1ドル 130円

ついに 1ドル 127円 突破
1ドル 130円 目前

放置されてきた 財政健全化

財政政策の無策
政治に迎合 永年のマイナス金利 日銀
耳ざわりの良い 良い面だけ強調  政治の先生たち
口を閉ざす マスコミ 翻訳経済学者

5月後半から 何となく収束かと思いきや
目指せ 360円 ・・・ か

1966年を思い出す 初めての海外出張
( 持ち出し外貨 500$(400円/$) 給料は40,000円の時代 )
 


2022/4/184/194/204/214/224/18〜4/224/244/254/264/274/284/294/30・・・
5/15/25/35/45/55/65/75/85/95/10・・・5/115/125/135/145/155/165/175/185/195/20・・・5/215/225/235/245/255/265/275/285/295/305/31・・・
6/16/26/36/46/56/66/76/86/96/10・・・6/116/126/136/146/156/166/176/186/196/20・・・6/216/226/236/246/256/266/276/286/296/30・・・
7/17/27/37/47/57/67/77/87/97/10・・・7/117/127/137/147/157/167/177/187/197/20・・・7/217/227/237/247/257/267/277/287/297/307/31・・・
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緒話 / 債権取り崩し国成熟した債権国日本経済の長期低迷GDPが回復しない債権取り崩し国になる日が早まる低成長からの脱却低成長が当たり前の時代・・・
中小製造業の生きる道 / 労働賃金減少成長しないGDP凡庸な先進国低い労働生産性物価から見る実質的経済本当に貿易立国か縮小する工業立国人口減による経済停滞か国内投資を減らす企業中小製造業は多すぎるのか多様性の経済・・・
 
 
 

 

忘れ去られた財政健全化 
 
 

 

●市場では1ドル130円まで見る向きも…財務相が認定した「悪い円安」 4/18
約20年ぶりの円安となった外国為替市場。これまでは円高が悪で円安は日本にとっては良いとされてきました。しかし今回の円安は様子が違うようです。私たちの生活にも大きな影響を与える「悪い円安」とは…。
18日、1ドル126円台後半の値をつけた外国為替市場。先週金曜日の値を更新し2002年5月以来、およそ20年ぶりの安値となりました。
民間の調査会社・帝国データバンクが食品主要メーカー105社に行った調査によると、原材料の高騰や円安の影響などで6167品目が値上げを予定していて、このうちおよそ7割はすでに値上げされたということです。
値上げ幅は輸入ワインなど酒類が平均15パーセント。次いでバターやチーズなど乳製品が平均13パーセント。スナック菓子やアイスなども平均10パーセント値上げされ家計を直撃。鈴木財務大臣は…。
鈴木財務大臣 「円安が進んで輸入品等が高騰している。悪い円安と言える」
300年の歴史があり、H2Aロケットの部品を提供するなど高い技術力を持つ町工場。止まらない円安に強い危機感を持っています。
金森合金 金森和治社長 「銅やアルミが1.5倍になったことに加え、燃料としての重油代も円安ですべてコストアップ」
取引先に、根拠を示した上で値上げ交渉を迫りましたが…。
金森社長 「燃料代などは見てくれない。厳しい」
帝国データバンクの調査でも6社に1社は「顧客離れ」や「競合他社に負けること」を恐れて価格転嫁できないそうです。
およそ1カ月ほどで10円以上も値下がりした円安。「悪い円安」はいつまで続くのでしょうか…。
今村証券営業推進部 織田真由美調査課長 「日本の円は、ロシアルーブル、トルコリラと同じくらいの下落率です。市場では130円くらいまで(下がると)見ている人が多い。4月の末から順次発表される企業決算で特に企業の予想や経営者のコメントを注視したい」
円安に加えロシアによるウクライナ侵攻によって原油や穀物価格の高騰も予想される中、厳しい家計のやりくりが続きそうです。 
●20年前の円安、黒田氏の脳裏よぎるか 4/18
およそ20年ぶりの円安・ドル高が進んでいる。高まるインフレ不安を背景に、世の中では「悪い円安」への懸念が日増しに強まるが、依然として円売り圧力は消えていない。日銀の黒田東彦総裁が「円安は日本経済にとってプラスの効果の方が大きい」という姿勢を崩していないことが、市場の円売りに安心感を与えている側面がある。なぜ「悪い円安」と主張しないのだろうか。
実は20年前の円安局面でも、円安の是非を巡って激しい論争が繰り広げられていた。このとき為替政策の現場指揮官だったのは黒田財務官。そう、現在の日銀総裁だ。
「現在は(円高の)修正過程である」。1ドル=130円台まで円安・ドル高が進んでいた2002年1月。黒田氏は当時も円安容認発言を繰り返していた。ただ現在と決定的に異なるのは、黒田氏の発言を日本政府も全面的に支持したことだ。当時の塩川正十郎財務相は「130円台はまあまあだが、(円が)もう少し安くなっても日本の評価として適正ではないか」と発言している。
20年前、日本は輸出主導の経済再生を強く志向しており、デフレ脱却が最大のテーマだった。ちなみに当時の日銀総裁は「強い自国通貨は国益」が信念だった速水優氏。このときも速水氏は「こうした(円安の)動きが日本売りにつながらなければいいが」と懸念を示したが、現在とは対照的に世論の支持を得られなかった。
あれから20年。日本経済を巡る環境は一変した。日本は貿易赤字に転落。世界経済は新型コロナウイルス後の急回復とロシアのウクライナ侵攻による急激なインフレ不安におびえている。このため黒田氏の発言は相次ぐ値上げに悲鳴を上げる世の中から、歓迎されていないように映る。
だが少し冷静に考えてみたい。ほんの1年ほど前の2021年初め。日本では1ドル=100円突破に身構える財務省、金融庁、日銀の3者協議が緊急で開かれ、円安ではなく円高への強い警戒感が漂っていた。ひとたび風向きが変われば、瞬く間に為替相場は反対方向へと走り出す。きっかけはいくらでもある。もし米連邦準備理事会(FRB)の利上げ加速で米国株が暴落したら。もし米国の消費者物価上昇率が急速にピークアウトしてFRBの利上げペースが鈍ったら――。
ベテランの市場参加者はこうした為替相場の急変ぶりを何度も見てきた。20年前に東京三菱銀行(当時)のチーフアナリストだった深谷幸司氏は今回、先行き130円に向けて円安が進む見通しを示しながらも、変動幅は100〜130円と予想。円高方向への反転の可能性もしっかり残した。
黒田総裁は財務官当時、激しい円高圧力に苦しめられた経験がある。就任当初の1999年から対ドル、対ユーロで巨額の円売り介入を繰り返したが、そのたびに市場から大規模な円買いを浴びせられ続けた。20年前の2002年は、ようやく円高圧力が和らぎ、為替相場が円安方向に振れた時期。為替相場の特性を肌感覚で知っているからこそ、今回も円安に歯止めをかける姿勢を打ち出すことには、慎重さが欠かせないと肝に銘じているはずだ。
日銀が11日に公表した4月の地域経済報告によると、全国9地域のうち、8地域で景気の総括判断が引き下げられた。景気を下支えするには、円安に歯止めがかかるからといって、現行の大規模金融緩和を安易に修正するわけにはいかない。景気下支えとインフレ抑制のバランスを慎重に見極めながら、黒田氏は現在の円安への姿勢を示していくことになりそうだ。
●迫る「債権取り崩し国」 経済「若返り」へ覚悟問う  4/18
20年ぶりの円安が進むなかで、日本経済が急速に老け込んでいる。
国家の盛衰を表すとされる国際収支発展段階説。資源高で貿易赤字が続く現在の日本は、海外からの利子や配当で貿易赤字を賄って経常黒字を保つ「成熟した債権国」に変貌した。貿易赤字が膨らみ経常赤字となれば最終段階の「債権取り崩し国」にいたる。産業構造の転換が進まず、老化が加速している。
老化は、さらなる円安圧力を招くリスクもはらむ。リーマン・ショック後には円が買われた。その信認を裏打ちしたのが、長期の経常黒字で積み上げた世界最大の対外純資産だった。ところがデフレ下の長期停滞にあえぐ間に資産を積み上げたドイツが肉薄する。ウクライナ危機では円は売られ、「有事の円買い」は過去のものになりつつある。
ドイツとの違いは何か。ドイツはブランド力のある高級車など高付加価値の製造業を抱える。東西ドイツ統一で豊富な労働力も手に入れた。「国内に主力製造業の生産設備が残っている。国家の若さを象徴する貿易黒字国の看板は簡単には外れない」(みずほ銀行の唐鎌大輔氏)
対して日本の産業は円安に依存して高付加価値化が進まず、1995年をピークに生産年齢人口も減少した。企業の生産拠点は海外に移り、現地で稼いだ収益の国内への還流も限られる。国内産業の競争力は衰え貿易赤字に陥りやすい。
「悪い円安」は、新たな不安の芽も育む。「家計のキャピタルフライト(資本逃避)」。JPモルガン・チェース銀行の佐々木融氏は、企業に続いて家計の資金も海外に流れ出すと予想する。個人金融資産は2021年末時点で初めて2000兆円の大台に乗せた。このうち外貨預金を除く現預金は約半分の1000兆円強に上り、潜在的な流出リスクがある。
個人投資家の九条さん(ハンドルネーム)は米長期債などドル資産に資金を移す方針だ。「金融緩和に伴いインフレが到来するのでは」との思いは今年の円安の加速でさらに強まった。マネックス証券によると、22年3月末の米国株の預かり資産残高は約5700億円と、2年で3倍。金融資産の過半を握る高齢層には、海外旅行や海外ブランドに慣れ親しみ、海外投資に抵抗感の薄いバブル世代が新たに仲間入りする。
日本は、海外投資からの収益に頼る超高齢国家への道を歩むのか。それとも若返りを目指すのか。
英国は1980年代に「債権取り崩し国」になったとされる。経常赤字拡大の歯止めとなったのが、金融サービス事業による手数料収入だ。サッチャー政権下の規制緩和で金融立国として活力を取り戻した。
日本でも国際金融都市構想が胎動する。再びインバウンド(訪日外国人)に活路を求める道もある。50年前の第1次オイルショックは、産業界の努力で日本のエネルギー効率が急速に高まる転機となった。ウクライナ危機は世界の省エネ需要を高めるとみられ、好機を生かせるか問われる。
いずれにせよ国内産業を活性化するには円安依存の経済政策と決別する覚悟が必要だ。「悪い円安」を契機にできるかもしれない。 
●「双子の赤字」とインフレ 「有事の円売り」が始まった 4/18 
2008年のリーマン・ショック時に財務官を務めた篠原尚之氏は、ロシアによるウクライナ侵攻という有事にもかかわらず、ジリジリと進む円安に危機感を強める。4月11日には、一時1ドル=125円台後半へと約6年10カ月ぶりの水準にまで円安が進んだ。鈴木俊一財務相は翌12日、「最近の円安の進行を含め、為替市場の動向や日本経済への影響を緊張感を持って注視する」と、たまらずけん制するに至った。
金利差の拡大
円安が進む要因は大きく二つ。
一つは欧米主要国との金利差拡大。8%に迫るインフレ(物価上昇率、2月は7・9%)抑制に向けて3月から利上げをスタートさせた米国は、5月にはコロナ対応として始めた金融緩和で膨らんだ保有資産を圧縮する「量的引き締め(QT)」に突き進む構えだ。「秋の中間選挙に向けて、バイデン大統領は市民生活を直撃しているインフレ抑制を至上命題にしており米連邦準備制度理事会(FRB)は強力で、スピーディーな引き締め政策に転じる」(市場関係者)。
英国も利上げをスタートさせ、欧州中央銀行(ECB)も年内の利上げを市場は視野に入れる。
その一方で、日銀は「金融政策を修正する必要性を全く意味しない」(黒田東彦総裁)と、2%の物価目標が達成しないことから、異次元緩和を根気強く続ける姿勢を崩さない。
さらに、欧米主要中央銀行の金融正常化から波及する金利の上昇圧力が強まった3月末、日銀は指定した利回りで国債を無制限に買い入れる「指し値オペ(公開市場操作)」を連発。是が非でも金利を抑え込む姿勢を鮮明にした。
「一般に金利の高い国の通貨が、低い国の通貨より上昇しやすい。足元のドル・円相場は、教科書通りに利上げに向かうドルが買われ、金融緩和を続け金利が低いままの円が売られる格好だ」(為替アナリスト)。日米の金利差拡大が、ドル高・円安を加速させている。
1ドル=130円
もう一つの円安要因が原油やガス、穀物など国際商品価格の高騰を背景にした、日本の貿易赤字の拡大や経常収支の赤字化である。特に貿易赤字の拡大は、輸入企業の円売り・ドル買いを通じて、需給面で円安を促す。
政府は原油高騰に伴うガソリン価格の上昇を補助金で、しのごうとするのもよくない。ガソリン価格が上昇すれば、需要が抑制され価格上昇が抑えられるという市場メカニズムが機能するが、財政資金で補助すれば、需要は強いままで、消費は拡大。その結果、原油輸入の増大と価格上昇を通じた貿易赤字は拡大する。これがさらに円安を後押ししてしまう。
大和総研の試算によると、22年の外為市場では16兆円の円売りが生じる見通しという。市場では「年内に1ドル=130円台の円安」を予想する声も上がり始めた。
さらに懸念すべきは、貿易や経常収支の赤字(双子の赤字)が円安を加速させ、株安と金利上昇(債券価格の下落)という「トリプル安」「日本売り」を誘発しかねないか、だ。バークレイズ証券の山川哲史調査部長は、「『日本売り』の問題は経常赤字自体ではなく、円滑に赤字がファイナンス(資金手当て)できるか否かにかかっている」と指摘する。
投機筋の日本売り
経常収支とは、外国とのモノやサービス、金融取引で発生した受取額と支払額の差額である。黒字なら生産や消費などの経済活動が国内資金で賄える状態で、赤字は不足する資金を外国から調達する状態を指す。1980年代以降、黒字を定着させた日本の経常収支の中心は貿易黒字だった。毎年10兆円を超える黒字を計上し続け、98年には15・7兆円に達した。しかし、これをピークに減少し、08年のリーマン・ショック後は4兆円に急減、11年は2・5兆円の赤字に転じた(図2)。
もう一つの柱である対外直接投資や証券投資から得られる配当や利子などの第1次所得収支の黒字が定着したのも80年代だが、その金額は年2兆〜3兆円と貿易黒字の3分の1以下の低水準だった。ただし、稼いだ黒字を先進国の債券や海外の工場建設などへの直接投資に振り向けたことで、日本の対外純資産は増加の一途をたどり、20年末で世界最大の356兆円に達する。この資産から上がってくる利子や配当が第1次所得収支の黒字を押し上げた。
貿易黒字が減少するのとは対照的に増え続け、05年を境に両者は逆転し、その格差は拡大している。21年は第1次所得収支の黒字は20・4兆円と貿易・サービス収支の赤字(2・5兆円)を補って15・4兆円の経常黒字を確保した。だが、今年1月は昨年12月に続く経常赤字となり、その赤字額も過去2番目に多い1・1兆円となった。
「巨額の貿易黒字」や「盤石の経常黒字」は過去のものとなり、ドイツの猛追を受ける対外純資産は「世界最大」の称号を失う局面を迎えつつある。この意味するところは、毎年垂れ流す財政赤字とGDP(国内総生産)の2倍を優に超える政府債務の持続性である。
フィデリティ・インスティテュートの重見吉徳首席研究員・マクロストラテジストは、「日本の貿易収支は、今後も1次産品や中国からの輸入品の価格上昇で赤字が定着するだろう」と予測する。1月のように、貿易赤字を第1次所得収支で穴埋めできなければ、経常赤字になる可能性が高い。
前出の山川氏は「日本の公的部門の貯蓄不足を、家計・非金融企業部門の貯蓄余剰が相殺する形で、対外余剰を維持してきた。民間の貯蓄余剰が国債市場へと恒常的に環流することで、海外からの資本流入に依存せず、財政赤字をファイナンスし、『日本売り』圧力を吸収するという特異な資金フローが定着した」と解説する。
経常赤字は、山川氏の指摘する特異な資金フローを成り立たなくする。「経常収支の悪化、その裏側にある国富流出による貯蓄・投資バランスの構造変化は、『日本売り』を誘因する契機となりかねない」(山川氏)。
円や日本の国債に幾度となく大規模な売りを仕掛けた投機筋は、分厚い貿易黒字や経常黒字、世界一の対外純資産の前に跳ね返されてきた。しかし、日本に巨額の投機マネーを蹴散らすだけの体力は残っているだろうか。国内で財政資金をファイナンスできている経常黒字の間に、財政収支を改善し、「日本売り」を抑制する環境整備が待ったなしだ。 

 

●NY外国為替市場 一時1ドル127円台の円安に およそ20年ぶり  4/19
18日のニューヨーク外国為替市場では、アメリカの長期金利の上昇を受けて円安ドル高がさらに進み、円相場は一時、およそ20年ぶりに1ドル=127円台まで値下がりしました。
18日のニューヨーク外国為替市場では、債券市場でアメリカの長期金利が上昇したことを受けて、より利回りが見込めるドルを買って円を売る動きが強まりました。
このため、円相場は一時、2002年5月以来、およそ19年11か月ぶりに1ドル=127円台まで値下がりしました。
円安が進んでいる背景には、アメリカでは、インフレを抑え込むために金融の引き締めが加速する見込みとなっているのに対して、日本では、日銀が大規模な金融緩和策を続ける姿勢を示しているため、日米の金利差が広がるとの見方が強まっていることがあります。
円安が進めば、日本の輸入物価の上昇につながることになります。
市場関係者は「国際的な原油の先物価格が再び上昇基調にあることから、原油を買うためのドル買いが強まるという見方も出ている。市場では、円安がどこまで進むかは、アメリカの長期金利がどこまで上昇するかに左右されると見られていて、関心が集まっている」と話しています。
●東京市場 円相場 1ドル=127円台まで値下がり 約20年ぶり  4/19
19日の東京外国為替市場、円相場はおよそ20年ぶりに1ドル=127円台まで値下がりしています。日本とアメリカの金利差を背景にドルを買って円を売る動きが強まっています。
アメリカでは、来月のFRB=連邦準備制度理事会の金融政策を決める会合が近づく中、金融引き締めが強まるとの見方から長期金利が上昇し、より利回りが見込めるドルを買って円を売る動きが強まりました。
円相場が1ドル=127円台をつけるのは、2002年5月以来、およそ20年ぶりです。
市場関係者は「金融政策の先行きを見通そうと、多くの投資家が政府や日銀幹部の発言を注視している」と話しています。  
●ドルが128円台に上昇、2002年5月17日以来=東京外為市場 4/19
19日の東京外為市場で、ドルが128円台に上昇した。2002年5月17日以来約20年ぶりのドル高/円安水準。日本当局からの円安けん制発言が相次いでいるものの、日米金利差拡大が意識されドル買い/円売りが一段と加速している。
●円安進行、一時128円台 20年ぶり安値 4/19
19日の外国為替市場で円相場が一段と下落し、一時1ドル=128円台と2002年5月以来およそ20年ぶりの円安・ドル高水準を付けた。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが加速するとの観測を背景に、日米金利差の拡大を意識した円売り・ドル買いが続いている。
3月末に1ドル=121円台で推移していた円相場は4月に入って一段と下落し、下げ幅は6円を超えた。15年に付けた日銀の異次元緩和後の最安値(125円86銭)を13日に更新した後も、円安基調に歯止めがかかっていない。
18日には日銀の黒田東彦総裁が「急速な円安はマイナスが大きくなる」と述べて市場をけん制。政府・日銀内でも円安に対する警戒感が高まりつつある。
●日銀「円安歓迎」で、ドル/円はGW前にも130円到達か?  4/19
円安が止まらない。2022年の76営業日目は125.87円からスタート。黒田日銀総裁がこの日「最近の円安はかなり急速」と発言したことを受け、東京時間昼前に126.23円までいったん下落。
しかし日銀が懸念しているのは円安の「スピード」であって、「水準」的にはまったく問題がないようだ。円安は日本経済にプラスという見解は変わっていない。「緩やかな円安は歓迎」というメッセージと解釈したマーケットは円売り警戒感がさらに薄れた。明け方には126.99円まで上昇して、終値は126.99円(前日比+0.64円)。
ブラード・セントルイス連銀総裁は「5月FOMC(米連邦公開市場委員会)で0.75ポイントの大幅利上げの可能性を排除しない」と発言した。極タカ派のブラード総裁の過激発言にマーケットは慣れっこだが、それでも日米金利差の拡大スピードがさらに速まっていることは確かだ。
19日(火曜)のマーケットでドル/円は127円台まで円安が進んでいる。最近のドル/円は1日約0.40円のペースで円安が進んでいる。日銀が円安に対する姿勢を買えなければゴールデンウイーク前に130円に到達できるだろう。
通貨としての円の総合的な実力が約50年ぶりの水準まで低下している。日本銀行が公表したBIS(国際決済銀行)ベースの2月の実質実効為替レート(2010年=100)は66.54で、1972年以来約50年ぶりの水準まで低下した。
実効為替レートが高いほど対外的な購買力があり、海外の製品を割安に購入できることを示す。反対に低いほど購買力が弱く、石油などの購入が割高になることを表す。
実質実効為替レートは円相場が初めて1ドル=70円台に突入した95年の150台が最高で、当時に比べると半分以下に低下している。
円は1973年に変動相場制に移行しているので、名目レートでいえば、現在のドル/円は固定相場制だった72年当時と同水準(1ドル=308円)程度まで低下していることになる。これからは気軽に海外旅行へ行くことはできない。1970年代前半のハワイは、「一生に一回は行きたい」遠い外国だった。そんな時代に逆戻りしてしまった。
実質実効為替レートが算出された2月時点の円の名目レートの平均は115.25円。今は127円台で、10円以上も円安になっている。実質実効レートもさらに下がっているはずだ。
2015年6月に125.85円まで円安が進んだときは、黒田日銀総裁は「実質実効為替レートでは、かなりの円安の水準になっている。ここからさらに円安に振れるということはなかなかありそうにない」と円安けん制発言を行った。現時点では、実効実質為替レートについて日銀から何も説明がない。
●円売り加速、1ドル128円前半に 130円超えも目前か 4/19
午後3時のドルは、前日のニューヨーク市場終盤(126.97/01円)に比べて大幅高の128.15/17円で推移している。米金利が高水準で推移していることや原油価格が再び上昇基調にあることなどから円安基調は根強く、円安に言及した要人発言などへの反応も鈍くなってきている。ドルは連日2002年5月以来の高値を更新しているが、きょうも騰勢は衰えず東京時間に1円以上、上昇した。
ドルは朝方から127円前半で堅調で、午後1時過ぎには一時128.23円と日中安値(126.98円)から1円以上、高い水準まで上値を伸ばした。高値を付けた後も128円台をしっかり維持している。
三井住友ⅮSアセットマネジメントのチーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏は「かなりドル高が勢いづいており、買われ過ぎている状況」だと指摘。手掛かりとされている日米の金利差拡大は新しい材料ではないため「投機的なドル買いの動きの印象が強い」という。
市川氏は、短期的には利益確定売りが出る可能性はあっても「目先は130円台まで上昇する可能性もあり、そう遠い水準ではない」とみている。
ここのところドル/円は急ピッチで上昇していることから政府関係者などからは円安をけん制するような発言が相次いでおり、きょうも鈴木俊一財務相が円安について「プラスの面もあるが、現状の経済状況を考えるとデメリットは強い」などと述べた。
しかし「インフレ抑制を全面に打ち出している米国側が、円買い介入に協調する流れにはならないのではないか」(SMBC信託銀行のマーケットアナリスト・合澤史登氏)とみられることなどから、政府・日銀が実際に円買い介入に踏み切る可能性は低いとの見方が多くなっており、口先介入の効果は徐々に薄れつつある。
その中で注目されるのが、今週20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に合わせて行われる予定の日米財務相会合で、「もし(会合後に)円安抑制のために何か方針が示された場合は市場にとってはサプライズで、ドル高/円安の巻き戻しが起こるとみられる」(合澤氏)という。
クロス円でも円安傾向は強く、ユーロは一時138.14円と15年8月以来、英ポンドは166.57円付近と16年2月以来の高水準で取引されている。
日本以外の主要国は金融政策正常化に向けて進んでいるため「クロス円も円安が進みやすい状況が続きそうだ」(三井住友ⅮSアセットマネジメント・市川氏)という。
●円安どこまで進む?なぜここまで? 背景と対策  4/19
円安は今後、どこまで進むのか。背景や必要な対策について、第一生命経済研究所の熊野英生氏と、ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏に聞いた。
「日本の政治の動きを市場が注視」
――急激な円安が進んだ背景は。
第一生命経済研究所・熊野英生氏「インフレのリスクに対して米国の中央銀行に当たる米連邦準備制度理事会(FRB)が後手に回った。金融緩和をやりすぎて物価が上がってきていたところに、ウクライナ情勢が拍車をかけた。FRBがもう少し前に利上げするか、利上げの見通しを出して市場をけん制していればここまで円安が進むことはなかったと思う。投機的な動きも入っていて、なかなか止まりにくい」
――どこまで進むか。
「1ドル=129円で止まると思っていたが、さらに進む可能性も出てきた。物価対策など日本の政治の動きを市場が注視している」
――負担が大きい家計に必要な支援は。
「物価対策として財政政策で家計の負担を和らげようとするのは限界がある。エネルギー価格が上がっていくのできりがない。既に住民税非課税世帯への10万円の支給が行われており、低所得者対策はある程度できている。夏にかけての中小企業の賃上げをどこまで後押しできるかが重要だ。エネルギー戦略を見直して、脱化石燃料をもっと積極的に推進する必要もあるだろう」
1ドル130円見えてきた 「アベノミクスの副作用」
――今後の行方は。
ニッセイ基礎研究所・上野剛生氏「円安はまだ進みそうだ。米国が利上げを続けていく可能性は極めて高い。一方、日銀は、賃金上昇を伴う物価上昇を目指して金融緩和を続けるとみられ、日米の金利差が開きやすいからだ。ロシア産のエネルギー排除で原油価格が上がることも、(日本の資金流出による)円安材料。1ドル=130円が見えてきた」
――政府、日銀が市場をけん制したにもかかわらず、円安はさらに進んだ。
「政府は円安対策で円を買ってドルを売る為替介入を行うことができるが、ハードルが高い。米国は今、インフレに非常に苦しんでいて、インフレ沈静化に役立つドル高への介入は歓迎しない。介入があっても『日本単独だろう』と金融市場で見透かされている。政府にできるのは、円安で打撃を受けた人や企業への対症療法的な財政支出による手当てくらいだろう」
――円安はアベノミクスの副作用か。
「日銀は賃金上昇を伴う物価上昇を目指して強力な金融緩和をしてきたが、(富裕層が潤えば低所得者層に富が滴り落ちるという)トリクルダウンは起きず、ずるずると緩和を続けざるを得なくなった。アベノミクスの副作用と言える」 

 

●ドル円は上げ止まらず 130円を視野に入れた動き=NY為替概況 4/20
きょうのNY為替市場でドル円は上げを加速させ、129円手前まで上昇した。米国債利回りと伴にドル円の上げも止まらず、130円を視野に入れた動きとなっている。そろそろ、日本の財務省の動きが本格的に気になって来る水準ではあるが、東京時間に鈴木財務相が円安進行について強い懸念を示したものの、ドル円の上げは一向に止まらない。
市場からは、財務省が介入を実施したとしても一時的な効果しか望めず、今回はドル売り介入になることから、外貨準備を失うだけとの声も出ている。また、日銀が引き締めに若干舵を切ったとしても、FRBが積極引き締めに動いている中では円相場への効果は限定的との声も出ているようだ。
ただ、FRBの利上げ期待がここ数カ月で急激に高まっているが、FRBは、年内の利上げをどのように決定するかはデータ次第とも述べている。市場からは、「利上げで労働力や半導体、小麦のそれぞれの不足の解消はおそらく難しい。そのため、FRBは一部の人が考えているよりも、最終的にはもう少し積極的でない行動を取るかもしれない」とのコメントも聞かれた。一方、FOMCメンバーからは、景気後退なしにインフレを抑制できるとの自信も示されているが、市場の懸念は根強いようだ。
また、市場からは、エネルギー価格と中国のロックダウンにより、米インフレはさらに上昇の可能性が指摘されている。3月の米消費者物価指数(CPI)は総合指数で前年比8.5%だったが、4月には9%に上昇する可能性があるという。原油相場の上昇圧力が依然として強く、中国のロックダウンはサプライチェーンの障害を増幅させる恐れがあることを理由に挙げている。
インフレが鈍化し始めるのは、あと1−2カ月先かもしれないが、そのピークが今よりずっと高くなることはないという。インフレのピークアウトは数カ月前の予想よりも遅れて始まり、ゆっくりと進行し、年内にはまだ5%台の高水準に留まると予想しているようだ。
ユーロドルはロンドン時間に1.08ドル台を回復する場面も見られていたが、NY時間にかけて再び1.07ドル台に値を落としている。一部からは、世界的な製造業の減速により、ユーロドルはさらに下値を試すとの見方も出ている。世界の製造業が減速しているにもかかわらず、中央銀行がインフレ抑制のために金融政策を引き締めることから、ユーロドルは今後1年間、軟調に推移する可能性が高いという。
世界の製造業は減速しており、ユーロドルのリスク評価も下向きを示しているという。また、ウクライナ危機の結果次第では、ドル高がさらに進む可能性が高いとも指摘している。FRBは今後1年間、インフレが確実に緩和されるための行動を取るのに対し、ECBの利上げは緩やかなものに留まるという。今後1年以内にユーロドルは1.05ドルまで下落すると予想している。
ポンドドルは上値の重い展開が続いており、再び1.30ドル付近での攻防戦。英中銀の利上げ期待も根強く、1.29ドル台に入ると買いも見られる一方、英経済への懸念も高まっていることから、ポンド買いには消極的といったところのようだ。
本日はIMFが世界経済見通し(WEO)を公表していたが、G7各国のうち今後2年間に物価上昇で最悪の衝撃に見舞われるのは英国だと警告した。IMFは今年と来年の両方について、英成長見通しを1月時点の予測に比べ約1%ポイントずつ下方修正した。22年を3.7%、23年を1.2%にそれぞれ下方修正している。高騰するインフレへの対処で金利が上昇し、生活費が高騰し投資が減速していることを理由に挙げた。インフレについては22年が7.4%、23年を5.3%と予測。英以外のG7各国は来年にはインフレが3%を下回ると予想されている。
●円安加速 1ドル130円台目前に 20年ぶり129円台  4/20
急速な円安の流れが強まり、円相場は、1ドル = 130円に迫る勢いとなっている。1カ月で10円以上進んだ円安は、勢いが一段と加速している。
20日朝の東京外国為替市場の円相場は、1ドル = 129円台をつけて、20年ぶりの円安ドル高水準を更新した。
今回の円安は、利上げが進むアメリカと、景気回復が遅れ、金利を低く抑えている日本とで、金融政策が真逆に進んでいることが背景にある。鈴木財務相や日銀の黒田総裁は、急激な円安をけん制する発言を繰り返しているが、流れは止められず、関係者の間では「1ドル = 130円に届くまで長くはかからない」との見方が広がっている。
景気が上向かない中で、物の値段が上昇し、家計が打撃を受ける懸念が一層強まっている。
●円のショートが奏功、1ドル=130円接近−米国債利回り上昇で 4/20
円の歴史的な下落は20日も続いた。米国債利回りが19日夜に上昇する中、1ドル=130円に近づいている。
日米金利差拡大見通しの中で円は14営業日続落し、ドルは129円35銭に達した。今後数カ月で130円に達するというコンセンサスがあるが、さらに早く実現しそうだ。投資家は当局の介入に警戒している。
りそなホールディングス市場企画部の梶田伸介チーフストラテジストは 、ドル・円の上昇モメンタムは米利回り上昇が続く現在、止められないと見られるとし、130円に達しないと考えるのは現状では難しいと語った。
米10年債利回りはアジア時間20日、3%をわずかに下回る水準。同年限の日本国債は0.25%に日本銀行が抑えている。これを背景に投資家は円のショートポジションを積み上げた。円は今月対ドルで20年ぶり安値を記録した。
オーストラリア・コモンウェルス銀行のストラテジスト、ジョセフ・カパーソ氏はリポートで、日本当局が円安に歯止めをかけるため介入する可能性は高まっていると指摘。介入の水準は不明だと付け加えた。
●20日の東京株式市場見通し=続伸後はもみ合いか 4/20
予想レンジ:2万6800円−2万7300円(19日終値2万6985円09銭)
20日の東京株式は続伸後、もみ合いか。日経平均株価は、きのう19日に3日ぶり反発した動きや、現地19日の米国株式も反発したことから、買い優勢のスタートとなりそう。ただ、手がかり材料に乏しいなか、直近で上値を抑える格好となっていた25日移動平均線(19日時点で2万7224円)が意識されるとみられ、上値が重くなる場面も想定される。為替相場は、ドル・円が1ドル=129円台の前半(19日は128円06−08銭)、ユーロ・円が1ユーロ=139円台の前半(同138円32−36銭)と円安方向に振れている。19日のADR(米国預託証券)は円換算値で、ソニーG <6758> 、ホンダ <7267> 、オリンパス <7733> などが、19日の東京終値に比べ高い。シカゴ日経平均先物の円建て清算値は、大阪取引所清算値比210円高の2万7260円だった。
●ドル・円反落、日銀指し値オペ後に利益確定が優勢に−128円台前半 4/20
東京外国為替市場のドル・円相場は下落に転じている。朝方は日米金利差の拡大を意識したドル買い・円売りが先行して1ドル=129円台に乗せたものの、日本銀行が長期金利上昇の抑制のため指し値オペを通知した後は利益確定や日米財務相会談に対する警戒から徐々に売りが優勢となっている。
市場関係者の見方
クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司外国為替部長
・ドル・円は指し値オペで乱高下した。ただ、引きつけて出てきたのが単発であり、直近の連続指値オペや予告オペではなかったので、来週の日銀の金融政策決定会合に向けてイールドカーブコントロール(YCC)に柔軟性を持たせる可能性を市場は意識したかもしれない
・また、日米財務相会談を控えて、利益確定の売りも入りやすいタイミングだったとも言える
あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジスト
・貿易赤字や指し値オペがドル・円がさらに上がるきっかけになる可能性もあったが、とりあえず利食いが先行しているので、ここから上は少し重くなるかもしれない
・ただ、円を買う材料が非常に乏しく、利食いが入ってもドル・円は底堅く、上値を追いやすい
・警戒されるのがG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)で予定されている日米財務相会談。米国サイドとドル・円の上昇スピードが速過ぎるなどの見解が出されると、上昇抑制材料になってくると思うが、地合い的には130円台を目指すような展開
背景
・19日の米国債市場では政策金利の変化に最も敏感な短期債中心に利回りが上昇。20日アジア時間も上昇が続き、10年債利回りは一時2.98%付近と18年12月以来の水準
・日銀が指し値オペを通知、10年国債を0.25%で買い入れ
・IMFの対日審査責任者サルガド氏:日銀の政策の一環としてYCC(イールドカーブコントロール)維持が重要
・円下落はファンダメンタルな動きの一部
・3月の日本の貿易収支は8カ月連続の赤字−原油高と円安が輸入額押し上げ
・G20会合、世界経済への打撃は「全てロシアの責任」と明確に主張へ
●年内に1ドル=130円台の円安を予想する声も 4/20
4月19日(2022年)午後の東京外国為替市場で円相場が一時、1ドル=128円20銭台まで下がり、2002年5月以来、約20年ぶりの円安ドル高水準となった。18日発売の「週刊エコノミスト」(2022年4月26日号)はタイミングよく、「とことん考える 危ない円安」と題して特集を組んでいる。
巻頭記事は、「『双子の赤字』とインフレ 『有事の円売り』が始まった」と書いている。
資源や穀物高に伴う貿易赤字の拡大や経常赤字が、円安やインフレ、金利の上昇圧力を高めている、と指摘。垂れ流し続ける財政赤字と累積する政府債務を持続できるかどうか、日本は大きな岐路に立たされているというのだ。
円安が進む要因を2つ挙げている。
1つは、欧米主要国との金利差拡大。8%に迫るインフレ抑制のため3月から利上げをスタートさせた米国は、5月にはコロナ対応として始めた金融緩和で膨らんだ保有資産を圧縮する「量的引き締め(QT)」に進む動きだ。英国も利上げをスタートさせ、欧州中央銀行も年内の利上げを市場は視野に入れているという。
一方の日銀は、異次元緩和を続ける姿勢を崩さない。
「教科書通りに利上げに向かうドルが買われ、金融緩和を続け金利が低い円が売られる格好だ」と為替アナリストは指摘している。
もう1つの円安要因が、原油やガス、穀物など国際商品価格の高騰を背景にした、日本の貿易赤字の拡大や経常収支の赤字化だという。市場では「年内に1ドル=130円台の円安」を予想する声も出てきたという。
目次には「国力の衰えと円安は連動する」「低成長、低金利、経常赤字 『日本売り』が始まった」「過去の遺産で食いつなぐ『債権取り崩し国』への道」などのタイトルが並び、関係者の悲痛な声が聞こえてくる。
なかでも、藤巻健史氏(フジマキ・ジャパン代表取締役)は、「ハイパーインフレと日銀 新中央銀行、新通貨しかない」という「奇策」を提言している。第二次大戦後のドイツで前例があるそうだ。それほどに深刻な事態なのかと衝撃を受けた。
●仕事始めに読んでおきたい厳選ニュース 4/20
円相場はニューヨーク時間に下げ、一時は1ドル=129円に迫りました。130円になれば、1ドルは日本全国の自動販売機で売られている標準的な缶コーヒーの値段に相当します。鈴木俊一財務相に「デメリットをもたらす面が強い」と言わせた急速な円安は、海外から日本を訪れる人には自販機よりむしろ、デパートや家電量販店で「爆買い」に興じる好機となるはずです。一方、ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、キット・ジャックス氏は「円安が(日本の)競争力回復を助けることは可能だが、それには時間がかかる」と指摘。新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるための水際対策は依然、観光目的の外国人に国境を閉ざしているため、爆買いはまだ先の話のようです。以下は一日を始めるにあたって押さえておきたい5本のニュース。
経済成長とインフレ
国際通貨基金(IMF)は2022年の世界経済成長率見通しを大幅に下方修正した。インフレ予想は上方修正。ロシアのウクライナ侵攻と新型コロナウイルス感染拡大による中国のロックダウン(都市封鎖)を受けて変更した。世界経済見通し(WEO)によると、今年の成長率は3.6%の見込み。ウクライナ侵攻前の1月時点では4.4%と予想されており、新型コロナ禍初期以来の大幅な引き下げとなる。21年の成長率は6.1%だった。今年のインフレ率は先進国・地域で5.7%、新興・途上国では8.7%と予想。1月予想から大きく引き上げた。
新戦略
野村ホールディングスは英国のインフレに関連する取引で痛手を被ったと、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。同社は2021年の早い時期に、ポンド建てのインフレ関連取引業務を拡大しようとしたが、英消費者物価の急激な動きに不意を突かれ、昨年に約3000万ドル(現在の為替レートで約38億6000万円)を失ったという。野村はユーロ建てのインフレ取引事業では昨年に過去最大の収入を得たと、関係者の1人が述べた。
3%の節目
米国債利回りは19日に全ての年限で上昇し、特に年限が短めの国債で伸びが大きくなった。30年債利回りは3年ぶりに一時3%を上回った。ウクライナでの戦争やサプライチェーン混乱の長期化でインフレ圧力は一段と高まり、米金融当局による政策引き締め見通しが強まっている。短期金融市場は来月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で約0.5ポイントの利上げが行われるとの見方を既に織り込んでいるが、セントルイス連銀のブラード総裁が18日に0.75ポイント利上げの可能性も排除しない考えを示したことがあらためて売り材料視された。前回0.75ポイントの利上げが行われたのは1994年。
富豪の冬
プーチン大統領はロシア企業に外国株式市場での上場廃止を義務付ける法改正に署名した。2014年のクリミア併合以来、国内企業には外国株式市場から引き揚げるよう促していたが、強制的な手続きに踏み切った。ロシア・トップの富豪、ウラジーミル・ポターニン氏らは事業の保有構造の変更を迫られる可能性がある。富豪らは保有企業をニューヨークやロンドン、フランクフルトなどの市場に上場させ、外貨で配当金を受け取っている。オトクルィチエ・ブローカーの調査責任者、アントン・ザトロキン氏は「30年かかって作り上げたものが破壊され、こうした人々は直接的・間接的な打撃を受ける」と述べた。
選挙シーズン
米中間選挙の鍵を握ると言われるペンシルベニア州の上院予備選を前に、トランプ前大統領のアジェンダを引き継ぐ共和党候補者にゴールドマン・サックス・グループの幹部からの寄付が相次いでいる。「米国ファーストの保守派」を自負するデービッド・マコーミック氏に、個人としての上限額で支援したゴールドマンの幹部は60人を超えた。同氏は世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツの元最高経営責任者(CEO)。妻のディナ・パウエル・マコーミック氏はゴールドマンのパートナーでもある。マコーミック候補の支持者には、ゴールドマンのデービッド・ソロモンCEOやジョン・ウォルドロン社長、投資銀行部門の共同責任者ダン・ディーズ氏が含まれる 

 

●止まらぬ円安、財界からも危惧の声 4/21
外国為替市場で円安ドル高が急速に進む中、業績や経済への悪影響を懸念する経営トップの意見表明が相次いでいる。行き過ぎた円安は、ロシアのウクライナ侵攻などで高騰する資源やエネルギーの輸入価格をさらに押し上げ、企業の原燃料コストを圧迫する。日本経済全体への悪影響や、先を読みづらくする急激な為替変動も懸念材料で、輸出増の恩恵を受けるはずの製造業からも悲観的な声が聞かれる。
「中小企業にとって悪い方向に働いている」
日本商工会議所の三村明夫会頭は、21日の定例記者会見で円安の影響を問われてそう述べた。
日商が先ごろ全国の中小企業などを対象に実施した調査の暫定結果によると、円安が経営にとって好ましいと答えた企業が数%にとどまったのに対し、好ましくないと答えた企業は53%を超えたという。三村氏は政府に対し「影響についてはっきりした分析を行い、好ましくないなら政策的にどういう手続きでやるかを考えてほしい」と訴えた。
円安を懸念する最大の理由は原燃料の高騰だ。カジュアル衣料「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、日本企業が海外から原材料を輸入し、付加価値をつけて販売していることを挙げ、「自国通貨が安く評価されるのはプラスにならない」と主張。日本製紙連合会の野沢徹会長(日本製紙社長)も「原燃料価格がものすごく高騰している。本当にきつい」と述べ、経営への打撃は避けられないとの認識を示す。
製紙業界は原燃料の大半を輸入に頼っており、もともと円高よりも円安の方が打撃となりやすい傾向がある。しかし、今回は輸出増のメリットが上回る他の製造業からも悲観的な声が聞かれる。それほど原燃料高騰は深刻なほか、上昇分の価格転嫁が最終製品にまで及んだとしても、家計が圧迫されて消費がしぼめば負の影響を受けざるを得ないからだ。産業空洞化や現地生産化の進展で、以前ほど輸出増は見込めなくなっているとの見方もあり、日本鉄鋼連盟の橋本英二会長(日本製鉄社長)は「日本の製造業にとって(円高ならぬ)円安リスクは初めてだ」と指摘する。
輸出企業の業績改善による賃金引き上げ(賃上げ)といったプラス面を挙げ、「金融政策をいじって為替をどうこうするという議論は時期尚早だ」とする経団連の十倉(とくら)雅和会長も、「急激な為替変動はよくない」と安定的な推移を望む。
●止まらぬ「悪い円安」 中小と家計への対応急げ 4/21
急速な円安に歯止めがかからない。きのうは一時1ドル=129円台まで円売りが進み、20年ぶりの円安ドル高水準を更新した。
政府、日銀は先週末から相次いで急激な為替変動に懸念を示す「口先介入」を重ねたが、不発に終わった。
インフレ対策のため利上げに動く米国などの主要国と、金融緩和を継続せざるを得ない日本との金利差が広がっている以上、円が売られやすい状況はまだ続きそうだ。
折からの資源・原材料高に加え、幅広い輸入品の価格高騰が企業や家計に重くのしかかっている。
これまでの円安に頼った景気対策は完全に裏目に出た。新型コロナウイルス禍から、さらに二番底に転落することがないよう、急激な円安がもたらす弊害を直視し、きめ細かな対応を求めたい。
円安は輸出企業の収益を押し上げるため、日銀はこれまで「全体として日本経済にプラス」と説明してきた。
しかし、この1カ月余りで10円超の円安が進むと、15日には鈴木俊一財務相が現状について「悪い円安」と初めて言及。19日の記者会見でも「現在の経済状況を考えるとデメリットをもたらす面が強い」と明言した。
さらに18日の国会では、日銀の黒田東彦総裁も「急速な円安はマイナスが大きくなる」と述べ、従来の発言を軌道修正したが、その後も円の下落は止まらなかった。
最大の要因が日米の金利差拡大だ。米連邦準備制度理事会(FRB)は3月、物価上昇を抑えるために利上げを決め、2年ぶりにゼロ金利政策を解除した。欧州も同様に緩和縮小を急ぐ構えだ。
景気の下支えのため超低金利政策を維持する方針を明らかにしているのは日本だけ。金融政策転換の動きから取り残されたことが、円の独歩安を加速させている。
製造業を中心に輸出企業がけん引役となってきた日本経済の構造も大きく変わった。
20年前の円安は輸出企業にとって追い風となったが、現在では生産拠点の海外移転や部品輸入の拡大が進み、恩恵は薄れている。
貿易収支も20年前は10兆円近い黒字だったが、近年は赤字も目立ち、昨年度は資源価格の高騰を受け、5兆3000億円超の赤字となった。構造的に輸入代金の決済に必要なドルが増大していることに注意が必要だ。
ロシアによるウクライナ侵攻の影響も加わり、石油や原材料のさらなる高騰が見込まれる中、東北でも内需型企業が苦境に立たされている。
日米の金融政策の違いからかつてのような協調介入の実施は望めず、打てる手は限られている。まずは弱い立場にある中小企業から順次コスト増を価格に転嫁しやすい環境を整えるとともに、相次ぐ値上げに苦しむ低所得層への支援強化を急ぐべきだろう。
●日本経済はウクライナ危機・感染拡大の下で「悪い円安」に直面 4/21
日米金融政策の方向性の違いなどを反映し、円安ドル高が進んでいる。2022年初に115円/ドル台だったドル円レートは本稿執筆時点で一時129円/ドル台に乗せた。こうした中で関心が高まっているのが、円安による日本経済への影響だ。
振り返ると、ドル円レートは2007年の124円/ドルから2011年の75円/ドルの史上最高値まで、約4年間で50円近くも急騰した。東日本大震災後の日本企業が直面した「6重苦」の1つと指摘されていた円高が現在は解消したのだから、日本経済にとって円安はプラスであると評価すべきかもしれない。
日本銀行が2022年1月に公表した展望レポートでは、「近年の経済構造の変化を考慮しても、円安は引き続き、全体としてみれば、わが国の景気にプラスの影響を及ぼす」と述べられている。筆者らが行った推計でも同様の結論を得ている(※1)。円安が日本経済にプラスの影響を及ぼす主な経路は、輸出金額や対外投資による純受取額が円換算値で増加し、国内企業収益の増加を通じて設備投資などが拡大し、幅広い業種に経済効果が波及するというものである。また、サービス輸出に含まれる訪日外国人観光客(インバウンド)の消費は2010年代に急増したが、円安はインバウンド消費を押し上げる効果を持つ。
しかしながら、円安がもたらすプラスの影響はウクライナ危機と新型コロナウイルス感染症の拡大によって発現しにくくなった。先行き不透明感が強い中では、企業は収益が増加しても設備投資の拡大などに消極的になりやすい。感染状況が十分に落ち着かなければ、インバウンドの受け入れを再開することはできない。こうした状況下で円安が進むと、輸入コストの上昇というマイナスの影響ばかり表れてしまう。
加えて、今回の円安は急速に進んでいる。企業などの対応が追い付かないスピードで為替レートが変化すれば、円安であっても円高であっても非効率が発生してコストがかかるため、日本経済にマイナスの影響を及ぼす。
これらを踏まえると、足元で進む円安はマイナスの影響がプラスのそれを上回る「悪い円安」といえる。もちろん、ウクライナ危機と感染拡大が収束すれば「良い円安」へと転じるだろう。円安の影響を検討する際は、為替レートの水準や変化のスピードに注目するだけでなく、日本経済を取り巻く環境を考慮することも重要だ。
●為替はG7の主要議題ならず、高い緊張感で円安注視−鈴木財務相 4/21
鈴木俊一財務相は米東部時間20日(日本時間21日)、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議について、ロシアのウクライナ侵略の下での国際経済が主な議題だったとし、「為替は主要な議題ではない」と語った。
最近の急激な円安に関して「高い緊張感を持って市場動向を注視していく」と説明した。今回の声明に為替に関する言及はないものの、これまでのG7の考え方を維持していると述べた。
日本銀行の黒田東彦総裁は「為替相場は経済や金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましい」とした上で、短期的に過度な変動は先行きの不確実性を高め、企業の事業計画の策定などを困難にすると懸念。日銀として為替が経済や物価に与える影響を注視していく考えを示した。
米ワシントンで行われた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議とG7財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で述べた。
●なぜ、円はロシアのルーブルより弱いのか?円安の本当の理由。 4/21
ドルばかりか人民元、ルーブルに対しても円安に
急速に進む円安は、4月20日に一時、1ドル=129円台前半にまで達した。3月1日は1ドル=114円台だったので、わずか1カ月半あまりで15円も円安が進んだことになる。こんな急激な円安はかつてなかったことであり、また、円安が止まる気配はまったくない。この異常事態の原因について、どのメディアも「日米の金利差が開くから」としているが、本当の原因はそうではない。円はドルに対してばかりか、世界の主要通貨のほとんどに対して値を下げているからだ。ユーロはもとより、人民元に対しても大幅に値を下げ、なんと経済制裁を受けているロシアのルーブルに対しても弱くなっている。あまりのことに、鈴木財務大臣も日銀の黒田総裁も「急速な円安は好ましくない」と言うようになったが、単なる“口先介入”だから、まったく効果がない。
日本とトルコだけが”無理やり金融緩和”続行中
“口先介入”でも、介入は介入だが、日銀にいたっては、さらなる円安を招くのが必至の金融緩和を続けているのだから、言うこととやることが逆である。日銀は、20日、指定した利回りで国債を無制限に買い入れる「指し値オペ」(公開市場操作)を通知した。0.25%の利回りで新発10年物国債を買い入れるというのだ。これは、3月29〜31日に続く「連続指し値オペ」で、金利抑制策である。つまり、日米の金利差は開く一方になる。インフレが進んでいるというのに、中央銀行が金融緩和をやっているのは、世界中でトルコと日本だけである。トルコのエルドアン大統領は、「インフレは金利を下げれば治る」という“トンデモ理論”を掲げ、過去2年半に3人の中央銀行総裁を解任した。そうして、無理やり金融緩和を続けてきた。そのため、トルコのインフレは止まらず、ウクライナ戦争勃発後はさらに進行した。トルコリアは、下落が止まらない。
インフレなのに日銀が金融緩和をやめない理由とは?
日銀が金融緩和をやめないのは、黒田総裁が“トンデモ理論”を信じているからではない。そんなことがあるわけがない。とすると、考えられる合理的な理由はただ一つだ。金融緩和をやめて、引き締めに転じれば、当然ながら金利は上昇する。インフレに対する金融対策はこれしかない。しかし、そうすると、国債利払い費がかさみ、国家財政が破綻してしまう可能性が現実になる。日本政府と日銀は一体だから、金融緩和続行で一致しているわけだ。別に不景気でも、税金で生きている役人は困らない。インフレで困るのは庶民だけだ。日本は自ら率先して不景気を続け、金利上昇を抑えこんでいる。いまのところ、これしかやりようがないのだろう。それほど、国債による国家債務は巨額だ。
「SWIFT」排除で加速する世界のドル離れ
ところで、現在のところ、ロシアに対する経済制裁はあまり効いていない。そればかりか、下手をすると、世界でドル離れが進み、ドルの価値が低下する可能性がある。そうなれば、円安はもう黙って見ているだけではすまなくなるだろう。経済制裁のなかでもっとも効果があるとされるのが、“金融爆弾”と称される「SWIFT」(国際銀行間通信協会)からのロシアの排除だ。ロシアに基軸通貨であるドルを使わなくさせれば、貿易の決済ができなくなり、ロシア経済は干上がる。そうアメリカは目論んだ。しかし、ドイツなどの反対で、ズベルバンクやガスプロム銀行などを外す抜け道を設けたりしたため、効果は薄れた。ルーブルは、いったん値を下げたが、いまは値を戻している。さらに、金融制裁の逆効果として、中東産油国をはじめとする非西側諸国の反発を招き、そうした国々がドル基軸体制から抜け出そうとする動きを加速させてしまった。
中国もロシアも独自の決済手段を構築
2008年のリーマンショック以来、ドルへの依存度を引き下げようという動きが、世界中で始まり、現在にいたっている。そんななかで起こったウクライナ戦争によるロシアへの金融制裁であることを、投資家は認識する必要がある。とくに中国は、国家戦略としてドル依存から抜け出し、人民元の国際化と外貨準備の多様化を進めてきた。そうして、人民元による国際銀行決済ネットワーク「CIPS」をつくった。これは、ロシアも同じだ。中国の「CIPS」と同様な、ルーブルを基にした独自の国際決済ネットワーク「SPFS」を、2014年のクリミア併合後の経済制裁を受けて構築してきた。中国の「CIPS」とロシアの「SPFS」がつながり、これにインドやサウジアラビア、イランなどが加われば、ドルの価値は明らかに低下する。すでにインドは、ドルを介さず、ルピーとルーブルを使った貿易決済システムの構築に向かっている。
ドルは石油(ペトロ)による担保を失いつつある
ドルは 1971年のニクソン・ショックまでは、「金本位制」(ゴールドスタンダード)に基づく兌換通貨だった。本来、通貨は金(ゴールド)と兌換できなくなれば、信用・価値を失う。しかし、アメリカはあらゆる国が必要とする石油(ペトロ)をドルのみで取引する体制を構築することで、ドルの基軸通貨としての信用を担保してきた。つまり、ドルは、金本位制から「石油本位制」(ペトロスタンダード)となり、今日にいたっている。しかし、いまやアメリカは中東から手を引きつつあり、産油国であるロシアとは敵対しているので、石油はドルのくびきから離れ始めてしまった。イランはもとより、サウジアラビアまでドルから離れようとしている。
ドルの価値を低下させ世界覇権を失わせる
かつて世界の産油国は、石油取引で手にした莫大なドル収入を、ロンドンを中心とした世界中のオフショア金融市場を通じてドル建て金融商品で運用してきた。その最大の金融商品は、アメリカ国債だった。つまり、世界の資産はほぼドル建てであり、グローバル企業も富裕層も、みなドルで資産を運用してきた。ロシアのオリガルヒも同じだ。しかし、いま、その体制がウクライナ戦争をきっかけに崩れようとしている。バイデン大統領が、「軍事介入はしない」と言って、ロシアのウクライナ侵略を許したために、こんなことになってしまった。この老大統領は、ドルの価値を低下させ、アメリカの世界覇権を失わせつつあることに気がついているのだろうか。アメリカはなぜ、イタリアやテキサスより小さい約1兆5000億ドルのGDPしか持たないロシアを脅威としたのか? ただ、核を持っているだけで、軍事費にいたってはアメリカの10分の1である。そんな国のために、アメリカが世界覇権を失い、ドルが基軸通貨から転落するとしたら、世界は無秩序になる。
世界中の中央銀行が金を集めている
世界のドル離れが加速するにつれ、金の価値がますます高まっている。現在、金は市場最高値を更新している。もともと、通貨の価値を担保するのは金だったのだから、これは当然だ。金本位制がなくなったいまも、この考えは変わっていない。そのため、ここ十数年、世界中の中央銀行が競って金を集めるようになった。現時点(2022年2月末)での「ワールド・ゴールド・カウンシル」(WGC)による世界の金備蓄量ランキングによると、第1位はダントツでアメリカ(8134トン)、第2位がドイツ(3367トン)、第3位が IMF(2814トン)、第4位がイタリア(2452トン)、第5位がフランス(2436トン)となっていて、IMFをのぞく上位4カ国の金保有量は、外貨準備の60%以上を占めている。この4カ国に続くのが、第6位のロシア(2299トン)第7位の中国(1948トン)である。ロシアはかつて10位以下だったが、ここ10年ほどで、1543トンも増やし、金備蓄が外貨準備に占める割合を25.3%まで伸ばしている。ちなみに、日本は第9位(845トン)で、アメリカの10分の1強、ロシアの3分の1強にすぎない。しかも、日本の金備蓄が外貨準備に占める割合は、たったの3.8%である。この金備蓄、外貨準備比率から言えることは、円はルーブルより価値がないということだ。
中国は世界第1位の金産出国、ロシアは第3位
WGCの統計によれば、2010年9月と2021年9月の間に金の保有量を90トン以上増やした国は12カ国ある。また、金の保有量と金以外の外貨準備高の両方を増やしたのは、ロシア、中国、トルコ、インド、タイ、ポーランド、メキシコ、ブラジル、イラク、韓国の10カ国となっている。各国とも、自国通貨の価値を高める努力をするとともに、ドル依存を減らしている。これができていないのが日本で、なぜ円が「安全資産」と言われてきたのか、皆目わからない。金は世界中で産出されるわけではない。国別金の産出量ランキングでは、いまや中国が第1位である。現在、世界では金が1年に約3000トン前後産出されるが、中国はその10分の1強である380トンを産出している。第2位はオーストラリア、第3位はロシアである。ロシアは広大な国土の各地で大規模な採掘を行っており、2017年には中国と共同で金採掘のために9億ドルの投資をするプロジェクトを立ち上げている。
経済衰退する国の通貨を誰が持つのか?
経済制裁は、日本語で平たく言えば「兵糧攻め」である。ロシアはウクライナの市民、民間人を殺戮している。それは人道に反する、戦争犯罪であると非難する声が強いが、経済制裁もまた非人道的な行為である。これで苦しむのは兵士ばかりか、市民、民間人だからだ。最終的に、敵国の国民が餓死するまで兵糧攻めは続く。ウクライナ戦争は長期戦となる可能性が高い。なぜなら、ロシアは資源も食糧も豊富に持っているからだ。兵糧攻めが効くのは、このどちらも持たない日本のような国に対してだけである。ロシアは、原油産出量世界第3位、小麦生産量世界第3位 トウモロコシ生産量世界第10位という国で、エネルギーと食糧に困るということはまずありえない。為替レートは、金利や通貨供給量の差だけで決まるのではない。資源や食糧などに基づいた富や経済力、いわゆる「国力」で決まる。この観点から円を見れば、明らかにルーブルより価値はない。ルーブルには、価値を担保する資源、食糧、金がある。日本にはそれがほとんどない。円安は円が売られるから起こる。しかし、いまの円安は、円売りではなく「日本売り」だ。日々、経済衰退する国の通貨を、投資家はもちろん、誰も持ちたがらない。この端的な事実を、ほぼ誰も指摘しない。
●最近の円安はファンダメンタルズ主導、政策変更の理由にならず=IMF 4/21
国際通貨基金(IMF)高官は20日、最近の円安はファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)主導であり、日銀の超低金利政策を含む日本の経済政策を変更する理由にはならないとの見解を示した。
IMFアジア太平洋局のサンジャヤ・パンス副局長はロイターのインタビューで「円相場でこれまでに見られているのはファンダメンタルズ主導だ」とし、「経済政策立案は引き続きファンダメンタルズに目を向けるべきだ。現在の動向はファンダメンタルズを反映しており、経済政策を変更する理由は見当たらない」と述べた。
日本の当局が円買い介入を行うのは妥当かとの問いには「現時点で外為市場に無秩序な状況は見られない。ファンダメンタルズ主導だ」とし、「市場が無秩序でない限り為替政策スタンスは適切、というのがわれわれの通常のアプローチだ」と述べた。
円安は輸出に追い風として、日本経済にはプラス要因とみなされていたが、足元では既に値上がりしている食料品やエネルギーの輸入価格を押し上げ、国内のインフレ圧力を強める可能性が懸念されている。
パンス氏は、円安は日本にとって悪材料ではなかったが、家計に影響を与えているため、玉石混交の面があると指摘。「インフレ圧力は依然落ち着いているため、日銀が超緩和策を変更する必要性はない」と語った。
金融引き締めを開始した他の先進国と日本の状況は大きく異なっているとし、「緩和的スタンスを変更する必要性をわれわれは全く認めていない」と述べた。
携帯電話料金引き下げの影響剥落といった一時的要因が総合消費者物価指数(CPI)上昇率を押し上げる可能性があるものの、物価上昇率が近い将来に日銀の物価目標を持続的に達成する可能性は低いとの見方を示し、「日本の状況はすでに金融政策の引き締めを開始した他の先進国と非常に異なる。緩和的金融政策スタンスを変更する必要性は見られない」と述べた。 
●吉野家“生娘シャブ漬け”は袋叩きで、黒田総裁は問題視しないテレビの怪 4/21
「水に落ちた犬を打つ」ではないが、テレビメディアの多くは「生娘シャブ漬け戦略」発言で大手牛丼チェーン「吉野家」をクビになった伊東正明・前常務(49)関連のニュースを朝から晩まで報じている。
発言は確かに論外だが、テレビメディアが伊東氏よりも問題視するべき人物は他にいるだろう。例えば日本銀行(日銀)の黒田東彦総裁(77)だ。
20日の外国為替市場では、1ドル=129円台前半となるなど約20年ぶりの円安水準が進行。米国が金利引き上げに踏み切る中で、黒田日銀は「アベノミクス」に由来する異次元(大規模)金融緩和策に固執。長期金利を0.25%以下に抑える方針を堅持しているため、日米の金利差が拡大し、円安は加速する一方だ。
財務省が20日発表した2021年度の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5兆3749億円の赤字に。円安は国内の輸出企業が恩恵を受けるとはいえ、資源価格の上昇などによって輸入額が増えるばかりなのだから赤字になるのも無理はない。
とりわけ大きな影響を受けているのが家計だ。食料品など生活必需品の多くは輸入依存度が高いため、円安進行であらゆるモノの価格が急上昇。本来であれば、黒田日銀はもはや“失敗”に終わったと言っていい異次元緩和策など、これまでの方針を転換するべき時なのに傍観したまま。それどころか、18日付の日経新聞によると、黒田総裁は<「円安は日本経済にとってプラスの効果の方が大きい」という姿勢を崩していない>とあるからクラクラしてしまう。
なぜ、テレビメディアは黒田総裁をもっと取り上げ、今の政策の問題点について指摘しないのか。ある意味、蔑視発言の伊東氏よりも、よっぽど国民生活に関わる重大なテーマではないか。 

 

●鈴木財務相 米イエレン財務長官と会談「円安 日米で意思疎通」 4/22
ワシントンを訪れている鈴木財務大臣は、アメリカのイエレン財務長官と会談し、このところの外国為替市場で円安が進んでいることについて日米の通貨当局の間で緊密に意思疎通を図っていくことを確認しました。
G20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議などに出席するためワシントンを訪れている鈴木財務大臣は、日本時間の22日未明、現地でアメリカのイエレン財務長官と会談しました。
会談のあと記者団の取材に応じた鈴木財務大臣によりますと、イエレン財務長官とは最近の外国為替市場の動向について議論したということです。
さらに鈴木大臣は「会談では私からは直近の円安がやはり急激だということを数字をもって示した。そのうえで、これまでのG7やG20における為替に関する合意を維持しつつ、為替の問題に関して、日米の通貨当局の間で緊密な意思疎通をはかっていくことを確認した」と述べました。
また、ウクライナ情勢については「ロシアによるウクライナ侵略を強く非難すること、そして日米がG7などと緊密に連携しながら、引き続きロシアに対する制裁を着実に実施していくことを確認した」と述べました。
鈴木財務大臣は一連の国際会議のあと記者団に対して、世界銀行とIMF=国際通貨基金の会議で、日本としてウクライナに対する世界銀行との協調融資を1億ドルから3億ドルに増額することを表明したことを明らかにしました。また、会議に出席するため現地を訪れているウクライナのマルチェンコ財務相と会談し、この中では鈴木大臣が追加的支援とウクライナへの変わらぬ連帯について直接伝え、マルチェンコ財務相からは謝意が示されたということです。
松野官房長官は午後の記者会見で「特に最近のドル円相場の動きについて議論を行いこれまでのG7やG20の為替に関する合意を維持していくことや、日米の通貨当局間で緊密な意思疎通を図っていくことを確認したと聞いている。アメリカなどの通貨当局と緊密な意思疎通を図りつつ、適切に対応していきたい」と述べました。そのうえで「やりとりの詳細を答えることは差し控える。為替政策に具体的にコメントすることも差し控えるが、為替の安定は重要であり急速な変動は望ましくない」と述べました。
●円安逆手に日本企業の国内還流促進すべき、成長押し上げ策に  4/22
外為市場でドル高・円安が進行中だ。日米金利差の一段の拡大観測や、エネルギー価格上昇による日本の貿易赤字拡大への思惑などから130円突破予想が広がっている。政府は物価高と円安の連動に頭を痛めているが、抜本的な発想の転換が必要だ。円安長期化を逆手に取って、海外に移転した日本企業の生産拠点を国内に還流させる「バックツー・ジャパン」戦略を打ち出すべきだ。
国内で生産拠点が急増すれば、雇用と税収が拡大基調をたどり、円安を利用した輸出増によって「底なしの円安」リスクを回避できる。補助金によるガソリン価格の補てんは「痛み止め」に過ぎず、製造業の国内還流を促進するための投資減税やその他の優遇策こそが、将来の日本経済の成長力強化につながる。新しい資本主義の中のパーツの1つに組み込んでほしい。
米利上げ加速と円安
21日にパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の利上げについて「検討される」と述べ、米5年債利回りは22日のアジア市場の取引時間帯に3.04%へと上昇した。
5月4日のFOMC後の会見でパウエル議長が、米国におけるインフレ率の高まりに対応し、中立金利かそれ以上の水準に政策金利を引き上げる可能性について言及するのではないかとの観測が市場で高まっている。
他方、日銀は長期金利を0.25%で抑え込む「指し値オペ」の連続実施を通告しており、日米金利差の拡大と円安進展がしばらく続きそうだという市場の思惑は強まるばかりだ。
外国人観光客の急減、地方の円安メリット消滅
黒田東彦日銀総裁は、18日の衆院決算行政監視委で「最近1カ月ほどで10円と急速な円安は、企業の事業計画策定に困難を来す可能性がある」と指摘し「大きな円安や急速な円安ではマイナス(の方)が大きくなる」と述べた。ただ、日銀の計量モデルの試算を踏まえ「円安が全体的に日本経済にプラスとの評価は変えていない」、「基本的に円安は全体としてプラス」というスタンスは変えなかった。
確かにマクロ的にトータルすれば、プラスが大きいという試算は成り立つ。しかし、国外で利益を享受できない多くの個人や地方の観光事業者などにとっては、マイナスばかりが目立つ事態になっている。
新型コロナウイルスが拡大する以前は、地方も円安で潤っていた。その大きな項目が海外から来日する観光客の需要だ。日本政府観光局によると、2019年の訪日外国人客数は過去最高の3188万人を記録した。ところが、2021年は24万5900人と19年比で99.2%減。ほぼ「消滅」したと言ってもいい状況になっている。
痛み止めの政策対応
こうなると、与党を通じて地方で苦境に直面する人々からの苦情が首相官邸に集まってくるという構図が出来上がることになる。
ガソリンなどの補助金を1リットル当たり25円から35円に引き上げたり、2兆7000億円規模の2022年度補正予算案の今国会中の成立が政府・与党内で検討されているとの報道が出てくるのは、国民の間に充満し出したエネルギー価格などの上昇に対する不満を与党の政治家が敏感に感じ取った証拠とも言える。
ただ、これらの政策対応は「痛み止め」の効果しかない。潜在成長率がゼロ%台に落ち込んだ日本経済の再活性化をにらんだ「前向きの政策展開」が全く見えないのが残念だ。
海外に出ていった日本企業
そこで、提案したいのは、円安を頭痛の種と思わず、有効に活用する新しいアプローチだ。日本企業は製造業を中心に「円高は困る」と主張して、中国などの海外に生産設備を移してきた。
国際協力銀行(JBIC)の調査によると、海外展開している965社のうち回答した510社の2021年度の海外売上高比率(見込み)は36.3%。2002年度の27.9%から8.7%ポイント上昇している。中でも自動車が40.5%、電機・電子が47.3%と、かつての輸出産業の両輪が海外にシフトし、日本国内が空洞化している実態が浮かび上がる。
地政学リスクと採算性
円高で採算が合わないと海外に出ていったが、足元の円安なら十分に利益が出ると一部の製造業の幹部はみている。特に中国に進出した企業にとって、1)中国人労働者の賃金上昇、2)米中関係の緊張に伴うリスク─の2つは、日本国内に戻る理由として正当化できるようだ。
中でもロシアによるウクライナ侵攻とその後の対ロシア制裁を目の当たりにしたことが、大きな変化をもたらしつつある。もし、中国がロシアに武器などを供与したり、台湾海峡で緊張が高まった場合、日本企業のビジネスに大きなリスクが発生する可能性があり、水面下でシミュレーションする必要性が出てきたのではないか。
コストを最小化する「最適生産」から、経済安全保障上のリスクを勘案して採算性を弾き出す時代に移行しつつある今、円安の時こそ、日本企業の生産設備を国内に呼び戻す絶好のチャンスであると考える。
国内回帰に財政支援が必要な理由
海外の設備を処分して国内に帰る場合、処理損や現地での法的紛争によるコストなどが、障害になる可能性がある。そうした点に着目し、日本政府が税法上の特典も含めて支援策を構築し、財政支援するスキームを構築すれば「生きた資金の活用」になるだろう。
台湾積体電路製造(TSMC)の熊本県への誘致の例を出すまでもなく、製造業の国内還流政策は、地方の雇用を増大させて税収を上げる効果を持つ。また、技術の集積による新たな産業の創造にもつながり得る可能性を秘めている。
岸田文雄首相は新しい資本主義を掲げているが、その中に「製造業の日本回帰」という項目を加え、足元の円安を奇貨として日本経済を浮揚させる反転攻勢に出てほしい。
そのような攻めの発想がなければ、円安に伴う購買力の低下を嘆き、1人当たり国内総生産(GDP)が年々、低下していく「衰退国」が定位置になってしまうだろう。
●「制御不能な円安」日本企業と家庭にもたらす負担  4/22
4月11日に円が20年ぶりの円安水準である1ドル=125円に達した時、アナリストの大半は年末までに130円まで円安が進むだろうと答えた。実際にはたった9日後の4月20日には129円に。円安がどれくらいの速さで、どこまで進み続けるか、またその過程でどれくらい上下するかは定かではない。市場は直線には進まないものだからだ。
制御不能な円からの逃避が起こるのではないかという不安は、特に参議選が数カ月先に迫っていることもあり、日本政府に警鐘を鳴らしている。すでに、円安が130円まで進んだ場合は財務省による為替介入があるのではないかとの報道も出ている。円安が125円まで進んだ時点でもそのような話が出ていた。
財務相による異例のコメント
今までのところ、鈴木俊一財務相は口先介入を試みている。下落の速度が速すぎるという通常のコメントに今やとどまらず、円安の程度が行き過ぎているという異例のコメントを述べるに至っている。
「企業がまだ十分に価格や賃金を上げていない現在のような状況においては、円安は望ましくない。はっきり言えばこれは悪い円安だ」と鈴木財務相は述べた。円安は日本にとって「全体としてはプラス」だと主張し続けている黒田東彦日銀総裁までもが、今や下落の速度が「急速」すぎると言っている。
エコノミストはますます黒田総裁ではなく鈴木相の側に付いている。十倉雅和経団連会長は論争に加わってこう述べている。「過去の円安局面においては貿易収支も経常収支も経済もよかったが、現在はそれほど単純ではない」。
昨年12月に東京商工リサーチが7000企業を対象に実施した聞き取り調査によると、30%近くがこのような円安は経営にマイナスだと回答しており、プラスだとしたのは5%だけであった。円安がマイナスだとした回答者によると、平均107円が最適な円相場だとのことである。
財務省にできる持続的な効果を持つ対策はほとんどないのが現実だ。為替介入は、為替の動きがファンダメンタルズから大きく乖離したモメンタムを得ている場合のみ効果がある。
そして実際に、円安が進むペースがあるべき水準を大きく越しているということであれば、協調介入は少なくともしばらくの間はモメンタムを止めるか、場合によってはある程度逆転させることが可能になるかもしれない。
アメリカ政府が日本政府の対策を支援すればその可能性は高まる。しかし実際には、現在の円安は経済のファンダメンタルズを反映しており、こうした場合は、介入には一時的な効果しかない。
大規模介入ははっきり言って無意味
最近の大規模な介入について考えてみよう。2003年1月から2004年3月の間に、財務省は35兆円(2003年の円ドルレートで3200億ドル)という巨額の資金を投入した。これは15カ月分の経常黒字合計の1.7倍の額であった。財務省は円高を阻止しようとしていたのだ。しかし、介入後の円は介入開始時より9%高くなった。財務省は通貨投機家を儲けさせただけに終わったのである。
円の下落の背景にあるファンダメンタルな要因は、アメリカと他のほとんどの国がインフレ対策として金利を上げている一方、日本では日銀が金利を上げないことに固執しているという事実である。
その結果、債券投資家は日本の債券からアメリカの債券に資金を移すことで利益を得ることができる。それが行われると、需要と供給の法則により円安が進むのである。これを悟った為替トレーダーが円安圧力を高めることになる。
10年米国債と日本国債の金利差が1.3%しかなかった9月には、1ドル110円だった。金利差が2.6%に広がった4月19日には、1ドル129円に突入した。実際、2020年初頭以来、円ドルレートと10年国債の日米金利差の間に84%という極端に高い相関が見られる(図を参照)。
アメリカ連邦準備制度理事会は今年中に6回も金利を上げることを発表しているため、投資家は金利差がさらに広がることを知っており、先手を打って円から逃避しているのだ。
黒田総裁が金利に関する立場を変えるならばある程度の影響があるだろうが、彼はそうしないと断言している。それどころか、日銀は無制限の資金を投入して10年日本国債の金利を0.25%以下に維持するとしている。これは、円安が好ましいという考えのためだけではなく、日本が持続的な2%インフレを達成するまでは金利を上げないという誓いのためでもある。
円安は輸出を促進するという幻想
為替レートが弱すぎると、強すぎる場合と同様に、国に損害を与える。1ドル=129円はあまりにも弱すぎて全体として国益にならない。
円安は輸出を促進することによって経済の需要を高めるため全体としては国益となると日銀は主張している。それがひいては生産や投資や雇用を促進するというのだ。このプラスの影響は、消費者が輸入品により高いお金を払わなければならないというマイナスの影響を上回るというのが日銀の見解である。
ある程度の為替レートの場合はその通りであろう。安倍晋三元首相の任期の最初の4年間には、政府が進みすぎた円高を修正しており、その結果として輸出が促進されると市場は信じていた。そう信じられたことにより円安が進行した。円安が1円進む度に日経平均株価が221円上昇した。
しかし、最初の4年間が終わった後はその連携は続かなかった。実際、現在では市場は反対の反応を示している。3月30日から4月20日の間、円安が4%進み、日経平均株価も同様に下落したのだ。
この違いは何に起因するのであろうか。
第1の原因は、円安が過去と同程度には輸出を促進しなくなったことだ。多くの企業が生産拠点を海外に移していることがその理由の1つである。近年、日本の自動車の3分の2は海外で生産されている。日銀の調査によると、海外生産の多い産業はそれが少ない産業と比較して、1%の円安から受ける輸出促進の恩恵が少ないという。
「プレミアム感」なくなった日本の電機
第2の原因は、生産拠点が国内か海外かにかかわらず、日本の電機・機械メーカーの多くがかつての競争力を失っていることである。2008年から2020年の間、世界の電機機器の市場規模は40%上昇したにもかかわらず、日本の電気機器メーカー上位10社のすべてが、世界においては売り上げが停滞している。
さらに悪いことに、日本の電機メーカーの総売上は30%も下がっている。(自動車以外の)機械セクターでの世界輸出における日本のシェアは、1991年にはアメリカやドイツよりも大きかったのが、2018年にはその2国より小さくなってしまった。この期間に円安が進行したにもかかわらず、そうなってしまったのである。
結果、かつては優れているという評判によりプレミアム価格を設定することができた日本企業が、今や価格を下げることでシェアを奪い合わなければならない状況に陥った。しかも、ますます大きく価格を下げなければならなくなってきている。
前述の日銀による調査では2700種類の製品を調べており、2002年から2010年の間では円安に振れた時には86%の製品の売り上げが増加していたことがわかった。2011年から2019年の間ではその割合が72%にまで低下している。残り28%に関してはむしろ、円安はエネルギーや原材料などの不可欠な輸入品の価格を上げることにより輸出に不利に働いた。
もう少し詳しく見てみよう。10%の円安は製品の売上数を20%上げるだろうか、10%だろうか、それとも5%だけだろうか。
ほとんどの製品に関しては、円安による促進の程度は、2011年から2019年の間にはその10年前と比較してかなり小さかった。そして、円安が輸出に不利に働いた28%の製品に関しては、円安による売り上げ減少幅は10年前よりひどくなっていたのだ。
結論としては、日本の輸出業者は鎮痛剤依存者に似ている。同じ効果を得るためだけにますます多量の服用が必要になっていき、その間にも基礎となる健康が損なわれていくのだ。
輸入への影響、あるいはその欠如
教科書が教えるところによると、通貨の下落は輸入品の価格を上げることによりGDPをその分上昇させる。これにより、消費者も企業も輸入品の代わりに国内で生産された同じ製品を買うようになる。日本の輸入の構造を見てみると、この理屈が日本の場合には該当しないことがわかる。
まず、日本の輸入品の約40%は鉱物性燃料や食料や原材料などの品目であるが、それらには国内での代替品がほとんど、あるいは、まったくない。しかも価格が変わっても、国が必要とする食料や石油や鉄鉱石の量はほとんど変わらない。
円安の唯一の帰結として、日本の企業や家庭は海外の生産者からより高い価格でモノを買わなければならなくなる。これらの商品に関しては、円安は単に収益を日本から海外へと移動させるだけなのである。
輸入に頼っている食料品をより高い価格で買わなければならないことが、1980年代半ば以来、日本の家庭における食費の割合が増えている理由の1つである。そのためにほかの商品に使う金が少なくなってしまう。食料品に費やす割合は国の発展を示す古典的な尺度である。
残りの60%の輸入品に関してはどうだろうか。それらはほとんど、化学物質から機械、さまざまな工業部品や玩具に至る工業製品である。結局のところ、これらの製品の60%は海外企業製ではないものの、日本企業の海外支社が生産している。
例えば、パナソニックのタイ工場で生産された電池や、マレーシア工場で生産されたエアコンといったものだ。ほとんどの企業は、海外で生産している製品と同じ製品、あるいは少なくとも同じモデルは国内では生産さえしていない。
これら2つの要因の結果、円安になっても日本は多かれ少なかれ、同じ量の輸入品を購入し、より多く支払うことになるのである。
より多く払って、より少なくしか得られない
あなたが仕立屋だとして、自分の製品を地元の食料品店を相手に交換しているとしよう。店の人が、よその町の新しい仕立屋はもっといい仕事をするから、あなたのドレス1着と交換する食料品をこれまでの半分だけにすると言ったとする。
半分しかもらえなくても、まったくもらえないよりはましだ、という理由であなたはその取引に応じるかもしれない。しかし条件は以前より悪くなる。
円安はこれに似ている。トヨタの自動車を輸出する度に日本がもらえる食料品が減ってきているのだ。トヨタにとってはいいかもしれないが、日本の消費者にとっては好ましくない。それでも円安によりトヨタの輸出が増加し雇用が促進され賃金も上昇するなら、利益がコストを上回るかもしれない。
しかし、現在の日本ではそれは起こっていない。いかなる経済取引においても利益とコストの両方が常に存在している。かなりの円安のため、利益がもはやコストに見合っていないのだ。
●協調介入も議論 急速な円安ドル高進む中の日米財務相会談 4/22
急速な円安ドル高が進む中、日米の財務相会談がアメリカで行われ、最近のドル円相場について協議しました。この中で、市場が注目していた協調介入についても議論されていたことがJNNの取材でわかりました。ワシントンから報告です。
およそ30分間の会談で、日米両国は為替相場や経済状況などについて議論しました。
鈴木俊一財務大臣「最近のドル円相場の動きについても議論した。直近の円安が急激であると」
一方、市場が注目していたドルを売って円を買う日米の協調介入について、鈴木大臣は協議したかどうかも「コメントしない」と話しましたが、日本のある政府関係者はJNNの取材に対し、協議したことを認めました。
さらに、「アメリカ側は前向きに検討してくれるトーンだった」とも話しました。
このアメリカの反応は円安に苦しむ日本政府にとっても驚きだったということで、円安がさらに進んだ場合、日米による協調介入が行われるかどうか、新たな注目となります。
では、実際に介入を行えるかと言えば、アメリカの事情を考えるとそう簡単ではありません。
バイデン政権は現在、歴史的な物価高に直面していまして、仮に協調介入を行い、為替が円高ドル安に振れた場合、今度はアメリカ国内の輸入物価の値上がりにつながるため、容易には認められない背景があります。
さらなる円安の進行で日本経済に深刻な悪影響が出る前にアメリカの理解を得られるかが最大の焦点です。
●20年ぶりの円安・ドル高、本当に恐ろしい円安リスクは「家計部門の円売り」 4/22
円相場の需給変化とは「企業部門による円売り」
約20年ぶりの円安相場が継続中である。その背景としては、日米の金融政策格差というオーソドックスな論点に加えて、円相場の需給環境が取り上げられることが多い。
需給環境と一口に言ってもその意味するところは幅広く、象徴的には(1)資源高を主因とする貿易赤字拡大だが、(2)本邦企業部門による対外直接投資の増大も円売り圧力を相当に強めている。
(1)は毎月経常的に発生するアウトライトの円売り・外貨買いであるのに対し、(2)は企業買収時にまとまったボリュームで発生する円の売り切りである。過去10年間では、(2)の勢いが強まった結果、今や日本の対外純資産残高の半分が直接投資になっている。
かつて、それは証券投資だった。
リスク回避ムードが強まった際、保有している海外の有価証券を売る(≒外貨売り・円買いする)動きは想像できるが、買収した海外の会社を売却する動きは想像が難しい。
「リスクオフの円買い」の迫力が薄れたのは貿易黒字が消滅したことも当然あるだろうが、中長期的には対外直接投資の増大も相当寄与していると考えられる。
なお、(1)や(2)の動きは基礎収支(経常収支+直接投資)の流出として総括されるものでもある。
特に、対外直接投資が顕著に増加した背景には、国内市場の縮小が既定路線になっている日本に投資をするのではなく、海外に活路を見出すという合理的な経営判断があったと言える。
それは投資をする上での期待収益率に関し、日本を回避して海外を選んだという意味で一種の企業部門による資本逃避でもある。だが、それでも海外事業の成功が国内経済に還元されることも期待されるため、一概に悪いことばかりではない。
必ずしも悪ではない企業部門による円売り
現に、第一次所得収支黒字が日本の経常黒字を支えていることは周知の通りである。また、貿易赤字にしても、資源高で一時的に歪んでいる部分はあるにせよ、理論的には最適な国際分業の結果であり、「黒字が善で赤字が悪」とは限らない。日本の貿易黒字が10年前から消滅しているのは相応の理由がある(紙幅の都合上、今回は詳述を避ける)。
つまり、上述した(1)資源高を主因とする貿易赤字拡大や、(2)企業部門による対外直接投資の増大のような「企業部門による円売り」は、必ずしも悪いことばかりではない。
これに対し、本当に恐ろしいのは、そうした「企業部門による円売り」ではなく「家計部門による円売り」である。家計部門が円建て資産の保有をリスクと考え始めた場合、それは単なる防衛行為なので日本経済にとっての恩恵は乏しいものになるだろう。
現状、そのような動きが早晩起こる雰囲気はない。岸田政権の支持率もまだ非常に高い。それは人口動態上、大きなボリュームを占める高齢者層に寄り添った政策運営が展開されているからだとの解説は多い。
実際、「年金生活者へ5000円支給」などの案が浮上してくるあたり、その見方は的外れとは言えない。いつまでも新規感染者数に拘泥し、直ぐに行動制限に手を付けようとするのも、若年層に比べて行動範囲の限られる高齢者層が多い世の中では決定的な批判に晒されにくいからだろう。
現実はその政策が慢性化することで成長率が停滞し、日銀が動けなくなり円安に繋がっているわけだが、その理解はまだ浸透していない。
とはいえ、現状が続く限り、円建て資産の相対的な価値は確実に蝕まれていく。
保守的な日本でもじわじわ広がる海外資産への関心
保守的な国民気質なのか、金融リテラシーの欠如なのか、原因は一つではないのだろうが、日本では個人金融資産の95%以上がいまだに円貨性の資産で保有され、50%以上がほぼ何の収益も生まない現預金に留め置かれている(図表1)。
2021年12月末時点で日本の家計金融資産は2023兆円と2000年3月末対比で620兆円も増えている。しかし、その増分の半分以上(343兆円)が円建て現預金で、リスク資産の代表格である株式・出資金の比率は10%前後でほとんど変わっていない。
円建て資産の構成を見る限り、NISA導入(2014年)なども挟んだ「貯蓄から投資へ」は全く奏功していない。しかし、構成比こそ小さいが、外貨性資産は0.9%から3.4%へ明確に増えており、金額だけで言えば、投資信託は7倍強、対外証券投資は5倍弱増えている。
   図表1
全体の比率の中では円貨性現預金に圧倒されてしまっているが、海外資産への関心は確実に高まっている。
20年ぶりの円安・ドル高、実質実効為替レート(REER)で見れば半世紀ぶりの円安、戻らなくなった購買力平価(PPP)、消滅した貿易黒字、対外直接投資の激増──など円建て資産を取り巻く客観的事実は確実に10年前とは変わっており、20年前とはさらに違う。
これほど分かりやすい環境変化が重なれば、大人しい日本人も動き出すかもしれない。根強いリスク回避性向がいつまでも同じとは限らない。
海外株投資という名の円売り
近年、日本でも米国株投資が一つのブームのように取り上げられている。2021年12月28日の日本経済新聞には、『若者の投資は消費感覚』と題した大手ネット証券会社社長のインタビューが掲載されていた。着実なリターンが期待できるからこその潮流と言えるだろう。
対照的に、日本株の人気は目を覆いたくなるような惨状にある。1月下旬(2022年1月27日〜1月31日)に実施された日経CNBCの視聴者調査では、『岸田政権を支持しますか』の問いに95.7%が『支持しない』と応えたことが話題になった。
事実として、国内株ではなく海外株に流れる国内投資マネーの動きは、投資信託における株式売買動向からも明らかである(図表2)。
   図表2
今はまだ2000兆円を超える家計金融資産の末端に過ぎない動きだが、元々日本の家計部門のリスク回避性向が強過ぎると言われていることを思えば、米国株ブームは安全資産への異常な執着が修正される前振れとも理解できるかもしれない。
書店に行けば、米国株投資の本が平積みでたくさん並んでいる。このような光景は今まであまり目にしないものだった。当然、すべてではないにしても、そうした米株投資は円売りを伴うはずである。
知らず知らずのうちに目減りしている円建て資産
国際比較をしても、日本の金融資産構成は修正される余地が見える。
図表3に示すように、40%弱が株式に寄せられている米国は極端としても、日本と同様、間接金融が力を持つユーロ圏でも20%弱が株式に割り当てられている。そのユーロ圏の半分程度の日本はやはり相当に保守的と言わざるを得ず、現預金が50%を超えていることも世界的には異例である(※)。
※米国の資金循環統計では国内・海外証券の区別がされていないため、外貨なのか内貨なのかという比較はここでは控えている
   図表3
しかし、年初来3か月半で円の対ドル相場は10%近く、昨年初めからでは20%近くも下落している。当然だが、ドルで保有していれば、それが単なる外貨預金であったとしても、その損失がカバーできたことになる。得られる金利も当然、円よりは高い。
もちろん、外貨預金の為替差損益は雑所得なのでそこから所得税も勘案するなど、細かな修正は必要だが、大半の日本人が安全資産の代表格と見ているであろう「円の普通・定期預金」は昨年来、資産防衛の観点からは相当に酷い選択肢だったと言える。
多くの日本の人々は海外資産との比較で自国通貨建ての保有資産の価値を判断しないだろうが、実際は巷説で取り上げられることの多い「安い日本」の傾向が強まる中、自身の保有資産から消費・投資する金額は同じものであっても漸増傾向にあるはずである。
結局、分散投資することなく抱えていた円建て資産は一般物価上昇の中で少しずつ召し上げられるという構図であり、その度合いが強まった時に、「円の普通・定期預金」は特に安全ではなかったことに気づくのかもしれない。国際経済に組み込まれている以上、必然の帰結と言える。
家計部門の円売りが始まる日
もちろん、そうした家計部門からの資本逃避(いわゆるキャピタルフライト)とも言えるような動きが早晩加速するという確信はない。しかし、その可能性に警鐘を鳴らす時期には来ていると筆者は考えている。
そうなるだけの客観的な諸条件が揃い始めていることは再三、周知している通りである。
日本では一度定められた方向に皆が走り出すと、その展開が非常に早く進む傾向にある。「円の普通・定期預金」の10%が動くだけでも100兆円規模の円売りになる。それは過去5年平均(18兆円程度)の経常黒字に換算すれば5〜6年分に相当する。
今の世の中、海外投資はさほど難しいことではなく、十分想定する価値のある数字である。何事も一定の「空気」が醸成されてからでなければ動けない日本だが、今後「円で保有していること自体が損であり、リスク」という認識が支配的になった時、家計部門の円売り主導で円相場は一段と値を下げる懸念はある。
それは最近のロシアで、かつてはギリシャなどで起きたことだ。真の円安リスクとしての「家計部門の円売り」の可能性があることを為政者においても意識して欲しいと思う。 

 

●為替相場 4/18〜4/22
18日からの週は、円安とドル高が先行した。米国の金融引き締め姿勢が強まる一方で、日本では従来の金融緩和姿勢が堅持されている。日米金融政策の方向性に明確な差がみられたことが円売りの背景となっている。また、欧州でもECB副総裁など複数の金融当局者が7月利上げ開始の可能性を示唆しており、ドル円とともにユーロ円の上昇も円安の動きをけん引している。ドル円は一時129円台、ユーロ円は140円近辺まで買われた。米欧などの金融引き締め姿勢の要因は、ウクライナ戦争でエネルギー価格が高騰、輸入インフレが各国の物価を押し上げていることにある。この週にはG7、G20、IMFなどの舞台で財務相や中央銀行総裁らが一堂に会した。しかし、G20やIMFでは共同声明はまとまらず。ロシアをめぐる世界各国の立場の相違が際立つ結果となった。ウクライナ戦争をめぐる世界の主要国の不協和音が戦争終結の道のりを遠ざけており、グローバルなインフレ圧力が根強いものとなっている。日米財務相会談が実施されたが、日本側からの円安警戒発言が目立つ一方で、米国側からは為替相場に対するメッセージは聞かれず。また、パウエルFRB議長がブラックアウト期間前に、5月会合で0.5%利上げを議論すると明言し、ドル高圧力が再燃した。週末にはポンドが急落。対ドルでポイントとなっていた1.30台を割り込むと売りが加速し1.28台へ。英小売売上高など直近の消費関連指標が弱含んだことがポンド売りのきっかけに。IMF世界経済見通しで、英国に対するインフレの打撃が懸念されていたが、数字に表れた形だった。NYダウは週末に一時1000ドル超安となる場面があった。金融引き締めに対する警戒感が広がるなかで週の取引を終えた。
18日
東京市場では、方向性に欠ける値動き。海外勢がイースター休暇となるなかで、やや手掛かり難となっている。イースターマンデーでオセアニアや香港などが休場でアジア市場でも取引が少ない中で、ドル買い円売りの動きが先行、ドル円は前週末の高値を超えて126.70台まで。その後、黒田総裁が円安について急激な変動という表現を使ったで急落するも、126.20台までの値動き。その後は126.60付近に落ち着き、先週末からの高値圏を維持した。ユーロ円は137円台まで買われたあとは、136.50割れへと反落。その後は下げ一服もユーロドルの重さもあって戻りは限定的。ユーロドルは1.08台割れへとじり安の動きだった。
ロンドン市場はイースターマンデーのため休場。
NY市場では、ドル円が底堅く推移。東京市場での黒田日銀総裁の円安けん制発言に対する円高反応は一時的だった。NY時間には米国債利回りが上昇するなか、ドル高のサポートされ、127円台をうかがう動きをみせた。FRBによる積極引き締めへの警戒感は根強い。今週はパウエルFRB議長がIMF主催のパネルに参加する。来週からは5月3−4日のFOMCを前にブラックアウト期間に入る。その前の最後の発言機会として注目されている。ユーロドルは下向きの流れが続いており、再び1.07台へと軟化。先週のECB理事会を受けた下げた1.0760付近がポイントに。ポンドドルも上値が重く、1.30台割れを試す展開が続いた。今週は金曜日に英小売売上高と英PMI速報値発表が予定されている。
19日
東京市場では、円安の動きが加速。ドル円は前日海外市場で127円ちょうど付近まで買われた。東京朝方には127円台にしっかりと乗せ、その後も上昇が継続。午後には128円台に乗せた。ほぼ一本調子で買われている。昨日黒田総裁が円安のけん制発言を行うも、調整の動きが限定的なものにとどまり、ドル円の126円台前半がしっかりとなったことで、円売りに対する安心感に。口先介入では効かず、介入の催促相場との思惑も。ユーロ円などクロス円でも円安の動きが顕著。ユーロ円は2015年以来の138円台乗せ。ポンド円は165円台前半から166.60台へと上伸。円が独歩安に。ユーロドルはドル高圧力に押されるも1.07台後半での取引に終始した。
ロンドン市場は、一段と円安が進行。ドル円は128.46レベルまで高値を伸ばし、2002年5月以来の高値水準となった。序盤は円売り一色となった。松野官房長官の円安けん制発言でやや円高に振れる場面があったが、すぐに値を戻し上値を追う展開に。クロス円も買われ、ユーロ円は138円台後半、ポンド円は167円台乗せ、豪ドル円は95円目前まで高値を伸ばした。その後、米債利回りの上昇とともに、ドル買い圧力も加わった。10年債利回りは2.90%台まで上昇。クロス円の上昇とともに1.08台乗せとなったユーロドルは1.09台後半へと反落。ポンドドルは1.3040近辺まで買われたあとは、1.30台前半で売買交錯。豪ドル/ドルは0.7400近辺に高値を伸ばしたあとは、0.7360台へと押し戻されている。欧州株は調整売りに押され、米株先物も時間外取引での上げを消している。NY原油先物は109ドル台手前から一時105ドル台まで反落した。
NY市場で、ドル円は上げ止まらず129円手前まで上昇。米国債利回りと伴にドル円の上げも止まらず、130円を視野に入れた動きとなっている。そろそろ、日本の財務省の動きが本格的に気になって来る水準ではあるが、東京時間に鈴木財務相が円安進行について強い懸念を示したものの、ドル円の上げは一向に止まらない。市場からは仮に財務省が介入を実施したとしても一時的な効果しか望めない、日銀が若干引き締めに舵を切ってもFRBの積極的な引き締めの中では円相場への効果は限定的との声があった。米国のインフレがいつ、どの程度のピークアウトをみせるのか、FRBの行動に変化があるのかがポイントのようだ。ユーロドルは1.08台が重く、NY時間の大半は1.07台後半で推移した。ポンドドルも上値が重く、1.30ドル付近での攻防だった。IMFは今年の世界経済見通しを下方修正した。なかでも、G7各国のうち今後2年間に物価上昇で最悪の衝撃に見舞われるのは英国だと警告した。
20日
東京市場で、ドル円は129円台をつけた。前日海外市場で129円手前まで買われたドル円は、東京時間に入るとあっさりと大台乗せ。そのまま買いが強まり、129.40近辺まで高値を伸ばした。2002年5月以来の高値水準となった。米国の積極的な金融引き締め姿勢への期待と、日本の緩和維持姿勢との対比でのドル買い円売りという流れが継続した形。その後、売買が交錯したところに日銀が指値オペを通告、再び129.30台まで買われた。その後は再び調整の動き。磯崎官房副長官が為替の急激な変動望ましくない、緊張感をもって注視などの発言を行ったことがきっかけに円買いが広がり128.05近辺まで下落した。午後に買い戻しは128.60台まで。ユーロ円も139.70付近まで買われたあとは138.50台まで反落。その後は139円台乗せまで反発している。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。G7・G20財務相・中央銀行総裁会議を控えて調整の動きが入っている。米10年債利回りは東京午前に2.97%台をつけたあとは低下しており、ロンドン市場では一時2.85%台まで水準を下げている。ドル売り圧力が広がり、ドル円は128円台割れから127.61レベルまで下落。ユーロドルは1.0810-20レベルから1.0867レベルまで上昇。ポンドドルは序盤に1.30台割れまで下落したあとは1.3066レベルまで高値を伸ばしている。カザークス・ラトビア中銀総裁が、ECB利上げは最短で7月の可能性がある、と述べたことがユーロ買いを誘った面もあった。対ポンドでユーロが買われた。また、G7・G20会議とともに鈴木財務相とイエレン米財務長官の会談が行われる予定。最近の急速な円安進行に何らかの対応が話し合われる可能性もあり、円安の動きに調整が入る面もあったようだ。ユーロ円やポンド円は上値重く推移している。
NY市場も、調整色の強い値動き。ドル円はドル売りとともに利益確定売りが強まり、127円台半ばまで下押しされた。米国債利回りも急低下しており、FRBの積極引き締めを材料とした値動きは一服している。市場ではドル高の動きの速さに警戒がでているもよう。「インフレは今期がピークで、2023年に向けて着実に低下し、それに伴って市場も次第に落ち着き、金利は低下の可能性がある」とのコメントも聞かれた。また、本邦勢からは円安が経済に与える影響を警戒する声が相次いでいる。ユーロドルは一時1.0860近辺まで反発した。タカ派で知られるドイツ連銀のナーゲル総裁が、「資産購入プロフラム(APP)は4−6月(第2四半期)末で終了し、7ー9月(第3四半期)の初めに利上げを実施する可能性がある」と語った。8月はECB理事会がないので事実上、7月の理事会での利上げということになる。ポンドドルは1.3060近辺まで買い戻され、1.30台は維持された。ただ、対ユーロや対円では軟調に推移。英経済への警戒感がポンドを圧迫している模様。
21日
東京市場で、ドル円相場は振幅。前日の129円台から127円台までの大きな調整の後で神経質な地合いとなっている。朝方には127円台後半から128円台を回復。米債利回りの上昇とともに128.60台まで一時上昇。しかし、午後には売りが優勢となり、128.10台に反落した。中国・香港株が下落、警戒感がドル円の上値を抑えたようだ。中国上海のロックダウン長期化や、景気下支えへの姿勢が期待された中国の習国家主席による演説が、長期の成長傾向は変わらないといった程度の言及にとどまったことなどへの失望感などが中国売りを誘った。ユーロドルも振幅。1.08台前半で上値重く推移したあと、ベルギー中銀総裁が7月にも中銀預金金利の引き上げを検討、年内に政策金利はプラス圏に浮上の可能性と発言し、ユーロ買いを誘った。1.08台半ばへと買い戻されている。
ロンドン市場は、ユーロ買いの動きが広がった。デギンドスECB副総裁が、データ次第としながらも、7月会合での利上げの可能性を示したことが背景。欧州短期金融市場では、今年中にECBが0.25%ずつ3回の利上げを行うことを織り込んでいる。ユーロドルは1.08台半ばから1.0936レベルまで買われた。ユーロ円は139円ちょうど付近から一時140.00レベルまで上昇。2015年6月以来のユーロ高・円安水準となった。ECBの早期利上げ観測に対し、日銀の強い緩和継続スタンスの対比が鮮明になっている。日銀は再び連続指し値オペを通知している。ユーロドルの上昇がドル売り圧力を波及させて、ポンドドルは1.30台半ばから1.3090レベルまで一時上昇。ドル円は128円台前半から127.80付近まで下落した。ただ、足元ではユーロ買い一服とともにドル円も128円付近に下げ渋っている。
NY市場では、ドル買いが再燃。ドル円は一時128.60付近まで上昇した。前日は、きょうは米国債利回りが再び急上昇しており、ドル円も買い戻しを強めた格好。デーリー・サンフランシスコ連銀総裁は、複数のFOMCで0.50%利上げを決定する可能性が高いとの認識を示していた。午後になってパウエルFRB議長のIMF主催のイベントでの講演が伝わり、「もう少し早く動くのが適切。次回5月FOMCで0.50%の大幅利上げが議題になる」と述べる一方、「軟着陸を目指し最善を尽くす」とも述べていた。大幅利上げの可能性に言及したものの、想定範囲内でもあったことから、ドル円は利益確定売りの反応を示していた。ユーロドルはNY時間に入ると反落。1.0835付近まで押し戻された。ポンドドルは1.30台での上下動。NY時間には売りが優勢だった。マン英中銀委員は「来月の英中銀金融政策委員会(MPC)で0.25%超の利上げが必要かどうかを検討している」と述べ、引き締めペースを早める議論を再燃させている。ただ、ポンド買いの反応は限定的だった。
22日
東京市場で、ドル円は上下動。昼頃までは堅調な動きとなり、朝方の128.20台から仲値前後には128.60台まで上昇。その後も高止まりした。しかし、鈴木財務相とイエレン財務長官との会談において「協調介入も議題に」との報道が流れ、一転して調整が入る展開となった。一時128円台を割り込んだ。週末を控えて市場には調整が入りやすい地合いとなっている。米10年債利回りが2.96%台から2.92%台に低下したことも重石に。ユーロ円も午前中の139.50付近から138.50付近へと大きく下落。ユーロドルは1.08台前半から半ばへと小幅の下げ渋り。
ロンドン市場は、ポンド売り主導でドル買いの動きが広がっている。ポンドドルは1.30台を割り込むと一気に売りが加速、1.29台割れから一時1.2862レベルまで安値を広げた。ポンド売りのきっかけは英小売売上高が予想外に弱かったこと。加えてこの日発表された英GfK消費者信頼感の低下、英PMI速報値が製造業、非製造業ともに予想を下回った。今週のIMF世界経済見通しではインフレの打撃が英経済を直撃することが警戒されていたが、今日の数字に表れた形。ポンドは対円でも167円台から165円台へと下落。対ユーロでも下落した。ポンドドルの急落を受けてユーロドルも連れ安となり、1.0850付近から一時1.0791レベルまで下落。ドル円は下に往って来い。東京午後には財務省幹部が、日米財務相会談で日米の協調介入について議論されたとの発言報道を受けて128円台半ばから127.74レベルまで一時下落。しかし、ロンドン時間に入るとドル買いの動きが波及して128円台半ばへと買い戻された。欧州株が軟調に推移しており、クロス円の上値は重い。ユーロ円は139円台から一時138.25付近まで下落、その後は138円台後半へと下げ渋り。豪ドル円は94円台割れから93.50付近まで下落したあと、戻りは93円台後半と限定的。
NY市場はドル円に買いが強まり、一時129円台を回復した。きょうは全体的にドル買いが優勢となり、ドル円の下値をサポート。ニューヨークを訪問中の黒田日銀総裁が「積極的な金融緩和継続する必要」と述べたことで買いが膨らんだ。一方、米株が急落しており、ダウ平均が一時1000ドル超急落する中、ドル円も128円台半ばに再び戻す展開。 

 

●「円安」の先に待ち受ける「稼げないニッポン」最悪のシナリオ 4/24
原油・資源高に加え、止まらない円安
日本経済がジリジリと衰退している。原油・資源高に加え、急速な円安進行による輸入物価上昇。これに対して、何ら有効な手立てを持たない政府と日本銀行。だだ、本当の衰退はこれから始まる。そして、それは日本経済の根幹を揺るがす可能性を秘めている。
筆者の21年10月22日の『日本国民に大ダメージを与える「不景気中の物価上昇」が現実味を帯びてきたワケ』には、すでに現在起こっていることが予測されている。
原油・資源価格の高騰と円安により、輸入物価を中心に物価の上昇が始まり、物価上昇はこれから本番を迎えると予測した。
そして、この物価上昇は、「不景気の中の物価上昇(インフレ率の上昇)」という“スタグフレーション”につながる可能性があると警鐘を鳴らした。
毎月の企業間で売買する物品の価格水準を数値化した「企業物価指数」が日銀から発表されている。その中の輸入物価指数を見ると、21年6月に100を超えた指数は、その後急激な上昇が続いている。(「輸入物価指数」は、基準として2015年を100としている)
前年同月比で見ると、21年1月、2月は減少だったが、3月から増加し、4月からは2ケタ増が続いている。そして11月には前年同月比45.3%にまで到達し、13ヵ月連続で増加している。(表1)
ただし、「企業物価(輸入物価)」の上昇と、実際に国民の生活に直接的に影響を及ぼす「消費者物価」の上昇にはタイムラグがある。企業が売買をした物品が商品となり、店頭などで売られ、消費者の手に渡るというフローを辿るからだ。
では、消費者物価の動向はどうなのか。総務省発表の「消費者物価指数(生鮮食品を除く)」では、指数が100を超えるのは、21年3月を除くと、21年11月からだ。(「消費者物価指数」は、基準として2020年を100としている)
前年同月比の動きで見ると、21年9月から増加に転じ、22年3月まで7ヵ月連続で前年同月比で増加している。(表2)
つまり、企業物価の上昇から消費者物価の上昇までには、3ヵ月から6ヵ月のタイムラグがあることがわかる。となれば、企業物価、特に輸入物価の大幅上昇が続いている現在、消費者物価の上昇はまだまだ続くということになる。
1ヵ月足らずで約12%も円安が進んだ
当初、企業物価の上昇の主因は、原油・資源価格の上昇だった。しかし、ここ最近の急激な円安進行によって生じた輸入物価の上昇が徐々に影響し始めている。
21年1月にドル・円相場は1ドル=104円台だったが、11月には1ドル=115円を突破した。それでも、今の急激な円安進行に比べれば、緩やかな円安と言える。
22年3月に入ると為替相場は、1ドル=115円台から“棒上がり”に上昇し、4月19日の海外市場では1ドル=129円台まで円安が進んだ。
21年初から約24%、22年3月からは1ヵ月足らずで約12%も円安が進んだことになる。
この背景には、原油・資源高を受け、世界中でインフレ(物価上昇)圧力が高まり、米国がインフレ抑制のために金融引き締めに政策転換したことにある。
米国が利上げを実施し、日本は低金利政策を維持する。すると、日米の金利差が拡大し、運用に有利なドルを買って、円を売る動きが強まる。これが円安進行の原因となっている。
円安進行に対して、様々な要因を指摘する声があるが、円安進行は“見事なまでに”米国の長期金利(10年国債利回り)の上昇とリンクしている。
この円安進行に対して、黒田東彦日銀総裁は当初、「円安には日本経済にとって悪いことばかりではない」との見解を示していた。
ところが、22年3月以降の急激な円安進行に対しては“手のひらを返し”、4月18日の衆院決算行政監視委員会では、「急速な円安の場合は経済への影響はマイナスが大きくなる」と答弁している。
通常、中央銀行総裁や首相、財務相などの要人は、例えば「1ドルは105円程度が望ましい」というように、具体的な為替水準についてコメント(口先介入)するのは国際的なタブーとなっている。最大限言及したとしても、「急激な為替変動は望ましくない」といった程度で、基本的にはコメントしないものだ。
他国は自国通貨高なのに、日本は円安容認
実際、米国ではこの間の急激なドル高・円安に対して、要人発言はほとんど聞かれない。それには2つの理由がある。
一つは、ドル高が米国の輸入物価の下落につながり、インフレ抑制の一助になるためだ。100円の商品を1ドルで買っていたのが、ドル高により1ドルで120円の商品が買えるようになる。
もう一つは、為替水準に言及しなくとも、金融政策によって為替水準を動かすことができるためだ。
インフレ抑制のため、金融引き締め(利上げ)に舵を切った米国では、引き締め強化(利上げ幅の拡大)に対する観測が強まっている。つまり、再度の利上げや利上げ幅の拡大について要人が発言すれば、一段の日米金利差拡大との思惑から一段の円安進行へとつながり、為替水準に言及しなくとも、ドル高を演出することができる。
自国通貨高によるインフレ抑制を狙い、例えば欧州でも金融引き締めに関する要人発言が相次いでおり、さながら“自国通貨高競争”の様相を呈し始めている。
では、円安進行に対して、日本はどのように対処しているのかと言えば、まったく成す術がない状態だ。否、むしろ日銀は円安を容認する姿勢を示しているのだ。
米国の長期金利の上昇を受け、国内でも長期金利(10年国債利回り)が上昇し、日銀が金融政策のレンジとしている年0.25%に接近する局面が出ている。
これに対して日銀は、長期国債を無制限に買入れる「指値オペ」を実施している。つまり、日銀は長期金利の上昇を容認しないという姿勢を示しているのだ。
市場ではこれを「長期金利の上昇抑制=低金利政策の維持=日米の金利差拡大=円安進行の容認」と受け止めている。
円安はどこまで進むのか?
筆者は22年1月23日の『日銀は「利上げ」を完全否定するも、決して“鵜呑みにできない”3つの理由』で、黒田総裁は円安が進行しても、金融政策の変更には踏み込まないだろうと指摘した。
13年3月に就任し、大規模金融緩和策による低金利政策により、2%の物価上昇の実現を打ち出した黒田総裁だが、これまでに一度も2%物価目標を達成できずに、23年4月の任期を迎えようとしている。
従って、残された任期の中で、たとえそれが原油高・資源高、円安進行による物価上昇であっても、低金利政策による2%物価目標を達成できる“唯一のチャンス”だから、黒田総裁にとって金融政策の変更という選択肢はない。
となれば、問題は円安はどこまで進むのかということ。もはや、1ドル=130円は何の抵抗線にもならない。いずれ1ドル=130円を突破する円安となるだろう。次のターゲットは「02年の135.69円、ここを抜けると98年の1ドル=147.66円」となってくる。
企業物価の上昇から消費者物価の上昇にタイムラグがあるように、円安進行による輸入物価の上昇にもタイムラグがある。
つまり、円安進行による輸入物価上昇を通じた物価上昇は、まだまだ序の口で、これから本番を迎えることになる。
「稼げないニッポン」到来の恐れ
そしてなによりも筆者が危惧するのは、経常収支の赤字の影響だ。
経常収支は貿易・サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支の合計で、「国の儲け」を表す。
経常収支の中で大きな比率を占めるのは、貿易収支と第一次所得収支だ。貿易収支は輸出入の収支、第一次所得収支は海外への投資や運用により生じる利子・配当金等の収支となる。
貿易収支は直近22年3月まで8ヵ月連続で赤字になっている。貿易立国、特に輸出立国であるはずの日本が、主に原油高・資源高と円安進行の影響から輸入額が輸出額を上回り、赤字が続いている。(表3)
それでも日本は経常収支の黒字を続けてきた。貿易収支の赤字を主に第一次所得収支がカバーし、黒字を保ってきたのだ。
ところが21年12月に経常収支は3708億円の赤字に転落した。20年6月以来、1年半ぶりの赤字転落となった。これまでの経常収支の赤字転落は、単月のみのケースがほとんどだった。
しかし、22年1月の経常収支も1兆1964億円と大幅な赤字が続いた(2月は黒字転換)。貿易収支の赤字を第一次所得収支などでカバーすることができなくなったのだ。(表4)
本稿は財政問題を取り上げているわけではないので詳細は割愛するが、日本が対GDP(国内総生産)比で世界最高の政府債務を抱えても、財政破綻やデフォルトの危機に陥らない理由の一つとして、経常黒字国であることがあげられる。
経常黒字ということは、日本は海外への投資や運用により対外債権を潤沢に持っており、“稼ぐ力がある”ということ。この稼ぐ力があることが、日本の財政、円に対する信認につながっている。
しかし、経常赤字となれば、“日本は稼ぐ力がない”となり、財政や円に対する評価が低下し、危機感が台頭する可能性がある。つまり、円売り=円安、それも金利差で起こる程度の円安ではなく、危機的な円安が起こる可能性があるのだ。これが、筆者が経常収支の赤字を危惧する理由だ。
原油高・資源高と円安の進行に対しても、何らの打開策を持たない政府と日銀が、経常赤字が恒常化した時に有効な対応策を持っているとは到底思えない。日本経済の衰退はこれから本格的な危機状況を迎える可能性がある。
●50年ぶり円安の原因は 4/24
円レートが50年ぶりの円安になっている。50年前というと今のような完全変動相場制になる前の固定レートの時代で、1ドル=308円であった。現在の1ドル=130円近くがこの時代と同じ水準の円安だと言われてもピンとこないかもしれないが、「実質実効レート」で考えるとそういうことになる。「1ドル=130円」などというのは、単に円とドルの間の交換比率を示す「名目レート」である。「円の実力」を見るためには、ドルだけでなく、いろいろな通貨との為替レートの動きを平均して見て、その上で物価の動きを考慮に入れる必要がある。その結果、はじき出されるのが実質実効レートなのである。
実質実効レートは指数で表され、2010年を基準として100とすると、ピークの1995年には150台であったが、最近では65前後にまで下がっている。これは50年前とほぼ同じ。円の実力は、ピークの半分以下になったということになる。こうした動きの背景には名目レートが円安になっていることもあるが、近年の日本のデフレの影響も大きい。日本の物価上昇率がほぼゼロなのに対し、米国の物価上昇率は年平均2%程度。これが20年続くとみると、日米で50%近くまで物価の差が開くことになり、こうした日本の物価の相対的低下は実質実効レートを引き下げる。
円の実力が95年のピークの半分以下になってしまったのは、名目レートが80円前後から130円近くにまで円安になっただけではなく、何より、デフレで日本の物価や賃金が諸外国に比べ安くなったからなのだ。その結果、円の購買力は下がっているし、私たちの賃金の購買力も下がっている。要するに日本は貧しくなっているのだ。
これは構造的な要因によるものである。世の中では、これは「悪い円安」だ、いや「良い円安」だと、あたかも名目レートの変化が問題の根源であるような言い方をするが、名目レートは経済状況の原因というより、結果であるとみた方がよいだろう。これだけデフレが続くのに名目レートが円安になっていること、また名目レートが円安になっているのに日本の物価が上がらないこと。何より実質実効レートが下がり続けていることは、日本経済の構造的停滞の結果という面が大きい。小手先の為替レート対策で構造的な要因が是正されるわけではない。
そうは言っても、名目レートの円安は気になる。米国などでのインフレと金融政策の変化による金利上昇が円安を加速させているが、ここまで円安が進むとメリットよりもマイナス面が目につく。輸入原材料が円安でさらに高騰する一方で、それを価格に転嫁できないデフレ経済で多くの企業が苦しむ。「悪い円安論」の背後には、デフレ対策で進められてきた過剰な金融緩和をそろそろ見直す時期に来ているのではないかという見方があるだろう。海外での物価上昇の展開をみると、日本での金融政策の見直しもそう遠くないだろう。そうなれば名目レートの過度な円安にも影響が及ぶだろう。
●円安はスピード違反? なぜ大台目前に切り返し 4/24
加速した円安。3月初旬から4月20日までのおよそ1か月半で、およそ15円という「スピード違反」とも言える速度で進みました。しかし、1ドル=130円台という大台を目前に、円相場は逆に円高方向に切り返し。マーケットでいったい何が起こっていたのでしょうか?
指値オペで、さらなる円安を予想も…
4月20日の朝、その日は私が株や為替のニュース原稿を書くマーケット番の担当で、取材拠点に向かっている途中、スマホに速報が入りました。「1ドル=129円台に 20年ぶりの円安水準を更新」その日にはちょうど日銀が、指定した利回りで国債を無制限に買い入れる指値オペを実施することが想定されていました。前回、指値オペが実施された際には、市場で日米の金利差拡大が強く意識され、1日で2円程度の円安となっていました。それだけに、「きょうも円安が加速するかもしれない。忙しくなりそうだな」と覚悟しつつ、職場に到着しました。東京市場での取り引きが本格化した午前8時以降も円安の流れは変わらず、円相場は129円台の前半で推移しました。市場関係者に見通しを取材しても、やはり「指値オペも予想されるため、きょう130円台に到達することも十分考えられる」という意見が大勢でした。午前10時すぎ、日銀が指値オペの実施を発表。円相場のチャートの動きに目を凝らしましたが、いくぶん円安が進んだように見えたものの、前回のような勢いはありません。そして発表から30分もすると、円高方向に切り返し始めます。11時台には128円台、夜になって海外市場での取り引き時間帯になると、127円台をつける場面もあるなど「円高ドル安」方向の動きが大きくなったのです。事前の想定とは逆の動きで、拍子抜けとも言える展開でした。
「スピード違反」への警戒感も
なぜ、円相場はこのタイミングで切り返したのか?ある市場関係者は、投資の世界でたまに耳にする「Buy the rumor,Sell the fact(うわさで買い、事実で売る)」が働いたと説明してくれました。投資家にすれば「予想した動きを事実確認できて安心した。ここらで1回利益を確定しとこうか」という感じでしょうか。とはいえ日米の金利差の拡大は当面続くのだから、もっと利益が出るのを待ってもいいのに…。そう思ってさらに取材を進めると、最近の円安のスピードについて、市場の間でも警戒感が広がり始めていることも一因であることが分かってきました。指摘されるのは「投機筋の動き」です。海外のヘッジファンドなどが、「ドル高・円安のトレンド」がしばらく不変とみるや、大量の投資資金を投じそのトレンドの幅を一気に拡大させたのではないか。1か月半で15円近く円安が進んだのには、こうした投機筋による「円売りの仕掛け」があったという見方も出ています。短期的に利益を得ることにたける投機筋は手じまいも早いことも知られていて、「このところの円安はさすがにスピード違反ぎみだ。この辺で、いったん利益を確定した方がいい」という警戒感が投資家の間に広がったという分析が聞かれました。とはいえ、円相場を動かしている最大の要因「日米の金利差拡大」は、経済のファンダメンタルズの反映そのもの。円安が進みやすい構造に変わりはないという見方が依然として根強く、今後のマーケットの状況から目が離せません。
日銀のいまを示す言葉「マラドーナではない」
ところで、この取材の最中に、ある市場関係者がつぶやいた言葉がとても印象的だったので、ご紹介します。「いまの日銀は、マラドーナではない」マラドーナとは、言わずと知れたサッカーの元アルゼンチン代表で、チームをワールドカップ優勝に導いたディエゴ・マラドーナ氏のことです。かつてBOE・イングランド銀行の総裁を務めたマーヴィン・キング氏が、状況に応じて柔軟に金融政策を繰り出す中央銀行のあり方を、ドリブルでピッチを縦横無尽に駆け抜けたマラドーナ氏になぞらえ、「マラドーナ理論」と称したと伝えられています。本来は、複数の国家の集合体であるECB・ヨーロッパ中央銀行に比べて、1つの主権国家の1つの中央銀行であるBOEの方が金融政策に柔軟性を持ちやすいという意味で語られたそうですが、「金融緩和と円安」「物価上昇と景気下支え」といったジレンマに直面し、どちらにも動きにくい日銀の立場を言い当てているように感じました。
注目予定
4月27日から28日にかけて開催される日銀の金融政策決定会合。2日目の会合終了後、決定内容と物価上昇の見通しなどを示す「展望レポート」もあわせて公表します。黒田総裁が会見で、「強力な金融緩和を粘り強く続ける」としている金融政策の方向性や、「円安は日本経済全体としてはプラス」としている原材料価格高騰・円安などの影響について、どのように言及するかが注目です。
●ついに来た! 1ドル135円で日本は韓国・イタリアより貧しい国に 4/24
急激な円安のため、日本の国際的地位が急低下している。それだけでなく、輸入物価高騰を増幅し、国民生活と企業を圧迫している。円安に対する評価が変ってきたいまこそ、金融政策を基本から転換しなければならない。
1人あたりGDPで韓国に抜かれる?
急激な円安が進んでいる。しかも、他国通貨に比べて下落率が大きい。最近では、ロシアのルーブルより下落率が大きい(日本経済新聞4月8日)。4月20日には一時、1ドル129円台を付けた。
こうなっているのは、アメリカが金融緩和政策からの脱却を急ぎ、各国もそれに対して必死で利上げを行っているにもかかわらず、日本銀行は金利を抑えているからだ。
急激な円安のため、日本の国際的地位が大きく低下している。このまま進んで、1ドル=130円台になると、重大な局面が訪れそうだ。日本の一人あたりGDPが、韓国やイタリアに抜かれる可能性が高いのである。
まず韓国との関係を見よう。2021年においては、日本の1人当たりGDPは、韓国より15.7%ほど高かった(図表1参照)。
   図表1 1人あたりGDP(ドル)
ところが、2022年になって円安が進んだ結果、この状況がすでに大きく変っている。2022年4月12日のレートで計算すると、韓国との差は7.2%と、大幅に縮まっている。
円安がさらに進んで1ドル135円になり、ウォンのレートが変らないとすれば、日本の1人あたりGDPは、韓国より低くなる。
賃金や生産性などの指標では、日本はすでに韓国に抜かれている。それだけでなく、最も基本的な指標である一人当たりGDPでも抜かれることになる。つまり、豊かさを示すほとんどすべての指標において、日本は韓国を下回ることになるのだ。
G7中で日本が最下位に
台湾との間でも、似たことが起こる。2021年においては、日本一人当たりGDPは、台湾より21.9%ほど高かった。2022年4月12日のレートでは、この値が9.1%になった。1ドル135円になれば、台湾の値は日本とあまり変らなくなる。
最近の円レートの動向から見ると、1ドル135円は十分あり得る値だ。したがって、日本が韓国や台湾よりも貧しくなるという事態は、十分あり得ることなのである。
G7の中ではどうか? 2021年では、最下位はイタリアで、日本はこれより14.4%高かった。ところが、2022年4月12日のレートでは、この値が6.7%になった。1ドル135円になれば、イタリアの方が高くなる。すると、日本はG7の中で、もっとも貧しい国になる。
G7は先進国の集まりということになっている。そこにとどまれるかどうかの議論が出てきても、反論するのは難しいだろう。
アベノミクスの円安政策が日本を没落させる
アベノミクスが始まる直前の2012年、日本の1人あたりGDPは、アメリカとほとんど変らなかった。そして、韓国は日本の51.8%、台湾は43.2%でしかなかった(図表2参照)。
   図表2  1人あたりGDPの推移
それから10年たって、上記のように、この関係は大きく変ったのだ。
アメリカの1人あたりGDPは、日本の1.73倍になった。そして、すでに見たように、韓国と台湾の1人あたりGDPが、日本とほぼ同じになっている。アベノミクスがもたらしたものが何であったかを、これほど明確に示しているものはない。
企業の時価総額世界ランキングでも、日本のトップであるトヨタ自動車(第41位、2286億ドル)より、台湾の半導体製造会社TSMC(第10位、5053億ドル)や、韓国のサムスン(第18位、3706億ドル)が、いまや上位にある(2022年4月13日現在)。
日本の凋落ぶりは明白だ。
円安が物価上昇を加速する
円安は、日本の国際的地位を低下させるだけではない。現実の経済活動にきわめて深刻な影響を与えている。なぜなら、円安は物価上昇を増幅するからだ。
ウクライナ情勢を背景として、原油などの資源価格が世界的に値上がりしており、それが国内の消費者物価を高騰させている。円安が進めば、円ベースでの上昇率はさらに高まる。
4月12日に発表された輸入物価指数に、それがはっきりと現れている。3月の指数の対前月比は、契約通貨ベースでは1.0%であるのに、円ベースでは3.3%になっている。つまり、円安の進行によって、価格高騰率がが3.3倍にも増幅されているのだ。(なお、対前年同月比は、それぞれ、25.2%と33.4%)。
株価も、円安を歓迎せず、むしろ、円安で下落するようになってきている。輸入価格の高騰による原材料価格の上昇を製品価格に完全に転嫁できず、企業の利益が減少するからだ。
そして、物価は上がるのに賃金が上がらないので、国民の不満が高まる。
円安スパイラルの阻止が緊急の課題
すでに述べたように、急激な円安が進行しているのは、日銀が長期金利抑制の姿勢を強く打ち出しているからだ。このため、円安が円安を呼ぶというスパイラル現象が起きつつある。
しかし、金利抑制策は、日本経済に何のメリットも与えていない。むしろ、金融機関の経営を圧迫するなどネガティブな影響が強い。
こうした政策から一刻も早く脱却して、円安スパイラルを食い止めることが必要だ。日銀が通貨価値安定という中央銀行本来の使命に戻り、金利抑制策からの転換を明言すれば、事態は大きく変るだろう。
ただし、口先介入だけでは不十分かもしれず、為替市場への介入が必要とされるかもしれない。
為替介入には、アメリカに承諾を求める必要があるという意見があるが、自国通貨の価値を守るための介入に外国の許しが必要という考えは理解できない。
ただし、円高に向けての介入が容易でないことは事実だ。これまで行ってきたのは、円安誘導の介入だ。円を売ってドルを買うのは、簡単にできる(政府短期証券を発行して調達した円資金を用いて、為替市場でドルを買い入れる)。2000年頃には、総額35兆円を超える大規模な円売りドル買いの介入が行なわれた。
それに対して、円高介入は、外貨準備の範囲内でしかできない。だから、限度がある(2021年9月末における日本の外貨準備高は1.4兆ドル)。
日本でもようやく円安の評価が変ってきた
トルコや韓国は、通貨価値の下落によって国が破綻しかねない事態に直面した経験がある。そうした国では、自国通貨安に対する国民の危機感がきわめて強い。
日本人はそうした危機感を持っておらず、むしろ、自国通貨安を歓迎するという不思議な状況がこれまで続いてきた。
しかし、価格転嫁が不充分にしかできない現状で、やっと円安の本質が理解されるようになってきた。日本でも、通貨安が経済を破壊しかねないという認識が、日本でもようやく広まりつつある。
7月の参議院選挙では、物価問題が最大の争点となるだろう。そこでの議論を、バラマキ的な物価対策のレベルで終わらせてはならない。円安政策からの転換という本質的な問題が争点となることを期待したい。
●本当の「悪い円安」 4/24
ドル・円相場は歴史的な水準をあっさり上抜け、20年ぶりの高値圏に浮上しました。輸入インフレを招く「悪い円安」は続くものの、ある程度の水準で止まるでしょう。しかし、将来東アジアで緊張が高まれば、そんなレベルでは済まないのは言うまでもありません。
4月13日の取引でドル・円は上値メドとして意識されていた「黒田シーリング」の125円86銭を上抜け、2002年以来20年ぶりの高値水準に切り上げています。その後も心理的節目を次々に突破し、気づいてみれば130円が間近に迫りました。勢いづいた相場は、もはやテクニカル分析の目安も役に立ちません。投機的な取引のせいか、最前線の市場関係者でさえ予想をことごとく外す毎日です。
黒田東彦日銀総裁は「悪い円安」を意識したせいか、最近の円安について「かなり急速な変動」「マイナス面も考えないといけない」と発言。一見すると円安容認を改めたようにも理解できますが、「全体としてプラスとの評価は変えていない」とも述べ、その後の円売りを誘発する要因になりました。鈴木俊一財務相はドル・円の128円台到達の際、円安をけん制していますが、流れは変わりません。
といっても、米連邦準備理事会(FRB)がタカ派姿勢を弱めれば、米金利の失速とともにドル買いは一服するとみられます。また、黒田総裁が異次元緩和へのこだわりを捨てれば、過度な円売りは抑制されるはずです。「異次元」に固執しても、来年3月には任期を終えるので、こちらも時間の問題です。数カ月はドル高・円安が続き、現在のペースなら140円台も想定内といえるでしょう。
警戒しなければならないのは、ロシアのウクライナ侵攻で世界が戦時モードに入ったことです。日本も西側として対ロシア制裁に参加し、核保有国であるロシアと中国、北朝鮮に囲まれている現状に改めて気づかされます。日本嫌いの韓国を含めれば、東アジアでの日本の孤立は決定的です。日米同盟といっても、アメリカは自国に被害が及ばないよう中ロとの直接軍事衝突を避けているように見えます。
自民党内でも穏健派とされる岸田文雄首相(党総裁)が7月の参院選をにらみ、自衛力の強化を打ち出しました。日本維新の会は核共有や非核三原則の見直しを公約に盛り込む方針で、核武装を望む声を取り込もうとしています。ただ、軍事大国化すれば安心・安全でしょうか。周辺国の挑発がエスカレートすれば、かえって一線を超えるリスクが高まります。その際、孤立無援の日本の通貨を誰が買い支えるのでしょうか。
ロシアのように、戦争当事国は経済の悪化に伴う通貨安・インフレにさらされます。円はこれまで世界最大の債権国であることを背景に安全通貨とされてきましたが、これからはリスク通貨になる可能性も出てきました。外貨売り・自国通貨買い介入にも限度があり、円安は制御不能に陥らないとも限りません。国土を守るのと同じぐらい通貨の防衛が重要であることを、多くの政治家に認識してもらわなければならないでしょう。
●円安で漂う「円安恐慌」の雰囲気は、円安一服のタイミング 4/24
円安は一段と進み、米ドル/円は130円の節目直前まで迫った。
繰り返し指摘してきたように、円安の流れは雄大で、安易な修正はないから、円安終焉の願望は早く捨て去るべきである。
さらに、構造上の視点における重要な示唆として、日本の個人投資家の逆張りを問題視したのも正解のはずだ。
なぜなら、大幅な円安の進行が続いており、さらに加速してきた分、逆張り筋の踏み上げは推測されやすい。強いトレンドであるがゆえに、損切りを迫られた結果、一段とトレンドを強化したわけだ。円売りが円売りを呼ぶような展開自体も、筆者が繰り返し懸念を表明したとおりであった。
ここまでくると、「円安恐慌」といった雰囲気が漂う。ミセス・ワタナベたちがどれぐらいの損失をこうむったかは正確に把握していないが、円安はどこまで? といった質問が連日あちこちで聞かれ、今まで円安余地に非常に懐疑的な見方を示してきた、いわゆるプロや識者でさえ、君子豹変して大幅な円安ターゲットに言及するようになった。
もっとも、君子豹変といえば、一部ウォール街の面々の得意技と言える。この前110円、ひどい場合は100円といった円高目標を提示したばかりの者が、今は一転して135円とか150円といったターゲットを言い、円安に対する恐怖をあおる論調に躍起になっている。厚かましいというか、タフすぎるとしか言いようがない。
日本人「識者」の多くは、ここまで節操がないということはないが、円高予測だった方のほとんどが、円安方向へシフトしてきた。
そして「言い訳」を探すというか、現実味の乏しいロジックを持ち出す例が多数見られるようになった。これもまた問題ではないかと思う。
たとえば、ある方は強い円をメインシナリオとして展開してきたが、最近の円安進行に鑑み、一転して円安の危機を煽るようになった。理屈としては、「円安傾向にあるから日本の家計(1000兆円規模とされる円預金)が外貨買いに走る可能性が大きいから、さらなる大きな円安余地を作る」といった論調だ。
しかし、日本の家計と言えば、世界でもっとも保守的と言われ、長年ゼロ金利(事実はマイナス金利)の環境の中でも預金が大半のままであった。いくら円安傾向にあるとはいえ、リスクを極端に嫌う日本の家計の大半が外貨買いに走るとは、到底考えられない。
筆者が処女作を出した2008年前半まで、日本ではスワップポイント(スワップ金利)を享受する円キャリートレードが流行っていたが、その円売りの全盛期でも日本の家計の総額からみれば微々たる規模に留まっていた。したがって、これからそんな日本の家計の大半が外貨買いに走るといったロジックは飛躍しすぎで、現実的でないことは明らかである。
円安の進行が世界中で話題となっているため、そろそろ円安一服か。
日本国内のみではなく、円安の進行が世界中で話題となり、中国メディアにも大きく取り上げられた。そのせいか、普段まったく為替問題に興味のない中国人の友人にまで、最近、円の行方を聞かれるようになった。円はどこまで安くなるかを知りたがっている模様だ。
経験則でいえば、これは円安一服の前兆であり、円安方向は変わらないが、少なくとも目先、円安一服のタイミングが近づいているのではないかと思う。
もっとも、130円や132円の上値打診の可能性は、目先、円安一服の可能性が大きいからと言って消えるわけではなく、なお残るだろう。
なにしろ、米ドル/円の強気トレンドが維持されており、「買われすぎ」と思われるがゆえに、さらに買われる展開になりやすいから、頭打ちのサインが本格的に点灯しない限り、性急な判断を避けたい。
さらに、この前の本コラムで説明したように、年間平均変動幅の15円〜20円で計算すると、130円や132円の打診があっても「正常範囲」なので、行きすぎた円安とは言い切れないかもしれない。
年間平均変動幅の視点をもって円安を検証すると、いろいろとおもしろい見方ができる。
市場参加者が円安に恐怖を感じるのは、変動幅ではなくスピードと水準のせい
前述のように、そもそも年間平均変動幅を超えていないのに、なぜ今、市場参加者は円安に対し、恐怖感に支配されるのだろうか。明らかに、変動幅ではなく、円安のスピードと今の水準が恐怖感につながっているはずだ。
言ってみれば、3月から円は一本調子の急落を演じてきたから、「スピード違反」と言われても仕方がないと思う。
さらに、米ドル/円は2015年の高値を超えたため、円安に危機感を抱くのも理解しやすいかと思う。
2011年の円の高値から、より大きく、より長く続く円安のメイントレンドが形成されていると、市場参加者、全員の目に映っているから、相場の自己実現性から考えて、どうしても円安に対する恐怖に陥りやすいという市場心理が推測される。
だからこそ、逆説的なロジックとなるが、猫も杓子も円安恐怖症にかかっているから、円買いを持つ者は損切り、円を売りたい者はすでに相場に参入したはずだ。
言い換えれば、恐怖症の蔓延は投資家の行動を促し、また、その行動の結果が今のレートに現れているから、円安恐怖とか、円安パニックとかが市場の話題なってから、恐怖を覚えたりパニックになったりし始める者がいたとしたら、かなり鈍感というか、出遅れというか、相場の本質をわかってないと言える。
このようなロジックは、実は米ドル全体にも通用する。
ドルインデックスは連続して上昇してきたゆえに、米ドル高がこれからさらに続くと思われる。しかし、よく冷静に考えてみればわかるように、米ドル高の基礎は米利上げの継続、また、大幅利上げの可能性にあるが、その大半はすでに今のレートに反映されており、織り込まれている可能性が大きい。
これからドルインデックスが大幅に上昇するには、やはり、現在想定される米大幅利上げ以外の材料が必要だ。
そうでないと、相場自体が材料の後を追うものとなり、本質的にそのようなことは決してない。
なぜなら、市場参加者はすでに発生した材料をもって相場に参入するのではなく、その材料に関する判断や思惑、さらに、これから出る材料に関する推測や思惑をもって相場に参入しているものである。
それこそ相場の真実であり、このことを悟れなければ、一生、相場から利益を取れない。そのあたりの話は、また市況と合わせて説明していきたい。市況はいかに。 

 

●日銀会合後も円安進行か、政策の微修正では止まらないとの声 4/25
外国為替市場のドル・円相場は、日本銀行が今週開く金融政策決定会合の後も円安基調が続くとみられている。金融政策は据え置き予想が大勢で、仮に微修正があっても円安の流れを変えるのは困難との声が市場関係者から聞かれる。
ブルームバーグ調査によると、エコノミストの9割が28日の決定会合で現状維持を予測。政策金利のフォワードガイダンス(指針)を引き締め方向に修正するとの予想は1割にとどまった。
大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、日米金利差と日本の貿易赤字を材料にするドル高円安は「米国要因が落ち着くまで簡単には終わらないだろう」と指摘。米国がインフレ抑制に向けて連続利上げとバランスシート縮小で対応していくことを考えると、「日銀が小手先の政策修正でやったふりをした所でその差は縮まらない」と言う。
日銀の黒田東彦総裁は22日、ニューヨークのコロンビア大学で講演し、物価上昇率はエネルギー価格の上昇を主因に2%程度となる可能性があるとしながらも、そのマグニチュード、広がり、背後にある経済状況は米国と大きく異なると言明。日銀は物価目標の安定的な実現に向けて「現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていく必要がある」と述べた。
シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは「日銀が今会合で円安対応のための政策変更を緊急避難的に実施する可能性は低い」と指摘。予想通り政策が据え置かれれば「一段の円安ドル高が進行する可能性が高い」とみる。
黒田総裁は18日の国会答弁で、為替が経済に与える影響について「非常に大きな円安とか、急速な円安の場合はマイナスが大きくなる」と述べる一方で、円安が全体としてプラスという評価は変えたわけではないと語った。みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジストは「記者会見で円安は全体として日本経済にプラスという認識が維持されれば、円売り安心感が再燃するだろう」と言う。
鈴木俊一財務相はイエレン米財務長官との21日の会談後、「直近の円安が急激であることを数字で示した」と述べた。みずほ証の山本氏は「当局からの円安懸念発言が続いているが、目先の実弾介入につながるものではない」と指摘。主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議やG20でも円安懸念は共有されなかったため、ドル・円相場は「米金利上昇とともに再び上昇しやすくなっている」と語る。
ドル・円相場は20日に一時1ドル=129円40銭と20年ぶりの円安水準を更新。その後は一時127円台まで戻したが、週末22日のニューヨーク市場で再び129円台を付け、足元では128円台後半で推移している。SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは「予想された通りG20で円安についての特別な文言はなく、ドル・円は再び129円から130円を試してゆく可能性がある」とみている。
●日経平均続落、終値514円安の2万6590円 4/25
25日の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前週末比514円48銭(1・90%)安の2万6590円78銭で終え、12日以来の安値となった。前週末の米株式相場の大幅安を受け、東京市場でも運用リスクを回避したい投資家の売りが膨らんだ。中国経済の減速懸念も意識された。午前には下げ幅が600円を超える場面があった。
中国では、新型コロナウイルスの感染が広がる上海でロックダウン(都市封鎖)を再び強化する動きがあるほか、北京でも感染者増に伴う検査拡大が伝わる。中国のコロナ感染拡大が景気を下押しするとの警戒が強まり、機械や鉄鋼、海運など景気敏感株の売りにつながった。
日経平均が2万6500円を下回る場面では、主力銘柄の一部に値ごろ感から買いが入り、下げ渋る場面があった。ただ、米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引き締めに動くとの見方が根強く、米株価指数先物は日本時間25日の取引で軟調に推移した。日本株市場でも投資家が積極的に運用リスクをとる動きは限られた。
午後には前期決算の下方修正を発表した清水建が大幅安となり、大林組や鹿島などゼネコン株の売りに波及した。コスト負担増が企業収益を圧迫するとの懸念も投資家の買い手控えにつながったようだ。
東証株価指数(TOPIX)は続落した。終値は前週末比28・63ポイント(1・50%)安の1876・52だった。午前には下げ幅が一時2%を超えた。
東証プライムの売買代金は概算で2兆4584億円。売買高は10億1350万株だった。東証プライムの値下がり銘柄数は1554と、全体の8割強を占めた。値上がりは250、変わらずは34だった。
ソフトバンクグループとファストリの下げが大きく、2銘柄で日経平均を208円ほど押し下げた。日産自やINPEX、川崎汽、ダイキンが下落した。ANAHDやJフロント、資生堂も安かった。一方、日ハムや味の素が上昇し、ヤマトHDやNTTも高かった。
●東証大幅続落、514円安 米金融引き締めを懸念 4/25
週明け25日の東京株式市場の日経平均株価(225種)は大幅続落した。終値は前週末比514円48銭安の2万6590円78銭。米連邦準備制度理事会(FRB)による急速な金融引き締めが米景気を過度に冷やすとの懸念が広がり、ほぼ全面安だった。
東証株価指数(TOPIX)は28・63ポイント安の1876・52。出来高は約10億1300万株。
米国ではFRBのパウエル議長が積極的な金融引き締めを検討する方針を示したことから、前週末の米株式市場が大幅下落。東京市場は朝方からこの流れを引き継いだ。
大型連休を控え、当面の利益を確定する売りが出たことも相場の重荷になった。
●「円安」が止まらない日本…1ドル=150円の大暴落で起こる恐ろしい現実 4/25
すでに半世紀ぶりの円安水準に落ち込んでいるのだという。このままでは海外旅行にさえ行けず、外国人に買い叩かれるだけの「貧しい国」になってしまう。生活を守るために、できることはまだある。
富が海外に流出していく
ロシアによるウクライナ侵攻以来、日本円の暴落が止まらない。4月13日には1ドル=126円を突破。ロシアの通貨ルーブルは侵攻前の水準に値を戻しつつあるが、円は対ドルで約9%も下落したままだ。
実に約20年ぶりの円安水準だが、事態はさらに深刻だ。経済学者で多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏が解説する。
「国際決済銀行が発表する『実質実効為替レート』は円の総合的な実力を示すものですが、これが約50年ぶりの低水準になっています。つまり、日本円は'70年代前半と同じくらいの実力しかないということです」
かつては「有事の円買い」と言われ、市場の危機が高まると円が買われたものだった。リーマンショックや東日本大震災のときでさえ、円高に振れた。日本円は「安全資産」として存在感を際立たせていたのである。
しかし、ウクライナへのロシアの侵攻が長期化しているにもかかわらず、円は売られ続けている。なぜか。みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏がこう分析する。
「現在の円安には二つの理由があります。一つは米FRBが利上げをしているから。日銀が金利上昇を抑え込んでいる日本と米国の金利差が拡大し、円売り・ドル買いの流れが続いています。
もう一つが日本の貿易赤字が拡大していることです。資源の乏しい日本はその大半を輸入に頼っていますが、ウクライナ侵攻もあり、エネルギー価格が高騰しています。燃料や原材料を高い値段で海外から購入せざるを得ないのです」
貿易赤字は今年1月に2兆1911億円、2月に6682億円となり、日本の富は海外へどんどん流出している。
「財務大臣が円安に対して『急激に変動することは望ましくない』と牽制しましたが、日銀総裁は金融緩和の継続を明言しており、何の意味もありませんでした。1ドル=126円を明らかに超えれば、1ドル=150円程度の円安は十分にありえます」(為替ストラテジストの高野やすのり氏)
現在の円の実力が'70年代前半と同程度であることは前述した。これが1ドル=150円にまで大暴落すれば、1ドル=360円の固定為替相場制だった時代と同じくらいの実力へとさらに低下していくという。
シグマキャピタル・チーフエコノミストの田代秀敏氏が言う。
「それはつまり、私たちの生活が、'70年代初頭の水準に引き落とされてしまうことを意味します。当時、海外旅行ができたのは、一流のプロ野球選手や芸能人など一握りの人だけでした。
いまはコロナ禍で海外に行けないだけと思っているかもしれませんが、コロナ禍が明けても、一般人は物価が高すぎて海外に行けないという事態になっているかもしれません。
仮に行っても、現地で普通の食事をすることすら高く感じるはずです。たとえば、米国のマクドナルドのビッグマックは5・81ドルですが、1ドル=150円で円換算すれば、871・5円。国内での価格は390円ですから、単純計算で約2・2倍です。海外で気軽にファストフードを食べることすらできない、そんな惨めな時代になってしまうのです」
それでも'70年代当時の日本は若者も多く、明日はもっと成長していくという希望が社会にあった。インフレと同時に、賃金は上昇していた。
「米国では、3月の消費者物価指数が8・5%の伸びを見せるなど歴史的なインフレが続いています。それと同時に賃金も上がっている。ところが、今の日本ではまったくと言っていいほど、賃金が上がっていません。これ以上、円安が進めば、日本人の購買力は諸外国に比べてどんどん下がっていく」(唐鎌氏)
日本人にとって物価が高くなっても、外国人にとって円安の日本はただの「物価が安い国」だ。
円の大暴落と原油価格の高騰は止まらず、物価が急激に上昇していくにもかかわらず、日本人の収入は増えない—。あまりにも暗い未来予測を目前にできることは円安とインフレに強い銘柄に投資し、少しでも資産を守ることだ。
●1ドル=150円の大暴落に備える「円安」と「インフレ」に強い日本株 4/25
ロシアによるウクライナ侵攻以来、日本円の暴落が止まらない。4月13日には1ドル=126円を突破。ロシアの通貨ルーブルは侵攻前の水準に値を戻しつつあるが、円は対ドルで約9%も下落したままだ。
実に約20年ぶりの円安水準だが、事態はさらに深刻だ。前編記事『「円安」が止まらない日本…「1ドル=150円」の大暴落で起こる恐ろしい現実』では円安の影響で衰退する日本経済と、このままそれが加速し1ドル=150円になった際に起こる現実をお伝えした。
ではそんな事態に備え、いまから資産を守るために何をすればよいのか。専門家に詳しく聞いた。
電気代も電車賃も上がる
日本人の財布に追い打ちをかけるのが、資源価格の高止まりだ。
「ガソリンはいま政府が1リットルあたり25円を上限に補助金を出しているため、1リットル174円程度で済んでいますが、補助金がなければ200円近いわけです。さらに円安が進み、1ドル=150円という水準になれば、1リットル240円程度にまで上昇するでしょう。
しかしこれで終わらない。原油や液化天然ガス(LNG)は長期的に上昇傾向にあるからです。いまは1バレル=100ドル程度の原油も、戦争の長期化で150ドルに近づくことが懸念されています」(経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦氏)
ウクライナ戦争前、世界は地球温暖化対策のための「脱炭素」一色だった。将来的に化石燃料の使用が減少するなかで、原油や石炭、LNGをすぐに増産する資源国はほとんどない。化石燃料の供給が増えないのに、ウクライナ戦争の影響で需要は急増しているのだから、エネルギー価格が上がるのは当たり前だ。
「原油が1バレル=150ドル、為替が1ドル=150円になれば、電気料金のさらなる値上げは確実です。たとえば、東京電力エナジーパートナーの標準家庭のモデル料金は8359円ですが、1万円を超えるのは時間の問題。1万5000円に迫っていくでしょう。
公共交通機関の値上げも始まります。山手線の初乗り運賃は140円ですが、これが200円になり、現在は約1万4000円の東京から新大阪までの新幹線代が2万円台になったりすることもありえます」(藤氏)
世界中に買い叩かれる
日本人にとって物価が高くなっても、外国人にとって円安の日本はただの「物価が安い国」だ。
「今後は日本の不動産、たとえば住環境のいい都内の一等地の物件や、北海道のニセコなどの有名リゾートのスキー場などは世界中の投資家がバンバン買っていくでしょう。
高度な技術を持つ中小企業なども簡単に買収されるようになって、企業防衛もできなくなる。今回の円安は限度を超えており、日本経済の衰退を加速させる」(慶應義塾大学ビジネススクール准教授の小幡績氏)
円の大暴落と原油価格の高騰は止まらず、物価が急激に上昇していくにもかかわらず、日本人の収入は増えない—。あまりにも暗い未来予測だが、できることはある。円安とインフレに強い銘柄に投資し、少しでも資産を守ることだ。
今回、6名の識者に円安とインフレに強い銘柄を推奨してもらったが、そのうち4名が挙げたのがプラント建設大手の日揮ホールディングスだ。
「現状で欧州各国はまだロシア産LNGの輸入禁止に踏み切っていませんが、将来的にロシア以外で代替エネルギーを確保しようと躍起になっています。
そうなると、世界各地でLNGプラント建設の需要が高まる可能性がある。日揮ホールディングスはすでに4月に入って、台湾や米国でLNG基地の拡張工事や設計を受注していますし、今後も期待できます」(投資情報会社ラカンリチェルカ会長の村瀬智一氏)
世界中で資源や穀物を買い集め、国や企業に売って儲ける商社株にも注目が集まる。
「燃料や鉱物の権益を持つ三菱商事も悪くないですが、安定需要のある食料品に強い丸紅も忘れてはいけません。世界有数の小麦の産地であるウクライナが戦場になったことで、穀物価格が上昇していますが、丸紅は備蓄を確保しており、含み益は大きい。
穀物価格の上昇は、世界中で農業の活性化を促進します。農業機械の需要も拡大するため、農機メーカーのクボタにも注目です。同社の農機は東南アジアやインドで販売好調です」(ちばぎん証券元顧問の安藤富士男氏)
絆アセットマネジメント代表の小沼正則氏がポイントに挙げるのは「価格転嫁」だ。たとえば、調味料で国内最大手の味の素は、原材料の値上がりに対応するため、6月1日から出荷価格を引き上げると発表している。
「すでに海外では値上げを実施し、業績を改善させています。国内でもトップシェアを誇るため、価格に転嫁しても消費者が離れにくい。今期は4年ぶりに過去最高益を更新する見通しです。
日本製鉄も鉄鉱石やエネルギーなどの価格上昇に対応するため、いち早く製品価格を値上げしました。その結果、前期324億円の赤字から今期は5200億円の黒字に転換する見通しです」
インフレなどの景気動向に左右されにくい「ディフェンシブ銘柄」を挙げたのは松井証券シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏だ。
「景気が悪くなったからといって、携帯電話やインターネット通信などの利用を控えることはあまりありません。そのため、通信セクターは物価が上がっても需要が減りにくいディフェンシブ銘柄の典型とされます。
NTTやKDDIは業績も安定しているので、人気を集めるでしょう。予想配当利回りも3%前後で配当収益も見込めるので、長期的に保有するのがおすすめです」
戦争は長期化する見通しだ。左表の銘柄も参考に、資産防衛のために株式投資も考えてほしい。 
●安倍元首相 “円安は日本経済にプラス” 日銀の措置 支持を強調  4/25
急速に進む円安をめぐり、自民党の安倍元総理大臣は、今の水準は日本経済にとって懸念ではなくプラスになると指摘したうえで、日銀が金利の上昇を抑え込むために実施している措置を支持する考えを強調しました。
自民党の安倍元総理大臣は、25日開かれた党の議員連盟の会合であいさつし、円安が急速に進んでいることについて「今の水準で右往左往する必要は全くない。日本のように輸出の工業力があり、外国からの観光客が再び戻ってくれば、円安は、日本にとって間違いなくプラスの環境になる」と指摘しました。
そのうえで「金融政策を為替に活用しないことが基本的な考え方であり、円安に金融政策で対応することは間違いだ。金利を上げて経済を冷やせば、スタグフレーションに入り、経済が非常に惨めになることは明らかだ」と述べ、日銀が金利上昇を抑え込むために実施している措置を支持する考えを強調しました。

 

●1ドル130円水域 何が円安をもたらしているのか  円安の背景に貿易赤字 4/26
円安への関心が高まっている。為替レートは、基本的には通貨の需給関係で決定される。いわゆるドル円レートで考えた場合、円に対する需要が強ければ円高になるし、ドルに対する需要が強ければ円安になる。こうした通貨の取引は実需取引と投機取引に分かれるが、そのうち実需取引は、さらに経常取引と資本取引に区別される。経常取引とは、モノやサービスの輸出入に、海外との利子や配当金の受払、海外援助の受払などを含めた取引のことであり、これらの経常取引を束ねた統計が、「経常収支」となる。
経常収支が黒字だということは、企業が海外から得た外貨の総額が、企業が海外向けに支払う外貨の総額よりも多いということを意味している。日本の企業は獲得した外貨を外国為替市場で売却して、円に換える必要がある。経常収支が黒字であれば、円の需要が強まるため、円高が進むことになる。その逆で、経常収支が赤字であれば円安が進むことになる。
   図表1 日本の2021年度の貿易収支
経常収支の中でも重要なのが貿易収支である。貿易取引には必ず通貨の売買が伴うので、為替レートに与える影響が大きいからだ。財務省が4月20日発表した2021年度の貿易統計速報によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は5兆3749億円の赤字と過去4番目の赤字幅を記録、このことが2021年度に進んだ円安トレンドのベースにある(図表1)。
なぜ貿易黒字への転換は「難しい」のか
貿易黒字に転換するためには、輸出を増やすか輸入を減らすか、その両方を進める必要がある。以前の日本なら、円安時にドル建ての価格を引き下げることでアメリカ向けの輸出が増えた反面、輸入が減ったので貿易収支が改善した。しかし現在の日本では、生産拠点の海外移転が進んだ結果、かつてほど完成品を作っていないため円安でも輸出が増えにくい。他方で、輸入を減らすことも難しい。特に難しいのが、石油やガスといった鉱物性燃料の輸入を削減することだ。再び2021年度の貿易統計速報を見てみると、鉱物性燃料の輸入額は19兆8001億円と輸入総額91兆2354億円の21.7%を占めていた。2020年度の鉱物性燃料の輸入額は10兆5878億円であるから、1年間で倍近い伸びだ。
鉱物性燃料の輸入額が急増した最大の理由は、価格の急騰にある。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界景気の悪化を受けて、石油やガスといった鉱物性燃料の価格は2020年に急落した。しかし世界景気の回復や産油国の協調減産を受けて、2021年に急騰した。その結果、日本の鉱物性燃料の輸入額も急増を余儀なくされたかたちだ。日本の場合、そもそも鉱物性燃料に乏しいことに加えて、2011年の東日本大震災以降、原子力発電の多くを停止したため、火力発電への依存度が高まっている。石油やガスの価格が高騰すれば、貿易収支はすぐに赤字化する構造になっている。円安の議論の中で原発の再稼働が語られる背景には、このような日本の貿易収支の特徴がある。
EUでも貿易赤字が定着へ
またヨーロッパでも、日本と同様に貿易赤字が定着しつつある。欧州連合(EU)27カ国のうち、統一通貨ユーロを導入している19カ国をユーロ圏と呼ぶ。そのユーロ圏の2022年1月の貿易収支は3カ月連続で赤字となり、貿易赤字が定着しつつある(図表2)。その理由も日本と同じで、石油やガスの輸入額が2021年以降に急増していることにある。特にEUの場合、主要なエネルギー源である天然ガスの輸入の約半分(欧州委員会によると2021年時点で45.3%)をロシアに頼っていた。それが主にスポット契約(必要に応じてその都度行われる契約)で行われていたため、天然ガスの価格高騰の影響を強く受けることになった。とはいえ、これはあくまで2022年1月までの話であることに留意したい。2022年2月24日、ロシアはウクライナに軍事侵攻した。この事態を受けて欧米を中心とする国際社会は、ロシアに対する経済・金融制裁を強化した。さらに欧米各国は、安全保障上の理由からロシア産の鉱物性燃料の利用を削減する方針を相次いで表明した。EUの場合は2030年までにロシア産の鉱物性燃料の利用をゼロにする方針になっている。
   図表2 ユーロ圏の貿易収支
EUは鉱物性燃料のそもそもの利用量の削減と、液化天然ガス(LNG)の輸入量の増加で脱ロシア化を図ろうとしている。しかしタンカーを用いたり加工のプロセスが必要となったりする分、LNGの輸入コストはパイプラインを用いるロシア産天然ガスよりも高くなる。このことはユーロ圏の貿易赤字を定着させる方向に働き、ユーロ安を促す。それだけではなく、鉱物性燃料以外の多くの原材料、例えばEUが普及を進めたい電気自動車(EV)の生産に不可欠なニッケルなどの原材料などについても、国際社会による経済・金融制裁に伴いロシアからの供給が減ることを睨んで価格が上昇している。こうしたこともまた、ユーロ圏の貿易赤字を定着させる要因になると考えられる。
コストの上昇局面ではデメリットが大きい通貨安
もちろん、為替レートは経常取引だけで決まるものではない。特に、各国の中央銀行間の金融政策の温度差(金利差)を反映した資本取引(特に証券投資)や投機取引(膨大な資金を投入して短期的に利ざやを稼ぐ取引)は、為替レートを大きく左右する。3月から円安が急速に進んだ最大の理由は、アメリカの利上げで資本取引や投機取引が増えたことにある。とはいえ、為替レートを考えるうえで、経常収支、特に貿易収支は最も重要な要素となることに変わりはない。通貨の取引はあくまで経常取引が基本であるため、貿易黒字が潤沢であれば、金利差の拡大で資本取引や投機取引が増えても、通貨安はそれほど進まないものだ。しかし貿易赤字であれば、通貨安に対する歯止めが利かなくなってしまう。本来、通貨安や通貨高にはそれぞれメリットやデメリットがあり、そのどちらが勝るかはその国の経済の構造によって変わるものだ。しかし現状のように、石油やガスだけではなく、さまざまな原材料のコストが上昇している局面では、通貨安ではメリットよりもデメリットの方が勝る。つまり、インフレの加速につながるわけだ。
円安の長期化が「コストプッシュ・インフレ」を進行させる
円安であれば、海外から輸入するときのコストが増える。1ドル100円だったモノを1ドル150円で輸入すれば、コストは1.5倍だ。コストが増えた分だけインフレが進むことを「コストプッシュ・インフレ」という。円安が長期化すれば、このコストプッシュ・インフレが進み、われわれの生活に悪影響が及ぶことになる。インフレが加速しても、それ以上に所得が増えるなら問題はない。しかしそのためには、経済が堅調に成長している必要がある。景気が低迷したままでは、十分な賃上げは望めないからだ。そうした中でインフレだけが加速すれば、所得は実質的に目減りしてしまうことになり、そのことがまた景気の低迷につながってしまう。2022年3月のユーロ圏の消費者物価(総合指数)は前年比7.5%上昇と統計開始以来の高水準となっている。また同月の日本の消費者物価(同)は同1.2%上昇と、ユーロ圏に比べればまだ低いが、着実にインフレは加速している。日銀のインフレ目標である2%(ただし生鮮を除くコアベース)を超える日も、そう遠くはないかもしれない。今後はロシアによるウクライナ侵攻の影響から、石油・ガス価格の高止まりが予想される。
そのため鉱物性燃料の使用量を削減でもしない限り、日本で貿易収支が黒字化する展望は描きにくい。もちろん、為替相場は変動を繰り返すものだが、このままでは円安トレンドが中長期的に定着する可能性が高いのではないだろうか。
●「悪い円安」論に違和感、金融政策とのリンクは危ない道に 4/26
「悪い円安」という言い回しが、このところマスコミ報道で多用されているように思う。もっとも、筆者は証券会社に籍を置き、金融市場参加者向けを含む各種媒体を通じて新たな情報を時々刻々追っているので、そのように感じるだけなのかもしれない。
「普通の人」から遠い存在の悪い円安
そこで、新聞記事検索ツールを用いて、今年に入ってから4月24日までを対象に、「悪い円安」という表現を含む記事の数を調べてみた。
すると、最も多かったのは日本経済新聞の36(朝刊32・夕刊4)。日経は電子版にも掲載記事が57あった。一方、経済ニュースの比重が日経よりも低い全国紙の場合、ここまでは多くない。産経が24と多めだが、あとは毎日が8、朝日が6、読売が5となっている。国内2大通信社では、時事が17、共同が7。NHKニュースは4。ちなみにロイターニュースは17である。
このように見てみると、「悪い円安」というコンセプトは、日ごろから経済の前線で戦っているビジネスパーソン、なかんずく金融市場関係者の間では相当ポピュラーだが、経済情報との接点が日常的にさほど多くない一般の人々の間では、あまり知られていないと考えられる。
物価高の「主犯」は日銀と考える人々から怨嗟(えんさ)の声が上っている、というような話は全く聞こえてこない。「普通の人々」の1人と言えそうな知人に尋ねてみたところ、海外旅行に行く機会がコロナ禍でほぼなくなっていることが、為替に関する情報への関心度合いを相当低くしているようである。
白川前総裁の指摘
さて、その「悪い円安」である。ドル/円相場が急速にドル高・円安ドル高に動いて一時129.43円をつける過程で、さまざまなモノの値上げラッシュの原因として、この相場水準は「悪い」という趣旨の報道が多くなった。
だが、そうした空気が広がる中でも、冷静な見解を口にする識者の姿も散見された。筆者が最も注目したのは、かつて金融危機後のドル安・円高急進行への対応に苦しんだ経験がある、白川方明前日銀総裁の発言内容である。
時事通信が4月11日に配信したインタビュー記事の中で白川氏は「円高も円安も『良い』『悪い』で評価する議論には違和感を覚える。為替レートと金融政策を直接結び付けているように感じられるからだ」と述べた。筆者のみるところ、真実を突いた発言である。
さらに白川氏は「議論すべきは、金融政策が持続的な成長を脅かすバブル経済をはじめとするさまざまな不均衡を生み出していないか、といった幅広い点検だ」「物価目標であれ為替レートであれ、そこにフォーカスした議論は判断を誤る」とも述べていた。
ドル/円相場のある水準が日本経済にとって、メリットとデメリットの差し引きで「良い」か「悪い」かがすぐわかるような計算式は、どこにも存在しない。経済主体ごとに良し悪しは変わってくるはずであり、たとえば129円という水準は、自動車など輸出関連企業や、外貨建てで配当される海外収益の比重が高いグローバル企業には「良い」水準である可能性が高い。
その一方で、同じ相場水準は、ドル建ての原油など資源の輸入契約を多く抱えている輸入関連企業にはネガティブだろう。家計にとっては、身近な食品などの値上がりにつながるため総じてネガティブなのだろうが、為替予約をつけていない外貨建て運用を大きな金額で行っている場合は少数派ながらポジティブということも考えられる。
妥当でない円安副作用と金融政策のリンク
企業物価指数の上昇率が足元でかなり高くなっているのは、明らかに「資源高」が主因である。3月の輸入物価指数を見ると、契約通貨ベース(多くの国際商品の場合はドル建て)の上昇率が前年同月比プラス25.2%であるのに対し、為替相場の影響が加味されている円ベースでは同33.4%。大まかに言えば、前年同月と比べた場合の輸入物価上昇の4分の3は資源高によるものであり、残りの4分の1だけが円安要因である。
なお、輸出物価指数を見ると、契約通貨ベースが同7.9%であるのに対し、円ベースでは同13.1%であり、輸出関連企業にかなりの円安差益が生じていることもうかがえる。
日銀短観(企業短期経済観測調査)3月調査で、輸出企業の2022年度事業計画の前提となっている為替相場は、ドル/円が111.01円、ユーロ/円が128.04円だった。足元の市場実勢に照らし合わせると、大幅な為替差益が見込まれる。そうした事情があるからこそ、円安に対して日経平均株価が株高で反応する場面が、引き続き見られているのだろう。
この問題にはほかにも論点がいくつかあるのだが、いずれにせよ、このところ急ピッチで進行した円安は「悪い」と定義付けた上で、日銀に金融政策変更でそれを押し返すように求める議論の根拠は、かなりあいまいで、不確かなものである。
さらに白川氏が示唆している通り、為替相場に事実上連動させるかのような金融政策運営は、不安定なものにならざるを得ず、日銀のありようとして明らかに望ましくない。
為替相場のある特定の水準が「良い」「悪い」いずれなのかの判断を無理に下そうとすることや、為替政策は政府(財務省)が所管しているにもかかわらず日銀に引き締め方向の政策対応を安易に求めることは、いずれも妥当ではないという見解を、筆者は維持している。
●20年ぶり円安、日本企業の勝ち組・負け組探る 4/26
ドル・円相場が一時1ドル=129円台と20年ぶりの円安水準に振れたことで日本の企業業績にどのような影響を及ぼすのか、投資家にとって銘柄選別の重要な判断材料の一つに浮上している。専門家の声を基に勝ち組・負け組企業を探ると、従来から円安恩恵、逆風業種とみられてきた以外にも顕著な影響が出そうな企業の姿が見えてくる。
野村証券の池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストは、円安は「海外需要や売上比率の高いセクターにポジティブ」と分析した上で、「円安で業績が後押しされる面があり、企業がそれに甘えてしまい、体質改善しないと次がしんどくなる」とみている。
同証によると、円安の継続によって業績面でプラスの影響を受けやすい業種は電子材料や非鉄金属だ。半導体ウエハーの信越化学工業やSUMCO、半導体用フォトレジストの東京応化工業に加え、スマートフォン向け高精度基板や偏光板の市場シェア拡大が期待できる日東電工の業績が好調に推移する可能性を予想した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一アナリストは、自動車業界について「為替が最大の業績スイングファクター」だと指摘。対米ドルなどの円安進行が完成車や海外生産用の部品の輸出採算の改善につながり、海外子会社の利益を連結決算に取り込む際に円建て換算金額が拡大し得るという。
三菱モルガンではトヨタ自動車、SUBARU(スバル)、マツダなどの日系主要完成車メーカー8 社の今期(2023年3月期)の合計営業利益は、楽観シナリオで前年同期比36%増の6兆6650億円と「円安頼みの増益」を予想している。
しかし、原料コスト増につながる資源価格の急騰も相まって、製造業に足元の円安を歓迎するムードはない。JFEホールディングス傘下JFEスチールの岩野利哉営業総括部長は21日の会見で、円安により輸出部分で手取りが増えるのでプラス要因になる一方、ほとんどの原料は輸入に頼っており、プラスとマイナスの両面があるとの見解を示した。
昔のような恩恵ない
「政府を含めて悪い円安という言葉がでてきているので、必ずしも昔のような鉄鋼業を支える円安ではない。ただ、総合的な影響はこれからよく見極めたい」と述べた。
住友商事グローバルリサーチの本間隆行チーフエコノミストは、円安のメリットを確保するために「輸出を増やさないといけないが、誰が買うのかというのが一番大きな問題」のほか、企業側にすぐに輸出を増やせるような機動力もないと述べた。
さらに、自動車業界でも部品不足や労働力が限定されており、「供給面でも制約があり、日本国内で自動車の生産台数をすぐに増やすことはできないだろう」とみている。
また、製造業各社が過去の円高傾向を受けて、為替の影響を回避するため製造拠点を海外に移転させてきた経緯もある。米モーニングスターの伊藤和典アナリストは、過去約10年間で各社が積極的に海外移転を進めた結果、円安メリットは受けられたとしても「以前ほどのインパクトはない」との考えを示した。
ソフトバンクGは86%がドル連動資産
時価総額が約8兆9000億円と、今や世界の人工知能(AI)テクノロジー企業への投資会社となったソフトバンクグループも円安の恩恵を顕著に受けそうだ。投資調査会社レデックス・リサーチのアナリスト、カーク・ブードリー氏は同社の資産価値の86%がドル連動資産だと指摘。
円安は「ソフトバンクGにメリットがある」と分析した。同氏がアナリスト分析情報サイト「スマートカルマ」に21日に配信したリポートによると、ドル円が前年同期比で12%変動すると、資産価値は約9%上昇すると試算した。
また、昨年11月に1兆円の自社株買い計画を発表したソフトバンクGにとっては、ドル建てコストの減少が「二つ目の恩恵」だとブードリー氏は指摘。一方、円安は同社のネット有利子負債を増加させる要因にもなるとみている。
このほか、三菱モルガンの村上宏俊アナリストはゲーム関連で、海外売上高比率の高い任天堂が為替変動による影響を大きく受けると分析。今期は対ドル1円の円安で11億円の営業増益要因になる。映画では、海外売上高比率の高い東映アニメーションと東映は円安が増益要因になるとした半面、東宝は大半が国内収益のため、影響はほぼないという。
オフィス賃料に負の圧力も
一方、野村証ではエネルギー価格の上昇と円安の進行は輸入原燃料を多く使う紙・パルプやセメント、ガラスセクターにとって大幅なコスト上昇につながると警戒している。
日本政府がロシアからの石炭輸入を段階的に減らし、最終的に輸入しない方針を示したことで、セメント各社の23年3月期の利益は大きく落ち込むと予想。ロシア炭への依存度が高い太平洋セメントや住友大阪セメントは、他地域の石炭に切り替えれば、一段のコスト上昇につながる可能性があるという。
不動産業界は、円安や物価高を背景にした企業業績の低迷からオフィスなどの賃貸料が今後下落する見通しで、特に不動産賃貸業に大きな影響が出るとみられている。不動産助言会社のアイビー総研の関大介社長は、販売価格に転嫁できない商店が入る商業施設や、収益が圧迫されている企業が入居するオフィスビルは賃料値下げの圧力を受けるため、住友不動産などが大きな影響を受けやすいと話した。
また、新型コロナウイルス禍で空室率が上昇する中、森ビルの「虎ノ門・麻布台プロジェクト」や三井不動産の「東京ミッドタウン八重洲」など大規模再開発事業の完成に伴って23年はオフィスビルの供給も増加することから、業績が低迷する可能性は「かなり高い」とみている。
●緊急事態一時1ドル129円台 約20年ぶりの円安水準!! 円安と自動車業界 4/26
4月20日の東京外為市場で米ドルが一時129円台に突入した。これは2002年5月17日以来、約20年ぶりのドル高・円安水準。ここまで円安が進むと、自動車業界に与える影響はどうなるのか? 過去の円安の時を振り返りながら、元外資系証券マンであるモータージャーナリストの柳川洋氏が解説していく。
日米金利差拡大・地政学リスクの上昇で20年ぶりのドル高・円安が進行
為替市場では2002年以来約20年ぶりの円安が進んでおり、4月20日には一時1ドル=129円台をつけた。
この記事を執筆している時点では1ドル=128円台で取引されている。ドルやユーロなどの外貨の価値が上昇して、円の価値が下がるのが円安。今年の初めには、ドルと円を交換する時、1ドルと115円の交換だったのが今は128円払わないと1ドルもらえない。
ドルやユーロなどの外貨の価値が上昇して、円の価値が下がるのが円安。今年の初めには、ドルと円を交換する時、1ドルと115円の交換だったのが今は128円払わないと1ドルもらえない。
この円安の理由にはさまざまあるが、大きく言うと2つの点の影響が大きい。
1点目は日米の金利差の拡大。日本はコロナの影響が比較的小さかったにもかかわらず、コロナ前のGDP水準にまだ回復していないが、アメリカは1年前にすでにコロナ前に回復。
またコロナの混乱もあり自動車も含めモノの供給が一部まだ滞っていることから、世界的にモノの値段が上昇しており、アメリカの中央銀行であるFRBが、物価上昇を抑えるために政策金利を引き上げ、世の中に出回っているおカネの量を減らす方向へ政策転換。
にもかかわらず、日本銀行は、国内景気の先行きを懸念して低金利と量的緩和を続ける方向を示し、おカネに対する需給を表す金利がアメリカでは大きく上昇し、ドル資産を持つ魅力が高まった。
2点目は地政学リスクの高まり。小麦の輸出量では世界1位と5位のロシアとウクライナ。またロシアは世界2位の原油輸出国だ。
両国からの資源の輸出が制裁や戦争のために滞っており、人が生きていくのに欠かせない食糧とエネルギーを自給できない日本やその他の国は、ドル建てで取引される原油や穀物などの商品を確保するために、自国通貨を売ってドルを買う必要があるためドルの需要が高まっている。
これまでは円安になれば、インバウンド需要により外貨を売って円を買うフローが起きたため、一定程度のスピード調整があったものの、コロナ後は海外観光客の受け入れも実質的に止まっていることなども、一方的な円安が止まらない理由の一つになっている。
円安という現象そのものは自動車業界にとってはプラス
基本的には円安は、日本の自動車業界にとってプラスだ。対ドルで1円円安が進むと、トヨタで400億円、ホンダで120億円、日産で130億円ほど、本業のもうけである営業利益が増加する要因になる。
自動車メーカー各社の2022年度の想定為替レートは1ドル=110〜112円程度なので、仮に今期の平均為替レートが想定レートより15円円安の1ドル=125〜127円程度で推移すると、ざっくりトヨタで6000億円、ホンダで1800億円、日産で1950億円もうけが増える。ものすごい額だ。
その仕組みはこうだ。たとえばトヨタは、昨年1年で日本から海外へおよそ176万台を輸出。昨年の世界生産量は約858万台、うち日本での生産は約288万台なので、輸出の占める割合は大きい。
アメリカ向けに原価250万円のクルマを日本で作った場合、為替が115円だった今年の初めには約21700ドル相当だったのが、今128円だと約19500ドル相当となる。
つまり円安によりドルで見た原価がおよそ1割下がるため、アメリカでの利益も増え、現地メーカーと比べて価格競争力が高まるせいで販売台数も増えることになる。
また仮に海外子会社のもうけが変わらなかったとしても、円安が進めば円に換算した利益は増えることになり、これもプラス材料になる。
円安は手放しで喜べるわけではない
ただし円安はメリットばかりではない。クルマの原材料や部品の一部は海外から輸入されるため、円安になると原価の上昇要因となり、円安メリットを一部帳消しにする。
またやや例外的だが、かつて円高で苦しんだマツダは、メキシコなどでの海外生産の規模を大きく広げたため、円安の恩恵は受けられず、むしろ営業利益が減ってしまう要因となる。
またクルマのような高額商品の値段が急に高くなったり安くなったりすると、駆け込み需要や買い控えが起き、計画的・安定的に生産ができなくなる。そのため、為替相場が大きく変動しても、機動的に製品価格を上げたり下げたりすることは簡単ではない。
よく「急激な相場の変動は望ましくない」と政府高官や財界人が発言するのはそういう意味がある。乱高下を伴った円安は、恩恵ばかりとは言えない。
加えて、円安の原因を考えれば、手放しで喜んでいいわけではないことがわかる。コロナ後の経済の回復が日本だけ遅いということは、日本人の給料が上がりにくいことを意味する。
そのなかでガソリンや食料品など海外から輸入されるものの値段が上がるということは、実質的に賃金が下がっていることになる。そうすれば日本国内でクルマを買う人も少なくなる。
またアメリカでの金利の上昇は、ローンを組んでクルマを買う大部分の消費者にとっては頭痛の種でしかなく、今あるクルマを長く乗ろう、という動きが出て新車販売に影響する。
地政学リスクの高まりは、グローバル産業である自動車メーカーにとって長期的視点でデメリットも大きい。ガソリン価格上昇によるクルマの乗り控えも起きる。今年の冬にはロシアへのエネルギー依存の高いヨーロッパでは石油不足や電力不足が起きる可能性が高い。
石炭火力発電の再開など、これまでの急進的なカーボンニュートラル化に逆行する動きが出て、EVの電池生産に不可欠なレアメタルなどの原材料価格の上昇や電力価格の上昇も加わり、EVへの需要が急激に落ち込むことも十分考えられる。
急激にEV化へ舵を切った自動車メーカーにとっては少なからぬ打撃となるだろう。
円相場が1ドル=70円台という超円高だった2011年は、「自動車メーカーにとって企業努力の限界を超える危機的な状況で、日本国内では雇用維持もままならず、海外へ生産拠点を移さざるを得ず、国内産業が空洞化する」という悲痛な訴えが当時の自工会会長からもあった。
それに比べれば今回の円安方向への推移は、自動車業界にとっては当然に恩恵の方が多い。だがやはり誰にとっても一番望ましいのは、偉いおじさんたちが口を揃えて言うように、急激な相場の変動がない、安定した平和な世の中が続くことだ。
●東京為替見通し=ドル円、「原油高・物価高対策」での円安抑制措置に注目 5/26
25日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、世界経済の成長鈍化懸念からダウ平均が一時480ドル超下落し、米10年債利回りが2.75%台まで大幅に低下したことで127.52円まで下落した。ユーロドルは欧州の主要株価指数が軒並み下落したことで1.0697ドルまで下落した。ユーロ円も136.49円まで連れ安に推移した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、本日岸田政権が策定予定の原油高・物価高対策での円安抑制措置に注目する展開となる。
一部報道によると、原油高・物価高対策では6.2兆円の国費が充てられ、民間資金を組み合わせた事業規模は13.2兆円になる。内容は、ガソリン補助金の拡大や中小企業の資金繰り対策、生活困窮者への支援などと報じられている。
今年夏の参議院選挙は、6月22日に公示、7月10日に投開票と予想されており、岸田政権は完勝を目指して、物価高の要因となっている「悪い円安」を抑制する措置を打ち出す可能性が警戒されている。また、27-28日の日銀金融政策決定会合では、イールドカーブコントロール(YCC)の変動幅拡大への警戒感が高まっている。さらに、28日に公表される経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、2022年度の消費者物価見通しが1%台後半に引き上げられて、30年ぶりの高水準となり長期金利上昇が容認される可能性にも要警戒となる。
すなわち、今週のドル高・円安に対するリスクシナリオは、岸田政権と黒田日銀の財政・金融政策による円安抑制措置となる。
中国政府は、昨日、人民元の下落阻止を打ち出した。オフショア人民元は、昨日、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めや中国経済の不透明感などから、ドルに対し1年5カ月ぶりの安値を付けた。中国人民銀行は、金融機関の外貨預金準備率を1ポイント引き下げ8%にすると発表し、人民元安を抑制する措置を打ち出している。
現状のドル高・円安は、日米の金融政策の乖離、日米10年債利回り格差の拡大観測などが背景にあることで、日本銀行の金融緩和スタンスの変更や指し値オペに代表される国債利回りの上昇抑制措置の撤廃などがなければ円安を抑制することはできない。
●東京為替:ドル・円はやや失速、円売りは一服 4/26
26日午後の東京市場でドル・円はやや失速し、127円90銭だにに値を下げている。午前中から続く円売りは一服し、主要通貨の対円での上昇はいったん収束したようだ。ただ、リスクオフによる円買いは後退しており、ドル・円、クロス円とも下値は堅い。
ここまでの取引レンジは、ドル・円は127円35銭から128円23銭、ユーロ・円は136円55銭から137円54銭、ユーロ・ドルは1.0707ドルから1.0738ドル。  
●東京株式 上げ幅拡大=円安で買い増加 4/26
(後場寄り)26日午後の東京株式市場は、為替相場が円安方向に振れたことを受け、買いの勢いが増す流れになっている。日経平均株価は上げ幅を拡大させ、前日比181円06銭高の2万6771円84銭で始まった。
(前引け)【プライム】米国株の反発を好感した買いや、前日まで相場が大きく下落した反動による自律反発狙いの買いが優勢となった。ただ、主要企業の決算を見極めたいというムードも強く、上昇幅は限定的だった。日経平均株価は前日比135円87銭高の2万6726円65銭と反発した。東証株価指数(TOPIX)は3.48ポイント高の1880.00と小幅高。
61%の銘柄が値上がりし、値下がりは34%だった。出来高は4億8300万株、売買代金は1兆2344億円。
業種別株価指数(全33業種)では、ゴム製品、陸運業、サービス業の上昇が目立った。下落は非鉄金属、鉱業、海運業など。
【スタンダード】スタンダードTOP20は小幅安。出来高1億3521万株。
【グロース】グロースCore、マザーズ指数はともに上伸。
(10時)日経平均株価は堅調。「米国株高を好感した買いや自律反発狙いの買いが入った」(大手証券)ことで、寄り後には前日比186円高の2万6777円まで上昇した。ただ、上値では戻り売りも出るため上昇幅は広がらず、2万6700円付近でもみ合っている。
業種別株価指数(全33業種)ではゴム製品や情報・通信業、不動産業などが上昇率が1%を超えてしっかり。半面、原油安を反映し、鉱業が大幅安となっている。
(寄り付き)26日午前の東京株式市場は、前日の米国株高を好感して買いが先行している。日経平均株価は3営業日ぶりに反発、前日比152円43銭高の2万6743円21銭で始まった。
●円安再燃を警戒しつつも、基本は調整継続か 4/26
〇本日のドル円、日米株価の動きや政府要人発言などを受け、128円挟みの乱高下、明確な方向性乏しい
〇4/20の年初来高値129.41示現後127.46-129.41というレンジ取引、本日東京時間に下限を一時下回る
〇引き続き127-128円台中心の時間調整の様相だが、ドルの下値余地拡大した感も、ドル続落にも注意
〇本日欧米時間のドル/円予想レンジは127.10-128.50、本日東京高値である128.20-25が最初の抵抗
〇ドル安・円高方向は東京安値の127.35レベルの攻防に注目、割り込めば127円割れの可能性も
東京市場の動き
26日の東京市場は往来相場。日米株価の動きなどに一喜一憂、128円挟みの乱高下で明確な方向性は乏しかった。
ドル/円は128.10-15円で寄り付いたものの、上値も重くドルは上げ渋り。日米株価の動きや、鈴木財務相をはじめとする政府要人の発言などを受け、右往左往するなか一時は調整的なドル売り・円買いが先行。127円台前半まで値を崩したが勢いは続かず、そののち反転すると再び128円台を回復するなど「行って来い」に。16時現在では、127.95-00円で推移し、欧米市場を迎えていた。
一方、材料的に注視されていたものは、「ロシア情勢」と「円安けん制発言」について。
前者は、ロシア露国防省が「ドンバスの武器輸送インフラを爆破した」と明らかにするなど、ウクライナ国内での戦闘は依然として継続。そうしたなか、ラブロフ外相から「NATOなど西側からウクライナに供与された武器は正当な標的になる」、「第3次世界大戦の危険は現実のものであり、過小評価すべきでない」といった発言も聞かれている。停戦に向けた活動も観測されているものの、あまり明るい前途は描けない。
対して後者は、先週末にTBSが報じた「日米財務相会談で協調介入議論」との話を、週末にロイターが否定。財務省幹部の話として「TBSの報道は事実に反しており、当局として取材に応じた事実もない」と指摘していたが、本日になり鈴木財務相が改めて「為替介入議論あったとの報道は事実に反する」とコメントしていた。なお、その一方で安倍元首相から「いまの水準は日本経済にとって懸念ではなくプラスになる」、渡辺元財務官も「130円や135円は日本経済にとって悪い水準でない」と、従来とは一線を画す円安容認発言が聞かれていたという。
欧米市場の見通し
20日に年初来高値129.41円を示現したのち、ドル/円は調整と思しき動きをたどっている。チャート的には127.46-129.41円というおよそ2円幅のレンジ取引で、価格ではなく時間調整の様相だったが、本日東京時間にレンジ下限を一時下回ってきた。ドル続落の可能性も否定できず、このあとはドル下値の攻防に注目だ。ちなみに、テクニカルには127円を割り込む危険性も取り沙汰されている。
来週3-4日に開催される米FOMCの「0.5%の利上げ」はほぼコンセンサスであり、日米金利差拡大観測を背景とした、基本的なドル高・円安傾向に変化は見られない。また、ドル高の調整を後押ししてきた本邦要人などによる「円安けん制発言」だが、前述したように若干風向きの変化もうかがえる状況だ。「円売り安心感」の再燃から、欧米投機筋などが再び積極的な円売りに動いても不思議はない。東京時間から流れが一変した動きにも一応要注意。
テクニカルに見た場合、ドル/円は引き続き127-128円台を中心とした時間調整の様相だが、本日東京時間にその下限を一時下回るなど、幾分ドルの下値余地が拡大した感もある。ドルの続落にも注意を払いたい。
しかし、逆に東京でドル下値トライを失敗したとの見方から、短期的には一転しての上値追い、再びドルの戻りをうかがう動きを見込む声も一部で聞かれていた。
材料的に見た場合、中長期的には新型コロナ感染が増加し、首都・北京で異例のロックダウン実施観測も取り沙汰されはじめた「中国情勢」。「Xデー」と言われた25日の夜に大規模パレードを実施したとされる「北朝鮮情勢」、「新型コロナ・オミクロン株蔓延問題」−−などに注目。
一方、本日は米経済指標として、4月の消費者信頼感指数や同リッチモンド連銀製造業指数などが発表される見込みだ。また、本日はドイツにある米軍基地で、同盟国など20カ国以上が参加したウクライナへの軍事支援を主題とする国際会議を開催されるほか、国連事務総長とプーチン露大統領の会談などが予定されている。広義政治ファクターにも要注意か。
そんな本日欧米時間のドル/円予想レンジは127.10-128.50円。ドル高・円安方向は、本日東京高値である128.20-25円が最初の抵抗。上抜けても、短期的には129円は少し遠いイメージか。対するドル安・円高方向は、やはり東京安値の127.35円レベルの攻防にまず注目。割り込めば127円割れも否定できない。
●円安で夏頃には値上げが加速!これから「高くなるモノ」とその対策は? 4/26
「老後がもうすぐなので、失われた20年なんてことになったら、怖くて投資できない」と、投資ビギナーに、このように聞かれることがある。
失われた20年と言っても、株価は変動している。例えば日経平均株価は、上下を繰り返しながらも上昇を続けているのだ。20年間、ずっと株価がただ下がっていた訳ではない。
昨年の4月7日付日本経済新聞電子版に『バブル後日経平均 長期低迷でも「資産 2.4 倍」の謎』という分かりやすい記事があるので読んでみて欲しい。一部を引用すると「バブル崩壊後の90年1月から日経平均に連動する投信(実質的に配当込み指数に連動)があったとして、毎月3万円を積立投資していたら、20年末までの累計積立額は1116万円。じゃあ資産はいくらになったと思う? ……1500万円くらい? 20年末の資産は2668万円。累計積立額の2.4倍だ」
失われた20年でも2.4倍になっていたのだ。「失われた20年」とマスコミが使っている言葉に惑わされて「投資は危ないもの」と誤解しないで欲しい。もちろん、投資を始めるならば正しいやり方はあり、それを学ぶことは前提だ。
なぜ円安が進んでいるのか?
急激な円安が続いている。加えて小麦や原油価格も上昇しているので、食品やガソリンが値上がりして家計を圧迫している。外貨建ての株や債券などの資産や、外国株や海外債券の投資信託など間接的な外貨建て資産を保有していない方は、資産が目減りしているだろう。
なぜ円安が進んでいるのか? 米国では政策金利を引き上げる方向に進んでいるが、日銀は金利の上昇を抑えているから金利の低い円を買わずにドルを買う流れが続いているのだ。さらに日本の貿易赤字も拡大している。それも円安になる原因となっている。
今は企業努力で値上げを抑えていても、夏頃には値上がりするモノが増えてくると予測できる。物価上昇のタイミングは、商品やサービスによってズレがあるのだ。例えば小麦の値上がりで麺類やお菓子が既に値上がりしている。しかし今後も小麦の価格が上昇していけば、肉類の価格も上がると予測できるのだ。牛や豚、鶏の飼育には小麦を含む大量の穀類が必要だ。小麦価格の上昇だけでなく他の穀類も上昇している。トウモロコシの年明け以降の平均価格は、昨年の平均価格を上回っている。
夏頃に値上がりするモノやサービスは?
肉類の価格の上昇が続けば、外食サービスも値上がりしていくのは想像に難くないだろう。すでに低価格のチェーンは値上げをしているが、今年の夏頃にはさらに値上げする外食サービスが多くなると予測できる。肉類の高騰と原油価格の上昇でエアコンなどの費用もかさむからだ。
また原油価格が上がってガソリンや電気料金がすでに上がっているが、バスやタクシー代も夏頃に値上げされると考えられる。さらに原油価格の上昇が続けば電車代なども値上がりする可能性さえもあるのだ。マンション価格も木材などの資材価格が高騰しているので今後もまだ値上がりすると考えられる。
日本企業は、原材料の価格上昇に企業努力で値上げを抑えているから給与が上がるとは考えにくい。給与が上がらず、モノやサービスの価格が今後も上昇するのならば今から収入を上げる努力をしなければ、現在と同じ水準の生活は守れない。投資を家計に取り入れることも真剣に考えておくべきだ。
投資をしたらお金が減ってしまうのか?
冒頭の質問以外にも投資ビギナーによく聞かれるのは、「投資をしたらお金を減らしてしまうのではないか?」という質問だ。投資でお金を減らすということは「含み損」がでている時に売却してしまうことだ。含み損とは、実際の損失ではなく「時価」が購入時よりも減っている状態のこと。その「含み損」の状態の時に、売却してしまうと「損を確定する」ということになり、資産を減らしてしまう。
例えば保有している株がマイナスになり、怖くなって売却してしまえば「損を確定」してしまい、お金を減らしてしまう。逆に含み損のマイナスを我慢でき、さらにその金融商品がプラスの「含み益」に転じた時に売却できれば、お金を減らしてしまうことはない。もちろん、その金融商品が再び含み益になることが前提なのはいうまでもない。「投資をしたらお金を減らしてしまうのではないか?」と、心配する方は、どのくらマイナスになってもメンタルが平常でいられるための金融商品の選び方が大事なのだ。
投資ビギナーにあった金融商品は?
投資と聞くと、真っ先に「株」を思い浮かべる方が多い。株式投資とは、個別の企業に投資をする方法だ。好決算や赤字といった企業の業績や政治や経済の影響を受けて価格が上下する。この企業の今後はどうなるのか予測するのは投資ビギナーには難しい。
企業の決算書なども読まなければならない。決算書を読まなければ投資ができないのかというと、そういうことではないのだが、株式投資は学ぼうとすると色々な手法があるので際限なく学ぶことにもなる。投資ビギナーならば、投資信託の方が安心だ。インデックス型の投資信託ならば、日本や世界の株式市場の代表的な株価指数と同じように上昇していく。株価指数とは、株式相場全体の状況を示すために、個々の株価を一定の計算方法で総合的に数値化したものだ。
もちろん投資信託でも政治や経済の影響を受けて上がったり下がったりする。だが、株式投資のように倒産して株に価値がなくなるということはない。価格の上げ下げは、個別企業に依存していないので価格変動のリスクを分散できるのだ。投資信託は、プロのファンドマネージャーが銘柄の入れ替えをしている。基本的には、良い銘柄だけが残っていくので右肩上がりに上昇していくのだ。これはインデックス型の投資信託でも同様だ。インデックス(株価指数)の銘柄の入れ替えがあるからだ。
投資信託を長く保有すると?
なぜ投資信託を長く保有することでお金が増えるのか。例えば、NISA制度が始まった2014年1月の日経平均株価は、1万5908円だった。この時に購入して2022年まで保有を続けていたとしよう。日経平均株価は、4月25日の終値で2万6590円だ。ロシアの侵攻のさなかでも約1.7倍になっているのだ。2014年から9年間保有していたら1.7倍になるのだ。
また、長期間積立買付することで値動きの幅が縮まってくることが知られている。運用成績の悪い時期と良い時期がならされて収益率が安定する傾向があるのだ。「いつ売却したらいいですか?」という質問も多くいただくが、5年以上保有しているのならば売却するのは「お金を使う時期」がきた時でいい。
筆者も子どもの大学費用で、積立していた投資信託や株を一部売却した。使う時期が決まっていたので前年からリターンの高いものから売却して預金に変えておいた。すべてを売却することはなく一部売却しただけなので、大きく資産が減ることはない。お金を長持ちさせることができるのが、投資の魅力的なところだ。 

