがあるとして逮捕したことを明らかにしました。
警察によりますと、3人は、男性が殺害された町からおよそ800キロ離れたアルバータ州エドモントンの住宅などにいたということですが、他にも関わった人物がいるとみて捜査を進めているため、動機や証拠などは明らかにできないとしています。その上で警察は「インド政府とつながりがあるかどうか捜査している」と明らかにしました。
殺害された指導者の男性は、インドでシーク教徒の多い北部の独立運動を支援していたとされています。
これまでにカナダ政府は、事件に関与した疑いがあるとしてインドの外交官1人を国外への追放処分にしたのに対し、インド政府が対抗措置をとるなど関係が悪化しています。
●バイデン大統領“日本は外国人嫌い”発言 日本政府「残念だ」 5/4
アメリカのバイデン大統領が日本を「外国人嫌い」の国と発言したことについて、日本政府は「正確な理解に基づかない発言があったことは残念だ」とアメリカ側に申し入れました。
アメリカのバイデン大統領は今月1日、選挙関連のイベントで演説した際、「われわれの経済が成長している理由の1つは、移民を受け入れているからだ」と述べたあとで中国とロシア、インドと並べて「なぜ日本は問題を抱えているのか。それは彼らが外国人嫌いで移民を望んでいないからだ」と発言しました。
日本政府関係者によりますと、この発言を受けて政府は、3日までに「日本の政策に対する正確な理解に基づかない発言があったことは残念だ」とアメリカ側に申し入れたということです。
また、日本の考えや政策について説明したとしています。
今回のバイデン大統領の発言をめぐっては、2日、ホワイトハウスのジャンピエール報道官への取材機会の際に、記者団から「同盟国に対して不適切な表現ではないか」などと真意をただす質問が出されました。
これに対してジャンピエール報道官は「バイデン大統領は移民がいかにアメリカを強くしているのかについて話していた」と釈明した上で、日米関係は重要であり続けると強調しています。
●泥沼のウクライナ戦争、ロシア軍に取り付く「亡霊」 5/4
第2次世界大戦の末期、旧ソ連軍は「赤いナポレオン」が考案した「作戦術」の用兵術で、ドイツや旧日本軍を蹂躙(じゅうりん)した。そのDNAを受け継ぐはずのロシア軍が、なぜ、ウクライナで泥沼の戦争を続けるのか。東京大学先端科学技術研究センター准教授・小泉悠さん(ロシア軍事・安全保障)に聞いた。
――1945年までの独ソ戦や日ソ戦は、物量優先の戦いだったのではないかと考えています。その戦術なり思想は、戦後の冷戦期、ソ連でどう継承されたのでしょうか?
「赤いナポレオン」ことトゥハチェフスキーの「作戦術」が見事だったのは、対独戦でも満州侵攻でも、ソ連軍がそれをある程度は理論通りに実行してみせたという点にあると思います。通俗的なソ連軍のイメージは、物量を単にぶつけるだけという見方がされがちです。しかし実際は、兵力の配置と補給を巧みに組み合わせ、物量を最適なタイミングと順番でぶつけることで、相互の攻撃軸を連携させて敵を壊滅させる大きな打撃力を生み出すことをしていました。実際、冷戦期にはその打撃力が維持され、NATO(北大西洋条約機構)も中国もそれを恐れていました。
――ソ連崩壊後、それがどう変わったのでしょうか?  ・・・
●自衛隊とフィリピン軍の共同訓練「円滑化協定」の締結へ連携 5/4
木原防衛大臣は、訪問先のハワイで、フィリピンのテオドロ国防相と会談し、自衛隊とフィリピン軍の部隊が共同訓練を実施しやすくするための「円滑化協定」の早期締結に向けて連携していくことで一致しました。
会談は、日本時間の4日未明に行われ、海洋進出を強める中国を念頭に南シナ海をめぐる情勢について意見を交わし、自由で開かれたインド太平洋を実現していくことが重要だという考えを確認しました。
そして、自衛隊とフィリピン軍の部隊が共同訓練を実施しやすくするため、武器・弾薬の取り扱いなどをあらかじめ取り決めておく「円滑化協定」の早期締結に向けて連携していくことで一致しました。
また、日本からフィリピンへのレーダーの輸出など、近年、安全保障面での協力が進展していることを踏まえ、今後もさまざまな分野で協力や交流を進めていくことでも一致しました。
日米豪比4か国の防衛相会談など、ハワイでの一連の日程を終えた木原大臣は記者団に対し、「同盟国、同志国のネットワークを重層的に構築、拡大していくことが抑止力、対処力の向上につながっていくと思う。新たなステージに向かう、極めて重要なきっかけになった」と述べました。
●イギリス 地方選挙でスナク首相率いる保守党が議席大幅減 5/4
イギリスで行われた地方選挙でスナク首相率いる与党・保守党が議席を大きく減らし、地元メディアは来年1月までに行われる総選挙で最大野党の労働党が第一党になるという分析を伝えています。
イギリスのイングランドでは2日、首都ロンドンを含む11の市長選挙と、107の自治体の議会選挙などが行われました。
公共放送BBCによりますと、このうち議会選挙は100の自治体の開票が終わった3日夜の時点で、与党・保守党が議席数を400以上減らし、議席の過半数を占める自治体は選挙前の13から5に減少しました。
これに対し、最大野党の労働党は170議席近く増やし、48の自治体で議席の過半数を占めました。
また、同じ日に行われたイギリス中西部、ブラックプールでの下院の補欠選挙や、スナク首相の選挙区を含む中部ノースヨークシャー州の市長選挙でも、いずれも労働党の候補が当選しました。
今回の選挙は、イギリスで来年1月までに行われる総選挙の行方を占うものとして注目されていましたが、経済の低迷などを背景に、14年間にわたって政権を握る保守党に対する有権者の不満が表れた形で、労働党のスターマー党首は総選挙の早期実施を求めました。
これに対してスナク首相は「総選挙では有権者はわれわれを支持するだろう」と強調しましたが、地元メディアはこの情勢が続けば総選挙では労働党が第一党になるという分析を伝えていて、スナク首相がいつ議会の解散に踏み切るかが焦点となります。
●日中韓とASEAN 災害時など資金融通し合う新枠組み設立で合意 5/4
日中韓の3か国とASEAN=東南アジア諸国連合の財務相・中央銀行総裁会議がジョージアで開かれ、自然災害の発生や感染症の拡大といった危機の際、域内の各国で緊急に資金を融通し合う枠組みを新たに設けることで合意しました。
会議は、3日、ジョージアのトビリシで開かれ、日本からは鈴木財務大臣と日銀の氷見野副総裁が出席しました。
この中では、自然災害の発生や感染症の拡大といった危機の際、域内の各国で緊急に資金を融通し合う枠組みを新たに設けることで合意しました。
1997年のアジア通貨危機を受けて設けられた「チェンマイ・イニシアティブ」という現在の枠組みを活用するもので、来年までに詳細の詰めを行うとしています。
鈴木大臣は記者会見で「パンデミックや自然災害などの対外的なショックの場合に迅速に支援を行うものであり、災害が多いASEAN諸国が期待していた。正式に承認できたことは大きな成果だ」と述べ、意義を強調しました。
また、会議後に発表された共同声明では、外国為替市場のボラティリティー=変動の高まりが、この地域の短期的な経済見通しに影響を与えるリスクがあるという認識が表明されました。
このほか、3日は、日本と太平洋の島しょ国の財務相会議も開かれ、気候変動やインフラ投資に関する議論を行い、経済・金融分野の関係強化に向け緊密なコミュニケーションを継続していくことで合意しました。
●交渉進展が焦点も ガザ地区南部でイスラエル空爆による死者か 5/4
イスラエルとイスラム組織ハマスの間での戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉が進展するかどうかが焦点となる中、多くの避難者が身を寄せるガザ地区南部では、3日もイスラエル軍による空爆で少なくとも6人が死亡したと伝えられるなど死傷者が増え続けています。
ガザ地区をめぐるイスラエルとハマスの間での戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉について、ハマスは「停戦についての提案を前向きに検討している」としたうえで、近くエジプトに交渉団を派遣する考えを示しています。
また、アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルは3日、エジプト当局者の話としてイスラエル側はハマスが1週間以内に提案に合意しなければ、南部ラファでの作戦を開始するなどと伝えていて、交渉が進展するかどうかが大きな焦点になっています。
こうした中でもイスラエル軍によるガザ地区での攻撃は続いていて、地元のメディアは3日、多数の避難者を含むおよそ120万人が身を寄せる南部ラファにある住宅がイスラエル軍による空爆を受け、子どもや女性を含む少なくとも6人が死亡し、ほかにも複数のけが人が出ていると伝えています。
地元の保健当局は3日、これまでに3万4622人が死亡したと発表し、死傷者の数は増え続けています。
イスラエルのネタニヤフ首相はラファへの地上作戦を強行する構えを崩していませんが、OCHA=国連人道問題調整事務所の報道官は3日、会見で「攻撃が行われれば住民の虐殺になりかねずガザ地区全体への人道支援にとっても深刻な打撃になりかねない」と述べ、イスラエル側に自制を求めました。
●ロシア国営ガス会社 24年ぶりの赤字転落 侵攻で欧州「脱ロシア依存」ガス輸出急減が直撃 5/4
ロシア国営ガス会社「ガスプロム」は、昨年度の決算がおよそ1兆400億円の赤字に転落したと発表しました。最終赤字の計上は24年ぶりで、ウクライナ侵攻に伴うヨーロッパへのガス輸出の急減が直撃したものとみられます。
ガスプロムの発表によりますと、2023年12月期決算は最終損益が6290億ルーブル、日本円でおよそ1兆400億円の赤字に転落しました。前の期はおよそ1.2兆ルーブルの黒字で、ガスプロムが最終赤字を計上したのは1999年12月期以来、24年ぶりとなります。
ウクライナ侵攻により、主なガス供給先であったヨーロッパが「脱ロシア依存」を進め、ガスの輸出が急減したことが直撃したものとみられます。
ロシアは石油・ガスによる収入が歳入のおよそ3割を占めていて、侵攻に伴う巨額の戦費支出が続くロシアの財政にも影響を及ぼす可能性があります。
●ウクライナ火力発電能力9割喪失 エネ相、日本協力に期待 5/4
ウクライナのハルシチェンコ・エネルギー相は3日、共同通信のインタビューに応じ、ロシアから攻撃を受ける電力施設について「火力は90%近く、水力は30〜40%の発電能力を失った」と述べた。小型発電設備の供与などで支援する日本に謝意を示し、復興段階での協力関係の強化にも期待した。
4月中旬にエネルギー関連インフラを狙ったロシアの大規模攻撃で、首都郊外のキーウ(キエフ)州最大の火力発電所が破壊された。南部のザポロジエ原発はロシア側に占拠され「設備管理はますます悪化している」と懸念を示し、部隊の即時撤退を訴えた。 

 

●プーチン氏5期目7日に就任式 5/5
ロシアのプーチン大統領の通算5期目の就任式が7日、モスクワで行われる。ウクライナ侵攻を背景に国内を引き締め、3月の大統領選は得票率約87%で圧勝した。8日以降に新内閣が発足、9日には旧ソ連の対ドイツ戦勝記念行事で演説し、2030年までの任期をスタートさせる。
就任式はクレムリン(大統領府)であり、18年の前回は約5000人が出席した。最初にプーチン氏は政権人事を提案。20年から務めるミシュスチン首相を続投させるもようで、8日に下院で承認される。
「内閣の骨格は維持される」(マトビエンコ上院議長)といい、政権の「マイナーチェンジ」にとどまる見通し。戦時下でラブロフ外相やショイグ国防相の留任も濃厚と目されている。
8日には早速、ロシア主導の経済ブロック「ユーラシア経済同盟」の首脳会議がモスクワで開かれる。加盟国首脳には、戦勝記念日の9日に「赤の広場」で実施される軍事パレードへの参列を促し、戦時下でロシアが孤立していないとアピールする場になりそうだ。
●武力行使を伴わない外交はロシアに通用しない…プーチンの侵略を止めるために西側諸国がやるべきこと 5/5
ロシアによるウクライナ侵攻は、2年以上が経過しても収束の見通しが立っていない。なぜプーチン大統領はウクライナに固執するのか。国際政治学者・舛添要一さんの新著『現代史を知れば世界がわかる』から侵攻に至った経緯を紹介しよう――。
なぜロシアは「領土拡大」に執念を燃やすのか
1206年にモンゴル帝国を建国したチンギス・ハンは、次々と領土を拡大していった。第2代皇帝オゴデイ・ハンの時代にロシアを攻め、1237年にはモスクワを陥落させた。ロシアは、1480年までの約240年間にわたって、モンゴルの支配下に置かれたが、これを「タタールの軛(くびき)」と呼ぶ。
この2世紀半にわたる隷従の体験が、ロシア人のその後の考え方や生き方に大きな影響を与えたのである。
陸続きのユーラシア大陸を席巻する騎馬民族に蹂躙(じゅうりん)されたロシア人は、外敵に対して異常なまでの警戒心を抱き、安全保障を重視するようになった。ロシア人が、ソ連邦崩壊後にNATOの東方拡大を警戒したのは当然である。
ロシアにとって、隣国のベラルーシとウクライナは国境を接する最後の砦であり、絶対に敵には渡さないとプーチンは決意した。
ベラルーシは親露派のルカシェンコ政権であるが、ウクライナは反露・親西欧のゼレンスキー政権になった。そのため、プーチンの危機感は募り、2022年2月24日にウクライナに軍事侵攻したのである。
他国を侵略する行為は国際法上許されるものではないが、軍事侵攻を決意するまでの心理状態を説明すれば、以上のようになる。
プーチンが称えるピョートル大帝の業績
モスクワ大公国のイヴァン3世は、1480年にキプチャク・ハン国への臣従を破棄して、「タタールの軛」からロシアを解放する。その孫が雷帝と呼ばれるイヴァン4世である。領土の拡張を試みるが、期待通りの成果を得ることができず、雷帝の死後、ロシアは不安定な「動乱時代(スムータ)」となり、対外戦争に負け、多くの領土を失った。
1613年にロマノフ朝が始まるが、1694年にはピョートル1世(大帝)が親政を開始し、西欧化・近代化を推進するとともに、ロシア領土を拡大し、ロシアを大国にしていく。プーチンは、このピョートル大帝の業績を称え、ウクライナ侵攻を「領土を奪還する」ための戦いだと正当化するのである。
1917年、レーニンがボリシェヴィキ革命を成功させ、ロマノフ朝が倒れた。このロシア革命は第一次世界大戦中に起こったが、レーニンは革命政権を安定化させるために戦争を早く終わらせようとし、ドイツと11月後半からブレスト=リトフスクで停戦交渉を開始した。
ウクライナでは、当時は中央ラーダ(評議会、ロシア語のソヴィエト)が権力を握り、反ボリシェヴィキの方針を貫いた。11月20日には「ウクライナ人民共和国」として事実上の独立を宣言し、12月17日にはボリシェヴィキと戦争状態に入った。
ドイツと手を組んだウクライナへの怒り
ボリシェヴィキ政府は、ウクライナにドイツが干渉するのを防ぐために、ドイツとの講和交渉を急いだ。
ところが、中央ラーダは、一足先に1918年2月9日、ドイツと講和した。ウクライナは、ボリシェヴィキと戦うためにドイツ軍の支援を受け、それと交換にドイツに100万トンの穀物の供給を約束したのである。
ウクライナの主要産品は、肥沃(ひよく)な大地が生み出す小麦などの穀物である。2022年に始まったウクライナ戦争で、その輸出が制限されたために、世界が食糧危機に陥ったことは周知の事実である。ドイツ軍はこの中央ラーダとの連携に力を得て、赤軍(ソヴィエト政権の軍隊)を攻撃し、首都ペトログラードに迫っていった。
そのような状況で、レーニンは革命の結果生まれた新体制を守るため、即刻の講和を主張して、3月3日に講和条約(ブレスト=リトフスク条約)を締結した。その結果、ロシアは、フィンランド、ポーランド、バルト三国、ウクライナなど、多くの領土を失った。
ドイツと手を組んだウクライナの裏切りが原因であり、この屈辱をスターリンもプーチンも忘れなかった。ウクライナへの怒りの念が、2022年のロシア軍のウクライナ侵攻の背景にある。
プーチンの狙いは帝国を復活させること
その後、第二次世界大戦でスターリンはヒトラーに勝ち、領土を奪還し、東欧諸国を支配下に置いた。プーチンがスターリンを尊敬する理由は、広大な領土を誇る大国、帝国を復興させたからである。
ソ連邦解体後のNATOの東方拡大は、「21世紀のブレスト=リトフスク条約」であり、それを是正し、帝国を復活させることこそが自らの責任であるとプーチンは確信している。
1999年8月に首相に就任したプーチンは、チェチェン紛争に介入し、親露派政権を樹立した。2000年3月の大統領選挙でプーチンは当選し、引き続き大国ロシアの復活という課題に挑戦していく。
1991年のソ連邦の解体で独立国となったジョージア(グルジア)で、2008年に南オセチア紛争(ロシア・グルジア戦争)が起こった。ジョージアには、親露派で分離独立を唱える南オセチアとアブハジアが存在していた。
2008年8月、グルジア軍は南オセチアの首都ツヒンヴァリに対し軍事行動を起こしたが、ロシア軍が南オセチアに入り、激しい戦闘が行われた。その結果、グルジア軍は撤退を余儀なくされ、ロシアは南オセチアとアブハジアの独立を承認したのである。
2022年2月のロシア軍によるウクライナ侵攻は、この2008年のグルジアに似ている。親露派勢力の要請で軍事侵攻し、独立国として承認するというパターンである。
2014年3月、ロシアはクリミア半島を併合した。その根拠は、住民投票によってロシア帰属が決められたことであるが、その住民投票はウクライナ憲法違反である。そこで、ロシアは、クリミアに独立宣言をさせ、独立国家としてロシアに併合したのである。
ウクライナ侵攻の直前の2022年2月21日、ロシアは東部のルガンスクとドネツクを独立国家として承認したが、クリミア併合と同じプロセスを追求するためであった。
ウクライナ侵攻を許した西側諸国の不作為
クリミアを併合するまでのプーチンの外交軍事の成功は、版図を広げ、大国の復活を目指すことを望むロシア国民の喝采するところであった。支持率が上がるのは当然である。
周到な準備と果敢な行動力がプーチンの成功につながったことは否定できないが、同時に忘れてはならないのは、それを可能にしてきたのはアメリカをはじめとする西側諸国の無関心と不作為であったということである。
ベルリンの壁が崩壊し、ソ連邦が解体した後の最大の問題の一つが、核兵器の管理である。
1968年に国連で採択され、1970年3月に発効した条約に、核拡散防止条約(NPT)という取り決めがある。それは、アメリカ、フランス、イギリス、中国、ソ連(ロシア)5カ国以外には核兵器の保有を認めないという約束である。核保有国を増やさないということでは評価できるが、批判的に言えば、国連安全保障理事会の常任理事国のみで核兵器を独占するということである。
唯一の被爆国である日本は、1970年2月に署名し、1976年6月に批准している。締約国は191カ国・地域にのぼる(2021年5月現在)が、参加していないのはインド、パキスタン、イスラエル、南スーダンである。5大国による核兵器の独占に反対しているからである。南スーダン以外の3カ国は既に核兵器を保有していると見られている。
プーチンを増長させたクリミア併合
ソ連時代には、連邦を構成していたベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンには核兵器が配備されていた。もし、この3カ国が独立後もそのまま核兵器を保有し続ければ、核兵器保有国が3カ国増えることになってしまい、NPTに違反することになる。
そこで、ソ連邦から独立する際に、この3共和国がNPTに加盟し、核兵器を放棄する(具体的にはロシアに引き渡す)ことにしたのである。1994年12月5日に、ハンガリーの首都ブダペストでOSCE(欧州安全保障協力機構)会議が開かれ、核放棄の見返りとして、ロシア、アメリカ、イギリスは、この3カ国の安全を保障することを約束した。こうして署名された文書を、ブダペスト覚書と呼ぶ。
2014年3月にロシアはクリミアを併合したが、ウクライナはブダペスト合意違反だと抗議した。ロシアは住民投票の結果だと反論したが、クリミア併合がブダペスト合意の違反であることは明白である。しかし、アメリカもイギリスも経済制裁は科したが、それは重いものではなく、合意を遵守(じゅんしゅ)させるための具体的・実効的な手は打たなかったのである。このような西側の姿勢が、プーチンを増長させたといえよう。
2022年のロシア軍によるウクライナ侵略についても、ブダペスト合意違反である。この覚書は反故にされてしまっている。もはやこの覚書に頼ることはできず、それに代わって強力な法的担保のある安全保障体制の構築が必要である。
ロシアが挑発行為とみなした「NATOの東方拡大」
外交では、プーチンは西側との協調路線を維持した。2006年7月には、G8の議長国として、サンクトペテルブルクでG8サミットを開催している。
2007年2月10日、ミュンヘン安全保障政策会議で、プーチンは、「冷戦後にアメリカ一極集中の世界は実現しなかった」と述べ、「アメリカの一方的な行動は問題を解決しておらず、新たな緊張をもたらしている」と指摘した。そして、NATOの東方拡大を「相互信頼のレベルを低下させる深刻な挑発行為」だと厳しく批判したのである。
それまでプーチンは、西側との協調路線を歩み、NATOの東方拡大などの屈辱にも耐えてきたが、ここにきて堪忍袋の緒が切れたように、アメリカへの不満を爆発させたのである。この演説は西側に大きな衝撃を与えたが、アメリカは、その不満の深刻さを正確に認識できなかったのである。冷戦の勝者として、敗者の痛みなど無視したアメリカの傲慢さ、鈍感さが、その後の事態の悪化の背景にある。
アメリカは、NATOの東方拡大へのロシアの懸念を真剣に受け止めず、さらに傷口に塩を塗るような行為に出た。2008年春にブカレストで開かれたNATO首脳会議において、アメリカはウクライナとジョージアの加盟を強く主張したのである。
これは、プーチンの神経を逆なでする提案であった。ロシアの反発を懸念するフランスとドイツの反対で、首脳会議は「ウクライナとジョージアをいずれNATOに加盟させる(will become member)」と、加盟時期を明示しない宣言をまとめた。これが、ブカレスト宣言と呼ばれるもので、4月3日に採択されている。
「米英vs独仏」の構図でバランスが保たれていたが…
プーチンにしてみると、フランスやドイツは冷戦の敗者であるロシアに一定の配慮をしているが、アメリカはロシアの封じ込めしか考えていない冷徹な勝者である。イギリスは、アメリカの立場に近い。つまり、西側の中で、「米英vs独仏」という対立があり、そのバランスが機能しているかぎり、ロシアにはまだ妥協する余地があったのである。
皮肉なことに、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻は、独仏をも英米側に押しやってしまった。プーチンにとっては、大きな誤算である。
ウクライナでは、親欧米派と親露派の対立が続いてきた。2010年に政権に就いた親露派のヤヌコーヴィチ大統領は、ロシアの圧力によって、2013年11月にEUとの協力協定への署名を取りやめた。
それに怒った親欧米派の市民が、キーウ(キエフ)中心にある「独立広場」などで反政府デモなどの抗議活動を繰り返し、大混乱になった。その結果、2014年2月にヤヌコーヴィチ大統領は国外に逃亡した。
これがマイダン革命であるが、親露派の多く住む東南部では、この動きを認めず、ロシアとの協力関係を重要視してウクライナからの分離を求める人々が立ち上がった。
プーチンは、この親露派の動きを支援し、「分離独立派の希望に応えるため」に、3月にはクリミアを併合した。
ウクライナ侵攻前から続く親欧米派と親露派の抗争
こうして、親露派とウクライナ政府側(親欧米派)との間で武力闘争が行われる深刻な事態となっていった。
クリミア、ドネツク、ルハンシク(ルガンスク)、オデーサ(オデッサ)、ザポリージャ(ザポロージエ)、ハルキウ(ハリコフ)、ドニプロペトロウシク(ドニプロペトロウスク)では親露派勢力が多く、NATOやEUではなく、ロシア主導の関税同盟への加盟を求める声が強かった。一方、西部、中部の親欧米派地域では親露派とは反対に、EUやNATOへの加盟を支持する人が多数だった。
ただ、ウクライナが分裂せずに一つの国家として存続すべきだという考えの人が、どの地域でも最も多かったことは記しておこう。
親露派陣営の過激派は暴力行為に訴え、ウクライナ政府側はそれに対抗するために軍隊を出動させた。3月、4月と対立抗争は激化し、ドンバス地域(ドネツク州とルハンシク州)では内戦の様相を呈し、ドンバス戦争とすら呼ばれたのである。
親露派の分離独立派は、4月7日にはドネツク人民共和国(DPR)を、4月27日にはルガンスク人民共和国(LPR)の樹立を宣言した。しかし、その後も、親露派の分離独立主義勢力とウクライナ政府軍との間で、激しい戦闘が続いていった。
欧米、EU、ロシアが話し合っても内戦収束は不可能だった
このような状況を危惧して、4月にウクライナ、アメリカ、ロシア、EUがジュネーブに集まり、ウクライナの違法な武装集団の武装解除、違法占拠した建物の返還などの措置をとることで合意した。そして、OSCE(欧州安全保障協力機構)の特別監視団が、その措置の実施を監督することになったが、内戦は収束しなかった。
ウクライナ、ロシア、OSCEに、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国の代表が加わり、7月31日、8月26日、9月1日、9月5日に会議が行われ、9月5日にベラルーシの首都ミンスクで議定書の調印に漕(こ)ぎ着けた。議定書は12項目からなり、即時停戦、OSCEによる停戦監視、ドネツク・ルガンスクの地方分権の確保、ウクライナ・ロシア国境セキュリティゾーンの設置、捕虜の解放、ドンバスの人権状況の改善、違法な武装集団の解散などが決められた。
しかし、議定書調印後も停戦違反が続発し、さらに関係者で議論が続けられ、覚書が9月19日に調印された。国境線から15km内での重火器の撤去など、議定書の内容を具体化した。
ところが、その後も覚書が遵守されない状況が続き、OSCEの関与のみでは内戦を止めさせることは不可能なことが明白になった。そこで、2015年2月に、フランスとドイツが介入することを決めたのである。
アメリカは一方的にウクライナに武器援助をしようとしたが、ドイツやフランスは、アメリカの動きは事態の悪化を招くだけだと反発し、ロシアとの良好な関係の維持にも配慮したのである。
威嚇や武力行使を伴わない外交はロシアに通用しない
こうして、2015年2月12日に、独仏の仲介で、ウクライナとロシアの間で、「ミンスク合意履行のための措置パッケージ」(ミンスク2)が成立した。内容は、OSCE監視下での無条件の停戦、捕虜の解放、最前線からの重火器の撤退、東部2州に自治権を与えるための憲法改正などである。
問題は、ロシアが、自国は紛争当事国ではないので、この合意を履行する責任はないと主張していることである。ウクライナはロシアも交渉に参加した以上、履行義務があると反論している。
しかし、この合意の後も、ウクライナ政府と親露派武装勢力は、お互いに相手が停戦合意に違反する行為を実行していると非難し、親露派勢力とウクライナ政府の間で小競(こぜ)り合いが続いていった。つまり、事態の抜本的改善は見られなかったのである。
2022年2月21日、ロシアは、ルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国の独立を承認し、翌22日には、プーチンは、「ミンスク合意はもはや存在しない」と述べた。そして、24日にはウクライナに侵攻したのである。
武力による威嚇、そして武力の行使を伴わない外交はロシアには通用しない。ブダペスト、ミンスクなどの覚書は、実効性を持たず、単なる紙切れに終わってしまった。
●すでに“平均寿命超え”プーチン大統領の「後継者ランキング」が話題 5/5
ロシアのプーチン大統領は現在71歳。かつては鍛え抜かれた身体や柔道をする姿を披露し、肉体派の一面を見せていたが、近年は健康面で不安を抱えているとされる。
がんとパーキンソン病を患っていると具体的に報じる西側メディアもあり、昨年10月にはロシア政府は否定したものの、一時、心肺停止状態に陥ったとの報道も流れた。
実は、ロシア人の平均寿命は世界平均以下に留まる。国連人口基金(UNFPA)が発表した23年のロシア人男性の平均寿命は70歳で、プーチン大統領はすでにそれを超えている。
「女性に比べてロシア人男性の平均寿命が極端に低いのは、ウォッカなどのアルコール度数の強い酒を日々摂取していること、また社会不安によるストレスと無関係ではないと見られています。プーチン大統領はお酒をほとんど飲まないことで知られていますが、あの広大な国を治める大統領の仕事量とストレスは計り知れません。ほぼ四半世紀にわたってトップ務めていれば、健康面でさまざまな問題が現れても不思議ではないでしょう」(ロシア事情に詳しいジャーナリスト)
そこで気になるのは後継候補。ロシアではランキング形式で紹介するサイトが話題になっており、1位に挙げられているのはメドベージェフ前大統領。現在は要職の安全保障会議副議長で与党「統一ロシア」の党首も務めている。
「プーチン大統領の右腕と呼ぶべき最側近の1人です。大統領経験もあり、まだ58歳と若く、彼に禅譲されるのが規定路線だと見られています」(同)
他にも同ランキングでは、ミシュスチン首相やキリエンコ大統領府第一副長官、パトルシェフ農業相、トルチャク上院第一副議長の名前も上位に挙がっている。
「ただし、ウクライナとの戦争は終着点が見えず、西側諸国との関係は冷戦時代に逆戻りしてしまった。友好関係にある中国とも、これ以上依存しすぎると経済規模で取り込まれかねない。それ以上に、出生率の低下、貧困の拡大、徴兵への不満など内政の問題が山積しているのです」(同)
誰が後継者になっても難しい舵取りを迫られることになりそうだ。
●「完全に失敗」の対ロシア制裁に、新たな手段 中国経由の抜け道封じに一定の成果、さらなる課題も 5/5
開戦から2年が経過したロシアとウクライナの戦争。欧米各国や日本はロシアに厳しい制裁を科し続けているものの、ロシアの最大の貿易相手国、中国との交易拡大などにより影響力は損なわれている。欧米は遅まきながら中国など第三国を対象としたある部門の制裁を強化。その効果はめざましく、ロシアのハイテク製品輸入などに打撃を与えているとみられる。
中国メーカー
ロシア国営大手軍需企業ロステフ傘下の歩兵戦闘車両メーカー「クルガンマシュザボト」(中部クルガン州)。同社では欧州連合(EU)により科せられた制裁に反発し、PR動画が作成され、通信アプリを通じて今年3月までに公開が始まった。
工場内で製品を作る男女の労働者らが作業をしながら「われわれは(問題なく)働いている」「(部品・材料は)すべてある」「全く問題ない」と口々に話し、制裁が何の効果もないことを誇示する。
動画には、コンピューター制御の溶接ロボットが動く様子も映っているが、ロボット上のメーカー名を示すロゴ部分はぼかし加工が施され判読できないようになっており、メーカーが制裁を破って輸出した「制裁破り」の製品であることを疑わせる。
これに対し、ともにラトビアを拠点としロシアに関する調査報道を手がける独立系メディア「バージヌイエ・イストリイ(重要な話題)」と「ザ・インサイダー」は、動画を紹介する記事で、このロボットは日本の産業用ロボット製造大手「安川電機」(福岡県北九州市)製で、制裁破りの製品である可能性があると報じた。
一方、安川電機の広報担当者は動画を見た上で、「ロボットのアームや操作プレートの形状から当社のものではない。これまでロステフやクルガンマシュザボトと取引をしたこともない」と報道を全面的に否定。
その上で「形状から、中国メーカーのものではないか。具体的にどこのメーカーであるかについては申し上げる立場にないが」と述べた。
4月11日、モスクワのショッピングモールに展示された中国製自動車を見る市民ら(ゲッティ=共同)
10倍以上の増加
産業用ロボット分野は長年、日本、ドイツ、スイスのメーカーが市場をリードしてきたが、中国も官民一体で開発を進め、その一角に食い込もうとしている。特に2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、制裁により西側ハイテク製品輸入の道を断たれたロシアが、中国製品の輸入にシフトしてきていることは想像に難くない。
英紙フィナンシャル・タイムズは1月、産業ロボットと並ぶハイテク製造機器であるコンピューター数値制御(CNC)工作機器について、中国製の対ロ輸出が侵攻開始以来、10倍以上に増えたとの記事を掲載した。
ロシア通関統計によると、22年2月に650万ドル(約10億円)相当だった中国からの製品輸出額は、利用可能な最新のデータがある23年7月には6800万ドルと急上昇。ロシアが輸入するCNC機器全体に占める割合も、12%から57%に上昇した。
作業工程をコンピューターで制御するCNC機器は民生品と同様、ミサイルや軍事用無人機(ドローン)などの軍需品の性能・品質向上に不可欠とされている。
中国側は重ねて、ロシアに軍需品は提供していないと主張しているが、軍民両用(デュアルユース)の製品が軍事用に転用されているとの指摘は多い。欧州委員会制裁履行特使のデービッド・オサリバン氏は昨年9月、集積回路(IC)やフラッシュメモリーなど軍事分野にも転用可能なハイテク物資の7割が中国を経由してロシアに供給されていると強調した。
ベルリンなどに拠点を置き新興国の経済ニュースなどを伝えるbneインテリニュースは今年1月、「第三国を通じた迂回ルートなどにより、ロシアに対するハイテク製品禁輸制裁は完全に失敗した」と論評した。
恐れる
軍需品輸出をいくら取り締まろうとしても、民生品を転用されたり、第三国を通じて迂回されたり、製品品目を偽ったりなどされれば、全てを把握するのは難しい。
こうした結果、米国は対ロ制裁で新しいアプローチを打ち出すことになった。バイデン政権は昨年12月22日、新たな対ロ制裁を発表。ロシアの軍事侵攻や制裁逃れに加担する金融取引に関わったり、取引を促進したりした第三国の金融機関に2次制裁を科すことを可能とした。制裁が科せられれば、銀行などはドル決済の道を事実上閉ざされ、外国企業との決済業務が困難になるなど経営に大きな影響が及ぶ。
2月24日、対ロシア追加制裁を発表するバイデン米大統領(ゲッティ=共同)
旧ソ連諸国の問題を研究する米シンクタンク、ウッドロウ・ウィルソン・センター・ケナン研究所によると、今年2月に入りロシアとの取引高が多かった中国の浙江長州商業銀行がロシアの顧客との取引を停止したのをきっかけに、中国4大銀行のうち中国工商銀行、中国建設銀行、中国銀行の3行が制裁を受けたロシア企業との取引を停止。いずれも米国の2次制裁を恐れたものとみられる。
バイデン政権は2月には、ウクライナ侵攻から2年が経過したことに加え、ロシアの反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏が死亡したことを受け、さらなる制裁を発表。ロシアのほか、中国やトルコなどの企業を制裁対象に加えた。
EUも2月、対ロシアで13回目となる追加制裁を発表。軍事転用可能な電子製品などをロシアに輸出したとして、初めて中国企業3社を制裁対象に加えた。
思いがけない成果
双方の首脳が「制限のない」パートナーシップをうたう中ロ関係。ロシアのウクライナ侵攻以来、貿易額の伸びは加速し、中国の税関当局によると、昨年の中ロの貿易額は前年比26・3%増の約2400億ドル(約37兆円)に達した。
しかし、米国による2次制裁開始以降、状況は一変した。米ブルームバーグ通信によると、拡大を続けてきた中国の対ロ輸出は今年3月、前年同月比16%減となり、22年9月以来、初の減少を記録した。
ロイター通信は5日、中国の銀行がロシア産原油の貿易決済に消極的であることから、ロシア産原油代金の中国での決済が大きく遅れる事態が生じていると報じた。
4月に中国を訪れたイエレン米財務長官は、記者会見で、ロシアとの重大取引を促進する銀行は、米国の制裁リスクにさらされることになると、あらためて中国にくぎを刺した。
記者会見するイエレン米財務長官=4月8日、北京(ロイター=共同)
さらなる抜け道
ロシア経済などの調査・分析を行っているシンクタンク「ロシアNIS経済研究所」の中居孝文所長は「モノではなく金の流れを規制する制裁で、トルコなどでも同様に銀行が取引を控えロシアとの貿易額が減少する動きがあり、一定の成果を挙げている」と評価する。
一方で、「ドル決裁が不可欠の大手銀行は米国の2次制裁を恐れロシアとの取引を手控えるだろうが、そうではない中小の金融機関には効果を上げないかもしれない」と指摘。さらに「中ロ間ではすでに米ドルではなく、(中国とロシアの通貨である)人民元、ルーブルによる決裁が中心となっていることを考えると、効果には限りがある。今後、抜け道を完全にふさぐのは難しい」と語る。
●ウクライナ・ゼレンスキー大統領を指名手配 ロシア内務省、具体的な容疑は不明 5/5
ロシア内務省がウクライナのゼレンスキー大統領を指名手配したことが明らかになりました。
タス通信などは4日、ウクライナのゼレンスキー大統領とポロシェンコ前大統領がロシア内務省の指名手配リストに含まれたと報じました。「刑法に違反した」ためだということですが、具体的な容疑は明らかにされていません。
今月7日のプーチン大統領の通算5期目の就任式や9日の対ドイツ戦勝記念日を前に、指名手配によってウクライナ侵攻を改めて正当化する狙いもありそうです。
ロシアはこれまでも侵攻を厳しく批判してきたエストニアのカラス首相や、侵攻をめぐり戦争犯罪の容疑でプーチン氏に逮捕状を出したICC=国際刑事裁判所の赤根智子所長らを指名手配しています。
●ゼレンスキー氏とウクライナ前大統領を指名手配 ロシア、容疑は不明 5/5
ロシア国営タス通信などは4日、ウクライナのゼレンスキー大統領とポロシェンコ前大統領が、ロシア内務省の指名手配リストに含まれたと伝えた。刑事事件としているが、詳しい容疑は不明だ。7日のプーチン大統領の通算5期目の就任式と9日の戦勝記念日に向け、プーチン政権がウクライナ侵攻の根拠として主張する「ウクライナ政府の残虐行為」を国内外にアピールする狙いの可能性がある。
ロシアはこれまでも外国の政治家らを一方的に指名手配しており、実質的な影響はないとみられる。ただ、将来の停戦交渉に向け、米欧と距離を置く新興国を中心にロシア寄りの国際世論を形成するために利用する思惑もありそうだ。
ロシアは今年2月、侵攻を厳しく批判するエストニアのカラス首相を「ソ連兵の記念碑を破壊した」として指名手配したほか、侵攻の戦争犯罪に関してプーチン氏に逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長らも指名手配している。
●要衝陥落「時間の問題」 兵器不足、交渉も視野 5/5
ウクライナ国防省情報総局のスキビツキー副局長は4日までに英誌エコノミストの取材に応じ、東部ドネツク州の要衝チャソフヤールがロシア軍に制圧されるのは「時間の問題」だと語った。ウクライナ軍は砲弾や兵器が不足しており「全ては備蓄と供給次第だ」と強調した。
ロシア軍を国境まで押し戻せたとしても戦争は終わらず、交渉を通じた終結しか道はないとの見方も示した。両軍は交渉の可能性を視野に、自国が「最も有利な立場」となるために攻防を続けていると述べた。
ドネツク州のロシア側実効支配地域「ドネツク人民共和国」の軍関係者は4日、タス通信に対し、チャソフヤールをロシア側が事実上包囲したと語った。チャソフヤールに入る複数の主要道路がロシア側の射程内に入っており、ウクライナ側は兵員や兵器を補充できないと説明した。
ウクライナ軍にとって、高台に位置するチャソフヤールは東部前線での重要拠点。スキビツキー氏は、ロシア軍が東部ハリコフ州や北東部スムイ州周辺でも攻撃準備を進め、兵力拡大を図っていると指摘した。
●トランプ氏復権でも米印関係強固 インド与党幹部インタビュー 5/5
インド総選挙(6月4日開票)で優勢が伝えられる与党インド人民党(BJP)で外交政策を統括するビジェイ・チョウタイワレ外務部長が、4日までにインタビューに応じた。チョウタイワレ氏は、11月の米大統領選でバイデン大統領、トランプ前大統領のどちらが勝利しても、モディ政権継続なら米印関係は「より強固になる」と述べた。主なやりとりは次の通り。
――2期目を終えようとしているモディ政権の外交の評価は。
新型コロナウイルス禍で貧しい国々にワクチンを供給し、インドのイメージを高めた。紛争にはバランスの良い対応を取った。モディ首相はロシアのプーチン大統領に「今は戦争の時代ではない」と伝える一方、ウクライナに何度も人道支援を送った。
モディ氏は細かい部分にも気を配る。ウクライナ戦争発生時、現地のNGOなどと協力して同国に取り残されたインド人学生たちに暖かい服や食料を手配するようにという電話が、モディ氏から私に深夜にあった。
――米国で第2次トランプ政権が誕生した場合、同国との関係は。
印米関係は多元的で、互いに協力し合っている。米議会で親インドの立場の議員は100人以上いて、(民主、共和)いずれの党にも属している。米大企業の最高経営責任者(CEO)の多くはインド出身だ。大統領選で誰が勝っても関係はより強固になると確信している。
――総選挙で勝利したら、国境地帯で衝突を繰り返している中国との関係改善に乗り出すか。
印中の国境問題は何十年も続いている。われわれは、両軍の部隊が今どこにいようとも衝突前の配置に戻るべきだという立場だ。これができれば関係改善の余地はあるが、難しい。
――日本との関係は。
安倍晋三氏の首相在任中、印日関係は新たな高みに達した。モディ政権3期目は、安全保障面だけでなく貿易や投資などさまざまな面でさらに関係が強化されるはずだ。
――モディ政権下でヒンズー至上主義の高まりを警戒する声もある。
インドやモディ氏のイメージを悪化させたい一部の欧米の利益団体やメディアの思惑によるものだ。多数派のヒンズー教徒の利益だけを追求しているといった批判は完全に誤りだ。
●ウクライナ戦時下3度目の復活祭 勝利と前線の兵士の無事祈る 5/5
ウクライナは5日、キリスト教東方正教会の復活祭(イースター)を迎えた。2022年2月のロシアの侵攻開始後、戦時下のイースターは3度目。首都キーウ(キエフ)の聖ミハイル黄金ドーム修道院には早朝から多くの市民が集まり、ウクライナの勝利と前線の兵士の無事を祈った。
ウクライナはキリスト教徒が多く、イースターはクリスマスに並ぶ特別な日。市民らは色とりどりの模様を施したイースター・エッグ「ピサンカ」や伝統のパン「パスカ」を入れたかごを手に修道院を訪れ、聖職者が聖水をかけて祝福した。
3人の娘を連れたライサさん(43)は、南部オデッサの前線にいるおい(35)の無事を祈った。
●米大統領選まで半年 バイデン大統領とトランプ氏が競り合う 5/5
秋のアメリカ大統領選挙まで、5月5日で半年となります。最新の世論調査では、民主・共和両党の候補者への指名が固まっているバイデン大統領とトランプ前大統領が競り合っていて、選挙戦が激しさを増しています。
アメリカ大統領選挙はことし11月5日に投票日を迎え、与党・民主党では再選を目指すバイデン大統領が、政権奪還を目指す野党・共和党ではトランプ前大統領が、党の候補者に指名されることが固まっています。
政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によりますと、各種世論調査の支持率の平均は、5月1日時点で差は1.5ポイントと競り合っていて、選挙戦が激しさを増しています。
このうちバイデン氏は、大統領に就任して以降、記録的な数の雇用を生み出したなどと実績をアピールしているほか「トランプ氏は民主主義に脅威をもたらす」などと訴えて、対決姿勢を鮮明にしています。
これに対してトランプ氏は、バイデン氏がインフレをもたらしたなどと強く批判するとともに、自身が大統領だった間、国際情勢は安定していたと強調しています。
また、トランプ氏は大統領経験者として初めて刑事裁判の被告となっていますが、裁判について「政治的な魔女狩りだ」などと述べ、選挙妨害だという主張を繰り返しています。
一方、今回の大統領選挙では、史上最高齢の大統領のバイデン氏と刑事事件で起訴されているトランプ氏のいずれも支持したくない有権者が一定数いるとみられ、ABCテレビなどが3月に行った世論調査では「大統領としてどちらがよりよい仕事をすると思うか」という問いに対し、30%が「どちらでもない」と回答しました。
こうした中、無所属で立候補を表明しているケネディ元大統領のおいのロバート・ケネディ・ジュニア氏が、全米で一定の支持を集めていて、バイデン氏とトランプ氏の支持層を取り込み、選挙戦にどこまで影響を与えるのかも注目されています。
バイデン氏とトランプ氏“支持率僅差” 各種世論調査平均
政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」のまとめによりますと、5月1日時点の各種世論調査の平均では、バイデン大統領を支持するとした人は45.1%、トランプ前大統領を支持するとした人は46.6%で、僅かな差となっています。
トランプ氏が大統領選挙への立候補を表明した1か月後にあたる、おととし12月15日時点では、バイデン大統領の支持率は44.8%で、トランプ氏を支持するとした人に比べ2.8ポイントリードしていました。
しかし、トランプ氏が東部ニューヨーク州の大陪審に起訴された去年春には、トランプ氏の支持率がバイデン大統領の支持率を一時上回ったほか、去年秋以降はトランプ氏にリードされる状況が続いていて、ことし1月には、バイデン大統領の支持率が43%、トランプ氏の支持率が47.3%と、4ポイント余りの差がつくこともありました。
また、接戦が予想される7つの州でそれぞれ行われた世論調査の支持率は、4月末時点の平均で、すべての州でトランプ氏がバイデン大統領を上回っています。
このうち、前回の大統領選挙でバイデン大統領が勝利した西部アリゾナ州では、▽バイデン大統領が43.3%、▽トランプ氏が48.3%と、トランプ氏がバイデン大統領に5ポイントの差をつけているほか、東部ペンシルベニア州では、▽バイデン大統領が47%、▽トランプ氏が48%となり、支持率がきっ抗しています。
欧州 極右や右派勢力 トランプ氏勢いに乗じ影響力拡大ねらいか
ヨーロッパの極右や右派勢力の間では、トランプ前大統領がことし11月の大統領選挙で再び勝利し、政権を奪還することへの期待が高まっています。
この集会は、4月下旬、ハンガリーの首都ブダペストで、地元のシンクタンクが、トランプ前大統領を支持するアメリカ最大規模の保守派の集会「CPAC」のヨーロッパ版として開きました。
集会にはアメリカの野党・共和党の議員が出席し、トランプ氏と、その元側近のバノン氏がビデオメッセージを寄せました。
このうちトランプ氏は「われわれは共にあらゆる邪悪な勢力から国家を解放する闘いに参加している」と述べ、6月に行われるヨーロッパ議会選挙と、11月のアメリカ大統領選挙での勝利に向けて連携を呼びかけました。
この呼びかけに応じる姿勢を示しているのが、ことし3月トランプ氏と会談するなど関係の近さをアピールするハンガリーのオルバン首相をはじめ、オランダやスペインの極右政党のトップや右派政党の議員などです。
オルバン首相は演説で、各国政府が国際的な規範などにとらわれず主権を優先して行動できるようにしようと訴え、「ヨーロッパを再び偉大に。ドナルド・トランプ、ヨーロッパの主権主義者たちに万歳。選挙を戦い抜こう」と述べました。
集会では、トランプ氏とオルバン氏の顔写真入りのシャツを着た人の姿もみられ、トランプ氏のメッセージやオルバン首相の演説に対して拍手を送るなどして、会場は熱気に包まれていました。
トランプ氏を支持するアメリカの保守勢力とヨーロッパの極右や右派勢力は、グローバリズムや国際協調に否定的で、自国第一主義的な考えで共通しています。
今回の集会は、双方が共通の立場を基盤にして勢力拡大に向けて連携を深めようとしていることを強く印象づけました。
ヨーロッパの極右や右派勢力は、トランプ氏の勢いにも乗じて、自分たちがヨーロッパの中で影響力を拡大することをねらっているとみられ、トランプ氏が大統領選挙で再び勝利することを待ち望んでいます。
専門家 “現時点ではいずれの候補も優勢と言えず”
ことし11月のアメリカ大統領選挙で対決することになるバイデン大統領とトランプ前大統領について、アメリカ政治に詳しい慶應義塾大学の渡辺靖教授は、「各種世論調査を見ても五分五分で、両候補ともいまひとつ人気のない候補だ。激戦州では第3の候補、あるいは第3の党がキャスティングボートを握る可能性もある」として、現時点ではいずれの候補も優勢とは言えないと分析しています。
そして、今後、それぞれの候補の勝敗に影響する課題として、バイデン大統領は、インフレやメキシコとの国境管理の対応に加えて、イスラエルによるガザ地区への攻撃に対する抗議デモの行方を、また、トランプ前大統領については、人工妊娠中絶の規制への対応のほか、トランプ氏に批判的な層が一定数いることや、刑事裁判の行方などをあげています。
一方、トランプ氏をめぐっては、自民党の麻生副総裁やハンガリーのオルバン首相、それにポーランドのドゥダ大統領など、各国の首脳や要人が相次いで面会を行っています。
これについて渡辺教授は、「一昔前までアメリカでは政権が代わっても外交政策そのものはほぼ一貫していたが、前回のトランプ政権では地球温暖化対策から自由貿易協定、同盟関係に至るまでかなりのぶれが生じた。その変動に備えておこう、リスクヘッジをしておこうという意図が各国で働いているのだと思う」と分析しています。
そして、ウクライナ支援や北朝鮮による拉致問題などそれぞれの国の課題について、トランプ氏に直接伝える機会となり、各国にとって有益だとしています。
その上で「トランプ氏からすれば、選挙前から自分の意向をくんで各国が動き出してくれるのは好都合であり、まさにトランプ氏の思惑どおりだと言える」と指摘しています。
●ウクライナで新たに547平方キロ制圧 年初来、東京23区の9割相当―ロシア 5/5
ロシアのショイグ国防相は3日、侵攻を続けるウクライナ東・南部で今年1月以降、新たに547平方キロを制圧したと明らかにした。軍・国防省の会議で報告した。広さは東京23区の約9割に相当する。旧ソ連による対ドイツ戦勝記念日を9日に控える中、戦果を誇示した。
独立系メディア「メドゥーザ」は、ショイグ氏の主張について「今月初旬時点の前線の状況とほぼ一致している」と分析。ロシア側の発表に誇張はないとの見方を示した。
侵攻2年目の昨年6月から半年間、ウクライナ軍は反転攻勢を試みたが、望んだ成果を得られなかった。この際にゼレンスキー政権が奪還した占領地の規模よりも、ロシア軍が今年に入って掌握した面積の方が上回っているもようだ。
西側諸国の支援の遅れが響き、ロシア軍が前線で優勢に立ったことは、ウクライナ軍も認識している。軍トップのシルスキー総司令官は4月下旬、東部ドネツク州の3集落から撤退したと認めた上で、敵軍が「戦術的成功」を収めていると通信アプリ「テレグラム」で指摘した。
ウクライナ国防省情報総局のスキビツキー副長官は2日の英誌エコノミスト(電子版)のインタビューで「戦争は交渉によって終わらせることができる」と述べ、軍事力だけでロシアを駆逐するシナリオは難しいと示唆。目下、ドネツク州の要衝チャソフヤル防衛が焦点だが、スキビツキー氏は、陥落は「時間の問題」と悲観した。
ウクライナ軍が反転攻勢で昨年8月に奪還した南部ザポロジエ州ロボティネでは、今も激しい攻防が続いている。ロシア通信によると、同州の親ロシア派幹部ロゴフ氏は1日、「ロシア軍がロボティネに国旗を掲げた」と主張した。多大な犠牲を伴って取り戻した領土を再び奪われることがあれば、ウクライナ側の士気に大きく影響しそうだ。
●中国 習国家主席 5日からフランス セルビア ハンガリー訪問へ 5/5
中国の習近平国家主席は、5日からフランスなどヨーロッパ3か国を訪問し、各国の首脳らと会談を行います。中国としてはヨーロッパ各国との関係を強化することで、対立が続くアメリカをけん制するねらいがあるとみられます。
中国の習近平国家主席は、5日から今月10日までの日程で、フランス、セルビア、それにハンガリーの3か国を訪問します。習主席のヨーロッパ訪問は、5年ぶりです。
このうち、ことし国交樹立から60年となるフランスでは、習主席は、マクロン大統領と会談し、両国関係のほかウクライナや中東をめぐる情勢などについて意見を交わす見通しです。
またフランスでは、マクロン大統領のほか、EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長を含めた三者でも会談し、中国とEUの関係について協議する予定です。
その後、習主席は、セルビアでブチッチ大統領と、ハンガリーでオルバン首相とそれぞれ会談し、巨大経済圏構想「一帯一路」を通じた協力の成果を確認するということです。
今回の訪問について、中国外務省は「中国とヨーロッパとの関係全体に重要な意義があり、世界の平和と発展に新しいエネルギーをもたらすだろう」と期待を示しています。
習主席はことし3月以降、中国を訪問したドイツのショルツ首相やオランダのルッテ首相とも相次いで会談していて、中国としては、ヨーロッパ各国との関係を強化することで、安全保障や先端技術などをめぐって対立が続くアメリカをけん制するねらいがあるとみられます。
中国専門家「ヨーロッパは最も重要なパートナー」
中国の習近平国家主席のヨーロッパ3か国訪問について、中国とヨーロッパの関係に詳しい中国人民大学の王義ガイ([ガイ]木偏に危)教授はNHKとのインタビューで、「ヨーロッパは、『政治の多極化』と『経済のグローバル化』を追求する中国にとって、最も重要なパートナーだ」と述べ、アメリカを中心とする国際秩序に対抗する意味でもヨーロッパとの関係構築が重要だという認識を示しました。
とりわけ、フランスについて、王教授は「フランスは『独立自主』の外交方針だ。中国はアメリカに従属したくないというフランスを重視している」と述べ、中国は独自の外交路線を進めるフランスとの関係を重視していると指摘しました。
また、ヨーロッパで中国経済への過度な依存の解消を目指す動きが出ていることについて、王教授は、フランス産のワインや化粧品といった高級品を例に挙げ「中国には4億人の中間層がいる。フランスにとって、中国は切り離せない市場でありパートナーだ」と述べ、経済的な結び付きを強めるメリットを強調しました。
また王教授は、「気候変動対策や新エネルギー、デジタル化などの分野でも中国の取り組みは非常に効率的で、ヨーロッパは中国との協力を余儀なくされている」と述べたうえで、ヨーロッパ側はアメリカとともに中国を抑え込むのではなく、協力を通じて自国の競争力を高めるべきだと主張しました。
さらに、ヨーロッパ各国が懸念を示すロシアによるウクライナ侵攻について「西側諸国とロシアの関係はこう着状態にあり、中国が調整役を果たすことができる」と述べ、中国は事態の打開に向けて一定の役割を担うことができるという考えを示しました。
●イスラエルとハマスの戦闘休止交渉 詰めの協議か 依然不透明 5/5
イスラエルとイスラム組織ハマスの間での戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉はエジプトなどの仲介で詰めの協議が行われているとみられます。イスラエルのメディアはハマスがこれまでに示された提案に応じなければイスラエルはエジプトに代表団を送らないと報じていて、双方が合意に至るかどうか依然、不透明な状況が続いています。
ガザ地区をめぐるイスラエルとハマスの間での戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉について仲介国のエジプトのメディアなどは4日までに、ハマスの代表団やアメリカのCIA=中央情報局のバーンズ長官がエジプトに到着したと伝えています。
ハマスは合意に達するために前向きな姿勢で臨むとしていて、エジプトのメディアはこれまでに多くの争点で合意点を見いだせているとのエジプト情報筋の話を伝えていて、詰めの協議が行われているとみられます。
ただ、イスラエルのメディアは、ハマスがこれまでに示された提案に応じなければ、イスラエルはエジプトに代表団を送らないとの政府高官の話を伝えています。
提案では、第1段階として、40日間戦闘を休止し、ハマス側が段階的に人質を解放するなどして次の段階に進むとされていますが、完全な停戦を求めてきたハマスと一貫してハマスの壊滅を目指すとしてきたイスラエルが妥協点を見いだし、合意に至るかどうか、依然、不透明な状況です。
交渉が続く一方で、イスラエル軍によるガザ地区での攻撃は続いていて、地元のメディアは4日、避難者などおよそ120万人が身を寄せる南部ラファにある住宅が空爆され子ども2人を含む3人が死亡したと伝えています。
地元の保健当局は4日、これまでに3万4654人が死亡したと発表していて、住民の犠牲が増え続けています。 
●ロシア “ゼレンスキー大統領らを指名手配のリストに追加” 5/5
ロシア内務省は、ウクライナのゼレンスキー大統領らを指名手配したと明らかにし、プーチン政権が重視する戦勝記念日などを前に、ウクライナへの軍事侵攻を改めて正当化しようとする思惑もあるとみられます。
ウクライナ軍は5日、ロシア軍との間で過去24時間に95回の戦闘があったと発表し、ロシアはウクライナ東部ドネツク州などで攻勢を強めています。
こうした中、ロシア内務省は、ウクライナのゼレンスキー大統領と、2014年から5年にわたり大統領を務めたポロシェンコ前大統領、それにウクライナ陸軍のパブリュク司令官を、指名手配のリストに追加したと、4日に明らかにしました。
ロシアの刑法に違反したと主張していますが、具体的な容疑は示していません。
これについて、ウクライナ外務省は4日に声明を発表し、ロシアのプーチン大統領にはICC=国際刑事裁判所から戦争犯罪の疑いで逮捕状が出されていることに触れたうえで、「ロシアがプロパガンダに躍起になっていることを示すものだ」としています。
一方、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は4日、ロシア側の対応について、「欧米寄りのウクライナ政府の信頼性を傷つけ、外交的に孤立させようとするもので、情報操作の試みの可能性が高い」と分析しています。
ロシアでは、5月7日からプーチン大統領の通算で5期目の任期が始まるのに続き、9日にはプーチン政権が重視する第2次世界大戦の戦勝記念日を迎えます。
プーチン政権としては、これを前にゼレンスキー大統領らの指名手配を発表し、ウクライナへの軍事侵攻を改めて正当化しようとする思惑もあるとみられます。
●ウクライナ支える米国の砲弾工場 物量が左右する世界の安全保障 5/5
4月、朝日新聞による米軍への取材申請が認められ、ウクライナに送る「155ミリ砲弾」の生産を急ぐ米ペンシルベニア州の工場に入った。
ロシアの侵攻を受けたウクライナの前線では2年以上、出口の見えない戦いが続く。そこで明らかになったのは、「大砲」「砲弾」という旧来の武器が依然、きわめて重要な意味を持つということだった。いま、ウクライナやそれを支える米欧は、この「ローテク兵器」の物量でロシア側に圧倒されつつある。
「戦場で危険な目に遭っている兵士の危険が増すことがないよう、あらゆる部品を最高の状態で出荷することに全力を注いでいる」。工場の責任者、リチャード・ハンセン氏はそう強調した。工場は米陸軍が所有し、米防衛大手ゼネラル・ダイナミクスの系列会社が運営している。需要の高まりに応え、1年半ほど前から4億1800万ドル(約650億円)をかけた施設改修計画が進む。
米国は戦場への直接介入は避けつつも、砲弾などの軍事支援を続けることでロシアに対抗してきた。しかし、第2次大戦以来ともいわれる砲弾の撃ち合いが続き、ウクライナ側に立つ米欧は深刻な砲弾不足に直面した。米国内の政治対立が響き、特にこの半年は補給が滞った。
米欧、ロシアの両陣営とも、砲弾の生産・補給力の数的優位をどう生み出すかが、今後の戦況や外交交渉の条件、世界の安全保障環境を大きく左右する事態になっている。

 

