1ドル 130円

ついに 1ドル 127円 突破
1ドル 130円 目前

放置されてきた 財政健全化

財政政策の無策
政治に迎合 永年のマイナス金利 日銀
耳ざわりの良い 良い面だけ強調  政治の先生たち
口を閉ざす マスコミ 翻訳経済学者

5月後半から 何となく収束かと思いきや
目指せ 360円 ・・・ か

1966年を思い出す 初めての海外出張
( 持ち出し外貨 500$(400円/$) 給料は40,000円の時代 )
 


2022/4/184/194/204/214/224/18〜4/224/244/254/264/274/284/294/30・・・
5/15/25/35/45/55/65/75/85/95/10・・・5/115/125/135/145/155/165/175/185/195/20・・・5/215/225/235/245/255/265/275/285/295/305/31・・・
6/16/26/36/46/56/66/76/86/96/10・・・6/116/126/136/146/156/166/176/186/196/20・・・6/216/226/236/246/256/266/276/286/296/30・・・
7/17/27/37/47/57/67/77/87/97/10・・・7/117/127/137/147/157/167/177/187/197/20・・・7/217/227/237/247/257/267/277/287/297/307/31・・・
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9/19/29/39/49/59/69/79/89/99/10・・・9/119/129/139/149/159/169/179/189/199/20・・・9/219/229/239/249/259/269/279/289/299/30・・・
2022/10/110/810/1510/2210/29・・・11/511/1211/1911/26・・・12/312/1012/1712/2412/31・・・
2023/1/71/141/211/28・・・2/42/112/182/25・・・3/43/113/183/25・・・4/14/84/154/224/29・・・5/65/135/205/27・・・6/36/106/176/247/1・・・7/87/157/227/29・・・8/58/128/198/26・・・9/29/99/169/23・・・
緒話 / 債権取り崩し国成熟した債権国日本経済の長期低迷GDPが回復しない債権取り崩し国になる日が早まる低成長からの脱却低成長が当たり前の時代・・・
中小製造業の生きる道 / 労働賃金減少成長しないGDP凡庸な先進国低い労働生産性物価から見る実質的経済本当に貿易立国か縮小する工業立国人口減による経済停滞か国内投資を減らす企業中小製造業は多すぎるのか多様性の経済・・・
 
 
 

忘れ去られた財政健全化 
 
 

 

●市場では1ドル130円まで見る向きも…財務相が認定した「悪い円安」 4/18
約20年ぶりの円安となった外国為替市場。これまでは円高が悪で円安は日本にとっては良いとされてきました。しかし今回の円安は様子が違うようです。私たちの生活にも大きな影響を与える「悪い円安」とは…。
18日、1ドル126円台後半の値をつけた外国為替市場。先週金曜日の値を更新し2002年5月以来、およそ20年ぶりの安値となりました。
民間の調査会社・帝国データバンクが食品主要メーカー105社に行った調査によると、原材料の高騰や円安の影響などで6167品目が値上げを予定していて、このうちおよそ7割はすでに値上げされたということです。
値上げ幅は輸入ワインなど酒類が平均15パーセント。次いでバターやチーズなど乳製品が平均13パーセント。スナック菓子やアイスなども平均10パーセント値上げされ家計を直撃。鈴木財務大臣は…。
鈴木財務大臣 「円安が進んで輸入品等が高騰している。悪い円安と言える」
300年の歴史があり、H2Aロケットの部品を提供するなど高い技術力を持つ町工場。止まらない円安に強い危機感を持っています。
金森合金 金森和治社長 「銅やアルミが1.5倍になったことに加え、燃料としての重油代も円安ですべてコストアップ」
取引先に、根拠を示した上で値上げ交渉を迫りましたが…。
金森社長 「燃料代などは見てくれない。厳しい」
帝国データバンクの調査でも6社に1社は「顧客離れ」や「競合他社に負けること」を恐れて価格転嫁できないそうです。
およそ1カ月ほどで10円以上も値下がりした円安。「悪い円安」はいつまで続くのでしょうか…。
今村証券営業推進部 織田真由美調査課長 「日本の円は、ロシアルーブル、トルコリラと同じくらいの下落率です。市場では130円くらいまで(下がると)見ている人が多い。4月の末から順次発表される企業決算で特に企業の予想や経営者のコメントを注視したい」
円安に加えロシアによるウクライナ侵攻によって原油や穀物価格の高騰も予想される中、厳しい家計のやりくりが続きそうです。 
●20年前の円安、黒田氏の脳裏よぎるか 4/18
およそ20年ぶりの円安・ドル高が進んでいる。高まるインフレ不安を背景に、世の中では「悪い円安」への懸念が日増しに強まるが、依然として円売り圧力は消えていない。日銀の黒田東彦総裁が「円安は日本経済にとってプラスの効果の方が大きい」という姿勢を崩していないことが、市場の円売りに安心感を与えている側面がある。なぜ「悪い円安」と主張しないのだろうか。
実は20年前の円安局面でも、円安の是非を巡って激しい論争が繰り広げられていた。このとき為替政策の現場指揮官だったのは黒田財務官。そう、現在の日銀総裁だ。
「現在は(円高の)修正過程である」。1ドル=130円台まで円安・ドル高が進んでいた2002年1月。黒田氏は当時も円安容認発言を繰り返していた。ただ現在と決定的に異なるのは、黒田氏の発言を日本政府も全面的に支持したことだ。当時の塩川正十郎財務相は「130円台はまあまあだが、(円が)もう少し安くなっても日本の評価として適正ではないか」と発言している。
20年前、日本は輸出主導の経済再生を強く志向しており、デフレ脱却が最大のテーマだった。ちなみに当時の日銀総裁は「強い自国通貨は国益」が信念だった速水優氏。このときも速水氏は「こうした(円安の)動きが日本売りにつながらなければいいが」と懸念を示したが、現在とは対照的に世論の支持を得られなかった。
あれから20年。日本経済を巡る環境は一変した。日本は貿易赤字に転落。世界経済は新型コロナウイルス後の急回復とロシアのウクライナ侵攻による急激なインフレ不安におびえている。このため黒田氏の発言は相次ぐ値上げに悲鳴を上げる世の中から、歓迎されていないように映る。
だが少し冷静に考えてみたい。ほんの1年ほど前の2021年初め。日本では1ドル=100円突破に身構える財務省、金融庁、日銀の3者協議が緊急で開かれ、円安ではなく円高への強い警戒感が漂っていた。ひとたび風向きが変われば、瞬く間に為替相場は反対方向へと走り出す。きっかけはいくらでもある。もし米連邦準備理事会(FRB)の利上げ加速で米国株が暴落したら。もし米国の消費者物価上昇率が急速にピークアウトしてFRBの利上げペースが鈍ったら――。
ベテランの市場参加者はこうした為替相場の急変ぶりを何度も見てきた。20年前に東京三菱銀行(当時)のチーフアナリストだった深谷幸司氏は今回、先行き130円に向けて円安が進む見通しを示しながらも、変動幅は100〜130円と予想。円高方向への反転の可能性もしっかり残した。
黒田総裁は財務官当時、激しい円高圧力に苦しめられた経験がある。就任当初の1999年から対ドル、対ユーロで巨額の円売り介入を繰り返したが、そのたびに市場から大規模な円買いを浴びせられ続けた。20年前の2002年は、ようやく円高圧力が和らぎ、為替相場が円安方向に振れた時期。為替相場の特性を肌感覚で知っているからこそ、今回も円安に歯止めをかける姿勢を打ち出すことには、慎重さが欠かせないと肝に銘じているはずだ。
日銀が11日に公表した4月の地域経済報告によると、全国9地域のうち、8地域で景気の総括判断が引き下げられた。景気を下支えするには、円安に歯止めがかかるからといって、現行の大規模金融緩和を安易に修正するわけにはいかない。景気下支えとインフレ抑制のバランスを慎重に見極めながら、黒田氏は現在の円安への姿勢を示していくことになりそうだ。
●迫る「債権取り崩し国」 経済「若返り」へ覚悟問う  4/18
20年ぶりの円安が進むなかで、日本経済が急速に老け込んでいる。
国家の盛衰を表すとされる国際収支発展段階説。資源高で貿易赤字が続く現在の日本は、海外からの利子や配当で貿易赤字を賄って経常黒字を保つ「成熟した債権国」に変貌した。貿易赤字が膨らみ経常赤字となれば最終段階の「債権取り崩し国」にいたる。産業構造の転換が進まず、老化が加速している。
老化は、さらなる円安圧力を招くリスクもはらむ。リーマン・ショック後には円が買われた。その信認を裏打ちしたのが、長期の経常黒字で積み上げた世界最大の対外純資産だった。ところがデフレ下の長期停滞にあえぐ間に資産を積み上げたドイツが肉薄する。ウクライナ危機では円は売られ、「有事の円買い」は過去のものになりつつある。
ドイツとの違いは何か。ドイツはブランド力のある高級車など高付加価値の製造業を抱える。東西ドイツ統一で豊富な労働力も手に入れた。「国内に主力製造業の生産設備が残っている。国家の若さを象徴する貿易黒字国の看板は簡単には外れない」(みずほ銀行の唐鎌大輔氏)
対して日本の産業は円安に依存して高付加価値化が進まず、1995年をピークに生産年齢人口も減少した。企業の生産拠点は海外に移り、現地で稼いだ収益の国内への還流も限られる。国内産業の競争力は衰え貿易赤字に陥りやすい。
「悪い円安」は、新たな不安の芽も育む。「家計のキャピタルフライト(資本逃避)」。JPモルガン・チェース銀行の佐々木融氏は、企業に続いて家計の資金も海外に流れ出すと予想する。個人金融資産は2021年末時点で初めて2000兆円の大台に乗せた。このうち外貨預金を除く現預金は約半分の1000兆円強に上り、潜在的な流出リスクがある。
個人投資家の九条さん(ハンドルネーム)は米長期債などドル資産に資金を移す方針だ。「金融緩和に伴いインフレが到来するのでは」との思いは今年の円安の加速でさらに強まった。マネックス証券によると、22年3月末の米国株の預かり資産残高は約5700億円と、2年で3倍。金融資産の過半を握る高齢層には、海外旅行や海外ブランドに慣れ親しみ、海外投資に抵抗感の薄いバブル世代が新たに仲間入りする。
日本は、海外投資からの収益に頼る超高齢国家への道を歩むのか。それとも若返りを目指すのか。
英国は1980年代に「債権取り崩し国」になったとされる。経常赤字拡大の歯止めとなったのが、金融サービス事業による手数料収入だ。サッチャー政権下の規制緩和で金融立国として活力を取り戻した。
日本でも国際金融都市構想が胎動する。再びインバウンド(訪日外国人)に活路を求める道もある。50年前の第1次オイルショックは、産業界の努力で日本のエネルギー効率が急速に高まる転機となった。ウクライナ危機は世界の省エネ需要を高めるとみられ、好機を生かせるか問われる。
いずれにせよ国内産業を活性化するには円安依存の経済政策と決別する覚悟が必要だ。「悪い円安」を契機にできるかもしれない。 
●「双子の赤字」とインフレ 「有事の円売り」が始まった 4/18 
2008年のリーマン・ショック時に財務官を務めた篠原尚之氏は、ロシアによるウクライナ侵攻という有事にもかかわらず、ジリジリと進む円安に危機感を強める。4月11日には、一時1ドル=125円台後半へと約6年10カ月ぶりの水準にまで円安が進んだ。鈴木俊一財務相は翌12日、「最近の円安の進行を含め、為替市場の動向や日本経済への影響を緊張感を持って注視する」と、たまらずけん制するに至った。
金利差の拡大
円安が進む要因は大きく二つ。
一つは欧米主要国との金利差拡大。8%に迫るインフレ(物価上昇率、2月は7・9%)抑制に向けて3月から利上げをスタートさせた米国は、5月にはコロナ対応として始めた金融緩和で膨らんだ保有資産を圧縮する「量的引き締め(QT)」に突き進む構えだ。「秋の中間選挙に向けて、バイデン大統領は市民生活を直撃しているインフレ抑制を至上命題にしており米連邦準備制度理事会(FRB)は強力で、スピーディーな引き締め政策に転じる」(市場関係者)。
英国も利上げをスタートさせ、欧州中央銀行(ECB)も年内の利上げを市場は視野に入れる。
その一方で、日銀は「金融政策を修正する必要性を全く意味しない」(黒田東彦総裁)と、2%の物価目標が達成しないことから、異次元緩和を根気強く続ける姿勢を崩さない。
さらに、欧米主要中央銀行の金融正常化から波及する金利の上昇圧力が強まった3月末、日銀は指定した利回りで国債を無制限に買い入れる「指し値オペ(公開市場操作)」を連発。是が非でも金利を抑え込む姿勢を鮮明にした。
「一般に金利の高い国の通貨が、低い国の通貨より上昇しやすい。足元のドル・円相場は、教科書通りに利上げに向かうドルが買われ、金融緩和を続け金利が低いままの円が売られる格好だ」(為替アナリスト)。日米の金利差拡大が、ドル高・円安を加速させている。
1ドル=130円
もう一つの円安要因が原油やガス、穀物など国際商品価格の高騰を背景にした、日本の貿易赤字の拡大や経常収支の赤字化である。特に貿易赤字の拡大は、輸入企業の円売り・ドル買いを通じて、需給面で円安を促す。
政府は原油高騰に伴うガソリン価格の上昇を補助金で、しのごうとするのもよくない。ガソリン価格が上昇すれば、需要が抑制され価格上昇が抑えられるという市場メカニズムが機能するが、財政資金で補助すれば、需要は強いままで、消費は拡大。その結果、原油輸入の増大と価格上昇を通じた貿易赤字は拡大する。これがさらに円安を後押ししてしまう。
大和総研の試算によると、22年の外為市場では16兆円の円売りが生じる見通しという。市場では「年内に1ドル=130円台の円安」を予想する声も上がり始めた。
さらに懸念すべきは、貿易や経常収支の赤字(双子の赤字)が円安を加速させ、株安と金利上昇(債券価格の下落)という「トリプル安」「日本売り」を誘発しかねないか、だ。バークレイズ証券の山川哲史調査部長は、「『日本売り』の問題は経常赤字自体ではなく、円滑に赤字がファイナンス(資金手当て)できるか否かにかかっている」と指摘する。
投機筋の日本売り
経常収支とは、外国とのモノやサービス、金融取引で発生した受取額と支払額の差額である。黒字なら生産や消費などの経済活動が国内資金で賄える状態で、赤字は不足する資金を外国から調達する状態を指す。1980年代以降、黒字を定着させた日本の経常収支の中心は貿易黒字だった。毎年10兆円を超える黒字を計上し続け、98年には15・7兆円に達した。しかし、これをピークに減少し、08年のリーマン・ショック後は4兆円に急減、11年は2・5兆円の赤字に転じた(図2)。
もう一つの柱である対外直接投資や証券投資から得られる配当や利子などの第1次所得収支の黒字が定着したのも80年代だが、その金額は年2兆〜3兆円と貿易黒字の3分の1以下の低水準だった。ただし、稼いだ黒字を先進国の債券や海外の工場建設などへの直接投資に振り向けたことで、日本の対外純資産は増加の一途をたどり、20年末で世界最大の356兆円に達する。この資産から上がってくる利子や配当が第1次所得収支の黒字を押し上げた。
貿易黒字が減少するのとは対照的に増え続け、05年を境に両者は逆転し、その格差は拡大している。21年は第1次所得収支の黒字は20・4兆円と貿易・サービス収支の赤字(2・5兆円)を補って15・4兆円の経常黒字を確保した。だが、今年1月は昨年12月に続く経常赤字となり、その赤字額も過去2番目に多い1・1兆円となった。
「巨額の貿易黒字」や「盤石の経常黒字」は過去のものとなり、ドイツの猛追を受ける対外純資産は「世界最大」の称号を失う局面を迎えつつある。この意味するところは、毎年垂れ流す財政赤字とGDP(国内総生産)の2倍を優に超える政府債務の持続性である。
フィデリティ・インスティテュートの重見吉徳首席研究員・マクロストラテジストは、「日本の貿易収支は、今後も1次産品や中国からの輸入品の価格上昇で赤字が定着するだろう」と予測する。1月のように、貿易赤字を第1次所得収支で穴埋めできなければ、経常赤字になる可能性が高い。
前出の山川氏は「日本の公的部門の貯蓄不足を、家計・非金融企業部門の貯蓄余剰が相殺する形で、対外余剰を維持してきた。民間の貯蓄余剰が国債市場へと恒常的に環流することで、海外からの資本流入に依存せず、財政赤字をファイナンスし、『日本売り』圧力を吸収するという特異な資金フローが定着した」と解説する。
経常赤字は、山川氏の指摘する特異な資金フローを成り立たなくする。「経常収支の悪化、その裏側にある国富流出による貯蓄・投資バランスの構造変化は、『日本売り』を誘因する契機となりかねない」(山川氏)。
円や日本の国債に幾度となく大規模な売りを仕掛けた投機筋は、分厚い貿易黒字や経常黒字、世界一の対外純資産の前に跳ね返されてきた。しかし、日本に巨額の投機マネーを蹴散らすだけの体力は残っているだろうか。国内で財政資金をファイナンスできている経常黒字の間に、財政収支を改善し、「日本売り」を抑制する環境整備が待ったなしだ。 

 

●NY外国為替市場 一時1ドル127円台の円安に およそ20年ぶり  4/19
18日のニューヨーク外国為替市場では、アメリカの長期金利の上昇を受けて円安ドル高がさらに進み、円相場は一時、およそ20年ぶりに1ドル=127円台まで値下がりしました。
18日のニューヨーク外国為替市場では、債券市場でアメリカの長期金利が上昇したことを受けて、より利回りが見込めるドルを買って円を売る動きが強まりました。
このため、円相場は一時、2002年5月以来、およそ19年11か月ぶりに1ドル=127円台まで値下がりしました。
円安が進んでいる背景には、アメリカでは、インフレを抑え込むために金融の引き締めが加速する見込みとなっているのに対して、日本では、日銀が大規模な金融緩和策を続ける姿勢を示しているため、日米の金利差が広がるとの見方が強まっていることがあります。
円安が進めば、日本の輸入物価の上昇につながることになります。
市場関係者は「国際的な原油の先物価格が再び上昇基調にあることから、原油を買うためのドル買いが強まるという見方も出ている。市場では、円安がどこまで進むかは、アメリカの長期金利がどこまで上昇するかに左右されると見られていて、関心が集まっている」と話しています。
●東京市場 円相場 1ドル=127円台まで値下がり 約20年ぶり  4/19
19日の東京外国為替市場、円相場はおよそ20年ぶりに1ドル=127円台まで値下がりしています。日本とアメリカの金利差を背景にドルを買って円を売る動きが強まっています。
アメリカでは、来月のFRB=連邦準備制度理事会の金融政策を決める会合が近づく中、金融引き締めが強まるとの見方から長期金利が上昇し、より利回りが見込めるドルを買って円を売る動きが強まりました。
円相場が1ドル=127円台をつけるのは、2002年5月以来、およそ20年ぶりです。
市場関係者は「金融政策の先行きを見通そうと、多くの投資家が政府や日銀幹部の発言を注視している」と話しています。  
●ドルが128円台に上昇、2002年5月17日以来=東京外為市場 4/19
19日の東京外為市場で、ドルが128円台に上昇した。2002年5月17日以来約20年ぶりのドル高/円安水準。日本当局からの円安けん制発言が相次いでいるものの、日米金利差拡大が意識されドル買い/円売りが一段と加速している。
●円安進行、一時128円台 20年ぶり安値 4/19
19日の外国為替市場で円相場が一段と下落し、一時1ドル=128円台と2002年5月以来およそ20年ぶりの円安・ドル高水準を付けた。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが加速するとの観測を背景に、日米金利差の拡大を意識した円売り・ドル買いが続いている。
3月末に1ドル=121円台で推移していた円相場は4月に入って一段と下落し、下げ幅は6円を超えた。15年に付けた日銀の異次元緩和後の最安値(125円86銭)を13日に更新した後も、円安基調に歯止めがかかっていない。
18日には日銀の黒田東彦総裁が「急速な円安はマイナスが大きくなる」と述べて市場をけん制。政府・日銀内でも円安に対する警戒感が高まりつつある。
●日銀「円安歓迎」で、ドル/円はGW前にも130円到達か?  4/19
円安が止まらない。2022年の76営業日目は125.87円からスタート。黒田日銀総裁がこの日「最近の円安はかなり急速」と発言したことを受け、東京時間昼前に126.23円までいったん下落。
しかし日銀が懸念しているのは円安の「スピード」であって、「水準」的にはまったく問題がないようだ。円安は日本経済にプラスという見解は変わっていない。「緩やかな円安は歓迎」というメッセージと解釈したマーケットは円売り警戒感がさらに薄れた。明け方には126.99円まで上昇して、終値は126.99円(前日比+0.64円)。
ブラード・セントルイス連銀総裁は「5月FOMC(米連邦公開市場委員会)で0.75ポイントの大幅利上げの可能性を排除しない」と発言した。極タカ派のブラード総裁の過激発言にマーケットは慣れっこだが、それでも日米金利差の拡大スピードがさらに速まっていることは確かだ。
19日(火曜)のマーケットでドル/円は127円台まで円安が進んでいる。最近のドル/円は1日約0.40円のペースで円安が進んでいる。日銀が円安に対する姿勢を買えなければゴールデンウイーク前に130円に到達できるだろう。
通貨としての円の総合的な実力が約50年ぶりの水準まで低下している。日本銀行が公表したBIS(国際決済銀行)ベースの2月の実質実効為替レート(2010年=100)は66.54で、1972年以来約50年ぶりの水準まで低下した。
実効為替レートが高いほど対外的な購買力があり、海外の製品を割安に購入できることを示す。反対に低いほど購買力が弱く、石油などの購入が割高になることを表す。
実質実効為替レートは円相場が初めて1ドル=70円台に突入した95年の150台が最高で、当時に比べると半分以下に低下している。
円は1973年に変動相場制に移行しているので、名目レートでいえば、現在のドル/円は固定相場制だった72年当時と同水準(1ドル=308円)程度まで低下していることになる。これからは気軽に海外旅行へ行くことはできない。1970年代前半のハワイは、「一生に一回は行きたい」遠い外国だった。そんな時代に逆戻りしてしまった。
実質実効為替レートが算出された2月時点の円の名目レートの平均は115.25円。今は127円台で、10円以上も円安になっている。実質実効レートもさらに下がっているはずだ。
2015年6月に125.85円まで円安が進んだときは、黒田日銀総裁は「実質実効為替レートでは、かなりの円安の水準になっている。ここからさらに円安に振れるということはなかなかありそうにない」と円安けん制発言を行った。現時点では、実効実質為替レートについて日銀から何も説明がない。
●円売り加速、1ドル128円前半に 130円超えも目前か 4/19
午後3時のドルは、前日のニューヨーク市場終盤(126.97/01円)に比べて大幅高の128.15/17円で推移している。米金利が高水準で推移していることや原油価格が再び上昇基調にあることなどから円安基調は根強く、円安に言及した要人発言などへの反応も鈍くなってきている。ドルは連日2002年5月以来の高値を更新しているが、きょうも騰勢は衰えず東京時間に1円以上、上昇した。
ドルは朝方から127円前半で堅調で、午後1時過ぎには一時128.23円と日中安値(126.98円)から1円以上、高い水準まで上値を伸ばした。高値を付けた後も128円台をしっかり維持している。
三井住友ⅮSアセットマネジメントのチーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏は「かなりドル高が勢いづいており、買われ過ぎている状況」だと指摘。手掛かりとされている日米の金利差拡大は新しい材料ではないため「投機的なドル買いの動きの印象が強い」という。
市川氏は、短期的には利益確定売りが出る可能性はあっても「目先は130円台まで上昇する可能性もあり、そう遠い水準ではない」とみている。
ここのところドル/円は急ピッチで上昇していることから政府関係者などからは円安をけん制するような発言が相次いでおり、きょうも鈴木俊一財務相が円安について「プラスの面もあるが、現状の経済状況を考えるとデメリットは強い」などと述べた。
しかし「インフレ抑制を全面に打ち出している米国側が、円買い介入に協調する流れにはならないのではないか」(SMBC信託銀行のマーケットアナリスト・合澤史登氏)とみられることなどから、政府・日銀が実際に円買い介入に踏み切る可能性は低いとの見方が多くなっており、口先介入の効果は徐々に薄れつつある。
その中で注目されるのが、今週20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に合わせて行われる予定の日米財務相会合で、「もし(会合後に)円安抑制のために何か方針が示された場合は市場にとってはサプライズで、ドル高/円安の巻き戻しが起こるとみられる」(合澤氏)という。
クロス円でも円安傾向は強く、ユーロは一時138.14円と15年8月以来、英ポンドは166.57円付近と16年2月以来の高水準で取引されている。
日本以外の主要国は金融政策正常化に向けて進んでいるため「クロス円も円安が進みやすい状況が続きそうだ」(三井住友ⅮSアセットマネジメント・市川氏)という。
●円安どこまで進む?なぜここまで? 背景と対策  4/19
円安は今後、どこまで進むのか。背景や必要な対策について、第一生命経済研究所の熊野英生氏と、ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏に聞いた。
「日本の政治の動きを市場が注視」
――急激な円安が進んだ背景は。
第一生命経済研究所・熊野英生氏「インフレのリスクに対して米国の中央銀行に当たる米連邦準備制度理事会(FRB)が後手に回った。金融緩和をやりすぎて物価が上がってきていたところに、ウクライナ情勢が拍車をかけた。FRBがもう少し前に利上げするか、利上げの見通しを出して市場をけん制していればここまで円安が進むことはなかったと思う。投機的な動きも入っていて、なかなか止まりにくい」
――どこまで進むか。
「1ドル=129円で止まると思っていたが、さらに進む可能性も出てきた。物価対策など日本の政治の動きを市場が注視している」
――負担が大きい家計に必要な支援は。
「物価対策として財政政策で家計の負担を和らげようとするのは限界がある。エネルギー価格が上がっていくのできりがない。既に住民税非課税世帯への10万円の支給が行われており、低所得者対策はある程度できている。夏にかけての中小企業の賃上げをどこまで後押しできるかが重要だ。エネルギー戦略を見直して、脱化石燃料をもっと積極的に推進する必要もあるだろう」
1ドル130円見えてきた 「アベノミクスの副作用」
――今後の行方は。
ニッセイ基礎研究所・上野剛生氏「円安はまだ進みそうだ。米国が利上げを続けていく可能性は極めて高い。一方、日銀は、賃金上昇を伴う物価上昇を目指して金融緩和を続けるとみられ、日米の金利差が開きやすいからだ。ロシア産のエネルギー排除で原油価格が上がることも、(日本の資金流出による)円安材料。1ドル=130円が見えてきた」
――政府、日銀が市場をけん制したにもかかわらず、円安はさらに進んだ。
「政府は円安対策で円を買ってドルを売る為替介入を行うことができるが、ハードルが高い。米国は今、インフレに非常に苦しんでいて、インフレ沈静化に役立つドル高への介入は歓迎しない。介入があっても『日本単独だろう』と金融市場で見透かされている。政府にできるのは、円安で打撃を受けた人や企業への対症療法的な財政支出による手当てくらいだろう」
――円安はアベノミクスの副作用か。
「日銀は賃金上昇を伴う物価上昇を目指して強力な金融緩和をしてきたが、(富裕層が潤えば低所得者層に富が滴り落ちるという)トリクルダウンは起きず、ずるずると緩和を続けざるを得なくなった。アベノミクスの副作用と言える」 

 

●ドル円は上げ止まらず 130円を視野に入れた動き=NY為替概況 4/20
きょうのNY為替市場でドル円は上げを加速させ、129円手前まで上昇した。米国債利回りと伴にドル円の上げも止まらず、130円を視野に入れた動きとなっている。そろそろ、日本の財務省の動きが本格的に気になって来る水準ではあるが、東京時間に鈴木財務相が円安進行について強い懸念を示したものの、ドル円の上げは一向に止まらない。
市場からは、財務省が介入を実施したとしても一時的な効果しか望めず、今回はドル売り介入になることから、外貨準備を失うだけとの声も出ている。また、日銀が引き締めに若干舵を切ったとしても、FRBが積極引き締めに動いている中では円相場への効果は限定的との声も出ているようだ。
ただ、FRBの利上げ期待がここ数カ月で急激に高まっているが、FRBは、年内の利上げをどのように決定するかはデータ次第とも述べている。市場からは、「利上げで労働力や半導体、小麦のそれぞれの不足の解消はおそらく難しい。そのため、FRBは一部の人が考えているよりも、最終的にはもう少し積極的でない行動を取るかもしれない」とのコメントも聞かれた。一方、FOMCメンバーからは、景気後退なしにインフレを抑制できるとの自信も示されているが、市場の懸念は根強いようだ。
また、市場からは、エネルギー価格と中国のロックダウンにより、米インフレはさらに上昇の可能性が指摘されている。3月の米消費者物価指数(CPI)は総合指数で前年比8.5%だったが、4月には9%に上昇する可能性があるという。原油相場の上昇圧力が依然として強く、中国のロックダウンはサプライチェーンの障害を増幅させる恐れがあることを理由に挙げている。
インフレが鈍化し始めるのは、あと1−2カ月先かもしれないが、そのピークが今よりずっと高くなることはないという。インフレのピークアウトは数カ月前の予想よりも遅れて始まり、ゆっくりと進行し、年内にはまだ5%台の高水準に留まると予想しているようだ。
ユーロドルはロンドン時間に1.08ドル台を回復する場面も見られていたが、NY時間にかけて再び1.07ドル台に値を落としている。一部からは、世界的な製造業の減速により、ユーロドルはさらに下値を試すとの見方も出ている。世界の製造業が減速しているにもかかわらず、中央銀行がインフレ抑制のために金融政策を引き締めることから、ユーロドルは今後1年間、軟調に推移する可能性が高いという。
世界の製造業は減速しており、ユーロドルのリスク評価も下向きを示しているという。また、ウクライナ危機の結果次第では、ドル高がさらに進む可能性が高いとも指摘している。FRBは今後1年間、インフレが確実に緩和されるための行動を取るのに対し、ECBの利上げは緩やかなものに留まるという。今後1年以内にユーロドルは1.05ドルまで下落すると予想している。
ポンドドルは上値の重い展開が続いており、再び1.30ドル付近での攻防戦。英中銀の利上げ期待も根強く、1.29ドル台に入ると買いも見られる一方、英経済への懸念も高まっていることから、ポンド買いには消極的といったところのようだ。
本日はIMFが世界経済見通し(WEO)を公表していたが、G7各国のうち今後2年間に物価上昇で最悪の衝撃に見舞われるのは英国だと警告した。IMFは今年と来年の両方について、英成長見通しを1月時点の予測に比べ約1%ポイントずつ下方修正した。22年を3.7%、23年を1.2%にそれぞれ下方修正している。高騰するインフレへの対処で金利が上昇し、生活費が高騰し投資が減速していることを理由に挙げた。インフレについては22年が7.4%、23年を5.3%と予測。英以外のG7各国は来年にはインフレが3%を下回ると予想されている。
●円安加速 1ドル130円台目前に 20年ぶり129円台  4/20
急速な円安の流れが強まり、円相場は、1ドル = 130円に迫る勢いとなっている。1カ月で10円以上進んだ円安は、勢いが一段と加速している。
20日朝の東京外国為替市場の円相場は、1ドル = 129円台をつけて、20年ぶりの円安ドル高水準を更新した。
今回の円安は、利上げが進むアメリカと、景気回復が遅れ、金利を低く抑えている日本とで、金融政策が真逆に進んでいることが背景にある。鈴木財務相や日銀の黒田総裁は、急激な円安をけん制する発言を繰り返しているが、流れは止められず、関係者の間では「1ドル = 130円に届くまで長くはかからない」との見方が広がっている。
景気が上向かない中で、物の値段が上昇し、家計が打撃を受ける懸念が一層強まっている。
●円のショートが奏功、1ドル=130円接近−米国債利回り上昇で 4/20
円の歴史的な下落は20日も続いた。米国債利回りが19日夜に上昇する中、1ドル=130円に近づいている。
日米金利差拡大見通しの中で円は14営業日続落し、ドルは129円35銭に達した。今後数カ月で130円に達するというコンセンサスがあるが、さらに早く実現しそうだ。投資家は当局の介入に警戒している。
りそなホールディングス市場企画部の梶田伸介チーフストラテジストは 、ドル・円の上昇モメンタムは米利回り上昇が続く現在、止められないと見られるとし、130円に達しないと考えるのは現状では難しいと語った。
米10年債利回りはアジア時間20日、3%をわずかに下回る水準。同年限の日本国債は0.25%に日本銀行が抑えている。これを背景に投資家は円のショートポジションを積み上げた。円は今月対ドルで20年ぶり安値を記録した。
オーストラリア・コモンウェルス銀行のストラテジスト、ジョセフ・カパーソ氏はリポートで、日本当局が円安に歯止めをかけるため介入する可能性は高まっていると指摘。介入の水準は不明だと付け加えた。
●20日の東京株式市場見通し=続伸後はもみ合いか 4/20
予想レンジ:2万6800円−2万7300円(19日終値2万6985円09銭)
20日の東京株式は続伸後、もみ合いか。日経平均株価は、きのう19日に3日ぶり反発した動きや、現地19日の米国株式も反発したことから、買い優勢のスタートとなりそう。ただ、手がかり材料に乏しいなか、直近で上値を抑える格好となっていた25日移動平均線(19日時点で2万7224円)が意識されるとみられ、上値が重くなる場面も想定される。為替相場は、ドル・円が1ドル=129円台の前半(19日は128円06−08銭)、ユーロ・円が1ユーロ=139円台の前半(同138円32−36銭)と円安方向に振れている。19日のADR(米国預託証券)は円換算値で、ソニーG <6758> 、ホンダ <7267> 、オリンパス <7733> などが、19日の東京終値に比べ高い。シカゴ日経平均先物の円建て清算値は、大阪取引所清算値比210円高の2万7260円だった。
●ドル・円反落、日銀指し値オペ後に利益確定が優勢に−128円台前半 4/20
東京外国為替市場のドル・円相場は下落に転じている。朝方は日米金利差の拡大を意識したドル買い・円売りが先行して1ドル=129円台に乗せたものの、日本銀行が長期金利上昇の抑制のため指し値オペを通知した後は利益確定や日米財務相会談に対する警戒から徐々に売りが優勢となっている。
市場関係者の見方
クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司外国為替部長
・ドル・円は指し値オペで乱高下した。ただ、引きつけて出てきたのが単発であり、直近の連続指値オペや予告オペではなかったので、来週の日銀の金融政策決定会合に向けてイールドカーブコントロール(YCC)に柔軟性を持たせる可能性を市場は意識したかもしれない
・また、日米財務相会談を控えて、利益確定の売りも入りやすいタイミングだったとも言える
あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジスト
・貿易赤字や指し値オペがドル・円がさらに上がるきっかけになる可能性もあったが、とりあえず利食いが先行しているので、ここから上は少し重くなるかもしれない
・ただ、円を買う材料が非常に乏しく、利食いが入ってもドル・円は底堅く、上値を追いやすい
・警戒されるのがG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)で予定されている日米財務相会談。米国サイドとドル・円の上昇スピードが速過ぎるなどの見解が出されると、上昇抑制材料になってくると思うが、地合い的には130円台を目指すような展開
背景
・19日の米国債市場では政策金利の変化に最も敏感な短期債中心に利回りが上昇。20日アジア時間も上昇が続き、10年債利回りは一時2.98%付近と18年12月以来の水準
・日銀が指し値オペを通知、10年国債を0.25%で買い入れ
・IMFの対日審査責任者サルガド氏:日銀の政策の一環としてYCC(イールドカーブコントロール)維持が重要
・円下落はファンダメンタルな動きの一部
・3月の日本の貿易収支は8カ月連続の赤字−原油高と円安が輸入額押し上げ
・G20会合、世界経済への打撃は「全てロシアの責任」と明確に主張へ
●年内に1ドル=130円台の円安を予想する声も 4/20
4月19日(2022年)午後の東京外国為替市場で円相場が一時、1ドル=128円20銭台まで下がり、2002年5月以来、約20年ぶりの円安ドル高水準となった。18日発売の「週刊エコノミスト」(2022年4月26日号)はタイミングよく、「とことん考える 危ない円安」と題して特集を組んでいる。
巻頭記事は、「『双子の赤字』とインフレ 『有事の円売り』が始まった」と書いている。
資源や穀物高に伴う貿易赤字の拡大や経常赤字が、円安やインフレ、金利の上昇圧力を高めている、と指摘。垂れ流し続ける財政赤字と累積する政府債務を持続できるかどうか、日本は大きな岐路に立たされているというのだ。
円安が進む要因を2つ挙げている。
1つは、欧米主要国との金利差拡大。8%に迫るインフレ抑制のため3月から利上げをスタートさせた米国は、5月にはコロナ対応として始めた金融緩和で膨らんだ保有資産を圧縮する「量的引き締め(QT)」に進む動きだ。英国も利上げをスタートさせ、欧州中央銀行も年内の利上げを市場は視野に入れているという。
一方の日銀は、異次元緩和を続ける姿勢を崩さない。
「教科書通りに利上げに向かうドルが買われ、金融緩和を続け金利が低い円が売られる格好だ」と為替アナリストは指摘している。
もう1つの円安要因が、原油やガス、穀物など国際商品価格の高騰を背景にした、日本の貿易赤字の拡大や経常収支の赤字化だという。市場では「年内に1ドル=130円台の円安」を予想する声も出てきたという。
目次には「国力の衰えと円安は連動する」「低成長、低金利、経常赤字 『日本売り』が始まった」「過去の遺産で食いつなぐ『債権取り崩し国』への道」などのタイトルが並び、関係者の悲痛な声が聞こえてくる。
なかでも、藤巻健史氏(フジマキ・ジャパン代表取締役)は、「ハイパーインフレと日銀 新中央銀行、新通貨しかない」という「奇策」を提言している。第二次大戦後のドイツで前例があるそうだ。それほどに深刻な事態なのかと衝撃を受けた。
●仕事始めに読んでおきたい厳選ニュース 4/20
円相場はニューヨーク時間に下げ、一時は1ドル=129円に迫りました。130円になれば、1ドルは日本全国の自動販売機で売られている標準的な缶コーヒーの値段に相当します。鈴木俊一財務相に「デメリットをもたらす面が強い」と言わせた急速な円安は、海外から日本を訪れる人には自販機よりむしろ、デパートや家電量販店で「爆買い」に興じる好機となるはずです。一方、ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、キット・ジャックス氏は「円安が(日本の)競争力回復を助けることは可能だが、それには時間がかかる」と指摘。新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるための水際対策は依然、観光目的の外国人に国境を閉ざしているため、爆買いはまだ先の話のようです。以下は一日を始めるにあたって押さえておきたい5本のニュース。
経済成長とインフレ
国際通貨基金(IMF)は2022年の世界経済成長率見通しを大幅に下方修正した。インフレ予想は上方修正。ロシアのウクライナ侵攻と新型コロナウイルス感染拡大による中国のロックダウン(都市封鎖)を受けて変更した。世界経済見通し(WEO)によると、今年の成長率は3.6%の見込み。ウクライナ侵攻前の1月時点では4.4%と予想されており、新型コロナ禍初期以来の大幅な引き下げとなる。21年の成長率は6.1%だった。今年のインフレ率は先進国・地域で5.7%、新興・途上国では8.7%と予想。1月予想から大きく引き上げた。
新戦略
野村ホールディングスは英国のインフレに関連する取引で痛手を被ったと、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。同社は2021年の早い時期に、ポンド建てのインフレ関連取引業務を拡大しようとしたが、英消費者物価の急激な動きに不意を突かれ、昨年に約3000万ドル(現在の為替レートで約38億6000万円)を失ったという。野村はユーロ建てのインフレ取引事業では昨年に過去最大の収入を得たと、関係者の1人が述べた。
3%の節目
米国債利回りは19日に全ての年限で上昇し、特に年限が短めの国債で伸びが大きくなった。30年債利回りは3年ぶりに一時3%を上回った。ウクライナでの戦争やサプライチェーン混乱の長期化でインフレ圧力は一段と高まり、米金融当局による政策引き締め見通しが強まっている。短期金融市場は来月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で約0.5ポイントの利上げが行われるとの見方を既に織り込んでいるが、セントルイス連銀のブラード総裁が18日に0.75ポイント利上げの可能性も排除しない考えを示したことがあらためて売り材料視された。前回0.75ポイントの利上げが行われたのは1994年。
富豪の冬
プーチン大統領はロシア企業に外国株式市場での上場廃止を義務付ける法改正に署名した。2014年のクリミア併合以来、国内企業には外国株式市場から引き揚げるよう促していたが、強制的な手続きに踏み切った。ロシア・トップの富豪、ウラジーミル・ポターニン氏らは事業の保有構造の変更を迫られる可能性がある。富豪らは保有企業をニューヨークやロンドン、フランクフルトなどの市場に上場させ、外貨で配当金を受け取っている。オトクルィチエ・ブローカーの調査責任者、アントン・ザトロキン氏は「30年かかって作り上げたものが破壊され、こうした人々は直接的・間接的な打撃を受ける」と述べた。
選挙シーズン
米中間選挙の鍵を握ると言われるペンシルベニア州の上院予備選を前に、トランプ前大統領のアジェンダを引き継ぐ共和党候補者にゴールドマン・サックス・グループの幹部からの寄付が相次いでいる。「米国ファーストの保守派」を自負するデービッド・マコーミック氏に、個人としての上限額で支援したゴールドマンの幹部は60人を超えた。同氏は世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツの元最高経営責任者(CEO)。妻のディナ・パウエル・マコーミック氏はゴールドマンのパートナーでもある。マコーミック候補の支持者には、ゴールドマンのデービッド・ソロモンCEOやジョン・ウォルドロン社長、投資銀行部門の共同責任者ダン・ディーズ氏が含まれる 

 

●止まらぬ円安、財界からも危惧の声 4/21
外国為替市場で円安ドル高が急速に進む中、業績や経済への悪影響を懸念する経営トップの意見表明が相次いでいる。行き過ぎた円安は、ロシアのウクライナ侵攻などで高騰する資源やエネルギーの輸入価格をさらに押し上げ、企業の原燃料コストを圧迫する。日本経済全体への悪影響や、先を読みづらくする急激な為替変動も懸念材料で、輸出増の恩恵を受けるはずの製造業からも悲観的な声が聞かれる。
「中小企業にとって悪い方向に働いている」
日本商工会議所の三村明夫会頭は、21日の定例記者会見で円安の影響を問われてそう述べた。
日商が先ごろ全国の中小企業などを対象に実施した調査の暫定結果によると、円安が経営にとって好ましいと答えた企業が数%にとどまったのに対し、好ましくないと答えた企業は53%を超えたという。三村氏は政府に対し「影響についてはっきりした分析を行い、好ましくないなら政策的にどういう手続きでやるかを考えてほしい」と訴えた。
円安を懸念する最大の理由は原燃料の高騰だ。カジュアル衣料「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、日本企業が海外から原材料を輸入し、付加価値をつけて販売していることを挙げ、「自国通貨が安く評価されるのはプラスにならない」と主張。日本製紙連合会の野沢徹会長(日本製紙社長)も「原燃料価格がものすごく高騰している。本当にきつい」と述べ、経営への打撃は避けられないとの認識を示す。
製紙業界は原燃料の大半を輸入に頼っており、もともと円高よりも円安の方が打撃となりやすい傾向がある。しかし、今回は輸出増のメリットが上回る他の製造業からも悲観的な声が聞かれる。それほど原燃料高騰は深刻なほか、上昇分の価格転嫁が最終製品にまで及んだとしても、家計が圧迫されて消費がしぼめば負の影響を受けざるを得ないからだ。産業空洞化や現地生産化の進展で、以前ほど輸出増は見込めなくなっているとの見方もあり、日本鉄鋼連盟の橋本英二会長(日本製鉄社長)は「日本の製造業にとって(円高ならぬ)円安リスクは初めてだ」と指摘する。
輸出企業の業績改善による賃金引き上げ(賃上げ)といったプラス面を挙げ、「金融政策をいじって為替をどうこうするという議論は時期尚早だ」とする経団連の十倉(とくら)雅和会長も、「急激な為替変動はよくない」と安定的な推移を望む。
●止まらぬ「悪い円安」 中小と家計への対応急げ 4/21
急速な円安に歯止めがかからない。きのうは一時1ドル=129円台まで円売りが進み、20年ぶりの円安ドル高水準を更新した。
政府、日銀は先週末から相次いで急激な為替変動に懸念を示す「口先介入」を重ねたが、不発に終わった。
インフレ対策のため利上げに動く米国などの主要国と、金融緩和を継続せざるを得ない日本との金利差が広がっている以上、円が売られやすい状況はまだ続きそうだ。
折からの資源・原材料高に加え、幅広い輸入品の価格高騰が企業や家計に重くのしかかっている。
これまでの円安に頼った景気対策は完全に裏目に出た。新型コロナウイルス禍から、さらに二番底に転落することがないよう、急激な円安がもたらす弊害を直視し、きめ細かな対応を求めたい。
円安は輸出企業の収益を押し上げるため、日銀はこれまで「全体として日本経済にプラス」と説明してきた。
しかし、この1カ月余りで10円超の円安が進むと、15日には鈴木俊一財務相が現状について「悪い円安」と初めて言及。19日の記者会見でも「現在の経済状況を考えるとデメリットをもたらす面が強い」と明言した。
さらに18日の国会では、日銀の黒田東彦総裁も「急速な円安はマイナスが大きくなる」と述べ、従来の発言を軌道修正したが、その後も円の下落は止まらなかった。
最大の要因が日米の金利差拡大だ。米連邦準備制度理事会(FRB)は3月、物価上昇を抑えるために利上げを決め、2年ぶりにゼロ金利政策を解除した。欧州も同様に緩和縮小を急ぐ構えだ。
景気の下支えのため超低金利政策を維持する方針を明らかにしているのは日本だけ。金融政策転換の動きから取り残されたことが、円の独歩安を加速させている。
製造業を中心に輸出企業がけん引役となってきた日本経済の構造も大きく変わった。
20年前の円安は輸出企業にとって追い風となったが、現在では生産拠点の海外移転や部品輸入の拡大が進み、恩恵は薄れている。
貿易収支も20年前は10兆円近い黒字だったが、近年は赤字も目立ち、昨年度は資源価格の高騰を受け、5兆3000億円超の赤字となった。構造的に輸入代金の決済に必要なドルが増大していることに注意が必要だ。
ロシアによるウクライナ侵攻の影響も加わり、石油や原材料のさらなる高騰が見込まれる中、東北でも内需型企業が苦境に立たされている。
日米の金融政策の違いからかつてのような協調介入の実施は望めず、打てる手は限られている。まずは弱い立場にある中小企業から順次コスト増を価格に転嫁しやすい環境を整えるとともに、相次ぐ値上げに苦しむ低所得層への支援強化を急ぐべきだろう。
●日本経済はウクライナ危機・感染拡大の下で「悪い円安」に直面 4/21
日米金融政策の方向性の違いなどを反映し、円安ドル高が進んでいる。2022年初に115円/ドル台だったドル円レートは本稿執筆時点で一時129円/ドル台に乗せた。こうした中で関心が高まっているのが、円安による日本経済への影響だ。
振り返ると、ドル円レートは2007年の124円/ドルから2011年の75円/ドルの史上最高値まで、約4年間で50円近くも急騰した。東日本大震災後の日本企業が直面した「6重苦」の1つと指摘されていた円高が現在は解消したのだから、日本経済にとって円安はプラスであると評価すべきかもしれない。
日本銀行が2022年1月に公表した展望レポートでは、「近年の経済構造の変化を考慮しても、円安は引き続き、全体としてみれば、わが国の景気にプラスの影響を及ぼす」と述べられている。筆者らが行った推計でも同様の結論を得ている(※1)。円安が日本経済にプラスの影響を及ぼす主な経路は、輸出金額や対外投資による純受取額が円換算値で増加し、国内企業収益の増加を通じて設備投資などが拡大し、幅広い業種に経済効果が波及するというものである。また、サービス輸出に含まれる訪日外国人観光客(インバウンド)の消費は2010年代に急増したが、円安はインバウンド消費を押し上げる効果を持つ。
しかしながら、円安がもたらすプラスの影響はウクライナ危機と新型コロナウイルス感染症の拡大によって発現しにくくなった。先行き不透明感が強い中では、企業は収益が増加しても設備投資の拡大などに消極的になりやすい。感染状況が十分に落ち着かなければ、インバウンドの受け入れを再開することはできない。こうした状況下で円安が進むと、輸入コストの上昇というマイナスの影響ばかり表れてしまう。
加えて、今回の円安は急速に進んでいる。企業などの対応が追い付かないスピードで為替レートが変化すれば、円安であっても円高であっても非効率が発生してコストがかかるため、日本経済にマイナスの影響を及ぼす。
これらを踏まえると、足元で進む円安はマイナスの影響がプラスのそれを上回る「悪い円安」といえる。もちろん、ウクライナ危機と感染拡大が収束すれば「良い円安」へと転じるだろう。円安の影響を検討する際は、為替レートの水準や変化のスピードに注目するだけでなく、日本経済を取り巻く環境を考慮することも重要だ。
●為替はG7の主要議題ならず、高い緊張感で円安注視−鈴木財務相 4/21
鈴木俊一財務相は米東部時間20日(日本時間21日)、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議について、ロシアのウクライナ侵略の下での国際経済が主な議題だったとし、「為替は主要な議題ではない」と語った。
最近の急激な円安に関して「高い緊張感を持って市場動向を注視していく」と説明した。今回の声明に為替に関する言及はないものの、これまでのG7の考え方を維持していると述べた。
日本銀行の黒田東彦総裁は「為替相場は経済や金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましい」とした上で、短期的に過度な変動は先行きの不確実性を高め、企業の事業計画の策定などを困難にすると懸念。日銀として為替が経済や物価に与える影響を注視していく考えを示した。
米ワシントンで行われた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議とG7財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で述べた。
●なぜ、円はロシアのルーブルより弱いのか?円安の本当の理由。 4/21
ドルばかりか人民元、ルーブルに対しても円安に
急速に進む円安は、4月20日に一時、1ドル=129円台前半にまで達した。3月1日は1ドル=114円台だったので、わずか1カ月半あまりで15円も円安が進んだことになる。こんな急激な円安はかつてなかったことであり、また、円安が止まる気配はまったくない。この異常事態の原因について、どのメディアも「日米の金利差が開くから」としているが、本当の原因はそうではない。円はドルに対してばかりか、世界の主要通貨のほとんどに対して値を下げているからだ。ユーロはもとより、人民元に対しても大幅に値を下げ、なんと経済制裁を受けているロシアのルーブルに対しても弱くなっている。あまりのことに、鈴木財務大臣も日銀の黒田総裁も「急速な円安は好ましくない」と言うようになったが、単なる“口先介入”だから、まったく効果がない。
日本とトルコだけが”無理やり金融緩和”続行中
“口先介入”でも、介入は介入だが、日銀にいたっては、さらなる円安を招くのが必至の金融緩和を続けているのだから、言うこととやることが逆である。日銀は、20日、指定した利回りで国債を無制限に買い入れる「指し値オペ」(公開市場操作)を通知した。0.25%の利回りで新発10年物国債を買い入れるというのだ。これは、3月29〜31日に続く「連続指し値オペ」で、金利抑制策である。つまり、日米の金利差は開く一方になる。インフレが進んでいるというのに、中央銀行が金融緩和をやっているのは、世界中でトルコと日本だけである。トルコのエルドアン大統領は、「インフレは金利を下げれば治る」という“トンデモ理論”を掲げ、過去2年半に3人の中央銀行総裁を解任した。そうして、無理やり金融緩和を続けてきた。そのため、トルコのインフレは止まらず、ウクライナ戦争勃発後はさらに進行した。トルコリアは、下落が止まらない。
インフレなのに日銀が金融緩和をやめない理由とは?
日銀が金融緩和をやめないのは、黒田総裁が“トンデモ理論”を信じているからではない。そんなことがあるわけがない。とすると、考えられる合理的な理由はただ一つだ。金融緩和をやめて、引き締めに転じれば、当然ながら金利は上昇する。インフレに対する金融対策はこれしかない。しかし、そうすると、国債利払い費がかさみ、国家財政が破綻してしまう可能性が現実になる。日本政府と日銀は一体だから、金融緩和続行で一致しているわけだ。別に不景気でも、税金で生きている役人は困らない。インフレで困るのは庶民だけだ。日本は自ら率先して不景気を続け、金利上昇を抑えこんでいる。いまのところ、これしかやりようがないのだろう。それほど、国債による国家債務は巨額だ。
「SWIFT」排除で加速する世界のドル離れ
ところで、現在のところ、ロシアに対する経済制裁はあまり効いていない。そればかりか、下手をすると、世界でドル離れが進み、ドルの価値が低下する可能性がある。そうなれば、円安はもう黙って見ているだけではすまなくなるだろう。経済制裁のなかでもっとも効果があるとされるのが、“金融爆弾”と称される「SWIFT」(国際銀行間通信協会)からのロシアの排除だ。ロシアに基軸通貨であるドルを使わなくさせれば、貿易の決済ができなくなり、ロシア経済は干上がる。そうアメリカは目論んだ。しかし、ドイツなどの反対で、ズベルバンクやガスプロム銀行などを外す抜け道を設けたりしたため、効果は薄れた。ルーブルは、いったん値を下げたが、いまは値を戻している。さらに、金融制裁の逆効果として、中東産油国をはじめとする非西側諸国の反発を招き、そうした国々がドル基軸体制から抜け出そうとする動きを加速させてしまった。
中国もロシアも独自の決済手段を構築
2008年のリーマンショック以来、ドルへの依存度を引き下げようという動きが、世界中で始まり、現在にいたっている。そんななかで起こったウクライナ戦争によるロシアへの金融制裁であることを、投資家は認識する必要がある。とくに中国は、国家戦略としてドル依存から抜け出し、人民元の国際化と外貨準備の多様化を進めてきた。そうして、人民元による国際銀行決済ネットワーク「CIPS」をつくった。これは、ロシアも同じだ。中国の「CIPS」と同様な、ルーブルを基にした独自の国際決済ネットワーク「SPFS」を、2014年のクリミア併合後の経済制裁を受けて構築してきた。中国の「CIPS」とロシアの「SPFS」がつながり、これにインドやサウジアラビア、イランなどが加われば、ドルの価値は明らかに低下する。すでにインドは、ドルを介さず、ルピーとルーブルを使った貿易決済システムの構築に向かっている。
ドルは石油(ペトロ)による担保を失いつつある
ドルは 1971年のニクソン・ショックまでは、「金本位制」(ゴールドスタンダード)に基づく兌換通貨だった。本来、通貨は金(ゴールド)と兌換できなくなれば、信用・価値を失う。しかし、アメリカはあらゆる国が必要とする石油(ペトロ)をドルのみで取引する体制を構築することで、ドルの基軸通貨としての信用を担保してきた。つまり、ドルは、金本位制から「石油本位制」(ペトロスタンダード)となり、今日にいたっている。しかし、いまやアメリカは中東から手を引きつつあり、産油国であるロシアとは敵対しているので、石油はドルのくびきから離れ始めてしまった。イランはもとより、サウジアラビアまでドルから離れようとしている。
ドルの価値を低下させ世界覇権を失わせる
かつて世界の産油国は、石油取引で手にした莫大なドル収入を、ロンドンを中心とした世界中のオフショア金融市場を通じてドル建て金融商品で運用してきた。その最大の金融商品は、アメリカ国債だった。つまり、世界の資産はほぼドル建てであり、グローバル企業も富裕層も、みなドルで資産を運用してきた。ロシアのオリガルヒも同じだ。しかし、いま、その体制がウクライナ戦争をきっかけに崩れようとしている。バイデン大統領が、「軍事介入はしない」と言って、ロシアのウクライナ侵略を許したために、こんなことになってしまった。この老大統領は、ドルの価値を低下させ、アメリカの世界覇権を失わせつつあることに気がついているのだろうか。アメリカはなぜ、イタリアやテキサスより小さい約1兆5000億ドルのGDPしか持たないロシアを脅威としたのか? ただ、核を持っているだけで、軍事費にいたってはアメリカの10分の1である。そんな国のために、アメリカが世界覇権を失い、ドルが基軸通貨から転落するとしたら、世界は無秩序になる。
世界中の中央銀行が金を集めている
世界のドル離れが加速するにつれ、金の価値がますます高まっている。現在、金は市場最高値を更新している。もともと、通貨の価値を担保するのは金だったのだから、これは当然だ。金本位制がなくなったいまも、この考えは変わっていない。そのため、ここ十数年、世界中の中央銀行が競って金を集めるようになった。現時点(2022年2月末)での「ワールド・ゴールド・カウンシル」(WGC)による世界の金備蓄量ランキングによると、第1位はダントツでアメリカ(8134トン)、第2位がドイツ(3367トン)、第3位が IMF(2814トン)、第4位がイタリア(2452トン)、第5位がフランス(2436トン)となっていて、IMFをのぞく上位4カ国の金保有量は、外貨準備の60%以上を占めている。この4カ国に続くのが、第6位のロシア(2299トン)第7位の中国(1948トン)である。ロシアはかつて10位以下だったが、ここ10年ほどで、1543トンも増やし、金備蓄が外貨準備に占める割合を25.3%まで伸ばしている。ちなみに、日本は第9位(845トン)で、アメリカの10分の1強、ロシアの3分の1強にすぎない。しかも、日本の金備蓄が外貨準備に占める割合は、たったの3.8%である。この金備蓄、外貨準備比率から言えることは、円はルーブルより価値がないということだ。
中国は世界第1位の金産出国、ロシアは第3位
WGCの統計によれば、2010年9月と2021年9月の間に金の保有量を90トン以上増やした国は12カ国ある。また、金の保有量と金以外の外貨準備高の両方を増やしたのは、ロシア、中国、トルコ、インド、タイ、ポーランド、メキシコ、ブラジル、イラク、韓国の10カ国となっている。各国とも、自国通貨の価値を高める努力をするとともに、ドル依存を減らしている。これができていないのが日本で、なぜ円が「安全資産」と言われてきたのか、皆目わからない。金は世界中で産出されるわけではない。国別金の産出量ランキングでは、いまや中国が第1位である。現在、世界では金が1年に約3000トン前後産出されるが、中国はその10分の1強である380トンを産出している。第2位はオーストラリア、第3位はロシアである。ロシアは広大な国土の各地で大規模な採掘を行っており、2017年には中国と共同で金採掘のために9億ドルの投資をするプロジェクトを立ち上げている。
経済衰退する国の通貨を誰が持つのか?
経済制裁は、日本語で平たく言えば「兵糧攻め」である。ロシアはウクライナの市民、民間人を殺戮している。それは人道に反する、戦争犯罪であると非難する声が強いが、経済制裁もまた非人道的な行為である。これで苦しむのは兵士ばかりか、市民、民間人だからだ。最終的に、敵国の国民が餓死するまで兵糧攻めは続く。ウクライナ戦争は長期戦となる可能性が高い。なぜなら、ロシアは資源も食糧も豊富に持っているからだ。兵糧攻めが効くのは、このどちらも持たない日本のような国に対してだけである。ロシアは、原油産出量世界第3位、小麦生産量世界第3位 トウモロコシ生産量世界第10位という国で、エネルギーと食糧に困るということはまずありえない。為替レートは、金利や通貨供給量の差だけで決まるのではない。資源や食糧などに基づいた富や経済力、いわゆる「国力」で決まる。この観点から円を見れば、明らかにルーブルより価値はない。ルーブルには、価値を担保する資源、食糧、金がある。日本にはそれがほとんどない。円安は円が売られるから起こる。しかし、いまの円安は、円売りではなく「日本売り」だ。日々、経済衰退する国の通貨を、投資家はもちろん、誰も持ちたがらない。この端的な事実を、ほぼ誰も指摘しない。
●最近の円安はファンダメンタルズ主導、政策変更の理由にならず=IMF 4/21
国際通貨基金(IMF)高官は20日、最近の円安はファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)主導であり、日銀の超低金利政策を含む日本の経済政策を変更する理由にはならないとの見解を示した。
IMFアジア太平洋局のサンジャヤ・パンス副局長はロイターのインタビューで「円相場でこれまでに見られているのはファンダメンタルズ主導だ」とし、「経済政策立案は引き続きファンダメンタルズに目を向けるべきだ。現在の動向はファンダメンタルズを反映しており、経済政策を変更する理由は見当たらない」と述べた。
日本の当局が円買い介入を行うのは妥当かとの問いには「現時点で外為市場に無秩序な状況は見られない。ファンダメンタルズ主導だ」とし、「市場が無秩序でない限り為替政策スタンスは適切、というのがわれわれの通常のアプローチだ」と述べた。
円安は輸出に追い風として、日本経済にはプラス要因とみなされていたが、足元では既に値上がりしている食料品やエネルギーの輸入価格を押し上げ、国内のインフレ圧力を強める可能性が懸念されている。
パンス氏は、円安は日本にとって悪材料ではなかったが、家計に影響を与えているため、玉石混交の面があると指摘。「インフレ圧力は依然落ち着いているため、日銀が超緩和策を変更する必要性はない」と語った。
金融引き締めを開始した他の先進国と日本の状況は大きく異なっているとし、「緩和的スタンスを変更する必要性をわれわれは全く認めていない」と述べた。
携帯電話料金引き下げの影響剥落といった一時的要因が総合消費者物価指数(CPI)上昇率を押し上げる可能性があるものの、物価上昇率が近い将来に日銀の物価目標を持続的に達成する可能性は低いとの見方を示し、「日本の状況はすでに金融政策の引き締めを開始した他の先進国と非常に異なる。緩和的金融政策スタンスを変更する必要性は見られない」と述べた。 
●吉野家“生娘シャブ漬け”は袋叩きで、黒田総裁は問題視しないテレビの怪 4/21
「水に落ちた犬を打つ」ではないが、テレビメディアの多くは「生娘シャブ漬け戦略」発言で大手牛丼チェーン「吉野家」をクビになった伊東正明・前常務(49)関連のニュースを朝から晩まで報じている。
発言は確かに論外だが、テレビメディアが伊東氏よりも問題視するべき人物は他にいるだろう。例えば日本銀行(日銀)の黒田東彦総裁(77)だ。
20日の外国為替市場では、1ドル=129円台前半となるなど約20年ぶりの円安水準が進行。米国が金利引き上げに踏み切る中で、黒田日銀は「アベノミクス」に由来する異次元(大規模)金融緩和策に固執。長期金利を0.25%以下に抑える方針を堅持しているため、日米の金利差が拡大し、円安は加速する一方だ。
財務省が20日発表した2021年度の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5兆3749億円の赤字に。円安は国内の輸出企業が恩恵を受けるとはいえ、資源価格の上昇などによって輸入額が増えるばかりなのだから赤字になるのも無理はない。
とりわけ大きな影響を受けているのが家計だ。食料品など生活必需品の多くは輸入依存度が高いため、円安進行であらゆるモノの価格が急上昇。本来であれば、黒田日銀はもはや“失敗”に終わったと言っていい異次元緩和策など、これまでの方針を転換するべき時なのに傍観したまま。それどころか、18日付の日経新聞によると、黒田総裁は<「円安は日本経済にとってプラスの効果の方が大きい」という姿勢を崩していない>とあるからクラクラしてしまう。
なぜ、テレビメディアは黒田総裁をもっと取り上げ、今の政策の問題点について指摘しないのか。ある意味、蔑視発言の伊東氏よりも、よっぽど国民生活に関わる重大なテーマではないか。 

 

●鈴木財務相 米イエレン財務長官と会談「円安 日米で意思疎通」 4/22
ワシントンを訪れている鈴木財務大臣は、アメリカのイエレン財務長官と会談し、このところの外国為替市場で円安が進んでいることについて日米の通貨当局の間で緊密に意思疎通を図っていくことを確認しました。
G20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議などに出席するためワシントンを訪れている鈴木財務大臣は、日本時間の22日未明、現地でアメリカのイエレン財務長官と会談しました。
会談のあと記者団の取材に応じた鈴木財務大臣によりますと、イエレン財務長官とは最近の外国為替市場の動向について議論したということです。
さらに鈴木大臣は「会談では私からは直近の円安がやはり急激だということを数字をもって示した。そのうえで、これまでのG7やG20における為替に関する合意を維持しつつ、為替の問題に関して、日米の通貨当局の間で緊密な意思疎通をはかっていくことを確認した」と述べました。
また、ウクライナ情勢については「ロシアによるウクライナ侵略を強く非難すること、そして日米がG7などと緊密に連携しながら、引き続きロシアに対する制裁を着実に実施していくことを確認した」と述べました。
鈴木財務大臣は一連の国際会議のあと記者団に対して、世界銀行とIMF=国際通貨基金の会議で、日本としてウクライナに対する世界銀行との協調融資を1億ドルから3億ドルに増額することを表明したことを明らかにしました。また、会議に出席するため現地を訪れているウクライナのマルチェンコ財務相と会談し、この中では鈴木大臣が追加的支援とウクライナへの変わらぬ連帯について直接伝え、マルチェンコ財務相からは謝意が示されたということです。
松野官房長官は午後の記者会見で「特に最近のドル円相場の動きについて議論を行いこれまでのG7やG20の為替に関する合意を維持していくことや、日米の通貨当局間で緊密な意思疎通を図っていくことを確認したと聞いている。アメリカなどの通貨当局と緊密な意思疎通を図りつつ、適切に対応していきたい」と述べました。そのうえで「やりとりの詳細を答えることは差し控える。為替政策に具体的にコメントすることも差し控えるが、為替の安定は重要であり急速な変動は望ましくない」と述べました。
●円安逆手に日本企業の国内還流促進すべき、成長押し上げ策に  4/22
外為市場でドル高・円安が進行中だ。日米金利差の一段の拡大観測や、エネルギー価格上昇による日本の貿易赤字拡大への思惑などから130円突破予想が広がっている。政府は物価高と円安の連動に頭を痛めているが、抜本的な発想の転換が必要だ。円安長期化を逆手に取って、海外に移転した日本企業の生産拠点を国内に還流させる「バックツー・ジャパン」戦略を打ち出すべきだ。
国内で生産拠点が急増すれば、雇用と税収が拡大基調をたどり、円安を利用した輸出増によって「底なしの円安」リスクを回避できる。補助金によるガソリン価格の補てんは「痛み止め」に過ぎず、製造業の国内還流を促進するための投資減税やその他の優遇策こそが、将来の日本経済の成長力強化につながる。新しい資本主義の中のパーツの1つに組み込んでほしい。
米利上げ加速と円安
21日にパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の利上げについて「検討される」と述べ、米5年債利回りは22日のアジア市場の取引時間帯に3.04%へと上昇した。
5月4日のFOMC後の会見でパウエル議長が、米国におけるインフレ率の高まりに対応し、中立金利かそれ以上の水準に政策金利を引き上げる可能性について言及するのではないかとの観測が市場で高まっている。
他方、日銀は長期金利を0.25%で抑え込む「指し値オペ」の連続実施を通告しており、日米金利差の拡大と円安進展がしばらく続きそうだという市場の思惑は強まるばかりだ。
外国人観光客の急減、地方の円安メリット消滅
黒田東彦日銀総裁は、18日の衆院決算行政監視委で「最近1カ月ほどで10円と急速な円安は、企業の事業計画策定に困難を来す可能性がある」と指摘し「大きな円安や急速な円安ではマイナス(の方)が大きくなる」と述べた。ただ、日銀の計量モデルの試算を踏まえ「円安が全体的に日本経済にプラスとの評価は変えていない」、「基本的に円安は全体としてプラス」というスタンスは変えなかった。
確かにマクロ的にトータルすれば、プラスが大きいという試算は成り立つ。しかし、国外で利益を享受できない多くの個人や地方の観光事業者などにとっては、マイナスばかりが目立つ事態になっている。
新型コロナウイルスが拡大する以前は、地方も円安で潤っていた。その大きな項目が海外から来日する観光客の需要だ。日本政府観光局によると、2019年の訪日外国人客数は過去最高の3188万人を記録した。ところが、2021年は24万5900人と19年比で99.2%減。ほぼ「消滅」したと言ってもいい状況になっている。
痛み止めの政策対応
こうなると、与党を通じて地方で苦境に直面する人々からの苦情が首相官邸に集まってくるという構図が出来上がることになる。
ガソリンなどの補助金を1リットル当たり25円から35円に引き上げたり、2兆7000億円規模の2022年度補正予算案の今国会中の成立が政府・与党内で検討されているとの報道が出てくるのは、国民の間に充満し出したエネルギー価格などの上昇に対する不満を与党の政治家が敏感に感じ取った証拠とも言える。
ただ、これらの政策対応は「痛み止め」の効果しかない。潜在成長率がゼロ%台に落ち込んだ日本経済の再活性化をにらんだ「前向きの政策展開」が全く見えないのが残念だ。
海外に出ていった日本企業
そこで、提案したいのは、円安を頭痛の種と思わず、有効に活用する新しいアプローチだ。日本企業は製造業を中心に「円高は困る」と主張して、中国などの海外に生産設備を移してきた。
国際協力銀行(JBIC)の調査によると、海外展開している965社のうち回答した510社の2021年度の海外売上高比率(見込み)は36.3%。2002年度の27.9%から8.7%ポイント上昇している。中でも自動車が40.5%、電機・電子が47.3%と、かつての輸出産業の両輪が海外にシフトし、日本国内が空洞化している実態が浮かび上がる。
地政学リスクと採算性
円高で採算が合わないと海外に出ていったが、足元の円安なら十分に利益が出ると一部の製造業の幹部はみている。特に中国に進出した企業にとって、1)中国人労働者の賃金上昇、2)米中関係の緊張に伴うリスク─の2つは、日本国内に戻る理由として正当化できるようだ。
中でもロシアによるウクライナ侵攻とその後の対ロシア制裁を目の当たりにしたことが、大きな変化をもたらしつつある。もし、中国がロシアに武器などを供与したり、台湾海峡で緊張が高まった場合、日本企業のビジネスに大きなリスクが発生する可能性があり、水面下でシミュレーションする必要性が出てきたのではないか。
コストを最小化する「最適生産」から、経済安全保障上のリスクを勘案して採算性を弾き出す時代に移行しつつある今、円安の時こそ、日本企業の生産設備を国内に呼び戻す絶好のチャンスであると考える。
国内回帰に財政支援が必要な理由
海外の設備を処分して国内に帰る場合、処理損や現地での法的紛争によるコストなどが、障害になる可能性がある。そうした点に着目し、日本政府が税法上の特典も含めて支援策を構築し、財政支援するスキームを構築すれば「生きた資金の活用」になるだろう。
台湾積体電路製造(TSMC)の熊本県への誘致の例を出すまでもなく、製造業の国内還流政策は、地方の雇用を増大させて税収を上げる効果を持つ。また、技術の集積による新たな産業の創造にもつながり得る可能性を秘めている。
岸田文雄首相は新しい資本主義を掲げているが、その中に「製造業の日本回帰」という項目を加え、足元の円安を奇貨として日本経済を浮揚させる反転攻勢に出てほしい。
そのような攻めの発想がなければ、円安に伴う購買力の低下を嘆き、1人当たり国内総生産(GDP)が年々、低下していく「衰退国」が定位置になってしまうだろう。
●「制御不能な円安」日本企業と家庭にもたらす負担  4/22
4月11日に円が20年ぶりの円安水準である1ドル=125円に達した時、アナリストの大半は年末までに130円まで円安が進むだろうと答えた。実際にはたった9日後の4月20日には129円に。円安がどれくらいの速さで、どこまで進み続けるか、またその過程でどれくらい上下するかは定かではない。市場は直線には進まないものだからだ。
制御不能な円からの逃避が起こるのではないかという不安は、特に参議選が数カ月先に迫っていることもあり、日本政府に警鐘を鳴らしている。すでに、円安が130円まで進んだ場合は財務省による為替介入があるのではないかとの報道も出ている。円安が125円まで進んだ時点でもそのような話が出ていた。
財務相による異例のコメント
今までのところ、鈴木俊一財務相は口先介入を試みている。下落の速度が速すぎるという通常のコメントに今やとどまらず、円安の程度が行き過ぎているという異例のコメントを述べるに至っている。
「企業がまだ十分に価格や賃金を上げていない現在のような状況においては、円安は望ましくない。はっきり言えばこれは悪い円安だ」と鈴木財務相は述べた。円安は日本にとって「全体としてはプラス」だと主張し続けている黒田東彦日銀総裁までもが、今や下落の速度が「急速」すぎると言っている。
エコノミストはますます黒田総裁ではなく鈴木相の側に付いている。十倉雅和経団連会長は論争に加わってこう述べている。「過去の円安局面においては貿易収支も経常収支も経済もよかったが、現在はそれほど単純ではない」。
昨年12月に東京商工リサーチが7000企業を対象に実施した聞き取り調査によると、30%近くがこのような円安は経営にマイナスだと回答しており、プラスだとしたのは5%だけであった。円安がマイナスだとした回答者によると、平均107円が最適な円相場だとのことである。
財務省にできる持続的な効果を持つ対策はほとんどないのが現実だ。為替介入は、為替の動きがファンダメンタルズから大きく乖離したモメンタムを得ている場合のみ効果がある。
そして実際に、円安が進むペースがあるべき水準を大きく越しているということであれば、協調介入は少なくともしばらくの間はモメンタムを止めるか、場合によってはある程度逆転させることが可能になるかもしれない。
アメリカ政府が日本政府の対策を支援すればその可能性は高まる。しかし実際には、現在の円安は経済のファンダメンタルズを反映しており、こうした場合は、介入には一時的な効果しかない。
大規模介入ははっきり言って無意味
最近の大規模な介入について考えてみよう。2003年1月から2004年3月の間に、財務省は35兆円(2003年の円ドルレートで3200億ドル)という巨額の資金を投入した。これは15カ月分の経常黒字合計の1.7倍の額であった。財務省は円高を阻止しようとしていたのだ。しかし、介入後の円は介入開始時より9%高くなった。財務省は通貨投機家を儲けさせただけに終わったのである。
円の下落の背景にあるファンダメンタルな要因は、アメリカと他のほとんどの国がインフレ対策として金利を上げている一方、日本では日銀が金利を上げないことに固執しているという事実である。
その結果、債券投資家は日本の債券からアメリカの債券に資金を移すことで利益を得ることができる。それが行われると、需要と供給の法則により円安が進むのである。これを悟った為替トレーダーが円安圧力を高めることになる。
10年米国債と日本国債の金利差が1.3%しかなかった9月には、1ドル110円だった。金利差が2.6%に広がった4月19日には、1ドル129円に突入した。実際、2020年初頭以来、円ドルレートと10年国債の日米金利差の間に84%という極端に高い相関が見られる(図を参照)。
アメリカ連邦準備制度理事会は今年中に6回も金利を上げることを発表しているため、投資家は金利差がさらに広がることを知っており、先手を打って円から逃避しているのだ。
黒田総裁が金利に関する立場を変えるならばある程度の影響があるだろうが、彼はそうしないと断言している。それどころか、日銀は無制限の資金を投入して10年日本国債の金利を0.25%以下に維持するとしている。これは、円安が好ましいという考えのためだけではなく、日本が持続的な2%インフレを達成するまでは金利を上げないという誓いのためでもある。
円安は輸出を促進するという幻想
為替レートが弱すぎると、強すぎる場合と同様に、国に損害を与える。1ドル=129円はあまりにも弱すぎて全体として国益にならない。
円安は輸出を促進することによって経済の需要を高めるため全体としては国益となると日銀は主張している。それがひいては生産や投資や雇用を促進するというのだ。このプラスの影響は、消費者が輸入品により高いお金を払わなければならないというマイナスの影響を上回るというのが日銀の見解である。
ある程度の為替レートの場合はその通りであろう。安倍晋三元首相の任期の最初の4年間には、政府が進みすぎた円高を修正しており、その結果として輸出が促進されると市場は信じていた。そう信じられたことにより円安が進行した。円安が1円進む度に日経平均株価が221円上昇した。
しかし、最初の4年間が終わった後はその連携は続かなかった。実際、現在では市場は反対の反応を示している。3月30日から4月20日の間、円安が4%進み、日経平均株価も同様に下落したのだ。
この違いは何に起因するのであろうか。
第1の原因は、円安が過去と同程度には輸出を促進しなくなったことだ。多くの企業が生産拠点を海外に移していることがその理由の1つである。近年、日本の自動車の3分の2は海外で生産されている。日銀の調査によると、海外生産の多い産業はそれが少ない産業と比較して、1%の円安から受ける輸出促進の恩恵が少ないという。
「プレミアム感」なくなった日本の電機
第2の原因は、生産拠点が国内か海外かにかかわらず、日本の電機・機械メーカーの多くがかつての競争力を失っていることである。2008年から2020年の間、世界の電機機器の市場規模は40%上昇したにもかかわらず、日本の電気機器メーカー上位10社のすべてが、世界においては売り上げが停滞している。
さらに悪いことに、日本の電機メーカーの総売上は30%も下がっている。(自動車以外の)機械セクターでの世界輸出における日本のシェアは、1991年にはアメリカやドイツよりも大きかったのが、2018年にはその2国より小さくなってしまった。この期間に円安が進行したにもかかわらず、そうなってしまったのである。
結果、かつては優れているという評判によりプレミアム価格を設定することができた日本企業が、今や価格を下げることでシェアを奪い合わなければならない状況に陥った。しかも、ますます大きく価格を下げなければならなくなってきている。
前述の日銀による調査では2700種類の製品を調べており、2002年から2010年の間では円安に振れた時には86%の製品の売り上げが増加していたことがわかった。2011年から2019年の間ではその割合が72%にまで低下している。残り28%に関してはむしろ、円安はエネルギーや原材料などの不可欠な輸入品の価格を上げることにより輸出に不利に働いた。
もう少し詳しく見てみよう。10%の円安は製品の売上数を20%上げるだろうか、10%だろうか、それとも5%だけだろうか。
ほとんどの製品に関しては、円安による促進の程度は、2011年から2019年の間にはその10年前と比較してかなり小さかった。そして、円安が輸出に不利に働いた28%の製品に関しては、円安による売り上げ減少幅は10年前よりひどくなっていたのだ。
結論としては、日本の輸出業者は鎮痛剤依存者に似ている。同じ効果を得るためだけにますます多量の服用が必要になっていき、その間にも基礎となる健康が損なわれていくのだ。
輸入への影響、あるいはその欠如
教科書が教えるところによると、通貨の下落は輸入品の価格を上げることによりGDPをその分上昇させる。これにより、消費者も企業も輸入品の代わりに国内で生産された同じ製品を買うようになる。日本の輸入の構造を見てみると、この理屈が日本の場合には該当しないことがわかる。
まず、日本の輸入品の約40%は鉱物性燃料や食料や原材料などの品目であるが、それらには国内での代替品がほとんど、あるいは、まったくない。しかも価格が変わっても、国が必要とする食料や石油や鉄鉱石の量はほとんど変わらない。
円安の唯一の帰結として、日本の企業や家庭は海外の生産者からより高い価格でモノを買わなければならなくなる。これらの商品に関しては、円安は単に収益を日本から海外へと移動させるだけなのである。
輸入に頼っている食料品をより高い価格で買わなければならないことが、1980年代半ば以来、日本の家庭における食費の割合が増えている理由の1つである。そのためにほかの商品に使う金が少なくなってしまう。食料品に費やす割合は国の発展を示す古典的な尺度である。
残りの60%の輸入品に関してはどうだろうか。それらはほとんど、化学物質から機械、さまざまな工業部品や玩具に至る工業製品である。結局のところ、これらの製品の60%は海外企業製ではないものの、日本企業の海外支社が生産している。
例えば、パナソニックのタイ工場で生産された電池や、マレーシア工場で生産されたエアコンといったものだ。ほとんどの企業は、海外で生産している製品と同じ製品、あるいは少なくとも同じモデルは国内では生産さえしていない。
これら2つの要因の結果、円安になっても日本は多かれ少なかれ、同じ量の輸入品を購入し、より多く支払うことになるのである。
より多く払って、より少なくしか得られない
あなたが仕立屋だとして、自分の製品を地元の食料品店を相手に交換しているとしよう。店の人が、よその町の新しい仕立屋はもっといい仕事をするから、あなたのドレス1着と交換する食料品をこれまでの半分だけにすると言ったとする。
半分しかもらえなくても、まったくもらえないよりはましだ、という理由であなたはその取引に応じるかもしれない。しかし条件は以前より悪くなる。
円安はこれに似ている。トヨタの自動車を輸出する度に日本がもらえる食料品が減ってきているのだ。トヨタにとってはいいかもしれないが、日本の消費者にとっては好ましくない。それでも円安によりトヨタの輸出が増加し雇用が促進され賃金も上昇するなら、利益がコストを上回るかもしれない。
しかし、現在の日本ではそれは起こっていない。いかなる経済取引においても利益とコストの両方が常に存在している。かなりの円安のため、利益がもはやコストに見合っていないのだ。
●協調介入も議論 急速な円安ドル高進む中の日米財務相会談 4/22
急速な円安ドル高が進む中、日米の財務相会談がアメリカで行われ、最近のドル円相場について協議しました。この中で、市場が注目していた協調介入についても議論されていたことがJNNの取材でわかりました。ワシントンから報告です。
およそ30分間の会談で、日米両国は為替相場や経済状況などについて議論しました。
鈴木俊一財務大臣「最近のドル円相場の動きについても議論した。直近の円安が急激であると」
一方、市場が注目していたドルを売って円を買う日米の協調介入について、鈴木大臣は協議したかどうかも「コメントしない」と話しましたが、日本のある政府関係者はJNNの取材に対し、協議したことを認めました。
さらに、「アメリカ側は前向きに検討してくれるトーンだった」とも話しました。
このアメリカの反応は円安に苦しむ日本政府にとっても驚きだったということで、円安がさらに進んだ場合、日米による協調介入が行われるかどうか、新たな注目となります。
では、実際に介入を行えるかと言えば、アメリカの事情を考えるとそう簡単ではありません。
バイデン政権は現在、歴史的な物価高に直面していまして、仮に協調介入を行い、為替が円高ドル安に振れた場合、今度はアメリカ国内の輸入物価の値上がりにつながるため、容易には認められない背景があります。
さらなる円安の進行で日本経済に深刻な悪影響が出る前にアメリカの理解を得られるかが最大の焦点です。
●20年ぶりの円安・ドル高、本当に恐ろしい円安リスクは「家計部門の円売り」 4/22
円相場の需給変化とは「企業部門による円売り」
約20年ぶりの円安相場が継続中である。その背景としては、日米の金融政策格差というオーソドックスな論点に加えて、円相場の需給環境が取り上げられることが多い。
需給環境と一口に言ってもその意味するところは幅広く、象徴的には(1)資源高を主因とする貿易赤字拡大だが、(2)本邦企業部門による対外直接投資の増大も円売り圧力を相当に強めている。
(1)は毎月経常的に発生するアウトライトの円売り・外貨買いであるのに対し、(2)は企業買収時にまとまったボリュームで発生する円の売り切りである。過去10年間では、(2)の勢いが強まった結果、今や日本の対外純資産残高の半分が直接投資になっている。
かつて、それは証券投資だった。
リスク回避ムードが強まった際、保有している海外の有価証券を売る(≒外貨売り・円買いする)動きは想像できるが、買収した海外の会社を売却する動きは想像が難しい。
「リスクオフの円買い」の迫力が薄れたのは貿易黒字が消滅したことも当然あるだろうが、中長期的には対外直接投資の増大も相当寄与していると考えられる。
なお、(1)や(2)の動きは基礎収支(経常収支+直接投資)の流出として総括されるものでもある。
特に、対外直接投資が顕著に増加した背景には、国内市場の縮小が既定路線になっている日本に投資をするのではなく、海外に活路を見出すという合理的な経営判断があったと言える。
それは投資をする上での期待収益率に関し、日本を回避して海外を選んだという意味で一種の企業部門による資本逃避でもある。だが、それでも海外事業の成功が国内経済に還元されることも期待されるため、一概に悪いことばかりではない。
必ずしも悪ではない企業部門による円売り
現に、第一次所得収支黒字が日本の経常黒字を支えていることは周知の通りである。また、貿易赤字にしても、資源高で一時的に歪んでいる部分はあるにせよ、理論的には最適な国際分業の結果であり、「黒字が善で赤字が悪」とは限らない。日本の貿易黒字が10年前から消滅しているのは相応の理由がある(紙幅の都合上、今回は詳述を避ける)。
つまり、上述した(1)資源高を主因とする貿易赤字拡大や、(2)企業部門による対外直接投資の増大のような「企業部門による円売り」は、必ずしも悪いことばかりではない。
これに対し、本当に恐ろしいのは、そうした「企業部門による円売り」ではなく「家計部門による円売り」である。家計部門が円建て資産の保有をリスクと考え始めた場合、それは単なる防衛行為なので日本経済にとっての恩恵は乏しいものになるだろう。
現状、そのような動きが早晩起こる雰囲気はない。岸田政権の支持率もまだ非常に高い。それは人口動態上、大きなボリュームを占める高齢者層に寄り添った政策運営が展開されているからだとの解説は多い。
実際、「年金生活者へ5000円支給」などの案が浮上してくるあたり、その見方は的外れとは言えない。いつまでも新規感染者数に拘泥し、直ぐに行動制限に手を付けようとするのも、若年層に比べて行動範囲の限られる高齢者層が多い世の中では決定的な批判に晒されにくいからだろう。
現実はその政策が慢性化することで成長率が停滞し、日銀が動けなくなり円安に繋がっているわけだが、その理解はまだ浸透していない。
とはいえ、現状が続く限り、円建て資産の相対的な価値は確実に蝕まれていく。
保守的な日本でもじわじわ広がる海外資産への関心
保守的な国民気質なのか、金融リテラシーの欠如なのか、原因は一つではないのだろうが、日本では個人金融資産の95%以上がいまだに円貨性の資産で保有され、50%以上がほぼ何の収益も生まない現預金に留め置かれている(図表1)。
2021年12月末時点で日本の家計金融資産は2023兆円と2000年3月末対比で620兆円も増えている。しかし、その増分の半分以上(343兆円)が円建て現預金で、リスク資産の代表格である株式・出資金の比率は10%前後でほとんど変わっていない。
円建て資産の構成を見る限り、NISA導入(2014年)なども挟んだ「貯蓄から投資へ」は全く奏功していない。しかし、構成比こそ小さいが、外貨性資産は0.9%から3.4%へ明確に増えており、金額だけで言えば、投資信託は7倍強、対外証券投資は5倍弱増えている。
   図表1
全体の比率の中では円貨性現預金に圧倒されてしまっているが、海外資産への関心は確実に高まっている。
20年ぶりの円安・ドル高、実質実効為替レート(REER)で見れば半世紀ぶりの円安、戻らなくなった購買力平価(PPP)、消滅した貿易黒字、対外直接投資の激増──など円建て資産を取り巻く客観的事実は確実に10年前とは変わっており、20年前とはさらに違う。
これほど分かりやすい環境変化が重なれば、大人しい日本人も動き出すかもしれない。根強いリスク回避性向がいつまでも同じとは限らない。
海外株投資という名の円売り
近年、日本でも米国株投資が一つのブームのように取り上げられている。2021年12月28日の日本経済新聞には、『若者の投資は消費感覚』と題した大手ネット証券会社社長のインタビューが掲載されていた。着実なリターンが期待できるからこその潮流と言えるだろう。
対照的に、日本株の人気は目を覆いたくなるような惨状にある。1月下旬(2022年1月27日〜1月31日)に実施された日経CNBCの視聴者調査では、『岸田政権を支持しますか』の問いに95.7%が『支持しない』と応えたことが話題になった。
事実として、国内株ではなく海外株に流れる国内投資マネーの動きは、投資信託における株式売買動向からも明らかである(図表2)。
   図表2
今はまだ2000兆円を超える家計金融資産の末端に過ぎない動きだが、元々日本の家計部門のリスク回避性向が強過ぎると言われていることを思えば、米国株ブームは安全資産への異常な執着が修正される前振れとも理解できるかもしれない。
書店に行けば、米国株投資の本が平積みでたくさん並んでいる。このような光景は今まであまり目にしないものだった。当然、すべてではないにしても、そうした米株投資は円売りを伴うはずである。
知らず知らずのうちに目減りしている円建て資産
国際比較をしても、日本の金融資産構成は修正される余地が見える。
図表3に示すように、40%弱が株式に寄せられている米国は極端としても、日本と同様、間接金融が力を持つユーロ圏でも20%弱が株式に割り当てられている。そのユーロ圏の半分程度の日本はやはり相当に保守的と言わざるを得ず、現預金が50%を超えていることも世界的には異例である(※)。
※米国の資金循環統計では国内・海外証券の区別がされていないため、外貨なのか内貨なのかという比較はここでは控えている
   図表3
しかし、年初来3か月半で円の対ドル相場は10%近く、昨年初めからでは20%近くも下落している。当然だが、ドルで保有していれば、それが単なる外貨預金であったとしても、その損失がカバーできたことになる。得られる金利も当然、円よりは高い。
もちろん、外貨預金の為替差損益は雑所得なのでそこから所得税も勘案するなど、細かな修正は必要だが、大半の日本人が安全資産の代表格と見ているであろう「円の普通・定期預金」は昨年来、資産防衛の観点からは相当に酷い選択肢だったと言える。
多くの日本の人々は海外資産との比較で自国通貨建ての保有資産の価値を判断しないだろうが、実際は巷説で取り上げられることの多い「安い日本」の傾向が強まる中、自身の保有資産から消費・投資する金額は同じものであっても漸増傾向にあるはずである。
結局、分散投資することなく抱えていた円建て資産は一般物価上昇の中で少しずつ召し上げられるという構図であり、その度合いが強まった時に、「円の普通・定期預金」は特に安全ではなかったことに気づくのかもしれない。国際経済に組み込まれている以上、必然の帰結と言える。
家計部門の円売りが始まる日
もちろん、そうした家計部門からの資本逃避(いわゆるキャピタルフライト)とも言えるような動きが早晩加速するという確信はない。しかし、その可能性に警鐘を鳴らす時期には来ていると筆者は考えている。
そうなるだけの客観的な諸条件が揃い始めていることは再三、周知している通りである。
日本では一度定められた方向に皆が走り出すと、その展開が非常に早く進む傾向にある。「円の普通・定期預金」の10%が動くだけでも100兆円規模の円売りになる。それは過去5年平均(18兆円程度)の経常黒字に換算すれば5〜6年分に相当する。
今の世の中、海外投資はさほど難しいことではなく、十分想定する価値のある数字である。何事も一定の「空気」が醸成されてからでなければ動けない日本だが、今後「円で保有していること自体が損であり、リスク」という認識が支配的になった時、家計部門の円売り主導で円相場は一段と値を下げる懸念はある。
それは最近のロシアで、かつてはギリシャなどで起きたことだ。真の円安リスクとしての「家計部門の円売り」の可能性があることを為政者においても意識して欲しいと思う。 

 

●為替相場 4/18〜4/22
18日からの週は、円安とドル高が先行した。米国の金融引き締め姿勢が強まる一方で、日本では従来の金融緩和姿勢が堅持されている。日米金融政策の方向性に明確な差がみられたことが円売りの背景となっている。また、欧州でもECB副総裁など複数の金融当局者が7月利上げ開始の可能性を示唆しており、ドル円とともにユーロ円の上昇も円安の動きをけん引している。ドル円は一時129円台、ユーロ円は140円近辺まで買われた。米欧などの金融引き締め姿勢の要因は、ウクライナ戦争でエネルギー価格が高騰、輸入インフレが各国の物価を押し上げていることにある。この週にはG7、G20、IMFなどの舞台で財務相や中央銀行総裁らが一堂に会した。しかし、G20やIMFでは共同声明はまとまらず。ロシアをめぐる世界各国の立場の相違が際立つ結果となった。ウクライナ戦争をめぐる世界の主要国の不協和音が戦争終結の道のりを遠ざけており、グローバルなインフレ圧力が根強いものとなっている。日米財務相会談が実施されたが、日本側からの円安警戒発言が目立つ一方で、米国側からは為替相場に対するメッセージは聞かれず。また、パウエルFRB議長がブラックアウト期間前に、5月会合で0.5%利上げを議論すると明言し、ドル高圧力が再燃した。週末にはポンドが急落。対ドルでポイントとなっていた1.30台を割り込むと売りが加速し1.28台へ。英小売売上高など直近の消費関連指標が弱含んだことがポンド売りのきっかけに。IMF世界経済見通しで、英国に対するインフレの打撃が懸念されていたが、数字に表れた形だった。NYダウは週末に一時1000ドル超安となる場面があった。金融引き締めに対する警戒感が広がるなかで週の取引を終えた。
18日
東京市場では、方向性に欠ける値動き。海外勢がイースター休暇となるなかで、やや手掛かり難となっている。イースターマンデーでオセアニアや香港などが休場でアジア市場でも取引が少ない中で、ドル買い円売りの動きが先行、ドル円は前週末の高値を超えて126.70台まで。その後、黒田総裁が円安について急激な変動という表現を使ったで急落するも、126.20台までの値動き。その後は126.60付近に落ち着き、先週末からの高値圏を維持した。ユーロ円は137円台まで買われたあとは、136.50割れへと反落。その後は下げ一服もユーロドルの重さもあって戻りは限定的。ユーロドルは1.08台割れへとじり安の動きだった。
ロンドン市場はイースターマンデーのため休場。
NY市場では、ドル円が底堅く推移。東京市場での黒田日銀総裁の円安けん制発言に対する円高反応は一時的だった。NY時間には米国債利回りが上昇するなか、ドル高のサポートされ、127円台をうかがう動きをみせた。FRBによる積極引き締めへの警戒感は根強い。今週はパウエルFRB議長がIMF主催のパネルに参加する。来週からは5月3−4日のFOMCを前にブラックアウト期間に入る。その前の最後の発言機会として注目されている。ユーロドルは下向きの流れが続いており、再び1.07台へと軟化。先週のECB理事会を受けた下げた1.0760付近がポイントに。ポンドドルも上値が重く、1.30台割れを試す展開が続いた。今週は金曜日に英小売売上高と英PMI速報値発表が予定されている。
19日
東京市場では、円安の動きが加速。ドル円は前日海外市場で127円ちょうど付近まで買われた。東京朝方には127円台にしっかりと乗せ、その後も上昇が継続。午後には128円台に乗せた。ほぼ一本調子で買われている。昨日黒田総裁が円安のけん制発言を行うも、調整の動きが限定的なものにとどまり、ドル円の126円台前半がしっかりとなったことで、円売りに対する安心感に。口先介入では効かず、介入の催促相場との思惑も。ユーロ円などクロス円でも円安の動きが顕著。ユーロ円は2015年以来の138円台乗せ。ポンド円は165円台前半から166.60台へと上伸。円が独歩安に。ユーロドルはドル高圧力に押されるも1.07台後半での取引に終始した。
ロンドン市場は、一段と円安が進行。ドル円は128.46レベルまで高値を伸ばし、2002年5月以来の高値水準となった。序盤は円売り一色となった。松野官房長官の円安けん制発言でやや円高に振れる場面があったが、すぐに値を戻し上値を追う展開に。クロス円も買われ、ユーロ円は138円台後半、ポンド円は167円台乗せ、豪ドル円は95円目前まで高値を伸ばした。その後、米債利回りの上昇とともに、ドル買い圧力も加わった。10年債利回りは2.90%台まで上昇。クロス円の上昇とともに1.08台乗せとなったユーロドルは1.09台後半へと反落。ポンドドルは1.3040近辺まで買われたあとは、1.30台前半で売買交錯。豪ドル/ドルは0.7400近辺に高値を伸ばしたあとは、0.7360台へと押し戻されている。欧州株は調整売りに押され、米株先物も時間外取引での上げを消している。NY原油先物は109ドル台手前から一時105ドル台まで反落した。
NY市場で、ドル円は上げ止まらず129円手前まで上昇。米国債利回りと伴にドル円の上げも止まらず、130円を視野に入れた動きとなっている。そろそろ、日本の財務省の動きが本格的に気になって来る水準ではあるが、東京時間に鈴木財務相が円安進行について強い懸念を示したものの、ドル円の上げは一向に止まらない。市場からは仮に財務省が介入を実施したとしても一時的な効果しか望めない、日銀が若干引き締めに舵を切ってもFRBの積極的な引き締めの中では円相場への効果は限定的との声があった。米国のインフレがいつ、どの程度のピークアウトをみせるのか、FRBの行動に変化があるのかがポイントのようだ。ユーロドルは1.08台が重く、NY時間の大半は1.07台後半で推移した。ポンドドルも上値が重く、1.30ドル付近での攻防だった。IMFは今年の世界経済見通しを下方修正した。なかでも、G7各国のうち今後2年間に物価上昇で最悪の衝撃に見舞われるのは英国だと警告した。
20日
東京市場で、ドル円は129円台をつけた。前日海外市場で129円手前まで買われたドル円は、東京時間に入るとあっさりと大台乗せ。そのまま買いが強まり、129.40近辺まで高値を伸ばした。2002年5月以来の高値水準となった。米国の積極的な金融引き締め姿勢への期待と、日本の緩和維持姿勢との対比でのドル買い円売りという流れが継続した形。その後、売買が交錯したところに日銀が指値オペを通告、再び129.30台まで買われた。その後は再び調整の動き。磯崎官房副長官が為替の急激な変動望ましくない、緊張感をもって注視などの発言を行ったことがきっかけに円買いが広がり128.05近辺まで下落した。午後に買い戻しは128.60台まで。ユーロ円も139.70付近まで買われたあとは138.50台まで反落。その後は139円台乗せまで反発している。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。G7・G20財務相・中央銀行総裁会議を控えて調整の動きが入っている。米10年債利回りは東京午前に2.97%台をつけたあとは低下しており、ロンドン市場では一時2.85%台まで水準を下げている。ドル売り圧力が広がり、ドル円は128円台割れから127.61レベルまで下落。ユーロドルは1.0810-20レベルから1.0867レベルまで上昇。ポンドドルは序盤に1.30台割れまで下落したあとは1.3066レベルまで高値を伸ばしている。カザークス・ラトビア中銀総裁が、ECB利上げは最短で7月の可能性がある、と述べたことがユーロ買いを誘った面もあった。対ポンドでユーロが買われた。また、G7・G20会議とともに鈴木財務相とイエレン米財務長官の会談が行われる予定。最近の急速な円安進行に何らかの対応が話し合われる可能性もあり、円安の動きに調整が入る面もあったようだ。ユーロ円やポンド円は上値重く推移している。
NY市場も、調整色の強い値動き。ドル円はドル売りとともに利益確定売りが強まり、127円台半ばまで下押しされた。米国債利回りも急低下しており、FRBの積極引き締めを材料とした値動きは一服している。市場ではドル高の動きの速さに警戒がでているもよう。「インフレは今期がピークで、2023年に向けて着実に低下し、それに伴って市場も次第に落ち着き、金利は低下の可能性がある」とのコメントも聞かれた。また、本邦勢からは円安が経済に与える影響を警戒する声が相次いでいる。ユーロドルは一時1.0860近辺まで反発した。タカ派で知られるドイツ連銀のナーゲル総裁が、「資産購入プロフラム(APP)は4−6月(第2四半期)末で終了し、7ー9月(第3四半期)の初めに利上げを実施する可能性がある」と語った。8月はECB理事会がないので事実上、7月の理事会での利上げということになる。ポンドドルは1.3060近辺まで買い戻され、1.30台は維持された。ただ、対ユーロや対円では軟調に推移。英経済への警戒感がポンドを圧迫している模様。
21日
東京市場で、ドル円相場は振幅。前日の129円台から127円台までの大きな調整の後で神経質な地合いとなっている。朝方には127円台後半から128円台を回復。米債利回りの上昇とともに128.60台まで一時上昇。しかし、午後には売りが優勢となり、128.10台に反落した。中国・香港株が下落、警戒感がドル円の上値を抑えたようだ。中国上海のロックダウン長期化や、景気下支えへの姿勢が期待された中国の習国家主席による演説が、長期の成長傾向は変わらないといった程度の言及にとどまったことなどへの失望感などが中国売りを誘った。ユーロドルも振幅。1.08台前半で上値重く推移したあと、ベルギー中銀総裁が7月にも中銀預金金利の引き上げを検討、年内に政策金利はプラス圏に浮上の可能性と発言し、ユーロ買いを誘った。1.08台半ばへと買い戻されている。
ロンドン市場は、ユーロ買いの動きが広がった。デギンドスECB副総裁が、データ次第としながらも、7月会合での利上げの可能性を示したことが背景。欧州短期金融市場では、今年中にECBが0.25%ずつ3回の利上げを行うことを織り込んでいる。ユーロドルは1.08台半ばから1.0936レベルまで買われた。ユーロ円は139円ちょうど付近から一時140.00レベルまで上昇。2015年6月以来のユーロ高・円安水準となった。ECBの早期利上げ観測に対し、日銀の強い緩和継続スタンスの対比が鮮明になっている。日銀は再び連続指し値オペを通知している。ユーロドルの上昇がドル売り圧力を波及させて、ポンドドルは1.30台半ばから1.3090レベルまで一時上昇。ドル円は128円台前半から127.80付近まで下落した。ただ、足元ではユーロ買い一服とともにドル円も128円付近に下げ渋っている。
NY市場では、ドル買いが再燃。ドル円は一時128.60付近まで上昇した。前日は、きょうは米国債利回りが再び急上昇しており、ドル円も買い戻しを強めた格好。デーリー・サンフランシスコ連銀総裁は、複数のFOMCで0.50%利上げを決定する可能性が高いとの認識を示していた。午後になってパウエルFRB議長のIMF主催のイベントでの講演が伝わり、「もう少し早く動くのが適切。次回5月FOMCで0.50%の大幅利上げが議題になる」と述べる一方、「軟着陸を目指し最善を尽くす」とも述べていた。大幅利上げの可能性に言及したものの、想定範囲内でもあったことから、ドル円は利益確定売りの反応を示していた。ユーロドルはNY時間に入ると反落。1.0835付近まで押し戻された。ポンドドルは1.30台での上下動。NY時間には売りが優勢だった。マン英中銀委員は「来月の英中銀金融政策委員会(MPC)で0.25%超の利上げが必要かどうかを検討している」と述べ、引き締めペースを早める議論を再燃させている。ただ、ポンド買いの反応は限定的だった。
22日
東京市場で、ドル円は上下動。昼頃までは堅調な動きとなり、朝方の128.20台から仲値前後には128.60台まで上昇。その後も高止まりした。しかし、鈴木財務相とイエレン財務長官との会談において「協調介入も議題に」との報道が流れ、一転して調整が入る展開となった。一時128円台を割り込んだ。週末を控えて市場には調整が入りやすい地合いとなっている。米10年債利回りが2.96%台から2.92%台に低下したことも重石に。ユーロ円も午前中の139.50付近から138.50付近へと大きく下落。ユーロドルは1.08台前半から半ばへと小幅の下げ渋り。
ロンドン市場は、ポンド売り主導でドル買いの動きが広がっている。ポンドドルは1.30台を割り込むと一気に売りが加速、1.29台割れから一時1.2862レベルまで安値を広げた。ポンド売りのきっかけは英小売売上高が予想外に弱かったこと。加えてこの日発表された英GfK消費者信頼感の低下、英PMI速報値が製造業、非製造業ともに予想を下回った。今週のIMF世界経済見通しではインフレの打撃が英経済を直撃することが警戒されていたが、今日の数字に表れた形。ポンドは対円でも167円台から165円台へと下落。対ユーロでも下落した。ポンドドルの急落を受けてユーロドルも連れ安となり、1.0850付近から一時1.0791レベルまで下落。ドル円は下に往って来い。東京午後には財務省幹部が、日米財務相会談で日米の協調介入について議論されたとの発言報道を受けて128円台半ばから127.74レベルまで一時下落。しかし、ロンドン時間に入るとドル買いの動きが波及して128円台半ばへと買い戻された。欧州株が軟調に推移しており、クロス円の上値は重い。ユーロ円は139円台から一時138.25付近まで下落、その後は138円台後半へと下げ渋り。豪ドル円は94円台割れから93.50付近まで下落したあと、戻りは93円台後半と限定的。
NY市場はドル円に買いが強まり、一時129円台を回復した。きょうは全体的にドル買いが優勢となり、ドル円の下値をサポート。ニューヨークを訪問中の黒田日銀総裁が「積極的な金融緩和継続する必要」と述べたことで買いが膨らんだ。一方、米株が急落しており、ダウ平均が一時1000ドル超急落する中、ドル円も128円台半ばに再び戻す展開。 

 

●「円安」の先に待ち受ける「稼げないニッポン」最悪のシナリオ 4/24
原油・資源高に加え、止まらない円安
日本経済がジリジリと衰退している。原油・資源高に加え、急速な円安進行による輸入物価上昇。これに対して、何ら有効な手立てを持たない政府と日本銀行。だだ、本当の衰退はこれから始まる。そして、それは日本経済の根幹を揺るがす可能性を秘めている。
筆者の21年10月22日の『日本国民に大ダメージを与える「不景気中の物価上昇」が現実味を帯びてきたワケ』には、すでに現在起こっていることが予測されている。
原油・資源価格の高騰と円安により、輸入物価を中心に物価の上昇が始まり、物価上昇はこれから本番を迎えると予測した。
そして、この物価上昇は、「不景気の中の物価上昇(インフレ率の上昇)」という“スタグフレーション”につながる可能性があると警鐘を鳴らした。
毎月の企業間で売買する物品の価格水準を数値化した「企業物価指数」が日銀から発表されている。その中の輸入物価指数を見ると、21年6月に100を超えた指数は、その後急激な上昇が続いている。(「輸入物価指数」は、基準として2015年を100としている)
前年同月比で見ると、21年1月、2月は減少だったが、3月から増加し、4月からは2ケタ増が続いている。そして11月には前年同月比45.3%にまで到達し、13ヵ月連続で増加している。(表1)
ただし、「企業物価(輸入物価)」の上昇と、実際に国民の生活に直接的に影響を及ぼす「消費者物価」の上昇にはタイムラグがある。企業が売買をした物品が商品となり、店頭などで売られ、消費者の手に渡るというフローを辿るからだ。
では、消費者物価の動向はどうなのか。総務省発表の「消費者物価指数(生鮮食品を除く)」では、指数が100を超えるのは、21年3月を除くと、21年11月からだ。(「消費者物価指数」は、基準として2020年を100としている)
前年同月比の動きで見ると、21年9月から増加に転じ、22年3月まで7ヵ月連続で前年同月比で増加している。(表2)
つまり、企業物価の上昇から消費者物価の上昇までには、3ヵ月から6ヵ月のタイムラグがあることがわかる。となれば、企業物価、特に輸入物価の大幅上昇が続いている現在、消費者物価の上昇はまだまだ続くということになる。
1ヵ月足らずで約12%も円安が進んだ
当初、企業物価の上昇の主因は、原油・資源価格の上昇だった。しかし、ここ最近の急激な円安進行によって生じた輸入物価の上昇が徐々に影響し始めている。
21年1月にドル・円相場は1ドル=104円台だったが、11月には1ドル=115円を突破した。それでも、今の急激な円安進行に比べれば、緩やかな円安と言える。
22年3月に入ると為替相場は、1ドル=115円台から“棒上がり”に上昇し、4月19日の海外市場では1ドル=129円台まで円安が進んだ。
21年初から約24%、22年3月からは1ヵ月足らずで約12%も円安が進んだことになる。
この背景には、原油・資源高を受け、世界中でインフレ(物価上昇)圧力が高まり、米国がインフレ抑制のために金融引き締めに政策転換したことにある。
米国が利上げを実施し、日本は低金利政策を維持する。すると、日米の金利差が拡大し、運用に有利なドルを買って、円を売る動きが強まる。これが円安進行の原因となっている。
円安進行に対して、様々な要因を指摘する声があるが、円安進行は“見事なまでに”米国の長期金利(10年国債利回り)の上昇とリンクしている。
この円安進行に対して、黒田東彦日銀総裁は当初、「円安には日本経済にとって悪いことばかりではない」との見解を示していた。
ところが、22年3月以降の急激な円安進行に対しては“手のひらを返し”、4月18日の衆院決算行政監視委員会では、「急速な円安の場合は経済への影響はマイナスが大きくなる」と答弁している。
通常、中央銀行総裁や首相、財務相などの要人は、例えば「1ドルは105円程度が望ましい」というように、具体的な為替水準についてコメント(口先介入)するのは国際的なタブーとなっている。最大限言及したとしても、「急激な為替変動は望ましくない」といった程度で、基本的にはコメントしないものだ。
他国は自国通貨高なのに、日本は円安容認
実際、米国ではこの間の急激なドル高・円安に対して、要人発言はほとんど聞かれない。それには2つの理由がある。
一つは、ドル高が米国の輸入物価の下落につながり、インフレ抑制の一助になるためだ。100円の商品を1ドルで買っていたのが、ドル高により1ドルで120円の商品が買えるようになる。
もう一つは、為替水準に言及しなくとも、金融政策によって為替水準を動かすことができるためだ。
インフレ抑制のため、金融引き締め(利上げ)に舵を切った米国では、引き締め強化(利上げ幅の拡大)に対する観測が強まっている。つまり、再度の利上げや利上げ幅の拡大について要人が発言すれば、一段の日米金利差拡大との思惑から一段の円安進行へとつながり、為替水準に言及しなくとも、ドル高を演出することができる。
自国通貨高によるインフレ抑制を狙い、例えば欧州でも金融引き締めに関する要人発言が相次いでおり、さながら“自国通貨高競争”の様相を呈し始めている。
では、円安進行に対して、日本はどのように対処しているのかと言えば、まったく成す術がない状態だ。否、むしろ日銀は円安を容認する姿勢を示しているのだ。
米国の長期金利の上昇を受け、国内でも長期金利(10年国債利回り)が上昇し、日銀が金融政策のレンジとしている年0.25%に接近する局面が出ている。
これに対して日銀は、長期国債を無制限に買入れる「指値オペ」を実施している。つまり、日銀は長期金利の上昇を容認しないという姿勢を示しているのだ。
市場ではこれを「長期金利の上昇抑制=低金利政策の維持=日米の金利差拡大=円安進行の容認」と受け止めている。
円安はどこまで進むのか?
筆者は22年1月23日の『日銀は「利上げ」を完全否定するも、決して“鵜呑みにできない”3つの理由』で、黒田総裁は円安が進行しても、金融政策の変更には踏み込まないだろうと指摘した。
13年3月に就任し、大規模金融緩和策による低金利政策により、2%の物価上昇の実現を打ち出した黒田総裁だが、これまでに一度も2%物価目標を達成できずに、23年4月の任期を迎えようとしている。
従って、残された任期の中で、たとえそれが原油高・資源高、円安進行による物価上昇であっても、低金利政策による2%物価目標を達成できる“唯一のチャンス”だから、黒田総裁にとって金融政策の変更という選択肢はない。
となれば、問題は円安はどこまで進むのかということ。もはや、1ドル=130円は何の抵抗線にもならない。いずれ1ドル=130円を突破する円安となるだろう。次のターゲットは「02年の135.69円、ここを抜けると98年の1ドル=147.66円」となってくる。
企業物価の上昇から消費者物価の上昇にタイムラグがあるように、円安進行による輸入物価の上昇にもタイムラグがある。
つまり、円安進行による輸入物価上昇を通じた物価上昇は、まだまだ序の口で、これから本番を迎えることになる。
「稼げないニッポン」到来の恐れ
そしてなによりも筆者が危惧するのは、経常収支の赤字の影響だ。
経常収支は貿易・サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支の合計で、「国の儲け」を表す。
経常収支の中で大きな比率を占めるのは、貿易収支と第一次所得収支だ。貿易収支は輸出入の収支、第一次所得収支は海外への投資や運用により生じる利子・配当金等の収支となる。
貿易収支は直近22年3月まで8ヵ月連続で赤字になっている。貿易立国、特に輸出立国であるはずの日本が、主に原油高・資源高と円安進行の影響から輸入額が輸出額を上回り、赤字が続いている。(表3)
それでも日本は経常収支の黒字を続けてきた。貿易収支の赤字を主に第一次所得収支がカバーし、黒字を保ってきたのだ。
ところが21年12月に経常収支は3708億円の赤字に転落した。20年6月以来、1年半ぶりの赤字転落となった。これまでの経常収支の赤字転落は、単月のみのケースがほとんどだった。
しかし、22年1月の経常収支も1兆1964億円と大幅な赤字が続いた(2月は黒字転換)。貿易収支の赤字を第一次所得収支などでカバーすることができなくなったのだ。(表4)
本稿は財政問題を取り上げているわけではないので詳細は割愛するが、日本が対GDP(国内総生産)比で世界最高の政府債務を抱えても、財政破綻やデフォルトの危機に陥らない理由の一つとして、経常黒字国であることがあげられる。
経常黒字ということは、日本は海外への投資や運用により対外債権を潤沢に持っており、“稼ぐ力がある”ということ。この稼ぐ力があることが、日本の財政、円に対する信認につながっている。
しかし、経常赤字となれば、“日本は稼ぐ力がない”となり、財政や円に対する評価が低下し、危機感が台頭する可能性がある。つまり、円売り=円安、それも金利差で起こる程度の円安ではなく、危機的な円安が起こる可能性があるのだ。これが、筆者が経常収支の赤字を危惧する理由だ。
原油高・資源高と円安の進行に対しても、何らの打開策を持たない政府と日銀が、経常赤字が恒常化した時に有効な対応策を持っているとは到底思えない。日本経済の衰退はこれから本格的な危機状況を迎える可能性がある。
●50年ぶり円安の原因は 4/24
円レートが50年ぶりの円安になっている。50年前というと今のような完全変動相場制になる前の固定レートの時代で、1ドル=308円であった。現在の1ドル=130円近くがこの時代と同じ水準の円安だと言われてもピンとこないかもしれないが、「実質実効レート」で考えるとそういうことになる。「1ドル=130円」などというのは、単に円とドルの間の交換比率を示す「名目レート」である。「円の実力」を見るためには、ドルだけでなく、いろいろな通貨との為替レートの動きを平均して見て、その上で物価の動きを考慮に入れる必要がある。その結果、はじき出されるのが実質実効レートなのである。
実質実効レートは指数で表され、2010年を基準として100とすると、ピークの1995年には150台であったが、最近では65前後にまで下がっている。これは50年前とほぼ同じ。円の実力は、ピークの半分以下になったということになる。こうした動きの背景には名目レートが円安になっていることもあるが、近年の日本のデフレの影響も大きい。日本の物価上昇率がほぼゼロなのに対し、米国の物価上昇率は年平均2%程度。これが20年続くとみると、日米で50%近くまで物価の差が開くことになり、こうした日本の物価の相対的低下は実質実効レートを引き下げる。
円の実力が95年のピークの半分以下になってしまったのは、名目レートが80円前後から130円近くにまで円安になっただけではなく、何より、デフレで日本の物価や賃金が諸外国に比べ安くなったからなのだ。その結果、円の購買力は下がっているし、私たちの賃金の購買力も下がっている。要するに日本は貧しくなっているのだ。
これは構造的な要因によるものである。世の中では、これは「悪い円安」だ、いや「良い円安」だと、あたかも名目レートの変化が問題の根源であるような言い方をするが、名目レートは経済状況の原因というより、結果であるとみた方がよいだろう。これだけデフレが続くのに名目レートが円安になっていること、また名目レートが円安になっているのに日本の物価が上がらないこと。何より実質実効レートが下がり続けていることは、日本経済の構造的停滞の結果という面が大きい。小手先の為替レート対策で構造的な要因が是正されるわけではない。
そうは言っても、名目レートの円安は気になる。米国などでのインフレと金融政策の変化による金利上昇が円安を加速させているが、ここまで円安が進むとメリットよりもマイナス面が目につく。輸入原材料が円安でさらに高騰する一方で、それを価格に転嫁できないデフレ経済で多くの企業が苦しむ。「悪い円安論」の背後には、デフレ対策で進められてきた過剰な金融緩和をそろそろ見直す時期に来ているのではないかという見方があるだろう。海外での物価上昇の展開をみると、日本での金融政策の見直しもそう遠くないだろう。そうなれば名目レートの過度な円安にも影響が及ぶだろう。
●円安はスピード違反? なぜ大台目前に切り返し 4/24
加速した円安。3月初旬から4月20日までのおよそ1か月半で、およそ15円という「スピード違反」とも言える速度で進みました。しかし、1ドル=130円台という大台を目前に、円相場は逆に円高方向に切り返し。マーケットでいったい何が起こっていたのでしょうか?
指値オペで、さらなる円安を予想も…
4月20日の朝、その日は私が株や為替のニュース原稿を書くマーケット番の担当で、取材拠点に向かっている途中、スマホに速報が入りました。「1ドル=129円台に 20年ぶりの円安水準を更新」その日にはちょうど日銀が、指定した利回りで国債を無制限に買い入れる指値オペを実施することが想定されていました。前回、指値オペが実施された際には、市場で日米の金利差拡大が強く意識され、1日で2円程度の円安となっていました。それだけに、「きょうも円安が加速するかもしれない。忙しくなりそうだな」と覚悟しつつ、職場に到着しました。東京市場での取り引きが本格化した午前8時以降も円安の流れは変わらず、円相場は129円台の前半で推移しました。市場関係者に見通しを取材しても、やはり「指値オペも予想されるため、きょう130円台に到達することも十分考えられる」という意見が大勢でした。午前10時すぎ、日銀が指値オペの実施を発表。円相場のチャートの動きに目を凝らしましたが、いくぶん円安が進んだように見えたものの、前回のような勢いはありません。そして発表から30分もすると、円高方向に切り返し始めます。11時台には128円台、夜になって海外市場での取り引き時間帯になると、127円台をつける場面もあるなど「円高ドル安」方向の動きが大きくなったのです。事前の想定とは逆の動きで、拍子抜けとも言える展開でした。
「スピード違反」への警戒感も
なぜ、円相場はこのタイミングで切り返したのか?ある市場関係者は、投資の世界でたまに耳にする「Buy the rumor,Sell the fact(うわさで買い、事実で売る)」が働いたと説明してくれました。投資家にすれば「予想した動きを事実確認できて安心した。ここらで1回利益を確定しとこうか」という感じでしょうか。とはいえ日米の金利差の拡大は当面続くのだから、もっと利益が出るのを待ってもいいのに…。そう思ってさらに取材を進めると、最近の円安のスピードについて、市場の間でも警戒感が広がり始めていることも一因であることが分かってきました。指摘されるのは「投機筋の動き」です。海外のヘッジファンドなどが、「ドル高・円安のトレンド」がしばらく不変とみるや、大量の投資資金を投じそのトレンドの幅を一気に拡大させたのではないか。1か月半で15円近く円安が進んだのには、こうした投機筋による「円売りの仕掛け」があったという見方も出ています。短期的に利益を得ることにたける投機筋は手じまいも早いことも知られていて、「このところの円安はさすがにスピード違反ぎみだ。この辺で、いったん利益を確定した方がいい」という警戒感が投資家の間に広がったという分析が聞かれました。とはいえ、円相場を動かしている最大の要因「日米の金利差拡大」は、経済のファンダメンタルズの反映そのもの。円安が進みやすい構造に変わりはないという見方が依然として根強く、今後のマーケットの状況から目が離せません。
日銀のいまを示す言葉「マラドーナではない」
ところで、この取材の最中に、ある市場関係者がつぶやいた言葉がとても印象的だったので、ご紹介します。「いまの日銀は、マラドーナではない」マラドーナとは、言わずと知れたサッカーの元アルゼンチン代表で、チームをワールドカップ優勝に導いたディエゴ・マラドーナ氏のことです。かつてBOE・イングランド銀行の総裁を務めたマーヴィン・キング氏が、状況に応じて柔軟に金融政策を繰り出す中央銀行のあり方を、ドリブルでピッチを縦横無尽に駆け抜けたマラドーナ氏になぞらえ、「マラドーナ理論」と称したと伝えられています。本来は、複数の国家の集合体であるECB・ヨーロッパ中央銀行に比べて、1つの主権国家の1つの中央銀行であるBOEの方が金融政策に柔軟性を持ちやすいという意味で語られたそうですが、「金融緩和と円安」「物価上昇と景気下支え」といったジレンマに直面し、どちらにも動きにくい日銀の立場を言い当てているように感じました。
注目予定
4月27日から28日にかけて開催される日銀の金融政策決定会合。2日目の会合終了後、決定内容と物価上昇の見通しなどを示す「展望レポート」もあわせて公表します。黒田総裁が会見で、「強力な金融緩和を粘り強く続ける」としている金融政策の方向性や、「円安は日本経済全体としてはプラス」としている原材料価格高騰・円安などの影響について、どのように言及するかが注目です。
●ついに来た! 1ドル135円で日本は韓国・イタリアより貧しい国に 4/24
急激な円安のため、日本の国際的地位が急低下している。それだけでなく、輸入物価高騰を増幅し、国民生活と企業を圧迫している。円安に対する評価が変ってきたいまこそ、金融政策を基本から転換しなければならない。
1人あたりGDPで韓国に抜かれる?
急激な円安が進んでいる。しかも、他国通貨に比べて下落率が大きい。最近では、ロシアのルーブルより下落率が大きい(日本経済新聞4月8日)。4月20日には一時、1ドル129円台を付けた。
こうなっているのは、アメリカが金融緩和政策からの脱却を急ぎ、各国もそれに対して必死で利上げを行っているにもかかわらず、日本銀行は金利を抑えているからだ。
急激な円安のため、日本の国際的地位が大きく低下している。このまま進んで、1ドル=130円台になると、重大な局面が訪れそうだ。日本の一人あたりGDPが、韓国やイタリアに抜かれる可能性が高いのである。
まず韓国との関係を見よう。2021年においては、日本の1人当たりGDPは、韓国より15.7%ほど高かった(図表1参照)。
   図表1 1人あたりGDP(ドル)
ところが、2022年になって円安が進んだ結果、この状況がすでに大きく変っている。2022年4月12日のレートで計算すると、韓国との差は7.2%と、大幅に縮まっている。
円安がさらに進んで1ドル135円になり、ウォンのレートが変らないとすれば、日本の1人あたりGDPは、韓国より低くなる。
賃金や生産性などの指標では、日本はすでに韓国に抜かれている。それだけでなく、最も基本的な指標である一人当たりGDPでも抜かれることになる。つまり、豊かさを示すほとんどすべての指標において、日本は韓国を下回ることになるのだ。
G7中で日本が最下位に
台湾との間でも、似たことが起こる。2021年においては、日本一人当たりGDPは、台湾より21.9%ほど高かった。2022年4月12日のレートでは、この値が9.1%になった。1ドル135円になれば、台湾の値は日本とあまり変らなくなる。
最近の円レートの動向から見ると、1ドル135円は十分あり得る値だ。したがって、日本が韓国や台湾よりも貧しくなるという事態は、十分あり得ることなのである。
G7の中ではどうか? 2021年では、最下位はイタリアで、日本はこれより14.4%高かった。ところが、2022年4月12日のレートでは、この値が6.7%になった。1ドル135円になれば、イタリアの方が高くなる。すると、日本はG7の中で、もっとも貧しい国になる。
G7は先進国の集まりということになっている。そこにとどまれるかどうかの議論が出てきても、反論するのは難しいだろう。
アベノミクスの円安政策が日本を没落させる
アベノミクスが始まる直前の2012年、日本の1人あたりGDPは、アメリカとほとんど変らなかった。そして、韓国は日本の51.8%、台湾は43.2%でしかなかった(図表2参照)。
   図表2  1人あたりGDPの推移
それから10年たって、上記のように、この関係は大きく変ったのだ。
アメリカの1人あたりGDPは、日本の1.73倍になった。そして、すでに見たように、韓国と台湾の1人あたりGDPが、日本とほぼ同じになっている。アベノミクスがもたらしたものが何であったかを、これほど明確に示しているものはない。
企業の時価総額世界ランキングでも、日本のトップであるトヨタ自動車(第41位、2286億ドル)より、台湾の半導体製造会社TSMC(第10位、5053億ドル)や、韓国のサムスン(第18位、3706億ドル)が、いまや上位にある(2022年4月13日現在)。
日本の凋落ぶりは明白だ。
円安が物価上昇を加速する
円安は、日本の国際的地位を低下させるだけではない。現実の経済活動にきわめて深刻な影響を与えている。なぜなら、円安は物価上昇を増幅するからだ。
ウクライナ情勢を背景として、原油などの資源価格が世界的に値上がりしており、それが国内の消費者物価を高騰させている。円安が進めば、円ベースでの上昇率はさらに高まる。
4月12日に発表された輸入物価指数に、それがはっきりと現れている。3月の指数の対前月比は、契約通貨ベースでは1.0%であるのに、円ベースでは3.3%になっている。つまり、円安の進行によって、価格高騰率がが3.3倍にも増幅されているのだ。(なお、対前年同月比は、それぞれ、25.2%と33.4%)。
株価も、円安を歓迎せず、むしろ、円安で下落するようになってきている。輸入価格の高騰による原材料価格の上昇を製品価格に完全に転嫁できず、企業の利益が減少するからだ。
そして、物価は上がるのに賃金が上がらないので、国民の不満が高まる。
円安スパイラルの阻止が緊急の課題
すでに述べたように、急激な円安が進行しているのは、日銀が長期金利抑制の姿勢を強く打ち出しているからだ。このため、円安が円安を呼ぶというスパイラル現象が起きつつある。
しかし、金利抑制策は、日本経済に何のメリットも与えていない。むしろ、金融機関の経営を圧迫するなどネガティブな影響が強い。
こうした政策から一刻も早く脱却して、円安スパイラルを食い止めることが必要だ。日銀が通貨価値安定という中央銀行本来の使命に戻り、金利抑制策からの転換を明言すれば、事態は大きく変るだろう。
ただし、口先介入だけでは不十分かもしれず、為替市場への介入が必要とされるかもしれない。
為替介入には、アメリカに承諾を求める必要があるという意見があるが、自国通貨の価値を守るための介入に外国の許しが必要という考えは理解できない。
ただし、円高に向けての介入が容易でないことは事実だ。これまで行ってきたのは、円安誘導の介入だ。円を売ってドルを買うのは、簡単にできる(政府短期証券を発行して調達した円資金を用いて、為替市場でドルを買い入れる)。2000年頃には、総額35兆円を超える大規模な円売りドル買いの介入が行なわれた。
それに対して、円高介入は、外貨準備の範囲内でしかできない。だから、限度がある(2021年9月末における日本の外貨準備高は1.4兆ドル)。
日本でもようやく円安の評価が変ってきた
トルコや韓国は、通貨価値の下落によって国が破綻しかねない事態に直面した経験がある。そうした国では、自国通貨安に対する国民の危機感がきわめて強い。
日本人はそうした危機感を持っておらず、むしろ、自国通貨安を歓迎するという不思議な状況がこれまで続いてきた。
しかし、価格転嫁が不充分にしかできない現状で、やっと円安の本質が理解されるようになってきた。日本でも、通貨安が経済を破壊しかねないという認識が、日本でもようやく広まりつつある。
7月の参議院選挙では、物価問題が最大の争点となるだろう。そこでの議論を、バラマキ的な物価対策のレベルで終わらせてはならない。円安政策からの転換という本質的な問題が争点となることを期待したい。
●本当の「悪い円安」 4/24
ドル・円相場は歴史的な水準をあっさり上抜け、20年ぶりの高値圏に浮上しました。輸入インフレを招く「悪い円安」は続くものの、ある程度の水準で止まるでしょう。しかし、将来東アジアで緊張が高まれば、そんなレベルでは済まないのは言うまでもありません。
4月13日の取引でドル・円は上値メドとして意識されていた「黒田シーリング」の125円86銭を上抜け、2002年以来20年ぶりの高値水準に切り上げています。その後も心理的節目を次々に突破し、気づいてみれば130円が間近に迫りました。勢いづいた相場は、もはやテクニカル分析の目安も役に立ちません。投機的な取引のせいか、最前線の市場関係者でさえ予想をことごとく外す毎日です。
黒田東彦日銀総裁は「悪い円安」を意識したせいか、最近の円安について「かなり急速な変動」「マイナス面も考えないといけない」と発言。一見すると円安容認を改めたようにも理解できますが、「全体としてプラスとの評価は変えていない」とも述べ、その後の円売りを誘発する要因になりました。鈴木俊一財務相はドル・円の128円台到達の際、円安をけん制していますが、流れは変わりません。
といっても、米連邦準備理事会(FRB)がタカ派姿勢を弱めれば、米金利の失速とともにドル買いは一服するとみられます。また、黒田総裁が異次元緩和へのこだわりを捨てれば、過度な円売りは抑制されるはずです。「異次元」に固執しても、来年3月には任期を終えるので、こちらも時間の問題です。数カ月はドル高・円安が続き、現在のペースなら140円台も想定内といえるでしょう。
警戒しなければならないのは、ロシアのウクライナ侵攻で世界が戦時モードに入ったことです。日本も西側として対ロシア制裁に参加し、核保有国であるロシアと中国、北朝鮮に囲まれている現状に改めて気づかされます。日本嫌いの韓国を含めれば、東アジアでの日本の孤立は決定的です。日米同盟といっても、アメリカは自国に被害が及ばないよう中ロとの直接軍事衝突を避けているように見えます。
自民党内でも穏健派とされる岸田文雄首相(党総裁)が7月の参院選をにらみ、自衛力の強化を打ち出しました。日本維新の会は核共有や非核三原則の見直しを公約に盛り込む方針で、核武装を望む声を取り込もうとしています。ただ、軍事大国化すれば安心・安全でしょうか。周辺国の挑発がエスカレートすれば、かえって一線を超えるリスクが高まります。その際、孤立無援の日本の通貨を誰が買い支えるのでしょうか。
ロシアのように、戦争当事国は経済の悪化に伴う通貨安・インフレにさらされます。円はこれまで世界最大の債権国であることを背景に安全通貨とされてきましたが、これからはリスク通貨になる可能性も出てきました。外貨売り・自国通貨買い介入にも限度があり、円安は制御不能に陥らないとも限りません。国土を守るのと同じぐらい通貨の防衛が重要であることを、多くの政治家に認識してもらわなければならないでしょう。
●円安で漂う「円安恐慌」の雰囲気は、円安一服のタイミング 4/24
円安は一段と進み、米ドル/円は130円の節目直前まで迫った。
繰り返し指摘してきたように、円安の流れは雄大で、安易な修正はないから、円安終焉の願望は早く捨て去るべきである。
さらに、構造上の視点における重要な示唆として、日本の個人投資家の逆張りを問題視したのも正解のはずだ。
なぜなら、大幅な円安の進行が続いており、さらに加速してきた分、逆張り筋の踏み上げは推測されやすい。強いトレンドであるがゆえに、損切りを迫られた結果、一段とトレンドを強化したわけだ。円売りが円売りを呼ぶような展開自体も、筆者が繰り返し懸念を表明したとおりであった。
ここまでくると、「円安恐慌」といった雰囲気が漂う。ミセス・ワタナベたちがどれぐらいの損失をこうむったかは正確に把握していないが、円安はどこまで? といった質問が連日あちこちで聞かれ、今まで円安余地に非常に懐疑的な見方を示してきた、いわゆるプロや識者でさえ、君子豹変して大幅な円安ターゲットに言及するようになった。
もっとも、君子豹変といえば、一部ウォール街の面々の得意技と言える。この前110円、ひどい場合は100円といった円高目標を提示したばかりの者が、今は一転して135円とか150円といったターゲットを言い、円安に対する恐怖をあおる論調に躍起になっている。厚かましいというか、タフすぎるとしか言いようがない。
日本人「識者」の多くは、ここまで節操がないということはないが、円高予測だった方のほとんどが、円安方向へシフトしてきた。
そして「言い訳」を探すというか、現実味の乏しいロジックを持ち出す例が多数見られるようになった。これもまた問題ではないかと思う。
たとえば、ある方は強い円をメインシナリオとして展開してきたが、最近の円安進行に鑑み、一転して円安の危機を煽るようになった。理屈としては、「円安傾向にあるから日本の家計(1000兆円規模とされる円預金)が外貨買いに走る可能性が大きいから、さらなる大きな円安余地を作る」といった論調だ。
しかし、日本の家計と言えば、世界でもっとも保守的と言われ、長年ゼロ金利(事実はマイナス金利)の環境の中でも預金が大半のままであった。いくら円安傾向にあるとはいえ、リスクを極端に嫌う日本の家計の大半が外貨買いに走るとは、到底考えられない。
筆者が処女作を出した2008年前半まで、日本ではスワップポイント(スワップ金利)を享受する円キャリートレードが流行っていたが、その円売りの全盛期でも日本の家計の総額からみれば微々たる規模に留まっていた。したがって、これからそんな日本の家計の大半が外貨買いに走るといったロジックは飛躍しすぎで、現実的でないことは明らかである。
円安の進行が世界中で話題となっているため、そろそろ円安一服か。
日本国内のみではなく、円安の進行が世界中で話題となり、中国メディアにも大きく取り上げられた。そのせいか、普段まったく為替問題に興味のない中国人の友人にまで、最近、円の行方を聞かれるようになった。円はどこまで安くなるかを知りたがっている模様だ。
経験則でいえば、これは円安一服の前兆であり、円安方向は変わらないが、少なくとも目先、円安一服のタイミングが近づいているのではないかと思う。
もっとも、130円や132円の上値打診の可能性は、目先、円安一服の可能性が大きいからと言って消えるわけではなく、なお残るだろう。
なにしろ、米ドル/円の強気トレンドが維持されており、「買われすぎ」と思われるがゆえに、さらに買われる展開になりやすいから、頭打ちのサインが本格的に点灯しない限り、性急な判断を避けたい。
さらに、この前の本コラムで説明したように、年間平均変動幅の15円〜20円で計算すると、130円や132円の打診があっても「正常範囲」なので、行きすぎた円安とは言い切れないかもしれない。
年間平均変動幅の視点をもって円安を検証すると、いろいろとおもしろい見方ができる。
市場参加者が円安に恐怖を感じるのは、変動幅ではなくスピードと水準のせい
前述のように、そもそも年間平均変動幅を超えていないのに、なぜ今、市場参加者は円安に対し、恐怖感に支配されるのだろうか。明らかに、変動幅ではなく、円安のスピードと今の水準が恐怖感につながっているはずだ。
言ってみれば、3月から円は一本調子の急落を演じてきたから、「スピード違反」と言われても仕方がないと思う。
さらに、米ドル/円は2015年の高値を超えたため、円安に危機感を抱くのも理解しやすいかと思う。
2011年の円の高値から、より大きく、より長く続く円安のメイントレンドが形成されていると、市場参加者、全員の目に映っているから、相場の自己実現性から考えて、どうしても円安に対する恐怖に陥りやすいという市場心理が推測される。
だからこそ、逆説的なロジックとなるが、猫も杓子も円安恐怖症にかかっているから、円買いを持つ者は損切り、円を売りたい者はすでに相場に参入したはずだ。
言い換えれば、恐怖症の蔓延は投資家の行動を促し、また、その行動の結果が今のレートに現れているから、円安恐怖とか、円安パニックとかが市場の話題なってから、恐怖を覚えたりパニックになったりし始める者がいたとしたら、かなり鈍感というか、出遅れというか、相場の本質をわかってないと言える。
このようなロジックは、実は米ドル全体にも通用する。
ドルインデックスは連続して上昇してきたゆえに、米ドル高がこれからさらに続くと思われる。しかし、よく冷静に考えてみればわかるように、米ドル高の基礎は米利上げの継続、また、大幅利上げの可能性にあるが、その大半はすでに今のレートに反映されており、織り込まれている可能性が大きい。
これからドルインデックスが大幅に上昇するには、やはり、現在想定される米大幅利上げ以外の材料が必要だ。
そうでないと、相場自体が材料の後を追うものとなり、本質的にそのようなことは決してない。
なぜなら、市場参加者はすでに発生した材料をもって相場に参入するのではなく、その材料に関する判断や思惑、さらに、これから出る材料に関する推測や思惑をもって相場に参入しているものである。
それこそ相場の真実であり、このことを悟れなければ、一生、相場から利益を取れない。そのあたりの話は、また市況と合わせて説明していきたい。市況はいかに。 

