安倍元首相殺害から国葬 海外メディア報道

安倍元首相殺害
時間の経過とともに  安倍元首相と統一教会の関係 明らかに
政治の闇に 陽が当たる

日本メディアの忖度にも 陽が当たりました
国民の半数以上が反対した国葬 
反対理由の調査・評価・見解 メディアの役割放棄 だんまり
目に見えた風景を報道してお終い

   安倍元首相 統一教会
   客観的な情報 報道してくれるのは ・・・

   NHK 国営放送 政権をお守りします
   民放テレビ CMで食べています スポンサーに迷惑をかけられません
   新聞 立ち位置バラバラ 記者クラブは村社会 スクープはご法度 
   ネット情報 信じるかどうかは自己責任

海外メディアの報道姿勢 立派に見えてしまいます

 


7/87/97/117/127/167/22・・・8/28/118/188/198/21・・・9/279/289/30・・・10/110/710/810/910/1410/15・・・
 
 
 

 

●「信じられない事件」安倍元首相の銃撃事件、海外メディア相次ぎ報道 7/8
安倍晋三元首相が銃撃された事件は、海外メディアも相次いで速報で伝えている。
事件の一報が入ったのは米東部時間の7日深夜だったが、米CNNは事件の速報に切り替え、安倍氏とトランプ前米大統領との親密な関係などを報じた。CNNの記者は東京から中継で「日本での銃犯罪は極めて珍しい」と話し、アナウンサーは「信じられない事件だ」と語った。
ロイター通信は8日午前11時46分、「日本の安倍元首相、奈良で演説中に倒れる。出血しているように見える」と、NHKの報道を引用する形で速報。AFP通信もその6分後に「日本の安倍元首相がイベントで出血して負傷」と速報を流した。AP通信もNHKの報道を引用する形で「心肺停止の模様」と速報を流した。
米国では、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどの主要メディアも相次いで速報した。
中国国営新華社通信は8日昼、日本メディアの報道として、「安倍晋三元首相が奈良県で銃で撃たれ、心肺停止状態にある」との速報を出した。
韓国メディアも日本メディアの報道を引用するなどしながら、「遊説中に散弾銃で撃たれ、心肺停止の状態」(聯合ニュース)などと相次いで速報している。
安倍元首相が在任時に良好な関係を築いていたインドでも、地元メディアが「安倍元首相が発砲被害」「男を確保」などと一斉に速報を流している。地元テレビ局「タイムズナウ」は、奈良からの映像を放送しつつ、「日本の首相として何度もインドを訪れた。モディ首相とも良好な関係を築き、日本からの投資をもたらした」などと伝えた。
●安倍元首相 銃で撃たれる 海外でも速報  7/8
奈良市で演説をしていた安倍元総理大臣が銃で撃たれ、心肺停止の状態になっていることを受けて、海外メディアも速報で伝えています。
アメリカメディアは
アメリカの主要メディアも相次いで、速報で伝えていてCNNテレビは、NHKの報道の内容を伝えるとともに、銃を使った犯罪がアメリカに比べると少ない日本で、最も著名な政治家の1人である安倍氏が撃たれた、などと伝えています。AP通信はNHKの報道を引用する形で、事件を速報する記事を世界に配信しています。これまでのところ、アメリカ政府は事件について公式な反応を示していません。
ブリンケン米国務長官「深い悲しみ」
アメリカのブリンケン国務長官は訪問先のインドネシアで「日本の安倍元総理大臣の命を狙った事件のニュースに接し、深い悲しみを抱きとても心配している。私たちの思いや祈りは安倍氏やその家族そして日本の人たちとともにある」と述べました。
トランプ前大統領「極めて衝撃的な知らせ」
在任中、安倍元総理大臣と親交が深かったアメリカのトランプ前大統領は日本時間の午後2時前、ソーシャルメディアへの投稿で「真にすばらしい人物であり、指導者である安倍元総理大臣が銃撃を受け、とても深刻な状態にあるという極めて衝撃的な知らせが入ってきた。彼は私の、そしてアメリカにとっての真の友人だ。今回の事件は、彼を愛し、尊敬してきた日本の人々にとって深刻な痛手だ。シンゾーと彼の家族に祈りをささげている」としています。
アメリカのペンス前副大統領はツイッターに「安倍元総理大臣が銃撃されたことを知り、深く心を痛めている。安倍さんは日本のすぐれたリーダーであり、アメリカの揺るぎない盟友だ。私たちはこの真にすぐれた人物と彼の家族のために、多くの人々とともに祈りをささげている」と投稿しました。
アメリカの駐日大使を務めたハガティ上院議員はツイッターに「友人である安倍氏の無事を祈る。状況を注視している」と投稿しました。ハガティ氏は安倍政権時代の2017年からおよそ2年、駐日大使を務めていました。
アメリカのエマニュエル駐日大使は今回の事態を受けて声明を発表しました。
この中でエマニュエル大使は「安倍晋三元総理大臣の銃撃事件を受け、深い悲しみを覚えるとともに大きな衝撃を受けています。安倍さんは日本の優れた指導者であり、アメリカにとって揺るぎない盟友でもあります。アメリカ政府とアメリカ国民は 安倍さんのご無事を願うとともにご家族と日本の国民が安心できるよう祈っています」としています。
ヨーロッパは各国メディアが速報
このうちロイター通信はNHKの報道を引用する形で「安倍元総理大臣が倒れたとき銃声のような音が聞こえた」などと伝えています。
フランスのAFP通信は安倍元総理大臣がけがをしたと速報しました。
イギリスの公共放送BBCは「安倍元総理大臣がイベントの最中に撃たれた」と速報しました。
イギリス ジョンソン首相「心を痛めている」
また、イギリスのジョンソン首相は8日「安倍氏に対する卑劣な攻撃があったことを知り、がく然とするとともに心を痛めている」とツイッターに投稿しました。
ロシアでも国営メディアなどが速報
ロシアでも国営メディアなどが速報で伝えました。このうちタス通信は、NHKのニュースを引用し、安倍元総理大臣が男に撃たれ心肺停止状態であると伝えています。また、ロシア通信も安倍元総理大臣が撃たれ救命措置がとられているなどと伝えています。ロシアでは当時、プーチン大統領と何度も首脳会談を重ねるなどロシアとの関係強化に取り組んできた日本の総理大臣として安倍氏のことは広く知られていてロシアメディアも大きく伝えています。
ロシア ラブロフ外相「G20会合の演説でお見舞いの言葉」
G20=主要20か国の外相会合が行われているインドネシアのバリ島でロシアのラブロフ外相は記者団の取材に応じました。このなかでロシアメディアが、安倍元総理大臣が男に銃で撃たれた事件についてまず質問したのに対して、ラブロフ外相は、外相会合のさなかに事件のことを知ったことを明らかにしました。その上で「会合での演説を安倍氏へのお見舞いの言葉で始めたのは、おそらく私が最初だろう」と述べ、会合の中で事件のことに触れたことを明らかにしました。またラブロフ外相は「この犯罪の背景に何があるのかは知らない。今後、捜査が行われていくはずなので私からはこれ以上言うことはない」と述べました。
アジアのメディアは
国営の中国中央テレビの電子版は、NHKの報道を引用する形で安倍元総理大臣が、奈良市で演説中に胸を撃たれたなどと速報で伝えました。
台湾の各メディアもNHKなどの報道を引用しながら、安倍元総理大臣が銃で撃たれたという情報があることや、心肺停止の状態とみられることなどを速報で伝えています。
韓国でも通信社の連合ニュースをはじめ各メディアが速報で伝えているほか、公共放送のKBSは同時通訳を交えてNHKのニュースをそのまま伝えました。
台湾 蔡総統「暴力的な不法行為を厳しく非難」
台湾では安倍元総理大臣は台湾に友好的な政治家というイメージが強く、反応が相次いでいます。蔡英文総統はフェイスブックに「暴力的な不法行為を厳しく非難する。安倍元総理大臣はわれわれの最も確かな親友であり、長年にわたって台湾を支持し、台湾と日本の関係を全力で進展させてきた。安倍元総理大臣がすみやかに危機を脱し、無事の知らせが来ることを願っている」と投稿しました。
頼清徳副総統はツイッターに日本語で「頑張って下さい!ご無事を祈っています」と書き込みました。
このほか議会のトップの游錫コン※立法院長首相にあたる蘇貞昌行政院長、最大野党・国民党の朱立倫主席らも安倍元総理大臣の無事を祈るメッセージを発しています。(※コンは「方」を横に2つ並べ、その下に「土」)
韓国 パク外相「回復を祈る」
韓国外務省によりますと、G20の外相会合に出席しているパク・チン(朴振)外相は林外務大臣に対して「とても衝撃的なニュースだ。安倍元総理大臣の回復を祈る」と話したということです。
インド モディ首相「深く心を痛めている」
安倍元総理大臣の在任中、互いに訪問を繰り返し親交を深めてきたインドのモディ首相は自らのツイッターに「親愛なる友人である安倍元総理大臣が襲われたことに深く心を痛めている。私たちの思いと祈りは安倍氏と家族、そして日本の人々とともにある」と投稿しました。
インドネシア 外務省「素早い回復を祈る」
G20の外相会合がインドネシアのバリ島で開かれるなか、議長国・インドネシアの外務省はツイッターで声明を投稿しました。それによりますとルトノ外相は会合の席でG20を代表して、林外務大臣に対し「安倍元総理大臣への心からのお見舞いと素早い回復を祈っている」と伝えたということです。
NZ アーダーン首相「深く衝撃を受けている」
ニュージーランドのアーダーン首相はツイッターに「深く衝撃を受けている。安倍氏は私が首相に就任してから初めて公式に会った首脳の1人だ。このような出来事は私たちを根底から震かんさせるものだ」と投稿しました。
またオーストラリアのアルバニージー首相もツイッターに「衝撃的なニュースだ。私たちの心は安倍氏の家族や日本の人々とともにある」と投稿しました。
IOC バッハ会長「私の思いは彼とともにある」
IOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長はツイッターに「このひきょうな攻撃に深い衝撃を受けている。私の思いは彼とともにある。彼が回復することを願い、祈っている」と投稿しました。安倍元総理大臣は、去年開催された東京オリンピック・パラリンピックの招致段階から関わり、オリンピックの普及や発展に貢献したとして、IOCから「オリンピック・オーダー」と呼ばれる功労章が贈られています。
各国の首脳や要人が相次いで声明
安倍元総理大臣が男に銃で撃たれたことを受けて、親交のあった各国の首脳や要人が相次いで声明を発表しています。
シンガポールのリー・シェンロン首相はフェイスブックに投稿し「安倍元総理大臣はシンガポールのよき友人で、ことし5月に東京を訪れたときには昼食を共にしたばかりだった。これは無分別な暴力行為だ」と強く非難しています。
またフランスのマクロン大統領もツイッターに「安倍氏を狙った卑劣な犯行に深いショックを受け、偉大な元総理大臣の家族や親しい人々に思いを寄せている。フランスは、日本国民とともにある」と投稿しました。
EU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領も「真の友人であり、多国間秩序と民主主義の価値観を断固として守る安倍氏が卑怯な攻撃を受けたことに衝撃と悲しみを覚える」とツイッターに投稿しています。 
 
 

 