●プーチン大統領に立ち向かう女性党首「声をあげよう」ANN単独インタビュー 5/6
ロシアによるウクライナへの侵攻が続くなか、平和の実現を訴える野党の設立大会が開かれ、党首がANNの単独インタビューに応じました。
「新政党立ち上げ」決意したジャーナリスト
モスクワで1日、ロシアの新たな政党・ラススベートの結党大会が開かれました。「夜明け」を意味する政党の党首として登壇したのは、女性ジャーナリストのエカテリーナ・ドゥンツォワさん(41)です。
ドゥンツォワさん「私を大統領候補にしようと、繋がった人々が今後も団結し続けることが必要でした」
ドゥンツォワさんは去年、大統領選挙に立候補しましたが、書類の不備を理由に候補者として認められませんでした。「当局による圧力」とみられています。
今回、新政党の立ち上げを決意したドゥンツォワさん。急な警察の立ち入りなど圧力を受けながらもロシア全土を回り、様々な人の話に耳を傾け、反戦を訴えます。
ドゥンツォワさん「特別軍事作戦が行われているなかで、多くの人は疑問を抱いています。戦争はいつ終わるのか?夫や子どもはいつ戦地から戻れるのか?ということです。ゴールは何なのでしょうか?」
新政党の支持者の中には、当局の圧力で職を失った教師もいます。
ドゥンツォワさん「学校を辞めたという教師が何人かやってきました。学校で定められた形での(侵攻を賛美するような授業)『大事なことを話そう』の授業を拒否したことで、退職願を書くよう迫られたのです」
独裁的なプーチン氏の「支配への対抗手段」
ドゥンツォワさんは「弾圧、そして24年に渡るプーチン氏からの支配が市民を沈黙させている」と指摘します。
ドゥンツォワさん「人々はプロパガンダを通じて『政権がすべて考えてあげる』『すべて解決してあげる』と言われ続けてきました。『何が起きても何をすべきか指示してくれる大統領がいる』とも。こうして中央集権化が始まったのです」
ドゥンツォワさんは「市民が声をあげることが、独裁的なプーチン氏の支配への対抗手段だ」と訴えます。
ドゥンツォワさん「トップをかえるだけでは何も変わりません。変化は私たちひとり一人から始めなければならないのです」
新たな政党ラススベートは今後、法務省に正式に政党として認められるかが焦点となります。
●ウクライナで復活祭の祈り 「神は同盟者」と大統領 5/6
ロシアの侵攻を受けるウクライナは5日、東方正教でクリスマスと並ぶ重要行事である復活祭(イースター)を迎えた。ゼレンスキー大統領は首都キーウ(キエフ)の世界遺産、聖ソフィア大聖堂前でビデオ演説。神はウクライナの「同盟者」だと語り、勝利に向けた団結を訴えた。
ゼレンスキー氏は「聖書は隣人愛を教えている」とし、共に戦うウクライナ国民は「この言葉の本当の意味」を理解していると指摘。互いに助け合い「隣人になった」と述べた。一方、ロシアは「元隣人」として遠い存在に成り果て、和解は困難と主張した。
ただ、前線の状況はゼレンスキー政権にとって厳しい。ロシア国防省は5日、2月に陥落させた東部ドネツク州の激戦地アウディイウカに近い集落オチェレティネを完全制圧したと発表した。ウクライナ軍はほぼ無抵抗で防衛線を破られたと伝えられている。
復活祭はロシアでも祝われ、プーチン大統領は例年通り、モスクワの救世主キリスト大聖堂で祈りをささげた。執り行ったキリル総主教は「(占領地を含めた)神聖な国境を防衛するため」「ロシア軍のため」に祈るよう呼び掛けた。
●ウクライナ東部ハリコフにロシアが「滑空爆弾」攻撃か 1人死亡 5/6
ウクライナ東部ハリコフ州の検察当局は5日、州都中心部に同日ロシア軍の攻撃があり、市民15人が負傷したと明らかにした。飛行機のような翼を持つため射程が伸びる「滑空爆弾」が使われたとみられ、約20棟の集合住宅が損害を受けた。州内の別の集落でも砲撃があり、88歳の女性1人が死亡、2人がけがを負った。
ロシア国防省は5日、ウクライナ東部ドネツク州の集落、オチェレチネを制圧したと発表した。ロシアは対ドイツ戦勝記念日を9日に控え、主に東部で攻勢を強めている。
ドネツク州内の火力発電所も5日、ロシア軍のロケット弾攻撃を受けた。敷地内の数カ所に着弾したとみられるが、損害規模は不明。
●モスクワの真ん中に置かれた米戦車…戦利品を誇示したロシアの思惑 5/6
ロシアがプーチン大統領の「5選」就任式を控え、ウクライナ戦争の戦利品をモスクワ市内に展示しながら戦果を誇示した。
米日刊ワシントンポスト(WP)によると、ロシア国防省は今月1日から1カ月間の日程で、モスクワのポクルロナヤの丘にある戦争博物館の広場で「ロシア軍のトロフィー(戦利品)」という名称の展示会を開催中だ。
展示会ではウクライナで捕獲した西側の武器が市民に公開された。米国がウクライナに支援したエイブラムスM1A1戦車をはじめ、オーストラリア、英国、ドイツ、トルコ、スウェーデン、フランスなどの戦車や装甲車など軍需装備34点。
今回の展示はプーチン大統領の「5選」就任式(5月7日)とロシアの最大祝日の一つ「戦勝記念日」(5月9日)を控えて開催された。戦勝記念日は1945年5月9日に旧ソ連が第2次世界大戦でナチスドイツの降伏を受けたことを記念する日だ。
ここに展示されたロシアの捕獲品の上には「勝利!」と書かれた赤い旗が数十本立てられ、「我々のの勝利は必然的」と表示された巨大なスクリーンもあったと、WPは伝えた。
昨年の戦勝記念日の行事は、ウクライナの大反撃にロシア軍が後退を繰り返す状況の中、縮小された規模で進行された。当時の戦勝記念日パレードでは第2次世界大戦当時に製造されたT−34戦車1両だけが展示された。
しかしそれ以降、ウクライナに対する西側の支援が遅れた半面、ロシアは軍需物資の製作に拍車を加え、ロシア軍はまた戦線を拡大する様相だ。ロシアのショイグ国防相は3日、ロシアが今年1月から占領したウクライナ領土は547平方キロメートルにのぼると主張した。
ロシア国防省系のズベズダTVは西側メディアが今回の展示を「北大西洋条約機構(NATO)連合の屈辱」の現場だと評価したとし、展示された西側の武器の性能は低いとも主張した。
今年の戦勝記念日行事も保安上の理由から戦争前より縮小されて開催されるが、モスクワの赤の広場で開かれる閲兵式は予定通りに進行され、参加軍人の数も昨年より増える予定だ。
ただ、今年の戦勝記念日にはモスクワで花火を行わないとみられる。ベルゴロドなど国境地域でもウクライナ軍を刺激するなどの懸念から花火を中止とし、「不滅の連帯」行進もオンラインで進められると現地メディアは伝えた。
●ロシア当局、法輪功学習者の女性を2か月拘留 米ホワイトハウスが懸念示す 5/6
ロシア当局は中国共産党と歩みを揃え、自国内で信仰への弾圧を強めている。モスクワ市トゥシンスキー地区裁判所は4日、法輪功学習者であるナタリヤ・ミネンコワ氏(46)について、2か月間の拘留を命じた。米ホワイトハウスは本件について懸念を表明した。
ロシア警察は3日、モスクワの法輪功学習者5人の自宅を家宅捜索し、4人を拘束したほか、法輪功関連の書籍などを押収した。家宅捜索の様子は警察によって録画され、公開された。拘束された4人のうち1人は釈放されたが、ミネンコワ氏ら3人は翌4日まで拘束された。
ロシア国営通信インタファクスは「好ましくない組織の活動」に対して法執行したと報じた。根拠となる法律は、2015年に制定された刑事法だ。当該法律は、独立ニュースメディアや米国のシンクタンクなど、100以上の組織を対象に取り締まりを行うもの。
いっぽう、ナタリヤ・ミネンコワ氏が所属する「法輪大法センター」は、取り締まりの根拠となっている法律によって違法と定められていない。また、「法輪大法センター」はロシア司法省が当該法律をもとに定めた違法組織のリストにも含まれていない。
ロシアは2022年2月に中国当局と「上限を設けない」パートナーシップ協定を締結した。その後のウクライナ戦争を通して、ロシアは対中依存をますます強めてきた。法輪功への弾圧は、中露の緊密な連携を如実に表している。
中国の伝統的な修煉法である法輪功は、1992年5月、李洪志氏により伝え出された。優れた健康増進効果があったため口コミで広がり、最大1億人もの人々が学んだと推定されている。
1999年当時、法輪功の人気ぶりを恐れた江沢民は弾圧を開始。以来、多くの学習者が不当な逮捕や拷問、収監などの非人道的な迫害に遭っている。
法輪大法情報センターのレビ・ブラウダ事務局長は「ミネンコワ氏がしたことは、公園で気功をして、自宅で法輪功の書籍を読むというだけのことだ。法輪功は宗教でもカルトでもない」と指摘。中国共産党のプロパガンダを引用するロシア政府系メディアの報道は「完全に間違っている」と批判した。
さらにブラウダ氏は、「全世界において、中国共産党だけが法輪功を悪者扱いし、弾圧してきた。ロシア当局には、中国共産党の圧力に屈することなく、自国民の権利と自由を守ることを求める」と呼びかけた。
ホワイトハウスも注視
ホワイトハウスのジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は6日、ロシア当局による法輪功学習者への不当な扱いについて「ロシアが言論・報道・集会・信教の自由に関して、あらゆる人々を弾圧するのは驚くに値しない」と述べた。米紙主催の講演会に出席したサリバン氏は、中ロ関係の緊密化を指摘し「我々は両国の関係を注意深く見守っている」と語った。
ロシアのプーチン大統領は今月中に中国を訪問する予定で、ウクライナ侵攻開始以来初の外遊となる。
ロシアでは2011年、法輪功の書籍「転法輪」の発行を禁止した。2021年には複数の都市で法輪功学習者が家宅捜索されている。
このような状況に対し、米国務省は最新の人権報告書で、ロシア当局が法輪功をターゲットとして、テロ対策法などを乱用していると批判した。
米国際宗教自由委員会(USCIRF)のスージー・ゲルマン委員も「ロシアが法輪功関連団体を『好ましくない』として禁止することは、国際的に保護された信教の自由への明白な違反だ」と指摘し、法輪功学習者らに対する訴追の停止を求めた。
大紀元の姉妹メディア新唐人テレビ(NTDTV)の取材に答えたゲルマン委員は、「ロシアは法輪功学習者の平和的な活動を犯罪として扱おうとしているが、これは断じて容認できないことだ。プーチン政権下で宗教的少数派の権利が危機に瀕している。国際社会は団結して、ロシアにおいて信教の自由が尊重されるよう、要求していかねばならない」と、人権状況の改善を訴えた。
欧州人権裁判所は2月、法輪功関連資料の発行を禁止するロシア当局の行為は「違法」であるとする判決を下した。
●プーチン新政権発足、注目の閣僚人事と凋落するガスプロム 5/6
プロローグ/ロシア新内閣を占う
本稿を書いている5月4日は、プーチンのウクライナ侵略戦争開始後801日目となり、ウクライナ戦争は2年3カ月目に入りました。
ちょうど2年前の2月24日、ロシア(露)軍はウクライナに全面侵攻開始。2月24日のロシア軍軍事侵攻の報に接し、筆者は即、102年前の2月24日を想起した次第です。
この日に何が起こったのかと申せば、ミュンヘンのビアホール「Hofbräuhaus」にてA.ヒトラーがナチス党(国家社会主義ドイツ労働者党)を創設(実際には改名)、25か条綱領を発表しました。
ですから筆者には、V.プーチン大統領はヒトラーの生まれ変わりのように思えました。
プーチン大統領(現71歳)はウクライナ侵攻電撃作戦を発動。侵攻開始後2〜3日で首都キーウ(キエフ)制圧可能との前提でウクライナに侵攻したので、戦争の長期化・泥沼化は大きな誤算となりました。
継戦能力は戦費と兵站補給いかんです。
筆者は開戦当初から、「ロシア軍の継戦能力は油価次第、ウクライナ軍の継戦能力は欧米の支援次第」と主張してきました。
ゆえに、2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃により油価は上昇。プーチン大統領にとり最大の誕生日(10月7日)プレゼントになりました。
今年に入ると欧米による対ウクライナ軍事支援先細りと油価(露ウラル原油)上昇により、ウクライナ軍不利・ロシア軍有利と報じられるようになりました。
まさにそのような折、米下院は4月20日、対ウクライナ610億ドル(約9.4兆円)と対イスラエル260億ドル(約4兆円)軍事支援法案を可決。
米上院は4月23日に承認、J.バイデン大統領は24日に署名して、法案は発効。米軍は直ちに武器弾薬の輸送準備開始。
今回の米軍事支援により、ウクライナ軍はロシア軍の反攻に対抗できる可能性が高まりました。
ウクライナ軍の祖国防衛が成功すれば、言葉の真の意味において戦争は膠着状態・長期化の様相を呈することになり、戦時経済となった露経済は弱体化必至です。
GDP(国内総生産)プラス成長をもって露経済は回復していると解説している評論家もいますが、これは見当違いです。
国家予算で武器弾薬を製造してGDPが一時的にプラス転換しても、実体経済は成長しません。
ロシアでは5月7日に第5期目のプーチン新大統領が誕生して、新内閣が組閣されます。
5月4日付け露国営タス通信によれば、プーチン新大統領は誕生直後に新首相候補をロシア下院に提出、下院は5月10日に予定されている下院総会で承認する予定です。
さらに、閣僚全員は5月13日開催予定の下院総会で承認する予定とのことにて、5月7日の新大統領就任式から1週間以内に新内閣発足予定となりました(後述)。
(健康問題さえ許せば)2030年には再度大統領選挙に出馬して、2036年まで大統領職に居座ることも可能であり、そうするでしょう。
すなわち、プーチン王朝は少なくとも2036年(プーチン83歳)まで続くことになり、その後は家族に王座を譲位するでしょう。
新大統領就任2日後は対独戦勝記念日軍事パレードとなり、ロシア軍のウクライナ東部大攻勢の様相が透けて見えてきます。
ロシア軍の大攻勢が失敗すれば、露国内情勢の流動化・液状化も視野に入り、戦後のロシアには「国破れて山河在り」がよく似合う状況が出現することでしょう。
本稿では、プーチン新大統領誕生後の新内閣とプーチン・ロシアの行く末を占ってみたいと思います。
第1部 2油種週次油価動静(2021年1月〜24年4月)
最初に、2021年1月から24年4月末までの代表的2油種の週次油価推移を概観します。
ロシアの代表的油種ウラル原油は、西シベリア産軽質・スウィート原油(硫黄分0.5%以下)と南部ヴォルガ流域の重質・サワー原油(同1%以上)のブレンド原油で、中質・サワー原油です。
なお、日本が2022年5月まで輸入していた露産原油3油種(S−1ソーコル原油/S−2サハリン・ブレンド/シベリア産ESPO原油)はすべて軽質・スウィート原油で、日本はウラル原油を輸入していません。
油価は2021年初頭より22年2月まで上昇基調でしたが、ウラル原油はロシア軍のウクライナ侵攻後下落開始。
2022年4月のOPEC+(OPEC=石油輸出国機構加盟国にロシアやメキシコなど加盟していない国を加えた需給調整を行う枠組み)による原油協調減産合意を受け、油価は上昇開始。
その後、油価は乱高下を繰り返しながら、今年に入り油価上昇しましたが、4月に入り下落しています。
露ウラル原油の4月29日〜5月3日週次平均油価は$68.93/bbl(前週比▲$2.56/露黒海沿岸ノヴォロシースク港出荷FOB)と下落。(bbl=バレル、1バレルは約159リットル、FOB=本船渡し)
北海ブレントとウラル原油の値差はロシア軍のウクライナ侵攻後、一時期最大バレル$40の大幅値差となりましたが、直近では値差$17まで縮小。
しかし原油性状の品質差による正常値差は$2〜3程度ゆえ、依然としてロシア産原油のバナナの叩き売り状態が続いていることになります。
この超安値ウラル原油を輸入し、自国で精製して石油製品(主に軽油)を欧州に国際価格で輸出して、“濡れ手に粟”の状態がインドです。しかしこれはビジネスそのものであり、政治的動機はありません。
付言すれば、中国が輸入している原油はウラル原油ではなく、長期契約に基づきESPOパイプライン(PL)で輸送されているシベリア産ESPO原油ですが、やはりバナナの叩き売り状態になっています。
世界の原油需給は均衡しており実需面より油価が上昇する要因は存在せず、唯一の油価上昇要因は地政学的要因のみです。
中東紛争激化に伴い油価上昇しましたが、紛争沈静化に伴い油価は下落傾向です。
第2部 市場別天然ガス月次価格推移月(2019年1月〜24年4月)
   2−1. 市場別天然ガス月次価格推移
天然ガスは市場別に価格体系が異なり、直近5年間の価格推移は以下の通りです。
上記のグラフをご覧いただければ、欧州ガス市場におけるガス価格が2021年と2022年は異様に急騰・乱高下していることが一目瞭然です。
2021年は欧州ガス需給が逼迫して、ガス価格は急騰しました。
この時、日系マスコミや一部のガス専門家は「ロシアが天然ガス供給を制限したので、欧州ガス価格は急騰した」と解説していましたが、事実に反します。
ガス価格高騰は欧州がガス需給を間違えた結果です。
一方、2022年の欧州ガス価格急騰はロシアがガス供給を制限・停止したことに起因します。
上記の通り、2021年と22年の欧州天然ガス価格急騰の原因は全く異なるのです。
ちなみに、2023年は欧州ガス需給が緩和したため、欧州ガス価格は急落。低水準で推移しています。
   2−2. 間違いだらけの日系マスコミ報道
ロシアの石油・ガス報道に関する記事や解説には誤解や間違いが多く、本稿でもしばしば指摘してきた通りです。今回は『日経ビジネス』記事(4月29日・5月6日合併号77頁)に言及したいと思います。
「ロシアは、生産量で世界2位の天然ガス大国だ。供給能力を持つ国は現時点でロシアだけ。それゆえ市場価格を左右する力を持つ。だが26年ごろから、この力が相対的に劣化することが予想されている。世界各地でLNG(液化天然ガス)の輸出開発計画が進み始めるからだ」(中略)。(最後の一文)「天然ガスの価格決定力が衰えるプーチン政権は、国際社会でどれだけの発言力を発揮できるのだろうか」
この記事の筆者は「ロシアは天然ガス大国であり、供給能力を持つ国はロシアだけなので市場価格を左右する力を持つ」と主張していますが、これは間違いです。
ガス価格は市場の需給で決まるものであり、ロシアはガス市場価格を左右する力を持っていません。
需給が逼迫すればガス価格は上がり、需給が緩和すれば下落します。ロシアにガス生産能力があっても、市場が受け入れなければ生産できないのです。
換言すれば、現在のロシアは天然ガスをもっと生産して輸出したいのですが、金城湯池の欧州ガス市場を失った露ガスプロムには中国以外、大手ガス需要家は消滅してしまったのです。
筆者は昨年から、世界最大のガス会社・露ガスプロムの経営悪化を予測して、このJBpressでもそのように報告してきました。
そして筆者の予想通り、ここにきてガスプロムの経営悪化が露マスコミに報じられるようになりました。
2023年は欧州市場におけるガス需給は緩和して、ガス価格は下落。EU諸国が露産PLガス輸入を削減した結果、ガスプロムの天然ガス生産量・輸出量は減少して、ガスプロムが大幅赤字に転落したのです。
もしロシアがガス市場価格を左右する力を持っていれば、このような事態には陥らなかったはずです。
露ガスプロムの2022年決算は1.23兆ルーブルの純益でしたが、23年決算は純損6300億ルーブル(約1兆円)、24年第1四半期も4500億ルーブル(約7200億円)の大幅純損となりました。
露ガスプロムの純損計上は1999年の793億ルーブル以降、初めてのことです。
天然ガスの輸出量激減と輸出価格下落による当然の結果ではありますが、プーチン大統領によるウクライナ侵略戦争の犠牲になって赤字幅が増幅された面も否めません。
ゆえに、このままウクライナ戦争が続けばガスプロムの経営はさらに悪化・深化して、税金投入して救済しなければ会社倒産の懸念も話題に上ることになるでしょう。
その場合、当然のことながら社長交代も視野に入ってくるものと筆者は予測します。
第3部 露プーチン大統領の権力構造
   3−1. 露プーチン大統領の権力基盤構図
露プーチン大統領の周囲には、相互協力・対立を繰り返す下記4つの派閥が存在します。
   3−2. 新大統領就任と新内閣
ロシアでは新大統領就任後、新内閣が組閣されます。
新大統領誕生後、2週間以内に大統領(元首)は首相候補を露下院に提案することになっており、大統領に指名された首相候補が露下院にて過半数の賛成を得れば、首相候補は首相に就任します。
露下院が3回否決すると、露大統領は下院を解散するか、新首相候補を下院に再提案することになります。
新生ロシア連邦の歴史の中で、露下院に首相承認を拒否されて、首相候補に指名されたが首相になれなかった人物が一人います。
それはE.ガイダール首相代行です。
新生ロシア連邦のB.エリツィン大統領から首相候補指名を受けましたが、当時の露下院は露共産党勢力が強く、承認を得られませんでした。
日本で言えば、自民党総裁になったが、総理になれなかったような状況です。
困ったエリツィン大統領は露ガスプロムのV.チェルノムイルジン社長を首相候補に指名すると、下院は同氏を首相承認。
この時、チェルノムイルジン氏は「ガスプロム社長からロシアの首相に降格された」と揶揄されました。
ガスプロムは国家の中の国家。当時はそれほど勢いがあったのです。
そのガスプロムは2023年、上述の通り大幅赤字転落。責任は偏にプーチン大統領のウクライナ侵略戦争に起因します。
第4部 ロシア新内閣注目人事を占う
   4−1. 第5期プーチン新大統領就任/新内閣誕生
ロシアでは5月7日正午(モスクワ時間)に新大統領が誕生、その2日後の9日は対独戦勝記念日になります。
新大統領は現職のプーチン大統領にて、プーチン治世は2024年5月7日から2030年5月7日までの6年間です。
改定された露憲法によればさらにあと1期大統領職が可能ゆえ、実質今後12年間の任期も視野に入ってきました。
今から12年後、また憲法を改定して大統領職に居座ることも理論的には可能です。
5月4日に配信された露国営タス通信によれば、プーチン新大統領は誕生直後に新首相候補を露下院に提出、露下院は5月10日開催予定の下院総会で首相候補を承認する予定です。
さらに、閣僚全員は5月13日開催予定の下院総会で承認する予定とのことで、5月7日の新大統領就任式から1週間以内に新内閣発足予定となりました。
換言すれば、プーチン大統領の頭の中には新首相・新閣僚候補名簿一覧表は既に作成済みということになりましょう。
(健康問題さえ許せば)2030年には再度大統領選挙に出馬して、2036年まで大統領職に居座ることも可能であり、本人はそうするはずです。
すなわち、プーチン王朝は少なくとも2036年(プーチン83歳)まで続くことになり、その後は家族に王座を譲位することになりましょう。
新首相候補は恐らく現M.ミシュースチン首相(58歳)が次期内閣の首相候補として新大統領から指名され、露下院にて承認されることでしょう。
ちなみに、新大統領就任と同時に現内閣閣僚は、新内閣誕生まで代行職となります。
去就が注目される人事は、S.ショイグー国防相(68歳)とS.ラブローフ外相(74歳)です。
一方、シュルギノフ・エネルギー相退任はほぼ確実とみられています。
   4−2. ロシア新内閣主要注目人事
新首相誕生後、新内閣が組閣されます。筆者はM.ミシュースチン首相留任を予測しております。
注目人事は新首相・エネルギー管掌新副首相・新エネルギー相・新外相・新国防相等々です。
当たるも八卦当たらぬも八卦ですが、新内閣主要人事を占えば下記の通りです。
注目人事は、N.パートルシェフ安保書記(72歳)の息子、D.パートルシェフ農相(46歳)の昇格人事とプーチン金庫番Yu.コヴァルチューク(73歳)の息子B.コヴァルチューク(46歳)前インテルRAO(電力会社)社長の閣僚ポスト人事です。
D.パートルシェフ農相は農相兼任の副首相昇格、B.コヴァルチューク氏はエネルギー相就任(あるいはそれ同等のポスト)が噂されています。
その他、S.ラブローフ外相(74歳)の去就と内閣ではありませんが新中銀総裁人事も注目されます。
筆者は、プーチン大統領の忠犬熊公D.メドベージェフ安保副議長の処遇にも注目しております。
ウクライナ戦争の文脈では、S.ショイグー国防相とV.ゲラーシモフ参謀総長が続投するのかどうか注目されます。
ウクライナ戦争の今後の戦況いかんでは、プーチン大統領を支えてきた利権集団間の対立が激化・表面化することも予見され、さらには同じ利権集団内部での対立も顕在化・表面化する可能性大です。
内閣以外の大統領選挙後の注目人事は露中銀総裁です。筆者は、現職のE.ナビウーリナ総裁が留任するかどうか注目しております。
付言すれば、A.シルアーノフ財務相とE.ナビウーリナ中銀総裁が留任すれば、露金融政策は不変と思われます。
   4−3. ダークホース登場/A.ジュ―ミン・トゥーラ州知事
筆者はプーチン大統領の隠し玉として、A.ジュ―ミン/現トゥーラ州知事(51歳)の動静を注視してきました。
(筆者の知る限り)本人の名前が最初に欧米のマスコミに登場したのは、2016年2月9日付け独日刊紙「Frankfurter Rundschau」でした。
ご参考までに、同紙が伝えるA.ジュ―ミン像は以下の通りです(一部抜粋)。
「クルスクで生まれた彼はヴォロネジ無線技士大学卒業後、1995年に連邦警護局に入り、政府指導者の身辺警護担当となり、プーチンのもとでクレムリン警護士官となった。プーチンが2008年に大統領から首相に職務変更となった時、ジューミンはプーチン首相の副官になり、2012年にプーチンが大統領に就任すると、大統領警護庁副長官に就任した。2014年には同等のポストである、国防軍参謀本部情報総局(GRU)副長官に就任。2015年に中将に昇進して陸軍参謀長となり、2015年12月には国防次官に就任した」
5月3日付け露独立新聞によれば、プーチン大統領は5月2日にジュ―ミン州知事と会談しました。
会談内容は未発表ですが、ジュ―ミン州知事はソ連邦時代のKGB第9局(要人警護)に属し、新生ロシア連邦では大統領警護局要員としてプーチン警護を担当。プーチンの命の恩人とも言われております。
プーチン大統領は政治の武者修行として、クレムリンにとり重要なトゥーラ州知事に任命して修行させています。
トゥーラ州がなぜ重要州かと申せば、モスクワに近く、ここには精鋭空挺部隊が駐屯しているからです。
プーチン大統領が彼を州知事に任命したとき、いずれクレムリンに錦を飾るだろうと噂されていましたが、今回のプーチン新大統領就任に伴い、クレムリンで重要ポストに就くかもしれません。
上記がA.ジュ―ミン州知事の動静に筆者が注目しているゆえんです。
エピローグ/歴史は繰り返す?
英国のW.チャーチル首相曰く、“I cannot forecast to you the action of Russia. It is a riddle wrapped in a mystery inside an enigma.” (ロシアは謎の中の謎に包まれた謎の国である)。
上記の一句は人口に膾炙する名句にて、この名句のあとに続く一句は次の通りです。
“but perhaps there is a key. That key is Russian national interest.”
チャーチル首相は「ロシアは謎の国であるが、謎を解くカギは国益だろう」と喝破したのです。
チャーチル首相は演説の名人ですが文筆の才もあり、戦後ノーベル文学賞を受賞しました。
プーチン大統領の国家政策が漂流しています。
旧ソ連邦と新生ロシア連邦は欧州大手石油・ガス需要家にとり信頼に足る石油・ガス供給源として、過去50年以上の長きにわたり天然資源を安定供給してきましたが、これは当然です。
ほかに主要外貨獲得源がないゆえ、信頼に足る資源供給源としての地位確立は旧ソ連邦・新生ロシア連邦にとり国益そのものでした。
しかし、プーチン大統領は旧ソ連邦・新生ロシア連邦の先達が過去50年以上の長きにわたり営々と築いてきた信頼を一日にして喪失。文字通り、「築城五十年、落城一日」となりました。
プーチン新ロシア大統領が2000年5月に誕生した時、彼のスローガンは強いロシアの実現と法の独裁でしたが、結果として弱いロシアの実現と大統領個人独裁の道を歩んでいます。
プーチン新大統領誕生時、筆者はサハリン島北東部のオホーツク海で石油・ガス探鉱事業に従事しておりました(サハリン−1プロジェクト)。
当時のサハリン州は旧ソ連邦時代の面影を色濃く残しており、筆者は『露連邦 タタール渡れば ソ連邦』というダジャレを口癖にしておりました(タタール海峡=間宮海峡)。
プーチン新大統領誕生はロシアにとり希望の光でしたが、結果として悲劇の誕生となりました。
そして、今年3月の露大統領選挙は、文字通り茶番劇そのものでした。
『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』の中でK.マルクス曰く、「ヘーゲルはどこかで言った『歴史は繰り返す』と。しかし彼は『最初は悲劇として、二度目は茶番劇として』と付け加えることを忘れた」。
5月7日の第5期プーチン新大統領誕生が世界の悲劇にならないことを祈るのみです。
●ロシア 戦勝記念日に向け、本番さながらの軍事パレード“リハ” 戦果あげようとウクライナで攻勢強める 5/6
ロシアでは9日の対ドイツ戦勝記念日を前に軍事パレードのリハーサルが行われました。
首都モスクワの赤の広場では5日、兵士らが正装して行進するなど本番さながらの形で軍事パレードのリハーサルが行われました。
今年のパレードには、9000人以上の兵士が参加し、70の兵器などが披露されるほか、航空機の飛行も行われるということです。
ロシアでは7日には、プーチン大統領の通算5期目の就任式が行われます。
祝賀ムードが高まる中、ロシア軍は9日の対ドイツ戦勝記念日に向けて戦果をあげようと、ウクライナ東部ドネツク州の要衝チャシウヤルなどに攻勢を強めているとされ、激しい戦闘が続いているとみられます。
●ロシア、対ウクライナで攻勢 強気の姿勢と交渉示唆で揺さぶりも 5/6
ロシアのプーチン大統領は7日、通算5期目の就任式を迎える。新たに6年間の任期が始まり、その統治は四半世紀を超えることになる。ウクライナでの「特別軍事作戦」が終わらない限り、内政と外交の両面で軍事最優先の流れが続く見通しだ。
モスクワ中心部で昨年11月から開催中の大規模展覧会「ロシア」。国内各地を紹介する中には、ロシアが2022年9月に一方的に併合を宣言したウクライナ東・南部4州の占領地域のブースもある。4州の風景や産業、出身著名人などを紹介した展示を前に、露西部リペツクから訪れた女性(51)は「これらの地域は元々(帝政時代に)ロシア領だった。感動で涙があふれた」と語った。
プーチン政権は、反体制派への徹底した弾圧と欧米敵視のプロパガンダを通じて、対ウクライナ政策への異論を許さない空気を醸成している。3年目に入ったウクライナでの特別軍事作戦を巡っては、ロシア軍は東部で進軍を続けるほか、各地の電力インフラをミサイルや無人航空機(ドローン)で破壊するなど攻勢を強める。
勢いづくロシアでは、ショイグ国防相が露大統領選直後の3月下旬、14の師団と16の旅団を年内に新たに編成する計画を発表した。兵員の増強も進めており、国防省は4月3日、年初以降、10万人以上が契約兵として登録されたと公表した。
弾薬供給量は前年の25倍
兵器の増産も着々と進めている。特別軍事作戦で使われる兵器の9割を生産するとされる露国営軍需企業「ロステフ」の幹部は、タス通信が4月8日に公表したインタビューで生産状況を詳述した。22年と比べ、自走砲10倍▽けん引砲14倍▽迫撃砲20倍▽多連装ロケットシステム2倍――の増産を達成し、23年の弾薬供給量は前年の25倍になったとアピールした。
ロシアが軍備や兵員を増強する中、バイデン米政権は4月24日、ウクライナ支援に向けた約608億ドル(約9兆4000億円)の緊急予算を成立させた。米国内の政治対立で滞っていた軍事支援が再開する。これに対し、ペスコフ露大統領報道官は同日、露軍が優勢な現状に言及した上で、「数々の新たな兵器が前線の状況を変えることはない」と強気の姿勢を示した。
プーチン大統領は、攻勢の強化を指示すると同時に、今年に入り、たびたび停戦交渉に言及している。4月11日に同盟国ベラルーシのルカシェンコ大統領と会談した際にも「平和的解決を諦めたことはない」と語った。その背景には、攻勢と交渉という二つの選択肢をちらつかせることで、抵抗を続けるウクライナの世論や後ろ盾の欧米を揺さぶる狙いがあるとみられる。
露外交アナリストのドミトリー・トレーニン氏は取材に対し、「西側諸国は今もロシアに戦略的敗北を与えようと努めている」と話し、欧米とロシアの直接的な衝突という「最悪の事態も否定できない」と訴えた。これは、欧米にウクライナ支援から手を引かせようともくろむ政権の意向に沿った主張とみられる。
●イスラエルとハマスの交渉難航 米CIA長官が仲介国カタールへ 5/6
イスラエルとイスラム組織ハマスとの、戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉が難航する中、アメリカのCIA=中央情報局のバーンズ長官が仲介国のカタールに向かい、交渉の進展に向け圧力をかけるねらいがあるとみられます。
一方、ガザ地区南部では、5日もイスラエル軍による攻撃が続き、乳児を含む少なくとも19人が死亡しました。
エジプトで行われていたイスラエルとハマスとの戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉は、ハマスが完全な停戦を求めて譲らず、5日も合意に至らないまま、ハマスの代表団がエジプトを離れました。
こうした中、ロイター通信は5日、アメリカのバーンズCIA長官がカタールの首都ドーハに向かい、カタールの首相と緊急に会談すると伝えました。
カタールはエジプトとともに交渉の仲介にあたり、ハマスの政治部門の最高幹部も活動の拠点としていることから、バーンズ長官は現地を訪れることで、イスラエルとハマスの双方に歩み寄るよう圧力をかけるねらいがあると見られます。
一方、イスラエル軍が大規模な地上作戦に踏み切るかが焦点となっているガザ地区南部のラファでは、5日もイスラエル軍による攻撃が続き、ロイター通信は乳児も含む少なくとも19人が死亡したとしています。
NHKガザ事務所のカメラマンが撮影した映像には、攻撃で死亡した人や、けがをした人が次々に地元の病院に搬送される様子が映っています。
戦闘の休止に向けた交渉が難航する中、ガザ地区では連日の攻撃で、市民の犠牲が増え続けています。
●イスラエルとハマスの戦闘休止の交渉続く
イスラエルとイスラム組織ハマスの間での戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉は、5日も継続する模様です。完全な停戦を求めるハマス側と、あくまでハマスの壊滅を目指すイスラエル側の主張の隔たりを埋めるのは容易ではなく、ぎりぎりの交渉が続けられているものとみられます。
ガザ地区をめぐるイスラエルとハマスの間での戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉について複数のアラブ系のメディアは、仲介国エジプトで4日に行われたものの合意には至らず、引き続き、5日も続けられると伝えています。
交渉に先だって、ハマスは前向きな姿勢で臨むとしていましたが、中東のメディアは、ハマス側は合意には完全な停戦が必要であると改めて強く主張しているほか、詳細の検討に更なる時間を求めているなどと伝えています。
一方、イスラエルのメディアは、ハマスがこれまでに示された提案に応じなければ、イスラエルは、エジプトに代表団を送らないとの政府高官の話を伝えています。
イスラエル側は、あくまでハマスの壊滅を目指し、ガザ地区南部ラファへの地上作戦を強行する姿勢を崩しておらず、双方の主張の隔たりを埋めるのは容易ではなく、ぎりぎりの交渉が続けられているものとみられます。
交渉の行方に注目が集まる中でも、イスラエル軍によるガザ地区での攻撃は続いていて、地元メディアは5日、イスラエル軍が、早朝に多数の避難者などが身を寄せる南部ラファ周辺など各地で空爆を行い、多数の死傷者が出ていると伝えています。
イスラエル軍のガザ地区攻撃続く ラファで空爆 3人死亡
交渉が続く一方で、イスラエル軍によるガザ地区での攻撃は続いていて、地元のメディアは4日、避難者などおよそ120万人が身を寄せる南部ラファにある住宅が空爆され、子ども2人を含む3人が死亡したと伝えています。
地元の保健当局は4日、これまでに3万4654人が死亡したと発表していて、住民の犠牲が増え続けています。
●ハマス“戦闘休止交渉の代表団 回答渡しエジプト離れる”発表 5/6
エジプトで行われてきた、イスラエルとイスラム組織ハマスの間での戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉について5日、ハマスはこれまでの提案に対する回答を仲介役に渡し、エジプトを離れると発表しました。完全な停戦を求めるハマスと、それを受け入れられないとするイスラエルとの隔たりは大きいままとみられ、事態打開の糸口を見いだせるかどうかは依然、不透明な情勢です。
仲介国のエジプトで行われてきたイスラエルとハマスの間での戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉についてハマスは5日、「今回の交渉は終了した。代表団は仲介役にこれまでの提案に対しての回答を渡し、今夜カイロを離れる」と発表しました。
これに先立ちハマスのハニーヤ最高幹部は声明で「イスラエルの侵略を終わらせ、軍が撤退することを保証し、人質交換を実現する包括的な合意に達することを求めている」などと述べ、合意には完全な停戦が必要だという立場を繰り返しました。
一方、イスラエルのネタニヤフ首相は5日「イスラエルは人質解放のため、戦闘を休止する用意がある。しかし、ハマスは極端な立場に固執したままで、それを受け入れることはできない」などと述べ、あくまでハマスの壊滅を目指す従来の主張を繰り返し、事態打開の糸口を見いだせるかどうかは依然、不透明な情勢です。
交渉の一方でハマスは5日、ガザ地区との境界にあるケレム・シャローム検問所付近にいたイスラエル兵に対し、ロケット弾で攻撃したと発表しました。
イスラエルメディアは少なくとも10人がけがをしたと伝え、イスラエル軍は攻撃の起点となった場所を空爆したなどと発表していて、緊迫した状況が続いています。
●バイデン政権、イスラエルへの弾薬供給を一時的に停止 米メディア 5/6
アメリカのメディアはバイデン政権が先週、イスラエルへの弾薬の供給を一時的に停止したと報じました。
アメリカのネットメディア「アクシオス」はアメリカが先週、イスラエルへの弾薬の供給を一時的に停止したと報じました。アメリカがイスラエル軍への武器供給を停止するのは去年のガザ侵攻以来初めてだということです。
アメリカでは大学でガザ侵攻に抗議するデモが続きバイデン政権は、イスラエルへの対応をめぐって厳しい批判の声にさらされています。
政権内ではイスラエルのガザでの戦闘をめぐり国際法を守っていないとの懸念が高まっています。アメリカは、2月イスラエルに提供した武器について国際法を遵守して使用するよう求めていたということです。
●習近平国家主席がフランス到着 “関係強化し米をけん制”狙いか 5/6
中国の習近平国家主席は5日、ヨーロッパ訪問の最初の国・フランスに到着しました。関係を強化し、対立が続くアメリカをけん制する狙いがあるとみられます。
ヨーロッパ3か国を訪問する習近平国家主席は5日、パリ郊外の空港に到着し、アタル首相に出迎えられました。習主席のヨーロッパ訪問は5年ぶりです。
到着に合わせて習主席は「伝統的な友好関係を強化し、様々な分野での交流と協力を深めていく」との談話を発表しました。アメリカの圧力一辺倒の対中外交とは一定の距離を置くフランスと関係を強化し、西側の連携にくさびを打ち込む狙いがあるとみられます。
習主席は談話で、国際情勢についても意見交換する意向を示していて、ウクライナ侵攻や中東情勢などについても協議する見通しです。
習主席はフランスのあと、中国が掲げる経済圏構想「一帯一路」の参加国であるセルビアとハンガリーも訪問する予定です。
●習近平氏がフランスに協力強化を呼び掛け「中仏の伝統的友好を強固に」 パリで談話発表 5/6
中国外務省によると習近平国家主席は5日のパリ到着後に発表した談話で、フランス訪問について「両国の伝統的な友好を強固にして政治的な相互信頼を増進し、戦略的合意を構築して各分野で交流や協力を深めることを望む」と表明した。米国が対中圧力の拡大を呼び掛ける中、中国はフランスとの関係強化を狙う。
中仏両国は今年、国交樹立60年を迎えた。フランスは東西冷戦中の1964年に米国の反発を押し切って中国と国交を結んでおり、習氏は当時の判断について「中仏両国は冷戦の壁を突破した」とたたえた。フランスが伝統的に重視する独自外交を称賛し、米主導の対中圧力と距離を置くよう促す意図があるとみられる。
習氏は中仏関係について「近年、高いレベルの発展を保ち、航空、宇宙、原子力、食料、グリーンなどの分野における協力は新たな成果を絶えず得ている」と強調した。経済面での協力をテコにフランス側と関係強化を進める考えだ。
習氏は、フランス滞在中にマクロン大統領と「新たな情勢下における中仏、中欧関係の発展」や、現在の重大な国際・地域問題について意見交換を行うと表明した。ロシアのウクライナ侵略への対応などについて協議する見通しだ。
習氏は5〜10日にフランス、セルビア、ハンガリーを訪れる。フランスでは、マクロン氏と欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長との3者による首脳会談にも出席する。
●右派の伸長焦点 ウクライナ支援に影響も―欧州議会選まで1カ月 5/6
欧州連合(EU)各国で市民代表を決める5年に1度の欧州議会選挙(定数720)は、6月6〜9日の投票まで1カ月に迫った。物価高や移民流入、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に伴う「支援疲れ」などを背景に、ポピュリズム(大衆迎合主義)的な政策を掲げて支持を集める右派の2会派が、どこまで議席を伸ばすかが焦点となりそうだ。
議会選の結果は、EUの行政府に当たる欧州委員会のトップ人事や、今後5年の政策運営に直結する。フォンデアライエン欧州委員長の所属政党が参加する中道右派「欧州人民党(EPP)」が最大会派の座を維持する見込みだが、右派が大幅に勢力を伸ばせば、環境政策やウクライナ支援が後退する可能性もある。
「(EU主要機関が集まる)ブリュッセルの官僚1万人を解雇する。まずはあなただ」。4月末に行われた討論会の冒頭、右派「アイデンティティーと民主主義(ID)」のアンダース・ビステセン議員はEU批判を展開し、隣のフォンデアライエン氏に辛辣(しんらつ)な言葉を浴びせた。
IDは、反EUや反移民を掲げ「一貫して議会多数派を支持しない」(ドイツのシンクタンク)会派。フランスの国民連合や「ドイツのための選択肢(AfD)」といった極右政党が集う。米政治専門メディア、ポリティコ欧州版は4月末時点で、現有59議席を83議席に伸ばすと予想している。
IDと比べ穏健とされる右派「欧州保守改革(ECR)」も議席を増やす見通しだ。ECRトップで極右政党「イタリアの同胞」を率いるメローニ首相は先週、得票の上積みを目指し議会選に出馬する意向を示した。
だが、3月以降は右派に逆風も吹き始めた。IDの一角を占める政党の候補者が親ロシア派組織から資金を得ていた疑惑が浮上。別の同会派議員のスタッフは、中国のスパイとして活動した容疑で独当局に拘束された。フォンデアライエン氏は討論会で、自身の政策運営などをやり玉に挙げたビステセン氏に「批判する前に、事態を収拾すべきでは」と痛烈にやり返した。 
●米高官「ことしいっぱい ウクライナは防衛に力入れることに」 5/6
アメリカ政府の高官はこれまで滞っていたウクライナへの軍事支援の再開が4月決まったことについて、形勢を直ちに変えるものではないとして、ことしいっぱいはロシア軍の攻勢に対しウクライナは防衛に力を入れることになるという見通しを示しました。
ロシア軍がウクライナ東部で攻勢を強める中、アメリカ政府は4月、600億ドルあまり、日本円で9兆3000億円を超えるウクライナヘの追加支援を決め、滞っていた武器や装備品などの軍事支援が再開することになりました。
経済紙、フィナンシャル・タイムズによりますとホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は4日、首都ワシントンで行われたイベントで軍事支援の効果について「当面はロシア軍の進軍が続く。スイッチを切り替えるようにはいかない」と指摘しました。
その上で「ウクライナが前線を防衛し、ロシア側の攻撃に耐えることを確かなものにする」として、ことしいっぱいはウクライナは防衛に力を入れることになるという見通しを示しました。
そして来年について「ロシアが奪った領土を取り戻すために前進するだろう」と述べ、ウクライナが反転攻勢に転じるとしています。
一方でアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は「アメリカ政府高官は来年の反転攻勢を支持する意向を示しているが、われわれはできるだけ早く主導権を握るべきだと評価している」としてことしロシアの進軍を許せばロシアが有利になると指摘しています。

 

●ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑発に対応 5/7
ロシア国防省は6日、プーチン大統領の指示で、戦術核兵器の使用練習を含む軍事演習を実施すると発表した。「一部西側当局者の挑発的発言や脅迫に対応」し領土の一体性と主権を守るのが目的と説明した。
演習では、非戦略核戦力の戦闘任務遂行能力を試験する。非戦略核兵器の使用や配備の練習も行う。南部軍管区のミサイル部隊と海軍が参加する。
一方、ロシア外務省は、戦術核兵器の使用練習を含む軍事演習は北大西洋条約機構(NATO)諸国の当局者による敵対的発言の内容を踏まえて検討されるべきと指摘。西側諸国の当局者は「現状をウクライナ危機のさらなる拡大やNATO諸国とロシアの軍事衝突へと意図的に導いている」とした。
また、ウクライナへのフランス軍派遣の可能性に関するマクロン仏大統領の発言について「ロシアとの直接対決に向けた準備とみなされる」としたほか、ウクライナ支援を巡るキャメロン英外相の発言については「ウクライナが英国の兵器を使ってロシア国内を攻撃した場合、ウクライナ国内外の英国の軍事施設や装備が標的になる可能性がある」と警告した。
その上で今回発表した軍事演習が「西側諸国の首都にいる『短気な人々』を落ち着かせることを期待する」とした。
これに対し、米国防総省報道官のパトリック・ライダー空軍少将は同日、ロシアの今回の発表について「無責任な発言」と非難。ただロシアの戦略核戦力の態勢に変化は見られないと述べた。
●プーチン大統領「戦術核兵器」の演習準備を指示 ロシア国防省「欧米の挑発的発言から領土と主権守るため」 5/7
プーチン大統領が、戦術核兵器の演習準備を指示した。
国防省は6日、ロシア軍がウクライナ侵攻の拠点としている南部軍管区で、プーチン大統領の指示を受けて、「非戦略核兵器」の使用を想定した軍事演習の準備を始めたと発表した。
ヨーロッパを射程に収める戦術核兵器を意味し、演習には航空機や海軍の艦艇などで編成するミサイル部隊も参加するという。
国防省は、「欧米の挑発的な発言からロシアの領土と主権を守るため」と主張している。
ロシアでは、このあと日本時間午後6時から、プーチン大統領の就任式が予定されていて、核戦力をアピールして欧米をけん制し、国内の結束を図る狙いがあるとみられる。
●プーチン大統領就任式、EU加盟国の大半が欠席へ 仏は代表派遣 5/7
米国と欧州連合(EU)加盟国の大半は、モスクワで7日に行われるロシアのプーチン大統領の就任式に出席しない。一方、フランスなど一部の国は代表を派遣する方針。
欧米諸国の間でプーチン氏を巡り対応の違いが浮き彫りになっている。
米国務省のミラー報道官は「就任式に代表を送ることはない」と説明。英国とカナダも就任式に代表を派遣しない方針を示している。
EUの報道官は、駐ロシア大使が就任式に参加しないと述べた。ドイツ外務省も欠席する方針を示している。
欧州外交筋によると、EU加盟国中20カ国は就任式を欠席するが、7カ国は代表を派遣する予定。フランスに加えて、ハンガリーとスロバキアが代表を送るという。
仏外交筋は「フランスは駐ロシア大使が代表として出席する」と述べた。
マクロン仏大統領は6日「われわれはロシアやロシア国民と戦争しているわけではなく、ロシアの政権交代を望んでいるわけでもない」と述べた。
●ロシア大統領就任式、対応分かれる 米不参加、EU7カ国出席か 5/7
7日に行われるプーチン・ロシア大統領の就任式への対応が各国で分かれている。米国務省のミラー報道官は6日の記者会見で、「米国の代表は出席しない」と不参加の意向を示した。一方、欧州ではフランスの駐ロシア大使が出席するほか、ハンガリーやスロバキアも代表を派遣する。
ロイター通信などによると、就任式に英国やドイツ、バルト3国などは欠席する。外交筋によれば、欧州連合(EU)加盟27カ国のうち7カ国が出席する見込みという。EU加盟国のうちハンガリーのオルバン首相はロシアに融和的で、親ロシア姿勢を見せるスロバキアのフィツォ首相も対ウクライナ武器供与停止を表明している。
ミラー氏は、3月に行われたロシア大統領選に関し「自由で公正であったとは見なしていない」と指摘し、正当性に疑問を呈した。一方で、「彼はロシアの大統領であり、その職を続けていく」と語り、指導者としての立場を認めた。
●欧米諸国、プーチン氏の就任式欠席へ 関係悪化改めて示す 5/7
7日に行われるプーチン大統領の通算5期目の就任式では、招待された複数の欧米諸国が欠席を表明した。ウクライナ侵略で決定的となったロシアと欧米の関係悪化が改めて浮き彫りとなった。
タス通信によると、ウシャコフ露大統領補佐官は6日、「就任式は国内行事だ」とし、「伝統として」他国首脳は招待せず、各国の駐露大使らを招待したと説明した。
ただ、タス通信やロイター通信によると、米国や英国やドイツ、イタリア、スペイン、ポーランド、欧州連合(EU)駐露代表部は事前に欠席を表明。一方、フランスは出席する方針だという。
また、旧ソ連構成国アルメニアも6日、パシニャン首相が就任式に出席しないと発表した。ロシアがパシニャン氏を就任式に招待したかどうかは不明。
アルメニアは露主導の「ユーラシア経済連合」(EAEU)の今年の議長国で、パシニャン氏は8日、同日のEAEU首脳会議のため訪露する予定だが、9日にロシアが主催する第二次大戦の対ドイツ戦勝記念式典にも出席しないという。
アルメニアは近年、係争地ナゴルノカラバフを巡る隣国アゼルバイジャンとの紛争で軍事支援の義務を果たさなかったとして、加盟する露主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)への不満を強め、ロシアから距離を置く一方、欧米に接近している。
●仏、プーチン大統領就任式に駐ロシア大使出席=外交筋 5/7
フランス外交筋は6日、モスクワで7日に行われるプーチン大統領の通算5期目の就任式に駐ロシア大使が出席すると明らかにした。
ドイツはプーチン大統領の就任式に代表を派遣しない方針。バルト3国も派遣しない。欧州の外交筋は、米国も派遣しないとの見方を示している。
●プーチン露大統領、5期目の就任式 ウクライナ侵略改めて正当化へ 5/7
ロシアのプーチン大統領は7日、3月に行われた大統領選(任期6年)で勝利したことを受け、首都モスクワで通算5期目となる大統領就任式に臨む。プーチン氏は式で演説し、3年目に突入したウクライナ侵略を正当化するとともに、目標達成まで軍事作戦を継続する意思を改めて表明する見通しだ。
プーチン氏は就任式に先立つ6日、ミシュスチン首相や政府閣僚らと会談。ウクライナ侵略について、東部ドンバス地域(ドネツク・ルガンスク両州)のロシア系住民をウクライナ側から「保護」するために「ロシアは軍事手段を用いた非常措置をとらざるを得なかった」と主張し、侵略を改めて正当化した。
ドンバスではウクライナの親露派政権が崩壊した2014年の政変後、主要部を実効支配した親露派武装勢力とウクライナの紛争が継続。プーチン氏は22年、紛争終結や住民保護を名目に軍事作戦の開始を宣言した。
プーチン氏はまた、侵略に伴い欧米諸国が発動した対露経済制裁について「ロシアを政治的かつ経済的に内部から破壊しようとしたものだ」と批判。それにもかかわらず露経済は順調に成長しているとし、「われわれの敵対者は一切成功しなかった」と述べて制裁の打破に自信を示した。
プーチン氏は就任式の後、次期首相を選定し、下院に承認を求める。下院に承認された次期首相が組閣を行う。ただ、外相や国防相など重要閣僚はプーチン氏と上院が協議して決める。露メディアは、ラブロフ外相やショイグ国防相、ミシュスチン首相ら主要閣僚は留任される公算が大きいと伝えている。
●ウクライナ外務省は非難 プーチン大統領、きょう通算5期目の就任式 5/7
ロシアのプーチン大統領はきょう、通算5期目となる就任式を迎えます。新たな任期は2030年までですが、長期化するウクライナ侵攻など課題も山積みです。
ロシア プーチン大統領「我々は力を合わせ、最も複雑な歴史的チャレンジをおおむね乗り越えてきた」
プーチン大統領は6日、政府の幹部らを集め、労をねぎらいました。
就任式は日本時間の午後6時に首都モスクワのクレムリンで行われる予定で、プーチン氏は演説で今後の政権の方針を示すものとみられます。
焦点の閣僚人事について、ロシアメディアでは側近が逮捕されたショイグ国防相を含め主要メンバーは留任するとの見方が大勢です。
9日の対ドイツ戦勝記念日、中国訪問と重要行事が続く一方で、ウクライナ侵攻の終わりは見えず、好調だとする経済も先行きは不透明で課題は山積しています。
一方、ウクライナ外務省は6日、プーチン大統領の就任式にあたって声明を発表し、「全世界と自国民にほぼ終生にわたる権力維持が合法であるかのような幻想を与えようとしている」などと非難しました。
3月に行われた大統領選挙は「偽りの選挙」だとして、国際社会に対し、結果を認めないよう求めています。
●「21世紀のロシア皇帝」プーチン氏、5回目の大統領就任「ソ連の道たどる可能性も」 5/7
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(71)が7日、政権5期目に突入する。プーチン大統領の単独終身政権体制にさらに一歩近づくなか、「強いロシアの復活」の一環であるウクライナ戦争に対する攻勢も大幅に強化されるという見通しが出ている。
プーチン大統領は、クレムリン宮のアンドレエフスキーホールで7日に開かれる就任式で、チャイコフスキーの行進曲に合わせて入場する予定だ。続いて、憲法の写本に右手をのせ就任宣誓をし、新たな任期6年を始めることになる。
プーチン大統領は、3月に行われたロシア大統領選で87%に達する圧倒的得票率によって大統領5期目を確定した。これに先立ち、2000年に初めて大統領に当選したのに続き、2004年、2012年、2018年の大統領選でも勝利をおさめた。2008年の大統領選では再選制限条項に阻まれ、ドミトリー・メドベージェフ大統領とプーチン首相の体制で4年を送ったが、当時も実権者はプーチン氏だった。2020年に改正された憲法で、プーチン大統領は2030年の大統領選挙にも出馬が可能になり、この際に勝利をおさめた場合、2036年まで政権を握ることができる。
プーチン大統領の新任期の開始に最も神経を尖らせているのは、ロシアと3年目となる戦争を行っているウクライナと、ウクライナを支援する周辺の欧州諸国だ。米国シラキュース大学のブライアン・テイラー教授はAP通信に「ウクライナ戦争は現在のプーチンの政治プロジェクトの核心であり、この流れが変わるといういかなる暗示もみられない」としたうえで、「このような状況は、ロシアと周辺のすべてに影響を及ぼす」と指摘した。一時は二転三転した戦争は3年目に突入し、ロシア側に重心が移っている。プーチン大統領も2月の国政演説で「ウクライナでロシアの目標を達成し、国民主権と安全保障を守るために必要なすべての措置を取る」とし、「ロシア軍は膨大な戦闘経験を積み、様々な分野で確実に主導権を取り、攻勢を広げている」と主張した。
ロシアがウクライナの領土の一部占領を維持したまま終わる場合、プーチン大統領がバルト海沿岸やポーランドなどで軍事的冒険主義をさらに拡大する可能性が懸念されている。ハーバード大学のスティーブン・ウォルト教授(国際関係学)は先月2日、米国の外交専門誌「フォーリン・ポリシー」への寄稿で、「プーチンには途方もない野望があり、ウクライナでの成功に続き、他の場所に新たな攻撃を試みる可能性がある」とし、「ただし彼の野望が、莫大な対価を支払ってまでロシアが現在得た以上に拡大することはないという可能性は残っている」と予想した。
プーチン大統領は、5回目の大統領選でも国民の10人中9人に近い賛成票を得るなど、圧倒的な勝利をおさめ、終身政権体制を事実上固めたという評価も出ている。また、「プーチン単独体制」を固めるために、政権5期目の開始とともに、国防相の交替を含む大規模な政府改編を通じて、側近体制の強化に乗りだすだろうという見方もある。一方、単独終身政権体制から来る権力の弱点が、プーチン政権5期目の期間中に明確に表れるだろうという診断もある。巨大国家ロシアが、基本的なシステムによる統制すらなしに、プーチン大統領個人によって恣意的かつ一方的な手法で主要な政策決定が下される状況が続けば、結局は国家レベルでの亀裂が生じるのは避けられないだろうということだ。さらに、プーチン大統領の野心がウクライナ戦争以外の戦争を招き、ロシアに危機をもたらす可能性があるという分析もある。
カーネギー・ロシアユーラシアセンターのマクシム・サモルコフ研究員は「ロシアの政治エリートは、プーチンの命令を履行することによりいっそう忠実になり、彼の偏執症的な世界観によりいっそう従順になった」としたうえで、「30年前のソ連がそうだったように、一晩のうちに崩壊するリスクに直面している」と予想した。さらに同研究員は「プーチンの気まぐれと妄想に引きずられ、モスクワは自滅的な失敗を犯す可能性が高い」と述べた。
●プーチン氏就任式を批判 「偽りの選挙」とウクライナ 5/7
ウクライナ外務省は6日の声明で、ロシアのプーチン大統領が通算5選を決めた3月の大統領選について「偽りの選挙」だとし、結果を認めないよう国際社会に呼びかけた。プーチン氏が独裁体制を敷いてロシアを侵略国にしたとし、7日の大統領就任式は「ほぼ終生にわたる権力維持が合法であるかのような錯覚を与える」と批判した。
ウクライナは、ロシアが併合を宣言したウクライナ東部・南部4州や南部クリミア半島でも強行された選挙の不当性を訴えている。
●「外国の代理人」を選挙から排除、ロシア下院可決 現職は権限剝奪 5/7
ロシア下院は6日、ロシア語でスパイの意味がある「外国の代理人」に指定された個人に対し、国や地方自治体の選挙への立候補を禁じる法案を可決した。上院の採決後、プーチン大統領が署名して成立する。ロシアではウクライナ侵攻への反対を表明したジャーナリストらが指定されており、選挙から完全に排除されることになる。
ロシア語では「外国の代理人」は、「米欧のスパイ」だと解釈される。立候補する人は必要な書類の提出前に、「外国の代理人」リストから削除される必要がある。現職の首長や議員に適用された場合は、法律の施行から180日以内にリストから削除されなければ、任期満了を待たずに解職となる。
ロシアで「外国の代理人」制度が設けられたのは2012年。当初は「外国の金銭的支援」を受ける団体が対象だったが、その後、個人にも拡大。ウクライナ侵攻後の22年12月には「外国の影響下にある」だけで指定が可能になり、公務員などへの就職ができなくなった。
政権批判を封じる手段
政府は「外国の干渉を排除する狙い」と主張するが、実際は人権団体や独立系メディア、外国系メディアなどを対象に、政権批判を封じる手段として使われてきた。
すでに3月の大統領選では、反戦を訴えた候補者は書類の不備などを理由に排除された。今後は「外国の代理人」に指定することで、反政権派を完全に選挙から排除し、強権体制を一段と固める可能性が高い。
●習近平国家主席がフランスで見せた「魅力攻勢」 5年ぶりに訪欧 5/7
中国の習近平国家主席が5年ぶりとなる欧州歴訪をしている。5日にはフランスで、両国関係における「新たな展望」を歓迎した。今回の訪欧は、まるでチャーム・オフェンシブ(魅力攻勢。相手の心をつかむために意識的に親切に温かく接すること)のようだ。
欧州連合(EU)は、安価な中国製電気自動車(EV)が欧州市場に参入することを懸念している。習国家主席は、EUとの間に迫りつつあるこの貿易戦争の回避を目指すだろう。
西側諸国はまた、中国について、ロシア軍に技術や設備を提供し、ウラジーミル・プーチン大統領のウクライナ侵攻を助けているとも非難している。
どちらの問題も、アメリカがここ数週間、習氏に対して発している警告と共通する。しかし、それは習氏が中国の国民に、そしてフランス国民に聞いてほしい話題ではない。
習氏は代わりに、アメリカが語る文脈に対抗するため、フランスを味方につけ、欧州での中国の影響力を強化しようとしている。
今回の訪仏で、習氏はウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長とも会談した。フォン・デア・ライエン委員長は中国に対する「デリスキング」(リスク低減)を呼びかけている。中国との協議に厳しい姿勢で臨むとともに、中国からの輸出と技術への依存を減らそうという政策だ。
習氏は、フランスの後にセルビアとハンガリーを訪問する。中国の投資を欲しがっているロシアの友好国だ。
習主席は6日のほとんどをフランスのエマニュエル・マクロン大統領との会談に費やした。
中国には5月下旬にプーチン大統領が訪問する予定だ。マクロン大統領としては、中ロの友好関係、そしてウクライナ戦争を解決するためにどこまでやる用意があるのかについて、習氏に迫りたいだろう。
両首脳はフランス製ブランデーについても協議した。ブランデーは、中国が最も輸入しているアルコール飲料だが、EUの中国製EVに対する調査を受け、中国政府はこのブランデーに関税を課すと脅している。
先週、高関税は業界の未来に打撃を与えると述べたフランスのブランデーメーカーにとっては、憂慮すべき事態だ。
中国側も同じように、EV補助金に関するEUの調査結果を懸念しているようだ。大成功を収めている中国のEVメーカーにとって、欧州は重要な市場だ。
そういうわけで、盧沙野駐仏中国大使の言葉を借りるなら、中国が「反中的な関係に対抗する」には、マクロン氏を味方につけるのが肝要だ。
習氏はそのために、両国の外交関係樹立60周年を記念して、仏中関係を結びつける絆を強調している。
習氏は仏紙フィガロへの寄稿で、三つのメッセージを持ってフランスを訪れると述べた。中国がフランスとの関係において「新たな展望」を切り開く、世界に対して「これまで以上に広く」門戸を開く、そして世界の平和と安定を維持する――というものだ。
こうした政府のメッセージに沿うように、中国の国営メディアも明るい論調で報じている。
新華社通信は、「中国とフランスは歴史の松明(たいまつ)で前途を照らし、中仏関係の明るい未来を切り開き、世界の平和と安定、発展に新たな貢献をする」と伝えた。
また、習氏がフランス人作家やアーティストを好んでいることや、習氏の著作がフランス語に翻訳されたことなども報じた。
一方で警告もある。環球時報は社説で、欧州は自立し、「特に、いかなる第三者にも支配されない」ようにするべきだと、露骨にアメリカを意識した論を展開した。
フランスを味方につけるうえで、マクロン氏は習氏にとって好ましい相手かもしれない。
マクロン氏は過去に、対中政策でアメリカにならうことに反発している。昨年の訪中では、台湾について、欧州は「むやみに」アメリカに従うべきではないと述べて議論を呼んだ。
マクロン氏は、ここ数週間で中国を怒らせている一連の貿易措置の強力な支持者の一人だが、中国企業がフランスにEV工場を建設することを望んでもいる。
それでも、マクロン氏は決して簡単に言いくるめられるような人物ではない。マクロン氏は先週、先週、習主席の訪問の準備のさなか、チベット亡命政府の指導者であるペンパ・ツェリン首相(主席大臣)とパリで会談した。
マクロン氏の重要な優先事項の一つは、ウクライナ侵攻を進めるロシアを支援する危険性を、中国に警告することだ。
フランスとEUの大半の国は、アメリカと同様、中国がロシアへの武器部品供給を停止することを望んでいる。
2日発行の英誌エコノミストの取材でマクロン氏は、「中国を国際秩序の安定に関わらせることが、我々の利益になる」と語った。
「だからこそ、平和構築のために中国と協力する必要がある」
習主席は今のところ、ロシアのウクライナ全面侵攻を止めるためにいかなる措置を取ることも拒否している。
仏紙フィガロへの寄稿の中で習氏は、中国は「ウクライナ危機が欧州の人々に与える影響を理解して」おり、自分たちは「当事者でも参加者でもない」と強調したうえで、「中国は危機の平和的解決に向けて建設的な役割を果たしている」と語っている。
だが、今回の訪仏がどのような結果を生むにせよ、習氏のハンガリーとセルビア訪問は、中国がなお欧州の東端に友好国を持っていることを示すものとなるだろう。
●中国とフランスがガザ南部ラファへの地上侵攻に反対する共同声明 パリ五輪期間中の休戦の呼びかけも 5/7
中国の習近平国家主席とフランスのマクロン大統領がイスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ南部・ラファへの地上侵攻に反対する共同声明を発表しました。
中国国営の新華社通信によりますと、フランスを訪問中の習近平国家主席は6日、マクロン大統領とともに中東情勢に関する共同声明を発表しました。
声明では、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ南部・ラファへの地上侵攻について反対するとしたほか、持続可能な停戦を早急に実現し、人道支援と民間人保護を行うことが不可欠だと強調。
また、夏に開催されるパリオリンピック・パラリンピック期間中の休戦を呼びかけています。
●ウクライナ和平会議、ロシアも参加すべき 中国大使が主張 5/7
中国の張漢暉駐ロシア大使は7日公表されたロシア通信(RIA)とのインタビューで、全ての当事者が対等に参加するウクライナ和平会議を支持すると述べた。
「中国はロシア側とウクライナ側が承認し、全ての当事者が平等に参加して和平に向けた全ての選択肢について公平に議論する国際和平会議の適時開催を支持する」と語った。
スイスはウクライナ和平の実現を目指し6月15─16日にハイレベル会合を開催するが、ロシアは招待されていない。 もっと見る
中国の習近平国家主席はスイスの和平会議に強い関心を示していないとみられる。ロシアは自国が招待されていないため、開催の意味はないと主張している。
同大使は中国が今後も役割を果たし危機解決のために「中国の知恵」を提供する用意があると発言。「紛争がエスカレートして制御不能にならないよう、全ての当事者ができる限り早く平和を回復するため共通の取り組みを進める必要がある」と述べた。
●中仏首脳、ラファ侵攻に反対表明 5/7
新華社電によると、中国の習近平国家主席とフランスのマクロン大統領は6日、パリでの首脳会談後に共同声明を発表し、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ最南部ラファの地上侵攻計画に反対すると表明した。
●中仏首脳が会談 習主席“新冷戦あおる”とウクライナ情勢めぐり米をけん制 5/7
中国の習近平国家主席がフランスのマクロン大統領と会談しました。ウクライナ情勢をめぐり、習主席は「新冷戦をあおる事に反対する」とのべ、アメリカをけん制しました。
会談で両首脳は、経済協力などについて話し合い、農業や貿易、人工知能など幅広い分野で協力することで一致しました。
会談後の共同会見でマクロン大統領は、中東情勢などを念頭にパリオリンピックの期間中すべての戦闘を停止する“オリンピック休戦”を求めていくと述べました。習主席もこれを支持する考えを明らかにしました。
一方でウクライナ侵攻をめぐって習主席は、「危機を利用して第三国に責任を転嫁し新冷戦をあおることに反対する」とのべました。
中国がロシアに軍事転用可能な半導体を輸出していると批判しているアメリカをけん制した発言とみられます。
習主席は、今回の訪問中、マクロン大統領の祖母の家があった、ピレネー地方に招待されています。習主席は、独自外交をめざすマクロン大統領と関係を強化し、アメリカ主導の対中包囲網にくさびをうちこむ狙いもあるとみられます。
●ロシア、英軍施設への反撃警告 ウクライナ支援巡る英外相発言で 5/7
ロシア外務省は6日、英国がウクライナに提供した兵器がロシア国内への攻撃に使用された場合、ロシアはウクライナ国内外の英国の軍事施設や装備に対し反撃する可能性があると警告した。
英国のキャメロン外相は2日、ウクライナを訪問し、「必要な限り」年間30億ポンド(37億4000万ドル)の軍事援助を行うと確約。また、供与した武器がロシア国内で使用されることに反対しない意向を示した。 もっと見る
これを受け、ロシア外務省はナイジェル・ケイシー駐ロ英大使を呼び出し、正式に抗議。キャメロン外相の発言は英国が事実上、紛争に関与することを認めるものであり、ウクライナに提供された長距離兵器はロシアに対しては使用されないというこれまでの意向と矛盾しているとした。
一方、英国はケイシー大使が呼び出されたことを否定し、大使はロシア政府高官と「外交的な会談」を行い、ロシアの侵略を受けるウクライナへの英国の支持を改めて表明したとした。
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ロシア外務省はケイシー氏に対し「ウクライナが英国の兵器を使ってロシア国内を攻撃した場合、ウクライナ国内外の英国の軍事施設や装備が標的になる可能性がある」と警告。キャメロン外相の発言は事態を深刻化させるとし、「英国によるこのような敵対的な行動がもたらす悲惨かつ不可避の結果を熟考し、(キャメロン)外相の好戦的で挑発的な発言を最も断固かつ明確な方法で直ちに撤回する」よう求めたとした。
●プーチン氏就任式を批判 「偽りの選挙」とウクライナ 5/7
ウクライナ外務省は6日の声明で、ロシアのプーチン大統領が通算5選を決めた3月の大統領選について「偽りの選挙」だとし、結果を認めないよう国際社会に呼びかけた。プーチン氏が独裁体制を敷いてロシアを侵略国にしたとし、7日の大統領就任式は「ほぼ終生にわたる権力維持が合法であるかのような錯覚を与える」と批判した。
ウクライナは、ロシアが併合を宣言したウクライナ東部・南部4州や南部クリミア半島でも強行された選挙の不当性を訴えている。
●NATO側に直接衝突警告 ロシア、戦術核で欧米けん制 5/7
ロシア外務省は6日、ウクライナ支援を続ける欧米がロシアと北大西洋条約機構(NATO)の軍事衝突に向けて事態を悪化させていると非難し、ウクライナに供与されるF16戦闘機は全て核兵器を搭載していると見なすと警告した。米国に対抗してロシアも戦術核を搭載可能な中・短距離ミサイル開発を加速して生産に入ると述べ、欧米を強くけん制した。
ロシア国防省はこれに先立ち、ウクライナ侵攻の拠点である南部軍管区で戦術核使用を想定した演習の準備を始めたと発表していた。ロシアでは7日にプーチン大統領の通算5期目の就任式があり、9日には第2次大戦での対ドイツ戦勝記念日を祝う。
●プーチン大統領 通算5期目の就任式 始まる 5/7
ロシアのプーチン大統領の通算5期目となる就任式が、モスクワのクレムリンで始まりました。プーチン大統領は、ウクライナへの軍事侵攻などを最優先の課題に位置づけ、政権運営にあたるとみられます。
任期は2030年まで6年間
就任式は、日本時間の7日午後6時すぎから、モスクワにあるクレムリンで行われ、プーチン大統領は、憲法に手を置いて宣誓を行いました。
プーチン氏は71歳。2000年にロシアの大統領に就任し、首相時代も含めて20年以上にわたり、ロシアで実権を握り続け、新たに2030年まで6年の任期が始まったことになります。
就任式には、ロシア政府の関係者のほか、一方的に併合したウクライナの占領地のロシア側の代表者などが参列する一方、ロイター通信は、欧米側は多くの国が代表の出席を見送ったと伝え、ウクライナへの軍事侵攻を受けて欧米側とロシアとの激しい対立が続いていることを印象づけました。
プーチン大統領は、ウクライナ侵攻や、対立を深める欧米諸国への対応とともに国内の統制を強化し、政権基盤を安定させることなどを引き続き最優先の課題に位置づけ、政権運営にあたるとみられます。
国営テレビは、就任式の模様だけでなく、プーチン大統領がクレムリンの執務室を出て専用車に乗って会場に向かう様子なども生中継で大々的に伝え、国民に向けてみずからの権力を誇示するねらいもあるとみられます。
プーチン大統領 “ロシア国民の利益と安全が何よりも優先”
プーチン大統領は、就任式の演説で、「祖国のために戦うすべての人たちに感謝したい」と述べ、ウクライナへの軍事侵攻に参加する兵士たちに謝意を示しました。
その上で、「ロシア国民の利益と安全が何よりも優先される」と述べ、欧米側との激しい対立が続く中で、国家の安全と安定を最優先の課題として取り組むと強調しました。
モスクワ市民は賛否の声
ロシアのプーチン大統領が7日から通算で5期目の任期が始まることについて、首都モスクワの市民からはさまざまな声が聞かれました。
このうち年金暮らしの女性は「とても良いことだ。プーチン大統領だけがロシアの発展を最高のレベルにまで引き上げてくれる」と話し、期待を示していました。
そのうえで、ウクライナへの軍事侵攻について「プーチン大統領が任期中にすべてを終わらせてくれるだろう。われわれは勝利し、ロシアが国際社会を率いていくだろう」と話していました。
また、別の女性も「プーチン大統領が新たな任期を迎えることを喜んでいる。プーチン大統領が始めたことは計画通りにすべてやり遂げて欲しい。この戦争は勝利するまで続ける必要がある」と述べるなど、ウクライナ侵攻においてロシアが勝利することに期待する声が多く聞かれました。
一方で、30歳の女性は、プーチン氏を支持するかどうかについて明言を避けたうえで「モスクワではいま、自分の立場を表明することすら難しくなっている。どこの国でも健全な政治状況であれば、指導者は交代する必要があると私は思う。戦争が終わることを待ち望んでいる」と悲観的な様子で話していました。
また、若い男性は「プーチン大統領の任期が続くことは誰もがわかっていることだ。それについては考えない方がいい。私は近い将来、ロシアを去ることを考えている。ロシア社会の雰囲気が好きではないからだ」と話していました。
ウクライナ市民からは憤りの声
ロシアのプーチン大統領が7日から通算で5期目の任期が始まることについて、ロシアが軍事侵攻を続けるウクライナの首都キーウの市民からは、憤りの声が聞かれました。
このうち28歳の女性は「戦争で悲惨なことがこれだけ長く続いているのに、なぜこのような人物が大統領と名乗れるのか。大統領に就任してほしくない」と話していました。
40歳の弁護士の女性は「私たちにとって彼は大統領でないというだけでなく人として認められない。すべての民主国家はこのような人を大統領と認めるべきではない」と話していました。
また60歳の男性は「ロシアではずっと前からちゃんとした選挙は行われていない。このような人が国のリーダーだと、ロシアにいい未来はない」と話していました。
林官房長官 “国益の観点から適切に対処”
林官房長官は7日午後の記者会見で、「ロシアによるウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがす暴挙で、引き続きウクライナの公正かつ永続的な平和を実現するための取り組みを強力に進めていく。日ロが隣国として対処する必要がある事項については、何がわが国の国益に資するかという観点から適切に対処していく」と述べました。
また、北方領土問題については「領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針を堅持する。こうした方針のもと、引き続きロシア側と必要なやり取りを行っていく」と述べました。
一方、就任式への対応を問われ、「在ロシア日本大使館に対し直前に招待があったが、日本政府からは出席しない予定だ」と明らかにしました。
●ハマス“提案を受け入れる” イスラエル 交渉団派遣も作戦継続 5/7
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まってから7日で7か月となる中、戦闘休止と人質解放に向けた交渉をめぐりハマスは仲介国の提案を受け入れると発表しました。これに対しイスラエルは、エジプトに交渉団を派遣するとしている一方、ガザ地区南部ラファでの作戦の継続を決めたと明らかにし、イスラエル側の対応が焦点です。
イスラエルとハマスの間の戦闘休止と人質解放に向けた交渉について、ハマスは6日、声明を発表し、仲介国のカタールとエジプトに対し「停戦合意についての彼らの提案を受け入れると伝えた」と発表しました。
仲介国の提案の内容について、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、3つの段階に分かれ、それぞれ42日間の戦闘休止が盛り込まれていると伝えています。
そのうえで第1段階では、ハマス側が女性や子どもなどの人質33人を解放し、イスラエル側が収監している多数のパレスチナ人を釈放するのに続いて、第2段階で、ハマス側が男性兵士を含む人質を追加で解放するとともに、イスラエル軍がガザ地区から完全に撤退し、第3段階では、国連や仲介国の関与のもとでガザ地区の復興に着手するなどとしています。
これに対しイスラエル首相府は、受け入れることができる条件で合意に達する可能性を最大化するため、エジプトに交渉団を派遣すると発表しました。
一方で、ハマスに軍事的な圧力をかけて人質の解放を進めるため、ガザ地区南部ラファでの作戦の継続を戦時内閣が全会一致で決めたと明らかにし、双方の戦闘が始まってから7日で7か月となる中、イスラエル側の対応が焦点です。
国連事務総長「不可欠な合意実現 この機会を逃してはならない」
イスラエルとイスラム組織ハマスの間での戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉について、国連のグテーレス事務総長は6日、記者団を前にコメントし「私はきょう、イスラエルとハマスに対し、絶対に不可欠な合意を実現するためにより力を尽くすよう強く呼びかけた。この機会を逃してはならない。ラファへの地上作戦は人道上の壊滅的な結果をもたらし地域を不安定化させることになり、容認できない」と訴えました。
一方、イスラエル軍がガザ地区南部ラファの一部から退避するよう住民らに通告したことについて、国連人権高等弁務官事務所のトップ、ターク人権高等弁務官は6日、コメントを出し「爆弾と病気と飢きんに苦しんでいるガザの人たちは、イスラエル軍の作戦が拡大する中、再び退避するよう通告された。これは非人道的で、民間人の保護を最優先する国際人道法と人権法の基本原則に反する」と非難しました。
林官房長官「わが国としても引き続き働きかけ行っていく」
林官房長官は、午前の記者会見で「人質の解放や停戦をめぐっては今もまさに調整がなされているところで、今後の見通しは予断できないが、わが国としてもこのような動きが早期に実現するよう、引き続き関係者への働きかけを行っていく」と述べました。
●バイデン大統領 イスラエル首相に“大規模な作戦 支持しない” 5/7
イスラエル軍がガザ地区南部ラファの一部から退避するよう住民などに通告する中、アメリカのバイデン大統領はイスラエルのネタニヤフ首相に対し、住民を危険にさらすような大規模な地上作戦は支持しない考えを改めて伝えました。
イスラエル軍は6日、避難者などおよそ120万人が身を寄せるガザ地区南部ラファの住民などに対して、東側の一部の地域でまもなく作戦を実施するとして、直ちに退避するようSNSなどを通じて通告し、その後、「限定的な攻撃を行っている」と発表しました。
こうした中、アメリカのバイデン大統領は6日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談しました。
ホワイトハウスのカービー大統領補佐官は会談後、記者会見し、バイデン大統領が、住民を危険にさらすようなラファへの大規模な地上作戦は支持しない考えを改めて伝えたと明らかにしました。その上でカービー補佐官は「イスラエル側には、彼らの意図や退避の目的について質問している」と述べ、説明を求めていると強調しました。
一方、イスラエル首相府は戦時内閣を6日開き、ハマスに軍事的な圧力をかけて人質の解放を進めるため、ラファでの作戦を継続することを決めたと発表していて、地上作戦に踏み切るのかどうか関心が集まっています。
またカービー補佐官は、戦闘の休止などに向けた交渉をめぐり、イスラム組織ハマスが仲介国に対して提案を受け入れると伝えたと発表したことについて、交渉は重要な段階にあるとの認識を示しました。
その上で「われわれは人質を解放し、6週間の停戦を実現し、人道支援を拡大したい。合意にたっすることが最善の道だ」と述べて、合意に向けて取り組む考えを示しました。 
●プーチン大統領、通算5期目始動 西側との核協議に前向き姿勢も 5/7
ロシアのプーチン大統領(71)は7日、就任式で宣誓し、新たな6年間の任期を開始した。通算5期目となる。
米国などが欠席した式典では核の戦略的安定性に関する西側との協議に前向きな姿勢を示しつつ、それは対等な条件でのみ可能だと述べた。
「われわれは団結した偉大な国民であり、共にあらゆる障害を乗り越え、計画した全てを実現する。共に勝利しよう」と語った。
また「ロシア国民はロシアの進むべき道が正しいことを確認した。深刻な課題に直面している今、これは非常に重要なことだ」とし、「われわれの共通の歴史的目標に対する深い理解のほか、われわれの選択、価値観、自由、ロシアの国益を断固として守る決意をこの中に見い出せる」とした。
米国はプーチン大統領の再選は自由で公正なものとは考えていないとし、就任式には出席しなかった。
英国、カナダ、欧州連合(EU)のほとんどの国も就任式をボイコットすることを決めたが、フランスは代表を派遣すると発表した。
ウクライナは就任式について「ロシア連邦を侵略国家に、また統治体制を独裁政権に変えた人物がほぼ生涯にわたって権力を握り続けることが合法であるという幻想」を作り出すことを狙ったものとした。