 

●注目の黒田総裁会見 ”円安”進行の中、日銀金融政策決定会合開催へ  4/27
日銀の金融政策決定会合がきょう27日・28日の2日間で開かれる。
今月20日に1ドル=129円台をつけるなど20年ぶりの水準まで円安ドル高が進む中、会合後の会見での黒田総裁の発言に注目が集まる。
急激な円安について、鈴木財務大臣からは牽制する発言が繰り返される一方、日銀の黒田総裁は、「マイナス」だとしながらも「日本経済全体としては円安はプラス」という基本スタンスを崩していない。
円安の進行に歯止めをかけるには、日銀が続けてきた大規模な金融緩和からの方向転換が効果的だ。
しかし、日本は新型コロナからの景気回復で欧米に遅れをとっている上に、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて原油など資源や穀物の価格が一段と上昇。
黒田総裁は、国際的な資源価格を反映して今後国内の消費者物価は一時的に上昇するものの、日銀が目標とする「安定的・持続的な2%の物価上昇」、つまり賃金と物価が緩やかに上昇していく状態にはまだ距離があるとしていて、28日の会見でも大規模緩和の必要性を強調するとの見方が優勢だ。
市場関係者からは、「日銀の金融政策決定会合や黒田総裁の会見の内容次第では、投機的な円売りが強まり、1ドル=130円をうかがう展開もありえる」との声も聞かれる。
●日銀会合注目点:現行緩和維持の見通し、円安で市場に政策修正の思惑 4/27
日本銀行が27、28日に開く金融政策決定会合では、ロシアのウクライナ侵攻後の資源・食料価格の高騰が景気に及ぼす悪影響が懸念される中、金融緩和策を維持すると見込まれている。約20年ぶりの円安・ドル高水準を受けて政策修正への思惑もくすぶっており、黒田東彦総裁会見への関心も高い。
ブルームバーグのエコノミスト調査によると、9割が金融政策の現状維持を予想している。1割は政策金利の先行きを示すフォワードガイダンスについて、利下げに関する文言の削除など引き締め方向への変更があり得るとみている。
インフレ対応で引き締めにかじを切る米欧中央銀行と緩和を続ける日銀との方向性の違いを背景に、20日には1ドル=129円40銭まで円安が進んだ。市場では日銀が円安や金利上昇圧力を受けて年内に政策修正に動くとの見方が増えており、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の弾力化を見込む声も出ている。
黒田総裁は22日に米国で講演し、「日本の経済と物価の立ち位置は米国と大きく異なる」として金融緩和継続の必要性を強調した。当面、消費者物価(生鮮食品除くコアCPI)の前年比は2%程度に上昇する可能性があるとしながらも、エネルギー中心の「コストプッシュが主因で持続力を欠くものだ」との見解を改めて示した。
複数の関係者によると、会合後に公表する経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、2022年度のコアCPI見通しが1%台後半へ大幅に上方修正される可能性が高い。もっとも、日銀は新たに見通しを示す24年度にかけて物価が2%程度で安定的に推移する姿は描けないとみており、金融引き締めと受け取られかねない政策修正には慎重とみられるという。
鈴木俊一財務相は、原材料価格が高騰する中での円安は経済状況を踏まえると「デメリットをもたらす面が強い」と警戒を強めている。黒田総裁も18日の国会答弁で、円安が日本経済に全体としてプラスとの評価を変えていないとしつつも、「非常に大きな円安とか、急速な円安の場合はマイナスが大きくなる」との見解を示した。
みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは、通貨政策を担う政府が円安を嫌悪する情報発信をしている以上、「金融政策をつかさどる日銀も同じ方向を向くのが理論的には当然」と指摘。「全体としてプラス」が事実だとしても、日銀による情報発信は「バランスの取れた方向感のないものに変わっていく」とみている。
●東京円、11銭円安の1ドル=127円98銭〜128円  4/27
27日の東京外国為替市場で、円相場は午後5時、前日(午後5時)比11銭円安・ドル高の1ドル=127円98銭〜128円ちょうどで大方の取引を終えた。
米長期金利の上昇一服で急速な円安・ドル高の流れはいったん落ち着いている。日本と米国で金融政策を決める会合を控え、市場では売り買いが交錯している。
対ユーロでは、前日(午後5時)比56銭円高・ユーロ安の1ユーロ=135円96銭〜136円ちょうどで大方の取引を終えた。
●円安は再び一服、FRB利上げ加速に注意 4/27
円高反転への兆しか
ドル/円は再び一服した動きとなりました。3月の終わりに125円台を付けた後、121円台前半まで調整され、その後10日ほど一服して129円台に上昇しましたが、今回の一服は円高反転への兆しなのでしょうか。
あるいは、やはり一服しているだけなのでしょうか。もし、その場合、どのくらいの期間の一服になるのでしょうか。先週からのドル/円の動きを振り返ってみたいと思います。
先週は週初の126円台から円安スピードがさらに加速し、20日早朝には129円台を付けました。しかし、*G7や日米財務相会談を控えた警戒感から129円台は維持できず、128円台に下落しました。
その後日米財務相会談において協調介入が議論されたと報じられると128円を割り込み127円台後半まで下落しましたが、黒田東彦日本銀行総裁が米コロンビア大学での講演で、「円安でも積極的な金融緩和を継続する必要がある」と発言したとの報道が伝わると、再び129円台に乗せました。
ところが、「円が下落との部分はなく、円についての言及はなかった」との訂正報道によって128円台に下落し、米株の大幅下落や米金利の低下を背景に、ドル/円は128円台半ばで先週を終えました。
日米協調介入については、さまざまな臆測が流れていましたが、22日に米国財務省が、「イエレン米財務長官と鈴木俊一財務相は為替市場を含む金融市場の動向を協議し、為替レートに関してはG7や**G20の従来のコミットメントを維持する重要性を強調した」との声明を発表しました。
また、23日には、日本の財務省高官が日米財務相会談で日米協調介入が議論されたとの報道を否定しました。これらの声明や否定報道によって介入の臆測は打ち消されましたが、週明けの東京市場では特段影響がありませんでした。
鈴木俊一財務相も帰国後、26日の閣議後の記者会見で、日米財務相会談で協調介入について協議したとする報道について、「その報道は事実に反する」と述べ、否定しました。
・G7…カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の7カ国
・G20…G7の7カ国にアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合・欧州中央銀行を加えた20カ国・地域
日銀会合に注目
マーケットでは5月のFOMC(米連邦公開市場委員会)だけでなく、その前に開催される4月27〜28日の日銀金融政策決定会合の注目度が高まっています。
26日の為替市場では、海外時間にドル/円やクロス円の円高が進みましたが、日銀の決定会合を警戒して円売りポジションを縮めた動きではないかとの見方もあるようです。
日銀が28日に展望レポートで公表する2022年度の物価見通しを1%台後半に上方修正されるとの観測が出ています。
どの程度上方修正されるのか、そして物価見通しが修正される中で金融緩和政策維持についてどのような展望を日銀が描くのか、また、円安についての見方を変えないのかどうかを注目したいと思います。
少しでも政策変更(金融引き締め方向)につながるような材料が出れば円高に反応しますが、予想の範囲内の見通しであったり、政策変更なしの場合は、材料出尽くしあるいは失望感から再び円売りに動くことも予想されるため注意する必要があります。
FRB利上げ加速の警戒感
5月3〜4日のFOMCでは、0.5%の利上げが織り込まれたとはいえ、0.5%利上げの次の一手が加速するような内容が声明文や記者会見で示唆されると、ドル/円や長期金利も再び上昇を始める可能性もあるため注視する必要があります。
21日の討論会でのパウエル議長の発言が株式市場を揺さぶりました。
パウエル議長は次回FOMCでの0.5%利上げも選択肢と述べ、さらに2004年から2006年にかけて0.25%の利上げを続けた金融引き締め期を引き合いに出し、「当時よりもインフレ率はずっと高いし、政策金利はまだかなり緩和的だ。私の考えではもう少し早く動くのが適切と思う」と述べたことから、米株式市場では0.5%の次は0.75%とさらなる利上げの加速への警戒感から、米ダウは1,000ドル近く下げるほど急落し、その後も続落しています。
利上げの加速とは、5月、6月、7月で各0.5%の利上げだけでなく、6月か7月に0.75%、あるいは両月とも0.75%、あるいは6月0.75%、7月1%と、まさに利上げ幅を加速させるような見方です。夏場までに中立金利(2.25%)に一気に近づけるような利上げは、株式市場にショックを与え、長期金利は上昇し、ドル高が予想されます。
そして日銀の決定会合はゴールデンウィーク(GW)の前に開催され、FOMCはGW真っただ中に開催されるため、アジア時間帯は流動性の低下によって相場が乱高下する可能性があり注意する必要があります。GW中、あるいはGW後に次の方向が見えてくるかもしれません。
原油一服、食料上昇
25日の原油はWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で一時6%近く下落し、100ドルを割れました。北京など中国の都市封鎖が拡大していくことが懸念され、世界経済停滞による需要減少で原油が売られたようです。
3月と比べて原油価格も上昇一服となっていますが、食料価格は上昇を続けており警戒する必要があります。
4月8日、FAO(国際連合食糧農業機関)は3月のFFPI(FAO食料価格指数、2014〜2016年=100)が2カ月連続で過去最高値を更新したと発表しました。FFPIは、国際農産物市場の動向を監視するための価格指数で、肉類、穀類、植物油、乳製品、砂糖の5つのグループの価格指数から算出されています。
FAOは3月の上昇について、ウクライナ紛争が主要穀物と植物油の市場に影響を与えた、と説明しています。植物油は2月から23%の急上昇となり、3カ月連続で過去最高値を更新しました。ヒマワリ油はロシアとウクライナで生産の50%以上を占めていますが、紛争の中で輸出が減少したことにより、3月のヒマワリ油の国際相場は大幅に上昇しました。
FAOは「ヒマワリ油の供給が混乱したため、パーム油、大豆油、菜種油の価格も著しく上昇した」と分析しています。日本でもサラダオイルなど食用油が値上がりしていますが、まだこれからも値上がりするということになりそうです。
また、2021〜2022年の穀物世界貿易を、3月の見通しから3%引き下げています。ウクライナとロシアの小麦(世界の3割)とトウモロコシ(世界の2割)の輸出減少が影響しているようです。
そして農産物の食糧価格も注目ですが、同時に注目したいのは主要肥料の荷動きです。
ロシアやベラルーシは主要肥料の生産や輸出で上位を占めており、制裁によって主要肥料の物流が鈍くなれば、肥料自体の価格も上昇し、世界の農産物全般の生産や価格に影響を与え、食料不足や物価高騰によって社会が不安定になる恐れがあります。
原油価格一服によって物価の上昇もひと息つくかと思いきや、食料価格が高止まりもしくは上昇が続くとなると、各国の金融引き締めのペースは鈍ることがないかもしれません。一難去ってまた一難、なかなか気を緩める局面にはならないかもしれません。
●NY外為:ユーロ続落、ウクライナ戦争絡みの燃料危機による景気減速懸念 4/27
NY外為市場ではユーロ売りに拍車がかかった。ウクライナ戦争絡みの燃料危機による域内景気減速懸念が強まった。
ユーロ・ドルは1.058ドルから1.0534ドルまで下落し2017年3月以降5年ぶり安値を更新。ユーロ・円は135円60銭から134円99銭まで下落した。ユーロ・ポンドは0.8426ポンドから0.8389ポンドまで下落し22日来の安値を更新。 
●円安「よくある勘違い」8つの論点 1ドル140円が天井?悪い円安? 4/27
急激に進む円安について、筆者のもとには過去に例がないほど多くの問い合わせが寄せられている。国民的関心の高さを実感せざるを得ない。問い合わせの内容はごく短期的な解釈から超長期の見通しまで多岐にわたるが、興味関心が重なる論点も多いので、Q&A方式で整理して解説を試みたいと思う。
【Q1】円安の原因は何なのか?
「金利」「需給」の両面から説明するのが一般的。金利面では、日本と各国の金融政策の格差が、需給面では貿易赤字の拡大(およびそれに伴う経常収支の構造変化)が円安の原因とみられる。
ここまでのメディア報道を見ていると、金利面のみから解説する論調が多いように思う。
「アメリカをはじめ諸外国が金利引き上げに着手するなかで、日本は逆に金利上昇を抑え込もうとしている」という分かりやすい対称性は、国民に広く刺さるロジックなのかもしれない。
もちろん、この説明そのものは間違っていない。
一気に75ベーシスポイント(0.75ポイント)の利上げを視野に入れる国(アメリカ)の通貨と、長期金利を人為的に抑制しようとする国の通貨(日本)、投資家にとってどちらが旨味があるかは明白だ。
しかしながら、筆者には外国の金利上昇が円売りの主な原因とはどうしても思えない。
過去1年間の円売りは、債務再編による財政再建を目指すアルゼンチンの通貨(ペソ)や、2021年末に通貨危機を経験していまも混乱が続くトルコの通貨(リラ)に匹敵する下落ぶりだ。
そうした事実を踏まえてなお、外国の通貨や政策金利に円安の原因があると主張するのは、さすがに無理筋ではないか。
各国の(通貨の対外的な実力を測る指標として使われる)名目実効為替相場の推移を比べてみると、日本円は主要通貨のなかで底が抜けたような動きを示しており、そこには円に特有の要因が作用していると考えるのがフェアだろう【図表1】。
   【図表1】主要7カ国(G7)の名目実効為替相場の推移。
円安の原因について、筆者は金利より需給に動かされている印象を強く持っていて、実際に需給のほうが重要だと考えている。
資源価格の高騰に伴う貿易赤字の拡大はストレートに円売り圧力を高め、その急拡大は2021年12月と2022年1月に経常赤字まで引き起こしている。引き続き需給環境を注視していく必要があるだろう。
【Q2】「円安」は「日本売り」という理解は正しい?
ある程度正しいと考える。【Q1】の回答で述べたように、金利と需給のどちらがより大きな円安の原因かと問われたら、筆者は後者と答える立場だ。
ただし、足もとの円安には、経済低迷に根本的な手を打たない日本政府に対する、市場からの警鐘の意味が含まれているように思う。
名目実効為替相場の比較を通じて円の独歩安が進んでいることを【Q1】で確認したが、株式市場も状況は同じで、主要株価指数のなかで日経平均だけが前年実績を断続的に割り込んでいる【図表2】。
   【図表2】主要国の代表的株価指数の推移。
政策を通じて制御するのが難しい為替や株式のような資産価格について日本の劣後は明確だが、一方で国債は日本銀行の大量保有や指値オペを背景に価格(および金利)が安定している。
そのように、為替や株式を介して見える景色と国債のそれがあまりにかい離した現状は「日本回避」の兆候だと筆者はくり返し指摘してきた。
パンデミック発生から2年が過ぎ、欧米諸国はコロナと共生する道を選び、行動制限やマスク着用をむやみに求めなくなった。国内総生産(GDP)成長率もコロナ以前の水準まで回復した。
ところが、日本はそこまで至っていない。
下の【図表3】は主要国のGDP成長率について、2年分(2020、21年)の実績値と2022年の予測値を積み上げて比較したものだ。
   【図表3】国際通貨基金(IMF)世界経済見通し(2020〜22年の累積成長率)の国・地域別比較。
日本の累積成長率だけがマイナスで、パンデミックの残した傷跡が癒えていない唯一の先進国であることが分かる。
世界各国の悩みはいまやインフレだが、日本の悩みは(インフレの苦しみも顕在化してきてはいるものの)いまだに新規感染者数だ。
その構図は、成長を追求する国と成長をあきらめた国の格差と表現してもいいだろう。そして、成長をあきらめた国の通貨が売られることには何の不思議もない。
【Q3】円安は米利上げに伴う「ドル高の裏返し」?
誤った解釈と言える。
例えば、円安は3月から加速したが、同時期の名目実効為替相場(先述)をみると、ドルはわずかに下落(ドル安)している。過去1年間についても「ドル安だが円安」という時期がかなりあった。
いまの円安がアメリカ側の要因(ドル高)ではなく日本側の要因によって起きていることの証左と言っていいだろう【図表4】。
   【図表4】米ドルと日本円の名目実効為替相場の推移
ただし、緩やかながらドルは上昇しており、その動きが円安とまったく無関係とは言い切れない。それでも、円安をドル高の「裏返し」と断言するのはさすがに無理がある。
【Q4】現在の円安は「構造的」なものと考えて良いのか?
少なくともその可能性があることを踏まえて金融政策を検討・執行すべきというのが、筆者の基本認識だ。
「構造的」という表現は、足もとの円安が経常収支の悪化(という対外収支の構造変化)により起きているとの意味で使われることが多い。それは貿易赤字の拡大とほぼ同義だ。
貿易赤字を生み出しているのは原油や天然ガスなど鉱物性燃料の価格高騰であり、したがって、円安が「構造的」かどうかも、資源価格の値動きが構造的かどうか次第ということになる。
その文脈で言えば、現在の資源価格の高騰は、脱炭素・感染症・戦争といった世界の大きなうねりによって引き起こされているように見受けられ、構造的と言えなくもない。
ロシア・ウクライナ戦争を契機とする「ロシア抜きの世界」は、食料まで含めた資源の供給制約を固定化することになるだろう。資源価格の高止まりは持続的なものと考えるほかないように筆者には感じられる。
化石燃料の純輸入国である日本にとって、資源価格が高く固定化されてしまうことは、経常収支や貿易収支の悪化が構造的に宿命づけられることを意味する。
日本が自ら資源価格を決定したり相場を修正したりはできないものの、(赤字黒字を左右する)輸入額が価格と量の乗算で決まることは間違いないのだから、原発再稼働によって電源構成を変更することで鉱物性燃料の輸入量を抑えるなど、積極的に策を打つ余地は残されている。
そうした努力の結果として、資源価格の下落が基調として根づき、「構造的」な円安を懸念したがそうではなかった、と杞憂で終わるならそれに越したことはない。
【Q5】日本国債の暴落が始まる兆候なのか?
やや過剰な懸念と言うべきだろう。
日本国債が国内消化率の高い内債(=自国通貨建てで発行され、日本銀行や市中金融機関、保険・年金基金など国内保有率が高い国債)であり続けてきたのは、長年の経常黒字のおかげだ。
したがって、貿易赤字の拡大によって経常黒字が揺らぎ始めているいま、日本国債の国内消化もある程度不安定化に向かっていると認識すべきだろう。
この「揺らいでいる」現状を「暴落する」と読み換える向きが多く、それは乱暴に過ぎると言わざるを得ない。
予断を許さない状況にあるのは間違いないが、だからと言って、投機的思惑が先行して自己実現的にある方向に走りやすい為替市場の動きと、きわめてローカルな需給関係に規定される国債市場の動きを混同すべきではない。
【Q6】円安はどこまで進む?
為替には「理論的なフェアバリュー(適正価格)が存在しない」と言われるが、推計するためのヒントとして用いられやすい購買力平価(=ある国である価格で買えるモノやサービスが他国ならいくらで買えるかを示す交換レート)を見ても、すでに節目という節目の水準はすべて突破しており、「意味のある」節目を見つけるのは難しい。
1998年4月に1ドル140円を超えたところで2兆円超の円買いドル売り介入に踏み切った例があるので、今回もそのあたりで介入があるとの見方が散見されるが、逆に言えば、そうした昔話を持ち出すことでしか意味のある節目を見つけるのが難しい状況ということだ。
こうなると、年間の値幅から節目の“当たり”をつけるくらいしか方法はないのかもしれない。
過去20年間をふり返ると、最大の値幅はリーマンショックの起きた2008年の25.07円だった【図表5】。
   【図表5】プラザ合意(1985年9月)以降のドル/円相場の年間値幅の推移。
2022年の値幅はここまで15.61円で、2008年よりまだ10円ほど狭い。しかし、これから140円前後まで円安が進めば、年間の値幅は25円を大きく超え、「リーマンショック級あるいはそれ以上」という話になる。
そこに先述した1998年の円売り介入の事例も加えて考えると、年内の円安は最大でも140円程度と見積もりたくなる気持ちは分からなくもない。
しかし、2008年当時は円高基調で、今回は【Q2】で論じたように「日本売り」の意味合いが含まれる円安基調だ。
究極的に言って、通貨防衛の難易度は円安方向のほうがはるかに高い。したがって、年間の値幅はさらに拡がる可能性があり、すなわち円安も140円を大きく超える可能性がある。
【Q7】円安はどうしたら止まるのか?
変動為替相場における潮流を反転させることができるのは基軸通貨国(具体的にはアメリカ)だけだ。
それでも、【Q4】の回答で触れたように、結果はともかくとして円安を抑制するために積極的に講じることのできる手段はまだある。
政府主導で原発再稼働を含めたエネルギー政策のあり方を模索するのであれば、それは誰もが納得できる不可抗力のストーリーとなり、そこに投機筋の円売りがつけ込む筋合いはない。
もちろん、政治的にクリアしなければならない課題は多く、決断が苦手な岸田政権には荷が重いかもしれない。
しかし、福島の事故という重い十字架を背負った日本があえて原発再稼働を決断することに大きな意味を見出す市場参加者は少なくないようにも思える。
ただし、国民的議論を前提とするそうした取り組みも、「円安を止めたいならば」選択肢になり得るだけで、円安を問題視しないのなら議論も検討も必要ない(政府は現時点ではそう考えているように感じられる)。
一方で、円安を問題視してその悪影響を和らげる意図があるなら、本稿の冒頭でも触れたように、金利と需給の両面から円安の原因に対処する方法が考えられる。
需給面では上記のように原発再稼働がひとつの手だろう。
金利面では、日本と各国の金融政策の格差が原因になっていることから、何よりもまず日銀の金融正常化プロセスへの着手が不可欠だ。
為替介入による是正を有効手段とみる向きもあるが、それは話が飛躍している。
理論的には、金融政策と通貨政策は同じ方向を向いている必要がある。金融緩和策を続けながら円安に不満を漏らすのは自己矛盾であって、緩和に傾斜し過ぎた金融政策の修正がまずは必要となる。
通貨が下落して困っていると言いながら、利下げをくり返して金融緩和を維持するエルドアン政権下のトルコ中央銀行はまったくの例外で、普通の中央銀行なら通貨の下落時は金融引き締め方向に舵を切るものだ。
日本について言えば、投機筋の円売りと本格的に戦うことを考え、日銀による利上げが最善の手と筆者は考える。
利上げで円売りが止まるかどうかは賭けだが、マイナス金利政策の解除が持つメッセージは相応に大きなものと受けとめられる可能性があり、その点では期待できる。
【Q8】足もとの円安は「悪い」円安なのか?
ひと言で善悪を論じるのは不可能だ。
過去の寄稿(4月18日付)の冒頭でも強調したことだが、「総論としては日本経済にプラス、各論ではさまざまな見方があるもののマイナスの意見が多く、(有利不利の)二極化を助長しかねない」というのが最もフェアなスタンスと筆者は考えている。
円安のメリットで得をするのは、輸出や海外投資の還流に近いグローバル大企業だけで、内需主導型の中小企業や家計部門はデメリットで損する面が圧倒的に大きい。
2013年以降のアベノミクスで証明されたように、日本ではグローバル大企業から中小企業、家計部門へのスピルオーバー(拡散効果、アベノミクス当時は「トリクルダウン理論」などとも呼ばれた)がほとんど期待できない。
結局、円安は両者の格差を拡大する、言い換えれば日本における優勝劣敗を徹底する相場現象と認識するのが正しいのではないか。 

 

●1ドル129円70銭前後と大幅なドル高・円安で推移 4/28
28日の外国為替市場のドル円相場は午後1時時点で1ドル=129円70銭前後と、前日午後5時時点に比べ1円15銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円31銭前後と2円48銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●円安、一時129円台後半 日銀の金融緩和維持で 4/28
28日の東京外国為替市場の円相場はドルに対して下落し、一時1ドル=129円台後半を付けた。20日に付けた1ドル=129円43銭を突破し、2002年4月以来20年ぶりの円安ドル高水準を更新した。日銀が金融政策決定会合で大規模な金融緩和策を維持することを決めたと発表した後、急速に円が売られた。
景気を下支えするため金利を低く抑える日本と、インフレ抑制のため利上げにかじを切った米国の中央銀行の政策の違いが改めて意識され、より有利な条件で運用できるドルの需要が高まった。
正午現在は前日比70銭円安ドル高の1ドル=128円68〜69銭。
●円下落、20年ぶり130円台 日銀の緩和維持受け 4/28
28日の外国為替市場で円相場が下落し、一時1ドル=130円台と2002年4月以来およそ20年ぶりの円安・ドル高水準を付けた。日銀が27〜28日の金融政策決定会合で金融緩和の据え置きを決定し、利上げに向かう米国との金融政策の方向性の違いが改めて意識された。
政策変更の発表前には128円台後半で推移しており、発表後に1円ほど円安・ドル高に進んだ。日銀は、長期金利の上限を0.25%程度に抑えるために国債を買い入れる「指し値オペ(公開市場操作)」を毎日実施することも決めた。
●日経平均は322円高、円安・ドル高進み買い優勢の展開 4/28
日経平均は322円高(13時20分現在)。日経平均寄与度では、アドバンテスト<6857>、デンソー<6902>、東エレク<8035>などがプラス寄与上位となっており、一方、ファーストリテ<9983>、エムスリー<2413>、日立建<6305>などがマイナス寄与上位となっている。セクターでは、鉄鋼、鉱業、その他金融業、証券商品先物、ガラス土石製品が値上がり率上位、海運業、サービス業、その他製品、陸運業が値下がりしている。
日経平均は堅調に推移している。日銀金融政策決定会合で大規模金融緩和など政策の維持を決めたことが発表され、外為市場で一時1ドル=129円80銭台と朝方と比べ40-50銭ほど円安・ドル高に振れたことから、輸出企業の採算改善につながるとの見方から買いを誘っているようだ。日銀は指し値オペ(公開市場操作)を毎日実施することも決めた。
●日銀、大規模緩和を維持 物価見通し1.9%に引き上げ 4/28
日銀は27〜28日に開いた金融政策決定会合で、大規模緩和を維持する方針を決めた。10年物国債を0.25%の利回りで無制限に買い入れる指し値オペ(公開市場操作)を毎営業日実施することも決めた。28日公表の経済・物価情勢の展望(展望リポート)は2022年度の物価上昇率見通しを従来の1.1%から1.9%に引き上げたが、日銀は物価上昇は一時的との見方を崩さず、現行の金融政策を堅持する意向だ。
日銀は長期金利を0%程度、短期金利をマイナス0.1%に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)は維持する。指し値オペについては「明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する」とした。16年9月の導入から初となる措置で、市場に金利を抑制する姿勢を改めて強く打ち出した。
展望リポートでは22年度の物価上昇率見通しを引き上げた。ロシアによるウクライナ侵攻で原油や天然ガスなどの資源価格が上昇し、原材料高で企業に値上げの動きが広がっている。総務省が発表する消費者物価指数のうち、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数は3月に前年同月に比べて0.8%上昇している。
4月には携帯電話通信料の引き下げの影響が薄まる。日銀が目指す物価上昇率2%への到達も現実味を帯びている。日銀は物価の見通しを「いったん2%程度まで上昇率を高める」とする一方、エネルギー価格の押し上げ効果が薄まり「プラス幅を縮小していく」として、23年度見通しを1.1%とした。
22年度の実質成長率見通しは3.8%から2.9%に下方修正した。新型コロナウイルスの感染再拡大に加え、資源価格上昇の影響が響くという。23年度は1.1%から1.9%に上方修正しており、「(22年度の)反動で上振れる」とした。
日銀では現在の物価上昇がコスト要因による一時的なもので「持続しない」(日銀関係者)との見方が多い。持続的に物価が上がっていくために必要な賃上げが依然として広がりを欠くためだ。
問題は円安だ。28日の東京外国為替市場では円相場が下落し、一時129円88銭と節目の130円に迫った。インフレ下で利上げを進める米国と大規模緩和を続ける日本との政策姿勢が一段と鮮明になったことで金利差が広がり、金利の高いドルにマネーが流れ込んでいる。海外から購入する原材料の価格などを押し上げる円安が、企業による値上げを通じて国民負担を増大させているとの認識も政府内で強まっている。
黒田東彦総裁は22日の米ニューヨークのコロンビア大での講演で「いまの金融緩和を継続する必要がある」と強調した。ただ、円安がこのまま進めば、日銀が年内に何らかの政策修正を迫られるとの見方も浮上している。
具体的には、金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)の見直しや、長短金利操作で容認する長期金利の上限を現在の0.25%程度から0.5%程度に広げる案などが選択肢となる可能性がある。日銀の緩和姿勢を試すかのように、投機筋が円売り・ドル買いを加速させる展開も否定はできない。 
●円相場 1ドル130円台後半まで急落 20年ぶりの円安水準更新  4/28
28日の東京外国為替市場では、日銀が大規模な金融緩和策を維持し、長期金利の上昇を容認しない姿勢を明確にしたことを受けて、円相場は1ドル=130円台後半まで2円以上急落し、20年ぶりの円安水準を更新しました。
28日の東京外国為替市場は、午後に入って円安が一段と進む展開になりました。
きっかけは、日銀が今回の金融政策決定会合の結果を公表し、今の大規模な金融緩和策を維持したうえで、長期金利の上昇を容認しない姿勢を鮮明にしたことでした。
金融引き締めを急ぐアメリカのFRB=連邦準備制度理事会との金融政策の違いがより強く意識されたことで、円相場は一時、1ドル=130円70銭台まで2円以上急落し、2002年4月以来、20年ぶりの円安水準を更新しました。
午後5時時点の円相場は、27日と比べて2円61銭円安ドル高の1ドル=130円59銭から60銭でした。
一方、ユーロに対しては、27日と比べて1円87銭円安ユーロ高の1ユーロ=137円83銭から87銭でした。
ユーロはドルに対して、1ユーロ=1.0554から56ドルでした。
市場関係者は「円安のデメリットが大きいという指摘も多い中で、日銀が長期金利の上昇を強力に抑え込む姿勢を鮮明にしたことは、投資家の間で驚きをもって受け止められた。円を売って、より利回りが見込めるドルを買う動きは当面続きそうだが、急ピッチな円安に警戒感も出ている」と話しています。
外国為替市場で円安が進んだことについて、山際経済再生担当大臣は、28日午後の会見で、「急激な為替の変化は好ましいものではないことは財務大臣も申し上げているとおりだ。われわれとしては為替が安定してくれることを期待している」と述べました。そのうえで、「経済に対する影響については様々なものが絡み合う。為替の問題だけではなく、経済の激変が起きたときに、それを緩和するようなことをこれまでも行ってきた。注視しながら対応しなくてはいけないと思っている」と述べました。
外国為替市場で円安が進んだことについて、為替政策を担当する財務省幹部は、記者団の取材に対して「為替相場というのは経済の基礎的条件に基づいて安定的に推移することが重要であり、過度な変動は望ましくない。そういった意味では足元の動きは極めて憂慮すべきことだと思う。日本銀行や各国の通貨当局と緊密に意思疎通をはかりながら、必要な場合には適切な対応をとる」と述べました。
●円相場、一時131円台…金融緩和維持決定受け1日で3円安に  4/28
28日の外国為替市場で、ドル買い・円売りが進み、円相場は一時、約20年ぶりの円安水準となる1ドル=131円台をつけた。27日の東京市場の終値(午後5時)は1ドル=127円98銭だった。1日で3円、円安・ドル高が進んだことになる。
27〜28日に開かれた日本銀行の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和の維持が決まったことで、段階的な利上げが見込まれているドルとの金利差拡大が続くとの見方が強まり、円が売られた。
日銀の黒田東彦総裁は28日の記者会見で「(日銀の)今回の政策決定が、円安を促すとは思っていない。円安が(日本経済に)プラスという評価を変えたわけではないが、(為替レートの)急激な変動は、不確実性の高まりを通じてマイナスに作用する」と述べた。 
●NY外為 円、130円台後半 4/28 
28日午前のニューヨーク外国為替市場では、日銀の金融政策決定会合を受けて円売りが進んだ海外市場の流れを引き継ぎ、円相場は1ドル=130円台後半に下落している。午前9時現在は130円80〜90銭と、前日午後5時(128円38〜48銭)比2円42銭の大幅な円安・ドル高。
日銀は28日、金融政策決定会合で大規模な金融緩和政策の維持を決定。これを受けて低金利の円を売り、ドルを買う動きが急速に強まり、円相場は2002年4月以来約20年ぶりの水準となる一時131円台に急落した。
ニューヨーク市場に入ってからも大幅な円安・ドル高水準が継続。朝方発表された1〜3月期の実質GDP(国内総生産)速報値は、年率換算で前期比1.4%減と市場予想に反して7四半期ぶりにマイナス成長となった。発表直後にドルが売られたが、一時的で円売り・ドル買いの勢いは衰えていない。マイナス成長は輸入の拡大などによるもので、個人消費や設備投資を柱に景気は底堅さが続いているとの見方は根強い。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0480〜0490ドル(前日午後5時は1.0554〜0564ドル)、対円では同137円10〜20銭(同135円57〜67銭)と、1円53銭の円安・ユーロ高。 
●日銀砲で円安急加速、ドル20年ぶり高値 131円後半突破 4/28 
04月25日週のドル/円は20年ぶりの130円台乗せ達成
グローバル経済を巡るリスク回避から、ドル/円は126.946円まで下げが先行しました。シカゴ通貨先物における円ショートポジションがかなり積み上がっていた反動も円を押し上げたようです。しかし、日銀による条件付きの毎営業日指値オペにて10年物国債の利回りを0.25%に抑制する施策が発表されると円安が急進。ドル/円は20年ぶりの130.667円(執筆時点)まで上昇幅を拡大しました。
米経済指標がドル/円上昇の新たな燃料となるか注視
来週は本邦勢が黄金週間で市場参加者が限られるなか、米国・英国で金融政策会合が相次いで開催されるほか、米国では雇用統計も発表されるなど値動きが荒っぽくなる可能性があり注意が必要です。米FOMCは0.5%の利上げのほか、量的引き締め(QT)開始も見込まれタカ派化が進展しそうです。通常ならドルのサポート材料となりますが、グローバルな景気減速懸念など見通しへの不確実性が高まるなかで、市場はリスク選好よりはリスク回避に若干軸足を移しているように見受けられ、正直、どちらに進むか判断は難しいところです。これまでに蓄積されたデータで織り込める分の引き締めを既に織り込んでしまっていることも、こうしたムードを強める格好になっています。
FOMCで米国の利上げスピード加速は単なる確認事項であって、正味のドライバーは経済が大幅利上げに耐えられるのかと言った部分ではないでしょうか。米経済の堅調さが改めて確認できるようなら、日米金利差拡大への期待からドル円はさらにレンジ上限を広げそうな雰囲気ですが、逆に米経済への不透明感が強まれば達成感から上昇への反動が大きく出ても不思議はなさそうです。この点で、FOMC後の雇用統計の結果は米利上げを受けた経済の行く末をみる最初のチェックポイントになりそうで要注目です。好材料と不安材料が混在しており、安心して一方向を見渡せる状況にないため、先週と同様に上下両方向にレンジを広めにして相場動向に機動的に対処したいです。
131円台は単なる通過点との声も
足元の下落幅が2.458円と3月28日高値125.083円から3月31日安値121.275円の3.808円に迫ることなく切り返した点で、ドル/円の底堅さが窺えます。すでに20年ぶりの130円達成で上方向の節目が見つけづらく、どこまで上昇幅を伸ばすのか不明ですが、当面は2002年2月安値の131.85円レベルが意識されそうです。もっとも、上昇の勢いがを踏まえるとこのレベルは単なる通過点と意識され、2002年3月高値(133.88円)程度まで視線が上がるかもしれません。ただし、さすがにスピードオーバーの感は否めませんので、129.500円を割り込んでくるようだと、128.000円付近までの調整は早いかもしれません。 

 

●円急落、一時131円25銭 4/29
28日のニューヨーク外国為替市場の円相場はドルに対して急落し、一時1ドル=131円25銭と約20年ぶりの円安ドル高水準を付けた。日米金利差の拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
午後5時現在は前日比2円36銭円安ドル高の1ドル=130円74〜84銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0494〜0504ドル、137円37〜47銭。
日銀が大規模な金融緩和政策によって低金利を堅持する姿勢を強調し、利上げ加速が見込まれる米連邦準備制度理事会(FRB)との政策の違いが改めて鮮明となった。
●NY外国為替市場 1ドル131円台前半まで値下がり  4/29
28日のニューヨーク外国為替市場では日銀が長期金利の上昇を強力に抑え込む方針を明確にしたことを受けて円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は一時1ドル=131円台前半まで値下がりして20年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
28日のニューヨーク外国為替市場では日銀が大規模な金融緩和策を維持したうえで長期金利の上昇を強力に抑え込む方針を明確にしたことを受けて、東京市場やロンドン市場で円安ドル高が加速した流れを引き継ぎ円を売ってドルを買う動きが強まりました。
このため円相場は一時1ドル=131円台前半まで値下がりし、2002年4月以来、20年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
円相場は1ドル=121円前後の水準だった3月末の時点から1か月近くでドルに対しておよそ10円値下がりし、円安が加速しています。
円安は日本の輸出企業にとっては利益が増える一方で、日本が輸入に頼るエネルギーや食料品などの価格を押し上げることにつながります。
市場関係者は「インフレを抑制するため金融の引き締めを急ぐアメリカと日本の金融政策の方向性の違いが改めて意識された。円を売る動きだけでなく利回りが見込めるドルを買う動きも強まっているため、円安ドル高がどこまで進むか見通せない状況となっている」と話しています。
●1ドル150円も視野に…“浮かれる”GW中に「円安地獄」へ突入か 4/29
ネット上には、経済の先行きを不安視する声が目立つ。約20年ぶりの円安水準となる1ドル=130円台に急落した、28日の東京外国為替市場の円相場。この日開かれた日銀の政策決定会合では、特定の利回りで国債を無制限に買い入れる「指し値オペ」を毎営業日実施することを決定。長期金利の上昇を抑える姿勢を鮮明にしたことから、日米の金利差がますます拡大すると受け止められたようだ。
この流れを受け、市場で懸念されているのが5月連休中のさらなる円安進行だ。
「米国の中央銀行に当たる米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、これまでの量的緩和策で膨らんだFRB総資産を圧縮するためとして、5月3、4日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の大幅利上げを検討することを表明している。これに対し、日銀の黒田東彦総裁は、今の大規模緩和策を続ける姿勢を鮮明にし、岸田文雄首相も26日の会見で、『日銀は2%の物価目標の下にその政策を進めている。引き続き努力を続けていただくよう期待している』と静観したまま。こうなると、日米の金利差は誰が見ても拡大するのは避けられないでしょう。より高い利回りで資産を運用したいと考える投資家らは、今以上に円を手放してドルに資産を替える動きを加速させるとみられています」(証券アナリスト)
市場で<日本がゴールデンウイークで浮かれている間に円安地獄になる><ゴールデンウイークに旅行している場合じゃない>などと悲鳴が上がっているのも無理はない。
そろそろ本気で黒田総裁の“暴走”にストップをかける時ではないのか。
●日銀公認の「超円安」はどこまで行くか 4/29
外国為替市場で、1ドルが130円の大台に乗った。130円をつけたのは2002年以来、20年ぶり。ウクライナ戦争直前の115円から、2カ月で12%という急激な値下がりである。
このきっかけは日銀の金融政策決定会合で、「指し値オペを毎営業日やる」という強硬な方針が決まったためだが、130円は通過点だろう。円はまだ高すぎるからだ。
黒田総裁の宣言した「円売り介入」
長期金利を事実上0.25%以下に固定する異例のオペレーションについて、日銀の黒田総裁は記者会見で「憶測を払拭するためだ」として量的緩和を今後も続ける決意を示し、「円安が日本経済にとって全体としてプラスだという評価は変えていない」と述べた。
これが外為市場には円安容認と受け止められたわけだが、彼はそれを想定していたようにみえる。図1のように、短期的にはドル/円レートは日米の長期金利の差で決まるので、日米の金利差が拡大している中で日本の長期金利を固定するのは、円売り介入と実質的に同じである。
   図1 ドル/円レートと米長期金利
130円になっても黒田総裁が円安に誘導するのは、最適水準がもっと円安だと考えているからだろう。これは彼が総裁になったときからの一貫した方針で、日銀のインフレ目標も実質的には円安ターゲティングだった。
この円安は、どこまで行くのだろうか。為替レートが何で決まるかについては諸説ある。変動相場制を提案したミルトン・フリードマンが想定していたのは、貿易黒字も赤字もなくなって世界全体で一物一価になる購買力平価(PPP)だった。
このPPPを簡単に示すのがエコノミスト誌の「ビッグマック指数」だが、これでみるとビッグマックの価格は日本では390円だが、アメリカでは5.44ドルなので、1ドル=130円で換算すると707円。円はPPPより45%も過小評価されている。
それが均衡に戻るとすれば、1ドル=71円ぐらいに上がるはずだが、そう考えている人は、市場関係者にも経済学者にもいない。それは外為市場が、ビッグマックのような商品の取引を決済する市場ではないからだ。
円は130円でも高すぎる
為替取引の99%は為替投機であり、そこで取引される資金の均衡を決めるのは資金需給である。それを決めるのは、短期的には実質金利だが、長期的には何で決まるだろうか。
1つの要因は、貯蓄=投資バランスである。図2のように日本の家計は戦後、一貫して貯蓄過剰だったが、1990年代までは企業が投資していたので、貯蓄と投資のバランスは取れていた。
   図2 日本の貯蓄=投資バランス
ところが1998年の金融危機を境に企業が貯蓄超過になり、需要不足でデフレになった。その原因は当初は銀行が不良債権を清算して資金を回収したためだったが、その後も中小企業が経営破綻を恐れて現金を保有する傾向が強まった。
企業がカネを借りて投資するのが資本主義なので、企業が貯蓄しているようでは停滞するのは当たり前だ。会計的には、国内の貯蓄超過は政府か海外で埋めるしかないので、次の式が成り立つ。
   貯蓄超過=政府投資+海外投資
この貯蓄超過(需要不足)は普通は金利で調整されるが、2000年代に金利がゼロになっても、この貯蓄超過は埋まらなかった。それを埋めたのが、財政赤字(官公需)と経常収支黒字(外需)だった。
経常収支の黒字は、2000年代まではほとんど貿易黒字(輸出)だったが、2010年代には低金利で海外直接投資を行う企業が増え、所得収支の黒字(海外法人の利益)が増えた。これは停滞する国内市場から成長するアジアへのキャピタルフライト(資本逃避)で、これが円安要因になった。
2020年にはコロナ対策で大幅な財政赤字になったが、これはそのまま家計の強制貯蓄になったので、今も民間は大幅な貯蓄超過になっており、これを埋めるのは財政赤字か経常収支の黒字しかない。
つまり経常収支の黒字は少なすぎるので、それを増やすにはもっと円安になって経常収支の黒字を増やす必要があるのだ。これは直感的にはわかりにくいと思うが、国内の需要不足を海外需要で埋めるという点では同じである。
ただし輸出産業の雇用は国内で発生するので国内総生産(GDP)に含まれるが、海外法人の利益(所得収支の黒字)はGDPに含まれない。国内の過剰貯蓄が海外に流出して、アジア人の雇用を生んでいるのだ。それが日本人の賃金が上がらない根本的な理由である。
「資源インフレ」の是正にはエネルギー政策の転換が必要だ
では円はどこまで下がるだろうか。これを考える上では、ドル/円だけではなく、全通貨に対する実質実効為替レートを考える必要がある。これでみると現在は歴史的に最低の水準にあるが、それ以上に交易条件が急速に悪化している。
   図3 交易条件と実質実効為替レート
交易条件とは輸出物価/輸入物価で、日本が輸出品でどれだけ輸入品(特に一次産品)を買えるかという指標だ。その最大の要因は資源価格である。
2020年から原油価格の上昇と脱炭素化による化石燃料への投資削減で、資源価格が上がり、交易条件は大幅に悪化した。この資源インフレで貿易収支が赤字になり、経常収支も今年は赤字になった。
さらにウクライナ戦争でロシアに対する経済制裁などで化石燃料の供給が減ったため、化石燃料を自給できない日本はさらに貿易赤字が拡大する見通しだ。このため3月から急激な円安になった。つまり、
   ・日米金利差の拡大
   ・強制貯蓄による貯蓄過剰
   ・資源価格の上昇
という3つの条件が重なり、急激な円安が起こっているのだ。円が上がる要因はないが、どこまで下がれば落ち着くかの答えは、この3つの条件のどれを重視するかに依存する。
日米の実質金利の差を重視するなら、今のアメリカの長期金利は約2.8%だが、予想インフレ率も約2.8%なので、実は日本とそれほど大きく違わない。今後、FRB(連邦準備制度理事会)が政策金利を引き上げると長期金利も上がるが、実質金利の差はそれほど拡大しないだろう。
強制貯蓄による貯蓄過剰は一時的な現象なので、為替レートにはそれほど影響しないが、これが今後、家計金融資産のキャピタルフライトで海外投資に流れると、円が暴落して通貨危機になる可能性もある。この場合は1ドル=150円も考えられる。
そこまで円が下がると、海外に脱出した企業が日本に回帰し、外資が日本に投資するようになるかもしれない。この場合の外資は主として中国やアジアだろうが、日本が法人税を下げれば「アジアの国際金融センター」になることも不可能ではない。
最大の問題は資源インフレである。これは戦争による一時的な要因だけではなく、脱炭素化や日本のエネルギー構成の脆弱性といった構造的な問題を含むので、日銀にはどうにもならない。
この点で「物価高対策」に6.2兆円の補正予算を出す岸田内閣と日銀の政策はチグハグである。物価高を止める方法は簡単である。日銀が指し値オペをやめて、長期金利を市場にまかせればいいのだ。資源高に対応するためには、岸田政権が日本のエネルギー戦略を転換する必要がある。
●急速なウォン安進行なら「市場安定措置を取る」 韓国担当次官 4/29
韓国企画財政部の李億遠(イ・オクウォン)第1次官は29日のマクロ経済金融会議で、外国為替市場でウォン安ドル高が進んでいることについて、米国の利上げ加速に対する懸念、中国の新型コロナウイルス感染拡大による都市封鎖(ロックダウン)に伴う景気鈍化の懸念が重なり、為替相場の変動性が拡大していると指摘し、「市場の動向を綿密にモニタリングし、急速に(ウォン安ドル高に)傾けば市場安定措置を取る」と述べた。
李氏は「現状況で韓国から外国人の投資資金が急速に流出する可能性は限定的」との見方も示した。米金利がハイペースで上昇し、韓米金利差の縮小や外国人資金の流入鈍化を懸念する声もあるが、他の新興国とは異なる韓国経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)と国の信用度、ショックの吸収能力、内外の金利逆転時にも外国人の資金流入が続いた過去の例などを考慮する必要があると指摘した。
一方で、世界的な金利上昇傾向が続く中、変動性が高い状態が続く可能性があるとし、「金利環境の変化とこれによる国内外の金融市場、実体経済への波及効果などを注視していくべきだ」と述べた。
物価に関しては、ロシアとウクライナの戦争長期化などで不確実性が高まり、当面は物価上昇圧力が高いと予想。ガソリンや軽油に課す「油類税」の引き下げ効果を消費者が早く実感できるよう、積極的に努めていくとした。政府はロシア軍のウクライナ侵攻による原油価格の高騰を受け、5月1日から油類税の引き下げ幅をこれまでの20%から30%に拡大する。 

 

●為替相場 4/25〜4/29 4/30
25日からの週は、総じてドル買いが強まった。次週5月4日に予定されている米FOMC結果発表では0.5%の大幅利上げについて、市場はほぼ完全に織り込んでいる。一方、この週の日銀決定会合では金融緩和策の強化が示され、円売りが強まった。政府から急速な円安を懸念する声が発せられるなかで、日銀は政策調整を行うのではないかとの思惑が市場に広がっていた。しかし、日銀は毎営業日の指し値オペ実施を表明、黒田日銀総裁会見でも金融緩和策の継続が強調され、全体として円安はプラスとの評価は変えてない、との従来からの姿勢も維持された。ドル円は130円の節目を上回ると一時131.25レベルと、2002年以来の高値水準をつけた。ユーロドルは1.04台、ポンドドルは1.24台まで下押しされる場面があった。欧州にとってはロシアがポーランドとブルガリアへの天然ガス供給を停止すると発表したことが衝撃を与えた。英国では消費関連の経済指標が弱含んでおり、高インフレ、利上げの弊害が懸念される状況となっている。長引くウクライナ戦争により、エネルギー価格高騰やその波及効果で欧州も英国も回復力を削がれてきているようだ。一方で、米GDP速報値は予想外のマイナスとなったが、国内の消費需要は引き続き底堅く、比較的強い経済を維持している。
25日
東京市場で、ドル円は振幅。週明けの市場は買いが先行。先週金曜日にTBSが報じた日米財務相会談で協調介入が議題となり前向きに検討してくれるトーンだったとの報道について、財務省幹部が通信社に対して匿名を条件にはっきりと否定したことが週末に報じられ、128円台前半から後半へと上昇。その後は、米株先物・時間外取引が先週末から一段と下落、リスク警戒の動きで128円台前半に押し戻された。米債利回りの低下もドル円の重石に。ユーロ円は138円台後半から139円台乗せも、138円台前半へと下落。ユーロドルは1.08台乗せでは売りに押され、1.07台後半へと軟化。週末の仏大統領選決選投票で現職のマクロン大統領が勝利したが、ユーロの上値は重かった。
ロンドン市場は、リスク回避ムード一色。先週後半から引き続き米欧金融引き締め姿勢が警戒されているほか、中国主要都市でのロックダウン措置導入の動きが中国の景気鈍化への懸念を広げていることが背景。ドル円とともにクロス円が下落、ドル円以外の通貨でのドル買いの動きも顕著。そのなかでは、独Ifo景況感指数が予想外に改善したユーロは比較的底堅く推移。一方、英CBI製造業受注指数が予想以上の低下となったことで、ポンド売りが強まっている。中国株の急落を受けて欧州株も軟調に推移するなかで、ユーロドルは1.07台後半から1.0707近辺まで下落。ポンドドルは1.28近辺から1.2750割れとなったあといったん下げ渋ったが、再び1.2705近辺に安値を広げている。ユーロ買い・ポンド売りが入っていた。ユーロ円は138.50付近から137.18近辺まで下落したあとは、下げ一服。ポンド円は164.50付近から163.50割れとなり、足元ではさらに163円台割れと軟調。ドル円は128.50付近から序盤に127.89レベルまで下落したが、その後は128円台前半で揉み合っている。
NY市場では、ドル円が再び下落した。NY時間に入ると米債利回り低下とともに戻り売りが優勢となり、127円台半ばまで一時下落した。中国で感染に収束の気配が見られず、ロックダウン措置が上海のみならず北京にも導入されるとの懸念が広がっている。市場ではFRBの積極利上げによる景気後退を不安視する声がある中で、中国でのロックダウンの広がりはサプライチェーン問題を悪化させ、景気後退への懸念に拍車をかけるとの指摘が聞かれる。ユーロドルは売りを強めており、1.07台を一時割り込んだ。2020年3月以来の安値水準。きょうの市場はリスク回避の雰囲気を強めており、為替市場はドル買い・円買いの動きが優勢となっている。 FRBは積極利上げへの姿勢を強める中で、ECBは利上げの可能性を示唆しつつも、慎重姿勢も崩していない。ポンドドルも売りが加速し、一時1.26台まで下落。2020年9月以来の安値水準。市場からは、多くの先進国に景気後退観測が広がれば、英国は特に他国よりも大きなリスクを抱えているとの指摘も。
26日
東京市場で、ドル円は振幅。朝方に128円台割れから127.34近辺まで下落。渡辺元財務官が130円や135円が日本経済にとってとても悪い水準ではない、介入をすぐに望んでいるとは思わない、などと発言したことを受けて反発。午後には再び128円台乗せ。ロンドン勢の本格参加を前に再び127.80台へと軟化した。ユーロ円は136.50台から137.50台での振幅。ユーロドルは午前中に1.0730台まで買われたあとは、高止まりに。豪ドル円は朝方に91.50割れまで下落したあとは、買いが強まり92.50台まで上伸。その後は上値追抑えられた。
ロンドン市場は、ドル高と円高が優勢。欧州株は前日の大幅安から反発しているが、米株先物は時間外取引で上値重く推移。NY原油先物は97ドル台から99ドル近辺で神経質に振幅。米10年債利回りはロンドン早朝に2.86%付近まで上昇していたが、その後は2.78%まで低下。ドル円は128円台では売りに押される展開で、ロンドン時間には127.60台へと再び押し戻されている。クロス円も総じて下落に転じており、ユーロ円は137円台から136円台前半へ、ポンド円は163円台から162円台前半へと下落。対ドルでもユーロやポンドは軟調。ユーロドルは1.07台割れから1.0670台へと安値を広げ、2020年3月以来の安値水準となった。ポンドドルは1.27台後半から1.27台割れを試す動き。ウクライナ情勢の膠着、米国など主要国中銀の金融引き締め姿勢、中国での新型コロナ感染拡大と成長鈍化懸念などネガティブな材料は依然として多い。
NY市場では、リスク回避ムードが継続。ドル買い以上に円買いの動きが強まっている。ドル円は先週サポートされた127.45付近を一時下回り、127円ちょうど付近まで下落する場面もが見られた。その後は127円台後半へと反発したが、128円には戻し切れず。上海に引き続き北京でもロックダウンの措置が実施されるのではとの不安から、中国経済への懸念が強まっている。一方、FRBの積極利上げへの期待は依然として強く、5月FOMCのみならず、9月FOMCまで連続で0.50%の大幅利上げが実施されるのではとの観測も出ているようだ。市場では景気後退のシナリオが再浮上しており、米国債利回りも急速にイールドカーブのフラット化が進む中、ドル円も戻りが優勢に。ユーロドルは下値を切り下げる動きが加速、1.0640近辺まで下落し、2020年3月以来の安値水準に。ポーランドのガス配給会社がロシアのガスプロムから天然ガス供給を明日からすべて停止するとの通告を受けたと報じられた。ポンドドルも1.25台まで急落し、2020年7月以来の安値水準となった。世界的な景気後退であれば、主要国の中では英国が最も影響が深刻になるとの見方もあり、ポンドは対ユーロでも下落している状況。
27日
東京市場で、ドル円は下に往って来い。前日の株安を受けたリスク警戒で朝方には127円台割れから126.90台まで一時下落。ただ、ストップロス狙いで強引に売られた面もあり、その後は一転して買い戻しが強まった。日経平均は午前中に600円超の下落となる場面があったが、その後は下げ幅を縮小、アジア株も値ごろ感から下がると買いが出ていた。ドル円は昼には127.80台まで反発した。ロンドン勢の参加を引開けて128円台をうかがう動きとなった。ユーロ円も135.05近辺まで下押しされた後は買い戻されて、136円台乗せへと上昇。第1四半期の豪消費者物価指数は強めの数字だったが、発表直後は反応薄。早期利上げがある程度織り込まれているようだ。ただ、その後は円安の流れとともに90円台後半から91円台後半まで買われた。
ロンドン市場は、ドル買いが継続。ユーロドルの下げが主導する格好。ロシアのガスプロムがポーランドとブルガリアへの天然ガス供給を停止との報道がユーロ売り圧力となった。ユーロドルは1.06台割れから1.0586レベルまで一時下落。2017年4月以来の安値水準となった。ユーロ売りの面が強く、ユーロ円は一時135.11レベル、ユーロポンドは0.8424レベルまで下押しされた。序盤はドル買いの動きも広がった。ポンドドルは一時1.2536レベルまで下落。ドル円は128.10レベルまで上昇。ドル指数は一段と上昇、2020年3月以来の高水準となった。米10年債利回りは2.79%付近まで一時上昇した。欧州株は売りが先行したが、米株先物が堅調なことを受けてプラス圏に浮上している。株式市場にはガスプロムの報道の影響は軽微だったようだ。為替市場でも序盤のドル買いやユーロ売りの勢いは一服している。
NY市場でも、ドル買いが優勢。ドル円は128円台を回復、128.60付近まで高値を伸ばした。ドル買いが下支えするとともに、きょうは米株が反発し景気後退を懸念したリスク回避ムードも一服した。世界的な景気後退への懸念の1つに中国のロックダウン拡大と景気減速への警戒感があるが、中国政府が、インフラ建設を強化する方針を明らかにしたこともネガティブな雰囲気を一服させている。日銀が明日、金融政策決定会合の結果を発表する。大きな政策変更はなく、現行の金融緩和を維持すると見られている。ユーロドルは売りが加速、一時1.05台前半まで下落した。2017年3月以来の安値水準となり、心理的水準1.05をうかがう展開に。きょうは一服しているものの、景気後退への懸念は根強く、ウクライナ情勢が混沌とする中で、ユーロドルは売りが続いている状況。ポンドドルも心理的水準の1.25ちょうど付近まで下落する場面があった。下値模索は5日連続となった。英CBIが4月の小売販売の景況感を発表し、予想外の急低下となっていた。このところ、英消費関連指標に弱い数字が相次いでおり、ポンド相場を圧迫している。
28日
東京市場では、ドル円が130円台を示現。日銀金融政策決定会合を受けて円売りが一気に強まった。日銀は毎営業日の指し値オペ実施を表明、市場の一部には悪い円安に対応するために政策調整があるのではとの思惑もあったが、むしろ金融緩和策の強化の内容だったことが背景。ドル円は128円台から130円付近の攻防を経て、130.27レベルまで高値を伸ばした。クロス円も軒並みの円安進行。ユーロ円は135円台後半から136円台後半へ上昇。ポンド円は161円台前半から162円台後半へ上昇。対欧州通貨ではドル買いの動きがみられた。ユーロドルは1.05台を割り込み、1.0483レベルまで、ポンドドルは1.25台前半から1.2492レベルまで下落した。
ロンドン市場は、円売りが強まった。日銀の強力な緩和継続姿勢が背景。きょうの決定会合で日銀は毎営業日の指し値オペ実施を表明、市場に金融緩和強化を印象付けた。黒田日銀総裁の会見では「金利の上限をしっかり画するため、指し値オペ明確化」「好循環の中での安定的な2%実現には時間がかかる」「強力な金融緩和を粘り強く続ける」とした。また、円相場については「全体として円安プラスとの評価は変えてない」と従来からの姿勢を維持した。ドル円は130円台乗せから一時131.01レベルまで買われ、2002年4月17日以来の高値水準となった。その後、財務省幹部が「為替、足元の動きは極めて憂慮すべき」と述べた。円安けん制としてはこれまでよりも強い言葉が発せられたことで130.20付近まで一時反落。130円台は維持されている。クロス円でも円安の動き。ユーロ円は135円台半ばから買われ、ロンドン序盤には138円ちょうどまで高値を伸ばした。その後の戻りは137円前後まで。ポンド円も161円台から一時164.25近辺まで上昇、その後の調整は162円台後半へとやや深めの動き。ポンドは対ドルや対ユーロでも軟調で、ポンドドルは1.25台後半に上昇後、1.24台後半へと下落。ユーロドルは1.04台後半に下押しされたあと1.05台後半に反発も、再び1.05前後へと押し戻されている。ドル指数は前日から一段高となっており、ドル高の流れは根強い。
NY市場では、ドル買い・欧州通貨売りが加速した。ユーロドルは1.05台割れから1.0470付近まで下落、ロンドン朝方から一段と売りが進行した。その後は下げ一服も、1.05台前半に低迷している。市場では、心理的水準1.05を割り込む動きを受けて、ユーロとドルのパリティー1.00を視野に入れるとの見方もでていた。一方、ECBがユーロ下落を阻止するために口先介入などを実施するとの思惑もあった。ポンドドルも心理的水準1.25を割り込み、一時1.24台前半まで下落。2020年7月以来の安値水準となった。来週の英MPCに向けて、市場での0.50%の大幅利上げの見方は一気に後退し、0.25%の利上げにとどまることがコンセンサスとなっていた。ドル円は131.20付近まで再び高値を伸ばした後は130円台後半に高止まりした。第1四半期の米GDP速報値が発表され、予想外のマイナス成長となった。今回のGDPは在庫投資や純輸出の減少が圧迫し、事前に減速が見込まれていたが、個人消費の伸びが予想外に小さかったことや政府支出の減少がマイナス成長に繋がった。しかし、一時的要因も多く、設備投資は堅調なことから、悲観的な雰囲気までは出ていなかった。
29日
東京市場は昭和の日の祝日のため休場。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。週末を控えて調整の動きに押されている。ドル円はオセアニア序盤につけた130.95レベルを高値にその後は軟調に推移。ロンドン序盤には130円台割れから129.77レベルまで下押しされた。その後、米債利回りの上昇とともに130.50付近まで反発したが、再び130円台割れと上値が重い。ユーロドルもドル売り圧力に押し上げられて、1.05台前半から1.0593レベルまで上昇。その後も1.05台後半に高止まりしている。ポンドドルは1.24台後半から1.2580近辺まで買われている。クロス円はドル円の値動きを反映しての振幅。ユーロ円は137円台で、ポンド円は162円台後半から164円付近で上に往って来い。米株先物・時間外取引が前日の大幅高の調整に押されており、足元では円買いの動きが優勢になっている。この日発表された4月ユーロ圏消費者物価速報は前年比+7.5%と前回並みの高水準が持続した。ユーロ圏第1四半期GDP速報値は前期比+0.2%とかろうじてプラスを維持した。
NY市場は月末の取引ということもあり、ドル買いも一服する中、ドル円は130円を再び割り込だ。米株式市場でダウ平均が一時1000ドル超下落するなどリスク回避の雰囲気も加わり、一時129円台前半まで下落する場面も見られた。
●NY円、反発 1ドル=129円80〜90銭 持ち高調整や株安受けた円買い 4/30
29日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3日ぶりに反発し、前日比95銭円高・ドル安の1ドル=129円80〜90銭で取引を終えた。短期間に急ピッチな円安が進んだ反動で、週末を前に持ち高調整の円買い・ドル売りが優勢となった。米株式相場が大幅に下落し、低リスク通貨とされる円に買いを呼び込んだ面もあった。
円は前日に131円台前半と20年ぶりの円安水準を更新した。最近1カ月で10円近く円安が進み、月末・週末とあって利益確定や持ち高調整の円買い・ドル売りが入った。29日は米株式市場でダウ工業株30種平均の下げ幅が一時は前日比1000ドルを超えた。投資家心理が弱気に傾き、円買いを誘った面もあった。
円以外の主要通貨に対しても利益確定のドル売りが広がった。インターコンチネンタル取引所(ICE)が算出するドル指数は28日に103台後半と2002年12月以来の高水準をつけ、その反動が出やすかった。
もっとも、円は買い一巡後に伸び悩んだ。米連邦公開市場委員会(FOMC)を5月3〜4日に控え、米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引き締め姿勢を示すとの見方が円の重荷だった。
円の高値は129円33銭、安値は130円37銭だった。
円は対ユーロで3日ぶりに反発し、前日比40銭円高・ユーロ安の1ユーロ=136円95銭〜137円05銭で取引を終えた。ドルに対する円買いが、円の対ユーロ相場に波及した。
ユーロは対ドルで7営業日ぶりに反発し、前日比0.0040ドル高い1ユーロ=1.0535〜45ドルで終えた。前日に5年ぶりのユーロ安・ドル高水準をつけていたため、持ち高調整のユーロ買いが優勢となった。
この日の高値は1.0579ドル、安値は1.0510ドルだった。
●「悪い円安」、家計の処方箋 4/30
急激な円安進行が毎日の暮らしに暗い影を落としている。円安の影響は立場によって様々。ただ今回は、輸入価格の高騰が身近な商品やサービスの値上げラッシュを引き起こす「悪い円安」の側面が色濃い。どう付き合っていけばいいのだろうか。
円相場は今月に入り、およそ20年ぶりの円安・ドル高水準を記録した。きっかけは、新型コロナウイルス後の世界的なインフレ不安とロシアによるウクライナ侵攻だ。
昨年以降、コロナ下の長い自粛生活の反動による消費の急拡大に対し、生産や流通が対応できずに物価が高騰。今年に入り、エネルギーや食料の主産地であるロシアとウクライナの武力衝突が起きたことで、世界的なインフレ不安が一段と強まった。
景気回復で先行する米連邦準備理事会(FRB)は3月から、インフレを抑えるために政策金利の引き上げに着手。欧州中央銀行(ECB)も先行きの利上げをにらんで量的緩和政策の縮小に踏み出した。一方、景気回復が遅れる日本は大規模な金融緩和政策を続ける方針を堅持し、日米間の金利差が急拡大した。投資マネーは金利が高い通貨に流れやすく、結果として円からドルやユーロへ、つまり円安・ドル高、円安・ユーロ高が進んだ。

「悪い円安」と呼ばれるのは、円安が商品やサービスの値上げを引き起こしているからだ。エネルギーや食料の自給率が極端に低い日本の場合、原油や小麦などの大半を輸入に頼らざるを得ない。世界的なインフレで値段が上がっているうえ、大幅な円安で円に換算した時の輸入品価格が高騰。国内製品も生産や流通の過程でガソリンや電気を使うため、値上げせざるを得ない状況に追い込まれている。
円相場の長期グラフをみると、これまでも急激な円安が繰り返し訪れている。暮らしを支えるためには、円安が進むたびに節約するしか方法はないのだろうか。そこで保有する通貨の国際分散という手法を提案したい。円預金だけでなく、ドル預金やユーロ預金などにも分散させて保有する考え方だ。
冒頭に指摘したとおり、円安の影響は立場によって変わる。分かりやすいのは企業。輸出業者は海外販売で得た外貨を円に換えるため、円安が業績を押し上げる。逆に輸入業者は海外から仕入れる商品を買うために円を外貨に換えるため、円安は業績を圧迫する。実は、個人の場合も影響は様々だ。消費者からみれば、輸入品の値段が上がるので円安はマイナス。ところが外貨資産への投資家の立場だったら、円換算の価値が上がるので円安がプラスに働く。
東京都内に住む中村美紀さん(仮名、52)は、円安が進み始めた昨年夏から手持ちのドル預金を取り崩して生活費に充てている。1ドル=100円程度の時代に預けたため、円に戻すと手数料などを引いても1〜2割ほど増え、商品の値上げを十分吸収できるという。
消費者にデフレ感覚が染みついた日本では、企業が買い控えを警戒して製造コストの上昇分をまるごと販売価格に転嫁しない。一方、ドル預金はそのまま円に換金できるので、値上げ分を為替差益で賄いやすいわけだ。
取引コストが安い外国為替証拠金(FX)会社を使う方法もある。FX大手の外為どっとコムの調査では、担保に預けたお金の数倍の金額を取引できる「レバレッジ」を1〜2倍にとどめる人が全体の4分の1近くを占めた。外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏は「生活費をドルで預ける手段として活用する人も少なくない」と話す。

グローバル化やIT化の進展で、現在は海外の商品との距離が近くなっている。消費者として海外の商品を買う機会が増える時代に、投資家として保有資金を円だけで持つ必然性は乏しい。かつて平日に金融機関の窓口でしか扱っていなかった外貨預金も、現在はインターネットで終日取引でき、取引コストも格段に安くなった。
為替市場に詳しいマーケット・リスク・アドバイザリーの深谷幸司氏は「円安で支出の負担が増すのであれば、収入も円と外貨に分散させておき、円安時には外貨で支払う方が生活防衛策として理にかなっている」と話す。円高時は円預金、円安時には外貨預金を生活費に充てる行動は、グローバル時代の新常識になるかもしれない。
だが家計の預金は円に偏っている。日銀の資金循環統計によると、2021年末時点で家計の現預金1091兆円のうち、外貨預金はわずか7兆円ほど。外貨になじみが薄い高齢層が過半を保有しているうえ、預金保険の対象外であることもあり、通貨の国際分散はほとんど浸透していない。
それでも若い世代を中心に、外貨との距離は縮まっている。ドル建ての投資信託の残高はコロナ後の円安・株高を背景に急増しており、若い世代が米国株などに資産を移す動きが目立つ。あと10年ほどの間に、若いころに海外旅行や海外ブランドに慣れ親しみ、外貨の保有にも抵抗が小さいバブル世代が高齢層に仲間入りする。
いまは急激な円安時なので、外貨に分散させるタイミングにはそぐわない。ただ円安で暮らしが苦しくなる状況を肌で感じている今だからこそ、次の円安局面に備えて通貨の国際分散という考え方だけは身につけておきたい。
●円相場 財務大臣と日銀総裁 発言変化の背景は? 4/30
外国為替市場では円の独歩安が続いています。この円安を政府や日銀はどう受け止めているのでしょうか。最近の財務大臣と日銀総裁の発言の微妙な変化から背後にある真意を探ります。
外国為替市場のドル円相場では3月に入ってから円安が加速し、4月28日には日銀が金融緩和策の維持を公表したことで1ドル=131円台まで値下がり。20年ぶりの円安水準を更新しました(4月28日午後7時時点)。およそ2か月で15円程度円安が進んだのです。金融市場の変動が大きいとき、通貨当局者の発言は投資家のあいだで特に注目されます。発言1つで市場が動くからです。私たち金融を担当する記者も当局者の発言内容は注意深くチェックしていますが、発言内容の変化を追うと、真意が透けて見えるときがあります。
財務相 配慮された発言
ことし3月22日。円相場はおよそ6年1か月ぶりに1ドル=120円台まで値下がりしました。アメリカFRBのパウエル議長が講演で利上げ幅を2倍にする可能性を示唆したことを受けて、市場で日米の金利差の拡大が意識され、円を売る動きが強まったのです。この日の鈴木財務大臣の発言です。「為替の円安方向の動きにより、輸出企業の収益は改善する。その一方で、輸入物価の上昇を通じて、企業や消費者の生活にも負担増となり得るなど、プラスとマイナス面双方の影響がある。引き続き、為替市場の動向や日本経済への影響を見ていかなければならない」円安のプラスとマイナスの両面を語り、市場に影響を与えないよう、配慮された回答といえるでしょうか。
ぶれない黒田発言が円安に
一方、日銀の黒田総裁は3月18日の金融政策決定会合後の記者会見で一貫した金融政策に対する姿勢を語りました。「必要があればちゅうちょなく金融緩和を行う」「円安は経済・物価ともにプラスに作用するという基本的な構図に変わりはない。円安がすべて経済にマイナスというのは間違い」一連の発言で、市場では円安容認ではないかと受け取る投資家からの円売りドル買いを誘いました。4月13日、信託大会で黒田総裁は「現在の強力な金融緩和を粘り強く続ける」と発言したことを材料に市場では金融緩和が当面続くとの見方から円安が加速。この日、1ドル=126円台をつけ、20年ぶりの円安となりました。黒田総裁の発言は終始一貫しているのですが、金利差を意識する投資家たちは円売りサインと敏感に反応する傾向が強まっているようです。
悪い円安の定義に言及
これに対して市場関係者が身構えたのは4月15日の鈴木財務大臣の発言でした。「円安が進んで、輸入品などが高騰している(中略)それに応じて原材料を十分価格に転嫁できないとか、買うほうも賃金が伸びを大きく上回るような補うようなところまで伸びていない環境については悪い円安というふうに言えるんだと思います」「悪い円安」について、鈴木大臣が初めて定義づけしたと市場で受け取られました。かなり踏み込んだ発言だと私も取材していて感じました。
黒田総裁、若干の軌道修正?
この財務大臣の発言を受けたのかどうか、真意は分かりませんが、これまで「円安は総じてプラス」と述べてきた日銀の黒田総裁も3日後の18日の国会答弁で急速な円安が進むことのマイナス面について触れます。「円安が日本経済全体にプラスという評価はさまざまなシミュレーション分析を行った結果です。基本的なところは変わっていない。ただ最近の急速な円安は(中略)かなり急速な為替の変動です。企業の事業計画の策定に困難をきたす恐れがあり、そういう意味でマイナスも考慮しなければならない」黒田総裁も鈴木大臣の警戒感を受けて、若干の発言の軌道修正を迫られたのではないかとある市場関係者は語っていました。
数字をもって示した
その後、鈴木大臣は4月21日、ワシントンで開かれたG20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議でアメリカのイエレン財務長官と会談。会談後、記者団に「私からは直近の円安がやはり急激だということを数字をもって示した」と発言しました。通貨当局トップどうしの話し合いはベールに包まれているもの。それが具体的な数字を示したということまで公言するのは驚きをもって受け止められました。ある市場関係者は「円安を食い止めたいという意志の表れだろう」と話していました。
物価高と選挙への影響を警戒
こうした鈴木大臣の発言の真意について、ある政府関係者は次のように述べています。政府関係者「原材料価格が高騰する中で、食料品を中心に値上げが広がり始めている。一方、コロナからの経済回復が途上で賃金上昇が進まない中、円安が進みすぎると、家計の負担が増大してしまう。物価高に対する不安が夏の参議院選挙にも影響しかねないことを政権内では警戒する声があがっている」
あくまで景気下支え
一方、日銀は4月28日の会合で大規模金融緩和の維持を決定。さらに10年ものの国債を0.25%の利回りで無制限に買い入れる「連続指値オペ」を毎営業日実施するという驚きの措置も打ち出しました。黒田総裁はそのねらいについて「長期金利の上限をしっかり画する」と述べました。ある市場関係者は「今回の指し値オペの常態化は、日銀としてかなり踏み込んだものだ。黒田総裁としては今の金融緩和政策は為替目的ではなく、あくまで経済を下支えするためのもの。この景気状況では政策を変えるべきではないという確固たる信念の表れだろう」と話していました。物価高がさまざまな影響を及ぼすことに警戒感を高めつつある政府と金融緩和の継続を強調する日銀。微妙な発言の違いにそれぞれの立場での思いがにじみ出ています。 
 
 

 

●これだけは押さえたい「急激な円安」が進んでる訳  5/1
東京外国為替市場でドル円相場が一時1ドル=130円台を突破した。これは2002年4月以来、約20年ぶりの円安・ドル高の水準となる。1年前の108円台からみれば20%も円安が進んだことになるが、3月初旬からの約2カ月ほどで13%も円安が進んでいることを考えると、いかに足元の円安のペースが異様かはわかるだろう。
その結果として、連日「円安」を報じるニュースが続いているため、それほど経済や投資に興味がない層にも「円安の影響」に興味を持つ人が増えてきたように感じている。今回は円安の影響について考えていこう。
外貨に対する相対的な価値
そもそも、「円安」とは何か。日本円が外貨に対して相対的な価値がどのように変動したかを表す表現と考えればよいだろう。1ドル=100円ということであれば、100円を渡せば1ドルと交換してもらえるということである。それでは、1ドル=120円になるとどうか。1ドルをもらうのに100円ではなく120円が必要となるわけだから、ドルに対して円の価値が下がっているということ。つまり円安になったということだ。
筆者は投資初心者や経済の初学者に講義をする機会が多いが、意外と勘違いをする人が多いのがこの部分だ。
1ドル=100円が1ドル=120円になると、つい円の量が20円増えているので、円が強くなったと思い「円高」と答えてしまう人がいるのだが、前述のように理屈がわかっていれば大丈夫だろう。
どうしても勘違いしてしまうという人は、為替相場においては自分の感覚と逆だと覚えてしまってもいいのかもしれない。
この基本を押さえた段階で、この2カ月におけるドル円相場の推移について再度確認してみよう。1ドル=115円台でスタートした3月。そして、4月28日には1ドル=130円を記録した。つまり約2カ月ほどで13%も円安が進んだことになる。
この2カ月のうちに急速に「円安」が進んだことは理解できただろう。それでは、次に気になるのは私たちの生活にどのような影響があるのか、ということだ。
テレビや新聞など、メディアでは足元の円安を報じる際に「悪い円安」という表現を使うことが多い。メディアが大げさに煽っているように思う方もいるかもしれないが、4月15日の閣議後の記者会見で鈴木俊一財務相が、企業が原材料高を価格転嫁できず、国民の賃金も上がらない状況下での円安は「悪い円安と言えるのではないか」と発言している。
また、日本銀行の黒田東彦総裁は「悪い円安」と表現はしていないものの、4月18日の衆院決算行政監視委員会で「大きな円安や急速な円安はマイナスが大きくなる」と発言している。
円安のメリット・デメリット
筆者は本件に限らず、物事には良い面も悪い面も存在していると考えているため、あまりよくわかっていない段階でメディアの受け売りで悪い円安論に追従することは勧めない。まずは円安のメリットとデメリットを理解すべきだろう。
まずメリットとして最初に挙げられることが多い点は、輸出企業の価格競争力が上がるというものだ。そのほかにも、海外の資産に投資をしていた際に受け取る利子や配当も円に換算した時には増えるということや、海外からの観光客が増える可能性が高まることも挙げられる。一方でデメリットとしては、海外から輸入をするモノの値段が上昇するということが挙げられる。
このようにメリットとデメリットがあるなかで、なぜ今回は「悪い円安」という表現が使われるのか。それは、2011年前後の円高局面などで日本企業が生産拠点を海外に移してしまったことで従来ほどは、輸出企業が円安のメリットを享受できないことや、そもそもコロナ禍において円安だからといって海外からの観光客が増えることはないからだ。
一方で、コロナ禍における供給制約やロシアのウクライナ侵攻を受けてエネルギーや食品の価格が上昇しているなかで、急激な円安が進むことでさらに物価上昇圧力が高まってしまうというデメリットが目立つからにほかならない。
そもそも、なぜこれほどまでに円安が進行したのか。大きな要因の1つは日米の金利差が拡大していることにあり、かつ金利差は今後も広がり続けると多くの投資家が考えていることだ。
4月12日にアメリカの労働省が発表した3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+8.5%となり、1981年12月以来、約40年ぶりの高水準となった。
これだけ物価が上昇してしまうと家計への悪影響が大きいため、アメリカの中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)は金利を引き上げることでインフレを退治しようとしており、FRBのパウエル議長も利上げや金融引き締めについては明言をしている。一方で、日本においては日本銀行の黒田総裁が金融緩和の継続を明言し、かつ利上げについては明確に否定している。
日本とアメリカの金利差が開くと円安・ドル高になる理由は単純で、金利が低い円を借りてきて、ドルを買えば円とドルの金利差はリスクなく稼ぐことができるため、ドル買い・円売りの動きが加速するのだ。これを「円キャリー取引」と呼ぶこともある。
以上の理屈を考えれば、日本も金利を上げて日米の金利差を縮小させれば円安に歯止めをかけられるじゃないかと思う方もいるだろう。実際に悪い円安論を強調する専門家はセットで金融緩和の終了も強調することが多い。しかし、アメリカは金利を引き上げることに耐えられる経済環境にあるのに対して、日本経済はそれほど強い経済環境ではないという認識を持つべきだろう。
本当に考えなければいけないこと
足元の円安について、前述のように日米の金利差拡大を理由として挙げがちだが、今回の円安の理由をそこだけに見てはいけない。よく日本経済を表す表現として「失われた30年」というものがあるが、根本的にはこの点をポイントとして挙げるべきなのだろう。
程度の差はあれ、他国が経済成長を続け、それに伴い賃金も上昇する中で、日本は経済が成長せず、賃金も上昇しなかった。更には非正規雇用の比率が高まり労働環境は不安定化し、少子高齢化・人口減少が進行してきてしまった。
さらに、コロナ禍やロシア・ウクライナ事案において、外国依存体質になってしまっていることが如実に表れてしまった。マスクもワクチンも国内では十分に作れず、食料やエネルギーは輸入に依存してしまっている。
円安の意味、円高と円安の判断の仕方など基本的な話から入ったが、足元の急激な円安の背景について、日米の金融政策の違いや、そもそもの日本経済の問題点など、幅広く思考を展開できるような経済脳を鍛えていきたいものである。
●日銀のデイリー指値オペによる円安再燃の継続性は 5/1
04月25日週のユーロ/円、ポンド/円は乱高下
中国でのコロナ感染拡大による影響が懸念されたほか、ロシア国営天然ガス企業・ガスプロムによる、ポーランドとブルガリアへの天然ガス供給停止が嫌気されリスクオフの円買い戻しが先行しました。ユーロ/円は134.774円、ポンド/円は159.582円付近へ下落。しかし、金融政策を据え置いた日銀会合で「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう指値オペを、上限を設けずかつ毎営業日行う」ことが決定され緩和継続姿勢を明確にすると、相場は円安へ急旋回。ユーロ/円は137.989円、ポンド/円は164.121円(ともに執筆時点)まで持ち直すなど荒っぽい展開となりました。かたや、リスク回避のドル高から、ユーロ/米ドルは5年1カ月ぶりの1.0500ドル割れ、ポンド/米ドルが1年9カ月ぶりの1.2500ドル割れまで低下するなど、対円と対ドルで対照的な値動きとなりました。
ユーロは好材料少なく、円安頼みの感否めず
中国の生産減速や成長鈍化懸念に加えて、欧州とロシアの対立激化よる経済への下押し圧力は増しています。ドイツは、楽観的な路線を辿ったとしても今年のGDPが2.2%程度に留まると、従前の3.6%見通しから大幅に下方修正しています。欧州の成長がマイナスにまで落ち込めば、EUの財政出動による共同債発行を巡るフローで少し話は違ってきますが、現時点でそこまでの悪化も見通せていませんので、ユーロに対する下押し圧力はなくなりづらそうです。対円では、日銀の条件付きデイリー指値オペがユーロのサポート材料として機能しそうですが、果たしてそれだけでユーロ安が後退するかは微妙と考えます。ドイツ10年物国債入札で入札利回りが上昇すれば、ECBの7月利上げ観測からユーロは局所的な反発期待は膨らみそうですが、直近のエネルギー価格上昇による消費の下押し懸念から、次第に上値は重くなるのではないでしょうか。
英緩やかな引き締め路線へ微調整か
来週はイングランド銀行(BOE)による金融政策委員会が開催されます。足もとのインフレ加速を背景として追加利上げが見込まれますが、公共料金の値上げなど家計への負担を考慮して小幅な引き締め(0.25%)に留まるとの見方が優勢です。また、2月には金利が1.00%へ達したら状況に応じて英国債などの購入資産売却を進めるとしていたタカ派センチメントが後退することも想定されます。宿泊・飲食関連の付加価値税率の引き上げなど物価上昇要因があるなかで、利上げ路線は継続せざるを得ないのでしょうが、利上げスピードは緩みそうな雰囲気で、引き締め=通貨高になりづらい感じです。引き締めペースが大きく後退するなら、成長鈍化の悪材料面がより意識されてポンドの上値を抑制しそうです。月が改まり、リバランスによる円買い圧力は緩和しそうですが、英経済の先行き懸念から何かとポンドの上値は重そうです。
ユーロ/円、5月のローソク足形状を重要視
ユーロ/円は月足ローソク足で大陽線後に上ひげの長いローソク足が出現し、次に陰線が出れば「三川宵の明星」が完成し下落の予兆と受け止められそうな形状になっています。こうした不安があるなかで、テクニカル的には上値の重さがイメージされやすいと考えます。4月5日安値134.294円レベルをトライする場面があっても不思議はないでしょう。逆に、戻りを試したとしても、日足ボリンジャーバンド+2σレベルの139.46円レベル(執筆時点)では戻り売りが被さってきそうです。
ポンド/円、戻り売り目線か
昨年7月から今年の3月にかけて形成されたバンド(148.451-158.217円)への回帰はさすがにやり過ぎと思われるため、160.000円割れからは買い戻しが強まる期待がある一方、日足一目転換線・基準線が集まる163.700-164.000円レベルより上では戻り売りが出やすく、節目の166.000円付近ではその勢いが和らぐのではないでしょうか。対ドルで2019年9月安値(1.19586ドル)と2020年4月安値(1.21643ドル)を結ぶ支持線を割り込んできたことも、ポンド/円の上値を抑えそうです。 

 

●1ドル130円13銭前後とドル高・円安で推移 5/2
2日の外国為替市場のドル円相場は午後0時時点で1ドル=130円13銭前後と、前週末午後5時時点に比べ12銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円89銭前後と39銭のユーロ安・円高で推移している。
●ドル・円は引き続き130円台前半で推移、日経平均相場動向は材料視されず 5/2
2日午前の東京市場でドル・円は130円台前半で推移し、下げ渋っている。日経平均は140円安で推移しているが、中国本土・香港穂市場は休場のため、日経平均の下落は特に意識されていないようだ。ここまでの取引レンジは、ドル・円は129円61銭から130円30銭、ユーロ・ドルは、1.0518ドルから1.0564ドル、ユーロ・円は136円75銭から137円38銭。
●日経平均は39円安、円安・ドル高も株価下支え要因に 5/2
日経平均は39円安(13時20分現在)。日経平均寄与度では、アドバンテスト<6857>、東エレク<8035>、ファナック<6954>などがマイナス寄与上位となっており、一方、ファーストリテ<9983>、村田製<6981>、ソフトバンクG<9984>などがプラス寄与上位となっている。セクターでは、建設業、その他製品、電気・ガス業、サービス業、精密機器が値下がり率上位、海運業、空運業、ゴム製品、ガラス土石製品、金属製品が値上がり率上位となっている。
日経平均は小幅安水準で推移している。外為市場で130円30銭前後と朝方に比べ60-70銭ほど円安・ドル高に振れたことが輸出株などの買い安心感となり、株価下支え要因となっているようだ。
●円安基調変わらず、ドル/円は底堅く推移 5/2
先週の回顧
先週のドル/円相場はドル一段高。一時20年ぶりに130円台を突破し、131.25円まで値を上げている。
前週末は、実施されたフランス大統領選の決選投票で現職のマクロン氏が再選される見通しとなり、そののち勝利宣言も。それとは別にTBSが報じ思惑を呼んだ「日米財務相会談で協調介入議論」との話を、ロイターが「財務省幹部、TBS報道を否定」と指摘し物議を醸していたようだ。
そうした状況下、ドル/円は128円半ばで寄り付いたのち、当初はドル売り先行。週間安値である126.95円まで1円を超える下落をたどっている。しかし切り返すと、一転してドルは急騰。前週記録した年初来高値129.41円や130円を超え、一気に131円台へ。週間高値の131.25円を示現したものの、週末にかけてはポジション調整と思しき動きも観測され、週末NYは130円台を維持できず。129円台後半で取引を終え越週となった。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「ロシア情勢」と「円安けん制発言と日銀金融政策」について。
前者は、ロシア軍がウクライナ南東部マリウポリをほぼ陥落させたと伝えられるなど、ウクライナ国内での戦闘は依然として継続。そうしたなか、欧米諸国を中心とした対露制裁はますます激しさを増す反面、ロシア側からは「核戦争が起きるかなりのリスクがあり、過小評価すべきでない」(ラブロフ外相)、「核兵器の使用を辞さない」(プーチン大統領)などとした、核の恫喝発言が週間を通して何度も聞かれている。また、それとは別にロシアが東欧2カ国への天然ガス供給を4月27日に停止するなど、エネルギーをめぐる「欧州vsロシア」のバトルが少しずつ鮮明化している。
対して後者は、前述したようにロイターが匿名財務省幹部の発言として否定した「TBS報道」を、そののち当事者である鈴木財務相も「事実ではない」とコメント。フェイクニュースだったことが明らかになった。なお、その一方、渡辺元財務官が「130円や135円は日本経済にとって悪い水準でない」と、従来とは一線を画す円安容認コメントを発したとされるなか、4月28日に日銀が決定会合の結果として、「当座預金残高の政策金利をマイナス0.10%で維持」などとし、現在の大規模な金融緩和策の継続を発表している。結果的に当局が一段の円安進行を容認したともいえそうで、実際日銀の決定が前述した「20年ぶりの130円台乗せ」を誘発していたことは間違いない。
今週の見通し
今年3月のドル/円相場は2年ぶりとなる月間変動幅10円超を記録したが、続く4月も月間変動幅は10円近い変動となった(安値121.67円、高値131.25円)。さらに言えば、ザックリ「月初安・月末高」の様相で、ドルの強さとともに円の弱さが際立った1ヵ月間と言ってよい。本日から始まる5月相場も、そんな過去2ヵ月を継ぐ3ヵ月連続の「大相場」を期待する声も少なくないようだ。
前述したように、日銀が先週改めて「大規模な金融緩和策の継続」を発表する一方、米国は今週3-4日に開催されるFOMCで「0.5%の利上げ」がほぼコンセンサスだ。単純に日米金利差という観点では、ドル高・円安基調が当面続くと言わざるを得ない。と言うより、それが基本的にはファンダメンタルズに沿った正常な動きと見られるだけでなく、先週時事通信がレポートしたように「円安阻止の妙手もない」。さすがに行き過ぎ感は出ているものの、ポジション調整程度しか円が大きく買い進められる要因は思いつかない。
テクニカルに見た場合、ドル/円相場はイケイケドンドンでドル高・円安が止まらない。先週ついに20年ぶりとなる130円台乗せを記録している。正直、2002年4月1日に記録した133.84円を「中期ターゲット」として認識しているが、先週を含めたここ最近のドル高進行スピードからすると、到達は意外に早いのかもしれない。仮に上抜ければ、2002年高値の135.20円がターゲットに。
材料的に見た場合、中長期的には、ここ最近人民元の下げが目立っており今週もその動きが気掛かりな「中国情勢」。いわゆるXデーを過ぎたものの、米国務省副報道官が「核実験再開」発言をするなど警戒感が依然として強い「北朝鮮情勢」、「新型コロナ・オミクロン株蔓延問題」−−などに注目。
そうしたなか今週は、4月のISM製造業景況指数や同雇用統計といった重要な米経済指標が発表されるほか、欧州を主とした企業決算発表も相次ぐ。そうしたなか、週を通して最大の注目要因である米FOMCが開催される見込みだ。また、3-5日に東京が休場になるが、経験則的に東京休場時は波乱が多いことも頭に入れておいて損はない。
そんな今週のドル/円予想レンジは、128.00-131.50円。ドル高・円安については130円半ばが弱い抵抗で、上抜けると先週記録した年初来高値131.25円が再び視界内に。対するドル安・円高方向は、129円レベルの攻防にまずは注目。割り込めば、なし崩し的なドル安進行も否定できない。 

 

●米FOMCの大幅利上げを織り込む長期金利上昇で130円35銭まで円安・ドル高 5/3
ドル・円:129円70銭まで下げた後、米FOMCでの大幅利上げを織り込む長期金利上昇で130円35銭まで円安・ドル高で推移。
ユーロ・ドル:ドイツの3月小売売上高は減少したこと、米長期金利の上昇を受けて1.0542ドルから1.0490ドルまでドル高・ユーロ安推移。
ユーロ・円:137円20銭から136円52銭まで円高・ユーロ安推移。
NY原油市場:下げ渋り、供給不安は解消されず。NY株式市場:反発、FOMC控え神経質な展開。
●米長期金利 一時3%台に上昇 3年5か月ぶり 円安要因に  5/3
2日のニューヨーク債券市場では、アメリカで金融引き締めが加速することへの警戒が強まり、長期金利が一時、3年5か月ぶりに3%台まで上昇しました。アメリカの長期金利の上昇は、外国為替市場で急速に進む円安ドル高の要因となっています。
2日のニューヨーク債券市場では、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が翌日の3日から開く金融政策を決める会合で金融引き締めを加速させることへの警戒が強まり、アメリカ国債が売られて長期金利の指標となる10年ものの国債の利回りが一時3%台まで上昇しました。
長期金利が3%台をつけるのは、2018年12月以来3年5か月ぶりです。
外国為替市場では、アメリカの長期金利の上昇でドルの利回りが見込めることなどから、円安ドル高が急速に進んでいて、2日のニューヨーク市場で、円相場は1ドル=130円台前半を中心とした水準で取り引きされています。
アメリカの長期金利は、おととし3月にFRBがゼロ金利政策と量的緩和策を導入してから、一時1%より低い水準で推移していましたが、その後アメリカ経済の回復やインフレを背景に上昇に転じ、ことし2月に2%台をつけていました。
●ニューヨーク外国為替市場概況・2日 ユーロドル、反落 5/3
2日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは反落。終値は1.0507ドルと前営業日NY終値(1.0545ドル)と比べて0.0038ドル程度のユーロ安水準だった。米連邦準備理事会(FRB)による積極的な利上げへの警戒感が強まる中、米10年債利回りが一時3.0081%前後と2018年12月以来約3年5カ月ぶりの高水準を付けるとユーロ売り・ドル買いが優勢に。3時過ぎに一時1.0490ドルと日通し安値を更新した。なお、23時発表の4月米ISM製造業景気指数が55.4と予想の57.6を下回り、20年7月以来の低水準を付けたことが分かると1.0542ドル付近まで下げ幅を縮める場面もあったが、米長期金利が高止まりする中、戻りは鈍かった。
ドル円は反発。終値は130.16円と前営業日NY終値(129.70円)と比べて46銭程度のドル高水準だった。欧州株相場の下落や時間外のダウ先物の失速を受けてリスク回避の円買いが先行すると、21時30分前に一時129.70円付近まで弱含んだ。ただ、週明け早朝取引で付けた日通し安値129.57円が目先サポートとして意識されると買い戻しが進んだ。米長期金利が3年5カ月ぶりの高水準を更新する中、130.35円付近まで持ち直した。
なお、FRBは3−4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で高インフレ抑制に向け、通常の2倍となる0.50%の大幅利上げに踏み切り、量的引き締め(QT)開始を決めるとみられている。市場では「パウエルFRB議長がFOMC後の会見で、インフレ抑制のための積極的な利上げを今後も続けるタカ派姿勢を示すことへの警戒感が強い」との声が聞かれた。
ユーロ円は続落。終値は136.78円と前営業日NY終値(136.95円)と比べて17銭程度のユーロ安水準。ダウ平均が一時520ドル超下落した場面ではリスク回避の円買いが入り、一時136.52円と本日安値を更新した。ユーロドルの下落につれた売りも出た。 

 

●NY円、横ばい 1ドル=130円10〜20銭 FOMC控え様子見 5/4
3日のニューヨーク外国為替市場で円相場は横ばい。前日と同じ1ドル=130円10〜20銭で取引を終えた。4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を控えて市場参加者の様子見ムードは強く、方向感が乏しかった。
FOMCでは通常の2倍の0.5%の利上げと資産圧縮の開始が決まる見通しだ。金融政策の先行きに関するパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言を見極めたいとの声が多い。日本がゴールデンウイーク(GW)の大型連休中ということもあって参加者が少なく、売買は盛り上がりを欠いた。
円の高値は129円70銭、安値は130円20銭だった。
円は対ユーロで3営業日ぶりに反落し、前日比20銭円安・ユーロ高の1ユーロ=136円90銭〜137円00銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで反発し、前日比0.0010ドルユーロ高・ドル安の1ユーロ=1.0515〜25ドルで取引を終えた。足元でユーロ安・ドル高が進んだ反動で、FOMCを前に持ち高調整のユーロ買いが入った。
ユーロの高値は1.0578ドル、安値は1.0512ドルだった。
●ロンドン外為3日 ユーロ、対ドルで下落 5/4
3日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=1.0540〜50ドルと前営業日である4月29日の同時点より0.0010ドルのユーロ安・ドル高で推移している。米連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融引き締めの観測からユーロ売り・ドル買いが優勢となっている。中国で続く厳格な新型コロナウイルス対策が世界経済を下押しするとの懸念もユーロ売り・ドル買いを促した。
円は対ユーロで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=136円90銭〜137円00銭と、前営業日の同時点より20銭の円安・ユーロ高で推移している。日銀が金融緩和を継続するとあって円売りが優勢になっている。
英ポンドは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.2510〜20ドルと前営業日の同時点に比べ0.0040ドルのポンド安・ドル高で推移している。
●ミスター円も苦心…円安を止める「為替介入があまりに非現実的」である理由 5/4
日銀の金融政策転換の可能性は低い
円安進行が止まらない。4月28日の東京市場では1ドル=130円を突破、NY市場でも勢いは止まらず、1ドル=131.24円まで円安が進んだ。円安進行を止める残された手段は「為替介入」しかない。果たして、介入は行われるのか? 
さらなる急激な円安進行の引き金を引いたのは日銀だった。4月28日の金融政策決定会合で大規模緩和の維持を決めたことに加え、10年国債利回りを0.25%で無制限に買い入れる「指し値オペ」を毎営業日実施するという強化策も決めた。
この決定を受け、28日の東京外国為替市場では1ドル=130円に円安が進み、約20年ぶりの円安・ドル高となった。さらに、円安の勢いは止まらず、NY市場では1ドル=131円台に円安が進んだ。
筆者はこれまで、1月23日の『日銀は「利上げ」を完全否定するも、決して“鵜呑みにできない”3つの理由』や4月24日の『「円安」の先に待ち受ける「稼げないニッポン」最悪のシナリオ』など数度にわたって、黒田東彦総裁の金融政策に対する姿勢を取り上げた。
13年3月に総裁就任して打ち出した「低金利政策による2%の物価上昇」という目標を達成できずに、23年4月の任期を迎えようとしている黒田総裁にとって、日米金利差が原因となっている現状の物価上昇でも、自らの目標を達成できる“唯一のチャンス”だから金融政策の変更は行わないと指摘した。
さらに、今後、利上げ幅の拡大など金融引き締め強化を行う可能性の高い米国と、低金利政策から抜け出せない日本の金利差は益々拡大する可能性があり、02年当時の1ドル=135円台まで円安が進む可能性を指摘した。
案の定、28日の金融政策決定会合後の記者会見で黒田総裁は、8%を超える米国の消費者物価指数の上昇率と0.8%にとどまる日本では環境が全く異なるとし、「2%の消費者物価目標の持続的、安定的な実現を目指す観点から粘り強く緩和を続ける」と強調した。
日銀では原油高・資源高、円安というコストの上昇(コストプッシュ型)の物価上昇は一時的なもので、「持続性はない」との見方をしている。
それ故に、黒田総裁は現状の円安進行に対しても、「全体として円安がプラスという考え方に変わりはない」との姿勢を崩さない。
黒田総裁が誕生した13年のドル・円の年間平均レートは1ドル=97.60円だった。黒田総裁の下で1ドル=131円まで円安は進んだので、円は30円以上も下落したことになる。
たしかに業績に与える影響度合いは減少してきているとは言っても、日本の輸出企業を苦しめる“円高”から脱却した功績は、黒田総裁の成果として評価されるべきだろう。
それでも、「悪い物価上昇」の一因となっている急激な円安進行に対しては、ここに来て黒田総裁自らが「過度な変動はマイナスに作用する」と評価を変えたように、政府部内からも批判が出ている。
鈴木俊一財務相も円安について、「米国などの通貨当局と緊密な意思疎通を図りながら適切に対応していきたい」と発言している。
「ミスター円」がみせた秀逸な為替介入
日銀が金融政策を変更しない以上、残された円安進行を止めるには、「為替介入」がもっとも有力な手段となる。
それでは、為替介入とはどのようなものなのか。
為替介入の正式名称「外国為替平衡操作」という。為替政策は財務省の管轄であり、為替介入は財務大臣の権限で実施される。鈴木財務相の「適切な対応」とは、為替介入を示唆しているのだ。
介入を行う場合には、財務省の外国為替資金特別会計(外為特会)の資金が使われる。円高阻止には「円を売って、ドルを買う」、円安阻止には「円を買って、ドルを売る」というオペレーションを実施する。財務省の指示を受けた日銀が、市場で実際にオペレーションを実施することになる。
とはいえ、為替介入は簡単なものではない。巨額な資金が取引されている為替市場でその相場の流れを変えるわけだから、(1)巨額の介入資金、(2)介入する通貨の当事者国(例えばドル・円相場に介入するためには米国)とのネゴシエーション、(3)経済・社会情勢の適切な判断が必要となる。
筆者はロイター通信で大蔵省(現、財務省)を担当し、為替市場も担当していた時に、為替介入を何度も経験している。
その中でも、特に秀逸な介入手腕を見せたのが、「ミスター円」と呼ばれ、「国際通貨マフィア」と例えられた榊原英資・国際金融局長(当時)だった。
巨額な為替相場の流れを変えるには、巨額な介入資金が必要だと前述したが、少ない介入資金でもっとも効率的に介入を行ったのが、榊原氏だった。
榊原氏が国際金融局長に就任した95年の年間平均レートは1ドル=94.06円と、日本は円高に苦しめられていた。そこで、榊原氏は円安誘導に乗り出し、積極的な「ドル買い・円売り」介入を実施した。
当時はやっと携帯電話が出始めた頃で、ショルダーホンと言われる大きな肩掛け携帯電話を使っている時代だった。インターネットもそれほど普及しておらず、新聞もインターネットサイトを開設していなかったので、ニュースの速報はもっぱら通信社が担っていた。
為替取引においては、ロイターに“一日の長”があり、大蔵省、日銀、銀行や輸出入企業の為替担当部署はロイターの速報を頼りにしていた。
榊原氏は介入を行うに当たり、ロイターを上手に利用した。巨額な取引が行われている為替相場の中で、わずかな介入資金では効果もなく、埋もれてしまうが、榊原氏は介入を実施したことを“さりげなく”ロイターに伝え、速報を出させることで市場に知らしめ、効果を最大限に引き出したのだ。
そのほかにも、いわゆる“覆面介入”と言われる方法も行った。輸出企業では商品の代金がドルで入ってくるため、ドルを円に転換する(ドル売り・円買い)需要が、輸入企業では買い入れた商品代金をドルで支払うため、円をドルに転換(ドル買い・円売り)需要がある。
この需要を利用して、ドル売り介入では例えば自動車メーカーなど輸出企業に、ドル買い介入では例えば商社など輸入企業を使って、介入を行った。こうすることで、介入を隠したまま、相場の流れを“自然”に変えようとした。
それでも、榊原氏が国際金融局長だった95年と96年に使われた介入資金は6兆5624億円にものぼる。この結果、97年の年間平均レートは1ドル=120.99円まで円安となった。
介入を実施・成功させるためには巨額の介入資金のほかに介入する通貨の当事者国とのネゴシエーションが必要だと前述した。
当時の米国通貨政策の責任者ローレン・サマーズ財務副長官と榊原氏は米ハーバード大学の客員教授をしていた時代からの友人関係にあったことも、榊原氏と米国とのネゴシエーションがうまくいった理由の一つだろう。
為替介入のための「ドル資金調達」の問題点
話を戻そう。では、現在の急激な円安進行を止めるための介入はできるのだろうか。
財務省の外国為替平衡操作の実施状況を見ると91年以降、円安誘導のためのドル買い・円売り介入は79兆8236億円実施されているに対して、現在必要な円高誘導のためのドル売り・円買い介入はわずか4兆8793億円しか行われていない。
あの“ミスター円”と異名を取った榊原氏が95年と96年に行った介入も、円安誘導のためのドル買い・円売り介入であり、それだけ円高誘導のためのドル売り・円買い介入は難しいのだ。
円安誘導のためのドル買い・円売り介入は、事実上、無制限に円資金を調達できるため、効果が出るまで介入を続けることができる。
しかし、円高誘導のためのドル売り・円買い介入を行う場合、外為特会で保有している外貨準備のドル資金には限界がある。
22年3月末時点の外貨準備は1兆3560億ドル(約173兆円)で介入に十分なドル資金を保有しているように見えるが、その80%は証券運用されており、大半が米国債となっている。
つまり、介入のためのドル資金を調達するためには、米国債を売却する必要があり、それは米国の長期金利に影響を与える可能性がある。
例えば、米国債を大量に売却すれば、米国の長期金利は上昇し、日米金利差が拡大することで一段の円安を招く可能性がある。
円高誘導のためのドル資金調達が円安を誘導するという“皮肉な結果”を招いてしまうリスクがあるのだ。
為替介入すべき水準を見極める難しさ
榊原氏も財務官時代の97年と98年に、円高誘導のためのドル売り・円買い介入を実施しているがその額は4兆1061億円と、円安誘導で行ったドル買い・円売り介入の6兆5624億円よりも2兆円以上も少ない。
ちなみに97年、98年の円高誘導の介入により、98年も1ドル=130.91円だった年間平均レートは99年には1ドル=113.91円まで円高となった。
円高誘導のためのドル売り・円買い介入は、この98年を最後に行われていない。また、円安誘導のためのドル買い・円売り介入も11年を最後に行われておらず、すでに10年以上も為替介入は実施されていない。
余談だが、最後に円高誘導のためのドル売り・円買い介入を実施した榊原氏の後任の大蔵省国際局長(当時)は黒田東彦日銀総裁その人だ。
さらに、外国為替平衡操作の実施状況を見ると、例えば、年間平均レートが126.65円だった91年には“円高誘導”のためのドル売り・円買い介入が実施されているのに対して、125.39円だった02年には”円安誘導“のためのドル買い・円売り介入が行われている。
また、120.99円だった97年には“円高誘導”のためのドル売り・円買い介入が実施されているのに対して、121.53円だった01年には”円安誘導“のためのドル買い・円売り介入が行われている。
つまり、その時の経済・社会情勢によって、適切と考えられる為替水準は違うということだ。
過去の介入を見ると、年間平均レートが134.71円の91年、130.91円の98年に円高誘導のためのドル売り・円買い介入が実施されているが、126.65円の92年、120.99円の97年にも行われている。
従って、1ドル=130円を突破した現在の円安が、介入の水準に当たるのかと言えば、必ずしもそうとは言えない。
前述したように、米国では8%を超える消費者物価指数の上昇率に対して、日本は0.8%にとどまる。米国にとってインフレ抑制に寄与するドル高・円安は願ってもないことだ。まして、自らがやれる金融政策の変更という円安阻止策を行わない日本が、米国に為替介入を容認させるのは、かなり難しいだろう。
詰まるところ、円安阻止のための為替介入は、巨額の介入資金、介入する通貨の当事者国とのネゴシエーション、経済・社会情勢の適切な判断のいずれの面からも“難しい”ということだ。  

 

●シドニー外為 米ドルは129円台半ば=豪ドルは93円台 5/5
5日朝のシドニー外国為替市場の円相場は1米ドル=129円台半ばで推移した。現地時間午前8時半現在、129円40〜50銭(前日同時刻は130円05〜15銭)。
オーストラリア・ドルは、1豪ドル=0.7250〜7260米ドル(同0.7095〜7105米ドル)、対円では93円85〜95銭(同92円30〜40銭)。
ニュージーランド(NZ)ドルは、1NZドル=0.6540〜6550米ドル(同0.6430〜6440米ドル)、対円は84円65〜75銭(同83円65〜75銭)。
ユーロは、1ユーロ=1.0610〜0620米ドル(同1.0520〜0530米ドル)、対円は137円35〜45銭(同136円85〜95銭)。
●FRB 22年ぶり“0.5%”大幅利上げ… 今後も円安進みやすい時間帯続く 5/5
1ドルが130円超えるなど、およそ20年ぶりの円安水準となっている日本経済。
この先も、円安は進むのでしょうか。その鍵を握るとして注目されていたFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)は、先ほど政策金利を0.5%引き上げることを決めました。
FRB・パウエル議長:「インフレは非常に高すぎる。これが国民にもたらしている厳しさを我々は理解している。私たちは、それ(インフレ)を低くするために動いている」
利上げは0.25%ずつが一般的で、その倍にあたる0.5%の大幅な金利引き上げは、2000年5月以来、22年ぶりのことです。
現在の円安は、依然ゼロ金利策を維持する日本と、利上げに踏み切ったアメリカの金利差による円売りドル買いが大きな要因となっています。
アメリカの利上げペースがアップすることで、円安はさらに進むことになるのでしょうか。専門家は、次のように話します。
ニッセイ基礎研究所上席エコノミスト・上野剛志氏:「0.5%の利上げ、大幅な利上げが決定された。議長は、今後のさらなる利上げ幅の拡大、0.75%の利上げに対しては、慎重な姿勢を示した。為替市場では、本日いったん円高ドル安方向へ振れる動きが出てきている。しかし、今後も円安が進みやすい時間帯は続くのかなとみています。輸入品の価格が高止まりして、企業が値上げの動きを今後も続けると想定される」
●ニューヨーク外国為替市場概況・4日 ドル円、続落 5/5
4日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続落。終値は129.09円と前営業日NY終値(130.14円)と比べて1円05銭程度のドル安水準だった。米連邦準備理事会(FRB)は3−4日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場予想通りFF金利の誘導目標を0.75−1.00%に引き上げることを決定。保有資産を圧縮する「量的引き締め(QT)」も決めた。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がFOMC後の会見冒頭で「インフレはあまりにも高い」と発言すると米金利上昇とともにドル買いが先行し一時130.38円と日通し高値を付けたものの、その後失速。同議長が「今後2回の会合で0.50%の利上げを検討」「0.75%利上げは積極的に検討しているものではない」などと発言すると、急激な金融引き締め観測が後退し、米金利低下とともにドル売りが活発化した。4時前には一時128.63円と日通し安値を更新した。
なお、FRBは市場が想定するほど大幅な利上げは検討していないとの見方から、ダウ平均は980ドル超急伸し、金融政策決定の影響をより受けやすい米2年債利回りは18bp低下する場面があった。
ユーロドルは続伸。終値は1.0622ドルと前営業日NY終値(1.0521ドル)と比べて0.0101ドル程度のユーロ高水準だった。このところのFRB高官によるインフレ警戒発言を受けて、市場では6月FOMCでの0.75%利上げを織り込む動きが進んでいたものの、パウエルFRB議長が0.75%の大幅利上げに消極的な姿勢を示すと0.75%利上げの可能性が大きく後退。米金利低下とともにドル売りが優勢となり、一時本日高値となる1.0631ドルまで値を上げた。
なお、FRBは資産圧縮を6月1日に開始する。満期償還される国債と不動産ローン担保証券(MBS)のうち再投資に回る金額を減らす方法を採用し、月額の減額幅は当初475億ドルで、3カ月後には950億ドルに拡大する。
ユーロ円も続伸。終値は137.13円と前営業日NY終値(136.94円)と比べて19銭程度のユーロ高水準。4時前に一時137.43円と日通し高値を付けたものの、すぐに失速し136.61円と日通し安値を更新した。ただ、米国株相場の上昇に伴うリスク・オンの円売り・ユーロ買いが出ると137.30円付近まで再び強含んだ。 

 

●日本株に「悪い円安」は未発生、ドル高止まる時が危険 5/6
足元で進む円安と日本株の相関性は、今のところはっきりしない。マーケットでも日本経済に対する円安の功罪について議論が分かれており、株価の材料としてはほぼ中立。日本株全体でみて「悪い円安」が発生している様子はない。相関性が高いのは米株であり、米株が大きく下落することで米利上げ観測が後退しドル高/円安が止まる時が日本株にとって危険な時間帯となりそうだ。
TS倍率は足元上昇
対ドルで円安が急激に進み始めたのは3月から。インフレ高進で米利上げ加速観測が強まり、日米金融政策の方向性の違いが鮮明化。日本の経常収支赤字化(1月)なども材料視され、115円付近だったドル/円は約2カ月で15円以上の円安が進んだ。
その間、日本株は3月後半までは円安・株高の関係になっていたが、4月に入ってからは円安・株安になっており、相関性は逆転している。ドル/円が120円を超えてから円安・株安のトレンドとなっており、この辺から「悪い円安」が発生したとの見方も聞かれるようになった。
しかし、TOPIXをS&P500で割ったTS倍率でみると、足元はむしろ上昇している。水準自体は依然低いものの、4月以降の日本株の対米パフォーマンスは向上。先進国23カ国と新興国23カ国の大型株と中型株を合わせたMSCIのACWI指数との比較でもTOPIXは上昇している。
日本株との関連性が高いのは、ドル/円よりも米国株や世界の株価だ。「市場のリスク選好度、もしくは世界の景況感に連動して日本株は動いている。円安は業種で影響が異なっているが、日本株全体をみれば今のところプラスに働いている」と、ニッセイ基礎研究所のチーフ株式ストラテジスト、井出真吾氏は指摘する。
キャピタルフライトは見られず
通貨価値の下落である円安を嫌って、日本の投資家が外国の株式や債券に資金を移している様子も見られない。3月から4月23日までの対内対外証券投資(財務省)では、日本居住者による対外株式・ファンド投資は、約1兆3000億円の処分超(売り越し)。中長期債も約4兆円の処分超だった。
ただ、国内投資家が日本株を選好しているわけではない。現物と先物を合計した日本株売買(東証・大取)では、3月から4月第3週までを累計すると、個人投資家は1374億円の買い越しにとどまっている。
海外投資家は同期間に日本株を3143億円売り越しているが、特段売りが膨らんでるわけではない。4月だけをみると、8164億円買い越しだ。ドル高/円安の進行でドル建て日経平均は2020年6月15日以来の安値に沈んでおり、割安感からの「安値拾い」が出た可能性があるとみられている。
しかし、グローバル投資家は世界景気に対し悲観な見方を強めている。バンク・オブ・アメリカの4月ファンドマネジャー調査によると、世界の景気見通しは過去最低水準に落ち込んでおり、「今後の株式配分の引き下げ余地を示唆する」と同調査では指摘。波乱余地は依然大きい。
ソフトランディングは可能か
日本株にとって下落リスクが高まるのは、円安が進んでいる間ではなく円安が止まる時だ。いまのドル高/円安のドライバーは日米金利差。逆資産効果が懸念されるような株安が発生すれば、米利上げ観測が後退し円安は止まる可能性が大きいが、米株と連動性の高い日本株も大幅安となる恐れが強まる。
3─4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では22年ぶりに0.50%ポイントの大幅利上げを決めた。マーケットは、警戒していた0.75%ポイントの利上げ可能性が後退したとみていったん金利低下・株高に動いたが、5日の市場では反転した。
声明文には「FOMCはインフレリスクに非常に注意を払っている」という1文が追加された。米連邦準備理事会(FRB)の目標の3倍近い水準にあるインフレ率が家計に及ぼす影響についてパウエル議長は「極めて不快」と述べており、6月と7月の会合でも大幅利上げが決まる見通しだ。米金利上昇を震源とした市場波乱のリスクは依然大きい。
米株が底堅い間は利上げを続け、急落すれば利上げを止めて、ソフトランディングにFRBは持ち込めるのか──。「そうした芸当ができるのかは極めて不透明だ。株価は一度下がり始めると、何をしても止まらなくなることはしばしばある」と、三井住友銀行のチーフ・マーケット・エコノミスト、森谷亨氏は警戒する。
米ダウは4月以降、1000ドルを超える下落を3度記録するなど不安定さを増している。リスクオフの円買いはすっかり影を潜めたが、リスクオフの日本株売りはまだ「健在」だ。
●東京円、41銭安の1ドル=130円51〜53銭  5/6
6日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前営業日の2日(午後5時)比41銭円安・ドル高の1ドル=130円51〜53銭で大方の取引を終えた。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が4日、1回あたり0・75%の大幅な利上げには否定的な考えを示し、いったんドル買いが落ち着いた。ただ、利上げ路線の米国と低金利政策を続ける日本の金利差拡大が意識され、円が売られやすくなっている。
対ユーロでは、同25銭円安・ユーロ高の1ユーロ=137円29〜33銭で大方の取引を終えた。
●円、130円台前半 ロンドン外為 5/6
週末6日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米雇用統計の発表を控え様子見姿勢が強まる中、1ドル=130円台前半でのもみ合いとなった。
正午現在は130円20〜30銭と、前日午後4時と同水準。 
●ロンドン外国為替市場で円相場、1ユーロ = 138円を超える 5/6
5月6日19時13分頃、ロンドン外国為替市場で円相場は1ユーロ = 138円を超え、前日3時頃の価格(137.17円)から0.86円(0.63%)上昇となる138.03円となった。 

 

●為替相場 5/2〜5/6 5/7
2日からの週は、ドル相場が振幅した。注目の米FOMCでは0.5%の利上げが決定された。今後についても6月、7月の0.5%利上げが示唆された。また、バランスシートの縮小について、6月から開始することが発表された。ただ、パウエル議長会見では一部市場で観測された0.75%幅の大幅利上げについては否定的な見方が示された。市場では、イベント通過とともに大幅利上げが否定されたことを受けてドル売りの反応が広がった。ドル円は130円台から一時128円台へと反落。ユーロドルは1.05台から1.06台へと反発。しかし、米金融当局のインフレ対応姿勢は強く、調整の動きが一巡した後は再びドル高に回帰するとの見方が優勢になっている。豪中銀は市場予想を上回る0.25%幅の利上げに踏み切り、豪ドル買いを誘った。インド中銀は米FOMCに先立って金融利上げを実施した。EUが年内に段階的なロシア産石油禁輸を発表した。原油相場が上昇し、資源国通貨買いにつながる場面があった。英中銀は政策金利を25bp引き上げて1.00%とした。一方で、来年のマイナス成長を予測しており、ポンドが急落した。FOMC後のドル売りで1.26台まで買われたポンドドルは、MPC後には一時1.24台割れとなった。ドル円やユーロドルでもドル買いの動きが再燃した。ポンドは下げ一服後も戻りが鈍く、翌日のロンドン市場朝にも売りが出て1.2270台まで値を落とすなど、英リセッション懸念のインパクトを感じさせる展開に。ポンドに連れ安となって1.05をしっかり割り込んだユーロドルは、仏中銀総裁のタカ派発言に一気に買い戻しが入った。週末の米雇用統計は労働市場のひっ迫と賃金高止まりを示し、インフレ圧力の根源になっていることを示している。4月の非農業部門雇用者数(NFP)は42.8万人増加し予想を上回った。一方、失業率は3.6%に留まり、平均時給は前月比0.3%上昇。労働参加率は低下していた。パウエルFRB議長は今週のFOMC後の会見で「持続不可能なペースでの賃金上昇に懸念」と述べていたが、本日の米雇用統計はFRBの積極利上げ姿勢を正当化する内容となっている。ただ、為替市場の反応は限定的。
2日
東京市場では、ドル円が神経質に振幅した。先週後半に131円台まで上昇したあと129円台前半に押し戻され、129円台後半に戻して週末を迎えた。週明けは米株先物の上昇を好感して買いが先行し、130.29レベルまで一時上昇。その後、米株先物に売りが出て、日経平均も売りに押されるなかで129.60付近まで反落。株安一服とともに米債利回りが高止まりすると午後には130.40台まで上値を伸ばした。ユーロドルは先週後半に節目の1.05を一時割り込む動きをみせた。週末は1.05台に戻して振幅した。週明けはドル高の動きがやや優勢となり、1.05台後半から1.0510台までじり安となった。
ロンドン市場は、ドル高水準を維持も、調整含みの値動き。ドル円は東京市場で買われたあと、ロンドン早朝には130.48レベルまで高値を伸ばした。しかし、米債利回りの上昇一服で上値が重くなり130円台割れへと反落。週明けの欧州株が軟調なことや、NY原油先物が101ドル付近まで下落するなど、リスク警戒の動きが広がっていることも上値を重くした。ユーロドルは序盤に1.05台前半から1.0570付近まで上伸したが、買いは続かず1.05台前半へと押し戻されている。ドル高圧力が根強い。ポンドドルは朝方に1.2540近辺まで下落したあとは、1.2580台まで反発。その後は1.25台後半での揉み合いに。いずれもやや調整気味だが、先週末からのドル高水準での取引が続いている。ドル円の反落とともにクロス円も軟調。ユーロ円は137円台後半から136円台後半へと下落。ポンド円は163円台後半から前半へと下落。英国はアーリー・メイ・バンク・ホリデー祝日で取引は閑散。
NY市場では、ドル買いが優勢。FOMCを控えて米10年債利回りが一時3%台に上昇した。ドル円は再び130円台を回復。今週は4日水曜日にFOMCの結果が発表され、0.50%の大幅利上げが確実視されている。市場もそれ自体は既に織り込み済みで、焦点はFRBがより積極的な引き締めサイクルを示唆するかどうかに注目を集めている。市場では6月、7月の大幅利上げ実施を織り込む動きが出ている。中にはそのうちの1回は0.75%の可能性を見込む声もあるようだ。ユーロドルは一時1.05台を再び割り込んだ。ユーロ相場に関しては中期的な見方が分かれている。対ドルで1.00まで下落との見方がある一方、ECBが今後12カ月以内に利上げを開始するとの見方がユーロの買い戻しを誘うとの見方もあった。ポンドドルは1.25台割れへと下落。ポンドは対ユーロでも軟調。今週の英金融政策委員会では0.25%利上げが織り込まれている。一方、英地方選挙が波乱材料との声もあった。パンデミックの規制中にジョンソン英首相がパーティーなどに参加したことについて野党からは辞任要求の声がでている。
3日
東京市場は、憲法記念日のため休場。
ロンドン市場は、ドル高水準での揉み合い。明日の米FOMC会合の結果発表待ちのムードが広がっており、方向性に欠ける売買に。ドル円はアジア朝方につけた129.86レベルを安値にロンドン朝方には130.29レベルまで買われた。米10年債利回りが一時3.00%台に上昇する動きに反応した。しかし、その後は2.96%台へと低下しており、ドル円の上昇も一服。ユーロドルは1.0492から1.0528レンジで上下動。前日からのレンジ内にとどまっている。ポンドドルも1.2487から1.2555までのレンジ取引。ロンドン序盤は買いが優勢だったが、上昇は続かず。4月独失業者数は1.3万人減と減少傾向が続いているが、減少幅は次第に縮小しており、雇用市場は次第に勢いを失っている印象。指標自体に対するユーロ相場の反応はみられず。豪ドルが堅調。アジア午後に豪中銀が0.1%から0.35%への利上げを発表、市場予想を上回る上げ幅とあって豪ドル買いの反応が広がった。今後の追加利上げについても示唆された。豪ドル/ドルは0.7148レベル、豪ドル円は92.94レベルまで高値を伸ばした。しかし、買いは続かず0.71台割れ、92円台前半へと押し戻されている。ただ、豪ドルは各通貨に対して高水準を維持しており、強い材料が出た影響は残っている。
NY市場では、ドル売りが優勢。米FOMCの結果発表を前に様子見気分が広がるなかえ、やや調整が入った。ドル円は一時129.70近辺まで下落したあとは130円台に戻した。米債利回りの上昇が一服したことがドル円に調整を促した。一方で、米株がしっかりと推移したことがドル円の下支えとなっていた。市場は明日のFOMCでの0.50%の大幅利上げを確実視しているが、それ自体はすでに織り込み済み。短期金融市場では6月、7月も連続で大幅利上げを見込む動きが出ており、そのうちの1回は0.75%の利上げとの見方も強まっている状況一方、ウクライナ情勢や中国ロックダウンの影響も警戒される中で、どの程度まで積極的なのかヒントを探りたいところ。ユーロドルは1.0575付近まで上昇する場面があったが、流れは維持できずに1.05台前半へと戻した。ECBが第3四半期に債券購入を停止した後、企業は資金調達コストの上昇に直面するとの懸念がでていた。ポンドドルは1.24台に再び下落。足元での英中銀利上げ観測は高いものの、英経済の成長鈍化を受けて来年には金融引き締めを撤回する可能性が指摘されていた。
4日
東京市場は、みどりの日のため休場。
ロンドン市場は、米FOMCを控えてややドル売りの動きが入っている。米10年債利回りが3.00%手前で上昇を抑えられると、2.94%台まで低下。ドル売り圧力となっている。ドル円は130.20近辺が重くなり、129.96レベルまで下押しされている。ポンドドルは1.2460台から1.2520台へと上昇。豪ドル/ドルも0.71ちょうど付近から0.7130付近へと上昇。そのなかではユーロドルの反発力は鈍く、1.0520-30レベルで売買が交錯している。この日はEUが年内に段階的にロシア産石油を禁輸する方針を表明しており、原油相場が上昇、欧州株が軟調に推移している。エネルギーコスト上昇が欧州経済の体力を弱めるとの懸念が広がったようだ。ユーロは対円では136円台後半での揉み合い、対ポンドでは0.84台前半で軟調な値動き。ポンド円が162円台前半から後半へ、豪ドル円が92円台前半から後半へと買われる動きと比較するとユーロ相場は上値が重い。また、この後の米FOMCを控えて、インド中銀が緊急利上げを発表、政策金利を40bp引き上げ4.40%とした。
NY市場では、ドル売りが強まった。午後になってFOMCの結果が公表され、その後のパウエルFRB議長の会見では冒頭に「インフレはあまりにも高過ぎる」と述べたことで最初はドル買いの反応が強まった。しかし、今度は「0.75%の利上げは積極的に検討していない。次の数回の会合で0.50%の追加利上げを検討すべき」と述べたことで、一気にドルの動きは反転した。バランスシート縮小については、6月から月475億ドルで開始し、縮小ペースは3カ月後に最大月950億ドルまで拡大するとしている。ドル円は130円台前半へと一瞬買われたあとすぐに売りが強まり128.60付近まで急反落。ユーロドルは1.05台前半に下押しされたあと、一気に1.06台乗せ。ポンドドルは1.2450付近に下げたあと、1.26台に乗せた。0.75%利上げの可能性が否定されたことを好感して米株式市場は大幅高となり、ドル円は129円台を回復、クロス円も総じて円安方向に振れた。
5日
東京市場は、こどもの日のため休場。
ロンドン市場は、ポンドが売られている。英金融政策委員会では政策金利が25bp引き上げられて1.00%となった。6名の委員が25bp、3名が50bpの利上げを主張した。英中銀は今後数カ月の一段の金融政策引き締めが適切との見方を示す一方で、2023年の経済成長率をマイナス0.25%と予測。この内容を受けてポンドが急落している。ポンドドルは1.25台半ばから一時1.24台割れへ、ポンド円は163円付近から161円台前半へと下落。ユーロポンドも0.84台前半から0.85台乗せへと買われている。英中銀の発表前からドル買いの動きが優勢だった。ドル円は129円台前半から129.90台へと上昇。ユーロドルは1.06台を割り込むと1.0550付近へと下押しされている。いずれも前日の米FOMC後のドル売りの動きは一巡した。米10年債利回りは一時2.97%近辺まで上昇し、ドル買いの動きを下支えした。
NY市場ではFOMC後のドル安分を戻す展開となった。米債利回りの上昇が目立ち、ベンチマークとなる米10年債利回りが3.1%台に乗せる中で、ドルは全面高の動きを見せた。ドル円は130円台をしっかり回復し、130円40銭台まで。ユーロドルは一時1.05を割り込む場面まで見られた。FOMC後に大きく上昇した米株式市場も大幅安となり、米国の金融引き締めに対する動きが再び強まる格好に。米ダウ平均株価は一時1300ドルを超える下げを見せた。その後夕方にかけて米債利回りの上昇が一服するとドル買いの動きも抑えられ、ドル円が130円を一時割り込むなどの動きに。
6日
東京市場では、5日NY夕方のドル売りが落ち着いたことでドル円がしっかりとした動きに。前日の米株安を受けて下げて始まった日経平均に買い戻しが入り、ドル円の買いを誘った面も。連休中にいったん大きく下げた後130円台を回復してきたことで、ドル円の買いに安心感が出ていた面も。前日海外市場の高値を超えて130円80銭前後まで一時上値を伸ばした。ユーロドルはNY夕方から東京朝にかけて1.0550前後が重くなっており、下を意識する展開に。もっともNY朝の雇用統計発表を前に下押しにも慎重姿勢が見られ、1.05台前半での推移が続いた。
ロンドン市場では欧州通貨の振幅が見られた。序盤はポンド主導で対ドル、対円での売りが目立った。前日の英中銀金融政策会合後に大きく売られたポンドは、その後の戻りが鈍く、リセッション懸念の影響を感じさせる展開が続くと、ロンドン勢の本格参加でもう一段の下げに。ユーロもつれ安となって、序盤は欧州通貨高ドル安円安にその後ビルロワドガロー仏中銀総裁が年内の政策金利プラス圏回復見込みを示し、次回理事会での利上げの可能性に言及すると一気にユーロ買いが強まる展開に。前日の安値を割り込んで1.0480台を付けていたユーロドルは1.06に迫る動きをみせた。ユーロ円の買い戻しも目立ち序盤の136円80銭台から138円10銭台まで1円20銭強の上昇に。ドル円はやや蚊帳の外もやや頭の重い展開に。
NY市場は再びドルの戻り売りが優勢となった。ただ、ドル円は130円台での推移が続いた。欧州通貨に買い戻しが入ったことで、ユーロ円やポンド円といったクロス円が上昇し、円安の動きがドル円をサポートしていたようだ。本日は4月の米雇用統計が発表になっていたが、FRBの積極利上げ姿勢を正当化する内容となっている。ただ、きょうの為替市場の反応は限定的。

 

●ドル高円安はより鮮明に 5/8
焦点の米連邦公開市場委員会(FOMC)で一段の利上げ幅拡大の観測は後退し、ドル買いが一服しています。ただ、日銀の異次元緩和継続による円安を日本政府は抑止できず、引き続きドルをサポート。また、日米関係はドル高・円安の強い支援材料となりそうです。
デフレ脱却宣言をしていない日本でインフレ圧力が強まるなか、4月27-28日に開催された日銀金融政策決定会合は異次元緩和を維持。2022年の消費者物価指数の見通しを前回から上方修正したものの、10年物国債金利0.25%の利回りで指し値を原則毎日実施すると決めています。黒田東彦総裁が改めて円安容認の姿勢を示すと円は急落し、ドル・円は一時131円25銭まで値を切り上げました。
一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は5月3-4日のFOMCで、FF(フェデラルファンド)レート誘導目標レンジを0.75-1.00%に引き上げ、6月から475億ドルペースでバランスシート縮小する政策を決定。パウエルFRB議長は会合後の記者会見で、利上げ幅について0.75%への拡大に慎重な姿勢を示しています。それを受けた米長期金利の低下で引き締め加速を期待したドル買いは巻き戻され、ドル・円は失速しました。
ただ、ドル・円はすぐに持ち直しています。日米中央銀行の政策決定を受け、方向性の違いからドル買い・円売りへカンタンに戻りました。特に、日銀の金利上昇を抑える指値オペは効果的で、クロス円の上昇要因にもなっています。財務省は鈴木財務相をはじめ「悪い円安」と明言してけん制のトーンを強めているものの、円安を抑止するのは困難で、円が主要通貨を支える構図が目立ちます。
さらに、中国の新型コロナウイルスまん延で、緩和政策による人民元安の進行にも目は離せません。周辺国の通貨もそれに追随しており、ドル高が際立ってきました。英中銀は昨年12月から4会合連続で利上げを実施したものの、今後のマイナス成長見通しが金融政策に影響を与えかねない状況です。つまり、ドル高・円安というより、目先はドル独歩高・円独歩安とみられます。
アメリカは輸入インフレを回避するためドル高を望んでいるとみられ、日米協調介入の可能性もほぼゼロ。直近のイエレン米財務長官と鈴木財務相との会談で協調介入が議論されたと伝えられ、市場は一時騒然。その後誤報とわかり、円売り再開の場面もありました。今月下旬のバイデン米大統領と岸田首相による首脳会談で恐らく為替は棚上げされ、政治力からみてもドル高・円安はより鮮明になります。
●詳しいFX投資家ほど陥った「間違い予想」 5/8
「買い」からだけでなく、「売り」からも取引を始められるというのは、FXの大きな特徴と言えるでしょう。となると、上がると思ったら買えばいいし、逆に下がると思ったら売ればいいとなります。
ただし、この「と思ったら」というのは「予想」であり、そんな相場予想がいつも当たるわけではないので、簡単なことではありません。
今回は、私が良く知っているあるベテランのFX投資家の「失敗例」を紹介しながら、「失敗の理由」を考えてみたいと思います。
ベテラン投資家の狙い
その方は「ベテラン」ですから、とても長い間FXトレードの世界でサバイバルしてきた投資家でした。長く「生き残ってきた」といったことだけでも、腕利きの投資家と言って良いでしょう。それは大損せず、しっかり利益を上げないと基本的には無理でしょうから。
この腕利きのベテラン・トレーダーは、ある時「米ドル/円は下がる」と予想し、米ドル売り・円買いの取引を続けていました。2017〜2020年の米トランプ政権時代の話で、当時は米中貿易戦争が激化し、それを懸念した株安、リスクオフの拡大が円高をもたらすといった見方が有力になっていました(図表参照)。
上がるか下がるか微妙といった具合に、相場予想に迷うケースの方が基本的には多そうですが、当時は為替相場に詳しい投資家ほど、この米中貿易戦争激化の中での米ドル安・円高予想は、基本的に迷いの少ない、「自信のある予想」だったようです。
ところで、FXの収益機会には、相場が上がるか下がるかを当てるほか、もう一つ金利差利益を狙う「スワップポイント」があります。この当時の金利は、「米ドル>日本円」だったので、金利の高い米ドルを売り、金利の低い円を買うということは、スワップポイントは支払いになってしまいます。この時のベテラン投資家からすると、スワップポイントを支払っても十分利益を出せるほど、円高予想に自信があったのでしょう。しかし結果的には、これが裏目に出てしまうのです。
ベテラン投資家の「失敗」
ベテラン投資家の予想に反して、なかなか米ドル/円は下がりませんでした。一方で、米ドル/円の当時のスワップ・ポイントは、米ドル買い・円売りならプラスでしたが、米ドル売り・円買いではマイナスだったので、スワップ・ポイントの支払いも次第に重荷となってきたようでした。そんな状況が長期化する中で、この投資家は一旦、米ドル売り・円買い取引からの撤退を余儀なくされるところとなってしまったのです。
ここが大事なポイントです。FXは買いだけではなく、売りもできるという「特徴」がありますが、それを不確実な相場観に頼り過ぎることは危険だということです。上述のケースは、FXの成功体験を多く持ち、長く取引してきたベテラン投資家であり、別な言い方をすると何もわからない「素人」ではありませんでした。ところが、逆に自らの経験に裏付けられた相場観に自信があったことこそ、災いになったと推測します。
金利差を味方にする
これまでにも述べてきたように、FXの収益機会は、キャピタルゲインとインカムゲインの2つに大別されます。価格変動に伴う収益がキャピタルゲイン、そして金利差利益がインカムゲインになります。重要なのは、この2つの収益機会の性質が大きく異なるということでしょう。
FXの2つの収益機会のうち、相場の変動を当てることと金利差を得ることは、確実性というテーマで考えた場合は、かなり対照的な位置付けになります。ですから、不確実性の高い相場観に頼り過ぎにならず、安定的な金利差を味方につけるためには、なるべく金利差と整合性の高い取引をするということが重要でしょう。
わかりやすくするために、具体例をあげてみてみましょう。金利が高い順に「米ドル>円>ユーロ」だった場合、最も金利の高い米ドルが下がると予想するなら、米ドル/円よりユーロ/円を売る方が良いでしょう。
米ドル/円が下落する場合、それに連れてユーロ/円も下落する可能性が基本的には高くなります。ところで、同じように下がると予想しても、米ドル売り・円買いでは金利差が支払いになる可能性があるのに対し、ユーロ売り・円買いでは金利差は収益になる可能性もあるからです。
相場予想に反して、対円で米ドル、ユーロがなかなか下がらない場合でも、ユーロ/円の場合は金利差収入がトータルの損失をカバーし、取引の継続の道を開いてくれる可能性があるわけです(※)。相場観によほど自信がある時以外は、できるだけ金利差と整合的な売買を選択することが、取引を長く続けられるコツと言えるでしょう。
※金利差とスワップポイントは、異なる場合があります。
それにしても、この「よほど自信がある時」というところが微妙ですね。ほとんどの場合、そして誰でも、最初から外れると思って予想しているわけではなく、結果的に外れてしまったということでしょうから。
そうであればなおさら、価格変動を予想して収益を狙う相場観の自信を元にした売買とは別に、足元の金利差と整合性ある売買を意識する=金利差を味方につけることが、取引の「成功」のためには必要なのかもしれません。 

 

●なぜ円安が進んでいるの? 20年ぶり水準、家計に負担も― 5/9
外国為替市場で円安・ドル高が急速に進んでいる。3月から5月初めにかけてのわずか2カ月間で円はドルに対し16円も下落、約20年ぶりの水準となる1ドル=131円台を記録した。急速な円安は家計への負担にもなりかねない。
――なぜ円安・ドル高が進むのか。
日米の金融政策の違いが明確になったことが大きい。日本では日銀が大規模な金融緩和を続け、企業の借り入れや住宅ローン金利の指標となる長期金利を低く抑え込んでいる。一方の米国は歴史的なインフレを抑え込むために金融引き締めにかじを切っており、金利上昇が続く。このため日米の金利差が拡大し、より金利の高いドルで資産運用をしようと円を売ってドルを買う動きが強まっている。
――「悪い円安」とも言われる。
円安が速いペースで進んでいることが問題視されている。海外に製品を輸出する企業にとって、円安は収益増につながる。しかし、ウクライナ情勢などを背景にエネルギーや食料品の価格が高騰する中、急速な円安が輸入コストをさらに押し上げて家計や輸入企業の収益を圧迫しかねない。鈴木俊一財務相は「輸入品高騰を価格に十分転嫁できない環境は『悪い円安』と言えるのではないか」と警戒感を示した。
――止める手段はあるのか。
政府が日銀を通じ市場で円買い・ドル売りを行う為替介入が可能だ。ただ、金融政策の方向性が異なる中では「日本だけで介入しても効果は限定的」(市場関係者)とされる。米国などと協調して実施すれば効果は大きくなるが、米国が自国の物価高につながるドル売りを容認する可能性は低いとみられ、実施は難しそうだ。
――今後の見通しは?
日銀は4月末の金融政策決定会合で、長期金利上昇を抑え込む姿勢を改めて鮮明にした。この結果、外為市場では円安が一気に加速。しかし黒田東彦総裁は、日本経済にとって「全体として円安はプラス」との考えで、大規模緩和を続ける構えを示している。日米金利差の拡大は当面続く見込みで、市場ではさらに円安が進むとの見方が優勢だ。
●午後3時のドルは131円近辺で底堅い、日米金利差で買い安心感 5/9
午後3時のドル/円は、前週末のニューヨーク市場終盤(130.56/59円)に比べてドル高/円安の131.00/02円と底堅さを維持している。日米の金融政策会合を経て改めて政策の違いが意識され、米金利も高止まりしていることからドル買いに安心感が生じているという。ただ、直近の高値(131.25円)を目前に利益確定売りなどが出て一段の上値追いとはならなかった。
きょうもドルは、高止まりしている米金利を支えに堅調な展開で、朝方の130円後半から、午後にかけて一時131.11円まで上昇した。131円台では利益確定売りも出たものの、全般的には底堅さを維持している。
足元の米10年債利回りは3.13%台半ばと高水準で推移。日米の金融政策会合を通過し改めて両国の金融政策の違いが意識され、金利差も拡大していることで「ドル買い/円売りの安心感が広がっている」(外銀)という。
ただ、ドルは131円台に乗せると実需や投機筋の利益確定売りも出て上値を抑えられた。市場関係者の多くは引き続きドル高/円安基調を見込んでいるが、目先は調整をこなしながら上方向を試す展開になるとみられている。
ドル売り要因としては、米長期金利の上昇を受けて不安定な動きとなっている株式市場やスピード調整の動きを指摘する声が出ている。
「(金利の上昇で)株価に大きい調整が入った場合、ドル/円も円高方向に振れる可能性もある」(楽天証券・FXディーリング部、荒地潤氏)という。また、ここのところリスクオフ局面でも円買いは進行していなかったものの「3―4月にかけて円売りが急ピッチで進んだため、足元のリスクオフ局面では行き過ぎた売りの修正も入り、円が買われている」(国内金融機関)との指摘もあった。
きょうは日経平均が一時690円超安となり、リスクオフムードが広がった。クロス円ではリスク回避の円買いもみられ、足元豪ドル/円は91.76円付近、ニュージーランド(NZ)ドル/円は83.20円付近と、いずれも円高気味となっている。
●NY外為 円、131円近辺 5/9
週明け9日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、午前8時現在1ドル=130円91銭〜131円01銭と、前週末午後5時(130円48〜58銭)比43銭の円安・ドル高で推移している。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0541〜0551ドル(前週末午後5時は1.0542〜0552ドル)、対円では同138円16〜26銭(同137円62〜72銭)。
●外為:1ドル131円26銭前後と大幅なドル高・円安で推移 5/9
9日の外国為替市場のドル円相場は午後4時時点で1ドル=131円26銭前後と、前週末午後5時時点に比べ76銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=137円81銭前後と49銭のユーロ高・円安で推移している。
●欧州通貨に買い戻し入る、ドル円は131円台に高止まり=ロンドン為替概況 5/9
ロンドン市場は、ドル買いが一服。基調としてのドル高圧力は継続も、欧州通貨を中心に買い戻しの動きが入っている。ユーロドルは東京市場での軟調な流れを受けてロンドン朝方には1.0495レベルまで下落、ポンドドルも1.2261レベルに安値を広げた。しかし、その後は売買が交錯するなかで、反発。ユーロドルは1.0550付近、ポンドドルは1.2350手前まで買い戻された。ユーロ円は137円台後半から138円台乗せへ、ポンド円は161円付近から161円台後半へと上昇。欧州株の軟調な動きも、欧州通貨は買いが優勢だった。ドル円はロンドン朝方に131.35レベルまで高値を伸ばした。2002年4月以来の高値水準となった。その後の調整は浅く、131円台を維持している。米10年債利回りは3.12%近辺から一時3.20%近辺まで上昇。根強いインフレ警戒が示されている。米株先物は時間外取引で軟調。ナスダック先物は2%超安となっている。プーチン露大統領演説では、ウクライナ侵攻の正当性が強調されたが、戦争宣言のような強硬な表現はみられず、比較的控えめの内容にとどまった。
ドル円は131円台前半での取引。東京市場で130円台前半から一時131円台乗せとなる流れを受けて、ロンドン市場では一段高。高値を131.35レベルまで伸ばし、2002年4月以来のドル高・円安水準となった。米10年債利回りは一時3.20%付近まで上昇。ドル買い圧力は根強い。
ユーロドルは1.05台前半での取引。序盤に1.0495レベルまで安値を広げたあとは、買い戻しが優勢となっている。1.0550付近まで反発した。ユーロ円は137円台後半から138円台にしっかりと乗せ、高値を138.32レベルに更新した。対ポンドではやや上値重く推移している。米債とともに欧州債の利回りも上昇しており、ドル高の調整を誘ったようだ。ただ、センティックスによる5月ユーロ圏投資家信頼感が予想以上に落ち込むなど、欧州経済をめぐるセンチメントは引き続き厳しい。
ポンドドルは1.23台前半での取引。序盤に1.2261レベルまで安値を広げたあとは、買い戻しが入っている。1.2350手前水準へと反発している。ポンド円は161円を挟む揉み合いを上放れると161.90近辺まで上昇。ユーロポンドは0.8570付近から0.8540付近へと上値重く推移。北アイルランド議会選では、アイルランドとの統一を標ぼうするシン・フェイン党が第一党を獲得、政治情勢が不安定化しているが、ポンド売りには調整が入っている。
●コロナ鎖国の日本が取るべき「円安を止める方法」 5/10
円安はどうやったら止まるのか?
円安相場が収束する雰囲気が感じられない。
ドル/円相場は3月初頭から約2カ月間で約15円も上昇している。パンデミック直前の3年間(2017〜19年)の平均年間値幅が9.74円だったことを思えば、特に企業部門においては、文字通り「急激な変動」を体感している最中と言える。
ここにきて最も受ける問い合わせは、(1)円安はいくらまで進むと思うか、(2)どうやったら止まると思うか──の2点である。直感的に(1)が多いように思われがちだが、(2)も同じくらい多い。
円高方向と円安方向では、根本的に防衛の難易度が異なる(言うまでもなく円安を防衛する方が難しい)。そのため、「本当にこの円安は止まるのか」という得も言われぬ不安を抱く人々が増えること自体は不思議ではない。円高相場と異なり、購買力平価(PPP)などに代表される「もっともらしい節目」も見つけにくいという事情もあり、円安を「糸の切れた凧」のように不安げに見る心持ちは理解できなくはない。
効果があるかどうかは別にして、日本の為政者が本当に「円安を止めたい」と考えた場合、自ら講じることができる処方箋は3つある。今の円安の背景は金利と需給から説明されることが多いので、処方箋もそれに沿っている必要がある。
前者の「円安はいくらまで進むと思うか」にアプローチする処方箋としては(A)日銀の正常化プロセス着手、後者の「どうやったら止まるか」にアプローチする手段としては(B)原発再稼働および(C)訪日外国人旅行者(インバウンド)の解禁などが考えられる。
いずれも、それをやったからと言って円安の潮流を覆せる保証はない。為替は常に「相手がある話」であり、日本の事情だけで方向感は決まらないからだ。
しかし、今の為替市場では、「参院選前に対立論点は作らない」という岸田政権の決定力のなさを見透かし、半ば「高を括った円売り」に勤しんでいる向きも多いように思える。とすれば、(A)〜(C)を実施する価値がないとは言えない。すべて同時に講じれば円安が反転する可能性は相応に高いと筆者は考える。
円安反転に効果が高そうな金融政策の正常化だが……
(A)日銀の正常化プロセス着手
多くの人々にとって最も分かりやすいのは、(A)日銀の正常化プロセス着手だろう。
3月以降、日銀の一挙一動は明らかに為替市場でウォッチされている。例えば、4月13日は「信託大会における日銀総裁挨拶」といった誰も気にしていなかったようなイベントで相場が走り出した(ここから126円台に乗せている)。
こうした注目度の高さを踏まえれば、日銀の緩和路線修正が流れを変える可能性はゼロではない。しかし、この選択肢は4月28日の政策決定会合や総裁会見を踏まえる限り、ほぼあり得ない選択肢となっている。
4月会合では「粘り強く金融緩和を続ける」と言い続けた上で、現行枠組み維持を前提として指値オペを毎営業日行うという決定がなされた。どちらかと言えば緩和強化で応戦しており、「為替市場との全面対決」を選んだ格好である。
しかし、これは妙手だったと筆者は考えている。為替市場は常に飽きっぽい。指値オペが日常化すれば、「オペ通告のたびに円売りが進む」というノイズは払拭できる公算が大きい。
そもそも、仮に何らかの緩和修正に着手したとしても、為替市場は「催促すれば引き締めして(円高にして)貰える」と解釈し、「次の一手」に期待を膨らませ、催促相場を育てようとするはずだ。
よって、中央銀行が為替市場の乱高下に巻き込まれた時は、基本的に「相手にしない」が一番であり、淡白な情報発信に努めるのが最善である。この点、指値オペの常態化は好手である。
だが、すべては「円安は日本経済全体にとってプラス」という前提に拠って立っており、ここに疑義を持つならば、何らかの緩和修正は必要になる。4月28日の会見でも、黒田総裁は「過度な変動はマイナスに作用する」と述べ、既に「悪い円安」論を唱えていた鈴木財務相の見方に寄せた感もあった。
本当に日銀が何らかの手を講じなければならなくなった場合、何が想定されるか。
フォワードガイダンス(金融政策の先行き指針)の引き締め方向への修正、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)における誘導目標金利の短期化(10年→5年)など小手先の論点が取りざたされやすいが、「次の一手」に対する催促相場を確実に断ち切りたいならば、一気にプラス金利まで視野に入れて利上げすることではないか。日銀の姿勢が「根本的に変わった」という可能性を感じさせるからだ。
しかし、そうなれば家計部門にとって最も重要な住宅ローン金利なども上がるため、政治的な逆風にもなりかねないだろう。参院選前の岸田政権にこれを容認する胆力があるとは思えない。
とすれば、少なくとも7月末までは現状が続くというのが既定路線と言えるし、その後は「自民党総裁選挙が……」といった理屈の下で、やはり見ないふりを決め込む可能性は高い。円安修正を企図して、政府・日銀が(A)日銀の正常化プロセス着手の経路を選択する公算は小さい。
タブー視されている原発再稼働のインフレ対策効果
(B)原発再稼働
今次の円安局面において、最も重要な論点は「需給が円売り超過に傾斜しているのだから円安で問題ない」という主張である。圧倒的な事実ゆえに、反論の余地がほとんどない。
その象徴が毎月計上される大幅な貿易赤字であり、周知の通り、輸入金額の急増により引き起こされている。貿易収支のフローは必ずアウトライト(買い切り・売り切り)取引として市場に現われ、流れを作るのに寄与する。金額は「価格」×「量」で算出される。資源の「価格」は日本の力でどうすることもできない。
しかし、資源を輸入する「量」は、国内の電源構成を修正することで可変的である。半ばタブー視されてきた原発再稼働が足許で注目されている理由の一つである。
最初に断っておくが、筆者は原発再稼働の是非を問うつもりはない。あくまで「円安を止めたいならば何があるか」と考えた時、それが議論の俎上に上ってくるのが自然だという話である。
もっとも、円安抑止は原発再稼働の副産物であり、全体論からすれば些末な話である。本当の問題意識は、「これ以上、日本経済のダウンサイジングをすることが正しいのか」というより大きなものになる。この点は後述する。
いずれにせよ、現状、日本の輸入金額の25%が鉱物性燃料である以上、資源高が貿易収支の仕上がりに影響する部分は相当大きい。その資源高は脱炭素・感染症・戦争という根深い要因に駆動されている。
「高い資源を買い続けて貿易赤字になる」という現状に何らか切り込まない限り、「需給要因を背景とした円安」はかなり手堅いストーリーであり続ける。
政府・与党にも動きは見られる。
4月26日、岸田首相はテレビ東京の番組において、物価高騰に対応する「緊急対策」の一環として、エネルギーの安定供給を念頭に「できるだけ可能な原子力発電所は動かしていきたい」と述べた。さらに、「今の枠組みの中でどこまで原子力の再稼働ができるのか追求していかなければならない」と踏み込んでいる。
また、翌27日にも経済同友会総会の挨拶で、「原子力の活用を進めていく」と表明。5月最初の訪英でも「安全を確保した原子炉の有効活用を図る」と述べた。短期間のうちに原発再稼働への意欲が集中的に情報発信されているが、その時間軸はいまだに判然としない。検討はいつまで続くのだろうか。
成長をあきらめた国の末路
繰り返しになるが、原発再稼働の主目的は円安抑止ではない。主目的は実体経済の安定運営であり、円安抑止はその副次的効果である。既報の通り、今夏・今冬の電力供給は逼迫の見通しが濃厚と言われる。
原発稼働をあくまでも避け、感染防止時の行動制限と同様、国民への節電を「お願い」することで乗り切るのか。しかし、行動制限や節電を「お願い」することはマクロ経済のダウンサイジング(規模縮小)を図ることに等しい。
金融引き締めや10円単位の値上げは大きな反対の声が挙がるのに、行動制限や節電には粛々と従う心理状態は理解が難しいが、大多数の国民にとって「政府は間違えない」という先入観が強いのかもしれない。
いずれにしても、原発再稼働は通貨安に切り込み、マクロ経済のダウンサイジングを回避するというポジティブな効果が見込める。そうした原発再稼働にまつわる経済合理性と国民の一部に根強く残る心理的障害の折り合いをいかにつけるかが今問われている。
「経済より命」路線の末に、パンデミックからの経済復活を半ば放棄した日本だからこそ、「原発再稼働はせず、ダウンサイジングを受け入れる」という選択肢も十分考えられる。G7および中国の中で比較した場合、いまだにコロナ前の実質GDP水準を復元できていないのは日本だけだ。これは偏執的な自粛意識がもたらした結果としか言いようがない。
しかし、資源に乏しい国が成長をあきらめ、外から購入する財も「高価でかまわない」という態度は絶対に持続可能ではない。
その「高価でかまわない」という態度を貫く過程では、拡張財政路線(恐らく一時的な補助金など)で痛みを緩和するという政策運営が付随してくるだろう。今までもそうやってきたわけだが、その結果が交易損失拡大に伴う「安い日本」の定着である。原発再稼働は最終的に世論が決める話だが、「成長をあきらめた国」がいかに劣化するか。この2年間から学びたい。
外国人の財布に頼らざるを得ない現実
(C)訪日外国人旅行者の解禁
4月27日の経済財政諮問会議では、民間議員から新型コロナウイルスの水際対策の一環として認められていない「観光目的の入国」の早期再開が提言された。5月初頭の訪英でも岸田首相は観光目的の外国人入国を6月にも認める方針を示唆している。
上述の(A)日銀の正常化プロセス着手は投機の円売りを焚きつける恐れがあり、(B)原発再稼働は世論の意見集約が難しいという問題があるとしても、(C)インバウンド解禁は反対する余地がほとんどないテーマである。
現在の経常黒字縮小の背景は、資源価格の高騰を受けた貿易赤字拡大とインバウンド需要消滅を受けた旅行収支黒字の消滅がある。インバウンド解禁と共に旅行収支黒字が戻れば、微力だとしても需給面からの円売り圧力を緩和する手立てにはなる。
いや、ここにきて目減りしている経常黒字を思えば、もはや旅行収支黒字は外貨獲得のための重要なツールである。岸田首相も「旺盛な海外需要の取り込みは経済の活力を高め、長期的な成長力を高めるものだ」と表明し、追随する姿勢を見せている。
保守的な日本の世論を踏まえれば、「外国人が入ってくると感染が拡大する」という反対が確実に予想されるが、今や新規感染者数にこだわり、実体経済を締め上げる発想は中国と日本くらいであり、そのような意見は滑稽ですらある。そもそも日本人が連休を使って海外旅行へ行く局面で、その逆はなぜ駄目なのか。論理的な説明は難しい。
なお、「屋外でもマスク」のような科学的根拠に乏しい要請に外国人は従わないであろうから、インバウンド解禁に踏み切る際には、惰性で続けているそうした国内の防疫対策にも整理もつけておく必要がある。そのための議論整理を踏まえれば、6月にインバウンド解禁というのは遅きに失している感はあるものの、理解できなくはない。
これほど「安い日本」がテーマ視されているならば、それを逆手に取って前向きに活かそうとする取り組みは検討されて当然である。残念な話だが、日本人の実質所得環境が悪化している以上、外国人の財布に頼らざるを得ないという事情もある。望む望まないにかかわらず、インバウンド需要を当て込んだ外貨獲得は日本に残された数少ないカードである。
世界から取り残される「コロナ鎖国」の日本
パンデミック直前の2019年は訪日外客数が3000万人を超え、旅行収支は約+2.7兆円といずれも過去最高を更新していた(図表1)。周知の通り、その多くは中国がカウンターパートである。
   図表1
なお、名目実効相場ベースで円と人民元の動きが対称的になっているのは、旅行収支に関し、赤字が消えた中国と黒字が消えた日本という事実もあるのではないか。旅行収支黒字が為替動向に影響するほどの規模とは思えないものの、こうした円と人民元の動きは興味深い(図表2)。
   図表2
過去2年間の日本の防疫政策を巡る世論の在り方を踏まえると、想定される最悪のパターンは「インバウンドを受け入れる→外国人がマスクをしなかったと囃し立てる→インバウンドのせいで感染が拡大したと騒ぐ→入国規制復活」だろう。そうなれば元の木阿弥であり、インバウンド解禁の議論自体が半永久的に封印されかねない。
欧米に続きアジア各国があらゆる制限の撤廃に踏み切り、日本でも屋外でのマスク着用に疑義が呈され始めている今が決断の好機に思える。それすらできなければ、「安い日本」は「安いだけの日本」として長期停滞を余儀なくされ続けるだろう。
将来の経常収支における新たな柱として旅行収支を考えるならば、いつまでも鎖国イメージを発信し続けるのはどう考えても得策ではない。
●「悪い円安」で金融緩和を止めれば長期停滞に逆もどりする 5/9
高橋洋一教授(嘉悦大学)の最新刊『プーチンショック後の世界と日本』(徳間書店)は、現在のコロナ禍とウクライナ戦争のダブルショックに直面する世界と日本経済の動向を考える上では必読の時論だろう。さらに日本経済では、岸田政権の“令和の検討使”的リスクも合わせて考えるべきだろう。つまり岸田政権の経済危機に対する無策に近い姿勢である。
高橋教授と最近、対談する機会を得た。高橋教授とは2020年に共著で『日本経済再起動』(かや書房)を出して以来の本格的対談になった。興味津々の内容は、月刊『WiLL』に近々掲載予定である。
この対談で話題になったひとつの論点は、現在の「悪い円安」論である。この問題については前回の連載でも書いた。新聞やテレビのワイドショーなどでは、「行き過ぎた円安を止めよ」「円安を止めるためには日銀の金融緩和を停止するのが正しい」などという意見を見かける。
しかしマスコミや一部の識者たちが言うように、「為替レートを目的にして日本銀行が金融政策を変更するのは下策中の下策」というのが、高橋教授や私の強調するところである。ちなみに2人だけの“特殊な”意見ではない。
例をいくつかあげよう。著名な経済学者でもあるローレンス・サマーズ元米財務長官は、最近のテレビ番組で、高インフレに苦しむ米国と低インフレ状況の日本とでは当然に金融政策のあり方が違うと強調し、日本では金融緩和の継続が正しいと語っている。
またフィナンシャル・タイムズの社説(「円安、日銀には物価『2%目標』達成の好機」)はさらに具体的に「悪い円安」=「金融緩和の停止」に手厳しい批判を展開している。同紙の社説では、岸田政権が世論などの圧力で、円安抑制と金融引き締めに転じることを「百害あって一利なしに近い」と断じている。
そもそも「悪い円安」の議論の背景には陳腐な為替レートについての見解がある。現在のような短期での為替レートの変動を正確に論じることができる理論はないことが知られている。しかしマスコミでは、日米の金利差で円安ドル高を説明しているのが一般的だ。あるいは経常収支の赤字転換の可能性でいまの為替レートを論じる人たちもいる。
これらは経済学的には根拠に乏しい。そもそも短期の為替レートは「ランダム・ウォーク」の典型だ。これは為替レートが現在の値からまさにランダムに上下動することを意味する。その正確な予測は困難である。これは堅固な事実である。
個人的には、ニュース解説で、もとになる経済記事が「日米の金利差で、米国の金利が日本よりも高いのでドルが買われ、円が売られて、その結果、円安ドル高になる」と書いてあるのを、金利差ではなく「日米の金融政策のスタンスの違い」と言い直している。
この日米の金融政策のスタンスの違いは、まだ金利差や経常収支に注目する手法よりは使える。例えば、有名なものとしてはソロスチャートがある。これは世界的に著名な投資家だったジョージ・ソロス氏の名前をとっている、日米のマネタリーベースの比率と現実の為替レートの推移を相関してみるものだ。
マネタリーベースは日米の中央銀行が実際にコントロールしている貨幣の量だ。この政策的に操作している貨幣の量の動向はまさに「金融政策のスタンス」として理解できる。以下の図は、日米マネタリーベース比率と為替レートの推移をみたものだ。
日米マネタリーベース比率が増加すれば(≒米国を一定とすれば日本の貨幣増加)、円安が加速し、他方で比率が減少すれば(≒米国を一定とすれば日本の貨幣減少)、円高が進行している。両者の相関係数は0.64で高いものだ。
ただしこのソロスチャートも無敵ではない。特に日米の中央銀行の政策スタンスが変更されたときには、ソロスチャートでは十分にカバーできない。何人かのエコノミストたちも同様の指摘をしている。今回のように連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めスタンスに転換した前後では、ソロスチャートは単純には使うことはできない。修正ソロスチャートが提起されているが、これからの研究のフロンティアである。
短期的な為替レートの予測が難しくても、為替レートに主眼を置いた金融政策の「百害あって一利なし」は明瞭にわかる。特に日本のバブル発生から長期停滞はその重要なエピソードだ。
1985年のプラザ合意直後から、日本は円高傾向が顕著になった。当時の米国は貿易赤字問題をドル安で解消できると信じていた。そのため各国に政治的圧力により協調的なドル安各国通貨高政策をとるように促した。
日本はその米国の力にもっとも従順に従い、金融政策を対ドルの為替レートに割り当ててしまった。要するに当時の「悪い円安」はアメリカの影で実行された。その結果は、日本経済、要するに国民の生活を顧みない金融政策となって現れる。80年代後半はバブル経済が引き起こされ、また90年代はバブル崩壊と長期停滞の始まりである。この為替レートを政策目的にした日本銀行の政策を「円高シンドローム」と名付けられている(『ドルと円』ロナルド・マッキノン 、大野健一)。
米国の貿易赤字の対象国が、日本から中国に移行した21世紀になってからもこの円高シンドロームは続いた。下図をみれば明らかに、購買力平価(長期的な為替レート水準=日米の物価水準の比率)を天井にして、実際の為替レートがいかにも巧妙にコントロールされているかのようだ。日銀は決して認めなかったが、ドル円レートが日銀の政策目標にどかんと居座っていたことがわかる(詳細は『平成大停滞と昭和恐慌』安達誠司、田中秀臣)。
90年代以降から2012年までの円高シンドロームは、日本の長期停滞の時期である。デフレは深化し、雇用は悪化、日本の現実と潜在的な成長率は大きく奪われた。いわゆる「失われた20年(プラスアルファ)」といわれる状況は、円高シンドロームと完全に重なる。その主因は、日本銀行が為替レートを政策目的に入れていたからだ。
アベノミクス以降は、この円高シンドロームは終わった。雇用や成長率がそれ以前よりも大きく改善したのは自明だ。いまの日本のマスコミや一部の識者たちは、「悪い円安」を主張することで、また日本銀行に国内経済を無視した、為替レートありきの政策に戻せ、といっているに等しい。
先のフィナンシャル・タイムズでも指摘されていて、また高橋教授と私の対談でも、岸田政権が日銀に金融引き締め=円安退治を促すリスクに特に注目した。
特に参院選前から来年の日銀の正副総裁人事が大きなポイントになる。ここで政治が間違え、日銀が悪しき政策転換をすれば、日本はまた長期停滞に陥るだろう。 

