経済の凪 マイナス金利

日銀の決意「マイナス金利」 
 
なかなか上向かない 経済動向 
一般論なら 円安誘導 株高 輸出拡大  
景気好循環の後押しになるはずでした 
 
経済の凪 世界中が「凪」です 
円高 株安 ご利益なしでした


  
経済の凪 日本だけではありません 世界中が「凪」です 
米国経済も「凪」 比較論で円買い優勢に  
円高 結果的に株安へ
  
  
  
  
  
恐怖心の連鎖 
世界中が津波に飲み込まれないことを願うばかり
  
マイナス金利導入 社説評 読売は評価するも他紙は懐疑的   
日銀は先月29日、追加の金融緩和策として、資金を預けた民間銀行から手数料を取る「マイナス金利」の導入を決めた。欧州中央銀行(ECB)などで導入済みとはいえ、日銀初の決定であり、市場には大きな驚きが広がった。  
これを受けた社説は、「評価」を明確にした読売を除けば、濃淡の差はあるものの総じて厳しい論調となっている。  
冒頭、「物価目標を達成し、デフレ脱却を確実にする強い決意の表れだろう」と書いた読売は、「世界経済の先行き不安が強まる中、日銀が機動的な対応を取ったことは評価できる」と賛意を表した。円高防止や株価押し上げへの期待とともに、中小・ベンチャー企業の資金調達が円滑になることで「新事業への投資拡大などが望めよう」との見通しも示す。  
もっとも一方では、「日銀が景気を下支えしている間に、政府は成長戦略を充実させるとともに、実行を急ぐべきだ」などと注文をつけてもいた。  
産経は、日銀の脱デフレへの強い決意は同時に「安倍晋三政権が期待するほどには経済再生を果たせていないことを示している」と現下の経済情勢を冷徹に分析した。そして「問題は、これが十分な政策効果を発揮するかどうかだ」と提起するのだが、以下に述べるように見方は懐疑的だ。「金融頼みには限界がある」「実需が盛り上がらなければ、経済の好循環には結びつくまい」−。  
さらに、規制緩和などで企業活動を後押しし、民間が前向きな経営に徹することがアベノミクスを再加速し、強い経済を実現する前提だと強調し、海外市場が揺らげばすぐに国内に跳ね返るリスクを打開するためにも「金融政策だけでなく、企業の生産性向上などで経済を早急に底上げしなければならない」と提言した。  
日経は、デフレ局面に戻る事態を避けるための日銀の対応は「理解できる」としつつも、「どこまで機能するかは未知数だ」「日銀の金融緩和だけで経済を持続的に改善させるのは難しい」と疑問符をつけている。「アベノミクスで金融緩和ばかり目立つ状況は好ましくない」などと批判もするが、同時に、「20カ国・地域(G20)での政策協調の議論を促すべきだ」と金融市場の安定に向けた“処方箋”を提示したりもした。  
このように問題点を厳しく指摘しながらも前向きに言及した産経、日経とは趣をやや異にし、どちらかといえば批判に終始したかに思えるのが朝日、毎日、東京だった。  
朝日は、マイナス金利が「預金金利までマイナスにしてしまう可能性がある」と論じ、「国民の期待に働きかけるこの手法を延々と続けていていいのか」「内外経済が不安定になるたびに、新たなサプライズを市場に与える今のやり方がいつまでも続けられるとは思えない。その手法はいよいよ限界にきている」と訴えた。  
毎日は「2%の物価目標が実現するまで追加緩和を繰り返すというのだろうか。冒険の先に、円の価値の暴落が待ってはいないか」「米国よりはるかに大胆な緩和策を続ける黒田日銀はこの先どこまで突き進むのか」と不安を募らせる。  
「効果が疑問視される弥縫策(びほうさく)だ」と断じた東京も「物価上昇目標の達成時期がまたも先送りされ、デフレ脱却は遠のくばかりだ」と非難した。  
一般になじみが薄く、いまひとつ理解しにくいと思われる「マイナス金利」だけに、日銀には国民に向けてもっと丁寧な説明をしてほしいのだが…。  
「マイナス金利導入」を受けた社説  
 産経 / 日銀頼みの限界忘れるな  
 朝日 / 効果ある政策なのか  
 毎日 / 苦しまぎれの冒険だ  
 読売 / 脱デフレの決意示す負の金利  
 日経 / 日銀頼みにせず市場安定へ協議を  