 

●フランス、ロシア大統領就任式に出席 非難の応酬のさなか 5/8
フランスのピエール・レビー駐ロシア大使は7日、ウラジーミル・プーチン大統領の通算5期目となる就任式に仏政府を代表して出席した。ロシア外務省が前日に同大使を呼び出し、それを仏政府が威嚇行為だと非難するなど、両国は応酬を続けている。
仏外務省の報道官はAFPに対し、レビー氏がロシア大統領府(クレムリン、Kremlin)で行われた就任式に出席したと明らかにした。式には約2500人が出席したが、複数の欧州主要国は欠席した。
ウクライナ侵攻が長期化する中で3月に行われたロシア大統領選では、プーチン氏が87%以上の得票率を獲得して地滑り的勝利を収めたが、投票に関する不正操作疑惑が取り沙汰されている。
エマニュエル・マクロン仏大統領は2日付の英誌エコノミストのインタビューで、ウクライナ紛争をめぐり、西側諸国の部隊をウクライナに派遣する選択肢について「あらゆる可能性を排除しない」と主張した。
仏外務省も選挙結果を「留意する」という前回の声明を再確認する一方で、選挙の過程で「弾圧が行われ」、ウクライナの被占領地域で投票が実施されたことを非難した。
これを受け、ロシア外務省は6日、レビー氏を呼び出し、「仏政府の破壊的で挑発的な姿勢が(ウクライナ)紛争の激化を招いている」と糾弾した。
仏外務省は翌7日、「情報操作と威嚇目的で」またしても外交ルートが「ゆがめられている」と非難した。
●5期目開始のプーチン大統領、現代ロシアの「皇帝」 5/8
ウラジミール・プーチン氏はもはや、目隠しをされても歩いていけたはずだ。
クレムリン大宮殿の「アンドレーエフの間」にたどり着くには、かなり歩く必要がある。そしてプーチン氏が大統領就任式のため広間まで歩くのは、これで5回目だ。プーチン氏は7日、ここで大統領就任の宣誓を行い、新たな6年間の任期を開始した。
プーチン大統領は出席した閣僚や要人に対し、「我々は団結している、偉大な国民だ。共にあらゆる障害を乗り越え、すべての計画を実現させ、共に勝利しよう」と語った。
プーチン氏にとって、この赤いじゅうたんのルートは慣れ親しんだものだろう。しかし、初めて大統領となった2000年5月とは、情勢が大きく異なる。
プーチン氏は当時、「民主主義を維持し、発展させ」、「ロシアの面倒をみる」と誓った。
それから24年後、クレムリン(ロシア大統領府)の指導者はウクライナに戦争を仕掛け、ロシアは多大な犠牲を出している。大統領は国内では、民主主義を発展させる代わりに抑圧している。批判する者を収監し、自らの権力に対するあらゆる監視と均衡を取り除いた。
アメリカ政府の国家安全保障顧問だったフィオナ・ヒル氏は、「プーチン氏は自分のことをロシアのツァーリ(皇帝)だと、『ウラジーミル大帝』だと思っている」と述べた。
「プーチン氏の最初の2期に限るなら、プーチン氏への評価はかなり好意的なものだったはずだ。ロシアを政治的に安定させ、返済能力を復活させた。ロシアの経済とシステムは、史上最も良い状態で動いていた」
「しかし、10年前のクリミア併合から始まったウクライナへの戦争で、この軌道が劇的に変わった。 プーチン氏は実務重視の現実主義者ではなく、帝国主義者になってしまった」
就任式の会場には、「プーチン5.0」の支持者が大勢いた。
ロシアのピョートル・トルストイ議員は、「プーチン氏はロシアを勝利に導いている!」と私に言った。
「勝利とは何ですか?」と私は尋ねた。
「勝利とは、ロシアは超大国なのだとイギリスと西側諸国が気づき、ロシアの国益を認めることだ」
「もし西側がそうしなかったら?」
「そうなれば、西側はおしまいだ」と、トルストイ議員は結論した。
クレムリン宮殿の中で私は、プーチン大統領を強力に支持するヴャチェスラフ・ヴォロディン下院議長にも会った。ヴォロディン議長は、「プーチン氏がいればロシアがあり、プーチン氏がいなければロシアはない」と宣言したことで有名だ。
ヴォロディン氏は私に、「西側諸国は、いずれ崩壊する弱いロシアを必要としているが、プーチンが立ちはだかっている」と話した。
驚くべきことに、プーチン氏が最初に政権を握ってから、アメリカでは5人の大統領が、イギリスでは7人の首相が誕生している。
そして、四半世紀近くにわたってロシアを動かしてきた結果、プーチン氏は確実にその痕跡を残した。かつて、「ブレジネフ主義」や「ゴルバチョフ主義」、「エリツィン主義」という表現はめったに使われなかった。
しかし、「プーチン主義」は存在する。
米カーネギー国際平和基金ユーラシア・ロシア・センターの上級フェロー、アンドレイ・コレスニコフ氏は、「ロシアの歴史には、『だれだれ主義』と呼ばれたものがもう一つある。スターリン主義だ」と語った。
「プーチン主義は、スターリン主義の再来と言ってもよいだろう。プーチン氏は、(旧ソヴィエト連邦の独裁者)スターリンのようにふるまっている。プーチン氏の権力は、スターリン時代のようにプーチン氏個人に集中している。プーチン氏は政治的な抑圧を大いに使う。そしてスターリンのように、死ぬ時まで権力を保とうと準備している」
西側諸国にとっての課題は、このプーチン氏とどう渡り合うかだ。日に日に強権的になり、本人が言うところの「偉大なるロシア」を何としても再建しようとする、現代の皇帝と。核兵器を持つ、現代の皇帝と。
「核兵器に対しては、我々にできることは山ほどある」と、前出のヒル氏は言う。
「中国やインド、日本といった国々は、プーチン氏がウクライナで核兵器をちらつかせた際、非常に神経質になって反発してきた。核兵器使用という乱暴で思わせぶりな話を押しとどめる国際的な枠組みを作ることで、ロシアに自制を強いることができる」
「プーチンはいろいろな意味で、ならず者リーダーのような存在だ。それだけに、国際的な枠組み作りは、プーチン対策のひとつのモデルになるかもしれない。彼がやりたがるような行動を許さない、制約を強化した、許容度の低い環境を作る必要がある」
公式には、今年3月の大統領選でのプーチン氏の得票率は87%だった。しかし、自由でも公正でもなかったと広くみられているこの選挙で、プーチン氏に対する本格的な対抗馬はいなかった。私はこの点についてこの日、ロシア中央選挙管理委員会のエラ・パムフィロワ委員長に質問してみたが、好意的な答えが返ってきたとは言い難い。
「大統領に反対する大勢が、出馬できなかった」と私は指摘した。
「そのような批判をする人は、ロシアに行ったことがないか、ロシアに来たばかりかのどちらかだ」とパンフィロワ氏は答えた。「作りごとと嘘ばかりだ」。
プーチン氏を見つけられるのは、クレムリン大宮殿だけではない。
私は、モスクワから約100キロにあるカシラの街で取材した。ここには、集合住宅の壁一面を覆う、巨大なプーチン氏の肖像画がある。
カシラでは、国民を常に見つめているのは(ジョージ・オーウェルが小説「1984年」で描いた「ビッグ・ブラザー(偉大なる兄弟)」ではなく)、「ビッグ・ウラジーミル」なのだ。
年金で生活し、道端で花を売っているワレンティナさんは、プーチン大統領が「好き」だと話した。
「良いアイデアを持っているし、国民のためにたくさんのことをしています。確かに私たちの年金は多くないけれど、たとえ彼でも、一度に全てを直すことはできないので」
「もう25年も続けていますが」と私が指摘すると、ワレンティナさんは「でも、(プーチン氏の)次に誰が来るのか分かりません」と答えた。
「ロシアでは、私たちは皆、同じように考えるよう求められます」と、プーチン氏の壁画の前を通りかかったウィクトリアさんは語った。
「何かプーチン氏に逆らうようなことを言うと、夫は『次にプーチン氏を批判したら離婚する』と言います。夫は大統領に夢中なんです。プーチン氏がいなければ、ここでの生活は1990年代と同じように厳しいものだっただろうと言います」
さらに、通りがかりのアレクサンドルさんに大統領をどう思うか尋ねようとしたところ、このような答えが返ってきた。
「今、意見を表明することは危険です。ノーコメントで」
私が話をしたほとんどの人は、プーチン氏の壁画に気づかずに通り過ぎると言う。慣れてしまったのだ。
まるで、たった一人の男がロシアを動かしていて、クレムリンに当面は変化の見込みがないことに慣れきっているのと同じように。
●プーチン大統領の就任式に駐露韓国大使が出席…西側諸国の多くはボイコット 5/8
7日(現地時間)昼、クレムリン大宮殿内のアンドレーエフの間で、ロシアのプーチン大統領の5回目となる就任式が行われた。
李度勲(イ・ドフン)駐ロシア韓国大使は熟考の末、出席した。
ロシア政府はプーチン大統領の就任式を「国内行事」とみなし、「外国の首脳には招待状を送らず、友好国や非友好国を含め、ロシアに駐在するすべての外交公館長を招待した」と前日の8日に明らかにしていた。
ロシアは2022年2月のウクライナ「特別軍事作戦」以降、西側の対ロシア制裁に参加する国を多数、非友好国に指定した。
韓国も2022年3月、米国・英国・オーストラリア・日本・欧州連合(EU)加盟国などと共に非友好国に分類された。
駐露大使の就任式出席は、韓露関係に緊張が高まっている中ではあるが、両国が関係回復の可能性を残している状況と無関係ではない。
ゲオルギー・ジノビエフ駐韓ロシア大使は韓国を「非友好国の中で最も友好的な国の一つ」と評価した。
一方、ウクライナが「プーチン大統領を民主的に選ばれた合法的なロシア大統領と認める法的根拠はない」として、各国に就任式を欠席するよう促した状況で、米国や欧州など西側諸国の多くは就任式をボイコットした。
●米英日ボイコットの渦中に…プーチン「戴冠式」に大使送った韓国政府の本心 5/8
7日に開かれるロシアのプーチン大統領の就任式に韓国の李度勲(イ・ドフン)駐ロシア大使が参加した。多くの自由民主主義陣営国家がプーチン氏の「戴冠式」と呼ばれる今回の就任式にボイコットを決めた中で尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権がこれまで指向してきた「価値外交」の基調とはやや異なる姿勢を見せた決定という指摘が出ている。
李大使出席…「関係を考慮」
韓国外交部が7日に明らかにしたところによると、この日モスクワのクレムリンで行われたプーチン大統領の5期目就任式には韓国政府を代表して李大使が参加した。
ロシア大統領府はこの日、就任式に非友好国を含むすべてのロシア駐在外交公館長を招いたと明らかにした。しかし米国、日本、カナダは早くから不参加を決めた。英国と相当数の欧州連合(EU)加盟国もロシアのウクライナ侵攻を理由に政府代表を送らなかった。これに対しフランス、ハンガリー、スロバキアは就任式に参加した。
韓国外交部当局者は「韓ロ関係を管理する必要性を考慮した決定」と説明した。ロシア国内の韓国企業の活動と在住韓国人保護の側面などを総合的に考慮したと分析される。
ここには対ロシア関係を着実に管理しておいてこそ長期的に韓国外交のレバレッジが大きくなるという判断も作用したとみられる。尹政権はウクライナ戦争勃発後に行われた多様な国際社会の対ロシア圧迫措置に参加しながらも韓ロ関係を戦略的に管理するという目標を指向してきた。
北朝鮮との密着は相変わらず…誤ったシグナル懸念
ただロシアが戦争犯罪を犯すなど侵略行為を継続するところに戦争過程で北朝鮮と「限度を越えた密着」を継続し、韓国の安全保障を脅かしている点で、ハイレベルの政府高官をプーチン氏の5期目就任を祝う席に送るのが適切なのかをめぐりさまざまな話が出てくる素地がある。ロシアは北朝鮮製の砲弾、弾薬、ミサイルなどをウクライナ攻撃に使っており、反対給付として北朝鮮に軍事偵察衛星技術などを移転したという指摘を受けているためだ。
また、3月にロシアの拒否権行使で国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁委傘下専門家パネルの任期が先月30日付けで終了した。対北朝鮮制裁監視塔に当たるパネルの崩壊は北朝鮮の直接的な脅威の下に置かれた韓国には痛恨の結果だった。
対ロシア関係で実利は得なければならないが、韓国政府の今回の決定がこれまで指向してきた価値外交基調から抜け出すようロシアと国際社会に誤ったシグナルを与えかねないとの懸念もそれで出ている。韓ロ関係を考慮して就任式そのものをボイコットはしないとしても出席者の格を調整するなどの方法で柔軟に対処する選択肢もあるためだ。
3月にプーチン大統領が選挙で過去最高得票率となる87.28%で5期目を決めた時も韓国政府は沈黙した。当時外交部は「ロシアの最近の選挙に対する言及は慎もうと思う。韓ロ両国は相互関係を管理しようとすることに共同の意志を持っている」と明らかにした。米国、英国、ドイツなど西側が「ロシアの大統領選挙は自由でも公正でもなかった」と声をそろえて糾弾したのとは異なる基調だった。
これと関連し、今回の就任式に出席する国を見ると韓国とは外交基調に違いがあるという指摘も出る。フランスは最近マクロン大統領が立ち上がり「米国に依存するのをやめよう」として戦略的自律性を叫んでおり、ハンガリーとスロバキアは親ロ性向が強い国に分類される。
●韓国の駐ロ大使、プーチン大統領の就任式に出席…米日などは欠席 5/8
韓国のイ・ドフン駐ロシア大使が7日正午(現地時間)、モスクワのクレムリンで開かれたウラジーミル・プーチン大統領の就任式に出席した。米国と欧州連合(EU)加盟国など多数の西側諸国は就任式に代表を送っていない。
外交部当局者は同日、記者団に「イ大使が就任式に出席した」と明らかにした。外交部は韓ロ関係を管理する必要性を考慮し、イ大使を出席させる方針を決めたという。同当局者は「EU内部でも就任式をボイコットするという国が20カ国余りで、残りは出席するという立場」だとし、各国が今回の就任式に代表を送るかどうかをめぐり異なる決定を下した中、韓国がこのような決定を下したと述べた。
外交部が説明したように、ウクライナ戦争が行われている中、世界各国はプーチン大統領の就任式に代表を送るかどうかをめぐり意見を一致させることができなかった。米国務省のマシュー・ミラー報道官は同日、「ロシアの大統領選挙が自由で公正に開かれているとは思っていない」とし、米国代表はプーチン大統領の就任式に出席しないと述べた。EUの報道官も、駐ロシア大使をプーチン大統領の就任式に出席させない方針を表明しており、英国やドイツ、カナダも出席を見送る意思を明らかにした。
フランスとハンガリー、スロバキアなど7カ国は就任式に代表を派遣したという。ロイター通信はこれと関連し、フランスの就任式出席は、フランスが最近ウクライナに対する支援を強化しロシアと摩擦を起こしてきた点で注目されると報じた。
韓国もロシアとの二国間関係がさらに悪化することを懸念し、出席の決定を下したものとみられる。ロシアは今年3月、国連安全保障理事会(安保理)の対北朝鮮専門家パネルの任期延長案を決定する表決で拒否権を行使し、韓国人宣教師をスパイ容疑で拘禁するなど、韓国と軋轢がある。韓国政府も先月2日、ロシアが安保理の対北朝鮮制裁決議に違反したとして独自制裁を加えると発表しており、ロシアはイ・ドフン大使を呼んで抗議した。
●日米欧、プーチン大統領の就任式を事実上ボイコット 5/8
ウクライナ侵攻を非難して対ロシア制裁を科す日本や米国などは7日、ロシアのプーチン大統領の就任式に大使を派遣せず、事実上ボイコットした。欧州連合(EU)の多くの国も欠席した。ロシア通信によると、対ロ制裁に加わる韓国やEU加盟国のギリシャは大使を出席させた。
ロシア大統領府は、モスクワに駐在する全ての大使を招待したと強調。ウシャコフ大統領補佐官(外交担当)は欠席した大使について「何のために駐在しているのか忘れたようだ」と語った。
在ロシア米大使館はタス通信に対し、トレーシー大使が一時的にロシアを離れていると説明した。ロイター通信によると、英国やカナダの駐ロ大使も欠席した。林芳正官房長官は、プーチン氏の就任式に日本は出席しないと述べた。
●ロシア、対等な条件なら西側と対話 プーチン氏就任式で演説 5/8
ロシアのプーチン大統領(71)は7日の就任式で、西側諸国と対話の用意があるとする一方、ウクライナとの戦争で勝利するとも強調した。
プーチン氏は宣誓後に「西側との対話を拒否するつもりはない」と述べるとともに、安全保障と戦略的安定に関する話し合いの用意はあるが、米国とその同盟国が「傲慢」でない場合に限るとくぎを刺した。
ウクライナでの勝利を約束し、全てのロシア人には「千年の歴史と先祖に答える責任がある」と強調した。
ロシアの情報機関である対外情報庁(SVR)のセルゲイ・ナルイシキン長官はロイターに、プーチン氏の演説は西側諸国に対して対話を始めるよう呼びかけたものだと指摘。
「一方から見れば、これは西側に対する対等な協力への招待であり、もう一方から見れば、ロシアは自国の発展と安全を確保するという確固たる信念を示している」とした。
●ウクライナ侵攻が重荷 新味欠くプーチン政権5期目 5/8
ロシアのプーチン大統領が7日、6年間の新たな任期をスタートさせた。2000年に47歳で権力の座に就いてから時は流れ、プーチン氏は現在71歳。後継体制をにらんだ政権人事に注目する向きもあるが、5期目の就任式は国民にとって新味に欠ける。ウクライナ侵攻が重荷となり、高揚感に乏しいのが実情だ。
プーチン氏の続投は、これまでの任期をリセットして多選制限を骨抜きにした20年の憲法改正でほぼ決まっていた。積年の西側諸国との摩擦は22年の侵攻開始でさらに悪化し、ロシアは現体制でまとまるしか選択肢がなくなっている。
3月の大統領選で圧勝後、プーチン氏は中国や北朝鮮などの指導部に祝福を受けたが、西側諸国ではロシアに融和的なハンガリーのオルバン首相ぐらいだ。国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状は首脳外交の足かせとなり、政治決断が物を言う停戦交渉の道筋も立たないままだ。
政権は国内引き締めを強化し、リベラル派の政治家やメディアを弾圧。反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏を2月に獄死に追い込んだ。12年の3期目、18年の4期目就任式の際に展開されたような抗議デモは皆無。ナワリヌイ氏の団体は、黒海沿岸にあるという「プーチン宮殿」の未公開写真を紹介するので精いっぱいだ。
国営テレビが事前に伝えた唯一の「サプライズ」は、プーチン氏の大統領専用車。西側諸国と対立する中で開発され、国産リムジンと宣伝される「アウルス・セナート」が、就任式に合わせてモデルチェンジされた。ただ、国民が嫌う侵攻長期化に終止符を打ったり、高インフレに歯止めをかけたりする取り組みとは無関係で、新鮮味のなさを浮き彫りにした。
●プーチンがスターリン超え30年独裁 親メディアが「帝国」連呼の危険な兆候 5/8
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(71)が7日、モスクワのクレムリンで5回目の就任式に出席し就任宣誓した。任期は6年となる。
2000年の初当選以来、24年も最高指導者を務めてきたプーチン氏は、計30年の長期政権を築く可能性がある。さらに20年の憲法改正で、2期12年、36年まで大統領を務めることが可能となっている。ロシアメディアは、最高指導者の地位に29年間座り続けたスターリンを超えると報じた。
プーチン氏はこの日、就任演説で「私たちはすべての国との関係強化に前向きだ。私たちは西側諸国との対話を拒否しない」と話した。しかし、ロシア国防省は6日、プーチン氏の指示で、核兵器の使用練習を含む軍事演習を実施すると発表していた。親プーチンのメディア「ツァルグラードTV」は「国防総省の報告書によると、演習では非戦略核兵器の使用も実施される。そしてこれはもはや西側諸国へのシグナルではなく、実際の行動である」と伝えた。
ロシア事情通は「最近、ロシアメディアのプーチンの代弁者≠ニ言われる司会者たちは『帝国』という言葉を使うようになりました。ソ連どころか、最大の領土を誇ったロシア帝国を思わせる言葉です。プーチン氏がロシア帝国の栄光を取り戻すことをアピールしているのです」と語る。
ロシア帝国は1721年から1917年まで存在し、現在のロシア連邦に加え、フィンランド、ベラルーシ、ウクライナ、ポーランド、中央アジアなどを広く支配していた。
最近、プーチンの声≠ニ呼ばれるロシア国営メディアの司会者ウラジーミル・ソロヴィヨフ氏は「私はいつもフィンランド人がロシア帝国に戻りたがっていると感じていた」と発言した。
前出事情通は「ここ数か月、クレムリンがカザフスタンへの侵攻を計画していることをほのめかしていました。アルメニアとの紛争の可能性も高まっています」と指摘する。
プーチン氏の野望は世界をおびやかすことになる。
●プーチン大統領 通算5期目となる任期始まる 2030年まで 5/8
ロシアのプーチン大統領の就任式が7日行われ、通算で5期目となる任期が始まりました。プーチン大統領は今週、旧ソビエト諸国の首脳との会議や、第2次世界大戦の戦勝記念日の式典に臨む予定で、ウクライナへの軍事侵攻で欧米との対立が深まる中、友好国との連携をアピールするとともに、国民に改めて結束を呼びかけるものとみられます。
ロシアのプーチン大統領は7日、モスクワのクレムリンで行われた就任式で宣誓し、2030年までの通算5期目となる任期が始まりました。
演説を行ったプーチン大統領はウクライナへの軍事侵攻に参加する兵士たちに謝意を示すとともに「われわれは結束した偉大な国民だ。あらゆる国難を乗り越えて、計画したことをすべて実現する。共に勝利しよう」と呼びかけました。
プーチン大統領は8日、旧ソビエトの各国首脳を招いて「ユーラシア経済同盟」の会議を開くほか、9日は、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利したことを記念する式典に臨む予定です。
プーチン大統領としてはウクライナ侵攻で欧米との対立が深まる中、友好国との連携をアピールするとともに、国民に改めて結束を呼びかけるものとみられます。
死亡したナワリヌイ氏の妻 SNSでプーチン政権を非難
プーチン大統領の就任式に合わせて、死亡した、反体制派の指導者ナワリヌイ氏の妻のユリアさんは、7日、SNSで動画を公開し「プーチン政権はうそと腐敗から成り立っている。私たち全員から、日々盗んでいる巨額の金を使って、平和な都市を攻撃したり、治安部隊が警棒で人々を殴ったり、うそのプロパガンダを広めたりしている」と述べ、プーチン政権を厳しく非難しました。
そして「私たちの国は今、うそつきでぬすっとで殺人者でもある人物によって支配されているが、これは絶対に終わることになる。諦めないで。真実は勝つ」と述べ、プーチン大統領に対する戦いを続けるよう支持者に呼びかけました。
ナワリヌイ氏がことし2月に死亡したあと、妻のユリアさんはロシア国外を拠点に夫に代わってプーチン政権への批判を続けています。
●「ロシアはもっと強くなる」プーチン大統領 通算5期目始動 侵攻継続向け国民に結束呼びかけ 5/8
ロシアのプーチン大統領が通算5期目となる大統領就任の宣誓を行い、新たな任期をスタートさせました。
季節外れの雪が舞う中で行われた就任式。プーチン大統領は「われわれが団結すれば勝つ」と国民に呼びかけしました。
ロシア プーチン大統領「国民の利益と安全が最優先課題だ。ロシアはこの難しい時代を必ず乗り越えてもっと強くなる」
就任式は、モスクワのクレムリンで日本時間の午後6時から行われました。プーチン氏は演説で3月の大統領選を念頭に、「国の方針が正しかったことをみなさんは確認した」と発言。そのうえで「すべての計画を達成する」と述べ、ウクライナ侵攻継続に向け国民の結束を呼びかけました。一方、欧米との戦略的安定性を含めた対話は拒否していないとし、「互いの国益を尊重しなければならない」と強調しました。
新たな任期は2030年までとなります。まずは人事が焦点となりますが、ペスコフ大統領報道官は、プーチン氏がきょうにも首相を決める可能性があるとし、ロシアメディアではミシュスチン首相ら主要メンバーが留任するとの見方が大勢で、安定を重視した形になりそうです。
9日には対ドイツ戦勝記念日、その後は中国訪問と重要行事が続くことになります。
Q.プーチン政権がこれからまた6年続くわけですが、市民はどう受け止めている?
モスクワ市民からは安定を求める声とともに、長期化する侵攻の終わりが見えない中、「早く戦争を終わらせてほしい」という声も聞かれました。
巨額の戦費支出のため増税に向けた動きが指摘されるほか、好調だとする経済もエネルギーへの制裁などで先行きは不透明で課題は山積しています。
●プーチン大統領、就任演説 「ともに勝利しよう」 5/8
プーチン大統領は7日、モスクワで行われた就任式の演説で西側が緊張を高めているなどと批判しました。
「選択は西側次第だ。ロシアの発展を抑制し続け、侵略政策を続け、何年もロシアに圧力をかけ続けるのか、あるいは協力と平和への道を模索するのかだ」(プーチン大統領)
就任演説は前回2018年の半分の時間で、ウクライナでの戦闘に「ともに勝利しよう」と国民に結束を呼びかけました。
就任式の前日、プーチン大統領は戦術核兵器の演習の実施を指示するなど核の脅威を高めています。
●プーチン大統領 通算5期目就任式 ウクライナ軍事侵攻参加の兵士たちに謝意 5/8
ロシアのプーチン大統領の通算5期目となる就任式が7日、首都モスクワのクレムリンで行われた。
プーチン氏は演説で、ウクライナへの軍事侵攻に参加する兵士たちに謝意を示したうえで、国民の団結を呼びかけた。
また、対立を深める欧米に対しては「対話は拒んでいない」と非難した。
プーチン氏の新たな任期は2030年までとなる。
●「ロシアに対する敵対的本性」北朝鮮、英のウクライナ支援を非難 5/8
北朝鮮国営の朝鮮中央通信は6日、ロシアの侵攻を受けているウクライナを英国が支援していることを非難する個人名の論評を配信した。「英国は欧州大陸を戦争の災難の中に深く追い込んでいる」
英国のデイヴィッド・キャメロン外相は2日、ウクライナのキーウを訪問してゼレンスキー大統領と会談した。
同日、キャメロン氏はロイター通信のインタビューで、「ウクライナにはイギリスが供与した兵器でロシア領内の標的を攻撃する権利があり、実際に行うかどうかはウクライナ次第だ」と話した。欧米諸国は戦闘拡大への懸念から供与した兵器をロシア領内に向けて使用しないように求めてきたが、一歩踏み込んだ形だ。また、キャメロン氏は、英国は必要な限り毎年30億ポンド(約5800億円)規模の軍事支援を続けると述べた。
キャメロン氏の言動に対し、国際問題評論家のシム・ミン氏の名で出された論評は、「英国はゼレンスキーかいらい当局に主力戦車やロケット砲、劣化ウラン弾をはじめとする各種の武装装備を提供し、特に2023年5月には真っ先に長距離巡航ミサイルを手渡すことで、ロシアに対する敵対的本性をさらけ出した」としながら、「ゼレンスキー当局をロシア領土縦深に対する無謀な攻撃に駆り出して日増しに劣悪になっているウクライナの戦況を収拾するために断末魔のあがきをしていることが分かる」と述べた。
また、「キャメロンがこのような無分別な暴言をはばかることなく吐いたことには、最近、ロシア武力の強力な軍事的攻勢によって日ごとに守勢に陥っているゼレンスキー当局の余命を維持させ、ウクライナ人の最後の一人まで反ロシア代理戦争に駆り出そうとする英国『ジェントルマン』の邪悪な企図が潜んでいる」と非難した。
●イスラエル軍、ラファ検問所を掌握 国連は人道支援の遅れを懸念 5/8
イスラエル国防軍(IDF)は7日、パレスチナ自治区ガザ地区南部ラファとエジプトを結ぶルートの検問所について、パレスチナ側を同軍の「作戦統制下」に置いたと発表した。
昨年10月にイスラエルとイスラム組織ハマスの間で戦争が始まって以来、ラファ検問所は援助物資の重要な入り口であり、人々が逃げ出すことのできる唯一の出口となっている。
IDFの戦車旅団は一晩の激しい攻撃の末、検問所へと移動した。
イスラエルとガザ地区の間にあるケレム・シャローム検問所も閉鎖されているため、国連はガザに支援物資を運ぶ二つの主要経路がふさがれた状態にあると警告している。
一方、米ホワイトハウスはこの日、ケレム・シャローム検問所の通行が8日に再開されると聞いていると発表した。
「テロリストが使用」とイスラエル軍
IDFは、ラファ検問所が「テロリストの目的に使用されている」という情報に基づき、部隊がガザ側で「作戦統制を確立した」と発表した。
詳細を明らかにしなかったものの、IDFは、5日にこの地域から発射された迫撃砲でイスラエル兵4人が死亡し、IDFが管理するケレム・シャローム検問所でも負傷者が出たと説明した。
IDFはさらに、検問所にいる大きなイスラエル国旗を掲げた装甲車と、パレスチナ人移住センター前の広場にいる多数の戦車を映したドローン映像を公開した。
イスラエル国防軍関係者によると、ラファ検問所は現在閉鎖されており、治安状況が許せばケレム・シャローム検問所を再開させるという。
IDFはその後、ハマスがさらに4発の迫撃砲をケレム・シャローム検問所に向けて発射したと発表した。
国連は人道支援の停滞を懸念
国連人道問題調整事務所(UNOCHA)のイエンス・レルケ報道官は、イスラエルが国連職員の両検問所へのアクセスを拒否したと発表した。
「援助物資をガザに運ぶ2本の大動脈が、現在、寸断されている」と、レルケ報道官は述べた。
同報道官は、国連の貯蔵タンクには「1日分の燃料」しかないと述べ、「長期にわたって燃料が運び込まれなければ、それは人道支援活動を押し殺す非常に有効な方法となる」と警告した。
IDFはこれに対してすぐに反応していない。ただこれまで、人道援助物資のガザへの、そしてガザ内部での輸送を促進すると約束し、北部での2カ所を含む代替検問所を設置したとしている。
ラファに滞在している国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のサム・ローズ氏はBBCに対し、燃料は「ガザ地区内のあらゆることの基礎」だと語った。
「水を通すにも、健康センターを運営するにも、病院での救命治療にも燃料が必要だ。もし燃料が亡くなれば、すべてが停止してしまう」
ローズ氏はまた、ラファにいる人々が置かれている状況を「まったくの惨状」だと表現した。
「通りは移動中の人々で渋滞している。避難区域の中にいる人々だけでなく、外にいる人々もいる。(中略)早々に移動することを決めた人々もいる」
しかし、「安全な場所はどこにもない」と、ローズ氏は付け加えた。
「安全地帯の半分は砂丘の上にあり、人々が寝泊まりできる場所ではない。残りの半分はハンユニスにあって、ここ数週間、猛烈な砲撃を受けている」
IDFは6日、ハマスの戦闘員排除とインフラ破壊のための「限定的な」作戦を行うとして、現地の数万人のパレスチナ人に対し、ラファの東側から「拡大人道地域」に避難するよう指示を出した。「拡大人道地域」は、ラファの北側のアル・マワシからハンユニス、ガザ中部デイル・アル・バラフへと広がっている。
   イスラエルが指定した避難地域と人道地域を示した地図
ハマスは、イスラエルのラファ検問所への侵入と占拠は、新たな停戦協定を確保しようとする、中東地域の調停者の動きを弱体化させることが目的だと指摘している。
ハマスは6日、エジプトとカタールによる停戦案を受け入れたと発表した。提案には、戦闘を数週間休止し、ガザで拘束されている数十人の人質を解放する内容が含まれている。
しかしイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は7日、ハマスの発表は「イスラエルの必要条件からかけ離れた」ものであり、「イスラエル軍のラファ入りを妨害する」ための作戦だが、それが失敗したのだと述べた。
また、この日にカイロに派遣された中堅レベルのイスラエル代表団に、人質の返還に必要な条件と「イスラエルの安全保障を確保するための重要な要件」について「断固とした態度を貫く」よう指示したと明らかにした。
イスラエルのヨアヴ・ガラント国防相は、「ハマスが壊滅するまで、あるいは最初の人質が帰国するまで、ラファでの活動をやめることはない」と、ガザとの境界線にいる部隊に伝えている。
一方、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、イスラエル・ハマス間の合意は、「ガザのパレスチナ人、そして人質とその家族の耐え難い苦しみを止めるために不可欠だ」と述べた。
「両当事者が政治的勇気を示し、今すぐ合意するための努力を惜しまないよう、改めて訴える」
昨年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲では、イスラエル側で約1200人が殺害され、250人以上が人質となった。イスラエルは直後に報復攻撃を開始した。
ハマス運営のガザ保健省は、ガザでのイスラエルの軍事作戦でこれまでに3万4780人以上が殺されたとしている。
同11月には1週間の停戦が実現し、この間にイスラエルの刑務所にいたパレスチナ人囚人約240人と引き換えに、ハマスの人質105人が解放された。
イスラエルによると、ガザでは依然128人の人質の行方がわかっておらず、そのうち少なくとも34人は死亡したと推定されている。
ラファへの攻撃
イスラエルは長らく、この戦争での勝利には、ラファに残ったハマス部隊の殲滅(せんめつ)が必要だと主張している。
ラファには現在、戦争で避難民となった100万人以上のパレスチナ人が滞在している。そのため国連や西側諸国は、ラファでの大規模な地上作戦は人道的な大惨事を引き起こすと警告している。
6日夜には、ラファの上空が炎で照らされ、イスラエルによる砲撃が続いているとの目撃情報が出た。
パレスチナのWAFA通信は、市内のクウェート専門病院の医療関係者の話として、20人が殺害され、数十人が負傷したと伝えた。
ロイター通信が取材したライード・アル・ダービーさんは、西側のタル・アルスルタン地区にある自宅が空襲で全壊し、妻と子供が殺されたと語った。
アルジネイネフ地区でも、2世帯が住んでいた住宅のがれきの下から7人の遺体が見つかったと報告されている。この地区は、IDFが6日に避難を命じたラファの東側に位置する。
IDFは7日朝に発表した声明で、「ハマスのテロリストを排除し、ラファ東部の特定地域内のハマスのテロリストのインフラを解体する」ための「精密な」作戦を開始したと発表した。
また、戦闘機と地上部隊が、ラファでハマスが使っていた軍事施設や地下インフラなどを攻撃し、約20人の「テロリスト」を殺害、三つの作戦用トンネルのシャフトを破壊したと説明した。
●欧米が抱える弾薬生産の課題とウクライナ支援の行方...足りない砲弾、兵力補充 5/8
米議会は4月23日、数カ月に及んだ論争を経て、ウクライナへの約608億ドル規模の軍事支援を含む緊急予算案を可決した。しかし、欧米各国はNATO標準弾を増産しているが自国の武器庫も補充しなければならず、ウクライナは今年の大半を通じて弾薬数でロシアに圧倒される可能性が高いと、当局者やアナリストはみている。
ウクライナ軍の砲弾発射数はここ数カ月で1日2000発を下回っているとされ、ロシア軍に対する防衛戦を辛うじて維持している状態だ。
「問題は、世界中で砲弾の不足が深刻なことだ」と、ウクライナのオレクサンドラ・ウスチノワ議員は言う。「ヨーロッパは100万発を提供すると言ったが、実際に提供されたのはその30%にすぎない。アメリカは弾薬の備蓄が尽きつつあり、さらにはイスラエルにも供給している」
緊急予算案の成立により、バイデン米政権は米軍の即応態勢を損なうことなく、ウクライナに砲弾を送る余裕が生まれるだろう。米国防総省は予算案の成立直後に、大砲、ロケット弾、大量の車両を含む総額10億ドルの軍事支援を発表した。
ただし、アメリカは今年の大半をかけて、まずは自国の備蓄をウクライナ開戦前のレベルに回復させるだろう。米陸軍は来年末までに現在の3倍を超える月10万発の砲弾の増産を目指している。
大西洋を隔てたヨーロッパの備蓄は空っぽだ。EUは今年3月までに100万発の砲弾をウクライナに届けるという目標を掲げていたが、実際に供給したのは約半分で、年末までに年産140万発の態勢になる見通しだとしている。
ウクライナを支援するヨーロッパ諸国はウクライナ軍の砲身を冷やさないように砲弾をかき集めようとしており、EU域外からの調達を模索している。
チェコはNATO標準の155ミリ砲弾50万発などを欧米以外から調達できるとして、各国に購入資金の拠出を求めた。約20カ国がこれに応じ、チェコは最初の砲弾をウクライナに届けるプロセスに入ったようだ。エストニアも同様に、砲弾やロケット弾の調達のめどがついたとして、各国に資金の拠出を募る意向を示している。
攻撃を行う余裕はない
古い砲弾を修理調整すれば新品を購入するより約30%安くなると、ヨーロッパの当局者は語る。ただし、古い砲弾は旧ソ連衛星国から調達する分が多く、彼らは決してロシアの機嫌を損ねたくない。
「ウクライナ側は今後12カ月間で、月に7万5000〜8万5000発を発射できるだろう。1日2400〜2500発の計算になる」と、英国際戦略研究所のフランツシュテファン・ガディは言う。
ガディによれば、これはウクライナがロシア軍との防衛戦を維持するために必要な最低限の量だ。「今年は攻撃作戦を行う余裕はない」
共和党のJ・D・バンス上院議員は4月にニューヨーク・タイムズ紙に寄稿し、そもそもアメリカには「ウクライナが戦争に勝つために必要な量の兵器を製造できる生産能力がない」と主張した。ウクライナ支援に批判的な米議員は今後もその主張を強めるだろう。
一方、ロシアは今年中に350万発の砲弾を製造できる見込みだ。生産能力を一気に増強し、年末には450万発に届くという分析もある。
ただし、ロシアの生産能力は上限に達しつつあるのではないかともいわれている。兵器工場は既に24時間体制で、ロシアが必要とする砲弾を生産するためには工場を新たに建設しなければならないだろうと、ヨーロッパの当局者はみている。ロシアは北朝鮮やイランからも調達しているが、古すぎて誤射を招きかねない砲弾も含まれている。
来年の初めまでに欧米の兵器工場でかなりの量の砲弾を生産できるようになり、ウクライナ軍が再び前線で戦えるようになるだろうと期待されている。現在は弾薬不足を補うために、ゴーグルや画面を通してドローン(無人機)の目線で操縦する一人称視点(FPV)のドローンを投入しているが、妨害装置で破壊される可能性があり、夜間は飛行できない。
ウクライナは高性能の榴弾砲をより多く手に入れて、数の劣位を打ち消そうとしている。榴弾砲は全長約960キロにわたる前線でロシアの攻撃を食い止めるために重要な防衛兵器ともいわれている。
頼みの綱はクラスター弾
「ウクライナは基本的に、今年は防衛に全力を注いでいる」と、ある議員補佐官は戦場の状況について匿名を条件に語った。「クラスター弾は......彼らが部隊を集結させようとしている今、トップ5に入る強力な防衛兵器だ」
なかでもDPICM(二重用途改良型通常弾)は通常の砲弾の約4〜5倍の殺傷力があると、この議員補佐官は言う。米軍には冷戦時代から引き継いだ約300万発の備蓄がある。バイデン政権はさらに5億ドル相当のDPICMをウクライナに供与する権限を持っており、近く供与が承認される見込みだ。
ただし、DPICMは「不発」になる確率が高い。発射されたときに必ず爆発するとは限らず、取り残された不発弾はしばしば民間人の命を奪うことになる。
米国防総省は、バイデンが2月にウクライナへの陸軍戦術ミサイル(ATACMS)の供与を承認し、4月に供与したことを明らかにした。
もっとも、欧米の兵器工場は自国とウクライナがそれぞれ必要とする兵器を供給するために、増産態勢に入ったばかりだ。ウクライナは、ここ数カ月と同じように今年の残りの大半を通じて、防衛の要塞を築くことになるだろう。これらの要塞が、昨年にウクライナの反撃を鈍らせたロシアの多層的な防衛網ほど効果的なものになるかどうかは、まだ分からない。
「ウクライナは多重防御を築いている」と、昨年11月にウクライナを訪れた米外交政策研究所ユーラシア・プログラムのロブ・リー上級研究員は言う。「問題は、人手不足と弾薬不足を同時に抱えていることで、それがさまざまな問題を生んでいる」
さらに、兵器の増産が進むにつれて、ウクライナは補充が追い付かないほど兵力を失うことになるかもしれない。「防衛産業への投資が必要だと(ウクライナの)人々が理解するまでに2年かかった」と、ウスチノワ議員は言うが。
●戦争で富増やすロシアと周辺国の富豪たち 長者番付が映す「特需」の恩恵 5/8
ロシア軍が2022年2月下旬にウクライナに全面侵攻して以来、ウクライナ各地の都市が荒廃し、双方で合わせて数十万人が死傷し、世界経済は根底から揺さぶられてきた。
多くの人々の生活が破壊された一方で、この戦争から直接あるいは間接に利益を得て富を増やした者もいる。その筆頭が、「オリガルヒ」と呼ばれるロシアの新興財閥系実業家たちだ。
国際的な経済制裁を受けているオリガルヒの多くは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の戦争努力に深く関わっている。ロシアの調査報道機関プロエクトが2023年7月に報じたところによると、ロシアの有力実業家少なくとも81人の企業がロシア軍やロシアの軍産複合体のサプライヤーになっている。ロシアがウクライナ南部のクリミアを占領した2014年から2023年までに、これらの企業がロシア政府から受注した契約の総額は少なくとも2200億ルーブル(約3700億円)にのぼるという。
81人のうち63人は、フォーブスの2024年版世界長者番付に名を連ねている。
これらのロシア人ビリオネア(資産額が10億ドル=約1540億円=以上の富豪)には、鉄鋼大手セベルスターリのアレクセイ・モルダショフ会長、金属大手ノリリスク・ニッケルのウラジーミル・ポターニン社長、天然ガス大手ノバテクのレオニード・ミヘリソン会長らが含まれる。セベルスターリはミサイル向けの鋼材、ノリリスクは戦闘機向けの金属などをそれぞれ納品している。ノバテクは軍に燃料を供給しているほか、弾薬など原料になる化学物質も生産している。
さらにソフトウェア企業アストラのデニス・フロロフ会長、製薬大手Rファームの創業者アレクセイ・レピク、そして複数の国会議員といったビリオネアの面々も、ロシア軍やそのウクライナでの占領地の事業に携わっている。
今年の世界長者番付に入ったロシア人は新顔19人を含む120人と、2023年版の105人から増え、過去最多だった。彼らの総資産額は5370億ドル(約82兆5000億円)で前年から13%増えている。石油大手ルクオイル創業者でロシア一の富豪であるワギト・アレクペロフを含むうち55人は、米国や英国、欧州連合(EU)の制裁対象になっている。
この55人のうち、37人は過去1年間で資産を増やしている。前年から資産を減らしたロシア人ビリオネアは24人にとどまり、制裁を受けたオリガルヒではわずか9人だった。
今年の番付の新顔19人には、制裁を受けているロシア人富豪3人が含まれる。ショッピングセンター運営シンディカグループ創業者で上院議員のアルセン・カノコフ、金採掘会社ハイランド・ゴールドなどを保有するウラジスラフ・スビブロフ、メディア権益を持つキスメット・キャピタルの創業者イワン・タブリンだ。新たなロシア人ビリオネア19人のうち少なくとも11人は西側企業の撤退から恩恵を受けており、タブリンもそのひとりだ。
キスメット社は、2023年4月にドイツの日用品大手ヘンケルのロシア事業を買収したコンソーシアムの一社だった。買収価格は約540億ルーブル(現在の為替レートで約900億円)と時価よりも50%以上低かった。これは、2022年12月にプーチンが署名した大統領令によって、ロシアから撤退する外国企業は資産価値を少なくとも50%割り引いて売却しなくてはならなくなったためだ。
米国は2023年12月にタブリンに制裁を科した際、「戦時下のロシアで最大のディールメーカーのひとり」と断じている。
ロシア人ビリオネアのなかには、ファストファッション大手グロリア・ジーンズの創業者ウラジーミル・メリニコフのように、ロシアの消費者が地元ブランドに切り替えたことで得をした人物もいる。グロリア社は外国ブランドのロシアからの撤退で売上高が急増した。
もっとも、彼はこうした状況を必ずしも喜んでいるわけではない。「競争があるおかげでわたしたちは強くなれます。ZARAやH&Mのような強力な競争相手が去ってしまうと、人々は何も買いたがらなくなってしまいました」。メリニコフはフォーブスのインタビューでそう語っている。「ロシアの市場に彼らの代わりになる企業はありません。そして、グロリア・ジーンズは競争がなければ生きていけないのです」
この戦争の「特需」で儲けているのはロシアの富豪だけではない。ウクライナが国土を守るために必死に戦うなか、周辺の第三国でもウクライナへの支援で利益をあげている実業家がいる。
チェコの軍需企業チェコスロバク・グループ(CSG)は、ウクライナ軍への最大の武器納入業者の一社になっている。オーナーのミハル・ストルナトはビリオネアで、資産額は前年の2倍強に膨らんでいる。
また、トルコの軍用ドローン(無人機)メーカー、バイカルは、ウクライナ軍に供給した攻撃用ドローン「バイラクタルTB2」が戦場の形勢逆転に寄与したことを受けて、輸出が急増した。オーナーであるセルチュクとハルクのバイラクタル兄弟は今年、そろって新たにビリオネアに仲間入りしている。
対照的なのがウクライナの富豪だ。ウクライナ人ビリオネアの総資産は2023年以降、19%も減った。ウクライナ一の富豪であるリナト・アフメトウは今年2月、保有企業のひとつメティンベストのコークス工場がある東部の都市アウジーウカがロシア軍に占領されたことで、新たな打撃を受けた。

ロシアとウクライナの両方もしくは一方への供給や、外国企業のロシア事業の割安取得やその撤退によって富を増やし、フォーブスの長者番付に初めて入ったか復活した富豪は、次のような顔ぶれとなっている(カッコ内は左から4月上旬時点の純資産額、富の主な源泉、出身国)。
ヨルゴス・プロコピウとその家族(26億ドル、海運業、ギリシャ)※新顔
イワン・タブリン(24億ドル、未公開株、ロシア)※新顔
コンスタンティノス・マルティノスとその家族(23億ドル、海運業、ギリシャ)※新顔
アンドレアス・マルティノスとその家族(18億ドル、海運業、ギリシャ)※新顔
アタナシオス・マルティノスとその家族(15億ドル、海運業、ギリシャ)※新顔
セルチュク・バイラクタル(12億ドル、軍用ドローン、トルコ)※新顔
ハルク・バイラクタル(11億ドル、軍用ドローン、トルコ)※新顔
ウラジーミル・ファルトゥシュニャク(18億ドル、小売業、ロシア)※新顔
ニコライ・ファルトゥシュニャク(15億ドル、小売業、ロシア)※新顔
アレクサンドル・ミハリスキー(13億ドル、小売業、ロシア)※新顔
ウラジーミル・メリニコフ(17億ドル、ファストファッション小売業、ロシア)※新顔
イーゴリ・ヤコブレフ(14億ドル、家電・靴販売、ロシア)※復活
ドミトリー・アレクセーエフ(13億ドル、小売業、ロシア)※新顔
ユーリ・カルプツォフ(13億ドル、小売業、ロシア)※新顔
アルセン・カノコフ(12億ドル、不動産業、ロシア)※新顔
ウラジスラフ・スビブロフ(11億ドル、鉱業、ロシア)※新顔
デニス・フロロフ(10億ドル、ITサービス業、ロシア)※新顔
イーゴリ・クドリャシュキン(10億ドル、鉱業、ロシア)※復活
アンドレイ・クジャエフ(10億ドル、通信業・石油サービス業・不動産業、ロシア)※復活
セルゲイ・シシュカレフ(10億ドル、運送業、ロシア)※新顔
●「ロシアの指示でゼレンスキー大統領の暗殺企てたウクライナ警護要員を逮捕」 5/8
ウクライナ保安局は、ロシア側の指示を受けウォロディミル・ゼレンスキー大統領など政府高官を暗殺しようとした疑いで、ウクライナ国家警護局の要員2人を逮捕した。AP通信が報じた。
ウクライナ保安局は7日(現地時間)、声明を通じて、高官を保護する任務のウクライナ国家警護局所属の大佐2人が、ロシア連邦保安局に所属の要員らと連携してゼレンスキー大統領の警護員の中から大統領を拉致または暗殺する「実行者」を探そうとした疑いで逮捕されたと明らかにした。2人は終身刑を宣告されうる反逆罪の容疑で捜査を受けている。ウクライナのバシル・マリュク保安局長は「この陰謀はロシアのウラジーミル・プーチン大統領の5回目の就任式(7日)を前に予想された」と明らかにした。
英国BBCの報道によると、ロシア連邦保安局は、別の暗殺標的だったキリロ・ブダノフ情報総局長やマリュク局長などを5日の東方正教会の復活祭前に殺害する具体的な計画も立てていたという。ロシア連邦保安局の計画は、「スパイ」の役割をした国家警護局の要員を利用し、ウクライナの高官の位置情報を把握した後、ドローンやミサイル、ロケットなどで攻撃を行う方法だったとBBCは報じた。ウクライナ保安局は、今回捕まった要員の一人はドローンや地雷なども購入していたと伝え、ロシア連邦保安局所属の職員3人がこの組織と攻撃などを監督したと主張した。捕まった要員らは、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以前からロシア側と繋がっていたという。
ロシアがゼレンスキー大統領を暗殺しようとしたという疑惑は、今回が初めてではない。ゼレンスキー大統領は、ウクライナ戦争の勃発後、自分を暗殺しようとした試みは少なくとも10回はあったと述べている。これに先立ち、ポーランドの検察は先月、ゼレンスキー大統領を暗殺するためにロシアの軍事情報当局側でスパイ活動を行ったポーランド人男性を逮捕したと発表した。
●「30年ツァー」即位したプーチン氏「対等な条件でのみ西側と対話」 5/8
ロシアのウラジミール・プーチン大統領(71)が7日(現地時間)の就任式で5期目に入った。前日には戦術核兵器訓練を指示し、西側にまた核警告をした。
プーチン大統領はこの日、モスクワのクレムリン(大統領府)で開かれた就任式で、右手を憲法の写本にのせて就任宣誓をした。ロシア国歌演奏後に続いた演説で、プーチン大統領は「ロシアがこの厳しく重要な時期を威厳を持って乗り越え、さらに強くなると確信する」とし「我々は団結した偉大な国家であり、共に進めばすべての障害を克服し、我々が計画したすべてのことを実現できるだろう」と述べた。
ウクライナ侵攻以降ロシアと西側の対立が深まる中で6年の任期を始めたプーチン大統領は「ロシアは西側との対話を避けない」とし「安全保障と戦略的安定について対話できるが、対等な条件でのみ可能だ」と強調した。また多極世界秩序を形成するためにパートナーと引き続き協力する方針だと明らかにした。
プーチン大統領は3月の大統領選挙で歴代最高得票率87.28%で5回目の当選を果たし、2000・2004・2012・2018年に続いて5期目に入った。今回の任期は2030年までの6年間。任期をすべて満たせば執権30年となり「現代版ツァー(皇帝)」と呼ばれる。ロシアは2020年に憲法を改正し、プーチン大統領が2036年まで執権できる道を開いておいたため、84歳まで権力の座にとどまることも可能だ。
しかし3年目に入ったウクライナ戦争、145人の命を奪ったクロッカスシティーホールテロ、最大の政敵アレクセイ・ナワリヌイ氏の獄中死などを意識したように、プーチン大統領は内部結集を注文した。プーチン大統領は「急速に変化する複雑な世界で我々は自給自足して競争力を備えるべきであり、我々の歴史で何度もそうであったようにロシアに新しい地平を開かなければいけない」とし「我々は共に勝利するだろう」と強調した。
プーチン大統領は戦術核兵器訓練も指示した。ロシア国防省は前日、ウクライナ国境近隣を担当する南部軍管区のミサイル部隊と空軍・海軍が参加する非戦略核兵器準備・配置演習を含む軍事訓練を「近い未来」に実施すると明らかにした。プーチン大統領は「ロシアに対する西側当局者の挑発的な発言と脅威に対応してロシア領土を守り、主権を保障するために」訓練を命令した。
プーチン大統領は反西側連帯の結束を推進し、就任後の最初の海外訪問で15日前後に中国を訪問して習近平主席と首脳会談を行う。年内の北朝鮮訪問も議論されていて、朝中ロの密着が強まる見込みだ。
ロシア大統領府はこの日の就任式を国内行事と見なし、外国首脳は招待せず、モスクワに駐在するすべての公館長を招待した。しかしウクライナ戦争や選挙の非公正性などを理由に米国・日本・英国・ドイツ・カナダ・スペイン・イタリア・オーストリア・ベルギーなど自由民主主義陣営の多くの国は出席しなかった。一方、フランス・ハンガリー・スロバキアは出席した。
李度勲(イ・ドフン)駐ロ韓国大使は出席した。韓国外交部の当局者は「韓ロ関係を管理する必要性を考慮した決定」と説明した。ロシア内の韓国企業の活動と現地韓国人保護の側面などを考慮したと解釈される。ロシアとの関係を管理してこそ長期的に韓国外交のレバレッジが強まるという判断も作用したとみられる。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は国際社会の対ロシア圧力に加わりながらも韓ロ関係を戦略的に管理するという目標を目指してきた。
●国連 中満事務次長 AIの軍事利用 “国際的な規制の策定急ぐ” 5/8
AI=人工知能の軍事利用をめぐって各国で開発が進むなか、標的の選定から攻撃までを人間の指示なしに行う兵器が登場する懸念が強まっています。こうした中、国連の軍縮部門トップ、中満泉事務次長がNHKのインタビューに応じ国際的な規制の策定を急ぐ考えを示しました。
AIの軍事利用をめぐっては、ガザ地区やウクライナでAIを利用した兵器などが投入されているほか、各国で開発が進んでいます。
こうした現状に国連の軍縮部門トップの中満泉事務次長がNHKのインタビューに応じ「戦争の中で実際に使用される現実が、目の前に出てきているということで本当に危機感を持っている。将来的には、戦争のありよう、戦い方が大きく変わってしまうのではないか」と述べ、強い危機感を示しました。
なかでも標的の選定から攻撃までを人間の指示なしに行うLAWS=自律型致死兵器システムと呼ばれる兵器については、国際的なルールがないことから、去年、国連のグテーレス事務総長が再来年までに法的拘束力のある枠組みを採択するよう加盟国に呼びかけています。
ただ規制に向けた議論について中満事務次長は「軍事大国はできれば自分たちが先を行ってLAWSの開発で優位を持ち、交渉における立ち位置をより優位なものにしていこうという意図がある」と述べ、すでに開発を進めている国とその他の国との溝があると指摘しました。
そのうえでテロ組織などがAIを悪用するおそれもあるとして「すべての国家、すべての人々に対して、非常に大きな悪影響があるだろうという共通の問題意識というのをまず構築していく」と述べ、国際社会の機運の醸成に努めながらルール作りを急ぐ考えを示しました。
●牙を剥くロシアへの二次制裁 「プーチンの戦争」支えた対中貿易に異変、禁輸分野からふさがれる“抜け穴” 5/8
ウクライナ侵攻を続けるロシアを経済面から支えてきた中国との貿易関係に異変が起きている。米国のバイデン政権が昨年末、対ロシア貿易にかかわる中国の銀行に対する制裁圧力を高めたことをうけ、彼らがロシアとの取引から次々と手を引き始めているためだ。同様の動きは、経済面ではロシア寄りだった中国以外の第三国にも広がっている。
バイデン政権は金融分野以外でも、5月にはロシアによる化学兵器使用を認定するなど、対露制裁圧力を高めている。米議会でようやく巨額の対ウクライナ支援が可決され、停滞していた軍事支援の再開にめどが立つなか、11月の米大統領選に向けて、戦況でも確実に成果を出そうとしている米政権の狙いもうかがえる。
「中国との取引が止まった」
「昨年12月、浙江省の銀行が、制裁対象である一部の物資≠フ支払いを止めたと通告してきた。しかし数週間後には、通貨や商品の種類にかかわらず、ロシアの(企業による)すべての取引を止めたと通告してきたんだ」
中国から機械製品を買い付けていたというロシア中部イジェフスクの同国企業関係者は、中国からの商品購入が突然困難になった状況を、ロシアメディアに打ち明けた。商品の支払いなどの取引を仲介していたのは、中国・浙江省の銀行だ。
このロシア企業関係者によれば、ロシアとの取引を止めたのは、同銀だけではないという。「中国のほかの大手銀行も、私たちの会社の外貨建て口座を凍結した」。浙江省は、中国企業の対ロシア輸出の拠点とみなされていた地域で、打撃の深刻さがうかがえた。
2022年2月に始まったウクライナ侵攻以降、欧米や日本などはロシアの戦争継続能力を削ぐために、経済、金融分野で大規模な対ロシア制裁を科した。しかし、それらは当初狙った成果を上げることなく、ロシア経済は地盤沈下を避け、さらに成長軌道にすら乗りつつある。中国やインド、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)などが、ロシアの主力輸出品である原油を大量に買い付けたためだ。
特に中国は、原油の大量購入のみならず、ロシアに対し半導体や電子回路、工作機械など、軍事転用が可能な民生用製品の輸出を継続したとされる。結果、ロシアは防衛産業の立て直しに成功し、ロシア軍の戦争継続能力は維持された。中国とロシアの貿易額は、ウクライナ侵攻がはじまった22年に、輸出入ともに実に、前年比で二桁増の伸びとなっていた。
制裁を強化
そのような状況に変化が起きたのは昨年12月のことだ。米バイデン政権は新たに、ロシアによる制裁回避に関与した第三国の銀行に対して、二次制裁を科す方針を表明。ロシアの軍事産業を支える個人や企業との取引を行ったなどと判断される金融機関を対象とした。
米国内などで事業を営む第三国の金融機関には命取りとなる制裁で、これが対ロシアビジネスを事実上支えてきた中国の銀行の動きを封じ込めた。ロシア企業は、中国からの製品購入で支払いを行うことができなくなった。
ロシア側の報道によれば、米国の制裁導入後、中国の銀行は相次ぎロシアビジネスの見直しを開始した。取引に関与している人物や企業がロシアと関係を持っているかどうかが詳細に調べられるようになり、ロシアの市民権を持つ人物が社長を務める中国企業なども、銀行口座を開設できないなどの事態が発生した。2月ごろからは、中国の銀行から「この取引は当行の内部規定に反している」などと理由で、ロシア側からの支払いが返金されるケースが相次いだという。
米政府は手を緩めていない。4月中旬にイタリアで開催された主要7カ国(G7)外相会合に出席したブリンケン国務長官は、工作機械や半導体など軍事転用が可能な物資が中国からロシアに流入しているために、ロシアの軍需産業が制裁による影響を免れていると、中国を名指しで批判。「中国が、欧州と肯定的な友好関係を築きたいのであれば、冷戦終結以降、欧州の安全保障上の最大の脅威となっているロシアを支援することは許されない」と断じた。
4月に北京を訪問したイエレン米財務長官も、中国の企業や金融機関がロシアによる軍事物資の調達に関与しているとし、制裁を発動する可能性を示唆した。米財務省は5月1日には、ロシアに対し赤外線探知機やドローンの部品など、軍事転用が可能な物資の輸出に関与したとして、中国やトルコ、アゼルバイジャン、UAEなど約300の企業や個人に制裁を科すと表明した。 
一連の事態は中国以外の国の金融機関にも当然、影響を及ぼしている。米シンクタンクによれば、バイデン政権の制裁導入を受け、トルコの銀行は24年初頭から、ロシアとの金融分野でのつながりをほぼ完全に解消したという。UAEの銀行も、ロシアからの撤退を開始した。
多くのロシア企業のビジネス拠点として知られるキプロスも、米連邦捜査局(FBI)と金融分野の調査で協力を開始したという。インドも、ロシアからの原油輸入の減少が指摘されている。
ロシア経済への影響は
ウクライナ侵攻開始以後に導入された欧米諸国による数々の対露制裁にもかかわらず、中国などとの貿易拡大を通じて収入を得て、さらに物資の流入により経済を安定させてきたロシアだが、今回の制裁強化により変化が生まれる可能性がある。特に輸入の停滞は、ロシア国内のインフレ懸念を高める。
ソ連崩壊以後も、ロシアはエネルギーや鉱物、木材などの資源輸出型の経済構造から抜け出すことができていない。それは、2000年代の原油価格の世界的な高騰を受けてロシア経済を潤したが、安易に外貨が稼げる構造は、ロシアの製造業の発展を阻害した。
結果として、ロシア経済は完成品を輸入に頼る構造となっており、輸入の停滞は物価上昇を引き起こしやすく、政権の中心的な支持層である年金受給者らをはじめロシア国民の生活に打撃を与える。
インフレが引き起こす市民生活への打撃は、ソ連崩壊後のハイパーインフレの記憶を持つ人々に強い心理的影響があり、過去にも繰り返し政権への脅威となっていた。プーチン政権が最も注意せねばならない経済指標とされる。
米政府は攻勢を強める
金融分野だけではない。米政府は5月1日には、ロシア軍がウクライナ侵攻で化学兵器を使用したと正式に表明し、ロシア政府の3機関と企業4社を制裁対象に加えた。ロシアが化学兵器禁止条約に違反して、化学兵器のクロロピクリンを使用したと断定したという。
実際にロシアが化学兵器を使用したかをめぐっては、ロシア側が認める可能性は極めて低く、確定的な結論を得ることは困難だ。しかし、米政府が正式承認したことは、米国以外の国々も、同問題をめぐり米国と歩調を合わせることを意味する。ロシアの軍事産業に対し、制裁を通じた国際的な締め付けが、さらに強化されるのは必至だ。
米議会は4月、ウクライナに対する約610億ドル(約9兆円)の支援を含む追加予算案を、超党派の賛成多数で可決した。約半年にわたり停滞していたウクライナに対する軍事支援が再び本格化することになる。
欧米諸国の対ウクライナ軍事支援はこれまで、中国などによる貿易を通じた事実上の対ロシア支援により、十分な戦果につながらなかった。新たな支援にもかかわらず、戦況を好転できないような事態になれば、11月の大統領選で再選を目指すバイデン政権にとり、取り返しのつかない打撃になる。そのような事態を避けるためにも、制裁の抜け穴を徹底的に塞ごうとする米政府の意図が浮かび上がる。
●ロシア、旧トヨタ工場で高級車「アウルス」生産へ プーチン氏使用 5/8
ロシアのマントゥロフ副首相代行は7日、サンクトペテルブルクの旧トヨタ自動車(7203.T), opens new tabの工場で、プーチン大統領が使用する高級車「アウルス」の生産を開始すると述べた。国営タス通信が伝えた。
プーチン氏は7日の大統領就任式の会場にもアウルスで乗りつけた。2月には北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記に贈呈している。
マントゥロフ氏は、サンクトペテルブルク工場での生産が年内に始まるとの見込みを示した。
トヨタは昨年3月、サンクトペテルブルク工場をアウルスブランドの過半数の持ち分を持つ国営企業・自動車・エンジン中央科学研究所(NAMI)に譲渡した。
●ウクライナ6州の電力施設に攻撃 ロシア軍、ミサイル50発以上 5/8
ウクライナのハルシチェンコ・エネルギー相は8日、同国西部リビウ州、南部ザポロジエ州を含む6州で7日夜から8日にかけて、電力施設に対するロシア軍の攻撃があったと明らかにした。ゼレンスキー大統領によると、ミサイル50発以上、無人機20機以上が使われた。一部で火災が起きたもようだ。
攻撃されたのは、他に中部のポルタワ、ビンニツァ、キロボフラード、西部のイワノフランコフスクの各州。
ロシア通信が現地軍事筋の情報として伝えたところによると、ロシア軍は8日未明、NATO側が供与するF16戦闘機などの受け入れを準備していたリビウ州の空港や軍事工場、鉄道施設などを空爆した。
●米、イスラエルへの兵器輸送を停止 ラファ侵攻阻止のため=高官 5/8
バイデン米政権は先週、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ南部ラファ侵攻を阻止するため、イスラエルへの兵器輸送を一時停止した。政権高官が7日に明らかにした。
内訳は2000ポンド爆弾1800発と500ポンド爆弾1700発という。
高官は匿名を条件に「この兵器の輸送をどのように進めるかについて最終的な決定は下していない」と述べた。
また、関係筋4人によると、兵器の輸送は少なくとも2週間止められており、米ボーイング製の精密誘導装置「統合直接攻撃弾(JDAM)」や小口径爆弾が含まれている。
ホワイトハウスと国防総省はコメントを控えた。
兵器の輸送停止は昨年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲後、米国がイスラエルに対する全面的支援を申し出てから初めてとみられる。
●英、次世代原子炉燃料HALEUの製造施設建設へ 欧州初 5/8
英政府は8日、次世代原子炉の燃料として必要な高純度低濃縮ウラン(HALEU)の製造施設を欧州で初めて建設するため、約2億ポンド(2億5114万ドル)を投じると発表した。
英国は気候変動目標の達成とエネルギー安全保障強化を狙い、原発の発電能力を2050年までに24ギガワットに増やし、電力需要に占める割合を現在の約14%から約25%に高める方針。その一環として次世代原子炉を建設したい意向だ。
エネルギー安全保障・ネットゼロ省によると、HALEU製造施設はイングランド北西部チェシャーにウラン濃縮企業ウレンコが建設し、2031年までに国内向けもしくは輸出用のHALEUを生産できるようになる見通し。政府はウレンコに1億9600万ポンドを提供する。
アンドルー・ボウイ政務次官(原子力・再生可能エネルギー担当)は「原子力燃料をロシアに過度に依存している状態からの脱却を望む同盟国に、この燃料を輸出する機会があるのは明らかだ」と述べた。
現在、HALEUを商用販売している主要企業はロシア国有エネルギー企業ロスアトム傘下のTENEX。同国のウクライナ侵攻以来、西側諸国はTENEXからの輸入を減らそうと模索している。
●ルーマニア、「パトリオット」供与で協議の用意 米と首脳会談 5/8
ルーマニアのヨハニス大統領は7日、ロシアが侵攻するウクライナへの地対空ミサイルシステム「パトリオット」供与について協議する用意があると述べた。
ウクライナのゼレンスキー大統領はパトリオットなどの防空システムの追加供与を求めている。欧州連合(EU)内では、ドイツがパトリオット砲台の追加供与を確約し、スペインはミサイルを供与するとしている。
ギリシャやオランダ、ポーランド、ルーマニア、スウェーデンなどもパトリオットシステムを保有している。
ヨハニス氏はバイデン米大統領とホワイトハウスで会談し、会談後に「ここ数週間、誰がウクライナにパトリオットを供与できるかという議論があった」と述べ、「バイデン大統領は会談でそのことに触れ、私は協議に前向きだと伝えた」と説明した。
●ガザ休戦交渉再開、ハマスが修正案 米「相違埋められる」 5/8
パレスチナ自治区ガザで続くイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘の休止に向けた交渉が7日、エジプトのカイロで再開した。米国はハマスが示した修正案で双方の溝が埋まるとの楽観的な見方を示した。
エジプトの関係者によると、7日の協議にはハマス、イスラエルのほか、仲介役を務める米国、エジプト、カタールの代表団が参加し、交渉再開に前向きな姿勢を示した。8日も協議を継続する。
ハマスは6日、仲介国の休戦案を受け入れると発表したが、イスラエルは受け入れられない要素が含まれるとし、合意に至っていないとした。
ホワイトハウスのカービー報道官は7日、ハマスが修正案を提示したと述べ、新たな文言は残りの溝を「確実に埋められること」を示唆していると述べた。詳細には言及しなかった。
ハマスはさらなる人質解放には恒久的な停戦での合意が必要だとしており、イスラエルは一時的な停戦のみを協議する姿勢を示している。
イスラエル軍は7日、ガザ南部にあるラファ検問所のパレスチナ側を掌握し、特殊部隊が一帯を精査していると発表した。同検問所はエジプトと境界を接している。
●イスラエルとハマス 仲介国エジプトに交渉団を派遣 5/8
イスラエルとイスラム組織ハマスは、戦闘休止などをめぐる交渉に向けて仲介国エジプトに交渉団を派遣しています。また、ロイター通信は、アメリカのCIA=中央情報局のバーンズ長官が8日にイスラエルに向かうと伝えており、多方面での交渉が続けられているもようです。
イスラエルとハマスの交渉をめぐって、イスラエルは、ハマスが受け入れるとした戦闘休止と人質解放の提案について、イスラエルの中核的な要求を満たすには、ほど遠いとしていますが、ネタニヤフ首相は仲介国のエジプトに交渉団を派遣したと明らかにしました。
ロイター通信はエジプトの関係者の話として、エジプトでの交渉が7日、イスラエルとハマスの交渉団のほか、アメリカなども交えて行われ、8日も続くという見通しを伝えています。
また、ロイター通信は、アメリカのCIAのバーンズ長官が8日にイスラエルに向かうと伝えており、多方面での交渉が続けられているもようです。
アメリカ ホワイトハウスのカービー大統領補佐官は7日に「それぞれの立場を詳細に見ると、その隔たりを近づけることはできるとみられる」と述べました。
一方、イスラエル軍は7日に、およそ120万人が身を寄せるガザ地区南部ラファの一部地域で、地上部隊が限定的な作戦を開始し、エジプトとの境界にあるラファ検問所のガザ地区側を掌握したなどと発表しています。
ガラント国防相は、7日に公開された映像で「人質解放のため妥協はいとわないが、この選択肢がなくなれば、われわれは作戦をさらに進める」と述べ、ハマスへの圧力を強めており、交渉が進展するかは予断を許さない状況です。
●ウクライナのキーウとリビウに攻撃−1カ月余りの中断後 5/8
ウクライナの首都キーウとポーランド国境に近い西部の都市リビウが8日未明にミサイル攻撃を受けたと地元当局が通信アプリのテレグラムを通じ発表した。
キーウでは3時間以上サイレンが鳴り響き、防空活動が行われた。キーウ市軍政部の声明によると、ロシアの戦略爆撃機Tu-95から異なる種類の巡航ミサイルが発射された。
キーウでは今のところ死傷者は報告されていない。こうした攻撃はここ1カ月余りなかった。 