●安倍元首相死去 各国の反応  7/9
演説中に銃で撃たれた安倍晋三元総理大臣は、治療を受けていた奈良県橿原市内の病院で亡くなりました。海外メディアも速報で伝えているほか、親交のあった各国の首脳や要人が相次いで声明を発表しています。
中国 習主席「両国関係の改善に向けて努力し 有益な貢献」
中国外務省によりますと、安倍元総理大臣が死去したことを受けて、習近平国家主席は9日、岸田総理大臣に弔電を送り、深い哀悼の意を示しました。この中で習主席は「安倍元総理大臣は任期中に両国関係の改善に向けて努力し有益な貢献を行った。突然の死去を深く悲しみ残念に思う」としています。そのうえで「岸田総理大臣とともに、これまでの政治文書の原則にもとづき、両国の善隣友好や協力の関係を引き続き発展させていきたい」としています。
米 トランプ前大統領「全世界にとって衝撃的な損失だ」
在任中、安倍元総理大臣と親交が深かったアメリカのトランプ前大統領は8日、西部ラスベガスで行った演説の冒頭で安倍氏が銃撃を受けて死去したことに言及し「非道な残虐行為であるだけでなく、全世界にとって衝撃的な損失だ」と述べ、犯行を非難するとともに哀悼の意を示しました。また「安倍元総理大臣は私の友人であり、同盟相手で、すばらしい愛国者だった。彼は平和と自由、そしてアメリカと日本のかけがえのない絆のために力を尽くすことを惜しまなかった」と述べて功績をたたえました。
クアッド首脳 連名で追悼声明「心を一つにしている」
安倍元総理大臣が創設に深く関わった日米豪印の4か国の枠組み、クアッドのうちアメリカとオーストラリア、それにインドの3か国の首脳は連名で追悼の声明を発表しました。この中では「安倍元総理大臣はクアッドのパートナーシップの創設に重要な役割を果たし、自由で開かれたインド太平洋という共通のビジョンを推進するために努力を惜しまなかった」とその功績をたたえました。そして「この悲しみの瞬間、私たちは日本の国民や岸田総理大臣と心を一つにしている。平和で豊かな地域の実現に向けた取り組みをさらに進めることで安倍元総理大臣に敬意を表していく」としています。
米バイデン大統領が日本大使館を弔問「世界の損失」
アメリカのバイデン大統領は安倍元総理大臣の死去を受けて8日、首都ワシントンの日本大使公邸を弔問に訪れ、「日本国民だけでなく世界にとっての損失だ」と記帳し、哀悼の意を示しました。安倍元総理大臣の死去を受けてアメリカのバイデン大統領は8日、首都ワシントンにある日本大使公邸を弔問に訪れました。バイデン大統領は持参した花束を安倍元総理大臣の遺影が飾られた机に置き、その後、記帳を行いました。この中で「バイデン一家とアメリカを代表して安倍氏の家族と日本の国民に心よりお見舞い申し上げる。彼の死は妻や家族、そして日本国民だけでなく世界にとっての損失だ。平和の人であり、判断力のある人物だった。彼の死は惜しまれるだろう」などと書き込み、哀悼の意を示しました。記帳は4分近くにおよびバイデン大統領は時折、顔をあげて遺影を見ながら書き記していました。また、バイデン大統領は弔意を示すため、ホワイトハウスなどの政府機関の建物で今月10日の日没まで半旗を掲げるよう指示しました。
米大統領 “安倍氏は同盟強化や開かれたインド太平洋に貢献”
アメリカのバイデン大統領は安倍元総理大臣の死去を受けて「安倍氏は両国の同盟関係の強化や自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて真剣に取り組んでいた」と述べその死を悼みました。アメリカのバイデン大統領は8日、ワシントン近郊にあるCIA=中央情報局の本部で行われたイベントであいさつし、その中で安倍元総理大臣が銃で撃たれて亡くなったことについて「ぞっとするような衝撃的な死を遂げた」と述べました。バイデン大統領はそのうえで、安倍氏とは、オバマ政権で副大統領を務めていたころに何度もやりとりをしたと紹介し「安倍氏は両国の同盟関係を強化することや、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて真剣に取り組んでいた」と述べ、その死を悼みました。そして安倍氏が総理大臣を辞任したあとも国や国民のために尽くしていたとして「大変尊敬している」とその功績をたたえました。さらにバイデン大統領は「銃による犯罪がどれだけ社会を深く傷つけるか理解している」とする一方「日本が日曜日に選挙を控えるなか、日本の民主主義の力を信じている」と述べました。
台湾で最も高いビル「台北101」に安倍元首相追悼のメッセージ
台湾で最も高いビル「台北101」の壁面に8日夜、安倍元総理大臣が亡くなったことを悼むメッセージがともされました。「台北101」の壁面にともされたのは、中国語で、安倍元総理大臣は台湾の永遠の友人だとして亡くなったことを悼むことばと、生前の台湾に対する支持と友情に感謝することば、それに日本語の「ありがとう」というメッセージです。台湾では、安倍元総理大臣が在任中に国会で「台湾は基本的価値観を共有するパートナーであり、大切な友人だ」と答弁したことや、退任後も「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と発言したことなどが知られています。20代の男性は「台湾に好意的だった総理大臣がこのような亡くなり方をして、とても残念です」と話していました。総理大臣経験者が白昼、市街地で銃撃されたことへの衝撃も広がっていて、20代の女性は「日本はおしなべて治安がよいと思っていたので、ニュースを見て、どうしてこのようなことが起きるのかと驚きました」と話していました。
海外メディア 電子版の特設ページなどで詳報
安倍元総理大臣が亡くなったことについて海外メディア各社は電子版の特設ページなどで専門家の分析などを交えながら詳しく伝えています。
このうち、アメリカのCNNテレビは安倍元総理大臣について「最も在任期間の長い総理大臣で、世界の舞台でも目立つ存在だった。トランプ前大統領と個人的な関係を築こうと努力し、トランプ氏にとっては大統領選挙に勝利したあと初めての外国の首脳との会談となった」などと紹介しています。そして、「世界中の政治家から安倍氏への追悼のメッセージが次々と寄せられ、彼の死にショックを受けている」としています。
イギリスの公共放送BBCは、安倍元総理大臣について「日本で今も大きな影響力を持ち、おそらく過去30年間で最も知名度の高い日本の政治家だ」としたうえで、「この事件は、銃規制が厳しく、銃器による暴力が非常に少ないことで知られる日本に衝撃を与えた」などと驚きをもって伝えています。
一方、アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、電子版の記事で、安倍元総理大臣がデフレからの脱却に向けて推進した「アベノミクス」について解説しています。この中では、安倍元総理大臣が経済の発展のために果たした役割を称賛するコメントが日銀の黒田総裁からも出されているとして、「アベノミクス」を高く評価する声があることを伝えています。一方で、「『アベノミクスが格差の拡大を招いた』という批判もある」としていて、アベノミクスをめぐって賛否両論があったことにも触れています。
海外メディア 速報で伝える
イギリスの公共放送BBCは、日本時間の午後6時ごろ、「安倍元総理大臣が死亡した」と報じました。
そのうえで、銃規制が厳しい日本で銃による事件が起きることは「極めてまれだ」として、日本中に衝撃が広がっていると伝えています。
またロイター通信は、NHKの報道を引用する形で「安倍元総理大臣が選挙運動中に銃撃され、死亡した」と速報しました。
アメリカのCNNテレビもNHKの報道を引用する形で、「最も在任期間の長い総理大臣だった安倍元総理大臣の死亡が確認された」と速報しました。
中国国営の中国中央テレビの電子版は、安倍元総理大臣が、銃で撃たれ、治療のかいなく、亡くなったと速報で伝えました。
またロシア国営のタス通信など、複数の国営メディアは安倍元総理大臣が銃で撃たれ亡くなったと速報で一斉に伝えました。このうち国営テレビは、安倍元総理大臣が亡くなったことを伝えるとともに、安倍氏の政治家としての経歴などを紹介しているほか、日本から特派員が中継で最新の情報などを伝えています。
米 バイデン大統領「彼を知るすべての人の悲劇だ」
アメリカのバイデン大統領は日本時間の午後10時前、声明を発表し「日本にとって、そして彼を知るすべての人にとっての悲劇だ。安倍氏は日米同盟と日米両国の国民の友情を深めた人物だった。日本の首相として最も長く在職した彼の、自由で開かれたインド太平洋を築くというビジョンは今後も続くだろう」とその功績をたたえました。そのうえで、「襲撃された瞬間も安倍氏は民主主義のもとで取り組んでいた。暴力的な攻撃は決して容認できるものではなく、銃による暴力は常に地域社会に深い傷痕を残すことをわれわれは知っている。アメリカは悲しみの瞬間にある日本とともにある。安倍氏の家族に深い哀悼の意を表する」として追悼しました。またバイデン大統領は、安倍元総理大臣の死去を受けて8日、ホワイトハウスの記者団に対し、「岸田総理大臣に電話をかけようと考えたが、夜遅かったので朝になったところで話すつもりだ」と述べました。
そのうえで、午後にワシントンにある日本大使館を弔問のために訪れると明らかにしました。
米 トランプ前大統領「彼のような人は二度と現れない」
在任中、安倍元総理大臣と親交が深かったアメリカのトランプ前大統領は安倍氏の死去を受けて日本時間の午後7時半ごろソーシャルメディアへの投稿で「世界にとってとても悪いニュースだ。歴史は彼がどれだけすばらしい人物でリーダーであったかを教えてくれるだろう。彼は皆を一つにまとめられるまたとない人物であるが、なによりも偉大な日本という国を愛した人物だった。彼のような人は二度と現れないだろう」と追悼しています。
米 オバマ元大統領「長年のパートナー 悲しみ覚える」
安倍元総理大臣が在任中の2016年に現職のアメリカ大統領として初めて広島を訪問したオバマ元大統領はツイッターに投稿し「友人であり長年のパートナーである安倍氏が亡くなったことにショックを受けるとともに悲しみを覚えている。安倍氏は両国の特別な同盟関係に献身的に尽くしてくれた。共に同盟強化に取り組んだこと、広島や真珠湾へ心動かされる訪問をしたことを忘れないだろう」と追悼しています。
米 ブッシュ元大統領「思いやりのあるしっかりした人物」
アメリカのブッシュ元大統領は声明を発表し、「安倍元総理大臣が暗殺されたことを知り、深く悲しんでいる。安倍氏が2006年に初めて総理大臣を務めた際に私は彼を知る機会に恵まれ、思いやりのあるしっかりした人物だと感じていた。彼は国のために奉仕し続けたいと願う愛国者だった」と追悼しました。
ドイツ ショルツ首相「深い悲しみ ドイツは日本に寄り添う」
ドイツのショルツ首相は8日、ツイッターに「安倍元総理大臣が暗殺されたことに衝撃を受け、深い悲しみをおぼえる。安倍元総理大臣の遺族、私の同僚の岸田総理大臣、そして日本の友人たちにお悔やみを申し上げる。このような困難なときにドイツは日本のそばに寄り添う」と投稿し、哀悼の意を表しました。
イタリア ドラギ首相「革新的な精神 偉大なリーダーだった」
イタリアのドラギ首相は声明を発表し「安倍元総理大臣の死去に対し、政府として、そして個人として深い哀悼の意を表する。今回の事件にイタリアは大きな衝撃を受けている。安倍氏はその革新的な精神と改革的なビジョンにより、日本そして国際政治において偉大なリーダーだった」と追悼しました。
フランス大統領府「日本国民および政府との連帯を表明」
フランス大統領府は、声明を発表し「マクロン大統領と安倍氏は、インド太平洋地域の安定と繁栄などグローバルな課題において協力関係を強化してきた。また、両国の文化面における豊かで活力のある関係を生かし結びつきを強めることに努めた」とマクロン大統領と安倍元総理大臣の関係を振り返りました。そのうえで「フランスは日本の国民および政府との連帯を表明する」として追悼の意を表しました。
英 エリザベス女王 天皇陛下に弔意を伝える
イギリス王室は8日、声明を発表し、安倍元総理大臣が亡くなったことを受けて、エリザベス女王が天皇陛下に弔意を伝えたことを明らかにしました。エリザベス女王は、「2016年に安倍夫妻とイギリスでお会いしたことは懐かしい思い出です。日本への愛、そしてイギリスとの絆をますます緊密にしようとする思いをはっきりと感じました」などとするメッセージを送ったということです。
イギリス ジョンソン首相「信じられないほど悲しい」
イギリスのジョンソン首相は自身のツイッターへの投稿で「信じられないほど悲しいニュースだ。彼のリーダーシップは多くの人の記憶に残るだろう。彼の家族、友人、そして日本の国民と思いは一緒だ。イギリスはこの暗く悲しい時にあなたたちとともにある」とコメントしました。また、イギリスの首相官邸は公式のツイッターで「イギリスにとってすばらしい友人だった安倍元総理大臣の悲劇的な死去を悼んでいる」というコメントとともに、安倍元総理大臣と、現在のジョンソン首相、メイ前首相、そしてキャメロン元首相が握手している写真を投稿しました。
インド モディ首相「ことばにできないほどの衝撃と悲しみ」
安倍元総理大臣の在任中、互いに訪問を繰り返し親交を深めてきたインドのモディ首相はみずからのツイッターに投稿し、「最も親しい友人の1人である安倍元総理大臣の悲劇的な死去に私はことばにできないほどの衝撃と悲しみを受けている。安倍氏は世界有数の政治家であり、卓越したリーダーだった。彼は日本と世界をより良い場所にするために人生を捧げた」としています。そのうえで、「きょう、インド全体が日本とともに悲しみ、私たちはこの困難なときに日本の人たちと連帯します」として哀悼の意を示しました。また、モディ首相は8日首都ニューデリーで行われた演説の冒頭で、「私にとって取り返しのつかない喪失と耐えがたい痛みの日だ。私の親友で元総理大臣の安倍氏はもういない。安倍氏の在任中、両国の政治的関係は新たな高みに達した。安倍氏はインドの人々の心の中に残り続ける」と述べ、安倍元総理大臣を追悼しました。モディ首相は、9日を、国を挙げて喪に服す日とするとしています。
ロシア プーチン大統領「偉大な政治家の命が奪われた」
ロシアのプーチン大統領は、安倍元総理大臣が亡くなったことを受けてコメントを発表しました。このなかでプーチン大統領は哀悼の意を示したうえで「日本政府を長く率い両国の善隣関係の発展に尽くした偉大な政治家の命が犯罪者の手によって奪われた」としています。そのうえで、安倍元総理大臣について「その記憶は彼を知るすべての人々の心の中に永遠に残るだろう」としています。一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官はメディアに対して「日本からのニュースに深く悲しんでいる。この事件を最も強いことばで非難する」と述べたうで、安倍元総理大臣について「まさに日本の愛国者であり、常に自国の利益のために立ち上がり、それを交渉のテーブルで行うことを好んだ。だからこそ、プーチン大統領と建設的な関係を築くことができたのだろう」と述べました。また、プーチン大統領の最側近の1人、パトルシェフ安全保障会議書記も声明を発表し「日本で最も権威のある政治家の1人であり、国内外から尊敬されていた。ロシアとの関係の発展に尽力し、両国民の相互理解の向上のために努力を惜しまなかった傑出した政治家として記憶されるだろう」としています。
中国大使館「安倍氏 両国関係の改善と発展に貢献」
東京にある中国大使館は8日、報道官がコメントを発表し「安倍氏は、総理大臣の在任中、両国関係の改善と発展に貢献した。訃報に接し、哀悼の意を表すとともに、ご遺族にお悔やみ申し上げる」としています。また中国外務省は8日、趙立堅報道官の談話を発表し「中国は今回の事件に衝撃を受けている。安倍元総理大臣は、両国関係の改善と発展に貢献した。哀悼の意を表すとともに、ご遺族にお悔やみ申し上げる」としています。
韓国 ユン大統領「遺族と日本国民に哀悼の意を伝える」
韓国の大統領府は、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が安倍元総理大臣の妻の昭恵さんにあてて弔電を送ったと発表しました。弔電では「日本の憲政史上最長の在任期間の総理であり、尊敬される政治家を失った遺族と日本国民に哀悼の意を伝える」としています。また、大統領府によりますと、ユン大統領は事件について「容認できない犯罪行為だ」と非難し、深い悲しみを示したということです。
台湾 蔡英文総統「言葉にならないほどのショック」
台湾の蔡英文総統はツイッターに日本語で「言葉にならないほどのショックを受けています。生前、台湾に実に多くのご支援とご配慮をくださいました。私たちはこのことを決して忘れません」と投稿しました。また総統府の報道官は「蔡英文総統は知らせを聞いてひどく心を痛め、最も深い哀悼の意を表している。蔡総統は、国際社会が重要なリーダーを失い、台湾も重要な親友を失ったと考えている」というコメントを発表しました。
インドネシア ルトノ外相「早すぎる死去 心から哀悼の意表す」
G20=主要20か国の議長国を務めるインドネシアのルトノ外相は、8日「安倍元総理大臣の早すぎる死去にあたり、この悲しみの時にインドネシア政府は、日本政府、日本の人たちに心から哀悼の意を表します。彼が国と人々に奉仕するため身をささげたことは、すべての人たちに記憶されるだろう」と述べました。
トルコ エルドアン大統領「いまわしい攻撃をした人物を非難」
トルコのエルドアン大統領はツイッターで「大切な同志である安倍元総理大臣が銃撃で命を落としたことを深い悲しみをもって知った。いまわしい攻撃をした人物を非難する。安倍氏の家族と愛する人たち、それにすべての日本国民と政府にお悔やみ申し上げます」と投稿しました。
フィリピン マルコス大統領「ご遺族と日本国民に深い哀悼の意」
フィリピンのマルコス大統領は9日、声明を発表し、「安倍氏が亡くなったことに衝撃と深い悲しみを感じました。彼のリーダーシップのもとで両国の関係は真に繁栄しました。ご遺族と日本国民に深い哀悼の意を捧げます」と追悼しました。一方で、ドゥテルテ前大統領も8日夜に声明を発表し、「安倍氏は誠実なよき友人であり、私の政権の強固な支援者だった。彼の思いやりに満ちた支援と卓越したリーダーシップを忘れない。世界で最も影響力のあるリーダーの一人だった」と追悼しました。
フィジー バイニマラマ首相「とても悲しいこと」
南太平洋の島国フィジーのバイニマラマ首相は、日本と太平洋の島しょ国の首脳などが3年ごとに日本に集まる「太平洋・島サミット」に出席するため、2015年と2018年に来日し、当時の安倍総理大臣と会談を行っています。バイニマラマ首相は、安倍元総理大臣の死去について「とても悲しいことだ。誰も日本でこんなことが起きるとは予想していなかった。日本の(林外務)大臣に哀悼の意を伝えた」と話し、バリ島で行われていたG20=主要20か国の外相会合の会場で林外務大臣に哀悼の意を伝えたことを明らかにしました。
イスラエル ラピド首相「イスラエルとの関係率いた」
中東イスラエルのラピド首相は、「安倍元総理の悲劇の死に際し日本の国民と政府に哀悼の意を表する」と声明を出しました。そして、在任中にイスラエルを訪問したことがある安倍氏について、「現代の日本における重要なリーダーの1人で、成長と繁栄のためイスラエルとの関係を率いてくれた」と振り返りました。一方、パレスチナ暫定自治政府も、「安倍元総理は日本に貢献するとともに、国際法や人権を守り、パレスチナの友人であること示し、パレスチナ人の自由への権利と国連決議に則ったパレスチナ国家の創設を支持してくれた」と述べました。
ウクライナ ゼレンスキー大統領「暴力行為に言い訳の余地ない」
ウクライナのゼレンスキー大統領は自身のツイッターに投稿し、「安倍元総理大臣が殺害されたという恐ろしいニュースについて、安倍氏の家族と日本の皆様に深い哀悼の意を表する。この凶悪な暴力行為に言い訳の余地はない」としています。
ブラジル ボルソナロ大統領「激しい怒りと悲しみ抱いている」
ブラジルのボルソナロ大統領は8日、みずからのツイッターで「激しい怒りと悲しみを抱いている。安倍氏は輝かしいリーダーであり、ブラジルにとってのとても大切な友人だった」と述べました。そのうえで「日本の人々への敬意と安倍氏への友情、そして不当な残虐行為に対する連帯を示すため、ブラジル全土に3日間、追悼するよう命じた。私たちは日本とともにある」としています。
NATO事務総長「凶悪な事件に深く悲しんでいる」
NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長はツイッターに投稿し「安倍氏が殺害されるという凶悪な事件に、深く悲しんでいる。安倍氏は、民主主義の擁護者であるとともに、私の友人であり、長年の同僚でもあった。NATOのパートナーである日本の人々にお悔やみを申し上げたい」とコメントしました。
EU委員長「多国間の協調を擁護 すばらしい人物」
EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長は声明で「多国間の協調を擁護したすばらしい人物だった。彼の家族、友人、そして、すべての日本の人々とともに哀悼の意を表します」としたうえで「安倍氏に対する残忍で卑劣な犯罪は、全世界に衝撃を与えている」と事件を厳しく非難しました。
国連 グテーレス事務総長「いつまでも忘れない」
国連のグテーレス事務総長は8日、自身のツイッターに投稿し、「深い悲しみに包まれている。わたしは何年にもわたり安倍氏と交流する機会に恵まれ、安倍氏の協調性と多国間主義へのコミットメントをいつまでも忘れない。ご遺族、日本の人々と政府に哀悼の意を表する」と追悼しました。
WHO テドロス事務局長「悲劇的な死を深く悲しんでいる」
WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は自身のツイッターに「安倍氏の悲劇的な死を深く悲しんでいる。彼のご家族と日本の皆様に心からお悔やみを申し上げる」とコメントしました。
●安倍元首相銃撃事件 欧州メディアはどう報じたか 7/9
安倍晋三元首相が襲撃された7月8日、欧州各国のメディアがこぞって速報を流した。主要紙は、ウェブ版でトップ扱いし、事件現場の写真を掲載しながら、大々的に報じた。ニュース専門番組は、プーチン大統領が行った下院幹部に向けた演説をトップに流し、安倍元首相の事件は、2番手か3番手に扱いにするなど、局による報じ方に差があった。 
フランスのルモンド紙は8日(以下、全紙同日)、「安倍晋三元首相、銃弾を浴び、危篤状態」と見出しに掲げたが、数十分後には死亡の記事に差し替えている。フィガロ紙は、「安倍晋三元首相、襲撃され死亡」と報じた。
同国のリベラシオン紙は、「安倍晋三元首相、選挙運動の最中に殺害される」との見出しを付け、安倍元首相が地面に倒れている写真を掲載。記事の後半は、「日本では、銃器のライセンス取得には長期間を要し、複雑だ。銃撃による年間の死者数も、極めて低い」と締め括っている。
スペインEFE通信は、「シンゾウ・アベとは何者か。パールハーバーに戻った日本のリーダー」という見出しを掲げた。
英国のガーディアン紙は、どこよりも早く日本の銃器規制について、長い記事を掲載。日本は世界でも「ガン・バイオレンス」の割合が低く、今回の事件は「極めて稀な暴力行為」だと報じた。
武器所持率の低さに注目
ドイツの公共放送「DW」は、日本の襲撃事件を大きく取り上げている。スタジオと中継がつながっていたソニア・ブラシュカ記者は、「日本では、心肺機能停止という言葉を使い、死という表現を一旦避けることが多い」と指摘した。
また、海外メディアの多くは、2年前に首相の座を降りた安倍元首相が、選挙キャンペーンで何をしていたのか、という疑問を抱いているようだった。ブラシュカ記者は、「体調不良のために職を続けられず、辞職したものの、政界のキーパーソンとして動いていた。自民党の選挙運動のサポートを彼が行うことは、大きな意味があった」と述べた。
スタジオにいたDWのキャスターが「日本は暴力や銃撃事件は非常に稀だと聞くが、それは正しいか」と問いかけると、ブラシュカ記者は、次のように答えた。
「日本での銃撃事件は、一般的には反社会的勢力のメンバーによるもので、それ以外の銃撃事件は極めて稀。容疑者が使用した武器も自家製のもので、購入した武器ではなかった」
スペインの民放「テレシンコ」は、英国のジョンソン首相辞任のニュースの前に、安倍元首相の事件を約3分間にわたって報じた。キャスターが「世界で殺人事件がもっとも低い国のひとつ」と述べ、「就任期間が短い政府で、安倍氏は9年間にわたって偉業を成し遂げた」とも言及した。
また、スペインの民放「ラ・セクスタ」は、ニュース番組直後の調査番組「ラ・セクスタ・クラべ」で、容疑者が使用した武器について解説。その後、人口100人あたりの日本の武器所持率を米国のそれと比較。日本は0.25人であるのに対し、米国は120人というデータをスタジオの大画面スクリーンで紹介した。
早かったティックトック
視聴率27.5%を誇るフランスの民放「TF1」のプライムタイムニュースは、南仏で起きている山火事被害をトップで扱い、番組中盤に安倍元首相のニュースを報じた。容疑者の男性については、「動機が極端に狂っている。安倍氏に対する憎悪はなかった」などと説明し、「日本は、武器に対する規制がとりわけ厳しい」との情報も付け足した。
中でも、フランスのニュース専門番組「フランスアンフォ」に登場したジャーナリストのフロランス・トマゾ氏の解説は、日本の現状を的確に分析していた。
「銃器は、この島国ではほぼ出回っておらず、銃による死者は、年間10人以下に留まる。日本は至って平和な国で、暴力で訴えることはなく、暴力を使う者たちは弾圧される。重大殺人事件の犯人は、時には死刑を言い渡され、昨年12月には3人が処刑されている。また、2007年に長崎で起きた市長射殺事件でも、犯人は無期懲役になったが、日本でこのような事件は極めて珍しい」
既存のメディア以外にも、情報はソーシャルメディア(SNS)でも流れていた。ツイッターやインスタグラムを始め、ショート動画アプリ「ティックトック」でも、安倍元首相が襲撃されるシーンをすばやくアップする外国人ユーザーたちがいた。
韓国、タイ、ベトナム、メキシコなど、複数の国のユーザーたちが、彼らの母国語を使い、独自解説を行う動画も多く視聴されていた。特に、襲撃の映像流出は、ティックトックが早かった。
世界の首脳が発信した追悼の言葉
襲撃の直後、海外の首脳も、迅速な対応を見せた。
米国のバイデン大統領は、事件の報告を受け、ワシントンの日本大使公邸に足を運んだ。「唖然とし、怒っている」「深く悲しんでいる。暴力は容認できない」との声明を発表している。
ドイツのショルツ首相は、「衝撃と深い悲しみを感じている」とツイッターに投稿。同国のメルケル前首相は、「長年の付き合いだった同僚のシンゾウ・アベが酷い攻撃を受けたニュースを知り、震えた」と綴っている。
フランスのマクロン大統領は、安倍氏の死亡が確認される前の段階で、「シンゾウ・アベが犠牲となった憎き攻撃に深い衝撃を受けている」、「フランスは日本国民とともにいる」と同じくツイッター上で追悼の意を表した。
イタリアのドラギ首相もツイッター上で、「イタリアは、この悲劇に立ちはだかるアベ氏の関係者と日本国民に寄り添いたい」と述べている。
多くの首脳がSNSを通じて、追悼の意を伝える中、ロシアのプーチン大統領は、安倍元首相の母と昭恵夫人に弔電を送っている。共同通信によると、同大統領は、「傑出した政治家」と安倍元首相を評価し、「彼の記憶はいつまでも心に残るだろう」と悼んでいる。
正確に伝えた特派員の日本像
今回の襲撃事件で顕著だったことは、SNSを通じた情報の速さに加え、海外メディアのプロたちが、日本の状況を正確に見極めていたことだ。「日本の銃規制は厳格であり、銃撃事件は極めて稀である」といった表現が頻用され、日本の治安を不安視する声は、今のところヨーロッパメディアでは耳にしない。
日本に駐在する各国の特派員が、日本での実生活を通し、安全な国であることを肌感覚で理解しているからに他ならない。一国の元首相が銃弾を浴び、死亡するという事件自体は衝撃だが、それでも日本が安全な国であるというイメージを的確に報じ、解説することができるのかは、彼ら特派員の「日本像」と深く結びついている。
その意味においては、日本の歴史に刻まれた「安倍晋三銃撃事件」は、ヨーロッパ各国では、正しく伝えられたと考えていい。
●英メディア「安倍氏銃撃で日本は永遠に変わる」  7/9
安倍晋三元首相が演説中に銃で撃たれた7月8日午後11時半過ぎは、イギリスでは午前3時半頃に当たる。攻撃から3時間弱の午前6時少し前、イギリスのBBCはニュースサイト上に常時情報をアップデートしていくコーナーを設置した。
長期政権を維持した安倍氏は大物政治家として国際社会でも名を知られている。BBCの特設コーナーは演説中の銃撃という衝撃的な事件を刻々と伝えていった。
高級紙タイムズや経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のウェブサイトは現場からの写真を使い、トップの位置に銃撃報道を置いた。FTは当初、撃たれて路上に横たわる安倍氏の顔が見える画像を使っていたが、ある読者が記事の下のコメント欄に「顔が見えるような画像を使う意味はない。外すべき」と書くと、まもなくして別の画像に差し替えられた。
BBCやガーディアン紙はウェブサイトのトップがイギリスの政界の話で、2番手の位置で銃撃事件を扱った。
なぜ日本で銃殺事件が起きるのかに注目
FTやタイムズのコメント欄を見ていると、「なんて悲しいニュースだ」「銃を使ったこんな事件が発生するとは信じられない」などのコメントが多い。少しでも日本を知っている人は日本が治安上安全な国であることが頭にインプットされているので、「信じられない」という思いを抱くのだろう。
この点について分析コラムを書いたのが、BBCのルパート・ウイングフィールド=ヘインズ東京特派員だ。「安倍晋三ーー日本を永遠に変えてしまうかもしれない、衝撃的な死」と題する記事の中で、「こんなことが日本で起きるなんて、一体どういうことか」という疑問を自分自身が抱いたという。
「日本では暴力的な犯罪が発生する可能性はあまり想定されていない」。というのも、銃の所持が「極めて難しい」からだ。所持するには犯罪歴がないこと、研修を受けていることなど数々の条件が付き、障壁が高い。結果として「銃を使った犯罪がほとんどない」。銃を使った犯罪による死は「年間10件もない」。
特派員の関心は犯罪の動機に向かう。「かつては日本でも政治家の暗殺事件があった」。1960年、日本社会党の浅沼稲次郎委員長が日比谷公会堂での演説中に右翼団体の団体員に刺されて即死した事件があった。「しかし、安倍氏は右派系国家主義の政治家であったから、右翼思想の青年の攻撃対象にはならないだろう」。
近年、日本で目立つのが「静かで、孤独の男性が誰かあるいは何かに憤りを感じて、殺傷事件を起こす例だ」。2019年の京都アニメーション放火殺人事件は「自分の作品を盗んだ」と主張する男性が犯行者で、2008年の秋葉原通り魔事件では、「誰も友達がいない」「自分は無視されている」と感じた男性が引き起こした、と指摘する。
実行犯の動機は何にしろ、安全であるがために警備が緩かった日本は変わらざるを得ないだろう、と特派員は予測する。
日本では選挙戦で政治家が通りに立って演説を行い、通行人と握手する。今回の事件でも、攻撃者は政治家の近くに位置し、自家製の武器を使うことができた。「今日の事件で、警備体制は変わらざるを得なくなるに違いない」。
イギリスでも議員は被害にあってきた
20世紀以降、イギリスの政治家で殺害された例を振り返ってみると、1990年代まではイギリス領北アイルランドでイギリスからの独立を求めて武力闘争を行った「アイルランド共和軍(IRA)」やその分派によるテロ事件があった。1979年、1984年、1990年に発生し、いずれも保守党議員が殺害された。宿泊先のホテルや車に仕掛けられた爆弾が命を奪った。
2000年代になると、特定の場所での殺傷・殺害事件が発生してくる。下院議員が地元選挙区の有権者と直接顔を合わせ、生活の悩み事などを聞く「サージェリー」と呼ばれる対話会合の場所やその近辺だ。
2000年、リベラル系野党・自由民主党のニック・ジョーンズ議員が南西部グロスタシャーの事務所で対話会を開いていると、男性が刀を手にして入ってきて、議員に傷を負わせようとした。議員は手と腕への負傷で終わったが、かばおうとした事務所職員の男性が刺し傷を負って死亡した。男は傷害罪で刑務所に入るところをジョーンズ議員が救ったことがあったが、精神を病んでいたという。
2010年、労働党議員スティーブン・ティムス氏がロンドン東部の選挙区内の対話会が開かれた会場の外にいたところ、一人の女性が議員に握手をしようと近寄り、議員の腹部を台所で使うナイフで2度刺した。議員は重傷を負ったが、命は取り留めた。女性はイスラム過激主義に心酔し、イラク戦争(2003年)開戦を支持した議員に対し、抗議の殺生を試みた。
人々の記憶にまだ強く残っているのが、2016年6月の労働党議員ジョー・コックス氏の殺害だ。この時、欧州連合(EU)からの離脱の是非について、数日後に国民投票が行われることになっており、離脱か残留かで国民の意見は二手に分かれていた。
コックス議員はEU残留派だった。イングランド北部バーストルの地元選挙区で対話会に向かう途中、極右主義に傾倒する離脱支持の男性に銃撃され、死亡した。
そして昨年10月、今度は保守党議員デービッド・エイメス氏が犠牲になった。イングランド地方南部エセックスの地元選挙区で行われる対話会の場所に入っていくと、中にいたイスラム過激主義を信奉する男性に複数回刺され、死亡した。
政治家の警備はどうなっているのか
イギリスでは、選挙戦になると、候補者は選挙地区を訪れ、路上で有権者と会話をするのが通例だが、事務所の職員や秘書、警備担当者などの数人に囲まれている。地元選挙事務所で対話会を行う際にもスタッフが一緒にいるが、議員は警備担当者を連れてきたがらない。有権者が相談事をする際に警備担当者がいては「邪魔になる」と考えるからだ。
対話会に参加する際には特に警備チェックは行われてこなかった。ふらっと訪れて、自分たちを代表する議員と直接会話ができる貴重な機会である。有権者と顔を合わせ、率直な会話をする対話会こそが「民主主義の基本を成す」と議員たちは考えている。
しかし、2016年のコックス議員の銃撃死は政界に大きな衝撃を与えた。「民主主義は維持したい、対話会参加の垣根はできうる限り低くしておきたい」という思いと、「でも、怖い・殺されたら困る」という気持ちとの兼ね合いを考えざるを得ない。
コックス議員、そしてエイメス議員の殺害事件以降、議員の身辺警護は強化されることになった。政府は選挙事務所や自宅に警報や監視カメラを設置する、対話会では参加を予約制にするなどを推奨している。
600余人の下院議員が身辺警護に使う経費は、かつては微々たるものだったが、2019年度では330万ポンド(約5億円)まで急激に増えた。それでも、残念ながらエイメス議員の命は守れなかった。
首相が記者会見をするときはどうなのか
イギリスのボリス・ジョンソン首相は7日、首相官邸前で与党保守党の党首を辞任する意向を表明した。
イギリスでは、首相が辞任表明をするとき、必ず踏襲される流れがある。まず官邸の中に入るドアの前方に演台を置き、これと向かい合うように報道陣を並ばせる。あらかじめ決められた時間になると、ドアを開けて中から出てくる首相が演台まで数歩歩く。そこで辞任表明の演説をするのである。
官邸の建物のドア前には、許可がない限り、一般市民が行くことができないようになっている。官邸に向かう道路には門があり、つねに数人の警官が陣取っている。門の外には市民が立ち並ぶことができるので、ジョンソン氏の辞任表明のときにはたくさんの人がスマートフォンを片手に集まっていた。
警備担当者が何人いても、監視カメラがあっても、一定の時間に首相が特定の位置に立つことがあらかじめわかっているので、安全保障の面からは決して100%安心な状態ではない。しかし、首相の生の演説の声を聞き、その姿の一部でも見える場所に一般市民が立てるようにしておくことで、政治が(少なくともある程度は)国民に開かれていることを示すことができる。
政治の場をいかに国民に開かれた状態にしながら、政治家の命も同時に守るのか。イギリスでも永遠の課題となっている。
●安倍元首相「暗殺」と一面で報じた米メディア 同盟国アメリカの受け止め? 7/9
安倍晋三元首相が亡くなった。
筆者は米東部時間7日の午後10時半すぎ、ふと見たツイッターで「Shinzo Abe」という文字がトレンド2位にあることに気づいた。タイトルを見ると「Japan’s former prime minister Shinzo Abe shot during campaign…」と書かれてあった。‘shot’という文字が目に飛び込んできたが「shot(銃撃)?」と、やや頭が混乱した。アメリカ全土では銃撃や乱射の事件が多発しているが、日本でshotとは? まさか…と思いながらクリックしたが、その「まさか」が起こっていた。
そこには、安倍元首相が何者かに撃たれたという速報やツイートが続々と流れていた。ほどなくして、日本好きの友人からもメッセージが届いた。彼はNHK Worldを観ていたら速報に切り替わり、事件を知ったという。日本であまり起こらない大事件にショックを受けているようだった。
翌朝目覚めた筆者は、祈る気持ちでツイッターを開いたら‘Rest In Peace’がトレンド入りして、安倍氏の死を知った。ニュースフィードの一面は、その一報で溢れていた。ツイッターではほかにも「RIP Abe」「PM Abe」がトレンドワードになり、「Japan」がアメリカのトレンド1位となった。
アメリカの同盟国である日本のリーダーとして長きにわたり友好関係を構築、尽力してきた人物の、しかも選挙活動中の殺害事件は、止まぬ銃犯罪に頭を悩ませ、同じく民主主義を重んじるアメリカ社会をも大きく震撼させた。
日系アメリカ人の友人からは聞かずとも、筆者の下にこのようなメッセージが来た。「PM Shinzo Abeの暗殺というショッキングなニュースを今しがた、CBSやCNNで知ったわ」「とてもひどい、悲しいこと!」「銃の写真はハンドメイドに見えるわね。日本で銃の購入は非常に困難だから、自分で作ったんでしょうね」「日本は犯罪率が低く、特に銃を使った暴力事件数は少ないって聞いているから、本当にショッキング」。また、普段連絡がこない知人からも、日本に対してのお悔やみメールが届いている。人々の日本に対するリアクション(衝撃)は、東日本大震災の時と似ている。
米メディアは軒並み「暗殺」と報じる
友人が言った‘Assassination’。暗殺というこの言葉でNBC、FOX、CNN、NPR、ニューヨークタイムズ、ワシントンポストなど各主要メディアが殺害事件を報じている。意味を広辞苑で調べると「ひそかにねらって人を殺すこと。多く、政治的に対立している要人を殺すこと」とある。英語の意味をケンブリッジ辞書で引くと、同様に「有名な人や重要な人を殺害すること。特に政治的な理由もしくは金銭と引き換えに」とある。
まだ容疑者の動機については捜査の段階で不明だが、「政治信条に対する恨みではない」とする日本の報道もある一方、何らかの理由で「殺そうと思って狙った」と殺害の意思があったことも示されている。動機の解明が待たれる。
また多くの記事では、安倍氏を紹介する枕詞として「日本でもっとも長く務めた首相」という言葉が使われている。日本の首相は頻繁に変わるという印象がアメリカにはあり、ヨーロッパやカナダなどの近隣国のリーダーに比べて知名度が上がらないことが多いが、安倍氏は8年8ヵ月もの間、日米の友好関係に貢献してきた人物として、一般市民の間でも割と知名度が高い方だと思う(辞任後も今だに筆者は『同じ苗字だね』と指摘されることが多く、知名度の高さを肌感覚で感じてきた)。
安倍氏の逝去を報じたニューヨークタイムズは、「アベノミクスによって経済の立て直しに貢献したが、戦後の平和主義を貫いてきた日本の軍備を正常化するという彼にとってもっとも重要だった目標には達しなかった」と報じた。また「戦争犯罪で訴えられた祖父を含む、厳格なナショナリストの政治家一族に生まれ、連続でもっとも長く首相を務め上げ日本をリードし、歴史を作った」とも評された。
USAトゥデイは、「日本経済の再建に貢献したが、タカ派の軍事思想でリベラル派の逆鱗に触れたリーダーとして、二極化した遺産を残した人物」と報じた。
日本でめったに起きない銃撃事件が発生し、日本社会に与える影響についてフォーカスした記事も散見される。
「銃規制が厳しいことで知られる日本は、世界でもっとも殺人率が低い国の1つ。AP通信によると、人口が1億2500万人以上にも拘らず、日本は昨年、銃による犯罪件数がわずか10件だった」(USAトゥデイ)
「この暗殺は、銃のほぼない日本に衝撃を与えた」「日本ではどんな形態の暴力も(アメリカに比べて)珍しく、銃による暴力はほとんどない(に等しい)。銃の関連事件の死者は昨年は1人だけで、17年以降も14人。1億2500万人が住む国としては非常に少ない数字」。よって「政治イベントでの警察の警備は手薄く、選挙期間中、有権者は国のトップと交流する機会がたくさんある」(ニューヨークタイムズ)
ニューヨークポストは安倍氏が凶弾に倒れる瞬間を左斜め前から捉えた動画を掲載し、「警備が誰も安倍氏の後ろを見ていない。悲劇的。彼はいい人だった」「とてもショック。悲しいことに、私たちは愛すべき世界のリーダーを失った」とする一般の人々のツイートを紹介した。
米要人も次々に哀悼の意
バイデン大統領は8日、日本の元リーダーの死に哀悼の意を表した。
「友人の安倍晋三元首相が射殺されたというニュースを聞き、私は愕然とし、憤慨し、深く悲しんでいる。 彼は私たちの人々(2国間の国民)の友情のチャンピオンだった(友情の証という意)。米国はこの悲しみの時に、日本と共にある」
安倍氏と言えば長い在任中、国際舞台で元大統領のオバマ氏やトランプ氏とも深い関係性を築いたことで知られる。
世界的リーダー同士で、トランプ前大統領とは一貫して緊密な関係を築き維持してきた数少ない1人と言われることが多い安倍氏。訃報に際し、トランプ氏は自身のソーシャルメディア、TRUTH Socialで、このように表明した。
   心肺停止が伝えられたアメリカ時間昨夜の時点
「本当に素晴らしい人物でありリーダーである安倍晋三前首相が銃撃され、非常に深刻な状態だというとんでもないニュース。彼は私の真の友人であり、さらに重要なことはアメリカにとってもかけがえのない友人だった。これは、彼を賞賛する日本の素晴らしい人々にとって大きな打撃だ。晋三と彼の美しい家族のために私たちは皆祈っている!」
   アメリカ時間翌朝、死去の報に際して
「世界にとって本当に悪いニュース!安倍晋三元首相が亡くなった。彼は暗殺された。捕まった殺害者は迅速かつ厳しく処罰されますように。安倍晋三が本当に素晴らしい人物であり素晴らしいリーダーだったことを真に知っている者はそんなにいないが、歴史がそれを教えてくれるだろう。彼はほかに類を見ないユニファイア(人々を統一するリーダー)で、何よりも彼の壮大な国、日本を愛し、大切にした男だった。安倍晋三(の死)は大いに惜しまれるだろう。彼のような人物はもう二度と現れないだろう!ドナルド・J・トランプ大統領」
こちらには現在、6万を超える「いいね」が寄せられている。
大統領時代には安倍氏と広島や真珠湾の追悼イベントを共に表敬訪問したオバマ氏も、安倍氏の死を悼んだ。
「友人であり長年のパートナーである安倍晋三が暗殺されたことにショックを受け悲しんでいる。安倍元首相は、彼が仕えた国、日本と日米両国の同盟のため、並大抵ではない献身をした」「同盟を強化するために我々が行ったこと、広島と真珠湾を共に訪れた感動的な体験、そして彼と妻の安倍昭恵氏が私と妻のミシェルに示した優しさを、私はいつまでも忘れない」「ミシェルと私から、痛ましい出来事に非常に心を痛めている日本の人々に向け、心から哀悼の意を表明する」 
 