 東京 / 追い込まれての弥縫策 
  
マイナス金利なのに、なぜ円高に転じたのか  
現実化してきた原油安で米国経済減速の悪夢  
日本の株式市場は相変わらず為替相場次第で乱高下する流れが続いている。日本銀行のマイナス金利政策導入発表からわずか5日後の2月3日には、日経平均株価は前日比559円安と急落したが、直接的には1ドル=120円台だったドル円相場が同117円まで急伸したことの影響が大きかった。  
ただ、最近は円高に振れる際の市場の思惑に変化が出てきていることにお気づきだろうか。これまでは原油安や中国経済不安に端を発したリスクオフ相場によって、安全資産としての円への選好が高まり、円高になるというのが典型的なパターンだった。  
1バレル=30ドル割れの受け止め方が変化  
ところが、2月3日にマイナス金利政策発表前の円高水準まで戻ってしまったときには、様子が違った。原油相場がフシ目の1バレル=30jを再び割ったことがきっかけだったが、その受け止め方に変化が見られたのだ。  
従来なら、原油安→リスクオフ相場→円高という流れだったが、今回は、原油安→米国実体経済の減速→米国利上げ政策の頓挫→日米金利差の方向性変化(日本金利<米国金利の幅拡大の歯止め)が強く意識された。このことの持つ意味とは何か――。  
従来、原油の純輸入国である米国では、油価下落は、シェールオイル開発などでのマイナス面はあるものの、ガソリンなどの価格低下が家計などに恩恵(実質所得増加)を与え、トータルでは経済成長にプラスとのコンセンサスが優勢であった。  
ところが、1バレル=30j割れといった水準が長期化し、見方が変わってきている。まず、こうした極端な低油価が続けば、エネルギー業界の業績低迷が続くばかりか、今年4月に負債の借り換え期が集中するシェール関連企業のデフォルト(債務不履行)が多発する可能性も出てくる。  
昨年12月には低格付けのジャンク債に投資する米サード・アベニューのファンドが投資家の換金要請に応えられなくなり、清算を発表。同ファンドは実際にはジャンク債よりさらに信用度の低いディストレスト債(破綻企業か破綻に近い企業の債券)に投資していたことが明らかになっているが、いずれにしろ、ブーム終焉を迎えているジャンク債市場のリスクに米国金融市場の注目が集まっているところだ。  
さらに、原油をはじめとする資源安は米大陸資源国であるカナダやブラジル、メキシコ、ベネズエラなどの経済を直撃しているが、もともと海外売上高比率の高い米国企業では、これら米大陸資源国への輸出が全体の5割弱(2013年実績)と大きな割合を占めている。  
これらの国々への輸出や現地事業での不振は、資本財などのメーカーのみならず、金融業などの業績悪化につながっているのが現状だ。2014年半ば以降、実質実効為替レートで約2割も高くなったドル高も、アップルを筆頭にIT業界の業績をジワジワと痛めつけている。  
米国の景気拡大もさすがに終焉か  
すでに昨年の段階で、米国のエネルギー業界や素材業界は減益に転じており、大幅な人員削減などのリストラが本格化している。原油安長期化によって企業業績悪化が拡大し、それが米国経済順調の象徴であった雇用面に波及すれば、米国の実体経済はいよいよスローダウンしかねない。すでに今年1月で米国の景気拡大期間は79カ月となり、過去平均の71カ月を超えていることから、「2016年には景気後退期入りか?」といった議論も現地では始まっている。  
現在、世界経済を一人で牽引する米国が息切れすれば、それだけで大きなニュースだ。そうした中で考えられることは、米国が利上げ継続断念→利下げを迫られて日米間の金利差が縮小へと方向転換することだ。その結果、これまでの円安ドル高の基調は根本的に変化する蓋然性が高い。  
むろん、それは日本の株式市場にとってマイナス材料だが、日本や欧州が対抗的にマイナス金利拡大などの政策を打ち出せば、世界経済は通貨切り下げ競争の様相を呈すだろう。米国金融政策の正常化というアンカーも失い、世界経済は大混乱が必至だ。その際は20 カ国・地域(G20)蔵相・中央銀行総裁会議などでの協調政策、原油価格の切り上げといった措置が求められることになりそうだ。 
  