 

●金利上限修正は「利上げ」 日銀理事、経済影響懸念 5/10
日銀の内田真一理事は10日の参院財政金融委員会で、長期金利の上限を現在の「0.25%程度」から引き上げることについて「(長期金利が)今は上限に張り付いているので、事実上利上げするということになる。日本経済にとって好ましくない」との認識を示した。金融市場では円安の是正を目的に日銀が方針を修正するとの観測がくすぶっている。立憲民主党の熊谷裕人氏への答弁。
米長期金利が上がり、日本の長期金利にも上昇圧力がかかっているが、日銀が国債を無制限に購入して上限内に抑えているため、日米の金利差が拡大して円安ドル高が進んでいる。
●午後3時のドルは130円前半、底堅い 米長期金利に連動 5/10
午後3時のドル/円は、前日のニューヨーク市場終盤(130.25/28円)に比べてドル高/円安の130.34/36円で推移している。日経平均の大幅下落や米長期金利の低下を受け、午前中に一時、129.80円まで下落した。ただ、その後米長期金利が再び3%台に乗せるとドル買い/円売り地合いとなり、130円前半で底堅い動きとなった。
時間外取引で米10年債利回りは足元、3.05%台前半。ドル/円はここのところ、米金利の動きに連動する展開が続いている。ただ、米国の利上げについては織り込みが進んでいるため、「米金利の上昇余地はそこまで大きくないのではないか」(SMBC信託銀行のマーケットアナリスト・合澤史登氏)との声も聞かれる。
米金利の上昇スピードが鈍化すれば、ドル/円も緩やかな上昇にとどまるという。
市場からは、不安定な状況が続く株式市場の動きを注視する意見も聞かれた。T&Dアセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト兼ファンドマネジャー、浪岡宏氏は、株価が下落する局面では、安全通貨としてのドル買いとリスク回避の円買いが入りやすくなり、「これまでのようにドル/円が一本調子で上がっていく可能性は低いのではないか」と話した。
日本の当局者による円安けん制発言が相次いだものの、市場の反応は薄かった。 鈴木俊一財務相は10日の閣議後会見で、外為市場でドル/円相場が20年ぶりの円安水準となっていることに関し、市場動向や日本経済への影響を緊張感を持って注視する考えを示した。一方、日銀の内田真一理事は参院・財政金融委員会で為替相場の短期間の変動は先行きの不確実性を高め、望ましくないと述べた。
SMBC信託銀行の合澤氏は、「これまでの発言と同じような内容が繰り返され、マーケットも慣れてしまった面はあるのではないか」と指摘する。また、先月の日米財務相会合を経て、為替介入の実現可能性が低いことが確認されたとして、政府関係者の発言に対する市場の反応が鈍くなっているという。
●米ドル円130円近辺でもみ合い…「怒涛の円安相場」終焉か 5/10
3月以降、米ドル/円はほぼ一方向に米ドル高・円安が続いていましたが、先週は130円前後の水準で一進一退の展開となりました。今回、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が、さまざまなデータを紐解き、「怒涛の円安」一服の可能性について考察します。
「5/10〜5/16のFX投資戦略」のポイント
・先週は米ドル高値圏で一進一退。短期的な「行き過ぎ」懸念が強まるなかで、「怒涛の円安」にも息切れの兆しが出てきた。
・ただ、大きく米ドル安・円高に戻すイメージは描きにくい。米ドル高・円安リスクは、CPI発表等を受けた米金利の短期的な「上がり過ぎ」修正が最大の焦点か。
米ドル安・円高リスクは米金利低下次第か
先週の米ドル/円は、130円前後といったこの間の米ドル高値圏で一進一退の展開となりました(図表1参照)。破竹の勢いで展開してきた「止まらない円安」、「怒涛の円安」も、さすがに息切れの兆しも出てきたということなのでしょうか。
この間ほんの2ヵ月程度で、15円以上も一気に米ドル高・円安が進んだことで、短期的な「行き過ぎ」の可能性を示すシグナルが増えていることは事実です。たとえば、米ドル/円の90日MA(移動平均線)かい離率は一時プラス10%以上に拡大しました(図表2参照)。また、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円売り超しは10万枚以上に拡大しました。
これらは、米ドルの短期的な「上がり過ぎ」、円の「売られ過ぎ」といった懸念が拡大している可能性を示しています。こういったことが、「怒涛の円安」足踏みの要因になっている可能性はあるでしょう。
では、「足踏み」にとどまらず、大きく米ドル安・円高に戻すかといえば、まだそういったイメージは描きにくいというのが正直な感想です。
たとえば、米ドル/円にはかつては米国株と一定程度順相関の関係があり、その関係が続いていたなら、先週にかけて米国株が比較的大きく下落したなかでは、米ドル安・円高に大きく戻してもおかしくなかったわけですが、そのような動きはほとんど見られませんでした。
「怒涛の円安」をもたらしたそもそもの要因
米国株との順相関の関係、とりわけ「株安(リスクオフ)の円高」といった関係が今年に入り大きく崩れたことは、その後の「怒涛の円安」をもたらした大きな要因だった可能性があるし、米ドル安・円高に大きく戻すイメージが描きにくくなった理由のひとつです。
株安でも円高にならなくなったなかでは、米ドル安・円高をもたらす要因はほとんど米金利低下のみといった状況になっています。その米金利、たとえば米10年債利回りの90日MA(移動平均線)かい離率は最近にかけてプラス40%以上に拡大、経験的には短期的な「上がり過ぎ」懸念が強まっています。
先週、注目されたFOMC(米連邦公開市場委員会)を受けて、米金利が大きく低下すると、それに連れる形で米ドル/円も128円台後半まで反落する場面がありました。これはまさに、FOMCといった注目イベントの通過を受けて、米金利の短期的な「上がり過ぎ」修正が本格化した結果と考えられます。
今週も、水曜日にCPI(消費者物価指数)、木曜日にPPI(生産者物価指数)の発表が予定されていますが、いずれも物価上昇率は前回を下回ると予想されているため、それを受けて米金利の短期的な「上がり過ぎ」修正がさらに広がるか、それが米ドル安・円高リスクにおける最大の焦点ではないでしょうか。
先週下落が目立った「米国株」について
最後に、米ドル安・円高への影響が低下したとはいうものの、先週にかけて急落が相次いだ米国株について少し確認したいと思います。
米国株のなかでも、相対的に下落が目立っているのはハイテク、グロース銘柄の構成割合の大きいナスダック指数です。ナスダック総合指数の高値からの下落率はすでに25%程度まで拡大してきました。
こういったなかで、ナスダック総合指数の90日MAかい離率はマイナス10%以上に拡大してきました(図表7参照)。その意味では、短期的な「下がり過ぎ」懸念が拡大しているため、そろそろ下落がひと息つく可能性もなくはないのかもしれません。
ただ、別の指標で見ると、株安の大きな流れが終わったかはまだまだ微妙ではないでしょうか。
米国グロース株の「記録的な割高」が是正
ナスダック総合指数/NYダウの相対株価は、ITバブルと呼ばれた2000年以来となる0.45倍から、先週はついに0.37倍を割れるところまで低下してきました。
これは、この間の株安の主因が、NYダウに対するナスダック指数のITバブル以来の記録的割高の是正だった可能性を示しているでしょう。構成銘柄との関係で、NYダウをバリュー株、ナスダック指数をグロース株とすれば、バリュー株に対するグロース株の記録的な割高の是正ということになります。
ただ同相対株価は、「コロナ・ショック」前の0.3倍程度はまだまだ大きく上回っています。かりに、同相対株価が0.3倍へ一段と低下するなら、NYダウが先週末の終値で横這いとして仮定した場合でも、ナスダック総合指数は1万ポイントの大台割れへ一段と下落するといった計算になります。
以上見てきたように、最近にかけての米国株の下落拡大の根底にあるのが、「コロナ・ショック」後の金融緩和などを受けた、ITバブル以来のグロース株の割高を是正する動きということなら、それはまだ終わりではない可能性があるでしょう。
また、そういったなかで、インフレ対策から先週FOMCが利上げ幅を0.5%に拡大した影響も注目されるところではないでしょうか。
●円相場、130円35〜36銭 10日午後5時現在 5/10
10日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=130円35〜36銭と、前日(131円20〜20銭)に比べ85銭の円高・ドル安となった。 
●東京マーケット・サマリー 5/10
外為市場
       ドル/円    ユーロ/ドル  ユーロ/円
午後5時現在  130.35/37   1.0555/59   137.59/63
NY午後5時   130.25/28   1.0555/59   137.58/62

午後5時のドル/円は、前日ニューヨーク市場午後5時時点よりややドル高/円安の130円前半。日経平均の大幅下落や米長期金利の低下を受け、午前中に一時129.80円まで下落した。ただ、その後米長期金利が再び3%台に乗せるとドル買い/円売り地合いとなり、130円前半で底堅い動きとなった。
株式市場
       終値   前日比   寄り付き  安値/高値
日経平均   26167.10 -152.24  26149.06  25,773.83─26,246.63
TOPIX  1862.38   -16.01   1861.43   1,840.00─1,867.32

東証出来高(万株)  137245  東証売買代金(億円)  32345.97
東京株式市場で日経平均は152円24銭安の2万6167円10銭と、続落した。前日の米株急落の流れを受け朝方は心理的節目の2万6000円台を割り込む場面がみられたが、その後下げ渋った。時間外取引で米株先物がしっかりと推移しており、米国株の下げ止まりや反発への期待が支えとなった。
プライム市場の騰落数は、値上がり704銘柄(38%)に対し、値下がりが1062銘柄(57%)、変わらずが71銘柄(3%)だった。
●ドル円、米金利上昇と有事のドル買いで年初来高値更新‼ 5/10
本日アジア時間は昨日海外時間の株安の影響が尾を引き、午前10時過ぎにドル/円は129.794円まで下落。同レベルからは、押し目を拾う投資家も多いようで一時130.551円レベルまで戻す場面もあったが、上値を試す勢いはなく欧州序盤には130.100円付近へ押し戻されている。
現在値より上には、抵抗帯となりそうな厚い売りオーダーはないが、130.500-600円には少しまとまった注文が観測される。一方、下方向もオーダーは少なく、129.800円と本日安値レベルに厚めの買い注文が観測される以外は目立った注文がみられない。
●円、130円近辺 ロンドン外為 5/10
10日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米長期金利の上昇一服を背景に円買い・ドル売りが進み、1ドル=130円近辺に上昇した。正午現在は130円00〜10銭と、前日午後4時に比べ50銭の円高・ドル安。
●NY円、130円前半 5/10
10日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比11銭円安ドル高の1ドル=130円40〜50銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0524〜34ドル、137円26〜36銭。
ユーロに対してドルが買われ、その影響で対円でもドルが買われた。ただ、11日に米消費者物価指数の公表を控えて様子見ムードも強く、値動きは限られた。 
 
 

 

●午後3時のドルは130円前半で値幅26銭、米国のCPIと金利動向見極め 5/11
午後3時のドル/円は、前日のニューヨーク市場終盤(130.43/46円)に比べて小幅ドル安/円高の130.35/37円で推移している。米国時間に公表される4月の米消費者物価指数(CPI)を見極めたいとの思惑から、積極的な取引は手控えられ、1日を通してドル/円は方向感のない展開が継続。値幅は26銭にとどまった。
米長期金利が横ばいで推移したことにつられて動意が乏しいかったとの指摘も聞かれた。
市場が注目する米CPIは、インフレのピークアウトを確認できるかが焦点となりそうだ。外為どっとコム総研の上席研究員・神田卓也氏は、「マーケットの一部では、米国のインフレが既にピークアウトしているのではないかという見方もあるようだ」と指摘する。また、「米10年債利回りも3%を超えたあたりから伸びが鈍化してきており、期待通りインフレが落ち着いているのか見極めたい」とし、指標の結果と、それに伴う米金利の動向に注目が集まっているという。
ロイターの事前調査によると、米CPI(季節調整済み)は前年同月比8.1%上昇、前月比0.2%の上昇と、前月(8.5%、1.2%)から伸びが鈍化する見込み。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.4%上昇と、前月の0.3%を上回ると予想されている。
一方、CPIの結果が市場予想を大きく下回った場合は、ドル高/円安の巻き戻しが入りやすいとの意見も聞かれた。トレイダーズ証券の市場部長・井口喜雄氏は、「仮に米CPIが市場予想を大きく下振れたら、これまでFRBのタカ派化期待を背景にドルが買われていた分、大きめの調整が入りやすい」と予想。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後につけた128円後半までドル/円が下落する可能性もあるとしている。
ユーロ/ドルは1.0544ドル付近、ユーロ/円は137.46円付近で、いずれもじり高となっている。
●NY外為 円、130円台後半 5/11
11日午前のニューヨーク外国為替市場では、4月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回ったことを受けてドルが買われ、円相場は1ドル=130円台後半に下落している。午前9時現在は130円70〜80銭と、前日午後5時(130円40〜50銭)比30銭の円安・ドル高。
米労働省が11日発表した4月のCPIは、季節調整済みで前月比0.3%上昇と、市場予想(ロイター通信調べ)の0.2%上昇を上回ったほか、前年比でも事前予想を上回った。これを受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後、積極的な利上げを継続していくとの見方が改めて広がり、米長期金利が上昇。日米金利差の観点から円売り・ドル買いが進んだ。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0520〜0530ドル(前日午後5時は1.0524〜0534ドル)、対円では同137円50〜60銭(同137円26〜36銭)と、24銭の円安・ユーロ高。
●トヨタ、最高益2兆8500億円 5/11
トヨタ自動車が11日発表した令和3年3月期連結決算は、最終利益が前期比26・9%増の2兆8501億円で、過去最高となった。売上高は15・3%増の31兆3795億円で、これも過去最高を記録した。新型コロナウイルス禍で落ち込んだ自動車販売が北米やアジアで回復傾向を示し、円安ドル高も追い風になった。
また、5年3月期の連結最終利益を前期比20・7%減の2兆2600億円と予想した。原材料価格の高騰などが響くとみている。
グループのダイハツ工業と日野自動車を含む23年3月期の販売台数は前期比31万台増の1070万台、トヨタ単独の生産台数は113万台増の970万台を計画した。いずれも過去最高となる水準だ。 

 

●NY円、130円近辺 5/12 
11日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比48銭円高ドル安の1ドル=129円92銭〜130円02銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0508〜18ドル、136円62〜72銭。朝方には一時1ドル=130円台後半まで急激に円安ドル高が進んだ。その後は米長期金利が低下したのを手がかりに、日米金利差の縮小を意識したドル売り円買いが優勢となった。  
●午後3時のドルは129円半ばで弱含み、イベント通過後のポジション調整で 5/12
午後3時のドル/円は、前日のニューヨーク市場終盤(129.96/99円)に比べてドル安/円高の129.59/61円で推移している。時間外取引の米長期金利の低下や日経平均株価の下落などリスク回避の流れが強まり、円買いが強まった。米消費者物価指数(CPI)通過後のポジション調整もみられ、ドル売り/円買いが優勢となった。
市場関係者によると「日米金融政策の方向性の違いからドル/円のトレンドは変わらないものの、短期的にドル高/円安が進んだことから、ポジション調整の時期に差し掛かったようだ」(アナリスト)と指摘する声が聞かれる。
ドル/円が米連邦公開市場委員会(FOMC)後に付けた128円半ばで下げ止まるのか、株安や金利低下が続けばさらに調整が深くなるのか、動向に注目が集まっている。
米国の4月消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.3%上昇となり、1981年12月以来の高水準だった3月の8.5%からは伸びは縮小した。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は、前年同月比6.2%上昇。82年8月以来の大幅な伸びとなった前月(6.5%上昇)から減速。前月比では0.6%上昇だった。
クレディ・アグリコル銀行の外国為替部長、斎藤裕司氏は「米CPIは強い印象。インフレが落ち着いてきた感じではない」とし、米連邦準備理事会(FRB)による積極的な金融引き締めも意識されやすく、「再び米金利は上昇基調となり、日米の金融政策の方向性の違いからドル高/円安のトレンドは変わらない」との見方を示した。
インフレ動向を見極める上で今晩発表される4月の米卸売物価指数(PPI)の結果に関心が寄せられている。
ポンド/円は158/13円、豪ドル/円は89.14/18円と軟調。世界的な景気減速懸念が広がる中、「クロス円を中心に円売りポジションを修正する市場参加者がでてきているとみられ、ドル/円にも円高圧力がかかりやすい」(前出のアナリスト)という。
●ロンドン外為 円、128円台後半 5/12
12日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、世界経済の減速懸念を背景に安全資産として円を買う動きが強まり、1ドル=128円台後半に上昇した。正午現在は128円65〜75銭と、前日午後4時(130円20〜30銭)比1円55銭の大幅な円高・ドル安。
対ユーロは、1ユーロ=134円30〜40銭(前日午後4時は137円35〜45銭)で、3円05銭の円高・ユーロ安。
このところ売られていた円相場は大幅な上昇となった。前日に発表された4月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回ったことで、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げペース加速の思惑が強まった。中国の新型コロナウイルス対策の都市封鎖(ロックダウン)の長期化も重なり、世界経済の減速懸念が一段と強まった。
ユーロは下落。一時2017年1月以来、約5年4カ月ぶりのドル高・ユーロ安水準を付けた。前日に欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が講演で早ければ7月の利上げを示唆したが、ウクライナ情勢の悪化で欧州経済の先行き懸念は強まっている。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0430〜0440ドル(前日午後4時は1.0545〜0555ドル)。
ポンドも急落。対ドルで約2年ぶりの安値に沈んだ。3月の英GDPはマイナス成長に転落し、英経済の景気停滞懸念が強まった。1ポンド=1.2200〜2210ドル(同1.2335〜2345ドル)。
スイス・フランも連れ安。1ドル=0.9960〜9970フラン(同0.9905〜9915フラン)。
●東京市場の動き 5/12
12日の東京市場はドルが弱含み。レンジは決して広くなかったが、「寄り付き高・大引け安」の様相だった。
ドル/円は129.95円レベルで寄り付いたのち、一時的に130円台を回復するも上値は重い。また、流れとしては緩やかな右肩下がりで、夕方に掛けては129.20円前後までじり安推移をたどっていた。日経平均株価が大きく値を下げたほか、時間外取引のNYダウなども冴えず、調整と思しき円買いを支援していたようだ。16時現在ドル/円は日中安値圏の129.25円レベルで推移、欧米市場を迎えている。
一方、材料的に注視されていたものは、「米金融政策」と「ロシア情勢」について。
前者は、昨日欧米時間に発表された4月の米消費者物価指数は前年同月比プラス8.3%で、予想を上回る内容に。名実ともに、FRBの大幅利上げを後押しする要因となっていた。そうしたなか、アトランタ連銀総裁は「インフレ率が中立の領域にまで政策金利を引き上げていく」、ダドリー前NY連銀総裁「米金利は5%以上になる可能性も」といった発言が聞かれていた。またセントルイス連銀総裁からは「0.5%利上げの方針が現時点で良好」としつつも、「現時点で0.75%の利上げは必要ない」との追加コメントも聞かれ、後者が一部でクローズアップされていたようだ。
対して後者は、ウクライナにおける戦闘が長期化するとの見通しが様々伝えられるなか、ロイターは「ウクライナが東部で反撃し、ロシア軍は撤退余儀なくされる」と報道。また、米国防長官からは「プーチン氏はNATOとの戦争を望んでいない」とする発言も聞かれていた。予断を許さないものの、だいぶ風向きが変わってきた。一方、そうしたなかタス通信が「ウクライナ南部ヘルソンの親ロシア派当局者が年末までにロシアに編入するようプーチン大統領に要請する計画」と報じており、これをウクライナ大統領が非難。「利敵行為者」の親ロシア派が愚かな発言をしているなどと断じていた。
●ドル円終値の推移 (△はドル高・円安)
          レンジ            前日比
 05月12日 128円83〜85銭       (▼1.13)
 05月11日 129円96〜98銭       (▼0.38)
 05月10日 130円34〜37銭       (▼0.86)
 05月09日 131円20〜21銭       (△0.69) 
 05月06日 130円51〜53銭       (△0.41) 
 05月02日 130円10〜12銭       (▼0.49)
 04月28日 130円59〜60銭       (△2.61) 
 04月27日 127円98〜00銭       (△0.11) 
 04月26日 127円87〜89銭       (▼0.32)
 04月25日 128円19〜21銭       (△0.14) 
 04月22日 128円05〜08銭       (△0.03) 
 04月21日 128円02〜03銭       (▼0.63)
 04月20日 128円65〜67銭       (△0.59) 
 04月19日 128円06〜08銭       (△1.43) 
 04月18日 126円63〜65銭       (△0.18) 
 04月15日 126円45〜48銭       (△1.12) 
 04月14日 125円33〜34銭       (▼0.72)
 04月13日 126円05〜06銭       (△0.53) 
 04月12日 125円52〜53銭       (△0.28) 
 04月11日 125円24〜26銭       (△1.20) 
 04月08日 124円04〜05銭       (△0.29) 
 04月07日 123円75〜77銭       (▼0.13)
 04月06日 123円88〜89銭       (△0.99) 
 04月05日 122円89〜91銭       (△0.24) 
 04月04日 122円65〜66銭       (△0.02) 
 04月01日 122円63〜64銭       (△1.00)
 03月31日 121円63〜65銭       (▼0.23)
 03月30日 121円86〜88銭       (▼1.71)
 03月29日 123円57〜59銭       (▼0.35)
 03月28日 123円92〜93銭       (△2.19)
 03月25日 121円73〜75銭       (△0.11)
 03月24日 121円62〜64銭       (△0.56)
 03月23日 121円06〜07銭       (△0.59)
 03月22日 120円47〜48銭       (△1.62)
 03月18日 118円85〜87銭       (△0.19)
 03月17日 118円66〜68銭       (△0.29)
 03月16日 118円37〜38銭       (△0.40)
 03月15日 117円97〜99銭       (△0.25)
 03月14日 117円72〜73銭       (△1.01)
 03月11日 116円71〜73銭       (△0.79)
 03月10日 115円92〜94銭       (△0.04)
 03月09日 115円88〜89銭       (△0.44)
 03月08日 115円44〜46銭       (△0.43)
 03月07日 115円01〜03銭       (▼0.44)
 03月04日 115円45〜46銭       (▼0.27)
 03月03日 115円72〜74銭       (△0.57)
 03月02日 115円15〜16銭       (△0.12)
 03月01日 115円03〜04銭       (▼0.46)
 02月28日 115円49〜51銭       (△0.22)
 02月25日 115円27〜29銭       (△0.66)
 02月24日 114円61〜62銭       (▼0.12)
 02月22日 114円73〜75銭       (▼0.19)
●円安の方が「日本経済全体のGDP押し上げ効果がある」理由 5/12
円安の経済効果を考えてみよう。
日銀の黒田総裁は、円安ドル高について「現状ではプラス面の方が大きい」と発言したのに対し、日本商工会議所の三村明夫会頭は「デメリットの方が大きい」と述べている。
為替動向は輸出入や海外投資を行う業者にとって死活問題だ。円安は輸出企業にとってはメリットだが輸入企業にとってはデメリットだ。また、これから海外進出を考えている企業にとってはデメリットであるが、すでに海外進出して投資回収している企業にとってはメリットだ。
まず中小企業への為替の影響を考えてみよう。中小企業は大企業に比して輸出が少なく、輸入が多く、円安によるデメリットを受けやすいのだ。三村会頭の意見は、中小企業を代弁している。
一方、黒田総裁の意見は経済全体のものだ。輸出企業は大企業であるとともに、世界市場で期していけるエクセレント企業だ。一方、輸入企業は平均的な企業だ。この場合、エクセレント企業に恩恵のある円安の方が日本経済全体のGDPを押し上げる効果がある。
これは、日本に限らず世界のどこの国でも見られる普遍的な現象だ。輸出の多寡により効果は異なるが、いずれも自国通貨安はGDPへプラス効果がある。例えば、国際機関が現在行っているマクロ経済モデルでも確認されている。
こうした指摘はこれまでも言われてきた。自国通貨安はしばしば近隣窮乏化策とも言われるが、それは逆にいえば自国経済はよくなることを意味している。この意味で、「円高は国益」は誤りだ。
主として大企業で構成されている経団連の十倉雅和会長は、最近の円安について大騒ぎすることではないという見解を示している。
ただし、大企業の中でも金融業界の意見は特殊だ。金融業界は、今の低金利環境では利鞘が稼げない。このため、金融業界の利益のために金利高を目論み、今の円安に否定的なことをいい、円高誘導への金利高に持っていこうとする。
それでも、このところの円安傾向を受けて、「円高は国益」「製造業が海外に拠点を移しており円安メリットは小さい」といった議論が出ている。民主党政権時代の円高で日本経済はどうなったのか。
「製造業が海外に拠点を移しており円安メリットは小さい」との意見は、輸出のメリット減少をいっているだけだ。海外に拠点を移しているので、その投資収益があるはずで、この円価換算収益は円安メリットを受けている。
海外から、政治的な理由で自国通貨安を是正しろとの要求があるのは、筆者としても想定内であるが、国内からそうした声があるとは、「国益」に反するので驚きだ。
ちなみに、ウクライナ侵攻を受けた最近のIMF(国際通貨基金)の世界経済見通しで、なぜ2022年の日本だけが経済成長するのかと言えば、日本だけが金融緩和していて、その効果が世界経済のマイナスを補っているからだ。
●令和3年度経常黒字、7年ぶり低水準 原油高と円安響く 5/12
財務省が12日発表した令和3年度の国際収支速報によると、海外とのモノやサービス、投資の取引状況を示す経常収支の黒字額は前年度比22・3%減の12兆6442億円だった。減少幅は東日本大震災後に燃油輸入の増加が続いた平成25年度(43・7%)以来の大きさで、黒字額は7年ぶりの低水準。ウクライナ危機などによる原油価格の高騰と円安進行が輸入物価を上昇させ、貿易収支が大幅な赤字になったことが響いた。
経常収支の減少は4年連続。このうち、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆6507億円の赤字だった。赤字は7年ぶりとなり、前年度から収支が5兆4277億円悪化した。輸出は半導体関連が堅調で85兆4957億円、輸入は原油高の影響で87兆1464億円といずれも比較可能な8年度以降で最高を記録したものの、輸入の伸びが輸出を上回った形だ。
海外への投資で得た利子や配当金の動向を示す第1次所得収支は21兆5883億円の黒字で、黒字幅が3兆円近く拡大した。このところの円安ドル高が海外からの配当金を押し上げた。
経常黒字は日本が海外で稼ぐ力を表し、円や日本国債が信用される源泉でもある。ただ、24兆円を超え過去最高だった19年度に比べ令和3年度はほぼ半減し、ロシアのウクライナ侵攻でも危機時の安全資産として円需要が高まる「有事の円買い」は起きなかった。侵攻の長期化で原油をはじめとした資源高は長引くとみられ、4年暦年では赤字になる可能性も指摘される。
一方、貿易赤字は企業が海外に支払う外貨を得るため円を売ることで円安にもつながり、資源高による輸入物価の上昇を助長する。火力発電用の燃油輸入を増加させる原発の停止を解消するなど赤字の改善に向けた取り組みが求められる。
●「悪い円安」論の虚像、構造的円安の行方を占う 5/12
「悪い円安」論が日本国内で横行している。円安が良いのか悪いのか、円高の方が良いのか悪いのかなどといった議論は不要で、もはや「円安は悪」というのは真実たる前提であって、その上でそれがいかに悪いのか、それをどのように是正すべきかを問うといった論調が支配的になっている感さえある。
筆者自身は、この局面は日銀の緩和姿勢や内外金利差拡大などを理由にドル高・円安を見込んできた。足元でも向こう数カ月で2002年に記録した135円前後へのドル/円上昇はありうると考えている。
ただ、1)コロナ危機前に比べると、4割以上も増えている米国のマネーサプライ、2)それに伴う米国のインフレが先進国の中でも突出している、3)貿易赤字の急増で米国の国際収支が悪化している、4)欧州など米国以外の国・地域で金融正常化を模索する動きが強まっている──などを考慮すると、中長期的には米ドルの行方を楽観しておらず、ドル/円も反落リスクがそれなりに大きいと見ている。
このあたりでドル高・円安が一服してくれば、中長期的な筆者の相場観にはフェイバーだ。だが、足元で日本中に広がる「悪い円安」論は、相場観として円安を見込むのか、円高を見込むのかを問わず、根源的なところに大きな間違いがあると思う。ましてやこの円安を政策的に止めるべきだという主張には、強い違和感を覚える。
スピード感か水準か
まず、円安を悪いと断じるにしても、円安のスピード感の問題とその絶対水準をしゅん別した議論が行われていない印象が強い。円安バイアスが強い日銀の黒田東彦総裁も最近の円安のスピード感には警戒感をにじませている。
同じように、筆者もこのペースの円安持続が良いことだとは思っていない。むしろ「速過ぎる円安」から円高への逆転が生じ、その円高が日本経済、特に企業業績や賃金、物価にマイナスの影響を与えうることを警戒すべきだと考えている。
一方、円安の絶対水準に関しては、この後に実質為替相場に言及するところで詳しく論じるが、仮にドル高・円安が現在の130円前後で止まり、向こう3年間ほどこの水準で推移した場合と、昨年初めの100円前後の円高水準で向こう3年ほど推移した場合の日本経済への影響を想像してみれば、円安の絶対水準に関する議論への答えは自ずと見えてこよう。
今は、円安のスピードが速いため「悪い円安」論が注目され、妥当にも見えるが、例えば、ドル/円が100円を割り込むような下落となったような場合に、今の「悪い円安」論者たちは何と言うのだろうか。
実質円相場は割安か
市場の一部では、1970年代以来の水準に実質実効円相場が下落していることをもって、円は割安になっている、もっと言えば、日本人の価値が不当に安く評価されているとの意見もある。
だが、実質為替相場のメカニズムを正しく理解していない議論が多い。まず、指摘しておきたいのは、国際通貨基金(IMF)など国際機関や通貨当局は過去との単純な比較で、実質為替相場の割高感や割安感を評価していないという点だ。
ちょうど10年前の2012年からIMFが年1回発行している外部セクターリポートがあるが、そこでは構造要因などを加味した経常収支の状況と、それと整合的な実質実効為替相場の関係で通貨のバリュエーションを評価している。現在までのところ、約50年ぶりの水準に低下している実質実効円相場が著しい過小評価との判断は受けていない。
重要なポイントは、実質為替相場も為替レートであるため、その評価に当たっては、日本国内の事情のみならず、貿易相手国のファンダメンタルズ環境、それを受けたそれらの国々の実質為替相場などが影響する点だ。
平たく言えば、仮に日本のファンダメンタルズが実質実効円相場でピークをつけた1990年代半ば以降、変わっていなかったとしても、中国や韓国などアジア諸国の競争力が高まり、それらの国々の実質為替相場が上昇するなら、それだけで実質実効円相場は下落すべきということになる。
実質実効円相場を用いた「悪い円安」論のほとんどが、こうした海外事情のことを考慮しないまま主張されている。恐らくIMFが10年前から外部セクターリポートを発行するようになり、為替評価方法を大きく転換したことさえも知られていないのだろう。
自然為替レートという概念
筆者が提唱したいのは「自然為替レート」という概念だ。金利の世界には自然利子率の概念が確立されており、実質金利が自然利子率を下回ってくると、景気やインフレの刺激効果が出てくる。ただ、デフレ環境下でゼロ金利制約に陥った日本経済は自らの政策的努力で効果的に実質金利を引き下げることが難しい。従って景気やインフレの刺激のためにマネタリー・コンディションを緩和させるに当たっては、実質円相場の下落に依存せざるをえなくなる。
この間、中国や韓国を筆頭にアジア諸国が世界の輸出基地として台頭し、それらの国々の実質為替相場は基本的に上昇しやすく、日本の実質為替相場は下落しやすい状況となった。ただ、アジア新興国の実力上昇が著しいため、実質円相場が長期的に下落しても、あるべき均衡点になかなか達せずにいる。
こうした中で、日本経済とインフレは浮揚感を欠いてきたのだと筆者は整理している。逆に言うなら、実質円相場が既に十分に安くなっているなら、今ごろ日本は明確にデフレ体質、ディスインフレ体質を克服していなければおかしい。実際にそうなっていないことは、実質円安は実体経済との対比で言えばまだ、不十分なのではないかということを物語る。
長期的に見れば、このことは実質実効円相場が日本の交易条件のすう勢的な悪化とともに下落してきたことに端的に表れている。アジア諸国との競合で日本の輸出品目である工業生産価格が長期的に低迷し、資源需要の増加を背景とする原油・資源価格の上昇が輸入物価を押し上げてきた。足元の円安(特に実質円相場の下落)も昨年以降の原油・資源高による交易条件の悪化を伴っている。
悪い円安か、良い円安か
この円安も手伝って今、「安いニッポン」が社会問題となっているが、その底流にある賃金低迷の決定打となったのは1985年以降、その当時の日米貿易戦争を背景に1995年まで続いた円高だった。その頃、日本は株価も不動産も世界の中で圧倒的に高かったが、人件費も米国や欧州諸国を上回っていた。円高進行を受けて95年にはドル建て賃金が4万4000ドルとなり、米国(2万8000ドル)の1.5倍以上になった(IMFの賃金指数)。
この円高の記憶は、近年まで企業経営者をはじめとした日本人の脳裏には焼きついた。その円高の記憶を前提に製造業を中心に企業戦略が組み直され、これが企業の海外進出を伴う国内での執ような賃金抑制につながった。
その結果、それをピークに日本の賃金は伸び悩み始め、特に1997─98年の金融危機の後は現金給与総額の前年比の伸びはマイナス圏で推移するようになった。消費者物価の伸びも落ち込み、現在まで続くデフレ経済の出発点となった。
実際には95年以降、そこまで激しいドル安・円高は進行しなかったが、すう勢的な賃金などを抑制するコストカット構造は継続。円建てで見ても、ドル建てで見ても、日本の賃金は低迷を続けることになった。
今はにわかに「悪い円安」論者が急増中だが、当時は95年までの円高が日本人(特に企業経営者)にとって「最悪の記憶」として残り、そのヒステリシス効果(履歴効果)が賃金抑制を含めたデフレ経済化を促す重要な1つの要因となったのだ。
足元の円安加速は「高い日本」を国際的に見て(ドル建てで見て)加速させた95年当時の円高加速を想起させる。もちろん今回はサイドが逆で「安い日本」が問題になっているが、この円安は日本経済がデフレ構造、ディスインフレ構造から抜け出していくに当たって、必要なプロセスの最終段階なのではないかと捉えている。
このまま円安が加速すると、筆者の中長期的な相場観にはアンフェイバーだが、ファンダメンタルズ的にはこれは「悪い円安」なのではなく、「良い円安」なのではないか。 

 

●ドル・円上昇に潮目の変化か、135円遠のいたとの見方も 5/13
右肩上がりで上昇してきたドル・円相場の雲行きが怪しくなってきた。米国の積極的な金融引き締めや中国の都市封鎖などによる世界景気の減速懸念を背景に、株式下落や米長期金利の低下が、円の買い戻しを促している。一本調子のドル高・円安は転換点を迎えたとの見方も出ている。
オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは、米利上げ開始後も持ちこたえていた米ダウ平均が年初来安値を更新したことで「マーケットの潮目が変わった」とみる。高インフレと低成長によるリスク資産の調整がついに始まり、「リスクオフの流れにマーケットが注力し始めた」中で、円が強くなってきたと説明する。  
3月以降、上昇基調にあったドル・円は、5月9日に付けた1ドル=131円35銭をピークに128円前後まで値を切り下げている。引き締め加速に動く米国と緩和を続ける日本の金融政策格差を背景に4月下旬に130円の節目を突破し、2002年以来となる135円を目指す機運が高まったが、米国株が調整色を強め、米長期金利が下げに転じると、その勢いは後退した。
「135円は遠ざかった感じがある」。バークレイズ証券の門田真一郎チーフ為替ストラテジストはそう話し、「これまでインフレが上がれば米金融当局がどんどん利上げし、ドル・円も上がるという相場だったが、利上げを織り込めたのも景気が良いからで、中国懸念もある中で一本調子で米利上げを織り込む相場ではなくなってきた可能性がある」と指摘。12日に122円をターゲットにドル・円スポット(129円80銭)の売りを推奨した。 
米10年債利回りは週初に3年半ぶりとなる3.2%を付けた後、2.8%台に低下している。しんきんアセットマネジメント投信の加藤純チーフマーケットアナリストは、大幅利上げによる景気悪化やウクライナ紛争、中国ロックダウンなど悪材料が多い中、「質への逃避」の意味でも米長期債は売りづらいと指摘する。
同氏は、利回り水準3%は「いいところ」と考えるとドル・円が131円35銭を超えて上昇するのは難しく、当面は128〜133円程度のレンジで推移し、その後「上に行くか、いったん125円に行くか」決まるとみている。
ドル高・円安が進むとの見方も
一方、円の反発は一時的で、ドル・円はさらに上昇するとの見方も根強い。みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジストは、コロナ後の繰り越し需要により年内は目立った米景気悪化がなく、来年前半にかけて米政策金利は3%程度まで引き上げられると予想。ドル・円も3月末にかけて136円に上昇し、景気加速と高インフレで大幅利上げが続くかたちになれば「140円がかなり近くなる」とみる。
JPモルガン・チェース銀行の佐々木融市場調査本部長は、リスク回避で多少、円の買い戻しが入っても、ドル・円は日本の貿易収支赤字化など構造的要因に支えられている部分が大きいと指摘。「実質的には50年ぶりの円安水準なのでどこまでいくかはもう分からない。年後半に農産物価格の大幅上昇や一段の原油高で貿易赤字が拡大すればスパイラル的な円安になる可能性もあるし、大きく調整する可能性もあり、かなりボラティリティーは高いだろう」と話す。
●「日銀vs海外勢」国債カラ売り危険な状態 ワタミのGW「3年ぶり回復傾向」 5/13
先月28日に円相場が1ドル=131円台に下落し、円安が加速している。日銀は新発10年債を0・25%の利回りで、無制限に買い取る「指し値オペ」の実施を発表した。当然、金利を引き上げる米国との差が広がり、今後も円安・ドル高が加速する。
この指し値オペに対して、4月27日の日本経済新聞朝刊に「日銀が上限とする『0・25%程度』を前に海外勢が国債売りを膨らませている」との記事があった。「2021年にオーストラリアで同様の売りを浴びせ、国債の利回り目標を撤廃させるのに成功した経験も外国人投資家を勢いづかせている」という。
今、どんどんカラ売りをして、国債が安くなれば買い戻す、対する日銀は買い支えし続けるしかないが、いずれ限界が来る。黒田東彦(はるひこ)日銀総裁の強引な政策が、海外のヘッジファンドの標的とされつつある。危険であり本来なら1面級の記事だ。
近著『インフレ不可避の世界 今すぐ大事な資産を守りなさい』(明日香出版社)を出したさわかみファンド創業者の澤上篤人さんは、国債や、上場投資信託(ETF)の買い入れなど、日銀の緩和政策について「経済的合理性の鉄槌(てっつい)が下される」と批判し、中央銀行の信頼失墜も「当然だ」と指摘する。「金融バブル」は2年程度で100%崩壊するという。
政府は6・5兆円の景気対策で物価上昇を抑えようとする一方、日銀は物価を上げる政策を継続する。政府に対し、日銀が違う政策を始めており、中央銀行の役目を果たしていない。
米連邦準備制度理事会(FRB)は5月3、4の両日の連邦市場公開委員会(FOMC)で政策金利を通常の2倍の0・5%引き上げることを支持する姿勢を示した。
元モルガン銀行東京支店長の藤巻健史さんは、ドル・円の動向を決める2大要因は「経常収支動向と日米金利差」だとし、朝日新聞などで今後1ドル=400円もあり得ると警告する。藤巻さんは、異次元の金融緩和で、国債を実質日銀が引き受ける「財政ファイナンス」を行った結果、金利が上昇した瞬間に「日銀が債務超過に陥る」と一番の問題点を指摘する。
金利を上げれば日銀が破綻する、金利を抑えれば円安が加速する、完全な袋小路である。円安・ドル高の影響下では、日銀の為替介入も難しい。保有する米国債をドルにして円を買う。米国債を日本が売ると、さらに金利差が広がるジレンマが生じる。
ワタミは1ドル=130円までの円安を織り込んで経営を行ってきたが当然、修正する。足元うれしいことに、ゴールデンウイークのワタミ外食各店は、3年ぶりの回復傾向となった。
一方、アルバイトなどの人手不足が深刻化している。円安も人手不足も、問題は「先送りせず」に迅速に手を打つ、それが経営だ。
私が自民党の財務金融部会で、日銀の出口戦略を話し合うべきだと強く提言をしたが、この国は「先送り」という決断をした。しかし、いよいよ「先送り」は限界に近づいている。 (ワタミ代表取締役会長兼社長・渡邉美樹)
●外為 1ドル129円08銭前後とドル高・円安で推移 5/13
13日の外国為替市場のドル円相場は午後1時時点で1ドル=129円08銭前後と、前日午後5時時点に比べ28銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=134円11銭前後と57銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●円、129円近辺 ロンドン外為 5/13
週末13日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、前日の急激な円高に一服感が広がり、1ドル=129円近辺に下落した。正午現在は128円90銭〜129円00銭と、前日午後4時比80銭の円安・ドル高。
●東京市場の動き 5/13
13日の東京市場は「行って来い」。一時ドル買いが進展し129円台を回復するも、続かなかった。
ドル/円は128.35円レベルで寄り付いたのち、しばらくは揉み合い。狭いレンジで揉み合いをたどるなか、上放れするとそのまま129円台へ。一気に1円近く上昇し、日中高値129.35円レベルを示現している。しかし勢いは続かず、じりじりと値を崩すと129円割れ。夕方には128.60円レベルまで値を崩すなど「行って来い」の様相に。16時現在では128.75-80円で推移、欧米市場を迎えていた。
なお、そうしたなか鈴木財務相から「為替の動静を緊張感もって注視」、黒田日銀総裁から「過度な為替変動は先行きの不確実性高める」といった発言が聞かれている。
一方、材料的に注視されていたものは、「北朝鮮情勢」と「ロシア情勢」について。
前者は、前日に突然「首都平壌でコロナ感染者を確認」と初めて発表し思惑を呼んだ北朝鮮だが、続報として「6人の死亡を確認、ひとりはステルスオミクロン株」などとも伝えられていた。ただWHOによると、北朝鮮から新型コロナ感染拡大に関する正式な報告はまだ受けていないとされ、詳細はわかっていないようだ。一方、それとは別に、米韓高官が電話会談を行い「北朝鮮のミサイル発射を非難」したほか、サキ米報道官からは改めて「バイデン大統領のアジア歴訪を控え、北朝鮮が核実験を準備している可能性がある」との指摘が聞かれていた。
対して後者は、フィンランドがNATO加盟を正式表明したことに、ロシアが猛反発。ペスコフ報道官は「間違いなくロシアへの脅威であり、NATO拡大は欧州と世界の安定につながらない」と強く非難している。また、タス通信が「ポーランド経由ドイツ行きの天然ガス輸送を停止」と伝えたほか、「ロシア軍は略奪した大量の小麦を密かに輸出」など、戦闘とは別の話題も幾つか取り沙汰され話題となっていた。 

 

●米国経済の減速懸念で円売り縮小 5/14
今週のドル・円は反落。米国金利の先高観を背景に週初に131円35銭までドル高円安が進行し、ドルは年初来高値を更新したが、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策引き締めによって米国経済が急激に減速するとの見方や世界経済の成長鈍化などを巡る懸念が強まり、5月12日の欧米市場で127円52銭までドル安円高に振れる場面があった。米長期金利の低下や米国株式の下落もドル売り材料となった。しかし、13日の東京市場で国内の輸入企業によるドル需要が強まったことや、米国の主要株価指数先物が時間外取引で上昇し、日経平均も高く推移したことから、リスク回避の円買いは縮小。ドル・円は129円台前半まで戻した。
13日のニューヨーク外為市場でドル・円は、一時128円84銭まで下げたが、129円台半ば近辺まで反発した。この日発表された5月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値は、市場予想を下回ったことから、ドル売りが一時優勢となった。ただ、議会上院で再任が承認されたパウエルFRB議長は6月と7月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で50ベーシスポイントの利上げを支持していること、米国株式が持ち直したことから、リスク回避のドル売り・円買いは縮小し、ドル・円は129円26銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:127円52銭−131円35銭。
●NY円、反落 1ドル=129円15〜25銭 米長期金利の上昇で円売り 5/14
13日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3日ぶりに反落し、前日比90銭円安・ドル高の1ドル=129円15〜25銭で取引を終えた。米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大観測から円売り・ドル買いが優勢になった。米株高も低リスク通貨とされる円の売りにつながった。
米長期金利は一時、前日比0.09%高い(債券価格は安い)2.94%を付けた。週末を控えた持ち高調整の債券売りが優勢だった。前日まで長期金利の上昇一服感が出ていたが再び2.9%台に乗せ、円売り・ドル買いが入りやすかった。米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを進める一方、日銀は金融緩和を維持している。日米の金融政策の違いを背景とした円安・ドル高基調が続くとの見方も円相場の重荷だった。
米株式市場では主要3株価指数がそろって上昇した。ダウ工業株30種平均は466ドル高で終えた。足元で米株式相場の下げ基調が続き、投資家が運用リスクを取りにくくなっていただけに、13日はリスク回避の際に買われやすい円の売りを誘った。
円の安値は129円45銭、高値は128円87銭だった。
円は対ユーロで5営業日ぶりに反落し、前日比1円35銭円安・ユーロ高の1ユーロ=134円45〜55銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで4日ぶりに反発し、前日比0.0025ドルユーロ高・ドル安の1ユーロ=1.0405〜15ドルで取引を終えた。ウクライナ戦争の長期化を背景とした欧州の景気減速懸念などからユーロ売り・ドル買いが先行し、一時は1.0349ドルと2017年1月以来のユーロ安・ドル高水準を付けた。ユーロ売り一巡後は週末を控え、持ち高調整のユーロ買い・ドル売り優勢に転じた。株高も、リスク選好時に買われやすいユーロの上昇につながった。
ユーロの高値は1.0416ドルだった。
●ドル円相場 5/14
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初130.51で寄り付いた後、本邦輸入企業と思しき実需のドル買い・円売りや、米金利上昇に伴うドル買い圧力(米5年債利回りは2008年9月以来となる3.10%へ急上昇。米10年債利回りは2018年11月以来となる3.20%へ急上昇)、直近高値突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り、バイデン米大統領によるインフレ対策への期待感が支援材料となり、週明け早々に、週間高値131.35(2002年4月以来、約20年ぶり高値圏)まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、急ピッチな上昇に対するポジション調整(反動売り→短期円ショート勢のストップロスを誘発)や、米FRBによる強力な金融引き締め観測(過剰流動性相場逆流リスク→株安→市場心理悪化→リスク回避の円買い圧力)、中国経済の失速懸念(新型コロナウイルスの感染拡大→ロックダウンなどコロナ対策の長期懸念→世界経済の減速懸念→株安→市場心理悪化→リスク回避の円買い圧力)、米金利低下に伴うドル売り圧力(質への逃避の米債買い圧力→米10年債利回りは5/9に記録した3.20%から5/12には2.81%まで急低下)が重石となり、週後半にかけて、4/27以来、約2週間ぶり安値となる127.51まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、急ピッチな下落の反動や、米10年債利回りの反転上昇、欧米株の持ち直しが支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間5/14午前5時30分現在)では、129.35前後まで回復する動きとなっております。尚、注目された米4月消費者物価指数(結果+8.3%、予想+8.1%)および米4月コア消費者物価指数(結果+6.2%、予想+6.0%)は共に市場予想を上回る結果となりましたが、ドル買いでの反応は一時的なものに留まりました。
●国内自動車メーカー 半数以上が今年度は減益予想 原材料高で  5/14
鉄やアルミなどの原材料価格が高止まりしていることを受けて、国内の大手自動車メーカーの半数以上が今年度は減益になると予想し、世界的な物価上昇で難しい対応を迫られそうです。
国内の主な自動車メーカー7社の昨年度の決算では、トヨタ自動車が最終利益が過去最高となるなど3社が増益に、日産自動車、三菱自動車工業、マツダの3社が最終損益が黒字に転換し、前の年度の業績を上回りました。アメリカなどの主要市場で販売を伸ばしたことに加え、円安で利益が押し上げられたためです。
しかし、今年度の見通しについては、主要7社のうち4社が最終的な利益が減益になると予想しています。
車の生産に必要な鉄、アルミ、貴金属などの原材料の価格や物流費が高止まりしているためで、営業損益ベースではトヨタが昨年度と比べて1兆4500億円、日産が2570億円、マツダが1200億円、利益を押し下げると見込んでいます。メーカー各社は、より安い材料に切り替えるなど一層のコスト削減に取り組むとしています。
ただ、ウクライナ情勢などの影響でコスト削減を上回る物価上昇が続く可能性もあり、今年度は車の販売価格に転嫁するかどうかも含め、難しい対応を迫られることになりそうです。 

 

●円安に逃げて、円安におののくお粗末さ 5/15
1971年8月のニクソン・ショックで、それまで1ドル=360円だった為替レートが同308円に引き上げられた。突如の円高となり、日本中が震え上がった。とりわけ輸出企業を中心に、産業界はこの難局をどう乗り切っていくかで大騒ぎとなった。
日本製品が世界市場で生き残っていくには、予想もしなかった大幅な円高をカバーするだけのコスト競争力をつけるしかない。各企業は必死の経営努力を重ねた。それが功を奏して、日本企業の国際競争力が高まり、73年10月に発生した第1次石油ショックも、79年末から80年初めにかけての第2次石油ショックも、それぞれ3年弱で乗り切った。世界に先駆けて驚くべき快挙を成し遂げたのだ。
その後も円高は進み、85年9月のプラザ合意で1ドル=250円だった為替レートは同125円に修正を迫られた。一気に2倍の円高だ。さすがに、「これはきついだろう」という見方で、米国をはじめとする諸外国は一致した。ところが、日本企業は「もうお手上げだ」と言いながらも、生き残るためのすさまじい経営努力を重ねた。そして、2倍という超円高を克服してしまったのだ。それどころか、95年には1ドル=79円台を付けるまでに円高対応力を高めた。その間、弱い企業はどんどん淘汰されていった。円高という逆境を耐え抜いて国際競争力を高めていった企業群が、強い日本経済を支えた。厳しいけれど、極めて健全な適者生存の経済運営を日本企業は先導したのだ。
甘えに走り出した日本企業
85年のプラザ合意を機に、日本は政官が主導して内需拡大に大きくかじを切った。米国などからの政治圧力もあって、輸出主体だった産業構造を内需中心へ切り替える政策を次々と打ち出した。同時に、金利をどんどん引き下げていった。内需シフトの代表例が、リゾート開発法案である。それが低金利を背に全国津々浦々で乱開発を繰り広げ、土地取引の大ブームに火を付けた。80年代後半のバブルの始まりである。
多くの企業も、土地や株式の財テクにのめり込みだした。一方で、米国との貿易摩擦を避けるために、半導体などへの投資を大幅に削減してしまった。その間隙を突いて、はるか後方を走るにすぎなかった韓国のサムスン電子などが巨額投資を重ねて、今日の隆盛を極めていった。
同時に、産業界を挙げて円安誘導の大合唱を始めた。それまでの、自助の精神でコスト競争力を高めようとする経営努力や、積極果敢な投資を抑え、ひたすら国に円安政策を求めるだけの甘えに走ったわけだ。それでも、長年にわたって培ってきた日本経済の地力もあって、円高は95年に1ドル=79円台を付けるまでに進んだ。
残念ながら、そのあたりからだ。日本経済の弱体化が目立つようになったのは。例えば、この20年ほどは日本企業の生産性が低いと散々言われているではないか。そんな表現は、90年代初めまで一度たりとも聞かれなかった。そう、円高傾向と必死で闘っていた間の日本企業は、世界でも抜群に強くなっていった。ところが、円安に逃げ出してからというもの、日本企業は一気にだらしなくなってしまったわけだ。
円安はいいことなしだ
そもそも、一国の通貨が強くなるということは、経済力や国力が高まっている証拠である。国民の生活もどんどん豊かになっているわけで、歓迎こそすれ忌避するものではない。好例がスイスである。しばらく前までは、円高とスイスフラン高が双璧をなして、国力の高まりを謳歌していた。ところが日本は先にも書いたように、円安に逃げた。そして、見る見るだらしなくなっていった。
一方、スイスは通貨高に対応すべく産業強化の努力を重ねた。例えば、世界に冠たるスイスの観光業だ。日本のように円安を利してのインバウンド観光ではない。「スイス観光は、通貨をはじめ何もかも高くつくが、それ以上の満足を味わえる」という世界的な評価を高め続けている。スイス国民はどんどん豊かになりつつ、観光業も隆々としているのだ。
日本は円安、つまり割安さによって、海外からの観光を誘っている。いわば安売りだ。それに対してスイスは割高とはなるが、それ以上の価値を海外からの観光客に認めさせて、堂々と勝負している。どちらがより高度な戦略かは言うまでもなかろう。日本経済の弱体化が不安視されている現在、国民も企業も真正面から経済力、さらには国力強化にまい進すべきだ。
●ドル円は一段高もペースダウン 5/15
米インフレ指標の強い内容を受け、ドルは独歩高の様相です。金融引き締め加速への思惑が背景にあります。ただ、ドル・円は131円台の定着に失敗するなど上値の重さも意識され始めており、目先は水準を切り上げるとしても、ペースは緩慢になりそうです。
5月11日に発表された米4月消費者物価指数(CPI)は前年比+8.3%(3月は+8.5%)、コア指数は+6.2%(同+6.5%)とそれぞれ前月から鈍化したものの、いずれも予想よりも高い伸びとなりました。翌12日の卸売物価指数(PPI)も注目され、結果は前年比+11.0%(前月+11.5%)、コア指数は+8.8%(同+9.6%)。やはり想定ほど失速せず、改めてアメリカのインフレ高進を裏付けました。
米連邦準備制度理事会(FRB)はその前の週に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、バイデン政権の推進するインフレ抑止を後押しする一段の金融引き締めに踏み切ったばかり。具体的にはFFレート誘導目標レンジを0.75-1.00%に0.50pt引き上げ、6-8月は475億ドル、9月以降は950億ドルのペースで保有資産を縮小します。この決定は、当面のドル買いを支える要因となりました。
利上げ幅を0.50ptとする強い引き締めは22年ぶりのこと。一方、パウエル議長はFOMC後の記者会見で今後0.75ptの利上げ幅への拡大には慎重な姿勢を示しました。ただ、市場は「経済指標が堅調なら引き上げざるを得ない」(短期筋)と指摘。当局者のなかにはタカ派的な主張が目立ち、6月14-15日のFOMCに向けインフレや雇用の関連指標が堅調なら引き締め加速への思惑が再燃し、それを織り込む展開が予想されます。
一方、他の主要中銀の政策姿勢にも変化がみられます。最近では欧州中銀(ECB)当局者が早ければ7月の利上げの可能性に言及し、早期引き締めへの思惑が高まってきています。ただ、ユーロ圏の経済指標は弱く、実際には遅れる公算が高いでしょう。また、20日発表の日本の4月消費者物価指数(コア指数)は、日銀が長年目標としてきた前年比+2%前後の上昇が予想されるものの、異次元緩和堅持のため円安基調には変わりがなさそうです。
とはいえ、ドル・円については131円台の定着に何度か失敗し、上値の重さが意識されています。岸田政権は夏の参院選を前に物価上昇の抑止に本腰を入れ、一段の円安へのけん制を強める可能性もあります。また、FRBの金融正常化を背景にNY株式市場は年初来安値を下回る水準に弱含み、リスクオフの円買いも見込まれます。年初来安値から17円超も値を切り上ており、目先の上昇余地は乏しくなってきたと考えてもいいころでしょう。 
●円安・株価 潮目に変化? 5/15
大型連休明けのマーケットは、1ドル=131円30銭台と20年ぶりの円安水準を更新した後、逆に一時127円台まで円高方向に動きました。また、日経平均株価は一時2万6000円割れ。アメリカでもダウ平均株価が年初来安値を更新。背景にあるのが「アメリカのインフレ長期化」への懸念で、それによって相場の潮目に変化が出てきているようにも見えますが、果たして?
主要企業「円安続かず」
大型連休明けに、大手企業の昨年度の決算が相次いで発表されましたが、市場で注目されたのが「円相場の見立て」です。決算発表にあわせて、今年度・2022年度の業績見通しの前提となる為替相場の想定が示されますが、その想定はトヨタ自動車が「1ドル=115円」、日産自動車や日立製作所が「120円」、ソニーグループが「123円」と、いずれも足元の水準と比べるとかなり「円高」方向で想定されているのです。急速に進んだ円安を織り込み切れていない面もありますが、主要企業の多くがいまの水準の円安が続くとは見ていないということです。
円相場に動きが
4月下旬に、20年ぶりに1ドル=131円台に突入した円相場。その後も130円台近辺で推移し、大型連休明けの5月9日には131円30銭台をつけて、20年ぶりの円安水準を更新。ところが12日になると、逆に一時127円台まで円高ドル安が進みました。
米インフレ長期化への懸念
この円相場の動きの背景にあるのが、「アメリカのインフレ長期化への懸念」です。アメリカのインフレをめぐっては、そろそろ物価上昇率が頭打ちになるというピークアウト論も出ていましたが、日本時間11日夜に発表された4月の消費者物価指数は前年同月比で「プラス8.3%」。3月は8.5%だったので、8か月ぶりの伸び率縮小となりました。これに対する市場の反応が、「インフレが長期化し、景気を冷え込ませるのではないか」という懸念でした。確かに伸び率は縮小したものの、事前の市場予想である8.1%を上回り、水準自体も依然として記録的な高さだという受け止めです。変動の大きいエネルギーや食品を除いたコア指数は前月比「プラス0.6%」で、3月の0.3%からむしろ上昇しました。家賃や航空運賃など幅広い品目が上がり、人手不足を背景に賃金の上昇も続いています。予想以上の物価上昇の強さだったことなどから、なおインフレが長期化するという見方が広がる形となりました。このため、アメリカの中央銀行にあたるFRBが金融引き締めを加速させ、その急激な金利上昇などにアメリカ経済が耐えきれず景気後退につながりかねないという見方にもつながっています。
市場関係者「市場のインフレ予想も上振れてきているのが気がかりで、これはFRBがインフレを制御できないのではないかという信認の揺らぎが生じていることを示唆するものだ。そうなると市場でインフレ予想が暴走し、駆け込み消費や便乗値上げを招いて歯止めが効かなくなるおそれもある」
株価は、上値重く
こうした懸念を受けて、12日にはダウ平均株価は年初来安値を更新。アメリカの長期金利も3%を下回りました。また、中国では「ゼロコロナ政策」のもとで、上海などに続いて北京でも厳しい外出制限が出され、生産や物流の停滞懸念も強まりました。先行きのリスクが高まる中、最近では影が薄くなっていた「有事の円買い」の動きが出た、円相場の反転につながったものと見られます。一方で、日経平均株価は12日にアメリカや中国の景気先行き懸念から、およそ2か月ぶりに2万6000円を割り込みました。
振り返れば株価は去年9月には3万円台、ことしの年初には2万9000円をつけていましたが、その後は下落傾向が続いています。市場関係者の中には、さらに年初来安値の2万4700円台(終値)を下回るタイミングがくるとの予想も出ています。「円安」「株高」の流れに潮目の変化が出ているようにも見えますが、日米の金融政策の方向性や金利差拡大の構図には変わりはないため、円相場は今後も円安が進み、135円、140円になる可能性もあるという見方もあります。また、アメリカのインフレについても「やはりピークアウトした」という受け止めもあり、一辺倒ではありません。本当に潮目の変化になるのかどうか、さらにマーケットの動きの裏側を探っていく必要がありそうです。
注目予定
16日には中国が先月の工業生産や消費など、主要な経済指標を公表します。「ゼロコロナ政策」のもと、上海などの各地で厳しい外出制限がとられた影響の広がりが懸念されます。20日に発表される日本の4月の消費者物価指数は、日銀が目標としてきた「プラス2%程度」になる可能性も指摘されています。
●ドル円は一段高もペースダウン 5/15
米インフレ指標の強い内容を受け、ドルは独歩高の様相です。金融引き締め加速への思惑が背景にあります。ただ、ドル・円は131円台の定着に失敗するなど上値の重さも意識され始めており、目先は水準を切り上げるとしても、ペースは緩慢になりそうです。
5月11日に発表された米4月消費者物価指数(CPI)は前年比+8.3%(3月は+8.5%)、コア指数は+6.2%(同+6.5%)とそれぞれ前月から鈍化したものの、いずれも予想よりも高い伸びとなりました。翌12日の卸売物価指数(PPI)も注目され、結果は前年比+11.0%(前月+11.5%)、コア指数は+8.8%(同+9.6%)。やはり想定ほど失速せず、改めてアメリカのインフレ高進を裏付けました。
米連邦準備制度理事会(FRB)はその前の週に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、バイデン政権の推進するインフレ抑止を後押しする一段の金融引き締めに踏み切ったばかり。具体的にはFFレート誘導目標レンジを0.75-1.00%に0.50pt引き上げ、6-8月は475億ドル、9月以降は950億ドルのペースで保有資産を縮小します。この決定は、当面のドル買いを支える要因となりました。
利上げ幅を0.50ptとする強い引き締めは22年ぶりのこと。一方、パウエル議長はFOMC後の記者会見で今後0.75ptの利上げ幅への拡大には慎重な姿勢を示しました。ただ、市場は「経済指標が堅調なら引き上げざるを得ない」(短期筋)と指摘。当局者のなかにはタカ派的な主張が目立ち、6月14-15日のFOMCに向けインフレや雇用の関連指標が堅調なら引き締め加速への思惑が再燃し、それを織り込む展開が予想されます。
一方、他の主要中銀の政策姿勢にも変化がみられます。最近では欧州中銀(ECB)当局者が早ければ7月の利上げの可能性に言及し、早期引き締めへの思惑が高まってきています。ただ、ユーロ圏の経済指標は弱く、実際には遅れる公算が高いでしょう。また、20日発表の日本の4月消費者物価指数(コア指数)は、日銀が長年目標としてきた前年比+2%前後の上昇が予想されるものの、異次元緩和堅持のため円安基調には変わりがなさそうです。
とはいえ、ドル・円については131円台の定着に何度か失敗し、上値の重さが意識されています。岸田政権は夏の参院選を前に物価上昇の抑止に本腰を入れ、一段の円安へのけん制を強める可能性もあります。また、FRBの金融正常化を背景にNY株式市場は年初来安値を下回る水準に弱含み、リスクオフの円買いも見込まれます。年初来安値から17円超も値を切り上ており、目先の上昇余地は乏しくなってきたと考えてもいいころでしょう。 

 

●東京円、55銭安の1ドル=129円35〜37銭 5/16
週明け16日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前週末(午後5時)比55銭円安・ドル高の1ドル=129円35〜37銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは同50銭円安・ユーロ高の1ユーロ=134円64〜68銭で大方の取引を終えた。
●円、129円台前半 ロンドン外為 5/16
週明け16日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、手掛かり材料難の中、1ドル=129円台前半での小動きとなった。正午現在は129円25〜35銭と、前週末午後4時比05銭の円高・ドル安。 
●NY円、129円前半 5/16
週明け16日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午前8時半現在、前週末比23銭円安ドル高の1ドル=129円39〜49銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0418〜28ドル、134円89〜99銭。米国の長期金利が上昇傾向となったのを手がかりに、日米の金利差の拡大を意識したドル買い円売りが先行した。 

 

●午後3時のドルは小幅高129円前半、米指標で景気減速感を見極め 5/17
午後3時のドル/円は、前日のニューヨーク市場終盤(129.16/19円)に比べて小幅ドル高の129.33/35円で推移している。米長期金利がやや上昇したことや実需の買いで午前は堅調な展開だったが、米中の景気減速懸念が市場のテーマとなりつつある中で指標の結果を見極めたいとのムードが強まり、積極的な取引は手控えられた。
ドルは米金利などをにらみながら仲値にかけての実需の買いもあり一時129.44円まで上昇したが、一巡後は小動きが続いた。時間外取引で米10年債利回りは足元2.92%台近辺と上昇の勢いは鈍っており、ドル/円も方向感を失っている。
市場では、米国の金融政策から米中の景気減速への懸念に目線が移っている。前日発表された中国の経済指標が予想を下回る内容となり、米経済の現状を見定める上できょう発表の米小売売上高は「これまでより注目度が高まっている」(トレイダーズ証券の市場部長・井口喜雄氏)という。
小売売上高が市場予想を下回った場合ドル/円の反応としては、素直に米景気の減速懸念が強まりが意識され米金利低下とドル安が進む可能性があるとの見方がある一方、「リスク回避の円買いと同時にドル買いもみられるのではないか」(ソニーフィナンシャルグループのアナリスト、森本淳太郎氏)として結果的にドル/円の大きな動きにはつながらないとの指摘もあった。
他の通過では豪ドルの上昇が目立った。豪ドル/円は90.61円付近、豪ドル/米ドルは0.7010ドル付近と、いずれも堅調に推移している。
豪中銀は5月の理事会でオフィシャルキャッシュレートを25ベーシスポイント(bp)引き上げて2010年11月以来の利上げを決定したが、議事要旨ではインフレの高まりにより決定よりも大幅な利上げを議論したことを明らかになり、豪ドルが買われた。
トレイダーズ証券の井口氏は「豪中銀は他の先進国に比べて金融政策正常化が遅れていた分、豪ドルの上値余地はまだあるとみている」と指摘。ウクライナ情勢の悪化が続く中で、資源価格の高止まりも豪ドルを下支えするとみている。
●円相場、129円39〜40銭 17日午後5時現在 5/17
17日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=129円39〜40銭と、前日(129円36〜36銭)に比べ03銭の円安・ドル高となった。 
●円、129円台前半 ロンドン外為 5/17
17日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、様子見ムードが広がる中、1ドル=129円台前半でもみ合いとなった。正午現在は129円30〜40銭と、前日午後4時比30銭の円安・ドル高。 
●NY外為〕円、129円台前半(17日午前8時) 5/17
17日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、午前8時現在1ドル=129円27〜37銭と、前日午後5時(129円05〜15銭)比22銭の円安・ドル高で推移している。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0534〜0544ドル(前日午後5時は1.0430〜0440ドル)、対円では同136円24〜34銭(同134円59〜69銭)。 
●「日銀は悪い円安を止めよ!」という主張の決定的弱点 5/17
金融引き締めを急速に進めようとする米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢と、異次元緩和の粘り強い継続によって物価目標2%の持続的・安定的達成をあくまで目指す日銀のハト派姿勢。両者のベクトルの違いを最大の材料にして、為替市場で円安・ドル高が急速に進み、一時131円台前半になった。
為替政策は日本では財務省の管轄であるにもかかわらず、「悪い円安」というコンセプトを前面に出したマスコミ報道の中には、米国に対抗して金融引き締め方向の動きを日銀が早急に見せて円安に歯止めをかけるべきだというニュアンスを帯びるものが少なくなかった。
だがそうしたムードの中でも日銀関係者からは、「為替防衛のために利上げするなら米国並みに上げないと効果はなく、そのペースで日本が利上げしたら財政が破綻し円安が止まらなくなる」という指摘が出ていた(4月16日付 日本経済新聞)。「円安で得をする人たちは黙っている。景気が良くない中で金融を引き締めるなんて、あり得ない」と日銀幹部が苦々しい表情を浮かべたとの報道もあった(4月28日付 共同通信)。
白川方明前総裁時代の日銀は、金融危機が発生した後、為替市場における現在とは正反対の動き、円高・ドル安の急進行に直面して苦闘した。その局面でよく聞かれていたのが、「日銀の金融緩和は小さすぎて遅すぎる(too little, too late)」「金融緩和は出し惜しみせず思い切ってやるべきだ」という類の日銀批判だった。FRBの金融緩和と同じマグニチュードで日銀も動けば円高・ドル安は止まるはずだという趣旨である。
けれども、日銀の利下げ余地には、その当時に支配的だった「金利のゼロ制約」を前提にすれば、物理的に限度がある。政策金利を2008年中に0.5%から2回利下げして0.1%にした後は、「新型オペ」(0.1%固定)による資金供給拡大や、「資産買入等の基金」を兆円単位で段階的に創設・拡大することにより、「金融緩和を大規模に積極的にやっている感」をなんとか醸し出そうと、当時の日銀は努力を重ねていた。
仮に日銀が、円安に歯止めをかける狙いで、マイナス金利の解除や長期金利の許容変動幅拡大(上限引き上げ)など円の市場金利を上昇させる方向で何らかのアクションを取る場合でも、その効果にはどうしても限界があり、市場からは「どうせ動くならもっと大きく」と催促され続けることになる可能性が高い。
それは、為替市場のプレーヤーとの間の不毛な駆け引きへの勝算が立たない突入であり、金融政策の本来のありようを見失った軽率な行動ということに、最終的にはなってしまうだろう。
円高も円安も「良い」「悪い」で論評されすぎ
白川前日銀総裁は時事通信の最近のインタビューで、「円高も円安も『良い』『悪い』で評価する議論には違和感を覚える。為替レートと金融政策を直接結び付けているように感じられるからだ」と述べていた。
政策の前線で市場と戦った人物による、本質をついた発言であり、もっと広くマスコミ報道で取り上げられてもよかったように思う。紙面の論調とかみ合わないのであまり報道が広がらなかったのではないかと、筆者は勘ぐっている。
すでに述べた通り、庶民の生活苦につながる「悪い円安」を日銀はなんとかすべきだという主張は、難点だらけである。筆者の見方を整理すると、以下のようになる。
為替相場のある特定の水準が日本経済にとって「良い」か「悪い」かの二分論的なレッテル貼りは危うい。企業か家計か、企業の中でも大企業か中小企業かなど、経済主体によって、メリットとデメリットのバランスは異なる。
為替相場の変動が問題になるのは通常、その水準ではなく、変化スピードである。緩やかな水準シフトではなく、あまりに急激に変化するようだと、企業の対応がすぐには追い付かない。
相場水準の急変動があった場合、それが一時的か不可逆的かの判断はなかなか難しい。仮に、思惑的売買が加速した一時的な振れだと判断される場合には、通貨当局がG7(主要7カ国)などの合意で認められているスムージングオペ(為替相場の一時的な急変動を落ち着かせるための介入)を実行するケースも状況次第では想定されるものの、基本的には放置しておけばよい。
これに対し、少なくともしばらくは元の相場水準には戻らない、ファンダメンタルズに沿った動きということなら、企業をはじめとする経済主体が新たな為替相場の水準に、徐々に順応していく必要がある。
物価高騰の主因は「資源高」
人々の生活苦につながっている、このところのエネルギーや食品関連の物価高騰の主因は、あくまでも「資源高」である。「円安」はサブの要因にすぎず、主犯ではない。仮に、日銀が金融引き締めに動くことにより円安を止めて円高方向に押し戻すことに成功する場合でも、それにより物価高の主因である「資源高」が消えてなくなるわけではない。なお、マスコミ数社の記者からの「悪い円安」に焦点をあてた取材の際にこの指摘をしてみたが、先方は無反応に近かった。
仮に、日銀が政策金利の引き上げなどでFRBにまともに対抗して円安を止めようとしても、「勝負にならない」可能性が高い。FRBは5月に続いて6月も0.5ポイント幅の追加利上げに動く可能性が高く、いずれ0.75ポイント幅で動くのではとの観測も市場にある。これに対し日銀が思い切ってマイナス金利の解除に動くとしても、0.1ポイント幅にすぎない。
日銀が仮に「悪い円安」対応で金融政策を突然動かすようだと、「物価安定の目標」2%の達成を目指して運営してきていることとの整合性が取れなくなる。「為替相場連動」の金融政策運営に切り替えたのだと市場からみなされれば、今度は円高・ドル安の急進行を通じて追加緩和を市場から促されることになる恐れもある。したがって、足元の局面で「妙なことはしない」のが日銀(およびその信認)にとっては上策だと、筆者はみている。
円安が急速に進行したものの、異次元緩和を続行しようとする日銀の姿勢は、政府・与党から支持され続けている。
岸田文雄首相は4月26日の記者会見で、円安に関連した日銀の政策変更の必要性について質問を受けた際、2%の物価目標達成に向けて「引き続き努力を続けていただくよう政府としては期待している」と返答。同日のテレビ番組出演時には、輸出企業や海外に資産を持つ企業にとって円安はプラスだとの認識も示した。
自民党内で最大の派閥を率いる安倍晋三元首相は4月28日の同派の会合で、「(日銀の)金融緩和政策をしっかり継続しないと日本経済を悪化させかねない」「悪い円安という評論は間違いだ」「円安が進んでいるからといって(その是正に)金融政策を使うことは間違っている。(日銀の)黒田東彦総裁の政策を私は支持したい」と述べた。
上記の安倍発言と重なり合うのが、パンス国際通貨基金(IMF)アジア太平洋副局長が、4月25日の記者会見で語った内容である。
時事通信の報道によると、「日銀の2%目標を大幅に下回っている」日本のインフレ率は、今後数カ月で若干上昇するかもしれないが「一時的にしか続かない」と、パンス氏は予想。円安は輸入物価高を招き一部に打撃を与えるとしつつも、輸出増で若干相殺も見込めると同氏は指摘した。
そして、日本のインフレがまだ抑制的な状況を踏まえれば、日銀は金融緩和を継続することが「きわめて適切」だとの見解が示された。IMFは4月7日の報告書で、日本の22年の経済成長率見通しを引き下げつつ、日銀は長期にわたり超緩和政策を維持すべきだとしていた。
パンス氏は上記の記者会見よりも前に、日本経済新聞のインタビューに応じていた。4月23日夜に電子版で配信された記事によると、同氏は今般の円安について、「根本的な懸念とは考えていない。円安で輸入品の価格が上がり、貿易赤字になったのは事実だ。同時に輸出も増え、双方向に作用している」と指摘。円安の一因となっている金融緩和政策を見直す必要はないかとの問いに対しては、「現在の政策を変更する必要はない。今後数カ月間は燃料費の上昇や昨年の携帯電話料金の引き下げの影響が消えることでインフレ率が一時的に上昇するが、また下がると考える。2%の目標を持続的に超えていくまでは、金融政策の変更は勧めない」と明言した。
日銀の金融政策運営に関連するIMF高官からのアドバイスは、担当者が交代すると内容が変わることもある。その影響力は限られるとみるべきだろう。
これに対し、自民党内で最大の派閥を率いる安倍元首相の意向を、岸田首相が完全に無視することは、党内の政治力学から考えて、きわめて難しいだろう。岸田内閣の「黒子」とされる木原誠官房副長官は英経済紙フィナンシャル・タイムズが3月31日に掲載したインタビューで、「最も重要なのはデフレを終わらせることだ」「いくらか誤解があるかもしれないが、岸田政権の基本政策は引き続きアベノミクスだ」と述べていた(和訳は筆者)。
また、公明党の山口那津男代表は4月30日に神戸市内で街頭演説した際、「米国にあわせて金利を動かせば経済が沈んでしまう」と発言。黒田日銀の方針を擁護した。
最後に、上記の為替・日銀関連の話からは離れてしまうのだが、筆者が気になったニュースを1つご紹介しておきたい。日本のマスコミ報道の「自由度」に関するものである。共同通信や時事通信がパリ発で伝えたものだが、日本の新聞やテレビで大きく取り上げたところはなかったようである。
国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF、本部パリ)は5月3日、22年の世界各国の報道自由度ランキングを発表した。RSFは今回、順位決定の方法を変更し、政治や経済、社会・文化の各影響、法的枠組み、安全性の5指標で判定することにした。180カ国・地域のうち、日本は昨年から順位を4つ下げて71位。首位はノルウェーで6年連続。2位はデンマーク、3位はスウェーデン。ウクライナ侵攻に絡んで報道規制を強化したロシアは155位に後退。中国は175位。最下位は北朝鮮だった。
報道に大企業の影響力が強まる日本
「日本についてRSFは、大企業の影響力が強まり、記者や編集部が都合の悪い情報を報じない『自己検閲』をするようになっている国の例として韓国やオーストラリアとともに言及した」(共同通信)
SNS(交流サイト)上で拡散されるフェイクニュースなどに対抗し、人々に真実をしっかり伝えていく上で、既存のマスコミ媒体の役割と重要度は非常に大きい。その自由度が低下するというのは実に由々しき事態である。
まだ大学生の頃から新聞ウオッチをしている筆者は、経済に関する記事を含めて、クオリティーが最近下がっているのではないかと感じさせられることもしばしばある。マスコミ報道に接する際には、何社かの記事内容を比べてみるなどしながら、自分で考える「批判的観察眼・思考力」を身につける必要があるように思う。
●「悪い円安」論は正しいのか? 海外事業ではプラスも 5/17
外国為替市場で著しく円安・ドル高が進んでいるが、日本株相場は上値が重い。かつては円安・株高はセットで捉えられていたが、足元ではその法則は当てはまらない。なぜ円安になっても日本株が買われないのか?  その理由については諸説あるようだが、一つには今般の円安が日本経済にとってマイナスだから、というものがある。いわゆる「悪い円安」論だ。その背景を日本経済新聞電子版の記事はこう解説している。
日本では中小企業が企業全体の99.7%、従業員数の69%を占める。その売上高に占める輸出比率は約3%。日銀の黒田東彦総裁が『円安は日本経済にプラス』と言っても理解されにくく、『悪い円安』論が勢いづくゆえんだ。
それはもちろん、事実である。しかし我々が問題にしているのは上場企業の株価であって、中小企業を含めた日本企業の総論ではない。「日経平均株式会社」は「日本株式会社」とは違うのだ。単純化した図式を言えば、「グローバル vs.ローカル」ということである。
上場企業は国内景気低迷下も、グローバルで稼げる力あり
ここで思い出されるのが14年度の我が国の経済状況だ。14年度の実質GDP(国内総生産)は前年比1.0%減と、世界金融危機の余波が残った09年度以来5年ぶりのマイナスとなった。期初に実施された消費増税が大きく響いたためだ。年度後半からは持ち直しの動きも出たが、前半の大幅減を埋められなかった。
ところが、である。15年3月期の上場企業の経常利益は7年ぶりに最高を更新した。コスト構造の改善も寄与したが、円安を追い風に海外事業の収益が伸びたのだ。日本の上場企業は国内景気が低迷してもグローバルで稼いで利益を上げられる。そのことを証明した象徴的な年となった。今起きていることはその延長線上にある。円安は日本経済全体にとってはデメリットの方が大きいかもしれないが、上場企業の業績に限って言えば、まだメリットの方が大きい。
長きにわたって日本の輸出産業を苦しめてきた円高によって、日本の産業構造が変わったという事実はある。各社は現地生産体制を構築するなど、円高対策を施してきた。それゆえ、円安になっても日本からの輸出が伸びないのは当然である。
しかし輸出=海外事業ではない。日本のグローバル企業は、現地法人によるビジネスや海外企業への出資など、様々な形態の海外事業を開拓してきた。日経平均構成銘柄の海外売上高比率は50%を超えている(開示がある企業の単純平均)。この海外での収益は円安によってかさ上げされる。円安は当然のように上場企業の業績にプラスの効果を与えるのだ。
為替感応度の高さは銘柄選択の重要な要素に
下のグラフは、「為替感応度」の大きさに従って5つのグループに分けた銘柄群の、過去3カ月の株価パフォーマンスを見たものである。これによると最も為替感応度の高い第1グループのリターンはプラス6.9%、反対に為替感応度の最も低い第5グループのリターンはマイナス6.5%と、わずか3カ月で約13%も差が生じている。これが示すことは、為替感応度が銘柄選択の有効なファクターとして機能しているということであり、端的に言えば、円安は株式市場でポジティブに評価されているということに他ならない。
以前、円高の時代は円高悲観論がまん延していた。今度は円安になったらなったで、「悪い円安」論だ。メディアというものは、常にネガティブ思考である。しかし、物事には常に2つの側面がある。これは為替レートでも同じこと。円高には悪い面もあれば良い面もあるように、円安にも両面ある。足元の円安は「悪い円安」と否定的な面ばかりが強調されるが、企業業績に与えるプラスの面をもっと評価すべきだろう。事実、株式市場は既にそうしているのだから。
ここまで述べてきたことは全体論である。しかし株価には癖のようなものがあって、為替に敏感な銘柄とそうでない銘柄とがある。外需産業に属しているからといって円安で株価が上がるというものではないことに注意が必要だ。実際にその銘柄が為替にどれだけの反応をしているかを日々チェックすることが肝要だろう。 

 

●円安の潮流変わらず、増える長期的な押し下げ要因 5/18
ドル/円相場は5月9日に131円35銭まで上昇し、2002年以来の高値を更新した。投機筋の円売りが膨らんだほか、日本勢のヘッジ付き外債処分に伴う円売りも相場を押し上げた可能性が高い。
例えば、日本勢は3月から4月にかけて中長期の外債をグロスで約81兆円も処分したが、低く見積もってもその半分は円買いのヘッジ為替を伴っていたとみられる。10年米国債(価格)で言えば、下げ幅は年初来1割を超えており、売却した外債にドル売り・円買いのヘッジ為替を充当しても数兆円が未消化のまま残った計算だ。厳格なひも付けではないにせよ、その解消には同程度のドル買い・円売りを要したはずで、ドル/円急騰の一翼を担ったとみられる。
翻って足元では、外債の処分も一巡したとみられ、市場が荒れ模様となれば円の買い戻しも入りやすい。ドル/円の騰勢はしばらく影を潜め、短期的には125円程度までの押し目があっても不思議ではない。
インフレは長期化のおそれ
一方、内外の金融政策格差は変わりそうになく、円安期待は根強く残ろう。
また、フィンランドやスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請を決定したことで、ロシアの態度硬化は必至とみられ、ウクライナとの戦争終結も見通せない。
このため、対ロシアの経済制裁も相まって、輸入元をロシアやウクライナに依存する幅広い資源やコモディティの供給制約が世界的なインフレ圧力を助長する構図は不変だ。
主要国では中国など一部を除き、コロナとの共存へ向いつつある。経済活動の活性化に伴い、幅広いモノやサービスへの需要も高まっていこう。4月の米消費者物価指数をみても、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸びが前月から加速した。
昨年を振り返ると、夏場にかけてインフレ圧力が和らいだものの、9月以降、米国を襲ったハリケーンによる供給制約と冬場を迎える欧州の暖房需要などから、再び幅広い資源価格が高騰。米連邦準備理事会(FRB)がタカ派へ傾斜する伏線となった。
世界的にみれば、金融政策の正常化や引き締めは今年末まで続くとみるのが妥当だ。市場では、欧州中央銀行(ECB)についても年央に利上げに着手し、マイナス0.50%の中銀預金金利を年末までに0.25%まで引き上げるとみている。
ユーロ/円急騰の場面も
加えてECBの資産買い入れも7─9月期中に終わる見込みで、イタリア国債など相対的に格付けの低い債券が軟調に推移しそうだ。実際、今年に入ってドイツ国債とイタリア国債の利回り格差は拡大傾向にある。
利上げの過程で、日本勢からみたユーロ/円のヘッジコストも、これまでのマイナス(受取り)からプラス(払い)へ転換する見通しだ。日本勢が欧州債の圧縮に動くと、オーバーヘッジとなった未消化のユーロ売り・円買いを解消するためのユーロ買い/円売りがユーロ/円を押し上げる場面も見込まれる。ドル/円の上昇圧力ともなるため、一定の留意が必要だ。
日銀は動かず、円安容認か
こうした中、日本でも4月分の生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数(コアコアCPI)の伸びが、前年比でプラス圏に浮上する見込みだ。ただ、欧米に比べてインフレの程度は鈍く、失業率もパンデミック前の水準まで下がっていない。金融政策の転換を時期尚早とする黒田東彦日銀総裁の主張は妥当と言え、在任期間中に緩和スタンスが変わる可能性は低い。
ただ、こうしたスタンスは、世界的にみればやはり特異と映る。過去最大規模に膨らんだ輸入総額と並んで、市場の円安期待を刺激し続けるだろう。
経験則は一時棚上げ
経験則に従えば、購買力平価(昨年末ドル96円51銭、国際通貨基金)から3割を超えるかい離を抱えた現在のドル/円は、既にオーバーシュートの領域だ。本来なら続伸はおろかその維持も困難であり、反落リスクを警戒すべきだ。
しかし、パンデミックや紛争、インフレと過去数十年間に起こらなかったことが、同時進行している上に長引く見通しだ。こうした状況下では、経験則もその妥当性を問われる。
しかも、日本でさえインフレに見舞われており、市場のインフレ期待も上昇傾向にある。実質金利の低下が、引き続き円安圧力となりかねない。
このため、調整局面を経て投機筋の円売りポジションが軽くなった後、再び騰勢を回復。年末にかけて2002年の高値135円15銭付近を上抜けしていく可能性が引き続き高いように思われる。
介入はあるか
この流れが反転する要因として協調(ドル売り)介入が挙げられる。実際、インフレを助長するユーロ安に対し、フランス中銀総裁などECB高官も苦言を呈している。参院選を前に、日本でもインフレを懸念する「悪い円安論」が根強い。人民元も対ドルで6.8元付近まで下落しており、インフレ圧力がじわりと高まってきた。仮に7元まで続落すれば、トランプ大統領(当時)が中国を為替操作国に認定した2019年以来だ。
中間選挙を控える米国でも、ドル高に対して何らかの政治的配慮が働くかもしれない。一段とドル高が進んだ場合、一定の歯止めをかけようとする国際的な合意が形成されやすい環境とは言える。各国高官から為替相場の動きに関して、「懸念(Concern)が共有されている」といったフレーズが出ないか、要注意だ。
もっとも、現在の動きは各国・地域の経済情勢と金融政策を映じたものであり、合理的だ。仮に通貨安を嫌うのであれば、金融政策の見直しが必要であり、それを無視したまま、協調介入が行われても、相場の潮流を変えることは難しいだろう。
長期的な円安材料
この間、国際通貨基金(IMF)からは、特別引き出し権(SDR)を構成する通貨バスケット比率の見直しが発表されている。向こう5年間の比率は、ドル43.38%(プラス1.65%)、ユーロ30.93%(マイナス1.62%)、円7.59%(マイナス0.74%)、ポンド7.44%(マイナス0.65%)、人民元12.28%(プラス1.36%)とされた。(カッコ内は見直し前との比較)
SDRの最大の狙いは、複数の通貨を参照することで、特定通貨の影響による価値の変動を抑制することだ。各国の中央銀行も、自身の外貨準備の通貨別アロケーションを検討する上で、SDRのバスケット比率を考慮しよう。
その点、デフレ脱却のためなら通貨安もいとわない日銀に対し、中国人民銀行は政策目標に経済成長を促すための「通貨価値の安定維持」を据える。
昨年末の世界の外貨準備(Allocated Reserves)に占める人民元の割合は約2.8%と円の半分だが、それでも着実に上昇しつつある。仮に6月末に発表される今年3月末のデータで両者が接近していれば、円と元の将来的な逆転も現実味を増す。自ずと相場にも反映されていくのではないか。  
●ドル円見通し 5月12日夜安値からの底上げ基調続くが130円手前で足踏み 5/18
ドル円は5月17日夜に129.77円をつけて5月16日に二度つけた129.60円台序盤から戻り高値を切り上げた。17日深夜に129.06円まで下げたものの129円割れを回避し16日安値128.68円から17日午前安値128.81円へと底上げしてきた流れを維持した。
5月17日はNYダウが米小売統計堅調と中国の感染抑制規制の緩和見込み等から3連騰となり、株買い債券売りで米長期債利回りが上昇したが、ドルストレートではリスクオンを優先してユーロやポンドなどが上昇したためにドル円はクロス円全般の上昇による円安と米長期債利回り反騰による押し上げで確りした印象だ。
米パウエル議長、積極的利上げ姿勢を強調
米連銀のパウエル議長は17日に、「歴史的な高インフレが明確に低下しなければ一層積極的な利上げに踏み切る可能性がある」「インフレ抑制が圧倒的に必要だ」と述べた。5月3-4日開催の前回FOMCにおいてパウエル議長は6月と7月のFOMCでも0.50%利上げを検討する姿勢を強調したがインフレの高止まりと深刻化への警戒感から積極利上げ姿勢は堅持されているようだ。
先週発表された米4月CPIは前年同月比8.3%上昇となり伸びは鈍化したが40年ぶりの高水準にあり、ウクライナ戦争とロシア制裁が今後に及ぼす影響次第ではさらに深刻化する可能性もあるところだ。支持率が低迷しているバイデン政権にとってもインフレ抑制が最重要であり、米連銀も0.75%利上げのような超大幅利上げにはならないとしても0.50%ずつの利上げがしばらく続く可能性が高い状況だ。
米シカゴ連銀のエバンズ総裁も17日に「インフレ率を2%の目標に戻すには政策金利が中立水準をいくらか上回る必要がある」とし、中立水準の「2.25〜2.50%へ迅速に戻すことを支持する」と述べた。米セントルイス連銀のブラード総裁も17日に「米経済は今後少なくとも18か月はトレンドを上回るペースで拡大を続け消費支出も堅調に推移する」とし、「今後数回のFOMCで0.50%の利上げを続けることはインフレ抑制に向けて良好な計画だ」とした。
●ロンドン外為 円、129円台前半 5/18
18日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、材料出尽くし感から積極的な取引が手控えられ、1ドル=129円台前半での小動きとなった。正午現在は129円10〜20銭と、前日午後4時(129円25〜35銭)比15銭の円高・ドル安。
4月の米小売売上高やパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言を前日に消化したことで、手掛かり材料に欠け、方向感の乏しい値動きが続いた。
対ユーロは1ユーロ=135円80〜90銭(前日午後4時は136円15〜25銭)と、35銭の円高・ユーロ安。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0515〜0525ドル(1.0530〜0540ドル)。
ポンドは1ポンド=1.2395〜2405ドル(1.2465〜2475ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9960〜9970フラン(0.9925〜9935フラン)。
●NY外為 円、129円台前半 5/18
18日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、午前8時現在1ドル=129円06〜16銭と、前日午後5時(129円29〜39銭)比23銭の円高・ドル安で推移している。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0506〜0516ドル(前日午後5時は1.0545〜0555ドル)、対円では同135円71〜81銭(同136円37〜47銭)。
●円安の潮流変わらず、増える長期的な押し下げ要因 5/18
ドル/円相場は5月9日に131円35銭まで上昇し、2002年以来の高値を更新した。投機筋の円売りが膨らんだほか、日本勢のヘッジ付き外債処分に伴う円売りも相場を押し上げた可能性が高い。
例えば、日本勢は3月から4月にかけて中長期の外債をグロスで約81兆円も処分したが、低く見積もってもその半分は円買いのヘッジ為替を伴っていたとみられる。10年米国債(価格)で言えば、下げ幅は年初来1割を超えており、売却した外債にドル売り・円買いのヘッジ為替を充当しても数兆円が未消化のまま残った計算だ。厳格なひも付けではないにせよ、その解消には同程度のドル買い・円売りを要したはずで、ドル/円急騰の一翼を担ったとみられる。
翻って足元では、外債の処分も一巡したとみられ、市場が荒れ模様となれば円の買い戻しも入りやすい。ドル/円の騰勢はしばらく影を潜め、短期的には125円程度までの押し目があっても不思議ではない。
インフレは長期化のおそれ
一方、内外の金融政策格差は変わりそうになく、円安期待は根強く残ろう。また、フィンランドやスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請を決定したことで、ロシアの態度硬化は必至とみられ、ウクライナとの戦争終結も見通せない。このため、対ロシアの経済制裁も相まって、輸入元をロシアやウクライナに依存する幅広い資源やコモディティの供給制約が世界的なインフレ圧力を助長する構図は不変だ。主要国では中国など一部を除き、コロナとの共存へ向いつつある。経済活動の活性化に伴い、幅広いモノやサービスへの需要も高まっていこう。4月の米消費者物価指数をみても、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸びが前月から加速した。昨年を振り返ると、夏場にかけてインフレ圧力が和らいだものの、9月以降、米国を襲ったハリケーンによる供給制約と冬場を迎える欧州の暖房需要などから、再び幅広い資源価格が高騰。米連邦準備理事会(FRB)がタカ派へ傾斜する伏線となった。世界的にみれば、金融政策の正常化や引き締めは今年末まで続くとみるのが妥当だ。市場では、欧州中央銀行(ECB)についても年央に利上げに着手し、マイナス0.50%の中銀預金金利を年末までに0.25%まで引き上げるとみている。
ユーロ/円急騰の場面も
加えてECBの資産買い入れも7─9月期中に終わる見込みで、イタリア国債など相対的に格付けの低い債券が軟調に推移しそうだ。実際、今年に入ってドイツ国債とイタリア国債の利回り格差は拡大傾向にある。利上げの過程で、日本勢からみたユーロ/円のヘッジコストも、これまでのマイナス(受取り)からプラス(払い)へ転換する見通しだ。日本勢が欧州債の圧縮に動くと、オーバーヘッジとなった未消化のユーロ売り・円買いを解消するためのユーロ買い/円売りがユーロ/円を押し上げる場面も見込まれる。ドル/円の上昇圧力ともなるため、一定の留意が必要だ。
日銀は動かず、円安容認か
こうした中、日本でも4月分の生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数(コアコアCPI)の伸びが、前年比でプラス圏に浮上する見込みだ。ただ、欧米に比べてインフレの程度は鈍く、失業率もパンデミック前の水準まで下がっていない。金融政策の転換を時期尚早とする黒田東彦日銀総裁の主張は妥当と言え、在任期間中に緩和スタンスが変わる可能性は低い。ただ、こうしたスタンスは、世界的にみればやはり特異と映る。過去最大規模に膨らんだ輸入総額と並んで、市場の円安期待を刺激し続けるだろう。
経験則は一時棚上げ
経験則に従えば、購買力平価(昨年末ドル96円51銭、国際通貨基金)から3割を超えるかい離を抱えた現在のドル/円は、既にオーバーシュートの領域だ。本来なら続伸はおろかその維持も困難であり、反落リスクを警戒すべきだ。しかし、パンデミックや紛争、インフレと過去数十年間に起こらなかったことが、同時進行している上に長引く見通しだ。こうした状況下では、経験則もその妥当性を問われる。しかも、日本でさえインフレに見舞われており、市場のインフレ期待も上昇傾向にある。実質金利の低下が、引き続き円安圧力となりかねない。このため、調整局面を経て投機筋の円売りポジションが軽くなった後、再び騰勢を回復。年末にかけて2002年の高値135円15銭付近を上抜けしていく可能性が引き続き高いように思われる。
介入はあるか
この流れが反転する要因として協調(ドル売り)介入が挙げられる。実際、インフレを助長するユーロ安に対し、フランス中銀総裁などECB高官も苦言を呈している。参院選を前に、日本でもインフレを懸念する「悪い円安論」が根強い。人民元も対ドルで6.8元付近まで下落しており、インフレ圧力がじわりと高まってきた。仮に7元まで続落すれば、トランプ大統領(当時)が中国を為替操作国に認定した2019年以来だ。中間選挙を控える米国でも、ドル高に対して何らかの政治的配慮が働くかもしれない。一段とドル高が進んだ場合、一定の歯止めをかけようとする国際的な合意が形成されやすい環境とは言える。各国高官から為替相場の動きに関して、「懸念(Concern)が共有されている」といったフレーズが出ないか、要注意だ。もっとも、現在の動きは各国・地域の経済情勢と金融政策を映じたものであり、合理的だ。仮に通貨安を嫌うのであれば、金融政策の見直しが必要であり、それを無視したまま、協調介入が行われても、相場の潮流を変えることは難しいだろう。
長期的な円安材料
この間、国際通貨基金(IMF)からは、特別引き出し権(SDR)を構成する通貨バスケット比率の見直しが発表されている。向こう5年間の比率は、ドル43.38%(プラス1.65%)、ユーロ30.93%(マイナス1.62%)、円7.59%(マイナス0.74%)、ポンド7.44%(マイナス0.65%)、人民元12.28%(プラス1.36%)とされた(カッコ内は見直し前との比較)。SDRの最大の狙いは、複数の通貨を参照することで、特定通貨の影響による価値の変動を抑制することだ。各国の中央銀行も、自身の外貨準備の通貨別アロケーションを検討する上で、SDRのバスケット比率を考慮しよう。その点、デフレ脱却のためなら通貨安もいとわない日銀に対し、中国人民銀行は政策目標に経済成長を促すための「通貨価値の安定維持」を据える。昨年末の世界の外貨準備(Allocated Reserves)に占める人民元の割合は約2.8%と円の半分だが、それでも着実に上昇しつつある。仮に6月末に発表される今年3月末のデータで両者が接近していれば、円と元の将来的な逆転も現実味を増す。自ずと相場にも反映されていくのではないか。 

 

●円相場、128円22〜23銭 5/19
19日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=128円22〜23銭と、前日(129円32〜33銭)に比べ1円10銭の円高・ドル安となった。
19日の東京株式市場は、前日に米国株が急落した流れを受けて売りが広がり、日経平均株価は5営業日ぶりに大幅反落した。午前には下落幅が700円を超える場面もあった。終値は前日比508円36銭安の2万6402円84銭。前日の米国市場では、米小売り大手の決算が市場予想を下回り、インフレが企業業績に及ぼす影響への懸念が強まった。東京市場でも投資家心理が悪化し、小売業や電気機器をはじめ幅広い業種、銘柄が値下がりした。ただ、売りが一巡した後は値頃感から買いも入り、午後には下げ幅が縮小した。
●ロンドン外為 円、127円台後半 5/19
19日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米長期金利の低下や株安を受けて円買い・ドル売りが優勢となり、1ドル=127円台後半に上昇した。正午現在は127円65〜75銭と、前日午後4時(128円40〜50銭)比75銭の円高・ドル安。
海外市場の流れを引き継ぎ、128円台半ばで始まった後、じりじりと値上がりした。127円台半ばに近づくと上昇は一服し、もみ合いとなった。
対ユーロは1ユーロ=134円45〜55銭(前日午後4時は135円00〜10銭)と、55銭の円高・ユーロ安。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0525〜0535ドル(1.0505〜0515ドル)。
ポンドは1ポンド=1.2420〜2430ドル(1.2405〜2415ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9760〜9770フラン(0.9890〜9900フラン)。
●ニューヨーク外国為替市場概況・19日 ユーロドル、反発 5/19
19日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは反発。終値は1.0588ドルと前営業日NY終値(1.0464ドル)と比べて0.0124ドル程度のユーロ高水準だった。欧州時間に公表された欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨(4月14日分)を受けて、ECBが7月にも利上げに踏み切るとの見方が強まると全般ユーロ買いが先行。5月米フィラデルフィア連銀製造業景気指数や4月米景気先行指標総合指数など、この日発表の米経済指標が軒並み予想より弱い内容だったことが分かるとドル売りも活発化した。前日の高値1.0564ドルを上抜けて、3時前には一時1.0607ドルまで上値を伸ばした。
なお、主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時102.66まで低下した。
ドル円は続落。終値は127.79円と前営業日NY終値(128.23円)と比べて44銭程度のドル安水準だった。前日の米国株相場の急落や本日の欧州株相場の下落を背景に、リスク回避の円買いが先行。米10年債利回りが一時2.77%台まで低下したこともドル売りを促し、22時30分前に一時127.03円と4月27日以来の安値を付けた。予想を下回る5月米フィリー指数なども相場の重し。
ただ、売り一巡後は下げ渋る展開に。節目の127.00円や4月27日の安値126.95円が目先サポートとして意識されたほか、米10年債利回りが低下幅を縮めたことが相場を下支えし、127.84円付近まで持ち直した。
ユーロ円は反発。終値は135.30円と前営業日NY終値(134.17円)と比べて1円13銭程度のユーロ高水準。ECB理事会議事要旨を手掛かりにユーロ買いが強まった欧州市場の流れがNY市場に入っても継続した。下落して始まった米国株相場が一時プラス圏に浮上するなど底堅く推移すると、リスク回避の巻き戻しが進み一時135.43円付近まで値を上げた。

 

●1ドル130円超は「恩恵的円安」 日本経済に“神風”が吹く日 5/20
2022年4月28日、1ドル=130円台と20年ぶりの円安水準を記録。長年のデフレ下で円高は敵視されてきたが、今度は「悪い円安」ともいわれている。
結局、円安は日本にとって“天国”か“地獄”か。 今回、本誌は“天国派”を掲げる気鋭のエコノミストに尋ねた。
金融緩和を続ける日本だけが経済成長する
「今、メディアでは『円安が国を滅ぼす』といった議論が盛んですが、それは的外れな主張。経済効果を考えれば、円安は国を滅ぼすどころか、国益そのものです」
こう話すのは、元内閣官房参与の高橋洋一氏だ。
日銀の黒田東彦総裁は、円安について「現状ではプラス面のほうが大きい」と発言している。対して、日本商工会議所の三村明夫会頭は「大きな経営上の問題になる」と懸念を示す。
「こうした見解の違いは、それぞれどこに着目するかによって生じるのです。円安は輸出企業にとってはメリットですが、輸入企業にとってはデメリットとなるのは事実です。中小企業の場合、大企業と比べて輸出が少ない半面、輸入が多く、円安によるデメリットを受けやすい。三村会頭の意見は、中小企業の声を代弁しているのです」(高橋氏)
だが、日本経済全体を見れば、円安のメリットのほうがはるかに大きいという。
「黒田総裁の発言は、日本経済全体を考慮したものです。輸出企業は大企業が多く、いずれも世界市場で伍していけるエクセレント企業です。エクセレント企業に恩恵をもたらす円安のほうがインパクトは大きく、日本経済全体のGDPを押し上げる効果があるのです。もちろん、GDPが増えれば雇用拡大に繋がり、労働者にとってもメリットとなります」
IMFの世界経済見通しによれば、2022年の経済成長率は、欧米は2021年より低くなるが、日本の経済成長率は高くなるとされている。
「これは日本だけが金融緩和を続け、円安を維持して経済成長するとともに、世界経済のマイナスを補填することを示しています。経済成長を促す円安を是正しろという声が海外から上がるのならまだしも、国内からそうした声が上がるのは、明らかに『国益』に反する。驚くべきことです」(同前)
日本産業大復活で賃金もアップ
武者リサーチ代表の武者陵司氏はこう話す。
「長期円安の時代が到来しました。円安の進行は不可逆的なもので、『円安短命論』も『悪い円安論』も、早晩消え去っていくはずです。円安は企業業績の向上をもたらし、日本の産業競争力を強めていく。円が弱くなれば、輸出が増え輸入が減る。海外移転工場の国内回帰、輸入品の国内代替も起こる。訪日観光客も増える。日本国内への投資と生産が増え、所得が増える。賃金も上昇するはずです。円安は、日本産業復活の“神風”となるでしょう」
過去の超円高時代には、その逆のことが起きた。日本企業は海外に工場を移し、国内は安い中国製品に浸食された。
「ひと言でいうと、円高は日本の競争力を徹底的に奪った。経済活動は価格競争力がすべてですが、円高によって価格競争力を失ったために、日本製品は世界で戦えず、貿易黒字はあっという間に消失しました。かつて1ドル=360円だったのが、一時は80円と4倍以上の円高になったわけですが、こんなに通貨が強くなった国は日本以外にありません」(武者氏)
それは、アメリカが日本の競争力を奪うための「懲罰的円高」だったという。
「とくにリーマンショック後の2008年〜2012年の超円高は、すでに困難な状況にあった半導体や液晶パネル、テレビ、携帯電話、PCなどのハイテク産業を壊滅させたのです」
それが今、「恩恵的円安」が訪れた。背景には、アメリカの政策転換があるという。
「円安の底流には、米国経済の突出した強さ、そして米中の対立がある。アメリカは中国を排除したサプライチェーン構築のために、日本の産業競争力を復活させることが必須だと考えているのです。つまり、その推進力となる円安が、アメリカの国益と直結したのです」(同前)
デフレ進行を防ぐために黒田総裁の判断は正しい
20年ぶりの円安水準でも、日銀の黒田総裁は金融引き締めによる金利の引き上げを否定している。円安の容認だ。
経済アナリストの森永卓郎氏が語る。
「その理由は、じつは日本は長期のデフレから脱却していないということです。輸入品の価格が上がっているので、インフレに見えるだけなんです。デフレを抑えるためには金融緩和政策を続けなければならないというのが、黒田総裁の判断です。ここで金利を上げたら、一気に景気が失速してしまうでしょう。正しい決断だと思います」
円安はモノづくり日本の復活にも繋がるという。
「円安は短期的には物価高というデメリットもありますが、日本の工場をもう一度再生するチャンスでもあります。かつて日本の平均賃金は先進国でもトップクラスでしたが、現在は韓国を下回った。これは言い換えれば、日本でいいモノを安く作れるようになったということです。円安を維持できれば、すごい勢いで製造拠点が日本に戻ってくるでしょう。それにより、雇用も復活します」(同前)
懸念されるのは、岸田文雄首相が打ち出そうとしている円安回避策だという。
「黒田総裁は2023年4月で任期が切れますが、岸田首相は再任しないでしょう。そして円安を回避するために財政、金融引き締めをやる。結果、金利がハネ上がって物価が下がっていくわけです。高金利のもとでデフレが起こるわけですが、そうなると景気は冷え込み、かつて経験したことのない景気悪化が訪れると思います。それは、昭和恐慌の二の舞となるかもしれません」
昭和恐慌で、当時の濱口雄幸内閣は、金本位制に復帰するため円高に誘導する政策を進めようとして金融引き締めをおこない、それが日本経済を破局に導いた。
「典型的な通貨政策の弊害をもたらしました。岸田首相は同じ轍を踏む危険性が高い。円安のデメリットも、“岸田恐慌”のインパクトとは比較にならないでしょう」 
●外為:1ドル128円12銭前後とドル高・円安で推移 5/20
20日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=128円12銭前後と、午後5時時点に比べ20銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=135円69銭前後と42銭のユーロ高・円安で推移している。
●ロンドン外為20日 ユーロ、対ドルで下落 持ち高調整の売り 5/20
20日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=1.0550〜60ドルと前日の同時点に比べ0.0030ドルのユーロ安・ドル高で推移している。前日に増えたユーロ買い・ドル売りの持ち高を調整する目的のユーロ売り・ドル買いが優勢となっている。前日は欧州中央銀行(ECB)が公表した4月の理事会の議事要旨から、7月にも利上げするとの見方が強まっていた。
円は対ユーロで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=135円10〜20銭と、前日の同時点に比べ30銭の円安・ユーロ高で推移している。
英ポンドは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.2460〜70ドルと前日の同時点に比べ0.0020ドルのポンド安・ドル高で推移している。20日に発表の5月の英消費者信頼感指数が過去最低水準に低下したのを受けたポンド売り・ドル買いが優勢となっている。
●NY円、127円後半 5/20
20日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比09銭円安ドル高の1ドル=127円87〜97銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0563〜73ドル、135円04〜14銭。
日銀の黒田東彦総裁が先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で金融緩和継続の姿勢を改めて示したことから、日米の金融政策の違いが意識されて円売りドル買いが先行した。その後、米長期金利が低下したことから円を買い戻す動きも出た。
●米ドル/円上昇は続くのか?調整が大きくなるシナリオとは 5/20
米ドル/円相場は年初の1ドル115円台から一時、15円もの円安ドル高進行となったことで、市場には140〜150円まで円安ドル高が進むとの展望も出てきました。
米国が利上げサイクルに入った一方、日本は金融緩和継続のスタンスを維持していることで日米金利差が拡大していることが米ドル/円相場上昇を牽引していますが、このシナリオに死角はないのでしょうか。
株が下がると米金利も下がる?
米連邦準備制度理事会(FRB)が3月に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)から利上げを開始しました。5月には0.5%もの利上げを実施、6月と7月にも0.5%の利上げが見込まれています。
政策金利の急激な引上げを織り込む形で米国債市場でも利回りが上昇してきましたが、長期金利が3%台に乗せると上昇の上値が重くなってきました。あまりの金利上昇のスピードに耐えかねて米国株が下落基調を強めると、米国株から債券市場へと資金がシフト、結果金利が押し下げられるという事象につながります。
経済が安定し、市場がリスクを取れる環境で債券から株へと資金がシフトすることで健全で安定的な金利上昇サイクルが形成されますが、足下ではウォルマートやターゲットなど小売業決算の悪化などから景気の先行きへの不安=リセッション警戒が高まりつつあります。
暗号資産市場の急落などリスク資産の下落も相まって米国株市場の下落色が強まっており、金利が上がりにくくなってしまいました。これが、ここからの米ドル/円上昇の上値を抑えてしまう可能性があります。
サプライズとショックが残されている日銀の方針転換
4月の日銀の金融政策決定会合で、黒田総裁は「連続指値オペ」にて日本の長期債利回りの0.25%以上の上昇を許さないスタンスを改めて明確に示しました。年初からの急激な円安進行で金融政策の修正を予測する向きもありましたが、それを一蹴したことでその後更に円安が進む展開となりました。
これで2023年4月の黒田総裁の任期までは日銀の緩和政策は続く、というのが市場のコンセンサスとなりました。もし、日銀の政策が豹変することがあれば今のマーケットには大きなサプライズとなります。黒田総裁が政策を明確に転換しなくても、任期が後1年も残されていないということもリスクと考えられます。
今週5月16日、某金融ベンダーが前日銀副総裁である中曽宏氏のインタビュー記事を掲載しました。
そこで、中曽氏は「アベノミクスについて、経済再生の処方箋としては正しいが“特に第一の矢の金融政策に相当負担がかかった”と指摘。潜在成長力を少しでも引き上げることができれば、賃金が上昇して家計の値上げ許容度が高まり、物価や金利の上昇で“金融政策が正常化できる”」と金融政策の正常化の可能性に言及していたことで、米ドル/円相場がこれに反応し円高に触れるという局面がありました。
この記事では「市場では、中曽会長が次期日銀総裁の有力候補の1人とみられている」としており、日銀総裁後任人事で名前が上がっている人物の金融政策が引き締めに転じる可能性があるという市場の思惑につながる可能性を感じさせるものであったかと思います。
今後、日銀総裁の後任人事を巡る報道や、その人物が掲げる金融政策がどのようなものか、といった視点が市場を動かす材料となる局面が増えてくるかもしれません。もし黒田日銀総裁の金融緩和路線が継続されないと市場が判断するようなことがあれば、米ドル/円相場は大きな調整を強いられる可能性もありそうです。
●資源高も相まって多くの企業が「悪い円安」を意識 5/20
2022年4月28日、円相場は対ドルで一時130円台まで下落し、02年4月以来20年ぶりとなる歴史的な円安水準に突入した。ドル円相場は3月初めまで1ドル=110円台半ばの水準で推移していたが、その後、わずか2カ月足らずで10%を超える急速な円安が発生した格好だ。
一般的に、円安は輸出数量の増加を通じて日本経済にプラスの影響をもたらすと説明される。しかし、現在はそうした円安メリットが表れにくい状況だ。これまでに日本の製造業企業は海外への生産移転を進めており、円安が輸出増加に結び付きにくくなっているほか、足元では半導体などで供給制約が発生していることから、自動車などの生産を大幅に拡大することが難しい。インバウンド観光客についても、コロナ禍で入国制限が敷かれており、当面の間は本格的な需要回復が見込めない。
一方、円安のデメリットは輸入コストの増大を通じて顕在化している。円安が資源高と同時進行することで、輸入物価の上昇を増幅させる構図だ。実際には、22年1〜3月期時点で円安の影響は輸入物価上昇率の4分の1程度であり、輸入物価上昇の主因は資源高であるが、企業から見れば原材料コストの上昇要因として円安のデメリットが意識されやすい状況といえる。
産業別に円安の影響を見てみよう。図表は、為替レートが10%円安になった場合に各産業が直面する短期的なプラス/マイナスの影響を試算したものだ。1円安によりドル建てで契約している輸出価格の円換算値が上昇して売上高が増加する影響、2輸入価格の円換算値が上昇して輸入コストが増加する影響、3輸入品価格の上昇が国内のサプライチェーンを通じて投入コストを押し上げる影響、4海外直接投資収益の円換算額が増加する影響──をそれぞれ表示している(注:各産業のドル建て部分の輸出入額が為替変動の影響を受けると想定し、輸入品の投入価格上昇による国産品価格への影響についてSNA産業連関表を用いて試算している。円安による輸出数量の増加は考慮していない)。
図表の「合計」を見るとマイナスとなる産業が目立ち、短期的には円安によるコスト上昇を受けて収益が下押しされる企業が増えることが分かる。円安の恩恵は輸出競争力のある輸送用機械や電子部品・デバイスのほか、卸売り(商社)など一部の産業に限られる。 
 
 

 

●NY市場サマリー(20日)ダウ反発も8週連続安、ドルは対ユーロで上昇 5/21
<為替> ドルが対ユーロで上昇。米連邦準備理事会(FRB)による積極的な引き締めの動きが経済成長の足かせになるという懸念が台頭し、リスク選好度が低下した。
ドルは対ユーロで0.3%高となった。しかし、週初からの大幅な下げを補うには至らなかった。週間では対ユーロで約1.3%下落し、2月初旬以来の大幅な下げを記録した。
キャピタル・エコノミクスのジョナス・ゴルターマン氏はノートで「最近の上昇を受け、ドルは一服商状となることが見込まれていた」と述べた。
マネックスUSAのトレーディングディレクター、フアン・ペレス氏は「世界経済が上期の低迷から回復し、見通しが改善すれば、ドルは一段高となり、他の通貨にも上昇余地が存在する」と述べた。
他の安全通貨も買われた。週間では、スイスフランは対ドルで約3%、円も対ドルで約1%それぞれ上昇する見通し。
ポンド/ドルは0.1%高。週間では2020年12月以来の大幅な伸びを記録する見通し。
暗号資産(仮想通貨)のビットコインは4.23%安の2万9009.94ドル。
●円安基調変わらず 金利差拡大は継続、実力行使もなく―G7 5/21
先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、為替の安定が重要だとする共同声明を採択した。鈴木俊一財務相は、最近の円安は急速と説明し、G7での「緊密な意思疎通」と「適切な対応」を呼び掛けた。ただ、米欧との金融政策の違いによる金利差拡大は続き、円安要因は増幅する。円買い介入など実力行使を伴わない「空砲」では、円安基調は変わりそうもない。
4月下旬の日米財務相会談で、鈴木氏は急激な円安への懸念を訴えたが、その後も円安は進行。5月初めには東京市場で一時1ドル=131円台と約20年ぶりの円安水準となった。輸入原材料の価格高騰などの悪影響も目立ち始め、日本側はG7で円安けん制を狙った。しかし、イエレン米財務長官はG7開幕に先立ち開いた記者会見で、ドル高は「理解できる」と事実上容認した。
1990年代のアジア通貨危機や日本の金融危機の際に円買い介入を主導した元財務官の榊原英資氏は「インフレ抑制の観点からは(米国にとって)ドル高の方が都合が良い」と指摘し、協調介入で合意を得るのは困難だとの認識を示している。
市場では1ドル=135〜140円まで円安が進むとの見方が広がる。日本はエネルギーと食料を海外に依存しており、代金を外貨で支払う際に円売り圧力がかかりやすく、「積年の課題を放置してきたツケを払わされている」(シンクタンク)との声も上がる。円安是正には、海外資金を国内に呼び込む成長戦略や、エネルギー・食料自給率を高める構造改革が王道と言えそうだ。
●NY円、小反落 1ドル=127円85〜95銭 リスク回避のドル買いで 5/21
20日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3日ぶりに小反落し、前日比05銭円安・ドル高の1ドル=127円85〜95銭で取引を終えた。米株式相場が大きく下げた場面で、流動性が高くリスク回避時に買われやすいドルが対ユーロなどで上昇し、円売り・ドル買いがやや優勢だった。ただ、ドルと同様に低リスク通貨とされる円も買われたため、円相場は方向感に乏しかった。
20日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反発して終えたが、午後には一時600ドル超下げた。前日に欧州中央銀行(ECB)による早期の利上げ観測からドル売り・ユーロ買いが進んでいた反動もあり、対ユーロなどでドルを買い直す動きが広がり、対円でもドルを支えた。
円にもリスク回避目的の買いが入り、円相場は高くなる場面もあった。20日の米債券市場で長期金利が低下し、日米の金利差拡大の見方がやや薄れたのも円買い・ドル売りを促した。
円の安値は128円24銭、高値は127円60銭だった。
円は対ユーロで反発し、前日比15銭円高・ユーロ安の1ユーロ=135円05〜15銭で取引を終えた。
ユーロはドルに対して反落し、前日比0.0015ドル安の1ユーロ=1.0565〜75ドルで終えた。米株安を受けてリスク回避目的のユーロ売り・ドル買いが優勢だった。
ユーロの安値は1.0533ドル、高値は1.0580ドルだった。 
●NY外為 円、127円台後半 5/21
週末20日のニューヨーク外国為替市場では、新規材料難となる中、円相場は1ドル=127円台後半を中心に推移した。午後5時現在は127円87〜97銭と、前日同時刻(127円78〜88銭)比09銭の円安・ドル高。
この日は米主要経済指標の発表がなく手掛かり難の状況。128円06銭でニューヨーク市場入りした後、いったん円売り・ドル買いが優勢となり、128円24銭まで円安が進んだ。
円売り一巡後は株が下げ幅を拡大し、米長期金利がじりじりと低下したのを眺め、円買いが徐々に強まる展開。ただ、売り込まれていた株が取引終盤に値を戻し、リスク回避の動きが弱まると、円は再び引き緩むなど、方向感に乏しい値動きが続いた。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0563〜0573ドル(前日午後5時は1.0580〜0590ドル)、対円では同135円04〜14銭(同135円19〜29銭)と、15銭の円高・ユーロ安。
●NY円、小反落 1ドル=127円85〜95銭 リスク回避のドル買いで 5/21
20日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3日ぶりに小反落し、前日比05銭円安・ドル高の1ドル=127円85〜95銭で取引を終えた。米株式相場が大きく下げた場面で、流動性が高くリスク回避時に買われやすいドルが対ユーロなどで上昇し、円売り・ドル買いがやや優勢だった。ただ、ドルと同様に低リスク通貨とされる円も買われたため、円相場は方向感に乏しかった。
20日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反発して終えたが、午後には一時600ドル超下げた。前日に欧州中央銀行(ECB)による早期の利上げ観測からドル売り・ユーロ買いが進んでいた反動もあり、対ユーロなどでドルを買い直す動きが広がり、対円でもドルを支えた。
円にもリスク回避目的の買いが入り、円相場は高くなる場面もあった。20日の米債券市場で長期金利が低下し、日米の金利差拡大の見方がやや薄れたのも円買い・ドル売りを促した。
円の安値は128円24銭、高値は127円60銭だった。
円は対ユーロで反発し、前日比15銭円高・ユーロ安の1ユーロ=135円05〜15銭で取引を終えた。
ユーロはドルに対して反落し、前日比0.0015ドル安の1ユーロ=1.0565〜75ドルで終えた。米株安を受けてリスク回避目的のユーロ売り・ドル買いが優勢だった。
ユーロの安値は1.0533ドル、高値は1.0580ドルだった。
●円安基調変わらず 金利差拡大は継続、実力行使もなく―G7 5/21
先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、為替の安定が重要だとする共同声明を採択した。鈴木俊一財務相は、最近の円安は急速と説明し、G7での「緊密な意思疎通」と「適切な対応」を呼び掛けた。ただ、米欧との金融政策の違いによる金利差拡大は続き、円安要因は増幅する。円買い介入など実力行使を伴わない「空砲」では、円安基調は変わりそうもない。
4月下旬の日米財務相会談で、鈴木氏は急激な円安への懸念を訴えたが、その後も円安は進行。5月初めには東京市場で一時1ドル=131円台と約20年ぶりの円安水準となった。輸入原材料の価格高騰などの悪影響も目立ち始め、日本側はG7で円安けん制を狙った。しかし、イエレン米財務長官はG7開幕に先立ち開いた記者会見で、ドル高は「理解できる」と事実上容認した。
1990年代のアジア通貨危機や日本の金融危機の際に円買い介入を主導した元財務官の榊原英資氏は「インフレ抑制の観点からは(米国にとって)ドル高の方が都合が良い」と指摘し、協調介入で合意を得るのは困難だとの認識を示している。
市場では1ドル=135〜140円まで円安が進むとの見方が広がる。日本はエネルギーと食料を海外に依存しており、代金を外貨で支払う際に円売り圧力がかかりやすく、「積年の課題を放置してきたツケを払わされている」(シンクタンク)との声も上がる。円安是正には、海外資金を国内に呼び込む成長戦略や、エネルギー・食料自給率を高める構造改革が王道と言えそうだ。
●《任期は来年4月まで》黒田総裁の「円安は日本経済にプラス」は正しかった? 5/21
なぜ急速に円安が進んだのか
急速な円安・ドル高が進行しています。今年3月上旬には1ドル110円台半ばだったのが、4月後半には130円近くまで下落。約20年ぶりという安値水準を突破してもなお、勢いは止まりません。
この円安は、どこまで進むのか。市場では、今年年末から来年初めにかけて140円から150円ぐらいまで円安になるだろうという予測が出ています。私も、おおむねその水準まで円安が進行するだろうと見ています。
ではなぜ、これほど急速に円安が進んだのか。その最大の理由は、日本とアメリカの金利差にあります。
アメリカはインフレが進行し、物価上昇が急激に進行しています。そのため経済の過熱を抑えるべく、当局が金融引き締めを急ぎ、金利を上げてきました。それとは対照的に、日本はデフレが長く続いてきました。ようやく物価上昇が始まったとはいえ、まだ力強い景気回復とは言えない状況です。そこで大規模緩和を続け、ゼロ金利政策を続けています。
日米の金利差が開くとどうなるか。10年物の利回りがほぼゼロに近い日本国債よりも、約3%近くまで上がった米国債を持っている方が得ですから、投資家の間では円を売ってドルを買う動きが強まる。そのため、円安が進むのです。
この基調は、当面続くでしょう。アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は、年末に向けて継続して利上げを進める構えです。欧州中央銀行も量的緩和を縮小させ、利上げに向かっている。そうした中、日本だけが今後も実質ゼロ金利を続けることが予想されるからです。
「円安は日本経済・物価にプラス」?
日本銀行の黒田東彦総裁は「円安は日本経済・物価にプラス」と繰り返し発言し、2013年3月の就任以来、推し進めてきた金融緩和路線を堅持しています。その結果、日本経済はデフレから脱却し、ようやく物価上昇率が1%台にまで回復してきました。これは黒田総裁の大きな業績であり、評価に値すると思います。
今回の円安を受けて、黒田総裁もさすがに「過度な円安はマイナス」と発言し、従来の主張を一部修正しました。しかしながら、黒田総裁が金融緩和路線そのものを大きく変更することはないでしょう。黒田総裁の任期は来年4月8日まで。そう考えると、少なくとも黒田総裁の任期中に円安基調が変わることはないとみてよいということになります。
ただ、円安に不安を抱く人も多いでしょう。とくに気がかりなのは、家計の圧迫です。折からのガソリン価格や小麦価格の高騰にこの円安が重なり、輸入品の値上がりを心配する人も増えています。
今後、円はどうなるのか。なぜ日銀は円安を続けるのか。円安に打つ手はないのか。円高になる日は来るのか、来るとすればどのタイミングなのか――こうした疑問について、かつて大蔵省(現・財務省)財務官として為替政策にかかわった立場から、お話ししたいと思います。
円安のメリットがなくなった
今回の円安について、鈴木俊一財務大臣は「どちらかというと悪い円安」と表現しました。では、「悪い円安」になっているのはなぜでしょうか。
日本は戦後、原材料を輸入して加工して輸出する「貿易立国」として経済成長を遂げてきました。そのため「輸出を促進する円安のほうが日本経済にプラス」という認識が長らく共有されてきました。円安であれば、日本からの輸出品の価格はドル換算ベースで安くなるため、価格競争で優位に立てるからです。
ところがこの20年、経済のグローバル化が進み、輸出企業の多くが消費市場に近い海外に製造拠点を移しました。現地で原材料を調達し、現地で加工して現地で販売する。そうしたグローバル企業にとっては、円安のメリットはありません。
国内に生産拠点を残している企業でも、全部が円安でメリットを享受できるわけではありません。なぜなら原材料の輸入価格が上がるためです。体力のある輸出企業ならば、販売価格も押し上げられるため、コスト上昇分を輸出価格の増分と相殺できます。一方、輸出をしていない中小企業は、コストが増えるだけなので、円安の恩恵を受けられません。
しかも、もともと原油高基調であったところにロシアのウクライナ侵略が重なり、天然ガスの供給も不足気味となり、エネルギー価格が全面高となっています。それに加えて円安となれば、ダブルパンチです。
いずれにせよ、これだけ経済がグローバル化して企業が海外に出てしまうと、円安のメリットよりもデメリットの方が感じられてしまうのは、当然の帰結です。
「為替介入」はできないのか?
では、この円安に対して、打つ手はあるのでしょうか。
為替市場で急激な変動を抑えるため、各国の通貨当局が自国通貨を売ったり買ったりする「為替介入」が行われることがあります。為替介入は財務大臣の権限で行われ、日銀が大臣の代理として、その指示に基づいて売買の実務的なオペレーションを担うことになっています。
かつて日本は円安が善しとされていたこともあり、急激に円高が進行した際に「円売りドル買い介入」を行ってきました。これによって市場に流通する円の量が増え、ドルに対して相対的に価値が下がるため、円高を抑えることができたのです。今回はその逆の「円買いドル売り介入」をしないのかと、市場関係者たちは注視していました。
ただ、為替介入はそう簡単に行われるものではありません。直近では2011年11月の円売り介入が最後です。円買い介入のほうは1998年6月以来、実に24年間も行われていません。為替介入がそう簡単にいかない理由はのちほど詳述しますが、要するに相手国と協調しないとうまく行かないからです。
ときには「口先介入」という手段が執られることもあります。政府側が実際に市場に資金を投じることなく、要人の発言によって市場に「為替介入があるかもしれない」というメッセージを与え、市場の行き過ぎをコントロールするという手段です。
私自身、財務官や国際金融局長(現・国際局長)の頃、円相場の動きが過熱した際には会見などでメッセージを発することがありました。わりとはっきりと物を言うせいで、「ミスター円」という呼び名が広がったのだと思います。もちろん、ズバズバものを言うからといって、国に不都合なことを言ったことはありません(笑)。
アメリカとの協調ができない
為替介入はなぜ難しいのか。それは、2つのハードルがあるからです。
1つ目のハードルは、「アメリカの理解が得られるか」という点です。
為替レートは単独で決められるものではなく、相手があって初めて決まるものです。円安を是正しようとすれば、必然的に基軸通貨であるドルにも影響が出ます。そこで、為替介入を行う際は、事前に日米両国の通貨当局が合意し、よくタイミングを見計らって呼吸を合わせてやって、初めて効果的に実行できるのです。相手国(この場合はアメリカ)が賛成しない介入は、効きません。
私が財務官を務めた1990年代に「円売りドル買い介入」でうまく円高を是正できたのは、日米の意思疎通がうまく行っていたからです。
当時、クリントン政権で財務長官を務めていたロバート・ルービンは、「強いドルが国益にかなっている」というスタンスを貫いていました。それまでの「ドル安で米国の輸出を増やす」というスタンスから大きく政策を転換したのです。ルービンは、ドルの価値を高めることで米国債を売り、世界中から低利で資金を集めようとしていました。ニューヨーク市場に世界中から大量の資金を集めることで株価や債券市場を押し上げ、貿易赤字を補い、国際収支のバランスを取ったのです。
一方、日本は輸出を後押しするために円安を期待するスタンスでした。そのため、日米の利害は基本的に一致していたのです。
もっとも、97年、98年には例外的に「円買いドル売り介入」をしています。これは円高ドル安方向の介入であるため、一見、日米の意向が逆方向であるかのように見えます。ただ、やはりこれもアメリカの意向に沿ったものでした。
当時、国際金融市場に吹き荒れていたのはアジア通貨危機の嵐でした。タイ、インドネシア、韓国がIMF(国際通貨基金)の管理下に入り、その影響は日本にも及んでいました。また、日本国内では金融危機が起き、北海道拓殖銀行が破綻するなど、深刻な状況に陥っていました。そうした状況下、日本としては過度の円安進行で株安が進み、企業マインドが冷え込んでいく連鎖を回避する必要がありました。
これに対してアメリカも、行き過ぎたドル高で資金が米国市場に過剰に集中し、株式市場を不安定にしかねないという懸念がありました。そこで日米金融当局の利害が一致し、協調介入したのです。アメリカが「日本政府の事情を慮った」のではなく、アメリカの国益にかなうからこその介入でした。昔から「アメリカ・ファースト」ということです。
「円買い介入」には限界がある
では現在はどうか。アメリカの最優先課題は、インフレの抑制です。日本が「円買い介入をして円高に誘導したい」と言い出したとしても、それにアメリカが頷く可能性は低いでしょう。なぜなら「ドル売り」介入をしたらドルの値が下がり、輸入物価を押し上げてインフレを悪化させてしまうからです。
2つ目のハードルは、円買い介入を効果的に行う手段が限られていることです。
一般的に、円売り介入は、それほど難しくはありません。短期の国債をどんどん発行して円を調達し、それを売ればいい。資金が調達出来さえすれば、限界はありません。
一方、円買い介入には限界があります。なぜなら、外貨準備高として日本が保有しているドルを売って円を買うというオペレーションになるからです。日本の外貨準備高は、直近では約1.4兆ドルですが、この蓄え以上のドルを売ることはできません。
私も円買い介入をした経験がありますが、当時の外貨準備高の10分の1を使ってしまったことがあります。「これではあと9回しかできないな」と焦った記憶があります。
円買い介入を繰り出せる回数、規模には限界があるため、それを投機筋に「もうこの後に介入はないな」と見透かされたら、一挙に反動がやってくることにもなりかねない。
そうしたこともあって、現在の局面で円買い介入をするのは相当難しいのです。
こうしてみると、この円安に対して当面は打つ手はない、ということになります。ただ、そう慌てる必要もない、というのが私の考えです。
●為替相場 5/16〜5/20 5/21
16日からの週は、ドル高の流れに調整が入った。高インフレやそれに対応する各国中銀の金融引き締め姿勢などが株式市場を押し下げている。米小売企業の決算で先行きを悲観的に見ていたことが象徴的。リスク回避ムードが広がるなかで、米国債をはじめとした主要国の債券利回りの低下につながった。ドル相場にとっては米債利回り低下が、売り圧力となっている。ドル円は127円近辺へと下落、ユーロドルは1.06近辺、ポンドドルは1.25近辺へと上昇する場面があった。クロス円は上下動。ドル相場主導の展開となるなかで、週を通した円相場の方向性はハッキリとしていない。
16日
東京市場は、ドル円が下落。週明けの東京市場では先週末のリスク警戒後退の流れもあって、堅調なスタート。ドル円は129.60台まで買われ、先週末高値を更新した。しかし、仲値を過ぎたあたりからは一転して下落。日経平均が上げ幅を縮小、先週末終値近辺へと前場で反落。ドル円は128.70近辺まで下押しされた。午後には下げ一服も、129円挟みで売買が交錯した。ユーロ円は134.40台まで買われたあとは133.75近辺まで下落。ドル円と同様の値動き。ユーロドルは1.04挟みでの推移。フィンランドに続いてスウェーデンも与党がNATO加盟支持を打ち出し、17日にも申請へとの報道が入ったが、すでに織り込み済みとされて影響は限定的に。
ロンドン市場は、円安・ドル安とリスク警戒後退の動き。ドル円の下押しは128.80付近までと東京昼頃の安値には届かず。その後は129.60近辺まで買われた。米株先物・時間外取引が下げ渋りとなったことに反応した。クロス円も買われた。ユーロ円は135円台をつけており、東京市場での下げを消した。ポンド円は158円台を回復している。ドル円以外の主要通貨ではドル売りに。ユーロドルは1.0400挟みでの揉み合いから1.0430台へと水準を上げた。ポンドドルは1.2220割れまで軟化したあとは、1.2270付近まで上昇。ユーロドルとともに買い優勢となっている。
NY市場では、売買が交錯。ドル円は朝方に129.60付近まで上昇も、その後は一時129円だ割れ。取引後半には129円台前半で揉み合った。米株の下げ一服とともにリスク回避ムードが一服。ただ、この日発表された中国4月の小売売上高と鉱工業生産が予想を下回るなど世界経済への不透明感も広がった。FRBなどの利上げ路線とともに、中国ロックダウンの影響が懸念された。ユーロドルはロンドンフィキシングにかけて売りがでて、1.03台に再び値を落とす場面があった。ただ、その後は1.04台を回復と下げ一服。ビルドワドガロー仏中銀総裁が、「ECBの正常化について明確なコンセンサスが形成されつつあり、6月の理事会は決定的なものになるだろう」と語ったことを受け、ECBの利上げ期待からユーロの買い戻しを誘っていた。ポンドドルは1.23台を回復。ただ、市場では弱気な見方も根強い。北アイルランド議定書をめぐる緊張が再び脚光を浴びポンドを圧迫する中、リスク志向が引き続き悪化した場合、今週中に1.20を割り込む可能性も指摘された。
17日
東京市場では、ドル円が下押し後に反発。朝方には128.80台まで下落。NY市場で低下した米債利回り動向が重石となった。その後は一転して買い戻され、午後には129.40台まで上昇。米10年債利回りはNY市場での2.85%台から2.92%まで上昇、ドル買いを誘った。ただ、昨日の海外市場で売りがでた129円台後半には届かず。ユーロ円は朝方にドル円の下げとともに124.50台まで下落したが、その後は135円台をしっかりと回復した。ユーロドルは朝方のドル売り局面で1.0440台へと上昇。その後も底堅さを維持して1.04台半ばでの揉み合いに。
ロンドン市場は、欧州通貨が買われている。ポンドはロンドン朝方に発表された英雇用統計の改善を好感して上昇。1−3月期失業率が3.7%へと低下、求人数が失業者数を統計開始以来初めて上回った。賃金上昇率も加速している。これを受けて、ポンドドルは1.23台から1.24台後半へ、ポンド円は159円台から161円台へと大きく買われた。ユーロ相場も連れ高となったが、クノット・オランダ中銀総裁が、7月利上げについて25bpが現実的としながらも、インフレが広範かつ累積的に上昇するならば50bp利上げの可能性排除すべきではない、と発言したことで、ユーロが一段高となった。ユーロドルは1.04台後半から1.05台前半へ、ユーロ円は135円台から136円台乗せへと上伸した。対ポンドではユーロ売りが先行も、発言後は買い戻しが入っている。ドル円は129円台前半での揉み合いが中心で、一時129.50レベルを上回ったが、すぐに売り戻されている。欧州株や米株先物・時間外取引は堅調に推移。NY原油先物は115ドル付近へと上昇。リスク動向は回復している。
NY市場では、ドル円が買い戻されるなかで、ドル自体は売り優勢。ドル円は買い戻しの流れが続き、129円台で推移している。リスク回避が一服しており、米株式市場も買い戻しが膨らむ中で、円安の動きがサポートした。ロックダウンを実施していた中国の上海市が6月から企業の生産活動と市民生活を全面的に正常化すると発表したことが好感されている模様。NY朝方に4月の米小売売上高が発表にされ、高インフレにもかかわらず商品への需要がなお底堅いことを示していた。午後になってパウエルFRB議長のイベントでの発言が伝わった。議長は「経済が想定通りに推移すれば、0.50%利上げを議題に乗せる」と述べたほか、「必要なら中立水準を超える利上げを躊躇しない」とも述べていた。また、「いまにして思えば、もっと早く利上げすべきだった」と、後手に回ったことを暗に認めるような発言も聞かれた。ユーロドルは買い戻しが加速、ストップを巻き込んで1.05台半ばまで上昇。ポンドドルは1.25台目前まで買われた。ただ、大台乗せには至らず1.24台後半に落ち着いた。ユーロ、ポンドともにロンドン市場からの堅調な流れを維持した。
18日
東京市場は、ドル円の上値が重かった。朝方に129.50レベルを上回ったが、すぐに売りに押されると午後には129円を一時割り込んだ。前日NY市場でドル買いを誘った米債利回りの上昇が一服したことに反応。米10年債利回りは節目の3%をつけきれずに2.96%台へと低下した。日経平均が上げ幅を縮小したこともドル円の売り圧力に。中国の住宅市場が弱い結果だったことがリスク警戒の動きとなった。ユーロ円も136円台半ばから135円台後半へと軟化した。ユーロドルは前日の上昇を受けて1.0560台まで買われたが、その後は利益確定売りなどで1.0520台まで反落。豪ドルが軟調。中国住宅指標とともに豪州の第1四半期賃金指数が予想を下回ったことが売りを誘った。
ロンドン市場は、ポンド売り主導でドル買いが広がった。前日のポンド買いに調整が入る形。きっかけとなったのがロンドン朝方に発表された4月英消費者物価指数。前年比+9.0%と前回+7.0%から一段とインフレが加速した。しかし、市場予想にわずかに届かなかったことでポンド売りの反応が広がった。ポンドドルは1.25手前水準から一時1.23台後半まで下落。その後は1.24台に戻したが、上値は抑えられている。ユーロドルも連れ安となり、1.05台前半から一時1.05台を割り込んだ。ドル円は東京午後に129円台割れへと下落したが、ロンドン時間には129円台前半へと戻す動き。米10年債利回りは2.95%台から1.99%付近で上下動しており、きょうはドル相場との連動性は薄い。クロス円はポンド円の下落で全般に上値が重い。欧州株は揉み合いも、米株先物がやや売りに押されており、円高圧力となる面も。ポンド円は161円台から一時160円台割れへと下落。ユーロ円は136円付近から135円台後半へと軟化。ECB当局者らからは、7月利上げを支持する発言が相次いだが、織り込み済みとして市場は反応薄だった。4月ユーロ圏消費者物価指数・確報値は前年比+7.4%と速報値から変わらずだった。
NY市場では、株急落のなかでリスク回避の動きが広がった。前日に続いてこの日の米小売企業決算も弱かったことがきっかけ。ダウ平均は一時1200ドル超急落した。市場の反応は鈍かったものの、前日のパウエルFRB議長の講演はこれまで以上にタカ派な印象ではあった。当面はFRBの大幅利上げが続くとの見方に変化はない。ただ、現在の市場は利上げ自体の行方以上に、それに伴う景気への影響を警戒している。ドル円は128円付近へと下落し、大台割れを試した。ユーロ円は一時134円台割れ。ユーロドルは1.05台割れから1.04台半ばまで下落。ポンド円は一時158円台割れ。ポンドドルは1.23台前半まで下落。高インフレが続くなかで、各国中銀の金融引き締めが景気後退、株式市場の不安定化につながる状況となっている。景気先行き、市場の金融引き締めの織り込み度合や、今後のインフレのピークアウトなどに相場参加者は神経を尖らせている状況。 
19日
東京市場では、ドル円が反発。前日の米株大幅安を受けたリスク警戒の円買いを受けて、朝方には127.90近辺まで下押しされた。ユーロ円も134円台割れと円買いが先行。しかし、その後は一転してドル円、クロス円が反発。米株先物・時間外取引が下げ渋りの動きとなったことに敏感に反応した。昼にかけてはダウ先物ととにもS&P500先物もプラス圏を回復。ドル円は128.95近辺、ユーロ円は135.46近辺まで高値を伸ばした。ロンドン勢の本格参加を前に円売りは一服。ドル円は128.60台、ユーロ円は135円台割れの動きに。10時半に発表された豪雇用統計は雇用者数の伸びが予想を大きく下回ったものの、正規雇用が大きく伸びたことや、失業率が予想通りとはいえ前回から低下して過去最低水準を更新した。
ロンドン市場は、株安が続くなかで、円買いとドル売りが混在している。前日の米株の急落を受けて、市場にはリスク警戒感が再び高まっている。欧州株が大幅安となっているほか、米株先物・時間外取引も再び下落。インフレや金融引き締めの動きが企業の先行き見通しに影を落としている。ドル円は東京市場で129円手前まで反発したが、東京午後からロンドン時間にかけては売り圧力が強まっている。128円台割れから安値を127.58レベルまで広げている。クロス円も軟調で、ユーロ円は134円を一時割り込み、ポンド円も158円近辺へと下落した。いずれも東京市場の上げを消した。株安とともに米債利回りが低下、ドル相場全般にドル安圧力が優勢に。ユーロドルは1.0460台まで下げたあとは上昇に転じ、1.05台に乗せている。ポンドドルも1.2350割れまで売られた後は、買いが強まり1.24台に乗せている。3月ユーロ圏経常収支は16億ユーロの赤字に転落。独建設業生産高も前月比横ばいと停滞。その一方で、英CBI製造業受注指数は予想外の上昇となり、輸出受注の回復に支えられた。
NY市場は、ドル売りが優勢。きょうのNY市場もリスク回避ムードを強めたが、為替市場ではドル売りの反応がみられた。ユーロの買い戻しが活発化していることが相対的なドル売りに繋がっているとの指摘も出ていたが、特段のドル売り材料はない。そのような中でドル円は一時127円台前半まで下げ幅を広げ、先週安値の127.50円付近を下回る展開が見られていた。きょうのドル売りについて一部からは、最近の急上昇後の転換点が接近しつつあるとの見方も出ている。金融情勢のさらなる悪化で、市場がFRBの引き締め期待を弱める段階にある半面、世界の他の地域、特にユーロ圏に関しては、市場がまだ大幅な引き締めを織り込んでいることを理由として挙げている。しかし、ドル高期待を温存している向きが圧倒的に多いのも実情。ユーロドルは買い戻しが活発化し、一時1.06台まで急速に買い戻された。ユーロ買戻しの直接的な材料は見当たらないが、ここに来てECBの利上げ期待が活発化しており、ユーロに見直し買いが入っているとの指摘も出ている。ポンドドルは一時1.25台まで急反発。ただ、市場では英景気減速を懸念する声もあり、今後のポンド相場の重石となるとの見方もあった。
20日
東京市場は、方向性に欠ける振幅。ドル円は午前に128.21近辺まで上昇。前日のドル安の動きに再び調整が入った。日本株・アジア株が堅調に推移しており、リスク回避ムードが一服した面も。中国はローンプライムレート5年物を4カ月ぶりに引き下げた。ユーロ円は135円台半ば超えまで買われた。しかし、円安の動きは続かず。昼過ぎにはドル円が127.50台、ユーロ円が134.70台まで反落。その後は下げ一服もレンジ内での推移にとどまっている。ユーロドルは午前に1.0550台まで下押しされたあと、再び買われて1.06台に接近している。米債利回りの戻りは限定的で、前日からのドル売り圧力が根強い印象。
ロンドン市場は、やや円売りの動きが優勢。この日は日本株・アジア株に続いて欧州株や米株先物が堅調に推移。リスク警戒感が緩和されている。週末を控えて先物に買い戻しが出ている面もありそうだ。為替市場では東京市場でドル円、クロス円が下押しされる場面があったが、ロンドン時間に入ると上昇に転じている。ドル円は127円台後半から128円台前半へ、ユーロ円は135円付近から135円台後半へ、ポンド円は159円台前半から160円台乗せまで一時買われている。ドル相場は前日からのドル安水準を踏襲しており、ユーロドルは1.06手前、ポンドドルは1.25手前水準まで買われたあとは、高止まりとなっている。この日発表された4月英小売売上高は予想外の上昇となり、対ユーロなどでポンド買いの動きがみられたが、足元ではポンド買いは一服している。
NY市場はリスク警戒感の強い展開に。序盤は週末を前にした米株の買い戻しが見られ、ドル円が128円20銭台まで買い戻されるなど、円売りの動きが優勢となった。その後米ダウ平均株価が朝の高値から800ドル超の下げを付ける中で、リスク警戒のドル買い円買い資源国通貨売りなどが見られた。もっともドル円は東京午前の安値を割り込まず、その日のレンジの中での取引に終始。引けにかけてポジション調整から米株が買い戻され、ダウ平均株価が小幅ながらプラス圏で引ける動きを見せる中で、ドル円もしっかりとなったが、127円90銭台まで。 

 

●“悪い円安”が起こっているのか?円安が与える影響と今後の行方 5/22
円安が加速し、そのデメリットを懸念するニュースをよく見かけます。そもそも円安は私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか?経済アナリストの増井麻里子さんにわかりやすく解説してもらいました。
円安が進んでいる
円安とはその名の通り、円の価値が安くなることです。現在、見た目よりも円安が進んでいます。
例えば名目為替レートで1ドル=100円だったのが、1ドル=110円になったとき、日本人にとって米国のモノは10%高くなります。名目為替レートが一定だったとしても、日本で物価が上がらず、米国で10%のインフレが起こると、日本人にとって米国のモノは10%高くなります。つまり、どちらも円の価値が安くなることを表しています。
したがって、物価を考慮した実質為替レートをみる必要があります。実質為替レートは、それぞれを指数化して「名目為替レート × 外国物価 ÷ 自国物価」で計算できます。
イメージしやすいように、数字を当てはめてみましょう。
2000年の名目為替レートは107.7円で、2001年は121.5円でした。2000年を100とすると、2001年は112.8となります。
2000年の物価水準を100とすると、2001年は米国が102.8、日本が99.3であり、実質為替レートは、112.8 × 102.8 ÷ 99.3 = 116.8です。つまり、16.8%の円安ということになります。
5/9に名目為替レートが1ドル=131円30銭台となり、2002年4月以来の円安水準となりました。通貨の実力を測るには、実質実効為替レートをみる必要があります。
これは、対象となるすべての通貨と日本円との2通貨間為替レートを、貿易額など相対的な重要度でウエイトづけして集計・算出した指標で、間接表示のため数値が高いほうが円高となります。
2010年を100とすると、2002年4月は102.35で、2022年3月は65.1まで低下しました。これは固定相場制だった1972年の水準です。
実質実効為替レートを見て、円が50年前の実力に転落したとは言えません。この指標は、経済発展が著しい途上国で上がりやすい傾向があるからです。それでも他の先進国は80〜110台であり、円の下落は激しいと言えます。
円安のメリットとデメリット
円安は私たちの生活に大きな影響をもたらします。ここではマクロの視点で、メリットとデメリットを見ていきます。
メリットのひとつは、輸出の増加です。海外から見ると日本の商品が安くなり、輸出数量が増えます。外貨建ての価格を変えず数量が伸びなかったとしても、円建ての輸出売上額が増えます。輸出大企業の株価が上がり、株主が資産効果によって消費を増やすことも期待できます。
2つめは、インバウンド消費の増加です。平時には、旅行コストが下がることにより海外からの旅行客が増え、日本国内の商品が売れるようになります。日本人が物価の安い国へ行くと、高級ホテルに泊まったり、つい買い物をたくさんしてしまうのと同じです。
3つめは、海外からの利子や配当金の円換算での増加です。これは第一次所得収支と呼ばれるもので、日本は大幅な黒字を維持しています。
一方で、デメリットもあります。輸入価格が値上がりするため、国内の物価が上昇します。例えば日本は小麦のほとんどを、輸入に頼っています。不作などにより小麦の供給が減少した場合、円安だと他国に買い負けしやすくなります。
小麦の輸入価格が上がれば、やがて消費者に価格転嫁され、小麦を原料としているパスタやうどん、パンも値上がりし、家計に影響を与えることになります。
なぜ“悪い円安”が懸念されるのか
過去にも日本で円安が続いたことはありました。しかし今回の円安は“悪い円安”と、ニュースなどではよく報道されています。今までの円安と一体なにが違うのでしょうか?
以前は円安が起こると、日本は国内で製造・加工したものの輸出が増え、その恩恵を受けてきました。しかし2008年のリーマンショックで1ドル=90円台に円高が進み、2011年後半に1ドル=70円台が定着したことで、輸出企業は製造拠点を海外にシフトさせました。
その後、円安になり、国内回帰の動きもありましたが、商品を販売するまでの時間(リードタイム)を短くするなど、さまざまな理由によって現地に工場を持つようになっています。今後は設計・開発拠点の海外シフトも見込まれています。
日本の輸出企業が大きな利益を上げているように見えます。しかし実際のところ、会社の決算書には海外子会社の利益が円換算で計上されているだけで、子会社の利息や配当金がどの程度円に換えられているかは不明です。外貨のまま再投資収益や内部留保となっている金額が大きいと考えられます。
国際収支上は、前述の第一次所得収支や直接投資には計上されていますが、必ずしも資金のやりとりがあるわけではありません。
一方、国内物価が上がってきています。5月16日に発表された4月の国内企業物価指数は、前年比+10.0%と、1981年以降で最大の上げ幅となりました。輸入物価指数は、円ベースで+44%、契約通貨ベースで+29.7%でした。
日銀は、最近の物価情勢の主因は世界的な資源価格上昇だと説明していますが、日本では円安の影響も無視できなくなってきているのではないでしょうか。さらに、日本経済全体にとって円安はプラスとの発言を続けています。
“悪い円安”がメリットをデメリットが上回る円安のことであれば、マクロ経済としてはまだ“悪い円安”とは言えないでしょう。中国、韓国やアジア新興国の台頭で市場の競争が激しくなり、日本の輸出主導型の経済モデルが危うくなっているとはいえ、このモデルから脱却していないからです。国内の設備投資や賃金には恩恵が小さくなっているけど、円高よりはましということです。
以前と違って”悪い円安”が懸念されているのは、世界的な資源価格の上昇が円安と重なったことが大きいとみられます。2000〜2002年に円安が進んだとき、WTI原油価格は1バレル=30ドル前後でした。2007〜2014年は1バレル=70〜90ドル台と高かったのですが、円高が進んだ後、徐々に円安へ向かった時期であり、円安は問題視されなかったのです。
日本は人口が多く、国として高付加価値サービスや海外投資による利益だけで食べていくのは無理があります。タックスヘイブンや国際金融センターのような国であれば、法務、税務、コンサルティングなどの高付加価値プロフェッショナルサービスで食べていけます。日本は当面、インバウンドと輸出数量の増加で円安のメリットを活かし、物価上昇には財政を使って対応することになるでしょう。しかし政府は、今後「何で食べていく国にするのか」という方向性を示さなければなりません。
金融政策スタンスの差により進む円安
米国の連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ抑制を優先し、FF金利の誘導目標を2022年3月に0.25%、5月に0.50%引き上げました。今後の引き上げペースが注目されています。
現在の日銀は、金融政策の現状維持で金利を上げない姿勢を示しています。これにより世界との金融政策スタンスの差が明確となり、円安が急激に進みました。
金利には成長率、インフレ率、需給などの要素があります。米国では4月には労働力人口 (就業者+失業者)が生産年齢人口 (16歳以上の人口) に占める割合である労働参加率が62.2%に低下。賃金上昇圧力は消えていません (日本の3月の15〜64歳の就業率は77.9% )。
しかし、その他の経済指標にはインフレピークアウトの兆しも見えてきました。経済活動活発化による需要増加に対して供給制約が続くことによるインフレが、いつまでも続くことは考えにくく、米国では急ピッチの利上げによる景気後退が懸念され始めました。したがって、市場の金利差拡大観測の後退とともに、円安も少し落ち着くとみられます。
●円安で日本の「ビッグマック指数」がタイや中韓よりも下に 5/22
外国為替市場で円の「独歩安」が止まらない。日本経済の先行きを曇らせる歴史的な超円安。その恩恵を今は受けている輸出業界にも不安感が広がっている。
5月9日の東京外国為替市場。円相場は一時1ドル=131円台を記録し、約20年ぶりの安値水準を更新した。3月初旬の1ドル=114円台から、たった2カ月で約17円下落したことになる。
歴史的な円安は、欧米主要国が金融の引き締めを急ぐ一方、日銀が緩和的な金融政策を継続し、資源価格の高騰で貿易赤字が拡大している状況も影響している。こうした状況に経団連の十倉雅和会長は5月9日の会見で「日本の経済が弱いということから来ている面が非常に多い」と懸念を示した。
鈴木俊一財務相も10日、閣議後の記者会見で「最近のような急速な円安の進行は望ましくない」と発言するなど、たびたび為替市場をけん制している。
米国より4割安
「ビッグマック指数」と呼ばれる経済指標を英国の経済誌『エコノミスト』が1986年に考案し、毎年2回公表している。ビッグマックとは、ハンバーガー大手マクドナルドの主力商品の一つだ。世界100カ国以上に展開する店舗で原則、同サイズ、同品質で販売され、肉や野菜といった原材料費はほぼ共通している。
そのため、自由な市場経済では国が異なったとしても同じモノは同じ値段で買えるとする「一物一価の法則」を前提に、「米国のビッグマック価格」と「その他の国のビッグマック価格」を比較することで、その国の「通貨の購買力格差」を把握することができる。
この指数が、基準となる米国のビッグマック指数に比べて大きければ、その国の通貨は、ドルに対して指数分だけ「過大評価」されていることになり、逆に小さければ、ドルに対して指数分だけ「過小評価」されていることになる。
ビッグマック指数の「2022年1月版」の指数を見ていくと、例えば、スイスの同指数は「プラス20.2%」と、基準の米国を大幅に上回る。つまり、通貨スイス・フランはドルより大幅に過大評価されている。
実際、スイスのビッグマック価格は「1月版」の時点で、6.98ドル(804円)と、基準となる米国の同価格5.81ドル(669円)に比べてかなり高額だ。
一方、日本はどうか。ビッグマック指数は「マイナス41.7%」と大きく下振れていた。確かに、日本のビッグマック価格は390円(3.39ドル)に過ぎす、米国の同価格よりかなり安かった。円はドルより約4割も過小評価されていたことになる。
取り残される日本
これは、カナダ、欧州連合(EU)、英国、豪州といった先進国に後れを取った。それどころか、ブラジル、タイ、中国といった新興国よりも低水準に沈んだ。比較対象の57カ国中、日本は33位と下位に位置し、先進国中では「最下位クラス」に甘んじた。
さて、足元の5月時点ではどうか。米国のビッグマック価格は5.34ドル。22年5月16日の為替レートは1ドル=129円なので日本円に換算すれば689円だ。日本は1月の3.39ドルから比べて、さらに3.02ドルまで安くなっている。
日米のビッグマック価格の年次推移をドル換算で比較すると、11年に米国が4.07ドルに対して日本は4.08ドルだった。しかし、翌12年には米国が4.33ドルに急上昇した一方、日本は4.09ドルと微増だった。13年には3.2ドルに下がり、それ以降は横ばいが続く様子が分かる。
ちょうど第2次安倍晋三政権のアベノミクスが始まった時期と重なるが、ビッグマック一つをとっても20年間、国際的に取り残されつつある状況が浮かび上がる。 

 

●円安はインバウンドに“追い風”ってホント?その裏にあるリスクとは 5/23
2022年の4月から、ドル円レートは1ドル120円台後半で推移し、一時は1ドル130円を超えることもありました。アメリカの金利政策の転換や世界的な情勢不安などを背景に、日本は約20年ぶりとなる「円安」を経験しています。
通貨レートに大きな影響を受ける分野の一つが、インバウンドです。円安が進むということは、外貨をもって入国してきた外国人にとっては、使えるお金が増えることになるからです。インバウンド消費額の伸びが期待できます。
しかし、円安がインバウンドに好影響しかもたらさないわけではありません。長期的に見た場合、円安によって、観光地としての日本の価値が下がっていくリスクもあるのです。
現在の円安がインバウンドに与えるポジティブな影響について分析したうえで、その裏側にあるリスクについても考察していきます。
「円安ドル高」、インバウンドへの好影響は本当か?
円高がインバウンド需要全体に与える影響について考えるときには、アメリカ合衆国ドル(以下米ドル)に対するレート以外にも、他の主要訪日国の通貨と円のレートについてもみていく必要があります。
コロナ前の2019年末のレートと比較して、実際の円安のインパクトはどの程度か検証していきます。
米ドル/円は110円台から128円台と、大幅な円安となっていることがわかります。約16%円安が進行しました。一方で、他の主要な通貨についてはどうでしょうか。ユーロ、中国人民元、韓国ウォンのいずれとの円レートでも確かに円高は進行しています。増加率はそれぞれ10%、21%、6%となっています。
中国人民元に対しては、円安が米ドルを上回るペースで進んだことがわかります。しかしインバウンドとの関連で見ると、訪日中国人観光客の消費額がすぐに増加することはないといえます。それは、中国では厳格な新型コロナウイルスに関する規制が続いており、中国人の海外旅行はまだ再開のめどが立っていないからです。
ユーロと韓国ウォンに対しては確かに円安が進んだものの、増加率は米ドルを上回りませんでした。
つまり、円安の進行度は通貨によって変わるため、米ドルに対する円のレートのみに着目していると、「円安」の実態を正確につかめない恐れがあります。
アメリカ人は、消費額ベースでは全体の6%程度
では、その訪日アメリカ人観光客は、消費額ベースでみるとインバウンド全体の何割を占めているのでしょうか。コロナ前の2019年のデータで見ていきます。
アメリカ人の消費額は全体の約6%程度となっています。
一方で、東アジアのメインの二カ国となる中国人、韓国人の消費額はそれぞれ全体の37%、8%と、この2国だけで全体の約45%を占めます。ユーロ圏全体の訪日客の消費額は、合計すると1,600億円を超え、全体の3%程度になります。
日本と政治や金融の面で関わりの強いアメリカですが、インバウンドの消費額ではわずかな割合しか占めていないことがわかります。つまり、現在の円安ドル高の影響については、アメリカ人の消費額を踏まえて正確に捉える必要があると言えます。
一方で、中国人の日本旅行再開がしばらくは見込めないことは、極めて大きな打撃となります。コロナ前には全体の4割近くを占めていた中国人の消費がほぼゼロになるのは、インバウンド産業の状況を根底から変える出来事です。
「円安ドル高により、アメリカ人のインバウンド消費額が増える可能性がある」というのは確かな事実です。しかし、その影響については、数字に基づいて検討したうえで、過大評価しないことが重要であると考えられます。
円安で観光資産が「買われる」リスク
では逆に、円安によって日本のインバウンドにもたらされうるリスクについて考えていきます。
個人消費だけでなく、不動産などへの投機も円安の影響を受けます。海外の投資家からみれば、日本の資産は現在「安く買える」状態になっているといえます。円安が今後も続いていけば、外資系企業が日本の観光資産を安く買い叩く可能性もあります。
例えば近年では、中国人投資家の間では日本の「不動産爆買い」の動きもみられます。北海道や沖縄といった、海外旅行客の多い地域に人気が集まっています。
そうした土地が外貨に「買われる」動きが続くと、たとえ沖縄や北海道が集客に成功しても、その利益が最終的に行きつく先は中国である、という現象が起きかねません。
円安は、インバウンド消費額の伸びという短期的、限定的なメリットの裏に、こうした長期的、構造的なリスクを抱えているということを理解しなければなりません。
長期的な円安になれば、客層も変わる可能性
さらに、円安は訪日観光客の客層を変える可能性もあります。
例えば、日本からタイやフィリピンといった東南アジアの国々に旅行するときに、多くの日本人が期待するのは「モノ・サービス共に安く済ませられる」という点であると考えられます。それは日本円がバーツやフィリピンペソよりも高く、日本人からしたら「物価が安い国」であるからです。
日本がもつ本来の魅力よりも、日本での安い消費行動のイメージが前に出てしまうと、オーバーツーリズムの問題も生じてきます。安い観光地に外国人が殺到する国、という評価が定着してしまうと、日本のブランドイメージの棄損にもつながります。
そうした悪循環が生じれば、日本の観光業の長期的な衰退は避けられないでしょう。
安売りではなく、納得感のある「高付加価値化」を
「円安=インバウンドに追い風」という考えは、今や主流の論調になりつつあります。
しかしその「追い風」がどの程度の強さかについては、冷静に捉える必要があるのではないでしょうか。
円安は、長期的に見れば日本のインバウンドを悪い方に変えてしまう可能性もあります。豊富な観光資源を抱えながらも、「安い国」としての評価が定着してしまうことは避けなければならない未来です。
そうした「安い国」になることを避けるためには、インバウンド全体で「高付加価値化」を進め、外貨を獲得していく必要があります。
ただモノやサービスの値段を上げて「観光地価格」を設定するだけでは、訪日外国人の満足度は下がってしまいます。「高付加価値化」による単価の引き上げを目指すには、日本固有の魅力を再発掘し、それを現代のニーズに合った形式で提供することが必要です。
円安がインバウンド回復の起爆剤となり、日本経済が再び活気づいていくのか。それとも、円安により安く買い叩かれ、消耗していくのか。20年ぶりの円安局面にある今、日本のインバウンドは岐路に立っています。
●東京外為 ドル、127円台半ば=買い戻し一巡後は伸び悩む 5/23
23日の東京外国為替市場のドルの対円相場(気配値)は、買い戻しが一巡した後は戻り売りに押されて伸び悩み、1ドル=127円台半ばに軟化した。午後5時現在は、127円59〜59銭と前週末(午後5時、127円94〜94銭)比35銭のドル安・円高。
ドル円は早朝、127円80〜90銭前後で取引された後、仲値前後から実需筋の売りが優勢となり、昼前に一時127円10銭台まで下落。正午にかけて若干値を戻したが、昼すぎに再び127円10銭台に押し戻された。ただ、同水準では買い戻しが入ったほか、時間外取引で米長期金利が上昇したことにも支援され、午後3時すぎには127円90銭前後まで水準を切り上げた。終盤は戻り売りに押され、127円50銭台まで下押した。
米長期金利の上昇に加え、「いったん伸び悩んだ日経平均株価が上げ幅を広げたことがドル円のサポート要因になった」(為替ブローカー)とみられている。もっとも、「128円に接近すると上値の重さも意識された」(FX業者)ことから、終盤は調整的な売りに押される展開だった。
ドル円は127円近くに下げた後に戻り歩調となったことで「底堅さは確認された」(先のブローカー)ものの、「米経済のリセッション入りの懸念は根強い」(先のFX業者)ため、当面は127円台でのもみ合いが続く公算が大きい。
ユーロは終盤、対円では伸び悩み、対ドルは底堅く推移。午後5時現在、1ユーロ=135円25〜26銭(前週末午後5時、135円31〜32銭)、対ドルでは1.0600〜0604ドル(同1.0576〜0580ドル)。
●ドル円 127.70円台まで反発、米長期金利が上昇・株先も堅調 5/23
米10年債利回りは2.84%台まで再び上昇し、ダウ先物が300ドル高と堅調な動きを眺め、ドル円は買い戻しが優勢。一時127.75円までドル高・円安に傾いている。
また米金利の上昇が重しとなり、ユーロドルは1.0650ドル付近まで本日の上昇幅を縮めた。
●ロンドン外為 円、127円台半ば 5/23
週明け23日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、新規の取引材料を欠く中でドル売り・円買いが優勢となり、1ドル=127円台半ばに上昇した。
正午現在は127円45〜55銭と、前週末午後4時比50銭の円高・ドル安。 

 

●外為8時30分 円、下落し127円台後半 対ユーロも大幅下落 5/24
24日早朝の東京外国為替市場で、円相場は下落している。8時30分時点は1ドル=127円75〜76銭と前日17時時点と比べて17銭の円安・ドル高だった。前日の米株式市場で米ダウ工業株30種平均が前週末比618ドル高となるなど主要株価指数が軒並み上昇し、市場参加者のリスク回避姿勢が後退。「低リスク通貨」との位置づけから買いが入っていた円にはやや売りが優勢となっている。
もっとも手掛かりを欠く中で積極的な円売り・ドル買いの動きには乏しい。日本時間24日の取引で米株価指数先物が下落しているほか、米長期金利の上昇が一服していることもあって円は底堅く推移している。
円は対ユーロでは大幅に下落している。8時30分時点は1ユーロ=136円49〜52銭と、同1円25銭の円安・ユーロ高だった。ユーロは対ドルでも上昇している。8時30分時点は1ユーロ=1.0684〜85ドルと同0.0084ドルのユーロ高・ドル安だった。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が23日公表のブログで「7月に利上げが可能になる」などとの見方を示し、早期に金融政策の正常化が進むとの観測からユーロに買いが入った。
●外為:1ドル127円80銭前後とドル高・円安で推移 5/24
24日の外国為替市場のドル円相場は午前9時時点で1ドル=127円80銭前後と、前日午後5時時点に比べ22銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円52銭前後と1円27銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。 
●円相場、127円77〜78銭 5/24
24日の東京外国為替市場の円相場は、正午現在1ドル=127円77〜78銭と、前日(127円59〜59銭)に比べ18銭の円安・ドル高となった。 
●外為:1ドル127円66銭前後と小幅なドル高・円安で推移 5/24
24日の外国為替市場のドル円相場は午後2時時点で1ドル=127円66銭前後と、前日午後5時時点に比べ8銭の小幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円11銭前後と86銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●外為:1ドル127円42銭前後とドル高・円安で推移 5/24
24日の外国為替市場のドル円相場は午後6時時点で1ドル=127円42銭前後と、午後5時時点に比べ16銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円36銭前後と13銭のユーロ安・円高で推移している。
●外為:1ドル127円34銭前後と小幅なドル高・円安で推移 5/24
24日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=127円34銭前後と、午後5時時点に比べ8銭の小幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円37銭前後と12銭のユーロ安・円高で推移している。
●ニューヨーク外国為替市場概況・24時 ドル円、売り優勢 5/24
24日のニューヨーク外国為替市場でドル円は売り優勢。24時時点では126.51円と22時時点(127.23円)と比べて72銭程度のドル安水準だった。米国株式相場がハイテク株を中心に軟調推移となったことで、リスク回避目的の売りが先行した。また、この日発表された米経済指標が軒並み市場予想より弱い結果となったことで、米10年債利回りは2.82%台から2.71%台まで急低下。株安と米長期金利低下を手掛かりにした売りが強まり、一時126.36円と4月18日以来の安値を更新した。
ユーロドルは底堅い。24時時点では1.0726ドルと22時時点(1.0707ドル)と比べて0.0019ドル程度のユーロ高水準だった。米金利低下を背景にしたドル売りが進み、一時1.0747ドルと4月25日以来の高値を更新した。リスクオフの流れから対ドルでも伸び悩む通貨が多いなか、欧州中央銀行(ECB)の早期利上げ期待もあり、ユーロの相対的な底堅さが目立っている。
なお、カザークス・ラトビア中銀総裁は「ECBは50bpの利上げを排除すべきではない」「ECBは7月と9月、10-12月期にも1回の利上げを行うと予想」などの見解を示した。
ユーロ円は軟調。24時時点では135.71円と22時時点(136.23円)と比べて52銭程度のユーロ安水準だった。株安を受けて円が全面高となるなか、一時135.55円まで下押しした。 

 