 

 

●安倍元首相が銃撃され韓国政府はノーコメント “非礼” 外国人記者も批判 7/11
安倍晋三元首相が銃撃を受けた直後に、トランプ前米大統領は8日、ソーシャル・メディアに、「とても衝撃的なニュースだ。みんなシンゾーと家族のために祈っている」と書き込んだ。
世界の指導者の反応が伝わる時間に、韓国大統領府と韓国外務省に、記者たちもコメントを求めた。その反応に、韓国人記者の一人は耳を疑った。
「安倍元首相の襲撃に関するメディアの報道について認知している」
「日本関係当局が事実関係を把握中であるだけに、具体的な言及は控える」
公式のコメントを出したくないのだ。韓国人記者には、その意味はよくわかった。韓国の有力紙「中央日報」のチョン・スジン記者は、「日韓関係の地雷を踏みたくなかったのだろう」と控えめに書いた。本当は「安倍晋三という地雷を踏みたくなかった」と書きたかっただろう。
韓国人記者と同じ時間に、英フィナンシャル・タイムズ紙のソウル支局長、クリスチャン・デービス記者も、大統領府と外務省に電話した。「コメントはない」と言われた。デービス記者は、この対応に腹が立った。
デービス記者は、ツイッターに「韓国大統領府と外務省は、安倍元首相銃撃事件についてコメントを断った。ノーコメントだ」と書いた。こんな非礼はないし、広報の役割を果たしていないと思ったのだろう。
チョン・スジン記者は、韓国政府のこの姿勢を批判した。隣国の元国家指導者が銃撃で死亡したのに、「ノーコメント」はないだろうと書いた。記者魂だ。韓国政府の混乱ぶりを批判したのはチョン記者だけで、韓国他紙と日本の新聞も報じなかった。
さらに、インドネシアで開かれた主要20カ国・地域外相会議で、韓国の朴振外相が、林芳正外相に「非常に衝撃的だ、安倍元首相の快癒を祈る」と伝えた、と書いた。
韓国紙の社説
この程度なら、大統領府と外務省も言うべきだったとの批判が、チョン記者の記事には滲み出る。なぜ、韓国政府は言えなかったのか、理由がある。韓国で、安倍元首相ほど口汚く非難される日本人はいない。「右翼」「軍国主義者」「反韓政治家」といった言葉を、新聞も平気で使う。
韓国政府は、「安倍元首相の回復を祈る」とコメントしたら、「お前らは安倍の味方か」といった抗議が必ず来ると心配したのだ。大統領の支持率も落ちているから、躊躇した。事態がはっきりするまで、「ノーコメント」にしたのだろう。
この空気は、左派系のハンギョレ新聞の9日の社説を見るとよくわかる。安倍元首相について「在任期間中に靖国神社を何度も参拝し、日本の植民地支配と侵略歴史に対する反省を拒否し、韓国最高裁の下した日帝強占期強制動員労働者に対する賠償判決に反発して輸出規制措置を取るなど、韓日関係が最悪の状況に陥ることに中心的な役割を果たした人物である」と書いた。
安倍元首相についての間違いだらけの表現だが、多くの韓国人はこう信じている。しかも、死んだ人を悪し様に言わない日本の文化を、全く理解していない。日本についてのステレオタイプの誤解と無理解が、込められている。
ハンギョレ新聞はまた、安倍元首相の死と参議院選挙を展望して「選挙後、9条改正、岸田首相の影響力が低下し、安倍元首相の遺志を維持すべしとの高市早苗氏や萩生田光一氏ら強硬派の影響力が大きくなりかねない」と、全く的外れな解説を書いた。だから、韓国の新聞は信用できない。
大統領、首相の反応は…
韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は8日午後に、安倍晋三元首相の遺族の昭恵夫人に弔電を送った。「日本憲政史上最長期間を務めた首相であり、尊敬を受ける政治家を失った遺族と日本国民に哀悼と慰めの意を伝える」と述べ、「安倍元首相を亡くならせた銃撃事件は許されない犯罪行為だ」とし、深い悲しみと衝撃を表したと、韓国大統領府は伝えた。
韓悳洙(ハン・ドクス)首相のコメントは、心がこもっていた。記者の取材に「北東アジアのために熱心に努力された方だった」と言葉を詰まらせ、2013年の世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)の思い出として「安倍元首相はそこで韓日関係をいかなる形でも改善しようという意志を持っていた」と回想し、「朴元大統領が基調演説する50分間は一番前の席に座り、演説と対談が終わるまで待って、朴元大統領と握手もして努力した姿が思い出される」と語った。
●海外メディア「安倍元首相の遺産」 自民が参院選大勝 7/11
海外メディアは10日投開票の参院選の結果を相次ぎ伝えた。自民党の大勝は、8日に銃撃を受けて死去した安倍晋三元首相の「遺産」と指摘する報道が目立った。安倍氏が目指した憲法改正の論議が進むとの見方を示す記事も多かった。
AP通信は「岸田文雄首相は長期的な政策目標に取り組めるようになる」と分析した。具体例として、岸田氏が「新しい資本主義」と呼ぶ経済政策や安全保障のほか、安倍氏が目指してきた憲法改正をあげた。
APは安倍氏の殺害により、今回の参院選は「新たな意味を持った」と指摘した。自民党に対する「同情票」を集めたとの見方を示したほか、多くの候補者が言論の自由の重要性を強調し、民主主義に対する暴力に屈しないと掲げた点に触れた。
米ニューヨーク・タイムズは「安倍氏の遺産は、投票所での有権者の選択と自民党の将来像を形作った」と指摘した。岸田氏が「私には安倍氏の考えを引き継ぐ責任がある」と述べたことを紹介した。
英フィナンシャル・タイムズ(FT)は「平和主義の憲法を改める歴史的な機会になる」と言及した。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)も「安倍氏が目指した憲法改正が自民党の勝利によって近づいてきた」と報じた。
米ワシントン・ポストは円安やインフレ、エネルギー価格の高騰といった岸田政権が抱える課題に言及した。岸田政権が「国内での圧力にさらされている」と指摘した。
韓国の新聞各紙は1面で、憲法改正に前向きな「改憲勢力」が3分の2を確保したことを中心に伝えた。東亜日報は社説で「日本政界の急速な右傾化につながる」と指摘した。安倍氏の死去に触れ「彼に対する追慕の動きは改憲に好意的な世論をつくる可能性が高い」と記述した。
中央日報は安倍氏の死去により韓国に対し強硬姿勢だった安倍派の声が強くなり、短期的に日韓関係の改善機運に影響を与えると憂慮した。一方で「関係改善に積極的な岸田首相が自分の色をだす力量を強めれば、中長期的には韓日関係に青信号がともる」と期待した。
中国共産党の機関紙、人民日報(電子版)は岸田氏が憲法改正案の早期の発議に意欲を示したと伝えた。
●安倍元総理銃撃 メディアの報道姿勢に「日本社会の『窮屈な空気』の正体」 7/11
8日、午前11時半ごろ、奈良市・近鉄大和西王寺駅付近で街頭演説中に襲撃された安倍元総理大臣が、搬送先の奈良県内の病院で亡くなった。67歳だった。
参院選の真っただ中に起こった凶行について、岸田総理大臣は「民主主義の根幹たる自由で公正な選挙は絶対に守り抜かなければならないと思っている。決して暴力に屈しない」などと発言した。また公明党の山口代表も「参議院選挙の最中に言論を封殺するような暴力行為が行われた。これは厳しく断固非難する」などと厳しい口調で語れば、日本維新の会の松井代表も「民主主義っていうのは、暴力では止められない」と述べるなど、各党の代表が一様に民主主義、言論の自由を暴力によって封殺することに対する怒りをあらわにした。
この流れは政界にとどまらず、芸能界では動画配信などの自粛や中止が続々と発表され、スポーツ界でも試合前の黙とうが行われるなど、安倍元総理を偲び追悼の動きが広がった。
憲政史上例を見ない元総理への銃撃事件によって、日本中をすっぽり包み込んだ“重たい空気感”の正体とは一体何なのだろうか――。気鋭の論客が指摘するのは、漠然とした不安の中に潜む「もう一つの民主主義の危機」だった。
元共同通信の敏腕記者で専修大学文学部ジャーナリズム学科教授の澤康臣氏は、安倍氏の報道に関する日本のジャーナリズムこそ、今の日本の窮屈な空気を作り出している正体だと主張する。
「今回の事件が民主主義、あるいは“民主主義政治に対する脅威”であるということは、間違いない。というのは、選挙・選挙運動、選挙運動というのは選挙の中でものすごく大切なコミュニケーション。その最も大切な選挙運動として行っている場を狙って妨害や破壊に遭うことをわかってやった。このようなことがあるんだったら、政治家になるのは怖いなって思う人がちょっとでも出たら、それはもう民主主義を破壊する行為だ」
澤氏は、元海上自衛隊隊員・山上徹也容疑者の動機について分からないから民主主義に対する脅威かどうかわからないという立場ではないことを明確に述べた。
そのうえで、注意しなくてはならない事として「全部わかって正式発表・正式確定した後でなければ『議論するのはまかりならん』という風にも聞こえる議論はあり得るが、それはそれで間違っている。極端すぎる」と続ける。
その理由について澤氏は「事実、あるいは情報は常に刻々と出てくるもの。更新をされながら少しずつ情報が増えていく。その折にわかる範囲『ここまではわかっている』『これはわかっていない』ということをちゃんと腑分けをしながら議論するのがフェアな議論。今ある材料、今の最新、そして最も正確な情報に基づいてフェアな議論をすることがどの段階でもなされるべきで、議論を活発にすべきだが、“わかっていないことをわかったようにしてしまう”と、不正確でアンフェアな議論になりかねない。そこを分けるべき」と説明した。
また一連の議論を巡る懸念点については「皆がそうとは言わないが、メディアもそうだし、受け止めの側もそう。人が亡くなった後ということで、そのことに対して厳粛な気持ちであることと、一定の敬意を表するということと、その方のこれまでの歴史、あるいは成したことへの評価を公正に行う。とくに政治家、最高の権力者でもいらした方なので、当然マイナスのこともある。そこに奥歯にものが挟まったようなことになってしまっては、非常にまずい。そのことを非常に懸念している。“不謹慎にならない”ということをあまりにも強制してプレッシャーになってしまうと、『言いたいことをちょっとやめておこうかな』となってしまう。これはフェアな社会を壊してしまう。安倍さんはそこまでは求めていないと思う」と続けた澤氏は「時代の空気。例えば傷ついた方々、困っている方々を労わりたい。これは誰でもそうで、物すごく大事な事。ただ、その方々に1ミリでもマイナスになったり、意に沿わない。あるいは必ずしも本意ではないということでも、世の中には大切な議論が存在する」とも述べ、安倍元総理にかぎらず、あらゆる人々に対して『不謹慎だ』『敬意が足りない』と過度な遠慮や自粛を非常に強く求めるプレッシャーが毎年強まっているところにこそ、いまの日本社会にある『窮屈な空気』であり、もう一つの民主主義の危機であり、今回の安倍元総理への襲撃事件で顕在化したのではないかと指摘した。
一方、教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は、衝撃的な出来事に遭遇した日本人が抱える不安について次のように分析する。
「現在は彼の死を悼むべき時ということを大前提にしながら、これから先のことに少し目を向けるならば、みんなが知っている人が、みんなが見ている前で、あんなむごい形で殺されてしまった。人として心が傷ついてしまうのは当然。私自身も少なからず動揺している。大人でもショックを受けてしまうような映像が繰り返し、繰り返し子どもの目に触れてしまう。知り合いの中学生のお子さんが今回の事件に触れて非常に不安になって泣き出してしまったということも聞いた。周りにいる大人が少なからず動揺している。人間として何とか回復させたいと思う。自分の心を安定させたいと思うのは当然のことだが、気を付けなければならないのは、強いストレス下において、人間の心は動揺してしまっているときに、冷静な判断をしにくくなっているはず。無理やり言葉で整理しようとか、論理で片付けようみたいなことというのは、基本的には難しい。要するに『民主主義への挑戦だ』という普通な構造でとらえると非常に収まりがいいが、『民主主義への挑戦だ』という表現を使われてしまうと、絶対的な正義に対する攻撃である。下手すると、その攻撃性の連鎖というか、その挑戦に対して応戦しなければならない。そういう感情を湧き立ててしまう危険性もある」
そのように述べたおおた氏は、「感情と論理は切り離して論じるべき」とする考えを述べたうえで、「彼の政権運営に関しては、もともと賛否も大きかった。彼自身が民主主義に与えたダメージも今後、総括・評価されなければいけない。死者に鞭を打つとは何事かというのは、切り分けて考える必要がある」と締めくくった。
一連の主張に国際政治学者の舛添要一氏は「政治家というのは、殺されようが病気で死のうが、功罪両方みんなが論じるというのは海外では当たりまえ。もちろん弔意は示すが、今はお亡くなりになった直後だが、歴史を書かなければいけない。10年、20年、30年後にこの事件をどういう風に書くのか。業績はどうだったのかということをきちんと評価したうえで、事件を位置づける。歴史を書くというのはそういうことだ」と私見を述べた。
すると、時事YouTuberのたかまつななは“ネットの分断”について言及。「ネットの分断が怖い。安倍さんを支持している人は、こういうことが起きたのは批判をしていた人がいたからではといっている。逆に反対派の人たちは、安倍さんが『モリ・カケ・桜』で責任を取らなかったから起こったと言っている。私は両方おかしいと思うが、そういう議論が起きてしまっていること自体、コミュニケーションができていないし、この件をきっかけに増々政治について話しにくい空気になったら残念だ」と“窮屈な空気”について懸念を示した。  
 
 

 

●日本で報道されない 安倍元総理のこれほどまでの「海外での影響力」 7/12
安倍元総理大臣の死去を受けてアメリカの国務長官が急遽来日
銃撃され暗殺された安倍晋三元内閣総理大臣に哀悼の意を示すため、アメリカのブリンケン国務長官が7月11日、急遽来日した。ブリンケン氏は岸田総理大臣と会談し、哀悼の意を伝えた。また、バイデン大統領からの安倍元総理の家族に宛てた手紙を日本側に手渡した。
飯田)7日〜8日にインドネシアで開かれていたG20外相会合などに出席するため、インドネシアとタイを訪問していましたが、急遽、日本に寄ったということです。
クラフト)大変ショッキングなニュースで、私もいまだに現実感がありません。アジアにいたとしても、閣僚高官が弔問に訪れるということは異例で、それだけ世界での安倍元総理の存在感が大きかったということを証明する一例ではないかと思います。
日本で報道されている以上に安倍元総理の海外での知名度、影響力は大きい
飯田)海外でもメディアで大きく報道され、政治指導者が次々にお悔やみの言葉を述べています。
クラフト)私自身の見識では、国内ではあまり報道されませんが、十数年前の日本の国際社会での地位は相当落ちていました。それを立て直した安倍元総理の功績は非常に大きいです。いま日本が国際社会やG7、G20で影響力を持つようになったのも、安倍政権の外交の努力だと思います。
飯田)安倍政権の。
クラフト)アベノミクス経済への貢献も高く評価されるべきなのですが、集団的自衛権も含めた安倍外交の貢献は計り知れないのではないかと思います。
飯田)海外の報道などを見ると、そちらの部分での評価の方が大きいですか?
クラフト)大きいですね。海外はそのように見ていますし、あの米誌『TIME』が安倍元総理を3週連続で表紙に載せると言っているほどです。日本で報道されている以上に、海外での安倍元総理の知名度や影響力は大きいのです。
戦後のG7で、これほどまでに存在感を示した日本の総理はいない 〜オバマ・トランプ両政権と上手く付き合う
飯田)第2次安倍政権が7年8ヵ月続きました。そのなかで「アメリカとべったりではないか」というような批判もされましたが、決してそれだけではなかったということでしょうか?
クラフト)日本で最も外遊を行った総理でもありますし、対中関係や韓国などとのいろいろな外交問題に取り組みました。安倍さん自身も北方領土問題を解決できなかったことに悔しさを述べていましたが、ロシアとも取り組み、いろいろな国と接して日本の世界での地位を戻した功績は、決して忘れてはいけないと思います。
飯田)在任中のアメリカの大統領も、最初はオバマ政権でした。それからトランプ政権に変わり、最初にG7の首脳としてトランプさんに会いに行ったのも安倍さんでした。
クラフト)最初の出だしは、少しオバマ政権とはギクシャクしていました。オバマ政権は中国にべったりでしたが、リスクある中国から正しい方向へ軌道修正させた。そして、ほとんどの欧米諸国のトップが良好な関係を持ちにくかったトランプさんと、上手く付き合うやり手でもありました。日本のためにトランプ政権と上手くやり合ったことは大きかったと思います。
飯田)オバマ、トランプ両政権と上手くやった人はそうはいないですよね。
クラフト)正反対の性格の持ち主と上手くやるというのは、個人的な好き嫌いを超えたものでなくてはできません。
飯田)最初にギクシャクしていたオバマ政権との関係も良好になっていきました。アメリカの上下両院合同会議での演説もインパクトがあったようですね。
クラフト)英語でスピーチして影響力を持ちました。
飯田)希望の同盟という。
クラフト)そうですね。ドイツの高官から聞いたのですが、G7の場で議論が白熱して合意ができないときに、安倍元総理が割って入って合意案を出したり、最後に締めたりと大きな存在感があったそうです。戦後のG7で、これほどまでに存在感を示した日本の総理はいないとも言っていました。
G7での「トランプ大統領対欧州」の対立に重要な役割を果たした安倍元総理 〜欧米各国からも慕われる
飯田)よく覚えているのが、カナダでのG7サミットでメルケルさんが机を叩かんばかりにトランプさんに迫っていったとき、トランプさんが最後に「シンゾー、お前はどう思う?」と聞いて決めたらしいですね。
クラフト)あれは衝撃的でした。トランプさんはすぐにそのままシンガポールへ行こうとしていたのです。実は「お前はどう思う?」と言っただけではなくて、最後は「あとはシンゾーに任せた」と言って立ち去ったのです。アメリカという大国が、G7で自分の国の声明文を他の国の首相に委ねるということは通常、あり得ませんので、相当信頼していたのだと思います。
飯田)アメリカからすると、G7は先進7ヵ国が集まってはいますが、「中心は自分だ」と思っているわけですよね。
クラフト)大事なポイントは、G7のなかでは「トランプ大統領対欧州」の対立があったということです。しかし安倍元総理は、決して「日米対欧州」という形にはしませんでした。メルケルさんやフランスのオランド氏、マクロン氏といった欧州国のトップからも慕われていたのです。敵味方をつくるのではなく、間に入る、それが日本の信頼に寄与したのだと思います。
飯田)微妙なところをきちんとつないでいく立ち位置は、今後も生かされるロールモデルにもなり得ますよね?
クラフト)いま、岸田外交がこれだけ存在感を示しているのは、安倍政権がつくり上げた土台の上に立っているからです。岸田さんも外務大臣としての経験があり、外交には長けていますが、安倍政権がつくり上げた土台は大きいと思います。
憲法改正については「議論すること」が大事
飯田)そのようななか、選挙で信任を得た岸田政権ですが、憲法改正についても11日の会見のなかで、「できる限り早く発議したい」とおっしゃっています。選挙のあと、私も特番でインタビューしましたが、「アジアのなかでも多国間の秩序をつくらなければいけない。それに対して汗をかいていく。自由で開かれた価値観を共有するところでやる」とのことでした。これを突き詰めていくと、「集団的自衛権をどうするのか」というような憲法問題にもなります。憲法の話は今後、外交にも直結していきそうですね?
クラフト)まさしくそうなります。近年、アメリカの影響力が停滞するなかで、アジアでのリーダーは日本に求められている。少なくともアメリカは、以前にも増して日本にアジアのリーダーシップを取ってもらいたいと思っていますし、現にリーダーシップを発揮していると思います。
飯田)アジアでのリーダーとして。
クラフト)ウクライナや中国の問題を考えると、防衛力の強化が問われていきます。その意味では、憲法改正はその一環として必要ですし、安倍政権で成し遂げた集団的自衛権が、いま生かされ始めているのではないかと思います。
飯田)「どのように議論していくのかはこれからだ」ともおっしゃっていましたが、一応、自民党は4つの項目を出しています。緊急事態条項などがまずは争点になってくるのでしょうか?
クラフト)憲法改正は安倍元総理の悲願で、(第2次)安倍政権が発足した2012年から言われていますが、ほとんど進歩していません。やっと今回の選挙で議論が進んでいくことになります。中身はそれぞれの党が主張し合っていく。大事なことは、「議論をする」ということです。それによってどのような方向性に行くかを詰めていく。まずは議論が大事なので、そこに1歩踏み込むべきではないでしょうか。  
 