 

●日銀会合後も円安進行か、政策の微修正では止まらないとの声 4/25
外国為替市場のドル・円相場は、日本銀行が今週開く金融政策決定会合の後も円安基調が続くとみられている。金融政策は据え置き予想が大勢で、仮に微修正があっても円安の流れを変えるのは困難との声が市場関係者から聞かれる。
ブルームバーグ調査によると、エコノミストの9割が28日の決定会合で現状維持を予測。政策金利のフォワードガイダンス(指針)を引き締め方向に修正するとの予想は1割にとどまった。
大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、日米金利差と日本の貿易赤字を材料にするドル高円安は「米国要因が落ち着くまで簡単には終わらないだろう」と指摘。米国がインフレ抑制に向けて連続利上げとバランスシート縮小で対応していくことを考えると、「日銀が小手先の政策修正でやったふりをした所でその差は縮まらない」と言う。
日銀の黒田東彦総裁は22日、ニューヨークのコロンビア大学で講演し、物価上昇率はエネルギー価格の上昇を主因に2%程度となる可能性があるとしながらも、そのマグニチュード、広がり、背後にある経済状況は米国と大きく異なると言明。日銀は物価目標の安定的な実現に向けて「現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていく必要がある」と述べた。
シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは「日銀が今会合で円安対応のための政策変更を緊急避難的に実施する可能性は低い」と指摘。予想通り政策が据え置かれれば「一段の円安ドル高が進行する可能性が高い」とみる。
黒田総裁は18日の国会答弁で、為替が経済に与える影響について「非常に大きな円安とか、急速な円安の場合はマイナスが大きくなる」と述べる一方で、円安が全体としてプラスという評価は変えたわけではないと語った。みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジストは「記者会見で円安は全体として日本経済にプラスという認識が維持されれば、円売り安心感が再燃するだろう」と言う。
鈴木俊一財務相はイエレン米財務長官との21日の会談後、「直近の円安が急激であることを数字で示した」と述べた。みずほ証の山本氏は「当局からの円安懸念発言が続いているが、目先の実弾介入につながるものではない」と指摘。主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議やG20でも円安懸念は共有されなかったため、ドル・円相場は「米金利上昇とともに再び上昇しやすくなっている」と語る。
ドル・円相場は20日に一時1ドル=129円40銭と20年ぶりの円安水準を更新。その後は一時127円台まで戻したが、週末22日のニューヨーク市場で再び129円台を付け、足元では128円台後半で推移している。SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは「予想された通りG20で円安についての特別な文言はなく、ドル・円は再び129円から130円を試してゆく可能性がある」とみている。
●日経平均続落、終値514円安の2万6590円 4/25
25日の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前週末比514円48銭(1・90%)安の2万6590円78銭で終え、12日以来の安値となった。前週末の米株式相場の大幅安を受け、東京市場でも運用リスクを回避したい投資家の売りが膨らんだ。中国経済の減速懸念も意識された。午前には下げ幅が600円を超える場面があった。
中国では、新型コロナウイルスの感染が広がる上海でロックダウン(都市封鎖)を再び強化する動きがあるほか、北京でも感染者増に伴う検査拡大が伝わる。中国のコロナ感染拡大が景気を下押しするとの警戒が強まり、機械や鉄鋼、海運など景気敏感株の売りにつながった。
日経平均が2万6500円を下回る場面では、主力銘柄の一部に値ごろ感から買いが入り、下げ渋る場面があった。ただ、米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引き締めに動くとの見方が根強く、米株価指数先物は日本時間25日の取引で軟調に推移した。日本株市場でも投資家が積極的に運用リスクをとる動きは限られた。
午後には前期決算の下方修正を発表した清水建が大幅安となり、大林組や鹿島などゼネコン株の売りに波及した。コスト負担増が企業収益を圧迫するとの懸念も投資家の買い手控えにつながったようだ。
東証株価指数(TOPIX)は続落した。終値は前週末比28・63ポイント(1・50%)安の1876・52だった。午前には下げ幅が一時2%を超えた。
東証プライムの売買代金は概算で2兆4584億円。売買高は10億1350万株だった。東証プライムの値下がり銘柄数は1554と、全体の8割強を占めた。値上がりは250、変わらずは34だった。
ソフトバンクグループとファストリの下げが大きく、2銘柄で日経平均を208円ほど押し下げた。日産自やINPEX、川崎汽、ダイキンが下落した。ANAHDやJフロント、資生堂も安かった。一方、日ハムや味の素が上昇し、ヤマトHDやNTTも高かった。
●東証大幅続落、514円安 米金融引き締めを懸念 4/25
週明け25日の東京株式市場の日経平均株価(225種)は大幅続落した。終値は前週末比514円48銭安の2万6590円78銭。米連邦準備制度理事会(FRB)による急速な金融引き締めが米景気を過度に冷やすとの懸念が広がり、ほぼ全面安だった。
東証株価指数(TOPIX)は28・63ポイント安の1876・52。出来高は約10億1300万株。
米国ではFRBのパウエル議長が積極的な金融引き締めを検討する方針を示したことから、前週末の米株式市場が大幅下落。東京市場は朝方からこの流れを引き継いだ。
大型連休を控え、当面の利益を確定する売りが出たことも相場の重荷になった。
●「円安」が止まらない日本…1ドル=150円の大暴落で起こる恐ろしい現実 4/25
すでに半世紀ぶりの円安水準に落ち込んでいるのだという。このままでは海外旅行にさえ行けず、外国人に買い叩かれるだけの「貧しい国」になってしまう。生活を守るために、できることはまだある。
富が海外に流出していく
ロシアによるウクライナ侵攻以来、日本円の暴落が止まらない。4月13日には1ドル=126円を突破。ロシアの通貨ルーブルは侵攻前の水準に値を戻しつつあるが、円は対ドルで約9%も下落したままだ。
実に約20年ぶりの円安水準だが、事態はさらに深刻だ。経済学者で多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏が解説する。
「国際決済銀行が発表する『実質実効為替レート』は円の総合的な実力を示すものですが、これが約50年ぶりの低水準になっています。つまり、日本円は'70年代前半と同じくらいの実力しかないということです」
かつては「有事の円買い」と言われ、市場の危機が高まると円が買われたものだった。リーマンショックや東日本大震災のときでさえ、円高に振れた。日本円は「安全資産」として存在感を際立たせていたのである。
しかし、ウクライナへのロシアの侵攻が長期化しているにもかかわらず、円は売られ続けている。なぜか。みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏がこう分析する。
「現在の円安には二つの理由があります。一つは米FRBが利上げをしているから。日銀が金利上昇を抑え込んでいる日本と米国の金利差が拡大し、円売り・ドル買いの流れが続いています。
もう一つが日本の貿易赤字が拡大していることです。資源の乏しい日本はその大半を輸入に頼っていますが、ウクライナ侵攻もあり、エネルギー価格が高騰しています。燃料や原材料を高い値段で海外から購入せざるを得ないのです」
貿易赤字は今年1月に2兆1911億円、2月に6682億円となり、日本の富は海外へどんどん流出している。
「財務大臣が円安に対して『急激に変動することは望ましくない』と牽制しましたが、日銀総裁は金融緩和の継続を明言しており、何の意味もありませんでした。1ドル=126円を明らかに超えれば、1ドル=150円程度の円安は十分にありえます」(為替ストラテジストの高野やすのり氏)
現在の円の実力が'70年代前半と同程度であることは前述した。これが1ドル=150円にまで大暴落すれば、1ドル=360円の固定為替相場制だった時代と同じくらいの実力へとさらに低下していくという。
シグマキャピタル・チーフエコノミストの田代秀敏氏が言う。
「それはつまり、私たちの生活が、'70年代初頭の水準に引き落とされてしまうことを意味します。当時、海外旅行ができたのは、一流のプロ野球選手や芸能人など一握りの人だけでした。
いまはコロナ禍で海外に行けないだけと思っているかもしれませんが、コロナ禍が明けても、一般人は物価が高すぎて海外に行けないという事態になっているかもしれません。
仮に行っても、現地で普通の食事をすることすら高く感じるはずです。たとえば、米国のマクドナルドのビッグマックは5・81ドルですが、1ドル=150円で円換算すれば、871・5円。国内での価格は390円ですから、単純計算で約2・2倍です。海外で気軽にファストフードを食べることすらできない、そんな惨めな時代になってしまうのです」
それでも'70年代当時の日本は若者も多く、明日はもっと成長していくという希望が社会にあった。インフレと同時に、賃金は上昇していた。
「米国では、3月の消費者物価指数が8・5%の伸びを見せるなど歴史的なインフレが続いています。それと同時に賃金も上がっている。ところが、今の日本ではまったくと言っていいほど、賃金が上がっていません。これ以上、円安が進めば、日本人の購買力は諸外国に比べてどんどん下がっていく」(唐鎌氏)
日本人にとって物価が高くなっても、外国人にとって円安の日本はただの「物価が安い国」だ。
円の大暴落と原油価格の高騰は止まらず、物価が急激に上昇していくにもかかわらず、日本人の収入は増えない—。あまりにも暗い未来予測を目前にできることは円安とインフレに強い銘柄に投資し、少しでも資産を守ることだ。
●1ドル=150円の大暴落に備える「円安」と「インフレ」に強い日本株 4/25
ロシアによるウクライナ侵攻以来、日本円の暴落が止まらない。4月13日には1ドル=126円を突破。ロシアの通貨ルーブルは侵攻前の水準に値を戻しつつあるが、円は対ドルで約9%も下落したままだ。
実に約20年ぶりの円安水準だが、事態はさらに深刻だ。前編記事『「円安」が止まらない日本…「1ドル=150円」の大暴落で起こる恐ろしい現実』では円安の影響で衰退する日本経済と、このままそれが加速し1ドル=150円になった際に起こる現実をお伝えした。
ではそんな事態に備え、いまから資産を守るために何をすればよいのか。専門家に詳しく聞いた。
電気代も電車賃も上がる
日本人の財布に追い打ちをかけるのが、資源価格の高止まりだ。
「ガソリンはいま政府が1リットルあたり25円を上限に補助金を出しているため、1リットル174円程度で済んでいますが、補助金がなければ200円近いわけです。さらに円安が進み、1ドル=150円という水準になれば、1リットル240円程度にまで上昇するでしょう。
しかしこれで終わらない。原油や液化天然ガス(LNG)は長期的に上昇傾向にあるからです。いまは1バレル=100ドル程度の原油も、戦争の長期化で150ドルに近づくことが懸念されています」(経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦氏)
ウクライナ戦争前、世界は地球温暖化対策のための「脱炭素」一色だった。将来的に化石燃料の使用が減少するなかで、原油や石炭、LNGをすぐに増産する資源国はほとんどない。化石燃料の供給が増えないのに、ウクライナ戦争の影響で需要は急増しているのだから、エネルギー価格が上がるのは当たり前だ。
「原油が1バレル=150ドル、為替が1ドル=150円になれば、電気料金のさらなる値上げは確実です。たとえば、東京電力エナジーパートナーの標準家庭のモデル料金は8359円ですが、1万円を超えるのは時間の問題。1万5000円に迫っていくでしょう。
公共交通機関の値上げも始まります。山手線の初乗り運賃は140円ですが、これが200円になり、現在は約1万4000円の東京から新大阪までの新幹線代が2万円台になったりすることもありえます」(藤氏)
世界中に買い叩かれる
日本人にとって物価が高くなっても、外国人にとって円安の日本はただの「物価が安い国」だ。
「今後は日本の不動産、たとえば住環境のいい都内の一等地の物件や、北海道のニセコなどの有名リゾートのスキー場などは世界中の投資家がバンバン買っていくでしょう。
高度な技術を持つ中小企業なども簡単に買収されるようになって、企業防衛もできなくなる。今回の円安は限度を超えており、日本経済の衰退を加速させる」(慶應義塾大学ビジネススクール准教授の小幡績氏)
円の大暴落と原油価格の高騰は止まらず、物価が急激に上昇していくにもかかわらず、日本人の収入は増えない—。あまりにも暗い未来予測だが、できることはある。円安とインフレに強い銘柄に投資し、少しでも資産を守ることだ。
今回、6名の識者に円安とインフレに強い銘柄を推奨してもらったが、そのうち4名が挙げたのがプラント建設大手の日揮ホールディングスだ。
「現状で欧州各国はまだロシア産LNGの輸入禁止に踏み切っていませんが、将来的にロシア以外で代替エネルギーを確保しようと躍起になっています。
そうなると、世界各地でLNGプラント建設の需要が高まる可能性がある。日揮ホールディングスはすでに4月に入って、台湾や米国でLNG基地の拡張工事や設計を受注していますし、今後も期待できます」(投資情報会社ラカンリチェルカ会長の村瀬智一氏)
世界中で資源や穀物を買い集め、国や企業に売って儲ける商社株にも注目が集まる。
「燃料や鉱物の権益を持つ三菱商事も悪くないですが、安定需要のある食料品に強い丸紅も忘れてはいけません。世界有数の小麦の産地であるウクライナが戦場になったことで、穀物価格が上昇していますが、丸紅は備蓄を確保しており、含み益は大きい。
穀物価格の上昇は、世界中で農業の活性化を促進します。農業機械の需要も拡大するため、農機メーカーのクボタにも注目です。同社の農機は東南アジアやインドで販売好調です」(ちばぎん証券元顧問の安藤富士男氏)
絆アセットマネジメント代表の小沼正則氏がポイントに挙げるのは「価格転嫁」だ。たとえば、調味料で国内最大手の味の素は、原材料の値上がりに対応するため、6月1日から出荷価格を引き上げると発表している。
「すでに海外では値上げを実施し、業績を改善させています。国内でもトップシェアを誇るため、価格に転嫁しても消費者が離れにくい。今期は4年ぶりに過去最高益を更新する見通しです。
日本製鉄も鉄鉱石やエネルギーなどの価格上昇に対応するため、いち早く製品価格を値上げしました。その結果、前期324億円の赤字から今期は5200億円の黒字に転換する見通しです」
インフレなどの景気動向に左右されにくい「ディフェンシブ銘柄」を挙げたのは松井証券シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏だ。
「景気が悪くなったからといって、携帯電話やインターネット通信などの利用を控えることはあまりありません。そのため、通信セクターは物価が上がっても需要が減りにくいディフェンシブ銘柄の典型とされます。
NTTやKDDIは業績も安定しているので、人気を集めるでしょう。予想配当利回りも3%前後で配当収益も見込めるので、長期的に保有するのがおすすめです」
戦争は長期化する見通しだ。左表の銘柄も参考に、資産防衛のために株式投資も考えてほしい。 
●安倍元首相 “円安は日本経済にプラス” 日銀の措置 支持を強調  4/25
急速に進む円安をめぐり、自民党の安倍元総理大臣は、今の水準は日本経済にとって懸念ではなくプラスになると指摘したうえで、日銀が金利の上昇を抑え込むために実施している措置を支持する考えを強調しました。
自民党の安倍元総理大臣は、25日開かれた党の議員連盟の会合であいさつし、円安が急速に進んでいることについて「今の水準で右往左往する必要は全くない。日本のように輸出の工業力があり、外国からの観光客が再び戻ってくれば、円安は、日本にとって間違いなくプラスの環境になる」と指摘しました。
そのうえで「金融政策を為替に活用しないことが基本的な考え方であり、円安に金融政策で対応することは間違いだ。金利を上げて経済を冷やせば、スタグフレーションに入り、経済が非常に惨めになることは明らかだ」と述べ、日銀が金利上昇を抑え込むために実施している措置を支持する考えを強調しました。

 

●1ドル130円水域 何が円安をもたらしているのか  円安の背景に貿易赤字 4/26
円安への関心が高まっている。為替レートは、基本的には通貨の需給関係で決定される。いわゆるドル円レートで考えた場合、円に対する需要が強ければ円高になるし、ドルに対する需要が強ければ円安になる。こうした通貨の取引は実需取引と投機取引に分かれるが、そのうち実需取引は、さらに経常取引と資本取引に区別される。経常取引とは、モノやサービスの輸出入に、海外との利子や配当金の受払、海外援助の受払などを含めた取引のことであり、これらの経常取引を束ねた統計が、「経常収支」となる。
経常収支が黒字だということは、企業が海外から得た外貨の総額が、企業が海外向けに支払う外貨の総額よりも多いということを意味している。日本の企業は獲得した外貨を外国為替市場で売却して、円に換える必要がある。経常収支が黒字であれば、円の需要が強まるため、円高が進むことになる。その逆で、経常収支が赤字であれば円安が進むことになる。
   図表1 日本の2021年度の貿易収支
経常収支の中でも重要なのが貿易収支である。貿易取引には必ず通貨の売買が伴うので、為替レートに与える影響が大きいからだ。財務省が4月20日発表した2021年度の貿易統計速報によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は5兆3749億円の赤字と過去4番目の赤字幅を記録、このことが2021年度に進んだ円安トレンドのベースにある(図表1)。
なぜ貿易黒字への転換は「難しい」のか
貿易黒字に転換するためには、輸出を増やすか輸入を減らすか、その両方を進める必要がある。以前の日本なら、円安時にドル建ての価格を引き下げることでアメリカ向けの輸出が増えた反面、輸入が減ったので貿易収支が改善した。しかし現在の日本では、生産拠点の海外移転が進んだ結果、かつてほど完成品を作っていないため円安でも輸出が増えにくい。他方で、輸入を減らすことも難しい。特に難しいのが、石油やガスといった鉱物性燃料の輸入を削減することだ。再び2021年度の貿易統計速報を見てみると、鉱物性燃料の輸入額は19兆8001億円と輸入総額91兆2354億円の21.7%を占めていた。2020年度の鉱物性燃料の輸入額は10兆5878億円であるから、1年間で倍近い伸びだ。
鉱物性燃料の輸入額が急増した最大の理由は、価格の急騰にある。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界景気の悪化を受けて、石油やガスといった鉱物性燃料の価格は2020年に急落した。しかし世界景気の回復や産油国の協調減産を受けて、2021年に急騰した。その結果、日本の鉱物性燃料の輸入額も急増を余儀なくされたかたちだ。日本の場合、そもそも鉱物性燃料に乏しいことに加えて、2011年の東日本大震災以降、原子力発電の多くを停止したため、火力発電への依存度が高まっている。石油やガスの価格が高騰すれば、貿易収支はすぐに赤字化する構造になっている。円安の議論の中で原発の再稼働が語られる背景には、このような日本の貿易収支の特徴がある。
EUでも貿易赤字が定着へ
またヨーロッパでも、日本と同様に貿易赤字が定着しつつある。欧州連合(EU)27カ国のうち、統一通貨ユーロを導入している19カ国をユーロ圏と呼ぶ。そのユーロ圏の2022年1月の貿易収支は3カ月連続で赤字となり、貿易赤字が定着しつつある(図表2)。その理由も日本と同じで、石油やガスの輸入額が2021年以降に急増していることにある。特にEUの場合、主要なエネルギー源である天然ガスの輸入の約半分(欧州委員会によると2021年時点で45.3%)をロシアに頼っていた。それが主にスポット契約(必要に応じてその都度行われる契約)で行われていたため、天然ガスの価格高騰の影響を強く受けることになった。とはいえ、これはあくまで2022年1月までの話であることに留意したい。2022年2月24日、ロシアはウクライナに軍事侵攻した。この事態を受けて欧米を中心とする国際社会は、ロシアに対する経済・金融制裁を強化した。さらに欧米各国は、安全保障上の理由からロシア産の鉱物性燃料の利用を削減する方針を相次いで表明した。EUの場合は2030年までにロシア産の鉱物性燃料の利用をゼロにする方針になっている。
   図表2 ユーロ圏の貿易収支
EUは鉱物性燃料のそもそもの利用量の削減と、液化天然ガス(LNG)の輸入量の増加で脱ロシア化を図ろうとしている。しかしタンカーを用いたり加工のプロセスが必要となったりする分、LNGの輸入コストはパイプラインを用いるロシア産天然ガスよりも高くなる。このことはユーロ圏の貿易赤字を定着させる方向に働き、ユーロ安を促す。それだけではなく、鉱物性燃料以外の多くの原材料、例えばEUが普及を進めたい電気自動車(EV)の生産に不可欠なニッケルなどの原材料などについても、国際社会による経済・金融制裁に伴いロシアからの供給が減ることを睨んで価格が上昇している。こうしたこともまた、ユーロ圏の貿易赤字を定着させる要因になると考えられる。
コストの上昇局面ではデメリットが大きい通貨安
もちろん、為替レートは経常取引だけで決まるものではない。特に、各国の中央銀行間の金融政策の温度差(金利差)を反映した資本取引(特に証券投資)や投機取引(膨大な資金を投入して短期的に利ざやを稼ぐ取引)は、為替レートを大きく左右する。3月から円安が急速に進んだ最大の理由は、アメリカの利上げで資本取引や投機取引が増えたことにある。とはいえ、為替レートを考えるうえで、経常収支、特に貿易収支は最も重要な要素となることに変わりはない。通貨の取引はあくまで経常取引が基本であるため、貿易黒字が潤沢であれば、金利差の拡大で資本取引や投機取引が増えても、通貨安はそれほど進まないものだ。しかし貿易赤字であれば、通貨安に対する歯止めが利かなくなってしまう。本来、通貨安や通貨高にはそれぞれメリットやデメリットがあり、そのどちらが勝るかはその国の経済の構造によって変わるものだ。しかし現状のように、石油やガスだけではなく、さまざまな原材料のコストが上昇している局面では、通貨安ではメリットよりもデメリットの方が勝る。つまり、インフレの加速につながるわけだ。
円安の長期化が「コストプッシュ・インフレ」を進行させる
円安であれば、海外から輸入するときのコストが増える。1ドル100円だったモノを1ドル150円で輸入すれば、コストは1.5倍だ。コストが増えた分だけインフレが進むことを「コストプッシュ・インフレ」という。円安が長期化すれば、このコストプッシュ・インフレが進み、われわれの生活に悪影響が及ぶことになる。インフレが加速しても、それ以上に所得が増えるなら問題はない。しかしそのためには、経済が堅調に成長している必要がある。景気が低迷したままでは、十分な賃上げは望めないからだ。そうした中でインフレだけが加速すれば、所得は実質的に目減りしてしまうことになり、そのことがまた景気の低迷につながってしまう。2022年3月のユーロ圏の消費者物価(総合指数)は前年比7.5%上昇と統計開始以来の高水準となっている。また同月の日本の消費者物価(同)は同1.2%上昇と、ユーロ圏に比べればまだ低いが、着実にインフレは加速している。日銀のインフレ目標である2%(ただし生鮮を除くコアベース)を超える日も、そう遠くはないかもしれない。今後はロシアによるウクライナ侵攻の影響から、石油・ガス価格の高止まりが予想される。
そのため鉱物性燃料の使用量を削減でもしない限り、日本で貿易収支が黒字化する展望は描きにくい。もちろん、為替相場は変動を繰り返すものだが、このままでは円安トレンドが中長期的に定着する可能性が高いのではないだろうか。
●「悪い円安」論に違和感、金融政策とのリンクは危ない道に 4/26
「悪い円安」という言い回しが、このところマスコミ報道で多用されているように思う。もっとも、筆者は証券会社に籍を置き、金融市場参加者向けを含む各種媒体を通じて新たな情報を時々刻々追っているので、そのように感じるだけなのかもしれない。
「普通の人」から遠い存在の悪い円安
そこで、新聞記事検索ツールを用いて、今年に入ってから4月24日までを対象に、「悪い円安」という表現を含む記事の数を調べてみた。
すると、最も多かったのは日本経済新聞の36(朝刊32・夕刊4)。日経は電子版にも掲載記事が57あった。一方、経済ニュースの比重が日経よりも低い全国紙の場合、ここまでは多くない。産経が24と多めだが、あとは毎日が8、朝日が6、読売が5となっている。国内2大通信社では、時事が17、共同が7。NHKニュースは4。ちなみにロイターニュースは17である。
このように見てみると、「悪い円安」というコンセプトは、日ごろから経済の前線で戦っているビジネスパーソン、なかんずく金融市場関係者の間では相当ポピュラーだが、経済情報との接点が日常的にさほど多くない一般の人々の間では、あまり知られていないと考えられる。
物価高の「主犯」は日銀と考える人々から怨嗟(えんさ)の声が上っている、というような話は全く聞こえてこない。「普通の人々」の1人と言えそうな知人に尋ねてみたところ、海外旅行に行く機会がコロナ禍でほぼなくなっていることが、為替に関する情報への関心度合いを相当低くしているようである。
白川前総裁の指摘
さて、その「悪い円安」である。ドル/円相場が急速にドル高・円安ドル高に動いて一時129.43円をつける過程で、さまざまなモノの値上げラッシュの原因として、この相場水準は「悪い」という趣旨の報道が多くなった。
だが、そうした空気が広がる中でも、冷静な見解を口にする識者の姿も散見された。筆者が最も注目したのは、かつて金融危機後のドル安・円高急進行への対応に苦しんだ経験がある、白川方明前日銀総裁の発言内容である。
時事通信が4月11日に配信したインタビュー記事の中で白川氏は「円高も円安も『良い』『悪い』で評価する議論には違和感を覚える。為替レートと金融政策を直接結び付けているように感じられるからだ」と述べた。筆者のみるところ、真実を突いた発言である。
さらに白川氏は「議論すべきは、金融政策が持続的な成長を脅かすバブル経済をはじめとするさまざまな不均衡を生み出していないか、といった幅広い点検だ」「物価目標であれ為替レートであれ、そこにフォーカスした議論は判断を誤る」とも述べていた。
ドル/円相場のある水準が日本経済にとって、メリットとデメリットの差し引きで「良い」か「悪い」かがすぐわかるような計算式は、どこにも存在しない。経済主体ごとに良し悪しは変わってくるはずであり、たとえば129円という水準は、自動車など輸出関連企業や、外貨建てで配当される海外収益の比重が高いグローバル企業には「良い」水準である可能性が高い。
その一方で、同じ相場水準は、ドル建ての原油など資源の輸入契約を多く抱えている輸入関連企業にはネガティブだろう。家計にとっては、身近な食品などの値上がりにつながるため総じてネガティブなのだろうが、為替予約をつけていない外貨建て運用を大きな金額で行っている場合は少数派ながらポジティブということも考えられる。
妥当でない円安副作用と金融政策のリンク
企業物価指数の上昇率が足元でかなり高くなっているのは、明らかに「資源高」が主因である。3月の輸入物価指数を見ると、契約通貨ベース(多くの国際商品の場合はドル建て)の上昇率が前年同月比プラス25.2%であるのに対し、為替相場の影響が加味されている円ベースでは同33.4%。大まかに言えば、前年同月と比べた場合の輸入物価上昇の4分の3は資源高によるものであり、残りの4分の1だけが円安要因である。
なお、輸出物価指数を見ると、契約通貨ベースが同7.9%であるのに対し、円ベースでは同13.1%であり、輸出関連企業にかなりの円安差益が生じていることもうかがえる。
日銀短観(企業短期経済観測調査)3月調査で、輸出企業の2022年度事業計画の前提となっている為替相場は、ドル/円が111.01円、ユーロ/円が128.04円だった。足元の市場実勢に照らし合わせると、大幅な為替差益が見込まれる。そうした事情があるからこそ、円安に対して日経平均株価が株高で反応する場面が、引き続き見られているのだろう。
この問題にはほかにも論点がいくつかあるのだが、いずれにせよ、このところ急ピッチで進行した円安は「悪い」と定義付けた上で、日銀に金融政策変更でそれを押し返すように求める議論の根拠は、かなりあいまいで、不確かなものである。
さらに白川氏が示唆している通り、為替相場に事実上連動させるかのような金融政策運営は、不安定なものにならざるを得ず、日銀のありようとして明らかに望ましくない。
為替相場のある特定の水準が「良い」「悪い」いずれなのかの判断を無理に下そうとすることや、為替政策は政府(財務省)が所管しているにもかかわらず日銀に引き締め方向の政策対応を安易に求めることは、いずれも妥当ではないという見解を、筆者は維持している。
●20年ぶり円安、日本企業の勝ち組・負け組探る 4/26
ドル・円相場が一時1ドル=129円台と20年ぶりの円安水準に振れたことで日本の企業業績にどのような影響を及ぼすのか、投資家にとって銘柄選別の重要な判断材料の一つに浮上している。専門家の声を基に勝ち組・負け組企業を探ると、従来から円安恩恵、逆風業種とみられてきた以外にも顕著な影響が出そうな企業の姿が見えてくる。
野村証券の池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストは、円安は「海外需要や売上比率の高いセクターにポジティブ」と分析した上で、「円安で業績が後押しされる面があり、企業がそれに甘えてしまい、体質改善しないと次がしんどくなる」とみている。
同証によると、円安の継続によって業績面でプラスの影響を受けやすい業種は電子材料や非鉄金属だ。半導体ウエハーの信越化学工業やSUMCO、半導体用フォトレジストの東京応化工業に加え、スマートフォン向け高精度基板や偏光板の市場シェア拡大が期待できる日東電工の業績が好調に推移する可能性を予想した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一アナリストは、自動車業界について「為替が最大の業績スイングファクター」だと指摘。対米ドルなどの円安進行が完成車や海外生産用の部品の輸出採算の改善につながり、海外子会社の利益を連結決算に取り込む際に円建て換算金額が拡大し得るという。
三菱モルガンではトヨタ自動車、SUBARU(スバル)、マツダなどの日系主要完成車メーカー8 社の今期(2023年3月期)の合計営業利益は、楽観シナリオで前年同期比36%増の6兆6650億円と「円安頼みの増益」を予想している。
しかし、原料コスト増につながる資源価格の急騰も相まって、製造業に足元の円安を歓迎するムードはない。JFEホールディングス傘下JFEスチールの岩野利哉営業総括部長は21日の会見で、円安により輸出部分で手取りが増えるのでプラス要因になる一方、ほとんどの原料は輸入に頼っており、プラスとマイナスの両面があるとの見解を示した。
昔のような恩恵ない
「政府を含めて悪い円安という言葉がでてきているので、必ずしも昔のような鉄鋼業を支える円安ではない。ただ、総合的な影響はこれからよく見極めたい」と述べた。
住友商事グローバルリサーチの本間隆行チーフエコノミストは、円安のメリットを確保するために「輸出を増やさないといけないが、誰が買うのかというのが一番大きな問題」のほか、企業側にすぐに輸出を増やせるような機動力もないと述べた。
さらに、自動車業界でも部品不足や労働力が限定されており、「供給面でも制約があり、日本国内で自動車の生産台数をすぐに増やすことはできないだろう」とみている。
また、製造業各社が過去の円高傾向を受けて、為替の影響を回避するため製造拠点を海外に移転させてきた経緯もある。米モーニングスターの伊藤和典アナリストは、過去約10年間で各社が積極的に海外移転を進めた結果、円安メリットは受けられたとしても「以前ほどのインパクトはない」との考えを示した。
ソフトバンクGは86%がドル連動資産
時価総額が約8兆9000億円と、今や世界の人工知能(AI)テクノロジー企業への投資会社となったソフトバンクグループも円安の恩恵を顕著に受けそうだ。投資調査会社レデックス・リサーチのアナリスト、カーク・ブードリー氏は同社の資産価値の86%がドル連動資産だと指摘。
円安は「ソフトバンクGにメリットがある」と分析した。同氏がアナリスト分析情報サイト「スマートカルマ」に21日に配信したリポートによると、ドル円が前年同期比で12%変動すると、資産価値は約9%上昇すると試算した。
また、昨年11月に1兆円の自社株買い計画を発表したソフトバンクGにとっては、ドル建てコストの減少が「二つ目の恩恵」だとブードリー氏は指摘。一方、円安は同社のネット有利子負債を増加させる要因にもなるとみている。
このほか、三菱モルガンの村上宏俊アナリストはゲーム関連で、海外売上高比率の高い任天堂が為替変動による影響を大きく受けると分析。今期は対ドル1円の円安で11億円の営業増益要因になる。映画では、海外売上高比率の高い東映アニメーションと東映は円安が増益要因になるとした半面、東宝は大半が国内収益のため、影響はほぼないという。
オフィス賃料に負の圧力も
一方、野村証ではエネルギー価格の上昇と円安の進行は輸入原燃料を多く使う紙・パルプやセメント、ガラスセクターにとって大幅なコスト上昇につながると警戒している。
日本政府がロシアからの石炭輸入を段階的に減らし、最終的に輸入しない方針を示したことで、セメント各社の23年3月期の利益は大きく落ち込むと予想。ロシア炭への依存度が高い太平洋セメントや住友大阪セメントは、他地域の石炭に切り替えれば、一段のコスト上昇につながる可能性があるという。
不動産業界は、円安や物価高を背景にした企業業績の低迷からオフィスなどの賃貸料が今後下落する見通しで、特に不動産賃貸業に大きな影響が出るとみられている。不動産助言会社のアイビー総研の関大介社長は、販売価格に転嫁できない商店が入る商業施設や、収益が圧迫されている企業が入居するオフィスビルは賃料値下げの圧力を受けるため、住友不動産などが大きな影響を受けやすいと話した。
また、新型コロナウイルス禍で空室率が上昇する中、森ビルの「虎ノ門・麻布台プロジェクト」や三井不動産の「東京ミッドタウン八重洲」など大規模再開発事業の完成に伴って23年はオフィスビルの供給も増加することから、業績が低迷する可能性は「かなり高い」とみている。
●緊急事態一時1ドル129円台 約20年ぶりの円安水準!! 円安と自動車業界 4/26
4月20日の東京外為市場で米ドルが一時129円台に突入した。これは2002年5月17日以来、約20年ぶりのドル高・円安水準。ここまで円安が進むと、自動車業界に与える影響はどうなるのか? 過去の円安の時を振り返りながら、元外資系証券マンであるモータージャーナリストの柳川洋氏が解説していく。
日米金利差拡大・地政学リスクの上昇で20年ぶりのドル高・円安が進行
為替市場では2002年以来約20年ぶりの円安が進んでおり、4月20日には一時1ドル=129円台をつけた。
この記事を執筆している時点では1ドル=128円台で取引されている。ドルやユーロなどの外貨の価値が上昇して、円の価値が下がるのが円安。今年の初めには、ドルと円を交換する時、1ドルと115円の交換だったのが今は128円払わないと1ドルもらえない。
ドルやユーロなどの外貨の価値が上昇して、円の価値が下がるのが円安。今年の初めには、ドルと円を交換する時、1ドルと115円の交換だったのが今は128円払わないと1ドルもらえない。
この円安の理由にはさまざまあるが、大きく言うと2つの点の影響が大きい。
1点目は日米の金利差の拡大。日本はコロナの影響が比較的小さかったにもかかわらず、コロナ前のGDP水準にまだ回復していないが、アメリカは1年前にすでにコロナ前に回復。
またコロナの混乱もあり自動車も含めモノの供給が一部まだ滞っていることから、世界的にモノの値段が上昇しており、アメリカの中央銀行であるFRBが、物価上昇を抑えるために政策金利を引き上げ、世の中に出回っているおカネの量を減らす方向へ政策転換。
にもかかわらず、日本銀行は、国内景気の先行きを懸念して低金利と量的緩和を続ける方向を示し、おカネに対する需給を表す金利がアメリカでは大きく上昇し、ドル資産を持つ魅力が高まった。
2点目は地政学リスクの高まり。小麦の輸出量では世界1位と5位のロシアとウクライナ。またロシアは世界2位の原油輸出国だ。
両国からの資源の輸出が制裁や戦争のために滞っており、人が生きていくのに欠かせない食糧とエネルギーを自給できない日本やその他の国は、ドル建てで取引される原油や穀物などの商品を確保するために、自国通貨を売ってドルを買う必要があるためドルの需要が高まっている。
これまでは円安になれば、インバウンド需要により外貨を売って円を買うフローが起きたため、一定程度のスピード調整があったものの、コロナ後は海外観光客の受け入れも実質的に止まっていることなども、一方的な円安が止まらない理由の一つになっている。
円安という現象そのものは自動車業界にとってはプラス
基本的には円安は、日本の自動車業界にとってプラスだ。対ドルで1円円安が進むと、トヨタで400億円、ホンダで120億円、日産で130億円ほど、本業のもうけである営業利益が増加する要因になる。
自動車メーカー各社の2022年度の想定為替レートは1ドル=110〜112円程度なので、仮に今期の平均為替レートが想定レートより15円円安の1ドル=125〜127円程度で推移すると、ざっくりトヨタで6000億円、ホンダで1800億円、日産で1950億円もうけが増える。ものすごい額だ。
その仕組みはこうだ。たとえばトヨタは、昨年1年で日本から海外へおよそ176万台を輸出。昨年の世界生産量は約858万台、うち日本での生産は約288万台なので、輸出の占める割合は大きい。
アメリカ向けに原価250万円のクルマを日本で作った場合、為替が115円だった今年の初めには約21700ドル相当だったのが、今128円だと約19500ドル相当となる。
つまり円安によりドルで見た原価がおよそ1割下がるため、アメリカでの利益も増え、現地メーカーと比べて価格競争力が高まるせいで販売台数も増えることになる。
また仮に海外子会社のもうけが変わらなかったとしても、円安が進めば円に換算した利益は増えることになり、これもプラス材料になる。
円安は手放しで喜べるわけではない
ただし円安はメリットばかりではない。クルマの原材料や部品の一部は海外から輸入されるため、円安になると原価の上昇要因となり、円安メリットを一部帳消しにする。
またやや例外的だが、かつて円高で苦しんだマツダは、メキシコなどでの海外生産の規模を大きく広げたため、円安の恩恵は受けられず、むしろ営業利益が減ってしまう要因となる。
またクルマのような高額商品の値段が急に高くなったり安くなったりすると、駆け込み需要や買い控えが起き、計画的・安定的に生産ができなくなる。そのため、為替相場が大きく変動しても、機動的に製品価格を上げたり下げたりすることは簡単ではない。
よく「急激な相場の変動は望ましくない」と政府高官や財界人が発言するのはそういう意味がある。乱高下を伴った円安は、恩恵ばかりとは言えない。
加えて、円安の原因を考えれば、手放しで喜んでいいわけではないことがわかる。コロナ後の経済の回復が日本だけ遅いということは、日本人の給料が上がりにくいことを意味する。
そのなかでガソリンや食料品など海外から輸入されるものの値段が上がるということは、実質的に賃金が下がっていることになる。そうすれば日本国内でクルマを買う人も少なくなる。
またアメリカでの金利の上昇は、ローンを組んでクルマを買う大部分の消費者にとっては頭痛の種でしかなく、今あるクルマを長く乗ろう、という動きが出て新車販売に影響する。
地政学リスクの高まりは、グローバル産業である自動車メーカーにとって長期的視点でデメリットも大きい。ガソリン価格上昇によるクルマの乗り控えも起きる。今年の冬にはロシアへのエネルギー依存の高いヨーロッパでは石油不足や電力不足が起きる可能性が高い。
石炭火力発電の再開など、これまでの急進的なカーボンニュートラル化に逆行する動きが出て、EVの電池生産に不可欠なレアメタルなどの原材料価格の上昇や電力価格の上昇も加わり、EVへの需要が急激に落ち込むことも十分考えられる。
急激にEV化へ舵を切った自動車メーカーにとっては少なからぬ打撃となるだろう。
円相場が1ドル=70円台という超円高だった2011年は、「自動車メーカーにとって企業努力の限界を超える危機的な状況で、日本国内では雇用維持もままならず、海外へ生産拠点を移さざるを得ず、国内産業が空洞化する」という悲痛な訴えが当時の自工会会長からもあった。
それに比べれば今回の円安方向への推移は、自動車業界にとっては当然に恩恵の方が多い。だがやはり誰にとっても一番望ましいのは、偉いおじさんたちが口を揃えて言うように、急激な相場の変動がない、安定した平和な世の中が続くことだ。
●東京為替見通し=ドル円、「原油高・物価高対策」での円安抑制措置に注目 5/26
25日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、世界経済の成長鈍化懸念からダウ平均が一時480ドル超下落し、米10年債利回りが2.75%台まで大幅に低下したことで127.52円まで下落した。ユーロドルは欧州の主要株価指数が軒並み下落したことで1.0697ドルまで下落した。ユーロ円も136.49円まで連れ安に推移した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、本日岸田政権が策定予定の原油高・物価高対策での円安抑制措置に注目する展開となる。
一部報道によると、原油高・物価高対策では6.2兆円の国費が充てられ、民間資金を組み合わせた事業規模は13.2兆円になる。内容は、ガソリン補助金の拡大や中小企業の資金繰り対策、生活困窮者への支援などと報じられている。
今年夏の参議院選挙は、6月22日に公示、7月10日に投開票と予想されており、岸田政権は完勝を目指して、物価高の要因となっている「悪い円安」を抑制する措置を打ち出す可能性が警戒されている。また、27-28日の日銀金融政策決定会合では、イールドカーブコントロール(YCC)の変動幅拡大への警戒感が高まっている。さらに、28日に公表される経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、2022年度の消費者物価見通しが1%台後半に引き上げられて、30年ぶりの高水準となり長期金利上昇が容認される可能性にも要警戒となる。
すなわち、今週のドル高・円安に対するリスクシナリオは、岸田政権と黒田日銀の財政・金融政策による円安抑制措置となる。
中国政府は、昨日、人民元の下落阻止を打ち出した。オフショア人民元は、昨日、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めや中国経済の不透明感などから、ドルに対し1年5カ月ぶりの安値を付けた。中国人民銀行は、金融機関の外貨預金準備率を1ポイント引き下げ8%にすると発表し、人民元安を抑制する措置を打ち出している。
現状のドル高・円安は、日米の金融政策の乖離、日米10年債利回り格差の拡大観測などが背景にあることで、日本銀行の金融緩和スタンスの変更や指し値オペに代表される国債利回りの上昇抑制措置の撤廃などがなければ円安を抑制することはできない。
●東京為替:ドル・円はやや失速、円売りは一服 4/26
26日午後の東京市場でドル・円はやや失速し、127円90銭だにに値を下げている。午前中から続く円売りは一服し、主要通貨の対円での上昇はいったん収束したようだ。ただ、リスクオフによる円買いは後退しており、ドル・円、クロス円とも下値は堅い。
ここまでの取引レンジは、ドル・円は127円35銭から128円23銭、ユーロ・円は136円55銭から137円54銭、ユーロ・ドルは1.0707ドルから1.0738ドル。  
●東京株式 上げ幅拡大=円安で買い増加 4/26
(後場寄り)26日午後の東京株式市場は、為替相場が円安方向に振れたことを受け、買いの勢いが増す流れになっている。日経平均株価は上げ幅を拡大させ、前日比181円06銭高の2万6771円84銭で始まった。
(前引け)【プライム】米国株の反発を好感した買いや、前日まで相場が大きく下落した反動による自律反発狙いの買いが優勢となった。ただ、主要企業の決算を見極めたいというムードも強く、上昇幅は限定的だった。日経平均株価は前日比135円87銭高の2万6726円65銭と反発した。東証株価指数(TOPIX)は3.48ポイント高の1880.00と小幅高。
61%の銘柄が値上がりし、値下がりは34%だった。出来高は4億8300万株、売買代金は1兆2344億円。
業種別株価指数(全33業種)では、ゴム製品、陸運業、サービス業の上昇が目立った。下落は非鉄金属、鉱業、海運業など。
【スタンダード】スタンダードTOP20は小幅安。出来高1億3521万株。
【グロース】グロースCore、マザーズ指数はともに上伸。
(10時)日経平均株価は堅調。「米国株高を好感した買いや自律反発狙いの買いが入った」(大手証券)ことで、寄り後には前日比186円高の2万6777円まで上昇した。ただ、上値では戻り売りも出るため上昇幅は広がらず、2万6700円付近でもみ合っている。
業種別株価指数(全33業種)ではゴム製品や情報・通信業、不動産業などが上昇率が1%を超えてしっかり。半面、原油安を反映し、鉱業が大幅安となっている。
(寄り付き)26日午前の東京株式市場は、前日の米国株高を好感して買いが先行している。日経平均株価は3営業日ぶりに反発、前日比152円43銭高の2万6743円21銭で始まった。
●円安再燃を警戒しつつも、基本は調整継続か 4/26
〇本日のドル円、日米株価の動きや政府要人発言などを受け、128円挟みの乱高下、明確な方向性乏しい
〇4/20の年初来高値129.41示現後127.46-129.41というレンジ取引、本日東京時間に下限を一時下回る
〇引き続き127-128円台中心の時間調整の様相だが、ドルの下値余地拡大した感も、ドル続落にも注意
〇本日欧米時間のドル/円予想レンジは127.10-128.50、本日東京高値である128.20-25が最初の抵抗
〇ドル安・円高方向は東京安値の127.35レベルの攻防に注目、割り込めば127円割れの可能性も
東京市場の動き
26日の東京市場は往来相場。日米株価の動きなどに一喜一憂、128円挟みの乱高下で明確な方向性は乏しかった。
ドル/円は128.10-15円で寄り付いたものの、上値も重くドルは上げ渋り。日米株価の動きや、鈴木財務相をはじめとする政府要人の発言などを受け、右往左往するなか一時は調整的なドル売り・円買いが先行。127円台前半まで値を崩したが勢いは続かず、そののち反転すると再び128円台を回復するなど「行って来い」に。16時現在では、127.95-00円で推移し、欧米市場を迎えていた。
一方、材料的に注視されていたものは、「ロシア情勢」と「円安けん制発言」について。
前者は、ロシア露国防省が「ドンバスの武器輸送インフラを爆破した」と明らかにするなど、ウクライナ国内での戦闘は依然として継続。そうしたなか、ラブロフ外相から「NATOなど西側からウクライナに供与された武器は正当な標的になる」、「第3次世界大戦の危険は現実のものであり、過小評価すべきでない」といった発言も聞かれている。停戦に向けた活動も観測されているものの、あまり明るい前途は描けない。
対して後者は、先週末にTBSが報じた「日米財務相会談で協調介入議論」との話を、週末にロイターが否定。財務省幹部の話として「TBSの報道は事実に反しており、当局として取材に応じた事実もない」と指摘していたが、本日になり鈴木財務相が改めて「為替介入議論あったとの報道は事実に反する」とコメントしていた。なお、その一方で安倍元首相から「いまの水準は日本経済にとって懸念ではなくプラスになる」、渡辺元財務官も「130円や135円は日本経済にとって悪い水準でない」と、従来とは一線を画す円安容認発言が聞かれていたという。
欧米市場の見通し
20日に年初来高値129.41円を示現したのち、ドル/円は調整と思しき動きをたどっている。チャート的には127.46-129.41円というおよそ2円幅のレンジ取引で、価格ではなく時間調整の様相だったが、本日東京時間にレンジ下限を一時下回ってきた。ドル続落の可能性も否定できず、このあとはドル下値の攻防に注目だ。ちなみに、テクニカルには127円を割り込む危険性も取り沙汰されている。
来週3-4日に開催される米FOMCの「0.5%の利上げ」はほぼコンセンサスであり、日米金利差拡大観測を背景とした、基本的なドル高・円安傾向に変化は見られない。また、ドル高の調整を後押ししてきた本邦要人などによる「円安けん制発言」だが、前述したように若干風向きの変化もうかがえる状況だ。「円売り安心感」の再燃から、欧米投機筋などが再び積極的な円売りに動いても不思議はない。東京時間から流れが一変した動きにも一応要注意。
テクニカルに見た場合、ドル/円は引き続き127-128円台を中心とした時間調整の様相だが、本日東京時間にその下限を一時下回るなど、幾分ドルの下値余地が拡大した感もある。ドルの続落にも注意を払いたい。
しかし、逆に東京でドル下値トライを失敗したとの見方から、短期的には一転しての上値追い、再びドルの戻りをうかがう動きを見込む声も一部で聞かれていた。
材料的に見た場合、中長期的には新型コロナ感染が増加し、首都・北京で異例のロックダウン実施観測も取り沙汰されはじめた「中国情勢」。「Xデー」と言われた25日の夜に大規模パレードを実施したとされる「北朝鮮情勢」、「新型コロナ・オミクロン株蔓延問題」−−などに注目。
一方、本日は米経済指標として、4月の消費者信頼感指数や同リッチモンド連銀製造業指数などが発表される見込みだ。また、本日はドイツにある米軍基地で、同盟国など20カ国以上が参加したウクライナへの軍事支援を主題とする国際会議を開催されるほか、国連事務総長とプーチン露大統領の会談などが予定されている。広義政治ファクターにも要注意か。
そんな本日欧米時間のドル/円予想レンジは127.10-128.50円。ドル高・円安方向は、本日東京高値である128.20-25円が最初の抵抗。上抜けても、短期的には129円は少し遠いイメージか。対するドル安・円高方向は、やはり東京安値の127.35円レベルの攻防にまず注目。割り込めば127円割れも否定できない。
●円安で夏頃には値上げが加速!これから「高くなるモノ」とその対策は? 4/26
「老後がもうすぐなので、失われた20年なんてことになったら、怖くて投資できない」と、投資ビギナーに、このように聞かれることがある。
失われた20年と言っても、株価は変動している。例えば日経平均株価は、上下を繰り返しながらも上昇を続けているのだ。20年間、ずっと株価がただ下がっていた訳ではない。
昨年の4月7日付日本経済新聞電子版に『バブル後日経平均 長期低迷でも「資産 2.4 倍」の謎』という分かりやすい記事があるので読んでみて欲しい。一部を引用すると「バブル崩壊後の90年1月から日経平均に連動する投信(実質的に配当込み指数に連動)があったとして、毎月3万円を積立投資していたら、20年末までの累計積立額は1116万円。じゃあ資産はいくらになったと思う? ……1500万円くらい? 20年末の資産は2668万円。累計積立額の2.4倍だ」
失われた20年でも2.4倍になっていたのだ。「失われた20年」とマスコミが使っている言葉に惑わされて「投資は危ないもの」と誤解しないで欲しい。もちろん、投資を始めるならば正しいやり方はあり、それを学ぶことは前提だ。
なぜ円安が進んでいるのか?
急激な円安が続いている。加えて小麦や原油価格も上昇しているので、食品やガソリンが値上がりして家計を圧迫している。外貨建ての株や債券などの資産や、外国株や海外債券の投資信託など間接的な外貨建て資産を保有していない方は、資産が目減りしているだろう。
なぜ円安が進んでいるのか? 米国では政策金利を引き上げる方向に進んでいるが、日銀は金利の上昇を抑えているから金利の低い円を買わずにドルを買う流れが続いているのだ。さらに日本の貿易赤字も拡大している。それも円安になる原因となっている。
今は企業努力で値上げを抑えていても、夏頃には値上がりするモノが増えてくると予測できる。物価上昇のタイミングは、商品やサービスによってズレがあるのだ。例えば小麦の値上がりで麺類やお菓子が既に値上がりしている。しかし今後も小麦の価格が上昇していけば、肉類の価格も上がると予測できるのだ。牛や豚、鶏の飼育には小麦を含む大量の穀類が必要だ。小麦価格の上昇だけでなく他の穀類も上昇している。トウモロコシの年明け以降の平均価格は、昨年の平均価格を上回っている。
夏頃に値上がりするモノやサービスは?
肉類の価格の上昇が続けば、外食サービスも値上がりしていくのは想像に難くないだろう。すでに低価格のチェーンは値上げをしているが、今年の夏頃にはさらに値上げする外食サービスが多くなると予測できる。肉類の高騰と原油価格の上昇でエアコンなどの費用もかさむからだ。
また原油価格が上がってガソリンや電気料金がすでに上がっているが、バスやタクシー代も夏頃に値上げされると考えられる。さらに原油価格の上昇が続けば電車代なども値上がりする可能性さえもあるのだ。マンション価格も木材などの資材価格が高騰しているので今後もまだ値上がりすると考えられる。
日本企業は、原材料の価格上昇に企業努力で値上げを抑えているから給与が上がるとは考えにくい。給与が上がらず、モノやサービスの価格が今後も上昇するのならば今から収入を上げる努力をしなければ、現在と同じ水準の生活は守れない。投資を家計に取り入れることも真剣に考えておくべきだ。
投資をしたらお金が減ってしまうのか?
冒頭の質問以外にも投資ビギナーによく聞かれるのは、「投資をしたらお金を減らしてしまうのではないか?」という質問だ。投資でお金を減らすということは「含み損」がでている時に売却してしまうことだ。含み損とは、実際の損失ではなく「時価」が購入時よりも減っている状態のこと。その「含み損」の状態の時に、売却してしまうと「損を確定する」ということになり、資産を減らしてしまう。
例えば保有している株がマイナスになり、怖くなって売却してしまえば「損を確定」してしまい、お金を減らしてしまう。逆に含み損のマイナスを我慢でき、さらにその金融商品がプラスの「含み益」に転じた時に売却できれば、お金を減らしてしまうことはない。もちろん、その金融商品が再び含み益になることが前提なのはいうまでもない。「投資をしたらお金を減らしてしまうのではないか?」と、心配する方は、どのくらマイナスになってもメンタルが平常でいられるための金融商品の選び方が大事なのだ。
投資ビギナーにあった金融商品は?
投資と聞くと、真っ先に「株」を思い浮かべる方が多い。株式投資とは、個別の企業に投資をする方法だ。好決算や赤字といった企業の業績や政治や経済の影響を受けて価格が上下する。この企業の今後はどうなるのか予測するのは投資ビギナーには難しい。
企業の決算書なども読まなければならない。決算書を読まなければ投資ができないのかというと、そういうことではないのだが、株式投資は学ぼうとすると色々な手法があるので際限なく学ぶことにもなる。投資ビギナーならば、投資信託の方が安心だ。インデックス型の投資信託ならば、日本や世界の株式市場の代表的な株価指数と同じように上昇していく。株価指数とは、株式相場全体の状況を示すために、個々の株価を一定の計算方法で総合的に数値化したものだ。
もちろん投資信託でも政治や経済の影響を受けて上がったり下がったりする。だが、株式投資のように倒産して株に価値がなくなるということはない。価格の上げ下げは、個別企業に依存していないので価格変動のリスクを分散できるのだ。投資信託は、プロのファンドマネージャーが銘柄の入れ替えをしている。基本的には、良い銘柄だけが残っていくので右肩上がりに上昇していくのだ。これはインデックス型の投資信託でも同様だ。インデックス(株価指数)の銘柄の入れ替えがあるからだ。
投資信託を長く保有すると?
なぜ投資信託を長く保有することでお金が増えるのか。例えば、NISA制度が始まった2014年1月の日経平均株価は、1万5908円だった。この時に購入して2022年まで保有を続けていたとしよう。日経平均株価は、4月25日の終値で2万6590円だ。ロシアの侵攻のさなかでも約1.7倍になっているのだ。2014年から9年間保有していたら1.7倍になるのだ。
また、長期間積立買付することで値動きの幅が縮まってくることが知られている。運用成績の悪い時期と良い時期がならされて収益率が安定する傾向があるのだ。「いつ売却したらいいですか?」という質問も多くいただくが、5年以上保有しているのならば売却するのは「お金を使う時期」がきた時でいい。
筆者も子どもの大学費用で、積立していた投資信託や株を一部売却した。使う時期が決まっていたので前年からリターンの高いものから売却して預金に変えておいた。すべてを売却することはなく一部売却しただけなので、大きく資産が減ることはない。お金を長持ちさせることができるのが、投資の魅力的なところだ。 

 

●注目の黒田総裁会見 ”円安”進行の中、日銀金融政策決定会合開催へ  4/27
日銀の金融政策決定会合がきょう27日・28日の2日間で開かれる。
今月20日に1ドル=129円台をつけるなど20年ぶりの水準まで円安ドル高が進む中、会合後の会見での黒田総裁の発言に注目が集まる。
急激な円安について、鈴木財務大臣からは牽制する発言が繰り返される一方、日銀の黒田総裁は、「マイナス」だとしながらも「日本経済全体としては円安はプラス」という基本スタンスを崩していない。
円安の進行に歯止めをかけるには、日銀が続けてきた大規模な金融緩和からの方向転換が効果的だ。
しかし、日本は新型コロナからの景気回復で欧米に遅れをとっている上に、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて原油など資源や穀物の価格が一段と上昇。
黒田総裁は、国際的な資源価格を反映して今後国内の消費者物価は一時的に上昇するものの、日銀が目標とする「安定的・持続的な2%の物価上昇」、つまり賃金と物価が緩やかに上昇していく状態にはまだ距離があるとしていて、28日の会見でも大規模緩和の必要性を強調するとの見方が優勢だ。
市場関係者からは、「日銀の金融政策決定会合や黒田総裁の会見の内容次第では、投機的な円売りが強まり、1ドル=130円をうかがう展開もありえる」との声も聞かれる。
●日銀会合注目点:現行緩和維持の見通し、円安で市場に政策修正の思惑 4/27
日本銀行が27、28日に開く金融政策決定会合では、ロシアのウクライナ侵攻後の資源・食料価格の高騰が景気に及ぼす悪影響が懸念される中、金融緩和策を維持すると見込まれている。約20年ぶりの円安・ドル高水準を受けて政策修正への思惑もくすぶっており、黒田東彦総裁会見への関心も高い。
ブルームバーグのエコノミスト調査によると、9割が金融政策の現状維持を予想している。1割は政策金利の先行きを示すフォワードガイダンスについて、利下げに関する文言の削除など引き締め方向への変更があり得るとみている。
インフレ対応で引き締めにかじを切る米欧中央銀行と緩和を続ける日銀との方向性の違いを背景に、20日には1ドル=129円40銭まで円安が進んだ。市場では日銀が円安や金利上昇圧力を受けて年内に政策修正に動くとの見方が増えており、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の弾力化を見込む声も出ている。
黒田総裁は22日に米国で講演し、「日本の経済と物価の立ち位置は米国と大きく異なる」として金融緩和継続の必要性を強調した。当面、消費者物価(生鮮食品除くコアCPI)の前年比は2%程度に上昇する可能性があるとしながらも、エネルギー中心の「コストプッシュが主因で持続力を欠くものだ」との見解を改めて示した。
複数の関係者によると、会合後に公表する経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、2022年度のコアCPI見通しが1%台後半へ大幅に上方修正される可能性が高い。もっとも、日銀は新たに見通しを示す24年度にかけて物価が2%程度で安定的に推移する姿は描けないとみており、金融引き締めと受け取られかねない政策修正には慎重とみられるという。
鈴木俊一財務相は、原材料価格が高騰する中での円安は経済状況を踏まえると「デメリットをもたらす面が強い」と警戒を強めている。黒田総裁も18日の国会答弁で、円安が日本経済に全体としてプラスとの評価を変えていないとしつつも、「非常に大きな円安とか、急速な円安の場合はマイナスが大きくなる」との見解を示した。
みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは、通貨政策を担う政府が円安を嫌悪する情報発信をしている以上、「金融政策をつかさどる日銀も同じ方向を向くのが理論的には当然」と指摘。「全体としてプラス」が事実だとしても、日銀による情報発信は「バランスの取れた方向感のないものに変わっていく」とみている。
●東京円、11銭円安の1ドル=127円98銭〜128円  4/27
27日の東京外国為替市場で、円相場は午後5時、前日(午後5時)比11銭円安・ドル高の1ドル=127円98銭〜128円ちょうどで大方の取引を終えた。
米長期金利の上昇一服で急速な円安・ドル高の流れはいったん落ち着いている。日本と米国で金融政策を決める会合を控え、市場では売り買いが交錯している。
対ユーロでは、前日(午後5時)比56銭円高・ユーロ安の1ユーロ=135円96銭〜136円ちょうどで大方の取引を終えた。
●円安は再び一服、FRB利上げ加速に注意 4/27
円高反転への兆しか
ドル/円は再び一服した動きとなりました。3月の終わりに125円台を付けた後、121円台前半まで調整され、その後10日ほど一服して129円台に上昇しましたが、今回の一服は円高反転への兆しなのでしょうか。
あるいは、やはり一服しているだけなのでしょうか。もし、その場合、どのくらいの期間の一服になるのでしょうか。先週からのドル/円の動きを振り返ってみたいと思います。
先週は週初の126円台から円安スピードがさらに加速し、20日早朝には129円台を付けました。しかし、*G7や日米財務相会談を控えた警戒感から129円台は維持できず、128円台に下落しました。
その後日米財務相会談において協調介入が議論されたと報じられると128円を割り込み127円台後半まで下落しましたが、黒田東彦日本銀行総裁が米コロンビア大学での講演で、「円安でも積極的な金融緩和を継続する必要がある」と発言したとの報道が伝わると、再び129円台に乗せました。
ところが、「円が下落との部分はなく、円についての言及はなかった」との訂正報道によって128円台に下落し、米株の大幅下落や米金利の低下を背景に、ドル/円は128円台半ばで先週を終えました。
日米協調介入については、さまざまな臆測が流れていましたが、22日に米国財務省が、「イエレン米財務長官と鈴木俊一財務相は為替市場を含む金融市場の動向を協議し、為替レートに関してはG7や**G20の従来のコミットメントを維持する重要性を強調した」との声明を発表しました。
また、23日には、日本の財務省高官が日米財務相会談で日米協調介入が議論されたとの報道を否定しました。これらの声明や否定報道によって介入の臆測は打ち消されましたが、週明けの東京市場では特段影響がありませんでした。
鈴木俊一財務相も帰国後、26日の閣議後の記者会見で、日米財務相会談で協調介入について協議したとする報道について、「その報道は事実に反する」と述べ、否定しました。
・G7…カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の7カ国
・G20…G7の7カ国にアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合・欧州中央銀行を加えた20カ国・地域
日銀会合に注目
マーケットでは5月のFOMC(米連邦公開市場委員会)だけでなく、その前に開催される4月27〜28日の日銀金融政策決定会合の注目度が高まっています。
26日の為替市場では、海外時間にドル/円やクロス円の円高が進みましたが、日銀の決定会合を警戒して円売りポジションを縮めた動きではないかとの見方もあるようです。
日銀が28日に展望レポートで公表する2022年度の物価見通しを1%台後半に上方修正されるとの観測が出ています。
どの程度上方修正されるのか、そして物価見通しが修正される中で金融緩和政策維持についてどのような展望を日銀が描くのか、また、円安についての見方を変えないのかどうかを注目したいと思います。
少しでも政策変更(金融引き締め方向)につながるような材料が出れば円高に反応しますが、予想の範囲内の見通しであったり、政策変更なしの場合は、材料出尽くしあるいは失望感から再び円売りに動くことも予想されるため注意する必要があります。
FRB利上げ加速の警戒感
5月3〜4日のFOMCでは、0.5%の利上げが織り込まれたとはいえ、0.5%利上げの次の一手が加速するような内容が声明文や記者会見で示唆されると、ドル/円や長期金利も再び上昇を始める可能性もあるため注視する必要があります。
21日の討論会でのパウエル議長の発言が株式市場を揺さぶりました。
パウエル議長は次回FOMCでの0.5%利上げも選択肢と述べ、さらに2004年から2006年にかけて0.25%の利上げを続けた金融引き締め期を引き合いに出し、「当時よりもインフレ率はずっと高いし、政策金利はまだかなり緩和的だ。私の考えではもう少し早く動くのが適切と思う」と述べたことから、米株式市場では0.5%の次は0.75%とさらなる利上げの加速への警戒感から、米ダウは1,000ドル近く下げるほど急落し、その後も続落しています。
利上げの加速とは、5月、6月、7月で各0.5%の利上げだけでなく、6月か7月に0.75%、あるいは両月とも0.75%、あるいは6月0.75%、7月1%と、まさに利上げ幅を加速させるような見方です。夏場までに中立金利(2.25%)に一気に近づけるような利上げは、株式市場にショックを与え、長期金利は上昇し、ドル高が予想されます。
そして日銀の決定会合はゴールデンウィーク(GW)の前に開催され、FOMCはGW真っただ中に開催されるため、アジア時間帯は流動性の低下によって相場が乱高下する可能性があり注意する必要があります。GW中、あるいはGW後に次の方向が見えてくるかもしれません。
原油一服、食料上昇
25日の原油はWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で一時6%近く下落し、100ドルを割れました。北京など中国の都市封鎖が拡大していくことが懸念され、世界経済停滞による需要減少で原油が売られたようです。
3月と比べて原油価格も上昇一服となっていますが、食料価格は上昇を続けており警戒する必要があります。
4月8日、FAO(国際連合食糧農業機関)は3月のFFPI(FAO食料価格指数、2014〜2016年=100)が2カ月連続で過去最高値を更新したと発表しました。FFPIは、国際農産物市場の動向を監視するための価格指数で、肉類、穀類、植物油、乳製品、砂糖の5つのグループの価格指数から算出されています。
FAOは3月の上昇について、ウクライナ紛争が主要穀物と植物油の市場に影響を与えた、と説明しています。植物油は2月から23%の急上昇となり、3カ月連続で過去最高値を更新しました。ヒマワリ油はロシアとウクライナで生産の50%以上を占めていますが、紛争の中で輸出が減少したことにより、3月のヒマワリ油の国際相場は大幅に上昇しました。
FAOは「ヒマワリ油の供給が混乱したため、パーム油、大豆油、菜種油の価格も著しく上昇した」と分析しています。日本でもサラダオイルなど食用油が値上がりしていますが、まだこれからも値上がりするということになりそうです。
また、2021〜2022年の穀物世界貿易を、3月の見通しから3%引き下げています。ウクライナとロシアの小麦(世界の3割)とトウモロコシ(世界の2割)の輸出減少が影響しているようです。
そして農産物の食糧価格も注目ですが、同時に注目したいのは主要肥料の荷動きです。
ロシアやベラルーシは主要肥料の生産や輸出で上位を占めており、制裁によって主要肥料の物流が鈍くなれば、肥料自体の価格も上昇し、世界の農産物全般の生産や価格に影響を与え、食料不足や物価高騰によって社会が不安定になる恐れがあります。
原油価格一服によって物価の上昇もひと息つくかと思いきや、食料価格が高止まりもしくは上昇が続くとなると、各国の金融引き締めのペースは鈍ることがないかもしれません。一難去ってまた一難、なかなか気を緩める局面にはならないかもしれません。
●NY外為:ユーロ続落、ウクライナ戦争絡みの燃料危機による景気減速懸念 4/27
NY外為市場ではユーロ売りに拍車がかかった。ウクライナ戦争絡みの燃料危機による域内景気減速懸念が強まった。
ユーロ・ドルは1.058ドルから1.0534ドルまで下落し2017年3月以降5年ぶり安値を更新。ユーロ・円は135円60銭から134円99銭まで下落した。ユーロ・ポンドは0.8426ポンドから0.8389ポンドまで下落し22日来の安値を更新。 
●円安「よくある勘違い」8つの論点 1ドル140円が天井?悪い円安? 4/27
急激に進む円安について、筆者のもとには過去に例がないほど多くの問い合わせが寄せられている。国民的関心の高さを実感せざるを得ない。問い合わせの内容はごく短期的な解釈から超長期の見通しまで多岐にわたるが、興味関心が重なる論点も多いので、Q&A方式で整理して解説を試みたいと思う。
【Q1】円安の原因は何なのか?
「金利」「需給」の両面から説明するのが一般的。金利面では、日本と各国の金融政策の格差が、需給面では貿易赤字の拡大(およびそれに伴う経常収支の構造変化)が円安の原因とみられる。
ここまでのメディア報道を見ていると、金利面のみから解説する論調が多いように思う。
「アメリカをはじめ諸外国が金利引き上げに着手するなかで、日本は逆に金利上昇を抑え込もうとしている」という分かりやすい対称性は、国民に広く刺さるロジックなのかもしれない。
もちろん、この説明そのものは間違っていない。
一気に75ベーシスポイント(0.75ポイント)の利上げを視野に入れる国(アメリカ)の通貨と、長期金利を人為的に抑制しようとする国の通貨(日本)、投資家にとってどちらが旨味があるかは明白だ。
しかしながら、筆者には外国の金利上昇が円売りの主な原因とはどうしても思えない。
過去1年間の円売りは、債務再編による財政再建を目指すアルゼンチンの通貨(ペソ)や、2021年末に通貨危機を経験していまも混乱が続くトルコの通貨(リラ)に匹敵する下落ぶりだ。
そうした事実を踏まえてなお、外国の通貨や政策金利に円安の原因があると主張するのは、さすがに無理筋ではないか。
各国の(通貨の対外的な実力を測る指標として使われる)名目実効為替相場の推移を比べてみると、日本円は主要通貨のなかで底が抜けたような動きを示しており、そこには円に特有の要因が作用していると考えるのがフェアだろう【図表1】。
   【図表1】主要7カ国(G7)の名目実効為替相場の推移。
円安の原因について、筆者は金利より需給に動かされている印象を強く持っていて、実際に需給のほうが重要だと考えている。
資源価格の高騰に伴う貿易赤字の拡大はストレートに円売り圧力を高め、その急拡大は2021年12月と2022年1月に経常赤字まで引き起こしている。引き続き需給環境を注視していく必要があるだろう。
【Q2】「円安」は「日本売り」という理解は正しい?
ある程度正しいと考える。【Q1】の回答で述べたように、金利と需給のどちらがより大きな円安の原因かと問われたら、筆者は後者と答える立場だ。
ただし、足もとの円安には、経済低迷に根本的な手を打たない日本政府に対する、市場からの警鐘の意味が含まれているように思う。
名目実効為替相場の比較を通じて円の独歩安が進んでいることを【Q1】で確認したが、株式市場も状況は同じで、主要株価指数のなかで日経平均だけが前年実績を断続的に割り込んでいる【図表2】。
   【図表2】主要国の代表的株価指数の推移。
政策を通じて制御するのが難しい為替や株式のような資産価格について日本の劣後は明確だが、一方で国債は日本銀行の大量保有や指値オペを背景に価格(および金利)が安定している。
そのように、為替や株式を介して見える景色と国債のそれがあまりにかい離した現状は「日本回避」の兆候だと筆者はくり返し指摘してきた。
パンデミック発生から2年が過ぎ、欧米諸国はコロナと共生する道を選び、行動制限やマスク着用をむやみに求めなくなった。国内総生産(GDP)成長率もコロナ以前の水準まで回復した。
ところが、日本はそこまで至っていない。
下の【図表3】は主要国のGDP成長率について、2年分(2020、21年)の実績値と2022年の予測値を積み上げて比較したものだ。
   【図表3】国際通貨基金(IMF)世界経済見通し(2020〜22年の累積成長率)の国・地域別比較。
日本の累積成長率だけがマイナスで、パンデミックの残した傷跡が癒えていない唯一の先進国であることが分かる。
世界各国の悩みはいまやインフレだが、日本の悩みは(インフレの苦しみも顕在化してきてはいるものの)いまだに新規感染者数だ。
その構図は、成長を追求する国と成長をあきらめた国の格差と表現してもいいだろう。そして、成長をあきらめた国の通貨が売られることには何の不思議もない。
【Q3】円安は米利上げに伴う「ドル高の裏返し」?
誤った解釈と言える。
例えば、円安は3月から加速したが、同時期の名目実効為替相場(先述)をみると、ドルはわずかに下落(ドル安)している。過去1年間についても「ドル安だが円安」という時期がかなりあった。
いまの円安がアメリカ側の要因(ドル高)ではなく日本側の要因によって起きていることの証左と言っていいだろう【図表4】。
   【図表4】米ドルと日本円の名目実効為替相場の推移
ただし、緩やかながらドルは上昇しており、その動きが円安とまったく無関係とは言い切れない。それでも、円安をドル高の「裏返し」と断言するのはさすがに無理がある。
【Q4】現在の円安は「構造的」なものと考えて良いのか?
少なくともその可能性があることを踏まえて金融政策を検討・執行すべきというのが、筆者の基本認識だ。
「構造的」という表現は、足もとの円安が経常収支の悪化(という対外収支の構造変化)により起きているとの意味で使われることが多い。それは貿易赤字の拡大とほぼ同義だ。
貿易赤字を生み出しているのは原油や天然ガスなど鉱物性燃料の価格高騰であり、したがって、円安が「構造的」かどうかも、資源価格の値動きが構造的かどうか次第ということになる。
その文脈で言えば、現在の資源価格の高騰は、脱炭素・感染症・戦争といった世界の大きなうねりによって引き起こされているように見受けられ、構造的と言えなくもない。
ロシア・ウクライナ戦争を契機とする「ロシア抜きの世界」は、食料まで含めた資源の供給制約を固定化することになるだろう。資源価格の高止まりは持続的なものと考えるほかないように筆者には感じられる。
化石燃料の純輸入国である日本にとって、資源価格が高く固定化されてしまうことは、経常収支や貿易収支の悪化が構造的に宿命づけられることを意味する。
日本が自ら資源価格を決定したり相場を修正したりはできないものの、(赤字黒字を左右する)輸入額が価格と量の乗算で決まることは間違いないのだから、原発再稼働によって電源構成を変更することで鉱物性燃料の輸入量を抑えるなど、積極的に策を打つ余地は残されている。
そうした努力の結果として、資源価格の下落が基調として根づき、「構造的」な円安を懸念したがそうではなかった、と杞憂で終わるならそれに越したことはない。
【Q5】日本国債の暴落が始まる兆候なのか?
やや過剰な懸念と言うべきだろう。
日本国債が国内消化率の高い内債(=自国通貨建てで発行され、日本銀行や市中金融機関、保険・年金基金など国内保有率が高い国債)であり続けてきたのは、長年の経常黒字のおかげだ。
したがって、貿易赤字の拡大によって経常黒字が揺らぎ始めているいま、日本国債の国内消化もある程度不安定化に向かっていると認識すべきだろう。
この「揺らいでいる」現状を「暴落する」と読み換える向きが多く、それは乱暴に過ぎると言わざるを得ない。
予断を許さない状況にあるのは間違いないが、だからと言って、投機的思惑が先行して自己実現的にある方向に走りやすい為替市場の動きと、きわめてローカルな需給関係に規定される国債市場の動きを混同すべきではない。
【Q6】円安はどこまで進む?
為替には「理論的なフェアバリュー(適正価格)が存在しない」と言われるが、推計するためのヒントとして用いられやすい購買力平価(=ある国である価格で買えるモノやサービスが他国ならいくらで買えるかを示す交換レート)を見ても、すでに節目という節目の水準はすべて突破しており、「意味のある」節目を見つけるのは難しい。
1998年4月に1ドル140円を超えたところで2兆円超の円買いドル売り介入に踏み切った例があるので、今回もそのあたりで介入があるとの見方が散見されるが、逆に言えば、そうした昔話を持ち出すことでしか意味のある節目を見つけるのが難しい状況ということだ。
こうなると、年間の値幅から節目の“当たり”をつけるくらいしか方法はないのかもしれない。
過去20年間をふり返ると、最大の値幅はリーマンショックの起きた2008年の25.07円だった【図表5】。
   【図表5】プラザ合意(1985年9月)以降のドル/円相場の年間値幅の推移。
2022年の値幅はここまで15.61円で、2008年よりまだ10円ほど狭い。しかし、これから140円前後まで円安が進めば、年間の値幅は25円を大きく超え、「リーマンショック級あるいはそれ以上」という話になる。
そこに先述した1998年の円売り介入の事例も加えて考えると、年内の円安は最大でも140円程度と見積もりたくなる気持ちは分からなくもない。
しかし、2008年当時は円高基調で、今回は【Q2】で論じたように「日本売り」の意味合いが含まれる円安基調だ。
究極的に言って、通貨防衛の難易度は円安方向のほうがはるかに高い。したがって、年間の値幅はさらに拡がる可能性があり、すなわち円安も140円を大きく超える可能性がある。
【Q7】円安はどうしたら止まるのか?
変動為替相場における潮流を反転させることができるのは基軸通貨国(具体的にはアメリカ)だけだ。
それでも、【Q4】の回答で触れたように、結果はともかくとして円安を抑制するために積極的に講じることのできる手段はまだある。
政府主導で原発再稼働を含めたエネルギー政策のあり方を模索するのであれば、それは誰もが納得できる不可抗力のストーリーとなり、そこに投機筋の円売りがつけ込む筋合いはない。
もちろん、政治的にクリアしなければならない課題は多く、決断が苦手な岸田政権には荷が重いかもしれない。
しかし、福島の事故という重い十字架を背負った日本があえて原発再稼働を決断することに大きな意味を見出す市場参加者は少なくないようにも思える。
ただし、国民的議論を前提とするそうした取り組みも、「円安を止めたいならば」選択肢になり得るだけで、円安を問題視しないのなら議論も検討も必要ない(政府は現時点ではそう考えているように感じられる)。
一方で、円安を問題視してその悪影響を和らげる意図があるなら、本稿の冒頭でも触れたように、金利と需給の両面から円安の原因に対処する方法が考えられる。
需給面では上記のように原発再稼働がひとつの手だろう。
金利面では、日本と各国の金融政策の格差が原因になっていることから、何よりもまず日銀の金融正常化プロセスへの着手が不可欠だ。
為替介入による是正を有効手段とみる向きもあるが、それは話が飛躍している。
理論的には、金融政策と通貨政策は同じ方向を向いている必要がある。金融緩和策を続けながら円安に不満を漏らすのは自己矛盾であって、緩和に傾斜し過ぎた金融政策の修正がまずは必要となる。
通貨が下落して困っていると言いながら、利下げをくり返して金融緩和を維持するエルドアン政権下のトルコ中央銀行はまったくの例外で、普通の中央銀行なら通貨の下落時は金融引き締め方向に舵を切るものだ。
日本について言えば、投機筋の円売りと本格的に戦うことを考え、日銀による利上げが最善の手と筆者は考える。
利上げで円売りが止まるかどうかは賭けだが、マイナス金利政策の解除が持つメッセージは相応に大きなものと受けとめられる可能性があり、その点では期待できる。
【Q8】足もとの円安は「悪い」円安なのか?
ひと言で善悪を論じるのは不可能だ。
過去の寄稿(4月18日付)の冒頭でも強調したことだが、「総論としては日本経済にプラス、各論ではさまざまな見方があるもののマイナスの意見が多く、(有利不利の)二極化を助長しかねない」というのが最もフェアなスタンスと筆者は考えている。
円安のメリットで得をするのは、輸出や海外投資の還流に近いグローバル大企業だけで、内需主導型の中小企業や家計部門はデメリットで損する面が圧倒的に大きい。
2013年以降のアベノミクスで証明されたように、日本ではグローバル大企業から中小企業、家計部門へのスピルオーバー(拡散効果、アベノミクス当時は「トリクルダウン理論」などとも呼ばれた)がほとんど期待できない。
結局、円安は両者の格差を拡大する、言い換えれば日本における優勝劣敗を徹底する相場現象と認識するのが正しいのではないか。 

 

●1ドル129円70銭前後と大幅なドル高・円安で推移 4/28
28日の外国為替市場のドル円相場は午後1時時点で1ドル=129円70銭前後と、前日午後5時時点に比べ1円15銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円31銭前後と2円48銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●円安、一時129円台後半 日銀の金融緩和維持で 4/28
28日の東京外国為替市場の円相場はドルに対して下落し、一時1ドル=129円台後半を付けた。20日に付けた1ドル=129円43銭を突破し、2002年4月以来20年ぶりの円安ドル高水準を更新した。日銀が金融政策決定会合で大規模な金融緩和策を維持することを決めたと発表した後、急速に円が売られた。
景気を下支えするため金利を低く抑える日本と、インフレ抑制のため利上げにかじを切った米国の中央銀行の政策の違いが改めて意識され、より有利な条件で運用できるドルの需要が高まった。
正午現在は前日比70銭円安ドル高の1ドル=128円68〜69銭。
●円下落、20年ぶり130円台 日銀の緩和維持受け 4/28
28日の外国為替市場で円相場が下落し、一時1ドル=130円台と2002年4月以来およそ20年ぶりの円安・ドル高水準を付けた。日銀が27〜28日の金融政策決定会合で金融緩和の据え置きを決定し、利上げに向かう米国との金融政策の方向性の違いが改めて意識された。
政策変更の発表前には128円台後半で推移しており、発表後に1円ほど円安・ドル高に進んだ。日銀は、長期金利の上限を0.25%程度に抑えるために国債を買い入れる「指し値オペ(公開市場操作)」を毎日実施することも決めた。
●日経平均は322円高、円安・ドル高進み買い優勢の展開 4/28
日経平均は322円高(13時20分現在)。日経平均寄与度では、アドバンテスト<6857>、デンソー<6902>、東エレク<8035>などがプラス寄与上位となっており、一方、ファーストリテ<9983>、エムスリー<2413>、日立建<6305>などがマイナス寄与上位となっている。セクターでは、鉄鋼、鉱業、その他金融業、証券商品先物、ガラス土石製品が値上がり率上位、海運業、サービス業、その他製品、陸運業が値下がりしている。
日経平均は堅調に推移している。日銀金融政策決定会合で大規模金融緩和など政策の維持を決めたことが発表され、外為市場で一時1ドル=129円80銭台と朝方と比べ40-50銭ほど円安・ドル高に振れたことから、輸出企業の採算改善につながるとの見方から買いを誘っているようだ。日銀は指し値オペ(公開市場操作)を毎日実施することも決めた。
●日銀、大規模緩和を維持 物価見通し1.9%に引き上げ 4/28
日銀は27〜28日に開いた金融政策決定会合で、大規模緩和を維持する方針を決めた。10年物国債を0.25%の利回りで無制限に買い入れる指し値オペ(公開市場操作)を毎営業日実施することも決めた。28日公表の経済・物価情勢の展望(展望リポート)は2022年度の物価上昇率見通しを従来の1.1%から1.9%に引き上げたが、日銀は物価上昇は一時的との見方を崩さず、現行の金融政策を堅持する意向だ。
日銀は長期金利を0%程度、短期金利をマイナス0.1%に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)は維持する。指し値オペについては「明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する」とした。16年9月の導入から初となる措置で、市場に金利を抑制する姿勢を改めて強く打ち出した。
展望リポートでは22年度の物価上昇率見通しを引き上げた。ロシアによるウクライナ侵攻で原油や天然ガスなどの資源価格が上昇し、原材料高で企業に値上げの動きが広がっている。総務省が発表する消費者物価指数のうち、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数は3月に前年同月に比べて0.8%上昇している。
4月には携帯電話通信料の引き下げの影響が薄まる。日銀が目指す物価上昇率2%への到達も現実味を帯びている。日銀は物価の見通しを「いったん2%程度まで上昇率を高める」とする一方、エネルギー価格の押し上げ効果が薄まり「プラス幅を縮小していく」として、23年度見通しを1.1%とした。
22年度の実質成長率見通しは3.8%から2.9%に下方修正した。新型コロナウイルスの感染再拡大に加え、資源価格上昇の影響が響くという。23年度は1.1%から1.9%に上方修正しており、「(22年度の)反動で上振れる」とした。
日銀では現在の物価上昇がコスト要因による一時的なもので「持続しない」(日銀関係者)との見方が多い。持続的に物価が上がっていくために必要な賃上げが依然として広がりを欠くためだ。
問題は円安だ。28日の東京外国為替市場では円相場が下落し、一時129円88銭と節目の130円に迫った。インフレ下で利上げを進める米国と大規模緩和を続ける日本との政策姿勢が一段と鮮明になったことで金利差が広がり、金利の高いドルにマネーが流れ込んでいる。海外から購入する原材料の価格などを押し上げる円安が、企業による値上げを通じて国民負担を増大させているとの認識も政府内で強まっている。
黒田東彦総裁は22日の米ニューヨークのコロンビア大での講演で「いまの金融緩和を継続する必要がある」と強調した。ただ、円安がこのまま進めば、日銀が年内に何らかの政策修正を迫られるとの見方も浮上している。
具体的には、金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)の見直しや、長短金利操作で容認する長期金利の上限を現在の0.25%程度から0.5%程度に広げる案などが選択肢となる可能性がある。日銀の緩和姿勢を試すかのように、投機筋が円売り・ドル買いを加速させる展開も否定はできない。 
●円相場 1ドル130円台後半まで急落 20年ぶりの円安水準更新  4/28
28日の東京外国為替市場では、日銀が大規模な金融緩和策を維持し、長期金利の上昇を容認しない姿勢を明確にしたことを受けて、円相場は1ドル=130円台後半まで2円以上急落し、20年ぶりの円安水準を更新しました。
28日の東京外国為替市場は、午後に入って円安が一段と進む展開になりました。
きっかけは、日銀が今回の金融政策決定会合の結果を公表し、今の大規模な金融緩和策を維持したうえで、長期金利の上昇を容認しない姿勢を鮮明にしたことでした。
金融引き締めを急ぐアメリカのFRB=連邦準備制度理事会との金融政策の違いがより強く意識されたことで、円相場は一時、1ドル=130円70銭台まで2円以上急落し、2002年4月以来、20年ぶりの円安水準を更新しました。
午後5時時点の円相場は、27日と比べて2円61銭円安ドル高の1ドル=130円59銭から60銭でした。
一方、ユーロに対しては、27日と比べて1円87銭円安ユーロ高の1ユーロ=137円83銭から87銭でした。
ユーロはドルに対して、1ユーロ=1.0554から56ドルでした。
市場関係者は「円安のデメリットが大きいという指摘も多い中で、日銀が長期金利の上昇を強力に抑え込む姿勢を鮮明にしたことは、投資家の間で驚きをもって受け止められた。円を売って、より利回りが見込めるドルを買う動きは当面続きそうだが、急ピッチな円安に警戒感も出ている」と話しています。
外国為替市場で円安が進んだことについて、山際経済再生担当大臣は、28日午後の会見で、「急激な為替の変化は好ましいものではないことは財務大臣も申し上げているとおりだ。われわれとしては為替が安定してくれることを期待している」と述べました。そのうえで、「経済に対する影響については様々なものが絡み合う。為替の問題だけではなく、経済の激変が起きたときに、それを緩和するようなことをこれまでも行ってきた。注視しながら対応しなくてはいけないと思っている」と述べました。
外国為替市場で円安が進んだことについて、為替政策を担当する財務省幹部は、記者団の取材に対して「為替相場というのは経済の基礎的条件に基づいて安定的に推移することが重要であり、過度な変動は望ましくない。そういった意味では足元の動きは極めて憂慮すべきことだと思う。日本銀行や各国の通貨当局と緊密に意思疎通をはかりながら、必要な場合には適切な対応をとる」と述べました。
●円相場、一時131円台…金融緩和維持決定受け1日で3円安に  4/28
28日の外国為替市場で、ドル買い・円売りが進み、円相場は一時、約20年ぶりの円安水準となる1ドル=131円台をつけた。27日の東京市場の終値(午後5時)は1ドル=127円98銭だった。1日で3円、円安・ドル高が進んだことになる。
27〜28日に開かれた日本銀行の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和の維持が決まったことで、段階的な利上げが見込まれているドルとの金利差拡大が続くとの見方が強まり、円が売られた。
日銀の黒田東彦総裁は28日の記者会見で「(日銀の)今回の政策決定が、円安を促すとは思っていない。円安が(日本経済に)プラスという評価を変えたわけではないが、(為替レートの)急激な変動は、不確実性の高まりを通じてマイナスに作用する」と述べた。 
●NY外為 円、130円台後半 4/28 
28日午前のニューヨーク外国為替市場では、日銀の金融政策決定会合を受けて円売りが進んだ海外市場の流れを引き継ぎ、円相場は1ドル=130円台後半に下落している。午前9時現在は130円80〜90銭と、前日午後5時(128円38〜48銭)比2円42銭の大幅な円安・ドル高。
日銀は28日、金融政策決定会合で大規模な金融緩和政策の維持を決定。これを受けて低金利の円を売り、ドルを買う動きが急速に強まり、円相場は2002年4月以来約20年ぶりの水準となる一時131円台に急落した。
ニューヨーク市場に入ってからも大幅な円安・ドル高水準が継続。朝方発表された1〜3月期の実質GDP(国内総生産)速報値は、年率換算で前期比1.4%減と市場予想に反して7四半期ぶりにマイナス成長となった。発表直後にドルが売られたが、一時的で円売り・ドル買いの勢いは衰えていない。マイナス成長は輸入の拡大などによるもので、個人消費や設備投資を柱に景気は底堅さが続いているとの見方は根強い。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0480〜0490ドル(前日午後5時は1.0554〜0564ドル)、対円では同137円10〜20銭(同135円57〜67銭)と、1円53銭の円安・ユーロ高。 
●日銀砲で円安急加速、ドル20年ぶり高値 131円後半突破 4/28 
04月25日週のドル/円は20年ぶりの130円台乗せ達成
グローバル経済を巡るリスク回避から、ドル/円は126.946円まで下げが先行しました。シカゴ通貨先物における円ショートポジションがかなり積み上がっていた反動も円を押し上げたようです。しかし、日銀による条件付きの毎営業日指値オペにて10年物国債の利回りを0.25%に抑制する施策が発表されると円安が急進。ドル/円は20年ぶりの130.667円(執筆時点)まで上昇幅を拡大しました。
米経済指標がドル/円上昇の新たな燃料となるか注視
来週は本邦勢が黄金週間で市場参加者が限られるなか、米国・英国で金融政策会合が相次いで開催されるほか、米国では雇用統計も発表されるなど値動きが荒っぽくなる可能性があり注意が必要です。米FOMCは0.5%の利上げのほか、量的引き締め(QT)開始も見込まれタカ派化が進展しそうです。通常ならドルのサポート材料となりますが、グローバルな景気減速懸念など見通しへの不確実性が高まるなかで、市場はリスク選好よりはリスク回避に若干軸足を移しているように見受けられ、正直、どちらに進むか判断は難しいところです。これまでに蓄積されたデータで織り込める分の引き締めを既に織り込んでしまっていることも、こうしたムードを強める格好になっています。
FOMCで米国の利上げスピード加速は単なる確認事項であって、正味のドライバーは経済が大幅利上げに耐えられるのかと言った部分ではないでしょうか。米経済の堅調さが改めて確認できるようなら、日米金利差拡大への期待からドル円はさらにレンジ上限を広げそうな雰囲気ですが、逆に米経済への不透明感が強まれば達成感から上昇への反動が大きく出ても不思議はなさそうです。この点で、FOMC後の雇用統計の結果は米利上げを受けた経済の行く末をみる最初のチェックポイントになりそうで要注目です。好材料と不安材料が混在しており、安心して一方向を見渡せる状況にないため、先週と同様に上下両方向にレンジを広めにして相場動向に機動的に対処したいです。
131円台は単なる通過点との声も
足元の下落幅が2.458円と3月28日高値125.083円から3月31日安値121.275円の3.808円に迫ることなく切り返した点で、ドル/円の底堅さが窺えます。すでに20年ぶりの130円達成で上方向の節目が見つけづらく、どこまで上昇幅を伸ばすのか不明ですが、当面は2002年2月安値の131.85円レベルが意識されそうです。もっとも、上昇の勢いがを踏まえるとこのレベルは単なる通過点と意識され、2002年3月高値(133.88円)程度まで視線が上がるかもしれません。ただし、さすがにスピードオーバーの感は否めませんので、129.500円を割り込んでくるようだと、128.000円付近までの調整は早いかもしれません。 

 

●円急落、一時131円25銭 4/29
28日のニューヨーク外国為替市場の円相場はドルに対して急落し、一時1ドル=131円25銭と約20年ぶりの円安ドル高水準を付けた。日米金利差の拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
午後5時現在は前日比2円36銭円安ドル高の1ドル=130円74〜84銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0494〜0504ドル、137円37〜47銭。
日銀が大規模な金融緩和政策によって低金利を堅持する姿勢を強調し、利上げ加速が見込まれる米連邦準備制度理事会(FRB)との政策の違いが改めて鮮明となった。
●NY外国為替市場 1ドル131円台前半まで値下がり  4/29
28日のニューヨーク外国為替市場では日銀が長期金利の上昇を強力に抑え込む方針を明確にしたことを受けて円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は一時1ドル=131円台前半まで値下がりして20年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
28日のニューヨーク外国為替市場では日銀が大規模な金融緩和策を維持したうえで長期金利の上昇を強力に抑え込む方針を明確にしたことを受けて、東京市場やロンドン市場で円安ドル高が加速した流れを引き継ぎ円を売ってドルを買う動きが強まりました。
このため円相場は一時1ドル=131円台前半まで値下がりし、2002年4月以来、20年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
円相場は1ドル=121円前後の水準だった3月末の時点から1か月近くでドルに対しておよそ10円値下がりし、円安が加速しています。
円安は日本の輸出企業にとっては利益が増える一方で、日本が輸入に頼るエネルギーや食料品などの価格を押し上げることにつながります。
市場関係者は「インフレを抑制するため金融の引き締めを急ぐアメリカと日本の金融政策の方向性の違いが改めて意識された。円を売る動きだけでなく利回りが見込めるドルを買う動きも強まっているため、円安ドル高がどこまで進むか見通せない状況となっている」と話しています。
●1ドル150円も視野に…“浮かれる”GW中に「円安地獄」へ突入か 4/29
ネット上には、経済の先行きを不安視する声が目立つ。約20年ぶりの円安水準となる1ドル=130円台に急落した、28日の東京外国為替市場の円相場。この日開かれた日銀の政策決定会合では、特定の利回りで国債を無制限に買い入れる「指し値オペ」を毎営業日実施することを決定。長期金利の上昇を抑える姿勢を鮮明にしたことから、日米の金利差がますます拡大すると受け止められたようだ。
この流れを受け、市場で懸念されているのが5月連休中のさらなる円安進行だ。
「米国の中央銀行に当たる米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、これまでの量的緩和策で膨らんだFRB総資産を圧縮するためとして、5月3、4日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の大幅利上げを検討することを表明している。これに対し、日銀の黒田東彦総裁は、今の大規模緩和策を続ける姿勢を鮮明にし、岸田文雄首相も26日の会見で、『日銀は2%の物価目標の下にその政策を進めている。引き続き努力を続けていただくよう期待している』と静観したまま。こうなると、日米の金利差は誰が見ても拡大するのは避けられないでしょう。より高い利回りで資産を運用したいと考える投資家らは、今以上に円を手放してドルに資産を替える動きを加速させるとみられています」(証券アナリスト)
市場で<日本がゴールデンウイークで浮かれている間に円安地獄になる><ゴールデンウイークに旅行している場合じゃない>などと悲鳴が上がっているのも無理はない。
そろそろ本気で黒田総裁の“暴走”にストップをかける時ではないのか。
●日銀公認の「超円安」はどこまで行くか 4/29
外国為替市場で、1ドルが130円の大台に乗った。130円をつけたのは2002年以来、20年ぶり。ウクライナ戦争直前の115円から、2カ月で12%という急激な値下がりである。
このきっかけは日銀の金融政策決定会合で、「指し値オペを毎営業日やる」という強硬な方針が決まったためだが、130円は通過点だろう。円はまだ高すぎるからだ。
黒田総裁の宣言した「円売り介入」
長期金利を事実上0.25%以下に固定する異例のオペレーションについて、日銀の黒田総裁は記者会見で「憶測を払拭するためだ」として量的緩和を今後も続ける決意を示し、「円安が日本経済にとって全体としてプラスだという評価は変えていない」と述べた。
これが外為市場には円安容認と受け止められたわけだが、彼はそれを想定していたようにみえる。図1のように、短期的にはドル/円レートは日米の長期金利の差で決まるので、日米の金利差が拡大している中で日本の長期金利を固定するのは、円売り介入と実質的に同じである。
   図1 ドル/円レートと米長期金利
130円になっても黒田総裁が円安に誘導するのは、最適水準がもっと円安だと考えているからだろう。これは彼が総裁になったときからの一貫した方針で、日銀のインフレ目標も実質的には円安ターゲティングだった。
この円安は、どこまで行くのだろうか。為替レートが何で決まるかについては諸説ある。変動相場制を提案したミルトン・フリードマンが想定していたのは、貿易黒字も赤字もなくなって世界全体で一物一価になる購買力平価(PPP)だった。
このPPPを簡単に示すのがエコノミスト誌の「ビッグマック指数」だが、これでみるとビッグマックの価格は日本では390円だが、アメリカでは5.44ドルなので、1ドル=130円で換算すると707円。円はPPPより45%も過小評価されている。
それが均衡に戻るとすれば、1ドル=71円ぐらいに上がるはずだが、そう考えている人は、市場関係者にも経済学者にもいない。それは外為市場が、ビッグマックのような商品の取引を決済する市場ではないからだ。
円は130円でも高すぎる
為替取引の99%は為替投機であり、そこで取引される資金の均衡を決めるのは資金需給である。それを決めるのは、短期的には実質金利だが、長期的には何で決まるだろうか。
1つの要因は、貯蓄=投資バランスである。図2のように日本の家計は戦後、一貫して貯蓄過剰だったが、1990年代までは企業が投資していたので、貯蓄と投資のバランスは取れていた。
   図2 日本の貯蓄=投資バランス
ところが1998年の金融危機を境に企業が貯蓄超過になり、需要不足でデフレになった。その原因は当初は銀行が不良債権を清算して資金を回収したためだったが、その後も中小企業が経営破綻を恐れて現金を保有する傾向が強まった。
企業がカネを借りて投資するのが資本主義なので、企業が貯蓄しているようでは停滞するのは当たり前だ。会計的には、国内の貯蓄超過は政府か海外で埋めるしかないので、次の式が成り立つ。
   貯蓄超過=政府投資+海外投資
この貯蓄超過(需要不足)は普通は金利で調整されるが、2000年代に金利がゼロになっても、この貯蓄超過は埋まらなかった。それを埋めたのが、財政赤字(官公需)と経常収支黒字(外需)だった。
経常収支の黒字は、2000年代まではほとんど貿易黒字(輸出)だったが、2010年代には低金利で海外直接投資を行う企業が増え、所得収支の黒字(海外法人の利益)が増えた。これは停滞する国内市場から成長するアジアへのキャピタルフライト(資本逃避)で、これが円安要因になった。
2020年にはコロナ対策で大幅な財政赤字になったが、これはそのまま家計の強制貯蓄になったので、今も民間は大幅な貯蓄超過になっており、これを埋めるのは財政赤字か経常収支の黒字しかない。
つまり経常収支の黒字は少なすぎるので、それを増やすにはもっと円安になって経常収支の黒字を増やす必要があるのだ。これは直感的にはわかりにくいと思うが、国内の需要不足を海外需要で埋めるという点では同じである。
ただし輸出産業の雇用は国内で発生するので国内総生産(GDP)に含まれるが、海外法人の利益(所得収支の黒字)はGDPに含まれない。国内の過剰貯蓄が海外に流出して、アジア人の雇用を生んでいるのだ。それが日本人の賃金が上がらない根本的な理由である。
「資源インフレ」の是正にはエネルギー政策の転換が必要だ
では円はどこまで下がるだろうか。これを考える上では、ドル/円だけではなく、全通貨に対する実質実効為替レートを考える必要がある。これでみると現在は歴史的に最低の水準にあるが、それ以上に交易条件が急速に悪化している。
   図3 交易条件と実質実効為替レート
交易条件とは輸出物価/輸入物価で、日本が輸出品でどれだけ輸入品(特に一次産品)を買えるかという指標だ。その最大の要因は資源価格である。
2020年から原油価格の上昇と脱炭素化による化石燃料への投資削減で、資源価格が上がり、交易条件は大幅に悪化した。この資源インフレで貿易収支が赤字になり、経常収支も今年は赤字になった。
さらにウクライナ戦争でロシアに対する経済制裁などで化石燃料の供給が減ったため、化石燃料を自給できない日本はさらに貿易赤字が拡大する見通しだ。このため3月から急激な円安になった。つまり、
   ・日米金利差の拡大
   ・強制貯蓄による貯蓄過剰
   ・資源価格の上昇
という3つの条件が重なり、急激な円安が起こっているのだ。円が上がる要因はないが、どこまで下がれば落ち着くかの答えは、この3つの条件のどれを重視するかに依存する。
日米の実質金利の差を重視するなら、今のアメリカの長期金利は約2.8%だが、予想インフレ率も約2.8%なので、実は日本とそれほど大きく違わない。今後、FRB(連邦準備制度理事会)が政策金利を引き上げると長期金利も上がるが、実質金利の差はそれほど拡大しないだろう。
強制貯蓄による貯蓄過剰は一時的な現象なので、為替レートにはそれほど影響しないが、これが今後、家計金融資産のキャピタルフライトで海外投資に流れると、円が暴落して通貨危機になる可能性もある。この場合は1ドル=150円も考えられる。
そこまで円が下がると、海外に脱出した企業が日本に回帰し、外資が日本に投資するようになるかもしれない。この場合の外資は主として中国やアジアだろうが、日本が法人税を下げれば「アジアの国際金融センター」になることも不可能ではない。
最大の問題は資源インフレである。これは戦争による一時的な要因だけではなく、脱炭素化や日本のエネルギー構成の脆弱性といった構造的な問題を含むので、日銀にはどうにもならない。
この点で「物価高対策」に6.2兆円の補正予算を出す岸田内閣と日銀の政策はチグハグである。物価高を止める方法は簡単である。日銀が指し値オペをやめて、長期金利を市場にまかせればいいのだ。資源高に対応するためには、岸田政権が日本のエネルギー戦略を転換する必要がある。
●急速なウォン安進行なら「市場安定措置を取る」 韓国担当次官 4/29
韓国企画財政部の李億遠(イ・オクウォン)第1次官は29日のマクロ経済金融会議で、外国為替市場でウォン安ドル高が進んでいることについて、米国の利上げ加速に対する懸念、中国の新型コロナウイルス感染拡大による都市封鎖(ロックダウン)に伴う景気鈍化の懸念が重なり、為替相場の変動性が拡大していると指摘し、「市場の動向を綿密にモニタリングし、急速に(ウォン安ドル高に)傾けば市場安定措置を取る」と述べた。
李氏は「現状況で韓国から外国人の投資資金が急速に流出する可能性は限定的」との見方も示した。米金利がハイペースで上昇し、韓米金利差の縮小や外国人資金の流入鈍化を懸念する声もあるが、他の新興国とは異なる韓国経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)と国の信用度、ショックの吸収能力、内外の金利逆転時にも外国人の資金流入が続いた過去の例などを考慮する必要があると指摘した。
一方で、世界的な金利上昇傾向が続く中、変動性が高い状態が続く可能性があるとし、「金利環境の変化とこれによる国内外の金融市場、実体経済への波及効果などを注視していくべきだ」と述べた。
物価に関しては、ロシアとウクライナの戦争長期化などで不確実性が高まり、当面は物価上昇圧力が高いと予想。ガソリンや軽油に課す「油類税」の引き下げ効果を消費者が早く実感できるよう、積極的に努めていくとした。政府はロシア軍のウクライナ侵攻による原油価格の高騰を受け、5月1日から油類税の引き下げ幅をこれまでの20%から30%に拡大する。 

 

●為替相場 4/25〜4/29 4/30
25日からの週は、総じてドル買いが強まった。次週5月4日に予定されている米FOMC結果発表では0.5%の大幅利上げについて、市場はほぼ完全に織り込んでいる。一方、この週の日銀決定会合では金融緩和策の強化が示され、円売りが強まった。政府から急速な円安を懸念する声が発せられるなかで、日銀は政策調整を行うのではないかとの思惑が市場に広がっていた。しかし、日銀は毎営業日の指し値オペ実施を表明、黒田日銀総裁会見でも金融緩和策の継続が強調され、全体として円安はプラスとの評価は変えてない、との従来からの姿勢も維持された。ドル円は130円の節目を上回ると一時131.25レベルと、2002年以来の高値水準をつけた。ユーロドルは1.04台、ポンドドルは1.24台まで下押しされる場面があった。欧州にとってはロシアがポーランドとブルガリアへの天然ガス供給を停止すると発表したことが衝撃を与えた。英国では消費関連の経済指標が弱含んでおり、高インフレ、利上げの弊害が懸念される状況となっている。長引くウクライナ戦争により、エネルギー価格高騰やその波及効果で欧州も英国も回復力を削がれてきているようだ。一方で、米GDP速報値は予想外のマイナスとなったが、国内の消費需要は引き続き底堅く、比較的強い経済を維持している。
25日
東京市場で、ドル円は振幅。週明けの市場は買いが先行。先週金曜日にTBSが報じた日米財務相会談で協調介入が議題となり前向きに検討してくれるトーンだったとの報道について、財務省幹部が通信社に対して匿名を条件にはっきりと否定したことが週末に報じられ、128円台前半から後半へと上昇。その後は、米株先物・時間外取引が先週末から一段と下落、リスク警戒の動きで128円台前半に押し戻された。米債利回りの低下もドル円の重石に。ユーロ円は138円台後半から139円台乗せも、138円台前半へと下落。ユーロドルは1.08台乗せでは売りに押され、1.07台後半へと軟化。週末の仏大統領選決選投票で現職のマクロン大統領が勝利したが、ユーロの上値は重かった。
ロンドン市場は、リスク回避ムード一色。先週後半から引き続き米欧金融引き締め姿勢が警戒されているほか、中国主要都市でのロックダウン措置導入の動きが中国の景気鈍化への懸念を広げていることが背景。ドル円とともにクロス円が下落、ドル円以外の通貨でのドル買いの動きも顕著。そのなかでは、独Ifo景況感指数が予想外に改善したユーロは比較的底堅く推移。一方、英CBI製造業受注指数が予想以上の低下となったことで、ポンド売りが強まっている。中国株の急落を受けて欧州株も軟調に推移するなかで、ユーロドルは1.07台後半から1.0707近辺まで下落。ポンドドルは1.28近辺から1.2750割れとなったあといったん下げ渋ったが、再び1.2705近辺に安値を広げている。ユーロ買い・ポンド売りが入っていた。ユーロ円は138.50付近から137.18近辺まで下落したあとは、下げ一服。ポンド円は164.50付近から163.50割れとなり、足元ではさらに163円台割れと軟調。ドル円は128.50付近から序盤に127.89レベルまで下落したが、その後は128円台前半で揉み合っている。
NY市場では、ドル円が再び下落した。NY時間に入ると米債利回り低下とともに戻り売りが優勢となり、127円台半ばまで一時下落した。中国で感染に収束の気配が見られず、ロックダウン措置が上海のみならず北京にも導入されるとの懸念が広がっている。市場ではFRBの積極利上げによる景気後退を不安視する声がある中で、中国でのロックダウンの広がりはサプライチェーン問題を悪化させ、景気後退への懸念に拍車をかけるとの指摘が聞かれる。ユーロドルは売りを強めており、1.07台を一時割り込んだ。2020年3月以来の安値水準。きょうの市場はリスク回避の雰囲気を強めており、為替市場はドル買い・円買いの動きが優勢となっている。 FRBは積極利上げへの姿勢を強める中で、ECBは利上げの可能性を示唆しつつも、慎重姿勢も崩していない。ポンドドルも売りが加速し、一時1.26台まで下落。2020年9月以来の安値水準。市場からは、多くの先進国に景気後退観測が広がれば、英国は特に他国よりも大きなリスクを抱えているとの指摘も。
26日
東京市場で、ドル円は振幅。朝方に128円台割れから127.34近辺まで下落。渡辺元財務官が130円や135円が日本経済にとってとても悪い水準ではない、介入をすぐに望んでいるとは思わない、などと発言したことを受けて反発。午後には再び128円台乗せ。ロンドン勢の本格参加を前に再び127.80台へと軟化した。ユーロ円は136.50台から137.50台での振幅。ユーロドルは午前中に1.0730台まで買われたあとは、高止まりに。豪ドル円は朝方に91.50割れまで下落したあとは、買いが強まり92.50台まで上伸。その後は上値追抑えられた。
ロンドン市場は、ドル高と円高が優勢。欧州株は前日の大幅安から反発しているが、米株先物は時間外取引で上値重く推移。NY原油先物は97ドル台から99ドル近辺で神経質に振幅。米10年債利回りはロンドン早朝に2.86%付近まで上昇していたが、その後は2.78%まで低下。ドル円は128円台では売りに押される展開で、ロンドン時間には127.60台へと再び押し戻されている。クロス円も総じて下落に転じており、ユーロ円は137円台から136円台前半へ、ポンド円は163円台から162円台前半へと下落。対ドルでもユーロやポンドは軟調。ユーロドルは1.07台割れから1.0670台へと安値を広げ、2020年3月以来の安値水準となった。ポンドドルは1.27台後半から1.27台割れを試す動き。ウクライナ情勢の膠着、米国など主要国中銀の金融引き締め姿勢、中国での新型コロナ感染拡大と成長鈍化懸念などネガティブな材料は依然として多い。
NY市場では、リスク回避ムードが継続。ドル買い以上に円買いの動きが強まっている。ドル円は先週サポートされた127.45付近を一時下回り、127円ちょうど付近まで下落する場面もが見られた。その後は127円台後半へと反発したが、128円には戻し切れず。上海に引き続き北京でもロックダウンの措置が実施されるのではとの不安から、中国経済への懸念が強まっている。一方、FRBの積極利上げへの期待は依然として強く、5月FOMCのみならず、9月FOMCまで連続で0.50%の大幅利上げが実施されるのではとの観測も出ているようだ。市場では景気後退のシナリオが再浮上しており、米国債利回りも急速にイールドカーブのフラット化が進む中、ドル円も戻りが優勢に。ユーロドルは下値を切り下げる動きが加速、1.0640近辺まで下落し、2020年3月以来の安値水準に。ポーランドのガス配給会社がロシアのガスプロムから天然ガス供給を明日からすべて停止するとの通告を受けたと報じられた。ポンドドルも1.25台まで急落し、2020年7月以来の安値水準となった。世界的な景気後退であれば、主要国の中では英国が最も影響が深刻になるとの見方もあり、ポンドは対ユーロでも下落している状況。
27日
東京市場で、ドル円は下に往って来い。前日の株安を受けたリスク警戒で朝方には127円台割れから126.90台まで一時下落。ただ、ストップロス狙いで強引に売られた面もあり、その後は一転して買い戻しが強まった。日経平均は午前中に600円超の下落となる場面があったが、その後は下げ幅を縮小、アジア株も値ごろ感から下がると買いが出ていた。ドル円は昼には127.80台まで反発した。ロンドン勢の参加を引開けて128円台をうかがう動きとなった。ユーロ円も135.05近辺まで下押しされた後は買い戻されて、136円台乗せへと上昇。第1四半期の豪消費者物価指数は強めの数字だったが、発表直後は反応薄。早期利上げがある程度織り込まれているようだ。ただ、その後は円安の流れとともに90円台後半から91円台後半まで買われた。
ロンドン市場は、ドル買いが継続。ユーロドルの下げが主導する格好。ロシアのガスプロムがポーランドとブルガリアへの天然ガス供給を停止との報道がユーロ売り圧力となった。ユーロドルは1.06台割れから1.0586レベルまで一時下落。2017年4月以来の安値水準となった。ユーロ売りの面が強く、ユーロ円は一時135.11レベル、ユーロポンドは0.8424レベルまで下押しされた。序盤はドル買いの動きも広がった。ポンドドルは一時1.2536レベルまで下落。ドル円は128.10レベルまで上昇。ドル指数は一段と上昇、2020年3月以来の高水準となった。米10年債利回りは2.79%付近まで一時上昇した。欧州株は売りが先行したが、米株先物が堅調なことを受けてプラス圏に浮上している。株式市場にはガスプロムの報道の影響は軽微だったようだ。為替市場でも序盤のドル買いやユーロ売りの勢いは一服している。
NY市場でも、ドル買いが優勢。ドル円は128円台を回復、128.60付近まで高値を伸ばした。ドル買いが下支えするとともに、きょうは米株が反発し景気後退を懸念したリスク回避ムードも一服した。世界的な景気後退への懸念の1つに中国のロックダウン拡大と景気減速への警戒感があるが、中国政府が、インフラ建設を強化する方針を明らかにしたこともネガティブな雰囲気を一服させている。日銀が明日、金融政策決定会合の結果を発表する。大きな政策変更はなく、現行の金融緩和を維持すると見られている。ユーロドルは売りが加速、一時1.05台前半まで下落した。2017年3月以来の安値水準となり、心理的水準1.05をうかがう展開に。きょうは一服しているものの、景気後退への懸念は根強く、ウクライナ情勢が混沌とする中で、ユーロドルは売りが続いている状況。ポンドドルも心理的水準の1.25ちょうど付近まで下落する場面があった。下値模索は5日連続となった。英CBIが4月の小売販売の景況感を発表し、予想外の急低下となっていた。このところ、英消費関連指標に弱い数字が相次いでおり、ポンド相場を圧迫している。
28日
東京市場では、ドル円が130円台を示現。日銀金融政策決定会合を受けて円売りが一気に強まった。日銀は毎営業日の指し値オペ実施を表明、市場の一部には悪い円安に対応するために政策調整があるのではとの思惑もあったが、むしろ金融緩和策の強化の内容だったことが背景。ドル円は128円台から130円付近の攻防を経て、130.27レベルまで高値を伸ばした。クロス円も軒並みの円安進行。ユーロ円は135円台後半から136円台後半へ上昇。ポンド円は161円台前半から162円台後半へ上昇。対欧州通貨ではドル買いの動きがみられた。ユーロドルは1.05台を割り込み、1.0483レベルまで、ポンドドルは1.25台前半から1.2492レベルまで下落した。
ロンドン市場は、円売りが強まった。日銀の強力な緩和継続姿勢が背景。きょうの決定会合で日銀は毎営業日の指し値オペ実施を表明、市場に金融緩和強化を印象付けた。黒田日銀総裁の会見では「金利の上限をしっかり画するため、指し値オペ明確化」「好循環の中での安定的な2%実現には時間がかかる」「強力な金融緩和を粘り強く続ける」とした。また、円相場については「全体として円安プラスとの評価は変えてない」と従来からの姿勢を維持した。ドル円は130円台乗せから一時131.01レベルまで買われ、2002年4月17日以来の高値水準となった。その後、財務省幹部が「為替、足元の動きは極めて憂慮すべき」と述べた。円安けん制としてはこれまでよりも強い言葉が発せられたことで130.20付近まで一時反落。130円台は維持されている。クロス円でも円安の動き。ユーロ円は135円台半ばから買われ、ロンドン序盤には138円ちょうどまで高値を伸ばした。その後の戻りは137円前後まで。ポンド円も161円台から一時164.25近辺まで上昇、その後の調整は162円台後半へとやや深めの動き。ポンドは対ドルや対ユーロでも軟調で、ポンドドルは1.25台後半に上昇後、1.24台後半へと下落。ユーロドルは1.04台後半に下押しされたあと1.05台後半に反発も、再び1.05前後へと押し戻されている。ドル指数は前日から一段高となっており、ドル高の流れは根強い。
NY市場では、ドル買い・欧州通貨売りが加速した。ユーロドルは1.05台割れから1.0470付近まで下落、ロンドン朝方から一段と売りが進行した。その後は下げ一服も、1.05台前半に低迷している。市場では、心理的水準1.05を割り込む動きを受けて、ユーロとドルのパリティー1.00を視野に入れるとの見方もでていた。一方、ECBがユーロ下落を阻止するために口先介入などを実施するとの思惑もあった。ポンドドルも心理的水準1.25を割り込み、一時1.24台前半まで下落。2020年7月以来の安値水準となった。来週の英MPCに向けて、市場での0.50%の大幅利上げの見方は一気に後退し、0.25%の利上げにとどまることがコンセンサスとなっていた。ドル円は131.20付近まで再び高値を伸ばした後は130円台後半に高止まりした。第1四半期の米GDP速報値が発表され、予想外のマイナス成長となった。今回のGDPは在庫投資や純輸出の減少が圧迫し、事前に減速が見込まれていたが、個人消費の伸びが予想外に小さかったことや政府支出の減少がマイナス成長に繋がった。しかし、一時的要因も多く、設備投資は堅調なことから、悲観的な雰囲気までは出ていなかった。
29日
東京市場は昭和の日の祝日のため休場。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。週末を控えて調整の動きに押されている。ドル円はオセアニア序盤につけた130.95レベルを高値にその後は軟調に推移。ロンドン序盤には130円台割れから129.77レベルまで下押しされた。その後、米債利回りの上昇とともに130.50付近まで反発したが、再び130円台割れと上値が重い。ユーロドルもドル売り圧力に押し上げられて、1.05台前半から1.0593レベルまで上昇。その後も1.05台後半に高止まりしている。ポンドドルは1.24台後半から1.2580近辺まで買われている。クロス円はドル円の値動きを反映しての振幅。ユーロ円は137円台で、ポンド円は162円台後半から164円付近で上に往って来い。米株先物・時間外取引が前日の大幅高の調整に押されており、足元では円買いの動きが優勢になっている。この日発表された4月ユーロ圏消費者物価速報は前年比+7.5%と前回並みの高水準が持続した。ユーロ圏第1四半期GDP速報値は前期比+0.2%とかろうじてプラスを維持した。
NY市場は月末の取引ということもあり、ドル買いも一服する中、ドル円は130円を再び割り込だ。米株式市場でダウ平均が一時1000ドル超下落するなどリスク回避の雰囲気も加わり、一時129円台前半まで下落する場面も見られた。
●NY円、反発 1ドル=129円80〜90銭 持ち高調整や株安受けた円買い 4/30
29日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3日ぶりに反発し、前日比95銭円高・ドル安の1ドル=129円80〜90銭で取引を終えた。短期間に急ピッチな円安が進んだ反動で、週末を前に持ち高調整の円買い・ドル売りが優勢となった。米株式相場が大幅に下落し、低リスク通貨とされる円に買いを呼び込んだ面もあった。
円は前日に131円台前半と20年ぶりの円安水準を更新した。最近1カ月で10円近く円安が進み、月末・週末とあって利益確定や持ち高調整の円買い・ドル売りが入った。29日は米株式市場でダウ工業株30種平均の下げ幅が一時は前日比1000ドルを超えた。投資家心理が弱気に傾き、円買いを誘った面もあった。
円以外の主要通貨に対しても利益確定のドル売りが広がった。インターコンチネンタル取引所(ICE)が算出するドル指数は28日に103台後半と2002年12月以来の高水準をつけ、その反動が出やすかった。
もっとも、円は買い一巡後に伸び悩んだ。米連邦公開市場委員会(FOMC)を5月3〜4日に控え、米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引き締め姿勢を示すとの見方が円の重荷だった。
円の高値は129円33銭、安値は130円37銭だった。
円は対ユーロで3日ぶりに反発し、前日比40銭円高・ユーロ安の1ユーロ=136円95銭〜137円05銭で取引を終えた。ドルに対する円買いが、円の対ユーロ相場に波及した。
ユーロは対ドルで7営業日ぶりに反発し、前日比0.0040ドル高い1ユーロ=1.0535〜45ドルで終えた。前日に5年ぶりのユーロ安・ドル高水準をつけていたため、持ち高調整のユーロ買いが優勢となった。
この日の高値は1.0579ドル、安値は1.0510ドルだった。
●「悪い円安」、家計の処方箋 4/30
急激な円安進行が毎日の暮らしに暗い影を落としている。円安の影響は立場によって様々。ただ今回は、輸入価格の高騰が身近な商品やサービスの値上げラッシュを引き起こす「悪い円安」の側面が色濃い。どう付き合っていけばいいのだろうか。
円相場は今月に入り、およそ20年ぶりの円安・ドル高水準を記録した。きっかけは、新型コロナウイルス後の世界的なインフレ不安とロシアによるウクライナ侵攻だ。
昨年以降、コロナ下の長い自粛生活の反動による消費の急拡大に対し、生産や流通が対応できずに物価が高騰。今年に入り、エネルギーや食料の主産地であるロシアとウクライナの武力衝突が起きたことで、世界的なインフレ不安が一段と強まった。
景気回復で先行する米連邦準備理事会(FRB)は3月から、インフレを抑えるために政策金利の引き上げに着手。欧州中央銀行(ECB)も先行きの利上げをにらんで量的緩和政策の縮小に踏み出した。一方、景気回復が遅れる日本は大規模な金融緩和政策を続ける方針を堅持し、日米間の金利差が急拡大した。投資マネーは金利が高い通貨に流れやすく、結果として円からドルやユーロへ、つまり円安・ドル高、円安・ユーロ高が進んだ。

「悪い円安」と呼ばれるのは、円安が商品やサービスの値上げを引き起こしているからだ。エネルギーや食料の自給率が極端に低い日本の場合、原油や小麦などの大半を輸入に頼らざるを得ない。世界的なインフレで値段が上がっているうえ、大幅な円安で円に換算した時の輸入品価格が高騰。国内製品も生産や流通の過程でガソリンや電気を使うため、値上げせざるを得ない状況に追い込まれている。
円相場の長期グラフをみると、これまでも急激な円安が繰り返し訪れている。暮らしを支えるためには、円安が進むたびに節約するしか方法はないのだろうか。そこで保有する通貨の国際分散という手法を提案したい。円預金だけでなく、ドル預金やユーロ預金などにも分散させて保有する考え方だ。
冒頭に指摘したとおり、円安の影響は立場によって変わる。分かりやすいのは企業。輸出業者は海外販売で得た外貨を円に換えるため、円安が業績を押し上げる。逆に輸入業者は海外から仕入れる商品を買うために円を外貨に換えるため、円安は業績を圧迫する。実は、個人の場合も影響は様々だ。消費者からみれば、輸入品の値段が上がるので円安はマイナス。ところが外貨資産への投資家の立場だったら、円換算の価値が上がるので円安がプラスに働く。
東京都内に住む中村美紀さん(仮名、52)は、円安が進み始めた昨年夏から手持ちのドル預金を取り崩して生活費に充てている。1ドル=100円程度の時代に預けたため、円に戻すと手数料などを引いても1〜2割ほど増え、商品の値上げを十分吸収できるという。
消費者にデフレ感覚が染みついた日本では、企業が買い控えを警戒して製造コストの上昇分をまるごと販売価格に転嫁しない。一方、ドル預金はそのまま円に換金できるので、値上げ分を為替差益で賄いやすいわけだ。
取引コストが安い外国為替証拠金(FX)会社を使う方法もある。FX大手の外為どっとコムの調査では、担保に預けたお金の数倍の金額を取引できる「レバレッジ」を1〜2倍にとどめる人が全体の4分の1近くを占めた。外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏は「生活費をドルで預ける手段として活用する人も少なくない」と話す。

グローバル化やIT化の進展で、現在は海外の商品との距離が近くなっている。消費者として海外の商品を買う機会が増える時代に、投資家として保有資金を円だけで持つ必然性は乏しい。かつて平日に金融機関の窓口でしか扱っていなかった外貨預金も、現在はインターネットで終日取引でき、取引コストも格段に安くなった。
為替市場に詳しいマーケット・リスク・アドバイザリーの深谷幸司氏は「円安で支出の負担が増すのであれば、収入も円と外貨に分散させておき、円安時には外貨で支払う方が生活防衛策として理にかなっている」と話す。円高時は円預金、円安時には外貨預金を生活費に充てる行動は、グローバル時代の新常識になるかもしれない。
だが家計の預金は円に偏っている。日銀の資金循環統計によると、2021年末時点で家計の現預金1091兆円のうち、外貨預金はわずか7兆円ほど。外貨になじみが薄い高齢層が過半を保有しているうえ、預金保険の対象外であることもあり、通貨の国際分散はほとんど浸透していない。
それでも若い世代を中心に、外貨との距離は縮まっている。ドル建ての投資信託の残高はコロナ後の円安・株高を背景に急増しており、若い世代が米国株などに資産を移す動きが目立つ。あと10年ほどの間に、若いころに海外旅行や海外ブランドに慣れ親しみ、外貨の保有にも抵抗が小さいバブル世代が高齢層に仲間入りする。
いまは急激な円安時なので、外貨に分散させるタイミングにはそぐわない。ただ円安で暮らしが苦しくなる状況を肌で感じている今だからこそ、次の円安局面に備えて通貨の国際分散という考え方だけは身につけておきたい。
●円相場 財務大臣と日銀総裁 発言変化の背景は? 4/30
外国為替市場では円の独歩安が続いています。この円安を政府や日銀はどう受け止めているのでしょうか。最近の財務大臣と日銀総裁の発言の微妙な変化から背後にある真意を探ります。
外国為替市場のドル円相場では3月に入ってから円安が加速し、4月28日には日銀が金融緩和策の維持を公表したことで1ドル=131円台まで値下がり。20年ぶりの円安水準を更新しました(4月28日午後7時時点)。およそ2か月で15円程度円安が進んだのです。金融市場の変動が大きいとき、通貨当局者の発言は投資家のあいだで特に注目されます。発言1つで市場が動くからです。私たち金融を担当する記者も当局者の発言内容は注意深くチェックしていますが、発言内容の変化を追うと、真意が透けて見えるときがあります。
財務相 配慮された発言
ことし3月22日。円相場はおよそ6年1か月ぶりに1ドル=120円台まで値下がりしました。アメリカFRBのパウエル議長が講演で利上げ幅を2倍にする可能性を示唆したことを受けて、市場で日米の金利差の拡大が意識され、円を売る動きが強まったのです。この日の鈴木財務大臣の発言です。「為替の円安方向の動きにより、輸出企業の収益は改善する。その一方で、輸入物価の上昇を通じて、企業や消費者の生活にも負担増となり得るなど、プラスとマイナス面双方の影響がある。引き続き、為替市場の動向や日本経済への影響を見ていかなければならない」円安のプラスとマイナスの両面を語り、市場に影響を与えないよう、配慮された回答といえるでしょうか。
ぶれない黒田発言が円安に
一方、日銀の黒田総裁は3月18日の金融政策決定会合後の記者会見で一貫した金融政策に対する姿勢を語りました。「必要があればちゅうちょなく金融緩和を行う」「円安は経済・物価ともにプラスに作用するという基本的な構図に変わりはない。円安がすべて経済にマイナスというのは間違い」一連の発言で、市場では円安容認ではないかと受け取る投資家からの円売りドル買いを誘いました。4月13日、信託大会で黒田総裁は「現在の強力な金融緩和を粘り強く続ける」と発言したことを材料に市場では金融緩和が当面続くとの見方から円安が加速。この日、1ドル=126円台をつけ、20年ぶりの円安となりました。黒田総裁の発言は終始一貫しているのですが、金利差を意識する投資家たちは円売りサインと敏感に反応する傾向が強まっているようです。
悪い円安の定義に言及
これに対して市場関係者が身構えたのは4月15日の鈴木財務大臣の発言でした。「円安が進んで、輸入品などが高騰している(中略)それに応じて原材料を十分価格に転嫁できないとか、買うほうも賃金が伸びを大きく上回るような補うようなところまで伸びていない環境については悪い円安というふうに言えるんだと思います」「悪い円安」について、鈴木大臣が初めて定義づけしたと市場で受け取られました。かなり踏み込んだ発言だと私も取材していて感じました。
黒田総裁、若干の軌道修正?
この財務大臣の発言を受けたのかどうか、真意は分かりませんが、これまで「円安は総じてプラス」と述べてきた日銀の黒田総裁も3日後の18日の国会答弁で急速な円安が進むことのマイナス面について触れます。「円安が日本経済全体にプラスという評価はさまざまなシミュレーション分析を行った結果です。基本的なところは変わっていない。ただ最近の急速な円安は(中略)かなり急速な為替の変動です。企業の事業計画の策定に困難をきたす恐れがあり、そういう意味でマイナスも考慮しなければならない」黒田総裁も鈴木大臣の警戒感を受けて、若干の発言の軌道修正を迫られたのではないかとある市場関係者は語っていました。
数字をもって示した
その後、鈴木大臣は4月21日、ワシントンで開かれたG20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議でアメリカのイエレン財務長官と会談。会談後、記者団に「私からは直近の円安がやはり急激だということを数字をもって示した」と発言しました。通貨当局トップどうしの話し合いはベールに包まれているもの。それが具体的な数字を示したということまで公言するのは驚きをもって受け止められました。ある市場関係者は「円安を食い止めたいという意志の表れだろう」と話していました。
物価高と選挙への影響を警戒
こうした鈴木大臣の発言の真意について、ある政府関係者は次のように述べています。政府関係者「原材料価格が高騰する中で、食料品を中心に値上げが広がり始めている。一方、コロナからの経済回復が途上で賃金上昇が進まない中、円安が進みすぎると、家計の負担が増大してしまう。物価高に対する不安が夏の参議院選挙にも影響しかねないことを政権内では警戒する声があがっている」
あくまで景気下支え
一方、日銀は4月28日の会合で大規模金融緩和の維持を決定。さらに10年ものの国債を0.25%の利回りで無制限に買い入れる「連続指値オペ」を毎営業日実施するという驚きの措置も打ち出しました。黒田総裁はそのねらいについて「長期金利の上限をしっかり画する」と述べました。ある市場関係者は「今回の指し値オペの常態化は、日銀としてかなり踏み込んだものだ。黒田総裁としては今の金融緩和政策は為替目的ではなく、あくまで経済を下支えするためのもの。この景気状況では政策を変えるべきではないという確固たる信念の表れだろう」と話していました。物価高がさまざまな影響を及ぼすことに警戒感を高めつつある政府と金融緩和の継続を強調する日銀。微妙な発言の違いにそれぞれの立場での思いがにじみ出ています。 
 