マイナス金利は実体経済の弱さを隠す厚化粧  
マイナス金利政策の発表を受けて、私の周りの経済や金融にそこそこ明るい方でも実のところイメージがわかない、それ以外の方々は何のことやらさっぱりわからない、というお声が多く――確かに、直後からの解説やコメントをみても苦慮している様子がうかがえました(ただし、市場関係者で今回の政策変更が難解というのは仮にも専門職としていかがなものでしょう?)。メディア等に登場する金融の専門家も、銀行業界か證券業界かで随分と反応も違っていたようです。評価がバラバラになってしまった点も一般国民を訳のわからない状態にしている原因の1つでしょう。  
今回のマイナス金利についてさっぱり分からないという方のために。例えば、肌荒れしている時に、どんなに高級なファンデーションをこれでもかと塗りたくっても駄目ですよね。やはり、睡眠をしっかり取り、ビタミンなど栄養を補給する(これもサプリメントよりは自然なものが断然ベター)などして、体質改善を促しお肌の新陳代謝を身体の中から図る。それで初めてお肌がイキイキと活性化するものです。  
高級なリキッド・ファンデーションをこれでもかと使ってきたのが量的緩和(市場の流動性を指すliquidityとliquidは同じ語源です)。塗ればいいというものではないのですが、百歩譲って短時間なら取り繕うことも可能としましょう。しかし、本質的な肌の美しさとは違います。  
そして、ボトボト垂れるぐらい、あるいは塗り過ぎて分厚くなり、しわが寄ってそれが干からびてひび割れするほど、ファンデを塗られたのが異次元の量的緩和。そして、これからも塗り捲るけど、ファンデを垂らしたら、その分は罰金ねというのが今回のマイナス金利。  
これだけ与えてるんだから、全部肌に刷り込んでキレイにしろと言われても無理があります。ファンデはもういいから、身体の中からの新陳代謝をちゃんとさせてくれと悲鳴を上げているのが日本経済。(金融政策を化粧品などと一緒にするな、愚弄するな、という反論は受け付けませんので、悪しからず。)  
たとえ話はさておき、国民が困惑している状況であるからこそ、たとえそれが結果的に国民の理解不足で終わったとしても、それでもなお理解してもらうよう丁寧な説明を心掛けるのが中央銀行の筋というもの。であるにもかかわらず、政策変更の際の記者会見を伝える記事では反論としていますが、「政策の詳細を国民が理解しないと効果がないということはない」と半ば開き直っておられるようなご様子も。セントラルバンカーとしての矜持はいずこに。  
実は私の銀行員としてのキャリアはディーリング・ルームの中でも短期金融市場といって、日銀からの資金供給に直接関わる部署でスタートしたものですから、少しばかり気になったことを拾い上げたいと思います。  
まずは黒田氏の政策が「異次元」とされてきたことからして、かなりの違和感があります。そう考える理由を説明するためには、日本の政策金利の歴史的な経緯をお伝えする必要があるでしょう。  
日本は20年ほどゼロ%近くの政策金利を採用してきました。そのスタートは公定歩合が0%の大台に突入した1995年9月8日です。ちなみに当時の米国の政策金利であるFFレートは5.75%でしたので今からしてみればとんでもない日米金利差があった時代でもあります。  
それが正真正銘のゼロパーセントとなったのは1999年2月12日のことでした。「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、できるだけ低めに推移するよう促す。その際、短期金融市場に混乱の生じないよう、その機能の維持に十分配意しつつ、当初0.15%前後を目指し、その後市場の状況を踏まえながら、徐々に一層の低下を促す。」  
とされている通り、そして、その発表会見の際に当時の日銀総裁である速水氏が「ゼロでも良い」と発言したことから、市場が驚いたのはもちろんですが、そこからゼロ金利政策なる言葉が市民権を得たとも言えます。中央銀行の金融政策として金利を動かすことが最早不可能となった段階で資金の供給量を増やす量的緩和策が開始されたのですから、ここから異次元の世界に突入したと言えるでしょう。今回にわかに焦点となった付利(08年10月31日から開始)+0.1%が日銀の当座預金には当時ありませんでした。正真正銘としたのはそのためです。  