 

 

●安倍元首相はたった1人で倒れ込んだ…「空白の7秒」大失態と報じられる 7/16
なぜ日本の警察は安倍元首相を守れなかったのか
安倍晋三元首相が奈良市での遊説中、銃撃を受けて死亡した。日本は犯罪率の低い安全な国として知られているが、そんな日本で発生したショッキングな襲撃事件として、海外にも驚きが広がっている。
岸田文雄首相は14日の記者会見で、「率直に言って警備体制に問題があったと考えている」と話し、政府として警備体制の不備を認めた。
交差点を背に演説する安倍元首相の後ろはがら空きとなっており、容易に接近することができた。また安倍元首相を囲む警護員らは前方を注視しており、離れた場所に警官が配置されているとはいえ、後ろからの狙撃はほぼ想定していなかったかのようだ。
こうした点に海外報道では、「(アメリカの基準からすると)ほとんど真剣だとは思えないほど緩い」との指摘も出ている。安倍元首相の警護は明らかな失敗だったと報じるメディアもある。
米メディアが報じた「警備上の複数のミス」
銃社会のアメリカで、メディアは警備体制をどのように報じたのだろうか。米保守派メディアのワシントン・エグザミナー誌は、警備体制には複数の失敗が重なったと指摘する。記事の著者は、同紙で国家安全保障を専門としている記者だ。
記事は初めに妥当だった点として、警視庁警備部が警護を担当していた点を挙げている。現場には奈良県警の警察官のほか、警視庁のSPも配置されていた。首都圏警察の専門部隊が警護に当たるのは、ロンドン警視庁の警護課が王族や首相、元首相などを警護しているのと同じ構図だという。
しかし、結果として凶弾は放たれてしまった。同誌が指摘する最大の敗因は、警護員と安倍元首相のあいだに距離がありすぎ、即座に取り囲んで壁を構築できなかった点にあるという。
襲撃の瞬間を捉えた映像を確認すると、1発目の発砲音が響き、ほどなくして白煙が流れ込んでいる。警護員らは音のした後ろ方向を振り返り、数秒間ただ立ち尽くしている。致命傷を与えた2発目の発砲と前後して、ようやく各員が動き出す。
近くにいた1人の警護員はブリーフケースで射線を遮ろうと試み、別の数人は容疑者を取り押さえている。このときすでに安倍元首相は演説台から降り、胸部から腹部を押さえるようにしながらうずくまっている。
ワシントン・エグザミナー誌は、警護員が最初に安倍氏の安全を確保するまで銃声から7秒を要したと指摘する。後述するが、アメリカのシークレット・サービスの場合、状況によっては4秒以内の到着でも失態扱いになるという。
トランプ氏の演説中に起きた制圧事例
同記事は2016年の米大統領選において、演説中の侵入者に極めて適切に対処できたとされる事例を挙げている。当時の候補者だったドナルド・トランプ氏の演説中、反対派とみられる人物が演説会場のバリケードを乗り越え、トランプ氏の立つステージに駆け上がろうとした。
このとき警護中のボディーガード集団は、侵入者の取り押さえをあえて一部のエージェントだけで行った。一方、候補者らの近くで待機していた別のボディーガード陣が素早く候補者を取り囲み、人間の壁を構築した。
同じ問題は、同年に民主党の予備選挙に立候補したバーニー・サンダース氏にも降りかかった。このときも同様、あらかじめ決められた手順どおりにボディーガードたちが反応し、人間の壁を築き上げることで攻撃者からサンダース氏を引き離している。
この戦術では、ボディーガードたちが身を挺して要人を護ると同時に、攻撃者の視線を遮る効果が生まれる。要人の正確な位置を把握できないようにすることで、発砲自体を躊躇させる作用をもたらす。
また、仮に暴徒たちが揺動部隊であった場合にも、この手法は高い効果を発揮する。侵入者を追い回した結果、警護対象者の周囲が手薄となるようでは元も子もない。人間の壁をつくる方式では、むしろ要人の周囲にボディーガードが集結する利点がある。
反面、奈良の事例では多くの警護員が被疑者の取り押さえに奔走し、安倍元首相を護ろうと立ちはだかった警護員は1名であった。仮定の話ではあるが、1発目の直後に人間の壁が構築されていれば、最悪の事態は免れた可能性もあるだろう。
シークレット・サービスなら4秒の空白で失態
ワシントン・エグザミナー誌はさらに、到着時間が長すぎると指摘している。同誌が検証したところ、1発目の銃声から最初の警護員が元首相の元へと到着するまでに、7秒を要していた。
参考までに、1992年のラスベガスで起きたロナルド・レーガン元大統領への不審者近接事件では、わずか4秒で到着したシークレット・サービスでさえ、警護の失敗であるとの厳しい批判を受けた。
この事件はレーガン氏の演説中、部外者の男が舞台袖からに乱入し、氏とわずか10センチほどの距離にまで接近を許したというものだ。それ以来シークレット・サービスは、警備要員の一部を常に要人の至近に配置するよう警護計画を改めている。
奈良の銃撃事件の警護体制は、こうした点からもアメリカの感覚からすると大いに問題ありとみなされるようだ。ただし記事は、防弾ブリーフケースを掲げて安倍元首相の前に唯一立ちはだかり、射線を遮った警護員については、「ずば抜けた勇気を示した」として称えている。
ちなみに、同誌によるとアメリカのボディーガードたちは、あの手この手の変装で要人の至近距離をキープしているという。2001年、ブッシュ元大統領がワールドシリーズの始球式に登板するとなれば、ボディーガードはアンパイアに扮して最も近いグラウンド上からブッシュ氏を警護した。
2017年のイギリスでヒラリー・クリントン氏に名誉学位が授与された式典では、ボディーガードが教員に扮して壇上に立ち、式の雰囲気を尊重しながら厳しい目を光らせたという。
「ほとんど真剣だとは思えないほど、緩い警備だった」
警護体制に関して日本は、欧米の基準よりもかなりおおらかだとみられているようだ。日本に住んで27年という英タイムズ紙の日本特派員は、安倍元首相の自宅マンション周辺では「警備体制が驚くほど緩かった」と指摘している。
安倍元首相は通算8年8カ月の首相任期中、昭恵夫人とともに、東京都渋谷区のマンションに住んでいた。そこからわずか1ブロックほどの距離に住んでいたという同紙記者は、「私たち(記者と家族)が住んでいることからも明らかだが、そこは豪勢で高級な住宅地というわけではなく、国家指導者の存在は私たちの暮らしに夢のような不思議な感触をもたらしていた」と振り返る。
警備体制について記事は、近隣には私服警官を含む警察官たちが警護にあたっていたと説明している。しかし、「それでも欧米の指導者と比較すると、警備は驚くほど、ほとんど真剣だとは思えないほど、緩かった」としている。近所の人々は親しみを込めて、その気になれば台所の窓から狙えるかもね、などと冗談を交わしていたようだ。いまとなってはそんなユーモアもはばかられる。
警備を最小限にしていた理由のひとつには、物々しさを抑え、地域との垣根を低くする配慮があったのかもしれない。地元の神社で祭りがあれば、当時の首相の母自らが飲み物とお菓子を子供たちに振る舞い、首相自身も気軽に写真撮影に応じていたという。
安全な国でなぜ…銃撃事件への海外メディアの驚き
世界でも安全な部類に入る日本という国で、元首相が凶弾に倒れたという事件は、世界に驚きを波及させている。容疑者が用いた銃と弾は自作のものだったが、それでも厳しい銃規制の敷かれた日本での銃撃事件は、海外を驚かせた。
米ワシントン・ポスト紙は、日本は「銃の保持に関して世界でも有数の厳しい法が制定されている国」であり、なおかつ「政治的暗殺事件がここ数十年ではまれな国」だとしている。
同紙によると昨年発生した銃撃事件は、誤射と自殺を除いて日本全国で10件となっている。うち8件は暴力団絡みの事件となっており、一般市民が銃を手にし悪用するケースは非常にまれであることがわかる。
銃の入手プロセスも厳しく、狩猟目的でライセンスを取得する場合、多段構えの手続きをクリアする必要がある。筆記試験をパスしたあと、警察が申請者自身と家族の犯罪歴などを身辺調査し、また、適切な保管ロッカーが設置されているかなど自宅の検査がある。実技の講習も必須だ。
こうした厳しい規制を、今回の容疑者は銃の自作という手段で回避した。厳しい銃規制をかいくぐって発生した事件として、海外でも注目を集めているようだ。カタールのアルジャジーラの取材に対し、米テンプル大学日本校のブノワ・ハーディー=チャートランド非常勤教授(東アジア地政学)は、安全な日本で起きた稀有な事件だと説明している。
「間違いなく、東京でよくある光景というわけではありません。このような銃暴力は発生してこなかったのです。(日本の)殺人率は世界でも最も低い部類です」
銃撃は想定外では済まされない
公衆の面前で行わなければならない選挙演説は、要人警護のなかでも難しい部類に入るだろう。聴衆と距離を取りすぎたり、あまりに過剰に警護員を配置したりするような態勢は取りづらい。人々の共感を得て親しみを高めてもらうはずの街頭演説が、権力を誇示しているかのように捉えられれば逆効果だ。
日本では銃の所持が厳しく規制されている。自作の銃による発砲という特殊なシナリオは、警備上の課題として十分に考慮されてこなかったことだろう。何の恨み節も発声しない突然の射撃は、演習になかったとの指摘も出ている。予備動作のない凶行は、確かに対処を取りづらいところではある。
事件を振り返れば、その最大の問題は、1発目の発砲後に生じた数秒間の空白だろう。結果論ではあるが、警護員が至近に待機し、即座に安倍元首相を囲める態勢ができていれば、ターゲットを目視で狙えなくなった容疑者は2発目の発射を逡巡した可能性がある。
今回のケースが例外的な事件であることを願いたいが、技術の発達で銃の自作が不可能ではなくなった現在、これまでの予測を越えた事態も起こり得る。今後、日本の警察当局は、要人の警備計画の前提を再考する必要があるだろう。 
 
 

 

●安倍元総理を海外メディアはどう報じているか。光も影もある“本当”の評価 7/22
安倍元総理の国葬が世論を二分しています。生前から支持と不支持のあいだで激しい対立を生んできた安倍氏。死後もなお大きな影響を残しているようです。
「朝日川柳」(朝日新聞 7月16日)では、<疑惑あった人が国葬そんな国>、<忖度はどこまで続くあの世まで>など、選ばれた句のすべてが批判的なものでした。これに怒った安倍シンパが、“#朝日新聞の廃刊を求めます”なるハッシュタグまで作り反発したのです。
すると、“反安倍”で知られるタレントのラサール石井氏が自身のツイッターアカウントで川柳を<素晴らしい!>と絶賛。続けて、<国葬に反対する人を非国民のように言い死を悼まない人間だと攻撃する者は彼らも攻撃するのか>と、持論を展開しました。
衝突を生む背景は?
こうした衝突を生む背景のひとつには、総理在任時に“モリカケ”や「桜を見る会」などの疑惑について真摯に説明してこなかったことがあります。
かつて衆議院議長も務めた伊吹文明氏が、<ありていにいえば、安倍さんには大変な道義的な責任がある。>(朝日新聞 2018年4月12日)と語っていたように、国民の不信を払拭する努力をおろそかにしてきたのは否めません。
そして悲惨な銃撃のきっかけになった統一教会の問題が、さらなる影を落としています。長年あえて触れられてこなかったタブーが、ついに白日のもとにさらされているのです。
一部のコメンテーターは、“安倍氏と統一教会を結びつけるネットの陰謀論を鵜呑みにしてしまった”と、山上徹也容疑者の動機を矮小化しようとしていました。
しかし、海外報道を見ればそれが明らかな誤りであることがわかります。
日本のメディアよりも早く統一教会との関連を報じた米CNN
銃撃事件の直後、日本のメディアよりも早くに、統一教会と安倍氏の関係を明らかにしたのが、アメリカのCNNでした。
そしてイギリスのフィナンシャル・タイムズ電子版の記事「Killing of Shinzo Abe shines spotlight on politicians’ links with Moonies」(「安倍晋三氏の殺害により文一家と政治家のつながりがクローズアップされる」カナ・イナガキ、アントニー・スロドコフスキー、エリ・スギウラ、クリスチャン・デイヴィス 2022年7月11日 以下すべて筆者訳) は、祖父の岸信介元総理大臣から三代に渡って統一教会と安倍氏が深い関係にあることを指摘。神田外語大学のジェフリー・ホール特別専任講師による以下の分析を紹介しています。
<統一教会は、冷戦中より共産主義に勝利するための組織の一つとして自民党の活動に寄与してきた。自民党・岸派と行動を共にし、その岸派は後に安倍派となったのだ。>
強固な信仰をもとにした数の力により、選挙における集票に重要な役割を果たしてきた。それこそが力の源泉であったと分析しているのです。
その見返りとして政治家や著名人を講演に招き教団の活動を称賛するスピーチをしてもらうことで、統一教会は組織としての“箔”をつけていきました。
安倍元総理と日本が統一教会にとって重要な存在となった経緯も
ワシントン・ポストの記事「How Abe and Japan became vital to Moon’s Unification Church」(いかにして安倍氏と日本が統一教会にとって重要な存在となったのか マーク・フィッシャー 2022年7月12日)に一例が記されています。
1990年代の半ばに開催された会議には、アメリカのブッシュ元大統領(第41代)、ジェラルド・フォード元大統領(第38代)、黒人コメディアンのビル・コスビー、そして旧ソ連のゴルバチョフ元書記長が参加し講演をしました。
有名人による宣伝効果でさらに信者が集まり、献金額は増えていく。こうした集金活動の中心地となっていたのが、他ならぬ日本だったというわけです。
<政府の調査や学者たちの研究によれば、アメリカを含む国際的な活動にかかる費用をまかなうための中心地として、統一教会は60年以上に渡り日本を頼ってきたのである。>
橋渡し役は、岸信介、安倍晋太郎、安倍晋三。脱会や献金をめぐるトラブルを抱え、海外では“カルト”と称されてきた団体が政治の中枢に食い込めた大きな理由です。
外交において残した「功績」
以上、安倍氏の“影”の部分について見てきました。これらは決してアンチの言いがかりなどではなく、直視しなければならない事実です。政治とカネの問題も含め、国葬に反対する人たちがいるのも当然の話です。
しかし、他方で功績についても目を向けなければなりません。今回の訃報を受け、いくつかの海外紙(誌)が改めて“政治家、安倍晋三”を定義しようとしていました。総じて外交面での評価であり、緊張が高まる国際情勢において第二次安倍政権下の日本が果たした役割を論じています。
アメリカのニューヨーク・タイムズ紙は「Making Sense of Shinzo Abe」(「安倍晋三氏を理解する」デイヴィッド・レオンハルト 2022年7月12日)という記事で、安倍氏が目指した国家像を分析しています。
極右だとか軍国主義を復活させようとしているとしてリベラル勢力から批判されてきましたが、レオンハルト氏の見立ては異なります。
<最も長く総理大臣を務め、暗殺される直前まで陰の実力者として君臨していた安倍氏は、その国家主義的な思想にも関わらず、根本においてプーチンや習近平、そしてその他の新しいナショナリストとは性格を異にしている。プーチンや習近平は民主主義を弱体化させ、世界中に独裁政治を広めようとしてきた。逆に安倍氏は地球規模での自由主義の連帯を強化するために、日本の国家主義を利用しようとしたのである。>
アメリカのプレゼンスが縮小していく中で独自に防衛力を強化しつつ、価値観による連帯で中国やロシアの台頭に立ち向かおうとしていたというわけですね。レオンハルト氏は、<民主主義的な国際協調主義にとって大きな影響力を持っていた>と評価しています。
賛否両論があるものの…
安倍政権が主張していた防衛費の増額なども、こうした面から見直す必要があるのかもしれません。フランスのル・モンド紙「Shinzo Abe’s geostrategic legacy under debate in Japan」(「日本で議論されている安倍晋三の戦略地政学上の遺産」フィリップ・ポンス 2022年7月9日)も、こう論じています。
<ロシアによるウクライナ侵攻への日本の外交上の対応は、同盟国とのコミットメントにおける新たな一歩であった。主に対中強硬論が影響を与えた今回のような関与の仕方をアメリカとEUは歓迎し、日本に対して新たな信頼を示すことにもなった。>
もっとも、積極的な外交姿勢への転換に一部から懸念の声があがっています。しかし、衰退していく日米同盟を補完するために出した一つの解であることには間違いない。それが海外の見方なのだと思います。
恥を忍んででも維持したかったもの
総理時代、トランプ前大統領に必要以上に気を遣っているように見えたのもこのヴィジョンを守るためでした。
イギリスのエコノミスト誌「Abe Shinzo left his mark on Asia and the world, not just Japan」(「日本のみならず、アジアと世界に足跡を残した安倍晋三」バンヤン 2022年7月14日)は、トランプ氏の大統領当選という衝撃にどのように対処したのかを論じています。
<安倍氏は、トランプ大統領の誕生がアメリカを激変させたと最初に認識したアジアの指導者でもあった。だから、トランプ氏が伝統的な同盟関係を軽視し、12カ国からなる将来的な貿易協定であるTPPから脱退しようとも、安倍氏は彼をハグしたのである。>
日本のメディアは両者の“友情”をこぞって揶揄してきました。確かに絵だけ見れば滑稽でした。しかし、そこには恥を忍んででも維持しなければならない国益と世界の安全があった。“民主主義VS専制主義”のせめぎ合いにおいて安倍晋三が与えたインパクトは、国内以上に海外で大きな意味を持っているのかもしれません。
「私は友人を失った」。フランスのマクロン大統領の言葉が、その喪失感をあらわしています。
事実を真正面から受け止めない限り、議論は平行線
当然、外交上の功績が統一教会をはじめとする問題をチャラにするわけではありません。しかし、それらの歴史を理由に日本のプレゼンス向上に努めた姿勢をすべて否定できるわけでもない。
統一教会の助力によって権力基盤を築いた政治家が、パワーバランスの激変に揺れる世界において一定の存在感を発揮した。事実はそれ以上でもそれ以下でもないのです。
支持する人、そうでない人。どちらもこのありのままの「安倍晋三」を真正面から受け止めない限り、議論はどこまで行っても感情論に終始してしまうのではないでしょうか。
純粋な正義でも絶対的な悪でもないところで、いまの日本は存在している。安倍氏の暗殺は、冷静な認識力と複雑さに耐える胆力を問うているのかもしれません。 
 
 

 

●論調比較・安倍元首相の国葬 国葬が安倍への評価揺るがす皮肉 8/2
岸田文雄政権が2022年7月22日、銃撃され死亡した安倍晋三元首相の国葬を9月27日に東京の日本武道館で行うと閣議決定した。国葬の基準が曖昧との疑問も指摘される中の「見切り発車」。
前首相の政治的評価は割れ、国葬の是非でも国民の意見は割れ、新聞の論調も割れている。国葬を積極的に推す新聞が一部ある半面、国葬への疑問の声があふれるが、真っ向から国葬反対を打ち出すのは一部地方紙に限られ、その他の大手紙はやや腰が引けている印象だ。
首相経験者の国葬は、連合軍の占領に終止符を打って独立を回復した吉田茂氏(1967年死去)以来、55年ぶり、戦後2人目。松野博一官房長官は国葬を行う事について、7月22日の閣議決定後の記者会見で、安倍氏が憲政史上最長の8年8カ月にわたって首相を務めたこと、国内外から幅広い哀悼・追悼の意が寄せられていることなどを挙げた。
葬儀委員長は岸田首相が務め、費用は政府が全額負担する。松野氏は「一般予備費の使用を想定しているが、詳細は今後検討していく。無宗教形式で、かつ簡素、厳粛に行う」と述べた。
戦前は国葬の実施を規定した「国葬令」(天皇の勅令)があり、1909年の伊藤博文(初代首相)をはじめ、山形有朋ら首相経験者の国葬が行われたほか、戦死した山本五十六連合艦隊司令長官のように、露骨な国威発揚のケースもあったが、1947年に失効。以後、国葬に関する法令はない。
政府は今回も総理府設置法に基づいて実施した吉田元首相のケースを踏襲し、「内閣府設置法」を根拠に内閣府の所掌事務とされる「国の儀式」として実施する。
ただ、吉田氏のときも、政権の判断に委ねるのでなく国会で法整備するのが筋だとの声が上がった。
戦後、吉田氏を除く歴代首相の葬儀をみると、安倍氏に抜かれるまでの最長政権記録を保持していた佐藤栄作氏は、沖縄返還を実現し、非核三原則を唱え、ノーベル平和賞を受賞したが、吉田氏の国葬の際の疑義を踏まえ、法的根拠がないことを理由に国葬が見送られ、内閣、自民党、国民有志による「国民葬」で行われた。
大平正芳氏以降は政府・自民党の「合同葬」の形式が定着しており、安倍氏が「特別扱い」なのは明らかだ。
ちなみに、吉田氏の国葬では、閣議了解で当日のルールを決め、省庁での弔旗掲揚、黙とう、職員の午後退庁、歌舞音曲の自粛まで網羅。さらに、民間企業や学校にも協力要請し、国会でも問題にされた。2年前の中曽根康弘元首相の合同葬では、政府が全国の国立大や自治体などに弔意を表明するよう求める通知を出して批判された。
今回、国民の批判を恐れてか、「(政府は)国民に喪に服すよう強制する考えはないと説明している。国葬の日は火曜日だが、学校や官公庁は休みにしない方針だ」(読売新聞7月23日)。
自民党が国葬を支持するのは当然として、連立与党である公明党の山口那津男代表は当初、コメントを控えていたが、19日に岸田首相と会談後、「総理の決断を支持したい」と公式に支持を表明した。
野党は、選挙中に銃撃され現役政治家が死亡したというショッキングな事件だったこともあり、状況判断に迷う様子もうかがえたが、まず共産党が「安倍氏の政治姿勢を国家として全面的に公認することになる」などと反対を表明。
国会の集中審議を求めていた立憲民主党も閣議決定を受け、泉健太代表が「なし崩し的な形で国葬の準備が進められようとしている。反対だと表明したい」と反対を明確にした。日本維新の会の松井一郎代表は反対しないとしつつ「賛成する人ばかりではない」と、国会での審議を求めている。
野党の主張に自民党も神経をとがらせているようで、茂木敏充幹事長は19日、「野党の主張は国SNS上でも賛否の意見が飛び交うが、世論が割れているのは明らかだ。NHKが7月16〜18日に実施した世論調査では、国葬実施を「評価する」49%、「評価しない」38%だった。
世論調査ではないが、熊本日日新聞が「SNSこちら編集局」の登録者を対象にアンケートを実施したところ、「どちらかといえば」を含めて賛成42.9%、反対49.6%となり、30代以下の若い世代では賛成が50%を超える一方、50代以上では反対が半数以上だった。
今回の国葬は、岸田首相が安倍氏の死亡から2日後の参院選投票日(7月10日)にはすでに意向を周辺に語っていたなどと報じられている。そして14日に記者会見で国葬を行うと発表、22日に閣議決定するという「即断即決」だった。安倍氏に近かったことで知られる政治ジャーナリストの田崎史郎氏は「国葬は保守派への配慮」(テレビ朝日「モーニングショー」)と解説している。
安倍氏の国葬の論点は、大きく2つになる。そもそも国葬で行うべきか、また、国葬にするなら根拠の説明を含め国会で議論すべきではないか――の2点だ。「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」と岸田首相は説明するが、民主主義と国葬がどうリンクするのか、論理的説明はない。