 

 

●これだけは押さえたい「急激な円安」が進んでる訳  5/1
東京外国為替市場でドル円相場が一時1ドル=130円台を突破した。これは2002年4月以来、約20年ぶりの円安・ドル高の水準となる。1年前の108円台からみれば20%も円安が進んだことになるが、3月初旬からの約2カ月ほどで13%も円安が進んでいることを考えると、いかに足元の円安のペースが異様かはわかるだろう。
その結果として、連日「円安」を報じるニュースが続いているため、それほど経済や投資に興味がない層にも「円安の影響」に興味を持つ人が増えてきたように感じている。今回は円安の影響について考えていこう。
外貨に対する相対的な価値
そもそも、「円安」とは何か。日本円が外貨に対して相対的な価値がどのように変動したかを表す表現と考えればよいだろう。1ドル=100円ということであれば、100円を渡せば1ドルと交換してもらえるということである。それでは、1ドル=120円になるとどうか。1ドルをもらうのに100円ではなく120円が必要となるわけだから、ドルに対して円の価値が下がっているということ。つまり円安になったということだ。
筆者は投資初心者や経済の初学者に講義をする機会が多いが、意外と勘違いをする人が多いのがこの部分だ。
1ドル=100円が1ドル=120円になると、つい円の量が20円増えているので、円が強くなったと思い「円高」と答えてしまう人がいるのだが、前述のように理屈がわかっていれば大丈夫だろう。
どうしても勘違いしてしまうという人は、為替相場においては自分の感覚と逆だと覚えてしまってもいいのかもしれない。
この基本を押さえた段階で、この2カ月におけるドル円相場の推移について再度確認してみよう。1ドル=115円台でスタートした3月。そして、4月28日には1ドル=130円を記録した。つまり約2カ月ほどで13%も円安が進んだことになる。
この2カ月のうちに急速に「円安」が進んだことは理解できただろう。それでは、次に気になるのは私たちの生活にどのような影響があるのか、ということだ。
テレビや新聞など、メディアでは足元の円安を報じる際に「悪い円安」という表現を使うことが多い。メディアが大げさに煽っているように思う方もいるかもしれないが、4月15日の閣議後の記者会見で鈴木俊一財務相が、企業が原材料高を価格転嫁できず、国民の賃金も上がらない状況下での円安は「悪い円安と言えるのではないか」と発言している。
また、日本銀行の黒田東彦総裁は「悪い円安」と表現はしていないものの、4月18日の衆院決算行政監視委員会で「大きな円安や急速な円安はマイナスが大きくなる」と発言している。
円安のメリット・デメリット
筆者は本件に限らず、物事には良い面も悪い面も存在していると考えているため、あまりよくわかっていない段階でメディアの受け売りで悪い円安論に追従することは勧めない。まずは円安のメリットとデメリットを理解すべきだろう。
まずメリットとして最初に挙げられることが多い点は、輸出企業の価格競争力が上がるというものだ。そのほかにも、海外の資産に投資をしていた際に受け取る利子や配当も円に換算した時には増えるということや、海外からの観光客が増える可能性が高まることも挙げられる。一方でデメリットとしては、海外から輸入をするモノの値段が上昇するということが挙げられる。
このようにメリットとデメリットがあるなかで、なぜ今回は「悪い円安」という表現が使われるのか。それは、2011年前後の円高局面などで日本企業が生産拠点を海外に移してしまったことで従来ほどは、輸出企業が円安のメリットを享受できないことや、そもそもコロナ禍において円安だからといって海外からの観光客が増えることはないからだ。
一方で、コロナ禍における供給制約やロシアのウクライナ侵攻を受けてエネルギーや食品の価格が上昇しているなかで、急激な円安が進むことでさらに物価上昇圧力が高まってしまうというデメリットが目立つからにほかならない。
そもそも、なぜこれほどまでに円安が進行したのか。大きな要因の1つは日米の金利差が拡大していることにあり、かつ金利差は今後も広がり続けると多くの投資家が考えていることだ。
4月12日にアメリカの労働省が発表した3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+8.5%となり、1981年12月以来、約40年ぶりの高水準となった。
これだけ物価が上昇してしまうと家計への悪影響が大きいため、アメリカの中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)は金利を引き上げることでインフレを退治しようとしており、FRBのパウエル議長も利上げや金融引き締めについては明言をしている。一方で、日本においては日本銀行の黒田総裁が金融緩和の継続を明言し、かつ利上げについては明確に否定している。
日本とアメリカの金利差が開くと円安・ドル高になる理由は単純で、金利が低い円を借りてきて、ドルを買えば円とドルの金利差はリスクなく稼ぐことができるため、ドル買い・円売りの動きが加速するのだ。これを「円キャリー取引」と呼ぶこともある。
以上の理屈を考えれば、日本も金利を上げて日米の金利差を縮小させれば円安に歯止めをかけられるじゃないかと思う方もいるだろう。実際に悪い円安論を強調する専門家はセットで金融緩和の終了も強調することが多い。しかし、アメリカは金利を引き上げることに耐えられる経済環境にあるのに対して、日本経済はそれほど強い経済環境ではないという認識を持つべきだろう。
本当に考えなければいけないこと
足元の円安について、前述のように日米の金利差拡大を理由として挙げがちだが、今回の円安の理由をそこだけに見てはいけない。よく日本経済を表す表現として「失われた30年」というものがあるが、根本的にはこの点をポイントとして挙げるべきなのだろう。
程度の差はあれ、他国が経済成長を続け、それに伴い賃金も上昇する中で、日本は経済が成長せず、賃金も上昇しなかった。更には非正規雇用の比率が高まり労働環境は不安定化し、少子高齢化・人口減少が進行してきてしまった。
さらに、コロナ禍やロシア・ウクライナ事案において、外国依存体質になってしまっていることが如実に表れてしまった。マスクもワクチンも国内では十分に作れず、食料やエネルギーは輸入に依存してしまっている。
円安の意味、円高と円安の判断の仕方など基本的な話から入ったが、足元の急激な円安の背景について、日米の金融政策の違いや、そもそもの日本経済の問題点など、幅広く思考を展開できるような経済脳を鍛えていきたいものである。
●日銀のデイリー指値オペによる円安再燃の継続性は 5/1
04月25日週のユーロ/円、ポンド/円は乱高下
中国でのコロナ感染拡大による影響が懸念されたほか、ロシア国営天然ガス企業・ガスプロムによる、ポーランドとブルガリアへの天然ガス供給停止が嫌気されリスクオフの円買い戻しが先行しました。ユーロ/円は134.774円、ポンド/円は159.582円付近へ下落。しかし、金融政策を据え置いた日銀会合で「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう指値オペを、上限を設けずかつ毎営業日行う」ことが決定され緩和継続姿勢を明確にすると、相場は円安へ急旋回。ユーロ/円は137.989円、ポンド/円は164.121円(ともに執筆時点)まで持ち直すなど荒っぽい展開となりました。かたや、リスク回避のドル高から、ユーロ/米ドルは5年1カ月ぶりの1.0500ドル割れ、ポンド/米ドルが1年9カ月ぶりの1.2500ドル割れまで低下するなど、対円と対ドルで対照的な値動きとなりました。
ユーロは好材料少なく、円安頼みの感否めず
中国の生産減速や成長鈍化懸念に加えて、欧州とロシアの対立激化よる経済への下押し圧力は増しています。ドイツは、楽観的な路線を辿ったとしても今年のGDPが2.2%程度に留まると、従前の3.6%見通しから大幅に下方修正しています。欧州の成長がマイナスにまで落ち込めば、EUの財政出動による共同債発行を巡るフローで少し話は違ってきますが、現時点でそこまでの悪化も見通せていませんので、ユーロに対する下押し圧力はなくなりづらそうです。対円では、日銀の条件付きデイリー指値オペがユーロのサポート材料として機能しそうですが、果たしてそれだけでユーロ安が後退するかは微妙と考えます。ドイツ10年物国債入札で入札利回りが上昇すれば、ECBの7月利上げ観測からユーロは局所的な反発期待は膨らみそうですが、直近のエネルギー価格上昇による消費の下押し懸念から、次第に上値は重くなるのではないでしょうか。
英緩やかな引き締め路線へ微調整か
来週はイングランド銀行(BOE)による金融政策委員会が開催されます。足もとのインフレ加速を背景として追加利上げが見込まれますが、公共料金の値上げなど家計への負担を考慮して小幅な引き締め(0.25%)に留まるとの見方が優勢です。また、2月には金利が1.00%へ達したら状況に応じて英国債などの購入資産売却を進めるとしていたタカ派センチメントが後退することも想定されます。宿泊・飲食関連の付加価値税率の引き上げなど物価上昇要因があるなかで、利上げ路線は継続せざるを得ないのでしょうが、利上げスピードは緩みそうな雰囲気で、引き締め=通貨高になりづらい感じです。引き締めペースが大きく後退するなら、成長鈍化の悪材料面がより意識されてポンドの上値を抑制しそうです。月が改まり、リバランスによる円買い圧力は緩和しそうですが、英経済の先行き懸念から何かとポンドの上値は重そうです。
ユーロ/円、5月のローソク足形状を重要視
ユーロ/円は月足ローソク足で大陽線後に上ひげの長いローソク足が出現し、次に陰線が出れば「三川宵の明星」が完成し下落の予兆と受け止められそうな形状になっています。こうした不安があるなかで、テクニカル的には上値の重さがイメージされやすいと考えます。4月5日安値134.294円レベルをトライする場面があっても不思議はないでしょう。逆に、戻りを試したとしても、日足ボリンジャーバンド+2σレベルの139.46円レベル(執筆時点)では戻り売りが被さってきそうです。
ポンド/円、戻り売り目線か
昨年7月から今年の3月にかけて形成されたバンド(148.451-158.217円)への回帰はさすがにやり過ぎと思われるため、160.000円割れからは買い戻しが強まる期待がある一方、日足一目転換線・基準線が集まる163.700-164.000円レベルより上では戻り売りが出やすく、節目の166.000円付近ではその勢いが和らぐのではないでしょうか。対ドルで2019年9月安値(1.19586ドル)と2020年4月安値(1.21643ドル)を結ぶ支持線を割り込んできたことも、ポンド/円の上値を抑えそうです。 

 

●1ドル130円13銭前後とドル高・円安で推移 5/2
2日の外国為替市場のドル円相場は午後0時時点で1ドル=130円13銭前後と、前週末午後5時時点に比べ12銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円89銭前後と39銭のユーロ安・円高で推移している。
●ドル・円は引き続き130円台前半で推移、日経平均相場動向は材料視されず 5/2
2日午前の東京市場でドル・円は130円台前半で推移し、下げ渋っている。日経平均は140円安で推移しているが、中国本土・香港穂市場は休場のため、日経平均の下落は特に意識されていないようだ。ここまでの取引レンジは、ドル・円は129円61銭から130円30銭、ユーロ・ドルは、1.0518ドルから1.0564ドル、ユーロ・円は136円75銭から137円38銭。
●日経平均は39円安、円安・ドル高も株価下支え要因に 5/2
日経平均は39円安(13時20分現在)。日経平均寄与度では、アドバンテスト<6857>、東エレク<8035>、ファナック<6954>などがマイナス寄与上位となっており、一方、ファーストリテ<9983>、村田製<6981>、ソフトバンクG<9984>などがプラス寄与上位となっている。セクターでは、建設業、その他製品、電気・ガス業、サービス業、精密機器が値下がり率上位、海運業、空運業、ゴム製品、ガラス土石製品、金属製品が値上がり率上位となっている。
日経平均は小幅安水準で推移している。外為市場で130円30銭前後と朝方に比べ60-70銭ほど円安・ドル高に振れたことが輸出株などの買い安心感となり、株価下支え要因となっているようだ。
●円安基調変わらず、ドル/円は底堅く推移 5/2
先週の回顧
先週のドル/円相場はドル一段高。一時20年ぶりに130円台を突破し、131.25円まで値を上げている。
前週末は、実施されたフランス大統領選の決選投票で現職のマクロン氏が再選される見通しとなり、そののち勝利宣言も。それとは別にTBSが報じ思惑を呼んだ「日米財務相会談で協調介入議論」との話を、ロイターが「財務省幹部、TBS報道を否定」と指摘し物議を醸していたようだ。
そうした状況下、ドル/円は128円半ばで寄り付いたのち、当初はドル売り先行。週間安値である126.95円まで1円を超える下落をたどっている。しかし切り返すと、一転してドルは急騰。前週記録した年初来高値129.41円や130円を超え、一気に131円台へ。週間高値の131.25円を示現したものの、週末にかけてはポジション調整と思しき動きも観測され、週末NYは130円台を維持できず。129円台後半で取引を終え越週となった。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「ロシア情勢」と「円安けん制発言と日銀金融政策」について。
前者は、ロシア軍がウクライナ南東部マリウポリをほぼ陥落させたと伝えられるなど、ウクライナ国内での戦闘は依然として継続。そうしたなか、欧米諸国を中心とした対露制裁はますます激しさを増す反面、ロシア側からは「核戦争が起きるかなりのリスクがあり、過小評価すべきでない」(ラブロフ外相)、「核兵器の使用を辞さない」(プーチン大統領)などとした、核の恫喝発言が週間を通して何度も聞かれている。また、それとは別にロシアが東欧2カ国への天然ガス供給を4月27日に停止するなど、エネルギーをめぐる「欧州vsロシア」のバトルが少しずつ鮮明化している。
対して後者は、前述したようにロイターが匿名財務省幹部の発言として否定した「TBS報道」を、そののち当事者である鈴木財務相も「事実ではない」とコメント。フェイクニュースだったことが明らかになった。なお、その一方、渡辺元財務官が「130円や135円は日本経済にとって悪い水準でない」と、従来とは一線を画す円安容認コメントを発したとされるなか、4月28日に日銀が決定会合の結果として、「当座預金残高の政策金利をマイナス0.10%で維持」などとし、現在の大規模な金融緩和策の継続を発表している。結果的に当局が一段の円安進行を容認したともいえそうで、実際日銀の決定が前述した「20年ぶりの130円台乗せ」を誘発していたことは間違いない。
今週の見通し
今年3月のドル/円相場は2年ぶりとなる月間変動幅10円超を記録したが、続く4月も月間変動幅は10円近い変動となった(安値121.67円、高値131.25円)。さらに言えば、ザックリ「月初安・月末高」の様相で、ドルの強さとともに円の弱さが際立った1ヵ月間と言ってよい。本日から始まる5月相場も、そんな過去2ヵ月を継ぐ3ヵ月連続の「大相場」を期待する声も少なくないようだ。
前述したように、日銀が先週改めて「大規模な金融緩和策の継続」を発表する一方、米国は今週3-4日に開催されるFOMCで「0.5%の利上げ」がほぼコンセンサスだ。単純に日米金利差という観点では、ドル高・円安基調が当面続くと言わざるを得ない。と言うより、それが基本的にはファンダメンタルズに沿った正常な動きと見られるだけでなく、先週時事通信がレポートしたように「円安阻止の妙手もない」。さすがに行き過ぎ感は出ているものの、ポジション調整程度しか円が大きく買い進められる要因は思いつかない。
テクニカルに見た場合、ドル/円相場はイケイケドンドンでドル高・円安が止まらない。先週ついに20年ぶりとなる130円台乗せを記録している。正直、2002年4月1日に記録した133.84円を「中期ターゲット」として認識しているが、先週を含めたここ最近のドル高進行スピードからすると、到達は意外に早いのかもしれない。仮に上抜ければ、2002年高値の135.20円がターゲットに。
材料的に見た場合、中長期的には、ここ最近人民元の下げが目立っており今週もその動きが気掛かりな「中国情勢」。いわゆるXデーを過ぎたものの、米国務省副報道官が「核実験再開」発言をするなど警戒感が依然として強い「北朝鮮情勢」、「新型コロナ・オミクロン株蔓延問題」−−などに注目。
そうしたなか今週は、4月のISM製造業景況指数や同雇用統計といった重要な米経済指標が発表されるほか、欧州を主とした企業決算発表も相次ぐ。そうしたなか、週を通して最大の注目要因である米FOMCが開催される見込みだ。また、3-5日に東京が休場になるが、経験則的に東京休場時は波乱が多いことも頭に入れておいて損はない。
そんな今週のドル/円予想レンジは、128.00-131.50円。ドル高・円安については130円半ばが弱い抵抗で、上抜けると先週記録した年初来高値131.25円が再び視界内に。対するドル安・円高方向は、129円レベルの攻防にまずは注目。割り込めば、なし崩し的なドル安進行も否定できない。 

 

●米FOMCの大幅利上げを織り込む長期金利上昇で130円35銭まで円安・ドル高 5/3
ドル・円:129円70銭まで下げた後、米FOMCでの大幅利上げを織り込む長期金利上昇で130円35銭まで円安・ドル高で推移。
ユーロ・ドル:ドイツの3月小売売上高は減少したこと、米長期金利の上昇を受けて1.0542ドルから1.0490ドルまでドル高・ユーロ安推移。
ユーロ・円:137円20銭から136円52銭まで円高・ユーロ安推移。
NY原油市場:下げ渋り、供給不安は解消されず。NY株式市場:反発、FOMC控え神経質な展開。
●米長期金利 一時3%台に上昇 3年5か月ぶり 円安要因に  5/3
2日のニューヨーク債券市場では、アメリカで金融引き締めが加速することへの警戒が強まり、長期金利が一時、3年5か月ぶりに3%台まで上昇しました。アメリカの長期金利の上昇は、外国為替市場で急速に進む円安ドル高の要因となっています。
2日のニューヨーク債券市場では、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が翌日の3日から開く金融政策を決める会合で金融引き締めを加速させることへの警戒が強まり、アメリカ国債が売られて長期金利の指標となる10年ものの国債の利回りが一時3%台まで上昇しました。
長期金利が3%台をつけるのは、2018年12月以来3年5か月ぶりです。
外国為替市場では、アメリカの長期金利の上昇でドルの利回りが見込めることなどから、円安ドル高が急速に進んでいて、2日のニューヨーク市場で、円相場は1ドル=130円台前半を中心とした水準で取り引きされています。
アメリカの長期金利は、おととし3月にFRBがゼロ金利政策と量的緩和策を導入してから、一時1%より低い水準で推移していましたが、その後アメリカ経済の回復やインフレを背景に上昇に転じ、ことし2月に2%台をつけていました。
●ニューヨーク外国為替市場概況・2日 ユーロドル、反落 5/3
2日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは反落。終値は1.0507ドルと前営業日NY終値(1.0545ドル)と比べて0.0038ドル程度のユーロ安水準だった。米連邦準備理事会(FRB)による積極的な利上げへの警戒感が強まる中、米10年債利回りが一時3.0081%前後と2018年12月以来約3年5カ月ぶりの高水準を付けるとユーロ売り・ドル買いが優勢に。3時過ぎに一時1.0490ドルと日通し安値を更新した。なお、23時発表の4月米ISM製造業景気指数が55.4と予想の57.6を下回り、20年7月以来の低水準を付けたことが分かると1.0542ドル付近まで下げ幅を縮める場面もあったが、米長期金利が高止まりする中、戻りは鈍かった。
ドル円は反発。終値は130.16円と前営業日NY終値(129.70円)と比べて46銭程度のドル高水準だった。欧州株相場の下落や時間外のダウ先物の失速を受けてリスク回避の円買いが先行すると、21時30分前に一時129.70円付近まで弱含んだ。ただ、週明け早朝取引で付けた日通し安値129.57円が目先サポートとして意識されると買い戻しが進んだ。米長期金利が3年5カ月ぶりの高水準を更新する中、130.35円付近まで持ち直した。
なお、FRBは3−4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で高インフレ抑制に向け、通常の2倍となる0.50%の大幅利上げに踏み切り、量的引き締め(QT)開始を決めるとみられている。市場では「パウエルFRB議長がFOMC後の会見で、インフレ抑制のための積極的な利上げを今後も続けるタカ派姿勢を示すことへの警戒感が強い」との声が聞かれた。
ユーロ円は続落。終値は136.78円と前営業日NY終値(136.95円)と比べて17銭程度のユーロ安水準。ダウ平均が一時520ドル超下落した場面ではリスク回避の円買いが入り、一時136.52円と本日安値を更新した。ユーロドルの下落につれた売りも出た。 

 

●NY円、横ばい 1ドル=130円10〜20銭 FOMC控え様子見 5/4
3日のニューヨーク外国為替市場で円相場は横ばい。前日と同じ1ドル=130円10〜20銭で取引を終えた。4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を控えて市場参加者の様子見ムードは強く、方向感が乏しかった。
FOMCでは通常の2倍の0.5%の利上げと資産圧縮の開始が決まる見通しだ。金融政策の先行きに関するパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言を見極めたいとの声が多い。日本がゴールデンウイーク(GW)の大型連休中ということもあって参加者が少なく、売買は盛り上がりを欠いた。
円の高値は129円70銭、安値は130円20銭だった。
円は対ユーロで3営業日ぶりに反落し、前日比20銭円安・ユーロ高の1ユーロ=136円90銭〜137円00銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで反発し、前日比0.0010ドルユーロ高・ドル安の1ユーロ=1.0515〜25ドルで取引を終えた。足元でユーロ安・ドル高が進んだ反動で、FOMCを前に持ち高調整のユーロ買いが入った。
ユーロの高値は1.0578ドル、安値は1.0512ドルだった。
●ロンドン外為3日 ユーロ、対ドルで下落 5/4
3日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=1.0540〜50ドルと前営業日である4月29日の同時点より0.0010ドルのユーロ安・ドル高で推移している。米連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融引き締めの観測からユーロ売り・ドル買いが優勢となっている。中国で続く厳格な新型コロナウイルス対策が世界経済を下押しするとの懸念もユーロ売り・ドル買いを促した。
円は対ユーロで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=136円90銭〜137円00銭と、前営業日の同時点より20銭の円安・ユーロ高で推移している。日銀が金融緩和を継続するとあって円売りが優勢になっている。
英ポンドは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.2510〜20ドルと前営業日の同時点に比べ0.0040ドルのポンド安・ドル高で推移している。
●ミスター円も苦心…円安を止める「為替介入があまりに非現実的」である理由 5/4
日銀の金融政策転換の可能性は低い
円安進行が止まらない。4月28日の東京市場では1ドル=130円を突破、NY市場でも勢いは止まらず、1ドル=131.24円まで円安が進んだ。円安進行を止める残された手段は「為替介入」しかない。果たして、介入は行われるのか? 
さらなる急激な円安進行の引き金を引いたのは日銀だった。4月28日の金融政策決定会合で大規模緩和の維持を決めたことに加え、10年国債利回りを0.25%で無制限に買い入れる「指し値オペ」を毎営業日実施するという強化策も決めた。
この決定を受け、28日の東京外国為替市場では1ドル=130円に円安が進み、約20年ぶりの円安・ドル高となった。さらに、円安の勢いは止まらず、NY市場では1ドル=131円台に円安が進んだ。
筆者はこれまで、1月23日の『日銀は「利上げ」を完全否定するも、決して“鵜呑みにできない”3つの理由』や4月24日の『「円安」の先に待ち受ける「稼げないニッポン」最悪のシナリオ』など数度にわたって、黒田東彦総裁の金融政策に対する姿勢を取り上げた。
13年3月に総裁就任して打ち出した「低金利政策による2%の物価上昇」という目標を達成できずに、23年4月の任期を迎えようとしている黒田総裁にとって、日米金利差が原因となっている現状の物価上昇でも、自らの目標を達成できる“唯一のチャンス”だから金融政策の変更は行わないと指摘した。
さらに、今後、利上げ幅の拡大など金融引き締め強化を行う可能性の高い米国と、低金利政策から抜け出せない日本の金利差は益々拡大する可能性があり、02年当時の1ドル=135円台まで円安が進む可能性を指摘した。
案の定、28日の金融政策決定会合後の記者会見で黒田総裁は、8%を超える米国の消費者物価指数の上昇率と0.8%にとどまる日本では環境が全く異なるとし、「2%の消費者物価目標の持続的、安定的な実現を目指す観点から粘り強く緩和を続ける」と強調した。
日銀では原油高・資源高、円安というコストの上昇(コストプッシュ型)の物価上昇は一時的なもので、「持続性はない」との見方をしている。
それ故に、黒田総裁は現状の円安進行に対しても、「全体として円安がプラスという考え方に変わりはない」との姿勢を崩さない。
黒田総裁が誕生した13年のドル・円の年間平均レートは1ドル=97.60円だった。黒田総裁の下で1ドル=131円まで円安は進んだので、円は30円以上も下落したことになる。
たしかに業績に与える影響度合いは減少してきているとは言っても、日本の輸出企業を苦しめる“円高”から脱却した功績は、黒田総裁の成果として評価されるべきだろう。
それでも、「悪い物価上昇」の一因となっている急激な円安進行に対しては、ここに来て黒田総裁自らが「過度な変動はマイナスに作用する」と評価を変えたように、政府部内からも批判が出ている。
鈴木俊一財務相も円安について、「米国などの通貨当局と緊密な意思疎通を図りながら適切に対応していきたい」と発言している。
「ミスター円」がみせた秀逸な為替介入
日銀が金融政策を変更しない以上、残された円安進行を止めるには、「為替介入」がもっとも有力な手段となる。
それでは、為替介入とはどのようなものなのか。
為替介入の正式名称「外国為替平衡操作」という。為替政策は財務省の管轄であり、為替介入は財務大臣の権限で実施される。鈴木財務相の「適切な対応」とは、為替介入を示唆しているのだ。
介入を行う場合には、財務省の外国為替資金特別会計(外為特会)の資金が使われる。円高阻止には「円を売って、ドルを買う」、円安阻止には「円を買って、ドルを売る」というオペレーションを実施する。財務省の指示を受けた日銀が、市場で実際にオペレーションを実施することになる。
とはいえ、為替介入は簡単なものではない。巨額な資金が取引されている為替市場でその相場の流れを変えるわけだから、(1)巨額の介入資金、(2)介入する通貨の当事者国(例えばドル・円相場に介入するためには米国)とのネゴシエーション、(3)経済・社会情勢の適切な判断が必要となる。
筆者はロイター通信で大蔵省(現、財務省)を担当し、為替市場も担当していた時に、為替介入を何度も経験している。
その中でも、特に秀逸な介入手腕を見せたのが、「ミスター円」と呼ばれ、「国際通貨マフィア」と例えられた榊原英資・国際金融局長(当時)だった。
巨額な為替相場の流れを変えるには、巨額な介入資金が必要だと前述したが、少ない介入資金でもっとも効率的に介入を行ったのが、榊原氏だった。
榊原氏が国際金融局長に就任した95年の年間平均レートは1ドル=94.06円と、日本は円高に苦しめられていた。そこで、榊原氏は円安誘導に乗り出し、積極的な「ドル買い・円売り」介入を実施した。
当時はやっと携帯電話が出始めた頃で、ショルダーホンと言われる大きな肩掛け携帯電話を使っている時代だった。インターネットもそれほど普及しておらず、新聞もインターネットサイトを開設していなかったので、ニュースの速報はもっぱら通信社が担っていた。
為替取引においては、ロイターに“一日の長”があり、大蔵省、日銀、銀行や輸出入企業の為替担当部署はロイターの速報を頼りにしていた。
榊原氏は介入を行うに当たり、ロイターを上手に利用した。巨額な取引が行われている為替相場の中で、わずかな介入資金では効果もなく、埋もれてしまうが、榊原氏は介入を実施したことを“さりげなく”ロイターに伝え、速報を出させることで市場に知らしめ、効果を最大限に引き出したのだ。
そのほかにも、いわゆる“覆面介入”と言われる方法も行った。輸出企業では商品の代金がドルで入ってくるため、ドルを円に転換する(ドル売り・円買い)需要が、輸入企業では買い入れた商品代金をドルで支払うため、円をドルに転換(ドル買い・円売り)需要がある。
この需要を利用して、ドル売り介入では例えば自動車メーカーなど輸出企業に、ドル買い介入では例えば商社など輸入企業を使って、介入を行った。こうすることで、介入を隠したまま、相場の流れを“自然”に変えようとした。
それでも、榊原氏が国際金融局長だった95年と96年に使われた介入資金は6兆5624億円にものぼる。この結果、97年の年間平均レートは1ドル=120.99円まで円安となった。
介入を実施・成功させるためには巨額の介入資金のほかに介入する通貨の当事者国とのネゴシエーションが必要だと前述した。
当時の米国通貨政策の責任者ローレン・サマーズ財務副長官と榊原氏は米ハーバード大学の客員教授をしていた時代からの友人関係にあったことも、榊原氏と米国とのネゴシエーションがうまくいった理由の一つだろう。
為替介入のための「ドル資金調達」の問題点
話を戻そう。では、現在の急激な円安進行を止めるための介入はできるのだろうか。
財務省の外国為替平衡操作の実施状況を見ると91年以降、円安誘導のためのドル買い・円売り介入は79兆8236億円実施されているに対して、現在必要な円高誘導のためのドル売り・円買い介入はわずか4兆8793億円しか行われていない。
あの“ミスター円”と異名を取った榊原氏が95年と96年に行った介入も、円安誘導のためのドル買い・円売り介入であり、それだけ円高誘導のためのドル売り・円買い介入は難しいのだ。
円安誘導のためのドル買い・円売り介入は、事実上、無制限に円資金を調達できるため、効果が出るまで介入を続けることができる。
しかし、円高誘導のためのドル売り・円買い介入を行う場合、外為特会で保有している外貨準備のドル資金には限界がある。
22年3月末時点の外貨準備は1兆3560億ドル(約173兆円)で介入に十分なドル資金を保有しているように見えるが、その80%は証券運用されており、大半が米国債となっている。
つまり、介入のためのドル資金を調達するためには、米国債を売却する必要があり、それは米国の長期金利に影響を与える可能性がある。
例えば、米国債を大量に売却すれば、米国の長期金利は上昇し、日米金利差が拡大することで一段の円安を招く可能性がある。
円高誘導のためのドル資金調達が円安を誘導するという“皮肉な結果”を招いてしまうリスクがあるのだ。
為替介入すべき水準を見極める難しさ
榊原氏も財務官時代の97年と98年に、円高誘導のためのドル売り・円買い介入を実施しているがその額は4兆1061億円と、円安誘導で行ったドル買い・円売り介入の6兆5624億円よりも2兆円以上も少ない。
ちなみに97年、98年の円高誘導の介入により、98年も1ドル=130.91円だった年間平均レートは99年には1ドル=113.91円まで円高となった。
円高誘導のためのドル売り・円買い介入は、この98年を最後に行われていない。また、円安誘導のためのドル買い・円売り介入も11年を最後に行われておらず、すでに10年以上も為替介入は実施されていない。
余談だが、最後に円高誘導のためのドル売り・円買い介入を実施した榊原氏の後任の大蔵省国際局長(当時)は黒田東彦日銀総裁その人だ。
さらに、外国為替平衡操作の実施状況を見ると、例えば、年間平均レートが126.65円だった91年には“円高誘導”のためのドル売り・円買い介入が実施されているのに対して、125.39円だった02年には”円安誘導“のためのドル買い・円売り介入が行われている。
また、120.99円だった97年には“円高誘導”のためのドル売り・円買い介入が実施されているのに対して、121.53円だった01年には”円安誘導“のためのドル買い・円売り介入が行われている。
つまり、その時の経済・社会情勢によって、適切と考えられる為替水準は違うということだ。
過去の介入を見ると、年間平均レートが134.71円の91年、130.91円の98年に円高誘導のためのドル売り・円買い介入が実施されているが、126.65円の92年、120.99円の97年にも行われている。
従って、1ドル=130円を突破した現在の円安が、介入の水準に当たるのかと言えば、必ずしもそうとは言えない。
前述したように、米国では8%を超える消費者物価指数の上昇率に対して、日本は0.8%にとどまる。米国にとってインフレ抑制に寄与するドル高・円安は願ってもないことだ。まして、自らがやれる金融政策の変更という円安阻止策を行わない日本が、米国に為替介入を容認させるのは、かなり難しいだろう。
詰まるところ、円安阻止のための為替介入は、巨額の介入資金、介入する通貨の当事者国とのネゴシエーション、経済・社会情勢の適切な判断のいずれの面からも“難しい”ということだ。  

 

●シドニー外為 米ドルは129円台半ば=豪ドルは93円台 5/5
5日朝のシドニー外国為替市場の円相場は1米ドル=129円台半ばで推移した。現地時間午前8時半現在、129円40〜50銭(前日同時刻は130円05〜15銭)。
オーストラリア・ドルは、1豪ドル=0.7250〜7260米ドル(同0.7095〜7105米ドル)、対円では93円85〜95銭(同92円30〜40銭)。
ニュージーランド(NZ)ドルは、1NZドル=0.6540〜6550米ドル(同0.6430〜6440米ドル)、対円は84円65〜75銭(同83円65〜75銭)。
ユーロは、1ユーロ=1.0610〜0620米ドル(同1.0520〜0530米ドル)、対円は137円35〜45銭(同136円85〜95銭)。
●FRB 22年ぶり“0.5%”大幅利上げ… 今後も円安進みやすい時間帯続く 5/5
1ドルが130円超えるなど、およそ20年ぶりの円安水準となっている日本経済。
この先も、円安は進むのでしょうか。その鍵を握るとして注目されていたFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)は、先ほど政策金利を0.5%引き上げることを決めました。
FRB・パウエル議長:「インフレは非常に高すぎる。これが国民にもたらしている厳しさを我々は理解している。私たちは、それ(インフレ)を低くするために動いている」
利上げは0.25%ずつが一般的で、その倍にあたる0.5%の大幅な金利引き上げは、2000年5月以来、22年ぶりのことです。
現在の円安は、依然ゼロ金利策を維持する日本と、利上げに踏み切ったアメリカの金利差による円売りドル買いが大きな要因となっています。
アメリカの利上げペースがアップすることで、円安はさらに進むことになるのでしょうか。専門家は、次のように話します。
ニッセイ基礎研究所上席エコノミスト・上野剛志氏:「0.5%の利上げ、大幅な利上げが決定された。議長は、今後のさらなる利上げ幅の拡大、0.75%の利上げに対しては、慎重な姿勢を示した。為替市場では、本日いったん円高ドル安方向へ振れる動きが出てきている。しかし、今後も円安が進みやすい時間帯は続くのかなとみています。輸入品の価格が高止まりして、企業が値上げの動きを今後も続けると想定される」
●ニューヨーク外国為替市場概況・4日 ドル円、続落 5/5
4日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続落。終値は129.09円と前営業日NY終値(130.14円)と比べて1円05銭程度のドル安水準だった。米連邦準備理事会(FRB)は3−4日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場予想通りFF金利の誘導目標を0.75−1.00%に引き上げることを決定。保有資産を圧縮する「量的引き締め(QT)」も決めた。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がFOMC後の会見冒頭で「インフレはあまりにも高い」と発言すると米金利上昇とともにドル買いが先行し一時130.38円と日通し高値を付けたものの、その後失速。同議長が「今後2回の会合で0.50%の利上げを検討」「0.75%利上げは積極的に検討しているものではない」などと発言すると、急激な金融引き締め観測が後退し、米金利低下とともにドル売りが活発化した。4時前には一時128.63円と日通し安値を更新した。
なお、FRBは市場が想定するほど大幅な利上げは検討していないとの見方から、ダウ平均は980ドル超急伸し、金融政策決定の影響をより受けやすい米2年債利回りは18bp低下する場面があった。
ユーロドルは続伸。終値は1.0622ドルと前営業日NY終値(1.0521ドル)と比べて0.0101ドル程度のユーロ高水準だった。このところのFRB高官によるインフレ警戒発言を受けて、市場では6月FOMCでの0.75%利上げを織り込む動きが進んでいたものの、パウエルFRB議長が0.75%の大幅利上げに消極的な姿勢を示すと0.75%利上げの可能性が大きく後退。米金利低下とともにドル売りが優勢となり、一時本日高値となる1.0631ドルまで値を上げた。
なお、FRBは資産圧縮を6月1日に開始する。満期償還される国債と不動産ローン担保証券(MBS)のうち再投資に回る金額を減らす方法を採用し、月額の減額幅は当初475億ドルで、3カ月後には950億ドルに拡大する。
ユーロ円も続伸。終値は137.13円と前営業日NY終値(136.94円)と比べて19銭程度のユーロ高水準。4時前に一時137.43円と日通し高値を付けたものの、すぐに失速し136.61円と日通し安値を更新した。ただ、米国株相場の上昇に伴うリスク・オンの円売り・ユーロ買いが出ると137.30円付近まで再び強含んだ。 

 

●日本株に「悪い円安」は未発生、ドル高止まる時が危険 5/6
足元で進む円安と日本株の相関性は、今のところはっきりしない。マーケットでも日本経済に対する円安の功罪について議論が分かれており、株価の材料としてはほぼ中立。日本株全体でみて「悪い円安」が発生している様子はない。相関性が高いのは米株であり、米株が大きく下落することで米利上げ観測が後退しドル高/円安が止まる時が日本株にとって危険な時間帯となりそうだ。
TS倍率は足元上昇
対ドルで円安が急激に進み始めたのは3月から。インフレ高進で米利上げ加速観測が強まり、日米金融政策の方向性の違いが鮮明化。日本の経常収支赤字化(1月)なども材料視され、115円付近だったドル/円は約2カ月で15円以上の円安が進んだ。
その間、日本株は3月後半までは円安・株高の関係になっていたが、4月に入ってからは円安・株安になっており、相関性は逆転している。ドル/円が120円を超えてから円安・株安のトレンドとなっており、この辺から「悪い円安」が発生したとの見方も聞かれるようになった。
しかし、TOPIXをS&P500で割ったTS倍率でみると、足元はむしろ上昇している。水準自体は依然低いものの、4月以降の日本株の対米パフォーマンスは向上。先進国23カ国と新興国23カ国の大型株と中型株を合わせたMSCIのACWI指数との比較でもTOPIXは上昇している。
日本株との関連性が高いのは、ドル/円よりも米国株や世界の株価だ。「市場のリスク選好度、もしくは世界の景況感に連動して日本株は動いている。円安は業種で影響が異なっているが、日本株全体をみれば今のところプラスに働いている」と、ニッセイ基礎研究所のチーフ株式ストラテジスト、井出真吾氏は指摘する。
キャピタルフライトは見られず
通貨価値の下落である円安を嫌って、日本の投資家が外国の株式や債券に資金を移している様子も見られない。3月から4月23日までの対内対外証券投資(財務省)では、日本居住者による対外株式・ファンド投資は、約1兆3000億円の処分超(売り越し)。中長期債も約4兆円の処分超だった。
ただ、国内投資家が日本株を選好しているわけではない。現物と先物を合計した日本株売買(東証・大取)では、3月から4月第3週までを累計すると、個人投資家は1374億円の買い越しにとどまっている。
海外投資家は同期間に日本株を3143億円売り越しているが、特段売りが膨らんでるわけではない。4月だけをみると、8164億円買い越しだ。ドル高/円安の進行でドル建て日経平均は2020年6月15日以来の安値に沈んでおり、割安感からの「安値拾い」が出た可能性があるとみられている。
しかし、グローバル投資家は世界景気に対し悲観な見方を強めている。バンク・オブ・アメリカの4月ファンドマネジャー調査によると、世界の景気見通しは過去最低水準に落ち込んでおり、「今後の株式配分の引き下げ余地を示唆する」と同調査では指摘。波乱余地は依然大きい。
ソフトランディングは可能か
日本株にとって下落リスクが高まるのは、円安が進んでいる間ではなく円安が止まる時だ。いまのドル高/円安のドライバーは日米金利差。逆資産効果が懸念されるような株安が発生すれば、米利上げ観測が後退し円安は止まる可能性が大きいが、米株と連動性の高い日本株も大幅安となる恐れが強まる。
3─4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では22年ぶりに0.50%ポイントの大幅利上げを決めた。マーケットは、警戒していた0.75%ポイントの利上げ可能性が後退したとみていったん金利低下・株高に動いたが、5日の市場では反転した。
声明文には「FOMCはインフレリスクに非常に注意を払っている」という1文が追加された。米連邦準備理事会(FRB)の目標の3倍近い水準にあるインフレ率が家計に及ぼす影響についてパウエル議長は「極めて不快」と述べており、6月と7月の会合でも大幅利上げが決まる見通しだ。米金利上昇を震源とした市場波乱のリスクは依然大きい。
米株が底堅い間は利上げを続け、急落すれば利上げを止めて、ソフトランディングにFRBは持ち込めるのか──。「そうした芸当ができるのかは極めて不透明だ。株価は一度下がり始めると、何をしても止まらなくなることはしばしばある」と、三井住友銀行のチーフ・マーケット・エコノミスト、森谷亨氏は警戒する。
米ダウは4月以降、1000ドルを超える下落を3度記録するなど不安定さを増している。リスクオフの円買いはすっかり影を潜めたが、リスクオフの日本株売りはまだ「健在」だ。
●東京円、41銭安の1ドル=130円51〜53銭  5/6
6日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前営業日の2日(午後5時)比41銭円安・ドル高の1ドル=130円51〜53銭で大方の取引を終えた。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が4日、1回あたり0・75%の大幅な利上げには否定的な考えを示し、いったんドル買いが落ち着いた。ただ、利上げ路線の米国と低金利政策を続ける日本の金利差拡大が意識され、円が売られやすくなっている。
対ユーロでは、同25銭円安・ユーロ高の1ユーロ=137円29〜33銭で大方の取引を終えた。
●円、130円台前半 ロンドン外為 5/6
週末6日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米雇用統計の発表を控え様子見姿勢が強まる中、1ドル=130円台前半でのもみ合いとなった。
正午現在は130円20〜30銭と、前日午後4時と同水準。 
●ロンドン外国為替市場で円相場、1ユーロ = 138円を超える 5/6
5月6日19時13分頃、ロンドン外国為替市場で円相場は1ユーロ = 138円を超え、前日3時頃の価格(137.17円)から0.86円(0.63%)上昇となる138.03円となった。 

 

●為替相場 5/2〜5/6 5/7
2日からの週は、ドル相場が振幅した。注目の米FOMCでは0.5%の利上げが決定された。今後についても6月、7月の0.5%利上げが示唆された。また、バランスシートの縮小について、6月から開始することが発表された。ただ、パウエル議長会見では一部市場で観測された0.75%幅の大幅利上げについては否定的な見方が示された。市場では、イベント通過とともに大幅利上げが否定されたことを受けてドル売りの反応が広がった。ドル円は130円台から一時128円台へと反落。ユーロドルは1.05台から1.06台へと反発。しかし、米金融当局のインフレ対応姿勢は強く、調整の動きが一巡した後は再びドル高に回帰するとの見方が優勢になっている。豪中銀は市場予想を上回る0.25%幅の利上げに踏み切り、豪ドル買いを誘った。インド中銀は米FOMCに先立って金融利上げを実施した。EUが年内に段階的なロシア産石油禁輸を発表した。原油相場が上昇し、資源国通貨買いにつながる場面があった。英中銀は政策金利を25bp引き上げて1.00%とした。一方で、来年のマイナス成長を予測しており、ポンドが急落した。FOMC後のドル売りで1.26台まで買われたポンドドルは、MPC後には一時1.24台割れとなった。ドル円やユーロドルでもドル買いの動きが再燃した。ポンドは下げ一服後も戻りが鈍く、翌日のロンドン市場朝にも売りが出て1.2270台まで値を落とすなど、英リセッション懸念のインパクトを感じさせる展開に。ポンドに連れ安となって1.05をしっかり割り込んだユーロドルは、仏中銀総裁のタカ派発言に一気に買い戻しが入った。週末の米雇用統計は労働市場のひっ迫と賃金高止まりを示し、インフレ圧力の根源になっていることを示している。4月の非農業部門雇用者数(NFP)は42.8万人増加し予想を上回った。一方、失業率は3.6%に留まり、平均時給は前月比0.3%上昇。労働参加率は低下していた。パウエルFRB議長は今週のFOMC後の会見で「持続不可能なペースでの賃金上昇に懸念」と述べていたが、本日の米雇用統計はFRBの積極利上げ姿勢を正当化する内容となっている。ただ、為替市場の反応は限定的。
2日
東京市場では、ドル円が神経質に振幅した。先週後半に131円台まで上昇したあと129円台前半に押し戻され、129円台後半に戻して週末を迎えた。週明けは米株先物の上昇を好感して買いが先行し、130.29レベルまで一時上昇。その後、米株先物に売りが出て、日経平均も売りに押されるなかで129.60付近まで反落。株安一服とともに米債利回りが高止まりすると午後には130.40台まで上値を伸ばした。ユーロドルは先週後半に節目の1.05を一時割り込む動きをみせた。週末は1.05台に戻して振幅した。週明けはドル高の動きがやや優勢となり、1.05台後半から1.0510台までじり安となった。
ロンドン市場は、ドル高水準を維持も、調整含みの値動き。ドル円は東京市場で買われたあと、ロンドン早朝には130.48レベルまで高値を伸ばした。しかし、米債利回りの上昇一服で上値が重くなり130円台割れへと反落。週明けの欧州株が軟調なことや、NY原油先物が101ドル付近まで下落するなど、リスク警戒の動きが広がっていることも上値を重くした。ユーロドルは序盤に1.05台前半から1.0570付近まで上伸したが、買いは続かず1.05台前半へと押し戻されている。ドル高圧力が根強い。ポンドドルは朝方に1.2540近辺まで下落したあとは、1.2580台まで反発。その後は1.25台後半での揉み合いに。いずれもやや調整気味だが、先週末からのドル高水準での取引が続いている。ドル円の反落とともにクロス円も軟調。ユーロ円は137円台後半から136円台後半へと下落。ポンド円は163円台後半から前半へと下落。英国はアーリー・メイ・バンク・ホリデー祝日で取引は閑散。
NY市場では、ドル買いが優勢。FOMCを控えて米10年債利回りが一時3%台に上昇した。ドル円は再び130円台を回復。今週は4日水曜日にFOMCの結果が発表され、0.50%の大幅利上げが確実視されている。市場もそれ自体は既に織り込み済みで、焦点はFRBがより積極的な引き締めサイクルを示唆するかどうかに注目を集めている。市場では6月、7月の大幅利上げ実施を織り込む動きが出ている。中にはそのうちの1回は0.75%の可能性を見込む声もあるようだ。ユーロドルは一時1.05台を再び割り込んだ。ユーロ相場に関しては中期的な見方が分かれている。対ドルで1.00まで下落との見方がある一方、ECBが今後12カ月以内に利上げを開始するとの見方がユーロの買い戻しを誘うとの見方もあった。ポンドドルは1.25台割れへと下落。ポンドは対ユーロでも軟調。今週の英金融政策委員会では0.25%利上げが織り込まれている。一方、英地方選挙が波乱材料との声もあった。パンデミックの規制中にジョンソン英首相がパーティーなどに参加したことについて野党からは辞任要求の声がでている。
3日
東京市場は、憲法記念日のため休場。
ロンドン市場は、ドル高水準での揉み合い。明日の米FOMC会合の結果発表待ちのムードが広がっており、方向性に欠ける売買に。ドル円はアジア朝方につけた129.86レベルを安値にロンドン朝方には130.29レベルまで買われた。米10年債利回りが一時3.00%台に上昇する動きに反応した。しかし、その後は2.96%台へと低下しており、ドル円の上昇も一服。ユーロドルは1.0492から1.0528レンジで上下動。前日からのレンジ内にとどまっている。ポンドドルも1.2487から1.2555までのレンジ取引。ロンドン序盤は買いが優勢だったが、上昇は続かず。4月独失業者数は1.3万人減と減少傾向が続いているが、減少幅は次第に縮小しており、雇用市場は次第に勢いを失っている印象。指標自体に対するユーロ相場の反応はみられず。豪ドルが堅調。アジア午後に豪中銀が0.1%から0.35%への利上げを発表、市場予想を上回る上げ幅とあって豪ドル買いの反応が広がった。今後の追加利上げについても示唆された。豪ドル/ドルは0.7148レベル、豪ドル円は92.94レベルまで高値を伸ばした。しかし、買いは続かず0.71台割れ、92円台前半へと押し戻されている。ただ、豪ドルは各通貨に対して高水準を維持しており、強い材料が出た影響は残っている。
NY市場では、ドル売りが優勢。米FOMCの結果発表を前に様子見気分が広がるなかえ、やや調整が入った。ドル円は一時129.70近辺まで下落したあとは130円台に戻した。米債利回りの上昇が一服したことがドル円に調整を促した。一方で、米株がしっかりと推移したことがドル円の下支えとなっていた。市場は明日のFOMCでの0.50%の大幅利上げを確実視しているが、それ自体はすでに織り込み済み。短期金融市場では6月、7月も連続で大幅利上げを見込む動きが出ており、そのうちの1回は0.75%の利上げとの見方も強まっている状況一方、ウクライナ情勢や中国ロックダウンの影響も警戒される中で、どの程度まで積極的なのかヒントを探りたいところ。ユーロドルは1.0575付近まで上昇する場面があったが、流れは維持できずに1.05台前半へと戻した。ECBが第3四半期に債券購入を停止した後、企業は資金調達コストの上昇に直面するとの懸念がでていた。ポンドドルは1.24台に再び下落。足元での英中銀利上げ観測は高いものの、英経済の成長鈍化を受けて来年には金融引き締めを撤回する可能性が指摘されていた。
4日
東京市場は、みどりの日のため休場。
ロンドン市場は、米FOMCを控えてややドル売りの動きが入っている。米10年債利回りが3.00%手前で上昇を抑えられると、2.94%台まで低下。ドル売り圧力となっている。ドル円は130.20近辺が重くなり、129.96レベルまで下押しされている。ポンドドルは1.2460台から1.2520台へと上昇。豪ドル/ドルも0.71ちょうど付近から0.7130付近へと上昇。そのなかではユーロドルの反発力は鈍く、1.0520-30レベルで売買が交錯している。この日はEUが年内に段階的にロシア産石油を禁輸する方針を表明しており、原油相場が上昇、欧州株が軟調に推移している。エネルギーコスト上昇が欧州経済の体力を弱めるとの懸念が広がったようだ。ユーロは対円では136円台後半での揉み合い、対ポンドでは0.84台前半で軟調な値動き。ポンド円が162円台前半から後半へ、豪ドル円が92円台前半から後半へと買われる動きと比較するとユーロ相場は上値が重い。また、この後の米FOMCを控えて、インド中銀が緊急利上げを発表、政策金利を40bp引き上げ4.40%とした。
NY市場では、ドル売りが強まった。午後になってFOMCの結果が公表され、その後のパウエルFRB議長の会見では冒頭に「インフレはあまりにも高過ぎる」と述べたことで最初はドル買いの反応が強まった。しかし、今度は「0.75%の利上げは積極的に検討していない。次の数回の会合で0.50%の追加利上げを検討すべき」と述べたことで、一気にドルの動きは反転した。バランスシート縮小については、6月から月475億ドルで開始し、縮小ペースは3カ月後に最大月950億ドルまで拡大するとしている。ドル円は130円台前半へと一瞬買われたあとすぐに売りが強まり128.60付近まで急反落。ユーロドルは1.05台前半に下押しされたあと、一気に1.06台乗せ。ポンドドルは1.2450付近に下げたあと、1.26台に乗せた。0.75%利上げの可能性が否定されたことを好感して米株式市場は大幅高となり、ドル円は129円台を回復、クロス円も総じて円安方向に振れた。
5日
東京市場は、こどもの日のため休場。
ロンドン市場は、ポンドが売られている。英金融政策委員会では政策金利が25bp引き上げられて1.00%となった。6名の委員が25bp、3名が50bpの利上げを主張した。英中銀は今後数カ月の一段の金融政策引き締めが適切との見方を示す一方で、2023年の経済成長率をマイナス0.25%と予測。この内容を受けてポンドが急落している。ポンドドルは1.25台半ばから一時1.24台割れへ、ポンド円は163円付近から161円台前半へと下落。ユーロポンドも0.84台前半から0.85台乗せへと買われている。英中銀の発表前からドル買いの動きが優勢だった。ドル円は129円台前半から129.90台へと上昇。ユーロドルは1.06台を割り込むと1.0550付近へと下押しされている。いずれも前日の米FOMC後のドル売りの動きは一巡した。米10年債利回りは一時2.97%近辺まで上昇し、ドル買いの動きを下支えした。
NY市場ではFOMC後のドル安分を戻す展開となった。米債利回りの上昇が目立ち、ベンチマークとなる米10年債利回りが3.1%台に乗せる中で、ドルは全面高の動きを見せた。ドル円は130円台をしっかり回復し、130円40銭台まで。ユーロドルは一時1.05を割り込む場面まで見られた。FOMC後に大きく上昇した米株式市場も大幅安となり、米国の金融引き締めに対する動きが再び強まる格好に。米ダウ平均株価は一時1300ドルを超える下げを見せた。その後夕方にかけて米債利回りの上昇が一服するとドル買いの動きも抑えられ、ドル円が130円を一時割り込むなどの動きに。
6日
東京市場では、5日NY夕方のドル売りが落ち着いたことでドル円がしっかりとした動きに。前日の米株安を受けて下げて始まった日経平均に買い戻しが入り、ドル円の買いを誘った面も。連休中にいったん大きく下げた後130円台を回復してきたことで、ドル円の買いに安心感が出ていた面も。前日海外市場の高値を超えて130円80銭前後まで一時上値を伸ばした。ユーロドルはNY夕方から東京朝にかけて1.0550前後が重くなっており、下を意識する展開に。もっともNY朝の雇用統計発表を前に下押しにも慎重姿勢が見られ、1.05台前半での推移が続いた。
ロンドン市場では欧州通貨の振幅が見られた。序盤はポンド主導で対ドル、対円での売りが目立った。前日の英中銀金融政策会合後に大きく売られたポンドは、その後の戻りが鈍く、リセッション懸念の影響を感じさせる展開が続くと、ロンドン勢の本格参加でもう一段の下げに。ユーロもつれ安となって、序盤は欧州通貨高ドル安円安にその後ビルロワドガロー仏中銀総裁が年内の政策金利プラス圏回復見込みを示し、次回理事会での利上げの可能性に言及すると一気にユーロ買いが強まる展開に。前日の安値を割り込んで1.0480台を付けていたユーロドルは1.06に迫る動きをみせた。ユーロ円の買い戻しも目立ち序盤の136円80銭台から138円10銭台まで1円20銭強の上昇に。ドル円はやや蚊帳の外もやや頭の重い展開に。
NY市場は再びドルの戻り売りが優勢となった。ただ、ドル円は130円台での推移が続いた。欧州通貨に買い戻しが入ったことで、ユーロ円やポンド円といったクロス円が上昇し、円安の動きがドル円をサポートしていたようだ。本日は4月の米雇用統計が発表になっていたが、FRBの積極利上げ姿勢を正当化する内容となっている。ただ、きょうの為替市場の反応は限定的。

 

●ドル高円安はより鮮明に 5/8
焦点の米連邦公開市場委員会(FOMC)で一段の利上げ幅拡大の観測は後退し、ドル買いが一服しています。ただ、日銀の異次元緩和継続による円安を日本政府は抑止できず、引き続きドルをサポート。また、日米関係はドル高・円安の強い支援材料となりそうです。
デフレ脱却宣言をしていない日本でインフレ圧力が強まるなか、4月27-28日に開催された日銀金融政策決定会合は異次元緩和を維持。2022年の消費者物価指数の見通しを前回から上方修正したものの、10年物国債金利0.25%の利回りで指し値を原則毎日実施すると決めています。黒田東彦総裁が改めて円安容認の姿勢を示すと円は急落し、ドル・円は一時131円25銭まで値を切り上げました。
一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は5月3-4日のFOMCで、FF(フェデラルファンド)レート誘導目標レンジを0.75-1.00%に引き上げ、6月から475億ドルペースでバランスシート縮小する政策を決定。パウエルFRB議長は会合後の記者会見で、利上げ幅について0.75%への拡大に慎重な姿勢を示しています。それを受けた米長期金利の低下で引き締め加速を期待したドル買いは巻き戻され、ドル・円は失速しました。
ただ、ドル・円はすぐに持ち直しています。日米中央銀行の政策決定を受け、方向性の違いからドル買い・円売りへカンタンに戻りました。特に、日銀の金利上昇を抑える指値オペは効果的で、クロス円の上昇要因にもなっています。財務省は鈴木財務相をはじめ「悪い円安」と明言してけん制のトーンを強めているものの、円安を抑止するのは困難で、円が主要通貨を支える構図が目立ちます。
さらに、中国の新型コロナウイルスまん延で、緩和政策による人民元安の進行にも目は離せません。周辺国の通貨もそれに追随しており、ドル高が際立ってきました。英中銀は昨年12月から4会合連続で利上げを実施したものの、今後のマイナス成長見通しが金融政策に影響を与えかねない状況です。つまり、ドル高・円安というより、目先はドル独歩高・円独歩安とみられます。
アメリカは輸入インフレを回避するためドル高を望んでいるとみられ、日米協調介入の可能性もほぼゼロ。直近のイエレン米財務長官と鈴木財務相との会談で協調介入が議論されたと伝えられ、市場は一時騒然。その後誤報とわかり、円売り再開の場面もありました。今月下旬のバイデン米大統領と岸田首相による首脳会談で恐らく為替は棚上げされ、政治力からみてもドル高・円安はより鮮明になります。
●詳しいFX投資家ほど陥った「間違い予想」 5/8
「買い」からだけでなく、「売り」からも取引を始められるというのは、FXの大きな特徴と言えるでしょう。となると、上がると思ったら買えばいいし、逆に下がると思ったら売ればいいとなります。
ただし、この「と思ったら」というのは「予想」であり、そんな相場予想がいつも当たるわけではないので、簡単なことではありません。
今回は、私が良く知っているあるベテランのFX投資家の「失敗例」を紹介しながら、「失敗の理由」を考えてみたいと思います。
ベテラン投資家の狙い
その方は「ベテラン」ですから、とても長い間FXトレードの世界でサバイバルしてきた投資家でした。長く「生き残ってきた」といったことだけでも、腕利きの投資家と言って良いでしょう。それは大損せず、しっかり利益を上げないと基本的には無理でしょうから。
この腕利きのベテラン・トレーダーは、ある時「米ドル/円は下がる」と予想し、米ドル売り・円買いの取引を続けていました。2017〜2020年の米トランプ政権時代の話で、当時は米中貿易戦争が激化し、それを懸念した株安、リスクオフの拡大が円高をもたらすといった見方が有力になっていました(図表参照)。
上がるか下がるか微妙といった具合に、相場予想に迷うケースの方が基本的には多そうですが、当時は為替相場に詳しい投資家ほど、この米中貿易戦争激化の中での米ドル安・円高予想は、基本的に迷いの少ない、「自信のある予想」だったようです。
ところで、FXの収益機会には、相場が上がるか下がるかを当てるほか、もう一つ金利差利益を狙う「スワップポイント」があります。この当時の金利は、「米ドル>日本円」だったので、金利の高い米ドルを売り、金利の低い円を買うということは、スワップポイントは支払いになってしまいます。この時のベテラン投資家からすると、スワップポイントを支払っても十分利益を出せるほど、円高予想に自信があったのでしょう。しかし結果的には、これが裏目に出てしまうのです。
ベテラン投資家の「失敗」
ベテラン投資家の予想に反して、なかなか米ドル/円は下がりませんでした。一方で、米ドル/円の当時のスワップ・ポイントは、米ドル買い・円売りならプラスでしたが、米ドル売り・円買いではマイナスだったので、スワップ・ポイントの支払いも次第に重荷となってきたようでした。そんな状況が長期化する中で、この投資家は一旦、米ドル売り・円買い取引からの撤退を余儀なくされるところとなってしまったのです。
ここが大事なポイントです。FXは買いだけではなく、売りもできるという「特徴」がありますが、それを不確実な相場観に頼り過ぎることは危険だということです。上述のケースは、FXの成功体験を多く持ち、長く取引してきたベテラン投資家であり、別な言い方をすると何もわからない「素人」ではありませんでした。ところが、逆に自らの経験に裏付けられた相場観に自信があったことこそ、災いになったと推測します。
金利差を味方にする
これまでにも述べてきたように、FXの収益機会は、キャピタルゲインとインカムゲインの2つに大別されます。価格変動に伴う収益がキャピタルゲイン、そして金利差利益がインカムゲインになります。重要なのは、この2つの収益機会の性質が大きく異なるということでしょう。
FXの2つの収益機会のうち、相場の変動を当てることと金利差を得ることは、確実性というテーマで考えた場合は、かなり対照的な位置付けになります。ですから、不確実性の高い相場観に頼り過ぎにならず、安定的な金利差を味方につけるためには、なるべく金利差と整合性の高い取引をするということが重要でしょう。
わかりやすくするために、具体例をあげてみてみましょう。金利が高い順に「米ドル>円>ユーロ」だった場合、最も金利の高い米ドルが下がると予想するなら、米ドル/円よりユーロ/円を売る方が良いでしょう。
米ドル/円が下落する場合、それに連れてユーロ/円も下落する可能性が基本的には高くなります。ところで、同じように下がると予想しても、米ドル売り・円買いでは金利差が支払いになる可能性があるのに対し、ユーロ売り・円買いでは金利差は収益になる可能性もあるからです。
相場予想に反して、対円で米ドル、ユーロがなかなか下がらない場合でも、ユーロ/円の場合は金利差収入がトータルの損失をカバーし、取引の継続の道を開いてくれる可能性があるわけです(※)。相場観によほど自信がある時以外は、できるだけ金利差と整合的な売買を選択することが、取引を長く続けられるコツと言えるでしょう。
※金利差とスワップポイントは、異なる場合があります。
それにしても、この「よほど自信がある時」というところが微妙ですね。ほとんどの場合、そして誰でも、最初から外れると思って予想しているわけではなく、結果的に外れてしまったということでしょうから。
そうであればなおさら、価格変動を予想して収益を狙う相場観の自信を元にした売買とは別に、足元の金利差と整合性ある売買を意識する=金利差を味方につけることが、取引の「成功」のためには必要なのかもしれません。 

 

●なぜ円安が進んでいるの? 20年ぶり水準、家計に負担も― 5/9
外国為替市場で円安・ドル高が急速に進んでいる。3月から5月初めにかけてのわずか2カ月間で円はドルに対し16円も下落、約20年ぶりの水準となる1ドル=131円台を記録した。急速な円安は家計への負担にもなりかねない。
――なぜ円安・ドル高が進むのか。
日米の金融政策の違いが明確になったことが大きい。日本では日銀が大規模な金融緩和を続け、企業の借り入れや住宅ローン金利の指標となる長期金利を低く抑え込んでいる。一方の米国は歴史的なインフレを抑え込むために金融引き締めにかじを切っており、金利上昇が続く。このため日米の金利差が拡大し、より金利の高いドルで資産運用をしようと円を売ってドルを買う動きが強まっている。
――「悪い円安」とも言われる。
円安が速いペースで進んでいることが問題視されている。海外に製品を輸出する企業にとって、円安は収益増につながる。しかし、ウクライナ情勢などを背景にエネルギーや食料品の価格が高騰する中、急速な円安が輸入コストをさらに押し上げて家計や輸入企業の収益を圧迫しかねない。鈴木俊一財務相は「輸入品高騰を価格に十分転嫁できない環境は『悪い円安』と言えるのではないか」と警戒感を示した。
――止める手段はあるのか。
政府が日銀を通じ市場で円買い・ドル売りを行う為替介入が可能だ。ただ、金融政策の方向性が異なる中では「日本だけで介入しても効果は限定的」(市場関係者)とされる。米国などと協調して実施すれば効果は大きくなるが、米国が自国の物価高につながるドル売りを容認する可能性は低いとみられ、実施は難しそうだ。
――今後の見通しは?
日銀は4月末の金融政策決定会合で、長期金利上昇を抑え込む姿勢を改めて鮮明にした。この結果、外為市場では円安が一気に加速。しかし黒田東彦総裁は、日本経済にとって「全体として円安はプラス」との考えで、大規模緩和を続ける構えを示している。日米金利差の拡大は当面続く見込みで、市場ではさらに円安が進むとの見方が優勢だ。
●午後3時のドルは131円近辺で底堅い、日米金利差で買い安心感 5/9
午後3時のドル/円は、前週末のニューヨーク市場終盤(130.56/59円)に比べてドル高/円安の131.00/02円と底堅さを維持している。日米の金融政策会合を経て改めて政策の違いが意識され、米金利も高止まりしていることからドル買いに安心感が生じているという。ただ、直近の高値(131.25円)を目前に利益確定売りなどが出て一段の上値追いとはならなかった。
きょうもドルは、高止まりしている米金利を支えに堅調な展開で、朝方の130円後半から、午後にかけて一時131.11円まで上昇した。131円台では利益確定売りも出たものの、全般的には底堅さを維持している。
足元の米10年債利回りは3.13%台半ばと高水準で推移。日米の金融政策会合を通過し改めて両国の金融政策の違いが意識され、金利差も拡大していることで「ドル買い/円売りの安心感が広がっている」(外銀)という。
ただ、ドルは131円台に乗せると実需や投機筋の利益確定売りも出て上値を抑えられた。市場関係者の多くは引き続きドル高/円安基調を見込んでいるが、目先は調整をこなしながら上方向を試す展開になるとみられている。
ドル売り要因としては、米長期金利の上昇を受けて不安定な動きとなっている株式市場やスピード調整の動きを指摘する声が出ている。
「(金利の上昇で)株価に大きい調整が入った場合、ドル/円も円高方向に振れる可能性もある」(楽天証券・FXディーリング部、荒地潤氏)という。また、ここのところリスクオフ局面でも円買いは進行していなかったものの「3―4月にかけて円売りが急ピッチで進んだため、足元のリスクオフ局面では行き過ぎた売りの修正も入り、円が買われている」(国内金融機関)との指摘もあった。
きょうは日経平均が一時690円超安となり、リスクオフムードが広がった。クロス円ではリスク回避の円買いもみられ、足元豪ドル/円は91.76円付近、ニュージーランド(NZ)ドル/円は83.20円付近と、いずれも円高気味となっている。
●NY外為 円、131円近辺 5/9
週明け9日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、午前8時現在1ドル=130円91銭〜131円01銭と、前週末午後5時(130円48〜58銭)比43銭の円安・ドル高で推移している。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0541〜0551ドル(前週末午後5時は1.0542〜0552ドル)、対円では同138円16〜26銭(同137円62〜72銭)。
●外為:1ドル131円26銭前後と大幅なドル高・円安で推移 5/9
9日の外国為替市場のドル円相場は午後4時時点で1ドル=131円26銭前後と、前週末午後5時時点に比べ76銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=137円81銭前後と49銭のユーロ高・円安で推移している。
●欧州通貨に買い戻し入る、ドル円は131円台に高止まり=ロンドン為替概況 5/9
ロンドン市場は、ドル買いが一服。基調としてのドル高圧力は継続も、欧州通貨を中心に買い戻しの動きが入っている。ユーロドルは東京市場での軟調な流れを受けてロンドン朝方には1.0495レベルまで下落、ポンドドルも1.2261レベルに安値を広げた。しかし、その後は売買が交錯するなかで、反発。ユーロドルは1.0550付近、ポンドドルは1.2350手前まで買い戻された。ユーロ円は137円台後半から138円台乗せへ、ポンド円は161円付近から161円台後半へと上昇。欧州株の軟調な動きも、欧州通貨は買いが優勢だった。ドル円はロンドン朝方に131.35レベルまで高値を伸ばした。2002年4月以来の高値水準となった。その後の調整は浅く、131円台を維持している。米10年債利回りは3.12%近辺から一時3.20%近辺まで上昇。根強いインフレ警戒が示されている。米株先物は時間外取引で軟調。ナスダック先物は2%超安となっている。プーチン露大統領演説では、ウクライナ侵攻の正当性が強調されたが、戦争宣言のような強硬な表現はみられず、比較的控えめの内容にとどまった。
ドル円は131円台前半での取引。東京市場で130円台前半から一時131円台乗せとなる流れを受けて、ロンドン市場では一段高。高値を131.35レベルまで伸ばし、2002年4月以来のドル高・円安水準となった。米10年債利回りは一時3.20%付近まで上昇。ドル買い圧力は根強い。
ユーロドルは1.05台前半での取引。序盤に1.0495レベルまで安値を広げたあとは、買い戻しが優勢となっている。1.0550付近まで反発した。ユーロ円は137円台後半から138円台にしっかりと乗せ、高値を138.32レベルに更新した。対ポンドではやや上値重く推移している。米債とともに欧州債の利回りも上昇しており、ドル高の調整を誘ったようだ。ただ、センティックスによる5月ユーロ圏投資家信頼感が予想以上に落ち込むなど、欧州経済をめぐるセンチメントは引き続き厳しい。
ポンドドルは1.23台前半での取引。序盤に1.2261レベルまで安値を広げたあとは、買い戻しが入っている。1.2350手前水準へと反発している。ポンド円は161円を挟む揉み合いを上放れると161.90近辺まで上昇。ユーロポンドは0.8570付近から0.8540付近へと上値重く推移。北アイルランド議会選では、アイルランドとの統一を標ぼうするシン・フェイン党が第一党を獲得、政治情勢が不安定化しているが、ポンド売りには調整が入っている。
●コロナ鎖国の日本が取るべき「円安を止める方法」 5/10
円安はどうやったら止まるのか?
円安相場が収束する雰囲気が感じられない。
ドル/円相場は3月初頭から約2カ月間で約15円も上昇している。パンデミック直前の3年間(2017〜19年)の平均年間値幅が9.74円だったことを思えば、特に企業部門においては、文字通り「急激な変動」を体感している最中と言える。
ここにきて最も受ける問い合わせは、(1)円安はいくらまで進むと思うか、(2)どうやったら止まると思うか──の2点である。直感的に(1)が多いように思われがちだが、(2)も同じくらい多い。
円高方向と円安方向では、根本的に防衛の難易度が異なる(言うまでもなく円安を防衛する方が難しい)。そのため、「本当にこの円安は止まるのか」という得も言われぬ不安を抱く人々が増えること自体は不思議ではない。円高相場と異なり、購買力平価(PPP)などに代表される「もっともらしい節目」も見つけにくいという事情もあり、円安を「糸の切れた凧」のように不安げに見る心持ちは理解できなくはない。
効果があるかどうかは別にして、日本の為政者が本当に「円安を止めたい」と考えた場合、自ら講じることができる処方箋は3つある。今の円安の背景は金利と需給から説明されることが多いので、処方箋もそれに沿っている必要がある。
前者の「円安はいくらまで進むと思うか」にアプローチする処方箋としては(A)日銀の正常化プロセス着手、後者の「どうやったら止まるか」にアプローチする手段としては(B)原発再稼働および(C)訪日外国人旅行者(インバウンド)の解禁などが考えられる。
いずれも、それをやったからと言って円安の潮流を覆せる保証はない。為替は常に「相手がある話」であり、日本の事情だけで方向感は決まらないからだ。
しかし、今の為替市場では、「参院選前に対立論点は作らない」という岸田政権の決定力のなさを見透かし、半ば「高を括った円売り」に勤しんでいる向きも多いように思える。とすれば、(A)〜(C)を実施する価値がないとは言えない。すべて同時に講じれば円安が反転する可能性は相応に高いと筆者は考える。
円安反転に効果が高そうな金融政策の正常化だが……
(A)日銀の正常化プロセス着手
多くの人々にとって最も分かりやすいのは、(A)日銀の正常化プロセス着手だろう。
3月以降、日銀の一挙一動は明らかに為替市場でウォッチされている。例えば、4月13日は「信託大会における日銀総裁挨拶」といった誰も気にしていなかったようなイベントで相場が走り出した(ここから126円台に乗せている)。
こうした注目度の高さを踏まえれば、日銀の緩和路線修正が流れを変える可能性はゼロではない。しかし、この選択肢は4月28日の政策決定会合や総裁会見を踏まえる限り、ほぼあり得ない選択肢となっている。
4月会合では「粘り強く金融緩和を続ける」と言い続けた上で、現行枠組み維持を前提として指値オペを毎営業日行うという決定がなされた。どちらかと言えば緩和強化で応戦しており、「為替市場との全面対決」を選んだ格好である。
しかし、これは妙手だったと筆者は考えている。為替市場は常に飽きっぽい。指値オペが日常化すれば、「オペ通告のたびに円売りが進む」というノイズは払拭できる公算が大きい。
そもそも、仮に何らかの緩和修正に着手したとしても、為替市場は「催促すれば引き締めして(円高にして)貰える」と解釈し、「次の一手」に期待を膨らませ、催促相場を育てようとするはずだ。
よって、中央銀行が為替市場の乱高下に巻き込まれた時は、基本的に「相手にしない」が一番であり、淡白な情報発信に努めるのが最善である。この点、指値オペの常態化は好手である。
だが、すべては「円安は日本経済全体にとってプラス」という前提に拠って立っており、ここに疑義を持つならば、何らかの緩和修正は必要になる。4月28日の会見でも、黒田総裁は「過度な変動はマイナスに作用する」と述べ、既に「悪い円安」論を唱えていた鈴木財務相の見方に寄せた感もあった。
本当に日銀が何らかの手を講じなければならなくなった場合、何が想定されるか。
フォワードガイダンス(金融政策の先行き指針)の引き締め方向への修正、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)における誘導目標金利の短期化(10年→5年)など小手先の論点が取りざたされやすいが、「次の一手」に対する催促相場を確実に断ち切りたいならば、一気にプラス金利まで視野に入れて利上げすることではないか。日銀の姿勢が「根本的に変わった」という可能性を感じさせるからだ。
しかし、そうなれば家計部門にとって最も重要な住宅ローン金利なども上がるため、政治的な逆風にもなりかねないだろう。参院選前の岸田政権にこれを容認する胆力があるとは思えない。
とすれば、少なくとも7月末までは現状が続くというのが既定路線と言えるし、その後は「自民党総裁選挙が……」といった理屈の下で、やはり見ないふりを決め込む可能性は高い。円安修正を企図して、政府・日銀が(A)日銀の正常化プロセス着手の経路を選択する公算は小さい。
タブー視されている原発再稼働のインフレ対策効果
(B)原発再稼働
今次の円安局面において、最も重要な論点は「需給が円売り超過に傾斜しているのだから円安で問題ない」という主張である。圧倒的な事実ゆえに、反論の余地がほとんどない。
その象徴が毎月計上される大幅な貿易赤字であり、周知の通り、輸入金額の急増により引き起こされている。貿易収支のフローは必ずアウトライト(買い切り・売り切り)取引として市場に現われ、流れを作るのに寄与する。金額は「価格」×「量」で算出される。資源の「価格」は日本の力でどうすることもできない。
しかし、資源を輸入する「量」は、国内の電源構成を修正することで可変的である。半ばタブー視されてきた原発再稼働が足許で注目されている理由の一つである。
最初に断っておくが、筆者は原発再稼働の是非を問うつもりはない。あくまで「円安を止めたいならば何があるか」と考えた時、それが議論の俎上に上ってくるのが自然だという話である。
もっとも、円安抑止は原発再稼働の副産物であり、全体論からすれば些末な話である。本当の問題意識は、「これ以上、日本経済のダウンサイジングをすることが正しいのか」というより大きなものになる。この点は後述する。
いずれにせよ、現状、日本の輸入金額の25%が鉱物性燃料である以上、資源高が貿易収支の仕上がりに影響する部分は相当大きい。その資源高は脱炭素・感染症・戦争という根深い要因に駆動されている。
「高い資源を買い続けて貿易赤字になる」という現状に何らか切り込まない限り、「需給要因を背景とした円安」はかなり手堅いストーリーであり続ける。
政府・与党にも動きは見られる。
4月26日、岸田首相はテレビ東京の番組において、物価高騰に対応する「緊急対策」の一環として、エネルギーの安定供給を念頭に「できるだけ可能な原子力発電所は動かしていきたい」と述べた。さらに、「今の枠組みの中でどこまで原子力の再稼働ができるのか追求していかなければならない」と踏み込んでいる。
また、翌27日にも経済同友会総会の挨拶で、「原子力の活用を進めていく」と表明。5月最初の訪英でも「安全を確保した原子炉の有効活用を図る」と述べた。短期間のうちに原発再稼働への意欲が集中的に情報発信されているが、その時間軸はいまだに判然としない。検討はいつまで続くのだろうか。
成長をあきらめた国の末路
繰り返しになるが、原発再稼働の主目的は円安抑止ではない。主目的は実体経済の安定運営であり、円安抑止はその副次的効果である。既報の通り、今夏・今冬の電力供給は逼迫の見通しが濃厚と言われる。
原発稼働をあくまでも避け、感染防止時の行動制限と同様、国民への節電を「お願い」することで乗り切るのか。しかし、行動制限や節電を「お願い」することはマクロ経済のダウンサイジング(規模縮小)を図ることに等しい。
金融引き締めや10円単位の値上げは大きな反対の声が挙がるのに、行動制限や節電には粛々と従う心理状態は理解が難しいが、大多数の国民にとって「政府は間違えない」という先入観が強いのかもしれない。
いずれにしても、原発再稼働は通貨安に切り込み、マクロ経済のダウンサイジングを回避するというポジティブな効果が見込める。そうした原発再稼働にまつわる経済合理性と国民の一部に根強く残る心理的障害の折り合いをいかにつけるかが今問われている。
「経済より命」路線の末に、パンデミックからの経済復活を半ば放棄した日本だからこそ、「原発再稼働はせず、ダウンサイジングを受け入れる」という選択肢も十分考えられる。G7および中国の中で比較した場合、いまだにコロナ前の実質GDP水準を復元できていないのは日本だけだ。これは偏執的な自粛意識がもたらした結果としか言いようがない。
しかし、資源に乏しい国が成長をあきらめ、外から購入する財も「高価でかまわない」という態度は絶対に持続可能ではない。
その「高価でかまわない」という態度を貫く過程では、拡張財政路線(恐らく一時的な補助金など)で痛みを緩和するという政策運営が付随してくるだろう。今までもそうやってきたわけだが、その結果が交易損失拡大に伴う「安い日本」の定着である。原発再稼働は最終的に世論が決める話だが、「成長をあきらめた国」がいかに劣化するか。この2年間から学びたい。
外国人の財布に頼らざるを得ない現実
(C)訪日外国人旅行者の解禁
4月27日の経済財政諮問会議では、民間議員から新型コロナウイルスの水際対策の一環として認められていない「観光目的の入国」の早期再開が提言された。5月初頭の訪英でも岸田首相は観光目的の外国人入国を6月にも認める方針を示唆している。
上述の(A)日銀の正常化プロセス着手は投機の円売りを焚きつける恐れがあり、(B)原発再稼働は世論の意見集約が難しいという問題があるとしても、(C)インバウンド解禁は反対する余地がほとんどないテーマである。
現在の経常黒字縮小の背景は、資源価格の高騰を受けた貿易赤字拡大とインバウンド需要消滅を受けた旅行収支黒字の消滅がある。インバウンド解禁と共に旅行収支黒字が戻れば、微力だとしても需給面からの円売り圧力を緩和する手立てにはなる。
いや、ここにきて目減りしている経常黒字を思えば、もはや旅行収支黒字は外貨獲得のための重要なツールである。岸田首相も「旺盛な海外需要の取り込みは経済の活力を高め、長期的な成長力を高めるものだ」と表明し、追随する姿勢を見せている。
保守的な日本の世論を踏まえれば、「外国人が入ってくると感染が拡大する」という反対が確実に予想されるが、今や新規感染者数にこだわり、実体経済を締め上げる発想は中国と日本くらいであり、そのような意見は滑稽ですらある。そもそも日本人が連休を使って海外旅行へ行く局面で、その逆はなぜ駄目なのか。論理的な説明は難しい。
なお、「屋外でもマスク」のような科学的根拠に乏しい要請に外国人は従わないであろうから、インバウンド解禁に踏み切る際には、惰性で続けているそうした国内の防疫対策にも整理もつけておく必要がある。そのための議論整理を踏まえれば、6月にインバウンド解禁というのは遅きに失している感はあるものの、理解できなくはない。
これほど「安い日本」がテーマ視されているならば、それを逆手に取って前向きに活かそうとする取り組みは検討されて当然である。残念な話だが、日本人の実質所得環境が悪化している以上、外国人の財布に頼らざるを得ないという事情もある。望む望まないにかかわらず、インバウンド需要を当て込んだ外貨獲得は日本に残された数少ないカードである。
世界から取り残される「コロナ鎖国」の日本
パンデミック直前の2019年は訪日外客数が3000万人を超え、旅行収支は約+2.7兆円といずれも過去最高を更新していた(図表1)。周知の通り、その多くは中国がカウンターパートである。
   図表1
なお、名目実効相場ベースで円と人民元の動きが対称的になっているのは、旅行収支に関し、赤字が消えた中国と黒字が消えた日本という事実もあるのではないか。旅行収支黒字が為替動向に影響するほどの規模とは思えないものの、こうした円と人民元の動きは興味深い(図表2)。
   図表2
過去2年間の日本の防疫政策を巡る世論の在り方を踏まえると、想定される最悪のパターンは「インバウンドを受け入れる→外国人がマスクをしなかったと囃し立てる→インバウンドのせいで感染が拡大したと騒ぐ→入国規制復活」だろう。そうなれば元の木阿弥であり、インバウンド解禁の議論自体が半永久的に封印されかねない。
欧米に続きアジア各国があらゆる制限の撤廃に踏み切り、日本でも屋外でのマスク着用に疑義が呈され始めている今が決断の好機に思える。それすらできなければ、「安い日本」は「安いだけの日本」として長期停滞を余儀なくされ続けるだろう。
将来の経常収支における新たな柱として旅行収支を考えるならば、いつまでも鎖国イメージを発信し続けるのはどう考えても得策ではない。
●「悪い円安」で金融緩和を止めれば長期停滞に逆もどりする 5/9
高橋洋一教授(嘉悦大学)の最新刊『プーチンショック後の世界と日本』(徳間書店)は、現在のコロナ禍とウクライナ戦争のダブルショックに直面する世界と日本経済の動向を考える上では必読の時論だろう。さらに日本経済では、岸田政権の“令和の検討使”的リスクも合わせて考えるべきだろう。つまり岸田政権の経済危機に対する無策に近い姿勢である。
高橋教授と最近、対談する機会を得た。高橋教授とは2020年に共著で『日本経済再起動』(かや書房)を出して以来の本格的対談になった。興味津々の内容は、月刊『WiLL』に近々掲載予定である。
この対談で話題になったひとつの論点は、現在の「悪い円安」論である。この問題については前回の連載でも書いた。新聞やテレビのワイドショーなどでは、「行き過ぎた円安を止めよ」「円安を止めるためには日銀の金融緩和を停止するのが正しい」などという意見を見かける。
しかしマスコミや一部の識者たちが言うように、「為替レートを目的にして日本銀行が金融政策を変更するのは下策中の下策」というのが、高橋教授や私の強調するところである。ちなみに2人だけの“特殊な”意見ではない。
例をいくつかあげよう。著名な経済学者でもあるローレンス・サマーズ元米財務長官は、最近のテレビ番組で、高インフレに苦しむ米国と低インフレ状況の日本とでは当然に金融政策のあり方が違うと強調し、日本では金融緩和の継続が正しいと語っている。
またフィナンシャル・タイムズの社説(「円安、日銀には物価『2%目標』達成の好機」)はさらに具体的に「悪い円安」=「金融緩和の停止」に手厳しい批判を展開している。同紙の社説では、岸田政権が世論などの圧力で、円安抑制と金融引き締めに転じることを「百害あって一利なしに近い」と断じている。
そもそも「悪い円安」の議論の背景には陳腐な為替レートについての見解がある。現在のような短期での為替レートの変動を正確に論じることができる理論はないことが知られている。しかしマスコミでは、日米の金利差で円安ドル高を説明しているのが一般的だ。あるいは経常収支の赤字転換の可能性でいまの為替レートを論じる人たちもいる。
これらは経済学的には根拠に乏しい。そもそも短期の為替レートは「ランダム・ウォーク」の典型だ。これは為替レートが現在の値からまさにランダムに上下動することを意味する。その正確な予測は困難である。これは堅固な事実である。
個人的には、ニュース解説で、もとになる経済記事が「日米の金利差で、米国の金利が日本よりも高いのでドルが買われ、円が売られて、その結果、円安ドル高になる」と書いてあるのを、金利差ではなく「日米の金融政策のスタンスの違い」と言い直している。
この日米の金融政策のスタンスの違いは、まだ金利差や経常収支に注目する手法よりは使える。例えば、有名なものとしてはソロスチャートがある。これは世界的に著名な投資家だったジョージ・ソロス氏の名前をとっている、日米のマネタリーベースの比率と現実の為替レートの推移を相関してみるものだ。
マネタリーベースは日米の中央銀行が実際にコントロールしている貨幣の量だ。この政策的に操作している貨幣の量の動向はまさに「金融政策のスタンス」として理解できる。以下の図は、日米マネタリーベース比率と為替レートの推移をみたものだ。
日米マネタリーベース比率が増加すれば(≒米国を一定とすれば日本の貨幣増加)、円安が加速し、他方で比率が減少すれば(≒米国を一定とすれば日本の貨幣減少)、円高が進行している。両者の相関係数は0.64で高いものだ。
ただしこのソロスチャートも無敵ではない。特に日米の中央銀行の政策スタンスが変更されたときには、ソロスチャートでは十分にカバーできない。何人かのエコノミストたちも同様の指摘をしている。今回のように連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めスタンスに転換した前後では、ソロスチャートは単純には使うことはできない。修正ソロスチャートが提起されているが、これからの研究のフロンティアである。
短期的な為替レートの予測が難しくても、為替レートに主眼を置いた金融政策の「百害あって一利なし」は明瞭にわかる。特に日本のバブル発生から長期停滞はその重要なエピソードだ。
1985年のプラザ合意直後から、日本は円高傾向が顕著になった。当時の米国は貿易赤字問題をドル安で解消できると信じていた。そのため各国に政治的圧力により協調的なドル安各国通貨高政策をとるように促した。
日本はその米国の力にもっとも従順に従い、金融政策を対ドルの為替レートに割り当ててしまった。要するに当時の「悪い円安」はアメリカの影で実行された。その結果は、日本経済、要するに国民の生活を顧みない金融政策となって現れる。80年代後半はバブル経済が引き起こされ、また90年代はバブル崩壊と長期停滞の始まりである。この為替レートを政策目的にした日本銀行の政策を「円高シンドローム」と名付けられている(『ドルと円』ロナルド・マッキノン 、大野健一)。
米国の貿易赤字の対象国が、日本から中国に移行した21世紀になってからもこの円高シンドロームは続いた。下図をみれば明らかに、購買力平価(長期的な為替レート水準=日米の物価水準の比率)を天井にして、実際の為替レートがいかにも巧妙にコントロールされているかのようだ。日銀は決して認めなかったが、ドル円レートが日銀の政策目標にどかんと居座っていたことがわかる(詳細は『平成大停滞と昭和恐慌』安達誠司、田中秀臣)。
90年代以降から2012年までの円高シンドロームは、日本の長期停滞の時期である。デフレは深化し、雇用は悪化、日本の現実と潜在的な成長率は大きく奪われた。いわゆる「失われた20年(プラスアルファ)」といわれる状況は、円高シンドロームと完全に重なる。その主因は、日本銀行が為替レートを政策目的に入れていたからだ。
アベノミクス以降は、この円高シンドロームは終わった。雇用や成長率がそれ以前よりも大きく改善したのは自明だ。いまの日本のマスコミや一部の識者たちは、「悪い円安」を主張することで、また日本銀行に国内経済を無視した、為替レートありきの政策に戻せ、といっているに等しい。
先のフィナンシャル・タイムズでも指摘されていて、また高橋教授と私の対談でも、岸田政権が日銀に金融引き締め=円安退治を促すリスクに特に注目した。
特に参院選前から来年の日銀の正副総裁人事が大きなポイントになる。ここで政治が間違え、日銀が悪しき政策転換をすれば、日本はまた長期停滞に陥るだろう。 

 

●金利上限修正は「利上げ」 日銀理事、経済影響懸念 5/10
日銀の内田真一理事は10日の参院財政金融委員会で、長期金利の上限を現在の「0.25%程度」から引き上げることについて「(長期金利が)今は上限に張り付いているので、事実上利上げするということになる。日本経済にとって好ましくない」との認識を示した。金融市場では円安の是正を目的に日銀が方針を修正するとの観測がくすぶっている。立憲民主党の熊谷裕人氏への答弁。
米長期金利が上がり、日本の長期金利にも上昇圧力がかかっているが、日銀が国債を無制限に購入して上限内に抑えているため、日米の金利差が拡大して円安ドル高が進んでいる。
●午後3時のドルは130円前半、底堅い 米長期金利に連動 5/10
午後3時のドル/円は、前日のニューヨーク市場終盤(130.25/28円)に比べてドル高/円安の130.34/36円で推移している。日経平均の大幅下落や米長期金利の低下を受け、午前中に一時、129.80円まで下落した。ただ、その後米長期金利が再び3%台に乗せるとドル買い/円売り地合いとなり、130円前半で底堅い動きとなった。
時間外取引で米10年債利回りは足元、3.05%台前半。ドル/円はここのところ、米金利の動きに連動する展開が続いている。ただ、米国の利上げについては織り込みが進んでいるため、「米金利の上昇余地はそこまで大きくないのではないか」(SMBC信託銀行のマーケットアナリスト・合澤史登氏)との声も聞かれる。
米金利の上昇スピードが鈍化すれば、ドル/円も緩やかな上昇にとどまるという。
市場からは、不安定な状況が続く株式市場の動きを注視する意見も聞かれた。T&Dアセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト兼ファンドマネジャー、浪岡宏氏は、株価が下落する局面では、安全通貨としてのドル買いとリスク回避の円買いが入りやすくなり、「これまでのようにドル/円が一本調子で上がっていく可能性は低いのではないか」と話した。
日本の当局者による円安けん制発言が相次いだものの、市場の反応は薄かった。 鈴木俊一財務相は10日の閣議後会見で、外為市場でドル/円相場が20年ぶりの円安水準となっていることに関し、市場動向や日本経済への影響を緊張感を持って注視する考えを示した。一方、日銀の内田真一理事は参院・財政金融委員会で為替相場の短期間の変動は先行きの不確実性を高め、望ましくないと述べた。
SMBC信託銀行の合澤氏は、「これまでの発言と同じような内容が繰り返され、マーケットも慣れてしまった面はあるのではないか」と指摘する。また、先月の日米財務相会合を経て、為替介入の実現可能性が低いことが確認されたとして、政府関係者の発言に対する市場の反応が鈍くなっているという。
●米ドル円130円近辺でもみ合い…「怒涛の円安相場」終焉か 5/10
3月以降、米ドル/円はほぼ一方向に米ドル高・円安が続いていましたが、先週は130円前後の水準で一進一退の展開となりました。今回、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が、さまざまなデータを紐解き、「怒涛の円安」一服の可能性について考察します。
「5/10〜5/16のFX投資戦略」のポイント
・先週は米ドル高値圏で一進一退。短期的な「行き過ぎ」懸念が強まるなかで、「怒涛の円安」にも息切れの兆しが出てきた。
・ただ、大きく米ドル安・円高に戻すイメージは描きにくい。米ドル高・円安リスクは、CPI発表等を受けた米金利の短期的な「上がり過ぎ」修正が最大の焦点か。
米ドル安・円高リスクは米金利低下次第か
先週の米ドル/円は、130円前後といったこの間の米ドル高値圏で一進一退の展開となりました(図表1参照)。破竹の勢いで展開してきた「止まらない円安」、「怒涛の円安」も、さすがに息切れの兆しも出てきたということなのでしょうか。
この間ほんの2ヵ月程度で、15円以上も一気に米ドル高・円安が進んだことで、短期的な「行き過ぎ」の可能性を示すシグナルが増えていることは事実です。たとえば、米ドル/円の90日MA(移動平均線)かい離率は一時プラス10%以上に拡大しました(図表2参照)。また、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円売り超しは10万枚以上に拡大しました。
これらは、米ドルの短期的な「上がり過ぎ」、円の「売られ過ぎ」といった懸念が拡大している可能性を示しています。こういったことが、「怒涛の円安」足踏みの要因になっている可能性はあるでしょう。
では、「足踏み」にとどまらず、大きく米ドル安・円高に戻すかといえば、まだそういったイメージは描きにくいというのが正直な感想です。
たとえば、米ドル/円にはかつては米国株と一定程度順相関の関係があり、その関係が続いていたなら、先週にかけて米国株が比較的大きく下落したなかでは、米ドル安・円高に大きく戻してもおかしくなかったわけですが、そのような動きはほとんど見られませんでした。
「怒涛の円安」をもたらしたそもそもの要因
米国株との順相関の関係、とりわけ「株安(リスクオフ)の円高」といった関係が今年に入り大きく崩れたことは、その後の「怒涛の円安」をもたらした大きな要因だった可能性があるし、米ドル安・円高に大きく戻すイメージが描きにくくなった理由のひとつです。
株安でも円高にならなくなったなかでは、米ドル安・円高をもたらす要因はほとんど米金利低下のみといった状況になっています。その米金利、たとえば米10年債利回りの90日MA(移動平均線)かい離率は最近にかけてプラス40%以上に拡大、経験的には短期的な「上がり過ぎ」懸念が強まっています。
先週、注目されたFOMC(米連邦公開市場委員会)を受けて、米金利が大きく低下すると、それに連れる形で米ドル/円も128円台後半まで反落する場面がありました。これはまさに、FOMCといった注目イベントの通過を受けて、米金利の短期的な「上がり過ぎ」修正が本格化した結果と考えられます。
今週も、水曜日にCPI(消費者物価指数)、木曜日にPPI(生産者物価指数)の発表が予定されていますが、いずれも物価上昇率は前回を下回ると予想されているため、それを受けて米金利の短期的な「上がり過ぎ」修正がさらに広がるか、それが米ドル安・円高リスクにおける最大の焦点ではないでしょうか。
先週下落が目立った「米国株」について
最後に、米ドル安・円高への影響が低下したとはいうものの、先週にかけて急落が相次いだ米国株について少し確認したいと思います。
米国株のなかでも、相対的に下落が目立っているのはハイテク、グロース銘柄の構成割合の大きいナスダック指数です。ナスダック総合指数の高値からの下落率はすでに25%程度まで拡大してきました。
こういったなかで、ナスダック総合指数の90日MAかい離率はマイナス10%以上に拡大してきました(図表7参照)。その意味では、短期的な「下がり過ぎ」懸念が拡大しているため、そろそろ下落がひと息つく可能性もなくはないのかもしれません。
ただ、別の指標で見ると、株安の大きな流れが終わったかはまだまだ微妙ではないでしょうか。
米国グロース株の「記録的な割高」が是正
ナスダック総合指数/NYダウの相対株価は、ITバブルと呼ばれた2000年以来となる0.45倍から、先週はついに0.37倍を割れるところまで低下してきました。
これは、この間の株安の主因が、NYダウに対するナスダック指数のITバブル以来の記録的割高の是正だった可能性を示しているでしょう。構成銘柄との関係で、NYダウをバリュー株、ナスダック指数をグロース株とすれば、バリュー株に対するグロース株の記録的な割高の是正ということになります。
ただ同相対株価は、「コロナ・ショック」前の0.3倍程度はまだまだ大きく上回っています。かりに、同相対株価が0.3倍へ一段と低下するなら、NYダウが先週末の終値で横這いとして仮定した場合でも、ナスダック総合指数は1万ポイントの大台割れへ一段と下落するといった計算になります。
以上見てきたように、最近にかけての米国株の下落拡大の根底にあるのが、「コロナ・ショック」後の金融緩和などを受けた、ITバブル以来のグロース株の割高を是正する動きということなら、それはまだ終わりではない可能性があるでしょう。
また、そういったなかで、インフレ対策から先週FOMCが利上げ幅を0.5%に拡大した影響も注目されるところではないでしょうか。
●円相場、130円35〜36銭 10日午後5時現在 5/10
10日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=130円35〜36銭と、前日(131円20〜20銭)に比べ85銭の円高・ドル安となった。 
●東京マーケット・サマリー 5/10
外為市場
       ドル/円    ユーロ/ドル  ユーロ/円
午後5時現在  130.35/37   1.0555/59   137.59/63
NY午後5時   130.25/28   1.0555/59   137.58/62

午後5時のドル/円は、前日ニューヨーク市場午後5時時点よりややドル高/円安の130円前半。日経平均の大幅下落や米長期金利の低下を受け、午前中に一時129.80円まで下落した。ただ、その後米長期金利が再び3%台に乗せるとドル買い/円売り地合いとなり、130円前半で底堅い動きとなった。
株式市場
       終値   前日比   寄り付き  安値/高値
日経平均   26167.10 -152.24  26149.06  25,773.83─26,246.63
TOPIX  1862.38   -16.01   1861.43   1,840.00─1,867.32

東証出来高(万株)  137245  東証売買代金(億円)  32345.97
東京株式市場で日経平均は152円24銭安の2万6167円10銭と、続落した。前日の米株急落の流れを受け朝方は心理的節目の2万6000円台を割り込む場面がみられたが、その後下げ渋った。時間外取引で米株先物がしっかりと推移しており、米国株の下げ止まりや反発への期待が支えとなった。
プライム市場の騰落数は、値上がり704銘柄(38%)に対し、値下がりが1062銘柄(57%)、変わらずが71銘柄(3%)だった。
●ドル円、米金利上昇と有事のドル買いで年初来高値更新‼ 5/10
本日アジア時間は昨日海外時間の株安の影響が尾を引き、午前10時過ぎにドル/円は129.794円まで下落。同レベルからは、押し目を拾う投資家も多いようで一時130.551円レベルまで戻す場面もあったが、上値を試す勢いはなく欧州序盤には130.100円付近へ押し戻されている。
現在値より上には、抵抗帯となりそうな厚い売りオーダーはないが、130.500-600円には少しまとまった注文が観測される。一方、下方向もオーダーは少なく、129.800円と本日安値レベルに厚めの買い注文が観測される以外は目立った注文がみられない。
●円、130円近辺 ロンドン外為 5/10
10日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米長期金利の上昇一服を背景に円買い・ドル売りが進み、1ドル=130円近辺に上昇した。正午現在は130円00〜10銭と、前日午後4時に比べ50銭の円高・ドル安。
●NY円、130円前半 5/10
10日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比11銭円安ドル高の1ドル=130円40〜50銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0524〜34ドル、137円26〜36銭。
ユーロに対してドルが買われ、その影響で対円でもドルが買われた。ただ、11日に米消費者物価指数の公表を控えて様子見ムードも強く、値動きは限られた。 
 
 

 

●午後3時のドルは130円前半で値幅26銭、米国のCPIと金利動向見極め 5/11
午後3時のドル/円は、前日のニューヨーク市場終盤(130.43/46円)に比べて小幅ドル安/円高の130.35/37円で推移している。米国時間に公表される4月の米消費者物価指数(CPI)を見極めたいとの思惑から、積極的な取引は手控えられ、1日を通してドル/円は方向感のない展開が継続。値幅は26銭にとどまった。
米長期金利が横ばいで推移したことにつられて動意が乏しいかったとの指摘も聞かれた。
市場が注目する米CPIは、インフレのピークアウトを確認できるかが焦点となりそうだ。外為どっとコム総研の上席研究員・神田卓也氏は、「マーケットの一部では、米国のインフレが既にピークアウトしているのではないかという見方もあるようだ」と指摘する。また、「米10年債利回りも3%を超えたあたりから伸びが鈍化してきており、期待通りインフレが落ち着いているのか見極めたい」とし、指標の結果と、それに伴う米金利の動向に注目が集まっているという。
ロイターの事前調査によると、米CPI(季節調整済み)は前年同月比8.1%上昇、前月比0.2%の上昇と、前月(8.5%、1.2%)から伸びが鈍化する見込み。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.4%上昇と、前月の0.3%を上回ると予想されている。
一方、CPIの結果が市場予想を大きく下回った場合は、ドル高/円安の巻き戻しが入りやすいとの意見も聞かれた。トレイダーズ証券の市場部長・井口喜雄氏は、「仮に米CPIが市場予想を大きく下振れたら、これまでFRBのタカ派化期待を背景にドルが買われていた分、大きめの調整が入りやすい」と予想。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後につけた128円後半までドル/円が下落する可能性もあるとしている。
ユーロ/ドルは1.0544ドル付近、ユーロ/円は137.46円付近で、いずれもじり高となっている。
●NY外為 円、130円台後半 5/11
11日午前のニューヨーク外国為替市場では、4月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回ったことを受けてドルが買われ、円相場は1ドル=130円台後半に下落している。午前9時現在は130円70〜80銭と、前日午後5時(130円40〜50銭)比30銭の円安・ドル高。
米労働省が11日発表した4月のCPIは、季節調整済みで前月比0.3%上昇と、市場予想(ロイター通信調べ)の0.2%上昇を上回ったほか、前年比でも事前予想を上回った。これを受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後、積極的な利上げを継続していくとの見方が改めて広がり、米長期金利が上昇。日米金利差の観点から円売り・ドル買いが進んだ。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0520〜0530ドル(前日午後5時は1.0524〜0534ドル)、対円では同137円50〜60銭(同137円26〜36銭)と、24銭の円安・ユーロ高。
●トヨタ、最高益2兆8500億円 5/11
トヨタ自動車が11日発表した令和3年3月期連結決算は、最終利益が前期比26・9%増の2兆8501億円で、過去最高となった。売上高は15・3%増の31兆3795億円で、これも過去最高を記録した。新型コロナウイルス禍で落ち込んだ自動車販売が北米やアジアで回復傾向を示し、円安ドル高も追い風になった。
また、5年3月期の連結最終利益を前期比20・7%減の2兆2600億円と予想した。原材料価格の高騰などが響くとみている。
グループのダイハツ工業と日野自動車を含む23年3月期の販売台数は前期比31万台増の1070万台、トヨタ単独の生産台数は113万台増の970万台を計画した。いずれも過去最高となる水準だ。 

 

●NY円、130円近辺 5/12 
11日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比48銭円高ドル安の1ドル=129円92銭〜130円02銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0508〜18ドル、136円62〜72銭。朝方には一時1ドル=130円台後半まで急激に円安ドル高が進んだ。その後は米長期金利が低下したのを手がかりに、日米金利差の縮小を意識したドル売り円買いが優勢となった。  
●午後3時のドルは129円半ばで弱含み、イベント通過後のポジション調整で 5/12
午後3時のドル/円は、前日のニューヨーク市場終盤(129.96/99円)に比べてドル安/円高の129.59/61円で推移している。時間外取引の米長期金利の低下や日経平均株価の下落などリスク回避の流れが強まり、円買いが強まった。米消費者物価指数(CPI)通過後のポジション調整もみられ、ドル売り/円買いが優勢となった。
市場関係者によると「日米金融政策の方向性の違いからドル/円のトレンドは変わらないものの、短期的にドル高/円安が進んだことから、ポジション調整の時期に差し掛かったようだ」(アナリスト)と指摘する声が聞かれる。
ドル/円が米連邦公開市場委員会(FOMC)後に付けた128円半ばで下げ止まるのか、株安や金利低下が続けばさらに調整が深くなるのか、動向に注目が集まっている。
米国の4月消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.3%上昇となり、1981年12月以来の高水準だった3月の8.5%からは伸びは縮小した。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は、前年同月比6.2%上昇。82年8月以来の大幅な伸びとなった前月(6.5%上昇)から減速。前月比では0.6%上昇だった。
クレディ・アグリコル銀行の外国為替部長、斎藤裕司氏は「米CPIは強い印象。インフレが落ち着いてきた感じではない」とし、米連邦準備理事会(FRB)による積極的な金融引き締めも意識されやすく、「再び米金利は上昇基調となり、日米の金融政策の方向性の違いからドル高/円安のトレンドは変わらない」との見方を示した。
インフレ動向を見極める上で今晩発表される4月の米卸売物価指数(PPI)の結果に関心が寄せられている。
ポンド/円は158/13円、豪ドル/円は89.14/18円と軟調。世界的な景気減速懸念が広がる中、「クロス円を中心に円売りポジションを修正する市場参加者がでてきているとみられ、ドル/円にも円高圧力がかかりやすい」(前出のアナリスト)という。
●ロンドン外為 円、128円台後半 5/12
12日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、世界経済の減速懸念を背景に安全資産として円を買う動きが強まり、1ドル=128円台後半に上昇した。正午現在は128円65〜75銭と、前日午後4時(130円20〜30銭)比1円55銭の大幅な円高・ドル安。
対ユーロは、1ユーロ=134円30〜40銭(前日午後4時は137円35〜45銭)で、3円05銭の円高・ユーロ安。
このところ売られていた円相場は大幅な上昇となった。前日に発表された4月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回ったことで、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げペース加速の思惑が強まった。中国の新型コロナウイルス対策の都市封鎖(ロックダウン)の長期化も重なり、世界経済の減速懸念が一段と強まった。
ユーロは下落。一時2017年1月以来、約5年4カ月ぶりのドル高・ユーロ安水準を付けた。前日に欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が講演で早ければ7月の利上げを示唆したが、ウクライナ情勢の悪化で欧州経済の先行き懸念は強まっている。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0430〜0440ドル(前日午後4時は1.0545〜0555ドル)。
ポンドも急落。対ドルで約2年ぶりの安値に沈んだ。3月の英GDPはマイナス成長に転落し、英経済の景気停滞懸念が強まった。1ポンド=1.2200〜2210ドル(同1.2335〜2345ドル)。
スイス・フランも連れ安。1ドル=0.9960〜9970フラン(同0.9905〜9915フラン)。
●東京市場の動き 5/12
12日の東京市場はドルが弱含み。レンジは決して広くなかったが、「寄り付き高・大引け安」の様相だった。
ドル/円は129.95円レベルで寄り付いたのち、一時的に130円台を回復するも上値は重い。また、流れとしては緩やかな右肩下がりで、夕方に掛けては129.20円前後までじり安推移をたどっていた。日経平均株価が大きく値を下げたほか、時間外取引のNYダウなども冴えず、調整と思しき円買いを支援していたようだ。16時現在ドル/円は日中安値圏の129.25円レベルで推移、欧米市場を迎えている。
一方、材料的に注視されていたものは、「米金融政策」と「ロシア情勢」について。
前者は、昨日欧米時間に発表された4月の米消費者物価指数は前年同月比プラス8.3%で、予想を上回る内容に。名実ともに、FRBの大幅利上げを後押しする要因となっていた。そうしたなか、アトランタ連銀総裁は「インフレ率が中立の領域にまで政策金利を引き上げていく」、ダドリー前NY連銀総裁「米金利は5%以上になる可能性も」といった発言が聞かれていた。またセントルイス連銀総裁からは「0.5%利上げの方針が現時点で良好」としつつも、「現時点で0.75%の利上げは必要ない」との追加コメントも聞かれ、後者が一部でクローズアップされていたようだ。
対して後者は、ウクライナにおける戦闘が長期化するとの見通しが様々伝えられるなか、ロイターは「ウクライナが東部で反撃し、ロシア軍は撤退余儀なくされる」と報道。また、米国防長官からは「プーチン氏はNATOとの戦争を望んでいない」とする発言も聞かれていた。予断を許さないものの、だいぶ風向きが変わってきた。一方、そうしたなかタス通信が「ウクライナ南部ヘルソンの親ロシア派当局者が年末までにロシアに編入するようプーチン大統領に要請する計画」と報じており、これをウクライナ大統領が非難。「利敵行為者」の親ロシア派が愚かな発言をしているなどと断じていた。
●ドル円終値の推移 (△はドル高・円安)
          レンジ            前日比
 05月12日 128円83〜85銭       (▼1.13)
 05月11日 129円96〜98銭       (▼0.38)
 05月10日 130円34〜37銭       (▼0.86)
 05月09日 131円20〜21銭       (△0.69) 
 05月06日 130円51〜53銭       (△0.41) 
 05月02日 130円10〜12銭       (▼0.49)
 04月28日 130円59〜60銭       (△2.61) 
 04月27日 127円98〜00銭       (△0.11) 
 04月26日 127円87〜89銭       (▼0.32)
 04月25日 128円19〜21銭       (△0.14) 
 04月22日 128円05〜08銭       (△0.03) 
 04月21日 128円02〜03銭       (▼0.63)
 04月20日 128円65〜67銭       (△0.59) 
 04月19日 128円06〜08銭       (△1.43) 
 04月18日 126円63〜65銭       (△0.18) 
 04月15日 126円45〜48銭       (△1.12) 
 04月14日 125円33〜34銭       (▼0.72)
 04月13日 126円05〜06銭       (△0.53) 
 04月12日 125円52〜53銭       (△0.28) 
 04月11日 125円24〜26銭       (△1.20) 
 04月08日 124円04〜05銭       (△0.29) 
 04月07日 123円75〜77銭       (▼0.13)
 04月06日 123円88〜89銭       (△0.99) 
 04月05日 122円89〜91銭       (△0.24) 
 04月04日 122円65〜66銭       (△0.02) 
 04月01日 122円63〜64銭       (△1.00)
 03月31日 121円63〜65銭       (▼0.23)
 03月30日 121円86〜88銭       (▼1.71)
 03月29日 123円57〜59銭       (▼0.35)
 03月28日 123円92〜93銭       (△2.19)
 03月25日 121円73〜75銭       (△0.11)
 03月24日 121円62〜64銭       (△0.56)
 03月23日 121円06〜07銭       (△0.59)
 03月22日 120円47〜48銭       (△1.62)
 03月18日 118円85〜87銭       (△0.19)
 03月17日 118円66〜68銭       (△0.29)
 03月16日 118円37〜38銭       (△0.40)
 03月15日 117円97〜99銭       (△0.25)
 03月14日 117円72〜73銭       (△1.01)
 03月11日 116円71〜73銭       (△0.79)
 03月10日 115円92〜94銭       (△0.04)
 03月09日 115円88〜89銭       (△0.44)
 03月08日 115円44〜46銭       (△0.43)
 03月07日 115円01〜03銭       (▼0.44)
 03月04日 115円45〜46銭       (▼0.27)
 03月03日 115円72〜74銭       (△0.57)
 03月02日 115円15〜16銭       (△0.12)
 03月01日 115円03〜04銭       (▼0.46)
 02月28日 115円49〜51銭       (△0.22)
 02月25日 115円27〜29銭       (△0.66)
 02月24日 114円61〜62銭       (▼0.12)
 02月22日 114円73〜75銭       (▼0.19)
●円安の方が「日本経済全体のGDP押し上げ効果がある」理由 5/12
円安の経済効果を考えてみよう。
日銀の黒田総裁は、円安ドル高について「現状ではプラス面の方が大きい」と発言したのに対し、日本商工会議所の三村明夫会頭は「デメリットの方が大きい」と述べている。
為替動向は輸出入や海外投資を行う業者にとって死活問題だ。円安は輸出企業にとってはメリットだが輸入企業にとってはデメリットだ。また、これから海外進出を考えている企業にとってはデメリットであるが、すでに海外進出して投資回収している企業にとってはメリットだ。
まず中小企業への為替の影響を考えてみよう。中小企業は大企業に比して輸出が少なく、輸入が多く、円安によるデメリットを受けやすいのだ。三村会頭の意見は、中小企業を代弁している。
一方、黒田総裁の意見は経済全体のものだ。輸出企業は大企業であるとともに、世界市場で期していけるエクセレント企業だ。一方、輸入企業は平均的な企業だ。この場合、エクセレント企業に恩恵のある円安の方が日本経済全体のGDPを押し上げる効果がある。
これは、日本に限らず世界のどこの国でも見られる普遍的な現象だ。輸出の多寡により効果は異なるが、いずれも自国通貨安はGDPへプラス効果がある。例えば、国際機関が現在行っているマクロ経済モデルでも確認されている。
こうした指摘はこれまでも言われてきた。自国通貨安はしばしば近隣窮乏化策とも言われるが、それは逆にいえば自国経済はよくなることを意味している。この意味で、「円高は国益」は誤りだ。
主として大企業で構成されている経団連の十倉雅和会長は、最近の円安について大騒ぎすることではないという見解を示している。
ただし、大企業の中でも金融業界の意見は特殊だ。金融業界は、今の低金利環境では利鞘が稼げない。このため、金融業界の利益のために金利高を目論み、今の円安に否定的なことをいい、円高誘導への金利高に持っていこうとする。
それでも、このところの円安傾向を受けて、「円高は国益」「製造業が海外に拠点を移しており円安メリットは小さい」といった議論が出ている。民主党政権時代の円高で日本経済はどうなったのか。
「製造業が海外に拠点を移しており円安メリットは小さい」との意見は、輸出のメリット減少をいっているだけだ。海外に拠点を移しているので、その投資収益があるはずで、この円価換算収益は円安メリットを受けている。
海外から、政治的な理由で自国通貨安を是正しろとの要求があるのは、筆者としても想定内であるが、国内からそうした声があるとは、「国益」に反するので驚きだ。
ちなみに、ウクライナ侵攻を受けた最近のIMF(国際通貨基金)の世界経済見通しで、なぜ2022年の日本だけが経済成長するのかと言えば、日本だけが金融緩和していて、その効果が世界経済のマイナスを補っているからだ。
●令和3年度経常黒字、7年ぶり低水準 原油高と円安響く 5/12
財務省が12日発表した令和3年度の国際収支速報によると、海外とのモノやサービス、投資の取引状況を示す経常収支の黒字額は前年度比22・3%減の12兆6442億円だった。減少幅は東日本大震災後に燃油輸入の増加が続いた平成25年度(43・7%)以来の大きさで、黒字額は7年ぶりの低水準。ウクライナ危機などによる原油価格の高騰と円安進行が輸入物価を上昇させ、貿易収支が大幅な赤字になったことが響いた。
経常収支の減少は4年連続。このうち、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆6507億円の赤字だった。赤字は7年ぶりとなり、前年度から収支が5兆4277億円悪化した。輸出は半導体関連が堅調で85兆4957億円、輸入は原油高の影響で87兆1464億円といずれも比較可能な8年度以降で最高を記録したものの、輸入の伸びが輸出を上回った形だ。
海外への投資で得た利子や配当金の動向を示す第1次所得収支は21兆5883億円の黒字で、黒字幅が3兆円近く拡大した。このところの円安ドル高が海外からの配当金を押し上げた。
経常黒字は日本が海外で稼ぐ力を表し、円や日本国債が信用される源泉でもある。ただ、24兆円を超え過去最高だった19年度に比べ令和3年度はほぼ半減し、ロシアのウクライナ侵攻でも危機時の安全資産として円需要が高まる「有事の円買い」は起きなかった。侵攻の長期化で原油をはじめとした資源高は長引くとみられ、4年暦年では赤字になる可能性も指摘される。
一方、貿易赤字は企業が海外に支払う外貨を得るため円を売ることで円安にもつながり、資源高による輸入物価の上昇を助長する。火力発電用の燃油輸入を増加させる原発の停止を解消するなど赤字の改善に向けた取り組みが求められる。
●「悪い円安」論の虚像、構造的円安の行方を占う 5/12
「悪い円安」論が日本国内で横行している。円安が良いのか悪いのか、円高の方が良いのか悪いのかなどといった議論は不要で、もはや「円安は悪」というのは真実たる前提であって、その上でそれがいかに悪いのか、それをどのように是正すべきかを問うといった論調が支配的になっている感さえある。
筆者自身は、この局面は日銀の緩和姿勢や内外金利差拡大などを理由にドル高・円安を見込んできた。足元でも向こう数カ月で2002年に記録した135円前後へのドル/円上昇はありうると考えている。
ただ、1)コロナ危機前に比べると、4割以上も増えている米国のマネーサプライ、2)それに伴う米国のインフレが先進国の中でも突出している、3)貿易赤字の急増で米国の国際収支が悪化している、4)欧州など米国以外の国・地域で金融正常化を模索する動きが強まっている──などを考慮すると、中長期的には米ドルの行方を楽観しておらず、ドル/円も反落リスクがそれなりに大きいと見ている。
このあたりでドル高・円安が一服してくれば、中長期的な筆者の相場観にはフェイバーだ。だが、足元で日本中に広がる「悪い円安」論は、相場観として円安を見込むのか、円高を見込むのかを問わず、根源的なところに大きな間違いがあると思う。ましてやこの円安を政策的に止めるべきだという主張には、強い違和感を覚える。
スピード感か水準か
まず、円安を悪いと断じるにしても、円安のスピード感の問題とその絶対水準をしゅん別した議論が行われていない印象が強い。円安バイアスが強い日銀の黒田東彦総裁も最近の円安のスピード感には警戒感をにじませている。
同じように、筆者もこのペースの円安持続が良いことだとは思っていない。むしろ「速過ぎる円安」から円高への逆転が生じ、その円高が日本経済、特に企業業績や賃金、物価にマイナスの影響を与えうることを警戒すべきだと考えている。
一方、円安の絶対水準に関しては、この後に実質為替相場に言及するところで詳しく論じるが、仮にドル高・円安が現在の130円前後で止まり、向こう3年間ほどこの水準で推移した場合と、昨年初めの100円前後の円高水準で向こう3年ほど推移した場合の日本経済への影響を想像してみれば、円安の絶対水準に関する議論への答えは自ずと見えてこよう。
今は、円安のスピードが速いため「悪い円安」論が注目され、妥当にも見えるが、例えば、ドル/円が100円を割り込むような下落となったような場合に、今の「悪い円安」論者たちは何と言うのだろうか。
実質円相場は割安か
市場の一部では、1970年代以来の水準に実質実効円相場が下落していることをもって、円は割安になっている、もっと言えば、日本人の価値が不当に安く評価されているとの意見もある。
だが、実質為替相場のメカニズムを正しく理解していない議論が多い。まず、指摘しておきたいのは、国際通貨基金(IMF)など国際機関や通貨当局は過去との単純な比較で、実質為替相場の割高感や割安感を評価していないという点だ。
ちょうど10年前の2012年からIMFが年1回発行している外部セクターリポートがあるが、そこでは構造要因などを加味した経常収支の状況と、それと整合的な実質実効為替相場の関係で通貨のバリュエーションを評価している。現在までのところ、約50年ぶりの水準に低下している実質実効円相場が著しい過小評価との判断は受けていない。
重要なポイントは、実質為替相場も為替レートであるため、その評価に当たっては、日本国内の事情のみならず、貿易相手国のファンダメンタルズ環境、それを受けたそれらの国々の実質為替相場などが影響する点だ。
平たく言えば、仮に日本のファンダメンタルズが実質実効円相場でピークをつけた1990年代半ば以降、変わっていなかったとしても、中国や韓国などアジア諸国の競争力が高まり、それらの国々の実質為替相場が上昇するなら、それだけで実質実効円相場は下落すべきということになる。
実質実効円相場を用いた「悪い円安」論のほとんどが、こうした海外事情のことを考慮しないまま主張されている。恐らくIMFが10年前から外部セクターリポートを発行するようになり、為替評価方法を大きく転換したことさえも知られていないのだろう。
自然為替レートという概念
筆者が提唱したいのは「自然為替レート」という概念だ。金利の世界には自然利子率の概念が確立されており、実質金利が自然利子率を下回ってくると、景気やインフレの刺激効果が出てくる。ただ、デフレ環境下でゼロ金利制約に陥った日本経済は自らの政策的努力で効果的に実質金利を引き下げることが難しい。従って景気やインフレの刺激のためにマネタリー・コンディションを緩和させるに当たっては、実質円相場の下落に依存せざるをえなくなる。
この間、中国や韓国を筆頭にアジア諸国が世界の輸出基地として台頭し、それらの国々の実質為替相場は基本的に上昇しやすく、日本の実質為替相場は下落しやすい状況となった。ただ、アジア新興国の実力上昇が著しいため、実質円相場が長期的に下落しても、あるべき均衡点になかなか達せずにいる。
こうした中で、日本経済とインフレは浮揚感を欠いてきたのだと筆者は整理している。逆に言うなら、実質円相場が既に十分に安くなっているなら、今ごろ日本は明確にデフレ体質、ディスインフレ体質を克服していなければおかしい。実際にそうなっていないことは、実質円安は実体経済との対比で言えばまだ、不十分なのではないかということを物語る。
長期的に見れば、このことは実質実効円相場が日本の交易条件のすう勢的な悪化とともに下落してきたことに端的に表れている。アジア諸国との競合で日本の輸出品目である工業生産価格が長期的に低迷し、資源需要の増加を背景とする原油・資源価格の上昇が輸入物価を押し上げてきた。足元の円安(特に実質円相場の下落)も昨年以降の原油・資源高による交易条件の悪化を伴っている。
悪い円安か、良い円安か
この円安も手伝って今、「安いニッポン」が社会問題となっているが、その底流にある賃金低迷の決定打となったのは1985年以降、その当時の日米貿易戦争を背景に1995年まで続いた円高だった。その頃、日本は株価も不動産も世界の中で圧倒的に高かったが、人件費も米国や欧州諸国を上回っていた。円高進行を受けて95年にはドル建て賃金が4万4000ドルとなり、米国(2万8000ドル)の1.5倍以上になった(IMFの賃金指数)。
この円高の記憶は、近年まで企業経営者をはじめとした日本人の脳裏には焼きついた。その円高の記憶を前提に製造業を中心に企業戦略が組み直され、これが企業の海外進出を伴う国内での執ような賃金抑制につながった。
その結果、それをピークに日本の賃金は伸び悩み始め、特に1997─98年の金融危機の後は現金給与総額の前年比の伸びはマイナス圏で推移するようになった。消費者物価の伸びも落ち込み、現在まで続くデフレ経済の出発点となった。
実際には95年以降、そこまで激しいドル安・円高は進行しなかったが、すう勢的な賃金などを抑制するコストカット構造は継続。円建てで見ても、ドル建てで見ても、日本の賃金は低迷を続けることになった。
今はにわかに「悪い円安」論者が急増中だが、当時は95年までの円高が日本人(特に企業経営者)にとって「最悪の記憶」として残り、そのヒステリシス効果(履歴効果)が賃金抑制を含めたデフレ経済化を促す重要な1つの要因となったのだ。
足元の円安加速は「高い日本」を国際的に見て(ドル建てで見て)加速させた95年当時の円高加速を想起させる。もちろん今回はサイドが逆で「安い日本」が問題になっているが、この円安は日本経済がデフレ構造、ディスインフレ構造から抜け出していくに当たって、必要なプロセスの最終段階なのではないかと捉えている。
このまま円安が加速すると、筆者の中長期的な相場観にはアンフェイバーだが、ファンダメンタルズ的にはこれは「悪い円安」なのではなく、「良い円安」なのではないか。 

 

●ドル・円上昇に潮目の変化か、135円遠のいたとの見方も 5/13
右肩上がりで上昇してきたドル・円相場の雲行きが怪しくなってきた。米国の積極的な金融引き締めや中国の都市封鎖などによる世界景気の減速懸念を背景に、株式下落や米長期金利の低下が、円の買い戻しを促している。一本調子のドル高・円安は転換点を迎えたとの見方も出ている。
オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは、米利上げ開始後も持ちこたえていた米ダウ平均が年初来安値を更新したことで「マーケットの潮目が変わった」とみる。高インフレと低成長によるリスク資産の調整がついに始まり、「リスクオフの流れにマーケットが注力し始めた」中で、円が強くなってきたと説明する。  
3月以降、上昇基調にあったドル・円は、5月9日に付けた1ドル=131円35銭をピークに128円前後まで値を切り下げている。引き締め加速に動く米国と緩和を続ける日本の金融政策格差を背景に4月下旬に130円の節目を突破し、2002年以来となる135円を目指す機運が高まったが、米国株が調整色を強め、米長期金利が下げに転じると、その勢いは後退した。
「135円は遠ざかった感じがある」。バークレイズ証券の門田真一郎チーフ為替ストラテジストはそう話し、「これまでインフレが上がれば米金融当局がどんどん利上げし、ドル・円も上がるという相場だったが、利上げを織り込めたのも景気が良いからで、中国懸念もある中で一本調子で米利上げを織り込む相場ではなくなってきた可能性がある」と指摘。12日に122円をターゲットにドル・円スポット(129円80銭)の売りを推奨した。 
米10年債利回りは週初に3年半ぶりとなる3.2%を付けた後、2.8%台に低下している。しんきんアセットマネジメント投信の加藤純チーフマーケットアナリストは、大幅利上げによる景気悪化やウクライナ紛争、中国ロックダウンなど悪材料が多い中、「質への逃避」の意味でも米長期債は売りづらいと指摘する。
同氏は、利回り水準3%は「いいところ」と考えるとドル・円が131円35銭を超えて上昇するのは難しく、当面は128〜133円程度のレンジで推移し、その後「上に行くか、いったん125円に行くか」決まるとみている。
ドル高・円安が進むとの見方も
一方、円の反発は一時的で、ドル・円はさらに上昇するとの見方も根強い。みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジストは、コロナ後の繰り越し需要により年内は目立った米景気悪化がなく、来年前半にかけて米政策金利は3%程度まで引き上げられると予想。ドル・円も3月末にかけて136円に上昇し、景気加速と高インフレで大幅利上げが続くかたちになれば「140円がかなり近くなる」とみる。
JPモルガン・チェース銀行の佐々木融市場調査本部長は、リスク回避で多少、円の買い戻しが入っても、ドル・円は日本の貿易収支赤字化など構造的要因に支えられている部分が大きいと指摘。「実質的には50年ぶりの円安水準なのでどこまでいくかはもう分からない。年後半に農産物価格の大幅上昇や一段の原油高で貿易赤字が拡大すればスパイラル的な円安になる可能性もあるし、大きく調整する可能性もあり、かなりボラティリティーは高いだろう」と話す。
●「日銀vs海外勢」国債カラ売り危険な状態 ワタミのGW「3年ぶり回復傾向」 5/13
先月28日に円相場が1ドル=131円台に下落し、円安が加速している。日銀は新発10年債を0・25%の利回りで、無制限に買い取る「指し値オペ」の実施を発表した。当然、金利を引き上げる米国との差が広がり、今後も円安・ドル高が加速する。
この指し値オペに対して、4月27日の日本経済新聞朝刊に「日銀が上限とする『0・25%程度』を前に海外勢が国債売りを膨らませている」との記事があった。「2021年にオーストラリアで同様の売りを浴びせ、国債の利回り目標を撤廃させるのに成功した経験も外国人投資家を勢いづかせている」という。
今、どんどんカラ売りをして、国債が安くなれば買い戻す、対する日銀は買い支えし続けるしかないが、いずれ限界が来る。黒田東彦(はるひこ)日銀総裁の強引な政策が、海外のヘッジファンドの標的とされつつある。危険であり本来なら1面級の記事だ。
近著『インフレ不可避の世界 今すぐ大事な資産を守りなさい』(明日香出版社)を出したさわかみファンド創業者の澤上篤人さんは、国債や、上場投資信託(ETF)の買い入れなど、日銀の緩和政策について「経済的合理性の鉄槌(てっつい)が下される」と批判し、中央銀行の信頼失墜も「当然だ」と指摘する。「金融バブル」は2年程度で100%崩壊するという。
政府は6・5兆円の景気対策で物価上昇を抑えようとする一方、日銀は物価を上げる政策を継続する。政府に対し、日銀が違う政策を始めており、中央銀行の役目を果たしていない。
米連邦準備制度理事会(FRB)は5月3、4の両日の連邦市場公開委員会(FOMC)で政策金利を通常の2倍の0・5%引き上げることを支持する姿勢を示した。
元モルガン銀行東京支店長の藤巻健史さんは、ドル・円の動向を決める2大要因は「経常収支動向と日米金利差」だとし、朝日新聞などで今後1ドル=400円もあり得ると警告する。藤巻さんは、異次元の金融緩和で、国債を実質日銀が引き受ける「財政ファイナンス」を行った結果、金利が上昇した瞬間に「日銀が債務超過に陥る」と一番の問題点を指摘する。
金利を上げれば日銀が破綻する、金利を抑えれば円安が加速する、完全な袋小路である。円安・ドル高の影響下では、日銀の為替介入も難しい。保有する米国債をドルにして円を買う。米国債を日本が売ると、さらに金利差が広がるジレンマが生じる。
ワタミは1ドル=130円までの円安を織り込んで経営を行ってきたが当然、修正する。足元うれしいことに、ゴールデンウイークのワタミ外食各店は、3年ぶりの回復傾向となった。
一方、アルバイトなどの人手不足が深刻化している。円安も人手不足も、問題は「先送りせず」に迅速に手を打つ、それが経営だ。
私が自民党の財務金融部会で、日銀の出口戦略を話し合うべきだと強く提言をしたが、この国は「先送り」という決断をした。しかし、いよいよ「先送り」は限界に近づいている。 (ワタミ代表取締役会長兼社長・渡邉美樹)
●外為 1ドル129円08銭前後とドル高・円安で推移 5/13
13日の外国為替市場のドル円相場は午後1時時点で1ドル=129円08銭前後と、前日午後5時時点に比べ28銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=134円11銭前後と57銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●円、129円近辺 ロンドン外為 5/13
週末13日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、前日の急激な円高に一服感が広がり、1ドル=129円近辺に下落した。正午現在は128円90銭〜129円00銭と、前日午後4時比80銭の円安・ドル高。
●東京市場の動き 5/13
13日の東京市場は「行って来い」。一時ドル買いが進展し129円台を回復するも、続かなかった。
ドル/円は128.35円レベルで寄り付いたのち、しばらくは揉み合い。狭いレンジで揉み合いをたどるなか、上放れするとそのまま129円台へ。一気に1円近く上昇し、日中高値129.35円レベルを示現している。しかし勢いは続かず、じりじりと値を崩すと129円割れ。夕方には128.60円レベルまで値を崩すなど「行って来い」の様相に。16時現在では128.75-80円で推移、欧米市場を迎えていた。
なお、そうしたなか鈴木財務相から「為替の動静を緊張感もって注視」、黒田日銀総裁から「過度な為替変動は先行きの不確実性高める」といった発言が聞かれている。
一方、材料的に注視されていたものは、「北朝鮮情勢」と「ロシア情勢」について。
前者は、前日に突然「首都平壌でコロナ感染者を確認」と初めて発表し思惑を呼んだ北朝鮮だが、続報として「6人の死亡を確認、ひとりはステルスオミクロン株」などとも伝えられていた。ただWHOによると、北朝鮮から新型コロナ感染拡大に関する正式な報告はまだ受けていないとされ、詳細はわかっていないようだ。一方、それとは別に、米韓高官が電話会談を行い「北朝鮮のミサイル発射を非難」したほか、サキ米報道官からは改めて「バイデン大統領のアジア歴訪を控え、北朝鮮が核実験を準備している可能性がある」との指摘が聞かれていた。
対して後者は、フィンランドがNATO加盟を正式表明したことに、ロシアが猛反発。ペスコフ報道官は「間違いなくロシアへの脅威であり、NATO拡大は欧州と世界の安定につながらない」と強く非難している。また、タス通信が「ポーランド経由ドイツ行きの天然ガス輸送を停止」と伝えたほか、「ロシア軍は略奪した大量の小麦を密かに輸出」など、戦闘とは別の話題も幾つか取り沙汰され話題となっていた。 