●円相場 126円台に値上がり アメリカの景気減速への懸念が背景  5/25
24日のニューヨーク外国為替市場ではアメリカの景気減速への懸念を背景にドルを売って円を買う動きが出て円相場は一時、およそ1か月ぶりに1ドル=126円台まで値上がりしました。
外国為替市場では、アメリカの長期金利の上昇でドルの利回りが見込めるとの見方から円安ドル高が進みましたが、24日のニューヨーク市場では景気が減速することへの懸念からアメリカ国債が買われて長期金利が低下したことを背景にドルを売って円を買う動きが出ました。
このため円相場は一時、およそ1か月ぶりに1ドル=126円台まで値上がりしました。
また、ニューヨーク株式市場では取り引き開始後、IT企業のネット広告の収入が減少するとの見方などから売り注文が増え、IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数は2.3%の大幅な下落となりました。
一方、ダウ平均株価は一時、500ドルを超える大幅な値下がりとなりましたがその後は買い戻しの動きが強まって値上がりに転じ、終値は前日に比べて48ドル38セント高い3万1928ドル62セントでした。
市場関係者は「景気の減速を懸念する投資家の間で、当面のリスクを避けようと株式を売ってより安全な資産とされるアメリカ国債を買う動きが出ていて、これが円相場の値上がりにつながっている」と話しています。 
●ロンドン外為 円、127円台前半 5/25
25日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米長期金利の低下が一服したことで円売り・ドル買いが進み、1ドル=127円台前半に下落した。
正午現在は127円10〜20銭と、前日午後4時比65銭の円安・ドル高。
●ロンドン外為 ユーロ、対ドルで下落 金融政策の正常化加速の観測が後退 5/25
25日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=1.0670〜80ドルと前日の同時点に比べ0.0050ドルのユーロ安・ドル高で推移している。欧州中央銀行(ECB)が金融政策の正常化を加速するとの観測が後退し、ユーロ売り・ドル買いが優勢となっている。
ECBのパネッタ専務理事が25日の講演で「金融政策の正常化とは、刺激策を全面的に取り除くことではない。景気への中立的な政策スタンスとは異なる」と指摘し、金融緩和を徐々に縮小していく必要性を訴えた。
円は対ユーロで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=135円90銭〜136円00銭と、前日の同時点に比べ20銭の円安・ユーロ高で推移している。
英ポンドは対ドルで上昇し、英国時間16時時点は1ポンド=1.2540〜50ドルと前日の同時点に比べ0.0020ドルのポンド高・ドル安で推移している。前日にポンド売り・ドル買いが進んでいたため、持ち高調整のポンド買い・ドル売りが優勢となっている。
●ドル・円下落どこまで、米金利上昇に一服感−125円割れると121円台も 5/25
ドル・円相場の調整がどこまで深まるかに市場の関心が集まっている。米国の景気後退懸念を背景に米長期金利上昇の一服感が強まる中、1ドル=125円までは調整の範囲との見方がある一方で、抜ければ121円台までの下落を予想する向きもある。
IG証券の石川順一シニアFXストラテジストは、米景気の先行きリスクが懸念される中、「米金利上昇圧力の後退ないしは低下幅拡大が意識される局面ではドル・円も新たな下値ポイントを探る展開になる」と指摘。アベノミクス相場下の2015年高値の125円85銭前後が「サポートに転換するか」が注目で、下抜けると「125円を維持ができるかが焦点になる」と話す。
ドル・円は5月9日に131円35銭と約20年ぶり高値を付けて以降、3%超下落し、24日には一時126円36銭と4月18日以来の安値を付けた。この間、米10年債利回りは3年半ぶり高水準の3.2%から2.7%台に低下。米金融当局の金融引き締めが景気後退を招くとの懸念が背景で、ブルームバーグの米エコ・サプライズ指数は8カ月ぶりに経済指標の予想比下振れが多いことを示すマイナスに転じている。
「チャートを見ると典型的な調整パターンに入ってきている」。大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、日足一目均衡表で遅行線がローソク足を下回り、基準線の上昇が止まり転換線が上から下に抜けている点を挙げ、「バイアスはかなり円高方向にかかっている」と指摘。「125円台は見に行くことになる」とし、3月28日高値の125円09銭を下抜けすると3月31日安値121円28銭まで下値の目標が広がると分析する。
一方で、ドル・円が本格的な下落トレンドに転じたとみる向きは少ない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは、今のドル・円下落は5月にかけて9週連続で上昇した後の「自律反落の範ちゅう」であり、3月安値からの上昇の38.2%押しの125円前後までの下げであれば、「トレンドが変わったという判定にはならない」と話す。
同氏は、同半値押しの123円を割り込むと130円が遠のいた感が出てくるが、「リセッション入り懸念が杞憂(きゆう)に終わることを前提にすれば、どこかで株安も止まり、6、7月の0.5ポイントずつの利上げで米短期金利が上がっていくなら、米長期金利もそれほど下がらない」と予想。投機筋の持ち高調整でドル・円は下がっても「日本の基礎収支の需給環境はまだドル買い・円売りが有利で、米景気への過度の警戒感が和らいでくれば、130円台戻しを狙うような展開になっていく」とみる。
みずほ証券は25日までに6月末のドル・円予想を133円から128円に引き下げた。山本雅文チーフ為替ストラテジストは、米株価の調整が想定以上に長引きかつ大幅となり、米株安が米金利低下と米景気後退懸念にもつながったことから、地合いが悪化したと説明。もっとも、今後の米景気の拡大と米利上げの継続見通しが確認されれば、年後半には再び上昇基調に戻るとし、来年3月末136円との予想は維持している。
●ドル円相場は円高に反発か? 為替を動かす要因を考える 5/25
急速に円高が進んだドル円相場に反発の兆しが見えている。5月24日のドル円相場は上昇し、1ドル127円前後まで円高が進んだ。4月末から5月頭には、一時131円を超える水準まで円安が進行したが、一服感も出てきた。
ではこの後のドル円相場をどう見るか。「(円安方向に)かなり行き過ぎな状況になっている」と分析するのは、三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストだ。
為替変動をもたらす要因
為替相場は、2国間ーー今回でいえば日本と米国の関係によって変動する。しかも、短期、中期、長期といったスパンで、変動をもたらす要素が異なることが特徴だ。
短期では、二国間の金利差によって為替が動く。金利の安い国で資金を調達して、金利の高い国の通貨を買い、運用すれば、金利差分だけ利益が出るというのが根拠だ。これを一般にキャリートレードとも言う。
現状、米国は高まるインフレに対応するために金融引き締め、つまり利上げを進めている。一方で日本は黒田東彦日銀総裁が緩和継続を宣言するなど、利上げの見通しはない。米国は3月に政策金利を0.25ポイント引き上げ、2022年は計7回の利上げが見込まれている。政策金利の誘導目標は2.75〜3%となる見通しだ。
為替は、こうした将来の利上げ回数を事前に織り込むことで変化する。金利先物市場が織り込む利上げ回数とドル円レートの推移を見ると、きれいに一致して連動している。日米の金利差は、ドル円が110円前後だった21年秋の1.3%前後から、足元2.6%程度まで拡大しており、こちらも二国間の金利差が為替に影響していることを示している。
ドル円はオーバーシュートしている
一方で、短期の為替を動かす材料は、往々にして行き過ぎる。下記は、市川氏が示した投機筋の通貨先物ポジションだ。円の売り越しは円安を呼び、円の買い越しは円高を呼ぶ。ところが現状は「円の売り越しを大きく超えて円安が進んでいる」(市川氏)。
為替を短期的に動かす要因として投機筋が挙げられることが多いが、現状の円安は別の要素もありそうだ。市川氏は、輸入企業が円安を見越して早めにドルを買ったり、円安期待で外貨を買った個人、さらにはFX取引も要因の1つではないかと見る。
為替の中期要因も、これ以上の円安は示唆していない。一般に、貿易収支は為替の中期要因となる。ある国の貿易赤字は、獲得する外貨よりも支払う外貨のほうが多いことを意味し、差分は市場で外貨を買ってこなくてはならない。つまり自国通貨安、外貨高の要因となる。
翻って米国は貿易赤字大国であり慢性的にドル安要因を抱えている。一方で、日本は資源高の影響で、21年度は2年ぶりの貿易赤字となった。このまま貿易赤字が定着すれば、こちらは円安の要因になるかっこうだ。
購買力平価でも歴史的なオーバーシュート
最後の長期要因でも、現在のドル円は「歴史的なオーバーシュート領域」(市川氏)にある。購買力平価の推移グラフがそれだ。
これは両国の物価水準をもとに、同じ物品やサービスが同じ値段で買えるとしたら、為替レートはいくらが適切かを計算したものだ。その分かりやすい例として、英エコノミストが毎年発表している「ビッグマック指数」がある。マクドナルドのビッグマックの値段を世界各国で比較したもので、ビッグマック価格と現実の為替がどのくらいかい離しているかを表している。
グラフを見ると、1970年代から円高方向へと推移してきたことが分かる。これは米国でインフレが進行しモノの値段がすべて上昇してきた一方で、日本は長らくデフレが続きモノの値段が変わらなかった結果起きた。インフレ率が高いのは通貨安要因であり、日米のインフレ率の差は「長い目で見るとドル安要因」(市川氏)というわけだ。
これまで、ドル円実勢レートは消費者物価ベースと輸出物価ベースの間に挟まって推移してきた。ところが、このレンジを突き抜けたタイミングが2回ある。米長期金利が11〜13%まで上昇し日米金利差が拡大した1980年代前半と、現在だ。
「超長期の購買力平価で見ても、かなり足元円安が進みすぎている。これから調整が入っていく動きになるのでは」(市川氏)
最後に、内外の物価格差を考慮した円の実質的な価値である実質実効為替レートの推移を確認しよう。70代以降、貿易黒字の大幅な拡大(円高要因)やプラザ合意によるドル高是正、そして日米貿易摩擦問題の深刻化などで、円の価値は上昇していった。
そして80年代のバブル崩壊を経て、円の強さが景気低迷とデフレ長期化の一因となった。そこから30年をかけて、「実力以上に高く評価されてきた円の評価が修正されてきた」(市川氏)のが現在だ。
こうした背景を踏まえ、市川氏は「1ドル130円は個人的には行き過ぎ。来年、再来年を見たときは、購買力平価からすると円が安すぎる」とした。 

 

●NY外為 円、127円台前半 5/26
25日のニューヨーク外国為替市場では、米長期金利の低下一服を受けてドルが買い戻され、円相場は1ドル=127円台前半に下落した。午後5時現在は127円26〜36銭と、前日同時刻(126円80〜90銭)比46銭の円安・ドル高。
相場は126円98銭で米市場入り後、連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の公表を控えて円売り・ドル買いが優勢となり、円は一時127円49銭まで値を下げた。米長期金利が前日終盤の水準を一時上回るなど、ここ最近の低下傾向に一服感が広がったことがドル買いを促した。
FOMC議事要旨では、今後2回の会合で、それぞれ0.5%の追加利上げを行うことを参加者の大半が支持したことが示された。市場の想定内の内容にとどまったことから相場の反応は限られ、円は終盤にかけて小幅に下げ幅を縮めた。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0675〜0685ドル(前日午後5時は1.0730〜0740ドル)、対円では同135円86〜96銭(同136円12〜22銭)と、26銭の円高・ユーロ安。
●NY円、反落 1ドル=127円25〜35銭で終了 対ユーロのドル買いが波及 5/26
25日のニューヨーク外国為替市場で円相場は反落し、前日比45銭円安・ドル高の1ドル=127円25〜35銭で取引を終えた。欧州中央銀行(ECB)が金融政策の正常化を早急に進めるとの見方が後退したのを受けてドルが対ユーロで上昇し、対円でのドル買いに波及した。米欧の株式相場が上昇したのも、低リスク通貨とされる円の売りを誘った。
欧州中央銀行(ECB)のパネッタ専務理事が25日の講演で、金融緩和を緩やかに解除していくことの必要性を主張した。今週に入ってラガルドECB総裁が「7月に利上げが可能になる」との見解を示し、金融政策の正常化を加速するとの見方が強まっていた。パネッタ氏の発言で対ユーロでのドル買いが優勢になり、円に対してもドルが買われた。円は前日に対ドルで4月中旬以来の高値を付けており、持ち高調整の売りも出やすかった。
欧州主要国の株式相場が軒並み上昇し、米株式市場ではダウ工業株30種平均が4日続伸した。前日に大きく下げたナスダック総合株価指数も反発し、投資家のリスク回避姿勢が和らいだのも円売りを誘った。
米連邦準備理事会(FRB)が午後に公表した5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨では参加者が「金融政策を早急に中立的なスタンスに移行させるべきだ」との見解で合意し、大半の参加者が「今後数回の会合で0.5%の利上げを実施することが適切」と判断していたことが分かった。ただ、新味に乏しく、為替相場の反応は目立たなかった。
この日の円の安値は127円49銭、高値は126円80銭だった。
円は対ユーロで続伸し、前日比25銭円高・ユーロ安の1ユーロ=135円85〜95銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで3日ぶりに反落し、前日比0.0055ドル安い1ユーロ=1.0675〜85ドルで終えた。ECBによる早急な金融政策正常化の観測が後退し、ユーロが売られた。
ユーロの安値は1.0642ドル、高値は1.0694ドルだった。 
●外為 1ドル127円26銭前後とドル高・円安で推移 5/26
26日の外国為替市場のドル円相場は午前11時時点で1ドル=127円26銭前後と、前日午後5時時点に比べ15銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円02銭前後と21銭のユーロ高・円安で推移している。
●外為 1ドル127円19銭前後と小幅なドル高・円安で推移 5/26
26日の外国為替市場のドル円相場は午後4時時点で1ドル=127円19銭前後と、前日午後5時時点に比べ8銭の小幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=135円78銭前後と3銭のユーロ安・円高と横ばい圏で推移している。
●外為 1ドル126円73銭前後とドル高・円安で推移 5/26
26日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=126円73銭前後と、午後5時時点に比べ14銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=135円74銭前後と43銭のユーロ高・円安で推移している。
●ロンドン外為 円、126円台後半 5/26
26日朝のロンドン外国為替市場の円相場は、黒田東彦日銀総裁が金融緩和策の出口戦略に言及したことをきっかけに円が買われ、1ドル=126円台後半に上昇した。午前9時現在は126円55〜65銭と、前日午後4時比75銭の円高・ドル安。 
●ニューヨーク外国為替市場概況・24時 ユーロ円、強含み 5/26
26日のニューヨーク外国為替市場でユーロ円は強含み。24時時点では136.46円と22時時点(136.06円)と比べて40銭程度のユーロ高水準だった。米国株式相場が堅調に推移していることをながめ、投資家のリスク志向改善を意識した買いが入り、136.40円台まで値を上げた。また、原油先物価格の上昇を受けて資源国通貨の買いも目立ち、カナダドル円は本日高値の99.61円を視野に入れた動きとなった。
ドル円は買い戻し。24時時点では127.33円と22時時点(127.17円)と比べて16銭程度のドル高水準だった。クロス円の上昇につれて127.30円台まで買い戻しが入った。株高を支えに全般円売りが進むなか、黒田日銀総裁の発言を受けて下落した下げ幅をほぼ取り戻している。
ユーロドルはもみ合い。24時時点では1.0717ドルと22時時点(1.0698ドル)と比べて0.0019ドル程度のユーロ高水準だった。1.0710ドルを挟んだ水準でのもみ合いとなった。ユーロポンドやユーロ円などの上昇につれて本日高値の1.0723ドルに迫る場面もあったが、積極的に上値を試す展開にはなっていない。 

 

●外為17時 円、8日ぶり反落 127円台前半 株高を受けて 5/27
27日の東京外国為替市場で円相場は8営業日ぶりに反落した。17時時点は1ドル=127円10〜11銭と、前日の同時点に比べ51銭の円安・ドル高だった。27日の日経平均株価の上昇などを背景として、投資家の運用リスクを回避する姿勢が後退して、「低リスク通貨」とされる円には売りが優勢だった。
円は一時127円20銭近辺まで売りが出た。26日の取引で欧米の主要株価指数がそろって上昇。27日の取引では日経平均株価も上昇した。投資家のリスク選好を背景に円は売りが続いた。国内輸入企業などの実需勢による円売り・ドル買いもみられた。ただ、日本時間27日夜に4月の米国のPCE(個人消費支出)デフレーターなどの発表を控え、積極的に持ち高を一方向に傾ける動きは限られた。9〜17時の円の高値は126円68銭近辺で値幅は52銭程度だった。
円は対ユーロで3日ぶりに反落した。17時時点は1ユーロ=136円42〜45銭と、前日の17時時点に比べ1円12銭の大幅な円安・ユーロ高だった。
ユーロは対ドルで続伸した。17時時点は1ユーロ=1.0733〜34ドルと、同0.0045ドルのユーロ高・ドル安だった。
●ニューヨーク外国為替市場概況・24時 ドル円、下げ渋り 5/27
27日のニューヨーク外国為替市場でドル円は下げ渋り。24時時点では127.11円と22時時点(127.03円)と比べて8銭程度のドル高水準だった。米10年債利回りの低下を受けて126.82円付近まで弱含む場面もあったが、ロンドン16時(日本時間24時)のフィキシングに向けたドル買いが観測されると127円台を回復した。
なお、5月米消費者態度指数(ミシガン大調べ)確報値は58.4と市場予想の59.1をわずかに下回ったが、相場への影響は限られた。
ユーロドルは上値が重い。24時時点では1.0711ドルと22時時点(1.0715ドル)と比べて0.0004ドル程度のユーロ安水準だった。リスクオンの流れに沿って1.0750ドル付近まで上昇する場面があったものの、その後は全般にドル買いが強まった影響から1.0700ドル手前まで失速した。
ユーロ円は24時時点では136.15円と22時時点(136.12円)と比べて3銭程度のユーロ高水準だった。米国株式相場が堅調に推移していることをながめ、投資家のリスク志向改善を意識した買いが先行。一時は136.40円付近まで下値を切り上げる場面も見られた。もっとも、その後はユーロドルの失速につれて上値が重くなった。
●短期・中期・長期の視点で考える「ドル円相場」 5/27
金利差という短期の変動要因によって大幅なドル高・円安が進行も、ややオーバーシュート気味に
ドル円相場は3月以降、大幅なドル高・円安が進行し、5月9日の取引時間中に一時1ドル=131円35銭水準をつけました。日米金融政策の方向性の違いなどを背景に、ドル買い・円売りに弾みがついたものと思われます。足元のドル円は127円前後で推移しており、ドル高・円安の動きはやや一服していますが、今後の相場展開について、短期、中期、長期の視点で考えてみます。
まず、短期の相場変動要因として、主に「金利差」があげられます。今局面でも、前述の日米金融政策の方向性が異なることで、日米長期金利差が拡大し、ドル高・円安が進行しました。なお、金利要因は非常にわかりやすいため、相場の動きがオーバーシュートする(行き過ぎる)こともあります。参考までに、通貨先物取引の投機筋ポジションをみると、円の売り越し以上に、ドル高・円安が進行していることが分かります(図表1)。
ただ中期の相場変動要因である貿易収支を踏まえると、円買い圧力は以前より小さいとみられる
もちろん投機筋のほかにも円を売る主体は存在します。例えば日本国内では、輸入企業(ドル買い・円売りの為替予約を締結)、個人(円資金をもとにドルの外貨預金を作成)、外国為替証拠金(FX)投資家(ドル買い・円売りポジションを構築)などで、彼らが一斉に動けば、ドル高・円安は大きく進行します。なお、投機筋やFX投資家は、比較的短期で反対売買(ドル売り・円買い)を行い、ポジションを閉じる傾向があります。
次に、中期の相場変動要因として、主に「貿易収支」があげられます。貿易赤字国では自国通貨を売って外貨を買う、貿易黒字国では外貨を売って自国通貨を買うという、取引需要があります。米国は変わらず貿易赤字国ですが、日本はかつての巨額の貿易黒字が年々縮小し、最近では貿易赤字が定着するとの懸念もみられます。そのため、日本では貿易取引に伴う円買い需要も、過去に比べ減ってきていると推測されます。
物価という長期の変動要因から、目先適度な調整後、時間をかけてゆっくりとドル安・円高方向へ
最後に、長期の相場変動要因として、主に「物価の格差」があげられます。物価の相対的変化率が為替レートの変化率を決めると考える「相対的購買力平価」は、長期的な為替レートの趨勢を評価する上で広く利用されています。これに基づくと、物価の高い国の通貨は長期的に下落することになりますが、実際、ドル円の長期トレンドは、日米の物価格差を反映し、ドル安・円高の傾向が確認されます。
ただ、現在のドル円の実勢レートは購買力平価を踏まえると、オーバーシュートの可能性が高いと思われます(図表2)。以上より、短期を週単位・月単位、中期を月単位・年単位、長期を複数年単位として、今後のドル円相場を展望した場合、「短期的にドル安・円高方向の調整が見込まれるものの、中期的な円買い圧力は強くなく、大幅なドル安・円高は想定し難い。ただ長期的にはゆっくりとドル安・円高地合いに戻る」、という動きが想定されます。
●円安継続…「物価上昇でも給与上がらず生活苦」を避ける防御策 5/27
4月28日、円相場は1ドル=130円台をつけ、20年ぶりの円安水準を更新しました。直近では130円台から遠のいたものの、多くのアナリストは今後ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想しています。円安が続くことによって、私たちの生活にはどのような影響が出るのでしょうか? 円安の影響から身を守るためには、どうすればよいのでしょうか。1級FP技能士・笹田潔氏が解説します。
円安が及ぼす影響は?
日本銀行が大規模な金融緩和を継続する方針を示したことで、ドル円相場はついに130円台に突入しました。直近では米国株式の下落により円相場は1ドル=128〜129円を推移していますが、今後のドル高・円安トレンドが継続のメインシナリオとして多くのアナリストが予想しています。
では、円安が続くことで身近な生活にどのような影響が出てしまうのでしょうか?
円安になると、日本からの輸出が有利になり、海外投資からの利益も円建てでは膨らむとされ、過去輸出産業で貿易黒字を築いていた日本経済においてプラスに働くものと考えられていました。ところが、現在の日本において輸入品が割高になることは、海外に頼るエネルギーや、食料品、原材料の価格が上昇するだけでなく、コロナ禍やロシア・ウクライナ情勢による物流が滞ることによる国際価格の急上昇も相まって、その影響が増幅されることに繋がっていることは言うまでもなく、多くのメディアでも取り上げられていることです。
もちろん、この影響はすでに消費者物価指数(CPI)にも及んでおり、速報値では月次の前年同月比2.5%と公表されています(図表2)。
このまま消費者物価指数(CPI)が上がり続けるか否かは今回の考察では言及しませんが、米国の消費者物価指数(CPI)の上昇継続の流れからも、容易に推測できることと言えます。
「過去のインフレ」と「今回のインフレ」の違い
円安が進行すると、物価が上昇する傾向にあることは前述しましたが、物価が上昇する局面では通常インフレーション(インフレ)になります。
では、インフレはどのようにして生じるのでしょうか? 過去インフレは、以下のような流れから、生じるとされていました。
景気がよくなる→給与が上がる/収入が増える→お金よりモノを必要とする→需要が増えて消費が拡大する→供給不足が生じモノの値段が上がる→供給量を増やすべく、企業が設備や人への投資を加速する→仕事の機会が増える→景気が良くなる という循環です。
今回のインフレはモノの需給関係から生じた価格上昇ではなく、外部環境から生じている物価上昇と言えます。これは、黒田総裁が4月の記者会見で「消費者物価は4月以降、2%程度の伸びとなる可能性がある」としながらも、今後も大規模な金融緩和を続ける姿勢を繰り返し強調した「エネルギー価格の上昇による『望ましくない物価上昇』であり、金融緩和を続け、景気を下支えする必要がある」としたことに繋がります。
まさにこの状況こそが、景気が後退していく中でインフレーション(インフレ、物価上昇)が同時進行する現象であり、景気停滞を意味する「スタグネーション(Stagnation)」と「インフレーション(Inflation)」を組み合わせた合成語で、スタグフレーションといいます。
スタグフレーション時では物価が上昇する一方、給料が上がらないため生活が苦しくなる方も出てしまいます。そのため、早めに給料以外の方法で、安定した収入を確保する準備をしていくことが必要になるのです。
円安でも自分の資産を守るには?
スタグフレーションが起きたときにも強いと言われる運用に、投資商品の購入があります。これは人の雇用と直接関係せず収支が得られることからです。当然、投資にはリターンに合ったリスクも存在します。投資商品の購入は自己責任で行っていただくことが大原則ですので、給与以外の方法が投資と記載してあったことを理由に投資商品の購入に走ることは避けてください。
投資商品の購入でリスクを軽減する方法の一つに「分散投資」があります。分散投資とは、ひとつの資産やひとつの銘柄に集中して一度に資金を投入するのではなく、いくつもの資産やいくつもの銘柄に対し複数回に分けて投資することを指します。分散投資では相関係数(2種類のデータ間の関連性を表す係数)が低い(相関係数が1に近い:正の相関、相関係数が-1に近い:負の相関、相関係数が0に近い:相関がない とされ、正の相関とは同じ方向に動きやすいことで、負の相関とは逆方向に動きやすいことを示します)資産を組み合わせることが、より効果的です。
相関係数のことなる資産の種類として、以下の投資商品が挙げられます。
(1)不動産投資 (2)株式投資 (3)債権投資 (4)金・コモディティ (5)暗号資産投資 (6)FX投資
まとめ 一刻も早く「安定した収入源」を用意すべし
今回は、円安で資産劣化を防ぐための防御策として、投資商品の購入という手法があるとしましたが、投資に取り組んだことがない、前掲のような商品の買い方も分からないという方が多いと思います。
為替レートは、金利や通貨供給量の差だけで決まるものではなく、資源や食糧などに基づいた富や経済力によっても大きく左右されます。これは現在円がルーブルよりも極端に価値が低いと評価されていることから明らかです。ルーブルには、貨幣価値を担保する資源、食糧(ロシアは、原油産出量世界第3位、小麦生産量世界第3位 トウモロコシ生産量世界第10位、金産出量世界第3位)などがあります。日本にはそれらがほとんどないのです。
円安は円が売られるから起こるのですが、今の円安は、円売りではなく「日本売り」といっても過言はないと思います。経済成長が鈍化している国の通貨を、グローバルな視点でみれば投資家はもちろん、国も持ちたがらないのです。
今回の円安は過去と異なり一過性のものとは言えない可能性があります。そのうえで保有している資産の劣化を防ぐ手法を書かせていただきました。 

 

●急速な円安進行に一服感 米景気後退懸念でドル売り 5/28
急速な円安進行に一服感が出ている。円はこの3週間でドルに対して約4円値上がりした。歴史的なインフレで米景気の後退懸念が強まり、ドルを売る動きが強まっているためだ。ただ円安に伴う輸入コストの増加を価格に反映しきれていない企業も多く、日本の消費者物価は当面、高水準の上昇が続きそうだ。
外国為替市場の円相場は5月9日、1ドル=131円34銭をつけ、2002年4月以来、約20年ぶりの円安・ドル高水準となった。3月1日には1ドル=115円近辺で取引されていたが、米連邦準備制度理事会(FRB)が3年3カ月ぶりの利上げを決めると、米長期金利が上昇。日米の金利差拡大が意識され、運用に有利なドルに買い注文が集まって円安が加速した。
「週単位で見ると、・・・
●為替相場 5/23〜5/27 5/28
23日からの週は、ドル売りが優勢。FOMC議事録公表を通過して米国の利上げペースが市場に織り込まれるなかで、欧州では7月利上げ開始がコンセンサス。ただ、ECBの利上げ幅をめぐって25bpが有力も、一部に50bpの見方があるなどタカ派度合いは不透明だ。ユーロ買い・ドル売りに傾きやすい状況。また、市場で利上げが十分に織り込まれている米国や英国では、利上げ一巡後の景気後退の回避が焦点となりつつある。長期債利回りの低下がドル売りやポンド売り圧力となる面もあったようだ。もっとも、50bpの利上げは期待先行という見方もあり、週末にはユーロ売りが入る場面が見られた。一方、日本では日銀総裁が他の諸国と比較してインフレ上昇は抑制されていると指摘、強力な緩和スタンスを維持する姿勢は変わらない。ドル円はドル売りに押され気味だが、クロス円は下がると買いが入る動きとなっている。NZ中銀が予想通りの利上げを発表し、声明で今後の利上げ継続を示唆したことでNZドル買いが強まった。
23日
東京市場で、ドル円は振幅。朝方に127.60台へと小安く推移したあと、東京勢の本格参加とともに買いが優勢となり128.08近辺の高値をつけた。その後は一転して売りが強まり、12710台まで押し下げられている。先週末海外市場での安値を割り込んでストップ注文が発動されたほか、米機関投資家筋からの売りのうわさもでていた。しかし、売りも続かず127.80台へと買い戻しが入っている。米株先物や米債利回り動向に神経質に反応していた。日米首脳会談が行われたが、為替市場に直接つながるものはなく影響は限定的だった。豪ドルが堅調。週末の豪総選挙で労働党が9年ぶりの政権奪還をほぼ確実としたことが、不透明感の払しょくにつながった。対ドルで0.71台乗せ、対円で91円台を試す動きに。
ロンドン市場は、ユーロ買いが優勢。5月独Ifo景況感指数が予想外に上昇したことに加えて、ラガルドECB総裁のタカ派発言に反応した。ユーロドルは1.06近辺での揉み合いを上抜けると、1.0690付近まで上昇。ユーロ円は135円台前半から136円台に乗せている。対ポンドでもユーロ買いが強まった。ただ、欧州株は上げ幅をやや縮めており、ECBの利上げペースの加速が警戒されたようだ。ポンドも連れ高となり対ドルで1.26近辺へ、対円で160円台後半へと買われている。ドル円は米債利回り動向に敏感に反応して上下動。ロンドン朝方に米債利回りが上昇すると127.90台まで上昇、東京午前の下げを消した。しかし、米債利回りが上昇一服し、ユーロドルの上昇が加わってドル売りに押され127円台半ば割れへと押し戻された。日米首脳会談が行われ、バイデン米大統領が、対中関税の引き下げを検討、としたことが株式市場に好感される面もあったようだ。ただ、ドル円は上値が重く、クロス円の上昇もユーロ買いによる面が強かった。
NY市場でも、ユーロ買いが優勢。ユーロドルはロンドン市場で急伸したあと、1.0690台へと高値を伸ばしている。ラガルドECB総裁が、「資産購入プログラム(APP)での純購入は7−9月(第3四半期)の非常に早い段階で終わると考えている。これにより、フォワードガイダンスに沿って7月の理事会で金利を引き上げることが可能になる。現在の見通しに基づくと、7ー9月期末までにマイナス金利を脱却できる可能性が高い」とブログで述べていた。ポンドドルも連れ高となって1.26ちょうど付近まで一時上昇。ただ、対ユーロでのポンド売り圧力もあって、1.25台後半での揉み合いに落ち着いた。ドル円は127円台前半から後半へと底堅く推移。米株式市場でダウ平均が一時700ドル超上昇し、ドル円の下値をサポートした。ただ、128円手前では上値を抑えられている。
24日
東京市場は、リスク警戒の円買いがやや優勢。ドル円は朝方に米株先物・時間外取引の下落を受けて、127.65近辺まで軟化。しかし、大口買い観測などで128円台に一時乗せた。しかし、その後は株安に押されて127.50台へと押し戻された。NY引け後に発表された米スナップの決算が弱かったことを受けて、同社株が30超安となり、ハイテク関連株全般に売りに押された。ユーロドルは前日のラガルドECB総裁発言を受けた買いが一服。1.07手前が重くなると1.0660台へと小反落。あすに中銀会合結果発表を控えるNZドルは調整的な売りが優勢だったが、0.64台前半での取引に落ち着いた。
ロンドン市場は、ドル売りが先行。ナスダック先物が大幅安、米債利回りが低下したことに反応。ドル円は127円台後半から一時127.09レベルまで下落。その後はやや株安が一服し、127円台半ばへと下げ渋っている。ユーロ相場は買いが優勢。ユーロドルはドル安圧力とともに、ラガルドECB総裁が再び第3四半期にはマイナス金利を脱却との見通しに言及し、買われて1.06台後半から一時1.0736レベルまで上伸。ユーロ円は136円近辺でサポートされると136.80付近まで一時上昇。ポンドは売られている。序盤はポンドドルが1.26手前まで買われる場面があったが、5月英PMI速報値が予想外に弱い数字となり急落。1.2475レベルまで安値を広げた。戻りは1.25台前半までと限定的。ポンド円も160円台半ばから一時159円台割れとなった。ユーロポンドは0.84台後半から0.85台後半へと大きく買われた。足元では、株安の動きは一服しているが、欧州株、米株先物ともに引き続きマイナス圏で推移している。
NY市場で、ドル円は126円台に下落。リスク回避ムードが広がるなかで、見切り売りが強まり一時126.35付近まで下落した。サポートされてきた127円ちょうどを下抜けて、ストップを巻き込んだもよう。前日の大幅高で底打ちが期待されていた米株式市場が取引序盤には下落したことが失望感を広げたようだ。ただ、為替市場ではリスク回避のドル買いではなく、逆にドル売りが強まった。市場では、景気後退が広く意識されるようであれば、FRBの利上げ期待が後退する可能性を見ているのかもしれない。前日は一部のFOMCメンバーから9月で利上げを一旦停止し、様子を見るのも選択肢の1つとの発言が出ていた。ユーロドルは一時1.07台半ばまで急速に買われた。カザークス・ラトビア中銀総裁は、「0.50%ポイントの大幅利上げ排除すべきでない」と述べた。一方で、ポンドドルには売りが強まり1.25台を割り込む場面があった。ロンドン時間に発表になっていた5月の英PMIを受けてポンドは戻り売りが強まっている。特にサービス業の弱さが目立ち、生活費危機の中で家計の実質所得が減少し、消費需要が弱まっていることを示唆した格好だった。
25日
東京市場では、NZドルが買われた。NZ中銀は市場予想通り0.5%の利上げを発表。声明の中で政策金利OCRがターゲットに安定的に戻るまでの引き締め姿勢継続に言及。追加利上げを強く示唆するものとしてNZドルの急騰につながった。発表前の下落を消して対ドルは0.65台乗せ。対円は81円台半ばから82円台前半に。ドル円は126.60付近まで軟化したあと、127円台に乗せた。米株先物が底堅く推移し、リスク警戒の動きが後退している。ユーロドルは1.0730近辺から1.0700台まで小安く推移。ドル円の上昇など、ドル買いの動きが重石に。
ロンドン市場は、ユーロ売りが優勢。ユーロドルの反落とともにドル指数の下げも一服。ユーロ売りの背景としては、ECB金融安定化報告で、インフレと成長鈍化の中で、企業の弱体化や資産市場が急激に調整されるリスクを警告していた。また、パネッタECB理事が正常化が中立を意味するものではないとの見方示しており、緩和スタンスを残したいとのニュアンスが感じられた。ユーロドルは1.07台を割り込むと、安値を1.0656レベルまで広げた。ユーロ円は136円付近から一時135.50割れ。ポンドドルは序盤に1.2560近辺まで買われたが、ロンドン勢の本格参加とともに売りに押されて一時1.2485近辺まで下落。ポンド円も159.50超えとなったあとは売りに転じて128.70付近まで反落。ドル円は東京市場からのじり高の動きを受けて序盤に127.30近辺に高値を伸ばしたが、その後は売買が交錯して127円台割れとなる場面も。米株先物はやや売りに押されている。
NY市場は、ドル売りが優勢。午後になって5月開催分のFOMC議事録が発表された。議事録では大半のメンバーが次回6月と7月の2回の0.50%ポイントの大幅利上げを支持していることが明らかとなった。その一方で、「迅速に利上げを実施すれば、年内において政策引き締めの効果、および経済の展開が政策調整をどの程度正当化したかを見極める上で良い位置につけることができると、多くの参加者が判断した」としている。市場からは、FRBが中立金利の水準まで迅速に政策金利を引き上げたあとは、利上げを一旦停止し、年末に向けて再評価するのではとの見方も。ユーロドルはロンドン時間の下げを戻す動き。1.06台半ばから1.06台後半へと反発。ポンドドルもロンドン時間に1.24台まで下落したが、NY時間には1.25台後半まで高値を伸ばした。この日は英中銀のチーフエコノミストのピル委員の発言が伝わっていたが、英中銀は高インフレと戦うために追加の引き締めを実施する必要があるが、あまりにも早く行動して英国を景気後退に追い込む危険性もあると警戒していた。 
26日
東京市場では、主要通貨が方向性に欠ける振幅だった。ドル円は朝方に前日の米FOMC後の売りが継続し127.12近辺まで下落。すぐに買いに転じると午前中に127.58近辺の高値をつけた。その後は米株先物や米債利回りの上下動をにらみつつ、レンジ内での振幅が続いた。ユーロドルは前日からの上昇の流れを受けて午前中に1.0723近辺まで高値を伸ばした。その後は上値を抑えられて揉み合いに。午後には下押しに流れが転じて1.06台後半に軟化した。ユーロ円は買いが先行して136.55近辺まで買われたあとは、ユーロドルの下げとともに135円台後半へと下押しされた。
ロンドン市場は、ドル売りが継続している。ドル売りを先導したのがドル円の下落。黒田日銀総裁が「米利上げでどんどん円安になるという事ではない、金利差と為替の関係は必ずしも確定的な結論ない」と述べたことに反応。ドル円は127円台を割り込み、126.55近辺まで下落した。この動きにやや遅れてユーロドルやポンドドルが買われている。ユーロドルは1.06台後半へと上値重く推移していたが、1.07台乗せから高値を1.0723近辺に伸ばした。ポンドドルは1.2550付近へと下げていたが、1.25台後半での振幅を経て1.2621近辺に高値を更新。株式市場は売買が交錯する神経質な動きとなっているが、次第に買いが優勢になってきている。米10年債利回りは2.70%付近に低下したあとは2.74%台に上昇と方向性に欠けた。前日の米FOMC議事録を無難に通過して、リスク警戒の動きは一服している。ドル円はクロス円とともに買い戻され、127円付近へと反発も、日銀総裁発言前の水準には届いていない。
NY市場ではロンドン市場で値を落としたドル円が買い戻される動きに。米株が続伸となり、リスク警戒感の後退からの円売りが強まった。ユーロドルではユーロ買いドル売りの動き。株高の動きが円安、ドル円を除くドル安につながっている。ロンドン市場で1.0720台まで上昇した後、1.0690割れまで調整が入る場面が見られたが、その後再びのユーロ買いドル売りとなり、1.0730前後まで。ロンドン市場で振幅が目立ったポンドドルは、ロンドン市場での1.2620前後までの上昇からいったん1.2550までと東京午後の安値圏に値を落とす動き。ただ、その後は下げ渋りを見せた。ユーロ円はドル円の買いとユーロドルの上昇の両面から支えられる形で136円60銭台まで。ロンドン市場での135円20銭台までの下げから1円半近い反発となった。
27日
東京市場では、午前中にドル円が値を落とす動きに。NY市場で127円台半ばがやや重くなり、下げやすい地合いとなる中、米債利回りが冴えない動きを見せたことをきっかけに売りが強まった。127円60銭台まで一時値を落としたが、前日ロンドン市場の安値に届かず、その後はいったんもみ合いに。ドル円でのドル売りもあってユーロドルはしっかり。昼前に1.0740前後を超え、1.0750超えのストップロス注文を巻き込む形で1.0760台まで。その他豪ドルの買いが目立つ展開に。アジア株式市場で香港株が大きく反発を見せ、リスク選好の動きが強まったことが、資源国通貨買いにつながった。東京午前の0.7100を挟んでの推移から0.7140台を付ける動きを見せている。
ロンドン市場は、ユーロドルの下げが目立った。東京昼頃の高値からじりじりと値を落とす動きを見せると、上昇局面でポイントとなった1.0740を割り込んで売りが加速。1.07を割り込むところまで売り込まれた。ECBによる7月及び9月の利上げを織り込む動きが進んでいるが、市場の一部で期待がある7月の0.25%利上げについては期待先行との意識が出てきており、調整が入った形。ドル円は東京市場の下げ分を解消する動きとなり127円20銭台まで。アジア市場での香港株の買い戻しに続き、欧州市場でも株高の動きが優勢となり、リスク選好での円売りが入る形に。ユーロ円も136円40銭前後の動きらから一時136円70銭台まで上昇も、その後はユーロ売りの動きに押され135円80銭台まで。
NY市場は月末絡みの動きでドルの買い戻しが優勢となり、ドル円は127円台に戻している。東京時間には一時126.70近辺まで下落する場面が見られた。今週のFOMC議事録を受けて、市場はFRBの積極利上げへの期待を一服させている。一部からは、インフレにピークアウト感が出れば、9月の利上げでFRBは一旦利上げサイクルを停止するとの声も出ている。 

 

●加速する2022年のドル高は「日本凋落」が原因なのか? 5/29
円安の急激な進行と世界的に加速するドル高傾向
ここ最近の円安の急激な進行を気にされている方は多いかもしれません。2021年4月時点では1ドル=108円前後だった水準が、2022年4月19日には129円台となり、たった1年で2割弱ほど円の価値が下落した結果となっています。
この円安の問題は、対ドルに限った話ではありません。対ユーロにおいても6年10ヶ月ぶりに一時140円台(2022年4月21日時点)に突入したほか、対ポンドも6年2ヶ月ぶり一時168円台(2022年4月20日時点)に乗るなど、全方位的に円が弱くなっています。
これとは対照的に、ドルは対外的な強さを高めており、円に対しては言わずもがな、対ユーロにおいてもここ1年で約13%上昇。過去2年間の最高値に達しています。このような急速なドル高には一体どのような理由があるのでしょうか。
いち早く利上げに踏み切ったことがドル高の要因に?
日本の論調では、「日本円に下落要因があったから円安に陥ってしまった」という分析が一般的です。
その具体理由としては、慢性化する貿易赤字や、他国と比べての程成長率などが挙げられます。ユーロ安も同様で、EUの弱体化の結果だとする分析が主流です。エネルギー価格が上昇するなかで、資源を輸入に依存していたことがその要因として挙げられることが多く、その潜在的リスクが、ウクライナ危機によって一気に可視化されたとする見方も多いようです。
一方、アメリカの専門家は少し違った評価をしています。彼らの主張に見られるのが、円やユーロが弱くなったこと以上に、ドルが強くなった、すなわちドルがより多く買われるようになったのだ、という論調です。
そのロジックを見てみましょう。コロナ禍による世界的な金融緩和のなかで、アメリカはいち早く利上げを敢行。利上げを行うとドル建ての各種金融商品の金利も上昇します。実際に米国債券10年物の利回りは、2022年初頭の1.60%から2022年4月22日時点で2.90%へと急上昇しました。
こうしたことによって「預金金利も上昇するのでは?」という期待感も市場に生まれ、利回りのいい商品を好む投資家の買いがドル建て商品に集まり、結果としてドルが高くなったという分析です。
過度なドル高が日本やEUの経済に与える影響
では、このドル高は、はたして他国にどのような影響を与えるのでしょうか?
かつての日本では、輸出産業に有利な点から適度な円安が好まれていました。
しかし、貿易赤字国となった現在では、円安はデメリットのほうが大きくなっています。特に問題なのが、日本が非資源国である点。日本は原材料の供給のほとんどを輸入に依存しているため、ドル高になると仕入れ原価が上昇してしまうのです。その結果、物価自体も上昇せざるをえず、消費者への圧迫にもつながります。企業も同様で、かつては円安の恩恵を受けていた輸出産業ですら、この円安によって原材料の価格高騰に苦しむ事態となっています。
ちなみに、EUも日本と同様にエネルギー資源を輸入に頼っていますが、ウクライナ危機によって、資源の供給源として重要な位置を占めていたロシアと取引ができなくなっています。EU各国は新しい供給路の確保に動いていますが、その取引がドル建てで行われることはまず間違いなく、EU圏におけるドル高は今後ますます進行することが予想されます。
アメリカにとってもデメリットは存在する
とはいえ、ドル高によってアメリカの一人勝ち状態が生まれるかというと、決してそうではありません。
なぜなら、アメリカにもまた、輸出企業や海外で事業を展開する会社が数多く存在し、それらの企業はドル高によって海外売上の数字も下がります。そうなると必然的に株価も下がるため、投資家たちにも悪影響を及ぼす可能性が大いに考えられます。企業側も、多少の為替変動に対してはリスクヘッジを行なっているものの、個々の企業の自衛策には限度があるため、ドル高が行き過ぎるとアメリカの産業構造に亀裂が走る可能性も考えられるでしょう。
しかし、ドル高の主な要因と考えられている利上げをストップすることは当面は難しいと思われます。なぜなら今回の利上げは、アメリカ市民を苦しめるインフレを食い止めるための施策としてあるからです。特にアメリカは今年11月に中間選挙を控えており、低迷している支持率を少しでも回復させたいと考えているバイデン政権は、市民からの支持を獲得するためにも、インフレ抑制の手をゆるめるわけにはいかない事情もあります。
ドルの強さを大きく左右するアメリカの金融政策ですが、不動産投資に関わる方も、今後の動向をぜひ注視しておきたいところです。
●来週の株式に向けて=SQまで膠着継続も、個別株物色には悪くない相場 5/29
日経平均株価は、週間ベースでは2週連続の上昇。前週まで90年ぶりと言われる8週連続の下落となったNYダウと比べても、底堅さを堅持している。
NYダウは、前日まで5日続伸しており9週連続安は避けられそうな雰囲気だが、依然として先行きに不透明感は漂う。東京市場も米国に比べ底堅いとはいえ、日経平均株価は2万7000円が壁となっており、上値は重い展開が続く。
来週からは6月相場に入るが、「来月10日のメジャーSQまで方向性に欠ける展開は続きそうだ」(アナリスト)との声も聞かれる。米連邦公開市場委員会(FOMC)が14〜15日に開催されるだけに、来月中旬までは手掛けにくさも残りそうだ。
ただ、「日経平均は一進一退が続くが、個別株の物色には決して悪い環境ではない」(市場関係者)との声も聞かれる。外国人観光客の新規入国の再開でインバウンド関連株が人気づき始めたが、この日はエイチ・アイ・エス<9603.T>やパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス<7532.T>が急伸した。更に、AI通訳アプリ「ポケトーク」を手掛けるソースネクスト<4344.T>が大幅続伸している。バイデン米大統領による台湾防衛に絡む発言で防衛関連株が注目されるなか、東京計器<7721.T>などの銘柄も上昇基調を強めている。
原発再稼働に絡んでは、29日の新潟県知事選も関心を集めるなか、東京電力ホールディングス<9501.T>や中国電力<9504.T>の動向なども注目されている。日経平均株価は膠着状態が続いても、注目テーマの人気に乗る個別銘柄は活況状態となる展開も期待できそうだ。来週は週末の3日に米5月雇用統計が発表され海外では重要経済指標が相次ぐ。30日は米国がメモリアルデーで休場だが、翌31日に中国5月製造業PMIが発表される。1日には米5月ISM製造業景況指数、2日に同ADP雇用統計が公表される。3日には雇用統計とともに同ISM非製造業景況指数が発表される。
国内では31日に4月鉱工業生産、1日に1〜3月法人企業統計が発表される。同日に伊藤園<2593.T>の決算が予定されている。31日にはトリプルアイズ<5026.T>がグロース市場に新規上場する。同日にMSCIの定期入れ替えが実施される。
●小売りが円安・原料高対策 値上げに壁、コスト削減急ぐ 5/29
小売り各社が円安や原材料高の対策に奔走している。ニトリホールディングスは海外で商品の生産・調達の仕組みを見直すほか、アダストリアは需要予測を活用して生産スケジュールの修正などで対応する。食品や日用品の値上げが相次ぐが、賃上げは小幅にとどまっており、消費関連企業では価格転嫁に限界がある状態だ。
円相場は一時1ドル=131円台に下落した。円安水準は輸出型の製造業にとって追い風となる。輸入に頼る小売業は円安が原価上昇などに直結する一方、価格転嫁は顧客離れの懸念がある。このため円安下でもコスト上昇を抑えられるように生産・調達の体制を多方面で修正する必要がある。
ニトリホールディングスは9割の商品を海外で生産しており、対ドルで1円の円安が年約20億円の減益要因になるという。これまで海外の外部工場に生産を委託してきたが、一部で内製化を広げる。自社での生産に切り替えることで円安などで高騰する原材料の調達や生産計画などの管理を自社でしやすくなり、原価の低減につながる。
具体的にはベトナムにカーテンを製造する専用工場を設立しており、色染めや縫製などを一貫して手掛けている。原材料を生産者から直接仕入れることも検討する。
カジュアル衣料を手掛けるアダストリアは急速に進む円安を受けて、為替予約で対応しているほか、生地などの発注の仕方を見直す。データ分析などを活用して早期に需要を予測し、生地を先行発注したり、閑散期に生産したりすることでコストを削減する。
価格が高騰している綿花については、再生ポリエステルなどの代替素材の使用も進める。
「無印良品」を展開する良品計画は、衣料品の製造工程で出た布の端などを商品に使い、価格を抑えている。これまで靴下などに残糸を活用してきたが、今後は製品の種類を増やしていく。
ビックカメラは円安や部品価格の高騰などを受けて、家電メーカーによる値上げが進むとみている。すでに食品や日用品などの値上げが進んでおり、消費者は値上げに対して敏感になっている。同社は一部商品の在庫を増やすことで、値上げ前の駆け込み需要などに対応できるようにしている。
賃金が伸び悩むなか、原材料高や円安を転嫁する値上げだけでは、節約志向を強める消費者の買い控えを招きかねない。既存商品を定期的に値下げしてきた良品計画の堂前宣夫社長は「(円安や原材料高の)現状では値下げは難しく、値上げも避けたい」と語る。
小売りや外食企業にとって、業務の効率化などでコストを抑え収益を確保する新たな手法が急務になっている。 

 

●シドニー外為〕米ドルは127円台前半=豪ドルは91円近辺 5/30
週明け30日朝のシドニー外国為替市場の円相場は1米ドル=127円台前半で推移した。現地時間午前8時半現在、127円15〜25銭(前週末同時刻は127円05〜15銭)。
オーストラリア・ドルは、1豪ドル=0.7150〜7160米ドル(同0.7095〜7105米ドル)、対円では90円95銭〜91円05銭(同90円15〜25銭)。
ニュージーランド(NZ)ドルは、1NZドル=0.6525〜6535米ドル(同0.6475〜6485米ドル)、対円は83円00〜10銭(同82円30〜40銭)。
ユーロは、1ユーロ=1.0730〜0740米ドル(同1.0725〜0735米ドル)、対円は136円45〜55銭(同136円35〜45銭)。 
●円相場、127円36〜36銭 5/30
30日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=127円36〜36銭と、前週末(127円13〜13銭)に比べ23銭の円安・ドル高となった。 
●進む円安、年内に「1ドル150円」の予想も 転換ポイントは「2023年度の後半」 5/30
コロナ禍とウクライナ戦争のダブルパンチによる物価高騰が家計を圧迫している。さらには、20年ぶりの水準となる1ドル=130円台を突破。自力では抜け出せそうにない「超円安サバイバル」だが、はたしていつまで続くのか──。
都内在住の50代主婦がスーパーマーケットで買い物をしながら眉をひそめる。
「毎月の値上げラッシュで生活が本当に大変です。それなのに夫の給料はまったく上がらず、出ていくお金が増えるだけ。しかも6月からはさらに値上げがあると聞き、気が滅入るばかりです」
いまのところ値上げラッシュが収まる気配はない。これまでの食品や日用品、飲料などに加えて6月からはインスタント麺類やアルコール、香辛料などの価格がアップし、一般市民の懐はいっそう苦しくなるばかり。
その要因の1つが円安だ。為替は4月28日に20年ぶりに1ドル130円台を記録し、以降も130円前後が続く。今後も円安が加速すると指摘するのは、経済評論家の加谷珪一さんだ。
「円安の要因の1つは日本銀行の量的緩和策です。日銀はこの政策を変更する気がないとみられ、今後も円安が進みそうです。1ドル130円は最低ラインで、年内には1ドル150円の超円安になる可能性が充分にあります」(加谷さん)
円安になると輸出企業が有利になる。実際、トヨタ自動車など一部企業の2022年3月期決算は、過去最高の純利益を叩き出した。一方で海外から輸入する場合はコストが上乗せされ、企業の収益を圧迫する。これに耐え切れない企業は、商品を値上げせざるを得ない。ニッセイ基礎研究所上席エコノミストの上野剛志さんが言う。
「いまは円安に資源高や穀物高が加わり、企業や家計を圧迫しています。円安にはメリットもありますが、現在の急速な円安では、輸入企業や家計にとってデメリットの側面が目立ってきています」
鈴木俊一財務大臣は4月15日の記者会見で「悪い円安」を認めたが、今後もこの傾向は続きそうだ。
「理論上、日銀が政策を変更して金利を上げれば、円安は収まるはず。しかし日本政府は1000兆円の債務を抱え、アメリカ並みの金利にすると利子だけで年間に30兆円の予算が必要になる。これは非現実的で、当面、国は金利を上げられません」(加谷さん)
だが、金利をずっと低く抑え続けるのは難しい。どこかのタイミングで利上げするしかない。上野さんが言う。
「日銀の黒田東彦総裁は、来年4月の任期満了まで金利を上げないでしょう。そうなると次期総裁に代わった来年度の後半がポイントになるかもしれません。期間が長めの金利について、上昇許容幅を若干引き上げるくらいのことは行われるでしょう」
これまで日本では物価が下がるデフレが諸悪の根源とされてきたが、この先は超円安や資源高、穀物高により、物価が上がり続けるインフレが到来すると予想される。ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんが語る。
「あらゆるものを輸入に頼る日本では、円安が進むと家計がますます苦しくなります。しかも物の値段は上がるのに給料は上がらない『悪いインフレ』が予想されるので、自分の身を守るには、賢く節約しながら副業や投資でお金を増やすことが必要です。そのためには円安を逆手にとり、危機を好機に変える発想と実践が求められます」 

 

●東京円、128円台前半  5/31
31日午前の東京外国為替市場の円相場は、1ドル=128円台前半で取引された。午前10時現在は前日比84銭円安ドル高の1ドル=128円19〜21銭。ユーロは89銭円安ユーロ高の1ユーロ=137円71〜77銭。
市場関係者によると、米国の長期金利が時間外取引で上昇。日米の金利差が拡大するとの思惑から、円を売ってドルを買う動きが先行した。 外為ブローカーは「米長期金利が投資家の想定よりも大きく上げたため、円安進行が勢いづく場面があった」と指摘した。
●外為10時 円、下げ幅拡大 128円台前半 中値「ドル不足」の声 8/31
31日午前の東京外国為替市場で、円相場は下げ幅を拡大している。10時時点は1ドル=128円20〜22銭と前日17時時点と比べて85銭の円安・ドル高だった。128円台への下落は1週間ぶり。10時前の中値決済に向けては「ドル不足」(国内銀行の為替担当者)との声が聞かれた。国内輸入企業による円売り・ドル買いが進んだとみられ、円相場に下押し圧力がかかった。
米長期金利が日本時間31日の取引で一時2.85%近辺まで上昇したのも、日米金利差の拡大を意識した円売り・ドル買いを促した。月末の持ち高調整を目的とした円売り・ドル買いも出たようだ。
円は対ユーロでも下げ幅を広げた。10時時点では1ユーロ=137円76〜78銭と、同94銭の円安・ユーロ高だった。ユーロは対ドルで上げ幅を縮小した。10時時点では1ユーロ=1.0744〜46ドルと同0.0001ドルのユーロ高・ドル安だった。 
●東京円、40銭安の1ドル=127円75〜76銭 5/31
31日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比40銭円安・ドル高の1ドル=127円75〜76銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、同34銭円安・ユーロ高の1ユーロ=137円16〜20銭で大方の取引を終えた。
●海外市場概況 5/31
ドル・円:127円67銭から128円89銭までドル高・円安で推移。5月シカゴ購買部協会景気指数の予想外の上昇や5月消費者信頼感指数の底堅い結果を受けて、ドル買い・円売りが優勢になった。
ユーロ・ドル:1.0679ドルまでユーロ安・ドル高推移後、1.0747ドルまでユーロ高・ドル安で推移。ユーロ圏5月消費者物価指数速報値の伸び拡大がユーロ買いにつながった。
ユーロ・円:136円81銭から138円24銭までユーロ高・円安で推移。
NY原油市場:OPEC増産思惑で下落。
NY株式市場:米国株式市場は反落、インフレ懸念根強く。
●NY外為 円、128円台後半 5/31
連休明け31日のニューヨーク外国為替市場では、米長期金利の上昇を眺めて円売り・ドル買いが優勢となり、円相場は1ドル=128円台後半に下落した。午後5時現在は128円66〜76銭と、前営業日の27日同時刻(127円04〜14銭)比1円62銭の円安・ドル高。
米長期金利が前週から一転して大幅上昇する中、早朝以降にドル買い・円売りの流れが加速。米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が30日の講演で、インフレ率が目標の2%により近づくまで、0.5%の大幅利上げ検討を続ける意向を明らかにしたことがきっかけとなった。
FRBは既に、6月と7月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の利上げを実施する方針を表明済み。9月以降については当局者の間で見解が割れているが、ウォラー氏のタカ派的な発言を受けて米金利の先高感が強まった。
ニューヨーク市場入り後も米株安や原油高を眺め、基軸通貨のドルを買う動きが継続。円は午前に一時128円88銭の安値を付け、その後も軟調に推移した。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0729〜0739ドル(前営業日午後5時は1.0731〜0741ドル)、対円では同138円13〜23銭(同136円37〜47銭)と、1円76銭の円安・ユーロ高。 
 
 

 

●外為10時 円、1ドル=129円台に下落 中値「ややドル不足」 6/1
1日午前の東京外国為替市場で円相場は下落幅を拡大した。10時時点は1ドル=128円91〜92銭と前日17時時点と比べて1円16銭の円安・ドル高で、その後、129円台に下落する場面もあった。129円台は5月18日以来、2週間ぶりとなる。日本時間1日の取引でも米長期金利の上昇が続き、円売り・ドル買いの勢いが強まった。
10時前の中値決済に向けては「ややドル不足」(国内銀行の為替担当者)との声があった。国内輸入企業による円売り・ドル買い観測も相場を下押しした。
円は対ユーロでも下げ幅を拡大している。10時時点は1ユーロ=138円27〜29銭と、同1円11銭の円安・ユーロ高だった。ユーロは対ドルでは下落しており、10時時点は1ユーロ=1.0725〜26ドルと同0.0011ドルのユーロ安・ドル高だった。
●外為 1ドル129円03銭前後と大幅なドル高・円安で推移 6/1
1日の外国為替市場のドル円相場は午後0時時点で1ドル=129円03銭前後と、前日午後5時時点に比べ1円30銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=138円25銭前後と1円15銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。 
●日経平均反発、4月21日以来高値 円安や中国経済期待で 6/1
1日の東京株式市場で日経平均株価は反発し、前日比178円09銭(0.65%)高の2万7457円89銭で終えた。4月21日以来の高値。米株価指数先物が日本時間1日の取引で堅調に推移し、投資家心理が上向いた。外国為替市場で円安・ドル高が進み自動車など輸出関連銘柄に買いが入った。中国経済の回復期待が高まったことも追い風に幅広い銘柄が上昇した。
日経平均の上げ幅は一時200円を超えた。外国為替市場で円相場が1ドル=129円台まで円安・ドル高が進み輸出採算が改善するとの思惑から、自動車関連株や機械株が物色された。
中国メディアの財新と米S&Pグローバルが1日発表した5月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は好不況の境目となる50を下回ったが、前月からは改善した。中国・上海市は1日から新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ目的の都市封鎖(ロックダウン)を解除した。東海東京調査センターの長田清英チーフストラテジストは「中国経済に対する不安感は日本株の上値を重くする一因だったが、上海市のロックダウン解除などで不透明感はかなり後退した」とみていた。
東証株価指数(TOPIX)は反発し、前日比25.97ポイント(1.36%)高の1938.64で終えた。4月5日以来およそ2カ月ぶりの高値となった。
東証プライムの売買代金は概算で2兆8971億円。売買高は12億2885万株だった。東証プライム市場の値上がり銘柄数は1546と、全体の約8割を占めた。値下がりは258、変わらずは33だった。
トヨタ、日産自、ホンダが買われた。ダイキン、KDDI、ソニーGが上昇。資生堂、商船三井も高かった。半面、東エレク、ソフトバンクグループ、第一三共、INPEXは売られた。
●東京円、1円64銭安の1ドル=129円39〜41銭 6/1
1日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比1円64銭円安・ドル高の1ドル=129円39〜41銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、1円47銭円安・ユーロ高の1ユーロ=138円63〜67銭で大方の取引を終えた。
●ドル円は129円台半ばへ上昇、日米金融政策スタンスの差を再び意識=ロンドン 6/1
ロンドン市場は、ドル円、クロス円が上昇。ドル円は129.61レベル、ユーロ円は138.98レベル、ポンド円は163.32レベル、豪ドル円は93.22レベルなどにそれぞれ本日の高値を伸ばした。昨日、ウォラー米FRB理事が今後数会合での50bpずつの利上げを提唱したが、これを受けたドル円の上昇が今日も継続している。また、きょうは若田部日銀副総裁が「金融緩和の粘り強い継続によって着実に経済の好循環を支え、賃金が上がっていく環境を維持することが必要になる」と発言しており、市場に強力な緩和策の継続を印象付けた。一方で、ECBメンバーではタカ派で知られるホルツマン・オーストリア中銀総裁は前日のユーロ圏インフレデータを念頭に置いて「インフレ率の新記録更新は50bp利上げの必要性を支持」と発言した。日銀の緩和姿勢が一層際立つこととなり、根強い円売り圧力となっている。ただ、欧州株や米株先物・時間外取引は上値重く推移しており、リスク選好面での円売り圧力はやや影を潜めている。
ドル円は129円台半ばでの取引。ロンドン序盤に129.54レベルまで買われたあとの下押しは129.20台までに限定された。足元では再び買われ、高値を129.61レベルに更新している。前日からの円安・ドル高の流れが継続している。米10年債利回りは2.85%付近から2.88%台前半での振幅となっている。
ユーロドルは1.07台前半での取引。ロンドン朝方に1.0705レベルまで下押しされたあとは、ロンドン序盤に1.0739レベルまで上昇。その後はレンジ内で推移している。ユーロ円はドル円とともに買われ、高値を138.98レベルまで伸ばした。その後は138円台後半に高止まりしている。対ポンドでは売買が交錯しており、目立った方向性は示していない。4月ドイツ小売売上高は前年比が伸びを回復も、前月比はマイナスとまちまち。5月ユーロ圏製造業PMI確報値は速報値から変わらず。
ポンドドルは1.25台後半での取引。ロンドン朝方に1.2610台まで買われたあと、1.2570台まで下落。その後はレンジ内で推移している。前日NY市場からのレンジ取引が続いている。ポンド円は円安の流れのなかにあり、ロンドン序盤には163.32レベルまで高値を伸ばした。その後は、上昇一服となり162円台後半から163円付近での推移に落ち着いている。ユーロポンドは0.85台前半での揉み合い。ポンド自体に目立った方向性は示されていない。5月英ネーションワイド住宅価格は前月比が+0.9%に伸びたが、前年比は+11.2%と前回から伸びが鈍った。 
●円安・物価上昇で批判強まる「黒田異次元緩和の総括」で必要な視点 6/1 
「円安放置で物価上昇」 緩和維持への批判は正当か?
ウクライナ侵攻などの影響で日本でも物価上昇圧力が高まる中で、金融緩和の継続に対する批判が強まっている。
物価上昇の主因は、エネルギーや食糧などの輸入品価格上昇にあるのだが、日本銀行が緩和政策を維持しているために米国との金利差が広がり、円安を通じて物価上昇が加速、家計の購買力や企業の収益を圧迫しているという批判だ。
負担増は、家計で言えば名目所得が固定されている年金や生活保護の受給者、企業で言えばコロナで深刻な影響を受けた飲食や宿泊、運輸といった内需サービスなどの事業者に集中しやすい点で、市場関係者だけでなく世論にも影響しやすい。
足元では円安圧力はやや低下しているが、今年冬にかけては、欧州諸国による原油や天然ガスのロシア依存の本格的な見直しやウクライナによる穀物供給の減少の影響が顕在化するなどの要素があり、輸入インフレ圧力が少なくとも高止まる可能性は否定できない。日銀への批判も、根強く残存することが考えられる。
来年春には黒田東彦総裁が任期を満了する状況でもあり、黒田総裁の下、続けられてきた「量的・質的金融緩和」の総括が検討されるべき良い機会ともいえる。
「量的・質的金融緩和」の総括  物価目標のほかにも重要な視点
10年目を迎える「量的・質的金融緩和」の効果や意味合いとしてまず検証されるべき本質的な問いは、2%物価目標の達成に有用だったかという点だろう。
だが現状では、このことについての明確な回答はまだ得られる状況には至らないと、筆者は考えている。
消費者物価指数(除く生鮮食料品)上昇率はこの4月に2%台を超えたが、日銀が4月末に示した物価見通しによれば、来年度には上昇率は1%台前半に再び減速すると予想されている。
今の状況は、「金融緩和に注力したことで、物価をようやくここまで引き上げることができた」ともいえる一方で、「これだけの政策を動員しても、物価目標は達成できなかった」とも主張できるからだ。
「量的・質的金融緩和」は、金融政策の歴史のなかでも「壮大な実験」と呼べるものだが、その政策を10年近く展開しても、物価との関係を巡る論争に終止符を打てないとすれば、大変残念なことだ。
ただそれでも、「量的・質的金融緩和」の総括を通じて明らかにできる点はいくつか存在する。
物価上昇の原因によって インフレ期待への影響は違うのか?
まず、物価上昇とインフレ期待の関係だ。
「量的・質的金融緩和」でまず掲げられたのは、日銀が物価目標を掲げ国債買い入れなどの大胆な量的緩和をすすめることを明確に言えば、インフレ期待が醸成されて物価が上がるという点だった。
この問題で、「量的・質的金融緩和」を通じて確認されたことは、企業や家計のインフレ期待が「適合的」であることだ。つまり、実際に物価が上がらないとインフレ期待が高まらないことだ。
その上で、足元のインフレ率上昇の経験は、物価上昇の原因がインフレ期待にどのような影響を持つのかということについて、ヒントをもたらす可能性がある。
輸入インフレを含めていかなる原因でも、物価が上昇し始めればインフレ期待は高まるのか、それとも内需の拡大を伴う「望ましい物価上昇」の方がインフレ期待醸成への影響は大きいのかといった点を、明らかにしておくことは重要だ。
いうまでもなく、インフレ期待は価格や賃金の設定を通じて、今後の物価の動きに大きな影響を与えるからだ。
また、今後、予想される企業のサプライチェーンの再構築が、これまでの低インフレ構造にどのような影響を及ぼすかという点も注視が必要だ。
地政学的状況の変化や経済安全保障の要請、気候変動問題への対応などを背景に、企業は将来に向けて既存のサプライチェーンを大きく見直していくことが想定される。
こうした見直しによる構造変化の下で、海外発の輸入インフレが国内に波及する経路やメカニズムを明らかにしておくことは重要だ。
なぜなら、このメカニズムの影響がはっきりすれば、金融政策の前提となる基調的なインフレ率を想定するのに有効だからだ。
ポリシーミックスの「功罪」 金融システム安定や市場機能への影響
「量的・質的金融緩和」は「壮大な実験」であった以上、その総括では他の経済政策との関係を視野に入れることも極めて重要だ。
例えば、異次元の金融緩和が資産価格の過大評価を招き、結果的に金融安定を損なうリスクが高いとの批判や懸念がしばしば示されてきた。
こうした批判は、リーマン・ショックに至る米国の政策運営も含めて歴史的には前例も多く、考え方自体は合理的なものだ。
だがしかし、少なくともこれまでのところ、異次元緩和によってそうした懸念が顕在化する事態は起きていない。
また、2020 年春のようにコロナショックで米欧の金融市場が大きく不安定化した際にも、国内では資産価格は変動したが、金融仲介機能への影響はごく短期で終わった。
このことは、日本では極めて緩和的な金融環境でも過度なリスクテークは生じない構造にあるためなのか、それともリーマン・ショック後の金融規制や監督の強化が有効だったからなのか。
それを確認しておくことは、再び強力な金融緩和が必要になった時に、中央銀行による金融政策と金融当局による監督規制とのポリシーミックスを考える上で重要だ。
より視点を広げれば、金融安定を維持できた裏側で、企業や家計に対する金融仲介機能や主要な金融市場の機能が維持されたかどうかを確認することも必要だ。
国債やETFの大量買い入れを通じた強力な金融緩和が、債券や株式の市場機能を損なうという批判も出て、日銀自身も「副作用」として認めてはきた。
それでも中央銀行が市場の発する情報を正しく理解する上でも、資金の適切な流れを通じた経済成長の下支えのためにどのような補完的な政策が必要かを考える上で、総括から得られる知見は有用な教訓となり得る。
財政の調達コスト引き下げは 財政規律を弛緩させたのか?
ポリシーミックスの効果を考えるうえで上でより難しい課題は、「量的・質的金融緩和」に伴う財政政策への影響の評価だ。
日銀は物価目標を達成するために強力な金融緩和を維持してきたが、それによる低金利環境の維持を通じて、財政資金の調達コストを結果的に抑制したとしても、そうした資金が経済成長のために活用されたのであれば、マクロ政策全体としては整合的なものだ。
さらに、財政支出によって成長基盤が強化されれば、長い目で見れば税収増で財政の健全化が進み、金融政策の柔軟性を高めることにもつながる。
ただ一方で、財政政策が、「量的・質的金融緩和」による低金利環境を有効に活用したかどうかという問題とは別に、長期にわたる金融緩和が財政規律を弛緩させ、財政健全化へのインセンティブを弱めたとの批判も根強く存在する。
本来、財政規律は、議会や政府の枠組みの中で確保されるのが筋だが、財政を拡張しても、金融緩和という「バックストップ」によってコストの上昇が抑制されるという意識が定着すれば、長い目で見て財政運営に影響を与える可能性がある。
この点に関しては、日本ではこれまで物価目標がごく一時的にしか達成されず、金融政策の正常化ができていないために、金融緩和による財政規律への影響を明確に把握することが難しかった。
実際、筆者もコロナ禍の前に欧米の政策当局や市場関係者を訪問していた際に、最も答えに困ったのは、「日本で2%インフレが実現した場合、10年国債の利回りは何%になるか」という質問だった。
将来の財政危機や日銀に対する信認の喪失といった「テールリスク」を除くとしても、常態的な金融緩和が財政運営に与える中長期な影響については、さまざまな面で不確実性が高いが、日本のこの10年近くの実験による経験が有用な前例となる可能性もある。
黒田総裁自身も記者会見などで強調してきたように、本来、政策運営は属人的なものであってはならない。その意味では「量的・質的緩和」の総括も、正副総裁人事とは関係なく行われる筋合いにある。
しかし、異次元緩和は「デフレ脱却」への要請を背景に従来にない政策手段を動員して展開された政策だけに、市場が想定するように正副総裁の任期が満了する来年春を見据えて成果と副作用を適切に評価しておくことは有用だ。
しかも、将来に向けて物価を取り巻く環境に変化の兆しがみられる点でも いまは良い機会といえる。
効果と副作用の双方の面で最も大きな影響を受ける家計や企業は、金融政策の運営を直接的に変更する手段を持たないだけでなく、その適切さを判断するための情報や経験も限られている。
家計や企業が物価と金融政策の「真実」を理解し適切な世論が形成されるためにも、日銀自身による真摯(しんし)な総括は重要な意味を持つ。 

 

●NY円、一時130円19銭 3週間ぶり円安ドル高水準 6/2
1日のニューヨーク外国為替市場の円相場は一時1ドル=130円19銭まで下落し、5月11日以来、3週間ぶりの円安ドル高水準となった。米長期金利の上昇を背景に、日米金利差の拡大を意識した円売りドル買いが優勢だった。
午後5時現在は、前日比1円45銭円安ドル高の1ドル=130円11〜21銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0647〜57ドル、138円60〜70銭。
●NY円、3日続落 1ドル=130円10〜20銭 良好な米経済指標の発表受け 6/2
1日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3日続落し、前日比1円45銭円安・ドル高の1ドル=130円10〜20銭で取引を終えた。一時、130円19銭と5月11日以来の円安・ドル高水準を付けた。米経済の底堅さを示す経済指標の発表を受けて、円売り・ドル買いが優勢となった。
1日発表の5月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は前月比で市場予想に反して上昇した。4月の米雇用動態調査(JOLTS)では、非農業部門の求人件数は大幅に上方修正された前月からは減少したが高水準を維持した。米経済の堅調さが示され、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締め観測が強まり、幅広い通貨に対してドルが買われた。
1日の米債券市場で長期金利が一時2.95%と前日終値(2.84%)から大きく上昇し、5月半ば以来の高水準を付けた。日米の金利差拡大が意識されたのも、円売り・ドル買いを促した。
円の高値は129円21銭だった。円は対ユーロで4日続落し、前日比45銭円安・ユーロ高の1ユーロ=138円60〜70銭で取引を終えた。
ユーロはドルに対して横ばいを挟んで4営業日ぶりに反落し、前日比0.0085ドル安の1ユーロ=1.0645〜55ドルだった。米金融引き締めが続くとの見方からユーロ売り・ドル買いが優勢となった。
ユーロの安値は1.0627ドル、高値は1.0731ドルだった。 
●円、129円台半ば ロンドン外為 6/2
1日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米長期金利の上昇を受けて円売り・ドル買いが優勢となり、1ドル=129円台半ばに下落した。
正午現在は129円40〜50銭と、前日午後4時比80銭の円安・ドル高。
●NY円、一時130円19銭 3週間ぶり円安ドル高水準 6/2
1日のニューヨーク外国為替市場の円相場は一時1ドル=130円19銭まで下落し、5月11日以来、3週間ぶりの円安ドル高水準となった。米長期金利の上昇を背景に、日米金利差の拡大を意識した円売りドル買いが優勢だった。
午後5時現在は、前日比1円45銭円安ドル高の1ドル=130円11〜21銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0647〜57ドル、138円60〜70銭。
●東京円、130円近辺  6/2
2日午前の東京外国為替市場の円相場は、1ドル=130円近辺で取引された。
午前10時現在は前日比65銭円安ドル高の1ドル=130円04〜05銭。ユーロは07銭円高ユーロ安の1ユーロ=138円56〜62銭。
前日のニューヨーク市場で米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大を意識した円売りドル買いが優勢となり、3週間ぶりの円安ドル高水準となった。東京市場ではこの流れを引き継いだ。
市場では「米国の5月の製造業景況指数が市場予想を上回る良い結果で、景気後退懸念が和らいだこともドル買いにつながった」(外為ブローカー)との声があった。
●米国の動きで円安が進行 円相場、目まぐるしい変動の背景は  6/2
5月の連休明けに1ドル=131円台まで進んだ円安ドル高。その後は1ドル=127円前後で推移していましたが、2日は一時、1ドル=130円台まで円安が進行。目まぐるしい動きの背景に何があるのでしょうか。
最近の物価高を抑え込もうと、米国は利上げに動きました。一方、景気回復が遅れる日本は低金利政策を続行。その結果、金利が高く運用に有利なドルが買われ、円安が進みました。 ところが5月中旬以降、米国で景気後退懸念が台頭。一時3%を超えた長期金利の上昇に歯止めがかかり、円安の進行が鈍化。6月に入ると長期金利は再び上昇傾向となり、またも円安が進み始めました。
本紙は朝刊紙面でドルなど24カ国・地域の通貨と円との「交換レート」を掲載しています。このデータを継続的にみていくと、英国やニュージーランドの通貨も、円に対する上昇度が5月中旬ごろに、いったん落ち着いていたことが分かります。
両国も米国と同様、利上げを実施。ただ、しばらくすると景気悪化が懸念されて通貨の上昇度が鈍化しました。円相場は各国の長期金利の動向や景気見通しなどの影響を受け、変動しています。
●東証大引け 小反落 米金融引き締めに警戒、円安が支え 6/2
2日の東京株式市場で日経平均株価は小幅に反落し、前日比44円01銭(0.16%)安の2万7413円88銭で終えた。米金融引き締めへの警戒感が再び強まり、前日の米株式相場が下落。東京市場でも売りが先行し、朝方に日経平均の下げ幅は一時200円を超えた。もっとも円相場が1ドル=130円台の円安・ドル高水準になったのが支えとなり、株価の下値は限られた。
米サプライマネジメント協会(ISM)が1日発表した5月の製造業景況感指数が市場予想を上回り、米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めが一段と強まるとの見方から、東京市場でも株価指数先物を中心に売りが出た。市場では「今週末公表の5月の米雇用統計も想定以上に上振れすれば、株式相場を下押しする」(国内証券ストラテジスト)との声が聞かれた。
ただ、売りが一巡すると日経平均は下げ幅を縮めた。円安・ドル高が企業収益にプラスに働くとして投資家心理を支えた。日経平均は前日比7円安まで下げる場面があった。
東証株価指数(TOPIX)は反落した。終値は前日比12.25ポイント(0.63%)安の1926.39だった。
東証プライムの売買代金は概算で2兆5463億円。売買高は10億9537万株だった。東証プライムの値下がり銘柄数は1192。値上がりは579、変わらずは66銘柄だった。
●外為:1ドル129円84銭前後とドル高・円安で推移 6/2
2日の外国為替市場のドル円相場は午後4時時点で1ドル=129円84銭前後と、前日午後5時時点に比べ44銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=138円61銭前後と1銭のユーロ安・円高と横ばい圏で推移している。
●米景気失速なら円高進行も 日銀の安達審議委員が会見  6/2
日銀の安達誠司審議委員は2日、札幌市で記者会見し、円相場の先行きに関して、急激な利上げなどの影響で米景気が失速すれば、円高ドル安が進む可能性があるとの見解を示した。最近は円安ドル高が急激に進んできたが、逆転する「リスクを十分意識する必要がある」と指摘した。
会見に先立って行った講演では、日銀が掲げる2%の物価上昇目標の達成は「依然として道半ば」と語った。生鮮食品を除く4月の消費者物価指数の上昇率は前年同月比2・1%に達したものの、エネルギー価格の上昇などの影響を除いた実力ベースでは1・0%程度にとどまると説明した。  

 

●NY円、130円前半 6/3
3日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午前8時半現在、前日比31銭円安ドル高の1ドル=130円16〜26銭を付けた。…
●東京外為 ドル、129円台後半=米雇用統計前で様子見 6/3
3日午後の東京外国為替市場のドルの対円相場(気配値)は、5月の米雇用統計の発表を前に様子見ムードが強まり、1ドル=129円台後半での小動きが続いている。午後3時現在、129円84〜84銭と前日(午後5時、129円88〜89銭)比04銭の小幅ドル安・円高。
きょうの東京市場は129円90銭台で始まった。実質的な「五・十日」に当たることから国内輸入企業とみられる買いが入り、午前9時すぎに130円00銭台に乗せた。仲値に向けては一転して国内輸出企業の売りに押され、129円65銭前後まで下落した。ただ、「今夜発表の米雇用統計を控え、積極的な売買は仕掛けづらい」(FX会社)状況とされ、実需筋の売買が一巡した後は129円70〜80銭台のレンジ圏でもみ合っている。
米雇用統計をめぐっては、雇用者数と平均時給がともに市場予想(非農業部門就業者数は前月比32万5000人増、平均時給は同0.4%上昇)を上回れば、米連邦準備制度理事会(FRB)による大幅な連続利上げ観測がさらに高まるとして、ドル買い傾斜を予想する声がある。市場予想を下回れば、長期金利の低下に伴ってドル円は軟化する公算が大きいとみられている。米雇用統計の結果がドル円相場の転機になる可能性があるため、「慎重姿勢を決め込む投資家が多く、発表までに上下するとしても持ち高調整の範囲内にとどまる」(国内証券大手)ことになりそうだ。
ユーロも午後は対円、対ドルでともに横ばい。米雇用統計が意識され、対ユーロ相場でも積極的な取引が手控えられている。午後3時現在、1ユーロ=139円63〜64銭(前日午後5時、138円79〜84銭)、対ドルでは1.0753〜0754ドル(同1.0686〜0686ドル)。 

 

●NY円、一時130円98銭 1カ月ぶり円安ドル高水準  6/4
3日のニューヨーク外国為替市場の円相場はドルに対して下落し、一時1ドル=130円98銭と5月9日以来、約1カ月ぶりの円安ドル高水準を付けた。朝方発表された5月の米雇用統計で非農業部門の就業者数の増加幅が市場予想を上回ったのを受けて米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
午後5時現在は前日比92銭円安ドル高の1ドル=130円77〜87銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0715〜25ドル、140円13〜23銭。
●NY 原油先物120ドル台に 外国為替市場1ドル=131円に迫る円安  6/4
3日のニューヨーク原油市場では、供給不足への懸念から国際的な原油の先物価格が一時、およそ3か月ぶりに1バレル=120ドル台まで上昇しました。また、外国為替市場では1ドル=131円に迫る水準まで円安ドル高が進みました。
3日のニューヨーク原油市場では、国際的な指標となるWTIの先物価格が一時、およそ3か月ぶりに1バレル=120ドル台まで上昇しました。背景には、EU=ヨーロッパ連合がロシア産の石油の輸入禁止などの追加制裁で合意したことに加えて、主な産油国が2日に決めた追加増産の規模が少ないと受け止められたことで、供給不足への懸念が続いていることがあります。
また、ニューヨーク外国為替市場ではアメリカの長期金利の上昇を背景に円を売ってより利回りが見込めるドルを買う動きが出て、円相場は一時、1ドル=131円に迫る水準まで円安ドル高が進みました。
このほか、ニューヨーク株式市場は、ダウ平均株価の終値が前日に比べて348ドル58セント安い3万2899ドル70セントとなりました。この日発表されたアメリカの5月の雇用統計で、農業分野以外の就業者の伸びが市場の予想を上回ったことを受けて、インフレを抑えるための金融引き締めが進むことへの警戒から売り注文が増えました。IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数は2.4%の大幅な下落になりました。 

 

●海外市場概況 6/5
ドル・円:129円87銭から130円98銭までドル高・円安で推移。5月米雇用統計で非農業部門雇用者数は予想を上回ったことから、ドル買いが強まった。
ユーロ・ドル:1.0763ドルから1.0704ドルまでユーロ安・ドル高に推移。米雇用統計を受けたユーロ売り・ドル買いが優勢となった。
ユーロ・円:139円55銭から140円37銭までユーロ高・円安で推移。
NY原油市場:続伸、米雇用統計めぐる需給思惑で買い続く。
NY株式市場:米国株式市場は反落、金融引き締めを警戒。
●先週の市場 6/5
先週のドル/円相場は、ドルが反転高。週末には5月9日以来の高値、一時131円寸前まで値を上げる局面も観測されていた。
前週末、ロシアが「ウクライナ東部の要衝リマンなどを制圧した」ことを明らかにするなか、日米韓外相が「北朝鮮のミサイル発射を非難」する共同声明を発表したことも話題となっていたようだ。
そうした状況下、ドル/円は127.15円で寄り付いたのち、週間安値の126.86円を示現。しかし、下値追いもそこまでで、以降はドルの買い戻しが週間を通して優勢だった。130円を突破したレベルでは一時上げ渋るも、週末に発表された注目の米雇用統計が良好な内容になったことを好感。再びドルが買われると、一時131円寸前まで値を上げている。週末NYも、そのままドルの高値圏130.80円レベルで取引を終え越週するなど、「寄り付き安・大引け高」の様相だった。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「日米欧の金融政策」と「ロシア情勢」について。
前者は、今週9日にECB理事会を控えるなか、市場筋のあいだではECBの利上げ期待が高まっている。先週5月31日にもフランス中銀総裁が「漸進的だが断固とした金融政策正常化は必要」と述べ、今月ではなく次回7月の利上げを後押しする発言。また、スロバキア中銀総裁はECBの利上げ幅について、「7月に0.25%、9月に0.50%になる可能性がある」と述べ、ユーロ買いを後押ししていた。対して、米国は発表された5月のISM製造業景況指数や同雇用統計が予想を上回る内容となるなか、米地区連銀総裁からも強気コメントが相次ぎ、週間を通してドルの支援材料に。しかし反面で、日本は引き続き米欧と異なる対応を見せており、実際に2日には安達日銀審議委員が「物価目標実現まで緩和政策を粘り強く続ける」とコメント。金融緩和に向けたスタンスは少しも変化していないことが再認識されている。
対して後者は、戦闘に関しては前述した「ウクライナ東部の要衝リマンなどを制圧」との発表に加え、ゼレンスキー大統領も「ロシア軍がウクライナの国土の約20%を占領している」ことを明かすなど、戦況としてはロシア軍の攻勢が目に付いた。そうしたなか、決定を先送りしていたEMEAクレジットデリバティブ決定委員会(CDDC)が、4月に期限を迎えたロシア国債の利息分ついて、6月1日ついに「支払い不履行」に相当すると認定。これにより、ロシアは約100年ぶりに対外デフォルトと見なされる可能性が高まったことが金融市場で大いに話題に。
●円安の常識を疑う 「GDPにマイナス」は異説か 6/5
美しく高機能な家電・情報端末のベンチャー企業として知名度が急上昇しているバルミューダ。国内や北米での販売が絶好調なのにもかかわらず、今年に入って失速した。2022年1〜3月期の連結決算は売上高が前年同期に比べ11%増えたものの、営業利益は62%減の1億7200万円に。原因は春先から外国為替市場で急激に進んだ円安・ドル高だ。
「商品企画では変わったことを考える企業だが、金銭感覚は多くの人と一緒。1ドル130円を想定した人はどれだけいただろうか」。寺尾玄社長は5月13日の決算説明会でこう弁明した。生産を国内外の協力工場に委託し、開発と販売に資源を集中させる軽量経営を標榜するが、部品・部材の調達といったサプライチェーン(供給網)上の混乱は避けられず、製品原価率が急上昇。大幅減益となった。
悪い円安が新常識に
円安は日本経済にとって「善」なのか「悪」なのか。昨年10月初めに1ドル=110円程度だった円相場は年末までに115円前後に下落。今年に入り加速度を増し、4月末には一時131円台をつけた。主要国・地域が軒並み金融緩和を修正し米国に次いで欧州も利上げに動く中、日銀は現状の政策を維持しており、金融政策の差などから今後も円安傾向が続くとの見方は強い。
「円安は輸出企業や海外に資産を持つ企業には追い風になる一方で、生活者には物価の引き上げで大きなマイナスになる」。岸田文雄首相が5月26日の衆院予算委員会で表明した為替感が示すとおり、政府は家計への影響を考慮しつつも円安に対し「善」寄りだ。日銀の黒田東彦総裁も5月30日の参院予算委員会で円相場について「比較的、安定的な状況に戻っている」と現状を肯定した。
円安は日本経済にプラスという見解は、昭和から平成にかけて製造業の輸出促進に寄与したという現実が基盤にある。その修正を国際社会から迫られ、円高に長く苦しんだ経験が、見解を常識へと引き上げた。
11年の東日本大震災のあとは1ドル=76円台まで円高・ドル安が進行。リーマン・ショックからの回復途上にあった輸出企業が悲鳴を上げ、政府・日銀は円売り介入に踏み切った。その後、日銀は円相場を円安方向にする効果のある「大規模金融緩和」を13年に開始し、現在まで続けている。
しかし、ここにきて輸入物価の上昇で日本経済が打撃を被る「悪い円安」への不安が新常識の域まで台頭してきた。円安で利益を得るはずの製造業が歓迎ムードとはならず、むしろ危機感を募らせる。なぜか。
輸出の追い風、2005年には失速
1つの要因が貿易を巡る日本の構造変化だ。みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストの協力を得て、交易条件の変化に伴う円安による名目国内総生産(GDP)への影響を算出したところ、従来の常識とは異なる構図が浮かび上がった。
交易条件とは海外との貿易における国の稼ぎやすさを示す考え方で、輸出物価指数と輸入物価指数から計算する。輸出物価が上昇したり輸入物価が下落したりすれば交易条件は改善し、貿易を通じた稼ぎやすさが上昇する。
2000年下半期(7〜12月)以降を対象にしたこの試算によると、10%の円安で名目GDPがプラスになるとみられるのは04年ごろまでで、その後はマイナスになるとの結果が得られた。04年ごろまでは半期でプラスの効果がおおむね1000億〜2000億円あったが、その後はマイナスに転じている。企業が海外生産比率を高めた結果、円安が輸出に有利に働く効果が小さくなったためだ。
さらに、11年の東日本大震災の後に全国の原子力発電所の稼働が停止したのが大幅な悪化につながった。13〜14年ごろは半期で1兆円前後のマイナスだった。その後、外貨を獲得する手段であるインバウンド(訪日外国人観光客)が増えるとマイナス幅は16年下半期には約1200億円にまで減少した。
足元ではマイナス幅が再び拡大している。21年下半期は約6200億円のマイナスとなるとの結果だ。ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり、エネルギーや穀物など国際商品価格が上昇しているのが主な理由だ。
「いまや『強い円が国益だ』という状況だ」。1990年代に米国と協調して為替介入をした榊原英資元財務官も構造変化を認める。
善悪二元論のワナ
投資判断として個別企業を見る場合、円安をどう織り込むかは難しさを増す。バルミューダのように円安に苦しむケースが増える一方、かつての常識通りに潤う企業も少なくない。2022年3月期決算で連結営業利益が1兆円の大台を超えたソニーグループは、円安が為替差益を大きく膨らませた。
輸出企業だから円安はプラスという常識も危うい。ダイキン工業の為替感応度は対ドルで1円あたり18億円で円安はプラスに働くが、同時に原材料高が前期比以上に収益を圧迫する。円安の影響は複雑になってきており、十河政則社長は決算説明会で「為替頼みの経営はしない」と言い切った。
円安の善悪はそれぞれ論拠があるが、投資機会を逃さずに、あるいは落とし穴にはまらないようにするには、そこで思考停止してはならない。常識を疑うことから始めてみよう。  

 

●外為 1ドル130円81銭前後と大幅なドル高・円安で推移 6/6
6日の外国為替市場のドル円相場は午前8時時点で1ドル=130円81銭前後と、前週末午後5時時点に比べ93銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=140円25銭前後と57銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●外為12時 円、下落し130円台後半 米雇用改善で 対ユーロも安い 6/6
6日午前の東京外国為替市場で、円相場は下落した。12時時点は1ドル=130円60〜61銭と前週末17時時点と比べて72銭の円安・ドル高だった。3日発表された5月の米雇用統計で雇用者数の伸びが市場予想を上回り、積極的な米金融引き締めが続くとの見方が強まった。米長期金利は3日に一時3%近くまで上昇するなど先高観が根強く、日米の金利差拡大を見込んだ円売り・ドル買いが優勢となった。
円は6日早朝に一時130円99銭近辺まで下落し、5月9日以来およそ1カ月ぶりの安値をつけた。だが、売りが一巡した後は目先の利益確定や持ち高調整を目的とした円買い・ドル売りが増えた。日本時間6日の取引で米長期金利やニューヨーク原油先物相場の上昇が一服したのも円相場の支えとなった。
9〜12時の円の安値は130円84銭近辺、高値は130円53銭近辺で値幅は31銭程度だった。
円は対ユーロでも下落した。12時時点は1ユーロ=140円04〜06銭と、同34銭の円安・ユーロ高だった。早朝には140円35銭近辺まで売られ、3日につけた15年6月以来7年ぶりの安値に並ぶ場面があった。欧州中央銀行(ECB)による7月の利上げがほぼ確実視されるなか、週内にECB理事会を控えて円売り・ユーロ買いの動きが出た。
ユーロは対ドルでは下落した。12時時点は1ユーロ=1.0722〜23ドルと同0.0034ドルのユーロ安・ドル高だった。
●東京円、130円台後半 6/6
週明け6日午前の東京外国為替市場の円相場は、1ドル=130円台後半で取引された。
午前10時現在は前週末比93銭円安ドル高の1ドル=130円81〜84銭。ユーロは46銭円安ユーロ高の1ユーロ=140円16〜25銭。
5月の米雇用統計で非農業部門の就業者数が堅調な伸びを示したことから、米金融引き締めが加速するとの観測が浮上。日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
市場では「5月に付けた約20年ぶり安値の131円台前半を超えるかが焦点だ」(外為ブローカー)との声が聞かれた。
●日経平均続伸、午前終値82円高の2万7844円 6/6
6日午前の東京株式市場で日経平均株価は続伸し、前週末比82円69銭(0.30%)高の2万7844円26銭で終えた。米株価指数先物が日本時間6日午前の取引で上げ幅を広げると、日経平均先物にも短期筋の買いが入り、指数を押し上げた。前週末の米株安を受けて、朝方は売りが先行し、日経平均の下げ幅が200円を超える場面があった。
6日午前の外為市場で円相場は1ドル=130円台と、前週末3日夕に比べ円安・ドル高の水準で推移した。輸出の採算改善の思惑から、自動車や機械といった輸出関連株の一部の支えとなった。
前週末には観光需要喚起策「Go To トラベル」を6月末から7月にも再開する案が政府内で浮上していると伝わった。経済活動が一段と活発になるとの見方から、鉄道や空運、百貨店など関連銘柄の上昇が目立った。丸三証券の丸田知広エクイティ部長は「欧米経済には減速感がある一方、景気のモメンタム(勢い)が改善方向に向かう日本の株に物色が向かいやすくなっている面がある」とみていた。
3日に発表された5月の米雇用統計では非農業部門の雇用者数が前月比39万人増と、市場予想を上回った。米連邦準備理事会(FRB)による積極的な金融引き締めが続くとの見方から、同日の米株式相場は下落した。東京市場でもこの流れを受け、朝方は売りが優勢だった。
東証株価指数(TOPIX)は続伸した。午前終値は前週末比1.87ポイント(0.10%)高の1935.01だった。
前引け時点の東証プライムの売買代金は概算で1兆1315億円、売買高は5億237万株だった。東証プライムの値上がり銘柄数は901と、全体の5割弱を占めた。値下がりは840、変わらずは96だった。 
●東京円、88銭安の1ドル=130円76〜78銭 6/6
6日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前週末(午後5時)比88銭円安・ドル高の1ドル=130円76〜78銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、同77銭円安・ユーロ高の1ユーロ=140円47〜51銭で大方の取引を終えた。
●東京円、130円台後半 ユーロは7年ぶり円安水準  6/6
週明け6日の東京外国為替市場の円相場は、1ドル=130円台後半で取引された。ユーロは対円で一時1ユーロ=140円台半ばを付け、2015年6月以来、約7年ぶりの円安ユーロ高水準となった。
午後5時現在は前週末比88銭円安ドル高の1ドル=130円76〜78銭。ユーロは77銭円安ユーロ高の1ユーロ=140円47〜51銭。
5月の米雇用統計で非農業部門の就業者数が堅調な伸びを示したことから、米金融引き締めが加速するとの観測が浮上。日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
●外為 1ドル130円82銭前後と大幅なドル高・円安で推移 6/6
6日の外国為替市場のドル円相場は午前10時時点で1ドル=130円82銭前後と、前週末午後5時時点に比べ94銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=140円16銭前後と48銭のユーロ高・円安で推移している。
●海外市場 6/6
ドル・円:130円62銭から132円01銭までドル高・円安で推移。米利上げ継続予想でドル買いが優勢になった。
ユーロ・ドル:1.0752ドルから1.0684ドルまでユーロ安・ドル高で推移。
ユーロ・円:7月利上げ観測で140円09銭から141円13銭までユーロ高・円安で推移。
NY原油市場:反落、インドはロシア産石油の輸入拡大との見方。
NY株式市場:反発、長期金利上昇で伸び悩む。 

 

●NY市場 一時1ドル132円台 約20年ぶりの円安ドル高水準を更新  6/7
6日のニューヨーク外国為替市場では、アメリカの景気減速への懸念が和らぎ、長期金利が上昇傾向にあることを背景に円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は一時、1ドル=132円台まで値下がりして、およそ20年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
6日のニューヨーク外国為替市場では、円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は一時、1ドル=132円台まで値下がりしました。
これは、2002年4月以来、20年2か月ぶりの円安ドル高水準です。
円安が進んでいるのは、アメリカの景気減速への懸念が和らぎ、債券市場でアメリカの長期金利が一時、3%台まで上昇したことから、投資家の間でより利回りが見込めるドルを買う動きが強まっているためです。
市場関係者は「アメリカの長期金利は、景気減速への懸念から上昇に歯止めがかかっていたが、このところ市場の予想を上回る内容の経済指標が相次いで発表されたことで懸念が和らぎ、再び上昇に転じている。インフレを抑えるためにアメリカで金融引き締めが加速し、日米の金利差が拡大するとの見方もドル買いにつながっている」と話しています。
また円相場は、ヨーロッパ中央銀行が7月にも利上げに踏み切るとの観測を背景にユーロに対しても円安が進んでいて、一時、2015年6月以来、およそ7年ぶりに1ユーロ=141円台まで値下がりしました。
●円相場 一時1ドル=132円台後半 約20年ぶりの円安水準に  6/7
7日の東京外国為替市場は、アメリカの長期金利の上昇を受け、円を売ってより利回りが見込めるドルを買う動きが強まり、円相場は一時1ドル=132円台後半まで値下がりして、およそ20年ぶりの円安水準を更新しました。
7日の東京外国為替市場は、アメリカの景気減速への懸念が和らいだという見方から、6日のニューヨーク市場でアメリカの長期金利が上昇したことを受け、円を売ってより利回りが見込めるドルを買う動きが強まり一段と円安が進みました。
円相場は一時、132円台後半まで値下がりし、2002年4月以来、およそ20年2か月ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
市場関係者は「日銀の黒田総裁がきょうの参議院の財政金融委員会で『金融政策を拙速に縮小すると設備投資などの国内需要に一段と下押し圧力がかかる』などと述べ、大規模な金融緩和を続ける姿勢を改めて示した。アメリカでインフレ抑制のために金融引き締めが加速するのではないかという見方が強まる中、投資家の間では黒田総裁の発言を受けて日米の金利差の拡大が改めて意識された」と話しています。
外国為替市場で円相場が1ドル=132円台まで値下がりしていることについて、鈴木財務大臣は、閣議のあとの記者会見で「為替相場は経済のファンダメンタルズ=基礎的条件を反映し、安定的に推移することが重要で、特に急速な変動は望ましくない。政府として為替市場の動向や日本経済の影響を緊張感を持って注視している」と述べました。そのうえで鈴木大臣は「アメリカなどの通貨当局と緊密な意思疎通を図りつつ、政府として適切に対応していきたい」と述べました。
松野官房長官は記者会見で「相場の水準などについてコメントすることは差し控えるが、為替の安定は重要であり、急速な変動は望ましくない」と述べました。そのうえで「一般論として、円安により、輸出や海外展開をしている企業の収益は改善する一方、輸入価格の上昇を通じて企業や消費者の負担増となり得る。プラス面、マイナス面双方で影響を与えるため、日本経済全体への影響を一概に申し上げるのは困難だが、為替市場の動向や日本経済への影響を緊張感を持って注視していきたい」と述べました。
●円、20年ぶり安値を更新 一時132円台に下落 6/7
7日の東京外国為替市場で円が対ドルで下落し、一時1ドル=132円台と2002年4月以来およそ20年2カ月ぶりの円安・ドル高水準を更新した。5月9日に付けた1ドル=131円35銭の直近安値を超えて円安・ドル高が進んだ。米国ではインフレ抑制のために金融引き締めが加速するという見方が強まる一方、日本は日銀が大規模緩和を続ける姿勢を鮮明にしている。日米の金利差の拡大が円安要因になっている。
鈴木俊一財務相は7日の閣議後の記者会見で、円安について「急速な変動は望ましくない」と述べた。「為替市場の動向や日本経済への影響を緊張感を持って注視する」と強調した。日銀の黒田東彦総裁は7日の参院財政金融委員会で「強力な金融緩和を粘り強く続ける」と発言し、市場では日米の金利差拡大が意識された。黒田総裁は「家計や地方の中小サービス産業に対するマイナスの影響を十分に考慮しなければならない」とも指摘した。
5月の米雇用統計では非農業部門の雇用者数が前月から39万人増え、市場予想(32万8000人)を上回った。失業率は横ばいの3.6%で「完全雇用」の状況に近いとされる水準を維持しており、労働需給の逼迫が鮮明となっている。
FRBが景気への配慮をせずにハイペースで利上げを進めるとの見方が強まり、米長期金利が3%を超えて上昇。3%超えは3週間ぶりで、日米金利差の拡大を手掛かりにドルを買って円を売る投資家が増えている。
足元で続く原油高も円安・ドル高要因だ。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の先物価格(期近)は1バレル120ドル近辺で推移しており、3月上旬以来、ほぼ3カ月ぶりの高水準だ。
エネルギーを輸入に頼る日本では輸入業者がドルを手当てする必要があり、原油高の局面では貿易赤字が膨らみやすい。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作氏は「実需筋は高いと思ってもドルを買わざるを得ない」といい、ドル高要因となっている。
これらのドル買い需要に対し、市場で円安抑止の効果が期待されているのがインバウンド(訪日外国人)の受け入れ再開だ。外国人が日本に来て買い物をすると円買いの需要が発生するためだ。
もっとも政府は1日の入国者数の上限を2万人に設定し、当初は添乗員付きのパッケージツアーしか認めない。みずほ銀行の唐鎌大輔氏によると、上限2万人で稼ぐことができる旅行収支の黒字は1カ月分の貿易赤字を相殺するものでしかないという。
円安を修正するには日銀の大規模緩和政策の見直し、原子力発電所の再稼働推進、インバウンドの全面解禁などが市場関係者から指摘される。しかしどれも政治面などのハードルが高く、すぐに実現する可能性は低い。当面は円安基調が続きそうだとの見方が多い。 
●最近のドル高円安はなぜ発生したのですか? 6/7
ドル円為替相場(レート)は、2022年3月初めから4月末までの期間で一気に15円程度円安に動きました。5月に131円前半をつけて一服感を見せた後、6月に入り、更に最安値を更新しています。(6月7日10時30分現在132円70銭)これはこの約30年の最安値の水準です。為替相場の動きの要因は、主として「金利」です。
筆者は経済学、特に国際金融を学び40年。メガバンク勤務時代は、実際に世界のディーリングルームでの取引や経済・市場調査を経験し、現在は金融に関する書籍の執筆や大学等での講義のために研究を続けています。その長年の経験から分かったことは、為替相場の変動の要因の約7割は「金利によるもの」ということです。つまり、為替相場は「金利次第」であり、これが金融商品の為替相場取引の「特徴」と考えています。為替相場は2つの金融商品の比較(ドル円の場合、通貨ドルと通貨円)という仕組みのせいもあり、金利差こそが主因となります。今回の131円まで行った大相場は、まさに金利差によるもので、主役は日本と米国の中央銀行です。
そもそも金融政策の最も重要な目標は「物価の安定」です。それも先進国では数字まで決まっていて「2%」、どのような先進国でも「2%」なのです。日本の中央銀行「日本銀行」の総裁は財務省出身の黒田東彦氏です。日本の消費者物価上昇率は2.1%となり、目標値に達しました。しかし、黒田氏は、金融政策決定会合などでも、日本の経済はまだ脆く、利上げに耐えられないとして、超低金利を今後も当面維持することを表明しました。
一方、米国の中央銀行FRB(Federal Reserve Board※注1)は中央銀行として非常に珍しい目標を持っています。雇用の最大化と物価の安定の2つです。雇用の最大化は景気指標ですが、物価と景気の両方を目標に持つ唯一の中央銀行なのです。 米国の失業率は3月に発表された2月分から3%台の完全雇用の状態となっていて、物価の目標のみに集中できる環境です。また、5月に発表された4月の米国の消費者物価上昇率は8.3%と高い結果でした。そのため政策金利は3月(0.25%)、次の5月(0.5%)と引き上げられ、さらに6月も大きく利上げが予想されています。3月以降の利上げを見越して、ドル高円安相場が始まったと考えています。
日米の金利、すなわち、金利差を見ると、米国金利の上昇で拡大が継続。日本の低金利もゆるぎなかった。とすれば、ドル高円安がある意味、公的に進められたも同然だったといえるでしょう。この米国の金利が高い状況が長く資金をひきつけ続けたことで円安ドル高が130円を越えて進みました。130円という数字に、特に意味はありません。
4月から、FRBの金利の強い引上げ、中国の景気悪化等により、ダウ平均株価など株式市場が下落を始めることになり、ドル高円安の流れは一旦一服しました。しかしその後6月入りしてから再度ドル高円安の流れを見せています。
ところで私は金融市場の講演会の時に、よく質問を受けることがあります。ブレイクトークとしてその際にいつも思うところを紹介しましょう。
一般の方は「円」を主語として「高い・安い」と話しをするのに対して専門家(プロ)の方は「ドル」を主語とすることが多いです。話がかみ合わないということがないように少し注意が必要です。また、よくある一般の方からの質問には「この相場はどこまで上がりますか」というものも多いです。これは、おそらく一般の方々は「上がったら売り、下がったら買い」というレンジ取引を行っていることの証左ではないかと推測しています。
●東京円、2円安の1ドル=132円76〜78銭 6/7
7日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比2円ちょうど円安ドル高の1ドル=132円76〜78銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは同1円41銭円安ユーロ高の1ユーロ=141円88〜92銭で大方の取引を終えた。
●円安、一時133円台 20年2カ月ぶり水準更新 5/7
7日の東京外国為替市場の円相場は対ドルで下落して一時1ドル=133円00銭を付け、2002年4月以来約20年2カ月ぶりの円安ドル高水準を更新した。米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めペースを速めるとの観測が強まる中、日銀の黒田東彦総裁が金融緩和の継続を訴えたことが材料視され、相対的に金利が低い円を売ってドルを買う動きが加速した。市場では1ドル=135円まで円が売られるとの見方も浮上している。
日米の金利差拡大が円安ドル高の流れを促している。黒田氏は7日の参院財政金融委員会で「強力な金融緩和を粘り強く続ける」と述べ、従来の立場を強調した。
●東京市場 6/7
7日の東京市場は円全面安。ドル/円は年初来高値を再び更新すると、一時133円レベルまで買い進まれている。
ドル/円は131.85-90円で寄り付いたのち、緩やかな右肩上がり。前日高値132.01円を超えただけでなく、さらに大幅な続伸をたどると、夕方には133円レベルへと値を上げている。途中、本邦要人から相次いで円安けん制発言が聞かれたものの、効果はほとんどなく、結果として「寄り付き安・大引け高」の様相。16時現在、ドル/円はわずかに緩んだ132.75-80円で推移し、欧米市場を迎えていた。
一方、材料的に注視されていたものは、「円安けん制発言」と「ロシア情勢」について。
前者は、ここのところ一服していた感もあった円安が昨日欧米時間に再燃。ドル/円が年初来高値を更新したこともあり、やや早めの時間帯から政府要人による円安けん制発言が相次ぐ格好となった。たとえば、鈴木財務相は「為替の急速な変動は望ましくない」と述べたうえで、米国などの通貨当局と密接な意思疎通を図っている旨のコメントも発していた。また松野官房長官は「為替の安定は重要」、内田日銀理事も「最近の短期間で大幅な円安進行は望ましくない」と指摘している。対して、黒田日銀総裁は「強力な金融緩和を粘り強く続ける」と発言した反面、そののち「短期間での大幅な円安進行は経済にマイナス作用」とコメントしていたようだ。
対して後者は、ロシア外務省が報復措置とみられる「米財務長官ら61人を入国禁止にする」と発表。また、モスクワに拠点を置く米報道機関各社に対し、報道制限措置導入の示唆も明らかにしている。また、ラブロフ外相が「西側が長距離砲供与ならウクライナは結果として多くの領土を失う」と恫喝したほか、シルアノフ財務相はBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に対して、世界的な経済危機のリスクを指摘したうえで、経済情勢の安定化に向け協調して措置を取るよう呼びかけたという。
●NY市場 一時1ドル132円台 約20年ぶりの円安ドル高水準を更新  6/7
6日のニューヨーク外国為替市場では、アメリカの景気減速への懸念が和らぎ、長期金利が上昇傾向にあることを背景に円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は一時、1ドル=132円台まで値下がりして、およそ20年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
6日のニューヨーク外国為替市場では、円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は一時、1ドル=132円台まで値下がりしました。これは、2002年4月以来、20年2か月ぶりの円安ドル高水準です。
円安が進んでいるのは、アメリカの景気減速への懸念が和らぎ、債券市場でアメリカの長期金利が一時、3%台まで上昇したことから、投資家の間でより利回りが見込めるドルを買う動きが強まっているためです。
市場関係者は「アメリカの長期金利は、景気減速への懸念から上昇に歯止めがかかっていたが、このところ市場の予想を上回る内容の経済指標が相次いで発表されたことで懸念が和らぎ、再び上昇に転じている。インフレを抑えるためにアメリカで金融引き締めが加速し、日米の金利差が拡大するとの見方もドル買いにつながっている」と話しています。
また円相場は、ヨーロッパ中央銀行が7月にも利上げに踏み切るとの観測を背景にユーロに対しても円安が進んでいて、一時、2015年6月以来、およそ7年ぶりに1ユーロ=141円台まで値下がりしました。 

 

●NY円、132円後半 米長期金利上昇が一服、もみ合う展開に 6/8
7日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比74銭円安ドル高の1ドル=132円59〜69銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0699〜0709ドル、141円96銭〜142円06銭。
東京市場で一時1ドル=133円00銭まで円安ドル高が進んだ流れを引き継ぎ、朝方は円売りドル買いが先行。その後、米長期金利の上昇が一服したのを背景にドルが売られ、もみ合う展開が続いた。
●外為 1ドル133円22銭前後とドル高・円安で推移 6/8
8日の外国為替市場のドル円相場は午後2時時点で1ドル=133円22銭前後と、前日午後5時時点に比べ46銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円27銭前後と41銭のユーロ高・円安で推移している。
●円全面安、日銀には緩和維持しか為す術なし 6/8
東京外為市場でドル円は133.21円付近まで円安・ドル高推移し、約20年ぶりの円安水準を連日で更新。主要国が金融引き締めに動いているなかで、日銀が一人出遅れていることが円安を後押ししている。インフレが家計を直撃しているが、賃金が停滞しているなかで金融引き締めを開始する条件は整っておらず、日銀に為す術がないことも円安を後押し。
ユーロ円は142.36円付近、ポンド円は167.44円付近、豪ドル円は96.20円付近まで上昇し、円相場は全面安。明日の欧州中央銀行(ECB)理事会を控えてユーロ円は2015年1月以来の高値を塗り替えている。 
●東京円、81銭安の1ドル=133円57〜59銭 6/8
8日の東京外国為替市場で、円相場は午後5時、前日(午後5時)比81銭円安・ドル高の1ドル=133円57〜59銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、88銭円安・ユーロ高の1ユーロ=142円76〜80銭で大方の取引を終えた。
●値上げ許容発言を撤回 黒田日銀総裁、改めて陳謝 6/8
黒田東彦日銀総裁は8日、衆院財務金融委員会で、6日の講演で最近の物価高に関し「家計が値上げを受け入れている」と発言したことについて、「表現は全く適切でなかった。撤回する」と述べた。
黒田総裁は、「家計が苦渋の選択として値上げをやむを得ず受け入れているということは十分認識している」と強調。その上で、「誤解を招いた表現で申し訳ない」と改めて陳謝した。
●円安進行、20年ぶり1ドル=134円台…黒田総裁の「緩和継続」強調が拍車  6/8
8日のロンドン外国為替市場で、1ドル=134円台まで円安・ドル高が進み、2002年2月以来、約20年4か月ぶりの円安水準となった。
急速なインフレ(物価上昇)に対応するため、米国が金融引き締めを急ぐ一方、日本は低金利政策が続き、日米の金利差が拡大するとの見方から運用面で有利となるドルが買われている。日本銀行の黒田 東彦はるひこ 総裁が8日のオンラインイベントで、金融緩和の継続を改めて強調したことも、円売りに拍車をかけた。
円は対ユーロでも売られており、15年1月以来、約7年5か月ぶりの円安水準で推移している。ユーロ圏では、欧州中央銀行(ECB)が9日の定例理事会で量的緩和策の終了を決定すると見込まれている。 

 

●円下落、一時134円半ば 20年ぶり円安ドル高水準 6/9
8日のニューヨーク外国為替市場の円相場は円がドルに対して下落し、一時1ドル=134円48銭と、2002年2月以来、約20年4カ月ぶりの円安水準を付けた。米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが広がった。9日の外国為替市場でも円安が進み、一時1ドル=134円50銭近辺を付けた。
原油先物相場が上昇したことからインフレ加速への警戒感が高まり、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐとの観測が強まった。米長期金利の指標となる10年債利回りは一時3・04%台まで上昇した。
●NY市場 一時1ドル134円台半ば 約20年ぶり円安ドル高水準更新  6/9
8日のニューヨーク外国為替市場では円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、円相場は一時、1ドル=134円台半ばまで値下がりしておよそ20年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。また、円相場はユーロに対しても一時、1ユーロ=144円台まで大きく値下がりし、7年5か月ぶりの円安ユーロ高水準となりました。
8日のニューヨーク外国為替市場では、東京市場やロンドン市場で円安ドル高が進んだ流れを引き継いで円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、円相場は一時、1ドル=134円台半ばまで値下がりしました。
これは2002年2月以来、20年4か月ぶりの円安ドル高水準です。
円安が進む背景には、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が利上げを進める姿勢を示す中、大規模な金融緩和を続ける姿勢を示す日本との金利差の拡大が改めて意識されていることがあります。
市場関係者は「原油や天然ガスの価格が高騰し、日本からエネルギーを買うための円売りドル買いが増えるとの見方が出ていることも円安の加速につながっている」と話しています。
また、円相場は、ヨーロッパ中央銀行が7月にも利上げに踏み切るとの観測を背景に、ユーロに対しても一時、1ユーロ=144円台まで大きく値下がりし、2015年1月以来、7年5か月ぶりの円安ユーロ高水準となりました。 
●ロンドン外国為替市場で円相場、1ユーロ = 144円を超える 6/9
6月8日21時44分頃、ロンドン外国為替市場で円相場は1ユーロ = 144円を超え、前日3時頃の価格(141.88円)から2.31円(1.63%)上昇となる144.19円となった。
●円下落、一時134円半ば 20年ぶり円安ドル高水準 6/9
8日のニューヨーク外国為替市場の円相場は円がドルに対して下落し、一時1ドル=134円48銭と、2002年2月以来、約20年4カ月ぶりの円安水準を付けた。米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが広がった。9日の外国為替市場でも円安が進み、一時1ドル=134円50銭近辺を付けた。
原油先物相場が上昇したことからインフレ加速への警戒感が高まり、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐとの観測が強まった。米長期金利の指標となる10年債利回りは一時3・04%台まで上昇した。
●NY市場 一時1ドル134円台半ば 約20年ぶり円安ドル高水準更新  6/9
8日のニューヨーク外国為替市場では円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、円相場は一時、1ドル=134円台半ばまで値下がりしておよそ20年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。また、円相場はユーロに対しても一時、1ユーロ=144円台まで大きく値下がりし、7年5か月ぶりの円安ユーロ高水準となりました。
8日のニューヨーク外国為替市場では、東京市場やロンドン市場で円安ドル高が進んだ流れを引き継いで円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、円相場は一時、1ドル=134円台半ばまで値下がりしました。
これは2002年2月以来、20年4か月ぶりの円安ドル高水準です。
円安が進む背景には、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が利上げを進める姿勢を示す中、大規模な金融緩和を続ける姿勢を示す日本との金利差の拡大が改めて意識されていることがあります。
市場関係者は「原油や天然ガスの価格が高騰し、日本からエネルギーを買うための円売りドル買いが増えるとの見方が出ていることも円安の加速につながっている」と話しています。
また、円相場は、ヨーロッパ中央銀行が7月にも利上げに踏み切るとの観測を背景に、ユーロに対しても一時、1ユーロ=144円台まで大きく値下がりし、2015年1月以来、7年5か月ぶりの円安ユーロ高水準となりました。
●円相場、134円27〜27銭 9日正午現在 6/9
9日の東京外国為替市場の円相場は、正午現在1ドル=134円27〜27銭と、前日(133円58〜58銭)に比べ69銭の円安・ドル高となった。
●円相場 1ドル=134円台半ば 約20年ぶりの円安水準続く  6/9
9日の東京外国為替市場は、円安が一段と加速し、円相場は1ドル=134円台半ばまで値下がりしています。日本とアメリカの金利差がさらに拡大するという見方を背景に、およそ20年ぶりの円安水準が続いています。
東京外国為替市場は、円を売ってドルを買う動きが加速し、円相場は1ドル=134円台半ばまで値下がりしています。
8日のニューヨーク市場で円安が進んだ流れを引き継ぎ、2002年2月以来、20年4か月ぶりの円安水準が続いています。
円相場はユーロに対しても値下がりしていて、2015年1月以来7年5か月ぶりの円安水準が続いています。
市場関係者は「インフレを抑制するため、アメリカとヨーロッパの中央銀行が金融引き締めの姿勢を強めているのに対し、日銀は今の大規模な金融緩和を続ける方針を維持している。投資家の間では、金融政策の方向性の違いによって、日本と欧米の金利差がさらに拡大するという見方が広がっていて円が売られやすくなっている」と話しています。
●円高水準の企業想定為替レート、市場の円安予想とギャップ 6/9
国内企業の多くが今年度の想定為替レートを実勢より15─20円近くドル安・円高水準に置いている。機械的・保守的な予想設定が多く、マーケット参加者の予想通り、このままドル高・円安で推移すれば、輸出企業は業績上振れの要因になる。ただ、一部の企業からは金融引き締めで米経済が減速し、円高になるとの見方も出ており、予断を許さない。
2023年3月期の想定為替レートを1ドル115―120円前後に置く国内企業が多い。想定為替レートを明らかにする決算発表があった4月後半から5月初旬は、ドルが20年ぶりに130円を突破した円安局面であり、市場とのギャップに注目が集まった。
日米金利差などを背景にドル高・円安を見込むマーケット参加者に対し、特段の明確な円高要因を想定して、想定為替レートを設定したという国内企業は多くない。
トヨタ自動車の想定為替レートは1ドル115円。景気や金利の予想を組み込んでいるわけではなく、決算締切日前の20営業日(3月11―31日)のドル/円相場の平均値をベースに想定為替レートとして機械的に算出している。
今年に入り、3月初旬まで114―115円程度で推移していたドルは、3月末の決算期末までに128円程度まで上昇した。野村証券のチーフ・エクイティ・ストラテジスト、池田雄之輔氏は、企業の為替見通しが実勢よりも円高水準となったのは、3月中旬以降に急ピッチで円安が進行したためとみる。
●恵みの円安、1ドル=134円台突入…自動車株軒並み高値更新 6/9
外国為替市場で円安がさらに加速し、ニューヨーク市場でも、1ドル=134円台に突入。2002年2月以来、約20年4カ月ぶりの円安水準となっている。
円相場は4月下旬に一時1ドル=131円台まで円安が進んだが、その後、米国の景気減速を防ぐために米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げのペースを緩めるとの見方が広がり、5月下旬には一時1ドル=126円台まで円高に戻していた。しかし、米国の長期金利が上昇し、日米の金利差拡大が意識され、円を売って金利の高いドルを買う動きが広がったことから、約2週間で7円ほども円安が進んでしまった。
また、日銀の黒田総裁が6月6日の講演で「家計の値上げ許容度も高まってきている」なとど述べたことについて、8日に開かれた衆議院の財務金融委員会で「表現は全く適切でなかった」と述べ、発言を撤回した。が、この日、英国メディアが主催するイベントの中で改めて「金融緩和を継続する」考えを示したため、市場関係者は、「主要国の中で唯一日本だけが金融緩和を継続する意向を示して、今後も円安の流れは変わらないだろう」との見方が再び広かったとみられている。
6月8日の東京株式市場は、前日の米株高や円安・ドル高が進んだのを受けて買い注文が優勢となり、日経平均株価(225種)は4営業日連続で値上がりして、終値も前日比290円34銭高の2万8234円29銭。終値で2万8000円台を回復するのは3月30日以来、約2か月ぶりという。
円安・ドル高が一段と進んだのを受け、採算改善への期待が高まった輸出関連銘柄の値上がりが目立ち、自動車株も堅調。マツダ、三菱自動車、スバル(SUBARU)、いすゞ自動車が一時年初来高値を更新したほか、トヨタ自動車や日産自動車、スズキなども軒並み上昇した。なかでも、三菱自動車は終値でも前日比4.54%増の437円、スバルも2.27%増の2493円50銭の高値圏で引けており、自動車などの輸出関連銘柄は投資家にとっても「恵みの円安」となっている。
●ドル円相場は134円を突破、為替を「円安」へと突き動かしているものは何か 6/9
ドル円相場は134円台を突破し、約20年ぶりの安値を再び更新している。
5月の小康状態を受けて「円安局面は終わったのか」という照会が多かったが、筆者にはまったくそうは思えなかった。
そもそも円売りを駆動してきた、1世界的にも特異な日本銀行の緩和姿勢(金利)、2収束のメドが立たない貿易赤字(需給)、という2つの論点は終始変わっていない。
6月からはインバウンド解禁という、2の貿易赤字を緩和するアプローチが政府から見られているが、1日2万人の入国上限で見込める旅行収支黒字は年間で7000億円弱、月に均せば約580億円にすぎない。一方、過去3カ月の貿易赤字は月平均6500億円である。これでは焼け石に水であり、根拠薄弱な入国上限のせいでせっかくの円安抑止策は奏功しない見通しである。
円独り負け→5月の小康状態→ドル高による円安
昨年来続く円安基調を振り返ってみると、「ドル高の裏返し」というにはあまりにも円の下落幅が大きい。
名目実効為替ベースで見た場合、2021年通年でドルは3.4%上昇している一方、円は8.7%も下落している。特に円安が勢いづき始めた今年3月は名目実効ベースで「ドルも円も下落する」という光景が広がり、明らかに「ドル高の裏返し」ではなく、円売りこそが円安の正体だった。
しかし、4月以降は巷間指摘されやすい「ドル高の裏返し」としての円安も顔を出し始めており、ドルと円の名目実効相場が対称的に動いた。
5月は逆に名目実効ベースでドル安が進む一方、円高が進んだ。これもFRB(連邦準備制度理事会)の正常化プロセスがアメリカの景気を悪化させるオーバーキルの懸念へ直結し、株価が調整する中でアメリカの金利が低下したことと平仄が合う。
6月に入ってからの円の名目実効相場は現時点で未公表だが、やはりアメリカの金利上昇に連れて円が売られている印象が強い。
いわゆる「FRBが利上げするから日米金利差が拡大して円売り・ドル買いが進んでいる」という一般的な解説に合う実態がようやく見られ始めたのは4月以降であり、足元は需給を越えて金利が説明力を持ち始めているように見える。
日本より政策金利が低いのはユーロ圏とスイスぐらい
こうした金利が説明力を持つ地合いになると、円売りは一段と勢いづく可能性がある。日米金利差ばかりに注目が集まるが、政策金利が離陸し始めているのはアメリカだけではない。
日本より政策金利が低い主要国はユーロ圏(マイナス0.50%)とスイス(マイナス0.75%)くらいだが、ECB(欧州中央銀行)は2022年9月末をメドにマイナス金利を脱却することを宣言している。
先進国の中では唯一、低金利と通貨安の必要性を公言してきたスイス国立銀行(SNB)も、ここにきて「インフレ率が0〜2%の範囲に収まらない場合、躊躇なく政策を引き締める」との高官発言が報じられはじめた。
6月2日に公表されたスイスの5月消費者物価指数(CPI)は前年比2.9%上昇と2008年9月以来、約14年ぶりの伸びを記録している。このままいけばSNBがECBの後を追う可能性は高いと言える。
こうなると「日銀(円)だけがマイナス金利」という構図になる。これは円安バブルという言葉まで用いられた約15年前(2005〜2007年)に近い相場環境である。
当時は「円だけがゼロ金利」という状況で円キャリー取引(円で調達しドルなどで運用する)が隆盛を極めた。そして、日本は巨額の貿易黒字を抱えており、円安がファンダメンタルズに反しているという部分もあった。
しかし、現在は巨額の貿易赤字に転じている。そのうえで「円だけがゼロ金利」どころか「円だけがマイナス金利」という地合いに陥れば円売りの正当性が一段と強まってしまうだろう。
ファンダメンタルズが「円売り」を正当化
要するに、今の円安はファンダメンタルズに沿った動きである点で圧倒的な正しさがある。日本国内では円安の良し悪しを議論する風潮がかまびすしいが、日本人がどう感じようと、肝心のファンダメンタルズが円売りを正当化しており、それを積極的に変えたいという雰囲気も政府・日銀からは出てこない。
原発再稼働もインバウンド解禁も外貨流出を食い止めるという観点からは直接的なアプローチになるはずだが、政府が積極的に手を付けようとする様子はない。参院選が終わったら、反対勢力を恐れなくなり、動き出してくれるのだろうか。
この状況が続くかぎり、基本的にはFRBの正常化プロセスがつまずくことでしか円安は止まりようがないだろう。ドットチャートでいえば、最短で2022年12月、順当に行ったら2023年3月だろうか。今の円売りペースを踏まえると、その時間軸はかなり長い。
●東京原油8万9000円超え 円安進行で値上がり予想 6/9
東京商品取引所で8日夕から9日朝まで行われた中東産原油の先物の夜間取引で指標価格が急上昇し、一時1キロリットル当たり8万9290円を付けた。8万9千円を超えるのは2008年7月中旬以来、約13年11カ月ぶり。
日銀が超低金利政策を続ける一方で米国が利上げにかじを切っており、外国為替市場で円安ドル高が進行。この影響で、原油輸入代金を円建て換算すれば一段の値上がりが予想されることから、先物高につながった。
中国の上海市が今月に入り、コロナ対策のロックダウンを実質的に解除、中国のエネルギー消費が増えるとの予想も世界的な原油先物高の傾向の一因となっている。  

 

●政府・日銀の声明文ポイント 6/10
財務省と金融庁、日銀が10日発表した声明文のポイントは次の通り。
一、外国為替相場は(経済の)ファンダメンタルズ(基礎的条件)に沿って安定的に推移することが重要。急速な変動は望ましくない。
一、最近の為替市場では急速な円安の進行が見られ、憂慮している。
一、政府・日銀は緊密に連携し、為替市場の動向や経済・物価などへの影響を一層の緊張感を持って注視していく。
一、「為替の過度の変動や無秩序な動きは経済や金融の安定に悪影響を与え得る」といった先進7カ国(G7)などで合意された考え方を踏まえ、必要な場合には適切な対応を取る。
●円安「必要なら適切な対応」 財務省、金融庁、日銀が初の声明文 6/10
財務省と金融庁、日本銀行は10日、国際金融市場に関する3者会合を開き、外国為替市場で進む円安ドル高の対応などを協議した。会合では初めて声明文を取りまとめ、「必要な場合には適切な対応を取る」と強調。国内の物価高を助長する急速な円安を牽制(けんせい)した。
会合では為替の過度な変動や無秩序な動きは経済や金融の安定を損ねるとの認識で一致し、為替市場の動向を一層の緊張感を持って注視する方針を確認した。
財務省の神田真人財務官は会合後、記者団に対し「急速な円安の進行が見られ憂慮している」と指摘。「あらゆるオプションを念頭に置いて機動的に対応する」と述べ、為替介入も排除しない考えを示唆した。
東京外国為替市場の円相場は9日、対ドルで一時1ドル=134円55銭まで下落。2002年2月以来、約20年4カ月ぶりの円安水準となった。
●円安、再び急加速 日銀総裁発言も波乱要因に 6/10
外国為替市場で小康状態にあった円安が、今月に入り再び急加速している。円の対ドル相場は連日のように20年ぶりの安値を更新し、年初からの下落幅は20円近くに達した。日銀の黒田東彦総裁はコロナ禍からの景気回復を支えるため、大規模金融緩和の継続が必要と訴える。一定の円安は覚悟の上とみられるが、こうした総裁の発言自体が波乱要因となっており、日銀の政策運営は難しさを増している。
ロシアのウクライナ侵攻で原油などの価格が高騰する中、円安が輸入物価の上昇に拍車を掛けている。家計や、価格転嫁が難しい中小企業には不満も鬱積(うっせき)する。
経済同友会が8日に公表した調査結果では、約200人の経営者のうち、現在の円安は日本経済に「マイナス」「ややマイナス」とした回答は計74%に上った。日銀は「円安は日本経済全体にプラス」(黒田総裁)との姿勢を崩していないが、同友会の桜田謙悟代表幹事は「経営者は(業種別の影響など)ミクロで見てほしいと考えている」と述べ、きめ細やかな目配りを求めた。
円相場は5月中旬以降、米連邦準備制度理事会(FRB)の急速な利上げによる米国の景気悪化が懸念され、いったん円高方向に戻す場面もあった。しかし、FRBの金融引き締め姿勢に変更がないと市場が判断したことで、再び日米間の金利差拡大が強く意識されて円安が加速した。
米国や欧州と異なり、日本経済はコロナ禍前の水準をいまだ回復しておらず、日銀は景気の腰折れを防ぐためにも「強力な金融緩和を粘り強く続ける」(黒田総裁)との立場。日米金利差はさらに拡大する方向で、円は今後も売られやすい環境が続く。
足元の急速な円安は黒田総裁の発言が材料視されている面も否めない。最近の講演では「家計が値上げを受け入れている」と発言、生活者視点を欠くとの厳しい批判を浴び、撤回に追い込まれた。総裁の発言が信頼を失えば市場は無用な混乱に陥りかねず、日銀には丁寧な説明が求められている。
●円安は損で円高が得? 「円安」の今、どんなメリットがあるの? 6/10
最近の経済関連のニュースでよく取り上げられる話題に「円安」があります。「円安」とは、為替取引において相手方の通貨に対して日本の通貨である「円」の価値が下がった(安くなった)ことを意味しています。
自分の国の通貨が下がるということは、海外からの輸入品に対して、より多くの円を払わなければ買えないということです。普通に考えると損をしているように感じますが、円安にもメリットがあります。
そもそも円安とは?
経済関連のニュースで「1ドル〇〇円台まで円安が進みました」と言っているのを聞いたことがある人も多いでしょう。円安とは、為替取引において日本の通貨である「円」が、相手方の通貨、例えばアメリカの通貨である「ドル」に対して価値が下がる(安くなる)ということです。
ある時点での為替相場で「1ドル=100円」だったとします。これは、「1ドルと交換するために100円が必要」ということを意味します。その後「1ドル=110円」になったとしましょう。このとき「1ドルと交換するために110円が必要」となり、同じ1ドルを手に入れるために、それまでより10円多く支払う必要があるということです。
これだけ見ますと、ドルが高くなったと理解するのは簡単ですが、円が安くなったと感じにくいかもしれません。そこで、分かりやすく100円を基準で考えますと、「1ドル=100円」は、「100円で1ドルを手に入れられた」のに対して、「1ドル=110円」の時は、「100円でおよそ0.91ドルしか手に入らない」ということを意味しており、円の価値が下がった(安くなった)ということになるのです。
円安と豊富な観光資源で「インバウンド」の起爆剤に
円を基準に考えますと、他国の通貨(例ではドル)に対して値下がりしていることを実感しやすくなったのではないでしょうか。実際、現在進んでいる円安によって、輸入に頼る食品や燃料は値上がりしていますし、海外旅行へ行くにも円高の時より出費がかさんでしまいます。
デメリットばかりのようですが、逆の立場で考えたらどうでしょう。「アメリカ・ドル」を使っている人から見ますと、円安は日本の高級なホテルや旅館に安く泊まれ、たくさん買い物をするチャンスです。
海外から日本へ旅行へ来ることを「インバウンド」といい、日本国内の多くの業種に利益をもたらしてくれます。
新型コロナウィルスの感染が広がる前までは、海外からの観光客による「爆買い」という現象が見られ、旅行会社、航空会社、百貨店やドラッグストアだけでなく、観光地の土産物屋のような規模の小さな小売業にまで多くの恩恵がありました。幸い日本には世界中の人を魅了する観光資源がたくさんあります。円安と観光資源は、再びインバウンド需要を喚起する起爆剤となり得ます。そして、コロナ禍で停滞していた経済活動を再始動するきっかけにもなるでしょう。
円安が農林水産物の輸出の追い風に?
今、日本から海外向けに輸出が伸びつつあるのが「農林水産物」です。特にここ10年は右肩上がりで輸出額が増えています。農林水産省のウェブサイトで公表されている「農林水産物輸出入概況」によると、さかのぼって閲覧できる最も古い2003年の農林水産物輸出額は3402億円でしたが、2021年は1兆1626億円と3倍以上に伸びています。その前年比25%以上の増加となっています。
かねてより日本の食料自給率の低さが論じられてきましたが、海外の安い輸入食品に頼ったままでした。急激に進んだ円安に加えてロシアのウクライナ侵攻によって、食料を過剰に海外に依存することへの危機感が一気に高まるにつれ「食糧安全保障」という言葉を耳にするようになりました。
現在の円安は身近な生活に負の影響を与えていますが、これを機に日本が食糧自給の向上を進めるために農業政策を見直すと同時に、農林水産物が新たな日本の輸出品として成長することが期待されます。
円安が新たな経済成長の起爆剤になるかも
コロナ禍でインバウンドが途絶え、観光や小売りなどの業種は苦境にあえいでいますが、ようやく海外観光客の受け入れが再開されようとしています。円安は海外観光客にとって日本に来るには好条件です。また、新たな輸出品として成長している農林水産物を売り込むにも、円安はまたとないチャンスです。現状は生活に負の影響が大きい円安ですが、日本の新たな成長の起爆剤になるかもしれません。
●外為 1ドル133円80銭前後とドル高・円安で推移 6/10
10日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=133円80銭前後と、午後5時時点に比べ20銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=141円80銭前後と16銭のユーロ安・円高で推移している。
●ロンドン外国為替市場で円相場、1ユーロ = 141円を切る 6/10
6月10日22時2分頃、ロンドン外国為替市場で円相場は1ユーロ = 141円を切り、前日2時頃の価格(142.89円)から1.90円(1.33%)下落となる140.99円となった。
●円は年末1ドル=124円へ反発、国内批判や米引き締め鈍化で−UBS 6/10
UBS AGは円相場が年末までに1ドル=124円に向けて反発すると予想している。日本銀行の金融緩和と大幅な円安に対する国内批判の強まりなどが円の上昇を促す可能性が高いとみている。日本の経済成長や国際収支の改善、米国の利上げペース鈍化によるドル高の反転も後押しするという。
ストラテジストのテック・レン・タン氏(シンガポール在勤)は9日付のリポートで、円が上昇に転じるための条件とその蓋然(がいぜん)性を示した。その中で、日銀が国内物価が持続的な上昇軌道にあるとの評価を改めることや、インフレ期待が上放れする懸念を強めることが円安反転の最も強力なきっかけになるが、その可能性は低いとした。米国の対日貿易赤字が全体の6.6%で、米国が高インフレと労働市場のひっ迫に直面する中、米財務省が円安に歯止めを掛けるよう日銀に圧力をかける可能性も低いと論じた。
一方、輸入物価の高騰が家計の購買力を圧迫する中、7月の参議院選挙に向けて世論の不満が一段と強まり、日銀は金融緩和の費用対効果の再考を迫られる可能性があるという。円安による輸出の強化、海外旅行者受け入れ再開による観光収入および国内成長、インフレの押し上げ効果も、徐々にではあるものの円の上昇要因になるとみている。
今年10−12月期には広範なドル高が反転すると予想。米国の経済成長とインフレが緩やかになるのと同時に米金融当局が利上げペースを緩め、タカ派トーンを弱めることで、米債利回りの安定化とともにドル・円の下落を促す可能性が高いとしている。
タム氏はドル売り・円買いポジションのエクスポージャーが管理可能な水準の投資家には、そのポジションを持ち続けることを推奨。ただ、短期的にはドル・円の上昇モメンタムが強いため、大規模なドル・円ショートを抱える投資家についてはエクスポージャーの管理が極めて重要としている。 

 

●NY円、134円35〜45銭 6/11
10日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比03銭円安ドル高の1ドル=134円35〜45銭を付けた。
●日本の為替介入「極めて例外的」 インフレでドル高容認―米報告 6/11
米財務省は10日、主要貿易相手国・地域の通貨政策を分析した半期為替報告書で、大幅な対米貿易黒字を抱える日本を引き続き「監視対象」に指定した。急速な円安・ドル高に見舞われる日本に対し、為替市場介入は極めて例外的な場合に限られるべきだと改めてくぎを刺した。米国はインフレ抑制に働く自国通貨高を事実上容認しており、日本の通貨当局が円安阻止の介入を行う難しさが浮き彫りとなった。
為替報告書は、ドルが主要通貨に対して上昇している現状を踏まえ、日本について「日米の金利差拡大を主因に円安が進んだ」「実質実効ベースの円相場は50年ぶりの安値に近い」などと指摘。その上で「介入は極めて例外的な状況に限り、適切な事前協議を踏まえて実施されるべきだ」と従来の主張を繰り返した。
●政府と日銀「円安憂慮」と異例の声明 必要なら適切な対応 6/11
20年ぶりの円安水準を受けて、政府と日本銀行は「憂慮している」と声明を出した。
財務省と金融庁、日銀の幹部が10日夕方、緊急の会合を開き、1ドル = 134円前後の、20年ぶりの円安ドル高水準を受け、経済への影響などについて話し合った。
2022年2月以来の開催で、初めて文書としてまとめた声明では、急速な円安進行を憂慮していること、各国と緊密な意思疎通を図りつつ、必要な場合は適切な対応をとること、としている。
財務省・神田眞人財務官「(適切な対応とは?)あらゆるオプションを念頭において、機動的に対応するということですけれども、(為替介入について)今は、そういう局面になるかどうかは申し上げられません」
こうした会合は、急速に進む円安を抑える狙いがある。
●NY外為 円、134円台前半 6/11
週末10日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、高水準のインフレ率を背景とした米長期金利の上昇を眺めて、海外市場での円買い・ドル売りの流れが反転し、1ドル=134円台前半付近での取引となった。午後5時現在は134円35〜45銭と、前日同時刻(134円32〜42銭)比03銭の円安・ドル高。
日本の財務省、金融庁、日銀が10日に会合を開き、最近の急激な円安進行を憂慮するとの声明を発表した。来週の日銀の金融政策決定会合で何らかの政策変更があるのではないか、との警戒感からこれまでの円安の流れが一服、円は133円台後半で高止まる場面もあった。
ただ米労働省が10日発表した5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.6%上昇となった。2カ月ぶりに前月(8.3%上昇)を上回り、40年5カ月ぶりの高い伸び率となったほか、市場予想(8.3%上昇)も上回った。米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的なペースで利上げを続けるとの見方が広がり、米長期金利が上昇。このため日米金利差の観点から、その後は円売り・ドル買いも入り、円は上値を削る展開となった。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0504〜0514ドル(前日午後5時は1.0613〜0623ドル)、対円では同141円27〜37銭(同142円67〜77銭)と1円40銭の円高・ユーロ安。
●NYダウ3日続落、終値880ドル安…インフレ懸念で売り膨らむ 6/11
10日のニューヨーク株式市場で、ダウ平均株価(30種)の終値は前日比880・00ドル安の3万1392・79ドルだった。同日発表された5月の米消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比8・6%と約40年半ぶりの高水準となり、インフレ(物価上昇)の長期化が景気を冷やすという見方が広がった。
値下がりは3日連続。ダウ平均は前日にもインフレ加速への警戒感から600ドルを超える下落となっていた。米連邦準備制度理事会(FRB)が記録的なインフレを抑制するため、金融引き締めを加速すると景気後退を招くとの懸念が市場で強まり、幅広い銘柄が売られた。
物価高で消費が伸び悩むとの思惑から、クレジットカード大手のアメリカン・エキスプレスやビザなど消費関連銘柄の下落が目立った。米市場関係者は「一部でインフレはピークに達したとの見方も出る中、上昇が再び加速し、消費者心理も悪化している。景気後退への不安が株売りを加速させた」と指摘した。
一方、10日のニューヨーク外国為替市場で、円相場は一時、1ドル=134円台半ばまで円安・ドル高が進んだ。約20年ぶりの安値圏となる。米長期金利が上昇し、日米の金利差が広がるとの見方から、運用に有利なドルを買う動きが優勢になった。 

 

 

 

●円相場 一時1ドル=134円台後半 20年4か月ぶり円安水準を更新 6/13
週明けの13日の外国為替市場では、円安が一段と進み、円相場は一時、1ドル=134円台後半まで値下がりして2002年2月以来、20年4か月ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
10日に発表されたアメリカの先月の消費者物価指数の伸び率が記録的な水準となったことで、市場では、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が今後、利上げをさらに加速させるのではないかという観測が出ていて、大規模な金融緩和を続ける日本との金利差が拡大するという見方から円を売る動きが出ています。
●一時1ドル 135円台 20年ぶり円安水準 日米“金利差”円売りドル買い強まる 6/13
速報です。円相場が1ドル=135円台に突入し、およそ20年ぶりの円安水準を更新しました。きょうの東京外国為替市場の円相場は、円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、一時1ドル=135円台と、2002年2月以来、20年4か月ぶりの円安ドル高水準をつけました。
背景にあるのは、日本とアメリカの金利の差です。アメリカでは記録的なインフレが進み、先月の消費者物価指数は、およそ40年半ぶりの高い水準となりました。物価上昇を抑えるため、アメリカの中央銀行にあたるFRBは、今週開く会合で、大幅な利上げを決める見通しです。一方、景気回復が遅れる日本では超低金利が続けられているため、アメリカとの金利差がさらに広がるとの見方から、円を売ってドルを買う動きにつながっています。
●1ドル134円台も「序の口」…これからさらに「円安」が進むといえるワケ 6/13
円安の背景
外国為替市場で主要通貨に対する円安傾向が鮮明だ。
6月9日の東京時間にドル/円の為替レートは1ドル=134円50銭台まで下落した。
円安進行の主たる背景要因として、日米の景況感の差が鮮明に開いていることは大きい。
ポイントは個人消費に代表される内需の強さの違いだ。
各種経済指標を確認すると、米国経済は堅調に推移している。
賃金の上昇ペースは高水準だ。
0.5ポイントの追加利上げに加えて6月からは量的引き締め=QTが始まったが景気が腰折れする状況には至っていない。
個人消費は増加基調を保っている。
企業は急増するコストの価格転嫁を進め、生産者物価の上昇に歩調を合わせて消費者物価が上昇している。
米国とは対照的に、わが国では需要が弱い。
世界全体でエネルギー資源や穀物、石油化学製品や物流費用などモノとサービスの価格が急騰しているが、企業の価格転嫁は容易ではなく、企業物価と消費者物価の乖離が大きい。
ただし、足許ではコスト増に耐えられない企業が急増している。
内需は追加的に圧迫され、国内企業の業績悪化懸念は高まるだろう。
それが円の先安感を強める展開が懸念される。
鮮明化する日米の景況感格差
6月に入ってからの円安進行の最大の要因は、日米の景気の強弱の差が、一段と鮮明になり始めたことだ。
米国の景気は緩やかに回復し続けている。
労働市場はかなり逼迫した状態が続いている。
賃金は増加傾向だ。
5月の時間当たり賃金の伸び率は前月からやや鈍化したが5.2%増加した。
それが個人の消費を支えている。
4月の個人消費支出(PCE)は実質ベースで前年同月比2.8%増加した。
旺盛な個人の消費に支えられて、米国の企業は価格転嫁を進めやすい。
4月の生産者物価指数は前年同月比で11.0%上昇した。
それに対してPCE価格指数は同6.3%、食品とエネルギーを除くコアPCE価格指数は4.9%上昇した。
FRBはインフレ退治のために必死になって金融政策を正常化し引き締めようとしているが、今のところ個人消費は旺盛だ。
その一方でわが国の賃金は思うように増えていない。
4月の毎月勤労統計調査の速報によると、現金給与総額は同1.7%増だ。
また、家計調査によると同月の勤労者世帯の実収入(二人以上の世帯)名目ベースで0.6%、実質ベースで3.5%減少した。
家計調査に収録されている消費支出(実質)は1.7%減少した。
賃金が増えない状況下で世界的にモノやサービスの価格が上昇しているため、家計消費への下押し圧力が強まっている。
そうした日米の需要の強弱の差が、ドル高・円安に大きく影響している。
さらに、米国では9月以降も0.50ポイント以上の追加利上げが実施される可能性が高い。
その一方で、わが国は日銀が基本的には異次元の金融緩和を続けるとの見方が多い。
内外金利差の拡大が補完的に円売り圧力を強め、134円台まで円安が進行した。
円の先安感はさらに強まる可能性
当面、米国の個人消費は底堅さを維持する可能性が高い。
その一方で、わが国では需要が減退する。
そうした見方から円の先安感は強まるだろう。
ウクライナ危機によって世界経済はブロック化し始め、各国企業の事業運営コストが増える。
それに加えて、中国のゼロコロナ政策はサプライチェーンの混乱に拍車をかけた。
世界の供給制約は長期化し、モノやサービスの価格はさらに押し上げられる。
その後も物価は高止まりするだろう。
例えば、原油価格はOPECプラスの増産発表後も上昇した。
その背景には世界の原油需給が一段と逼迫するとの観測増加がある。
資材の不足と価格高騰、脱炭素を背景とする融資抑制、金利上昇が進む状況下、産油国が生産を短期間で増やすことは難しい。
米国のシェールオイル業界ではリグの稼働数が徐々に増えてはいるが、2020年3月にコロナショックによって世界の金融市場が大混乱に陥る前の水準にまでは回復していない。
また、世界的な物流の混乱や異常気象、ウクライナ危機による肥料不足など複合的な要因が重なり、世界的に食糧不足が顕在化している。
食品などの輸出規制を強化する国が増えている。
世界経済全体で需給はタイト化し、インフレ急騰と成長率低下の同時進行は避けられない。
それに加えて米欧の金融政策大転換によって世界の金融市場は大きく不安定化するだろう。
その状況下、米国のように需要が旺盛であり潜在成長率が相対的に高い国の企業は価格転嫁を進め、より有利に資材や労働力を調達しやすい。
人口が減少し内需が縮小均衡に向かうわが国では企業がさらなるコストプッシュ圧力に直面するだろう。
主力の自動車産業では半導体やワイヤーハーネスなどの不足と価格高騰によって生産減少が深刻だ。
家計の可処分所得がより急速に減少する展開は排除できない。
内需のさらなる減少を背景に、原油、天然ガスや穀物市場で海外勢に本邦企業が買い負けるケースは急速に増えるだろう。
円の先安感は高まりやすい。
●異例の円安、いつまで続く  6/13
円は通常、経済の悪材料を受けて上昇する通貨だが、現在は米国のインフレ高騰によって打撃を受けている。
円相場は、ドル高と日本の金融緩和政策に挟まれ、2002年以来の安値を付けた。ロシアのウクライナ侵攻、米インフレ率の急上昇、中国経済の減速により世界経済の見通しが悪化する中、ドル相場は上昇。主要16通貨に対するドルの価値を示すドル指数は過去1年で12%超急騰し、この間にドルの対円相場は22%も跳ね上がっている。
ドル相場が幅広く上昇する一方、円相場は大幅に下落している。日本の物価が小幅に上昇しているにもかかわらず、日銀が低金利政策を継続する方針を表明していることが一因だ。
米連邦準備制度理事会(FRB)はその対極に位置している。過去40年超で最も高いインフレ率を抑制するため、政策金利を0.5ポイント引き上げた。今週の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げを検討する見込みだ。
円は世界で3番目に取引量が大きい通貨であり、金融市場で重要な役割を果たしている。一部では、円安が巨大な米国債市場に痛手を与えるのではないかとの懸念すら出ている。
円安は通常、自動車などの輸出に支えられている日本経済にとって追い風となる。しかし日本の輸出企業は、今回の円安が資源価格の上昇や供給不足と同時に進行していることに懸念を示し始めている。
日本自動車工業会の永塚誠一副会長は記者会見で、「通常時であれば、車両輸出を中心に円安のメリットが生じ、総じてみれば収益を増加させる方向に働く」とした上で、「資材や部品輸入の価格が大変高騰しており、円安のデメリットが拡大している」と述べた。
ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は4月、日本経済にとって「円安のメリットは全くない」と述べた。「日本は世界中から原材料を入れて、加工して、付加価値をつけて売るという業務をやっている。その中で自国の通貨が安く評価されるというのは決してプラスにならない」
市場環境が悪化しているとき、通常なら円はドルと同様に、投資家が逃げ込む安全資産になる。しかし、アナリストらによると、今回の市場混乱時に投資家が円に逃げ込むことはなかった。日米の金融政策の乖離(かいり)や、ここ数カ月にわたる日本の貿易赤字などが理由だ。貿易赤字は長期間続く可能性があると見る向きもある。ウクライナでの戦争によって生じたエネルギーショックによって、日本の輸入業者は石油やガスを購入する際、より多くのドルが必要になるとも指摘されている。
一方、円を売ったヘッジファンドや投資家は、ドルの上昇が終わりに近づきつつある可能性を警戒し始めている。とりわけ、借り入れコストが上がり、消費者がインフレの影響を感じる中で米国経済が減速した場合、ドル高が終わるかもしれないという。
米国が景気減速、あるいは最終的にリセッション(景気後退)に陥ると予想する一部ヘッジファンドは、円高になった場合に利益を得られるオプションを購入しつつある。ゴールドマン・サックスのアナリストは、ドルは円に対し30%過大評価されているとみている。同社は、6カ月以内にドル相場が対円で115円を割り込んだ場合に利益が出るオプションの購入を顧客向けリポートで推奨している。現在の相場は1ドル=約135円。
ゴールドマン・サックスのグローバル為替・金利・新興国市場戦略部門共同責任者のザック・パンドル氏は、「貿易加重平均の円相場は、レーガン政権時代以来の安値水準にある」と指摘、「ドルの対円相場水準は持続不可能だ」と述べた。
日米両国の中央銀行の立場を分けている最大の理由はインフレである。4月の日本の総合消費者物価指数は前年同月比で2.5%の上昇。価格変動の大きい生鮮食品とエネルギーを除く同指数の上昇はわずか0.8%だった。一方、米国の消費者物価指数(CPI)上昇率は、エネルギーと食料品価格の高騰を受け、5月に前年同月比で8.6%に達した。
日本の財務省、日銀、金融庁は10日、急速な円安の進行に懸念を表明した。「政府・日本銀行は、緊密に連携しつつ、為替市場の動向やその経済・物価等への影響を、一層の緊張感を持って注視していく」とし、必要な場合には適切な対応をとると述べた。
しかし投資家らは、日銀による介入は予想していない。これまでに日銀は、財務省の指示を受けて外為市場に介入したことがある。介入するとすれば、その手法は金融引き締めではなく円買いだ。米国との協調介入でなければ大きな効果を持たないだろうが、インフレの状況から見て米国が協調介入するとは考えにくい。
ドイツ銀行のストラテジスト、アラン・ラスキン氏は「外為市場への直接介入を誘発する公式の相場水準には、まだほど遠い。日本は過去10年間、介入への依存度を次第に下げてきた」と述べた。
日本が最後に外為市場に介入したのは2011年10月。最後にドル売り円買い介入を行ったのは1998年6月だ。
英銀大手スタンダードチャータードでグローバル為替調査・北米マクロ経済戦略部門の責任者を務めるスティーブ・イングランダー氏は、最近の円安は過去の円安とは違ってドル相場の広範な動きから生じており、円が上昇に転じるとの見方を示した。
イングランダー氏は「これまでほとんどのケースでは、円の下落は過剰な円高で起きていたが、今回はそうではない。現在のような急激な(ドル)上昇は長続きしない」と語った。
●外為 1ドル134円80銭前後と大幅なドル高・円安で推移 6/13
13日の外国為替市場のドル円相場は午後0時時点で1ドル=134円80銭前後と、前週末午後5時時点に比べ1円20銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=141円41銭前後と55銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●松野長官「急速な円安の進行を憂慮」1ドル135円台突入に 6/13
松野官房長官は13日、円相場が1ドル=135円台に突入したことについて「急速な円安の進行がみられ、憂慮している」と述べた。
13日の東京外国為替市場の円相場は、円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、一時1ドル=135円台と、2002年2月以来、20年4か月ぶりの円安ドル高水準をつけた。
これについて松野官房長官は13日の記者会見で「最近の為替市場では、急速な円安の進行がみられ、憂慮している」と述べた。
また松野官房長官は「政府としては日本銀行と緊密に連携をしつつ、為替市場の動向やその経済物価などへの影響を一層の緊張感を持って、注視をしていく考えだ」と強調した。
●東証前引け 大幅続落、20年ぶり円安の下支えは限定的 TOPIXは2%安 6/13
13日午前の東京株式市場で日経平均株価は大幅に続落し、前週末比735円43銭(2.64%)安の2万7088円86銭で終えた。前週末の米株式相場が大幅に下落したことを受け、東京市場でも運用リスクを回避したい投資家の売りが幅広い銘柄に出た。下げ幅は800円を超える場面があった。
前週末10日に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8.6%上昇した。市場予想や4月の実績(いずれも8.3%)を上回った。米国のインフレ再加速で、米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引き締めを続け、米景気を冷やすとの懸念が株式相場の重荷となった。
米株価指数先物が日本時間13日午前の取引で下げる中、日経平均先物にも短期筋の売りが出て指数を押し下げた面がある。JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは「米金融政策を巡って再び不透明感が高まり、海外勢が日本株買いに動こうとする動きに冷や水を浴びせた」と話していた。
外国為替市場では円相場が対ドルで1ドル=135円台に下げ、2002年2月以来の円安・ドル高水準となった。輸出関連株の一部の下支えにつながったものの、株式市場全体の地合いを好転させる材料にはならなかった。一方、食品などディフェンシブ銘柄の一部には買いが入った。
東証株価指数(TOPIX)は大幅に続落した。午前終値は前週末比39.04ポイント(2.01%)安の1904.05だった。
前引け時点の東証プライムの売買代金は概算で1兆4517億円、売買高は6億1384万株だった。東証プライムの値下がり銘柄数は1483と、全体の約8割を占めた。値上がりは305、変わらずは49だった。
エムスリーやオムロン、リクルートが下落。クボタやデンソー、アドテストも安かった。一方、明治HDや東ガス、三越伊勢丹は上昇した。
●24年ぶりの安値が近づく円安と政府・日銀会合声明文の狙い 6/13
四半世紀ぶりの円安水準が近づく
円安が歴史的な節目となる水準に再び接近してきた。先週のドル円レートは134円台半ばと、2002年以来20年ぶりの水準まで円安が進んだ。あと一歩円安が進み、2002年の高値である1ドル=135円15銭を超えると、今度はいよいよ1990年代以来24年ぶり、つまり四半世紀ぶりの円安水準と局面が変わる。
ところで、円安が日本経済にプラスかマイナスか、という論争が続いている。日本銀行は為替の過度の変動は望ましくないとする一方、円安自体は基本的には経済にプラス、との評価を崩していない。
6月8日に経済同友会が発表した「円安が日本経済に与える影響」についての調査によると、企業経営者の52.1%は「ややマイナスの影響」、21.6%は「マイナスの影響」と回答している。合計で7割強がマイナスとの判断である。また、現在の円安が自社の業績に与える影響については、「影響なし」が42.7%、「増益」が25.9%、「減益」が31.4%となっている。
現在の円安は、日本経済、企業経営共にマイナス、との回答が優勢となっているのである。そのうえで、自社にとって望ましい円相場については、「110円〜115円未満」のレンジが最も回答数が多い、いわゆる最頻値となった。現状は、その望ましい水準よりも20円以上円安の水準にある。
これらの点から、現状は「悪い円安」の状態にある、というのが企業経営者のコンセンサスと言えるだろう。
政府・日銀の会合で異例の声明文を公表
こうした中、6月10日の午後4時から、財務省、金融庁、日本銀行は、国際金融資本市場に関する情報交換会合、いわゆる「3者会合」を開いた。この会合は、為替市場が大きく変動する局面で過去に何度も開かれ、会合を開くという事実で市場をけん制することに最大の狙いがある。
ただし今回は、会合後に声明文が公表されており、この点で、市場けん制の度合いが従来よりも一歩踏み込んだ印象がある。2016年から始まった3者会合で、会合後に声明文が発表されるのは今回が初めてだ。
声明文では急速な円安の進行を「憂慮している」と明記した上で、「必要な場合には適切な対応を取る」との表現が入った。これをやや踏み込んだ表現との評価もあるかもしれないが、そこまでではないだろう。
米国の賛同が得られない中、政府(財務省)が唯一持っている為替政策の手段である為替介入(円買い介入)は封じられている状況にある。米財務省は10日に公表した半年に一度の「外国為替政策報告書」で、年明けの急速な円安に触れたうえで「為替介入は事前に適切な協議をした上で、極めて例外的な状況のみ」で認められるという従来の表現を踏襲している。日本の為替介入をけん制しているのである。
そうしたなか、声明文の表現を強めても、政府(財務省)が実効性のある政策が打ち出せない状況に全く変わりはないのである。
政府・与党からの批判に先手を打ったか
為替市場に唯一影響を与えることができる政策は、金融政策の変更である。しかし、日本銀行は、為替市場への影響を意図して金融政策を修正することを強く否定している。今回の声明文にも、金融政策の対応についての言及はない。
国会では、政府の物価高対策の効果が大きな争点の一つとなっている。来月の参院選でもそれは争点となるだろう。そうした中、為替市場で円安が一段と進めば、それは物価高を助長し、政府の物価高対策の効果を損ねてしまう。
異例の金融緩和を続ける日本銀行の政策が悪い円安を生んでいるとの批判が、再び政府内、与党内で高まりかねない状況になってきた。それに対して日本銀行が先手を打ち、批判をかわす狙いが、3者会合の開催や声明文の公表にあったのではないか。
それでも、日本銀行が実際に政策修正を行う可能性は低いことから、ドル円レートは早晩、四半世紀ぶりの円安水準に達することになるだろう。 
●東京円、1円安い1ドル=134円59〜60銭に 6/13
13日の東京外国為替市場で、円相場は午後5時、前週末(午後5時)比1円ちょうど円安・ドル高の1ドル=134円59〜60銭で大方の取引を終えた。
●円相場 1ドル=135円台前半 24年ぶり円安水準 6/13
円安ドル高が加速しています。週明けの13日の東京外国為替市場は、円を売ってドルを買う動きが広がり、円相場は一時、1ドル=135円台前半まで値下がりし、およそ24年ぶりの円安水準となりました。
13日の東京外国為替市場は、朝方から円を売ってドルを買う動きが広がり、午後1時すぎに1ドル=135円22銭まで値下がりしました。これは、1998年10月以来、およそ24年ぶりの水準です。背景には、アメリカの中央銀行がインフレを抑えるため利上げを急いでいるのに対して日銀は大規模な金融緩和を続ける姿勢を示していることで、日米の金利差が拡大するとの見方からより高い利回りが見込めるドルを買う動きが広がっているためです。円安ドル高は輸出企業にとってはプラスに働く一方で、輸入企業にとってはコストが増えることになります。ロシアによるウクライナ侵攻を背景に、エネルギー価格や小麦などの食料価格が高止まりしていて、こうした物資を輸入に頼る日本にとっては、円安の進行で家計の負担がさらに増すだけに、政府や日銀の今後の対応が焦点になりそうです。
老舗パン屋 原材料高を懸念
一段と円安ドル高が進んだことで、外国産の小麦粉も仕入れている大阪・旭区にある創業62年の老舗パン屋では、原材料コストのさらなる上昇を懸念する声が聞かれました。このパン屋では、国産だけでなく、カナダ産やアメリカ産の小麦粉も使っていますが、ロシアによるウクライナ侵攻を背景とした小麦価格の上昇に、円安の影響も加わり、仕入れ値が去年の同じ時期と比べて1割以上、上昇しているといいます。さらに、食用油やバターといったほかの原材料価格や、パンを入れるプラスチック製の袋なども仕入れ値が上がっています。このため店では、ことしに入って順次、20種類ほどの商品を値上げしてきましたが、店では、パンに使う油やバターを減らしても味が変わらないように工夫したり、利益率が高い季節限定の商品を時期を早めて発売するなどして、さらなる値上げを避けるための努力を重ねています。「パン屋のグロワール」の運営会社の一楽虎光 社長は、「経営は次第に苦しい状況になってきていて、仕入れ値がさらに上がるとますます厳しくなります。経営努力でさらなる値上げは防いでいきたいです」と話していました。
専門家“家計へのマイナス多い”
日本総合研究所の若林厚仁 関西経済研究センター長は、円安ドル高が加速していることについて「円安がある程度進むとは想定していたが、予想以上に進んでいる。今後も、国内外の金利の差から円安に向かう可能性が高くなっているのではないか」と話し、当面、円安傾向が続く可能性が高いという見方を示しました。そのうえで、関西企業への影響については「関西では、製造業が多いが、輸出が多い大企業よりは中小企業が多く、為替の恩恵を受けにくいし、これだけ円安が急激に進むと、輸出企業にとっても資材の輸入などで対応が難しくなる。さらに、輸入企業は海外調達の食料を、国内に切り替えるなどの対応策も簡単にはできない」と指摘しました。そして、生活への影響については「円安によって輸入品の価格が上がるので家計にとってはマイナス面がほとんどだ。例えば、関西はパンの消費量が多いが、小麦の輸入価格が円安でさらに上がっているので、パン好きの家庭には特に影響が大きいかもしれない」と述べ、食卓などへの影響は大きいという考えを示しました。
大銀協会長“安定的望ましい”
東京外国為替市場で円安ドル高が進んでいることについて、大阪銀行協会の会長で、三井住友銀行の高島誠 頭取は「いまの円安は、ここ数か月、特に数週間で急激に進んできている。企業などが先行きの見通しを立てるうえでは、円相場は安定的に推移することが望ましい」と述べました。また、企業や家計への影響については、「全体としてみれば円安などによるコスト上昇分を価格に転嫁できていない状況だが、逆に価格に転嫁すれば、家計の購買力が低下する可能性が高くなる。為替相場が経済に与える影響を注視していきたい」と述べました。
●株価も続落 円安は約24年ぶり水準に 6/13
週明け13日の東京外国為替市場で、円相場は一時1ドル=135円台前半まで下落し、平成10年10月以来、約23年8カ月ぶりの安値水準をつけた。米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利の引き上げを加速する中、日本銀行は大規模金融緩和の低金利政策を続けており、日米の金利差拡大で円を売り、運用に有利なドルを買う動きが強まった。
午後5時現在は前週末比1円ちょうど円安ドル高の1ドル=134円59〜60銭。
円相場は今年に入りドルに対して20円程度も売り込まれ、特に5月以降は下落基調を強めている。世界経済を牽引(けんいん)する米国でインフレが歴史的水準に加速し、FRBが14、15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅な追加利上げを決めるとの観測が広がったためだ。
景気の先行き不安から投資家がリスク回避に傾いたことで、前週末の米ニューヨーク株式市場はダウ工業株30種平均など主要3指数がそろって下落した。代わりに投資資金が逃げ込んだのが米国債や金といった比較的安全とされる資産だ。
13日の東京株式市場でもこの流れは変わらず、日経平均株価は続落。終値は前週末比836円85銭安の2万6987円44銭と今年2番目の下げ幅だった。アジア株も下落が目立った。日銀はこの日、相場を下支えするため、株価指数連動型の上場投資信託(ETF)を約2カ月ぶりに701億円分買い入れた。
10日には財務省と金融庁、日銀が情報交換会合で初の声明を発表し、これまでより踏み込んだ形で円安を牽制したが、効果は限定的だった。市場の関心はFOMCの動向に集中しており、ある市場関係者は「パウエルFRB議長がFOMC後の記者会見で、利上げの道筋をどのように説明するか注目したい」と話す。
●松野長官「急速な円安の進行を憂慮」1ドル135円台突入に 6/13
松野官房長官は13日、円相場が1ドル=135円台に突入したことについて「急速な円安の進行がみられ、憂慮している」と述べた。
13日の東京外国為替市場の円相場は、円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、一時1ドル=135円台と、2002年2月以来、20年4か月ぶりの円安ドル高水準をつけた。
これについて松野官房長官は13日の記者会見で「最近の為替市場では、急速な円安の進行がみられ、憂慮している」と述べた。また松野官房長官は「政府としては日本銀行と緊密に連携をしつつ、為替市場の動向やその経済物価などへの影響を一層の緊張感を持って、注視をしていく考えだ」と強調した。
●「150円近くまで円安進む可能性ある」“ミスター円”榊原元財務官が警告 6/13
円が歴史的な水準まで売り込まれました。
記者「円相場が135円15銭をつけ、1998年以来の水準となっています」
きょう午後、円相場は一時1ドル=135円台前半まで下落。1998年10月以来、およそ24年ぶりの円安水準となりました。今年初めは1ドル115円台。わずか半年で20円、円安が進みました。さらに株価も・・・
記者「きょうの日経平均株価は800円以上値下がりして取引を終えています」
国会でも・・・
立憲民主党 杉尾秀哉参議院議員「日本売りに近い状況になりつつあるのではないか」
日本銀行 黒田東彦総裁「最近の急速な円安の進行は経済にマイナスであり望ましくない」
1998年10月以来の1ドル135円台前半。1998年といえば日本経済が激震に見舞われた年でした。その前の年には山一証券が経営破綻。株安と円安が同時に進む「日本売り」という言葉が飛び交いました。当時、円安と戦ったのが“ミスター円”と呼ばれた財務省の榊原元財務官です。榊原氏は、いまさらなる円安が進むと警告します。
榊原英資元財務官「140円台までいくんじゃないかと思います。150円に非常に近いところまで円安が進む可能性はありますね」
その理由の1つが為替介入の難しさです。
榊原英資元財務官「アメリカはいまのドル高をむしろ望んでいるようなところがあります。いま介入することにアメリカが同意する可能性はないわけです」
アメリカは、いまの「ドル高」が好都合なため、為替介入は難しくあまり手の打ちようがないと指摘します。榊原元財務官は、かつて自身の部下として為替対応にあたった日銀の黒田総裁についてこう指摘しました。
榊原英資元財務官「円高に持って行くためには金融引き締めをしなければいけないが、少なくとも黒田さんの任期中、来年3月までは金融緩和を続けるだろう」
きょう、国会で黒田総裁は・・・
日本銀行 黒田東彦総裁「最近の急速な円安の進行は先行きの不確実性を高め、企業による事業計画の策定を困難にするなど経済にマイナスで望ましくない 」
急速な円安は望ましくないとしながらも、金融緩和を修正しない黒田総裁。いつまでその姿勢を貫けるのでしょうか?
●NY外為 円、134円近辺 6/13
週明け13日午前のニューヨーク外国為替市場では、東京市場で一時約24年ぶりの水準まで円安・ドル高が進み、一服感が広がる中、円相場は1ドル=134円近辺に上昇している。午前9時現在は134円00〜10銭と、前週末午後5時(134円35〜45銭)比35銭の円高・ドル安。
日米の金利差拡大観測を背景に円相場は東京市場で、一時1998年10月以来の円安水準となる135円20銭前後まで下落。ただその後は急ピッチで円安・ドル高が進行した反動からドルの利益確定の売りも出て、一服感が広がった。
この日は米マクロ指標などの新規材料に乏しい。10日発表の5月の米消費者物価指数(CPI)が高い伸びとなったことで、米連邦公開市場委員会(FOMC、14、15日開催)で、連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ幅を0.75%に拡大するとの見方が一部で再燃。金融緩和を維持する姿勢を示す日銀との金融政策の違いが意識され、日米の金利差拡大観測が強まっている。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0460〜0470ドル(前週末午後5時は1.0504〜0514ドル)、対円では同140円20〜30銭(同141円27〜37銭)と、1円07銭の円高・ユーロ安。
●135円を超え四半世紀ぶりの水準に達した円安と軋む日銀のYCC 6/13
24年ぶりの円安水準に
先週末に発表された米国の物価統計が上振れたことを受けて、米国では米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げの加速観測が再び高まっている。これは株価下落を生じさせるとともに、米長期金利を押し上げている。さらに米国での利上げの加速観測と米長期金利の上昇は、為替市場で円安ドル高の傾向を一段と強めている。
13日の東京市場で、ドル円は2002年以来となる135円台に乗せた。さらに、2002年の高値である1ドル=135円15銭をも超え、1990年代以来24年ぶり、つまり四半世紀ぶりの円安水準に一時達したのである。
日銀のYCCの信頼感は揺らいだか
他方、米国の長期金利上昇が国内長期金利にも上昇圧力をかけ、日本の10年国債利回りは一時0.255%と、日本銀行がイールドカーブコントロール(YCC)のもとで変動レンジの上限としてきた0.25%を上回った。日本銀行は毎営業日指値オペを実施し、10年国債利回りが変動レンジの上限を超えないように、4月以降強力な体制を築いてきた。
それにもかかわらず、10年国債利回りが0.25%を超えたのはかなり驚きである。それだけ、日本の国債市場も米国国債市場の影響を強く受けていることを意味していよう。指値オペを実施している時間帯では利回りは0.25%を上限に抑えることはできても、それ以外の時間帯では、0.25%を上回る水準での取引が、今後常態化してくる可能性もあるだろう。その場合、10年国債利回りが0.25%を超えている安値の水準で国債を買い入れ、指値オペでより高い価格(低い利回り)で日本銀行に国債を売却することで、金融機関は利益を上げることができるようになる。日本銀行の指値オペがそうした機会を金融機関に提供するようになることは問題である。
日本銀行は慌てて、長期国債を14日に追加買い入れ(5年超10年以下5,000億円)すること、いわゆる臨時オペの実施を発表した。しかし、長期金利上昇抑制に関する日本銀行の影響力に対する市場の不信感は、これで大きく高まってしまったのではないか。そして、YCCという制度に対する市場の信頼感も、大きく揺らいでしまったのではないか。
YCCの柔軟化も
今後も米国の長期金利上昇が続くようであれば、日本銀行は国内の長期金利の上昇を一定程度容認する姿勢に転じる可能性が出てきたのではないか。現在実施している毎営業日指値オペを撤廃することを向こう数回の金融政策決定会合のいずれかで決定したうえで、10年国債利回りが0.25%に接近しても、0.25%の指値オペを必ずしも実施しない形で、0.25%を上回る10年国債利回りを緩やかに容認することも考えられるところだ。
さらに、市場の攻撃対象ともされる10年国債利回りの変動レンジを撤廃し、随時指値オペを使うことで10年国債利回りの大幅上昇はその都度けん制していくような、より柔軟な制度にYCCを修正していく可能性も考えられるだろう。
長期金利の緩やかな上昇を一定程度容認するYCCの柔軟化は、円安進行に多少歯止めをかけることになるだろう。しかし、円安進行の主因は米国の金融引き締めの加速観測にあることから、それが変わらないのであれば円安の流れは変わらない。
●日経平均、大幅続落 終値836円安の2万6987円 6/13
13日の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前週末比836円85銭(3.01%)安の2万6987円44銭で終えた。5月27日以来約半月ぶりの安値。前週末の米株式市場で米インフレの再加速への警戒から、主要3指数がそろって下落した。東京市場でもこの流れを受け、運用リスクを回避したい投資家の売りが幅広い銘柄に出た。日経平均の下げ幅は1月27日(841円03銭)以来の大きさとなった。
前週末10日に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8.6%上昇した。市場予想(8.3%)を上回り、4月実績からの上昇率が高まった。米インフレの再加速で、米連邦準備理事会(FRB)が秋以降も積極的な金融引き締めを続けるとの観測が台頭。米景気を冷やすとの懸念が株式相場の重荷となった。
東京市場では機械や電機、自動車といった景気敏感株の下げが目立った。13日の東京外国為替市場では円相場が1ドル=135円台前半に下落し、1998年以来の円安・ドル高水準を付けた。ただ、景気減速への懸念が強まる中で、輸出関連株の支えにはならなかった。
米長期金利が3.1%台後半に上昇し、金利の上昇で割高感が意識されやすい高PER(株価収益率)のグロース(成長)株にも売りが出た。一方、食品や地銀、小売りといった内需関連の一角には買いが入った。
東証株価指数(TOPIX)は3日続落した。終値は前週末比42.03ポイント(2.16%)安の1901.06だった。
東証プライムの売買代金は概算で2兆8954億円。売買高は12億1859万株だった。東証プライムの値下がり銘柄数は1457と、全体の8割弱を占めた。値上がりは332、変わらずは49だった。
ソフトバンクグループやエムスリー、クボタが大幅安。東エレクやファストリが下落し、トヨタやソニーGも売られた。一方、関西電や三井住友トラ、明治HDは上昇した。 

 

●1ドル=135円、歴史的な円安どこまで進む? 専門家に聞く 6/14
円安が止まらない。13日の東京外国為替市場で円相場が一時、1ドル=135円20銭台をつけ、1998年10月以来、23年8カ月ぶりの円安水準となった。円安の流れは今後も続くのか。政府の対応は――。専門家に聞いた。
先週発表された5月の米国の消費者物価上昇率が市場予想を上回る伸びとなり、米国の大幅利上げの観測が強まり、長期金利の上昇につながってドル買いが進んでいる。
背景にある米国のインフレへの警戒と利上げ観測の2点が変わらない限り、円安ドル高は今後も進みやすい。多くの人が円安ドル高を予想してドルを買えば、さらに円安ドル高に弾みがつくことも想定される。ただ、投機的な取引が主導する場合、利益確定の動きによって、短期間で円高ドル安に振れてしまう可能性もある。 ・・・
●なぜ円安が止まらない…背景と黒田総裁の思惑は?いつまで続く?  6/14
円相場はきのう(13日)の東京外国為替市場で一時、1ドル=135円台前半まで値下がりし、およそ24年ぶりとなる円安水準となりました。原材料コストのさらなる上昇をなど、急速な円安ドル高が進むことへの懸念の声も聞かれています。なぜ円安は止まらないのか?日銀の思惑とは?背景を解説します。
円安がパン屋にも打撃!
こちらの大阪 旭区にある創業62年の老舗パン屋では、国産だけでなく、カナダ産やアメリカ産の小麦粉も使っています。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻を背景とした小麦価格の上昇に、このところ急速に進んだ円安の影響も加わり、仕入れ値が去年の同じ時期と比べて1割以上、上昇しているといいます。このため店ではことしに入って順次、20種類ほどの商品を値上げしてきましたが、さらにパンに使う油やバターを減らしても味が変わらないように工夫したりするなどして、さらなる値上げを避けるための努力を重ねています。運営会社の社長はこう話していました。「経営は次第に苦しい状況になってきていて、仕入れ値がさらに上がるとますます厳しくなります。経営努力でさらなる値上げは防いでいきたいです」
なぜ円安?「金利差」とは?
円安が進んでいる背景には、日本と欧米での「金利差」があります。記録的なインフレを抑えるため金融引き締めを急ぐ欧米の中央銀行と、大規模な金融緩和を続ける日銀の金融政策の方向性が異なっているのです。このうちアメリカの長期金利は、去年末までは【1.5%前後】で推移していました。しかし、ことしの2月、ロシアのウクライナ侵攻を受けた原材料価格の高騰でインフレへの懸念が強まると、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が金融引き締めを強めるという見方から【2%台】に上昇。その後も、FRBが記録的なインフレに対応するため金融引き締めを加速させるという見方を背景に、長期金利は上昇を続け、先月、3年5か月ぶりに【3%台】に上昇しました。一方、日本の長期金利は、日銀の大規模な金融緩和の一環で、ゼロ%程度、事実上の上限として【0.25%程度】に抑えられています。年明けにはおよそ1%だった日米の金利差が、いまはおよそ3%と3倍に広がっている形で、より利回りが見込めるドルを買って円を売る動きにつながってます。
欧米と日本の違いが鮮明に
今後の方針についても、欧米と日本の違いが鮮明になっています。アメリカのFRBは、ことし3月に政策金利を引き上げゼロ金利を解除したあと、先月、0.5%の大幅な利上げを決めました。さらに今月と来月も大幅な利上げが見込まれています。イギリスのイングランド銀行も今月、5回連続となる利上げが見込まれているほか、ヨーロッパ中央銀行も来月、11年ぶりの利上げに踏み切る方針です。これに対して、日銀は今の大規模な金融緩和を続ける方針を堅持していて、こうした方向性の違いが今後も金利差が広がるという見方につながっています。
黒田総裁 なぜ金融緩和にこだわる?
日銀は、黒田総裁が「金融引き締めを行う状況には全くない」と述べるなど、大規模な金融緩和を堅持する方針を示しています。その理由としてあげているのが、「日本の経済や物価の状況は欧米とは大きく異なる」ということです。具体的にはどういうことなのでしょうか。
   1.日本は新型コロナ拡大前のGDP水準まで回復せず
まず、GDP=国内総生産の規模は2019年の10月から12月期では年換算で541兆円だったのに対して、ことし1月から3月期は538兆円となっていることなどから、新型コロナの感染拡大前の水準を回復できていないとしています。
   2.今、引き締めると景気を冷え込ませるおそれ
また、働く人1人当たりのことし4月の名目賃金は、前の年の同じ月と比べ1.7%の増加にとどまり、経済の持ち直しを反映して増加しているものの、上昇は緩やかなものにとどまっているとしています。このため、今の局面で金融緩和をやめて引き締めに転じてしまうと、金利の上昇などを通じて景気を冷え込ませるおそれがあるとしています。日銀としては、賃金と物価がともに上昇する好循環を作り出すため、粘り強く金融緩和を続けるとしています。
ただし、円安の影響については…
黒田総裁は、急速に進む円安については先行きの不確実性を高め、企業の事業計画の策定を困難にするなど「経済にマイナスであり望ましくない」としています。アメリカが金融引き締めを加速する一方、日銀が金融緩和を続ければ金利差がさらに広がり、一段の円安となって経済へのマイナス影響も大きくなる懸念があります。つまり、緩和を維持しても、引き締めに転じても、どちらも景気を悪化させかねないというジレンマを抱えていて、日銀は難しいかじ取りを迫られています。
経済同友会 櫻田代表幹事「円安加速 かなり深刻」
経済同友会の櫻田代表幹事は14日の定例会見で「今の円安傾向はすぐには元に戻らず、エネルギーや食料、物流の目づまりによるコスト増によって、日本国内のインフレーションはさらに加速する可能性がある。消費者や企業は、円安を否定的に受け止めていると思う」と述べました。さらに櫻田代表幹事は「円安の要因は日米の金利差だと思うが、日本の成長していく力、稼ぐ力、よい製品を作っていく力が弱いという印象を世界に与えている結果として、さらに円安が加速しているのであれば、かなり深刻に受け止めなければならない。日本の経済力を強くしたり生産性を高めたり、競争力を上げたりすることに真剣に取り組む姿勢を見せ、行動に移すことが大事だ」と指摘。そのうえで、一方的な円安の動きを是正するには、日本の産業競争力を高めることも重要だという認識を示しました。
夏ごろまで、さらに円安続く…?
今後の見通しについて、日本総合研究所の松田健太郎副主任研究員は「FRBはことしの夏ごろまでは、インフレ抑制に向けて強い姿勢を続けるとみられる。金利差の相関関係から見ると、アメリカの長期金利がまだ上昇していくので、1ドル=140円くらいの水準となってもおかしくはない」と述べました。ただし「アメリカが金利を極端に上げすぎると、アメリカ経済の減速が避けられない事態に向かう懸念もあり、その場合はむしろ円高方向に向かう可能性もある」と指摘しました。そのうえで松田氏は「為替の変動が激しく不安定な状態が続くと、日本企業は今後の事業計画を立てる上で不透明感が強くなり、経済にとってマイナスの影響が大きくなる」と述べました。
●NY円、24年ぶり円安水準 一時135円48銭 6/14
14日のニューヨーク外国為替市場の円相場は円がドルに対して大幅下落し、一時1ドル=135円48銭と1998年10月以来、約24年ぶりの円安水準を付けた。米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
午後5時現在は、前日比1円04銭円安ドル高の1ドル=135円43〜53銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0412〜22ドル、141円03〜13銭。
米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が15日に公表されるのを前に、政策金利を通常の3倍となる0・75%引き上げるとの予想が強まった。米長期金利の指標となる10年債利回りは一時3・49%台まで上昇し、2011年4月以来、約11年2カ月ぶりの高水準を付けた。
●円、134円台半ば ロンドン外為 6/14
14日朝のロンドン外国為替市場の円相場は、1ドル=134円台半ばに下落した。
午前9時現在は134円40〜50銭と、前日午後4時比55銭の円安・ドル高。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策会合を控え、市場では大幅な利上げへの警戒感が広がっている。