大手紙の論調を見てみよう。真っ先に国葬を「けしかけた」のが、産経だ。岸田首相が会見で方針を明らかにする前、14日の「主張」(社説に相当で「心を込めた国葬で送りたい」と題し、〈安倍氏の葬送では、憲政史上最長の首相在任による業績を踏まえることに加え、国際社会が示してくれた追悼にふさわしい礼遇を示すことが大切だ〉〈これほど世界から惜しまれた政治家が日本にいただろうか。日本にとどまらず、世界のリーダーだった。国民が安倍氏を悼み、外国からの弔問を受け入れるには国葬こそ当然の礼節である〉〈安倍氏の功績は吉田氏に劣らない〉と、美辞麗句を連ね、〈岸田文雄政権はその方針(国葬)を固め、ただちに準備に入ってもらいたい〉と、政権の尻を叩いた形だ。
ただ、その後の報道で、前述の通り、この時には岸田首相はすでに国葬を決断していたことになる。
また、産経はこの前日、13日の1面トップで「安倍氏『国葬』待望論」との記事を掲載したが、小見出しに「法整備や国費投入課題」と取り、〈元首相の葬儀に国費を投じることには批判的な意見も根強い〉と指摘したうえで、〈過去の例に照らせば、国葬となる可能性は高くない。法的根拠となる国葬令は昭和22年に失効している〉〈最近では内閣と自民による「合同葬」が主流で、安倍氏もこの形式となる可能性が有力視される〉と、国葬実現は難しいとの見方を示すなど、14日の「主張」とは趣が異なり、極めてバランスの取れた書きぶりだった。国葬反対論の根強さを認識している証だろう。
自民党政権を基本的に支持している読売(16日)も、産経の「主張」ほど煽りはしないが、〈国葬には、海外の多くの首脳や要人が出席する見通しだ。外交上も重要な場となる。国家的行事として、責任を持って執り行おうという政府の姿勢は理解できる〉と、支持を表明。
ただ、さすがに反対論は無視できず、〈国葬という最高の形式に、異論がある人もいよう。だが、不慮の死を遂げた元首相の追悼方法を巡って日本国内が論争となれば、国際社会にどう映るか。そんな事態を、遺族も望んではいまい。政府は、不必要な混乱を招かないよう、国葬の規模や運営方法などについて、丁寧に説明を尽くしてもらいたい〉と、産経よりは理性的に書いている。
ただし、森友・加計・桜を見る会など安倍政治の「マイナス面」には具体的に一言も触れていない。
日経(23日)は、〈内政や外交の実績を総合的に評価した判断は理解できる〉と基本的に肯定しつつ、丁寧な説明などを求め、茂木幹事長の野党批判を〈今回の政府判断や自らの政治的評価を他者に押しつけるような言動は慎むべきだ〉とたしなめるなど、最低限のバランスをとっている。
一方、安倍政治に批判的だった朝日、毎日、東京は、国民の間に国葬への反対があること、国会での審議無しに決めたこと――の2点を中心に、国葬に批判的な論を展開する。
毎日(16日)は〈国葬に関する法律や基準はない。首相経験者の業績で判断することになれば、時の政権によって恣意(しい)的に運用されることがあり得る。退陣から2年弱で、現役の政治家だった安倍氏の歴史的評価は定まっていない。野党は「公文書改ざん問題や国会での虚偽答弁などがあったことも忘れてはならない」と指摘している〉と、安倍政治の評価が割れていることを強調。
東京(20日)も〈自民党保守派への配慮という岸田首相の政治判断があったのだろう。しかし、通算八年八カ月にわたる安倍政権には評価の一方、根強い批判があることも事実だ〉と指摘する。
朝日(20日)は〈安倍氏を支持してきた党内外の保守勢力への配慮だとしたら、幅広い国民の理解からは遠ざかるだけだ〉と疑問を呈する。
岸田政権が国会審議を避けていることについても、毎日(23日)は、首相が国葬とすることによって「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」と強調していることを指摘し、〈日本の民主主義の基盤は、国民の代表で構成する国会である。国民の疑問に答えるには、政府が国会で説明し、議論することが欠かせない〉と訴え、東京も〈国葬に法令上の明確な定めがない以上、唯一の立法府である国会が議論を尽くすべきだ〉と主張している。
ただ、朝日、毎日、東京の3紙も、国葬に疑問を呈しつつ、明確に反対までは明言していない。選挙中の銃撃という衝撃的な亡くなり方が影響しているのかもしれない。
地方紙は、それぞれの地域事情も含め、多くが安倍政治への否定的側面を指摘。その中で、琉球新報(沖縄県、16日)が、確認できた中では唯一、「国葬反対」を明言した。
〈沖縄の立場からはさらに厳しい評価をせざるを得ない。安倍元首相は、沖縄の民意を踏みにじりながら辺野古新基地建設を力ずくで進めてきた。地位協定見直し要求も無視し続けた〉〈憲法が保障する内心の自由に抵触する国葬には反対する〉
沖縄タイムス(17日)は〈辺野古の新基地建設をはじめ、こと沖縄政策に対しては強硬姿勢が目立つ政治家でもあった。……吉田氏に続いて安倍氏が国葬で送られることに対し、県民からは反発の声が上がっているが当然だ〉〈国論を二分した安倍氏の政策は評価が定まっているとは言えない。なぜ国葬なのか。政府は追悼の在り方を再考すべきだ〉と、限りなく反対に近いニュアンスで書く。
京都新聞(17日)も〈ムードに乗じて岸田氏の判断で決めていいのか。政治利用ともみえるだけに疑問と危うさを禁じ得ない。再考を求めたい〉と、「再考」を求めているのは、反対に近い主張だ。
東北のブロック紙、河北新報(宮城県)は〈安倍氏の「実績」について……特に東北の被災地に刻まれている記憶は複雑だ。東京電力福島第1原発の状況を「アンダーコントロール」と語って招致した東京五輪は、いつの間にか「復興五輪」から「コロナに打ち勝った証し」にすり替わった〉と指摘。
信濃毎日新聞(23日)は〈コロナ禍、近親者のみで葬儀を済ませる世帯が目立つ。故人との別れとなる弔問を控えたという人も多かろう。そんな折、国は海外から要人を招き、盛大に儀式を催す。「国民の声」を認識できていないなら、ずれているのは政府・与党の方だろう。……急拡大する新型コロナ感染が収束しているかどうかも気がかりだ〉と、コロナ禍を踏まえて批判。
全国紙、ブロック紙、県紙などの多くは、多様な視点で安倍政治のマイナス面を冷静に指摘し、国葬にひた走る岸田政権の判断に反対または疑問を呈している。
また、〈極めて異例の「国葬」という形式が、かえって社会の溝を広げ、政治指導者に対する冷静な評価を妨げはしないか〉(朝日)、〈国葬の形式を取ることで、有形無形に弔意を強いるムードが広がりかねない。国民の分断を招く恐れもある〉(北海道新聞23日)、〈安倍氏を静かに送ることができるように、賛否を巡って国民が激しく対立する事態は避けたい〉(西日本新聞=福岡県16日)など、強引な国葬決定が国民の分断を加速することへの懸念も目立った。
本稿では触れなかったが、安倍氏銃撃の背景にある旧統一教会の反社会的な活動、そして旧統一教会の自民党との癒着問題が、国葬論議に影を落としてもいる。自民党・岸田政権が国会での議論を避ける一因が、旧統一教会問題を追及されるのを避けるためとの見方もある。
いずれにせよ、岸田首相が安倍支持派(保守派、右派)に配慮して国葬を早々に決断した結果、安倍政治の否定的側面を含め、安倍氏の評価に改めて光が当たる事態は皮肉といえる。国の分断も進めてしまうとしたら、その政治責任は岸田首相にのしかかる。 
 
 

 

●米メディア、旧統一教会が「重荷」と報道 岸田内閣改造 8/11
海外メディアは10日に発足した第2次岸田改造内閣について報じた。安倍晋三元首相の銃撃事件後、宗教団体の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題が政権運営の「重荷」になっていると指摘した。
ロイター通信は「自民党の旧統一教会との関係に対し国民の怒りが高まっている」と指摘。この問題は政権にとって「大きな重荷であり、支持率下落の要因になった」と説明した。内閣改造の時期について「予測よりも早く踏み切った」とし、「旧統一教会の問題がいかに早く岸田文雄首相の危機に発展したかを示している」と解説した。
内閣改造では、旧統一教会との関係を認めていた閣僚の数人は再任されなかったことにも触れた。岸田氏の「旧統一教会が不当に党の政策に影響を与えたとは認識していない」との発言も紹介した。
AP通信は、安倍氏の銃撃事件によって政権の「不確実性が増大した」と分析した。今回の内閣改造は「旧統一教会から距離をとるため」とも説明。9月に実施予定の安倍氏の国葬も日本の世論を二分していると説明した。 
 
 

 

●日本のメディアに抗議…“統一教会”信者らがソウルで大規模集会 8/18
韓国で18日、いわゆる統一教会の日本人の信者らが、日本のメディアに抗議するとして大規模な集会を開きました。ソウルから中継です。
抗議集会は午後2時からソウル中心部で行われ、デモ行進も行われました。私たちは参加者にインタビューを試みましたが、指示が出ているのか、ほとんど取材に応じる人はいませんでした。
「歪曲報道、宗教弾圧、中断しろ、中断しろ」
教団側は韓国在住の日本人信者らおよそ4000人が参加していると発表していて、涙ながらに苦境を訴える日本人もいました。
信者らは安倍元首相への銃撃事件について、日本メディアで“統一教会”が直接的な原因であるかのような歪曲された情報が流されていると主張し、偏った情報を発信するコメンテーターらに抗議するなどとしています。
さらに、日本で信者を強制的に脱退させる事案が繰り返されているとの主張も展開しました。
事件をきっかけに日本で“統一教会”へ批判が高まる中、今回の集会には自らの主張を日本に対して訴える狙いがあるものとみられます。 
 
 

 

●「海外メディアは忖度しない」は本当か?──注意すべきは「情報源」 8/19
7月8日、奈良市で安倍晋三元首相が銃撃された事件は、世界中のマスコミにとって実に大きなニュースだった。現場にいたNHK記者のおかげで、私のスマートフォンにも速報が届いた。私はフランスの公共ラジオ放送局「ラジオ・フランス」の特派員として、直ちに国際編集部に連絡した。
「まだ情報が少ないけれど、日本のメディアによると安倍元首相が銃撃されたらしい」
その後、「心肺停止状態とも報道されている」とも伝えた。残念なことに約5時間半後、安倍元首相の死亡が確認された。
われわれ日本にいる外国特派員が選挙取材で地方に行くことは少なく、今回も現場に特派員はいなかった。そんなときは日本のメディアの情報に頼ることになる。私もいくつかの理由から、奈良には行かなかった。
やがて、その場で逮捕された山上徹也容疑者に関する報道が始まった。特に注目されたのは本人の動機だ。言うまでもなく記者が本人に聞くことはできないから、全ては警察からの情報に基づく。夕方頃から日本のメディアは次のように報じた。
「『特定の宗教団体に恨む気持ちがあった。安倍元首相が(その団体に)近いので狙った』という趣旨の供述をしていることが捜査関係者への取材でわかった」(朝日新聞)
その日、外国メディアは日本での報道に基づいて記事を書いた。ほとんどの場合、警察は外国記者には話をしないからだ。
大手メディアは「特定の宗教団体」の名称を報道しなかった。ただ、SNSなど一部で「統一教会」という情報が流れた。それでも、私はその情報を使うことはできないと判断した。自分で直接確かめようがなかったからだ。情報源の信憑性を確認できず、証言や証拠もなかった。
もし警察が「特定の宗教団体とは世界平和統一家庭連合(旧統一教会)だ」と日本のメディアに言ったなら、なぜそれが報道されなかったかが大きな問題になる。ただ警察が知らせなかった場合、名称を報じなかった判断は正しいと私は思う。
それでも、複数の外国メディアは早い段階で「統一教会」と報じ、それを見た一部の日本人は「外国メディアのほうが忖度せずに事実を書いている」とSNSに投稿し始めた。
しかしそれら外国の記事をきちんと読めば、独自取材ではなく、日本のオンラインメディアや雑誌、SNSなどの情報に基づいて書かれた内容だと分かる。
問題は、外国メディアが「統一教会」とした際の情報源だ。もちろん、情報源は容疑者ではない。警察は外国記者の取材に応じず情報を提供しないので、警察の回答に基づくものではないのもほぼ確実だ。
「外国メディアのほうが良い」と日本人は思いがちだ。だが、一概にそうとも言えない。注意すべきなのは情報そのものだけでなく、情報源だ。自分で確認できなくても構わない、「すごい」と思われる情報なら間違って伝えても構わない、と考える外国メディアもある。
その場合はどうでもいい情報を利用して、ガンガン書く。今回も「容疑者は自衛官時代に手製銃の作り方を学んだ」とか「容疑者は宗教団体幹部を待っていたが来なかったので、安倍を殺すことをその場で決めた」という報道があった。
どこまで証拠を押さえ、責任を持って報じるかは、それぞれの媒体の判断だ。今回のような事件の場合、情報が多すぎるので、整理した上で落ち着いた形で報道することが望ましい。
特に外国記者は一般的に、情報を確認したり証言や証拠を集めるのに日本の記者より時間がかかるから、他媒体との競争は無視し、必要な時間をかけて正確な情報を出すことが最も重要だ。
速報性よりも、確認できた正しい情報を重視する。それが報道の基礎だ。報道する人はその姿勢を忘れるべきではない。 
 
 

 

●『...と思い込み...』 安倍元首相銃撃、発表文そのまま? 8/21
安倍晋三元首相が選挙応援の演説中に撃たれ死亡した事件は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の保守政界への浸透から警察の警護体制に至るまで現代社会のさまざまな問題を映し出した。
その中でも筆者が注目するのは新聞・テレビなどのオールドメディアの衰弱ぶりだ。
事件発生から数日間、旧統一教会を「ある宗教団体」と名称明記を控えたことは既に指摘されているが、その後の報道でも首をかしげたくなることが多かった。
その最たるものは安倍元首相と旧統一教会との関係性についての表現だ。安倍元首相が参院全国区で旧統一教会支援の候補者を指名したり、関連団体にビデオメッセージを送ったりしていたことが分かってからも、テレビや一部新聞では「山上容疑者は安倍元総理と旧統一教会とつながりがあると思い込み犯行に及んだと供述している」と、しばらくは警察発表をそのまま報じ続けた。
因果関係や関係性がはっきりしない場合にメディアが慎重な表現をすることはままある。しかし、これは明らかな誤報である。
なぜなら「...思い込み...」は関係性がないこと、つまり安倍元首相と旧統一教会につながりがないのに、山上容疑者が思い違いをしていたことを強く示唆する表現だからだ。予備知識なくこのニュースを聞いた視聴者は、「ああ、容疑者は勘違いしていたのだな」と思うはずだ。
こんなことがなぜ起きるのか。警察の発表文を記者たちはそのまま原稿にし、デスクもそれを通したためだ。編集のプロセスとして「おい、これは『思い込み』でいいのか」というチェックが入らなかった。恐ろしいことだ。仮にこの時点で十分に関係性が確定していなくとも、「思い込み」は決め付けである。
せめて「つながりがあると考え犯行に及んだ」などと中立的な表記に改めるのが編集作業というものだ。
筆者が通信社に在職中、ある時期からデスクが記者に広報文をメールやファクスで送らせ、原文と原稿を照らし合わせることが多くなった。出稿部から離れていた筆者は不思議に思っていたが、それはチェック作業というよりもデスク自身の危機管理という側面が強かったようだ。
つまり広報文通りに書いておかないとクレームが来る恐れがある、という自己保身的な危機管理である。そこには編集作業の重要な要素の一つである発表文そのものを疑ってかかるという視点がない。
警察や当局の広報文が常に正しいとは限らない。いやむしろ権力は都合が悪いことは隠す。隠さなくとも都合のいい方向に誘導するのが権力の常道だ。今回の「思い込み」という表現にも、亡き元首相や政権への姑息な忖度がにおう。
それをチェックするのがメディアではなかったか。取材・編集のイロハをうっちゃり、内容を吟味せず、クレーム対応にばかり気を取られる。ちょっとした表現にもオールドメディアの劣化が映し出されている。 
 
 

 

●安倍元首相「国葬」海外の反応は? 9/27
英 トラス首相「英国との温かい友情 永遠の遺産として残る」
イギリスのトラス首相は、27日、自身のツイッターに日本語と英語の両方で、「安倍元首相の長年にわたる英国との温かい友情は、今日の日英両国の緊密な友好関係の中に、永遠の遺産として残ります」と投稿し、イギリスと良好な関係を築いてきた安倍元総理大臣に哀悼の意を表しました。
インド モディ首相「心の中に生き続けることでしょう」
インドのモディ首相は、自身のツイッターに日本語で「安倍さんは偉大な指導者、稀有な人物であり、印日友好に確信を持ってくれている人でした。安倍さんは何百万人もの人々の心の中に生き続けることでしょう」と投稿し、良好な関係を築いてきた安倍元総理大臣に対して哀悼の意を示しました。また、インド外務省によりますと、モディ首相は国葬の後、安倍元総理の妻の昭恵さんと面会し、弔意を伝えたということです。
米CNNテレビ 日本武道館の近くから中継
アメリカのCNNテレビは、会場となった日本武道館の近くから特派員が中継し「安倍元総理大臣は最も長く総理大臣を務め、日本の世界的な注目度を高めた。朝早くから参列できなかった市民が献花をしようと訪れている」などと述べました。そのうえで「多くの人たちは、多額の国費が議会にはかることなく使われたことに不満を持っている。食べるのに苦労している人もいるなかで、税金の使い方に問題があるとの意見もある。人々は一日中抗議している」として国葬をめぐって国民の賛否が分かれていることを伝えています。
欧州メディア 「国葬」国民の賛否が分かれていると伝える
ヨーロッパのメディアは、安倍元総理大臣の「国葬」をめぐって、日本では、国民の賛否が分かれていると伝えています。
このうちロイター通信は27日、日本で「国葬」が行われるのは1967年以来だとしたうえで「元総理大臣の殺害がきっかけとなり、与党の多くの議員と旧統一教会とのつながりが明らかになった」と伝えました。
またフランスのAFP通信は27日「世論調査では、およそ60%の日本国民が『国葬』に反対している」と伝えました。
そしてイギリスの公共放送BBCは、26日の記事に「なぜ安倍元総理大臣の『国葬』は論争になっているのか」という見出しをつけ、多額の費用に反対の声が上がっているとする一方「彼ほど長期にわたって総理大臣を務めた人はいない」と報じました。
韓国メディア 日本国内の世論の分裂を伝える
韓国メディアは、一部のテレビ局が会場近くに設けられた献花台の前から中継したほか、安倍元総理大臣の「国葬」をめぐって日本の世論が大きく割れていることに焦点を当てて伝えています。
このうち、通信社の連合ニュースは「国葬」に反対する市民グループの集会の様子も詳しく紹介したうえで「『国葬』による日本国内の世論の分裂は『国葬』当日に最もはっきりと示された」と報じました。
また、革新系のキョンヒャン(京郷)新聞は「旧統一教会との関係や『国葬』の妥当性をめぐって世論が好意的ではない中で行われた」と伝え、SNSのハッシュタグでは「安倍さんありがとうございました」と「最後まで国葬に反対します」の2種類が多く登場していると指摘しています。
台湾メディア「代表3人が献花 会場で『台湾』とアナウンス」
安倍元総理大臣の「国葬」について、台湾の主要なメディアはいずれも東京から中継したり日本の報道を引用したりして詳しく伝えています。TVBSなど各テレビ局は、台湾の代表3人がほかの海外からの参列者と同様に献花を行い、その際、会場で「台湾」とアナウンスされたことを強調しています。
日本の一部メディアの「台湾を国扱いするものだとして中国が反発するのではないか」という見方について、台湾の日本に対する窓口機関「台湾日本関係協会」の周学佑 秘書長は27日午前の記者会見で「台湾と日本の間の基本的な人情や義理について中国が抗議する理由は何もないと思う」と述べました。
中国 “台湾の参列者の献花 機会与えるべきでない”
中国外務省の汪文斌報道官は27日の記者会見で安倍元総理大臣の「国葬」で台湾からの参列者が献花を行ったことについて問われ「台湾は中国の不可分の一部で、『1つの中国』の原則は国際社会における普遍的な共通認識だ。日本は、両国の間の4つの政治文書の原則を順守し台湾独立分子に政治的な工作を行ういかなる舞台や機会も与えるべきではない」と述べ、日本側をけん制しました。 
●「世論分断」「旧統一教会」に焦点 安倍氏国葬めぐり海外メディア 9/27
27日の安倍晋三元首相の国葬について、海外メディアでは安倍氏の業績などを振り返る一方、世論分断や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる問題に焦点を合わせた報道が目立つ。
AFP通信は安倍氏が「国際的な同盟関係を強化し『アベノミクス』と呼ばれる経済政策を推進したことで知られる」と紹介するとともに、国葬とした岸田文雄首相の決定が「議論と抗議を引き起こした」と伝えた。
米紙ニューヨーク・タイムズは「国葬をめぐり反発に直面する日本」と題する記事で、「国民の怒りは(安倍氏銃撃の)犯人や警備体制ではなく、自民党に向かった」と説明。国葬への賛否が「安倍政権を評価する『国民投票』になっている」と論じた。カナダ公共放送CBCは、安倍氏の生前の功績やスキャンダルに触れながら、旧統一教会との関係が論争となり、岸田内閣の支持率が落ち込んでいると報じた。
国営通信社の中国新聞社は27日、記者の解説動画で、世論調査で6割超が国葬に反対し、岸田内閣の支持率が下落していると報道。「葬式では死者が最も尊敬される」という中国のことわざを紹介し、「今回の安倍氏の葬儀では体現されなかった」と指摘した。上海市共産党委員会の機関紙、新民晩報(電子版)は、岸田首相が掲げる「聞く力」に言及し、「国葬をめぐっては、大多数の国民の声を聞かなかったようだ」と皮肉った。
「歴史修正主義者」と安倍氏への否定的感情が強い韓国では、日本での国葬反対の動きへの関心が高い。聯合ニュースは「東京で国葬に反対するデモが行われるなど反対世論が高まり、国葬が分裂を生んでいる」と報道。先進7カ国(G7)首脳の出席がゼロになったことで「弔問外交に活用するという岸田政権の構想は力を失った」と伝えた。
一方、安倍氏が「日本を代表する親台湾政治家」として広く知られ、熱心な支持者も多い台湾では、日本で国葬反対の声が高まっていることを不思議に思う人が多い。主要紙・聯合報は、国葬の費用、安倍氏の政治的遺産への複雑な評価、自民党と旧統一教会の関係について明確にされていないことが原因だと解説。「岸田首相は弔問外交を展開したい考えだが、国民を十分に納得させるには至っていないようだ」と指摘した。 
●国葬めぐり豪メディア「安倍氏は分断の遺産を残した」 9/27
安倍元総理大臣の国葬をめぐり、オーストラリアのメディアは「安倍氏は分断の遺産を残した」などと報じました。
シドニー・モーニング・ヘラルドは、国葬の費用や、自民党と旧統一教会の関係から国葬反対を訴える声があることを挙げ、「安倍氏は海外では日本屈指の政治家として見られているが、分断の遺産を国内に残した」と指摘しました。
安倍元総理の国葬には、オーストラリアからはアルバニージー首相のほか、首相経験者3人が参列します。アルバニージー首相は、安倍元総理が日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4カ国の協力枠組み「クアッド」の設立に重要な役割を果たしたと評価し、「3人の元首相と私が日本に向かうのは、彼への敬意の表明です」とコメントしています。
●安倍元総理の国葬で「世論真っ二つ」”日本が混乱” 米メディア 9/27
安倍元総理の国葬を目前にアメリカメディアは賛否をめぐって世論が二分され、日本が混乱に陥っているなどと報じています。
ロサンゼルス・タイムズは26日、国葬反対派は「法的根拠がないにも関わらず、岸田内閣が一方的に決定し、非民主主義的だ」と訴えていると、デモ活動の写真とともに報じました。
ブルームバーグは国葬で日本が一つになるどころか、党派間の溝を深め、岸田内閣の支持率は下落し、短期政権となってしまう恐れがあると指摘しました。
一方で、海外の人が認識している21世紀の日本の指導者は安倍元総理だけで、外交や経済で果たした役割は大きく、殺害される直前まで日本のために働いたことは反対派も認めるべきで、国葬を実施するのは正しいと論じています。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国と台湾の緊張が高まり、北朝鮮がミサイル実験を続ける中、アメリカ政府当局者は「入れ替わりが激しく力のない内閣とは、向き合いたくない」と話しているとした上で、国葬による岸田内閣の支持率低下はアメリカにとっても問題だと指摘しています。
●中国メディア「国葬がまるで国民投票」 9/27
中国メディアは安倍元総理の国葬を大きく取り上げ、賛否を巡り国民の間で論争になっていると強調しています。
環球時報は国民の間で国葬の賛否が大きく割れていると指摘し、「国葬がまるで国民投票のようになっている」と伝えました。そのうえで、「この国葬を巡り岸田内閣は国民の不評を買うことになった」と報じています。
別の中国メディアは参加する海外の要人が当初の予定を下回ったことで、弔問外交をアピールしてきた岸田総理は窮地に陥ったと伝えています。
●岸田首相の弔問外交を「惨事」と韓国メディア 「日本も指導者に恵まれない」 9/27
2022年9月26日、韓国・ヘラルド経済は「安倍晋三元首相の国葬を弔問外交の場として活用しようという岸田文雄首相の構想は思惑通りにいかなくなった」と伝えた。
記事は「岸田首相、弔問外交惨事」と題して、日本メディアの報道を引用し「27日に行われる安倍元首相の国葬に、主要7カ国(G7)の首脳級が参加しないことになった」「参列の予定だったカナダのトルドー首相がハリケーン被害の復旧優先を理由にキャンセルしたことで、G7からの参列者で最高位は米国のハリス副大統領となった」としている。
また、各国からの参列者を詳しく紹介し、「日本国内から約3600人、海外から700人参列する見通し」で、「当初、日本政府が発表していた6000人より大幅に少なくなると予想される」とも伝えている。さらに、日本国内では国葬反対世論が高まっているとし「国葬は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と与党の関係疑惑と不満、国論の分裂を拡大させている」と強調している。
この記事に、韓国のネットユーザーからは「もう家族葬と火葬まで済ませたのに、四十九日も過ぎた今頃、どうしてまた葬儀をするのか」「王様じゃあるまいし、元首相の葬儀になぜわざわざ参列する必要が?」「靖国神社の参拝と真榊(まさかき)の奉納を定期的に行ってきた人間の葬儀に行くことはない」「安倍元首相の弔問なら、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が行くべきじゃないか?。安倍元首相のおかげで反日を扇動し世界で最も得した人物じゃないか」「そんな岸田首相にペコペコする尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領こそ惨事だ」「お宅もうちも、指導者に恵まれないね」などのコメントが寄せられている。
また、韓国からは韓悳洙(ハン・ドクス)首相、鄭鎮碩(チョン・ジンソク)国会副議長が参列の予定だが、「尹大統領よ、今日本に行けば1時間くらい会ってもらえるんじゃないか?」「今だ。急いで行って首脳会談を2時間くらいしてこい」などの声も見られた。 
 