 

●金正恩氏、プーチン大統領に祝電…対独戦勝79周年で 5/9
北朝鮮の金正恩国務委員長(朝鮮労働党総書記)が9日、ロシアの対独戦勝79周年に際し、プーチン大統領に祝電を送った。朝鮮中央通信が伝えた。
金正恩氏は祝電で、「こんにち、ロシア人民は大統領の指導の下、敵対勢力の悪辣な挑戦と威嚇に立ち向かって国の主権的権利を守り抜き、地域の平和と安全を保障するための正義の闘いに決然と奮い立って戦勝世代の誇るに足る気概を堂々とつないでいる」と述べた。
金正恩氏は「大統領と勇敢なロシアの軍隊と人民が強国の威力で帝国主義の覇権政策と強権に敗北を与え、公正で平和な多極世界を建設するための闘いで新たな勝利を収めることを願う」と強調しながら、ロシアのウクライナ侵攻を強く支持した。
●金総書記、露戦勝記念日でプーチン氏に祝意 「確固たる支持と連帯」 5/9
北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は9日、ロシアが第2次大戦でナチス・ドイツに勝利したことを祝う79回目の「戦勝記念日」に寄せて金正恩朝鮮労働党総書記がプーチン大統領に祝意を送り、ロシアに対する「確固たる支持と連帯」を表明したと伝えた。
金氏は「ロシアの神聖な大義に確固たる支持と連帯を表明し、貴殿と勇敢なるロシア軍と人民が、帝国主義者の覇権主義政策を駆逐する闘いで新たな勝利を収めるよう望んでいる」と述べたという。
米国などの諸国は、北朝鮮がロシアにウクライナとの戦闘に使用する武器を提供していると非難。北朝鮮とロシアはともに否定する一方、昨年には軍事関係強化を表明している。
●ロシア、旧トヨタ工場で高級車「アウルス」生産へ プーチン氏使用 5/9
ロシアのマントゥロフ副首相代行は7日、サンクトペテルブルクの旧トヨタ自動車の工場で、プーチン大統領が使用する高級車「アウルス」の生産を開始すると述べた。国営タス通信が伝えた。
プーチン氏は7日の大統領就任式の会場にもアウルスで乗りつけた。2月には北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記に贈呈している。
マントゥロフ氏は、サンクトペテルブルク工場での生産が年内に始まるとの見込みを示した。
トヨタは昨年3月、サンクトペテルブルク工場をアウルスブランドの過半数の持ち分を持つ国営企業・自動車・エンジン中央科学研究所(NAMI)に譲渡した。
●プーチン氏、アルメニアに対ロシア関係維持要求か モスクワでパシニャン首相と首脳会談 5/9
ロシアのプーチン大統領は8日、首都モスクワで南カフカス地方の旧ソ連構成国、アルメニアのパシニャン首相と会談した。会談の詳細な内容は公表されていないが、アルメニアが「ロシア離れ」と欧米接近の動きを強めていることを背景に、プーチン氏はパシニャン氏にロシアとの関係維持を求めた公算が大きい。
会談は、モスクワで同日開かれたロシアやアルメニアなど旧ソ連構成5カ国でつくる「ユーラシア経済連合」(EAEU)の首脳会議に合わせて行われた。
プーチン氏は会談の冒頭で、ロシアとアルメニアの貿易額が増加していると指摘。一方で「貿易とは別の問題もある。公の場で詳しく話すつもりはないが、地域の安全保障にかかわる問題だ」とし、両国間に見解相違があることを認めた。
パシニャン氏も「両国関係や地域の安全保障に関する重要な問題について話し合いたい」と応じた。
アルメニアはEAEUに加え、ロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)にも加盟している。しかし、パシニャン氏は近年、係争地ナゴルノカラバフを巡る隣国アゼルバイジャンとの紛争で軍事支援の義務を果たさなかったとして、CSTOとロシアへの不満を公然と表明。CSTOからアルメニアが離脱する可能性を示唆する一方、欧米諸国との関係強化を進めている。
ロシアはアルメニアの対露非難は不当だと反発。アルメニアと欧米の接近にも不快感を示してきた。
●ロシア軍事パレードの規模縮小続く 戦力損耗を示唆、きょう対独戦勝記念式典 5/9
ロシアは第二次大戦の対ドイツ戦勝記念日とする9日、首都モスクワの「赤の広場」や国内各地で毎年恒例の軍事パレードを行う。モスクワでの式典ではプーチン大統領が演説する。ウクライナ侵略を対独戦と同じ「祖国防衛戦」だと位置付けるプーチン氏は、演説でも国民の愛国心に訴えかけ、侵略への支持拡大を図る見通しだ。ただ、侵略の開始後、パレードの規模は縮小傾向が続き、露軍の損耗も示唆している。
露国防省の事前発表によると、政権側が最重要視する赤の広場でのパレードには今年、9千人超の軍人と戦闘車両など約70の地上兵器が参加。天候が良ければ航空機も上空を飛行する。
赤の広場でのパレードに参加する地上兵器の数は昨年より減少する。昨年は約8千人の軍人と100超の兵器が参加した。侵略開始直後の2022年は約1万1千人の軍人と約130の兵器が、侵略前の21年は約1万2千人の軍人と約190の兵器が参加していた。
パレードには、旧ソ連構成国からベラルーシのルカシェンコ大統領ら首脳が出席を予定。一方、ロシアとの確執を深めているアルメニアのパシニャン首相は「毎年参加する必要があるとは思わない」として欠席を表明した。アゼルバイジャンのアリエフ大統領も国内行事を優先して欠席を決めるなど、旧ソ連圏でのロシアの影響力低下を示唆した。
旧ソ連圏外からはキューバとラオス、ギニアビサウの首脳が出席する予定だ。
●「プロパガンダを信じるな」…ロシア政府系メディアに乱入して「プーチンの野望」を全国民に暴露した女性が語る「衝撃の顛末」 5/9
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。
ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。
長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』より抜粋してお届けする。
警察の目を盗んで
2人の警察官がピタリと脇についたまま、わたしはテレビセンターの長い廊下を歩いて行った。ちょうどこの頃、わたしの反戦抗議の映像は世界の主要なテレビで流れていた。何百人もがSNSに感謝の言葉を書いてくれた。あとで聞いたところだと、テレビ局のあるオスタンキノにはモスクワ中から記者や弁護士が駆けつけていた。その中には感謝のしるしとしてわたしに渡そうと、白い薔薇の花束を持った男性もいたそうだ。
テレビセンターの一階にある警察分署に入った。中は大騒ぎだった。ひっきりなしに電話が鳴っていた。私服警官が次々とやってきた。だが、誰もわたしには注意を払っていなかった。チャンスだった。一刻も無駄にはできない。見つからないようにバッグから携帯を取り出し、SNSを開き、自宅で録画しておいたビデオメッセージを投稿した。
「ウクライナでいま起きていることは犯罪です。ロシアは侵略国です。この犯罪の責任はただ一人の人物にあります。ウラジーミル・プーチンです。
わたしの父親はウクライナ人、母親はロシア人です。2人は敵同士になったことはありません。わたしが身に着けているロシア、ウクライナ両国旗の色のネックレスは、2つの兄弟民族が和解するために、ロシアがこのきょうだい殺しの戦争を即刻中止しなければならないという象徴です。
残念ながら、わたしは第一チャンネルでこの数年働いてきました。クレムリンのプロパガンダに従事してきました。いま、わたしはそれを恥じています。テレビ画面からウソを流してきたことを恥じています。ロシア人をゾンビ化してきたことを恥じています。
元同僚からのメッセージ
すべてが始まった2014年、わたしたちは沈黙していました。クレムリンがアレクセイ・ナヴァリヌイに毒を使ったときも集会に出ませんでした。わたしたちはこの非人間的体制を黙って見ているだけでした。いま全世界がわたしたちに背を向けています。この先、10世代を経ようとも、子孫たちはこの兄弟殺しの戦争の汚名を拭い去ることはできないでしょう。
思慮深く賢明なロシア人であるわれわれ、わたしたちの力だけがこの狂気を止めることができるのです。集会に参加しましょう。何も恐れずに。わたしたちを一人残らず刑務所に叩き込むことはできないのですから」
動画の読み込みに時間がかかった。まわりを見まわした。警備員の一人がじっとこちらを見ているのに気づいた。本能的に体が縮こまった。
「マリーナ、大丈夫? 弁護士はいるの?」
元同僚からのメッセージが携帯の画面に表示された。プーチンがドンバスでの戦争を始めた時、ロシア国営テレビを辞め、反体制派ミハイル・ホドルコフスキーのチームに入った女性だ。彼女に動画を送った。
「マリーナ、どこにいるんだ?」
第一チャンネルのワシントン特派員だったイーゴリ・リスキンからのメッセージだ。リスキンはもうだいぶ前から家族と一緒にアメリカに住んでいる。
尋問
「オスタンキノの警察署」
急いで書いた。万が一の時のためにリスキンにも動画を送った。
「携帯をさっさと切りなさい!」
男の声が聞こえた。目を上げると黒いファイルを脇に抱えた背の低い男がいた。
「なんであんなことをやったんだ。一人でやったのか。それとも手助けした者がいるのか?」
洗いざらい真実を話した。一人でやった。わたしがオンエアに出ていこうと考えたことは誰も知らない。戦争が始まった時、わたしは激しく動揺した。食事も水も喉を通らず、眠ることもできなかった。モスクワ中心部のマネージ広場に行った。でも警察が抗議者を根こそぎ捕まえて警察車両に押し込んでいるのを目撃した。その時わたしは、わたしならもっと効果的な抗議ができるはずだと考えた。
休みの日に近所の文房具店にクルマを飛ばし、厚紙とマーカーを買い、家に帰って食卓の上でスローガンを書いた。その後すぐにビデオメッセージを録画した。最初はニュースルームの中にとどまろうと思っていた。でも直前に考えを変え、MCの後ろに立とうと決めた。『ヴレーミャ』の時間帯にスタジオの警備が交代したからだ。
一日中警備についていた2メートルもあるゴリラのような男の警察官が、可愛い少女のような警察官に代わり、その人は携帯にのめり込んだ。これはチャンスだと思った。こんなことはできっこないと90パーセント思っていた。スタジオに駆け込むなんて無理だ、最後の瞬間に膝が震えるか、チーフディレクターがわたしをフレームの外に出すだろう、と。
プーチンのための戦争
警察署には次から次へと人が来た。さまざまな治安機関の係官だったが、皆同じ質問をした。
「なぜスローガンは英語だったのか?」
「英語で書いたのは、西側の人たちに、ロシア人が戦争に反対していることを示すためです。ロシア人はこんな戦争を望んでいません。この戦争を必要としているのは一人、ウラジーミル・プーチンだけです。権力を握っていたいからです。プロパガンダによってゾンビ化されているロシア人には、できるだけ簡単に『あなたたちはここで騙されている!』とロシア語で書いたのです。このプロパガンダに乗らず、オルタナティブな情報源を探してもらいたいと思ったのです。比較し、分析してもらいたかったのです」
わたしは一瞬黙った。壁の時計の針は深夜を指そうとしていた。捜査官たちは報告書に何か熱心に書き込んでいた。
わたしは「弁護士を呼びたいので電話をさせてください」と要求した。
●EU、ロシア凍結資産活用で合意 利子でウクライナ軍事支援 5/9
欧州連合(EU)加盟国は8日、域内で凍結したロシア資産の利子をウクライナ支援に使うことで合意した。ベルギー政府が発表した。
外交筋によると、利子をEU基金に移して9割をウクライナ軍事支援に、1割を復興などに使う想定という。
主要7カ国(G7)は2022年2月のウクライナ侵略の開始直後、ロシア中央銀行の資産約3000億ドルを凍結していた。それ以降、EUと他のG7諸国は、ウクライナを支援するためどのように資金を活用するかを議論してきた。
27年までに域内にあるロシア資産から得られる利益は150億─200億ユーロ(376億ドル)とEUは推計している。ベルギーの決済機関ユーロクリアが域内の資産を保管している。
EU議長国ベルギーはXへの投稿で「この資金はウクライナの復興とロシア侵略に対する軍事防衛を支援するために使われる」と述べた。
米国は、資産全体の没収を提案しているが、欧州はユーロへのリスクや法的措置などを理由に難色を示している。米国はまた、ウクライナへの融資の担保として資産を活用するよう働きかけている。
●旧ソ連圏結束へ首脳会議 制裁下のロシア経済ブロック 5/9
ロシアのプーチン大統領は通算5期目に入った。8日、自国主導の「ユーラシア経済同盟」の首脳会議をモスクワで開催。ロシアは勢力圏を力ずくで保持しようとウクライナ侵攻を続ける中、影響力が皮肉にも低下した。西側諸国の制裁に耐え抜くため、死活的に重要な旧ソ連圏の結束を図る。
9日にはモスクワで対ドイツ戦勝記念日の軍事パレードがあり、旧ソ連構成国首脳が参列。プーチン氏は8日の声明で共に戦った「友愛の絆」を強調しており、国際社会で孤立するイメージの払拭を狙う。
ユーラシア経済同盟の今年の議長国アルメニアは2月に国際刑事裁判所(ICC)に加盟。ICCに逮捕状を出されたプーチン氏は訪問時に拘束される可能性があるため、今回はロシアが会場となった。
アルメニアのパシニャン首相は8日の首脳会議だけ参加。ナゴルノカラバフ紛争でアルメニアは昨年9月、同盟国ロシアの支援がなく、アゼルバイジャンに敗北した。パシニャン氏が軍事パレードを観閲すれば自国で批判を招くからだ。
ロシアは中央アジア諸国との摩擦も表面化している。3月のモスクワ郊外の銃乱射テロで「イスラム過激派」が拘束された結果、労働移民のロシア入国が拒まれるケースが多発。人、モノ、カネの移動を自由化する経済同盟の理念が揺らいだ。
旧ソ連圏の一部はロシアにとって、並行輸入など制裁回避の拠点となった。しかし、米国は2月、ロシア独自の決済システム「ミール」運営会社に制裁を発動。ミールは連鎖的な制裁を恐れる銀行が取り扱いをやめ、決済不能に陥っている。
●プーチン氏は「皇帝」になるのか…ロシアで相次ぐ「演出」の数々 正教会トップまで礼賛「世紀末まで権力の座に」 5/9
ウクライナ侵攻が開始以来2年2カ月を超えたロシアのプーチン大統領(71)が7日、通算5期目に入った。就任演説でロシアの「未来」や「発展」など前向きな言葉をちりばめ、愛国心を鼓舞し国民の潜在的な不安払拭に努めたが、戦況や経済は流動的。正教会の威光を活用した現代の新たな「皇帝」として、長期支配を貫徹する戦略のようだ。
大統領通算5期目に…2年後にスターリンを超える長期政権
憲法規定ではプーチン氏は今後2期12年間、2036年まで統治可能だ。ソ連時代も含めロシアの長期独裁者といえばスターリンだが、「最高指導者」だった期間は長く見積もっても26年間ほど。2000年に初当選したプーチン氏は2年後にスターリンを超えるのは確実。2期目を全うすれば、歴代皇帝で最長だった18世紀のエカテリーナ2世の在位期間を上回る。
これに関連して注目すべきは、就任式を巡るメディア報道だ。クレムリンでの就任式後、「生神女(しょうしんじょ)福音大聖堂」で行われたロシア正教会のキリル総主教による祈とう会に出席。政府系テレビはこの模様を初めて実況中継したのだ。
総主教はプーチン氏を、国民の間で人気が高い中世ロシアの英雄アレクサンドル・ネフスキーにたとえ、「世紀末まで」権力の座にとどまることを祈っていると述べた。大衆紙コムソモリスカヤ・プラウダは、総主教の発言全文を掲載。限りなく皇帝に近い、国父のようなプーチン像を刷り込むプロパガンダの狙いが見え隠れする。
不安要因は? ウクライナ侵攻で死傷者約50万人超えたとの見方も
ではプーチン体制は盤石なのか。長期にわたる反欧米の愛国プロパガンダが奏功し国民の支持は高水準だが、政権は総動員に踏み込めない。都市部の市民の多くは消極的支持で平静を装っているからだ。ウクライナ侵攻によるロシア側の死傷者数は、旧ソ連が9年間のアフガニスタン侵攻で出したのを上回る約50万人との見方もあり、社会の底流には不満も鬱積(うっせき)している。
英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のジャック・ワトリング研究員は、対ロ制裁などの影響で、ロシアの戦闘力は来年がピークで、26年以降は急激な低下が始まるとの分析を報告書で示している。プーチン氏が演説で国民に提示したさまざまな公約が実行される保証はどこにもない。
●プーチン氏5期 侵攻は正当化できない 5/9
異例の長期政権が維持される可能性がある。国家主権を踏みにじる軍事侵攻の長期化が危惧される。早期の停戦と撤収を通し、欧米との関係正常化への道を探ることだ。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が通算5期目に入った。憲法改正により、プーチン氏は制度上は2036年まで大統領を務めることができる。
就任演説では、22年2月に開始したウクライナ侵攻に参加する兵士らに謝意を示した。この2年余りを「われわれは困難な時期を乗り切った」と自賛し、作戦継続へ国民の結束を呼びかけた。
侵攻に対するウクライナ軍の反転攻勢は失速し、現状はロシア軍が攻勢を強めている。とはいえ、当初の早期決着の思惑は外れた。高い得票率で大統領選を圧勝したことで、長期化する軍事行動を正当化しようとする狙いがうかがえる。
欧米はウクライナ支援を続けている。これを受けて、米国主導の北大西洋条約機構(NATO)への対抗姿勢を崩さない。ロシア軍は定員を大幅に増やし、核兵器を含む近代装備の充実や武器の生産強化を図る構えを見せる。
こうした動きが欧州側を刺激して、欧州の首脳による踏み込んだ発言につながっている。ウクライナへの欧米の地上部隊派遣を「排除しない」との発言や、NATOの枠内で「核共有」を受け入れる用意があると核兵器配備への言及もあった。
対ロ強硬論に対し、ロシアは戦術核で揺さぶりをかける。米国が戦術核使用を想定したミサイルを欧州などに配備しているとして、同様の措置を取ると応じている。
ロシア国防省は、戦術核兵器を意味するとみられる兵器の使用を想定した演習をする準備を始めたと発表した。ベラルーシはこれに連動して、自国に配備されたロシアの戦術核兵器の点検を行うとする。核使用も辞さない姿勢を示しての威嚇であり、極めて危険だ。
またロシア側は、ウクライナに供与されるF16戦闘機はすべて核兵器を搭載していると見なすと警告した。F16は7月にも配備の可能性がある。戦闘を激化させないよう、対話の重要性が高まっている。
プーチン氏はNATOとの交戦の可能性に言及したことがある。また、欧米と対話するかどうかは欧米の意思にかかっていると述べている。侵攻したのはロシアであることを忘れてはならない。まず戦闘を止め、対話に応じることだ。
日本や欧米各国は対ロ制裁を継続する。これに対し、ロシアは非欧米諸国などと連携した外交や経済活動で、国際的孤立を避けようとする。経済面での打撃は想定ほど強くはないようだが、国民の閉塞(へいそく)感は強まっているという。
大統領選では9割近い得票率で圧勝した。だが、侵攻に反対する野党候補が排除された選挙は公正性などが非難される。国民の言論や対立陣営への弾圧も続く。国内外からの厳しい目を自覚する必要がある。
●「ロシアファシズムだ」戦勝記念日でゼレンスキー大統領が非難 5/9
ウクライナは、ロシアとは異なり前日の5月8日を第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利したことを祝う戦勝記念日としています。ゼレンスキー大統領はこの日にあわせてSNSに動画でメッセージを出し、ロシアの軍事侵攻を止めるため各国に結束を呼びかけました。
ウクライナは去年、第2次世界大戦でナチス・ドイツが降伏した日の5月8日を戦勝記念日と正式に定め、9日を戦勝記念日とするロシアとの違いを明確にしました。
ゼレンスキー大統領はこの日にあわせてSNSに動画でメッセージを出し「80年前、数百万人のウクライナ人たちがナチズムを打ち砕くために戦ったが、こんにち、われわれは再び、悪に立ち向かっている。この悪とはロシアファシズムだ」としてロシアをナチス・ドイツになぞらえて非難しました。
そしてこの動画の撮影場所は侵攻の開始当初、ロシア軍が子どもを含むおよそ350人の住民を監禁した北部チェルニヒウ州の村にある建物の地下室だとした上で「光や食料、水などもない地下室に閉じ込められた彼らを想像すれば、プーチンのロシアがどのようなものであるか理解できるだろう」と訴えました。
その上で「世界がことばではなく行動によって反プーチン連合でまとまれば、モスクワのナチスを阻止し、新たな悪がヨーロッパ全体、さらには世界中に広がることを防ぐことができる」と述べて各国に結束を呼びかけました。
●プーチン大統領の再任に祝意 中国外交部 5/9
中国外交部の林剣(りん・けん)報道官は8日の記者会見で、ロシアのプーチン大統領が7日の就任式で新たに6年の任期をスタートさせ、今期最初の外遊先に中国を予定しているとの質問に対し、中国はロシアがプーチン大統領の指導の下、国家の建設と経済・社会の発展で絶えず新たな成果を収めると信じていると表明した。
林氏は次のように述べた。中国はプーチン大統領の就任に祝意を表す。習近平(しゅう・きんぺい)主席もすでに大統領の再選に祝電を送り祝意を表している。ロシアがプーチン大統領の指導の下、国家の建設と経済・社会の発展で絶えず新たな成果を収めると信じている。
中ロ関係は習近平主席とプーチン大統領の戦略的指導の下、健全で安定した発展を維持している。双方は常に「同盟せず、対抗せず、第三国を標的にせず」の原則を守り、相互尊重と平等互恵を基礎として両国関係と各分野の協力を発展させ、両国人民に確かな利益をもたらし、世界を共に発展、進歩させるため積極的に役割を果たしている。
今年は中ロ国交樹立75周年に当たる。双方は両国首脳の共通認識をよりどころに、相互信頼を絶えず増進し、協力を広げ、友好を継承し、平等で秩序ある世界の多極化と包摂的、包容的な経済のグローバル化を共に提唱し、推進していく。真の多国間主義を実践し、グローバルガバナンスがより公正で合理的な方向へ発展するよう導いていく。
中国は、2国間関係を戦略的にリードする両国首脳外交の役割を高く重視している。両国首脳は緊密な交流を維持し、中ロ関係を常に順調かつ安定して前向きに発展させることで合意している。
●プーチン氏就任 国の未来奪う長期独裁 5/9
多大な犠牲と苦難を国民に強いておきながら、その根本にある戦争を終わらせる道筋は示さない。そんな無責任な独裁者から、国民の気持ちは早晩離れていくだろう。
ロシアのプーチン大統領が通算5期目となる就任式に臨んだ。2030年までの任期を務めれば、旧ソ連の独裁指導者スターリンに匹敵する超長期政権となる。
就任演説の冒頭で、プーチン氏はウクライナ侵攻参加者に謝意を表明。「共に勝利しよう」と締めくくった。
6年前の就任演説では、生活の向上、幸福、健康を政権の最重要事項と位置づける考えを表明したが、今回、国民に寄り添う姿勢は後退した。
むしろ現状を「困難な節目の時期」と位置づけ、これを乗り越えれば長期的計画が実現できると、根拠も示さずに団結を説く。無謀な戦争遂行を国民に強いた戦前の日本を見るかのようだ。
表面的には、ウクライナでの戦況を立て直し、経済も回復基調にみえる。だが、ひと皮むけば困難が山積みだ。
戦争は政治的、経済的な孤立を招いただけでない。前途ある若者を消耗品扱いして前線に送り込んでいる。母国に見切りをつけて外国に逃れる者も後を絶たない。プーチン氏は「ロシアの未来」を葬ったといえるだろう。
戦争に公然と異を唱える動きは封じられているが、各種の世論調査によれば、多くの国民が軍事作戦の早期終結や対話の開始を望んでいるのが現実だ。
プーチン氏は演説で「西側との対話は拒否しない」と述べてはいる。だが、自らの言い分が通らない話し合いには乗らない姿勢も強調した。実質的に対話を拒否しているのと、なんら変わらない。
真に話し合いを望むのであれば、ウクライナでの占領地拡大にむけた戦闘をいったん中止するのが筋だろう。
つまるところ、国内での統制強化を正当化し、停滞の責任を西側諸国に押しつけるため、戦争継続を必要としている。それが今のプーチン政権の内実ではないか。
就任式に先立ちプーチン氏は、欧州に向けた戦術核の使用を想定した演習実施を指示した。核戦力を誇示して西側のウクライナ支援を牽制(けんせい)するのは、開戦後繰り返されてきた脅しである。核軍縮に責任を負う核保有国として極めて無責任かつ危険な姿勢だ。
権力維持と野心実現のために、世界の安全を犠牲にし、国民の幸福を切り捨てる。そんな政権を待ち受ける運命は衰退か破綻(はたん)しかあり得ないとプーチン氏は悟るべきだ。
●ロシア正教会トップ、プーチン氏へ「終身大統領に」 侵攻支持の姿勢 5/9
ロシア正教会トップのキリル総主教は7日、プーチン大統領の通算5期目の就任式後に、モスクワの大聖堂で礼拝を行い、プーチン氏に対し、「あなたの生涯が終わるときが、政権の終わりになってほしい」と述べ、「終身大統領」になるよう求めた。キリル氏はこれまでもプーチン氏や、ウクライナ侵攻を支持する発言を繰り返してきた。
プーチン氏は就任式後、大統領執務室のあるモスクワ中心部のクレムリン内の大聖堂で、キリル総主教とともに礼拝に参加した。
キリル氏はプーチン大統領に「終身大統領」となるよう要望し、「あなたは、この祖国への長く偉大な奉仕(大統領職)を成功裏に終えるためのすべてを持っている」とたたえた。
●ウクライナ国民がNATOの派兵求める請願書 ロシア「非常に危険な」紛争を警告 5/9
ウクライナ大統領府の請願サイトに、欧米の支援国によるウクライナへの軍隊派遣を求める国民からの請願書が掲載された。請願書は公式のものではなく、北大西洋条約機構(NATO)も派兵の計画はないと表明しているが、ロシア政府は8日、すぐさま反発し、NATOの介入は「非常に危険」な紛争になりかねないと警告した。
請願書はウクライナの一般市民が7日に投稿した。ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領に対して、「ウクライナの領土の一体性を取り戻す」のを支援するため、欧州連合(EU)、英国、北アイルランド、米国に軍隊の派遣を要請するよう求めている。
ゼレンスキーに請願書を検討してもらうには2万5000人分の署名が必要だが、日本時間9日未明時点では二千数百人となっている。請願書の期限は今年8月7日。
ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は8日の記者会見でさっそく反応し、ロシアによる対ウクライナ戦争にNATO軍が直接介入すれば「非常に危険な」結果を招きかねないと警告した。請願書は「言語道断の挑発」だと非難し、引き続き注視する考えも示した。ロシア国営のタス通信が伝えた。
ウクライナ政府は2015年に請願サイトを開設した。2022年2月にロシアの全面侵攻を受け始めてからは、請願書はウクライナ軍人の死後叙勲を求めるものが大半を占めるようになっている。
2万5000人分の署名が集まっても、ゼレンスキーが対応するとは限らない。必要数の署名を集めた請願書2000件近くが「検討中」となっており、それには2019年に投稿されたものも含まれる。
仮にゼレンスキーがNATOに軍隊の派遣を要請したとしても、NATO側は必ずしも応じる必要はない。
マクロンの「派兵におわせ」にも反発
欧州やNATOの首脳は決まってウクライナへの軍隊の派遣を否定してきたが、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は先週公開された英誌エコノミストのインタビューで、ロシア軍がウクライナの前線を突破したりウクライナ側から要請があったりすれば、ウクライナへの派兵を検討する意向を示した。
これに対してロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は8日、「フランス(の部隊)が紛争地帯に現れれば、(ロシア軍の)目標になることは避けられない」と警告した。ロシア国営RIAノーボスチ通信が報じた。
マクロンは2月にも、NATOは「ロシアがこの戦争に勝てないようにする」ために、ウクライナに派兵する選択肢を排除していないと述べていた。派兵に関してNATOで合意はないとも説明した。
ドイツや米国といったNATOの主要加盟国やNATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長はすぐにマクロンの発言を打ち消し、NATOに派兵の「計画はない」と言明した。
●●バイデン氏、イスラエルへの武器供給停止に初言及 ラファ侵攻なら 5/9
バイデン米大統領は8日、イスラエル軍がガザ南部の都市ラファに大規模侵攻した場合、イスラエルへの武器供給を停止すると警告した。バイデン氏が武器供給停止について公に言及したのは初めて。
CNNとのインタビューで「ラファに侵攻すれば、そうした都市に対応するために歴史的に使われてきた武器を供給しないことを明確にした」と述べた。
また、米国がイスラエルに供与した兵器がガザの民間人殺害に使用されていることも認め「ガザではこれらの爆弾や人口密集地を狙う他の方法により市民が殺害されている」との見解を示した。
イスラエルは今週、ラファを攻撃したが、バイデン氏は「人口密集地」を標的にしなかったため本格侵攻とは見なしていないと語った。
イスラエルにとって米国は最大の武器供給国で、昨年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲後に武器供給を加速していた。
バイデン氏は一方で、防空システム「アイアンドーム」などの防衛装備についてはイスラエルへの提供を継続するとし「アイアンドームや中東地域でこのところ発生している攻撃への対応能力という点でイスラエルの安全を今後も確保していくつもりだ」と語った。
ガザ地区の保健省によると、イスラエルの攻撃でこれまでに3万4789人のパレスチナ人が殺害され、その大半は民間人だという。
また、オースティン国防長官はこの日に開かれた上院公聴会で、イスラエルがラファへの本格侵攻を計画していることを踏まえ、イスラエルへの弾薬供給を一部停止したと明らかにした。
●バイデン氏、イスラエルへの武器供与の一部停止を示唆 ラファ侵攻なら 5/9
アメリカのジョー・バイデン大統領は8日放送の米CNNによるインタビューで、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区ラファで大規模な地上作戦を開始した場合、同国への武器供与の一部を停止すると警告した。
バイデン氏はインタビューで、「もしイスラエルがラファに侵攻すれば、ラファへの対応で過去にに使用されてきた武器の供給はしない」、「私たちは武器や砲弾を提供するつもりはない」などと発言。
同時に、「イスラエルの安全を確保し続ける」とも述べた。
アメリカは、イスラエルによる大規模なラファ侵攻に強く反対している。しかしイスラエルは、これを実行する構えを見せている。
ガザ最南部の都市ラファは、イスラム組織ハマスの最後の主要拠点とされる。ガザ各地からの避難者で人口が膨れ上がっており、米当局はイスラエルがラファで作戦を実施すれば、多数の民間人犠牲者が出ると警告している。
一線は「まだ」超えていない
バイデン氏はCNNのインタビューで、ラファの現状について、イスラエルが地上作戦を開始したとはみていないとし、次のように述べた。
「(イスラエル軍は)人口密集地には入っていない。境界上での行動だ」
「だが実際に人口密集地に入れば、私たちの支持は得られないと、(イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と)戦争内閣にはっきり伝えた」
バイデン氏はまた、イスラエルによるガザ住民の殺害にアメリカの武器が使われてきたと認めた。
イスラエルについて「一線」を越えたと思うかと問われると、「まだだ」と答えた。
バイデン氏の今回の発言は、ラファへの地上侵攻に関するこれまでの同氏の警告で最も強い。イスラエルへの武器輸出の停止に言及したのは初めて。
アメリカはすでに、イスラエルへの数千発の爆弾の輸送を延期している。今後の提供についても見直すとしている。
イスラエルはこの動きに失望を示した。同国軍は、両国の意見の相違は「非公開の場で」解決されるとしている。
アメリカが現在、輸送を止めている武器は、将来の供与分。そのため、イスラエルが直ちに影響を受ける可能性は低い。それでも、イスラエルの空爆のペースを考えれば、近いうちに同国の攻撃に影響が出るとみられる。
ガザでは民間人の死者が増え続け、人道状況も悪化している。そうしたなかバイデン氏に対しては、イスラエル軍の作戦を抑制するよう、与党・民主党や国民の一部から圧力が高まっている。
ラファで戦闘
イスラエル軍は8日、ラファ東部で「正確な」対テロ作戦を実施し、ハマス戦闘員らを殺害したと発表した。ハマスも同日、戦闘があったと明らかにした。
ラファ周辺では戦闘と爆撃が続いている。
こうしたなかイスラエルは同日、ケレム・シャローム検問所を、支援物資搬入のため再開したと発表した。同検問所はガザ住民の支援にとって重要なルートの一部だが、5日にロケット攻撃があって以降、閉鎖されていた。
イスラエル軍は同検問所にトラックが到着したと発表した。だが国連機関は、同検問所からガザへはまだ物資が運び込まれていないとした。
ガザ南部の主要検問所としては他にラファ検問所があるが、イスラエル軍は7日、これを掌握したと発表した。
一方、停戦と人質解放をめぐる交渉は、エジプト・カイロで再開された。仲介国の一つ、アメリカは、ハマスの修正案が突破口になるとの見方を示した。
昨年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲では、約1200人が殺害され、252人が人質となった。イスラエルは直後にガザへの報復攻撃を開始した。
ハマスが運営するガザ保健当局は、ガザでこれまでに3万4780人以上が殺されたとしている。
同11月には1週間の停戦が実現し、この間にイスラエルの刑務所にいたパレスチナ人囚人約240人と引き換えに、ハマスの人質となっていた105人が解放された。
イスラエルによると、ガザでは依然128人の人質の行方がわかっておらず、そのうち少なくとも36人は死亡したと推定されている。
●トルコ4月CPI、前年比69.8%上昇に加速―前月比も3.18%上昇に加速 5/9
トルコ統計局が先週末(3日)発表した4月CPI(消費者物価指数、03年=100)は前年比69.8%上昇と、前月(3月)の同68.5%上昇を上回り、6カ月連続で伸びが加速、22年11月(84.39%上昇)以来、約1年5カ月ぶりの高い伸びとなった。ただ、市場予想(70.33%上昇)をやや下回った。
同国のインフレ率はウクライナ戦争の勃発(22年2月24日)と、それに伴う西側の対ロ経済制裁により、エネルギー価格の高騰と、中銀の利下げに伴う通貨トルコリラの急落が加わり、21年6月(前年比17.53%上昇)から22年10月(同85.51%上昇)まで17カ月連続で急加速した。翌11月(同84.39%上昇)から23年6月まで減速したが、最近は再加速傾向にある。23年7ー9月は加速、10月は減速したものの、11月以降、6カ月連続で加速している。
前月比(全体指数)は3.18%上昇と、前月(3月)の3.16%上昇を上回り、3カ月ぶりに伸びが加速、2月(4.53%上昇)以来、2カ月ぶりの高い伸びとなった。ただ、23年10月以降はホテル・カフェの新年価格改定や最低賃金の引き上げに伴う1月の6.70%上昇や2月の4.53%上昇を除けば、3%台前半で推移しており、23年7月の9.49%上昇をピークに低下傾向にある。
メフメト・シムシェク財務相は4月インフレ統計の結果について、「前月比の伸びは予想通りだった。年間インフレ率は5月にピークに達したあと、我々の予測通り急激に低下し始めるだろう。従って、インフレとの戦いはやがて終わり、ディスインフレのプロセス(インフレの低下基調)に入る」と楽観的に見ている。市場では過去の利上げサイクル(23年6月から24年3月まで計36.5ポイント利上げ)のインフレ抑制効果により、インフレ率は24年末までに43.5%上昇に低下すると予想しており、中銀に対する金融引き締め圧力は続くと見ている。
セクター別(前月比)のインフレ率は、酒・たばこが9.56%上昇(前月は0.02%低下)と、最も高い伸びとなった。次いで、ホテル・カフェ・レストランが4.69%上昇(同3.95%上昇)、アパレル・靴は4.58%上昇(同2.64%上昇)、家具・生活用品は4.11%上昇(同3.23%上昇)、どのカテゴリーにも入らないその他商品・サービスは3.52%上昇(同3.24%上昇)と、いずれも全体の伸び(3.18%上昇)を上回った。
このほか、通信は3.18%上昇(同5.65%上昇)、教育は2.97%上昇(同13.08%上昇)、運輸は2.81%上昇(同1.73%上昇)、食品・生鮮飲料水は2.78%上昇(同3.4%上昇)、レクリエーション・文化は2.62%上昇(同3.74%上昇)、天然ガス料金を含む住宅(光熱費や修理費)は1.38%上昇(同3.42%上昇)。対照的に、最も低い伸びとなったのはヘルス(薬局・美容)の1.03%上昇(同1.42%上昇)だった。
他方、セクター別の前年比(全体指数)は、教育が103.86%上昇(前月は104.07%上昇)と、最も高い伸びとなった。次いで、ホテル・カフェ・レストランが95.82%上昇(同94.97%上昇)、運輸は80.39%上昇(同79.92%上昇)、酒・たばこは78.53%上昇(同62.98%上昇)、ヘルスは77.67%上昇(同80.25%上昇)と、いずれも全体の伸び(69.8%上昇)を上回った。
このほか、食品・生鮮飲料水は68.50%上昇(同70.41%上昇)、家具・生活用品が67.88%上昇(同63.72%上昇)、レクリエーション・文化は66.99%上昇(同66.85%上昇)、その他商品・サービスは66.12%上昇(同62.74%上昇)、住宅は55.55%上昇(同51.17%上昇)、通信は55.40%上昇(同59.54%上昇)。対照的に、アパレル・靴が51.20%上昇(同50.10%上昇)と、最も低い伸びとなった。
中銀はインフレ率が5月に前年比73−75%上昇でピークに達すると予想している。2月8日に発表した最新の四半期インフレ報告書では、24年末時点のインフレ見通し(中心値)を36%上昇、25年末時点の見通しを14%と予想している。ちなみに23年は64.8%上昇だった。
●ロシアがフランスに警告 「ウクライナに入ればロシア軍の標的に」 5/9
ロシア外務省のザハロワ報道官が8日(現地時間)、「フランス人が紛争地域に現れれば、ロシア軍の標的になることが避けられないだろう」と警告した。
ザハロワ報道官はこの日の記者会見で、マクロン仏大統領が最近エコノミストのインタビューでウクライナ派兵の可能性を排除しないと述べたことを批判し、このように明らかにした。
ロシアと西側の対立を緩和する方法に関する質問に対しては、欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)に言及しながら「西側がウクライナへの軍事支援を中断すればすべてが2週間以内に終わるだろう」と述べた。
ボレル氏が最近の講演で「西側国家の軍事支援がなければウクライナは2週間以内に屈服するだろう」と話したということだ。
またザハロワ報道官は、ロシアとウクライナが共に参加する平和会議に関する中国の習近平国家主席のアイデアにロシアが関心を持っていると明らかにした。ロシアは西側の制裁に加わるスイスが来月開催するウクライナ平和会議には出席しない予定だ。
前日のプーチン大統領の就任式に西側国家の多くの大使が出席しなかったことに関しては「公式行事に出席し、連絡を交わして意思疎通をするという基本機能を遂行しなければ、彼ら(西側大使)はロシアで何をするのか疑問だ」と指摘した。
そして「今後ロシアに派遣される西側国家の大使らがロシア大統領に信任状を提出する時も、クレムリン(大統領府)を訪れず新しい儀式を作り出すかもしれない」と皮肉った。
ガザ地区戦争については「これまで平和協定の見通しはない」とし、イスラエルのラファ作戦で葛藤が深まっていると評価した。
●ロシア、ウクライナに大規模空爆 発電施設で被害 5/9
ロシア軍は7日から8日未明にかけて、ウクライナ各地のエネルギーインフラに大規模な攻撃を仕掛けた。ここ数週間で最大の空爆で、3人が負傷したほか、発電や送電の施設に被害が出ているという。
ウクライナ空軍のオレシチュク司令官は、ロシア軍がミサイル55発とドローン(無人機)21機で攻撃したと明らかにした。そのうち59のミサイルとドローンを撃墜したとしたいう。
ハルシチェンコ・エネルギー相は、中部のポルタワ、キロボフラード、ビンニツァ、南部ザポリージャ、西部のリビウ、イワノフランキフスクの各州の発電・送電施設が標的となったとSNS「テレグラム」で明らかにした。
ハルシチェンコ氏は「敵はわれわれから発電・送電能力を奪おうとしている」などと指摘し、国民に節電を呼びかけた。
当局によると、キーウ州で2人、キロボフラード州で8歳の子どもが負傷した。
ウクライナ軍が特に東部の主要な前線で劣勢に立たされている中、ロシアはここ1カ月、ウクライナのエネルギーシステムを麻痺(まひ)させようと攻撃を強めている。ロシアは先月もキーウ州最大の発電所を攻撃した。
ウクライナ軍の劣勢は米国からの軍事支援が途絶えて武器不足に陥ったことによるところが大きく、ロシア軍は昨年12月からウクライナ東部で前進している。米国は先月、ウクライナ支援法が成立したことを受けて軍事支援を再開した。
●習近平氏、ハンガリーを訪問 欧州切り崩しへ親中オルバン政権と関係強化 5/9
欧州を歴訪している中国の習近平国家主席は8日、欧州随一の親中・親露国家であるハンガリーの首都ブダペストに到着した。9日にオルバン首相と会談する見通し。習氏は、今回の歴訪で訪れたハンガリーとセルビアを中国の巨大経済圏構想「一帯一路」における欧州の2大拠点と位置づけ、貿易分野などでの中国の攻勢への警戒を強める欧州諸国の切り崩しに向けた突破口に仕立てる構えだ。
ハンガリーからの報道によると、習氏は今回の歴訪での最終訪問国である同国に10日まで滞在する間、一帯一路構想の一環として少なくとも16のインフラ整備や貿易・投資などの計画に関してハンガリーと合意文書を交わす。
また、報道によれば、習氏はユネスコの世界遺産に登録された初期キリスト教墓所がある南部ペーチの近郊を訪れ、中国長城汽車の電気自動車(EV)製造工場の建設を発表するとみられている。
習氏とオルバン氏との会談では、ロシアに侵略されたウクライナをめぐる対応も主要議題となる。
ハンガリーは外交分野でも中露への接近姿勢が際立って強い。オルバン氏は会談で、中国が昨年発表したウクライナ戦争の終結に向けた12項目の和平提案への支持を表明する。
中国の和平提案を巡ってはロシアが歓迎の意向を示す一方、米国は内容が侵略を正当化するロシアの言い分に寄り過ぎているとして拒否を表明している。
●習近平主席がヨーロッパ3国を訪問〜東欧に映るウクライナ戦争への思惑 5/9
中国の習近平主席がヨーロッパを訪問している。新型コロナウイルス禍の前以来、実に5年ぶりとなった習主席の欧州歴訪は、フランスと東欧のセルビア、ハンガリー。なぜこの3国だったのか? 東アジア情勢に詳しい、飯田和郎・元RKB解説委員長が5月9日に出演したRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で解説した。
西側諸国で中国とは特別な関係のフランス
習主席は5月10日までフランス、それにセルビア、ハンガリーを回っている。5年ぶりの欧州訪問ということもあり、練りに練った外遊に感じる。なぜ、この3つの国なのかを考えたい。先週のこのコーナーで「中国は節目を大切にする」と話した。今回の訪問先選びにも、それが生きている。
フランスは、伝統的に独自の外交を展開してきた。フランスと中国は今年、国交樹立60周年。中国とアメリカの国交正常化は今年45年、日本とは今年52年。日米が台湾にある中華民国を承認していた時代から、フランスは台湾ではなく、現在の中国を承認していた。西側といわれる国の中で、中国と最初に国交を結んだ国がフランスだ。
フランスはアメリカとは協調しつつも、一方で一線を画す。また「大国同士の外交」という意味では、フランスも中国も共に、国連安保理の常任理事国に名を連ねている。中国はアメリカとの難しい関係を視野に入れながら、フランスを選んだということだ。
中国経済とも関係が深いセルビア
フランスには今月、岸田首相も訪れている。岸田首相とマクロン大統領の首脳会談が現地時間の2日、習近平主席との首脳会談が直後の6日。岸田首相はその後、大西洋を越えてブラジル、パラグアイへ渡ったが、習主席はフランスの次に、セルビアを訪問している。
セルビア、ハンガリーは共に、中国と良好な関係を築いている。どちらも、中国が提唱する広域経済圏構想「一帯一路」に加わり、ヨーロッパにおいて「一帯一路」のキーになる国だ。
セルビアに、スメデレヴォという都市がある。ここには100年以上の歴史を持つ製鉄所があるが、この製鉄所は国際競争力が弱く、近年、倒産の危機にあった。それが、今から8年前、中国の国営企業が多額の投資をし、また技術支援によって立ち直った。現在はこの中国企業の傘下にある。これは「一帯一路」プロジェクトの一環だ。投資も中国政府の指示によるものだろう。ハンガリー国内を走る高速道路の建設も、中国企業が請け負った。これはヨーロッパでは最初のケースだった。
ハンガリーはヨーロッパ戦略の「入り口」
習近平主席の最後の訪問国はハンガリー。ここも中国との関係が緊密だ。ハンガリーもほかの東欧諸国同様、旧ソ連の衛星国から生まれ変わり、自由という価値観を取り戻した国だが、現在の指導者、オルバン首相は長期政権を続けるともに、強権的な手法を隠さない。ある意味、習近平氏と似た指導者といえる。
やはり、ハンガリーでも「一帯一路」プロジェクトが進み、中央ヨーロッパ、東ヨーロッパにおいて、中国企業が最も投資している国がこのハンガリーだ。中国のヨーロッパ戦略の「入り口」という表現をしてもよい。
この3か国の中で、習近平主席の訪問先として、メディアのもっとも注目度が高いのはフランスのように思える。マクロン大統領との首脳会談、それにEU(欧州連合)のフォンデアライエン欧州委員長を交えての三者会談の報道が目についた。そんな中で、私はフランスではなく、セルビア、ハンガリーへの訪問が気になった。
セルビアの人口は680万人。ハンガリーの人口は960万人。フランスに比べて、国力は圧倒的に小さな国だが、なぜ、この二つの国へ習主席は行ったのか。経済関係も大切だが、一方で、ウクライナとロシアの戦争の影がくっきり浮かび上がる。
セルビアの惨事から25年の節目
まずセルビアについて話したい。バルカン半島に、かつてユーゴスラビアという国が存在した。セルビアを含む連邦体としてユーゴは構成されていたが、解体された。民族、宗教が異なり、モザイク国家と呼ばれたユーゴスラビアが解体された原因こそ、この民族、宗教紛争だった。
現在のセルビアの形になったのは2006年。首都はユーゴ時代からベオグラードだ。ユーゴ紛争当時の1999年、NATO(北大西洋条約機構)の主力であるアメリカの戦闘機がベオグラードにあった中国大使館を誤って爆撃するという事件が起きた。建物は破壊され、中にいた中国の国営通信社の記者3人が犠牲になっている。
大使館の敷地の中の主権は中国だ。誤った爆撃だったとしても、中国からしたら、重大な主権侵害にあたる。
当時、私は新聞社の北京特派員だった。仕事場から近い、北京のアメリカ大使館には連日、大勢のデモ隊が押しかけ、大使館に向かって投石が続いたのを取材した。当局が主導する官製デモだが、参加者の目は真から怒りに燃えていたのを、記憶している。北京だけではなく、中国各地のアメリカの領事館、また世界各地にアメリカ大使館へ中国系住民がデモを繰り返した。
冒頭「中国共産党は節目を大切にする」と紹介したが、このベオグラードの中国大使館誤爆事件が起きたのが1999年5月7日。つまり、事件からちょうど25年が経つ節目の今年5月7日に、習近平氏はフランスからベオグラードに入った。
周到に準備をしたのだろう。中国側が希望し、中国と良好な関係を維持するセルビア側もお膳立てしたはずだ。このことから気になるのが、中国のウクライナ危機へのスタンスだ。今から2年前の5月6日、ベオグラードの中国大使館誤爆事件の「あの日」がまた巡ってきたタイミングで、中国外務省のスポークスマンは、こう言っている。
「中国人民は1999年5月9日を永遠に忘れない。NATOによるこの野蛮な暴挙を永遠に忘れない」
「中華民族が受けた屈辱を、心に刻み続ける」という宣言だ。この発言のあと、このスポークスマンは続けてこう述べている。
「NATOは、主権国家に対して戦争を仕掛け、平和を損ない、多くの無辜の市民を死に至らしめてきた。そして、冷戦終結以降、5回も東へ東へと拡大をした。これは、ヨーロッパをより安全にするどころか、ロシアとウクライナの紛争の種を蒔き、ヨーロッパ大陸における新たな戦争につながっている」
中国外務省はユーゴでの紛争とウクライナ危機を重ね合わせている。この発言は、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって2か月あまり経過したころだ。つまり、「アメリカを中心としたNATOという組織が膨らみ、ユーゴ紛争、ひいてはウクライナ戦争に至った」という論理だ。
もちろん、ウクライナで起きている戦争について、中国は現在も、ロシアと同一歩調を取っているわけではない。だが、ウクライナ侵攻を、NATOのせいにする、というのはロシアのプーチン大統領と同じだ。ウクライナ戦争を機に、アメリカ、そしてアメリカが主導するNATOを非難する材料にしている。
中国と似通った立場にあるNATO加盟国
そのセルビアはNATOには加盟していない。一方で、習近平主席のその次の訪問先、ハンガリーはNATOに加盟している。
「中国が大切にする節目」の話に戻れば、ハンガリーと中国は今年、国交樹立75周年。今年は共産党による中華人民共和国誕生75周年。つまり、ハンガリーは現在の中国が生まれると即座に、国交を樹立した「古くからの友人」であるわけだ。ハンガリーには、世界最大の電気自動車(EV)メーカーBYD(比亜迪)など中国企業が多数、進出している。
ウクライナとの関係でいえば、ハンガリーはウクライナと国境を接している。国境に近いウクライナ西部には、ハンガリー語を日常的に話すハンガリー系の住民が多数住んでいる。ハンガリーのオルバン首相の専制的な手法を支えているのが、民族主義だ。ウクライナ西部のハンガリー系住民に自治権を持たせるよう主張してきた。それは現在のウクライナ政権の考えと対立する。オルバン首相はウクライナ危機を利用しながら、民族意識の高揚、自らの求心力を高まることを目指しているように見える。
なにより、ハンガリーはNATO加盟国でありながら、NATOがウクライナへ武器を提供することに反対している。述べてきたように、NATO、それにウクライナというテーマにおいて、ハンガリーは中国とある意味、似通った立場にあると言ってもいいかもしれない。
セルビアにしてもハンガリーにしても、中国は歴史的な結びつき、経済的な結びつきが強い。それをテコに、2国間の関係にとどまらず、ヨーロッパへの浸透を図る。そして、そこにはウクライナ紛争へのスタンス、そしてロシアやNATOへのスタンスも、中国は計算に入れている。
中国は、アメリカとの関係が順調にいくとは考えていない。ロシアとは同床異夢だが、習近平主席がいま、ヨーロッパで行っている外遊は、結果として、ロシアを利すことになり、アメリカを揺さぶることになっているのではないか。私にはそうみえる。
●中国の習近平国家主席がセルビアで公式レセプションを受ける 5/9
赤旗はベオグラードのニコラ・テスラ空港から始まり、高速道路に沿ってセルビアの首都の中心部まで伸びた。
これはセルビアが中国との「厳しい友情」に誇りを示し、習近平のベオグラード訪問を歓迎する方法だ。
ジンクス タワーとして知られる市の西門には、塔全体が中国の国色で覆われています。
そして念のため、昨年セルビア西部のヴァリエボに冷蔵庫工場を開設した中国の家電メーカー、ハイセンスの看板もある。
欧州の一部地域では、中国国家主席の旅程が眉をひそめたかもしれない。 結局のところ、セルビアがこれほどの国際的指導者による3か所の訪問ツアーに参加することはめったにない。
しかしセルビアは近年、欧州連合(EU)加盟交渉を続ける中、中国との関係を深めている。
習氏は今回の訪問を利用してNATOへの批判を強調する可能性が高い。 彼の訪問は、ベオグラードの中国大使館に対する米国の空爆から25周年と一致する。 セルビアの新聞ポリティカの社説で大統領は、この事件に対する感情は依然として高揚していると説明した。
「私たちは決して忘れてはなりません」と彼は書いた。 「中国国民は平和を大切にしていますが、このような悲劇的な歴史を繰り返すことは決して許しません。」
この種のレトリックは、大多数の国民がNATO加盟に反対しているセルビアで反響を呼んでいる。 これが、習近平の欧州歴訪の今回の停止を非常に合理的なものにする主な要因である。
ビジネス上の連絡先も要因です。 両国は昨年、習近平が旧セルビアを訪問した2016年の「包括的戦略的パートナーシップ」に基づいて自由貿易協定に署名した。
中国は現在、セルビアへの海外直接投資の最大の供給源であると主張している。 同社の大使であるリー・ミン氏は、ハイセンスは鉱山会社紫金およびタイヤ製造会社リンロンとともに、2万人の雇用を創出していると述べた。
実際、国連の貿易統計では、中国はドイツ、イタリア、米国、ロシアに次いで海外直接投資のリストで第5位となっている。
しかし、中国からの投資は目覚ましいものであり、今後も増加する可能性があります。 セルビアは初めて中国の高速電車を導入したばかりだ。 最終的には、中国の専門知識と資金提供によって再建中のベオグラード・ブダペスト鉄道でスイス製の車両と併走することになる。
そしてこれはほんの始まりにすぎません。 セルビアのゴラン・ベシッチ・インフラ大臣は、中国のパートナーが道路、橋、トンネル、衛生設備など他のインフラにも取り組むと述べた。 同氏はセルビア国営ラジオRTSに対し、「中国企業との協力の余地は確かに大きい」と語った。
セルビアのアレクサンダー・ヴチッチ大統領が、習主席を讃える晩餐会で中国の大統領に自国最高のワインを振る舞おうと計画しているのも不思議ではない。
ヴチッチ氏は、5年以内に中国でセルビアワインに輸入関税が課されなくなることに触れ、セルビアワインは「以前ほど高価ではなくなった」と中国中央テレビに語った。 [those] フランスでは」と述べ、習氏が自分の選択を「気に入ってくれる」と信じていると語った。
これは習近平の欧州歴訪の第一行目に接待したエマニュエル・マクロンに対する穏やかな批判だったのかもしれない。 フランス大統領の献上品はレミーマルタン・ルイ13世のコニャック1本で、ベオグラードでは5,000ユーロ相当の値段がする。
ピレネー山脈への訪問も魅力攻勢に含まれていたが、これは習主席に対するマクロン大統領と欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長の嘆願を和らげ、欧州とのより均衡のとれた貿易を確保し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領にウクライナ戦争終結への影響を与えるためだった。
ベオグラードの次の中国大統領の次の目的地はブダペストで、そこで欧州連合加盟国の指導者の中で最も強力な同盟者であるハンガリーのヴィクトール・オルバン首相と会談する予定だ。
そこには中国からの投資も強力な要因となっており、移民からウクライナへの武器供給に至るまで、EUの合意に対するオルバン首相の抵抗を支えるプロジェクトの中に電気自動車大手BYDの工場も含まれている。
●影響力低下するモスクワ教会 5/9
旧ソ連圏で離脱の動き ウクライナ戦争支持に反発
「プーチン大統領が2022年4月にウクライナ侵攻を始めてから、モスクワ総主教庁ロシア正教会(ROC MP)ほど影響力を失ったロシアの組織はない」と米国のロシア専門家(元ベーカー米国務長官特別顧問)ポール・ゴーブル氏は説く。
米シンクタンク「ジェームズタウン財団(JTF)発行の「ユーラシア・デーリー・モニター(EDM)」は3月28日、「モスクワ教会はロシアを含む旧ソ連圏全域で地盤を失いつつある」とのゴーブル氏の解説を配信した。
ゴーブル氏はさらに、「このような自ら招いた損失は、ウクライナやバルト諸国、さらにはロシア自身を含むソ連崩壊後の他の地域におけるモスクワ教会の地位を崩壊させつつある。こうした動向は、キリル総主教の権力と影響力を低下させ、ROC MPがロシア国内で団結を保ち、自らの組織的終焉(しゅうえん)を防ぐことができるだろうかという問題を提起している」と指摘する。旧ソ連構成国でキリル総主教のウクライナ戦争支持に対する反発も強まっており、アゼルバイジャンやモルドバでは、モスクワ教会主導のロシア教会から離脱の動きがあるという。
独自の道歩む信者増加
ROC MPは東方正教会最大の教会であり、ソ連崩壊後のほとんどの地域を正統な教区と見なしながら、他の地域への拡大を目指している。それにもかかわらず、ソ連崩壊後、教会の影響力はロシア連邦以外では、低下しているというのが事実のようだ。コンスタンチノープル総主教庁が18年にウクライナに独立自治を付与し、ウクライナがモスクワ教会の司祭を追放したことは、恐らくこの傾向の象徴的な側面であろう。
しかし、それだけではない。ロシアそのものを含め、旧ソ連圏全体で、ROC MPの権威を拒否し、独自の道を歩もうとする信者が増えているという。このプロセスは、プーチン大統領が22年2月24日にウクライナ侵攻を開始した後に加速し、今年の4月には前例のないレベルまで上昇したといわれる。
ROC MPを率いるキリル総主教は、ある場所での教会の行動が他の場所にも影響を及ぼすことを、十分に認識している。同総主教は一度に、ある一つの問題に取り組むことで、自らの地位と教会を守ることができると期待しているのだ。最近まで、ROC MPは伝統的に複数の課題に同時に対処することを避けてきた。ロシアの対ウクライナ戦争が3年目を迎えた今、事態は急速に動いており、モスクワ教会とその指導者にはもはや、その余裕はない。
4月初めに開かれたROC MPの教会会議では、ウクライナ、モルドバ、アゼルバイジャンの三つの旧ソ連共和国におけるロシア正教会の地位に関する問題が一挙に取り上げられた。ジョージアから分離独立したアブハジア自治共和国における正教会の地位に関する問題が沸騰している中で、ROC MPが招集されたのである。これら3カ国におけるモスクワ教会の動きは、その影響力の衰えを反映したと言えよう。
ウクライナの場合、ROC MPは、ウクライナが自民族教会を支援し、同国内のモスクワ教会支部に反対する動きを非難した。また、占領地の正教会小教区を自国に従属させようとする現在進行中の取り組みを歓迎した。
司教空席で問題が悪化
イスラム教徒の多いアゼルバイジャンでは、正教徒は少数派であり、モスクワ教会は、ロシア人信者を司教に昇格させることができなかった。また、アゼルバイジャン正教徒の信者の多くが、自分たちの共同体に近いという理由で好んでいた人物も任命されなかった。
その結果、ROC MPはバクーのポストを空席にし、誰も満足させることなく、この問題が悪化し続けることを確実にした。これらの動きは全て、ロシア連邦内を含む地域全体の正教会信者を激怒させている。「プーチンの戦争」を支持するモスクワ教会の姿勢は、こうした感情をさらに燃え上がらせているという。旧ソ連諸国内での正教会の動きから当分、目を離せないようだ。
●武器弾薬が届くまでの隙をついたロシア軍の猛攻、ウクライナ地上軍に危機迫る 5/9
1.ウクライナ軍の防御に突破口形成の危機
戦闘様相を局地的に見ると、東部戦線のウクライナ地上軍のいくつかの防御陣地で、突破口が形成されそうな危機が迫っている。
というのも、十分な弾薬や必要な武器が前線に到着しない間、ロシアは戦勝記念日までに何としても戦果を挙げたいからだ。
2.両軍の地上作戦全般と東部戦線の概観
両地上軍の攻防全般と東部戦線の攻防の実態はどうなのか。 
ウクライナ軍の反転攻勢が止まり、ロシア地上軍はウクライナ軍と対峙する中で、北部から西部にわたる全線において攻撃を行っている。
米国の戦争研究所(ISW)が作成した「Russia's Invasion of Ukraine」の地図のロシア軍占拠地域の変化を概観すると、大きな変化はないように見える(図1参照)。
その戦闘様相の強度と要領によって区分すると、
A:戦力を集中して突破を目指して攻撃する地域(主攻撃)、
B:その地にもともと配分された戦力で攻撃し、できれば地域を獲得する狙いで攻撃する地域(助攻撃)、
C:少ない戦力でウクライナ軍の防御部隊を引き付け転用させない地域(助攻撃)、
D:威力偵察または渡河作戦を妨害する地域の4つがある。
   図1 ウクライナの領土とロシアの占拠地域の変化
その中でも、ウクライナにとって厳しい局面にあるのは、ロシア軍が戦力を集中して突破を目指して攻撃する東部戦線の戦闘である。
特に北から、
1東部戦線の東部バフムトのチャシウ・ヤール、
2東部ドネツク方面北側のアウディウカからオチャレティネ、
3ドネツク方面南側のマリンカからパラスゴィウカの地域である。
ロシア軍はこの地域に最も多くの戦力を集中し、次から次へ戦力を投入し、絶え間ない攻撃を実施している。
この地域では、戦闘行動としてどのような戦いが行われているのか、 また戦況推移の状況はどうなのか、そしてウクライナ軍はどのような思いで戦っているのかを考察する。
3.アウディウカからオチャレティネへの攻勢
前述の1〜3の地域の中で、ロシア軍が最も戦力を集中して戦い、ウクライナ軍が苦戦し防御陣地に突破口が形成されようとしているのは、アウディウカからオチャレティネへの攻撃である。
この地の戦闘が今、最も注目されている。
アウディウカ要塞の戦いからオチャレティネ付近までの攻撃要領と時期的段階から、以下の概ね4つの段階に区分して説明する。
1アウディウカ要塞に楔を入れた段階(10月上旬〜1月下旬までの4か月間)
2ウクライナ軍の後退行動とロシア軍の追撃段階(2月上旬〜下旬までの1か月間)
3ウクライナ軍の新たな陣地への突破攻撃(3月上旬〜下旬までの1か月間)
4新たな陣地への突破口形成と陣内戦闘(4月以降)
   図2 ロシア軍、アウディウカからオチャレティネへの攻撃前進
4.アウディウカからの攻勢、4段階の戦闘
この間の戦いでは、ロシア軍がこの地域に戦力を集中して次から次に戦力を投入し、航空支援も増加させた。
一方、ウクライナ軍は弾薬や武器が最も不足していた時期であり、これまで最も困難な戦いを強いられてきた。
細部については、以下のとおりである。
   (1)アウディウカ要塞に楔を入れた段階(図21)
ウクライナ軍が守るアウディウカ要塞に対して、ロシア軍は東部・西部・南部の3方向から攻撃した。
そして、3方向に楔を打ち込んだ。突破口を形成した。1の破線に至るまでに4か月を要した。
この段階は、ロシア軍の無謀な歩兵戦力投入とウクライナ軍の要塞死守により、ロシア軍の損害が最も多い時期でもあった。
   (2)ウクライナ軍の後退行動とロシア軍の追撃段階(図22)
突破口を形成された結果、ウクライナ軍は退路を遮断される脅威を感じたために、この地から計画的・自主的な後退行動を行った。
離脱から後退行動というのは本来、地上作戦の中では極めて困難な作戦であり、混乱するものである。
離脱が見破られた場合には、包囲殲滅される場合もあるからだ。
ウクライナ軍の一部は離脱が遅れ、捕獲された兵士もいたという情報があったが、戦争研究所の両軍の行動の流れを見れば、主力は秩序だって後退することができたと考えられる。
本来、撤退については発表しないものだ。
ウクライナ軍総司令官が2月17日、「包囲を避け、兵士の命を守るため部隊を撤退させる」と発表した時には撤退がほぼ完了していたと思われる。
とはいえ、ウクライナ軍が後退行動を行ったために、多くの領土を奪取されたことは事実である。
   (3)ウクライナ軍の新たな陣地への突破攻撃(図23)
ロシア軍は、ウクライナ軍の新たな陣地に対して攻撃を続行した。
この段階の戦いは概ね1か月間で、ロシア軍はこの新陣地の一部に楔を打ち込んだ。
これは、ウクライナ軍が弾薬や武器が足りなくなっていた段階で、ロシア軍が絶え間ない攻撃を行った結果によるものだ。
この陣地のオチャレティネ方向で、突破口を形成されてしまった。他の方向もロシア軍の強い圧迫を受けている。
ウクライナ軍がこの陣地線でロシア軍の攻撃前進を止められなかったことは、この地域の防御の瓦解に結び付く可能性がある。
   (4)ウクライナ軍の新たな陣地への突破口形成と陣内戦闘(図24)
ウクライナ軍の前線部隊には、米国が4月24日に決定した緊急支援がまだ届いていないようだ。
ウクライナ軍にとっては、必要とする弾薬・武器が不足する中での戦いである。ロシア軍は、このチャンスを逃すことなく猛攻撃を仕掛けている。
そして現在、オチャレティネ方向に戦力を次から次へと投入し、楔を打ち込むように攻撃している。
この地で、ウクライナ軍は新たな陣地の第1線防御陣地の一部が破られ、その内部の縦深陣地で戦っている。通常、陣内戦と呼ばれるものだ。
ロシア軍歩兵が死傷した兵士を乗り越えて次から次に攻撃することによって、ウクライナ軍は陣内に浸透され逐次後退を余儀なくされている。
現状でも、ウクライナ軍はロシア軍の攻撃前進を止められてはいない。
ウクライナ軍は、この陣地内でロシア軍の前進を止められなければ、5〜10キロ離れた次の陣地での防御になる。
そうなれば、東部戦線での防御を大幅に見直さなければならなくなる。
5.ウクライナが苦戦を強いられている理由
ウクライナ軍が苦しい戦いを強いられ、一部の地域では後退を余儀なくされているのには理由がある。
   (1)弾薬・武器不足で、突入するロシア歩兵を止められない
ウクライナ軍は、アウディウカからオチャレティネ正面のほかに、10月以降、東部バフムトでは約5キロ、マリンカでは約2〜3キロ攻撃前進された。
他の戦線では、ロシア軍が攻撃しているが戦線に大きな動きはない。
ウクライナ軍には補充されているものもあるようだが、3つの地域でのロシア軍の攻撃を止められるほど、十分な弾薬と武器が届いていていない。
ロシア軍は、歩兵に損害が増えようとも次から次へと歩兵を送り込んで、ウクライナ軍陣地へ浸透攻撃をさせてきた。
このため、歩兵の損失も著しく増加した。
特に、アウディウカ要塞を攻撃している間は、攻撃しても前進できずに多くの損失を出した。グラフ1に示すように、2023年10月から、ロシア軍兵員の損失は急増した。
ウクライナ軍に必要な弾薬が十分にあれば、ロシア軍が無謀な攻撃を実施した場合、グラフ1のAの曲線(破線)のようになると予想した。
この時、ウクライナ軍は保有する弾薬が不足し始めたが、ロシア軍歩兵を倒すのに最小限の量はあったようだ。
だが、ウクライナ軍が後退せざるを得なくなりつつあった1月から、Bの曲線になったのだ。
ロシア軍が「肉挽き器攻撃」と称される無謀な攻撃を重ねてきても、損失は増加せずに、減少した。
このような経過でウクライナ軍の弾薬が不足してきた結果、ロシア軍歩兵に損害を与えられず、浸透を許してしまったのである。
   グラフ1 ロシア軍兵の損失の推移
   (2)増加するロシア空軍爆撃に対して、やられっぱなし
ロシア軍戦闘機等による爆撃回数は、2023年5月から増加した。
その後、アウディウカ要塞攻撃開始から一時減少傾向にあったが、その後、著しく増加している。
ウクライナ軍は、ロシア空軍戦闘機や攻撃機がウクライナ軍陣地に対地攻撃を実施しても、ほとんど対応できなかった。
滑空爆弾を投下する「Su-30・34・35」戦闘機に対しては、パトリオットミサイルを一時的に前線まで進出させて攻撃させることができるが、この防空ミサイルが不足していたために対応できなかった。
「Su-25」攻撃機は、爆弾投下やロケット攻撃を行う場合、敵陣地の近くを低空で飛行する。
ウクライナ軍は、携帯対空ミサイル「スティンガー」があれば撃墜できるが、この時期にはこれも不足していて、ロシア軍機による対地攻撃に何もできずにやられっぱなし状態であった。
   グラフ2 ロシア空軍の空爆回数の推移
6.瀬戸際の東部戦線
ウクライナ軍がアウディウカの地域でロシア軍の攻撃を止められるか、突き抜けられて戦果拡張されるかで、今後の戦況は大きく変わる。
今、その瀬戸際にきている。
戦況を左右するものは、ロシア軍の今の攻撃を止められる弾薬と武器が十分に届くかどうかだ。
また、「F-16」の引き渡しを受け、ウクライナ地上軍がやられっぱなしのロシア軍戦闘機を撃墜できるかできるかどうかだろう。
ウクライナ軍には、米国製の射程300キロの「ATACMS」ミサイルシステムが3月から相当数供与され、すでに使用されている。
クラスター弾は、広範囲を制圧できるとはいえ、射程300キロあるATACMSは、クリミア半島など戦線から遠方にあるロシア軍部隊の集結地や訓練場、空軍基地、重要施設に重点的に使用したいはずだ。
もしも、アウディウカからオチャレティネの防御戦闘で、陣地がさらに突破される恐れがある場合、弾薬・武器が前線に届くまでの応急的措置として、その地点にATACMSを一時的に使用して、攻撃を阻止することになるであろう。
7.日本は傍観しているだけなのか
敵が前進して、目の前に迫っているにもかかわらず、その敵に向かって射撃することもできず、火砲の射撃支援も得られない。
その敵は、友軍の近接航空支援(対地攻撃)で、ウクライナ軍陣地を爆撃して破壊している。
上空を飛び回る敵の戦闘機に、味方の戦闘機は何もできない。
戦っているウクライナ軍兵士は、どれほど恐怖を感じているだろう。
ウクライナ軍にとっては、侵攻を受けた当初もそうだったろうが、弾薬や武器が枯渇してきている今ほど、恐ろしさを感じている時はないに違いない。
このようなウクライナ軍の状況を見て、西側の一員としての日本は、ただ傍観しているだけでよいのか。
●ロシアきょう「戦勝記念日」記念式典でプーチン大統領が演説 5/9
ロシアでは、5月9日は、第2次世界大戦の戦勝記念日です。ウクライナへの軍事侵攻を続けるプーチン大統領は、首都モスクワで行われる記念式典の演説で、国民に改めて結束を呼びかけるものとみられます。
9日午後4時から赤の広場で式典
ロシアで5月9日の「戦勝記念日」は、第2次世界大戦で旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利したことを祝う、最も重要な祝日の1つで、各地で記念式典や軍事パレードが行われます。
首都モスクワでは、日本時間の9日午後4時から中心部の赤の広場で式典が開かれ、7日に通算で5期目の任期をスタートさせたばかりのプーチン大統領が演説する予定です。
ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから3年目に入るなか、プーチン大統領は、軍事侵攻をナチス・ドイツに勝利した先の大戦と重ね、国民に改めて結束を呼びかけるものとみられます。
また演説の後には、軍事パレードが行われ、ショイグ国防相によりますと、70以上の兵器や9000人以上の兵士が参加する予定です。
これを前に、プーチン大統領は8日、旧ソビエト各国の首脳を招いて、ロシアが主導する「ユーラシア経済同盟」の会議を開きました。
会議に出席した首脳の多くは、戦勝記念日の式典にも出席すると伝えられ、軍事侵攻で欧米との対立が深まる中、友好国との連携をアピールするとみられます。
「不滅の連隊」各国で
ロシアの戦勝記念日にあわせて、東京のロシア大使館では6日、外交官や国内各地に住むロシア人などが参加し、家族や親族の遺影を掲げて行進する催し「不滅の連隊」が行われました。
国営ロシア通信によりますと、参加者は300人あまりで、ノズドレフ大使があいさつで「われわれの責務は、ナチズムを粉砕し用心するよう言い残した人々の記憶を守り、世界大戦の惨禍を繰り返さないよう全力を尽くすことだ」などと述べたということです。
また大使館によりますと、今回の催しには、中国の呉江浩駐日大使が初めて参加したということで、ノズドレフ大使と並んで行進する映像も公開し、両国の接近を印象づけています。
ロシア外務省は、「不滅の連隊」の催しは、ことし、アメリカやスペイン、ベトナムなど10か国以上で行われ、あわせて数千人が参加したとしているほか、中国・北京でも9日ロシア大使館で行われる予定だと発表しています。
ロシア側としては、外国に住むロシア国民などとの結束をアピールするねらいもあるとみられます。
ロシアにとって5月9日は
ロシアで、5月9日は、第2次世界大戦で旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利したことを祝う「戦勝記念日」で、最も重要な祝日の1つです。
ナチス・ドイツとの戦いは、ロシアでは「大祖国戦争」と呼ばれ、旧ソビエトでは2600万人以上の兵士と市民が死亡したとされ、苦難の末に祖国を防衛し、勝利した、栄光と誇りの日と位置づけられています。
例年、この日には、各地で記念式典などが行われ、特に、首都モスクワ中心部の「赤の広場」で開かれる式典では大統領による演説のほか、大規模な軍事パレードが行われてきました。
このうち60周年の節目の2005年の式典には、当時の小泉総理大臣や、アメリカのブッシュ大統領、ドイツのシュレーダー首相など50以上の国や国際機関の代表が出席し、戦勝国・敗戦国がともに大戦の犠牲者を追悼し、「追悼と和解」を演出する側面もありました。
プーチン政権では国威発揚の場に
プーチン政権は近年、この戦勝記念日を国威発揚の場として利用し、軍事パレードでは、最新のミサイルや戦車などを披露し、ロシアの軍事力を内外にアピールしてきました。
2012年からは、戦勝記念日に合わせて、大戦で戦った家族や親族の遺影を掲げて市民が行進する催し「不滅の連隊」が各地で行われ、プーチン大統領みずからも市民とともに参加するなど、政権側は愛国心を高めて国民の結束をアピールするイベントとして利用してきました。
プーチン政権は、おととし、ウクライナへの軍事侵攻を始めてからは、ウクライナのゼレンスキー政権を一方的にナチスに重ね、ロシアを守るためにネオナチと戦っているとして軍事侵攻を正当化する主張を繰り返してきました。
去年の戦勝記念日の演説では、プーチン大統領は「われわれの祖国に対して再び『本当の戦争』が行われている」などと述べ、ロシアは欧米などとの戦争が始まったと主張しています。
一方、軍事侵攻の影響もあり、去年の軍事パレードは例年よりも規模が縮小され、参加した戦車は1両だけで、「不滅の連隊」も中止となりました。
またウクライナでは、戦勝記念日について、かつては同じ旧ソビエトのロシアと同様に9日に祝われてきましたが、ロシアによる軍事侵攻後の去年、ヨーロッパ各国などと足並みをそろえ、8日に記念日を変更する法改正を行い、ロシアと決別する姿勢を鮮明にしています。
ウクライナ隣接地区ではパレード中止
ロシア国営のタス通信によりますと、9日の戦勝記念日に行われる軍事パレードは28の都市で実施されるということです。
ただ、ウクライナに隣接する西部クルスク州やブリャンスク州などのほか、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部のクリミアでは軍事パレードの中止が決まっています。
中止の理由について、地元の知事などは「安全を最優先するため」としていて、こうした地域では、ロシア側の施設への攻撃も続いていることから警戒を強めているものとみられます。
また、2012年以降、戦勝記念日にあわせて行われてきた、市民が第2次世界大戦で戦った家族や親族の遺影を掲げて行進する催し「不滅の連隊」についても、安全上の懸念を理由に全国的に2年連続で中止となり、オンラインなどのイベントに変更されています。
●「停戦しても、終わりなき戦争が待つだけ」 ウクライナ大統領最側近 5/9
ウクライナのゼレンスキー大統領の最側近の一人、ミハイロ・ポドリャク大統領府長官顧問が8日、キーウ市内で朝日新聞の取材に応じた。全面侵攻を続けるロシアとの現時点での停戦交渉の可能性を否定し、「交渉のテーブルにつくという幻想を抱かないでほしい」と主張した。
停戦交渉の条件についてゼレンスキー氏は、ロシア軍の撤退や正義の回復といった10項目の「平和の公式」が軸になるとくり返してきた。
ポドリャク氏は、ロシアがすでに占領したウクライナ領を維持できると考えている以上、仮に停戦しても「終わりなき戦争」が待っているだけだとし、ウクライナ社会もそれを理解していると語った。
スイスでは6月、各国首脳級でウクライナ和平の道筋を協議する初めての「平和サミット」が開かれる。ポドリャク氏は、「中立」とされる国々も含めて可能な限り多く参加することが望ましいとした。
●イラン、存立脅かされれば核ドクトリン変更へ=最高指導者顧問 5/9
イラン最高指導者ハメネイ師の顧問であるカマル・ハラジ氏は、自国の存立がイスラエルによって脅かされれば核ドクトリンを変更すると述べた。
イランはこれまで、核兵器を得る計画はないと表明している。
ハラジ氏は「われわれは核爆弾を製造することを決定していないが、イランの存立が脅かされるようなことがあれば軍事ドクトリンを変更する以外に選択肢はないだろう」と語った。同国の「学生ニュースネットワーク」が9日報じた。
●韓国大統領、就任2年で会見 経済重視 5/9
韓国の尹錫悦大統領は9日、就任2年を迎えるのに合わせて記者会見を開き、4月の総選挙で与党「国民の力」が敗北したことについて、国民の生活を改善する政府の努力が不足していたとの認識を示した。
尹氏が会見を開くのは1年9カ月ぶり。残り3年の任期では経済の改善を重視すると表明、少子高齢化の問題に取り組む省を新設することも明らかにした。
同氏は「今後重要なのは経済だ。企業の成長や雇用創出も重要だが、それ以上に重要なのは、一人一人の生活で不便な点を探し、それを解決するため一層努力することだと考えている」と発言。
総選挙で与党が敗北したことについて問われると「私の政権の仕事が、必要とされるものに程遠いという国民の評価を反映したものだと考えている」と答えた。
夫人が知人から高額な贈り物を受け取った疑惑についても初めて謝罪した。
外交政策については、紛争中のいかなる国にも殺傷力のある武器を供与しない姿勢を維持すると発言。ロシアは長い間、良いパートナーだったが、ウクライナとの戦争や北朝鮮製兵器の使用で関係の「居心地が悪く」なったと述べた。
最大野党「共に民主党」の朴贊大院内代表は、尹氏の会見に「激しく失望」したとし「国民の生活を守る心も意思もない」ことが改めて浮き彫りになったと批判した。
●韓国 ユン大統領 就任2年を前に日韓関係の改善進める姿勢強調 5/9
韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領は、10日で就任2年となるのを前に記者会見を開き、日韓関係について「さまざまな懸案や歴史が障害になり得ることもあるが、進むべき方向に歩まなければならない」と述べ、今後も関係改善を進めていく姿勢を強調しました。
韓国大統領府で開かれた記者会見で、ユン・ソンニョル大統領は、日韓関係について「さまざまな懸案や歴史が障害になり得ることもあるが、耐えることは耐えながら進むべき方向に歩まなければならない。岸田総理大臣とは互いに十分信頼し、両国関係を発展させる姿勢が十分にあることも互いによく知っている」と述べました。
先月の総選挙で野党が過半数を占めたことで、国会などで対日政策の見直しを求める声が強まるという指摘もある中で、ユン大統領としては、今後も日韓関係の改善を進めていく姿勢を強調した形です。
このほか、去年の出生率が過去最低を更新するなど、少子化に歯止めがかからない状況について「国家非常事態と言える」と指摘し、少子化対策に取り組む省庁を新たに設置する意向を示しました。
ユン大統領が単独で記者会見を開くのは、就任100日後に開いたおととし8月以来1年9か月ぶりで、総選挙で与党が大敗した原因として、ユン大統領の独断的な政権運営が影響したという声もあるだけに、記者会見を通じて広く国民に政権構想を説明するねらいがあったとみられます。
●EU弱体化求めるのは「自滅的で無責任な行為」=独首相 5/9
ドイツのショルツ首相は9日、6月の欧州連合(EU)議会選挙を前に、EUの役割軽減を求める意見は自滅的で無責任だと非難した。
政府のウェブサイトに投稿したビデオメッセージで、一部のポピュリストはドイツのEU離脱を望み、別の人々はEUの「縮小」を望み、また別の人々はロシアまたは中国をロールモデルと見ていると指摘。「なんという自滅的な愚行。このような時期に欧州の結束を疑問視するのがどれほど無責任なことか」と述べた。
世論調査では、今回の議会選で国粋派とユーロ懐疑派の政党の得票が記録的水準になると予想されている。
ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のワイデル共同党首は今年、同国のEU残留の是非を問う国民投票と、欧州委員会の権限抑制を求めた。
ショルツ氏は、ロシアのウクライナ攻撃や11月の米大統領選を控えた不確実性の中で、欧州の結束は最も重要だと訴えた。
●世界最大級のCO2回収・貯留施設稼働、アイスランドでスイス企業 5/9
スイスの新興企業クライムワークスは、大気中から二酸化炭素(CO2)を直接回収し、地中に貯留する技術「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」を活用した世界最大規模のプラントを稼働した。
今回稼働したのは、アイスランドに新設した「マンモス」。マンモスのCO2回収能力は年間3万6000トン。今年末までにほぼフル稼働する見通し。
クライムワークスが手掛ける商業プロジェクトとしては、同じくアイスランドに設置したDACプラント「オルカ」に次いで2件目となる。オルカの回収能力は年間4000トンで、これまでの回収量としては最大規模とされていたが、マンモスはこれの10倍近くとなる。
クライムワークスの共同創業者で共同最高経営責任者(CEO)を務めるヤン・バルツバッハー氏は「マンモスの稼働開始は、回収能力を2030年までにメガトン、50年までにギガトンの水準までに拡大する旅路の証しとなる」と語った。
CO2の回収には、大量のエネルギーを消費するが、アイスランドで操業するプラント2カ所は、再生可能な地熱発電で稼働する。
DACを巡っては、コストが高いなど批判の声があがっている。
クライムワークスは、マンモスでのトン当たりのCO2回収にかかるコストの詳細を明かしていないが、30年までに1トン=400─600ドルに、40年までに200─350ドルに削減していく方針だ。
●凍結したロシアの資産から得た利子をウクライナ支援活用でEU大筋合意 利子収入は日本円で約5000億円に 5/9
EU=ヨーロッパ連合は、凍結したロシアの資産から得た利子を、ウクライナ支援に活用することで大筋合意した。
EUは8日、加盟国の大使級会合を開き、経済制裁の一環として凍結したロシアの資産から得た利子を、ウクライナの支援に活用することで大筋合意した。
議長国のベルギーがSNSに投稿し明らかになったもので、ウクライナの軍事支援や復興援助に充てられる。
EUによると、ロシアの凍結資産から毎年30億ユーロ、日本円で約5000億円の利子収入を得ているという。
EUの首脳は2024年3月、凍結資産の活用について、議論を前進させることで合意していた。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、利子だけではなく、資産そのものを支援に充てるよう呼び掛けている。
●イスラエルとヒズボラが交戦、ガラント国防相は夏の攻撃激化示唆 5/9
イスラエルは8日、レバノン南部で激しい空爆を実施し、レバノンに拠点を置く親イラン武装組織ヒズボラはイスラエルの標的に対しドローン(無人機)とロケット弾による攻撃を行った。
パレスチナ自治区ガザの武装組織「イスラム聖戦」の軍事部門クッズ旅団によると、イスラエルの攻撃でパレスチナ人戦闘員3人が死亡した。ヒズボラによると、同組織でも少なくとも1人の戦闘員が死亡した。
レバノンの治安筋は、イスラエルの攻撃により3人が死亡したとしたと述べた。
ヒズボラとイスラエルの戦闘は昨年10月以降、イスラム組織ハマスとイスラエルのガザでの戦闘と並行して続いている。
イスラエル軍はレバノン南部のヒズボラの軍事施設やインフラを攻撃したと発表した。
ヒズボラは国境沿いのイスラエルの町ヤアラにある軍司令部にドローン、ビラニットの基地にロケット弾を発射したと発表した。
イスラエルのガラント国防相は同国北部を訪問し、部隊に任務は完了していないと述べた。同氏の事務所が公開した動画で、今夏に攻撃を強化する可能性を示唆した。
●英BP、石油・ガスの生産量削減目標にCEOが柔軟姿勢 5/9
英石油大手BP(BP.L), opens new tabのマレー・オーキンクロス最高経営責任者(CEO)は8日、ロイターに対し、同社が再生可能エネルギー・低炭素エネルギーへの移行戦略として打ち出している長期的な石油・ガスの生産量削減目標に対し、柔軟に取り組む姿勢を示した。
同社のエネルギー移行戦略や同業他社と比べた株価の低迷を巡る投資家の不安を和らげる狙いがあるとみられる。
BPは昨年、2030年の石油・ガス生産量を石油換算で19年より約25%少ない日量200万バレルに減らすと発表。削減率は20年に発表した当初目標から下方修正した。
オーキンクロス氏は、30年の削減率は目標を超える可能性がある一方、目標に達しない可能性もあると指摘。「200万(石油換算バレル)は現時点で目指す妥当な数字だ。上振れする可能性があるかと言えばあるし、下振れする可能性もあるかと言えばある」と語った。
さらに同氏は、BPには世界各地で進めるかどうかを向こう数年以内に決定しなければならない30余りのプロジェクトがあると説明した。
その上で「これらのプロジェクトの是非を、リターンを根拠とする手法に基づき決定することが、30年時点の生産を巡る当社の考え方を伝えるのに役立つだろう。ただ私は生産量ではなく、リターンとキャッシュフローを重視する」と述べた。
●ロシア戦勝記念日 モスクワで記念式典 欧米各国の首脳出席せず 5/9
ロシアでは9日が第2次世界大戦の戦勝記念日で、首都モスクワで記念式典が行われました。式典には、旧ソビエト諸国の首脳などが参列する一方で、欧米各国の首脳は出席せず、欧米との激しい対立など長期化するウクライナ侵攻を反映する内容となりました。
ロシアでは9日、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利してから79年の記念日となり、20以上の都市で軍事パレードなどが行われました。
首都モスクワでは、日本時間の9日午後4時から中心部にある赤の広場で記念式典が行われました。
雪もちらつく中で行われた式典でプーチン大統領が演説し「ロシアを脅かすことは許さない。われわれの戦略部隊はいつでも戦闘準備ができている」と述べ核戦力も含めてロシア軍の戦力に言及し欧米側を強くけん制しました。
そして「国家と国民の、自由と安全な未来を確保できると確信している。ロシアのために。勝利のために。万歳」と述べ、ロシア軍のウクライナでの勝利に向けて国民に改めて結束を呼びかけました。
このあと軍事パレードが行われ、短距離弾道ミサイル「イスカンデル」などウクライナの前線でも使われている兵器のほか、ロシア軍の核戦力の中枢を担っているICBM=大陸間弾道ミサイル「ヤルス」なども登場しました。
一方、今回のパレードには、70以上の兵器や、軍事侵攻に加わる兵士を含む9000人以上が参加しましたがウクライナ侵攻前の2021年には、190以上の兵器と1万2000人以上が参加していて侵攻の後、その規模は縮小されています。
式典には、ロシアと同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領など旧ソビエト諸国や、キューバやアフリカの一部の国の首脳などが参列する一方で欧米各国の首脳は出席せず、式典は欧米との激しい対立など長期化する軍事侵攻を反映する内容となりました。
 ●イスラエル ハマス “進展兆しなし”もエジプトでの交渉継続か 5/9
イスラエルとイスラム組織ハマスの間の戦闘休止などに向けてエジプトで行われている交渉をめぐりイスラエルの交渉団は、進展の兆しはないもののエジプトに残ると伝えられていて、ぎりぎりの交渉が続いているものとみられます。一方、イスラエル軍はガザ地区南部ラファでの攻撃を繰り返し、軍事的な圧力を強めています。
イスラエルとハマスの間の戦闘の休止と人質解放に向けた交渉で、ハマス側は仲介国が示した提案を受け入れるとしたのに対し、イスラエル側は人質の解放などの中核的な要求を満たすにはほど遠いとしながらも、仲介国のエジプトに交渉団を派遣しています。
ロイター通信は交渉は8日も行われ、イスラエル当局者の話として「進展の兆しはないが、交渉団はエジプトに残る」と伝えています。
また、イスラエルのメディアなどはアメリカのCIA=中央情報局のバーンズ長官が8日、戦闘の休止と人質の解放をめぐりネタニヤフ首相と会談したと報じています。
バーンズ長官は直前にエジプトやカタールを訪問していたということで、アメリカや仲介国の働きかけで双方の立場の隔たりを埋められるかが引き続き焦点になっています。
一方、避難者など120万人が身を寄せるガザ地区南部のラファでは地元メディアが8日、中心部にある住宅が空爆を受けたと伝えていて、イスラエル軍が住民に退避を通告した東部以外でも激しい攻撃が続いています。
また、イスラエル軍は8日、ラファ東部で地上部隊による作戦を続け、ハマスの地下トンネルを破壊したと発表するなど、ハマスに対する軍事的な圧力を強めています。
ただ、ハマス側は「軍事的な圧力のもとでは停戦や人質解放の新たな取り組みには応じられない」としていて、交渉が進展するか注視されています。
戦闘休止と人質解放に向けた交渉について、アメリカ・ホワイトハウスのジャンピエール報道官は8日、記者団に対し「協議は継続中だ。われわれの評価では、両者の間の隔たりを近づけることはできる。われわれは彼らの取り組みを支援し続ける」と述べて交渉を進展させるために働きかけを続ける考えを示しました。 
●プーチン大統領“戦術核兵器部隊の軍事演習にベラルーシ参加” 5/9
ロシアのプーチン大統領は、ロシア軍が近く行うとする戦術核兵器の部隊による軍事演習に同盟関係にあるベラルーシも参加することになったと明らかにし核戦力に言及して欧米側への威嚇を繰り返しています。
ロシア国防省は、今月6日、プーチン大統領の指示を受けて戦術核兵器を扱う部隊による軍事演習の準備を開始したと発表しました。
プーチン大統領は9日、首都モスクワで行われた戦勝記念日の式典の後、記者団に対し、同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領と会談しこの演習についても話し合ったことを明らかにしました。
その上でベラルーシにはロシアの戦術核兵器が配備されているとして演習にはベラルーシも参加するよう求めたとしています。
そしてプーチン大統領は「演習は3段階で実施される。ベラルーシは第2段階でわれわれの行動に参加する。国防省などに関連する指示を出した」と述べました。
プーチン大統領は戦勝記念日の式典で行った演説でも「戦略部隊はいつでも戦闘準備ができている」と述べロシア軍の核戦力に言及しました。
プーチン政権は、ベラルーシでロシアの戦術核兵器の配備を進めているとこれまでも強調していましたが、核戦力の使用を想定した演習をベラルーシと行うのは初めてで核戦力に言及して欧米側への威嚇を繰り返しています。
●米長官「原爆が戦争止めた」 5/9
オースティン米国防長官は8日、上院歳出委員会の小委員会で証言し、広島、長崎への原爆投下について、第2次世界大戦を終わらせるために必要だったとの見解を示した。米国内では原爆投下に肯定的な意見が多く、それに沿った見解と言えそうだ。
グラム上院議員(共和党)の質問に回答した。グラム氏はまず米軍制服組トップのブラウン統合参謀本部議長に「広島、長崎への原爆投下を支持するか」と尋ね、ブラウン氏は「それが世界大戦を終わらせた」と語った。オースティン氏はその後に同じ質問を受け、「議長(ブラウン氏)と同意見だ」と述べた。
このやりとりは、米政府がパレスチナ自治区ガザ最南部ラファへの本格侵攻に対する懸念から、イスラエルへの大型爆弾輸出を停止したことに関し、グラム氏が批判する文脈で飛び出した。グラム氏は「負けるわけにはいかない戦争で、イスラエルに必要なものを与えるべきだ」と訴えた。