当時の日銀当座預金の管理では、企業などに貸出しをせず、余剰資金を日銀の当座に残せば、金利が0%ですから銀行の収益はゼロ。法定準備預金(預金者が預金を引き出すことを想定して、預金の一定割合の現金を手元に置いておく=日本銀行に預ける=日銀当座預金に残高を残すことが民間銀行には義務付けられています)として定められたギリギリの金額をいかに日銀当座預金に積むかが資金担当に課せられた使命でした。  
機会収益を逃すまいと、少しでも高い金利があれば(海外も含め)そちらで運用しようとするのが銀行です。したがって、90年代に法定準備預金で必要とされる以上の金額を日銀の当座預金に積むようなことをすると、決して大袈裟ではなく「無駄金を積みやがって」と資金担当者は罵倒されたものです。現在のように、一金融機関が何千億円も金融機関全体では250兆円もの資金を毎日、日銀当座預金に残すなど当時からすれば隔世の感があるわけですが、この時の無駄なお金という意味合いだけが残り、業界では日銀当座預金に積まれた残高を今でも通称で「ブタ積み」と呼んでいます。  
2000年に入ったころには徐々に貸出し先もなくなり、私の在籍していた中規模程度の米系商業銀行でもすでに数百億円単位の金額を0%で積んでいた記憶があります(外資でも在日支店は日銀当座預金を保有します)。つまり、当座預金に金利が付いているから日銀当座預金の残高が積み上がるわけではなく、適当な貸出先が見つからなければ金利が付いてなくても当座預金の残高は増えるということです。  
また、これまでの金融政策と全く違うという点で言うなら、2002年9月18日に公表された日銀による株式購入もあげられます。当時も今も先進国で中央銀行による株の買い入れをしているのは日本だけですので、異次元と言えるでしょう(ECBの資産購入もカバード債やABSです)。  
黒田総裁になって以降、「従来の政策の枠組みから大きく変更した金融緩和を実施した」とは言われますが、過去の経緯をふり返れば、結局のところは今までの延長線上で資金の供給量を大量に増やしただけ。長い年月をかけてアレルギー原因物質が少しずつ体内に蓄積され、臨界点を超えるとアナフィラキシーショック(急性アレルギー反応)が起こることがあるとされますが、金融や実態経済はアレルギー反応とは違います。量さえ増やせばその臨界点を超えて、新たな、しかも良好な反応が起こると確約されているものではありません。  
それでもなお「ベースマネー」(日銀から金融機関の資金供給)を増やせばおのずと「マネーストック」(金融機関から我々市中の方への資金の流れ)も増えて景気も回復する、よって「ベースマネー」の量を増やすことこそがデフレ脱却、経済成長に繋がるのだと喧伝されてきましたが、市場関係者(メディアに登場する方々ではありません、実際に取引を通じて市場を追いかけている人たちです)の間では当初から、これまで散々緩和策をやってきてもなお思わしい結果が実体経済に出て来なかったのであるから(0%時代突入から2年後には山一證券が破綻するなど大手金融機関の経営破たんが続き、異次元の世界に突入した数年後の2003年には株価が7600円台へ暴落をするなど極度の金融不安に日本は見舞われ、その度に日本の実体経済が疲弊)、日銀が資金の供給量を増やしたところで状況改善には繋がるまいとの冷静な意見が目立っていました。  
国内経済の本質的な活性化を金融政策だけに依存するには無理があることはこのコラムでは毎度お馴染みの米財務省の為替報告書でも何度となく指摘されていましたし、今回マイナス金利が発表されるやいなやウォール・ストリート・ジャーナル紙では 『マイナス金利が日本経済を救うわけではない』 と取り上げられ、  
He says this will make banks more eager to lend to firms. Mr. Kuroda's prediction is as wrong as all his previous forecasts. (彼はこれで企業への融資を銀行が増やすのに熱心になるはずだという。黒田氏の予測はこれまでの全ての予見がそうだったように間違っている。)  