 

 

●「分断した日本」安倍氏国葬。米英メディアは「反対派」をどう報じたか? 9/28
27日、安倍晋三元首相の国葬が執り行われた。アメリカをはじめとする海外メディアも、この国葬について報じた。
国葬の時間はアメリカ東部時間(EST)の真夜中だったため、国葬を取り巻くさまざまな報道が行き交ったのは翌朝だった。ニュースには、国葬を巡る「日本の分断」の問題が散見された。
「日本社会を真っ二つにした日」BBC
英BBCは「安倍晋三:分断された日本が殺害された元首相に別れを告げる」という見出しで、着物の喪服姿の昭恵夫人がお辞儀をしている写真と共に報じた。
「安倍元首相は国外で高く賞賛されたが国内では(評価が)分かれる人物で、国葬は大きな論争を巻き起こした」とし、会場の外での「騒々しい怒りのデモ」を引き起こしたとした。
「安倍氏の死後、多くの国民は安倍氏が日本に安定と安心を与えてくれたことに気付いた」「献花台に並ぶ人の列は3kmをはるかに超えた」と説明しながら、16億6000万円の国葬費用に激怒し「安倍氏はその栄誉に値しない」というデモ隊の声を拾い、「日本社会を真っ二つに切り裂いたような日だった」「複雑でしばしば分断的とされる安倍氏の遺産の象徴のようだった」と説明。
また、「国葬反対派の多くは年配の人々」「安倍氏の支持者の多くは若い世代」とも紹介している。
「年配の人々は『平和主義』憲法を支持し、多額の軍事費に反対してきた。それを憲法で変えようとしたのが安倍氏であり、戦争の記憶に悩まされていない世代は、日本の領土に対する中国の攻撃的な主張に反応している」
海外の要人については、「アメリカやオーストラリアなど世界の要人が参列したことや、エリザベス女王の国葬を欠席したインドのナレンドラ・モディ首相も参列したことは(安倍氏がそれほどの人物だったことを表し)驚きに値しない」とした。また「安倍氏は常に中国からの脅威の高まりを警戒していた。それは同盟国が抱いている懸念でもあり、(国葬に参列したこれらの要人は)安倍氏が時代をはるかに先取りしていたことを認識しているだろう」と分析した。
「生前と死後、日本の世論を二極化させた」ワシントンポスト
米ワシントンポストも「分断された日本が世論を二分した元指導者、安倍晋三を見送る」と、BBC同様に「分断」という単語を使った見出しで、安倍氏について「生前と死後、日本の世論を二極化させた人物」と報じた。
反対派の動きとして、「何千人もの人々がデモ行進し、16億6000万円の国葬費 — インフレの上昇と政府による十分な説明がなされなかったという扱いにくい問題 ― に抗議」「安倍氏と統一教会の関係を巡るスキャンダルが拡大し、抗議者の不満を増幅させている」と説明した。
この記事に関する読者のコメントは14件に留まっている。1100を超えるコメントがついている韓国の尹大統領の米議員への侮辱発言の記事と比較しても、14件は少ない方と言える。
読者からのコメントとして、以下のような意見が上がっている。
「この記事は、何千人もが献花台に列を成して花を捧げ、安倍氏に敬意を表した事実を故意に無視している」「エリザベス女王の国葬と比べると昼と夜の真逆のコントラストのようで、多額の費用がどこに使われたのかまったく見えなかった。ちょっとした工夫で刺激を与えることができるのに、会場は高校の体育館のようで華やかさに欠け、とても退屈で気が滅入る雰囲気で、記憶に残るものとは程遠い。同時通訳用イヤフォンは見えず、外国の要人は退屈そうだった。男性ばかりで女性の参列者の少なさも目立った」
「世界の要人、そして抗議者が集結」WSJ
米ウォール・ストリート・ジャーナルは「安倍晋三の国葬に世界の要人、抗議者が集結」という見出しで、「何千人もが国葬に抗議する一方、世界の要人が日本でもっとも長く在任した元首相に敬意を表した」と報じた。
同紙は国葬自体について、「エリザベス女王の豪華な国葬とは対照的に、安倍氏の国葬は式典への長い行列や大規模な軍事展示を特徴とせず、祝日でもなかった」と紹介した。
安倍氏については、「自由で開かれたインド太平洋という言葉を作り出したのは彼だった。この原則は日米同盟を形成する絆の一部であり、我々は支持する」と、安倍氏の功績を称える参列者の1人、米ハリス副大統領のコメントに触れた。
「日本では滅多にない政治的安定をもたらし、国際的な知名度を上げた」人物としながらも、「彼個人の支持率は決して高くなかった」とも説明。
献花に訪れた一般市民の声として、賛否両方の声を拾った。「もっとも尊敬する政治家。隣国との困難な関係への対処など、日本がただの敗戦国のままにならぬよう懸命に働いてくれた」「日本に人生を捧げてくれた人物にせめて花を捧げたい」など支持派の意見を拾った一方で、安倍氏が推し進めていた憲法改正について「抑止のためだと言ったが軍事費が無制限に増やさざるを得なくなる」とする、デモ参加者の声も紹介。また「事件後に明らかになった、安倍氏および自民党と統一教会との関係は、岸田政府に対する感情を悪化させ、国葬への反対を強めた」とした。 
●安倍元首相の国葬 海外メディアは「分裂する日本」などと報道 9/28
安倍元総理の国葬について海外メディアは世論が割れる中で行われたことに触れ、「分裂する日本」などと報道しました。
アメリカのCNNは多くの人が献花に訪れたことに触れる一方で、抗議デモも行われ「国民の深い溝を露呈した」と伝えました。
イギリスのBBCは「分裂する日本 亡くなった元首相に別れを告げる」と題した記事で、安倍元総理の国葬が「大きな論争を巻き起こした」と指摘しました。
「日本社会が真っ二つに割れたような日であり、出来事だった」として、「安倍氏の複雑で、しばしば争いの種になる遺産を示すものでもある」と論評しています。
また、韓国の聯合ニュースは「反対世論が高まり、統合でなく分裂を生んでいる」とした上で岸田総理の「国政運営の未熟さを表しているとも言える」などと厳しく指摘しています。 
 
 

 

●安倍元首相の国葬は、日本のイメージを悪化させただけ 9/30
日本での安倍元総理の国葬にまつわる論争が激化していた中、私は、フランスではこの国葬がどのように報道されるのかを注目していました。ひととおりのフランスの報道機関による、この日本の国葬についての報道は、どれも似たり寄ったりで、国葬儀そのものよりも、その背景に焦点が当てられ、この国葬に対して国民の約6割が反対していること、またこの意見は日本では珍しい数千人単位のデモが起こり続けてきたこと、国葬儀の1週間ほど前には抗議のために首相官邸前でガソリンを被って火をつける人までいたこと、1,200万ユーロという税金がつぎ込まれたこと、日本政府が見込んでいた海外からの要人の弔問客もG7の現職の首脳は現れなかったこと、これにつれて、現首相の支持率が急落したことなどに言及しています。つまり、ポジティブな要素はまるでありません。
日本の国葬翌日の仏紙ル・モンドでは、「7月8日に選挙演説中に暗殺された安倍元首相の国葬は、国民の強い不満を呼び起こし、岸田現首相の支持率を著しく低下させた。誰からも何の疑問を抱くこともなく行われた世界的な影響力を持ったエリザベス女王の国葬は、イギリス国内だけでなく世界中の人々の感動を呼び起こし、この日本の国葬とのコントラストを際立たせた」と書いています。
安倍元首相暗殺から国葬までのフランスでの報道の経緯
安倍元総理が暗殺された日は、その当日からフランスでも速報が流され、日本から生中継の映像が流され、その衝撃の大きさは相当なものでした。安倍元首相は、近来の日本の首相の中では海外でも抜群に知名度があり、首相を退いた後もその発言には、現職の首相以上に注目されていた感じでした。しかも、それが選挙演説中の、世界一安全なはずの日本での銃による暗殺という事件はかなりセンセーショナルでもあり、マクロン大統領をはじめ、世界各国の首脳が弔意を示すメッセージを次々と発表している様子などが伝えられていました。
この事件直後の報道では、民主主義への攻撃は許されないという正論も手伝って、「日出ずる国は、日本の近代史における重要な家系の純粋な家系図を失い、日本の歴史に長い歴史を持つ日本の政府首脳が初めて暗殺された暗い日として、永遠に刻まれることになるであろう」、彼の出自についても「19世紀以降に大きな影響力を持った安倍、岸、佐藤という苗字を持つ家系であり、真の日本の王朝物語、安倍氏はその生涯を武勇伝として残した」と神格化されたような報道ぶりでした。
しかし、それからまもなく、事件の背景にある真相(統一教会との繋がり)が明らかになるにつれ、彼の評価が一転するだけでなく、この事件の真相に関わる重大な問題を選挙が終わるまで曖昧にして伏せてしまう日本の政府と警察、マスコミについての辛辣な批判が始まりました。「投票日までの48時間、日本の大手メディアは膨大な人的・物的資源(全国紙5社で9,355人の記者)を導入して、事件の情報収集に当たっており、事件現場にはヘリコプターが飛ばされ、事件現場は模型で再現され、きめ細かく検証されているかのごとく報道している一方で、堕落した日本のマスコミは、これだけの人的・物的資源を導入が単なる水増しされた動員、導入であるかを物語るかのごとく、愚かしいニュースを流し、驚くことに安倍晋三が殺害された翌日、日本の大手5大新聞は全て同じ記事を一面トップで掲載し、書体の大きさも含めて一言一句違わないのは、彼らの共犯関係を裏付けている。もはや日本の主要メディアは機能していない」と書かれていました。
そして、その後は、安倍晋三氏と統一教会の問題、日本での統一教会の被害について、また100人以上の現職の国会議員(その大半が自民党)が統一教会との関わりがあるという事実などが着々とフランスでも報道されていました。仏フィガロ紙では、「日本における統一教会の驚異的な影響力」と題して、「数千人の統一教会信者の前で晴れ晴れとスピーチする衆議院副議長は、日本で非難を浴び続けている宗教団体の集会に参加したということで、当然、本来ならば、彼の政治生命は絶たれるはずだが、安倍晋三の下ではそのような付き合いは無害どころか、高く評価されていた・・」と報道しています。
事件直後のフランスのツイッターのトレンド1位は「Shinzo Abe」でしたが、それからまもなくすると、「Shinzo Abe」と検索すると「Shinzo Abe secte moon」(安倍晋三 統一教会)と出てくるようになりました。
次の段階でこの話題に注目が集まり始めたのは、現在の民主主義体制では国葬は規定されておらず、この点に関する法的根拠はないにもかかわらず、国会も通さずに岸田首相が国葬を行う決断をしたことや、そのことに反発する国民の声が大きくなり、7月末に行われた世論調査で53%以上の国民が反対しているという段階で、岸田内閣が支持率の急激な低下に押されて、9月に行われるはずだった閣僚の入れ替えを早めたものの、依然として不評をかっていることなどが伝えられていました。
9月に入り、「マクロン大統領は安倍元首相の国葬には参加できない(しない)」と返答したというニュースが一瞬、流れましたが、その時には、上記した内容の報道がさんざんフランスでもなされていたので、至極、当然の成り行きであると思われていました。国葬を機に弔問外交を行うと見積もっていた日本政府にとっては大誤算で、結果として、G7(主要7カ国)の現職の首脳は一人も参加しないものとなりました。
そして、強硬に国葬を開催しようとしている日本政府にとっては、これでもかというタイミングでエリザベス女王がご逝去され、フランスでは、その国葬までの1週間ほど、まるで自分の国の女王か?と思われるほどのエリザベス女王・イギリス王室フィーバーが巻き起こり、非のうちどころのない国葬の様子を密着で報道しました。安倍元首相が暗殺された時には、エリザベス女王からの弔文が送られたというのに、このとんでもない顛末には、唖然とさせられるばかりです。もはや比較の対象にするのが失礼なレベルですが、もちろんエリザベス女王の国葬に関しては、きちんと国会で決議され、反対する国民どころか、女王の棺と対面するための一般の弔問客の列が4日半も途切れることなく行列したのは25万人、国葬当日に沿道に駆けつけた人約10万人、全世界からの現職首脳2,000人が参列、全世界で40億人がこの国葬の模様を視聴したと言われています。
そんな今世紀最大のため息が出るほど美しいイギリスの国葬の後の日本の国葬は、そのお粗末さどころか、日本の粗を露呈する以外のなにものでもなく、もはや報道に値するのはその国葬儀自体よりも、そのことによる日本国民の分断やスキャンダルでしかありえなくなったのです。
スキャンダルの深掘りへ
この日本の国葬儀と国民の反発、統一教会問題から、さらに、フランスのメディアは、統一教会以外の安倍氏に対する問題追求、批判はさらに厳しくなりました。「9年近くも政権を維持したのは記録的な長さであり、国際的にも多くの功績を残したが、内政面ではもっと複雑な問題を抱えている。安倍晋三は、その超保守的な姿勢、悪化したナショナリズム、労働者よりも大企業にはるかに有利な経済政策、そして彼の職務を汚す政治・金融スキャンダルなどで多くの批判を浴びており、分裂的な人物である。彼の首相引退も世間的には、健康上の理由ということになっているが、実際には、政治・金融スキャンダルによるものであった」など、当初は「真の日本の王朝物語、安倍氏はその生涯を武勇伝として残した」とまで言われた安倍元首相は、国葬によって、より過去のスキャンダルに注目され、それが印象づけられることとなりました。
そして、それは、安倍元首相だけには、留まらず、この国民の60%以上が反対する国葬を民主的な協議も行わずに強硬した現岸田首相への非難にも繋がっています。仏経済紙レゼコー紙は、「Fumio Kishida Mr Nobody」と題して、「日本の首相は国葬で自分の野望の喪失を悼むことになるだろう」「白い花壇の前で喪に服すとき、首相は自民党が自分に託した期待も喪うことになる」「保守派の仲間たちが岸田文雄を指名したのは、わずか1年前のことだったが、ほぼ企業だけが儲かったアベノミクスに対する改革もこの気弱なリーダーは、事実上、すべての改革プロジェクトを放棄している。そのため、彼の人気は野望とともに崩れてしまった。そこへ来て、安倍晋三の暗殺で明るみに出た、多くの自民党議員と統一教会とのつながりのツケも回ってきた。それに輪をかけるようにこの過半数を超える世論を無視し、野党の説得もできずに強硬した国葬は、さらに彼の支持率を奪った」とかなり辛辣に述べています。
だいたい、国民の半数以上が反対していることを強硬的に行うということはフランスでは考えられないことです。フランス政府がこのようなことを強行すれば、巻き起こるデモや氾濫は日本の非ではありませんから、フランス政府は非常に世論に対して敏感に対応します。同意を得られなければ、きっと何としてでも説得しようと試みるであろうし、それを無視して強行するなどということは、それこそ民主主義国として許されないと国民は大荒れに荒れることでしょう。今回の日本の国葬(国葬儀)の開催は、フランス人には理解できないことだったのです。
こうして、フランスでの安倍元首相の暗殺事件から国葬までの報道の経緯を辿っていくと、この事件をきっかけに、どんどん日本へのネガティブイメージが膨らんでいったように思います。安倍元総理を全否定するつもりはありませんが、その後の問題処理対応一つ一つで、みるみる日本のイメージを悪化させてしまった気がして残念でなりません。 
 
 

 