 

●プーチン大統領 戦勝記念日で核戦力について繰り返し言及 5/10
ロシアのプーチン大統領は、第2次世界大戦の戦勝記念日にあたる9日、戦術核兵器を扱う部隊が参加する演習など、核戦力について繰り返し言及しました。
ウクライナへの軍事支援を再開したり強化したりする欧米側への威嚇とみられます。
ロシアでは9日、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利してから79年の記念日となり、首都モスクワで式典が行われました。
プーチン大統領は演説で「われわれの戦略部隊はいつでも戦闘準備ができている」と述べてロシア軍の核戦力に言及し、軍事パレードでは、核弾頭の搭載も可能な短距離弾道ミサイル「イスカンデル」なども登場しました。
また、プーチン大統領は記者団に対し、ロシア軍の戦術核兵器を扱う部隊が行う軍事演習について、ロシアの戦術核兵器が配備されているとする同盟国のベラルーシも参加して実施されると明らかにしました。
ウクライナ情勢を巡っては最大の支援国アメリカが軍事支援を再開したほか、今月、イギリスのキャメロン外相が「ウクライナにはイギリスの供与した兵器でロシア領内を攻撃する権利がある」と述べるなど、ロシアは、欧米側の言動に神経をとがらせているとみられます。
アメリカのメディア「ブルームバーグ」は「ロシアは再び核の脅しを始めた」と伝えるなど、プーチン大統領の一連の発言はこのところの欧米側の動きを踏まえた威嚇とみられます。
一方、ウクライナは、ロシアが戦勝記念日としている9日をヨーロッパの団結を記念する「ヨーロッパの日」としていて、この日、首都キーウにはヨーロッパ議会のメツォラ議長が訪れ、ゼレンスキー大統領と共同の会見を行いました。
会見のさなか、キーウ市内には防空警報が鳴り響き、ゼレンスキー大統領が「気分はどうですか」と問いかけると、メツォラ議長は「大丈夫です。大統領が言ったとおりきょうは『ヨーロッパの日』です。あなたたちが毎日どのような暮らしを強いられているかよく分かりました」と応じました。
このあとゼレンスキー大統領は戦勝記念日を祝うロシアについて「ナチスがいまパレードを行っている。これが彼らの平和に対する態度だ。これが現実だ」と改めて非難し会見を終えました。
●プーチン氏、ロシア軍は「常に準備ができている」 戦勝記念日の演説で 5/10
ロシアのプーチン大統領は9日、自国の軍隊について、外部からの脅威と戦う準備が「常に整っている」との認識を示した。第2次世界大戦の戦勝記念日の演説で述べた。
毎年の戦勝記念日はプーチン氏にとって、世論の支持を集め、自国の軍事力を誇示する重要なイベントとなっている。
第2次世界大戦でソ連がナチスドイツに勝利したことを祝うこの日の式典は、モスクワの赤の広場で開かれ、戦車やミサイルなどが登場する軍事パレードも行われた。
パレードでの兵士や兵器の数は昨年以上に少ないものの、現在ロシア軍はウクライナ軍と戦う前線で攻勢をかけている。
プーチン氏は「ロシアはあらゆる手を尽くし、世界的な紛争の始まりを阻止するだろう」「しかし、いかなる国も我が国を脅かすのを許しはしない。我が戦略部隊は常に準備を整えている」と語った。
その上で、祖国防衛の戦いの成否は個々の国民にかかっていると強調。とりわけ戦勝記念日には、国民がそのことをより実感すると付け加えた。プーチン氏は演説を1分間の黙祷(もくとう)で締めくくった。
ロシアのショイグ国防相はSNSのテレグラムで声明を出し、主要な軍事パレードに加わる人員は9000人、軍装備の数は70だと明らかにしていた。昨年の人員1万人、兵器数125から減少した。
式典にはベラルーシやカザフスタン、タジキスタンなど主にソ連の旧構成国の首脳らが招待されていた。
ロシアによるウクライナ侵攻開始以降、戦勝記念日を迎えるのは今回で3度目。ロシア外務省の報道官はタス通信のインタビューに答え、「非友好的な国々」は招待していないと述べた。
●プーチン大統領「ウクライナのドローン、ハエのように頭上を飛ぶ」 5/10
ロシアのプーチン大統領がウクライナのドローン(無人機)をハエに例えた。
9日(現地時間)のタス通信によると、ロシア大統領府はこの日、プーチン大統領の就任式(7日)後に開かれた軍会議の映像を公開した。
映像によると、プーチン大統領は7日の軍会議で「敵(ウクライナ)のドローンがハエのように頭の上を飛び回っていて、我々の軍人がどれほど苦労しているよく知っている」と述べた。
続いて「我々はこの問題を解決するために努力していて、私は必ず結果を見ることになると確信している」と話した。
プーチン大統領は「成功するためには先端技術分野で一歩先を進まなければいけない」と強調した。開発者、科学者、技術者らが敵より先を進むために一日24時間働いているとも語った。
プーチン大統領はロシア発展の核心条件が特殊軍事作戦の成功だと信じていると述べた。
ウクライナ軍は戦場で、費用がそれほどかからない空中・海上ドローンを積極的に活用しながらロシア軍に打撃を与えている。ウクライナ軍の海上ドローンでロシア黒海艦隊の軍艦が撃沈したという報道もあった。
ロシアは最近、ウクライナのドローンから軍を保護するために照準器に対空機関銃が付いた「アンチドローン」武器を公開した。ロシア国防省は前日、ウクライナ「特別軍事作戦」で破壊したウクライナドローンは2万3828機にのぼると明らかにした。
一方、この日の会議に出席したある司令官はウクライナ東部アウディイウカ近隣のベルディチ戦闘の話をすると、プーチン大統領は「苦労が多かったはずだが、結局は彼らを捕まえた」と述べ、2日にベルディチを掌握した軍を激励した。
●雪降る5月に行進=ロシア兵震え、プーチン氏も冬服 5/10
9日のロシア・モスクワ「赤の広場」の軍事パレードは、5月として異例の雪が降る中で行われた。
現地メディアは「(対ドイツ戦勝記念行事の)歴史上初めて」と報道。プーチン大統領はスーツ姿でなく、厚手のコートで演説した。
大勢の将兵は行進前、震えるような面持ちで冬用のジャンパー姿で石畳に集まった。開始を告げる「スパスカヤ塔」の鐘が鳴らされる前に上着を脱ぎ、いつもの儀仗(ぎじょう)服姿になった。
寒空の行事は、第2次大戦さなかの1941年11月、降雪の中でソ連兵が行進し、そのまま前線に向かったといわれる「伝説」の軍事パレードを想起させる。今回、ウクライナ侵攻に参加する部隊は重装備の戦闘服姿で行進した。長期戦に向け、自国民に決意を促す政権の思惑がにじむ。
●ロシア戦勝記念日 軍事パレードは大幅縮小 プーチン大統領は西側諸国けん制 5/10
第二次世界大戦の戦勝記念日を迎えたロシアでは、モスクワで軍事パレードが行われました。去年に続いて大幅に縮小された形となりました。
ロシア プーチン大統領「ロシアは今、困難で危機的な時期を迎えている。祖国の運命、その将来は我々一人ひとりに掛かっている」
雪のちらつくなか行われた式典で、プーチン大統領は侵攻から2年が過ぎて膠着(こうちゃく)状態が続くウクライナ情勢を念頭に、国民の結束を訴えました。
さらに「ロシアは世界的な対立を避けるため、あらゆる手段を講じるが、それを脅かすものは許さない」と述べたうえで、「ロシアの核戦力は常に戦闘準備が整っている」とロシアと対立するウクライナと西側諸国を牽制(けんせい)しました。
軍事パレードの規模は去年に引き続き縮小していて、ウクライナ侵攻で使われている主力戦車などは参加しませんでした。
●プーチン大統領「通算5期目」突入で“大暴発”が許される? ロシア正教トップお墨付きの不気味 5/10
世界に衝撃が走ったウクライナ侵攻から800日あまり。欧米主導の国際社会による制裁が続く中、「21世紀のロシア皇帝」と呼ばれるプーチン大統領(71)の任期は通算5期目に突入した。続投可能なため、最長で2036年まで居座る可能性がある。そうなれば、干支はぐるりと一回り。「プーチンのロシア」はどこへ向かうのか。マトモな一般市民は不安を募らせている。
7日(現地時間)の大統領就任式には約2600人が出席。G7では独自スタンスを取るフランスが大使を送り出した一方、米英は欠席。日本は右へならえで、関連報道も決して多くなかったが、見逃せないシーンがあったという。
筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)がこう指摘する。
「国営の第1チャンネルが関連行事も含めた就任式の様子を生中継したのですが、最大の見せ場はロシア正教のキリル総主教による祝辞でした。プーチン氏に〈ロシアという国を守るのは善良な人間だけではない〉と語りかけ、〈紛争が絶えないため、国家元首は時に運命的で恐るべき決断を下さなければならない〉などと迫ったのです。モスクワの友人たちは〈恐ろしいことになった〉と動揺している。というのは、対ウクライナ戦での戦術核使用にお墨付きを与えたと受け止められたからです。ロシア正教は国民の7割が信仰する国家的宗教です。そのトップの発言は非常に重い」
「プーチン大統領がいつまでも権力の座にとどまりますように」
伏線とみられるのが、就任式前日の動きだ。ロシア国防省は6日、ウクライナ侵攻の拠点となる南部軍管区で「非戦略核兵器」の使用を想定した演習の準備を始めたと発表。つまり、戦術核のことだ。総主教が「神よ、プーチン大統領がいつまでも権力の座にとどまりますように」と演説を締めくくったのも何やら意味深である。
「総主教の祝辞が終わり、教会の鐘が鳴ると、生中継を担当していたアナウンサーが深いため息をついていました。感情を抑えられなかったのか。米議会では約610億ドルのウクライナ支援予算が成立。5期目最初の外遊先に選ぶほど頼みにしている中国の習近平国家主席は、ロシアを素通りして訪仏。あからさまにプーチン氏を牽制しています。国家経済を支える国営のガスプロムは24年ぶりの赤字に転落。八方塞がりのプーチン氏は、11月の米大統領選までに局面打開を狙いにいくはずです」(中村逸郎氏)
強まる揺さぶり。季節が進むのが恐ろしい。
●プーチン氏、戦勝記念日にロシア軍の「英雄」たたえる 西側諸国へ警告も 5/10
ロシア・モスクワの赤の広場で9日、第2次世界大戦の対独戦勝記念日を祝う軍事パレードが行われた。毎年恒例の行事だが、今年はいつもと違う雰囲気だった。
ロシアで春に雪が降るのは異例だ。しかし、それだけが理由ではなかった。
9000人が広場を行進した。そう言われれば、大人数だと思うかもしれない。しかし、ロシアがウクライナに侵攻する前の数年間は、参加者の数はもっと多かった。
この日に披露された軍用装備品も少なかった。登場した戦車はT-34が1台だけだった。
対象的に多かったのは、ロシアが仕掛けたウクライナでの戦争への言及だった。パレード参加者の中には、ウクライナで戦ってきた兵士もいた。
「我々は特別軍事作戦(ウクライナ侵攻をロシア政府はこう呼ぶ)を遂行している最中に、戦勝記念日を迎えた」と、ウラジーミル・プーチン大統領は赤の広場での演説で述べた。「前線で(作戦に)加わっている者たちは、我々の英雄だ」。
「常に戦闘態勢」と西側諸国に警告
ロシアはここ数日、イギリスやフランスなどの西側諸国がロシアを脅かしていると非難している。エマニュエル・マクロン仏大統領は、地上部隊をウクライナに派遣する可能性を排除していない。
プーチン氏はこの日、西側諸国に警告を発した。核兵器を使用する可能性を再びちらつかせて威嚇しながら。
「ロシアは国際的対立を回避するためにあらゆる手だてを尽くす」とプーチン氏は述べた。「しかし同時に、我々を脅かす者は許さない。我々の戦略軍は常に、戦闘警戒態勢にある」。
プーチン政権下の戦勝記念日は、ロシアで最も重要な、世俗的な祝日となっている。
この戦勝記念日は、旧ソヴィエト連邦がナチス・ドイツを打ち負かしたことだけでなく、その勝利のために払った膨大な人的犠牲を思い起こす日でもある。旧ソ連の民間人2700万人以上が死亡したこの戦いは、ここロシアでは大祖国戦争と呼ばれる。
しかし、戦勝記念日はさまざまな点で、過去の出来事だけを象徴しているわけではない。この日が映し出しているのは、現在のロシアの姿だ。
過去を利用し現在起きていることを正当化
今日のロシアに何らかの国家理念があるとすれば、勝利という理念だろう。ロシア国民は、この国が歴史を通じて、フランス皇帝ナポレオン1世やナチス・ドイツの指導者ヒトラーといった外国の敵から攻撃され、その度に勝利してきたと、絶えず教えられている。
当局は過去を思い起こさせているだけではない。その過去を、現在起きていることを正当化するための武器にしている。それが、今日のロシアだ。
当局は国民に、ウクライナでの戦争を第2次世界大戦の続きとしてとらえさせることで、外部勢力が再びロシアを滅ぼそうと戦っているのだと信じ込ませようとしている。今日の敵というのは、ウクライナ、そして西側諸国を指す。
しかし実際は、2014年にウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合し、東部ドンバス地方に軍事介入したのはロシアの方だ。そして2022年にウクライナへの全面侵攻を命じたのは、プーチン大統領だった。
ロシア国内で「不穏な」流れ
ウクライナで戦争を始めた結果、ロシア国内ではかなり異常な、そして不穏なことが起きている。
第2次世界大戦での恐怖を経験したロシア国民は、その後数十年間はこう口にしていた。「私たちはあらゆる類いの窮乏を耐えられる。これ以上の戦争が起こらないのであれば」と。
「戦争はもうごめんだ」というフレーズを、この巨大な国の至るところで耳にした。町でも村でも、どこに行っても。
旧ソ連最後の指導者ミハイル・ゴルバチョフ氏がロシア国内を旅した際、国民から言われたのがまさに「戦争はもうごめんだ」という言葉だったという。彼が涙ながらに私に語ってくれたのを今でも覚えている。
だが、そのメッセージは変わってしまった。
モスクワ郊外の小さな町で9日、私は戦争記念碑の除幕式が行われるのを見ていた。旧ソ連時代のアフガニスタン紛争、ソ連崩壊後のチェチェン紛争、そしてウクライナでの戦争で死亡したロシア兵にささげられたものだ。
地元の役人が演説をしていた。彼はそこに集まった大人や子供たちにこう伝えた。
「常に戦争があった。これからも常に戦争は起きるだろう。それが人の常というものだ」
かつて戦争で多くの苦しみを味わった国で、戦争が常態化している。これが今のロシアの姿だ。
●ゲオルギー・ジノビエフ駐韓ロシア大使「韓露関係の回復は文化・観光から始めよう」 5/10
「現在、ロシアと韓国の関係はかなり悪化しています。しかし、良い環境が構築されれば、新たに発展できる潜在力が残っていると思います。」
7日、ロシアのプーチン大統領の就任式が行われ、通算で5期目となる任期が始まった。今後、韓国とロシアの関係性をどのように変えていくのだろうか。自らを『楽観主義者』と称したゲオルギー・ジノビエフ駐韓ロシア大使は、韓国とロシアの関係に改善の余地があると強調した。
去る3日、ソウル中区の駐韓ロシア大使館で行われた本紙とのインタビューで彼は、露宇戦争以後に悪化した韓露関係を認めながらも、文化観光など民間分野での協力が必要だと強調した。
2022年2月24日、ロシアのプーチン大統領は「特別軍事作戦」を行うと宣言。ウクライナへの軍事侵攻を始めた。韓国はロシアに対する西側諸国の制裁に参加し、ロシアは韓国を「非友好国」に指定した。交流が途絶えた。今年3月、ロシア当局は韓国人宣教師をスパイ容疑で拘禁し、韓国ではロシアのボリショイ・バレエ団の来韓公演が中止となった。両国間の葛藤はさらに深まった。幸い李度勲(イ・ドフン)駐ロシア大使が7日(現地時間)、プーチン大統領の就任式に出席するなど、関係改善に乗り出している。
ジノビエフ氏は、ロシアが北朝鮮と密接な関係にあることを隠さなかった。最近、ある韓国メディアとのインタビューで、北朝鮮との武器取引疑惑を否定した彼は、ロシアの特別軍事作戦に支持を表明する北朝鮮に対し、「(北朝鮮との)関係を発展させないことこそおかしい」と述べた。ロシアを支持する北朝鮮と密接な関係を築くことしかないというわけだ。ただ、ロシアが 国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁に違反してはいないと主張した。
ジノビエフ氏は韓露関係が梗塞したことは認めながらも、ウクライナに武器を供給するなど他の西側諸国とは差があると評価した。彼は「露韓関係の悪化は内部的な問題があって発生したのではなく、外的要因で発生した」として「不信や対立で取り返しのつかない西側諸国の関係とは異なる」と語った。
韓米日同盟と朝中露対決構図が固まった今、外交・安保・通商分野で疎遠になった韓露関係に変化を作ることは現実的に容易ではない。ジノビエフ氏はハードル低い「文化・観光・芸術」分野から改善していこうと提案した。彼は「文化と人文分野で交流を徐々に回復できる」として「第一歩が何かは重要ではない」と付け加えた。
文化・観光分野交流活性化の最優先課題としては韓‐露の直行便の開設を挙げた。現在、韓国とロシアの航空便は中国などの経由地を経由しなければならず、往来が容易ではない。ジノビエフ氏は「両国の民間の交流を遮る最も大きな理由は直行便の不在」とし、直行便の運航から始めるのが最も効率的であるだろうと提案した。
民間領域では両国間の文化・芸術分野を活性化を挙げた。ジノビエフ氏は去る4月、ロシアのボリショイ・バレエ団の公演が中止になったことに対して遺憾を示した。彼は、文化交流に対して「政治化されてはならない」と声を高めた。去る3月、『プーチン支持派の芸術家』と呼ばれるロシアのバレリーナ、スヴェトラーナ・ザハーロワさん(44)の来韓公演『モダンス』が中止となったのに続き、4月にはボリショイ・バレエ団の来韓公演も相次いで中止となった。ジノビエフ氏は「韓国よりも関係が悪化した日本でも、先日ロシア文化祭が開かれた」と取り上げ、ロシア文化そのものを排斥しないでほしいと呼びかけた。
またコンピューターゲームなど若年層が好む文化協力方案も出した。彼は今年2月、ロシアのカザンで開かれた国際ゲーム大会に韓国チームも参加し、各国の観衆から大きな愛を受けたと説明した。さらに、モスクワで開かれる新興国間の協力や経済成長の促進が目的の集団であるブリックス(BRICS)傘下の協力機構行事に韓国の青年たちが参加したとし、若年層を中心に交流を強化しようと提案した。
最後に韓国がロシアイシューに接する際は『均衡ある視線』で見てほしいと訴えた。韓国では主に西側諸国のメディアが伝えた内容を中心にロシア関連の懸案に接しているとし、そうした点が非常に残念であると表明した。彼は「西側諸国のメディア報道だけを信頼するなら、ウクライナ戦争がいつ終わるのかを把握するのが非常に難しくなる」と指摘し、韓国が特定の観点に偏らず、多様な意見に耳を傾けてほしいと付け加えた。
●ウクライナ軍も囚人を前線に動員 5/10
軍事アナリストによると、ウクライナ軍は人員と弾薬の不足に苦しんでいる。ウクライナ東部のハリコフ、ドネツク、ルハンシク地域で軍隊を指揮するユーリー・ソドル将軍は、「敵の数はわれわれの7倍から10倍だ」というのだ。
ゼレンスキー大統領によれば、武器、弾薬の不足ではウクライナの一発に対してロシアの十発の砲弾という状況だ。チェコのウクライナへの砲兵イニシアティブは現在進行中だが、数週間内に多くの砲弾を提供できる見込みはない。ポーランドの軍事専門家ムジカ氏は「戦場では砲撃は最小限に抑えられ、しばしば司令官によって許可を受けなければならない状況だ」と説明していた。弾薬の配給制といった感じだ。
バイデン米大統領は4月24日、ウクライナ支援法案に署名した。これを受け、米国は約610億ドル規模のウクライ支援に乗り出す。ロイター通信によると、第一弾として約10億ドルの兵器供給として、車両、対空ミサイル「スティンガー」、高機動ロケット砲システム向けの追加弾薬、155ミリ砲弾、対戦車ミサイル「TOW」および「ジャベリン」などが既に承認されたという。
米国からの軍事支援は時間がかかるだろうが、ウクライナに届くだろう。その軍事支援は守勢に回るウクライナ軍に再び武器と弾薬を提供するだろうが、戦争がさらに長期化した場合、果たして米国からの軍事支援がいつまで続くかは分からない。ムジカ氏は「ウクライナの弾薬庫が完全に空になる前に、米国からの数十億ドルの支援パッケージが届けばウクライナにとって救いだが、不均衡を軽減するのに役立つが、それ以上ではない」と、米国の支援パッケージに対して過大な期待を戒めている。
問題はウクライナ軍の兵士不足だ。インスブルック大学の政治学者、ロシア問題専門家のマンゴット教授は4月28日、ドイツ民間ニュース専門局ntvでのインタビューで、「ウクライナ軍の兵士不足は欧米の軍事支援では解決できない問題だ。ウクライナ軍は少なくとも10万人の兵力が新たに必要だ」という。
ゼレンスキー大統領は4月2日、動員年齢を「27歳」から「25歳」に引き下げ、予備兵を徴兵できる法案に署名したばかりだ。ちなみに、ウクライナ議会では予備兵の徴兵年齢の引き下げ問題は昨年から議論されてきたが、ゼレンスキー氏は国民への影響を考え、最終決定まで9カ月間の月日を要した。
現在の戒厳令の下では、ロシア侵攻軍と戦うために、一部の例外を除いて、18歳から60歳までのウクライナ人男性は国外に出ることが認められていない。そのような中で、ウクライナの男性たちは毎日、前線での死を避けるために祖国を離れようとしている。2022年に戦争が始まって以来、ルーマニアとの国境にあるティサ川を渡ろうとして24人が死亡したという。また、国境警備隊は国境を越えて人々を密入国させようとした約450の犯罪グループを摘発したという。
キエフの外務省は4月23日、ウクライナに帰国するための身分証明書の発行を除き、海外在住の18歳から60歳までの男性ウクライナ人に対する領事サービスの一時停止を発表した。この措置は男性の母国への帰国を奨励するウクライナ政府の取り組みの一環だ。
なお、BBCは昨年11月、ルーマニア、モルドバ、ポーランド、ハンガリー、スロバキアからの不法国境越えに関するデータを引用し、開戦以来2万人近くの男性が徴兵を逃れてウクライナから逃亡していると報じた。戦争が始まって以来、検察当局は4万6000件以上の脱走および軍隊からの無許可退去事件を捜査しており、その件数は急速に増加傾向にあるという。
兵役年齢のウクライナ人男性が海外で居住している場合、彼らをウクライナに引き渡すべきだという声もある。エストニアなどは引き渡しの用意があるというが、ドイツは拒否している、要するに、ウクライナ側は不足する兵士を如何にかき集めるかで必死なわけだ。
外電によると、ウクライナ議会は囚人を招集して前線に派遣する法案を可決したという。ロシアでは既に昨年から、軍紀違反者や民間の犯罪者らが「ストームZ」と呼ばれるロシアの懲罰部隊に投入され、ウクライナの前線に派遣されているが、ウクライナでも同様に、囚人の招集、前線派遣を実施する。同法案によれば、恩赦と引き換えに、投獄された犯罪者をウクライナ軍の前線部隊に配備することが認められるが、これは囚人の自発的な意思にのみ行われ、殺人、強姦、国家安全保障への攻撃などの罪で投獄されている重犯罪者はその対象ではないという。いずれにしても、ウクライナ東部などの戦場では、ロシア軍の「懲罰部隊」とウクライナ軍の「囚人部隊」が戦いを繰り広げる、といった状況が予想されるわけだ。
ゼレンスキー大統領は6日の「歩兵の日」、歩兵、戦死した英雄の親族、部隊指揮官と面会し、国家賞、戦旗、名誉賞を授与した。そして「ウクライナがこの戦争に耐え、目標を達成する能力を保持しているという事実に対して、私はすべての戦士たちに感謝する。そして全てのウクライナ人、国民は、私たちの戦士たちが何を経験しているのか、どれほどの苦痛と損失を抱えているのかを常に忘れてはならない」と語っている。
●グローバル中枢国家:防衛輸出における韓国の台頭 5/10
はじめに
近年、韓国は世界で最も急成長している防衛輸出国の1つとして台頭し、国際舞台で注目を集めている。自国をグローバル中枢国家の地位に高めるというビジョンを掲げる尹錫悦政権は、外交、安全保障、貿易、技術、産業のさまざまな側面を対象とする18の政策を提唱してきた。これらの主要政策の中で、防衛輸出の強化は尹大統領の主要な取り組みの1つとして浮上している。尹大統領は新年の辞において、韓国の防衛産業輸出額が年平均150億ドルの節目を超えたことを高らかに表明し、2027年までに世界の4大防衛輸出国の一角を占めるという韓国の確固たる目標を再確認した。実際、2000年には31位であった韓国は、2019年〜2023年の期間の防衛輸出で世界上位10カ国入りを果たしている。
この飛躍的な成長の背景にあるのが情勢不安の高まりと軍事費の急増を特徴とする世界の安全保障環境の変化であり、ロシアの侵攻に伴い現在も続くウクライナ戦争により一層拍車がかかっている。こうした状況下において韓国は防衛産業で成功を収めてきたが、韓国と同水準の国力で達成できた国は数少ない。
本稿では、主要な実績と韓国が世界の武器貿易における急成長国として脚光を浴びるに至った内外の重要要因について掘り下げる。さらに、武器売却は単なる商取引にとどまらず、国家の戦略観と地政学の側面も含むという認識の下、韓国が直面する課題について検討する。
グローバル中枢国家と防衛輸出
「グローバル中枢国家」は尹政権にとって中心となるビジョンであり、国家目標の指針となっているものの、幾分曖昧さをはらんでおり、解釈の余地が残されている。尹大統領は、「自由と連帯の精神に根差したグローバル中枢国家として、大韓民国は急速に変化する安全保障環境に積極的に対応するよう努めていく」と明言した。実質的に、正式名称である「自由・平和・繁栄に寄与するグローバル中枢国家」は、韓国の主要な目標を端的に表したものである。すなわち、韓国は国際問題においてより大きな役割を担い、同志国との緊密な協力の下、「自由、人権や法の支配」といった普遍的な価値観を推進するということだ。尹大統領の「グローバル中枢国家」ビジョンは、自由主義的なレトリックを韓国の現実的な外交路線に組み込むことで、実質的に「価値観外交」を包含するものとなっている。この文脈において、防衛輸出は、経済的利益や外交関係の発展などの具体的成果を示す上で大きな役割を果たすとともに、擁護を約束した価値観へのコミットメントを強調する「グローバル中枢国家」の実現に不可欠である。こうした側面は、尹大統領の権力基盤を強化し、国内外においてこのビジョンを正当化するにあたって欠かすことができない。
韓国政府は防衛輸出を通じて確かに一定の誇るべき成果を上げてきた。尹政権の国家安全保障戦略では、韓国を「防衛産業大国」とうたっており、防衛輸出の拡大により2022年の輸出額は過去最高を記録したとしている。2023年には、韓国の武器輸出は約140億ドルに達したが、2022年の173億ドルからは減少した。このように前年比では減少したものの、2023年の韓国の防衛輸出は多角化の面で成功を収めた。2023年の輸出先は従来の4カ国から12カ国に拡大し、輸出された兵器システムの種類も6種類から12種類に倍増した。韓国はその多様な顧客基盤を拡大し、今では豪州から東南アジア、中東、欧州諸国など複数の地域にまたがって、戦車、榴弾砲、戦闘機、多連装ロケットシステム、装甲車、外洋哨戒艦などさまざまな品目を販売している。さらに、武器売却は、装備品や部品の供与、訓練プログラムの実施、共同開発の取り組みを含んでおり、兵器の販売にとどまらず、韓国の防衛協力を促進する上でますます重要な役割を果たしている。
2024年については、韓国政府は武器輸出額を200億ドルにするという野心的な目標を掲げている。この目標は、世界の防衛市場における韓国の地位の向上を反映するとともに、同志国と協力して国際場裏でより影響力のある役割を果たすという同国の戦略的ビジョンと合致している。
防衛輸出がグローバル中枢国家としての韓国の新たな役割を国際社会にアピールする上で大きく寄与してきたことは明らかである。韓国は紛争当事国に対する兵器供与を制限する政策を取っているため、ウクライナ支援にあたり殺傷力のある兵器を直接提供してはいないが、米国に155mm砲弾を輸出することで米国によるウクライナへの弾薬供与を支援する一方、ポーランドに対しては韓国製部品を組み込んだクラブ榴弾砲の対ウクライナ輸出を承認した。さらに、韓国による近年の北大西洋条約機構(NATO)諸国への武器輸出は、対ウクライナ支援によりNATOの軍事力が制約を受ける中、その強化に寄与している。実質的に、韓国の武器輸出は間接的にウクライナの防衛に貢献しており、同志国を支援し、共通の価値を支える上で韓国の役割が大きくなっていることを示している。
タイミングの良さか、それとも別の要因か
タイミングが完璧であったことが、韓国の防衛輸出の成功において極めて重要な役割を果たした。世界の安全保障環境は不安定さを増しているため、世界の国防費はかつてない水準に達しており、世界的に武器売却が促進されている。2023年の世界の軍事費の総額は過去最高の2兆2,000億ドルに達し、前年比で9%増加した。今年の軍事費は記録をさらに塗り替える見通しである。ウクライナで戦争が続く中、一部の欧州諸国では、東部前線で高まる需要に対応し、自国の国防を強化するための生産能力が不足している。ウクライナ侵攻に伴う対露制裁により、ロシアによる武器輸出は困難になっている。かつてロシアにとって重要な顧客であったベトナムは、5年間でロシア製兵器の割合が22%から16%に減少した。
このような状況の中で韓国はチャンスをつかんだのである。朝鮮戦争以来、北朝鮮による脅威が続いているため、韓国は防衛産業強化に多大な努力を費やしてきた。政府と企業の緊密な協力に基づき、超党派の支持を受けて、ハンファ・エアロスペース、韓国航空宇宙産業(KAI)、現代ロテム、LIGネクスワンなどの主要な兵器メーカーは、今や世界の防衛市場において存在感を示すのに十分な競争力をつけている。
韓国の技術力、大量生産能力、迅速な納期対応、競争力のある価格設定、NATOとの兵器の相互運用性、信頼できる販売後の保守・整備のおかげで、韓国は世界の顧客にとって魅力的な選択肢となっている。さらに、韓国は現地生産や共同開発を提案することで、巧みに顧客の要請に応えるとともに、手厚い技術移転の機会を提供している。2023年の大きな節目となったのは、ハンファ・エアロスペースがレッドバック歩兵戦闘車129両を供給する24億ドルの契約を豪州と締結したことである。この契約は、K21歩兵戦闘車を豪州向けのAS21レッドバック歩兵戦闘車に仕様変更し、豪州国内で生産することにより地元経済と国防産業に恩恵をもたらすことを通じて、韓国が顧客に応えられることを示した。
尹政権がグローバル中枢国家のビジョンに沿って防衛輸出促進のために相当な外交支援を行うと同時に、技術的・財政的・制度的支援を提供したことも特筆に値する。実際、尹政権の国家安全保障戦略には、防衛輸出は安全保障、外交、政治、国家間の相互信頼と密接に関連しているという認識の下、防衛輸出拡大を目指した「政府を挙げた支援体制」を確立するという韓国政府のコミットメントが反映されている。
韓国政府は、防衛産業分野で米国との連携強化に向けた取り組みを強化している。昨年10月のソウル国際航空宇宙および防衛産業展示会(ADEX)では、KF-21戦闘機が米軍の主要軍用機と並んで初の公開デモ飛行を行ったほか、米軍のB-52爆撃機が上空飛行を行った上で韓国の空軍基地に初めて着陸した。これらの出来事は、北朝鮮に対する抑止のメッセージを強化するだけでなく、防衛産業における韓国の競争力強化にもつながっており、韓国の存在感と説得力が高まった。さらに、韓国は米国との間で相互の防衛調達(RDP)に関する協定を締結する可能性があるが、その目的は防衛分野のサプライチェーンにおけるパートナーシップを強化することにあり、協定締結による米国やその同盟国・パートナー国の市場へのアクセス拡大を通じて防衛輸出を促進することが期待される。
尹大統領は、安全保障パートナーシップを強化し、韓国の防衛産業の知名度を高めるために外遊を巧みに活用しており、訪問国だけでなく世界中の顧客に向けて防衛産業を宣伝している。こうしたアプローチの好例となっているのがアラブ首長国連邦(UAE)との戦略防衛協力および多目的輸送機の共同開発プロジェクトに関する覚書や英国との初の共同防衛輸出に関する覚書であり、いずれも両国への訪問中に締結されたものである。さらに、尹大統領が欧州、東南アジア、中東の主要武器市場を訪問した際、兵器メーカーを同行させて売り込みを図ったことは、韓国がこうした側面で積極的な取り組みを行っていることを一層浮き彫りにしている。
課題
ウクライナ戦争、イスラエル・ガザ紛争、台湾海峡をめぐる緊張、イランの代理勢力の活発化などのさまざまな不安定要素を背景に、今年の世界の武器市場は拡大する見通しであり、韓国は世界市場で足場を固める態勢が整っている。欧州、東南アジア、中東には潜在的な輸出機会がある上、ポーランドとの新規契約の交渉も現在進んでいる。韓国国会は韓国輸出入銀行の資本限度額を15兆ウォンから25兆ウォン(187億ドル)に引き上げる法案を可決しており、韓国の防衛輸出は一層促進されるだろう。
しかし、現在こそ成功を収めているものの、韓国の防衛産業の未来は必ずしも明るいとはいえないかもしれない。韓国には防衛技術の独自開発能力が不足しているため、その基幹技術を米国に大きく依存している。また、韓国の防衛輸出を阻害しかねない不測の事態が生じるおそれもある。例えば、インドネシアとのKF-21戦闘機共同開発プログラムでは、インドネシア側の技術者がKF-21の秘密情報を漏えいしたほか、分担金未納分が1兆ウォン近くに達するなどの課題に直面している。欧州連合(EU)初の防衛産業戦略に記載されているように、EUは欧州域内の防衛産業の連携強化に向けた強い意向を持っており、韓国が欧州の武器市場にアクセスする上で課題となる可能性がある。何よりも、韓国の防衛産業に対するアプローチは短期的な成果に偏りがちで、包括的な長期戦略を欠いている。防衛産業は国家のビジョンと政治的方向性を表す広告塔の役割を果たしている。すなわち、防衛産業は地政学と相互に複雑に結びついており、武器取引に伴う単なる経済的利益を超越しているのである。この点に関連して、韓国は防衛産業輸出を熱心に推進しているが、グローバル中枢国家としてのメッセージ発信と役割との間で矛盾をはらんでいるという課題に直面している。
尹大統領は、防衛産業は「平和産業」であり、専ら「価値観を共有し、国際秩序を尊重する」国々を強化するためのものであると明言した。しかし、昨年5月、駐韓ミャンマー大使が韓国の兵器PRイベントに参加し、K2戦車の上に乗っているところを写真に撮られたことは、普遍的な価値観の擁護に尽力する主要防衛輸出国としての韓国の信頼性に疑問を投げかけるものである。加えて、批判の声こそ広がってはいないものの、UAE、エジプト、サウジアラビアなど、米国の主要なパートナーでありながら、自由民主主義の模範例とは言い難い国々に武器を積極的に売却することは、グローバル中枢国家であるという韓国のメッセージに矛盾があることを示唆しているのかもしれない。
さらに、韓国が世界の武器貿易におけるプレゼンスを拡大するにつれ、これまで意図的に深くは関与してこなかった特定の安全保障問題や領域において、より大きな役割を担うよう求める圧力が高まることは避けられない。そのことは、ロシア、北朝鮮、中国といったさまざまなステークホルダーを巻き込み、韓国がかじ取りを行う地域の安全保障ダイナミクスをいずれ複雑化させることになる。官民の緊密な協力を通じて製品の質を高め、体系的な改善を図る取り組みを強化することも重要であるが、韓国は防衛輸出を通じて発信・追求しようとしているグローバル中枢国家としてのナラティブと目標を洗練させることにも時間をかけるべきである。
●なぜアメリカは武器供与の停止に言及したのか イスラエルへ過去最大の警告 5/10
アメリカはイスラエルに対して唯一、真の影響力をもつ国だ。しかしイスラエルは、パレスチナ自治区ガザでの戦争を通して、その最も友好的な国の忠告のほとんどをあえて無視し続けている。
米政府は、イスラム組織ハマスを相手とする戦争への支持は「鉄壁」だとしている。だが、イスラエル軍が民間人を守らず、ガザの人々が人道支援を受けられていないことについては、繰り返し懸念を示している。
アメリカは7カ月の長期にわたり、イスラエルへの圧力を徐々に強めてきた。内々に忠告し、公に警告してきた。国連では、イスラエルへの非難決議に拒否権を行使するのをやめた。パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のイスラエル人入植者らに制裁を科した。
ジョー・バイデン大統領は、1カ月前の電話協議でとりわけ断固とした姿勢を示した。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対し、イスラエルが支援物資のトラックをガザに入れないなら、アメリカは支援を縮小すると告げた。
しかし、こうした忠告や説得の多くに、イスラエルは耳を貸さなかった。そこでアメリカは今や、最も強硬な手段に訴え始めた。
なぜ強硬策に訴えるのか
イスラエルにとってアメリカは、武器と弾薬の最大の供給源だ。イスラエルに毎年38億ドル(約5900億円)の軍事支援をすることが法律で決まっている。イスラエルを近隣諸国より優位に立たせるのが目的だ。米議会は先月、追加で140億ドルの軍事支援を提供する予算案を可決した。
そしていま、バイデン政権は初めて、イスラエルへの軍需品の輸送を一時停止している。政権高官はBBCに、2000ポンド爆弾など数千発の爆弾の運び入れを停止中だと明らかにした。
この高官はまた、他の武器についても売却の見直しを進めていると述べた。対象には、自由落下爆弾を精密誘導弾に変えるための機器などが含まれるという。
なぜアメリカは、イスラエルに対しておそらく最大の影響力をもつ手段を、ついに行使することにしたのか。理由の一つ目として、ガザ南部ラファでの対ハマス軍事作戦が挙げられる。アメリカと多くの西側諸国は、この作戦が民間人の多大な犠牲と人道上の大惨事を招くとしている。
米当局は輸送を延期している爆弾について、ラファの密集した都市環境で使われれば、壊滅的な結果をもたらすはずだと説明。イスラエルによるラファ攻撃をアメリカは望んでおらず、そのメッセージを強調する一つの方法が、今回の延期だとしている。米紙ワシントン・ポストは、今回の武器輸送の延期を、アメリカの懸念がいかに深刻かをイスラエルに伝える「警告」だとする米当局者の話を伝えた。
二つ目の理由は、ハマスとの停戦合意を支持するようイスラエルに圧力をかけ続けたいという、アメリカ側の強い意向だ。停戦と人質解放に向けた交渉は、エジプト・カイロで続いている。アメリカとしては、イスラエルが妥協しないならそれに伴うコストを拡大するという状況を作りたいのかもしれない。
アメリカ国内政治の問題
理由の三つ目は紛れもなく、アメリカの国内政治だ。バイデン氏には民主党支持者らから、イスラエルへの支持を抑えるよう大きな圧力がかかっている。
今年は米大統領選挙の年だ。世論調査は、一部の民主党支持者(特に若い世代)が11月の投票日に、バイデン氏への投票をためらうかもしれないと示している。ガザでの戦争でアメリカが果たしている役割が原因だ。投票率が低ければ、共和党のドナルド・トランプ前大統領との争いで、バイデン氏は大打撃を受ける可能性がある。
イスラエルへの軍事支援を差し控えるという決定は、アメリカにとってリスクを伴う。イスラエルはまたも、アメリカの発言や対応をただ無視して済ませる可能性がある。長期的なアメリカの軍事支援は続くはずだと見越して、アメリカ政府の警告は、はったりに過ぎないとあしらうかもしれない。
そうすれば、世界におけるアメリカの影響力低下を公然と示すことになる。ただしイスラエルも、最大の友好国との間に歴史的な亀裂が入るのは嫌うかもしれない。イスラエルは防空システムを全面的にアメリカに依存している。ほんの数週間前にはその防空システムが、イランのドローン(無人機)とミサイルによる大規模な攻撃からイスラエルを守った。
大きな試練は、アメリカの兵器を使ってイスラエル軍が人権侵害を犯しているのか、米国務省が判断するときにやって来る。調査については近々、声明が出る予定だ。
最後に、アメリカはイスラエルの唯一の友好国ではないことも指摘しておく。アメリカがイスラエルへの武器売却を延期すれば、イギリスなどの国々にも同様の措置を取るよう圧力がかかるだろう。そうした制限は、実際的というより象徴的なものだ。それでも、イスラエルの外交的孤立を助長することにはなるだろう。
●ロシア、米国の武器到着までの「好機」に攻撃激化か 西側分析 5/10
西側の情報当局者らは、米国からの武器や弾薬がウクライナの前線に届くまでの時間をロシアは「好機」ととらえ、その間に地上と空からの攻撃を強めようとしていると分析している。最新の戦況評価を直接知る当局者3人がCNNに明らかにした。
米国ではウクライナへの軍事支援などを盛り込んだ法案が先月、成立した。当局者らは、米国で資金が確保されてから、戦況に大きな影響を及ぼす武器などが大量に到着するまでに時間がかかると指摘。到着の遅れにロシアは付け込むとみている。
8日未明にかけてロシアはミサイルとドローン(無人機)を用いて大規模な攻撃を行った。ウクライナ当局者によると、ロシアはミサイル55発とドローン21機でウクライナ各地のエネルギーインフラを攻撃した。同国最大の電力会社は、この6週間で同社の施設が攻撃を受けるのは5回目だと明らかにした。
米国のウクライナ支援法は先月、イスラエルや台湾への支援とともに成立した。共和党の右派が法案に反対していたために、下院での採決には数カ月を要した。
法案の採決と成立の遅れにより、ウクライナ軍は領土と人員の両方で犠牲を払うことになったと当局者らは指摘する。ロシア軍はウクライナ軍の武器不足というこの絶好の機会が失われる前にさらに前進すると予想される。
西側諸国とウクライナの当局者は、激しさを増す当面の攻撃は、ロシアが計画している初夏の大規模攻撃につながるとみている。ウクライナ軍が人員不足に直面している中、同国や米国の当局者は、ロシアが部分的な動員をかけることも懸念している。
米軍当局者はCNNに、ウクライナは今後数週間、「戦線を維持するだけで精一杯だろう」との見方を示した。
●特殊作戦軍司令官また交代 ウクライナ、戦況停滞で混乱か 5/10
ロシアから侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は9日、特殊作戦軍のルパンチュク司令官を解任し、後任にツレパク副司令官を任命した。ウクライナメディアが報じた。ルパンチュク氏は昨年11月に司令官に就いたばかりだった。戦況が停滞する中、軍高官らの人事に混乱が生じている可能性がある。
要人警護を担う国家警備局の局長の解任も9日発表した。大統領らの暗殺計画に関与したとして同局の大佐2人が拘束されたことを受けた措置とみられる。
ゼレンスキー氏は2月に人事刷新を開始。軍総司令官のザルジニー氏を解任し、侵攻当初からゼレンスキー氏を支えてきた国家安全保障・国防会議書記のダニロフ氏も3月に解任した。
英字紙キーウ・インディペンデントによると、ツレパク新司令官は2014年に東部ドネツク州の空港防衛作戦の指揮官を務め、20年に特殊作戦軍の副司令に就任した。
ゼレンスキー氏は9日、戒厳令と総動員令を8月11日まで延長する法律に署名。ロシアの侵攻開始に伴い全土に発令され、延長を繰り返している。
●ウクライナ大統領、警護トップを解任 ロシア指示の暗殺計画巡り 5/10
ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、自身に対する暗殺計画を巡り、国家警護局のルディ長官を解任した。保安局(SBU)が7日、計画に関わった国家警護局の大佐2人の拘束を発表。ルディ氏は責任を取らされたとみられる。
ルディ氏は2019年から警護官を束ねる同局を率いていた。
SBUの発表によると、大佐2人はロシア連邦保安局(FSB)から指示を受けていた。「実行役」の警護官を勧誘したり、ドローン攻撃の目標を選定したりする任務を課せられていたといい、国家反逆とテロの容疑に問われている。
●中国、ハンガリーとの関係格上げ 欧州への影響力確保狙う 首脳会談 5/10
ハンガリーを訪問中の中国の習近平国家主席は9日、ブダペストでオルバン首相と会談し、両国関係を外的環境の変化に左右されない「全天候型」の全面的戦略パートナーシップに格上げすることで合意した。
両国は中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の強化でも一致。ブダペストとギリシャの首都アテネを結ぶ高速鉄道の建設を加速させるほか、ブダペスト周辺の貨物鉄道の拡充などを進める。さらに原子力発電分野での協力も拡大することで合意した。
習氏は会談後の記者会見で「中国は、ハンガリーが欧州連合(EU)内でより大きな役割を発揮し、中欧関係のさらなる発展を推進することを支持する」と述べ、EU加盟国であるハンガリーとの緊密な関係をてこに、欧州への影響力を確保する狙いを示した。
オルバン首相は「私たちは今、多極化した世界にいる。その新しい世界秩序の大きな柱が中国だ」と中国をたたえた。
ハンガリーは経済の中国依存からの脱却を図るEUの批判をかわしながら、中国からの投資をさらに呼び込み経済成長につなげる戦略とみられる。
会談ではウクライナ情勢も議題に上がった。オルバン政権はロシアのプーチン政権に近いとされ、ウクライナに侵攻するロシアに対する中国の「中立」姿勢にも理解を示している。習氏は会見で、ウクライナ情勢などを念頭に、両国が「国際、地域情勢を巡る立場が近い」と指摘した。
一方、ハンガリーと中国の接近は、EUの足並みを乱すことが目立つオルバン政権への批判を、さらに高める可能性がある。
●中国とハンガリー、蜜月強調=EV、原発で連携 5/10
欧州を歴訪している中国の習近平国家主席は9日、ハンガリーでオルバン首相と会談し、両国関係を常に信頼できる「全天候型」の包括的戦略パートナーシップに格上げすることで合意した。習氏はその後の共同記者発表で、中国とハンガリーは「史上最良の時期にある」と蜜月を強調。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」を通じハンガリーへの援助を強化する考えを示した。
両国は電気自動車(EV)や鉄道、原発分野など、18件の開発案件や協力事業で署名を交わした。首脳会談ではロシアの侵攻を受けるウクライナ情勢についても話し合い、早期の和平実現を目指す方針で一致した。
●イスラエル、米から数十億ドルの兵器追加確保へ 一部輸送停止でも 5/10
バイデン米政権はイスラエルへの兵器輸送の一部を一時停止し、他についても見直しを進めているが、なお数十億ドル規模の兵器がイスラエルに届けられる見通し。
政権高官は今週、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ南部ラファの本格侵攻で使う可能性がある兵器の提供について検証した結果、爆弾の輸送を一時停止したと述べた。 もっと見る
議会筋は「数千万ドル」規模の爆弾が対象と試算した。
上院外交委員会の共和党トップ、ジム・リッシュ氏は無誘導爆弾を精密兵器に変える統合直接攻撃弾(JDAMS)、対戦車弾、迫撃砲、装甲車両など、他のさまざまな装備がイスラエルに輸送されると記者団に語った。
輸出審査が長引いているとも指摘した。
バイデン大統領は8日のCNNのインタビューで、イスラエル軍がラファに大規模侵攻した場合、イスラエルへの武器供給を停止すると警告した。 もっと見る
これとは別に、下院外交委員会の民主党トップであるグレゴリー・ミークス氏は、F15戦闘機を含む180億ドル規模のイスラエル向け武器移転を保留にした。イスラエルがどのように兵器を使用するかの情報が必要としている。
イスラエルのネタニヤフ首相はバイデン氏の発言に反発し、9日のビデオ声明で「爪を使って」でも戦うと述べた。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は、イスラエルが自衛に必要な武器を提供し続けると強調した。
●ラファへの地上作戦“武器供与せず” 米とイスラエルに亀裂か 5/10
ガザ地区南部ラファへの地上作戦をめぐり、アメリカのバイデン大統領が武器を供与しないと警告したことで、アメリカとイスラエルの間に深刻な亀裂が入るのではないかとの懸念が出ています。アメリカの有力紙は両国の関係が「史上最悪の危機の1つ」と伝えています。
イスラエル軍はイスラム組織ハマスの壊滅に向けてガザ地区南部ラファへの地上作戦を強行する構えを見せています。
これについて8日、バイデン大統領はCNNテレビとのインタビューで、イスラエルがラファへの大規模な地上作戦を行った場合、砲弾などの武器を供与しない考えを明らかにしました。
これに対してイスラエル側は、激しく反発しています。
9日、ネタニヤフ首相やガラント国防相がイスラエルを止めることはできないとする内容の発言を重ねて示しました。
極右政党の党首でもあるベングビール国家治安相はSNSでハートマークを使ってハマスとバイデン大統領が相思相愛だと受け取れる趣旨の投稿を行い、バイデン大統領の発言を批判しています。
また、イスラエル軍のハガリ報道官は、9日、記者会見の中で「イスラエル軍は、現在計画している作戦と、ラファでの作戦に必要な武器を保有している」と述べ、アメリカからの供与がなくても武器などの十分な備えがあると明らかにしました。
アメリカの有力紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」はイスラエルがレバノンを爆撃した1981年に当時のレーガン大統領がイスラエルへの戦闘機の供与を延期したことを引き合いに出し「武器供与の停止はアメリカとイスラエルの関係において過去最悪の危機の1つになる可能性がある」と報じています。
●ガザ停戦交渉、合意なく終了 イスラエル首相は戦闘継続崩さず 5/10
パレスチナ地区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘休止と人質解放に向け、仲介国エジプトの首都カイロで7日から開かれていた間接交渉は合意に至らず、9日に終了した。関係筋が明らかにした。
ハマス代表団は仲介者が提示した停戦案を再確認し、カイロを離れたという。提案にはパレスチナ自治区ガザのイスラエル人の人質解放と、イスラエルが拘束している多数のパレスチナ人の解放が含まれている。
イスラエル高官も交渉が終了し、ハマスの人質解放案について留保する意向を仲介国に伝えたと明かした。また、ガザ最南部ラファなどでの作戦を予定通り続行すると述べた。
イスラエルのネタニヤフ首相は、本格侵攻すれば武器支援をやめると米国が強い警告を発する中、あらゆる手段で戦うと表明。ビデオ声明で「もし必要なら爪でも戦うだろう」とし、「だが、われわれには爪以上の力がある」と強硬姿勢を堅持した。
イスラエル軍のハガリ報道官は、作戦に必要な武器弾薬はあると強調した。
住民などによると、イスラエル軍は9日にラファで攻撃を実施。同市東部のブラジル地区で少なくとも3人が死亡、負傷者も出た。サブラ地区では住宅2軒への空爆で、女性や子どもを含む少なくとも12人が死亡したという。死者には過激派組織の司令官とその家族らが含まれていた。
一方、ハマスとイスラム聖戦はガザ東方に集結したイスラエル軍の戦車にロケット弾と迫撃砲を発射したと発表した。
米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は9日、バイデン大統領はイスラエル軍がラファで大規模な侵攻に踏み切ってもハマス壊滅という目標達成にはつながらなないと考えていると述べた。バイデン氏は前日、イスラエル軍がラファに大規模侵攻した場合、イスラエルへの武器供給を停止すると警告していた。
この警告について、イスラエルのヘルツォグ駐米大使は9日、イスラエル軍によるラファ侵攻計画を巡って依然として協議が行われている中で、こうした発言が公になったことは「誤ったメッセージを送ることになる」と反発した。
●プーチン大統領「ベラルーシが戦術核演習に参加」 ウクライナ侵攻をめぐり一歩も譲歩しない姿勢を強調 5/10
第2次世界大戦戦勝記念日の式典で「戦略核部隊が戦闘準備態勢にある」と述べたロシアのプーチン大統領は、式典終了後、“近く行うとする戦術核兵器の演習にベラルーシも参加することになった”と明らかにしました。
ベラルーシにはロシアの戦術核が配備されています。核戦力をめぐる一連の発言は内外から注目されるタイミングで、ウクライナ侵攻をめぐり一歩も譲歩しない姿勢を強調した形です。 
 5/11-5/20