 

●米国経済の減速懸念で円売り縮小 5/14
今週のドル・円は反落。米国金利の先高観を背景に週初に131円35銭までドル高円安が進行し、ドルは年初来高値を更新したが、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策引き締めによって米国経済が急激に減速するとの見方や世界経済の成長鈍化などを巡る懸念が強まり、5月12日の欧米市場で127円52銭までドル安円高に振れる場面があった。米長期金利の低下や米国株式の下落もドル売り材料となった。しかし、13日の東京市場で国内の輸入企業によるドル需要が強まったことや、米国の主要株価指数先物が時間外取引で上昇し、日経平均も高く推移したことから、リスク回避の円買いは縮小。ドル・円は129円台前半まで戻した。
13日のニューヨーク外為市場でドル・円は、一時128円84銭まで下げたが、129円台半ば近辺まで反発した。この日発表された5月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値は、市場予想を下回ったことから、ドル売りが一時優勢となった。ただ、議会上院で再任が承認されたパウエルFRB議長は6月と7月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で50ベーシスポイントの利上げを支持していること、米国株式が持ち直したことから、リスク回避のドル売り・円買いは縮小し、ドル・円は129円26銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:127円52銭−131円35銭。
●NY円、反落 1ドル=129円15〜25銭 米長期金利の上昇で円売り 5/14
13日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3日ぶりに反落し、前日比90銭円安・ドル高の1ドル=129円15〜25銭で取引を終えた。米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大観測から円売り・ドル買いが優勢になった。米株高も低リスク通貨とされる円の売りにつながった。
米長期金利は一時、前日比0.09%高い(債券価格は安い)2.94%を付けた。週末を控えた持ち高調整の債券売りが優勢だった。前日まで長期金利の上昇一服感が出ていたが再び2.9%台に乗せ、円売り・ドル買いが入りやすかった。米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを進める一方、日銀は金融緩和を維持している。日米の金融政策の違いを背景とした円安・ドル高基調が続くとの見方も円相場の重荷だった。
米株式市場では主要3株価指数がそろって上昇した。ダウ工業株30種平均は466ドル高で終えた。足元で米株式相場の下げ基調が続き、投資家が運用リスクを取りにくくなっていただけに、13日はリスク回避の際に買われやすい円の売りを誘った。
円の安値は129円45銭、高値は128円87銭だった。
円は対ユーロで5営業日ぶりに反落し、前日比1円35銭円安・ユーロ高の1ユーロ=134円45〜55銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで4日ぶりに反発し、前日比0.0025ドルユーロ高・ドル安の1ユーロ=1.0405〜15ドルで取引を終えた。ウクライナ戦争の長期化を背景とした欧州の景気減速懸念などからユーロ売り・ドル買いが先行し、一時は1.0349ドルと2017年1月以来のユーロ安・ドル高水準を付けた。ユーロ売り一巡後は週末を控え、持ち高調整のユーロ買い・ドル売り優勢に転じた。株高も、リスク選好時に買われやすいユーロの上昇につながった。
ユーロの高値は1.0416ドルだった。
●ドル円相場 5/14
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初130.51で寄り付いた後、本邦輸入企業と思しき実需のドル買い・円売りや、米金利上昇に伴うドル買い圧力(米5年債利回りは2008年9月以来となる3.10%へ急上昇。米10年債利回りは2018年11月以来となる3.20%へ急上昇)、直近高値突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り、バイデン米大統領によるインフレ対策への期待感が支援材料となり、週明け早々に、週間高値131.35(2002年4月以来、約20年ぶり高値圏)まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、急ピッチな上昇に対するポジション調整(反動売り→短期円ショート勢のストップロスを誘発)や、米FRBによる強力な金融引き締め観測(過剰流動性相場逆流リスク→株安→市場心理悪化→リスク回避の円買い圧力)、中国経済の失速懸念(新型コロナウイルスの感染拡大→ロックダウンなどコロナ対策の長期懸念→世界経済の減速懸念→株安→市場心理悪化→リスク回避の円買い圧力)、米金利低下に伴うドル売り圧力(質への逃避の米債買い圧力→米10年債利回りは5/9に記録した3.20%から5/12には2.81%まで急低下)が重石となり、週後半にかけて、4/27以来、約2週間ぶり安値となる127.51まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、急ピッチな下落の反動や、米10年債利回りの反転上昇、欧米株の持ち直しが支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間5/14午前5時30分現在)では、129.35前後まで回復する動きとなっております。尚、注目された米4月消費者物価指数(結果+8.3%、予想+8.1%)および米4月コア消費者物価指数(結果+6.2%、予想+6.0%)は共に市場予想を上回る結果となりましたが、ドル買いでの反応は一時的なものに留まりました。
●国内自動車メーカー 半数以上が今年度は減益予想 原材料高で  5/14
鉄やアルミなどの原材料価格が高止まりしていることを受けて、国内の大手自動車メーカーの半数以上が今年度は減益になると予想し、世界的な物価上昇で難しい対応を迫られそうです。
国内の主な自動車メーカー7社の昨年度の決算では、トヨタ自動車が最終利益が過去最高となるなど3社が増益に、日産自動車、三菱自動車工業、マツダの3社が最終損益が黒字に転換し、前の年度の業績を上回りました。アメリカなどの主要市場で販売を伸ばしたことに加え、円安で利益が押し上げられたためです。
しかし、今年度の見通しについては、主要7社のうち4社が最終的な利益が減益になると予想しています。
車の生産に必要な鉄、アルミ、貴金属などの原材料の価格や物流費が高止まりしているためで、営業損益ベースではトヨタが昨年度と比べて1兆4500億円、日産が2570億円、マツダが1200億円、利益を押し下げると見込んでいます。メーカー各社は、より安い材料に切り替えるなど一層のコスト削減に取り組むとしています。
ただ、ウクライナ情勢などの影響でコスト削減を上回る物価上昇が続く可能性もあり、今年度は車の販売価格に転嫁するかどうかも含め、難しい対応を迫られることになりそうです。 

 

●円安に逃げて、円安におののくお粗末さ 5/15
1971年8月のニクソン・ショックで、それまで1ドル=360円だった為替レートが同308円に引き上げられた。突如の円高となり、日本中が震え上がった。とりわけ輸出企業を中心に、産業界はこの難局をどう乗り切っていくかで大騒ぎとなった。
日本製品が世界市場で生き残っていくには、予想もしなかった大幅な円高をカバーするだけのコスト競争力をつけるしかない。各企業は必死の経営努力を重ねた。それが功を奏して、日本企業の国際競争力が高まり、73年10月に発生した第1次石油ショックも、79年末から80年初めにかけての第2次石油ショックも、それぞれ3年弱で乗り切った。世界に先駆けて驚くべき快挙を成し遂げたのだ。
その後も円高は進み、85年9月のプラザ合意で1ドル=250円だった為替レートは同125円に修正を迫られた。一気に2倍の円高だ。さすがに、「これはきついだろう」という見方で、米国をはじめとする諸外国は一致した。ところが、日本企業は「もうお手上げだ」と言いながらも、生き残るためのすさまじい経営努力を重ねた。そして、2倍という超円高を克服してしまったのだ。それどころか、95年には1ドル=79円台を付けるまでに円高対応力を高めた。その間、弱い企業はどんどん淘汰されていった。円高という逆境を耐え抜いて国際競争力を高めていった企業群が、強い日本経済を支えた。厳しいけれど、極めて健全な適者生存の経済運営を日本企業は先導したのだ。
甘えに走り出した日本企業
85年のプラザ合意を機に、日本は政官が主導して内需拡大に大きくかじを切った。米国などからの政治圧力もあって、輸出主体だった産業構造を内需中心へ切り替える政策を次々と打ち出した。同時に、金利をどんどん引き下げていった。内需シフトの代表例が、リゾート開発法案である。それが低金利を背に全国津々浦々で乱開発を繰り広げ、土地取引の大ブームに火を付けた。80年代後半のバブルの始まりである。
多くの企業も、土地や株式の財テクにのめり込みだした。一方で、米国との貿易摩擦を避けるために、半導体などへの投資を大幅に削減してしまった。その間隙を突いて、はるか後方を走るにすぎなかった韓国のサムスン電子などが巨額投資を重ねて、今日の隆盛を極めていった。
同時に、産業界を挙げて円安誘導の大合唱を始めた。それまでの、自助の精神でコスト競争力を高めようとする経営努力や、積極果敢な投資を抑え、ひたすら国に円安政策を求めるだけの甘えに走ったわけだ。それでも、長年にわたって培ってきた日本経済の地力もあって、円高は95年に1ドル=79円台を付けるまでに進んだ。
残念ながら、そのあたりからだ。日本経済の弱体化が目立つようになったのは。例えば、この20年ほどは日本企業の生産性が低いと散々言われているではないか。そんな表現は、90年代初めまで一度たりとも聞かれなかった。そう、円高傾向と必死で闘っていた間の日本企業は、世界でも抜群に強くなっていった。ところが、円安に逃げ出してからというもの、日本企業は一気にだらしなくなってしまったわけだ。
円安はいいことなしだ
そもそも、一国の通貨が強くなるということは、経済力や国力が高まっている証拠である。国民の生活もどんどん豊かになっているわけで、歓迎こそすれ忌避するものではない。好例がスイスである。しばらく前までは、円高とスイスフラン高が双璧をなして、国力の高まりを謳歌していた。ところが日本は先にも書いたように、円安に逃げた。そして、見る見るだらしなくなっていった。
一方、スイスは通貨高に対応すべく産業強化の努力を重ねた。例えば、世界に冠たるスイスの観光業だ。日本のように円安を利してのインバウンド観光ではない。「スイス観光は、通貨をはじめ何もかも高くつくが、それ以上の満足を味わえる」という世界的な評価を高め続けている。スイス国民はどんどん豊かになりつつ、観光業も隆々としているのだ。
日本は円安、つまり割安さによって、海外からの観光を誘っている。いわば安売りだ。それに対してスイスは割高とはなるが、それ以上の価値を海外からの観光客に認めさせて、堂々と勝負している。どちらがより高度な戦略かは言うまでもなかろう。日本経済の弱体化が不安視されている現在、国民も企業も真正面から経済力、さらには国力強化にまい進すべきだ。
●ドル円は一段高もペースダウン 5/15
米インフレ指標の強い内容を受け、ドルは独歩高の様相です。金融引き締め加速への思惑が背景にあります。ただ、ドル・円は131円台の定着に失敗するなど上値の重さも意識され始めており、目先は水準を切り上げるとしても、ペースは緩慢になりそうです。
5月11日に発表された米4月消費者物価指数(CPI)は前年比+8.3%(3月は+8.5%)、コア指数は+6.2%(同+6.5%)とそれぞれ前月から鈍化したものの、いずれも予想よりも高い伸びとなりました。翌12日の卸売物価指数(PPI)も注目され、結果は前年比+11.0%(前月+11.5%)、コア指数は+8.8%(同+9.6%)。やはり想定ほど失速せず、改めてアメリカのインフレ高進を裏付けました。
米連邦準備制度理事会(FRB)はその前の週に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、バイデン政権の推進するインフレ抑止を後押しする一段の金融引き締めに踏み切ったばかり。具体的にはFFレート誘導目標レンジを0.75-1.00%に0.50pt引き上げ、6-8月は475億ドル、9月以降は950億ドルのペースで保有資産を縮小します。この決定は、当面のドル買いを支える要因となりました。
利上げ幅を0.50ptとする強い引き締めは22年ぶりのこと。一方、パウエル議長はFOMC後の記者会見で今後0.75ptの利上げ幅への拡大には慎重な姿勢を示しました。ただ、市場は「経済指標が堅調なら引き上げざるを得ない」(短期筋)と指摘。当局者のなかにはタカ派的な主張が目立ち、6月14-15日のFOMCに向けインフレや雇用の関連指標が堅調なら引き締め加速への思惑が再燃し、それを織り込む展開が予想されます。
一方、他の主要中銀の政策姿勢にも変化がみられます。最近では欧州中銀(ECB)当局者が早ければ7月の利上げの可能性に言及し、早期引き締めへの思惑が高まってきています。ただ、ユーロ圏の経済指標は弱く、実際には遅れる公算が高いでしょう。また、20日発表の日本の4月消費者物価指数(コア指数)は、日銀が長年目標としてきた前年比+2%前後の上昇が予想されるものの、異次元緩和堅持のため円安基調には変わりがなさそうです。
とはいえ、ドル・円については131円台の定着に何度か失敗し、上値の重さが意識されています。岸田政権は夏の参院選を前に物価上昇の抑止に本腰を入れ、一段の円安へのけん制を強める可能性もあります。また、FRBの金融正常化を背景にNY株式市場は年初来安値を下回る水準に弱含み、リスクオフの円買いも見込まれます。年初来安値から17円超も値を切り上ており、目先の上昇余地は乏しくなってきたと考えてもいいころでしょう。 
●円安・株価 潮目に変化? 5/15
大型連休明けのマーケットは、1ドル=131円30銭台と20年ぶりの円安水準を更新した後、逆に一時127円台まで円高方向に動きました。また、日経平均株価は一時2万6000円割れ。アメリカでもダウ平均株価が年初来安値を更新。背景にあるのが「アメリカのインフレ長期化」への懸念で、それによって相場の潮目に変化が出てきているようにも見えますが、果たして?
主要企業「円安続かず」
大型連休明けに、大手企業の昨年度の決算が相次いで発表されましたが、市場で注目されたのが「円相場の見立て」です。決算発表にあわせて、今年度・2022年度の業績見通しの前提となる為替相場の想定が示されますが、その想定はトヨタ自動車が「1ドル=115円」、日産自動車や日立製作所が「120円」、ソニーグループが「123円」と、いずれも足元の水準と比べるとかなり「円高」方向で想定されているのです。急速に進んだ円安を織り込み切れていない面もありますが、主要企業の多くがいまの水準の円安が続くとは見ていないということです。
円相場に動きが
4月下旬に、20年ぶりに1ドル=131円台に突入した円相場。その後も130円台近辺で推移し、大型連休明けの5月9日には131円30銭台をつけて、20年ぶりの円安水準を更新。ところが12日になると、逆に一時127円台まで円高ドル安が進みました。
米インフレ長期化への懸念
この円相場の動きの背景にあるのが、「アメリカのインフレ長期化への懸念」です。アメリカのインフレをめぐっては、そろそろ物価上昇率が頭打ちになるというピークアウト論も出ていましたが、日本時間11日夜に発表された4月の消費者物価指数は前年同月比で「プラス8.3%」。3月は8.5%だったので、8か月ぶりの伸び率縮小となりました。これに対する市場の反応が、「インフレが長期化し、景気を冷え込ませるのではないか」という懸念でした。確かに伸び率は縮小したものの、事前の市場予想である8.1%を上回り、水準自体も依然として記録的な高さだという受け止めです。変動の大きいエネルギーや食品を除いたコア指数は前月比「プラス0.6%」で、3月の0.3%からむしろ上昇しました。家賃や航空運賃など幅広い品目が上がり、人手不足を背景に賃金の上昇も続いています。予想以上の物価上昇の強さだったことなどから、なおインフレが長期化するという見方が広がる形となりました。このため、アメリカの中央銀行にあたるFRBが金融引き締めを加速させ、その急激な金利上昇などにアメリカ経済が耐えきれず景気後退につながりかねないという見方にもつながっています。
市場関係者「市場のインフレ予想も上振れてきているのが気がかりで、これはFRBがインフレを制御できないのではないかという信認の揺らぎが生じていることを示唆するものだ。そうなると市場でインフレ予想が暴走し、駆け込み消費や便乗値上げを招いて歯止めが効かなくなるおそれもある」
株価は、上値重く
こうした懸念を受けて、12日にはダウ平均株価は年初来安値を更新。アメリカの長期金利も3%を下回りました。また、中国では「ゼロコロナ政策」のもとで、上海などに続いて北京でも厳しい外出制限が出され、生産や物流の停滞懸念も強まりました。先行きのリスクが高まる中、最近では影が薄くなっていた「有事の円買い」の動きが出た、円相場の反転につながったものと見られます。一方で、日経平均株価は12日にアメリカや中国の景気先行き懸念から、およそ2か月ぶりに2万6000円を割り込みました。
振り返れば株価は去年9月には3万円台、ことしの年初には2万9000円をつけていましたが、その後は下落傾向が続いています。市場関係者の中には、さらに年初来安値の2万4700円台(終値)を下回るタイミングがくるとの予想も出ています。「円安」「株高」の流れに潮目の変化が出ているようにも見えますが、日米の金融政策の方向性や金利差拡大の構図には変わりはないため、円相場は今後も円安が進み、135円、140円になる可能性もあるという見方もあります。また、アメリカのインフレについても「やはりピークアウトした」という受け止めもあり、一辺倒ではありません。本当に潮目の変化になるのかどうか、さらにマーケットの動きの裏側を探っていく必要がありそうです。
注目予定
16日には中国が先月の工業生産や消費など、主要な経済指標を公表します。「ゼロコロナ政策」のもと、上海などの各地で厳しい外出制限がとられた影響の広がりが懸念されます。20日に発表される日本の4月の消費者物価指数は、日銀が目標としてきた「プラス2%程度」になる可能性も指摘されています。
●ドル円は一段高もペースダウン 5/15
米インフレ指標の強い内容を受け、ドルは独歩高の様相です。金融引き締め加速への思惑が背景にあります。ただ、ドル・円は131円台の定着に失敗するなど上値の重さも意識され始めており、目先は水準を切り上げるとしても、ペースは緩慢になりそうです。
5月11日に発表された米4月消費者物価指数(CPI)は前年比+8.3%(3月は+8.5%)、コア指数は+6.2%(同+6.5%)とそれぞれ前月から鈍化したものの、いずれも予想よりも高い伸びとなりました。翌12日の卸売物価指数(PPI)も注目され、結果は前年比+11.0%(前月+11.5%)、コア指数は+8.8%(同+9.6%)。やはり想定ほど失速せず、改めてアメリカのインフレ高進を裏付けました。
米連邦準備制度理事会(FRB)はその前の週に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、バイデン政権の推進するインフレ抑止を後押しする一段の金融引き締めに踏み切ったばかり。具体的にはFFレート誘導目標レンジを0.75-1.00%に0.50pt引き上げ、6-8月は475億ドル、9月以降は950億ドルのペースで保有資産を縮小します。この決定は、当面のドル買いを支える要因となりました。
利上げ幅を0.50ptとする強い引き締めは22年ぶりのこと。一方、パウエル議長はFOMC後の記者会見で今後0.75ptの利上げ幅への拡大には慎重な姿勢を示しました。ただ、市場は「経済指標が堅調なら引き上げざるを得ない」(短期筋)と指摘。当局者のなかにはタカ派的な主張が目立ち、6月14-15日のFOMCに向けインフレや雇用の関連指標が堅調なら引き締め加速への思惑が再燃し、それを織り込む展開が予想されます。
一方、他の主要中銀の政策姿勢にも変化がみられます。最近では欧州中銀(ECB)当局者が早ければ7月の利上げの可能性に言及し、早期引き締めへの思惑が高まってきています。ただ、ユーロ圏の経済指標は弱く、実際には遅れる公算が高いでしょう。また、20日発表の日本の4月消費者物価指数(コア指数)は、日銀が長年目標としてきた前年比+2%前後の上昇が予想されるものの、異次元緩和堅持のため円安基調には変わりがなさそうです。
とはいえ、ドル・円については131円台の定着に何度か失敗し、上値の重さが意識されています。岸田政権は夏の参院選を前に物価上昇の抑止に本腰を入れ、一段の円安へのけん制を強める可能性もあります。また、FRBの金融正常化を背景にNY株式市場は年初来安値を下回る水準に弱含み、リスクオフの円買いも見込まれます。年初来安値から17円超も値を切り上ており、目先の上昇余地は乏しくなってきたと考えてもいいころでしょう。 

 

●東京円、55銭安の1ドル=129円35〜37銭 5/16
週明け16日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前週末(午後5時)比55銭円安・ドル高の1ドル=129円35〜37銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは同50銭円安・ユーロ高の1ユーロ=134円64〜68銭で大方の取引を終えた。
●円、129円台前半 ロンドン外為 5/16
週明け16日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、手掛かり材料難の中、1ドル=129円台前半での小動きとなった。正午現在は129円25〜35銭と、前週末午後4時比05銭の円高・ドル安。 
●NY円、129円前半 5/16
週明け16日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午前8時半現在、前週末比23銭円安ドル高の1ドル=129円39〜49銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0418〜28ドル、134円89〜99銭。米国の長期金利が上昇傾向となったのを手がかりに、日米の金利差の拡大を意識したドル買い円売りが先行した。 

 

●午後3時のドルは小幅高129円前半、米指標で景気減速感を見極め 5/17
午後3時のドル/円は、前日のニューヨーク市場終盤(129.16/19円)に比べて小幅ドル高の129.33/35円で推移している。米長期金利がやや上昇したことや実需の買いで午前は堅調な展開だったが、米中の景気減速懸念が市場のテーマとなりつつある中で指標の結果を見極めたいとのムードが強まり、積極的な取引は手控えられた。
ドルは米金利などをにらみながら仲値にかけての実需の買いもあり一時129.44円まで上昇したが、一巡後は小動きが続いた。時間外取引で米10年債利回りは足元2.92%台近辺と上昇の勢いは鈍っており、ドル/円も方向感を失っている。
市場では、米国の金融政策から米中の景気減速への懸念に目線が移っている。前日発表された中国の経済指標が予想を下回る内容となり、米経済の現状を見定める上できょう発表の米小売売上高は「これまでより注目度が高まっている」(トレイダーズ証券の市場部長・井口喜雄氏)という。
小売売上高が市場予想を下回った場合ドル/円の反応としては、素直に米景気の減速懸念が強まりが意識され米金利低下とドル安が進む可能性があるとの見方がある一方、「リスク回避の円買いと同時にドル買いもみられるのではないか」(ソニーフィナンシャルグループのアナリスト、森本淳太郎氏)として結果的にドル/円の大きな動きにはつながらないとの指摘もあった。
他の通過では豪ドルの上昇が目立った。豪ドル/円は90.61円付近、豪ドル/米ドルは0.7010ドル付近と、いずれも堅調に推移している。
豪中銀は5月の理事会でオフィシャルキャッシュレートを25ベーシスポイント(bp)引き上げて2010年11月以来の利上げを決定したが、議事要旨ではインフレの高まりにより決定よりも大幅な利上げを議論したことを明らかになり、豪ドルが買われた。
トレイダーズ証券の井口氏は「豪中銀は他の先進国に比べて金融政策正常化が遅れていた分、豪ドルの上値余地はまだあるとみている」と指摘。ウクライナ情勢の悪化が続く中で、資源価格の高止まりも豪ドルを下支えするとみている。
●円相場、129円39〜40銭 17日午後5時現在 5/17
17日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=129円39〜40銭と、前日(129円36〜36銭)に比べ03銭の円安・ドル高となった。 
●円、129円台前半 ロンドン外為 5/17
17日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、様子見ムードが広がる中、1ドル=129円台前半でもみ合いとなった。正午現在は129円30〜40銭と、前日午後4時比30銭の円安・ドル高。 
●NY外為〕円、129円台前半(17日午前8時) 5/17
17日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、午前8時現在1ドル=129円27〜37銭と、前日午後5時(129円05〜15銭)比22銭の円安・ドル高で推移している。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0534〜0544ドル(前日午後5時は1.0430〜0440ドル)、対円では同136円24〜34銭(同134円59〜69銭)。 
●「日銀は悪い円安を止めよ!」という主張の決定的弱点 5/17
金融引き締めを急速に進めようとする米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢と、異次元緩和の粘り強い継続によって物価目標2%の持続的・安定的達成をあくまで目指す日銀のハト派姿勢。両者のベクトルの違いを最大の材料にして、為替市場で円安・ドル高が急速に進み、一時131円台前半になった。
為替政策は日本では財務省の管轄であるにもかかわらず、「悪い円安」というコンセプトを前面に出したマスコミ報道の中には、米国に対抗して金融引き締め方向の動きを日銀が早急に見せて円安に歯止めをかけるべきだというニュアンスを帯びるものが少なくなかった。
だがそうしたムードの中でも日銀関係者からは、「為替防衛のために利上げするなら米国並みに上げないと効果はなく、そのペースで日本が利上げしたら財政が破綻し円安が止まらなくなる」という指摘が出ていた(4月16日付 日本経済新聞)。「円安で得をする人たちは黙っている。景気が良くない中で金融を引き締めるなんて、あり得ない」と日銀幹部が苦々しい表情を浮かべたとの報道もあった(4月28日付 共同通信)。
白川方明前総裁時代の日銀は、金融危機が発生した後、為替市場における現在とは正反対の動き、円高・ドル安の急進行に直面して苦闘した。その局面でよく聞かれていたのが、「日銀の金融緩和は小さすぎて遅すぎる(too little, too late)」「金融緩和は出し惜しみせず思い切ってやるべきだ」という類の日銀批判だった。FRBの金融緩和と同じマグニチュードで日銀も動けば円高・ドル安は止まるはずだという趣旨である。
けれども、日銀の利下げ余地には、その当時に支配的だった「金利のゼロ制約」を前提にすれば、物理的に限度がある。政策金利を2008年中に0.5%から2回利下げして0.1%にした後は、「新型オペ」(0.1%固定)による資金供給拡大や、「資産買入等の基金」を兆円単位で段階的に創設・拡大することにより、「金融緩和を大規模に積極的にやっている感」をなんとか醸し出そうと、当時の日銀は努力を重ねていた。
仮に日銀が、円安に歯止めをかける狙いで、マイナス金利の解除や長期金利の許容変動幅拡大(上限引き上げ)など円の市場金利を上昇させる方向で何らかのアクションを取る場合でも、その効果にはどうしても限界があり、市場からは「どうせ動くならもっと大きく」と催促され続けることになる可能性が高い。
それは、為替市場のプレーヤーとの間の不毛な駆け引きへの勝算が立たない突入であり、金融政策の本来のありようを見失った軽率な行動ということに、最終的にはなってしまうだろう。
円高も円安も「良い」「悪い」で論評されすぎ
白川前日銀総裁は時事通信の最近のインタビューで、「円高も円安も『良い』『悪い』で評価する議論には違和感を覚える。為替レートと金融政策を直接結び付けているように感じられるからだ」と述べていた。
政策の前線で市場と戦った人物による、本質をついた発言であり、もっと広くマスコミ報道で取り上げられてもよかったように思う。紙面の論調とかみ合わないのであまり報道が広がらなかったのではないかと、筆者は勘ぐっている。
すでに述べた通り、庶民の生活苦につながる「悪い円安」を日銀はなんとかすべきだという主張は、難点だらけである。筆者の見方を整理すると、以下のようになる。
為替相場のある特定の水準が日本経済にとって「良い」か「悪い」かの二分論的なレッテル貼りは危うい。企業か家計か、企業の中でも大企業か中小企業かなど、経済主体によって、メリットとデメリットのバランスは異なる。
為替相場の変動が問題になるのは通常、その水準ではなく、変化スピードである。緩やかな水準シフトではなく、あまりに急激に変化するようだと、企業の対応がすぐには追い付かない。
相場水準の急変動があった場合、それが一時的か不可逆的かの判断はなかなか難しい。仮に、思惑的売買が加速した一時的な振れだと判断される場合には、通貨当局がG7(主要7カ国)などの合意で認められているスムージングオペ(為替相場の一時的な急変動を落ち着かせるための介入)を実行するケースも状況次第では想定されるものの、基本的には放置しておけばよい。
これに対し、少なくともしばらくは元の相場水準には戻らない、ファンダメンタルズに沿った動きということなら、企業をはじめとする経済主体が新たな為替相場の水準に、徐々に順応していく必要がある。
物価高騰の主因は「資源高」
人々の生活苦につながっている、このところのエネルギーや食品関連の物価高騰の主因は、あくまでも「資源高」である。「円安」はサブの要因にすぎず、主犯ではない。仮に、日銀が金融引き締めに動くことにより円安を止めて円高方向に押し戻すことに成功する場合でも、それにより物価高の主因である「資源高」が消えてなくなるわけではない。なお、マスコミ数社の記者からの「悪い円安」に焦点をあてた取材の際にこの指摘をしてみたが、先方は無反応に近かった。
仮に、日銀が政策金利の引き上げなどでFRBにまともに対抗して円安を止めようとしても、「勝負にならない」可能性が高い。FRBは5月に続いて6月も0.5ポイント幅の追加利上げに動く可能性が高く、いずれ0.75ポイント幅で動くのではとの観測も市場にある。これに対し日銀が思い切ってマイナス金利の解除に動くとしても、0.1ポイント幅にすぎない。
日銀が仮に「悪い円安」対応で金融政策を突然動かすようだと、「物価安定の目標」2%の達成を目指して運営してきていることとの整合性が取れなくなる。「為替相場連動」の金融政策運営に切り替えたのだと市場からみなされれば、今度は円高・ドル安の急進行を通じて追加緩和を市場から促されることになる恐れもある。したがって、足元の局面で「妙なことはしない」のが日銀(およびその信認)にとっては上策だと、筆者はみている。
円安が急速に進行したものの、異次元緩和を続行しようとする日銀の姿勢は、政府・与党から支持され続けている。
岸田文雄首相は4月26日の記者会見で、円安に関連した日銀の政策変更の必要性について質問を受けた際、2%の物価目標達成に向けて「引き続き努力を続けていただくよう政府としては期待している」と返答。同日のテレビ番組出演時には、輸出企業や海外に資産を持つ企業にとって円安はプラスだとの認識も示した。
自民党内で最大の派閥を率いる安倍晋三元首相は4月28日の同派の会合で、「(日銀の)金融緩和政策をしっかり継続しないと日本経済を悪化させかねない」「悪い円安という評論は間違いだ」「円安が進んでいるからといって(その是正に)金融政策を使うことは間違っている。(日銀の)黒田東彦総裁の政策を私は支持したい」と述べた。
上記の安倍発言と重なり合うのが、パンス国際通貨基金(IMF)アジア太平洋副局長が、4月25日の記者会見で語った内容である。
時事通信の報道によると、「日銀の2%目標を大幅に下回っている」日本のインフレ率は、今後数カ月で若干上昇するかもしれないが「一時的にしか続かない」と、パンス氏は予想。円安は輸入物価高を招き一部に打撃を与えるとしつつも、輸出増で若干相殺も見込めると同氏は指摘した。
そして、日本のインフレがまだ抑制的な状況を踏まえれば、日銀は金融緩和を継続することが「きわめて適切」だとの見解が示された。IMFは4月7日の報告書で、日本の22年の経済成長率見通しを引き下げつつ、日銀は長期にわたり超緩和政策を維持すべきだとしていた。
パンス氏は上記の記者会見よりも前に、日本経済新聞のインタビューに応じていた。4月23日夜に電子版で配信された記事によると、同氏は今般の円安について、「根本的な懸念とは考えていない。円安で輸入品の価格が上がり、貿易赤字になったのは事実だ。同時に輸出も増え、双方向に作用している」と指摘。円安の一因となっている金融緩和政策を見直す必要はないかとの問いに対しては、「現在の政策を変更する必要はない。今後数カ月間は燃料費の上昇や昨年の携帯電話料金の引き下げの影響が消えることでインフレ率が一時的に上昇するが、また下がると考える。2%の目標を持続的に超えていくまでは、金融政策の変更は勧めない」と明言した。
日銀の金融政策運営に関連するIMF高官からのアドバイスは、担当者が交代すると内容が変わることもある。その影響力は限られるとみるべきだろう。
これに対し、自民党内で最大の派閥を率いる安倍元首相の意向を、岸田首相が完全に無視することは、党内の政治力学から考えて、きわめて難しいだろう。岸田内閣の「黒子」とされる木原誠官房副長官は英経済紙フィナンシャル・タイムズが3月31日に掲載したインタビューで、「最も重要なのはデフレを終わらせることだ」「いくらか誤解があるかもしれないが、岸田政権の基本政策は引き続きアベノミクスだ」と述べていた(和訳は筆者)。
また、公明党の山口那津男代表は4月30日に神戸市内で街頭演説した際、「米国にあわせて金利を動かせば経済が沈んでしまう」と発言。黒田日銀の方針を擁護した。
最後に、上記の為替・日銀関連の話からは離れてしまうのだが、筆者が気になったニュースを1つご紹介しておきたい。日本のマスコミ報道の「自由度」に関するものである。共同通信や時事通信がパリ発で伝えたものだが、日本の新聞やテレビで大きく取り上げたところはなかったようである。
国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF、本部パリ)は5月3日、22年の世界各国の報道自由度ランキングを発表した。RSFは今回、順位決定の方法を変更し、政治や経済、社会・文化の各影響、法的枠組み、安全性の5指標で判定することにした。180カ国・地域のうち、日本は昨年から順位を4つ下げて71位。首位はノルウェーで6年連続。2位はデンマーク、3位はスウェーデン。ウクライナ侵攻に絡んで報道規制を強化したロシアは155位に後退。中国は175位。最下位は北朝鮮だった。
報道に大企業の影響力が強まる日本
「日本についてRSFは、大企業の影響力が強まり、記者や編集部が都合の悪い情報を報じない『自己検閲』をするようになっている国の例として韓国やオーストラリアとともに言及した」(共同通信)
SNS(交流サイト)上で拡散されるフェイクニュースなどに対抗し、人々に真実をしっかり伝えていく上で、既存のマスコミ媒体の役割と重要度は非常に大きい。その自由度が低下するというのは実に由々しき事態である。
まだ大学生の頃から新聞ウオッチをしている筆者は、経済に関する記事を含めて、クオリティーが最近下がっているのではないかと感じさせられることもしばしばある。マスコミ報道に接する際には、何社かの記事内容を比べてみるなどしながら、自分で考える「批判的観察眼・思考力」を身につける必要があるように思う。
●「悪い円安」論は正しいのか? 海外事業ではプラスも 5/17
外国為替市場で著しく円安・ドル高が進んでいるが、日本株相場は上値が重い。かつては円安・株高はセットで捉えられていたが、足元ではその法則は当てはまらない。なぜ円安になっても日本株が買われないのか?  その理由については諸説あるようだが、一つには今般の円安が日本経済にとってマイナスだから、というものがある。いわゆる「悪い円安」論だ。その背景を日本経済新聞電子版の記事はこう解説している。
日本では中小企業が企業全体の99.7%、従業員数の69%を占める。その売上高に占める輸出比率は約3%。日銀の黒田東彦総裁が『円安は日本経済にプラス』と言っても理解されにくく、『悪い円安』論が勢いづくゆえんだ。
それはもちろん、事実である。しかし我々が問題にしているのは上場企業の株価であって、中小企業を含めた日本企業の総論ではない。「日経平均株式会社」は「日本株式会社」とは違うのだ。単純化した図式を言えば、「グローバル vs.ローカル」ということである。
上場企業は国内景気低迷下も、グローバルで稼げる力あり
ここで思い出されるのが14年度の我が国の経済状況だ。14年度の実質GDP(国内総生産)は前年比1.0%減と、世界金融危機の余波が残った09年度以来5年ぶりのマイナスとなった。期初に実施された消費増税が大きく響いたためだ。年度後半からは持ち直しの動きも出たが、前半の大幅減を埋められなかった。
ところが、である。15年3月期の上場企業の経常利益は7年ぶりに最高を更新した。コスト構造の改善も寄与したが、円安を追い風に海外事業の収益が伸びたのだ。日本の上場企業は国内景気が低迷してもグローバルで稼いで利益を上げられる。そのことを証明した象徴的な年となった。今起きていることはその延長線上にある。円安は日本経済全体にとってはデメリットの方が大きいかもしれないが、上場企業の業績に限って言えば、まだメリットの方が大きい。
長きにわたって日本の輸出産業を苦しめてきた円高によって、日本の産業構造が変わったという事実はある。各社は現地生産体制を構築するなど、円高対策を施してきた。それゆえ、円安になっても日本からの輸出が伸びないのは当然である。
しかし輸出=海外事業ではない。日本のグローバル企業は、現地法人によるビジネスや海外企業への出資など、様々な形態の海外事業を開拓してきた。日経平均構成銘柄の海外売上高比率は50%を超えている(開示がある企業の単純平均)。この海外での収益は円安によってかさ上げされる。円安は当然のように上場企業の業績にプラスの効果を与えるのだ。
為替感応度の高さは銘柄選択の重要な要素に
下のグラフは、「為替感応度」の大きさに従って5つのグループに分けた銘柄群の、過去3カ月の株価パフォーマンスを見たものである。これによると最も為替感応度の高い第1グループのリターンはプラス6.9%、反対に為替感応度の最も低い第5グループのリターンはマイナス6.5%と、わずか3カ月で約13%も差が生じている。これが示すことは、為替感応度が銘柄選択の有効なファクターとして機能しているということであり、端的に言えば、円安は株式市場でポジティブに評価されているということに他ならない。
以前、円高の時代は円高悲観論がまん延していた。今度は円安になったらなったで、「悪い円安」論だ。メディアというものは、常にネガティブ思考である。しかし、物事には常に2つの側面がある。これは為替レートでも同じこと。円高には悪い面もあれば良い面もあるように、円安にも両面ある。足元の円安は「悪い円安」と否定的な面ばかりが強調されるが、企業業績に与えるプラスの面をもっと評価すべきだろう。事実、株式市場は既にそうしているのだから。
ここまで述べてきたことは全体論である。しかし株価には癖のようなものがあって、為替に敏感な銘柄とそうでない銘柄とがある。外需産業に属しているからといって円安で株価が上がるというものではないことに注意が必要だ。実際にその銘柄が為替にどれだけの反応をしているかを日々チェックすることが肝要だろう。 

 

●円安の潮流変わらず、増える長期的な押し下げ要因 5/18
ドル/円相場は5月9日に131円35銭まで上昇し、2002年以来の高値を更新した。投機筋の円売りが膨らんだほか、日本勢のヘッジ付き外債処分に伴う円売りも相場を押し上げた可能性が高い。
例えば、日本勢は3月から4月にかけて中長期の外債をグロスで約81兆円も処分したが、低く見積もってもその半分は円買いのヘッジ為替を伴っていたとみられる。10年米国債(価格)で言えば、下げ幅は年初来1割を超えており、売却した外債にドル売り・円買いのヘッジ為替を充当しても数兆円が未消化のまま残った計算だ。厳格なひも付けではないにせよ、その解消には同程度のドル買い・円売りを要したはずで、ドル/円急騰の一翼を担ったとみられる。
翻って足元では、外債の処分も一巡したとみられ、市場が荒れ模様となれば円の買い戻しも入りやすい。ドル/円の騰勢はしばらく影を潜め、短期的には125円程度までの押し目があっても不思議ではない。
インフレは長期化のおそれ
一方、内外の金融政策格差は変わりそうになく、円安期待は根強く残ろう。
また、フィンランドやスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請を決定したことで、ロシアの態度硬化は必至とみられ、ウクライナとの戦争終結も見通せない。
このため、対ロシアの経済制裁も相まって、輸入元をロシアやウクライナに依存する幅広い資源やコモディティの供給制約が世界的なインフレ圧力を助長する構図は不変だ。
主要国では中国など一部を除き、コロナとの共存へ向いつつある。経済活動の活性化に伴い、幅広いモノやサービスへの需要も高まっていこう。4月の米消費者物価指数をみても、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸びが前月から加速した。
昨年を振り返ると、夏場にかけてインフレ圧力が和らいだものの、9月以降、米国を襲ったハリケーンによる供給制約と冬場を迎える欧州の暖房需要などから、再び幅広い資源価格が高騰。米連邦準備理事会(FRB)がタカ派へ傾斜する伏線となった。
世界的にみれば、金融政策の正常化や引き締めは今年末まで続くとみるのが妥当だ。市場では、欧州中央銀行(ECB)についても年央に利上げに着手し、マイナス0.50%の中銀預金金利を年末までに0.25%まで引き上げるとみている。
ユーロ/円急騰の場面も
加えてECBの資産買い入れも7─9月期中に終わる見込みで、イタリア国債など相対的に格付けの低い債券が軟調に推移しそうだ。実際、今年に入ってドイツ国債とイタリア国債の利回り格差は拡大傾向にある。
利上げの過程で、日本勢からみたユーロ/円のヘッジコストも、これまでのマイナス(受取り)からプラス(払い)へ転換する見通しだ。日本勢が欧州債の圧縮に動くと、オーバーヘッジとなった未消化のユーロ売り・円買いを解消するためのユーロ買い/円売りがユーロ/円を押し上げる場面も見込まれる。ドル/円の上昇圧力ともなるため、一定の留意が必要だ。
日銀は動かず、円安容認か
こうした中、日本でも4月分の生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数(コアコアCPI)の伸びが、前年比でプラス圏に浮上する見込みだ。ただ、欧米に比べてインフレの程度は鈍く、失業率もパンデミック前の水準まで下がっていない。金融政策の転換を時期尚早とする黒田東彦日銀総裁の主張は妥当と言え、在任期間中に緩和スタンスが変わる可能性は低い。
ただ、こうしたスタンスは、世界的にみればやはり特異と映る。過去最大規模に膨らんだ輸入総額と並んで、市場の円安期待を刺激し続けるだろう。
経験則は一時棚上げ
経験則に従えば、購買力平価(昨年末ドル96円51銭、国際通貨基金)から3割を超えるかい離を抱えた現在のドル/円は、既にオーバーシュートの領域だ。本来なら続伸はおろかその維持も困難であり、反落リスクを警戒すべきだ。
しかし、パンデミックや紛争、インフレと過去数十年間に起こらなかったことが、同時進行している上に長引く見通しだ。こうした状況下では、経験則もその妥当性を問われる。
しかも、日本でさえインフレに見舞われており、市場のインフレ期待も上昇傾向にある。実質金利の低下が、引き続き円安圧力となりかねない。
このため、調整局面を経て投機筋の円売りポジションが軽くなった後、再び騰勢を回復。年末にかけて2002年の高値135円15銭付近を上抜けしていく可能性が引き続き高いように思われる。
介入はあるか
この流れが反転する要因として協調(ドル売り)介入が挙げられる。実際、インフレを助長するユーロ安に対し、フランス中銀総裁などECB高官も苦言を呈している。参院選を前に、日本でもインフレを懸念する「悪い円安論」が根強い。人民元も対ドルで6.8元付近まで下落しており、インフレ圧力がじわりと高まってきた。仮に7元まで続落すれば、トランプ大統領(当時)が中国を為替操作国に認定した2019年以来だ。
中間選挙を控える米国でも、ドル高に対して何らかの政治的配慮が働くかもしれない。一段とドル高が進んだ場合、一定の歯止めをかけようとする国際的な合意が形成されやすい環境とは言える。各国高官から為替相場の動きに関して、「懸念(Concern)が共有されている」といったフレーズが出ないか、要注意だ。
もっとも、現在の動きは各国・地域の経済情勢と金融政策を映じたものであり、合理的だ。仮に通貨安を嫌うのであれば、金融政策の見直しが必要であり、それを無視したまま、協調介入が行われても、相場の潮流を変えることは難しいだろう。
長期的な円安材料
この間、国際通貨基金(IMF)からは、特別引き出し権(SDR)を構成する通貨バスケット比率の見直しが発表されている。向こう5年間の比率は、ドル43.38%(プラス1.65%)、ユーロ30.93%(マイナス1.62%)、円7.59%(マイナス0.74%)、ポンド7.44%(マイナス0.65%)、人民元12.28%(プラス1.36%)とされた。(カッコ内は見直し前との比較)
SDRの最大の狙いは、複数の通貨を参照することで、特定通貨の影響による価値の変動を抑制することだ。各国の中央銀行も、自身の外貨準備の通貨別アロケーションを検討する上で、SDRのバスケット比率を考慮しよう。
その点、デフレ脱却のためなら通貨安もいとわない日銀に対し、中国人民銀行は政策目標に経済成長を促すための「通貨価値の安定維持」を据える。
昨年末の世界の外貨準備(Allocated Reserves)に占める人民元の割合は約2.8%と円の半分だが、それでも着実に上昇しつつある。仮に6月末に発表される今年3月末のデータで両者が接近していれば、円と元の将来的な逆転も現実味を増す。自ずと相場にも反映されていくのではないか。  
●ドル円見通し 5月12日夜安値からの底上げ基調続くが130円手前で足踏み 5/18
ドル円は5月17日夜に129.77円をつけて5月16日に二度つけた129.60円台序盤から戻り高値を切り上げた。17日深夜に129.06円まで下げたものの129円割れを回避し16日安値128.68円から17日午前安値128.81円へと底上げしてきた流れを維持した。
5月17日はNYダウが米小売統計堅調と中国の感染抑制規制の緩和見込み等から3連騰となり、株買い債券売りで米長期債利回りが上昇したが、ドルストレートではリスクオンを優先してユーロやポンドなどが上昇したためにドル円はクロス円全般の上昇による円安と米長期債利回り反騰による押し上げで確りした印象だ。
米パウエル議長、積極的利上げ姿勢を強調
米連銀のパウエル議長は17日に、「歴史的な高インフレが明確に低下しなければ一層積極的な利上げに踏み切る可能性がある」「インフレ抑制が圧倒的に必要だ」と述べた。5月3-4日開催の前回FOMCにおいてパウエル議長は6月と7月のFOMCでも0.50%利上げを検討する姿勢を強調したがインフレの高止まりと深刻化への警戒感から積極利上げ姿勢は堅持されているようだ。
先週発表された米4月CPIは前年同月比8.3%上昇となり伸びは鈍化したが40年ぶりの高水準にあり、ウクライナ戦争とロシア制裁が今後に及ぼす影響次第ではさらに深刻化する可能性もあるところだ。支持率が低迷しているバイデン政権にとってもインフレ抑制が最重要であり、米連銀も0.75%利上げのような超大幅利上げにはならないとしても0.50%ずつの利上げがしばらく続く可能性が高い状況だ。
米シカゴ連銀のエバンズ総裁も17日に「インフレ率を2%の目標に戻すには政策金利が中立水準をいくらか上回る必要がある」とし、中立水準の「2.25〜2.50%へ迅速に戻すことを支持する」と述べた。米セントルイス連銀のブラード総裁も17日に「米経済は今後少なくとも18か月はトレンドを上回るペースで拡大を続け消費支出も堅調に推移する」とし、「今後数回のFOMCで0.50%の利上げを続けることはインフレ抑制に向けて良好な計画だ」とした。
●ロンドン外為 円、129円台前半 5/18
18日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、材料出尽くし感から積極的な取引が手控えられ、1ドル=129円台前半での小動きとなった。正午現在は129円10〜20銭と、前日午後4時(129円25〜35銭)比15銭の円高・ドル安。
4月の米小売売上高やパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言を前日に消化したことで、手掛かり材料に欠け、方向感の乏しい値動きが続いた。
対ユーロは1ユーロ=135円80〜90銭(前日午後4時は136円15〜25銭)と、35銭の円高・ユーロ安。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0515〜0525ドル(1.0530〜0540ドル)。
ポンドは1ポンド=1.2395〜2405ドル(1.2465〜2475ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9960〜9970フラン(0.9925〜9935フラン)。
●NY外為 円、129円台前半 5/18
18日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、午前8時現在1ドル=129円06〜16銭と、前日午後5時(129円29〜39銭)比23銭の円高・ドル安で推移している。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0506〜0516ドル(前日午後5時は1.0545〜0555ドル)、対円では同135円71〜81銭(同136円37〜47銭)。
●円安の潮流変わらず、増える長期的な押し下げ要因 5/18
ドル/円相場は5月9日に131円35銭まで上昇し、2002年以来の高値を更新した。投機筋の円売りが膨らんだほか、日本勢のヘッジ付き外債処分に伴う円売りも相場を押し上げた可能性が高い。
例えば、日本勢は3月から4月にかけて中長期の外債をグロスで約81兆円も処分したが、低く見積もってもその半分は円買いのヘッジ為替を伴っていたとみられる。10年米国債(価格)で言えば、下げ幅は年初来1割を超えており、売却した外債にドル売り・円買いのヘッジ為替を充当しても数兆円が未消化のまま残った計算だ。厳格なひも付けではないにせよ、その解消には同程度のドル買い・円売りを要したはずで、ドル/円急騰の一翼を担ったとみられる。
翻って足元では、外債の処分も一巡したとみられ、市場が荒れ模様となれば円の買い戻しも入りやすい。ドル/円の騰勢はしばらく影を潜め、短期的には125円程度までの押し目があっても不思議ではない。
インフレは長期化のおそれ
一方、内外の金融政策格差は変わりそうになく、円安期待は根強く残ろう。また、フィンランドやスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請を決定したことで、ロシアの態度硬化は必至とみられ、ウクライナとの戦争終結も見通せない。このため、対ロシアの経済制裁も相まって、輸入元をロシアやウクライナに依存する幅広い資源やコモディティの供給制約が世界的なインフレ圧力を助長する構図は不変だ。主要国では中国など一部を除き、コロナとの共存へ向いつつある。経済活動の活性化に伴い、幅広いモノやサービスへの需要も高まっていこう。4月の米消費者物価指数をみても、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸びが前月から加速した。昨年を振り返ると、夏場にかけてインフレ圧力が和らいだものの、9月以降、米国を襲ったハリケーンによる供給制約と冬場を迎える欧州の暖房需要などから、再び幅広い資源価格が高騰。米連邦準備理事会(FRB)がタカ派へ傾斜する伏線となった。世界的にみれば、金融政策の正常化や引き締めは今年末まで続くとみるのが妥当だ。市場では、欧州中央銀行(ECB)についても年央に利上げに着手し、マイナス0.50%の中銀預金金利を年末までに0.25%まで引き上げるとみている。
ユーロ/円急騰の場面も
加えてECBの資産買い入れも7─9月期中に終わる見込みで、イタリア国債など相対的に格付けの低い債券が軟調に推移しそうだ。実際、今年に入ってドイツ国債とイタリア国債の利回り格差は拡大傾向にある。利上げの過程で、日本勢からみたユーロ/円のヘッジコストも、これまでのマイナス(受取り)からプラス(払い)へ転換する見通しだ。日本勢が欧州債の圧縮に動くと、オーバーヘッジとなった未消化のユーロ売り・円買いを解消するためのユーロ買い/円売りがユーロ/円を押し上げる場面も見込まれる。ドル/円の上昇圧力ともなるため、一定の留意が必要だ。
日銀は動かず、円安容認か
こうした中、日本でも4月分の生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数(コアコアCPI)の伸びが、前年比でプラス圏に浮上する見込みだ。ただ、欧米に比べてインフレの程度は鈍く、失業率もパンデミック前の水準まで下がっていない。金融政策の転換を時期尚早とする黒田東彦日銀総裁の主張は妥当と言え、在任期間中に緩和スタンスが変わる可能性は低い。ただ、こうしたスタンスは、世界的にみればやはり特異と映る。過去最大規模に膨らんだ輸入総額と並んで、市場の円安期待を刺激し続けるだろう。
経験則は一時棚上げ
経験則に従えば、購買力平価(昨年末ドル96円51銭、国際通貨基金)から3割を超えるかい離を抱えた現在のドル/円は、既にオーバーシュートの領域だ。本来なら続伸はおろかその維持も困難であり、反落リスクを警戒すべきだ。しかし、パンデミックや紛争、インフレと過去数十年間に起こらなかったことが、同時進行している上に長引く見通しだ。こうした状況下では、経験則もその妥当性を問われる。しかも、日本でさえインフレに見舞われており、市場のインフレ期待も上昇傾向にある。実質金利の低下が、引き続き円安圧力となりかねない。このため、調整局面を経て投機筋の円売りポジションが軽くなった後、再び騰勢を回復。年末にかけて2002年の高値135円15銭付近を上抜けしていく可能性が引き続き高いように思われる。
介入はあるか
この流れが反転する要因として協調(ドル売り)介入が挙げられる。実際、インフレを助長するユーロ安に対し、フランス中銀総裁などECB高官も苦言を呈している。参院選を前に、日本でもインフレを懸念する「悪い円安論」が根強い。人民元も対ドルで6.8元付近まで下落しており、インフレ圧力がじわりと高まってきた。仮に7元まで続落すれば、トランプ大統領(当時)が中国を為替操作国に認定した2019年以来だ。中間選挙を控える米国でも、ドル高に対して何らかの政治的配慮が働くかもしれない。一段とドル高が進んだ場合、一定の歯止めをかけようとする国際的な合意が形成されやすい環境とは言える。各国高官から為替相場の動きに関して、「懸念(Concern)が共有されている」といったフレーズが出ないか、要注意だ。もっとも、現在の動きは各国・地域の経済情勢と金融政策を映じたものであり、合理的だ。仮に通貨安を嫌うのであれば、金融政策の見直しが必要であり、それを無視したまま、協調介入が行われても、相場の潮流を変えることは難しいだろう。
長期的な円安材料
この間、国際通貨基金(IMF)からは、特別引き出し権(SDR)を構成する通貨バスケット比率の見直しが発表されている。向こう5年間の比率は、ドル43.38%(プラス1.65%)、ユーロ30.93%(マイナス1.62%)、円7.59%(マイナス0.74%)、ポンド7.44%(マイナス0.65%)、人民元12.28%(プラス1.36%)とされた(カッコ内は見直し前との比較)。SDRの最大の狙いは、複数の通貨を参照することで、特定通貨の影響による価値の変動を抑制することだ。各国の中央銀行も、自身の外貨準備の通貨別アロケーションを検討する上で、SDRのバスケット比率を考慮しよう。その点、デフレ脱却のためなら通貨安もいとわない日銀に対し、中国人民銀行は政策目標に経済成長を促すための「通貨価値の安定維持」を据える。昨年末の世界の外貨準備(Allocated Reserves)に占める人民元の割合は約2.8%と円の半分だが、それでも着実に上昇しつつある。仮に6月末に発表される今年3月末のデータで両者が接近していれば、円と元の将来的な逆転も現実味を増す。自ずと相場にも反映されていくのではないか。 

 

●円相場、128円22〜23銭 5/19
19日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=128円22〜23銭と、前日(129円32〜33銭)に比べ1円10銭の円高・ドル安となった。
19日の東京株式市場は、前日に米国株が急落した流れを受けて売りが広がり、日経平均株価は5営業日ぶりに大幅反落した。午前には下落幅が700円を超える場面もあった。終値は前日比508円36銭安の2万6402円84銭。前日の米国市場では、米小売り大手の決算が市場予想を下回り、インフレが企業業績に及ぼす影響への懸念が強まった。東京市場でも投資家心理が悪化し、小売業や電気機器をはじめ幅広い業種、銘柄が値下がりした。ただ、売りが一巡した後は値頃感から買いも入り、午後には下げ幅が縮小した。
●ロンドン外為 円、127円台後半 5/19
19日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米長期金利の低下や株安を受けて円買い・ドル売りが優勢となり、1ドル=127円台後半に上昇した。正午現在は127円65〜75銭と、前日午後4時(128円40〜50銭)比75銭の円高・ドル安。
海外市場の流れを引き継ぎ、128円台半ばで始まった後、じりじりと値上がりした。127円台半ばに近づくと上昇は一服し、もみ合いとなった。
対ユーロは1ユーロ=134円45〜55銭(前日午後4時は135円00〜10銭)と、55銭の円高・ユーロ安。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0525〜0535ドル(1.0505〜0515ドル)。
ポンドは1ポンド=1.2420〜2430ドル(1.2405〜2415ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9760〜9770フラン(0.9890〜9900フラン)。
●ニューヨーク外国為替市場概況・19日 ユーロドル、反発 5/19
19日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは反発。終値は1.0588ドルと前営業日NY終値(1.0464ドル)と比べて0.0124ドル程度のユーロ高水準だった。欧州時間に公表された欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨(4月14日分)を受けて、ECBが7月にも利上げに踏み切るとの見方が強まると全般ユーロ買いが先行。5月米フィラデルフィア連銀製造業景気指数や4月米景気先行指標総合指数など、この日発表の米経済指標が軒並み予想より弱い内容だったことが分かるとドル売りも活発化した。前日の高値1.0564ドルを上抜けて、3時前には一時1.0607ドルまで上値を伸ばした。
なお、主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時102.66まで低下した。
ドル円は続落。終値は127.79円と前営業日NY終値(128.23円)と比べて44銭程度のドル安水準だった。前日の米国株相場の急落や本日の欧州株相場の下落を背景に、リスク回避の円買いが先行。米10年債利回りが一時2.77%台まで低下したこともドル売りを促し、22時30分前に一時127.03円と4月27日以来の安値を付けた。予想を下回る5月米フィリー指数なども相場の重し。
ただ、売り一巡後は下げ渋る展開に。節目の127.00円や4月27日の安値126.95円が目先サポートとして意識されたほか、米10年債利回りが低下幅を縮めたことが相場を下支えし、127.84円付近まで持ち直した。
ユーロ円は反発。終値は135.30円と前営業日NY終値(134.17円)と比べて1円13銭程度のユーロ高水準。ECB理事会議事要旨を手掛かりにユーロ買いが強まった欧州市場の流れがNY市場に入っても継続した。下落して始まった米国株相場が一時プラス圏に浮上するなど底堅く推移すると、リスク回避の巻き戻しが進み一時135.43円付近まで値を上げた。

 

●1ドル130円超は「恩恵的円安」 日本経済に“神風”が吹く日 5/20
2022年4月28日、1ドル=130円台と20年ぶりの円安水準を記録。長年のデフレ下で円高は敵視されてきたが、今度は「悪い円安」ともいわれている。
結局、円安は日本にとって“天国”か“地獄”か。 今回、本誌は“天国派”を掲げる気鋭のエコノミストに尋ねた。
金融緩和を続ける日本だけが経済成長する
「今、メディアでは『円安が国を滅ぼす』といった議論が盛んですが、それは的外れな主張。経済効果を考えれば、円安は国を滅ぼすどころか、国益そのものです」
こう話すのは、元内閣官房参与の高橋洋一氏だ。
日銀の黒田東彦総裁は、円安について「現状ではプラス面のほうが大きい」と発言している。対して、日本商工会議所の三村明夫会頭は「大きな経営上の問題になる」と懸念を示す。
「こうした見解の違いは、それぞれどこに着目するかによって生じるのです。円安は輸出企業にとってはメリットですが、輸入企業にとってはデメリットとなるのは事実です。中小企業の場合、大企業と比べて輸出が少ない半面、輸入が多く、円安によるデメリットを受けやすい。三村会頭の意見は、中小企業の声を代弁しているのです」(高橋氏)
だが、日本経済全体を見れば、円安のメリットのほうがはるかに大きいという。
「黒田総裁の発言は、日本経済全体を考慮したものです。輸出企業は大企業が多く、いずれも世界市場で伍していけるエクセレント企業です。エクセレント企業に恩恵をもたらす円安のほうがインパクトは大きく、日本経済全体のGDPを押し上げる効果があるのです。もちろん、GDPが増えれば雇用拡大に繋がり、労働者にとってもメリットとなります」
IMFの世界経済見通しによれば、2022年の経済成長率は、欧米は2021年より低くなるが、日本の経済成長率は高くなるとされている。
「これは日本だけが金融緩和を続け、円安を維持して経済成長するとともに、世界経済のマイナスを補填することを示しています。経済成長を促す円安を是正しろという声が海外から上がるのならまだしも、国内からそうした声が上がるのは、明らかに『国益』に反する。驚くべきことです」(同前)
日本産業大復活で賃金もアップ
武者リサーチ代表の武者陵司氏はこう話す。
「長期円安の時代が到来しました。円安の進行は不可逆的なもので、『円安短命論』も『悪い円安論』も、早晩消え去っていくはずです。円安は企業業績の向上をもたらし、日本の産業競争力を強めていく。円が弱くなれば、輸出が増え輸入が減る。海外移転工場の国内回帰、輸入品の国内代替も起こる。訪日観光客も増える。日本国内への投資と生産が増え、所得が増える。賃金も上昇するはずです。円安は、日本産業復活の“神風”となるでしょう」
過去の超円高時代には、その逆のことが起きた。日本企業は海外に工場を移し、国内は安い中国製品に浸食された。
「ひと言でいうと、円高は日本の競争力を徹底的に奪った。経済活動は価格競争力がすべてですが、円高によって価格競争力を失ったために、日本製品は世界で戦えず、貿易黒字はあっという間に消失しました。かつて1ドル=360円だったのが、一時は80円と4倍以上の円高になったわけですが、こんなに通貨が強くなった国は日本以外にありません」(武者氏)
それは、アメリカが日本の競争力を奪うための「懲罰的円高」だったという。
「とくにリーマンショック後の2008年〜2012年の超円高は、すでに困難な状況にあった半導体や液晶パネル、テレビ、携帯電話、PCなどのハイテク産業を壊滅させたのです」
それが今、「恩恵的円安」が訪れた。背景には、アメリカの政策転換があるという。
「円安の底流には、米国経済の突出した強さ、そして米中の対立がある。アメリカは中国を排除したサプライチェーン構築のために、日本の産業競争力を復活させることが必須だと考えているのです。つまり、その推進力となる円安が、アメリカの国益と直結したのです」(同前)
デフレ進行を防ぐために黒田総裁の判断は正しい
20年ぶりの円安水準でも、日銀の黒田総裁は金融引き締めによる金利の引き上げを否定している。円安の容認だ。
経済アナリストの森永卓郎氏が語る。
「その理由は、じつは日本は長期のデフレから脱却していないということです。輸入品の価格が上がっているので、インフレに見えるだけなんです。デフレを抑えるためには金融緩和政策を続けなければならないというのが、黒田総裁の判断です。ここで金利を上げたら、一気に景気が失速してしまうでしょう。正しい決断だと思います」
円安はモノづくり日本の復活にも繋がるという。
「円安は短期的には物価高というデメリットもありますが、日本の工場をもう一度再生するチャンスでもあります。かつて日本の平均賃金は先進国でもトップクラスでしたが、現在は韓国を下回った。これは言い換えれば、日本でいいモノを安く作れるようになったということです。円安を維持できれば、すごい勢いで製造拠点が日本に戻ってくるでしょう。それにより、雇用も復活します」(同前)
懸念されるのは、岸田文雄首相が打ち出そうとしている円安回避策だという。
「黒田総裁は2023年4月で任期が切れますが、岸田首相は再任しないでしょう。そして円安を回避するために財政、金融引き締めをやる。結果、金利がハネ上がって物価が下がっていくわけです。高金利のもとでデフレが起こるわけですが、そうなると景気は冷え込み、かつて経験したことのない景気悪化が訪れると思います。それは、昭和恐慌の二の舞となるかもしれません」
昭和恐慌で、当時の濱口雄幸内閣は、金本位制に復帰するため円高に誘導する政策を進めようとして金融引き締めをおこない、それが日本経済を破局に導いた。
「典型的な通貨政策の弊害をもたらしました。岸田首相は同じ轍を踏む危険性が高い。円安のデメリットも、“岸田恐慌”のインパクトとは比較にならないでしょう」 
●外為:1ドル128円12銭前後とドル高・円安で推移 5/20
20日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=128円12銭前後と、午後5時時点に比べ20銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=135円69銭前後と42銭のユーロ高・円安で推移している。
●ロンドン外為20日 ユーロ、対ドルで下落 持ち高調整の売り 5/20
20日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=1.0550〜60ドルと前日の同時点に比べ0.0030ドルのユーロ安・ドル高で推移している。前日に増えたユーロ買い・ドル売りの持ち高を調整する目的のユーロ売り・ドル買いが優勢となっている。前日は欧州中央銀行(ECB)が公表した4月の理事会の議事要旨から、7月にも利上げするとの見方が強まっていた。
円は対ユーロで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=135円10〜20銭と、前日の同時点に比べ30銭の円安・ユーロ高で推移している。
英ポンドは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.2460〜70ドルと前日の同時点に比べ0.0020ドルのポンド安・ドル高で推移している。20日に発表の5月の英消費者信頼感指数が過去最低水準に低下したのを受けたポンド売り・ドル買いが優勢となっている。
●NY円、127円後半 5/20
20日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比09銭円安ドル高の1ドル=127円87〜97銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0563〜73ドル、135円04〜14銭。
日銀の黒田東彦総裁が先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で金融緩和継続の姿勢を改めて示したことから、日米の金融政策の違いが意識されて円売りドル買いが先行した。その後、米長期金利が低下したことから円を買い戻す動きも出た。
●米ドル/円上昇は続くのか?調整が大きくなるシナリオとは 5/20
米ドル/円相場は年初の1ドル115円台から一時、15円もの円安ドル高進行となったことで、市場には140〜150円まで円安ドル高が進むとの展望も出てきました。
米国が利上げサイクルに入った一方、日本は金融緩和継続のスタンスを維持していることで日米金利差が拡大していることが米ドル/円相場上昇を牽引していますが、このシナリオに死角はないのでしょうか。
株が下がると米金利も下がる?
米連邦準備制度理事会(FRB)が3月に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)から利上げを開始しました。5月には0.5%もの利上げを実施、6月と7月にも0.5%の利上げが見込まれています。
政策金利の急激な引上げを織り込む形で米国債市場でも利回りが上昇してきましたが、長期金利が3%台に乗せると上昇の上値が重くなってきました。あまりの金利上昇のスピードに耐えかねて米国株が下落基調を強めると、米国株から債券市場へと資金がシフト、結果金利が押し下げられるという事象につながります。
経済が安定し、市場がリスクを取れる環境で債券から株へと資金がシフトすることで健全で安定的な金利上昇サイクルが形成されますが、足下ではウォルマートやターゲットなど小売業決算の悪化などから景気の先行きへの不安=リセッション警戒が高まりつつあります。
暗号資産市場の急落などリスク資産の下落も相まって米国株市場の下落色が強まっており、金利が上がりにくくなってしまいました。これが、ここからの米ドル/円上昇の上値を抑えてしまう可能性があります。
サプライズとショックが残されている日銀の方針転換
4月の日銀の金融政策決定会合で、黒田総裁は「連続指値オペ」にて日本の長期債利回りの0.25%以上の上昇を許さないスタンスを改めて明確に示しました。年初からの急激な円安進行で金融政策の修正を予測する向きもありましたが、それを一蹴したことでその後更に円安が進む展開となりました。
これで2023年4月の黒田総裁の任期までは日銀の緩和政策は続く、というのが市場のコンセンサスとなりました。もし、日銀の政策が豹変することがあれば今のマーケットには大きなサプライズとなります。黒田総裁が政策を明確に転換しなくても、任期が後1年も残されていないということもリスクと考えられます。
今週5月16日、某金融ベンダーが前日銀副総裁である中曽宏氏のインタビュー記事を掲載しました。
そこで、中曽氏は「アベノミクスについて、経済再生の処方箋としては正しいが“特に第一の矢の金融政策に相当負担がかかった”と指摘。潜在成長力を少しでも引き上げることができれば、賃金が上昇して家計の値上げ許容度が高まり、物価や金利の上昇で“金融政策が正常化できる”」と金融政策の正常化の可能性に言及していたことで、米ドル/円相場がこれに反応し円高に触れるという局面がありました。
この記事では「市場では、中曽会長が次期日銀総裁の有力候補の1人とみられている」としており、日銀総裁後任人事で名前が上がっている人物の金融政策が引き締めに転じる可能性があるという市場の思惑につながる可能性を感じさせるものであったかと思います。
今後、日銀総裁の後任人事を巡る報道や、その人物が掲げる金融政策がどのようなものか、といった視点が市場を動かす材料となる局面が増えてくるかもしれません。もし黒田日銀総裁の金融緩和路線が継続されないと市場が判断するようなことがあれば、米ドル/円相場は大きな調整を強いられる可能性もありそうです。
●資源高も相まって多くの企業が「悪い円安」を意識 5/20
2022年4月28日、円相場は対ドルで一時130円台まで下落し、02年4月以来20年ぶりとなる歴史的な円安水準に突入した。ドル円相場は3月初めまで1ドル=110円台半ばの水準で推移していたが、その後、わずか2カ月足らずで10%を超える急速な円安が発生した格好だ。
一般的に、円安は輸出数量の増加を通じて日本経済にプラスの影響をもたらすと説明される。しかし、現在はそうした円安メリットが表れにくい状況だ。これまでに日本の製造業企業は海外への生産移転を進めており、円安が輸出増加に結び付きにくくなっているほか、足元では半導体などで供給制約が発生していることから、自動車などの生産を大幅に拡大することが難しい。インバウンド観光客についても、コロナ禍で入国制限が敷かれており、当面の間は本格的な需要回復が見込めない。
一方、円安のデメリットは輸入コストの増大を通じて顕在化している。円安が資源高と同時進行することで、輸入物価の上昇を増幅させる構図だ。実際には、22年1〜3月期時点で円安の影響は輸入物価上昇率の4分の1程度であり、輸入物価上昇の主因は資源高であるが、企業から見れば原材料コストの上昇要因として円安のデメリットが意識されやすい状況といえる。
産業別に円安の影響を見てみよう。図表は、為替レートが10%円安になった場合に各産業が直面する短期的なプラス/マイナスの影響を試算したものだ。1円安によりドル建てで契約している輸出価格の円換算値が上昇して売上高が増加する影響、2輸入価格の円換算値が上昇して輸入コストが増加する影響、3輸入品価格の上昇が国内のサプライチェーンを通じて投入コストを押し上げる影響、4海外直接投資収益の円換算額が増加する影響──をそれぞれ表示している(注:各産業のドル建て部分の輸出入額が為替変動の影響を受けると想定し、輸入品の投入価格上昇による国産品価格への影響についてSNA産業連関表を用いて試算している。円安による輸出数量の増加は考慮していない)。
図表の「合計」を見るとマイナスとなる産業が目立ち、短期的には円安によるコスト上昇を受けて収益が下押しされる企業が増えることが分かる。円安の恩恵は輸出競争力のある輸送用機械や電子部品・デバイスのほか、卸売り(商社)など一部の産業に限られる。 
 
 

 

●NY市場サマリー(20日)ダウ反発も8週連続安、ドルは対ユーロで上昇 5/21
<為替> ドルが対ユーロで上昇。米連邦準備理事会(FRB)による積極的な引き締めの動きが経済成長の足かせになるという懸念が台頭し、リスク選好度が低下した。
ドルは対ユーロで0.3%高となった。しかし、週初からの大幅な下げを補うには至らなかった。週間では対ユーロで約1.3%下落し、2月初旬以来の大幅な下げを記録した。
キャピタル・エコノミクスのジョナス・ゴルターマン氏はノートで「最近の上昇を受け、ドルは一服商状となることが見込まれていた」と述べた。
マネックスUSAのトレーディングディレクター、フアン・ペレス氏は「世界経済が上期の低迷から回復し、見通しが改善すれば、ドルは一段高となり、他の通貨にも上昇余地が存在する」と述べた。
他の安全通貨も買われた。週間では、スイスフランは対ドルで約3%、円も対ドルで約1%それぞれ上昇する見通し。
ポンド/ドルは0.1%高。週間では2020年12月以来の大幅な伸びを記録する見通し。
暗号資産(仮想通貨)のビットコインは4.23%安の2万9009.94ドル。
●円安基調変わらず 金利差拡大は継続、実力行使もなく―G7 5/21
先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、為替の安定が重要だとする共同声明を採択した。鈴木俊一財務相は、最近の円安は急速と説明し、G7での「緊密な意思疎通」と「適切な対応」を呼び掛けた。ただ、米欧との金融政策の違いによる金利差拡大は続き、円安要因は増幅する。円買い介入など実力行使を伴わない「空砲」では、円安基調は変わりそうもない。
4月下旬の日米財務相会談で、鈴木氏は急激な円安への懸念を訴えたが、その後も円安は進行。5月初めには東京市場で一時1ドル=131円台と約20年ぶりの円安水準となった。輸入原材料の価格高騰などの悪影響も目立ち始め、日本側はG7で円安けん制を狙った。しかし、イエレン米財務長官はG7開幕に先立ち開いた記者会見で、ドル高は「理解できる」と事実上容認した。
1990年代のアジア通貨危機や日本の金融危機の際に円買い介入を主導した元財務官の榊原英資氏は「インフレ抑制の観点からは(米国にとって)ドル高の方が都合が良い」と指摘し、協調介入で合意を得るのは困難だとの認識を示している。
市場では1ドル=135〜140円まで円安が進むとの見方が広がる。日本はエネルギーと食料を海外に依存しており、代金を外貨で支払う際に円売り圧力がかかりやすく、「積年の課題を放置してきたツケを払わされている」(シンクタンク)との声も上がる。円安是正には、海外資金を国内に呼び込む成長戦略や、エネルギー・食料自給率を高める構造改革が王道と言えそうだ。
●NY円、小反落 1ドル=127円85〜95銭 リスク回避のドル買いで 5/21
20日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3日ぶりに小反落し、前日比05銭円安・ドル高の1ドル=127円85〜95銭で取引を終えた。米株式相場が大きく下げた場面で、流動性が高くリスク回避時に買われやすいドルが対ユーロなどで上昇し、円売り・ドル買いがやや優勢だった。ただ、ドルと同様に低リスク通貨とされる円も買われたため、円相場は方向感に乏しかった。
20日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反発して終えたが、午後には一時600ドル超下げた。前日に欧州中央銀行(ECB)による早期の利上げ観測からドル売り・ユーロ買いが進んでいた反動もあり、対ユーロなどでドルを買い直す動きが広がり、対円でもドルを支えた。
円にもリスク回避目的の買いが入り、円相場は高くなる場面もあった。20日の米債券市場で長期金利が低下し、日米の金利差拡大の見方がやや薄れたのも円買い・ドル売りを促した。
円の安値は128円24銭、高値は127円60銭だった。
円は対ユーロで反発し、前日比15銭円高・ユーロ安の1ユーロ=135円05〜15銭で取引を終えた。
ユーロはドルに対して反落し、前日比0.0015ドル安の1ユーロ=1.0565〜75ドルで終えた。米株安を受けてリスク回避目的のユーロ売り・ドル買いが優勢だった。
ユーロの安値は1.0533ドル、高値は1.0580ドルだった。 
●NY外為 円、127円台後半 5/21
週末20日のニューヨーク外国為替市場では、新規材料難となる中、円相場は1ドル=127円台後半を中心に推移した。午後5時現在は127円87〜97銭と、前日同時刻(127円78〜88銭)比09銭の円安・ドル高。
この日は米主要経済指標の発表がなく手掛かり難の状況。128円06銭でニューヨーク市場入りした後、いったん円売り・ドル買いが優勢となり、128円24銭まで円安が進んだ。
円売り一巡後は株が下げ幅を拡大し、米長期金利がじりじりと低下したのを眺め、円買いが徐々に強まる展開。ただ、売り込まれていた株が取引終盤に値を戻し、リスク回避の動きが弱まると、円は再び引き緩むなど、方向感に乏しい値動きが続いた。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0563〜0573ドル(前日午後5時は1.0580〜0590ドル)、対円では同135円04〜14銭(同135円19〜29銭)と、15銭の円高・ユーロ安。
●NY円、小反落 1ドル=127円85〜95銭 リスク回避のドル買いで 5/21
20日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3日ぶりに小反落し、前日比05銭円安・ドル高の1ドル=127円85〜95銭で取引を終えた。米株式相場が大きく下げた場面で、流動性が高くリスク回避時に買われやすいドルが対ユーロなどで上昇し、円売り・ドル買いがやや優勢だった。ただ、ドルと同様に低リスク通貨とされる円も買われたため、円相場は方向感に乏しかった。
20日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反発して終えたが、午後には一時600ドル超下げた。前日に欧州中央銀行(ECB)による早期の利上げ観測からドル売り・ユーロ買いが進んでいた反動もあり、対ユーロなどでドルを買い直す動きが広がり、対円でもドルを支えた。
円にもリスク回避目的の買いが入り、円相場は高くなる場面もあった。20日の米債券市場で長期金利が低下し、日米の金利差拡大の見方がやや薄れたのも円買い・ドル売りを促した。
円の安値は128円24銭、高値は127円60銭だった。
円は対ユーロで反発し、前日比15銭円高・ユーロ安の1ユーロ=135円05〜15銭で取引を終えた。
ユーロはドルに対して反落し、前日比0.0015ドル安の1ユーロ=1.0565〜75ドルで終えた。米株安を受けてリスク回避目的のユーロ売り・ドル買いが優勢だった。
ユーロの安値は1.0533ドル、高値は1.0580ドルだった。
●円安基調変わらず 金利差拡大は継続、実力行使もなく―G7 5/21
先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、為替の安定が重要だとする共同声明を採択した。鈴木俊一財務相は、最近の円安は急速と説明し、G7での「緊密な意思疎通」と「適切な対応」を呼び掛けた。ただ、米欧との金融政策の違いによる金利差拡大は続き、円安要因は増幅する。円買い介入など実力行使を伴わない「空砲」では、円安基調は変わりそうもない。
4月下旬の日米財務相会談で、鈴木氏は急激な円安への懸念を訴えたが、その後も円安は進行。5月初めには東京市場で一時1ドル=131円台と約20年ぶりの円安水準となった。輸入原材料の価格高騰などの悪影響も目立ち始め、日本側はG7で円安けん制を狙った。しかし、イエレン米財務長官はG7開幕に先立ち開いた記者会見で、ドル高は「理解できる」と事実上容認した。
1990年代のアジア通貨危機や日本の金融危機の際に円買い介入を主導した元財務官の榊原英資氏は「インフレ抑制の観点からは(米国にとって)ドル高の方が都合が良い」と指摘し、協調介入で合意を得るのは困難だとの認識を示している。
市場では1ドル=135〜140円まで円安が進むとの見方が広がる。日本はエネルギーと食料を海外に依存しており、代金を外貨で支払う際に円売り圧力がかかりやすく、「積年の課題を放置してきたツケを払わされている」(シンクタンク)との声も上がる。円安是正には、海外資金を国内に呼び込む成長戦略や、エネルギー・食料自給率を高める構造改革が王道と言えそうだ。
●《任期は来年4月まで》黒田総裁の「円安は日本経済にプラス」は正しかった? 5/21
なぜ急速に円安が進んだのか
急速な円安・ドル高が進行しています。今年3月上旬には1ドル110円台半ばだったのが、4月後半には130円近くまで下落。約20年ぶりという安値水準を突破してもなお、勢いは止まりません。
この円安は、どこまで進むのか。市場では、今年年末から来年初めにかけて140円から150円ぐらいまで円安になるだろうという予測が出ています。私も、おおむねその水準まで円安が進行するだろうと見ています。
ではなぜ、これほど急速に円安が進んだのか。その最大の理由は、日本とアメリカの金利差にあります。
アメリカはインフレが進行し、物価上昇が急激に進行しています。そのため経済の過熱を抑えるべく、当局が金融引き締めを急ぎ、金利を上げてきました。それとは対照的に、日本はデフレが長く続いてきました。ようやく物価上昇が始まったとはいえ、まだ力強い景気回復とは言えない状況です。そこで大規模緩和を続け、ゼロ金利政策を続けています。
日米の金利差が開くとどうなるか。10年物の利回りがほぼゼロに近い日本国債よりも、約3%近くまで上がった米国債を持っている方が得ですから、投資家の間では円を売ってドルを買う動きが強まる。そのため、円安が進むのです。
この基調は、当面続くでしょう。アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は、年末に向けて継続して利上げを進める構えです。欧州中央銀行も量的緩和を縮小させ、利上げに向かっている。そうした中、日本だけが今後も実質ゼロ金利を続けることが予想されるからです。
「円安は日本経済・物価にプラス」?
日本銀行の黒田東彦総裁は「円安は日本経済・物価にプラス」と繰り返し発言し、2013年3月の就任以来、推し進めてきた金融緩和路線を堅持しています。その結果、日本経済はデフレから脱却し、ようやく物価上昇率が1%台にまで回復してきました。これは黒田総裁の大きな業績であり、評価に値すると思います。
今回の円安を受けて、黒田総裁もさすがに「過度な円安はマイナス」と発言し、従来の主張を一部修正しました。しかしながら、黒田総裁が金融緩和路線そのものを大きく変更することはないでしょう。黒田総裁の任期は来年4月8日まで。そう考えると、少なくとも黒田総裁の任期中に円安基調が変わることはないとみてよいということになります。
ただ、円安に不安を抱く人も多いでしょう。とくに気がかりなのは、家計の圧迫です。折からのガソリン価格や小麦価格の高騰にこの円安が重なり、輸入品の値上がりを心配する人も増えています。
今後、円はどうなるのか。なぜ日銀は円安を続けるのか。円安に打つ手はないのか。円高になる日は来るのか、来るとすればどのタイミングなのか――こうした疑問について、かつて大蔵省(現・財務省)財務官として為替政策にかかわった立場から、お話ししたいと思います。
円安のメリットがなくなった
今回の円安について、鈴木俊一財務大臣は「どちらかというと悪い円安」と表現しました。では、「悪い円安」になっているのはなぜでしょうか。
日本は戦後、原材料を輸入して加工して輸出する「貿易立国」として経済成長を遂げてきました。そのため「輸出を促進する円安のほうが日本経済にプラス」という認識が長らく共有されてきました。円安であれば、日本からの輸出品の価格はドル換算ベースで安くなるため、価格競争で優位に立てるからです。
ところがこの20年、経済のグローバル化が進み、輸出企業の多くが消費市場に近い海外に製造拠点を移しました。現地で原材料を調達し、現地で加工して現地で販売する。そうしたグローバル企業にとっては、円安のメリットはありません。
国内に生産拠点を残している企業でも、全部が円安でメリットを享受できるわけではありません。なぜなら原材料の輸入価格が上がるためです。体力のある輸出企業ならば、販売価格も押し上げられるため、コスト上昇分を輸出価格の増分と相殺できます。一方、輸出をしていない中小企業は、コストが増えるだけなので、円安の恩恵を受けられません。
しかも、もともと原油高基調であったところにロシアのウクライナ侵略が重なり、天然ガスの供給も不足気味となり、エネルギー価格が全面高となっています。それに加えて円安となれば、ダブルパンチです。
いずれにせよ、これだけ経済がグローバル化して企業が海外に出てしまうと、円安のメリットよりもデメリットの方が感じられてしまうのは、当然の帰結です。
「為替介入」はできないのか?
では、この円安に対して、打つ手はあるのでしょうか。
為替市場で急激な変動を抑えるため、各国の通貨当局が自国通貨を売ったり買ったりする「為替介入」が行われることがあります。為替介入は財務大臣の権限で行われ、日銀が大臣の代理として、その指示に基づいて売買の実務的なオペレーションを担うことになっています。
かつて日本は円安が善しとされていたこともあり、急激に円高が進行した際に「円売りドル買い介入」を行ってきました。これによって市場に流通する円の量が増え、ドルに対して相対的に価値が下がるため、円高を抑えることができたのです。今回はその逆の「円買いドル売り介入」をしないのかと、市場関係者たちは注視していました。
ただ、為替介入はそう簡単に行われるものではありません。直近では2011年11月の円売り介入が最後です。円買い介入のほうは1998年6月以来、実に24年間も行われていません。為替介入がそう簡単にいかない理由はのちほど詳述しますが、要するに相手国と協調しないとうまく行かないからです。
ときには「口先介入」という手段が執られることもあります。政府側が実際に市場に資金を投じることなく、要人の発言によって市場に「為替介入があるかもしれない」というメッセージを与え、市場の行き過ぎをコントロールするという手段です。
私自身、財務官や国際金融局長(現・国際局長)の頃、円相場の動きが過熱した際には会見などでメッセージを発することがありました。わりとはっきりと物を言うせいで、「ミスター円」という呼び名が広がったのだと思います。もちろん、ズバズバものを言うからといって、国に不都合なことを言ったことはありません(笑)。
アメリカとの協調ができない
為替介入はなぜ難しいのか。それは、2つのハードルがあるからです。
1つ目のハードルは、「アメリカの理解が得られるか」という点です。
為替レートは単独で決められるものではなく、相手があって初めて決まるものです。円安を是正しようとすれば、必然的に基軸通貨であるドルにも影響が出ます。そこで、為替介入を行う際は、事前に日米両国の通貨当局が合意し、よくタイミングを見計らって呼吸を合わせてやって、初めて効果的に実行できるのです。相手国(この場合はアメリカ)が賛成しない介入は、効きません。
私が財務官を務めた1990年代に「円売りドル買い介入」でうまく円高を是正できたのは、日米の意思疎通がうまく行っていたからです。
当時、クリントン政権で財務長官を務めていたロバート・ルービンは、「強いドルが国益にかなっている」というスタンスを貫いていました。それまでの「ドル安で米国の輸出を増やす」というスタンスから大きく政策を転換したのです。ルービンは、ドルの価値を高めることで米国債を売り、世界中から低利で資金を集めようとしていました。ニューヨーク市場に世界中から大量の資金を集めることで株価や債券市場を押し上げ、貿易赤字を補い、国際収支のバランスを取ったのです。
一方、日本は輸出を後押しするために円安を期待するスタンスでした。そのため、日米の利害は基本的に一致していたのです。
もっとも、97年、98年には例外的に「円買いドル売り介入」をしています。これは円高ドル安方向の介入であるため、一見、日米の意向が逆方向であるかのように見えます。ただ、やはりこれもアメリカの意向に沿ったものでした。
当時、国際金融市場に吹き荒れていたのはアジア通貨危機の嵐でした。タイ、インドネシア、韓国がIMF(国際通貨基金)の管理下に入り、その影響は日本にも及んでいました。また、日本国内では金融危機が起き、北海道拓殖銀行が破綻するなど、深刻な状況に陥っていました。そうした状況下、日本としては過度の円安進行で株安が進み、企業マインドが冷え込んでいく連鎖を回避する必要がありました。
これに対してアメリカも、行き過ぎたドル高で資金が米国市場に過剰に集中し、株式市場を不安定にしかねないという懸念がありました。そこで日米金融当局の利害が一致し、協調介入したのです。アメリカが「日本政府の事情を慮った」のではなく、アメリカの国益にかなうからこその介入でした。昔から「アメリカ・ファースト」ということです。
「円買い介入」には限界がある
では現在はどうか。アメリカの最優先課題は、インフレの抑制です。日本が「円買い介入をして円高に誘導したい」と言い出したとしても、それにアメリカが頷く可能性は低いでしょう。なぜなら「ドル売り」介入をしたらドルの値が下がり、輸入物価を押し上げてインフレを悪化させてしまうからです。
2つ目のハードルは、円買い介入を効果的に行う手段が限られていることです。
一般的に、円売り介入は、それほど難しくはありません。短期の国債をどんどん発行して円を調達し、それを売ればいい。資金が調達出来さえすれば、限界はありません。
一方、円買い介入には限界があります。なぜなら、外貨準備高として日本が保有しているドルを売って円を買うというオペレーションになるからです。日本の外貨準備高は、直近では約1.4兆ドルですが、この蓄え以上のドルを売ることはできません。
私も円買い介入をした経験がありますが、当時の外貨準備高の10分の1を使ってしまったことがあります。「これではあと9回しかできないな」と焦った記憶があります。
円買い介入を繰り出せる回数、規模には限界があるため、それを投機筋に「もうこの後に介入はないな」と見透かされたら、一挙に反動がやってくることにもなりかねない。
そうしたこともあって、現在の局面で円買い介入をするのは相当難しいのです。
こうしてみると、この円安に対して当面は打つ手はない、ということになります。ただ、そう慌てる必要もない、というのが私の考えです。
●為替相場 5/16〜5/20 5/21
16日からの週は、ドル高の流れに調整が入った。高インフレやそれに対応する各国中銀の金融引き締め姿勢などが株式市場を押し下げている。米小売企業の決算で先行きを悲観的に見ていたことが象徴的。リスク回避ムードが広がるなかで、米国債をはじめとした主要国の債券利回りの低下につながった。ドル相場にとっては米債利回り低下が、売り圧力となっている。ドル円は127円近辺へと下落、ユーロドルは1.06近辺、ポンドドルは1.25近辺へと上昇する場面があった。クロス円は上下動。ドル相場主導の展開となるなかで、週を通した円相場の方向性はハッキリとしていない。
16日
東京市場は、ドル円が下落。週明けの東京市場では先週末のリスク警戒後退の流れもあって、堅調なスタート。ドル円は129.60台まで買われ、先週末高値を更新した。しかし、仲値を過ぎたあたりからは一転して下落。日経平均が上げ幅を縮小、先週末終値近辺へと前場で反落。ドル円は128.70近辺まで下押しされた。午後には下げ一服も、129円挟みで売買が交錯した。ユーロ円は134.40台まで買われたあとは133.75近辺まで下落。ドル円と同様の値動き。ユーロドルは1.04挟みでの推移。フィンランドに続いてスウェーデンも与党がNATO加盟支持を打ち出し、17日にも申請へとの報道が入ったが、すでに織り込み済みとされて影響は限定的に。
ロンドン市場は、円安・ドル安とリスク警戒後退の動き。ドル円の下押しは128.80付近までと東京昼頃の安値には届かず。その後は129.60近辺まで買われた。米株先物・時間外取引が下げ渋りとなったことに反応した。クロス円も買われた。ユーロ円は135円台をつけており、東京市場での下げを消した。ポンド円は158円台を回復している。ドル円以外の主要通貨ではドル売りに。ユーロドルは1.0400挟みでの揉み合いから1.0430台へと水準を上げた。ポンドドルは1.2220割れまで軟化したあとは、1.2270付近まで上昇。ユーロドルとともに買い優勢となっている。
NY市場では、売買が交錯。ドル円は朝方に129.60付近まで上昇も、その後は一時129円だ割れ。取引後半には129円台前半で揉み合った。米株の下げ一服とともにリスク回避ムードが一服。ただ、この日発表された中国4月の小売売上高と鉱工業生産が予想を下回るなど世界経済への不透明感も広がった。FRBなどの利上げ路線とともに、中国ロックダウンの影響が懸念された。ユーロドルはロンドンフィキシングにかけて売りがでて、1.03台に再び値を落とす場面があった。ただ、その後は1.04台を回復と下げ一服。ビルドワドガロー仏中銀総裁が、「ECBの正常化について明確なコンセンサスが形成されつつあり、6月の理事会は決定的なものになるだろう」と語ったことを受け、ECBの利上げ期待からユーロの買い戻しを誘っていた。ポンドドルは1.23台を回復。ただ、市場では弱気な見方も根強い。北アイルランド議定書をめぐる緊張が再び脚光を浴びポンドを圧迫する中、リスク志向が引き続き悪化した場合、今週中に1.20を割り込む可能性も指摘された。
17日
東京市場では、ドル円が下押し後に反発。朝方には128.80台まで下落。NY市場で低下した米債利回り動向が重石となった。その後は一転して買い戻され、午後には129.40台まで上昇。米10年債利回りはNY市場での2.85%台から2.92%まで上昇、ドル買いを誘った。ただ、昨日の海外市場で売りがでた129円台後半には届かず。ユーロ円は朝方にドル円の下げとともに124.50台まで下落したが、その後は135円台をしっかりと回復した。ユーロドルは朝方のドル売り局面で1.0440台へと上昇。その後も底堅さを維持して1.04台半ばでの揉み合いに。
ロンドン市場は、欧州通貨が買われている。ポンドはロンドン朝方に発表された英雇用統計の改善を好感して上昇。1−3月期失業率が3.7%へと低下、求人数が失業者数を統計開始以来初めて上回った。賃金上昇率も加速している。これを受けて、ポンドドルは1.23台から1.24台後半へ、ポンド円は159円台から161円台へと大きく買われた。ユーロ相場も連れ高となったが、クノット・オランダ中銀総裁が、7月利上げについて25bpが現実的としながらも、インフレが広範かつ累積的に上昇するならば50bp利上げの可能性排除すべきではない、と発言したことで、ユーロが一段高となった。ユーロドルは1.04台後半から1.05台前半へ、ユーロ円は135円台から136円台乗せへと上伸した。対ポンドではユーロ売りが先行も、発言後は買い戻しが入っている。ドル円は129円台前半での揉み合いが中心で、一時129.50レベルを上回ったが、すぐに売り戻されている。欧州株や米株先物・時間外取引は堅調に推移。NY原油先物は115ドル付近へと上昇。リスク動向は回復している。
NY市場では、ドル円が買い戻されるなかで、ドル自体は売り優勢。ドル円は買い戻しの流れが続き、129円台で推移している。リスク回避が一服しており、米株式市場も買い戻しが膨らむ中で、円安の動きがサポートした。ロックダウンを実施していた中国の上海市が6月から企業の生産活動と市民生活を全面的に正常化すると発表したことが好感されている模様。NY朝方に4月の米小売売上高が発表にされ、高インフレにもかかわらず商品への需要がなお底堅いことを示していた。午後になってパウエルFRB議長のイベントでの発言が伝わった。議長は「経済が想定通りに推移すれば、0.50%利上げを議題に乗せる」と述べたほか、「必要なら中立水準を超える利上げを躊躇しない」とも述べていた。また、「いまにして思えば、もっと早く利上げすべきだった」と、後手に回ったことを暗に認めるような発言も聞かれた。ユーロドルは買い戻しが加速、ストップを巻き込んで1.05台半ばまで上昇。ポンドドルは1.25台目前まで買われた。ただ、大台乗せには至らず1.24台後半に落ち着いた。ユーロ、ポンドともにロンドン市場からの堅調な流れを維持した。
18日
東京市場は、ドル円の上値が重かった。朝方に129.50レベルを上回ったが、すぐに売りに押されると午後には129円を一時割り込んだ。前日NY市場でドル買いを誘った米債利回りの上昇が一服したことに反応。米10年債利回りは節目の3%をつけきれずに2.96%台へと低下した。日経平均が上げ幅を縮小したこともドル円の売り圧力に。中国の住宅市場が弱い結果だったことがリスク警戒の動きとなった。ユーロ円も136円台半ばから135円台後半へと軟化した。ユーロドルは前日の上昇を受けて1.0560台まで買われたが、その後は利益確定売りなどで1.0520台まで反落。豪ドルが軟調。中国住宅指標とともに豪州の第1四半期賃金指数が予想を下回ったことが売りを誘った。
ロンドン市場は、ポンド売り主導でドル買いが広がった。前日のポンド買いに調整が入る形。きっかけとなったのがロンドン朝方に発表された4月英消費者物価指数。前年比+9.0%と前回+7.0%から一段とインフレが加速した。しかし、市場予想にわずかに届かなかったことでポンド売りの反応が広がった。ポンドドルは1.25手前水準から一時1.23台後半まで下落。その後は1.24台に戻したが、上値は抑えられている。ユーロドルも連れ安となり、1.05台前半から一時1.05台を割り込んだ。ドル円は東京午後に129円台割れへと下落したが、ロンドン時間には129円台前半へと戻す動き。米10年債利回りは2.95%台から1.99%付近で上下動しており、きょうはドル相場との連動性は薄い。クロス円はポンド円の下落で全般に上値が重い。欧州株は揉み合いも、米株先物がやや売りに押されており、円高圧力となる面も。ポンド円は161円台から一時160円台割れへと下落。ユーロ円は136円付近から135円台後半へと軟化。ECB当局者らからは、7月利上げを支持する発言が相次いだが、織り込み済みとして市場は反応薄だった。4月ユーロ圏消費者物価指数・確報値は前年比+7.4%と速報値から変わらずだった。
NY市場では、株急落のなかでリスク回避の動きが広がった。前日に続いてこの日の米小売企業決算も弱かったことがきっかけ。ダウ平均は一時1200ドル超急落した。市場の反応は鈍かったものの、前日のパウエルFRB議長の講演はこれまで以上にタカ派な印象ではあった。当面はFRBの大幅利上げが続くとの見方に変化はない。ただ、現在の市場は利上げ自体の行方以上に、それに伴う景気への影響を警戒している。ドル円は128円付近へと下落し、大台割れを試した。ユーロ円は一時134円台割れ。ユーロドルは1.05台割れから1.04台半ばまで下落。ポンド円は一時158円台割れ。ポンドドルは1.23台前半まで下落。高インフレが続くなかで、各国中銀の金融引き締めが景気後退、株式市場の不安定化につながる状況となっている。景気先行き、市場の金融引き締めの織り込み度合や、今後のインフレのピークアウトなどに相場参加者は神経を尖らせている状況。 
19日
東京市場では、ドル円が反発。前日の米株大幅安を受けたリスク警戒の円買いを受けて、朝方には127.90近辺まで下押しされた。ユーロ円も134円台割れと円買いが先行。しかし、その後は一転してドル円、クロス円が反発。米株先物・時間外取引が下げ渋りの動きとなったことに敏感に反応した。昼にかけてはダウ先物ととにもS&P500先物もプラス圏を回復。ドル円は128.95近辺、ユーロ円は135.46近辺まで高値を伸ばした。ロンドン勢の本格参加を前に円売りは一服。ドル円は128.60台、ユーロ円は135円台割れの動きに。10時半に発表された豪雇用統計は雇用者数の伸びが予想を大きく下回ったものの、正規雇用が大きく伸びたことや、失業率が予想通りとはいえ前回から低下して過去最低水準を更新した。
ロンドン市場は、株安が続くなかで、円買いとドル売りが混在している。前日の米株の急落を受けて、市場にはリスク警戒感が再び高まっている。欧州株が大幅安となっているほか、米株先物・時間外取引も再び下落。インフレや金融引き締めの動きが企業の先行き見通しに影を落としている。ドル円は東京市場で129円手前まで反発したが、東京午後からロンドン時間にかけては売り圧力が強まっている。128円台割れから安値を127.58レベルまで広げている。クロス円も軟調で、ユーロ円は134円を一時割り込み、ポンド円も158円近辺へと下落した。いずれも東京市場の上げを消した。株安とともに米債利回りが低下、ドル相場全般にドル安圧力が優勢に。ユーロドルは1.0460台まで下げたあとは上昇に転じ、1.05台に乗せている。ポンドドルも1.2350割れまで売られた後は、買いが強まり1.24台に乗せている。3月ユーロ圏経常収支は16億ユーロの赤字に転落。独建設業生産高も前月比横ばいと停滞。その一方で、英CBI製造業受注指数は予想外の上昇となり、輸出受注の回復に支えられた。
NY市場は、ドル売りが優勢。きょうのNY市場もリスク回避ムードを強めたが、為替市場ではドル売りの反応がみられた。ユーロの買い戻しが活発化していることが相対的なドル売りに繋がっているとの指摘も出ていたが、特段のドル売り材料はない。そのような中でドル円は一時127円台前半まで下げ幅を広げ、先週安値の127.50円付近を下回る展開が見られていた。きょうのドル売りについて一部からは、最近の急上昇後の転換点が接近しつつあるとの見方も出ている。金融情勢のさらなる悪化で、市場がFRBの引き締め期待を弱める段階にある半面、世界の他の地域、特にユーロ圏に関しては、市場がまだ大幅な引き締めを織り込んでいることを理由として挙げている。しかし、ドル高期待を温存している向きが圧倒的に多いのも実情。ユーロドルは買い戻しが活発化し、一時1.06台まで急速に買い戻された。ユーロ買戻しの直接的な材料は見当たらないが、ここに来てECBの利上げ期待が活発化しており、ユーロに見直し買いが入っているとの指摘も出ている。ポンドドルは一時1.25台まで急反発。ただ、市場では英景気減速を懸念する声もあり、今後のポンド相場の重石となるとの見方もあった。
20日
東京市場は、方向性に欠ける振幅。ドル円は午前に128.21近辺まで上昇。前日のドル安の動きに再び調整が入った。日本株・アジア株が堅調に推移しており、リスク回避ムードが一服した面も。中国はローンプライムレート5年物を4カ月ぶりに引き下げた。ユーロ円は135円台半ば超えまで買われた。しかし、円安の動きは続かず。昼過ぎにはドル円が127.50台、ユーロ円が134.70台まで反落。その後は下げ一服もレンジ内での推移にとどまっている。ユーロドルは午前に1.0550台まで下押しされたあと、再び買われて1.06台に接近している。米債利回りの戻りは限定的で、前日からのドル売り圧力が根強い印象。
ロンドン市場は、やや円売りの動きが優勢。この日は日本株・アジア株に続いて欧州株や米株先物が堅調に推移。リスク警戒感が緩和されている。週末を控えて先物に買い戻しが出ている面もありそうだ。為替市場では東京市場でドル円、クロス円が下押しされる場面があったが、ロンドン時間に入ると上昇に転じている。ドル円は127円台後半から128円台前半へ、ユーロ円は135円付近から135円台後半へ、ポンド円は159円台前半から160円台乗せまで一時買われている。ドル相場は前日からのドル安水準を踏襲しており、ユーロドルは1.06手前、ポンドドルは1.25手前水準まで買われたあとは、高止まりとなっている。この日発表された4月英小売売上高は予想外の上昇となり、対ユーロなどでポンド買いの動きがみられたが、足元ではポンド買いは一服している。
NY市場はリスク警戒感の強い展開に。序盤は週末を前にした米株の買い戻しが見られ、ドル円が128円20銭台まで買い戻されるなど、円売りの動きが優勢となった。その後米ダウ平均株価が朝の高値から800ドル超の下げを付ける中で、リスク警戒のドル買い円買い資源国通貨売りなどが見られた。もっともドル円は東京午前の安値を割り込まず、その日のレンジの中での取引に終始。引けにかけてポジション調整から米株が買い戻され、ダウ平均株価が小幅ながらプラス圏で引ける動きを見せる中で、ドル円もしっかりとなったが、127円90銭台まで。 

 

●“悪い円安”が起こっているのか?円安が与える影響と今後の行方 5/22
円安が加速し、そのデメリットを懸念するニュースをよく見かけます。そもそも円安は私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか?経済アナリストの増井麻里子さんにわかりやすく解説してもらいました。
円安が進んでいる
円安とはその名の通り、円の価値が安くなることです。現在、見た目よりも円安が進んでいます。
例えば名目為替レートで1ドル=100円だったのが、1ドル=110円になったとき、日本人にとって米国のモノは10%高くなります。名目為替レートが一定だったとしても、日本で物価が上がらず、米国で10%のインフレが起こると、日本人にとって米国のモノは10%高くなります。つまり、どちらも円の価値が安くなることを表しています。
したがって、物価を考慮した実質為替レートをみる必要があります。実質為替レートは、それぞれを指数化して「名目為替レート × 外国物価 ÷ 自国物価」で計算できます。
イメージしやすいように、数字を当てはめてみましょう。
2000年の名目為替レートは107.7円で、2001年は121.5円でした。2000年を100とすると、2001年は112.8となります。
2000年の物価水準を100とすると、2001年は米国が102.8、日本が99.3であり、実質為替レートは、112.8 × 102.8 ÷ 99.3 = 116.8です。つまり、16.8%の円安ということになります。
5/9に名目為替レートが1ドル=131円30銭台となり、2002年4月以来の円安水準となりました。通貨の実力を測るには、実質実効為替レートをみる必要があります。
これは、対象となるすべての通貨と日本円との2通貨間為替レートを、貿易額など相対的な重要度でウエイトづけして集計・算出した指標で、間接表示のため数値が高いほうが円高となります。
2010年を100とすると、2002年4月は102.35で、2022年3月は65.1まで低下しました。これは固定相場制だった1972年の水準です。
実質実効為替レートを見て、円が50年前の実力に転落したとは言えません。この指標は、経済発展が著しい途上国で上がりやすい傾向があるからです。それでも他の先進国は80〜110台であり、円の下落は激しいと言えます。
円安のメリットとデメリット
円安は私たちの生活に大きな影響をもたらします。ここではマクロの視点で、メリットとデメリットを見ていきます。
メリットのひとつは、輸出の増加です。海外から見ると日本の商品が安くなり、輸出数量が増えます。外貨建ての価格を変えず数量が伸びなかったとしても、円建ての輸出売上額が増えます。輸出大企業の株価が上がり、株主が資産効果によって消費を増やすことも期待できます。
2つめは、インバウンド消費の増加です。平時には、旅行コストが下がることにより海外からの旅行客が増え、日本国内の商品が売れるようになります。日本人が物価の安い国へ行くと、高級ホテルに泊まったり、つい買い物をたくさんしてしまうのと同じです。
3つめは、海外からの利子や配当金の円換算での増加です。これは第一次所得収支と呼ばれるもので、日本は大幅な黒字を維持しています。
一方で、デメリットもあります。輸入価格が値上がりするため、国内の物価が上昇します。例えば日本は小麦のほとんどを、輸入に頼っています。不作などにより小麦の供給が減少した場合、円安だと他国に買い負けしやすくなります。
小麦の輸入価格が上がれば、やがて消費者に価格転嫁され、小麦を原料としているパスタやうどん、パンも値上がりし、家計に影響を与えることになります。
なぜ“悪い円安”が懸念されるのか
過去にも日本で円安が続いたことはありました。しかし今回の円安は“悪い円安”と、ニュースなどではよく報道されています。今までの円安と一体なにが違うのでしょうか?
以前は円安が起こると、日本は国内で製造・加工したものの輸出が増え、その恩恵を受けてきました。しかし2008年のリーマンショックで1ドル=90円台に円高が進み、2011年後半に1ドル=70円台が定着したことで、輸出企業は製造拠点を海外にシフトさせました。
その後、円安になり、国内回帰の動きもありましたが、商品を販売するまでの時間(リードタイム)を短くするなど、さまざまな理由によって現地に工場を持つようになっています。今後は設計・開発拠点の海外シフトも見込まれています。
日本の輸出企業が大きな利益を上げているように見えます。しかし実際のところ、会社の決算書には海外子会社の利益が円換算で計上されているだけで、子会社の利息や配当金がどの程度円に換えられているかは不明です。外貨のまま再投資収益や内部留保となっている金額が大きいと考えられます。
国際収支上は、前述の第一次所得収支や直接投資には計上されていますが、必ずしも資金のやりとりがあるわけではありません。
一方、国内物価が上がってきています。5月16日に発表された4月の国内企業物価指数は、前年比+10.0%と、1981年以降で最大の上げ幅となりました。輸入物価指数は、円ベースで+44%、契約通貨ベースで+29.7%でした。
日銀は、最近の物価情勢の主因は世界的な資源価格上昇だと説明していますが、日本では円安の影響も無視できなくなってきているのではないでしょうか。さらに、日本経済全体にとって円安はプラスとの発言を続けています。
“悪い円安”がメリットをデメリットが上回る円安のことであれば、マクロ経済としてはまだ“悪い円安”とは言えないでしょう。中国、韓国やアジア新興国の台頭で市場の競争が激しくなり、日本の輸出主導型の経済モデルが危うくなっているとはいえ、このモデルから脱却していないからです。国内の設備投資や賃金には恩恵が小さくなっているけど、円高よりはましということです。
以前と違って”悪い円安”が懸念されているのは、世界的な資源価格の上昇が円安と重なったことが大きいとみられます。2000〜2002年に円安が進んだとき、WTI原油価格は1バレル=30ドル前後でした。2007〜2014年は1バレル=70〜90ドル台と高かったのですが、円高が進んだ後、徐々に円安へ向かった時期であり、円安は問題視されなかったのです。
日本は人口が多く、国として高付加価値サービスや海外投資による利益だけで食べていくのは無理があります。タックスヘイブンや国際金融センターのような国であれば、法務、税務、コンサルティングなどの高付加価値プロフェッショナルサービスで食べていけます。日本は当面、インバウンドと輸出数量の増加で円安のメリットを活かし、物価上昇には財政を使って対応することになるでしょう。しかし政府は、今後「何で食べていく国にするのか」という方向性を示さなければなりません。
金融政策スタンスの差により進む円安
米国の連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ抑制を優先し、FF金利の誘導目標を2022年3月に0.25%、5月に0.50%引き上げました。今後の引き上げペースが注目されています。
現在の日銀は、金融政策の現状維持で金利を上げない姿勢を示しています。これにより世界との金融政策スタンスの差が明確となり、円安が急激に進みました。
金利には成長率、インフレ率、需給などの要素があります。米国では4月には労働力人口 (就業者+失業者)が生産年齢人口 (16歳以上の人口) に占める割合である労働参加率が62.2%に低下。賃金上昇圧力は消えていません (日本の3月の15〜64歳の就業率は77.9% )。
しかし、その他の経済指標にはインフレピークアウトの兆しも見えてきました。経済活動活発化による需要増加に対して供給制約が続くことによるインフレが、いつまでも続くことは考えにくく、米国では急ピッチの利上げによる景気後退が懸念され始めました。したがって、市場の金利差拡大観測の後退とともに、円安も少し落ち着くとみられます。
●円安で日本の「ビッグマック指数」がタイや中韓よりも下に 5/22
外国為替市場で円の「独歩安」が止まらない。日本経済の先行きを曇らせる歴史的な超円安。その恩恵を今は受けている輸出業界にも不安感が広がっている。
5月9日の東京外国為替市場。円相場は一時1ドル=131円台を記録し、約20年ぶりの安値水準を更新した。3月初旬の1ドル=114円台から、たった2カ月で約17円下落したことになる。
歴史的な円安は、欧米主要国が金融の引き締めを急ぐ一方、日銀が緩和的な金融政策を継続し、資源価格の高騰で貿易赤字が拡大している状況も影響している。こうした状況に経団連の十倉雅和会長は5月9日の会見で「日本の経済が弱いということから来ている面が非常に多い」と懸念を示した。
鈴木俊一財務相も10日、閣議後の記者会見で「最近のような急速な円安の進行は望ましくない」と発言するなど、たびたび為替市場をけん制している。
米国より4割安
「ビッグマック指数」と呼ばれる経済指標を英国の経済誌『エコノミスト』が1986年に考案し、毎年2回公表している。ビッグマックとは、ハンバーガー大手マクドナルドの主力商品の一つだ。世界100カ国以上に展開する店舗で原則、同サイズ、同品質で販売され、肉や野菜といった原材料費はほぼ共通している。
そのため、自由な市場経済では国が異なったとしても同じモノは同じ値段で買えるとする「一物一価の法則」を前提に、「米国のビッグマック価格」と「その他の国のビッグマック価格」を比較することで、その国の「通貨の購買力格差」を把握することができる。
この指数が、基準となる米国のビッグマック指数に比べて大きければ、その国の通貨は、ドルに対して指数分だけ「過大評価」されていることになり、逆に小さければ、ドルに対して指数分だけ「過小評価」されていることになる。
ビッグマック指数の「2022年1月版」の指数を見ていくと、例えば、スイスの同指数は「プラス20.2%」と、基準の米国を大幅に上回る。つまり、通貨スイス・フランはドルより大幅に過大評価されている。
実際、スイスのビッグマック価格は「1月版」の時点で、6.98ドル(804円)と、基準となる米国の同価格5.81ドル(669円)に比べてかなり高額だ。
一方、日本はどうか。ビッグマック指数は「マイナス41.7%」と大きく下振れていた。確かに、日本のビッグマック価格は390円(3.39ドル)に過ぎす、米国の同価格よりかなり安かった。円はドルより約4割も過小評価されていたことになる。
取り残される日本
これは、カナダ、欧州連合(EU)、英国、豪州といった先進国に後れを取った。それどころか、ブラジル、タイ、中国といった新興国よりも低水準に沈んだ。比較対象の57カ国中、日本は33位と下位に位置し、先進国中では「最下位クラス」に甘んじた。
さて、足元の5月時点ではどうか。米国のビッグマック価格は5.34ドル。22年5月16日の為替レートは1ドル=129円なので日本円に換算すれば689円だ。日本は1月の3.39ドルから比べて、さらに3.02ドルまで安くなっている。
日米のビッグマック価格の年次推移をドル換算で比較すると、11年に米国が4.07ドルに対して日本は4.08ドルだった。しかし、翌12年には米国が4.33ドルに急上昇した一方、日本は4.09ドルと微増だった。13年には3.2ドルに下がり、それ以降は横ばいが続く様子が分かる。
ちょうど第2次安倍晋三政権のアベノミクスが始まった時期と重なるが、ビッグマック一つをとっても20年間、国際的に取り残されつつある状況が浮かび上がる。 

 

●円安はインバウンドに“追い風”ってホント?その裏にあるリスクとは 5/23
2022年の4月から、ドル円レートは1ドル120円台後半で推移し、一時は1ドル130円を超えることもありました。アメリカの金利政策の転換や世界的な情勢不安などを背景に、日本は約20年ぶりとなる「円安」を経験しています。
通貨レートに大きな影響を受ける分野の一つが、インバウンドです。円安が進むということは、外貨をもって入国してきた外国人にとっては、使えるお金が増えることになるからです。インバウンド消費額の伸びが期待できます。
しかし、円安がインバウンドに好影響しかもたらさないわけではありません。長期的に見た場合、円安によって、観光地としての日本の価値が下がっていくリスクもあるのです。
現在の円安がインバウンドに与えるポジティブな影響について分析したうえで、その裏側にあるリスクについても考察していきます。
「円安ドル高」、インバウンドへの好影響は本当か?
円高がインバウンド需要全体に与える影響について考えるときには、アメリカ合衆国ドル(以下米ドル)に対するレート以外にも、他の主要訪日国の通貨と円のレートについてもみていく必要があります。
コロナ前の2019年末のレートと比較して、実際の円安のインパクトはどの程度か検証していきます。
米ドル/円は110円台から128円台と、大幅な円安となっていることがわかります。約16%円安が進行しました。一方で、他の主要な通貨についてはどうでしょうか。ユーロ、中国人民元、韓国ウォンのいずれとの円レートでも確かに円高は進行しています。増加率はそれぞれ10%、21%、6%となっています。
中国人民元に対しては、円安が米ドルを上回るペースで進んだことがわかります。しかしインバウンドとの関連で見ると、訪日中国人観光客の消費額がすぐに増加することはないといえます。それは、中国では厳格な新型コロナウイルスに関する規制が続いており、中国人の海外旅行はまだ再開のめどが立っていないからです。
ユーロと韓国ウォンに対しては確かに円安が進んだものの、増加率は米ドルを上回りませんでした。
つまり、円安の進行度は通貨によって変わるため、米ドルに対する円のレートのみに着目していると、「円安」の実態を正確につかめない恐れがあります。
アメリカ人は、消費額ベースでは全体の6%程度
では、その訪日アメリカ人観光客は、消費額ベースでみるとインバウンド全体の何割を占めているのでしょうか。コロナ前の2019年のデータで見ていきます。
アメリカ人の消費額は全体の約6%程度となっています。
一方で、東アジアのメインの二カ国となる中国人、韓国人の消費額はそれぞれ全体の37%、8%と、この2国だけで全体の約45%を占めます。ユーロ圏全体の訪日客の消費額は、合計すると1,600億円を超え、全体の3%程度になります。
日本と政治や金融の面で関わりの強いアメリカですが、インバウンドの消費額ではわずかな割合しか占めていないことがわかります。つまり、現在の円安ドル高の影響については、アメリカ人の消費額を踏まえて正確に捉える必要があると言えます。
一方で、中国人の日本旅行再開がしばらくは見込めないことは、極めて大きな打撃となります。コロナ前には全体の4割近くを占めていた中国人の消費がほぼゼロになるのは、インバウンド産業の状況を根底から変える出来事です。
「円安ドル高により、アメリカ人のインバウンド消費額が増える可能性がある」というのは確かな事実です。しかし、その影響については、数字に基づいて検討したうえで、過大評価しないことが重要であると考えられます。
円安で観光資産が「買われる」リスク
では逆に、円安によって日本のインバウンドにもたらされうるリスクについて考えていきます。
個人消費だけでなく、不動産などへの投機も円安の影響を受けます。海外の投資家からみれば、日本の資産は現在「安く買える」状態になっているといえます。円安が今後も続いていけば、外資系企業が日本の観光資産を安く買い叩く可能性もあります。
例えば近年では、中国人投資家の間では日本の「不動産爆買い」の動きもみられます。北海道や沖縄といった、海外旅行客の多い地域に人気が集まっています。
そうした土地が外貨に「買われる」動きが続くと、たとえ沖縄や北海道が集客に成功しても、その利益が最終的に行きつく先は中国である、という現象が起きかねません。
円安は、インバウンド消費額の伸びという短期的、限定的なメリットの裏に、こうした長期的、構造的なリスクを抱えているということを理解しなければなりません。
長期的な円安になれば、客層も変わる可能性
さらに、円安は訪日観光客の客層を変える可能性もあります。
例えば、日本からタイやフィリピンといった東南アジアの国々に旅行するときに、多くの日本人が期待するのは「モノ・サービス共に安く済ませられる」という点であると考えられます。それは日本円がバーツやフィリピンペソよりも高く、日本人からしたら「物価が安い国」であるからです。
日本がもつ本来の魅力よりも、日本での安い消費行動のイメージが前に出てしまうと、オーバーツーリズムの問題も生じてきます。安い観光地に外国人が殺到する国、という評価が定着してしまうと、日本のブランドイメージの棄損にもつながります。
そうした悪循環が生じれば、日本の観光業の長期的な衰退は避けられないでしょう。
安売りではなく、納得感のある「高付加価値化」を
「円安=インバウンドに追い風」という考えは、今や主流の論調になりつつあります。
しかしその「追い風」がどの程度の強さかについては、冷静に捉える必要があるのではないでしょうか。
円安は、長期的に見れば日本のインバウンドを悪い方に変えてしまう可能性もあります。豊富な観光資源を抱えながらも、「安い国」としての評価が定着してしまうことは避けなければならない未来です。
そうした「安い国」になることを避けるためには、インバウンド全体で「高付加価値化」を進め、外貨を獲得していく必要があります。
ただモノやサービスの値段を上げて「観光地価格」を設定するだけでは、訪日外国人の満足度は下がってしまいます。「高付加価値化」による単価の引き上げを目指すには、日本固有の魅力を再発掘し、それを現代のニーズに合った形式で提供することが必要です。
円安がインバウンド回復の起爆剤となり、日本経済が再び活気づいていくのか。それとも、円安により安く買い叩かれ、消耗していくのか。20年ぶりの円安局面にある今、日本のインバウンドは岐路に立っています。
●東京外為 ドル、127円台半ば=買い戻し一巡後は伸び悩む 5/23
23日の東京外国為替市場のドルの対円相場(気配値)は、買い戻しが一巡した後は戻り売りに押されて伸び悩み、1ドル=127円台半ばに軟化した。午後5時現在は、127円59〜59銭と前週末(午後5時、127円94〜94銭)比35銭のドル安・円高。
ドル円は早朝、127円80〜90銭前後で取引された後、仲値前後から実需筋の売りが優勢となり、昼前に一時127円10銭台まで下落。正午にかけて若干値を戻したが、昼すぎに再び127円10銭台に押し戻された。ただ、同水準では買い戻しが入ったほか、時間外取引で米長期金利が上昇したことにも支援され、午後3時すぎには127円90銭前後まで水準を切り上げた。終盤は戻り売りに押され、127円50銭台まで下押した。
米長期金利の上昇に加え、「いったん伸び悩んだ日経平均株価が上げ幅を広げたことがドル円のサポート要因になった」(為替ブローカー)とみられている。もっとも、「128円に接近すると上値の重さも意識された」(FX業者)ことから、終盤は調整的な売りに押される展開だった。
ドル円は127円近くに下げた後に戻り歩調となったことで「底堅さは確認された」(先のブローカー)ものの、「米経済のリセッション入りの懸念は根強い」(先のFX業者)ため、当面は127円台でのもみ合いが続く公算が大きい。
ユーロは終盤、対円では伸び悩み、対ドルは底堅く推移。午後5時現在、1ユーロ=135円25〜26銭(前週末午後5時、135円31〜32銭)、対ドルでは1.0600〜0604ドル(同1.0576〜0580ドル)。
●ドル円 127.70円台まで反発、米長期金利が上昇・株先も堅調 5/23
米10年債利回りは2.84%台まで再び上昇し、ダウ先物が300ドル高と堅調な動きを眺め、ドル円は買い戻しが優勢。一時127.75円までドル高・円安に傾いている。
また米金利の上昇が重しとなり、ユーロドルは1.0650ドル付近まで本日の上昇幅を縮めた。
●ロンドン外為 円、127円台半ば 5/23
週明け23日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、新規の取引材料を欠く中でドル売り・円買いが優勢となり、1ドル=127円台半ばに上昇した。
正午現在は127円45〜55銭と、前週末午後4時比50銭の円高・ドル安。 

 

●外為8時30分 円、下落し127円台後半 対ユーロも大幅下落 5/24
24日早朝の東京外国為替市場で、円相場は下落している。8時30分時点は1ドル=127円75〜76銭と前日17時時点と比べて17銭の円安・ドル高だった。前日の米株式市場で米ダウ工業株30種平均が前週末比618ドル高となるなど主要株価指数が軒並み上昇し、市場参加者のリスク回避姿勢が後退。「低リスク通貨」との位置づけから買いが入っていた円にはやや売りが優勢となっている。
もっとも手掛かりを欠く中で積極的な円売り・ドル買いの動きには乏しい。日本時間24日の取引で米株価指数先物が下落しているほか、米長期金利の上昇が一服していることもあって円は底堅く推移している。
円は対ユーロでは大幅に下落している。8時30分時点は1ユーロ=136円49〜52銭と、同1円25銭の円安・ユーロ高だった。ユーロは対ドルでも上昇している。8時30分時点は1ユーロ=1.0684〜85ドルと同0.0084ドルのユーロ高・ドル安だった。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が23日公表のブログで「7月に利上げが可能になる」などとの見方を示し、早期に金融政策の正常化が進むとの観測からユーロに買いが入った。
●外為:1ドル127円80銭前後とドル高・円安で推移 5/24
24日の外国為替市場のドル円相場は午前9時時点で1ドル=127円80銭前後と、前日午後5時時点に比べ22銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円52銭前後と1円27銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。 
●円相場、127円77〜78銭 5/24
24日の東京外国為替市場の円相場は、正午現在1ドル=127円77〜78銭と、前日(127円59〜59銭)に比べ18銭の円安・ドル高となった。 
●外為:1ドル127円66銭前後と小幅なドル高・円安で推移 5/24
24日の外国為替市場のドル円相場は午後2時時点で1ドル=127円66銭前後と、前日午後5時時点に比べ8銭の小幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円11銭前後と86銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●外為:1ドル127円42銭前後とドル高・円安で推移 5/24
24日の外国為替市場のドル円相場は午後6時時点で1ドル=127円42銭前後と、午後5時時点に比べ16銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円36銭前後と13銭のユーロ安・円高で推移している。
●外為:1ドル127円34銭前後と小幅なドル高・円安で推移 5/24
24日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=127円34銭前後と、午後5時時点に比べ8銭の小幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円37銭前後と12銭のユーロ安・円高で推移している。
●ニューヨーク外国為替市場概況・24時 ドル円、売り優勢 5/24
24日のニューヨーク外国為替市場でドル円は売り優勢。24時時点では126.51円と22時時点(127.23円)と比べて72銭程度のドル安水準だった。米国株式相場がハイテク株を中心に軟調推移となったことで、リスク回避目的の売りが先行した。また、この日発表された米経済指標が軒並み市場予想より弱い結果となったことで、米10年債利回りは2.82%台から2.71%台まで急低下。株安と米長期金利低下を手掛かりにした売りが強まり、一時126.36円と4月18日以来の安値を更新した。
ユーロドルは底堅い。24時時点では1.0726ドルと22時時点(1.0707ドル)と比べて0.0019ドル程度のユーロ高水準だった。米金利低下を背景にしたドル売りが進み、一時1.0747ドルと4月25日以来の高値を更新した。リスクオフの流れから対ドルでも伸び悩む通貨が多いなか、欧州中央銀行(ECB)の早期利上げ期待もあり、ユーロの相対的な底堅さが目立っている。
なお、カザークス・ラトビア中銀総裁は「ECBは50bpの利上げを排除すべきではない」「ECBは7月と9月、10-12月期にも1回の利上げを行うと予想」などの見解を示した。
ユーロ円は軟調。24時時点では135.71円と22時時点(136.23円)と比べて52銭程度のユーロ安水準だった。株安を受けて円が全面高となるなか、一時135.55円まで下押しした。 

 