といった手痛い評価となるのもある意味致し方ないことかと思います。  
個人のレベルで考えた場合、経済不安で将来もそれを引きずりそうだと思えば、怖くて消費をしようにもできなくなります。国内の消費は減退→需要がなければ企業としても設備投資をしたところでリターンが期待できないわけでこちらも手控える→国内企業の収益が頭打ちであれば賃金や雇用に影響→さらなる経済不安へ、という悪循環にこの20年間陥ったまま。貸し渋りが問題とされた時もありましたが、そもそも資金のニーズがなければ銀行の貸出しが増えるべくもありません。裏を返せば、需要があれば貸出しも投資も放っておいても沸いてきます。金融政策のみで出来ることではないので限界とされるわけです。  
いくら「ベースマネー」を増やしたところで「マネーストック」は増えなかった。そこで、マイナス金利を適用して金融機関が積み上げた資金を無理矢理市中に流そうとの発想に至った。今回の政策は、翻せばこれまでの黒田日銀による量的緩和策では如何ともし難かったということ(うまく行っていたのなら、マイナス金利にする必要がありません)。原因と結果をはっきりさせましょう。今回の措置は銀行の貸出増加を促すことがその狙いとされていますが、貸出し増加が伸びないのは資金が足りないためではなく、国内に資金ニーズそのものがない、それを生み出す国内需要がないからというのが非常に大きい要因です。  
市中への貸出しに回らないような必要以上の積み上げを金融機関がするのは、必要のない資金供給を日銀がこれまでやり続けていたからとの側面も大いにあるわけです。それを+0.1%の金利で甘んじて受け取っていた銀行側は、本来であればそんなに大量の資金供給をしてくれるなと日銀に訴えるのが筋ですが、イージーマネーが手に入るならと飛びついた。今回梯子を外された形となりましたが、君子は豹変すと承知してきた金融機関は対応ができるはずです。この辺りの判断で今後それぞれの銀行の明暗が分かれることでしょう。  
銀行側が批判されるべきことはもちろんあるとは思いますが、付利+0.1%をつけてきたのは他ならぬ日銀です。銀行と同じぐらい日銀を非難するなからともかく、銀行をひたすら悪者に仕立てマイナス金利の正当性を訴えるというのも偏った議論です。であるからこそ、資金ニーズのないところに大量の資金供給をしておいて、日銀当座預金に積み上げる銀行がけしからんと、ペナルティでマイナス金利にするのはおかしな話で、マイナス金利にするならこれ以上当座預金に積み上げないよう資金供給そのものを控えマネタリーベースを縮小すべし、とマイナス金利反対の意見も日銀委員から出てきたわけです。  
市場を混乱させないように、マイナス金利と同時にベースマネーの縮小をなどという話になればこれは黒田日銀による量的緩和の敗北宣言となるでしょう。沽券にかかわっている場合ではないと思いますが、批判をするのは何も、黒田氏や黒田氏を支持して来て来た人たちのプライドを傷つけることが目的ではありません。政策決定の中枢に、あるいはそこに近しい方々こそが事実を事実として認めなければ次のステップに日本が進めないと考えるからです。  
金融機関と日銀の間で資金が滞留すれば、さらにペナルティを課せば、資金供給された資金は実体経済とはかけ離れた金融市場や資本市場へ、あるいは海外への投資へと回りかねません。確かに短期的には株、不動産、外貨の運用にはフェイバーかもしれません。しかし、目先の個人的な利益に一喜一憂するだけで、本当にそれでよいのか(その先を見込んで市場の方はいち早く動き出したようです。余談ではありますが、上昇相場の最終局面は価格の急上昇や急低下が起こりやすいもの。こうした相場はプロの鉄火場ですから安易に手を出さない方が得策です)。  
日銀が資金供給をするのはなんのためなのか。日本国内の実体経済にこそ回すのが目的ではないのか。金融政策で出来ることは限られているとの至極当たり前かつ謙虚な原点に立ち返ることが必要かと思われます。  
  