 

●1ドル135円まで円安加速、「良い円安・悪い円安」論より重要な政策 6/15
円安、135円台まで加速 参院選で重要な本質的な議論
円ドル相場は13日、一時1ドル135円台まで円が下落した。
この数カ月、円安が進むなかで、「良い円安、悪い円安」の議論がメディアを騒がせ、政治家の発言の中にもたびたび登場した。
米国の長期金利上昇が5月で一服、円安ドル高の動きもいったんピークを越えたかともみえたが、6月に入って米金利高、ドル高の動きが再燃、この議論がまた蒸し返されている。
冷静な議論をすれば、為替はあくまでも交換レートであり、変動すれば必ずそれによってメリットを享受する人とデメリットを被る人が出るのは当たり前で、この点は株式投資や債券投資とは異なる。
そのメリット、デメリットの片方だけを非常に恣意(しい)的に採り上げるのが、この「良い円安、悪い円安」の議論だといえる。
来週公示の参院選でも円安・物価高問題にどう対応するのかは与野党の主要争点になりそうだが、より本質的な議論を深める時だ。
複数の為替変動要因が作用 企業や家計も行動変化
筆者は為替変動について議論すること自体が無意味だと言っているわけではない。円安が良い悪いという議論ではなく、為替変動が経済や市場にどのような影響を及ぼすのかということを正確に理解しておくことがより重要なのだ。
為替変動によって実際にメリットを享受した人はそれを受けて何らかの経済的な行動を取ることが予想される。一方でデメリットを被った人は、よりアクティブにそのデメリットを解消すべく行動することになるだろう。
為替変動によって瞬間的に得をした損をしたというだけでは当然終わらない。
為替変動は何らかの要因によって起きるが、その変動に対して家計や企業などの経済主体がさまざま行動を取ることによって、為替変動を引き起こした状況や要因自体にも変化をもたらすことになる。
つまり為替変動からのフィードバックが生じ、そしてそのこと自体がまた次の為替変動をもたらしていくという複雑な連鎖プロセスが為替水準を決めていく。
為替変動にどう対応するのかや、政策の是非もこうした点から考える必要がある。
為替変動をもたらす要因については、よく知られているように大きく言って三つある。
一つは、二国間のインフレ格差によって為替水準が決まるとする購買力平価説だ。
二つ目は、経常収支や資本収支などによって為替水準が決まるとするフロー・アプローチ。
そして三つ目が、二国間の資産収益の格差によって為替水準が決まるとするアセット・アプローチだ。
金とドルのリンクが外されたニクソンショックを契機に1972年にドルと主要国通貨との交換レートが自由に変動し始めて以降、これらのうち一つだけで為替変動を完全に説明できるということはなかった。
局面によってはアセット・アプローチがよく当てはまるようにみえるかと思えば、フロー・アプローチが重要になる局面もある。時には購買力平価説が強い説得力を持つ場面もある。
企業と家計、政府による 三つのフィードバックの経路
そして、為替変動が引き起こすフィードバックの経路も複数存在する。
一つは、為替変動に対応して企業が輸出入の価格を変動させるプロセスだ。
企業の価格設定方法次第で実際の輸出入の数量が調整され、それが貿易収支にも影響を与えることで為替水準も影響を受けてくる。
例えば自国通貨安が起きた場合に、輸出先での現地販売価格を引き下げ、輸出数量を増やす行動を企業が取れば、貿易黒字が増え、自国通貨高の圧力を生む。
このフィードバック経路では、企業による価格変更は、それぞれの国におけるインフレ率の変化ということであり、それを反映して金利水準が変化すれば、その経路によっても為替水準に影響を与えることになる。
この一つ目のフィードバック経路は、変化した為替水準を元の水準に戻す方向に働く。
二つ目のフィードバック経路は、為替変動による価格変動に対応して家計の消費行動が変化するプロセスだ。
例えば現在のように円安ドル高が進めば、日本では輸入価格の上昇で家計の実質所得が減少するが、それに伴って消費支出が減れば経済成長が鈍化する。
経済成長の鈍化は金利の低下を促し、為替を一段と自国通貨安の方向に変化させる可能性がある。
このフィードバック経路は、変化した為替水準を一段と同じ方向に後押しするように働く。
そして、三つ目の経路は、政府の行動を通じたものだ。
自国通貨安の動きが起きた場合、上述のように輸出増による経済を刺激する方向での影響と、家計の実質所得減による景気抑制方向での影響のどちらもがあり得るが、政府がそのどちらの経路を重視するのかによって、財政政策を緊縮的に変化させるか積極的に変化させるかが違ってくる。
過去の日本では、円高が進行すると、政府は円高対策と称して財政を拡張的に運営するのが常だった。
財政拡張が金利上昇をもたらせばむしろ自国通貨高を促してしまうことになるが、中央銀行の金融緩和と組み合わせることによって金利上昇を抑制できれば、為替へのフィードバック経路を遮断することもできる。
逆に自国通貨安による家計へのネガティブな影響を相殺するために政府が積極財政政策を採ることもあり得る。
この場合は、むしろ中央銀行の金融緩和を組み合わせないことで金利上昇を促すことによって為替へのフィードバック経路を強める方が得策だ。
今の円安は金利変動と同時 資源価格急騰で貿易黒字縮小圧力
現在のドル円市場の状況を、為替変動とそのフィードバックのメカニズムに基づいて説明すると、次のようなものになるだろう。
まず為替変動自体はアセット・アプローチのメカニズムが中心になっている。
つまり米国の金利上昇によって日米間の金利差が急拡大して、それが円安ドル高をもたらしているわけだ。
為替変動をもたらす三つのメカニズムが働く時間的なスパンはそれぞれ異なり、アセット・アプローチのメカニズムによる為替変動が最も短時間で発生する。金利変動と為替変動はほぼ同時的に起きているといって良いだろう。
一方、為替変動が引き起こすフィードバックは三つの経路のいずれもが、それなりに長い時間がかかる。
あえて順番を付ければ、「家計の消費行動」→「企業の価格設定行動」→「政府の財政政策」の順番で要する時間が長くなるといえるが、企業と政府の行動については、必ずこの順番であるとも断言はできない。
いずれにせよ為替変動のフィードバックのプロセスが作動し始めるには一定の時間がかかるため、その間に為替変動はオーバーシュートしてしまうこともままある。
現状もそういった形でのオーバーシュートがすでに起きている可能性もある。
最も早く作動する家計の消費行動を通じたフィードバック経路が作動し始めることになっても、そのフィードバック経路は、為替変動の方向を後押しすることになるので、現状では円安ドル高を抑制することにはならない。
円安を抑制する方向でのフィードバック経路の一つは、企業の価格設定行動を通じて輸出数量が増え貿易黒字が増大していく方向だが、現在はウクライナ戦争などによる資源価格の上昇による貿易黒字縮小圧力がそれを相殺してしまう可能性が高い。
実際、昨年来、すでに日本の貿易収支は原油輸入額の急増を主因に大幅な赤字となっており、これはむしろ円安進行を促している。
円安抑制なら積極財政と緩和修正だが 「政策コスト」を吟味する必要
今の円安の状況を考えると、この先、円安の動きに歯止めをかけるものがあるとすれば、まずはアセット・アプローチのメカニズムが一巡すること、つまり米金利の上昇が止まることだ。
しかし、これは米国のインフレ動向次第としか言いようがない。
米国サイドで、ドル高によるインフレ抑制と金利押し下げというフィードバック経路が今後は動き始めることが想定されるが、少なくとも現時点では、インフレ圧力の方がドル高の効果はるかに上回っているようだ。
先行きも米金利上昇を一巡させる方向でのフィードバック経路が十分に働くことになるのかは何ともいえない。
となると、メカニズムとして円安を抑制する経路があるとすれば、為替変動のフィードバックの三つ目の経路である政府の財政政策によるものくらいしか思い付かない。
つまり日本が積極財政、米国が緊縮財政という方向に動いた上で、日本では中央銀行の金融緩和による金利抑制政策を取りやめて財政による金利上昇を促すという方法だ。
ただ、ここで最初の話に戻って、通貨変動には必ずメリットとデメリットがあって、それ自体に良いも悪いもないのだとすれば、円安を抑制するために日本が積極財政を採ったり、日銀が金融緩和をやめたりする「政策コスト」を払うことが正しいのかどうかという議論はまずしっかりと行われる必要がある。
その議論をしっかりと行った上で、それでも円安抑制策が必要だとの結論に至るのであれば、採るべき政策の方向は一つしかない。
●円安進行、135円台半ば 24年ぶり水準―NY市場 6/15
14日のニューヨーク外国為替市場では、円相場が1ドル=135円台半ばに下落し、1998年10月以来約24年ぶりの円安水準となった。米連邦準備制度理事会(FRB)が大幅利上げに踏み切るとの観測が広がり、日米金利差の拡大を見込んだ円売り・ドル買いの動きが加速した。午後5時現在は135円43〜53銭と、前日同時刻比1円04銭の円安・ドル高。
FRBがインフレを抑制するため、市場が想定していた0.5%ではなく、0.75%の大幅利上げに踏み切るとの観測が拡大。金利収入が見込めるドルを買い、円を売る動きが強まった。
日銀は14日、臨時の国債買い入れを実施し、長期金利の上昇を抑え込む姿勢を鮮明にしている。市場では「日本の当局が為替介入に踏み切らない限り、さらに円安が進むリスクが高い」(欧州系金融機関)との声が出ている。
対ユーロは1ユーロ=141円03〜13銭と、1円11銭の円安・ユーロ高。
●政府・日銀、為替介入にハードル 米当局はドル高容認 6/15
急激な円安進行を受け、政府・日銀は「必要な場合には適切な対応を取る」(鈴木俊一財務相)と、為替介入も辞さない構えを見せている。生活必需品の値上がりに拍車を掛け、消費を冷え込ませる恐れがあるためだ。ただ、実際に円買い・ドル売り介入に踏み切るには米通貨当局の理解を得ることが不可欠。インフレ退治に奔走する米国は輸入物価を押し下げるドル高を事実上容認しており、介入のハードルは高い。
「急速な円安の進行が見られて憂慮している」。鈴木氏は14日の閣議後記者会見で改めて懸念を表明。その上で、「各国の通貨当局と緊密な意思疎通を図る」と述べ、「伝家の宝刀」と呼ばれる介入をちらつかせ、外国為替市場をけん制した。
ただ、市場の反応は薄く、実力行使を伴わない「口先介入」は限界を露呈しつつある。大規模な為替介入を指揮した経験を持つ元財務官の1人は「実際に介入した後でなければ口先介入は効かない」と解説する。
為替介入は、東日本大震災後に円高が進んだ2011年11月を最後に行われていない。円安阻止のための円買い介入は、日本経済がバブル崩壊後の金融危機に直面していた1998年6月までさかのぼる。
円買い介入の原資には、外国為替資金特別会計が保有する外貨や、外貨建て債券の売却資金を充てる。財務省によると、日本の外貨準備は5月末時点で1.3兆ドルを超え、そのうち8割は米国債などの証券だ。元手は潤沢だが、大量の米国債を売却すれば米国の金利が一段と上昇し、世界の金融市場が混乱に陥る恐れがある。
また、米財務省は10日に発表した半期為替報告書で日本に対し、「介入は極めて例外的な状況に限り、適切な事前協議を踏まえて実施されるべきだ」と注文を付けた。ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは「仮に米国の理解が得られても、協調介入より効果が限られる単独介入になる可能性が高い」と指摘する。
インフレ抑制へ利上げを進める米国と、「異次元緩和」を続ける日本との金利差は拡大していく見込み。円売り圧力は今後も続くとみられ、介入を行った場合でも円安に歯止めがかかるかは未知数だ。
●NY外国為替市場 1ドル=135円半ばまで値下がり  6/15
14日のニューヨーク外国為替市場は円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、円相場は一時、1ドル=135円台半ばまで値下がりしておよそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
14日のニューヨーク外国為替市場はアメリカの長期金利の上昇を背景に、円を売ってより利回りが見込めるドルを買う動きが一段と強まりました。
このため、円相場は一時、1ドル=135円台半ばまで値下がりして、1998年10月以来、およそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
急速な円安の背景には、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会がインフレを抑え込むため、14日から2日間開いている金融政策を決める会合で、利上げ幅を異例の0.75%まで拡大することも含め金融引き締めを一段と加速させるとの観測が広がっていることから、ニューヨーク債券市場でアメリカの長期金利が3.4%台まで上昇し、日米の金利差が拡大していることがあります。
市場関係者は「ドル買いが強まる中で円安がじりじりと進んでいて、どこで歯止めがかかるのか見通せない状況になっている」と話しています。
また、14日のニューヨーク株式市場、ダウ平均株価の終値は、前日に比べて151ドル91セント安い3万364ドル83セントと、株価が急落した13日に続いてことしの最安値を更新しました。
ダウ平均株価の値下がりは5営業日連続で、この間の下落幅は2800ドルを超えました。
●外為:1ドル135円07銭前後と大幅なドル高・円安で推移 6/15
15日の外国為替市場のドル円相場は午後1時時点で1ドル=135円07銭前後と、前日午後5時時点に比べ64銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=141円02銭前後と27銭のユーロ高・円安で推移している。
●不景気の崖っぷちに立たされた日本「100円ショップが消えていく」 6/15
円相場が24年ぶりに最低水準を記録するなど「円安」の流れが加速化し、日本の経済事情が悪化している。原油や穀物など世界的な原材料価格の急騰に円安まで重なり、日本の中小・零細企業と家計が直撃を受けている。
13日、東京外国為替市場で円相場は一時1ドル=135.22円付近まで下落し、1998年以来24年ぶりの最安値を記録した。14日午後3時29分基準で1ドル=134.5円で取引された。3月1日の115.07円から3カ月で20円も下落した。鈴木俊一財務相は同日、閣議後の記者会見で、「急速な円安の流れを懸念している」とし、「外国為替市場の動向や経済・物価などへの影響をさらに緊張感を持って注視している」と述べた。
今回の急速な円安には、米国の5月の消費者物価指数の上昇率が予想より高く、連邦準備制度理事会(FRB)が基準金利の引き上げに拍車をかけるだろうという見通しが大きな影響を及ぼした。
これからも日本経済に打撃を与える「悪い円安」の流れが続く可能性が高い。米国はインフレに対抗して金利引き上げに乗り出しているが、日本は「ゼロ金利」政策を固守しているためだ。日銀の黒田東彦総裁は7日、「強力な金融緩和を粘り強く続ける」と述べた。日本の産業競争力が低下している中、米国と日本の金利差が拡大すれば、円安の流れを防ぐのは難しい。
新型コロナパンデミックで内傷が深刻な中小企業や零細企業は円安で原材料の輸入費用がさらに上昇し、崖っぷちに立たされている。企業情報大手の「帝国データバンク」の資料によると、先月全国で倒産した企業件数は517件で、昨年同月より12.1%増えた。この数値が増えたのは2020年7月以降1年10カ月ぶり。倒産企業の大半が中小企業だ。
安価な商品を集めた「100円ショップ」や銭湯、クリーニング店など中小企業や零細企業等の廃業が目立って増えている。東京で「100円ショップ」9店舗を運営する「プロディア」は1日、ホームページにて「グループの店舗はすべて閉店した」と知らせた。 16年間にわたり東京文京区でプロディアの店舗を任されていた店長は「朝日新聞」に「ほとんどの商品の仕入れが値上げになった。こんなことはこれまでになかった」と語った。100円で物を売れない状況になったためだ。4日に廃業した東京中野区にある銭湯の社長は同紙に、コロナ禍で利用者がピーク時の3分の1まで減った上、燃料の高騰などが原因で、「最後はガス代を払うために商売しているようなものだった」と話した。東京では毎月銭湯1〜2軒が廃業しているという。
食品や電気、ガス、交通、外食など消費者物価も軒並み上昇している。帝国データバンク調査によると、今月基準で企業105社がラーメンや食用油、飲料など6285品目の値上げに踏み切った。7月以降も3000以上の商品価格が値上がりする予定だ。今年4月、日本の消費者物価指数は2.1%(生鮮食品を除く)上昇し、2015年3月(2.2%)以来7年1カ月ぶりの最高値となった。 
●1ドル140円も? 24年ぶり円安について知っておきたいこと 6/15
6月13日、円相場は一時1ドル=135円台前半と、1998年以来24年ぶりの安値を付けた。90年代初めにバブルが崩壊、その後金融機関などが相次いで破綻しデフレ経済へと日本が転落した時以来の円安ドル高水準だ。5月25日の1ドル=126円台から3週間で10円の円安となったことからも分かるように、円安のペースは加速している。一体何が起こっているのか。気になるポイントをまとめた。
1:円安が急速に進んだ理由は
円安基調が強まったのは、22年3月に米連邦準備制度理事会(FRB)が金利および量の両面から金融引き締め策を加速する姿勢を示したからだ。これを受け市場では日米の金利差が拡大するとの観測が広がった。円を売ってドルを買う動きが強まり、4月の約1カ月間で円相場は1ドル=118円台から129円台まで円安が進んだ。以降、円相場は一時的に1ドル=130円台に乗せる場面があるものの、1ドル=127〜129円を推移する状態が続いていた。
潮目が変わったのが、6月10日の5月の米消費者物価指数(CPI)の発表だ。物価動向はFRBが金融引き締めのペースを判断する際の重要指標。40年ぶりの伸び率を記録した3月の前年同月比8.5%上昇から4月は同8.3%上昇だったため、市場では「インフレのピークは近いのでは」との予想が大半だった。結果は前年同月比8.6%上昇と、3月を上回った。前月比でも1%上昇となったため、市場の希望的観測は裏切られた。物価上昇が止まらない以上、米国はさらに強い金融引き締め策を実行するのが確実となった。
この「CPIショック」を受けて米長期金利は上昇。日米の金利差は拡大し、ドルを買う動きが強まった。円相場は1ドル134円台まで円安が進む。6月13日には一時1ドル=135円台前半まで下落し、98年10月以来、約24年ぶりの安値水準となった。
2:次のFOMCの注目ポイントは
米国では6月14、15日、金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)がある。すでに短期金利の指標となるフェデラルファンド(FF)レートを6月と7月に0.5%ずつ引き上げることが確実視されているが、市場では今回のFOMCで1994年以来となる0.75%の大幅利上げもあるのではとの声も出始めている。
最大の焦点が9月以降の利上げのペースだ。見極めに当たり重要となるのがFOMC終了直後に発表される将来の金利予想分布図(ドット・チャート)の平均値。これはいわばFOMCメンバーによる最新の経済見通しのようなもの。ここでインフレ予想が引き上げられると、市場はパウエルFRB議長のインフレ抑制スタンスの高まりを意識することとなる。
ドット・チャートの上方修正等があった場合、日米の金融政策の違いがより浮き彫りとなるため、円安が進む可能性が高そうだ。逆に現状維持だった場合は、円が買い戻される動きが出るだろう。
   米インフレ、原油価格の動向が影響
3:円が下げ止まるために必要な条件は
米国のインフレ、原油価格高騰という、あらがえない外的要因が円安進行の主要因と捉えられている。米CPIの記録的な上昇で、米国では「インフレが減速しないリスク」が現実味を帯びてきた。米国の物価上昇は新型コロナウイルス禍からの経済正常化に伴う供給制約がきっかけだったが、今やロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の上昇に加えて、コロナ禍で抑えられていた消費者の社会活動が活発化し、需要が旺盛になり始めている点もインフレを助長させている。インフレ懸念が後退しない限り、FRBは金融引き締めをやめないため、円安基調は変わらないだろう。
一方、一昨年以降の原油価格の上昇は日本の原油輸入額を膨らませている。支払いに必要なドルを調達するためのドル買い、円売りの動きが活発化している。貿易収支は輸入額が輸出額を上回る赤字状態が続き、改善の見通しは立てにくい状態だ。ロシアへの制裁や、欧米諸国によるロシア産原油の禁輸措置導入も相次いでいる。世界の原油需給は引き続きひっ迫しており、価格高騰が収まる可能性は低いと考えられる。
4:日銀はなぜ緩和政策をゆるめないのか
米国のインフレ、原油価格高騰といった外的要因が円安進行の主要因だが、日銀が長期金利の抑制に躍起になっている点も、円安進行を助長しているのではとの見方は強い。
春以降の円安進行で、市場では円安抑制のために長期金利の上昇許容幅を拡大するのではとの見方があったが、4月末の金融政策決定会合では、連続指し値オペを毎営業日実施すると決定した。指し値オペとは、日銀が金利の上昇(債券価格の下落)を抑えるため、国債を指定した利回りで無制限に買い入れる制度のことだ。つまり、長期金利に事実上の上限を設け、金利上昇を抑制する策である。4月の決定会合では、今後は明らかに応札が見込まれない場合を除いて、10年国債利回りについて0.25%での指し値オペを実施することが決まった。
日銀の黒田東彦総裁は5月20日の記者会見で「経済を下支えし、基調的な物価上昇率を引き上げていく観点から、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適当だと考えている」と見解を述べている。米欧の金利上昇に連動する形で長期金利は上昇基調にあるが、日銀は日本の物価や経済の状況は欧米とは異なると考えている。足元の日本のGDP規模は年率換算で538兆円(22年1-3月)だが、これはコロナ前の水準(19年10-12月の年率換算で541兆円)まで回復していない。この局面で金融引き締めには転じられないとしている。エネルギー価格の上昇も一時的なものであり、物価押上げ効果も先行き減衰していくとの見方を崩していない。
またこれまでの発言を振り返ると、黒田総裁は円安の影響について、企業が海外で稼いだ利益が円換算で膨らむことなどを理由に「全体としてはプラス」との認識を崩していない。為替市場への影響を意図して金融政策を修正することも強く否定してきた。ただ6月13日の国会では「急速な円安の進行は先行きの不確実性を高め、企業の事業計画の策定を困難にするなど、経済にマイナスであり、望ましくない」と述べるなど、若干発言に変化が見られる部分がある。
6月16、17日に予定されているの金融政策決定会合で、日銀は景気を下支えするために金融緩和を続けるだろうとの見方は依然強い。今後の政策修正を示唆する発言があるかどうかが焦点となりそうだ。
   金融政策の変更はあるか
5:政府には円安への対応策があるのか
6月10日に開かれた政府と日銀による国際金融資本市場に関する情報交換会合(3者会合)では「最近の為替市場では急速な円安進行が見られ憂慮している。必要な場合には適切な対応を取る」との声明文が発表された。財務省の神田真人財務官は、声明文の中にある「適切な対応」の中身について問われた際「あらゆるオプションを念頭に置いて機動的に対応する」と述べている。
だが「為替市場に唯一影響を与えられるのは金融政策の変更だ」と、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは話す。中央銀行の独立性が守られる限り、政府にできる手は限られている。15日に閉会した通常国会では、円安が引き起こした物価高騰や、政府の物価高対策の効果について議論されたものの、政府・与党は円安問題にどう向き合えばよいか、実効性のある明確な答えを出していない。7月には参院選挙もあるだけに、円安は与党自民党にとっての逆風となりそうだ。
6:為替介入の可能性は
鈴木俊一財務相は14日の閣議後の記者会見で「急速な円安の進行が見られて憂慮している」と改めて懸念を表明した上で「各国の通貨当局と緊密な意思疎通を図る」と述べた。為替介入も視野に入れているというニュアンスを匂わせた発言とみられる。だが市場の反応は薄く、14日の円相場の終値は1ドル=134円56銭。実力行使を伴わない「口先介入」はもはや限界となっている。
政府による円買い為替介入のハードルは高い。協調介入には米国の理解・協力が必要だが、現在の米国の最優先課題はインフレの是正だ。輸入物価を押し下げるドル高の方が好都合という側面もあり、米国が積極的に為替介入に応じるとは考えづらい。現に米国は10日に発表した半期為替報告書で日本について「介入は例外的な状況に限り適切な事前協議を踏まえて実施されるべきだ」と触れている。仮に米国の理解を得られたとしても、協調介入ではなく単独介入となる可能性が高く、効果は限定的となるだろう。
7:円キャリー取引は復活するか
日銀の黒田総裁が緩和姿勢を崩さないことから、為替市場では「円高には振れない」と円売りを積極化する投資家が増えるのではないかとの声がある。低金利の円を売ってドルやスイスフラン、豪ドルなど高金利の通貨を買い、両者の金利差で稼ぐ「円キャリー取引」が活発化するのではという見立てだ。
黒田総裁が大規模緩和を開始した2013年4月以降、為替相場では、円売りポジションを積み上げる投資家が目立った。だが今回はそのような動きはあまりない。投機筋の売買動向を示す際に参考になる米商品先物取引委員会(CFTC)のIMM先物通貨の非商業部門のデータでも、足元で円安が進んでいるにもかかわらず、円の売越幅は減少傾向だ。投機筋の円キャリー取引はそれほど起こっていないとみられる。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは「実需面のドル買い・円売りが円安進行に影響を与えている」と見ている。
   1ドル=140円の可能性
8:いつまで円安は続くのか
この疑問は「ドル高はいつまで続くのか」と言い換えた方がよさそうだ。今回の円安の最も大きな原因は日米金利差の拡大である。従ってドル高基調が収束しない限り円安は続くと考えられる。
米国はインフレ鎮静化に向けて利上げを進めているが、政策金利が利上げサイクルの到達点といわれる2%台半ばに差し掛かる頃が「ドル高の終わり」と見る市場関係者は多い。この頃になれば、米国の物価上昇率が鈍化し、景気後退リスクが意識されやすくなる。足元の政策金利は0.75〜1%。あと何回の利上げで2%台半ばまで持っていくかによって、ドル高の終着点が見えてくるだろう。6月と7月、0.5%ずつの利上げは確実視されているため、秋口にはドル高が一服すると考えられる。
11月には、米国の中間選挙も控えている。ここで与党民主党が敗北すると、米国政治が停滞するリスクの高まりが意識される。ここでドルが売られるシナリオもありそうだ。
9:1ドル=140円突破の可能性はあるか
さらなる円安進行のカギを握るのが貿易収支の動向といわれている。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支の赤字は21年度、5兆3749億円と過去4番目の大きさとなった。これは、東日本大震災後に原発が稼働を停止しエネルギーの輸入が増えた14年度以来の水準だ。月ベースで見ても、22年4月まで9カ月連続の赤字となっている。輸入会社が支払いに充てるドルを調達するため、円を売る動きが大きいということだ。
また輸入コストは円安のみならずエネルギー価格や食料価格の動向、部品調達などのサプライチェーンの制約度合いにも左右される。エネルギー調達において海外依存度の高い日本は、エネルギー価格が高くなると貿易赤字が膨らみやすい。「東日本大震災以降、原発再稼働に関する議論を先送りしたり、再生可能エネルギー導入を積極的に進めなかったりしたツケが出ている」と、ニッセイ基礎研究所の上野剛志・上席エコノミストは話す。
10:岸田政権の経済政策が円安要因との声もある
岸田文雄政権が掲げる「新しい資本主義」の成長戦略と位置付けている政策が、円安につながるのではと指摘する声もある。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは、昨年度政府が設立した「大学ファンド」が外貨買い・円売りの要因になるのではと見る。大学ファンドは、世界トップレベルの研究力を目指す大学にその運用益を配分すべく設立された。すでに約5兆円が運用開始されており、将来的に総額10兆円規模のファンドになる予定だ。目標運用利回りは4%超となっているため、超低金利下の日本の円資産だけでは達成できない。資産の相当額を外貨に振り分ける必要がある。「片道切符の外貨買い・円売りとなるだろう」(植野氏)
岸田政権が策定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で目玉に掲げる「資産所得倍増プラン」に関しても、個人マネーの海外流出につながる施策だと見る人が多い。家計に眠る2000兆円もの金融資産がリスクマネーと化し、日本の株式市場に向かうことを岸田政権は想定しているのだろうが、日本企業と日本経済の成長力が高まらなければ、個人マネーは相対的に利回りの高い外貨資産に向かってしまう。「円安が加速するリスクがある」とみずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは話す。
●米FRB利上げへ 27年ぶり0.75%上げも 円安一層加速か 6/15
米連邦準備制度理事会(FRB)は米国時間の15日、3会合連続となる政策金利の引き上げを決める見通しだ。上げ幅は0・5%と見られていたが、約40年ぶりの記録的な物価上昇(インフレ)を抑制するため、従来の3倍に当たる0・75%の引き上げとなるとの見方が強まっている。FRBが0・75%の利上げをすれば1994年11月以来、27年7カ月ぶり。大規模緩和を続ける日銀との政策の違いは鮮明で、円安・ドル高の流れが一段と強まりそうだ。
FRBは5月会合で従来の上げ幅の2倍となる0・5%の利上げを決定。その後公開された議事録では、大半の参加者が「今後2回の会合で0・5%ずつの利上げをするのが適切だろう」との見方を示していた。
ところが、6月10日発表の5月の消費者物価指数は前年同月比8・6%上昇と、市場予想(8・3%)を大きく上回るサプライズとなった。4月の消費者物価上昇率が8カ月ぶりに前月を下回り、「インフレはピークに達した」(エコノミスト)との楽観論も出ていただけに、市場ではインフレの再加速が驚きをもって受け止められた。これを受け、米ゴールドマン・サックスなどの大手金融機関は相次いで上げ幅の予想を0・5%から0・75%に引き上げた。
FRBのパウエル議長は5月中旬、インフレ率が低下しなければ「さらに積極的に行動することを検討する必要がある」と利上げペースを加速させる可能性を示唆する発言をしている。一方、日銀の黒田東彦総裁は6月上旬、「揺るぎない姿勢で金融緩和を継続していく」と明言しており、日米の金融政策の違いは鮮明だ。
FRBの金融引き締め強化の観測を受け、米国では長期金利が上昇。これに伴い、運用に有利なドルを買って円を売る動きが活発化している。14日のニューヨーク外国為替市場では、円は一時1ドル=135円50銭台まで下落し、1998年10月以来、約24年ぶりの円安・ドル高水準を更新している。
●円安加速、早朝に1ドル=135円60銭近辺…15日のFOMCで利上げ幅拡大 6/15
15日の外国為替市場の円相場は、早朝に一時、1ドル=135円60銭近辺となり、約24年ぶりの円安水準を更新した。東京市場の午後5時は、前日(午後5時)比28銭円安・ドル高の1ドル=134円70〜71銭で大方の取引を終えた。米連邦準備制度理事会(FRB)が15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅を拡大するとの見方が広がり、米長期金利が上昇。運用で利回りの見込めるドルが買われ、円が売られる展開となった。
●外為 1ドル134円72銭前後とドル高・円安で推移 6/15
15日の外国為替市場のドル円相場は午後4時時点で1ドル=134円72銭前後と、前日午後5時時点に比べ29銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=141円07銭前後と32銭のユーロ高・円安で推移している。
●円、134円台後半 ロンドン外為 6/15
15日朝のロンドン外国為替市場の円相場は、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策発表や欧州中央銀行(ECB)の臨時理事会を控え、1ドル=134円台後半でもみ合いとなった。
午前9時現在は134円70〜80銭と、前日午後4時比15銭の円安・ドル高。
●ロンドン外為 円、134円台半ば 6/15
15日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)の金融政策発表を控え、1ドル=134円台半ばを中心にもみ合いとなった。正午現在は134円40〜50銭と、前日午後4時(134円55〜65銭)比15銭の円高・ドル安。
対ユーロは、1ユーロ=140円85〜95銭(前日午後4時は140円10〜20銭)で、75銭の円安・ユーロ高。
FRBが15日に発表する金融政策は利上げ幅が焦点。直前に0.75%の大幅利上げを織り込む動きがあっただけに、0.5%の利上げとなった場合は「市場が急変動する可能性がある」(邦銀筋)と指摘されている。
15日にはECBが臨時理事会を開くとも伝わり、ユーロが急伸。欧州各国の長期金利は低下した。市場では前回の会合後、イタリアの長期金利が約8年ぶりの高水準になるなどしていた。ユーロ買い・ドル売りが入り、円も対ドルで底堅かった。
ユーロは堅調。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0480〜0490ドル(1.0405〜0415ドル)。
ポンドは前日に約2年ぶりの安値を更新したが、この日は買い戻しが先行した。1ポンド=1.2085〜2095ドル(1.1995〜2005ドル)。
スイス・フランは対ドルでパリティー(等価)を挟んだ水準での取引。1ドル=0.9985〜9995フラン(1.0000〜0010フラン)。 

 

●円相場やダウ平均株価乱高下 円安と株安はいったん歯止め 6/16
15日のニューヨークの金融市場では、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が異例の0.75%の利上げに踏み切ったことを受けて円相場やダウ平均株価が乱高下し、結果的に、このところの円安ドル高と株安の進行にはひとまず歯止めがかかりました。
15日のニューヨーク外国為替市場ではFRBが0.75%の利上げを発表した直後は円売りドル買いの動きが出て、円相場は1ドル=134円台後半まで値下がりしました。
その後は、パウエル議長が記者会見で「この規模の利上げが普通だとは思わない」などと発言したことを受けて今後も利上げの加速が続くことへの懸念がいくぶん和らいで円が買い戻され、1ドル=133円台半ばまで値上がりしました。
ニューヨーク株式市場でも、FRBの決定のあとダウ平均株価は乱高下し、パウエル議長の記者会見を受けて値上がりに転じました。
終値は、前日に比べて303ドル70セント高い、3万668ドル53セントと6営業日ぶりの値上がりとなりました。
IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数も2.5%の大幅な上昇となりました。
ニューヨーク市場では、このところ、金融引き締めが加速するとの見方から円安ドル高が進み、株価も急落していましたが、15日は、こうした動きにひとまず歯止めがかかりました。
値下がりが際立つ“円”
外国為替市場では急速に円安ドル高が進んでいますが、円は、世界のほかの国の通貨の中でも値下がりが際立っています。
ことしに入ってから今月半ばまでのおよそ半年間の為替レートを見ると、円は、ドルに対して14.3%値下がりしました。
アメリカで利上げが加速するとの見方から、ほかの多くの国の通貨もドルに対して値下がりしていますが、イギリスのポンドは10.3%、ユーロは8.4%、オーストラリアドルは4.6%、カナダドルは2.0%、南アフリカのランドは1.1%の下落と、日本円の下落幅が目立つ形になっています。
また、ブラジルのレアルは8.9%の上昇と、ドルに対して値上がりした通貨もあります。
定番のハンバーガーセットが“1468円”
アメリカで販売されているモノの価格をみると、円の弱さがうかがえます。
1ドル=135円の為替レートをもとに手数料などを考慮せず単純計算すると、日本の1000円は、7ドル40セントになります。
首都ワシントンの中心部にある大手ハンバーガーチェーンのマクドナルドでは、定番のハンバーガー、ビッグマックが14日時点の税込みで6ドル81セントで、日本円では919円にあたります。
さらに、ドリンクとフライドポテトがつくセット価格では、10ドル88セントと、日本円で1468円に。
商品内容に違いはあるものの、日本では、同じハンバーガーが単品では390円。
セットではランチの時間帯をのぞいて690円で販売されています。
牛丼は“1000円超え”
また、日本の大手牛丼チェーン「※吉野家」のアメリカ西海岸のロサンゼルスの店舗では、牛丼のレギュラーサイズが税込みで8ドル37セントで販売されています。
1ドル=135円の換算では1129円と、1000円を超える計算になります。
野菜の付け合わせが選べるなど、商品内容に違いがあるため単純な比較はできませんが、日本では、牛丼の並盛が、現在は税込み426円で販売されています。
●歴史的な円安で円買いに走る韓国人、その目に映る「宝の山」 6/16
6月14日、東京外国為替市場の円相場は、一時1ドル=135円22銭と1998年10月以来、24年4か月ぶりの円安ドル高となった。
現在、ドルはどの通貨に対しても高く、韓国のウォンもドルに対してはウォン安だが、4月頃から円に対してはウォン高が続いている。
今年の4月までは1円=10ウォンだったが、6月13日現在、1円=9.5423ウォンと10ウォンを割っている。
韓国では一般的に円は安全資産と言われ、最近の不安定な世界経済の中で円安になりにくいと見られていた。
しかし、米国が利上げのペースを上げているのに比べ、日本は景気浮揚に力点を置いて金利を上げないことから日米の金利差が拡大し、必然的に円安が進んでいる。
さらに、6月10日発表された米国の5月消費者物価指数(CPI)は、前年同期比8.6%も上がり、米国の株式市場に衝撃を与えた。
何しろ1981年以降最高の物価上昇である。
インフレがピークを過ぎたという期待感は薄まり、米連邦準備制度理事会(FRB)は6月14、15日に開かれるFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げ幅を0.75%まで拡大するとの観測が広がっている。
インフレ退治を目的とした米国の攻撃的な利上げに比べ、日銀の黒田東彦総裁はゼロ金利政策を堅持すると再三発言しており、日米金利差は拡大の一途を辿るのは間違いない。
こうした観測から市場では、最も金利の低い円で融資を受け、金利の高くなった米ドルなどの通貨や資産に投資する「円キャリートレード」傾向が活発になっているようだ。
これもまた、円安の主な要因の一つになっているという。
ここ数年、株式や外国為替への取引が活発になっている韓国の個人投資家は、こうした状況をチャンスと捉えているようだ。
これまで韓国では円安を憂慮する人たちが多かった。
なぜなら、韓国は輸出依存の極めて高い経済であり、輸出品の多くが日本製品と重なるため、円安になると品質の高い日本製品が韓国製品より有利になるからだ。
ところが、こうした考えは古く、最近では円安は必ずしも韓国経済にとってマイナスではないとの見方が広がっている。
韓国貿易協会国際貿易通商研究院は米国の利上げをきっかけに円安の影響を調査しているが、韓国の輸出に対する影響はあまりないと分析している。
それによると例えば、日銀が金融緩和に踏み切り円安が始まった2012〜2016年の間、日本の輸出物量の増加率は年間1%ポイント未満に過ぎないという。
また、最近の日本と韓国の輸出競争力を相対化した数値でも(2019年0.481→2020年0.471)、日本の競争力の落ち込みが目立ち、円安が韓国経済にマイナスとは言えなくなっているとしている。
こうしたことから、特に若い世代を中心に円安が韓国経済にマイナスという印象は薄れているようである。
一方、ここ数年で急速に力をつけた韓国人個人投資家は、むしろ円安を投資チャンスと捉えている。
先に挙げたキャリートレードなどはその一つ。実際、韓国の5大都市銀行の円預金残高は4月末基準で6044億円に増えた。
2021年12月末4946億円から22%ほど増加している。このうち半分以上の579億円が今年の3月に新しく入って来た資金だという。
円は2011年10月末に1ドル75円32銭の高値をつけた。現在の円はそれより約60円も安くなっている。ある意味歴史的な水準といえる。
韓国人投資家はこの機を逃す手はないと考えているようだ。
もしこの後、日銀が政策を変更して金利を上げ、円高ドル安(ウォン安)に振れるようなことがあれば、金利だけでなくキャリートレードを解消することで為替差益も生まれる。
個人投資家だけでなく、コロナ禍が去って日本へのリベンジ旅行を計画する人も円を買っているようだ。
また、価格が高くなりすぎた韓国の不動産は買えないか買えても高い利回りが期待できないが、安い日本の不動産も買い時だと思って投資を始めた韓国人も増えている。
そうした不動産は、エアビーアンドビー(Airbnb)として活用することを目論んでいるという。
もっと手軽に、今が円預金する適期だとして、円買いに走る韓国人もいる。
今の円安を韓国人の目には宝の山に映っているのかもしれない。筆者も少しずつ円を増やして、日本の個人旅行が解禁される時に備えておこうとは思っている。
●米国の利上げ加速、27年ぶり0.75% 円安ドル高は長期的か 6/16
米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は15日、連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、通常の上げ幅の3倍となる0.75%の利上げを決めた。記録的なインフレを鎮めるため、既定路線だった0.5%を上回り、1994年11月以来27年7カ月ぶりの大幅利上げ。日本との金利差はさらに拡大し、長期的な円安ドル高の圧力はさらに強まる。
利上げは3回連続で、上げ幅は、事実上のゼロ金利政策を解除した3月の0.25%、前回5月の0.5%、今回の0.75%へと拡大。主要な政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.5〜1.75%に引き上げる。出席者が予想した年末の誘導目標は3.4%で、3月時点から1.5ポイント上方修正した。
FRBのパウエル議長は記者会見で、0.75%の利上げは予想以上のインフレに対応した「異例の大きさ」としつつ、「(7月の)次回会合で0.5%または0.75%引き上げる可能性が高い」と大幅な利上げを続ける考えを示唆。その後はペースを緩める方針も示した。
インフレへの懸念と、急ピッチで進む金融引き締めによる景気後退への警戒感が混在する難しい局面。パウエル氏は、急激な景気後退を招かないインフレの沈静化は「可能だ」としつつ「難易度は上がっており大きなチャレンジになった」と述べ、「不確実な環境での金融政策により、経済が予期せぬ方向に向かう可能性があることも認識する必要がある」と不安をにじませた。
米国では昨年から、コロナ禍からの経済活動の再開による供給不足で物価が高騰し、さらにロシアによるウクライナ侵攻で燃料や食料品が急騰。FRBが利上げに踏み切った3月以降も歯止めはかからず、直近5月の消費者物価指数は前年同月比8.6%増と40年5カ月ぶりの水準となった。
円安進行 所得も上がらず「悪いインフレ」歯止めなし
米連邦準備制度理事会(FRB)が予想以上のインフレに直面し、金融引き締めを加速した。片や日本は低金利政策から抜け出せず、円安が進行中。ただでさえロシアによるウクライナ侵攻に伴って燃料などの価格が高騰する中、円安で物価高に拍車がかかり、所得の上がらない家計を圧迫する懸念が高まっている。
国際的な資金の流れは、金利の低い国から高い国に移る傾向がある。運用に有利なためで、特に、国際的な基軸通貨である米国の利上げは影響が大きい。このため英イングランド銀行(BOE)や欧州中央銀行(ECB)も利上げにかじを切り、資金流出を防ごうとしている。
しかし、日本は賃金上昇を伴う消費拡大には程遠く、経済活動を抑制する金融引き締めには踏み出せない状態だ。膨大な国債発行残高を抱える政府の利払い負担が増えるのを避けるため利上げできないという悪循環も指摘される。既に市場は動けない日銀を見透かし、一時は1ドル=135円台と24年ぶりの円安水準に陥った。
15日のニューヨーク市場では、0.75%の利上げが予想の範囲内だったため、過度な引き締めは避けられたとの安心感から円が買い戻され134円台とやや円高に振れた。しかし、長期的な円安圧力がさらに強まったのは事実。市場関係者は秋口の140円台も視野に入れる。
ただでさえロシアによるウクライナ侵攻の影響で高騰する燃料や食料品の価格は、円安により輸入時の価格がさらに引き上がる。家計は、所得が上がらないのに物価が上昇する「悪いインフレ」に圧迫され始めている。日銀は日本時間の16、17日に金融政策決定会合を開く。終了後の会見で黒田東彦総裁がどのような発信をするのか、注目される。
●円安が続く相場、それでも「為替介入」しない理由とは? 6/16
近ごろ円安が続いていることがニュースでよく取り上げられています。円安は海外から物を輸入する際のレートが不利になるため、市民の生活にも悪影響を及ぼす可能性があります。この円安は通貨当局による「為替介入」により緩和することも可能ですが、現在は大きな為替介入は行われていません。
この記事では、円安とはどのような状況なのか、また為替介入がなぜ行われていないのかについて解説していきます。
円安とは?
円安とは「外貨に対して日本円の価値が下がること」を意味します。円安になると日本から物を輸出する際はメリットになりますが、逆に輸入する際は不利なレートで物品を購入しなければならず大きなデメリットとなります。以前の日本は自動車など輸出産業が盛んだったため、格安で輸出ができる円安にもメリットが多かったですが、現在は海外からの安い原材料の輸入が生命線である部分もあり、円安は大きな打撃となります。
そこで円安を緩和するために通貨当局(日本では財務省、金融庁、日本銀行)が行うのが「為替介入」です。円安は日本円が売られて需要が下がってしまうため起こる現象であるため、政府がドルなど外貨を売り、日本円を買うことで円安を抑えることができます。為替介入は数兆円単位の金額が投じられることもあり、相場に大きな影響を与えるため、大きく注目されます。直近では2011年の東日本大震災の際、1日としては過去最大となる8兆722億円の為替介入が行われ話題となりました。
為替介入が行われない理由
近年、円安が急激に進んでいます。2022年3月28日には1ドル=125円10銭という、約6年7ヶ月ぶりの円安水準となりました。ところが、それを緩和する為替介入は現在まで実施されていません。実はこれにはいくつか理由があります。
・外貨準備の範囲でしか介入できない
先述したように、円安の抑止には外貨を売却して円の購入を行います。つまり、政府が持っている外貨の範囲内でしか円を購入することができないのです。これは日銀が好きなだけ発行できる日本円を売却する円高の抑止とは大きく異なります。
・米国債を売却する必要がある
現在、日本の外貨準備の80%は証券運用です。この証券運用の多くはアメリカの国債(米国債)である可能性が高く、為替介入を行うにはこれらを売却しなければいけません。しかし米国債を売却するとアメリカの長期金利を上昇させてしまうため、日米の金利差が拡大してしまい、逆に円安のリスクとなってしまうのです。
・アメリカとの連携
政府によるドル売りは、日米関係にも大きく影響します。アメリカは現在、インフレに悩んでいるため、円安ドル高の現状はアメリカにとって好ましい状態なのです。もしアメリカの意向に反して為替介入を強行し円安を回避してしまいますと、日本はアメリカから反発を受ける可能性もあります。
為替介入しない理由はさまざまなものがある
ここまで、円安についての説明や、政府が為替介入を行わない背景について解説しました。円安により市民生活にもさまざまな影響が出てしまいますが、政府としてもすぐに為替介入できない理由が多く存在するのです。これらを理解した上で、これからの為替について、またそれに影響される私たちの生活について考えてみてはいかがでしょうか。
●「24年ぶりの歴史的円安」1ドル=135円? 円安のメリット・デメリット 6/16
2022年6月14日、ニューヨーク外国為替市場において一時、1ドル=135円48銭と1998年10月以来の円安水準になりました。
およそ24年ぶりとなる円安水準に「歴史的円安」などの声も上がり話題となっていますが、一体何が“ヤバイ”のか、騒がれている理由が今ひとつ掴めていない方もいるのではないでしょうか。
一体なぜこのような円安になったのか、私たちの生活への影響、メリットはあるのかなどを、わかりやすく簡単に解説していきます。
「為替」の仕組みと「円安」の主な要因
まず、簡単に為替の仕組みについて説明します。中長期的な視点から見ると、為替の変動は「金利」「物価」の側面から動く傾向にあります。
今回の円安の主な要因は、日米の「金利差」にあります。アメリカではインフレが進み、その対処法として金利を引き上げる政策が進められています。
この金利の引き上げが想定よりもさらにスピードアップするのではないか? 1回の金利の引き上げ幅が大きくなるのではないか? そのような懸念が円安ドル高をさらに加速させたと考えることができます。
要は、日本は金利が上がらない、アメリカは金利が上がるとなれば、円を売ってドルを買った方が金利がついて良いわけです。このような流れから、円安ドル高の流れは今後も継続する(少なくとも大幅な円高は考えにくい)でしょう。
ただ、アメリカの金利がどこまで上がるかによって為替が変動する状況にあるため、際限なくどこまでも円安へとなる可能性は低いでしょう。
円安のデメリット:輸入物価に反映され、値上げにつながる
それでは、この円安は私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか?
まず考えられるのが、輸入物価の上昇です。海外から輸入する製品の価格は円安によって押し上げられ、私たちが購入する際の価格が上がります。
ましてや、現在はロシア・ウクライナ情勢もあり、小麦などの価格がすでに上がっている状況にもあります。商品価格の上昇+円安というダブルパンチも考えられます。このような値上げはこれからも進んでいくことになるでしょう。
私たちが海外に行くときの旅費やお土産などの価格も高いと感じるようになるでしょう(逆に言えば、日本の物価が安すぎるともいえますが……)。
コロナ禍の影響もあり、これまでは海外に行ける状況ではなかったものの、今後海外旅行が少しずつ緩和されるにつれ、円安の影響を感じる機会も増えていきそうです。
生活する上で、価格の面でマイナスの影響を受ける可能性があること、これがわかりやすい円安のデメリットといえます。
円安のメリット:インバウンドは活性化する可能性大
一方、海外から日本に来る外国人旅行者は円安の恩恵を受けることになります。今まで以上に、ますます「日本は安い」と思われかねません。インバウンドを期待する旅行関係者にとっては恩恵を受けることになりそうです。
また、ドルを中心に外貨預金など資産運用を行っている方も円安により為替差益が得られますので、恩恵を受ける対象になります。
この他、輸出をメインとする企業にとっては、円安により売上増加が期待できるため有利となります。中には、過去最高益を叩き出す企業もある模様です。
このように、円安はメリット・デメリットあり、恩恵を受けるケースもあれば不利となるケースもあります。
長期的な視点からいえば、円安は日本の物価上昇にもつながるため、給料が上がらなければ実質的な購買力が低下する恐れがあります。
意図的な円安ではなく、金利差による自然の流れではあるものの、このまま放置するのもどうかと思います。個人個人でできることは限られていますが、外貨による運用などで資産を守るといった視点も必要だと考えます。
●米、大幅利上げ継続へ 円安基調が強まる可能性も 6/16
米国での歴史的なインフレに対処するため、中央銀行の連邦準備制度理事会(FRB)は大幅利上げを7月にかけて連続で実施する検討に入った。物価抑制のため急速な金融引き締めを優先させるが、景気悪化を招きかねず、経済の「ソフトランディング(軟着陸)」へ難局を迎えている。16日に金融政策決定会合を始めた日銀は大規模な金融緩和を続けており、金利差拡大により円安ドル高の基調が強まる可能性もある。
FRBは15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、1994年11月以来、27年7カ月ぶりとなる政策金利の0.75%引き上げを決定した。
●米利上げ、続く円安圧力 貿易赤字拡大、企業に危機感 6/16
米連邦準備制度理事会(FRB)が0.75%の利上げに踏み切った。大規模金融緩和を続ける日本と米国の金利差は一段と広がり、円安・ドル高が加速する可能性がある。日本の財務省が16日発表した5月の貿易統計で、貿易赤字は歴史的水準に拡大。産業界では危機感が高まっている。
16日の東京外国為替市場は、米利上げ幅が市場の予想通りだったため、前日までの急速な円安進行はいったん落ち着きを見せた。パウエルFRB議長は今回の大幅利上げについて「異例の大きさ」と発言。今後、利上げ幅縮小を探る構えだ。ただ、FRBはこれまでも予想外のインフレ高進に対応し、大幅な利上げを迫られてきただけに先行きは不透明だ。
コロナ禍で打撃を受けた観光業界にとって、円安は訪日外国人客の回復に弾みをつける「追い風」(旅行大手)となり、大手百貨店も「訪日客の買い物意欲が高まってプラス要因となるのは間違いない」と期待する。しかし、原材料を海外から輸入する食品メーカーなどは「価格高騰で負担が大きくなる中、さらに厳しい状況を強いられる」(J―オイルミルズ)と懸念する。
ロシアによるウクライナ侵攻の影響に伴う供給不安で、資源や原材料の価格上昇が続く状況では、円安の恩恵を受けやすい輸出産業からも「(部品調達などで)円安のデメリットが拡大している」(日本自動車工業会の永塚誠一副会長)との声が上がる。海運業界はドル建ての運賃収入の増加が見込めるものの、「急速な円安で日本の景気が落ち込めば荷動きが減る。中長期的には懸念の方が大きい」(関係者)と不安の声が漏れる。
5月の貿易統計で、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支の赤字額は、資源価格の高騰や円安で過去2番目の大きさとなった。これは所得の大幅な海外流出を意味し、国内景気の下押し材料になりかねない。日銀は米国などに追随して拙速に利上げすれば景気回復を阻害しかねないとして、16、17両日の金融政策決定会合で大規模金融緩和を継続する見通しだ。
円安は日本経済の弱さがもたらしたとの見方もあり、経団連の十倉雅和会長は16日、記者団に「日本の経済や産業を強くするしかない」と強調した。
●米欧が利上げ、日銀は緩和維持の見通し…金利差拡大で「円の独歩安」 6/16
日本銀行は16〜17日開催の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の維持を決める見通しだ。米欧など主要国・地域が景気回復に伴うインフレ(物価上昇)を抑制するため、軒並み利上げに傾く中、国内外の金利差拡大が続く。為替相場では主要通貨に対する「円の独歩安」が進む恐れがある。
国内の物価は上昇基調にあるが、日銀はコロナ禍で冷え込んだ景気を下支えする必要があると判断している。日銀が金融緩和を継続すれば、利上げ幅を拡大したFRBとの違いが一段と際立つ。日銀は長期金利を抑え込んでいるため、金利上昇が続く米国との金利差が開き、円安・ドル高が進みやすくなる。
円安は輸出企業や海外展開する企業の収益を押し上げる一方、燃料費や原材料価格の高騰につながり、家計や輸入品を仕入れる企業の負担が増す。日銀は「急激な円安は好ましくない」としつつも、金利上昇が中小企業や家計の借り入れ負担を増やす副作用を懸念している。手詰まりに見える日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁が17日午後の記者会見でどう説明するか、関心が集まる。
●円安一段落、133円台後半 株は5日ぶり反発、警戒感和らぐ 6/16
16日の東京外国為替市場で、円相場は1ドル=133円台後半に上昇し、円安が一段落した。
米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ方針に対する過度な警戒感が和らぎ、持ち高調整の円買い・ドル売りが優勢となった。東京株式市場では日経平均株価が5営業日ぶりに反発した。
円相場は午後5時半現在、133円62〜63銭と前日比1円09銭の円高・ドル安。円買い・ドル売りが一巡し円が軟化する場面があったが、その後は134円台前半を中心に推移した。日銀の金融政策決定会合が17日まで開かれており、投機的な円売りが手控えられたことも円相場を支えた。ただ、市場では日米の金融政策の方向性の違いから金利差拡大が意識されており、「円安基調は変わらない」(FX会社)との見方が強い。
●東京為替 ドル・円は失速、米金利にらみ 6/16
16日午後の東京市場でドル・円は失速し、134円半ばから前半に値を下げた。米10年債利回りの低下でややドル売りに振れ、対円ではじり安。ただ、クロス円も同様の値動きだが、米株式先物は堅調地合いを維持し、今晩の株高を期待した円売りが主要通貨を支える。
ここまでの取引レンジは、ドル・円は133円70銭から134円68銭、ユーロ・円は139円68銭から140円60銭、ユーロ・ドルは1.0431ドルから1.0469ドル。
●外為 1ドル133円19銭前後と大幅なドル安・円高で推移 6/16
16日の外国為替市場のドル円相場は午後6時時点で1ドル=133円19銭前後と、午後5時時点に比べ1円06銭の大幅なドル安・円高。ユーロ円は1ユーロ=138円62銭前後と93銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●ロンドン外為 円急伸、一時132円台 6/16
16日午前のロンドン外国為替市場の円相場は一時1ドル=132円台前半に急伸した。主要中央銀行による利上げ加速で世界経済の減速懸念が強まり、安全資産とされる円を買い戻す動きが広がった。正午現在は133円00〜10銭と、前日午後4時(134円50〜60銭)比1円50銭の大幅な円高・ドル安。
対ユーロは1ユーロ=138円40〜50銭(前日午後4時は140円05〜15銭)と、1円65銭の円高・ユーロ安。
米連邦準備制度理事会(FRB)は15日、0.75%の大幅利上げを決定。16日も英イングランド銀行が追加利上げを発表し、スイス国立銀行も市場予想に反して約15年ぶりの利上げに踏み切るなど、主要中銀の利上げが加速している。
日銀は17日に金融政策を発表するが、その前に思惑的な円買い・ドル売りも入った。市場からは「日銀が金利上昇を認めるとの観測があり、円を下支えしている」(英調査会社)との指摘もあった。
ユーロは上値が重かった。欧州中央銀行(ECB)が債券市場の安定化策を打ち出したものの、予想の範囲内との受け止めが広がった。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0400〜0410ドル(前日午後4時は1.0405〜0415ドル)。
ポンドは買われた。イングランド銀行は0.25%の利上げを発表。1ポンド=1.2155〜2165ドル(同1.2065〜2075ドル)。
スイス・フランは中銀のサプライズ利上げで急騰した。1ドル=0.9810〜9820フラン(同1.0005〜0015フラン)。  

 

●米、利上げ 異例0.75% 6/17
米連邦準備制度理事会(FRB)は15日、連邦公開市場委員会(FOMC)で、通常の3倍となる0・75%の利上げを決めました。引き上げは3会合連続で、0・75%の上げ幅は1994年11月以来、約27年半ぶりです。パウエルFRB議長は記者会見で、7月も大幅な利上げに踏み切る可能性に言及しました。歴史的な高インフレの抑制へ、積極的な引き締めを続ける方針です。日米の金利差がさらに広がり、円安・ドル高の構図がいっそう強まります。
15日発表されたFOMCの声明は、「物価上昇率は(新型コロナウイルスの)パンデミック(世界的流行)に関連した需給の不均衡、エネルギー価格の高騰、広範におよぶインフレ圧力を反映して高止まりしている」と指摘。会合後に記者会見したパウエル議長は利上げを継続する方針を改めて強調し、次回の7月会合の利上げ幅も「0・5%か0・75%の判断になる可能性が高い」と述べました。
「アベノミクス」の金融緩和によって引き起こされた円安は、輸入依存度を強める日本経済を直撃しています。円安が加速を始めた3月以降、わずか3カ月でドルに対して20円も下落しています。今後も、値上げを予定している企業は後をたちません。経済同友会の6月の景気定点観測アンケート調査には、日本企業の買収により技術が海外流出するなど「国力低下」への懸念も出ています。
「アベノミクス」の堅持を宣言する岸田文雄政権の経済運営が日本経済「成長」の障害となっています。
●円相場 NY市場 一時1ドル=131円台半ばまで大きく値上がり  6/17
16日のニューヨーク外国為替市場はドルを売ってこれまで売られていた円を買い戻す動きが強まり、円相場は一時、1ドル=131円台半ばまで大きく値上がりしました。
16日のニューヨーク外国為替市場では急速な金融の引き締めでアメリカの景気が減速することへの警戒などからドルが売られ、円を買い戻す動きが強まりました。
このため、16日の東京市場で1ドル=134円台前半を中心に取り引きされていた円相場は、一時、1ドル=131円台半ばまで大きく値上がりしました。
外国為替市場では、このところ日米の金利差が拡大するとの見方を背景に円安ドル高が急速に進み、今週、1ドル=135円台半ばまで値下がりしていました。
市場関係者は「このところの円安の進行が急ピッチだった分、円の買い戻しも出やすい状況で荒い値動きになっている。アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会に続いて、イギリスやスイスの中央銀行が相次いで利上げを決める中、大規模な金融緩和を維持してきた日銀がきょう開く金融政策を決める会合で円安をめぐって何らかの対応を見せるかが市場の関心を集めている」と話しています。
●NY外為 円下げ幅拡大、再び135円台 6/17
週末17日午前のニューヨーク外国為替市場では、日銀の金融緩和維持決定を背景とした急速な円安の流れが継続し、円相場は再び1ドル=135円台前半に下落している。午前10時50分現在は135円10〜20銭と、前日午後5時(132円09〜19銭)比3円01銭の大幅な円安・ドル高。
日銀は17日、現行の金融緩和策の維持を決定した。黒田日銀総裁は急速な円安をけん制する発言を繰り返していたため、これまでの金融緩和策の修正が行われるのではないか、との観測が強まっていた。日銀の金融緩和維持決定により、日米の金利差拡大が再び意識され、円は大きく売られる展開となった。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0450〜0460ドル(前日午後5時は1.0548〜0558ドル)、対円では同141円25〜35銭(同139円34〜44銭)と1円91銭の円安・ユーロ高。 

 

●NY円反落 1ドル=134円90銭〜135円00銭 日銀の金融緩和維持受け円売り 6/18
17日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3営業日ぶりに反落し、前日比2円80銭の円安・ドル高となる1ドル=134円90銭〜135円00銭で取引を終えた。日銀が17日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和の維持を決めた。金融引き締めを加速する米連邦準備理事会(FRB)との政策の違いが鮮明となり、円売りが強まった。
日銀の黒田総裁は記者会見で金融引き締めは現時点で適切ではないと明言したため、米市場では「日銀の金融緩和は当面続くと再確認した」(ジェフリーズのブラッド・ベクテル氏)との指摘があった。日銀の政策修正の思惑から前日に積み増された円の買い持ち高を解消する目的の円売りが出たという。
円の安値は135円42銭、高値は134円44銭だった。
円は対ユーロで3営業日ぶりに大幅に反落し、前日比2円20銭の円安・ユーロ高となる1ユーロ=141円55〜65銭で取引を終えた。欧州中央銀行(ECB)は7月に利上げを予告しており、日欧の金融政策の違いから円売り・ユーロ買いが強まった。
ユーロは対ドルで4営業日ぶりに反落し、前日比0.0060ドル安い1ユーロ=1.0490〜0500ドルで終えた。米長期金利が上昇し、欧米金利差の拡大を見込むユーロ売り・ドル買いが優勢だった。3連休前の週末とあって持ち高調整のユーロ売りが出やすかった。
ユーロの安値は1.0445ドル、高値は1.0508ドルだった。 
●NY円反落 1ドル=134円90銭-135円00銭 日銀の金融緩和維持受け円売り 6/18
17日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3営業日ぶりに反落し、前日比2円80銭の円安・ドル高となる1ドル=134円90銭〜135円00銭で取引を終えた。日銀が17日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和の維持を決めた。金融引き締めを加速する米連邦準備理事会(FRB)との政策の違いが鮮明となり、円売りが強まった。
日銀の黒田総裁は記者会見で金融引き締めは現時点で適切ではないと明言したため、米市場では「日銀の金融緩和は当面続くと再確認した」(ジェフリーズのブラッド・ベクテル氏)との指摘があった。日銀の政策修正の思惑から前日に積み増された円の買い持ち高を解消する目的の円売りが出たという。
円の安値は135円42銭、高値は134円44銭だった。
円は対ユーロで3営業日ぶりに大幅に反落し、前日比2円20銭の円安・ユーロ高となる1ユーロ=141円55〜65銭で取引を終えた。欧州中央銀行(ECB)は7月に利上げを予告しており、日欧の金融政策の違いから円売り・ユーロ買いが強まった。
ユーロは対ドルで4営業日ぶりに反落し、前日比0.0060ドル安い1ユーロ=1.0490〜0500ドルで終えた。米長期金利が上昇し、欧米金利差の拡大を見込むユーロ売り・ドル買いが優勢だった。3連休前の週末とあって持ち高調整のユーロ売りが出やすかった。
ユーロの安値は1.0445ドル、高値は1.0508ドルだった。
●NY外為 円大幅下落、134円台後半=日銀の緩和維持で 6/18
週末17日のニューヨーク外国為替市場では、日銀が大規模金融緩和の維持を決めたのを受け、日米金利差の拡大が改めて意識され、円相場は1ドル=134円台後半に大幅下落した。一時135円42銭を付けた。午後5時現在は134円88〜98銭と、前日同時刻(132円09〜19銭)比2円79銭の円安・ドル高。
米連邦準備制度理事会(FRB)が0.75%の大幅利上げに踏み切るなど、世界的なインフレ傾向を受けて主要国の中央銀行が利上げに動く中、日銀は17日、大規模金融緩和の維持を決定。黒田東彦日銀総裁は「急速な円安は経済にマイナス」とけん制したが、海外市場では、日米金利差の拡大が意識され、金利収入が見込めるドルを買い、円を売る動きが加速した。
この日のニューヨーク市場は、134円72銭で取引開始。海外市場での円売りの動きが継続した。市場では「135円台に入り、値動きが大きく無秩序になれば、為替介入を促すことになる」(欧州系金融機関)との警戒感が出ている。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0490〜0500ドル(前日午後5時は1.0548〜0558ドル)、対円では同141円57〜67銭(139円34〜44銭)と、2円23銭の円安・ユーロ高。
●今週のレビュー (6/13〜17) 6/18
ドル円相場
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初134.43で寄り付いた後、1米インフレ懸念の高まりを背景とした米FRBによるタカ派傾斜観測(6/10に発表された米5月CPIが約40年5ヵ月ぶり高水準を記録→インフレがピークアウトするとの期待感後退→米長期金利急上昇→米ドル買い)や、2心理的節目135.00突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り(135.00に観測されていたリバース・ノックアウト・オプションがトリガーヒットしたことに伴うオプション勢のデルタ買戻し)、3日銀による臨時国債買い入れオペ増額発表(日銀による長期金利抑制方針を再確認)が支援材料となり、週央にかけて、約23年8ヵ月ぶり高値となる135.60まで急伸しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、4パウエルFRB議長による「0.75%の利上げが一般的になるとは予想せず」「7月会合では0.50%か0.75%の利上げが選択肢となる可能性あり」との慎重な発言(過度なタカ派観測後退→米長期金利急低下→米ドル売り)や、
5世界的な金融引き締めを背景とした過剰流動性相場の逆流懸念(米国による75bp利上げに続いて、英中銀が25bp、スイス中銀が50bpの利上げを決定→スタグフレーション懸念が燻る中での利上げ実施で株式市場が大暴落→リスク回避の円買い圧力)、6米経済指標の冴えない結果(米5月住宅着工件数、5月建設許可件数、米6月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、米新規失業保険申請件数などが軒並み不冴な結果)、7日銀に対する緩和修正期待(世界的な金融引き締めを背景に日銀金融政策決定会合や黒田日銀総裁記者会見で政策修正や出口議論に関する決定・発言が出てくるとの思惑)が重石となり、週後半にかけて、週間安値131.49(6/6以来の安値圏)まで急落しました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、8日銀金融政策決定会合で現行政策の維持が決定されたことや、黒田日銀総裁より「金融緩和政策の継続」が強調されたこと(上記7の市場の催促に対して日銀はゼロ回答→円売り再開)が支援材料となり、週末にかけて、一時135.41まで反発する荒々しい値動きとなりました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間6/18午前5時00分現在)では、134.95前後で推移しております。
尚、注目された米FOMCでは、FF金利誘導目標の75bp引き上げに加えて、声明文で「委員会はインフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている(The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective)」とのタカ派スタンスが強調されました。また同時に発表された経済見通し・政策金利見通しでは、GDP見通しの下方修正(2022年末時点のGDP見通しは前回3月時点の2.8%から1.7%へ下方修正)と、物価見通しの上方修正(2022年末時点のPCE見通しは前回3月時点の4.3%から5.2%へ上方修正)、政策金利見通しの上方修正(2022年末時点のFF金利予測・中央値は前回3月時点の1.9%から3.4%へ上方修正)が示されるなど、スタグフレーション懸念が燻る中でも、インフレ抑制を重視し、利上げ方針を継続する方向性が示されました。
ユーロドル相場
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0513で寄り付いた後、1欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中でのECBによる金融引き締め開始→欧州経済に強い逆風)や、2米インフレ加速を背景とした米長期金利の急上昇、3世界的な金融引き締めを背景とした過剰流動性相場の逆流懸念(株式市場をはじめリスクアセットが大暴落→資産現金化需要のドル買い圧力)、4ドイツ6月ZEW景況感指数(結果▲28.0、予想▲27.5)の冴えない結果、5リントナー独財務相による「スタグフレーションはあり得るシナリオ」との悲観的な発言、6米FOMCのタカ派的な結果(政策金利が75bp引き上げられると共にドットチャートも上方修正)が重石となり、週央にかけて、週間安値1.0359(5/13以来、約1カ月ぶり安値圏)まで急落しました。
しかし、5/13に記録した約5年4カ月ぶり安値1.0350(2017年1月以来の安値圏)をバックに下げ渋ると、7パウエルFRB議長による「0.75%の利上げが一般的になるとは予想せず」「7月会合では0.50%か0.75%の利上げが選択肢となる可能性あり」との慎重な発言や、8上記7を背景とした米長期金利の急低下、9ECB臨時会合でのユーロ圏利回り格差緩和策の提示、Iフランス中銀ビルロワドガロー総裁による「ECBは漸進的かつ持続的に利上げを行う」とのタカ派的な発言、J米経済指標の不冴な結果、K対ポンドや対スイスフランでのドル売り圧力(英中銀やスイス中銀が利上げ決定→英ポンドやスイスフラン上昇→ユーロ連れ高)、L短期筋のショートカバーが支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0602まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、M欧米金融政策格差に着目したユーロ売り・ドル買い圧力が重石となり、本稿執筆時点(日本時間6/18午前5時00分現在)では、1.0495前後で推移しております。
●ドル円相場に変調のきざし… 日米金利差相場の賞味期限 6/18
1. 日米金利差相場に変調のきざし
6月10日に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)が予想外に強い数字であったことや、翌週13日の米ウォールストリートジャーナル紙(WSJ)が掲載した0.75%の大幅利上げの観測記事が、米連邦準備制度理事会(FRB)によるリークとの見方が広がったため、米国の長期金利は急騰しました。米10年国債利回りは6月9日終値の3.044%から、13日には3.365%まで2営業日で32ベーシスポイントも急騰しました。しかし、一方のドル円レートは、134円台を中心としたもみあいの展開が続き、終値で見たこの間の変化率はわずか0.04%のドル高にとどまりました。
また、同期間における円の主要通貨に対する変化率を見ると、既に利上げを開始している主要通貨も含めほぼ円の独歩高の展開となっており、マーケットの変調を意識させる展開となりました。
2. 市場変調の背景
FOMC参加者の経済成長率予測 (注)データは2022年6月15日現在。(出所)FRBのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
6月15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではWSJの観測記事の通り、0.75%の利上げが決定されました。そして、同時に発表された経済予測では、2022年の経済成長率予測(中央値)が+2.8%から+1.7%に、同2023年は+2.2%から+1.7%に引き下げられました。
+1.7%という成長率は、FRBが見ている金融政策が中立的である場合の長期成長率予測の+1.8%をわずかとはいえ下回る水準であり、今後実施が見込まれる大幅利上げが米国経済にブレーキをかける可能性を示唆している、とも言えそうです。
これまでは米国の堅調な景気拡大が続くことを前提に、「利上げと長期金利上昇」はドル買い材料とみなされてきました。しかし、金融引き締めが景気後退やリスク資産の価格下落を通じ、「ドル売り」や「リスクオフの円買い」を誘発する展開をマーケットが意識し始めるようになると、事情は大きく変わってきます。そして、こうした見方をする市場参加者が一定数を超えると、ある日突然「ドル買い材料」であった米金利上昇が、「ドル売り材料」へと180度転換する可能性も、否定できないでしょう。
3. 日米金利差相場の賞味期限
マーケットを動かす材料は、その織り込みが終わることで市場の価格変動への影響力を失うのが一般的です。なかでも外国為替市場では、株式や債券のようにバリュエーションがあまり機能せず、ファンダメンタルズに基づくフェアバリューの推計が難しいため、その価格変動を主導する市場参加者の注目点は、どうしても移ろいやすい傾向があります。
こうした観点から現在のドル円相場を見ると、ある種異様な状態にあることが解ります。60営業日のドル円レートと米10年国債利回りの相関係数を見ると、足元では57営業日連続で0.9を超えて推移しており、その平均値は0.97に達しています。
過去2年余りの相場をふりかえると、同様に相関係数が長期間にわたり0.9を超えた期間は2回ありました。2021年3月4日に始まった、同相関係数が0.9を上回る「米長期金利とドル円レートが連動する」相場は52営業日続き、同期間の相関係数の平均値は0.95でした。また、21年10月20日に始まった同様な相場は、22営業日、同平均値は0.91でした。
こうした相場展開と比較すると、現在は異常に高い相関が相当長い期間にわたり続いていることがわかります。つまるところ、わかりやすい「米金利上昇で円安ドル高」というシナリオに、「全員参加で乗っかっている状態」と見えなくもありません。
2020年の夏を底に始まった米長期金利の上昇と2021年初旬に始まった円安ドル高は、時おり調整を交えつつも比較的高い連動性を見せてきました。しかしこの間、2020年の秋や2021年の初夏には、新型コロナウイルスの感染状況など他の材料に市場参加者の関心が移ることで、突然かつ急激に両者の関係が逆相関となる局面が現れています。
金融市場が織り込んでいる米国の金融引き締めが、米国経済の今後の成長にブレーキをかけかねない、ある意味「ギリギリの水準」まできていると仮定すると、「日米金利差」を材料にしたドル買い相場はそろそろ終盤であり、金利差相場の賞味期限切れによるこれまでとは違った相場展開についても、リスクシナリオとして注意しておく必要がありそうです。 

 

●「日本大好き」韓国人、超「円安」の“訪日ラッシュ” 「意外な街」の名前 6/19
日本政府は新型コロナの水際対策を緩和して、6月10日から観光客の受け入れを再開させた。
1日あたりの入国者数の上限が1万人から2万人に引き上げられ、7月からは3万人に増やすことで調整が進められている。
世界経済フォーラムが発表した「2021年版の旅行・観光開発ランキング」では、日本が総合順位で世界1位になった。これは、調査の開始以来初めてのことだという。
いま多くの外国人が日本を訪れたいと感じている。とりわけ、日本は約20年ぶりの円安水準だ。日本を訪問したいと考える外国人の間では、自国通貨を円に換金する動きが高まっており、あとは訪問時期だけ調整すれば良い状態となった。
じつはこの動きはお隣の国、韓国でも同じだ。
2019年7月から日本製品不買運動を行い、「日本製品は買わない」「日本には行かない」と国民総出で反日活動に乗り出していた彼らであったが、日本行きの航空券が発売されて直ぐに“予約戦争”が勃発した。
ある旅行会社では、5月25日に販売を始めた「大阪・神戸2泊3日ツアー」に2時間で1365人が殺到して完売、その後もアクセスが集中してサイトがサーバーダウンしてしまったという。
韓国人の「訪日ラッシュ」へ
これから韓国も夏休みシーズンが到来する。
この時期に日本が外国人の受け入れをさらに増やせば、韓国人による“予約戦争”が激化して多くの韓国人が日本へとやってくるだろう。
そんな韓国人に人気の旅行先は主要都市である東京都、大阪府、京都府はもちろん、福岡県、愛知県、北海道、さらには島根県まで多方面にわたる。
近年は王道の観光地だけでなく、陶磁器や刃物を購入するためにメジャーではない場所を訪れることがひそかなブームになっている。
たとえば、陶磁器であれば佐賀県や愛知県、刃物であれば東京都のかっぱ橋や大阪府堺市が人気なのだ。
陶磁器なら岡山県の備前焼や岐阜県の美濃焼なども有名だが、なぜ佐賀県や愛知県が買い付け先として人気なのか。
答えは簡単だ。買い付けついでに観光ができるからだ。
「佐賀県」が大人気のワケ
佐賀県は、有田焼・伊万里焼・唐津焼とそれぞれ特徴のある陶磁器が揃っている。加えて佐賀県は韓国人の好きな温泉もあるし、食べ物だって美味しい。
福岡県は韓国旅行者にとって馴染み深い都市で、そこから佐賀県伊万里市までは車で1時間半もあれば十分に行ける距離だし、公共交通機関を使っても3時間ほどだ。
愛知県瀬戸市の瀬戸物も人気が高く、瀬戸市へ立ち寄った帰りにトヨタ自動車博物館に行くのも自動車愛好家のパパさんには人気が高いという。
不買運動が起こる前まで、別府や湯布院は韓国人だらけであった。筆者も韓国から訪れたことがあるが、特に湯布院は韓国人率が高く、早々に引き上げてしまったくらいだ。
その点、佐賀県まで足を延ばせば韓国人は少なく、海外旅行気分が味わえるのだから、日本を何度も訪れている韓国人にとって人気が高いのも頷ける。
かっぱ橋に、堺も人気!
彼らが日本を訪れて陶磁器を買い付ける理由は、韓国人の間で食の美に対する変化が起こっているからだ。
これまで、外食で韓国料理を注文すると銀食器で提供されることがほとんどだった。家庭では陶磁器も使用するが、依然として銀食器は韓国の食になくてはならないツールだ。
そのような食文化が、ここ数年で若い世代を中心に変わりつつある。
筆者の友人の中にも、おしゃれな食器を購入してはSNSに投稿する人がいるように、“映え”のために陶磁器を購入する人が少なくない。
それは飲食店でも同じで、日本食店を中心に客ウケを狙って徐々に高級食器に切り替える店舗が出始めた。食器が高級になるから、盛り付け方も次第に綺麗になってくる。
料理の盛り付けが変われば、使用する道具にもこだわりが出てくる。
欧米からやってきた外国人がかっぱ橋や堺市で刃物を購入する理由と同じで、韓国人の間にも「日本の刃物技術は素晴らしい」という認識がある。
「刃物熱」が高まっている
韓国では2010年ごろから日本の包丁の評価が高くなり、料理人以外でも日本の包丁を好むようになった。
日本の誇る包丁産地は新潟県三条市・燕市、岐阜県関市、福井県越前市、大阪府堺市、兵庫県三木市、島根県安来市、高知県香美市とあるが、その中でも堺市は関西国際空港からのアクセスが便利なこと、そして、何と言っても韓国人が最も好きな大阪まで観光できるのだから人気が高い。
アテンドを職業としている筆者の友人が、コロナ規制前に韓国人の男女10人を堺市に案内したことがあるという。
聞くと、彼らの訪日目的は「包丁購入」だったが、友人のエピソードを聞く限り、ほんとうは包丁の製造過程を見ることが目的だったようだ。
現地に到着すると、友人に細かい要望をして、刃が出来るまでの工程はもちろん、柄を作る工程、鞘の工程を見たがり、また、堺市の研ぎ名人に会いたいとリクエストしてきたという。
さらには、名指しで職人に会いに行きたいと言い出す者もいたというから、その情熱は“ホンモノ”だろう。ただし、これには友人も困ってしまい、アポイントを取ってないことを理由になんとか彼らを説き伏せて3泊4日の滞在を終えたという。
こだわりを持つ「韓国人たち」
韓国人のアテンドをする友人が、今回の旅行解禁によって「こだわりを持つ韓国人たち」が新たにどんなリクエストをしてくるか興味深いし、期待もできると話していた。
包丁に関して言えば韓国の包丁が切れないわけではないが、やはり日本の包丁の切れ味は群を抜いている。
料理人の場合、客に“魅せる”ために購入することも多い。銘に自身の名前を彫ってもらい、客に見せると客はその料理人や訪れた店を“本物”だと認める。
韓国では、ただ胃袋を満足させるための食事ではなく、目で見て食を楽しむという、新たな食の美学が一般人の間にも広まってきた。
誤解を生まないために補足しておくと、韓国料理の中に「宮廷料理」という豪華な料理があって、それは目でも楽しめるようになっている。
ただ、値が張るために、客人をもてなすことがない限り韓国ではあまり口にしない。
日本の「自動車」も大人気
また韓国に自動車文化が存在しないこともあり、その欲求に駆られた韓国人たちが日本で自動車イベントを見学するというツアーもある。
韓国では中古車輸入に関して自由貿易を謳っているが、アメリカの自動車診断システムOBD2、またヨーロッパのEU5に対応していない自動車は輸入ができない。
そうなれば2015年以前の中古車の輸入はできず、韓国では古い自動車の文化は育ちにくい。そこで日本のイベントに参加する旅行が人気なのだ。
場所は関東園なら大黒インター「HCC95 ヒストリックカークラブ95」、群馬の「伊香保おもちゃと自動車博物館」、関西では京都の「高尾サンデーミーティング」、それと各地域で行われるクラシックカー・ラリーイベントも人気が高い。
これほど韓国人は日本が大好きなわけだが、多くの韓国人観光客が口を揃えて言うことは「日本の交通費が高い」ということだ。これは韓国に限らない外国人観光客も同じなようで、ドイツ銀行が調査した「世界主要都市の公共交通機関1カ月定期券の平均価格(2019年)」で、東京は第4位で高い。
韓国は交通費が非常に安い。地下鉄は初乗り1250ウォン(約125円/10キロまで)だし、ソウルのタクシーの初乗り料金は、中型で昼間は3800ウォン(約380円/2キロまで)だ。地下鉄とバスの乗り換えには割引きだって適応される。
だから、韓国人にとって日本の交通費は旅行する際にもっとも障害になるものだ。彼らが旅館ではなくビジネスホテルに宿泊し、吉野家やサイゼリヤで食事を済ませる理由は、交通費と相殺するといった背景もある。
やっぱり「メイド・イン・ジャパン」
ここ数年で、韓国の百貨店やインターネットモールでは、陶磁器が多く取り扱われるようになった。だが、そこに並ぶものは青や白、ピンクにグレーといった、色鮮やかなものが多い。やはり若い女性向けの商品だ。
落ち着いた色合いの陶磁器や高級感のあるものを求めるには、まだ韓国内に供給先が少ない。それならば、現地に行こうと考えて彼らは日本にやってくる。
日本政府は、個人旅行の解禁についてまだ明言していない。しかし、いつか必ずコロナ規制が緩和され、陶磁器や刃物を求めて多くの韓国人が日本を訪れることになるだろう。“メイドインジャパン”が再び韓国人の間でブームになる日はそう遠くない。少なくとも、円安の間はこれが続くはずだ。
●給食がピンチ!食品価格高騰に“円安”が拍車…工夫で乗り切る 6/19
報告:仁科健吾「足立区の小学校では今まさに給食の準備が行われています、あれは鮭ですね」
小学校の給食の風景はいつの世も同じと思いきや、感染対策で会話のない「黙食」です。こうした感染対策だけではなく今、給食は「節約の工夫」も余儀なくされています。献立を決める栄養士は…
足立区立江北小学校 栄養士 平野由美子さん「給食費が足りなくなっちゃうっていうのは大変なことなので、そうならないように工夫しています」
食品の価格が高騰していますが、給食費は決まっています。
平野由美子さん「キュウリの量をちょっとだけ減らして、他の価格の安い野菜、キャベツとかを増やすようにしています」「1人あたり15gのところを10gにするとか、本当にちょっとしたことなんですけど、そういうのを積み重ねていく」
ほかにも果物の切り方や、魚の種類の変更など材料費を抑える工夫をしています。足立区では給食費の補助のためおよそ2400万円の補正予算案を提出しています。止まらない物価上昇に円安が拍車をかける不安は拭えません。
足立区立江北小学校 武智勇喜校長「やはり不安はありますね、足立区はおいしい給食を提供するために色々と工夫しているんですね。その中で食材が上がるということは非常に厳しい」
円相場は今週、一時1ドル135円台半ばというおよそ24年ぶりの安値をつけました。日銀の黒田総裁は急速な円安の進行は「経済にマイナスであり望ましくない」としています。
一方で…
日銀 黒田東彦 総裁「金融緩和を粘り強く続けることで経済をしっかりとサポートしていくことが必要であるという風に考えております」
日銀は17日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和を維持することを決めました。金融引き締めを決めている欧米との金利の差から円安が一段と進む可能性があります。また、日本ではコーヒー豆をほぼ輸入に頼っていますが…
やなか珈琲 権藤則彦社長「もう2倍の価格で買い付けをするしかないという状況ですね」「現在の在庫限りで販売終了予定になっていますブラジルのコーヒーになります」
こちらのコーヒーチェーンでは価格の高騰から、一部の銘柄について新たな買い付けをやめ、在庫限りとしています。一方で1カ月ほど前からアフリカ南東部マラウイ産のコーヒーを扱い始めました。
権藤則彦社長「正直まだこの価格で、こういうクオリティのコーヒーがあったんだねっていうちょっと驚きがありましたね」
価格高騰の中、活路を見出したマラウイのコーヒー。常連客に味を聞いてみました。
常連客「ちょっとほろ苦い感じで、香ばしい感じがします」
そして「名前のせい」で値上げをしづらい業種も…
100円ショップすまいる 堀弘子さん「『100円ショップ』じゃなくなっちゃいますよね値上げしちゃうと」
東京・練馬区の100円ショップ。100円ショップとはいいますが、商品を見ると、ところどころに「150円」と書かれた値札があります。プラスチック製品が大きな影響を受けているといいます。
100円ショップすまいる 堀弘子さん「ポリ袋なんかだと、70リットル10枚入りだったものがなくなってしまったので今度は8枚入りのものに切り替えました」「(100円を)維持できるものは維持していきたいですね」
日用品が中心のため、客も困惑しています。
客「まあ仕方がないのかなーと思いつつ、上げられると困るかなーとは思っています」
●豪ドル支える新政権、「反中」姿勢はマイナス要因か 6/19
オーストラリアがインフレ高進を背景に金融引き締めを加速させ、豪ドルは新たな上昇局面に入りました。足元はドルに翻ろうされていますが、目先は底堅い値動きが予想されます。総選挙で発足した新政権の政策運営が、豪ドル高を後押ししそうです。
米連邦準備制度理事会(FRB)による引き締め加速への思惑から、足元のドルはほぼ全面高。しかし、主要通貨が全般的に対ドルで弱含み基調を強めているなか、豪ドルの底堅さが目立ちます。豪ドル・ドルは節目の0.70ドルを割り込んでも、同水準に戻す場面がみられます。ポンドやユーロに対しては数年来の高値圏で推移し、主に欧州通貨に対して買いが入りやすい地合いです。
コロナ禍やウクライナ戦争を背景としたインフレ高進を抑止しようと、豪準備銀行(中銀)が引き締め姿勢を強めているのが豪ドル高の主因です。今年1-3月期の消費者物価指数(CPI)は前年比+5.1%と、伸びは前期を上回り2001年以来の高水準に達しました。これを受け、中銀は5月に11年超ぶりに政策金利を引き上げ、6月には利上げ幅を拡大して引き締めを加速させています。
雇用関連統計では、失業率が3.9%と歴史的な低水準を記録し、労働市場の引き締まりで賃金は今後も上昇が予想されます。インフレ圧力の継続で中銀はさらにタカ派姿勢を強めることが見込まれます。一方、5月21日の総選挙で発足したアルバニージー政権の政策運営も、豪ドル高の支援材料となるでしょう。労働党が公約として掲げてきた最低賃金の引き上げが成立すれば物価を一段押し上げる要因になります。
現時点での市場シナリオは、年末までに政策金利は2.6%付近に達する見通し。中銀がハト派からタカ派に転じたことで一気に豪ドル選好地合いに傾き、それが欧州通貨よりも強い理由になっているのかもしれません。金融引き締めに関してはFRBの後塵を拝していましたが、このペースの回復と引き締めならオーストラリアの政策金利は年末時点でアメリカに追いつく可能性もあります。
一方、豪ドルにとってマイナス要因となるのは、今後の対中関係でしょう。両国関係は2010年代前半には、経済面での戦略的パートナーとして良好でした。その後は中国の太平洋での軍事行動や対豪不動産投資などが問題視されはじめ、コロナ発生源をめぐり決定的に悪化。新政権発足後、2年ぶりに開かれた中国との外相会談では、貿易や外交で安易に妥協しないスタンスを強調しています。
アルバニージー首相が所属する労働党は、選挙戦で従来の親中路線を封印して9年ぶりの政権交代を実現しました。馬脚を表せば国内世論はたちまち政権批判に燃え上がるとみられ、不安定な政治が豪ドルの重石になりかねません。 

 

●ドル円見通し 6月16日深夜から4円近いV字反騰、歴史的な円安相場続く 6/20
概況
ドル円は6月15日午前高値で135.58円を付けて2021年1月底102.57円以降の高値を更新したが、米FOMCでの0.75%の超大幅利上げ決定を通過しつつ目先のドル買い材料一巡として16日夜には131.48円まで急落した。17日の日銀金融政策決定会合で何らかの円安けん制や金融緩和政策の変化もあり得るとしていったん円の買い戻しが優勢となったことで15日午前高値からの下げ幅は4.10円となった。
しかし日銀の緩和姿勢は変わらないだろうとみて再び円売りが強まり、日銀が金融政策の現状維持を決定したことから17日深夜には135.42円へ戻し、16日深夜への下げ幅をほぼ解消した。16日深夜安値からは4円近いV字反騰であり、直前2日間で4円を超えた下落を1日で解消した。
日銀の金融緩和続き、円安けん制も効果なし、米連銀はドル高支持姿勢
日銀は6月17日の金融政策決定会合でマイナス金利と量的金融緩和政策の維持を決定、毎営業日の指値オペによる長期金利抑制方針についても対象を10年債のみならず7年債などへ拡大した。
黒田総裁は会見で、景気認識については「基調としては持ち直しているが回復途上」、「資源価格上昇による下押し圧力を受けている」とし、「賃金の本格的な上昇を実現するには金融緩和を粘り強く続けることで経済をサポートしていくことが必要」とした。為替動向については「最近の急速な円安進行は企業の先行きの不確実性を高め経済にとってマイナスで望ましくない」とけん制したが踏み込んだ発言はなく、「今後も金融為替市場の動向や物価への影響を十分注視する」とした。その上で「賃金の上昇を伴う形で2%の物価目標を安定的・持続的に実現できるよう金融緩和を実施していく」と強調した。
市場が懸念する長短金利操作への限界については「限界は生じていない」とし、「変動幅の引き上げは緩和効果が弱まる」と否定、「国債を無制限に購入する指し値オペなど今後も必要な措置を講じていく」と述べた。インフレの進行による家計圧迫に対する批判が強まりその大きな原因が円安とされていることで、従来までの円安にはメリットがあると円安許容姿勢を変えなかったところからは変化もみられるが、具体的な円安容認限界水準や円安抑制への行動指針を示していないためけん制効果は乏しい。
米連銀の大幅利上げは続く
米連銀は6月16日未明に通常の3倍にあたる0.75%の超大幅利上げを決定した。事前にWSJ紙が0.75%利上げの可能性を報じていたことでサプライズ感はなく、当面の重要イベント通過とし、16日のスイス中銀や英中銀による利上げも踏まえてFOMC後はドル高が一巡してドル安へと流れが変わった。しかし、米連銀は7月にも0.50%か0.75%の大幅利上げを行い、その後もインフレ抑制が実現するまで大幅利上げを継続する可能性が高まっている。6月17日にはパウエル米連銀議長は会合挨拶で「2%の目標へインフレを押し下げることに強く集中している」とし、「米連銀の物価安定への強い取り組みこそ通貨ドルの価値への幅広い信頼を醸成している」と述べ、基軸通貨としてのドルの強さが「さまざまな利益」をもたらしているとドル高歓迎姿勢を強調した。パウエル議長は6月22日に上院、23日に下院で半期毎の議会証言で金融政策報告を行う予定であり、バイデン政権によるインフレ抑制が最重要課題とする中での金融引き締め継続を強く主張するのだろうと思われる。
6月17日にはミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が今回の0.75%利上げを支持、7月も0.75%利上げをしてその後は0.50%利上げを継続してゆくことが望ましいと述べたが、同総裁はFOMC投票権を持っていないもののハト派として知られているために大幅利上げ継続への積極的支持発言として注目された。一方でカンザスシティー連銀のジョージ総裁は今回のFOMCでの0.75%利上げに反対したが、政策の不透明感が増すことが反対理由だったと述べた。株安や長期債利回りの高騰などによる金融市場全般の動揺を配慮したものといえる。
米長期債利回り上昇基調と日米金融政策差による歴史的円安は継続
長期金利の指標である米10年債利回りは6月14日に一時3.50%へ上昇してから3.18%までいったん低下していたが、16日は一時3.50%へと再び上昇、17日も3.31%から3.19%の範囲で高止まりし、前日比0.03%上昇の3.23%で終了した。利上げに敏感な2年債利回りは6月10日の急騰で5月11日の2.86%を突破して3%台に到達、6月14日には3.45%を付けて2007年12月以来の高水準とし、その後は低下したものの17日は前日比0.09%上昇の3.19%として高止まりしている。日本の新発10年債利回りも日銀のYCC上限である0.25%を16日と17日に一時超える等上昇しているとはいえ相対的には相当程度の低水準にあるため、ドル円は米長期債利回りと同調した上昇基調での推移がまだ続くと思われる。
今回のFOMCにおける参加メンバー18人の金利見通しでは2022年末に3.25〜3.50%との予想が8人で最多、2023年末に3.50〜3.75%との予想が7人と最多だったが3.75〜4.00%が4人、4.00〜4.25%も4人であり、今年末にかけて急激な利上げを行った後もまだ暫く利上げが継続してゆく可能性が高い。これに対して日銀は黒田総裁在任中の方針転換はなさそうであり、その後に新総裁が就任したとしても低成長で賃金が伸びない中でインフレによる消費低迷が景気鈍化へと進み、貿易収支・経常収支悪化の埋め合わせによる円売りドル買いも拡大してゆきかねない状況であり、まだ暫くは歴史的な円安相場が続くのだろうと思われる。
●外為:1ドル135円18銭前後と大幅なドル高・円安で推移 6/20
20日の外国為替市場のドル円相場は午前8時時点で1ドル=135円18銭前後と、前週末午後5時時点に比べ86銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=141円77銭前後と56銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●円相場 一時1ドル135円台半ばまで値下がり 6/20
週明けの20日の東京外国為替市場は、日米の金融政策の方向性の違いを手がかりに円を売ってドルを買う動きが続き、円相場は午前中、一時、1ドル=135円台の半ばまで値下がりしました。
週明けの20日の東京外国為替市場は、朝方、円を売ってドルを買う動きが増え、円相場は一時、135円台の半ばまで値下がりしました。
先週はアメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が大幅な利上げを決める一方、日銀は今の大規模な金融緩和策の維持を決定し、外国為替市場では、日米の方向性の違いを手がかりに、円を売って金利が高いドルを買う動きが増えていました。
市場関係者は「円安ドル高が進みやすい状況に変わりはないが、一部の投資家の間では、アメリカの景気は急速な金融引き締めによって悪化してしまうのではないかという懸念も出ていて、ドルを売って円を買う動きも見られる」と話しています。 
●東京円、38銭安の1ドル=134円65〜68銭 6/20
週明け20日の東京外国為替市場で、円相場は午後5時、前週末(午後5時)比38銭円安・ドル高の1ドル=134円65〜68銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、40銭円安・ユーロ高の1ユーロ=141円63〜67銭で大方の取引を終えた。
●東京外国為替市場概況・17時 ドル円、弱含み 6/20
20日午後の東京外国為替市場でドル円は弱含み。17時時点では134.65円と15時時点(135.04円)と比べて39銭程度のドル安水準だった。岸田首相から「(黒田日銀総裁との会談で)急激な円安は憂慮すべきとの話があった」との発言が伝わると売りで反応し、一時134.54円と本日安値を付けた。一方、長期的な円安・ドル高トレンドを期待する声が依然として多い中で押し目買いがみられるなど一巡後は下げ渋っている。
ユーロドルは伸び悩み。17時時点では1.0517ドルと15時時点(1.0528ドル)と比べて0.0011ドル程度のユーロ安水準だった。東京時間からの地合いを引き継いで欧州勢参入後には一時1.0543ドルまで値を上げた。一方、先週末高値の1.0560ドルがレジスタンスとして機能すると、ユーロ豪ドルなど一部ユーロクロスが下げた影響を受けて1.0510ドル台まで上げ幅を縮めた。
ユーロ円は軟調。17時時点では141.62円と15時時点(142.19円)と比べて57銭程度のユーロ安水準だった。岸田首相の発言やその他ユーロクロスの下げを受けて141円台半ばまで失速した。
●ロンドン外為 円、134円台後半 6/20
週明け20日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、ドル買いの動きが一服して円が買い戻され、1ドル=134円台後半に上昇した。正午現在は134円85〜95銭と、前週末午後4時(135円25〜35銭)比40銭の円高・ドル安。
海外市場の流れを引き継ぎ、134円台後半で始まった後はもみ合いが続いた。米国市場が休場となるため、様子見ムードが強い。
対ユーロは1ユーロ=142円00〜10銭(前週末午後4時は141円45〜55銭)と、55銭の円安・ユーロ高。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0530〜0540ドル(1.0455〜0465ドル)。
ポンドは1ポンド=1.2245〜2255ドル(1.2180〜2190ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9625〜9635フラン(0.9720〜9730フラン)。 

 

●外為 1ドル135円03銭前後とドル高・円安で推移 6/21
21日の外国為替市場のドル円相場は午後0時時点で1ドル=135円03銭前後と、前日午後5時時点に比べ38銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円21銭前後と60銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●世界の利上げ連鎖で円安相場が再起動か 次の節目はどこに 6/21
外国為替市場で円安相場が再起動し、1ドル=140円の到達が視野に入ってきた。背景にあるのは世界的な利上げムードのさらなる高まりだ。
6月10日に米国の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で8.6%(5月分)上昇と、3〜4月を超える大幅なプラスとなり(米CPIショック、関連記事:「1ドル140円も? 24年ぶり円安について知っておきたい10のこと」)、15日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では通常の3倍と異例の「0.75%幅」の利上げが決まった。
FRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長は記者会見で、次回7月会合の利上げについても「0.5%か0.75%の判断になる可能性が高い」と語った。米国でのインフレはFRBの従来想定よりも上振れており、利上げペースの加速によって経済活動の過熱を早期に押さえ込みたい狙いがある。
それだけではない。16日にはスイス国立銀行(中銀)も利上げに動いた。およそ15年ぶりの利上げで、市場にとっては想定外のサプライズ。市場関係者に、「そこまで世界的にインフレ懸念は強いのか」と印象づけた。
翻って日銀。17日の金融政策決定会合の結果は「現状維持」で、現行の金融緩和を維持することを決めた。国内でも品目によっては値上げが相次ぐが、「資源価格上昇によるコストプッシュ型のインフレで、我々が目指す物価上昇とは異なっている」(黒田東彦総裁)ため、「金融を引き締めると、さらに景気の下押し圧力になる」というのが緩和維持の理由だ。
5月に始まった「日銀は緩和、円安物価高対策は政府」との役割分担路線を6月の決定会合でも踏襲した形だ。15日の岸田文雄首相の記者会見でも「金融政策については確かに為替にも影響を与えるが、金融政策は一方で金利を通じて中小企業、零細企業の経営上の負担にも大きな影響を与える」との言及があった。17日の黒田会見と表裏一体だ。東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「政権は、円安を止めるために日銀に金利を引き上げてほしいとは思っていない」とみる。
主要な中銀が利上げなど金融政策上の引き締めに動くなか、日銀がいわば孤立的に金融緩和の維持を続けることで、円安ムードが補強されている。20日の東京時間の円相場は1ドル=135円近辺。24年ぶりの円安水準で小動きしている。
米国と日本、それぞれの分岐点
今後のシナリオはどうなるか。分岐点はいくつかあるが、特に米国で言えば、加速する利上げが、実体経済に波及していつごろどこまで経済を冷やすのか、だろう。
利上げの影響は、一部の金融取引を除けば、じわじわと時間差で顕在化する。CPIなど統計上の物価指標だけを見ていても判断しづらい。小売売上高や住宅着工、米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数など景況感指数、個別企業の決算など、様々な指標が発表されるたびに市場で材料視されることになる。
株式市場では利上げが景気を冷やすことへの警戒感が先行しており、ダウ工業株30種平均は節目の3万ドルを割れた。円相場にとっては「インフレが弱まりそうなデータ」=「米利上げの鈍化、打ち止め」=「ドル買いの巻き戻しによる円高」という考え方になる。
国内要因の焦点は主に2つある。インバウンドの復活やエネルギー政策の修正といった、実需の円売りを相殺・縮小する動きがどこまで進むか。もう1つは、世論や政治的な圧力が日銀に政策の修正を迫るかどうか。いずれの分岐点も、今後数カ月内に状況が大きく変わりうる。
実際、スイス中銀の利上げ発表の直後には、日銀も緩和政策の修正に動くのではないかとの思惑が一時的に強まり、17日の日銀の金融政策決定会合前には一時131円台まで円が買い戻される場面もあった。
国内大手FX業者の売買動向データによれば、足元のドルの「売り」「買い」の建玉の合計が16日までは急増したが、17日には解消してしまったという。ポジションはなお「買い」(ドル高・円安で利益を狙うポジション)方向に傾いているものの、様子見の向きも根強い。目先の流れが円安であることは市場のコンセンサスだが、その賞味期限は、意外に短いかもしれない。 
●円相場、135円22〜22銭 6/21
21日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=135円22〜22銭と、前日(134円65〜66銭)に比べ57銭の円安・ドル高となった。 
●円安ドル高進み一時1ドル=136円台 24年ぶりの円安水準を更新 6/21
外国為替市場では円相場が一時1ドル=136円台に値下がりし、約24年ぶりの円安水準を更新しました。外国為替市場では円を売ってドルを買う動きが加速し、一時1ドル=136円台に値下がりしました。1998年10月以来、約24年ぶりの円安水準を更新しました。
日銀は先週に金融緩和策の継続を発表しましたが、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)など、世界の主要な中央銀行はインフレを抑えようと金融引き締めを早めていて、各国との方向性の違いが意識されています。
●24年ぶり円安ドル高水準  一時1ドル=136円台まで下落 ロンドン為替市場  6/21
円安が進行している。21日のロンドン外国為替市場の円相場は円を売ってドルを買う動きが強まり円は対ドルで一時136円台まで下落した。1998年10月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準になる。
●ロンドン外為市場 1ドル=136円台 24年ぶり円安ドル高水準に  6/21
21日のロンドン外国為替市場では円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は一時、1ドル=136円台まで値下がりして、およそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
21日のロンドン外国為替市場では、大幅な利上げを進めるアメリカと、大規模な金融緩和を続ける日本との金融政策の方向性の違いが引き続き意識され、円を売ってドルを買う動きが強まりました。
この結果、円相場は一時、1ドル=136円台まで値下がりし、1998年10月以来、およそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
円は、ユーロに対しても値下がりしています。
市場関係者は「日本の金融政策が転換する兆しが見えないため、日米の金利差の拡大が意識されていて、当面、円が売られやすい状況が続くとみられる」と話しています。 

 

●NY円、一時136円後半 6/22
連休明け21日のニューヨーク外国為替市場の円相場は円がドルに対して大幅下落し、一時1ドル=136円71銭と1998年10月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準を付けた。日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが続いており、日本での輸入品のさらなる値上げにつながる可能性がある。
午後5時現在、前週末比1円76銭円安ドル高の1ドル=136円64〜74銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0530〜40ドル、143円90銭〜144円00銭。
日銀が大規模金融緩和策を維持する一方、米連邦準備制度理事会は金融引き締めを急速に進める方針を示している。
●NY外為市場 1ドル=136円台後半 24年ぶりの円安ドル高水準更新  6/22
21日のニューヨーク外国為替市場では円安が一段と進み、円相場は一時、1ドル=136円台後半まで値下がりしておよそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
21日のニューヨーク外国為替市場ではロンドン市場の流れを引き継いで円を売ってドルを買う動きが強まり、円安がじりじりと進む展開となりました。
このため円相場は一時、1ドル=136円台後半まで値下がりして1998年10月以来、およそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
急速な円安の背景には、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が先週、異例の0.75%の大幅利上げに踏み切り、アメリカの長期金利が上昇傾向にあるのに対して、日銀は大規模な金融緩和を続けて長期金利の上昇を抑え込む姿勢を示していることから日米の金融政策の方向性の違いが意識され、金利差が拡大するとの見方が広がっていることがあります。
また、円相場はユーロに対しても一時、1ユーロ=143円台後半まで値下がりしました。
市場関係者は「円は世界のほかの国の通貨の中でもドルに対する値下がりが際立っていて、値下がりのペースがこのところ速まっていることが日本経済に及ぼす影響を懸念する声も出ている。当面、円安に歯止めがかかる材料は見当たらず、どこまで円安が進むのか、見通せない状況が続いている」と話しています。
NYダウ平均一時700ドル超の大幅値上がり
21日のニューヨーク株式市場は、このところ売られていた銘柄を中心に買い戻しの動きが強まり、ダウ平均株価は一時、先週末に比べて700ドルを超える大幅な値上がりとなりました。
終値は先週末に比べて641ドル47セント高い3万530ドル25セントでした。
ダウ平均株価は先週16日に1年5か月ぶりに3万ドルの大台を割り込み、先週末の終値は前の週に比べて1500ドルを超える大幅な値下がりとなっていましたが、下落にひとまず歯止めがかかりました。
IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数も2.5%の大幅な上昇となりました。 
●NY外為 円、136円近辺 6/22
22日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、午前8時現在1ドル=135円98銭〜136円08銭と、前日午後5時(136円64〜74銭)比66銭の円高・ドル安で推移している。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0508〜0518ドル(前日午後5時は1.0530〜0540ドル)、対円では同142円92銭〜143円02銭(同143円90銭〜144円00銭)。
●NY外為市場 1ドル=136円台後半 24年ぶりの円安ドル高水準更新  6/22
21日のニューヨーク外国為替市場では円安が一段と進み、円相場は一時、1ドル=136円台後半まで値下がりしておよそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
21日のニューヨーク外国為替市場ではロンドン市場の流れを引き継いで円を売ってドルを買う動きが強まり、円安がじりじりと進む展開となりました。
このため円相場は一時、1ドル=136円台後半まで値下がりして1998年10月以来、およそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
急速な円安の背景には、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が先週、異例の0.75%の大幅利上げに踏み切り、アメリカの長期金利が上昇傾向にあるのに対して、日銀は大規模な金融緩和を続けて長期金利の上昇を抑え込む姿勢を示していることから日米の金融政策の方向性の違いが意識され、金利差が拡大するとの見方が広がっていることがあります。
また、円相場はユーロに対しても一時、1ユーロ=143円台後半まで値下がりしました。
市場関係者は「円は世界のほかの国の通貨の中でもドルに対する値下がりが際立っていて、値下がりのペースがこのところ速まっていることが日本経済に及ぼす影響を懸念する声も出ている。当面、円安に歯止めがかかる材料は見当たらず、どこまで円安が進むのか、見通せない状況が続いている」と話しています。
NYダウ平均一時700ドル超の大幅値上がり
21日のニューヨーク株式市場は、このところ売られていた銘柄を中心に買い戻しの動きが強まり、ダウ平均株価は一時、先週末に比べて700ドルを超える大幅な値上がりとなりました。
終値は先週末に比べて641ドル47セント高い3万530ドル25セントでした。
ダウ平均株価は先週16日に1年5か月ぶりに3万ドルの大台を割り込み、先週末の終値は前の週に比べて1500ドルを超える大幅な値下がりとなっていましたが、下落にひとまず歯止めがかかりました。
IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数も2.5%の大幅な上昇となりました。
●ニューヨーク外国為替市場概況・22日 ドル円、4日ぶり反落 6/22
22日のニューヨーク外国為替市場でドル円は4営業日ぶりに反落。終値は136.26円と前営業日NY終値(136.57円)と比べて31銭程度のドル安水準だった。東京市場で一時136.71円と1998年10月以来約24年ぶりの高値を付けたあとだけに海外市場では利食い売りなどが先行。米10年債利回りが3.12%台まで大幅に低下すると、全般ドル売りが活発化し一時135.69円と日通し安値を付けた。ただ、クロス円の上昇につれた買いが入ると136.30円付近まで下げ渋った。360ドル超下落したダウ平均が一時上げに転じるなど、米国株相場が底堅く推移したことも相場を下支えした。
なお、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は米上院銀行委員会で議会証言を行い、「継続的な利上げは適切」「FRBはインフレ率2%への回帰に強くコミット」などと発言。前週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見と同様の姿勢を示した。議会証言後の質疑応答では「米経済のソフトランディング(軟着陸)を目指しているが、達成は非常に困難」「現在、リセッション(景気後退)の可能性は高まっていない」などと語った。市場では「警戒していたほどタカ派的な内容ではなかった」との声が聞かれた。
ユーロドルは3日続伸。終値は1.0566ドルと前営業日NY終値(1.0533ドル)と比べて0.0033ドル程度のユーロ高水準だった。欧州株安や欧州長期金利の低下を受けて、日本時間夕刻に一時1.0469ドルまで売られたものの、NY市場では買い戻しが優勢となった。米長期金利が大幅に低下したことを背景に、対欧州通貨中心にドル安が進むと、24時前に一時1.0606ドルと日通し高値を付けた。
ドルスイスフランは一時0.9581スイスフランと3日以来のドル安・スイスフラン高水準を付けた。ジョーダン・スイス国立銀行(スイス中銀、SNB)総裁が「追加利上げの必要もある」「インフレデータは追加利上げの必要性を示唆」と述べたことで、SNBによる追加利上げ観測が高まった。
ユーロ円は小幅ながら4日続伸。終値は143.99円と前営業日NY終値(143.96円)と比べて3銭程度のユーロ高水準。米国株相場の下げ渋りなどを受けて、投資家のリスク志向が改善すると円売り・ユーロ買いが優勢となった。3時過ぎには一時144.25円と8日に付けた2015年1月以来の高値に面合わせした。

 

●円全面高、ドル円135.18円まで下落 元財務官「介入の可能性排除できず」 6/23
円が主要国通貨に対し全面高に。ドル円は135.80円付近から135.18円まで下落している。元財務官の発言に海外勢が反応しているもよう。元財務官の中尾氏はブルームバーグのインタビューで、円の下落を食い止めるために為替市場への介入の可能性を排除することはできないと述べた。そのほか、協調介入の可能性は難しいと述べたほか、現在の円安は日本経済にとってよくない。現在の円安は明らかに金融政策が一役買っているとも述べた。
●この米ドル高円安の流れはどうなるのでしょうか? 6/23
金融市場の予想については、あくまでも「可能性」の話であることは、最初に申し上げます。前回の記事「最近の米ドル高円安はなぜ発生したのか」の公開日6月7日からおおむね円安米ドル高の方向に推移しています。6月22日現在の円安値・米ドルの最高値は1ドル=136円を超えました。
私は、今後は円安ドル高への動きが収まってくる可能性があると考えています。その理由を解説していきましょう。
為替相場が動く要因は様々ありますが、金利が原因の7割程度であると個人的な研究で分かってきました。特に最近では、日米の金利差が主因になっていると考えるのが自然ではないでしょうか。金融の世界では基本的に、金利が高いところに資金は流れます。この6月の流れを丁寧にお浚いしてみましょう。
米国の中央銀行FRB(Federal Reserve Board)は、その金融政策を決定する会合FOMC(Federal Open Market Committee: 連邦公開市場委員会)を6月14日〜15日の2日間開催しました。FOMCはほぼ90日に1回、年に8回開催されます。結果は、3月から始まった引締め(利上げ政策)を「更に」強化するものでした。政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の現状の誘導目標を、3月に0.25%利上げ、次の5月は0.5%利上げ、 そして6月では0.75%利上げしました。FRBでは0.25%を1ノッチ(Notch:歯車の刻み)といい、1つの単位として使うことがあります。3月は1ノッチ、5月は2ノッチ、6月は3ノッチということになります。
FRBの目標については前回詳しくご説明したのでここでは深くは触れませんが、消費者物価指数(CPI : Consumer Price Index)は2022年5月分のものは8.6%と、目標の2%と比べて高く、利上げも止む無しといった具合で、しかももっと早く利上げに取り掛かれなかったのか、と反省の声まで上がってきています。
現在の市場関係者の焦点は、今年年末の米国の政策金利は「3%近辺」かどうか、という点に移っています。現在、1.5%近辺であり、これ以降、更に1.5%の利上げは織り込まれているということです。今後、利上げの効果が出てくるまでのタイムラグもあり、米国の消費者物価の動きには注目が集まっています。
片や、日本の中央銀行は日本銀行(BOJ : Bank of Japan)です。金融政策決定会合が、FRBから2日遅れ、6月16日〜17日の2日間で開催されました。日本銀行では米国のFRBとは違い、量的金融緩和政策の維持が決定し発表されました。政策金利である無担保コール翌日物金利(短期金利)は、0%からマイナス金利が当面、維持されることとなっています。
消費者物価指数も直近で2.1%の上昇となっており、先進国の共通目標の2%近辺であり、そういう意味では今回の会合での決定内容で良かったともいえます。しかし、経済目標の根本には経済成長があるわけであり、経済成長率(GDP伸び率)が四半期ベースでは低く、株式市場も不安定で、市場に明るさはありません。
日本銀行の金融政策の今後の注目点は、黒田東彦総裁の任期が2023年4月8日で終了するということです。要は後任人事とそれに伴う政策変更の可能性です。今のところ、市場の予想では雨宮正佳副総裁のようです。雨宮氏の発言などから予想をすると、金利の「変動幅を広げる」可能性が高いということは言えます。この変動幅を広げるということは、実はクセモノで「幅」の概念とすると上下に幅があるわけですが、政策で使われるときは上下どちらかに変動させるときに使います。今回は金利、とくに長期金利を「上げる」方向の様です。
日米金利差が為替相場を動かす要因ですので、そういう意味では、日米金利差が狭まっていったら、円安ドル高への動きが収まってくる可能性があります。
●ロンドン外国為替市場で円相場、1ユーロ = 144円を超える 6/23
6月23日0時53分頃、ロンドン外国為替市場で円相場は1ユーロ = 144円を超え、前日3時頃の価格(143.72円)から0.29円(0.20%)上昇となる144.01円となった。 
●円相場、135円32〜32銭 6/23
23日の東京外国為替市場の円相場は、正午現在1ドル=135円32〜32銭と、前日(136円23〜24銭)に比べ91銭の円高・ドル安となった。 
●東京外国為替市場で円相場、1ユーロ = 143円を切る 6/23
6月23日11時58分頃、東京外国為替市場で円相場は1ユーロ = 143円を切り、前日17時頃の価格(142.92円)から0.01円(0.01%)下落となる142.91円となった。
●明日の為替相場見通し=米長期金利動向など注目 6/23
明日の為替相場見通し=米長期金利動向など注目  今晩から明日にかけての外国為替市場のドル円相場は、今晩のNYダウや米長期金利の動向に左右されそうだ。予想レンジは1ドル=134円90〜135円80銭。
この日の東京市場では、135円前半へとドル安・円高方向に振れた。時間外取引の米長期金利が低下基調となったことがドル売り・円買いを誘った。この米長期金利がどう動くかが焦点となる。今晩はパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の下院での議会証言が予定されているが、基本的には昨晩の上院での発言と似た内容となるとみられている。また、米新規失業保険申請件数や明日の日本の5月消費者物価指数(CPI)なども注目されそうだ。
●「リバース通貨戦争」の号砲鳴る−物価抑制へ各国中銀が通貨高目指す 6/23
口火を切ったのは欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル理事だった。同理事は2月、米ドル高・ユーロ安の進行度合いを示すチャートを掲げて見せた。カナダ銀行のマックレム総裁はその2カ月後、カナダ・ドル安に不満を表明。スイス国立銀行のジョルダン総裁はスイス・フラン高を望む考えを示唆した。
米連邦準備制度がインフレ抑制に積極的に取り組む態勢を受けて、米ドルは年初来で7%上昇。各国・地域の中銀当局者は、持続的な物価高騰に歯止めを掛けようと必死なあまり、輸入物価の押し下げにつながる自国・地域の通貨高を現時点では歓迎すると、あからさまとも言えるシグナルを発し始めた。
こうした形の介入はこれまで極めて異例であり、口先だけであっても相場を動かすことになった。今月16日には、スイス中銀が2007年以来の利上げに踏み切ってトレーダーの度肝を抜き、スイス・フランは7年ぶりの高水準を付けた。その数時間後には、イングランド銀行が0.25ポイント利上げを発表し、必要なら一段と大幅な利上げの用意があることを示唆した。
各国・地域のインフレ対策において、為替相場がかつてないほど重要な要素となっている。ゴールドマン・サックス・グループのエコノミスト、マイケル・ケーヒル氏は先進各国・地域の中銀がこれほどまでに積極的に強い通貨を目指した事例は記憶にないと話す。
外国為替市場ではこうした現象を「リバース(逆の)通貨戦争」と呼んでいる。各国・地域は10年余りにわたり、企業の輸出競争力の強化と経済成長促進を狙い、自国・地域の為替相場の下落を望んできたが、現状はその逆になっているためだ。燃料や食料品、電化製品など広範な品目が値上がりする状況では、購買力強化が急激に重要度を増している。
ただ、これは危険なゲームでもある。野放しのままなら、主要通貨の大幅な為替相場変動を引き起こし、輸出に依存する製造業の競争力が低下するほか、多国籍企業の収益に打撃となって、インフレの重荷を世界中で押し付け合う事態になりかねない。
通貨戦争は勝者がいれば敗者もいる悪名高きゼロサムゲームだ。ドイツ銀行のチーフ国際ストラテジストを務めるアラン・ラスキン氏は、どの国も「同じものを得ようとする」ものの、「通貨の世界ではそれは不可能だ」と指摘した。
通貨高がインフレ抑制にどれほど効果があるかは正確には不明なままだ。為替相場が消費者物価指数(CPI)に反映されるパススルー効果について、米連邦準備制度理事会(FRB)や米財務省の元高官で、現在はシティグループ・グローバル・マーケッツのグローバル・チーフエコノミスト、ネイサン・シーツ氏はごくわずかだと語る。
しかし、物価高騰の局面ではこうした効果が高まる可能性もある。シーツ氏は、米ドル相場の10%上昇が以前であればインフレ率を0.5ポイント程度鈍化させるのに過ぎなかったのに対し、現時点ではそれが「1ポイント」になっているかもしれないとの推計を示した。
一方で、当局による介入には失敗の大きなリスクが伴うと複数の専門家は警告する。元米財務省当局者で、公的通貨・金融機関フォーラム(OMFIF)の米国議長を務めるマーク・ソーベル氏は、「為替相場をターゲットとするのは極めて気まぐれで成果に乏しい取り組みとなりかねない」とし、「特定の政策選択に外為市場がどう反応しそうか予測するのはしばしば無駄足となる公算が大きい」とコメントした。

 

●ドル高にインフレ緩和効果 利上げで進行―米FRB議長 6/24
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は23日、下院金融サービス委員会で証言し、FRBの利上げを受けた外国為替市場でのドル高進行には、インフレ緩和を促す効果があるとの見方を示した。米インフレ率が40年ぶりの水準に高止まりする中、輸入物価を安くするドル高を容認した形だ。
FRBは、歴史的な高インフレを抑制するため、積極的な利上げを推進。一方の日銀は大規模な金融緩和を堅持しており、日米の金利差が一段と拡大するとの観測から、円安・ドル高が加速した。
●ドル円、約1週間ぶり安値圏へ下落。米長期金利の急低下が重石に 6/24
23日(木)のドル円相場は大幅下落。アジア時間朝方にかけて、高値136.27まで上値を伸ばすも、一巡後に伸び悩むと、1中尾元財務官による「為替介入の可能性は排除できない」との見解発表や、2米経済指標の冴えない結果(米新規失業保険申請件数や米6月製造業・サービス業PMI速報値が予想比悪化)、3米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回りは6/10以来となる3.01%へ急低下。6/16に記録した3.49%からわずか1週間で48bpの低下幅)が重石となり、米国時間午前にかけて、安値134.27まで急落しました(日通し高値からちょうど2円下落)。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると(一目均衡表転換線をバックに下げ渋ると)、4パウエルFRB議長による「インフレを抑制するFRBのコミットメントは無条件」とのタカ派的な発言(米下院金融サービス委員会での議会証言)や、5ボウマンFRB理事による「7月会合での75bpの利上げ実施とその後数回の会合での少なくとも50bpの利上げ実施が適切となることを想定」とのタカ派的な発言、6米主要株価指数の底堅い動き、7米長期金利の持ち直し(米10年債利回りは3.01%から3.09%へ上昇)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間6/24午前5時30分現在)では、134.99前後で推移しております。
23日(木)のユーロドル相場は上値の重い展開。アジア時間朝方にかけて、高値1.0581まで上値を伸ばすも、一目均衡表雲下限をバックに伸び悩むと、1欧州経済の先行き不透明感(昨日発表されたフランス6月PMI速報値、ドイツ6月PMI速報値、ユーロ圏6月PMI速報値が軒並み市場予想比悪化)や、2ドイツ政府による国内ガス供給リスクレベルの上方修正(上から2番目の「警報」レベルへの引き上げ)、3欧州株の冴えない動き、4欧州債利回りの急低下(特にドイツ債)が重石となり、欧州時間朝方にかけて、安値1.0483まで下落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、5米経済指標の冴えない結果や、6米金利低下に伴うドル売り圧力が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間6/24午前5時30分現在)では、1.0522前後で推移しております。 
●東京市場 6/24
24日の東京市場はドルが小安い。基本は134円台後半を中心とした一進一退をたどるなか、終盤はややドル売りが目に付いた。
ドル/円は134.95円レベルで寄り付いたものの、積極的な動意に欠ける。日米金利や株価の動きをにらみつつ、一時135円台前半へとドル高が進展するも、勢いは続かなかった。再び134円台へと押し戻されると、終盤掛けてはドルの下げが加速。16時現在ではドル安値圏、134.55-60円で推移し欧米市場を迎えている。
一方、材料的に注視されていたものは、「FRB議長の議会証言」と「中国情勢」について。
前者は、22日の半期に一度の米上院議会証言で、パウエルFRB議長は「景気後退の可能性はある」と認めつつも、積極的な利上げを続ける姿勢を示し話題となったことに続き、23日には下院金融サービス委で「利上げを背景とした外国為替市場でのドル高にインフレを緩和する効果がある」と述べ、思惑を呼んでいたようだ。実質的なドル高容認発言であり、今後折に付け市場ではドル買い安心感を醸したものとして話題となる可能性もある。
対して後者は、台湾国防部が「中国軍機22機が今週2度目の防空識別圏に侵入した」と発表。また日本に対しても、防衛省の発表で「中国軍の爆撃機3機が沖縄本島と宮古島のあいだの上空を往復した」ことが明らかになっている。威嚇行為とみられる「力による現状変更」への圧力が強まるなか、日中は海洋会議開催し、領海侵入の「懸念」を伝達するとともに対応を求めたという。
●外為 1ドル134円93銭前後とドル高・円安で推移 6/24
24日の外国為替市場のドル円相場は午後6時時点で1ドル=134円93銭前後と、午後5時時点に比べ43銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円25銭前後と71銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●欧州株が堅調、為替相場は円安・ドル安に=ロンドン為替 6/24
欧州株が堅調に推移していることを受けて、為替相場はロンドン朝方にみられた円高・ドル高の動きを解消している。足元では円安・ドル安の動きを強めてきている。ドル円は135円台を一時回復。ユーロ円は142.40台へ、ユーロドルは1.0550台へと高値を伸ばしている。
●円高に振れたあとは円安方向に転じる、欧州株など堅調で=ロンドン為替 6/24
ロンドン市場は、序盤に円高方向に振れたあとは、円安の動きに転じている。欧州株や米株先物・時間外取引が上げ幅を拡大する動きがドル円やクロス円の下支えとなっている。この日発表された6月のドイツIfo景況感指数は92.3と前回の93.0から悪化したが、特段のユーロ売り反応は見られなかった。むしろ、景気回復の鈍化が中銀の利上げペースを緩和させるとの期待もあるようだ。ビスコ伊中銀総裁は、イタリアの経済状況は悪化している、と述べている。序盤は円高・ドル高の動きで始まった。ドル円は134.35レベル、ユーロ円は141.40レベル、ポンド円は164.81レベルまで下押しされた。ユーロドルは1.0520近辺、ポンドドルは1.2240近辺まで下押しされた。しかし、その後は流れが反転している。ドル円は135円台を回復、ユーロ円は142.60レベル、ポンド円は166.24レベルに高値を更新。ユーロドルは一時1.0550台へと上昇、ポンドドルは1.23台に乗せてきている。ユーロポンドはやや下押しされている。5月の英小売売上高は前月比、前年比ともにマイナスとなったが、ポンド売り反応はほとんど見られなかった。
ドル円は135円近辺での取引。ロンドン朝方には米債利回り低下とともに134.35レベルまで下落した。しかし、欧州株や米株先物が堅調に推移すると、米債利回りも上昇。ドル円は買いに転じて135円台を回復している。東京朝方の高値135.23レベルには届いていない。
ユーロドルは1.05台前半での取引。東京午後には1.0540台まで上昇する場面があったが、ロンドン朝方には売りが優勢となり、1.0520付近まで下押しされた。その後は、欧州株の堅調な動きとともに1.0555レベルまで高値を伸ばした。ただ、足元では米債利回りの上昇で1.05台前半へと押し戻されている。ユーロ円は序盤に141.40近辺まで安値を広げた。前日NY市場での安値水準にほぼ並んだが下抜けには至らず。その後は上昇に転じると、高値を142.60レベルまで伸ばした。対ポンドではやや売りに押されている。この日発表された6月独ZEW景況感指数は92.3と、前回の93.0から低下した。
ポンドドルは1.23近辺での取引。序盤に1.2240台まで下押しされたあとは、上昇に転じている。足元では高値を1.2310レベルまで伸ばした。ポンド円は序盤に164.80付近まで下落したが、その後は買いが強まっている。足元では高値を166.30近辺に伸ばしている。ユーロポンドは0.8590台から0.8560台へと軟化。総じてポンドが堅調に推移している。5月の英小売売上高は前月比、前年比ともにマイナスとなったが、ポンド売り反応はほとんど見られなかった。
●NY円 134円99銭〜135円09銭  6/24
24日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午前8時半現在、前日比07銭円安ドル高の1ドル=134円99銭〜135円09銭を付けた。
●「円安の深淵」に沈み込む日本円 日銀はなぜ動かない? 6/24
6月21日、米ドルに対する円相場が1ドル=136円を突破し、24年ぶりの円安ドル高となった。今年に入ってから、世界のあちこちで金利引き上げの動きが見られるが、日本の中央銀行である日本銀行は金融緩和の強化にこだわり続ける。米日の政策の違いが大きくなる中、ドルに対する円相場の今年の低下幅は累計19%に迫り、円は今やアジアで最も弱い通貨だ。
日本銀行はなぜ動かないのか?
円安はコインの裏表のようなもので、日本で大量買いをしようとする海外の消費者は「買い物のタイミングが来た!」と喜びを隠せない。一方、日本に居住する人が直面するのは、原料コストの上昇による電力価格と天然ガス価格の大幅な値上がりだ。
急激な円安に対し、ある時期から日本は全体として「淡々とした落ち着きある態度」を見せるようになった。しかし企業も消費者も苦しい胸の内を明かす。
一方で、日本のインフレ状況は全体として主要7ヶ国(G7)の他の国よりも深刻とは言えず、物価安定目標を2%と設定した日本銀行にとって、緩和政策の解除を迫る圧力はそれほど強くない。
他方で、日本銀行の白川方明・前総裁が述べたように、「日本がマクロ経済や為替政策を制定する過程では、発言権を持つ重要な経済団体責任者の多くが輸出に関連する製造業に従事しているため、日本国内では往々にして自国通貨の値上がりが激しく批判される。つまり、通貨安はそれほど激しく批判されない」ということがある。
日本銀行はあとどれくらい持ちこたえられるか?
しかし円安を放任することは経済発展に対しては諸刃の剣であり、物価高騰を招くおそれがある。
中銀証券の管濤グローバルチーフエコノミストは、「もしも日本国内のインフレ圧力に迫られて、日銀がイールドカーブ・コントロールをやめれば、日本国債の金利が跳ね上がり、日銀とその他の金融機関に巨額の損失をもたらし、さらには日本政府の償還の負担が増大することになる。それによって引き起こされる打撃は円安の打撃をはるかに上回り、波及する範囲はアジア地域にとどまらない」との見方を示した。
またUBSチーフ・インベストメント・オフィス(CIO)は、「これからいくつかの四半期の間に、日銀は政策の正常化に向けて動き始めるだろう。日銀は先週初めて日本経済の成長と動的インフレ見通しの改善を強調し、年内に超緩和政策を徐々に解消するための地ならしをした」との見方を示した。
●パウエル議長のドル高容認発言は通貨切り上げ競争を招くか 6/24
「近隣窮乏化政策」とは逆の「通貨切り上げ競争」のリスク
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は23日に、米下院の金融サービス委員会で議会証言を行った。前日の証言では、急速な金融引き締めによって米国経済が後退に陥る可能性について、「確かに可能性はある」と景気後退の可能性を認める発言をしていた(コラム「広がり始めたR-Word:米国景気後退(リセッション)観測」、2022年6月24日)。
パウエル議長は23日の証言で、「我々がインフレと戦う姿勢は無条件だ」と述べて、物価の安定確保を最優先する姿勢を改めて強調した。さらに注目されたのが、議員の質問に答える中で、ドル高にはインフレを緩和する効果がある、との見方を示したことだ。これは、単に事実を述べているだけでなく、パウエル議長がドル高を容認していることを示すもの、と広く受け止められた。
景気情勢が厳しい時には、自国通貨の下落を促すことで景気を支える「近隣窮乏化政策」が各国でとられやすい。現状はその逆であり、各国共に通貨高で物価高を抑えたいとの考えを持っている。しかし自国通貨を為替介入、あるいは金融政策を通じて為替を操作・誘導することは、国際協調の綻びにつながるため、主要国は控えている。
しかし、FRBがドル高の意向を明言すれば、他国も自国通貨高の意向を表明することを控えなくなり、最悪の場合には、「近隣窮乏化政策」とは逆に「通貨切り上げ競争」へ発展していくリスクがあるのではないか。
米国が日本の為替介入を認める可能性はさらに後退
パウエル議長がドル高容認の姿勢を明言する中では、日本が円安阻止のための為替介入を実施することを米国が認める可能性は一段と後退した、と言える。しかし、主要各国が自国通貨高の意向を強める中で、日本は米国との関係悪化を覚悟のうえで、米国の支持を得られないままに円買いドル売りの単独介入に踏み切る可能性も、わずかながら出てきたかもしれない。しかし、単独為替介入の効果は限られる。他方、すべての国が物価高に苦しみ、自国通貨高を望むこの時期に、日本のために協調での円買い介入に応じる国はないのである。
アジアを中心に新興国市場に混乱のリスク
パウエル議長のドル高容認の姿勢は、このように為替安定に向けた各国協調に綻びをもたらすものであるが、それに加えて、新興国にとっても大きな懸念である。FRBが急速に金融引き締めを進め、またドル高容認姿勢を強める場合、新興国からは資金が米国に流れ、一段の自国通貨安が物価高に拍車をかける可能性や、金融市場の混乱が誘発されやすいのである。
国内経済に弱さを受けて米国とは逆に金融緩和を進める中国では、そうしたリスクは高いのではないか。また、弱い中国経済の影響を受けて金融引き締めを進めにくいアジア新興国でも、そうしたリスクは今後高まってくる可能性があるだろう。

 

●NY円、反落 1ドル=135円15〜25銭で終了 欧米株高で円売り 6/25
24日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3日ぶりに反落し、前日比25銭円安・ドル高の1ドル=135円15〜25銭で取引を終えた。主要国の株式相場が上昇し、低リスク通貨とされる円が売られた。
米株式市場でダウ工業株30種平均が823ドル上昇した。投資家が運用リスクを取る動きが広がり、ドルやユーロに対して円が売られた。米長期金利が上昇して終え、日米金利差の縮小に歯止めがかかったのも円の重荷だった。
円の下値は堅く、上げに転じる場面もあった。ミシガン大学が24日発表した6月の米消費者態度指数(確報値)が50.0と過去最低となった。一方、消費者が予想するインフレ率は1年先と5年先がともに速報値から小幅に低下した。指標発表後に米長期金利が低下する場面があり、円にも買いが入った。
円の安値は135円40銭、高値は134円72銭だった。
円は対ユーロで3日ぶりに反落し、前日比65銭円安・ユーロ高の1ユーロ=142円60〜70銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで反発し、前日比0.0035ドル高い1ユーロ=1.0550〜60ドルで終えた。米欧の株高を受け、円と同様に低リスク通貨とされるドルがユーロに対して売られた。24日に独Ifo経済研究所が発表した6月の企業景況感指数が市場予想以上に低下したため、ユーロの上値は重かった。
ユーロの高値は1.0571ドル、安値は1.0517ドルだった。 
●今週のレビュー 6/20−6/24 6/25
ドル円相場
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初134.90で寄り付いた後、1-株式市場の堅調推移(アジア株や欧米株が軒並み上昇)や、2-上記1を背景としたリスク選好の円売り圧力(クロス円上昇→ドル円連れ高)、3-米金利上昇に伴うドル買い圧力(米10年債利回りが一時3.31%まで上昇)、4-直近高値(6/15高値135.60)突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売りが支援材料となり、週央にかけて、週間高値136.72(約23年8ヵ月ぶり高値圏)まで急伸しました。しかし、心理的節目137.00をバックに伸び悩むと、5-急ピッチな上昇に対する反動売り(利食い売りや新規の逆張り)や、6-パウエルFRB議長の半期に一度の議会証言を通過したことに伴う材料出尽くし感(パウエルFRB議長は100bpの利上げの可能性に関する質問に対し、「いかなる利上げ幅も排除しない」と回答するなど、インフレ押し下げへの強いコミットを改めて強調するも、真新しさに欠けたことから材料視されず)、7-中尾元財務官による「為替介入の可能性は排除できない」との見解発表、8-米経済指標の冴えない結果(米新規失業保険申請件数や米6月製造業・サービス業PMI速報値が軒並み予想比悪化)、8米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回りは6/16に記録した3.49%からわずか1週間で3.00%まで急低下)が重石となり、週後半にかけて、週間安値134.26まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、9-パウエルFRB議長による「インフレ抑制に対してFRBは無条件にコミット」とのタカ派的な発言や、10-ボウマンFRB理事による「7月会合での75bpの利上げ実施とその後数回の会合での少なくとも50bpの利上げ実施が適切となることを想定」とのタカ派的な発言、11-米主要株価指数の大幅上昇(米ダウ平均株価は2週間ぶり高値圏へ急騰→市場心理改善→リスク選好の円売り圧力)、12-米長期金利の持ち直し(米10年債利回りは3.00%から3.13%へ急上昇)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間6/25午前6時00分現在)では、135.20前後まで持ち直す動きとなっております。
ユーロドル相場
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0472で寄り付いた後、1週末に実施されたフランス下院選挙の決選投票でマクロン大統領率いる与党連合が過半数を大きく割り込んだこと(前回の350議席に対して今回は過半数の289議席を大幅に割り込む245議席まで大幅減少)や、2ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの悪化懸念(ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアによる攻撃が激化する可能性がある」との見解を発表)、3欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中での金融引き締め転換は景気への逆風)、4欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力が重石となり、週央にかけて、週間安値1.0468まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、5米金利低下に伴うドル売り圧力(米長期金利が急低下→世界的なドル安に波及)や、5株式市場の持ち直し(市場心理改善→リスク選好のドル売り圧力)、6短期筋のショートカバーが支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0606まで反発しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、7米当局者による相次ぐタカ派発言(パウエルFRB議長やシカゴ連銀エバンズ総裁など)や、8ユーロ圏6月消費者信頼感指数(結果▲23.6、予想▲20.5)の冴えない結果、9ユーロ圏PMI速報値(フランス6月PMI速報値、ドイツ6月PMI速報値、ユーロ圏6月PMI速報値)の冴えない結果、Iドイツ政府による国内ガス供給リスクレベルの上方修正(上から2番目の「警報」レベルへの引き上げ)、Jドイツ6月IFO企業景況感指数(結果92.3、予想92.9)の不冴な結果が重石となり、本稿執筆時点(日本時間6/25午前6時00分現在)では、1.0555前後で推移しております。
●やっぱり「円安ではなく、円高こそが今の日本を救う」と断言できる理由 6/25
円安は今の日本経済に悪い。これは、一般の人から見れば、議論の余地のない現実であり、どう考えても常識である。
「円高は悪だ」と言うときの「2つの間違い」とは? 
そして、それはやはり経済学から言っても正しい。問題は、これまで日本ではなぜ「円高は悪いこと」という議論が広まっていたのか、そして多くのエコノミストがなぜそれを支持していたのか、ということである。
第1に、為替は妥当な水準にあるべきである。世界全体の経済にとって妥当な水準(理論的には均衡レート)が存在し、そこからずれるのは円高にせよ円安にせよ、よくない。したがって、円安が望ましいということは、極端な円高が望ましいというのと同じく間違っている。
第2に、妥当な水準が円高に動くということは、日本経済にとってつねに望ましい。経済学の教科書には、自国通貨が強くなり交易条件が改善すれば自国の経済厚生が高まる、と書いてある。つまり、円高になると日本は豊かになる、ということである。
これは単純だ。今までよりも輸入品が安く手に入る。国内製品は同じ価格である。だから、前よりも必ず消費者はハッピーになる。
ここで「輸出が不利になるではないか」という疑問があるかもしれないが、経済全体で考えればそんなことはないことがわかる。自動車が1万ドルでしか売れないとすると、1ドル=100円と50円だと売り上げは、それぞれ100万円と50万円だ。だが、例えば原油の価格が円換算だと半分になっているので、50万円で今までの100万円分の原油が買える。だから、国全体で見れば困ることは決してない。
「貿易黒字があった場合はどうなんだ?」という疑問はどうか。その黒字で何かを買うことになるわけだから、例えば1株100ドルのアメリカ企業Xの株は、1ドル=100円なら貿易黒字1万円で100株しか買えなかったが、50円になれば貿易黒字が5000円に減っても100株買える。
あるいは、ハワイのコンドミニアムが2億円だったのが、半額の1億円で買えるようになるから問題ない。これらの投資支出も考えれば、貿易収支が黒字でも、トータルでは円高により損することはない。すなわち、経済全体で見れば、損することはありえない。
さらに「妥当な水準が円高に動く」ということは、理論的にいえば、実質で円が強くなっているということであり、輸出品の価格は実質で見て上昇した状態で売れていることになり、輸入品の価格は実質で見て安くなっているので、大幅に日本経済の厚生が高まる。つまり、日本は確実に豊かになっている。
しかし、日本経済に何か特殊なひずみがある場合には、損をすることもありうる。
例えば、ある分野の輸出品の競争力がないにもかかわらず、同じ輸出品を同じ価格で売り続けようとする場合。つまり、1ドルでも値上げすれば、まったく売れなくなってしまうような製品を輸出し続けようとする場合だ。
この場合に、原材料コストが上昇して、経済全体の価格体系が変化しても、従来の生産構造に固執し、生産に関する行動を変えなければ、新しい経済構造に対応していない生産を続けることにより、経済全体で大きな損失が出る。
お気づきのとおり、これは日本の産業のデフォルメした姿である。円高になった場合に、実質的な均衡レートが円高になったのか、金融市場のひずみで実体経済に合わない円高になったのか議論もせずに、現状維持のために、為替介入したり、過度の金融緩和を行ったりして、経済構造の変化を阻害し、不動産・株式バブルを生み出したのが1980年代末である。
この結果、バブル崩壊後、日本はずっと古い経済社会構造と間違った現実認識の下で「景気が悪い」と騒ぎ続け、財政赤字を拡大し、非効率な分野を温存した。そして、やっと、あまりに異常な円安によって、消費者だけでなく生産者である企業も円安によるコスト高で苦しくなって、初めて「円安は悪い」ということに気づいたのである。
なぜ今は「異常な円安」になっているのか
では、現在、なぜ異常な円安になってしまっているのだろうか。これは単純な話で、実体経済、つまり、貿易や海外への直接(実物)投資などの経済の実体的構造により為替レートが決まらずに、金融市場の都合だけで為替レートが動いているからだ。
理論的には、世界的にモノの値段がどこでも同一になる「一物一価の法則」が成り立つはずである。また、経済全体で見ても、それぞれの経済の購買力が均衡状態となる「購買力平価(PPP)の為替水準」と、金融投資をする場合にどこの国の金融資産(例えば国債)に投資しても実質的に同じリターンが得られるような「金利平価の水準の為替レート」がある。しかし、この2つの均衡が両立することは現実的にはない。
そして、現実を見ると、近年では金融市場の影響力があまりに強くなり、金融市場の都合だけで為替レートが決まってしまう。さらに、それが金利平価という理論的な均衡水準ですらなく、トレーダーたちの思惑で、この金融市場の均衡レートからも大きく逸脱してしまい、乱高下するようになってしまっている。
これが日本円の現在の状態だ。この20年は明らかに日本市場の金利が低かったので、円安方向に大きく歪んでしまった。
その結果、輸入品が割高になったが、日本の輸入は資源や食料品などの必需品が中心で、減らすことはできず、輸入品への支払いが激増し、日本経済全体の購買力が低下した。さらに、これらの必需品は世界的にも高騰、さらに原油などは金融市場の思惑で実物取引とは離れて先物価格が急騰し、それが標準的な状態となり、過度に割高な水準が続いた。資源高、円安のダブルパンチで日本は貧しくなっていった。
これは、2002年から2007年までの「実感なき景気回復」といわれたときの状態でもある。生産も輸出も増えて景気がよいと言われたにもかかわらず、国民は貧しくなったと感じた。円安と資源、原材料、食品高で、輸出を増やして稼いだのをはるかに上回る輸入品への支出増加となってしまい、自由に使える所得が減ってしまったからである。
日本経済がさらに弱くなった「3つの理由」
現在もまったく同じ状況だが、さらに悪い。現在、日本経済が過去に比べてさらに弱くなってしまった理由は3つある。
1つ目は、実質的な経済が弱くなってしまったことだ。過度の円安によって生き残ることができる企業とは、「本来は価格勝負しかできないのに、その価格も円安でハンディキャップをもらっている状態で、ぎりぎり赤字にならないで生産を続けてきた生産者」だ。
中小企業だけでなく、大企業も本質的には同じで、過度の円安に頼って甘えているうちに「割安ということしか売りがない生産者」になってしまい、しかも、それが円安というおまけをもらってぎりぎり生き残っているから、付加価値も生み出さない。過度の円安で損をしているすべての消費者の損だけが残ってしまう。
そして、為替が正常な方向に戻ろうとすれば、これらの生産者はつぶれてしまうから、大騒ぎをして政府に働きかける。この循環で、弱い生産者ばかりになってしまい、交易条件が、名目の為替レートの影響ではなく、実質的な為替レートでも弱い国になってしまった。
この結果、もちろん賃金も安いままになった。過度の円安で割安に換算されているという面もあるが、同時に、上述の弱い生産者の下で働くことにより、企業の生産性が低いということは労働者の生産性も低くなるから、実質でも安くなってしまった。
名目的にも、実質的にも、円安により日本の賃金は低くなってしまい、日本の国民は消費者として購買力を失い、労働者として生産性を失ってしまったのである。
2つ目は、金融市場のひずみで過度の円安になり被害をこうむっているわけだが、その被害をあえて拡大するように、日本銀行が過度の金融緩和を行い、継続したことである。円安の被害を自ら最大限に拡大してきたのである。
3つ目は、政策論争が「円安、インフレを望む」というまったく180度間違った方向に進んでしまい、間違ったエコノミスト、えせ経済学者の影響がメディアや人々の間に残ってしまったことである。今後、彼らが退場していったとしても、人々の「印象の混乱」は残るから、妥当な為替政策、円安を止める政策が行われなくなり、金融政策の修正もできなくなってしまう。
このような状況がこの10年続いてしまい、日本経済は現在のような悲惨な状況に陥ってしまったのである。
過度の円安を修正するのは難しくない
では、どうするか。ここからは、政策提言である。
答えは簡単だ。過度の円安を修正すればよい。かつ、それは簡単に実行できる。日本銀行の金融政策は異常な異次元緩和なのであるから、ごく普通の金融緩和に戻せばよい。引き締めではないから、景気を悪くすることはない。
イールドカーブコントロールを修正すればいちばんいいし、連続指し値オペを止めるだけでも効果はある。投機的トレーダーとの戦いになるが、テクニカルではあるが、勝つ気でやれば必ず勝てる。問題は、それをやる気があるかどうかである。
6月17日の日銀政策決定会合後の黒田東彦総裁の記者会見で、黒田氏は久しぶりに気合いを表に出したので、あとはメディアと世間の円安とインフレに対する認識を正しいものにすれば、黒田日銀も動けるようになるはずだが、会見では日銀の「4つの誤った認識」が再度繰り返された。
第1の誤りは「為替に働きかけることを金融政策の目的とはしないから、円安により金融政策を変えることはない」という説明だ。
日銀が普通の金融緩和策を行っているのであれば、それは正しい。しかし、今行われているのは「異次元緩和という緊急避難的な政策」であり、これを長期に継続すること自体が間違っている。そのひずみが極端な円安になっているのだ。
だから、その誤りを修正する義務がある。為替に影響を与えようとするのではなく、現在の金融政策が為替に悪影響を与えてしまっているから、金融政策を正しい方向に修正するのである。為替を目的としないからこそ、異次元緩和、イールドカーブコントロールを止める必要がある。
第2の誤りは「現時点で円安を修正するように金融引き締めを行えば、輸入コスト高で悪化しかかっている景気をさらに悪化させることになる。だから金融引き締めはできない」という主張だ。これも180度間違っている。
円安修正のための金融調整は景気にプラス
確かに輸入コスト高で景気は悪くなっている。だから、コスト高を和らげればよい。
日本の物価上昇・コスト高は、ほとんどすべて海外要因である。だから、引き締めしないというが、逆である。海外要因だから、円安が修正されれば、コスト高の影響はすぐに緩和される。原油価格の上昇でガソリン、電気代が2倍になったが、円安でそれは3倍に拡大した。
もし円安を修正すれば、原油は3分の1安くなる。景気悪化の原因が輸入財価格の高騰なのだから、為替がいちばん効果があるに決まっている。円安修正のための金融政策調整は、景気にプラスだ。
第3の誤りは、日本経済へのインフレ圧力はアメリカのような労働市場の逼迫からの賃金上昇ではなく、輸入コストの上昇という対外的要因だから、国内の金融政策は変えない、という点だ。
違う。対外要因だからこそ、為替水準に大きな歪みを与えている金融政策を変更する必要があるのだ。
第4の誤りは「金融緩和は絶対に継続する。だから変更はできない」という主張だ。まったく正反対だ。このままでは、金融緩和の継続はできなくなる。緩和の持続性が危うくなっているからこそ、トリッキーな連日指し値オペを止めて、普通の国債買い入れを行い、投機的トレーダーを追い払う必要があるのだ。
金融緩和継続のためにこそ政策変更が必要
たとえ一時的には長期金利が上昇することになっても、中長期的な長期金利水準を安定的に低い水準に維持するために、現在の政策の調整・変更が必要なのだ。緩和継続のためにこそ、今、政策の調整が必要なのだ。したがって、異次元緩和の正常化とは金融緩和に資するのであり、決して引き締めではないのである。
しかし、最大の責任は有力な経済メディアやエコノミストたちにある。彼らが依然として「為替変動には金融政策ではなく、財政と為替介入で対応しろ」などと間違ったことを言っている。
また、日銀の政策変更について「日銀が誤りを認めること」「日銀の負け」という位置づけで報道・批判を行う。違う。調整は、日銀が自ら正しい金融政策を持続するために行うものであり、まさに正常化なのである。
国内の議論が正常化すれば、日銀も正しい妥当な金融緩和政策へと舵を切ることができ、投機的トレーダーも消え、為替市場も正常化されるだろう。
(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレース予想や競馬論を語るコーナーです。あらかじめご了承ください)
1980年代後半から拍車がかかったバブル、円高で最も得をしたのは誰か。それは、日本競馬界と社台グループである。
アメリカの不況と円高があいまって、あのサンデーサイレンスをわずか16億円で購入できたのである。サンデーサイレンスがいなかったら、日本の今の競馬は存在していなかっただろう。海外に遠征することなど、まったくなかったかもしれない。競馬界全体への効果は1兆円を超えるのではないかと思っている。
超円安時代は「超円高時代の逆」をやれ
質的にも量的にも世界一のサラブレッド生産国となった日本。超円安の今、何をすべきか。バブル期・超円高のときの逆、つまり「サンデーサイレンスを輸出すること」である。
もちろん、サンデーサイレンスはこの世にいないが、日本のすばらしい馬たちを種馬として、繁殖牝馬として超高値で売ることである。サラブレッドの生産ほど、資本の論理に忠実な世界もない。交配のときには、超一流と期待された馬だけが、超一流の繁殖牝馬と交配できる。そして、超一流の調教師に預けられ、最も丁寧に育てられ、種馬になるためにローテーションを組まれる。すばらしい戦績を残した馬は種牡馬になり、また超一流の牝馬と交配される。
つまり、勝ち残りシステムなのである。そして、実際の子供たちのレースでも、パフォーマンスは父親よりも母親による影響のほうが圧倒的に大きいから、優秀な牝馬と交配されない時点で負けなのである。
また、近年は技術の発達により(それと資本の原理の貫徹により)、昔では考えられないぐらい、1頭の種牡馬が200頭を超える牝馬と年間に交配するようになった。質でも量でも、優秀な子供が出てくる可能性が高まるのである。
日本がサラブレッドの生産で世界一になったのだから、世界に血を輸出する必要がある。それは、世界のためではなく、日本の馬たちのためである。
なぜなら、日本で活躍した馬の血が欧州やアメリカで広まると、彼らの活躍により、それと類似の血脈をもった馬を世界中で求めるようになる。類似のものが多く存在するのは、日本である。さらに、日本の馬が世界に広まる。
多数派は勝つのであり、株式市場も民主主義も資本主義もサラブレッドの生産も、力が歴史を変えてしまうのである。高い馬と認識されないと、いい馬でも安い牝馬と交配されてしまう。確率的にいい牝馬でない可能性が高い。そうすると子供を残せなくなる。
したがって、実力だけでなく、世界の人々の認識も(実は実力以上に)重要なのである。だから、短期的には合理性のないフランスの凱旋門賞へ挑戦も、一度勝つまでは「やっぱり日本の馬は世界一だ」と名実ともに彼らに思い知らせるためにも必要なのである。
さて、26日は宝塚記念(阪神競馬場第11レース、距離2200メートル、G1)。そのような馬になることを願って、エフフォーリア(2枠4番)の復活に賭ける。馬券的にはアリーヴォ(7枠13番)やオーソリティ(1枠1番)が狙い目に見えるが、そんなことは忘れて、エフフォーリアが凱旋門賞を勝つことを期待して、ここも圧勝してもらいたい。 

 

●円安歯止めかからず――金融緩和見直しの必要性明白 日銀は動けない? 6/26
日本銀行が政策変更しないかぎり、円安はとめどもなく続く。日銀が金融緩和から脱却できないのは、金利上昇によって経済に悪影響が及ぶからというより、日銀が債務超過に陥るからだ。
日銀だけが金融緩和を拡大
世界の中央銀行が一斉に利上げに動いている。アメリカ連邦公開市場委員会は、6月15日の会合で、政策金利の0.75%引上げを決めた。イングランド銀行は、5回連続の利上げを決めた。スイス中央銀行も、約15年ぶりの利上げに踏み切った。さらに7月には、ヨーロッパ中央銀行が利上げを行う。こうした中で、日本だけが金融緩和を継続している。日本銀行は6月16日の政策決定会合で大規模緩和を続けるとし、長期金利のコントロールを強めるとした。
円キャリー取引で円安が進む
こうした状況では、円安が加速する。日米間の金利差が拡大しているので、「円を売ってドルを買う」取引が利益をもたらすからだ。これは、「キャリー取引」と呼ばれるものだ。将来、何らかの理由で円高になれば、損失が生じるので、これは投機的な取引だ。ところが、現在は日銀が金利を必死に抑えているので、この取引が確実に利益を生む。つまり、日銀が投機を煽っていることになる。スイスフランはこれまではキャリー取引の対象だったが、金利を引き上げたとたんにフラン高に転じた。円の場合も、金融緩和修正の観測があったので、政策決定会合前は一時的に円高にふれた。しかし、金融緩和継続の発表で、再び円安になった。スイス利上げなどの影響があるので、円安圧力は今後さらに強まるだろう。では「どこまで円安が続くのか?」。現在の状況では、どこまで円安になっても、不思議はない。なぜなら、「円を売ってドルを買う」取引が利益をもたらすからだ。そして、円キャリー取引では円を売ってドルを買うので、さらに円安が進むからだ。
円安は国民生活を圧迫する
円安によって輸入価格の高騰に拍車が掛かり、国内物価を引き上げる。もちろん、輸入価格高騰は円安だけで生じているのではない。いまの物価高の基本は、アメリカのインフレと、ウクライナ危機によって原油などの原材料価格が高騰しているという海外要因による。しかし、円安がそれに拍車をかけていることは間違いない。5月の輸入物価指数の対前年同月比は、契約通貨ベースでは26.3%だったが、円ベースでは43.4%だった(対前月比では、それぞれ1.3%と3.0%)。このように、円安の影響がきわめて大きいことがわかる。円安は輸出企業の利益を増やすから望ましいと言われる。確かに、輸出企業の立場から言えば、そのとおりだ。円安になると、ドル建ての輸出が増えなくても、円建ての輸出額が自動的に増える。だから利益が増える。ただしその裏にはトリックがある。円安になると、円建ての輸出額が増えるだけでなく、円建ての輸入額も増える。これは企業の原価を増加させるから、そのままでは、企業の利益を圧迫する。ところが、これまで企業は、原価上昇を売上に転嫁して、最終的には消費者に転嫁してきた。だから、売り上げの増加効果だけが残って、利益が増えるのだ。しかし今回は、企業も厳しい状況に直面している。原材料価格が上昇する反面で、販売価格を十分に引き上げられないため、粗利益(付加価値)が減少するからだ。粗利益は賃金や利益の原資になるので、企業は賃金を上げたくとも上げられない。消費者や労働者の立場からすると、物価は上るが賃金は上がらないので、生活が苦しくなる。
事後的な物価対策でなく、原因の円安への対策が必要
この事態に対して、いかなる対策が取られているか? 政府が行っているのは、物価対策だ。補助金を出して、ガソリン価格を抑えている。しかし、原因に対処せずに結果に対処しても、物価高騰は収まらない。それだけではない。対策の対象になるものとならないものとの間で、著しい不公平が発生する。物価高騰を抑えるには、その原因に対処する必要がある。原油などの原材料価格高騰について、日本ができることは、残念ならながらほとんどない。しかし、円安に対処することはできる。一刻も早く、それを実行することが求められる。
金利の上昇を認めるべきだ
円安を抑えるために、為替市場への介入が必要との意見がある。しかし、円安のための介入は簡単だが、円高のための介入は難しい。円安介入では、国債を発行して資金を調達し、ドルを買えばよい。これは原理的にはいくらでも行なえる。2001年から03年にかけては、総額約39兆円もの介入を行なった。それに対して、円高のための介入では、ドルを売る必要がある。これは外貨準備を使ってなされる。したがって外貨準備の範囲でしかできない。外貨準備高は、現在約1.3兆ドルと巨額だが、無限ではない。だから、円キャリーを行なう投機筋に足元を見られる。このような問題があるが、より基本的な問題は、 円高への介入と金融緩和は逆方向の政策ということだ。この両方を行えば、アクセスとブレーキを同時に踏むことになる。だから、介入を考える前に、金融政策の転換を考えるべきだ。いまの状態を変えるには、日銀が金融緩和から脱却するしかない。具体的には、金利の上昇を認めることだ。まず、現在0.25%を上限に抑え込んでいる長期金利を、市場の実勢に任せる。そしてさらに、政策金利(当座預金のうち政策金利残高への付利。 現在、マイナス0.1%)を引き上げる。
日銀が方向転換できないのは、債務超過に陥るから
金利を引き上げると、様々な問題が起こるので、できないと言われる。特に財政に対する影響が問題だとされる。しかし、財政収支試算(「中長期の経済財政に関する試算」2022年1月)では、長期金利が2027年度に1%となり、29年度には2.2%になる。それでも、国の一般会計の税収と歳出の差額は、2022年度に比べて改善することになっている。金融政策の転換ができないのは、日銀自身の事情によると考えられる。なぜなら、金利上昇を認めると当座預金への付利が増大するからだ。その規模は、仮に金利を1%引き上げれば、年間でおよそ5.6兆円、保有国債が全額償還されるまでの期間で、およそ34兆円という巨額のものになると推計される。そして、日銀は債務超過に陥る。日銀が動けないのは、このためだ。大規模な金融緩和で巨額の国債を買い続けたために、このようなことになった。
異次元緩和の総括が必要
しかし、これは、遅かれ早かれ、いずれは問題になることだ。金融政策を正常化していくためには、どこかの時点で、必ずこの問題が発生する。いま、急激な円安対処のために、それが緊急に必要になっているだけのことだ。債務超過に陥っても、民間企業とは違って日銀の場合には、日常の業務に支障が出るわけではない。政府に対する日銀納付金が減少することは大きな問題だが、やむをえないだろう。そして、対処も型式的には簡単だ。政府が交付公債を日銀に渡すことによって出資し、日銀が増資すれば良い。問題の本質は、こうした形式上の処理ではない。国民の理解を得られるかどうかだ。そのためには、異次元金融緩和の詳細な総括が是非とも必要だ。とりわけ、これによって利益を得た階層と損失を被った階層が何であったのかを、客観的に示す必要がある。
●24年ぶり円安ドル高に「アベノミクスの限界を見ているんですが日銀が・・・」 6/26
評論家の寺島実郎氏が26日、TBS系「サンデーモーニング」に出演。21日のニューヨーク外国為替市場の円相場で円がドルに対して大幅下落し、一時1ドル=136円71銭と1998年10月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準を付けたことに言及した。
日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが続いており、日本での輸入品のさらなる値上げにつながる可能性がある。日銀が大規模な金融緩和策を維持する一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は金融引き締めを急速に進める方針を示しており、金融政策の方向性の違いが鮮明になっている。日銀が大規模な金融緩和の維持を決めたことが改めて意識され、円売りドル買いが広がった。21日の米株式相場が上昇し、投資家のリスクを避ける姿勢が和らいだことも、相対的に安全な通貨とされる円を売る動きにつながった。
寺島氏は「日本売りっていうのが本当に大きな流れになってきちゃっている。日本の政治、経済に対する不信って言ってもいいと思いますけど、日本の国際社会での評価は今24位なんですけれども中国や韓国よりも下。円売りがここに来てまた加速していて、要するにアベノミクスの限界を見ているんですが、日銀が頑としてね、世界がみんな金利を引き上げている中で動けない金縛り状態にあるわけですね。この半月くらい日銀とヘッジファンドの戦いっていう綱引きが進んでまして、間もなく日本は世界の金利引き上げに耐え切れなくなって、日本も動き出すだろうという思惑のもとに売りを見せられているんですよ」とし、「意地になって日銀は守っている形なんだけれども遅かれ早かれ世界の正常化という流れの中で、分かりやすく言うと、日本も金融をじゃぶじゃぶにして景気を浮揚させようというアプローチから脱却しなきゃいけないところに近づいているんだと。マジックマネー、マネーゲームの時代が終わりつつあるということをしっかり見つめきゃいけないだろうと僕は思います」と自身の考えを述べた。 

 

●外為 1ドル134円63銭前後とドル高・円安で推移 6/27
27日の外国為替市場のドル円相場は午前10時時点で1ドル=134円63銭前後と、前週末午後5時時点に比べ13銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円07銭前後と53銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。 
●外為 1ドル135円17銭前後とドル高・円安で推移 6/27
27日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=135円17銭前後と、午後5時時点に比べ11銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円85銭前後と11銭のユーロ安・円高で推移している。
●NY円 135円34〜44銭 6/27
週明け27日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午前8時半現在、前週末比18銭円安ドル高の1ドル=135円34〜44銭を付けた。
●明日の為替相場見通し=引き続き長期債動向など注視 6/27
今晩から明日にかけての外国為替市場のドル円相場は、引き続き米長期債利回りなどが注目されそうだ。予想レンジは1ドル=134円60〜135円50銭。
ドルは135円前後で高止まりしている。今晩は米5月耐久財受注や同住宅販売保留指数の発表があるが、相場に与えるインパクトは限定的とみられている。米長期債利回りの動向にもよるが、ドルは戻り売りをこなしながら135円から一段の上昇を狙えるかが注目されている。

 