 

●ロシア出身コラムニスト小原ブラス氏 プーチン大統領5期目の国民感情に言及 5/11
ロシア出身のタレントでコラムニストの小原ブラス氏(32)が11日、東野幸治(56)がMCを務めるABCテレビ「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」(土曜午前9時30分=関西ローカル)に出演。プーチン大統領が5期目に入ることになったロシア国民の感情に言及した。
小原氏は、プーチン大統領について「演説とかするときに、いわゆるKGBっぽい人のしゃべり方をする。説得力がある。長いこと話を聞いてるほど、正しいかも? と思わせてしまう」と、指摘。
続けて「開戦当時、(ウクライナ侵攻を)反対と言っていた人も、支持に変わっている。僕は、個人的に、そういう印象を持っている」とした。
支持層としては「高齢が多い。若い子たちは不支持を表明する熱量がないというか…」とも言い、これには東野も「日本にも似てるところがある」と、日本国内の現況を鑑みて同調した。
また、ロシア軍事専門家の小泉悠氏も「今回の支持が、圧倒的に高い。プーチンの言葉、ある程度、刺さっていると思うんですよね」と、プーチン大統領支持の国内での高まりについて言い及んだ。
さらに、小原氏の発言を受けて「小原さんが言う通り、プーチン大統領はロシアの歴史などをきっちり伝え、『分かってるじゃないか』と思わせる。その上で、今年は『ロシアには核抑止力がある』から入った。歴史的なことだけじゃなく、やはり今は戦時だから」。聴衆を引き込むプーチン大統領の技量を説明した。
1992年生まれの小原氏も「ちょうど僕が生まれた時が一番つらい時代で、ほんとに(生活するのに)物々交換っていうイメージがある」と回顧。その上で、現在のロシア国民には「その時に、一番嫌いなのがアメリカ。アメリカ嫌いっていうか、ゴルバチョフが嫌い。せっかく西側に(国を)開いたのに、何も変わらない。(西側に)見捨てられたという思いがある」と指摘した。
これに、ほんこんは「ロシア人の感情、わかるけど、それは違う話で。民主主義が成り立ってない。これでええのか? 国民がやっていかな。争いは収まれへんよ」と発言。
小原氏は「(国民感情として)自分だけが声をあげても仕方ないというのもあるとは思うけど、あとは、そもそも給料も上がっているから。みすみす自分の(暮らし)を悪くするのもどうなのかっていう気持ちになってる(という背景がある)から」と言い、淡々と母国国民の心情を分析し、返していた。
●プーチン・大統領就任式で「すべての計画を実現させ、共に勝利しよう」と演説。自分は絶対に間違わずに行動するリーダーという路線を生涯崩さない姿勢がもたらす未来とは 5/11
5月7日、クレムリンでプーチンの大統領就任式が行われた。現在71歳のプーチン政権はどこまで続くのだろうか。長年、プーチンの動向を見続けてきた軍事評論家の黒井文太郎氏が解説する。
長期独裁プーチン政権の読み方
5月7日、クレムリンでプーチンの大統領就任式が行われました。プーチンの大統領就任は5回目。途中、首相に退いて事実上の院政を敷いた時期もありますが、現在にいたるまですでに24年間も政権のトップにいます。
任期は今後6年間ですが、2020年の憲法改正で次の出馬も可能になっているので、本人が健康であれば、さらに6年追加で12年後の2036年まで独裁者の地位にいることが可能となります。現在71歳。2036年には83歳で常識的には引退の年齢ですが、彼がその気になれば再びの憲法改正で、さらに続けることも十分にあり得ます。
とにかくロシアでのプーチンの独裁権力は盤石で、ロシアの政官界でも軍でも、誰もがプーチンへの忖度を最優先しています。プーチンの独断で開始されたウクライナ侵略がもう2年以上も泥沼化していて、ロシア軍にも30〜50万人もの大量の死傷者が出ていますが、ロシア国内ではプーチン批判はタブーなので、ウクライナへの侵略も一切、批判されません。
今回の大統領就任式を含め、プーチンはしばしば自分の声でロシア国民向け演説をしますが、それは常に自己正当化で貫かれています。今回も「すべての計画を実現させ、共に勝利しよう」と語っていますが、この計画はプーチンの計画ですから、つまりは今後も自分の方針は変更しないし、国民は文句言わずに自分に従えという意味になります。
前述したようにウクライナ戦は泥沼化しており、メディアではしばしば停戦の可能性について報じられますが、プーチンは侵攻開始時に自ら語った目的である「ネオナチ政権の打倒」つまりはウクライナ政府の打倒、と「ウクライナ軍の解体」つまりはウクライナ軍の降伏を取り下げませんので、プーチンの言葉が実現されない内容での停戦は現実的ではありません。
今回の大統領就任式での演説では「西側と対等な立場でなら対話は可能」と主張していますが、これは立場を軟化させたわけではまったくなく、前述したようなロシア側の要求を西側がのむならば、という従来の発言と変わりません。
彼はロシア国内で長年にわたり、誰よりもタフなリーダー像を強く打ち出しており、間違いを認めて訂正するということはしません。ロシアでは、そんなプーチンの言葉を正当化することだけが、戦争を含むすべての政策で絶対的に最優先されます。
では、プーチンはどういう手段でこれほどの独裁権力を手に入れたか、経緯を簡単に説明します。
プーチンが絶対的な独裁者になるまで
まず、プーチンは前大統領のエリツィンに取り入って、1999年に後継者指名を受けました。ただ、プーチンは何の準備もなく、ただ棚ボタで大統領になったわけではありません。大統領後継指名の直後に、プーチン側から次の政権の方針についての文書が発表されていますが、その内容は強いロシアの復活に向けた実に詳細なものでした。政権奪取を見据えて充分に準備されていたことがうかがえます。
もっとも、プーチンはそれを単独で準備していたわけではありません。プーチンは旧ソ連時代にKGB(ソ連国家保安委員会)工作員でしたが、サンクトペテルブルク副市長時代に旧KGB人脈の仲間たちがいました。プーチンがその後、1996年にモスクワ政界に転じ、エリツィンに取り入って大統領府副長官、FSB(連邦保安庁)長官、首相と駆け上がっていくなかで、旧KGB人脈が彼を裏で支えました。つまり、ソ連崩壊後に不遇の時代を過ごしていた旧KGB人脈が復権していくなかでの、表の代表者がプーチンだったわけです。
プーチンはエリツィンの後継者として大統領になりましたが、就任後はエリツィン人脈を徐々に排除し、旧KGB人脈を取り立てていきます。旧KGB人脈を権力構造の中枢に集中させ、エリツィン時代に権勢をふるった新興財閥も排除していきました。
新興財閥を排除し、治安機関強化で秩序回復を進めるプーチンに、エリツィン時代の無秩序ぶりを経験していた国民の多くが拍手しました。
プーチンは同時に、旧KGBが得意だった情報統制にも乗り出し、メディア支配を徹底。プーチンの実績を誇大宣伝し、国民の意識を誘導します。2003年からの国際的な石油高騰によってロシア経済は劇的に向上し、それもプーチンの人気を後押しします。こうしてプーチンは堅い支持基盤を手に入れました。他の有力者の人脈を追い落とすために当初は旧KGB人脈に支えられていたプーチンですが、徐々にプーチン個人の存在感が突出していき、絶対的な独裁者になっていきました。
2008年、大統領は連続2期まで(当時は1期4年間)という当時の憲法規定でプーチンは一時的に首相に転じますが、傀儡の大統領には旧KGB人脈の実力者ではなく、サンクトペテルブルク時代初期からの“子分”である軽量級のメドベージェフを充てました。2012年に大統領に復帰しますが、そのときはもう完全に独裁者でした。
プーチンの言葉を正当化することがロシア政府の判断の基礎
そんなプーチン独裁権力が究極的に極まり、事実上の「皇帝」となったのは2014年でしょう。ウクライナの政変への対処で、簡単にクリミア半島を手に入れ、ウクライナ東部でも親ロシア傀儡勢力の支配エリアを確立したプーチンは、ロシア国内で「ロシア系の同胞を救った偉大な指導者」として崇め奉られる存在になりました。
なお、プーチンは40代で権力者になった当初から、人々に軽く見られないよう、前述の強くてタフなリーダー像を打ち出してきました。独断で正しい行動ができる男らしい指導者という自らのイメージは、“皇帝”として絶対的なものになりました。
その後のプーチンは、すべてを自らの言葉で堂々と語り、絶対に選択は間違わず、果敢に行動するリーダーという偶像の路線を、頑なに守っています。それを崩すことは生涯ないでしょう。
したがって、ロシアの今後の動向を予測するうえで最重要なのは、皇帝プーチン本人の言動です。ロシアの客観的な政治経済・軍事状況とは関係なく、彼の言葉を正当化することがロシア政府の判断の基礎になっているからです。
5月9日、モスクワでは対独戦勝記念日の軍事パレードが行われましたが、その際の演説でプーチンは「私たちを脅かす者は誰も許さない。核兵器の運用部隊は常に即応戦態勢にある」と発言しました。すぐにでも使うと言ったわけではなりませんが、ロシアあるいはプーチン政権が危機に陥れば核使用することを示唆したわけで、自分の発言を絶対に撤回・訂正しないプーチンの言動としては、無視できない発言といえます。今後も彼の発言、とくに微妙な“言い回し”に要注目です。
●ミシュスチン首相を再任 経済閣僚ら留任と報道―ロシア 5/11
通算5期目に入ったロシアのプーチン大統領は10日、ミシュスチン首相を再任した。2020年から務めるミシュスチン氏の続投をプーチン氏が9日付で提案し、下院が10日に政権与党「統一ロシア」などの賛成多数で承認したのを受けた。最大野党・共産党は採決を棄権した。
ロシア紙RBK(電子版)は10日、複数の関係者の話として、最終調整の段階にある新内閣の人事を詳報。「骨格は維持される」(マトビエンコ上院議長)という事前の説明通り、経済閣僚を中心に大半が留任するとみられている。
●プーチン大統領、ミシュスチン氏を首相に再任命 下院承認後 5/11
ロシアのプーチン大統領は10日、ミシュスチン氏を再び首相に任命した。ロシア政府が発表した。
これに先立ち、プーチン大統領はミシュスチン首相の再任を議会に提案し、下院が投票で承認していた。
ミシュスチン氏は戦時下で経済的難局を乗り切るためプーチン氏を支えてきたテクノクラート(専門知識のある官僚)として知られている。
プーチン氏の全ての決断を支持してきた議会には事実上反対派がいないため、同氏の承認はほぼ確実となっていた。
再選を果たしたプーチン大統領の新任期入りに伴い、政府は憲法に沿って総辞職していた。
プーチン氏は大規模な内閣改造は行わないと予想されており、ショイグ国防相やラブロフ外相などの主要閣僚は留任する見通し。
これによりプーチン氏は安定をアピールできるとアナリストは指摘する。
●「この8年間プーチンは国民を洗脳してきた」...政府系メディアに乱入した女性が捜査官相手に吐いた反戦抗議の「納得の理由」 5/11
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。
ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。
長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』より抜粋してお届けする。
薄暗い路地で
弁護士と面会したいなら自分たちと一緒に別の場所に来るように、と言われた。言い争っても無駄だ。テレビセンターの裏口から出て警察車両に乗り込んだ。右手の窓越しにオスタンキノのテレビ塔がカラフルな照明を浴びていた。左手には高層ビル群が高くそびえていた。
「どこへ連れて行くんです?」と用心深く聞いた。同行者たちは黙っていた。クルマは暗い路地に入り、しばらくすると外部から見えないように高い塀で目隠しされた灰色の2階建ての建物のところでブレーキをかけた。正面の白い看板には赤い字で〈全ロシア・エキスポセンター警察署〉と書かれていた。
「この並木道は何度も歩いたけど、エキスポセンターの公園に警察署があるとは思ってもみなかった」わたしは言った。
建物に入った。当直の他は人っ子一人いなかった。
「弁護士はどこ?」書類が山のように積んである小さい部屋を見まわしてきいた。答えはなかった。捜査官はドアをしっかり閉め、穏やかな声で、自分は過激派対策センターの者だと説明し始めた。
「これは取り調べですか?せめて息子に電話させてください。息子は心配しています。いつもなら、もうだいぶ前に家に着いている時刻ですから」
「これは取り調べじゃありません。友好的に話をしたいだけです」
友達に対するような微笑みを浮かべて過激派対策センターの男は言った。
男の問い
「ほら、何もメモしてないでしょう。なんであんなことをしたのか知りたいだけなんです。誰に頼まれたんです?」
「わたしの良心です。わたしは大人ですから決断はすべて自分で下します。もう一度言いますが、これはわたしの個人的な選択です。これ以上黙っていることはできません。この20年、プーチンはロシアの独立系メディアを全部潰しました。NTVの解体に始まってテレビ局ドーシチ、ラジオ局モスクワ・エコーを潰し、いまではロシアには反対派メディアは残っていません。
テレビ局はすべて国家の手の中です。マイダンの後、ウクライナはクレムリンの一番の敵になりました。国営メディアは8年間、あらゆる手立てを使ってウクライナ人を人でなし扱いして、ロシア人の間にウクライナ人への激しい憎悪をかきたてたのです。
ウクライナとその住民について何か言う時には、いつも『ナショナリスト』『バンデラの追随者』『右派セクター支持者』『アゾフ大隊』という言葉を使い、独立国家の大統領ヴォロディミル・ゼレンスキーをオンエアで『道化師』『コメディアン』『麻薬中毒者』呼ばわりしてきました。支配下に置くメディアの手を借りながら、黒を白と言いくるめるゲッベルスの手法を使って、クレムリンは国民を洗脳してきました。
大衆の意識を変えることを許したのは、この虚偽の情報なのです。夜も昼も絶え間ないプロパガンダの流れが、あらゆるチャンネルを通して大衆に注ぎ込まれています。何百万ものロシア人が、残酷な死刑執行人の集団になってしまったのも驚くことではありません」
早口に息つく間もなくまくし立てた。怒りがふつふつと心のなかで膨らんでいった。
欺瞞だらけのメディア
「わたし自身はもう10年もテレビを見ていません。わたしの同僚たちも同じです。クレムリンのプロパガンダを信じているのは、あまり教育を受けていない地方の人びとで、おもに一度も外国に行ったことのないお年寄りばかりです。ロシアに住む人の77パーセントは外国旅行用パスポートさえ持っていません。統計では、ヨーロッパやアメリカに行ったことのあるロシア国民はわずか5パーセントです。国民の大多数がプーチンを信じて、西側は敵ばかりだと考えたとしても驚くことではありません。あなたはヨーロッパに行ったことがありますか?」わたしは捜査官にきいた。
捜査官は黙って肩をすくめ、わたしの一方的なおしゃべりを聞いていた。
「8年前に第一チャンネルを辞めなかったのが悔やまれます。でも国際ニュース部で仕事をしていたのが救いでした。プロパガンダを書く必要もなく、CNNやスカイニュース、ロイター、APを見ていられたし、スカイプで政治評論家や学者や欧米の特派員と話ができましたから。しかし現実に起きているあらゆることと、わたしたちが報道で伝えていることの違いへの違和感は年々大きくなっていきました。
何もかも捨てて仕事を辞めていく同僚を羨ましく思いました。わたしにはそんなことはできませんでした。大変な思いで離婚をし、2人の子供がいるし、建てかけの家もあるし、年老いた母もいる、クルマのローンもある、他にもたくさん問題を抱えていましたから。わたしは弱く、テレビ局を辞める強さがなかったのです。一週間働いて次の週は非番というニュース部門のシフトも好都合でした。子供を育て、旅行に行ったり、スポーツをしたり友人と会うには理想的でした。でも戦争の最初の日に、これは袋小路だ、とわかったのです」
すでに時計の針は朝の5時を指していた。窓の外は日の出前の静けさだ。
「疲れました。51条(黙秘権を認める憲法の条文)によれば自分に不利な証言はしなくていいはずです。席を外させてください」
●国連総会、パレスチナの国連加盟を支持する決議案を採択 安保理に加盟の再検討求める 5/11
国連総会は10日に緊急特別会合を開き、パレスチナの国連加盟を支持する決議案の採決を行い、日本やフランスなど143カ国の賛成多数で採択した。イスラエルやアメリカなど9カ国が反対したほか、25カ国が棄権した。
この決議案は、国連安全保障理事会にパレスチナの加盟を再検討するよう求めるもの。
パレスチナは2012年から国連で、正式な加盟国でない「オブザーバー国家」としての資格を持っているが、採決には参加できない。
さらに、国連への正式加盟を決定する権限は、安全保障理事会にだけ与えられている。
安全保障理事会が先月に、パレスチナの国連への正式加盟の勧告を求める決議案について採決した際は、常任理事国のアメリカが拒否権を発動し、決議案は否決された。
しかし今回は、アメリカは拒否権ではなく反対票を投じた。これはパレスチナ人への支持を示すジェスチャーと捉えられる。
パレスチナ自治政府(PA)のマフムード・アッバス議長は採択を歓迎し、「パレスチナは国連への正式加盟に向けて努力を継続する」と声明で述べた。
一方、イスラエルのギラド・エルダン国連大使は、国連が「テロ国家」を歓迎したと非難した。
エルダン大使は国連総会での演説で、国連加盟国が決議案を採択して国連憲章を破壊しているとして、それを示すためにシュレッダーを取り出して国連憲章の書かれた紙を細断してみせた。
欧州諸国、パレスチナ国家承認を計画か
パレスチナをめぐっては、複数の欧州諸国がパレスチナ国家の承認を計画していると報じられている。
欧州連合(EU)のジョゼップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は9日、スペインは21日にもパレスチナ国家を承認すると、スペイン公共放送局RTVEに述べた。ボレル氏は以前、アイルランドやスロヴェニア、マルタもこうした措置を取る方針だとしていた。実施日は明らかにしていない。
パレスチナ人の代表機関、パレスチナ解放機構(PLO)は1988年、パレスチナ国家の樹立を初めて宣言した。
ロイター通信によると、国連加盟193カ国のうち139カ国がパレスチナを国家として認めているが、これはもっぱら象徴的なものとみなされている。
パレスチナ人は実際には、イスラエル占領下のパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区の一部で、パレスチナ自治政府を通じて限定的な自治を行っている。パレスチナ自治政府は2007年にガザ地区での支配権をイスラム組織ハマスに奪われた。国連は両地区を単一の政治組織からなる、イスラエルに占領された領土とみなしている。
イスラエルはパレスチナの国家としての地位を認めず、両地区でのパレスチナ国家の建国に反対している。このような国家は、イスラエルとしての存在を脅かすものだと、同国は主張している。
アメリカはイスラエルの隣にパレスチナ人国家が共存する「2国家解決」を支持しているが、両者の直接交渉を通じてのみ実現されるべきだとしている。
●米がウクライナに軍事支援 高官「ロシア前進も突破口にはならず」 5/11
米国政府は10日、ロシアの侵攻を受けるウクライナに4億ドル(620億円)相当の追加軍事支援をすると発表した。ハルキウ州での戦闘についてカービー米広報補佐官(国家安全保障担当)は記者団に「今後数週間でロシアがさらに前進する可能性はあるが、大きな突破口にはならないと予想している」と語り、防衛に必要な装備を迅速に提供する考えを示した。
今回の支援には、防空ミサイルの「パトリオット」や「ネイサムス」で使う追加のミサイル、携帯式の地対空ミサイル「スティンガー」、高機動ロケット砲システム「ハイマース」とその弾薬の他、155ミリ砲弾、歩兵戦闘車両「ブラッドレー」、欧米製のミサイルや発射台、レーダーをウクライナのシステムに統合する装備などが含まれる。 ・・・
●広島市が平和記念式典にイスラエル招待へ、ロシアは侵攻以降招いていないのに…それダブルスタンダードでは? 5/11
広島市が8月6日に開く平和記念式典に例年通りイスラエルを招待する方針に、批判が広がっている。パレスチナ自治区ガザの犠牲が拡大する中、イスラエルの攻撃を容認するメッセージになりかねない、との懸念からだ。ウクライナ侵攻が始まった2022年以降、招待していないロシアなどへの対応と異なる「二重基準」との指摘もある。被爆地で開かれる式典が、世界の平和構築のために果たせる役割とは。
「ダブルスタンダード」に声を荒げた松井市長
4月24日、広島市役所で開かれた松井一実市長の記者会見。今年の式典にイスラエルを招待する一方で、ロシアと同盟国ベラルーシの招待は、見送る方針を示した。記者からは「一方の戦闘は容認し、もう一方は容認しないという風に見えるのではないか」と質問が上がった。
「受け止める方の意思ですから、私はどうしようもありません」「片方の戦争は良くて、片方は悪いなんてひと言も言っていません」。序盤は淡々と応じた松井市長。ところが「ダブルスタンダードにみえる」と、記者が言及すると、態度が急変。質問を遮って「ダブルスタンダードは取っていない。あなたの解釈です」「勝手に想像しないでください」と声を荒らげた。
広島市によると、式典は米軍の原爆投下で亡くなった推定14万人の死者らの霊を慰めるとともに世界平和を祈ろうと、1952年から開かれている。被爆の実相に触れてもらおうと、2006年以降は日本に大使館のある全ての国を対象に招待し、昨年は過去最多の111カ国と欧州連合(EU)の代表が参加。パレスチナは含まれていない。
ただウクライナ侵攻以降、市は「式典の円滑な挙行に影響を及ぼす可能性がある」としてロシアとベラルーシを招待せず、その代わりに、紛争解決を願う書簡を送っている。市の担当者は「ウクライナを支援する西側諸国が参列を見送る懸念などを、外務省から指摘されて判断した」と説明した。
広島市には1000件超の抗議メールが殺到
松井市長はイスラエルについて「他の国と同じように招待するという基本を貫きたい」と強調したが、4月の会見後、ガザの緊張は高まっている。避難民が集中する南部ラファへのイスラエルの本格侵攻も懸念される中、広島市には5月9日までに1000件超の抗議メールが殺到。総じて「イスラエルを招待すべきでない」「ロシアとベラルーシを招待しないのにおかしい」との内容という。
広島市立大の湯浅正恵教授(社会学)は「イスラエルはこれまでも式典に参加してきたのに、半年以上にわたり侵攻し市民の殺傷を重ね、平和への誓いを裏切り続けてきた」と憤る。市が例年通りの参加を認めれば、「平和都市の広島がイスラエルの攻撃を容認している、とのメッセージを、世界に送ることになりかねない」と危ぶむ。
湯浅さんも参加する市民団体「広島パレスチナともしび連帯共同体」は5月6日から「イスラエル代表を平和記念式典に招待しないよう広島市に要請します」と訴えるオンライン署名を開始。10日午後8時時点で1万3600件の賛同を得た。15日に提出する。
「戦争中の国にはなおさら来てもらいたい」という声も
1991〜99年に広島市長を務めた平岡敬さん(96)は、イスラエルを招待する今回の市の判断について「同国と結びつきの深い米国に配慮する日本政府の方針が働いているのだろう」とみる。市は独自の考え方に基づき、平和を訴えるべきだと唱える。
原爆が投下された8月6日を「核保有国も含むあらゆる国を広島に招待し『戦争を止めよう』と訴える日だ」と捉え、より幅広い国の結集を呼びかける。「戦争中の国にはなおさら来てもらい、78年余り前の惨劇を思ってほしい。核のない世界をつくろう、戦争をやめようという、広島の思いを受け止めてもらいたい」と述べた。
●前線全体で「激しい戦闘」 ロシア軍の攻撃阻止表明 ゼレンスキー氏 5/11
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は10日、前線全体で「激しい戦闘」が行われたと明らかにした上で、地上でのロシア軍による新たな大規模攻撃を阻止すると表明した。
ロシア軍は同日、ウクライナ北東部ハルキウ(Kharkiv)州に奇襲を仕掛け、約2年前に後退した同州の国境地帯に向かってわずかながら前進した。
ゼレンスキー氏は同日夕方、司令官から報告を受けた後、「前線全体で激しい戦闘が行われている」とソーシャルメディアに投稿。
ハルキウ州に援軍を送り、火砲と無人機でロシアの攻撃に対応すると明らかにした。
さらに、ロシア軍の攻撃に武力で立ち向かうとして、西側の同盟諸国に追加軍事支援を呼び掛けた。
ビデオ演説で、「ウクライナの国境および前線で、ロシアの攻撃の意図をくじくような方法で、同国軍を必ず粉砕する」と表明。
「わが国のパートナーが時宜を得た物資で兵士を支援することが重要だ」と付け加えた。
●ウクライナ、越境図るロシア軍を押し返したと アメリカは追加支援発表 5/11
ウクライナは10日、北東部ハルキウ州でロシア軍の装甲車部隊が越境して前線を突破しようとするのを、押し返したと明らかにした。
ハルキウ州のオレフ・シニエフボフ州知事は、ロシアの偵察部隊が国境を越えて侵入しようとしたものの、ウクライナ側は「1メートルたりとも失っていない」と述べた。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「ロシアはハルキウ州で新たな反撃作戦を開始した」と発表。これに対してウクライナ軍旅団が反撃しており、激戦が展開していると述べた。
ウクライナ国防省によると、ロシア軍は国境沿いにあるヴォヴチャンスクの街を「誘導型航空爆弾」と砲撃で激しく攻撃したのに続き、小規模な「偵察部隊」が複数個所で越境した。
ヴォヴチャンスクは、ウクライナ第二の都市ハルキウから約75キロ北東にある。
ヴォヴチャンスクの地元当局によると、10日早朝から激しい攻撃が始まり、民間人を避難させたという。ハルキウ州知事によると、ヴォヴチャンスクの人口は約3000人で、ロシアの攻撃で少なくとも1人が殺害され、5人が負傷した。
国防省は、「敵は午前5時ごろ、装甲車両に守られながら、こちらの防衛線を突破しようとした。現時点までに、すでに敵を押し戻したが、さまざまな程度の戦闘が続いている」と説明した。
民間人が避難したヴォヴチャンスクには、予備役が送り込まれているという。
ヴォヴチャンスクは2022年9月に解放されるまで、数カ月にわたりロシアに占領されていた。
ロシアの意図は緩衝地帯か
ウクライナ軍の司令官はかねて、ロシア軍が近く夏の大攻勢を開始すると予測しており、州都ハルキウの制圧さえ目指すかもしれないと警戒している。ただし、それに必要な人員・軍備はロシア側にないと、ウクライナ当局は力説する。
ウクライナ政府の偽情報対策を率いるアンドリー・コヴァレンコ氏は、ロシア軍は国境沿いで状況を悪化させることはできても、ウクライナ第二の都市を制圧するだけの能力はないと主張する。
ウクライナの軍事評論家、オレクサンドル・コヴァレンコ氏は、ロシア軍が今年2月に東部の小都市アウディイウカを制圧するには、数カ月にわたる砲撃に加え、約8万人の兵を必要としたと指摘。スーミやハルキウなどの大都市制圧に必要な人員・資材は、規模が全く異なるとコヴァレンコ氏は話した。
ウクライナ側がロシアのベルゴロド州に越境攻撃を繰り返していることから、ロシア側は同州防衛のため10キロの緩衝地帯を作ろうとしている可能性があると、ウクライナ側は見ている。
ウクライナ国防省情報総局のヴァディム・スキビツキー副局長は今月上旬、英誌エコノミストのインタビューで、ロシア軍がハルキウとスーミ攻略の準備をしていると話した。ウクライナ軍のオレクサンドル・パヴリュク陸軍司令官も、同様の警告をしている。
10日にはこのほか、ロシアに占領されている東部ルハンスク州のロヴェンキーで石油貯蔵施設で出火し、大規模な火事になった。ロシアが現地で任命した行政当局によると、ウクライナの攻撃によるもので、3人が殺害され、7人が負傷したという。
アメリカ、4億ドルの追加支援
ロシア政府は、アメリカからの軍事援助の到着が遅れているのを利用し、ウクライナ東部ドネツク州で軍を前進させようと攻撃を続けている。
こうした状況で10日にはアメリカ政府が、ウクライナに4億ドル(約620億円)の追加軍事支援を発表した。4月20日に成立した約608億ドルの追加予算に基づく、ウクライナ追加支援の第3弾となる。この追加予算に基づきアメリカは4月末に、計70億ドル相当の包括支援を送ったばかり。
アントニー・ブリンケン国務長官は声明で、「この4億ドルの包括支援には、緊急に必要とされている」防空システムのミサイルや砲弾、対戦車兵器や装甲車両などが含まれると述べた。
ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報担当調整官は記者団に対して、ロシアは「今から数週間のうちにさらに部隊を進め、ウクライナの国境沿いに緩衝地帯を設けようとするだろう」とアメリカとして見ていると話した。
ただし、ウクライナ軍はそうしたロシアからの攻撃に耐える能力があるとアメリカ政府は確信しており、ウクライナの防衛に必要な装備や兵器を届けるためアメリカは「昼夜を分かたず」作業しているのだとも、カービー氏は説明した。
●イスラエル、アメリカ供与の武器を「国際法に違反して使用した疑い」=米政府 5/11
アメリカ政府は10日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区での戦闘で、アメリカから供与された武器を国際人道法に違反して使用した可能性があると発表した。
米国務省は、連邦議会に同日提出した報告書の中で、アメリカが供与した武器がイスラエルが果たすべき義務と「矛盾する」方法で使用されたと「評価するのは理にかなう」と指摘した。報告書はホワイトハウスの指示のもと、国務省が作成した。
一方で同省は、イスラエルはガザでのイスラム組織ハマスとの戦いで「異例の軍事的挑戦」に立ち向かわなければならない状況だとした。
報告書はガザにおけるイスラエルの軍事行動の一部を明確に非難する一方で、イスラエル国防軍(IDF)の作戦が国際法に違反していると断定するには至っていない。
また、米国製兵器の合法的使用についてイスラエルから得た確約は「確かで信頼できる」ものだとし、イスラエルへの武器の輸送を継続できるとしている。
報告書はこうした評価について、米政府は「完全な情報」を有していないと指摘。その理由として、ハマスが「軍事目的で民間インフラを利用し、民間人を人間の盾に利用している」ため、何が正当な標的なのかを「戦闘が続く紛争地帯の現場で事実を究明するのは困難」であることが多いとしている。
それでも、イスラエルがアメリカ製武器に大きく依存していることから、おそらく「IHL(国際人道法)上の義務や、民間人の被害を軽減するための確立されたベストプラクティス(最善慣行)と矛盾する状況で」使用されているだろうと、報告書は指摘している。
民間人の保護については
民間人の保護については、「イスラエルには、その軍事作戦において、民間人の被害を軽減するためのベストプラクティスを実施するための知識や経験、手段がある」としつつ、「多数の民間人犠牲者を出すなど作戦が現地にもたらした結果から、IDFが常に武器を効果的に使用しているのか、かなりの疑問が生じている」と付け加えた。
報告書によると、国連と複数の人道支援団体は、民間人への危害を軽減するためのイスラエルの取り組みは「一貫性がなく、効果がなく、不十分」だと評している。
米国務省によると、紛争初期の数カ月間、ガザへの人道援助の流入を「最大化」しようとするアメリカの取り組みにイスラエルは十分に協力しなかったものの、その状況はすでに変化している。
「現在のところ、イスラエル政府がアメリカの人道支援物資の輸送や配達を禁止あるいは制限しているとは評価していない」と報告書には書かれている。
アメリカ、ラファ侵攻なら武器供与停止も
報告書の寄稿者の1人で、アメリカの元駐トルコ大使、デイヴィッド・サターフィールド氏はBBCに対し、このような報告書は異例のことで、アメリカはイスラエルの行動を引き続き「検討し続ける」方針だと話した。
「この紛争は、世界が見たこともないものだ」と、サターフィールド氏は付け加えた。「我々は、きわめて率直かつ信頼できる判断を下すために、すべての要因を考慮するようにした」。
ジョー・バイデン米大統領は8日放送の米CNNによるインタビューで、イスラエルがガザ南部ラファで大規模な地上作戦を開始した場合、同国への武器供与の一部を停止すると、公然と警告した。
この数日後にようやく、今回の報告書が発表された。
ラファはハマスの最後の主要拠点とされる。ガザ各地から避難者が集まり、100万人以上のパレスチナ人で街は埋め尽くされている。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は報告書の発表を前に、ラファでの作戦が「レッド・ライン」(越えてはならない一線)を越えるというバイデン氏の警告を一蹴。「必要なら(中略)私たちは単独で対処する。必要なら私たちは独力で踏ん張って戦う」と表明した。
国連は、6日以降で8万人以上がラファから避難したと9日に発表した。同市は砲撃が絶えず、人々が密集する地域の近くにイスラエル軍の戦車が集結している。
イスラエル軍はラファでの作戦開始と同時に、エジプトとの境界にあるラファ検問所を掌握し封鎖。イスラエルとの境界にあるケレム・シャローム検問所は再開したが、国連は職員や車両が近づくには危険すぎるとしている。
昨年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲では、約1200人が殺害され、252人が人質となった。イスラエルは直後にガザへの報復攻撃を開始した。
ハマスが運営するガザ保健当局は、ガザでこれまでに3万4900人以上が殺されたとしている。
●ロシア、ウクライナ北部へ奇襲攻撃 ここ2年で最も重大な越境攻勢 5/11
ロシア軍がウクライナ北部へ2回の越境攻撃を仕掛けたことが分かった。ウクライナの情報筋や当局者が明らかにした。これについてウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアによる「新たな反転攻勢の波」だとの認識を示している。
ウクライナ軍の情報筋がCNNに語ったところによると、ロシア兵はまず、国境の町ボルチャンスクへ向け約1キロ侵入した。侵入の目的は「10キロの深さまで入り、ロシア領に戦争の影響が及ばないよう国境緩衝地帯を構築することにあった」という。
ウクライナ国防省は公式声明で、装甲車の支援を受けたロシア兵が10日午前5時ごろ国境を越えたと説明。国境地帯ではこの前日、誘導型の航空爆弾や火砲による攻撃が激しさを増していたと明らかにした。
声明はまた、一帯の防御を強化する目的でウクライナ軍の予備部隊が投入されたとも明らかにした。
前線の状況を直接知る2人目の情報筋によると、ロシア軍がウクライナ国内に5キロ侵入し、国境沿い約75キロに位置するクラスネ村へ向かう場面もあったという。クラスネはボルチャンスク西郊に位置する。
この情報筋によると、クラスネへ向かうロシア軍の攻撃は4個大隊の約2000人が実施した。
ウクライナ当局は2度目の攻撃について詳しい情報を公表していないものの、ウクライナ軍参謀本部は10日夜、クラスネ周辺と隣接する二つの村でロシアの攻撃があったと指摘した。
一連の動きについて聞かれたウクライナのゼレンスキー大統領は、事態の重大さを否定しなかったものの、ウクライナ軍はそうした動きを予期していたと説明。「ロシアは(北部ハルキウ州で)新たな反転攻勢の波を仕掛けている。ウクライナは兵員や部隊、火砲で対抗した」としている。
今回の攻撃はウクライナが2022年晩夏にハルキウ州を奪還して以降、最も重大な越境地上攻撃となる。ハルキウ州は全面侵攻開始当初にロシアが奪取していた。
ハルキウ市に対するロシアの航空攻撃はこのところ増加しており、市内の発電施設や変電所が壊滅状態になった。
●ロシア、ウクライナ第2の都市ハルキウに侵攻…地上戦で住民数千人避難 5/11
ロシア軍は10日(現地時間)、ウクライナで2番目に大きい都市である北東部のハルキウを狙って攻撃を開始した。ウクライナ軍はロシアの戦争計画が転換されたと判断し、これに対抗して追加兵力を急派するなど、この地域での地上戦は続くもようだ。
ハルキウ州のオレグ・シネフボウ知事は、前日夜から続くロシア軍の攻撃で、少なくとも住民1人が死亡、5人が負傷し、州当局は住民3000人を避難させた状態だと明らかにした。AP通信が報じた。ロシアは、国境から5キロメートルも離れていないボルチャンスクを狙い、誘導爆弾やS300などの地対空ミサイルを利用した大規模爆撃を行い、装甲車で防衛ラインを突破しようとした。ロシアの「偵察兵力」も進入したと、英国BBC放送は明らかにした。今回の攻撃は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がベルゴロドなどのロシア国境地域に対するウクライナからの攻撃を防ぐために構想した「緩衝地帯」を形成しようとする動きとみられる。
これに先立ち、ウクライナ軍当局はハルキウやスミ地域などの北東側の国境に数千のロシア軍兵力が集結していることを確認したとして、ロシアに対して警告している。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこの日、記者団に「この方向で激しい戦闘が繰り広げられている」として、「撃退する準備はできている」と述べた。ウクライナの公共放送「ススピーリネ」が明らかにした。
ハルキウは、2022年2月のウクライナ戦争開戦直後に戦闘が行われたところだ。ウクライナ軍は、ロシアの侵攻を受けた2022年9月ごろにハルキウを奪還した。
●「この8年間プーチンは国民を洗脳してきた」...政府系メディアに乱入した女性が捜査官相手に吐いた反戦抗議の「納得の理由」 5/11
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。
ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。
長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』より抜粋してお届けする。
薄暗い路地で
弁護士と面会したいなら自分たちと一緒に別の場所に来るように、と言われた。言い争っても無駄だ。テレビセンターの裏口から出て警察車両に乗り込んだ。右手の窓越しにオスタンキノのテレビ塔がカラフルな照明を浴びていた。左手には高層ビル群が高くそびえていた。
「どこへ連れて行くんです?」と用心深く聞いた。同行者たちは黙っていた。クルマは暗い路地に入り、しばらくすると外部から見えないように高い塀で目隠しされた灰色の2階建ての建物のところでブレーキをかけた。正面の白い看板には赤い字で〈全ロシア・エキスポセンター警察署〉と書かれていた。
「この並木道は何度も歩いたけど、エキスポセンターの公園に警察署があるとは思ってもみなかった」わたしは言った。
建物に入った。当直の他は人っ子一人いなかった。
「弁護士はどこ?」書類が山のように積んである小さい部屋を見まわしてきいた。答えはなかった。捜査官はドアをしっかり閉め、穏やかな声で、自分は過激派対策センターの者だと説明し始めた。
「これは取り調べですか?せめて息子に電話させてください。息子は心配しています。いつもなら、もうだいぶ前に家に着いている時刻ですから」
「これは取り調べじゃありません。友好的に話をしたいだけです」
友達に対するような微笑みを浮かべて過激派対策センターの男は言った。
男の問い
「ほら、何もメモしてないでしょう。なんであんなことをしたのか知りたいだけなんです。誰に頼まれたんです?」
「わたしの良心です。わたしは大人ですから決断はすべて自分で下します。もう一度言いますが、これはわたしの個人的な選択です。これ以上黙っていることはできません。この20年、プーチンはロシアの独立系メディアを全部潰しました。NTVの解体に始まってテレビ局ドーシチ、ラジオ局モスクワ・エコーを潰し、いまではロシアには反対派メディアは残っていません。
テレビ局はすべて国家の手の中です。マイダンの後、ウクライナはクレムリンの一番の敵になりました。国営メディアは8年間、あらゆる手立てを使ってウクライナ人を人でなし扱いして、ロシア人の間にウクライナ人への激しい憎悪をかきたてたのです。
ウクライナとその住民について何か言う時には、いつも『ナショナリスト』『バンデラの追随者』『右派セクター支持者』『アゾフ大隊』という言葉を使い、独立国家の大統領ヴォロディミル・ゼレンスキーをオンエアで『道化師』『コメディアン』『麻薬中毒者』呼ばわりしてきました。支配下に置くメディアの手を借りながら、黒を白と言いくるめるゲッベルスの手法を使って、クレムリンは国民を洗脳してきました。
大衆の意識を変えることを許したのは、この虚偽の情報なのです。夜も昼も絶え間ないプロパガンダの流れが、あらゆるチャンネルを通して大衆に注ぎ込まれています。何百万ものロシア人が、残酷な死刑執行人の集団になってしまったのも驚くことではありません」
早口に息つく間もなくまくし立てた。怒りがふつふつと心のなかで膨らんでいった。
欺瞞だらけのメディア
「わたし自身はもう10年もテレビを見ていません。わたしの同僚たちも同じです。クレムリンのプロパガンダを信じているのは、あまり教育を受けていない地方の人びとで、おもに一度も外国に行ったことのないお年寄りばかりです。ロシアに住む人の77パーセントは外国旅行用パスポートさえ持っていません。統計では、ヨーロッパやアメリカに行ったことのあるロシア国民はわずか5パーセントです。国民の大多数がプーチンを信じて、西側は敵ばかりだと考えたとしても驚くことではありません。あなたはヨーロッパに行ったことがありますか?」わたしは捜査官にきいた。
捜査官は黙って肩をすくめ、わたしの一方的なおしゃべりを聞いていた。
「8年前に第一チャンネルを辞めなかったのが悔やまれます。でも国際ニュース部で仕事をしていたのが救いでした。プロパガンダを書く必要もなく、CNNやスカイニュース、ロイター、APを見ていられたし、スカイプで政治評論家や学者や欧米の特派員と話ができましたから。しかし現実に起きているあらゆることと、わたしたちが報道で伝えていることの違いへの違和感は年々大きくなっていきました。
何もかも捨てて仕事を辞めていく同僚を羨ましく思いました。わたしにはそんなことはできませんでした。大変な思いで離婚をし、2人の子供がいるし、建てかけの家もあるし、年老いた母もいる、クルマのローンもある、他にもたくさん問題を抱えていましたから。わたしは弱く、テレビ局を辞める強さがなかったのです。一週間働いて次の週は非番というニュース部門のシフトも好都合でした。子供を育て、旅行に行ったり、スポーツをしたり友人と会うには理想的でした。でも戦争の最初の日に、これは袋小路だ、とわかったのです」
すでに時計の針は朝の5時を指していた。窓の外は日の出前の静けさだ。
「疲れました。51条(黙秘権を認める憲法の条文)によれば自分に不利な証言はしなくていいはずです。席を外させてください」
見えない話し相手
捜査官はわたしの後を、トイレのドアまで暗い廊下をついてきた。
「なんでついて来るんですか?」
「そういう決まりになっているんです。あなたが静脈をカットしないとも限りませんから……」
この捜査官はルビャンカ(ロシア連邦保安庁(FSB)の本部があるモスクワ中心部の地区。ロシア革命当初から治安・諜報機関が置かれ、「拷問、流刑、銃殺」などのイメージと結びつく。)の超インテリの取調官ではなく、国際政治問題にはまったく疎い、ごく普通の捜査官だった。彼の携帯はしょっちゅう鳴っていた。部屋に戻ると電話の向こう側で話す人の声が途切れ途切れに聞こえた。
「なぜこんなことを……、どう関わっているのか聞いてみろ。誰が手引きしたんだ……」
見えない話し相手は、スターラヤ広場やルビャンカの幹部だ。
「刑事事件か、あるいは行政事件か。どちらだと思います?」
捜査官がわたしにきいた。
「弁護士を呼んでください。約束したでしょう。弁護士に微妙なニュアンスを説明してもらいたいんです。残念ながらわたしは法律家ではありませんから」
悪魔の契約書
わたしは苛立っていた。でも苛立ってもどうにもならないことはわかっていた。少し気を落ち着かせた。
「あなたは誰のためにやってるんです?」
捜査官がまたきいた。
「隠れた動機を探そうとしても無駄です。これは犯罪的な戦争に対するノーマルな人間のノーマルな反応だと思います。2月24日という日に、わたしたち一人一人のテーブルの上に、いつのまにか『悪魔との契約書』が置かれたのです。この犯罪的な体制のために働き続けるつもりなら、それは、この契約書にサインしたということです」
捜査官はモニターから目をそらし、驚いたように額に皺を寄せた。どうやら彼はこの訊問を録画しているようだった。できるだけ正直に話した。抗議の空気がクレムリンのプロパガンダの主役である「聖域中の聖域」、ニュース番組『ヴレーミャ』にまで浸透していることを知らせてやろうではないか。
「それで、誰がこれをやれって命令したんですか?あなたにカネを払ったのは誰なんです?」
相手はまたきいた。
要領を得ない尋問
「カネを払ったですって?わたしは何も不自由していません。モスクワの中流階層の普通の生活を送っています。幸せに暮らすためのものは全部あります。素晴らしい子供たち、家、犬、クルマ、友達……」
「でも、ブレスレットは何ですか……金ですか?」
「よくあるイミテーションです。何が言いたいんですか。この世のすべてはカネだと思ってるの?それは間違ってます!」
「ずっと考えてるんですよ……。行政事件か刑事事件かって。刑務所に行きたいんですか?」
「わたしは普通の人間です。だから刑務所には行きたくありません。でもオンエアで抗議しようと決心した時、あらゆるリスクは意識していました。2〜3年は刑務所に入るかもしれないとも考えました」
思いがけない言葉
壁の時計に目をやった。午前10時だった。一日の仕事が始まっている。ドアの向こうに男の声が聞こえた。部屋の入口に若い男が立っていた。ニッコリと笑いながらテーブルの上に2つのコーヒーカップとブリヌイ(ロシアのクレープ)を置いた。一瞬の迷いもなく食べ物に飛びついた。それほどお腹が空いていた。ひどく神経が苛立っていたし疲れていた。
捜査官はコーヒーを一口すすると、男にわたしを見張っているように言い残してどこかへ消えた。この合間にわたしはコーヒーを飲み、前に座っている男の顔をじっと眺めた。
「そうだ、ゼレンスキーがあなたに感謝の意を表していましたよ」
携帯から目を離して男が突然言った。それから気まずそうにすぐ口をつぐんだ。いらぬことを言ったと思ったのだ。
「それは素晴らしい。ゼレンスキーに感謝しなくちゃ」
わたしは元気を出した。
「ゼレンスキーは英雄ね。包囲されたキエフから逃げ出さなかったし、リヴォフ(ウクライナ語ではリヴィウ)に避難しろと言われても国民と共に残ったし。ヨーロッパで犯罪的な戦争を始めておいて地下壕に隠れるプーチンとは大違い」
この時、過激派対策センターの捜査官が戻ってきた。何か新しい指示を受けたようだ。これまでの「友好的会話」の雰囲気が突然変わった。
祖国愛ゆえの抗議
「マリーナ・ウラジーミロヴナ。なぜそんなに自分の祖国が嫌いなんです?」
2人になると、捜査官は厳しい口調できいた。
「わたしは祖国を愛しています。でも、祖国といま権力にいる人たちとは全く別々のものです。あの人たちがしたことを考えてみてください。ポーランドとモルドヴァの国境には数百万人ものウクライナ難民がいます。寄る辺のない女性と子供たちです。プーチンは一日でこの人たちから何もかも奪ったんです。家も仕事も……。それがどんなことかわたしは知っています。子供の時、チェチェンで同じことを経験しましたから。
わたしの家族は第一次チェチェン戦争が始まった時、グローズヌイから避難を余儀なくされました。住宅も家財道具も本当にすべてを失いました。母は40歳を超えて人生をゼロから始めざるをえなかったのです。母はいまでもそのトラウマから立ち直っていません。1990年代は、苦しみと貧困と屈辱の長い日々でした。だから難民の将来がどんなものか、よくわかるのです。途方もなく大きな悲劇です。オフィスにいるあなたたちにはわかるわけがありません」
「あなたは間違っている。プーチンがやったことはすべて正しい。わたしたちがやらなければ、ウクライナ人が先にわれわれを攻撃したでしょう。それに、われわれと戦っているのはアメリカとNATOです」
捜査官は大きな音を立ててコーヒーをすすると、わたしの目を見ながら、おもねるような声で突然言った。
「こちらのために働く気はありませんか?何の不自由もなくなりますよ」
「バカにしないで。いまの権力者には本当に虫酸が走る。飢えて死んだほうがましよ。21世紀に戦争を始めるなんて、おかしいと思わない?」
「どっちにしたって刑事事件ですよ。刑事事件になります」
事態を急転させた1本の電話
自分を悩ませていた問いに自分で答えるように、毅然とした声で過激派対策センターの捜査官は言った。
「弁護士を呼んでください」
わたしはもう苛立ちを隠せなかった。これ見よがしにそっぽを向き、頭をソファーの背にもたせかけ、少し客観的になろうとした。こめかみで血管が脈打っている。頭の中では、いちばん陰鬱な情景が描き出された。
相手の携帯がまた鳴った。男は足早に出口に向かった。ドアのところに彼の相棒が立っていた。2人は一瞬のすきもなくわたしを監視していた。
「フランス大統領のマクロンがあなたに政治亡命の受け入れと外交的保護を申し出ました」
隣に座る若い男がニュース速報を声に出して読み始めた。
「ありえないわ」
わたしは驚いて眉を上げた。フランス大統領のマクロンがわたしの保護を表明した?
起きていることが現実なのかどうか、信じられなかった。今のわたしにとって、国際社会の反応は、溺れる者にとっての藁のようなものだ。
廊下から途切れ途切れの言葉が聞こえた。
「了解です。……すべてそうします」
数分後、捜査官が帰ってきて言った。
「まもなく裁判所へ出発します。あなたは行政事件の裁判にかけられることになりました」
●バイデン政権を悩ます「悪夢の1968年シナリオ」とは何か 5/11
11月のアメリカ大統領選、今はトランプ氏リードだが…
この世界の定番である「リアル・クリア・ポリティクス」のデータ を見ると、4月には両者ともに支持率を下げてほぼ横一線に並んだものの、その後はドナルド・トランプ氏が少し盛り返して、最近は約1ポイント差のリードとなっている。
しかるに今は競馬にたとえれば、競走馬が向こう正面を走っている状態だ。本当に勝負がかかってくるのは第4コーナーを回るあたりからで、現時点でどっちがリードしているかはあんまり意味がない。
そして現下の選挙情勢をざっくり言えば、右側にトランプ応援団が3割くらいいて、左側には「それだけは勘弁、バイデンのほうがマシ!」と言っている人たちが3割くらいいて、残りはどうかといえば「まだ考えてない」。
もうちょっと言えば、「またあの2人なのか、勘弁してくれよ〜」と思っている人が少なくなさそうだ。毎度ながらアメリカの大統領選挙の本番は9月以降であり、最後は政治に関心の薄い浮動層の奪い合いとなる。
われわれだって同様ではないか。あと1年半、来年10月までには必ず総選挙が行われる。そのときにどの党に入れるか、今から決めている人はそんなに多くないだろう。
そのときの自民党総裁が岸田さんなのか、誰かほかの人なのか、裏金事件にどういう「けじめ」がついているのか、野党が何を公約し、どういう選挙協力が行われているのかなど、不確定要素があまりにも多すぎる。おそらくは「そのときになってから考える」人が多数派なのではないだろうか。
ところがアメリカ大統領選挙になると、「今日が投票日だとしたら、どちらが勝つか」という調査結果が飛び交うことになる。とくに今年のように「もしトラ」(英語では”Trump 2.0”という表現がある)が意識されていると、皆がこの数字に一喜一憂するようになる。
しかるにこの選挙の結果は、最後は6〜7つの激戦州における選挙人の足し算で決まるはずである。今の時点で「どちらが勝つか」は計算不可能と言わざるをえない。
2人とも悩みを抱え、現状は「消耗戦」の様相
そして現状は、「トランプ氏は裁判」「バイデン氏は中東情勢」が悩みの種であり、選挙戦はいささか消耗戦の様相を呈している。
トランプ氏は、4月から「口止め料事件」の裁判がニューヨーク州地裁で始まった。ほかの3つの刑事裁判ではトランプ陣営の「遅延工作」が功を奏しつつあるが、実際に公判が始まってみると、やはり予想外のことが起きつつある。
トランプ氏にとっては、来る日も来る日も法廷に身柄を拘束され、さまざまな証言をじっと聞いていなければならないという事態がかなり苦痛のようである。つい法廷で「不規則発言」に及んだり、自前のSNS「ソーシャル・トゥルース」で不満をぶちまけたりしている。
その都度、裁判長に叱られ、ついには罰金を取られ、「今度やったら収監しますよ!」とまで言われている。いや、いくら前大統領だからといっても容赦してはもらえない。なにしろトランプ氏は刑事被告人なのだ。
他方、ジョー・バイデン氏を悩ませているのは中東情勢である。正確に言えば、パレスチナ問題に端を発して各地の大学で発生している「キャンパス・プロテスツ(Campus Protests)」だ。
今どき「学園紛争」とは驚きだが、ニューヨークのコロンビア大学を起点に学生デモが全米に拡散し、これからシーズンを迎える卒業式が中止というケースも増えている。すでに全米で逮捕者が2000人を超えているというから、尋常ではない。
なぜ、大学紛争がバイデン政権にとってマイナスなのか。現在の民主党支持者の間には、「上の世代がイスラエル支持で、若い世代はパレスチナに同情的」という亀裂が入っている。
昨年10月7日に起きたハマスのテロ攻撃に対し、バイデン大統領は当初は明確なイスラエル支援の姿勢だった。しかし、イスラエル軍がガザ地区へ侵攻すると、残虐行為に対する抗議の声が国内で広がり始めた。バイデン政権は途中からネタニヤフ政権に人道的配慮を求めるようになったが、何しろ素直に言うことを聞くような相手ではない。
今の状況は1968年に似ている?
しかるにバイデン氏にとって、若者の支持を失うのは致命的なことである。そうでなくても11月には82歳になる高齢のバイデン氏は、彼らから見て理想の大統領候補者とは程遠い。若者たちが11月の投票日に家で寝てしまうと、それこそ「ほぼトラ」確定ということになりかねない。
最近では、この状況が「1968年に似てきた」とも言われている。プラハの春、パリ五月革命、キング牧師暗殺の年である。アメリカではベトナム反戦デモが猖獗(しょうけつ)を極めた。日本では川端康成がノーベル文学賞を受賞し、東京・府中市で「三億円事件」が発生し、メキシコ五輪ではストライカー釜本邦茂を擁する日本サッカーが銅メダルを獲得した年である。
この年のアメリカ大統領選挙では、民主党のリンドン・ジョンソン大統領が再選出馬するものと目されていた。ところが、ベトナム戦争の泥沼化によって、予備選挙では反戦候補のユージーン・マッカーシー上院議員が大旋風を巻き起こす。するとジョンソン氏は、3月になって出馬辞退を宣言してしまう。
民主党主流派は大慌てとなった。そこへジョン・F・ケネディ大統領の弟、ロバート・ケネディ元司法長官が急遽、名乗りを上げてくれた。6月のカリフォルニア州予備選挙で勝利し、これでひと安心と思ったところ、その直後に暗殺されてしまう。今年はその長男、ロバート・ケネディ・ジュニア氏が、第3政党の候補者として大統領選挙に出馬していることも含めて、不思議と因縁めいている。
結局、8月にシカゴで行われた民主党大会では、反戦運動家たちが暴徒化し、警官隊との間で流血の惨事となった。大混乱の中で、民主党はヒューバート・ハンフリー副大統領を正式な党の候補者に指名する。しかるに妥協の産物であったハンフリー氏は、共和党のリチャード・ニクソン候補に僅差で敗れてしまう。
反戦運動の暴走に対し、ニクソン氏は「法と秩序」の回復を訴え、ベトナムからの「名誉ある撤退」を主張する。そのうえで、「私にはベトナム戦争を終わらせる秘密のプランがある」と語った。この辺りも、「私が大統領になれば、すぐにウクライナ戦争を終わらせてみせる」と豪語するトランプ氏と妙に重なって見える。
「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」かもしれない
作家マーク・トウェインいわく、「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」。2024年と1968年の間には、確かにどこかサイクルが重なっているようなのだ。
民主党にとって何よりゲンが悪いのは、今年も党大会はシカゴで予定されている(8月19〜22日)。はたして、そのときまでに中東情勢が収まり、反イスラエル・デモは沈静化しているだろうか。
オキュパイ・ウォール・ストリート運動(2011年)のように長期化したり、ブラック・ライブズ・マター運動(2020年)のように全米に拡大したりすると、バイデン陣営にとっては容易ならざる事態となってしまう。
困り果てているのは、リベラル派の有識者たちである。有力紙のオピニオン欄には、その手の論説が増えている。5月1日付のニューヨークタイムズ紙では、元東京支局長で今も健筆をふるっているニコラス・クリストフ氏がこんなことを書いている(筆者抄訳) 。
「まず、学生たちの道徳的野心に敬意を表したい。自分は1960年代の反ベトナム戦争世代である。あの戦争は確かに間違っていたが、自分たちは戦争を短くすることはできなかった」
「1968年の左翼活動家たちは、平和候補のマッカーシーを大統領にすることはできず、むしろ彼らの混乱は秩序を求めるニクソンの当選を助ける結果となった。この歴史は記憶されるべきだ。善意や共感だけでは不十分で、結果が大事なのだ。あなたたちの活動はガザの人々に役立っているだろうか」
若い世代に対し、大人が苦しい「説得」、あるいは「お説教」を試みている図式である。まあ、いい大人が「君たちの気持ちはよくわかる」なんてことを言い出したら、若者は素直に信じてはいかんだろう。あいにくZ世代は新聞など読んでいないだろうし、それこそTikTokなどで情報を得ているのかもしれない。そして流行のSNSが、中国やロシアの「反イスラエル」世論工作下にあるとの観測も絶えないところだ。
学生たちが言っていることには土台無理がある。彼らの要求どおり、アメリカの大学当局がイスラエルとの関係を絶ったところで、それで戦争を止める効果があるとは考えにくい。反ユダヤ武装勢力であるハマスのことを、まるで「いい人」たちのように勘違いしているのも困ったところだ。何より彼らが学業を妨害し、ほかの学生たちに迷惑をかけ、秩序を乱していることは責められるべきであろう。
カギ握る4000万人超のZ世代
もっと言えば、ベトナム反戦世代は本心では「俺たちのときは徴兵制があったんだ」(命懸けだったんだぜ。お気楽なお前たちとは違うんだよ!)と叫びたいところであろう。世代的に近い筆者としては、その気持ちはよ〜くわかる。ただし彼らもまた、上の世代からひんしゅくを買っていたことは忘れてはならないだろう。
このあたり、人類が古来繰り返してきた「近頃の若いやつらは……」という嘆きの繰り返しであって、「世代間ギャップ」以外の何ものでもなさそうだ。そして年寄りの嘆きは、つねに歴史の闇へと消えていく。歴史は若い世代に味方するのだ。当たり前だよね。
現在の10代から20代のことを「Z世代」と呼ぶ。定義的には1996年から2012年生まれを指すことが多い。日本では数が少ないためか今ひとつ目立っていないが、全世界的に見ればとくに新興国では「人口爆発」の世代である。「デジタル・ネイティブ」な彼らは、やがて世の中を大きく変えていくだろう。
アメリカ選挙においても、Z世代は着実に存在感を増している。2020年選挙に比べても4年分有権者が増加しているから、Z世代の有権者は今年4000万人を超えて、全体の17%に達する見込みだ。
「若者は投票しない」と言われつつも、2020年選挙における30歳未満の投票率は50%となり、2016年より11ポイント増加したとのこと。うち6割がバイデン氏に投票したというから、当選の立役者と言っていい。
2024年選挙で彼らがどう動くのか。その答えは半年後にならないとわからない。
●ロシア、ウクライナ北東部で大規模攻撃準備も 米は支援強化=高官 5/11
米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は10日、ロシア軍がウクライナ北東部ハリコフ州で「より大規模な攻撃を仕掛ける可能性は確かにある」と述べた。
ロシア軍は同日、ウクライナ第2の都市ハリコフ近郊で地上攻撃を強化。これまで東部および南部で長期にわたり戦闘が繰り広げられていたが、北東部に戦線が広がった格好だ。
カービー氏は、ロシアがハリコフを射程圏内とする長距離兵器を使用する準備している兆候は懸念されるとし、24時間体制でウクライナへの物資供給に取り組んでいると語った。
ロシアは今後数週間でさらに進軍する可能性はあるものの、防衛線を大幅に突破することは想定していないとした。
また、ホワイトハウスは10日、ウクライナに対する4億ドル規模の追加軍事支援を用意していると明らかにした。当局者によると、戦場ですぐに使用可能な大砲や高性能地対空ミサイルシステム「NASAMS」用弾薬、装甲車両などが含まれているという。
●ウクライナに620億円支援表明 バイデン米政権、防空強化 5/11
バイデン米政権は10日、ロシアの侵攻が続くウクライナに対し、総額4億ドル(約620億円)相当の追加軍事支援を実施すると表明した。防空の強化に向け、大統領権限で米軍の備蓄から地対空ミサイルシステム「パトリオット」用の弾薬などを供与する。
今回の支援には高性能地対空ミサイルシステム「NASAMS」用弾薬、高機動ロケット砲システム「ハイマース」、地対空ミサイル「スティンガー」、対戦車ミサイル「ジャベリン」なども盛り込んだ。
カービー大統領補佐官は、ロシアがウクライナ東部ハリコフ州などで数週間のうちにさらなる攻勢に出る可能性があると指摘した。
●ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司令官が予想 5/11
ウクライナのパブリュク陸軍司令官は、ウクライナへの武器供給の遅れをロシアは利用しようとしていると述べ、戦争は今後2カ月で重大な局面を迎えるとの見方を示した。英誌エコノミストが10日、インタビューの内容を伝えた。
「われわれが1─2カ月で十分な武器を入手すれば、状況が不利に転じる可能性があることをロシアは承知している」と語った。
インタビューはロシア軍が10日にハリコフ近郊で攻撃を開始する前に行われた。
パブリュク氏はロシア軍が東部のルガンスク、ドネツク両州をゆっくりと前進することに集中するとの見方を示した。ウクライナは防空体制の高める必要があるとし、F16戦闘機が配備されれば強化が図られると述べた。
「(ロシアは)最も適切な方向を選択する前に、ウクライナの戦線の安定性を試している」と語った。
また首都キーウの防衛体制に改めて重点を置くべきとの考えを示した。「東部の状況がいかに厳しくても、キーウの防衛は依然として主な懸念事項の一つだ」と指摘。「キーウはウクライナの中心であり、首都の防衛が将来重要な役割を果たすことは分かっている」と述べた。
●ウクライナ、越境図るロシア軍を押し返したと アメリカは追加支援発表 5/11
ウクライナは10日、北東部ハルキウ州でロシア軍の装甲車部隊が越境して前線を突破しようとするのを、押し返したと明らかにした。
ハルキウ州のオレフ・シニエフボフ州知事は、ロシアの偵察部隊が国境を越えて侵入しようとしたものの、ウクライナ側は「1メートルたりとも失っていない」と述べた。
ロシアは、「ロシアはハルキウ州で新たな反撃作戦を開始した」と発表。これに対してウクライナ軍旅団が反撃しており、激戦が展開していると述べた。
ウクライナ国防省によると、ロシア軍は国境沿いにあるヴォヴチャンスクの街を「誘導型航空爆弾」と砲撃で激しく攻撃したのに続き、小規模な「偵察部隊」が複数個所で越境した。
ヴォヴチャンスクは、ウクライナ第二の都市ハルキウから約75キロ北東にある。
ヴォヴチャンスクの地元当局によると、10日早朝から激しい攻撃が始まり、民間人を避難させたという。ハルキウ州知事によると、ヴォヴチャンスクの人口は約3000人で、ロシアの攻撃で少なくとも1人が殺害され、5人が負傷した。
国防省は、「敵は午前5時ごろ、装甲車両に守られながら、こちらの防衛線を突破しようとした。現時点までに、すでに敵を押し戻したが、さまざまな程度の戦闘が続いている」と説明した。
民間人が避難したヴォヴチャンスクには、予備役が送り込まれているという。
ヴォヴチャンスクは2022年9月に解放されるまで、数カ月にわたりロシアに占領されていた。
ロシアの意図は緩衝地帯か
ウクライナ軍の司令官はかねて、ロシア軍が近く夏の大攻勢を開始すると予測しており、州都ハルキウの制圧さえ目指すかもしれないと警戒している。ただし、それに必要な人員・軍備はロシア側にないと、ウクライナ当局は力説する。
ウクライナ政府の偽情報対策を率いるアンドリー・コヴァレンコ氏は、ロシア軍は国境沿いで状況を悪化させることはできても、ウクライナ第二の都市を制圧するだけの能力はないと主張する。
ウクライナの軍事評論家、オレクサンドル・コヴァレンコ氏は、ロシア軍が今年2月に東部の小都市アウディイウカを制圧するには、数カ月にわたる砲撃に加え、約8万人の兵を必要としたと指摘。スーミやハルキウなどの大都市制圧に必要な人員・資材は、規模が全く異なるとコヴァレンコ氏は話した。
ウクライナ側がロシアのベルゴロド州に越境攻撃を繰り返していることから、ロシア側は同州防衛のため10キロの緩衝地帯を作ろうとしている可能性があると、ウクライナ側は見ている。
ウクライナ国防省情報総局のヴァディム・スキビツキー副局長は今月上旬、英誌エコノミストのインタビューで、ロシア軍がハルキウとスーミ攻略の準備をしていると話した。ウクライナ軍のオレクサンドル・パヴリュク陸軍司令官も、同様の警告をしている。
10日にはこのほか、ロシアに占領されている東部ルハンスク州のロヴェンキーで石油貯蔵施設で出火し、大規模な火事になった。ロシアが現地で任命した行政当局によると、ウクライナの攻撃によるもので、3人が殺害され、7人が負傷したという。
アメリカ、4億ドルの追加支援
ロシア政府は、アメリカからの軍事援助の到着が遅れているのを利用し、ウクライナ東部ドネツク州で軍を前進させようと攻撃を続けている。
こうした状況で10日にはアメリカ政府が、ウクライナに4億ドル(約620億円)の追加軍事支援を発表した。4月20日に成立した約608億ドルの追加予算に基づく、ウクライナ追加支援の第3弾となる。この追加予算に基づきアメリカは4月末に、計70億ドル相当の包括支援を送ったばかり。
アントニー・ブリンケン国務長官は声明で、「この4億ドルの包括支援には、緊急に必要とされている」防空システムのミサイルや砲弾、対戦車兵器や装甲車両などが含まれると述べた。
ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報担当調整官は記者団に対して、ロシアは「今から数週間のうちにさらに部隊を進め、ウクライナの国境沿いに緩衝地帯を設けようとするだろう」とアメリカとして見ていると話した。
ただし、ウクライナ軍はそうしたロシアからの攻撃に耐える能力があるとアメリカ政府は確信しており、ウクライナの防衛に必要な装備や兵器を届けるためアメリカは「昼夜を分かたず」作業しているのだとも、カービー氏は説明した。
●ロシア、ウクライナ北部へ奇襲攻撃 ここ2年で最も重大な越境攻勢 5/11
ロシア軍がウクライナ北部へ2回の越境攻撃を仕掛けたことが分かった。ウクライナの情報筋や当局者が明らかにした。これについてウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアによる「新たな反転攻勢の波」だとの認識を示している。
ウクライナ軍の情報筋がCNNに語ったところによると、ロシア兵はまず、国境の町ボルチャンスクへ向け約1キロ侵入した。侵入の目的は「10キロの深さまで入り、ロシア領に戦争の影響が及ばないよう国境緩衝地帯を構築することにあった」という。
ウクライナ国防省は公式声明で、装甲車の支援を受けたロシア兵が10日午前5時ごろ国境を越えたと説明。国境地帯ではこの前日、誘導型の航空爆弾や火砲による攻撃が激しさを増していたと明らかにした。
声明はまた、一帯の防御を強化する目的でウクライナ軍の予備部隊が投入されたとも明らかにした。
前線の状況を直接知る2人目の情報筋によると、ロシア軍がウクライナ国内に5キロ侵入し、国境沿い約75キロに位置するクラスネ村へ向かう場面もあったという。クラスネはボルチャンスク西郊に位置する。
この情報筋によると、クラスネへ向かうロシア軍の攻撃は4個大隊の約2000人が実施した。
ウクライナ当局は2度目の攻撃について詳しい情報を公表していないものの、ウクライナ軍参謀本部は10日夜、クラスネ周辺と隣接する二つの村でロシアの攻撃があったと指摘した。
一連の動きについて聞かれたウクライナのゼレンスキー大統領は、事態の重大さを否定しなかったものの、ウクライナ軍はそうした動きを予期していたと説明。「ロシアは(北部ハルキウ州で)新たな反転攻勢の波を仕掛けている。ウクライナは兵員や部隊、火砲で対抗した」としている。
今回の攻撃はウクライナが2022年晩夏にハルキウ州を奪還して以降、最も重大な越境地上攻撃となる。ハルキウ州は全面侵攻開始当初にロシアが奪取していた。
ハルキウ市に対するロシアの航空攻撃はこのところ増加しており、市内の発電施設や変電所が壊滅状態になった。