マイナス金利、「第3波」襲来の予兆  
日経平均918円安が示すマネー萎縮  
日銀のマイナス金利導入政策を受け、金融市場の動揺が止まらない。  
9日は為替市場で円相場が一時1ドル=114円台まで円高方向に振れ、長期金利(指標となる10年物国債利回り)は初めてマイナス圏に突入。一方、日経平均株価は前日比918円86銭(5.4%)安の1万6085円44銭で取引を終えた。資金をリスク性の高い株式から引き揚げ、比較的安全とされる円、日本国債に退避する投資家が相次いでいるためだ。マイナス金利の仕組みと影響について解説する。  
そもそも長期金利がマイナスになるとは  
日銀は1月29日、金融機関が日銀に預ける当座預金の一部に0.10%のマイナス金利を付与する政策を決めた。黒田東彦総裁は「必要であればさらにマイナス金利を引き下げる」と繰り返し述べており、株安・円高でマイナス金利拡大の思惑が広がった。本来、債券は投資家が利息を受け取る金融商品だ。現在、10年物国債の表面利率は0.3%。投資家は年0.3%の利息を10年間受け取り、10年後の償還期日まで保有していれば額面の100円が手元に戻ってくる。しかし、9日は10年物国債の利回りがマイナス0.010%を付けた時点で価格は103円5銭7厘に上昇した。債券価格と利回りはシーソーの関係で、「利回りの低下(上昇)=債券価格の上昇(下落)」となる。債券の買い手が多ければ利回りも低下する。計算上、投資家は償還日の2025年12月20日まで持ち続け、その間の利息収入を足し合わせても、損失が出ることになる。  
損失が出るのに、なぜ債券を買うのか  
日銀は既に国債の買い入れ枠を段階的に増やしてきた。現在、80兆円規模だが、早ければ3月にも100兆円規模に増やすとの観測がくすぶる。「日銀が買い手に回ってくれるなら、一段と債券価格は上昇(利回りは低下)するだろう」との思惑から、国債を買い進める投資家が増えている。  
日銀は「景気浮揚策のウルトラC」としてマイナス金利の導入に踏み切ったのでは  
当初、金融市場では日経平均株価が一時1万8000円台目前まで回復するなど、「第1波」は歓迎ムードだった。しかし、足元の世界経済は日本の政策や景気よりも海外の要因を受けやすい。中国経済は失速し、米国は昨年末に利上げに転じた。「第1波」は、わずか2日で消え去り、続く「第2波」は国内の好材料より海外の不安要因が意識され、投資家が一斉にリスク性資産から資金を引き揚げる動きとなった。国債は日銀の買い入れ枠を後ろ盾に安全資産とみなされ、円も買い進まれた。  
今後のリスク要因は  
元日興証券国際市場分析部長で現在、経済情報サービス、ブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏は、金融市場から実体経済に広がる「第3波」への警戒を呼び掛けている。馬渕氏が懸念するのは、「金融の縮小均衡」だ。金融機関は国債などを買い進める一方、市場の利ざやが下がり続ければ収益を圧迫しかねない。そうなれば貸し出しに弾みを付けるどころか、「貸し渋り」「貸しはがし」に動く可能性があるという見立てだ。日銀は中堅・中小企業などへの貸し出し増加を期待してマイナス金利政策に踏み切ったが、金融機関から見ると「引当金を積み増してまで危ないところにお金は貸せない」というのが本音だろう。  
生活への影響は  
一般に金利が下がれば住宅ローンが借りやすくなったり、消費者心理が改善に向かったりする効果が期待される。一方で預貯金の金利は、スズメの涙ほど。みずほ銀行は8日、異例となる2営業日連続の定期預金の金利引き下げを発表した。9日から預入期間が10年までのすべての定期預金の金利を年0.025%にする。100万円預けても、250円しか付かない計算になる。とはいえ、株安・円高で個人マネーは有利な投資先を見出せずにいる。当面は低すぎる金利を覚悟の上で、銀行の預貯金にマネーが滞留し続ける可能性がある。さらに、馬渕氏が指摘するような「金融の縮小均衡」が起きれば、個人は資産防衛に走ろうと、一層、預貯金にお金を溜め込もうとするだろう。消費は停滞し、企業業績が悪化。さらに賃金や設備投資も滞る「負のスパイラル」が懸念されている。  