●一時1ドル135円58銭まで上昇、時間外のNYダウ先物高が支援材料 6/28
28日の東京外国為替市場のドル円相場は、午前10時時点で1ドル=135円45銭前後と前日の午後5時時点に比べて40銭弱のドル高・円安となっている。
27日のニューヨーク外国為替市場のドル円相場は、1ドル=135円46銭前後と前週末に比べて20銭強のドル高・円安で取引を終えた。この日に発表された米5月耐久財受注や米5月住宅販売保留指数が市場予想を上回ったことを受け、一時135円55銭まで上伸した。
この流れを引き継いだ東京市場はドル買い・円売りが優勢。時間外取引でNYダウ先物が堅調な動きとなっていることや、日経平均株価が朝安後に切り返していることが支援材料となり、午前9時40分過ぎには135円58銭をつける場面があった。ただ、四半期末にあたる30日を前に国内輸出企業のドル売り・円買いが意識されやすく、一段と上値を追う勢いには乏しい。
ユーロは対ドルで1ユーロ=1.0576ドル前後と前日の午後5時時点に比べて0.0010ドル程度のユーロ安・ドル高。対円では1ユーロ=143円24銭前後と同20銭強のユーロ高・円安で推移している。
●円相場、135円25〜26銭 6/28
28日の東京外国為替市場の円相場は、正午現在1ドル=135円25〜26銭と、前日(135円07〜07銭)に比べ18銭の円安・ドル高となった。
●円相場、135円73〜77銭 28日午後5時現在 6/28
28日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=135円73〜77銭と、前日(135円07〜07銭)に比べ66銭の円安・ドル高となった。 
●外為 1ドル135円25銭前後とドル高・円安で推移 6/28
28日の外国為替市場のドル円相場は午後0時時点で1ドル=135円25銭前後と、前日午後5時時点に比べ19銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=143円05銭前後と9銭の小幅なユーロ高・円安で推移している。
●外為 1ドル135円97銭前後とドル高・円安で推移 6/28
28日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=135円97銭前後と、午後5時時点に比べ26銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=143円93銭前後と26銭のユーロ高・円安で推移している。
●早朝のロンドン外国為替市場で円相場、1ユーロ = 143円を超える
6月28日17時51分頃、早朝のロンドン外国為替市場で円相場は1ユーロ = 143円を超え、前日2時頃の価格(143.42円)から0.28円(0.20%)上昇となる143.70円となった。
●NY円、136円前半 6/28
28日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午前8時半現在、前日比63銭円安ドル高の1ドル=136円06〜16銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0551〜61ドル、143円65〜75銭。
米株式先物や欧州株の上昇を背景に、投資家のリスク志向が高まり、相対的に安全な通貨とされる円を売ってドルを買う動きが先行した。
●ドル円が再び136円台に、株高と日米金利差拡大観測で円安に=ロンドン 6/28
ドル円が再び136円台に、株高と日米金利差拡大観測で円安に=ロンドン為替概況
ロンドン市場は、ドル円が再び136円台に乗せている。クロス円も買われており、円売りの動きが広がっている。ロンドン朝方に中国が入国者の隔離期間を短縮と報じられると中国株が買われた。米株先物も時間外取引で上昇に転換、欧州株は堅調に推移している。リスク警戒感の後退が円売りを促している。また、米10年債利回りが3.17%付近から3.25%付近へと上昇しており、日米金利差拡大観測が再燃していることもドル円を押し上げている。ドル円は135円台半ばを上抜けると135円台後半で一時揉み合いとなったが、再び買われると136円台乗せから136.20近辺に高値を伸ばした。クロス円も堅調。ユーロ円は143円台前半から一時144円台乗せ。ポンド円は166円付近から167円手前まで上昇。豪ドル円は93円台後半から94円台後半まで買われた。対ポンドではユーロ買いが優勢。ラガルドECB総裁は、7月の0.25%利上げ、9月はインフレ次第でより大幅な利上げも、と従来の発言内容を再確認した。ラトビア中銀総裁は7月の0.50%利上げ検討を主張。ベルギー中銀総裁は、9月の50bp利上げが適切、200bpの利上げは比較的早期に必要とした。
ドル円は136円台前半での取引。東京午前につけた135.11レベルを安値に、その後は買いの流れが続いている。ロンドン時間に入ると135円台後半へと上昇。しばし揉み合ったあと再び買われると136円台乗せから高値を136.20近辺へと伸ばしている。今月23日以来の136円台での取引。米10年債利回りが3.17%付近から3.25%付近へと上昇、欧州株の堅調などがドル円を押し上げた。
ユーロドルは1.05台後半での取引。序盤に1.0571レベルから1.0606レベルまで買われた。その後はこのレンジ内での取引に終始している。一方、ユーロ円は堅調な流れ。ドル円とともに買われ、143円台前半から144.10近辺まで高値を伸ばしている。ユーロは対ポンドでも買いが優勢。一連のECB高官発言で利上げの前倒し期待が広がった面もあったようだ。
ポンドドルは1.22台半ばでの取引。ロンドン朝方に1.2291レベルまで買われたあとは上値重く推移。足元では安値を1.2238近辺まで広げている。ポンド円は堅調な流れ。166円付近から一時166.93近辺まで上昇。その後は166円台後半で高止まりしている。ユーロポンドは0.8610台から0.8640台へと買われており、対ユーロではポンド安になっている。 
●1ドル140円視野、それでも通貨危機との見方に違和感=尾河眞樹氏 6/28
日銀の黒田東彦総裁は、6月17日に行われた金融政策決定会合後の記者会見で、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の下での長期金利の許容変動幅拡大は「考えていない」と明確に否定した。折しも、15日に終了した米連邦公開市場委員会(FOMC)が非常にタカ派的内容であったことも相まって、翌週急激にドル高・円安が進行、136円台後半の高値を付けるに至った。
安全通貨の立場不変
主要国通貨のほとんどが対円で上昇するなど、為替市場は再び円全面安の様相を呈している。1ドル=140円台が現実味を帯びてきたこともあってか、最近はいよいよ「日本売りだ」「通貨危機だ」と、あたかも日本のあらゆる資産がタタキ売られるかのような、不安を煽る論調が散見されるようになった。しかし、足元の円安は日本の信認低下に伴う資本流出とは程遠い。ドル円でみると分かり難いのだが、円の名目実効為替レートと米株価を重ねてみると、基調としては円安トレンドが続いているものの、米株価が下落する際には円の実効レートが上昇するといった具合に、市場がリスクオフに傾くと円買いが進む構図は以前から何ら変わっていない。このことは日本円が、グローバルにみれば依然として安全資産の位置づけにあることを示している。
背景に金融政策格差
ではなぜ円安トレンドかといえば、これは圧倒的に日本と海外の金融政策の格差によるところが大きい。直近では16日にスイス中銀が50Bpsの利上げに踏み切った。欧州中銀(ECB)も6月の理事会で、7月に利上げする方針を示しているため、日本、米国、ユーロ圏、英国、スイス、カナダの主要6中銀のうち、利上げしないのは日本のみとなる。各国がこぞって金融引き締め局面に入ったなかで、日本だけが取り残されている状況が際立っているのだ。前述した黒田日銀総裁の発言も手伝って、投資家は何の不安もなくキャリートレード(金利差を狙った投資)のための円売りが継続できる。実際、日本の実質金利は4月以降ジワジワと低下しており、各国と日本の実質金利差は拡大傾向にある。
鍵となる実質金利
実質金利は、名目金利(10年債利回り)から期待インフレ率を差し引いた実質ベースの10年物金利だが、米国の場合、米連邦準備理事会(FRB)の利上げによって、インフレが将来沈静化するとの見方から、期待インフレ率(ブレークイーブン・インフレ率)は4月のピークだった4.0%台から足元2.5%台まで低下した。反対に、利上げにより米10年債利回りは一時3.5%まで上昇したため、米実質金利は上昇。一方で、日本は指値オペにより10年債利回りの上限を0.25%でキャップしているため、資源高などで期待インフレ率がジワリ上昇するなか、日本の実質金利は緩やかながらマイナス幅を拡大しつつある。これが日米の実質金利差拡大につながり、ドル円の上昇を促しているのだ。ドル円相場と日米実質金利差の相関性は非常に高く、特に、日本の場合は10年債の利回りを固定しているだけに、このまま放置すれば期待インフレ率が上昇するに連れ、日本の実質金利がさらに低下し、これとともに円相場が一段と下落する公算は大きい。
日銀のジレンマ
したがって、もしもこの円安トレンドを金融政策で止めようとするのなら、たとえばYCCのターゲットを10年債から5年債に変更する、あるいは、10年債利回りの変動幅を拡大することなどが考えられよう。10年債利回りの上昇をある程度容認すれば、実質金利の下落に歯止めがかかるため、円安にもブレーキをかけることができそうだ。ではなぜそうしないのかといえば、金融政策は為替のための手段ではない(ことになっている)ことに加え、そもそも日本の実質金利の低下は、景気刺激効果につながるからだ。「物価上昇率>名目金利」となれば、預金の利息よりも物価の上昇が大きくなるため、教科書的には貯蓄よりも消費や投資が選好されることになる。問題は日本の場合、現在のインフレが資源高によるコストプッシュであることに加え、賃金が上昇しないことで体感インフレが加速しており、消費者マインドの悪化につながっていることだ。このため、インフレによって家計のサイフの紐は益々固くなるという、いわゆる「悪いインフレ」が進行しつつある。景気の足取りがおぼつかないなかで、仮に、現状マイナス0.7%付近の日本の実質金利がプラスに転じれば、金融環境が引き締まり、かえって景気の足かせとなるリスクもある。消費者マインドの改善には資源価格が下落するか、賃金が上昇することが必要だが、いずれも金融政策でどうにかできるものではない。景気度外視で円安是正に踏み切るなら、上述した手法やマイナス金利政策の修正など、取り得る手段がないわけではないが、日銀としてはその効果よりもリスクの方が高いとみているのではないか。加えて、日銀は急速な円安は望ましくないものの、円安そのものは日本経済全体にとってはネットでプラスとの考えを維持しており、現状では円安是正に動くこと自体考えにくい。
将来に備えた議論を
6月のFOMCで更新されたドットチャートでは、23年末の政策金利見通しの中央値が3.75%だったが、一方でFF金利先物は23年末で3.25%付近と、むしろ22年末の見通し(3.375%)より低くなっている。FRBの急速な金融引き締めによって、景気減速が早まるとの見方から、来年後半は早くも「利下げ」が市場で織り込まれているからだ。実際、米国経済が急速に減速する、あるいは景気後退に陥るなどすれば、ドルは大幅に下落する公算が大きい。それを思えば、足元の円安を過剰に不安視するよりも、円安のうちに出来ることを考えるほうが得策ではないだろうか。岸田首相は5月、英ロンドンのシティで行ったスピーチで、「Invest In Kishida」と述べた。円安の今こそ、腰の据わった日本への長期投資のマネーを呼び込むべく、規制緩和や東京市場の活性化、政府のDX推進など、構造改革や成長戦略を推進する必要があるのではないか。実際、コロナ禍初期には、日本の危機管理に対する懸念が露呈した一方で、日本人の公衆衛生意識の高さや、ひとたびワクチンの供給が始まると一気に普及するという協調性、パンデミック初期に海外で起きたような略奪や暴動が日本では起きなかったことなど、海外から改めて見直されている面も大きい。ひとたび門戸を開けば、円安の今がチャンスとばかりに、海外投資家が株式や不動産なども含めて、日本の資産を買いにくる可能性はありそうだ。その際に、例えば日本の水資源や質の高い農産物、安全性の高い食料品などが、気づいたら全て海外資本だったというようなことのないように、安全保障面から日本の何を守るのかという戦略も、同時に必要になってくるだろう。他方、円安・資源高が続いた場合に、エネルギーを安定的に調達するためにはどうするのか、エネルギー安全保障の問題も具体的な戦略が見えないままだ。日銀についても、今後仮にマイナス金利を終了する場合にどういった手順を踏むのか、また、購入した資産をどう減らすのかなど、出口に向けた具体的なステップについて、円高の時にはできなかった議論を今こそ開始し、将来に備える必要があるのではないか。 
●円相場200円へ、プラザ合意以降の円高バブル崩壊が庶民の福音になる 6/28
日本が円買い介入を始めても円安は止められない
ごく最近、米国の大手ヘッジファンドのトップから「日本はなぜ円安を受け入れないのか?」と質問された。同時に彼は、「日米金利差が理由と言うが、それでは過去の円相場を説明できないではないか」として説明を求めてきた。
この議論の顛末は最後に書くとして、参院選が始まって物価高が一つの争点となりつつある中、物価高の原因である円安問題を冷静に考える必要がある。つまり、「円安は悪なのか」であり、「円安の原因は日米金利差なのか」である。
本件は、日本銀行黒田総裁の「家計は値上げ許容度が高まっている」との発言が炎上したこともあり、日本国内外での注目度が高まっている。
しかし、過去の円相場の動きと日銀の為替介入等を振り返れば、今の円安は、インフレ対策で必死の米国がドル高を望んでいる以上、財務省財務官や日銀総裁が問題だと考えて円買い介入を始めても(および利上げを始めても)、止められるというものでもないことは明白である。
では、逆に円安を止める必要はあるのだろうか。物価上昇に対して打つ手とは何なのだろうか。本稿ではこれを考えてみたい。
日米金利差と為替水準に相関はない
まず理解すべきは、日米金利差と為替水準に明確な相関はないということだ。
円相場の動く原因として「日米金利差」があるのは事実ながら、一般には為替トレーダー(ドル/円を売買して利鞘を稼ぐ人のこと)が自分たちのポジションを作る際、または利益を確定する際の理由として使うことが多い。メディアで一般的に使われるのは、インタビュー相手が為替トレーダーであることが多いからだと言われている。
しかし、それは円相場が上がったり下がったりするからであって、一本調子のトレンドの際に「日米金利差」を理由として使い続けることには無理があり、実際にもそうはしない。
また、経済理論として「金利と為替の二つを同時にコントロールすることは不可能」という考え方はあるが、例えば「日米金利差が1%開くと3円の円安が進む」というような相関があることを裏付ける理論はない。
さらに、1カ月ほど前に129円となった頃には、「日米金利差を考えれば130円程度が限界」という言葉がまことしやかにささやかれていた。それにもかかわらず、それから現在までに7円の円安が進んだことを考えれば、そこには何の根拠もなかったことが分かる。
加えて、冷静に過去を振り返れば、1985年9月までは1ドル=200円台だった為替相場が、プラザ合意によるG5諸国(米英仏独日)の協調介入でドル以外の通貨の価値を上げることを決めた3カ月後には100円台となった。
このように、米国の実質的な保護国として生きる日本の円相場は、米国発のイベントによって、連続性のない動きをしてきたという歴史がある。
つまり、円相場を見る際には、「日米金利差」などのように誰もが信じている話、あるいは米株の暴落のように市場を信じ込ませやすい話題は少なくないものの、別の動きの(しかも、それは金融・為替理論とは異なる経済分野の)話があることを忘れてはならない。
そこまで上昇していない日本の消費者物価
日本の今の論調は、米国では物価の上昇に対してFRB(米連邦準備理事会)が利上げで対応しているので、日本も利上げでインフレを止めるべきだというものだ。多くのエコノミストや政治家、テレビのコメンテーター等から出ている。
ここで、直近発表された日本の物価指数を見てみよう。物価指数と一言でくくっても、実は複数ある。
日本銀行などが日本の物価安定を考えるために行動する際に見ているものは、太字にした消費者物価の「除く生鮮食品」であり、昨今のように原油価格等が上昇している場合は、ここからエネルギーを除いた「除く生鮮食品、エネルギー」も指標としている。以下、データはすべて前年同月比%。
   企業物価指数(5月、国内):+9.1%
   企業物価指数(5月、輸入):+43.3%
   消費者物価指数(5月、総合):+2.5%
   消費者物価指数(5月、除く生鮮食品):+2.1%
   消費者物価指数(5月、除く生鮮食品・エネルギー):+0.8%
これらの違いを簡単に解説すると、最上段にある企業物価指数(国内)の前年同月比+9.1%は企業間での取引の価格の上昇率を指し、メディアで報道される「小麦粉の価格が上がっている」というパン屋さんなどのコメントは、ここに表れている。数字自体も、米国の5月の消費者物価が+8.6%と近しいものがあり、イメージ的に両者を比較しやすいところがある。
次に、企業物価指数(輸入)は+43.3%と高く、ここに原油価格やその他の輸入品の価格が反映されている。
三つめの消費者物価指数(総合)は、消費者が購入する際の物価全体を見ているもので、エコノミストの中にはこれを使えという人が少なくない。その背景には、超金融緩和の目標として「インフレターゲットを2%」とした日銀に対して、「もう2%は超えているだろう」と言いたい気持ちがあるのだろう。しかし、「インフレターゲットの2%を上回った」と数字あわせのように言っても、これまで使っていない数字を突然使うというのには無理がある。
四つ目の消費者物価指数(除く生鮮食品)は、基本的に日本銀行が使う物価指数である。日本人が見るべき物価指数はこれだ。
この指数は3月までは0.8%など1%未満だったが、4月に続いて5月も+2.1%なのでインフレターゲットは達成している。ところが、日本銀行は「安定的な2%の達成」としてきたので、2カ月ではまだ早いという気持ちのようだ。その背景には、次に示す指数の前年同月比での低さがある。
五つ目の消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)は、エネルギー価格が異常に動いている際に使う指標だ。ただし、この指数は4月に続き5月も+0.8%と、消費者物価指数(除く生鮮食品)と比べればだいぶ低い。
これが今の日本で受け入れられないのは、「物価が上昇していない」ということをどこか無理して伝えているように思える数字だからだろう。
今後、日銀がどう動くかは日銀のみぞ知るだが、外野席から言わせてもらえば、日銀だけでも衆愚政治からは距離を置いてもらいたいと思う。なぜならば、利上げは決して日本経済にとってはプラスではない。利上げとは景気過熱の際に巡航速度に下げるための手段だからだ。
円安が進んでいる真の理由
円安が進んだタイミングは、基本的にはロシアのウクライナ侵攻が進んできた時に一致している。これが今の円安の理由を解く鍵だ。
第一の理由は、ロシアが核兵器の使用をチラつかせる中で、北朝鮮がミサイル発射実験を繰り返し行ったことにある。すなわち、日本がいかに危険な場所にあるかを市場が意識し始めたということだ。
日本を一軒家に例えれば、裏庭の向こうにある米国と同盟を結んでいるものの、お向かいさんは日本政府が実質的に仮想敵としている中国である。中国は核兵器を保有し、日本を射程とするミサイルも多数保有している。
そのお隣の朝鮮半島の北部にも、核兵器と日本を射程に収めるミサイルを持つ北朝鮮がいる。北隣のロシアは既に津軽海峡をロシア海軍が横断したり、北方領土で軍事演習をしたりしている。しかも、なぜだか今の日本は中国を刺激することが好きである。
三方向のお隣さんが怒ったら、裏庭の遠くから米国が助けに来る前に日本はやられてしまう。これが日本は地政学的に危ない国だという証拠であり、安易に円買いができないという理由の第一である。
第二は、昨年末に過去最高を記録した、日本の411兆円を超える対外純資産の脆弱性である。日本の対外純資産は、それが強みとして認識されてきたが、米国が「悪の枢軸」と呼ぶような国を含め、実質的な敵国に対する投融資も多い。ロシアのウクライナ侵攻で露呈したが、411兆円という対外純資産は、実はかなり目減りするのではないかという見方もある。
例えば、ロシアではサハリン1(油田)、サハリン2(天然ガス田)が稼働しているが、日本がカーボン・ニュートラルの秘密兵器と位置付けてきたものの中にサハリン3(海底の天然ガス田)がある。ロシアの経済発展を援助するため、様々な資金も提供してきた。こういったプロジェクトについては、国際協力銀行なども融資しており、カントリー・リスクが高いためリターンもかなりある。これが、ロシアとの関係悪化ですべて失われる危険性がある。
ロシア側についている国への投融資も同様だ。仮に各国がロシアに協調した態度を取り、それに米国側が厳しい姿勢を取れば、日本もこれに追随せざるを得ないため、相手国の国有化等によって日本の権益は失われてしまう可能性がある。
そう考えると、日本の対外純資産の多くは、結構リスキーな国に関連しており、これらのリスクが顕現化すると、実は411兆円が半減することとてありうる、ということである。極端かもしれないが、為替トレーダーにしてみれば相場が動くのであれば極端な話であっても構わない。
既に終わりつつあるプラザ合意以降の円高バブル
1985年9月のプラザ合意以降の円高は、日本の経済構造を大きく変えた。特に、円高直後には円高不況が訪れたが、その1年後には円高、株高、債券高というトリプル高になって日本経済はバブルに突入した。
しかし、バブル経済は数年で破裂し、その後は2000年代初頭まで続く不良債権問題で日本経済は大きく悪化した。しかも、円高対応のため企業努力は、従業員レベルで見れば終身雇用の割合が全雇用の半分以下となるなど、雇用の犠牲を伴うものだった。結果、日本全体でも貧困家庭が増えた。
多くの政治家は、貧困家庭よりも富裕層の方が票になるので、今回の参議院議員選挙でも、貧困問題を解決する案を、目標期限を定めて正しい理屈で真面目に主張している政党はない。
他方、黒田日銀総裁と言えば、円売り介入額が歴代第二位の財務官である。円高不況から日本を脱出させるために戦った勇士だ。その黒田元財務官からすれば、日本の為替相場は(1985年の円高開始直前からすれば)まだ円高水準ということかもしれない。
つまり、日本経済のバブルは崩壊して終わったものの、為替相場のバブルは円高水準のまま続いている。しかし、かつてのように円高が米国経済にとってプラスだというプレッシャーがなくなっているのだから、インフレと戦う米国の視点から見ても、円安ドル高(米国はドル高で輸入物価が下がる)はもっと進むタイミングに来ていると考えるという見方が市場では可能となる。
為替のバブルもそろそろ終焉に近づいているということだ。
しかも、円安が進めば、日本経済を蝕んでいる様々な要因を払拭できるかもしれない。世間では、「悪い円安」という指摘も聞こえるが、日本経済にとっては円安の方が間違いなく良いことが多い。
コロナ禍の影響が終われば、インバウンドは今以上に増えるだろう。インバウンドが増加すれば、日本経済は一気に良くなる。製造業の多くも、円安が進めば企業収益が増える。もちろん、かつての輸出依存型経済ではないため円安の効果は小さくなっているものの、それでも円安が日本の製造業にとってプラスなのは、各社が発表する「1円の為替変動でいくらの利益(損失)」という部分を見ればわかる。
物価が上がって困る理由は、賃金が上がらないからである。
政府がやるべきは企業の賃金引き上げの促進
円安で物価が上がっても、円安で利益の増えた企業が賃金を引き上げれば、実質的な購買力は変わらないはずだ。
簡単に言えば、1ドル=100円の為替水準で500万円の給与と、1ドル=200円で1000万円の給与のどちらが良いかと質問した場合、多くの人は後者を選ぶだろう。ドル換算では同じなのだが。海外旅行にでも行かない限り、名目上の給与が2倍になるメリットは非常に大きい。
また、物価が上がることは、そもそも利益率が低い飲食業などにとってもプラスだ。これまでは顧客に気兼ねして値上げを十分にできなかったが、物価と賃金が上がっていれば、利益維持のために堂々と値上げをできるようになる。日本で給与水準が一番低い業種は飲食業だが、これであれば飲食業従事者の賃金も上がる。
日本は円安を素直に受け入れるべきである。円高に耐える経済構造になって労働者を泣かせてきた日本企業も、円安で収益力が強まれば賃金を増やすゆとりが出てくる。それを内部留保に溜めずに労働者に支払うべきだ。そうすれば日本経済は復活する。
冒頭のヘッジファンドへの回答
ヘッジファンドのトップが知りたいのはそこだ。今のファンドとしてのポジションは円売り、日本国債売りなので、先述したような展開になれば日本の円安はもっと進む。賃金が上がる時、どこかで長期金利が上がり始めるので、日本国債も売りポジションが妥当ということになる。
もちろん、これには痛みも伴う可能性は小さくない。
なぜなら、長期金利が上がれば日本国債の消化に影響が出かねず、それは日本の財政危機につながる可能性もなしとしないためだ。ヘッジファンドのトップが知りたいのはまさにそこで、日本政府は、(1)日本国民のために賃上げを伴う物価高となる円安を受け入れるのか、それとも、(2)日本の財政を守るためにあくまで円安のさらなる進行を止めるのか、だ。
筆者は(1)の説明をしたが、彼は「日本国民は怒らない人々なので、選挙で与党が負けることもない。従って、国民優先の政策をとることについては半信半疑だね」との回答だった。

 

●円相場、136円05〜06銭 6/29
29日の東京外国為替市場の円相場は、午前9時現在1ドル=136円05〜06銭と、前日(135円73〜77銭)に比べ32銭の円安・ドル高となった。
●外為 1ドル136円04銭前後とドル高・円安で推移 6/29
29日の外国為替市場のドル円相場は午前11時時点で1ドル=136円04銭前後と、前日午後5時時点に比べ33銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=143円22銭前後と45銭のユーロ安・円高で推移している。
●外為 1ドル136円03銭前後とドル高・円安で推移 6/29
29日の外国為替市場のドル円相場は午後2時時点で1ドル=136円03銭前後と、前日午後5時時点に比べ32銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円89銭前後と78銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●NY外国為替市場 1ドル=136円台前半まで値下がり  6/29
28日のニューヨーク外国為替市場では、日本とアメリカの金利差が拡大するとの見方を背景に円相場は一時、1ドル=136円台前半まで値下がりしました。
28日のニューヨーク外国為替市場では円を売ってより利回りが見込めるドルを買う動きが出たことから、円相場は一時、1ドル=136円台前半まで値下がりしました。
外国為替市場では先週、1ドル=136円台後半まで円安が進み、およそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新したあと、円を買い戻す動きも出ましたが、この日は再び円が売られました。
また、ニューヨーク原油市場では国際的な原油価格の指標となるWTIの先物価格が一時、1週間ぶりに1バレル=112ドル台まで上昇しました。
中国政府が新型コロナウイルスの対策として海外からの入国者に義務づけている隔離の期間を短縮する方針を発表したことをきっかけに、経済活動の正常化が進み、原油の需要が高まるとの観測が出たことが背景です。
このほか、ニューヨーク株式市場では消費者の景況感を示す経済指標が市場の予想を下回ったことを手がかりに売り注文が増え、ダウ平均株価は一時、500ドルを超える大幅な値下がりとなりました。
終値は前日と比べて491ドル27セント安い、3万946ドル99セントでした。
IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数も前日と比べて2.9%の大幅な下落となりました。
●1ドル=140円時代は近い…「円安進行」で海外旅行するならどこの国? 6/29
円安でも海外旅行をお得にする方法があります。ドル円相場は、1ドル=140円まで円安が進むともささやかれています。しかし、これはあくまで米ドルに対してで、他の国(通貨)に対してではありません。
たとえば、ノルウェーやスウェーデンの通貨でみてみると、1クローネは、ここ半年では13円から14円余りで推移しています。海外旅行に行くのなら、米国よりそれほど円安の進んでいないノルウェーやスウェーデンのほうがお得に感じるかもしれません。
また、外国に行くときは、「現地通貨に換える場合、日本円の支払いが少なくてすむ外貨を選ぶ」ことです。例えば米ドルなら日本円は135円出さなければなりませんが、豪ドルなら93円台、ニュージーランドのNZドルなら85円台ですみます。もちろん、豪ドルは少し前まで80円台だったと思うと悔しいですが、それでも米ドルに換えるよりも、日本円の支出額は減ります。もちろん各国で物価は異なりますし、通貨ごとに円安(場合によっては円高)の進み具合も違います。「現地通貨と円」の値動きをきちんと把握することが大切です。
また外貨預金をしている人は、なるべくそれを使いましょう。
例えば、ソニー銀行の「Sony Bank WALLET」(Visaデビット)の外貨普通預金口座からは、事務手数料が1.7%かかりますが、海外のATMで現地通貨で引き出すことができます。
「Sony Bank WALLET」のデビットカードで決済すると、外貨預金から即時に引き落とされます。対応通貨はドル、ユーロのほかに、英ポンド、豪ドル、NZドル、スイス・フラン、香港ドル、カナダ・ドル、南アフリカ・ランド、スウェーデン・クローナです。
また、SMBC信託銀行の外貨預金GLOBAL PASS(多通貨Visaデビット一体型キャッシュカード)は、海外で買い物ができ、そのまま口座から引き落とされるので手数料が無料です。
海外旅行に行かない場合でも、ラグジュアリーブランド企業などのホームページからのオンラインショッピングでは、外貨引き落とし口座を指定したクレジットカードで買い物することもできます。
ただ郵送費が数千円する場合もあります。うまく計算して円安を乗り切りましょう。
●歴史的な円安ドル高 長期化か 6/29
外国為替の割高・割安をみる際に市場関係者が用いる代表的な指標に購買力平価がある。様々な為替の決定要因を捨象し、国や通貨は違っても同じものを買うときは同じ値段になるように為替水準が決まるという概念だ。
英エコノミスト誌が更新し続けているビッグマック平価はビッグマックの各国での値段を基準に為替の平価を算出している。日本で390円、米国で5.81ドルの場合、1ドル=67円なら同じお金でビッグマックが買える。今のドル円相場は米国観光客が日本で同じお金で2つ買えるほどドルは高く円は安いということ。
一般には1973年を起点に輸出物価、企業物価、消費者物価の3種をもとに計算した購買力平価が参照される。過去50年ではドル円は輸出物価平価の水準を下限に消費者物価平価を上限にした幅でおおむね推移してきた。足元は消費者物価平価(110円近辺)を上回るドル高にある。
6月22日に1ドル=136円台後半と1998年10月以来の約24年ぶりの円安水準と報じられているが、消費者物価ベースの購買力平価を上回ったのは過去50年で3回しかない。82年の米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締め時と85年のプラザ合意によるドル高是正時、今回である。現在は85年以来の37年ぶりの円安ドル高局面ともいえる。
ドル高になると米国の輸出産業は不利になる。85年当時は自動車など米産業界の要請もありプラザ合意につながり、合意後24時間で20円という円安ドル高の是正が進んだ。多くの米企業が円安ドル高で困っていた。今回はそのような声をあまり聞かない。構造変化で円安で困る主体が米国で少なくなったからか。
歴史的な円安ドル高は調整されるだろう。ただ困っている米関係者が少ないとするとドル高が長く続く可能性はみておかなければならない。 
●外為 1ドル136円49銭前後とドル高・円安で推移 6/29
29日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=136円49銭前後と、午後5時時点に比べ46銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=143円37銭前後と35銭のユーロ高・円安で推移している。
●円相場、一時1ドル=137円台に…24年ぶりの円安水準 6/29
29日の外国為替市場で、円相場は一時、1ドル=137円台まで円安・ドル高が進み、1998年以来、約24年ぶりの円安水準を更新した。
欧州中央銀行(ECB)が29日にポルトガルで開いた金融政策に関する討論会で、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、米国では家計も企業も財務的に安定しているとして「経済全般が金融引き締めに耐えられる」と述べた。インフレ(物価上昇)を抑制するため、米国で金融引き締めがさらに進むとの思惑が広がった。
●NY円、一時137円00銭 24年ぶり円安ドル高水準 6/29
29日のニューヨーク外国為替市場の円相場は円がドルに対して大きく下落して一時1ドル=137円00銭と1998年9月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準を付けた。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が物価高を抑えるために金融引き締めを積極的に進める方針を示し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが進んだ。
午後5時現在は、前日比45銭円安ドル高の1ドル=136円55〜65銭。ユーロは1ユーロ=1・0437〜47ドル、142円60〜70銭。
FRBが金融引き締めを急ぐ一方、日銀は大規模な金融緩和策を維持する方針を示しており、金融政策の方向性の違いが鮮明になっている。投資家はFRBが金融引き締めを加速させる可能性を意識し、円売りドル買いが膨らんだ。その後は米長期金利が低下し、円を買い戻す動きも出た。

 

●1ドル137円台まで下落、24年ぶり円安水準 米「利上げ」発言で 6/30
29日のニューヨーク外国為替市場で、円相場が一時、1ドル=137円台まで下落した。約24年ぶりの円安ドル高水準。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がこの日のシンポジウムで、積極的な利上げ方針についてあらためて発言。日米の金融政策の方向性の違いが意識され、金利の高いドルを買い円を売る動きが広がった。
FRBはインフレを抑えるため金融引き締めを進めており、今月15日には、通常の3倍となる0・75%幅の大幅な利上げを決めた。一方で、日本は金融緩和を続けている。日米の金利差拡大に伴い、3月以降の約4カ月で20円ほど円安ドル高が進んでいる。エネルギー価格の高騰も重なり、日本では食料やガソリン価格が上がり、家計の負担が重くなっている。
●外為 1ドル136円60銭前後と大幅なドル高・円安で推移 6/30
30日の外国為替市場のドル円相場は午前9時時点で1ドル=136円60銭前後と、前日午後5時時点に比べ57銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円66銭前後と36銭のユーロ安・円高で推移している。
●外為 1ドル136円59銭前後と大幅なドル高・円安で推移 6/30
30日の外国為替市場のドル円相場は午後0時時点で1ドル=136円59銭前後と、前日午後5時時点に比べ56銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円73銭前後と29銭のユーロ安・円高で推移している。 
●1ドル137円台まで下落、24年ぶり円安水準 米「利上げ」発言で 6/30
29日のニューヨーク外国為替市場で、円相場が一時、1ドル=137円台まで下落した。約24年ぶりの円安ドル高水準。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がこの日のシンポジウムで、積極的な利上げ方針についてあらためて発言。日米の金融政策の方向性の違いが意識され、金利の高いドルを買い円を売る動きが広がった。
FRBはインフレを抑えるため金融引き締めを進めており、今月15日には、通常の3倍となる0・75%幅の大幅な利上げを決めた。一方で、日本は金融緩和を続けている。日米の金利差拡大に伴い、3月以降の約4カ月で20円ほど円安ドル高が進んでいる。エネルギー価格の高騰も重なり、日本では食料やガソリン価格が上がり、家計の負担が重くなっている。
●東京円、17銭安の1ドル=136円19〜21銭 6/30
30日の東京外国為替市場で、円相場は午後5時、前日(午後5時)比17銭円安・ドル高の1ドル=136円19〜21銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、78銭円高・ユーロ安の1ユーロ=142円25〜29銭で大方の取引を終えた。
●再びドル高に動きだす、昨日のパウエルFRB議長の発言で 6/30
昨日の海外市場で、ドル円は137円ちょうど近辺の高値をつけた。年初来高値を更新するとともに、1998年9月以来のドル高・円安水準となった。ECBフォーラムでパウエルFRB議長が「米経済は金融引き締めに十分対応できる状況にある」と発言したことが一段の利上げ加速を想起させ、ドル高の動きにつながった。利上げが景気を冷やすことを警戒も、何としてでもインフレを抑え込みたいとの強いメッセージが発せられていた。
ドル円相場にとっては、緩和継続姿勢を変えない日銀と積極的な利上げ姿勢を示す米金融当局との対比が一段と際立った格好となっている。昨日の東京市場では山岡元日銀局長が「インフレ期待や円安見通しが引き続き高まれば、長期債利回り上限の調整必要となる可能性」と発言したことで一瞬、円高に振れた。しかし、すぐに円安方向に押し戻されていた。「日銀は来月はイールド上限を調整せず、1年以内に行う可能性」とも述べており、市場には黒田総裁退任後にならなければ政策変更はないだろう、との思いがあったようだ。
きょうは一連の米経済指標が発表される。米新規失業保険申請件数(25日までの週)、米個人所得(5月)、米個人支出(5月)、米PCEデフレータ(5月)、米PCEコアデフレータ(5月)、米シカゴ購買部協会景気指数(6月)など。米金融当局が物価指標として重視することで知られるPCEデフレータは、前年比+6.4%が市場の大方の予想。前回4月の+6.3%から一段と伸びが加速する見込みになっている。一方で、景況感関連としてはシカゴ購買部協会景気指数も注目される。58.0が市場の大方の予想となっており、前回5月の60.3から低下する見込み。昨日のパウエル議長の発言に沿って考えれば、よりインフレ上昇が警戒されることとなる。
この後の海外市場で発表される経済指標は、上記米指標のほかにもスイスKOF先行指数(6月)、トルコ貿易収支(5月)、スウェーデン政策金利、ドイツ雇用統計(6月)、ユーロ圏失業率(5月)、香港小売売上高指数(5月)、南アフリカ生産者物価指数(5月)、南アフリカ貿易収支(5月)、ブラジル失業率(5月)、カナダGDP(4月)など。スウェーデン中銀は政策金利を50bp引き上げて0.75%とすることが見込まれている。
ECB年次フォーラムを終えて、金融当局者の講演イベント予定はみらず。インタビューなどに注意する程度となっている。 

 

●東京外国為替市場で円相場、1ドル = 135円を切る 7/1
7月1日14時13分頃、東京外国為替市場で円相場は1ドル = 135円を切り、前日17時頃の価格(136.20円)から1.31円(0.96%)下落となる134.89円となった。
●日経平均は491円安、ダウ平均先物安や円高・ドル安が重しに 7/1
日経平均は491円安(13時20分現在)。日経平均寄与度では、ファーストリテ、東エレク、TDKなどがマイナス寄与上位となっており、一方、キッコーマン、コナミHD、エプソンなどがプラス寄与上位となっている。セクターでは全業種が値下がり。鉱業、ゴム製品、空運業、電気・ガス業、卸売業が値下がり率上位となっている。
日経平均は下げ幅を広げ、26000円を下回って推移している。ダウ平均先物が安く、また、外為市場で1ドル=134円90銭台と1円ほど円高・ドル安が進みんだことなどが東京市場の株価の重しとなっているようだ。
●ドル/円135円はすでに「円高」。 急スピードの警戒感薄れ、さらに上昇余地? 7/1
2022年も今日から後半戦。コロナ後初めて「自由に移動できる夏」になった今年は、欧米ではインフレ率がどれほど上がっていても旅行に行きたい人が多く、ホテルはすでに満室でどこもキャンセル待ち状態になっているらしい。ちなみに、日本ハワイ間の燃料サーチャージは、円安と原油高のおかげで倍に値上がりして、一人往復47,000円払わないと飛行機さえ乗せてもらえない。さらにハワイから帰国するときには、新型コロナの陰性証明書の発行が一人約34,000円かかる。旅行代とは別に一人8万円かかるから、家族5人でハワイに行くとすれば、別途40万円用意しないといけない。それができないなら、できるだけエアコンは使わず、かといって熱中症にならないようにして夏をやり過ごす。実質賃金が上昇しなければ、日銀がどんなに頑張ってもインフレは長続きしない。
6月30日(木曜)のドル/円は「円高」。24時間のレンジは135.55円から136.81円。値幅は1.26円。2022年の129営業日目は136.53円からスタート。
今週再び強まった円安の流れを引き継ぎ、東京時間朝に136.81円まで円安に動いたが、前日(29日)につけた24年ぶりの円の安値137円を超えることなく失速した。その後は売りが強まり、明け方には135.55円まで円高に動いた。終値は135.75円(前日比▲0.85円)。
レジスタンスは、136.81円(6/30) / 147.63円(1998)
サポートは、135.70円(200時間移動平均)/ 135.55円(6/30)/ 135.10円(6/28)/ 134.49円(6/27)
6月を振り返ると、13日の週にFRB(米連邦準備制度理事会)をはじめとする中央銀行が、相次ぎ政策金利を発表し、その翌週は、高インフレと(日銀を除く)中央銀行利上げの仁義なき戦いに、株式市場と金利高の良好な関係の終わりを感じた。
FRBの急激な利上げの副作用はすでに出始めている。米国指標はすでに減速傾向だ。今週発表された6月リッチモンド連銀製造業景気指数は▲19で、前回の▲9から大きく急激に下落して新型コロナ流行後の最悪となった。米消費者信頼感指数は、103.2から98.7も悪化している。FRBも注目するPCE(個人消費支出)コアデフレーターは伸び悩んだ。パウエルFRB議長の「インフレ退治のために無条件でコミットする」という決意が試される。 
●外為 1ドル135円61銭前後とドル高・円安で推移 7/1
1日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=135円61銭前後と、午後5時時点に比べ30銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=141円81銭前後と51銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●東京市場 7/1
1日の東京市場はドルが続落。ドル/円は6月27日、今週初め以来の134円台を一時示現している。
ドル/円は135.75円レベルで寄り付いたのち、当初はドル買い先行。136円前後まで一時値を上げている。しかし、日米株価が弱含みに推移したうえ、米長期金利が低下したことなどを嫌気。徐々にリスク回避の動きに押される展開となると、ドル/円も目先高値から1円以上下落した134円台まで一気に値を崩している。16時現在でも、そのままドルの安値圏135.05-10円で推移し、欧米市場を迎えていた。
一方、材料的に注視されていたものは、「ロシア情勢」と「荒れ模様のビットコイン」について。
前者は、ウクライナにおける戦闘は引き続きロシア軍の攻勢が伝えられているなか、「ロシア軍が黒海の蛇島から撤退」といった別の報道も。これを受け、港湾封鎖が緩和されるとの期待感も取り沙汰されていた。またポーランド首相から「EUとロシアは物資輸送で解決策が必要との認識で一致している」との発言も聞かれていたが、今後果たして実りある進展を迎えることが出来るのだろうか。
対して後者は、昨日から本日にかけて暗号資産ビットコインはかなり激しい上下動。2万ドル台から18600ドル台までと、一時大きく下落したものの、舌の根も乾かぬうちに2000ドルを超える急反発をたどっている。100%を超える戻し幅で、いわゆる「行って来い」。しかし、それで終わりではなく、本日東京で目先高値をつけたのち再び1500ドル近い下落を記録するなど、なかなかのジェットコースター相場だった。
●ロンドン外国為替市場で円相場、1ユーロ = 140円を切る 7/1
7月1日23時33分頃、ロンドン外国為替市場で円相場は1ユーロ = 140円を切り、前日2時頃の価格(142.20円)から2.35円(1.65%)下落となる139.85円となった。
●半年で21円も円安に いったいどこまで? 7/1
円安の流れが止まりません。今週、外国為替市場では、アメリカが金融引き締めを積極的に続けるという見方から、円相場が一時、およそ24年ぶりに1ドル=137円台まで値下がりしました。この半年間で実に21円も円安ドル高が進み、半年間の値下がり幅としては、日銀の記録が残る1998年以降で最大となりました。輸入物価を押し上げる円安に対し、企業や家計の間で懸念が強まっています。この円安、どこまで進むのでしょうか。
短期間の急激なコスト増加に対応できない
「想定を超える円安です。この半年で急激にコストが増えて、準備する時間もなく、すぐに値上げもできないので、耐えるしかありません」
今週、取材した都内で義足や義手などを手がける義肢装具メーカーの社長のことばです。
このメーカーでは、義足などを必要とする人にいつでも製品を提供できるよう、200種類にのぼる部品や材料をアメリカやドイツなどの海外から輸入しています。
しかし、急速に進む円安の影響で、仕入れ価格が2割上昇。アルミや鉄などの原材料価格も高騰していて、収益が圧迫されています。
メ−カーでは販売価格への転嫁を検討していますが、義足などの部品の価格を値上げするには、国の認可を得る必要があります。
仮に認められたとしても実際に値上げできるのは来年4月。現状は企業努力でコスト削減を図りながらやりくりしていくしかないといいます。
中小メーカーの経営に重くのしかかる輸入物価の高騰。短期間に急激に円安が進む中、企業の中には対応が間に合わないところも出てきています。
記録的なスピードで円が下落
今週、外国為替市場では、円相場が一時、およそ24年ぶりに1ドル=137円台まで値下がりしました。
そして、上半期最終日の30日午後5時時点の円相場は、1ドル=136円19銭から21銭でした。115円台前半だった去年の年末から半年間で、およそ21円もの値下がりです。
毎営業日の記録が残る日銀の1998年以降の午後5時時点のデータでみると、半年間の値下がり幅としては最大となりました。
短期間でこれだけ円安が進んだ背景には、日米の金融政策の方向性の違いがあります。
インフレ抑制のため、金融引き締めを急ぐアメリカでは金利が上昇。これに対し、日銀は大規模な金融緩和で金利を抑え込んでいます。
金利差が拡大する構図は当面、変わらないという見方から、より利回りが見込めるドルを買って円を売る動きが続いてきました。
過去にも円安が急速に進んだ局面があります。2013年から2015年にかけてです。
きっかけは2013年の日銀の黒田総裁就任。「黒田バズーカ」と呼ばれる市場に大量の資金を供給する大規模な金融緩和策を打ち出したことで、一気に円安が進みました。
また2015年には、アメリカがリーマンショック以降続けてきたゼロ金利政策の解除に向け、動き出したことが大きな要因でした。
いずれも市場が金融政策の潮目の変化を捉え、為替の大幅な変動を生み出してきたのです。
新型コロナからの経済活動の再開に伴う世界的なインフレに加え、ロシアのウクライナへの軍事侵攻による資源価格の高騰を受け、いま、欧米の中央銀行が金融引き締めを急いでいます。
ただ、急速な金融引き締めによって、景気が一気に冷え込むリスクも指摘され始めています。
世界的なインフレはどこで収まるのか。欧米の金融引き締めは、どこまで進むのか。そして、日銀は今の大規模な金融緩和をいつまで続けるのか。
市場で各国の中央銀行の一挙手一投足が注目されています。
下半期さらに円安進行?1ドル=145円も
この記録的な円安。今後の動向について、市場関係者はどうみているのでしょうか。
市場関係者1「アメリカの急速な利上げに伴う日米の金利差拡大によって円安ドル高が進行し、年内に1ドル=145円まで円安が進む可能性があると見ている。来年以降はアメリカの景気の減速感が強まり、アメリカの利下げが意識されれば、ドル円は反転するだろう。そして来年の後半には、日銀の金融政策の修正などにより、日本の金利が上昇し、1ドル=133円程度になるとみている」
市場関係者2「FRBがインフレ抑制に本腰を入れ、市場で大幅な利上げが織り込まれる一方、日銀は金融緩和の維持に強い姿勢を示しているため、円安ドル高が進む余地が拡大し、年内に1ドル=142円まで円安が進む可能性がある。ただ、アメリカの景気はこの先、大幅な利上げによって減速が見込まれ、人手不足などの供給制約が徐々に解消されることで、インフレはいくらか落ち着くのではないか。来年は円高ドル安方向になりやすくなると思う」
市場関係者の間では、年内にもう一段、円安が進むという見方が多くなっています。
食料やエネルギーなどを輸入に頼る日本では、輸入物価を押し上げる円安は、私たちの生活に大きな影響を与えます。
それだけに、為替相場の変動や中央銀行の動き、潮目の変化を注意深く見ていく必要がありそうです。
注目予定
7日に大幅な利上げを決めたアメリカのFRB=連邦準備制度理事会の6月会合の議事録が公表されます。今後の金融引き締めのペースなどについて、どのような議論が行われたのか注目されます。
8日に発表されるアメリカの雇用統計では、失業率がコロナ前の水準に回復するのかに関心が集まりそうです。
10日は参議院選挙の投開票日。物価高への対策が争点の1つとなる中、今後の日本経済を左右する選挙の結果に注目です。
●円安影響…iPhone・iPadなど日本で値上げ 7/1
7月に入りさまざまなものが値上げされる中、アメリカのIT大手・アップルも円安の影響を受けて、1日からiPhoneやiPadなどを日本で値上げしました。
アップルの公式サイトによりますと、例えば9万8800円からだったSIMフリーのiPhone13は、販売価格が1万9000円上がり、11万7800円からとなっていて、最上位機種では4万円値上げした機種もあります。
アップルの関係者によりますと、値上げの理由は急激に進む円安ドル高の影響だということです。アップルは4月の決算会見で、ドル高によって収益に悪影響が出ていると指摘していました。
一方、1日からさまざまな食品も値上がりします。穴子やアスパラなど旬の食材をこだわりの油で揚げる、都内の老舗天ぷら店では…。
天寿ゞ・鈴木康夫さん「小麦粉とか油も値上がりしてます。(卸業者が)値上げの紙を持ってくるときに、申し訳ないって言うんだけど、申し訳ないなんて言わないでくれって。仕方がないんじゃないでしょうかね」
天ぷらに使う食材や油、小麦粉などの値上げが続いているといいます。
日清オイリオグループとJ-オイルミルズ、昭和産業は1日から食用油を、ニップンと日清製粉ウェルナは小麦粉を値上げします。
帝国データバンクによりますと、今年6月末までに発表された値上げされる品目は1万5000以上にのぼり、年内では、2万品目以上が値上げされる可能性が高いということです。
●ニトリHD会長:円安は年後半に反転すると考えていたが間違いだった 7/1
家具・インテリアチェーンを展開するニトリホールディングスの似鳥昭雄会長は1日、円安傾向が年後半に反転すると考えていた自身の見通しが「間違っていた」と認め、円高反転の時期が想定より遅れるとの見方を示した。
似鳥氏は同日の決算会見で、今年3月ごろから急激に進行した円安について、従来は年後半に円高方向に反転し、8月ごろには1ドル=115円になると考えていた為替相場の見通しが間違っていたと認めた。
第1四半期業績が目標を下回ったことについて、「為替が予測を外れたのが一番大きいと思っている」とした上で、「会社始まって以来の、私にとっては苦い失敗」と反省しており、「このような失敗を二度としないようにしたい」と述べた。現状では年内には円高方向に転じると考えているが、それでも110円前後の水準には戻らないだろうとの見方を示した。
円相場は6月末に一時、1998年以来約24年ぶりの円安水準となる1ドル=137円台を付けた。
同社は前期(2022年2月期)で35期連続の増収増益を達成。似鳥氏の経済や為替相場の見通しには定評があり、成長の原動力の一つともなっていた。ニトリHDは商品などを海外から多く輸入しており、足元で進む円安・ドル高は業績に逆風となる。
ニトリHDは同日発表した決算で、今期の業績予想見通しを据え置いた。

 

●早朝の東京外国為替市場で円相場、1ユーロ = 141円を超える 7/2
7月2日6時12分頃、早朝の東京外国為替市場で円相場は1ユーロ = 141円を超え、前日17時頃の価格(141.35円)から0.33円(0.23%)上昇となる141.02円となった。
●為替相場 6/27〜7/1 7/2
27日からの週は、波乱含みとなった。週前半は円安の動きが先行したが、週後半は株安とともに円高方向に押し戻されている。パウエル米FRB議長がECBフォーラムで、「米経済は金融引き締めに十分対応できる状況にある」と発言。市場に一段の利上げ加速を想起させた。利上げが景気を冷やすことを警戒も、何としてでもインフレを抑え込みたいとの強いメッセージが発せられていた。発言直後には日米金利差拡大観測の再燃でドル円は137.00近辺と、1998年9月以来の高値水準をつけた。しかし、その後は株安とともに円高方向に押し戻されている。ドル円は一時134円台に。パウエル議長の発言以降は、市場に米経済成長の鈍化懸念が台頭している。株安とともに米債利回りが低下するなかで、為替市場ではリスク警戒のドル高圧力が広がった。ユーロドルは1.06台をつけたあとは一時1.03台まで下落。ポンドドルは1.23台から1.20台に下げる場面があった。週末に発表されたユーロ圏消費者物価速報は前年比+8.6%を上昇が一段と加速、ECBの利上げ幅拡大への思惑となった。一方で、英経済指標は総じて弱く、先行して利上げを開始した英中銀の打ち止めへの思惑がでてきたようだ。
27日
東京市場では、ドル円が下に往って来い。週明け午前は売りが先行、135円台前半から134.60付近へと軟化した。先週後半から強まっている米国のリセッション懸念が重石。米株先物・時間外取引が軟調に推移したことも警戒感を誘った。しかし、その後は買い戻しの動きに転じた。日経平均が朝から堅調で、その後も上げ幅を拡大。米株先物にも買い戻しが入り、プラスに転じる場面も。米債利回りも上昇。午後には135円手前まで下げ渋った。ユーロドルは朝方のドル安局面で1.0580付近まで買われたが、上値追いの勢いもなく、その後は揉み合いとなった。ユーロ円は早朝に143円手前まで買われたあとは、142円ちょうど付近まで下落と振幅。午後には142円台半ばへと下げ渋り。
ロンドン市場は、円売りが優勢。米株先物・時間外取引とともに欧州株も買われており、先週末に米株が買われたリスク選好の流れが継続している。債券は売られており、米10年債利回りは一時3.17%台後半まで上昇。英欧などの主要経済指標の発表に欠けるなかで、週明けロンドン市場はリスク動向に反応している。ドル円は東京午前に134円台半ばまで下落したが、その後は再び買われている。ロンドン序盤には135円台乗せから135.30台へと上昇。ユーロ円も東京午前に142円手前まで下押しされたあとは、ロンドン時間には143円台乗せ。ポンド円は165.10台を安値にロンドン序盤には166.50台まで買われた。ただ、ポンドは対ユーロでの売りに押され166円付近へと上昇一服。ドル相場はまちまち。ユーロドルが1.0550付近から1.0590付近へと買われる一方で、ポンドドルは1.22台後半から一時1.2330付近まで買われたあとは、再び1.2270付近へと押し戻されている。ユーロドルの底堅い動きを受けて、ドル指数は先週からやや水準を下げている。
NY市場は、全体的に様子見ムード。ドル円は135円台での小幅の上下動。135円台半ばでは上値を抑えられるも、135円ちょうど近辺では下げ止まっている。下値での押し目買い意欲が強く円安の動きがドル円の下値をサポートしている状況に変化はない。日銀が主要国の中で唯一、金融緩和姿勢を維持する中で、各国との金融格差拡大が引き続き円売りを誘発している。一方、ドルの方は戻り売りが優勢。市場はリセッション(景気後退)へのリスクを高めており、FRBの利上げサイクルが市場の期待ほど高まらないのではとの見方も。米金利上昇観測の一服で足元の株式市場の地合いが改善しており、これがドルを圧迫しているとの指摘も。ユーロドルは一時1.06台に上昇。ただ、ユーロ圏の景気後退リスクにより、ユーロの回復には時間がかかるとの声も聞かれる。ウクライナ危機をめぐる欧米の対ロシア制裁によるガス不足が欧州で続く可能性が高く、市場参加者はEUの大部分で景気後退の恐れがあるとしている。ポンドドルは一時1.23台を回復。ポンドは最近、景気敏感通貨としての性格を帯びつつあり、株式市場との正の相関性が高い。株式相場の改善はポンドにとって追い風になるという。ただ、英国はEUとの貿易摩擦を引き起こすリスクがある。
28日
東京市場で、ドル円は135円台前半を中心に振幅。朝方に135.60手前まで買われたあとは、135.10付近まで下押し。午後にはじり高の動きとなった。午前はダウ平均先物が100ドル超安となったが、午後には買い戻しが入りプラス圏を回復。日経平均も底堅く円売りが根強い印象だった。ユーロ円も午前中には143.40台から142.80台まで下落したが、午後には143.20台まで値を戻している。株式動向をにらんで円相場が上下動した。
ロンドン市場は、ドル円が再び136円台に乗せている。クロス円も買われて、円売りの動きが広がっている。ロンドン朝方に中国が入国者の隔離期間を短縮と報じられると中国株が買われた。米株先物も時間外取引で上昇に転換、欧州株は堅調に推移している。リスク警戒感の後退が円売りを促している。また、米10年債利回りが3.17%付近から3.25%付近へと上昇しており、日米金利差拡大観測が再燃していることもドル円を押し上げている。ドル円は135円台半ばを上抜けて136円台乗せから136.20近辺に高値を伸ばした。ユーロ円は143円台前半から一時144円台乗せ。ポンド円は166円付近から167円手前まで上昇。豪ドル円は93円台後半から94円台後半まで買われた。対ポンドではユーロ買いが優勢。ラガルドECB総裁は、7月の0.25%利上げ、9月はインフレ次第でより大幅な利上げも、と従来の発言内容を再確認した。ラトビア中銀総裁は7月の0.50%利上げ検討を主張。ベルギー中銀総裁は、9月の50bp利上げが適切、200bpの利上げは比較的早期に必要とした。
NY市場では、リスク警戒のドル買いが再燃。この日は米株式市場が急落している。ロンドン市場で136円台に乗せたドル円は、NY時間には136.30台まで上昇。136円台に高止まりしている。直近高値の136.71レベルが上値のメドに。ユーロドルは1.05ちょうど付近まで一時下落したあとは1.0540付近までの反発にとどまっており、ロンドン市場午前からの上値重い展開が続いている。ポンドドルも上値が重く、1.22台を割り込んだ。本日は6月調査の米消費者信頼感指数が発表され、100を下回り、昨年2月以来の低水準となった。インフレが米消費者のセンチメントを弱め続けている。ただ、為替市場の反応は限定的だった。ラガルドECB総裁がポルトガルのシントラで開催されているECBの年次フォーラムに出席しており、従来と変わらずの慎重な見通しを示した。7月に0.25%ポイントで利上げを再開し、9月には大幅利上げの可能性を示唆する内容を繰り返した。
29日
東京市場は、調整の動き。前日に136.30台まで買われたドル円は135.90付近へと下押しされた。前日の米株安を受けて、日経平均やアジア株などが売りに押される展開、米10年債利回りも上昇一服となり3.11%台まで低下した。ただ、ドル円の下押しは浅く、午後には136.20台まで買い戻された。ユーロドルは1.05台前半と前日のNY市場終盤の水準で揉み合った。しかし、午後1時半に発表されたドイツ西部ノルトライン・ヴェストファーレン州の消費者物価指数が予想外の前月比マイナスに落ち込み、前年比の伸びも鈍化したことがユーロ売りを誘った。ユーロドルは1.05台割れ目前に。ユーロ円は143円台前半での推移から、142円台後半へと下落した。ロンドン時間に発表されるドイツ全体の消費者物価指数の鈍化への思惑が広がったもよう。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。前日の米株安を受けて、欧州株が軟調に推移。米株先物の反発力も弱いなかで、ロンドン序盤はリスク警戒の円高・ドル高の動きが先行した。ドル円は135.79近辺まで一時下落。山岡元日銀局長が、物価上振れなら日銀は円安を放置できなくなる、債券利回り上限の調整の可能性も、と指摘したことに反応した面もあった。しかし、その後は米債利回りの上昇とともに買われ、136.50台へと上昇。6月22日につけた24年来の高値水準136.71レベルを試す展開となっている。ユーロドルは序盤に1.0486近辺まで下押しされた。ドイツ州単位の消費者物価指数が下振れしたことが影響していた。その後は1.05台前半へと下げ渋り。ユーロ円の142円台半ばから143円台後半への上昇が下支えとなっている。ポンドドルは1.22台が重くなり、1.2150台へと軟化。ドル買い圧力に押されている。ポンド円は165.50付近から166.20付近で下に往って来い。株安やドル円上昇など、米金融当局の利上げ加速観測を市場は意識しているようだ。
NY市場では、ドルが一段高。ドル円は一時137円ちょうど近辺まで上げ幅を伸ばした。1998年9月以来の高値水準となった。今週は米債利回り低下でドル円も伸び悩んでいたが、今日の動きで上値追いのムードが再加速している。本日はポルトガルのシントラで開催されているECBの年次フォーラムでパウエルFRB議長が講演を行っており、「米経済は金融引き締めに十分対応できる状況にある」と述べ、為替市場も敏感に反応したもよう。ユーロドルは1.05台割れから一時1.0435近辺まで下落。ポンドドルは一時1.21ちょうど付近まで下落。ECBの年次フォーラムにベイリー英中銀総裁が参加し、「インフレ持続ならより強力に行動する」と利上げ姿勢を示す一方で、英経済の減速リスクにも言及していた。今日のパウエルFRB議長の発言は、ラガルトECB総裁やベイリー英中銀総裁よりも利上げの副作用に対してより楽観的な印象を与えたようだ。
30日
東京市場では、ドル円の上値が重くなった。前日に137.00レベルの高値をつけたあと136円台後半で東京朝を迎えた。再び買われたが136.80付近までにとどまり、136.60台へ。午後には米株先物・時間外取引に下げで日経平均が下げ幅を拡大、リスク警戒の動きに。ドル円は136.30近辺へと軟化した。ユーロ円は142円台後半での揉み合いから142円台半ば割れへと円買いの動きに押された。ユーロドルは1.04台半ばでの揉み合い。ポンドドルは1.2120台から1.2150近辺へと小高い動き。
ロンドン市場は、リスク警戒の動き。欧州株が大幅安となり、独仏株価指数はいずれも2.5%超安と下げ幅を拡大。前日のパウエルFRB議長発言の影響が続いている。同議長は、「米経済は金融引き締めに十分対応できる状況にある」と発言。市場に一段の利上げ加速を想起させた。利上げが景気を冷やすことを警戒も、何としてでもインフレを抑え込みたいとの強いメッセージが発せられていた。発言直後は137円ちょうど付近まで買われたドル円だったが、その後は株安とともに上値が重くなった。ロンドン時間には136円台半ばを下回ると一時135.97近辺まで下押しされた。ただ、その後は136円台前半へと持ち直しており、日米金利差拡大観測が下支えとなっているもよう。ユーロ相場が軟調。独雇用統計が予想外に悪化したことが重石。ユーロドルは1.04台割れ水準、ユーロ円は142円台割れ水準へと下落している。対ポンドでもユーロは軟調。ポンドはユーロに連れ安。ポンドドルは1.21台後半へと反発も、再び1.21付近へと下押しされている。ポンド円は165円台での振幅も足元では165.20付近と上値重く推移。
NY市場で、ドル円は135円台に下落。朝方発表になった米PCEのデータが予想を下回ったことで、インフレへの懸念が一服。また、米株式市場に売りが強まったことや、米国債利回りの低下、原油相場が下落していることもドル円の戻り売りにつながったようだ。米10年債利回りは一時3%を下回った。前日は137円ちょうどまで上昇する場面があったが、本日は期末とあって、積み上がったロングポジションの調整が出た可能性もありそうだ。後半には135円台半ばまで下落。米経済は年末にリセッション(景気後退)に向かう可能性が高いとの見方がでていた。ユーロドルは下に往って来い。ロンドン時間にはドル買いが優勢となり、1.04を一時割り込んだ。しかし、朝方発表の米経済指標を受けてドルの戻り売りが強まると、ユーロドルは1.0480台まで反発、ロンドン時間の下げを取り戻す展開となった。ポンドドルも買い戻されて1.21台後半まで上昇。ただ、市場では英経済の先行き不透明感が広がっており、今後のテクニカル・リセッションの可能性も指摘されている。英中銀は次回8月の利上げが見込まれているが、それで利上げはいったん停止する可能性も。
1日
東京市場は、リスク回避の動き。ここにきて米リセッション懸念が広がっている。ドル円は前日の海外市場で売られた後、朝方には136円手前まで買われたが、調整の動きが一巡すると再びドル売り・円買いが強まった。午後には135円割れとなる場面があった。日経平均が下げ幅を拡大、米株先物・時間外取引の下落などが重石。今晩の米ISM製造業景気指数が弱めの数字となる思惑も円買いを誘った。ユーロ円は141円台半ば割れから一時142円台を回復も、その後はドル円とともに下落、141円台割れに。ユーロドルは1.04台後半でのもみ合い。円相場主導の展開で動きにくかった。米10年債利回りは3.02%付近から2.94%付近まで低下した。
ロンドン市場は、ポンド売りが継続している。東京市場からリスク警戒のドル買い・円買いの動きに押されたポンド相場だが、ロンドン時間に入ると一段安になっている。この日発表された英製造業PMI確報値が予想外に下方修正されたことや、消費者信用残高が縮小したことなどに反応している。米欧に先駆けて利上げを開始した英中銀だが、市場では次回の利上げのあとはしばらく様子を見るとの思惑がでているもよう。これに対して、ECBはようやく7月から利上げを開始する方針、米FRBは金融引き締めを継続する姿勢を示している。相対的にポンドが売られやすくなっているようだ。ユーロ圏消費者物価速報は前年比+8.6%と前回の+8.1%から一段と上昇加速した。ポンドドルは1.20台半ばへ、ポンド円は163円台割れ目前へと下落。ユーロポンドは0.86台後半に買われている。ユーロドルは1.04台前半では下げ渋り1.04台半ばから後半での推移。ユーロ円は序盤に141円台割れとなったあとは141円台後半まで反発する場面があった。ドル円は134.75近辺まで下押しされたあとは135.70付近まで反発。円相場は株式動向に敏感に反応している。欧州株は売りが先行したが、プラス圏へと切り返した。ただ、足元では再び下げに転じるなど不安定な推移となっている。ドル円、クロス円ともに上昇は一服。
NY市場はリスク回避の雰囲気が一時広がり、為替市場はドル買いの反応が見られた。一方、米国債利回りの低下や株安による円高の動きも見られ、ドル円は再び134円台に下落する場面が見られていた。朝方発表になったISM製造業景気指数が米リセッション(景気後退)への懸念を高める内容となったことが市場を圧迫。本日の21日線は134.60付近に来ていたが、目先の下値メドとして意識される。 

 

●ドル高円安基調に変わりなし? FOMC議事要旨の公開も 7/3
投資情報会社・フィスコが7月4日〜7月8日のドル円相場の見通しを解説する。
今週のドル円は底堅い値動きとなりそうだ。一時137円00銭と1998年9月以来約24年ぶりの高値圏に浮上した。1ドル=136円台では高値警戒感から利益確定を狙ったドル売りが観測されており、ドルは上げ渋っている。ただ、日米金融政策の違いに着目した為替取引は縮小していないことから、ドル高円安の基調に変わりはないだろう。
6月28日に発表された消費者信頼感指数は節目の100を下回り、2021年2月以来となる低調な内容を示した。他にも予想を下回る経済指標が目立ち、米国経済にリセッション懸念が広がり始めた。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)は7月の連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で0.75ポイントの追加利上げを決定するとみられており、金融引き締め姿勢を崩していない。
今週は7月6日に公表されるFOMC議事要旨(6月14-15日開催分)で0.75ポイント利上げの継続などタカ派的な内容なら、ドルを押し上げる要因となる。なお、欧州中央銀行(ECB)は7月と9月に預金金利の引き上げ計画しており、ユーロ・円の押し上げ要因になるが、米ドル・円の取引にもある程度の影響が及びそうだ。他の主要中央銀行も追加的な引き締めの意向でクロス円は下げづらく、ドル・円相場を支える見通し。
●円19%下落、東京株8%安 日米金利差は2倍に―2022年上半期 7/3
2022年上半期(1〜6月)の金融市場で円安と株安が急速に進んだ。6月末の水準を昨年12月末と比べると、円の対ドル相場は約24年ぶりの安値圏となる1ドル=136円台後半へ約19%(約22円)下落。日経平均株価は2万6393円04銭へ約8%(約2400円)値下がりした。円安が株高にはつながらなくなってきた。
長期金利で比べた日米金利差は約1.5%から2倍の約3%へ拡大、低金利の円を売ってドルを買う動きが強まった。
金利差が拡大したのは、米国の中央銀行がインフレ退治へ3月から利上げに着手したため。米利上げペースは3月の0.25%から5月に2倍の0.5%、6月に3倍の0.75%へ加速。日銀が景気の下支えへ大規模な金融緩和を続けているのとは対照的だ。金融政策の方向性の違いは鮮明で、円安・ドル高傾向は続く可能性がある。
コロナ禍からの経済活動の回復で昨年後半から目立ち始めた世界的な物価の上昇は、ロシアが2月にウクライナ侵攻を始めた影響で勢いを増した。戦争でエネルギーと食料の価格が高騰したためで、原油先物相場の代表指標となる米国産標準油種WTIの終値は、半年で4割上昇した。
消費者物価指数の上昇率(前年同月比)を見ると、米国は昨年12月の7.0%から今年5月には8.6%と40年5カ月ぶりの高い伸びを記録した。日本の全国消費者物価もこの間、消費者の実感に近い総合指数で0.8%から2.5%へ上昇した。 

 

●円相場、135円44〜48銭 7/4 
4日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=135円44〜48銭と、前週末(135円29〜29銭)に比べ15銭の円安・ドル高となった。 
●1ドル=136円…なぜ「異常な円安」は止まらないのか? その「根本的な理由」 7/4
24年ぶりの円安水準
外国為替市場で、わが国の円が米ドルをはじめとする主要な通貨に対して減価傾向で推移している。
6月22日には一時、ドル/円の為替レートが136円70銭台まで下落(ドル高・円安が進行)した。
24年ぶりの円安水準だ。
年初来から6月28日までの間、円はドルに対して15.5%下落した。
為替レートの理論値に関する考え方の一つである“購買力平価”などに比べ、現実に取引されている円はかなり安い。
その背景として、1990年以降にわが国経済が直面してきた複数の問題が深刻化していることが大きい。
その一つが内需の低迷だ。
需要が増えないため、わが国の企業は海外の企業に比べて購買力が低下している。
足許では、世界全体でインフレが最大の問題となっている。
経済が脱グローバル化し、世界全体で企業がコストプッシュ圧力の高まりに直面している。
内外金利の拡大観測が加わることによって主要通貨に対して円は弱含みの展開が予想される。
輸入物価の上昇などによって生活水準の引き下げを余儀なくされる家計は増えるだろう。
購買力平価を「大きく下回る」円安
為替レートの水準を説明する理論の一つに、“購買力平価”がある。
購買力平価とは、世界各国で特定のモノの価格が、単一の価格に収れんすること(一物一価の法則)を前提にしている。
その上で、10年や20年など長期の時間軸でみると、同じモノの価格は、一つの水準に落ち着くと考える。
英エコノミスト誌が公表する“ビッグマック指数”は、各国で販売されているビッグマックが同じ価格になる為替レートがいくらかを示す。
2022年4月に国際通貨基金(IMF)が公表した“世界経済見通し”によると、米ドルと円の購買力平価は2021年末で96.51円、2022年末に91.15円と予想されている。
2021年末の購買力平価に比べ、足許のドル/円の為替レートは35円程度も円安に振れている。
これが、経済の基礎的条件=ファンダメンタルズから乖離した円安進行、と言われるゆえんだ。
影響を与えているのは、為替取引のほとんどが資本取引であることだ。
為替取引は貿易取引と、クロスボーダーでの株式や債券、通貨などの売買からなる資本取引の二つに分けられる。
貿易取引は基本的には各国の経済の実力を反映する傾向にある。
為替取引全体に占めるウェイトは10%程度だ。
なお国際決済銀行(BIS)によると2019年4月の一日平均の通貨取引額は6.6兆ドル(約891兆円)、その7%が非金融企業などによるものだった。
それに対して、資本取引は全体の90%近くを占める。
主要投資家はわが国と米国など、各国経済の今後の展開を予想する。
現在、米国の個人消費は依然としてしっかりしている。
投資家は金利が低い円で資金を借り、より多くの金利収入が期待できる米ドルを買い、利得を目指す。
足許のように日米の金融政策の違いが鮮明な状況では円売りが増加し、売りが売りを呼ぶ形でドル高・円安の流れが強まる。
円安の「負の側面」が加速する
わが国の金利が低水準で推移してきた最大の要因は、自律的な需要の創出が難しいことにある。
1990年はじめにバブルが崩壊し、わが国の経済は長期の停滞に陥った。
実質GDP成長率は伸び悩んだ。
国税庁によると1997年に平均給与は467万3000円に達した後は増えていない。
その背景には、不良債権処理の遅れによって、経済全体に過度なリスク回避の心理が広まったことがある。
また、1990年代以降、冷戦の終結によって世界経済はグローバル化した。
国境のハードルが下がり、世界の企業は最もコストの低いところでモノを生産し、最も高く売れるところで供給する体制を強化した。
グローバル化の最大のベネフィットは、世界的に景気が回復しても物価が上昇しづらくなったことだ。
その状況下、わが国の企業は環境の変化に対応することが難しく、グローバル化に後れを取った。
リーマンショック後は国内企業の海外進出が加速し、徐々に本邦企業はグローバル化のベネフィットを手に入れ始めた。
しかし、2018年以降の米中対立、さらには2月24日のウクライナ危機の発生によって世界経済は脱グローバル化し始めた。
各国の企業はサプライチェーン(供給網)の寸断などに直面し、コストプッシュ圧力が急速に高まってインフレが進行している。
その状況下、わが国経済にとって円安のマイナス面が増える。
当面、円は主要通貨に対して弱含むだろう。
内需が縮小均衡しているため、国内で持続的に給与所得が増加し、可処分所得が増える展開は期待できない。
他方で、世界的に資源価格はピークアウトしたあとも高止まりし、わが国の交易条件は追加的に悪化しやすい。
電力料金や食品価格の上昇に対応するために生活水準の引き下げを余儀なくされる家計が急増する展開が懸念される。 

 

●円相場、135円84〜84銭 7/5 
5日の東京外国為替市場の円相場は、午前9時現在1ドル=135円84〜84銭と、前日(135円44〜48銭)に比べ40銭の円安・ドル高となった。  
●外為 1ドル136円24銭前後と大幅なドル高・円安で推移 7/5
5日の外国為替市場のドル円相場は午後4時時点で1ドル=136円24銭前後と、前日午後5時時点に比べ80銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=142円15銭前後と90銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●東京円、64銭安の1ドル=136円08〜09銭 7/5
5日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比64銭円安ドル高の1ドル=136円08〜09銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは同10銭円高ユーロ安の1ユーロ=141円17〜21銭で大方の取引を終えた。
●NY円、135円後半 7/5
連休明け5日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前週末比66銭円安ドル高の1ドル=135円83〜93銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0259〜69ドル、139円43〜53銭。
日米の金融政策を巡って方向性の違いが意識され、円売りドル買いが優勢となった。欧州経済の減速懸念からユーロが対ドルで急落して一時、2002年12月以来、約19年半ぶりのユーロ安ドル高水準を付けた。ユーロを売ってドルを買う動きが加速し、その影響で対円でもドルが買われた。
●ルーブル8割高・止まらぬ円安 4〜6月、実態は「ドル1強」 7/5
4〜6月の外国為替市場で米ドルの上昇が鮮明になった。インフレ抑制を急ぐ米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを一気に速め、ドルに資金が集まった。円の弱さが際立った1〜3月とは異なり、ドル以外の多くの主要通貨が下落した。ロシアのルーブルが8割高と急騰ぶりが目を引くが、市場の潮流は「ドルの一人勝ち」だ。ドル高は新興国のインフレに拍車をかけ、世界経済の減速懸念を強める。
円やユーロなど主要通貨に対するドルの強さを示すドル指数は6月末に2002年12月以来20年ぶりの高水準をつけた。3月末対比でも6%超上昇した。金融緩和を続ける日本の円相場は6月下旬、一時1ドル=137円台に下げ、4〜6月の下落幅は15円程度に達した。幅広い通貨に対する円の弱さが際立った1〜3月からドル高の要素が加わり、円の対ドル相場は下落が加速した。
幅広い貿易相手国・地域と比較した各通貨の総合的な強さを表す名目実効為替レートである日経通貨インデックス(2015年=100)について6月末時点の値を3月末と比較した騰落率をみると、ロシアのルーブルの上昇率が81%と全25通貨のなかで最も大きかった。ウクライナ侵攻に絡む経済制裁でもエネルギー輸出は続いている半面、輸入は急減した。外貨流出を防ぐためだった資本規制もルーブルの売り需要を封じた。
特殊な事例であるルーブルを除くと米ドルやこれに連動する通貨高が目立ち、実質的に「ドルの一人勝ち」の様相を呈した。ドルの4〜6月の上昇率は4.5%。高インフレの継続をみてFRBが利上げを加速し、基軸通貨の高い利回りにひかれてマネーが集まった。スイスフランも中央銀行が6月に予想外の大幅利上げを決めて買いが集まったが、上昇率は1.6%にとどまった。
ドル高は米国にとっては「インフレ抑制要因になる」(パウエルFRB議長)半面、グローバル展開する企業は価格競争力が低下し、海外で稼いだ収益もドル換算で目減りする。マイクロソフトはドル高を主因に2022年4〜6月期の収益見通しを下方修正した。三菱UFJ銀行の井野鉄兵チーフアナリストは「米国にとっても手放しで歓迎できる状態ではない」と指摘する。
ドル1強の余波は資源高に苦しむ世界経済にも広がる。世界の貿易取引の多くはドルで決済され、ドル高は他通貨の購買力低下に直結する。現地通貨建ての輸入価格が膨らみ各国のインフレに拍車をかける。
とくに打撃を受けやすいのが対外収支にもろさを抱え、ただでさえ高インフレ体質が残る新興国だ。MSCI新興国通貨指数は4〜6月に4.5%ほど下落した。
資源をもたない国では資源高で貿易赤字が拡大し、自国通貨安に拍車がかかりやすい。インドの通貨ルピーは6月末に1ドル=79ルピー前後と対ドルで過去最安値を更新した。2月から外貨準備が減少しており、当局が通貨防衛のためにルピー買い・ドル売り介入に踏み切っているとの思惑も広がる。
韓国のウォンも足元では1ドル=1300ウォン程度と13年ぶりの安値圏にある。資源国であるブラジルのレアルも6月末は1ドル=5.2レアル前後と3月末比で10%近く下落した。みずほ銀行の堀内隆文マーケット・エコノミストは「世界経済の減速が意識されるなか資源の輸出も伸びず、米金利上昇を背景とした通貨安の回避は難しい」と指摘する。
新興国の通貨安はドル建て債務の返済負担の増加につながる。国際決済銀行(BIS)によると、新興国のドル建て債務は昨年末時点で4.2兆ドルと10年ほどで約2倍となった。米金利の上昇は債務の借換時に金利負担を高める。米金融引き締めとドル高が新興国の債務問題に波及すれば、世界経済の新たな火種になりかねない。 

 

●円安はいつまで?円安転換材料と2022年下半期の注目通貨ペアを3つ紹介 7/6
2022年7月現在、日本と海外の政策金利の差が拡大するという思惑から、円安が継続しています。日本と他国の金利差の拡大が主要因です。
世界的に止まらないインフレーションを背景に、世界各国で政策金利を引き上げています。一方で日本は、日銀が目標としている物価目標2%は達成しているにもかかわらず、緩和姿勢は維持され、政策金利が引き上げられる兆候がありません。
物価上昇が抑えられていること、いい物価上昇ではなく、コストプッシュ型の悪い物価上昇であることが、緩和路線を維持している理由です。
円安論調が強まり、機関投資家も個人投資家も円安方向の目線で固まっている中、円安はいつまで継続するか、プロトレーダーである筆者が解説していきます。また、今後注目の通貨ペアも紹介します。  ( 本記事は7月4日時点の情報です)
1.円安が転換すると考えられる材料2つ
円安トレンドが転換する材料を2つ解説していきます。
   1-1.米国利上げペースが後退
最初の材料は「米国の利上げペースが後退すること」でしょう。円高圧力というよりは、米ドル安の動きからドル円中心にクロス円が動いているため、ドル円が下落するとクロス円全般が下落するという考え方です。
マーケットは、7月のFOMCで、米国が0.5%か0.75%の利上げを行うことを織り込んでいます。しかし、今月のPCEデフレーターの数字からインフレ懸念が若干鈍化しました。また住宅市場でも販売価格が高値で売れなくなってきており、在庫が増加しているニュースが出ている等インフレが落ち着いてくる兆しが出てきています。
7月CPIの結果次第では、9月以降の米国の利上げ織り込みが低下する可能性があります。米国債金利が低下し、期待インフレ率も大幅に低下していることから、トレンドが続いた場合はドル円は下落傾向になり、クロス円は調整ムードになる可能性があります。
   1-2.日銀金融政策の変更
日銀は、世界とは真逆に緩和路線を続けています。一方で、消費者が感じる物価上昇も上昇してきており、消費マインドに影響を与えています。
実質所得は伸びておらず、日本の物価上昇が景気に悪い影響を与える可能性があるという側面が強まっています。緩和路線を転換するようなニュースが出た場合は、円ショートの巻き戻しが誘発され大きくクロス円は円高に振れることでしょう。
日銀の政策転換は、指値オペがヒントになります。
現在日銀は日本国債の10年金利を0.25%に抑え込むために、金利が上昇する場合は国債の買い入れオペを行い、金利を押し下げています。しかしオペレーションの持続性には疑問があるとして、海外ヘッジファンドの一部が日本国債のショート(金利上昇方向)でポジションを大きく保有し始めています。日銀がギブアップすることに賭けているということです。
仮に日銀が金利上昇の押さえ込みを諦めた場合は、利上げ方向に転じる可能性が考えられます。日本円は上昇し、クロス円は円高方向に振れるでしょう。
また黒田総裁は来年3月までの任期となっています。任期満了前に総裁を変更する可能性もあり、黒田総裁が辞任となれば円高に振れる可能性があります。
2.下半期注目の通貨ペアを3つ紹介
下半期に注目の通貨ペアを3つ解説します。
   2-1.ドル円(USD/JPY)
まず1つ目はドル円になります。
2022年7月現在、135円という水準ですが、この数カ月で大きく円安に振れており、更なる円安予想もあります。行き過ぎた予想が出始めている以上、一旦上値は重くなりやすいでしょう。
円安が調整する材料もあるため、淡々とショートポジションを積んでおき、120円から130円まで円高に振れることに賭けてみるというFX戦略もあるでしょう。
ただし、現時点では逆張りのトレードになることは知っておきましょう。スワップポイントもドル円ショートはマイナスとなります。レバレッジ含めてリスク管理には注意しましょう。
材料が出始めてからエントリーを行うというスタンスでもいいでしょう。
   2-2.スイスフラン円(CHF/JPY)
2つ目の注目通貨ペアはスイスフラン円です。
スイスフランは欧州通貨の中ではリスク回避通貨です。キャリートレードを行う場合に売られる通貨ペアとして知られています。つまり日本円と同じ性質を持っているということです。
2022年7月現在、スイスは利上げが行われており、日本円との動きが逆になっています。スイスフラン円は、何十年振りぶりの水準にまで円安が進行しています。
逆の値動きになってはいるものの、スイスフランはリスク回避通貨という点では日本円と大きく変わりません。円高材料がで始めると真っ先に売られる通貨として選ばれる可能性があります。
スイスフランに馴染みのない方も、一度チャートをチェックしてみてください。
   2-3.ポンドドル(GBP/USD)
3つ目の注目通貨ペアは紹介するのはポンドドルです。
イギリスは輸入国であり、現在の食料品の高騰も含めた物価上昇は国内経済の物価に大きく影響を与えています。見通しでは10月以降物価上昇率が二桁に到達すると予想されています。二桁の物価上昇は政府としても容認できる水準ではないでしょう。
現在でも既に国内で賃上げを求めるストライキが起きていたりする中、悪い物価上昇になっており、実質賃金は上昇していません。株価や経済を悪化させてでもインフレを止めに行かざる得ない展開が予想されます。政策金利の引き上げから、イギリスポンドの上昇が起きる可能性があるのです。
現在既に通貨安となっており、輸入国として輸入物価も上がってしまっています。近いうちに歯止めをかけるでしょう。
米国は既に市場から大きな利上げを行うと織り込まれています。これから利上げを行うイギリスのイギリスポンドをロングし、利上げが一旦止まる可能性がある米ドルをショートにする、GBP/USDのロングというFX戦略も選択肢の一つでしょう。
3.まとめ
今回は円安トレンドが転換する際の材料を2つ紹介しました。円安を妄信せず、円高になる可能性も理解した上でトレードを行いましょう。また、下半期の注目通貨ペアを3つ紹介しました。紹介した通貨ペアは、2022年7月時点では逆張りのトレードになります。リスク管理には十分注意しましょう。
レバレッジを掛け過ぎず無理のない範囲で、材料が確認できてからエントリーを検討してみてください。
●ユーロ暴落をきっかけにドル全面高でクロス円も全面安 7/6
概況
ドル円は6月29日夜に137.00円をつけて2021年1月6日底102.57円以降の最高値を更新したところから7月1日に134.74円まで反落したものの135円割れを何度か買い戻されて底固さを見せ、7月5日午前には136.36円まで切り返していた。しかし欧州諸国の景況感悪化から欧州主要国の長期債利回りが低下し始めるとユーロドルが夕刻から急落、ポンドや豪ドル等へも売りが波及してドル全面高の様相となり、クロス円も大幅下落したこととリスク回避による円の買い戻しで5日夕刻には135.50円台へ下落、その後も136円台をつけると戻り売りにつかまり深夜には135.51円まで安値を切り下げていた。
7月6日午前序盤にはドル高が一服する中でリスク回避的な円の買い戻し圧力が再び強まり135.50円を割り込んでいる。
6月22日に136.71円へ上昇したところから6月23日夜に134.25円まで2.46円の下落を入れてから一段高したが、7月1日安値にかけて2.26円の下落からの反騰では高値更新へ進めずに失速しているため、やや大きな調整安を入れても高値更新へと進んできた強気な流れにヒビが入っている印象もある。6月23日夜安値から7月1日午後安値へと底上げしてきた支持線を割り込むようだと6月16日深夜にかけて直前高値から4円を超える下落規模となったことの再現となる可能性にも注意したい。
今晩はユーロ圏5月小売売上高、6月の米ISMサービス業景況指数、明日未明にFOMC議事録公開がある。
ユーロ暴落
ユーロドルは7月1日深夜安値1.0365ドルから反発して4日から5日午後にかけては1.040ドル台前半で推移していたが、欧州主要国の景況感悪化と株安・長期債利回り低下から急落商状に陥り、1.040ドル割れからは売りの連鎖反応で下げ足が早まり深夜には1.0233ドルまで暴落的な下落となった。
2017年1月3日底1.0341ドルを割り込み、2008年7月15日天井1.6035ドル以降の安値を更新、2002年12月に1ドル1ユーロのパリティレベルにあったところ以来の安値水準となった。
スペイン、イタリア、フランス等の景況感が悪化、ロシアからの天然ガス供給不安、欧米の金融引き締めによる景気後退懸念、中国で再び感染拡大が報じられたことなどが重なりリスク回避的な株売り債券買いで欧州主要国の長期債利回りが低下したことなどが入り交じっての急落だった。
ユーロ安に同調してポンドドルも1.20ドルを割り込み2021年6月1日天井1.4248ドル以降の最安値を更新、豪ドル米ドルも0.67ドル台へ急落して2021年2月25日天井0.8007ドル以降の安値を更新するなどドルストレートではドル全面高、クロス円は全面安となった。
NYダウは急落後に反騰、米長期債利回りは大幅低下
欧州株式市場が総崩れで英FT100指数が2.8%安、独DAXが2.9%安、仏CAC指数が2.7%安となり、NYダウも序盤に700ドル安を超えたが、米長期債利回り低下と売られ過ぎ警戒からの買い戻しで前日比129.44ドル安まで下げ幅を大きく削り、ナスダック総合指数は安値から400ポイント強の反騰で前日比194.39ポイント高とプラス圏へ戻した。世界連鎖株安にブレーキを掛けた印象もあるが、主要国の金融引き締めによるリセッション入りへの懸念が強まっており、やや乱調な展開を続けつつ年初からの調整安が継続しやすい状況にあると思われる。
一方で米長期債利回りは安全資産買いにより総じて低下した。指標の米10年債利回りは前日比0.07%低下の2.81%で終了したが、一時は2.78%まで低下した。6月14日に3.50%をつけて1昨年以降の最高値としたところから調整安に入っており、7月1日には一時2.79%まで下げ、7月4日の米国市場休場明けとなった5日の序盤は2.97%まで戻していたが株売り債券買いにより低下に転じている。
30年債利回りも0.07%低下の3.04%となったが、大幅利上げ継続感も変わらないために利上げに敏感な2年債利回りは0.01%低下の2.82%にとどまり、7月1日につけた2.73%割れには至らずに10年債利回りとは長短逆転(逆イールド)となった。
ドル円としては米長期債利回りの低下により昨年来の大上昇基調を継続しつつも勢いが徐々に鈍る状況となっていたが、欧米の長期債利回り低下が進む中では金利差からの円安よりもクロス円における円高がドル円にも波及しやすい状況にあると思われる。昨晩はひとまず戻したNYダウが再び下げるようだと世界的な景気後退感と株安長期債利回り低下がまだ続いてドル円も大きな調整安に陥る可能性もあるところと注意する。

 

●NY円、135円後半 7/7
6日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比02銭円安ドル高の1ドル=135円85〜95銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0178〜88ドル、138円33〜43銭。
朝方発表された米サプライ管理協会(ISM)の6月の非製造業景況指数が市場予想を上回ったのを背景に、相対的に投資リスクが低いとされる円を売ってドルを買う動きが優勢となった。
●外為 1ドル135円88銭前後とドル高・円安で推移 7/7
7日の外国為替市場のドル円相場は午前8時時点で1ドル=135円88銭前後と、前日午後5時時点に比べ46銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=138円40銭前後と50銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●円相場、135円94〜95銭 7/7
7日の東京外国為替市場の円相場は、午前9時現在1ドル=135円94〜95銭と、前日(135円43〜43銭)に比べ51銭の円安・ドル高となった。
●円相場、136円11〜13銭 7/7
7日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=136円11〜13銭と、前日(135円43〜43銭)に比べ68銭の円安・ドル高となった。
●米長期金利の低下でもドル安・円高に振れない理由  7/7
ドル円は3月以降6月中旬まで、米長期金利の上昇などを背景に大幅なドル高・円安が進行した
ドル円相場は、2022年3月以降、大幅なドル高・円安が進行する展開となりました。この理由の1つが、日米金融政策の方向性の違いです。米国では、3月に利上げが開始され、その後もインフレ抑制のため、大幅な連続利上げが行われています。一方、日本では、金融緩和が維持されており、その結果、日米の長期金利差が拡大し、ドル高・円安が進んだと考えられます。
実際、米国の10年国債利回りは、2月28日の1.83%水準から6月14日に3.47%水準へ達し、上昇幅は1.6%を超えましたが、日本の10年国債利回りの上昇幅は、この間わずか0.06%程度でした(取引終了時点での比較、以下同じ)。ドル円は同期間、1ドル=115円水準から135円47銭水準へ、20円47銭程度ドル高・円安が進み(ニューヨーク市場取引終了時点での比較、以下同じ)、やはり米長期金利の上昇が大きく影響したと推測されます。
しかしながら6月中旬以降、米長期金利が低下しても、ドル円相場はドル安・円高に振れていない
その後、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、大幅利上げによるインフレ抑制姿勢が明確に示されると、市場では米景気減速を織り込む動きが強まりました。米国の10年国債利回りは、6月14日の3.47%水準から7月6日の2.93%水準まで低下し、低下幅は0.5%を超えました。しかしながら、7月6日のドル円は135円95銭水準にあり、米長期金利が大きく低下したにもかかわらず、それほどドル安・円高は進みませんでした。
以下、この理由について考えてみます。はじめに、2月28日から6月14日までの期間について、主要33通貨の対米ドルの変化率を検証します。結果は図表1の通りで、主要通貨に対し、米ドルはほぼ全面高、日本円はほぼ全面安となっています。この期間は、原油高や米国の利上げペースに市場の注目が集まっていたため、米ドルが大きく買われ、金融緩和を続けている日本の円は大きく売られました。
理由は、ドル円を動かす主因が日米長期金利差から市場のリスク選好度合いに移ったためとみる
次に、6月14日から7月6日までの期間について、同じく主要33通貨の対米ドルの変化率を検証します。結果は図表2の通りで、米ドルと同様、日本円も主要通貨に対し、上昇していることが分かります。6月のFOMC後、多くの国で株価の不安定さが続くなか、為替市場ではリスクオフ(回避)の動きが強まり、米ドル、日本円などが買われました。そのため、強い通貨同士であるドル円は、小幅な値動きにとどまりました。
以上より、ドル円相場を動かす主因は、6月14日以降、「日米長期金利差」から「市場のリスク選好度合い」に移行したものと思われます。なお、過度な米景気減速懸念が後退し、市場がリスクオン(選好)に転じた場合、米ドルと日本円はともに売られ、ドル円はやはり小動きが予想されます。日銀が金融緩和の修正に動けば、大幅なドル安・円高の進行が見込まれますが、日銀は当面、緩和を維持する公算が大きいとみています。
●東証大幅反発、382円高 米国株上昇、円安を好感 7/7
7日の東京株式市場の日経平均株価(225種)は大幅反発し、終値は前日比382円88銭高の2万6490円53銭だった。前日の米国株式市場の上昇や、外国為替市場の円安ドル高進行を好感し、買い注文が優勢となった。
東証株価指数(TOPIX)は26・36ポイント高の1882・33。出来高は約12億7800万株。
前日の米国市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め政策の先行き不透明感が後退し、投資家心理が改善。ダウ工業株30種平均は反発した。東京市場も流れを引き継いだ。

 

●NY円、136円近辺 7/8
7日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比10銭円安ドル高の1ドル=135円95銭〜136円05銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0156〜66ドル、138円11〜21銭。
米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
●NY円、下落 1ドル=135円95銭〜136円05銭 日米金利差の拡大で円売り 7/8
7日のニューヨーク外国為替市場で円相場は下落し、前日比10銭円安・ドル高の1ドル=135円95銭〜136円05銭で取引を終えた。米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大を見込む円売り・ドル買いが優勢だった。米雇用統計の発表を8日に控え、積極的な売買は手控えられた。
米長期金利が終値で2.99%と前日終値から0.06%上昇し、円売りを促した。7日は米連邦準備理事会(FRB)のウォラー理事が高インフレについて「減速の兆しがみえない」と指摘し、26〜27日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも通常の3倍にあたる0.75%の利上げを支持する姿勢を示した。FRBの積極的な金融引き締め姿勢も引き続き円の重荷だった。
もっとも、取引終了にかけて円は下げ渋った。8日発表の6月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数の伸び悩みや賃金上昇の高止まりが予想されている。市場では「統計発表後の米長期金利の反応が読みづらく、ドルの買い持ち高を中立方向に戻す円買い・ドル売りが出た」(邦銀の為替トレーダー)との指摘があった。
円の安値は136円10銭、高値は135円56銭だった。
円は対ユーロで6日続伸し、前日比25銭円高・ユーロ安の1ユーロ=138円10〜20銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで4日続落し、前日比0.0025ドル安い1ユーロ=1.0155〜65ドルで終えた。一時は1.0145ドルと2002年12月以来のユーロ安水準をつけた。欧州中央銀行(ECB)が7日に公表した理事会の議事要旨で、大半のメンバーが7月は0.25%の利上げを支持していたことがわかった。大幅利上げを進めるFRBとの差が意識され、ユーロが売られた。
この日の高値は1.0196ドルだった。
●円が対ドルで上昇、安倍元首相が演説中に負傷との報道で=外為市場 7/8
8日午前の東京外国為替市場で、円が対ドル、対ユーロなどで急速に上昇した。共同通信によると、午前11時半ごろ、奈良市内の路上で街頭演説をしていた自民党の安倍晋三元首相が、不審な男に背後から襲われた。取材中の共同通信記者は、2発の銃声のような音を聞いたという。
それまで136円前半を推移していたドルは、報道が流れた直後から急落し135.63円をつけた。対ユーロも138円前半から137円後半へ円高が進行している。 
●東京外為 ドル、135円台後半=安倍氏銃撃で下落後は戻す 7/8
8日の東京外国為替市場のドルの対円相場(気配値)は、安倍元首相銃撃を受けて下落した後はユーロ安・ドル高などを背景に、1ドル=135円台後半に戻している。午後5時現在、135円83〜83銭と前日(午後5時、136円11〜13銭)比28銭のドル安・円高。
ドル円は早朝、135円90銭台で取引された後、仲値にかけて実需筋の売り買いが交錯し、136円前後を中心にやや上下した。その後、正午前に安倍元首相が奈良県内で遊説中に銃撃された事件が伝わると、「リスクオフのムードから円買い・ドル売りが加速した」(FX業者)とされ、135円30銭台に急落した。午後は売りが一巡したことから135円50〜70銭前後で下げ渋り、終盤はユーロ安・ドル高の余波でドル円はやや買われる展開となっている。
安倍氏の銃撃事件で金融市場は「いったん大きく動揺した」(同)が、その後は「事件がもたらす政局などへの影響を見極めるムードが広がった」(為替ブローカー)という。終盤は「欧州勢の参入に伴ってユーロ売りが強まったが、ユーロドルの下げが先行してドル円をやや押し上げる方向に作用した」(同)と指摘されている。
ユーロは終盤、対円、対ドルで売りが強まった。特に、このところパリティー(等価)が視野に入ったユーロドルの下げが目立っている。午後5時現在、1ユーロ=137円30〜31銭(前日午後5時、138円73〜78銭)、対ドルでは1.0108〜0109ドル(同1.0192〜0192ドル)。
●ドル円は年末136円台予想も長期的には「円高・ドル安」に 7/8
6月10日に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)は、市場予想を上回る物価の伸びが確認された。これを受けて、6月14〜15日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、大幅利上げによるインフレ抑制姿勢が示され、多少の景気減速は止むを得ないとの考えが示唆された。
米金融当局がインフレ抑制に本腰を入れたことで、市場で大幅な連続利上げが織り込まれた一方、日銀は金融緩和の維持に強い姿勢を示しており、円安・ドル高が進む余地は拡大したとみている。当社は、これまで年内のドル円相場の予想レンジを1ドル=125〜137円台、年末着地は131円台としていたが、年内のレンジは1ドル=130〜142円台、年末着地は136円台と、年内の見通しを「円安・ドル高」方向に修正した。
米利上げの時期と幅については、7月に0.75%、9月に0.50%、11月と12月に各0.25%、来年3月に0.25%と予想している。ドル円が予想レンジの上限に近づく一つのシナリオとしては、原油価格や物価の伸びが高止まりし、市場が想定以上の利上げを織り込み、米長期金利が再び水準を切り上げていく展開が考えられる。
一方、ドル円が予想レンジの下限に近づく一つのシナリオとしては、日米の金融政策に変化が生じる展開が考えられる。米国については、市場で早期大幅利上げの織り込みが一巡し、利下げが意識される局面が挙げられる。日本については、来年4月の黒田日銀総裁の任期満了が近づくにつれ、政策変更の思惑が強まる局面が想定される。いずれも実際に発生すれば、日米金利差拡大を背景とする円安・ドル高の流れは反転しやすくなる。
今後の米国の景気については、大幅な利上げによって減速が見込まれ、人手不足などの供給制約が徐々に解消されることで、インフレはいくらか落ち着くと予想している。従って、短期的にはここからもう一段、円安・ドル高が進むものの、徐々に一服する可能性が高いだろう。しかも、現在のドル円の実勢レートは、購買力平価を踏まえると円安・ドル高方向にオーバーシュートして(行き過ぎて)いる(図表)。
ドル円は直近3カ月で20円超円安に振れているが、現状の日米物価格差が続いた場合、ドル円は長期的に見れば、ゆっくりと円高・ドル安地合いに戻る動きが想定されるだろう。
●円安、対ロシア制裁議論 12日に日米財務相が会談 7/8
鈴木俊一財務相は12日、来日するイエレン米財務長官と日米財務相会談を行う。米財務省が8日発表した。会談ではウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対する制裁の強化などについて議論。日本側は、急激に進む円安・ドル高をめぐり、為替の安定に向けた連携を確認したい考えだ。

 

●NY円、136円前半 7/9
8日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比12銭円安ドル高の1ドル=136円07〜17銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0181〜91ドル、138円55〜65銭。
米長期金利の上昇を手掛かりに、日米金利差の拡大を意識した円売りドル買いがやや優勢となった。
●NY円、続落 1ドル=136円05〜15銭 米景気懸念の後退で 7/9
8日のニューヨーク外国為替市場で円相場は続落し、前日比10銭円安・ドル高の1ドル=136円05〜15銭で取引を終えた。8日発表の6月の米雇用統計は労働市場の堅調を示した。米景気の先行き不安が後退し、投資家が運用リスクを取りやすくなったことから「低リスク通貨」とされる円は売りが優勢だった。
雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比37万2000人増と市場予想(25万人増)を大きく上回った。平均時給も高い伸びが続き、労働市場が強さを保っていると受け止められた。米経済が景気後退に陥るとの懸念が和らぎ、円売りを誘った。米長期金利が上昇し、日米金利差が拡大したのも円の重荷となった。
もっとも、円の下値は堅かった。来週発表の6月の米消費者物価指数(CPI)を見極めようと一方的な円売りは手控えられた。
安倍晋三元首相が8日、襲撃され死亡した。円相場への影響について、市場では「足元で大きな反応はないが、政府の政策運営や外交にどのような影響が出るかを長期的に見極めていく必要がある」(邦銀の為替ディーラー)との声があった。
円の安値は136円56銭、高値は135円80銭だった。
円は対ユーロで横ばいを挟んで8営業日ぶりに反落し、前日比45銭円安・ユーロ高の1ユーロ=138円55〜65銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで5営業日ぶりに反発し、前日比0.0025ドルユーロ高・ドル安の1ユーロ=1.0180〜90ドルで取引を終えた。欧州の主要株価指数の上昇で投資家が運用リスクを取る姿勢を強め、ユーロ買い・ドル売りが優勢だった。
ユーロの高値は1.0191ドル、安値は1.0116ドルだった。
●円安「賞味期限」いつか 市場参加者は気もそぞろ 7/9
今年春以降、激しい円安・ドル高局面が続いている。だが為替相場が一方向に動き続けることはない。円安はいつ「賞味期限」を迎えるのか。市場参加者の間でも年後半に向け、そわそわする空気が漂い始めている。
市場がざわつくのには理由がある。これまで円安の根拠になっていた日米間の長期金利差が縮み始めたことだ。円相場と日米金利差のチャートを並べてみれば一目瞭然。4月以降、親密に重なり合っていた2本の線が明確に別行動を始めている。
為替相場は金利の高い通貨に流れやすい。春以降、米連邦準備理事会(FRB)が政策金利の引き上げにかじを切ったことから日米金利差が拡大。投資マネーは円からドルへ、どっと流れ込んだ。
ところが6月下旬から米長期金利が低下に転じる。当然、日米金利差も縮み始めたが、ここでねじれが生じた。激しい円安の流れに乗ってきた投資マネーは反対方向に突然かじを切られても、即座にブレーキをかけられない。
さて、どうしたものか。FRBの利上げが続くなかで生じた突然の米長期金利低下は、明確なトレンド転換なのか、一時的な小休止なのか――。市場参加者は現状を見極めきれず、そわそわする状況に陥った。
米長期金利が低下に転じたのは、FRBの急激な利上げが先行きの米景気後退を招くことに対する警戒感が強まったからだ。FRBのパウエル議長も6月下旬の米議会証言で「経済の軟着陸は非常に難しい」と語っている。国内外の金融機関で30年以上にわたって為替相場を見つめてきたマーケット・リスク・アドバイザリーの深谷幸司氏は「7〜9月期が円安のピークで、10〜12月期以降は相場の方向感が変わるだろう」と読む。
金利差の縮小にもかかわらず、即座に円高へと転じない理由として、需給要因を挙げる市場参加者もいる。為替相場を動かす基本材料は金利差と需給差。国際エネルギー価格の高騰を背景に、日本は今年に入って大幅な貿易赤字を計上し続けている。貿易赤字は円高要因になる輸出額よりも、円安要因になる輸入額の方が多い状態。金利差要因が消えても、需給差要因による円安圧力は続くとも考えられる。
だが需給要因には注意が必要だ。輸入価格高騰に苦しむ輸入企業はコストを抑えるため、少しでも円高の水準で円を売りたいのが本音。金利差の縮小で円高に転じる可能性が出てくれば、円を売るタイミングもぎりぎりまで遅らせる選択肢が浮かぶ。当面は輸入企業の円売りが円高の壁になっても、次第に壁は円高方向へと動いていく。
円安局面の持続に自信を持ちきれない理由は、ほかにもある。円相場の水準感だ。6月半ばには1ドル=135円台前半まで下落し、約24年ぶりの円安水準を記録した。次の節目は1998年の147円台になる。
もっとも当時は、日本の大手金融機関が相次いで経営破綻し、市場で「日本売り」と呼ばれていた時代。邦銀が海外の金融機関から外貨を調達する際に金利を上乗せされる「ジャパン・プレミアム」も発生していた。現在の日本経済の状況と比べると、当時と同じ水準まで円安が進むと考えるのは難しい。しかも年前半の円相場の下落幅はすでに22円に達し、40年ぶりの大きさに達している。
政府・日銀にとって、世の中から「悪い円安」と懸念される円相場の状況を長く放置することは難しい。円安がいつ賞味期限を迎えるのかは、政策運営を判断するうえで重要なポイント。政府の円買い介入や日銀の金融引き締めが話題に上り、市場参加者をより一層そわそわさせるのも無理はない。
ちなみに1998年の円安から円高への転換のきっかけは米国経済の先行き不安だった。アジア通貨危機がロシアを経由して米国の裏庭と呼ばれた中南米にも及び、米金利の低下を促した。
ウクライナ危機が欧州経済に動揺を与え、世界的な景気後退懸念がささやかれる現状は、どことなく当時と似た空気を漂わせる。だからこそ市場参加者は余計に円安の賞味期限が気になり始めたのかもしれない。 

 

●円安に「断固たる措置」を 7/10
市場のテーマはインフレから景気後退に移り、日銀の緩和政策を背景とした過度な円安は一服したもようです。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)はドル高を事実上容認し、ドル・円はなお上昇基調を維持。今後、為替介入で相場の上昇を抑制できるでしょうか。
足元で発表された米国の消費者信頼感指数やISM製造業景況指数が想定よりも弱い内容となり、インフレ高進と景気減速が同時に進むスタグフレーションの到来が懸念されています。アメリカのみならずユーロ圏やオセアニアにもその警戒が広がり、世界経済の先行き不透明感が深まってきました。そのため安全通貨買いに振れ、ドルと円への買いがドル・円相場を下押しする展開が続いています。
しかし、パウエルFRB議長は前週の討論会で、為替相場に「責任を負わない」と最近のドル高をなかば容認。一方、岸田政権が参院選前に閣議決定した「骨太方針2022」は大胆な金融政策や機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略で「アベノミクス」復活のような印象を与えました。参院選で与党が勝利すれば、日米中銀の政策方針の違いを背景にドル買い・円売り再開の可能性もあります。
東京商工リサーチによると、円安を原因とした6月中の企業倒産件数は5月に続きゼロでした。が、ウクライナ戦争などにより原材料や資材、燃料の高騰が中小企業の業績を圧迫。コロナ禍による業績の低迷から抜け出せないなか、円安がさらに進めば業績を悪化させると予想されます。そうなれば、政府・日銀がいずれ円安に歯止めをかけなければならない場面もあるでしょう。
主に日銀の緩和解除と政府の為替介入が考えられますが、日銀の政策転換は困難です。また、円買い(ドル売り)介入は外貨準備高の限度があるほか、政府保有の米国債の売却にもつながり、かえって日米金利差の拡大によりドル高・円安を招く危険もあります。そうした理由から、為替介入も不可能とみられています。といっても、「注視する」だけでは円売り安心感に一撃を食らわすことはできません。
世界を見渡すと、主要国から新興国まで多くの国々がドル高に伴う自国通貨安に苦しんでいます。例えば、インドは直物と先物を組み合わせてルピー買い介入を仕掛けましたが、逆にルピー安を助長してしまい、現在はスムージング介入に絞ったようです。また、ベトナムも積極的なドン買い(ドル売り)介入を繰り返しているものの、ドン安のペースを少々弱める程度にとどまっています。
日本では、ほとんどの市場関係者が国際的同意を得られないとの見方から為替介入に否定的です。ただ、自国通貨を防衛するのに、諸外国の同意を得たり手段を選んだりする必要があるでしょうか。常套句の口先介入だから、投機筋から「やる気がない」と見透かされてしまうのです。本当に「断固たる措置」なら、日本に追随する国もあるはず。そうした「協調介入」によるドル高阻止が待たれます。
●ドル円週間見通し 下げ渋り? 6月の米CPI発表には注意 7/10
7月11日〜7月15日のドル円相場の見通しを解説する。
今週のドル円は下げ渋る可能性がある。米リセッション懸念で利益確定のドル売りに下押しされる場面がありそうだが、日米金融政策の違いに着目した取引でドル買い・円売りは続き、ドル高円安の基調を維持される見通し。6月下旬から7月上旬にかけて発表された米経済指標は消費者信頼感指数やISM製造業景況感指数など低調な内容が目立つ。米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ高進を抑止するため引き締め姿勢を強めるものの、米金利安でドル売りに振れやすい。
外為市場の関心がインフレから景気に移りつつあるなか、7月13日に発表される6月消費者物価指数が市場予想を上回った場合、インフレ高進による米経済成長の鈍化が懸念される。また、15日発表の6月小売売上高は5月に予想外のマイナスとなったが、6月も弱い内容なら消費の減退が警戒されそうだ。
ただ、6日に公表された連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、インフレ高進を抑えるため引き締めに前向きな姿勢が示された。パウエルFRB議長は直近の討論会で「ドル高に責任を負わない」との見方を伝えており、ドル高進行を懸念していないことを示唆した。世界経済の先行き不透明感も警戒され、ユーロ圏は足元の弱い経済指標にエネルギー供給不安が追い打ちをかける。英国の政局流動化もあり、欧州通貨が一段安となった場合、ドル選好地合いとなろう。
一方、日本銀行は「インフレ上昇圧力は強まっているものの、安定的な上昇とは言えない」との見方を変えていないため、現行の金融緩和策を継続する方針を伝えている。欧米主要国などで景気減速への懸念が強まればリスク回避の円買いが拡大する可能性もあるが、ドル・円は日米金利差の取引で下値の堅さが顕著になりそうだ。 

 

●外為 1ドル136円17銭前後とドル高・円安で推移 7/11
11日の外国為替市場のドル円相場は午前8時時点で1ドル=136円17銭前後と、前週末午後5時時点に比べ34銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=138円51銭前後と1円23銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●外為 1ドル136円30銭前後とドル高・円安で推移 7/11
11日の外国為替市場のドル円相場は午前9時時点で1ドル=136円30銭前後と、前週末午後5時時点に比べ47銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=138円53銭前後と1円25銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●円相場、前週末から小動きで始まる 参院選に反応薄 7/11
11日早朝の外国為替市場で円相場は前週末から小動きで取引を始めた。朝7時すぎ時点では1ドル=136円10銭台と、前週末のニューヨーク市場の取引終了時点とほぼ同水準で取引されている。10日投開票の参院選で自民党が単独で改選過半数を確保したが、与党の大勝は事前の予想通りとの見方から材料視する取引は少なかった。 
●円安ドル高進む 1ドル=137円前半 24年ぶり安値を更新 7/11
11日の東京外国為替市場は一時1ドル=137円台前半とおよそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
先週末に発表されたアメリカの雇用統計が市場予想を上回り、日米の金利の差が意識されたことから、円売り・ドル買いが進みました。
●円安進む 1ドル137円突破、24年ぶり安値更新 7/11
7月11日の為替は円安ドル高が進んだ。日本時間9時過ぎに円安が加速し、一時137円前半となり24年ぶりの安値を更新した。11時現在も137円台で推移している。
先週末8日には、米国で非農業部門就業者数が発表となった。6月の非農業部門の就業者数は37万2000人増え、26万人前後と見られた市場予想を上回った。失業率は引き続き低水準を維持しており、需要の強さを示している。これにより米景気後退懸念が薄れ、次回の連邦公開市場委員会(FOM)会合でも大型利上げを実施する可能性が高まった。日米の金利差はさらに開く可能性が高く、このことが円売りを呼んだと見られる。
●円相場、136円80〜80銭 7/11
11日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=136円80〜80銭と、前週末(135円83〜83銭)に比べ97銭の円安・ドル高となった。 
●自民大勝で円売り加速、一時1ドル=137円半ばに…「年内140円台も視野」 7/11
11日の外国為替市場の円相場は円売りが広がり、一時、1ドル=137円半ばと、1998年以来、約24年ぶりの円安水準となった。参院選で自民党が大勝したことから、日本銀行による低金利政策が続くとの見方が広がった。
日本銀行が11日開いた支店長会議で、黒田東彦(はるひこ)総裁が大規模な金融緩和を継続する姿勢を改めて示したことも、市場参加者に、今後の日米の金利差拡大を意識させた。
東京市場は午後5時、前週末(午後5時)比97銭円安・ドル高の136円80〜82銭で大方の取引を終えた。
円は対ユーロでも売られ、同1円02銭円安・ユーロ高の1ユーロ=138円32〜36銭で大方の取引を終えた。
市場では、岸田首相は現在の大規模な金融緩和を支持しているとの見方が強く、「日銀が円安を是正するために金融引き締めに動く可能性はほぼない。円相場は年内に1ドル=140円台が視野に入る」(みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミスト)との見方も出ている。
●東京市場 7/11
週明け11日の東京市場はドルが堅調裡。早朝を安値に1円を超えるドル高の進行、早くも年初来高値を更新してきた。
先週末は、ウクライナ侵攻以来初めてとなる、中国の王国務委員兼外相とブリンケン米国務長官の会談が実施され話題に。また、昨日投開票された日本の参院選は、自民党が改選議席の過半数となる63議席を単独で獲得し大勝している。
そうした状況下、ドル/円は寄り付いた136円レベルを日中安値に右肩上がり。途中、黒田日銀総裁から「物価安定目標の実現を目指し、必要な時点まで大規模金融緩和策を継続する考え」が示されたことも材料視されると、ドル高・円安がさらに加速した。137.00円を超える137.25円レベルまで大幅上伸。その後はやや上げ渋る展開となったが、すでに底堅く、16時現在では137.00円前後で推移し、欧米市場を迎えている。
一方、材料的に注視されていたものは、「米中関係」と「安倍氏死去」について。
前者は、前述したように中国の王国務委員兼外相とブリンケン米国務長官の会談が実施され、米国サイドは「台湾情勢めぐり中国に懸念表明」、「中露関係への懸念」も示していた。それに対し、中国サイドは「対中追加関税を速やかに撤廃し、中国企業への一方的な制裁をやめるべき」と要求したほか、「台湾をめぐる内政干渉の停止」も求めたという。双方の議論はほぼ平行線をたどったと言えるかもしれない。なお、そののちブリンケン氏は、「米中首脳が数週間内におそらくテレビ形式で対話する」との見通しを指摘していた。
対して後者は、先週末8日突然の訃報が伝えられた「安倍元首相死去」をめぐり、週末にかけては世界各国の首脳などから弔意が相次ぐ。中国の習国家主席やプーチン露大統領からも弔電がとどいたほか、バイデン米大統領は岸田首相に直接電話し、弔意と憤りを伝えたという。またブリンケン米国務長官は、予定を前倒しして11日に日本を訪問。本日午前に岸田首相などと会談したもようだ。
●ドル円136.75近辺、ユーロドル1.0115近辺=ロンドン為替 7/11
ドル円は137.00付近でのもみ合いを下放れており、136.70台へと軟化。ユーロドルは1.0115レベルに本日安園を広げている。ユーロ円は139.00付近で上値を抑えられると、足元では138.50割れ水準へと軟化している。
東京市場では、週末の参院選での自民党大勝を受けた株高、黒田日銀総裁の金融緩和継続姿勢の確認などで円売りが進行、137.28レベルと24年ぶり円安・ドル高水準をつけた。しかし、その後は中国での新型コロナへの不透明感が再燃したことでロックダウン措置導入が警戒されている。中国・香港株の下落とともに米株先物・時間外取引や欧州株が軟調に推移。米10年債利回りは3.05%付近に低下している。市場のムードは一転してリスク警戒へと傾いている。
●NY円、一時137円75銭 7/11
週明け11日のニューヨーク外国為替市場の円相場は円がドルに対して大幅下落して一時1ドル=137円75銭と、1998年9月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準を付けた。参院選で与党が圧勝したことから日銀の大規模金融緩和が継続するとの見方が強まり、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが進んだ。
午後5時現在は、前週末比1円29銭円安ドル高の1ドル=137円36〜46銭。ユーロは1ユーロ=1.0035〜45ドル、137円96銭〜138円06銭。
先週末発表の6月の米雇用統計が堅調だったのに伴い、利上げペースを緩めるとの観測が後退した。
●NY外為 ドル・円137.62円まで、24年ぶりドル高・円安更新、日米金利差拡大 7/11
NY外為市場でドル・円は137円62銭まで上昇し、1998年以降24年ぶりドル高・円安を更新した。ユーロ・円は138円34銭から138円84銭まで上昇。米国の金利先高観を受けたドル買いや、与党圧勝により、日銀が緩和策を当面継続するとの見方に日米金利差拡大観測が一段と強まった。
●自民大勝に日本株高・円安、安定政権に期待−金融政策へ思惑も 7/11
参議院選挙での自民党大勝で政権安定への期待が広がり日経平均株価は続伸している。株高を通じて為替は円安、債券は下落する反応だが、安倍晋三元首相の銃撃死を含めて市場には金融政策修正などの観測も広まっている。
参院選明けの東京株式相場は11日、日経平均株価が3日続伸して一時2万7000円台を回復した。政治情勢安定への期待に米リセッション(景気停滞)懸念後退が加わった。自民大勝での株高による円売りでドル円相場は一時137円台に上昇、約24年ぶりの円安となった。債券相場は下落。先週末の堅調な米雇用統計を受けた米長期金利上昇を引き継ぎ、株高や円安を受けて下げ幅を拡大している。
岸田文雄首相は2025年夏まで国政選挙予定がなく、中長期的に独自色を出しやすくなる。異次元金融緩和を進めた黒田東彦・日銀総裁の後任人事も迫る中で、アベノミクスを推し進めた安倍元首相が亡くなったことも加わり、金融政策の正常化など転換点が迫っていると予想する市場関係者もいる。一方で岸田政権の支持率低下リスクが薄まり、黒田総裁の任期中の政策修正期待が後退し、円安要因が一つ加わったとする指摘もある。

 

●外為:1ドル137円44銭前後と大幅なドル高・円安で推移 7/12
12日の外国為替市場のドル円相場は午前9時時点で1ドル=137円44銭前後と、前日午後5時時点に比べ66銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=138円04銭前後と24銭のユーロ安・円高で推移している。
●ついに1ドル137円台の円安、24年前と違う現在の深刻さとは 7/12
アメリカやヨーロッパの政策金利の差から生じた、円安傾向が止まりません。6月29日には一時、1ドル=137円台と1998年9月以来、24年ぶりの円安水準となりました。アメリカの中央銀行にあたる、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を上げた一方で、日本銀行は規制緩和を継続。この日米間の政策金利の差から、円を売ってドルを買う動きが強まったことで、昨年来、続いていた円安傾向に拍車がかかった格好になりました。
円安は良いことなの?悪いことなの?
「円安ドル高」と聞いて、どういうイメージを持つでしょうか。結局、円安ドル高が日本にとって良いことなのか悪いことなのかよく分からないという方も多いと思います。それもそのはずで、円安ドル高が日本にとって良いことなのか悪いことなのかの判断は、専門家の間でも分かれていることなのです。
ただ、このところ特に、悪いイメージで報じられていることが多いため、何となく円安ドル高は日本にとって悪いことだと思っている方も多いのではないでしょうか。そこで、まずは、円安ドル高のデメリットを見ていきましょう。
円安ドル高の一番のデメリットは、食料品の価格が上がりやすいことです。日本の食糧自給率は年々下がり続けて、2020年のカロリーベースでの食糧自給率は、37%に過ぎません。日本では多くの食料を輸入に頼っている状況にありますが、円の価値が落ちれば食料品の価格が上がり、購買力も落ちます。
例えば、「1ドル=100円」の場合の1万ドルは100万円ですが、「1ドル=130円」だと1万ドルは130万円です。輸入品を買い付けるのに、それまでより余計にお金を支払わなければなりません。また、エネルギーの決済に使われるのはドルであるため、エネルギー購入価格も上がります。そうすると、電気代やガソリン価格も高騰します。以上を踏まえると、円安ドル高には、家計の財布に直結するようなデメリットがあることは事実です。
また海外製品の値段も上がります。6月7日に、Appleは「MacBook Air」の新作を発表しました。価格は税抜きで1199ドルから。日本での価格は16万4800円からで、税抜きの場合の為替レートは「1ドル=約125円」が適用されています。もし、「1ドル=100円」だった場合、日本での販売価格は11万9900円ほどになります。同じ製品であるにも関わらず、為替によって、4万円以上の差が出てしまうわけです。さらに、7月1日にはiPhoneやiPadの値上げも発表されました。
また、海外留学に行くことも金銭的に難しくなるでしょう。例えば留学費用で100万円をためていた場合、「1ドル=100円」であれば、1万ドルに交換できます。しかし、「1ドル=130円」だと、約7400ドルに目減りしてしまうのです。
こうして並べてみると、円安ドル高はデメリットしかないように思えますが、実はメリットもあります。そのため、多くの専門家も、一概に円安ドル高が悪いと言うことができないのです。
円安のメリットとは
円安ドル高の一番のメリットは、円換算した時の輸出企業の利益の増加です。トヨタ自動車、三菱商事、三井物産、日立製作所、日本製鉄。日本を代表する大企業ですが、これらの企業はいずれも、今年3月期決算で純利益が過去最高を記録しています。好調の理由はさまざまですが、円安ドル高もそのうちの一つです。また、東京株式市場に上場している企業は輸出企業が多いことから、円安が市場全体の株高につながる可能性があります。
さらに、新型コロナの影響で外国人観光客を制限している状況にはありますが、円安の方が外国人観光客の日本滞在コストを抑えられます。外国人観光客の制限が撤廃された時、多くの外国人観光客が訪れ、観光地に莫大な利益をもたらせる可能性もあるでしょう。
中には、円安は日本経済にプラスになると考える方もいるのではないでしょうか。実際、10年ほど前までは、そうした論調が多数派を占めていました。「円安になれば、輸出企業が潤って、その利益が国内に循環される」という意見を目にしたことがある方も多いと思います。
24年前の円安とは違う点
もちろん、そうした側面は今でもあるのですが、以前と比べるとそのメリットが小さくなってきたのも事実です。それは、国内産業の形が以前と変化していることに理由があります。24年前に比べて、国内に生産拠点を置いている企業は少なくなっています。海外の生産拠点から海外へ直接輸出しているという企業が過去の円安時より増えているのです。
その結果、円安ドル高の大きなメリット(円換算した時の輸出企業の利益の増加)を受けられる企業は、限定的になりました。もちろん、この機会に生産拠点を海外から日本に移す動きも一部には見られていますが、すぐに生産拠点を移すことは簡単にはできません。
加えて、もうひとつの24年前と違う点に、足元での物価高があります。24年前は、証券会社、銀行の経営破綻が相次ぎ不況ではあったものの、物価高ではありませんでした。しかし、現在、毎日のように商品値上げのニュースが流れ、エネルギーを中心に物価は上がり続けています。そのような中、円安ドル高がさらに輪をかけているといった状況にあります。
インフレは、日本だけに限ったものではなく、世界各国がインフレに陥っています。そうした中、通貨の流通量を抑えてインフレを抑制するため各国が取っている対策が、政策金利の引き上げです。
そう聞くと、「日本も政策金利を引き上げればいいのでは?」と思う方もいるでしょうが、政策金利を引き上げるタイミングは景気が過熱しているときです。日本は現在、決して景気が良いとは言えず、むしろ不況だと言えます。そんな中、政策金利を上げると、借金をしている企業の返済額は膨れあがり、多くの企業が経営破綻する恐れがあります。
個人でも、住宅ローンの金利が上がるため、返済に窮する人も出てくるでしょう。景気が一気に悪くなる可能性があるため、今の日本ではなかなか政策金利の引き上げができません。
円安ドル高は日本単独でどうにかできるものではありません。世界の状況が落ち着くまで、いつもは2つ買っていた商品を1つにするなど、地道に節約していくほかないのかもしれません。 
●円相場、137円13〜13銭 7/12
12日の東京外国為替市場の円相場は、正午現在1ドル=137円13〜13銭と、前日(136円80〜80銭)に比べ33銭の円安・ドル高となった。 
●外為 1ドル137円37銭前後と大幅なドル高・円安で推移 7/12
12日の外国為替市場のドル円相場は午後4時時点で1ドル=137円37銭前後と、前日午後5時時点に比べ59銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=137円67銭前後と61銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●参院選後の円安に、ユーロ一段安からのドル全面高も加勢で137円台後半へ 7/12
ドル円は7月10日の参院選における与党大勝を受けて経済金融政策継続への安心感からリスク選好となり、11日午前高値で137.27円をつけて6月29日夜につけた137円を突破、いったん利益確定売りに押されて136.70円近辺をつけたものの夜はユーロドルの一段安などドル全面高の様相となったことでさらに持ち上げられて137.75円まで高値を切り上げた。12日午前序盤も137円台前半を維持している。
7月8日に安倍元首相銃撃報道から一時売られたものの選挙情勢での与党有利見通しと米雇用統計が強かったことでの米長期債利回り上昇で8日夜には136.56円まで持ち直していたが、雇用統計通過後はいったんドル高が収まっていた。しかし欧州のリセッション懸念が強まる中で11日夜はユーロドルが1ユーロ1ドルのパリティに迫る下落となり、豪ドルや英ポンドなども軒並み昨年来安値を更新してドル高感が強まり、ドル円は本邦要因としての円安に全般的なドル高が重なる状況となり6月後半からの137円を上値抵抗とした持ち合いから上放れた。
●日米財務相、急速な円安・ドル高で「適切に協力」…食料・エネルギー高騰  7/12
鈴木財務相は12日、来日中のイエレン米財務長官と財務省で会談した。急速に円安・ドル高が進む為替相場について、日米で引き続き緊密に協議し、適切に協力することを確認した。ロシアのウクライナ侵略に伴う食料やエネルギー価格の高騰に連携して対応することでも一致した。
イエレン氏の来日は財務長官就任後初めて。鈴木氏との会談は、ワシントンで行った4月以来となる。
会談後に発表した共同声明では「ロシアの侵略による経済的な影響が為替相場の変動を高めており、経済・金融に悪影響を与えうる」との認識を共有した。鈴木氏は会談後の記者会見で「最近の急速な円安について憂慮し、高い緊張感を持って市場動向を注視していくとの日本の立場を説明し、ご理解いただいた」と述べた。
対露制裁を強化していく方針も確認し、声明では「エネルギー価格の上昇を抑制する方策を探求するG7(先進7か国)の取り組みを歓迎する」と明記した。G7はロシア産石油の取引価格に上限を設ける措置を検討しているが、会談では具体的な上限価格に関する言及はなかったという。
イエレン氏は会談の冒頭、安倍晋三・元首相が銃撃され死亡した事件に触れ、「日米間の緊密連携というレガシー(遺産)の精神を受け継ぎ、盛り上げていく」と述べた。イエレン氏は12日に横浜港で演説する予定だったが、事件を受けて中止した。
●鈴木財務相「急速な円安進行を憂慮」 市場の動きに警戒感示す  7/12
外国為替市場で今週、円相場が1ドル=137円台の後半まで値下がりするなど、このところ円安ドル高が一段と進んでいることについて、鈴木財務大臣は「急速な円安の進行が見られ憂慮している」と述べ、市場の動きに警戒感を示しました。
鈴木財務大臣は、12日の閣議のあとの記者会見で、このところ円安ドル高が進んでいることについて「最近の為替市場では急速な円安の進行が見られ憂慮している」と述べました。
そのうえで「政府として日本銀行と緊密に連携しつつ、為替市場の動向や経済、物価などへの影響を一層緊張感を持って注視していく。各国の通貨当局とも緊密な意思疎通を図り、必要な場合には適切な対応を取っていきたい」と述べ、市場の動きをけん制しました。
また、就任後初めて日本を訪れているアメリカのイエレン財務長官と12日午後、会談することについて鈴木大臣は「足元のさまざまなグローバルな課題があるので、日米が連携を深めながら解決していけるよう、今回の面会の機会を最大限活用していきたい」と述べ、日米が連携して共通の課題の解決に取り組みたいという考えを示しました。
●金融政策の違いを強調したくない日本 7/12
経済アナリストでSBI FXトレード社外取締役のジョセフ・クラフトが7月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。24年ぶりとなる円安について解説した。
24年ぶりの円安ドル高水準
週明け7月11日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、円がドルに対して大幅下落して一時1ドル=137円75銭と、1998年9月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準を付けた。
飯田)一時、1ドル137円後半までいったということです。現在、足もとも137円40銭台という取引になっています。週明けにどのようになってしまったのでしょうか?
クラフト)基本的にこれまでの流れとしては、日米の金利差の拡大が大きいですね。8日にアメリカの雇用統計が出て、予想よりも堅調な内容となっています。アメリカの中央銀行には2つの使命があります。1つは完全雇用、もう1つは物価の安定です。8日の雇用データから見ると、物価8.6%のCPIに比べて、雇用の方は比較的堅調である。従って米中銀は引き続き利上げを継続していく。逆に11日になって、黒田総裁が異次元緩和を維持していくことを表明し、日米の金利差が開いていくのではないかという目論見から、市場が円売りに転じたということだと思います。
飯田)そうすると、円でお金を用意して、それをドルに変えて運用すれば儲かるぞという。
クラフト)金利差の面で言えばそうですね。12日にイエレン財務長官が来日していますので、おそらくならないとは思いますが、円安が議論の土台に乗るかどうかも注目ですね。
財務省が介入して円安を阻止することは難しい 〜アメリカが同意しなければ為替介入はできない
飯田)アメリカではインフレをどうするかということが問題になっています。ただ、あまりブレーキを踏みすぎると雇用にも影響が出るのではないかとも言われています。
クラフト)いい塩梅で利上げを行ってインフレを抑えたいけれども、過度な経済減速にはしたくない。非常に難しいですね。
飯田)ブレーキとアクセルを何度も踏みかえて、というような感じになる。
クラフト)そうですね。日本では財務省が介入して円安を阻止するという見方もありますが、これも厳しい。というのも、アメリカが同意しないと介入は難しいのです。アメリカからしてみると、いまは過度なインフレなので、ドル安はインフレを助長しかねません。そのため、アメリカが同意することは考えにくい。
金融政策の違いを強調したくない日本 〜「日本も柔軟な金融政策を取れる」というメッセージを発信すれば円売りの速度が弱まる
飯田)為替介入して円安を阻止することが難しいとなると、このまま円安基調が続くということでしょうか?
クラフト)基本的には円安基調です。そのペースをどこまで緩められるのか。政府としては、あまり「金融政策の違いを強調したくない」のではないかと思います。
飯田)「基本的には同じ方向を向いている」としておきたい。
クラフト)「日本も、もう少し柔軟な金融政策を取れるぞ」というメッセージを発信すれば、多少は円売りの加速が弱まるということだと思います。そのタイミングがいつなのかが注目されています。 

 

●円、137円近辺 ロンドン外為 7/13
13日朝のロンドン外国為替市場の円相場は、海外市場の流れを引き継ぎ、1ドル=137円近辺で推移した。午前9時現在は137円00〜10銭と、前日午後4時比40銭の円安・ドル高。
●NY円、一時137円80銭台 7/13
13日のニューヨーク外国為替市場の円相場は対ドルで下落が進み、一時1ドル=137円80銭台を付けた。1998年9月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準。
●東京市場 7/13
13日の東京市場はドルが強保ち合い。137円台を中心とした高値圏での推移となったが、137.75円の年初来高値を更新することは出来なかった。
ドル/円は136.85円前後で寄り付いたのち、当初はドル売り優勢。136.65-70円へと小幅に値を下げ日中安値を示現後は、逆にドルが強含む展開に。137.25円レベルへと反騰高をたどり、その後も多くの時間帯を137円台で過ごす底堅い値動きだった。16時現在では137.15-20円で推移し、欧米市場を迎えている。
一方、材料的に注視されていたものは、「日米為替スタンス」と「臨時首脳会談」について。
前者は、昨日東京時間に実施された日米財務相会談において、「為替相場の変動に適切に対応する」とした共同声明が発表されたものの、飽くまでも総論としての認識。各論としては、逆に日米の認識の違いが明らかとなった。そもそも、日本の財務省幹部も認めているように、「会談で為替介入に関する議論はなかった」うえ、日本政府が最近の円安を憂慮していると説明したのに対し、米国サイドからは特段のコメントやアクションはなかったとの情報も。さらにロイターによると、イエレン米財務長官は会談後、記者団に対し、「為替介入はまれで例外的な状況でしか正当化されない」と改めて慎重な見解を示したという。やはりファンダメンタルズに沿った円安を消極的ながら容認していると考えて間違いなさそうだ。
対して後者は、昨日は凶弾に倒れ亡くなった安倍元首相の葬儀が行われるなか、弔意を示す各国首脳からの電話などがここ2日ほど相次ぎ、岸田首相との即席首脳会談も幾つか観測されている。たとえば日豪や日仏、そして日本とカナダ首脳の電話会談も観測されていた。それぞれの首脳は安倍氏への弔意を示すともに、両国関係に変化なく協力を続けていくことで一致したなどと伝えられている。

 

●NY外国為替市場 1ドル=137円台後半まで値下がり  7/14
13日のニューヨーク外国為替市場は、アメリカの消費者物価の上昇率が記録的な水準になったことを受けて金融引き締めが加速するという観測が広がり、円相場は一時、1ドル=137円台後半まで値下がりしました。
13日のニューヨーク外国為替市場は、この日発表されたアメリカの先月の消費者物価指数が9.1%の上昇と、およそ40年半ぶりの水準となったことを受け、金融引き締めが加速するとの観測が広がりました。
この結果、日米の金利差が一段と拡大するとの見方から、円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は一時、1ドル=137円80銭台に値下がりして、およそ24年ぶりの円安水準を更新しました。
また、ユーロ相場も一時、1ユーロが1ドルを下回る水準まで下落し、およそ20年ぶりに1ユーロの価値が1ドルを割り込むいわゆる「等価割れ」となりました。
市場関係者は、「消費者物価の上昇率が予想より拡大したため、FRBが今月下旬の会合で、前回を上回る1%の大幅利上げを決めるという観測も出ている。 アメリカの金融引き締めのペースと景気への影響に警戒が強まっている」と話しています。
●円相場一時1ドル=138円台に 24年ぶりの円安ドル高水準 7/14
外国為替市場で、円安が加速し円相場がおよそ24年ぶりに1ドル=138円台をつけました。
東京外国為替市場で円相場が一時、1ドル=138円台まで値下がりし1998年9月以来およそ24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。
これは前の日に発表されたアメリカの消費者物価指数が9.1%の上昇となり、およそ40年半ぶりの高い伸びとなったことを受けたものです。
FRB(=連邦準備制度理事会)が、インフレをおさえこむため今月の会合でも大幅な利上げを決める見通しで日米の金利差が更に拡大するとの見方から、円を売ってドルを買う動きが強まりました。
●円安の幕引き、ユーロ/円からか 7/14
今年6月半ば以降、米金利には上昇が一巡する兆しが出てきている。米経済のリセッション懸念など世界経済の減速不安が強まる中、銅など資源価格の調整が本格化。ロシア/ウクライナ問題で100ドルを大きく超えて高騰した原油相場にもいよいよピークアウト感が生じ、インフレと米連邦準備理事会(FRB)など各国中央銀行の金融引き締めに対する警戒感が後退し始めたことが、その背景にある。
だが、この間の日米金利差縮小を無視するかのように、ドル/円はジリ高推移を続け、14日午前の東京市場では138円台を回復する動きとなっている。135円前後の2002年高値の突破の後、ドル/円は1998年に付けた147円台の高値まで主だったレジスタンスは指摘しえない状況になった。
米金利にピークアウト感がある中、この高値を試すことになるとは思わないが、当面は引き続き上振れリスクを警戒するのが妥当なようだ。現在、指摘しうる上値めどは、1990年からの下げ幅の76.4%戻し(140.01円前後)。このあたりを念頭に今しばらくは、ドル高・円安を見込むべきだと考えている。
金利差とドル/円、反応に非対称性
重要なことは、金利差に対するドル/円の感応度が低下するのは今回が初めてではないということだ。そもそも近年、ドル/円と金利差の関係(相関)は安定していないし、特に2020年のコロナ危機の時にはFRBのアグレッシブな金融緩和を受けて、米10年国債利回りはゼロ%近くまで低下した。
その際、日米10年債利回りの金利差は、長期的な関係からはドル/円が80円を割り込んでもおかしくないところにまで縮小した。だが、実際には100円を割り込むこともなく、昨年以降はドル高・円安局面に入った。米経済の回復とインフレ懸念を背景とする米金利上昇、それに伴う金利差拡大にドル/円相場は上昇して反応するようになったのだ。
つまり、米金利が低下し、金利差が縮小する時にはドル安・円高の反応は弱く、米金利が上昇し、金利差が拡大する時のドル高・円安の反応は強く出ているということだ。
昨年以降の中長期的なドル高・円安局面においても、例えば、昨年半ばに米金利が低下する場面があったが、金利差縮小に伴うドル安・円高はほとんど進まなかった。日米金利差に対するドル/円の反応に非対称性が生じているのだ。
今年は3月から5月にかけてドル/円は、日米金利差との極めて強い相関を示した。ところが、6月以降の米金利低下、それに伴う金利差縮小には目立って反応していない。金利差縮小の中、足元で進んでいるドル高・円安は実のところ、今局面のみに特徴的な変化ではない。
貿易赤字の拡大
筆者はこうしたドル/円の金利差に対する非対称的な反応を、貿易赤字拡大など日本の国際収支の悪化で理解してきた。すなわち2020年のコロナ危機の際にまず、世界的な需要の落ち込みを受けて日本の輸出が落ち込み、貿易収支は赤字に陥った。その後、輸出は回復してきているが、サプライチェーン問題がくすぶる中、予期せぬオーバーヘッジに陥ることを警戒する輸出企業のドル売りヘッジには力が入らない。
反面、昨年来の原油・資源高で日本の輸入は急増しており、貿易赤字の拡大が鮮明となってきた。当然、輸入企業のドル買い需要は膨らんでいる。こうした中、為替需給の観点では、実需企業の間で、輸入企業の旺盛なドル買い需要がある中、言わばドルの売り手不在のような状況が出現した。
そうした中で、米金利上昇に伴うドル高・円安を見越したヘッジファンドなど海外勢の買いが加わると、ドル/円は金利差拡大方向へは敏感に反応する。反面、米金利が低下してもドル/円下落方向には反応しない。こうした構図となっている。
今回のドル高・円安局面がどこまで続くかの1つの鍵を握るのは、金利市場がどこでFRBによる金融引き締めの織り込みを終わるかであろう。景気減速懸念から原油・資源相場にピークアウト感が漂い始めた今、この点に関してはこれから1─2カ月間が勝負ではないかと思う。
ただ、貿易収支など日本の国際収支の問題は、改善が明確になるには相当な時間を要するだろう。もちろん、原油・資源価格の下落は、この観点でも最終的には円高的に作用し始める可能性はある。だが、FRBの引き締めの織り込みが佳境を迎えるこの数カ月間のうちに、供給制約が解消したり、原油価格がコロナ危機前の水準へ下落したりして、日本の国際収支が正常化する事態は想定しがたい。
しかも、今回のドル高・円安は120円、125円、130円などのキーレベルを突破してきた際に、中小の輸入企業などがオプションなどを用いて構築してきた長期のドル買いヘッジ・ポジションをノックアウトしてきた。足元では、その復元ニーズに伴うドル買い需要も旺盛だと聞く。米金利低下、日米金利差縮小にかかわらず、ドル/円を押し上げる需給的な要因となっている。
鍵を握るユーロ/円
ただ、こうした需給的な特殊要因がない、ユーロ/円などクロス円はこの間、金利差縮小に素直に反応する格好で調整色を強めている。
例えば、本年初にはゼロ%を下回っていた独10年国債利回りは6月には2%に近づく急上昇となり、この間に、125円前後で沈んでいたユーロ/円は145円に肉薄する急騰を見せた。だが、6月以降、独金利が足元にかけて1.1%前後まで低下してくると、ユーロ/円も137円前後まで値を崩してきた。
実のところ、ドル/円と同じように、ユーロ/円の金利差との相関もそれほど安定したものではない。ただ、円安が明確になった3月以降は、ユーロ/円は金利差との相関を回復。しかも、1%当りの金利差変化への感応度は、ユーロ/円が2018年春から2020年春にかけて(コロナ危機が勃発するまで)比較的長い期間にわたり、金利差との安定した関係を維持した時とほぼ同じ程度の「まとも」な関係を維持している。
3月以降の急ピッチな上昇後、6月からは本格的な調整局面に入り、この数カ月間は大きな値動きを見せるユーロ/円だが、金利差の限界的な変化に照らした場合、決して過剰で不可解な上げ下げとなっているわけではない。
ユーロ安の謎と意義
その反面、ユーロ/ドルは金利差との感応度を失う中で、今週はとうとう1ユーロ=1米ドルのパリティを割り込むところまで値を崩してきた。実のところ、この間、ユーロ/ドル下落を金利差以上にうまく説明してきたのは、イタリア国債などのドイツ国債に対する上乗せ金利、いわゆる欧州ソブリン・スプレッドである。
独伊10年金利差は今年の年初には1.3%程度だったが、足元では2%程度まで拡大。この間にユーロ/ドルは1.13ドル前後からパリティ水準にまで値を崩してきた。
ただ、そのソブリン・スプレッドにしてもユーロ/ドルとそれほど明確な因果関係があるわけではなく、米株下落に象徴されるような、金融市場における世界的なリスク回避傾向の高まりの中で生じている現象だ。
こう整理すると、ユーロ/ドルとソブリン・スプレッドで生じていた相関は一種の疑似相関であり、今回のユーロ/ドル下落は、リスクオフ環境下における全面的な米ドル高の反映と見るのが適切ではないかと思われる。それは恐らくドル/円を金利差縮小の中で押し上げる要因にもなっている。
ただ、こうした中で今年5月までの全面的な円安は全面的な米ドル高へ引き継がれる格好となり、世界全体の中で円安は相対的に目立たなくなってきている。その結果、6月以降はユーロ/円や豪ドル/円などクロス円は調整局面に入ってきている。
とは言え、今後を展望した場合、原油・資源相場とともに米金利にもピークアウト感が出てくると、これまで米国債など安全資産、米株などリスク資産の値崩れリスクに対するヘッジとして投資家の間で保有されていたコモディティや為替市場における米ドルのロングの益出しが始まり、一気にヘッジ・ポジションが米国債などにシフトする可能性がある。
こうした流れが本格化した場合、ユーロ/円から始まった円安の修正が次第にドル/円に引き継がれ、クロス円よりもドル/円を押し下げることにつながるだろう。
今年10─12月期ぐらいからのリスクと考えているが、リスクオフ的なドル安・円高にも注意が必要な時間帯に入ってきていると考えている。
●日経平均は続伸、ダウ平均先物の底堅い動きや円安・ドル高受け買い優勢 7/14
日経平均は続伸。13日の米株式市場でNYダウは4日続落。注目された6月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率が市場予想を上回ったことを受け、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めペースの加速が景気悪化を招くとの見方から売りが優勢の展開だった。米株安を受けた今日の日経平均は121.45円安からスタート。取引開始後は朝方軟調だったダウ平均先物が底堅い動きとなったことや、外為市場で昼前に一時1ドル=138円10銭台と朝方に比べ50-60ほど円安・ドル高に振れたことが輸出株などの株価の支えとなり、日経平均は前場中頃に上昇に転じた後、上げ幅を広げた。後場は円安・ドル高が一段と進んだこともあり、日経平均は高値圏で概ね底堅い動きとなった。
大引けの日経平均は前日比164.62円高の26643.39円となった。東証プライムの売買高は9億7278万株、売買代金は2兆2407億円だった。セクターでは水産・農林業、海運業、精密機器などが上昇。一方、電気・ガス業、銀行業、空運業が下落した。東証プライムの値上がり銘柄は全体の57%、対して値下がり銘柄は37%となった。
●急速な円安進行「憂慮」 官房長官、物価影響を注視 7/14
松野博一官房長官は14日の記者会見で、外国為替市場で円安ドル高が急速に進んでいることに関し「憂慮している」と述べた。政府として日銀と緊密に連携しながら「為替市場の動向や経済、物価などへの影響を一層の緊張感を持って注視していく」と語った。
6月の米消費者物価指数の上昇率が約40年ぶりの大きさとなったことを背景に、14日の円相場は一時1ドル=138円台まで下落した。松野氏は、米国でのインフレ動向や米金融政策の変更によって「日本経済や世界経済にどのような影響が生じるか、引き続き注視していきたい」とした。
●外為 1ドル138円01銭前後と大幅なドル高・円安で推移 7/14
14日の外国為替市場のドル円相場は午後1時時点で1ドル=138円01銭前後と、前日午後5時時点に比べ97銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=138円46銭前後と1円03銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●早朝のニューヨーク外国為替市場で円相場、1ドル = 139円を超える 7/14
7月14日17時34分頃、早朝のニューヨーク外国為替市場で円相場は1ドル = 139円を超え、前日6時頃の価格(137.40円)から1.96円(1.43%)上昇となる139.36円となった。 
●円相場、139円10〜11銭 7/14
14日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=139円10〜11銭と、前日(137円04〜04銭)に比べ2円06銭の円安・ドル高となった。 
●1ドル139円台まで急落 約24年ぶりの円安水準を更新  7/14
14日の東京外国為替市場は、アメリカの金融引き締めがさらに加速するとの見方から円相場は2円以上急落して1ドル=139円台まで値下がりしました。およそ24年ぶりの円安水準です。
14日の東京市場では、13日に発表されたアメリカの先月の消費者物価の上昇率が市場予想を上回る記録的な水準となったことでアメリカの金融引き締めがさらに加速するとの見方が広がりました。
このため、円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、円相場は2円以上急落して1ドル=139円台まで値下がりしました。
1998年9月以来およそ24年ぶりの円安水準です。
午後5時時点の円相場は13日と比べて2円5銭、円安ドル高の1ドル=139円9銭から11銭でした。
ユーロに対しては13日と比べて2円11銭、円安ユーロ高の1ユーロ=139円59銭から63銭でした。ユーロはドルに対して1ユーロ=1.0036から38ドルでした。
市場関係者は「アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会がインフレを抑えるために今月下旬の会合で大幅な利上げに踏み切るのではないかという見方が広がっていて、大規模な金融緩和を続ける日銀との政策の違いが強く意識されている」と話しています。
●円安ドル高さらに進む 一時1ドル=139円台 1日で2円近く円安に 7/14
外国為替市場で円相場が1ドル=139円台に値下がりし、1998年9月以来、約24年ぶりの円安水準を更新しました。
外国為替市場では円を売ってドルを買う動きが加速しています。
14日午後に一時1ドル=139円台を付け、1998年9月以来、約24年ぶりの円安水準を更新しました。
13日に発表されたアメリカの消費者物価指数の上昇率が市場の予想を上回って記録的な水準となったことから、FRB(連邦準備制度理事会)がさらに利上げを加速するという見方が広がっています。
低金利を維持する日本との金利差を意識した円を売る動きが続いています。
●円急落、一時139円台 24年ぶり円安ドル高水準  7/14
14日の外国為替市場の円相場はドルに対して売られ、一時1ドル=139円台前半まで急落した。1998年9月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準を更新した。歴史的なインフレに対処するため米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを加速し、日米金利差が拡大するとの観測から円売りドル買いが優勢となり、前日から2円以上、円安が進む場面もあった。
東京外国為替市場では一時1ドル=139円18銭まで円が下落した。午後5時現在は前日比2円05銭円安ドル高の1ドル=139円09〜11銭。ユーロは2円11銭円安ユーロ高の1ユーロ=139円59〜63銭。
●東証大引け 続伸し164円高、円安が輸出関連を押し上げ 値上がり6割弱 7/14
14日の東京株式市場で日経平均株価は続伸し、前日比164円62銭(0.62%)高の2万6643円39銭で終えた。外国為替市場で円相場が対ドルで1ドル=138円台に下落し、24年ぶりの円安・ドル高水準になった。輸出採算の改善につながるとの観測から、自動車や機械の一部に買いが入った。主力の値がさ株に断続的に買いが入ったことも相場を押し上げた。
前日の米株式市場で主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が0.7%高となり、東京市場でも東エレクなど半導体関連銘柄の買いにつながった。このところ下げが続いていた後で、買い直す動きが出やすかった面もあった。
外国為替市場では円安・ドル高が進み、輸出関連株の支えとなった。空売り比率の相対的に高い海運などにも買い戻しが入った。薄商いのなかでファストリやソフトバンクグループといった主力の値がさ株に買いが入り、指数を押し上げた面もある。
朝方は売りが優勢だった。13日に発表された6月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率が前月比、前年同月比がともに市場予想を上回った。米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを加速させ、米景気の悪化につながるとの観測から、同日の米株式市場で主要3指数は下落。東京市場は売り先行で始まったものの、ほどなく下げ幅を縮めた。
東証株価指数(TOPIX)は続伸した。終値は前日比4.28ポイント(0.23%)高の1893.13だった。
東証プライムの売買代金は概算で2兆2407億円。売買高は9億7278万株だった。東証プライムの値上がり銘柄数は1051と、全体の6割弱を占めた。値下がりは697、変わらずは90だった。
●円、139円近辺 ロンドン外為 7/14
14日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、日米の金融政策の違いを意識したドル買い意欲が一段と強まる中、約24年ぶりの円安水準となる1ドル=139円近辺に下落した。
正午現在は139円00〜10銭と、前日午後4時比1円90銭の大幅な円安・ドル高。
●NY円、138円88〜98銭  7/14
14日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比1円50銭円安ドル高の1ドル=138円88〜98銭を付けた。 

 

●円相場、138円91〜91銭 15日午後5時現在 7/15
15日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=138円91〜91銭と、前日(139円10〜11銭)に比べ19銭の円高・ドル安となった。 
●東京外国為替市場 円相場1ドル = 139円挟む値動き 7/15
円相場は、1ドル = 139円を挟んだ取引となっている。
15日の東京外国為替市場の円相場は、円を売る動きが続いていて、1ドル = 139円を挟んだ値動きとなっている。
14日のニューヨーク市場では、円相場は一時1ドル = 139円30銭台まで値を下げたが、その後、やや円が買い戻される展開となっている。
15日の東京株式市場の日経平均株価、午前の終値は、14日に比べ、154円08銭高い、2万6,797円47銭、TOPIX(東証株価指数)は、1,892.77だった。
●ニューヨーク外国為替市場概況 ユーロドル、反発 7/15
15日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは反発。終値は1.0080ドルと前営業日NY終値(1.0018ドル)と比べて0.0062ドル程度のユーロ高水準だった。前日に辞任を表明したドラギ伊首相をマッタレッラ大統領が慰留したことで、リスク回避の姿勢が後退し、イタリア株中心に欧州株相場が反発。ユーロ買い戻しが先行した。
NY市場では、6月米小売売上高が前月比1.0%増と予想の0.8%増を上回ったものの、前日にウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事が指摘した「予想よりも大幅に強い数字」ではなかったとの見方から、市場で台頭していた今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での1%利上げ観測が後退し、ドル売りを誘った。
また、米ミシガン大学が7月消費者態度指数(速報値)に併せて発表した消費者の期待インフレ率で、5年先が2.8%と前月の3.1%から鈍化し1年ぶりの低水準を記録したこともドル売りを促した。同指標はFRBが6月FOMCで0.75%の大幅利上げを決めた一因とされており、この結果が米金融引き締め加速への過度な警戒感の緩和につながった。24時30分前に一時1.0098ドルと本日高値を更新した。
なお、ボスティック米アトランタ連銀総裁はこの日、「0.75%利上げは大きな動きであり、FRBは移行が秩序あるものになることを望む」「あまりにも劇的な動きは経済を弱体化させ、不確実性が増す可能性」と述べ、1%利上げには否定的な見方を示した。ボスティック氏は13日に「1%の利上げを検討する可能性がある」との見方を示していた。また、FOMCで投票権を有するブラード米セントルイス連銀総裁も「今月1%の極めて大幅な利上げを決定する必要性を強く感じていない」などと語った。
ドル円は3営業日ぶりに反落。終値は138.57円と前営業日NY終値(138.96円)と比べて39銭程度のドル安水準だった。注目の米小売指標が予想よりも大幅に強い数字ではなかったとの受け止めがドルの重しとなり、23時30分過ぎに一時138.39円と日通し安値を更新した。米ミシガン大学が発表した期待インフレ率が前月から鈍化し予想を下回ったことも、FRBの急激な利上げ観測の後退を誘い、米金利の低下とドル売りを促した。
ユーロ円は3日続伸。終値は139.63円と前営業日NY終値(139.23円)と比べて40銭程度のユーロ高水準。欧州を代表する株価指数のひとつユーロ・ストックス50指数が2.3%超上昇したほか、ダウ平均が650ドル超上げると、投資家のリスク志向が改善し円売り・ユーロ買いが強まった。前日の高値139.77円を上抜けて一時139.89円まで値を上げた。その後の下押しも139.55円付近にとどまった。
●円安、140円視野の裏側 米バブル動揺で「悪いドル高」 7/15
米国によるインフレ退治のための金融引き締めがマネーの逆流を加速させている。外国為替市場では円安が止まらず、1ドル=140円の節目が視野に入った。ユーロも1ユーロ=1ドルの等価(パリティ)を割り込む水準まで売られている。その裏側には米国との金利差だけではなく、米株バブルの動揺に伴い企業や金融機関がドル資金の確保を急ぐ「悪いドル高」もあるとみられる。ドルの調達難はドル建て債務が多い海外企業の信用収縮を招き、世界経済が縮小均衡に陥るリスクを高める。
証券資金還流、2年で100兆円
ドルの総合的な強さを示すドルインデックスは14日、一時109台と2002年9月以来の高値を付けた。過去3カ月の上昇率は9%。同期間の「悪いドル高」のピッチは20年春のコロナショック(5%)を上回り、08年秋のリーマン・ショック(16%)に次ぐ。
米国への資金還流が止まらない。米財務省によれば、米国居住者による対外証券(株式と債券)投資は4月まで20カ月連続で売り越し(米国への資金流入超過)だ。20年のコロナショックからの累計額は7700億ドル(107兆円)にのぼる。米国の株式と債券がともに売られても、ドルが買われる一因だ。こうした現象は極めてまれだ。
ドル高は原材料費の高騰や在庫の急増で傷んだ米国企業の収益をさらに圧迫する。JPモルガン・チェースは14日、融資の焦げ付きに備えて貸倒引当金を積み増したことにより、22年4〜6月期決算が大幅減益になったと発表。財務強化のため、自社株買いの一時停止も表明した。同日の米株式市場では銀行株を中心に急落し、ダウ工業株30種平均の下落幅は一時600ドルを超えた。投資家の目は米国の不良債権に向かい始めている。
ドル建て社債の利回り急上昇
信用力の低い企業を中心に、新興国のドル調達にも影響が広がっている。インターコンチネンタル取引所(ICE)とバンク・オブ・アメリカが算出する新興アジア市場のハイイールド社債指数の利回りは13日、17.6%と09年4月以来の水準に上昇した。
中国の低格付け企業が発行するドル建て社債指数の利回りは28.8%と過去1年で18%も跳ね上がった。信用リスクを反映する米国債との利回り差(スプレッド)は26%に近く、リーマン・ショック並みの水準だ。
国際決済銀行(BIS)によると、新興国のドル建て債務(金融を除く)は21年末時点で4兆2400億ドルと過去2年で12%増加した。中国13%、韓国19%、台湾21%などの伸びが目立つ。
通貨危機時に資金を融通し合う「チェンマイ・イニシアチブ」など日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)は金融の安全網を整備し、1990年代のアジア通貨危機の再来を懸念する声は聞かれない。しかし、もともとアジアにはインフレ率が低い国が多く、企業の価格転嫁が進みにくいという事情は共通する。今後、原材料価格の高騰で採算が悪化する企業が増えるとみられている。
日本株は円安に支えられて底堅いが、アジア企業同様、マージンの縮小が予想される。ドル独歩高に対する世界の懸念が深まり、ドル高抑制で各国が足並みをそろえれば、円高に反転し、株価が下落に転じる可能性もある。
●日経平均続伸 24年ぶりの円安・ドル高水準で買い優勢 7/15
15日の東京株式市場で日経平均株価は3営業日連続で値を上げ、前日に比べて145円8銭高い2万6788円47銭で取引を終えました。
東京市場では、外国為替市場で円相場が139円前後と、24年ぶりの円安・ドル高水準で推移したことなどから、買い注文がふくらみました。日経平均株価は一時200円以上値を上げました。
しかし、世界全体の景気減退への警戒感や、15日が週末であることから、利益を確定する目的の売り注文が入り、平均株価はマイナスに転じる場面もありました。
東証プライムの売買代金は、概算で2兆5444億円。売買高は、概算で10億7831万株。
●鈴木財務相 “投機的な動き背景に急速な円安 状況を憂慮”  7/15
インドネシアで開かれているG20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議に出席している鈴木財務大臣は、最近の外国為替市場では投機的な動きを背景に急速に円安が進んでいるとしてこうした状況を憂慮していると述べました。
鈴木財務大臣は、現地で記者団に対し「会議では、為替市場では急激な変動が見られ、高い緊張感を持って市場動向を注視する必要があることを申し上げた」と述べました。
そのうえで「最近の為替市場は、投機的な動きを背景とした急速な円安の進行が見られ、憂慮しているところだ」と述べました。
鈴木財務大臣は「為替政策については過度の変動や無秩序な動きは経済や金融の安定に悪影響を与えうるというG20やG7で合意された考え方を踏まえ、各国通貨当局と緊密な意思疎通を図りつつ、必要な場合に適切な対応をとりたい」と述べ、円安ドル高が急速に進む市場の動きをけん制しました。
●円安 なぜこんなに急に? 7/15
なぜ円安が進んでいるのですか?
背景には、日本と欧米の中央銀行の金融政策の方向性の違いがあります。
アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会は記録的なインフレに対応するため、金融引き締めを急いでいます。先月(6月)には、およそ27年半ぶりとなる0.75%の大幅な利上げを決めました。さらに13日に発表された消費者物価指数が9.1%の上昇と、およそ40年半ぶりの記録的な水準となりました。市場では、FRBが今月(7月)下旬の会合でさらに大幅な利上げに踏み切るのではないかという観測も出ています。これに対し、日銀は、今の大規模な金融緩和を続ける姿勢を鮮明にしています。市場では、欧米と日本の金利差が拡大するとみて、より利回りが見込めるドルなどの外貨を買って、円を売る動きが強まっています。
1月には1ドル=115円台でした。こんなに急ピッチな円安は過去に例があるのでしょうか?
外国為替市場で、ことし1月から6月末までの半年間で、ドル円相場は1ドル=115円台から136円台まで21円、値下がりしました。これは、日銀に記録が残る1998年以降の1日ごとのデータによりますと半年間で最も大きな値下がり幅となります。そして、7月に入っても円安はさらに進み14日には1ドル=139円台まで値下がりしました。
円安はどこまで進むのですか?
日米の金利差は今後も拡大が見込まれることから、市場関係者の間ではさらに円安が進むという見方も出ています。ただ、アメリカの急速な金融引き締めで今後、アメリカの景気の減速感が強まる可能性があります。そうなればある程度、円安に歯止めがかかるのではないかという見方もあります。
モノが値上がりして困っています。これも円安の影響なのでしょうか?
円安のデメリットは石油をはじめとする原材料を輸入する際のコストがかさむことです。ロシアのウクライナ侵攻以降、原油などのエネルギー価格や穀物などの原材料価格がすでに高騰しています。円安が進めば、この価格上昇にさらに拍車をかけることになります。このため、今の円安は、メリットよりもデメリットのほうが大きい「悪い円安」だという指摘が出ています。
政府や日銀は、何か手をうたないのでしょうか?
過去には急激な為替の変動に対して政府と日銀が市場介入を行ったことがあります。円安に歯止めをかけたいときには外貨準備として持っているドルを売って、円を買うことになります。鈴木財務大臣は、今月12日の記者会見で円安について「最近の為替市場では急速な円安の進行が見られ憂慮している」と述べました。そのうえで「政府として日本銀行と緊密に連携しつつ、為替市場の動向や経済、物価などへの影響を一層緊張感を持って注視していく。各国の通貨当局とも緊密な意思疎通を図り、必要な場合には適切な対応をとっていきたい」と述べ、市場の動きをけん制しました。
また12日には、来日中だったアメリカのイエレン財務長官と会談し、為替の問題について日米が適切に協力する方針を確認しました。ただ、円安に歯止めをかけるための市場介入は極めて難しいという指摘もあります。アメリカが記録的なインフレに見舞われる中、物価高につながりかねない“ドル安”を容認するとは考えにくいからです。日銀の黒田総裁も急速な円安について、「先行きの不確実を高め、企業による事業計画の策定を困難にするなど経済にマイナスであり望ましくないと考えている」と述べて金融・為替市場の動向や経済物価への影響を十分注視する必要があるという認識を示しました。仮に日銀が欧米と方向性をそろえ金融緩和を修正すれば円安の進行に歯止めがかかる可能性があります。ただ新型コロナからの回復途上にある今は日本経済を下支えるために大規模な金融緩和策を続けることが重要だと強調しています。 

 

●円相場、理論値より割安  日経均衡為替レートは109円台 7/16
外国為替市場で円相場が理論値に比べて割安になっている。日本経済新聞社と日本経済研究センターが最新データで推計した1〜3月の「日経均衡為替レート」は1ドル=109円70銭だった。同じ期間の実勢レートは116円30銭で、理論値に比べて6円以上も円安・ドル高の水準だった。4月以降は一段と円安が進んでおり、理論値との差はさらに広がっている可能性がある。
日経均衡為替レートは、外国為替相場が長い目でみれば経済の基礎的条件で決まるとの考え方から、政府債務や対外純資産、内外金利差、交易条件、貿易財と非貿易財の価格比といった国内外のマクロ経済指標を変数に、回帰分析の手法で推計している。
理論値は2021年10〜12月期の106円台後半から大きく円安・ドル高に傾いた。前四半期から円安に振れるのは2四半期ぶり。輸入物価の上昇に伴う交易条件の悪化が円の理論値を押し下げた。外国為替市場では3月には一時1ドル=125円台まで円安・ドル高が進んでいた。
円相場はロシアのウクライナ侵攻に伴う資源高、米国の利上げなどを受けて4月以降も円安・ドル高が進んでいる。足元で円相場は一時、1ドル=139円台まで下落した。
●為替相場 7/11-15 7/16
11日からの週は、ドル高が進行。ドル円は139円台と24年ぶりの高値水準へ上昇。ユーロドルは一時パリティ(等価)を下回って1ユーロ=0.99ドル台へと下落。ドル高の背景には、米消費者物価指数が前年比+9.1%と予想以上のインフレ加速を示したことにある。市場では次回米FOMCで1.00%ポイントの大幅利上げを織り込む動きがみられた。米金融当局のタカ派メンバーからも0.75%利上げを支持する声が上がり、市場の大幅利上げの織り込みが行き過ぎることに対する警戒感も示される事態に。ドル円にとっては日米金利差拡大観測が相場を押し上げた。黒田日銀総裁は、強力な金融緩和政策姿勢を維持している。ユーロドルにおいても欧州と米国との景気見通しの差がユーロ売りを誘った。欧州委員会は夏季経済予測で成長率見通し引き下げ、インフレ見通し引き上げを発表した。イタリアの政局不安が持ち上がり、イタリア債が下落(利回り上昇)、ドイツ債との利回り格差が拡大し、ECBの断片化対策が現実的な問題となっている。ポンドドルは一時1.17台まで下落。インフレ対応が景気減速につながることが懸念されたほか、ジョンソン英首相辞任で後継首相選びをめぐる不透明感がでていた。インフレ対応で、カナダ中銀は予想外の1.00%の大幅利上げを実施。NZ中銀と韓国中銀は0.50%利上げを実施。各国で大幅利上げが相次いており、世界的に株式市場が不安定になった。米国との金利見通しに加えて、リスク警戒のドル高の面もあった。
15日
東京市場は、値動き一服。ドル円は139円を挟む推移が続いた。前日には139.39レベルまで高値を伸ばしたが、その後は138.60付近まで調整売りが入った経緯がある。NY終盤から東京午後に至るまでは138.70台から139.10台での振幅を繰り返している。日本勢にとっては週末の三連休を控えて取引動意が弱い点も指摘された。ユーロドルは前日に0.9952レベルまで安値を広げたあとは、1.00台前半に戻した。東京市場では1.0008から1.0041レンジで揉み合いとなっている。東京午後に豪ドル売りが入った。豪大手金融機関のウェストパック銀行が、9月の豪中銀の利上げ幅が0.25%に戻るとの見方を示したことに反応。豪ドル円は一時93円台半ば割れまで下落した。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。前日のNY市場でドル買いに調整が入った流れが続いている。ドル円は139円近辺が重くなると、ロンドン序盤に138.56レベルまで下落。米債利回りの低下に反応した。その後138.90付近まで下げ渋ったが、ロンドン昼にかけて再び軟調に推移している。ユーロドルは1.1007近辺まで軟化したあとはじり高の動きに。足元では1.0060付近へと買われている。欧州株が堅調に推移しており、ユーロ円は138.75近辺を安値に139.50近辺へと上昇。東京市場からは下に往って来いとなっている。ポンドドルはユーロ相場につれ高で、1.1805近辺を安値に1.1853近辺まで買われた。ポンド円は163.65近辺まで下落したあとは164円台前半へと買い戻されている。NY原油先物が上昇。米政府高官が「バイデン大統領のリヤド訪問で、米国はサウジアラビアが即時増産に応じること期待せず」との発言が伝わると96ドル付近から一気に98ドル付近まで上伸した。ドル建て原油相場の上昇がドル売り圧力に広がった面も。この日はレーン・フィンランド中銀総裁が「ECBは7月に25bp、9月に50bp利上げの公算大」と述べたが、市場は織り込み済みとして反応薄だった。
NY市場はドル売りが優勢となり、ドル円も一時138.40近辺まで下落した。ただ、下押す動きまではなく、140円を視野に入れた展開に変化はない。この日発表の7月調査分のミシガン大消費者信頼感指数の速報値を受けてドル売りが強まる場面も見られた。指数は51.1と予想の50.0を上回った。ただ市場は、5−10年先のインフレ期待値が2.8%と、3.0%を下回ったことに敏感に反応した模様。パウエルFRB議長がFOMC後の会見で同数値に言及していたことから注目を集めていた。

 

●ドル円の未体験ゾーン 7/17
ドル・円相場の底堅い値動きが続き、次の節目となる140円が視野に入ってきました。一方、米国経済のリセッション懸念で、ドル高はそろそろピークにも見えます。しかし、円安には歯止めがかからず、参院選で大勝した岸田政権の政策運営が注目されそうです。
安倍晋三元首相が街頭演説中に襲撃され、その後死亡が確認されると、「アベノミクス」終えんを嫌気した円買いでドル・円はいったん下落。ただ、その日の夜に発表された米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想を上回り、雇用情勢の改善による米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げへの思惑がドルを押し上げました。一方で減速懸念も根強く、一段のドル買いは抑制されています。
そして7月11日の参院選で自民党が圧勝すると、翌日の東京市場はご祝儀相場となり、株高・円安が再開。さらに日銀の黒田総裁が異次元緩和の継続方針を強調したことで、ドル・円は節目の137円台に浮上しました。ユーロ・ドルのパリティ付近での攻防でドルは下押しされる場面もありますが、ドル・円の値動きは底堅く、目先は具体的な上値抵抗線が乏しいため140円を目指す展開となりそうです。
ドル・円は目下1998年以来24年ぶりの高値圏で推移するほか、足元の実質実効為替レートは日銀データで1980年以降の最低水準に落ち込み、市場参加者のほとんどが円安の未体験ゾーンといえるでしょう。1998年はアジア通貨危機やロシア危機に見舞われた年として記憶されています。FRBの緊急利下げなどが市場を翻ろうし為替相場は乱高下しましたが、当時を語れる人は少ないかもしれません。
それだけに140円台という高水準で推移するドル・円は想像しがたく、徐々に失速するとの見立ての方が現実的に思えます。実際、金融機関がまとめた今後の見通しではインフレ高進の一服や景気減速懸念による金融引き締め後退の観測が示されており、ドル高は7-9月期がピークとの指摘が散見されます。半面、日銀は緩和一辺倒のため、引き続きドルをはじめ主要通貨を押し上げる要因は残ります。
また、今週来日したイエレン米財務長官は為替介入について「例外的な状況でしか正当化されない」と政府・日銀の円買い介入に釘を刺しています。鈴木俊一財務相が最近の円安を憂慮していると説明したものの、「既読スルー」されたもようでドル高・円安の流れを変えることはできそうにありません。ドル・円が今後、150円台、160円台に進んでも、政府は日米の力関係に身を任せるつもりでしょうか。
風向きを変えるとすれば岸田政権の政策運営でしょう。自民党の最大派閥である安倍派の四分五裂は避けられず、今後は宏池会系の岸田派の増強などの可能性もあります。「リベラル」を自称する岸田首相が9月の党人事・内閣改造でムードを刷新できれば、円安も次第に収束すると期待しています。
●円安メリットがなくなったというのは本当か?日産の黒字化が意味するもの 7/17
2022年7月15日に1ドル139円台前半まで円安が進行しました。24年ぶりの安値水準です。輸出国である日本経済は、為替の影響を大きく受けます。円安は輸出産業にとって大いに有利になります。
しかし、一部のメディアで円安メリットはなくなったとの主張も見かけるようになりました。その根拠の一つとなっているのが、輸出中心の企業は現地生産を行うようになっており、輸出量が減少していることをあげています。
円安の恩恵が受けられなくなったというのは本当なのでしょうか?日本を代表する自動車産業と、日産をもとに検証します。
急激な円高と円安に翻弄された日本企業
まずは日本の輸出額の推移を見てみましょう。2019年は76兆円で前年比5.6%の減少、2020年は68兆円で前年比11.1%の減少となりました。確かに近年の輸出額は減少していますが、これは新型コロナウイルス感染拡大という突発的な出来事が主要因です。
2018年は81兆円で、過去最高だった2007年の83兆円に近づいていました。
2011年に1ドル75円という空前の円高に見舞われ、多くの日本企業が海外に拠点を移したと言われています。当時の日本銀行総裁だった白川方明氏は、歴史的な円高に苦しみ、為替介入を実施しました。しかし円高の勢いは収まらず、追加の介入を求める声が出ていました。
白川総裁は円安誘導に対して抵抗感を持っていたと言われています。円高が長期化する見込みであれば、海外に拠点を移すという経営判断が下されることは大いにありえます。
しかし、円高は長く続きませんでした。黒田東彦氏が2013年3月に日本銀行総裁に就任すると、異次元緩和と呼ばれる大規模な緩和策を実施。2013年12月には100円台まで円安が進行します。
2013年からは輸出額が増加に転じました。
円高が長期化すれば、拠点を海外に移す動きは加速したものと予想できます。しかし、円安に動いたことでわざわざ移す必要はなくなったのです。
営業利益36.3%増の超絶決算となったトヨタ
日本の主力産業である自動車メーカーが、円安によって業績にどのような影響が出たのかを見てみましょう。
トヨタは2022年3月期の営業利益が前期比36.3%減の2兆9,956億円でした。純利益は同26.9%増の2兆8,501億円です。
営業利益率は9.5%(前期から1.4ポイントのプラス)となりました。
トヨタは営業利益が大幅に増加している要因の一つに為替変動の影響を挙げ、6,100億円のプラス効果があったとしています。
2023年3月期の営業利益は前期比19.9%減、純利益は20.7%減を予想しています。しかし、トヨタは1ドル115円の為替レートで業績予想を出しており、利益が押し上げられる可能性もあります。
ホンダは2022年3月期の営業利益が前期比32.0%増の8,712億円、純利益が同7.5%増の7,070億円となりました。
2022年3月期ホンダの営業利益率は6.0%となり、前期より1.0ポイント上昇しています。ホンダは営業利益において為替の影響が860億円のプラスに働いたとしています。
2023年3月期の営業利益は前期比7.0%の減少を予想していますが、ホンダは1ドル120円で計算をしています。トヨタと同じく、円安の進行で増益となる可能性もあります。
円安は原価率に悪影響を及ぼすのか?
円安になると、材料や部品などの調達コストが上がり、利益が圧迫される傾向があります。しかし、2022年3月期までのトヨタ、ホンダの原価率をみると、原価率が膨らんでいる様子はありません。
急速に円安が進行し、資源高に見舞われた2022年1月から3月までのホンダの原価率を見ても79.5%で、急激な変化は起こっていません。
主力産業である自動車メーカーの業績を見ると、円安メリットが大いに発生していることがわかります。
日産の黒字化に貢献した円安
円安に振れたことで、多大なる恩恵を受けた会社が日産自動車。日産は2022年3月期に2,473億円の営業利益を出しました。日産は2020年3月期に404億円、2021年3月期に1,500億円の営業赤字を計上していました。一転して黒字となったのです。
日産は為替の影響で営業利益が634億円のプラスに働いたとしています。2023年3月期は為替で更に500億円の恩恵を受ける予想を出しています。
日産は為替に翻弄された歴史を持ちます。
カルロス・ゴーン氏が指揮を執っていた2011年〜2016年度の経営戦略が「日産パワー88」。これは販売台数の拡大を目指し、中国や南米などの新興国を中心に市場占有率を高めるものでした。
この戦略の背景にあったのは、過度な円高が進行したために生産設備を海外に移し、新興国で安く組み立て、現地の旺盛な需要を取り込んで販売台数拡大を狙ったことがあると考えられます。
しかし、2013年から急速に円安が進行。日産は販売台数を増やしたことで売上高を伸ばすことができましたが、利益率は低迷してしまいます。そして2020年3月期に赤字へと転落しました。
日産は拡大路線を改め、生産拠点の絞り込みを実施します。インドネシア、バルセロナの工場閉鎖を計画。北米工場もスリム化を進めました。
原点回帰をした日産は、日本のマーケット強化を打ち出し、市場占有率を上げる取り組みを実施しています。輸出企業としての在り方を見直したと見ることができます。
その取り組みが奏功して黒字化を果たしました。
円安は物価高を引き起こして忌み嫌われるものになっていますが、多くの企業に恩恵を与えています。生産拠点が日本に戻ることで、雇用が促進されるかもしれません。デメリットばかりではないのです。
●勢い止まらぬドル高でリスク増大、アジア株から710億ドル流出 7/17 
ドルの絶え間ない上昇がアジアの新興国株式市場からの資金流出に拍車をかける恐れがあり、年後半の回復期待を後退させている。
アジア通貨の指数は約2年ぶりの安値に沈み、為替相場の動向と強い相関を持つ株式に不吉な兆候が見えている。MSCIの日本を除いたアジア株の指数は年初来で20%下落。中国以外のアジア新興国からの外国人投資家による資金引き揚げは、今年はこれまでに710億ドル(約9兆8400億円)と、既に2021年の2倍の流出額だ。
ドルは米金融当局による積極的利上げの観測を追い風に、このところ外国為替市場で圧倒的な強さを見せている。ドル高はリスク選好度の低下シグナルとなり、アジア株には不吉な兆候である上、ドル建てでの輸入に依存する国が多い新興国の経済成長にはマイナス要因とされる。
BNPパリバ・アセット・マネジメントのアジア株式責任者、陳志凱氏は「成長ではなくリスク回避ムードがあるため、ドルは上昇している」とし、アジア資産には「良い組み合わせではない」と指摘した。
韓国や台湾といったアジアのハイテク株の比重が大きい市場は特に打撃を受けやすいようだ。世界的な債券利回り上昇や景気後退の逆風で、バリュエーションや需要見通しが悪化している。韓国と台湾の株価指標は今年のアジア株指数の中で不振が目立っており、外国人投資家による売り越しは計500億ドルに上っている。 

 

●円相場 7/18 
[東京休場(海の日)] 7月の円相場は当初最強であったが、7月4日週は月間3位、先週(7月11日週)は6位。7月の季節的円高需給で今年の傾向である最弱の円からは抜け出しているが、12通貨中6位であることは例年のように強くもない。やはり歴史的な貿易赤字の下ではなかなか強くなれない。さてイエレン財務長官来日とG20財務相・中銀総裁会合では日本は円安懸念を示したが、為替についてはこれまでのG20合意に基づくものとされて進展はなかった。ただイエレン財務長官が一般論だがドル高は米企業の競争力を弱めると発言したことや、NYタイムズでもドル高の弊害が取り上げられたことは、さらにドル高が進めば議論が深まることを示唆した。
貿易赤字の通貨を金利操作や介入で強くすることは難しい。日本は逆の意味で円高時代に円を安くしようと金利操作、介入を駆使したが、なかなか効果が出なかった。ただ貿易赤字になると一気に円安が進んだ。もちろん金利操作や介入で20円-40円を動かした実績もあるので注意は必要だが、日銀は金融緩和を維持、介入は原則禁止の現在ではなかなか為替相場の誘導は難しい。今週は日銀政策決定会合と6月貿易統計の発表で金融政策と需給をチェックできる。消費者物価の目標は1.9%から2%超に上方修正するが大規模金融緩和は維持するようだ。貿易統計は1.5兆円の赤字予想。円高月の7月は円全面安とはならないが、若干の調整は想定できる。円相場は貿易収支が決め、貿易収支は原油相場が決める日本だ。8月3日のOPECプラスがバイデン大統領の要請を受けて増産するかどうかも焦点だ。 
●円、138円台前半 ロンドン外為 7/18
週明け18日朝のロンドン外国為替市場の円相場は、円買いが優勢となり、1ドル=138円台前半に上昇した。 午前9時現在は138円05〜15銭と、前週末午後4時比45銭の円高・ドル安。
●NY外為 円、138円台前半 7/18
週明け18日午前のニューヨーク外国為替市場の円相場は、米国の大幅利上げに対する観測が後退する中、1ドル=138円台前半で小動きとなっている。午前9時現在は138円30〜40銭と、前週末午後5時(138円50〜60銭)比20銭の円高・ドル安。
前週は米国のインフレの高止まりを示す統計が発表された後、7月の連邦公開市場委員会(FOMC)での1.00%利上げ観測が急浮上。しかし、週後半に、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事や複数の地区連銀総裁が急速な金融引き締めに慎重な姿勢を表明したことでドルの騰勢がしぼみ、週明けの円相場は138円台前半から同半ばのレンジで推移している。
今週は米国で住宅指標の発表が相次ぐほか、日銀の金融政策決定会合(20〜21日)、欧州中央銀行(ECB)の定例理事会(21日)の開催が控えている。日銀が大規模緩和の継続姿勢を示せば、米欧との政策の違いに改めて焦点が当たり、円の下押し圧力が強まる場面もありそうだ。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0130〜0140ドル(前週末午後5時は1.0084〜0094ドル)、対円では同140円15〜25銭(同139円68〜78銭)と、47銭の円安・ユーロ高。 

 

●外為 1ドル138円24銭前後とドル高・円安で推移 7/19 
19日の外国為替市場のドル円相場は午前8時時点で1ドル=138円24銭前後と、前日午後5時時点に比べ15銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=140円20銭前後と11銭のユーロ高・円安で推移している。 
●外為 1ドル138円18銭前後と小幅なドル高・円安で推移 7/19
19日の外国為替市場のドル円相場は午後0時時点で1ドル=138円18銭前後と、前日午後5時時点に比べ9銭の小幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=139円98銭前後と11銭のユーロ安・円高で推移している。
●ドル円見通し ドル全面高一服、139円台序盤から138円割れへ調整安入る 7/19
ドル円は参院選での与党大勝をきっかけに7月11日午前に137.00円を突破して夜には全般のドル高に乗じて137.75円へ到達、12日夜に136.46円まで調整したところから13日夜には137.86円へ高値を更新、14日午前に138円を突破して14日夜には139.39円まで大幅続伸した。
7月13日の米CPIが予想を上回り、次回FOMCでの1.0%利上げの可能性が強まったことでドル高が勢い付いたことが背景だったが、1.0%利上げに否定的な米連銀高官発言もあり15日はユーロドルが1ユーロ1ドルのパリティ割れまで下げたところから持ち直して欧米株も上昇したことでドル高に一服感が生じ、ドル円も調整的な下落で15日深夜には138.38円まで下げ138.53円で週を終えた。
7月18日は日本市場休場だったが、先週末からのドル安への修正が続いたためにドル円も夕刻安値で137.88円まで続落したが、その後は138円割れを買われて下げ渋り、19日朝時点は138円台序盤で推移している。
●ロンドン外為 円、137円台半ば 7/19
19日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米国の大幅な利上げ観測の後退を受けて円が買い戻され、1ドル=137円台半ばに上昇した。正午現在は137円45〜55銭と、前日午後4時(138円00〜10銭)比55銭の円高・ドル安。
海外市場の流れを引き継ぎ137円台後半で始まった後、じりじりと値を上げた。欧州中央銀行(ECB)が21日に0.5%の大幅利上げに踏み切るとの観測から、ユーロが対ドルで上昇したことにも支えられた。
対ユーロは1ユーロ=141円00〜10銭(前日午後4時は140円65〜75銭)と、35銭の円安・ユーロ高。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0250〜0260ドル(1.0190〜0200ドル)。
ポンドは1ポンド=1.2020〜2030ドル(1.2020〜2030ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9675〜9685フラン(0.9730〜9740フラン)。
●NY円、小反落 1ドル=138円15〜25銭 米株高で売り 7/19
19日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3営業日ぶりに小反落し、前日比5銭円安・ドル高の1ドル=138円15〜25銭で取引を終えた。朝方は対ユーロのドル売りが円相場に波及し、円買いが先行した。だが、米株式相場が大幅高となり、低リスク通貨とされる円に売り圧力が強まり、下げに転じて終えた。
欧州市場で進んだ円高・ドル安の流れを引き継いで始まった。ロイター通信が19日、関係者の話として欧州中央銀行(ECB)が21日の理事会で通常の2倍の0.5%の利上げを議論する見通しと伝えた。市場では0.25%の利上げが見込まれていたため、持ち高調整のユーロ買い・ドル売りが加速。対円でのドル売りにつながった。
円は買い一巡後に徐々に上げ幅を縮めた。ダウ工業株30種平均が大幅高で推移し、前日比754ドル高で終えた。投資家心理が強気に傾き、円売りを誘った。米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大を見込む円売り・ドル買いも促した。
円の高値は朝方につけた137円46銭、安値は138円25銭だった。
円は対ユーロで5日続落し、前日比1円20銭の円安・ユーロ高となる1ユーロ=141円25〜35銭で取引を終えた。ECBの大幅利上げ観測が浮上し、金融緩和を続ける日銀との方向性の違いを意識した円売り・ユーロ買いが強まった。
ユーロは対ドルで大幅に3日続伸し、前日比0.0075ドル高い1ユーロ=1.0215〜25ドルで終えた。ECBが0.5%の利上げに動くとの観測が浮上し、持ち高調整のユーロ買い・ドル売りが広がった。米株高を受け、リスク選好のユーロ買いも誘った。
ユーロの高値は1.0265ドル、安値は1.0221ドルだった。  

 

●外為 1ドル138円16銭前後とドル高・円安で推移 7/20
20日の外国為替市場のドル円相場は午前9時時点で1ドル=138円16銭前後と、前日午後5時時点に比べ42銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=141円34銭前後と31銭のユーロ高・円安で推移している。
●東京円、39銭安の1ドル=138円12〜14銭 7/20
20日の東京外国為替市場で、円相場は午後5時、前日(午後5時)比39銭円安・ドル高の1ドル=138円12〜14銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは、19銭円安・ユーロ高の1ユーロ=141円23〜27銭で大方の取引を終えた。
●ロンドン外為 円、138円台前半 7/20
20日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、日欧の金融政策決定会合を翌日に控えて様子見姿勢が強まる中、1ドル=138円台前半で推移した。正午現在は138円15〜25銭と、前日午後4時(137円85〜95銭)比30銭の円安・ドル高。
海外市場の流れを引き継ぎ、138円台前半で取引が始まった。21日に開かれる日銀や欧州中央銀行(ECB)の金融政策決定会合の内容を見極めたいとのムードから、積極的な売買は手控えられている。
対ユーロは1ユーロ=140円90銭〜141円00銭(前日午後4時は141円20〜30銭)と、30銭の円高・ユーロ安。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0195〜0205ドル(1.0240〜0250ドル)。
ポンドは1ポンド=1.1975〜1985ドル(1.2020〜2030ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9700〜9710フラン(0.9680〜9690フラン)。
●NY円、138円台前半 7/20
20日のニューヨーク外国為替市場では、新規材料難の中、日欧の金融政策決定会合を控えて様子見ムードが広がり、円相場は1ドル=138円台前半で小動きとなった。午後5時現在は138円21〜31銭と、前日同時刻比06銭の円安・ドル高。

 