 

●「自由」の価値を知るロシア人は何処に 5/12
ロシアの著名な哲学者アレキサンダー・ジプコ氏(Alexander Zipko)は独週刊誌シュピーゲル(2023年7月8日号)とのインタビューの中で、「プーチン氏は生来、自己愛が強い人間だ」と述べる一方、「ロシア国民は強い指導者を願い、その独裁的な指導の下で生きることを願っている」という。同氏によると、「ロシア人は自身で人生を選択しなければならない自由を最も恐れている」というのだ。
現代人は「自由」を愛し、自分の願いを誰からも妨げられずに果たせる無制限な自由を恋い慕う。「自由」という言葉は多分、「歌の世界」でも「文学の世界」でも「愛」という言葉に次いで最も頻繁に飛び出す言葉(ロゴス)ではないか。その「自由」をロシア国民は最も恐れているというのだ。
ロシア国民の心理状況を理解するためには、唯物論世界観の共産主義思想を国是として世界で初めて建設されたソ連共産党政権時代、その後継国ロシアの歴史まで戻らなければならないかもしれない。ロシア人は粛清と圧制下の100年以上の歴史に刻み込まれた生き方から脱皮できないでいるのかもしれない。
自分の意思で人生を決めるような人間が出てくると、最悪の場合、彼らは粛清され、政治犯として収容所に送られていった。ロシア国民はそれを見、聞いてきたので、大多数の国民は「自由」を悪魔の誘惑のように感じてきたのかもしれない。
そのような中でも「自由」を自身の命以上に重視するロシア人も出てきた。最近ではプーチン大統領の批判者、反体制派活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏の名を挙げることができるだろう。同氏は2月16日、収監先の刑務所で死去した。47歳だった。明確な死因については不明だ。同氏は昨年末、新たに禁錮19年を言い渡され、過酷な極北の刑務所に移され、厳しい環境の中で獄死した。
一人のロシア人が「自分はナワリヌイ氏の政治信条には同意できないが、同氏がドイツで治療を受けた後、再びモスクワに戻ったその決意には尊敬せざるを得ない。彼はモスクワに戻れば死が待っていることを知っていたはずだ」と述べていた。
当方は60万人のイスラエルの民を率いて神の約束の地カナンに向かったモーセの生き方に強い関心がある。エジプトのファラオ(王)の王子として成長したモーセは奴隷となって酷使されているイスラエルの民をみて心を痛める。ある日、奴隷のイスラエル人を殴打するエジプトの兵士を見て激怒し、その兵士を殺害する。そのことが伝わり、モーセは王宮を後にして逃避する。
放浪生活後、ミデヤン人の祭司のイテロの家庭に拾われ、その祭司の娘チッポラと結婚して子供をもうけるが、エジプトに残してきたイスラエルの民を忘れることができないので、エジプトに戻り、ファラオにイスラエルの民の解放を願う。モーセの話は旧約聖書の「出エジプト記」に記述されている。
出エジプトしたイスラエルの民は荒野でさまざまな困難に直面すると、「エジプトに戻りたい。あそこでは飢えることはなかった」と嘆く。それに対し、モーセは民の不信に激怒しながらも、エジプトからイスラエルの民を導いた神に問いかけるシーンがある。
一人のラビが言っていた事を思い出す。「イスラエルの民は奴隷の身から解放されたが、『自由』の価値を知り、それを経験した者はいなかった。一方、モーセはエジプト時代、王子として自由を享受できる立場にあった。彼は自由を体験していた。荒野での試練に対して、モーセとイスラエルの民の反応が異なったのは、その自由体験の有無だ」という趣旨を述べていた。
ロシア国民はモーセ時代のイスラエルの民と同じように、自由を体験していない。そのような中でもナワリヌイ氏のように「自由」を求めて立ち上がるロシア人が出てきた。
ナワリヌイ氏はその強い意志力もあったが、自由を体験している。毒薬で殺害されそうになり、ドイツの病院で治療を受けたが、そのドイツ治療時代は同氏にとって自由だったはずだ。同氏は治療が終わるとモスクワに戻っていった。ちょうど、モーセがエジプトから荒野路程の生き方を選んだようにだ。自由を一度でも味わった人はそれを奪われると激しい抵抗をする。自由のために自身の命すら捨てることを厭わなくなるものだ。
ゴルバチョフ大統領時代、外交問題の顧問チームの一員だったジプコ氏は、「ゴルバチョフ時代、共産党政治局員会議ではメンバー間で論争があったが、プーチン氏の時代になって、会議はプーチン氏の語る内容を傾聴するだけの場となり、議論があったことは一度もない」という。
部下たちはプーチン氏が語る内容を「然り」と聞くだけで、西側社会では当然の「議論文化」はロシアではゴルバチョフ時代の短い期間を除けば育ったことがないという。民主主義が何かを理解しているロシア国民は少ないのだ。
モーセはカナン入りを目の前にしながら約束の地に足を踏み入れることはできなかった。それを悔いるモーセに対し、妻チッポラは「あなたは入れないが、子供たちがカナンに入るだろう」といって慰めた。ロシア国民に「あなた方が自由を得るためにはポスト・プーチン時代の到来まで待たなければならない」といった慰めは非情だ。
プーチン大統領は7日、通算5期目の新しい任期をスタートさせた、ロシアの憲法上から、プーチン氏は2036年まで現在の地位を維持できる。そのような中、「自由」のために立ち上がるロシア人が出てくるとしたら、そのロシア人は「自由」の価値を知り、体験した人間に違いないはずだ。
●新内閣副首相候補にプーチン氏側近の長男を指名 ロシア首相 5/12
ロシアのミシュスチン首相は11日、新内閣の副首相候補にプーチン大統領側近の長男ドミトリー・パトルシェフ氏を指名しました。
ドミトリー・パトルシェフ氏は、プーチン大統領の側近で、ウクライナ侵攻の推進論者とされる国家安全保障会議書記ニコライ・パトルシェフ氏の長男です。
現在、46歳の若手ですが前内閣では農相を務めていて、今回、10人の副首相候補の一人に抜擢されました。
ロシアメディアではかねてからプーチン後継候補の一人との見方があって、処遇が注目されていました。
ウクライナ侵攻に関連しては、「ロシア政府から利益を得ているか、ロシア政府を支援している関係者」などの理由でイギリスなど複数の国から、個人制裁の対象になっています。
また、今回の組閣ではプーチン大統領の姪の夫で現ケメロボ州知事のセルゲイ・ツィヴィリョフ氏もエネルギー相に指名されました。
正式には13日、14日の下院の審議を経て、プーチン大統領が承認すると決まります。国防相、外相などの閣僚は議会上院との協議を経て、プーチン大統領が任命することになっています。
●プーチン氏側近の息子を副首相に ロシア首相、新内閣を提案 5/12
ロシアのプーチン大統領が10日に再任したミシュスチン首相は11日、新内閣の人事を下院に提案した。政府が発表した。プーチン氏の最側近パトルシェフ安全保障会議書記の息子で、農相を務めたドミトリー・パトルシェフ氏を副首相にすることを提案。同氏はプーチン氏の後継候補の一人と目されている。
首相は、大統領が任命する国防相や外相、内相ら重要閣僚以外を提案。ドミトリー氏はアブラムチェンコ副首相の後任で、地方経済や農業を担当。農相の後任にはルット次官が昇格する。マントゥロフ副首相兼産業貿易相を第1副首相に、サベリエフ運輸相を副首相に提案。エネルギー担当のノバク副首相は経済担当も兼務する。
●ロシア首相、新内閣人事案を提出 第1副首相を交代 大幅刷新は回避 5/12
ロシアのミシュスチン首相は11日、プーチン大統領の通算5期目の大統領就任に伴う新内閣発足手続きの一環として、副首相と閣僚の人事案を露下院に提出した。人事案は今後、下院での審査と承認を経て、プーチン氏の署名により成立する。人事に大幅な刷新はなく、ウクライナ侵略に伴う対露経済制裁に適切に対処できているとするプーチン政権の立場を反映した。
露憲法は経済・文化分野などの閣僚の人事権を首相に与える一方、国防相や外相など特に重要な閣僚に関しては大統領が上院と協議して任命すると規定。プーチン氏はショイグ前国防相やラブロフ前外相も再任させるとの観測が強い。
人事案では、ベロウソフ前第1副首相が退任し、後任にマントゥロフ前副首相兼産業貿易相を充てる。マントゥロフ氏は第1副首相として技術開発や産業発展を指揮するとした。
アブラムチェンコ前副首相(農業・環境担当)も退任し、後任にパトルシェフ国家安全保障会議書記を父に持つドミトリー・パトルシェフ前農相を起用する。また、運輸・物流担当の副首相を新設し、サベリエフ前運輸相を充てる。
ノバク前副首相(エネルギー担当)やトルトネフ前副首相(極東担当)、ゴリコワ前副首相(保健・労働・文化担当)らは再任。ただ、ノバク氏はエネルギーに加え、退任するベロウソフ氏が所管していた制裁対応も担当する。シルアノフ前財務相ら前内閣の大多数の閣僚も再任となる。
●プーチン氏5期目始動、ウクライナ侵略継続のため増税へ 5/12
ロシアのプーチン大統領は7日、大統領就任式で宣誓し、通算5期目に入った。国民の団結を強調し、ウクライナ侵略を念頭に欧米との対立をいとわない姿勢を示した。戦時下の大統領として侵略長期化に向けた体制構築を急ぐ方針だ。
プーチン氏はモスクワの大統領府で宣誓後に演説し「ロシアを守る。国民の利益と安全を何よりも優先する」と語った。ウクライナでロシアが進める「特別軍事作戦」に参加する兵士らに謝意を示した。
「あらゆる障害を克服し、共に勝利しよう」とも述べ、国民に団結を訴えた。長引くウクライナ侵略や欧米諸国との対立を念頭にした発言とみられる。
ウクライナ侵略を批判し対ロ制裁を強める欧米に向けて「我々は西側諸国との対話を拒否しているわけではない」と述べた。「選択は彼ら次第だ」とも強調し、相互の利益の尊重が対話の前提になるとの姿勢を示した。
米国など西側諸国が主導する世界秩序からの転換を改めて訴えた。「多極的な世界秩序の形成に向けて取り組んでいく」と言及した。
現在71歳のプーチン氏の任期は2030年までとなる。さらに続投すれば、83歳まで権力の椅子に座り続けることも可能だ。プーチン氏は政権基盤を盤石にするため憲法改正を繰り返した。08年の憲法改正で大統領任期を4年から6年に延長し、20年の改憲では大統領任期を通算2期と定めた。
今年も3%以上の成長
ロシアは22年2月にウクライナへの侵略を開始した。欧米から対ロ制裁が続く中、軍需関連産業が成長の柱となっている。
23年の国内総生産(GDP、速報値)は22年に比べて3.6%増加し、2年ぶりのプラス成長となった。国際通貨基金(IMF)は4月に公表した経済見通しで、ロシアの24年成長率を3.2%に上方修正しており、今年も3%以上の成長が続くとの見方が多い。
ロシア民間世論調査会社レバダセンターの調査ではプーチン氏の3月の支持率は87%とウクライナ侵略後で最高となった。
高い支持率背景に不人気策へ、過去にも例
高い支持率を背景に、政権がウクライナへの侵略継続に向けて国民の支持を得にくい政策を導入する環境は整っている。
ロシアの独立系メディアは3月、プーチン政権が個人所得税の最高税率を現在の15%から20%に引き上げる可能性があると報じた。高所得層からの税収を増やし、歳出増を賄うとみられる。
プーチン政権は過去にも新たな任期の開始直後に不人気政策を断行した実績がある。4期目に入った18年には、年金受給開始年齢を段階的に引き上げる年金改革を実施した。ロシア各地で抗議行動が広がった。
ロシアは石油やガス輸出による税収が歳入の柱で、石油・ガス収入は3割超を占める。足元では中国などアジアへの輸出シフトを進めているとみられる。ロシア財務省が発表した24年1〜3月の石油・ガス収入は前年同期比79%増と大幅増だった。米国など西側諸国は金融制裁を強めており、継続できるかどうかは不透明だ。
状況の改善を目指し、プーチン氏は大統領就任を受けて外交攻勢を強めるとみられる。5月には訪中し習近平(シー・ジンピン)国家主席との首脳会談に臨む予定で、5期目の就任後で初の外遊となる見通しだ。同氏は23年10月にも訪中し習氏と会談しエネルギー安全保障などを巡る結束について確認した。
●5期目のプーチン政権 問われる強権への結束力 5/12
ウクライナへの侵攻を続けるロシアのプーチン大統領が通算5期目に入った。選挙での勝利を侵攻への支持と捉え、蛮行を重ねることは許されない。
プーチン氏は7日の就任演説で国民に向けて「共に勝利しよう」と団結を呼びかけた。「ロシアに圧力をかけ続けるのか、和平の道を模索するのか、その選択は西側諸国次第だ」とも主張した。
「戦時大統領」として求心力を維持しようという意図は明白だ。プーチン氏は第2次チェチェン紛争での強硬姿勢で支持を得て2000年に初当選した。新たな戦争によって延命を図っている。
プーチン氏が強気なのは、ロシアは孤立していないとの思いがあるからだろう。
対露経済制裁を科しているのは欧米や日本などにとどまる。中国などが原油を買い支え、露経済は揺らいでいない。「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の多くも、国益優先の観点からロシアとの友好関係を維持する。
一方、侵攻を受けるウクライナは、欧米の軍事支援で何とか持ちこたえているのが現状だ。
ただ、各国での「支援疲れ」の広がりや、トランプ前米大統領の返り咲き当選の可能性といった不確定要素もある。結束が試される局面だ。
ロシアの横暴を止めることができない背景には、国際社会における西側諸国の求心力低下がある。
中国など新興国の台頭で世界経済を率いる力が弱まり、外交・軍事面の影響力も縮小している。
ロシアを非難する一方、パレスチナ自治区ガザ地区を攻撃するイスラエルに及び腰だった欧米には「二重基準」との批判がつきまとう。新興・途上国からの信頼は大きく損なわれた。
ロシアのウクライナ侵攻は、14年の一方的なクリミア併合から始まった。当時、日米欧はエネルギーの調達など実利を優先して厳しい態度を取れなかった。それがプーチン氏の増長と暴走を招いた側面は否めない。
欧米や日本は、新興・途上国の不信感を拭い、共にロシアに対峙(たいじ)する環境を整える必要がある。国際秩序が揺らぐ中、「力による現状変更は認めない」との姿勢を貫く覚悟が問われている。
●ウクライナ東部で「5集落を制圧」ロシア国防省 砲撃防ぐ“緩衝地帯”目的か 5/12
ロシア国防省はウクライナ東部・ハルキウ州で5つの集落を制圧したと発表しました。
ロシア軍は10日朝から国境を越えウクライナ側に侵入し、5つの集落でウクライナ軍と激しい戦闘を続けていました。
これについてロシア国防省は11日、いずれの集落も制圧したと発表しました。
こうしたロシア軍の動きについて、「ウクライナ側からの砲撃を防ぐため緩衝地帯を作ろうとしているのではないか」という見方が出ています。
一方、ハルキウ州の知事は「5つの村すべてで依然、激しい戦闘が続いている」としたうえで、住民2500人以上を避難させたと明らかにしています。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、「ロシアの攻勢を阻止し、主導権をウクライナに取り戻さなければならない」と訴えました。
●ゼレンスキー大統領「7つの集落で防衛作戦実施」 ロシアのハルキウ州への攻勢で 5/12
ロシアがウクライナ東部ハルキウ州への攻勢を強める中、ゼレンスキー大統領は「7つの集落で防衛作戦を実施している」と発表しました。
ロシア軍は10日に国境をこえて侵攻したハルキウ州について、「5つの集落を掌握した」と主張しています。こうした中、ゼレンスキー大統領は11日、「ハルキウ州の国境に接する7つの集落で防衛作戦を展開している」との声明を出しました。ハルキウ州での兵力を増強しているということです。
今回のロシアの動きについては、ハルキウ州を制圧して緩衝地帯にする狙いがあるとの見方がある一方で、アメリカの戦争研究所は別の戦略的な目的があると分析しています。ドネツク州などの東部戦線からウクライナ軍の兵力をハルキウ州へ引きつけ、手薄になったところを攻めて、突破口を開く狙いがあると指摘しています。
ゼレンスキー大統領は東部ドネツク州についても触れ、緊迫した状態が続いているとし、「毎日30回以上の戦闘が行われ、とても困難な状況だ」としています。
●習近平主席の5年ぶりの訪欧の狙いは 5/12
中国の習近平国家主席のフランス、セルビア、ハンガリー3カ国の欧州歴訪は‘中国離れ’が見え出してきた欧州の流れに何らかのインパクトを与えただろうか。習近平主席の5年ぶりの欧州3カ国訪問の成果とその狙いについて駆け足で振り返った。
習近平氏の2019年以来の欧州訪問のハイライトはフランス訪問(5日〜7日)だ。習近平主席はマクロン大統領との首脳会談、それに欧州連合(EU)の欧州委員会のフォンデアライエン委員長を交えた3者会談、その前にはフランス企業指導者との経済懇談会などをこなしている。
マクロン大統領は昨年4月5日から7日までの日程で北京を公式訪問し、習近平主席と会談し、その後、習近平主席が自ら広州など中国内を案内するなど、異例の厚遇を受けている。習近平主席の今回のフランス訪問(国賓)はその返礼訪問だ。
マクロン大統領は訪中前、フランスのメディアとのインタビューで、「欧州は台湾問題で米国の追随者であってはならない。最悪は、欧州が米国の政策に従い、中国に対し過剰に対応しなければならないことだ」と指摘、米中両国への等距離外交を強調した。マクロン大統領の発言が報じられると、米国やドイツなど欧米諸国から「西側の対中政策の歩調を崩す」といった批判が高まったことはまだ記憶に新しい。
仏大統領府筋によると、マクロン大統領は習近平主席との会談では両国間の経済関係の強化のほか、ウクライナ問題など国際問題についても意見の交換をした。1年前のマクロン氏の訪中では、50社以上の同国代表企業が随伴し、仏航空機大手エアバスは中国航空器材集団から160機を受注、仏電力公社EDFと中国国有の国家能源投資集団は海上風力発電の分野で合意するなど、大口の商談が次々とまとまった。習近平主席は今回、経済界との会談で、原発や航空機事業分野で共同プロジェクトの他、仏産チーズ、ハム、ワインなどの輸入拡大に意欲を示した。同時に、米国を念頭に、「経済・貿易の政治問題化に反対する」と強調したという。
注目すべき点は、マクロン大統領は前回の訪中で欧米から批判を受けたことを踏まえ、今回は習近平氏との首脳会談だけではなく、EUのフォンデアライエン委員長を招いて3者会談を開いたことだ。
予想されたことだが、同委員長は中国側の経済政策を厳しく批判した。曰く、1市場アクセスの不均衡:EU企業が中国市場にアクセスする際には、しばしば制限や障壁に直面する一方、中国企業はEU市場へのアクセスに比較的容易になっている。これはEU側の不満の源泉だ、2補助金と競争の歪み:中国政府は、多くの産業に補助金を提供し、これが国内市場での競争を歪め、EU企業との競争にも影響が出ていること、3EUと中国の間で貿易不均衡が存在。EUは巨額の貿易赤字を抱えている等々、対中国貿易での問題点を突っ込んで説明した。
マクロン大統領はEU委員長にEUの立場を説明させる一方、自身は仲介者の立場を取り、中国との経済関係を深めていくという高等戦術を展開させている。そして訪中時の返礼として、マクロン大統領は自身のゆかりの地、南仏オートピレネー県のツールマネー峠に習近平主席夫妻を招くなど、習近平主席との関係強化に関心を注いでいる。
参考までに、マクロン大統領は7日、Xで「習近平国家主席、広東で私を歓迎してくださったのと同じように、私にとってとても大切なオートピレネーのツールマレー峠で皆様をお迎えできることをとても嬉しく思います」と発信している。
その後、習近平主席はセルビアを訪問し、アレクサンダル・ヴチッチ大統領と首脳会談をした(ヴチッチ大統領は2022年2月、訪中し、習近平主席と会談した)。今年は北大西洋条約機構(NATO)がセルビアの首都ベオグラードにある中国大使館を間違って空爆した事件から25年目を迎える。中国側は米国への批判を込めて、セルビアとの協調関係を演出したわけだ。
セルビアは伝統的に親ロシア派だが、2014年以来、EUの加盟候補国だ。中国側にとってバルカンの盟主セルビアはギリシャのピレウス湾岸から欧州市場を結ぶ中継地として重要な位置にある。セルビアには多数の中国企業が進出している。ハンガリー・セルビア鉄道、ノビサド・ルマ高速道路の建設をはじめ、2016年には中国鉄鋼大手の河北鉄鋼集団が、セルビア・スメデレボの鉄鋼プラントを買収した。2018年8月末にはベオグラード南東部にある欧州最大の銅生産地ボルの「RTBボル」銅鉱山会社の株63%を12億6000万ドルで中国資源大手の紫金鉱業が落札している。
中国企業の進出は歓迎されるが、「債務の罠」(debt trap)に陥るケースも出てくる。セルビアの隣国モンテネグロ政府は、アドリア海沿岸部の港湾都市バールと隣国セルビアの首都ベオグラードを高速道路で結ぶ計画を推進するために多額の融資を中国政府から受けたために借款返済に苦しんでいる。セルビアでも対中借款が増え、国の全借款4分の1は対中借款だという(「バルカン盟主セルビアの『中国の夢』」2022年12月19日参考)。
習近平主席の最後の訪問国はハンガリーだ。習近平主席は8日夜、ハンガリー入りし、9日、オルバン首相と首脳会談をした。その後の記者会見で、習近平主席は「中国とハンガリー両国の関係は最良の時を迎えている」と指摘、両国関係を包括的戦略パートナーに引き上げたことを明らかにした。イタリアが離脱した巨大経済圏構想「一帯一路」にハンガリーは依然深く関与し、中国との関係を深めている。ハンガリーのメディアによると、両国は電気自動車(EV)や鉄道、原発分野などの協力事業で合意したという。
なお、ハンガリーは今年下半期のEU議長国だ。EU、NATO加盟国でありながら、ロシアとの関係も維持するオルバン首相のハンガリーは中国にとって欧州市場の絶好の窓口となっている。
中国国営通信新華社によると、習近平主席は「中国と欧州双方はパートナーとしての位置付けを堅持し、対話と協力を続け、戦略的意思疎通を深め、戦略的相互信頼を増進し、戦略的共通認識を凝集し、戦略的協力を行い、中欧関係が安定かつ健全に発展するよう推進し、世界の平和と発展に新たな貢献を続けていくべきである」と述べている。5年ぶりの習近平主席の欧州訪問はその布石であり、フランス、セルビア、ハンガリーの欧州3カ国はその目的を実現するための駒というわけだろうか。
●「5つの集落制圧」ウクライナ北東部ハルキウ州でロシア軍攻勢続く ロシア国防省「緩衝地帯」設ける狙いか“東部から部隊引きつける陽動作戦”の見方も 5/12
ウクライナ北東部ハルキウ州でロシア軍が国境を越えて進軍し、攻勢を強めています。
ロシア国防省は5つの集落を制圧したと発表、一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は7つの集落の近くで戦闘が続いているとしています。
ハルキウ州知事によりますと、ハルキウ州のロシアとの国境付近では10日に続いて11日も激しい戦闘が行われ、州内の都市ボウチャンシクとその周辺地域ではロシア軍の攻撃により市民2人が死亡しました。
ウクライナメディアによりますと、州知事は、現地時間の11日の正午の時点で、ボウチャンシクなどロシアの攻撃を受けている地域から、住民2500人以上が避難した、と明らかにしました。
こうした中、ロシア国防省は11日、ハルキウ州の国境地帯にある5つの集落を制圧したと発表しました。
一方、ゼレンスキー大統領は7つの集落の近くで防衛作戦が続いているとし、ハルキウ州での兵力を増強していると強調しました。
ロイター通信はウクライナ軍の情報筋の見方として、ロシア軍の狙いは緩衝地帯の設置を目指しウクライナ軍を国境から10キロの地点まで後退させることだ、と伝えています。
ハルキウ州はロシア西部ベルゴロド州に隣接し、プーチン大統領は今年3月、ウクライナ領土内に「緩衝地帯」をつくる考えを示していました。
また、ウクライナメディアは、ロシア軍のハルキウ州への攻勢は東部のドネツク州やルハンシク州に展開するウクライナ軍の部隊をハルキウ州に引き寄せる陽動作戦の狙いがある、とするウクライナ軍高官の見方を伝えています。
●ロシア軍は「攻勢作戦激化の可能性高い」 ウクライナ北東部侵攻で 米政策研究機関が分析 5/12
アメリカの政策研究機関「戦争研究所」は10日、ロシア軍はウクライナ北東部への新たな侵攻で、「戦術的な足場を確保し、攻勢作戦を激化する可能性が高い」との分析を公表しました。
ウクライナ北東部・ハルキウ州へのロシア軍の侵攻について、戦争研究所は10日、ロシア軍が複数の集落を制圧した可能性が高いと分析しました。また、ロシア軍は今回確保した戦術的な足場を活用し、攻勢作戦を激化させる可能性が高いとしています。
仮に、ウクライナ第二の都市・ハルキウから20キロの距離まで進軍すれば、市内への日常的な砲撃が可能になり、後の大規模攻撃への下準備となるということです。
一方で、ハルキウの占領作戦が差し迫っているわけではなく、今回の攻撃で東部の他の戦線からウクライナ軍の戦力を引きつけ、手薄になったところから突破口を開くという目的である可能性が高いと分析しています。
●緩衝地帯設置狙いか ロシア軍のハルキウ州侵攻続く 住民2500人以上避難 5/12
ロシア軍はウクライナ東部・ハルキウ州への侵攻を続けていて、2500人以上の住民が避難を余儀なくされています。
AFP通信などによりますと、ハルキウ州の知事は11日、30の集落がロシア軍の砲撃を受け、住民2500人以上を避難させたことを明らかにしました。
ロシア軍は10日朝から、装甲車の支援を受けながら国境を超えてウクライナ側に入り、5つの集落でウクライナ軍との激しい戦闘がありました。
こうしたロシア軍の動きについて「ウクライナ側からの砲撃を防ぐため緩衝地帯を作ろうとしているのではないか」との見方がでています。
ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、ハルキウ州で激しい戦闘が続いていることを認めたうえで、「ロシアの攻勢を阻止し、主導権をウクライナに取り戻さなければならない」と訴えました。
●真実を教えよう! 米国がウクライナ追加支援を決めた「3つの隠蔽された目的」 5/12
2024年4月20日、米下院は総額953億ドルの大規模な支援策を可決した。そのなかには、ウクライナへの608億ドル、イスラエルとガザを含む紛争地域の民間人への人道支援に264億ドル、台湾とインド太平洋地域への81億ドルが含まれている。ウクライナへの援助は311対112で賛成多数となり、共和党の112人が反対票を投じた。24日に上院でも可決され、バイデン大統領の署名を経て成立した。
驚くのは、20日、ロイド・オースティン国防長官が声明を発表し、そのなかで、「本法案はまた、米国の将来に対する重要な投資でもある」と明言している点だ。「防衛産業基盤に直接流入する約500億ドルを提供することで、この法案は、米国の長期的な安全保障を強化すると同時に、30以上の州で良質な米国人の雇用を創出する」というのである。
ウクライナ支援で票を買うバイデン大統領
ジョー・バイデン再選につながる国内雇用のため、ウクライナ戦争支援にカネを出すというのは、「カネで票を買い、ウクライナで命を奪うということ」を意味していることになる。具体的にどの州が潤うかについては、4月18日付の「ワシントンポスト」が「議会が承認したウクライナへの軍事援助の大半が使われている地区の地図を掲載している(下図を参照)。
議会が承認したウクライナへの軍事援助の大半は、上記の地区で使われている
『ウクライナへの援助』の使い道
米戦略国際問題研究センターのマーク・カンシアン上級顧問は、2023年10月3日、「『ウクライナへの援助』のほとんどは米国内で使われている」という記事を公表した。それによると、これまで議会が承認した1130億ドルの配分のうち、「約680億ドル(60%)が米国内で使われ、軍と米国産業に利益をもたらしている」と指摘されている(下図を参照)。これは、下図の青、オレンジ、斜線の三つの部分を合わせたものということになる(「備考」を参照)。バイデン政権は、自らの政府機関への資金提供、米軍への資金提供の大部分、軍備の補填とウクライナの装備購入の大部分、人道支援の一部について、ウクライナへの「支援」や「援助」という名目で行っており、その資金は米国内にとどまる。このため、カンシアンは、「ウクライナ援助」(Aid to Ukraine)という言葉は「誤用(misnomer)である」と指摘している。
   図 アメリカ議会承認済みのウクライナ支援の配分(単位:10億ドル)
(備考)青とオレンジはウクライナへの軍事援助で、青は対外援助法に基づいて大統領が軍事援助を提供するために大統領権限を行使してなされる物品などのウクライナへの移転(ドローダウン)を指し、オレンジは大規模訓練や役務の提供を指す。青色斜線(「軍事−アメリカ」)は、国防総省が受け取る東欧での軍事活動の強化や軍需品生産の加速のための資金で、大半は米陸軍に支払われ、米海軍と米空軍に支払われる金額は少ない。黄色は人道援助、水色はウクライナ政府が通常の政府活動を継続するための資金、緑色(「米政府と国内」)は核不拡散活動など、戦争関連活動向けに米政府の他の部署が受け取る資金を示している。
バイデン大統領の大きな過ち
本当は、バイデン大統領は大きな過ちを犯している。それは、2022年2月24日にはじまったロシアによるウクライナへの全面侵攻を停止し、和平合意を締結させる絶好のチャンスを逸したとことだ。もっとはっきり書けば、せっかく緒戦でウクライナが勝利し、和平協定の締結目前にまで至ったにもかかわらず、米国と英国が軍事支援を約束して、ウクライナに和平を見送らせたのである。その結果、数十万人の死傷者が増加しただけでなく、戦渦の終結はまったく見通せない状況がつづいている。
2022年春の段階で、バイデン大統領がウクライナ支援を名目に「投資」し、その資金を国内にとどめたり、還流したりして、大統領選に利用しようとしていたわけではない(彼にとっては中間選挙で大きく負けないことが念頭にあった)。ただ、「ロシアの弱体化」という目的のために、ウクライナ戦争の継続を望んだのである。
和平目前だった
すでに、独立言論フォーラムで公開した拙稿「2022年2〜5月のウクライナ戦争を終わらせることができた会談」で詳述したように、『フォーリン・アフェアーズ』の報道によって、ウクライナとロシアが2022年に和平協定締結の直前にまで至っていたことが米側の情報としてはじめて明らかになっている(ほぼ同じ内容をドイツの「ヴェルト」も報道)。
2022年2月28日からスタートした2国による和平協議は断続的に行われ、3月29日になって、トルコのイスタンブールで直接会談し、双方は共同コミュニケに合意したと発表する。「ウクライナの安全保障に関する条約の主要条項」と題されたコミュニケ草案の全文を入手した『フォーリン・アフェアーズ』には、「ウクライナ側がこのコミュニケを大筋で起草し、ロシア側はこれを条約の骨子とすることを暫定的に受け入れたという」と書かれている。
コミュニケで想定されている条約は、ウクライナが永世中立、非核国家であることを宣言するものであった。「ウクライナは、軍事同盟に参加したり、外国の軍事基地や軍隊の駐留を認めたりする意図を放棄する」として、コミュニケには、条約を保証する国の候補として、国連安全保障理事会の常任理事国(ロシアを含む)、カナダ、ドイツ、イスラエル、イタリア、ポーランド、トルコが挙げられていた。
ウクライナが攻撃を受け、支援を要請した場合、すべての保証国は、ウクライナとの協議や保証国同士の協議の後、ウクライナの安全回復のために支援を提供する義務を負うとのべているという。「驚くべきことに、これらの義務は、NATOの第5条(飛行禁止区域の設定、武器の提供、保証国の軍事力による直接介入)よりもはるかに正確に明記されていた」と『フォーリン・アフェアーズ』は指摘している。
さらに、提案された枠組みではウクライナは永世中立国となるが、ウクライナのEU加盟への道は開かれており、保証国(ロシアを含む)は明確に「ウクライナのEU加盟を促進する意思を確認する」と記されていたという。
この内容には、『フォーリン・アフェアーズ』の記事が指摘するように、プーチンの譲歩があったと思われる。3月初旬には、プーチンの電撃作戦が失敗したことは、明らかだったから、「おそらくプーチンは、長年の懸案であった『ウクライナがNATOへの加盟を断念し、自国領土にNATO軍を決して駐留させない』という要求をのむことができれば、損切りするつもりだったのだろう」、と記事はのべている。         「コミュニケにはもうひとつ、振り返ってみれば驚くべき条項が含まれている」ともかかれている。それは、今後10年から15年の間に、クリミアをめぐる紛争を平和的に解決することを求めるというものだ。2014年にロシアがクリミアを併合して以来、ロシアはクリミアの地位について議論することに同意してこなかったことを考えると、ここでもロシア側の譲歩が現れている。
刮目すべき事実
刮目すべきは、和平協議がキーウ郊外のブチャとイルピンでの虐殺が明らかになった4月上旬以降もつづけられたことである。『フォーリン・アフェアーズ』の記事は、4月12日と15日の協定(交渉官間で交わされた最後の草案)のバージョンを比較し、その時点では重要な安全保障問題についての合意が得られていなかったことを明らかにしている。原案では、「ウクライナが攻撃された場合、保証国(ロシアを含む)はウクライナに軍事支援を行うかどうかを独自に決定する」とされていたが、4月15日の原案では、「合意された決定に基づいて」行われるという要件が追加された。
戦争の終結と平和条約の調印後にウクライナが保有できる軍隊の規模や軍備の数についても意見が対立した。4月15日の時点で、ウクライナ側は25万人の平時の軍隊を望んでいたが、ロシア側は最大でも8万5000人で、2022年の侵攻前のウクライナの常備軍よりかなり少ないと主張した。ウクライナ側は800台の戦車を望んでいたが、ロシア側は342台しか認めなかった。ミサイルの射程距離の差はさらに顕著で、ウクライナ側は280キロ、ロシア側はわずか40キロだった。
こうした実質的な意見の相違にもかかわらず、4月15日の草案では、条約は2週間以内に調印されることになっていた。「確かに、その日付はずれたかもしれないが、両チームが迅速に動くことを計画していたことを示している」というのが『フォーリン・アフェアーズ』の見立てだ。
和平を潰した米英
米国の利害を代表する『フォーリン・アフェアーズ』の記事では、和平交渉決裂の理由を、ウォロディミル・ゼレンスキーに帰しているようにみえる。(1)ブチャとイルピンでのロシアの残虐行為に憤慨していた、(2)自分たちは戦争に勝てるというウクライナ人の新たな自信――といったものがゼレンスキーの和平拒否へと傾かせたというのだ。
だが、3月30日、当時のボリス・ジョンソン英首相が「(プーチンの)軍隊が一人残らずウクライナから撤退するまで、制裁を強化し続けるべきだ」と述べ、4月9日、キーウを訪問した出来事は重大だった。そこで、ジョンソンは戦争継続を求めたのである。この事実は、和平会談でウクライナ側の代表を務めたダヴィド・アラハミヤが
「私たちがイスタンブールから戻ったとき、ボリス・ジョンソンがキエフにやってきて、『我々は(ロシア側とは)何もサインしない。戦い続けよう』とのべた」という発言によって裏づけられている。もちろん、ジョンソンの裏にはバイデン大統領が控えていた。
こう考えると、バイデン大統領の思惑が気になる。おそらく戦争を長期戦にもち込んで、ロシアの弱体化をはかるというのが狙いであったのだろう。
ウクライナ支援の本当の理由
しかし、それだけではない。米国がウクライナ支援を継続し、戦争を長引かせている背後には、今後の戦争に備えて最新兵器を開発するための実験を行うという狙いがあるのだ。
日本のマスメディアは報道しないが、ウクライナ戦争は自律型兵器の実験場となっている。米国は2017年から人工知能(AI)を戦争に持ち込むプロジェクト、「プロジェクト・メイヴン」(Project Maven)に着手している。たとえば、戦争に革命をもたらす可能性のある新世代の自律型無人機の開発が行われており、そのための実験場として、ウクライナ戦争は格好の場となっている。だからこそ、NYT(ニューヨークタイムズ)によれば、プロジェクト・メイヴンは、「現在では、ウクライナの最前線でテストされている野心的な実験に成長し、ロシアの侵略者と戦う兵士たちにタイムリーな情報を提供する米軍の取り組みの重要な要素を形成している」という。
おまけに、遠隔操作で動く軍事用ロボットは、非クルー式地上車両(Uncrewed Ground Vehicles, UGVs)もウクライナに投入され、実験場と化している。「最近のビデオでは、ウクライナのUGVがロシア領内の橋や陣地を攻撃し、爆発物を設置して撤退したり、神風攻撃をしたりしている」という(The Economistを参照)。
つまり、最新のテクノロジーを実験するうえでも、ウクライナ戦争の継続が望ましいと考える人々が米国にたくさんいる。ウクライナ戦争で自律型無人機などの最新兵器の性能が高まれば、今後予想されるロシアや中国との直接的な戦争に大いに役立つかもしれない。そんな「悪だくみ」もあって、米国はウクライナ戦争を支援しつづけているのだ。
そう考えると、日本がウクライナに対して武器供与するなど「もってのほか」ということになるだろう。AIを使った自律型兵器開発に間接的に手を貸すことになるからだ。日本国民はバイデン政権の「悪だくみ」に加担すべきではない。
●アメリカの9.6兆円軍事援助で勢いづくか、ウクライナ軍が仕掛ける「牛の舌」分断とリベンジ反攻作戦の“勝ち目” 5/12
日本の防衛予算を上回るアメリカの軍事支援が再開
2024年4月20日、アメリカ議会下院で半年以上“棚ざらし”状態だった、総額610億ドル(約9.6兆円)にも達するウクライナ軍事支援の緊急予算案が可決。アメリカが誇る世界最強の「武器・弾薬サプライチェーン」が再び動き始めた。2025年半ばまでの援助額は、日本の2024年度防衛予算の約7.9兆円と比べても、その巨額さは一目瞭然だ。
この朗報にゼレンスキー・ウクライナ大統領は、「アメリカが支援する限り、民主主義と自由は敗北しない。ありがとう、アメリカ!」と、SNS上で歓喜した。
弾切れ寸前のウクライナ軍は、まさに首の皮1枚でつながった格好だが、アメリカの動きは素早く、数日後には早速610億ドルのほぼ1割に当たる60億ドル(約9300億円)を使い、「武器・弾薬支援パッケージ」第1弾として現地に送り始めた。
中身について日本のメディアは詳しく紹介していないが、ウクライナ軍の実情を知る上で参考になるため、分かりやすく解説した表を別に掲げた。
欠乏する弾薬がリストアップされ、普通の大砲(榴弾砲)の弾薬はもちろん、対地ミサイルや戦闘機、ドローン(UAS)から国土を守るアイテムが目立つ。これらによるウクライナ軍の前線部隊や発電所・インフラの被害は想像以上に深刻だ。
“ドローン・キラー”として消費急増の機関銃
個別で見ると、まずは長距離ミサイルの「ATACMS(エータクムス)」に注目だろう。ロケット弾を立て続けに発射する、タイヤ式の高機動ロケット砲システムHIMARS(ハイマース)や、このキャタピラ型のMLRS(多連装ロケットシステム)を使って発射できる精密誘導の長距離地対地ミサイルである。
これまでアメリカのバイデン政権は、ロシア・プーチン政権を刺激しないよう、ウクライナからロシア本土を直接狙える「射程300km」型でなく、飛距離を落とした「射程165km」型の供与にとどめていた。
だが、アメリカ政府は「300km」型をすでに渡していると認め、今年4月にクリミア半島の飛行場攻撃で実際に使用されたと一部メディアも報じている。
「レーザー誘導ロケット・システム」も特筆すべき兵器だ。アメリカは攻撃ヘリが地上攻撃用に使うロケット弾を在庫として多数抱え、これを「ドローン撃墜用」に改造すれば、対空ミサイルよりも激安で揃えられる。ロシアの安価なドローンの撃墜には、費用対効果と供給の両面で極めて有利だ。
簡単なレーザー受信機と、飛翔コースを微妙に調節する小翼からなるキットを、ロケット弾本体に装着。敵のドローンにマーキング用のレーザー銃を使いレーザー光線を照射、発射されたロケット弾はレーザー光線に導かれドローンを撃ち落とす仕掛けである。
「小銃・機関銃などの弾薬」は、歩兵が戦場で大量に消費するだけと思いがちだが、今回の戦争でドローン撃墜には機関銃が費用対効果に優れると再確認されている。特にロシアが多用するイラン製の「シャヘド136」は、長距離飛行できるよう飛行機の形状で、飛行距離を稼ぐため速度は時速200km以下と案外遅い。
このため、肉眼で発見して機関銃でも十分撃墜可能らしく、“ドローン・キラー”として機関銃弾の消費が急増しているという。いずれにせよ、ハイテクならぬローテク兵器が活躍しているのも、この戦争の特徴だ。
ウクライナの反攻作戦は「2025年春」に決行か?
アメリカからの軍事支援が再開し、次に気になるのが、ウクライナの「リベンジ反攻作戦」がいつ行われるのかという点だろう。主要メディアは「2025年春の、雪解けを終え地面が乾く5月ごろ」と予測する。
ある軍事研究家も、「アメリカの援助が半年も途絶え、満身創痍に陥っているウクライナ軍の最前線部隊を、まずは休ませながら交代させて反攻に備えるのが先決なので、2025年春以降というのは説得力がある」と推測する。また、「今年夏には待望の米製『F-16多用途戦闘機』が到着。制空権(航空優勢)を握り、敵地上部隊を空爆するなど、反攻部隊を空から援護する“守護神”として期待される」と述べる。
「多用途戦闘機」とは、従来のように、対空ミサイルや機関砲で敵の戦闘機と格闘する、本来の空中戦に特化した機体ではなく、爆弾や対地ミサイルを抱え、高性能の照準装置を備える。対地攻撃任務(空爆)をこなしたり、強力な妨害電波などで敵レーダーを撹乱する電子戦(ジャミング)も可能だったり、高度な探知レーダーで敵艦を発見し、対艦ミサイルで撃沈させたりと、“マルチプレーヤー”戦闘機のことを指す。
ただし、ウクライナ人パイロットはまだ「若葉マーク」で、いきなりの最前線への投入は格好の標的になりかねない。まずは本国上空でパトロール飛行を続け、ロシアのドローンや巡航ミサイルを撃墜したりするのが無難だ。
その間に消耗した戦車や装甲車両の補充分が続々届き、大量動員の兵士の訓練も十分に行えば、ウクライナ軍は戦力を蓄えられるはず。そう考えると、準備万端整うのは、やはり2025年に入ってからだろう。国際情勢に詳しいジャーナリストもこう指摘する。
「今年11月の米統領選で2期目をねらうバイデン米大統領が、直前に“リベンジ反攻作戦”という大きなリスクを冒すとは思えない。また、万が一トランプ氏が大統領に返り咲いても、2025年1月の大統領就任早々から、反攻作戦という血生臭いイベントは避けるはずだ」
一方、ロシア側の動きはどうか。
「今年5月7日に通算5期目のロシア大統領就任式、9日には対独戦勝記念日の軍事パレードと2大イベントを終了。これを踏まえ、プーチン氏は一大攻勢に出る可能性が高い。しかも、ウクライナ第二の都市ハルキウ攻略に挑むのではないかとの指摘が軍事専門家の間で囁かれている。ゼレンスキー氏にとって、まずはこの対策が最優先課題だろう」(同前)
「牛の舌」を分断させてロシア軍を兵糧攻め
では、リベンジ反攻作戦はどのような形になるのか。2023年半ばに展開されたウクライナの大反攻作戦は結局失敗した。敗因は多々あるが、前出の軍事研究家は「作戦が稚拙だった」と手厳しく切り捨て、こう続ける。
「こちらの戦力が相手の10倍なら別だが、攻撃側は戦力の一点集中が常識。この場合、防御側のロシア軍に対し、攻撃側のウクライナ軍の兵力は5〜10倍、最低でも3倍で挑むのが理想で、世界中の陸軍大学でも『いろはのい』として習う。だがウクライナ軍はどっちつかずの戦力分散配置という愚策でお茶を濁し、敗れてしまった」
先の反攻作戦では、ウクライナ南部、ザポリージャ州マリウポリ方面への一点突破をアメリカは強く推した。だがウクライナ側は、南部2本、東部1本、計3本の進撃ルートでの逆襲に固執した。一点突破は自分の損害も大きくなる危険性があると考えたのだろう。
一方、ロシア侵略軍は戦線が1000km以上と長大なため、全体に薄く広く兵力を配置せざるを得なかった。このため、ウクライナ軍は3方面で反撃をうかがいながらロシア軍を引き付け、戦線のどこかでほころびが生じたら、すかさずそこに雪崩れ込めばロシア軍の防御態勢は瓦解すると楽観視した。
ところがロシア軍は予想以上の大兵力と、頑強で巧妙に築いた防御陣地や地雷原で待ち受け、結局兵力を分散配置したウクライナ軍は惨敗した。
高い勉強代を支払ったウクライナだが、リベンジ反攻作戦では、戦闘経験やノウハウで世界一のアメリカのアドバイスを全面採用する方が得策だろう。
作戦の中身については、憶測の域を出ないが、「純軍事的には、当初からアメリカが主張するメリトポリ方面への一点突破で、『牛の舌』地域を分断・孤立させるプランが理にかなっている」と前出の軍事研究家は分析する。
「牛の舌」とは、ウクライナ南部のアゾフ海・黒海沿いに、ザポリージャ、ヘルソン両州の沿岸地帯を幅100km前後、東西約400kmにわたり、牛の舌のように細長く伸びたロシア侵略軍が占拠する地帯のことである。
そこで、ロシア国境から東方に200km強、「牛の舌」のほぼ中間にある重要都市・メリトポリを目指し、同市の北部約80km辺りから戦車や歩兵戦闘車で固めたウクライナ反攻部隊の主軸が戦線を突破し南下。アゾフ海まで突進し、メリトポリ以東のロシア軍を孤立させるというシナリオが有望視される。
だが、先の反攻作戦でも実施した反攻ルートで、ロシア側も防御を固めているはずだ。事実ロシア軍はこの地域を要塞化し、地雷原、戦車壕(戦車を阻む大型塹壕)、鉄条網、コンクリート塊などを交互に配置した防御ラインを何重にも築いていると見られ、突破はかなり困難だろう。
多用途戦闘機「F-16」の存在がカギとなる
前回の反攻作戦では、ウクライナ軍には現代戦で必須の戦闘機による支援がほとんどなかったが、次のリベンジ作戦では優秀な戦闘機F-16による空からの強力な援護が約束されている。
計画では、NATO加盟国から50機前後が提供され、2024年7月ごろから順次ウクライナに引き渡される。
「戦争のエスカレーションを危惧してF-16製造国のアメリカは直接供与をためらうが、もしかしたら2025年には供与に転じるかもしれない。同国は少なくとも900機を保有するため余力は十分で、ウクライナ軍の保有数は100機以上になる可能性もある」(前出の軍事研究家)
リベンジ反攻作戦でF-16の役割は次のように多岐にわたる。
まずは「地対空ミサイル(SAM)潰し」が“一丁目一番地”だ。現代戦では真っ先に行われ、戦場の上空で制空権を握れるか否かを左右する極めて重要な任務で、いわば「露払い」である。
メリトポリ周辺には、ロシア軍の中・短距離SAM(射程100km未満)が多数布陣し、この完全破壊を図ると見られる。
これには、電子戦装置を装備したF-16が先鋒を務める。相手がレーダー電波を発信すると逆探知し、発信源に突進する対レーダー・ミサイルを撃ち込み、SAM用レーダーを破壊する。万が一、SAMが発射されても、ジャミングやデコイ(電波を発信したり反射したりする「おとり」)、フレア(火の玉を多数発射し赤外線=熱線に反応する対空ミサイルを騙す)などでかわす。
ちなみにロシア軍はS-200/S-300/S-400といった、射程200〜400kmを誇る長射程SAMを持つが、「牛の舌」は幅が100km前後で、ウクライナ軍の地対地ミサイルやドローンに狙われる恐れがある。何より非常に高価なシステムなため、前線近くにはあまり配置されない。
長射程の利点を生かし、敵の射程外から攻撃する「スタンド・オフ攻撃」が得意で、これまではクリミア半島に数基設置されていた。だが、これらもウクライナのATACMSや巡航ミサイルの餌食となり、多数が破壊されている。
ロシア軍の強固な「防衛ライン」を無力化させる作戦
ロシア側のSAMを一掃したら、次は精密誘導爆弾(JDAM)や、地対空ミサイルでロシア軍の空軍基地や指揮・通信施設、砲陣地を攻撃。並行して強固な防御ライン、とりわけ地雷原を徹底的に叩き、ウクライナ反攻部隊の前進を援護する。
もちろんウクライナ地上部隊は、F-16の攻撃に合わせながら、大砲やHIMARSなどで砲撃し、地雷原や陣地に潜むロシア軍部隊を徹底的に叩く。
地雷原を突破した反攻部隊は、工兵部隊による戦場にできた凸凹の修復の支援を受けながら前進する。ただし、途中のメリトポリ市内への突入は控え、包囲するにとどめて当面はやり過ごし、先鋒部隊は一路アゾフ海を目指す。市街戦は双方に多大な犠牲を伴うため、突入は避けたいところだろう。「兵糧攻め」で敵部隊の降参を待つのがセオリーである。
こうして先鋒部隊がアゾフ海の海岸に達すれば、「牛の舌」の東部分、つまりヘルソン州に立てこもるロシア軍部隊は、ほぼ孤立する。
わずかに、クリミア半島とは細い陸地(地峡)でつながり、道路や鉄道が通る。また半島と「牛の舌」との間にも橋が何本か架かるが、これらの橋は長距離射のATACMSやドローンなどで破壊し、地続きの連絡路・鉄道も地雷の散布で使用を困難にする――というのが推測されるリベンジ反攻作戦の想定シナリオである。
反攻作戦と並行し、クリミア半島にも攻撃が加えられ、特に半島のアキレス腱でロシア本土と連絡するクリミア大橋は、最重要攻撃目標となり、完全な破壊を目指すはずだ。この橋を寸断しない限り、「牛の舌」東部で籠城するロシア軍部隊の兵糧攻めは完璧にならないからである。
合わせて、同半島のレーダー・サイトや航空基地、燃料貯蔵庫、インフラ設備にも猛攻が加えられるだろう。
「目前の敵部隊より後方の補給路撃破」の重要性
さらにロシア本土からドンバス地方〜メリトポリの兵站線(補給路)の壊滅も重要だ。
ロシアは最近同地域に鉄道を新設し、「牛の舌」方面への補給を強化している。そこで、いくつかある鉄橋をミサイルなどで攻撃して、メリトポリやヘルソン州への補給を妨害する作戦に出るだろう。
「国外での戦争を旨とする米軍は補給路、つまり兵站を重要視する。裏を返せば兵站の大事さをどの軍隊よりも知っており、目前の敵部隊よりも、はるか後方の輸送部隊や補給の撃破を重んじる」(前出の軍事研究家)
とりわけ、最前線に強力な兵力を配置する一方で、これを維持するための兵站線が貧弱で長く伸び切る場合は、攻撃側にとってまたとない好機となる。最前線の兵力が大きいほど、補給が遮断された際のダメージは大きい。第2次大戦時に南太平洋の島々に大軍を派遣した旧日本軍の惨劇を見れば明らかだ。
当然のことながら、ロシアの戦闘機は「牛の舌」の上空で暴れ回るF-16との制空権争いに臨むはずだ。だが、ロシア本土から200〜500kmも離れ、しかもウクライナ側は高性能のパトリオットなど、多数のSAMやF-16が控える。
加えて「空飛ぶレーダー・ライト」と呼ばれる大きな皿型レーダー・アンテナ(レドーム)を機体の背中に背負った「E-3早期警戒管制機(AWACS)」が、NATO加盟国であるルーマニアの、ウクライナ国境ギリギリの上空を旋回するだろう。
レーダーの探知能力は半径600kmといわれ、「牛の舌」どころかクリミア半島全域のロシア軍機の動きもキャッチできる。これら情報は秘密性の高いデジタル無線回線でF-16と情報共有され、同機が持つ長射程対空ミサイルで狙い撃ちすれば、ロシア戦闘機は気づかないうちに撃墜される可能性が高く、こうしたスタンド・オフ攻撃により、ロシア空軍機の苦戦は否めない。
そして、「牛の舌」の分断後は、ヘルソン州周辺やメリトポリ市内で孤立するロシア軍部隊に降伏を迫り、双方の損害を少なくするのが良策だ。
「『窮鼠(きゅうそ)猫を噛む』のことわざのように、完全包囲された部隊は、破れかぶれの抵抗を見せ、制圧までに双方に多大な犠牲が出ることがよくある。これを防ぐため、クリミア半島の地峡部分をわざと開放し、ここからロシア軍部隊を潰走させるといった策は、古今東西の戦でもよく用いられる」(前出・軍事研究家)
610億ドルという巨費で息を吹き返しつつあるウクライナと、一大攻勢をうかがうロシア。5期目のロシア大統領となったプーチン氏は、就任式で「あらゆる国難を乗り越えて計画したことを全部実現する。共に勝利しよう」と宣言。ウクライナ侵略戦争の継続を強調して見せた。「2024年夏の陣」は果たしてどうなるのか。
●真実を教えよう! 米国がウクライナ追加支援を決めた「3つの隠蔽された目的」 5/12
2024年4月20日、米下院は総額953億ドルの大規模な支援策を可決した。そのなかには、ウクライナへの608億ドル、イスラエルとガザを含む紛争地域の民間人への人道支援に264億ドル、台湾とインド太平洋地域への81億ドルが含まれている。ウクライナへの援助は311対112で賛成多数となり、共和党の112人が反対票を投じた。24日に上院でも可決され、バイデン大統領の署名を経て成立した。
驚くのは、20日、ロイド・オースティン国防長官が声明を発表し、そのなかで、「本法案はまた、米国の将来に対する重要な投資でもある」と明言している点だ。「防衛産業基盤に直接流入する約500億ドルを提供することで、この法案は、米国の長期的な安全保障を強化すると同時に、30以上の州で良質な米国人の雇用を創出する」というのである。
ウクライナ支援で票を買うバイデン大統領
ジョー・バイデン再選につながる国内雇用のため、ウクライナ戦争支援にカネを出すというのは、「カネで票を買い、ウクライナで命を奪うということ」を意味していることになる。具体的にどの州が潤うかについては、4月18日付の「ワシントンポスト」が「議会が承認したウクライナへの軍事援助の大半が使われている地区の地図を掲載している(下図を参照)。
議会が承認したウクライナへの軍事援助の大半は、上記の地区で使われている。
『ウクライナへの援助』の使い道
米戦略国際問題研究センターのマーク・カンシアン上級顧問は、2023年10月3日、「『ウクライナへの援助』のほとんどは米国内で使われている」という記事を公表した。それによると、これまで議会が承認した1130億ドルの配分のうち、「約680億ドル(60%)が米国内で使われ、軍と米国産業に利益をもたらしている」と指摘されている(下図を参照)。これは、下図の青、オレンジ、斜線の三つの部分を合わせたものということになる(「備考」を参照)。バイデン政権は、自らの政府機関への資金提供、米軍への資金提供の大部分、軍備の補填とウクライナの装備購入の大部分、人道支援の一部について、ウクライナへの「支援」や「援助」という名目で行っており、その資金は米国内にとどまる。このため、カンシアンは、「ウクライナ援助」(Aid to Ukraine)という言葉は「誤用(misnomer)である」と指摘している。
バイデン大統領の大きな過ち
本当は、バイデン大統領は大きな過ちを犯している。それは、2022年2月24日にはじまったロシアによるウクライナへの全面侵攻を停止し、和平合意を締結させる絶好のチャンスを逸したとことだ。もっとはっきり書けば、せっかく緒戦でウクライナが勝利し、和平協定の締結目前にまで至ったにもかかわらず、米国と英国が軍事支援を約束して、ウクライナに和平を見送らせたのである。その結果、数十万人の死傷者が増加しただけでなく、戦渦の終結はまったく見通せない状況がつづいている。
2022年春の段階で、バイデン大統領がウクライナ支援を名目に「投資」し、その資金を国内にとどめたり、還流したりして、大統領選に利用しようとしていたわけではない(彼にとっては中間選挙で大きく負けないことが念頭にあった)。ただ、「ロシアの弱体化」という目的のために、ウクライナ戦争の継続を望んだのである。
和平目前だった
すでに、独立言論フォーラムで公開した拙稿「2022年2〜5月のウクライナ戦争を終わらせることができた会談」で詳述したように、『フォーリン・アフェアーズ』の報道によって、ウクライナとロシアが2022年に和平協定締結の直前にまで至っていたことが米側の情報としてはじめて明らかになっている(ほぼ同じ内容をドイツの「ヴェルト」も報道)。
2022年2月28日からスタートした2国による和平協議は断続的に行われ、3月29日になって、トルコのイスタンブールで直接会談し、双方は共同コミュニケに合意したと発表する。「ウクライナの安全保障に関する条約の主要条項」と題されたコミュニケ草案の全文を入手した『フォーリン・アフェアーズ』には、「ウクライナ側がこのコミュニケを大筋で起草し、ロシア側はこれを条約の骨子とすることを暫定的に受け入れたという」と書かれている。
コミュニケで想定されている条約は、ウクライナが永世中立、非核国家であることを宣言するものであった。「ウクライナは、軍事同盟に参加したり、外国の軍事基地や軍隊の駐留を認めたりする意図を放棄する」として、コミュニケには、条約を保証する国の候補として、国連安全保障理事会の常任理事国(ロシアを含む)、カナダ、ドイツ、イスラエル、イタリア、ポーランド、トルコが挙げられていた。
ウクライナが攻撃を受け、支援を要請した場合、すべての保証国は、ウクライナとの協議や保証国同士の協議の後、ウクライナの安全回復のために支援を提供する義務を負うとのべているという。「驚くべきことに、これらの義務は、NATOの第5条(飛行禁止区域の設定、武器の提供、保証国の軍事力による直接介入)よりもはるかに正確に明記されていた」と『フォーリン・アフェアーズ』は指摘している。
さらに、提案された枠組みではウクライナは永世中立国となるが、ウクライナのEU加盟への道は開かれており、保証国(ロシアを含む)は明確に「ウクライナのEU加盟を促進する意思を確認する」と記されていたという。
この内容には、『フォーリン・アフェアーズ』の記事が指摘するように、プーチンの譲歩があったと思われる。3月初旬には、プーチンの電撃作戦が失敗したことは、明らかだったから、「おそらくプーチンは、長年の懸案であった『ウクライナがNATOへの加盟を断念し、自国領土にNATO軍を決して駐留させない』という要求をのむことができれば、損切りするつもりだったのだろう」、と記事はのべている。 「コミュニケにはもうひとつ、振り返ってみれば驚くべき条項が含まれている」ともかかれている。それは、今後10年から15年の間に、クリミアをめぐる紛争を平和的に解決することを求めるというものだ。2014年にロシアがクリミアを併合して以来、ロシアはクリミアの地位について議論することに同意してこなかったことを考えると、ここでもロシア側の譲歩が現れている。
刮目すべき事実
刮目すべきは、和平協議がキーウ郊外のブチャとイルピンでの虐殺が明らかになった4月上旬以降もつづけられたことである。『フォーリン・アフェアーズ』の記事は、4月12日と15日の協定(交渉官間で交わされた最後の草案)のバージョンを比較し、その時点では重要な安全保障問題についての合意が得られていなかったことを明らかにしている。原案では、「ウクライナが攻撃された場合、保証国(ロシアを含む)はウクライナに軍事支援を行うかどうかを独自に決定する」とされていたが、4月15日の原案では、「合意された決定に基づいて」行われるという要件が追加された。
戦争の終結と平和条約の調印後にウクライナが保有できる軍隊の規模や軍備の数についても意見が対立した。4月15日の時点で、ウクライナ側は25万人の平時の軍隊を望んでいたが、ロシア側は最大でも8万5000人で、2022年の侵攻前のウクライナの常備軍よりかなり少ないと主張した。ウクライナ側は800台の戦車を望んでいたが、ロシア側は342台しか認めなかった。ミサイルの射程距離の差はさらに顕著で、ウクライナ側は280キロ、ロシア側はわずか40キロだった。
こうした実質的な意見の相違にもかかわらず、4月15日の草案では、条約は2週間以内に調印されることになっていた。「確かに、その日付はずれたかもしれないが、両チームが迅速に動くことを計画していたことを示している」というのが『フォーリン・アフェアーズ』の見立てだ。
和平を潰した米英
米国の利害を代表する『フォーリン・アフェアーズ』の記事では、和平交渉決裂の理由を、ウォロディミル・ゼレンスキーに帰しているようにみえる。(1)ブチャとイルピンでのロシアの残虐行為に憤慨していた、(2)自分たちは戦争に勝てるというウクライナ人の新たな自信――といったものがゼレンスキーの和平拒否へと傾かせたというのだ。
だが、3月30日、当時のボリス・ジョンソン英首相が「(プーチンの)軍隊が一人残らずウクライナから撤退するまで、制裁を強化し続けるべきだ」と述べ、4月9日、キーウを訪問した出来事は重大だった。そこで、ジョンソンは戦争継続を求めたのである。この事実は、和平会談でウクライナ側の代表を務めたダヴィド・アラハミヤが
「私たちがイスタンブールから戻ったとき、ボリス・ジョンソンがキエフにやってきて、『我々は(ロシア側とは)何もサインしない。戦い続けよう』とのべた」という発言によって裏づけられている。もちろん、ジョンソンの裏にはバイデン大統領が控えていた。
こう考えると、バイデン大統領の思惑が気になる。おそらく戦争を長期戦にもち込んで、ロシアの弱体化をはかるというのが狙いであったのだろう。
ウクライナ支援の本当の理由
しかし、それだけではない。米国がウクライナ支援を継続し、戦争を長引かせている背後には、今後の戦争に備えて最新兵器を開発するための実験を行うという狙いがあるのだ。
日本のマスメディアは報道しないが、ウクライナ戦争は自律型兵器の実験場となっている。米国は2017年から人工知能(AI)を戦争に持ち込むプロジェクト、「プロジェクト・メイヴン」(Project Maven)に着手している。たとえば、戦争に革命をもたらす可能性のある新世代の自律型無人機の開発が行われており、そのための実験場として、ウクライナ戦争は格好の場となっている。だからこそ、NYT(ニューヨークタイムズ)によれば、プロジェクト・メイヴンは、「現在では、ウクライナの最前線でテストされている野心的な実験に成長し、ロシアの侵略者と戦う兵士たちにタイムリーな情報を提供する米軍の取り組みの重要な要素を形成している」という。
おまけに、遠隔操作で動く軍事用ロボットは、非クルー式地上車両(Uncrewed Ground Vehicles, UGVs)もウクライナに投入され、実験場と化している。「最近のビデオでは、ウクライナのUGVがロシア領内の橋や陣地を攻撃し、爆発物を設置して撤退したり、神風攻撃をしたりしている」という(The Economistを参照)。
つまり、最新のテクノロジーを実験するうえでも、ウクライナ戦争の継続が望ましいと考える人々が米国にたくさんいる。ウクライナ戦争で自律型無人機などの最新兵器の性能が高まれば、今後予想されるロシアや中国との直接的な戦争に大いに役立つかもしれない。そんな「悪だくみ」もあって、米国はウクライナ戦争を支援しつづけているのだ。
そう考えると、日本がウクライナに対して武器供与するなど「もってのほか」ということになるだろう。AIを使った自律型兵器開発に間接的に手を貸すことになるからだ。日本国民はバイデン政権の「悪だくみ」に加担すべきではない。
●ウクライナ東部ハルキウでロシア軍の攻勢続く 国境周辺で激化 5/12
ウクライナ東部のハルキウ州では、北から国境を越えて侵入したロシア軍の部隊の攻勢が続いています。
一方、ロシア側によりますと、隣接する西部のベルゴロド州では、ウクライナ側からの砲撃や無人機による攻撃が相次いでいるということで、国境周辺の地域では戦闘が激しさを増しています。
ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、ロシアとの国境に近い東部ハルキウ州北部の7つの集落で、戦闘が続いていることを明らかにしました。
またハルキウ州の知事は、ロシア軍の攻撃により、国境に近いボフチャンシクなどで合わせて2人が死亡したと、12日発表しました。
11日に撮影されたボフチャンシクの映像では、多くの建物が被害を受け、内部が黒焦げになって火や煙があがっているものもあり、地元の警察官は「ロシア軍は町全体を絶えず砲撃している」と話していました。
ハルキウ州の北部からは多くの住民が避難していて、ウクライナの非常事態庁が公開した映像からは、緊急車両で高齢者などが避難する様子がうかがえます。
一方、ハルキウ州の北に隣接するロシアのベルゴロド州の知事は、11日、SNSで、ウクライナ軍の激しい砲撃があり、女性1人が死亡したと発表しました。
また12日には、ウクライナ側の無人機を使った攻撃で電力設備が被害を受け、国境に近い地域で停電が起きているとしています。
ロシア軍が10日に、地上部隊を国境を越えてウクライナ側に侵入させたあと、国境周辺の地域では戦闘が激しさを増しています。
●「5つの集落制圧」 ウクライナ北東部ハルキウ州でロシア軍攻勢続く ロシア国防省 「緩衝地帯」設ける狙いか “東部から部隊引きつける陽動作戦”の見方も 5/12
ウクライナ北東部ハルキウ州でロシア軍が国境を越えて進軍し、攻勢を強めています。
ロシア国防省は5つの集落を制圧したと発表、一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は7つの集落の近くで戦闘が続いているとしています。
ハルキウ州知事によりますと、ハルキウ州のロシアとの国境付近では10日に続いて11日も激しい戦闘が行われ、州内の都市ボウチャンシクとその周辺地域ではロシア軍の攻撃により市民2人が死亡しました。
ウクライナメディアによりますと、州知事は、現地時間の11日の正午の時点で、ボウチャンシクなどロシアの攻撃を受けている地域から、住民2500人以上が避難した、と明らかにしました。
こうした中、ロシア国防省は11日、ハルキウ州の国境地帯にある5つの集落を制圧したと発表しました。
一方、ゼレンスキー大統領は7つの集落の近くで防衛作戦が続いているとし、ハルキウ州での兵力を増強していると強調しました。
ロイター通信はウクライナ軍の情報筋の見方として、ロシア軍の狙いは緩衝地帯の設置を目指しウクライナ軍を国境から10キロの地点まで後退させることだ、と伝えています。
ハルキウ州はロシア西部ベルゴロド州に隣接し、プーチン大統領は今年3月、ウクライナ領土内に「緩衝地帯」をつくる考えを示していました。
また、ウクライナメディアは、ロシア軍のハルキウ州への攻勢は東部のドネツク州やルハンシク州に展開するウクライナ軍の部隊をハルキウ州に引き寄せる陽動作戦の狙いがある、とするウクライナ軍高官の見方を伝えています。 
●国境周辺から4000人超避難 ロシア、兵力の分散狙いか 5/12
ウクライナ東部ハリコフ州北部に対するロシア軍の地上侵攻で、シネグボフ州知事は12日、国境周辺から4千人以上が避難したと明らかにした。12日も激しい戦闘が続いており、ウクライナ軍は部隊を増派。米シンクタンク、戦争研究所は侵攻規模は限定的だとした上で、ウクライナ軍を同州防衛に当たらせて他の前線に展開する兵力を分散させるのがロシアの狙いだとする報告書を公表した。
シネグボフ氏らによると、国境から約6キロのボウチャンスク方面では11日、滑空爆弾による攻撃が20回以上あり民間人2人が死亡した。12日も砲撃が続き、死傷者が出た。