●円相場 126円台に値上がり アメリカの景気減速への懸念が背景  5/25
24日のニューヨーク外国為替市場ではアメリカの景気減速への懸念を背景にドルを売って円を買う動きが出て円相場は一時、およそ1か月ぶりに1ドル=126円台まで値上がりしました。
外国為替市場では、アメリカの長期金利の上昇でドルの利回りが見込めるとの見方から円安ドル高が進みましたが、24日のニューヨーク市場では景気が減速することへの懸念からアメリカ国債が買われて長期金利が低下したことを背景にドルを売って円を買う動きが出ました。
このため円相場は一時、およそ1か月ぶりに1ドル=126円台まで値上がりしました。
また、ニューヨーク株式市場では取り引き開始後、IT企業のネット広告の収入が減少するとの見方などから売り注文が増え、IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数は2.3%の大幅な下落となりました。
一方、ダウ平均株価は一時、500ドルを超える大幅な値下がりとなりましたがその後は買い戻しの動きが強まって値上がりに転じ、終値は前日に比べて48ドル38セント高い3万1928ドル62セントでした。
市場関係者は「景気の減速を懸念する投資家の間で、当面のリスクを避けようと株式を売ってより安全な資産とされるアメリカ国債を買う動きが出ていて、これが円相場の値上がりにつながっている」と話しています。 
●ロンドン外為 円、127円台前半 5/25
25日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米長期金利の低下が一服したことで円売り・ドル買いが進み、1ドル=127円台前半に下落した。
正午現在は127円10〜20銭と、前日午後4時比65銭の円安・ドル高。
●ロンドン外為 ユーロ、対ドルで下落 金融政策の正常化加速の観測が後退 5/25
25日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=1.0670〜80ドルと前日の同時点に比べ0.0050ドルのユーロ安・ドル高で推移している。欧州中央銀行(ECB)が金融政策の正常化を加速するとの観測が後退し、ユーロ売り・ドル買いが優勢となっている。
ECBのパネッタ専務理事が25日の講演で「金融政策の正常化とは、刺激策を全面的に取り除くことではない。景気への中立的な政策スタンスとは異なる」と指摘し、金融緩和を徐々に縮小していく必要性を訴えた。
円は対ユーロで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=135円90銭〜136円00銭と、前日の同時点に比べ20銭の円安・ユーロ高で推移している。
英ポンドは対ドルで上昇し、英国時間16時時点は1ポンド=1.2540〜50ドルと前日の同時点に比べ0.0020ドルのポンド高・ドル安で推移している。前日にポンド売り・ドル買いが進んでいたため、持ち高調整のポンド買い・ドル売りが優勢となっている。
●ドル・円下落どこまで、米金利上昇に一服感−125円割れると121円台も 5/25
ドル・円相場の調整がどこまで深まるかに市場の関心が集まっている。米国の景気後退懸念を背景に米長期金利上昇の一服感が強まる中、1ドル=125円までは調整の範囲との見方がある一方で、抜ければ121円台までの下落を予想する向きもある。
IG証券の石川順一シニアFXストラテジストは、米景気の先行きリスクが懸念される中、「米金利上昇圧力の後退ないしは低下幅拡大が意識される局面ではドル・円も新たな下値ポイントを探る展開になる」と指摘。アベノミクス相場下の2015年高値の125円85銭前後が「サポートに転換するか」が注目で、下抜けると「125円を維持ができるかが焦点になる」と話す。
ドル・円は5月9日に131円35銭と約20年ぶり高値を付けて以降、3%超下落し、24日には一時126円36銭と4月18日以来の安値を付けた。この間、米10年債利回りは3年半ぶり高水準の3.2%から2.7%台に低下。米金融当局の金融引き締めが景気後退を招くとの懸念が背景で、ブルームバーグの米エコ・サプライズ指数は8カ月ぶりに経済指標の予想比下振れが多いことを示すマイナスに転じている。
「チャートを見ると典型的な調整パターンに入ってきている」。大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、日足一目均衡表で遅行線がローソク足を下回り、基準線の上昇が止まり転換線が上から下に抜けている点を挙げ、「バイアスはかなり円高方向にかかっている」と指摘。「125円台は見に行くことになる」とし、3月28日高値の125円09銭を下抜けすると3月31日安値121円28銭まで下値の目標が広がると分析する。
一方で、ドル・円が本格的な下落トレンドに転じたとみる向きは少ない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは、今のドル・円下落は5月にかけて9週連続で上昇した後の「自律反落の範ちゅう」であり、3月安値からの上昇の38.2%押しの125円前後までの下げであれば、「トレンドが変わったという判定にはならない」と話す。
同氏は、同半値押しの123円を割り込むと130円が遠のいた感が出てくるが、「リセッション入り懸念が杞憂(きゆう)に終わることを前提にすれば、どこかで株安も止まり、6、7月の0.5ポイントずつの利上げで米短期金利が上がっていくなら、米長期金利もそれほど下がらない」と予想。投機筋の持ち高調整でドル・円は下がっても「日本の基礎収支の需給環境はまだドル買い・円売りが有利で、米景気への過度の警戒感が和らいでくれば、130円台戻しを狙うような展開になっていく」とみる。
みずほ証券は25日までに6月末のドル・円予想を133円から128円に引き下げた。山本雅文チーフ為替ストラテジストは、米株価の調整が想定以上に長引きかつ大幅となり、米株安が米金利低下と米景気後退懸念にもつながったことから、地合いが悪化したと説明。もっとも、今後の米景気の拡大と米利上げの継続見通しが確認されれば、年後半には再び上昇基調に戻るとし、来年3月末136円との予想は維持している。
●ドル円相場は円高に反発か? 為替を動かす要因を考える 5/25
急速に円高が進んだドル円相場に反発の兆しが見えている。5月24日のドル円相場は上昇し、1ドル127円前後まで円高が進んだ。4月末から5月頭には、一時131円を超える水準まで円安が進行したが、一服感も出てきた。
ではこの後のドル円相場をどう見るか。「(円安方向に)かなり行き過ぎな状況になっている」と分析するのは、三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストだ。
為替変動をもたらす要因
為替相場は、2国間ーー今回でいえば日本と米国の関係によって変動する。しかも、短期、中期、長期といったスパンで、変動をもたらす要素が異なることが特徴だ。
短期では、二国間の金利差によって為替が動く。金利の安い国で資金を調達して、金利の高い国の通貨を買い、運用すれば、金利差分だけ利益が出るというのが根拠だ。これを一般にキャリートレードとも言う。
現状、米国は高まるインフレに対応するために金融引き締め、つまり利上げを進めている。一方で日本は黒田東彦日銀総裁が緩和継続を宣言するなど、利上げの見通しはない。米国は3月に政策金利を0.25ポイント引き上げ、2022年は計7回の利上げが見込まれている。政策金利の誘導目標は2.75〜3%となる見通しだ。
為替は、こうした将来の利上げ回数を事前に織り込むことで変化する。金利先物市場が織り込む利上げ回数とドル円レートの推移を見ると、きれいに一致して連動している。日米の金利差は、ドル円が110円前後だった21年秋の1.3%前後から、足元2.6%程度まで拡大しており、こちらも二国間の金利差が為替に影響していることを示している。
ドル円はオーバーシュートしている
一方で、短期の為替を動かす材料は、往々にして行き過ぎる。下記は、市川氏が示した投機筋の通貨先物ポジションだ。円の売り越しは円安を呼び、円の買い越しは円高を呼ぶ。ところが現状は「円の売り越しを大きく超えて円安が進んでいる」(市川氏)。
為替を短期的に動かす要因として投機筋が挙げられることが多いが、現状の円安は別の要素もありそうだ。市川氏は、輸入企業が円安を見越して早めにドルを買ったり、円安期待で外貨を買った個人、さらにはFX取引も要因の1つではないかと見る。
為替の中期要因も、これ以上の円安は示唆していない。一般に、貿易収支は為替の中期要因となる。ある国の貿易赤字は、獲得する外貨よりも支払う外貨のほうが多いことを意味し、差分は市場で外貨を買ってこなくてはならない。つまり自国通貨安、外貨高の要因となる。
翻って米国は貿易赤字大国であり慢性的にドル安要因を抱えている。一方で、日本は資源高の影響で、21年度は2年ぶりの貿易赤字となった。このまま貿易赤字が定着すれば、こちらは円安の要因になるかっこうだ。
購買力平価でも歴史的なオーバーシュート
最後の長期要因でも、現在のドル円は「歴史的なオーバーシュート領域」(市川氏)にある。購買力平価の推移グラフがそれだ。
これは両国の物価水準をもとに、同じ物品やサービスが同じ値段で買えるとしたら、為替レートはいくらが適切かを計算したものだ。その分かりやすい例として、英エコノミストが毎年発表している「ビッグマック指数」がある。マクドナルドのビッグマックの値段を世界各国で比較したもので、ビッグマック価格と現実の為替がどのくらいかい離しているかを表している。
グラフを見ると、1970年代から円高方向へと推移してきたことが分かる。これは米国でインフレが進行しモノの値段がすべて上昇してきた一方で、日本は長らくデフレが続きモノの値段が変わらなかった結果起きた。インフレ率が高いのは通貨安要因であり、日米のインフレ率の差は「長い目で見るとドル安要因」(市川氏)というわけだ。
これまで、ドル円実勢レートは消費者物価ベースと輸出物価ベースの間に挟まって推移してきた。ところが、このレンジを突き抜けたタイミングが2回ある。米長期金利が11〜13%まで上昇し日米金利差が拡大した1980年代前半と、現在だ。
「超長期の購買力平価で見ても、かなり足元円安が進みすぎている。これから調整が入っていく動きになるのでは」(市川氏)
最後に、内外の物価格差を考慮した円の実質的な価値である実質実効為替レートの推移を確認しよう。70代以降、貿易黒字の大幅な拡大(円高要因)やプラザ合意によるドル高是正、そして日米貿易摩擦問題の深刻化などで、円の価値は上昇していった。
そして80年代のバブル崩壊を経て、円の強さが景気低迷とデフレ長期化の一因となった。そこから30年をかけて、「実力以上に高く評価されてきた円の評価が修正されてきた」(市川氏)のが現在だ。
こうした背景を踏まえ、市川氏は「1ドル130円は個人的には行き過ぎ。来年、再来年を見たときは、購買力平価からすると円が安すぎる」とした。 

 

●NY外為 円、127円台前半 5/26
25日のニューヨーク外国為替市場では、米長期金利の低下一服を受けてドルが買い戻され、円相場は1ドル=127円台前半に下落した。午後5時現在は127円26〜36銭と、前日同時刻(126円80〜90銭)比46銭の円安・ドル高。
相場は126円98銭で米市場入り後、連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の公表を控えて円売り・ドル買いが優勢となり、円は一時127円49銭まで値を下げた。米長期金利が前日終盤の水準を一時上回るなど、ここ最近の低下傾向に一服感が広がったことがドル買いを促した。
FOMC議事要旨では、今後2回の会合で、それぞれ0.5%の追加利上げを行うことを参加者の大半が支持したことが示された。市場の想定内の内容にとどまったことから相場の反応は限られ、円は終盤にかけて小幅に下げ幅を縮めた。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0675〜0685ドル(前日午後5時は1.0730〜0740ドル)、対円では同135円86〜96銭(同136円12〜22銭)と、26銭の円高・ユーロ安。
●NY円、反落 1ドル=127円25〜35銭で終了 対ユーロのドル買いが波及 5/26
25日のニューヨーク外国為替市場で円相場は反落し、前日比45銭円安・ドル高の1ドル=127円25〜35銭で取引を終えた。欧州中央銀行(ECB)が金融政策の正常化を早急に進めるとの見方が後退したのを受けてドルが対ユーロで上昇し、対円でのドル買いに波及した。米欧の株式相場が上昇したのも、低リスク通貨とされる円の売りを誘った。
欧州中央銀行(ECB)のパネッタ専務理事が25日の講演で、金融緩和を緩やかに解除していくことの必要性を主張した。今週に入ってラガルドECB総裁が「7月に利上げが可能になる」との見解を示し、金融政策の正常化を加速するとの見方が強まっていた。パネッタ氏の発言で対ユーロでのドル買いが優勢になり、円に対してもドルが買われた。円は前日に対ドルで4月中旬以来の高値を付けており、持ち高調整の売りも出やすかった。
欧州主要国の株式相場が軒並み上昇し、米株式市場ではダウ工業株30種平均が4日続伸した。前日に大きく下げたナスダック総合株価指数も反発し、投資家のリスク回避姿勢が和らいだのも円売りを誘った。
米連邦準備理事会(FRB)が午後に公表した5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨では参加者が「金融政策を早急に中立的なスタンスに移行させるべきだ」との見解で合意し、大半の参加者が「今後数回の会合で0.5%の利上げを実施することが適切」と判断していたことが分かった。ただ、新味に乏しく、為替相場の反応は目立たなかった。
この日の円の安値は127円49銭、高値は126円80銭だった。
円は対ユーロで続伸し、前日比25銭円高・ユーロ安の1ユーロ=135円85〜95銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで3日ぶりに反落し、前日比0.0055ドル安い1ユーロ=1.0675〜85ドルで終えた。ECBによる早急な金融政策正常化の観測が後退し、ユーロが売られた。
ユーロの安値は1.0642ドル、高値は1.0694ドルだった。 
●外為 1ドル127円26銭前後とドル高・円安で推移 5/26
26日の外国為替市場のドル円相場は午前11時時点で1ドル=127円26銭前後と、前日午後5時時点に比べ15銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円02銭前後と21銭のユーロ高・円安で推移している。
●外為 1ドル127円19銭前後と小幅なドル高・円安で推移 5/26
26日の外国為替市場のドル円相場は午後4時時点で1ドル=127円19銭前後と、前日午後5時時点に比べ8銭の小幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=135円78銭前後と3銭のユーロ安・円高と横ばい圏で推移している。
●外為 1ドル126円73銭前後とドル高・円安で推移 5/26
26日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=126円73銭前後と、午後5時時点に比べ14銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=135円74銭前後と43銭のユーロ高・円安で推移している。
●ロンドン外為 円、126円台後半 5/26
26日朝のロンドン外国為替市場の円相場は、黒田東彦日銀総裁が金融緩和策の出口戦略に言及したことをきっかけに円が買われ、1ドル=126円台後半に上昇した。午前9時現在は126円55〜65銭と、前日午後4時比75銭の円高・ドル安。 
●ニューヨーク外国為替市場概況・24時 ユーロ円、強含み 5/26
26日のニューヨーク外国為替市場でユーロ円は強含み。24時時点では136.46円と22時時点(136.06円)と比べて40銭程度のユーロ高水準だった。米国株式相場が堅調に推移していることをながめ、投資家のリスク志向改善を意識した買いが入り、136.40円台まで値を上げた。また、原油先物価格の上昇を受けて資源国通貨の買いも目立ち、カナダドル円は本日高値の99.61円を視野に入れた動きとなった。
ドル円は買い戻し。24時時点では127.33円と22時時点(127.17円)と比べて16銭程度のドル高水準だった。クロス円の上昇につれて127.30円台まで買い戻しが入った。株高を支えに全般円売りが進むなか、黒田日銀総裁の発言を受けて下落した下げ幅をほぼ取り戻している。
ユーロドルはもみ合い。24時時点では1.0717ドルと22時時点(1.0698ドル)と比べて0.0019ドル程度のユーロ高水準だった。1.0710ドルを挟んだ水準でのもみ合いとなった。ユーロポンドやユーロ円などの上昇につれて本日高値の1.0723ドルに迫る場面もあったが、積極的に上値を試す展開にはなっていない。 

 

●外為17時 円、8日ぶり反落 127円台前半 株高を受けて 5/27
27日の東京外国為替市場で円相場は8営業日ぶりに反落した。17時時点は1ドル=127円10〜11銭と、前日の同時点に比べ51銭の円安・ドル高だった。27日の日経平均株価の上昇などを背景として、投資家の運用リスクを回避する姿勢が後退して、「低リスク通貨」とされる円には売りが優勢だった。
円は一時127円20銭近辺まで売りが出た。26日の取引で欧米の主要株価指数がそろって上昇。27日の取引では日経平均株価も上昇した。投資家のリスク選好を背景に円は売りが続いた。国内輸入企業などの実需勢による円売り・ドル買いもみられた。ただ、日本時間27日夜に4月の米国のPCE(個人消費支出)デフレーターなどの発表を控え、積極的に持ち高を一方向に傾ける動きは限られた。9〜17時の円の高値は126円68銭近辺で値幅は52銭程度だった。
円は対ユーロで3日ぶりに反落した。17時時点は1ユーロ=136円42〜45銭と、前日の17時時点に比べ1円12銭の大幅な円安・ユーロ高だった。
ユーロは対ドルで続伸した。17時時点は1ユーロ=1.0733〜34ドルと、同0.0045ドルのユーロ高・ドル安だった。
●ニューヨーク外国為替市場概況・24時 ドル円、下げ渋り 5/27
27日のニューヨーク外国為替市場でドル円は下げ渋り。24時時点では127.11円と22時時点(127.03円)と比べて8銭程度のドル高水準だった。米10年債利回りの低下を受けて126.82円付近まで弱含む場面もあったが、ロンドン16時(日本時間24時)のフィキシングに向けたドル買いが観測されると127円台を回復した。
なお、5月米消費者態度指数(ミシガン大調べ)確報値は58.4と市場予想の59.1をわずかに下回ったが、相場への影響は限られた。
ユーロドルは上値が重い。24時時点では1.0711ドルと22時時点(1.0715ドル)と比べて0.0004ドル程度のユーロ安水準だった。リスクオンの流れに沿って1.0750ドル付近まで上昇する場面があったものの、その後は全般にドル買いが強まった影響から1.0700ドル手前まで失速した。
ユーロ円は24時時点では136.15円と22時時点(136.12円)と比べて3銭程度のユーロ高水準だった。米国株式相場が堅調に推移していることをながめ、投資家のリスク志向改善を意識した買いが先行。一時は136.40円付近まで下値を切り上げる場面も見られた。もっとも、その後はユーロドルの失速につれて上値が重くなった。
●短期・中期・長期の視点で考える「ドル円相場」 5/27
金利差という短期の変動要因によって大幅なドル高・円安が進行も、ややオーバーシュート気味に
ドル円相場は3月以降、大幅なドル高・円安が進行し、5月9日の取引時間中に一時1ドル=131円35銭水準をつけました。日米金融政策の方向性の違いなどを背景に、ドル買い・円売りに弾みがついたものと思われます。足元のドル円は127円前後で推移しており、ドル高・円安の動きはやや一服していますが、今後の相場展開について、短期、中期、長期の視点で考えてみます。
まず、短期の相場変動要因として、主に「金利差」があげられます。今局面でも、前述の日米金融政策の方向性が異なることで、日米長期金利差が拡大し、ドル高・円安が進行しました。なお、金利要因は非常にわかりやすいため、相場の動きがオーバーシュートする(行き過ぎる)こともあります。参考までに、通貨先物取引の投機筋ポジションをみると、円の売り越し以上に、ドル高・円安が進行していることが分かります(図表1)。
ただ中期の相場変動要因である貿易収支を踏まえると、円買い圧力は以前より小さいとみられる
もちろん投機筋のほかにも円を売る主体は存在します。例えば日本国内では、輸入企業(ドル買い・円売りの為替予約を締結)、個人(円資金をもとにドルの外貨預金を作成)、外国為替証拠金(FX)投資家(ドル買い・円売りポジションを構築)などで、彼らが一斉に動けば、ドル高・円安は大きく進行します。なお、投機筋やFX投資家は、比較的短期で反対売買(ドル売り・円買い)を行い、ポジションを閉じる傾向があります。
次に、中期の相場変動要因として、主に「貿易収支」があげられます。貿易赤字国では自国通貨を売って外貨を買う、貿易黒字国では外貨を売って自国通貨を買うという、取引需要があります。米国は変わらず貿易赤字国ですが、日本はかつての巨額の貿易黒字が年々縮小し、最近では貿易赤字が定着するとの懸念もみられます。そのため、日本では貿易取引に伴う円買い需要も、過去に比べ減ってきていると推測されます。
物価という長期の変動要因から、目先適度な調整後、時間をかけてゆっくりとドル安・円高方向へ
最後に、長期の相場変動要因として、主に「物価の格差」があげられます。物価の相対的変化率が為替レートの変化率を決めると考える「相対的購買力平価」は、長期的な為替レートの趨勢を評価する上で広く利用されています。これに基づくと、物価の高い国の通貨は長期的に下落することになりますが、実際、ドル円の長期トレンドは、日米の物価格差を反映し、ドル安・円高の傾向が確認されます。
ただ、現在のドル円の実勢レートは購買力平価を踏まえると、オーバーシュートの可能性が高いと思われます(図表2)。以上より、短期を週単位・月単位、中期を月単位・年単位、長期を複数年単位として、今後のドル円相場を展望した場合、「短期的にドル安・円高方向の調整が見込まれるものの、中期的な円買い圧力は強くなく、大幅なドル安・円高は想定し難い。ただ長期的にはゆっくりとドル安・円高地合いに戻る」、という動きが想定されます。
●円安継続…「物価上昇でも給与上がらず生活苦」を避ける防御策 5/27
4月28日、円相場は1ドル=130円台をつけ、20年ぶりの円安水準を更新しました。直近では130円台から遠のいたものの、多くのアナリストは今後ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想しています。円安が続くことによって、私たちの生活にはどのような影響が出るのでしょうか? 円安の影響から身を守るためには、どうすればよいのでしょうか。1級FP技能士・笹田潔氏が解説します。
円安が及ぼす影響は?
日本銀行が大規模な金融緩和を継続する方針を示したことで、ドル円相場はついに130円台に突入しました。直近では米国株式の下落により円相場は1ドル=128〜129円を推移していますが、今後のドル高・円安トレンドが継続のメインシナリオとして多くのアナリストが予想しています。
では、円安が続くことで身近な生活にどのような影響が出てしまうのでしょうか?
円安になると、日本からの輸出が有利になり、海外投資からの利益も円建てでは膨らむとされ、過去輸出産業で貿易黒字を築いていた日本経済においてプラスに働くものと考えられていました。ところが、現在の日本において輸入品が割高になることは、海外に頼るエネルギーや、食料品、原材料の価格が上昇するだけでなく、コロナ禍やロシア・ウクライナ情勢による物流が滞ることによる国際価格の急上昇も相まって、その影響が増幅されることに繋がっていることは言うまでもなく、多くのメディアでも取り上げられていることです。
もちろん、この影響はすでに消費者物価指数(CPI)にも及んでおり、速報値では月次の前年同月比2.5%と公表されています(図表2)。
このまま消費者物価指数(CPI)が上がり続けるか否かは今回の考察では言及しませんが、米国の消費者物価指数(CPI)の上昇継続の流れからも、容易に推測できることと言えます。
「過去のインフレ」と「今回のインフレ」の違い
円安が進行すると、物価が上昇する傾向にあることは前述しましたが、物価が上昇する局面では通常インフレーション(インフレ)になります。
では、インフレはどのようにして生じるのでしょうか? 過去インフレは、以下のような流れから、生じるとされていました。
景気がよくなる→給与が上がる/収入が増える→お金よりモノを必要とする→需要が増えて消費が拡大する→供給不足が生じモノの値段が上がる→供給量を増やすべく、企業が設備や人への投資を加速する→仕事の機会が増える→景気が良くなる という循環です。
今回のインフレはモノの需給関係から生じた価格上昇ではなく、外部環境から生じている物価上昇と言えます。これは、黒田総裁が4月の記者会見で「消費者物価は4月以降、2%程度の伸びとなる可能性がある」としながらも、今後も大規模な金融緩和を続ける姿勢を繰り返し強調した「エネルギー価格の上昇による『望ましくない物価上昇』であり、金融緩和を続け、景気を下支えする必要がある」としたことに繋がります。
まさにこの状況こそが、景気が後退していく中でインフレーション(インフレ、物価上昇)が同時進行する現象であり、景気停滞を意味する「スタグネーション(Stagnation)」と「インフレーション(Inflation)」を組み合わせた合成語で、スタグフレーションといいます。
スタグフレーション時では物価が上昇する一方、給料が上がらないため生活が苦しくなる方も出てしまいます。そのため、早めに給料以外の方法で、安定した収入を確保する準備をしていくことが必要になるのです。
円安でも自分の資産を守るには?
スタグフレーションが起きたときにも強いと言われる運用に、投資商品の購入があります。これは人の雇用と直接関係せず収支が得られることからです。当然、投資にはリターンに合ったリスクも存在します。投資商品の購入は自己責任で行っていただくことが大原則ですので、給与以外の方法が投資と記載してあったことを理由に投資商品の購入に走ることは避けてください。
投資商品の購入でリスクを軽減する方法の一つに「分散投資」があります。分散投資とは、ひとつの資産やひとつの銘柄に集中して一度に資金を投入するのではなく、いくつもの資産やいくつもの銘柄に対し複数回に分けて投資することを指します。分散投資では相関係数(2種類のデータ間の関連性を表す係数)が低い(相関係数が1に近い:正の相関、相関係数が-1に近い:負の相関、相関係数が0に近い:相関がない とされ、正の相関とは同じ方向に動きやすいことで、負の相関とは逆方向に動きやすいことを示します)資産を組み合わせることが、より効果的です。
相関係数のことなる資産の種類として、以下の投資商品が挙げられます。
(1)不動産投資 (2)株式投資 (3)債権投資 (4)金・コモディティ (5)暗号資産投資 (6)FX投資
まとめ 一刻も早く「安定した収入源」を用意すべし
今回は、円安で資産劣化を防ぐための防御策として、投資商品の購入という手法があるとしましたが、投資に取り組んだことがない、前掲のような商品の買い方も分からないという方が多いと思います。
為替レートは、金利や通貨供給量の差だけで決まるものではなく、資源や食糧などに基づいた富や経済力によっても大きく左右されます。これは現在円がルーブルよりも極端に価値が低いと評価されていることから明らかです。ルーブルには、貨幣価値を担保する資源、食糧(ロシアは、原油産出量世界第3位、小麦生産量世界第3位 トウモロコシ生産量世界第10位、金産出量世界第3位)などがあります。日本にはそれらがほとんどないのです。
円安は円が売られるから起こるのですが、今の円安は、円売りではなく「日本売り」といっても過言はないと思います。経済成長が鈍化している国の通貨を、グローバルな視点でみれば投資家はもちろん、国も持ちたがらないのです。
今回の円安は過去と異なり一過性のものとは言えない可能性があります。そのうえで保有している資産の劣化を防ぐ手法を書かせていただきました。 

 

●急速な円安進行に一服感 米景気後退懸念でドル売り 5/28
急速な円安進行に一服感が出ている。円はこの3週間でドルに対して約4円値上がりした。歴史的なインフレで米景気の後退懸念が強まり、ドルを売る動きが強まっているためだ。ただ円安に伴う輸入コストの増加を価格に反映しきれていない企業も多く、日本の消費者物価は当面、高水準の上昇が続きそうだ。
外国為替市場の円相場は5月9日、1ドル=131円34銭をつけ、2002年4月以来、約20年ぶりの円安・ドル高水準となった。3月1日には1ドル=115円近辺で取引されていたが、米連邦準備制度理事会(FRB)が3年3カ月ぶりの利上げを決めると、米長期金利が上昇。日米の金利差拡大が意識され、運用に有利なドルに買い注文が集まって円安が加速した。
「週単位で見ると、・・・
●為替相場 5/23〜5/27 5/28
23日からの週は、ドル売りが優勢。FOMC議事録公表を通過して米国の利上げペースが市場に織り込まれるなかで、欧州では7月利上げ開始がコンセンサス。ただ、ECBの利上げ幅をめぐって25bpが有力も、一部に50bpの見方があるなどタカ派度合いは不透明だ。ユーロ買い・ドル売りに傾きやすい状況。また、市場で利上げが十分に織り込まれている米国や英国では、利上げ一巡後の景気後退の回避が焦点となりつつある。長期債利回りの低下がドル売りやポンド売り圧力となる面もあったようだ。もっとも、50bpの利上げは期待先行という見方もあり、週末にはユーロ売りが入る場面が見られた。一方、日本では日銀総裁が他の諸国と比較してインフレ上昇は抑制されていると指摘、強力な緩和スタンスを維持する姿勢は変わらない。ドル円はドル売りに押され気味だが、クロス円は下がると買いが入る動きとなっている。NZ中銀が予想通りの利上げを発表し、声明で今後の利上げ継続を示唆したことでNZドル買いが強まった。
23日
東京市場で、ドル円は振幅。朝方に127.60台へと小安く推移したあと、東京勢の本格参加とともに買いが優勢となり128.08近辺の高値をつけた。その後は一転して売りが強まり、12710台まで押し下げられている。先週末海外市場での安値を割り込んでストップ注文が発動されたほか、米機関投資家筋からの売りのうわさもでていた。しかし、売りも続かず127.80台へと買い戻しが入っている。米株先物や米債利回り動向に神経質に反応していた。日米首脳会談が行われたが、為替市場に直接つながるものはなく影響は限定的だった。豪ドルが堅調。週末の豪総選挙で労働党が9年ぶりの政権奪還をほぼ確実としたことが、不透明感の払しょくにつながった。対ドルで0.71台乗せ、対円で91円台を試す動きに。
ロンドン市場は、ユーロ買いが優勢。5月独Ifo景況感指数が予想外に上昇したことに加えて、ラガルドECB総裁のタカ派発言に反応した。ユーロドルは1.06近辺での揉み合いを上抜けると、1.0690付近まで上昇。ユーロ円は135円台前半から136円台に乗せている。対ポンドでもユーロ買いが強まった。ただ、欧州株は上げ幅をやや縮めており、ECBの利上げペースの加速が警戒されたようだ。ポンドも連れ高となり対ドルで1.26近辺へ、対円で160円台後半へと買われている。ドル円は米債利回り動向に敏感に反応して上下動。ロンドン朝方に米債利回りが上昇すると127.90台まで上昇、東京午前の下げを消した。しかし、米債利回りが上昇一服し、ユーロドルの上昇が加わってドル売りに押され127円台半ば割れへと押し戻された。日米首脳会談が行われ、バイデン米大統領が、対中関税の引き下げを検討、としたことが株式市場に好感される面もあったようだ。ただ、ドル円は上値が重く、クロス円の上昇もユーロ買いによる面が強かった。
NY市場でも、ユーロ買いが優勢。ユーロドルはロンドン市場で急伸したあと、1.0690台へと高値を伸ばしている。ラガルドECB総裁が、「資産購入プログラム(APP)での純購入は7−9月(第3四半期)の非常に早い段階で終わると考えている。これにより、フォワードガイダンスに沿って7月の理事会で金利を引き上げることが可能になる。現在の見通しに基づくと、7ー9月期末までにマイナス金利を脱却できる可能性が高い」とブログで述べていた。ポンドドルも連れ高となって1.26ちょうど付近まで一時上昇。ただ、対ユーロでのポンド売り圧力もあって、1.25台後半での揉み合いに落ち着いた。ドル円は127円台前半から後半へと底堅く推移。米株式市場でダウ平均が一時700ドル超上昇し、ドル円の下値をサポートした。ただ、128円手前では上値を抑えられている。
24日
東京市場は、リスク警戒の円買いがやや優勢。ドル円は朝方に米株先物・時間外取引の下落を受けて、127.65近辺まで軟化。しかし、大口買い観測などで128円台に一時乗せた。しかし、その後は株安に押されて127.50台へと押し戻された。NY引け後に発表された米スナップの決算が弱かったことを受けて、同社株が30超安となり、ハイテク関連株全般に売りに押された。ユーロドルは前日のラガルドECB総裁発言を受けた買いが一服。1.07手前が重くなると1.0660台へと小反落。あすに中銀会合結果発表を控えるNZドルは調整的な売りが優勢だったが、0.64台前半での取引に落ち着いた。
ロンドン市場は、ドル売りが先行。ナスダック先物が大幅安、米債利回りが低下したことに反応。ドル円は127円台後半から一時127.09レベルまで下落。その後はやや株安が一服し、127円台半ばへと下げ渋っている。ユーロ相場は買いが優勢。ユーロドルはドル安圧力とともに、ラガルドECB総裁が再び第3四半期にはマイナス金利を脱却との見通しに言及し、買われて1.06台後半から一時1.0736レベルまで上伸。ユーロ円は136円近辺でサポートされると136.80付近まで一時上昇。ポンドは売られている。序盤はポンドドルが1.26手前まで買われる場面があったが、5月英PMI速報値が予想外に弱い数字となり急落。1.2475レベルまで安値を広げた。戻りは1.25台前半までと限定的。ポンド円も160円台半ばから一時159円台割れとなった。ユーロポンドは0.84台後半から0.85台後半へと大きく買われた。足元では、株安の動きは一服しているが、欧州株、米株先物ともに引き続きマイナス圏で推移している。
NY市場で、ドル円は126円台に下落。リスク回避ムードが広がるなかで、見切り売りが強まり一時126.35付近まで下落した。サポートされてきた127円ちょうどを下抜けて、ストップを巻き込んだもよう。前日の大幅高で底打ちが期待されていた米株式市場が取引序盤には下落したことが失望感を広げたようだ。ただ、為替市場ではリスク回避のドル買いではなく、逆にドル売りが強まった。市場では、景気後退が広く意識されるようであれば、FRBの利上げ期待が後退する可能性を見ているのかもしれない。前日は一部のFOMCメンバーから9月で利上げを一旦停止し、様子を見るのも選択肢の1つとの発言が出ていた。ユーロドルは一時1.07台半ばまで急速に買われた。カザークス・ラトビア中銀総裁は、「0.50%ポイントの大幅利上げ排除すべきでない」と述べた。一方で、ポンドドルには売りが強まり1.25台を割り込む場面があった。ロンドン時間に発表になっていた5月の英PMIを受けてポンドは戻り売りが強まっている。特にサービス業の弱さが目立ち、生活費危機の中で家計の実質所得が減少し、消費需要が弱まっていることを示唆した格好だった。
25日
東京市場では、NZドルが買われた。NZ中銀は市場予想通り0.5%の利上げを発表。声明の中で政策金利OCRがターゲットに安定的に戻るまでの引き締め姿勢継続に言及。追加利上げを強く示唆するものとしてNZドルの急騰につながった。発表前の下落を消して対ドルは0.65台乗せ。対円は81円台半ばから82円台前半に。ドル円は126.60付近まで軟化したあと、127円台に乗せた。米株先物が底堅く推移し、リスク警戒の動きが後退している。ユーロドルは1.0730近辺から1.0700台まで小安く推移。ドル円の上昇など、ドル買いの動きが重石に。
ロンドン市場は、ユーロ売りが優勢。ユーロドルの反落とともにドル指数の下げも一服。ユーロ売りの背景としては、ECB金融安定化報告で、インフレと成長鈍化の中で、企業の弱体化や資産市場が急激に調整されるリスクを警告していた。また、パネッタECB理事が正常化が中立を意味するものではないとの見方示しており、緩和スタンスを残したいとのニュアンスが感じられた。ユーロドルは1.07台を割り込むと、安値を1.0656レベルまで広げた。ユーロ円は136円付近から一時135.50割れ。ポンドドルは序盤に1.2560近辺まで買われたが、ロンドン勢の本格参加とともに売りに押されて一時1.2485近辺まで下落。ポンド円も159.50超えとなったあとは売りに転じて128.70付近まで反落。ドル円は東京市場からのじり高の動きを受けて序盤に127.30近辺に高値を伸ばしたが、その後は売買が交錯して127円台割れとなる場面も。米株先物はやや売りに押されている。
NY市場は、ドル売りが優勢。午後になって5月開催分のFOMC議事録が発表された。議事録では大半のメンバーが次回6月と7月の2回の0.50%ポイントの大幅利上げを支持していることが明らかとなった。その一方で、「迅速に利上げを実施すれば、年内において政策引き締めの効果、および経済の展開が政策調整をどの程度正当化したかを見極める上で良い位置につけることができると、多くの参加者が判断した」としている。市場からは、FRBが中立金利の水準まで迅速に政策金利を引き上げたあとは、利上げを一旦停止し、年末に向けて再評価するのではとの見方も。ユーロドルはロンドン時間の下げを戻す動き。1.06台半ばから1.06台後半へと反発。ポンドドルもロンドン時間に1.24台まで下落したが、NY時間には1.25台後半まで高値を伸ばした。この日は英中銀のチーフエコノミストのピル委員の発言が伝わっていたが、英中銀は高インフレと戦うために追加の引き締めを実施する必要があるが、あまりにも早く行動して英国を景気後退に追い込む危険性もあると警戒していた。 
26日
東京市場では、主要通貨が方向性に欠ける振幅だった。ドル円は朝方に前日の米FOMC後の売りが継続し127.12近辺まで下落。すぐに買いに転じると午前中に127.58近辺の高値をつけた。その後は米株先物や米債利回りの上下動をにらみつつ、レンジ内での振幅が続いた。ユーロドルは前日からの上昇の流れを受けて午前中に1.0723近辺まで高値を伸ばした。その後は上値を抑えられて揉み合いに。午後には下押しに流れが転じて1.06台後半に軟化した。ユーロ円は買いが先行して136.55近辺まで買われたあとは、ユーロドルの下げとともに135円台後半へと下押しされた。
ロンドン市場は、ドル売りが継続している。ドル売りを先導したのがドル円の下落。黒田日銀総裁が「米利上げでどんどん円安になるという事ではない、金利差と為替の関係は必ずしも確定的な結論ない」と述べたことに反応。ドル円は127円台を割り込み、126.55近辺まで下落した。この動きにやや遅れてユーロドルやポンドドルが買われている。ユーロドルは1.06台後半へと上値重く推移していたが、1.07台乗せから高値を1.0723近辺に伸ばした。ポンドドルは1.2550付近へと下げていたが、1.25台後半での振幅を経て1.2621近辺に高値を更新。株式市場は売買が交錯する神経質な動きとなっているが、次第に買いが優勢になってきている。米10年債利回りは2.70%付近に低下したあとは2.74%台に上昇と方向性に欠けた。前日の米FOMC議事録を無難に通過して、リスク警戒の動きは一服している。ドル円はクロス円とともに買い戻され、127円付近へと反発も、日銀総裁発言前の水準には届いていない。
NY市場ではロンドン市場で値を落としたドル円が買い戻される動きに。米株が続伸となり、リスク警戒感の後退からの円売りが強まった。ユーロドルではユーロ買いドル売りの動き。株高の動きが円安、ドル円を除くドル安につながっている。ロンドン市場で1.0720台まで上昇した後、1.0690割れまで調整が入る場面が見られたが、その後再びのユーロ買いドル売りとなり、1.0730前後まで。ロンドン市場で振幅が目立ったポンドドルは、ロンドン市場での1.2620前後までの上昇からいったん1.2550までと東京午後の安値圏に値を落とす動き。ただ、その後は下げ渋りを見せた。ユーロ円はドル円の買いとユーロドルの上昇の両面から支えられる形で136円60銭台まで。ロンドン市場での135円20銭台までの下げから1円半近い反発となった。
27日
東京市場では、午前中にドル円が値を落とす動きに。NY市場で127円台半ばがやや重くなり、下げやすい地合いとなる中、米債利回りが冴えない動きを見せたことをきっかけに売りが強まった。127円60銭台まで一時値を落としたが、前日ロンドン市場の安値に届かず、その後はいったんもみ合いに。ドル円でのドル売りもあってユーロドルはしっかり。昼前に1.0740前後を超え、1.0750超えのストップロス注文を巻き込む形で1.0760台まで。その他豪ドルの買いが目立つ展開に。アジア株式市場で香港株が大きく反発を見せ、リスク選好の動きが強まったことが、資源国通貨買いにつながった。東京午前の0.7100を挟んでの推移から0.7140台を付ける動きを見せている。
ロンドン市場は、ユーロドルの下げが目立った。東京昼頃の高値からじりじりと値を落とす動きを見せると、上昇局面でポイントとなった1.0740を割り込んで売りが加速。1.07を割り込むところまで売り込まれた。ECBによる7月及び9月の利上げを織り込む動きが進んでいるが、市場の一部で期待がある7月の0.25%利上げについては期待先行との意識が出てきており、調整が入った形。ドル円は東京市場の下げ分を解消する動きとなり127円20銭台まで。アジア市場での香港株の買い戻しに続き、欧州市場でも株高の動きが優勢となり、リスク選好での円売りが入る形に。ユーロ円も136円40銭前後の動きらから一時136円70銭台まで上昇も、その後はユーロ売りの動きに押され135円80銭台まで。
NY市場は月末絡みの動きでドルの買い戻しが優勢となり、ドル円は127円台に戻している。東京時間には一時126.70近辺まで下落する場面が見られた。今週のFOMC議事録を受けて、市場はFRBの積極利上げへの期待を一服させている。一部からは、インフレにピークアウト感が出れば、9月の利上げでFRBは一旦利上げサイクルを停止するとの声も出ている。 

 

●加速する2022年のドル高は「日本凋落」が原因なのか? 5/29
円安の急激な進行と世界的に加速するドル高傾向
ここ最近の円安の急激な進行を気にされている方は多いかもしれません。2021年4月時点では1ドル=108円前後だった水準が、2022年4月19日には129円台となり、たった1年で2割弱ほど円の価値が下落した結果となっています。
この円安の問題は、対ドルに限った話ではありません。対ユーロにおいても6年10ヶ月ぶりに一時140円台(2022年4月21日時点)に突入したほか、対ポンドも6年2ヶ月ぶり一時168円台(2022年4月20日時点)に乗るなど、全方位的に円が弱くなっています。
これとは対照的に、ドルは対外的な強さを高めており、円に対しては言わずもがな、対ユーロにおいてもここ1年で約13%上昇。過去2年間の最高値に達しています。このような急速なドル高には一体どのような理由があるのでしょうか。
いち早く利上げに踏み切ったことがドル高の要因に?
日本の論調では、「日本円に下落要因があったから円安に陥ってしまった」という分析が一般的です。
その具体理由としては、慢性化する貿易赤字や、他国と比べての程成長率などが挙げられます。ユーロ安も同様で、EUの弱体化の結果だとする分析が主流です。エネルギー価格が上昇するなかで、資源を輸入に依存していたことがその要因として挙げられることが多く、その潜在的リスクが、ウクライナ危機によって一気に可視化されたとする見方も多いようです。
一方、アメリカの専門家は少し違った評価をしています。彼らの主張に見られるのが、円やユーロが弱くなったこと以上に、ドルが強くなった、すなわちドルがより多く買われるようになったのだ、という論調です。
そのロジックを見てみましょう。コロナ禍による世界的な金融緩和のなかで、アメリカはいち早く利上げを敢行。利上げを行うとドル建ての各種金融商品の金利も上昇します。実際に米国債券10年物の利回りは、2022年初頭の1.60%から2022年4月22日時点で2.90%へと急上昇しました。
こうしたことによって「預金金利も上昇するのでは?」という期待感も市場に生まれ、利回りのいい商品を好む投資家の買いがドル建て商品に集まり、結果としてドルが高くなったという分析です。
過度なドル高が日本やEUの経済に与える影響
では、このドル高は、はたして他国にどのような影響を与えるのでしょうか?
かつての日本では、輸出産業に有利な点から適度な円安が好まれていました。
しかし、貿易赤字国となった現在では、円安はデメリットのほうが大きくなっています。特に問題なのが、日本が非資源国である点。日本は原材料の供給のほとんどを輸入に依存しているため、ドル高になると仕入れ原価が上昇してしまうのです。その結果、物価自体も上昇せざるをえず、消費者への圧迫にもつながります。企業も同様で、かつては円安の恩恵を受けていた輸出産業ですら、この円安によって原材料の価格高騰に苦しむ事態となっています。
ちなみに、EUも日本と同様にエネルギー資源を輸入に頼っていますが、ウクライナ危機によって、資源の供給源として重要な位置を占めていたロシアと取引ができなくなっています。EU各国は新しい供給路の確保に動いていますが、その取引がドル建てで行われることはまず間違いなく、EU圏におけるドル高は今後ますます進行することが予想されます。
アメリカにとってもデメリットは存在する
とはいえ、ドル高によってアメリカの一人勝ち状態が生まれるかというと、決してそうではありません。
なぜなら、アメリカにもまた、輸出企業や海外で事業を展開する会社が数多く存在し、それらの企業はドル高によって海外売上の数字も下がります。そうなると必然的に株価も下がるため、投資家たちにも悪影響を及ぼす可能性が大いに考えられます。企業側も、多少の為替変動に対してはリスクヘッジを行なっているものの、個々の企業の自衛策には限度があるため、ドル高が行き過ぎるとアメリカの産業構造に亀裂が走る可能性も考えられるでしょう。
しかし、ドル高の主な要因と考えられている利上げをストップすることは当面は難しいと思われます。なぜなら今回の利上げは、アメリカ市民を苦しめるインフレを食い止めるための施策としてあるからです。特にアメリカは今年11月に中間選挙を控えており、低迷している支持率を少しでも回復させたいと考えているバイデン政権は、市民からの支持を獲得するためにも、インフレ抑制の手をゆるめるわけにはいかない事情もあります。
ドルの強さを大きく左右するアメリカの金融政策ですが、不動産投資に関わる方も、今後の動向をぜひ注視しておきたいところです。
●来週の株式に向けて=SQまで膠着継続も、個別株物色には悪くない相場 5/29
日経平均株価は、週間ベースでは2週連続の上昇。前週まで90年ぶりと言われる8週連続の下落となったNYダウと比べても、底堅さを堅持している。
NYダウは、前日まで5日続伸しており9週連続安は避けられそうな雰囲気だが、依然として先行きに不透明感は漂う。東京市場も米国に比べ底堅いとはいえ、日経平均株価は2万7000円が壁となっており、上値は重い展開が続く。
来週からは6月相場に入るが、「来月10日のメジャーSQまで方向性に欠ける展開は続きそうだ」(アナリスト)との声も聞かれる。米連邦公開市場委員会(FOMC)が14〜15日に開催されるだけに、来月中旬までは手掛けにくさも残りそうだ。
ただ、「日経平均は一進一退が続くが、個別株の物色には決して悪い環境ではない」(市場関係者)との声も聞かれる。外国人観光客の新規入国の再開でインバウンド関連株が人気づき始めたが、この日はエイチ・アイ・エス<9603.T>やパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス<7532.T>が急伸した。更に、AI通訳アプリ「ポケトーク」を手掛けるソースネクスト<4344.T>が大幅続伸している。バイデン米大統領による台湾防衛に絡む発言で防衛関連株が注目されるなか、東京計器<7721.T>などの銘柄も上昇基調を強めている。
原発再稼働に絡んでは、29日の新潟県知事選も関心を集めるなか、東京電力ホールディングス<9501.T>や中国電力<9504.T>の動向なども注目されている。日経平均株価は膠着状態が続いても、注目テーマの人気に乗る個別銘柄は活況状態となる展開も期待できそうだ。来週は週末の3日に米5月雇用統計が発表され海外では重要経済指標が相次ぐ。30日は米国がメモリアルデーで休場だが、翌31日に中国5月製造業PMIが発表される。1日には米5月ISM製造業景況指数、2日に同ADP雇用統計が公表される。3日には雇用統計とともに同ISM非製造業景況指数が発表される。
国内では31日に4月鉱工業生産、1日に1〜3月法人企業統計が発表される。同日に伊藤園<2593.T>の決算が予定されている。31日にはトリプルアイズ<5026.T>がグロース市場に新規上場する。同日にMSCIの定期入れ替えが実施される。
●小売りが円安・原料高対策 値上げに壁、コスト削減急ぐ 5/29
小売り各社が円安や原材料高の対策に奔走している。ニトリホールディングスは海外で商品の生産・調達の仕組みを見直すほか、アダストリアは需要予測を活用して生産スケジュールの修正などで対応する。食品や日用品の値上げが相次ぐが、賃上げは小幅にとどまっており、消費関連企業では価格転嫁に限界がある状態だ。
円相場は一時1ドル=131円台に下落した。円安水準は輸出型の製造業にとって追い風となる。輸入に頼る小売業は円安が原価上昇などに直結する一方、価格転嫁は顧客離れの懸念がある。このため円安下でもコスト上昇を抑えられるように生産・調達の体制を多方面で修正する必要がある。
ニトリホールディングスは9割の商品を海外で生産しており、対ドルで1円の円安が年約20億円の減益要因になるという。これまで海外の外部工場に生産を委託してきたが、一部で内製化を広げる。自社での生産に切り替えることで円安などで高騰する原材料の調達や生産計画などの管理を自社でしやすくなり、原価の低減につながる。
具体的にはベトナムにカーテンを製造する専用工場を設立しており、色染めや縫製などを一貫して手掛けている。原材料を生産者から直接仕入れることも検討する。
カジュアル衣料を手掛けるアダストリアは急速に進む円安を受けて、為替予約で対応しているほか、生地などの発注の仕方を見直す。データ分析などを活用して早期に需要を予測し、生地を先行発注したり、閑散期に生産したりすることでコストを削減する。
価格が高騰している綿花については、再生ポリエステルなどの代替素材の使用も進める。
「無印良品」を展開する良品計画は、衣料品の製造工程で出た布の端などを商品に使い、価格を抑えている。これまで靴下などに残糸を活用してきたが、今後は製品の種類を増やしていく。
ビックカメラは円安や部品価格の高騰などを受けて、家電メーカーによる値上げが進むとみている。すでに食品や日用品などの値上げが進んでおり、消費者は値上げに対して敏感になっている。同社は一部商品の在庫を増やすことで、値上げ前の駆け込み需要などに対応できるようにしている。
賃金が伸び悩むなか、原材料高や円安を転嫁する値上げだけでは、節約志向を強める消費者の買い控えを招きかねない。既存商品を定期的に値下げしてきた良品計画の堂前宣夫社長は「(円安や原材料高の)現状では値下げは難しく、値上げも避けたい」と語る。
小売りや外食企業にとって、業務の効率化などでコストを抑え収益を確保する新たな手法が急務になっている。 

 

●シドニー外為〕米ドルは127円台前半=豪ドルは91円近辺 5/30
週明け30日朝のシドニー外国為替市場の円相場は1米ドル=127円台前半で推移した。現地時間午前8時半現在、127円15〜25銭(前週末同時刻は127円05〜15銭)。
オーストラリア・ドルは、1豪ドル=0.7150〜7160米ドル(同0.7095〜7105米ドル)、対円では90円95銭〜91円05銭(同90円15〜25銭)。
ニュージーランド(NZ)ドルは、1NZドル=0.6525〜6535米ドル(同0.6475〜6485米ドル)、対円は83円00〜10銭(同82円30〜40銭)。
ユーロは、1ユーロ=1.0730〜0740米ドル(同1.0725〜0735米ドル)、対円は136円45〜55銭(同136円35〜45銭)。 
●円相場、127円36〜36銭 5/30
30日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=127円36〜36銭と、前週末(127円13〜13銭)に比べ23銭の円安・ドル高となった。 
●進む円安、年内に「1ドル150円」の予想も 転換ポイントは「2023年度の後半」 5/30
コロナ禍とウクライナ戦争のダブルパンチによる物価高騰が家計を圧迫している。さらには、20年ぶりの水準となる1ドル=130円台を突破。自力では抜け出せそうにない「超円安サバイバル」だが、はたしていつまで続くのか──。
都内在住の50代主婦がスーパーマーケットで買い物をしながら眉をひそめる。
「毎月の値上げラッシュで生活が本当に大変です。それなのに夫の給料はまったく上がらず、出ていくお金が増えるだけ。しかも6月からはさらに値上げがあると聞き、気が滅入るばかりです」
いまのところ値上げラッシュが収まる気配はない。これまでの食品や日用品、飲料などに加えて6月からはインスタント麺類やアルコール、香辛料などの価格がアップし、一般市民の懐はいっそう苦しくなるばかり。
その要因の1つが円安だ。為替は4月28日に20年ぶりに1ドル130円台を記録し、以降も130円前後が続く。今後も円安が加速すると指摘するのは、経済評論家の加谷珪一さんだ。
「円安の要因の1つは日本銀行の量的緩和策です。日銀はこの政策を変更する気がないとみられ、今後も円安が進みそうです。1ドル130円は最低ラインで、年内には1ドル150円の超円安になる可能性が充分にあります」(加谷さん)
円安になると輸出企業が有利になる。実際、トヨタ自動車など一部企業の2022年3月期決算は、過去最高の純利益を叩き出した。一方で海外から輸入する場合はコストが上乗せされ、企業の収益を圧迫する。これに耐え切れない企業は、商品を値上げせざるを得ない。ニッセイ基礎研究所上席エコノミストの上野剛志さんが言う。
「いまは円安に資源高や穀物高が加わり、企業や家計を圧迫しています。円安にはメリットもありますが、現在の急速な円安では、輸入企業や家計にとってデメリットの側面が目立ってきています」
鈴木俊一財務大臣は4月15日の記者会見で「悪い円安」を認めたが、今後もこの傾向は続きそうだ。
「理論上、日銀が政策を変更して金利を上げれば、円安は収まるはず。しかし日本政府は1000兆円の債務を抱え、アメリカ並みの金利にすると利子だけで年間に30兆円の予算が必要になる。これは非現実的で、当面、国は金利を上げられません」(加谷さん)
だが、金利をずっと低く抑え続けるのは難しい。どこかのタイミングで利上げするしかない。上野さんが言う。
「日銀の黒田東彦総裁は、来年4月の任期満了まで金利を上げないでしょう。そうなると次期総裁に代わった来年度の後半がポイントになるかもしれません。期間が長めの金利について、上昇許容幅を若干引き上げるくらいのことは行われるでしょう」
これまで日本では物価が下がるデフレが諸悪の根源とされてきたが、この先は超円安や資源高、穀物高により、物価が上がり続けるインフレが到来すると予想される。ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんが語る。
「あらゆるものを輸入に頼る日本では、円安が進むと家計がますます苦しくなります。しかも物の値段は上がるのに給料は上がらない『悪いインフレ』が予想されるので、自分の身を守るには、賢く節約しながら副業や投資でお金を増やすことが必要です。そのためには円安を逆手にとり、危機を好機に変える発想と実践が求められます」 

 

●東京円、128円台前半  5/31
31日午前の東京外国為替市場の円相場は、1ドル=128円台前半で取引された。午前10時現在は前日比84銭円安ドル高の1ドル=128円19〜21銭。ユーロは89銭円安ユーロ高の1ユーロ=137円71〜77銭。
市場関係者によると、米国の長期金利が時間外取引で上昇。日米の金利差が拡大するとの思惑から、円を売ってドルを買う動きが先行した。 外為ブローカーは「米長期金利が投資家の想定よりも大きく上げたため、円安進行が勢いづく場面があった」と指摘した。
●外為10時 円、下げ幅拡大 128円台前半 中値「ドル不足」の声 8/31
31日午前の東京外国為替市場で、円相場は下げ幅を拡大している。10時時点は1ドル=128円20〜22銭と前日17時時点と比べて85銭の円安・ドル高だった。128円台への下落は1週間ぶり。10時前の中値決済に向けては「ドル不足」(国内銀行の為替担当者)との声が聞かれた。国内輸入企業による円売り・ドル買いが進んだとみられ、円相場に下押し圧力がかかった。
米長期金利が日本時間31日の取引で一時2.85%近辺まで上昇したのも、日米金利差の拡大を意識した円売り・ドル買いを促した。月末の持ち高調整を目的とした円売り・ドル買いも出たようだ。
円は対ユーロでも下げ幅を広げた。10時時点では1ユーロ=137円76〜78銭と、同94銭の円安・ユーロ高だった。ユーロは対ドルで上げ幅を縮小した。10時時点では1ユーロ=1.0744〜46ドルと同0.0001ドルのユーロ高・ドル安だった。 
●東京円、40銭安の1ドル=127円75〜76銭 5/31
31日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比40銭円安・ドル高の1ドル=127円75〜76銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、同34銭円安・ユーロ高の1ユーロ=137円16〜20銭で大方の取引を終えた。
●海外市場概況 5/31
ドル・円:127円67銭から128円89銭までドル高・円安で推移。5月シカゴ購買部協会景気指数の予想外の上昇や5月消費者信頼感指数の底堅い結果を受けて、ドル買い・円売りが優勢になった。
ユーロ・ドル:1.0679ドルまでユーロ安・ドル高推移後、1.0747ドルまでユーロ高・ドル安で推移。ユーロ圏5月消費者物価指数速報値の伸び拡大がユーロ買いにつながった。
ユーロ・円:136円81銭から138円24銭までユーロ高・円安で推移。
NY原油市場:OPEC増産思惑で下落。
NY株式市場:米国株式市場は反落、インフレ懸念根強く。
●NY外為 円、128円台後半 5/31
連休明け31日のニューヨーク外国為替市場では、米長期金利の上昇を眺めて円売り・ドル買いが優勢となり、円相場は1ドル=128円台後半に下落した。午後5時現在は128円66〜76銭と、前営業日の27日同時刻(127円04〜14銭)比1円62銭の円安・ドル高。
米長期金利が前週から一転して大幅上昇する中、早朝以降にドル買い・円売りの流れが加速。米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が30日の講演で、インフレ率が目標の2%により近づくまで、0.5%の大幅利上げ検討を続ける意向を明らかにしたことがきっかけとなった。
FRBは既に、6月と7月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の利上げを実施する方針を表明済み。9月以降については当局者の間で見解が割れているが、ウォラー氏のタカ派的な発言を受けて米金利の先高感が強まった。
ニューヨーク市場入り後も米株安や原油高を眺め、基軸通貨のドルを買う動きが継続。円は午前に一時128円88銭の安値を付け、その後も軟調に推移した。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0729〜0739ドル(前営業日午後5時は1.0731〜0741ドル)、対円では同138円13〜23銭(同136円37〜47銭)と、1円76銭の円安・ユーロ高。 
 
 

 

●外為10時 円、1ドル=129円台に下落 中値「ややドル不足」 6/1
1日午前の東京外国為替市場で円相場は下落幅を拡大した。10時時点は1ドル=128円91〜92銭と前日17時時点と比べて1円16銭の円安・ドル高で、その後、129円台に下落する場面もあった。129円台は5月18日以来、2週間ぶりとなる。日本時間1日の取引でも米長期金利の上昇が続き、円売り・ドル買いの勢いが強まった。
10時前の中値決済に向けては「ややドル不足」(国内銀行の為替担当者)との声があった。国内輸入企業による円売り・ドル買い観測も相場を下押しした。
円は対ユーロでも下げ幅を拡大している。10時時点は1ユーロ=138円27〜29銭と、同1円11銭の円安・ユーロ高だった。ユーロは対ドルでは下落しており、10時時点は1ユーロ=1.0725〜26ドルと同0.0011ドルのユーロ安・ドル高だった。
●外為 1ドル129円03銭前後と大幅なドル高・円安で推移 6/1
1日の外国為替市場のドル円相場は午後0時時点で1ドル=129円03銭前後と、前日午後5時時点に比べ1円30銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=138円25銭前後と1円15銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。 
●日経平均反発、4月21日以来高値 円安や中国経済期待で 6/1
1日の東京株式市場で日経平均株価は反発し、前日比178円09銭(0.65%)高の2万7457円89銭で終えた。4月21日以来の高値。米株価指数先物が日本時間1日の取引で堅調に推移し、投資家心理が上向いた。外国為替市場で円安・ドル高が進み自動車など輸出関連銘柄に買いが入った。中国経済の回復期待が高まったことも追い風に幅広い銘柄が上昇した。
日経平均の上げ幅は一時200円を超えた。外国為替市場で円相場が1ドル=129円台まで円安・ドル高が進み輸出採算が改善するとの思惑から、自動車関連株や機械株が物色された。
中国メディアの財新と米S&Pグローバルが1日発表した5月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は好不況の境目となる50を下回ったが、前月からは改善した。中国・上海市は1日から新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ目的の都市封鎖(ロックダウン)を解除した。東海東京調査センターの長田清英チーフストラテジストは「中国経済に対する不安感は日本株の上値を重くする一因だったが、上海市のロックダウン解除などで不透明感はかなり後退した」とみていた。
東証株価指数(TOPIX)は反発し、前日比25.97ポイント(1.36%)高の1938.64で終えた。4月5日以来およそ2カ月ぶりの高値となった。
東証プライムの売買代金は概算で2兆8971億円。売買高は12億2885万株だった。東証プライム市場の値上がり銘柄数は1546と、全体の約8割を占めた。値下がりは258、変わらずは33だった。
トヨタ、日産自、ホンダが買われた。ダイキン、KDDI、ソニーGが上昇。資生堂、商船三井も高かった。半面、東エレク、ソフトバンクグループ、第一三共、INPEXは売られた。
●東京円、1円64銭安の1ドル=129円39〜41銭 6/1
1日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比1円64銭円安・ドル高の1ドル=129円39〜41銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、1円47銭円安・ユーロ高の1ユーロ=138円63〜67銭で大方の取引を終えた。
●ドル円は129円台半ばへ上昇、日米金融政策スタンスの差を再び意識=ロンドン 6/1
ロンドン市場は、ドル円、クロス円が上昇。ドル円は129.61レベル、ユーロ円は138.98レベル、ポンド円は163.32レベル、豪ドル円は93.22レベルなどにそれぞれ本日の高値を伸ばした。昨日、ウォラー米FRB理事が今後数会合での50bpずつの利上げを提唱したが、これを受けたドル円の上昇が今日も継続している。また、きょうは若田部日銀副総裁が「金融緩和の粘り強い継続によって着実に経済の好循環を支え、賃金が上がっていく環境を維持することが必要になる」と発言しており、市場に強力な緩和策の継続を印象付けた。一方で、ECBメンバーではタカ派で知られるホルツマン・オーストリア中銀総裁は前日のユーロ圏インフレデータを念頭に置いて「インフレ率の新記録更新は50bp利上げの必要性を支持」と発言した。日銀の緩和姿勢が一層際立つこととなり、根強い円売り圧力となっている。ただ、欧州株や米株先物・時間外取引は上値重く推移しており、リスク選好面での円売り圧力はやや影を潜めている。
ドル円は129円台半ばでの取引。ロンドン序盤に129.54レベルまで買われたあとの下押しは129.20台までに限定された。足元では再び買われ、高値を129.61レベルに更新している。前日からの円安・ドル高の流れが継続している。米10年債利回りは2.85%付近から2.88%台前半での振幅となっている。
ユーロドルは1.07台前半での取引。ロンドン朝方に1.0705レベルまで下押しされたあとは、ロンドン序盤に1.0739レベルまで上昇。その後はレンジ内で推移している。ユーロ円はドル円とともに買われ、高値を138.98レベルまで伸ばした。その後は138円台後半に高止まりしている。対ポンドでは売買が交錯しており、目立った方向性は示していない。4月ドイツ小売売上高は前年比が伸びを回復も、前月比はマイナスとまちまち。5月ユーロ圏製造業PMI確報値は速報値から変わらず。
ポンドドルは1.25台後半での取引。ロンドン朝方に1.2610台まで買われたあと、1.2570台まで下落。その後はレンジ内で推移している。前日NY市場からのレンジ取引が続いている。ポンド円は円安の流れのなかにあり、ロンドン序盤には163.32レベルまで高値を伸ばした。その後は、上昇一服となり162円台後半から163円付近での推移に落ち着いている。ユーロポンドは0.85台前半での揉み合い。ポンド自体に目立った方向性は示されていない。5月英ネーションワイド住宅価格は前月比が+0.9%に伸びたが、前年比は+11.2%と前回から伸びが鈍った。 
●円安・物価上昇で批判強まる「黒田異次元緩和の総括」で必要な視点 6/1 
「円安放置で物価上昇」 緩和維持への批判は正当か?
ウクライナ侵攻などの影響で日本でも物価上昇圧力が高まる中で、金融緩和の継続に対する批判が強まっている。
物価上昇の主因は、エネルギーや食糧などの輸入品価格上昇にあるのだが、日本銀行が緩和政策を維持しているために米国との金利差が広がり、円安を通じて物価上昇が加速、家計の購買力や企業の収益を圧迫しているという批判だ。
負担増は、家計で言えば名目所得が固定されている年金や生活保護の受給者、企業で言えばコロナで深刻な影響を受けた飲食や宿泊、運輸といった内需サービスなどの事業者に集中しやすい点で、市場関係者だけでなく世論にも影響しやすい。
足元では円安圧力はやや低下しているが、今年冬にかけては、欧州諸国による原油や天然ガスのロシア依存の本格的な見直しやウクライナによる穀物供給の減少の影響が顕在化するなどの要素があり、輸入インフレ圧力が少なくとも高止まる可能性は否定できない。日銀への批判も、根強く残存することが考えられる。
来年春には黒田東彦総裁が任期を満了する状況でもあり、黒田総裁の下、続けられてきた「量的・質的金融緩和」の総括が検討されるべき良い機会ともいえる。
「量的・質的金融緩和」の総括  物価目標のほかにも重要な視点
10年目を迎える「量的・質的金融緩和」の効果や意味合いとしてまず検証されるべき本質的な問いは、2%物価目標の達成に有用だったかという点だろう。
だが現状では、このことについての明確な回答はまだ得られる状況には至らないと、筆者は考えている。
消費者物価指数(除く生鮮食料品)上昇率はこの4月に2%台を超えたが、日銀が4月末に示した物価見通しによれば、来年度には上昇率は1%台前半に再び減速すると予想されている。
今の状況は、「金融緩和に注力したことで、物価をようやくここまで引き上げることができた」ともいえる一方で、「これだけの政策を動員しても、物価目標は達成できなかった」とも主張できるからだ。
「量的・質的金融緩和」は、金融政策の歴史のなかでも「壮大な実験」と呼べるものだが、その政策を10年近く展開しても、物価との関係を巡る論争に終止符を打てないとすれば、大変残念なことだ。
ただそれでも、「量的・質的金融緩和」の総括を通じて明らかにできる点はいくつか存在する。
物価上昇の原因によって インフレ期待への影響は違うのか?
まず、物価上昇とインフレ期待の関係だ。
「量的・質的金融緩和」でまず掲げられたのは、日銀が物価目標を掲げ国債買い入れなどの大胆な量的緩和をすすめることを明確に言えば、インフレ期待が醸成されて物価が上がるという点だった。
この問題で、「量的・質的金融緩和」を通じて確認されたことは、企業や家計のインフレ期待が「適合的」であることだ。つまり、実際に物価が上がらないとインフレ期待が高まらないことだ。
その上で、足元のインフレ率上昇の経験は、物価上昇の原因がインフレ期待にどのような影響を持つのかということについて、ヒントをもたらす可能性がある。
輸入インフレを含めていかなる原因でも、物価が上昇し始めればインフレ期待は高まるのか、それとも内需の拡大を伴う「望ましい物価上昇」の方がインフレ期待醸成への影響は大きいのかといった点を、明らかにしておくことは重要だ。
いうまでもなく、インフレ期待は価格や賃金の設定を通じて、今後の物価の動きに大きな影響を与えるからだ。
また、今後、予想される企業のサプライチェーンの再構築が、これまでの低インフレ構造にどのような影響を及ぼすかという点も注視が必要だ。
地政学的状況の変化や経済安全保障の要請、気候変動問題への対応などを背景に、企業は将来に向けて既存のサプライチェーンを大きく見直していくことが想定される。
こうした見直しによる構造変化の下で、海外発の輸入インフレが国内に波及する経路やメカニズムを明らかにしておくことは重要だ。
なぜなら、このメカニズムの影響がはっきりすれば、金融政策の前提となる基調的なインフレ率を想定するのに有効だからだ。
ポリシーミックスの「功罪」 金融システム安定や市場機能への影響
「量的・質的金融緩和」は「壮大な実験」であった以上、その総括では他の経済政策との関係を視野に入れることも極めて重要だ。
例えば、異次元の金融緩和が資産価格の過大評価を招き、結果的に金融安定を損なうリスクが高いとの批判や懸念がしばしば示されてきた。
こうした批判は、リーマン・ショックに至る米国の政策運営も含めて歴史的には前例も多く、考え方自体は合理的なものだ。
だがしかし、少なくともこれまでのところ、異次元緩和によってそうした懸念が顕在化する事態は起きていない。
また、2020 年春のようにコロナショックで米欧の金融市場が大きく不安定化した際にも、国内では資産価格は変動したが、金融仲介機能への影響はごく短期で終わった。
このことは、日本では極めて緩和的な金融環境でも過度なリスクテークは生じない構造にあるためなのか、それともリーマン・ショック後の金融規制や監督の強化が有効だったからなのか。
それを確認しておくことは、再び強力な金融緩和が必要になった時に、中央銀行による金融政策と金融当局による監督規制とのポリシーミックスを考える上で重要だ。
より視点を広げれば、金融安定を維持できた裏側で、企業や家計に対する金融仲介機能や主要な金融市場の機能が維持されたかどうかを確認することも必要だ。
国債やETFの大量買い入れを通じた強力な金融緩和が、債券や株式の市場機能を損なうという批判も出て、日銀自身も「副作用」として認めてはきた。
それでも中央銀行が市場の発する情報を正しく理解する上でも、資金の適切な流れを通じた経済成長の下支えのためにどのような補完的な政策が必要かを考える上で、総括から得られる知見は有用な教訓となり得る。
財政の調達コスト引き下げは 財政規律を弛緩させたのか?
ポリシーミックスの効果を考えるうえで上でより難しい課題は、「量的・質的金融緩和」に伴う財政政策への影響の評価だ。
日銀は物価目標を達成するために強力な金融緩和を維持してきたが、それによる低金利環境の維持を通じて、財政資金の調達コストを結果的に抑制したとしても、そうした資金が経済成長のために活用されたのであれば、マクロ政策全体としては整合的なものだ。
さらに、財政支出によって成長基盤が強化されれば、長い目で見れば税収増で財政の健全化が進み、金融政策の柔軟性を高めることにもつながる。
ただ一方で、財政政策が、「量的・質的金融緩和」による低金利環境を有効に活用したかどうかという問題とは別に、長期にわたる金融緩和が財政規律を弛緩させ、財政健全化へのインセンティブを弱めたとの批判も根強く存在する。
本来、財政規律は、議会や政府の枠組みの中で確保されるのが筋だが、財政を拡張しても、金融緩和という「バックストップ」によってコストの上昇が抑制されるという意識が定着すれば、長い目で見て財政運営に影響を与える可能性がある。
この点に関しては、日本ではこれまで物価目標がごく一時的にしか達成されず、金融政策の正常化ができていないために、金融緩和による財政規律への影響を明確に把握することが難しかった。
実際、筆者もコロナ禍の前に欧米の政策当局や市場関係者を訪問していた際に、最も答えに困ったのは、「日本で2%インフレが実現した場合、10年国債の利回りは何%になるか」という質問だった。
将来の財政危機や日銀に対する信認の喪失といった「テールリスク」を除くとしても、常態的な金融緩和が財政運営に与える中長期な影響については、さまざまな面で不確実性が高いが、日本のこの10年近くの実験による経験が有用な前例となる可能性もある。
黒田総裁自身も記者会見などで強調してきたように、本来、政策運営は属人的なものであってはならない。その意味では「量的・質的緩和」の総括も、正副総裁人事とは関係なく行われる筋合いにある。
しかし、異次元緩和は「デフレ脱却」への要請を背景に従来にない政策手段を動員して展開された政策だけに、市場が想定するように正副総裁の任期が満了する来年春を見据えて成果と副作用を適切に評価しておくことは有用だ。
しかも、将来に向けて物価を取り巻く環境に変化の兆しがみられる点でも いまは良い機会といえる。
効果と副作用の双方の面で最も大きな影響を受ける家計や企業は、金融政策の運営を直接的に変更する手段を持たないだけでなく、その適切さを判断するための情報や経験も限られている。
家計や企業が物価と金融政策の「真実」を理解し適切な世論が形成されるためにも、日銀自身による真摯(しんし)な総括は重要な意味を持つ。 

 

●NY円、一時130円19銭 3週間ぶり円安ドル高水準 6/2
1日のニューヨーク外国為替市場の円相場は一時1ドル=130円19銭まで下落し、5月11日以来、3週間ぶりの円安ドル高水準となった。米長期金利の上昇を背景に、日米金利差の拡大を意識した円売りドル買いが優勢だった。
午後5時現在は、前日比1円45銭円安ドル高の1ドル=130円11〜21銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0647〜57ドル、138円60〜70銭。
●NY円、3日続落 1ドル=130円10〜20銭 良好な米経済指標の発表受け 6/2
1日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3日続落し、前日比1円45銭円安・ドル高の1ドル=130円10〜20銭で取引を終えた。一時、130円19銭と5月11日以来の円安・ドル高水準を付けた。米経済の底堅さを示す経済指標の発表を受けて、円売り・ドル買いが優勢となった。
1日発表の5月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は前月比で市場予想に反して上昇した。4月の米雇用動態調査(JOLTS)では、非農業部門の求人件数は大幅に上方修正された前月からは減少したが高水準を維持した。米経済の堅調さが示され、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締め観測が強まり、幅広い通貨に対してドルが買われた。
1日の米債券市場で長期金利が一時2.95%と前日終値(2.84%)から大きく上昇し、5月半ば以来の高水準を付けた。日米の金利差拡大が意識されたのも、円売り・ドル買いを促した。
円の高値は129円21銭だった。円は対ユーロで4日続落し、前日比45銭円安・ユーロ高の1ユーロ=138円60〜70銭で取引を終えた。
ユーロはドルに対して横ばいを挟んで4営業日ぶりに反落し、前日比0.0085ドル安の1ユーロ=1.0645〜55ドルだった。米金融引き締めが続くとの見方からユーロ売り・ドル買いが優勢となった。
ユーロの安値は1.0627ドル、高値は1.0731ドルだった。 
●円、129円台半ば ロンドン外為 6/2
1日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米長期金利の上昇を受けて円売り・ドル買いが優勢となり、1ドル=129円台半ばに下落した。
正午現在は129円40〜50銭と、前日午後4時比80銭の円安・ドル高。
●NY円、一時130円19銭 3週間ぶり円安ドル高水準 6/2
1日のニューヨーク外国為替市場の円相場は一時1ドル=130円19銭まで下落し、5月11日以来、3週間ぶりの円安ドル高水準となった。米長期金利の上昇を背景に、日米金利差の拡大を意識した円売りドル買いが優勢だった。
午後5時現在は、前日比1円45銭円安ドル高の1ドル=130円11〜21銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0647〜57ドル、138円60〜70銭。
●東京円、130円近辺  6/2
2日午前の東京外国為替市場の円相場は、1ドル=130円近辺で取引された。
午前10時現在は前日比65銭円安ドル高の1ドル=130円04〜05銭。ユーロは07銭円高ユーロ安の1ユーロ=138円56〜62銭。
前日のニューヨーク市場で米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大を意識した円売りドル買いが優勢となり、3週間ぶりの円安ドル高水準となった。東京市場ではこの流れを引き継いだ。
市場では「米国の5月の製造業景況指数が市場予想を上回る良い結果で、景気後退懸念が和らいだこともドル買いにつながった」(外為ブローカー)との声があった。
●米国の動きで円安が進行 円相場、目まぐるしい変動の背景は  6/2
5月の連休明けに1ドル=131円台まで進んだ円安ドル高。その後は1ドル=127円前後で推移していましたが、2日は一時、1ドル=130円台まで円安が進行。目まぐるしい動きの背景に何があるのでしょうか。
最近の物価高を抑え込もうと、米国は利上げに動きました。一方、景気回復が遅れる日本は低金利政策を続行。その結果、金利が高く運用に有利なドルが買われ、円安が進みました。 ところが5月中旬以降、米国で景気後退懸念が台頭。一時3%を超えた長期金利の上昇に歯止めがかかり、円安の進行が鈍化。6月に入ると長期金利は再び上昇傾向となり、またも円安が進み始めました。
本紙は朝刊紙面でドルなど24カ国・地域の通貨と円との「交換レート」を掲載しています。このデータを継続的にみていくと、英国やニュージーランドの通貨も、円に対する上昇度が5月中旬ごろに、いったん落ち着いていたことが分かります。
両国も米国と同様、利上げを実施。ただ、しばらくすると景気悪化が懸念されて通貨の上昇度が鈍化しました。円相場は各国の長期金利の動向や景気見通しなどの影響を受け、変動しています。
●東証大引け 小反落 米金融引き締めに警戒、円安が支え 6/2
2日の東京株式市場で日経平均株価は小幅に反落し、前日比44円01銭(0.16%)安の2万7413円88銭で終えた。米金融引き締めへの警戒感が再び強まり、前日の米株式相場が下落。東京市場でも売りが先行し、朝方に日経平均の下げ幅は一時200円を超えた。もっとも円相場が1ドル=130円台の円安・ドル高水準になったのが支えとなり、株価の下値は限られた。
米サプライマネジメント協会(ISM)が1日発表した5月の製造業景況感指数が市場予想を上回り、米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めが一段と強まるとの見方から、東京市場でも株価指数先物を中心に売りが出た。市場では「今週末公表の5月の米雇用統計も想定以上に上振れすれば、株式相場を下押しする」(国内証券ストラテジスト)との声が聞かれた。
ただ、売りが一巡すると日経平均は下げ幅を縮めた。円安・ドル高が企業収益にプラスに働くとして投資家心理を支えた。日経平均は前日比7円安まで下げる場面があった。
東証株価指数(TOPIX)は反落した。終値は前日比12.25ポイント(0.63%)安の1926.39だった。
東証プライムの売買代金は概算で2兆5463億円。売買高は10億9537万株だった。東証プライムの値下がり銘柄数は1192。値上がりは579、変わらずは66銘柄だった。
●外為:1ドル129円84銭前後とドル高・円安で推移 6/2
2日の外国為替市場のドル円相場は午後4時時点で1ドル=129円84銭前後と、前日午後5時時点に比べ44銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=138円61銭前後と1銭のユーロ安・円高と横ばい圏で推移している。
●米景気失速なら円高進行も 日銀の安達審議委員が会見  6/2
日銀の安達誠司審議委員は2日、札幌市で記者会見し、円相場の先行きに関して、急激な利上げなどの影響で米景気が失速すれば、円高ドル安が進む可能性があるとの見解を示した。最近は円安ドル高が急激に進んできたが、逆転する「リスクを十分意識する必要がある」と指摘した。
会見に先立って行った講演では、日銀が掲げる2%の物価上昇目標の達成は「依然として道半ば」と語った。生鮮食品を除く4月の消費者物価指数の上昇率は前年同月比2・1%に達したものの、エネルギー価格の上昇などの影響を除いた実力ベースでは1・0%程度にとどまると説明した。  

 

●NY円、130円前半 6/3
3日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午前8時半現在、前日比31銭円安ドル高の1ドル=130円16〜26銭を付けた。…
●東京外為 ドル、129円台後半=米雇用統計前で様子見 6/3
3日午後の東京外国為替市場のドルの対円相場(気配値)は、5月の米雇用統計の発表を前に様子見ムードが強まり、1ドル=129円台後半での小動きが続いている。午後3時現在、129円84〜84銭と前日(午後5時、129円88〜89銭)比04銭の小幅ドル安・円高。
きょうの東京市場は129円90銭台で始まった。実質的な「五・十日」に当たることから国内輸入企業とみられる買いが入り、午前9時すぎに130円00銭台に乗せた。仲値に向けては一転して国内輸出企業の売りに押され、129円65銭前後まで下落した。ただ、「今夜発表の米雇用統計を控え、積極的な売買は仕掛けづらい」(FX会社)状況とされ、実需筋の売買が一巡した後は129円70〜80銭台のレンジ圏でもみ合っている。
米雇用統計をめぐっては、雇用者数と平均時給がともに市場予想(非農業部門就業者数は前月比32万5000人増、平均時給は同0.4%上昇)を上回れば、米連邦準備制度理事会(FRB)による大幅な連続利上げ観測がさらに高まるとして、ドル買い傾斜を予想する声がある。市場予想を下回れば、長期金利の低下に伴ってドル円は軟化する公算が大きいとみられている。米雇用統計の結果がドル円相場の転機になる可能性があるため、「慎重姿勢を決め込む投資家が多く、発表までに上下するとしても持ち高調整の範囲内にとどまる」(国内証券大手)ことになりそうだ。
ユーロも午後は対円、対ドルでともに横ばい。米雇用統計が意識され、対ユーロ相場でも積極的な取引が手控えられている。午後3時現在、1ユーロ=139円63〜64銭(前日午後5時、138円79〜84銭)、対ドルでは1.0753〜0754ドル(同1.0686〜0686ドル)。 

 

●NY円、一時130円98銭 1カ月ぶり円安ドル高水準  6/4
3日のニューヨーク外国為替市場の円相場はドルに対して下落し、一時1ドル=130円98銭と5月9日以来、約1カ月ぶりの円安ドル高水準を付けた。朝方発表された5月の米雇用統計で非農業部門の就業者数の増加幅が市場予想を上回ったのを受けて米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
午後5時現在は前日比92銭円安ドル高の1ドル=130円77〜87銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0715〜25ドル、140円13〜23銭。
●NY 原油先物120ドル台に 外国為替市場1ドル=131円に迫る円安  6/4
3日のニューヨーク原油市場では、供給不足への懸念から国際的な原油の先物価格が一時、およそ3か月ぶりに1バレル=120ドル台まで上昇しました。また、外国為替市場では1ドル=131円に迫る水準まで円安ドル高が進みました。
3日のニューヨーク原油市場では、国際的な指標となるWTIの先物価格が一時、およそ3か月ぶりに1バレル=120ドル台まで上昇しました。背景には、EU=ヨーロッパ連合がロシア産の石油の輸入禁止などの追加制裁で合意したことに加えて、主な産油国が2日に決めた追加増産の規模が少ないと受け止められたことで、供給不足への懸念が続いていることがあります。
また、ニューヨーク外国為替市場ではアメリカの長期金利の上昇を背景に円を売ってより利回りが見込めるドルを買う動きが出て、円相場は一時、1ドル=131円に迫る水準まで円安ドル高が進みました。
このほか、ニューヨーク株式市場は、ダウ平均株価の終値が前日に比べて348ドル58セント安い3万2899ドル70セントとなりました。この日発表されたアメリカの5月の雇用統計で、農業分野以外の就業者の伸びが市場の予想を上回ったことを受けて、インフレを抑えるための金融引き締めが進むことへの警戒から売り注文が増えました。IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数は2.4%の大幅な下落になりました。 

 

●海外市場概況 6/5
ドル・円:129円87銭から130円98銭までドル高・円安で推移。5月米雇用統計で非農業部門雇用者数は予想を上回ったことから、ドル買いが強まった。
ユーロ・ドル:1.0763ドルから1.0704ドルまでユーロ安・ドル高に推移。米雇用統計を受けたユーロ売り・ドル買いが優勢となった。
ユーロ・円:139円55銭から140円37銭までユーロ高・円安で推移。
NY原油市場:続伸、米雇用統計めぐる需給思惑で買い続く。
NY株式市場:米国株式市場は反落、金融引き締めを警戒。
●先週の市場 6/5
先週のドル/円相場は、ドルが反転高。週末には5月9日以来の高値、一時131円寸前まで値を上げる局面も観測されていた。
前週末、ロシアが「ウクライナ東部の要衝リマンなどを制圧した」ことを明らかにするなか、日米韓外相が「北朝鮮のミサイル発射を非難」する共同声明を発表したことも話題となっていたようだ。
そうした状況下、ドル/円は127.15円で寄り付いたのち、週間安値の126.86円を示現。しかし、下値追いもそこまでで、以降はドルの買い戻しが週間を通して優勢だった。130円を突破したレベルでは一時上げ渋るも、週末に発表された注目の米雇用統計が良好な内容になったことを好感。再びドルが買われると、一時131円寸前まで値を上げている。週末NYも、そのままドルの高値圏130.80円レベルで取引を終え越週するなど、「寄り付き安・大引け高」の様相だった。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「日米欧の金融政策」と「ロシア情勢」について。
前者は、今週9日にECB理事会を控えるなか、市場筋のあいだではECBの利上げ期待が高まっている。先週5月31日にもフランス中銀総裁が「漸進的だが断固とした金融政策正常化は必要」と述べ、今月ではなく次回7月の利上げを後押しする発言。また、スロバキア中銀総裁はECBの利上げ幅について、「7月に0.25%、9月に0.50%になる可能性がある」と述べ、ユーロ買いを後押ししていた。対して、米国は発表された5月のISM製造業景況指数や同雇用統計が予想を上回る内容となるなか、米地区連銀総裁からも強気コメントが相次ぎ、週間を通してドルの支援材料に。しかし反面で、日本は引き続き米欧と異なる対応を見せており、実際に2日には安達日銀審議委員が「物価目標実現まで緩和政策を粘り強く続ける」とコメント。金融緩和に向けたスタンスは少しも変化していないことが再認識されている。
対して後者は、戦闘に関しては前述した「ウクライナ東部の要衝リマンなどを制圧」との発表に加え、ゼレンスキー大統領も「ロシア軍がウクライナの国土の約20%を占領している」ことを明かすなど、戦況としてはロシア軍の攻勢が目に付いた。そうしたなか、決定を先送りしていたEMEAクレジットデリバティブ決定委員会(CDDC)が、4月に期限を迎えたロシア国債の利息分ついて、6月1日ついに「支払い不履行」に相当すると認定。これにより、ロシアは約100年ぶりに対外デフォルトと見なされる可能性が高まったことが金融市場で大いに話題に。
●円安の常識を疑う 「GDPにマイナス」は異説か 6/5
美しく高機能な家電・情報端末のベンチャー企業として知名度が急上昇しているバルミューダ。国内や北米での販売が絶好調なのにもかかわらず、今年に入って失速した。2022年1〜3月期の連結決算は売上高が前年同期に比べ11%増えたものの、営業利益は62%減の1億7200万円に。原因は春先から外国為替市場で急激に進んだ円安・ドル高だ。
「商品企画では変わったことを考える企業だが、金銭感覚は多くの人と一緒。1ドル130円を想定した人はどれだけいただろうか」。寺尾玄社長は5月13日の決算説明会でこう弁明した。生産を国内外の協力工場に委託し、開発と販売に資源を集中させる軽量経営を標榜するが、部品・部材の調達といったサプライチェーン(供給網)上の混乱は避けられず、製品原価率が急上昇。大幅減益となった。
悪い円安が新常識に
円安は日本経済にとって「善」なのか「悪」なのか。昨年10月初めに1ドル=110円程度だった円相場は年末までに115円前後に下落。今年に入り加速度を増し、4月末には一時131円台をつけた。主要国・地域が軒並み金融緩和を修正し米国に次いで欧州も利上げに動く中、日銀は現状の政策を維持しており、金融政策の差などから今後も円安傾向が続くとの見方は強い。
「円安は輸出企業や海外に資産を持つ企業には追い風になる一方で、生活者には物価の引き上げで大きなマイナスになる」。岸田文雄首相が5月26日の衆院予算委員会で表明した為替感が示すとおり、政府は家計への影響を考慮しつつも円安に対し「善」寄りだ。日銀の黒田東彦総裁も5月30日の参院予算委員会で円相場について「比較的、安定的な状況に戻っている」と現状を肯定した。
円安は日本経済にプラスという見解は、昭和から平成にかけて製造業の輸出促進に寄与したという現実が基盤にある。その修正を国際社会から迫られ、円高に長く苦しんだ経験が、見解を常識へと引き上げた。
11年の東日本大震災のあとは1ドル=76円台まで円高・ドル安が進行。リーマン・ショックからの回復途上にあった輸出企業が悲鳴を上げ、政府・日銀は円売り介入に踏み切った。その後、日銀は円相場を円安方向にする効果のある「大規模金融緩和」を13年に開始し、現在まで続けている。
しかし、ここにきて輸入物価の上昇で日本経済が打撃を被る「悪い円安」への不安が新常識の域まで台頭してきた。円安で利益を得るはずの製造業が歓迎ムードとはならず、むしろ危機感を募らせる。なぜか。
輸出の追い風、2005年には失速
1つの要因が貿易を巡る日本の構造変化だ。みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストの協力を得て、交易条件の変化に伴う円安による名目国内総生産(GDP)への影響を算出したところ、従来の常識とは異なる構図が浮かび上がった。
交易条件とは海外との貿易における国の稼ぎやすさを示す考え方で、輸出物価指数と輸入物価指数から計算する。輸出物価が上昇したり輸入物価が下落したりすれば交易条件は改善し、貿易を通じた稼ぎやすさが上昇する。
2000年下半期(7〜12月)以降を対象にしたこの試算によると、10%の円安で名目GDPがプラスになるとみられるのは04年ごろまでで、その後はマイナスになるとの結果が得られた。04年ごろまでは半期でプラスの効果がおおむね1000億〜2000億円あったが、その後はマイナスに転じている。企業が海外生産比率を高めた結果、円安が輸出に有利に働く効果が小さくなったためだ。
さらに、11年の東日本大震災の後に全国の原子力発電所の稼働が停止したのが大幅な悪化につながった。13〜14年ごろは半期で1兆円前後のマイナスだった。その後、外貨を獲得する手段であるインバウンド(訪日外国人観光客)が増えるとマイナス幅は16年下半期には約1200億円にまで減少した。
足元ではマイナス幅が再び拡大している。21年下半期は約6200億円のマイナスとなるとの結果だ。ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり、エネルギーや穀物など国際商品価格が上昇しているのが主な理由だ。
「いまや『強い円が国益だ』という状況だ」。1990年代に米国と協調して為替介入をした榊原英資元財務官も構造変化を認める。
善悪二元論のワナ
投資判断として個別企業を見る場合、円安をどう織り込むかは難しさを増す。バルミューダのように円安に苦しむケースが増える一方、かつての常識通りに潤う企業も少なくない。2022年3月期決算で連結営業利益が1兆円の大台を超えたソニーグループは、円安が為替差益を大きく膨らませた。
輸出企業だから円安はプラスという常識も危うい。ダイキン工業の為替感応度は対ドルで1円あたり18億円で円安はプラスに働くが、同時に原材料高が前期比以上に収益を圧迫する。円安の影響は複雑になってきており、十河政則社長は決算説明会で「為替頼みの経営はしない」と言い切った。
円安の善悪はそれぞれ論拠があるが、投資機会を逃さずに、あるいは落とし穴にはまらないようにするには、そこで思考停止してはならない。常識を疑うことから始めてみよう。  

 

●外為 1ドル130円81銭前後と大幅なドル高・円安で推移 6/6
6日の外国為替市場のドル円相場は午前8時時点で1ドル=130円81銭前後と、前週末午後5時時点に比べ93銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=140円25銭前後と57銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●外為12時 円、下落し130円台後半 米雇用改善で 対ユーロも安い 6/6
6日午前の東京外国為替市場で、円相場は下落した。12時時点は1ドル=130円60〜61銭と前週末17時時点と比べて72銭の円安・ドル高だった。3日発表された5月の米雇用統計で雇用者数の伸びが市場予想を上回り、積極的な米金融引き締めが続くとの見方が強まった。米長期金利は3日に一時3%近くまで上昇するなど先高観が根強く、日米の金利差拡大を見込んだ円売り・ドル買いが優勢となった。
円は6日早朝に一時130円99銭近辺まで下落し、5月9日以来およそ1カ月ぶりの安値をつけた。だが、売りが一巡した後は目先の利益確定や持ち高調整を目的とした円買い・ドル売りが増えた。日本時間6日の取引で米長期金利やニューヨーク原油先物相場の上昇が一服したのも円相場の支えとなった。
9〜12時の円の安値は130円84銭近辺、高値は130円53銭近辺で値幅は31銭程度だった。
円は対ユーロでも下落した。12時時点は1ユーロ=140円04〜06銭と、同34銭の円安・ユーロ高だった。早朝には140円35銭近辺まで売られ、3日につけた15年6月以来7年ぶりの安値に並ぶ場面があった。欧州中央銀行(ECB)による7月の利上げがほぼ確実視されるなか、週内にECB理事会を控えて円売り・ユーロ買いの動きが出た。
ユーロは対ドルでは下落した。12時時点は1ユーロ=1.0722〜23ドルと同0.0034ドルのユーロ安・ドル高だった。
●東京円、130円台後半 6/6
週明け6日午前の東京外国為替市場の円相場は、1ドル=130円台後半で取引された。
午前10時現在は前週末比93銭円安ドル高の1ドル=130円81〜84銭。ユーロは46銭円安ユーロ高の1ユーロ=140円16〜25銭。
5月の米雇用統計で非農業部門の就業者数が堅調な伸びを示したことから、米金融引き締めが加速するとの観測が浮上。日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
市場では「5月に付けた約20年ぶり安値の131円台前半を超えるかが焦点だ」(外為ブローカー)との声が聞かれた。
●日経平均続伸、午前終値82円高の2万7844円 6/6
6日午前の東京株式市場で日経平均株価は続伸し、前週末比82円69銭(0.30%)高の2万7844円26銭で終えた。米株価指数先物が日本時間6日午前の取引で上げ幅を広げると、日経平均先物にも短期筋の買いが入り、指数を押し上げた。前週末の米株安を受けて、朝方は売りが先行し、日経平均の下げ幅が200円を超える場面があった。
6日午前の外為市場で円相場は1ドル=130円台と、前週末3日夕に比べ円安・ドル高の水準で推移した。輸出の採算改善の思惑から、自動車や機械といった輸出関連株の一部の支えとなった。
前週末には観光需要喚起策「Go To トラベル」を6月末から7月にも再開する案が政府内で浮上していると伝わった。経済活動が一段と活発になるとの見方から、鉄道や空運、百貨店など関連銘柄の上昇が目立った。丸三証券の丸田知広エクイティ部長は「欧米経済には減速感がある一方、景気のモメンタム(勢い)が改善方向に向かう日本の株に物色が向かいやすくなっている面がある」とみていた。
3日に発表された5月の米雇用統計では非農業部門の雇用者数が前月比39万人増と、市場予想を上回った。米連邦準備理事会(FRB)による積極的な金融引き締めが続くとの見方から、同日の米株式相場は下落した。東京市場でもこの流れを受け、朝方は売りが優勢だった。
東証株価指数(TOPIX)は続伸した。午前終値は前週末比1.87ポイント(0.10%)高の1935.01だった。
前引け時点の東証プライムの売買代金は概算で1兆1315億円、売買高は5億237万株だった。東証プライムの値上がり銘柄数は901と、全体の5割弱を占めた。値下がりは840、変わらずは96だった。 
●東京円、88銭安の1ドル=130円76〜78銭 6/6
6日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前週末(午後5時)比88銭円安・ドル高の1ドル=130円76〜78銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、同77銭円安・ユーロ高の1ユーロ=140円47〜51銭で大方の取引を終えた。
●東京円、130円台後半 ユーロは7年ぶり円安水準  6/6
週明け6日の東京外国為替市場の円相場は、1ドル=130円台後半で取引された。ユーロは対円で一時1ユーロ=140円台半ばを付け、2015年6月以来、約7年ぶりの円安ユーロ高水準となった。
午後5時現在は前週末比88銭円安ドル高の1ドル=130円76〜78銭。ユーロは77銭円安ユーロ高の1ユーロ=140円47〜51銭。
5月の米雇用統計で非農業部門の就業者数が堅調な伸びを示したことから、米金融引き締めが加速するとの観測が浮上。日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
●外為 1ドル130円82銭前後と大幅なドル高・円安で推移 6/6
6日の外国為替市場のドル円相場は午前10時時点で1ドル=130円82銭前後と、前週末午後5時時点に比べ94銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=140円16銭前後と48銭のユーロ高・円安で推移している。
●海外市場 6/6
ドル・円:130円62銭から132円01銭までドル高・円安で推移。米利上げ継続予想でドル買いが優勢になった。
ユーロ・ドル:1.0752ドルから1.0684ドルまでユーロ安・ドル高で推移。
ユーロ・円:7月利上げ観測で140円09銭から141円13銭までユーロ高・円安で推移。
NY原油市場:反落、インドはロシア産石油の輸入拡大との見方。
NY株式市場:反発、長期金利上昇で伸び悩む。 

 

●NY市場 一時1ドル132円台 約20年ぶりの円安ドル高水準を更新  6/7
6日のニューヨーク外国為替市場では、アメリカの景気減速への懸念が和らぎ、長期金利が上昇傾向にあることを背景に円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は一時、1ドル=132円台まで値下がりして、およそ20年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
6日のニューヨーク外国為替市場では、円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は一時、1ドル=132円台まで値下がりしました。
これは、2002年4月以来、20年2か月ぶりの円安ドル高水準です。
円安が進んでいるのは、アメリカの景気減速への懸念が和らぎ、債券市場でアメリカの長期金利が一時、3%台まで上昇したことから、投資家の間でより利回りが見込めるドルを買う動きが強まっているためです。
市場関係者は「アメリカの長期金利は、景気減速への懸念から上昇に歯止めがかかっていたが、このところ市場の予想を上回る内容の経済指標が相次いで発表されたことで懸念が和らぎ、再び上昇に転じている。インフレを抑えるためにアメリカで金融引き締めが加速し、日米の金利差が拡大するとの見方もドル買いにつながっている」と話しています。
また円相場は、ヨーロッパ中央銀行が7月にも利上げに踏み切るとの観測を背景にユーロに対しても円安が進んでいて、一時、2015年6月以来、およそ7年ぶりに1ユーロ=141円台まで値下がりしました。
●円相場 一時1ドル=132円台後半 約20年ぶりの円安水準に  6/7
7日の東京外国為替市場は、アメリカの長期金利の上昇を受け、円を売ってより利回りが見込めるドルを買う動きが強まり、円相場は一時1ドル=132円台後半まで値下がりして、およそ20年ぶりの円安水準を更新しました。
7日の東京外国為替市場は、アメリカの景気減速への懸念が和らいだという見方から、6日のニューヨーク市場でアメリカの長期金利が上昇したことを受け、円を売ってより利回りが見込めるドルを買う動きが強まり一段と円安が進みました。
円相場は一時、132円台後半まで値下がりし、2002年4月以来、およそ20年2か月ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
市場関係者は「日銀の黒田総裁がきょうの参議院の財政金融委員会で『金融政策を拙速に縮小すると設備投資などの国内需要に一段と下押し圧力がかかる』などと述べ、大規模な金融緩和を続ける姿勢を改めて示した。アメリカでインフレ抑制のために金融引き締めが加速するのではないかという見方が強まる中、投資家の間では黒田総裁の発言を受けて日米の金利差の拡大が改めて意識された」と話しています。
外国為替市場で円相場が1ドル=132円台まで値下がりしていることについて、鈴木財務大臣は、閣議のあとの記者会見で「為替相場は経済のファンダメンタルズ=基礎的条件を反映し、安定的に推移することが重要で、特に急速な変動は望ましくない。政府として為替市場の動向や日本経済の影響を緊張感を持って注視している」と述べました。そのうえで鈴木大臣は「アメリカなどの通貨当局と緊密な意思疎通を図りつつ、政府として適切に対応していきたい」と述べました。
松野官房長官は記者会見で「相場の水準などについてコメントすることは差し控えるが、為替の安定は重要であり、急速な変動は望ましくない」と述べました。そのうえで「一般論として、円安により、輸出や海外展開をしている企業の収益は改善する一方、輸入価格の上昇を通じて企業や消費者の負担増となり得る。プラス面、マイナス面双方で影響を与えるため、日本経済全体への影響を一概に申し上げるのは困難だが、為替市場の動向や日本経済への影響を緊張感を持って注視していきたい」と述べました。
●円、20年ぶり安値を更新 一時132円台に下落 6/7
7日の東京外国為替市場で円が対ドルで下落し、一時1ドル=132円台と2002年4月以来およそ20年2カ月ぶりの円安・ドル高水準を更新した。5月9日に付けた1ドル=131円35銭の直近安値を超えて円安・ドル高が進んだ。米国ではインフレ抑制のために金融引き締めが加速するという見方が強まる一方、日本は日銀が大規模緩和を続ける姿勢を鮮明にしている。日米の金利差の拡大が円安要因になっている。
鈴木俊一財務相は7日の閣議後の記者会見で、円安について「急速な変動は望ましくない」と述べた。「為替市場の動向や日本経済への影響を緊張感を持って注視する」と強調した。日銀の黒田東彦総裁は7日の参院財政金融委員会で「強力な金融緩和を粘り強く続ける」と発言し、市場では日米の金利差拡大が意識された。黒田総裁は「家計や地方の中小サービス産業に対するマイナスの影響を十分に考慮しなければならない」とも指摘した。
5月の米雇用統計では非農業部門の雇用者数が前月から39万人増え、市場予想(32万8000人)を上回った。失業率は横ばいの3.6%で「完全雇用」の状況に近いとされる水準を維持しており、労働需給の逼迫が鮮明となっている。
FRBが景気への配慮をせずにハイペースで利上げを進めるとの見方が強まり、米長期金利が3%を超えて上昇。3%超えは3週間ぶりで、日米金利差の拡大を手掛かりにドルを買って円を売る投資家が増えている。
足元で続く原油高も円安・ドル高要因だ。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の先物価格(期近)は1バレル120ドル近辺で推移しており、3月上旬以来、ほぼ3カ月ぶりの高水準だ。
エネルギーを輸入に頼る日本では輸入業者がドルを手当てする必要があり、原油高の局面では貿易赤字が膨らみやすい。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作氏は「実需筋は高いと思ってもドルを買わざるを得ない」といい、ドル高要因となっている。
これらのドル買い需要に対し、市場で円安抑止の効果が期待されているのがインバウンド(訪日外国人)の受け入れ再開だ。外国人が日本に来て買い物をすると円買いの需要が発生するためだ。
もっとも政府は1日の入国者数の上限を2万人に設定し、当初は添乗員付きのパッケージツアーしか認めない。みずほ銀行の唐鎌大輔氏によると、上限2万人で稼ぐことができる旅行収支の黒字は1カ月分の貿易赤字を相殺するものでしかないという。
円安を修正するには日銀の大規模緩和政策の見直し、原子力発電所の再稼働推進、インバウンドの全面解禁などが市場関係者から指摘される。しかしどれも政治面などのハードルが高く、すぐに実現する可能性は低い。当面は円安基調が続きそうだとの見方が多い。 
●最近のドル高円安はなぜ発生したのですか? 6/7
ドル円為替相場(レート)は、2022年3月初めから4月末までの期間で一気に15円程度円安に動きました。5月に131円前半をつけて一服感を見せた後、6月に入り、更に最安値を更新しています。(6月7日10時30分現在132円70銭)これはこの約30年の最安値の水準です。為替相場の動きの要因は、主として「金利」です。
筆者は経済学、特に国際金融を学び40年。メガバンク勤務時代は、実際に世界のディーリングルームでの取引や経済・市場調査を経験し、現在は金融に関する書籍の執筆や大学等での講義のために研究を続けています。その長年の経験から分かったことは、為替相場の変動の要因の約7割は「金利によるもの」ということです。つまり、為替相場は「金利次第」であり、これが金融商品の為替相場取引の「特徴」と考えています。為替相場は2つの金融商品の比較(ドル円の場合、通貨ドルと通貨円)という仕組みのせいもあり、金利差こそが主因となります。今回の131円まで行った大相場は、まさに金利差によるもので、主役は日本と米国の中央銀行です。
そもそも金融政策の最も重要な目標は「物価の安定」です。それも先進国では数字まで決まっていて「2%」、どのような先進国でも「2%」なのです。日本の中央銀行「日本銀行」の総裁は財務省出身の黒田東彦氏です。日本の消費者物価上昇率は2.1%となり、目標値に達しました。しかし、黒田氏は、金融政策決定会合などでも、日本の経済はまだ脆く、利上げに耐えられないとして、超低金利を今後も当面維持することを表明しました。
一方、米国の中央銀行FRB(Federal Reserve Board※注1)は中央銀行として非常に珍しい目標を持っています。雇用の最大化と物価の安定の2つです。雇用の最大化は景気指標ですが、物価と景気の両方を目標に持つ唯一の中央銀行なのです。 米国の失業率は3月に発表された2月分から3%台の完全雇用の状態となっていて、物価の目標のみに集中できる環境です。また、5月に発表された4月の米国の消費者物価上昇率は8.3%と高い結果でした。そのため政策金利は3月(0.25%)、次の5月(0.5%)と引き上げられ、さらに6月も大きく利上げが予想されています。3月以降の利上げを見越して、ドル高円安相場が始まったと考えています。
日米の金利、すなわち、金利差を見ると、米国金利の上昇で拡大が継続。日本の低金利もゆるぎなかった。とすれば、ドル高円安がある意味、公的に進められたも同然だったといえるでしょう。この米国の金利が高い状況が長く資金をひきつけ続けたことで円安ドル高が130円を越えて進みました。130円という数字に、特に意味はありません。
4月から、FRBの金利の強い引上げ、中国の景気悪化等により、ダウ平均株価など株式市場が下落を始めることになり、ドル高円安の流れは一旦一服しました。しかしその後6月入りしてから再度ドル高円安の流れを見せています。
ところで私は金融市場の講演会の時に、よく質問を受けることがあります。ブレイクトークとしてその際にいつも思うところを紹介しましょう。
一般の方は「円」を主語として「高い・安い」と話しをするのに対して専門家(プロ)の方は「ドル」を主語とすることが多いです。話がかみ合わないということがないように少し注意が必要です。また、よくある一般の方からの質問には「この相場はどこまで上がりますか」というものも多いです。これは、おそらく一般の方々は「上がったら売り、下がったら買い」というレンジ取引を行っていることの証左ではないかと推測しています。
●東京円、2円安の1ドル=132円76〜78銭 6/7
7日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比2円ちょうど円安ドル高の1ドル=132円76〜78銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは同1円41銭円安ユーロ高の1ユーロ=141円88〜92銭で大方の取引を終えた。
●円安、一時133円台 20年2カ月ぶり水準更新 5/7
7日の東京外国為替市場の円相場は対ドルで下落して一時1ドル=133円00銭を付け、2002年4月以来約20年2カ月ぶりの円安ドル高水準を更新した。米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めペースを速めるとの観測が強まる中、日銀の黒田東彦総裁が金融緩和の継続を訴えたことが材料視され、相対的に金利が低い円を売ってドルを買う動きが加速した。市場では1ドル=135円まで円が売られるとの見方も浮上している。
日米の金利差拡大が円安ドル高の流れを促している。黒田氏は7日の参院財政金融委員会で「強力な金融緩和を粘り強く続ける」と述べ、従来の立場を強調した。
●東京市場 6/7
7日の東京市場は円全面安。ドル/円は年初来高値を再び更新すると、一時133円レベルまで買い進まれている。
ドル/円は131.85-90円で寄り付いたのち、緩やかな右肩上がり。前日高値132.01円を超えただけでなく、さらに大幅な続伸をたどると、夕方には133円レベルへと値を上げている。途中、本邦要人から相次いで円安けん制発言が聞かれたものの、効果はほとんどなく、結果として「寄り付き安・大引け高」の様相。16時現在、ドル/円はわずかに緩んだ132.75-80円で推移し、欧米市場を迎えていた。
一方、材料的に注視されていたものは、「円安けん制発言」と「ロシア情勢」について。
前者は、ここのところ一服していた感もあった円安が昨日欧米時間に再燃。ドル/円が年初来高値を更新したこともあり、やや早めの時間帯から政府要人による円安けん制発言が相次ぐ格好となった。たとえば、鈴木財務相は「為替の急速な変動は望ましくない」と述べたうえで、米国などの通貨当局と密接な意思疎通を図っている旨のコメントも発していた。また松野官房長官は「為替の安定は重要」、内田日銀理事も「最近の短期間で大幅な円安進行は望ましくない」と指摘している。対して、黒田日銀総裁は「強力な金融緩和を粘り強く続ける」と発言した反面、そののち「短期間での大幅な円安進行は経済にマイナス作用」とコメントしていたようだ。
対して後者は、ロシア外務省が報復措置とみられる「米財務長官ら61人を入国禁止にする」と発表。また、モスクワに拠点を置く米報道機関各社に対し、報道制限措置導入の示唆も明らかにしている。また、ラブロフ外相が「西側が長距離砲供与ならウクライナは結果として多くの領土を失う」と恫喝したほか、シルアノフ財務相はBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に対して、世界的な経済危機のリスクを指摘したうえで、経済情勢の安定化に向け協調して措置を取るよう呼びかけたという。
●NY市場 一時1ドル132円台 約20年ぶりの円安ドル高水準を更新  6/7
6日のニューヨーク外国為替市場では、アメリカの景気減速への懸念が和らぎ、長期金利が上昇傾向にあることを背景に円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は一時、1ドル=132円台まで値下がりして、およそ20年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
6日のニューヨーク外国為替市場では、円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は一時、1ドル=132円台まで値下がりしました。これは、2002年4月以来、20年2か月ぶりの円安ドル高水準です。
円安が進んでいるのは、アメリカの景気減速への懸念が和らぎ、債券市場でアメリカの長期金利が一時、3%台まで上昇したことから、投資家の間でより利回りが見込めるドルを買う動きが強まっているためです。
市場関係者は「アメリカの長期金利は、景気減速への懸念から上昇に歯止めがかかっていたが、このところ市場の予想を上回る内容の経済指標が相次いで発表されたことで懸念が和らぎ、再び上昇に転じている。インフレを抑えるためにアメリカで金融引き締めが加速し、日米の金利差が拡大するとの見方もドル買いにつながっている」と話しています。
また円相場は、ヨーロッパ中央銀行が7月にも利上げに踏み切るとの観測を背景にユーロに対しても円安が進んでいて、一時、2015年6月以来、およそ7年ぶりに1ユーロ=141円台まで値下がりしました。 

 

●NY円、132円後半 米長期金利上昇が一服、もみ合う展開に 6/8
7日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比74銭円安ドル高の1ドル=132円59〜69銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0699〜0709ドル、141円96銭〜142円06銭。
東京市場で一時1ドル=133円00銭まで円安ドル高が進んだ流れを引き継ぎ、朝方は円売りドル買いが先行。その後、米長期金利の上昇が一服したのを背景にドルが売られ、もみ合う展開が続いた。
●外為 1ドル133円22銭前後とドル高・円安で推移 6/8
8日の外国為替市場のドル円相場は午後2時時点で1ドル=133円22銭前後と、前日午後5時時点に比べ46銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円27銭前後と41銭のユーロ高・円安で推移している。
●円全面安、日銀には緩和維持しか為す術なし 6/8
東京外為市場でドル円は133.21円付近まで円安・ドル高推移し、約20年ぶりの円安水準を連日で更新。主要国が金融引き締めに動いているなかで、日銀が一人出遅れていることが円安を後押ししている。インフレが家計を直撃しているが、賃金が停滞しているなかで金融引き締めを開始する条件は整っておらず、日銀に為す術がないことも円安を後押し。
ユーロ円は142.36円付近、ポンド円は167.44円付近、豪ドル円は96.20円付近まで上昇し、円相場は全面安。明日の欧州中央銀行(ECB)理事会を控えてユーロ円は2015年1月以来の高値を塗り替えている。 
●東京円、81銭安の1ドル=133円57〜59銭 6/8
8日の東京外国為替市場で、円相場は午後5時、前日(午後5時)比81銭円安・ドル高の1ドル=133円57〜59銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、88銭円安・ユーロ高の1ユーロ=142円76〜80銭で大方の取引を終えた。
●値上げ許容発言を撤回 黒田日銀総裁、改めて陳謝 6/8
黒田東彦日銀総裁は8日、衆院財務金融委員会で、6日の講演で最近の物価高に関し「家計が値上げを受け入れている」と発言したことについて、「表現は全く適切でなかった。撤回する」と述べた。
黒田総裁は、「家計が苦渋の選択として値上げをやむを得ず受け入れているということは十分認識している」と強調。その上で、「誤解を招いた表現で申し訳ない」と改めて陳謝した。
●円安進行、20年ぶり1ドル=134円台…黒田総裁の「緩和継続」強調が拍車  6/8
8日のロンドン外国為替市場で、1ドル=134円台まで円安・ドル高が進み、2002年2月以来、約20年4か月ぶりの円安水準となった。
急速なインフレ(物価上昇)に対応するため、米国が金融引き締めを急ぐ一方、日本は低金利政策が続き、日米の金利差が拡大するとの見方から運用面で有利となるドルが買われている。日本銀行の黒田 東彦はるひこ 総裁が8日のオンラインイベントで、金融緩和の継続を改めて強調したことも、円売りに拍車をかけた。
円は対ユーロでも売られており、15年1月以来、約7年5か月ぶりの円安水準で推移している。ユーロ圏では、欧州中央銀行(ECB)が9日の定例理事会で量的緩和策の終了を決定すると見込まれている。 

 

●円下落、一時134円半ば 20年ぶり円安ドル高水準 6/9
8日のニューヨーク外国為替市場の円相場は円がドルに対して下落し、一時1ドル=134円48銭と、2002年2月以来、約20年4カ月ぶりの円安水準を付けた。米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが広がった。9日の外国為替市場でも円安が進み、一時1ドル=134円50銭近辺を付けた。
原油先物相場が上昇したことからインフレ加速への警戒感が高まり、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐとの観測が強まった。米長期金利の指標となる10年債利回りは一時3・04%台まで上昇した。
●NY市場 一時1ドル134円台半ば 約20年ぶり円安ドル高水準更新  6/9
8日のニューヨーク外国為替市場では円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、円相場は一時、1ドル=134円台半ばまで値下がりしておよそ20年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。また、円相場はユーロに対しても一時、1ユーロ=144円台まで大きく値下がりし、7年5か月ぶりの円安ユーロ高水準となりました。
8日のニューヨーク外国為替市場では、東京市場やロンドン市場で円安ドル高が進んだ流れを引き継いで円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、円相場は一時、1ドル=134円台半ばまで値下がりしました。
これは2002年2月以来、20年4か月ぶりの円安ドル高水準です。
円安が進む背景には、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が利上げを進める姿勢を示す中、大規模な金融緩和を続ける姿勢を示す日本との金利差の拡大が改めて意識されていることがあります。
市場関係者は「原油や天然ガスの価格が高騰し、日本からエネルギーを買うための円売りドル買いが増えるとの見方が出ていることも円安の加速につながっている」と話しています。
また、円相場は、ヨーロッパ中央銀行が7月にも利上げに踏み切るとの観測を背景に、ユーロに対しても一時、1ユーロ=144円台まで大きく値下がりし、2015年1月以来、7年5か月ぶりの円安ユーロ高水準となりました。 
●ロンドン外国為替市場で円相場、1ユーロ = 144円を超える 6/9
6月8日21時44分頃、ロンドン外国為替市場で円相場は1ユーロ = 144円を超え、前日3時頃の価格(141.88円)から2.31円(1.63%)上昇となる144.19円となった。
●円下落、一時134円半ば 20年ぶり円安ドル高水準 6/9
8日のニューヨーク外国為替市場の円相場は円がドルに対して下落し、一時1ドル=134円48銭と、2002年2月以来、約20年4カ月ぶりの円安水準を付けた。米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが広がった。9日の外国為替市場でも円安が進み、一時1ドル=134円50銭近辺を付けた。
原油先物相場が上昇したことからインフレ加速への警戒感が高まり、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐとの観測が強まった。米長期金利の指標となる10年債利回りは一時3・04%台まで上昇した。
●NY市場 一時1ドル134円台半ば 約20年ぶり円安ドル高水準更新  6/9
8日のニューヨーク外国為替市場では円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、円相場は一時、1ドル=134円台半ばまで値下がりしておよそ20年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。また、円相場はユーロに対しても一時、1ユーロ=144円台まで大きく値下がりし、7年5か月ぶりの円安ユーロ高水準となりました。
8日のニューヨーク外国為替市場では、東京市場やロンドン市場で円安ドル高が進んだ流れを引き継いで円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、円相場は一時、1ドル=134円台半ばまで値下がりしました。
これは2002年2月以来、20年4か月ぶりの円安ドル高水準です。
円安が進む背景には、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が利上げを進める姿勢を示す中、大規模な金融緩和を続ける姿勢を示す日本との金利差の拡大が改めて意識されていることがあります。
市場関係者は「原油や天然ガスの価格が高騰し、日本からエネルギーを買うための円売りドル買いが増えるとの見方が出ていることも円安の加速につながっている」と話しています。
また、円相場は、ヨーロッパ中央銀行が7月にも利上げに踏み切るとの観測を背景に、ユーロに対しても一時、1ユーロ=144円台まで大きく値下がりし、2015年1月以来、7年5か月ぶりの円安ユーロ高水準となりました。
●円相場、134円27〜27銭 9日正午現在 6/9
9日の東京外国為替市場の円相場は、正午現在1ドル=134円27〜27銭と、前日(133円58〜58銭)に比べ69銭の円安・ドル高となった。
●円相場 1ドル=134円台半ば 約20年ぶりの円安水準続く  6/9
9日の東京外国為替市場は、円安が一段と加速し、円相場は1ドル=134円台半ばまで値下がりしています。日本とアメリカの金利差がさらに拡大するという見方を背景に、およそ20年ぶりの円安水準が続いています。
東京外国為替市場は、円を売ってドルを買う動きが加速し、円相場は1ドル=134円台半ばまで値下がりしています。
8日のニューヨーク市場で円安が進んだ流れを引き継ぎ、2002年2月以来、20年4か月ぶりの円安水準が続いています。
円相場はユーロに対しても値下がりしていて、2015年1月以来7年5か月ぶりの円安水準が続いています。
市場関係者は「インフレを抑制するため、アメリカとヨーロッパの中央銀行が金融引き締めの姿勢を強めているのに対し、日銀は今の大規模な金融緩和を続ける方針を維持している。投資家の間では、金融政策の方向性の違いによって、日本と欧米の金利差がさらに拡大するという見方が広がっていて円が売られやすくなっている」と話しています。
●円高水準の企業想定為替レート、市場の円安予想とギャップ 6/9
国内企業の多くが今年度の想定為替レートを実勢より15─20円近くドル安・円高水準に置いている。機械的・保守的な予想設定が多く、マーケット参加者の予想通り、このままドル高・円安で推移すれば、輸出企業は業績上振れの要因になる。ただ、一部の企業からは金融引き締めで米経済が減速し、円高になるとの見方も出ており、予断を許さない。
2023年3月期の想定為替レートを1ドル115―120円前後に置く国内企業が多い。想定為替レートを明らかにする決算発表があった4月後半から5月初旬は、ドルが20年ぶりに130円を突破した円安局面であり、市場とのギャップに注目が集まった。
日米金利差などを背景にドル高・円安を見込むマーケット参加者に対し、特段の明確な円高要因を想定して、想定為替レートを設定したという国内企業は多くない。
トヨタ自動車の想定為替レートは1ドル115円。景気や金利の予想を組み込んでいるわけではなく、決算締切日前の20営業日(3月11―31日)のドル/円相場の平均値をベースに想定為替レートとして機械的に算出している。
今年に入り、3月初旬まで114―115円程度で推移していたドルは、3月末の決算期末までに128円程度まで上昇した。野村証券のチーフ・エクイティ・ストラテジスト、池田雄之輔氏は、企業の為替見通しが実勢よりも円高水準となったのは、3月中旬以降に急ピッチで円安が進行したためとみる。
●恵みの円安、1ドル=134円台突入…自動車株軒並み高値更新 6/9
外国為替市場で円安がさらに加速し、ニューヨーク市場でも、1ドル=134円台に突入。2002年2月以来、約20年4カ月ぶりの円安水準となっている。
円相場は4月下旬に一時1ドル=131円台まで円安が進んだが、その後、米国の景気減速を防ぐために米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げのペースを緩めるとの見方が広がり、5月下旬には一時1ドル=126円台まで円高に戻していた。しかし、米国の長期金利が上昇し、日米の金利差拡大が意識され、円を売って金利の高いドルを買う動きが広がったことから、約2週間で7円ほども円安が進んでしまった。
また、日銀の黒田総裁が6月6日の講演で「家計の値上げ許容度も高まってきている」なとど述べたことについて、8日に開かれた衆議院の財務金融委員会で「表現は全く適切でなかった」と述べ、発言を撤回した。が、この日、英国メディアが主催するイベントの中で改めて「金融緩和を継続する」考えを示したため、市場関係者は、「主要国の中で唯一日本だけが金融緩和を継続する意向を示して、今後も円安の流れは変わらないだろう」との見方が再び広かったとみられている。
6月8日の東京株式市場は、前日の米株高や円安・ドル高が進んだのを受けて買い注文が優勢となり、日経平均株価(225種)は4営業日連続で値上がりして、終値も前日比290円34銭高の2万8234円29銭。終値で2万8000円台を回復するのは3月30日以来、約2か月ぶりという。
円安・ドル高が一段と進んだのを受け、採算改善への期待が高まった輸出関連銘柄の値上がりが目立ち、自動車株も堅調。マツダ、三菱自動車、スバル(SUBARU)、いすゞ自動車が一時年初来高値を更新したほか、トヨタ自動車や日産自動車、スズキなども軒並み上昇した。なかでも、三菱自動車は終値でも前日比4.54%増の437円、スバルも2.27%増の2493円50銭の高値圏で引けており、自動車などの輸出関連銘柄は投資家にとっても「恵みの円安」となっている。
●ドル円相場は134円を突破、為替を「円安」へと突き動かしているものは何か 6/9
ドル円相場は134円台を突破し、約20年ぶりの安値を再び更新している。
5月の小康状態を受けて「円安局面は終わったのか」という照会が多かったが、筆者にはまったくそうは思えなかった。
そもそも円売りを駆動してきた、1世界的にも特異な日本銀行の緩和姿勢(金利)、2収束のメドが立たない貿易赤字(需給)、という2つの論点は終始変わっていない。
6月からはインバウンド解禁という、2の貿易赤字を緩和するアプローチが政府から見られているが、1日2万人の入国上限で見込める旅行収支黒字は年間で7000億円弱、月に均せば約580億円にすぎない。一方、過去3カ月の貿易赤字は月平均6500億円である。これでは焼け石に水であり、根拠薄弱な入国上限のせいでせっかくの円安抑止策は奏功しない見通しである。
円独り負け→5月の小康状態→ドル高による円安
昨年来続く円安基調を振り返ってみると、「ドル高の裏返し」というにはあまりにも円の下落幅が大きい。
名目実効為替ベースで見た場合、2021年通年でドルは3.4%上昇している一方、円は8.7%も下落している。特に円安が勢いづき始めた今年3月は名目実効ベースで「ドルも円も下落する」という光景が広がり、明らかに「ドル高の裏返し」ではなく、円売りこそが円安の正体だった。
しかし、4月以降は巷間指摘されやすい「ドル高の裏返し」としての円安も顔を出し始めており、ドルと円の名目実効相場が対称的に動いた。
5月は逆に名目実効ベースでドル安が進む一方、円高が進んだ。これもFRB(連邦準備制度理事会)の正常化プロセスがアメリカの景気を悪化させるオーバーキルの懸念へ直結し、株価が調整する中でアメリカの金利が低下したことと平仄が合う。
6月に入ってからの円の名目実効相場は現時点で未公表だが、やはりアメリカの金利上昇に連れて円が売られている印象が強い。
いわゆる「FRBが利上げするから日米金利差が拡大して円売り・ドル買いが進んでいる」という一般的な解説に合う実態がようやく見られ始めたのは4月以降であり、足元は需給を越えて金利が説明力を持ち始めているように見える。
日本より政策金利が低いのはユーロ圏とスイスぐらい
こうした金利が説明力を持つ地合いになると、円売りは一段と勢いづく可能性がある。日米金利差ばかりに注目が集まるが、政策金利が離陸し始めているのはアメリカだけではない。
日本より政策金利が低い主要国はユーロ圏(マイナス0.50%)とスイス(マイナス0.75%)くらいだが、ECB(欧州中央銀行)は2022年9月末をメドにマイナス金利を脱却することを宣言している。
先進国の中では唯一、低金利と通貨安の必要性を公言してきたスイス国立銀行(SNB)も、ここにきて「インフレ率が0〜2%の範囲に収まらない場合、躊躇なく政策を引き締める」との高官発言が報じられはじめた。
6月2日に公表されたスイスの5月消費者物価指数(CPI)は前年比2.9%上昇と2008年9月以来、約14年ぶりの伸びを記録している。このままいけばSNBがECBの後を追う可能性は高いと言える。
こうなると「日銀(円)だけがマイナス金利」という構図になる。これは円安バブルという言葉まで用いられた約15年前(2005〜2007年)に近い相場環境である。
当時は「円だけがゼロ金利」という状況で円キャリー取引(円で調達しドルなどで運用する)が隆盛を極めた。そして、日本は巨額の貿易黒字を抱えており、円安がファンダメンタルズに反しているという部分もあった。
しかし、現在は巨額の貿易赤字に転じている。そのうえで「円だけがゼロ金利」どころか「円だけがマイナス金利」という地合いに陥れば円売りの正当性が一段と強まってしまうだろう。
ファンダメンタルズが「円売り」を正当化
要するに、今の円安はファンダメンタルズに沿った動きである点で圧倒的な正しさがある。日本国内では円安の良し悪しを議論する風潮がかまびすしいが、日本人がどう感じようと、肝心のファンダメンタルズが円売りを正当化しており、それを積極的に変えたいという雰囲気も政府・日銀からは出てこない。
原発再稼働もインバウンド解禁も外貨流出を食い止めるという観点からは直接的なアプローチになるはずだが、政府が積極的に手を付けようとする様子はない。参院選が終わったら、反対勢力を恐れなくなり、動き出してくれるのだろうか。
この状況が続くかぎり、基本的にはFRBの正常化プロセスがつまずくことでしか円安は止まりようがないだろう。ドットチャートでいえば、最短で2022年12月、順当に行ったら2023年3月だろうか。今の円売りペースを踏まえると、その時間軸はかなり長い。
●東京原油8万9000円超え 円安進行で値上がり予想 6/9
東京商品取引所で8日夕から9日朝まで行われた中東産原油の先物の夜間取引で指標価格が急上昇し、一時1キロリットル当たり8万9290円を付けた。8万9千円を超えるのは2008年7月中旬以来、約13年11カ月ぶり。
日銀が超低金利政策を続ける一方で米国が利上げにかじを切っており、外国為替市場で円安ドル高が進行。この影響で、原油輸入代金を円建て換算すれば一段の値上がりが予想されることから、先物高につながった。
中国の上海市が今月に入り、コロナ対策のロックダウンを実質的に解除、中国のエネルギー消費が増えるとの予想も世界的な原油先物高の傾向の一因となっている。  

 

●政府・日銀の声明文ポイント 6/10
財務省と金融庁、日銀が10日発表した声明文のポイントは次の通り。
一、外国為替相場は(経済の)ファンダメンタルズ(基礎的条件)に沿って安定的に推移することが重要。急速な変動は望ましくない。
一、最近の為替市場では急速な円安の進行が見られ、憂慮している。
一、政府・日銀は緊密に連携し、為替市場の動向や経済・物価などへの影響を一層の緊張感を持って注視していく。
一、「為替の過度の変動や無秩序な動きは経済や金融の安定に悪影響を与え得る」といった先進7カ国(G7)などで合意された考え方を踏まえ、必要な場合には適切な対応を取る。
●円安「必要なら適切な対応」 財務省、金融庁、日銀が初の声明文 6/10
財務省と金融庁、日本銀行は10日、国際金融市場に関する3者会合を開き、外国為替市場で進む円安ドル高の対応などを協議した。会合では初めて声明文を取りまとめ、「必要な場合には適切な対応を取る」と強調。国内の物価高を助長する急速な円安を牽制(けんせい)した。
会合では為替の過度な変動や無秩序な動きは経済や金融の安定を損ねるとの認識で一致し、為替市場の動向を一層の緊張感を持って注視する方針を確認した。
財務省の神田真人財務官は会合後、記者団に対し「急速な円安の進行が見られ憂慮している」と指摘。「あらゆるオプションを念頭に置いて機動的に対応する」と述べ、為替介入も排除しない考えを示唆した。
東京外国為替市場の円相場は9日、対ドルで一時1ドル=134円55銭まで下落。2002年2月以来、約20年4カ月ぶりの円安水準となった。
●円安、再び急加速 日銀総裁発言も波乱要因に 6/10
外国為替市場で小康状態にあった円安が、今月に入り再び急加速している。円の対ドル相場は連日のように20年ぶりの安値を更新し、年初からの下落幅は20円近くに達した。日銀の黒田東彦総裁はコロナ禍からの景気回復を支えるため、大規模金融緩和の継続が必要と訴える。一定の円安は覚悟の上とみられるが、こうした総裁の発言自体が波乱要因となっており、日銀の政策運営は難しさを増している。
ロシアのウクライナ侵攻で原油などの価格が高騰する中、円安が輸入物価の上昇に拍車を掛けている。家計や、価格転嫁が難しい中小企業には不満も鬱積(うっせき)する。
経済同友会が8日に公表した調査結果では、約200人の経営者のうち、現在の円安は日本経済に「マイナス」「ややマイナス」とした回答は計74%に上った。日銀は「円安は日本経済全体にプラス」(黒田総裁)との姿勢を崩していないが、同友会の桜田謙悟代表幹事は「経営者は(業種別の影響など)ミクロで見てほしいと考えている」と述べ、きめ細やかな目配りを求めた。
円相場は5月中旬以降、米連邦準備制度理事会(FRB)の急速な利上げによる米国の景気悪化が懸念され、いったん円高方向に戻す場面もあった。しかし、FRBの金融引き締め姿勢に変更がないと市場が判断したことで、再び日米間の金利差拡大が強く意識されて円安が加速した。
米国や欧州と異なり、日本経済はコロナ禍前の水準をいまだ回復しておらず、日銀は景気の腰折れを防ぐためにも「強力な金融緩和を粘り強く続ける」(黒田総裁)との立場。日米金利差はさらに拡大する方向で、円は今後も売られやすい環境が続く。
足元の急速な円安は黒田総裁の発言が材料視されている面も否めない。最近の講演では「家計が値上げを受け入れている」と発言、生活者視点を欠くとの厳しい批判を浴び、撤回に追い込まれた。総裁の発言が信頼を失えば市場は無用な混乱に陥りかねず、日銀には丁寧な説明が求められている。
●円安は損で円高が得? 「円安」の今、どんなメリットがあるの? 6/10
最近の経済関連のニュースでよく取り上げられる話題に「円安」があります。「円安」とは、為替取引において相手方の通貨に対して日本の通貨である「円」の価値が下がった(安くなった)ことを意味しています。
自分の国の通貨が下がるということは、海外からの輸入品に対して、より多くの円を払わなければ買えないということです。普通に考えると損をしているように感じますが、円安にもメリットがあります。
そもそも円安とは?
経済関連のニュースで「1ドル〇〇円台まで円安が進みました」と言っているのを聞いたことがある人も多いでしょう。円安とは、為替取引において日本の通貨である「円」が、相手方の通貨、例えばアメリカの通貨である「ドル」に対して価値が下がる(安くなる)ということです。
ある時点での為替相場で「1ドル=100円」だったとします。これは、「1ドルと交換するために100円が必要」ということを意味します。その後「1ドル=110円」になったとしましょう。このとき「1ドルと交換するために110円が必要」となり、同じ1ドルを手に入れるために、それまでより10円多く支払う必要があるということです。
これだけ見ますと、ドルが高くなったと理解するのは簡単ですが、円が安くなったと感じにくいかもしれません。そこで、分かりやすく100円を基準で考えますと、「1ドル=100円」は、「100円で1ドルを手に入れられた」のに対して、「1ドル=110円」の時は、「100円でおよそ0.91ドルしか手に入らない」ということを意味しており、円の価値が下がった(安くなった)ということになるのです。
円安と豊富な観光資源で「インバウンド」の起爆剤に
円を基準に考えますと、他国の通貨(例ではドル)に対して値下がりしていることを実感しやすくなったのではないでしょうか。実際、現在進んでいる円安によって、輸入に頼る食品や燃料は値上がりしていますし、海外旅行へ行くにも円高の時より出費がかさんでしまいます。
デメリットばかりのようですが、逆の立場で考えたらどうでしょう。「アメリカ・ドル」を使っている人から見ますと、円安は日本の高級なホテルや旅館に安く泊まれ、たくさん買い物をするチャンスです。
海外から日本へ旅行へ来ることを「インバウンド」といい、日本国内の多くの業種に利益をもたらしてくれます。
新型コロナウィルスの感染が広がる前までは、海外からの観光客による「爆買い」という現象が見られ、旅行会社、航空会社、百貨店やドラッグストアだけでなく、観光地の土産物屋のような規模の小さな小売業にまで多くの恩恵がありました。幸い日本には世界中の人を魅了する観光資源がたくさんあります。円安と観光資源は、再びインバウンド需要を喚起する起爆剤となり得ます。そして、コロナ禍で停滞していた経済活動を再始動するきっかけにもなるでしょう。
円安が農林水産物の輸出の追い風に?
今、日本から海外向けに輸出が伸びつつあるのが「農林水産物」です。特にここ10年は右肩上がりで輸出額が増えています。農林水産省のウェブサイトで公表されている「農林水産物輸出入概況」によると、さかのぼって閲覧できる最も古い2003年の農林水産物輸出額は3402億円でしたが、2021年は1兆1626億円と3倍以上に伸びています。その前年比25%以上の増加となっています。
かねてより日本の食料自給率の低さが論じられてきましたが、海外の安い輸入食品に頼ったままでした。急激に進んだ円安に加えてロシアのウクライナ侵攻によって、食料を過剰に海外に依存することへの危機感が一気に高まるにつれ「食糧安全保障」という言葉を耳にするようになりました。
現在の円安は身近な生活に負の影響を与えていますが、これを機に日本が食糧自給の向上を進めるために農業政策を見直すと同時に、農林水産物が新たな日本の輸出品として成長することが期待されます。
円安が新たな経済成長の起爆剤になるかも
コロナ禍でインバウンドが途絶え、観光や小売りなどの業種は苦境にあえいでいますが、ようやく海外観光客の受け入れが再開されようとしています。円安は海外観光客にとって日本に来るには好条件です。また、新たな輸出品として成長している農林水産物を売り込むにも、円安はまたとないチャンスです。現状は生活に負の影響が大きい円安ですが、日本の新たな成長の起爆剤になるかもしれません。
●外為 1ドル133円80銭前後とドル高・円安で推移 6/10
10日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=133円80銭前後と、午後5時時点に比べ20銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=141円80銭前後と16銭のユーロ安・円高で推移している。
●ロンドン外国為替市場で円相場、1ユーロ = 141円を切る 6/10
6月10日22時2分頃、ロンドン外国為替市場で円相場は1ユーロ = 141円を切り、前日2時頃の価格(142.89円)から1.90円(1.33%)下落となる140.99円となった。
●円は年末1ドル=124円へ反発、国内批判や米引き締め鈍化で−UBS 6/10
UBS AGは円相場が年末までに1ドル=124円に向けて反発すると予想している。日本銀行の金融緩和と大幅な円安に対する国内批判の強まりなどが円の上昇を促す可能性が高いとみている。日本の経済成長や国際収支の改善、米国の利上げペース鈍化によるドル高の反転も後押しするという。
ストラテジストのテック・レン・タン氏(シンガポール在勤)は9日付のリポートで、円が上昇に転じるための条件とその蓋然(がいぜん)性を示した。その中で、日銀が国内物価が持続的な上昇軌道にあるとの評価を改めることや、インフレ期待が上放れする懸念を強めることが円安反転の最も強力なきっかけになるが、その可能性は低いとした。米国の対日貿易赤字が全体の6.6%で、米国が高インフレと労働市場のひっ迫に直面する中、米財務省が円安に歯止めを掛けるよう日銀に圧力をかける可能性も低いと論じた。
一方、輸入物価の高騰が家計の購買力を圧迫する中、7月の参議院選挙に向けて世論の不満が一段と強まり、日銀は金融緩和の費用対効果の再考を迫られる可能性があるという。円安による輸出の強化、海外旅行者受け入れ再開による観光収入および国内成長、インフレの押し上げ効果も、徐々にではあるものの円の上昇要因になるとみている。
今年10−12月期には広範なドル高が反転すると予想。米国の経済成長とインフレが緩やかになるのと同時に米金融当局が利上げペースを緩め、タカ派トーンを弱めることで、米債利回りの安定化とともにドル・円の下落を促す可能性が高いとしている。
タム氏はドル売り・円買いポジションのエクスポージャーが管理可能な水準の投資家には、そのポジションを持ち続けることを推奨。ただ、短期的にはドル・円の上昇モメンタムが強いため、大規模なドル・円ショートを抱える投資家についてはエクスポージャーの管理が極めて重要としている。 