●朝日奈央「中居さん帰ってきて!」 10/1
タレントの朝日奈央が1日放送のテレビ朝日系「中居正広のキャスターな会」に出演。代役MCのタレント・劇団ひとりの“むちゃぶり”に泣きを入れた。
番組では、9月27日に執り行われた安倍晋三元首相の国葬に対する海外メディアの反応について特集した。中国共産党系メディアが、G7の首脳が誰一人来ず、弔問外交は失敗したとの趣旨の報道をしたことも紹介した。その中国も国葬に参列したのは、全国政治協商会議の万鋼副主席で、国際情報誌「フォーサイト」の元編集長・堤伸輔氏は「中国の中ではあまり政治的影響力を持たない人がやってきた」と指摘。「それほど重要ポストにある人は送り込まない、そういう中国側の判断が含まれているんだと思いますね」と読み解いた。
この日、体調不良で番組を欠席した中居正広の代役でMCを務めた劇団ひとりが「どう、朝日さん?」と突然、話を振った。
この想定外の“むちゃぶり”に、朝日は「エッ、今?」と焦りまくり。「今でしょう!重要人物を送り込まなかった中国に対して、ちょっと一言お願いしますよ〜」とさらに畳みかけてくるひとりに、朝日は「今ですか?中居さんだったら絶対、そんなことしないですよ!」と抗議。「中居さ〜ん!中居さん、帰ってきてください」と“難問”に最後は泣きを入れていた。
●イタリア極右政党が第1党に 中林美恵子さんらが解説 10/1
日経電子版「Think!」は、各界のエキスパートが注目ニュースにひとこと解説を投稿する機能です。今週(9月23〜28日)に電子版のトップページに掲載された記事の中から、「ニュースの理解が深まる投稿」を厳選して3本お届けします。
「イタリア極右政党が第1党に」
イタリアの総選挙は25日、投開票された。伊公共放送RAIによると、メローニ党首率いる野党の極右「イタリアの同胞(FDI)」が第1党になる見通しだ。メローニ氏は同国初の女性首相となる可能性がある。
【中林美恵子さんの解説】この頃の「右派」というカテゴリー分けにも、変化を感じる。表現は、各国それぞれの政治事情にも依るので、一般化は難しいが、本来大きな政府やバラマキは左派の考えに近い。米共和党に近いという指摘もあるが、トランプ派の自国第一主義との共鳴があるのだろう。財政規律に興味を示さないトランプ氏は、共和党としては新種の登場だった。ポピュリズムと右派の接点は近ごろ顕著だ。ネオコンが衰退し、民主主義の拡張が軍事的コストから敬遠される今日、右派も世界的に変化し続けているということだろう。
「安倍元首相の国葬と弔問外交」
政府は27日午後2時、安倍晋三元首相の国葬を日本武道館(東京・千代田)で開く。首相経験者の国葬は戦後2例目で、1967年の吉田茂氏以来55年ぶり。岸田文雄首相は26日、ハリス米副大統領らと都内で会談し「弔問外交」を始めた。
【竹中治堅さんの解説】豪州からアルバニージー首相、インドからモディ首相が参列することに注目したい。両国ともクアッド=日米豪印協力枠組みのメンバーであり、日本が「自由で開かれたインド太平洋」構想を推進する上で米国と並んで最重要視する国々である。両国とはマラバールに象徴されるように安全保障協力も深化させている。両国首脳の来日は安倍晋三元首相の大きな貢献が「自由で開かれたインド太平洋」構想の提唱やクアッドの推進であったことを示している。また、各国、就中、東アジア各国に両国と日本の緊密な関係を改め示すことになった。
「ポンド安けん制」
英イングランド銀行(中央銀行)のベイリー総裁は26日、外国為替市場で通貨ポンドが急落したことを受けて臨時の声明を出し「インフレ率を中期で2%の目標へ持続的に戻すため、必要に応じて金利を変更することをためらわない」と強調した。
【伊藤さゆりさんの解説】対ドルで一時市場最安値をつけたポンド相場。通貨安が進むユーロや日本円との違いは、英国の経常収支が赤字基調にあることです。エネルギー価格等の高騰で、日本の経常収支黒字も減少、ユーロ圏は22年4〜6月期にGDP比0.6%の赤字となったものの、英国の経常赤字は直近1〜3月期で同8.3%と大規模。それだけ多くの資本流入を必要とし、新興国のように資本流出による通貨安加速が生じやすい構造なのです。中銀の利上げは資本流出に歯止めをかける狙いがあるものの、国内の景気を冷やします。トラス政権の政策で光熱費や税負担が軽減されても、住宅ローン金利の負担増が勝ってしまっては元も子もないとの懸念の声も聞かれます。 
●国葬が終わり、「分断」が残る 10/6
あなたは「自分はここに住み続けられるだろうか」と不安になることはないだろうか。
あるいは飲食店や病院などに行った時、「自分が何をしている誰かバレたら大変なことになるのではないか」と思ったりしないだろうか。
もしくは普通に生活している中で、見知らぬ人からあからさまに睨まれたり敵意をぶつけられることはないだろうか。 
突然こんなことを書いたのは、国葬を通じて、改めてこの国の「分断」について考えさせられたからである。
国葬を前にして、8年8ヶ月にわたる安倍政権の「業績」という言葉をよく耳にするようになった。そこではさまざまな言葉が語られていたが、安倍政権が残したもっとも大きなもの、それは「分断」だと私は思っている。
安倍元首相が自らに異論を唱える者を率先して「こんな人たち」と口にし、時にSNSで誰かを名指しで批判する。総理大臣のそのような作法によって、人を「敵」と「味方」に線引きするやり方は、今や当たり前のものとなった。
その果てに、私は冒頭に書いたような不安を日常的に感じるようになった。特にSNS社会となり、敵味方を単純に色分けすることがこの数年で顕著になった。また、右派に「敵認定」されている私のSNSはしょっちゅう炎上するようになり、それによって多くのものを失ってきた。本当は、こういうことはネット媒体では書きたくない。具体的なことは「週刊金曜日」10月7日号に書いたので、そちらを読んでほしい。
さて、このような状況が続いていた中で、安倍元首相銃撃事件が起きたわけである。
統一教会の名前がまだ伏せられ、「特定の団体」とされていた事件直後、SNSには心ないデマや決めつけの言葉が溢れた。
いずれも、安倍政権を批判してきたリベラル派の言動が事件を招いたというような内容のものだ。政権批判をしてきた著名人の顔が次々とネットで拡散され、私は背筋がスッと寒くなったのを覚えている。
その後、逮捕された山上容疑者と統一教会をめぐる問題が明らかになり、一時のデマや決めつけは鳴りを潜めた。が、あの時拡散された言葉たちは、安倍政権的なものが深めてきた「分断」を象徴するようなものだったと今、思う。
そうしてすぐに国葬が強行されることが勝手に決められた。それは「分断」をより一層深めるものであるのは誰の目にも明らかだった。世論調査をするたびに国葬に反対する人々は増え続け、とうとう直前には7割以上が反対という調査結果も出た。それなのに強行される国葬に、多くの人が反対の声を上げた。
が、私はこの動きから距離をとっていた。
一度だけ、知り合いがやっているデモに一参加者として少し顔を出した程度で、それ以外は、反対運動の呼びかけ人に誘われても、スピーチを依頼されてもすべて断っていた。
もちろん、私自身、国葬には反対だ。しかし、どうしたって感情的になりがちなこの問題は、慎重に慎重に言葉を尽くして語らないと、分断を取り返しのつかないものにしてしまう気がした。20年以上前、右翼団体に所属していた身としての直感もあった。とにかく汚い言葉の応酬になり、分断を決定づけられてしまうことだけは避けたかった。
距離をとっていたことに対し、「炎上を恐れてネトウヨに屈するのか」という人もいるだろう。しかし、女である私から見えているこの世界は、冒頭のような心配を毎日しなければならない世界なのだ。いつの間にか、そうなっていたのだ。
一方で、一部の左派の間で飛び交う言葉に引いていた。死去の一報を受け、「ざまぁみろ」などその死を喜んだり茶化したりする言葉。たまたま見かけたデモでは、安倍元首相の死を「嬉しい」などと拡声器で口にして笑う人もいた。少なくとも、私はそういう人たちと一緒にされたくない。また、その手の発言は右派の思う壺だとも思う。人の死を喜ぶ血も涙もない左翼というストーリーはどれほど都合がいいだろう。
とにかく、そんなようなことが重なって、自分が前面に立つ気にはどうしてもなれなかった。
さて、ここまで散々「分断」が決定的になることへの恐れを書いてきたが、それには理由がある。私自身、ここ数年のこの国で、最も深刻な問題が分断だと思っているからだ。
例えば、これを読んでいる人には映画『主戦場』を観た人も多いと思う。慰安婦論争を扱ったドキュメンタリー映画だ。これを観た時、いわゆる右派とリベラルは、同じ国で生きながらもまったく違う世界に住んでいて、まったく違うストーリーを生きていることに驚愕した。以来、その差はどんどん開き、お互いが「言葉の通じないモンスター」化し続けているのではないだろうか。
そんな社会の分断が進むとどうなるか。
「自分たちの大切な仲間」と「どうなってもいいそれ以外」という線引きが当たり前になるだろう。
というか、安倍政権下での森友学園、加計学園、そして「桜を見る会」などのもろもろは、そんな社会を凝縮した上で先取りしたような問題だったわけだが、線引きが当たり前になると、「どうなってもいいそれ以外」の命は軽くなる。少なくとも、積極的に助けようだとか支援しようという発想はなくなるのではないだろうか。
その上で、この国は30年かけて格差社会となってきた経緯がある。そのような社会は、あまりにも簡単に自分と違う階層の人間を「得体の知れないモンスター化」する。16年、貧困の現場にいて、私はそのことを痛感している。
年越し派遣村の時にこの国に当たり前にあった「同情」は、14年経ち消えてなくなった。「日本もそういう社会になったのだ」ということを、多くの人が諦めとともに受け入れたからだ。そうして人々がホームレス化することを誰もが「自己責任」と突き放すようになった。そういう社会になると、公助が機能不全を起こしても誰もそのことを問題視しない。「自業自得」の人間が死のうがどうしようが知ったことじゃないからだ。
そう考えると、生活保護がバッシングされ続け、高齢者が「お荷物扱い」されてきた理由もわかる。また、自民党の政治家たちが高齢者に対して「いつまで生きる気だ」と言ったり、性的マイノリティの人への差別発言を繰り返しても議員の立場でい続けている理由も見えてくる。
考えてみれば、もうずーっと前から「公的ケアの対象になる人」たちは、「ズルして楽して得して怠けている」という誤解だらけのレッテルを貼られてきた。景気の低迷の中、「病気も障害もなく高齢者でもなければ自己責任で死ぬまで競争に勝ち続いてください、それが無理なら野垂れ死で」というメッセージを浴び続けている多くの人にとって、それらの人々が「特権」に見えてしまう末期的症状だ。衰退が進み、少ないパイを奪い合うような社会で分断が続くことは、社会のシステムを破壊していくことにつながっていくと思うのだ。
そしてこの分断社会はすでに、顔出しで声を上げ続けてきた私にとって、安心して生きられる場所ではなくなっている。声を上げ始めた16年前とはまったく違った地平に私たちは住んでいる。
周りを見渡せば、環境も大きく変わった。
少し前、何かトラブルが起きたりしても「一緒に闘ってくれる/くれそうな」出版社や編集者はたくさんいたのに、ネットの炎上がリアルで様々な実害を引き起こすようになったこの数年で、気がつけば絶滅寸前となっている。その上、長い出版不況で、物言う多くの媒体も消滅もくしは消滅寸前。最後のトドメのように、この2、3年、少なくない編集者から「とにかく炎上しないように」ばかりを言われるようになった。そして実際何かあっても、誰も助けてくれないのだ。
それが私から見えている世界だ。
そうして気がつけば、メディアからは政権を批判するような人々の姿がどんどん消えている。特にテレビ業界は凄まじい(8月以降は統一教会問題で頑張る番組もあるが)。
だからこそ、なんとか分断を乗り越える方法がないものかと思っている。そしてそれを、自分たちやもっと若い世代で考えたいとも思っている。何しろ私たちは、下手したら今まで生きた年数と同じくらいの長さをこれからこの国で生きていかないといけないのだ。
一方、同世代や下の世代には、すでに日本に見切りをつけ始めている人もいる。私の周りにも、子どもを海外に留学させ、仕事も海外でと考えている人は少なくない。自らが海外移住を考えている人もいる。
しかし、そうできるのは経済力があったりツテがあったり語学ができたり、とにかく海外でも生きていける才能がある人たちだ。
翻って、高卒でフリーランス、英語もからきしできない私は、どれほど「日本から出ていけ」と罵声を浴びせられても、この国で生きていくしかない。
そんなエリートでもなんでもない人間が、自分が「おかしい」と思ったことに声を上げ続けられる社会。それが今、大きく損なわれているからこそ、こんなことを書いた。
もちろん、「国葬反対」の声を上げることは大切だし、それぞれの立場でできることをやっていた人たちは最大限にリスペクトしている。
ただ、私たちにはこの分断を乗り越えるための方策を考える責任もあるのではないかと、銃撃事件以降、思い始めている。 
 
 

 

●なぜ国葬で日本国民は「団結」できなかったのか…「政治利用」の落とし穴 10/7
旧統一教会問題に加え、安倍晋三元首相の国葬を実施したことで、岸田政権に想定外の逆風が吹いている。米大統領の暗殺事件に詳しい米モンクレア州立大学のケーリー・フェダーマン准教授は、「指導者の死から故意に何かを得ようとしてはいけない。そうした動きには警戒が必要だ」という。NY在住ジャーナリストの肥田美佐子氏がリポートする――。
「暗殺」の動機は必ずしも政治的ではない
――まず、「assassination(暗殺)」という言葉についてですが、欧米メディアは、安倍晋三元首相の事件を「assassination」と報じました。一方、日本の主流メディアは、いわゆる政治テロではなく、個人的怨恨(えんこん)が動機とみられているためだと思われますが、「暗殺」という言葉を使わず、「銃撃事件」などと報じています。
英語で「assassination」と言うとき、(動機は)必ずしも政治的なものとは限りません。
著書『ウィリアム・マッキンリーの暗殺 アナキズム(無政府主義)、狂気、そして、社会科学の誕生』でも書きましたが、暗殺犯の動機は政治的なものばかりでなく、実に「個人的」かつ「心理的・精神的」なものです。と同時に、「社会学的」で「論理的」な側面もあります。
日本政治は私の専門外のため、限られた情報に基づいた個人的見解ですが、山上徹也容疑者は、アメリカ型の「暗殺犯」という枠にぴったり当てはまると思います。
ただ、アメリカでも、被害者が政治的職業の人でないと、「暗殺」という言葉は使いません。一般人が撃たれた場合は、「銃撃事件」「殺人事件」です。そうした意味では、英語の「暗殺」にも政治的な意味合いが含まれますが、動機は精神的・個人的なものでも、「暗殺」と表現します。
山上容疑者は、母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に多額の献金をして破産したことから、旧統一教会を恨みに思い、(教団の関係団体にビデオメッセージを送った)安倍元首相を暗殺したと聞いています。背景に母親が介在しているという意味で、これ以上「個人的」な動機はありません。
なぜ要人暗殺犯は「無職」が多いのか
また、家庭が破産したこと、つまり「経済的」な要素も含まれていますよね。彼自身も仕事がなかったと聞いています。1881年にジェームズ・ガーフィールド第20代大統領(共和党)を暗殺したチャールズ・J・ギトーも失業していました。1901年にウィリアム・マッキンリー第25代大統領(共和党)を暗殺したレオン・チョルゴッシュも、仕事がありませんでした。20世紀初頭のヨーロッパで政治家を狙った暗殺犯らも無職でした。
つまり、いずれのケースにも「経済的」な要素が絡んでいたのです。単に仕事がないというだけでなく、「構造的」な動機と言っていいかもしれません。例えば、「経済も社会全体も政権与党も、何もかもが俺に不利なことをする」といった考え方です。
仮に山上容疑者もそうした考えを持っていたとすれば、その対象が自民党(の安倍元首相)だったのでしょう。そして、その対象を暗殺することで、恨む気持ちが軽減するものだと考えられます。そうした意味で、暗殺は「心理的・精神的」な動機に深く根差しているのです。
というのも、暗殺には「目的」があり、その目的とは、自分の衝動や欲求、怒り、逆境を自分の中から解放し、和らげることだからです。
山上容疑者と大統領暗殺犯の共通点
――あなたは、著書『The Assassination of William McKinley』(『ウィリアム・マッキンリーの暗殺』)の中で、マッキンリー大統領の暗殺犯について、独特の分析手法を展開しています。山上容疑者をどのように分析しますか。
返答が非常に難しい質問ですね。まず、山上容疑者については限られたことしか把握していませんし、私は、銃撃犯やシリアルキラーなどのプロファイリングを行う犯罪学者ではなく、政治学者です。
この点を十分に理解してもらった上で、あえて答えますが、山上容疑者は、いわゆる「暗殺犯」のプロファイルに合致すると思います。
そもそも、アメリカで暗殺犯のプロファイルという概念が確立されたのは、マッキンリー大統領が凶弾に倒れたことがきっかけになったと、私は考えています。
注:ウィリアム・マッキンリー大統領は、エイブラハム・リンカーン第16代大統領とジェームズ・ガーフィールド第20代大統領に続いて暗殺された3人目の米大統領。
山上容疑者は、比較的裕福な家庭に生まれたと聞いています。しかし、その一方で、友人が少なく、孤独で非社交的なタイプだったそうですが、孤独で非社交的という特徴は、マッキンリー大統領を暗殺したチョルゴッシュや、ジョン・F・ケネディ第35代大統領(民主党)の暗殺犯とされるリー・ハーヴェイ・オズワルドにも当てはまります。   注:ジョン・F・ケネディ大統領は、暗殺された4人目の米大統領。
個人的な問題を国家レベルの政治問題に転化した
ただ、一方で、そうした暗殺犯や暗殺未遂犯と山上容疑者を比べると、違和感を覚える点が1つあります。山上容疑者の「年齢」です。事件当時、彼は41歳だったそうですが、例えば、チョルゴッシュは28歳、オズワルドは24歳など、暗殺犯は20〜30歳代の若者が多いのです。
そうした特徴から推察するに、山上容疑者は旧統一教会に対する積年の恨みを心に募らせてきたものと思われます。母親が旧統一教会に多額の献金を行い、一家が破産したことで、同教団を恨み、その問題を、旧統一教会と関わりがあったと彼が考えた安倍元首相に向けたのでしょう。
つまり、「個人的な問題」を「国家レベルの政治問題」へと転化させたのです。マッキンリー大統領を銃で撃ったチョルゴッシュをはじめ、多くの暗殺犯や暗殺未遂犯にも、ある意味で、そうした傾向が見られます。
個人的な恨みを心に秘め、その問題や問題の解消法について単一の考え方にとらわれるという傾向は、一般的な暗殺犯のプロファイルに合致するように見えます。社会からの疎外感や孤立感、怒り、そして、恨みの感情といったものも、彼らに共通する点です。
そうした特徴は、20世紀初頭のヨーロッパで起こった暗殺事件にまでさかのぼります。彼らの動機には、ある意味で政治的な側面も含まれることがありますが、それよりも、非常に精神的・心理的なものです。
心に深く根差した恨みや重荷を抱え、その責任を負うべき対象だと彼らがみなす人間をあやめることで、その重荷を解き放てると考えるのです。それが、暗殺事件の最も悲しく、最もせつない側面だと思います。
ケネディ大統領の暗殺でアメリカ国民は団結した
――1963年のケネディ大統領暗殺がアメリカ社会を震撼(しんかん)させたように、安倍元首相の銃撃事件も、日本社会に衝撃を与えました。ケネディ大統領の暗殺はアメリカをどのように変えましたか。
計り知れないほど大きな影響を全米に及ぼしました。国民の「団結」です。アメリカ社会が一変したのです。「1960年代は、ケネディ大統領の暗殺で始まった」と言われたほどです。46歳という若さで暗殺されたわけですから。
国民は、「一匹狼の狙撃犯が米大統領の命を奪い、若い大統領の下でエキサイティングなことが起こるだろうと考える国民の期待を、一瞬にしてかき消してしまうとは」という感覚に打ちのめされたのです。
1995年に起こったイスラエルのイツハク・ラビン首相の暗殺も同様です。国民は、「純真さの喪失」とでも言うべき感覚に襲われました。彼は中東和平交渉を推し進めた立役者だったからです。   注:ラビン首相は1993年、パレスチナ解放機構(PLO)のアラファト議長との間で、パレスチナ自治政府を公認するオスロ合意を締結。翌年、ノーベル平和賞を受賞したが、1995年11月、中東和平を快く思わないユダヤ教徒の青年に銃撃された。
国民はラビン首相を強く支持していたため、その指導者の命が奪われたことで、自分たちを守ってくれる盾を失ったように感じたのです。
指導者の暗殺で民主主義社会が不安定化することはない
――独裁政権では、指導者が暗殺されると社会が不安定化する一方、民主主義国家ではそうならないという専門家の指摘があります。
そうだと思います。マッキンリー大統領の暗殺が好例です。暗殺犯のチョルゴッシュはアメリカ社会の不安定化を狙っていましたが、そうなりませんでした。副大統領もいますし、州政府や最高裁など、しっかりした統治機構があるからです。
民主主義国家では、仮に国王が暗殺されたとしても、政府が機能不全にはなりません。チョルゴッシュのように、暗殺によって国民を決起させようとしても、誰も立ち上がりません。革命など起こらないのです。もちろん、山上容疑者は革命などを望んでいなかったと思いますが。
たとえ、国家指導者の暗殺が国民を団結させるとまではいかなくても、国家を分断させることはほぼないと言えます。
――安倍元首相は支持者からの賛辞を謳歌(おうか)した半面、世論を二分する主張を打ち出すなど、反対派も少なくありませんでした。そうした日本を代表する政治家の暗殺は今後、日本社会に「団結」と「分断」のどちらをもたらすと思いますか。現政権が安倍元首相の死を「国民の団結」というプラスの結果につなげるには、どうすべきでしょうか。
安倍元首相の暗殺が日本社会にどのような影響を及ぼすか、私にはわかりません。ただ、政治家に何らかの心理的影響が及んでいるのは確かでしょう。例えば、有権者との握手に二の足を踏むなど、ある種の危機感が生まれたのではないでしょうか。
世界を見渡せば、21世紀は、ある意味で「暴力の世紀」とも言えます。アメリカよりはるかに平和的な日本社会も、そうした世紀に突入しつつあるのかもしれません。私としては、そうなってほしくありませんが。
日本の政治は私の専門外のため、日本が今後どうなるかはわかりません。
指導者の死から故意に何かを得ようとしてはいけない
しかし、例えば、ケネディ大統領の暗殺後、政権を引き継いだリンドン・ジョンソン第36代大統領(民主党)は1964年、公民権法という、議会の意見が大きく分かれる法律の成立にこぎ着けました。同政策を推進していたケネディ大統領の暗殺が法案への支持を押し上げ、議会通過を後押ししたのです。暗殺がなかったら、成立は無理だったでしょう。
とはいえ、暗殺と政治的な勢いの高まりを同一視すべきではありません。要は、指導者の暗殺が政権に対する国民の見方を変えるということなのです。ケネディ大統領の場合は若く人気があったため、暗殺が(民主党への共感を呼び)ジョンソン政権に「ハロー(後光)効果」を与えるという結果をもたらしたのです。
ロナルド・レーガン第40代大統領(共和党)も暗殺未遂事件から見事に生還したことで支持率を伸ばし、結果的に、減税など、大きな成功を収めました。
日本がどうなるかは見当もつきませんが、指導者の死から故意に何かを得ようとしてはいけません。なぜなら、それは「政治的」な意図を意味し、国民を「団結」させることにはならないからです。仮にそうした動きがあるとすれば、警戒が必要です。
●中国人が安倍元首相の国葬と反対デモを見て「衝撃」を受けたワケ 10/7
7月8日、安倍晋三元首相襲撃事件は中国のメディアでも大きく報じられたが、9月27日に行われた国葬について、中国国内のメディアはそれほど多くを伝えなかった。しかし在日中国人がSNSで、そして中国人ジャーナリストが当日の様子を伝え、背景を解説する動画をアップしたりすると、多くの中国人からさまざまな反応が寄せられた。感嘆、疑問……中国人にとって安倍元首相の国葬は、民主主義や言論の自由を考える大きなきっかけとなったからだ。(日中福祉プランニング代表 王 青)
安倍元首相が亡くなったことを 中国人はどう思っていたのか
9月27日、安倍晋三元首相の国葬が、東京の日本武道館で行われた。安倍元首相は日本の憲政史上最も長く首相を務めた政治家であり、街頭演説中に銃撃されて衝撃的な死を遂げた。しかし、国葬をめぐっては世論が二つに割れた。
世論調査では5割以上の日本国民が国葬に反対していたという。また、首相官邸の近くで男性が焼身自殺を図って反対の意を示すなど、「国葬反対」の抗議活動が繰り広げられていたことは、海外でも大きく報道され話題となった。
7月8日、安倍元首相が銃撃され亡くなったというニュースは、中国でも日本とほぼ同じ時刻に速報された。国営メディアをはじめ各メディアで大々的に報じられ、注目ニュースのランキングを総なめにした。安倍元首相は長い任期中、米日中の外交関係を上手にかじ取りしていたし、日中関係も比較的安定していた。何より中国人にとっては、2020年に新型コロナウイルスの感染拡大が始まった頃、自ら指揮を執って中国にたくさんの支援物資を送ってくれた記憶が鮮明にあるため(中国では多くの人が安倍晋三氏が自分の給料を削ってコロナ対策のために中国へ支援金を寄付したと信じている)、安倍元首相に対し好印象を持っている人が少なくない。以前、『中国のSNSで「安倍首相の辞任」が驚くほど盛り上がり、好意的な理由』に書いたように、特に海外に暮らす中国人や在日中国人の中には安倍元首相を支持する人が多い。
日本にいる中国人インフルエンサーが 国葬の様子を伝えた
今回の国葬について、中国国内のメディアの報道はそれほど多くなかった。しかし在日中国人や海外にいる中国人、とりわけSNS上で数百万人のフォロワーを持つ(中国では『大V』と呼ばれる)インフルエンサーたちが、SNSを通じて9月27日の国葬や日本社会の様子を中国語で発信したことで、中国人から大きな関心が寄せられた。
東京に住む知人の中国人男性は、早朝から地下鉄に乗って献花台のある九段坂公園へ向かったと、中国のWeChatで伝えた。その後も献花台に向かう途中の写真などをアップした。「生まれて初めてこんな長い列を見た。最後尾が見えなくて、全長3〜4kmはあるだろう。人々は手に花を持って黙々と前へ進み、神聖な雰囲気であった」「連日、日本のマスコミでは国葬に反対する声がとても多いと伝えていたので、献花する人はそんなにいないだろうと思っていたが、実際に来てみたら、こんなに大勢の人が集まっていることに驚いた。やっぱり日本国民の中でも、安倍さんを偲んで支持する人が多かったね」とつづった。
日本に住む中国の有名ジャーナリストも 国葬について解説
また、中国の国営テレビ放送局であるCCTV(中央電視台)の元編集委員であり、現在は日本でYouTubeを通じて中国に向け情報発信をしているジャーナリストの王志安氏は、9月27日の国葬を取材し、解説する動画を2本作成してYouTubeにアップした。1本目は「安倍元首相の国葬」、2本目は「なぜ日本の民衆は安倍の国葬に反対するか」だった。
中国では情報が規制されていると日本では思われているが、実際には大勢の中国人、特に若者はVPN(仮想プライベートネットワーク)を使ってYouTubeやTwitterを利用している。彼らはこうして中国国内の報道にとらわれず、世界のニュースやさまざまな言論に触れることができている。
王志安氏は、中国で数々の大事件を調査し鋭く解説してきた有名なジャーナリストであり、絶大な影響力を持つカリスマ的存在だ。彼がYouTubeチャンネルを開設すると、瞬く間に登録者数が数十万に上った。ほとんどは中国本土からと思われる。
王志安氏の国葬レポートに対する中国人の感想
今回はご本人から了解を得て、彼とスタッフが制作した動画の内容や、中国の視聴者の感想などを一部紹介する。
YouTube の動画は、国葬当日の朝から夕方まで都内の数カ所(武道館、安倍元首相の渋谷にある自宅、九段坂公園、日比谷公園、国会議事堂前など)をめぐり、ナレーション付きでそれぞれの様子を伝えている。
例えば、1本目の動画は下記のような解説で映像を流した。
・ 午前10時頃、半蔵門駅で降りた。そこで見た光景は、献花台へ向かう人々の、延々と続く長蛇の列だった。人が非常に多いが、割り込んだりする人は一人もいなくて、みんな秩序良く先に進んでいた。これは日本国民の民度が高い表れだ。警察官が多く配置されているが、あまり意味がない。直射日光が強い中、ところどころで設置されていたミストが素晴らしい。熱中症を防ぐ効果がある。一般市民も警察も整然としてスムーズに進行する様子に、日本はこういう大きなイベントを運営する能力が非常に優れていると感じた。
・ 午後0時半頃、日比谷公園。国葬に反対する多くの団体が集まっている。団体の代表がマイクを持って演説していた(着物姿の女性が日本語でスピーチする様子がそのまま流れている)。参加者は「国賊に国葬、正気?」「国葬反対」などと書かれた旗やプラカード、横断幕を持ち、シュプレヒコールを上げて行進した。中には、安倍元首相の母校である「成蹊学院」の旗もあり、母校の人たちも反対していた。こちらの雰囲気は献花台周辺とまったく違う。変装した人や笑い声を上げる人もいて、まるでカーニバルのような楽しい雰囲気さえあった。デモ隊の外側にはたくさんの警察官が付き添って、道を開けてくれた。
安倍元首相の国葬の様子に、 中国の人たちの感想は……
これらの動画には、視聴した人たちからおびただしい数のコメントが寄せられた。コメントは国葬の賛成派と反対派に二分されるが、それぞれ秩序を保って、衝突なしで平和に進行していたこと、そして、警察官が参加者に協力的な姿勢であることについての感想を述べている。
2本目の動画で王志安氏は、安倍元首相の国葬に反対する日本人がなぜ多いのかについてくわしく説明している。山上徹也容疑者の生い立ちや、彼に対して同情する人が多いこと、安倍元首相を始めとする自民党議員と旧統一教会との接点、英国エリザベス女王の葬儀を上回る予算で多額の税金を使っていること、日本のメディアが政界と旧統一教会の関係について報道することについて及び腰であることまで、実に事細かに国葬反対派が多い背景を解説している。
しかし中国の人々の興味はそこにはなく、「健康な社会にはいろいろな声がある」と、平和なデモや警察官の様子にばかりコメントが集中してしまうのだ。
「安倍元首相は、日本という国のために尽力したと思うが、すべての人に支持されるとは限らないのだ。それでも国葬にめぐって賛成の声も反対の声も上げることができる。それこそ、正常な国の姿ではないか。本当にうらやましい!」
「以前旅行で日本に行ったことがあるが、今日、動画を見て、新しい日本を発見した気がした。警察官がデモ隊のために道を空けてくれたシーンを見て涙が出た……これこそ人権が尊重されている国だ。感動した!そして、日本への憧れがさらに大きくなった」
「一つの葬儀が、見事に文明、自由、自信とは何か、民主主義、成熟社会とは何かをすべて解釈してくれた。我々は、正真正銘の民主自由の国を見ることができた!王さん、ありがとう!」
「動画を見て思ったのだが、国葬に反対する人たちは、恐らく反対しても結果が変わらないことを十分承知していると思う。それでも声を上げた。そういう権利を使いたかったのだ」
また、「警察は多かったようだが、今さら意味がない。なぜなら、安倍元首相が銃殺された時に警察はボーッとしていたではないか」「全員マスクしているのね!エリザベス女王の葬儀の時はマスクなしだった」などのコメントも散見された。
着目点は「民主主義」「言論の自由」
この記事を書いていたら、現在日本に留学している二人の中国人学生からこんな質問をされた。
「世論調査で約6割もの人が国葬に反対している。普通なら政府は民意を受け止めて、考え直すのではないか? しかし国葬を強行した。日本は本当の民主主義の国なのか?」
「テレビを見ていると、国葬に反対している人がとても多いという印象だった。しかし実際に献花に行ってみたら、ものすごく人が多かった。マスコミは反対派に傾いて報道していると感じる。これは公平なのか?」
国葬をめぐるさまざまな動きや反対運動は、日本人から見ると別に珍しくもなく、当たり前なことだったかもしれない。しかし、中国人にとっては自国にない光景であり、衝撃的かつ新鮮に映った。コロナ前に観光や仕事で日本を訪れたことのある人は多いし、また、近年は在日中国人の人口が増えている。以前よりも日本という国が身近になって、関心を持つようになってきた。そのために、中国人からさまざまな感想や疑問が出てきたのだ。
元首相が銃撃されて亡くなり、国葬という形で弔われる。賛成と反対はほぼ同数か反対派が多いくらいだが、国葬は滞りなく行われる――。王志安氏を筆頭に在日中国人が伝えた安倍元首相の国葬の様子は、中国人にとって、民主主義とは何か、言論の自由とは何かを考える意義のあるきっかけとなった。国の政治制度や環境が違っても、共感できる部分があったからに違いない。 
 