●外為 1ドル138円41銭前後とドル高・円安で推移 7/21
21日の外国為替市場のドル円相場は午前9時時点で1ドル=138円41銭前後と、前日午後5時時点に比べ31銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=140円89銭前後と38銭のユーロ安・円高で推移している。
●外為 1ドル138円71銭前後とドル高・円安で推移 7/21
21日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=138円71銭前後と、午後5時時点に比べ12銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=141円24銭前後と1銭のユーロ高・円安と横ばい圏で推移している。
●円、138円台後半 ロンドン外為 7/21
21日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、日銀が大規模な金融緩和策の維持を決めたことを受けて円売り・ドル買いが優勢となり、1ドル=138円台後半に下落した。正午現在は138円55〜65銭と、前日午後4時比50銭の円安・ドル高。 
●NY円、138円台前半 7/21
21日午前のニューヨーク外国為替市場の円相場は、日欧の金融政策決定発表を受け、1ドル=138円台前半で推移した。午前9時現在は138円35〜45銭と、前日午後5時比14銭の円安・ドル高。
●黒田総裁「金利ちょこっと上げても円安は止まらない」 緩和継続を強調  7/21
21日、2013年から異次元の大規模緩和政策を二人三脚で進めた安倍晋三元首相の死去後に初めてとなる記者会見に臨んだ、日銀の黒田東彦総裁。「逝去の影響についてコメントは控えるが、使命である物価安定目標の実現を目指して金融政策を実施する考えに変わりはない」として、緩和策の継続姿勢を強調した。
前回6月の会見以降、利上げを急ぐ米国と低金利を堅持する日本との金利差拡大を背景に、円はドルに対しさらに5円程度安くなった。約24年ぶりの円安ドル高水準が続き、物価高が国民の負担となる中でも、黒田氏はこの日、低金利政策が円安の主因ではないとの発言に一歩踏み込んだ。
「今の円安は実はドルの独歩高だ。5回利上げした英国も利上げを控えるユーロも、対ドルでは(円と)同じくらい下落している。(日本が)金利をちょこっと上げたら円安が止まるとは到底考えられない」と説明。大幅に金利を引き上げた場合、企業や家計の借り入れ負担が重くなることで景気に悪影響を与えかねないことを強調した。
一方、会見前に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の物価見通し(生鮮食品を除く)では、黒田氏の任期満了となる23年4月からさらに1年以上が経過しても、2%の物価目標の達成の姿は描けていない。「輸入物価の上昇で国民の所得が海外に流出し、景気を下押しして物価上昇はそのまま続かない」(黒田氏)と見ているためだ。
物価と景気のはざまで日銀の抱えるジレンマは根深い。安倍氏、黒田氏という金融緩和の主役2人が舞台を去ったとしても、異次元緩和の修正が容易ではないことを印象づけた。 

 

●円相場、137円58〜58銭 7/22
22日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=137円58〜58銭と、前日(138円57〜62銭)に比べ99銭の円高・ドル安となった。 
●NY円急伸、一時135円台 景気先行き懸念で2週ぶり 7/22
週末22日のニューヨーク外国為替市場では、世界的な景気をめぐる懸念が広がる中、米長期金利の低下を受けて円買い・ドル売りが加速、円相場は一時約2週間ぶりに1ドル=135円台に急伸した。午後5時現在は136円02〜12銭と、前日同時刻比1円27銭の大幅な円高・ドル安。
●NY為替市場 円相場 一時1ドル135円台半ばまで値上がり  7/22
22日のニューヨーク外国為替市場では、アメリカの企業の景況感を示す経済指標が市場の予想を下回ったことをきっかけに景気減速への懸念からドルを売って円を買う動きが出て円相場は一時、およそ2週間ぶりに1ドル=135円台半ばまで値上がりしました。
22日のニューヨーク外国為替市場では、この日に発表されたアメリカの企業の購買担当者の景況感を示す経済指標が市場の予想を下回ったことをきっかけに、アメリカの景気減速への懸念が広がりました。
債券市場でアメリカの国債が買われ、長期金利が一時、2.7%台まで低下したこともあってドルを売って円を買う動きが出て、円相場は一時、およそ2週間ぶりに1ドル=135円台半ばまで値上がりしました。
外国為替市場では、このところ円安が進み、円相場は先週、およそ24年ぶりに1ドル=139円台まで値下がりしましたが、急速な円安にひとまず歯止めがかかりました。
市場関係者は「このところ発表されているアメリカの景気に関する経済指標が相次いで市場の予想を下回っていることもあって、ドルが売られやすい状況となっている。市場ではアメリカの中央銀行に当たるFRB=連邦準備制度理事会が来週開く金融政策を決める会合の結果に関心が集まっている」と話しています。
●1ドル=139円台、円安はどこまで進むのか 7/22
円相場がまたも急落し、14日には1ドル=139円台まで下落、いよいよ140円の大台目前まで円安ドル高が進みました。直接の理由として挙げられているのが、13日発表されたアメリカの6月の消費者物価指数です。前年比で9.1%もの上昇となり、5月の8.6%どころか、事前予想の8.8%をも上回り、1981年11月以来の高いインフレ率です。前月比でみても6月は1.3%の伸びと、5月の1.0%を上回っており、度重なる利上げにもかかわらず、インフレは減速するどころか逆に加速しています。金融市場では、アメリカの中央銀行にあたるFRBが7月の決定会合で1.0%利上げに踏み切るという見方まで台頭し、日米の金利差が一層意識されたとされています。
しかし、為替市場を左右する最も大きな要因とされる長期金利(10年物国債の利回り)は、実は低下しているのです。消費者物価が発表された当日も、いったんはショックで上昇したものの、2.93%にまで下げて終わりました。3%台半ばまで上がった6月と比較すれば、すでにアメリカの長期金利にはピークアウト感が出てきています。これは急速な引き締めによるアメリカの景気減速を、市場が織り込み始めことを示しているものです。
一方、外国為替市場で最も注目を集めているのは、円ではなく、ユーロの急落です。13日、ユーロはなんと20年ぶりに1ユーロ=1ドルという等価(パリティ)を割り込みました。海外旅行好きの人なら、「1ドルは110円だが、1ユーロは130円」というように、円換算した時にユーロのほうがドルより高いというのが半ば常識でしょうが、それが逆転したのです。20年前といえば、1999年に誕生した統一通貨ユーロに対する、いわば先行期待が剝げ落ちた時期で、その後はヨーロッパ債務危機の際にも等価(パリティ)割れしなかっただけに、今回は、歴史的な出来事と言ってよいでしょう。
背景にあるのは、ウクライナ戦争の打撃を最も受けているヨーロッパの景気の先行きへの懸念です。ユーロ圏も6月に消費者物価8.6%上昇と歴史的なインフレに直面していて、ECB・欧州中央銀行はすでに利上げへの転換を表明していますが、すぐ先には景気後退に陥るのではないかと心配されているのです。足もとの円安も、ユーロの急落に引っ張られた感が強く、外国為替市場では、ドルだけが一人、強くなっているという、典型的なドル高が進んでいるのです。相対的に見れば、日米欧を見比べれば、急速な金利引き上げができるアメリカ経済が、一番まともというわけです。
しかし、ここまで見てくると、少し不思議な気もします。アメリカの景気減速懸念が台頭しているのにドル高がどんどん進むのは、違和感がありますし、そもそもインフレが進んでいる国の通貨は、減価する方が理にかなっています。コロナバブルが弾けて買うものがない中で、結局ドルしか買えないという状況を示しているように思えます。言い換えれば、ある種の不均衡が拡大しているとも言え、そうした不均衡は、いずれ相場が反転する際の、マグマを貯めていると見えなくもありません。

 

●動かない日銀 副作用にもっと目を配れ 7/23
金融政策を正常化させる世界の流れから日本だけが取り残された格好だ。金利差が拡大して円安ドル高がさらに進む可能性がある。輸入物価を押し上げ、国民生活への打撃が大きくならないか心配だ。
日銀は21日までの金融政策決定会合で、市場の予想通り、大規模な金融緩和策の維持を決めた。
その数時間後、欧州中央銀行(ECB)は11年ぶりの利上げ決定に踏み切った。市中銀行の余剰資金に対するマイナス0・5%の預金金利をゼロにし、2014年から続くマイナス金利政策を終える。
新型コロナ禍で金融緩和を実施した世界の中央銀行の多くは、物価高を抑え込むため金融引き締めに転じている。ECBもこれに追随した。先行した米連邦準備制度理事会(FRB)は来週の会合でも大幅利上げを決定する見通しで、日銀の孤立が際立つ。
金融政策はそれぞれの国や地域の経済情勢を踏まえ判断される。景気を下支えするために金融緩和を続けるという日銀の説明は理解できる。
黒田東彦総裁は記者会見で急速な円安は日本経済にマイナスと述べる一方、「金利をちょこっと上げるだけで円安が止まるとは到底考えられない」と持論を展開した。大規模な金融緩和の必要性を強調し、金利引き上げや長期金利の変動幅を変更するつもりは「全くない」と言い切った。
長期金利を揺さぶる市場へのメッセージだろうが、かたくなになっているようにも聞こえる。現在の金融政策を墨守し、修正に柔軟さを欠くのであれば問題だ。
大規模な金融緩和は13年4月に始まった。年2%程度の物価安定目標を2年程度で実現するはずが、できないまま9年以上が経過した。金融政策で物価を引き上げる筋書き通りにならなかったのは明らかだ。金融緩和の長期化がもたらす副作用もある。経済全体への目配りが欠かせない。
その一つが直面する円安である。世界的な資源価格の上昇と記録的な円安が重なり、今年上半期の貿易収支は赤字が過去最大となった。
日銀は今回、物価見通しを改め、22年度は目標を上回る2・3%とした。23年度以降は1%台半ばに減速し、持続的、安定的な物価上昇ではないとみる。それでも政策を一切修正できないと硬直的に考える必要はあるまい。
長期金利を上限の0・25%に抑えるため無制限に国債を買い入れる政策は、市場をゆがめるとの批判がある。日銀の国債保有残高が膨らみ、政府の財政規律の緩みも気がかりだ。金利変動幅の見直しは選択肢になるのではないか。
日銀の金融政策を決める審議委員6人のうち、2人は24日付で交代する。来春には黒田氏と2人の副総裁が任期満了を迎える。大規模金融緩和の見直しはその後になりそうだ。市場の混乱を招かないように、出口戦略は入念に準備しておかねばならない。
●株安と円高ドル安に注意 米国株下がっても積立投資は継続を! 7/23
多くの投資家に人気の米国株指数「S&P500」が1月3日につけた高値から20%以上の下落を記録し、弱気相場入りしました。一般的に直近高値から20%下落すると弱気相場入りしたと定義されています。人気の「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」や「SBI•V•S&P500インデックスファンド」などの投資信託も昨年までの伸びが嘘のようになってしまっています。実際にこれらの投資信託のマイナス幅自体はそれほど大きくないはずです。理由は「円安」がマイナス幅を軽減しているからです。一時137円台を記録した円安がドルベースでの下落を緩和している形となるため、その損失が小さくなっていることが原因です。巷では円安の影響で物価が高くなっているという「負」の影響が取り上げられていますが、外国資産を保有している方にとっては円安の悪い影響を抑え、むしろ「正」にすることができる典型的な例でしょう。今回の例からも円資産のみでなく、外国資産を保有することの重要性が確認できますが、S&P500をはじめとした米国株式が弱気相場入りしていることは事実です。歴史的な円安となっている今だからこそマイナス幅が小さく済んでいますが、仮に為替が円高に動いた場合は株安と円高ドル安のダブルパンチを被る可能性もあり得ます。
円安の主な原因は日米の金利差
歴史的な円安が起きている理由は様々ですが、主な要因の一つに日米の金利差が挙げられます。米国はコロナ禍において大胆な金融緩和策を実施しました。これが功を奏してかコロナ禍を乗り切り、経済の停滞は限定的なもので済みましたが、次に米国を襲ったのが急激なインフレ(物価上昇)です。市場にお金が出回ることによる経済の過熱と、未だ残るコロナの影響による物流の停滞など、様々な要因が絡み合い急激な物価の上昇が引き起こされました。賃金上昇や企業利益の向上を伴う緩やかなインフレは経済成長に欠かせないものですが、今回のインフレはかなり急激です。過度な物価上昇は景気後退を招くことになるので、FRB(米国の中央銀行)も行き過ぎたインフレを抑える施策を取る必要が出てきます。
その施策の代表例が利上げ
利上げを行うことによりお金を借りることに抵抗が生まれますので、過熱した経済に落ち着きを取り戻す効果が期待できます。米国ではFOMC(米国の金融政策決定会合)のたびに利上げを行い、インフレの沈静化に努めています。対して日本では金利を一定値以上には上げない「指値オペ」という施策が行われています。米国と違って日本は長らく低成長が続いております。米国同様に金利を引き上げるとプラスの効果よりもマイナスの効果の方が大きいと判断されていますので、金利が0.25%を超えることが無いよう、日銀が国債を買い入れています。つまり日本は金利が上がらず、米国は金利が上がり続けており、今後もそれが続くと見られています。一般的に投資マネーは金利の低い通貨から金利の高い通貨へ流れます。より大きな利息が付く方に投資したいと考えることはごく自然なことです。金利の低い円を売って、金利の高いドルを買う流れが強くなっていますので、売られれる円の価値は低くなり(円安)、買われるドルの価値が上がっている(ドル高)のが今の状況です。この円安ドル高は米国の利上げが終わらない限り続くというのが大方の見方ですが、言い換えると米国の利上げが落ち着きを見せれば、円高ドル安に動く可能性があるということになります。
インフレが落ち着きを見せると米国の利上げも終わる?
FRBが利上げを急いでいる理由はインフレの沈静化にあります。インフレが無事落ち着きを見せると利上げを急ぐ必要がなくなりますから、そのペースは鈍化することになるでしょう。そうなると今のような円安もひと段落し、円高の方向に動くことになる可能性が高くなります。この場合は株価も落ち着きを見せ、上昇に転じるかもしれません。為替による利益は小さくなりますが、株価は上昇するので大きな問題はないでしょう。
怖いのはリセッション(景気後退)を伴った円高ドル安
急激な物価上昇は経済活動の停滞を招き、リセッションの原因となってしまいます。FRBはリセッションを避けるべく利上げをおこなっておりますが、それも虚しく、近々、もしくは既に米国はリセッション入りしてしまっているという説が濃厚になってきています。リセッションになってしまうと金利を上げ続けることによってさらに経済活動は停滞、悪化してしまいます。これまでと同じ早いペースで利上げを行うことは難しくなるでしょう。利上げのペースを落とす、もしくは逆に利下げを行うことによって経済を回復させる必要が出てきます。そうすると日米の金利差は縮まります。金利差が縮まれば円高に動くのがセオリーです。リセッションによる経済停滞、景気悪化で株価も下落し、為替も円高ドル安に動くことによって株価と為替のダブルパンチを被ってしまう可能性も否定できません。あくまでも現時点では可能性の話ですが、さらなる米国株の下落と円高の可能性も視野に入れておく必要があるでしょう。
積立投資は株価や為替の動きを気にすることなく続けることが大事
更なる下落が予想される米国株式への投資は控えた方が良いのでしょうか。保有している資産は売却し、円高になってから投資を再開する方が得策なのでしょうか。答えは「否」です。現在の株価や為替は長い投資期間から見れば一つの通過点に過ぎません。米国株は多くの暴落を経験し、例外なくその暴落から回復、高値を更新し続けています。もちろんこれからもそうなると断言することはできませんが、そうなる可能性は高いといえるでしょう。ただひたすらに積立を継続することが長期的な利益の源泉になるということは過去の歴史が教えてくれています。高値、安値や円安、円高といったことに踊らされることなく、淡々と続けることが将来の利益につながるはずです。
●ロンドン外国為替市場で円相場、1ユーロ = 139円を切る 7/23
7月23日18時28分頃、ロンドン外国為替市場で円相場は1ユーロ = 139円を切り、前日3時頃の価格(139.16円)から0.18円(0.13%)下落となる138.98円となった。

 

●出口の見えない円安と物価上昇でガソリン代はこの先どうなる? 7/24
円安ドル高の傾向が続いています。2022年7月14日の東京外国為替市場では、1ドル=139円台を記録。1998年9月以来24年ぶりという円安になっています。
また、アメリカの2022年6月の消費者物価指数は前の年の同じ月に比べて9.1%も上昇。これは40年半ぶりの高い水準となっています。
日本でもガソリン代が高値で推移し、暮らしに不安を持つ人も多いのではないでしょうか。そこで、改めてガソリン代の計算方法をご紹介、今だからこそクルマの利用方法を見直してみてはいかがでしょうか?
ガソリン代はどれくらい値上がりしているの?
ガソリン代が値上げしているとご案内しましたが、実際はどのような動きをしているのでしょうか? 経済産業省 資源エネルギー庁から詳しいデータが公表されていますので、そちらを確認してみましょう。
   ガソリンなどの店頭現金小売価格の全国平均はいくら?
同庁が2022年7月13日に発表した石油製品価格調査の結果の概要を確認してみましょう。同調査によると、レギュラーガソリンの店頭現金小売価格(税込。以下同)は、1Lあたり172.7円となりました。こちらは直近では2週連続の値下がりですが、依然として高値水準を保っています。また、ハイオクガソリンの店頭現金小売価格は、1Lあたり183.5円となっています。同年6月27日の調査では、レギュラーガソリンが1Lあたり174.9円、ハイオクガソリンは1Lあたり185.8円となっています。
   東京都のガソリン代は高い? 北海道や沖縄県は高いの?
東京や大阪などの大都市圏では、ガソリン代が高いというイメージがあるかもしれません。また、本州と離れる北海道や沖縄などもガソリン代が高いのでは? と思う方がいるかもしれません。経済産業省 資源エネルギー庁の統計で改めて確認してみましょう。2022年7月11日の現金価格の平均値は以下のようになっています。
北海道 / レギュラーガソリン:171.0円 / ハイオクガソリン:181.9円
東京都 / レギュラーガソリン:173.3円 / ハイオクガソリン:182.1円
愛知県 / レギュラーガソリン:167.8円 / ハイオクガソリン:178.8円
大阪府 / レギュラーガソリン:173.0円 / ハイオクガソリン:184.2円
福岡県 / レギュラーガソリン:173.1円 / ハイオクガソリン:184.1円
沖縄県 / レギュラーガソリン:182.3円 / ハイオクガソリン:191.1円
経済産業省 資源エネルギー庁の統計で、ガソリン代が一番安かった県は宮城県でした。一方、一番高かった県は長崎県でした。その差は1Lあたりで15円ほどとなっています。
ガソリン代の推移
経済産業省 資源エネルギー庁のホームページには1990年8月27日調査からの統計が公開されています。そこで、過去32年でのガソリン代の最安値、最高値を確認してみました。
同庁の統計による、レギュラーガソリン現金価格の全国平均で1990年8月27日以降の最安値は、1998年10月26日の1Lあたり91円です。この91円という価格は、199年6月7日調査でも記録されているので、この時期がここ30年あまりでガソリン代が安かった時期といえそうです。
逆に最高値は2008年8月4日の185.1円です。同年は月別で9番目までの高値を占めており、2008年7月7日調査から2008年9月1日までがワースト10に入っているので、この時期がガソリン代がいちばん高かったといえそうです。
また、直近では2022年3月14日の1Lあたり175.2円がちょうど10番目の高値。2022年7月11日調査の172.7円もワースト24番目に入っており、2022年はここ30年あまりで2番目に高値の時期と推測できるでしょう。
2008年水準で考えると、レギュラーガソリンの現金価格が180円を超えてくると「かなり高い」、危険領域になるかもしれません。
   10年前に比べてガソリン代は高い? 安い?
それでは、2012年7月9日調査以降の直近10年でレギュラーガソリンの現金価格の推移を確認してみましょう。2012年7月9日のレギュラーガソリン現金価格の全国平均値は139.4円でした。それから比較すると、2022年7月11日が172.7円なので、33.3円値上がりしたことになります。最安値は2016年3月7日の112.0円です。そこに比べると、60.7円も値上がりしたことになります。最高値は2022年3月14日の175.2円。2016年2月〜4月にかけて、ワースト10に入る月が多かったのですが、直近の6〜7月もワースト圏内に入っており、直近のガソリン代の値上がりは予断を許さない状況にあるといえそうです。

 

●米ドルの圧倒的「一人勝ち」で日本経済の貧困化はさらに進むのか? 7/25 
ドル資金が市場から消える
このところ為替相場では円安ドル高が続いているが、ドルは円に対してだけ強くなっているわけではない。ドルはユーロなど他の通貨に対しても高く推移しており、ユーロドル市場は、一時、両通貨の交換比率が1を下回る「パリティ割れ」と呼ばれる状況になった。これは約20年ぶりの出来事である。
米ドルの価値が上がっているのは、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が金融正常化を急ピッチで進めており、金利の上昇とマネーの収縮が進んでいるからである。
米国をはじめとする世界の中央銀行は、リーマンショックに対応するため市場から国債を買い入れ、大量のマネーを供給する量的緩和策を続けてきた。この政策によって米国経済はリーマンショックから回復し、成長軌道に乗ったものの、近年は物価上昇が顕著となっていた。こうしたところに原油価格の高騰やウクライナ情勢などが影響し、昨年(2021年)後半からはインフレが急加速。米国政府とFRBにとってインフレ抑制は目下、最優先の課題となっている。
当初、FRBによる金利引き上げは、金融政策を元の状態に戻すいわゆる「金融正常化」の一環として行われていた。しかし、インフレが政治問題化した2022年以降は、インフレ抑制策としてのニュアンスが強くなっている。
FRBは2022年6月、保有する国債を売却して、市場からマネーを回収するQT(量的引き締め)を開始したが、これは市場に大量のマネーを供給するQE(量的緩和策)とは正反対のオペレーションである。
FRBは量的緩和策の実施を通じて、当初(2008年1月時点)約8300億ドルだったマネタリーベースを、約7倍の5.6兆ドルまで増やした。マネタリーベースの増加によって信用創造は大きく膨らみ、結果としてマネーストックは7.5兆ドルから21.7兆ドルへと約3倍に拡大している。とりわけコロナ後に実施された大量の流動性供給による影響は大きく、全世界にドルが溢れかえった状態と言ってよい。
ところが量的引き締めでは、最大で月あたり950億ドルのペースで資金の回収が実施される。FRBが予定通りQTを実施した場合、2年間で約2.3兆円ドルの資金が回収される計算だ。単純に考えればマネタリーベースが約4割減少するということであり、この比率をマネーストックにそのまま当てはめた場合、市場からは約9兆ドルのマネーが消滅する。実際にここまでのペースで信用収縮が発生するのかは分からないが、少なくとも近年、市場が経験したことがないペースでマネーが消えるのは間違いない。
新興国では資金引き揚げで株価下落も
ドルは世界における基軸通貨であり、これだけの勢いでドルが市中から消滅すると、日本を含む各国の金融市場には極めて大きな影響が及ぶ。
日本にとって最大の懸念材料はやはり円安だろう。ドルが急速に市場から回収されるということは、相対的にドルの価値が上昇することを意味している。当然のことながら、このオペレーションは金利の上昇とセットになっており、日米の金利差をさらに拡大させる作用をもたらす。日本にとっては現在、進んでいる円安が加速、あるいは長期化する可能性が高まってくる。
同時に、ドルの確保が難しくなる可能性もあり、邦銀の経営にも影響を及ぼす可能性がある。メガバンクを中心とした邦銀各行は、輸入を行う企業に対してドル資金を提供している。これまで市場からドルを調達するのは容易だったが、米国のQT実施によってドルの価値が高まり、ドルの調達コスト上昇が懸念される。今後、ドルの回収が進んだ場合、邦銀はドル調達に際してより高いプレミアムを支払う必要が出てくるため、収益悪化要因となる。
新興国の場合、証券市場にも大きな影響が及ぶだろう。
ドルは資源国など一部の国の通貨を除き、多くの通貨に対して上昇している。対外債務比率が高い国の通貨は対ドルで大幅に下落しており、一部ではデフォルトの可能性も指摘される。すでにスリランカは国家破産状態となっているし、アルゼンチンやトルコといった国々も対外債務の履行が困難になると予想されている。
日本でもいよいよ外貨が貴重品となりつつある
今のところ米国経済そのものは、大きな影響を受けておらず、株式市場もそれなりの水準を維持している。だが米国の金利上昇ペースがさらに加速し、新興国を中心に全世界的な株価下落が発生した場合、米国経済本体も無傷でいられるとは限らない。
米国の株市場は何とか高値を維持していることから、今のところ投資家は、インフレに対して大きく買い負けた状態にはなっていない。だが、米国の株価が大幅に調整することになれば、物価は上昇しているにもかかわらず資産価格が下がる結果となる。
今後の株価を正確に予想することは難しいが、少なくともリーマンショック以降の米国の株価はFRBによるマネタリーベースの増加と歩調を合わせて上昇を続けてきた。同じようにマネーの収縮ペースに合わせて株価が下落した場合、調整はかなり長引くことになる。
日本円の対ドル下落率はユーロなど他通貨よりも大きく、日本が置かれた状況もかなり厳しい。
日本はトルコやアルゼンチンといった新興国とは異なり、資金調達の多くが国内で実施されていることから、ドル回収の影響を直接的に受けるわけではない。それにもかかわらず、日本円の対ドル下落幅が大きいのは、日米の金利差拡大の影響が大きいことに加え、日本の購買力低下を市場が懸念しているからである。
このまま円安が進んだ場合、日本の物価にもう一段の上昇圧力が加わり、交易条件の悪化によって日本経済の貧困化がさらに進む可能性が否定できない。ドル調達コストの上昇も、ジワジワと実体経済に影響を及ぼしていくだろう。
日銀は現在の金融政策を変更する方針は示しておらず、米国の金利差は拡大する一方である。米国も正常化実施後、すぐに緩和路線に転じるとは考えにくい。
戦後、一貫して円の価値は上がっており、日本人は容易にドルを入手し、世界に対して高い購買力を発揮できた。しかしながら、こうした従来の常識はそろそろ捨て去る必要がある。他の多くの国と同様、外貨は貴重なものであるとの認識が必要となってくるかもしれない。 
●円相場、136円13〜17銭 7/25
25日の東京外国為替市場の円相場は、正午現在1ドル=136円13〜17銭と、前週末(137円58〜58銭)に比べ1円45銭の円高・ドル安となった。 
●円、136円台半ば ロンドン外為 7/25
週明け25日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策発表を週内に控えた様子見ムードの中を1ドル=136円台半ばに下落した。正午現在は136円40〜50銭と、前週末午後4時比35銭の円安・ドル高。 
●NY円、反落 1ドル=136円60〜70銭 FOMC前で持ち高調整の円売り 7/25
25日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3営業日ぶりに反落し、前週末比60銭円安・ドル高の1ドル=136円60〜70銭で取引を終えた。26〜27日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に持ち高調整の円売り・ドル買いが優勢となった。米長期金利の上昇も日米金利差の拡大を受けた円売りを促した。
FOMCでは通常の3倍の0.75%の利上げが確実視されている。金融引き締めを続ける米連邦準備理事会(FRB)と、大規模な金融緩和を維持する日銀の違いが改めて意識され、円が売られた。米長期金利が終値で2.80%と前週末比0.05%上昇し、円売り・ドル買いを誘った。
取引終了にかけて円は下げ渋った。今週は28日に4〜6月期の米実質国内総生産(GDP)速報値、29日に6月の米個人消費支出(PCE)のインフレ指標など注目度の高い経済指標の発表が相次ぐ。結果を見極めたいとの雰囲気が強く、積極的にドルを買う動きは限られた。
円の安値は136円78銭、高値は136円42銭だった。
円は対ユーロで4営業日ぶりに反落し、前週末比75銭円安・ユーロ高の1ユーロ=139円60〜70銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで小反発し、前週末0.0005ドル高の1ユーロ=1.0215〜25ドルで終えた。ユーロ買いが先行した。だが、ロシア国営ガスプロムが25日、ロシアとドイツをつなぐ天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム」の流量を減らすと述べたと伝わった。エネルギー不足によるユーロ圏の経済活動の縮小を見込むユーロ売りを誘い、上げ幅を縮小して終えた。
ユーロの高値は朝方につけた1.0255ドル、安値は1.0204ドルだった。

 

●外為 1ドル136円53銭前後とドル高・円安で推移 7/26
26日の外国為替市場のドル円相場は午前8時時点で1ドル=136円53銭前後と、前日午後5時時点に比べ16銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=139円53銭前後と54銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●外為 一時1ドル136円20銭台に軟化、時間外のNYダウ先物安などが影響 7/26
26日の東京外国為替市場のドル円相場は、午前10時時点で1ドル=136円42銭前後と前日の午後5時時点に比べ2銭程度のドル高・円安となっている。
25日のニューヨーク外国為替市場のドル円相場は、1ドル=136円69銭前後と前週末に比べて60銭弱のドル高・円安で取引を終えた。26〜27日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にした持ち高調整のドル買い・円売りが優勢で、一時136円79銭まで上伸した。
ただ、FOMCの結果やパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見を見極めたいとする向きも多く、この日の東京市場ではドル買いが一服。こうしたなか、日経平均株価や時間外取引のNYダウ先物が下落していることが影響し、午前9時30分ごろには136円27銭まで下押す場面があった。
ユーロは対ドルで1ユーロ=1.0230ドル前後と前日の午後5時時点に比べて0.0040ドル弱のユーロ高・ドル安。対円では1ユーロ=139円56銭前後と同50銭強のユーロ高・円安で推移している。 
●東京円、25銭安の1ドル=136円65〜67銭 7/26
26日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比25銭円安ドル高の1ドル=136円65〜67銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは同63銭円安ユーロ高の1ユーロ=139円65〜69銭で大方の取引を終えた。
●円、136円台後半=ロンドン外為 7/26
26日朝のロンドン外国為替市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策発表を翌日に控えて様子見ムードが強まる中、円相場は1ドル=136円台後半で小動きとなった。午前9時現在は136円60〜70銭と、前日午後4時比05銭の円高・ドル安。 
●NY円、136円後半 7/26
26日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午前8時半現在、前日比01銭円安ドル高の1ドル=136円61〜71銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0116〜26ドル、138円29〜39銭。
エネルギー不足で欧州経済が減速するとの懸念からユーロに対してドルや円が買われ、その影響でドルと円の取引はもみ合う展開となった。

 

●外為 1ドル136円84銭前後とドル高・円安で推移 7/27
27日の外国為替市場のドル円相場は午前8時時点で1ドル=136円84銭前後と、前日午後5時時点に比べ19銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=138円59銭前後と1円06銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●東京円、32銭円安の1ドル=136円97〜99銭  7/27
27日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比32銭円安・ドル高の1ドル=136円97〜99銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは、77銭円高・ユーロ安の1ユーロ=138円88〜92銭で大方の取引を終えた。
●ロンドン外為27日 ユーロ、対ドルで下落 FOMC控えドル買い 7/27
27日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=1.0120〜30ドルと、前日の同時点に比べ0.0010ドルのユーロ安・ドル高で推移している。米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表を英国時間27日夕に控え、持ち高調整のユーロ売り・ドル買いが優勢となっている。天然ガス供給不足による欧州経済の悪化懸念もユーロ相場の重荷になった。
円は対ユーロで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=138円90銭〜139円00銭と前日の同時点に比べ50銭の円安・ユーロ高で推移している。対ドルでの円売りが対ユーロに波及した。
英ポンドは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.2030〜40ドルと前日の同時点より0.0020ドルのポンド安・ドル高で推移している。
●NY外為 円、137円近辺 7/27
27日午前のニューヨーク外国為替市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融政策会合の結果発表を控えて様子見ムードが広がる中、円相場は1ドル=137円近辺で小動きとなっている。午前9時現在は136円90銭〜137円00銭と、前日午後5時比変わらず。
FRBはこの日まで2日間の日程で開催する連邦公開市場委員会(FOMC)で通常の3倍となる0.75%の利上げを決定すると予想されている。連邦公開市場委員会(FOMC)声明発表とパウエルFRB議長の会見を午後に控え、市場は、9月以降の利上げペースや景気認識に関する内容を見極めたいとの雰囲気になっている。
米商務省が朝方発表した6月の耐久財受注は前月比1.9%増と、市場予想(0.5%減=ロイター通信調べ)を大幅に上回ったが、市場の反応は限定的だった。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0140〜0150ドル(前日午後5時は1.0111〜0121ドル)、対円では同138円85〜95銭(同138円48〜58銭)と、37銭の円安・ユーロ高。

 

●外為:ドル136円前半で弱含み、FRB議長発言で売り圧力強まる 7/28
<09:02> ドル136円前半で弱含み、FRB議長発言で売り圧力強まる
ドルは136.07円付近で弱含み。前日のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見を受けて、FRBが大幅利上げに対して慎重な姿勢を示したと受け止められたことから、「急激なドル高/円安にブレーキがかかった格好」(国内金融機関)という。
時間外取引の米長期金利は2.76%台と3%を下回る水準で推移するなど、「金利差の面からもドル買い/円売りが進めにくく、いったん140円台は遠のいた」(同)との声が聞かれた。
ただ、再び米国の大幅利上げ観測が強まり、日米金利差拡大が意識されるほか、株高によるリスク選好の流れから円売り圧力が強まれば、ドル/円は再び上昇基調に戻る可能性はあると、みられている。
パウエル議長は27日、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、現在は通常よりも「著しく」不確実性が増しており、当局はこれまでのように政策の水準と軌道に関する長期的ガイダンスを提供することができないと表明。政策の方向性について信頼できるガイダンスを提供できるのは、唯一「会合ごとに」だと述べた。 また、「次回の会合でも異例の大幅利上げが適切かもしれないが、それは今からその時までに得られるデータに左右される」とし、「われわれは引き続き会合ごとに意思決定を行い、我々の考えをできる限り明確に伝えていく」と述べた。
<07:58> ドル135.90─137.20円の見通し、底堅さ維持も上値は重い
きょうの予想レンジはドル/円が135.90―137.20円、ユーロ/ドルが1.0130─1.0260ドル、ユーロ/円が138.50―140.00円付近。
現在、ドル/円は136.45円付近、ユーロ/ドルは1.0199ドル付近、ユーロ/円は139.19円付近で推移している。
きょうのドル/円は、米金利や株価の動向をにらみながら、136円半ばを中心に推移するとみられる。月末絡みのフローで実需のドル買いが入りやすいほか、日経平均株価が上昇するなどリスク選好の流れから円売り圧力も強まれば、137円に乗せる可能性がある。
ただ、前日のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言を受けて、ドル売り圧圧力が強まるなど、「137円台では調整売りもでやすいとみられ、上値追いに慎重となりそうだ」(国内金融機関)との声が聞かれた。
26日のニューヨーク市場では、米FRBが26─27日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を75ベーシスポイント(bp)に引き上げた。
FOMC後のパウエル米FRB議長の会見を受けてドルは上下に振れた後、FRBが今後の利上げペースを加速させないとの思惑が強まり、ドルは一時136.33円付近まで下落。同市場の終値は136.55/58円だった。
主なスケジュールでは、6月の豪小売売上高や7月の独消費者物価指数(速報値)、第2・四半期米GDP(速報値)、週間の米新規失業保険申請件数などが発表予定となっている。
●東京外為 ドル、135円台前半=実需や投機筋の売りに下落 7/28
28日午前の東京外国為替市場のドルの対円相場(気配値)は、米利上げ加速観測の剥落を受けた投機筋や実需のドル売りの動きがさらに優勢となり、1ドル=135円台前半に下落した。正午現在は、135円36〜36銭と前日(午後5時、136円98〜98銭)比1円62銭の大幅ドル安・円高。
前日の海外時間には、米連邦公開市場委員会(FOMC)が0.75%の利上げを決定。一部で1.00%の大幅利上げが予想されていたこともあって発表直後からドルが売られ、パウエルFRB議長が会見で今後の利上げペースを緩める可能性に触れたことを受けて、さらにドル売り・円買いが進んだ。
きょう東京時間はこの流れを受けて136円10銭近辺で始まった。仲値に向けては月末要因による輸入企業のドル買い・円売りが先行し、136円40銭台まで強含んだものの、その後は輸出企業によるドル売り・円買いに投機筋のドル売りも加わってドル円の下げが加速。一時135円00銭台まで水準を切り下げた。
市場では「投機筋のポジション調整に伴うドル売りがどの程度出てくるのかを見極めたい」(大手証券)との声が聞かれる。きょう発表される4〜6月期の米GDPについては、「2期連続のマイナス成長となれば、ドル売りがさらに強まりやすくなる」(外為仲介業者)との見方が出ていた。
ユーロは朝方に比べ対円で下落、対ドルはもみ合い。正午現在は、1ユーロ=138円13〜15銭(前日午後5時、138円90〜91銭)、対ドルでは1.0204〜0205ドル(同1.0140〜0141ドル)。
●午後3時のドルは135円前半、円一段高で3週ぶり安値 7/28
午後3時のドル/円は、前日ニューヨーク市場の終盤からドル安/円高の135円前半で取引されている。海外市場でドルが売られた流れを継いで、東京市場では円が一段高。短期筋のドル売り/円買いが活発化したという。
海外市場で下落したドルは、朝方の136円半ばから続落。「136円台を割り込んだことで、これまでドルを買い込んだ向きが損失確定のドル売りを迫られた」(外銀)といい、7月6日以来3週間ぶり安値となる135.10円まで一気に下落した。
前日の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、ドル買い/円売りを後押しする材料も特段見当たらず「海外勢を中心にいったんポジション調整の売りが出たようだ」(クレディ・アグリコル銀行の外国為替部長、斎藤裕司氏)という。
対ドルで円買いが勢いづいたことで、円高は他通貨にも波及。6月小売売上高が予想を下回った豪ドルは95円半ばから94円半ばへ売られ、ユーロも139円前半から137円後半まで下落した。
ユーロはその後、138円前半へ小幅反発。日本時間午後1時半に発表されたドイツ最大州ノルトライン・ウェストファーレン州の7月消費者物価指数(CPI)は、前月比プラス1.1%と前月のマイナス0.1%を大きく上回った。前年比ではプラス7.8%だった。
●ロンドン外国為替市場で円相場、1ユーロ = 137円を切る 7/28
7月28日21時54分頃、ロンドン外国為替市場で円相場は1ユーロ = 137円を切り、前日3時頃の価格(138.91円)から1.93円(1.39%)下落となる136.98円となった。

 

●NY市場、一時134円台前半…1か月半ぶりの円高水準  7/29
28日のニューヨーク外国為替市場で、円相場は一時、1ドル=134円台前半まで上昇した。6月中旬以来、約1か月半ぶりの円高・ドル安水準になった。
円相場は一時、1ドル=134円20銭台をつけた。7月中旬には1ドル=139円30銭台まで円安が進み、約24年ぶりの円安水準を更新していた。2週間程度で約5円、円高が進んだ。
28日に公表された2022年4〜6月期の米国の実質国内総生産(GDP)が2四半期連続のマイナス成長となり、米国経済の先行きに対する不透明感が増した。比較的安全な資産とされる米国債が買われたことで、米長期金利の指標となる10年物米国債の利回りは一時、2・6%台と、4月中旬以来の水準に低下した。
日米の金利差が縮小したことから、運用の魅力が薄れたドルを売り、円を買う動きが優勢だった。
●円相場 一時1ドル=134円台前半まで値上がり 米GDPの発表受け  7/29
28日のニューヨーク外国為替市場では、アメリカのGDP=国内総生産の伸び率が2期連続のマイナスとなったことを受けて、景気後退への警戒からドルを売って円を買う動きが強まり、円相場は一時、およそ1か月ぶりに1ドル=134円台前半まで値上がりしました。
28日のニューヨーク外国為替市場では、この日発表されたアメリカのGDPの伸び率が2期連続のマイナスとなったことを受けてドルを売って円を買う動きが強まりました。
このため円相場は一時、およそ1か月ぶりに1ドル=134円台前半まで値上がりしました。
市場では27日に中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が0.75%の大幅な利上げを決めたこともあって景気後退への警戒が広がりました。
安全資産としてアメリカ国債が買われて長期金利が低下し、日米の金利差が縮まるとの見方からドル売り円買いにつながりました。
一方、ニューヨーク株式市場では、FRBの利上げのペースが鈍るとの観測などから買い注文が増え、ダウ平均株価の終値は前日に比べて300ドルを超える値上がりとなりました。
市場関係者は「景気後退への警戒は根強いが利上げのペースが鈍れば景気の急激な冷え込みは避けられるとの見方もあり、景気の先行きについて見方が分かれている状況だ」と話しています。
●NY市場サマリー28日 株大幅続伸、ドル/円6週間ぶり安値、利回り低下 7/29
為替
ニューヨーク外為市場でドルが対円で下落し、6週間ぶり安値を付けた。朝方発表された第2・四半期の米国内総生産(GDP)が2四半期連続で縮小したことを受け、米連邦準備理事会(FRB)が積極的な利上げを続けるという観測が後退した。
米商務省が28日発表した第2・四半期の実質GDP速報値は年率換算で前期比0.9%減と、2四半期連続で縮小。米経済活動の3分の2以上を占める個人消費は2年ぶりの低い伸びとなった。
UBSのFXストラテジスト、バサール・セレブリアコフ氏は「低調なGDPは明らかに景気減速を示唆している。インフレ軟化に伴い成長も鈍化するだろう」と指摘。「そうなれば、引き締めサイクルの終了につながり、とりわけドル/円を圧迫することになる」と述べた。
終盤の取引で、ドル/円は1.7%安の134.31円。一時6週間ぶりの安値となる134.30円に沈む場面もあった。1日の下げ率としては2020年3月以来最大となる勢い。
ドルは米債利回りの低下にも追随した。
債券
米金融・債券市場では、米債利回りが低下した。第2・四半期の米国内総生産(GDP)が2四半期連続で縮小したことを受け、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ抑制に向けそれほど積極的になる必要がないかも知れないとの見方が広がった。
10年債利回りは5.1ベーシスポイント(bp)低下の2.681%。GDP発表直前には2.783%まで上昇していた。
MUFGセキュリティーズの米マクロ戦略部門責任者、ジョージ・ ゴンカルブス氏は、投資家は成長見通しがそれほど素晴らしいものではないことを認識しており、現水準での米債購入は妥当とした。
2・10年債の利回り格差はマイナス21.1bpに縮小したものの、なお逆イールドの状態にある。
2年債利回りは8.3bp低下の2.889%。6月中旬には3%超で推移していた。
株式
米国株式市場は続伸し、主要株価3指数がいずれも1%超高で取引を終えた。第2・四半期の米国内総生産(GDP)が2四半期連続で縮小したことを受け、米連邦準備理事会(FRB)が一部の想定ほど積極的に利上げを行う必要はないとの観測が広がった。
GDP統計を受け米10年債利回りが低下。株式市場では国債利回り低下に伴い上昇する傾向にある公益事業と不動産がS&P主要セクターの上げを主導した。
エドワード・ジョーンズのシニア投資ストラテジスト、モナ・マハジャン氏は利回り低下について「FRBが今後12カ月のある時点で政策転換し、利下げを余儀なくされるのではないかという市場の見方」を反映している可能性があると指摘。「引き締めペースが今後より緩やかになることを示す」と語った。
第2・四半期決算も市場予想を上回る発表が増えており、市場を支援している。
第2・四半期純利益が予想を上回った自動車大手フォード・モーターは6.1%上昇した。
金先物
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金塊先物相場は、米経済が2四半期連続でマイナス成長となったことを受けて、安全な資金逃避先として買いが集まり、上伸した。
商務省が発表した2022年4─6月期の実質GDP(国内総生産)速報値は年率換算で前期比0.9%減だった。0.9%増のプラス成長を見込んでいた市場予想を下回り、2四半期連続のマイナス成長となった。これを受けリセッション(景気後退)への懸念が強まり、序盤から買いが先行。また前日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後に行われた記者会見での米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の発言から、利上げペースが緩やかになるとの観測が広がったことも、相場の押し上げ要因となった。
●円132円台、1週間で6円円高に 円安トレード巻き戻し 7/29
円相場が急上昇している。29日には一時1ドル=132円台を付け、21日に付けた138円88銭の安値からわずか1週間で6円超の円高が進んだ。日米金利差の拡大を手がかりに円売り・ドル買いを膨らませてきた投機筋が巻き戻しの動きを強めている。夏季休暇前後で市場取引が薄く、円相場の動きが荒い。
29日の外国為替市場で円相場は一時1ドル=132円台半ばと6月17日以来の円高・ドル安水準を付けた。3月半ばの115円前後から139円台まで進んだ円安が急ピッチで円高方向に逆戻りしている。
「円売り・ドル買いで利益が出ていたポジションを解消する動きが出た」とある邦銀の為替ディーラーは話す。「ドルの買い持ち高はかなりたまっていた。輸出企業の円買いが相場を押し上げたところで、ドル買い持ち高を解消する動きが円高を加速させた」(別の邦銀ディーラー)
持ち高解消の背景にあるのは米景気懸念だ。28日発表の4〜6月期米実質経済成長率は2四半期連続のマイナスとなり、景気懸念が強まった。27日の記者会見で米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は今後の利上げはデータ次第との姿勢を示しており、想定していたほど日米金利差が拡大しないとみた投機筋などが円売り・ドル買いの持ち高を解消しつつある。
海外勢が夏季休暇に入る前に持ち高を落とす動きが出た面もある。世界的な景気懸念で日本国債利回りも低下(債券価格は上昇)している。日銀の政策修正を見込んで債券売り・円売りでしかけていた投機筋が金利低下で損失を抱え、両方の持ち高を解消する動きが日本の金利低下と円高の同時進行につながったとの見方もある。
先行きについては見方は割れている。シティグループ証券の高島修チーフFXストラテジストは「世界の注目点がインフレから景気後退に移ったことで、昨年来の円安・ドル高トレンドが終わった可能性がある」と指摘する。商品価格も上昇が一服しており、貿易赤字の拡大に伴う円売りが一段と膨らむ状況ではないことも一因だ。
一方で三菱UFJ銀行の井野鉄兵チーフアナリストは「さらに円高が進むとは考えづらい。FRBの利上げ路線が終わったわけではなく、米長期金利の低下余地は限られている」と指摘する。長期金利の指標となる米10年債利回りは2.6%台と短期金利である政策金利の2.25〜2.50%に迫る。日銀が大規模な金融緩和を続けている以上、円安・ドル高の基調は続くとの見立てだ。
一時は1ドル=140円の心理的節目に迫った円相場が急激に上昇しているのは事実。一時的な調整にとどまるのか、それとも円安局面の終わりを示唆しているのか。見方が定まらないだけに、取引が減る休暇シーズンの8月の急激な値動きに警戒感が増しつつある。
●外為 1ドル133円04銭前後とドル高・円安で推移 7/29
29日の外国為替市場のドル円相場は午後6時時点で1ドル=133円04銭前後と、午後5時時点に比べ26銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=135円89銭前後と5銭の小幅なユーロ高・円安で推移している。
●円、一時132円台に上昇 1カ月半ぶり円高水準 7/29
29日の東京外国為替市場で円相場が対ドルで上昇し、一時1ドル=132円台を付けた。6月17日以来1カ月半ぶりの円高水準となる。28日発表した米国の4〜6月期実質国内総生産(GDP)が前期比年率換算で2四半期連続でマイナス成長となり、米経済の先行き警戒感から幅広い通貨に対してドルが売られた。
円相場は前日夕には135円60銭近辺で推移しており、2円以上の円高・ドル安が進んだ。27日のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の記者会見を受けて米国の急激な金融引き締め観測が後退したことも、円買い・ドル売りにつながっている。
●東京外為 ドル、132円台後半=米景気懸念で1カ月半ぶり安値 7/29
29日の東京外国為替市場のドルの対円相場(気配値)は、米景気減速懸念を背景に1ドル=132円台後半まで急落した。一時約1カ月半ぶりのドル安水準となる132円50銭前後まで値を下げた。午後5時現在は、132円77〜77銭と前日(午後5時、135円57〜59銭)比2円80銭の大幅ドル安・円高。
前日の海外市場では、4〜6月期の米実質GDP(国内総生産)が年率換算で前期比0.9%減と2四半期連続でマイナスとなったことからドル売りが加速した。
きょうの東京市場は134円40銭前後で始まった後、仲値に向けて134円65銭前後まで値を上げたが、買い一巡後は売り優勢の展開。正午すぎに急落し、一気に133円を割り込んだ。市場関係者によると、「海外投機筋の間でドル買い・円売りポジションを解消する動きが広がった」(FX業者)という。個人投資家のストップロスが巻き込まれたことも売りに拍車を掛け、欧州勢が参加する時間帯には6月17日以来のドル安・円高水準となる132円50銭前後まで下落した。終盤にかけて売りは一服し、132円80銭前後の水準に買い戻された。「テクニカル的な節目が132円50銭前後に観測されている」(同)ことに加え、6月の米個人消費支出(PCE)・物価など米国の重要指標の発表を日本時間今夜に控えていることもドルが下げ渋る要因となったようだ。
ドル円の下落は1日で3円に迫る勢いを見せたが、市場では「一本調子のドル高に伴って構築されたポジションが閉じられたにすぎず、ここからさらにドルを大きく切り下げる動きには発展しづらい」(国内証券大手)との見方が出ていた。
ユーロは終盤にかけて対円でもみ合い、対ドルでは堅調地合い。午後5時現在、1ユーロ=135円87〜88銭(前日午後5時、138円46〜47銭)、対ドルでは1.0234〜0234ドル(同1.0212〜0213ドル)。
●円相場 一時132円台に 急速な値上がり 米の景気後退への警戒感  7/29
29日の東京外国為替市場は、アメリカの景気後退への警戒感からドルを売って円を買う動きが加速し、円相場は一時3円以上値上がりして1ドル=132円台半ばまで急速に円高ドル安が進みました。
29日の東京外国為替市場は、28日にアメリカで発表されたGDP=国内総生産の伸び率が2期連続のマイナスとなったことを受けて、アメリカの景気後退への警戒感が一気に強まりました。
このためドルを売って円を買う動きが加速し、円相場は一時3円以上値上がりして、1ドル=132円台半ばまで急速に円高ドル安が進みました。
1ドル=132円台をつけるのは先月17日以来およそ1か月半ぶりです。
円相場は今月中旬に1ドル=139円台まで値下がりし、およそ24年ぶりの円安水準となりましたが、その後一転して円高ドル安が進みました。
この2週間で6円以上、円高ドル安が進んだことになります。
市場関係者は「28日のニューヨーク市場では、GDPの結果への懸念に加えてアメリカの利上げのペースが鈍るのではないかという見方も広がって、長期金利が低下した。東京市場でも日米の金利差の縮小が意識され、ドルを売って円を買う動きが急速に強まっている」と話しています。
●ユーロ相場が底堅く推移、対ドル1.0240近辺=ロンドン為替 7/29
ロンドン午前、全般にドルに買い戻しがでるなかで、ユーロドルは底堅く推移している。ロンドン朝方に1.0254レベルまで高値を伸ばしたあとは、ドル買いに押されて1.0186レベルまで下押しされた。その後再び買いが優勢となっており、1.0240近辺まで上昇してきている。ユーロ円は東京市場からの円買い圧力を受けて、ロンドン序盤には135.55レベルまで下落したが、その後は買戻しの流れに転じて136.50近辺へと反発している。ユーロポンドは買いの動きが鮮明。0.8370付近から0.8410付近へとほぼ一方通行で上昇している。この日発表されたユーロ圏消費者物価速報が前年比+8.9%と過去最高水準を更新、一段とインフレが加速したほか、ユーロ圏GDP速報値も前期比+0.7%と前回および予想を上回る伸びを示していた。一方で、英住宅ローン承認件数は予想以上に減少しており、高インフレ、金利引き上げの影響がみられていた。
●ニューヨーク外国為替市場で円相場、1ドル = 135円を切る 7/29
7月29日23時21分頃、ニューヨーク外国為替市場で円相場は1ドル = 135円を切り、前日6時頃の価格(134.27円)から0.23円(0.17%)下落となる134.04円となった。
●NY外為 円、133円台半ば 7/29
週末29日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、午前8時現在1ドル=133円40〜50銭と、前日午後5時(134円18〜28銭)比78銭の円高・ドル安で推移している。ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0205〜0215ドル(前日午後5時は1.0191〜0201ドル)、対円では同136円18〜28銭(同136円88〜98銭)。 

 

●円高も怖くない! 爆騰エリアに眠る「低位株」バーゲンハント作戦  7/30
米金融引き締め懸念が後退、副作用のドル安・円高が巻き起こす新たな潮流を捉えよ。
東京株式市場は難しい地合いに直面している。週末29日の日経平均株価は寄り付きこそリスク選好ムードのなか2万8000円大台を回復する場面があったが、その後は軟化し前日比13円安の2万7801円で今週の取引を終えた。
さかのぼって28日木曜日の米国株市場では、朝方発表された4〜6月期実質GDPが2四半期連続のマイナス成長となったことを受け売りが先行したものの、その後はNYダウ、ナスダック総合株価指数ともにプラス圏に切り返した。GDPの結果を受けリセッション懸念が高まる一方、FRBの金融引き締め強化に対する過度な警戒感は後退する格好となり、足もとでは後者の方を好感する形でマーケットは強気優勢に傾いた。
結局、28日のNYダウは330ドルあまり上昇して引けており、これを受けて翌日の東京市場でも今度こそ2万8000円大台ラインを明確に突き破り、次なる目標であるボックス上限の2万8300円どころを目指す展開が期待された。だが今の東京市場には、米国株の動向以外にもう一つ全体相場の方向性を左右する重要なファクターがあった。
それは為替市場の動向である。景気後退が現実味を帯びるなかで、FRBの金融引き締め策が修正を迫られるとの思惑が米長期金利の急低下をもたらしており、ドル円相場では急速に円が買い戻されている。この日は1ドル=133円を割り込む水準まで急速に円高が進んだことで、日経平均は値を消す展開を強いられ大引けはマイナス圏で着地した。中期的にみてもドル高トレンドが終了した可能性があり、ドル円のアンワインドの動きが株式市場にとって向かい風となることは避けられない。決算発表が佳境入りとなるなか、円高が気になって主力輸出株への買いは入りにくくなり、日経平均の上値も必然的に重くなりそうだ。
●国内株式市場見通し:米ISM景気指数やOPECプラスに注目 7/30
今週の日経平均は週間で113.02円安(-0.40%)と4週ぶりに反落。先週に回復したばかりの52週移動平均線を僅かに下回ったものの、26週線や200日線上は維持した。
週初の日経平均は215.41円安と8日ぶりに反落。連日の上昇の反動が意識されるなか、米7月の総合購買担当者景気指数(PMI)速報値が約2年ぶりに拡大・縮小の境界値となる50を割り込んだことで、景気後退懸念が重荷になった。翌26日は44.04円安と小幅続落。米連銀各行が公表する景気指標が軒並み予想を下回ったことや、米小売のウォルマートが業績予想の下方修正を発表したことが投資家心理を悪化させた。
一方、27日は60.54円高と反発。国際通貨基金(IMF)が成長率見通しを引き下げたことに加え、米国の7月消費者信頼感指数や6月新築住宅販売件数が軒並み予想を下回ったが、アルファベットとマイクロソフトの決算が想定程に悪くなかったことで、安心感から買い戻しが優勢となった。28日は99.73円と続伸。連邦公開市場委員会(FOMC)では予想通り0.75ptの利上げが決定。あく抜け感が台頭したほか、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が今後の利上げペースについて慎重な姿勢を示したため、買い戻しが強まった。ただ、日経平均は心理的な節目の28000円回復直後に失速した。
週末29日は13.84円安と反落。米4-6月期国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となったが、FRBの大幅利上げを回避できるとの期待から前日の米株式市場は続伸。FOMC直後に上昇しても翌日以降に下落することの多かった米国株が続伸したことで、投資家心理が上向いた。しかし、日経平均はこの日も寄り付き直後に28000円まで上昇した後は失速し、28000円をすぐに割り込む展開。決算を発表したアップルとアマゾン・ドット・コムが揃って良好な内容から時間外取引で株価が大幅に上昇していたものの、1ドル=132円台まで急速に進行した円高・ドル安が重荷となった。  

 

●円安リスクへの対処法 7/31
為替円安の振れが著しい。3月上旬までのドル円レートは、1ドル=116円前後だったのに、それ以降は6月までごく短期間に1ドル=130円台半ばに円安が進んだ。今後、年末までに1ドル=140円台も十分可能性がある。為替レートが140円になれば、原油・食料などの輸入価格はさらに上昇するだろう。このコスト高にどう対処すればよいだろうか。
これはひとつの考え方だが、自らがドル資産を持つことがリスクヘッジになる。できれば原材料の年間仕入高に近い規模で保有するとよい。1ドルが135円のときにドルを保有したとき、その後142円になると約5%の為替差益が発生することになる。もう片方で原材料輸入のコスト高で採算悪化になるが、その損失は円安差益によって減殺できるという訳だ。
こういうと、もしもドル資産を保有して円高に振れると、為替差損を被るではないかと反論されそうだ。しかし、もう一方で原材料の価格が円高になって安くなる。つまり、採算改善のメリットが発生している。為替差損と採算改善のメリットは、互いに打ち消し合うことになる。
ドル保有で為替リスクをヘッジすることは、将来の時点でメリットとデメリットが相殺されるように手当てすることにほかならない。
今後、こうしたドル保有のメリットが増えると考えられるのは、ドルの短期金利が2〜3%へと高まっていきそうだからだ。米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、6月時点の見通しで2022年末には政策金利を3.4%程度まで引き上げると見通しを示している。これは、ドルの短期資産に3.4%の利回りが付いて、利息収入がより多く見込めることを意味する。ドル安・円高のリスクに対して、この利息収入が為替リスクをいくらか吸収してくれる。
筆者は、22年11・12月は円とドルとの金利差を狙って、投機筋が同じようにドル保有を増やすと予想している。このとき、円は世界中で調達金利が最も低くなるから、投機筋は円で調達して、その資金をドルで運用するだろう。これを円キャリー取引という。円キャリー取引は、ヘッジファンドなど国際的投機筋の専売特許という印象があるが、日本の個人投資家も、FX取引を通じて同じことが可能である。そうした取引は、円を売ってドルを買うことになるから、自己実現的に円安を進めるだろう。
筆者は、今後、22年末にかけて、ドル保有によるリスクヘッジで回避する方法をより多くの人が利用することで、より円安が進みやすくなる可能性もあるという点も指摘したい。
選挙があると、与野党が物価対策をいろいろと打ち出ししてくる。しかし、物価そのものをコントロールすることは甚だしく難しい。だから、企業は自衛策を講じる他はない。ドル保有はその対処法の一つになる。

 

●外為 1ドル133円30銭前後と大幅なドル高・円安で推移 8/1
1日の外国為替市場のドル円相場は午前8時時点で1ドル=133円30銭前後と、前週末午後5時時点に比べ52銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円19銭前後と35銭のユーロ高・円安で推移している。
●東京円、132円台後半
週明け1日午前の東京外国為替市場の円相場は、1ドル=132円台後半で取引された。午前10時現在は前週末比12銭円安ドル高の1ドル=132円89〜91銭。ユーロは07銭円高ユーロ安の1ユーロ=135円81〜85銭。
前週末に、米国の景気減速に対する警戒感から急速に円買いドル売りが進んだため、ひとまず円を売ってドルを買い戻す動きが出た。
市場では「足元では米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ観測と米景気後退懸念の間で、やや値動きが激しくなっている」(外為ブローカー)との声があった。
●外為 1ドル132円60銭前後とドル安・円高で推移
1日の外国為替市場のドル円相場は午後2時時点で1ドル=132円60銭前後と、前週末午後5時時点に比べ18銭のドル安・円高。ユーロ円は1ユーロ=135円55銭前後と29銭のユーロ安・円高で推移している。
●急激な円安相場の終焉か?混迷続くドル円相場! 8/1
1ドル=139円台までドル高円安が進み、このまま一気に140円台に行くかと思われたドル円相場だが、ここにきて円安トレンドのシナリオが崩れ始めてきた。予想を超えるインフレが世界で同時に進み、米国を筆頭に金利を引き上げてインフレ退治を始めたことで、ドルが買われて来た。ところが、最近になって金利上昇によるドル高一辺倒の相場にやや陰りが見えてきた。ドル高円安トレンドは転換したのか……、それともまた異なるシナリオが始まるのか……。外為オンライン・アナリストの佐藤正和さんに8月相場の見通しを伺った。
――139円台をつけた後、急速に円高に戻していますが、トレンドは変わったのでしょうか?
7月27日に開催された米国の金融政策を決定する「FOMC(米連邦公開市場委員会)」で、予想通り0.75%の利上げが決定されましたが、市場には0.75%で済んだという安心感が広がったのか、ドル円相場は一時136円台にまで円高に振れました。今年3月に0.25%の利上げを決めてから4会合連続の利上げとなり、その間の利上げ幅は「2.25%」となります。
米国の直近の消費者物価指数は6月の「9.1%」となり、実に40年ぶりの高水準まで上昇しています。2ヶ月連続の0.75%の金利上昇もやむを得ないところです。問題はこれからどうなるのかですが、7月のFOMC後の記者会見で「FRB(米連邦準備制度理事会)」のパウエル議長は、次回の会合で大幅な利上げの可能性を残しつつも、「判断は今から次回の会合までのデータ次第だ」と述べ、「いずれ利上げペースを落とすことになる」と説明しました。次回のFOMCは9月になるため、当面は経済指標を見守っていくということです。
要するに、パウエル議長は今後も景気指標次第では大幅利上げの可能性もあるとしながらも、データ次第では利上げペースが鈍化する可能性も示唆。こうした議長発言に、市場は予想したよりもハト派的な発言だったと受け止め、ドル円相場は急激なドル買いのトレンドを修正し始めたと考えられます。
――2四半期連続のマイナス成長となりましたが、リセッション(景気後退)の可能性は?
米国のGDP成長率の第2四半期(4−6月期)が「マイナス0.9%」となり、市場予測の「プラス0.4%」を大きく下回りました。「2四半期連続のマイナス成長」というのは、教科書的にはいわゆる景気後退状態となるわけですが、バイデン大統領やパウエル議長が「リセッションとは考えていない」というコメントを出しています。リセッションになれば、金融引締めのスピードは弱まると捉えられて、NYダウやナスダックといった株式市場は軒並み大きく上昇。為替市場も一時的に132円台まで円高が進みました。
イエレン財務長官もGDPの公表後、「米経済がリセッションに陥っているとは考えていない」と景気後退入りを否定するコメントを出し、さらに「消費者物価の伸びは近いうちに、低下する可能性が高い」と発言しました。
その言葉をそのまま鵜吞みにするのは難しいかもしれませんが、マイナス成長に陥りながらも物価を守る、という姿勢は堅持したと言えます。ただ、問題は急激な利上げを実施したにもかかわらず、インフレが止まらなかった場合です。いわゆる「スタグフレーション(不況下の物価高)」となるわけですが、今回のインフレはロシアによるウクライナ侵攻など地政学リスクが背景にあるため、楽観はできそうもありません。
――どんな経済指標をチェックすればいいのでしょうか……?
たとえば、8月5日に発表される米国の「雇用統計」は、景気の良し悪しを最も早く察知するデータとして重視されています。「非農業部門雇用者数」では、前回6月のデータでは38万人増でしたが、7月の市場予想では25万人という数字が出ています。失業率も予想では3.6%と前月と同じになっています。市場予想を大きく上回れば、依然として景気は好調に推移しており、逆に少なければリセッションを裏付けるものになります。
また、8月10日に発表される「CPI(消費者物価指数)」、FRBが重視する食品やエネルギーを除く「コアCPI」をはじめとして、製造業PMI、新築住宅販売件数(共に8月23日発表)といった指標は注意深く見ていく必要があると思います。
ちなみに、7月28日に発表された「週間失業保険申請件数」は、25.6万件。前週の指標では今年1月の第4週以来の26万件超えとなりました。失業保険を申請する人の増加は景気後退を示唆する前兆かもしれません。このような指標が次々に発表され続ければ、利上げのスピードは弱まり、ドルが売られ円が買われるトレンドに転換する可能性もあります。
――日本銀行は、相変わらず頑なな姿勢を守っていますが……?
米国を筆頭に世界中が金利を引き上げている中で、日本銀行だけが金融緩和の方針を崩していません。7月21日に行われた日銀金融政策決定会合後の記者会見でも、黒田日銀総裁は「金利を引き上げるつもりは全くない」と言い切りました。
日本銀行が置かれている立場を考えると、確かに量的緩和を転換すると宣言したり、イールドカーブコントロールに修正を加えたりするような政策変更は容易にはできそうもありません。ただ、黒田総裁の発言はあくまでも「自分の任期中」という条件付きのコメントだと思われます。
いずれにしても、日本ではインフレが徐々に進行しており、毎月のように生活必需品が値上がりしている状態です。いずれ何らかの形で、現在の金融政策が見直される可能性があるかもしれません。
――8月の主要通貨の予想レンジを教えてください。
8月は、2日に「オーストラリア準備銀行(豪中央銀行)」、4日にはイギリスの中央銀行「イングランド銀行」の政策決定会合が予定されており、豪中銀は利上げも予想されています。その一方で、日銀やFOMC、ECB(欧州中央銀行)は予定されておらず、金利面では大きな動きはないと考えていいでしょう。
その半面で、投資家の多くが夏休みとなるため、ボラティリティの高い相場になることが予想されます。最近のドル円相場では1日に3円程度動くケースもあり、変動幅の大きさに注意が必要です。8月の予想レンジは次の通りです。
   ドル円……1ドル=130円−137円
   ユーロ円……1ユーロ=134円−140円
   ユーロドル……1ユーロ=1.000ドル−1.045ドル 
   英国ポンド円……1ポンド=160円−168円 
   豪ドル円……1豪ドル=92円−96円
――8月の為替相場で注意すべきことは?
ドル円相場に関しては、FOMCによる0.75%の金利引き上げ、そして四半期GDPの発表という大きなハードルを通過したことで、1ドル=140円台突破にチャレンジという状況から、一転して1か月半ぶりの132円台にまで円安が進みました。8月がどんな相場になるのかは、やはり今後発表される各種の景気指標次第と言っていいと思います。米国、中国共に景気を減速させており、その影響がどんな形で出てくるのかを見極める1か月といっていいでしょう。
むろん、ロシア・ウクライナ情勢の変化にも注意する必要があります。事態が変化すれば原油や食料など、資源価格に大きな影響をもたらすかもしれません。いずれにしても、ドル円相場はこの3か月で13円ほど動いており、ボラティリティが高いうえに、経済の先行きも不透明です。
FX取引では、あまり深追いはせずに、淡々とテクニカル指標などを参考にしながらポジションを抑え気味にトレードすることが大切です。1ドル=140円手前で買ってしまっている人も含めて、あまり無理せずに深追いはしないことです。波乱含みの相場では、「利益を細かく積み上げる」トレードをすることが基本です。
●日銀の大規模金融緩和継続を歓迎?アメリカが円安を黙認する2つの理由 8/1
7月20〜21日の日銀の金融政策決定会合では、予想通り大規模金融緩和政策を維持することが決定された。一方、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は6月に続いて7月も0.75%の大幅な金利引き上げを行い、EUのECB(欧州中央銀行)も21日、11年ぶりに政策金利を0.5%引き上げるなど、主要国の中央銀行はインフレが高進する中で金融引き締めを急いでおり、日銀だけが取り残されている。
このため日本と海外の金利差が拡大して円安が進行し、これがすでに上昇しつつある物価をさらに上昇させて企業収益や家計に大きな影響を及ぼし、国内各方面から金融政策の変更を求める声が上がっている。
アメリカが円安を黙認している
しかしその一方で、口には出さないが日銀の大規模金融緩和を内心で歓迎している人々もいる。例えば輸出企業は円安による為替差益と海外での競争力向上を享受しているし、株式投資をしている人は金融が引き締まると株価が下がるので現在の金融政策が維持される方がよいはずだ。銀行からローンを変動金利で借りている人も低金利が続く方がよいに決まっているし、財務省も声には出さないが国債の利払い費が抑えられるので大規模金融緩和の継続を望んでいるはずだ。
そして実は、アメリカ政府も日銀の大規模金融緩和と円安を歓迎していると思われる。今回の円安の急激な進行局面で不思議なことは、これだけの円安となれば日本製品の価格競争力が強くなり過ぎることに対して通常であればアメリカ商務省、USTRなどが強烈にクレームを言って来そうなものだが、沈黙していることだ。
7月12日に来日したイエレン財務長官は、鈴木財務大臣や黒田日銀総裁と会談したが、鈴木大臣との共同声明ではロシアの侵略による経済的な影響が為替相場の変動を高めているというくだりの中で「我々は、G7 及び G20 のコミットメントに沿って、引き続き、為替市場に関して緊密に協議し、為替の問題について適切に協力する」といういつものG7/G20合意が書かれただけだ。
12日付のロイター通信が会談後のイエレン財務長官の発言として伝えるところによれば、会談では最近の円安を振り返ったが、為替介入や関連政策は協議しなかったとのことだ。これはつまり、イエレン長官は現在の円相場に関して日本政府に円安に歯止めをかけるように注文を付けたり、日米で円安を止めるように協力しようなどといったことを一切言わず、円安を黙認していることに他ならない。
これには二つの理由が考えられる。一つ目は今のアメリカ政府にとっては物価抑制が最重要・最優先の課題であって、アメリカの輸入物価を押し下げる効果があるドル高・円安はアメリカ政府として歓迎こそすれ、否定するようなものではないからだ。
そしてもう一つ、もっと重要な理由がある。それは赤字体質のアメリカ経済の資金繰りを回していくためには強いドルが必要だから円安は好都合ということだ。
よく知られているように、アメリカは国民が自ら生み出す価値以上のモノやサービスを消費する過剰消費体質の経済で、不足分は海外から輸入している。
このためアメリカの貿易収支や経常収支をみると、恒常的に大幅な赤字が続いているが、この赤字を埋めるためのお金は、海外の投資家にアメリカの国債、社債などを買ってもらって調達している。そしてアメリカ国債についていえば、日本がその消化に大きな役割を果たしている。アメリカ国債の保有国別ランキングを見ると、日本が1兆21百億ドルで1位、中国が98百億ドルで2位、そしてイギリスが63百億ドルで3位と続く。
「強いドルはアメリカの国益」
ところで、海外の投資家にアメリカ国債を積極的に買ってもらってアメリカ経済が資金繰りに行き詰まらないようにするためには、それが魅力的であり続ける必要がある。世界の投資家がアメリカ国債に投資する理由としては、市場の規模が大きくいつでもどんな金額でもすぐに売買ができること、アメリカが政治的・軍事的・経済的に安定しているので世界が混乱した時の資金の逃避先として適当なこと、そして金利と為替の観点から有利な投資先であることが挙げられる。
特にその中でも金利と為替は重要だが、これらは常に変動するため、歴代のアメリカの財務長官は海外との金利差とドルの為替レートに常に注意を払って海外の投資家をアメリカ国債に呼び込む努力を怠らなかった。すでに1995年に当時のクリントン政権のロバート・ルービン財務長官は「強いドルはアメリカの国益に適っている」と述べているが、その後の財務長官もアメリカ・ファーストを唱えてドル安を肯定したトランプ政権の1人を除いてこの路線を踏襲している。
また少し古い話になるが、1999年1月〜2月にスイスで開催されたいわゆるダボス会議で元米財務次官で経済学者のフレッド・バーグステン氏が行ったスピーチは、アメリカ政府が海外との金利差縮小に伴うドル安を嫌うことがはっきりと示されたよい例だ。
当時アメリカは経常収支赤字の拡大などで急激なドル安が進行する一方、EUでは創設されたばかりのユーロへの期待感の高まりから大幅なユーロ高が予想されており、円も前年12月の「資金運用部ショック」と呼ばれる国債市場の混乱によって長期金利が急騰し、円高が急激に進行する状況にあった。こうした中でバーグステン氏はドルを守るために、日米欧通貨当局が協調して為替市場でドル買い介入を行うことと日欧中央銀行が政策金利を引き下げることを求めたのだ。そしてこのスピーチとの関連性は不明だが、日銀はその直後の1999年2月12日から速水総裁の下で世界初のゼロ金利政策を実施した。
黒田総裁が、どこまでこうしたアメリカ側の事情を意識して大規模金融緩和を継続しているかわからないが、日銀が大規模金融緩和を続けることは、結果として強いドルを志向するアメリカにとって好都合であることは疑いない。 
●東京市場 8/1
週明け1日の東京市場はドルがさらに続落。それほど目立った材料もないなかドル安が進行したものの、132円台は辛うじて維持されている。
先週末は、露のガスプロムが隣国「ラトビアに対するガス供給を停止」したと発表し話題に。また、ペロシ米下院議長が米議員団を率いてインド太平洋地域を歴訪すると発表したが、取り沙汰されている台湾訪問に言及しなかったことも思惑を呼ぶ。
そうした状況下、ドル/円は133.20円前後で寄り付いたのち、しばらくは小じっかり。133.55-60円の日中高値を示現している。しかし、ジリジリと値を崩すと途中ストップロスを巻き込み下げが加速。132.10円レベルまで一気に値を下げた。132円を割り込めなかったことで、本日安値を付けたのちは低位揉み合い。16時現在では132.30円前後で推移し、欧米市場を迎えていた。
一方、材料的に注視されていたものは、「ロシア情勢」と「各国の積極的な外交姿勢」について。
前者は、現地メディアがインタビューに応じたトルコ報道官の発言として「ウクライナ穀物船は1日にも出航する可能性が高い」と報じ、一安心の感も。ただ、ウクライナ大統領は同国の今年の穀物生産量が、「ロシアによる軍事侵攻の影響で半減する恐れ」と指摘するなど、輸出が順調に進んでも万々歳とはいかないようだ。また、それとは別に前述したように、露のガスプロムが明確な理由も示さず隣国「ラトビアに対するガス供給を停止」したと発表したことが話題に。エネルギー供給問題をめぐる欧米諸国間の駆け引きも目が離せなくなっている。
対して後者は、先週末金曜日以降重要な2ヵ国間会談などが相次ぐ。たとえば、「米露外相が、拘束の米国人解放や穀物輸出などめぐり電話会談」を行ったほか、「日米が経済版2プラス2開催」そして「日米外相が会談も実施」されている。また今後の予定として、先でも取り上げた「ペロシ米下院議長のアジア歴訪」や「米国務長官、今週からカンボジアをはじめとする東南アジア・アフリカを歴訪、読売新聞が伝えた「日中、8月初旬の対面式外相会談を調整」なども思惑を呼んでいたようだ。
●NY円、4日続伸 1ドル=131円55〜65銭 日米金利差の縮小で 8/1
1日のニューヨーク外国為替市場で円相場は4日続伸し、前週末比1円60銭円高・ドル安の1ドル=131円55〜65銭で取引を終えた。一時は131円60銭と6月中旬以来の高値を付けた。米景気の減速懸念を受けて米長期金利が低下し、日米金利差が縮小するとの観測から円買い・ドル売りが優勢となった。
1日発表の7月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は52.8だった。市場予想は上回ったが個別項目の「新規受注」が弱く、製造業の活動が鈍化しているとの見方が広がった。同日発表の6月の米建設支出は市場予想を下回った。相対的に安全資産とされる米国債が買われて米長期金利が低下し、円買いを誘った。
ペロシ米下院議長が2日に台湾を訪問する見通しと伝わった。中国は訪問に反対しており、米中の緊張が高まるとの見方も低リスク通貨の円の買いにつながった。
円の安値は132円51銭だった。
円は対ユーロで3日続伸し、前週末比1円25銭円高・ユーロ安の1ユーロ=134円95銭〜135円05銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで続伸し、前週末比0.0035ドルユーロ高・ドル安の1ユーロ=1.0255〜65ドルで取引を終えた。米国の景気減速懸念や米連邦準備理事会(FRB)の利上げペースが減速するとの観測からユーロ買いが優勢だった。
ユーロの高値は1.0275ドル、安値は1.0225ドルだった。

 

●円相場 一時130円台前半に値上がり 約2か月ぶり  8/2
2日の東京外国為替市場、円相場は一時、2円以上値上がりして、およそ2か月ぶりに1ドル=130円台の前半をつけました。アメリカの景気減速への懸念に加えて、ペロシ下院議長が台湾を訪問する見通しだと伝わったことで、米中の対立への警戒感から円高ドル安が進行しています。
2日の東京外国為替市場、円相場は一時、2円以上、円高ドル安が進み、およそ2か月ぶりに1ドル=130円台前半をつけました。
円高が進んでいる背景には、アメリカの景気減速への懸念に加えて、アジアを訪れているアメリカのペロシ下院議長が、台湾を訪問する見通しだと伝わったことで今後、米中対立が強まるという警戒感が高まっていることがあります。
円相場は、先月14日には、およそ24年ぶりに1ドル=139円台の前半をつけるなど、急速な円安が進行していましたが、先週以降は、アメリカの景気減速への懸念から、一転してドルを売って円を買い戻す動きが強まっています。
市場関係者は「中国の高官からは、ペロシ下院議長の台湾訪問に対してけん制する発言も出ているだけに、今後の米中双方の動きに関心が集まっている」と話しています。
●円安トレンド終了で「1ドル130円割れ」はあるか… 8/2
「8/2〜8/8のFX投資戦略」のポイント
・7月の米ドル/円は、140円手前で上昇が一巡すると、月末にかけて一転して132円台まで急落した。米利上げ見通しの下方修正により、「米金利上昇=米ドル高」終了の可能性が出てきたことに加え、短期的な米ドル「上がり過ぎ」修正が一気に起こったことが主因か。
・円安トレンド終了の可能性が出てきたが、円高トレンド開始後の過去の経験や、米金利の見通しなどを参考にすると、このまま130円割れに向かう可能性は低そう。8月の米ドル/円は130〜136円中心の展開を予想。
突如「米ドル安・円高」となった理由
7月の米ドル/円は、一時140円近くまで上昇しましたが、7月27日のFOMC(米連邦公開市場委員会)を境に大きく下落に転じると、一気に132円台まで急落となりました(図表1参照)。
まず、140円近くまで米ドル高となったのは、米6月CPI(消費者物価指数)が予想以上の上昇率となったことを受けて、7月FOMCで利上げ幅を1%に拡大するとの見方が急浮上したことが主なきっかけでした。
ただ実際の利上げ幅は0.75%となり、加えてFOMC翌日に発表された4〜6月期の米GDP成長率(速報値)が前期に続き2四半期連続のマイナス成長となると、米国の政策金利であるFFレートの引き上げは、この先3.5%未満にとどまるといった具合に米利上げ見通しを下方修正する動きが広がりました。
こういったなかで、米ドルは突如急落に向かったわけですが、これについて少し詳しく見ていきたいと思います。
7月FOMCの利上げ幅は、上述のように一時浮上した1%を下回ったものの、それにしても6月の0.75%利上げが1994年以来だったので、そんな大幅利上げを2回連続で行ったということになります。
にもかかわらず、なぜその後から突如米ドル急落に向かったかといえば、そもそも米ドルは、政策金利に連動するわけではなく、それを先取りする市場金利、この場合なら、米2年債利回りなどに連動することが基本で、その米2年債利回りはFOMCの後低下に向かったので、米ドルもそれに連れて下落したということでしょう(図表2参照)。
米2年債利回りは、すでに6月には3.4%まで上昇しました。これは、基本的にFFレートが3.5%まで引き上げられることを先取りした動きということでしょう(図表3参照)。そんな米2年債利回りなどの上昇を手掛かりに、米ドル/円も140円近くまで上昇したわけです。
ところが、7月27日のFOMCを境に、上述のようにFFレート引き上げは3.5%未満にとどまるとの見方が広がりました。こういったことから、米2年債利回り上昇も、それを手掛かりとしてきた米ドル高も、すでにピークアウトした可能性が出てきたわけです。
「米金利上昇=米ドル高」の動きはもう終わったか
「米金利上昇=米ドル高」が終わった可能性が出てきた。そのうえで細かく見ると、2年債利回りなど米金利の多くは6月にこの間のピークを付けていたのに対し、米ドル/円は7月に入り米ドル高値を更新するなど、米金利と米ドルの動きにかい離も目立ちはじめていました。
そして、そのように米金利から見て「上がり過ぎ」が懸念されていた米ドルは、90日MA(移動平均線)かい離率がプラス10%近くまで拡大するなど、短期的な「上がり過ぎ」も懸念されるものでした(図表4参照)。
7月FOMCをきっかけに、「米金利上昇=米ドル高」終了の可能性が出てきたことを受けて、そんな米ドル「上がり過ぎ」修正も一気に広がったことが、米ドル安・円高が突如急拡大した主たる背景だったのではないでしょうか。
米金利上昇の終了…米ドル/円の「上がり過ぎ」も修正
一時132円台まで米ドル/円が下落したことで、90日MAかい離率はマイナス2%程度まで縮小しました。米金利との関係も含めて、米ドルの短期的な「上がり過ぎ」はかなり修正されたでしょう。
米金利は、すでに6月でピークを付けた可能性はあるものの、一方でまだ米景気減速への懸念はそれほど深刻なものではなく、FOMCも利上げを続ける見通しのなかにおいてはさらに大きく低下するとは考えにくいでしょう。
そんな米金利の見通しを前提にするなら、米ドル/円も8月に一段と大きく下落し、130円割れに向かう可能性は低いのではないでしょうか。
米金利上昇にリードされる形で2021年102円から続いてきた米ドル高・円安トレンドは、米金利上昇の終了によって、140円に届かないまま終わった可能性が出てきたと思います。
ただし、短期的には一気に「行き過ぎ」修正も進んだことから、さらに大きく米ドル安・円高に向かうわけでもない、8月の米ドル/円はそんな見通しになるのではないでしょうか。
8月中に「1ドル130円割れ」が起こる可能性
ちなみに、図表5は、過去4回の米ドル高・円安から米ドル安・円高へのトレンド転換直後の値動きの特徴について調べたものです。これをまとめると、円安トレンドが終了すると、2ヵ月で5%以上の米ドル下落が起こり、下落率が10%以上に拡大するのは半年以上の時間がかかっていました。
ただし、途中で「××ショック」などに巻き込まれると、米ドル安・円高はより激しいものとなりました。
今回はすでに7月の米ドル高値139.4円程度を記録したタイミングから1ヵ月も過ぎないなかで一時132円半ばまで下落、下落率はほぼ5%に達しました。これまでの経験からすると、とくに「××ショック」に巻き込まれるようなことでもなければ、8月中に130円を大きく米ドルが割り込む可能性は低いでしょう。
以上から、8月の米ドル/円は130〜136円中心の展開を予想します。
●為替相場が転換点 円安ピークアウトも予断許さず  8/2
一時は1ドル=140円をうかがう円安基調だった為替相場が、1日の東京外国為替市場では同132円台で推移した。円安基調がピークアウトへの転換点を迎え、輸入物価の上昇が抑制されることを期待したい。
円高・ドル安基調への揺り戻しは、米国経済の減速懸念が背景にある。米連邦準備制度理事会(FRB)は7月末の会合で2カ月連続となる政策金利の0・75%引き上げを決めた。通常の3倍となる利上げ幅で、景気の先行き懸念から米国の長期金利は下降基調にある。加えて年内に3回残されたFRBの会合では利上げペースを緩和する可能性があり、日米金利差の一段の縮小観測から円が買われやすくなっているようだ。
国際通貨基金(IMF)がまとめた2022年および23年の世界経済見通しの中で、興味深い予測が盛り込まれた。23年の実質成長率について、米国が1・0%、ユーロ圏が1・2%の見通しであるのに対し、日本は欧米を上回る1・7%成長が見込まれている。歴史的なインフレと金融引き締めにより経済減速する欧米に対し、日本は異次元金融緩和が景気を下支える局面変化が期待される。
これまでは米国と真逆の金融政策が円安を助長し、この円安が高騰する食料・エネルギーの輸入物価をさらに引き上げる負のスパイラルに陥っていた。行き過ぎた円安の是正と金融緩和効果が日本経済にどの程度プラスに作用するかを注視したい。
ただ世界の景気後退は日本経済を冷やす。4―6月期の実質国内総生産(GDP)でその兆しがあることに留意したい。米国は2四半期連続で減少し、ゼロコロナ政策の中国はほぼ横ばい。ユーロ圏は増加も、ロシアからのガス供給問題を抱えるドイツが横ばいにとどまった。
円安是正は日本経済にプラスに作用するものの、その根拠が米国および世界経済の減速では元も子もない。コロナ禍、ウクライナ情勢、沈静化しないインフレ、新興・途上国の債務問題など、先行き不透明な課題に一定の解を見いだせない限り、円安是正も予断を許さない。 
●外為 1ドル130円92銭前後とドル高・円安で推移 8/2
2日の外国為替市場のドル円相場は午後6時時点で1ドル=130円92銭前後と、午後5時時点に比べ11銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=134円04銭前後と32銭のユーロ高・円安で推移している。
●円、131円近辺=ロンドン外為 8/2
2日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米長期金利の低下を受けてドル売り・円買いが優勢となり、1ドル=131円近辺に上昇した。正午現在は130円95銭〜131円05銭と、前日午後4時比80銭の円高・ドル安。 
●NY外為 円、131円台後半 8/2
2日午前のニューヨーク外国為替市場では、ペロシ米下院議長が無事に台湾に到着したとの報を受け、安心感からドル買いが強まり、円相場は1ドル=131円台後半に下落している。午前11時現在は131円70〜80銭と、前日午後5時(131円55〜65銭)比15銭の円安・ドル高。
ペロシ米下院議長の台湾訪問で米中関係が一段と悪化するとの懸念から、朝方はリスク回避の円買い・ドル売りが先行。ただペロシ下院議長の台湾到着が伝わると、いったんドルを買い戻す動きが強まった。米長期金利の上昇も、円売り・ドル買いにつながった。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0200〜0210ドル(前日午後5時は1.0255〜0265ドル)、対円では同134円35〜45銭(同134円95銭〜135円05銭)と60銭の円高・ユーロ安。
●急速に円高進む 約2か月ぶり一時130円台に 8/2
急速に円高が進み、円相場が一時、およそ2か月ぶりに1ドル=130円台をつけました。
2日の東京外国為替市場で円相場が一時、1ドル=130円台前半をつけ、およそ2か月ぶりの円高ドル安水準となりました。
円相場は先月14日に1ドル=139円台まで円安が進みましたが、先週以降、急速に円を買う動きが進み、2週間あまりで9円ほどの円高となりました。
これは景気減速の懸念からアメリカの金利引き上げのペースが緩くなるとの見方が広がったためです。また、アメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問すると報じられたことで米中の対立への警戒感が強まったことも、円高に進んだ要因の一つとみられています。
●円安進行に歯止め=基調変わらずとの見方も―市場関係者 8/2
米国の景気後退懸念を背景に、3月から進行した急速な円安に歯止めがかかりつつある。2日の東京市場で円相場は一時1ドル=130円台半ばと、約2カ月ぶりの高値水準に上昇。市場では円買いがさらに進むとの見方がある一方、中長期的な円安基調は変わらないとの声も根強い。
世界的なインフレで、米欧などの中央銀行が金融引き締めに動く一方、日銀は大規模金融緩和策を堅持しており、これまでは日米の金利差拡大を見込んだ円売りが優勢だった。ただ、米国では経済指標の悪化を受け景気後退観測が台頭。米長期金利の低下に伴い円が買い戻され、7月中旬に付けた139円台前半から足元で9円近く上昇した。
市場関係者は「米国のインフレ沈静化で、一時的に円高がさらに進む可能性もある」(UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント最高投資責任者の青木大樹氏)と指摘。大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは「(5月の)高値の126円より円高方向に振れれば、円安基調終了の兆しが見えてくる」と予想する。
あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジストは、これまでの急速な円安は「投機的な要素が大きい」と指摘。「円安トレンドは終了した」と話す。
一方、円安修正は一時的との見方は少なくない。外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「経済指標次第で米国の大幅利上げ観測が強まれば、円安に戻る」とみる。前出の青木氏も「年末までには米経済の過度な景気後退懸念が和らぎ、円安基調に戻る」と予想している。

 

●ニューヨーク外国為替市場で円相場、1ドル = 132円を超える 8/3
8月3日0時53分頃、ニューヨーク外国為替市場で円相場は1ドル = 132円を超え、前日6時頃の価格(131.61円)から0.61円(0.46%)上昇となる132.22円となった。
●円安ドル高加速 133円台後半に 3円以上値下がり 円売り強まる 8/3
3日の東京外国為替市場、円安ドル高の動きが加速し、円相場は3円以上値下がりして1ドル=133円台後半での取り引きとなっています。
3日の東京外国為替市場は、アメリカが金融引き締めに慎重になるのではないかという見方が後退したことからアメリカの長期金利が上昇し、日米の金利差の拡大が意識されて円を売ってドルを買う動きが強まっています。
市場関係者は「アメリカではFRBが利上げのペースを緩めるのではないかという観測が広がっていたがサンフランシスコ連銀の総裁が金融引き締めに前向きな発言をしたと受け止められ、これがドルを買い戻す動きにつながっている。市場ではアメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問したことを受けて、中国がどのような対応をとるかに注目が集まっている」と話しています。
●東京円、3円安の1ドル=133円台後半で取引…FRB利上げ観測で円安  8/3
3日の東京外国為替市場の円相場は、大幅な円安・ドル高が進み、前日(午後5時)に比べて3円ちょうど円安・ドル高の1ドル=133円台後半で取引されている。前日には1ドル=130円台をつけて約2か月ぶりの円高・ドル安水準となっており、相場は乱高下している。
米連邦準備制度理事会(FRB)高官が利上げペースの鈍化に消極的な発言をしたことから、日米の金利差拡大が改めて意識され、運用面で有利となるドル買い・円売りが優勢となっている。前日はナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問で米中対立が激化するとの警戒感から、安全資産とされる円買いが進んでいた。
対ユーロでは、同2円20銭程度円安・ユーロ高の1ユーロ=135円台後半で取引されている。
●東証、一時200円超高 割安感、円安で反発 8/3
3日午前の東京株式市場の日経平均株価は反発し、上げ幅は一時200円を超えた。前日の下落で割安感が出た銘柄に買い注文が入った。東京外国為替市場が円安ドル高に転じたことも、投資家心理を支えた。
午前終値は前日終値比146円24銭高の2万7740円97銭。東証株価指数(TOPIX)は2・01ポイント高の1927・50。
ペロシ米下院議長の台湾訪問で米中対立が激化するとの見方から、前日の平均株価は400円近く値を下げた。3日は米中対立への懸念が残るものの、前日に円高もあって売りが目立った輸出関連銘柄が上昇した。加えて、好決算を発表した銘柄の値上がりも相場全体を押し上げた。 
●株価 値上がり 円安ドル高進み 輸出関連の銘柄などに買い注文  8/3
3日の東京株式市場、外国為替市場で円安ドル高が進んだ影響で、輸出関連の銘柄などに買い注文が出て日経平均株価は値上がりしました。日経平均株価、3日の終値は前日より147円17銭高い2万7741円90銭。東証株価指数=トピックスは5.28上がって1930.77。一日の出来高は11億7660万株でした。市場関係者は「円安が進んだことで自動車や半導体など輸出関連の銘柄への買い注文が目立ったほか、業績が好調だった衣料品メーカーなどの株価も上昇し、全体を押し上げた。一方で、アメリカのペロシ下院議長の台湾訪問を受けて、米中対立への懸念も出て、取り引きに慎重な投資家も多かった」と話しています。
●東京円、2円39銭安の1ドル=133円21〜23銭 8/3
3日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比2円39銭円安ドル高の1ドル=133円21〜23銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは、同1円81銭円安ユーロ高の1ユーロ=135円58〜62銭で大方の取引を終えた。
●米利上げ観測再燃で円下落 8/3
3日の東京外国為替市場の円相場は、米国が大幅な利上げを続けるとの観測が再燃して円売りドル買い注文が膨らみ、一時1ドル=133円89銭まで円安ドル高が加速した。ただ、米中関係の緊張を懸念して円を買い戻す動きもあり、荒い値動きになった。
午後5時現在は前日比2円39銭円安ドル高の1ドル=133円21〜23銭。ユーロは1円81銭円安ユーロ高の1ユーロ=135円58〜62銭。
朝方は、米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的な金融引き締めを続けるとの思惑が改めて広がり、日米金利差の再拡大を意識した円売りドル買いが先行。一時、前日比で3円強も円安ドル高が進んだ。
●円、133円台前半 ロンドン外為 8/3
3日朝のロンドン外国為替市場の円相場は、ドルが買い戻された海外市場の流れを引き継ぎ、1ドル=133円台前半に下落した。午前9時現在は133円20〜30銭と、前日午後4時比1円55銭の円安・ドル高。
●NY円、133円後半 8/3
3日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比67銭円安ドル高の1ドル=133円80〜90銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0161〜71ドル、136円09〜19銭。
米連邦準備制度理事会(FRB)の複数の当局者が、高インフレを抑えるために金融引き締めを続ける必要性を強調した。日米の金利差拡大が意識され、円売りドル買いが優勢となった。
●円相場(NY)一時1ドル=134円台半ばまで円安ドル高進む  8/3
3日のニューヨーク外国為替市場では、アメリカの景気に関する経済指標が市場の予想を上回り、利上げのペースが鈍るとの見方が一段と後退したことを背景に一時、1ドル=134円台半ばまで円安ドル高が進みました。
3日のニューヨーク外国為替市場では、円を売ってドルを買う動きが出て円相場は一時、1ドル=134円台半ばまで値下がりしました。
この日、発表された製造業の新規受注を示す経済指標や、非製造業の景況感を示す経済指標がいずれも市場の予想を上回り、利上げのペースが鈍るとの見方が一段と後退しました。
このため、債券市場で一時、アメリカの長期金利が上昇し、日米の金利差の拡大が意識されて円売りドル買いにつながりました。
市場関係者は「アメリカの景気減速への懸念から今後の利上げのペースが鈍るのではないかとの見方が広がっていたが、景気に関する経済指標が予想を上回ったことで利上げへの警戒が再び強まった」と話しています。
一方、ニューヨーク株式市場では、景気に関する経済指標が市場の予想を上回ったことで買い注文が増え、ダウ平均株価の終値は前日に比べて416ドル33セント高い3万2812ドル50セントでした。
IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数も2.5%の大幅な上昇となりました。
●円相場 一時3円以上値下がりも買い戻す動き 米中対立懸念から  8/3
3日の東京外国為替市場、円相場は一時3円以上、値下がりしましたが、アメリカのペロシ下院議長と台湾の蔡英文総統の会談を受けて、米中対立への懸念から円を買い戻す動きも出ています。
市場関係者は「アメリカが金融引き締めに慎重になるのではないかという見方が後退したことから、円相場は午前中、3円以上値下がりしたが、アメリカのペロシ下院議長と台湾の蔡英文総統が会談したと伝わると、米中対立への懸念から比較的安全な通貨とされる円を買い戻す動きが進んだ」と話しています。
●「行き過ぎた円安」の修正、更に続く可能性 8/3
為替市場において、7月中旬に一時1ドル139円まで円安ドル高が進んだ後、月末までに大きく円高に動いた。そして今週8月に入ってから、一時1ドル130円台まで円高が進む場面があった。
円高ドル安のきっかけは、7月27日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FRB(米連邦準備理事会)による利上げが早々に打ち止めになるとの期待が高まったことで、実際FOMC後に米長期金利が一時大きく低下した。ただ、ユーロドルをみると、FOMC後にユーロドルはややドル安になった程度で、為替市場全体で「ドル安期待」が大きく強まったようには思われない。
一方、日本側で円高要因を探しても、明確な材料は思い当たらない。なお、株式市場では、米国株は7月後半に大きく上昇しており、日本株は7月後半からほぼ横ばいで推移している。株式市場における資金フローの動きは、むしろドル高方向に作用している可能性がある。
日本銀行が金融緩和の修正を迫られるとの見方が強まったが......
7月後半の大幅な円高ドル安は、米国の長期金利低下とともに進んでいる。一方で、春先からのドル円と米長期金利の関係を遡り振り返ると、3月初旬には115円付近だったドル円が、6月初旬の135円付近まで約20円ドル高円安に動いた。この時までは、米10年金利は1.7%付近から3.5%まで上昇しており、米金利上昇によってドル高円安はかなり説明できた。
その後、米国金利は6月中旬にピークをつけ、原油安などでインフレ期待の低下をうけて低下した。一方ドル円は、7月中旬まで139円台までドル高円安が進み、米金利と方向性が異なる動きをみせており、米金利では説明できない円安が進んだ。
7月中旬まで、ドル高円安が続いた理由ははっきりしない。為替市場で時折観測されるバンドワゴン効果によって、自己実現的な円安期待が強まり1ドル140円に迫るまで円安が進んだとみられる。自己実現的な円安期待が強まった一つの要因は、メディア等で報じられているとおり、日本銀行が現行の金融緩和(YCC、イールドカーブコントロール)の修正を迫られ、日本の長期金利が上昇するとの見方が、海外投資家を中心に強まったことがあるだろう。
実際には、日本銀行が現行の金融緩和を徹底する姿勢は春先からほとんど揺らいでいないのだが、米欧の金利上昇の後追いで、日本の長期金利も上昇するとのシナリオに賭けるポジションが積み上がっていたとみられる。そして、日本の長期金利上昇に期待した投資家は、同時に円安が進むとの見通しを持っていたとみられ、この思惑が7月中旬までの自己実現的なドル高円安を後押しした可能性がある。
ただ、日本銀行の金融緩和への姿勢が全く揺るがないことが明らかになり、「年内にYCC政策の変更」を予想していた数少ない日銀ウォッチャーが見通しを修正する中で、海外投資家を中心に日本の長期金利上昇に賭けるポジションを維持することが難しくなったとみられる。
そして、日本銀行の金融緩和撤廃を促す、「自己実現的な円安が続く」との期待が剥落、7月半ばまでの「行き過ぎた円安」が修正されることになった。このため、米金利低下がドル安円高を加速させることになり、短期間で一気に130円台まで大きく円高が進んだと思われる。
日銀の政策変更への思惑が行き過ぎた円安を招いた
日銀の政策変更への思惑が行き過ぎた円安を招いた、との筆者の仮説が妥当で、今後将来の円安期待が完全が消失するとすれば、ドル円と米10年金利との関係が6月以前の状態に戻ってもおかしくない。
8月2日時点の米国10年金利は2.7%台だが、これは4月以来の水準である。4月時点のドル円は125円前後なので、米金利とドル円の6月までの関係が戻れば、1ドル130円を下回り円高ドル安が進んでも不思議ではないだろう。
日本銀行がメディアなどの円安批判等に影響されていたなら......
最近の大幅な円高の動きをみると、7月まで不確実に為替市場が動いた中で、日本銀行の徹底した金融緩和維持の対応が妥当であったとことが、改めて評価されるだろう。7月後半からの米国の金利低下には、米経済の下振れリスクの高まりが影響した。
実際に、2022年前半までは、世界的な製造業部門における需給ひっ迫がインフレを押し上げていたが、年央になって需要の停滞によって需給バランスが緩和する兆しがみられている。米欧の需要減速、そして中国経済の停滞などで、世界経済の下振れリスクが高まっている。
もし、日本銀行が、春先から報じられていたメディアなどでの円安批判等に影響され、金融緩和政策を修正していれば、足元で円高は更に進んでいただろう。つまり、円安を容認し、金融緩和を続けたが故に、円高進行を吸収する余裕(緩衝材)が作られたということである。
徹底した金融緩和維持でこの余裕を作っていなければ、米経済の減速で一段と円高が進み、日本経済の復調に大きなブレーキになっていたかもしれない。この意味で、黒田総裁率いる日本銀行による徹底した金融緩和維持は、日本経済の復調を強く支えていると言えるだろう。

 

●外為:1ドル133円86銭前後と大幅なドル高・円安で推移 8/4
4日の外国為替市場のドル円相場は午前11時時点で1ドル=133円86銭前後と、前日午後5時時点に比べ63銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円12銭前後と55銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●「キシダは何もしていない」ポール・クルーグマンが日本に落胆している理由 8/4 
コロナ第7波、ウクライナ情勢、そしてインフレ。世界経済は新たな転機を迎えている。明日の行方すら分からない時代、果たして日本はどこに向かうのか。経済学の泰斗、ポール・クルーグマン教授が語り尽くす。
根本的なデフレ脱却に至っていない
本題に入る前に、安倍氏の銃撃については、当然私もショックを受けています。日本で元首相が殺害されるとは誰も予想していなかった。心からお悔やみを申しあげたい。
しかし、その話とアベノミクスについての評価は別の話です。遡ること2016年3月22日、私は当時の安倍氏に直接会って、消費増税はすべきでないと進言しました。ですが、安倍氏は私を裏切る形で2019年10月に10%へと消費税を引き上げました。これは大きな失策と言わざるをえません。
そもそも、消費増税とは緊縮財政であり、景気の過熱、つまりインフレを抑制するために行うものです。日本のように長いデフレに陥っている国でやっても逆効果なのは明らかだったはずです。
そして今、日本は果たしてデフレから脱却できたのでしょうか。
確かに数字の上ではインフレ率は当初の目標である2%となっています。しかし、これは政策が効果を発揮したからではありません。実際には、ロシア・ウクライナ戦争による食糧やエネルギーの危機を背景とした円安による物価上昇という外的要因によるものです。
それでいて、先述したアメリカのインフレ率9%に比べれば、日本のインフレ率はまだはるかに低い。日本は根本的なデフレ脱却に至っていないと見るのが正しいでしょう。
岸田首相の「新しい資本主義」は空虚だ
この「デフレマインド」は日本特有の諸悪の根源であり、私もずっと頭を悩ませています。
これを解消するのは、やはり賃金を上げることに尽きると思います。にもかかわらず、安倍氏の後を継いだ岸田文雄首相は賃金上昇をいまだ実現できていません。
確かに2021年には、「業績がコロナ前の水準を回復した企業について、3%を超える賃上げを期待する」と岸田首相は述べました。また賃上げに応じた企業に対し、法人税負担の控除率を引き上げる優遇税制を、2022年度の税制改正大綱に盛り込んでいます。
しかし賃上げ税制自体は安倍政権下の2013年度から導入されているものです。ですから賃上げの実現を望める政策とは言えず、何もやっていないに等しいでしょう。岸田首相の掲げる「新しい資本主義」も、私には空虚に聞こえて仕方がありません。
では、岸田首相の役目とは何か。
第一に、日本の経営者団体のような反対論者を無視してでも、企業の内部留保の水準を明確化し、大幅に切り崩して賃金を上げることに向かわせる法整備を行うなどの荒療治でしょう。
私は、日本は世界でも有数の「プロダクト・エコノミー(良品を生産する経済)」を形成している国だと認識しています。世界中の人々は、まだまだ日本の製品を欲しがっているのです。実際、日本の上場企業の多くは今年、過去最高益を更新するなど、好調ぶりを見せています。
問題なのは、そういった企業が利益を内部留保として貯め込んで、その上にあぐらをかいていることです。企業としては賢い考え方でしょうし、「当然だ」という議論ももちろんあります。しかし、日本全体としては長期的に経済を減速させることにしかなりません。
一刻も早くエネルギー源を確保せよ
二つ目のステップとしては、労働法の強制力をより強めることにあります。
日本の同法ではすでに、同一労働に対しては、男女や正規・非正規関係なく、同一賃金を求めています。しかし、実際には、いまだ日本では男女、正規・非正規で賃金格差が見られます。
両者を同じ賃金水準にするだけでも、労働の流動性は増し、産業のさらなる発展と成長が期待できるはずです。付け加えるならば、非正規雇用者の立場の不安定さを解消するためにも、彼らの労働組合への加入を徹底させることも重要だと考えます。
ここまで日本における賃金上昇の必要性を話してきましたが、岸田首相がやるべき喫緊の課題がもう一つあります。
それは、一刻も早くエネルギー源を確保することです。
かねてより私は、このウクライナ侵攻で世界的なグローバリゼーション(地球規模で複数の資本、情報、人の交流や移動が行われる現象)の終焉、そして世界経済の「ブロック化」が進むことを危惧しています。
戦争がいつ終わるかは分かりませんが、ロシア経済は、世界の経済・金融から切り離されつつあります。ただ、ロシアだけが孤立するわけではありません。その隣には、2030年には世界1位の経済大国になると言われる中国がいます。
中国の今のやり方は、率直に言って非常にずる賢い。戦争を傍観するふりをして、ロシアから安くエネルギーを買い、それをまた別の国に売っている。
ロシアへの制裁を厳格化し、ロシア産エネルギーを欧米や日本が輸入しなくなっても、中国、インドが今後の主要輸出先となり、大幅な輸出減にはならないでしょう。そういう意味で、中国はロシアに対する制裁の「逃し弁(エスケープ・バルブ)」となってしまいます。
日本が残酷な未来にならないために
さらに中国はロシアと組んで、新経済圏を作ろうともしています。これこそ世界経済のブロック化であり、欧米などと違って、日本はその分断の陰でエネルギー不足に苛まれることになるでしょう。そうなれば、日本経済はさらに悪化の道を辿ります。
すでにヨーロッパでは「脱ロシア・中国」を掲げ、中東やアメリカへのエネルギー依存度を高め、再生可能エネルギーや原発の増設を積極的に進めています。日本はとにかく自国で産出できるエネルギーが少ない。
そうなると、まずエネルギー源を分散させて輸入することで目の前のリスクを減らすことが重要になってきます。当然、しばらくはエネルギー価格の高騰に苦しむこともあるでしょう。そこは政府も積極財政として、補助金支出や減税という手法で抑えていくほかありません。
しかし、手っ取り早い方法は、原子力発電所の再稼働です。
それを促進するのは、岸田首相の最も大事なミッションと言えるでしょう。このまま何も対策を講じず、エネルギー源を確保できなければ、日本という国の存亡にもかかわります。
賃金の上昇とエネルギー源の確保。明日にでもこれらを実行しなければ、東京の道路は荒れ果て、雑草が生えてくるという残酷な未来もあり得ます。そうならないためにも、日本人には奮起してもらいたいと考えます。 
●外為 1ドル133円70銭前後とドル高・円安で推移 8/4
4日の外国為替市場のドル円相場は午後2時時点で1ドル=133円70銭前後と、前日午後5時時点に比べ47銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=135円86銭前後と29銭のユーロ高・円安で推移している。
●外為 1ドル134円30銭前後とドル高・円安で推移 8/4
4日の外国為替市場のドル円相場は午後6時時点で1ドル=134円30銭前後と、午後5時時点に比べ14銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円87銭前後と34銭のユーロ高・円安で推移している。
●ロンドン外為 円、134円台前半 8/4
4日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、手掛かり材料に乏しい中、1ドル=134円台前半で小動きとなった。正午現在は134円15〜25銭と、前日午後4時(134円30〜40銭)比15銭の円高・ドル安。
この日は134円台前半で取引が始まった。特段の手掛かり材料がない中、ポジション調整などの取引が中心となり、小幅な値動きにとどまった。英イングランド銀行(中央銀行)が0.5%の大幅利上げを決めた後、ポンド円は急落したが、ドル円への影響は限定的だった。
対ユーロは1ユーロ=136円70〜80銭(前日午後4時は136円05〜15銭)と、65銭の円安・ユーロ高。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0185〜0195ドル(1.0135〜0145ドル)。
ポンドは1ポンド=1.2175〜2185ドル(1.2105〜2115ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9590〜9600フラン(0.9640〜9650フラン)。
●NY円、132円台後半 8/4
4日のニューヨーク外国為替市場では、リスク回避ムードが広がる中で、相対的に安全性が高いとされる円が買われ、円相場は1ドル=132円台後半に上昇した。午後5時現在は132円88〜98銭と、前日同時刻比92銭の円高・ドル安。
米連邦準備制度理事会(FRB)高官による積極利上げを支持する発言に反応した前日までの円売り・ドル買いが一服。一方で、ペロシ米下院議長の台湾訪問に伴う米中関係悪化懸念がくすぶり、リスク回避ムードが円相場を支えた。 

 

●円相場、133円26〜31銭 8/5
5日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=133円26〜31銭と、前日(134円16〜17銭)に比べ90銭の円高・ドル安となった。 
●午後3時のドルは小幅高133円前半、米指標前に持ち高調整 8/5
午後3時のドル/円は、前日ニューヨーク市場の終盤から小幅ドル高/円安の133円前半で取引されている。米雇用統計の発表を今夜に控え、持ち高調整的な売買が中心で、方向感は乏しかったという。
ドルは朝方の安値132円半ばを底に、午後にかけてじりじりと上昇。一時133.48円まで買われた。台湾株が2%を超える上げ幅となるなど、アジア株高を受けて円が弱含みとなったほか「前日海外で売られたドルに、持ち高調整的な買い戻しが入った」(外銀)という。
緊張が高まっている台湾情勢に大きな動きがなかったことも、円が弱含みとなった一因。訪日中のペロシ米下院議長は会見で、今回の歴訪は台湾や周辺地域の現状変更が目的ではないと述べた。
前日、中国軍は軍事演習で1996年の第3次台湾危機以来となるミサイル発射訓練を行い、外為市場ではリスク回避的に円が買われた。
もっとも、UBSウェルス・マネジメントのチーフ・インベストメント・オフィス(CIO)はリポートで、最近のドル安/円高は「米連邦準備理事会(FRB)の利上げサイクルが近く終了するとの思惑が高まり、激しい利益確定売りに押された」ためだと分析し、さらなる利益確定売りで130円台を割り込む可能性があるとしている。
●ロンドン外為5日 ユーロ、対ドルで下落 強い米雇用統計で 8/5
5日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=1.0160〜70ドルと、前日の同時点に比べ0.0050ドルのユーロ安・ドル高で推移している。5日公表の7月の米雇用統計で、非農業部門の雇用者数の伸びが市場予想を大きく上回った。インフレ抑制のため、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを加速するとの観測から、ユーロ売り・ドル買いが強まった。
円は対ユーロで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=137円50〜60銭と前日の同時点に比べ1円60銭の円安・ユーロ高で推移している。強い米雇用統計を受け、対ドルで円売りが膨らみ、対ユーロにも波及した。
英ポンドは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.2050〜60ドルと前日の同時点に比べ0.0050ドルのポンド安・ドル高で推移している。
●NY円下落、134円台後半 8/5
週末5日午前のニューヨーク外国為替市場では、市場予想を大幅に上回った7月の米雇用統計を受けて円売り・ドル買いが急速に進み、円相場は1ドル=134円台後半に下落した。午前8時55分現在は134円60〜70銭と、前日午後5時比1円72銭の大幅な円安・ドル高。 
●円安から一転!“投機筋”はどこに? 8/5
ジェットコースターのように激しく振幅を繰り返す円相場。7月14日に1ドル=139円台と24年ぶりの円安水準となったのもつかの間、一転して円が買われる展開となり、その後の3週間で9円近くも円高ドル安が進むという異常事態に。8月2日には1ドル=130円台をつけました。マーケット関係者からは、「ちょっとしたパニック状態」「どちらの方向に動くのか誰もわからない」との嘆き節も。7月中旬にかけて加速した円安相場、そして7月下旬から8月上旬の相場急変の局面で市場を動かしたのは誰だったのか、取材しました。
“投機筋”って何者?
まず、振り返るのは7月中旬にかけて加速した円安ドル高の流れ。いったい誰が主導したのか。マーケット関係者の多くが口にしたのは「投機筋」の動きです。為替が急激に変動する際によく聞く「投機筋」ということば。短期の取り引きを繰り返して利益を得ようとする投資家というような意味ですが、この10か月、マーケットを取材してもどこにそんな投資家がいるのかわからないままでした。正体不明の「投機筋」を追い求めて、まずはその動きをつかむデータがないか、為替ディーラーなどに聞いてみました。
プロが参考にする「IMM通貨先物」
プロも参考にしているデータとして紹介してくれたのがCME=シカゴ・マーカンタイル取引所で取り引きされている「IMM通貨先物」のポジション(持ち高)です。CFTC=アメリカ商品先物取引委員会がこの「IMM通貨先物」について、各取引所に「売りポジション」と「買いポジション」の公表を義務づけ、集計したデータを毎週公表しています。このうちの「ノン・コマーシャル」(非商業)の部門がいわゆる投機筋のポジションだとされています。円が上昇すると予想する投資家は「買い」のポジションを積み上げ、逆に円が下落するとみれば、「売り」のポジションを多くします。このように売り買いどちらが多いかで投機筋の“読み”を探ることができます。
“投機筋”は一貫して円売りポジションを積み上げ
「IMM通貨先物ポジション」のグラフをみると、ドル円の先物取引で円は去年3月以降、一貫して売り越し。(「売りポジション」が「買いポジション」より多い)そしてアメリカのFRBが0.75%の大幅な利上げに踏み切ったことし6月中旬以降は、円だけでなく、ユーロ、ポンド、オーストラリアドルのいずれも売り越しとなっています。「投機筋」は、ドルに対する主要通貨の「売り」ポジションを積み上げていたわけです。これについてマーケット関係者は、「投機筋は、アメリカが当面、金融の引き締めを続け、これに伴ってしばらくはほとんどの通貨に対してドル高が続くとみていた」と解説します。
一転して円高ドル安方向に
ところが「投機筋」のシナリオに暗雲が垂れこめる事態が。アメリカのFRBが7月27日までの会合で、0.75%の大幅な利上げを決めましたが、パウエル議長が会見で、「利上げのペースを緩めることが適切になる可能性がある」と発言。市場では、急速な利上げによって、アメリカ経済が景気後退に陥るのではないかという懸念が強まりました。さらに28日、アメリカのことし4月から6月までのGDP=国内総生産の伸び率が2期連続のマイナスに。「テクニカルリセッション」ということばが市場を駆け巡りました。29日の東京外国為替市場では、アメリカ経済の先行きへの懸念が一気に強まり、円相場は3円以上値上がり。8月2日には、アメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問すると伝わったことで、米中対立への警戒感から、円相場は1ドル=130円台まで大きく値上がりしました。
円の売りポジションはどうなったのか
このときに「IMM通貨先物」の売り買いのポジションがどうなったのか。このコラム執筆時には円高ドル安方向に転じたときのポジションのデータがまだ公表されていないので、投機筋がどう動いたのか定かなことはわかりません。結局、7月下旬に為替市場の流れが変わった局面で誰がマーケットを動かしたのかは分からずじまいですが、その直前まで、投機筋の多くが円を売りポジションで持ち続けていたのは事実で、この投資スタンスが変わったのかどうかが焦点となります。三菱UFJ銀行の平松誠基アナリストは、「アメリカの大幅な利上げが続くと予想していた投機筋の動きが調整され、円高ドル安を加速させたのではないか。ファンダメンタルズだけでは説明がつかない」と指摘します。投機筋はいまどこで何をしているのか。その動きを探り、検証する取材を続けたいと思います。
●急激な「円高」逆戻り!...日本経済に吉か凶か?  8/5
2022年3月以来、急速に進んでいた円安が、ここにきて一転、急激な円高に転じている。7月22日の東京外国為替市場で1ドル139円96銭と140円台に迫る勢いだったのが、8月2日には一時130円割れ寸前までいった。円安加速に苦しんでいた日本経済に与える影響はプラスか、マイナスか。エコノミストの分析を読み解くと――。
円安見込んだFX取引...大損失を受けた個人投資家も
急な円高が、日本の個人投資家に思わぬ打撃を与えている。朝日新聞(2022年8月5日付)「円安で急増のFX落とし穴 6月の取引額最大⇒急な円高で大きな損失も」によると、少ない元手で多額の外貨取引ができる外国為替証拠金取引(FX)で、大きな損失が出た投資家も出ている模様だという。3月以降、日本ではFX取引が急激に増えた。円安が急速に進んだからだ。7月中旬までに1ドル=139円台にまで下がり、約25円も円安ドル高が進んだため、この流れに乗ろうと6月の店頭取引額は過去最大を更新した。ところが、8月2日には一時、1ドル=130円台にまで円高に振れた。ようするに、円高になると予想して1ドル=135円でドルを買い、1ドル=140円になった時にドルを売って差益を稼ごうともくろんでいた人は、大きな損失をこうむるというわけだ。ネット上では「2か月分の利益が飛んだ」などと、円安を見込んで円売りドル買いをしていた投資家から悲鳴を上がっている、と朝日新聞は報じている。
「経済は生き物、正確な答えは難しい」
さて、今回の急な「円高への逆戻り」、日本経済にはどんな影響を与えるのだろうか。 第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は、リポート「円安反転の効果、プラスかマイナスか? 〜物価上昇圧力が弱まることの評価〜」(8月3日付)のなかで、「円安トレンドが反転したことは、日本経済にとってプラスなのか、それともマイナスなのか。この質問は、一見ごく単純なものだが、それに正確に答えることは難しい。頭を整理するためにも、読者も自分なりにこの質問の答えを考えることをお薦めしたい」として、次の4つの観点から分析している。
(1)価格転嫁の観点からはプラス=従来の円安・原油高は、製造業を中心に価格転嫁を促してきた。しかし、あまりに素材価格の高騰が急激だったために、価格転嫁が追いつかない状況だった。今後はコストプッシュ圧力が弱まるので、価格転嫁によって、変動利益率を改善させていくだろう。つまり、円安・原油高からの反転は、企業収益にはプラスとみることができる。
(2)購買力の海外流出が減るのでプラス=2022年1〜3月期の輸入デフレータは実額で15.7兆円(年間換算値)と巨大であった(図表1参照)。これは、国内所得が海外に流出するという意味でマイナスである。原油高に起因する部分は、日本から産油国への所得流出になっていた。7〜9月になると、その海外流出額は減ることだろう。これは外生的ショックが和らぐ意味で日本経済にプラスだ。
   (図表1)輸入デフレータの推移
(3)長期的に見るとプラス効果は限定的=目先のコストプッシュ圧力の部分だけをみると、プラスだが、なぜ円安・原油高が修正されているのかという理由まで広げて考えると、見方が変わってくる。
そうした観点では、円安反転の背後には米国の景気後退リスクがあるから、(これまで述べた)プラスは減殺される。米景気後退リスクが強まると、2022年後半にかけて、日本から米国向けの輸出数量が落ち、世界的な貿易取引も落ちていく可能性はある。総合して考えると、短期的には収益率が改善しても、しばらくすると収益水準は悪化していく。
つまり、円安・原油安のプラス効果は短期間に限定されるものだと理解できる。
(4)FRB(米連邦準備制度理事会)の引締め次第=物価上昇圧力が弱まる点では、日本だけではなく、米国も同じだ。7〜9月の米消費者物価は伸び率が鈍化するだろう。すると、9・11・12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)でも、利上げペースを小幅に止めようという判断に変わっていく。
ただし、この見解には不確実性がある。なぜなら、FRBが物価警戒を弱めない可能性があるからだ。もともと、景気とインフレの間にジレンマがある。最近のFRBは、インフレ抑制重視のほうに軸足を置いている。その結果、2022年前半だけではなく、今後も米国の景気後退リスクを強めていく。FRBの金融引き締めがペースダウンしていけばプラスだが、逆に、FRBが金融引き締めの緩和に反応しないのならばマイナスだと言えそうだ。つまるところ、結局、プラスなのか、マイナスなのか。熊野氏はこう結んでいる。
「経済は生き物なので、円安・原油高の影響をそう単純に解釈することはできない。(中略)もう1つの留意点を加えると、為替相場や原油市況のトレンドが一方向だけに向かわなくなったことは期待形成の側面でプラスだとみる。それは、価格転嫁をして採算改善を試みてきた企業にとって、やっとその成果が生じるようになったからだ。相場が一方向に流れると、それが企業の採算悪化の不安を増長させる。だから、相場はある程度アップダウンしたほうが無限大の不安を与えずに済む。また、価格転嫁をしていた企業には、やっと採算が確保できそうだという安堵感も生じるだろう」
「米株安」「中国リスク」「BA.5」...不安要因ばかり
同じく第一生命経済研究所主任エコノミストの藤代宏一氏も、「プラスか、マイナスか」には慎重な立場だ。藤代氏のリポート「円高に耐える日本株 ただし内需は不安材料」(8月3日付)のなかで、今後の波乱含みの展開をこう分析する。まず、注目点として、為替と日本株についての状況を整理すると――。
「直近の円安反転の背景にあるのは米金利低下である=図表2参照。為替市場で材料視されている米5年金利は7月20日の直近ピーク値3.16%から8月1日の2.63%まで強烈に低下し、この間にドル円相場は138近傍から131近傍まで下落した。目下、為替市場参加者の視線は米金利に集中しており、ドル円相場と米金利の方向感は密接に連動している」
   (図表2)ドル円相場と米5年金利の推移
そうしたもとで、日経平均は2万7000円台を維持している。その背景には、米金利低下が米株高を促したことでグローバルな株価上昇につながり、日本株に資金流入があったのだろう。一方、米国株の先行きは心許ない、藤代氏は指摘する。
「現在発表中の米企業決算は8月2日時点で、74%がアナリスト予想を上回るなどまずまずの着地であるが、ISM製造業(景況感指数)など広範なマクロ指標の悪化に鑑みると、今後の米企業業績に多くは期待できない」
そこで、「米株安」になる展開があるかもしれない、というわけだ。
「仮に米株安となっても、米金利が反転上昇し再び円安基調となれば、日本株へのマイナス影響を緩和すると期待される。ただし、その際に日本企業の業績不安が生じていれば、日本株は持ち堪えられないだろう(中略)今後も中国における再ロックダウン不安もあり、ダウンサイドリスクが残存する」
また、現在進行中の新型コロナ「BA.5」の爆発的な拡大の懸念材料だ。藤代氏はこう結んでいる。
「この期に及んで言及するまでもないが、コロナに対する慎重姿勢が高齢者を中心に人々の消費活動を抑制しているほか、インバウンドの本格的再開も事実上は棚上げになっており、内需の回復期待が揺らぎつつある」
「急な円高は新たな日本経済の逆風に」
一方、急な円高が新たな日本経済のリスクになると警告するのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。木内氏のリポート「台湾地政学リスクの高まりで金融市場は動揺:リスク回避の円買いも復活」(8月2日付)によると、この先、円は3つの要因によってさらに巻き戻しが続くという。
(1)FRBの利上げペースの鈍化の可能性を織り込んだ米国の長期金利低下による日米長期金利差縮小。
(2)米国を中心にした世界経済の減速という経済リスクの高まり。
(3)台湾情勢など地政学リスクの高まり。
そして、円の巻き戻しが新たな日本経済の逆風になるというのだ。
「円の巻き戻しが進むことで、日本経済に逆風となっている物価高懸念が多少緩和される、というプラス面はある。しかし、為替市場が円高に振れれば、株価が大きく下落しやすくなるだろう」
「日経平均株価などを構成する企業には大規模な輸出企業が多く含まれていることから、円安によって円換算での輸出代金が増えることで、株価にはプラスに働く。逆に円高が進めば、株価には逆風である。年初来、米国の株価の下落幅と比べると、日本の株価の下落が小幅であったのは、円安進行の影響が大きいだろう」
しかし、これからは、株価の下落を抑えていた円安が円高に転じる。
「今後、上記3つの要因から円の巻き戻しが進む場合、株価の下落率は米国などと比べても大きくなるだろう。それは国内での消費者心理に悪影響を及ぼす可能性が考えられる。物価高を促す大きな懸念材料であった円安進行が一巡しても、今度は、円の巻き戻しが新たな日本経済の逆風となっていくのである」
木内氏はこう警鐘を鳴らしている。

 

●サプライズな強さを見せた米雇用統計後にドル高円安進む=NY為替概況 8/6
サプライズな強さを見せた米雇用統計後にドル高円安進む=NY為替概況
きょうのドル円は米雇用統計の力強い結果を受けて一気に上昇した。雇用統計まではやや上値の重い展開。東京午前に132円50銭台を付けた後、133円台前半まで上昇も、ロンドン市場に入っても132円台を付ける場面が見られるなど、上値の重さが印象的に。
しかし注目された米雇用統計がサプライズな強さを見せると、流れが一気に変わった。米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が市場予想を倍以上も上回る伸びに。前回値が上方修正されたうえでの結果に市場のサプライズとなった。失業率が予想外に低下。平均時給が予想外に上昇と、NFP以外も力強い結果となった。
この結果を受けて、ドル円は急騰した。発表時の133円20銭前後から134円台半ば前後まで一気に進み、そのまま135円ちょうど前後まで。そこで30銭程度の調整を挟むも、勢いは継続し、135円50銭前後まで上値を伸ばした。
その後はいったん調整の動きとなったが、NY午後は135円ちょうどを挟んでの推移となるなど、堅調な地合いを維持した。
今後の米FRBによる追加利上げ期待が一気に強まった形。発表前までは次回9月の利上げについて、0.50%に利上げ幅が縮小するとの見通しが約66%と大勢となっており、34%が3会合連続での0.75%利上げという状況であった。発表後は入れ替わり、約70%が0.75%利上げを見込み、約30%が0.50%利上げを予想するという状況に。この結果に米長期債利回りなども上昇を見せ、ドル買いの動きにつながった。
米10年債は2.70%割れの水準から一時2.867%まで。2年債はそれ以上に上昇。
ユーロドルは1.0230前後から1.0140近くまで値を落とした。ドルはほぼ全面高。もっともドル円でのドル高円安の勢いが強く、ユーロ円は上昇。ロンドン市場で136円割れを付けていたユーロ円は136円20銭台で発表を迎えると、137円76銭をつけている。
利上げ見通しが強まり、米株は下げて始まったが、ダウ平均がプラス圏で引けるなど、株が落ち着いた動きを見せたことで、円売りの動きが広がり、クロス円の買いにつながった面も。
昨日市場予想通り27年ぶりの0.5%の利上げを決めた後、1.22台から1.2060台まで一時値を落としたポンドドルは、1.2150前後まで戻して発表を迎え、発表後のドル買いに1.2000台まで値を落としている。その後は買い戻しも1.21を付けず、上値の重い展開に。
●円売り投機はピークを過ぎたのか 無責任なエコノミストの為替予測 8/6
エコノミストたちの外国為替相場の「予測」ほど、無責任で人騒がせなものはない。今週初め、円ドル相場が1ドル=130円台まで付けた途端、潮のごとく引いたが、つい先週までは年末までには1ドル=200円近くまで下がるなどという「専門家」予想がネットに氾濫していた。
周辺からはそんな情報を突きつけられ、どう思うかと聞かれ、筆者はそのたびに「当たる当たらぬ易占いじゃあるまい。しょせんは市場の投機なんだから、いつ逆に円高に振れるかもしれないよ」と答えてきたが、相手は当然、納得しそうにない。
円安が止まらないとの前提に立つ有力エコノミストは「悪い円安」論を展開し、円安の元凶は日銀の異次元金融緩和政策にあると批判してきた。円安を止めるためには日銀が緩和を打ち切り、利上げすべきと提唱するわけである。
この考え方は、先の参院選での立憲民主党の主張にも影響を及ぼしたばかりではない。岸田文雄首相が任命し、日銀の政策委員会審議委員に就任した高田創氏も異次元緩和批判論者である。
だが、「悪い円安」論は不毛である。まず、「円安」だが、仮に150円であろうと、200円であろうと、その水準で安定すれば、「よい円安」になりうる。日本企業の国際競争力は高まるし、中国など海外よりも国内で生産したほうが有利なのだ。
企業収益、設備投資、雇用も増える。輸入コスト高がさらにかさむと円安悪者論者はのたまうが、この際、値上げすれば問題なしである。ただし、企業は製品価格アップに並行して賃上げすればよい。つまり、設備投資増―雇用増―値上げ―賃上げ―内需増という脱デフレの道が一挙に開ける。
さて気になるのは冒頭で触れた「為替投機」動向である。円売りは、高インフレ退治の米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが続くが、それに対し日銀はマイナス金利政策を変えないとの「読み」に基づく。FRBは9月以降の大幅利上げには慎重のようだ。だから投機筋は慌てて円買いに転じたという。
だが、大口の資金をかき集めて投機を行う投資ファンドというものは、どの投資家も同じ手口を始める前にさっさと手じまいする。みんな同じ円売りとなると儲けられないし、大損をくらうリスクが高まるからだ。
では、円売り投機のピークは過ぎたのか。
グラフは、東京オフショア市場での邦銀の外国の金融機関向けの貸付残高と円ドル相場の推移である。オフショアとは「沖合」という意味だが、銀行の帳簿上だけ国外取引という扱いにして、手元の円資金を外国銀行などに貸し付ける。その資金はグローバルな外為取引の原資になる。この貸付残高が膨らめば円安となり、縮小すれば円高となることを示している。連動しなかったのは新型コロナウイルス・ショックの2020年5月時だけである。
データの最新は5月で前月を下回った。円相場も揺れた。さて、円売り投機のピークは過ぎたのかな?
●サプライズな強さを見せた米雇用統計後にドル高円安進む=NY為替概況 8/6
サプライズな強さを見せた米雇用統計後にドル高円安進む=NY為替概況
きょうのドル円は米雇用統計の力強い結果を受けて一気に上昇した。雇用統計まではやや上値の重い展開。東京午前に132円50銭台を付けた後、133円台前半まで上昇も、ロンドン市場に入っても132円台を付ける場面が見られるなど、上値の重さが印象的に。
しかし注目された米雇用統計がサプライズな強さを見せると、流れが一気に変わった。米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が市場予想を倍以上も上回る伸びに。前回値が上方修正されたうえでの結果に市場のサプライズとなった。失業率が予想外に低下。平均時給が予想外に上昇と、NFP以外も力強い結果となった。
この結果を受けて、ドル円は急騰した。発表時の133円20銭前後から134円台半ば前後まで一気に進み、そのまま135円ちょうど前後まで。そこで30銭程度の調整を挟むも、勢いは継続し、135円50銭前後まで上値を伸ばした。
その後はいったん調整の動きとなったが、NY午後は135円ちょうどを挟んでの推移となるなど、堅調な地合いを維持した。
今後の米FRBによる追加利上げ期待が一気に強まった形。発表前までは次回9月の利上げについて、0.50%に利上げ幅が縮小するとの見通しが約66%と大勢となっており、34%が3会合連続での0.75%利上げという状況であった。発表後は入れ替わり、約70%が0.75%利上げを見込み、約30%が0.50%利上げを予想するという状況に。この結果に米長期債利回りなども上昇を見せ、ドル買いの動きにつながった。
米10年債は2.70%割れの水準から一時2.867%まで。2年債はそれ以上に上昇。
ユーロドルは1.0230前後から1.0140近くまで値を落とした。ドルはほぼ全面高。もっともドル円でのドル高円安の勢いが強く、ユーロ円は上昇。ロンドン市場で136円割れを付けていたユーロ円は136円20銭台で発表を迎えると、137円76銭をつけている。
利上げ見通しが強まり、米株は下げて始まったが、ダウ平均がプラス圏で引けるなど、株が落ち着いた動きを見せたことで、円売りの動きが広がり、クロス円の買いにつながった面も。
昨日市場予想通り27年ぶりの0.5%の利上げを決めた後、1.22台から1.2060台まで一時値を落としたポンドドルは、1.2150前後まで戻して発表を迎え、発表後のドル買いに1.2000台まで値を落としている。その後は買い戻しも1.21を付けず、上値の重い展開に。
●「家計が苦しくなった」 円安が進み、みんなの生活にはどんな影響が? 8/6
円安ドル高が進み、私たちの暮らしにも影響を与えています。2022年3月に1ドル120円を超えて以来、さらなる円安が進み、7月中旬の東京外国為替市場の円相場は、1ドル138円を超えています。
円安の原因は、日米金利差や日米の金融政策の方向性の違いとされています。2022年3月に米国の金融政策策定にあたるFRB(Federal Reserve Board:連邦準備理事会)が政策金利を引き上げたことにより、日米金利差が開き、一層の円安が進みました。
円安になると、輸出品の価格が安くなり、販売が活性化されるため、輸出を中心としている企業には有利となります。一方、製品や原材料を輸入している場合、その価格が上がってしまいます。
そのため、食糧自給率の低い我が国では、最近になって食料品などの値上げが相次いでいますね。これにはウクライナ侵攻の問題なども関係しています。
急速な円安は私たちの生活にどんな影響を及ぼしているの?
それでは、急速な円安は私たちの生活にどのような影響が出ているのでしょう。株式会社ホロスプランニングがアンケートで生活者の意識を調べていますので、その結果を見ていきましょう。
調査対象の世帯年収は「300〜500万円」が35.4%で最も多く、「500〜750万円」が29.2%「300万円未満」が17.8%で続きました。世帯年収500万円未満が54%と半数を超えます。
生活費は月にいくらくらい上がったか尋ねると、「1〜3万円」が61.0%、「1万円未満」が28.0%でした。70.4%もの人が、1万円以上生活費が上がってしまったと答えており、円安による物価上昇の影響を強く受けている人が多くなっている様子がわかります。
ドルと円の相場はいくらが適正だと思うか聞いたところ、最も多いのは「110〜120円」(43.8%)、次いで「100〜110円」(34.8%)でした。そこから見ると、今の相場は円安すぎるということでしょうか。
円安で物価が上昇し、生活を直撃
急速な円安問題に対し、思うことを聞いたところ、「生活費(家計)が苦しい」というコメントが多く寄せられました。「電気や水道などのインフラやガソリンなどの燃料、生鮮野菜などの値段が上がり家計に響いてきた」というコメントからも、円安の影響でさまざまなモノが値上がりし、生活を直撃している様子が読み取れます。また、「給料は上がらないのに物価だけ上がって大変」という声も多く聞かれました。
他には、「海外旅行や留学を希望していたのに行きづらくなった」といった意見も。航空券の価格が高騰している他、海外での買い物や生活費、学費も高くなってしまうため、留学したくても躊躇してしまう人もいるようです。新型コロナウイルスの感染拡大で、海外に行きづらくなっていたところ、円安のダブルパンチで海外旅行は再び遠のき、旅行業界もますます厳しいのではないのでしょうか。
また、「円安になってしまった後の国の対策が不十分であるように感じる」「政府や日銀が適切に対処していない」といった意見も目立ちました。
円安は輸出や外国人向け観光業にはチャンス
円安は、物価高の原因となったり、海外旅行のコストが上がってしまう等、なにかとネガティブに捉えられがちです。その一方で、「日本の魅力的な商品を海外にどんどん売って欲しい」「外国人向けの観光業には有利なので、うまく活用して外貨を稼いで欲しい」というように、輸出業や外国人向け観光業などは円安を好機と捉えて欲しいという意見もありました。
このように、円安は日本経済にとって悪い面もあれば良い面もあります。とはいえ、現在のレートは通常より10円以上円安なわけですから、円が適正なレートになるよう、政府や日銀の対策が待たれますね。

 

●円安になってから始めた人が多い資産運用TOP3 8/7
「ライフスタイルサポート事業」、「エンターテインメント事業」、「EC事業」の3つの軸で事業を展開する総合IT企業エイチームのグループ会社であるエイチームフィナジーは、2022年3月頃から続く円安と物価高騰に伴う人々の家計への影響や資産形成への意識の変化について、20歳〜69歳の男女553人を対象に調査。その結果を発表した。
6割以上がすでに「家計に影響があった」と実感していることがわかり、影響があった具体的な家計項目として、食費や燃料費、水道光熱費と回答した人が半数以上となった。日々の家計項目だけでなく、将来に向けた資産運用にかける金額についても4割以上が「変化があった」と回答。世界のさまざまな動きや円安に起因した食品の値上がりやガソリン価格の上昇が家計だけでなく、資産運用にも影響を与えているという。
[ 調査概要 調査方法:インターネットによる調査  調査対象:20歳〜69歳の男女  調査期間:2022年6月24日〜29日  調査エリア:全国 サンプル数:553名  調査機関/調査委託先:株式会社ジャストシステム ]
「物価の高騰を受けて家計に影響があった」と回答した人は6割以上
「2022年3月以降、円安による物価の高騰を受け、家計に何らかの影響がありましたか?」という質問には、「はい」と回答した人は65.3パーセントで6割以上だった。3月頃から続く物価高騰は、多くの家庭の家計を圧迫しているようだ。
食費、燃料費、水道光熱費への影響を実感している人がそれぞれ半数以上
具体的な費目では、食費、燃料費、水道光熱費の各項目において50パーセント以上の人が影響を受けていると感じている。世界情勢の急変に伴う小麦や油脂の値上がりが相次ぎ、続く円安の影響で輸入食品の価格が高騰。家計に追い打ちをかけているようだ。特に食費に関しては84.1パーセントで大多数が家計への影響を実感していると回答。食品会社の相次ぐ値上げにより、食卓にも少なからず影響が出ているといわれているが、今回の調査では「輸入品の買いだめをした」という人もおり、値上げの対応に追われている家庭も少なくないようだ。燃料費、水道光熱費への影響は、ガソリンの価格と電気代がそろって値上がりしていることなどが大きな原因と考えられそうだ。
お金の使い道の変化は、収入よりも支出を抑えることを重視する傾向に
お金の使い道の変化に関する質問では、「変化あり」と「変化なし」がほぼ拮抗する結果だった。変化のあった人は、「日々の出費を節約するようになった」と答える方が約7割を占め、収入を増やすことよりも支出を抑えることに注力している傾向が見える。一方で変化があった人の中には「新しく資産運用を始めた」という回答もあった。収入源を増やすことで家計に余裕を生みたいという人も少数ながらいるようだ。
新たに始めた資産運用は、1位「投資信託」、2位「預貯金」・「株式投資」、4位「外貨預金」
円安後に新しく資産運用を始めた人でもっとも多かった運用方法は、「投資信託(つみたてNISA等)」で52.4パーセントだった。2位は「預貯金」と「株式投資」の47.6パーセント、続いて「外貨預金」が42.9パーセントとなっており、それぞれ4割を超える結果だった。政府の後押しや新生活のスタートもあって、投資信託と回答した人が半数を超えているようだ。
4割以上の人が円安を契機に資産運用の金額を見直している!?
円安に伴う資産運用額の変動を調査すると、円安前から資産運用を行っていた人の43.4パーセントが円安後に資産運用にかける金額に「変化があった」と回答。4割以上が円安を契機に資産運用にかける金額を見直したと考えられる。回答には「円安になったので外貨預金はすべて解約した」や「円安の際に解約した」といった声も見られ、円安など揺れる情勢下で行う資産運用の難しさが浮き彫りとなった。
物価高騰にかかわらず月に10万円以上を資産運用に費やす人が10パーセント以上
円安で資産運用を取りやめたり金額を少なくしたりする人がいる一方で、月に10万円以上を資産運用に費やすという人も円安以前・以降で各10パーセント以上となった。今回の調査は、物価高騰に伴う家計の打撃や不安を如実に表す結果になった。テレビの向こう側の出来事にも思える国際的な経済的不安が日常生活に顕在化し、財布を脅かしているといえる。いつまで続くか分からない不安定な情勢で、今まで通りの資産運用も難しくなっているのかもしれない。将来への不安を少しでも軽減するために、情報収集し続けることが重要になってきそうだ。 

 

●外為 1ドル135円17銭前後と大幅なドル高・円安で推移 8/8
8日の外国為替市場のドル円相場は午前11時時点で1ドル=135円17銭前後と、前週末午後5時時点に比べ1円87銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=137円48銭前後と1円13銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●東京円、135円台前半 8/8
週明け8日午前の東京外国為替市場の円相場は、1ドル=135円台前半で取引された。
午前10時現在は前週末比2円03銭円安ドル高の1ドル=135円33〜34銭。ユーロは1円15銭円安ユーロ高の1ユーロ=137円56〜63銭。
前週末の米雇用統計の内容が市場予想を上回ったことから、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを加速するとの観測が強まり、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
市場では、米雇用統計の結果を受けて「米国が大幅利上げに踏み切る確率が跳ね上がった」(外為ブローカー)との声が出た。 
●円下落、一時135円57銭 7月28日以来の安値水準 8/8
週明け8日の東京外国為替市場の円相場は、ドルに対して下落し、一時1ドル=135円57銭と7月28日以来の円安ドル高水準を付けた。日米金利差が拡大するとの観測から、円売りドル買いが進んだ。
午後5時現在は前週末比1円68銭円安ドル高の1ドル=134円98銭〜135円00銭。ユーロは1円38銭円安ユーロ高の1ユーロ=137円79〜83銭。
米国の労働市場の逼迫を背景に、米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的に利上げするとの見方が広まり、円安ドル高が進んだ。市場では「10日に発表される米消費者物価指数の内容を見極めたいと考える投資家が多い」との声も聞かれた。
●外為 1ドル135円12銭前後とドル高・円安で推移 8/8
8日の外国為替市場のドル円相場は午後6時時点で1ドル=135円12銭前後と、午後5時時点に比べ15銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=137円71銭前後と7銭の小幅なユーロ安・円高で推移している。
●円、135円近辺 ロンドン外為 8/8
週明け8日朝のロンドン外国為替市場の円相場は、新規の手掛かり材料に乏しい中、1ドル=135円近辺でもみ合った。午前9時現在は134円95銭〜135円05銭と、前週末午後4時比30銭の円高・ドル安。
●NY外為 円、134円台後半 8/8
週明け8日午前のニューヨーク外国為替市場の円相場は、新規材料難の中、1ドル=134円台後半で小動きとなっている。午前8時55分現在は134円80〜90銭と、前週末午後5時(134円97銭〜135円07銭)比17銭の円高・ドル安。
前週末の堅調な米雇用統計を受けた円売り・ドル買いの流れが一服、円相場は135円付近で推移していた海外市場の値幅の狭い動きが継続している。米長期金利の低下を背景にややドル安・円高に傾く場面もあるものの、この日の朝方は米主要経済指標の発表もなく、相場の値動きは限定的となっている。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0190〜0200ドル(前週末午後5時は1.0190〜0200ドル)、対円では同137円50〜60銭(同137円40〜50銭)と10銭の円安・ユーロ高。
●東証、4カ月ぶり高値水準 円安ドル高を好感 8/8
週明け8日の東京株式市場の日経平均株価(225種)は、4営業日続伸した。終値は前週末比73円37銭高の2万8249円24銭で、3月29日以来約4カ月ぶりの高値水準。米景気後退に対する懸念から朝方は売りが先行したが、外国為替市場で円安ドル高が進んだことが好感され、買い優勢に転じた。
東証株価指数(TOPIX)は4・24ポイント高の1951・41。出来高は約11億2300万株。
米雇用統計の内容が市場予想を上回ったことから、FRBが利上げを加速するとの見方が広がり、円安ドル高が進行。鉄鋼や自動車株などが上昇したほか、好決算を発表した銘柄にも買い注文が入った。 

 

●円相場、134円88〜88銭 8/9
9日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=134円88〜88銭と、前日(134円99〜99銭)に比べ11銭の円高・ドル安となった。 
●ロンドン外為 円、134円台後半 8/9
9日午前のロンドン外国為替市場では、注目されている米消費者物価指数(CPI)の発表を10日に控えて様子見気分が広がり、円相場は1ドル=134円台後半で小動きとなった。正午現在は134円85〜95銭と、前日午後4時(134円70〜80銭)比15銭の円安・ドル高。
海外市場の流れを引き継ぎ、134円台後半で取引が始まった。今後の米利上げ動向を左右する米CPIの内容を見極めたいとの思惑から、積極的な取引は手控えられている。
対ユーロは1ユーロ=137円90銭〜138円00銭(前日午後4時は137円60〜70銭)と、30銭の円安・ユーロ高。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0220〜0230ドル(同1.0210〜0220ドル)。
ポンドは1ポンド=1.2100〜2110ドル(同1.2115〜2125ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9530〜9540フラン(同0.9530〜9540フラン)。
●NY円、135円台前半 8/9
9日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、7月の米消費者物価指数(CPI)の発表を翌日に控えて様子見ムードが広がり、おおむね1ドル=135円台前半で動意に乏しい展開となった。午後5時現在は135円09〜19銭と、前日同時刻比14銭の円安・ドル高。

 

●円相場、135円20〜20銭 8/10
10日の東京外国為替市場の円相場は、午前9時現在1ドル=135円20〜20銭と、前日(134円88〜88銭)に比べ32銭の円安・ドル高となった。
●外為 1ドル135円05銭前後とドル高・円安で推移 8/10
10日の外国為替市場のドル円相場は午前11時時点で1ドル=135円05銭前後と、前日午後5時時点に比べ15銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=137円89銭前後と14銭のユーロ高・円安で推移している。 
●円相場、135円00〜04銭 8/10
10日の東京外国為替市場の円相場は、正午現在1ドル=135円00〜04銭と、前日(134円88〜88銭)に比べ12銭の円安・ドル高となった。
●円相場、134円94〜95銭 8/10
10日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=134円94〜95銭と、前日(134円88〜88銭)に比べ06銭の円安・ドル高となった。 
●ロンドン外為 円、135円近辺 8/10
10日午前のロンドン外国為替市場では、注目されている米消費者物価指数(CPI)の発表を控えて様子見ムードが強まる中、円相場は1ドル=135円近辺で小動きとなった。正午現在は134円95銭〜135円05銭と、前日午後4時(134円90銭〜135円00銭)比05銭の円安・ドル高。
135円台前半で取引が始まった後、円はやや強含んだものの、総じて小幅な値動きにとどまった。この後発表される米CPIの内容を見極めたいとの思惑から、ポジション調整の取引が中心となっている。
対ユーロは1ユーロ=138円20〜30銭(前日午後4時は137円90銭〜138円00銭)と、30銭の円安・ユーロ高。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0235〜0245ドル(同1.0220〜0230ドル)。
ポンドは1ポンド=1.2090〜2100ドル(同1.2085〜2095ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9490〜9500フラン(同0.9520〜9530フラン)。
●NY円、一時132円03銭 1週間ぶり円高ドル安水準 8/10
10日のニューヨーク外国為替市場の円相場はドルに対して急上昇し、一時1ドル=132円03銭と、約1週間ぶりの円高ドル安水準を付けた。米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げペースを加速するとの観測が後退し、米長期金利が急低下。日米の金利差縮小を意識したドル売り円買いが進んだ。
午後5時現在は、前日比2円26銭円高ドル安の1ドル=132円83〜93銭だった。ユーロは1ユーロ=1・0294〜0304ドル、136円83〜93銭。 

 

●ロンドン外為11日 ユーロ、対ドルで下落 持ち高調整の売り 8/11
11日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=1.0340〜50ドルと、前日の同時点に比べ0.0010ドルのユーロ安・ドル高で推移している。利益確定や持ち高調整のユーロ売り・ドル買いが優勢となっている。前日発表の7月の米消費者物価指数(CPI)上昇率が市場予想を下回り、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めペースを減速するとの観測から、ユーロは対ドルで7月上旬以来の高値を付けていた。
円は対ユーロで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=137円10〜20銭と前日の同時点と比べ30銭の円安・ユーロ高で推移している。欧州の主要国債利回りが総じて上昇しており、日欧の金利差拡大を意識した円売り・ユーロ買いが優勢となっている。
英ポンドは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.2210〜20ドルと前日の同時点に比べ0.0050ドルのポンド安・ドル高で推移している。
●NY円、133円近辺 8/11
11日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比09銭円安ドル高の1ドル=132円92銭〜133円02銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0314〜24ドル、137円34〜44銭。
朝方発表された7月の米卸売物価指数が予想に反して前月比で低下したのを手掛かりに、円は対ドルで一時1ドル=131円74銭まで急伸。その後、米長期金利が上昇したのを受け、日米の金利差拡大を意識したドル買い円売りが優勢となった。

 

●外為 1ドル133円27銭前後と大幅なドル高・円安で推移 8/12
12日の外国為替市場のドル円相場は午前10時時点で1ドル=133円27銭前後と、前日午後5時時点に比べ77銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=137円41銭前後と62銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。 
●外為 1ドル133円43銭前後と大幅なドル高・円安で推移 8/12
12日の外国為替市場のドル円相場は午後0時時点で1ドル=133円43銭前後と、前日午後5時時点に比べ93銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=137円58銭前後と79銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●外為 1ドル133円47銭前後とドル高・円安で推移 8/12
12日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=133円47銭前後と、午後5時時点に比べ21銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=137円46銭前後と27銭のユーロ高・円安で推移している。
●円、133円台後半 ロンドン外為 8/12
週末12日午前のロンドン外国為替市場では、持ち高調整のドル買い・円売りが優勢となり、円相場は1ドル=133円台後半に下落した。
正午現在は133円55〜65銭と、前日午後4時比1円ちょうどの円安・ドル高。 
●NY外為 円、133円台後半 8/12
週末12日午前のニューヨーク外国為替市場では、海外市場での円安・ドル高の流れを引き継ぎ、1ドル=133円台後半に下落している。午前9時現在は133円60〜70銭と、前日午後5時(132円92銭〜133円02銭)比68銭の円安・ドル高。
海外市場では、週末を前にポジション調整目的の円売り・ドル買いが進んだ。インフレ懸念がひとまず後退したことで円高が進んできた反動から利益確定目的で円が売られた面もあった。ほぼ全面高の欧州株を背景に投資家のリスク回避姿勢が後退、安全資産として円が売られやすかった。朝方は主要経済指標の発表もなく、ニューヨーク市場に入ってからも円安・ドル買い地合いが継続している。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0270〜0280ドル(前日午後5時は1.0314〜0324ドル)、対円では同137円25〜35銭(同137円34〜44銭)と09銭の円高・ユーロ安。 

 

●為替相場 8/8-8/12 8/13
8日からの週は、ドルが売られた。前週末に発表された米雇用統計が予想以上の強い内容となったことでドル買いが広がって週明けを迎えた。注目は水曜日の米消費者物価指数(CPI)に集まった。週前半はドル高水準を維持しつつも、やや調整が入る展開だった。ただ、米CPI待ちのムードも強く、大きな値動きはみられず。米CPIは前年比+8.5%と前回の+9.1%から大幅に鈍化した。市場予想+8.7%を下回ったことで、市場では米債利回りが急落、ドル売りが殺到した。ドル円は135円付近から132円付近へと急落。戻りは133円付近までだった。木曜日の米生産者物価指数(PPI)も同様に伸びが鈍化した。ドル円は131円台後半までもう一段の下落。しかし、その後は下げ渋り133円台を回復する流れとなった。短期金融市場では次回9月FOMCでの利上げ幅観測が0.75%から0.50%へと傾いている。ただ、米金融当局者からは積極利上げ路線に変更を加えるような内容はみられず。0.75%利上げ観測も4割前後と根強い。米株式市場はインフレ緩和を好感して上昇。ドル円の下支えとなる面もあった。リスク動向に敏感な豪ドルの堅調さが目立っている。8月後半のジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長講演が次の注目イベントとなっている。
8日
東京市場は、ドル円が底堅く推移。先週末の米雇用統計の強さを受けて、ドル円は135円台半ば近くまで上値を伸ばした。その後135円割れまで調整が入って週の取引を終え、週明けは同水準でスタート。早朝の市場で134.86レベルまで一時反落。しかし、東京勢の本格参加とともに上値をトライする動きを見せ、135.58近辺まで上昇、先週末の高値をわずかに超える場面が見られた。その後は135円台前半での推移。すでに大きく上昇した後ということや、10日の米消費者物価指数を控えて、135円台半ばからを積極的に買い上げる流れにはならず。もっとも下値もしっかり。 ユーロドルは1.01台後半推移。こちらも比較的しっかりの展開。ユーロ円は一時137.80台まで上昇。ドル円同様に先週末の高値をわずかに超えた。もっとも値幅自体は限定的。
ロンドン市場は、ドルが軟調。週明けのロンドン市場では主要な経済指標発表や金融当局者らの講演予定などは見られず、材料難。水曜日の米消費者物価指数の発表待ちとなっている。新たな手掛かりに欠けるなかで、先週末の強い米雇用統計結果を受けたドル買いの動きに調整が入る格好となっている。また、8月第2週に入って、海外勢がサマーバケーションをとっていることも動意薄につながっているようだ。ドル円は米債利回りの低下とともに上値重く推移。135円台前半から134.60付近へと軟化、この日の安値を広げている。週明けの欧州株が堅調に推移しており序盤は買われたクロス円も、次第に上値が重くなっている。ユーロ円は137円台後半から前半へ、ポンド円は163円台後半から163円台割れ水準へと反落。ユーロドルやポンドドルは売買が交錯しているが、ややドル売りの動き。ユーロドルは1.02を挟んで、ポンドドルは1.21を挟んで振幅も底堅く推移している。
NY市場では、ドル相場が上下動。ドル円は売りが先行。序盤には134.30台まで下押しされた。その後は再び135円台を回復と振幅。先週末の強い米雇用統計結果を受けて市場には米金融当局の積極利上げへの期待が高まっている。その反面、景気後退への懸念も高まっており、ドル相場は不安定に推移している。短期金融市場では、FF金利は2023年初頭に3.25−3.50%でピークを迎え、その後すぐに利下げ開始のシナリオを織り込んでいる。ただ、先週末の米雇用統計を受けてピークアウト水準が高まるとの見方もでている。米株は伸びを欠いた。ユーロドルは1.02台に乗せたが、終盤には1.01台へと反落。欧州経済の不確実性を背景にユーロに弱気な見方は根強い。エネルギー供給、景気後退の可能性、イタリアの政治不安などが重石に。ポンドドルは1.21台まで上昇する場面があったが、その後は1.20台後半と上に往って来いだった。
9日
東京市場は、全般に小動き。ドル円は午前中には134.67近辺まで軟化。日経平均の下げが重石となった。その後昼にかけては135円台まで買い戻されて、午後には揉み合いとなった。ユーロ円はドル円の調整売りに合わせて朝方には137.27近辺まで軟化したが、その後は137.70台まで買い戻された。ユーロドルは1.02ちょうど付近での小動きに終始。あすの米消費者物価指数の発表を前に、上下いずれもに大きな動きには慎重姿勢だった。
ロンドン市場は、対欧州通貨でドル売りが優勢。ユーロドルは一時1.0247近辺まで買われた。前日高値を上回ったが、先週末高値には届かず。その後は1.02台前半で上昇一服。ポンドドルはロンドン朝方に1.2066近辺まで軟化したあとは、1.2130近辺まで反発。その後は1.21ちょうど近辺まで押し戻された。序盤にユーロ買い・ポンド売りが入った分、ポンドの上値は抑えらえた。ラムスデン英中銀副総裁は、「政策金利をさらに引き上げなければならない公算高い、ある時点からは政策金利をかなり早く引き下げ始める必要ある事否定せず、今後、利下げと資産売却を同時に行う状況となる可能性も」などと述べた。「先週のMPCではインフレの定着を阻止するために強硬策をとらざるを得なかった」とも述べていた。利下げに関する言及があったことがポンド売りを誘っていた。ドル円は東京午後に135.16近辺まで買われたあとは、上値を抑えられている。ロンドン序盤に134.70近辺まで軟化する場面があった。クロス円は振幅もやや円安方向への動き。ユーロ円は137円台半ばから138.30付近へ、ポンド円は162円台後半から163.67近辺まで一時上昇した。欧州株、米株先物・時間外取引はいずれも上値重く推移。NY原油先物は92ドル台へと上昇。ロシア南部経由の石油供給停止が報じられていた。
NY市場は、あすの米消費者物価指数の発表待ちのムード。ドル円は135円ちょうど付近での値動きに終始した。先週の強い米雇用統計からFRBの積極利上げへの期待は強く、9月のFOMCでの0.75%ポイントの利上げの確率は70%程度で推移している。一方、米国債の逆イールドが拡大するなど、リセッション(景気後退)への警戒感も高まっている状況。そのような中で明日は米消費者物価指数(CPI)の発表が予定されており、その結果待ちの雰囲気も強い。ユーロドルは1.02台での推移。21日線が1.0170付近となっているが、その上の水準をしっかりと堅持し、リバウンド相場の流れを維持している。ポンドドルは1.21台に上昇してNY時間が始まったが、戻り売りに押されて1.20台へと下落。「英政府が英企業・家庭への電力供給で1月に計画停電を検討」とブルームバーグが関係者の話として報じたことがポンド売りを誘った。
10日
東京市場は、落ち着いた値動き。日本時間午後9時30分の米消費者物価指数(CPI)待ちとなっている。ドル円は135.30近辺まで買われたあとは、売りに転じて135円台割れとなった。午後には134.89近辺まで一段安となった。その後は135円挟みでの揉み合いとなった。ユーロ円は朝方のドル円の上昇がドル高主導だったこともあり、上値が重く138.00台から137.70台まで下げた。午後には下げも一服した。ユーロドルは1.0203-1.0219と16ポイントレンジにとどまった。米CPIの結果次第では大きな値動きとなる可能性があり、事前にポジションを傾けにくい面が指摘された。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。米消費者物価指数の発表を控えて、前日海外市場でのドル買いの動きに調整が入っている。なかでもユーロドルの上昇が目立っており、1.02ちょうど手前でサポートされたあとは1.0240近辺へと上昇。ポンドドルは1.2060台から一時1.21台乗せ、豪ドル/ドルは0.6950割れ水準から0.6980付近へ、NZドル/ドルは0.6280付近から0.8320近辺まで買われた。そのなかで、ドル円は135円を挟んで売買が交錯するなかで、一時134.84近辺まで下押しされた。米10年債利回りは前日終値水準をはさんで2.76%台から2.80%付近で方向感に欠ける動き。足元ではユーロ買いの動きも入っている。ロシアが中欧への原油供給パイプラインの再開を準備しているとの報道が好感された。ユーロドルは1.0245近辺、ユーロ円は138.30近辺、ユーロポンドは0.8470近辺へと一段高となっている。
NY市場では、米消費者物価指数(CPI)の結果を受けてドル売りが強まった。ドル円は一時132円ちょうど付近まで急落。本日の高値135.30付近からは一時300ポイント超下落した。7月の米CPIは総合指数で前年比8.5%となった。食品・エネルギーを除いたコア指数も前年比5.9%と予想を下回っている。市場は、FRBが9月FOMCで0.75%の利上げを行うと見ているものの、その期待値は緩んでいるもよう。ただ、FRBがタカ派姿勢を変更するまではみていないようだ。米CPI発表後にエバンス・シカゴ連銀総裁やカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁の発言が伝わっていたが、いずれもこれまでのタカ派姿勢を堅持している。終盤にはドル円も133円付近まで買い戻された。ユーロドルは一時1.0370近辺まで上昇。21日線を上放れている。ただ、ユーロ自体を積極的に買い上げる説得力はないようだ。欧州は米国よりも地政学リスクにさらされている点が指摘された。ポンドドルは一時1.2275近辺まで上昇。ユーロドルと同様に21日線から上放れた。ただ、ポンドは8月に入り、G10通貨の中で2番目にパフォーマンスが悪い。
11日
東京市場は山の日の祝日のため休場。
ロンドン市場は、再びドル売りが優勢。ドル円はロンドン時間に入ると132.43近辺まで下押しされた。その後も上値重く揉み合っている。きょうはこのあとに米生産者物価指数が発表される。前日の消費者物価指数と同様に伸びの鈍化が予想されている。ユーロドルが堅調。前日の1.02台前半から1.03台後半まで急伸から1.0276近辺まで反落してロンドン時間に入ったが、再び買いが強まると1.0343近辺まで上昇している。足元でも高値付近から離れていない。一方、ポンドドルもロンドン序盤は買いが先行して1.21台後半から1.2246近辺まで上昇も、その後は1.22ちょうど付近へと押し戻されている。ユーロポンドに買いが入っており、ポンドの上値を抑えた格好。ユーロ円は136円台後半での揉み合いが続くなかで、一時137.14レベルまで買われる場面があった。ポンド円は162.50手前が重くなると161.72近辺まで下押しされている。ロンドン時間には目立った材料はでていないが、アジア朝方に発表された7月英RICS住宅価格が63%と予想を上回ったものの、3か月連続での低下となっていた。
NY市場で、ドル円は下に往って来いの展開。朝方発表になった米生産者物価指数(PPI)が、前日の米消費者物価指数(CPI)に引き続き、インフレの鈍化傾向を示したことで、序盤はドル売りが加速した。ドル円はストップを巻き込んで一時131円台後半まで下落したが、売りが一巡すると次第に買い戻しが膨らみ、下げを取り戻している。米国債利回りが上昇に転じたこともドル円をサポート、133円台に戻した。ユーロドルは米PPIを受けて1.0365近辺まで上昇したあと、1.03台前半へと値を落とした。1.03台は維持されており、このところの底堅い流れは維持されている。ポンドドルは米PPIを受けて1.2250付近まで買われたが、その後は1.21台へと反落。21日線を上放れる動きに変化はみられていない。米インフレ鈍化を示す新たな証拠により、市場はFRBの利上げ幅が縮小するとの期待を高めている。ただ、「高インフレは若干緩やかになったものの、問題はまだ消えていない」との慎重な声も聞かれる状況。この2日間のインフレ指標に過度に反応し過ぎで、下値ではドルの見直し買いが出たのかもしれない。
12日
東京市場は、ドル買いの動きが先行した。前日のNY市場後半のドル買いが再燃した格好。ドル円は午前に133.49近辺まで高値を伸ばした。その後は、米債利回りの低下をにらみながら上昇一服。133円台前半での揉み合いとなっている。ユーロドルは1.03台での取引が続いている。午前のドル買い局面で1.0305近辺まで下押しされたが、大台割れには至らず揉み合っている。ポンドドルは1.2180付近から1.22ちょうど付近で下に往って来い。いずれも前日からのドル高水準を維持しつつも、調整を交えた値動きだった。今週の米インフレ市場は伸び鈍化が示されたが、米金融当局者からは積極的な利上げ姿勢に目立った変化はみられていない。ドル相場をめぐる強弱感が対立している。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米消費者物価指数や生産者物価指数の伸び鈍化を受けたドル売りに、週末を控えて調整が入っている。東京時間にデイリー・サンフランシスコ連銀総裁が、9月会合で50bp利上げが妥当としながらも、75bp利上げの必要性についてオープンとの姿勢を示していた。市場は米金融当局者の積極利上げ姿勢に変化はないとの印象を受けていた。ただ、東京市場での値動きは限定的。ロンドン時間に入るとまずユーロドルやポンドドルに売りが入った。米債利回りが一時上昇したことに反応していた。この日発表された第2四半期の英GDP速報値は前期比マイナス0.1%とパンデミック時以来のマイナス成長となった。ポンドドルは1.22付近から1.21台前半へと下落している。ユーロドルも連れ安となり1.03台前半から1.02台後半へと軟化。ただ、ユーロ買い・ポンド売りが強まったことでユーロの下げ幅は限定的。ポンド円が162円台後半から161円台割れまで下落する一方で、ユーロ円は137円台半ばから前半で下に往って来いとなっている。その他通貨にも次第にドル買いの動きが波及。ドル円は133円台前半での揉み合いを上放れて133.70台に上昇。東京市場では堅調だった豪ドル/ドルは0.7120付近から0.7080台へと反落している。
NY市場はドル買いが強まり、ドル円も買いが優勢となった。一時133.90円付近まで上昇する場面が見られている。ただ、100日線と21日線の間での上下動に終始しており、次第に三角保ち合いに入りつつある雰囲気も出ている。 

 

●テクニカル分析で考える「ドル高・円安トレンド」の持続性 8/14
ドル円は半年ほどで約26円、ドル高・円安が進行、このトレンドの持続性を一目均衡表で考える
2022年のドル円相場は、1月24日に年初来のドル安値となる1ドル=113円47銭水準をつけた後、日米の金利差拡大などを背景にドル買い・円売りが優勢となり、7月14日には139円39銭水準に達しました。つまり、この半年ほどで約26円、ドル高・円安が進んだことになります。7月14日以降、ドル高・円安の動きは、やや一服したように見受けられますが、今後の展開について、テクニカル分析で考えてみます。
一般に、テクニカル分析で使用されるチャートは、「トレンド系」と「オシレーター系」に分類されます。トレンド系チャートは相場のトレンド判断に適し、オシレーター系チャートは相場の過熱感の判断に適しているとされます。今回は、年初からのドル高・円安のトレンドについて、その持続性を確認するため、トレンド系チャートの代表格である「一目均衡表」に注目します。
足元ドル円は雲という領域の下抜けに近づいており、下抜けなら強力なドル売りシグナルの点灯に
一目均衡表は、「転換線」、「基準線」、「先行スパン1」、「先行スパン2」、「遅行線」という5つの線で構成されます。これら5つの線と日足の位置関係が重要で、例えば、(1)転換線が基準線を上抜けている、(2)遅行線が日足を上抜けている、(3)日足が雲(先行スパン1と先行スパン2に挟まれた領域)を上抜けている、という3つの条件がそろうと、「三役好転」という、非常に強い買いシグナルと解釈されます。
反対に、3つともすべて下抜けとなってしまうと、「三役逆転」という、非常に強い売りシグナルと判断されます。そこで、実際にドル円の一目均衡表をみてみると、直近では、転換線が基準線を下抜け、遅行線が日足を下抜けており、三役逆転のうち、2つの条件がそろっています【図表】。日足はまだ、雲の中に位置していますが、雲を下抜けると、3つの条件がそろって三役逆転となり、非常に強いドル売りシグナルとなります。
雲下限は、今月末にかけて131円台後半から132円台後半へ、ここを下抜けるか否かに要注目
したがって、当面は、ドル円が雲の下限である先行スパン2を下抜けるか否かが焦点となります。先行スパン2の具体的な水準は、8月12日が131円68銭、15日と16日が132円05銭、17日が132円11銭で、18日から9月7日まで132円88銭です。各日において、ドル円のニューヨーク市場終値が、先行スパン2を大きく下回ると、年初からのドル高・円安トレンドは、いったん終了となる可能性が高まります。
もちろん、ここからドル円が大きくドル高・円安方向に切り返せば、再び三役好転となり、ドル高・円安トレンドが継続することも考えられます。なお、テクニカル分析は、あくまで相場をみる上での1つの手法ですが、とりわけ一目均衡表は、市場参加者の間で広く認識されており、ドル円相場の方向性について、この先、どのようなシグナルが示唆されるのか、しばらく注視するのもよいと思います。
●ドル円 概況 8/14
ドル円はドル全面高の流れで7月14日に139.39円をつけて2021年1月6日底102.57円以降の最高値をつけたが、米長期債利回りが大幅低下したことやユーロドルが1ユーロ1ドルのパリティを割り込んだところから反騰入りしたことでドル全面安の様相となり、8月2日安値130.39円まで9.00円の下落となった。下落規模は2021年1月以降では5月9日から5月24日までの4.99円を大きく超えてこの間の最大となった。
米FOMCの大幅利上げが7月14日にかけてドル円が大上昇した背景だったが、利上げペースが鈍化するとの見方が浮上したことで8月2日までいったん下げ、8月2日夜からは大幅利上げはさらに続くとの見方が再浮上したことで8月8日高値135.57円まで切り返した。
しかし8月10日の米7月CPIが予想を下回り、11日の米PPIも予想を下回る水準となったことで利上げペースの鈍化予想が再び強まったことで10日夜には132.01円へ急落、11日夜には131.72円まで安値を切り下げた。重要インフレ指標発表を通過したことでひとまず買い戻し優勢となり12日夜には133.89円まで切り返したが134円には届かずに先週を終えている。

 

●外為12時 円、横ばい圏 133円台前半、米物価指標の下振れは支え 8/15
15日午前の東京外国為替市場で円相場は横ばい圏だった。12時時点は1ドル=133円29〜30銭と前週末12日の17時時点と比べて4銭の円安・ドル高だった。前週に米国で発表された物価指標が市場予想を下回る結果となり、米利上げ鈍化を意識した円買い・ドル売りが入った。だが、国内実需筋の円売り・ドル買い観測が相場の上値を抑えた。
円は10時前には132円92銭近辺まで上昇する場面があった。国内で事業会社がお盆休暇を取得するなど市場参加者が少なくなるなか、インフレのピークアウトで米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを鈍らせるとの見方から円買い・ドル売りが入った。日本時間15日午前の取引で、米長期金利がやや低下していることも相場の支えとなった。
円の上値も限られた。10時前の中値決済に向けては「ややドル不足」(国内銀行)との声が聞かれた。輸入企業など国内実需筋による円売り・ドル買いが多かったとの観測が相場を下押しした。
内閣府が15日発表した4〜6月期の実質国内総生産(GDP)速報値は年率換算で2.2%増だった。市場予想(2.5%増)を下回ったものの、3四半期連続のプラス成長で円相場を方向付ける材料とはならなかった。
9〜12時の円の安値は133円39銭近辺で、値幅は47銭程度だった。
円は対ユーロで上昇している。12時時点は1ユーロ=136円55〜58銭と、同65銭の円高・ユーロ安だった。ユーロは対ドルで下落し、12時時点は1ユーロ=1.0245ドル近辺と、同0.0051ドルのユーロ安・ドル高だった。 
●東京円、26銭安の1ドル=133円51〜53銭 8/15
15日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前週末(午後5時)比26銭円安・ドル高の1ドル=133円51〜53銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは、58銭円高・ユーロ安の1ユーロ=136円62〜66銭で大方の取引を終えた。
●円、133円台前半 ロンドン外為 8/15
週明け15日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、手掛かり材料難の中で積極的な商いが手控えられ、1ドル=133円台前半での小動きとなった。正午現在は133円35〜45銭と、前週末午後4時比30銭の円高・ドル安。 
●NY外為 円、133円台前半 8/15
週明け15日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、午前8時現在1ドル=133円12〜22銭と、前週末午後5時(133円56〜66銭)比44銭の円高・ドル安で推移している。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0190〜0200ドル(前週末午後5時は1.0251〜0261ドル)、対円では同135円68〜78銭(同136円88〜98銭)。 

 

●外為 1ドル133円93銭前後とドル高・円安で推移 8/16
16日の外国為替市場のドル円相場は午後6時時点で1ドル=133円93銭前後と、午後5時時点に比べ28銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=135円73銭前後と1銭のユーロ安・円高と横ばい圏で推移している。
●外為 1ドル134円15銭前後と大幅なドル高・円安で推移 8/16
16日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=134円15銭前後と、午後5時時点に比べ50銭の大幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=135円92銭前後と18銭のユーロ高・円安で推移している。
●円、133円台後半 ロンドン外為 8/16
16日朝のロンドン外国為替市場の円相場は、ドルが買い戻された海外市場の流れを引き継ぎ、1ドル=133円台後半に下落した。午前9時現在は133円60〜70銭と、前日午後4時比65銭の円安・ドル高。 
●NY円、134円前半 8/16
16日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午前8時半現在、前日比1円01銭円安ドル高の1ドル=134円28〜38銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0133〜43ドル、136円14〜24銭。米長期金利の上昇を手掛かりに、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが先行した。
●ドル円は134円台 ドル高はしばらく続くとの声は多い=NY為替 8/16
きょうの為替市場はNY時間に入ってドルは戻り売りが優勢となっているものの、ドル円は円安の動きもあり、134円台を維持している。米国債利回りの上昇や、リバウンド相場が続いている米株式市場がドル円の下値をサポートしているようだ。
ドル円はここ数日133円台での膠着した展開が見られていたが、きょうは134円台に上昇しており、再度上値を試に行くか注目される。しかし、以前ほどの円安への情熱は無くなっているようで、140円を目指そうという雰囲気までは感じられない。
ただ、ドル自体は上昇を見込む声は多い。エネルギーショック、中国人民銀行の人民元切り下げ観測、そして、米経済指標の改善などに支えられ、ドルは短期的にさらに上昇する可能性があるという。米国はエネルギー面で自立しており、エネルギー価格の上昇に対してドルは比較的影響を受けにくい。以前もそうであったように、人民元の切り下げがあるとドルは上昇する傾向があるという。
FRBが利下げに軸足を移すのはもうしばらくかかりそうだが、最終的に利下げに転換した場合でも、それにECBや英中銀など他の中央銀行も追随する可能性がある。単独で行われることはないという。そのためドルは底堅さを保つことができるとしている。

 

●円相場、134円14〜15銭 8/17
17日の東京外国為替市場の円相場は、正午現在1ドル=134円14〜15銭と、前日(133円66〜66銭)に比べ48銭の円安・ドル高となった。 
●外為 1ドル134円13銭前後とドル高・円安で推移 8/17
17日の外国為替市場のドル円相場は午後1時時点で1ドル=134円13銭前後と、前日午後5時時点に比べ48銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円44銭前後と70銭の大幅なユーロ高・円安で推移している。
●東京円、1円14銭安の1ドル=134円79〜81銭 8/17
17日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比1円14銭円安・ドル高の1ドル=134円79〜81銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは、同1円25銭円安・ユーロ高の1ユーロ=137円03〜07銭で大方の取引を終えた。
●ロンドン外為 円、135円近辺 8/17
17日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、手掛かり材料に欠ける中、円売り・ドル買いが優勢となり、1ドル=135円近辺に下落した。正午現在は134円90銭〜135円00銭と、前日午後4時(134円35〜45銭)比55銭の円安・ドル高。
海外市場の流れを引き継ぎ134円台後半で始まった後は、様子見ムードが強く、積極的な取引は手控えられた。市場では、この日発表される7月の米小売売上高や7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を見極めようとの雰囲気が強い。
対ユーロは1ユーロ=137円30〜40銭(前日午後4時は136円75〜85銭)と、55銭の円安・ユーロ高。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0170〜0180ドル(1.0175〜0185ドル)。
ポンドは1ポンド=1.2095〜2105ドル(1.2090〜2100ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9515〜9525フラン(0.9500〜9510フラン)。
●NY円、続落 1ドル=135円05〜15銭 日米金利差の拡大で 8/17
17日のニューヨーク外国為替市場で円相場は続落し、前日比85銭円安・ドル高の1ドル=135円05〜15銭で取引を終えた。米長期金利が上昇し、日米金利差が拡大するとの観測から円売りが出た。
17日発表の7月の英消費者物価指数(CPI)の上昇率が前年同月比10.1%と市場予想以上に伸びた。世界的なインフレ圧力の強さが意識され、米長期金利が2.9%台に上昇。ドル買い・円売りを誘った。
円は売り一巡後は下げ渋った。午後に公表された7月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、参加者が利上げの効果を検証しながら「どこかの時点で利上げペースを緩めることが適切になる」とみていたことがわかった。市場では、想定されていたほどタカ派ではないとの見方が広がり、円に買いが入った。
円の安値は135円50銭、高値は134円79銭だった。
円は対ユーロで続落し、前日比95銭円安・ユーロ高の1ユーロ=137円40〜50銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで続伸し、前日比0.0005ドルユーロ高・ドル安の1ユーロ=1.0170〜80ドルで取引を終えた。FOMC議事要旨を受けてユーロ買いが優勢となった。ただ、高インフレで欧州景気が悪化するとの見方は根強く、ユーロには売りも出た。
ユーロの高値は1.0201ドル、安値は1.0146ドルだった。 

 

●外為 1ドル134円86銭前後と小幅なドル高・円安で推移 8/18
18日の外国為替市場のドル円相場は午後0時時点で1ドル=134円86銭前後と、前日午後5時時点に比べ9銭の小幅なドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=137円27銭前後と29銭のユーロ高・円安で推移している。
●円相場、135円29〜30銭 8/18
18日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=135円29〜30銭と、前日(134円80〜80銭)に比べ49銭の円安・ドル高となった。 
●ロンドン外為 円、135円台前半 8/18
18日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、手掛かり材料難の中、1ドル=135円台前半でもみ合いとなった。正午現在は135円20〜30銭と、前日午後4時(135円40〜50銭)比20銭の円高・ドル安。
様子見ムードが強く、積極的な取引は手控えられた。市場では、米国の利上げ姿勢を見極めようと、米経済指標に注目が集まっている。この日は、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数や中古住宅販売、週間新規失業保険申請件数などが発表される。
対ユーロは1ユーロ=137円50〜60銭(前日午後4時は137円60〜70銭)と、10銭の円高・ユーロ安。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0170〜0180ドル(1.0155〜0165ドル)。
ポンドは1ポンド=1.2050〜2060ドル(1.2040〜2050ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9525〜9535フラン(0.9525〜9535フラン)。
●NY円、135円後半 8/18
18日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比79銭円安ドル高の1ドル=135円84〜94銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0082〜92ドル、137円07〜17銭。
米連邦準備制度理事会(FRB)の高官から高インフレを警戒する発言が相次いだのを手掛かりに、日米の金利差拡大を意識したドル買い円売りが優勢となった。 