 

●NY円、134円35〜45銭 6/11
10日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比03銭円安ドル高の1ドル=134円35〜45銭を付けた。
●日本の為替介入「極めて例外的」 インフレでドル高容認―米報告 6/11
米財務省は10日、主要貿易相手国・地域の通貨政策を分析した半期為替報告書で、大幅な対米貿易黒字を抱える日本を引き続き「監視対象」に指定した。急速な円安・ドル高に見舞われる日本に対し、為替市場介入は極めて例外的な場合に限られるべきだと改めてくぎを刺した。米国はインフレ抑制に働く自国通貨高を事実上容認しており、日本の通貨当局が円安阻止の介入を行う難しさが浮き彫りとなった。
為替報告書は、ドルが主要通貨に対して上昇している現状を踏まえ、日本について「日米の金利差拡大を主因に円安が進んだ」「実質実効ベースの円相場は50年ぶりの安値に近い」などと指摘。その上で「介入は極めて例外的な状況に限り、適切な事前協議を踏まえて実施されるべきだ」と従来の主張を繰り返した。
●政府と日銀「円安憂慮」と異例の声明 必要なら適切な対応 6/11
20年ぶりの円安水準を受けて、政府と日本銀行は「憂慮している」と声明を出した。
財務省と金融庁、日銀の幹部が10日夕方、緊急の会合を開き、1ドル = 134円前後の、20年ぶりの円安ドル高水準を受け、経済への影響などについて話し合った。
2022年2月以来の開催で、初めて文書としてまとめた声明では、急速な円安進行を憂慮していること、各国と緊密な意思疎通を図りつつ、必要な場合は適切な対応をとること、としている。
財務省・神田眞人財務官「(適切な対応とは?)あらゆるオプションを念頭において、機動的に対応するということですけれども、(為替介入について)今は、そういう局面になるかどうかは申し上げられません」
こうした会合は、急速に進む円安を抑える狙いがある。
●NY外為 円、134円台前半 6/11
週末10日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、高水準のインフレ率を背景とした米長期金利の上昇を眺めて、海外市場での円買い・ドル売りの流れが反転し、1ドル=134円台前半付近での取引となった。午後5時現在は134円35〜45銭と、前日同時刻(134円32〜42銭)比03銭の円安・ドル高。
日本の財務省、金融庁、日銀が10日に会合を開き、最近の急激な円安進行を憂慮するとの声明を発表した。来週の日銀の金融政策決定会合で何らかの政策変更があるのではないか、との警戒感からこれまでの円安の流れが一服、円は133円台後半で高止まる場面もあった。
ただ米労働省が10日発表した5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.6%上昇となった。2カ月ぶりに前月(8.3%上昇)を上回り、40年5カ月ぶりの高い伸び率となったほか、市場予想(8.3%上昇)も上回った。米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的なペースで利上げを続けるとの見方が広がり、米長期金利が上昇。このため日米金利差の観点から、その後は円売り・ドル買いも入り、円は上値を削る展開となった。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0504〜0514ドル(前日午後5時は1.0613〜0623ドル)、対円では同141円27〜37銭(同142円67〜77銭)と1円40銭の円高・ユーロ安。
●NYダウ3日続落、終値880ドル安…インフレ懸念で売り膨らむ 6/11
10日のニューヨーク株式市場で、ダウ平均株価(30種)の終値は前日比880・00ドル安の3万1392・79ドルだった。同日発表された5月の米消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比8・6%と約40年半ぶりの高水準となり、インフレ(物価上昇)の長期化が景気を冷やすという見方が広がった。
値下がりは3日連続。ダウ平均は前日にもインフレ加速への警戒感から600ドルを超える下落となっていた。米連邦準備制度理事会(FRB)が記録的なインフレを抑制するため、金融引き締めを加速すると景気後退を招くとの懸念が市場で強まり、幅広い銘柄が売られた。
物価高で消費が伸び悩むとの思惑から、クレジットカード大手のアメリカン・エキスプレスやビザなど消費関連銘柄の下落が目立った。米市場関係者は「一部でインフレはピークに達したとの見方も出る中、上昇が再び加速し、消費者心理も悪化している。景気後退への不安が株売りを加速させた」と指摘した。
一方、10日のニューヨーク外国為替市場で、円相場は一時、1ドル=134円台半ばまで円安・ドル高が進んだ。約20年ぶりの安値圏となる。米長期金利が上昇し、日米の金利差が広がるとの見方から、運用に有利なドルを買う動きが優勢になった。 

 

 

 

●円相場 一時1ドル=134円台後半 20年4か月ぶり円安水準を更新 6/13
週明けの13日の外国為替市場では、円安が一段と進み、円相場は一時、1ドル=134円台後半まで値下がりして2002年2月以来、20年4か月ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
10日に発表されたアメリカの先月の消費者物価指数の伸び率が記録的な水準となったことで、市場では、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が今後、利上げをさらに加速させるのではないかという観測が出ていて、大規模な金融緩和を続ける日本との金利差が拡大するという見方から円を売る動きが出ています。
●一時1ドル 135円台 20年ぶり円安水準 日米“金利差”円売りドル買い強まる 6/13
速報です。円相場が1ドル=135円台に突入し、およそ20年ぶりの円安水準を更新しました。きょうの東京外国為替市場の円相場は、円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、一時1ドル=135円台と、2002年2月以来、20年4か月ぶりの円安ドル高水準をつけました。
背景にあるのは、日本とアメリカの金利の差です。アメリカでは記録的なインフレが進み、先月の消費者物価指数は、およそ40年半ぶりの高い水準となりました。物価上昇を抑えるため、アメリカの中央銀行にあたるFRBは、今週開く会合で、大幅な利上げを決める見通しです。一方、景気回復が遅れる日本では超低金利が続けられているため、アメリカとの金利差がさらに広がるとの見方から、円を売ってドルを買う動きにつながっています。
●1ドル134円台も「序の口」…これからさらに「円安」が進むといえるワケ 6/13
円安の背景
外国為替市場で主要通貨に対する円安傾向が鮮明だ。
6月9日の東京時間にドル/円の為替レートは1ドル=134円50銭台まで下落した。
円安進行の主たる背景要因として、日米の景況感の差が鮮明に開いていることは大きい。
ポイントは個人消費に代表される内需の強さの違いだ。
各種経済指標を確認すると、米国経済は堅調に推移している。
賃金の上昇ペースは高水準だ。
0.5ポイントの追加利上げに加えて6月からは量的引き締め=QTが始まったが景気が腰折れする状況には至っていない。
個人消費は増加基調を保っている。
企業は急増するコストの価格転嫁を進め、生産者物価の上昇に歩調を合わせて消費者物価が上昇している。
米国とは対照的に、わが国では需要が弱い。
世界全体でエネルギー資源や穀物、石油化学製品や物流費用などモノとサービスの価格が急騰しているが、企業の価格転嫁は容易ではなく、企業物価と消費者物価の乖離が大きい。
ただし、足許ではコスト増に耐えられない企業が急増している。
内需は追加的に圧迫され、国内企業の業績悪化懸念は高まるだろう。
それが円の先安感を強める展開が懸念される。
鮮明化する日米の景況感格差
6月に入ってからの円安進行の最大の要因は、日米の景気の強弱の差が、一段と鮮明になり始めたことだ。
米国の景気は緩やかに回復し続けている。
労働市場はかなり逼迫した状態が続いている。
賃金は増加傾向だ。
5月の時間当たり賃金の伸び率は前月からやや鈍化したが5.2%増加した。
それが個人の消費を支えている。
4月の個人消費支出(PCE)は実質ベースで前年同月比2.8%増加した。
旺盛な個人の消費に支えられて、米国の企業は価格転嫁を進めやすい。
4月の生産者物価指数は前年同月比で11.0%上昇した。
それに対してPCE価格指数は同6.3%、食品とエネルギーを除くコアPCE価格指数は4.9%上昇した。
FRBはインフレ退治のために必死になって金融政策を正常化し引き締めようとしているが、今のところ個人消費は旺盛だ。
その一方でわが国の賃金は思うように増えていない。
4月の毎月勤労統計調査の速報によると、現金給与総額は同1.7%増だ。
また、家計調査によると同月の勤労者世帯の実収入(二人以上の世帯)名目ベースで0.6%、実質ベースで3.5%減少した。
家計調査に収録されている消費支出(実質)は1.7%減少した。
賃金が増えない状況下で世界的にモノやサービスの価格が上昇しているため、家計消費への下押し圧力が強まっている。
そうした日米の需要の強弱の差が、ドル高・円安に大きく影響している。
さらに、米国では9月以降も0.50ポイント以上の追加利上げが実施される可能性が高い。
その一方で、わが国は日銀が基本的には異次元の金融緩和を続けるとの見方が多い。
内外金利差の拡大が補完的に円売り圧力を強め、134円台まで円安が進行した。
円の先安感はさらに強まる可能性
当面、米国の個人消費は底堅さを維持する可能性が高い。
その一方で、わが国では需要が減退する。
そうした見方から円の先安感は強まるだろう。
ウクライナ危機によって世界経済はブロック化し始め、各国企業の事業運営コストが増える。
それに加えて、中国のゼロコロナ政策はサプライチェーンの混乱に拍車をかけた。
世界の供給制約は長期化し、モノやサービスの価格はさらに押し上げられる。
その後も物価は高止まりするだろう。
例えば、原油価格はOPECプラスの増産発表後も上昇した。
その背景には世界の原油需給が一段と逼迫するとの観測増加がある。
資材の不足と価格高騰、脱炭素を背景とする融資抑制、金利上昇が進む状況下、産油国が生産を短期間で増やすことは難しい。
米国のシェールオイル業界ではリグの稼働数が徐々に増えてはいるが、2020年3月にコロナショックによって世界の金融市場が大混乱に陥る前の水準にまでは回復していない。
また、世界的な物流の混乱や異常気象、ウクライナ危機による肥料不足など複合的な要因が重なり、世界的に食糧不足が顕在化している。
食品などの輸出規制を強化する国が増えている。
世界経済全体で需給はタイト化し、インフレ急騰と成長率低下の同時進行は避けられない。
それに加えて米欧の金融政策大転換によって世界の金融市場は大きく不安定化するだろう。
その状況下、米国のように需要が旺盛であり潜在成長率が相対的に高い国の企業は価格転嫁を進め、より有利に資材や労働力を調達しやすい。
人口が減少し内需が縮小均衡に向かうわが国では企業がさらなるコストプッシュ圧力に直面するだろう。
主力の自動車産業では半導体やワイヤーハーネスなどの不足と価格高騰によって生産減少が深刻だ。
家計の可処分所得がより急速に減少する展開は排除できない。
内需のさらなる減少を背景に、原油、天然ガスや穀物市場で海外勢に本邦企業が買い負けるケースは急速に増えるだろう。
円の先安感は高まりやすい。
●異例の円安、いつまで続く  6/13
円は通常、経済の悪材料を受けて上昇する通貨だが、現在は米国のインフレ高騰によって打撃を受けている。
円相場は、ドル高と日本の金融緩和政策に挟まれ、2002年以来の安値を付けた。ロシアのウクライナ侵攻、米インフレ率の急上昇、中国経済の減速により世界経済の見通しが悪化する中、ドル相場は上昇。主要16通貨に対するドルの価値を示すドル指数は過去1年で12%超急騰し、この間にドルの対円相場は22%も跳ね上がっている。
ドル相場が幅広く上昇する一方、円相場は大幅に下落している。日本の物価が小幅に上昇しているにもかかわらず、日銀が低金利政策を継続する方針を表明していることが一因だ。
米連邦準備制度理事会(FRB)はその対極に位置している。過去40年超で最も高いインフレ率を抑制するため、政策金利を0.5ポイント引き上げた。今週の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げを検討する見込みだ。
円は世界で3番目に取引量が大きい通貨であり、金融市場で重要な役割を果たしている。一部では、円安が巨大な米国債市場に痛手を与えるのではないかとの懸念すら出ている。
円安は通常、自動車などの輸出に支えられている日本経済にとって追い風となる。しかし日本の輸出企業は、今回の円安が資源価格の上昇や供給不足と同時に進行していることに懸念を示し始めている。
日本自動車工業会の永塚誠一副会長は記者会見で、「通常時であれば、車両輸出を中心に円安のメリットが生じ、総じてみれば収益を増加させる方向に働く」とした上で、「資材や部品輸入の価格が大変高騰しており、円安のデメリットが拡大している」と述べた。
ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は4月、日本経済にとって「円安のメリットは全くない」と述べた。「日本は世界中から原材料を入れて、加工して、付加価値をつけて売るという業務をやっている。その中で自国の通貨が安く評価されるというのは決してプラスにならない」
市場環境が悪化しているとき、通常なら円はドルと同様に、投資家が逃げ込む安全資産になる。しかし、アナリストらによると、今回の市場混乱時に投資家が円に逃げ込むことはなかった。日米の金融政策の乖離(かいり)や、ここ数カ月にわたる日本の貿易赤字などが理由だ。貿易赤字は長期間続く可能性があると見る向きもある。ウクライナでの戦争によって生じたエネルギーショックによって、日本の輸入業者は石油やガスを購入する際、より多くのドルが必要になるとも指摘されている。
一方、円を売ったヘッジファンドや投資家は、ドルの上昇が終わりに近づきつつある可能性を警戒し始めている。とりわけ、借り入れコストが上がり、消費者がインフレの影響を感じる中で米国経済が減速した場合、ドル高が終わるかもしれないという。
米国が景気減速、あるいは最終的にリセッション(景気後退)に陥ると予想する一部ヘッジファンドは、円高になった場合に利益を得られるオプションを購入しつつある。ゴールドマン・サックスのアナリストは、ドルは円に対し30%過大評価されているとみている。同社は、6カ月以内にドル相場が対円で115円を割り込んだ場合に利益が出るオプションの購入を顧客向けリポートで推奨している。現在の相場は1ドル=約135円。
ゴールドマン・サックスのグローバル為替・金利・新興国市場戦略部門共同責任者のザック・パンドル氏は、「貿易加重平均の円相場は、レーガン政権時代以来の安値水準にある」と指摘、「ドルの対円相場水準は持続不可能だ」と述べた。
日米両国の中央銀行の立場を分けている最大の理由はインフレである。4月の日本の総合消費者物価指数は前年同月比で2.5%の上昇。価格変動の大きい生鮮食品とエネルギーを除く同指数の上昇はわずか0.8%だった。一方、米国の消費者物価指数(CPI)上昇率は、エネルギーと食料品価格の高騰を受け、5月に前年同月比で8.6%に達した。
日本の財務省、日銀、金融庁は10日、急速な円安の進行に懸念を表明した。「政府・日本銀行は、緊密に連携しつつ、為替市場の動向やその経済・物価等への影響を、一層の緊張感を持って注視していく」とし、必要な場合には適切な対応をとると述べた。
しかし投資家らは、日銀による介入は予想していない。これまでに日銀は、財務省の指示を受けて外為市場に介入したことがある。介入するとすれば、その手法は金融引き締めではなく円買いだ。米国との協調介入でなければ大きな効果を持たないだろうが、インフレの状況から見て米国が協調介入するとは考えにくい。
ドイツ銀行のストラテジスト、アラン・ラスキン氏は「外為市場への直接介入を誘発する公式の相場水準には、まだほど遠い。日本は過去10年間、介入への依存度を次第に下げてきた」と述べた。
日本が最後に外為市場に介入したのは2011年10月。最後にドル売り円買い介入を行ったのは1998年6月だ。
英銀大手スタンダードチャータードでグローバル為替調査・北米マクロ経済戦略部門の責任者を務めるスティーブ・イングランダー氏は、最近の円安は過去の円安とは違ってドル相場の広範な動きから生じており、円が上昇に転じるとの見方を示した。
イングランダー氏は「これまでほとんどのケースでは、円の下落は過剰な円高で起きていたが、今回はそうではない。現在のような急激な(ドル)上昇は長続きしない」と語った。
●外為 1ドル134円80銭前後と大幅なドル高・円安で推移 6/13
13日の外国為替市場のドル円相場は午後0時時点で1ドル=134円80銭前後と、前週末午後5時時点に比べ1円20銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=141円41銭前後と55銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●松野長官「急速な円安の進行を憂慮」1ドル135円台突入に 6/13
松野官房長官は13日、円相場が1ドル=135円台に突入したことについて「急速な円安の進行がみられ、憂慮している」と述べた。
13日の東京外国為替市場の円相場は、円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、一時1ドル=135円台と、2002年2月以来、20年4か月ぶりの円安ドル高水準をつけた。
これについて松野官房長官は13日の記者会見で「最近の為替市場では、急速な円安の進行がみられ、憂慮している」と述べた。
また松野官房長官は「政府としては日本銀行と緊密に連携をしつつ、為替市場の動向やその経済物価などへの影響を一層の緊張感を持って、注視をしていく考えだ」と強調した。
●東証前引け 大幅続落、20年ぶり円安の下支えは限定的 TOPIXは2%安 6/13
13日午前の東京株式市場で日経平均株価は大幅に続落し、前週末比735円43銭(2.64%)安の2万7088円86銭で終えた。前週末の米株式相場が大幅に下落したことを受け、東京市場でも運用リスクを回避したい投資家の売りが幅広い銘柄に出た。下げ幅は800円を超える場面があった。
前週末10日に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8.6%上昇した。市場予想や4月の実績(いずれも8.3%)を上回った。米国のインフレ再加速で、米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引き締めを続け、米景気を冷やすとの懸念が株式相場の重荷となった。
米株価指数先物が日本時間13日午前の取引で下げる中、日経平均先物にも短期筋の売りが出て指数を押し下げた面がある。JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは「米金融政策を巡って再び不透明感が高まり、海外勢が日本株買いに動こうとする動きに冷や水を浴びせた」と話していた。
外国為替市場では円相場が対ドルで1ドル=135円台に下げ、2002年2月以来の円安・ドル高水準となった。輸出関連株の一部の下支えにつながったものの、株式市場全体の地合いを好転させる材料にはならなかった。一方、食品などディフェンシブ銘柄の一部には買いが入った。
東証株価指数(TOPIX)は大幅に続落した。午前終値は前週末比39.04ポイント(2.01%)安の1904.05だった。
前引け時点の東証プライムの売買代金は概算で1兆4517億円、売買高は6億1384万株だった。東証プライムの値下がり銘柄数は1483と、全体の約8割を占めた。値上がりは305、変わらずは49だった。
エムスリーやオムロン、リクルートが下落。クボタやデンソー、アドテストも安かった。一方、明治HDや東ガス、三越伊勢丹は上昇した。
●24年ぶりの安値が近づく円安と政府・日銀会合声明文の狙い 6/13
四半世紀ぶりの円安水準が近づく
円安が歴史的な節目となる水準に再び接近してきた。先週のドル円レートは134円台半ばと、2002年以来20年ぶりの水準まで円安が進んだ。あと一歩円安が進み、2002年の高値である1ドル=135円15銭を超えると、今度はいよいよ1990年代以来24年ぶり、つまり四半世紀ぶりの円安水準と局面が変わる。
ところで、円安が日本経済にプラスかマイナスか、という論争が続いている。日本銀行は為替の過度の変動は望ましくないとする一方、円安自体は基本的には経済にプラス、との評価を崩していない。
6月8日に経済同友会が発表した「円安が日本経済に与える影響」についての調査によると、企業経営者の52.1%は「ややマイナスの影響」、21.6%は「マイナスの影響」と回答している。合計で7割強がマイナスとの判断である。また、現在の円安が自社の業績に与える影響については、「影響なし」が42.7%、「増益」が25.9%、「減益」が31.4%となっている。
現在の円安は、日本経済、企業経営共にマイナス、との回答が優勢となっているのである。そのうえで、自社にとって望ましい円相場については、「110円〜115円未満」のレンジが最も回答数が多い、いわゆる最頻値となった。現状は、その望ましい水準よりも20円以上円安の水準にある。
これらの点から、現状は「悪い円安」の状態にある、というのが企業経営者のコンセンサスと言えるだろう。
政府・日銀の会合で異例の声明文を公表
こうした中、6月10日の午後4時から、財務省、金融庁、日本銀行は、国際金融資本市場に関する情報交換会合、いわゆる「3者会合」を開いた。この会合は、為替市場が大きく変動する局面で過去に何度も開かれ、会合を開くという事実で市場をけん制することに最大の狙いがある。
ただし今回は、会合後に声明文が公表されており、この点で、市場けん制の度合いが従来よりも一歩踏み込んだ印象がある。2016年から始まった3者会合で、会合後に声明文が発表されるのは今回が初めてだ。
声明文では急速な円安の進行を「憂慮している」と明記した上で、「必要な場合には適切な対応を取る」との表現が入った。これをやや踏み込んだ表現との評価もあるかもしれないが、そこまでではないだろう。
米国の賛同が得られない中、政府(財務省)が唯一持っている為替政策の手段である為替介入(円買い介入)は封じられている状況にある。米財務省は10日に公表した半年に一度の「外国為替政策報告書」で、年明けの急速な円安に触れたうえで「為替介入は事前に適切な協議をした上で、極めて例外的な状況のみ」で認められるという従来の表現を踏襲している。日本の為替介入をけん制しているのである。
そうしたなか、声明文の表現を強めても、政府(財務省)が実効性のある政策が打ち出せない状況に全く変わりはないのである。
政府・与党からの批判に先手を打ったか
為替市場に唯一影響を与えることができる政策は、金融政策の変更である。しかし、日本銀行は、為替市場への影響を意図して金融政策を修正することを強く否定している。今回の声明文にも、金融政策の対応についての言及はない。
国会では、政府の物価高対策の効果が大きな争点の一つとなっている。来月の参院選でもそれは争点となるだろう。そうした中、為替市場で円安が一段と進めば、それは物価高を助長し、政府の物価高対策の効果を損ねてしまう。
異例の金融緩和を続ける日本銀行の政策が悪い円安を生んでいるとの批判が、再び政府内、与党内で高まりかねない状況になってきた。それに対して日本銀行が先手を打ち、批判をかわす狙いが、3者会合の開催や声明文の公表にあったのではないか。
それでも、日本銀行が実際に政策修正を行う可能性は低いことから、ドル円レートは早晩、四半世紀ぶりの円安水準に達することになるだろう。 
●東京円、1円安い1ドル=134円59〜60銭に 6/13
13日の東京外国為替市場で、円相場は午後5時、前週末(午後5時)比1円ちょうど円安・ドル高の1ドル=134円59〜60銭で大方の取引を終えた。
●円相場 1ドル=135円台前半 24年ぶり円安水準 6/13
円安ドル高が加速しています。週明けの13日の東京外国為替市場は、円を売ってドルを買う動きが広がり、円相場は一時、1ドル=135円台前半まで値下がりし、およそ24年ぶりの円安水準となりました。
13日の東京外国為替市場は、朝方から円を売ってドルを買う動きが広がり、午後1時すぎに1ドル=135円22銭まで値下がりしました。これは、1998年10月以来、およそ24年ぶりの水準です。背景には、アメリカの中央銀行がインフレを抑えるため利上げを急いでいるのに対して日銀は大規模な金融緩和を続ける姿勢を示していることで、日米の金利差が拡大するとの見方からより高い利回りが見込めるドルを買う動きが広がっているためです。円安ドル高は輸出企業にとってはプラスに働く一方で、輸入企業にとってはコストが増えることになります。ロシアによるウクライナ侵攻を背景に、エネルギー価格や小麦などの食料価格が高止まりしていて、こうした物資を輸入に頼る日本にとっては、円安の進行で家計の負担がさらに増すだけに、政府や日銀の今後の対応が焦点になりそうです。
老舗パン屋 原材料高を懸念
一段と円安ドル高が進んだことで、外国産の小麦粉も仕入れている大阪・旭区にある創業62年の老舗パン屋では、原材料コストのさらなる上昇を懸念する声が聞かれました。このパン屋では、国産だけでなく、カナダ産やアメリカ産の小麦粉も使っていますが、ロシアによるウクライナ侵攻を背景とした小麦価格の上昇に、円安の影響も加わり、仕入れ値が去年の同じ時期と比べて1割以上、上昇しているといいます。さらに、食用油やバターといったほかの原材料価格や、パンを入れるプラスチック製の袋なども仕入れ値が上がっています。このため店では、ことしに入って順次、20種類ほどの商品を値上げしてきましたが、店では、パンに使う油やバターを減らしても味が変わらないように工夫したり、利益率が高い季節限定の商品を時期を早めて発売するなどして、さらなる値上げを避けるための努力を重ねています。「パン屋のグロワール」の運営会社の一楽虎光 社長は、「経営は次第に苦しい状況になってきていて、仕入れ値がさらに上がるとますます厳しくなります。経営努力でさらなる値上げは防いでいきたいです」と話していました。
専門家“家計へのマイナス多い”
日本総合研究所の若林厚仁 関西経済研究センター長は、円安ドル高が加速していることについて「円安がある程度進むとは想定していたが、予想以上に進んでいる。今後も、国内外の金利の差から円安に向かう可能性が高くなっているのではないか」と話し、当面、円安傾向が続く可能性が高いという見方を示しました。そのうえで、関西企業への影響については「関西では、製造業が多いが、輸出が多い大企業よりは中小企業が多く、為替の恩恵を受けにくいし、これだけ円安が急激に進むと、輸出企業にとっても資材の輸入などで対応が難しくなる。さらに、輸入企業は海外調達の食料を、国内に切り替えるなどの対応策も簡単にはできない」と指摘しました。そして、生活への影響については「円安によって輸入品の価格が上がるので家計にとってはマイナス面がほとんどだ。例えば、関西はパンの消費量が多いが、小麦の輸入価格が円安でさらに上がっているので、パン好きの家庭には特に影響が大きいかもしれない」と述べ、食卓などへの影響は大きいという考えを示しました。
大銀協会長“安定的望ましい”
東京外国為替市場で円安ドル高が進んでいることについて、大阪銀行協会の会長で、三井住友銀行の高島誠 頭取は「いまの円安は、ここ数か月、特に数週間で急激に進んできている。企業などが先行きの見通しを立てるうえでは、円相場は安定的に推移することが望ましい」と述べました。また、企業や家計への影響については、「全体としてみれば円安などによるコスト上昇分を価格に転嫁できていない状況だが、逆に価格に転嫁すれば、家計の購買力が低下する可能性が高くなる。為替相場が経済に与える影響を注視していきたい」と述べました。
●株価も続落 円安は約24年ぶり水準に 6/13
週明け13日の東京外国為替市場で、円相場は一時1ドル=135円台前半まで下落し、平成10年10月以来、約23年8カ月ぶりの安値水準をつけた。米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利の引き上げを加速する中、日本銀行は大規模金融緩和の低金利政策を続けており、日米の金利差拡大で円を売り、運用に有利なドルを買う動きが強まった。
午後5時現在は前週末比1円ちょうど円安ドル高の1ドル=134円59〜60銭。
円相場は今年に入りドルに対して20円程度も売り込まれ、特に5月以降は下落基調を強めている。世界経済を牽引(けんいん)する米国でインフレが歴史的水準に加速し、FRBが14、15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅な追加利上げを決めるとの観測が広がったためだ。
景気の先行き不安から投資家がリスク回避に傾いたことで、前週末の米ニューヨーク株式市場はダウ工業株30種平均など主要3指数がそろって下落した。代わりに投資資金が逃げ込んだのが米国債や金といった比較的安全とされる資産だ。
13日の東京株式市場でもこの流れは変わらず、日経平均株価は続落。終値は前週末比836円85銭安の2万6987円44銭と今年2番目の下げ幅だった。アジア株も下落が目立った。日銀はこの日、相場を下支えするため、株価指数連動型の上場投資信託(ETF)を約2カ月ぶりに701億円分買い入れた。
10日には財務省と金融庁、日銀が情報交換会合で初の声明を発表し、これまでより踏み込んだ形で円安を牽制したが、効果は限定的だった。市場の関心はFOMCの動向に集中しており、ある市場関係者は「パウエルFRB議長がFOMC後の記者会見で、利上げの道筋をどのように説明するか注目したい」と話す。
●松野長官「急速な円安の進行を憂慮」1ドル135円台突入に 6/13
松野官房長官は13日、円相場が1ドル=135円台に突入したことについて「急速な円安の進行がみられ、憂慮している」と述べた。
13日の東京外国為替市場の円相場は、円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、一時1ドル=135円台と、2002年2月以来、20年4か月ぶりの円安ドル高水準をつけた。
これについて松野官房長官は13日の記者会見で「最近の為替市場では、急速な円安の進行がみられ、憂慮している」と述べた。また松野官房長官は「政府としては日本銀行と緊密に連携をしつつ、為替市場の動向やその経済物価などへの影響を一層の緊張感を持って、注視をしていく考えだ」と強調した。
●「150円近くまで円安進む可能性ある」“ミスター円”榊原元財務官が警告 6/13
円が歴史的な水準まで売り込まれました。
記者「円相場が135円15銭をつけ、1998年以来の水準となっています」
きょう午後、円相場は一時1ドル=135円台前半まで下落。1998年10月以来、およそ24年ぶりの円安水準となりました。今年初めは1ドル115円台。わずか半年で20円、円安が進みました。さらに株価も・・・
記者「きょうの日経平均株価は800円以上値下がりして取引を終えています」
国会でも・・・
立憲民主党 杉尾秀哉参議院議員「日本売りに近い状況になりつつあるのではないか」
日本銀行 黒田東彦総裁「最近の急速な円安の進行は経済にマイナスであり望ましくない」
1998年10月以来の1ドル135円台前半。1998年といえば日本経済が激震に見舞われた年でした。その前の年には山一証券が経営破綻。株安と円安が同時に進む「日本売り」という言葉が飛び交いました。当時、円安と戦ったのが“ミスター円”と呼ばれた財務省の榊原元財務官です。榊原氏は、いまさらなる円安が進むと警告します。
榊原英資元財務官「140円台までいくんじゃないかと思います。150円に非常に近いところまで円安が進む可能性はありますね」
その理由の1つが為替介入の難しさです。
榊原英資元財務官「アメリカはいまのドル高をむしろ望んでいるようなところがあります。いま介入することにアメリカが同意する可能性はないわけです」
アメリカは、いまの「ドル高」が好都合なため、為替介入は難しくあまり手の打ちようがないと指摘します。榊原元財務官は、かつて自身の部下として為替対応にあたった日銀の黒田総裁についてこう指摘しました。
榊原英資元財務官「円高に持って行くためには金融引き締めをしなければいけないが、少なくとも黒田さんの任期中、来年3月までは金融緩和を続けるだろう」
きょう、国会で黒田総裁は・・・
日本銀行 黒田東彦総裁「最近の急速な円安の進行は先行きの不確実性を高め、企業による事業計画の策定を困難にするなど経済にマイナスで望ましくない 」
急速な円安は望ましくないとしながらも、金融緩和を修正しない黒田総裁。いつまでその姿勢を貫けるのでしょうか?
●NY外為 円、134円近辺 6/13
週明け13日午前のニューヨーク外国為替市場では、東京市場で一時約24年ぶりの水準まで円安・ドル高が進み、一服感が広がる中、円相場は1ドル=134円近辺に上昇している。午前9時現在は134円00〜10銭と、前週末午後5時(134円35〜45銭)比35銭の円高・ドル安。
日米の金利差拡大観測を背景に円相場は東京市場で、一時1998年10月以来の円安水準となる135円20銭前後まで下落。ただその後は急ピッチで円安・ドル高が進行した反動からドルの利益確定の売りも出て、一服感が広がった。
この日は米マクロ指標などの新規材料に乏しい。10日発表の5月の米消費者物価指数(CPI)が高い伸びとなったことで、米連邦公開市場委員会(FOMC、14、15日開催)で、連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ幅を0.75%に拡大するとの見方が一部で再燃。金融緩和を維持する姿勢を示す日銀との金融政策の違いが意識され、日米の金利差拡大観測が強まっている。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0460〜0470ドル(前週末午後5時は1.0504〜0514ドル)、対円では同140円20〜30銭(同141円27〜37銭)と、1円07銭の円高・ユーロ安。
●135円を超え四半世紀ぶりの水準に達した円安と軋む日銀のYCC 6/13
24年ぶりの円安水準に
先週末に発表された米国の物価統計が上振れたことを受けて、米国では米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げの加速観測が再び高まっている。これは株価下落を生じさせるとともに、米長期金利を押し上げている。さらに米国での利上げの加速観測と米長期金利の上昇は、為替市場で円安ドル高の傾向を一段と強めている。
13日の東京市場で、ドル円は2002年以来となる135円台に乗せた。さらに、2002年の高値である1ドル=135円15銭をも超え、1990年代以来24年ぶり、つまり四半世紀ぶりの円安水準に一時達したのである。
日銀のYCCの信頼感は揺らいだか
他方、米国の長期金利上昇が国内長期金利にも上昇圧力をかけ、日本の10年国債利回りは一時0.255%と、日本銀行がイールドカーブコントロール(YCC)のもとで変動レンジの上限としてきた0.25%を上回った。日本銀行は毎営業日指値オペを実施し、10年国債利回りが変動レンジの上限を超えないように、4月以降強力な体制を築いてきた。
それにもかかわらず、10年国債利回りが0.25%を超えたのはかなり驚きである。それだけ、日本の国債市場も米国国債市場の影響を強く受けていることを意味していよう。指値オペを実施している時間帯では利回りは0.25%を上限に抑えることはできても、それ以外の時間帯では、0.25%を上回る水準での取引が、今後常態化してくる可能性もあるだろう。その場合、10年国債利回りが0.25%を超えている安値の水準で国債を買い入れ、指値オペでより高い価格(低い利回り)で日本銀行に国債を売却することで、金融機関は利益を上げることができるようになる。日本銀行の指値オペがそうした機会を金融機関に提供するようになることは問題である。
日本銀行は慌てて、長期国債を14日に追加買い入れ(5年超10年以下5,000億円)すること、いわゆる臨時オペの実施を発表した。しかし、長期金利上昇抑制に関する日本銀行の影響力に対する市場の不信感は、これで大きく高まってしまったのではないか。そして、YCCという制度に対する市場の信頼感も、大きく揺らいでしまったのではないか。
YCCの柔軟化も
今後も米国の長期金利上昇が続くようであれば、日本銀行は国内の長期金利の上昇を一定程度容認する姿勢に転じる可能性が出てきたのではないか。現在実施している毎営業日指値オペを撤廃することを向こう数回の金融政策決定会合のいずれかで決定したうえで、10年国債利回りが0.25%に接近しても、0.25%の指値オペを必ずしも実施しない形で、0.25%を上回る10年国債利回りを緩やかに容認することも考えられるところだ。
さらに、市場の攻撃対象ともされる10年国債利回りの変動レンジを撤廃し、随時指値オペを使うことで10年国債利回りの大幅上昇はその都度けん制していくような、より柔軟な制度にYCCを修正していく可能性も考えられるだろう。
長期金利の緩やかな上昇を一定程度容認するYCCの柔軟化は、円安進行に多少歯止めをかけることになるだろう。しかし、円安進行の主因は米国の金融引き締めの加速観測にあることから、それが変わらないのであれば円安の流れは変わらない。
●日経平均、大幅続落 終値836円安の2万6987円 6/13
13日の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前週末比836円85銭(3.01%)安の2万6987円44銭で終えた。5月27日以来約半月ぶりの安値。前週末の米株式市場で米インフレの再加速への警戒から、主要3指数がそろって下落した。東京市場でもこの流れを受け、運用リスクを回避したい投資家の売りが幅広い銘柄に出た。日経平均の下げ幅は1月27日(841円03銭)以来の大きさとなった。
前週末10日に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8.6%上昇した。市場予想(8.3%)を上回り、4月実績からの上昇率が高まった。米インフレの再加速で、米連邦準備理事会(FRB)が秋以降も積極的な金融引き締めを続けるとの観測が台頭。米景気を冷やすとの懸念が株式相場の重荷となった。
東京市場では機械や電機、自動車といった景気敏感株の下げが目立った。13日の東京外国為替市場では円相場が1ドル=135円台前半に下落し、1998年以来の円安・ドル高水準を付けた。ただ、景気減速への懸念が強まる中で、輸出関連株の支えにはならなかった。
米長期金利が3.1%台後半に上昇し、金利の上昇で割高感が意識されやすい高PER(株価収益率)のグロース(成長)株にも売りが出た。一方、食品や地銀、小売りといった内需関連の一角には買いが入った。
東証株価指数(TOPIX)は3日続落した。終値は前週末比42.03ポイント(2.16%)安の1901.06だった。
東証プライムの売買代金は概算で2兆8954億円。売買高は12億1859万株だった。東証プライムの値下がり銘柄数は1457と、全体の8割弱を占めた。値上がりは332、変わらずは49だった。
ソフトバンクグループやエムスリー、クボタが大幅安。東エレクやファストリが下落し、トヨタやソニーGも売られた。一方、関西電や三井住友トラ、明治HDは上昇した。 

 

●1ドル=135円、歴史的な円安どこまで進む? 専門家に聞く 6/14
円安が止まらない。13日の東京外国為替市場で円相場が一時、1ドル=135円20銭台をつけ、1998年10月以来、23年8カ月ぶりの円安水準となった。円安の流れは今後も続くのか。政府の対応は――。専門家に聞いた。
先週発表された5月の米国の消費者物価上昇率が市場予想を上回る伸びとなり、米国の大幅利上げの観測が強まり、長期金利の上昇につながってドル買いが進んでいる。
背景にある米国のインフレへの警戒と利上げ観測の2点が変わらない限り、円安ドル高は今後も進みやすい。多くの人が円安ドル高を予想してドルを買えば、さらに円安ドル高に弾みがつくことも想定される。ただ、投機的な取引が主導する場合、利益確定の動きによって、短期間で円高ドル安に振れてしまう可能性もある。 ・・・
●なぜ円安が止まらない…背景と黒田総裁の思惑は?いつまで続く?  6/14
円相場はきのう(13日)の東京外国為替市場で一時、1ドル=135円台前半まで値下がりし、およそ24年ぶりとなる円安水準となりました。原材料コストのさらなる上昇をなど、急速な円安ドル高が進むことへの懸念の声も聞かれています。なぜ円安は止まらないのか?日銀の思惑とは?背景を解説します。
円安がパン屋にも打撃!
こちらの大阪 旭区にある創業62年の老舗パン屋では、国産だけでなく、カナダ産やアメリカ産の小麦粉も使っています。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻を背景とした小麦価格の上昇に、このところ急速に進んだ円安の影響も加わり、仕入れ値が去年の同じ時期と比べて1割以上、上昇しているといいます。このため店ではことしに入って順次、20種類ほどの商品を値上げしてきましたが、さらにパンに使う油やバターを減らしても味が変わらないように工夫したりするなどして、さらなる値上げを避けるための努力を重ねています。運営会社の社長はこう話していました。「経営は次第に苦しい状況になってきていて、仕入れ値がさらに上がるとますます厳しくなります。経営努力でさらなる値上げは防いでいきたいです」
なぜ円安?「金利差」とは?
円安が進んでいる背景には、日本と欧米での「金利差」があります。記録的なインフレを抑えるため金融引き締めを急ぐ欧米の中央銀行と、大規模な金融緩和を続ける日銀の金融政策の方向性が異なっているのです。このうちアメリカの長期金利は、去年末までは【1.5%前後】で推移していました。しかし、ことしの2月、ロシアのウクライナ侵攻を受けた原材料価格の高騰でインフレへの懸念が強まると、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が金融引き締めを強めるという見方から【2%台】に上昇。その後も、FRBが記録的なインフレに対応するため金融引き締めを加速させるという見方を背景に、長期金利は上昇を続け、先月、3年5か月ぶりに【3%台】に上昇しました。一方、日本の長期金利は、日銀の大規模な金融緩和の一環で、ゼロ%程度、事実上の上限として【0.25%程度】に抑えられています。年明けにはおよそ1%だった日米の金利差が、いまはおよそ3%と3倍に広がっている形で、より利回りが見込めるドルを買って円を売る動きにつながってます。
欧米と日本の違いが鮮明に
今後の方針についても、欧米と日本の違いが鮮明になっています。アメリカのFRBは、ことし3月に政策金利を引き上げゼロ金利を解除したあと、先月、0.5%の大幅な利上げを決めました。さらに今月と来月も大幅な利上げが見込まれています。イギリスのイングランド銀行も今月、5回連続となる利上げが見込まれているほか、ヨーロッパ中央銀行も来月、11年ぶりの利上げに踏み切る方針です。これに対して、日銀は今の大規模な金融緩和を続ける方針を堅持していて、こうした方向性の違いが今後も金利差が広がるという見方につながっています。
黒田総裁 なぜ金融緩和にこだわる?
日銀は、黒田総裁が「金融引き締めを行う状況には全くない」と述べるなど、大規模な金融緩和を堅持する方針を示しています。その理由としてあげているのが、「日本の経済や物価の状況は欧米とは大きく異なる」ということです。具体的にはどういうことなのでしょうか。
   1.日本は新型コロナ拡大前のGDP水準まで回復せず
まず、GDP=国内総生産の規模は2019年の10月から12月期では年換算で541兆円だったのに対して、ことし1月から3月期は538兆円となっていることなどから、新型コロナの感染拡大前の水準を回復できていないとしています。
   2.今、引き締めると景気を冷え込ませるおそれ
また、働く人1人当たりのことし4月の名目賃金は、前の年の同じ月と比べ1.7%の増加にとどまり、経済の持ち直しを反映して増加しているものの、上昇は緩やかなものにとどまっているとしています。このため、今の局面で金融緩和をやめて引き締めに転じてしまうと、金利の上昇などを通じて景気を冷え込ませるおそれがあるとしています。日銀としては、賃金と物価がともに上昇する好循環を作り出すため、粘り強く金融緩和を続けるとしています。
ただし、円安の影響については…
黒田総裁は、急速に進む円安については先行きの不確実性を高め、企業の事業計画の策定を困難にするなど「経済にマイナスであり望ましくない」としています。アメリカが金融引き締めを加速する一方、日銀が金融緩和を続ければ金利差がさらに広がり、一段の円安となって経済へのマイナス影響も大きくなる懸念があります。つまり、緩和を維持しても、引き締めに転じても、どちらも景気を悪化させかねないというジレンマを抱えていて、日銀は難しいかじ取りを迫られています。
経済同友会 櫻田代表幹事「円安加速 かなり深刻」
経済同友会の櫻田代表幹事は14日の定例会見で「今の円安傾向はすぐには元に戻らず、エネルギーや食料、物流の目づまりによるコスト増によって、日本国内のインフレーションはさらに加速する可能性がある。消費者や企業は、円安を否定的に受け止めていると思う」と述べました。さらに櫻田代表幹事は「円安の要因は日米の金利差だと思うが、日本の成長していく力、稼ぐ力、よい製品を作っていく力が弱いという印象を世界に与えている結果として、さらに円安が加速しているのであれば、かなり深刻に受け止めなければならない。日本の経済力を強くしたり生産性を高めたり、競争力を上げたりすることに真剣に取り組む姿勢を見せ、行動に移すことが大事だ」と指摘。そのうえで、一方的な円安の動きを是正するには、日本の産業競争力を高めることも重要だという認識を示しました。
夏ごろまで、さらに円安続く…?
今後の見通しについて、日本総合研究所の松田健太郎副主任研究員は「FRBはことしの夏ごろまでは、インフレ抑制に向けて強い姿勢を続けるとみられる。金利差の相関関係から見ると、アメリカの長期金利がまだ上昇していくので、1ドル=140円くらいの水準となってもおかしくはない」と述べました。ただし「アメリカが金利を極端に上げすぎると、アメリカ経済の減速が避けられない事態に向かう懸念もあり、その場合はむしろ円高方向に向かう可能性もある」と指摘しました。そのうえで松田氏は「為替の変動が激しく不安定な状態が続くと、日本企業は今後の事業計画を立てる上で不透明感が強くなり、経済にとってマイナスの影響が大きくなる」と述べました。
●NY円、24年ぶり円安水準 一時135円48銭 6/14
14日のニューヨーク外国為替市場の円相場は円がドルに対して大幅下落し、一時1ドル=135円48銭と1998年10月以来、約24年ぶりの円安水準を付けた。米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
午後5時現在は、前日比1円04銭円安ドル高の1ドル=135円43〜53銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0412〜22ドル、141円03〜13銭。
米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が15日に公表されるのを前に、政策金利を通常の3倍となる0・75%引き上げるとの予想が強まった。米長期金利の指標となる10年債利回りは一時3・49%台まで上昇し、2011年4月以来、約11年2カ月ぶりの高水準を付けた。
●円、134円台半ば ロンドン外為 6/14
14日朝のロンドン外国為替市場の円相場は、1ドル=134円台半ばに下落した。
午前9時現在は134円40〜50銭と、前日午後4時比55銭の円安・ドル高。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策会合を控え、市場では大幅な利上げへの警戒感が広がっている。

 

●1ドル135円まで円安加速、「良い円安・悪い円安」論より重要な政策 6/15
円安、135円台まで加速 参院選で重要な本質的な議論
円ドル相場は13日、一時1ドル135円台まで円が下落した。
この数カ月、円安が進むなかで、「良い円安、悪い円安」の議論がメディアを騒がせ、政治家の発言の中にもたびたび登場した。
米国の長期金利上昇が5月で一服、円安ドル高の動きもいったんピークを越えたかともみえたが、6月に入って米金利高、ドル高の動きが再燃、この議論がまた蒸し返されている。
冷静な議論をすれば、為替はあくまでも交換レートであり、変動すれば必ずそれによってメリットを享受する人とデメリットを被る人が出るのは当たり前で、この点は株式投資や債券投資とは異なる。
そのメリット、デメリットの片方だけを非常に恣意(しい)的に採り上げるのが、この「良い円安、悪い円安」の議論だといえる。
来週公示の参院選でも円安・物価高問題にどう対応するのかは与野党の主要争点になりそうだが、より本質的な議論を深める時だ。
複数の為替変動要因が作用 企業や家計も行動変化
筆者は為替変動について議論すること自体が無意味だと言っているわけではない。円安が良い悪いという議論ではなく、為替変動が経済や市場にどのような影響を及ぼすのかということを正確に理解しておくことがより重要なのだ。
為替変動によって実際にメリットを享受した人はそれを受けて何らかの経済的な行動を取ることが予想される。一方でデメリットを被った人は、よりアクティブにそのデメリットを解消すべく行動することになるだろう。
為替変動によって瞬間的に得をした損をしたというだけでは当然終わらない。
為替変動は何らかの要因によって起きるが、その変動に対して家計や企業などの経済主体がさまざま行動を取ることによって、為替変動を引き起こした状況や要因自体にも変化をもたらすことになる。
つまり為替変動からのフィードバックが生じ、そしてそのこと自体がまた次の為替変動をもたらしていくという複雑な連鎖プロセスが為替水準を決めていく。
為替変動にどう対応するのかや、政策の是非もこうした点から考える必要がある。
為替変動をもたらす要因については、よく知られているように大きく言って三つある。
一つは、二国間のインフレ格差によって為替水準が決まるとする購買力平価説だ。
二つ目は、経常収支や資本収支などによって為替水準が決まるとするフロー・アプローチ。
そして三つ目が、二国間の資産収益の格差によって為替水準が決まるとするアセット・アプローチだ。
金とドルのリンクが外されたニクソンショックを契機に1972年にドルと主要国通貨との交換レートが自由に変動し始めて以降、これらのうち一つだけで為替変動を完全に説明できるということはなかった。
局面によってはアセット・アプローチがよく当てはまるようにみえるかと思えば、フロー・アプローチが重要になる局面もある。時には購買力平価説が強い説得力を持つ場面もある。
企業と家計、政府による 三つのフィードバックの経路
そして、為替変動が引き起こすフィードバックの経路も複数存在する。
一つは、為替変動に対応して企業が輸出入の価格を変動させるプロセスだ。
企業の価格設定方法次第で実際の輸出入の数量が調整され、それが貿易収支にも影響を与えることで為替水準も影響を受けてくる。
例えば自国通貨安が起きた場合に、輸出先での現地販売価格を引き下げ、輸出数量を増やす行動を企業が取れば、貿易黒字が増え、自国通貨高の圧力を生む。
このフィードバック経路では、企業による価格変更は、それぞれの国におけるインフレ率の変化ということであり、それを反映して金利水準が変化すれば、その経路によっても為替水準に影響を与えることになる。
この一つ目のフィードバック経路は、変化した為替水準を元の水準に戻す方向に働く。
二つ目のフィードバック経路は、為替変動による価格変動に対応して家計の消費行動が変化するプロセスだ。
例えば現在のように円安ドル高が進めば、日本では輸入価格の上昇で家計の実質所得が減少するが、それに伴って消費支出が減れば経済成長が鈍化する。
経済成長の鈍化は金利の低下を促し、為替を一段と自国通貨安の方向に変化させる可能性がある。
このフィードバック経路は、変化した為替水準を一段と同じ方向に後押しするように働く。
そして、三つ目の経路は、政府の行動を通じたものだ。
自国通貨安の動きが起きた場合、上述のように輸出増による経済を刺激する方向での影響と、家計の実質所得減による景気抑制方向での影響のどちらもがあり得るが、政府がそのどちらの経路を重視するのかによって、財政政策を緊縮的に変化させるか積極的に変化させるかが違ってくる。
過去の日本では、円高が進行すると、政府は円高対策と称して財政を拡張的に運営するのが常だった。
財政拡張が金利上昇をもたらせばむしろ自国通貨高を促してしまうことになるが、中央銀行の金融緩和と組み合わせることによって金利上昇を抑制できれば、為替へのフィードバック経路を遮断することもできる。
逆に自国通貨安による家計へのネガティブな影響を相殺するために政府が積極財政政策を採ることもあり得る。
この場合は、むしろ中央銀行の金融緩和を組み合わせないことで金利上昇を促すことによって為替へのフィードバック経路を強める方が得策だ。
今の円安は金利変動と同時 資源価格急騰で貿易黒字縮小圧力
現在のドル円市場の状況を、為替変動とそのフィードバックのメカニズムに基づいて説明すると、次のようなものになるだろう。
まず為替変動自体はアセット・アプローチのメカニズムが中心になっている。
つまり米国の金利上昇によって日米間の金利差が急拡大して、それが円安ドル高をもたらしているわけだ。
為替変動をもたらす三つのメカニズムが働く時間的なスパンはそれぞれ異なり、アセット・アプローチのメカニズムによる為替変動が最も短時間で発生する。金利変動と為替変動はほぼ同時的に起きているといって良いだろう。
一方、為替変動が引き起こすフィードバックは三つの経路のいずれもが、それなりに長い時間がかかる。
あえて順番を付ければ、「家計の消費行動」→「企業の価格設定行動」→「政府の財政政策」の順番で要する時間が長くなるといえるが、企業と政府の行動については、必ずこの順番であるとも断言はできない。
いずれにせよ為替変動のフィードバックのプロセスが作動し始めるには一定の時間がかかるため、その間に為替変動はオーバーシュートしてしまうこともままある。
現状もそういった形でのオーバーシュートがすでに起きている可能性もある。
最も早く作動する家計の消費行動を通じたフィードバック経路が作動し始めることになっても、そのフィードバック経路は、為替変動の方向を後押しすることになるので、現状では円安ドル高を抑制することにはならない。
円安を抑制する方向でのフィードバック経路の一つは、企業の価格設定行動を通じて輸出数量が増え貿易黒字が増大していく方向だが、現在はウクライナ戦争などによる資源価格の上昇による貿易黒字縮小圧力がそれを相殺してしまう可能性が高い。
実際、昨年来、すでに日本の貿易収支は原油輸入額の急増を主因に大幅な赤字となっており、これはむしろ円安進行を促している。
円安抑制なら積極財政と緩和修正だが 「政策コスト」を吟味する必要
今の円安の状況を考えると、この先、円安の動きに歯止めをかけるものがあるとすれば、まずはアセット・アプローチのメカニズムが一巡すること、つまり米金利の上昇が止まることだ。
しかし、これは米国のインフレ動向次第としか言いようがない。
米国サイドで、ドル高によるインフレ抑制と金利押し下げというフィードバック経路が今後は動き始めることが想定されるが、少なくとも現時点では、インフレ圧力の方がドル高の効果はるかに上回っているようだ。
先行きも米金利上昇を一巡させる方向でのフィードバック経路が十分に働くことになるのかは何ともいえない。
となると、メカニズムとして円安を抑制する経路があるとすれば、為替変動のフィードバックの三つ目の経路である政府の財政政策によるものくらいしか思い付かない。
つまり日本が積極財政、米国が緊縮財政という方向に動いた上で、日本では中央銀行の金融緩和による金利抑制政策を取りやめて財政による金利上昇を促すという方法だ。
ただ、ここで最初の話に戻って、通貨変動には必ずメリットとデメリットがあって、それ自体に良いも悪いもないのだとすれば、円安を抑制するために日本が積極財政を採ったり、日銀が金融緩和をやめたりする「政策コスト」を払うことが正しいのかどうかという議論はまずしっかりと行われる必要がある。
その議論をしっかりと行った上で、それでも円安抑制策が必要だとの結論に至るのであれば、採るべき政策の方向は一つしかない。
●円安進行、135円台半ば 24年ぶり水準―NY市場 6/15
14日のニューヨーク外国為替市場では、円相場が1ドル=135円台半ばに下落し、1998年10月以来約24年ぶりの円安水準となった。米連邦準備制度理事会(FRB)が大幅利上げに踏み切るとの観測が広がり、日米金利差の拡大を見込んだ円売り・ドル買いの動きが加速した。午後5時現在は135円43〜53銭と、前日同時刻比1円04銭の円安・ドル高。
FRBがインフレを抑制するため、市場が想定していた0.5%ではなく、0.75%の大幅利上げに踏み切るとの観測が拡大。金利収入が見込めるドルを買い、円を売る動きが強まった。
日銀は14日、臨時の国債買い入れを実施し、長期金利の上昇を抑え込む姿勢を鮮明にしている。市場では「日本の当局が為替介入に踏み切らない限り、さらに円安が進むリスクが高い」(欧州系金融機関)との声が出ている。
対ユーロは1ユーロ=141円03〜13銭と、1円11銭の円安・ユーロ高。
●政府・日銀、為替介入にハードル 米当局はドル高容認 6/15
急激な円安進行を受け、政府・日銀は「必要な場合には適切な対応を取る」(鈴木俊一財務相)と、為替介入も辞さない構えを見せている。生活必需品の値上がりに拍車を掛け、消費を冷え込ませる恐れがあるためだ。ただ、実際に円買い・ドル売り介入に踏み切るには米通貨当局の理解を得ることが不可欠。インフレ退治に奔走する米国は輸入物価を押し下げるドル高を事実上容認しており、介入のハードルは高い。
「急速な円安の進行が見られて憂慮している」。鈴木氏は14日の閣議後記者会見で改めて懸念を表明。その上で、「各国の通貨当局と緊密な意思疎通を図る」と述べ、「伝家の宝刀」と呼ばれる介入をちらつかせ、外国為替市場をけん制した。
ただ、市場の反応は薄く、実力行使を伴わない「口先介入」は限界を露呈しつつある。大規模な為替介入を指揮した経験を持つ元財務官の1人は「実際に介入した後でなければ口先介入は効かない」と解説する。
為替介入は、東日本大震災後に円高が進んだ2011年11月を最後に行われていない。円安阻止のための円買い介入は、日本経済がバブル崩壊後の金融危機に直面していた1998年6月までさかのぼる。
円買い介入の原資には、外国為替資金特別会計が保有する外貨や、外貨建て債券の売却資金を充てる。財務省によると、日本の外貨準備は5月末時点で1.3兆ドルを超え、そのうち8割は米国債などの証券だ。元手は潤沢だが、大量の米国債を売却すれば米国の金利が一段と上昇し、世界の金融市場が混乱に陥る恐れがある。
また、米財務省は10日に発表した半期為替報告書で日本に対し、「介入は極めて例外的な状況に限り、適切な事前協議を踏まえて実施されるべきだ」と注文を付けた。ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは「仮に米国の理解が得られても、協調介入より効果が限られる単独介入になる可能性が高い」と指摘する。
インフレ抑制へ利上げを進める米国と、「異次元緩和」を続ける日本との金利差は拡大していく見込み。円売り圧力は今後も続くとみられ、介入を行った場合でも円安に歯止めがかかるかは未知数だ。
●NY外国為替市場 1ドル=135円半ばまで値下がり  6/15
14日のニューヨーク外国為替市場は円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、円相場は一時、1ドル=135円台半ばまで値下がりしておよそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
14日のニューヨーク外国為替市場はアメリカの長期金利の上昇を背景に、円を売ってより利回りが見込めるドルを買う動きが一段と強まりました。
このため、円相場は一時、1ドル=135円台半ばまで値下がりして、1998年10月以来、およそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
急速な円安の背景には、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会がインフレを抑え込むため、14日から2日間開いている金融政策を決める会合で、利上げ幅を異例の0.75%まで拡大することも含め金融引き締めを一段と加速させるとの観測が広がっていることから、ニューヨーク債券市場でアメリカの長期金利が3.4%台まで上昇し、日米の金利差が拡大していることがあります。
市場関係者は「ドル買いが強まる中で円安がじりじりと進んでいて、どこで歯止めがかかるのか見通せない状況になっている」と話しています。
また、14日のニューヨーク株式市場、ダウ平均株価の終値は、前日に比べて151ドル91セント安い3万364ドル83セントと、株価が急落した13日に続いてことしの最安値を更新しました。
ダウ平均株価の値下がりは5営業日連続で、この間の下落幅は2800ドルを超えました。
●外為:1ドル135円07銭前後と大幅なドル高・円安で推移 6/15
15日の外国為替市場のドル円相場は午後1時時点で1ドル=135円07銭前後と、前日午後5時時点に比べ64銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=141円02銭前後と27銭のユーロ高・円安で推移している。
●不景気の崖っぷちに立たされた日本「100円ショップが消えていく」 6/15
円相場が24年ぶりに最低水準を記録するなど「円安」の流れが加速化し、日本の経済事情が悪化している。原油や穀物など世界的な原材料価格の急騰に円安まで重なり、日本の中小・零細企業と家計が直撃を受けている。
13日、東京外国為替市場で円相場は一時1ドル=135.22円付近まで下落し、1998年以来24年ぶりの最安値を記録した。14日午後3時29分基準で1ドル=134.5円で取引された。3月1日の115.07円から3カ月で20円も下落した。鈴木俊一財務相は同日、閣議後の記者会見で、「急速な円安の流れを懸念している」とし、「外国為替市場の動向や経済・物価などへの影響をさらに緊張感を持って注視している」と述べた。
今回の急速な円安には、米国の5月の消費者物価指数の上昇率が予想より高く、連邦準備制度理事会(FRB)が基準金利の引き上げに拍車をかけるだろうという見通しが大きな影響を及ぼした。
これからも日本経済に打撃を与える「悪い円安」の流れが続く可能性が高い。米国はインフレに対抗して金利引き上げに乗り出しているが、日本は「ゼロ金利」政策を固守しているためだ。日銀の黒田東彦総裁は7日、「強力な金融緩和を粘り強く続ける」と述べた。日本の産業競争力が低下している中、米国と日本の金利差が拡大すれば、円安の流れを防ぐのは難しい。
新型コロナパンデミックで内傷が深刻な中小企業や零細企業は円安で原材料の輸入費用がさらに上昇し、崖っぷちに立たされている。企業情報大手の「帝国データバンク」の資料によると、先月全国で倒産した企業件数は517件で、昨年同月より12.1%増えた。この数値が増えたのは2020年7月以降1年10カ月ぶり。倒産企業の大半が中小企業だ。
安価な商品を集めた「100円ショップ」や銭湯、クリーニング店など中小企業や零細企業等の廃業が目立って増えている。東京で「100円ショップ」9店舗を運営する「プロディア」は1日、ホームページにて「グループの店舗はすべて閉店した」と知らせた。 16年間にわたり東京文京区でプロディアの店舗を任されていた店長は「朝日新聞」に「ほとんどの商品の仕入れが値上げになった。こんなことはこれまでになかった」と語った。100円で物を売れない状況になったためだ。4日に廃業した東京中野区にある銭湯の社長は同紙に、コロナ禍で利用者がピーク時の3分の1まで減った上、燃料の高騰などが原因で、「最後はガス代を払うために商売しているようなものだった」と話した。東京では毎月銭湯1〜2軒が廃業しているという。
食品や電気、ガス、交通、外食など消費者物価も軒並み上昇している。帝国データバンク調査によると、今月基準で企業105社がラーメンや食用油、飲料など6285品目の値上げに踏み切った。7月以降も3000以上の商品価格が値上がりする予定だ。今年4月、日本の消費者物価指数は2.1%(生鮮食品を除く)上昇し、2015年3月(2.2%)以来7年1カ月ぶりの最高値となった。 
●1ドル140円も? 24年ぶり円安について知っておきたいこと 6/15
6月13日、円相場は一時1ドル=135円台前半と、1998年以来24年ぶりの安値を付けた。90年代初めにバブルが崩壊、その後金融機関などが相次いで破綻しデフレ経済へと日本が転落した時以来の円安ドル高水準だ。5月25日の1ドル=126円台から3週間で10円の円安となったことからも分かるように、円安のペースは加速している。一体何が起こっているのか。気になるポイントをまとめた。
1:円安が急速に進んだ理由は
円安基調が強まったのは、22年3月に米連邦準備制度理事会(FRB)が金利および量の両面から金融引き締め策を加速する姿勢を示したからだ。これを受け市場では日米の金利差が拡大するとの観測が広がった。円を売ってドルを買う動きが強まり、4月の約1カ月間で円相場は1ドル=118円台から129円台まで円安が進んだ。以降、円相場は一時的に1ドル=130円台に乗せる場面があるものの、1ドル=127〜129円を推移する状態が続いていた。
潮目が変わったのが、6月10日の5月の米消費者物価指数(CPI)の発表だ。物価動向はFRBが金融引き締めのペースを判断する際の重要指標。40年ぶりの伸び率を記録した3月の前年同月比8.5%上昇から4月は同8.3%上昇だったため、市場では「インフレのピークは近いのでは」との予想が大半だった。結果は前年同月比8.6%上昇と、3月を上回った。前月比でも1%上昇となったため、市場の希望的観測は裏切られた。物価上昇が止まらない以上、米国はさらに強い金融引き締め策を実行するのが確実となった。
この「CPIショック」を受けて米長期金利は上昇。日米の金利差は拡大し、ドルを買う動きが強まった。円相場は1ドル134円台まで円安が進む。6月13日には一時1ドル=135円台前半まで下落し、98年10月以来、約24年ぶりの安値水準となった。
2:次のFOMCの注目ポイントは
米国では6月14、15日、金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)がある。すでに短期金利の指標となるフェデラルファンド(FF)レートを6月と7月に0.5%ずつ引き上げることが確実視されているが、市場では今回のFOMCで1994年以来となる0.75%の大幅利上げもあるのではとの声も出始めている。
最大の焦点が9月以降の利上げのペースだ。見極めに当たり重要となるのがFOMC終了直後に発表される将来の金利予想分布図(ドット・チャート)の平均値。これはいわばFOMCメンバーによる最新の経済見通しのようなもの。ここでインフレ予想が引き上げられると、市場はパウエルFRB議長のインフレ抑制スタンスの高まりを意識することとなる。
ドット・チャートの上方修正等があった場合、日米の金融政策の違いがより浮き彫りとなるため、円安が進む可能性が高そうだ。逆に現状維持だった場合は、円が買い戻される動きが出るだろう。
   米インフレ、原油価格の動向が影響
3:円が下げ止まるために必要な条件は
米国のインフレ、原油価格高騰という、あらがえない外的要因が円安進行の主要因と捉えられている。米CPIの記録的な上昇で、米国では「インフレが減速しないリスク」が現実味を帯びてきた。米国の物価上昇は新型コロナウイルス禍からの経済正常化に伴う供給制約がきっかけだったが、今やロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の上昇に加えて、コロナ禍で抑えられていた消費者の社会活動が活発化し、需要が旺盛になり始めている点もインフレを助長させている。インフレ懸念が後退しない限り、FRBは金融引き締めをやめないため、円安基調は変わらないだろう。
一方、一昨年以降の原油価格の上昇は日本の原油輸入額を膨らませている。支払いに必要なドルを調達するためのドル買い、円売りの動きが活発化している。貿易収支は輸入額が輸出額を上回る赤字状態が続き、改善の見通しは立てにくい状態だ。ロシアへの制裁や、欧米諸国によるロシア産原油の禁輸措置導入も相次いでいる。世界の原油需給は引き続きひっ迫しており、価格高騰が収まる可能性は低いと考えられる。
4:日銀はなぜ緩和政策をゆるめないのか
米国のインフレ、原油価格高騰といった外的要因が円安進行の主要因だが、日銀が長期金利の抑制に躍起になっている点も、円安進行を助長しているのではとの見方は強い。
春以降の円安進行で、市場では円安抑制のために長期金利の上昇許容幅を拡大するのではとの見方があったが、4月末の金融政策決定会合では、連続指し値オペを毎営業日実施すると決定した。指し値オペとは、日銀が金利の上昇(債券価格の下落)を抑えるため、国債を指定した利回りで無制限に買い入れる制度のことだ。つまり、長期金利に事実上の上限を設け、金利上昇を抑制する策である。4月の決定会合では、今後は明らかに応札が見込まれない場合を除いて、10年国債利回りについて0.25%での指し値オペを実施することが決まった。
日銀の黒田東彦総裁は5月20日の記者会見で「経済を下支えし、基調的な物価上昇率を引き上げていく観点から、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適当だと考えている」と見解を述べている。米欧の金利上昇に連動する形で長期金利は上昇基調にあるが、日銀は日本の物価や経済の状況は欧米とは異なると考えている。足元の日本のGDP規模は年率換算で538兆円(22年1-3月)だが、これはコロナ前の水準(19年10-12月の年率換算で541兆円)まで回復していない。この局面で金融引き締めには転じられないとしている。エネルギー価格の上昇も一時的なものであり、物価押上げ効果も先行き減衰していくとの見方を崩していない。
またこれまでの発言を振り返ると、黒田総裁は円安の影響について、企業が海外で稼いだ利益が円換算で膨らむことなどを理由に「全体としてはプラス」との認識を崩していない。為替市場への影響を意図して金融政策を修正することも強く否定してきた。ただ6月13日の国会では「急速な円安の進行は先行きの不確実性を高め、企業の事業計画の策定を困難にするなど、経済にマイナスであり、望ましくない」と述べるなど、若干発言に変化が見られる部分がある。
6月16、17日に予定されているの金融政策決定会合で、日銀は景気を下支えするために金融緩和を続けるだろうとの見方は依然強い。今後の政策修正を示唆する発言があるかどうかが焦点となりそうだ。
   金融政策の変更はあるか
5:政府には円安への対応策があるのか
6月10日に開かれた政府と日銀による国際金融資本市場に関する情報交換会合(3者会合)では「最近の為替市場では急速な円安進行が見られ憂慮している。必要な場合には適切な対応を取る」との声明文が発表された。財務省の神田真人財務官は、声明文の中にある「適切な対応」の中身について問われた際「あらゆるオプションを念頭に置いて機動的に対応する」と述べている。
だが「為替市場に唯一影響を与えられるのは金融政策の変更だ」と、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは話す。中央銀行の独立性が守られる限り、政府にできる手は限られている。15日に閉会した通常国会では、円安が引き起こした物価高騰や、政府の物価高対策の効果について議論されたものの、政府・与党は円安問題にどう向き合えばよいか、実効性のある明確な答えを出していない。7月には参院選挙もあるだけに、円安は与党自民党にとっての逆風となりそうだ。
6:為替介入の可能性は
鈴木俊一財務相は14日の閣議後の記者会見で「急速な円安の進行が見られて憂慮している」と改めて懸念を表明した上で「各国の通貨当局と緊密な意思疎通を図る」と述べた。為替介入も視野に入れているというニュアンスを匂わせた発言とみられる。だが市場の反応は薄く、14日の円相場の終値は1ドル=134円56銭。実力行使を伴わない「口先介入」はもはや限界となっている。
政府による円買い為替介入のハードルは高い。協調介入には米国の理解・協力が必要だが、現在の米国の最優先課題はインフレの是正だ。輸入物価を押し下げるドル高の方が好都合という側面もあり、米国が積極的に為替介入に応じるとは考えづらい。現に米国は10日に発表した半期為替報告書で日本について「介入は例外的な状況に限り適切な事前協議を踏まえて実施されるべきだ」と触れている。仮に米国の理解を得られたとしても、協調介入ではなく単独介入となる可能性が高く、効果は限定的となるだろう。
7:円キャリー取引は復活するか
日銀の黒田総裁が緩和姿勢を崩さないことから、為替市場では「円高には振れない」と円売りを積極化する投資家が増えるのではないかとの声がある。低金利の円を売ってドルやスイスフラン、豪ドルなど高金利の通貨を買い、両者の金利差で稼ぐ「円キャリー取引」が活発化するのではという見立てだ。
黒田総裁が大規模緩和を開始した2013年4月以降、為替相場では、円売りポジションを積み上げる投資家が目立った。だが今回はそのような動きはあまりない。投機筋の売買動向を示す際に参考になる米商品先物取引委員会(CFTC)のIMM先物通貨の非商業部門のデータでも、足元で円安が進んでいるにもかかわらず、円の売越幅は減少傾向だ。投機筋の円キャリー取引はそれほど起こっていないとみられる。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは「実需面のドル買い・円売りが円安進行に影響を与えている」と見ている。
   1ドル=140円の可能性
8:いつまで円安は続くのか
この疑問は「ドル高はいつまで続くのか」と言い換えた方がよさそうだ。今回の円安の最も大きな原因は日米金利差の拡大である。従ってドル高基調が収束しない限り円安は続くと考えられる。
米国はインフレ鎮静化に向けて利上げを進めているが、政策金利が利上げサイクルの到達点といわれる2%台半ばに差し掛かる頃が「ドル高の終わり」と見る市場関係者は多い。この頃になれば、米国の物価上昇率が鈍化し、景気後退リスクが意識されやすくなる。足元の政策金利は0.75〜1%。あと何回の利上げで2%台半ばまで持っていくかによって、ドル高の終着点が見えてくるだろう。6月と7月、0.5%ずつの利上げは確実視されているため、秋口にはドル高が一服すると考えられる。
11月には、米国の中間選挙も控えている。ここで与党民主党が敗北すると、米国政治が停滞するリスクの高まりが意識される。ここでドルが売られるシナリオもありそうだ。
9:1ドル=140円突破の可能性はあるか
さらなる円安進行のカギを握るのが貿易収支の動向といわれている。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支の赤字は21年度、5兆3749億円と過去4番目の大きさとなった。これは、東日本大震災後に原発が稼働を停止しエネルギーの輸入が増えた14年度以来の水準だ。月ベースで見ても、22年4月まで9カ月連続の赤字となっている。輸入会社が支払いに充てるドルを調達するため、円を売る動きが大きいということだ。
また輸入コストは円安のみならずエネルギー価格や食料価格の動向、部品調達などのサプライチェーンの制約度合いにも左右される。エネルギー調達において海外依存度の高い日本は、エネルギー価格が高くなると貿易赤字が膨らみやすい。「東日本大震災以降、原発再稼働に関する議論を先送りしたり、再生可能エネルギー導入を積極的に進めなかったりしたツケが出ている」と、ニッセイ基礎研究所の上野剛志・上席エコノミストは話す。
10:岸田政権の経済政策が円安要因との声もある
岸田文雄政権が掲げる「新しい資本主義」の成長戦略と位置付けている政策が、円安につながるのではと指摘する声もある。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは、昨年度政府が設立した「大学ファンド」が外貨買い・円売りの要因になるのではと見る。大学ファンドは、世界トップレベルの研究力を目指す大学にその運用益を配分すべく設立された。すでに約5兆円が運用開始されており、将来的に総額10兆円規模のファンドになる予定だ。目標運用利回りは4%超となっているため、超低金利下の日本の円資産だけでは達成できない。資産の相当額を外貨に振り分ける必要がある。「片道切符の外貨買い・円売りとなるだろう」(植野氏)
岸田政権が策定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で目玉に掲げる「資産所得倍増プラン」に関しても、個人マネーの海外流出につながる施策だと見る人が多い。家計に眠る2000兆円もの金融資産がリスクマネーと化し、日本の株式市場に向かうことを岸田政権は想定しているのだろうが、日本企業と日本経済の成長力が高まらなければ、個人マネーは相対的に利回りの高い外貨資産に向かってしまう。「円安が加速するリスクがある」とみずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは話す。
●米FRB利上げへ 27年ぶり0.75%上げも 円安一層加速か 6/15
米連邦準備制度理事会(FRB)は米国時間の15日、3会合連続となる政策金利の引き上げを決める見通しだ。上げ幅は0・5%と見られていたが、約40年ぶりの記録的な物価上昇(インフレ)を抑制するため、従来の3倍に当たる0・75%の引き上げとなるとの見方が強まっている。FRBが0・75%の利上げをすれば1994年11月以来、27年7カ月ぶり。大規模緩和を続ける日銀との政策の違いは鮮明で、円安・ドル高の流れが一段と強まりそうだ。
FRBは5月会合で従来の上げ幅の2倍となる0・5%の利上げを決定。その後公開された議事録では、大半の参加者が「今後2回の会合で0・5%ずつの利上げをするのが適切だろう」との見方を示していた。
ところが、6月10日発表の5月の消費者物価指数は前年同月比8・6%上昇と、市場予想(8・3%)を大きく上回るサプライズとなった。4月の消費者物価上昇率が8カ月ぶりに前月を下回り、「インフレはピークに達した」(エコノミスト)との楽観論も出ていただけに、市場ではインフレの再加速が驚きをもって受け止められた。これを受け、米ゴールドマン・サックスなどの大手金融機関は相次いで上げ幅の予想を0・5%から0・75%に引き上げた。
FRBのパウエル議長は5月中旬、インフレ率が低下しなければ「さらに積極的に行動することを検討する必要がある」と利上げペースを加速させる可能性を示唆する発言をしている。一方、日銀の黒田東彦総裁は6月上旬、「揺るぎない姿勢で金融緩和を継続していく」と明言しており、日米の金融政策の違いは鮮明だ。
FRBの金融引き締め強化の観測を受け、米国では長期金利が上昇。これに伴い、運用に有利なドルを買って円を売る動きが活発化している。14日のニューヨーク外国為替市場では、円は一時1ドル=135円50銭台まで下落し、1998年10月以来、約24年ぶりの円安・ドル高水準を更新している。
●円安加速、早朝に1ドル=135円60銭近辺…15日のFOMCで利上げ幅拡大 6/15
15日の外国為替市場の円相場は、早朝に一時、1ドル=135円60銭近辺となり、約24年ぶりの円安水準を更新した。東京市場の午後5時は、前日(午後5時)比28銭円安・ドル高の1ドル=134円70〜71銭で大方の取引を終えた。米連邦準備制度理事会(FRB)が15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅を拡大するとの見方が広がり、米長期金利が上昇。運用で利回りの見込めるドルが買われ、円が売られる展開となった。
●外為 1ドル134円72銭前後とドル高・円安で推移 6/15
15日の外国為替市場のドル円相場は午後4時時点で1ドル=134円72銭前後と、前日午後5時時点に比べ29銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=141円07銭前後と32銭のユーロ高・円安で推移している。
●円、134円台後半 ロンドン外為 6/15
15日朝のロンドン外国為替市場の円相場は、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策発表や欧州中央銀行(ECB)の臨時理事会を控え、1ドル=134円台後半でもみ合いとなった。
午前9時現在は134円70〜80銭と、前日午後4時比15銭の円安・ドル高。
●ロンドン外為 円、134円台半ば 6/15
15日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)の金融政策発表を控え、1ドル=134円台半ばを中心にもみ合いとなった。正午現在は134円40〜50銭と、前日午後4時(134円55〜65銭)比15銭の円高・ドル安。
対ユーロは、1ユーロ=140円85〜95銭(前日午後4時は140円10〜20銭)で、75銭の円安・ユーロ高。
FRBが15日に発表する金融政策は利上げ幅が焦点。直前に0.75%の大幅利上げを織り込む動きがあっただけに、0.5%の利上げとなった場合は「市場が急変動する可能性がある」(邦銀筋)と指摘されている。
15日にはECBが臨時理事会を開くとも伝わり、ユーロが急伸。欧州各国の長期金利は低下した。市場では前回の会合後、イタリアの長期金利が約8年ぶりの高水準になるなどしていた。ユーロ買い・ドル売りが入り、円も対ドルで底堅かった。
ユーロは堅調。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0480〜0490ドル(1.0405〜0415ドル)。
ポンドは前日に約2年ぶりの安値を更新したが、この日は買い戻しが先行した。1ポンド=1.2085〜2095ドル(1.1995〜2005ドル)。
スイス・フランは対ドルでパリティー(等価)を挟んだ水準での取引。1ドル=0.9985〜9995フラン(1.0000〜0010フラン)。 

 

●円相場やダウ平均株価乱高下 円安と株安はいったん歯止め 6/16
15日のニューヨークの金融市場では、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が異例の0.75%の利上げに踏み切ったことを受けて円相場やダウ平均株価が乱高下し、結果的に、このところの円安ドル高と株安の進行にはひとまず歯止めがかかりました。
15日のニューヨーク外国為替市場ではFRBが0.75%の利上げを発表した直後は円売りドル買いの動きが出て、円相場は1ドル=134円台後半まで値下がりしました。
その後は、パウエル議長が記者会見で「この規模の利上げが普通だとは思わない」などと発言したことを受けて今後も利上げの加速が続くことへの懸念がいくぶん和らいで円が買い戻され、1ドル=133円台半ばまで値上がりしました。
ニューヨーク株式市場でも、FRBの決定のあとダウ平均株価は乱高下し、パウエル議長の記者会見を受けて値上がりに転じました。
終値は、前日に比べて303ドル70セント高い、3万668ドル53セントと6営業日ぶりの値上がりとなりました。
IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数も2.5%の大幅な上昇となりました。
ニューヨーク市場では、このところ、金融引き締めが加速するとの見方から円安ドル高が進み、株価も急落していましたが、15日は、こうした動きにひとまず歯止めがかかりました。
値下がりが際立つ“円”
外国為替市場では急速に円安ドル高が進んでいますが、円は、世界のほかの国の通貨の中でも値下がりが際立っています。
ことしに入ってから今月半ばまでのおよそ半年間の為替レートを見ると、円は、ドルに対して14.3%値下がりしました。
アメリカで利上げが加速するとの見方から、ほかの多くの国の通貨もドルに対して値下がりしていますが、イギリスのポンドは10.3%、ユーロは8.4%、オーストラリアドルは4.6%、カナダドルは2.0%、南アフリカのランドは1.1%の下落と、日本円の下落幅が目立つ形になっています。
また、ブラジルのレアルは8.9%の上昇と、ドルに対して値上がりした通貨もあります。
定番のハンバーガーセットが“1468円”
アメリカで販売されているモノの価格をみると、円の弱さがうかがえます。
1ドル=135円の為替レートをもとに手数料などを考慮せず単純計算すると、日本の1000円は、7ドル40セントになります。
首都ワシントンの中心部にある大手ハンバーガーチェーンのマクドナルドでは、定番のハンバーガー、ビッグマックが14日時点の税込みで6ドル81セントで、日本円では919円にあたります。
さらに、ドリンクとフライドポテトがつくセット価格では、10ドル88セントと、日本円で1468円に。
商品内容に違いはあるものの、日本では、同じハンバーガーが単品では390円。
セットではランチの時間帯をのぞいて690円で販売されています。
牛丼は“1000円超え”
また、日本の大手牛丼チェーン「※吉野家」のアメリカ西海岸のロサンゼルスの店舗では、牛丼のレギュラーサイズが税込みで8ドル37セントで販売されています。
1ドル=135円の換算では1129円と、1000円を超える計算になります。
野菜の付け合わせが選べるなど、商品内容に違いがあるため単純な比較はできませんが、日本では、牛丼の並盛が、現在は税込み426円で販売されています。
●歴史的な円安で円買いに走る韓国人、その目に映る「宝の山」 6/16
6月14日、東京外国為替市場の円相場は、一時1ドル=135円22銭と1998年10月以来、24年4か月ぶりの円安ドル高となった。
現在、ドルはどの通貨に対しても高く、韓国のウォンもドルに対してはウォン安だが、4月頃から円に対してはウォン高が続いている。
今年の4月までは1円=10ウォンだったが、6月13日現在、1円=9.5423ウォンと10ウォンを割っている。
韓国では一般的に円は安全資産と言われ、最近の不安定な世界経済の中で円安になりにくいと見られていた。
しかし、米国が利上げのペースを上げているのに比べ、日本は景気浮揚に力点を置いて金利を上げないことから日米の金利差が拡大し、必然的に円安が進んでいる。
さらに、6月10日発表された米国の5月消費者物価指数(CPI)は、前年同期比8.6%も上がり、米国の株式市場に衝撃を与えた。
何しろ1981年以降最高の物価上昇である。
インフレがピークを過ぎたという期待感は薄まり、米連邦準備制度理事会(FRB)は6月14、15日に開かれるFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げ幅を0.75%まで拡大するとの観測が広がっている。
インフレ退治を目的とした米国の攻撃的な利上げに比べ、日銀の黒田東彦総裁はゼロ金利政策を堅持すると再三発言しており、日米金利差は拡大の一途を辿るのは間違いない。
こうした観測から市場では、最も金利の低い円で融資を受け、金利の高くなった米ドルなどの通貨や資産に投資する「円キャリートレード」傾向が活発になっているようだ。
これもまた、円安の主な要因の一つになっているという。
ここ数年、株式や外国為替への取引が活発になっている韓国の個人投資家は、こうした状況をチャンスと捉えているようだ。
これまで韓国では円安を憂慮する人たちが多かった。
なぜなら、韓国は輸出依存の極めて高い経済であり、輸出品の多くが日本製品と重なるため、円安になると品質の高い日本製品が韓国製品より有利になるからだ。
ところが、こうした考えは古く、最近では円安は必ずしも韓国経済にとってマイナスではないとの見方が広がっている。
韓国貿易協会国際貿易通商研究院は米国の利上げをきっかけに円安の影響を調査しているが、韓国の輸出に対する影響はあまりないと分析している。
それによると例えば、日銀が金融緩和に踏み切り円安が始まった2012〜2016年の間、日本の輸出物量の増加率は年間1%ポイント未満に過ぎないという。
また、最近の日本と韓国の輸出競争力を相対化した数値でも(2019年0.481→2020年0.471)、日本の競争力の落ち込みが目立ち、円安が韓国経済にマイナスとは言えなくなっているとしている。
こうしたことから、特に若い世代を中心に円安が韓国経済にマイナスという印象は薄れているようである。
一方、ここ数年で急速に力をつけた韓国人個人投資家は、むしろ円安を投資チャンスと捉えている。
先に挙げたキャリートレードなどはその一つ。実際、韓国の5大都市銀行の円預金残高は4月末基準で6044億円に増えた。
2021年12月末4946億円から22%ほど増加している。このうち半分以上の579億円が今年の3月に新しく入って来た資金だという。
円は2011年10月末に1ドル75円32銭の高値をつけた。現在の円はそれより約60円も安くなっている。ある意味歴史的な水準といえる。
韓国人投資家はこの機を逃す手はないと考えているようだ。
もしこの後、日銀が政策を変更して金利を上げ、円高ドル安(ウォン安)に振れるようなことがあれば、金利だけでなくキャリートレードを解消することで為替差益も生まれる。
個人投資家だけでなく、コロナ禍が去って日本へのリベンジ旅行を計画する人も円を買っているようだ。
また、価格が高くなりすぎた韓国の不動産は買えないか買えても高い利回りが期待できないが、安い日本の不動産も買い時だと思って投資を始めた韓国人も増えている。
そうした不動産は、エアビーアンドビー(Airbnb)として活用することを目論んでいるという。
もっと手軽に、今が円預金する適期だとして、円買いに走る韓国人もいる。
今の円安を韓国人の目には宝の山に映っているのかもしれない。筆者も少しずつ円を増やして、日本の個人旅行が解禁される時に備えておこうとは思っている。
●米国の利上げ加速、27年ぶり0.75% 円安ドル高は長期的か 6/16
米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は15日、連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、通常の上げ幅の3倍となる0.75%の利上げを決めた。記録的なインフレを鎮めるため、既定路線だった0.5%を上回り、1994年11月以来27年7カ月ぶりの大幅利上げ。日本との金利差はさらに拡大し、長期的な円安ドル高の圧力はさらに強まる。
利上げは3回連続で、上げ幅は、事実上のゼロ金利政策を解除した3月の0.25%、前回5月の0.5%、今回の0.75%へと拡大。主要な政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.5〜1.75%に引き上げる。出席者が予想した年末の誘導目標は3.4%で、3月時点から1.5ポイント上方修正した。
FRBのパウエル議長は記者会見で、0.75%の利上げは予想以上のインフレに対応した「異例の大きさ」としつつ、「(7月の)次回会合で0.5%または0.75%引き上げる可能性が高い」と大幅な利上げを続ける考えを示唆。その後はペースを緩める方針も示した。
インフレへの懸念と、急ピッチで進む金融引き締めによる景気後退への警戒感が混在する難しい局面。パウエル氏は、急激な景気後退を招かないインフレの沈静化は「可能だ」としつつ「難易度は上がっており大きなチャレンジになった」と述べ、「不確実な環境での金融政策により、経済が予期せぬ方向に向かう可能性があることも認識する必要がある」と不安をにじませた。
米国では昨年から、コロナ禍からの経済活動の再開による供給不足で物価が高騰し、さらにロシアによるウクライナ侵攻で燃料や食料品が急騰。FRBが利上げに踏み切った3月以降も歯止めはかからず、直近5月の消費者物価指数は前年同月比8.6%増と40年5カ月ぶりの水準となった。
円安進行 所得も上がらず「悪いインフレ」歯止めなし
米連邦準備制度理事会(FRB)が予想以上のインフレに直面し、金融引き締めを加速した。片や日本は低金利政策から抜け出せず、円安が進行中。ただでさえロシアによるウクライナ侵攻に伴って燃料などの価格が高騰する中、円安で物価高に拍車がかかり、所得の上がらない家計を圧迫する懸念が高まっている。
国際的な資金の流れは、金利の低い国から高い国に移る傾向がある。運用に有利なためで、特に、国際的な基軸通貨である米国の利上げは影響が大きい。このため英イングランド銀行(BOE)や欧州中央銀行(ECB)も利上げにかじを切り、資金流出を防ごうとしている。
しかし、日本は賃金上昇を伴う消費拡大には程遠く、経済活動を抑制する金融引き締めには踏み出せない状態だ。膨大な国債発行残高を抱える政府の利払い負担が増えるのを避けるため利上げできないという悪循環も指摘される。既に市場は動けない日銀を見透かし、一時は1ドル=135円台と24年ぶりの円安水準に陥った。
15日のニューヨーク市場では、0.75%の利上げが予想の範囲内だったため、過度な引き締めは避けられたとの安心感から円が買い戻され134円台とやや円高に振れた。しかし、長期的な円安圧力がさらに強まったのは事実。市場関係者は秋口の140円台も視野に入れる。
ただでさえロシアによるウクライナ侵攻の影響で高騰する燃料や食料品の価格は、円安により輸入時の価格がさらに引き上がる。家計は、所得が上がらないのに物価が上昇する「悪いインフレ」に圧迫され始めている。日銀は日本時間の16、17日に金融政策決定会合を開く。終了後の会見で黒田東彦総裁がどのような発信をするのか、注目される。
●円安が続く相場、それでも「為替介入」しない理由とは? 6/16
近ごろ円安が続いていることがニュースでよく取り上げられています。円安は海外から物を輸入する際のレートが不利になるため、市民の生活にも悪影響を及ぼす可能性があります。この円安は通貨当局による「為替介入」により緩和することも可能ですが、現在は大きな為替介入は行われていません。
この記事では、円安とはどのような状況なのか、また為替介入がなぜ行われていないのかについて解説していきます。
円安とは?
円安とは「外貨に対して日本円の価値が下がること」を意味します。円安になると日本から物を輸出する際はメリットになりますが、逆に輸入する際は不利なレートで物品を購入しなければならず大きなデメリットとなります。以前の日本は自動車など輸出産業が盛んだったため、格安で輸出ができる円安にもメリットが多かったですが、現在は海外からの安い原材料の輸入が生命線である部分もあり、円安は大きな打撃となります。
そこで円安を緩和するために通貨当局(日本では財務省、金融庁、日本銀行)が行うのが「為替介入」です。円安は日本円が売られて需要が下がってしまうため起こる現象であるため、政府がドルなど外貨を売り、日本円を買うことで円安を抑えることができます。為替介入は数兆円単位の金額が投じられることもあり、相場に大きな影響を与えるため、大きく注目されます。直近では2011年の東日本大震災の際、1日としては過去最大となる8兆722億円の為替介入が行われ話題となりました。
為替介入が行われない理由
近年、円安が急激に進んでいます。2022年3月28日には1ドル=125円10銭という、約6年7ヶ月ぶりの円安水準となりました。ところが、それを緩和する為替介入は現在まで実施されていません。実はこれにはいくつか理由があります。
・外貨準備の範囲でしか介入できない
先述したように、円安の抑止には外貨を売却して円の購入を行います。つまり、政府が持っている外貨の範囲内でしか円を購入することができないのです。これは日銀が好きなだけ発行できる日本円を売却する円高の抑止とは大きく異なります。
・米国債を売却する必要がある
現在、日本の外貨準備の80%は証券運用です。この証券運用の多くはアメリカの国債(米国債)である可能性が高く、為替介入を行うにはこれらを売却しなければいけません。しかし米国債を売却するとアメリカの長期金利を上昇させてしまうため、日米の金利差が拡大してしまい、逆に円安のリスクとなってしまうのです。
・アメリカとの連携
政府によるドル売りは、日米関係にも大きく影響します。アメリカは現在、インフレに悩んでいるため、円安ドル高の現状はアメリカにとって好ましい状態なのです。もしアメリカの意向に反して為替介入を強行し円安を回避してしまいますと、日本はアメリカから反発を受ける可能性もあります。
為替介入しない理由はさまざまなものがある
ここまで、円安についての説明や、政府が為替介入を行わない背景について解説しました。円安により市民生活にもさまざまな影響が出てしまいますが、政府としてもすぐに為替介入できない理由が多く存在するのです。これらを理解した上で、これからの為替について、またそれに影響される私たちの生活について考えてみてはいかがでしょうか。
●「24年ぶりの歴史的円安」1ドル=135円? 円安のメリット・デメリット 6/16
2022年6月14日、ニューヨーク外国為替市場において一時、1ドル=135円48銭と1998年10月以来の円安水準になりました。
およそ24年ぶりとなる円安水準に「歴史的円安」などの声も上がり話題となっていますが、一体何が“ヤバイ”のか、騒がれている理由が今ひとつ掴めていない方もいるのではないでしょうか。
一体なぜこのような円安になったのか、私たちの生活への影響、メリットはあるのかなどを、わかりやすく簡単に解説していきます。
「為替」の仕組みと「円安」の主な要因
まず、簡単に為替の仕組みについて説明します。中長期的な視点から見ると、為替の変動は「金利」「物価」の側面から動く傾向にあります。
今回の円安の主な要因は、日米の「金利差」にあります。アメリカではインフレが進み、その対処法として金利を引き上げる政策が進められています。
この金利の引き上げが想定よりもさらにスピードアップするのではないか? 1回の金利の引き上げ幅が大きくなるのではないか? そのような懸念が円安ドル高をさらに加速させたと考えることができます。
要は、日本は金利が上がらない、アメリカは金利が上がるとなれば、円を売ってドルを買った方が金利がついて良いわけです。このような流れから、円安ドル高の流れは今後も継続する(少なくとも大幅な円高は考えにくい)でしょう。
ただ、アメリカの金利がどこまで上がるかによって為替が変動する状況にあるため、際限なくどこまでも円安へとなる可能性は低いでしょう。
円安のデメリット:輸入物価に反映され、値上げにつながる
それでは、この円安は私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか?
まず考えられるのが、輸入物価の上昇です。海外から輸入する製品の価格は円安によって押し上げられ、私たちが購入する際の価格が上がります。
ましてや、現在はロシア・ウクライナ情勢もあり、小麦などの価格がすでに上がっている状況にもあります。商品価格の上昇+円安というダブルパンチも考えられます。このような値上げはこれからも進んでいくことになるでしょう。
私たちが海外に行くときの旅費やお土産などの価格も高いと感じるようになるでしょう(逆に言えば、日本の物価が安すぎるともいえますが……)。
コロナ禍の影響もあり、これまでは海外に行ける状況ではなかったものの、今後海外旅行が少しずつ緩和されるにつれ、円安の影響を感じる機会も増えていきそうです。
生活する上で、価格の面でマイナスの影響を受ける可能性があること、これがわかりやすい円安のデメリットといえます。
円安のメリット:インバウンドは活性化する可能性大
一方、海外から日本に来る外国人旅行者は円安の恩恵を受けることになります。今まで以上に、ますます「日本は安い」と思われかねません。インバウンドを期待する旅行関係者にとっては恩恵を受けることになりそうです。
また、ドルを中心に外貨預金など資産運用を行っている方も円安により為替差益が得られますので、恩恵を受ける対象になります。
この他、輸出をメインとする企業にとっては、円安により売上増加が期待できるため有利となります。中には、過去最高益を叩き出す企業もある模様です。
このように、円安はメリット・デメリットあり、恩恵を受けるケースもあれば不利となるケースもあります。
長期的な視点からいえば、円安は日本の物価上昇にもつながるため、給料が上がらなければ実質的な購買力が低下する恐れがあります。
意図的な円安ではなく、金利差による自然の流れではあるものの、このまま放置するのもどうかと思います。個人個人でできることは限られていますが、外貨による運用などで資産を守るといった視点も必要だと考えます。
●米、大幅利上げ継続へ 円安基調が強まる可能性も 6/16
米国での歴史的なインフレに対処するため、中央銀行の連邦準備制度理事会(FRB)は大幅利上げを7月にかけて連続で実施する検討に入った。物価抑制のため急速な金融引き締めを優先させるが、景気悪化を招きかねず、経済の「ソフトランディング(軟着陸)」へ難局を迎えている。16日に金融政策決定会合を始めた日銀は大規模な金融緩和を続けており、金利差拡大により円安ドル高の基調が強まる可能性もある。
FRBは15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、1994年11月以来、27年7カ月ぶりとなる政策金利の0.75%引き上げを決定した。
●米利上げ、続く円安圧力 貿易赤字拡大、企業に危機感 6/16
米連邦準備制度理事会(FRB)が0.75%の利上げに踏み切った。大規模金融緩和を続ける日本と米国の金利差は一段と広がり、円安・ドル高が加速する可能性がある。日本の財務省が16日発表した5月の貿易統計で、貿易赤字は歴史的水準に拡大。産業界では危機感が高まっている。
16日の東京外国為替市場は、米利上げ幅が市場の予想通りだったため、前日までの急速な円安進行はいったん落ち着きを見せた。パウエルFRB議長は今回の大幅利上げについて「異例の大きさ」と発言。今後、利上げ幅縮小を探る構えだ。ただ、FRBはこれまでも予想外のインフレ高進に対応し、大幅な利上げを迫られてきただけに先行きは不透明だ。
コロナ禍で打撃を受けた観光業界にとって、円安は訪日外国人客の回復に弾みをつける「追い風」(旅行大手)となり、大手百貨店も「訪日客の買い物意欲が高まってプラス要因となるのは間違いない」と期待する。しかし、原材料を海外から輸入する食品メーカーなどは「価格高騰で負担が大きくなる中、さらに厳しい状況を強いられる」(J―オイルミルズ)と懸念する。
ロシアによるウクライナ侵攻の影響に伴う供給不安で、資源や原材料の価格上昇が続く状況では、円安の恩恵を受けやすい輸出産業からも「(部品調達などで)円安のデメリットが拡大している」(日本自動車工業会の永塚誠一副会長)との声が上がる。海運業界はドル建ての運賃収入の増加が見込めるものの、「急速な円安で日本の景気が落ち込めば荷動きが減る。中長期的には懸念の方が大きい」(関係者)と不安の声が漏れる。
5月の貿易統計で、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支の赤字額は、資源価格の高騰や円安で過去2番目の大きさとなった。これは所得の大幅な海外流出を意味し、国内景気の下押し材料になりかねない。日銀は米国などに追随して拙速に利上げすれば景気回復を阻害しかねないとして、16、17両日の金融政策決定会合で大規模金融緩和を継続する見通しだ。
円安は日本経済の弱さがもたらしたとの見方もあり、経団連の十倉雅和会長は16日、記者団に「日本の経済や産業を強くするしかない」と強調した。
●米欧が利上げ、日銀は緩和維持の見通し…金利差拡大で「円の独歩安」 6/16
日本銀行は16〜17日開催の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の維持を決める見通しだ。米欧など主要国・地域が景気回復に伴うインフレ(物価上昇)を抑制するため、軒並み利上げに傾く中、国内外の金利差拡大が続く。為替相場では主要通貨に対する「円の独歩安」が進む恐れがある。
国内の物価は上昇基調にあるが、日銀はコロナ禍で冷え込んだ景気を下支えする必要があると判断している。日銀が金融緩和を継続すれば、利上げ幅を拡大したFRBとの違いが一段と際立つ。日銀は長期金利を抑え込んでいるため、金利上昇が続く米国との金利差が開き、円安・ドル高が進みやすくなる。
円安は輸出企業や海外展開する企業の収益を押し上げる一方、燃料費や原材料価格の高騰につながり、家計や輸入品を仕入れる企業の負担が増す。日銀は「急激な円安は好ましくない」としつつも、金利上昇が中小企業や家計の借り入れ負担を増やす副作用を懸念している。手詰まりに見える日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁が17日午後の記者会見でどう説明するか、関心が集まる。
●円安一段落、133円台後半 株は5日ぶり反発、警戒感和らぐ 6/16
16日の東京外国為替市場で、円相場は1ドル=133円台後半に上昇し、円安が一段落した。
米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ方針に対する過度な警戒感が和らぎ、持ち高調整の円買い・ドル売りが優勢となった。東京株式市場では日経平均株価が5営業日ぶりに反発した。
円相場は午後5時半現在、133円62〜63銭と前日比1円09銭の円高・ドル安。円買い・ドル売りが一巡し円が軟化する場面があったが、その後は134円台前半を中心に推移した。日銀の金融政策決定会合が17日まで開かれており、投機的な円売りが手控えられたことも円相場を支えた。ただ、市場では日米の金融政策の方向性の違いから金利差拡大が意識されており、「円安基調は変わらない」(FX会社)との見方が強い。
●東京為替 ドル・円は失速、米金利にらみ 6/16
16日午後の東京市場でドル・円は失速し、134円半ばから前半に値を下げた。米10年債利回りの低下でややドル売りに振れ、対円ではじり安。ただ、クロス円も同様の値動きだが、米株式先物は堅調地合いを維持し、今晩の株高を期待した円売りが主要通貨を支える。
ここまでの取引レンジは、ドル・円は133円70銭から134円68銭、ユーロ・円は139円68銭から140円60銭、ユーロ・ドルは1.0431ドルから1.0469ドル。
●外為 1ドル133円19銭前後と大幅なドル安・円高で推移 6/16
16日の外国為替市場のドル円相場は午後6時時点で1ドル=133円19銭前後と、午後5時時点に比べ1円06銭の大幅なドル安・円高。ユーロ円は1ユーロ=138円62銭前後と93銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●ロンドン外為 円急伸、一時132円台 6/16
16日午前のロンドン外国為替市場の円相場は一時1ドル=132円台前半に急伸した。主要中央銀行による利上げ加速で世界経済の減速懸念が強まり、安全資産とされる円を買い戻す動きが広がった。正午現在は133円00〜10銭と、前日午後4時(134円50〜60銭)比1円50銭の大幅な円高・ドル安。
対ユーロは1ユーロ=138円40〜50銭(前日午後4時は140円05〜15銭)と、1円65銭の円高・ユーロ安。
米連邦準備制度理事会(FRB)は15日、0.75%の大幅利上げを決定。16日も英イングランド銀行が追加利上げを発表し、スイス国立銀行も市場予想に反して約15年ぶりの利上げに踏み切るなど、主要中銀の利上げが加速している。
日銀は17日に金融政策を発表するが、その前に思惑的な円買い・ドル売りも入った。市場からは「日銀が金利上昇を認めるとの観測があり、円を下支えしている」(英調査会社)との指摘もあった。
ユーロは上値が重かった。欧州中央銀行(ECB)が債券市場の安定化策を打ち出したものの、予想の範囲内との受け止めが広がった。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0400〜0410ドル(前日午後4時は1.0405〜0415ドル)。
ポンドは買われた。イングランド銀行は0.25%の利上げを発表。1ポンド=1.2155〜2165ドル(同1.2065〜2075ドル)。
スイス・フランは中銀のサプライズ利上げで急騰した。1ドル=0.9810〜9820フラン(同1.0005〜0015フラン)。  

 

●米、利上げ 異例0.75% 6/17
米連邦準備制度理事会(FRB)は15日、連邦公開市場委員会(FOMC)で、通常の3倍となる0・75%の利上げを決めました。引き上げは3会合連続で、0・75%の上げ幅は1994年11月以来、約27年半ぶりです。パウエルFRB議長は記者会見で、7月も大幅な利上げに踏み切る可能性に言及しました。歴史的な高インフレの抑制へ、積極的な引き締めを続ける方針です。日米の金利差がさらに広がり、円安・ドル高の構図がいっそう強まります。
15日発表されたFOMCの声明は、「物価上昇率は(新型コロナウイルスの)パンデミック(世界的流行)に関連した需給の不均衡、エネルギー価格の高騰、広範におよぶインフレ圧力を反映して高止まりしている」と指摘。会合後に記者会見したパウエル議長は利上げを継続する方針を改めて強調し、次回の7月会合の利上げ幅も「0・5%か0・75%の判断になる可能性が高い」と述べました。
「アベノミクス」の金融緩和によって引き起こされた円安は、輸入依存度を強める日本経済を直撃しています。円安が加速を始めた3月以降、わずか3カ月でドルに対して20円も下落しています。今後も、値上げを予定している企業は後をたちません。経済同友会の6月の景気定点観測アンケート調査には、日本企業の買収により技術が海外流出するなど「国力低下」への懸念も出ています。
「アベノミクス」の堅持を宣言する岸田文雄政権の経済運営が日本経済「成長」の障害となっています。
●円相場 NY市場 一時1ドル=131円台半ばまで大きく値上がり  6/17
16日のニューヨーク外国為替市場はドルを売ってこれまで売られていた円を買い戻す動きが強まり、円相場は一時、1ドル=131円台半ばまで大きく値上がりしました。
16日のニューヨーク外国為替市場では急速な金融の引き締めでアメリカの景気が減速することへの警戒などからドルが売られ、円を買い戻す動きが強まりました。
このため、16日の東京市場で1ドル=134円台前半を中心に取り引きされていた円相場は、一時、1ドル=131円台半ばまで大きく値上がりしました。
外国為替市場では、このところ日米の金利差が拡大するとの見方を背景に円安ドル高が急速に進み、今週、1ドル=135円台半ばまで値下がりしていました。
市場関係者は「このところの円安の進行が急ピッチだった分、円の買い戻しも出やすい状況で荒い値動きになっている。アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会に続いて、イギリスやスイスの中央銀行が相次いで利上げを決める中、大規模な金融緩和を維持してきた日銀がきょう開く金融政策を決める会合で円安をめぐって何らかの対応を見せるかが市場の関心を集めている」と話しています。
●NY外為 円下げ幅拡大、再び135円台 6/17
週末17日午前のニューヨーク外国為替市場では、日銀の金融緩和維持決定を背景とした急速な円安の流れが継続し、円相場は再び1ドル=135円台前半に下落している。午前10時50分現在は135円10〜20銭と、前日午後5時(132円09〜19銭)比3円01銭の大幅な円安・ドル高。
日銀は17日、現行の金融緩和策の維持を決定した。黒田日銀総裁は急速な円安をけん制する発言を繰り返していたため、これまでの金融緩和策の修正が行われるのではないか、との観測が強まっていた。日銀の金融緩和維持決定により、日米の金利差拡大が再び意識され、円は大きく売られる展開となった。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0450〜0460ドル(前日午後5時は1.0548〜0558ドル)、対円では同141円25〜35銭(同139円34〜44銭)と1円91銭の円安・ユーロ高。 

 

●NY円反落 1ドル=134円90銭〜135円00銭 日銀の金融緩和維持受け円売り 6/18
17日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3営業日ぶりに反落し、前日比2円80銭の円安・ドル高となる1ドル=134円90銭〜135円00銭で取引を終えた。日銀が17日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和の維持を決めた。金融引き締めを加速する米連邦準備理事会(FRB)との政策の違いが鮮明となり、円売りが強まった。
日銀の黒田総裁は記者会見で金融引き締めは現時点で適切ではないと明言したため、米市場では「日銀の金融緩和は当面続くと再確認した」(ジェフリーズのブラッド・ベクテル氏)との指摘があった。日銀の政策修正の思惑から前日に積み増された円の買い持ち高を解消する目的の円売りが出たという。
円の安値は135円42銭、高値は134円44銭だった。
円は対ユーロで3営業日ぶりに大幅に反落し、前日比2円20銭の円安・ユーロ高となる1ユーロ=141円55〜65銭で取引を終えた。欧州中央銀行(ECB)は7月に利上げを予告しており、日欧の金融政策の違いから円売り・ユーロ買いが強まった。
ユーロは対ドルで4営業日ぶりに反落し、前日比0.0060ドル安い1ユーロ=1.0490〜0500ドルで終えた。米長期金利が上昇し、欧米金利差の拡大を見込むユーロ売り・ドル買いが優勢だった。3連休前の週末とあって持ち高調整のユーロ売りが出やすかった。
ユーロの安値は1.0445ドル、高値は1.0508ドルだった。 
●NY円反落 1ドル=134円90銭-135円00銭 日銀の金融緩和維持受け円売り 6/18
17日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3営業日ぶりに反落し、前日比2円80銭の円安・ドル高となる1ドル=134円90銭〜135円00銭で取引を終えた。日銀が17日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和の維持を決めた。金融引き締めを加速する米連邦準備理事会(FRB)との政策の違いが鮮明となり、円売りが強まった。
日銀の黒田総裁は記者会見で金融引き締めは現時点で適切ではないと明言したため、米市場では「日銀の金融緩和は当面続くと再確認した」(ジェフリーズのブラッド・ベクテル氏)との指摘があった。日銀の政策修正の思惑から前日に積み増された円の買い持ち高を解消する目的の円売りが出たという。
円の安値は135円42銭、高値は134円44銭だった。
円は対ユーロで3営業日ぶりに大幅に反落し、前日比2円20銭の円安・ユーロ高となる1ユーロ=141円55〜65銭で取引を終えた。欧州中央銀行(ECB)は7月に利上げを予告しており、日欧の金融政策の違いから円売り・ユーロ買いが強まった。
ユーロは対ドルで4営業日ぶりに反落し、前日比0.0060ドル安い1ユーロ=1.0490〜0500ドルで終えた。米長期金利が上昇し、欧米金利差の拡大を見込むユーロ売り・ドル買いが優勢だった。3連休前の週末とあって持ち高調整のユーロ売りが出やすかった。
ユーロの安値は1.0445ドル、高値は1.0508ドルだった。
●NY外為 円大幅下落、134円台後半=日銀の緩和維持で 6/18
週末17日のニューヨーク外国為替市場では、日銀が大規模金融緩和の維持を決めたのを受け、日米金利差の拡大が改めて意識され、円相場は1ドル=134円台後半に大幅下落した。一時135円42銭を付けた。午後5時現在は134円88〜98銭と、前日同時刻(132円09〜19銭)比2円79銭の円安・ドル高。
米連邦準備制度理事会(FRB)が0.75%の大幅利上げに踏み切るなど、世界的なインフレ傾向を受けて主要国の中央銀行が利上げに動く中、日銀は17日、大規模金融緩和の維持を決定。黒田東彦日銀総裁は「急速な円安は経済にマイナス」とけん制したが、海外市場では、日米金利差の拡大が意識され、金利収入が見込めるドルを買い、円を売る動きが加速した。
この日のニューヨーク市場は、134円72銭で取引開始。海外市場での円売りの動きが継続した。市場では「135円台に入り、値動きが大きく無秩序になれば、為替介入を促すことになる」(欧州系金融機関)との警戒感が出ている。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0490〜0500ドル(前日午後5時は1.0548〜0558ドル)、対円では同141円57〜67銭(139円34〜44銭)と、2円23銭の円安・ユーロ高。
●今週のレビュー (6/13〜17) 6/18
ドル円相場
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初134.43で寄り付いた後、1米インフレ懸念の高まりを背景とした米FRBによるタカ派傾斜観測(6/10に発表された米5月CPIが約40年5ヵ月ぶり高水準を記録→インフレがピークアウトするとの期待感後退→米長期金利急上昇→米ドル買い)や、2心理的節目135.00突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り(135.00に観測されていたリバース・ノックアウト・オプションがトリガーヒットしたことに伴うオプション勢のデルタ買戻し)、3日銀による臨時国債買い入れオペ増額発表(日銀による長期金利抑制方針を再確認)が支援材料となり、週央にかけて、約23年8ヵ月ぶり高値となる135.60まで急伸しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、4パウエルFRB議長による「0.75%の利上げが一般的になるとは予想せず」「7月会合では0.50%か0.75%の利上げが選択肢となる可能性あり」との慎重な発言(過度なタカ派観測後退→米長期金利急低下→米ドル売り)や、
5世界的な金融引き締めを背景とした過剰流動性相場の逆流懸念(米国による75bp利上げに続いて、英中銀が25bp、スイス中銀が50bpの利上げを決定→スタグフレーション懸念が燻る中での利上げ実施で株式市場が大暴落→リスク回避の円買い圧力)、6米経済指標の冴えない結果(米5月住宅着工件数、5月建設許可件数、米6月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、米新規失業保険申請件数などが軒並み不冴な結果)、7日銀に対する緩和修正期待(世界的な金融引き締めを背景に日銀金融政策決定会合や黒田日銀総裁記者会見で政策修正や出口議論に関する決定・発言が出てくるとの思惑)が重石となり、週後半にかけて、週間安値131.49(6/6以来の安値圏)まで急落しました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、8日銀金融政策決定会合で現行政策の維持が決定されたことや、黒田日銀総裁より「金融緩和政策の継続」が強調されたこと(上記7の市場の催促に対して日銀はゼロ回答→円売り再開)が支援材料となり、週末にかけて、一時135.41まで反発する荒々しい値動きとなりました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間6/18午前5時00分現在)では、134.95前後で推移しております。
尚、注目された米FOMCでは、FF金利誘導目標の75bp引き上げに加えて、声明文で「委員会はインフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている(The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective)」とのタカ派スタンスが強調されました。また同時に発表された経済見通し・政策金利見通しでは、GDP見通しの下方修正(2022年末時点のGDP見通しは前回3月時点の2.8%から1.7%へ下方修正)と、物価見通しの上方修正(2022年末時点のPCE見通しは前回3月時点の4.3%から5.2%へ上方修正)、政策金利見通しの上方修正(2022年末時点のFF金利予測・中央値は前回3月時点の1.9%から3.4%へ上方修正)が示されるなど、スタグフレーション懸念が燻る中でも、インフレ抑制を重視し、利上げ方針を継続する方向性が示されました。
ユーロドル相場
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0513で寄り付いた後、1欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中でのECBによる金融引き締め開始→欧州経済に強い逆風)や、2米インフレ加速を背景とした米長期金利の急上昇、3世界的な金融引き締めを背景とした過剰流動性相場の逆流懸念(株式市場をはじめリスクアセットが大暴落→資産現金化需要のドル買い圧力)、4ドイツ6月ZEW景況感指数(結果▲28.0、予想▲27.5)の冴えない結果、5リントナー独財務相による「スタグフレーションはあり得るシナリオ」との悲観的な発言、6米FOMCのタカ派的な結果(政策金利が75bp引き上げられると共にドットチャートも上方修正)が重石となり、週央にかけて、週間安値1.0359(5/13以来、約1カ月ぶり安値圏)まで急落しました。
しかし、5/13に記録した約5年4カ月ぶり安値1.0350(2017年1月以来の安値圏)をバックに下げ渋ると、7パウエルFRB議長による「0.75%の利上げが一般的になるとは予想せず」「7月会合では0.50%か0.75%の利上げが選択肢となる可能性あり」との慎重な発言や、8上記7を背景とした米長期金利の急低下、9ECB臨時会合でのユーロ圏利回り格差緩和策の提示、Iフランス中銀ビルロワドガロー総裁による「ECBは漸進的かつ持続的に利上げを行う」とのタカ派的な発言、J米経済指標の不冴な結果、K対ポンドや対スイスフランでのドル売り圧力(英中銀やスイス中銀が利上げ決定→英ポンドやスイスフラン上昇→ユーロ連れ高)、L短期筋のショートカバーが支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0602まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、M欧米金融政策格差に着目したユーロ売り・ドル買い圧力が重石となり、本稿執筆時点(日本時間6/18午前5時00分現在)では、1.0495前後で推移しております。
●ドル円相場に変調のきざし… 日米金利差相場の賞味期限 6/18
1. 日米金利差相場に変調のきざし
6月10日に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)が予想外に強い数字であったことや、翌週13日の米ウォールストリートジャーナル紙(WSJ)が掲載した0.75%の大幅利上げの観測記事が、米連邦準備制度理事会(FRB)によるリークとの見方が広がったため、米国の長期金利は急騰しました。米10年国債利回りは6月9日終値の3.044%から、13日には3.365%まで2営業日で32ベーシスポイントも急騰しました。しかし、一方のドル円レートは、134円台を中心としたもみあいの展開が続き、終値で見たこの間の変化率はわずか0.04%のドル高にとどまりました。
また、同期間における円の主要通貨に対する変化率を見ると、既に利上げを開始している主要通貨も含めほぼ円の独歩高の展開となっており、マーケットの変調を意識させる展開となりました。
2. 市場変調の背景
FOMC参加者の経済成長率予測 (注)データは2022年6月15日現在。(出所)FRBのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
6月15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではWSJの観測記事の通り、0.75%の利上げが決定されました。そして、同時に発表された経済予測では、2022年の経済成長率予測(中央値)が+2.8%から+1.7%に、同2023年は+2.2%から+1.7%に引き下げられました。
+1.7%という成長率は、FRBが見ている金融政策が中立的である場合の長期成長率予測の+1.8%をわずかとはいえ下回る水準であり、今後実施が見込まれる大幅利上げが米国経済にブレーキをかける可能性を示唆している、とも言えそうです。
これまでは米国の堅調な景気拡大が続くことを前提に、「利上げと長期金利上昇」はドル買い材料とみなされてきました。しかし、金融引き締めが景気後退やリスク資産の価格下落を通じ、「ドル売り」や「リスクオフの円買い」を誘発する展開をマーケットが意識し始めるようになると、事情は大きく変わってきます。そして、こうした見方をする市場参加者が一定数を超えると、ある日突然「ドル買い材料」であった米金利上昇が、「ドル売り材料」へと180度転換する可能性も、否定できないでしょう。
3. 日米金利差相場の賞味期限
マーケットを動かす材料は、その織り込みが終わることで市場の価格変動への影響力を失うのが一般的です。なかでも外国為替市場では、株式や債券のようにバリュエーションがあまり機能せず、ファンダメンタルズに基づくフェアバリューの推計が難しいため、その価格変動を主導する市場参加者の注目点は、どうしても移ろいやすい傾向があります。
こうした観点から現在のドル円相場を見ると、ある種異様な状態にあることが解ります。60営業日のドル円レートと米10年国債利回りの相関係数を見ると、足元では57営業日連続で0.9を超えて推移しており、その平均値は0.97に達しています。
過去2年余りの相場をふりかえると、同様に相関係数が長期間にわたり0.9を超えた期間は2回ありました。2021年3月4日に始まった、同相関係数が0.9を上回る「米長期金利とドル円レートが連動する」相場は52営業日続き、同期間の相関係数の平均値は0.95でした。また、21年10月20日に始まった同様な相場は、22営業日、同平均値は0.91でした。
こうした相場展開と比較すると、現在は異常に高い相関が相当長い期間にわたり続いていることがわかります。つまるところ、わかりやすい「米金利上昇で円安ドル高」というシナリオに、「全員参加で乗っかっている状態」と見えなくもありません。
2020年の夏を底に始まった米長期金利の上昇と2021年初旬に始まった円安ドル高は、時おり調整を交えつつも比較的高い連動性を見せてきました。しかしこの間、2020年の秋や2021年の初夏には、新型コロナウイルスの感染状況など他の材料に市場参加者の関心が移ることで、突然かつ急激に両者の関係が逆相関となる局面が現れています。
金融市場が織り込んでいる米国の金融引き締めが、米国経済の今後の成長にブレーキをかけかねない、ある意味「ギリギリの水準」まできていると仮定すると、「日米金利差」を材料にしたドル買い相場はそろそろ終盤であり、金利差相場の賞味期限切れによるこれまでとは違った相場展開についても、リスクシナリオとして注意しておく必要がありそうです。 

 

●「日本大好き」韓国人、超「円安」の“訪日ラッシュ” 「意外な街」の名前 6/19
日本政府は新型コロナの水際対策を緩和して、6月10日から観光客の受け入れを再開させた。
1日あたりの入国者数の上限が1万人から2万人に引き上げられ、7月からは3万人に増やすことで調整が進められている。
世界経済フォーラムが発表した「2021年版の旅行・観光開発ランキング」では、日本が総合順位で世界1位になった。これは、調査の開始以来初めてのことだという。
いま多くの外国人が日本を訪れたいと感じている。とりわけ、日本は約20年ぶりの円安水準だ。日本を訪問したいと考える外国人の間では、自国通貨を円に換金する動きが高まっており、あとは訪問時期だけ調整すれば良い状態となった。
じつはこの動きはお隣の国、韓国でも同じだ。
2019年7月から日本製品不買運動を行い、「日本製品は買わない」「日本には行かない」と国民総出で反日活動に乗り出していた彼らであったが、日本行きの航空券が発売されて直ぐに“予約戦争”が勃発した。
ある旅行会社では、5月25日に販売を始めた「大阪・神戸2泊3日ツアー」に2時間で1365人が殺到して完売、その後もアクセスが集中してサイトがサーバーダウンしてしまったという。
韓国人の「訪日ラッシュ」へ
これから韓国も夏休みシーズンが到来する。
この時期に日本が外国人の受け入れをさらに増やせば、韓国人による“予約戦争”が激化して多くの韓国人が日本へとやってくるだろう。
そんな韓国人に人気の旅行先は主要都市である東京都、大阪府、京都府はもちろん、福岡県、愛知県、北海道、さらには島根県まで多方面にわたる。
近年は王道の観光地だけでなく、陶磁器や刃物を購入するためにメジャーではない場所を訪れることがひそかなブームになっている。
たとえば、陶磁器であれば佐賀県や愛知県、刃物であれば東京都のかっぱ橋や大阪府堺市が人気なのだ。
陶磁器なら岡山県の備前焼や岐阜県の美濃焼なども有名だが、なぜ佐賀県や愛知県が買い付け先として人気なのか。
答えは簡単だ。買い付けついでに観光ができるからだ。
「佐賀県」が大人気のワケ
佐賀県は、有田焼・伊万里焼・唐津焼とそれぞれ特徴のある陶磁器が揃っている。加えて佐賀県は韓国人の好きな温泉もあるし、食べ物だって美味しい。
福岡県は韓国旅行者にとって馴染み深い都市で、そこから佐賀県伊万里市までは車で1時間半もあれば十分に行ける距離だし、公共交通機関を使っても3時間ほどだ。
愛知県瀬戸市の瀬戸物も人気が高く、瀬戸市へ立ち寄った帰りにトヨタ自動車博物館に行くのも自動車愛好家のパパさんには人気が高いという。
不買運動が起こる前まで、別府や湯布院は韓国人だらけであった。筆者も韓国から訪れたことがあるが、特に湯布院は韓国人率が高く、早々に引き上げてしまったくらいだ。
その点、佐賀県まで足を延ばせば韓国人は少なく、海外旅行気分が味わえるのだから、日本を何度も訪れている韓国人にとって人気が高いのも頷ける。
かっぱ橋に、堺も人気!
彼らが日本を訪れて陶磁器を買い付ける理由は、韓国人の間で食の美に対する変化が起こっているからだ。
これまで、外食で韓国料理を注文すると銀食器で提供されることがほとんどだった。家庭では陶磁器も使用するが、依然として銀食器は韓国の食になくてはならないツールだ。
そのような食文化が、ここ数年で若い世代を中心に変わりつつある。
筆者の友人の中にも、おしゃれな食器を購入してはSNSに投稿する人がいるように、“映え”のために陶磁器を購入する人が少なくない。
それは飲食店でも同じで、日本食店を中心に客ウケを狙って徐々に高級食器に切り替える店舗が出始めた。食器が高級になるから、盛り付け方も次第に綺麗になってくる。
料理の盛り付けが変われば、使用する道具にもこだわりが出てくる。
欧米からやってきた外国人がかっぱ橋や堺市で刃物を購入する理由と同じで、韓国人の間にも「日本の刃物技術は素晴らしい」という認識がある。
「刃物熱」が高まっている
韓国では2010年ごろから日本の包丁の評価が高くなり、料理人以外でも日本の包丁を好むようになった。
日本の誇る包丁産地は新潟県三条市・燕市、岐阜県関市、福井県越前市、大阪府堺市、兵庫県三木市、島根県安来市、高知県香美市とあるが、その中でも堺市は関西国際空港からのアクセスが便利なこと、そして、何と言っても韓国人が最も好きな大阪まで観光できるのだから人気が高い。
アテンドを職業としている筆者の友人が、コロナ規制前に韓国人の男女10人を堺市に案内したことがあるという。
聞くと、彼らの訪日目的は「包丁購入」だったが、友人のエピソードを聞く限り、ほんとうは包丁の製造過程を見ることが目的だったようだ。
現地に到着すると、友人に細かい要望をして、刃が出来るまでの工程はもちろん、柄を作る工程、鞘の工程を見たがり、また、堺市の研ぎ名人に会いたいとリクエストしてきたという。
さらには、名指しで職人に会いに行きたいと言い出す者もいたというから、その情熱は“ホンモノ”だろう。ただし、これには友人も困ってしまい、アポイントを取ってないことを理由になんとか彼らを説き伏せて3泊4日の滞在を終えたという。
こだわりを持つ「韓国人たち」
韓国人のアテンドをする友人が、今回の旅行解禁によって「こだわりを持つ韓国人たち」が新たにどんなリクエストをしてくるか興味深いし、期待もできると話していた。
包丁に関して言えば韓国の包丁が切れないわけではないが、やはり日本の包丁の切れ味は群を抜いている。
料理人の場合、客に“魅せる”ために購入することも多い。銘に自身の名前を彫ってもらい、客に見せると客はその料理人や訪れた店を“本物”だと認める。
韓国では、ただ胃袋を満足させるための食事ではなく、目で見て食を楽しむという、新たな食の美学が一般人の間にも広まってきた。
誤解を生まないために補足しておくと、韓国料理の中に「宮廷料理」という豪華な料理があって、それは目でも楽しめるようになっている。
ただ、値が張るために、客人をもてなすことがない限り韓国ではあまり口にしない。
日本の「自動車」も大人気
また韓国に自動車文化が存在しないこともあり、その欲求に駆られた韓国人たちが日本で自動車イベントを見学するというツアーもある。
韓国では中古車輸入に関して自由貿易を謳っているが、アメリカの自動車診断システムOBD2、またヨーロッパのEU5に対応していない自動車は輸入ができない。
そうなれば2015年以前の中古車の輸入はできず、韓国では古い自動車の文化は育ちにくい。そこで日本のイベントに参加する旅行が人気なのだ。
場所は関東園なら大黒インター「HCC95 ヒストリックカークラブ95」、群馬の「伊香保おもちゃと自動車博物館」、関西では京都の「高尾サンデーミーティング」、それと各地域で行われるクラシックカー・ラリーイベントも人気が高い。
これほど韓国人は日本が大好きなわけだが、多くの韓国人観光客が口を揃えて言うことは「日本の交通費が高い」ということだ。これは韓国に限らない外国人観光客も同じなようで、ドイツ銀行が調査した「世界主要都市の公共交通機関1カ月定期券の平均価格(2019年)」で、東京は第4位で高い。
韓国は交通費が非常に安い。地下鉄は初乗り1250ウォン(約125円/10キロまで)だし、ソウルのタクシーの初乗り料金は、中型で昼間は3800ウォン(約380円/2キロまで)だ。地下鉄とバスの乗り換えには割引きだって適応される。
だから、韓国人にとって日本の交通費は旅行する際にもっとも障害になるものだ。彼らが旅館ではなくビジネスホテルに宿泊し、吉野家やサイゼリヤで食事を済ませる理由は、交通費と相殺するといった背景もある。
やっぱり「メイド・イン・ジャパン」
ここ数年で、韓国の百貨店やインターネットモールでは、陶磁器が多く取り扱われるようになった。だが、そこに並ぶものは青や白、ピンクにグレーといった、色鮮やかなものが多い。やはり若い女性向けの商品だ。
落ち着いた色合いの陶磁器や高級感のあるものを求めるには、まだ韓国内に供給先が少ない。それならば、現地に行こうと考えて彼らは日本にやってくる。
日本政府は、個人旅行の解禁についてまだ明言していない。しかし、いつか必ずコロナ規制が緩和され、陶磁器や刃物を求めて多くの韓国人が日本を訪れることになるだろう。“メイドインジャパン”が再び韓国人の間でブームになる日はそう遠くない。少なくとも、円安の間はこれが続くはずだ。
●給食がピンチ!食品価格高騰に“円安”が拍車…工夫で乗り切る 6/19
報告:仁科健吾「足立区の小学校では今まさに給食の準備が行われています、あれは鮭ですね」
小学校の給食の風景はいつの世も同じと思いきや、感染対策で会話のない「黙食」です。こうした感染対策だけではなく今、給食は「節約の工夫」も余儀なくされています。献立を決める栄養士は…
足立区立江北小学校 栄養士 平野由美子さん「給食費が足りなくなっちゃうっていうのは大変なことなので、そうならないように工夫しています」
食品の価格が高騰していますが、給食費は決まっています。
平野由美子さん「キュウリの量をちょっとだけ減らして、他の価格の安い野菜、キャベツとかを増やすようにしています」「1人あたり15gのところを10gにするとか、本当にちょっとしたことなんですけど、そういうのを積み重ねていく」
ほかにも果物の切り方や、魚の種類の変更など材料費を抑える工夫をしています。足立区では給食費の補助のためおよそ2400万円の補正予算案を提出しています。止まらない物価上昇に円安が拍車をかける不安は拭えません。
足立区立江北小学校 武智勇喜校長「やはり不安はありますね、足立区はおいしい給食を提供するために色々と工夫しているんですね。その中で食材が上がるということは非常に厳しい」
円相場は今週、一時1ドル135円台半ばというおよそ24年ぶりの安値をつけました。日銀の黒田総裁は急速な円安の進行は「経済にマイナスであり望ましくない」としています。
一方で…
日銀 黒田東彦 総裁「金融緩和を粘り強く続けることで経済をしっかりとサポートしていくことが必要であるという風に考えております」
日銀は17日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和を維持することを決めました。金融引き締めを決めている欧米との金利の差から円安が一段と進む可能性があります。また、日本ではコーヒー豆をほぼ輸入に頼っていますが…
やなか珈琲 権藤則彦社長「もう2倍の価格で買い付けをするしかないという状況ですね」「現在の在庫限りで販売終了予定になっていますブラジルのコーヒーになります」
こちらのコーヒーチェーンでは価格の高騰から、一部の銘柄について新たな買い付けをやめ、在庫限りとしています。一方で1カ月ほど前からアフリカ南東部マラウイ産のコーヒーを扱い始めました。
権藤則彦社長「正直まだこの価格で、こういうクオリティのコーヒーがあったんだねっていうちょっと驚きがありましたね」
価格高騰の中、活路を見出したマラウイのコーヒー。常連客に味を聞いてみました。
常連客「ちょっとほろ苦い感じで、香ばしい感じがします」
そして「名前のせい」で値上げをしづらい業種も…
100円ショップすまいる 堀弘子さん「『100円ショップ』じゃなくなっちゃいますよね値上げしちゃうと」
東京・練馬区の100円ショップ。100円ショップとはいいますが、商品を見ると、ところどころに「150円」と書かれた値札があります。プラスチック製品が大きな影響を受けているといいます。
100円ショップすまいる 堀弘子さん「ポリ袋なんかだと、70リットル10枚入りだったものがなくなってしまったので今度は8枚入りのものに切り替えました」「(100円を)維持できるものは維持していきたいですね」
日用品が中心のため、客も困惑しています。
客「まあ仕方がないのかなーと思いつつ、上げられると困るかなーとは思っています」
●豪ドル支える新政権、「反中」姿勢はマイナス要因か 6/19
オーストラリアがインフレ高進を背景に金融引き締めを加速させ、豪ドルは新たな上昇局面に入りました。足元はドルに翻ろうされていますが、目先は底堅い値動きが予想されます。総選挙で発足した新政権の政策運営が、豪ドル高を後押ししそうです。
米連邦準備制度理事会(FRB)による引き締め加速への思惑から、足元のドルはほぼ全面高。しかし、主要通貨が全般的に対ドルで弱含み基調を強めているなか、豪ドルの底堅さが目立ちます。豪ドル・ドルは節目の0.70ドルを割り込んでも、同水準に戻す場面がみられます。ポンドやユーロに対しては数年来の高値圏で推移し、主に欧州通貨に対して買いが入りやすい地合いです。
コロナ禍やウクライナ戦争を背景としたインフレ高進を抑止しようと、豪準備銀行(中銀)が引き締め姿勢を強めているのが豪ドル高の主因です。今年1-3月期の消費者物価指数(CPI)は前年比+5.1%と、伸びは前期を上回り2001年以来の高水準に達しました。これを受け、中銀は5月に11年超ぶりに政策金利を引き上げ、6月には利上げ幅を拡大して引き締めを加速させています。
雇用関連統計では、失業率が3.9%と歴史的な低水準を記録し、労働市場の引き締まりで賃金は今後も上昇が予想されます。インフレ圧力の継続で中銀はさらにタカ派姿勢を強めることが見込まれます。一方、5月21日の総選挙で発足したアルバニージー政権の政策運営も、豪ドル高の支援材料となるでしょう。労働党が公約として掲げてきた最低賃金の引き上げが成立すれば物価を一段押し上げる要因になります。
現時点での市場シナリオは、年末までに政策金利は2.6%付近に達する見通し。中銀がハト派からタカ派に転じたことで一気に豪ドル選好地合いに傾き、それが欧州通貨よりも強い理由になっているのかもしれません。金融引き締めに関してはFRBの後塵を拝していましたが、このペースの回復と引き締めならオーストラリアの政策金利は年末時点でアメリカに追いつく可能性もあります。
一方、豪ドルにとってマイナス要因となるのは、今後の対中関係でしょう。両国関係は2010年代前半には、経済面での戦略的パートナーとして良好でした。その後は中国の太平洋での軍事行動や対豪不動産投資などが問題視されはじめ、コロナ発生源をめぐり決定的に悪化。新政権発足後、2年ぶりに開かれた中国との外相会談では、貿易や外交で安易に妥協しないスタンスを強調しています。
アルバニージー首相が所属する労働党は、選挙戦で従来の親中路線を封印して9年ぶりの政権交代を実現しました。馬脚を表せば国内世論はたちまち政権批判に燃え上がるとみられ、不安定な政治が豪ドルの重石になりかねません。 