金融市場の混乱が収束に向かう条件は  
市場心理が落ち着くのには時間がかかりそうだ。野村証券の伊藤高志エクイティ・マーケット・ストラテジストが注目しているのが「恐怖指数」だ。将来の株価や変動性を予想する「オプション」の価格などから算出するが、その値は投資家心理の目安として知られている。日経平均の場合、大阪取引所に上場するオプション価格を基に、今後1カ月の予想変動率(年換算)を示す「日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)」が目安となる。この値は昨年末に19.47だったのが、9日は42.47まで跳ね上がった。端的に言えば、日経平均が上下に40%以上振れる可能性を示唆している。一方で、上場企業は2016年3月期も増収増益を維持する可能性が高い。伊藤氏は「外部環境が変わらない中で、リスクが2倍になったため、損失を抑えようと投資家は日本株の持ち高を半減させる必要に迫られている」という。不安な市場心理が売りを加速する構図で、日経平均は一段と下落する可能性もある。  
日銀は次の一手を打つのか  
3月にかけて重要日程が目白押しで、日銀にとどまらず各国が政策協調を打ち出せるかが焦点だ。2月26、27日は20カ国・地域(G20) 財務相・中央銀行総裁会議が中国・上海で開かれる。3月に入ると政治日程が目白押しで、1日は米大統領選予備選のヤマ場「スーパーチュースデー」、5日は中国の国会に相当する全国人民代表大会だ。14、15日に日銀政策決定会合、相前後してFOMC(米連邦公開市場委員会)、ECB(欧州中央銀行)理事会も予定されている。現時点で日銀が即座に動くと考える市場関係者は少数派だが、米国が「年4回」としていた利上げペースを落とすのか、ECBが追加緩和を進めるのかが焦点になりそうだ。投資家心理が一方向に振れやすい局面だけに、プラスの材料が出れば株高・円安に再び傾く可能性もある。  
  
「なぜマイナス金利か」日銀は説明していない  
日本銀行は1月29日、マイナス金利政策の導入を決めた。黒田東彦総裁は量的質的緩和政策(QQE)についても引き続き進めていくとしている。その狙いどおりの効果が発現できるのか。元日本銀行政策委員会・審議委員でクレディ・スイス証券取締役副会長の水野温氏さんに聞いた。  
日本銀行のマイナス政策の狙いはQQE(量的質的緩和)と同じ、リスク資産価格の押し上げと円高是正。金融緩和の波及経路は、国債の利回りを押し下げて、リスク資産とのスプレッドをタイト化(利ザヤを小さく)して、日本銀行が安全資産を買いますから、皆さんリスク資産を買ってくださいということ。リスク資産へのシフトを促すことをポートフォリオリバランス効果と呼んでいる。この効果と、金融機関の経営体質改善を、マイナス金利で強化していく。しかし、QQEでデフレ脱却ができなかったのに、なぜ、マイナス金利ならできるのかがよくわからない。  
金融緩和の限界を否定する日本銀行  
理屈はともかく、実際にワークするのかどうか。日銀の取引先金融機関は国債のオペに応じて供給された資金を日銀に預けて10ベーシス(0.1%)もらってきたが、これがゼロ、マイナス金利にされる。  
それでは、資金をほかで運用しようと思っても、貸出増加は期待薄で、日本の資本市場には厚みがない。CPも社債もすでに割高だし、銀行としては保有するリスクに対し国際金融規制も受けており、どんどん株を買っていくわけにはいかない。外貨投資に向かおうとすれば、ドルのファンディングコストが上がっているという状況もある。  
日銀が「国債をもっと高い価格で買います」といっても、金融機関は国債を金融取引上、担保にしているという事情もあるし、売買で益出しすると会計上の扱いが変わるという問題点もある。  
また、証券会社は、MRF(マネーリザーブファンド)という証券決済機能を果たす金融商品を提供しているが、金利がマイナスになると損失補てんを続けるか、そうした商品を維持することが難しくなる。MRFはリスク商品を証券会社で購入する際の口座の受け皿になっているので、維持できなければ、「貯蓄から投資へ」の誘導も上手くいかなくなる。  