 

●ロシア国防相交代 ショイグ氏からベロウソフ氏に プーチン氏 5/13
通算5期目入りしたロシアのプーチン大統領は、ショイグ国防相を退任させ、後任に第1副首相を務めてきたベロウソフ氏を充てる人事を上院に提案した。
上院が12日、通信アプリ「テレグラム」で発表した。大統領府によると、プーチン氏はパトルシェフ安全保障会議書記を退任させ、後任にショイグ氏を充てる大統領令を出した。
ウクライナ侵攻の中で異例の交代人事。ショイグ氏は陣頭指揮から外れる形で、昇進との見方は薄い。短期戦を見込んだ侵攻が長期化した責任を問われた可能性もありそうだ。ペスコフ大統領報道官によれば、パトルシェフ氏の転出先は近く明らかにされる。
ラブロフ外相は続投が提案された。プーチン氏はこれらを含む軍・治安機関などのトップ人事を上院と協議し、近く任命する見通しだ。
ショイグ氏は、エリツィン政権時代からの非常事態相などを経て、2012年に国防相に就任。国民の人気は高かった。22年の侵攻開始後、占領したウクライナ北部キーウ(キエフ)州や北東部ハリコフ州からのロシア軍撤退を受け、保守派に「弱腰」と批判された。
民間軍事会社「ワグネル」創設者の故プリゴジン氏とも対立し、ショイグ氏を解任すべきだという要求が昨年6月の反乱に発展。ショイグ氏の支持率は低下した。
戦時下で続投が既定路線とみられた一方、ショイグ氏の最側近だったイワノフ国防次官が今年4月、収賄容疑で突如拘束され、影響力の低下も指摘されていた。
●ロシアのショイグ国防相退任、後任は異例の経済専門家・ベロウソフ氏…参謀総長や外相は留任へ 5/13
ロシアのプーチン大統領は12日、内閣改造でセルゲイ・ショイグ国防相(68)を退任させ、後任に第1副首相として経済政策を担当してきたアンドレイ・ベロウソフ氏(65)を充てる人事を議会上院に提案した。上院がSNSで発表した。ウクライナ侵略が続く戦時体制下で、経済専門家が国防トップに就く異例の交代人事となる。
ロシア大統領府は、ショイグ氏を安全保障会議書記に任命したと明らかにした。ショイグ氏は当初、通算5期目に入ったプーチン政権で続投が既定路線とみられていたが、先月、側近で軍関連の建設部門を担当していたティムール・イワノフ国防次官が収賄容疑で拘束された。汚職疑惑が影響した可能性があり、戦況への影響が注目される。
ショイグ氏は2012年に国防相に就任。22年のウクライナ侵略開始直後、首都キーウ攻略に失敗し、露軍が大幅に撤退を強いられたことが批判の対象になった。また、民間軍事会社「ワグネル」創設者のエフゲニー・プリゴジン氏とも対立し、政権内での影響力の低下が指摘されていた。
新たに国防相に就くベロウソフ氏は20年から第1副首相を務め、プーチン氏の信頼も厚いとされる。国防予算が増額される戦時体制下で、米欧の対露制裁への対応や、国内経済の安定化に取り組んできたベロウソフ氏の起用人事は、「いかに戦争がロシア経済の中心になっているかを示す」(米紙ウォール・ストリート・ジャーナル)との指摘がある。
ウクライナ侵略の総司令官を務めてきたワレリー・ゲラシモフ参謀総長や、セルゲイ・ラブロフ外相は留任する見通しだ。これまで安全保障会議書記を務めてきたプーチン氏の側近、ニコライ・パトルシェフ氏の処遇は近く発表するとしている。
●ロシアのショイグ国防相の交代、プーチン氏が提案 後任に経済学者のベロウソフ氏 5/13
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は12日、長年の盟友であるセルゲイ・ショイグ国防相を交代させる人事案を上院に提出した。2012年から同職に就いていた68歳のショイグ氏は、ロシア安全保障会議の書記に任命される見通し。
ロシア議会上院が公表した文書によると、ショイグ氏の後任には、第1副首相を務めてきたアンドレイ・ベロウソフ氏が就任する。
ショイグ氏はロシアとウクライナの戦争で重要な役割を果たしてきた。
プーチン氏は強い権限を有する安全保障会議書記に、ニコライ・パトルシェフ氏に替えてショイグ氏を充てる方針であることが、ロシア政府の文書で示されている。パトルシェフ氏の新たなポストはまだ明らかになっていない。
ショイグ氏はプーチン氏と親密な関係にあり、故郷シベリアでプーチン氏を釣りに連れて行くこともよくあった。
軍事経験がなかったにもかかわらず国防相のポストを与えられたショイグ氏に対し、軍幹部の中には不満を抱く者もいた。
土木技師だったショイグ氏は1990年代に非常事態・自然災害復旧省のトップとして頭角を現すようになった。
国防相としては、とりわけ2022年にロシアがウクライナに全面侵攻して以降、能力不足だとの見方が多かったと、BBCのダニー・エイバーハード欧州アナリストは指摘する。
2023年にはロシアの戦争遂行をめぐり、同国の民間軍事組織「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏との確執が公然となった。
ロシア政府に対する短期間の反乱を率いたプリゴジン氏は音声メッセージで、ショイグ氏を「嫌なやつ」、「老いぼれた道化師」と非難した。
その後、プリゴジン氏は2023年8月、モスクワからサンクトペテルブルクへ向かうために乗っていた自家用機が、モスクワの北西部に墜落して死亡した。ロシア大統領府(クレムリン)は、墜落への関与を否定している。
ショイグ氏の後任として、軍事経験がほとんどない経済学者ベロウソフ氏の名前があがったことに驚く人もいる。
しかし、複数のアナリストは、プーチン氏がロシア経済を戦争努力とさらに密接なものにしようとしていることの表れだとみている。
クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、民間人を任命するという案は、国防相としての役割に「革新」が求められていることを示していると述べた。
また、ロシアは1980年代半ばのソヴィエト連邦のようになりつつあるとした。ソ連では当時、国内総生産(GDP)に占める軍事費の割合が高かった。
そのため、軍事支出をロシア経済全体により良く組み込まれるようにする必要があると、ペスコフ氏は付け加えた。
「革新に対してよりオープンである者が、戦場で勝利する」
ショイグ氏は以前から立場が弱まり、失職の可能性が取りざたされていたため、交代に驚きはないと、BBCのスティーヴ・ローゼンバーグ・ロシア編集長は述べた。ウクライナでのロシアの作戦は、軍事的後退や、人員と物資の大幅な損失に悩まされてきた。
経済学者を国防相に据えることは、クレムリンの優先事項に変化があったことを映し出していると、ローゼンバーグ編集長は言う。ロシア経済は今、戦時体制下にある。そのため、国防省がこの戦争の資金を十分確保することが不可欠になる。
ロシアの独立系サイト「ザ・ベル」は、あるロシア政府関係者の話として、ベロウソフ氏は「ロシアが複数の敵に包囲されていると考える、強硬な国家擁護者」と見なされていると伝えた。
ベロウソフ氏はプーチン氏と同様に、ロシア正教会と近しい関係にある。また、プーチン氏のように武道愛好家で、若い頃には空手やロシアの格闘技サンボを練習していたとされる。
前内閣で第1副首相に任命される前は、プーチン氏の側近として数年間働いていた。それ以前は、経済開発相を務めていた。
ベロウソフ氏は経済が専門の側近の中で唯一、2014年のウクライナ南部クリミアの一方的併合を支持したと報じられている。
プーチン氏は3月の大統領選で87%の得票率で勝利。2000年に初当選して以来、通算5選を決めた。今回の選挙では本来の意味での対立候補は1人も立候補を認められなかった。
留任する閣僚にはベテランのセルゲイ・ラヴロフ外相らがいる。
●プーチン大統領 ショイグ国防相を交代へ 4月に側近が収賄疑いで拘束…後任に第一副首相・ベロウソフ氏の見通し 5/13
ロシアのプーチン大統領は、ショイグ国防相を交代させる方針を示した。
2012年から国防相を務めたショイグ氏は4月、側近が収賄の疑いで拘束され、処遇が焦点の1つとなっていた。
退任は、スキャンダルが影響した可能性もあるとみられる。
後任は、第一副首相のアンドレイ・ベロウソフ氏になる見通しで、ショイグ氏は安全保障会議書記に任命される。
こうした中、ロシア国防省は12日、ウクライナ東部ハルキウ州を攻撃し、あわせて9つの集落を制圧したと発表した。
一連の攻撃で4人が死亡、6000人以上の住民が避難している。
一方、ロシアのベルゴロドでは、ウクライナ軍のミサイル攻撃を受け、12人が死亡、子ども2人を含む19人が負傷した。
●ロシア、ショイグ国防相が交代 安全保障会議書記に 5/13
ロシアのプーチン大統領は12日、国防相を務めたセルゲイ・ショイグ氏を交代させ、第1副首相だったアンドレイ・ベロウソフ氏を新たな国防相に任命する人事を上院に提案した。ショイグ氏は同日の大統領令で安全保障会議書記に任命された。タス通信が伝えた。安保会議は大統領が議長を務める安全保障問題の最高政策立案機関で、盟友ショイグ氏を自身の補佐役に置く。
ウクライナ侵攻の長期化を視野に、経済発展相などを歴任した経済官僚のベロウソフ氏を国防相に据えて経済と軍事の一層の連携を図る。軍制服組トップのゲラシモフ参謀総長は留任し、継続して作戦指揮を担う。
ショイグ氏は軍需産業分野を統括する政府軍事産業委員会の副議長を兼務。プーチン氏はウクライナ侵攻継続に向けた軍備強化などを引き続き担当させるが、戦況停滞や悪化による批判から守る意図もうかがえる。
国防相への任命提案についてペスコフ大統領報道官は、無人機などが多用される現状を念頭に「国防省は技術革新に対しオープンでなければならない」と説明した。
●プーチン氏もくろむ「旧ソ連連合」に亀裂…戦術核で牽制も露の影響力低下で不可避 首都の軍事パレード出席「常に臨戦態勢」も 5/13
ロシアのプーチン大統領は第二次世界大戦の対ドイツ戦勝記念日の9日、首都モスクワの「赤の広場」で行われた軍事パレードに出席し、「核戦力部隊は常に臨戦態勢にある」と強調した。戦術核兵器の演習に隣国ベラルーシも参加するなど旧ソ連との連合を模索するが、亀裂も生じているのが現状だ。
プーチン氏は9日の式典で「何者にもロシアを脅かすことは許さない。わが戦略部隊(核戦力部隊)は常に臨戦態勢にある」と演説。ロシアが侵略するウクライナと同国を支援する欧米諸国を威圧した。
ロシア国営テレビによると、プーチン氏は軍事パレード後、ベラルーシのルカシェンコ大統領と「無名戦士の墓」に献花した際、戦術核兵器の使用に関する演習にベラルーシも参加することを明らかにした。ベラルーシにはロシアの戦術核が配備されている。
ロシア国防省は6日、南部軍管区で戦術核使用を想定した演習準備を始めたと発表済みだ。ベラルーシ国防省も7日に戦術核兵器の点検を実施すると表明し、ルカシェンコ氏は共同で初の戦術核使用に関する訓練を計画していると述べた。
赤の広場でのパレードには9000人超の軍人と70超の兵器が参加。戦闘車両や核搭載可能な短距離弾道ミサイル「イスカンデルM」、多弾頭の大陸間弾道ミサイル「ヤルス」などが登場した。旧ソ連圏からはルカシェンコ氏や中央アジア5カ国の首脳が出席した。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(71)は7日、大統領府がある首都モスクワのクレムリンで就任宣誓し、通算5期目に入った。最長で2期、83歳となる2036年まで大統領を務めることも可能となった。00年の初当選以来、最高権力者として政敵を次々と排除し、盤石に見えるプーチン体制だが、異例の長期政権における最大の「敵」は意外なところに潜んでいるという。
プーチン氏は就任演説で、ウクライナ侵攻開始以来の約2年を振り返り「われわれは困難な時期を乗り切った」と述べた。
安全保障面ではロシア軍の定員を最大132万人に増やし、核兵器を含む近代装備の充実や戦車、弾薬などの生産を強化し、北大西洋条約機構(NATO)に対抗する。
外交面では、欧米を「新植民地主義」と非難。中国やインド、イランなど非欧米諸国とつくる「BRICS」などを軸に国際的孤立を回避したい考えだ。
内政では、3月の大統領選で、87%を超す「史上最高」の得票率で圧勝したが、侵攻反対を唱える元下院議員が候補者登録を拒まれるなど、不公正さも指摘された。
就任式後に注視されているのが政権の人事だ。下院(国家院)に承認された次期首相が組閣を行うが、外相や国防相など重要閣僚はプーチン氏と上院が協議して決める仕組みだ。
●ロシア・プーチン大統領、国防相のショイグ氏交代の人事案示す ロシア軍、ウクライナ北東部でさらに4集落制圧も隣接のロシア西部で集合住宅の一部崩壊 5/13
ロシアのプーチン大統領は、長年、国防相を務めてきたショイグ氏を交代させる人事を示しました。こうした中、ウクライナ北東部ハルキウ州ではロシア軍による攻勢が続いています。
通算5期目に入ったプーチン大統領は12日、政権の主要幹部の人事案を示しました。
この中で、2012年から国防相を務めたショイグ氏は交代となり、プーチン氏はショイグ氏を安全保障会議の書記に任命する大統領令に署名しました。
こうした中、ウクライナ北東部ハルキウ州ではロシア軍による攻勢が続いていて、ロシア国防省は12日、“新たに4つの集落を制圧した”と発表。ハルキウ州知事は“国境周辺から4000人以上が避難したこと”を明らかにしています。
一方、隣接するロシア西部ベルゴロド州では集合住宅の一部が崩壊し、ロシア国防省は「ウクライナ側による砲撃があり、それを迎撃したミサイルの破片が当たった」としています。この攻撃により少なくとも12人が死亡したということです。
●プーチン氏、国防相らの交代決断 側近を解任、その息子を副首相に 5/13
ロシアのプーチン大統領は12日、ショイグ国防相に代わり、前内閣で第1副首相を務めたベロウソフ氏を国防相にする人事を固めた。インタファクス通信が伝えた。週内に上院との協議を経て正式に決める。ミシュスチン首相やラブロフ外相は留任し、プーチン氏通算5期目の内閣の陣容が固まった。
ショイグ氏は、国防の重要ポストである国家安全保障会議書記に横滑りし、プーチン氏側近のパトルシェフ同書記は解任となる。ただ、パトルシェフ氏の息子で農相だったドミトリー・パトルシェフ氏が新内閣で副首相に昇格する。
ベロウソフ氏はプーチン氏の経済担当の補佐官を務めるなど経済畑を歩んだ。2020年にミシュスチン首相が新型コロナウイルスに感染した際には首相代行を務めた。
ペスコフ大統領報道官は、国防省の改革が狙いだと報道陣に話した。ウクライナ侵攻後、ロシア軍は戦略、兵站(へいたん)、動員など様々な分野で失態が目立った。昨年6月には民間軍事会社ワグネルの反乱も招いており、ショイグ氏の更迭説が浮上していた。
●「第三次世界大戦は起こらない」と思っちゃいけない…“重大リスク”を軽視してしまう人の共通点 5/13
「全面戦争は決して起こらない」――以前からロシアとウクライナの衝突が指摘されていたにもかかわらず、こうした楽観論が有識者からも出ていたのはなぜなのか……? ここでは人間が重大リスクを見落としてしまう理由を、関西大学教授の藤田政博氏の新刊『 リーダーのための【最新】認知バイアスの科学 その意思決定、本当に大丈夫ですか? 』より一部抜粋してお届けする。
なぜ「ロシアは攻めてこない」と思っていたのか?
2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、2024年5月現在も続いています。
これは、突如として始まったわけではありません。欧米各国から「ロシアがウクライナに攻め込んでくる」と指摘されていたのです。ですが、その一方で、「全面戦争は決して起こらない」と考えていた有識者も多数いました。
当時のニュース番組では、現地のジャーナリストにマイクを向けられたウクライナ兵たちが「(ロシアとの戦争は)デマだ、信じるな」などと楽観的な返答をしている場面が流れていました。もしかすると、これ自体情報工作だったのかもしれませんが、現実にロシアが侵攻を開始したのは、その直後のことでした。
このように正常性バイアスとは、緊急の場面で楽観的に判断をするバイアスです。このようなことが起こるのは戦争のときだけでなく、災害時にも正常性バイアスは発揮されます。
たとえば、大地震の後に大きな津波がやってくることがあります。
そういうときに、地域防災無線などで「津波が来ます。避難してください」と言われても、とくに自宅が倒壊しなかった方は「私は家でいつも通り生活しているし、まあ大丈夫だろう」と判断してしまうのです。
すると避難が遅れたり、あるいは避難しなかったりで津波に巻き込まれてしまう……こういうことが発生するのが正常性バイアスです。つまり「(災害時でも)今の自分がいる状況は普段と変わらない」と、実際以上に思い込んでしまうのです。
このようなことが知られるようになってきたため、2024年1月に発生した能登半島地震では、テレビで「津波! 逃げて!」とかなり激しく(大きな字幕で)避難を促す放送がおこなわれました。これに対し、一部で批判の声も上がりましたが、過去の事例から学んで、少しでも多くの人が避難するのに役立ったと思われます。
なぜロシアとの戦争は起こらないと考えるのか?
侵攻前の状況で言うと、実際にロシアはウクライナとの国境辺りに、大量に軍隊を送っていました。それでも「単なる脅し」と捉えられていたのです。
「ロシアがその軍隊を進めて全面戦争になったら、おそらくロシアにも重大な被害が出るだろうし、ほかの国もどんどん巻き込まれる可能性もある。第三次世界大戦に発展し、核攻撃という話にもなりかねないので、そこはやらないでしょう」と。
これこそ、まさに正常性バイアスです。なぜ、このバイアスが働くのかというと「自分が住んでいるこの世界は安定しており、その安定が続くのだ」と考えたほうが、精神的に安定して過ごせるからです。誰でも、第三次世界大戦になって核攻撃が始まり、地球滅亡……ということは考えたくないのです。
災害場面でも同じで「自分の住んでいる家が津波で流されてしまう」など、天変地異によって自分の生活基盤がなくなるということは起きないと考えたほうが、心理的に安定していられます。
つまり、論理的に考えられるかどうかという話ではなく、そう捉えたほうが精神的に安定できるからそのように考えるという話なのです。
裏を返せば、このバイアスに掛かるときは、すでに事態が深刻化しているときです。ビジネスで言えば、倒産直前に発揮された例があります。
1997年に山一證券が自主廃業を決めた際も、山一證券の従業員には直前まで「自分の会社が潰れる」とは思っていなかった人が多数いたという逸話が残っています。
当時、山一證券で働いていた方の手記を読んだことがあるのですが、テレビを点けたら自社の社長が泣いて謝りながら「社員は悪くありません!!」と絶叫していて、そこで初めて「うちの会社って潰れるんだ」とわかったと言います。
もちろん、大企業だった山一證券では、会社の情報を社員がマスコミを通じて初めて知るということもあったでしょう。
末期状態になるまで気づかない「最強のバイアス」
しかし、それを除いても、じつはそれまでに倒産の予兆はありました。前社長が逮捕されていたり、役員が銀行に支援を求めたり、どんどん人が辞めたりなど、倒産に至る兆候はあったのです。
しかし、それに気づかなかった人たちも多かったそうです。まさに正常性バイアスと考えられるでしょう。
正常性バイアスは「最強のバイアス」とも言えます。ウクライナ侵攻も、津波の被害も、山一證券の倒産もそうですが、気づいたときにはもう遅かったという事例がたくさんあります。
誰も確認しなかったことで死亡事故に発展
正常性バイアスは災害時など、緊急時に生じるバイアスですが、このようなバイアスは日常的にも生じ得ます。
このバイアスは、自分の将来や身のまわりの環境について「いいことは起き、悪いことは起きない」と楽観視してしまうことですが、これを「楽観バイアス」と言います。
社会心理学者は「楽観バイアスが災害場面で発揮されると正常性バイアスになる」と説明しています。つまり両者は、本質的には同じものです。
楽観バイアスも、精神的な安定を求めるために生じます。そのほうが生き残りに有利だからです。たとえば「自分はいつ死ぬのか」と、悲観しながら過ごすより「今日も明日も生きていけるだろう」と思っていたほうが、前向きな行動を取りやすくなります。
とはいえ、楽観バイアスが原因の一つとなって、死亡事故に繋がる事件が起きたと思われる事例もあり、無視はできません。近年で言うと、2022年9月に静岡県で起きています。
3歳女児がバスに置き去りされ死亡
3歳女児がバスに置き去りにされ、熱中症で死亡してしまった事件です。
バスを運転していた園長(当時)ほかの記者会見によると、(1)乗降車時の人数確認、(2)複数人での車内点検、(3)最終的な出欠情報の確認、(4)登園するはずの園児がいない場合の保護者への連絡のすべてを怠っていたそうです(讀賣新聞2022年9月8日)。
バスにおける子どもの置き去り事故は日本以外でも起きており、日本でも2021年に福岡県で発生し、社会的な問題にもなりました。静岡県での事件は、その後再び起きました。
こういう事件は楽観バイアスが原因になることがあり得ます。
この事例を、楽観バイアスに当てはめて考えてみると、(1)は「毎回確認しなくても大丈夫だろう」、(2)については「ほかの人が確認したから大丈夫だろう」となり、(3)は「出欠情報を確認しなくても大丈夫だろう」で、(4)も「保護者に連絡しなくても大丈夫だろう」などと、つい楽観的に考えてしまうのです。
報道によると、バスを運転していた元園長や添乗していた職員は、二人とも子どもが残っていないか確認しませんでした。また当時の担任は、女の子が登園していないことに気づいていながら、無断欠席と思い込んでいたそうです。死亡した女の子は、それまで無断欠席を一度もしたことがなかったそうです。
正常性バイアスだけでなく、日常的に起こる楽観バイアスも、重大なケースに繋がることがあり、注意が必要です。
タイタニック、二度目の悲劇もバイアスが原因?
楽観バイアスが影響して、その本人が亡くなったと思われる事故も起きています。2023年6月にアメリカで起きた潜水艇沈没事故です。
これは、1912年4月に北大西洋で沈没した豪華客船「タイタニック」の観覧ツアーをおこなっていた会社の潜水艇が、水圧に耐え切れずに圧潰、乗員・乗客5人全員が亡くなる事故でした。この乗員の一人が、ツアー会社のCEOだったのです。
タイタニックの残骸は、深海約3800メートルの位置にあります。そこに行くための潜水艇は、その水圧に耐えられる設計にしなくてはいけません。
しかし、BBCニュース(2023年6月22日)によると、タイタニックの観覧を敢行していた会社の元ディレクターが、検査報告書で潜水艇に対する懸念を表明していたそうです。「重大な安全上の懸念を呼ぶ数多くの問題が指摘されていた」とのことで、このディレクターは「潜水艇が極限の深さに達すると、乗客に危険が及ぶ可能性を強調した」のですが、会社から解雇されたとのことです。
亡くなったストックトン・ラッシュCEO(写真:時事通信)写真を見る
亡くなったストックトン・ラッシュCEO(写真:時事通信)
事故で死亡した5人の中には同社のCEOも含まれているので、本当に大丈夫だと考えていたのでしょう。これは、楽観バイアスに囚われていたと推測されます。
しかし、当事者たちからすれば予防が非常に難しいものでもあります。何か重大なことが起きてしまった後で、初めて「あれはバイアスだったのか」と気づくこともあるためです。
そのため「楽観バイアスは誰にでも生じ得る」と肝に銘じ、常に自分に問い掛けることが大事です。いざというとき、楽観バイアスがもたらす「大丈夫だろう」は命取りになり得ます。なるべくならば、同じ轍を踏まずに役割を全うしたいものです。
●ウクライナ北東部「さらに4集落制圧」ロシア国防省 隣接するロシア西部の州で集合住宅崩壊「ウクライナの攻撃」 5/13
ロシア国防省は攻撃を続ける北東部ハルキウ州で新たに4つの集落を制圧したと発表、国境地帯での攻防が激しくなっています。
ロシアと国境を接するハルキウ州では、12日もロシア軍が攻勢を強め、州知事によると、国境周辺から4000人以上が避難したということです。
ロシア国防省は州内で新たに4つの集落を制圧したと発表。これで9つの集落を制圧したことになりますが、ウクライナのゼレンスキー大統領は…
ウクライナ ゼレンスキー大統領「国境地帯の広範囲で激しい防衛戦が続いている」
ロシア軍に「できるだけ多くの損失を与える必要がある」と反撃する構えです。
こうした中、ロシア西部ベルゴロド州では集合住宅の一部が崩壊し、15人が死亡しました。
ロシア国防省は「ウクライナ側の砲撃があり、迎撃したミサイルの破片があたった」としていますが、ウクライナ側は関与を否定しているということです。
●「兵士切れ」ウクライナが受刑者動員 “肉の壁”ロシアとの「囚人戦争」最前線 5/13
ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中、ウクライナでもいよいよ兵員確保が厳しい状況になってきたようだ。ウクライナのゼレンスキー大統領が、徴兵年齢上限を27歳から25歳に引き下げる法案に署名したのは今年4月のこと。ウクライナでは戒厳令に基づき、動員命令を受けた27〜60歳の男性及び、18歳以上の志願兵が戦闘任務についてきたが、兵役で徴兵された者は動員の対象外になり、前線へ送ることはできなかった。今回の兵役年齢引き下げにより動員対象は広がり、推定で47万人の追加徴集が可能になったとされる。
「ただ、これはあくまでも数字上の話で、動員を恐れて国外に脱出している若者も少なくありません。米シンクタンクの調査によれば、現在、ウクライナ軍の総兵力は約100万人。うち、前線で戦っている兵士は30万人ほどだとされ、これに対しロシア軍の前線兵力は今年1月の時点で推定47万人。しかも、6月1日にはさらに30万人を追加徴集する準備をしているとの報道もあり、ウクライナとしては何がなんでも前線の兵士を確保しておきかったところ。ようやく西側からの武器支援は再開しましたが、戦闘を維持するためにはやはり人的戦闘力が欠かせません。ゼレンスキー氏は、書類偽造などによる動員逃れの取り締まりのため、病気や障害などを理由に徴兵を免れた者の再検査を義務づける法律にも署名するなど、あの手この手で兵員確保を強化しています」(外報部記者)
とはいえ、戦争長期化を背景に各地で連日、兵士の早期帰還を求めるデモが行われるなど、国民感情には大きなきしみも出始めている。そんな中、ウクライナの最高会議が、受刑者の軍への入隊を可能にする法案を可決したことが、5月8日に明らかになったのだ。
「今回の法案は、入隊できる受刑者の条件を『刑期が残り3年未満の者に限る』としていて、2人以上の殺人、性的暴力、重大な汚職で服役している者、元政府高官らは対象外になっています。また、入隊した受刑者は恩赦で放免になるわけではなく、戦闘中は仮釈放扱いなのだとか。とはいえ、ウクライナ政府はこれまでロシア軍が受刑者を動員して最前線に投入することを徹底して批判してきたわけですから、筋が合いません。しかも、法案の文面には『入隊した受刑者には休暇が与えられず、戦争が終わるまで戦い続ける』といった旨の記述があるため、受刑者の権利擁護団体から『法案は差別的で、刑期よりも長くなる可能性がある』との猛抗議を受けていると報じられています」(同)
実は、ウクライナ政府は侵攻が始まった2022年2月の時点で、軍事経験のある受刑者を釈放し、前線に配置すると発表していた。ゼレンスキー氏もビデオメッセージで「自身の罪を、最も戦闘の激しい前線で償うことができる。今重要なのは防衛だ。我々(国民は)全員が戦士だ」と訴えていた。
しかし、今回は軍事経験の有無は一切問わないことから、前線で戦えるのかという疑問もあり、そうなればロシア軍が行ってきた戦闘未経験の受刑者を最前線に送る「肉の壁作戦」と何が違うのかという議論が起こることは必至だ。受刑者の権利擁護団体代表は、「これはロシアと同じ、血による贖罪だ。戦う意志のある(受刑)者は一つの部隊に入れられ、肉のように扱われる」と痛烈に批判している。
●ウクライナ軍がハルキウ方面への増援強化 ロシアの「陽動」にはまる懸念 5/13
ロシア軍が5月9日の対独戦勝記念日にウクライナで新たな攻勢を始めるであろうことは、この戦争を観察してきた人々の間では広く予想されていた。果たして9日未明、BMP歩兵戦闘車やMT-LB装甲牽引車に乗り込んだロシア軍部隊がウクライナ北東部の国境を越え、ハルキウ州の州都でウクライナ第2の都市であるハルキウ市から北へ27kmほどしか離れていない一帯に進軍した。
ウクライナ軍は即座にBMPとMT-LB数両を破壊した。続けて、大破したこれらの車両を回収するためにロシア側が送り込んだBREM装甲回収車1両も破壊した。
それでもロシア軍の第11軍団と第44軍団の小隊規模の部隊、つまり数十人程度の部隊は国境から南へ15kmかそこら前進し、ストリレチャ、ピルナ、クラスネ、モロホベチ、オリーニコベの各村を占拠した。
ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは11日のリポートで、冷静になるよう呼びかけている。「ロシア軍がなぜこれほど素早く国境を越えることができたのか疑問に思っている人も多いが、答えは簡単だ。国境地帯はグレーゾーンであり、国境線沿いに部隊や防御設備は直接配置されていないからだ」
ウクライナ側は代わりに国境から南へ数km離れた場所に防御陣地を築き、そこに陸軍や領土防衛隊の部隊を駐留させ、国境地帯でのロシア軍の侵入に対応できるようにしている。
「(ウクライナ側の)防御が崩壊したと主張するのは早計であり、現実に即していない」とフロンテリジェンス・インサイトは注意を促している。「大規模な機械化旅団の場合と異なり、(ロシア側の)国境の小さな村に駐留するロシア軍の軽装甲の小規模な戦術部隊は比較的容易にグレーゾーンに侵入し、制圧できる」
ロシア側は、占拠したいくつかの村の陣地に増援を送ろうとしている兆しがある一方、国境とハルキウの間のウクライナ側の主要防御線に本格的な攻勢をかけるべく、連隊や旅団全体を集結させている動きは確認されていない。
そのためフロンテリジェンス・インサイトは、ロシア側が国境沿いの小さな村々を越えてさらに前進するのは「依然として非常に困難だ」と指摘している。
そもそも、ロシア側は本格的な攻勢を意図しているわけではなさそうだというのが、フィンランドの軍事アナリスト、ヨニ・アスコラの見方だ。アスコラは、ロシア軍によるハルキウ方面の「攻勢」は周到な陽動であり、ウクライナ東部ドンバス地方(ドネツク州とルハンシク州)の2つの主要な攻勢軸であるチャシウヤール方面とアウジーウカ方面からウクライナ軍の一部部隊を引き離すのが目的ではないかと推測している。ロシア軍は昨年後半以来、両方面で多大な損害を出しながら攻勢を続けている。
アスコラによれば、ロシア軍は陽動によってウクライナ軍に部隊の配置転換を強い、「東部での主要な攻勢への対抗に使用できる予備兵力を減らす」ことを狙っている可能性が高い。
もしそうだとすれば、ロシア軍の作戦は目的を達成しようとしている可能性がある。
ウクライナ軍はハルキウの北方面を守る領土防衛隊の部隊を増援するために、まず陸軍の第42独立機械化旅団を送ったもようだ。ウクライナ軍の将校デニス・ヤロスラウスキーによれば、さらに陸軍の第57独立機械化旅団と第92独立強襲旅団、国防省情報総局のクラーケン連隊も同方面に移動しているという。
ウクライナ軍参謀本部は動揺しているようだ。まさにそれこそロシア側の狙いかもしれない。フロンテリジェンス・インサイトは「ロシアは国境を越えて脅威が迫っていると住民に信じ込ませ、社会にパニックと不安をもたらすことを意図しているとみられる」と述べ、こう続けている。
「ウクライナ側がこれらの地域(ハルキウの北方面)へ部隊を移動するように仕向けることで、ロシアはドンバス地方におけるロシアの戦略目標にウクライナ側が注力するのを乱そうとしている」
●ロシア、ウクライナ北東部へ地上軍戦闘を拡大…重大局面を迎えるか 5/13
ロシア軍がウクライナ北東部の国境を越え、ハルキウ州に地上軍を進撃させ、地上戦線をウクライナ東部と南部から北東部まで拡大した。兵力と武器で押されるウクライナ軍をあちこちに所に分散させながら地上戦で優位を確実にする一方、この地域を「緩衝地帯」として確保しようとする作戦とみられている。
ロイター通信などの報道によると、ロシア国防省は11日(現地時間)、自国軍が10日にウクライナ国境沿いのベルゴロドからハルキウ州に進撃したのに続き、国境付近の5つの集落を占領したと発表した。ロシア軍はハルキウ市から北東に70キロメートルほど離れたボルチャンスクを狙った大規模空爆を行った後、地上軍を投入した。ロシア国防省は、プレテニウカ、オヒルツェベ、ボリシウカ、ピルナ、ストリレチャなど国境沿いの5つの集落を解放した」と主張した。これらの集落は国境から3〜5キロメートルほどの距離だ。
ウクライナ側は、国境沿いの集落周辺で激しい戦闘が2日間続いたと述べた。ハルキウ州のオレグ・シネフボウ知事はこのように明らかにし、今後「戦闘がさらに拡散して圧迫が増大し、駐留軍隊が補強されるだろう」と述べた。だが、人口130万人のウクライナ2大都市であるハルキウ市から住民が避難すべき状況ではないと付け加えた。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は同日夜、クラスネなど他の地域でも戦闘が起きたとし、「わが軍の将兵たちが2日連続で反撃し、ウクライナ領土を守っている」と述べた。
現地政府関係者らは、ロシア軍の攻撃後、1700人ほどの住民が安全な場所に避難したと明らかにした。AP通信は、自社の記者たちが住民避難支援チームに同行しているとし、多くの建物が破壊され、道路から人影が消えたと報道した。ロシアの戦闘機が空爆を続け、黒い煙が立ち上る中、道路のあちこちに爆撃で大きな穴ができ、燃える建物も多かったとも報じた。
ボルチャンスク地域の軍政庁責任者、タマズ・ハンバラシビリ氏は「(ロシア)国境沿いの集落の状況が非常に悪い」とし、「空爆が続きミサイル攻撃や砲撃も続いている」と語った。
ロシア軍は2022年2月に始まったウクライナ侵攻戦争初期にウクライナの首都キーウとハルキウ市周辺まで進撃したが、4月以後ウクライナ軍の激しい反撃に遭い、両地域から撤退した。特に、同年9月以降はハルキウ州から兵力を完全に撤退させ、東部のドンバス地域と南部ヘルソン州などにのみ地上軍を配置してきた。その後、ハルキウ州と国境近くのロシアのベルゴロド地域は、ウクライナ軍の主な攻撃目標になった。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は今年3月、ウクライナ軍の攻撃を阻止する緩衝地帯を自国の国境に近いウクライナ地域に作るよう指示した。この指示以後、ロシア軍がハルキウ州に対する空爆を強化し、この地域を緩衝地帯として確保しようとする作戦が差し迫ったものとみられてきた。
米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は、ロシア軍がハルキウ州で戦術的に相当な成果を上げたと分析した。
ニューヨーク・タイムズ紙などの米国メディアは、今回の地上軍作戦がロシア軍の「春の大攻勢」につながった場合、2年以上にわたるウクライナ戦争が重大局面を迎える可能性があると指摘した。
●【ウクライナ戦争で中露関係に変化は?】対露制裁不参加でもロシア重視は変化なし、迷走する中国の立ち回り 5/13
ロシア専門家の馮玉軍北京大学教授がエコノミスト誌4月13日号に寄稿、戦争によって国際的秩序を変えようとするロシアと違い、中国は紛争の平和的解決を願っており、中露関係はウクライナ戦争によって後退した、と述べている。
この戦争でウクライナは膨大な犠牲を強いられたが、その抵抗の強さと結束力は、ロシアは軍事的に無敵との神話を粉砕した。ウクライナは灰塵から復活するかもしれない。戦争が終わった時、ウクライナは欧州連合(EU)および北大西洋条約機構(NATO)への加盟の可能性を期待できる。
他方、この戦争はロシアにとって一大転機だ。戦争でプーチン政権は国際的孤立に追いやられた。
また、プーチンは厄介な国内の政治的混乱にも対処しなければならなかった。これらはロシアにおいて政治的リスクが非常に高いことを示している。
さらに、この戦争でますます多くの旧ソ連邦諸国がロシアの帝国主義的野心は自国の独立、主権、そして領土の保全を脅かすと確信した。ロシアの勝利は無理との認識が増す中、これらの国は、ロシアに依存しない経済成長政策やよりバランスの取れた外交政策の追求等により、モスクワと距離を置き始めている。その結果、ロシアが推奨するユーラシア統合の可能性は薄れた。
一方、欧州もロシアの軍事的侵略が欧州大陸の安全保障と国際的秩序に突きつける重大な脅威に気づき、冷戦後のEU=ロシア間の雪解けに終止符が打たれた。多くの欧州諸国がプーチンのロシアに対する幻想を捨てた。
NATOもマクロン仏大統領の言う「脳死状態」から覚醒した。大多数のNATO諸国は軍事支出を拡大、東欧におけるNATOの軍事配備も大幅に増強された。スウェーデンとフィンランドのNATO加盟は、プーチンがこの戦争を利用してNATO拡大を阻止することができなかったことを示している。
中国とロシアの関係は固定的ではなく、過去2年間の出来事に影響を受けてきた。鋭敏な観察者は、中国のロシアへのスタンスは戦争前の2022年の「無制限」なものから、伝統的な「非同盟、非対立、そして第三国を標的にしない」原則に戻ったと指摘する。
中国は西側の対露制裁には加わらなかったが、そうした制裁に組織的に違反はしなかった。
戦争が始まってから、中国は2つの外交的仲裁を行った。成功はしなかったが、中国がこの残忍な戦争を交渉によって終わらせるよう願っていることは何人も疑うべきではない。
このことは、中国とロシアは非常に異なることを示している。ロシアは既存の国際的・地域的秩序を戦争という手段によって覆そうとしているが、中国は紛争の平和的解決を願っている。
中国でウクライナ側の記事が出た理由
筆者の馮玉軍は北京大学教授と紹介されているが、現職は上海の復旦大学国際問題研究院副院長の方がメインのようであり、また1994年から2016年まで国家安全部系列の中国現代国際関係研究院に籍を置き、ロシア研究所所長を勤めている。
現在でもネット空間においては、ロシアには甘く、ウクライナには厳し目の言論統制が続いているようであり、筆者の見解は、この意味では傍流である。またここまで大胆な見解も稀有だ。
ただ、ウクライナの立場に立ったネット上の情報は、一定の制限は受けつつも禁止されてはいない。これはロシア・ウクライナ問題に対する中国の基本政策が、意識的にどっちつかずのものにしてあることに起因する。
そのこともあり22年に言論NPOが中国側と共同で行った世論調査の結果は、半分以上の中国人が、今回の戦争はロシアに責任があると見ているというものだった。もちろん中国人のロシア人嫌い、あるいはそれまでの中国とウクライナの良好な関係も、反ロシアに世論が傾く原因であっただろう。
この世論調査の公表も、また今回の馮教授の論評も、中国の対西側世論工作という側面もある。習近平政権の言論統制は極めて厳しく、当然、馮教授も関係当局の許可を得て寄稿しているはずだ。つまり、対西側世論工作として、国内にはこういうロシアに対する厳しい意見があることを知らしめ、中国は決してロシア一辺倒ではない、ということを西側社会に示すことを目的としているように思われる。
特に欧州との関係において、そうだ。中国と欧州との関係悪化の主因が中露関係にあることは中国側もよく分かっている。そこでロシアのかかえる問題点をえぐり出し、中国の立場をバランス良く描くことにより、対中認識を改善させようとしている、と見るべきであろう。
習近平の「微笑外交」の行方は
馮教授は、中国のロシアへのスタンスは戦争前の22年の「無制限」なものから、伝統的な「非同盟、非対立、そして第三国を標的にしない」原則に戻ったと“鋭敏な観察者”が指摘していると書いている。しかし、そもそも中露の「無制限」な協力関係は口にされただけであり実体を伴ったことは1度もない。
4月初めにラブロフ外相が訪中した際、習近平は会見している。ブリンケン米国務長官と同じ待遇だが、依然としてロシアを重視する姿勢に変化はなく、ショルツ独首相をはじめとした欧州指導者との会談の後も、この姿勢に変わりはない。
「習近平外交思想」という大きな枠組みを自分で作り、「戦狼外交」の失敗により軌道修正を迫られ「微笑外交」に転じたが、路線の修正は出来ず、迷走しているというのが現状であろう。ロシアとも欧州とも、そして米国とも上手くやることを目指すのが中国外交の現状だが、基本路線を修正せずに、全ての相手と上手くやれる道は限りなく狭い。
●「ロシアが勝利する。我々も韓国を攻撃できる」金正恩、開戦初期の不気味な予言 5/13
北朝鮮の金正恩総書記が9日、ロシアの対独戦勝79周年に際し、プーチン大統領に祝電を送った。
金正恩氏は祝電で、「大統領と勇敢なロシアの軍隊と人民が強国の威力で帝国主義の覇権政策と強権に敗北を与え、公正で平和な多極世界を建設するための闘いで新たな勝利を収めることを願う」と強調している。
北朝鮮はこの祝電に限らず、「ロシア勝利」の主張を繰り返している。ウクライナ軍の兵器不足などによるロシアの優勢に乗じた「悪ノリ」と見ることもできるだろう。しかし2022年の開戦初期、ロシアの攻勢が挫折しかけた時期にも、北朝鮮当局が内部で「ロシアが勝つ」と強調していたのも事実だ。
北朝鮮は当初、国内向けメディアでウクライナ侵攻への言及を避けながらも、朝鮮労働党は党員に限り、詳細を伏せた上で情報を伝えていた。
その一方、ロシアに派遣された労働者に対しては、侵略の事実を知っている前提で思想教育を行った。デイリーNKの現地情報筋によれば、その内容は「ロシアは、同じ国だったウクライナに派兵した」とした上で、「必要に応じて、われわれも南側(韓国)を占領できる」「われわれは南朝鮮を一気に攻撃できる」などと主張するものだった。
さらに「ロシアが優越した軍事力をもってしても、一気にウクライナを占領しないように、われわれも南朝鮮の事情を考慮してやっている」と主張。そして、「戦争はロシアの勝利で終わるだろう」としていた。
北朝鮮が、客観的な根拠をもって戦争の成り行きを予測していたとは思えない。ただ同国は、世界の紛争地に兵器を輸出してきた「武器商人」の顔も持っている。戦争の展開について、何らかの「勘」や「読み」が働いたとしてもおかしくはない。
また、金正恩氏は昨年末以降、韓国との平和的な南北統一を放棄したうえで、「戦争になれば平定する」としている。
現実の推移と重ねて見ると、不気味な感じもする。
こうした言動から見て思うのは、金正恩氏は平和で安定した情勢よりは、「乱世」を望んでいるように見えるということだ。北東アジアでは、国力の最も小さい北朝鮮こそ「乱世」に弱いはずなのだが、民主主義が存在せず、民の苦しみを意に介さない独裁者にとってそんなことは二の次なのである。
●ジョージアで米国人ら拘束、「スパイ法案」に抗議デモ=ロ通信社 5/13
旧ソ連構成国ジョージアの議会で外国から資金提供を受けている団体を規制する「外国の代理人(スパイ)」法案の審議が進む中、ロシア国営タス通信は13日、トビリシで行われた抗議デモで米国人2人とロシア人1人を含む20人が拘束されたと伝えた。
ジョージアの野党は12日、議員の議会入りを阻止するため、議会の外で徹夜の抗議活動を行うよう呼びかけていた。
コバヒゼ首相は同日、週内に同法案を成立させる考えを示した。 もっと見る
タス通信が目撃者の話として伝えたところによると、13日の早い時間帯に警察が議会通用口からデモ隊を追い払い始め、いくつかの小競り合いに発展した。
西側諸国とジョージア野党は法案について、権威主義的でロシアに影響されたものだと非難している。
●北朝鮮、米同盟国による監視を批判 5/13
北朝鮮外務省は13日、米同盟国が国連制裁違反を点検するとの名目で北朝鮮への監視を強めているため、国家主権と安全保障を守るために必要な措置を採るとする声明を出した。朝鮮中央通信が伝えた。
声明は英国、カナダ、ドイツ、フランス、ニュージーランド、オーストラリアの6カ国に対し、国連制裁を口実にした「アジア太平洋へのあからさまな軍事介入」を直ちに中止するよう要求している。具体的にどのような対抗措置を採るかには触れていない。
韓国国防省が先に明らかにしたところでは、韓国と英国は4月、国連の制裁決議を実行するため、朝鮮半島近くの海域で合同哨戒を行った。
●米欧、ガザ停戦に向けイスラエルへの圧力足りず=トルコ大統領 5/13
トルコのエルドアン大統領は12日、米国と欧州諸国がパレスチナ自治区ガザでの停戦に向け、イスラエルに十分圧力をかけていないと批判した。
エルドアン氏はイスタンブールで演説し、イスラム組織ハマスがカタールとエジプトが示した休戦案を受諾したにもかかわらず、イスラエルのネタニヤフ政権はガザ最南部ラファで無実の人々を攻撃していると指摘。「だれが平和と対話を望み、だれが衝突の継続とさらなる流血を望んでいるのか明らかになった」と述べた。
「欧州も米国もイスラエルに停戦を強いるような反応を見せていない」とし、「われわれに事あるごとに人権と自由を説く国々が、3万5000人のガザ市民を虐殺した者どもを公然と支援している」と批判した。
●ロシア・ベルゴロド州で集合住宅崩壊、ウクライナが砲撃と当局は非難 5/13
ウクライナと国境を接するロシア・ベルゴロド州の州都ベルゴロドで12日、集合住宅の爆発があり、建物全体が崩壊した。ロシアはウクライナ軍の攻撃によるものだと非難している。
現場の監視カメラ映像では、10階建ての集合住宅の低層階付近で大きな爆発があり、その後建物が倒壊したことが確認できる。
ベルゴロド州のヴャチェスラフ・グラトコフ知事は、がれきの中から2人の遺体が収容されたと述べた。少なくとも19人が負傷したという。
ベルゴロド市はウクライナ北東部ハルキウ州と接する国境近くにある。ロシア軍は10日に同州への攻撃を開始した。
ベルゴロド州は2022年にロシアがウクライナに全面侵攻を開始して以降、ウクライナ軍からしばしば標的にされてきた。ウクライナ当局はこれまで、越境攻撃は民間人を標的にしたものではないとしている。
「逃げられなかった」
グラトコフ州知事は、ウクライナが同州を砲撃したことが爆発の原因だと非難した。
この説明について、ウクライナ政府は疑問を投げかけている。ある政府関係者は、ウクライナに向けてロシア軍機が投下した誘導爆弾の滑空翼が開かなかったことが原因ではないかと指摘した。
現場の様子を捉えた複数画像には、救助隊が手作業でがれきを取り除き、生存者を探している様子が写っている。メインの建物がさらに崩壊する恐れがあるとして、周囲の集合住宅の住民は避難している。
がれきの中に複数の人が閉じ込められていると考えられると、グラトコフ州知事は付け加えた。
住民の1人はロシア国営通信社RIAノーヴォスチに対し、爆発が起きた時に寝室にいた夫が、頭と顔を負傷したと語った。夫には逃げる「時間がなかった」と、この女性は述べた。
ロシア調査委員会の報道官は、刑事事件として捜査が開始されたと述べた。
今回の出来事は、ウクライナ北東部で国境を越えた「激しい戦闘」が続く中で起きた。ロシア軍は10日にウクライナ・ハルキウ州に越境攻撃を仕掛け、同州に侵入した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12日夕の演説で、ロシア軍の攻撃を受けて数千人が家を追われたと述べた。
「ハルキウ州での攻撃の背後には、我々の武力を分散させ、ウクライナ人の士気とモチベーション、自衛能力を低下させるという考えがある」と、ゼレンスキー氏は付け加えた。
ロシア国防省は自軍がハルキウ州の5村を制圧したと主張している。
●ロシア軍、ウクライナ北東部ハルキウで新たに四つの集落を制圧か…露南西部では集合住宅が崩壊 5/13
ロシア国防省は12日、ウクライナ北東部ハルキウ州で新たに四つの集落を制圧したと発表した。北から国境を越えてウクライナに侵入した露軍の攻勢が続き、ロイター通信はウクライナ側の話として、露軍が国境から約5キロ・メートルに位置する同州ボウチャンスクの郊外に達したと報じた。ウクライナ側が防戦を強いられている模様だ。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12日のビデオ演説で、ハルキウ州で激しい戦いが続いていると指摘し、露軍が「足場を固めている集落がある」とした。露軍の狙いは「我が軍の戦力を分散させ、弱体化させることだ」と指摘した。
ハルキウ州内では戦闘の激化に伴い、住民の避難が続いている。州知事は12日、市民2人が死亡したほか、2日間で約4000人が避難したと明らかにした。ゼレンスキー氏は東部ドネツク州でも複数の地域で激しい戦闘が続いているとの認識を示した。
一方、ロイター通信によれば、ロシア側は、ウクライナと国境を接する露南西部ベルゴロド州の州都ベルゴロドで12日、10階建ての集合住宅が崩壊し、少なくとも13人が死亡したと発表した。ロシア当局者は、ウクライナのミサイル攻撃によるものだと主張している。
●ロシア軍、ハルキウ州の5村を制圧と発表 簡単に越境許したとウクライナ司令官が証言 5/13
ウクライナ北東部ハルキウ州への越境攻撃を仕掛けたロシアは、国境沿いの町ヴォヴチャンスク近郊の五つの村を制圧したと、11日に発表した。ウクライナ軍偵察部隊の司令官は、同軍の防衛線が存在せず、ロシア部隊が容易に国境を越えて侵入したとBBCに話した。
ハルキウ州の5村を占拠したというロシア軍の11日の発表について、BBCは正確なのか確認できていない。
ロシア軍の10日の急襲以降、ハルキウ州の国境地帯では激しい戦闘が続いている。
同州のオレフ・シニエフボフ知事は、住民1775人が避難したとソーシャルメディアで説明した。国境から約6キロメートルのヴォヴチャンスクには数百人が残っているという。
ウクライナ軍特殊偵察部隊のデニス・ヤロスラフスキー指揮官は、「防衛の第1線がなかった。この目で見た。ロシア軍はただ歩いて入ってきた。地雷原もない場所を歩いて入ってきた」と、ハルキウ州の公園でBBCに話した。
同指揮官がBBCに見せた、ドローン(無人機)で数日前に撮影したという映像には、ロシア軍の小隊が何の抵抗も受けずに歩いて国境を越えている様子が写っていた。
同指揮官によると、当局は巨額を費やして防衛を固めているとしていたが、そうしたものはなかったという。「怠慢か腐敗のどちらかだ。失敗ではなかった。裏切りだった」。
今回の越境攻撃は、以前から可能性が高いとみられていた。ウクライナと西側の両方の情報機関は、ロシアが国境付近で兵士3万人規模の増強をしていることをつかんでいた。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領も、同国をウクライナの砲撃から守るため、ハルキウ州の内部に緩衝地帯を設けると公言していた。
ウクライナ当局は否定するが、攻撃への備えが不十分だったとみられる。
ヤロスラフスキー指揮官は、部下らとともに1時間以内にヴォヴチャンスク近くの前線に戻ると話した。ロシア軍はすでに同町の端まで部隊を進めたと報じられている。
同指揮官の部隊は2022年秋にハルキウ州でロシア軍と戦い、ロシア軍を国境まで押し戻した。ところがいま、ヴォヴチャンスクが再びロシアの手に渡ることを懸念している。そして、彼の部隊がまた同じ戦闘を繰り返さなくてはならないかもしれないと、いら立ちを示した。
地元の警官の見方では、ヴォヴチャンスクには1時間に50〜60発のロシアの砲弾が撃ち込まれている。また、前線から数十キロ離れたロシアの戦闘機から滑空爆弾も発射されているという。
ロシアによる侵攻前は、ヴォヴチャンスクの人口は約2万人だった。侵攻が始まると多くが避難し、約3000人に減少。ここ数日でさらに数百人が去っている。
●ロシア軍、国境周辺で攻勢強める ハリコフ州で9集落制圧と発表 5/13
ロシアと国境を接するウクライナ北東部ハリコフ州を攻撃するロシア軍は、国境から約4キロのボウチャンスクの郊外で攻勢を強めている。ウクライナ軍が12日明らかにした。
ロシア軍は10日、ハリコフで地上攻撃を開始。これまで東部および南部で長期にわたり戦闘が繰り広げられていたが、北東部に戦線が広がった。
ウクライナ軍参謀本部はロシア軍がハリコフ州で「戦術的成功」を収めたとした。ボウチャンスクへの攻撃にかなりの兵力を動員しており、ロシア側で少なくとも100人の死亡が報告されているとした。
ロシア軍は同州で9集落を制圧したと発表。
ウクライナ軍のボロシン報道官は、ロシアがボウチャンスクと国境から約7.5キロのリプシに攻撃の照準を合わせていると述べた。
ハリコフ州のシネグボフ知事は、ロシア軍がボウチャンスクへの砲撃を激化させており、約6000人の住民が避難したと明らかにした。
ゼレンスキー大統領は定例のビデオ演説で、東部ドネツク州でも同様に激しい戦闘が繰り広げられていると述べた。
一方、ハリコフ州に隣接するロシア西部ベルゴロド州ではウクライナ軍が発射しロシア側が撃墜したミサイルの直撃で集合住宅が崩壊し、少なくとも13人が死亡した。ロシアの当局者らが明らかにした。
●ロシア軍がウクライナ東部に侵攻し戦闘激化…6000人以上の住民が避難 ウクライナもロシアにミサイル攻撃 5/13
ロシア軍が国境を越えてウクライナ東部に侵入し攻撃する一方で、ウクライナ側もロシア西部の住宅などにミサイル攻撃を行い、国境周辺で戦闘が激しさを増している。
ロシア国防省は12日、ウクライナ東部ハルキウ州を攻撃し、あわせて9つの集落を制圧したことを明らかにした。
州知事によると、一連の攻撃で4人が死亡、12日までに6000人以上の住民が避難した。
一方、ハルキウ州と国境を接するロシアのベルゴロドで、集合住宅などがウクライナ軍のミサイル攻撃を受け、12人が死亡、子ども2人を含む19人が負傷した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、国境地帯の7つの集落で戦闘が続いていることを明らかにしていて、戦闘が激しさを増している。
●UAEがイスラエル首相非難、ガザの戦後支援巡る発言で 5/13
イスラエルのネタニヤフ首相が、パレスチナ自治区ガザで戦後、新政府の支援にアラブ首長国連邦(UAE)など中東湾岸諸国が関与する可能性があると述べたことを巡り、UAEのアブドラ外相は11日、ネタニヤフ氏には何の法的権限もないと非難した。
ネタニヤフ氏は先のインタビューで、UAEやサウジアラビアなどの国がガザで戦後に発足する文民政権への支援に関わる可能性があると述べた。
しかしアブドラ氏はXに「UAEはイスラエルの首相にこうした措置を取る法的権限がないことを強調し、ガザでイスラエルのプレゼンスを補助する計画に巻き込まれることを拒否する」と投稿。UAEにはパレスチナ人の希望に応えるパレスチナ政府を支援する用意があり、こうした望みには独立も含まれるとした。
●イラク石油・ガス田開発、中国企業のみが10カ所落札 5/13
イラクの石油・天然ガス田開発プロジェクトの入札で、中国企業が11、12日の両日に10カ所の開発権を落札した。これまでのところ、外国企業による落札は中国企業のみとなっている。
イラクは主に国内向けの生産増強を目的に、11日から合計29のプロジェクトについて入札を実施している。欧州、中国、アラブ地域、イラクなどの20社が事前に応札資格を得た。
イラクは火力発電所の燃料を、イランから輸入した天然ガスに大きく依存しているため、国内の天然ガス生産を増やしたい意向。ただ、今のところ天然ガス油田に対する応札はゼロとなっている。
米石油メジャーが入札に参加していないことも注目される。
これまでに落札した中国企業は中国海洋石油(CNOOC)や中国石油化工(シノペック)などだった。
●「ラファ空爆」地元メディア伝える 新検問所で支援拡大が焦点 5/13
パレスチナの地元メディアはイスラエル軍が13日、ガザ地区で多くの住民が身を寄せる南部ラファを空爆したと伝えました。一方、イスラエル側はガザ地区への支援ルートを増やすため地区北部に新たな検問所を設けたと発表し、深刻な人道状況が続くガザ地区への支援拡大につながるかが焦点です。
パレスチナの地元メディアはイスラエル軍が13日未明に、ガザ地区で、100万人以上が身を寄せてきた南部ラファの中心部などに複数の空爆を行い、多くの住民がけがをしたと伝えました。
またイスラエル軍は12日、制圧したとしていたガザ地区北部のジャバリアで、ハマスが再結集する動きがあるとして、空爆に続いて地上部隊による作戦を始めたと発表しました。
住民には事前に退避を求めたと強調していますが、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは砲弾が飛び交う中、お年寄りや子どもなどが逃げ惑ったり、けがをした人が搬送されたりする様子を伝えています。
ガザ地区の保健当局は12日、これまでの死者の数は3万5034人に上ったと発表しました。
一方、イスラエル軍は12日、アメリカ政府と連携し、ガザ地区北部に「西エレズ」と呼ばれる新たな検問所を設けたと発表し、検問所とみられる場所をトラックが次々と通り抜ける映像を公開しました。
検問所の開設についてイスラエル軍は、「ガザ地区への支援ルートを増やすための努力の一環だ」としていて、トラック数十台分の小麦粉が搬入される予定だとしています。
国連によりますとガザ地区では食料や燃料などが不足し、人道状況の悪化が懸念されていて、新たな検問所の開設が支援の拡大につながるかが焦点です。
林官房長官「外交努力を粘り強く積極的に行っていく」
林官房長官は午前の記者会見で「現地の危機的な人道状況がさらに深刻さを増していることを深く憂慮している。わが国としてはラファへの全面的な軍事作戦には反対であり、即時の停戦を求めるとともに、それが持続可能な停戦につながることを強く期待する」と述べました。
その上で「イスラエル側にもラファの状況への懸念に言及しつつ行動を求めてきている。引き続きあらゆる外交努力を粘り強く積極的に行っていく」と述べました。 
 

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

 
 5/21-5/31

 

 

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

 
 6/1-6/10

 

 

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

 
 6/11-6/20

 

 

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

 
 6/21-6/30

 

 

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

          

 

 
 
 
 

 



2024/4-

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