 

●ドル円見通し 6月16日深夜から4円近いV字反騰、歴史的な円安相場続く 6/20
概況
ドル円は6月15日午前高値で135.58円を付けて2021年1月底102.57円以降の高値を更新したが、米FOMCでの0.75%の超大幅利上げ決定を通過しつつ目先のドル買い材料一巡として16日夜には131.48円まで急落した。17日の日銀金融政策決定会合で何らかの円安けん制や金融緩和政策の変化もあり得るとしていったん円の買い戻しが優勢となったことで15日午前高値からの下げ幅は4.10円となった。
しかし日銀の緩和姿勢は変わらないだろうとみて再び円売りが強まり、日銀が金融政策の現状維持を決定したことから17日深夜には135.42円へ戻し、16日深夜への下げ幅をほぼ解消した。16日深夜安値からは4円近いV字反騰であり、直前2日間で4円を超えた下落を1日で解消した。
日銀の金融緩和続き、円安けん制も効果なし、米連銀はドル高支持姿勢
日銀は6月17日の金融政策決定会合でマイナス金利と量的金融緩和政策の維持を決定、毎営業日の指値オペによる長期金利抑制方針についても対象を10年債のみならず7年債などへ拡大した。
黒田総裁は会見で、景気認識については「基調としては持ち直しているが回復途上」、「資源価格上昇による下押し圧力を受けている」とし、「賃金の本格的な上昇を実現するには金融緩和を粘り強く続けることで経済をサポートしていくことが必要」とした。為替動向については「最近の急速な円安進行は企業の先行きの不確実性を高め経済にとってマイナスで望ましくない」とけん制したが踏み込んだ発言はなく、「今後も金融為替市場の動向や物価への影響を十分注視する」とした。その上で「賃金の上昇を伴う形で2%の物価目標を安定的・持続的に実現できるよう金融緩和を実施していく」と強調した。
市場が懸念する長短金利操作への限界については「限界は生じていない」とし、「変動幅の引き上げは緩和効果が弱まる」と否定、「国債を無制限に購入する指し値オペなど今後も必要な措置を講じていく」と述べた。インフレの進行による家計圧迫に対する批判が強まりその大きな原因が円安とされていることで、従来までの円安にはメリットがあると円安許容姿勢を変えなかったところからは変化もみられるが、具体的な円安容認限界水準や円安抑制への行動指針を示していないためけん制効果は乏しい。
米連銀の大幅利上げは続く
米連銀は6月16日未明に通常の3倍にあたる0.75%の超大幅利上げを決定した。事前にWSJ紙が0.75%利上げの可能性を報じていたことでサプライズ感はなく、当面の重要イベント通過とし、16日のスイス中銀や英中銀による利上げも踏まえてFOMC後はドル高が一巡してドル安へと流れが変わった。しかし、米連銀は7月にも0.50%か0.75%の大幅利上げを行い、その後もインフレ抑制が実現するまで大幅利上げを継続する可能性が高まっている。6月17日にはパウエル米連銀議長は会合挨拶で「2%の目標へインフレを押し下げることに強く集中している」とし、「米連銀の物価安定への強い取り組みこそ通貨ドルの価値への幅広い信頼を醸成している」と述べ、基軸通貨としてのドルの強さが「さまざまな利益」をもたらしているとドル高歓迎姿勢を強調した。パウエル議長は6月22日に上院、23日に下院で半期毎の議会証言で金融政策報告を行う予定であり、バイデン政権によるインフレ抑制が最重要課題とする中での金融引き締め継続を強く主張するのだろうと思われる。
6月17日にはミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が今回の0.75%利上げを支持、7月も0.75%利上げをしてその後は0.50%利上げを継続してゆくことが望ましいと述べたが、同総裁はFOMC投票権を持っていないもののハト派として知られているために大幅利上げ継続への積極的支持発言として注目された。一方でカンザスシティー連銀のジョージ総裁は今回のFOMCでの0.75%利上げに反対したが、政策の不透明感が増すことが反対理由だったと述べた。株安や長期債利回りの高騰などによる金融市場全般の動揺を配慮したものといえる。
米長期債利回り上昇基調と日米金融政策差による歴史的円安は継続
長期金利の指標である米10年債利回りは6月14日に一時3.50%へ上昇してから3.18%までいったん低下していたが、16日は一時3.50%へと再び上昇、17日も3.31%から3.19%の範囲で高止まりし、前日比0.03%上昇の3.23%で終了した。利上げに敏感な2年債利回りは6月10日の急騰で5月11日の2.86%を突破して3%台に到達、6月14日には3.45%を付けて2007年12月以来の高水準とし、その後は低下したものの17日は前日比0.09%上昇の3.19%として高止まりしている。日本の新発10年債利回りも日銀のYCC上限である0.25%を16日と17日に一時超える等上昇しているとはいえ相対的には相当程度の低水準にあるため、ドル円は米長期債利回りと同調した上昇基調での推移がまだ続くと思われる。
今回のFOMCにおける参加メンバー18人の金利見通しでは2022年末に3.25〜3.50%との予想が8人で最多、2023年末に3.50〜3.75%との予想が7人と最多だったが3.75〜4.00%が4人、4.00〜4.25%も4人であり、今年末にかけて急激な利上げを行った後もまだ暫く利上げが継続してゆく可能性が高い。これに対して日銀は黒田総裁在任中の方針転換はなさそうであり、その後に新総裁が就任したとしても低成長で賃金が伸びない中でインフレによる消費低迷が景気鈍化へと進み、貿易収支・経常収支悪化の埋め合わせによる円売りドル買いも拡大してゆきかねない状況であり、まだ暫くは歴史的な円安相場が続くのだろうと思われる。
●外為:1ドル135円18銭前後と大幅なドル高・円安で推移 6/20
20日の外国為替市場のドル円相場は午前8時時点で1ドル=135円18銭前後と、前週末午後5時時点に比べ86銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=141円77銭前後と56銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●円相場 一時1ドル135円台半ばまで値下がり 6/20
週明けの20日の東京外国為替市場は、日米の金融政策の方向性の違いを手がかりに円を売ってドルを買う動きが続き、円相場は午前中、一時、1ドル=135円台の半ばまで値下がりしました。
週明けの20日の東京外国為替市場は、朝方、円を売ってドルを買う動きが増え、円相場は一時、135円台の半ばまで値下がりしました。
先週はアメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が大幅な利上げを決める一方、日銀は今の大規模な金融緩和策の維持を決定し、外国為替市場では、日米の方向性の違いを手がかりに、円を売って金利が高いドルを買う動きが増えていました。
市場関係者は「円安ドル高が進みやすい状況に変わりはないが、一部の投資家の間では、アメリカの景気は急速な金融引き締めによって悪化してしまうのではないかという懸念も出ていて、ドルを売って円を買う動きも見られる」と話しています。 
●東京円、38銭安の1ドル=134円65〜68銭 6/20
週明け20日の東京外国為替市場で、円相場は午後5時、前週末(午後5時)比38銭円安・ドル高の1ドル=134円65〜68銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、40銭円安・ユーロ高の1ユーロ=141円63〜67銭で大方の取引を終えた。
●東京外国為替市場概況・17時 ドル円、弱含み 6/20
20日午後の東京外国為替市場でドル円は弱含み。17時時点では134.65円と15時時点(135.04円)と比べて39銭程度のドル安水準だった。岸田首相から「(黒田日銀総裁との会談で)急激な円安は憂慮すべきとの話があった」との発言が伝わると売りで反応し、一時134.54円と本日安値を付けた。一方、長期的な円安・ドル高トレンドを期待する声が依然として多い中で押し目買いがみられるなど一巡後は下げ渋っている。
ユーロドルは伸び悩み。17時時点では1.0517ドルと15時時点(1.0528ドル)と比べて0.0011ドル程度のユーロ安水準だった。東京時間からの地合いを引き継いで欧州勢参入後には一時1.0543ドルまで値を上げた。一方、先週末高値の1.0560ドルがレジスタンスとして機能すると、ユーロ豪ドルなど一部ユーロクロスが下げた影響を受けて1.0510ドル台まで上げ幅を縮めた。
ユーロ円は軟調。17時時点では141.62円と15時時点(142.19円)と比べて57銭程度のユーロ安水準だった。岸田首相の発言やその他ユーロクロスの下げを受けて141円台半ばまで失速した。
●ロンドン外為 円、134円台後半 6/20
週明け20日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、ドル買いの動きが一服して円が買い戻され、1ドル=134円台後半に上昇した。正午現在は134円85〜95銭と、前週末午後4時(135円25〜35銭)比40銭の円高・ドル安。
海外市場の流れを引き継ぎ、134円台後半で始まった後はもみ合いが続いた。米国市場が休場となるため、様子見ムードが強い。
対ユーロは1ユーロ=142円00〜10銭(前週末午後4時は141円45〜55銭)と、55銭の円安・ユーロ高。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0530〜0540ドル(1.0455〜0465ドル)。
ポンドは1ポンド=1.2245〜2255ドル(1.2180〜2190ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9625〜9635フラン(0.9720〜9730フラン)。 

 

●外為 1ドル135円03銭前後とドル高・円安で推移 6/21
21日の外国為替市場のドル円相場は午後0時時点で1ドル=135円03銭前後と、前日午後5時時点に比べ38銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円21銭前後と60銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●世界の利上げ連鎖で円安相場が再起動か 次の節目はどこに 6/21
外国為替市場で円安相場が再起動し、1ドル=140円の到達が視野に入ってきた。背景にあるのは世界的な利上げムードのさらなる高まりだ。
6月10日に米国の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で8.6%(5月分)上昇と、3〜4月を超える大幅なプラスとなり(米CPIショック、関連記事:「1ドル140円も? 24年ぶり円安について知っておきたい10のこと」)、15日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では通常の3倍と異例の「0.75%幅」の利上げが決まった。
FRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長は記者会見で、次回7月会合の利上げについても「0.5%か0.75%の判断になる可能性が高い」と語った。米国でのインフレはFRBの従来想定よりも上振れており、利上げペースの加速によって経済活動の過熱を早期に押さえ込みたい狙いがある。
それだけではない。16日にはスイス国立銀行(中銀)も利上げに動いた。およそ15年ぶりの利上げで、市場にとっては想定外のサプライズ。市場関係者に、「そこまで世界的にインフレ懸念は強いのか」と印象づけた。
翻って日銀。17日の金融政策決定会合の結果は「現状維持」で、現行の金融緩和を維持することを決めた。国内でも品目によっては値上げが相次ぐが、「資源価格上昇によるコストプッシュ型のインフレで、我々が目指す物価上昇とは異なっている」(黒田東彦総裁)ため、「金融を引き締めると、さらに景気の下押し圧力になる」というのが緩和維持の理由だ。
5月に始まった「日銀は緩和、円安物価高対策は政府」との役割分担路線を6月の決定会合でも踏襲した形だ。15日の岸田文雄首相の記者会見でも「金融政策については確かに為替にも影響を与えるが、金融政策は一方で金利を通じて中小企業、零細企業の経営上の負担にも大きな影響を与える」との言及があった。17日の黒田会見と表裏一体だ。東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「政権は、円安を止めるために日銀に金利を引き上げてほしいとは思っていない」とみる。
主要な中銀が利上げなど金融政策上の引き締めに動くなか、日銀がいわば孤立的に金融緩和の維持を続けることで、円安ムードが補強されている。20日の東京時間の円相場は1ドル=135円近辺。24年ぶりの円安水準で小動きしている。
米国と日本、それぞれの分岐点
今後のシナリオはどうなるか。分岐点はいくつかあるが、特に米国で言えば、加速する利上げが、実体経済に波及していつごろどこまで経済を冷やすのか、だろう。
利上げの影響は、一部の金融取引を除けば、じわじわと時間差で顕在化する。CPIなど統計上の物価指標だけを見ていても判断しづらい。小売売上高や住宅着工、米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数など景況感指数、個別企業の決算など、様々な指標が発表されるたびに市場で材料視されることになる。
株式市場では利上げが景気を冷やすことへの警戒感が先行しており、ダウ工業株30種平均は節目の3万ドルを割れた。円相場にとっては「インフレが弱まりそうなデータ」=「米利上げの鈍化、打ち止め」=「ドル買いの巻き戻しによる円高」という考え方になる。
国内要因の焦点は主に2つある。インバウンドの復活やエネルギー政策の修正といった、実需の円売りを相殺・縮小する動きがどこまで進むか。もう1つは、世論や政治的な圧力が日銀に政策の修正を迫るかどうか。いずれの分岐点も、今後数カ月内に状況が大きく変わりうる。
実際、スイス中銀の利上げ発表の直後には、日銀も緩和政策の修正に動くのではないかとの思惑が一時的に強まり、17日の日銀の金融政策決定会合前には一時131円台まで円が買い戻される場面もあった。
国内大手FX業者の売買動向データによれば、足元のドルの「売り」「買い」の建玉の合計が16日までは急増したが、17日には解消してしまったという。ポジションはなお「買い」(ドル高・円安で利益を狙うポジション)方向に傾いているものの、様子見の向きも根強い。目先の流れが円安であることは市場のコンセンサスだが、その賞味期限は、意外に短いかもしれない。 
●円相場、135円22〜22銭 6/21
21日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=135円22〜22銭と、前日(134円65〜66銭)に比べ57銭の円安・ドル高となった。 
●円安ドル高進み一時1ドル=136円台 24年ぶりの円安水準を更新 6/21
外国為替市場では円相場が一時1ドル=136円台に値下がりし、約24年ぶりの円安水準を更新しました。外国為替市場では円を売ってドルを買う動きが加速し、一時1ドル=136円台に値下がりしました。1998年10月以来、約24年ぶりの円安水準を更新しました。
日銀は先週に金融緩和策の継続を発表しましたが、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)など、世界の主要な中央銀行はインフレを抑えようと金融引き締めを早めていて、各国との方向性の違いが意識されています。
●24年ぶり円安ドル高水準  一時1ドル=136円台まで下落 ロンドン為替市場  6/21
円安が進行している。21日のロンドン外国為替市場の円相場は円を売ってドルを買う動きが強まり円は対ドルで一時136円台まで下落した。1998年10月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準になる。
●ロンドン外為市場 1ドル=136円台 24年ぶり円安ドル高水準に  6/21
21日のロンドン外国為替市場では円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は一時、1ドル=136円台まで値下がりして、およそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
21日のロンドン外国為替市場では、大幅な利上げを進めるアメリカと、大規模な金融緩和を続ける日本との金融政策の方向性の違いが引き続き意識され、円を売ってドルを買う動きが強まりました。
この結果、円相場は一時、1ドル=136円台まで値下がりし、1998年10月以来、およそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
円は、ユーロに対しても値下がりしています。
市場関係者は「日本の金融政策が転換する兆しが見えないため、日米の金利差の拡大が意識されていて、当面、円が売られやすい状況が続くとみられる」と話しています。 

 

●NY円、一時136円後半 6/22
連休明け21日のニューヨーク外国為替市場の円相場は円がドルに対して大幅下落し、一時1ドル=136円71銭と1998年10月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準を付けた。日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが続いており、日本での輸入品のさらなる値上げにつながる可能性がある。
午後5時現在、前週末比1円76銭円安ドル高の1ドル=136円64〜74銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0530〜40ドル、143円90銭〜144円00銭。
日銀が大規模金融緩和策を維持する一方、米連邦準備制度理事会は金融引き締めを急速に進める方針を示している。
●NY外為市場 1ドル=136円台後半 24年ぶりの円安ドル高水準更新  6/22
21日のニューヨーク外国為替市場では円安が一段と進み、円相場は一時、1ドル=136円台後半まで値下がりしておよそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
21日のニューヨーク外国為替市場ではロンドン市場の流れを引き継いで円を売ってドルを買う動きが強まり、円安がじりじりと進む展開となりました。
このため円相場は一時、1ドル=136円台後半まで値下がりして1998年10月以来、およそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
急速な円安の背景には、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が先週、異例の0.75%の大幅利上げに踏み切り、アメリカの長期金利が上昇傾向にあるのに対して、日銀は大規模な金融緩和を続けて長期金利の上昇を抑え込む姿勢を示していることから日米の金融政策の方向性の違いが意識され、金利差が拡大するとの見方が広がっていることがあります。
また、円相場はユーロに対しても一時、1ユーロ=143円台後半まで値下がりしました。
市場関係者は「円は世界のほかの国の通貨の中でもドルに対する値下がりが際立っていて、値下がりのペースがこのところ速まっていることが日本経済に及ぼす影響を懸念する声も出ている。当面、円安に歯止めがかかる材料は見当たらず、どこまで円安が進むのか、見通せない状況が続いている」と話しています。
NYダウ平均一時700ドル超の大幅値上がり
21日のニューヨーク株式市場は、このところ売られていた銘柄を中心に買い戻しの動きが強まり、ダウ平均株価は一時、先週末に比べて700ドルを超える大幅な値上がりとなりました。
終値は先週末に比べて641ドル47セント高い3万530ドル25セントでした。
ダウ平均株価は先週16日に1年5か月ぶりに3万ドルの大台を割り込み、先週末の終値は前の週に比べて1500ドルを超える大幅な値下がりとなっていましたが、下落にひとまず歯止めがかかりました。
IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数も2.5%の大幅な上昇となりました。 
●NY外為 円、136円近辺 6/22
22日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、午前8時現在1ドル=135円98銭〜136円08銭と、前日午後5時(136円64〜74銭)比66銭の円高・ドル安で推移している。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0508〜0518ドル(前日午後5時は1.0530〜0540ドル)、対円では同142円92銭〜143円02銭(同143円90銭〜144円00銭)。
●NY外為市場 1ドル=136円台後半 24年ぶりの円安ドル高水準更新  6/22
21日のニューヨーク外国為替市場では円安が一段と進み、円相場は一時、1ドル=136円台後半まで値下がりしておよそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
21日のニューヨーク外国為替市場ではロンドン市場の流れを引き継いで円を売ってドルを買う動きが強まり、円安がじりじりと進む展開となりました。
このため円相場は一時、1ドル=136円台後半まで値下がりして1998年10月以来、およそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
急速な円安の背景には、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が先週、異例の0.75%の大幅利上げに踏み切り、アメリカの長期金利が上昇傾向にあるのに対して、日銀は大規模な金融緩和を続けて長期金利の上昇を抑え込む姿勢を示していることから日米の金融政策の方向性の違いが意識され、金利差が拡大するとの見方が広がっていることがあります。
また、円相場はユーロに対しても一時、1ユーロ=143円台後半まで値下がりしました。
市場関係者は「円は世界のほかの国の通貨の中でもドルに対する値下がりが際立っていて、値下がりのペースがこのところ速まっていることが日本経済に及ぼす影響を懸念する声も出ている。当面、円安に歯止めがかかる材料は見当たらず、どこまで円安が進むのか、見通せない状況が続いている」と話しています。
NYダウ平均一時700ドル超の大幅値上がり
21日のニューヨーク株式市場は、このところ売られていた銘柄を中心に買い戻しの動きが強まり、ダウ平均株価は一時、先週末に比べて700ドルを超える大幅な値上がりとなりました。
終値は先週末に比べて641ドル47セント高い3万530ドル25セントでした。
ダウ平均株価は先週16日に1年5か月ぶりに3万ドルの大台を割り込み、先週末の終値は前の週に比べて1500ドルを超える大幅な値下がりとなっていましたが、下落にひとまず歯止めがかかりました。
IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数も2.5%の大幅な上昇となりました。
●ニューヨーク外国為替市場概況・22日 ドル円、4日ぶり反落 6/22
22日のニューヨーク外国為替市場でドル円は4営業日ぶりに反落。終値は136.26円と前営業日NY終値(136.57円)と比べて31銭程度のドル安水準だった。東京市場で一時136.71円と1998年10月以来約24年ぶりの高値を付けたあとだけに海外市場では利食い売りなどが先行。米10年債利回りが3.12%台まで大幅に低下すると、全般ドル売りが活発化し一時135.69円と日通し安値を付けた。ただ、クロス円の上昇につれた買いが入ると136.30円付近まで下げ渋った。360ドル超下落したダウ平均が一時上げに転じるなど、米国株相場が底堅く推移したことも相場を下支えした。
なお、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は米上院銀行委員会で議会証言を行い、「継続的な利上げは適切」「FRBはインフレ率2%への回帰に強くコミット」などと発言。前週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見と同様の姿勢を示した。議会証言後の質疑応答では「米経済のソフトランディング(軟着陸)を目指しているが、達成は非常に困難」「現在、リセッション(景気後退)の可能性は高まっていない」などと語った。市場では「警戒していたほどタカ派的な内容ではなかった」との声が聞かれた。
ユーロドルは3日続伸。終値は1.0566ドルと前営業日NY終値(1.0533ドル)と比べて0.0033ドル程度のユーロ高水準だった。欧州株安や欧州長期金利の低下を受けて、日本時間夕刻に一時1.0469ドルまで売られたものの、NY市場では買い戻しが優勢となった。米長期金利が大幅に低下したことを背景に、対欧州通貨中心にドル安が進むと、24時前に一時1.0606ドルと日通し高値を付けた。
ドルスイスフランは一時0.9581スイスフランと3日以来のドル安・スイスフラン高水準を付けた。ジョーダン・スイス国立銀行(スイス中銀、SNB)総裁が「追加利上げの必要もある」「インフレデータは追加利上げの必要性を示唆」と述べたことで、SNBによる追加利上げ観測が高まった。
ユーロ円は小幅ながら4日続伸。終値は143.99円と前営業日NY終値(143.96円)と比べて3銭程度のユーロ高水準。米国株相場の下げ渋りなどを受けて、投資家のリスク志向が改善すると円売り・ユーロ買いが優勢となった。3時過ぎには一時144.25円と8日に付けた2015年1月以来の高値に面合わせした。

 

●円全面高、ドル円135.18円まで下落 元財務官「介入の可能性排除できず」 6/23
円が主要国通貨に対し全面高に。ドル円は135.80円付近から135.18円まで下落している。元財務官の発言に海外勢が反応しているもよう。元財務官の中尾氏はブルームバーグのインタビューで、円の下落を食い止めるために為替市場への介入の可能性を排除することはできないと述べた。そのほか、協調介入の可能性は難しいと述べたほか、現在の円安は日本経済にとってよくない。現在の円安は明らかに金融政策が一役買っているとも述べた。
●この米ドル高円安の流れはどうなるのでしょうか? 6/23
金融市場の予想については、あくまでも「可能性」の話であることは、最初に申し上げます。前回の記事「最近の米ドル高円安はなぜ発生したのか」の公開日6月7日からおおむね円安米ドル高の方向に推移しています。6月22日現在の円安値・米ドルの最高値は1ドル=136円を超えました。
私は、今後は円安ドル高への動きが収まってくる可能性があると考えています。その理由を解説していきましょう。
為替相場が動く要因は様々ありますが、金利が原因の7割程度であると個人的な研究で分かってきました。特に最近では、日米の金利差が主因になっていると考えるのが自然ではないでしょうか。金融の世界では基本的に、金利が高いところに資金は流れます。この6月の流れを丁寧にお浚いしてみましょう。
米国の中央銀行FRB(Federal Reserve Board)は、その金融政策を決定する会合FOMC(Federal Open Market Committee: 連邦公開市場委員会)を6月14日〜15日の2日間開催しました。FOMCはほぼ90日に1回、年に8回開催されます。結果は、3月から始まった引締め(利上げ政策)を「更に」強化するものでした。政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の現状の誘導目標を、3月に0.25%利上げ、次の5月は0.5%利上げ、 そして6月では0.75%利上げしました。FRBでは0.25%を1ノッチ(Notch:歯車の刻み)といい、1つの単位として使うことがあります。3月は1ノッチ、5月は2ノッチ、6月は3ノッチということになります。
FRBの目標については前回詳しくご説明したのでここでは深くは触れませんが、消費者物価指数(CPI : Consumer Price Index)は2022年5月分のものは8.6%と、目標の2%と比べて高く、利上げも止む無しといった具合で、しかももっと早く利上げに取り掛かれなかったのか、と反省の声まで上がってきています。
現在の市場関係者の焦点は、今年年末の米国の政策金利は「3%近辺」かどうか、という点に移っています。現在、1.5%近辺であり、これ以降、更に1.5%の利上げは織り込まれているということです。今後、利上げの効果が出てくるまでのタイムラグもあり、米国の消費者物価の動きには注目が集まっています。
片や、日本の中央銀行は日本銀行(BOJ : Bank of Japan)です。金融政策決定会合が、FRBから2日遅れ、6月16日〜17日の2日間で開催されました。日本銀行では米国のFRBとは違い、量的金融緩和政策の維持が決定し発表されました。政策金利である無担保コール翌日物金利(短期金利)は、0%からマイナス金利が当面、維持されることとなっています。
消費者物価指数も直近で2.1%の上昇となっており、先進国の共通目標の2%近辺であり、そういう意味では今回の会合での決定内容で良かったともいえます。しかし、経済目標の根本には経済成長があるわけであり、経済成長率(GDP伸び率)が四半期ベースでは低く、株式市場も不安定で、市場に明るさはありません。
日本銀行の金融政策の今後の注目点は、黒田東彦総裁の任期が2023年4月8日で終了するということです。要は後任人事とそれに伴う政策変更の可能性です。今のところ、市場の予想では雨宮正佳副総裁のようです。雨宮氏の発言などから予想をすると、金利の「変動幅を広げる」可能性が高いということは言えます。この変動幅を広げるということは、実はクセモノで「幅」の概念とすると上下に幅があるわけですが、政策で使われるときは上下どちらかに変動させるときに使います。今回は金利、とくに長期金利を「上げる」方向の様です。
日米金利差が為替相場を動かす要因ですので、そういう意味では、日米金利差が狭まっていったら、円安ドル高への動きが収まってくる可能性があります。
●ロンドン外国為替市場で円相場、1ユーロ = 144円を超える 6/23
6月23日0時53分頃、ロンドン外国為替市場で円相場は1ユーロ = 144円を超え、前日3時頃の価格(143.72円)から0.29円(0.20%)上昇となる144.01円となった。 
●円相場、135円32〜32銭 6/23
23日の東京外国為替市場の円相場は、正午現在1ドル=135円32〜32銭と、前日(136円23〜24銭)に比べ91銭の円高・ドル安となった。 
●東京外国為替市場で円相場、1ユーロ = 143円を切る 6/23
6月23日11時58分頃、東京外国為替市場で円相場は1ユーロ = 143円を切り、前日17時頃の価格(142.92円)から0.01円(0.01%)下落となる142.91円となった。
●明日の為替相場見通し=米長期金利動向など注目 6/23
明日の為替相場見通し=米長期金利動向など注目  今晩から明日にかけての外国為替市場のドル円相場は、今晩のNYダウや米長期金利の動向に左右されそうだ。予想レンジは1ドル=134円90〜135円80銭。
この日の東京市場では、135円前半へとドル安・円高方向に振れた。時間外取引の米長期金利が低下基調となったことがドル売り・円買いを誘った。この米長期金利がどう動くかが焦点となる。今晩はパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の下院での議会証言が予定されているが、基本的には昨晩の上院での発言と似た内容となるとみられている。また、米新規失業保険申請件数や明日の日本の5月消費者物価指数(CPI)なども注目されそうだ。
●「リバース通貨戦争」の号砲鳴る−物価抑制へ各国中銀が通貨高目指す 6/23
口火を切ったのは欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル理事だった。同理事は2月、米ドル高・ユーロ安の進行度合いを示すチャートを掲げて見せた。カナダ銀行のマックレム総裁はその2カ月後、カナダ・ドル安に不満を表明。スイス国立銀行のジョルダン総裁はスイス・フラン高を望む考えを示唆した。
米連邦準備制度がインフレ抑制に積極的に取り組む態勢を受けて、米ドルは年初来で7%上昇。各国・地域の中銀当局者は、持続的な物価高騰に歯止めを掛けようと必死なあまり、輸入物価の押し下げにつながる自国・地域の通貨高を現時点では歓迎すると、あからさまとも言えるシグナルを発し始めた。
こうした形の介入はこれまで極めて異例であり、口先だけであっても相場を動かすことになった。今月16日には、スイス中銀が2007年以来の利上げに踏み切ってトレーダーの度肝を抜き、スイス・フランは7年ぶりの高水準を付けた。その数時間後には、イングランド銀行が0.25ポイント利上げを発表し、必要なら一段と大幅な利上げの用意があることを示唆した。
各国・地域のインフレ対策において、為替相場がかつてないほど重要な要素となっている。ゴールドマン・サックス・グループのエコノミスト、マイケル・ケーヒル氏は先進各国・地域の中銀がこれほどまでに積極的に強い通貨を目指した事例は記憶にないと話す。
外国為替市場ではこうした現象を「リバース(逆の)通貨戦争」と呼んでいる。各国・地域は10年余りにわたり、企業の輸出競争力の強化と経済成長促進を狙い、自国・地域の為替相場の下落を望んできたが、現状はその逆になっているためだ。燃料や食料品、電化製品など広範な品目が値上がりする状況では、購買力強化が急激に重要度を増している。
ただ、これは危険なゲームでもある。野放しのままなら、主要通貨の大幅な為替相場変動を引き起こし、輸出に依存する製造業の競争力が低下するほか、多国籍企業の収益に打撃となって、インフレの重荷を世界中で押し付け合う事態になりかねない。
通貨戦争は勝者がいれば敗者もいる悪名高きゼロサムゲームだ。ドイツ銀行のチーフ国際ストラテジストを務めるアラン・ラスキン氏は、どの国も「同じものを得ようとする」ものの、「通貨の世界ではそれは不可能だ」と指摘した。
通貨高がインフレ抑制にどれほど効果があるかは正確には不明なままだ。為替相場が消費者物価指数(CPI)に反映されるパススルー効果について、米連邦準備制度理事会(FRB)や米財務省の元高官で、現在はシティグループ・グローバル・マーケッツのグローバル・チーフエコノミスト、ネイサン・シーツ氏はごくわずかだと語る。
しかし、物価高騰の局面ではこうした効果が高まる可能性もある。シーツ氏は、米ドル相場の10%上昇が以前であればインフレ率を0.5ポイント程度鈍化させるのに過ぎなかったのに対し、現時点ではそれが「1ポイント」になっているかもしれないとの推計を示した。
一方で、当局による介入には失敗の大きなリスクが伴うと複数の専門家は警告する。元米財務省当局者で、公的通貨・金融機関フォーラム(OMFIF)の米国議長を務めるマーク・ソーベル氏は、「為替相場をターゲットとするのは極めて気まぐれで成果に乏しい取り組みとなりかねない」とし、「特定の政策選択に外為市場がどう反応しそうか予測するのはしばしば無駄足となる公算が大きい」とコメントした。

 

●ドル高にインフレ緩和効果 利上げで進行―米FRB議長 6/24
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は23日、下院金融サービス委員会で証言し、FRBの利上げを受けた外国為替市場でのドル高進行には、インフレ緩和を促す効果があるとの見方を示した。米インフレ率が40年ぶりの水準に高止まりする中、輸入物価を安くするドル高を容認した形だ。
FRBは、歴史的な高インフレを抑制するため、積極的な利上げを推進。一方の日銀は大規模な金融緩和を堅持しており、日米の金利差が一段と拡大するとの観測から、円安・ドル高が加速した。
●ドル円、約1週間ぶり安値圏へ下落。米長期金利の急低下が重石に 6/24
23日(木)のドル円相場は大幅下落。アジア時間朝方にかけて、高値136.27まで上値を伸ばすも、一巡後に伸び悩むと、1中尾元財務官による「為替介入の可能性は排除できない」との見解発表や、2米経済指標の冴えない結果(米新規失業保険申請件数や米6月製造業・サービス業PMI速報値が予想比悪化)、3米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回りは6/10以来となる3.01%へ急低下。6/16に記録した3.49%からわずか1週間で48bpの低下幅)が重石となり、米国時間午前にかけて、安値134.27まで急落しました(日通し高値からちょうど2円下落)。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると(一目均衡表転換線をバックに下げ渋ると)、4パウエルFRB議長による「インフレを抑制するFRBのコミットメントは無条件」とのタカ派的な発言(米下院金融サービス委員会での議会証言)や、5ボウマンFRB理事による「7月会合での75bpの利上げ実施とその後数回の会合での少なくとも50bpの利上げ実施が適切となることを想定」とのタカ派的な発言、6米主要株価指数の底堅い動き、7米長期金利の持ち直し(米10年債利回りは3.01%から3.09%へ上昇)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間6/24午前5時30分現在)では、134.99前後で推移しております。
23日(木)のユーロドル相場は上値の重い展開。アジア時間朝方にかけて、高値1.0581まで上値を伸ばすも、一目均衡表雲下限をバックに伸び悩むと、1欧州経済の先行き不透明感(昨日発表されたフランス6月PMI速報値、ドイツ6月PMI速報値、ユーロ圏6月PMI速報値が軒並み市場予想比悪化)や、2ドイツ政府による国内ガス供給リスクレベルの上方修正(上から2番目の「警報」レベルへの引き上げ)、3欧州株の冴えない動き、4欧州債利回りの急低下(特にドイツ債)が重石となり、欧州時間朝方にかけて、安値1.0483まで下落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、5米経済指標の冴えない結果や、6米金利低下に伴うドル売り圧力が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間6/24午前5時30分現在)では、1.0522前後で推移しております。 
●東京市場 6/24
24日の東京市場はドルが小安い。基本は134円台後半を中心とした一進一退をたどるなか、終盤はややドル売りが目に付いた。
ドル/円は134.95円レベルで寄り付いたものの、積極的な動意に欠ける。日米金利や株価の動きをにらみつつ、一時135円台前半へとドル高が進展するも、勢いは続かなかった。再び134円台へと押し戻されると、終盤掛けてはドルの下げが加速。16時現在ではドル安値圏、134.55-60円で推移し欧米市場を迎えている。
一方、材料的に注視されていたものは、「FRB議長の議会証言」と「中国情勢」について。
前者は、22日の半期に一度の米上院議会証言で、パウエルFRB議長は「景気後退の可能性はある」と認めつつも、積極的な利上げを続ける姿勢を示し話題となったことに続き、23日には下院金融サービス委で「利上げを背景とした外国為替市場でのドル高にインフレを緩和する効果がある」と述べ、思惑を呼んでいたようだ。実質的なドル高容認発言であり、今後折に付け市場ではドル買い安心感を醸したものとして話題となる可能性もある。
対して後者は、台湾国防部が「中国軍機22機が今週2度目の防空識別圏に侵入した」と発表。また日本に対しても、防衛省の発表で「中国軍の爆撃機3機が沖縄本島と宮古島のあいだの上空を往復した」ことが明らかになっている。威嚇行為とみられる「力による現状変更」への圧力が強まるなか、日中は海洋会議開催し、領海侵入の「懸念」を伝達するとともに対応を求めたという。
●外為 1ドル134円93銭前後とドル高・円安で推移 6/24
24日の外国為替市場のドル円相場は午後6時時点で1ドル=134円93銭前後と、午後5時時点に比べ43銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円25銭前後と71銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●欧州株が堅調、為替相場は円安・ドル安に=ロンドン為替 6/24
欧州株が堅調に推移していることを受けて、為替相場はロンドン朝方にみられた円高・ドル高の動きを解消している。足元では円安・ドル安の動きを強めてきている。ドル円は135円台を一時回復。ユーロ円は142.40台へ、ユーロドルは1.0550台へと高値を伸ばしている。
●円高に振れたあとは円安方向に転じる、欧州株など堅調で=ロンドン為替 6/24
ロンドン市場は、序盤に円高方向に振れたあとは、円安の動きに転じている。欧州株や米株先物・時間外取引が上げ幅を拡大する動きがドル円やクロス円の下支えとなっている。この日発表された6月のドイツIfo景況感指数は92.3と前回の93.0から悪化したが、特段のユーロ売り反応は見られなかった。むしろ、景気回復の鈍化が中銀の利上げペースを緩和させるとの期待もあるようだ。ビスコ伊中銀総裁は、イタリアの経済状況は悪化している、と述べている。序盤は円高・ドル高の動きで始まった。ドル円は134.35レベル、ユーロ円は141.40レベル、ポンド円は164.81レベルまで下押しされた。ユーロドルは1.0520近辺、ポンドドルは1.2240近辺まで下押しされた。しかし、その後は流れが反転している。ドル円は135円台を回復、ユーロ円は142.60レベル、ポンド円は166.24レベルに高値を更新。ユーロドルは一時1.0550台へと上昇、ポンドドルは1.23台に乗せてきている。ユーロポンドはやや下押しされている。5月の英小売売上高は前月比、前年比ともにマイナスとなったが、ポンド売り反応はほとんど見られなかった。
ドル円は135円近辺での取引。ロンドン朝方には米債利回り低下とともに134.35レベルまで下落した。しかし、欧州株や米株先物が堅調に推移すると、米債利回りも上昇。ドル円は買いに転じて135円台を回復している。東京朝方の高値135.23レベルには届いていない。
ユーロドルは1.05台前半での取引。東京午後には1.0540台まで上昇する場面があったが、ロンドン朝方には売りが優勢となり、1.0520付近まで下押しされた。その後は、欧州株の堅調な動きとともに1.0555レベルまで高値を伸ばした。ただ、足元では米債利回りの上昇で1.05台前半へと押し戻されている。ユーロ円は序盤に141.40近辺まで安値を広げた。前日NY市場での安値水準にほぼ並んだが下抜けには至らず。その後は上昇に転じると、高値を142.60レベルまで伸ばした。対ポンドではやや売りに押されている。この日発表された6月独ZEW景況感指数は92.3と、前回の93.0から低下した。
ポンドドルは1.23近辺での取引。序盤に1.2240台まで下押しされたあとは、上昇に転じている。足元では高値を1.2310レベルまで伸ばした。ポンド円は序盤に164.80付近まで下落したが、その後は買いが強まっている。足元では高値を166.30近辺に伸ばしている。ユーロポンドは0.8590台から0.8560台へと軟化。総じてポンドが堅調に推移している。5月の英小売売上高は前月比、前年比ともにマイナスとなったが、ポンド売り反応はほとんど見られなかった。
●NY円 134円99銭〜135円09銭  6/24
24日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午前8時半現在、前日比07銭円安ドル高の1ドル=134円99銭〜135円09銭を付けた。
●「円安の深淵」に沈み込む日本円 日銀はなぜ動かない? 6/24
6月21日、米ドルに対する円相場が1ドル=136円を突破し、24年ぶりの円安ドル高となった。今年に入ってから、世界のあちこちで金利引き上げの動きが見られるが、日本の中央銀行である日本銀行は金融緩和の強化にこだわり続ける。米日の政策の違いが大きくなる中、ドルに対する円相場の今年の低下幅は累計19%に迫り、円は今やアジアで最も弱い通貨だ。
日本銀行はなぜ動かないのか?
円安はコインの裏表のようなもので、日本で大量買いをしようとする海外の消費者は「買い物のタイミングが来た!」と喜びを隠せない。一方、日本に居住する人が直面するのは、原料コストの上昇による電力価格と天然ガス価格の大幅な値上がりだ。
急激な円安に対し、ある時期から日本は全体として「淡々とした落ち着きある態度」を見せるようになった。しかし企業も消費者も苦しい胸の内を明かす。
一方で、日本のインフレ状況は全体として主要7ヶ国(G7)の他の国よりも深刻とは言えず、物価安定目標を2%と設定した日本銀行にとって、緩和政策の解除を迫る圧力はそれほど強くない。
他方で、日本銀行の白川方明・前総裁が述べたように、「日本がマクロ経済や為替政策を制定する過程では、発言権を持つ重要な経済団体責任者の多くが輸出に関連する製造業に従事しているため、日本国内では往々にして自国通貨の値上がりが激しく批判される。つまり、通貨安はそれほど激しく批判されない」ということがある。
日本銀行はあとどれくらい持ちこたえられるか?
しかし円安を放任することは経済発展に対しては諸刃の剣であり、物価高騰を招くおそれがある。
中銀証券の管濤グローバルチーフエコノミストは、「もしも日本国内のインフレ圧力に迫られて、日銀がイールドカーブ・コントロールをやめれば、日本国債の金利が跳ね上がり、日銀とその他の金融機関に巨額の損失をもたらし、さらには日本政府の償還の負担が増大することになる。それによって引き起こされる打撃は円安の打撃をはるかに上回り、波及する範囲はアジア地域にとどまらない」との見方を示した。
またUBSチーフ・インベストメント・オフィス(CIO)は、「これからいくつかの四半期の間に、日銀は政策の正常化に向けて動き始めるだろう。日銀は先週初めて日本経済の成長と動的インフレ見通しの改善を強調し、年内に超緩和政策を徐々に解消するための地ならしをした」との見方を示した。
●パウエル議長のドル高容認発言は通貨切り上げ競争を招くか 6/24
「近隣窮乏化政策」とは逆の「通貨切り上げ競争」のリスク
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は23日に、米下院の金融サービス委員会で議会証言を行った。前日の証言では、急速な金融引き締めによって米国経済が後退に陥る可能性について、「確かに可能性はある」と景気後退の可能性を認める発言をしていた(コラム「広がり始めたR-Word:米国景気後退(リセッション)観測」、2022年6月24日)。
パウエル議長は23日の証言で、「我々がインフレと戦う姿勢は無条件だ」と述べて、物価の安定確保を最優先する姿勢を改めて強調した。さらに注目されたのが、議員の質問に答える中で、ドル高にはインフレを緩和する効果がある、との見方を示したことだ。これは、単に事実を述べているだけでなく、パウエル議長がドル高を容認していることを示すもの、と広く受け止められた。
景気情勢が厳しい時には、自国通貨の下落を促すことで景気を支える「近隣窮乏化政策」が各国でとられやすい。現状はその逆であり、各国共に通貨高で物価高を抑えたいとの考えを持っている。しかし自国通貨を為替介入、あるいは金融政策を通じて為替を操作・誘導することは、国際協調の綻びにつながるため、主要国は控えている。
しかし、FRBがドル高の意向を明言すれば、他国も自国通貨高の意向を表明することを控えなくなり、最悪の場合には、「近隣窮乏化政策」とは逆に「通貨切り上げ競争」へ発展していくリスクがあるのではないか。
米国が日本の為替介入を認める可能性はさらに後退
パウエル議長がドル高容認の姿勢を明言する中では、日本が円安阻止のための為替介入を実施することを米国が認める可能性は一段と後退した、と言える。しかし、主要各国が自国通貨高の意向を強める中で、日本は米国との関係悪化を覚悟のうえで、米国の支持を得られないままに円買いドル売りの単独介入に踏み切る可能性も、わずかながら出てきたかもしれない。しかし、単独為替介入の効果は限られる。他方、すべての国が物価高に苦しみ、自国通貨高を望むこの時期に、日本のために協調での円買い介入に応じる国はないのである。
アジアを中心に新興国市場に混乱のリスク
パウエル議長のドル高容認の姿勢は、このように為替安定に向けた各国協調に綻びをもたらすものであるが、それに加えて、新興国にとっても大きな懸念である。FRBが急速に金融引き締めを進め、またドル高容認姿勢を強める場合、新興国からは資金が米国に流れ、一段の自国通貨安が物価高に拍車をかける可能性や、金融市場の混乱が誘発されやすいのである。
国内経済に弱さを受けて米国とは逆に金融緩和を進める中国では、そうしたリスクは高いのではないか。また、弱い中国経済の影響を受けて金融引き締めを進めにくいアジア新興国でも、そうしたリスクは今後高まってくる可能性があるだろう。

 

●NY円、反落 1ドル=135円15〜25銭で終了 欧米株高で円売り 6/25
24日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3日ぶりに反落し、前日比25銭円安・ドル高の1ドル=135円15〜25銭で取引を終えた。主要国の株式相場が上昇し、低リスク通貨とされる円が売られた。
米株式市場でダウ工業株30種平均が823ドル上昇した。投資家が運用リスクを取る動きが広がり、ドルやユーロに対して円が売られた。米長期金利が上昇して終え、日米金利差の縮小に歯止めがかかったのも円の重荷だった。
円の下値は堅く、上げに転じる場面もあった。ミシガン大学が24日発表した6月の米消費者態度指数(確報値)が50.0と過去最低となった。一方、消費者が予想するインフレ率は1年先と5年先がともに速報値から小幅に低下した。指標発表後に米長期金利が低下する場面があり、円にも買いが入った。
円の安値は135円40銭、高値は134円72銭だった。
円は対ユーロで3日ぶりに反落し、前日比65銭円安・ユーロ高の1ユーロ=142円60〜70銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで反発し、前日比0.0035ドル高い1ユーロ=1.0550〜60ドルで終えた。米欧の株高を受け、円と同様に低リスク通貨とされるドルがユーロに対して売られた。24日に独Ifo経済研究所が発表した6月の企業景況感指数が市場予想以上に低下したため、ユーロの上値は重かった。
ユーロの高値は1.0571ドル、安値は1.0517ドルだった。 
●今週のレビュー 6/20−6/24 6/25
ドル円相場
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初134.90で寄り付いた後、1-株式市場の堅調推移(アジア株や欧米株が軒並み上昇)や、2-上記1を背景としたリスク選好の円売り圧力(クロス円上昇→ドル円連れ高)、3-米金利上昇に伴うドル買い圧力(米10年債利回りが一時3.31%まで上昇)、4-直近高値(6/15高値135.60)突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売りが支援材料となり、週央にかけて、週間高値136.72(約23年8ヵ月ぶり高値圏)まで急伸しました。しかし、心理的節目137.00をバックに伸び悩むと、5-急ピッチな上昇に対する反動売り(利食い売りや新規の逆張り)や、6-パウエルFRB議長の半期に一度の議会証言を通過したことに伴う材料出尽くし感(パウエルFRB議長は100bpの利上げの可能性に関する質問に対し、「いかなる利上げ幅も排除しない」と回答するなど、インフレ押し下げへの強いコミットを改めて強調するも、真新しさに欠けたことから材料視されず)、7-中尾元財務官による「為替介入の可能性は排除できない」との見解発表、8-米経済指標の冴えない結果(米新規失業保険申請件数や米6月製造業・サービス業PMI速報値が軒並み予想比悪化)、8米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回りは6/16に記録した3.49%からわずか1週間で3.00%まで急低下)が重石となり、週後半にかけて、週間安値134.26まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、9-パウエルFRB議長による「インフレ抑制に対してFRBは無条件にコミット」とのタカ派的な発言や、10-ボウマンFRB理事による「7月会合での75bpの利上げ実施とその後数回の会合での少なくとも50bpの利上げ実施が適切となることを想定」とのタカ派的な発言、11-米主要株価指数の大幅上昇(米ダウ平均株価は2週間ぶり高値圏へ急騰→市場心理改善→リスク選好の円売り圧力)、12-米長期金利の持ち直し(米10年債利回りは3.00%から3.13%へ急上昇)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間6/25午前6時00分現在)では、135.20前後まで持ち直す動きとなっております。
ユーロドル相場
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0472で寄り付いた後、1週末に実施されたフランス下院選挙の決選投票でマクロン大統領率いる与党連合が過半数を大きく割り込んだこと(前回の350議席に対して今回は過半数の289議席を大幅に割り込む245議席まで大幅減少)や、2ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの悪化懸念(ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアによる攻撃が激化する可能性がある」との見解を発表)、3欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中での金融引き締め転換は景気への逆風)、4欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力が重石となり、週央にかけて、週間安値1.0468まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、5米金利低下に伴うドル売り圧力(米長期金利が急低下→世界的なドル安に波及)や、5株式市場の持ち直し(市場心理改善→リスク選好のドル売り圧力)、6短期筋のショートカバーが支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0606まで反発しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、7米当局者による相次ぐタカ派発言(パウエルFRB議長やシカゴ連銀エバンズ総裁など)や、8ユーロ圏6月消費者信頼感指数(結果▲23.6、予想▲20.5)の冴えない結果、9ユーロ圏PMI速報値(フランス6月PMI速報値、ドイツ6月PMI速報値、ユーロ圏6月PMI速報値)の冴えない結果、Iドイツ政府による国内ガス供給リスクレベルの上方修正(上から2番目の「警報」レベルへの引き上げ)、Jドイツ6月IFO企業景況感指数(結果92.3、予想92.9)の不冴な結果が重石となり、本稿執筆時点(日本時間6/25午前6時00分現在)では、1.0555前後で推移しております。
●やっぱり「円安ではなく、円高こそが今の日本を救う」と断言できる理由 6/25
円安は今の日本経済に悪い。これは、一般の人から見れば、議論の余地のない現実であり、どう考えても常識である。
「円高は悪だ」と言うときの「2つの間違い」とは? 
そして、それはやはり経済学から言っても正しい。問題は、これまで日本ではなぜ「円高は悪いこと」という議論が広まっていたのか、そして多くのエコノミストがなぜそれを支持していたのか、ということである。
第1に、為替は妥当な水準にあるべきである。世界全体の経済にとって妥当な水準(理論的には均衡レート)が存在し、そこからずれるのは円高にせよ円安にせよ、よくない。したがって、円安が望ましいということは、極端な円高が望ましいというのと同じく間違っている。
第2に、妥当な水準が円高に動くということは、日本経済にとってつねに望ましい。経済学の教科書には、自国通貨が強くなり交易条件が改善すれば自国の経済厚生が高まる、と書いてある。つまり、円高になると日本は豊かになる、ということである。
これは単純だ。今までよりも輸入品が安く手に入る。国内製品は同じ価格である。だから、前よりも必ず消費者はハッピーになる。
ここで「輸出が不利になるではないか」という疑問があるかもしれないが、経済全体で考えればそんなことはないことがわかる。自動車が1万ドルでしか売れないとすると、1ドル=100円と50円だと売り上げは、それぞれ100万円と50万円だ。だが、例えば原油の価格が円換算だと半分になっているので、50万円で今までの100万円分の原油が買える。だから、国全体で見れば困ることは決してない。
「貿易黒字があった場合はどうなんだ?」という疑問はどうか。その黒字で何かを買うことになるわけだから、例えば1株100ドルのアメリカ企業Xの株は、1ドル=100円なら貿易黒字1万円で100株しか買えなかったが、50円になれば貿易黒字が5000円に減っても100株買える。
あるいは、ハワイのコンドミニアムが2億円だったのが、半額の1億円で買えるようになるから問題ない。これらの投資支出も考えれば、貿易収支が黒字でも、トータルでは円高により損することはない。すなわち、経済全体で見れば、損することはありえない。
さらに「妥当な水準が円高に動く」ということは、理論的にいえば、実質で円が強くなっているということであり、輸出品の価格は実質で見て上昇した状態で売れていることになり、輸入品の価格は実質で見て安くなっているので、大幅に日本経済の厚生が高まる。つまり、日本は確実に豊かになっている。
しかし、日本経済に何か特殊なひずみがある場合には、損をすることもありうる。
例えば、ある分野の輸出品の競争力がないにもかかわらず、同じ輸出品を同じ価格で売り続けようとする場合。つまり、1ドルでも値上げすれば、まったく売れなくなってしまうような製品を輸出し続けようとする場合だ。
この場合に、原材料コストが上昇して、経済全体の価格体系が変化しても、従来の生産構造に固執し、生産に関する行動を変えなければ、新しい経済構造に対応していない生産を続けることにより、経済全体で大きな損失が出る。
お気づきのとおり、これは日本の産業のデフォルメした姿である。円高になった場合に、実質的な均衡レートが円高になったのか、金融市場のひずみで実体経済に合わない円高になったのか議論もせずに、現状維持のために、為替介入したり、過度の金融緩和を行ったりして、経済構造の変化を阻害し、不動産・株式バブルを生み出したのが1980年代末である。
この結果、バブル崩壊後、日本はずっと古い経済社会構造と間違った現実認識の下で「景気が悪い」と騒ぎ続け、財政赤字を拡大し、非効率な分野を温存した。そして、やっと、あまりに異常な円安によって、消費者だけでなく生産者である企業も円安によるコスト高で苦しくなって、初めて「円安は悪い」ということに気づいたのである。
なぜ今は「異常な円安」になっているのか
では、現在、なぜ異常な円安になってしまっているのだろうか。これは単純な話で、実体経済、つまり、貿易や海外への直接(実物)投資などの経済の実体的構造により為替レートが決まらずに、金融市場の都合だけで為替レートが動いているからだ。
理論的には、世界的にモノの値段がどこでも同一になる「一物一価の法則」が成り立つはずである。また、経済全体で見ても、それぞれの経済の購買力が均衡状態となる「購買力平価(PPP)の為替水準」と、金融投資をする場合にどこの国の金融資産(例えば国債)に投資しても実質的に同じリターンが得られるような「金利平価の水準の為替レート」がある。しかし、この2つの均衡が両立することは現実的にはない。
そして、現実を見ると、近年では金融市場の影響力があまりに強くなり、金融市場の都合だけで為替レートが決まってしまう。さらに、それが金利平価という理論的な均衡水準ですらなく、トレーダーたちの思惑で、この金融市場の均衡レートからも大きく逸脱してしまい、乱高下するようになってしまっている。
これが日本円の現在の状態だ。この20年は明らかに日本市場の金利が低かったので、円安方向に大きく歪んでしまった。
その結果、輸入品が割高になったが、日本の輸入は資源や食料品などの必需品が中心で、減らすことはできず、輸入品への支払いが激増し、日本経済全体の購買力が低下した。さらに、これらの必需品は世界的にも高騰、さらに原油などは金融市場の思惑で実物取引とは離れて先物価格が急騰し、それが標準的な状態となり、過度に割高な水準が続いた。資源高、円安のダブルパンチで日本は貧しくなっていった。
これは、2002年から2007年までの「実感なき景気回復」といわれたときの状態でもある。生産も輸出も増えて景気がよいと言われたにもかかわらず、国民は貧しくなったと感じた。円安と資源、原材料、食品高で、輸出を増やして稼いだのをはるかに上回る輸入品への支出増加となってしまい、自由に使える所得が減ってしまったからである。
日本経済がさらに弱くなった「3つの理由」
現在もまったく同じ状況だが、さらに悪い。現在、日本経済が過去に比べてさらに弱くなってしまった理由は3つある。
1つ目は、実質的な経済が弱くなってしまったことだ。過度の円安によって生き残ることができる企業とは、「本来は価格勝負しかできないのに、その価格も円安でハンディキャップをもらっている状態で、ぎりぎり赤字にならないで生産を続けてきた生産者」だ。
中小企業だけでなく、大企業も本質的には同じで、過度の円安に頼って甘えているうちに「割安ということしか売りがない生産者」になってしまい、しかも、それが円安というおまけをもらってぎりぎり生き残っているから、付加価値も生み出さない。過度の円安で損をしているすべての消費者の損だけが残ってしまう。
そして、為替が正常な方向に戻ろうとすれば、これらの生産者はつぶれてしまうから、大騒ぎをして政府に働きかける。この循環で、弱い生産者ばかりになってしまい、交易条件が、名目の為替レートの影響ではなく、実質的な為替レートでも弱い国になってしまった。
この結果、もちろん賃金も安いままになった。過度の円安で割安に換算されているという面もあるが、同時に、上述の弱い生産者の下で働くことにより、企業の生産性が低いということは労働者の生産性も低くなるから、実質でも安くなってしまった。
名目的にも、実質的にも、円安により日本の賃金は低くなってしまい、日本の国民は消費者として購買力を失い、労働者として生産性を失ってしまったのである。
2つ目は、金融市場のひずみで過度の円安になり被害をこうむっているわけだが、その被害をあえて拡大するように、日本銀行が過度の金融緩和を行い、継続したことである。円安の被害を自ら最大限に拡大してきたのである。
3つ目は、政策論争が「円安、インフレを望む」というまったく180度間違った方向に進んでしまい、間違ったエコノミスト、えせ経済学者の影響がメディアや人々の間に残ってしまったことである。今後、彼らが退場していったとしても、人々の「印象の混乱」は残るから、妥当な為替政策、円安を止める政策が行われなくなり、金融政策の修正もできなくなってしまう。
このような状況がこの10年続いてしまい、日本経済は現在のような悲惨な状況に陥ってしまったのである。
過度の円安を修正するのは難しくない
では、どうするか。ここからは、政策提言である。
答えは簡単だ。過度の円安を修正すればよい。かつ、それは簡単に実行できる。日本銀行の金融政策は異常な異次元緩和なのであるから、ごく普通の金融緩和に戻せばよい。引き締めではないから、景気を悪くすることはない。
イールドカーブコントロールを修正すればいちばんいいし、連続指し値オペを止めるだけでも効果はある。投機的トレーダーとの戦いになるが、テクニカルではあるが、勝つ気でやれば必ず勝てる。問題は、それをやる気があるかどうかである。
6月17日の日銀政策決定会合後の黒田東彦総裁の記者会見で、黒田氏は久しぶりに気合いを表に出したので、あとはメディアと世間の円安とインフレに対する認識を正しいものにすれば、黒田日銀も動けるようになるはずだが、会見では日銀の「4つの誤った認識」が再度繰り返された。
第1の誤りは「為替に働きかけることを金融政策の目的とはしないから、円安により金融政策を変えることはない」という説明だ。
日銀が普通の金融緩和策を行っているのであれば、それは正しい。しかし、今行われているのは「異次元緩和という緊急避難的な政策」であり、これを長期に継続すること自体が間違っている。そのひずみが極端な円安になっているのだ。
だから、その誤りを修正する義務がある。為替に影響を与えようとするのではなく、現在の金融政策が為替に悪影響を与えてしまっているから、金融政策を正しい方向に修正するのである。為替を目的としないからこそ、異次元緩和、イールドカーブコントロールを止める必要がある。
第2の誤りは「現時点で円安を修正するように金融引き締めを行えば、輸入コスト高で悪化しかかっている景気をさらに悪化させることになる。だから金融引き締めはできない」という主張だ。これも180度間違っている。
円安修正のための金融調整は景気にプラス
確かに輸入コスト高で景気は悪くなっている。だから、コスト高を和らげればよい。
日本の物価上昇・コスト高は、ほとんどすべて海外要因である。だから、引き締めしないというが、逆である。海外要因だから、円安が修正されれば、コスト高の影響はすぐに緩和される。原油価格の上昇でガソリン、電気代が2倍になったが、円安でそれは3倍に拡大した。
もし円安を修正すれば、原油は3分の1安くなる。景気悪化の原因が輸入財価格の高騰なのだから、為替がいちばん効果があるに決まっている。円安修正のための金融政策調整は、景気にプラスだ。
第3の誤りは、日本経済へのインフレ圧力はアメリカのような労働市場の逼迫からの賃金上昇ではなく、輸入コストの上昇という対外的要因だから、国内の金融政策は変えない、という点だ。
違う。対外要因だからこそ、為替水準に大きな歪みを与えている金融政策を変更する必要があるのだ。
第4の誤りは「金融緩和は絶対に継続する。だから変更はできない」という主張だ。まったく正反対だ。このままでは、金融緩和の継続はできなくなる。緩和の持続性が危うくなっているからこそ、トリッキーな連日指し値オペを止めて、普通の国債買い入れを行い、投機的トレーダーを追い払う必要があるのだ。
金融緩和継続のためにこそ政策変更が必要
たとえ一時的には長期金利が上昇することになっても、中長期的な長期金利水準を安定的に低い水準に維持するために、現在の政策の調整・変更が必要なのだ。緩和継続のためにこそ、今、政策の調整が必要なのだ。したがって、異次元緩和の正常化とは金融緩和に資するのであり、決して引き締めではないのである。
しかし、最大の責任は有力な経済メディアやエコノミストたちにある。彼らが依然として「為替変動には金融政策ではなく、財政と為替介入で対応しろ」などと間違ったことを言っている。
また、日銀の政策変更について「日銀が誤りを認めること」「日銀の負け」という位置づけで報道・批判を行う。違う。調整は、日銀が自ら正しい金融政策を持続するために行うものであり、まさに正常化なのである。
国内の議論が正常化すれば、日銀も正しい妥当な金融緩和政策へと舵を切ることができ、投機的トレーダーも消え、為替市場も正常化されるだろう。
(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレース予想や競馬論を語るコーナーです。あらかじめご了承ください)
1980年代後半から拍車がかかったバブル、円高で最も得をしたのは誰か。それは、日本競馬界と社台グループである。
アメリカの不況と円高があいまって、あのサンデーサイレンスをわずか16億円で購入できたのである。サンデーサイレンスがいなかったら、日本の今の競馬は存在していなかっただろう。海外に遠征することなど、まったくなかったかもしれない。競馬界全体への効果は1兆円を超えるのではないかと思っている。
超円安時代は「超円高時代の逆」をやれ
質的にも量的にも世界一のサラブレッド生産国となった日本。超円安の今、何をすべきか。バブル期・超円高のときの逆、つまり「サンデーサイレンスを輸出すること」である。
もちろん、サンデーサイレンスはこの世にいないが、日本のすばらしい馬たちを種馬として、繁殖牝馬として超高値で売ることである。サラブレッドの生産ほど、資本の論理に忠実な世界もない。交配のときには、超一流と期待された馬だけが、超一流の繁殖牝馬と交配できる。そして、超一流の調教師に預けられ、最も丁寧に育てられ、種馬になるためにローテーションを組まれる。すばらしい戦績を残した馬は種牡馬になり、また超一流の牝馬と交配される。
つまり、勝ち残りシステムなのである。そして、実際の子供たちのレースでも、パフォーマンスは父親よりも母親による影響のほうが圧倒的に大きいから、優秀な牝馬と交配されない時点で負けなのである。
また、近年は技術の発達により(それと資本の原理の貫徹により)、昔では考えられないぐらい、1頭の種牡馬が200頭を超える牝馬と年間に交配するようになった。質でも量でも、優秀な子供が出てくる可能性が高まるのである。
日本がサラブレッドの生産で世界一になったのだから、世界に血を輸出する必要がある。それは、世界のためではなく、日本の馬たちのためである。
なぜなら、日本で活躍した馬の血が欧州やアメリカで広まると、彼らの活躍により、それと類似の血脈をもった馬を世界中で求めるようになる。類似のものが多く存在するのは、日本である。さらに、日本の馬が世界に広まる。
多数派は勝つのであり、株式市場も民主主義も資本主義もサラブレッドの生産も、力が歴史を変えてしまうのである。高い馬と認識されないと、いい馬でも安い牝馬と交配されてしまう。確率的にいい牝馬でない可能性が高い。そうすると子供を残せなくなる。
したがって、実力だけでなく、世界の人々の認識も(実は実力以上に)重要なのである。だから、短期的には合理性のないフランスの凱旋門賞へ挑戦も、一度勝つまでは「やっぱり日本の馬は世界一だ」と名実ともに彼らに思い知らせるためにも必要なのである。
さて、26日は宝塚記念(阪神競馬場第11レース、距離2200メートル、G1)。そのような馬になることを願って、エフフォーリア(2枠4番)の復活に賭ける。馬券的にはアリーヴォ(7枠13番)やオーソリティ(1枠1番)が狙い目に見えるが、そんなことは忘れて、エフフォーリアが凱旋門賞を勝つことを期待して、ここも圧勝してもらいたい。 

 

●円安歯止めかからず――金融緩和見直しの必要性明白 日銀は動けない? 6/26
日本銀行が政策変更しないかぎり、円安はとめどもなく続く。日銀が金融緩和から脱却できないのは、金利上昇によって経済に悪影響が及ぶからというより、日銀が債務超過に陥るからだ。
日銀だけが金融緩和を拡大
世界の中央銀行が一斉に利上げに動いている。アメリカ連邦公開市場委員会は、6月15日の会合で、政策金利の0.75%引上げを決めた。イングランド銀行は、5回連続の利上げを決めた。スイス中央銀行も、約15年ぶりの利上げに踏み切った。さらに7月には、ヨーロッパ中央銀行が利上げを行う。こうした中で、日本だけが金融緩和を継続している。日本銀行は6月16日の政策決定会合で大規模緩和を続けるとし、長期金利のコントロールを強めるとした。
円キャリー取引で円安が進む
こうした状況では、円安が加速する。日米間の金利差が拡大しているので、「円を売ってドルを買う」取引が利益をもたらすからだ。これは、「キャリー取引」と呼ばれるものだ。将来、何らかの理由で円高になれば、損失が生じるので、これは投機的な取引だ。ところが、現在は日銀が金利を必死に抑えているので、この取引が確実に利益を生む。つまり、日銀が投機を煽っていることになる。スイスフランはこれまではキャリー取引の対象だったが、金利を引き上げたとたんにフラン高に転じた。円の場合も、金融緩和修正の観測があったので、政策決定会合前は一時的に円高にふれた。しかし、金融緩和継続の発表で、再び円安になった。スイス利上げなどの影響があるので、円安圧力は今後さらに強まるだろう。では「どこまで円安が続くのか?」。現在の状況では、どこまで円安になっても、不思議はない。なぜなら、「円を売ってドルを買う」取引が利益をもたらすからだ。そして、円キャリー取引では円を売ってドルを買うので、さらに円安が進むからだ。
円安は国民生活を圧迫する
円安によって輸入価格の高騰に拍車が掛かり、国内物価を引き上げる。もちろん、輸入価格高騰は円安だけで生じているのではない。いまの物価高の基本は、アメリカのインフレと、ウクライナ危機によって原油などの原材料価格が高騰しているという海外要因による。しかし、円安がそれに拍車をかけていることは間違いない。5月の輸入物価指数の対前年同月比は、契約通貨ベースでは26.3%だったが、円ベースでは43.4%だった(対前月比では、それぞれ1.3%と3.0%)。このように、円安の影響がきわめて大きいことがわかる。円安は輸出企業の利益を増やすから望ましいと言われる。確かに、輸出企業の立場から言えば、そのとおりだ。円安になると、ドル建ての輸出が増えなくても、円建ての輸出額が自動的に増える。だから利益が増える。ただしその裏にはトリックがある。円安になると、円建ての輸出額が増えるだけでなく、円建ての輸入額も増える。これは企業の原価を増加させるから、そのままでは、企業の利益を圧迫する。ところが、これまで企業は、原価上昇を売上に転嫁して、最終的には消費者に転嫁してきた。だから、売り上げの増加効果だけが残って、利益が増えるのだ。しかし今回は、企業も厳しい状況に直面している。原材料価格が上昇する反面で、販売価格を十分に引き上げられないため、粗利益(付加価値)が減少するからだ。粗利益は賃金や利益の原資になるので、企業は賃金を上げたくとも上げられない。消費者や労働者の立場からすると、物価は上るが賃金は上がらないので、生活が苦しくなる。
事後的な物価対策でなく、原因の円安への対策が必要
この事態に対して、いかなる対策が取られているか? 政府が行っているのは、物価対策だ。補助金を出して、ガソリン価格を抑えている。しかし、原因に対処せずに結果に対処しても、物価高騰は収まらない。それだけではない。対策の対象になるものとならないものとの間で、著しい不公平が発生する。物価高騰を抑えるには、その原因に対処する必要がある。原油などの原材料価格高騰について、日本ができることは、残念ならながらほとんどない。しかし、円安に対処することはできる。一刻も早く、それを実行することが求められる。
金利の上昇を認めるべきだ
円安を抑えるために、為替市場への介入が必要との意見がある。しかし、円安のための介入は簡単だが、円高のための介入は難しい。円安介入では、国債を発行して資金を調達し、ドルを買えばよい。これは原理的にはいくらでも行なえる。2001年から03年にかけては、総額約39兆円もの介入を行なった。それに対して、円高のための介入では、ドルを売る必要がある。これは外貨準備を使ってなされる。したがって外貨準備の範囲でしかできない。外貨準備高は、現在約1.3兆ドルと巨額だが、無限ではない。だから、円キャリーを行なう投機筋に足元を見られる。このような問題があるが、より基本的な問題は、 円高への介入と金融緩和は逆方向の政策ということだ。この両方を行えば、アクセスとブレーキを同時に踏むことになる。だから、介入を考える前に、金融政策の転換を考えるべきだ。いまの状態を変えるには、日銀が金融緩和から脱却するしかない。具体的には、金利の上昇を認めることだ。まず、現在0.25%を上限に抑え込んでいる長期金利を、市場の実勢に任せる。そしてさらに、政策金利(当座預金のうち政策金利残高への付利。 現在、マイナス0.1%)を引き上げる。
日銀が方向転換できないのは、債務超過に陥るから
金利を引き上げると、様々な問題が起こるので、できないと言われる。特に財政に対する影響が問題だとされる。しかし、財政収支試算(「中長期の経済財政に関する試算」2022年1月)では、長期金利が2027年度に1%となり、29年度には2.2%になる。それでも、国の一般会計の税収と歳出の差額は、2022年度に比べて改善することになっている。金融政策の転換ができないのは、日銀自身の事情によると考えられる。なぜなら、金利上昇を認めると当座預金への付利が増大するからだ。その規模は、仮に金利を1%引き上げれば、年間でおよそ5.6兆円、保有国債が全額償還されるまでの期間で、およそ34兆円という巨額のものになると推計される。そして、日銀は債務超過に陥る。日銀が動けないのは、このためだ。大規模な金融緩和で巨額の国債を買い続けたために、このようなことになった。
異次元緩和の総括が必要
しかし、これは、遅かれ早かれ、いずれは問題になることだ。金融政策を正常化していくためには、どこかの時点で、必ずこの問題が発生する。いま、急激な円安対処のために、それが緊急に必要になっているだけのことだ。債務超過に陥っても、民間企業とは違って日銀の場合には、日常の業務に支障が出るわけではない。政府に対する日銀納付金が減少することは大きな問題だが、やむをえないだろう。そして、対処も型式的には簡単だ。政府が交付公債を日銀に渡すことによって出資し、日銀が増資すれば良い。問題の本質は、こうした形式上の処理ではない。国民の理解を得られるかどうかだ。そのためには、異次元金融緩和の詳細な総括が是非とも必要だ。とりわけ、これによって利益を得た階層と損失を被った階層が何であったのかを、客観的に示す必要がある。
●24年ぶり円安ドル高に「アベノミクスの限界を見ているんですが日銀が・・・」 6/26
評論家の寺島実郎氏が26日、TBS系「サンデーモーニング」に出演。21日のニューヨーク外国為替市場の円相場で円がドルに対して大幅下落し、一時1ドル=136円71銭と1998年10月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準を付けたことに言及した。
日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが続いており、日本での輸入品のさらなる値上げにつながる可能性がある。日銀が大規模な金融緩和策を維持する一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は金融引き締めを急速に進める方針を示しており、金融政策の方向性の違いが鮮明になっている。日銀が大規模な金融緩和の維持を決めたことが改めて意識され、円売りドル買いが広がった。21日の米株式相場が上昇し、投資家のリスクを避ける姿勢が和らいだことも、相対的に安全な通貨とされる円を売る動きにつながった。
寺島氏は「日本売りっていうのが本当に大きな流れになってきちゃっている。日本の政治、経済に対する不信って言ってもいいと思いますけど、日本の国際社会での評価は今24位なんですけれども中国や韓国よりも下。円売りがここに来てまた加速していて、要するにアベノミクスの限界を見ているんですが、日銀が頑としてね、世界がみんな金利を引き上げている中で動けない金縛り状態にあるわけですね。この半月くらい日銀とヘッジファンドの戦いっていう綱引きが進んでまして、間もなく日本は世界の金利引き上げに耐え切れなくなって、日本も動き出すだろうという思惑のもとに売りを見せられているんですよ」とし、「意地になって日銀は守っている形なんだけれども遅かれ早かれ世界の正常化という流れの中で、分かりやすく言うと、日本も金融をじゃぶじゃぶにして景気を浮揚させようというアプローチから脱却しなきゃいけないところに近づいているんだと。マジックマネー、マネーゲームの時代が終わりつつあるということをしっかり見つめきゃいけないだろうと僕は思います」と自身の考えを述べた。 

 

●外為 1ドル134円63銭前後とドル高・円安で推移 6/27
27日の外国為替市場のドル円相場は午前10時時点で1ドル=134円63銭前後と、前週末午後5時時点に比べ13銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円07銭前後と53銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。 
●外為 1ドル135円17銭前後とドル高・円安で推移 6/27
27日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=135円17銭前後と、午後5時時点に比べ11銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円85銭前後と11銭のユーロ安・円高で推移している。
●NY円 135円34〜44銭 6/27
週明け27日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午前8時半現在、前週末比18銭円安ドル高の1ドル=135円34〜44銭を付けた。
●明日の為替相場見通し=引き続き長期債動向など注視 6/27
今晩から明日にかけての外国為替市場のドル円相場は、引き続き米長期債利回りなどが注目されそうだ。予想レンジは1ドル=134円60〜135円50銭。
ドルは135円前後で高止まりしている。今晩は米5月耐久財受注や同住宅販売保留指数の発表があるが、相場に与えるインパクトは限定的とみられている。米長期債利回りの動向にもよるが、ドルは戻り売りをこなしながら135円から一段の上昇を狙えるかが注目されている。

 

●一時1ドル135円58銭まで上昇、時間外のNYダウ先物高が支援材料 6/28
28日の東京外国為替市場のドル円相場は、午前10時時点で1ドル=135円45銭前後と前日の午後5時時点に比べて40銭弱のドル高・円安となっている。
27日のニューヨーク外国為替市場のドル円相場は、1ドル=135円46銭前後と前週末に比べて20銭強のドル高・円安で取引を終えた。この日に発表された米5月耐久財受注や米5月住宅販売保留指数が市場予想を上回ったことを受け、一時135円55銭まで上伸した。
この流れを引き継いだ東京市場はドル買い・円売りが優勢。時間外取引でNYダウ先物が堅調な動きとなっていることや、日経平均株価が朝安後に切り返していることが支援材料となり、午前9時40分過ぎには135円58銭をつける場面があった。ただ、四半期末にあたる30日を前に国内輸出企業のドル売り・円買いが意識されやすく、一段と上値を追う勢いには乏しい。
ユーロは対ドルで1ユーロ=1.0576ドル前後と前日の午後5時時点に比べて0.0010ドル程度のユーロ安・ドル高。対円では1ユーロ=143円24銭前後と同20銭強のユーロ高・円安で推移している。
●円相場、135円25〜26銭 6/28
28日の東京外国為替市場の円相場は、正午現在1ドル=135円25〜26銭と、前日(135円07〜07銭)に比べ18銭の円安・ドル高となった。
●円相場、135円73〜77銭 28日午後5時現在 6/28
28日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=135円73〜77銭と、前日(135円07〜07銭)に比べ66銭の円安・ドル高となった。 
●外為 1ドル135円25銭前後とドル高・円安で推移 6/28
28日の外国為替市場のドル円相場は午後0時時点で1ドル=135円25銭前後と、前日午後5時時点に比べ19銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=143円05銭前後と9銭の小幅なユーロ高・円安で推移している。
●外為 1ドル135円97銭前後とドル高・円安で推移 6/28
28日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=135円97銭前後と、午後5時時点に比べ26銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=143円93銭前後と26銭のユーロ高・円安で推移している。
●早朝のロンドン外国為替市場で円相場、1ユーロ = 143円を超える
6月28日17時51分頃、早朝のロンドン外国為替市場で円相場は1ユーロ = 143円を超え、前日2時頃の価格(143.42円)から0.28円(0.20%)上昇となる143.70円となった。
●NY円、136円前半 6/28
28日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午前8時半現在、前日比63銭円安ドル高の1ドル=136円06〜16銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0551〜61ドル、143円65〜75銭。
米株式先物や欧州株の上昇を背景に、投資家のリスク志向が高まり、相対的に安全な通貨とされる円を売ってドルを買う動きが先行した。
●ドル円が再び136円台に、株高と日米金利差拡大観測で円安に=ロンドン 6/28
ドル円が再び136円台に、株高と日米金利差拡大観測で円安に=ロンドン為替概況
ロンドン市場は、ドル円が再び136円台に乗せている。クロス円も買われており、円売りの動きが広がっている。ロンドン朝方に中国が入国者の隔離期間を短縮と報じられると中国株が買われた。米株先物も時間外取引で上昇に転換、欧州株は堅調に推移している。リスク警戒感の後退が円売りを促している。また、米10年債利回りが3.17%付近から3.25%付近へと上昇しており、日米金利差拡大観測が再燃していることもドル円を押し上げている。ドル円は135円台半ばを上抜けると135円台後半で一時揉み合いとなったが、再び買われると136円台乗せから136.20近辺に高値を伸ばした。クロス円も堅調。ユーロ円は143円台前半から一時144円台乗せ。ポンド円は166円付近から167円手前まで上昇。豪ドル円は93円台後半から94円台後半まで買われた。対ポンドではユーロ買いが優勢。ラガルドECB総裁は、7月の0.25%利上げ、9月はインフレ次第でより大幅な利上げも、と従来の発言内容を再確認した。ラトビア中銀総裁は7月の0.50%利上げ検討を主張。ベルギー中銀総裁は、9月の50bp利上げが適切、200bpの利上げは比較的早期に必要とした。
ドル円は136円台前半での取引。東京午前につけた135.11レベルを安値に、その後は買いの流れが続いている。ロンドン時間に入ると135円台後半へと上昇。しばし揉み合ったあと再び買われると136円台乗せから高値を136.20近辺へと伸ばしている。今月23日以来の136円台での取引。米10年債利回りが3.17%付近から3.25%付近へと上昇、欧州株の堅調などがドル円を押し上げた。
ユーロドルは1.05台後半での取引。序盤に1.0571レベルから1.0606レベルまで買われた。その後はこのレンジ内での取引に終始している。一方、ユーロ円は堅調な流れ。ドル円とともに買われ、143円台前半から144.10近辺まで高値を伸ばしている。ユーロは対ポンドでも買いが優勢。一連のECB高官発言で利上げの前倒し期待が広がった面もあったようだ。
ポンドドルは1.22台半ばでの取引。ロンドン朝方に1.2291レベルまで買われたあとは上値重く推移。足元では安値を1.2238近辺まで広げている。ポンド円は堅調な流れ。166円付近から一時166.93近辺まで上昇。その後は166円台後半で高止まりしている。ユーロポンドは0.8610台から0.8640台へと買われており、対ユーロではポンド安になっている。 
●1ドル140円視野、それでも通貨危機との見方に違和感=尾河眞樹氏 6/28
日銀の黒田東彦総裁は、6月17日に行われた金融政策決定会合後の記者会見で、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の下での長期金利の許容変動幅拡大は「考えていない」と明確に否定した。折しも、15日に終了した米連邦公開市場委員会(FOMC)が非常にタカ派的内容であったことも相まって、翌週急激にドル高・円安が進行、136円台後半の高値を付けるに至った。
安全通貨の立場不変
主要国通貨のほとんどが対円で上昇するなど、為替市場は再び円全面安の様相を呈している。1ドル=140円台が現実味を帯びてきたこともあってか、最近はいよいよ「日本売りだ」「通貨危機だ」と、あたかも日本のあらゆる資産がタタキ売られるかのような、不安を煽る論調が散見されるようになった。しかし、足元の円安は日本の信認低下に伴う資本流出とは程遠い。ドル円でみると分かり難いのだが、円の名目実効為替レートと米株価を重ねてみると、基調としては円安トレンドが続いているものの、米株価が下落する際には円の実効レートが上昇するといった具合に、市場がリスクオフに傾くと円買いが進む構図は以前から何ら変わっていない。このことは日本円が、グローバルにみれば依然として安全資産の位置づけにあることを示している。
背景に金融政策格差
ではなぜ円安トレンドかといえば、これは圧倒的に日本と海外の金融政策の格差によるところが大きい。直近では16日にスイス中銀が50Bpsの利上げに踏み切った。欧州中銀(ECB)も6月の理事会で、7月に利上げする方針を示しているため、日本、米国、ユーロ圏、英国、スイス、カナダの主要6中銀のうち、利上げしないのは日本のみとなる。各国がこぞって金融引き締め局面に入ったなかで、日本だけが取り残されている状況が際立っているのだ。前述した黒田日銀総裁の発言も手伝って、投資家は何の不安もなくキャリートレード(金利差を狙った投資)のための円売りが継続できる。実際、日本の実質金利は4月以降ジワジワと低下しており、各国と日本の実質金利差は拡大傾向にある。
鍵となる実質金利
実質金利は、名目金利(10年債利回り)から期待インフレ率を差し引いた実質ベースの10年物金利だが、米国の場合、米連邦準備理事会(FRB)の利上げによって、インフレが将来沈静化するとの見方から、期待インフレ率(ブレークイーブン・インフレ率)は4月のピークだった4.0%台から足元2.5%台まで低下した。反対に、利上げにより米10年債利回りは一時3.5%まで上昇したため、米実質金利は上昇。一方で、日本は指値オペにより10年債利回りの上限を0.25%でキャップしているため、資源高などで期待インフレ率がジワリ上昇するなか、日本の実質金利は緩やかながらマイナス幅を拡大しつつある。これが日米の実質金利差拡大につながり、ドル円の上昇を促しているのだ。ドル円相場と日米実質金利差の相関性は非常に高く、特に、日本の場合は10年債の利回りを固定しているだけに、このまま放置すれば期待インフレ率が上昇するに連れ、日本の実質金利がさらに低下し、これとともに円相場が一段と下落する公算は大きい。
日銀のジレンマ
したがって、もしもこの円安トレンドを金融政策で止めようとするのなら、たとえばYCCのターゲットを10年債から5年債に変更する、あるいは、10年債利回りの変動幅を拡大することなどが考えられよう。10年債利回りの上昇をある程度容認すれば、実質金利の下落に歯止めがかかるため、円安にもブレーキをかけることができそうだ。ではなぜそうしないのかといえば、金融政策は為替のための手段ではない(ことになっている)ことに加え、そもそも日本の実質金利の低下は、景気刺激効果につながるからだ。「物価上昇率>名目金利」となれば、預金の利息よりも物価の上昇が大きくなるため、教科書的には貯蓄よりも消費や投資が選好されることになる。問題は日本の場合、現在のインフレが資源高によるコストプッシュであることに加え、賃金が上昇しないことで体感インフレが加速しており、消費者マインドの悪化につながっていることだ。このため、インフレによって家計のサイフの紐は益々固くなるという、いわゆる「悪いインフレ」が進行しつつある。景気の足取りがおぼつかないなかで、仮に、現状マイナス0.7%付近の日本の実質金利がプラスに転じれば、金融環境が引き締まり、かえって景気の足かせとなるリスクもある。消費者マインドの改善には資源価格が下落するか、賃金が上昇することが必要だが、いずれも金融政策でどうにかできるものではない。景気度外視で円安是正に踏み切るなら、上述した手法やマイナス金利政策の修正など、取り得る手段がないわけではないが、日銀としてはその効果よりもリスクの方が高いとみているのではないか。加えて、日銀は急速な円安は望ましくないものの、円安そのものは日本経済全体にとってはネットでプラスとの考えを維持しており、現状では円安是正に動くこと自体考えにくい。
将来に備えた議論を
6月のFOMCで更新されたドットチャートでは、23年末の政策金利見通しの中央値が3.75%だったが、一方でFF金利先物は23年末で3.25%付近と、むしろ22年末の見通し(3.375%)より低くなっている。FRBの急速な金融引き締めによって、景気減速が早まるとの見方から、来年後半は早くも「利下げ」が市場で織り込まれているからだ。実際、米国経済が急速に減速する、あるいは景気後退に陥るなどすれば、ドルは大幅に下落する公算が大きい。それを思えば、足元の円安を過剰に不安視するよりも、円安のうちに出来ることを考えるほうが得策ではないだろうか。岸田首相は5月、英ロンドンのシティで行ったスピーチで、「Invest In Kishida」と述べた。円安の今こそ、腰の据わった日本への長期投資のマネーを呼び込むべく、規制緩和や東京市場の活性化、政府のDX推進など、構造改革や成長戦略を推進する必要があるのではないか。実際、コロナ禍初期には、日本の危機管理に対する懸念が露呈した一方で、日本人の公衆衛生意識の高さや、ひとたびワクチンの供給が始まると一気に普及するという協調性、パンデミック初期に海外で起きたような略奪や暴動が日本では起きなかったことなど、海外から改めて見直されている面も大きい。ひとたび門戸を開けば、円安の今がチャンスとばかりに、海外投資家が株式や不動産なども含めて、日本の資産を買いにくる可能性はありそうだ。その際に、例えば日本の水資源や質の高い農産物、安全性の高い食料品などが、気づいたら全て海外資本だったというようなことのないように、安全保障面から日本の何を守るのかという戦略も、同時に必要になってくるだろう。他方、円安・資源高が続いた場合に、エネルギーを安定的に調達するためにはどうするのか、エネルギー安全保障の問題も具体的な戦略が見えないままだ。日銀についても、今後仮にマイナス金利を終了する場合にどういった手順を踏むのか、また、購入した資産をどう減らすのかなど、出口に向けた具体的なステップについて、円高の時にはできなかった議論を今こそ開始し、将来に備える必要があるのではないか。 
●円相場200円へ、プラザ合意以降の円高バブル崩壊が庶民の福音になる 6/28
日本が円買い介入を始めても円安は止められない
ごく最近、米国の大手ヘッジファンドのトップから「日本はなぜ円安を受け入れないのか?」と質問された。同時に彼は、「日米金利差が理由と言うが、それでは過去の円相場を説明できないではないか」として説明を求めてきた。
この議論の顛末は最後に書くとして、参院選が始まって物価高が一つの争点となりつつある中、物価高の原因である円安問題を冷静に考える必要がある。つまり、「円安は悪なのか」であり、「円安の原因は日米金利差なのか」である。
本件は、日本銀行黒田総裁の「家計は値上げ許容度が高まっている」との発言が炎上したこともあり、日本国内外での注目度が高まっている。
しかし、過去の円相場の動きと日銀の為替介入等を振り返れば、今の円安は、インフレ対策で必死の米国がドル高を望んでいる以上、財務省財務官や日銀総裁が問題だと考えて円買い介入を始めても(および利上げを始めても)、止められるというものでもないことは明白である。
では、逆に円安を止める必要はあるのだろうか。物価上昇に対して打つ手とは何なのだろうか。本稿ではこれを考えてみたい。
日米金利差と為替水準に相関はない
まず理解すべきは、日米金利差と為替水準に明確な相関はないということだ。
円相場の動く原因として「日米金利差」があるのは事実ながら、一般には為替トレーダー(ドル/円を売買して利鞘を稼ぐ人のこと)が自分たちのポジションを作る際、または利益を確定する際の理由として使うことが多い。メディアで一般的に使われるのは、インタビュー相手が為替トレーダーであることが多いからだと言われている。
しかし、それは円相場が上がったり下がったりするからであって、一本調子のトレンドの際に「日米金利差」を理由として使い続けることには無理があり、実際にもそうはしない。
また、経済理論として「金利と為替の二つを同時にコントロールすることは不可能」という考え方はあるが、例えば「日米金利差が1%開くと3円の円安が進む」というような相関があることを裏付ける理論はない。
さらに、1カ月ほど前に129円となった頃には、「日米金利差を考えれば130円程度が限界」という言葉がまことしやかにささやかれていた。それにもかかわらず、それから現在までに7円の円安が進んだことを考えれば、そこには何の根拠もなかったことが分かる。
加えて、冷静に過去を振り返れば、1985年9月までは1ドル=200円台だった為替相場が、プラザ合意によるG5諸国(米英仏独日)の協調介入でドル以外の通貨の価値を上げることを決めた3カ月後には100円台となった。
このように、米国の実質的な保護国として生きる日本の円相場は、米国発のイベントによって、連続性のない動きをしてきたという歴史がある。
つまり、円相場を見る際には、「日米金利差」などのように誰もが信じている話、あるいは米株の暴落のように市場を信じ込ませやすい話題は少なくないものの、別の動きの(しかも、それは金融・為替理論とは異なる経済分野の)話があることを忘れてはならない。
そこまで上昇していない日本の消費者物価
日本の今の論調は、米国では物価の上昇に対してFRB(米連邦準備理事会)が利上げで対応しているので、日本も利上げでインフレを止めるべきだというものだ。多くのエコノミストや政治家、テレビのコメンテーター等から出ている。
ここで、直近発表された日本の物価指数を見てみよう。物価指数と一言でくくっても、実は複数ある。
日本銀行などが日本の物価安定を考えるために行動する際に見ているものは、太字にした消費者物価の「除く生鮮食品」であり、昨今のように原油価格等が上昇している場合は、ここからエネルギーを除いた「除く生鮮食品、エネルギー」も指標としている。以下、データはすべて前年同月比%。
   企業物価指数(5月、国内):+9.1%
   企業物価指数(5月、輸入):+43.3%
   消費者物価指数(5月、総合):+2.5%
   消費者物価指数(5月、除く生鮮食品):+2.1%
   消費者物価指数(5月、除く生鮮食品・エネルギー):+0.8%
これらの違いを簡単に解説すると、最上段にある企業物価指数(国内)の前年同月比+9.1%は企業間での取引の価格の上昇率を指し、メディアで報道される「小麦粉の価格が上がっている」というパン屋さんなどのコメントは、ここに表れている。数字自体も、米国の5月の消費者物価が+8.6%と近しいものがあり、イメージ的に両者を比較しやすいところがある。
次に、企業物価指数(輸入)は+43.3%と高く、ここに原油価格やその他の輸入品の価格が反映されている。
三つめの消費者物価指数(総合)は、消費者が購入する際の物価全体を見ているもので、エコノミストの中にはこれを使えという人が少なくない。その背景には、超金融緩和の目標として「インフレターゲットを2%」とした日銀に対して、「もう2%は超えているだろう」と言いたい気持ちがあるのだろう。しかし、「インフレターゲットの2%を上回った」と数字あわせのように言っても、これまで使っていない数字を突然使うというのには無理がある。
四つ目の消費者物価指数(除く生鮮食品)は、基本的に日本銀行が使う物価指数である。日本人が見るべき物価指数はこれだ。
この指数は3月までは0.8%など1%未満だったが、4月に続いて5月も+2.1%なのでインフレターゲットは達成している。ところが、日本銀行は「安定的な2%の達成」としてきたので、2カ月ではまだ早いという気持ちのようだ。その背景には、次に示す指数の前年同月比での低さがある。
五つ目の消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)は、エネルギー価格が異常に動いている際に使う指標だ。ただし、この指数は4月に続き5月も+0.8%と、消費者物価指数(除く生鮮食品)と比べればだいぶ低い。
これが今の日本で受け入れられないのは、「物価が上昇していない」ということをどこか無理して伝えているように思える数字だからだろう。
今後、日銀がどう動くかは日銀のみぞ知るだが、外野席から言わせてもらえば、日銀だけでも衆愚政治からは距離を置いてもらいたいと思う。なぜならば、利上げは決して日本経済にとってはプラスではない。利上げとは景気過熱の際に巡航速度に下げるための手段だからだ。
円安が進んでいる真の理由
円安が進んだタイミングは、基本的にはロシアのウクライナ侵攻が進んできた時に一致している。これが今の円安の理由を解く鍵だ。
第一の理由は、ロシアが核兵器の使用をチラつかせる中で、北朝鮮がミサイル発射実験を繰り返し行ったことにある。すなわち、日本がいかに危険な場所にあるかを市場が意識し始めたということだ。
日本を一軒家に例えれば、裏庭の向こうにある米国と同盟を結んでいるものの、お向かいさんは日本政府が実質的に仮想敵としている中国である。中国は核兵器を保有し、日本を射程とするミサイルも多数保有している。
そのお隣の朝鮮半島の北部にも、核兵器と日本を射程に収めるミサイルを持つ北朝鮮がいる。北隣のロシアは既に津軽海峡をロシア海軍が横断したり、北方領土で軍事演習をしたりしている。しかも、なぜだか今の日本は中国を刺激することが好きである。
三方向のお隣さんが怒ったら、裏庭の遠くから米国が助けに来る前に日本はやられてしまう。これが日本は地政学的に危ない国だという証拠であり、安易に円買いができないという理由の第一である。
第二は、昨年末に過去最高を記録した、日本の411兆円を超える対外純資産の脆弱性である。日本の対外純資産は、それが強みとして認識されてきたが、米国が「悪の枢軸」と呼ぶような国を含め、実質的な敵国に対する投融資も多い。ロシアのウクライナ侵攻で露呈したが、411兆円という対外純資産は、実はかなり目減りするのではないかという見方もある。
例えば、ロシアではサハリン1(油田)、サハリン2(天然ガス田)が稼働しているが、日本がカーボン・ニュートラルの秘密兵器と位置付けてきたものの中にサハリン3(海底の天然ガス田)がある。ロシアの経済発展を援助するため、様々な資金も提供してきた。こういったプロジェクトについては、国際協力銀行なども融資しており、カントリー・リスクが高いためリターンもかなりある。これが、ロシアとの関係悪化ですべて失われる危険性がある。
ロシア側についている国への投融資も同様だ。仮に各国がロシアに協調した態度を取り、それに米国側が厳しい姿勢を取れば、日本もこれに追随せざるを得ないため、相手国の国有化等によって日本の権益は失われてしまう可能性がある。
そう考えると、日本の対外純資産の多くは、結構リスキーな国に関連しており、これらのリスクが顕現化すると、実は411兆円が半減することとてありうる、ということである。極端かもしれないが、為替トレーダーにしてみれば相場が動くのであれば極端な話であっても構わない。
既に終わりつつあるプラザ合意以降の円高バブル
1985年9月のプラザ合意以降の円高は、日本の経済構造を大きく変えた。特に、円高直後には円高不況が訪れたが、その1年後には円高、株高、債券高というトリプル高になって日本経済はバブルに突入した。
しかし、バブル経済は数年で破裂し、その後は2000年代初頭まで続く不良債権問題で日本経済は大きく悪化した。しかも、円高対応のため企業努力は、従業員レベルで見れば終身雇用の割合が全雇用の半分以下となるなど、雇用の犠牲を伴うものだった。結果、日本全体でも貧困家庭が増えた。
多くの政治家は、貧困家庭よりも富裕層の方が票になるので、今回の参議院議員選挙でも、貧困問題を解決する案を、目標期限を定めて正しい理屈で真面目に主張している政党はない。
他方、黒田日銀総裁と言えば、円売り介入額が歴代第二位の財務官である。円高不況から日本を脱出させるために戦った勇士だ。その黒田元財務官からすれば、日本の為替相場は(1985年の円高開始直前からすれば)まだ円高水準ということかもしれない。
つまり、日本経済のバブルは崩壊して終わったものの、為替相場のバブルは円高水準のまま続いている。しかし、かつてのように円高が米国経済にとってプラスだというプレッシャーがなくなっているのだから、インフレと戦う米国の視点から見ても、円安ドル高(米国はドル高で輸入物価が下がる)はもっと進むタイミングに来ていると考えるという見方が市場では可能となる。
為替のバブルもそろそろ終焉に近づいているということだ。
しかも、円安が進めば、日本経済を蝕んでいる様々な要因を払拭できるかもしれない。世間では、「悪い円安」という指摘も聞こえるが、日本経済にとっては円安の方が間違いなく良いことが多い。
コロナ禍の影響が終われば、インバウンドは今以上に増えるだろう。インバウンドが増加すれば、日本経済は一気に良くなる。製造業の多くも、円安が進めば企業収益が増える。もちろん、かつての輸出依存型経済ではないため円安の効果は小さくなっているものの、それでも円安が日本の製造業にとってプラスなのは、各社が発表する「1円の為替変動でいくらの利益(損失)」という部分を見ればわかる。
物価が上がって困る理由は、賃金が上がらないからである。
政府がやるべきは企業の賃金引き上げの促進
円安で物価が上がっても、円安で利益の増えた企業が賃金を引き上げれば、実質的な購買力は変わらないはずだ。
簡単に言えば、1ドル=100円の為替水準で500万円の給与と、1ドル=200円で1000万円の給与のどちらが良いかと質問した場合、多くの人は後者を選ぶだろう。ドル換算では同じなのだが。海外旅行にでも行かない限り、名目上の給与が2倍になるメリットは非常に大きい。
また、物価が上がることは、そもそも利益率が低い飲食業などにとってもプラスだ。これまでは顧客に気兼ねして値上げを十分にできなかったが、物価と賃金が上がっていれば、利益維持のために堂々と値上げをできるようになる。日本で給与水準が一番低い業種は飲食業だが、これであれば飲食業従事者の賃金も上がる。
日本は円安を素直に受け入れるべきである。円高に耐える経済構造になって労働者を泣かせてきた日本企業も、円安で収益力が強まれば賃金を増やすゆとりが出てくる。それを内部留保に溜めずに労働者に支払うべきだ。そうすれば日本経済は復活する。
冒頭のヘッジファンドへの回答
ヘッジファンドのトップが知りたいのはそこだ。今のファンドとしてのポジションは円売り、日本国債売りなので、先述したような展開になれば日本の円安はもっと進む。賃金が上がる時、どこかで長期金利が上がり始めるので、日本国債も売りポジションが妥当ということになる。
もちろん、これには痛みも伴う可能性は小さくない。
なぜなら、長期金利が上がれば日本国債の消化に影響が出かねず、それは日本の財政危機につながる可能性もなしとしないためだ。ヘッジファンドのトップが知りたいのはまさにそこで、日本政府は、(1)日本国民のために賃上げを伴う物価高となる円安を受け入れるのか、それとも、(2)日本の財政を守るためにあくまで円安のさらなる進行を止めるのか、だ。
筆者は(1)の説明をしたが、彼は「日本国民は怒らない人々なので、選挙で与党が負けることもない。従って、国民優先の政策をとることについては半信半疑だね」との回答だった。

 

●円相場、136円05〜06銭 6/29
29日の東京外国為替市場の円相場は、午前9時現在1ドル=136円05〜06銭と、前日(135円73〜77銭)に比べ32銭の円安・ドル高となった。
●外為 1ドル136円04銭前後とドル高・円安で推移 6/29
29日の外国為替市場のドル円相場は午前11時時点で1ドル=136円04銭前後と、前日午後5時時点に比べ33銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=143円22銭前後と45銭のユーロ安・円高で推移している。
●外為 1ドル136円03銭前後とドル高・円安で推移 6/29
29日の外国為替市場のドル円相場は午後2時時点で1ドル=136円03銭前後と、前日午後5時時点に比べ32銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円89銭前後と78銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●NY外国為替市場 1ドル=136円台前半まで値下がり  6/29
28日のニューヨーク外国為替市場では、日本とアメリカの金利差が拡大するとの見方を背景に円相場は一時、1ドル=136円台前半まで値下がりしました。
28日のニューヨーク外国為替市場では円を売ってより利回りが見込めるドルを買う動きが出たことから、円相場は一時、1ドル=136円台前半まで値下がりしました。
外国為替市場では先週、1ドル=136円台後半まで円安が進み、およそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新したあと、円を買い戻す動きも出ましたが、この日は再び円が売られました。
また、ニューヨーク原油市場では国際的な原油価格の指標となるWTIの先物価格が一時、1週間ぶりに1バレル=112ドル台まで上昇しました。
中国政府が新型コロナウイルスの対策として海外からの入国者に義務づけている隔離の期間を短縮する方針を発表したことをきっかけに、経済活動の正常化が進み、原油の需要が高まるとの観測が出たことが背景です。
このほか、ニューヨーク株式市場では消費者の景況感を示す経済指標が市場の予想を下回ったことを手がかりに売り注文が増え、ダウ平均株価は一時、500ドルを超える大幅な値下がりとなりました。
終値は前日と比べて491ドル27セント安い、3万946ドル99セントでした。
IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数も前日と比べて2.9%の大幅な下落となりました。
●1ドル=140円時代は近い…「円安進行」で海外旅行するならどこの国? 6/29
円安でも海外旅行をお得にする方法があります。ドル円相場は、1ドル=140円まで円安が進むともささやかれています。しかし、これはあくまで米ドルに対してで、他の国(通貨)に対してではありません。
たとえば、ノルウェーやスウェーデンの通貨でみてみると、1クローネは、ここ半年では13円から14円余りで推移しています。海外旅行に行くのなら、米国よりそれほど円安の進んでいないノルウェーやスウェーデンのほうがお得に感じるかもしれません。
また、外国に行くときは、「現地通貨に換える場合、日本円の支払いが少なくてすむ外貨を選ぶ」ことです。例えば米ドルなら日本円は135円出さなければなりませんが、豪ドルなら93円台、ニュージーランドのNZドルなら85円台ですみます。もちろん、豪ドルは少し前まで80円台だったと思うと悔しいですが、それでも米ドルに換えるよりも、日本円の支出額は減ります。もちろん各国で物価は異なりますし、通貨ごとに円安(場合によっては円高)の進み具合も違います。「現地通貨と円」の値動きをきちんと把握することが大切です。
また外貨預金をしている人は、なるべくそれを使いましょう。
例えば、ソニー銀行の「Sony Bank WALLET」(Visaデビット)の外貨普通預金口座からは、事務手数料が1.7%かかりますが、海外のATMで現地通貨で引き出すことができます。
「Sony Bank WALLET」のデビットカードで決済すると、外貨預金から即時に引き落とされます。対応通貨はドル、ユーロのほかに、英ポンド、豪ドル、NZドル、スイス・フラン、香港ドル、カナダ・ドル、南アフリカ・ランド、スウェーデン・クローナです。
また、SMBC信託銀行の外貨預金GLOBAL PASS(多通貨Visaデビット一体型キャッシュカード)は、海外で買い物ができ、そのまま口座から引き落とされるので手数料が無料です。
海外旅行に行かない場合でも、ラグジュアリーブランド企業などのホームページからのオンラインショッピングでは、外貨引き落とし口座を指定したクレジットカードで買い物することもできます。
ただ郵送費が数千円する場合もあります。うまく計算して円安を乗り切りましょう。
●歴史的な円安ドル高 長期化か 6/29
外国為替の割高・割安をみる際に市場関係者が用いる代表的な指標に購買力平価がある。様々な為替の決定要因を捨象し、国や通貨は違っても同じものを買うときは同じ値段になるように為替水準が決まるという概念だ。
英エコノミスト誌が更新し続けているビッグマック平価はビッグマックの各国での値段を基準に為替の平価を算出している。日本で390円、米国で5.81ドルの場合、1ドル=67円なら同じお金でビッグマックが買える。今のドル円相場は米国観光客が日本で同じお金で2つ買えるほどドルは高く円は安いということ。
一般には1973年を起点に輸出物価、企業物価、消費者物価の3種をもとに計算した購買力平価が参照される。過去50年ではドル円は輸出物価平価の水準を下限に消費者物価平価を上限にした幅でおおむね推移してきた。足元は消費者物価平価(110円近辺)を上回るドル高にある。
6月22日に1ドル=136円台後半と1998年10月以来の約24年ぶりの円安水準と報じられているが、消費者物価ベースの購買力平価を上回ったのは過去50年で3回しかない。82年の米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締め時と85年のプラザ合意によるドル高是正時、今回である。現在は85年以来の37年ぶりの円安ドル高局面ともいえる。
ドル高になると米国の輸出産業は不利になる。85年当時は自動車など米産業界の要請もありプラザ合意につながり、合意後24時間で20円という円安ドル高の是正が進んだ。多くの米企業が円安ドル高で困っていた。今回はそのような声をあまり聞かない。構造変化で円安で困る主体が米国で少なくなったからか。
歴史的な円安ドル高は調整されるだろう。ただ困っている米関係者が少ないとするとドル高が長く続く可能性はみておかなければならない。 
●外為 1ドル136円49銭前後とドル高・円安で推移 6/29
29日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=136円49銭前後と、午後5時時点に比べ46銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=143円37銭前後と35銭のユーロ高・円安で推移している。
●円相場、一時1ドル=137円台に…24年ぶりの円安水準 6/29
29日の外国為替市場で、円相場は一時、1ドル=137円台まで円安・ドル高が進み、1998年以来、約24年ぶりの円安水準を更新した。
欧州中央銀行(ECB)が29日にポルトガルで開いた金融政策に関する討論会で、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、米国では家計も企業も財務的に安定しているとして「経済全般が金融引き締めに耐えられる」と述べた。インフレ(物価上昇)を抑制するため、米国で金融引き締めがさらに進むとの思惑が広がった。
●NY円、一時137円00銭 24年ぶり円安ドル高水準 6/29
29日のニューヨーク外国為替市場の円相場は円がドルに対して大きく下落して一時1ドル=137円00銭と1998年9月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準を付けた。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が物価高を抑えるために金融引き締めを積極的に進める方針を示し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが進んだ。
午後5時現在は、前日比45銭円安ドル高の1ドル=136円55〜65銭。ユーロは1ユーロ=1・0437〜47ドル、142円60〜70銭。
FRBが金融引き締めを急ぐ一方、日銀は大規模な金融緩和策を維持する方針を示しており、金融政策の方向性の違いが鮮明になっている。投資家はFRBが金融引き締めを加速させる可能性を意識し、円売りドル買いが膨らんだ。その後は米長期金利が低下し、円を買い戻す動きも出た。

 

●1ドル137円台まで下落、24年ぶり円安水準 米「利上げ」発言で 6/30
29日のニューヨーク外国為替市場で、円相場が一時、1ドル=137円台まで下落した。約24年ぶりの円安ドル高水準。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がこの日のシンポジウムで、積極的な利上げ方針についてあらためて発言。日米の金融政策の方向性の違いが意識され、金利の高いドルを買い円を売る動きが広がった。
FRBはインフレを抑えるため金融引き締めを進めており、今月15日には、通常の3倍となる0・75%幅の大幅な利上げを決めた。一方で、日本は金融緩和を続けている。日米の金利差拡大に伴い、3月以降の約4カ月で20円ほど円安ドル高が進んでいる。エネルギー価格の高騰も重なり、日本では食料やガソリン価格が上がり、家計の負担が重くなっている。
●外為 1ドル136円60銭前後と大幅なドル高・円安で推移 6/30
30日の外国為替市場のドル円相場は午前9時時点で1ドル=136円60銭前後と、前日午後5時時点に比べ57銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円66銭前後と36銭のユーロ安・円高で推移している。
●外為 1ドル136円59銭前後と大幅なドル高・円安で推移 6/30
30日の外国為替市場のドル円相場は午後0時時点で1ドル=136円59銭前後と、前日午後5時時点に比べ56銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円73銭前後と29銭のユーロ安・円高で推移している。 
●1ドル137円台まで下落、24年ぶり円安水準 米「利上げ」発言で 6/30
29日のニューヨーク外国為替市場で、円相場が一時、1ドル=137円台まで下落した。約24年ぶりの円安ドル高水準。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がこの日のシンポジウムで、積極的な利上げ方針についてあらためて発言。日米の金融政策の方向性の違いが意識され、金利の高いドルを買い円を売る動きが広がった。
FRBはインフレを抑えるため金融引き締めを進めており、今月15日には、通常の3倍となる0・75%幅の大幅な利上げを決めた。一方で、日本は金融緩和を続けている。日米の金利差拡大に伴い、3月以降の約4カ月で20円ほど円安ドル高が進んでいる。エネルギー価格の高騰も重なり、日本では食料やガソリン価格が上がり、家計の負担が重くなっている。
●東京円、17銭安の1ドル=136円19〜21銭 6/30
30日の東京外国為替市場で、円相場は午後5時、前日(午後5時)比17銭円安・ドル高の1ドル=136円19〜21銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、78銭円高・ユーロ安の1ユーロ=142円25〜29銭で大方の取引を終えた。
●再びドル高に動きだす、昨日のパウエルFRB議長の発言で 6/30
昨日の海外市場で、ドル円は137円ちょうど近辺の高値をつけた。年初来高値を更新するとともに、1998年9月以来のドル高・円安水準となった。ECBフォーラムでパウエルFRB議長が「米経済は金融引き締めに十分対応できる状況にある」と発言したことが一段の利上げ加速を想起させ、ドル高の動きにつながった。利上げが景気を冷やすことを警戒も、何としてでもインフレを抑え込みたいとの強いメッセージが発せられていた。
ドル円相場にとっては、緩和継続姿勢を変えない日銀と積極的な利上げ姿勢を示す米金融当局との対比が一段と際立った格好となっている。昨日の東京市場では山岡元日銀局長が「インフレ期待や円安見通しが引き続き高まれば、長期債利回り上限の調整必要となる可能性」と発言したことで一瞬、円高に振れた。しかし、すぐに円安方向に押し戻されていた。「日銀は来月はイールド上限を調整せず、1年以内に行う可能性」とも述べており、市場には黒田総裁退任後にならなければ政策変更はないだろう、との思いがあったようだ。
きょうは一連の米経済指標が発表される。米新規失業保険申請件数(25日までの週)、米個人所得(5月)、米個人支出(5月)、米PCEデフレータ(5月)、米PCEコアデフレータ(5月)、米シカゴ購買部協会景気指数(6月)など。米金融当局が物価指標として重視することで知られるPCEデフレータは、前年比+6.4%が市場の大方の予想。前回4月の+6.3%から一段と伸びが加速する見込みになっている。一方で、景況感関連としてはシカゴ購買部協会景気指数も注目される。58.0が市場の大方の予想となっており、前回5月の60.3から低下する見込み。昨日のパウエル議長の発言に沿って考えれば、よりインフレ上昇が警戒されることとなる。
この後の海外市場で発表される経済指標は、上記米指標のほかにもスイスKOF先行指数(6月)、トルコ貿易収支(5月)、スウェーデン政策金利、ドイツ雇用統計(6月)、ユーロ圏失業率(5月)、香港小売売上高指数(5月)、南アフリカ生産者物価指数(5月)、南アフリカ貿易収支(5月)、ブラジル失業率(5月)、カナダGDP(4月)など。スウェーデン中銀は政策金利を50bp引き上げて0.75%とすることが見込まれている。
ECB年次フォーラムを終えて、金融当局者の講演イベント予定はみらず。インタビューなどに注意する程度となっている。 

 

●東京外国為替市場で円相場、1ドル = 135円を切る 7/1
7月1日14時13分頃、東京外国為替市場で円相場は1ドル = 135円を切り、前日17時頃の価格(136.20円)から1.31円(0.96%)下落となる134.89円となった。
●日経平均は491円安、ダウ平均先物安や円高・ドル安が重しに 7/1
日経平均は491円安(13時20分現在)。日経平均寄与度では、ファーストリテ、東エレク、TDKなどがマイナス寄与上位となっており、一方、キッコーマン、コナミHD、エプソンなどがプラス寄与上位となっている。セクターでは全業種が値下がり。鉱業、ゴム製品、空運業、電気・ガス業、卸売業が値下がり率上位となっている。
日経平均は下げ幅を広げ、26000円を下回って推移している。ダウ平均先物が安く、また、外為市場で1ドル=134円90銭台と1円ほど円高・ドル安が進みんだことなどが東京市場の株価の重しとなっているようだ。
●ドル/円135円はすでに「円高」。 急スピードの警戒感薄れ、さらに上昇余地? 7/1
2022年も今日から後半戦。コロナ後初めて「自由に移動できる夏」になった今年は、欧米ではインフレ率がどれほど上がっていても旅行に行きたい人が多く、ホテルはすでに満室でどこもキャンセル待ち状態になっているらしい。ちなみに、日本ハワイ間の燃料サーチャージは、円安と原油高のおかげで倍に値上がりして、一人往復47,000円払わないと飛行機さえ乗せてもらえない。さらにハワイから帰国するときには、新型コロナの陰性証明書の発行が一人約34,000円かかる。旅行代とは別に一人8万円かかるから、家族5人でハワイに行くとすれば、別途40万円用意しないといけない。それができないなら、できるだけエアコンは使わず、かといって熱中症にならないようにして夏をやり過ごす。実質賃金が上昇しなければ、日銀がどんなに頑張ってもインフレは長続きしない。
6月30日(木曜)のドル/円は「円高」。24時間のレンジは135.55円から136.81円。値幅は1.26円。2022年の129営業日目は136.53円からスタート。
今週再び強まった円安の流れを引き継ぎ、東京時間朝に136.81円まで円安に動いたが、前日(29日)につけた24年ぶりの円の安値137円を超えることなく失速した。その後は売りが強まり、明け方には135.55円まで円高に動いた。終値は135.75円(前日比▲0.85円)。
レジスタンスは、136.81円(6/30) / 147.63円(1998)
サポートは、135.70円(200時間移動平均)/ 135.55円(6/30)/ 135.10円(6/28)/ 134.49円(6/27)
6月を振り返ると、13日の週にFRB(米連邦準備制度理事会)をはじめとする中央銀行が、相次ぎ政策金利を発表し、その翌週は、高インフレと(日銀を除く)中央銀行利上げの仁義なき戦いに、株式市場と金利高の良好な関係の終わりを感じた。
FRBの急激な利上げの副作用はすでに出始めている。米国指標はすでに減速傾向だ。今週発表された6月リッチモンド連銀製造業景気指数は▲19で、前回の▲9から大きく急激に下落して新型コロナ流行後の最悪となった。米消費者信頼感指数は、103.2から98.7も悪化している。FRBも注目するPCE(個人消費支出)コアデフレーターは伸び悩んだ。パウエルFRB議長の「インフレ退治のために無条件でコミットする」という決意が試される。 
●外為 1ドル135円61銭前後とドル高・円安で推移 7/1
1日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=135円61銭前後と、午後5時時点に比べ30銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=141円81銭前後と51銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●東京市場 7/1
1日の東京市場はドルが続落。ドル/円は6月27日、今週初め以来の134円台を一時示現している。
ドル/円は135.75円レベルで寄り付いたのち、当初はドル買い先行。136円前後まで一時値を上げている。しかし、日米株価が弱含みに推移したうえ、米長期金利が低下したことなどを嫌気。徐々にリスク回避の動きに押される展開となると、ドル/円も目先高値から1円以上下落した134円台まで一気に値を崩している。16時現在でも、そのままドルの安値圏135.05-10円で推移し、欧米市場を迎えていた。
一方、材料的に注視されていたものは、「ロシア情勢」と「荒れ模様のビットコイン」について。
前者は、ウクライナにおける戦闘は引き続きロシア軍の攻勢が伝えられているなか、「ロシア軍が黒海の蛇島から撤退」といった別の報道も。これを受け、港湾封鎖が緩和されるとの期待感も取り沙汰されていた。またポーランド首相から「EUとロシアは物資輸送で解決策が必要との認識で一致している」との発言も聞かれていたが、今後果たして実りある進展を迎えることが出来るのだろうか。
対して後者は、昨日から本日にかけて暗号資産ビットコインはかなり激しい上下動。2万ドル台から18600ドル台までと、一時大きく下落したものの、舌の根も乾かぬうちに2000ドルを超える急反発をたどっている。100%を超える戻し幅で、いわゆる「行って来い」。しかし、それで終わりではなく、本日東京で目先高値をつけたのち再び1500ドル近い下落を記録するなど、なかなかのジェットコースター相場だった。
●ロンドン外国為替市場で円相場、1ユーロ = 140円を切る 7/1
7月1日23時33分頃、ロンドン外国為替市場で円相場は1ユーロ = 140円を切り、前日2時頃の価格(142.20円)から2.35円(1.65%)下落となる139.85円となった。
●半年で21円も円安に いったいどこまで? 7/1
円安の流れが止まりません。今週、外国為替市場では、アメリカが金融引き締めを積極的に続けるという見方から、円相場が一時、およそ24年ぶりに1ドル=137円台まで値下がりしました。この半年間で実に21円も円安ドル高が進み、半年間の値下がり幅としては、日銀の記録が残る1998年以降で最大となりました。輸入物価を押し上げる円安に対し、企業や家計の間で懸念が強まっています。この円安、どこまで進むのでしょうか。
短期間の急激なコスト増加に対応できない
「想定を超える円安です。この半年で急激にコストが増えて、準備する時間もなく、すぐに値上げもできないので、耐えるしかありません」
今週、取材した都内で義足や義手などを手がける義肢装具メーカーの社長のことばです。
このメーカーでは、義足などを必要とする人にいつでも製品を提供できるよう、200種類にのぼる部品や材料をアメリカやドイツなどの海外から輸入しています。
しかし、急速に進む円安の影響で、仕入れ価格が2割上昇。アルミや鉄などの原材料価格も高騰していて、収益が圧迫されています。
メ−カーでは販売価格への転嫁を検討していますが、義足などの部品の価格を値上げするには、国の認可を得る必要があります。
仮に認められたとしても実際に値上げできるのは来年4月。現状は企業努力でコスト削減を図りながらやりくりしていくしかないといいます。
中小メーカーの経営に重くのしかかる輸入物価の高騰。短期間に急激に円安が進む中、企業の中には対応が間に合わないところも出てきています。
記録的なスピードで円が下落
今週、外国為替市場では、円相場が一時、およそ24年ぶりに1ドル=137円台まで値下がりしました。
そして、上半期最終日の30日午後5時時点の円相場は、1ドル=136円19銭から21銭でした。115円台前半だった去年の年末から半年間で、およそ21円もの値下がりです。
毎営業日の記録が残る日銀の1998年以降の午後5時時点のデータでみると、半年間の値下がり幅としては最大となりました。
短期間でこれだけ円安が進んだ背景には、日米の金融政策の方向性の違いがあります。
インフレ抑制のため、金融引き締めを急ぐアメリカでは金利が上昇。これに対し、日銀は大規模な金融緩和で金利を抑え込んでいます。
金利差が拡大する構図は当面、変わらないという見方から、より利回りが見込めるドルを買って円を売る動きが続いてきました。
過去にも円安が急速に進んだ局面があります。2013年から2015年にかけてです。
きっかけは2013年の日銀の黒田総裁就任。「黒田バズーカ」と呼ばれる市場に大量の資金を供給する大規模な金融緩和策を打ち出したことで、一気に円安が進みました。
また2015年には、アメリカがリーマンショック以降続けてきたゼロ金利政策の解除に向け、動き出したことが大きな要因でした。
いずれも市場が金融政策の潮目の変化を捉え、為替の大幅な変動を生み出してきたのです。
新型コロナからの経済活動の再開に伴う世界的なインフレに加え、ロシアのウクライナへの軍事侵攻による資源価格の高騰を受け、いま、欧米の中央銀行が金融引き締めを急いでいます。
ただ、急速な金融引き締めによって、景気が一気に冷え込むリスクも指摘され始めています。
世界的なインフレはどこで収まるのか。欧米の金融引き締めは、どこまで進むのか。そして、日銀は今の大規模な金融緩和をいつまで続けるのか。
市場で各国の中央銀行の一挙手一投足が注目されています。
下半期さらに円安進行?1ドル=145円も
この記録的な円安。今後の動向について、市場関係者はどうみているのでしょうか。
市場関係者1「アメリカの急速な利上げに伴う日米の金利差拡大によって円安ドル高が進行し、年内に1ドル=145円まで円安が進む可能性があると見ている。来年以降はアメリカの景気の減速感が強まり、アメリカの利下げが意識されれば、ドル円は反転するだろう。そして来年の後半には、日銀の金融政策の修正などにより、日本の金利が上昇し、1ドル=133円程度になるとみている」
市場関係者2「FRBがインフレ抑制に本腰を入れ、市場で大幅な利上げが織り込まれる一方、日銀は金融緩和の維持に強い姿勢を示しているため、円安ドル高が進む余地が拡大し、年内に1ドル=142円まで円安が進む可能性がある。ただ、アメリカの景気はこの先、大幅な利上げによって減速が見込まれ、人手不足などの供給制約が徐々に解消されることで、インフレはいくらか落ち着くのではないか。来年は円高ドル安方向になりやすくなると思う」
市場関係者の間では、年内にもう一段、円安が進むという見方が多くなっています。
食料やエネルギーなどを輸入に頼る日本では、輸入物価を押し上げる円安は、私たちの生活に大きな影響を与えます。
それだけに、為替相場の変動や中央銀行の動き、潮目の変化を注意深く見ていく必要がありそうです。
注目予定
7日に大幅な利上げを決めたアメリカのFRB=連邦準備制度理事会の6月会合の議事録が公表されます。今後の金融引き締めのペースなどについて、どのような議論が行われたのか注目されます。
8日に発表されるアメリカの雇用統計では、失業率がコロナ前の水準に回復するのかに関心が集まりそうです。
10日は参議院選挙の投開票日。物価高への対策が争点の1つとなる中、今後の日本経済を左右する選挙の結果に注目です。
●円安影響…iPhone・iPadなど日本で値上げ 7/1
7月に入りさまざまなものが値上げされる中、アメリカのIT大手・アップルも円安の影響を受けて、1日からiPhoneやiPadなどを日本で値上げしました。
アップルの公式サイトによりますと、例えば9万8800円からだったSIMフリーのiPhone13は、販売価格が1万9000円上がり、11万7800円からとなっていて、最上位機種では4万円値上げした機種もあります。
アップルの関係者によりますと、値上げの理由は急激に進む円安ドル高の影響だということです。アップルは4月の決算会見で、ドル高によって収益に悪影響が出ていると指摘していました。
一方、1日からさまざまな食品も値上がりします。穴子やアスパラなど旬の食材をこだわりの油で揚げる、都内の老舗天ぷら店では…。
天寿ゞ・鈴木康夫さん「小麦粉とか油も値上がりしてます。(卸業者が)値上げの紙を持ってくるときに、申し訳ないって言うんだけど、申し訳ないなんて言わないでくれって。仕方がないんじゃないでしょうかね」
天ぷらに使う食材や油、小麦粉などの値上げが続いているといいます。
日清オイリオグループとJ-オイルミルズ、昭和産業は1日から食用油を、ニップンと日清製粉ウェルナは小麦粉を値上げします。
帝国データバンクによりますと、今年6月末までに発表された値上げされる品目は1万5000以上にのぼり、年内では、2万品目以上が値上げされる可能性が高いということです。
●ニトリHD会長:円安は年後半に反転すると考えていたが間違いだった 7/1
家具・インテリアチェーンを展開するニトリホールディングスの似鳥昭雄会長は1日、円安傾向が年後半に反転すると考えていた自身の見通しが「間違っていた」と認め、円高反転の時期が想定より遅れるとの見方を示した。
似鳥氏は同日の決算会見で、今年3月ごろから急激に進行した円安について、従来は年後半に円高方向に反転し、8月ごろには1ドル=115円になると考えていた為替相場の見通しが間違っていたと認めた。
第1四半期業績が目標を下回ったことについて、「為替が予測を外れたのが一番大きいと思っている」とした上で、「会社始まって以来の、私にとっては苦い失敗」と反省しており、「このような失敗を二度としないようにしたい」と述べた。現状では年内には円高方向に転じると考えているが、それでも110円前後の水準には戻らないだろうとの見方を示した。
円相場は6月末に一時、1998年以来約24年ぶりの円安水準となる1ドル=137円台を付けた。
同社は前期(2022年2月期)で35期連続の増収増益を達成。似鳥氏の経済や為替相場の見通しには定評があり、成長の原動力の一つともなっていた。ニトリHDは商品などを海外から多く輸入しており、足元で進む円安・ドル高は業績に逆風となる。
ニトリHDは同日発表した決算で、今期の業績予想見通しを据え置いた。

 