個人も企業も決済ニーズがあり、銀行預金をまったく持たないわけにはいかない。そもそも、日本は欧米に比べて非常に現金需要の強い国だ。  
マイナス金利の導入で、QQEのオペレーションはより難しくなる。日銀はこれまで、まだまだ国債を買えます、マネタリーベースを増やせますといい続けてきた。QQE限界論に反発して、「追加緩和は可能」として、マイナス金利政策を導入した。  
しかし、今回、年間80兆円のマネタリーベースを積むという金融調節方針は変えずに、量と質と(マイナス)金利で緩和を続けますといっている。国債入札の安定性の低下は必ず起きてくる。前述のように、金融機関がオペに応じなくなる可能性がある。  
欧州でもマイナス金利政策を採用しているじゃないか、という主張はあるが、欧州でも金融機関の経営が苦しくなっている。バランスシートがどんどん縮小していっている。  
欧州の中央銀行の場合はそもそも金利ターゲット下で金利を引下げ、後から量的緩和を行っている。中央銀行のバランスシートの規模の名目GDP比で見れば、FRB(米国連邦準備制度理事会)とECB(欧州中央銀行)は25%程度に対し、日本銀行は70%程度に拡大しており、資産買い入れは難しくなってくる。入札というやり方を止めて、ECBのように金融機関が売りたい銘柄を買うという方法に国債買い入れの手法を変えるかもしれない。  
量的質的金融緩和の検証がない  
日銀は最近、マネタリーベースを積むことの効果についてはあまり話題にしなくなっており、もっぱら2%のインフレ目標の達成をコミットすることにより「インフレ期待に働きかける」効果を主張している。ただ、2年経っても3年経ってもいずれも効果が出ていない。  
マネタリーベースターゲットを残したまま、マイナス金利政策を導入したが、おそらく、なし崩し的に"金利ターゲット"に戻っていくだろう。であれば、「フレームワークの変更です、金利ターゲット政策に戻します」といったほうがいい。ただ、量的質的緩和について検証もしないまま次のステップに行くのは問題がある。「QQEではおカネが十分に回らなかったのに、マイナス金利にすれば、回るんですか」という疑問が湧くが、それについて日銀は説明を一切していない。  
また、表向きはいわないが、追加の緩和を行った狙いは円高圧力を緩和して、株価を押し上げることだろう。しかし、どの国も自国通貨を安くしたい中、マイナス金利政策の導入後、むしろ円高が進行した。原油価格や為替を安定させるためには、グローバルな政策協調が必要だ。また、株価の上昇を維持するには、日本が成長していくという評価がなければならないので、政府が財政の健全化や成長戦略を協調して打ちだしていく必要がある。しかし、最近は、黒田総裁も政府に対してそのような要求を言わなくなっている。  
結局は、市場の要求に応じた「政策の逐次投入」に  
今回の「マイナス金利付き量的質的金融緩和」の導入は、「サプライズ」効果があり、確かに、一瞬円安と株高を実現した。しかし、物価目標への波及経路が明確ではないので、市場からは、そうした効果を狙ったものということを読まれてしまい、円安株高も長続きしなかった。  
そもそも、中国発の世界同時株安に対し、日本銀行の金融緩和だけで歯止めをかけることは困難である。  
たしかに、マイナス金利政策の導入で、マイナス10ベーシスをマイナス20ベーシスに、さらにマイナス30ベーシスに、という政策の余地はできたが、今後、円高が進んだり、株価が下がったりするたびに、日銀が追加緩和をせざるを得なくなる。そういう意味では、ここから先、黒田総裁がもっとも言われたくないことだとは思うが、「政策の逐次投入」にならざるをえないだろう。  
金融機関からの批判は強い。政策委員会は今回、賛成5、反対4という結果で、マイナス金利導入を決定している。一部のボードメンバーが、サプライズ、かつ、その効果に懐疑的なマイナス金利政策を、金融市場がサプライズと受け止めるのは不思議でない。もし、ボードメンバーの間で十分な時間をかけて検討や議論があれば、金融機関もシステム対応を含め、もう少し好意的に受け止めただろう。 

 
2016/2