 

 

●安倍氏国葬 TV各局どう伝えた? 世論割れ、多角的報道に腐心 10/8
安倍晋三元首相の国葬が行われた9月27日のNHKと民放各局。式典とともに反対デモにも時間を割くなど、賛否が分かれた世論を反映して賛美一色にならない丁寧な報道に見えたが、識者はどう見たのか。
当日を振り返ると、各局とも午前からニュースや情報番組で、断続的に会場の日本武道館(東京)周辺の警備や献花台、反対デモの様子を報じた。テレビ東京を除き、午後二時からは式典を中継した。
違いが際立ったのが午後二時十八分ごろから、政府制作の安倍氏の生前映像が会場で流れた場面。NHKとフジテレビ系は政府映像を放送したが、日本テレビ系とテレビ朝日系はCMを挟み、政府映像を小さな別画面で流しながら、日テレ系は安倍氏襲撃事件の捜査状況を伝え、テレ朝系は安倍氏の政策を振り返った。TBS系は政府映像に、木村草太・東京都立大教授(憲法学)の「法律家の評価では、安倍氏は立憲主義を軽視した」とのコメントなどをかぶせた。
テレビ東京は午後一時四十分から五分間、会場周辺や反対デモの様子などを報じ、同四十五分から大型犬が活躍する米映画「ベートーベン」を放送。いつものテレ東ぶりを発揮しつつ、式典はネット配信した。
夕方以降は特番もなく、式典や献花の長い列、反対デモや自治体の判断が分かれた半旗掲揚、海外メディアの反応などをニュースで多角的に報じた。
番組出演した木村教授は「賛成反対以前に、この儀式が何のために行われるのかよく分からない国民が多かった印象。法的に分析しようという立場の自分が起用されたのでは」。元NHKプロデューサーの永田浩三・武蔵大教授(メディア社会学)は「NHKも森友学園や『桜を見る会』の問題も取り上げ、賛否が分かれていることも紹介して、すごくまともだった」との評。直前に、東京五輪関連の番組を巡り、放送倫理・番組向上機構(BPO)に重大な放送倫理違反を認定されたことが効いたとみる。
砂川浩慶・立教大教授(メディア研究)は「テレビが国民の意思を多様に伝える良いテストケース」で、コメンテーターも偏った人選はなかったとの見立ての一方、「今回はラッキーだっただけ」と警鐘を鳴らす。「世論が二分され、反対の声を取り上げやすかった。賛成八割、反対二割ではこうはならなかった。テレビは風を読むメディア。だから、世論が『戦争バンザイ』など一方向になった時がすごく怖い」。臨時国会などでも多角的な報道がなされるのか、目が離せないという。
●元2世信者の会見中止求めた旧統一教会 「海外で報じられることを阻止・・・」 10/8
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の取材を20年間を続けるジャーナリストの鈴木エイトさんが8日、自身のツイッターを更新。7日に日本外国特派員協会で行われた元2世信者小川さゆりさん(仮名)の記者会見の中止を求めるファクスを送った教団の狙いについて「会見が海外メディアで報じられることを何としてでも阻止したかったのだろう」と分析した。
ファクスは英語と日本語で、英語版には小川さんの両親の署名も書かれていた。内容は精神疾患の症状が安倍元首相の銃撃事件以降ひどくなり、小川さんの説明に虚偽の可能性があると主張、会見中止を要請したもの。
会見の途中でこの内容を知らされた小川さんは「そもそも両親は私にお金を返すから貸してと言って(献金する)200万円近くの給料を取っていった。渡さなかった時には職場まで来て、渡すまで職場から帰りませんでした。そのお金は1円も帰ってきていません。そういったことが積み重なって、私は精神を病みました。しかし、心の症状は4年前に治っています」と断言。「お金を返しもしないで自分たちが正しいと主張する人たちと自分とどちらが悪なのか、これを見てくださっている多くの方は分かってくれていると私は信じています。私が正しいと思ってくださるなら、どうかこの団体を解散させてください」と涙ながらに語った。
鈴木さんは「国連に取り合ってもらえず、海外の息の掛かった人権団体等を使って『宗教迫害』『人権侵害』『報道被害』主張を展開する統一教会」などと私見をつづった。 
 
 

 

●何もなく無事終わった安倍元首相の国葬 岸田政権の外交的難題は続く 10/9
先月27日、賛否を呼ぶなか安倍晋三元首相の国葬が東京・日本武道館にて執り行われた。JNNが1日と2日に行った世論調査では、「岸田内閣を支持できない」「国葬実施は良くなかった」と回答した人は半数を超えたという。
国葬を何とか乗り越えた岸田政権
国葬実施以前、アメリカのカマラ・ハリス副大統領、フランスのニコラ・サルコジ元大統領、インドのナレンドラ・モディ首相など多くの海外要人が参加するとのことから、テロや暗殺の恐れも排除できないなか、日本警察の命運をかけた厳重な警備体制が敷かれた。
それにより、国葬の日の朝から夜まで、会場となった日本武道館を中心に東京各地の駅や空港、主要駅などでは大きな事件は報告されず、今ごろ岸田文雄首相も安堵していることだろう。
もし何か起こっていれば、日本警察に疑問が向けられるだけでなく、日本の諸外国との関係にも大きなヒビが入ったことは想像に難くない。
支持率アップの要因にならず
周知のように、国葬については賛成、反対がはっきりし、その後も反対の声が収まったわけではない。海外メディアは、国葬によって露呈される日本の分断とも報道した。
国葬は岸田政権の命運をかけた一大行事になったが、それも大きく影響し、岸田政権の支持率は低下している。成功した国葬により、今後支持率が再び上昇傾向になる可能性も十分にあるが、岸田政権は今後も外交的難題に直面しそうだ。
政治経済のバランスで悩む岸田政権
最大の外交的難題とは、政治と経済のバランスだ。ロシアがウクライナへ侵攻したことで、岸田政権は対ロ非難を強め、今日、日露の政治関係は外交関係樹立以降で最も冷え込んでいる。
しかし、サハリン2のように、政治的喧嘩でヒースアップしても、今日ロシア産エネルギーに依存せざるを得ない日本としては、政治と経済の間で如何にバランスを取るかが重要になる。
リスクがある国への出資や投資はなるべく避けたいところだが、今後ウラジーミル・プーチン大統領が天然ガスの日本向け輸出などで制限を掛けてくる恐れも十分にある。
輸出入品がストップする可能性も…
また、日中関係でも同じことが言える。今日、日中双方とも必要以上の関係悪化は避けようとしているが、台湾有事などが発生すれば、その回避は極めて難しくなる。
台湾有事では、自衛隊は米軍支援に回ることになり、そうなれば中国が日本への態度を硬化させ、日本向け輸出品、日本からの輸入品に対してストップをかけてくる可能性もある。
岸田政権は安倍政権を受け継ぐ形で、外交面で最大限やっている。しかし、安倍政権時以上に大国間競争は激化しており、政治と経済のバランスをとることは難しくなってきている。
今後、岸田政権が政治と経済の狭間に落下するようなことがあれば、今回の国葬時に見られた時よりもっと大きな退陣デモが発生する可能性があろう。 
 
 

 

 

●岸田首相が緊急生出演…支持率急落の中、山積する課題の「検討」「実行」 10/14
今回のBSフジLIVE「プライムニュース」には、岸田文雄首相が緊急生出演。予算委員会での論戦を前に、山積する課題に対する覚悟と具体策について伺った。
支持率急落の岸田首相「議論したことを実行に移す時期」
長野美郷キャスター: 発足から1年となる岸田内閣の支持率推移。50%前後の支持率を維持してきたが、7月の参院選の後に支持率が急落。時事通信の世論調査では支持が27.4%で、初めて20%台に落ち込んだ。急落の理由は旧統一協会問題と国葬問題と見られるが、対応について反省などは。
岸田文雄 首相: 支持率に一喜一憂せずとは思うが、厳しい声には真摯に丁寧に謙虚に向き合わなければ。旧統一教会の問題は、社会的に問題が指摘されている団体と関係があったことについて謙虚に反省しながら、今までについて丁寧に説明する。同時に、今後関係をしっかりと断つことが何より大事。自民党でもガバナンスコードの見直しや関係を断つことをどう担保するかについて議論を進めている。政府では幅広い相談窓口を用意し、消費者契約法をはじめとする法律の見直し等を行い、被害に遭われている方の救済に全力を注ぐ。また国葬儀の問題は、有識者の意見も伺い論点と意見を整理する。その上で、総理経験者の国葬儀について一定のルールを考えていきたい。
反町理キャスター: その国葬の費用。16.6億円という見積もりだったが、フジテレビのニュースで、4億円近く安い総額12億円台に収まったと報道した。これについては。
岸田文雄 首相: 速報値であり、よく確認して精緻な数字を出さなければいけない。海外から多く迎えた賓客の方々の滞在日数が当初の想定より限定されていたことにより、警護費や接遇費が少なくなった。いずれにせよ、しっかりと数字を明らかにし今後の議論に資する形で提供したい。
反町理キャスター: 支持率が高かったころ、日本維新の会の馬場代表が岸田さんについて「無策無敵」と述べた。また、検討はするが実行しないと、遣唐使にひっかけて「検討使」という言葉も一部メディアなどで取りざたされた。今支持率が急落した状況で、まさに実行力が問われる。
岸田文雄 首相: この1年間、例えばロシア外交政策の大転換やコロナの水際対策など、具体的な決断・実行は積み重ねてきたと思っている。だが、今私たちが直面する課題として、資本主義自体の持続可能性や、ポスト冷戦が終わり新しい国際秩序が問われている。大がかりな課題に大がかりな政策を訴えていかなければならず、実行に至っていない部分があるのは御指摘のとおりで、謙虚に受け止める。この1年間議論を積み重ねたものを実行に移す時期だという覚悟で政策を進めていきたい。
物価高騰に応える規模の補正予算を、賃金上昇のため「リスキリング」を
長野美郷キャスター: この臨時国会で補正予算の審議がなされるが、この規模感と最重要課題については。
岸田文雄 首相: 最重要課題は物価高騰への対応。2つ目として、それに見合うだけの賃上げ。3つ目として、やはり経済成長。そのための投資、改革。この3つ。これが大きな課題であると思う。具体的な政策を今、与党と協議しながら用意している。
反町理キャスター: 30兆円規模という話もある。
岸田文雄 首相: 数字はいろいろ飛び交っているが、去年との比較で規模をどうするか。去年の経済対策は半分以上がコロナ対策で、ウィズコロナへ向けた今の段階では去年より少なくてもいいのでは、という意見もある。一方で、我々は去年とは桁外れの世界規模の物価高騰の中にいる。アメリカや中国をはじめ国際的な景気が下振れリスクにさらされ、間違いなく日本にマイナスの影響が来る。それに応える意味で規模を考えなければいけない。内容ももちろん大事だが、ある程度の規模のものをしっかり用意しなければメッセージが伝わらない。この段階で具体的な数字は申し上げないが、内容も規模もともに大事だという姿勢で与党と議論を積み重ねている。
長野美郷キャスター: 日本経済低迷の象徴が賃金の問題。2021年の日本の平均賃金は、統計が出ているOECD34か国中24位と低迷。実質賃金は30年近くほぼ横ばいとなっている。改善のため岸田総理が打ち出したのが「リスキリング」。個人のリスキリングへの公的支援について、人への投資策を5年間で1兆円のパッケージに拡充する方針を掲げた。
岸田文雄 首相: リスキリング、つまりキャリアアップを目指す人がより高い賃金を目指してさまざまな研修を受けたり学び直しをすることが必要になってくる。日本経済の再生に重要なグリーンやデジタルの分野は、絶えず非連続的なイノベーションが起こり続ける世界。突然大きなイノベーションが起こり状況が変われば、その分野に労働力を移動させていかなければ経済全体が動かない。そのため、必要とされる労働移動に対応するリスキリングを用意しなければいけない。2023年6月までにこれに関する大きな指針をつくり、民間の協力を得て日本の経済自体を変えていかなければ。もちろんセーフティーネット等はしっかり用意をして、失業がない形での労働移動や、意欲のある人がキャリアアップしたいときに、それを応援できる仕組みを。
国民が実感する電気料金の軽減を。原発は未来を考え再稼働へ
長野美郷キャスター: 物価高、特に冬に向けて懸念される電気料金の値上がりに対して岸田総理の発言。「家計・企業を直接的に支援するため、前例のない思い切った負担緩和対策を行いたい」とした上で「国からの巨額の支援金が電力会社への補助金ではなく、全て国民の負担軽減に充てられることを明確に示す仕組みとしなければ」。これについて。
岸田文雄 首相: ロシアのウクライナ侵略を背景とする国際的なエネルギー危機により、日本では昨年比で電力料金が2〜3割上がっている状況。ウクライナ情勢も世界的な物価高騰も続くことが心配される。電気料金はなだらかにではなく階段式に上がる。電力会社にお金を投入するのではなく、請求書でどれだけ料金が下がったかよくわかる形で、皆さんに対策を実感してもらえるように。実現のための具体的なシステムや全体の仕組みを詰めている。国民の皆さんの心に届くような政策を用意したい。
長野美郷キャスター: 電気料金高騰の背景には、東日本大震災の後、原発の稼働が一部にとどまっている事情がある。岸田総理は「休止火力の稼働や必要な燃料の調達、原子力発電の最大限の活用など、供給力の確保に業界全体でしっかり取り組んでいただきたい」と発言。現在の日本の電源構成を見ると原子力は全体の3.9%にとどまっている。
岸田文雄 首相: さまざまな選択肢を用意しバランスよくエネルギーを調達しなければいけない。そのメニューの一つとして、原子力についても正面から今一度議論を。原子力に関しては安全が大前提で、規制等の緩和は全く考えていない。その中で再稼働へしっかり進めていかなければ。中長期的な未来を考え、運転期間の延長や次世代革新炉の開発や建設についても議論をしてもらいたいと、専門家を中心とするGX会議(グリーントランスフォーメーション実行会議)に指示した。
反町理キャスター: 処理場についての結論が見えないままに増設、置換えまたは再稼働推進という部分について、納得できない人も多いのでは。
岸田文雄 首相: かなり長期的なことを議論しなければならない。どの時点で、あるいはどのスパンでものを考えるか、冷静な議論をしなければ。それも含めて指示を出した。年末に向けて議論を深めてもらいたい。
コロナ対策は機動的に。防衛費増額は内容・予算・財源の結論を年末に
反町理キャスター: 10月11日から水際規制が緩和された。インバウンドの観光客増加は日本経済にとって間違いなくプラスになる一方、2023年の1〜2月にはまた異なる変異株による新型コロナ流行の第8波が来るという見通しもある。中長期のビジョンはどうなるか。
岸田文雄 首相: 変異株についても、WHOが懸念するような変異株に指定されるものが出れば、発生国との関係で水際対策を考えていく。必要な対応は機動的に。一方、世界的な新型コロナに対する対応とのバランスも考えなければいけない。
反町理キャスター: 防衛費について。5年間で対GDP比の2%にという目標が自民党の公約の中に入っている。すると2027年度には年度の防衛予算が10兆を超えていなければいけないという計算になる。防衛予算の内訳と、増やすスケジュール感のイメージは。
岸田文雄 首相: 他の国と比較で、対GDP比は一つの考え方として尊重しなければならない。ただ、単に防衛装備を用意すれば防衛力が充実するのではなく、それを支えるための研究や技術、また経済力などがあってこそ総合的に我が国の防衛力が充実し、結果として国民の命と暮らしを守れる。金額はもちろんだが、内容として何が入るか、予算がどれだけいるか、裏付けとなる財源をどうするか。三位一体での議論をスタートしている。有識者の議論も進んでおり、政府においても議論し、与党からもさまざまな提言を受けている。この3つについて、年末に向けて結論を出していきたい。
長野美郷キャスター: 視聴者の方から。「マイナンバーカードに保険証を紐付けするなんて、申請率が低いから無理やり義務化しようとしているようにしか見えません。セキュリティの面から断固反対」。
岸田文雄 首相: 日本を国際社会に決して劣らないデジタル社会にするための一つの基盤、パスポートがマイナンバーカード。色々なご意見には向き合っていくが、ご理解いただければ。 
 
 

 

 

●国葬騒動で復活した「反アベ」 なぜ国葬批判に戦争、原発を持ち出した? 10/15
毎日新聞は9月18日、岸田内閣の支持率が29%になったと発表。7月発表の52%から大幅下落です。普段は「検討使」の岸田氏が、安倍晋三元首相の国葬を珍しく「決断」したため下落するという皮肉でした。
岸田氏の支持率が高かった理由は、メディアが叩きようがなかったから。安倍氏については左派のメディア・論客・活動家が「奴は極悪人」認定をし、「アベ政治を許さない」とやり続けた。
「憲法9条を改正し、日本を戦争ができる国にする独裁者」との設定を元に安保法制を「戦争法案」と呼び、共謀罪は「居酒屋で上司を殴る相談をすると逮捕される密告社会を作る」と大げさにアベを批判した。
野党は幹部や人気若手が反対デモに参加しアベを徹底批判。モリカケ桜問題について、国会で延々批判。左派メディアが積極的に報じ、支持率が下がることはあるものの、海外要人と安倍氏のにこやかな姿を見てまた上がる。
しかし、アベが退陣して以来、左派は叩くすべを失った。せいぜい、アベ時代の官房長官だった菅義偉氏が首相になった直後の「学術会議問題」とワクチン確保が遅いのを責める程度に。岸田氏になってからアベ色が薄く、叩く要素が消えてしまったのです。
しかし、安倍氏の国葬を決断したところ「あの極悪人を国葬にするとは許せん!」と反対の炎が吹き上がり、世論調査で反対の声が大きいことに力を得て「やっぱアベは悪人」の勢い復活。ただ、そこが理由じゃないです。
先日、ABEMA Primeという報道番組に出たのですが、反対理由を立憲民主党の辻元清美氏は以下三つ挙げました。(1)閣議決定だけで国葬を決める、国会を無視した決め方(2)内閣府設置法の「国の儀式」は天皇の国事行為のみ(3)安倍氏の功績の判断基準が不透明。
ノンポリの私もこれには納得ですし、コレが反対理由です。
番組中では、代々木公園で開かれた「さようなら戦争 さようなら原発 9・19大集会」で国葬反対を訴える様も紹介されました。著名参加者は、日本共産党の志位和夫氏・小池晃氏、社民党の福島瑞穂氏、作家・落合恵子氏、ジャーナリスト・鎌田慧氏ら。
これに平石直之アナが「なぜ国葬反対を訴えるのに戦争や原発を出すのか? ブレないか?」と立民の小川淳也議員に聞きました。私も平石アナにかぶせ「2010年代前半以降の反原発運動に参加する『いつものメンバー』が安倍氏叩きのため、安保法制や共謀罪をイシューに追加。今回は国葬。いい加減このやり方が倒閣運動では通用しないと思わないのか? 辻元さんが指摘した3点でいいし、原発も戦争も出さなくてよかった」と言ったら小川氏は「意見を述べる人を侮辱するのですか!」的にキレました。さらに「メディアが切り取った一部の映像で何を言うか!」のようなことも言う。いやいや、あなた方が支持するデモを散々取り扱ってきたメディアが、アベの国葬を批判するために取材に来たんでしょ。
彼ら、国葬後、いかにしてアベを再び世に出して批判するんですかね。「死せる孔明、生ける仲達を走らす」ではないですが、「死せるアベ、生ける左派を走らす」を感じた国葬騒動でした。 
 
 

 

 



2022/10