●早朝の東京外国為替市場で円相場、1ユーロ = 141円を超える 7/2
7月2日6時12分頃、早朝の東京外国為替市場で円相場は1ユーロ = 141円を超え、前日17時頃の価格(141.35円)から0.33円(0.23%)上昇となる141.02円となった。
●為替相場 6/27〜7/1 7/2
27日からの週は、波乱含みとなった。週前半は円安の動きが先行したが、週後半は株安とともに円高方向に押し戻されている。パウエル米FRB議長がECBフォーラムで、「米経済は金融引き締めに十分対応できる状況にある」と発言。市場に一段の利上げ加速を想起させた。利上げが景気を冷やすことを警戒も、何としてでもインフレを抑え込みたいとの強いメッセージが発せられていた。発言直後には日米金利差拡大観測の再燃でドル円は137.00近辺と、1998年9月以来の高値水準をつけた。しかし、その後は株安とともに円高方向に押し戻されている。ドル円は一時134円台に。パウエル議長の発言以降は、市場に米経済成長の鈍化懸念が台頭している。株安とともに米債利回りが低下するなかで、為替市場ではリスク警戒のドル高圧力が広がった。ユーロドルは1.06台をつけたあとは一時1.03台まで下落。ポンドドルは1.23台から1.20台に下げる場面があった。週末に発表されたユーロ圏消費者物価速報は前年比+8.6%を上昇が一段と加速、ECBの利上げ幅拡大への思惑となった。一方で、英経済指標は総じて弱く、先行して利上げを開始した英中銀の打ち止めへの思惑がでてきたようだ。
27日
東京市場では、ドル円が下に往って来い。週明け午前は売りが先行、135円台前半から134.60付近へと軟化した。先週後半から強まっている米国のリセッション懸念が重石。米株先物・時間外取引が軟調に推移したことも警戒感を誘った。しかし、その後は買い戻しの動きに転じた。日経平均が朝から堅調で、その後も上げ幅を拡大。米株先物にも買い戻しが入り、プラスに転じる場面も。米債利回りも上昇。午後には135円手前まで下げ渋った。ユーロドルは朝方のドル安局面で1.0580付近まで買われたが、上値追いの勢いもなく、その後は揉み合いとなった。ユーロ円は早朝に143円手前まで買われたあとは、142円ちょうど付近まで下落と振幅。午後には142円台半ばへと下げ渋り。
ロンドン市場は、円売りが優勢。米株先物・時間外取引とともに欧州株も買われており、先週末に米株が買われたリスク選好の流れが継続している。債券は売られており、米10年債利回りは一時3.17%台後半まで上昇。英欧などの主要経済指標の発表に欠けるなかで、週明けロンドン市場はリスク動向に反応している。ドル円は東京午前に134円台半ばまで下落したが、その後は再び買われている。ロンドン序盤には135円台乗せから135.30台へと上昇。ユーロ円も東京午前に142円手前まで下押しされたあとは、ロンドン時間には143円台乗せ。ポンド円は165.10台を安値にロンドン序盤には166.50台まで買われた。ただ、ポンドは対ユーロでの売りに押され166円付近へと上昇一服。ドル相場はまちまち。ユーロドルが1.0550付近から1.0590付近へと買われる一方で、ポンドドルは1.22台後半から一時1.2330付近まで買われたあとは、再び1.2270付近へと押し戻されている。ユーロドルの底堅い動きを受けて、ドル指数は先週からやや水準を下げている。
NY市場は、全体的に様子見ムード。ドル円は135円台での小幅の上下動。135円台半ばでは上値を抑えられるも、135円ちょうど近辺では下げ止まっている。下値での押し目買い意欲が強く円安の動きがドル円の下値をサポートしている状況に変化はない。日銀が主要国の中で唯一、金融緩和姿勢を維持する中で、各国との金融格差拡大が引き続き円売りを誘発している。一方、ドルの方は戻り売りが優勢。市場はリセッション(景気後退)へのリスクを高めており、FRBの利上げサイクルが市場の期待ほど高まらないのではとの見方も。米金利上昇観測の一服で足元の株式市場の地合いが改善しており、これがドルを圧迫しているとの指摘も。ユーロドルは一時1.06台に上昇。ただ、ユーロ圏の景気後退リスクにより、ユーロの回復には時間がかかるとの声も聞かれる。ウクライナ危機をめぐる欧米の対ロシア制裁によるガス不足が欧州で続く可能性が高く、市場参加者はEUの大部分で景気後退の恐れがあるとしている。ポンドドルは一時1.23台を回復。ポンドは最近、景気敏感通貨としての性格を帯びつつあり、株式市場との正の相関性が高い。株式相場の改善はポンドにとって追い風になるという。ただ、英国はEUとの貿易摩擦を引き起こすリスクがある。
28日
東京市場で、ドル円は135円台前半を中心に振幅。朝方に135.60手前まで買われたあとは、135.10付近まで下押し。午後にはじり高の動きとなった。午前はダウ平均先物が100ドル超安となったが、午後には買い戻しが入りプラス圏を回復。日経平均も底堅く円売りが根強い印象だった。ユーロ円も午前中には143.40台から142.80台まで下落したが、午後には143.20台まで値を戻している。株式動向をにらんで円相場が上下動した。
ロンドン市場は、ドル円が再び136円台に乗せている。クロス円も買われて、円売りの動きが広がっている。ロンドン朝方に中国が入国者の隔離期間を短縮と報じられると中国株が買われた。米株先物も時間外取引で上昇に転換、欧州株は堅調に推移している。リスク警戒感の後退が円売りを促している。また、米10年債利回りが3.17%付近から3.25%付近へと上昇しており、日米金利差拡大観測が再燃していることもドル円を押し上げている。ドル円は135円台半ばを上抜けて136円台乗せから136.20近辺に高値を伸ばした。ユーロ円は143円台前半から一時144円台乗せ。ポンド円は166円付近から167円手前まで上昇。豪ドル円は93円台後半から94円台後半まで買われた。対ポンドではユーロ買いが優勢。ラガルドECB総裁は、7月の0.25%利上げ、9月はインフレ次第でより大幅な利上げも、と従来の発言内容を再確認した。ラトビア中銀総裁は7月の0.50%利上げ検討を主張。ベルギー中銀総裁は、9月の50bp利上げが適切、200bpの利上げは比較的早期に必要とした。
NY市場では、リスク警戒のドル買いが再燃。この日は米株式市場が急落している。ロンドン市場で136円台に乗せたドル円は、NY時間には136.30台まで上昇。136円台に高止まりしている。直近高値の136.71レベルが上値のメドに。ユーロドルは1.05ちょうど付近まで一時下落したあとは1.0540付近までの反発にとどまっており、ロンドン市場午前からの上値重い展開が続いている。ポンドドルも上値が重く、1.22台を割り込んだ。本日は6月調査の米消費者信頼感指数が発表され、100を下回り、昨年2月以来の低水準となった。インフレが米消費者のセンチメントを弱め続けている。ただ、為替市場の反応は限定的だった。ラガルドECB総裁がポルトガルのシントラで開催されているECBの年次フォーラムに出席しており、従来と変わらずの慎重な見通しを示した。7月に0.25%ポイントで利上げを再開し、9月には大幅利上げの可能性を示唆する内容を繰り返した。
29日
東京市場は、調整の動き。前日に136.30台まで買われたドル円は135.90付近へと下押しされた。前日の米株安を受けて、日経平均やアジア株などが売りに押される展開、米10年債利回りも上昇一服となり3.11%台まで低下した。ただ、ドル円の下押しは浅く、午後には136.20台まで買い戻された。ユーロドルは1.05台前半と前日のNY市場終盤の水準で揉み合った。しかし、午後1時半に発表されたドイツ西部ノルトライン・ヴェストファーレン州の消費者物価指数が予想外の前月比マイナスに落ち込み、前年比の伸びも鈍化したことがユーロ売りを誘った。ユーロドルは1.05台割れ目前に。ユーロ円は143円台前半での推移から、142円台後半へと下落した。ロンドン時間に発表されるドイツ全体の消費者物価指数の鈍化への思惑が広がったもよう。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。前日の米株安を受けて、欧州株が軟調に推移。米株先物の反発力も弱いなかで、ロンドン序盤はリスク警戒の円高・ドル高の動きが先行した。ドル円は135.79近辺まで一時下落。山岡元日銀局長が、物価上振れなら日銀は円安を放置できなくなる、債券利回り上限の調整の可能性も、と指摘したことに反応した面もあった。しかし、その後は米債利回りの上昇とともに買われ、136.50台へと上昇。6月22日につけた24年来の高値水準136.71レベルを試す展開となっている。ユーロドルは序盤に1.0486近辺まで下押しされた。ドイツ州単位の消費者物価指数が下振れしたことが影響していた。その後は1.05台前半へと下げ渋り。ユーロ円の142円台半ばから143円台後半への上昇が下支えとなっている。ポンドドルは1.22台が重くなり、1.2150台へと軟化。ドル買い圧力に押されている。ポンド円は165.50付近から166.20付近で下に往って来い。株安やドル円上昇など、米金融当局の利上げ加速観測を市場は意識しているようだ。
NY市場では、ドルが一段高。ドル円は一時137円ちょうど近辺まで上げ幅を伸ばした。1998年9月以来の高値水準となった。今週は米債利回り低下でドル円も伸び悩んでいたが、今日の動きで上値追いのムードが再加速している。本日はポルトガルのシントラで開催されているECBの年次フォーラムでパウエルFRB議長が講演を行っており、「米経済は金融引き締めに十分対応できる状況にある」と述べ、為替市場も敏感に反応したもよう。ユーロドルは1.05台割れから一時1.0435近辺まで下落。ポンドドルは一時1.21ちょうど付近まで下落。ECBの年次フォーラムにベイリー英中銀総裁が参加し、「インフレ持続ならより強力に行動する」と利上げ姿勢を示す一方で、英経済の減速リスクにも言及していた。今日のパウエルFRB議長の発言は、ラガルトECB総裁やベイリー英中銀総裁よりも利上げの副作用に対してより楽観的な印象を与えたようだ。
30日
東京市場では、ドル円の上値が重くなった。前日に137.00レベルの高値をつけたあと136円台後半で東京朝を迎えた。再び買われたが136.80付近までにとどまり、136.60台へ。午後には米株先物・時間外取引に下げで日経平均が下げ幅を拡大、リスク警戒の動きに。ドル円は136.30近辺へと軟化した。ユーロ円は142円台後半での揉み合いから142円台半ば割れへと円買いの動きに押された。ユーロドルは1.04台半ばでの揉み合い。ポンドドルは1.2120台から1.2150近辺へと小高い動き。
ロンドン市場は、リスク警戒の動き。欧州株が大幅安となり、独仏株価指数はいずれも2.5%超安と下げ幅を拡大。前日のパウエルFRB議長発言の影響が続いている。同議長は、「米経済は金融引き締めに十分対応できる状況にある」と発言。市場に一段の利上げ加速を想起させた。利上げが景気を冷やすことを警戒も、何としてでもインフレを抑え込みたいとの強いメッセージが発せられていた。発言直後は137円ちょうど付近まで買われたドル円だったが、その後は株安とともに上値が重くなった。ロンドン時間には136円台半ばを下回ると一時135.97近辺まで下押しされた。ただ、その後は136円台前半へと持ち直しており、日米金利差拡大観測が下支えとなっているもよう。ユーロ相場が軟調。独雇用統計が予想外に悪化したことが重石。ユーロドルは1.04台割れ水準、ユーロ円は142円台割れ水準へと下落している。対ポンドでもユーロは軟調。ポンドはユーロに連れ安。ポンドドルは1.21台後半へと反発も、再び1.21付近へと下押しされている。ポンド円は165円台での振幅も足元では165.20付近と上値重く推移。
NY市場で、ドル円は135円台に下落。朝方発表になった米PCEのデータが予想を下回ったことで、インフレへの懸念が一服。また、米株式市場に売りが強まったことや、米国債利回りの低下、原油相場が下落していることもドル円の戻り売りにつながったようだ。米10年債利回りは一時3%を下回った。前日は137円ちょうどまで上昇する場面があったが、本日は期末とあって、積み上がったロングポジションの調整が出た可能性もありそうだ。後半には135円台半ばまで下落。米経済は年末にリセッション(景気後退)に向かう可能性が高いとの見方がでていた。ユーロドルは下に往って来い。ロンドン時間にはドル買いが優勢となり、1.04を一時割り込んだ。しかし、朝方発表の米経済指標を受けてドルの戻り売りが強まると、ユーロドルは1.0480台まで反発、ロンドン時間の下げを取り戻す展開となった。ポンドドルも買い戻されて1.21台後半まで上昇。ただ、市場では英経済の先行き不透明感が広がっており、今後のテクニカル・リセッションの可能性も指摘されている。英中銀は次回8月の利上げが見込まれているが、それで利上げはいったん停止する可能性も。
1日
東京市場は、リスク回避の動き。ここにきて米リセッション懸念が広がっている。ドル円は前日の海外市場で売られた後、朝方には136円手前まで買われたが、調整の動きが一巡すると再びドル売り・円買いが強まった。午後には135円割れとなる場面があった。日経平均が下げ幅を拡大、米株先物・時間外取引の下落などが重石。今晩の米ISM製造業景気指数が弱めの数字となる思惑も円買いを誘った。ユーロ円は141円台半ば割れから一時142円台を回復も、その後はドル円とともに下落、141円台割れに。ユーロドルは1.04台後半でのもみ合い。円相場主導の展開で動きにくかった。米10年債利回りは3.02%付近から2.94%付近まで低下した。
ロンドン市場は、ポンド売りが継続している。東京市場からリスク警戒のドル買い・円買いの動きに押されたポンド相場だが、ロンドン時間に入ると一段安になっている。この日発表された英製造業PMI確報値が予想外に下方修正されたことや、消費者信用残高が縮小したことなどに反応している。米欧に先駆けて利上げを開始した英中銀だが、市場では次回の利上げのあとはしばらく様子を見るとの思惑がでているもよう。これに対して、ECBはようやく7月から利上げを開始する方針、米FRBは金融引き締めを継続する姿勢を示している。相対的にポンドが売られやすくなっているようだ。ユーロ圏消費者物価速報は前年比+8.6%と前回の+8.1%から一段と上昇加速した。ポンドドルは1.20台半ばへ、ポンド円は163円台割れ目前へと下落。ユーロポンドは0.86台後半に買われている。ユーロドルは1.04台前半では下げ渋り1.04台半ばから後半での推移。ユーロ円は序盤に141円台割れとなったあとは141円台後半まで反発する場面があった。ドル円は134.75近辺まで下押しされたあとは135.70付近まで反発。円相場は株式動向に敏感に反応している。欧州株は売りが先行したが、プラス圏へと切り返した。ただ、足元では再び下げに転じるなど不安定な推移となっている。ドル円、クロス円ともに上昇は一服。
NY市場はリスク回避の雰囲気が一時広がり、為替市場はドル買いの反応が見られた。一方、米国債利回りの低下や株安による円高の動きも見られ、ドル円は再び134円台に下落する場面が見られていた。朝方発表になったISM製造業景気指数が米リセッション(景気後退)への懸念を高める内容となったことが市場を圧迫。本日の21日線は134.60付近に来ていたが、目先の下値メドとして意識される。 

 

●ドル高円安基調に変わりなし? FOMC議事要旨の公開も 7/3
投資情報会社・フィスコが7月4日〜7月8日のドル円相場の見通しを解説する。
今週のドル円は底堅い値動きとなりそうだ。一時137円00銭と1998年9月以来約24年ぶりの高値圏に浮上した。1ドル=136円台では高値警戒感から利益確定を狙ったドル売りが観測されており、ドルは上げ渋っている。ただ、日米金融政策の違いに着目した為替取引は縮小していないことから、ドル高円安の基調に変わりはないだろう。
6月28日に発表された消費者信頼感指数は節目の100を下回り、2021年2月以来となる低調な内容を示した。他にも予想を下回る経済指標が目立ち、米国経済にリセッション懸念が広がり始めた。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)は7月の連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で0.75ポイントの追加利上げを決定するとみられており、金融引き締め姿勢を崩していない。
今週は7月6日に公表されるFOMC議事要旨(6月14-15日開催分)で0.75ポイント利上げの継続などタカ派的な内容なら、ドルを押し上げる要因となる。なお、欧州中央銀行(ECB)は7月と9月に預金金利の引き上げ計画しており、ユーロ・円の押し上げ要因になるが、米ドル・円の取引にもある程度の影響が及びそうだ。他の主要中央銀行も追加的な引き締めの意向でクロス円は下げづらく、ドル・円相場を支える見通し。
●円19%下落、東京株8%安 日米金利差は2倍に―2022年上半期 7/3
2022年上半期(1〜6月)の金融市場で円安と株安が急速に進んだ。6月末の水準を昨年12月末と比べると、円の対ドル相場は約24年ぶりの安値圏となる1ドル=136円台後半へ約19%(約22円)下落。日経平均株価は2万6393円04銭へ約8%(約2400円)値下がりした。円安が株高にはつながらなくなってきた。
長期金利で比べた日米金利差は約1.5%から2倍の約3%へ拡大、低金利の円を売ってドルを買う動きが強まった。
金利差が拡大したのは、米国の中央銀行がインフレ退治へ3月から利上げに着手したため。米利上げペースは3月の0.25%から5月に2倍の0.5%、6月に3倍の0.75%へ加速。日銀が景気の下支えへ大規模な金融緩和を続けているのとは対照的だ。金融政策の方向性の違いは鮮明で、円安・ドル高傾向は続く可能性がある。
コロナ禍からの経済活動の回復で昨年後半から目立ち始めた世界的な物価の上昇は、ロシアが2月にウクライナ侵攻を始めた影響で勢いを増した。戦争でエネルギーと食料の価格が高騰したためで、原油先物相場の代表指標となる米国産標準油種WTIの終値は、半年で4割上昇した。
消費者物価指数の上昇率(前年同月比)を見ると、米国は昨年12月の7.0%から今年5月には8.6%と40年5カ月ぶりの高い伸びを記録した。日本の全国消費者物価もこの間、消費者の実感に近い総合指数で0.8%から2.5%へ上昇した。 

 

●円相場、135円44〜48銭 7/4 
4日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=135円44〜48銭と、前週末(135円29〜29銭)に比べ15銭の円安・ドル高となった。 
●1ドル=136円…なぜ「異常な円安」は止まらないのか? その「根本的な理由」 7/4
24年ぶりの円安水準
外国為替市場で、わが国の円が米ドルをはじめとする主要な通貨に対して減価傾向で推移している。
6月22日には一時、ドル/円の為替レートが136円70銭台まで下落(ドル高・円安が進行)した。
24年ぶりの円安水準だ。
年初来から6月28日までの間、円はドルに対して15.5%下落した。
為替レートの理論値に関する考え方の一つである“購買力平価”などに比べ、現実に取引されている円はかなり安い。
その背景として、1990年以降にわが国経済が直面してきた複数の問題が深刻化していることが大きい。
その一つが内需の低迷だ。
需要が増えないため、わが国の企業は海外の企業に比べて購買力が低下している。
足許では、世界全体でインフレが最大の問題となっている。
経済が脱グローバル化し、世界全体で企業がコストプッシュ圧力の高まりに直面している。
内外金利の拡大観測が加わることによって主要通貨に対して円は弱含みの展開が予想される。
輸入物価の上昇などによって生活水準の引き下げを余儀なくされる家計は増えるだろう。
購買力平価を「大きく下回る」円安
為替レートの水準を説明する理論の一つに、“購買力平価”がある。
購買力平価とは、世界各国で特定のモノの価格が、単一の価格に収れんすること(一物一価の法則)を前提にしている。
その上で、10年や20年など長期の時間軸でみると、同じモノの価格は、一つの水準に落ち着くと考える。
英エコノミスト誌が公表する“ビッグマック指数”は、各国で販売されているビッグマックが同じ価格になる為替レートがいくらかを示す。
2022年4月に国際通貨基金(IMF)が公表した“世界経済見通し”によると、米ドルと円の購買力平価は2021年末で96.51円、2022年末に91.15円と予想されている。
2021年末の購買力平価に比べ、足許のドル/円の為替レートは35円程度も円安に振れている。
これが、経済の基礎的条件=ファンダメンタルズから乖離した円安進行、と言われるゆえんだ。
影響を与えているのは、為替取引のほとんどが資本取引であることだ。
為替取引は貿易取引と、クロスボーダーでの株式や債券、通貨などの売買からなる資本取引の二つに分けられる。
貿易取引は基本的には各国の経済の実力を反映する傾向にある。
為替取引全体に占めるウェイトは10%程度だ。
なお国際決済銀行(BIS)によると2019年4月の一日平均の通貨取引額は6.6兆ドル(約891兆円)、その7%が非金融企業などによるものだった。
それに対して、資本取引は全体の90%近くを占める。
主要投資家はわが国と米国など、各国経済の今後の展開を予想する。
現在、米国の個人消費は依然としてしっかりしている。
投資家は金利が低い円で資金を借り、より多くの金利収入が期待できる米ドルを買い、利得を目指す。
足許のように日米の金融政策の違いが鮮明な状況では円売りが増加し、売りが売りを呼ぶ形でドル高・円安の流れが強まる。
円安の「負の側面」が加速する
わが国の金利が低水準で推移してきた最大の要因は、自律的な需要の創出が難しいことにある。
1990年はじめにバブルが崩壊し、わが国の経済は長期の停滞に陥った。
実質GDP成長率は伸び悩んだ。
国税庁によると1997年に平均給与は467万3000円に達した後は増えていない。
その背景には、不良債権処理の遅れによって、経済全体に過度なリスク回避の心理が広まったことがある。
また、1990年代以降、冷戦の終結によって世界経済はグローバル化した。
国境のハードルが下がり、世界の企業は最もコストの低いところでモノを生産し、最も高く売れるところで供給する体制を強化した。
グローバル化の最大のベネフィットは、世界的に景気が回復しても物価が上昇しづらくなったことだ。
その状況下、わが国の企業は環境の変化に対応することが難しく、グローバル化に後れを取った。
リーマンショック後は国内企業の海外進出が加速し、徐々に本邦企業はグローバル化のベネフィットを手に入れ始めた。
しかし、2018年以降の米中対立、さらには2月24日のウクライナ危機の発生によって世界経済は脱グローバル化し始めた。
各国の企業はサプライチェーン(供給網)の寸断などに直面し、コストプッシュ圧力が急速に高まってインフレが進行している。
その状況下、わが国経済にとって円安のマイナス面が増える。
当面、円は主要通貨に対して弱含むだろう。
内需が縮小均衡しているため、国内で持続的に給与所得が増加し、可処分所得が増える展開は期待できない。
他方で、世界的に資源価格はピークアウトしたあとも高止まりし、わが国の交易条件は追加的に悪化しやすい。
電力料金や食品価格の上昇に対応するために生活水準の引き下げを余儀なくされる家計が急増する展開が懸念される。 

 

●円相場、135円84〜84銭 7/5 
5日の東京外国為替市場の円相場は、午前9時現在1ドル=135円84〜84銭と、前日(135円44〜48銭)に比べ40銭の円安・ドル高となった。  
●外為 1ドル136円24銭前後と大幅なドル高・円安で推移 7/5
5日の外国為替市場のドル円相場は午後4時時点で1ドル=136円24銭前後と、前日午後5時時点に比べ80銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円15銭前後と90銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●東京円、64銭安の1ドル=136円08〜09銭 7/5
5日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比64銭円安ドル高の1ドル=136円08〜09銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは同10銭円高ユーロ安の1ユーロ=141円17〜21銭で大方の取引を終えた。
●NY円、135円後半 7/5
連休明け5日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前週末比66銭円安ドル高の1ドル=135円83〜93銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0259〜69ドル、139円43〜53銭。
日米の金融政策を巡って方向性の違いが意識され、円売りドル買いが優勢となった。欧州経済の減速懸念からユーロが対ドルで急落して一時、2002年12月以来、約19年半ぶりのユーロ安ドル高水準を付けた。ユーロを売ってドルを買う動きが加速し、その影響で対円でもドルが買われた。
●ルーブル8割高・止まらぬ円安 4〜6月、実態は「ドル1強」 7/5
4〜6月の外国為替市場で米ドルの上昇が鮮明になった。インフレ抑制を急ぐ米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを一気に速め、ドルに資金が集まった。円の弱さが際立った1〜3月とは異なり、ドル以外の多くの主要通貨が下落した。ロシアのルーブルが8割高と急騰ぶりが目を引くが、市場の潮流は「ドルの一人勝ち」だ。ドル高は新興国のインフレに拍車をかけ、世界経済の減速懸念を強める。
円やユーロなど主要通貨に対するドルの強さを示すドル指数は6月末に2002年12月以来20年ぶりの高水準をつけた。3月末対比でも6%超上昇した。金融緩和を続ける日本の円相場は6月下旬、一時1ドル=137円台に下げ、4〜6月の下落幅は15円程度に達した。幅広い通貨に対する円の弱さが際立った1〜3月からドル高の要素が加わり、円の対ドル相場は下落が加速した。
幅広い貿易相手国・地域と比較した各通貨の総合的な強さを表す名目実効為替レートである日経通貨インデックス(2015年=100)について6月末時点の値を3月末と比較した騰落率をみると、ロシアのルーブルの上昇率が81%と全25通貨のなかで最も大きかった。ウクライナ侵攻に絡む経済制裁でもエネルギー輸出は続いている半面、輸入は急減した。外貨流出を防ぐためだった資本規制もルーブルの売り需要を封じた。
特殊な事例であるルーブルを除くと米ドルやこれに連動する通貨高が目立ち、実質的に「ドルの一人勝ち」の様相を呈した。ドルの4〜6月の上昇率は4.5%。高インフレの継続をみてFRBが利上げを加速し、基軸通貨の高い利回りにひかれてマネーが集まった。スイスフランも中央銀行が6月に予想外の大幅利上げを決めて買いが集まったが、上昇率は1.6%にとどまった。
ドル高は米国にとっては「インフレ抑制要因になる」(パウエルFRB議長)半面、グローバル展開する企業は価格競争力が低下し、海外で稼いだ収益もドル換算で目減りする。マイクロソフトはドル高を主因に2022年4〜6月期の収益見通しを下方修正した。三菱UFJ銀行の井野鉄兵チーフアナリストは「米国にとっても手放しで歓迎できる状態ではない」と指摘する。
ドル1強の余波は資源高に苦しむ世界経済にも広がる。世界の貿易取引の多くはドルで決済され、ドル高は他通貨の購買力低下に直結する。現地通貨建ての輸入価格が膨らみ各国のインフレに拍車をかける。
とくに打撃を受けやすいのが対外収支にもろさを抱え、ただでさえ高インフレ体質が残る新興国だ。MSCI新興国通貨指数は4〜6月に4.5%ほど下落した。
資源をもたない国では資源高で貿易赤字が拡大し、自国通貨安に拍車がかかりやすい。インドの通貨ルピーは6月末に1ドル=79ルピー前後と対ドルで過去最安値を更新した。2月から外貨準備が減少しており、当局が通貨防衛のためにルピー買い・ドル売り介入に踏み切っているとの思惑も広がる。
韓国のウォンも足元では1ドル=1300ウォン程度と13年ぶりの安値圏にある。資源国であるブラジルのレアルも6月末は1ドル=5.2レアル前後と3月末比で10%近く下落した。みずほ銀行の堀内隆文マーケット・エコノミストは「世界経済の減速が意識されるなか資源の輸出も伸びず、米金利上昇を背景とした通貨安の回避は難しい」と指摘する。
新興国の通貨安はドル建て債務の返済負担の増加につながる。国際決済銀行(BIS)によると、新興国のドル建て債務は昨年末時点で4.2兆ドルと10年ほどで約2倍となった。米金利の上昇は債務の借換時に金利負担を高める。米金融引き締めとドル高が新興国の債務問題に波及すれば、世界経済の新たな火種になりかねない。 

 

●円安はいつまで?円安転換材料と2022年下半期の注目通貨ペアを3つ紹介 7/6
2022年7月現在、日本と海外の政策金利の差が拡大するという思惑から、円安が継続しています。日本と他国の金利差の拡大が主要因です。
世界的に止まらないインフレーションを背景に、世界各国で政策金利を引き上げています。一方で日本は、日銀が目標としている物価目標2%は達成しているにもかかわらず、緩和姿勢は維持され、政策金利が引き上げられる兆候がありません。
物価上昇が抑えられていること、いい物価上昇ではなく、コストプッシュ型の悪い物価上昇であることが、緩和路線を維持している理由です。
円安論調が強まり、機関投資家も個人投資家も円安方向の目線で固まっている中、円安はいつまで継続するか、プロトレーダーである筆者が解説していきます。また、今後注目の通貨ペアも紹介します。  ( 本記事は7月4日時点の情報です)
1.円安が転換すると考えられる材料2つ
円安トレンドが転換する材料を2つ解説していきます。
   1-1.米国利上げペースが後退
最初の材料は「米国の利上げペースが後退すること」でしょう。円高圧力というよりは、米ドル安の動きからドル円中心にクロス円が動いているため、ドル円が下落するとクロス円全般が下落するという考え方です。
マーケットは、7月のFOMCで、米国が0.5%か0.75%の利上げを行うことを織り込んでいます。しかし、今月のPCEデフレーターの数字からインフレ懸念が若干鈍化しました。また住宅市場でも販売価格が高値で売れなくなってきており、在庫が増加しているニュースが出ている等インフレが落ち着いてくる兆しが出てきています。
7月CPIの結果次第では、9月以降の米国の利上げ織り込みが低下する可能性があります。米国債金利が低下し、期待インフレ率も大幅に低下していることから、トレンドが続いた場合はドル円は下落傾向になり、クロス円は調整ムードになる可能性があります。
   1-2.日銀金融政策の変更
日銀は、世界とは真逆に緩和路線を続けています。一方で、消費者が感じる物価上昇も上昇してきており、消費マインドに影響を与えています。
実質所得は伸びておらず、日本の物価上昇が景気に悪い影響を与える可能性があるという側面が強まっています。緩和路線を転換するようなニュースが出た場合は、円ショートの巻き戻しが誘発され大きくクロス円は円高に振れることでしょう。
日銀の政策転換は、指値オペがヒントになります。
現在日銀は日本国債の10年金利を0.25%に抑え込むために、金利が上昇する場合は国債の買い入れオペを行い、金利を押し下げています。しかしオペレーションの持続性には疑問があるとして、海外ヘッジファンドの一部が日本国債のショート(金利上昇方向)でポジションを大きく保有し始めています。日銀がギブアップすることに賭けているということです。
仮に日銀が金利上昇の押さえ込みを諦めた場合は、利上げ方向に転じる可能性が考えられます。日本円は上昇し、クロス円は円高方向に振れるでしょう。
また黒田総裁は来年3月までの任期となっています。任期満了前に総裁を変更する可能性もあり、黒田総裁が辞任となれば円高に振れる可能性があります。
2.下半期注目の通貨ペアを3つ紹介
下半期に注目の通貨ペアを3つ解説します。
   2-1.ドル円(USD/JPY)
まず1つ目はドル円になります。
2022年7月現在、135円という水準ですが、この数カ月で大きく円安に振れており、更なる円安予想もあります。行き過ぎた予想が出始めている以上、一旦上値は重くなりやすいでしょう。
円安が調整する材料もあるため、淡々とショートポジションを積んでおき、120円から130円まで円高に振れることに賭けてみるというFX戦略もあるでしょう。
ただし、現時点では逆張りのトレードになることは知っておきましょう。スワップポイントもドル円ショートはマイナスとなります。レバレッジ含めてリスク管理には注意しましょう。
材料が出始めてからエントリーを行うというスタンスでもいいでしょう。
   2-2.スイスフラン円(CHF/JPY)
2つ目の注目通貨ペアはスイスフラン円です。
スイスフランは欧州通貨の中ではリスク回避通貨です。キャリートレードを行う場合に売られる通貨ペアとして知られています。つまり日本円と同じ性質を持っているということです。
2022年7月現在、スイスは利上げが行われており、日本円との動きが逆になっています。スイスフラン円は、何十年振りぶりの水準にまで円安が進行しています。
逆の値動きになってはいるものの、スイスフランはリスク回避通貨という点では日本円と大きく変わりません。円高材料がで始めると真っ先に売られる通貨として選ばれる可能性があります。
スイスフランに馴染みのない方も、一度チャートをチェックしてみてください。
   2-3.ポンドドル(GBP/USD)
3つ目の注目通貨ペアは紹介するのはポンドドルです。
イギリスは輸入国であり、現在の食料品の高騰も含めた物価上昇は国内経済の物価に大きく影響を与えています。見通しでは10月以降物価上昇率が二桁に到達すると予想されています。二桁の物価上昇は政府としても容認できる水準ではないでしょう。
現在でも既に国内で賃上げを求めるストライキが起きていたりする中、悪い物価上昇になっており、実質賃金は上昇していません。株価や経済を悪化させてでもインフレを止めに行かざる得ない展開が予想されます。政策金利の引き上げから、イギリスポンドの上昇が起きる可能性があるのです。
現在既に通貨安となっており、輸入国として輸入物価も上がってしまっています。近いうちに歯止めをかけるでしょう。
米国は既に市場から大きな利上げを行うと織り込まれています。これから利上げを行うイギリスのイギリスポンドをロングし、利上げが一旦止まる可能性がある米ドルをショートにする、GBP/USDのロングというFX戦略も選択肢の一つでしょう。
3.まとめ
今回は円安トレンドが転換する際の材料を2つ紹介しました。円安を妄信せず、円高になる可能性も理解した上でトレードを行いましょう。また、下半期の注目通貨ペアを3つ紹介しました。紹介した通貨ペアは、2022年7月時点では逆張りのトレードになります。リスク管理には十分注意しましょう。
レバレッジを掛け過ぎず無理のない範囲で、材料が確認できてからエントリーを検討してみてください。
●ユーロ暴落をきっかけにドル全面高でクロス円も全面安 7/6
概況
ドル円は6月29日夜に137.00円をつけて2021年1月6日底102.57円以降の最高値を更新したところから7月1日に134.74円まで反落したものの135円割れを何度か買い戻されて底固さを見せ、7月5日午前には136.36円まで切り返していた。しかし欧州諸国の景況感悪化から欧州主要国の長期債利回りが低下し始めるとユーロドルが夕刻から急落、ポンドや豪ドル等へも売りが波及してドル全面高の様相となり、クロス円も大幅下落したこととリスク回避による円の買い戻しで5日夕刻には135.50円台へ下落、その後も136円台をつけると戻り売りにつかまり深夜には135.51円まで安値を切り下げていた。
7月6日午前序盤にはドル高が一服する中でリスク回避的な円の買い戻し圧力が再び強まり135.50円を割り込んでいる。
6月22日に136.71円へ上昇したところから6月23日夜に134.25円まで2.46円の下落を入れてから一段高したが、7月1日安値にかけて2.26円の下落からの反騰では高値更新へ進めずに失速しているため、やや大きな調整安を入れても高値更新へと進んできた強気な流れにヒビが入っている印象もある。6月23日夜安値から7月1日午後安値へと底上げしてきた支持線を割り込むようだと6月16日深夜にかけて直前高値から4円を超える下落規模となったことの再現となる可能性にも注意したい。
今晩はユーロ圏5月小売売上高、6月の米ISMサービス業景況指数、明日未明にFOMC議事録公開がある。
ユーロ暴落
ユーロドルは7月1日深夜安値1.0365ドルから反発して4日から5日午後にかけては1.040ドル台前半で推移していたが、欧州主要国の景況感悪化と株安・長期債利回り低下から急落商状に陥り、1.040ドル割れからは売りの連鎖反応で下げ足が早まり深夜には1.0233ドルまで暴落的な下落となった。
2017年1月3日底1.0341ドルを割り込み、2008年7月15日天井1.6035ドル以降の安値を更新、2002年12月に1ドル1ユーロのパリティレベルにあったところ以来の安値水準となった。
スペイン、イタリア、フランス等の景況感が悪化、ロシアからの天然ガス供給不安、欧米の金融引き締めによる景気後退懸念、中国で再び感染拡大が報じられたことなどが重なりリスク回避的な株売り債券買いで欧州主要国の長期債利回りが低下したことなどが入り交じっての急落だった。
ユーロ安に同調してポンドドルも1.20ドルを割り込み2021年6月1日天井1.4248ドル以降の最安値を更新、豪ドル米ドルも0.67ドル台へ急落して2021年2月25日天井0.8007ドル以降の安値を更新するなどドルストレートではドル全面高、クロス円は全面安となった。
NYダウは急落後に反騰、米長期債利回りは大幅低下
欧州株式市場が総崩れで英FT100指数が2.8%安、独DAXが2.9%安、仏CAC指数が2.7%安となり、NYダウも序盤に700ドル安を超えたが、米長期債利回り低下と売られ過ぎ警戒からの買い戻しで前日比129.44ドル安まで下げ幅を大きく削り、ナスダック総合指数は安値から400ポイント強の反騰で前日比194.39ポイント高とプラス圏へ戻した。世界連鎖株安にブレーキを掛けた印象もあるが、主要国の金融引き締めによるリセッション入りへの懸念が強まっており、やや乱調な展開を続けつつ年初からの調整安が継続しやすい状況にあると思われる。
一方で米長期債利回りは安全資産買いにより総じて低下した。指標の米10年債利回りは前日比0.07%低下の2.81%で終了したが、一時は2.78%まで低下した。6月14日に3.50%をつけて1昨年以降の最高値としたところから調整安に入っており、7月1日には一時2.79%まで下げ、7月4日の米国市場休場明けとなった5日の序盤は2.97%まで戻していたが株売り債券買いにより低下に転じている。
30年債利回りも0.07%低下の3.04%となったが、大幅利上げ継続感も変わらないために利上げに敏感な2年債利回りは0.01%低下の2.82%にとどまり、7月1日につけた2.73%割れには至らずに10年債利回りとは長短逆転(逆イールド)となった。
ドル円としては米長期債利回りの低下により昨年来の大上昇基調を継続しつつも勢いが徐々に鈍る状況となっていたが、欧米の長期債利回り低下が進む中では金利差からの円安よりもクロス円における円高がドル円にも波及しやすい状況にあると思われる。昨晩はひとまず戻したNYダウが再び下げるようだと世界的な景気後退感と株安長期債利回り低下がまだ続いてドル円も大きな調整安に陥る可能性もあるところと注意する。

 

●NY円、135円後半 7/7
6日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比02銭円安ドル高の1ドル=135円85〜95銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0178〜88ドル、138円33〜43銭。
朝方発表された米サプライ管理協会(ISM)の6月の非製造業景況指数が市場予想を上回ったのを背景に、相対的に投資リスクが低いとされる円を売ってドルを買う動きが優勢となった。
●外為 1ドル135円88銭前後とドル高・円安で推移 7/7
7日の外国為替市場のドル円相場は午前8時時点で1ドル=135円88銭前後と、前日午後5時時点に比べ46銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=138円40銭前後と50銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●円相場、135円94〜95銭 7/7
7日の東京外国為替市場の円相場は、午前9時現在1ドル=135円94〜95銭と、前日(135円43〜43銭)に比べ51銭の円安・ドル高となった。
●円相場、136円11〜13銭 7/7
7日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=136円11〜13銭と、前日(135円43〜43銭)に比べ68銭の円安・ドル高となった。
●米長期金利の低下でもドル安・円高に振れない理由  7/7
ドル円は3月以降6月中旬まで、米長期金利の上昇などを背景に大幅なドル高・円安が進行した
ドル円相場は、2022年3月以降、大幅なドル高・円安が進行する展開となりました。この理由の1つが、日米金融政策の方向性の違いです。米国では、3月に利上げが開始され、その後もインフレ抑制のため、大幅な連続利上げが行われています。一方、日本では、金融緩和が維持されており、その結果、日米の長期金利差が拡大し、ドル高・円安が進んだと考えられます。
実際、米国の10年国債利回りは、2月28日の1.83%水準から6月14日に3.47%水準へ達し、上昇幅は1.6%を超えましたが、日本の10年国債利回りの上昇幅は、この間わずか0.06%程度でした(取引終了時点での比較、以下同じ)。ドル円は同期間、1ドル=115円水準から135円47銭水準へ、20円47銭程度ドル高・円安が進み(ニューヨーク市場取引終了時点での比較、以下同じ)、やはり米長期金利の上昇が大きく影響したと推測されます。
しかしながら6月中旬以降、米長期金利が低下しても、ドル円相場はドル安・円高に振れていない
その後、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、大幅利上げによるインフレ抑制姿勢が明確に示されると、市場では米景気減速を織り込む動きが強まりました。米国の10年国債利回りは、6月14日の3.47%水準から7月6日の2.93%水準まで低下し、低下幅は0.5%を超えました。しかしながら、7月6日のドル円は135円95銭水準にあり、米長期金利が大きく低下したにもかかわらず、それほどドル安・円高は進みませんでした。
以下、この理由について考えてみます。はじめに、2月28日から6月14日までの期間について、主要33通貨の対米ドルの変化率を検証します。結果は図表1の通りで、主要通貨に対し、米ドルはほぼ全面高、日本円はほぼ全面安となっています。この期間は、原油高や米国の利上げペースに市場の注目が集まっていたため、米ドルが大きく買われ、金融緩和を続けている日本の円は大きく売られました。
理由は、ドル円を動かす主因が日米長期金利差から市場のリスク選好度合いに移ったためとみる
次に、6月14日から7月6日までの期間について、同じく主要33通貨の対米ドルの変化率を検証します。結果は図表2の通りで、米ドルと同様、日本円も主要通貨に対し、上昇していることが分かります。6月のFOMC後、多くの国で株価の不安定さが続くなか、為替市場ではリスクオフ(回避)の動きが強まり、米ドル、日本円などが買われました。そのため、強い通貨同士であるドル円は、小幅な値動きにとどまりました。
以上より、ドル円相場を動かす主因は、6月14日以降、「日米長期金利差」から「市場のリスク選好度合い」に移行したものと思われます。なお、過度な米景気減速懸念が後退し、市場がリスクオン(選好)に転じた場合、米ドルと日本円はともに売られ、ドル円はやはり小動きが予想されます。日銀が金融緩和の修正に動けば、大幅なドル安・円高の進行が見込まれますが、日銀は当面、緩和を維持する公算が大きいとみています。
●東証大幅反発、382円高 米国株上昇、円安を好感 7/7
7日の東京株式市場の日経平均株価(225種)は大幅反発し、終値は前日比382円88銭高の2万6490円53銭だった。前日の米国株式市場の上昇や、外国為替市場の円安ドル高進行を好感し、買い注文が優勢となった。
東証株価指数(TOPIX)は26・36ポイント高の1882・33。出来高は約12億7800万株。
前日の米国市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め政策の先行き不透明感が後退し、投資家心理が改善。ダウ工業株30種平均は反発した。東京市場も流れを引き継いだ。

 

●NY円、136円近辺 7/8
7日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比10銭円安ドル高の1ドル=135円95銭〜136円05銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0156〜66ドル、138円11〜21銭。
米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
●NY円、下落 1ドル=135円95銭〜136円05銭 日米金利差の拡大で円売り 7/8
7日のニューヨーク外国為替市場で円相場は下落し、前日比10銭円安・ドル高の1ドル=135円95銭〜136円05銭で取引を終えた。米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大を見込む円売り・ドル買いが優勢だった。米雇用統計の発表を8日に控え、積極的な売買は手控えられた。
米長期金利が終値で2.99%と前日終値から0.06%上昇し、円売りを促した。7日は米連邦準備理事会(FRB)のウォラー理事が高インフレについて「減速の兆しがみえない」と指摘し、26〜27日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも通常の3倍にあたる0.75%の利上げを支持する姿勢を示した。FRBの積極的な金融引き締め姿勢も引き続き円の重荷だった。
もっとも、取引終了にかけて円は下げ渋った。8日発表の6月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数の伸び悩みや賃金上昇の高止まりが予想されている。市場では「統計発表後の米長期金利の反応が読みづらく、ドルの買い持ち高を中立方向に戻す円買い・ドル売りが出た」(邦銀の為替トレーダー)との指摘があった。
円の安値は136円10銭、高値は135円56銭だった。
円は対ユーロで6日続伸し、前日比25銭円高・ユーロ安の1ユーロ=138円10〜20銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで4日続落し、前日比0.0025ドル安い1ユーロ=1.0155〜65ドルで終えた。一時は1.0145ドルと2002年12月以来のユーロ安水準をつけた。欧州中央銀行(ECB)が7日に公表した理事会の議事要旨で、大半のメンバーが7月は0.25%の利上げを支持していたことがわかった。大幅利上げを進めるFRBとの差が意識され、ユーロが売られた。
この日の高値は1.0196ドルだった。
●円が対ドルで上昇、安倍元首相が演説中に負傷との報道で=外為市場 7/8
8日午前の東京外国為替市場で、円が対ドル、対ユーロなどで急速に上昇した。共同通信によると、午前11時半ごろ、奈良市内の路上で街頭演説をしていた自民党の安倍晋三元首相が、不審な男に背後から襲われた。取材中の共同通信記者は、2発の銃声のような音を聞いたという。
それまで136円前半を推移していたドルは、報道が流れた直後から急落し135.63円をつけた。対ユーロも138円前半から137円後半へ円高が進行している。 
●東京外為 ドル、135円台後半=安倍氏銃撃で下落後は戻す 7/8
8日の東京外国為替市場のドルの対円相場(気配値)は、安倍元首相銃撃を受けて下落した後はユーロ安・ドル高などを背景に、1ドル=135円台後半に戻している。午後5時現在、135円83〜83銭と前日(午後5時、136円11〜13銭)比28銭のドル安・円高。
ドル円は早朝、135円90銭台で取引された後、仲値にかけて実需筋の売り買いが交錯し、136円前後を中心にやや上下した。その後、正午前に安倍元首相が奈良県内で遊説中に銃撃された事件が伝わると、「リスクオフのムードから円買い・ドル売りが加速した」(FX業者)とされ、135円30銭台に急落した。午後は売りが一巡したことから135円50〜70銭前後で下げ渋り、終盤はユーロ安・ドル高の余波でドル円はやや買われる展開となっている。
安倍氏の銃撃事件で金融市場は「いったん大きく動揺した」(同)が、その後は「事件がもたらす政局などへの影響を見極めるムードが広がった」(為替ブローカー)という。終盤は「欧州勢の参入に伴ってユーロ売りが強まったが、ユーロドルの下げが先行してドル円をやや押し上げる方向に作用した」(同)と指摘されている。
ユーロは終盤、対円、対ドルで売りが強まった。特に、このところパリティー(等価)が視野に入ったユーロドルの下げが目立っている。午後5時現在、1ユーロ=137円30〜31銭(前日午後5時、138円73〜78銭)、対ドルでは1.0108〜0109ドル(同1.0192〜0192ドル)。
●ドル円は年末136円台予想も長期的には「円高・ドル安」に 7/8
6月10日に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)は、市場予想を上回る物価の伸びが確認された。これを受けて、6月14〜15日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、大幅利上げによるインフレ抑制姿勢が示され、多少の景気減速は止むを得ないとの考えが示唆された。
米金融当局がインフレ抑制に本腰を入れたことで、市場で大幅な連続利上げが織り込まれた一方、日銀は金融緩和の維持に強い姿勢を示しており、円安・ドル高が進む余地は拡大したとみている。当社は、これまで年内のドル円相場の予想レンジを1ドル=125〜137円台、年末着地は131円台としていたが、年内のレンジは1ドル=130〜142円台、年末着地は136円台と、年内の見通しを「円安・ドル高」方向に修正した。
米利上げの時期と幅については、7月に0.75%、9月に0.50%、11月と12月に各0.25%、来年3月に0.25%と予想している。ドル円が予想レンジの上限に近づく一つのシナリオとしては、原油価格や物価の伸びが高止まりし、市場が想定以上の利上げを織り込み、米長期金利が再び水準を切り上げていく展開が考えられる。
一方、ドル円が予想レンジの下限に近づく一つのシナリオとしては、日米の金融政策に変化が生じる展開が考えられる。米国については、市場で早期大幅利上げの織り込みが一巡し、利下げが意識される局面が挙げられる。日本については、来年4月の黒田日銀総裁の任期満了が近づくにつれ、政策変更の思惑が強まる局面が想定される。いずれも実際に発生すれば、日米金利差拡大を背景とする円安・ドル高の流れは反転しやすくなる。
今後の米国の景気については、大幅な利上げによって減速が見込まれ、人手不足などの供給制約が徐々に解消されることで、インフレはいくらか落ち着くと予想している。従って、短期的にはここからもう一段、円安・ドル高が進むものの、徐々に一服する可能性が高いだろう。しかも、現在のドル円の実勢レートは、購買力平価を踏まえると円安・ドル高方向にオーバーシュートして(行き過ぎて)いる(図表)。
ドル円は直近3カ月で20円超円安に振れているが、現状の日米物価格差が続いた場合、ドル円は長期的に見れば、ゆっくりと円高・ドル安地合いに戻る動きが想定されるだろう。
●円安、対ロシア制裁議論 12日に日米財務相が会談 7/8
鈴木俊一財務相は12日、来日するイエレン米財務長官と日米財務相会談を行う。米財務省が8日発表した。会談ではウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対する制裁の強化などについて議論。日本側は、急激に進む円安・ドル高をめぐり、為替の安定に向けた連携を確認したい考えだ。

 

●NY円、136円前半 7/9
8日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比12銭円安ドル高の1ドル=136円07〜17銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0181〜91ドル、138円55〜65銭。
米長期金利の上昇を手掛かりに、日米金利差の拡大を意識した円売りドル買いがやや優勢となった。
●NY円、続落 1ドル=136円05〜15銭 米景気懸念の後退で 7/9
8日のニューヨーク外国為替市場で円相場は続落し、前日比10銭円安・ドル高の1ドル=136円05〜15銭で取引を終えた。8日発表の6月の米雇用統計は労働市場の堅調を示した。米景気の先行き不安が後退し、投資家が運用リスクを取りやすくなったことから「低リスク通貨」とされる円は売りが優勢だった。
雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比37万2000人増と市場予想(25万人増)を大きく上回った。平均時給も高い伸びが続き、労働市場が強さを保っていると受け止められた。米経済が景気後退に陥るとの懸念が和らぎ、円売りを誘った。米長期金利が上昇し、日米金利差が拡大したのも円の重荷となった。
もっとも、円の下値は堅かった。来週発表の6月の米消費者物価指数(CPI)を見極めようと一方的な円売りは手控えられた。
安倍晋三元首相が8日、襲撃され死亡した。円相場への影響について、市場では「足元で大きな反応はないが、政府の政策運営や外交にどのような影響が出るかを長期的に見極めていく必要がある」(邦銀の為替ディーラー)との声があった。
円の安値は136円56銭、高値は135円80銭だった。
円は対ユーロで横ばいを挟んで8営業日ぶりに反落し、前日比45銭円安・ユーロ高の1ユーロ=138円55〜65銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで5営業日ぶりに反発し、前日比0.0025ドルユーロ高・ドル安の1ユーロ=1.0180〜90ドルで取引を終えた。欧州の主要株価指数の上昇で投資家が運用リスクを取る姿勢を強め、ユーロ買い・ドル売りが優勢だった。
ユーロの高値は1.0191ドル、安値は1.0116ドルだった。
●円安「賞味期限」いつか 市場参加者は気もそぞろ 7/9
今年春以降、激しい円安・ドル高局面が続いている。だが為替相場が一方向に動き続けることはない。円安はいつ「賞味期限」を迎えるのか。市場参加者の間でも年後半に向け、そわそわする空気が漂い始めている。
市場がざわつくのには理由がある。これまで円安の根拠になっていた日米間の長期金利差が縮み始めたことだ。円相場と日米金利差のチャートを並べてみれば一目瞭然。4月以降、親密に重なり合っていた2本の線が明確に別行動を始めている。
為替相場は金利の高い通貨に流れやすい。春以降、米連邦準備理事会(FRB)が政策金利の引き上げにかじを切ったことから日米金利差が拡大。投資マネーは円からドルへ、どっと流れ込んだ。
ところが6月下旬から米長期金利が低下に転じる。当然、日米金利差も縮み始めたが、ここでねじれが生じた。激しい円安の流れに乗ってきた投資マネーは反対方向に突然かじを切られても、即座にブレーキをかけられない。
さて、どうしたものか。FRBの利上げが続くなかで生じた突然の米長期金利低下は、明確なトレンド転換なのか、一時的な小休止なのか――。市場参加者は現状を見極めきれず、そわそわする状況に陥った。
米長期金利が低下に転じたのは、FRBの急激な利上げが先行きの米景気後退を招くことに対する警戒感が強まったからだ。FRBのパウエル議長も6月下旬の米議会証言で「経済の軟着陸は非常に難しい」と語っている。国内外の金融機関で30年以上にわたって為替相場を見つめてきたマーケット・リスク・アドバイザリーの深谷幸司氏は「7〜9月期が円安のピークで、10〜12月期以降は相場の方向感が変わるだろう」と読む。
金利差の縮小にもかかわらず、即座に円高へと転じない理由として、需給要因を挙げる市場参加者もいる。為替相場を動かす基本材料は金利差と需給差。国際エネルギー価格の高騰を背景に、日本は今年に入って大幅な貿易赤字を計上し続けている。貿易赤字は円高要因になる輸出額よりも、円安要因になる輸入額の方が多い状態。金利差要因が消えても、需給差要因による円安圧力は続くとも考えられる。
だが需給要因には注意が必要だ。輸入価格高騰に苦しむ輸入企業はコストを抑えるため、少しでも円高の水準で円を売りたいのが本音。金利差の縮小で円高に転じる可能性が出てくれば、円を売るタイミングもぎりぎりまで遅らせる選択肢が浮かぶ。当面は輸入企業の円売りが円高の壁になっても、次第に壁は円高方向へと動いていく。
円安局面の持続に自信を持ちきれない理由は、ほかにもある。円相場の水準感だ。6月半ばには1ドル=135円台前半まで下落し、約24年ぶりの円安水準を記録した。次の節目は1998年の147円台になる。
もっとも当時は、日本の大手金融機関が相次いで経営破綻し、市場で「日本売り」と呼ばれていた時代。邦銀が海外の金融機関から外貨を調達する際に金利を上乗せされる「ジャパン・プレミアム」も発生していた。現在の日本経済の状況と比べると、当時と同じ水準まで円安が進むと考えるのは難しい。しかも年前半の円相場の下落幅はすでに22円に達し、40年ぶりの大きさに達している。
政府・日銀にとって、世の中から「悪い円安」と懸念される円相場の状況を長く放置することは難しい。円安がいつ賞味期限を迎えるのかは、政策運営を判断するうえで重要なポイント。政府の円買い介入や日銀の金融引き締めが話題に上り、市場参加者をより一層そわそわさせるのも無理はない。
ちなみに1998年の円安から円高への転換のきっかけは米国経済の先行き不安だった。アジア通貨危機がロシアを経由して米国の裏庭と呼ばれた中南米にも及び、米金利の低下を促した。
ウクライナ危機が欧州経済に動揺を与え、世界的な景気後退懸念がささやかれる現状は、どことなく当時と似た空気を漂わせる。だからこそ市場参加者は余計に円安の賞味期限が気になり始めたのかもしれない。 

 

●円安に「断固たる措置」を 7/10
市場のテーマはインフレから景気後退に移り、日銀の緩和政策を背景とした過度な円安は一服したもようです。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)はドル高を事実上容認し、ドル・円はなお上昇基調を維持。今後、為替介入で相場の上昇を抑制できるでしょうか。
足元で発表された米国の消費者信頼感指数やISM製造業景況指数が想定よりも弱い内容となり、インフレ高進と景気減速が同時に進むスタグフレーションの到来が懸念されています。アメリカのみならずユーロ圏やオセアニアにもその警戒が広がり、世界経済の先行き不透明感が深まってきました。そのため安全通貨買いに振れ、ドルと円への買いがドル・円相場を下押しする展開が続いています。
しかし、パウエルFRB議長は前週の討論会で、為替相場に「責任を負わない」と最近のドル高をなかば容認。一方、岸田政権が参院選前に閣議決定した「骨太方針2022」は大胆な金融政策や機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略で「アベノミクス」復活のような印象を与えました。参院選で与党が勝利すれば、日米中銀の政策方針の違いを背景にドル買い・円売り再開の可能性もあります。
東京商工リサーチによると、円安を原因とした6月中の企業倒産件数は5月に続きゼロでした。が、ウクライナ戦争などにより原材料や資材、燃料の高騰が中小企業の業績を圧迫。コロナ禍による業績の低迷から抜け出せないなか、円安がさらに進めば業績を悪化させると予想されます。そうなれば、政府・日銀がいずれ円安に歯止めをかけなければならない場面もあるでしょう。
主に日銀の緩和解除と政府の為替介入が考えられますが、日銀の政策転換は困難です。また、円買い(ドル売り)介入は外貨準備高の限度があるほか、政府保有の米国債の売却にもつながり、かえって日米金利差の拡大によりドル高・円安を招く危険もあります。そうした理由から、為替介入も不可能とみられています。といっても、「注視する」だけでは円売り安心感に一撃を食らわすことはできません。
世界を見渡すと、主要国から新興国まで多くの国々がドル高に伴う自国通貨安に苦しんでいます。例えば、インドは直物と先物を組み合わせてルピー買い介入を仕掛けましたが、逆にルピー安を助長してしまい、現在はスムージング介入に絞ったようです。また、ベトナムも積極的なドン買い(ドル売り)介入を繰り返しているものの、ドン安のペースを少々弱める程度にとどまっています。
日本では、ほとんどの市場関係者が国際的同意を得られないとの見方から為替介入に否定的です。ただ、自国通貨を防衛するのに、諸外国の同意を得たり手段を選んだりする必要があるでしょうか。常套句の口先介入だから、投機筋から「やる気がない」と見透かされてしまうのです。本当に「断固たる措置」なら、日本に追随する国もあるはず。そうした「協調介入」によるドル高阻止が待たれます。
●ドル円週間見通し 下げ渋り? 6月の米CPI発表には注意 7/10
7月11日〜7月15日のドル円相場の見通しを解説する。
今週のドル円は下げ渋る可能性がある。米リセッション懸念で利益確定のドル売りに下押しされる場面がありそうだが、日米金融政策の違いに着目した取引でドル買い・円売りは続き、ドル高円安の基調を維持される見通し。6月下旬から7月上旬にかけて発表された米経済指標は消費者信頼感指数やISM製造業景況感指数など低調な内容が目立つ。米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ高進を抑止するため引き締め姿勢を強めるものの、米金利安でドル売りに振れやすい。
外為市場の関心がインフレから景気に移りつつあるなか、7月13日に発表される6月消費者物価指数が市場予想を上回った場合、インフレ高進による米経済成長の鈍化が懸念される。また、15日発表の6月小売売上高は5月に予想外のマイナスとなったが、6月も弱い内容なら消費の減退が警戒されそうだ。
ただ、6日に公表された連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、インフレ高進を抑えるため引き締めに前向きな姿勢が示された。パウエルFRB議長は直近の討論会で「ドル高に責任を負わない」との見方を伝えており、ドル高進行を懸念していないことを示唆した。世界経済の先行き不透明感も警戒され、ユーロ圏は足元の弱い経済指標にエネルギー供給不安が追い打ちをかける。英国の政局流動化もあり、欧州通貨が一段安となった場合、ドル選好地合いとなろう。
一方、日本銀行は「インフレ上昇圧力は強まっているものの、安定的な上昇とは言えない」との見方を変えていないため、現行の金融緩和策を継続する方針を伝えている。欧米主要国などで景気減速への懸念が強まればリスク回避の円買いが拡大する可能性もあるが、ドル・円は日米金利差の取引で下値の堅さが顕著になりそうだ。 

 

●外為 1ドル136円17銭前後とドル高・円安で推移 7/11
11日の外国為替市場のドル円相場は午前8時時点で1ドル=136円17銭前後と、前週末午後5時時点に比べ34銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=138円51銭前後と1円23銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●外為 1ドル136円30銭前後とドル高・円安で推移 7/11
11日の外国為替市場のドル円相場は午前9時時点で1ドル=136円30銭前後と、前週末午後5時時点に比べ47銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=138円53銭前後と1円25銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●円相場、前週末から小動きで始まる 参院選に反応薄 7/11
11日早朝の外国為替市場で円相場は前週末から小動きで取引を始めた。朝7時すぎ時点では1ドル=136円10銭台と、前週末のニューヨーク市場の取引終了時点とほぼ同水準で取引されている。10日投開票の参院選で自民党が単独で改選過半数を確保したが、与党の大勝は事前の予想通りとの見方から材料視する取引は少なかった。 
●円安ドル高進む 1ドル=137円前半 24年ぶり安値を更新 7/11
11日の東京外国為替市場は一時1ドル=137円台前半とおよそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
先週末に発表されたアメリカの雇用統計が市場予想を上回り、日米の金利の差が意識されたことから、円売り・ドル買いが進みました。
●円安進む 1ドル137円突破、24年ぶり安値更新 7/11
7月11日の為替は円安ドル高が進んだ。日本時間9時過ぎに円安が加速し、一時137円前半となり24年ぶりの安値を更新した。11時現在も137円台で推移している。
先週末8日には、米国で非農業部門就業者数が発表となった。6月の非農業部門の就業者数は37万2000人増え、26万人前後と見られた市場予想を上回った。失業率は引き続き低水準を維持しており、需要の強さを示している。これにより米景気後退懸念が薄れ、次回の連邦公開市場委員会(FOM)会合でも大型利上げを実施する可能性が高まった。日米の金利差はさらに開く可能性が高く、このことが円売りを呼んだと見られる。
●円相場、136円80〜80銭 7/11
11日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=136円80〜80銭と、前週末(135円83〜83銭)に比べ97銭の円安・ドル高となった。 
●自民大勝で円売り加速、一時1ドル=137円半ばに…「年内140円台も視野」 7/11
11日の外国為替市場の円相場は円売りが広がり、一時、1ドル=137円半ばと、1998年以来、約24年ぶりの円安水準となった。参院選で自民党が大勝したことから、日本銀行による低金利政策が続くとの見方が広がった。
日本銀行が11日開いた支店長会議で、黒田東彦(はるひこ)総裁が大規模な金融緩和を継続する姿勢を改めて示したことも、市場参加者に、今後の日米の金利差拡大を意識させた。
東京市場は午後5時、前週末(午後5時)比97銭円安・ドル高の136円80〜82銭で大方の取引を終えた。
円は対ユーロでも売られ、同1円02銭円安・ユーロ高の1ユーロ=138円32〜36銭で大方の取引を終えた。
市場では、岸田首相は現在の大規模な金融緩和を支持しているとの見方が強く、「日銀が円安を是正するために金融引き締めに動く可能性はほぼない。円相場は年内に1ドル=140円台が視野に入る」(みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミスト)との見方も出ている。
●東京市場 7/11
週明け11日の東京市場はドルが堅調裡。早朝を安値に1円を超えるドル高の進行、早くも年初来高値を更新してきた。
先週末は、ウクライナ侵攻以来初めてとなる、中国の王国務委員兼外相とブリンケン米国務長官の会談が実施され話題に。また、昨日投開票された日本の参院選は、自民党が改選議席の過半数となる63議席を単独で獲得し大勝している。
そうした状況下、ドル/円は寄り付いた136円レベルを日中安値に右肩上がり。途中、黒田日銀総裁から「物価安定目標の実現を目指し、必要な時点まで大規模金融緩和策を継続する考え」が示されたことも材料視されると、ドル高・円安がさらに加速した。137.00円を超える137.25円レベルまで大幅上伸。その後はやや上げ渋る展開となったが、すでに底堅く、16時現在では137.00円前後で推移し、欧米市場を迎えている。
一方、材料的に注視されていたものは、「米中関係」と「安倍氏死去」について。
前者は、前述したように中国の王国務委員兼外相とブリンケン米国務長官の会談が実施され、米国サイドは「台湾情勢めぐり中国に懸念表明」、「中露関係への懸念」も示していた。それに対し、中国サイドは「対中追加関税を速やかに撤廃し、中国企業への一方的な制裁をやめるべき」と要求したほか、「台湾をめぐる内政干渉の停止」も求めたという。双方の議論はほぼ平行線をたどったと言えるかもしれない。なお、そののちブリンケン氏は、「米中首脳が数週間内におそらくテレビ形式で対話する」との見通しを指摘していた。
対して後者は、先週末8日突然の訃報が伝えられた「安倍元首相死去」をめぐり、週末にかけては世界各国の首脳などから弔意が相次ぐ。中国の習国家主席やプーチン露大統領からも弔電がとどいたほか、バイデン米大統領は岸田首相に直接電話し、弔意と憤りを伝えたという。またブリンケン米国務長官は、予定を前倒しして11日に日本を訪問。本日午前に岸田首相などと会談したもようだ。
●ドル円136.75近辺、ユーロドル1.0115近辺=ロンドン為替 7/11
ドル円は137.00付近でのもみ合いを下放れており、136.70台へと軟化。ユーロドルは1.0115レベルに本日安園を広げている。ユーロ円は139.00付近で上値を抑えられると、足元では138.50割れ水準へと軟化している。
東京市場では、週末の参院選での自民党大勝を受けた株高、黒田日銀総裁の金融緩和継続姿勢の確認などで円売りが進行、137.28レベルと24年ぶり円安・ドル高水準をつけた。しかし、その後は中国での新型コロナへの不透明感が再燃したことでロックダウン措置導入が警戒されている。中国・香港株の下落とともに米株先物・時間外取引や欧州株が軟調に推移。米10年債利回りは3.05%付近に低下している。市場のムードは一転してリスク警戒へと傾いている。
●NY円、一時137円75銭 7/11
週明け11日のニューヨーク外国為替市場の円相場は円がドルに対して大幅下落して一時1ドル=137円75銭と、1998年9月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準を付けた。参院選で与党が圧勝したことから日銀の大規模金融緩和が継続するとの見方が強まり、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが進んだ。
午後5時現在は、前週末比1円29銭円安ドル高の1ドル=137円36〜46銭。ユーロは1ユーロ=1.0035〜45ドル、137円96銭〜138円06銭。
先週末発表の6月の米雇用統計が堅調だったのに伴い、利上げペースを緩めるとの観測が後退した。
●NY外為 ドル・円137.62円まで、24年ぶりドル高・円安更新、日米金利差拡大 7/11
NY外為市場でドル・円は137円62銭まで上昇し、1998年以降24年ぶりドル高・円安を更新した。ユーロ・円は138円34銭から138円84銭まで上昇。米国の金利先高観を受けたドル買いや、与党圧勝により、日銀が緩和策を当面継続するとの見方に日米金利差拡大観測が一段と強まった。
●自民大勝に日本株高・円安、安定政権に期待−金融政策へ思惑も 7/11
参議院選挙での自民党大勝で政権安定への期待が広がり日経平均株価は続伸している。株高を通じて為替は円安、債券は下落する反応だが、安倍晋三元首相の銃撃死を含めて市場には金融政策修正などの観測も広まっている。
参院選明けの東京株式相場は11日、日経平均株価が3日続伸して一時2万7000円台を回復した。政治情勢安定への期待に米リセッション(景気停滞)懸念後退が加わった。自民大勝での株高による円売りでドル円相場は一時137円台に上昇、約24年ぶりの円安となった。債券相場は下落。先週末の堅調な米雇用統計を受けた米長期金利上昇を引き継ぎ、株高や円安を受けて下げ幅を拡大している。
岸田文雄首相は2025年夏まで国政選挙予定がなく、中長期的に独自色を出しやすくなる。異次元金融緩和を進めた黒田東彦・日銀総裁の後任人事も迫る中で、アベノミクスを推し進めた安倍元首相が亡くなったことも加わり、金融政策の正常化など転換点が迫っていると予想する市場関係者もいる。一方で岸田政権の支持率低下リスクが薄まり、黒田総裁の任期中の政策修正期待が後退し、円安要因が一つ加わったとする指摘もある。

 

●外為:1ドル137円44銭前後と大幅なドル高・円安で推移 7/12
12日の外国為替市場のドル円相場は午前9時時点で1ドル=137円44銭前後と、前日午後5時時点に比べ66銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=138円04銭前後と24銭のユーロ安・円高で推移している。
●ついに1ドル137円台の円安、24年前と違う現在の深刻さとは 7/12
アメリカやヨーロッパの政策金利の差から生じた、円安傾向が止まりません。6月29日には一時、1ドル=137円台と1998年9月以来、24年ぶりの円安水準となりました。アメリカの中央銀行にあたる、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を上げた一方で、日本銀行は規制緩和を継続。この日米間の政策金利の差から、円を売ってドルを買う動きが強まったことで、昨年来、続いていた円安傾向に拍車がかかった格好になりました。
円安は良いことなの?悪いことなの?
「円安ドル高」と聞いて、どういうイメージを持つでしょうか。結局、円安ドル高が日本にとって良いことなのか悪いことなのかよく分からないという方も多いと思います。それもそのはずで、円安ドル高が日本にとって良いことなのか悪いことなのかの判断は、専門家の間でも分かれていることなのです。
ただ、このところ特に、悪いイメージで報じられていることが多いため、何となく円安ドル高は日本にとって悪いことだと思っている方も多いのではないでしょうか。そこで、まずは、円安ドル高のデメリットを見ていきましょう。
円安ドル高の一番のデメリットは、食料品の価格が上がりやすいことです。日本の食糧自給率は年々下がり続けて、2020年のカロリーベースでの食糧自給率は、37%に過ぎません。日本では多くの食料を輸入に頼っている状況にありますが、円の価値が落ちれば食料品の価格が上がり、購買力も落ちます。
例えば、「1ドル=100円」の場合の1万ドルは100万円ですが、「1ドル=130円」だと1万ドルは130万円です。輸入品を買い付けるのに、それまでより余計にお金を支払わなければなりません。また、エネルギーの決済に使われるのはドルであるため、エネルギー購入価格も上がります。そうすると、電気代やガソリン価格も高騰します。以上を踏まえると、円安ドル高には、家計の財布に直結するようなデメリットがあることは事実です。
また海外製品の値段も上がります。6月7日に、Appleは「MacBook Air」の新作を発表しました。価格は税抜きで1199ドルから。日本での価格は16万4800円からで、税抜きの場合の為替レートは「1ドル=約125円」が適用されています。もし、「1ドル=100円」だった場合、日本での販売価格は11万9900円ほどになります。同じ製品であるにも関わらず、為替によって、4万円以上の差が出てしまうわけです。さらに、7月1日にはiPhoneやiPadの値上げも発表されました。
また、海外留学に行くことも金銭的に難しくなるでしょう。例えば留学費用で100万円をためていた場合、「1ドル=100円」であれば、1万ドルに交換できます。しかし、「1ドル=130円」だと、約7400ドルに目減りしてしまうのです。
こうして並べてみると、円安ドル高はデメリットしかないように思えますが、実はメリットもあります。そのため、多くの専門家も、一概に円安ドル高が悪いと言うことができないのです。
円安のメリットとは
円安ドル高の一番のメリットは、円換算した時の輸出企業の利益の増加です。トヨタ自動車、三菱商事、三井物産、日立製作所、日本製鉄。日本を代表する大企業ですが、これらの企業はいずれも、今年3月期決算で純利益が過去最高を記録しています。好調の理由はさまざまですが、円安ドル高もそのうちの一つです。また、東京株式市場に上場している企業は輸出企業が多いことから、円安が市場全体の株高につながる可能性があります。
さらに、新型コロナの影響で外国人観光客を制限している状況にはありますが、円安の方が外国人観光客の日本滞在コストを抑えられます。外国人観光客の制限が撤廃された時、多くの外国人観光客が訪れ、観光地に莫大な利益をもたらせる可能性もあるでしょう。
中には、円安は日本経済にプラスになると考える方もいるのではないでしょうか。実際、10年ほど前までは、そうした論調が多数派を占めていました。「円安になれば、輸出企業が潤って、その利益が国内に循環される」という意見を目にしたことがある方も多いと思います。
24年前の円安とは違う点
もちろん、そうした側面は今でもあるのですが、以前と比べるとそのメリットが小さくなってきたのも事実です。それは、国内産業の形が以前と変化していることに理由があります。24年前に比べて、国内に生産拠点を置いている企業は少なくなっています。海外の生産拠点から海外へ直接輸出しているという企業が過去の円安時より増えているのです。
その結果、円安ドル高の大きなメリット(円換算した時の輸出企業の利益の増加)を受けられる企業は、限定的になりました。もちろん、この機会に生産拠点を海外から日本に移す動きも一部には見られていますが、すぐに生産拠点を移すことは簡単にはできません。
加えて、もうひとつの24年前と違う点に、足元での物価高があります。24年前は、証券会社、銀行の経営破綻が相次ぎ不況ではあったものの、物価高ではありませんでした。しかし、現在、毎日のように商品値上げのニュースが流れ、エネルギーを中心に物価は上がり続けています。そのような中、円安ドル高がさらに輪をかけているといった状況にあります。
インフレは、日本だけに限ったものではなく、世界各国がインフレに陥っています。そうした中、通貨の流通量を抑えてインフレを抑制するため各国が取っている対策が、政策金利の引き上げです。
そう聞くと、「日本も政策金利を引き上げればいいのでは?」と思う方もいるでしょうが、政策金利を引き上げるタイミングは景気が過熱しているときです。日本は現在、決して景気が良いとは言えず、むしろ不況だと言えます。そんな中、政策金利を上げると、借金をしている企業の返済額は膨れあがり、多くの企業が経営破綻する恐れがあります。
個人でも、住宅ローンの金利が上がるため、返済に窮する人も出てくるでしょう。景気が一気に悪くなる可能性があるため、今の日本ではなかなか政策金利の引き上げができません。
円安ドル高は日本単独でどうにかできるものではありません。世界の状況が落ち着くまで、いつもは2つ買っていた商品を1つにするなど、地道に節約していくほかないのかもしれません。 
●円相場、137円13〜13銭 7/12
12日の東京外国為替市場の円相場は、正午現在1ドル=137円13〜13銭と、前日(136円80〜80銭)に比べ33銭の円安・ドル高となった。 
●外為 1ドル137円37銭前後と大幅なドル高・円安で推移 7/12
12日の外国為替市場のドル円相場は午後4時時点で1ドル=137円37銭前後と、前日午後5時時点に比べ59銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=137円67銭前後と61銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●参院選後の円安に、ユーロ一段安からのドル全面高も加勢で137円台後半へ 7/12
ドル円は7月10日の参院選における与党大勝を受けて経済金融政策継続への安心感からリスク選好となり、11日午前高値で137.27円をつけて6月29日夜につけた137円を突破、いったん利益確定売りに押されて136.70円近辺をつけたものの夜はユーロドルの一段安などドル全面高の様相となったことでさらに持ち上げられて137.75円まで高値を切り上げた。12日午前序盤も137円台前半を維持している。
7月8日に安倍元首相銃撃報道から一時売られたものの選挙情勢での与党有利見通しと米雇用統計が強かったことでの米長期債利回り上昇で8日夜には136.56円まで持ち直していたが、雇用統計通過後はいったんドル高が収まっていた。しかし欧州のリセッション懸念が強まる中で11日夜はユーロドルが1ユーロ1ドルのパリティに迫る下落となり、豪ドルや英ポンドなども軒並み昨年来安値を更新してドル高感が強まり、ドル円は本邦要因としての円安に全般的なドル高が重なる状況となり6月後半からの137円を上値抵抗とした持ち合いから上放れた。
●日米財務相、急速な円安・ドル高で「適切に協力」…食料・エネルギー高騰  7/12
鈴木財務相は12日、来日中のイエレン米財務長官と財務省で会談した。急速に円安・ドル高が進む為替相場について、日米で引き続き緊密に協議し、適切に協力することを確認した。ロシアのウクライナ侵略に伴う食料やエネルギー価格の高騰に連携して対応することでも一致した。
イエレン氏の来日は財務長官就任後初めて。鈴木氏との会談は、ワシントンで行った4月以来となる。
会談後に発表した共同声明では「ロシアの侵略による経済的な影響が為替相場の変動を高めており、経済・金融に悪影響を与えうる」との認識を共有した。鈴木氏は会談後の記者会見で「最近の急速な円安について憂慮し、高い緊張感を持って市場動向を注視していくとの日本の立場を説明し、ご理解いただいた」と述べた。
対露制裁を強化していく方針も確認し、声明では「エネルギー価格の上昇を抑制する方策を探求するG7(先進7か国)の取り組みを歓迎する」と明記した。G7はロシア産石油の取引価格に上限を設ける措置を検討しているが、会談では具体的な上限価格に関する言及はなかったという。
イエレン氏は会談の冒頭、安倍晋三・元首相が銃撃され死亡した事件に触れ、「日米間の緊密連携というレガシー(遺産)の精神を受け継ぎ、盛り上げていく」と述べた。イエレン氏は12日に横浜港で演説する予定だったが、事件を受けて中止した。
●鈴木財務相「急速な円安進行を憂慮」 市場の動きに警戒感示す  7/12
外国為替市場で今週、円相場が1ドル=137円台の後半まで値下がりするなど、このところ円安ドル高が一段と進んでいることについて、鈴木財務大臣は「急速な円安の進行が見られ憂慮している」と述べ、市場の動きに警戒感を示しました。
鈴木財務大臣は、12日の閣議のあとの記者会見で、このところ円安ドル高が進んでいることについて「最近の為替市場では急速な円安の進行が見られ憂慮している」と述べました。
そのうえで「政府として日本銀行と緊密に連携しつつ、為替市場の動向や経済、物価などへの影響を一層緊張感を持って注視していく。各国の通貨当局とも緊密な意思疎通を図り、必要な場合には適切な対応を取っていきたい」と述べ、市場の動きをけん制しました。
また、就任後初めて日本を訪れているアメリカのイエレン財務長官と12日午後、会談することについて鈴木大臣は「足元のさまざまなグローバルな課題があるので、日米が連携を深めながら解決していけるよう、今回の面会の機会を最大限活用していきたい」と述べ、日米が連携して共通の課題の解決に取り組みたいという考えを示しました。
●金融政策の違いを強調したくない日本 7/12
経済アナリストでSBI FXトレード社外取締役のジョセフ・クラフトが7月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。24年ぶりとなる円安について解説した。
24年ぶりの円安ドル高水準
週明け7月11日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、円がドルに対して大幅下落して一時1ドル=137円75銭と、1998年9月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準を付けた。
飯田)一時、1ドル137円後半までいったということです。現在、足もとも137円40銭台という取引になっています。週明けにどのようになってしまったのでしょうか?
クラフト)基本的にこれまでの流れとしては、日米の金利差の拡大が大きいですね。8日にアメリカの雇用統計が出て、予想よりも堅調な内容となっています。アメリカの中央銀行には2つの使命があります。1つは完全雇用、もう1つは物価の安定です。8日の雇用データから見ると、物価8.6%のCPIに比べて、雇用の方は比較的堅調である。従って米中銀は引き続き利上げを継続していく。逆に11日になって、黒田総裁が異次元緩和を維持していくことを表明し、日米の金利差が開いていくのではないかという目論見から、市場が円売りに転じたということだと思います。
飯田)そうすると、円でお金を用意して、それをドルに変えて運用すれば儲かるぞという。
クラフト)金利差の面で言えばそうですね。12日にイエレン財務長官が来日していますので、おそらくならないとは思いますが、円安が議論の土台に乗るかどうかも注目ですね。
財務省が介入して円安を阻止することは難しい 〜アメリカが同意しなければ為替介入はできない
飯田)アメリカではインフレをどうするかということが問題になっています。ただ、あまりブレーキを踏みすぎると雇用にも影響が出るのではないかとも言われています。
クラフト)いい塩梅で利上げを行ってインフレを抑えたいけれども、過度な経済減速にはしたくない。非常に難しいですね。
飯田)ブレーキとアクセルを何度も踏みかえて、というような感じになる。
クラフト)そうですね。日本では財務省が介入して円安を阻止するという見方もありますが、これも厳しい。というのも、アメリカが同意しないと介入は難しいのです。アメリカからしてみると、いまは過度なインフレなので、ドル安はインフレを助長しかねません。そのため、アメリカが同意することは考えにくい。
金融政策の違いを強調したくない日本 〜「日本も柔軟な金融政策を取れる」というメッセージを発信すれば円売りの速度が弱まる
飯田)為替介入して円安を阻止することが難しいとなると、このまま円安基調が続くということでしょうか?
クラフト)基本的には円安基調です。そのペースをどこまで緩められるのか。政府としては、あまり「金融政策の違いを強調したくない」のではないかと思います。
飯田)「基本的には同じ方向を向いている」としておきたい。
クラフト)「日本も、もう少し柔軟な金融政策を取れるぞ」というメッセージを発信すれば、多少は円売りの加速が弱まるということだと思います。そのタイミングがいつなのかが注目されています。 

 

●円、137円近辺 ロンドン外為 7/13
13日朝のロンドン外国為替市場の円相場は、海外市場の流れを引き継ぎ、1ドル=137円近辺で推移した。午前9時現在は137円00〜10銭と、前日午後4時比40銭の円安・ドル高。
●NY円、一時137円80銭台 7/13
13日のニューヨーク外国為替市場の円相場は対ドルで下落が進み、一時1ドル=137円80銭台を付けた。1998年9月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準。
●東京市場 7/13
13日の東京市場はドルが強保ち合い。137円台を中心とした高値圏での推移となったが、137.75円の年初来高値を更新することは出来なかった。
ドル/円は136.85円前後で寄り付いたのち、当初はドル売り優勢。136.65-70円へと小幅に値を下げ日中安値を示現後は、逆にドルが強含む展開に。137.25円レベルへと反騰高をたどり、その後も多くの時間帯を137円台で過ごす底堅い値動きだった。16時現在では137.15-20円で推移し、欧米市場を迎えている。
一方、材料的に注視されていたものは、「日米為替スタンス」と「臨時首脳会談」について。
前者は、昨日東京時間に実施された日米財務相会談において、「為替相場の変動に適切に対応する」とした共同声明が発表されたものの、飽くまでも総論としての認識。各論としては、逆に日米の認識の違いが明らかとなった。そもそも、日本の財務省幹部も認めているように、「会談で為替介入に関する議論はなかった」うえ、日本政府が最近の円安を憂慮していると説明したのに対し、米国サイドからは特段のコメントやアクションはなかったとの情報も。さらにロイターによると、イエレン米財務長官は会談後、記者団に対し、「為替介入はまれで例外的な状況でしか正当化されない」と改めて慎重な見解を示したという。やはりファンダメンタルズに沿った円安を消極的ながら容認していると考えて間違いなさそうだ。
対して後者は、昨日は凶弾に倒れ亡くなった安倍元首相の葬儀が行われるなか、弔意を示す各国首脳からの電話などがここ2日ほど相次ぎ、岸田首相との即席首脳会談も幾つか観測されている。たとえば日豪や日仏、そして日本とカナダ首脳の電話会談も観測されていた。それぞれの首脳は安倍氏への弔意を示すともに、両国関係に変化なく協力を続けていくことで一致したなどと伝えられている。

 

●NY外国為替市場 1ドル=137円台後半まで値下がり  7/14
13日のニューヨーク外国為替市場は、アメリカの消費者物価の上昇率が記録的な水準になったことを受けて金融引き締めが加速するという観測が広がり、円相場は一時、1ドル=137円台後半まで値下がりしました。
13日のニューヨーク外国為替市場は、この日発表されたアメリカの先月の消費者物価指数が9.1%の上昇と、およそ40年半ぶりの水準となったことを受け、金融引き締めが加速するとの観測が広がりました。
この結果、日米の金利差が一段と拡大するとの見方から、円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は一時、1ドル=137円80銭台に値下がりして、およそ24年ぶりの円安水準を更新しました。
また、ユーロ相場も一時、1ユーロが1ドルを下回る水準まで下落し、およそ20年ぶりに1ユーロの価値が1ドルを割り込むいわゆる「等価割れ」となりました。
市場関係者は、「消費者物価の上昇率が予想より拡大したため、FRBが今月下旬の会合で、前回を上回る1%の大幅利上げを決めるという観測も出ている。 アメリカの金融引き締めのペースと景気への影響に警戒が強まっている」と話しています。
●円相場一時1ドル=138円台に 24年ぶりの円安ドル高水準 7/14
外国為替市場で、円安が加速し円相場がおよそ24年ぶりに1ドル=138円台をつけました。
東京外国為替市場で円相場が一時、1ドル=138円台まで値下がりし1998年9月以来およそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
これは前の日に発表されたアメリカの消費者物価指数が9.1%の上昇となり、およそ40年半ぶりの高い伸びとなったことを受けたものです。
FRB(=連邦準備制度理事会)が、インフレをおさえこむため今月の会合でも大幅な利上げを決める見通しで日米の金利差が更に拡大するとの見方から、円を売ってドルを買う動きが強まりました。
●円安の幕引き、ユーロ/円からか 7/14
今年6月半ば以降、米金利には上昇が一巡する兆しが出てきている。米経済のリセッション懸念など世界経済の減速不安が強まる中、銅など資源価格の調整が本格化。ロシア/ウクライナ問題で100ドルを大きく超えて高騰した原油相場にもいよいよピークアウト感が生じ、インフレと米連邦準備理事会(FRB)など各国中央銀行の金融引き締めに対する警戒感が後退し始めたことが、その背景にある。
だが、この間の日米金利差縮小を無視するかのように、ドル/円はジリ高推移を続け、14日午前の東京市場では138円台を回復する動きとなっている。135円前後の2002年高値の突破の後、ドル/円は1998年に付けた147円台の高値まで主だったレジスタンスは指摘しえない状況になった。
米金利にピークアウト感がある中、この高値を試すことになるとは思わないが、当面は引き続き上振れリスクを警戒するのが妥当なようだ。現在、指摘しうる上値めどは、1990年からの下げ幅の76.4%戻し(140.01円前後)。このあたりを念頭に今しばらくは、ドル高・円安を見込むべきだと考えている。
金利差とドル/円、反応に非対称性
重要なことは、金利差に対するドル/円の感応度が低下するのは今回が初めてではないということだ。そもそも近年、ドル/円と金利差の関係(相関)は安定していないし、特に2020年のコロナ危機の時にはFRBのアグレッシブな金融緩和を受けて、米10年国債利回りはゼロ%近くまで低下した。
その際、日米10年債利回りの金利差は、長期的な関係からはドル/円が80円を割り込んでもおかしくないところにまで縮小した。だが、実際には100円を割り込むこともなく、昨年以降はドル高・円安局面に入った。米経済の回復とインフレ懸念を背景とする米金利上昇、それに伴う金利差拡大にドル/円相場は上昇して反応するようになったのだ。
つまり、米金利が低下し、金利差が縮小する時にはドル安・円高の反応は弱く、米金利が上昇し、金利差が拡大する時のドル高・円安の反応は強く出ているということだ。
昨年以降の中長期的なドル高・円安局面においても、例えば、昨年半ばに米金利が低下する場面があったが、金利差縮小に伴うドル安・円高はほとんど進まなかった。日米金利差に対するドル/円の反応に非対称性が生じているのだ。
今年は3月から5月にかけてドル/円は、日米金利差との極めて強い相関を示した。ところが、6月以降の米金利低下、それに伴う金利差縮小には目立って反応していない。金利差縮小の中、足元で進んでいるドル高・円安は実のところ、今局面のみに特徴的な変化ではない。
貿易赤字の拡大
筆者はこうしたドル/円の金利差に対する非対称的な反応を、貿易赤字拡大など日本の国際収支の悪化で理解してきた。すなわち2020年のコロナ危機の際にまず、世界的な需要の落ち込みを受けて日本の輸出が落ち込み、貿易収支は赤字に陥った。その後、輸出は回復してきているが、サプライチェーン問題がくすぶる中、予期せぬオーバーヘッジに陥ることを警戒する輸出企業のドル売りヘッジには力が入らない。
反面、昨年来の原油・資源高で日本の輸入は急増しており、貿易赤字の拡大が鮮明となってきた。当然、輸入企業のドル買い需要は膨らんでいる。こうした中、為替需給の観点では、実需企業の間で、輸入企業の旺盛なドル買い需要がある中、言わばドルの売り手不在のような状況が出現した。
そうした中で、米金利上昇に伴うドル高・円安を見越したヘッジファンドなど海外勢の買いが加わると、ドル/円は金利差拡大方向へは敏感に反応する。反面、米金利が低下してもドル/円下落方向には反応しない。こうした構図となっている。
今回のドル高・円安局面がどこまで続くかの1つの鍵を握るのは、金利市場がどこでFRBによる金融引き締めの織り込みを終わるかであろう。景気減速懸念から原油・資源相場にピークアウト感が漂い始めた今、この点に関してはこれから1─2カ月間が勝負ではないかと思う。
ただ、貿易収支など日本の国際収支の問題は、改善が明確になるには相当な時間を要するだろう。もちろん、原油・資源価格の下落は、この観点でも最終的には円高的に作用し始める可能性はある。だが、FRBの引き締めの織り込みが佳境を迎えるこの数カ月間のうちに、供給制約が解消したり、原油価格がコロナ危機前の水準へ下落したりして、日本の国際収支が正常化する事態は想定しがたい。
しかも、今回のドル高・円安は120円、125円、130円などのキーレベルを突破してきた際に、中小の輸入企業などがオプションなどを用いて構築してきた長期のドル買いヘッジ・ポジションをノックアウトしてきた。足元では、その復元ニーズに伴うドル買い需要も旺盛だと聞く。米金利低下、日米金利差縮小にかかわらず、ドル/円を押し上げる需給的な要因となっている。
鍵を握るユーロ/円
ただ、こうした需給的な特殊要因がない、ユーロ/円などクロス円はこの間、金利差縮小に素直に反応する格好で調整色を強めている。
例えば、本年初にはゼロ%を下回っていた独10年国債利回りは6月には2%に近づく急上昇となり、この間に、125円前後で沈んでいたユーロ/円は145円に肉薄する急騰を見せた。だが、6月以降、独金利が足元にかけて1.1%前後まで低下してくると、ユーロ/円も137円前後まで値を崩してきた。
実のところ、ドル/円と同じように、ユーロ/円の金利差との相関もそれほど安定したものではない。ただ、円安が明確になった3月以降は、ユーロ/円は金利差との相関を回復。しかも、1%当りの金利差変化への感応度は、ユーロ/円が2018年春から2020年春にかけて(コロナ危機が勃発するまで)比較的長い期間にわたり、金利差との安定した関係を維持した時とほぼ同じ程度の「まとも」な関係を維持している。
3月以降の急ピッチな上昇後、6月からは本格的な調整局面に入り、この数カ月間は大きな値動きを見せるユーロ/円だが、金利差の限界的な変化に照らした場合、決して過剰で不可解な上げ下げとなっているわけではない。
ユーロ安の謎と意義
その反面、ユーロ/ドルは金利差との感応度を失う中で、今週はとうとう1ユーロ=1米ドルのパリティを割り込むところまで値を崩してきた。実のところ、この間、ユーロ/ドル下落を金利差以上にうまく説明してきたのは、イタリア国債などのドイツ国債に対する上乗せ金利、いわゆる欧州ソブリン・スプレッドである。
独伊10年金利差は今年の年初には1.3%程度だったが、足元では2%程度まで拡大。この間にユーロ/ドルは1.13ドル前後からパリティ水準にまで値を崩してきた。
ただ、そのソブリン・スプレッドにしてもユーロ/ドルとそれほど明確な因果関係があるわけではなく、米株下落に象徴されるような、金融市場における世界的なリスク回避傾向の高まりの中で生じている現象だ。
こう整理すると、ユーロ/ドルとソブリン・スプレッドで生じていた相関は一種の疑似相関であり、今回のユーロ/ドル下落は、リスクオフ環境下における全面的な米ドル高の反映と見るのが適切ではないかと思われる。それは恐らくドル/円を金利差縮小の中で押し上げる要因にもなっている。
ただ、こうした中で今年5月までの全面的な円安は全面的な米ドル高へ引き継がれる格好となり、世界全体の中で円安は相対的に目立たなくなってきている。その結果、6月以降はユーロ/円や豪ドル/円などクロス円は調整局面に入ってきている。
とは言え、今後を展望した場合、原油・資源相場とともに米金利にもピークアウト感が出てくると、これまで米国債など安全資産、米株などリスク資産の値崩れリスクに対するヘッジとして投資家の間で保有されていたコモディティや為替市場における米ドルのロングの益出しが始まり、一気にヘッジ・ポジションが米国債などにシフトする可能性がある。
こうした流れが本格化した場合、ユーロ/円から始まった円安の修正が次第にドル/円に引き継がれ、クロス円よりもドル/円を押し下げることにつながるだろう。
今年10─12月期ぐらいからのリスクと考えているが、リスクオフ的なドル安・円高にも注意が必要な時間帯に入ってきていると考えている。
●日経平均は続伸、ダウ平均先物の底堅い動きや円安・ドル高受け買い優勢 7/14
日経平均は続伸。13日の米株式市場でNYダウは4日続落。注目された6月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率が市場予想を上回ったことを受け、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めペースの加速が景気悪化を招くとの見方から売りが優勢の展開だった。米株安を受けた今日の日経平均は121.45円安からスタート。取引開始後は朝方軟調だったダウ平均先物が底堅い動きとなったことや、外為市場で昼前に一時1ドル=138円10銭台と朝方に比べ50-60ほど円安・ドル高に振れたことが輸出株などの株価の支えとなり、日経平均は前場中頃に上昇に転じた後、上げ幅を広げた。後場は円安・ドル高が一段と進んだこともあり、日経平均は高値圏で概ね底堅い動きとなった。
大引けの日経平均は前日比164.62円高の26643.39円となった。東証プライムの売買高は9億7278万株、売買代金は2兆2407億円だった。セクターでは水産・農林業、海運業、精密機器などが上昇。一方、電気・ガス業、銀行業、空運業が下落した。東証プライムの値上がり銘柄は全体の57%、対して値下がり銘柄は37%となった。
●急速な円安進行「憂慮」 官房長官、物価影響を注視 7/14
松野博一官房長官は14日の記者会見で、外国為替市場で円安ドル高が急速に進んでいることに関し「憂慮している」と述べた。政府として日銀と緊密に連携しながら「為替市場の動向や経済、物価などへの影響を一層の緊張感を持って注視していく」と語った。
6月の米消費者物価指数の上昇率が約40年ぶりの大きさとなったことを背景に、14日の円相場は一時1ドル=138円台まで下落した。松野氏は、米国でのインフレ動向や米金融政策の変更によって「日本経済や世界経済にどのような影響が生じるか、引き続き注視していきたい」とした。
●外為 1ドル138円01銭前後と大幅なドル高・円安で推移 7/14
14日の外国為替市場のドル円相場は午後1時時点で1ドル=138円01銭前後と、前日午後5時時点に比べ97銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=138円46銭前後と1円03銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●早朝のニューヨーク外国為替市場で円相場、1ドル = 139円を超える 7/14
7月14日17時34分頃、早朝のニューヨーク外国為替市場で円相場は1ドル = 139円を超え、前日6時頃の価格(137.40円)から1.96円(1.43%)上昇となる139.36円となった。 
●円相場、139円10〜11銭 7/14
14日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=139円10〜11銭と、前日(137円04〜04銭)に比べ2円06銭の円安・ドル高となった。 
●1ドル139円台まで急落 約24年ぶりの円安水準を更新  7/14
14日の東京外国為替市場は、アメリカの金融引き締めがさらに加速するとの見方から円相場は2円以上急落して1ドル=139円台まで値下がりしました。およそ24年ぶりの円安水準です。
14日の東京市場では、13日に発表されたアメリカの先月の消費者物価の上昇率が市場予想を上回る記録的な水準となったことでアメリカの金融引き締めがさらに加速するとの見方が広がりました。
このため、円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、円相場は2円以上急落して1ドル=139円台まで値下がりしました。
1998年9月以来およそ24年ぶりの円安水準です。
午後5時時点の円相場は13日と比べて2円5銭、円安ドル高の1ドル=139円9銭から11銭でした。
ユーロに対しては13日と比べて2円11銭、円安ユーロ高の1ユーロ=139円59銭から63銭でした。ユーロはドルに対して1ユーロ=1.0036から38ドルでした。
市場関係者は「アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会がインフレを抑えるために今月下旬の会合で大幅な利上げに踏み切るのではないかという見方が広がっていて、大規模な金融緩和を続ける日銀との政策の違いが強く意識されている」と話しています。
●円安ドル高さらに進む 一時1ドル=139円台 1日で2円近く円安に 7/14
外国為替市場で円相場が1ドル=139円台に値下がりし、1998年9月以来、約24年ぶりの円安水準を更新しました。
外国為替市場では円を売ってドルを買う動きが加速しています。
14日午後に一時1ドル=139円台を付け、1998年9月以来、約24年ぶりの円安水準を更新しました。
13日に発表されたアメリカの消費者物価指数の上昇率が市場の予想を上回って記録的な水準となったことから、FRB(連邦準備制度理事会)がさらに利上げを加速するという見方が広がっています。
低金利を維持する日本との金利差を意識した円を売る動きが続いています。
●円急落、一時139円台 24年ぶり円安ドル高水準  7/14
14日の外国為替市場の円相場はドルに対して売られ、一時1ドル=139円台前半まで急落した。1998年9月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準を更新した。歴史的なインフレに対処するため米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを加速し、日米金利差が拡大するとの観測から円売りドル買いが優勢となり、前日から2円以上、円安が進む場面もあった。
東京外国為替市場では一時1ドル=139円18銭まで円が下落した。午後5時現在は前日比2円05銭円安ドル高の1ドル=139円09〜11銭。ユーロは2円11銭円安ユーロ高の1ユーロ=139円59〜63銭。
●東証大引け 続伸し164円高、円安が輸出関連を押し上げ 値上がり6割弱 7/14
14日の東京株式市場で日経平均株価は続伸し、前日比164円62銭(0.62%)高の2万6643円39銭で終えた。外国為替市場で円相場が対ドルで1ドル=138円台に下落し、24年ぶりの円安・ドル高水準になった。輸出採算の改善につながるとの観測から、自動車や機械の一部に買いが入った。主力の値がさ株に断続的に買いが入ったことも相場を押し上げた。
前日の米株式市場で主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が0.7%高となり、東京市場でも東エレクなど半導体関連銘柄の買いにつながった。このところ下げが続いていた後で、買い直す動きが出やすかった面もあった。
外国為替市場では円安・ドル高が進み、輸出関連株の支えとなった。空売り比率の相対的に高い海運などにも買い戻しが入った。薄商いのなかでファストリやソフトバンクグループといった主力の値がさ株に買いが入り、指数を押し上げた面もある。
朝方は売りが優勢だった。13日に発表された6月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率が前月比、前年同月比がともに市場予想を上回った。米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを加速させ、米景気の悪化につながるとの観測から、同日の米株式市場で主要3指数は下落。東京市場は売り先行で始まったものの、ほどなく下げ幅を縮めた。
東証株価指数(TOPIX)は続伸した。終値は前日比4.28ポイント(0.23%)高の1893.13だった。
東証プライムの売買代金は概算で2兆2407億円。売買高は9億7278万株だった。東証プライムの値上がり銘柄数は1051と、全体の6割弱を占めた。値下がりは697、変わらずは90だった。
●円、139円近辺 ロンドン外為 7/14
14日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、日米の金融政策の違いを意識したドル買い意欲が一段と強まる中、約24年ぶりの円安水準となる1ドル=139円近辺に下落した。
正午現在は139円00〜10銭と、前日午後4時比1円90銭の大幅な円安・ドル高。
●NY円、138円88〜98銭  7/14
14日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比1円50銭円安ドル高の1ドル=138円88〜98銭を付けた。 

 

●円相場、138円91〜91銭 15日午後5時現在 7/15
15日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=138円91〜91銭と、前日(139円10〜11銭)に比べ19銭の円高・ドル安となった。 
●東京外国為替市場 円相場1ドル = 139円挟む値動き 7/15
円相場は、1ドル = 139円を挟んだ取引となっている。
15日の東京外国為替市場の円相場は、円を売る動きが続いていて、1ドル = 139円を挟んだ値動きとなっている。
14日のニューヨーク市場では、円相場は一時1ドル = 139円30銭台まで値を下げたが、その後、やや円が買い戻される展開となっている。
15日の東京株式市場の日経平均株価、午前の終値は、14日に比べ、154円08銭高い、2万6,797円47銭、TOPIX(東証株価指数)は、1,892.77だった。
●ニューヨーク外国為替市場概況 ユーロドル、反発 7/15
15日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは反発。終値は1.0080ドルと前営業日NY終値(1.0018ドル)と比べて0.0062ドル程度のユーロ高水準だった。前日に辞任を表明したドラギ伊首相をマッタレッラ大統領が慰留したことで、リスク回避の姿勢が後退し、イタリア株中心に欧州株相場が反発。ユーロ買い戻しが先行した。
NY市場では、6月米小売売上高が前月比1.0%増と予想の0.8%増を上回ったものの、前日にウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事が指摘した「予想よりも大幅に強い数字」ではなかったとの見方から、市場で台頭していた今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での1%利上げ観測が後退し、ドル売りを誘った。
また、米ミシガン大学が7月消費者態度指数(速報値)に併せて発表した消費者の期待インフレ率で、5年先が2.8%と前月の3.1%から鈍化し1年ぶりの低水準を記録したこともドル売りを促した。同指標はFRBが6月FOMCで0.75%の大幅利上げを決めた一因とされており、この結果が米金融引き締め加速への過度な警戒感の緩和につながった。24時30分前に一時1.0098ドルと本日高値を更新した。
なお、ボスティック米アトランタ連銀総裁はこの日、「0.75%利上げは大きな動きであり、FRBは移行が秩序あるものになることを望む」「あまりにも劇的な動きは経済を弱体化させ、不確実性が増す可能性」と述べ、1%利上げには否定的な見方を示した。ボスティック氏は13日に「1%の利上げを検討する可能性がある」との見方を示していた。また、FOMCで投票権を有するブラード米セントルイス連銀総裁も「今月1%の極めて大幅な利上げを決定する必要性を強く感じていない」などと語った。
ドル円は3営業日ぶりに反落。終値は138.57円と前営業日NY終値(138.96円)と比べて39銭程度のドル安水準だった。注目の米小売指標が予想よりも大幅に強い数字ではなかったとの受け止めがドルの重しとなり、23時30分過ぎに一時138.39円と日通し安値を更新した。米ミシガン大学が発表した期待インフレ率が前月から鈍化し予想を下回ったことも、FRBの急激な利上げ観測の後退を誘い、米金利の低下とドル売りを促した。
ユーロ円は3日続伸。終値は139.63円と前営業日NY終値(139.23円)と比べて40銭程度のユーロ高水準。欧州を代表する株価指数のひとつユーロ・ストックス50指数が2.3%超上昇したほか、ダウ平均が650ドル超上げると、投資家のリスク志向が改善し円売り・ユーロ買いが強まった。前日の高値139.77円を上抜けて一時139.89円まで値を上げた。その後の下押しも139.55円付近にとどまった。
●円安、140円視野の裏側 米バブル動揺で「悪いドル高」 7/15
米国によるインフレ退治のための金融引き締めがマネーの逆流を加速させている。外国為替市場では円安が止まらず、1ドル=140円の節目が視野に入った。ユーロも1ユーロ=1ドルの等価(パリティ)を割り込む水準まで売られている。その裏側には米国との金利差だけではなく、米株バブルの動揺に伴い企業や金融機関がドル資金の確保を急ぐ「悪いドル高」もあるとみられる。ドルの調達難はドル建て債務が多い海外企業の信用収縮を招き、世界経済が縮小均衡に陥るリスクを高める。
証券資金還流、2年で100兆円
ドルの総合的な強さを示すドルインデックスは14日、一時109台と2002年9月以来の高値を付けた。過去3カ月の上昇率は9%。同期間の「悪いドル高」のピッチは20年春のコロナショック(5%)を上回り、08年秋のリーマン・ショック(16%)に次ぐ。
米国への資金還流が止まらない。米財務省によれば、米国居住者による対外証券(株式と債券)投資は4月まで20カ月連続で売り越し(米国への資金流入超過)だ。20年のコロナショックからの累計額は7700億ドル(107兆円)にのぼる。米国の株式と債券がともに売られても、ドルが買われる一因だ。こうした現象は極めてまれだ。
ドル高は原材料費の高騰や在庫の急増で傷んだ米国企業の収益をさらに圧迫する。JPモルガン・チェースは14日、融資の焦げ付きに備えて貸倒引当金を積み増したことにより、22年4〜6月期決算が大幅減益になったと発表。財務強化のため、自社株買いの一時停止も表明した。同日の米株式市場では銀行株を中心に急落し、ダウ工業株30種平均の下落幅は一時600ドルを超えた。投資家の目は米国の不良債権に向かい始めている。
ドル建て社債の利回り急上昇
信用力の低い企業を中心に、新興国のドル調達にも影響が広がっている。インターコンチネンタル取引所(ICE)とバンク・オブ・アメリカが算出する新興アジア市場のハイイールド社債指数の利回りは13日、17.6%と09年4月以来の水準に上昇した。
中国の低格付け企業が発行するドル建て社債指数の利回りは28.8%と過去1年で18%も跳ね上がった。信用リスクを反映する米国債との利回り差(スプレッド)は26%に近く、リーマン・ショック並みの水準だ。
国際決済銀行(BIS)によると、新興国のドル建て債務(金融を除く)は21年末時点で4兆2400億ドルと過去2年で12%増加した。中国13%、韓国19%、台湾21%などの伸びが目立つ。
通貨危機時に資金を融通し合う「チェンマイ・イニシアチブ」など日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)は金融の安全網を整備し、1990年代のアジア通貨危機の再来を懸念する声は聞かれない。しかし、もともとアジアにはインフレ率が低い国が多く、企業の価格転嫁が進みにくいという事情は共通する。今後、原材料価格の高騰で採算が悪化する企業が増えるとみられている。
日本株は円安に支えられて底堅いが、アジア企業同様、マージンの縮小が予想される。ドル独歩高に対する世界の懸念が深まり、ドル高抑制で各国が足並みをそろえれば、円高に反転し、株価が下落に転じる可能性もある。
●日経平均続伸 24年ぶりの円安・ドル高水準で買い優勢 7/15
15日の東京株式市場で日経平均株価は3営業日連続で値を上げ、前日に比べて145円8銭高い2万6788円47銭で取引を終えました。
東京市場では、外国為替市場で円相場が139円前後と、24年ぶりの円安・ドル高水準で推移したことなどから、買い注文がふくらみました。日経平均株価は一時200円以上値を上げました。
しかし、世界全体の景気減退への警戒感や、15日が週末であることから、利益を確定する目的の売り注文が入り、平均株価はマイナスに転じる場面もありました。
東証プライムの売買代金は、概算で2兆5444億円。売買高は、概算で10億7831万株。
●鈴木財務相 “投機的な動き背景に急速な円安 状況を憂慮”  7/15
インドネシアで開かれているG20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議に出席している鈴木財務大臣は、最近の外国為替市場では投機的な動きを背景に急速に円安が進んでいるとしてこうした状況を憂慮していると述べました。
鈴木財務大臣は、現地で記者団に対し「会議では、為替市場では急激な変動が見られ、高い緊張感を持って市場動向を注視する必要があることを申し上げた」と述べました。
そのうえで「最近の為替市場は、投機的な動きを背景とした急速な円安の進行が見られ、憂慮しているところだ」と述べました。
鈴木財務大臣は「為替政策については過度の変動や無秩序な動きは経済や金融の安定に悪影響を与えうるというG20やG7で合意された考え方を踏まえ、各国通貨当局と緊密な意思疎通を図りつつ、必要な場合に適切な対応をとりたい」と述べ、円安ドル高が急速に進む市場の動きをけん制しました。
●円安 なぜこんなに急に? 7/15
なぜ円安が進んでいるのですか?
背景には、日本と欧米の中央銀行の金融政策の方向性の違いがあります。
アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会は記録的なインフレに対応するため、金融引き締めを急いでいます。先月(6月)には、およそ27年半ぶりとなる0.75%の大幅な利上げを決めました。さらに13日に発表された消費者物価指数が9.1%の上昇と、およそ40年半ぶりの記録的な水準となりました。市場では、FRBが今月(7月)下旬の会合でさらに大幅な利上げに踏み切るのではないかという観測も出ています。これに対し、日銀は、今の大規模な金融緩和を続ける姿勢を鮮明にしています。市場では、欧米と日本の金利差が拡大するとみて、より利回りが見込めるドルなどの外貨を買って、円を売る動きが強まっています。
1月には1ドル=115円台でした。こんなに急ピッチな円安は過去に例があるのでしょうか?
外国為替市場で、ことし1月から6月末までの半年間で、ドル円相場は1ドル=115円台から136円台まで21円、値下がりしました。これは、日銀に記録が残る1998年以降の1日ごとのデータによりますと半年間で最も大きな値下がり幅となります。そして、7月に入っても円安はさらに進み14日には1ドル=139円台まで値下がりしました。
円安はどこまで進むのですか?
日米の金利差は今後も拡大が見込まれることから、市場関係者の間ではさらに円安が進むという見方も出ています。ただ、アメリカの急速な金融引き締めで今後、アメリカの景気の減速感が強まる可能性があります。そうなればある程度、円安に歯止めがかかるのではないかという見方もあります。
モノが値上がりして困っています。これも円安の影響なのでしょうか?
円安のデメリットは石油をはじめとする原材料を輸入する際のコストがかさむことです。ロシアのウクライナ侵攻以降、原油などのエネルギー価格や穀物などの原材料価格がすでに高騰しています。円安が進めば、この価格上昇にさらに拍車をかけることになります。このため、今の円安は、メリットよりもデメリットのほうが大きい「悪い円安」だという指摘が出ています。
政府や日銀は、何か手をうたないのでしょうか?
過去には急激な為替の変動に対して政府と日銀が市場介入を行ったことがあります。円安に歯止めをかけたいときには外貨準備として持っているドルを売って、円を買うことになります。鈴木財務大臣は、今月12日の記者会見で円安について「最近の為替市場では急速な円安の進行が見られ憂慮している」と述べました。そのうえで「政府として日本銀行と緊密に連携しつつ、為替市場の動向や経済、物価などへの影響を一層緊張感を持って注視していく。各国の通貨当局とも緊密な意思疎通を図り、必要な場合には適切な対応をとっていきたい」と述べ、市場の動きをけん制しました。
また12日には、来日中だったアメリカのイエレン財務長官と会談し、為替の問題について日米が適切に協力する方針を確認しました。ただ、円安に歯止めをかけるための市場介入は極めて難しいという指摘もあります。アメリカが記録的なインフレに見舞われる中、物価高につながりかねない“ドル安”を容認するとは考えにくいからです。日銀の黒田総裁も急速な円安について、「先行きの不確実を高め、企業による事業計画の策定を困難にするなど経済にマイナスであり望ましくないと考えている」と述べて金融・為替市場の動向や経済物価への影響を十分注視する必要があるという認識を示しました。仮に日銀が欧米と方向性をそろえ金融緩和を修正すれば円安の進行に歯止めがかかる可能性があります。ただ新型コロナからの回復途上にある今は日本経済を下支えるために大規模な金融緩和策を続けることが重要だと強調しています。 

 

●円相場、理論値より割安  日経均衡為替レートは109円台 7/16
外国為替市場で円相場が理論値に比べて割安になっている。日本経済新聞社と日本経済研究センターが最新データで推計した1〜3月の「日経均衡為替レート」は1ドル=109円70銭だった。同じ期間の実勢レートは116円30銭で、理論値に比べて6円以上も円安・ドル高の水準だった。4月以降は一段と円安が進んでおり、理論値との差はさらに広がっている可能性がある。
日経均衡為替レートは、外国為替相場が長い目でみれば経済の基礎的条件で決まるとの考え方から、政府債務や対外純資産、内外金利差、交易条件、貿易財と非貿易財の価格比といった国内外のマクロ経済指標を変数に、回帰分析の手法で推計している。
理論値は2021年10〜12月期の106円台後半から大きく円安・ドル高に傾いた。前四半期から円安に振れるのは2四半期ぶり。輸入物価の上昇に伴う交易条件の悪化が円の理論値を押し下げた。外国為替市場では3月には一時1ドル=125円台まで円安・ドル高が進んでいた。
円相場はロシアのウクライナ侵攻に伴う資源高、米国の利上げなどを受けて4月以降も円安・ドル高が進んでいる。足元で円相場は一時、1ドル=139円台まで下落した。
●為替相場 7/11-15 7/16
11日からの週は、ドル高が進行。ドル円は139円台と24年ぶりの高値水準へ上昇。ユーロドルは一時パリティ(等価)を下回って1ユーロ=0.99ドル台へと下落。ドル高の背景には、米消費者物価指数が前年比+9.1%と予想以上のインフレ加速を示したことにある。市場では次回米FOMCで1.00%ポイントの大幅利上げを織り込む動きがみられた。米金融当局のタカ派メンバーからも0.75%利上げを支持する声が上がり、市場の大幅利上げの織り込みが行き過ぎることに対する警戒感も示される事態に。ドル円にとっては日米金利差拡大観測が相場を押し上げた。黒田日銀総裁は、強力な金融緩和政策姿勢を維持している。ユーロドルにおいても欧州と米国との景気見通しの差がユーロ売りを誘った。欧州委員会は夏季経済予測で成長率見通し引き下げ、インフレ見通し引き上げを発表した。イタリアの政局不安が持ち上がり、イタリア債が下落(利回り上昇)、ドイツ債との利回り格差が拡大し、ECBの断片化対策が現実的な問題となっている。ポンドドルは一時1.17台まで下落。インフレ対応が景気減速につながることが懸念されたほか、ジョンソン英首相辞任で後継首相選びをめぐる不透明感がでていた。インフレ対応で、カナダ中銀は予想外の1.00%の大幅利上げを実施。NZ中銀と韓国中銀は0.50%利上げを実施。各国で大幅利上げが相次いており、世界的に株式市場が不安定になった。米国との金利見通しに加えて、リスク警戒のドル高の面もあった。
15日
東京市場は、値動き一服。ドル円は139円を挟む推移が続いた。前日には139.39レベルまで高値を伸ばしたが、その後は138.60付近まで調整売りが入った経緯がある。NY終盤から東京午後に至るまでは138.70台から139.10台での振幅を繰り返している。日本勢にとっては週末の三連休を控えて取引動意が弱い点も指摘された。ユーロドルは前日に0.9952レベルまで安値を広げたあとは、1.00台前半に戻した。東京市場では1.0008から1.0041レンジで揉み合いとなっている。東京午後に豪ドル売りが入った。豪大手金融機関のウェストパック銀行が、9月の豪中銀の利上げ幅が0.25%に戻るとの見方を示したことに反応。豪ドル円は一時93円台半ば割れまで下落した。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。前日のNY市場でドル買いに調整が入った流れが続いている。ドル円は139円近辺が重くなると、ロンドン序盤に138.56レベルまで下落。米債利回りの低下に反応した。その後138.90付近まで下げ渋ったが、ロンドン昼にかけて再び軟調に推移している。ユーロドルは1.1007近辺まで軟化したあとはじり高の動きに。足元では1.0060付近へと買われている。欧州株が堅調に推移しており、ユーロ円は138.75近辺を安値に139.50近辺へと上昇。東京市場からは下に往って来いとなっている。ポンドドルはユーロ相場につれ高で、1.1805近辺を安値に1.1853近辺まで買われた。ポンド円は163.65近辺まで下落したあとは164円台前半へと買い戻されている。NY原油先物が上昇。米政府高官が「バイデン大統領のリヤド訪問で、米国はサウジアラビアが即時増産に応じること期待せず」との発言が伝わると96ドル付近から一気に98ドル付近まで上伸した。ドル建て原油相場の上昇がドル売り圧力に広がった面も。この日はレーン・フィンランド中銀総裁が「ECBは7月に25bp、9月に50bp利上げの公算大」と述べたが、市場は織り込み済みとして反応薄だった。
NY市場はドル売りが優勢となり、ドル円も一時138.40近辺まで下落した。ただ、下押す動きまではなく、140円を視野に入れた展開に変化はない。この日発表の7月調査分のミシガン大消費者信頼感指数の速報値を受けてドル売りが強まる場面も見られた。指数は51.1と予想の50.0を上回った。ただ市場は、5−10年先のインフレ期待値が2.8%と、3.0%を下回ったことに敏感に反応した模様。パウエルFRB議長がFOMC後の会見で同数値に言及していたことから注目を集めていた。

 

●ドル円の未体験ゾーン 7/17
ドル・円相場の底堅い値動きが続き、次の節目となる140円が視野に入ってきました。一方、米国経済のリセッション懸念で、ドル高はそろそろピークにも見えます。しかし、円安には歯止めがかからず、参院選で大勝した岸田政権の政策運営が注目されそうです。
安倍晋三元首相が街頭演説中に襲撃され、その後死亡が確認されると、「アベノミクス」終えんを嫌気した円買いでドル・円はいったん下落。ただ、その日の夜に発表された米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想を上回り、雇用情勢の改善による米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げへの思惑がドルを押し上げました。一方で減速懸念も根強く、一段のドル買いは抑制されています。
そして7月11日の参院選で自民党が圧勝すると、翌日の東京市場はご祝儀相場となり、株高・円安が再開。さらに日銀の黒田総裁が異次元緩和の継続方針を強調したことで、ドル・円は節目の137円台に浮上しました。ユーロ・ドルのパリティ付近での攻防でドルは下押しされる場面もありますが、ドル・円の値動きは底堅く、目先は具体的な上値抵抗線が乏しいため140円を目指す展開となりそうです。
ドル・円は目下1998年以来24年ぶりの高値圏で推移するほか、足元の実質実効為替レートは日銀データで1980年以降の最低水準に落ち込み、市場参加者のほとんどが円安の未体験ゾーンといえるでしょう。1998年はアジア通貨危機やロシア危機に見舞われた年として記憶されています。FRBの緊急利下げなどが市場を翻ろうし為替相場は乱高下しましたが、当時を語れる人は少ないかもしれません。
それだけに140円台という高水準で推移するドル・円は想像しがたく、徐々に失速するとの見立ての方が現実的に思えます。実際、金融機関がまとめた今後の見通しではインフレ高進の一服や景気減速懸念による金融引き締め後退の観測が示されており、ドル高は7-9月期がピークとの指摘が散見されます。半面、日銀は緩和一辺倒のため、引き続きドルをはじめ主要通貨を押し上げる要因は残ります。
また、今週来日したイエレン米財務長官は為替介入について「例外的な状況でしか正当化されない」と政府・日銀の円買い介入に釘を刺しています。鈴木俊一財務相が最近の円安を憂慮していると説明したものの、「既読スルー」されたもようでドル高・円安の流れを変えることはできそうにありません。ドル・円が今後、150円台、160円台に進んでも、政府は日米の力関係に身を任せるつもりでしょうか。
風向きを変えるとすれば岸田政権の政策運営でしょう。自民党の最大派閥である安倍派の四分五裂は避けられず、今後は宏池会系の岸田派の増強などの可能性もあります。「リベラル」を自称する岸田首相が9月の党人事・内閣改造でムードを刷新できれば、円安も次第に収束すると期待しています。
●円安メリットがなくなったというのは本当か?日産の黒字化が意味するもの 7/17
2022年7月15日に1ドル139円台前半まで円安が進行しました。24年ぶりの安値水準です。輸出国である日本経済は、為替の影響を大きく受けます。円安は輸出産業にとって大いに有利になります。
しかし、一部のメディアで円安メリットはなくなったとの主張も見かけるようになりました。その根拠の一つとなっているのが、輸出中心の企業は現地生産を行うようになっており、輸出量が減少していることをあげています。
円安の恩恵が受けられなくなったというのは本当なのでしょうか?日本を代表する自動車産業と、日産をもとに検証します。
急激な円高と円安に翻弄された日本企業
まずは日本の輸出額の推移を見てみましょう。2019年は76兆円で前年比5.6%の減少、2020年は68兆円で前年比11.1%の減少となりました。確かに近年の輸出額は減少していますが、これは新型コロナウイルス感染拡大という突発的な出来事が主要因です。
2018年は81兆円で、過去最高だった2007年の83兆円に近づいていました。
2011年に1ドル75円という空前の円高に見舞われ、多くの日本企業が海外に拠点を移したと言われています。当時の日本銀行総裁だった白川方明氏は、歴史的な円高に苦しみ、為替介入を実施しました。しかし円高の勢いは収まらず、追加の介入を求める声が出ていました。
白川総裁は円安誘導に対して抵抗感を持っていたと言われています。円高が長期化する見込みであれば、海外に拠点を移すという経営判断が下されることは大いにありえます。
しかし、円高は長く続きませんでした。黒田東彦氏が2013年3月に日本銀行総裁に就任すると、異次元緩和と呼ばれる大規模な緩和策を実施。2013年12月には100円台まで円安が進行します。
2013年からは輸出額が増加に転じました。
円高が長期化すれば、拠点を海外に移す動きは加速したものと予想できます。しかし、円安に動いたことでわざわざ移す必要はなくなったのです。
営業利益36.3%増の超絶決算となったトヨタ
日本の主力産業である自動車メーカーが、円安によって業績にどのような影響が出たのかを見てみましょう。
トヨタは2022年3月期の営業利益が前期比36.3%減の2兆9,956億円でした。純利益は同26.9%増の2兆8,501億円です。
営業利益率は9.5%(前期から1.4ポイントのプラス)となりました。
トヨタは営業利益が大幅に増加している要因の一つに為替変動の影響を挙げ、6,100億円のプラス効果があったとしています。
2023年3月期の営業利益は前期比19.9%減、純利益は20.7%減を予想しています。しかし、トヨタは1ドル115円の為替レートで業績予想を出しており、利益が押し上げられる可能性もあります。
ホンダは2022年3月期の営業利益が前期比32.0%増の8,712億円、純利益が同7.5%増の7,070億円となりました。
2022年3月期ホンダの営業利益率は6.0%となり、前期より1.0ポイント上昇しています。ホンダは営業利益において為替の影響が860億円のプラスに働いたとしています。
2023年3月期の営業利益は前期比7.0%の減少を予想していますが、ホンダは1ドル120円で計算をしています。トヨタと同じく、円安の進行で増益となる可能性もあります。
円安は原価率に悪影響を及ぼすのか?
円安になると、材料や部品などの調達コストが上がり、利益が圧迫される傾向があります。しかし、2022年3月期までのトヨタ、ホンダの原価率をみると、原価率が膨らんでいる様子はありません。
急速に円安が進行し、資源高に見舞われた2022年1月から3月までのホンダの原価率を見ても79.5%で、急激な変化は起こっていません。
主力産業である自動車メーカーの業績を見ると、円安メリットが大いに発生していることがわかります。
日産の黒字化に貢献した円安
円安に振れたことで、多大なる恩恵を受けた会社が日産自動車。日産は2022年3月期に2,473億円の営業利益を出しました。日産は2020年3月期に404億円、2021年3月期に1,500億円の営業赤字を計上していました。一転して黒字となったのです。
日産は為替の影響で営業利益が634億円のプラスに働いたとしています。2023年3月期は為替で更に500億円の恩恵を受ける予想を出しています。
日産は為替に翻弄された歴史を持ちます。
カルロス・ゴーン氏が指揮を執っていた2011年〜2016年度の経営戦略が「日産パワー88」。これは販売台数の拡大を目指し、中国や南米などの新興国を中心に市場占有率を高めるものでした。
この戦略の背景にあったのは、過度な円高が進行したために生産設備を海外に移し、新興国で安く組み立て、現地の旺盛な需要を取り込んで販売台数拡大を狙ったことがあると考えられます。
しかし、2013年から急速に円安が進行。日産は販売台数を増やしたことで売上高を伸ばすことができましたが、利益率は低迷してしまいます。そして2020年3月期に赤字へと転落しました。
日産は拡大路線を改め、生産拠点の絞り込みを実施します。インドネシア、バルセロナの工場閉鎖を計画。北米工場もスリム化を進めました。
原点回帰をした日産は、日本のマーケット強化を打ち出し、市場占有率を上げる取り組みを実施しています。輸出企業としての在り方を見直したと見ることができます。
その取り組みが奏功して黒字化を果たしました。
円安は物価高を引き起こして忌み嫌われるものになっていますが、多くの企業に恩恵を与えています。生産拠点が日本に戻ることで、雇用が促進されるかもしれません。デメリットばかりではないのです。
●勢い止まらぬドル高でリスク増大、アジア株から710億ドル流出 7/17 
ドルの絶え間ない上昇がアジアの新興国株式市場からの資金流出に拍車をかける恐れがあり、年後半の回復期待を後退させている。
アジア通貨の指数は約2年ぶりの安値に沈み、為替相場の動向と強い相関を持つ株式に不吉な兆候が見えている。MSCIの日本を除いたアジア株の指数は年初来で20%下落。中国以外のアジア新興国からの外国人投資家による資金引き揚げは、今年はこれまでに710億ドル(約9兆8400億円)と、既に2021年の2倍の流出額だ。
ドルは米金融当局による積極的利上げの観測を追い風に、このところ外国為替市場で圧倒的な強さを見せている。ドル高はリスク選好度の低下シグナルとなり、アジア株には不吉な兆候である上、ドル建てでの輸入に依存する国が多い新興国の経済成長にはマイナス要因とされる。
BNPパリバ・アセット・マネジメントのアジア株式責任者、陳志凱氏は「成長ではなくリスク回避ムードがあるため、ドルは上昇している」とし、アジア資産には「良い組み合わせではない」と指摘した。
韓国や台湾といったアジアのハイテク株の比重が大きい市場は特に打撃を受けやすいようだ。世界的な債券利回り上昇や景気後退の逆風で、バリュエーションや需要見通しが悪化している。韓国と台湾の株価指標は今年のアジア株指数の中で不振が目立っており、外国人投資家による売り越しは計500億ドルに上っている。 

 

●円相場 7/18 
[東京休場(海の日)] 7月の円相場は当初最強であったが、7月4日週は月間3位、先週(7月11日週)は6位。7月の季節的円高需給で今年の傾向である最弱の円からは抜け出しているが、12通貨中6位であることは例年のように強くもない。やはり歴史的な貿易赤字の下ではなかなか強くなれない。さてイエレン財務長官来日とG20財務相・中銀総裁会合では日本は円安懸念を示したが、為替についてはこれまでのG20合意に基づくものとされて進展はなかった。ただイエレン財務長官が一般論だがドル高は米企業の競争力を弱めると発言したことや、NYタイムズでもドル高の弊害が取り上げられたことは、さらにドル高が進めば議論が深まることを示唆した。
貿易赤字の通貨を金利操作や介入で強くすることは難しい。日本は逆の意味で円高時代に円を安くしようと金利操作、介入を駆使したが、なかなか効果が出なかった。ただ貿易赤字になると一気に円安が進んだ。もちろん金利操作や介入で20円-40円を動かした実績もあるので注意は必要だが、日銀は金融緩和を維持、介入は原則禁止の現在ではなかなか為替相場の誘導は難しい。今週は日銀政策決定会合と6月貿易統計の発表で金融政策と需給をチェックできる。消費者物価の目標は1.9%から2%超に上方修正するが大規模金融緩和は維持するようだ。貿易統計は1.5兆円の赤字予想。円高月の7月は円全面安とはならないが、若干の調整は想定できる。円相場は貿易収支が決め、貿易収支は原油相場が決める日本だ。8月3日のOPECプラスがバイデン大統領の要請を受けて増産するかどうかも焦点だ。 
●円、138円台前半 ロンドン外為 7/18
週明け18日朝のロンドン外国為替市場の円相場は、円買いが優勢となり、1ドル=138円台前半に上昇した。 午前9時現在は138円05〜15銭と、前週末午後4時比45銭の円高・ドル安。
●NY外為 円、138円台前半 7/18
週明け18日午前のニューヨーク外国為替市場の円相場は、米国の大幅利上げに対する観測が後退する中、1ドル=138円台前半で小動きとなっている。午前9時現在は138円30〜40銭と、前週末午後5時(138円50〜60銭)比20銭の円高・ドル安。
前週は米国のインフレの高止まりを示す統計が発表された後、7月の連邦公開市場委員会(FOMC)での1.00%利上げ観測が急浮上。しかし、週後半に、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事や複数の地区連銀総裁が急速な金融引き締めに慎重な姿勢を表明したことでドルの騰勢がしぼみ、週明けの円相場は138円台前半から同半ばのレンジで推移している。
今週は米国で住宅指標の発表が相次ぐほか、日銀の金融政策決定会合(20〜21日)、欧州中央銀行(ECB)の定例理事会(21日)の開催が控えている。日銀が大規模緩和の継続姿勢を示せば、米欧との政策の違いに改めて焦点が当たり、円の下押し圧力が強まる場面もありそうだ。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0130〜0140ドル(前週末午後5時は1.0084〜0094ドル)、対円では同140円15〜25銭(同139円68〜78銭)と、47銭の円安・ユーロ高。 

 

●外為 1ドル138円24銭前後とドル高・円安で推移 7/19 
19日の外国為替市場のドル円相場は午前8時時点で1ドル=138円24銭前後と、前日午後5時時点に比べ15銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=140円20銭前後と11銭のユーロ高・円安で推移している。 
●外為 1ドル138円18銭前後と小幅なドル高・円安で推移 7/19
19日の外国為替市場のドル円相場は午後0時時点で1ドル=138円18銭前後と、前日午後5時時点に比べ9銭の小幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=139円98銭前後と11銭のユーロ安・円高で推移している。
●ドル円見通し ドル全面高一服、139円台序盤から138円割れへ調整安入る 7/19
ドル円は参院選での与党大勝をきっかけに7月11日午前に137.00円を突破して夜には全般のドル高に乗じて137.75円へ到達、12日夜に136.46円まで調整したところから13日夜には137.86円へ高値を更新、14日午前に138円を突破して14日夜には139.39円まで大幅続伸した。
7月13日の米CPIが予想を上回り、次回FOMCでの1.0%利上げの可能性が強まったことでドル高が勢い付いたことが背景だったが、1.0%利上げに否定的な米連銀高官発言もあり15日はユーロドルが1ユーロ1ドルのパリティ割れまで下げたところから持ち直して欧米株も上昇したことでドル高に一服感が生じ、ドル円も調整的な下落で15日深夜には138.38円まで下げ138.53円で週を終えた。
7月18日は日本市場休場だったが、先週末からのドル安への修正が続いたためにドル円も夕刻安値で137.88円まで続落したが、その後は138円割れを買われて下げ渋り、19日朝時点は138円台序盤で推移している。
●ロンドン外為 円、137円台半ば 7/19
19日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米国の大幅な利上げ観測の後退を受けて円が買い戻され、1ドル=137円台半ばに上昇した。正午現在は137円45〜55銭と、前日午後4時(138円00〜10銭)比55銭の円高・ドル安。
海外市場の流れを引き継ぎ137円台後半で始まった後、じりじりと値を上げた。欧州中央銀行(ECB)が21日に0.5%の大幅利上げに踏み切るとの観測から、ユーロが対ドルで上昇したことにも支えられた。
対ユーロは1ユーロ=141円00〜10銭(前日午後4時は140円65〜75銭)と、35銭の円安・ユーロ高。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0250〜0260ドル(1.0190〜0200ドル)。
ポンドは1ポンド=1.2020〜2030ドル(1.2020〜2030ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9675〜9685フラン(0.9730〜9740フラン)。
●NY円、小反落 1ドル=138円15〜25銭 米株高で売り 7/19
19日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3営業日ぶりに小反落し、前日比5銭円安・ドル高の1ドル=138円15〜25銭で取引を終えた。朝方は対ユーロのドル売りが円相場に波及し、円買いが先行した。だが、米株式相場が大幅高となり、低リスク通貨とされる円に売り圧力が強まり、下げに転じて終えた。
欧州市場で進んだ円高・ドル安の流れを引き継いで始まった。ロイター通信が19日、関係者の話として欧州中央銀行(ECB)が21日の理事会で通常の2倍の0.5%の利上げを議論する見通しと伝えた。市場では0.25%の利上げが見込まれていたため、持ち高調整のユーロ買い・ドル売りが加速。対円でのドル売りにつながった。
円は買い一巡後に徐々に上げ幅を縮めた。ダウ工業株30種平均が大幅高で推移し、前日比754ドル高で終えた。投資家心理が強気に傾き、円売りを誘った。米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大を見込む円売り・ドル買いも促した。
円の高値は朝方につけた137円46銭、安値は138円25銭だった。
円は対ユーロで5日続落し、前日比1円20銭の円安・ユーロ高となる1ユーロ=141円25〜35銭で取引を終えた。ECBの大幅利上げ観測が浮上し、金融緩和を続ける日銀との方向性の違いを意識した円売り・ユーロ買いが強まった。
ユーロは対ドルで大幅に3日続伸し、前日比0.0075ドル高い1ユーロ=1.0215〜25ドルで終えた。ECBが0.5%の利上げに動くとの観測が浮上し、持ち高調整のユーロ買い・ドル売りが広がった。米株高を受け、リスク選好のユーロ買いも誘った。
ユーロの高値は1.0265ドル、安値は1.0221ドルだった。  

 

●外為 1ドル138円16銭前後とドル高・円安で推移 7/20
20日の外国為替市場のドル円相場は午前9時時点で1ドル=138円16銭前後と、前日午後5時時点に比べ42銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=141円34銭前後と31銭のユーロ高・円安で推移している。
●東京円、39銭安の1ドル=138円12〜14銭 7/20
20日の東京外国為替市場で、円相場は午後5時、前日(午後5時)比39銭円安・ドル高の1ドル=138円12〜14銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは、19銭円安・ユーロ高の1ユーロ=141円23〜27銭で大方の取引を終えた。
●ロンドン外為 円、138円台前半 7/20
20日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、日欧の金融政策決定会合を翌日に控えて様子見姿勢が強まる中、1ドル=138円台前半で推移した。正午現在は138円15〜25銭と、前日午後4時(137円85〜95銭)比30銭の円安・ドル高。
海外市場の流れを引き継ぎ、138円台前半で取引が始まった。21日に開かれる日銀や欧州中央銀行(ECB)の金融政策決定会合の内容を見極めたいとのムードから、積極的な売買は手控えられている。
対ユーロは1ユーロ=140円90銭〜141円00銭(前日午後4時は141円20〜30銭)と、30銭の円高・ユーロ安。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0195〜0205ドル(1.0240〜0250ドル)。
ポンドは1ポンド=1.1975〜1985ドル(1.2020〜2030ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9700〜9710フラン(0.9680〜9690フラン)。
●NY円、138円台前半 7/20
20日のニューヨーク外国為替市場では、新規材料難の中、日欧の金融政策決定会合を控えて様子見ムードが広がり、円相場は1ドル=138円台前半で小動きとなった。午後5時現在は138円21〜31銭と、前日同時刻比06銭の円安・ドル高。

 

●外為 1ドル138円41銭前後とドル高・円安で推移 7/21
21日の外国為替市場のドル円相場は午前9時時点で1ドル=138円41銭前後と、前日午後5時時点に比べ31銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=140円89銭前後と38銭のユーロ安・円高で推移している。
●外為 1ドル138円71銭前後とドル高・円安で推移 7/21
21日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=138円71銭前後と、午後5時時点に比べ12銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=141円24銭前後と1銭のユーロ高・円安と横ばい圏で推移している。
●円、138円台後半 ロンドン外為 7/21
21日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、日銀が大規模な金融緩和策の維持を決めたことを受けて円売り・ドル買いが優勢となり、1ドル=138円台後半に下落した。正午現在は138円55〜65銭と、前日午後4時比50銭の円安・ドル高。 
●NY円、138円台前半 7/21
21日午前のニューヨーク外国為替市場の円相場は、日欧の金融政策決定発表を受け、1ドル=138円台前半で推移した。午前9時現在は138円35〜45銭と、前日午後5時比14銭の円安・ドル高。
●黒田総裁「金利ちょこっと上げても円安は止まらない」 緩和継続を強調  7/21
21日、2013年から異次元の大規模緩和政策を二人三脚で進めた安倍晋三元首相の死去後に初めてとなる記者会見に臨んだ、日銀の黒田東彦総裁。「逝去の影響についてコメントは控えるが、使命である物価安定目標の実現を目指して金融政策を実施する考えに変わりはない」として、緩和策の継続姿勢を強調した。
前回6月の会見以降、利上げを急ぐ米国と低金利を堅持する日本との金利差拡大を背景に、円はドルに対しさらに5円程度安くなった。約24年ぶりの円安ドル高水準が続き、物価高が国民の負担となる中でも、黒田氏はこの日、低金利政策が円安の主因ではないとの発言に一歩踏み込んだ。
「今の円安は実はドルの独歩高だ。5回利上げした英国も利上げを控えるユーロも、対ドルでは(円と)同じくらい下落している。(日本が)金利をちょこっと上げたら円安が止まるとは到底考えられない」と説明。大幅に金利を引き上げた場合、企業や家計の借り入れ負担が重くなることで景気に悪影響を与えかねないことを強調した。
一方、会見前に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の物価見通し(生鮮食品を除く)では、黒田氏の任期満了となる23年4月からさらに1年