 

●円相場、136円65〜66銭 8/19
19日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=136円65〜66銭と、前日(135円29〜30銭)に比べ1円36銭の円安・ドル高となった。 
●円、一時137円台に下落 3週間ぶり円安水準 8/19
19日の外国為替市場で対ドルの円相場が下落し、一時1ドル=137円台を付けた。137円台は7月27日以来およそ3週間ぶりの円安・ドル高水準となった。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締め観測を背景に米金利の上昇圧力が強まり、日米の金利差拡大を受けた円安・ドル高が進んだ。
米セントルイス連銀のブラード総裁が18日に「(市場が織り込む利下げ観測は)間違いなく時期尚早」と発言し、早期利下げ観測が後退した。米長期金利が上昇したことを手がかりにした円売り・ドル買いが膨らんだ。
●ロンドン外為 円、136円台後半 8/19
週末19日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、米長期金利の上昇を受けて円売り・ドル買いが進み、1ドル=136円台後半に下落した。正午現在は136円80〜90銭と、前日午後4時(135円15〜25銭)比1円65銭の円安・ドル高。
136円台前半で始まった後、じりじりと値下がりした。セントルイス連銀のブラード総裁の発言などをきっかけに、米国が9月に0.75%の大幅利上げに踏み切るとの観測が再び強まったこともドル買いを促した。
対ユーロは1ユーロ=137円60〜70銭(前日午後4時は136円90銭〜137円00銭)と、70銭の円安・ユーロ高。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0055〜0065ドル(1.0125〜0135ドル)。
ポンドは1ポンド=1.1835〜1845ドル(1.2000〜2010ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9560〜9570フラン(0.9540〜9550フラン)。(2022/08/19-20:10)
●NY円、一時137円22銭
19日のニューヨーク外国為替市場の円相場は円がドルに対して大幅下落し、一時1ドル=137円22銭と7月下旬以来、約3週間ぶりの円安ドル高水準を付けた。米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが進んだ。
午後5時現在は、前日比1円12銭円安ドル高の1ドル=136円96銭〜137円06銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0035〜45ドル、137円39〜49銭。
FRBの高官からインフレ抑制に向けて利上げ継続の必要性を強調する発言が前日から相次いだ。
●NY外国為替市場 円安進み約3週間ぶり1ドル137円台前半に  8/19
19日のニューヨーク外国為替市場では、大幅な利上げが続くとの見方から円安ドル高が進み、円相場は一時およそ3週間ぶりに1ドル=137円台前半まで値下がりしました。
19日のニューヨーク外国為替市場はセントルイス連邦準備銀行の総裁がインフレの長期化を示唆する内容の発言をしたことを受けて、FRB=連邦準備制度理事会の大幅な利上げが続くとの見方が広がりました。
このためアメリカの長期金利が上昇し、日米の金利差の拡大が意識されて円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は一時およそ3週間ぶりに1ドル=137円台前半まで値下がりしました。
円相場は先月、およそ24年ぶりに1ドル=139円台まで下落したあと、アメリカの景気減速への懸念から今月2日には130円台まで円が買い戻されましたが、再び円安ドル高が進んでいます。
市場関係者は「カナダやイギリスでも物価が上昇し、世界的なインフレが長期化することに懸念が広がっていることが、円を売る動きにつながっている」と話しています。 

 

●為替相場 8/15-8/19 8/20 
15日からの週は、ドル高が進行した。週央の米FOMC議事録をにらんで神経質な展開がみられたが、議事録公表後にはドル高の動きが鮮明となった。議事録では、多くが必要以上に引き締めるリスクを認識していることが示されたほか、利上げペースが遅くなる可能性を見ていることも明らかとなった。市場は当初、ドル売りに反応したが、一連の米金融当局者の講演などでは積極的な利上げ姿勢には変化は見られなかった。米債利回りの上昇とともに、ドル円は137円付近に上昇。ユーロドルは1.00台、ポンドドルは1.18台へと軟化。豪ドル/ドルは中国経済指標の弱含みもあって一時0.69台割れ水準に下落。米経済指標はセンチメント系に回復の動きがみられる一方、住宅関連指標は引き続く弱含んだ。短期金融市場では次回9月FOMCでの利上げ幅について、50bpが6割、75bpが4割程度を織り込んでいる。前週に発表されたインフレ指標の伸び鈍化の後にしては75bp利上げ観測は根強い状況となっている。来週後半のジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長講演が次の焦点となっている。
15日
東京市場は、静かな週明け相場。ドル円は午前に132.92付近まで軟化したが、午後には133円台前半に下げ渋っている。米10年債利回りが小幅に低下したことがドル売りに、日経平均が300円超と大きく上昇したことがリスク選好の円売りに。ユーロドルは1.0230台から1.0270付近での揉み合いに終始。オセアニア通貨が軟調。午前に発表された中国の小売売上高、鉱工業生産、不動産投資などがいずれも予想を下回ったことが中国景気への警戒感につながった。豪ドル/ドルは0.71台前半での揉み合いを下放れて0.70台後半へと軟化、豪ドル円は95円付近から94円台半ばへと下落した。
ロンドン市場は、リスク警戒のドル買い・円買いの動き。ドル円が133円台前半から半ばで揉み合う一方で、その他主要通貨に対してはドルが買われ、クロス円が下押しされている。この日発表された一連の中国経済指標が冴えない結果だったことが背景。また、中国が1年物MLFを予想外に引き下げたことで、人民元安・ドル高が進行しドル買い圧力となった面も。序盤は先週の米株高を受けて買い先行となった欧州株だが、米株先物の反落とともに上値重く推移。NY原油先物は92ドル付近から88ドル台割れへと大幅下落。リスク動向に敏感な豪ドルは、対ドルでは0.70台前半、対円では93円台後半へと大きく値を下げた。ドルカナダは一時1.29台乗せ、カナダ円は103円台前半まで下落。ユーロドルは1.02台半ばから1.01台後半まで、ポンドドルは1.21台割れから1.20台半ばまで下落。ユーロ円は136円台半ばから136円台割れ、ポンド円は161円台半ばから160円台後半へと下落する場面があった。欧州・ロンドン時間には目立った新規材料は出ていない。
NY市場では、ドル円が下に往って来いの展開だった。序盤に132円台半ばまで下落したが、その後は133円台へと戻した。中国経済指標の弱い内容でリスク警戒の円買い圧力がみられたが、安全資産としてのドル需要がドル円の下値をサポートした格好。ユーロドルは1.02台前半から1.01台に下落。21日線を下回る動き。ポンドドルは1.21台割れから1.20台半ばへと下落。21日線を下回った。この日は米欧で特段の新規材料はでていない。先週の消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)の発表で、米インフレのピーク接近への期待が高まっている。一方、それでもなおFRBはタカ派姿勢を堅持している状況だが、市場は想定よりは早期に利上げサイクルが終了するとの見方も出ている。先週末のミシガン大消費者信頼感指数の改善を受けて米景気後退への懸念が一服する中、今週は米鉱工業生産と小売売上高の発表が予定され、インフレの落ち着きと底堅い個人消費が示されると期待されている。一方、中国や英欧を始め、海外経済は厳しい状況が続いていることから、ドル高がピークに達したかを疑問視する声も。
16日
東京市場で、ドル円は底堅く推移。朝方に再び133円台割れも、下げは一時的にとどまった。その後は133.49近辺まで上昇し、午後は高止まりとなった。ドル円に連動し、ユーロ円は135.65付近、ポンド円は160.88付近、豪ドル円は93.86付近まで強含み。ただ、前日の下げに対して、クロス円の戻りは限定的だった。今週は中国経済指標のさらなる悪化を受けて世界的な景気懸念が強まっており、東京午前はリスク回避の円買いが一時優勢となる場面はあったが、次第に円安に傾いた。インフレ懸念が若干後退しているなかで、主要な米株価指数が戻り歩調を維持しており、悲観的な雰囲気は広がっていない。経済が深く傷つくまで中国政府がゼロコロナ政策を続けないとの楽観的な見方もでていた。
ロンドン市場は、円売りとドル買いが優勢。前日のNY市場からのドル反発の流れが続いた。ドル円はロンドン序盤に134円台乗せから134.40付近に高値を伸ばしている。クロス円も上昇し、円売りのフローが持ち込まれている。米債利回りの上昇も支援材料。短期金融市場での米9月FOMC利上げ観測では75bpの織り込み度がやや上昇している。また、話題となったのが日銀が7月の都市銀行のマイナス金利適用残高は9030億円、みずほ銀が大半を預け入れとの報道。市場に日銀のマイナス金利の超緩和策を再び印象付けていた。ユーロドルもドル買いが再燃。1.01台後半から1.0125近辺へと安値を広げている。8月独ZEW景況感指数はマイナス55.3と前回から一段と低下した。発表を受けて対ポンドなどでユーロ売りの反応がみられた。ただ、ユーロ円では円売り圧力が優勢で135円台半ばから136円台乗せへと上昇。ポンドドルは1.20台半ばから1.2008近辺まで下押しされたあとは売買が交錯も、上値は重く1.20台前半の安値圏にとどまっている。ポンド円は円売りの動きとともに160円台後半から161.50台まで上昇している。
NY市場では、ドル売りと円売りが交錯。ドルに戻り売りが広がる中で、ドル円は円安がサポートし、134円台を維持した。米債利回りが上昇、米株式市場でリバウンド相場が続いたことなどがドル円の下支えとなった。ユーロドルは1.01台後半まで一時反発。21日線が1.0210付近にきており、回復できるかが注目される。ただ、ユーロドルへの弱気な見方は多く、再度パリティ(1.00ドル)を試すとの見方は根強い。欧州のエネルギー危機とドル高が重しとなり、ユーロは今後さらに下落する可能性も。ポンドドルは1.21台まで一時上昇。1.2105レベルの21日線の水準を回復している。きょう発表された英雇用統計では平均賃金の伸びが拡大していた。次回9月の英金融政策委員会で0.50%利上げ観測が台頭している。ユーロポンドは0.84台前半でじり安の動きが続いた。
17日
東京市場で、ドル円は上下動。133.43近辺まで買われたあとは、133.91近辺まで弱含んだ。全般的な方向性は希薄だった。積極的な米利上げ観測が根強い反面、米経済の縮小継続や、インフレ率のピークアウトも想定されているため、今月のドル円は調整安が一巡した後のもみ合いを続けている。ユーロ円は136.71近辺まで強含んだ後、136.27近辺まで水準を切り下げた。ただ、下げた後には切り返しており、東京時間帯はほぼ横ばい。豪ドル円は93.79付近まで軟化。4−6月期の豪賃金の伸びが市場予想に届かなかったことが嫌気された。ただ、午後に入って94円台前半へ下げ幅を縮小している。NZ中銀は市場予想通りに0.50%の利上げを決定し、政策金利を3.00%とした。金融政策報告(MPS)で政策金利見通しを引き上げたことが買い手掛かりとなった。ただ、MPSで利上げ打ち止め水準がしめされるなかで、上値追いは限定的だった。
ロンドン市場は、ドル買い・円売りの動き。ロンドン時間に入ると主要国の債券利回りが上昇。序盤は米債利回り上昇とともにドル買いの動きが広がった。ドル円は134円台前半から後半へと上昇。ユーロドルは1.01台後半から半ばへと軟化。英独債利回りの上昇も大きく、ユーロドルは買い戻されて下に往って来いとなっている。第2四半期のユーロ圏GDP改定値は前期比、前年比とも予想外に0.1%ポイントずつの下方改定となったが、ユーロ相場は反応薄。ポンドドルは朝方に発表された7月英消費者物価指数が前年比+10.1%と二桁台の伸びとなった。40年来の記録的な高水準だった。ポンドドルは1.2143近辺まで高値を伸ばしたものの、ドル買い圧力とともにすぐに売り戻された。生産者物価指数などにインフレ鈍化の兆候が見られたことが影響した面も。市場では高インフレが景気鈍化につながる面が警戒されたとの声もあった。クロス円はドル円とともに堅調な足取り。ドル円がロンドン昼過ぎに135円台を付けており、ユーロ円は137円台前半、ポンド円は163円台前半へと水準を上げている。ユーロドルやポンドドルが売買交錯となる一方で、豪ドルやNZドル、カナダドルでは引き続きドル買いの動きが強まっている。米FOMC議事録を控えて、米金融当局の積極利上げ姿勢が再確認されることが見込まれているもよう。
NY市場では、FOMC議事録後にドル売りの反応が広がった。議事録では、多くが必要以上に引き締めるリスクを認識していることが示されたほか、利上げペースが遅くなる可能性を見ていることも明らかとなった。7月FOMC以降のFOMC委員の発言は、従来通りにタカ派姿勢を堅持していたが、その割に今回の議事録に慎重な表現が含まれていたことは若干の驚きとなっているようだ。ただ、9月FOMCに対する市場の見方に変化はなく、0.50%ポイント利上げの確率が60%、0.75%ポイントは40%となっている。ドル円はFOMC議事録前に135.50付近まで上昇。米債利回り上昇に反応していた。議事録後は134円台後半に反落したが、東京市場よりは高い水準を維持した。ユーロドルは、議事録を受けて一時1.02台に上昇したが、上値は重く1.01台後半に伸び悩んだ。ポンドドルは議事録後の上昇は1.21台に届かず、1.2040付近へと押し戻された。再び21日線を下放れする弱い地合いとなっている。きょうの英消費者物価指数が一段上昇で英中銀の0.50%利上げへの期待が高まっているが、将来の成長を犠牲にするものとの悲観的な見方が優勢だったもよう。
18日
東京市場は、ドル円が上下動。前日の米FOMC議事録を受けて市場では米利上げペースをめぐる思惑が交錯した。議事録では予想ほどタカ派度が強まらなかった、インフレ率のピークアウト期待や景気悪化を背景に、米利上げペースの減速を巡る思惑が高まりつつある。ただ、積極的な米利上げ観測も根強く残っている。ドル円は朝方に134.74近辺まで軟化したあとは、135.15近辺まで切り返した。前日NY市場でのレンジ内での振幅にとどまった。ユーロ円も137.23近辺まで軟化したが、前日からの高値圏は維持しており、下押しの動きは限定的。 豪ドル円は一時93.40付近まで下落。7月の豪雇用統計では市場予想に反して就業者数が減少した。ただ、豪ドル売りの反応は一時的で、東京午後に入ると下げ幅をほぼ消している。
ロンドン市場は、ドル買いが一服。ロンドン序盤にはドル買いの動きが入ったが、次第にドルが売り戻されての揉み合いに落ち着いた。ドル円はロンドン朝方に135.43レベルまで上昇。米FOMC議事録後の下落をほぼ埋め戻している。その後は再び135円付近へと軟化。米10年債利回りは2.86%付近から2.91%付近まで上昇したあとは、2.86%付近と上下動。ユーロドルは序盤に1.0146レベルまで下落したあとは1.0180付近まで反発。ポンドドルは序盤に1.1995近辺まで一時下落。しかし、その後は買いが優勢となり1.2080近辺に高値を伸ばした。対ユーロでのポンド買いが入っており、ポンドは底堅く推移。対円では162.25近辺の安値から一時163円台乗せと堅調。一方、ユーロ円は137.16近辺まで下落した後の戻りは137.70近辺までにとどまった。7月ユーロ圏消費者物価指数・確報値は前年比+8.9%、前月比+0.1%と速報値から変わらず。6月ユーロ圏建設業生産高は前月比−1.3%と落ち込み、4か月連続のマイナスに。シュナーベルECB理事は、短期的にインフレがさらに加速する可能性排除せず、と警戒感を示した。トルコ中銀は予想外の利下げを発表。リラが急落している。利下げは昨年12月以来。
NY市場では、ドル買いが優勢。序盤はドル売りが先行したが、フィラデルフィア連銀指数が予想外に強い内容となったことをきっかけにドル買いが強まった。前日のFOMC議事録は慎重な雰囲気も垣間見せていたが、基本的にFRBのタカ派姿勢に変化はない。FOMC委員は米経済が急降下していないことから、FRBはしばらく利上げを続けると見られている。それに伴ってドル高への期待も依然として高い状況。この日も複数のFOMC委員の発言が伝わっていたが、タカ派姿勢に変化はないようだ。タカ派の急先鋒として知られるブラード・セントルイス連銀総裁は9月の0.75%ポイントの利上げを支持する意向を固めていると伝わっていた。ドル円は134.60台まで売りが先行したが、その後は135円台を回復、135.80付近まで上昇した。ユーロドルは売りが加速。ロンドン市場で1.0190付近まで買われたあとは、NY勢の参加とともに売りに転換。1.01台へと急反落したあと、さらに1.0080付近まで下押しされた。ポンドドルは節目の1.20ドルを割り込んだ。その後はストップを巻き込んで1.1920台まで下落した。
19日
東京市場では、ドル円が一段高となった。日本時間午前8時半に発表された本邦の全国消費者部下指数は生鮮除く前年比が+2.4%に上昇。4か月連続で日銀物価目標2%を上回った。しかし、ドル円の下げは135.72近辺までにとどまった。午前9時前後から騰勢を強めると136円台乗せから136.37近辺まで上昇。約3週間ぶりの円安・ドル高水準となった。米経済は悪化しつつも底堅さが見られるため、来月の米連邦公開市場委員会(FOMC)以降も積極的な金融引き締めが続くと想定されている。先週発表された7月の米消費者物価指数(CPI)は伸びが鈍化したものの、その後に発言する米金融当局は積極的な利上げを支持している。ただ、東京序盤以降のドル円の動意は限定的に。ドル円に連動し、ユーロ円は137.44付近、ポンド円は162.46付近、豪ドル円は94.29付近まで水準を切り上げた。ただ、対欧州通貨ではドル高圧力が強く、ユーロ円やポンド円の上値は重かった。
ロンドン市場は、ドルが再び買われている。米金融当局による積極的な利上げ姿勢への思惑が根強いことが背景。今週の米FOMC議事録では、必要以上の金融引き締めとなるリスクが認識されていることが示され、一時ドル売りの反応が広がったが、それと前後する一連の米金融当局者発言では積極的な利上げ姿勢を緩める内容は見られず。市場は米債利回りの上昇とともに、再びドル買いに傾斜している。ドル円は136円台半ばを上抜けると騰勢を強めており、137円目前の水準へと買われている。ユーロドルは1.01台後半での揉み合いがしばらく続いたが、足元では下値を模索、1.0050台へと下落。パリティ水準が意識される動きに。ポンドドルはロンドン序盤から軟調な流れ。1.19台割れから1.1830付近へと下押しされている。米10年債利回りは2.90%付近から2.94%台まで上昇。米積極利上げへの思惑に、週末調整圧力も加わり、欧州株、米株先物は下落している。ドル相場主導の展開のなかで、クロス円は売買が交錯している。ドル円の上昇スピードがやや速く、おおむね円安の動きが優勢になっている。
NY市場でドル円は買いが継続し、一時137円台を回復した。ドル買いが加速しており、ドル円を140円に向かって押し上げているようだ。上値では本邦輸出企業の売りオーダーも観測されているものの、ファンド勢や個人投資家の買いがそれを吸収している模様。 

 

●長期化する円安で大ダメージを受ける年金生活者  8/21 
今春以降急速に進んだ円安が、日本経済に深刻なダメージを与え続けている。7月中旬には為替相場が一時1ドル139円台に突入し、24年ぶりとなる円安を記録した。
今後も円安が続き、値上げが続くとすれば、どんな事態が起こるのか。経済アナリストの森永卓郎氏はこう言う。
「急激な金利引き上げの結果、アメリカの景気が失速に向かい、為替相場はどこかで円高に振れていくと見ています。ただ、それまでの間に、もし1ドル130円から200円という円安状態に進めば、消費者物価は今より約8%の上昇になります。これは産業関連表の価格均衡分析という手法で試算でき、商品別で詳しく見ると、例えば都市ガスが約26%、ガソリンが約24%、衣服・身の回り品が約24%、家電が約16%、食肉が約13%の価格上昇率となります」
すでに、東京電力と中部電力管内では9月からの電気料金のさらなる値上げが発表されている。東短リサーチのチーフエコノミスト・加藤出氏が言う。
「円安の長期化はエネルギー価格の高騰に拍車をかけています。原油相場は中国経済への不安などで6月のピーク時より下がっているものの、ウクライナ情勢はまだ先行き不透明です。下げ渋りや再上昇の恐れはあります。特に灯油など冬の燃料費がかさむ寒冷地では、最も電気代が高くなる冬場に向け、エネルギー価格の高止まりと電気料金の値上げによる大打撃が予想されます」
続けて加藤氏は、「現在の円安は、今後じわじわと生活に影響していく」と見る。
「食品主要105社を対象にした帝国データバンクの最新調査(7月末時点)によれば、『年初から値上げ済み』の品目数が増えた一方、『今後値上げ予定』の品目も急増しています。円安の長期化で、すでに値上げした食品の再値上げや、値上げ予定のなかった食品の値上げも増えている。
昨年来、流通大手のイオンや西友はプライベートブランド商品の『価格凍結』を行なってきましたが、さすがに7月から一部商品の値上げが始まっています。彼らが耐えきれなくなって値上げがより増えると、他のメーカーも急速に追随する可能性があります。現在の円安の影響の特徴は、じわじわと生活面に現われるところ。気付いたら1年前に比べてとんでもない負担を強いられていたとなりかねず、長期的に家計に影響を与えています」
その大きなダメージを被るのが年金生活者だ。
「年金額は賃金や物価変動を基準に毎年改定されているが、受給額は実際の物価変動よりは当然遅れます。今年の年金額は昨年よりむしろ減っていることから、年金生活者にとっては、まさに今、食品価格などの上昇は痛みが大きい」(同前)
人生100年時代には健康寿命を20年、30年と延ばすことが可能になった。ただ、同時に資産寿命も20年、30年と延ばさないと老後破産が待っている。年金だけに頼った生活には大きなリスクがあると言えるだろう。 

 

●東京円、前週末比17銭安の1ドル=136円83〜86銭 8/22
22日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前週末(午後5時)比17銭円安・ドル高の1ドル=136円83〜86銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは、同99銭円高・ユーロ安の1ユーロ=136円90〜94銭で大方の取引を終えた。
●ロンドン外為 円、137円台近辺 8/22
週明け22日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、手掛かり材料に欠ける中、1ドル=137円近辺でのもみ合いとなった。正午現在は137円00〜10銭と、前週末午後4時(137円10〜20銭)比10銭の円高・ドル安。
海外市場の流れを引き継ぎ136円台後半で始まった後、米長期金利の上昇を受けてやや円売り・ドル買いが進んだ。市場では、25日に始まるジャクソンホール会議に関心が集まっている。
対ユーロは1ユーロ=137円15〜25銭(前週末午後4時は137円65〜75銭)と、50銭の円高・ユーロ安。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0005〜0015ドル(1.0035〜0045ドル)。
ユーロは、ロシアから欧州への天然ガスの供給懸念から主要通貨に対して売られた。対ドルでは一時1ユーロ=0.9990ドル前後と、7月中旬以来となる1ユーロ=1ドルのパリティー(等価)割れとなった。
ポンドは1ポンド=1.1800〜1810ドル(1.1800〜1810ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9580〜9590フラン(0.9585〜9595フラン)。
●NY円、136円99銭〜137円09銭  8/22
週明け22日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午前8時半現在、前週末比03銭円安ドル高の1ドル=136円99銭〜137円09銭を付けた。
●NY円、137円47〜57銭 8/22
週明け22日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前週末比51銭円安ドル高の1ドル=137円47〜57銭を付けた。 

 

●外為 1ドル137円24銭前後とドル高・円安で推移 8/23
23日の外国為替市場のドル円相場は午前10時時点で1ドル=137円24銭前後と、前日午後5時時点に比べ39銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円36銭前後と54銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●外為 1ドル137円29銭前後とドル高・円安で推移 8/23
23日の外国為替市場のドル円相場は午後3時時点で1ドル=137円29銭前後と、前日午後5時時点に比べ44銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円16銭前後と74銭の大幅なユーロ安・円高で推移している。
●東京円、一時137円70銭 1カ月ぶり円安ドル高水準 8/23
23日の東京外国為替市場の円相場はドルに対して下落し、一時1ドル=137円70銭を付けた。7月22日以来、約1カ月ぶりの円安ドル高水準。
午後5時現在は前日比44銭円安ドル高の1ドル=137円27〜29銭。ユーロは55銭円高ユーロ安の1ユーロ=136円35〜39銭。
前日の米長期金利が心理的な節目の3%台まで上昇したことを手掛かりに、朝方から日米金利差の拡大を意識した円売りドル買いが優勢だった。円売り一巡後は、利益確定や持ち高調整でドルを売る動きもあった。
●外為 1ドル137円36銭前後とドル高・円安で推移 8/23
23日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=137円36銭前後と、午後5時時点に比べ11銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=136円38銭前後と5銭の小幅なユーロ高・円安で推移している。
●ロンドン外為 円、137円台半ば 8/23
23日午前のロンドン外国為替市場では、米国の大幅利上げへの警戒感が強まる中、円相場は1ドル=137円台半ばに弱含んだ。正午現在は137円40〜50銭と、前日午後4時(137円15〜25銭)比25銭の円安・ドル高。
海外市場の流れを引き継ぎ、137円台前半で取引が始まった。26日のジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演がタカ派的な内容になるとの思惑から、日米金利差拡大を見込んだ円売りが出やすい地合いとなっている。
対ユーロは1ユーロ=136円35〜45銭(前日午後4時は136円65〜75銭)と、30銭の円高・ユーロ安。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=0.9920〜9930ドル(0.9960〜9970ドル)。
ポンドは1ポンド=1.1760〜1770ドル(1.1785〜1795ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9660〜9670フラン(0.9630〜9640フラン)。
●ニューヨーク外国為替市場概況・24時 ドル円、急落 8/23
23日のニューヨーク外国為替市場でドル円は急落。24時時点では136.26円と22時時点(137.51円)と比べて1円25銭程度のドル安水準だった。22時45分発表の8月米製造業・サービス部門PMI速報値に続き、7月米新築住宅販売件数や8月米リッチモンド連銀製造業景気指数が予想より弱い内容となったことを受けて全般ドル売りが先行。前日の安値136.70円や節目の136円を下抜けて、一時135.82円まで値を下げた。米10年債利回りが低下に転じたことも相場の重し。
ユーロドルは反発。24時時点では0.9987ドルと22時時点(0.9923ドル)と比べて0.0064ドル程度のユーロ高水準だった。低調な米経済指標が相次いだことでユーロ買い・ドル売りが優勢になると、23時過ぎに一時1.0018ドルと日通し高値を更新した。
ただ、前日の高値1.0047ドルが目先レジスタンスとして意識されると伸び悩んだ。天然ガスなどエネルギー供給の先行き不透明感が強く、ユーロ圏景気の減速懸念からユーロ売りが出やすい面もあった。
ユーロ円は売買が交錯。24時時点では136.08円と22時時点(136.46円)と比べて38銭程度のユーロ安水準。ユーロドルの上昇につれた買いが入り137.06円と日通し高値を付けたものの、ドル円の下落につれた売りが出ると135.89円付近まで押し戻された。 

 

●円相場、136円54〜55銭 8/24
24日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=136円54〜55銭と、前日(137円27〜28銭)に比べ73銭の円高・ドル安となった。
●ロンドン外為 円、136円台後半 5/24
24日午前のロンドン外国為替市場では、米国で大幅な利上げが続くとの観測を背景にドル買い・円売りが優勢となり、円相場は1ドル=136円台後半に下落した。正午現在は136円75〜85銭と、前日午後4時(136円20〜30銭)比55銭の円安・ドル高。
海外市場の流れを引き継ぎ、136円台後半で取引が始まった。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が週末26日に米西部ワイオミング州ジャクソンホールでの会合で行う講演で、インフレ抑制に向けて大幅な利上げを継続する方針を示すとの思惑から、日米金利差拡大をにらんで円相場はやや軟調となった。
対ユーロは1ユーロ=135円65〜75銭(前日午後4時は136円00〜10銭)と、35銭の円高・ユーロ安。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=0.9915〜9925ドル(0.9980〜9990ドル)。
ポンドは1ポンド=1.1770〜1780ドル(1.1845〜1855ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9635〜9645フラン(0.9620〜9630フラン)。
●NY円、137円前半 8/24
24日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比37銭円安ドル高の1ドル=137円07〜17銭を付けた。ユーロは1ユーロ=0・9964〜74ドル、136円71〜81銭。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が26日の講演で金融引き締めに積極的なタカ派姿勢を示すとの見方から、米長期金利の指標となる10年債利回りが一時3・12%台と約2カ月ぶりの高水準に上昇。このため、日米の金利差拡大を意識したドル買い円売りが優勢となった。  

 

●円相場、136円82〜83銭 8/25
25日の東京外国為替市場の円相場は、正午現在1ドル=136円82〜83銭と、前日(136円54〜55銭)に比べ28銭の円安・ドル高となった。
●円相場、136円48〜48銭 8/25
25日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=136円48〜48銭と、前日(136円54〜55銭)に比べ06銭の円高・ドル安となった。 
●円、136円台半ば ロンドン外為 8/25
25日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を翌日に控えて様子見ムードが強まる中、1ドル=136円台半ばでもみ合いとなった。正午現在は136円50〜60銭と、前日午後4時比20銭の円高・ドル安。 
●NY円、136円半ば 8/25
25日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比64銭円高ドル安の1ドル=136円43〜53銭を付けた。ユーロは1ユーロ=0・9967〜77ドル、136円06〜16銭。米長期金利が低下し、日米の金利差縮小を意識したドル売り円買いが優勢となった。 

 

●日銀為替市況 午後5時時点、137円01〜04銭のドル高・円安 8/26
日銀が26日公表した午後5時時点の外国為替市況は1ドル=137円01〜04銭と前日に比べ54銭のドル高・円安。ユーロは対円で1ユーロ=136円65〜69銭と同18銭のユーロ高・円安。対ドルでは1ユーロ=0.9973〜75ドルと同0.0026ドルのユーロ安・ドル高だった。
●東京円、54銭安の1ドル=137円01〜04銭  8/26
26日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比54銭円安・ドル高の1ドル=137円01〜04銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは、同18銭円安・ユーロ高の1ユーロ=136円65〜69銭で大方の取引を終えた。
●ロンドン外為 円、136円台後半 8/26
週末26日午前のロンドン外国為替市場では、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を控えて様子見姿勢が強い中、円相場は1ドル=136円台後半で取引された。正午現在は136円85〜95銭と、前日午後4時(136円65〜75銭)比20銭の円安・ドル高。
137円近辺で取引が始まった。序盤は円がやや強含んだものの、積極的な取引は手控えられ、その後は136円台後半で小動きとなった。市場関係者は、ジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言を手掛かりに、今後の米金融政策の動向を見極めようとしている。
対ユーロは1ユーロ=137円10〜20銭(前日午後4時は136円40〜50銭)と、70銭の円安・ユーロ高。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0010〜0020ドル(同1.0005〜0015ドル)。
ポンドは1ポンド=1.1830〜1840ドル(同1.1820〜1830ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9625〜9635フラン(同0.9635〜9645フラン)。
●NY円、一時137円75銭 1カ月ぶり円安ドル高水準 8/26
26日のニューヨーク外国為替市場の円相場は対ドルで大きく下落し、一時1ドル=137円75銭と7月下旬以来、約1カ月ぶりの円安ドル高水準を付けた。米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げペースを加速するとの観測が高まり、日米の金利差拡大を見込んだドル買い円売りが進んだ。
午後5時現在は、前日比1円19銭円安ドル高の1ドル=137円62〜72銭だった。ユーロは1ユーロ=0.9960〜70ドル、137円00〜10銭。
●NY円、反落 1ドル=137円60〜70銭、米金融引き締めの長期化観測で 8/26
26日のニューヨーク外国為替市場で円相場は反落し、前日比1円15銭円安・ドル高の1ドル=137円60〜70銭で取引を終えた。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が26日、カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)での講演でインフレ抑制を最優先で進める姿勢を示した。米金融引き締めが長く続くとの見方が強まり、ドル買いが優勢となった。
パウエル議長は講演で、インフレを抑えるため「FRBの政策手段を力強く使う」と述べた。利上げは「家計や企業に痛みをもたらす」とも指摘し、景気よりもインフレ抑制を優先することを示唆した。物価の安定には「引き締め的な政策をしばらく続ける必要がある」とも指摘。金融引き締めが長期化するとの見方から、対主要通貨でドルが買われた。円は一時137円75銭と7月22日以来の安値を付けた。
パウエル議長の講演前にドルが売られる場面もあった。26日朝に発表された物価指標の7月の米個人消費支出(PCE)デフレーターはエネルギー・食品を除くコア指数は前年同月比4.6%上昇と伸び率は6月(4.8%)から縮小し、市場予想(4.7%)より小さかった。インフレ水準は高いものの、上昇圧力は弱まりつつあるとの見方がドル売りを促した。
円の高値は136円19銭だった。
円は対ユーロで反落し、前日比95銭円安・ユーロ高の1ユーロ=137円00〜10銭で取引を終えた。ロイター通信が26日、欧州中央銀行(ECB)が9月の理事会で通常の3倍となる0.75%の利上げを議論する可能性があると報じ、ユーロ買いが優勢となった。
ユーロはドルに対して横ばいをはさんで4営業日ぶりに小反落し、前日比0.0005ドル安の1ユーロ=0.9960〜70ドルだった。ECBによる大幅利上げ観測からユーロ買いが先行した。だが、パウエル議長の講演を受け、米金融引き締めの長期化観測が高まるとドル買いが勢いを増した。
ユーロの安値は0.9957ドル、高値は1.0090ドルだった。 

 

●為替相場 8/22-8/26 8/27
まとめ8月22日から8月26日の週
22日からの週は、金曜日のジャクソンホール会議におけるパウエルFRB議長講演に市場の関心が集まった。週を通して調整色が強く、これまでのドル高の対する調整売りが散見された。ただ、米経済指標の強弱に神経質に反応しつつも、米金融当局は景気面での多少の犠牲を払ってでもインフレ抑制を優先されるとの見方が市場に広がった。パウエル議長の積極的な利上げ路線の表明を想定するムードが優勢だった。ドル高一服となるなかで、ユーロ安と豪ドル高の動きが目立った。ウクライナ戦争が半年を超えるなかで欧州ではエネルギー危機が警戒された。欧州天然ガス先物が急上昇し、ユーロ売り圧力となった。一方、不動産不況に苦慮する中国だが、利下げや政府の景気支援策が報じられるとムードが好転、中国・香港株が持ち直した。経済的に中国との関係が深い豪州とあって豪ドルは堅調な足取りをみせた。増産見通しが後退したことで原油相場が上昇。カナダドルなど資源国通貨買いが入る場面もあった。パウエル議長はFRBは強力な手段を活用するなど引き締めの維持を示唆。この結果を受けて9月のFOMCでの0.75%利上げ期待が強まりドル高に。もっとも市場は不安定。その後ったんドル売りが入り、ドル円は136円20銭台まで高値から1円以上値を落とし、その後買い戻しが入って高値を更新、137円60銭台で引ける動きに。講演直後のドル買い局面では1.0020割れまでにとどまったユーロドルは1.0090前後までの反発を経て、ドル高が強まり0.9960台で引けている。
22日
東京市場では、先週からのドル高の流れ継続も、上値にはやや慎重さがみられた。ドル円は136円台後半から取引をスタート。ドル買いが先行し、午前の取引で先週末の高値を上回ると、137.40台まで買われた。午後には上昇一服となり、137.20前後で揉み合った。全般にドル買いが優勢となるなかで、ユーロドルは午前中に先週末安値を割り込んで1.0020台まで軟化、その後は1.00台前半で下げ一服に。週前半はそれほど目立った材料がなく、市場は週後半のジャクソンホール会議を注目している。特に同会議でのパウエル議長講演が注目を集めており、日本時間で26日午後11時の公演開始までは動きにくさも。中国の事実上の政策金利である最優遇貸出金利(ローンプライムレート・LPR)は、一般的に重要視される1年物が予想よりも小さい利下げ幅だった。一方、住宅ローン金利に影響を与える5年物が予想を超える利下げ幅となり、中国株高・元安の動き。住宅市場動向への警戒感はあるものの、豪ドルが対ドルで0.69台に乗せるなど、期待感も見られた。
ロンドン市場は、ユーロ売り主導でリスク回避の動きが広がっている。週明けの欧州天然ガス価格が一時10%高となり、エネルギー危機が意識されている。欧州株や米株先物・時間外取引が大きく下落。独DAX指数は一時2%安、ダウ先物は300ドル超安と売りに押された。為替市場ではユーロやポンドが主導して下落。ユーロドルは1.00台半ばが重くなるとパリティ水準(1.0000)を下回り、7月14日以来の0.9990レベルまで下落した。ユーロ円は137円台後半から一時136.60付近まで下落。ポンドドルは1.18台前半から1.1780台へと下落。ポンド円は162円台前半から一時161.10台まで下落した。ドル円は米10年債利回りが2.94%に低下する動きとともに137円台割れから136.70近辺まで一時下落。ただ、足元ではドル円は137円台を回復、クロス円も全般に下げ渋っている。中国当局が不動産開発会社に対する支援策を計画と報じられたことで、豪ドル買いの反応がみられている。欧州株や米株先物は引き続きマイナス圏推移も、一段の下げの勢いは落ち着いている。
NY市場は、ドル買いが強まった。ドル円はしっかりとした値動きが続き137円台で推移。リスク回避の円高は出ているものの、それ以上にドル買いが強まった。今週はジャクソンホールでFRBの年次総会が予定されており、パウエルFRB議長のスピーチが26日金曜日に行われる。インフレが鈍化傾向を見せているものの、議長は予想以上にタカ派姿勢を強調するのではとの警戒感が高まっているようだ。加えて、米国以外の国が直面している課題がドルの上昇を後押ししているとの指摘も多い。本日は中国が景気減速を支えるために最優遇貸出金利(ローンプライムレート)を引き下げていた。また、韓国の貿易データも芳しくなかった。ロシアから安価なエネルギーを輸入し、特に中国へ高付加価値商品を輸出するというドイツの経済モデルもかつてないほどの困難に直面している。そのような中で消去法的にドルに資金が流入している可能性が高いという。ユーロドルは7月に続きパリティ(1.00ドル)を割り込み、0.9935近辺まで下げ幅を拡大。ポンドドルは1.17台に下落し、一時7月中旬に付けた年初来安値を下回る場面が見られた。
23日
東京市場は、ドル高の流れが継続。今週末のジャクソンホール会議でパウエル議長が積極的な利上げ姿勢の継続を示すとの思惑から、ドル全面高基調が継続している。19日に発表されたロシアによるノルドストリーム1の今月末からの3日間停止報道により、欧州のエネルギー問題への警戒感が強まっていることもユーロ売り・ドル買いからのドル全面高を誘った。ユーロドルは調整買いが先行も0.9950付近では慎重姿勢がみられた。午後に入ってロンドン勢が参加し始めると再び売りが強まり、0.9910台へと下落。昨日に海外市場で対ドルで0.6860台まで下落した豪ドルは、その後買い戻しが入り0.69ちょうど前後を回復。しかし、午後に入るとドル全面高となる中で0.6870台まで再び下落。ドル円は朝方に137.71近辺まで高値を伸ばした。その後はロシアが数日中にウクライナへの攻撃を強める可能性があるとの報道が入り、米大使館が米国民に対してウクライナ出国を要請と報じられると、137.08近辺まで下押し。大台は維持されて午後には137円台前半に落ち着いた。
ロンドン市場は、ドル高圧力が根強い。序盤にユーロドルが下値を試して、0.9901レベルまで安値を更新。ただ、前日ほどのリスク回避の動きは広がらず0.99台前半での揉み合いに落ち着いている。欧州天然ガス先物の上昇が一服したことが背景。ただ、米債利回りは前日終値付近から離れず高止まり。金曜日のパウエルFRB議長講演を控えて、市場の積極的な利上げ姿勢への思惑が広がっているもよう。ドル円はロンドン朝方に137.04近辺まで軟化したあとは137.50台まで一時上昇。ポンドドルは売りが先行し1.1720付近まで下押しされたあとは1.1780付近まで下げ渋り。ただ、東京朝方の高値付近で上値を抑えられている。この日発表されたユーロ圏や英国の8月PMI速報値は予想からの強弱はまちまちだったものの、全般に前回から水準を下げている。英欧の景気動向に対する不透明感が続いている。クロス円は序盤に下押しされたあとは買戻しが入っており、下に往って来い。ユーロ円は136円台割れから136円台前半、ポンド円は161円台割れから161円台後半での取引となっている。このあとのNY市場で発表される米PMI速報値が注目材料に。
NY市場では、弱い米経済指標を受けてドルに戻り売りが広がった。この日発表の米サービス業PMI速報値と米中古住宅販売成約指数がかなり弱い内容だったことで、今週のジャクソンホールでのFRBの年次総会への警戒感が緩んだようだ。米国債利回りも下げに転じ、米10年債利回りは一時3%を下回る中、ドル円は137円台半ばから一時135円台に下落する場面が見られた。その後は136円台後半に下げ渋った。ユーロドルは買い戻しが強まった。ロンドン時間に0.99ちょうど付近まで下落する場面があったが、NY時間に入るとパリティ(1.0000)を一時回復。その後は再び0.99台へと押し戻された。エネルギー価格上昇に歯止めがかからず、ユーロ圏の経済見通しがかつてないほど悪化している中で、パリティ割れ水準が長引くとの見方が広がっていた。ポンドドルはロンドン時間に1.17台前半まで下落していたが、NY時間に入って1.18台に戻す展開。ただ、積極的に買い戻そうという動きまではなく、ここ数日の急速な下落に調整が入ったといった程度の動きだった。
24日
東京市場は、調整ムード。株安から円高の動きが優勢となっている。ドル円は朝方に137円台へと上昇する場面があったが、137円台での買いには慎重だった。午後には円買いが強まり136.30台へと反落している。中国・香港などの株安が目立つ中、日経平均も軟調で株安からの円買いが進行。ユーロ円や豪ドル円などの売りも見られ、円買い主導での動きに。もっとも一方向に動くだけの勢いはなく、その後136.60台へ反発。昨日の海外市場で米非製造業PMI後のドル売りに1.00台を一時回復したユーロドルは0.99台後半に落として東京朝を迎え、ドル買いが優勢となる中で0.9950割れ。午後に入るとユーロ円の下げもあって0.9940割れまで。ユーロ円は円高圧力を受けて137円台前半から136円台後半へと軟化した。ポンドドルは1.18台前半から一時1.18台割れと上値重く推移した。
ロンドン市場は、ユーロやポンドなど欧州通貨に売り圧力がかかっている。欧州ガス先物が再び上昇していることが欧州景気に対する不安材料に。ドイツ経済相は公共スペースの照明制限など含む省エネ対策を閣議決定し、ガス使用量は全体で2−2.5%削減されると述べている。また、ドラギ伊首相は、来週のEU会合でガス価格の上限を設定することを計画している、と述べた。短期金融市場ではインフレを警戒して、ECBが10月末までに1.00%幅の利上げを織り込んでいるもよう。ユーロドルは0.99台半ばでの揉み合いを下放れて0.9917近辺に安値を更新。ポンドドルは1.18台前半から1.1772近辺に安値を更新。ただ、いずれも前日安値には届かず比較的小幅の動き。米10年債利回りは3.02%から3.06%と前日終値水準を挟んだ推移にとどまっており、ドル買い圧力は軽微にとどまっている。ドル円は137円付近で上値を抑えられると、ロンドン序盤には136.17近辺まで下押しされた。その後は再び136円台後半へと下げ渋っている。クロス円は上値が重く、ユーロ円は一時135.52近辺、ポンド円は160.84近辺まで安値を広げた。
NY市場は、ドルに戻り売りが入った。ロンドンフィキシングにかけてドル売りが強まった。ドル円は一時136円台後半へと反落。ただ、特段の材料は見当たらず、明日からのジャクソンホールを前に短期筋や実需筋から調整売りが出た可能性が高く、トレンドに変化は無さそうだ。前日のドルは米サービス業のPMIの予想以上の落ち込みで売りが強まった。ドル円も135円台まで下落する場面がみられたものの、137円台に下げを取り戻していた。ユーロドルは一時パリティ(1.00ドル)付近まで急速に買い戻された。ただ、1.00台での売りは根強く、0.99台半ばまで売り戻しが入った。市場では、米金融当局が多少の犠牲を払ってでもインフレ抑制を優先するとみている。一方、ECBは積極利上げに慎重姿勢を崩していない。ユーロ圏ではガス不足の脅威が差し迫る中で、ユーロにとってのリスクはあくまで下振れ方向にあるという。ポンドドルは一時1.18台前半まで急速に反発。しかし、ユーロドルと同様に買い一巡後は1.17台後半へ押し戻された。英国では名目金利が上昇しても、インフレが大幅に上昇しているため、実質金利はまだ低下傾向にあり、ポンド相場が圧迫されている。英金利とポンドのパフォーマンスは新興国通貨のそれに近いとの見方も。
25日
東京市場は、ドル相場がじり安となった。本日からの米ジャクソンホール会議を前に、積極的なポジション作成を見送る動きが見られ、これまでのドル高に調整が入った。ドル円は137.20付近で上値を抑えられると、136.60台へと水準を下げた。ユーロドルは朝方の0.9960台から買われて1.0007近辺とパリティ超えとなる場面があった。軽いショートカバーの動きがみられた。ユーロ円は136円台後半と前日からの高値圏で揉み合った。いずれも値幅自体はそれほど大きなものではなく、調整主導の展開だった。
ロンドン市場は、総じてドル売りが優勢。ロンドン朝方にドル円は136.32近辺に安値を広げた。ユーロドルは1.0000のパリティ水準を上回ると高値を1.0033近辺まで伸ばした。ポンドドルも1.1864近辺に高値を伸ばしている。中国の経済支援策報道が好感されて豪ドルが堅調。対ドルで0.6991近辺へと上昇する動きがドル売りをけん引していた。あすのジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長講演を控えて、このところ続いたドル高の動きに調整が入る形。ただ、そのなかでユーロが全面安。ユーロドルは再びパリティ割れとなり、0.99台後半へと押し戻されている。対円は137円手前まで買われたあとは136円台前半へと反落。対ポンド、対豪ドルなどでもユーロは軟調。週明けに急騰した欧州天然ガス先物がきょうは再び高値をつけており、エネルギー危機が意識された面も。この日発表された8月独Ifo景況感指数は予想ほどは落ち込まなかったが、今年の最低水準をつけた。Ifoエコノミストは第3四半期のドイツ経済は0.5%程度縮小する見込みとしていた。半年を過ぎても収束のメドが立たないウクライナ戦争の影響が改めて懸念される。
NY市場は、パウエル待ちのムードが広がった。ドル円はNY朝方までは上値が重く136.30付近まで値を落としていた。しかし、第2四半期の米GDP確報値が上方修正されたことや、米新規失業保険申請件数が予想以下だったことが買い戻しを誘った。136.90台まで一時上昇。その後はあすのパウエルFRB議長の講演待ちとなり、136円台半ばに戻して揉み合った。ユーロドルも方向感のない展開。中国の景気対策のニュースもあり、ロンドン時間の早朝にはパリティ(1.00ドル)を回復する場面も見られた。しかし、滞空時間は短く、直ぐに戻り売りに押される展開。ポンドドルも方向感なく1.18台での上下動が続いた。英欧ともに先の見えないインフレ圧力が経済見通しに対する不安感を広げている状況。調整のドル売りが入っても反発力は限定されているようだ。ユーロドルは1.00台を回復してもすぐに売りに押し戻されている。ポンドドルは1.19台が遠くなってきている。
26日
東京市場では、ドル円がしっかりとした値動き。136.50付近で取引が始まった後は上昇の流れが続いている。午後には136.80台へと上昇しており、137円台をうかがう勢いを示している。米10年債は3.02%台から3.055%付近へと上昇しており、ドル高圧力となっている。ドル円に連動し、ユーロ円は136.36付近、ポンド円は161.72付近まで水準を切り上げた。豪ドル円は豪ドル売りで95.04付近まで軟化した後、95.33付近まで強含んだ。ただ、対ドルでは欧州通貨や資源国通貨の上値は重く、クロス円の上値はそれほど伸びていない。パウエルFRB議長講演が大注目となるなかで、前日海外市場での値動きに調整が入る格好になっている。
ロンドン市場は、ドル安・円安の動きが優勢。序盤はドル買いが先行し、ドル円は137.13近辺まで上昇、ユーロドルは0.9947近辺まで下押しされた。欧州株は堅調に取引をスタート、米債利回りは上昇。しかし、為替市場の流れは一転してドル安・円安に変化している。ユーロドルの上昇が主導し、パリティ水準を回復すると高値を1.0023近辺に伸ばしている。ポンドドルも1.1780付近の安値から1.1845近辺へと急反発。ドル円が136.80近辺へと小幅に下押しされる一方で、ユーロ円は136円台前半から137円台乗せ、ポンド円は161円台前半から162円台乗せへと上伸している。ただ、欧州株は序盤の上げを消してマイナスへ、米株先物は下げ幅を拡大。米10年債利回りは上昇傾向が続いて、3.08%付近まで上昇している。パウエルFRB議長のジャクソンホールでの講演を控えて、神経質に方向が変化している。各市場の間での連関性もはっきりとしていない。
NY市場は激しい振幅後ドル高に。パウエル議長の講演まではドル売りが目立つ展開。ユーロドルが1.0070台を付けるなどの動きが見られた。ポジション調整と、PCEデフレータの弱さが重石。パウエル議長はFRBは強力な手段を活用するなど引き締めの維持を示唆。この結果を受けていったんドル高株安の動き。ドル円が137円30銭台まで上昇、ユーロドルも1.0020割れまで。しかし一転してドル売りに。調整の動きが激しくなり、136円20銭台までドル円が大きく下げると、ユーロドルは1.0090前後までと公園前の水準を超えてのドル売りに。その後は再びドル高。ドル円は高値を更新。さらに引けにかけて買いが入り137円60銭台とほぼ高値引けに。ユーロドルは0.9960割れまで一時値を落としての推移に。 

 

●ドル円見通し 8/28
概況
ドル円は7月14日に139.39円へ上昇して昨年1月底以降の最高値を付けたが、米長期債利回り低下や米FRBによる大幅利上げペースが鈍化するのではないかとの思惑から8月2日安値130.39円まで9円の円高ドル安となる急落調整が入った。しかし米地区連銀総裁達によるタカ派姿勢支持発言から再び米長期債利回りが上昇したために8月23日高値137.71円まで切り返してきた。
8月23日夜の米経済指標が予想以上に悪化したことで米FRBのタカ派姿勢が緩むとして23日夜安値135.80円へ一時的に急落したが、その後は8月26日のジャクソンホール会合におけるパウエル米FRB議長講演待ちとなり、24日深夜に137.24円まで戻した後は新たな高値更新へ進めずに136円台序盤では買い戻される持ち合い商状での推移に入っていた。
8月26日21時半の米PCEデフレーターが予想を下回る低下となったことで議長講演前にいったんドル安となりドル円は136.45円まで下落、その後に議長講演内容がタカ派維持姿勢と報じられるとドル高に急旋回となり137円を突破、27日早朝の取引終了間際には137.50円超えが観測された。
パウエル米FRB議長は「景気よりもインフレ抑制」姿勢を堅持
FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は8月26日にカンザスシティ連銀主催のワイオミング州ジャクソンホールにおけるシンポジウムで講演を行い、「高止まりしているインフレ抑制には金融引き締めをしばらくの間維持する必要がある」とし、「物価安定へ向けて決意を持って行動する」と強調した。
FRBは3月FOMCから利上げに入り、0.25%、0.50%、0.75%、0.75%と4会合連続で利上げを決定して5月以降は通常の0.25%利上げ幅を超える大幅利上げを繰り返してきた。政策金利はゼロだったところから2.25〜2.50%の水準まで切り上がってきたが、パウエル議長は「物価高と労働市場の引き締まりを踏まえれば現状の中立金利水準で利上げを止めることはない」とし、「物価安定のためには景気抑制的スタンスをしばらく維持する必要がある」とした。
9月FOMCにおける利上げ幅への具体的な言及はなく「利上げが進んだある時点で利上げ減速が適切となる可能性がある」としたものの、最近の米CPIやPCEデフレーターの減速については「インフレ低下を確信するには程遠い」とした。
議長講演に先立つ8月25日に、カンザスシティー連銀のジョージ総裁は9月FOMCで0.50%か0.75%の利上げを想定するとし、「政策金利が4%を超えてからもその水準にとどまることが必要」と述べ、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁も次回の利上げは「0.5%か0.75%」とし、アトランタ連銀のボスティック総裁はインフレと雇用指標が強ければ0.75%利上げが正当化されると述べた。またセントルイス連銀のブラード総裁も「年末までに政策金利を3.75〜4.00%に引き上げたい」と述べている。
パウエル議長は6月の半期議会証言で「景気よりも物価抑制」と述べてリセッション入りに言及したが、その後もある程度の景気後退による痛みを伴ってもインフレを抑え込むことが最重要とのスタンスを維持しており、今回の講演も従来の姿勢を維持していることを強調し、やや楽観的な早期利上げ打ち止め論に冷水を浴びせた。
NYダウ暴落、米長期債利回りはまちまち
8月26日のNYダウは前日比1008.38ドル安と大幅下落した。下落規模は5月18日の前日比1164.52ドル安以来の大きさで、ナスダック総合指数も前日比497.56ポイント安と急落した。パウエル議長講演でのタカ派姿勢により金融引き締め継続とリセッション入りの懸念が再認識された。
一方で米長期債利回りはまちまちだった。10年債利回りは前日比0.01%上昇の3.04%だったが、PCEデフレーターが予想より鈍化したところで3.02%へ低下し、パウエル議長講演から反騰したものの、NYダウの急落により株売り債券買いの裁定が働いたために上昇は限られた。
30年債利回りも10年債と同様に0.05%低下の3.19%となったが、利上げに敏感な2年債利回りは0.04%上昇の3.41%で終了したが一時は3.44%を付けて6月14日に付けたパンデミック以降の最高値3.46%に迫った。2年債と10年債及び30年債との逆イールドは継続している。 

 

●円急落、一時139円 7月以来、米利上げ意識 8/29
週明け29日の東京外国為替市場の円相場は対ドルで下落し、一時、1ドル=139円ちょうどを付けた。7月15日以来、約1カ月半ぶりの円安ドル高水準。前週末比で2円程度円安ドル高が進み、日本が金融危機だった1998年8月に付けた140円台に迫った。
前週末に米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が講演で、利上げを継続する必要性を強調。日米の金利差拡大を見越した円売りドル買いが進んだ。
午後5時現在は前週末比1円68銭円安ドル高の1ドル=138円69〜71銭。ユーロは1円24銭円安ユーロ高の1ユーロ=137円89〜93銭。
●ドル買いの調整入るも、ドル円は下がると買いが出る流れ=ロンドン為替概況 8/29
ドル買いの調整入るも、ドル円は下がると買いが出る流れ=ロンドン為替概況
東京午後に約一月半ぶりの139円を付けるなどドル高が進む展開に。先週末のジャクソンホール会議でのパウエル議長講演を受けて、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅利上げ期待が強まったことなどから米債利回りの上昇が見られ、ドル買いが強まった。
ロンドン市場ではドル高に対する調整が入った。大台をいったん付けたことで調整が入る展開に。英国がバンクホリデーで休場となっており、取引参加者が少なくなっていることも、調整の入りやすい地合いに。ドル円は138円30銭台まで。調整一服後は買い戻しも入っており138円60銭台を回復。
ドル全面高基調の中で東京午後に0.9910台を付けたユーロドル。139円の大台を付けたドル円に調整が入ったことをきっかけに、ユーロドルでもドル売りの動き。週末にはホルツマン・オーストラリア中銀総裁やクノット・オランダ中銀が9月のECB理事買いでの0.75%利上げの可能性に言及したことを、欧州勢が改めて材料視した面も。ユーロドルはパリティ(1ユーロ=1ドル)前後まで。
東京市場から買いが入っていたユーロ円はロンドン市場に入っても買いが続いた。先週末NY午後に136円台に値を落とし、その後137円台に乗せて週の取引を終えたユーロ円。朝の137円台前半から買いが入り、ロンドン市場に入って138円台に。その後いったん調整も、再び買いが入る展開となり138円台後半まで。週末にジャクソンホール会議でのパネルディスカッションで黒田日銀総裁が緩和維持以外の選択肢はないと発言したことなどが円売りを誘った形。
●NY円、138円69〜79銭 8/29
週明け29日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前週末比1円07銭円安ドル高の1ドル=138円69〜79銭を付けた。 

 

●円相場、138円57〜61銭 8/30
30日の東京外国為替市場の円相場は、正午現在1ドル=138円57〜61銭と、前日(138円70〜70銭)に比べ13銭の円高・ドル安となった。 
●円相場 小幅に値上がり 1ドル=138円台半ばに  8/30
30日の東京外国為替市場、円相場は小幅に値上がりして1ドル=138円台半ばを中心に取り引きされました。
午後5時時点の円相場は、29日と比べて24銭円高ドル安の1ドル=138円45銭から47銭でした。
また、ユーロに対しては29日と比べて、95銭円安ユーロ高の1ユーロ=138円84銭から88銭でした。
ユーロはドルに対して1ユーロ=1.0028から29ドルでした。
市場関係者は「アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会のパウエル議長が、利上げを続ける姿勢を鮮明にしたことで、きのうは急速に円安が進んだが、きょうは、いったん利益を確定しようと円を買い戻す動きが出た。ただアメリカでは現地時間の30日も、FRBの高官の講演が予定されているだけに、今後の金融政策の動向を見極めたいと慎重な姿勢の投資家も多かった」と話しています。
●ロンドン外為 ユーロ、上昇に転じる 1.00ドル台前半 ポンドは下げ渋り 8/30
30日午前のロンドン外国為替市場で、ユーロ相場は対ドルで上昇に転じている。英国時間9時30分時点では1ユーロ=1.0025〜35ドルと、前営業日26日の同16時時点と比べて0.0015ドルのユーロ高・ドル安で推移している。30日のフランクフルト株式市場でドイツ株価指数(DAX)が堅調に推移していることなどで投資家のリスク選好姿勢がやや強まり、持ち高調整目的のユーロ買い・ドル売りが入った。英国時間30日の取引で米長期金利が一段と低下している点も支えとなっている。
英ポンドは対ドルでやや下げ渋っている。1ポンド=1.1740〜50ドルと同0.0050ドルのポンド安・ドル高で推移している。
●NY円、一時139円08銭 1カ月半ぶり円安ドル高  8/30
30日のニューヨーク外国為替市場の円相場は対ドルで下落し、一時1ドル=139円08銭と7月中旬以来、約1カ月半ぶりの円安ドル高水準を付けた。米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
午後5時現在は前日比07銭円安ドル高の1ドル=138円76〜86銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0011〜21ドル、138円97銭〜139円07銭。
米労働省が発表した7月の雇用動態調査で求人数が増え、労働市場の逼迫が意識された。全米産業審議会が発表した8月の消費者信頼感指数は市場予想を上回り、景気の底堅さも示された。
●経済同友会・桜田氏 円安で「日銀は苦渋の状態」 8/30
経済同友会の桜田代表幹事は、外国為替市場で進む円安について「マイナスの方が大きい」と述べて日銀の金融政策は難しい状態にあるという認識を改めて示しました。
経済同友会・桜田謙悟代表幹事「今、この経済環境であげられますか、というまさに非常に苦渋の状態に日銀はある」
桜田代表幹事は、今の円安について「会員などから聞こえてくる限りは、マイナスの方が大きいと言わざるを得ない」と述べました。
そのうえで、円安を是正するには「金利を上げるしかない」としながらも、新型コロナから持ち直した消費や設備投資が急激なコストの上昇で足踏みする可能性があり、日銀は金利を上げる決断はできないだろうという認識を改めて示しました。
また、旧統一教会の問題については「国民が納得する形で決着すべき」で「うやむやにしてはいけない」と述べました。 

 

●外為 1ドル138円82銭前後とドル高・円安で推移 8/31
31日の外国為替市場のドル円相場は午後7時時点で1ドル=138円82銭前後と、午後5時時点に比べ24銭のドル高・円安。ユーロ円は1ユーロ=138円57銭前後と5銭の小幅なユーロ安・円高で推移している。
●ロンドン外為 ユーロ、伸び悩み 1.00ドルちょうど近辺 ポンドも上げ幅縮小 8/31
31日午前のロンドン外国為替市場で、ユーロ相場は対ドルで上げ幅を縮小している。英国時間9時30分時点では1ユーロ=1.0005〜15ドルと、前日の同16時時点と比べて0.0015ドルのユーロ高・ドル安で推移している。その後は横ばい圏での推移となる場面もある。英国時間31日の取引で米長期金利が上昇したことを受けたユーロ売り・ドル買いが出た。
天然ガスの供給不足による欧州景気の減速懸念もユーロの重荷となっているようだ。ロシア国営ガス会社ガスプロムがかねて発表していた通り、欧州向けガスパイプライン「ノルドストリーム」での供給を31日から一時停止したと伝わった。欧州天然ガスの指標価格であるオランダTTF(9月物)は前日比で上昇している。
英ポンドも対ドルで上昇幅を縮めている。1ポンド=1.1635〜45ドルと同0.0005ドルのポンド高・ドル安で推移している。
●NY円、139円近辺 8/31
8月31日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比15銭円安ドル高の1ドル=138円91銭〜139円01銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1.0048〜58ドル、139円64〜74銭。米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
●円安加速!パウエル議長、不退転の決意表明 8/31
パウエル議長の講演が株式市場を直撃
8月26日のジャクソンホールでジェローム・パウエル議長は30分予定の講演を8分40秒と短くまとめ、余計なことは一切言わず、インフレ退治のためには手綱を緩めないと強い姿勢を強調しました。
景気悪化という痛みを伴っても物価安定のみに集中するとの姿勢が、楽観的だった株式市場を直撃し、NYダウ(ダウ工業株30種平均)は1,000ドル超の下落となりました。
楽観的だったのは、7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見でパウエル議長が「金融引き締めが進むにつれ、利上げペースを緩めることが適切となる可能性が高い」と述べたことから、ジャクソンホールでの講演では利上げペースを緩める理由を改めて説明するのではないかとの期待が高まったことが背景にあります。
ダウ工業株30種平均は1,000ドル超の下落となりましたが、7月中旬から8月中旬の3,000ドル超の上げ幅の帳消しとはなっていません。
パウエル議長の「9月会合の利上げ幅はデータ次第」という変わらぬコメントにまだ期待が残っているのかもしれません。
また、講演の直前に米商務省が発表した7月のPCE(個人消費支出)の食品・エネルギーを除いたコア指数の前月比が+0.1%と予想(0.3%)も前月(0.6%)も下回ったことから、インフレピークアウトへの期待も高まったようです。
また、講演開始と同時に発表された8月のミシガン大学消費者信頼感指数確報値の1年先の期待インフレ率が4.8%と、ガソリン価格の低下を反映し、前月の5.2%から低下したこともインフレピークアウト感を高め、1,000ドル超の下落にとどめたのかもしれません。
4.8%は8カ月ぶりの低水準となったことから、9月の0.75%の利上げは織り込まれたかもしれませんが、その先については利上げペースが緩まる可能性への期待をもたせた可能性があります。
ドル/円は講演に素直に反応し、1ドル=136円台から上昇し137円台半ばでその週を終えました。週明け138円のストップを付けて139円近辺まで上昇しましたが、高値更新は9月2日の米雇用統計待ちになるかもしれません。
しかし、講演後の米10年債利回りをみると、3.1%台で終えており、直近ピークの3.5%には届いていないことから、9月のFOMCまでの間に景気悪化やインフレ鈍化が伴えば、ドル/円の高値更新や140円超えは時間がかかる可能性があります。
それよりもドル高に対するマーケットの関心はユーロに移りそうです。エネルギー価格の高騰が続き、過去500年で最悪の状況といわれている干ばつの影響が大きくなってきている欧州の景気が急減速する可能性があるからです。
9月8日のECB(欧州中央銀行)理事会での利上げによってユーロが上昇すれば、絶好の売り場提供と考える市場参加者が増えるかもしれません。
FOMCの金利見通しに注目
9月20〜21日のFOMCではジャクソンホールでの講演を受けて0.75%の利上げはかなり織り込まれたことから、0.75%となっても反応は鈍くなることが予想されますが、ドットチャートと呼ばれる政策金利であるFF金利の見通しにはより注目が集まるので注意が必要です。
この見通しによってFRB(米連邦準備制度理事会)はどのようなペースで利上げを行いたいのかを予想することができます。
6月の金利見通しでは、2022年末の予想中央値が3.375%、2023年末の予想中央値が3.75%となっています。
これらの金利見通しが4%近く、あるいは4%超への上方修正になった場合、一段のドル高になる可能性が予想されるため注意する必要があります。
現在の政策金利であるFF金利の上限は2.50%です。9月に0.75%の利上げとなれば、3.25%となります。
9月以降のFOMCは11月と12月の2回あるため、各会合で0.5%と0.5%の利上げだと2022年末は4.25%、0.5%と0.25%だと4.0%、0.25%と0.25%だと3.75%となります。
つまり、2022年末の利上げ見通しによって、FOMCのメンバーがどのような利上げペースを考えているかということがわかります。
11月か12月に1回でも0.75%が加われば、もっと年末の利上げ見通しが上がるということになります。
そして2023年の見通しがさらに上がっていれば、市場が期待する利上げペースの鈍化はないかもしれません。市場の期待を打ち消すのかどうか注目です。
パウエル・ピボットに注意
パウエル議長は1年前のジャクソンホールで「インフレは一時的」との誤認の失敗を繰り返さないように今回は強い決意表明をしました。
来年の利下げを期待した市場に対して、「歴史は時期尚早な金融緩和を強く戒めている」とけん制し、高インフレの抑制について「やり遂げるまでやり続けなければならない」と利上げ継続について不退転の決意を表明しましたが、(過度の利上げによって経済を停滞させる)オーバーキルという誤認を再びしなければよいのですが。
ハト派とタカ派を行ったり来たりするパウエル議長の金融姿勢に市場は翻弄(ほんろう)されています。この金融姿勢をパウエル・ピボット(転換)と市場は呼んでいます。
タカ派に傾きすぎた姿勢を後悔し、再びハト派にピボットするかもしれないと注意しておくことは必要かもしれません。

 

●円急落、139円台半ば 24年ぶり円安水準更新 9/1
1日午前の東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=139円台半ばまで下落し、1998年9月以来、24年ぶりの円安ドル高水準を更新した。歴史的なインフレを回避するために米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的な利上げを続け、日米金利差が拡大するとの思惑から、円売りドル買いが加速した。
午前10時現在、前日比88銭円安ドル高の1ドル=139円46〜48銭。ユーロは1円15銭円安ユーロ高の1ユーロ=139円77〜84銭。
●東京円、70銭安の1ドル=139円28〜29銭 9/1
1日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比70銭円安・ドル高の1ドル=139円28〜29銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは、同1円07銭円安・ユーロ高の1ユーロ=139円69〜73銭で大方の取引を終えた。
●円急落、一時140円台 24年ぶり円安水準更新  9/1
1日の外国為替市場の円相場は対ドルで急落し、一時1ドル=140円台を付けた。1998年8月以来、24年ぶりの円安ドル高水準を更新した。歴史的なインフレに対処するため米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的な利上げを継続し、日米金利差が拡大するとの観測から、円売りドル買いが優勢となった。
FRB高官が前日、インフレ抑制を優先する考えを強調。日銀が景気下支えのため超低金利政策を続ける中、日米の金融政策の違いが改めて鮮明になり、資産運用に不利な円が売られた。日本時間1日夜に発表された米経済指標が堅調だったことから、一段と円安ドル高が進んだ。
●ロンドン外為 円、139円台前半 9/1
1日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、日米金利差の拡大観測から円売り・ドル買いが優勢となり、1ドル=139円台前半に下落した。正午現在は139円25〜35銭と、前日午後4時(138円55〜65銭)比70銭の円安・ドル高。
海外市場の流れを引き継ぎ、朝方から139円台前半で推移した。市場では、この日発表される8月のISM米製造業PMIや、翌日の米雇用統計を見極めようとの雰囲気が強い。
対ユーロは1ユーロ=139円50〜60銭(前日午後4時は139円35〜45銭)と、15銭の円安・ユーロ高。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0010〜0020ドル(1.0050〜0060ドル)。
ポンドは1ポンド=1.1555〜1565ドル(1.1630〜1640ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9785〜9795フラン(0.9755〜9765フラン)。
●NY円、140円15〜25銭 9/1
1日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比1円24銭円安ドル高の1ドル=140円15〜25銭を付けた。 
●「アベノミクスの手仕舞い」に財務省が動き出した…「ミスターJGB」? 9/1
「異次元緩和」がついに終わる
安倍晋三元首相が銃撃に倒れ、日銀の黒田東彦総裁の任期満了も来春に迫る中、財務省は「アベクロ時代」の終焉に伴う「異次元緩和策」の手仕舞いへの備えを急いでいる。国の借金が国内総生産(GDP)の2倍に膨らむ中、日銀が緩和縮小に動けば、長期金利が上がって国債の利払い費が急膨張しかねないからだ。今春以降、インフレ圧力の高まりを受けて米連邦準備理事会(FRB)が急速な金融引き締めに乗り出した一方、黒田日銀が物価上昇率目標2%を達成できていないことを理由に異次元緩和を堅持してきたことから、日米金利差拡大を背景に円安・ドル高が急速に進んだ。
賃上げが進まない中、エネルギーや原材料、食品などの輸入価格上昇を増幅する円安は、世論の間で「悪い円安」と懸念を広げた。財務省にとっては国富の海外流出に伴う経常収支の赤字拡大も悩ましい問題で、放置すれば「日本売り」につながりかねないリスクもあるだけに、茶谷栄治次官(1986年入省)ら中枢は「黒田緩和の矛盾が噴出し、いよいよ限界に近付いてきた」との思いを強めた。
「ミスターJGB」を呼び戻す「異例人事」
6月に、国債管理政策を担う理財局長に「ミスターJGB(日本国債)」の異名を取る斎藤通雄氏(1987年入省)を上がりポストの東海財務局長から呼び戻す異例の人事を行ったり、新たな有識者会議「国の債務管理に関する研究会」を立ち上げたりしたのも、日銀の異次元緩和の見直しに備えるためだった。斎藤氏は国債を市場で大量に売りさばくようになった1998年から2001年まで市場の制度整備に携わり、旧大蔵省の資金運用部による買い入れ停止をきっかけに長期金利が一時、0.6%台から2.4%台に跳ね上がった「運用部ショック」の収拾に奔走。2010年から2013年までは理財局国債業務課長や国債企画課長を務め、東日本大震災の復興財源を調達するための復興債の発行などを手掛けた。メガバンクや大手証券など国債の買い手である大手金融機関の市場部門と太いパイプを持つ斎藤氏は、以前にも理財局長への起用が有力視されていた。
だが、森友学園への国有地売却やその後の公文書改ざんの発覚で、理財局長が国会での追及の矢面に立たされる「修羅場ポスト」となり、将来の次官級候補を就けて「組織防衛」を最優先する必要が生じたため、斎藤氏の起用が見送られた経緯がある。安倍首相の退陣後に森友問題が落ち着く一方で、アベノミクスの修正を掲げる岸田文雄政権が発足して日銀の異次元緩和の見直し観測が台頭する中、「ミスターJGB」を必要とする場面がいよいよ到来した。
タガが外れた自民党「積極財政派」
アベノミクスが始まった2013年度以降、2021年度まで国債発行残高は約300兆円も増える一方、国の利払い費の増加額は約5000億円にとどまっている。異次元緩和が財政の資金繰りの円滑化に大いに役立ってきたことは、財務省も認めざるを得ない。ただ、やっかいなことにその効果が絶大だったがゆえに、永田町の財政規律に対する意識が喪失し、自民党内では安倍氏につらなる積極財政派を勢いづかせる大きな副作用ももたらした。
今では「自国通貨建ての国債が発行できる国は財政破綻しない」という現代貨幣理論(MMT)を信奉する与党幹部が跋扈するような状況で、財務省としては財政健全化のタガを締め直すためにも、異次元緩和の見直しに向き合わざるを得ないのが実情だ、安倍氏の死去により、市場で異次元緩和の手仕舞い観測が一層強まる中、投機筋は盛んに日本国債売りを仕掛けている。
日銀にも次官級OBを送り込む
安倍氏とアベノミクスを二人三脚で推進してきた黒田日銀は無制限に国債を買い入れる指し値オペを連発し、長期金利の上限を誘導目標の0.25%以内に抑えようと躍起になっているが、「こんな状況を長く続けられるわけではないのは誰の目にも明らか」(官房筋)だ。ポスト黒田の日銀にとって最大のマンデートが異次元緩和の修正になるのは確実で、財務省は国債消化の日銀頼みからの脱却を迫られている。
次期総裁にはともに日銀生え抜きの雨宮正佳副総裁と、中曽宏前副総裁のいずれかが就くことが有力視されているが、財務省は新執行部の副総裁に次官級OBを送り込み、金利上昇による国債市場の混乱を抑える異次元緩和の出口戦略を描く腹積もりだ。しかしながら、10年近くもの長きにわたって相場を大きく歪めてきた「何でもありの金融政策」の後始末は、一筋縄では行きそうにない。 
●NY市場 1ドル=140円台まで下落 24年ぶりの円安水準  9/1
1日のニューヨーク外国為替市場、円相場は1ドル=140円台まで値下がりし、1998年8月以来、24年ぶりの円安水準を更新しました。アメリカが大幅な利上げを続けるという見方が広がり、円安が一段と加速しています。
1日のニューヨーク外国為替市場では朝方から円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は1ドル=140円台まで値下がりしました。140円台をつけるのは1998年8月以来、24年ぶりです。
1日発表された製造業の景況感に関する経済指標が市場の予想を上回ったことから、アメリカの景気は底堅く、中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が大幅な利上げを続けるという見方が広がりました。
このため、アメリカの長期金利が上昇し、日米の金利差の拡大が意識されて円を売ってより利回りの見込めるドルを買う動きが強まりました。
市場関係者は「FRBのパウエル議長が先週の講演で利上げを続ける姿勢を鮮明にして以降、金融引き締めの長期化に警戒感が強まっていることも円相場の下落につながっている。円安がどこまで進むか見通せない状況だ」と話しています。
円相場は、この1か月でおよそ7円値下がりしていて円安が一段と加速しています。
なぜこれほどの急変動?
円相場は7月中旬に1ドル=139円台まで急速に円安が進んだあと、8月はじめには一気に1ドル=130円台まで値上がりし、その後、再び140円台まで円安が進みました。
円相場がこれだけの短い期間に10円近い変動を繰り返すのは異例のことで、背景にはアメリカの記録的なインフレの先行きや金融引き締めについて投資家の見方がめまぐるしく変わったことがあります。
アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会は、記録的なインフレを抑え込むため6月と7月の金融政策を決める会合で、連続で0.75%の大幅な利上げを決めました。
これだけの大幅な利上げを連続で行うのは1980年代に当時のFRBのボルカー議長がインフレを封じ込めたとき以来、およそ40年ぶりの金融引き締めだと言われています。
これに対して、日銀は長期金利を0.25%以内に抑え込み今の大規模な金融緩和を続ける姿勢を鮮明にしています。
こうした日米の違いが強く意識されて金利が上昇するドルを買って円を売る動きが強まり、円相場は7月14日には1ドル=139円38銭まで値下がりしました。
その後は、FRBの急速な金融引き締めでアメリカで景気後退が進むという警戒感が強まり、一転して円が買い戻され8月2日には1ドル=130円台前半まで円高ドル安が進みました。
また投資家の間ではアメリカのインフレはピークをすぎ、金融引き締めのペースも落ちるという見方も出ていました。
ただ、そうした投資家の見方をけん制するようにFRBの高官からはインフレ抑制のために大幅な利上げの継続が必要だという発言も相次ぎ、円相場は再び円安方向に動き出します。
さらにFRBのパウエル議長がアメリカ西部・ジャクソンホールで行われた先週末の講演で利上げを継続する姿勢を鮮明にしたことで日米の金利差の拡大が改めて意識され、円を売ってドルを買う動きが強まり、およそ24年ぶりに1ドル=140円台まで値下がりしました。
この1年の円相場は
円相場はさまざまな経済情勢を反映して変動しますが、今回の円安の背景には日本とアメリカの金融政策の動向が大きく影響しています。
1年前の去年9月。円相場は1ドル=110円前後。新型コロナウイルスの感染状況などをにらみながら、一進一退の動きが続いていました。しかし、去年10月以降、原油高に伴うインフレへの懸念からアメリカが金融引き締めに向かうという見方が広がって、円安ドル高が進み始めました。
ことし2月下旬のロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、原油をはじめとする資源価格が一段と高騰。インフレを抑え込むため、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が利上げを急ぐ一方、日銀は金融緩和を続ける姿勢を堅持し日米の金利差の拡大が強く意識されるようになりました。
3月に日銀が長期金利の上昇を抑えるため、一定期間、指定した利回りで国債を無制限に買い入れる措置に踏み切って金融緩和を続ける強い姿勢を示したことで円安ドル高は一気に加速。
円相場はおよそ20年ぶりの円安ドル高水準となる1ドル=126円台をつけました。
その後もアメリカが大幅な利上げを続け日米の金利差はさらに拡大。円相場は4月には1ドル=130円台、6月には1998年10月以来およそ24年ぶりの円安水準となる135円台前半をつけ、7月には一時、139円台前半まで値下がりしました。
円相場はいったん130円台まで戻したものの、1日のニューヨーク市場で1ドル=140台をつけました。
「金融危機」以来の円安
24年前の平成10年・1998年、日本経済は「金融危機」に直面していました。
前の年の1997年に北海道拓殖銀行や山一証券などが相次いで経営破綻したことを受けて、市場では金融システムに対する不安から「日本売り」が強まり、急速な円売りで円安ドル高が進行。1997年1月に1ドル=115円から120円程度だった円相場は、1998年1月には130円台に値下がりしました。
政府・日銀は円安に歯止めをかけるため、4月と6月に「円買い・ドル売り」の市場介入に踏み切りましたが円安の流れは止まらず、8月には1ドル=147円台をつけました。円安を阻止するための「円買い・ドル売り」の市場介入は、このときを最後に実施されていません。
ただ、その後、ロシアの経済危機を受けてアメリカのヘッジファンドが経営破綻。アメリカ経済の先行きに悲観的な見方が急速に広がったことなどから円高ドル安に転じ、10月には1ドル=110円前後まで一気に円高が進みました。
この年は日本長期信用銀行や日本債券信用銀行も経営破綻し、不良債権処理を迫られた金融機関がみずからの経営を優先して企業への融資を控える「貸し渋り」ということばが流行語にもなりました。
円安のメリット・デメリットは
円安は、海外に製品を輸出する企業や海外で事業を展開する企業にとっては利益を押し上げるメリットがあります。海外で稼いだドルなどの外貨をより多くの円に換えることができるためです。
SMBC日興証券によりますと、円安の進行などを背景に旧東証1部に上場していた3月期決算の企業のうち、製造業を中心に107社が今年度1年間の最終的な利益の見通しを上方修正しました。
ただ、日本企業は長く続いた円高の影響を軽減させるため生産拠点の海外移転を進めてきたことから、かつてほど輸出によるメリットは大きくないという指摘があります。
また、円安には外国人観光客を呼び込むプラスの面もありますが、新型コロナウイルスの感染拡大でそのメリットも薄らいでいます。
一方、デメリットとしてはロシアのウクライナ侵攻以降、原油などのエネルギーや穀物などの価格が高止まりする中、原材料を輸入する際のコストが一段とかさむことが挙げられます。
民間の信用調査会社、帝国データバンクが7月に全国の企業2万5000社余りを対象に実施した調査では、業績への影響について「マイナス」と答えた企業が全体の61%に上りました。原材料価格の上昇によるコスト負担の増加に加えて、コストの上昇を販売価格に転嫁できず収益が悪化したことなども理由として挙げられています。
このため、今の円安はデメリットのほうが大きい「悪い円安」だという指摘も出ています。 

 

●東京市場の円安、140円43銭まで進行 9/2
日銀によると、2日の東京外国為替市場で一時1ドル=140円43銭まで円安ドル高が進んだ。
●円安止まらず140円台 年明けから25円下落 9/2
2日の東京外国為替市場で円安が加速し、日銀によると、一時1ドル=140円43銭まで下落した。日本がバブル崩壊後の金融危機だった1998年8月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準を更新した。円は今年に入ってドルに対し25円程度下落しており、日米の金融政策の違いによる金利差拡大を意識した円安が止まらない。
午後5時現在は前日比96銭円安ドル高の1ドル=140円24〜26銭。ユーロは39銭円安ユーロ高の1ユーロ=140円08〜12銭。
市場では「海外勢は日本政府が口先介入しかできないとみている」(外為ブローカー)との声もあった。
●円、140円台前半=ロンドン外為 9/2
週末2日朝のロンドン外国為替市場の円相場は、円売り・ドル買いが進んだ海外市場の流れを引き継ぎ、1ドル=140円台前半で推移した。午前9時現在は140円25〜35銭と、前日午後4時比25銭の円安・ドル高。
●欧州市場の主要指標11時半 ロンドン株、堅調 ユーロは小高く推移 9/2
2日午前のロンドン株式市場でFTSE100種総合株価指数は堅調に推移し、英国時間11時半時点は前日比0.54%ほど高い水準で取引されている。前日まで大幅に4日続落していたため、値ごろ感を意識した買いが入った。北海ブレント先物などの上昇を受け、エネルギー株が買い直されている。
ドイツ株価指数(DAX)は1%強上昇し、フランスCAC40も高値圏を維持。欧州主要600社の株価指数であるストックス600は前日比0.64%ほど高い水準で推移している。欧州天然ガス価格の指標となるオランダTTF先物価格が下落しており、投資家が過度なリスク回避姿勢を後退させた。
ロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで小高く推移し、英国時間11時半時点は1ユーロ=0.9990〜1.0000ドルと前日の同16時時点と比べ0.0060ドルのユーロ高・ドル安で推移している。欧州株高を受け、ユーロ買い・ドル売りが優勢となっている。
英ポンドは対ドルで上昇し、英国時間11時半時点は1ポンド=1.1560〜70ドルと、前日の同16時時点より0.0040ドルのポンド高・ドル安で推移している。
ロンドン原油市場(ICEフューチャーズ)で北海ブレント先物相場は1バレル94.30ドル近辺と前日の終値に比べ2%ほど上昇している。ロンドン地金市場協会(LBMA)の金価格も上昇。国際指標のロンドン金属取引所(LME)の銅3カ月先物は下落している。
●NY円 一時140円80銭 24年ぶり円安ドル高水準  9/2
2日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、朝方発表された8月の米雇用統計の内容が堅調だったのを受けて対ドルで下落し、一時1ドル=140円80銭を付けた。日本がバブル崩壊後の金融危機だった1998年8月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準を更新した。
午後5時現在は、前日比08銭円高ドル安の1ドル=140円07〜17銭だった。
雇用統計は、景気動向を敏感に映す非農業部門の就業者数が前月比31万5千人増と市場予想を上回った。力強い労働市場を背景に、FRBが高インフレを抑えるために利上げを加速するとの観測が高まり、ドル買い円売りが進んだ。
●24年ぶり1ドル=140円…日本の「逆行通貨政策」が呼んだ円急落 9/2
日本円の眠れない夜だ。1日(現地時間)のニューヨーク外国為替市場で日本円は1ドル=140円台まで値下がりした。アジア通貨危機当時の1998年8月以来24年ぶりの円安ドル高水準だ。値下がりペースも速い。今年に入って18%(25円)も円安ドル高が進んだが、こうしたペースは1979年(19%)以来43年ぶりだ。インベスティングドットコムによると、2日午前11時30分現在、1ドル=140円10銭で取引されている。
円安の主な要因は日本銀行(日銀)の「逆行」通貨政策だ。米国など主要国の中央銀行が政策金利を相次いで引き上げて緊縮に入っているが、、日銀は依然として緩和的通貨政策を維持している。ブルームバーグは「米国と日本の通貨政策トップの発言がタカ(通貨緊縮)とハト(通貨緩和)に明確に分かれている」と分析した。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は先月26日(現地時間)、ジャクソンホールミーティングで「今は利上げをやめる時ではない」とし「歴史は通貨政策を早期に緩和してはいけないと強く警告している」と述べた。
一方、日銀の黒田東彦総裁は7月の記者会見で「金利を少し上げて円安が止まるとは到底考えられない」とし「金利調整で円安を防ごうとすれば大幅に利上げすべきだが、その場合、景気に悪影響を与えかねない」と述べた。
米国と日本の通貨政策デカップリングはさらに深まる可能性が高い。米国の各種経済指標が好調であるため、米国が緊縮の速度を遅らせる可能性は低下している。1日(現地時間)、米国の製造業関連の指標が出て、こうした差はさらに明確になった。供給管理協会(ISM)の8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)はウォール街の予測値(51.8)を上回る52.8となった。
さらに米国の週間新規失業保険請求者数は3週連続で減少した。米労働省によると、先月27日に集計した週間新規失業保険請求者数は前週比5000人減少した23万2000人。ウォール街は24万5000人と予想したが、これよりも雇用状況が良かった。FRBがインフレに対応して利上げを継続する余力があるということだ。こうした雰囲気を反映するかのように米国債10年物の利回りは1日(現地時間)に3.295%まで上がった。ブルームバーグは「投資家は日本より米国で魅力的な収益を追求できるため円安が加速している」と報じた。
日本円の急落にもかかわらず、専門家らは日本が緩和的通貨政策を維持すると予想している。ウォールストリートジャーナル(WSJ)は「少なくとも黒田総裁の任期が終わる来年4月まではこうした(緩和的)通貨政策は続くだろう」と報じた。
しかし円安の中でも日本企業は過去のような浮揚効果を得られずにいる。輸出競争力が高まるよりも原材料・エネルギー輸入費用が大きく増えたからだ。ブルームバーグは「日本製鉄は円安による原材料コストの急騰と戦っている」とし「原材料価格の急騰に円安までが重なり、日本企業が負担する鉄鋼価格は地球上で最も高い」と報じた。
大和証券の阿部健児チーフストラテジストは「1円の円安ドル高で上場企業の経常利益が0.4%減少する」と分析した。日本経済新聞は1日、「新型コロナ防疫問題のため、円安でも日本を訪問する外国人観光客が増えていない」とし「円安の局面で日本経済をどう活性化するのか、日本政府の悩みが深まっている」と報じた。
●140円台加速 24年ぶり円安水準更新も… 「問われる政府・日銀の覚悟」 9/2
私達の家計を直撃する物価高をお伝えする「家計クライシス」。きょうもテーマは「円安」です。24年ぶりに140円の大台を突破し、きょうも加速しています。しかし政府は、円安阻止に動こうとせず、静観したままです。
会社員「こんなに円安になっちゃって、本当に大丈夫なのかな。生活に密着しているところで物価高」
「資源価格が高騰している。何しても上がってるし、食品関係もどんどん値上がりしている。庶民の生活を守ってほしい」
歴史的な円安が止まりません。昨夜23時過ぎに、24年ぶりに140円台をつけた円相場。きょうの東京市場でもジワジワ円安が進み、午後3時過ぎには40銭台に。今年に入って25円以上円安が進んだことになります。
TBSテレビ 木戸誠人経済部長「これまで心理的な壁とされてきた140円を突破したことで、このままさらに円安が進むのかどうか、見通しが極めて難しくなりました」
原材料の多くを輸入に頼る日本では「円安」はそのまま「物価高騰」に直結します。
アメリカから牛肉を輸入しているステーキ店。円安で、一番人気のメニュー、アウトサイドステーキを値上げしました。
ステーキハウスTRUMP 渡辺洋平さん「(2年半前の)オープン当初が2300円ぐらい、今は大体2900円、約3000円。ランチで来ていたお客さんが結構減りました。苦しいし、もう耐えるしかない」
お客さんは…
客「値上げに気づかなかったけど、言われたら上がっている。物は本当にどんどん高くなっている」
一方、円安の影響はあの「シウマイ弁当」にも。「崎陽軒」は来月1日から平均4%の値上げを行います。定番商品の「シウマイ弁当」を860円(税込)から900円(税込)に値上げします。
円安の原因は、日米の金利差です。アメリカが急激な利上げを進める一方、日銀は頑なに金融緩和を変えず、円安阻止に動こうとはしていません。
一方、生活を圧迫する円安に政府も静観したままです。今年4月、1ドル=126円台の時、鈴木財務大臣は…
鈴木俊一財務大臣「しっかり緊張感をもって、これからの為替の動向については注視していきたい」
そしてこのときから15円近く円安が進んだきょうも…
鈴木俊一財務大臣「高い緊張感をもって注視をしてまいりたい」
発言は5か月前とほとんど変わっていないのです。
TBSテレビ 木戸誠人経済部長「ずっと『注視している』だけで、どうせ政府・日銀は何も手を打たないと、市場に見透かされている状態が続いています。円安が物価高につながり、国民生活を圧迫しているのにこのままでいいのか。政府・日銀の覚悟が問われていると思います」
●24年ぶり円安水準 1ドル140円台前半 暮らしに影響は 9/2
2日の東京外国為替市場、アメリカが大幅な利上げを続けるという見方から円安が一段と加速し、円相場は一時、24年ぶりの円安水準となる1ドル=140円台前半まで下落しました。
2日の東京外国為替市場では、日本時間の1日夜発表されたアメリカの経済指標が市場の予想を上回ったことを受けて、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が大幅な利上げを続けるという見方が広がりました。
このため、日米の金利差の拡大が意識され、円を売って、より利回りの見込めるドルを買う動きが進み、円相場は一時、24年ぶりの円安水準となる1ドル=140円台前半まで下落しました。
円安は海外に製品を輸出する企業や海外で事業を展開する企業にとっては、利益を押し上げるメリットがある一方、原材料などを輸入する場合はコストがふくらむデメリットがあります。
原材料価格や物流費の上昇を背景に、食料品などの値上がりが続いているだけに、円安ドル高に歯止めがかからなければ、一段の値上がりにつながる可能性が出てきています。
生活への不安の声も
円相場が一時、24年ぶりの円安水準となる中、街の人からは、値上げによる生活への不安の声などが聞かれました。
大阪市内で飲食店を経営する60代の男性は、「仕入れ値が上がって大変ですが、メニューの値段は、なかなか上げられないので大変です」と話していました。
60代のパート従業員の女性は、「ふだん買い物に行っても、同じお金で買える物が減ったと感じます。年金とパート代で暮らしているので、物の値段が上がると困ります」と話していました。
10代の大学生の女性は、「海外のコスメや食べ物の値段が前よりも高くなって出費が増えました」と話していました。
ビルの管理会社で働く60代の男性は、「今は仕事への影響はないですが、ガソリンの値段も上がっているし、取引先も材料費が上がっているというので、今後が心配です」と話していました。
宇治茶農家 燃料高などで“節約しないと”
宇治茶の農家では、円安などの影響でお茶の生産に必要な燃料の価格が上がっていて、さらなる円安の加速に懸念を強めています。
京都府南部を中心に行われている宇治茶の生産では、春に収穫した茶葉を乾燥させる工程でボイラーを使っています。
宇治市の吉田利一さんの茶園では、毎年5月、茶葉を乾燥させるため重油を利用しています。
ことし使用した重油の価格は、1リットルあたり93円と去年よりおよそ30%ほど値上がりしていて、費用は37万円余りに膨らんでいるということです。
新型コロナの影響でお茶会の開催が減っているほか、外国人旅行者への販売量も落ち込んでいることもあり、廃業する農家も出ているということで、円安が加速して負担がさらに強まることを懸念しています。
吉田さんは、「燃料のほかにも農薬や肥料の価格も上がっているので、工夫して節約をしないといけない状況です。苦しいですが、いまは我慢するしかありません」と話していました。
●日経平均3日続落、終値10円安の2万7650円 9/2
2日の東京株式市場で日経平均株価は小幅に3日続落し、前日比10円63銭(0.04%)安の2万7650円84銭で終えた。8月2日以来1カ月ぶりの安値となる。寄り付きは前日の大幅安を受け自律反発狙いの買いが値がさ株の一角に入り上昇して始まったが、一巡後は戻り待ちの売りに押され下げに転じた。ただ、下げた場面では押し目買いも入り下げ幅は限定的だった。
2日の日本時間夜に8月の米雇用統計の公表を控え、米国の経済や金融政策の先行きに対する警戒感を背景とした売りが優勢だった。米長期金利の上昇を受けハイテクなどグロース(成長)株などが売られ指数を押し下げた。東証業種別では鉄鋼、空運業、非鉄金属、鉱業の下げが目立った。
朝方は前日の大幅安で200日移動平均線(1日時点で2万7501円)に接近。目先の反発を期待した買いが入り上げ幅は一時100円を超えたが、続かなかった。
大和証券の壁谷洋和チーフグローバルストラテジストは、「外国為替市場で1ドル=140円台半ばまで進んだ円安・ドル高も下値を支える要因になったが、投資家の米金融政策の引き締めに対する警戒感は相当強く上値を抑えた」とみていた。
東証株価指数(TOPIX)は3日続落し、前日比5.32ポイント(0.27%)安の1930.17で終えた。
東証プライムの売買代金は概算で2兆4774億円。売買高は10億3061万株だった。東証プライム市場の値下がり銘柄数は1096と、全体の約6割を占めた。値上がりは650、変わらずは91だった。 

 

●為替相場 8/29-9/2 9/3 
まとめ8月29日から9月2日の週
29日からの週は、ドル買いの動きが広がった。前週末のパウエルFRB議長講演で景気後退となってもインフレが抑制するまで利上げを継続する、との強い姿勢が示されたことが背景。市場にドル買い安心感を広げた。一方、日銀の黒田総裁は緩和継続以外の選択肢はないと発言しており、日米の金融スタンスの差が一段と拡大した。また、8日に理事会を控えるECBメンバーからも75bp利上げを主張する声が高まっており、日欧の金融スタンスの差も拡大している。ドル円、ユーロ円ともに買われた。ドル円は24年ぶりの140円台乗せ。ユーロ円も140円近辺に上昇。ドル相場全体ではドル高圧力が優勢。ポンドドルは一時1.15台割れ、豪ドル/ドルは0.67台へと下落した。一方、ユーロドルはパリティ水準を挟んで綱引き状態になっている。ユーロは対ポンドでも堅調。英欧ともに高インフレが景気後退リスクを高めているが、英国ではさらに次期新首相のもとでの政策が不透明であることが不透明感を広げていた。一方、ユーロ相場にとっては天然ガス先物が低下していることも支援材料。予定より早く備蓄が進展していることや、ロシアからのガス供給再開期待も広がった。週末の米雇用統計は依然タイトな米労働市場に若干の緩和の兆しを見せた。非農業部門雇用者数(NFP)は31.5万人増と予想を若干上回った一方、失業率は3.7%に悪化した。注目だったのが労働参加率が62.4%に上昇したこと。特に女性が参加率を押し上げたようだ。パンデミックで労働市場から一時離れていた人々が戻りつつあるのかもしれない。労働人口が増加するにつれ賃金の伸びは鈍化し、いずれインフレの落ち着きに貢献する可能性がある。
29日
東京市場は、ドルが全面高。先週末のジャクソンホール会議でのパウエル議長講演を受けて、9月の大幅利上げ観測が高まったことが背景。市場での利上げ幅見通しは0.75%が75%、0.50%が25%となっている。米10年債利回りは6月29日以来、約2ヶ月ぶりの高水準となっている。ドル円は137円台半ばでスタート後、すぐに138円台に乗せると、そのままの勢いで午後には139円ちょうど前後まで上昇した。円に関してはジャクソンホール会議で黒田日銀総裁が緩和継続以外の選択肢はないと発言したことが円売りを誘っており、ドル全面高の流れの中でも特にドル円が上がりやすくなっていた。ユーロドルは0.99台後半から0.9914まで下落。ドル高基調の中、ユーロ売りドル買いが進んだが、ドル円ほどの動きにはならず。ドル主導の中、やや方向感がわかりにくいユーロ円は137円ちょうど近くから137.82レベルを付けるところまで円売りが入った。
ロンドン市場は、ドル買いに調整が入った。ドル円は東京市場で139円の大台を付けた後、売りに押された。英国がバンクホリデーで休場となっており、取引参加者が少なくなっていることも調整につながったようだ。138.30台まで反落。ただ、買い戻しに138.60台まで再び上昇した。ユーロドルは買い戻しが入り、パリティ水準を回復すると1.0030付近まで上昇。週末にはホルツマン・オーストラリア中銀総裁やクノット・オランダ中銀が9月のECB理事会での0.75%利上げの可能性に言及したことを、欧州勢が改めて材料視した面も指摘された。ユーロ円は東京市場から引き続き堅調で、137円台後半から138円台半ばへと一段高に。週末にジャクソンホール会議でのパネルディスカッションで黒田日銀総裁が緩和維持以外の選択肢はないと発言したことなどが円売りを誘った形。
NY市場では、ドル売り一巡後は値動きが落ち着いた。ドル円は序盤に138円台前半へと軟化したが、その後は138.90付近まで再び上昇した。ユーロドルはNY時間にかけて買い戻しが膨らみ、パリティ(1.00ドル)を一時回復。ただ、パリティを回復すると戻り待ちの売り圧力も強まるようで、再び0.99台に値を落とす動きも見られている。先週はパウエルFRB議長のジャクソンホールでの講演で、「インフレ対策として金利をさらに上昇させる必要がある」と述べたことを受けてドルが上昇。FRBは、利上げが自国経済に大きなリスクとなっている他の中央銀行とは一線を画している雰囲気もある。これは明らかにタカ派なFRBと、タカ派ではあるが懸念を募らせているECBなど他の中央銀行との間のかい離を背景にした動きだとの指摘も聞かれる。一方、ECBにも0.75%利上げの可能性を探るタカ派の意見があり、綱引き状態に。ポンドドルは序盤に1.17台前半へと買われた後は、一時1.17台割れと売買が交錯した。東京午後には一時1.16台半ばと2020年3月以来の安値水準を付ける場面があった。市場からは、英経済は第4四半期からリセッション(景気後退)に入り、来年の第2四半期までに実質GDPが1%程度縮小するとの予想も。
30日
東京市場で、ドル円はやや頭の重い展開だった。前日はロンドン勢不在の欧州市場でドル円はいったん調整売りとなり138円台前半に値を落とした。その後、NY市場で138.80台まで戻して東京朝を迎えた。東京市場ではドル買い円買いの動き。リスク回避の意識が強く、ドル円は138円台前半へ軟化。ユーロドルはNY市場で回復したパリティを割り込み0.9982を付ける動き。午後に入ってユーロドルは買い戻しが入り、パリティを回復。目立った方向性はみられず。ユーロ円は午前の安値から昼前に138.60台まで回復も、その後138.40割れとなった。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。欧州株や米株先物が堅調に推移し、パウエルFRB議長講演を受けた株式市場の警戒感は一服。リスク警戒のドル買いに巻き戻しが入った。ドル円はロンドン序盤に138.60付近から138円台前半へと下押し、足元ではさらに138.05近辺へと安値を広げている。米債利回りが低下、10年債利回り3.10%付近から3.05%付近へと水準を下げている。ユーロドルはしばらく1.0000のパリティ付近で揉み合ったが、一気に1.0025近辺に上昇したあと、高値を1.0055近辺へと伸ばした。ポンドドルも1.17ちょうど付近から一時1.1760近辺まで上昇。しかし、その後は対ユーロでの売りもあって1.17台前半に押し戻されている。この日発表された一連のドイツ各州消費者物価指数は前年比が一段と上昇、一方でユーロ圏景況感は2か月連続での100割れと低迷した。英消費者信用残高は前年比6.9%増となったが、インフレの影響が色濃く出た可能性もあり、消費の強さを示したものかどうかは不透明。米大手金融機関からは来年初頭にはインフレが20%超となり、来年のマイナス成長の予想が伝えられている。クロス円は欧州株高を受けて円売りが先行も次第に上げを失っている。ユーロ円は138円台での上下動、ポンド円は162円付近から162円台半ばで上に往って来い。
NY市場では、一転してドル買いが強まった。ドル円は139円台に一時上昇。米株式市場でダウ平均が一時400ドル超下落するなどリスク回避の雰囲気が強まり、ドル買いを誘発した。この日発表の米消費者信頼感指数や求人件数が強い内容となり、FRBのタカ派姿勢を正当化する内容となったことに反応した。市場では、金曜日のパウエルFRB議長の講演で、インフレ抑制に向けたFRBのコミットメントを再確認したことから、ドルはしばらく堅調に推移するとの声も多い。ユーロドルは一時0.99ドル台に伸び悩む動きが見られたものの、買戻しの機運も出ており、パリティ(1.00ドル)の水準は維持している。先週のパウエルFRB議長の講演でFRBのタカ派姿勢が確認されたが、ECBもタカ派姿勢になるとの見方がユーロの下値を支えているようだ。バスレ・スロベニア中銀総裁は、7月の0.50%ポイントの利上げより大幅となり得る利上げを来週の理事会で支持すると述べていた。ポンドドルは一時1.1620付近まで下落し、2020年3月以来の安値水準を更新。過熱感を測るRSIが30付近まで低下しており、下げ過ぎ感も台頭しているが、ポンドはガス危機と構造問題を抱え、回復に苦戦するとの指摘も根強い。
31日
東京市場では、ドル高に対する調整が入った。ドル円は朝方の138円台後半から徐々にドル売りに押された。午前の取引で138円台半ばを割り込むと、午後に入ってからも売りに押されて138.33近辺まで下落した。昨日の海外市場、ドル高局面では1ユーロ=1ドルを割り込む動きを見せたユーロドルは、その後少し買いが入り、1.0010台で東京市場を迎えた。1.0046近辺まで一時反発。来週のECB理事会での0.75%利上げへの期待が支えとなっている。ユーロ円は目立った動意が見られず139円ちょうどを挟んだレンジ取引に終始した。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。ユーロ売り・ドル買いの動きが主導している。ユーロドルは1.0050手前で上値を抑えられるとパリティ割れから0.9970台へと下押しされている。ポンドドルも1.17手前まで買われた後は売りの流れに転じ、1.1610台へと下落。ドル円は連れ高となり、138.20台から138.90付近へと買われた。米10年債利回りが3.09%付近から3.19%付近へ上昇する動きがドル買い圧力に。また、欧州経済への不透明感が欧州通貨売りを誘った面も。8月のイタリアとユーロ圏消費者物価が予想以上の上昇となり、ナーゲル独連銀総裁は、この結果を受けて「ECBは9月に強力な利上げが必要に、来週は決定的な行動が緊急に必要だ」と表明した。また、きょうから9月2日までロシアがノルドストリーム1のガス供給をメンテナンスのため停止するとしており、欧州天然ガス先物が上昇。2日以降の停止リスクも不安材料となっている。欧州株は買い先行も、下落へと転じている。
NY市場では、月末とあって積極的な売買が手控えられた。そのなかではユーロドルの上昇が目立った。0.99台後半からロンドンフィキシングにかけて1.0080付近まで急速の上昇。月末フローが活発に入ったもよう。この日は8月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)が発表され、総合指数で9.1%まで上昇していた。それに伴ってECBの利上げ期待も高まっており、短期金融市場では、中銀預金金利が10月までに1.25%まで上昇する可能性を織り込む動きが出ている。9月か10月の理事会での0.75%利上げの可能性を意味する。ポンドドルは1.16ちょうど付近でサポートされると1.1650付近まで買い戻された。しかし、上値は重く午後には1.16台割れを試す動きに。天然ガス価格の高騰で英インフレは来年に22%を超える可能性との指摘があるなかで、英景気後退観測が高まっている。ドル円は138円台半ばから後半での揉み合い。140円に向けた動きの可能性は温存している状況。
1日
東京市場で、ドル円は24年ぶりの高値水準に上昇。朝方のドル買いの動きで、7月につけた高値139.39レベルを上回り、139.68レベルと1998年以来、24年ぶりの高値水準をつけた。その後は高値圏推移が続いた後、株安の動きを受けた円買い圧力に押されて午後には139円台前半に調整された。来週のECB理事会での0.75%利上げ期待から海外市場で1.0080近くまで上昇したユーロドルはNY午後の1.0050前後でのもみ合いから、東京朝のドル買いに1.0020前後まで軟化、その後もユーロ売りの動きが継続し1.0008レベルを付けた。ユーロ円はドル円の上昇もあり午前中に140円ちょうどを付ける動き。午後に入ってドル円の調整とユーロドルの軟調地合い維持に139.50台まで反落した。
ロンドン市場は、根強いドル高圧力が広がった。特にポンドドルの下げが主導。序盤の1.16台乗せは一時的にとどまり、1.1550台まで下押しされている。2020年3月以来の安値水準に。英米欧の金融政策会合が9月に開催されるが、米欧で0.75%の大幅利上げ観測が台頭する一方で、英中銀についてはそれほどの利上げ幅観測が広がっていない。英新首相候補らが減税など景気対策に軸足を置くなかで、英中銀が大胆なインフレ対応がしにくい面も。高インフレ、来年のリセッション観測が広がるなかで、英経済は厳しい状況にある。ユーロドルは1.0050付近で上値を抑えられたが、下値も1.0003近辺までと方向性に欠ける揉み合い。ユーロ圏製造業PMI確報値は英国の数字とともに50割れと低迷した。ただ、ユーロは対ポンドでの買いが下支えになった面もあり、下落の動きは限定的だった。ドル円は東京市場で139.68近辺まで買われ、24年来の高値水準をつけたが、ロンドン市場では一時139.06近辺まで下押しされた。米債利回りが小幅に低下したことも重石だった。しかし、足元では139円台前半で下げ一服となっている。
NY市場で、ドル円は98年8月以来の140円台に上昇。この日発表の8月の米ISM製造業景気指数が52.8と前回と変わらずだったものの、予想を上回ったことがドル買いを誘発した。ここ数カ月冴えなかった新規受注や雇用指数が一気に50を回復し、総合指数は前回と変わらずだったものの、詳細は強い内容だったと言える。ただ、140円台に入ると、輸出企業などの実需筋やオプション絡みの売りオーダーも並んでいるようだ。明日の東京市場でも話題となりそうで、財務省の動きも警戒されるが、介入は口先だけに留まるものとみられる。ユーロドルはドル買いに押されて0.99台前半まで下落。目先は8月23日安値0.99ちょうど付近が下値メドに。ポンドドルも売りが加速し、瞬間的に1.15台を割り込んだ。2020年3月以来の安値水準。他のG10通貨と比較しても弱い値動きが続いているポンドだが、最近のポンド下落は英経済が直面する逆風への懸念を反映している可能性が指摘された。ポンドは目立ったマクロ経済ニュースに欠けるなかで低調に推移している。来週月曜日にはトラス外相が次期首相に指名される可能性が高まっており、新政権下での政策変更をめぐる不透明感も重石に。
2日
東京市場は、ドル円が再び高値を伸ばした。ドル円は朝方に140.24近辺まで上昇し、海外市場の高値を超えた。いったん調整が入って140円を割り込んだものの、その後再び140.40近辺に高値を伸ばした。ユーロドルではドル高が一服。昨日の海外市場でのドル高局面で0.9910台まで値を落としたユーロドルは0.9950前後まで値を戻して東京朝を迎え、東京市場ではじりじりとユーロ買いが入る形で0.9970台まで上昇。昨日1.1500近くまで値を落とし、その後1.1550前後まで戻して東京市場を迎えたポンドドルが、1.1550を挟んでの推移が続くなど、ドル円を除くとドル高は一服している。ユーロドルがしっかりで、ドル円が大きく買われる中、ユーロ円も買いが入っており140円近くを付けている。
ロンドン市場は、ユーロが堅調。ユーロドルはロンドン午前に一段高となっている。0.99台後半から一時1.0017レベルまで高値を伸ばした。欧州天然ガスをめぐる不透明感が緩和されていることがユーロ買いを誘ったようだ。ただ、ロンドン昼に向けては次第に動意を失っており、パリティ付近に落ち着いてきている。ユーロ円は140円台にしっかりとのせ、140.53レベルまで高値を伸ばした。足元では140円台前半に上昇一服。ドル円は140円台で高止まり状態。そのなかで一時140.43レベルと24年来の高値水準を小幅に更新している。欧州株の堅調とともに、米株先物も下げを消して揉み合いに。米10年債利回りは一時3.23%付近まで低下も、足元では3.25%と前日終値付近に落ち着いている。全般的に米雇用統計待ちのモードに入っていた。
NY市場は朝方発表の8月の米雇用統計を受け前半はドルの戻り売りが優勢となった。ただ、中盤になって市場はリスク回避の雰囲気を一気に強め、対欧州通貨中心にドルは買い戻しが強まる展開となった。きっかけはロシアのガスプロムがメンテナンスのために稼働を停止していたノルドストリームを、新たな技術的問題が発見されたとして、予定通り再開できないと発表したこと。土曜日に再開される予定だった。ただ、雰囲気を一変させるほどの材料とも思えず、地合いの弱さを感じさせる展開ではある。 

 

●米雇用統計から乱高下するも140円割れを買われて確り、歴史的上昇の継続 9/4
概況
ドル円は9月2日夜の米8月雇用統計へ向けたドル高継続感から9月1日夜に1998年8月以来の140円台に到達、2日午前に140.25円、雇用統計発表前には140.49円まで高値を伸ばしていた。
米雇用統計では非農業部門就業者数が予想を若干上回ったものの過去分の下方修正があり、失業率が予想外に3.7%へ悪化、平均時給の伸びも鈍化したため、これらの内容を見て米FRBの大幅利上げ姿勢が継続するのか若干緩むのか市場の解釈が定まらず、為替市場は当初にドル高反応を見せてからドル安へと変わり深夜以降はドル高へ戻るという乱高下型の反応となった。
ドル円は雇用統計発表直後に140.58円へ上昇してから早々に139.94円へ反落、更に140.79の高値をつけ、その後は139.90円台をサポートに買い戻し歩調で越週。やや乱調な展開となったが、ユーロドルが深夜から反落して再びパリティを割り込み、ポンドドルは深夜からの反落で昨年6月天井以降の最安値を更新するなど全般的には乱高下が落ち着いた後はドル高基調の継続という印象が強まったと思われる。
米雇用統計通過で為替市場は乱高下、NYダウは反落、米長期債利回りは低下
9月2日夜に米労働省が発表した8月雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比31.5万人増となり市場予想の30万人増を若干上回ったが7月からは伸びが鈍化した。6月分は速報の39.8万人増から29.3万人増へと大幅下方修正され、7月分も速報の52.8万人増から52.6万人増へと下方修正されて合計10.7万人の下方修正となった。失業率は3.5%の市場予想に反して3.7%への悪化した。また平均時給の伸び率は前月比が0.3%で7月の0.5%及び市場予想の0.4%を下回り、前年同月比は5.2%で7月と同じだったが市場予想の5.3%を下回った。
失業率の悪化と6月分の大幅下方修正にサプライズ感があったために市場の受け止め方も混乱が見られ、為替市場では9月1日夜から戻していたユーロやポンド、豪ドル等が雇用統計発表後に高値を切り上げたが、深夜から反落に転じてドル高基調の継続感を示して週を終えている。このうち9月8日のECB理事会で0.75%利上げが予想されているユーロドルは9月1日深夜安値割れには至らなかったが、利上げペースがそこまで上がらないとみられている英ポンドは9月1日深夜安値を割り込んで昨年6月1日天井以降の安値を更新して2020年3月底1.1404ドル割れへの余裕が乏しくなっている。
9月2日のNYダウは前日比337.98ドル安と反落した。8月26日に前日比1008.38ドル安の大幅下落から4日続落し、1日は買い戻しで下げ渋ったものの再び反落して8月16日高値以降の安値も更新したことで金融引き締めによる景気後退懸念の強まりを示した。ナスダック総合指数は9月2日を前日比154.26ポイント安として8月26日から6営業日続落となった。
一方で米長期債利回りは0.75%利上げの可能性がやや後退したとの受け止めで前日までの大幅上昇が一服して低下反応となった。10年債利回りは前日比0.06%低下の3.19%だったが、前週末の8月26日終値3.03%からは0.16%の大幅上昇だった。30年債利回りは前日比0.01%低下の3.35%だったが前週末の3.19%からは0.16%の上昇だった。2年債利回りは前日比012%低下の3.39%で前週末の3.38%からわずかな上昇だったが、9月1日には3.55%を付けて15年ぶり高水準に達している。
米FOMCの9月利上げ幅とその後の展開を巡る思案は暫く続く
米FRBは9月20-21日に次回FOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)を予定しており、0.50%ないし0.75%の利上げが予想されている。3月に0.25%、5月には通常の倍の0.50%、6月と7月は通常の3倍の0.75%ずつの利上げが決定されてきた。8月26日のジャクソンホールシンポジウムにおけるパウエル米FRB議長講演では従来からの「景気よりも物価抑制が最重要」との認識により物価抑制への強い決意が示されたことで0.75%利上げの可能性が高まり、地区連銀総裁達も雇用統計とCPIを見極めて0.50%か0.75%の利上げ幅を判断するとの見解を示していたのだが、8月米雇用統計の内容はいずれの利上げ幅になるのかという点では決定打にはならなかったと思われ、0.50%利上げがやや優勢となりつつも0.75%利上げの可能性を否定するものではなかったと思われる。
9月13日の8月米CPI、14日の8月米PPIの発表等を見て利上げ幅も判断されると思われるが、仮に9月の利上げ幅が0.50%であっても大幅な利上げであり、年末から来年への利上げ継続とその後も利上げした水準を維持する政策スタンスは劇的なインフレ低下が発生しないことには変わらないため、今後も米長期債利回りの上昇とドル高の基調は継続し、ドル円も高値追及への流れを続けるのではないかと思われる。
ドル円は7月高値を超えて1998年天井へ挑戦の流れ続く
ドル円は7月14日高値139.39円から8月2日安値130.39円まで9円の急落調整が入ったが、その後の反騰により7月14日高値を超えてダブル天井破りとし、24年ぶりの140円台に到達した。
概ね3か月(2か月強から4か月)周期の底打ちサイクルでは8月2日安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りした状況にあると思われる。サイクルトップも概ね3か月前後の周期であり、7月14日高値を基準として次の高値形成期は10月序盤から11月序盤にかけての間と想定されるので、米国の利上げ継続と日銀の金融緩和継続の環境が変わらなければドル高円安基調はさらに続くと思われる。
今後の上値目途としては、5月24日から7月14日への上昇幅13.04円と同規模のN字型上昇として143.43円、8月2日への下落幅の倍返しで148.39円と計測されるが、歴史的な過去の高値としては1998年8月11日天井の147.63円があり、140円台を固めて高値切り上げに入ればそれらの目標を順次試す可能性も十分にあるのではないかと思われる。
直前安値から10円を超える上昇の直後には調整安も入りやすく、2月24日から3月28日にかけて10.71円の上昇後に3月31日安値まで3.84円の反落が入り、そこから5月9日高値まで10.08円の上昇後に5月24日安値まで4.99円のやや長い調整が入っている。現状も直前高値から3円前後、やや大きめなら5円規模の反落が何時入っても不思議ないと思われるが、そうした急落調整でも中長期的な環境が変わらなければバーゲンハント買いされやすいと思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、139.50円を下値支持線、9月2日夜高値140.79円を上値抵抗線とする。
(2)139.50円以上での推移中は9月2日高値超えから142円台、さらに143円台を目指す上昇を想定する。
(3)直前高値から1円を超える規模の反落は入りやすいと注意し、139.50円割れからは139円前後試しを想定するが、139円前後は買い拾われやすいとみる。 

 

●円相場、140円56〜57銭 9/5
5日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=140円56〜57銭と、前週末(140円24〜24銭)に比べ32銭の円安・ドル高となった。 
●明日の為替相場見通し=ニューヨーク休場で方向性に欠ける 9/5
明日の為替相場見通し=ニューヨーク休場で方向性に欠ける  今晩から明日にかけての外国為替市場のドル円相場は、今晩のニューヨーク市場がレーバーデーで休場となるため、方向性に欠ける展開が予想される。ただ、この日の東京市場でユーロは対ドルで20年ぶりの安値圏に下落しており、このユーロ安の動きがどこまで続くかが注目されている。
●円、140円台半ば ロンドン外為 9/5
週明け5日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、円売り・ドル買いが進んだ海外市場の流れを引き継ぎ、1ドル=140円台半ばに下落した。正午現在は140円45〜55銭と、前週末午後4時比50銭の円安・ドル高。 

 

●円相場、141円55〜56銭 9/6
6日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=141円55〜56銭と、前日(140円56〜57銭)に比べ99銭の円安・ドル高となった。 
●円相場 1ドル=141円台後半まで値下がり 約24年ぶりの円安水準  9/6
6日の東京外国為替市場は、ドルやユーロといった主要通貨と円との金利差が改めて意識され、金利の低い円を売る動きが広がりました。円相場は、1ドル=141円台後半まで値下がりし、1998年以来、およそ24年ぶりの円安水準となりました。
東京外国為替市場では、日本時間の6日午後、オーストラリアの中央銀行が利上げを発表したことをきっかけに、投資家の間で、金融引き締めが続くドルなどの主要な通貨と円の金利差が改めて意識され、金利の低い円を売る動きが広がりました。
このため、円相場は1998年8月以来、およそ24年ぶりに141円台後半まで値下がりし、午後5時時点では、5日と比べて96銭、円安ドル高の1ドル=141円53銭から55銭でした。
またヨーロッパ中央銀行が今週、利上げを行うのではないかとみられていることから、ユーロに対しても円を売る動きが出ていて、5日と比べて1円87銭、円安ユーロ高の1ユーロ=141円18銭から22銭でした。
ユーロはドルに対して1ユーロ=0.9975から76ドルでした。
市場関係者は、「各地の中央銀行で利上げの動きが相次ぐなか、円との金利差は今後も広がるとみられることから、円が売られやすい状況は続きそうだ」と話しています。
日商 三村会頭「輸出ない企業や家計にとってコストアップ」
東京外国為替市場で円安が進んでいることについて、日本商工会議所の三村会頭は6日の記者会見で「輸出をしていない企業や家計にとってはコストアップにつながる」と述べ、先行きへの懸念を示しました。
この中で三村会頭は、アメリカで金融引き締めが進む一方、日本で大規模な金融緩和が続いていることを踏まえると、円安が進むのは当然だと指摘しました。
そのうえで、「日本の金融政策がこのまま続くかぎり円安は継続し、もっと進むかもしれないというおそれすら抱いている」と述べ、先行きへの懸念を示しました。
さらに三村会頭は、「日本はいま大幅な貿易赤字なので円安は日本経済にダメージを与えている。経営にプラスになる企業もあるが、輸出をしていない企業や家計にとってはコストアップにつながる。現在の円安が国全体にどういう影響を与えているかきっちり分析したうえでどうするか決めるべきだ」と述べ、円安のメリットとデメリットを見極めたうえで対応を検討すべきだという考えを示しました。
●1ドル=142円台まで一時下落 24年ぶりの円安水準 ロンドン市場  9/6
6日のロンドン外国為替市場では円安が一段と進み、円相場は一時、1ドル=142円台まで値下がりして、1998年以来、およそ24年ぶりの円安水準となりました。
外国為替市場では欧米など各国の中央銀行の金融引き締めを背景に円安が加速していて、6日のロンドン市場では円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、円相場が一時、1ドル=142円台まで値下がりしました。
142円台をつけるのは1998年8月以来、およそ24年ぶりです。
債券市場ではアメリカの長期金利が上昇し、日米の金利差の拡大が一段と意識されて円を売ってより利回りが見込めるドルを買う動きが強まりました。
円相場は、5日前の今月1日に1ドル=140円台をつけたばかりで、円安が加速しています。
市場関係者は「先月下旬にFRB=連邦準備制度理事会のパウエル議長が講演で利上げを続ける姿勢を鮮明にして以降、金融引き締めへの警戒からアメリカの長期金利の上昇傾向が続いている。また、6日にオーストラリアの中央銀行が利上げを発表したこともあり、大規模な金融緩和を続ける日銀の政策との違いが意識され金利の低い円を売る動きに歯止めがかからない状況となっている」と話しています。
●NY円、反落 1ドル=142円75〜85銭 一時143円台と24年ぶりの円安水準 9/6
6日のニューヨーク外国為替市場で円相場は大幅に反落し、前営業日の2日に比べ2円70銭の円安・ドル高となる1ドル=142円75〜85銭で取引を終えた。一時は143円台に乗せ、1998年8月以来24年ぶりの円安水準をつけた。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが長期化するとの観測から米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大を見込む円売り・ドル買いが強まった。
6日は米サプライマネジメント協会(ISM)が午前に発表した8月の非製造業景況感指数が56.9と前月から0.2ポイント上昇した。市場予想(55.5)に反して改善し、FRBの利上げを後押しする内容と受け止められた。米長期金利が終値で3.35%と前週末から0.16%上昇し、円売り・ドル買いが広がった。
円は売り一巡後にやや下げ渋った。米株式相場の下落で投資家心理が冷え込み、低リスク通貨とされる円の支えになった。急ピッチで円安が進んだため、利益確定の円買い・ドル売りも出た。
円の高値は朝方につけた141円89銭だった。
円は対ユーロで続落し、前営業日比1円80銭の円安・ユーロ高となる1ユーロ=141円35〜45銭で取引を終えた。欧州中央銀行(ECB)が8日の理事会で大幅利上げを決めるとの観測から円売り・ユーロ買いが優勢となった。
ユーロは対ドルで反落し、前営業日比0.0050ドル安い1ユーロ=0.9900〜10ドルで終えた。一時は0.9864ドルと20年ぶりのユーロ安水準をつけた。FRBの金融引き締めの長期化観測を受け米長期金利が上昇。欧米金利差の拡大を見込んだユーロ売り・ドル買いが強まった。ユーロの高値は0.9929ドルだった。 

 

●円相場、143円90〜91銭 9/7
7日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=143円90〜91銭と、前日(141円55〜56銭)に比べ2円35銭の円安・ドル高となった。 
●円、一時144円70銭 売り加速 ロンドン外為 9/7
7日午前のロンドン外国為替市場では、日米金利差の拡大観測を背景に円売り・ドル買いが加速し、円相場は一時1ドル=144円70銭近辺に下落した。正午現在は144円65〜75銭と、前日午後4時比2円ちょうどの大幅な円安・ドル高。
●NY円、一時145円目前 日米の金利差拡大意識 9/7
7日のニューヨーク外国為替市場の円相場は日米の金利差拡大を見込んだドル買い円売りが進んだロンドン市場の流れを引き継いで取引され、一時1ドル=144円98銭近辺を付けた。心理的節目とされる145円に迫ったのを受け、一部で円を買い戻す動きも出た。午前8時半現在は前日比1円86銭円安ドル高の1ドル=144円60〜70銭を付けた。ユーロは1ユーロ=0・9888〜98ドル、143円07〜17銭。
●円下落幅、プラザ合意後最大に 150円台射程圏 9/7
7日の外国為替市場では円相場が急落し、一時1ドル=144円台まで円安ドル高が進んだ。今年に入ってから既に30円以上も円安方向に動いたことになり、年間の下落幅はバブル経済の最盛期だった1989年を抜いて、日米欧がドル高の是正で合意した85年の「プラザ合意」以降では最大になった。相場の底はまだ見えてこず、市場関係者からは150円の大台突破を予想する声が出始めている。
円相場は7日の東京市場で一時144円台前半を付け、日本長期信用銀行が破綻するなど金融危機が起きた1998年の8月以来、24年ぶりの円安ドル高水準を更新した。米欧の主要中央銀行がインフレ抑制で政策金利の引き上げを急速に進める中、あくまで超低金利政策を維持する日本銀行の特異さが目立ち、金利差の拡大から資産運用で不利になる円が売られている。
みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストによると、外国為替市場は既に「プラザ合意以降では最大の円安相場」にある。過去に年間下落幅が大きかった89年(28円45銭)は、三菱地所がニューヨークのロックフェラーセンターを買収するなど、日本企業による米国での買収が相次いだ。いわば日本経済の強さを背景にドル資金を得るための円売りが進んだ。
だが足元では、東日本大震災後の原発停止で化石燃料の輸入量が増えて貿易赤字が膨らむなど、国力の低下が円売りの背景にある。
鈴木俊一財務相は7日、記者団に対し「(急激な円安が)継続することになれば、必要な対応を取っていく」と市場の動きを牽制(けんせい)した。ただ、米国がインフレ抑制で輸入物価を引き下げるドル高を容認する中、日本政府が単独で為替介入に踏み切るのは難しい。日銀も景気減速を恐れ利上げに慎重だ。市場からは政府日銀の手詰まり感が見透かされ、一層の円売りを招く。
日米の金利差拡大で円安ドル高が進む流れは年内いっぱい続くとみられ、円相場は98年に記録した147円66銭を突破すれば、次は160円20銭(90年)まで大きな節目がない。市場では「150円台は覚悟したほうがいい」(唐鎌氏)と一層の下落が予想される。
●円相場 1ドル=144円台に値下がり 円安の流れ止まらず  9/7
7日の東京外国為替市場は、円安の流れが止まらず、円相場は一時、1ドル=144円台まで値下がりし、6日に比べて2円以上、円安が進みました。
7日の東京外国為替市場は、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会による大幅な利上げが続くという見方が広がり、円を売ってドルを買う動きが強まりました。
このため円相場は一時、1998年8月以来、およそ24年ぶりに、1ドル=144円台まで円安が進み、午後5時時点では、6日と比べて2円36銭円安ドル高の1ドル=143円89銭から91銭となっていて、9月に入ってから円相場は4円以上、値下がりしています。
また、ヨーロッパ中央銀行が今週、利上げを行うのではないかとみられていることから、ユーロに対しても円を売る動きが出ていて、6日と比べて1円61銭円安ユーロ高の、1ユーロ=142円79銭から83銭でした。
ユーロはドルに対して、1ユーロ=0.9923から25ドルでした。
アメリカで大幅な利上げが続くという見方から、世界の多くの国の通貨がドルに対して値下がりしていますが、その中でも円の下落率は際立っていて、去年の年末からおよそ20%、額にしておよそ29円、円安が進んでいます。
市場関係者は「午後になって鈴木財務大臣が急激な市場の動きをけん制する発言をしたものの、市場の反応は限定的だった。日本時間の今夜からあすにかけて、パウエル議長をはじめFRBの高官が発言する機会が相次ぐため、様子見の姿勢もみられるが、円売りドル買いに歯止めをかける材料が見つからない状況だ」と話しています。
鈴木財務相 市場の動きをけん制
鈴木財務大臣は、外国為替市場で急速に円安が進んでいることについて、7日午後、財務省内で記者団の取材に応じ「為替の相場はファンダメンタルズに沿って安定的に推移するのが重要だ。急激に変化することは望ましくないが、最近の動きを見ると急激だという印象を持っており、円安方向に一方的に振れていると憂慮している」と指摘しました。
そのうえで「緊張感をもって推移を見守っていくが、これが継続するということであれば、必要な対応をとっていきたい」と述べ、市場の動きをけん制しました。
また、記者団から「必要な対応とは為替介入のことか」と問われたのに対して、「どういう対応をとるかということは為替に大きな影響を与えるのでコメントしない」と述べるにとどまりました。
そのうえで、円安のメリットとデメリットのどちらが大きいか問われたのに対して、鈴木大臣は「メリットとデメリットそれぞれあるが、足元で政府は物価高騰対策に力を入れているのだから、そうしたマイナス面の方に注目していかなければならない」と述べました。
世界の通貨の中でも値下がり際立つ
外国為替市場で急速に円安ドル高が進んでいますが、円は、世界のほかの国の通貨の中でも値下がりが際立っています。
アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会のパウエル議長がアメリカ西部、ワイオミング州で開かれた「ジャクソンホール会議」の講演で利上げを継続する姿勢を鮮明にした8月26日から、9月7日までの為替レートを見ると、円はドルに対して4.3%値下がりしました。
この講演以降、ほかの国の多くの通貨もドルに対して下落していますが、韓国のウォンが3.8%、南アフリカのランドとオーストラリアドルがいずれも2.4%、イギリスのポンドは1.9%、カナダドルは1%、ユーロは0.4%、それぞれ下落していて、円の下落幅の大きさが目立っています。
また、ことしに入ってから9月7日までで見ると、円はドルに対して20%の大幅な値下がりとなっています。
ドルに対しては、イギリスのポンドが14.8%、韓国のウォンが14.1%、ユーロは12.7%、南アフリカのランドが7.8%、オーストラリアドルが7.3%、カナダドルが4%、それぞれ値下がりしていますが、円の値下がりが際立つ形となっています。
円の通貨としての総合的実力“51年前の水準に低下”
ドルやユーロなど世界の主要通貨に対する円の通貨としての総合的な実力は51年前の水準に低下しています。
BIS=国際決済銀行が公表した7月の「実質実効為替レート」は、58.7となりました。
これは、変動相場制に移行した1973年2月よりも前の1971年8月以来、およそ51年ぶりの低い水準です。
実質実効為替レートは、ドルやユーロ、円、人民元など主要な国と地域の通貨について、貿易量や物価水準などを考慮して比較し、通貨の総合的な実力を算出する指標です。
円の実質実効為替レートは、急激に円高が進んだ1995年4月の150.84が最高で、その後はデフレの長期化などによって低下傾向が続いています。
円の実力はピーク時の半分以下に落ち込んだことになり、統計の残る中で最低だった1970年8月の57.1にも迫る低い水準となっています。
政府や日銀が打てる手はないのか
円安に歯止めがかからない中で政府や日銀が打てる手はないのでしょうか。
過去には急激な為替の変動に対して政府と日銀が市場介入を行ったことがあります。
円安に歯止めをかけるために市場介入を行う際には外貨準備として持っているドルを売って円を買うことになります。
ただ、円安に歯止めをかけるための市場介入は極めて難しいという指摘もあります。
記録的なインフレに見舞われるアメリカがさらなる物価高につながりかねないドル安を簡単に容認するとは考えにくいからです。
今回の円安ドル高の背景には、アメリカの金融引き締めが続くという市場の観測があり、仮に日本が単独で介入しても円安に歯止めをかける効果は限定的だという指摘もあります。
一方、日銀が今の大規模な金融緩和策を修正して欧米と方向性をそろえれば、円安に歯止めがかかる可能性があります。
ただ、日銀の黒田総裁は賃金の上昇を伴う形で2%の物価安定目標を実現するため、今の大規模な金融緩和を続けるという考え方を変えていません。
ことし7月の会見で、黒田総裁は、金融緩和策を修正して金利を引き上げる可能性について「金利を上げたときのインパクトはかなり大きく、金利を引き上げるつもりは全くない」と述べています。
そのうえで「金利を少し上げるだけで円安が止まるとは到底考えられない。金利だけで円安を止めようとすれば大幅な金利引き上げになって経済に大きなダメージとなる」と指摘し、円安に歯止めをかけるために今の金融緩和策を修正して金利を引き上げることは考えられないという認識を示しています。
専門家「アメリカの金融政策の動向が焦点」
三菱UFJ銀行の井野鉄兵チーフアナリストは、「先月下旬にアメリカの中央銀行にあたるFRBのパウエル議長がインフレ抑制のために積極的に利上げを進める姿勢を打ち出したことで、円安ドル高が加速した。さらに1ドル=140円を超える円安水準となっても、日本政府は市場をけん制する動きを強めていないと市場関係者が受け止めたため、円安に拍車がかかった」と指摘しました。
そのうえで「アメリカだけでなくヨーロッパやオーストラリアなども金融引き締めを進める中、日本だけが金融緩和を続けているため、他のさまざまな通貨に対して円は安くなっている。またウクライナ情勢の悪化以降、資源輸入国の日本で貿易赤字が増えていることも、円安の要因になっている」と述べました。
円安による日本経済への影響については、「円安で期待される製造業の輸出増加も、かつてよりも恩恵は受けにくい。また円安は、外国人旅行者の呼び込みにもプラスに働くが、現状では水際対策が緩和されたとはいえ、旅行者数がコロナ前の水準に回復するには時間がかかるだろう。一方、円安による輸入物価の上昇で今後、さまざまな商品に価格転嫁が進む見通しで、生活者目線でいえば、物価上昇が暮らしの負担になるおそれがある」と指摘しました。
今後の見通しについては、「アメリカの金融政策の動向が焦点だ。今月、アメリカでは、FRB高官の発言機会や経済指標の公表、金融政策を決める会合などが控えていて、内容次第で一段と円安は進みやすい。ただ、1998年の最安値だった1ドル=147円近辺では、日本政府が市場へのけん制の動きを強める可能性もあり、ひとつの大きな節目となる」と述べました。 

 

●円相場、143円82〜83銭 9/8
8日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時現在1ドル=143円82〜83銭と、前日(143円90〜91銭)に比べ08銭の円高・ドル安となった。
●円、143円台後半 ロンドン外為 9/8
8日午前のロンドン外国為替市場では、前日までの急激な円売り・ドル買いが一服し、円相場は1ドル=143円台後半に上昇した。正午現在は143円65〜75銭と、前日午後4時比80銭の円高・ドル安。
●NY円、144円前半  9/8
8日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比34銭円安ドル高の1ドル=144円06〜16銭を付けた。ユーロは1ユーロ=0・9993〜1・0003ドル、144円02〜12銭。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が討論会でインフレ抑制のため大幅利上げを続ける方針を表明した。米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
●NY円、続落 1ドル=144円05〜15銭 パウエル議長発言受け円売り 9/8
8日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3日続落し、前日比35銭円安・ドル高の1ドル=144円05〜15銭で取引を終えた。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が金融引き締めの長期化を改めて示唆した。米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大を見込む円売り・ドル買いが優勢となった。
パウエル議長は8日に参加した討議で「(インフレ抑制に向けて)強く行動する必要があり、やり遂げるまで続ける必要がある」と述べ、利上げを継続する姿勢を改めて示した。議長の発言を受け「利上げは年内で打ち止めと予想していたが、来年前半も続く可能性がある」(バークレイズ)との指摘があった。米長期金利が終値で3.32%と前日比0.06%上昇し、円売りを促した。
円の安値は144円43銭。高値は朝方につけた143円41銭だった。
円は対ユーロで4日続落し、前日比15銭円安・ユーロ高の1ユーロ=144円00〜10銭で取引を終えた。欧州中央銀行(ECB)が8日の理事会で通常の3倍となる0.75%の利上げを決め、円は売り優勢となった。
ユーロは対ドルで反落し、前日比0.0010ドル安い1ユーロ=0.9995〜1.0005ドルで終えた。ECBの大幅利上げを受け、ユーロ買いが先行した。ECBは今後、複数の会合で利上げを続ける見通しを示したが、市場の想定内の内容だった。「今後も0.75%の利上げが必要だと強調しなかったため、ユーロ買いは続かなかった」(TD証券)と指摘された。
ユーロの高値は1.0030ドル、安値は0.9931ドルだった。
●ドル円相場、一時145円に迫る 24年ぶりの円安水準 9/8
8日の東京外国為替市場の円相場は一時、1ドル=144円台半ばを付けた。米国で大幅な利上げが続くとの見方が広がり、7日のニューヨーク外国為替市場では一時、1ドル=144円90銭台まで下落。1998年8月以来、約24年ぶりの円安・ドル高水準で、心理的な節目とされる145円に迫った。
東京市場の8日午後5時現在は前日比08銭円高・ドル安の1ドル=143円81〜83銭。
米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)が今月開催する連邦公開市場委員会(FOMC)で、引き続き大幅な利上げをするとの観測が強まった。インフレを抑えるため積極的な利上げを進める米国と、大規模な金融緩和を続ける日銀との金利差が意識され、運用に有利なドルを買って円を売る動きが加速した。
円の下落幅は1週間で5円を超えており、円安が輸入品の価格を押し上げ物価上昇に拍車をかける懸念が強まっている。
財務省と金融庁、日銀は8日、幹部による情報交換会合(3者会合)を財務省内で開催。財務省の神田真人財務官は会合後、記者団に対し「高い緊張感を持って注視していく。明らかに過度な変動で、極めて憂慮している」と強調。「あらゆる措置を排除せず、必要な対応を取る準備がある」と述べ、急激な円安をけん制した。
会合には、金融庁の中島淳一長官、日銀の内田真一理事らも出席した。
3者会合で政府が対応策を打ち出すことへの警戒感から、東京外国為替市場では円が一時50銭近く上昇した。しかし、会合後は再び144円台まで円安が進行した。 

 

●東京円、1円46銭高の1ドル=142円35〜37銭 9/9
9日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比1円46銭円高・ドル安の1ドル=142円35〜37銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは、同17銭円安・ユーロ高の1ユーロ=143円71〜75銭で大方の取引を終えた。
●円急騰、142円台前半=政府・日銀の円安けん制で―東京市場 9/9
9日の東京外国為替市場の円相場は、1ドル=142円台前半に急騰した。政府・日銀から円安をけん制する発言が相次いだことを受け、いったん円を買い戻す動きが広がった。午後5時現在は142円35〜36銭と前日比1円47銭の円高・ドル安。
財務省と金融庁、日銀の3者会合が8日に開かれたのに続き、9日昼には岸田文雄首相と日銀の黒田東彦総裁が金融市場の動向などについて意見を交わした。急速な円安に対する政府・日銀のけん制が続いたことで「市場に警戒感が広がった」(国内証券)とされ、円買い・ドル売りの動きが進んだ。 
●円急伸、141円台後半 ロンドン外為 9/9
週末9日午前のロンドン外国為替市場では、黒田東彦日銀総裁の円安けん制発言などを受けてドルを売って円を買い戻す動きが加速し、円相場は1ドル=141円台後半に急伸した。正午現在は141円65〜75銭と、前日午後4時比2円25銭の大幅な円高・ドル安。
●NY円、反発 1ドル=142円60〜70銭 円高進んだ海外市場の流れ引き継ぐ 9/9
9日のニューヨーク外国為替市場で円相場は4営業日ぶりに反発し、前日比1円45銭円高・ドル安の1ドル=142円60〜70銭で取引を終えた。黒田日銀総裁の円安けん制発言を受けて海外市場で円高・ドル安が進んだ流れを引き継いだ。ただ、日米の金融政策の違いから円安が進みやすいとの見方は根強く、米国の取引時間帯では円は伸び悩んだ。
岸田首相と黒田氏は9日、急激な円安進行を巡り協議した。会談後、黒田氏は記者団に為替相場の急変は「将来の不確実性を高めてしまう意味で好ましくない」と述べた。発言を受けて円売り・ドル買いの持ち高を減らす動きが広がり、海外市場で円高・ドル安に振れた流れを引き継いだ。
ただ、ニューヨーク市場の取引が始まった後は円は伸び悩んだ。市場では「現時点で日本政府による為替介入は見込みにくい」(スコシア・キャピタルのショーン・オズボーン氏)との声が聞かれた。米連邦準備理事会(FRB)は、20〜21日に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%の大幅利上げを3会合連続で決める見通し。金融緩和を続ける日銀との政策の違いから、円売り・ドル買いは続くとの見方も円の重荷だった。
円の高値は142円17銭、円の安値は142円80銭だった。
円は対ユーロで5営業日ぶりに反発し、前日比75銭円高・ユーロ安の1ユーロ=143円25〜35銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで反発し、前日比0.0045ドルユーロ高・ドル安の1ユーロ=1.0040〜50ドルで取引を終えた。今週は対ドルで20年ぶりのユーロ安水準を付けた。8月の米消費者物価指数(CPI)の発表を13日に控え、ひとまず持ち高調整のユーロ買い・ドル売りが優勢になった。米株相場が上昇し、リスクオンの際に買われやすいユーロを支えた面もあった。
ユーロの高値は1.0062ドル、安値は1.0032ドルだった。
●円安、金利差拡大で加速も マイナス金利は日本だけに 9/9
ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源高で拍車が掛かるインフレを抑えるため、海外の中央銀行が大幅利上げを進め、大規模な金融緩和を続けている日銀との違いが一段と鮮明になってきた。内外金利差の拡大で円安がさらに加速する可能性もある。
日銀と同様にマイナス金利政策を導入していた欧州やデンマークの中銀は既にマイナス金利を解除し、今月中にはスイスの中銀も追随する見込み。日銀は21、22両日の金融政策決定会合でも現行政策を継続し、マイナス金利を維持する見通しで、取り残される形となる公算が大きい。
米連邦準備制度理事会(FRB)は歴史的な高インフレを退治するため、景気減速を招いても利上げを続ける姿勢を明確にしている。FRBは日銀会合直前の20、21両日に開く会合で、通常の3倍のペースとなる0.75%の利上げを3会合連続で決めるとの観測が強い。新興国の中銀も米国への資金流出を警戒し、利上げに乗り出している。
こうした中でも日銀が大規模緩和を続けているのは、コロナ禍からの景気回復を引き続き支える必要があると判断しているためだ。日銀が動かないと踏む外国為替市場では投機的な円売りもあり、円相場は7日に1ドル=144円99銭と、約24年ぶりの安値を更新した。
日銀の黒田東彦総裁は9日、首相官邸で岸田文雄首相と会談した後、急激な為替変動は「好ましくない」と円安をけん制。円相場を1円以上、円高方向に押し戻すきっかけとなった。ただ「日銀だけ金融政策の方向性が違えば円安基調は当面続く」(市場関係者)との見方は強い。
世界的なインフレ下で円安が進めば、輸入品の価格上昇を通じて日本の物価も上がる。東短リサーチの加藤出社長は「日本の国民は購買力をそがれ、金融政策によって生活費が上がる迷惑な話だ」と指摘。マイナス金利の長期化が金融システムに与える副作用も大きいとして、「本来であれば、日銀は政策修正を行うタイミングだ」と話す。 

 

●為替相場 9/5-9/9 9/10 
まとめ9月5日から9月9日の週
5日からの週は、週の半ばにかけてドル高円安の動きが強まった。2日の米雇用統計の堅調な結果もあり140円台に乗せて始まったドル円は、週明け米国が祝日で参加者が少なかったこともあり、比較的落ち着いた動きでスタート。もっとも、雇用統計の好結果を受けて米短期金利市場では今月の米FOMCで0.75%の利上げを実施するとの見通しが広がり、2日の米雇用統計直後の高値を超えると一気にドル買い円売りが加速。6日の米ISM非製造業景気指数の好結果なども支えとなり、143円台を付ける動きに。その後もドル買い円売りの勢いは止まらず、7日には一時144円99銭前後まで上値を伸ばす場面が見られた。145円を付けきれずに値を落とすと、その後は144円を挟んでの推移に。143円台前半まで落としたところで、パウエル米FRB議長が積極利上げの継続に前向きな発言を行ったことなどから144円台半ば近くまで戻すなど、ドル買いの勢いが継続するように見えた。しかし、急激なドル買い円売りの動きに警戒感が高まる中、週末を前に調整が入る展開。黒田日銀総裁が1日に2円も3円も動くのは急激な変化と、円安のスピードに警戒感を示したことなども材料に141円台半ば近くまで一時値を落としている。ドル全面高基調の中、6日に0.9860台を付けたユーロドルは、その後買い戻しが強まり1.01台まで。ECB理事会が0.75%の利上げを実施。今後も大幅利上げを続ける可能性を示唆したことでユーロの買い戻しが強まった。トラス新政権が誕生した英ポンドは、ドル高の勢いに押されて7日に1.1400台を試す動きを見せたが、ユーロドルの買い戻しに連れ高となったことに加え、新政権下での経済対策への期待感などもあり、1.16台半ば近くまで買い戻しが入った。
5日
東京市場は、ドル円が堅調に週明けスタートを切った。先週末に米国の積極的な利上げ期待から上昇したドル円相場。米雇用統計直後のドル買いに140.80近辺を付けた後、いったん利益確定の売りに押され、140円割れをトライし、少し戻して週の取引を終えた。週明けもドル高円安の流れが継続。利益確定の動きが一服し、ドル高基調に復する展開。週末のG7財務相・中央銀行総裁会議において、鈴木財務相は為替については自分も含め話が出なかったと発言しており、円売りにつながっている面も。140.50付近の高値をつけたあとは調整が入ったが、下値はしっかり。ユーロドルは前回付けた0.9901の安値を割り込み、20年ぶりの0.98台を付ける動き。欧州のエネルギー問題が重石に。先月末から3日間のメインテナンスに入り、当初3日から再開予定となっていたロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」について、ロシアはガス漏れがあるなどとして再開延期を2日に発表。金曜日NY市場午後の1.0030前後から0.9950割れまでのユーロ売りを誘った。朝は対円での買いが目立ったユーロ円は、その後のユーロ売りに上値を抑える展開となり、軟調。
ロンドン市場は、ドル買い先行もその後は一服している。東京午後からロンドン朝方にかけて、ユーロドルは0.99台を割り込むと、安値を0.9878レベルまで広げた。20年来の安値水準となっている。週末にロシアが欧州向け天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」の再開を無期限で延期と発表したことが失望売りにつながった。週明けの欧州株式市場では独DAX指数などが大幅安で取引されている。ただ、ユーロ売りの動きには調整が入り0.99台前半へと買い戻されている。ユーロ円も138.69近辺に安値を広げたあと、139.64レベルに高値を更新。ポンドドルも同様に、朝方に1.1444近辺に安値を広げたあとは買戻しに転じて1.1530近辺に高値を伸ばしている。ポンド円は160.63近辺の安値から161.76近辺に高値を更新。ドル円は序盤に140.60近辺に高値を伸ばしたが、先週末につけた高値140.80レベルには届かず、その後は140.50付近での揉み合いとなっている。欧州通貨に買い戻しが入っているが、材料的には欧州のエネルギー危機が一段と深刻化、英国ではこのあとの英保守党党首選の結果発表をへて、新たな首相の政策へと不透明感が広がっている。トラス外相がスナク財務相に勝利するとの見方が濃厚。トラス氏は付加価値税の減税措置を看板に掲げているが、市場ではインフレ高進を警戒しており冷ややかな目で見ているようだ。
NY市場はレーバーデーの祝日のため休場。
6日
東京市場は、ドル円が堅調。午前中から下値しっかりの展開だったが、午後に入ってから円売りが加速。直近高値を上回ると24年ぶりの141円台乗せとなった。仕掛け的な円売りでストップロスを巻き込む動きへと連鎖した。ユーロ円は140円が重かったがドル円の上昇加速とともに140.50近辺へと上昇。クロス円でも円売りが入った。豪中銀は市場予想通り0.5%ポイントの利上げを発表。調整売りが入っていた豪ドルは対円で65.50付近に軟化していたが、円売りとともに96円台をつけた。対ドルでは上値が重く、0.68台前半から0.68台割れへと下落。
ロンドン市場は、ドル円が141円台後半に高値を伸ばしている。東京朝方に140.25近辺に下押しされたあとは、終始堅調な動き。東京午後の豪中銀の利上げ発表後、米債利回りの上昇とともに141円台に乗せた。ロンドン時間に入ると欧州株や米株先物の反発の動きもあってクロス円とともに一段と上昇、高値を141.86近辺に伸ばした。その後も141円台後半に高止まり。市場では豪中銀をはじめとして、明日のカナダ中銀、8日のECBなど主要中銀の大幅利上げの動きが想定されるなかで、頑として動かない日銀との対比が意識されたか。円売りが進行するなかで、ユーロ円は一時141円台乗せ、ポンド円は164円台乗せまで上伸。豪ドル円は96円台乗せと比較的値動きは限定的。対ドルではポンドドルが1.15台半ばから1.16台乗せでの振幅となる一方、ユーロドルは0.9986近辺まで買われたあとは0.9920台へと安値を広げる不安定な振幅だった。対ユーロでポンドが買われている。きょう就任するトラス英新首相のエネルギー支援策が好感された面が指摘される。1300億ポンド規模でエネルギー料金を凍結する計画と報じられている。
NY市場では、ドル円が一段高。一時1998年8月以来の143円台乗せとなった。143円付近にはオプション勢の防戦売りも観測されているようだが、ロング勢に後退する気配はない。市場からは、インフレ抑制に強硬なFRBと米エネルギーの自給自足から、今年のドルは上昇が続く可能性が指摘されている。8月のISM非製造業景気指数が56.9と2カ月連続の上昇となったこともドル買いを加速させた。インフレ圧力は引き続き緩和傾向を示す一方で、新規受注や雇用が上昇。ユーロドルは売りに押されて一時0.9865付近まで下落。依然として下値模索が続いている状況。ポンドドルはロンドン時間に1.16台を回復していたが、NY時間にかけて戻り売りが強まり一時1.15台を割り込んだ。ただ、対ユーロや対円では底堅さがみられ、先週までの軟調な動きは一服している。トラス新首相が、政府保証が付いたエネルギー業者への融資を活用した1300億ポンドのエネルギー料金凍結計画をまとめたと伝わった。それにより、同首相が公約に掲げている減税策が最終的にインフレを悪化させるとの懸念や、エネルギー料金高騰により英経済が深刻な不況に入るとの懸念も一服している。
7日
東京市場は、ドル高・円安の流れが加速。ドル円は一時144.30台まで上昇。その後144円割れまで調整も、再び144円台を付けるなど、しっかりした値動きが継続した。急速な値動きに対する警戒で円買いが入る場面もあったが、すぐに買いが入る展開。松野官房長官が、従来からの円安けん制発言も、円安はインバウンドに有利といった発言もあり、海外勢からは円安容認と捉えられた面も指摘された。急速な円安進行は一部ファンドからの仕掛けとの観測もでていた。ドル円とともにユーロ円は141円台前半から142円台乗せ。振幅を伴いながらも午後には142.60台まで上値を伸ばした。ユーロドルはドル買いに押されて0.99ちょうど付近から一時0.9870台まで下落。その後は0.99台を回復と方向性に欠けた。あすのECB理事会での大幅利上げ観測で、下値に買いが入った面も。
ロンドン市場は、ドル円の上昇が継続。東京午後に144.38レベルの高値をつけたあとはしばらく144円を挟む揉み合いが続いた。ロンドン序盤は米債利回りの上昇も一服。しかし、ロンドン昼に向けて再びドル円は動意付き144.80近辺に高値を更新。24年ぶりの高値水準を付けている。クロス円もじり高となり、円が全面安商状となっている。ユーロ円は163円台乗せ、豪ドル円は97円台乗せ、カナダ円は110円の節目水準に上昇。そのなかではポンド円の上昇は鈍い。166円付近まで買われたあとは、165円台円半ばに反落している。ポンドドルが1.15台乗せから1.1420付近へと下押しされ、対ユーロでもポンドが軟調に推移している。一連の英中銀高官による議会証言では、昨日発表されたトラス新首相のエネルギー価格上限設定法案のインフレ抑制効果が期待された。英2年債利回りが低下、英利上げペース鈍化観測がポンド売りの背景となっているようだ。
NY市場では、ドル円が143円台に伸び悩んだ。朝方には144.99近辺まで買われ、145円台を試す動きがみられた。98年8月以来の高水準。このところのドル高の勢いに、一旦ロングポジションを解消していたファンド勢や投機筋の買い戻しが活発に入っているもよう。それに伴いテクニカル勢も追随したようだ。買いが買いを呼ぶ展開。しかし、145.00近辺ではオプション関連の売り注文観測などで上値を抑えられた。取引後半になって143円台へと急反落した。特段の材料は見当たらないが、きょうは原油相場が81ドル台に急落し、それに伴い米国債利回りも急低下した。一方、米株式市場はダウ平均が急反発するなど、このところの値動きの巻き返しが強まる中、ドルも戻り売りに押されたようだ。ユーロドルはNY朝方に0.98台に下落していたが、終盤になってパリティ(1.00ドル)を回復した。ポンドドルは一時1.14ちょうど付近まで下げ幅を拡大し1985年以来の安値水準に下落したが、1.15台に急速に買い戻されている。カナダ中銀は予想通りに0.75%ポイントの利上げを実施。政策金利を3.25%まで引き上げた。声明では「インフレを鑑みれば、追加利上げが必要になる」と追加利上げの可能性も示唆している。ただ、大方の予想通りであったこともあり、カナダドルは小幅な反応に留まった。
8日
東京市場で、ドル円は不安定な振幅後、調整の動き。前日の海外市場で144.99レベルまで上昇した後、1円以上調整が入り、143円台後半で東京朝を迎えたドル円。朝はいったんドル買いが強まり、144.55近辺まで上昇。ドル高の勢い継続を意識させた。しかし、その後は調整が入り、再び143円台に。午後に入って143.70台を付けた後、144円台を回復したところで、16時45分からの日銀、財務省、金融庁の3者協議が行われることが報じられ、円買いの動きで143.50台を一時付けた。ユーロドルは昨日の海外市場で0.98台後半を付けた後、ドル高調整に1.00超え。ドル円同様に午前中はドル買いの動きで0.9980前後まで下げたが、午後に入ってドル売りが優勢となり1.00を回復。
ロンドン市場は、前日からのドル安圏で取引されている。ドル円は前日に144.99レベルで上値を止められたあとは、上値重く推移。東京午後に財務省、金融庁、日銀の三者会合が開催されると報じられると、円安対応が出るのではとの思惑で一段と売り圧力が広がった。144円台割れから下値を模索。ロンドン序盤に三者会合後に神田財務官が会見。ドル円は一時143.43レベルまで下落も、すぐに144円台に戻した。その後は143円台後半と前日からのドル安傾向が上値を抑えている。神田財務官からは新味のある内容は聞かれず、前回6月会合からの基本認識に変化はなかったということで声明文も発表されなかった。ユーロドルは1.00を挟んだ上下動。ロンドン序盤に0.9977近辺まで反落も、足元では1.00台に再び乗せている。ポンドドルはやや上値が重い。東京早朝につけた1.1541近辺を高値に売られ、ロンドン序盤には1.1476近辺まで下押し。その後は1.15台を回復も、高値を試す勢いはみられず。ユーロ買い・ポンド売りがじりじりと進行している。トラス英首相のエネルギー価格上限設定が短期的にはインフレを抑制するとの見方からポンドの上値が重くなっているもよう。
NY市場は一時144円台半ば近くまで。ロンドン市場からの調整を受けてNY朝も上値の重い展開となったが、米ケイトー研究所でのディスカッションに参加したパウエル議長が、「インフレ抑制の任務が完了するまで一直線で行動する」など、積極的な利上げの継続を示唆したことで、ドル買いが進み、144円台をしっかり回復した。今月の米FOMCでの0.75%ポイントの利上げ見通しが、議長発言で強まる形となり、短期金利先物市場動向からの利上げ確率を示すCMEFEDWATCHでは80%以上が0.75%利上げを見込む動きとなっている。ロンドン市場でECBの大幅利上げが下値を支えたユーロドルでもドル買いが進み、0.99ドル台半ばまで。ポンドドルが1.1460ドル前後まで値を落とすなど、ドルは全面高の動きを見せた。
9日
東京市場は調整が広がる展開となった。午前中はドル売りの動きが優勢に。ドル円が144円台を割り込み143円50銭台まで。朝方は1.0000を割り込んでいたユーロドルが1.0080台を付けるなどの動きに。週末を前にドル買いポジションに調整が入った形。その後は円買いが優勢な展開となり、ドル円はさらに大きく値を落とした。きっかけとなったのは午前中に岸田首相と官邸で協議を行った黒田日銀総裁の発言。総裁は1日に2円-3円動くのは急激な変化と認識、今後も為替相場を注視するなど、過度な動きを警戒する姿勢を示した。この発言を受けてドル円は143円の大台を割り込んで売りが強まる展開となり、142円台前半まで。午前中とは違い円買いが主導したことでクロス円も軒並みの売りとなり、午前中にユーロドルの上昇もあって144円70銭台を付けていたユーロ円が143円60銭台を付けるなどの動きに。
ロンドン市場でドル円はもう一段の調整が入った。東京午後に142円台半ば前後を付けた後、いったんは143円台を回復も、再びドル売り円買いの動きに。東京午後の安値を割り込んで売りが加速し、142円の大台も割り込んで141円50銭台まで値を落とした。黒田総裁発言をロンドン勢も材料視したことに加え、週末を前にしたポジション調整の意識もドル円の売りにつながった。安値を付けた後は142円80銭前後まで1円30銭近い買い戻し。その後142円20銭前後まで下げるなど荒っぽい動きが続いた。ロンドン市場でのドル円の下げは、東京午後の円買い主導の動きに対して、ドル売りと円買いがともに入るものとなり、ユーロドルはユーロ高ドル安に。1.01の大台を回復する動き。その後ドル円の買い戻しが入る局面ではユーロ売りドル買いが強まり、1.0030台まで値を落とすなど、こちらも不安定な振幅を見せた。
NY市場では一服したものの、きょうはドルの戻り売りが強まった。ドル円も急速に戻り売りに押され、ロンドン時間には141.50付近まで急落する場面も見られた。東京時間に岸田首相が日銀の黒田総裁と会談し、最近の急速な円安進行をけん制した。市場は日銀がスタンスを変えたり、為替介入が実施されるとは見ていない。ただ、過熱気味だった円安に対する調整にはちょうど良いきっかけになったのかもしれない。 

 

●147円に迫るドル円相場…これはドル高?円安?それともユーロ安? 9/11
ドル円がおよそ24年ぶりの水準まで円安となるなか、株式会社オープンハウス ウェルス・マネジメント事業部のチーフストラテジストである浅井聡氏は、「為替を読むために“第二の基軸通貨”ユーロを知る必要がある」と語ります。日本円の立ち位置について、「ドル・円・ユーロ」の3方向から、詳しくみていきましょう。
ドル円が騒がれているが…為替相場の主役は「ユーロ」
2022年に入り、ドル円相場はドル高円安が急速に進行しています。米中央銀行(Fed)はインフレ抑制のための金融引き締め(利上げ)方針を打ち出していましたが、8月に開催されたジャクソンホール会議では、パウエル議長がこれをより明確なメッセージで発したことをきっかけに、ドル円相場は大台の140円乗せとなりました。
いよいよ1998年の山一拓銀時代のドル高円安水準147円に迫る勢いです。この円安進行の背景は、「日米金利差拡大」と「各中央銀行のスタンスが真逆で明確であること」が主な要因となっていることは間違いありません。
   [図表1]ドル円相場推移(1992年〜)
しかし、日本では140円台乗せの見出しがおどるなか、グローバルレベルでは、ユーロドル相場がパリティ(パリティとはちょうど1ユーロ=1ドルとなること)を割るニュースのほうが、はるかに重要視されています。これはどういうことでしょうか?
外国為替市場の主戦場ともいうべきマーケットは、基軸通貨「アメリカドル」と第二の基軸通貨といわれる「ユーロ」との比較、あくまでもユーロドル相場です。今後の為替を読むためには、ドル円相場よりもユーロドル相場をしっかりと観察しておく必要があるでしょう。
為替を読むために…「第二の基軸通貨」ユーロを知る
通貨としてのユーロの歴史は案外浅く、ドイツやフランス、イタリアなどのEU各国の取り決めにより、単一通貨ユーロが発足したのは1999年1月のことです。
発足当時は、チャートが存在しないので、ずいぶんテクニカルアナリストを悩ませたものですが、あれから四半世紀近く経過したことで今ではすっかり定着し、残念ながらイギリスポンド加盟の道は閉ざされているものの、現在では第二の基軸通貨としての地位を着々と築いてきています。
もっとも、ユーロの道のりは険しく、発足当時はユーロという通貨が末永く存続できるのかという信任を試すように発足当時には1ユーロ=1.17ドルだったものが、2000年1月には初のパリティ割れを見せ、回復するのに約2年の日々を費やしたのです。
その後、順次加盟国が増え、しっかりとした足取りで進んだことで、その信任を得ることができ、2009年からのギリシャ財政問題などを抱えつつも、2003年以降は一度もパリティ割れを起こしたことはありませんでした。
しかし、ここにきてユーロ安ドル高傾向が続き、ウクライナ情勢やロシア制裁の影響を大きく受けていることを加味しても、再びパリティ割れが定着してしまったのですから、非常に大きなニュースとして取り上げられるのは想像に易いことでしょう。
では、どうしてユーロ安が進行しているのでしょうか? 円安との関連性はあるのでしょうか?
   [図表2]ユーロドル相場推移(正式発足以来)
大荒れの為替相場…円安?ユーロ安?それともドル高?
インターバンク(銀行間)為替市場は基軸通貨であるアメリカドルを中心に取引がなされています。ニュースで見るユーロ円相場は、ドル円相場×ユーロドル相場=ユーロ円相場 という単純な掛け算で算出されているだけで、イギリスポンドやスイスフランなどの主要通貨でもまったく同じ仕組みです。
たとえば、ある日、ユーロが対ドルで2%下落しユーロ安になったとします。同じく日本円が対ドルで2%下落して円安になったと仮定しましょう。これは要因という観点から「円安」だと呼べるでしょうか? これは明らかに「ドル高」要因です。
また、ある日、ユーロが対ドルでほとんど変化がなく、日本円が2%下落したらどうでしょうか? これこそが「円安」と言えるでしょう。
それでは、2022年、実際に年初来のユーロドル、ドル円の動きを同時に見てみましょう。
   [図表3]年初来ユーロ対ドル変動率(緑色線)、日本円対ドル変動率(黄色線)
もし、ユーロドルとドル円が連動していれば、それは「ドル高」要因を反映した為替市場だと判断することができます。確かに、トレンドは一致しており、ユーロも日本円も下落傾向にあるため、「ドル高」要因が介在していることは間違いないでしょう。
しかし、ユーロの下落率は約−12%、対して日本円の下落率は約−18%となっており、その差は歴然です。
もちろん、これには地政学的リスクなど少なからず「ユーロ安」要因も存在しますが、ここでは単純化のために、ドルと円のためだけに材料が現在化したと仮定しましょう。
この変動率を使うと、−12%分が「ドル高」要因、差の−6%を「円安」要因と分類することができそうです。
   [図表4]日本円の対ドル騰落率と、ユーロの対ドル騰落率の傾向(2021年1月以降)
そこで、図表4をご覧ください。これは2021年初来の毎週末のドル円相場、ユーロドル相場の毎週末騰落率を繋いだものです。2021年1月から2022年9月にかけて、多少の乱れはあるものの、概ね左下方向に進んでいることがわかります。下方向に進めば円安で、左方向に進めばユーロ安です。
もし「ドル高」要因しか材料がないとすると、日本円とユーロは同じ変動率を示すはずで、緑色線と平行に移動していたでしょう。しかし、実際のチャートではそれよりも右方向へ移動する傾向を見せています。この左方向へのズレが「円安」要因の大きさを表しているのです。
昨今のドル高円安トレンドは、この「ドル高」要因と、「円安」要因とに仕分けをすることによって、より深く相場を観察することができるのです。
長期に影響する「ドル高」、「円安」要因とは?
ドル円相場を本格的に検証する前に、ユーロ独自の事情、つまり「ユーロ安」要因がはたして、「円安」要因と被っているか否かを検証しておく必要があります。
もし、「ユーロ安」要因と「円安」要因が被っていれば、対ドルの為替レートは連動し、すなわち「ドル高」要因に置き換えられます。そのためにもユーロドルのパリティ割れのニュースには気を配っておく必要があるのです。
現在、主な「ユーロ安」要因はこうです。ユーロ圏もアメリカに匹敵する高いインフレ率に悩まされており、欧州中央銀行ECBはマイナス金利政策から脱却し、利上げの方向性を明確にしていることから、金利差はあるものの、そのスタンスはアメリカと同じ方向性を持っています。
しかし、ロシア制裁の影響を大きく受けているユーロ圏では、資源供給制約による景気後退要因がコロナ後の活動再開(つまり雇用の拡大)を阻害しているため、スタグフレーション懸念によるユーロ安ドル高の牽引役になっています。これは程度の差こそあれ、日本でも同じ状況であり、置き換えられた「ドル高」要因と言えるでしょう。
そしてアメリカ。いち早くコロナ後の経済活動の再開を果たしたことで有効求人倍率は2倍にまで達しており、また供給制約による資源高に対しては原油や天然ガスの輸出超過国となっています。雇用を守りつつ利上げのできるアメリカには、言わずもがな「ドル高」要因が満載です。
あえて「ドル安」要因を探すとすれば、対GDP経常収支が−3%台まで悪化していることくらいでしょう。しかしこれも世界の一大消費大国アメリカにしてみれば、標準的なレベルであり、大きな要因にはなりえません。
このように現在のグローバル経済環境は、アメリカとそれ以外の国という構図が明確になっており、その分「ドル高」、「ドル安」要因について見極めていくのは意外と簡単です。
「ドル高」要因を材料として為替相場が動いているのであれば、その主たる取引相手であるユーロとの相場が取り上げられることとなり、折しもユーロドル相場がパリティという重要な節目を迎えていることからも、パリティがより注目されることとなっています。
グローバル目線で見るなら、私たち日本人もドル円相場のゆくえを占うためには、先ずユーロドル相場のゆくえに注目していかなければならないことがおわかりいただけたことと思います。
みるべき要因は「金利差」だけにあらず
それでは、いよいよ日本独自の「円安」要因を探ってみることにしましょう。昨今の、円安ドル高が進行している主因はやはり金利差です。
一方の通貨の(短期)金利がゼロまたはマイナス金利であり、もう片方の通貨に投資妙味のある金利がついていれば、為替リスクを取ってでも、金利が欲しい向きが低金利通貨を売って高金利通貨を買い、これを預金などにして運用する「キャリートレード」という取引手法が脚光を浴びることになります。
日米で見ると、その金融政策の明確であればあるほど、安心してキャリートレードを行うことができ、相場の世界ではごく自然に円売りが円売りを呼ぶという現象が起こります。
しかし、もし、ドル高円安の要因がキャリートレードによるものだけだとすると、不都合が起こります。たとえば、フランスフラン。この通貨はゼロ金利をも超越した、マイナス金利を実に7年以上も継続しているにもかかわらず、スイスフランは対ドルで1割程度の変動率で安定推移しているのです。
   [図表5]2013年来スイスフラン対ドル変動率(緑色線)、日本円対ドル変動率(灰色線)
このことから、いま注目されている金利差という材料だけが為替を動かしているわけではないことが見て取れます。そしてこの金利差による「ドル高」要因の賞味期限は、ズバリ、インフレが沈静化した時です。
利上げの幅やペースがどうなるか? ではなく、いつインフレが沈静化するか、その時期を見極めることが大切です。
真に注目すべきはニッポンの経常収支と貿易収支
一体、どこに注目すれば本質を見極めることができるのでしょうか?私は、貿易収支を含む経常収支に焦点を当てたいと思います。
元来、日本は加工貿易国【株式会社ニッポン】として史上類を見ない経済成長を遂げてきた国です。その構造はとても単純で、材料を輸入してよい製品を作り、それをアメリカに売って利益を得る。
アメリカドルで得た利益は、仕入やお給料に充てるために必ず円転しなければなりませんから、必然的に円高になります。
   [図表6]直近3年の貿易収支を含む経常収支の推移
ところが、財務省統計からも見て取れる通り、現在は真逆の状態。【株式会社ニッポン】の工場は、急速に回復したアメリカの旺盛な需要についていけていません。さらには、いざものづくりを再開しようにも、原材料を「ゼロコロナ政策真っ最中」の中国に依存し過ぎているため、材料の調達もままならず、そこに来て円安による輸入インフレだけが先行している状態で、結果、日本の経常収支は8年ぶりの低水準に甘んじる結果となっているのです。
しかも肝心かなめの貿易収支は構造的な赤字が続いていることからも、その深刻度はかなりなものとなっています。
コロナ後の立ち上がりでアメリカに出遅れた日本の姿が「円安」要因として顕在化しているのだとすると、むしろこの「円安」要因の賞味期限は年単位で長持ちすることになるのではないでしょうか? 

 

●東京円、46銭安の1ドル=142円76〜78銭 9/12
12日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比46銭円安・ドル高の1ドル=142円76〜78銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、同1円55銭円安・ユーロ高の1ユーロ=145円26〜30銭で大方の取引を終えた。
●円、142円台後半 ロンドン外為 9/12
週明け12日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、手掛かり材料難から積極的な取引は手控えられ、1ドル=142円台後半で推移した。正午現在は142円55〜65銭と、前週末午後4時比15銭の円安・ドル高。
●ロンドン外為12日 ユーロ、対ドルで上昇 欧州株高で 9/12
12日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで上昇し、英国時間16時時点は1ユーロ=1.0130〜40ドルと、前営業日の同時点に比べ0.0090ドルのユーロ高・ドル安で推移している。欧州株高で投資家が運用リスクを取りやすくなり、ユーロ買い・ドル売りが優勢となった。天然ガス価格の下落もユーロ圏経済の悪化懸念を和らげ、ユーロ買いにつながった。
円は対ユーロで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=144円20〜30銭と前営業の同時点と比べ1円20銭の円安・ユーロ高で推移している。
英ポンドは対ドルで上昇し、英国時間16時時点は1ポンド=1.1700〜10ドルと前営業日の同時点と比べ0.0120ドルのポンド高・ドル安で推移している。
●NY円、反落 1ドル=142円75〜85銭 米長期金利の上昇で 9/12
12日のニューヨーク外国為替市場で円相場は反落し、前週末比15銭円安・ドル高の1ドル=142円75〜85銭で取引を終えた。米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大を見込む円売り・ドル買いが優勢だった。半面、対ユーロでのドル売りが、対円にも波及し、円は底堅く推移した。
米長期金利は一時3.37%と約3カ月ぶりの高水準を付けた。午後に結果が発表された10年債入札は需要の強さを示す応札倍率が前回を下回った。「弱め」の結果と受け止められ、債券売りが広がった。長期金利の上昇につられ、円売り・ドル買いの動きが強まった。
「日銀は円安に対応して金融政策を引き締める可能性は低い」(JPモルガン)との見方が海外勢には多い。インフレ対応の利上げを継続する見通しの米連邦準備理事会(FRB)との金融政策の方向性の違いに着目した投機筋の円売り・ドル買い需要が根強いことも、円の下落につながった。
円相場は上昇する場面もあった。欧州株の上昇で市場参加者が運用リスクを取りやすくなり、ユーロ買い・ドル売りの動きが強まった。対ユーロでドルが売られ、対円にもドル売りが波及した。
円の安値は142円87銭、高値は142円17銭だった。
円は対ユーロで反落し、前週末比1円25銭円安・ユーロ高の1ユーロ=144円50〜60銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで続伸し、前週末比0.0075ドル高い1ユーロ=1.0115〜25ドルで終えた。足元で欧州中央銀行(ECB)高官から追加利上げを示唆する発言が相次いでいる。インフレのピークアウトの兆しがみえ始めた米国と異なり、ガスや電気の高騰が続く欧州ではピークアウトがまだ先になるとの見方が根強い。ECBの金融引き締めの長期化を見込んだユーロ買い・ドル売りが入った。
ユーロの高値は1.0163ドル、安値は1.0105ドルだった。 

 

●東京円51銭高、1ドル=142円25〜26銭 9/13
13日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比51銭円高・ドル安の1ドル=142円25〜26銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは、前日(午後5時)比93銭円高・ユーロ安の1ユーロ=144円33〜37銭で大方の取引を終えた。
●ロンドン外為 ユーロ、小動き 1.01ドル台前半 9/13
13日午前のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで小幅な動きとなっている。英国時間9時30分時点は1ユーロ=1.0130〜40ドルと前日の同16時時点と同じ水準だった。欧州中央銀行(ECB)の大幅利上げ継続の観測がユーロ買い・ドル売りを誘った。半面、ユーロ圏景気の減速懸念も根強く、一方向に持ち高を傾けにくい状況のようだ。
英ポンドは対ドルで小幅ながら上昇に転じ、英国時間9時30分時点は1ポンド=1.1710〜20ドルと、前日の同16時時点と比べ0.0010ドルのポンド高・ドル安で推移している。13日早朝に発表の英労働指標では、雇用者数の増加幅が縮小したほか求人数が減少するなど、労働需給の若干の緩みが示唆された。一方で、5〜7月期の失業率は3.6%と1974年5〜7月期(3.6%)以来の低さで、賃金上昇率の伸びが拡大した。イングランド銀行(英中央銀行)の大幅利上げの継続観測を改めて後押しする内容と受け止められ、ややポンド買い・ドル売りが優勢となっている。
●ロンドン外為 ユーロ、対ドルで下落 米CPI受けドル買い 9/13
13日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=1.0010〜20ドルと、前日の同時点に比べ0.0120ドルのユーロ安・ドル高で推移している。8月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率が市場予想を上回ったのを受け、ユーロ売り・ドル買いが膨らんだ。ユーロ圏でも高インフレの継続が改めて意識され、欧州景気を懸念したユーロ売り・ドル買いも出た。
円は対ユーロで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=144円40〜50銭と前日の同時点と比べ20銭の円安・ユーロ高で推移している。対ドルでの円売りの勢いが対ユーロに波及した。
英ポンドも対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.1540〜50ドルと前日の同時点と比べ0.0160ドルのポンド安・ドル高で推移している。
●ロンドン外為 円、142円台前半 9/13
13日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、8月の米消費者物価指数の発表を前に様子見ムードが広がり、1ドル=142円台前半でのもみ合いとなった。正午現在は142円05〜15銭と、前日午後4時(142円35〜45銭)比30銭の円高・ドル安。
朝方から142円台前半で始まり、狭い範囲での値動きが続いた。ロイター通信によると、米消費者物価は前年同月比8.1%上昇と、伸び率は前月の8.5%から減速すると予想されている。
対ユーロは1ユーロ=144円55〜65銭(前日午後4時は144円20〜30銭)と、35銭の円安・ユーロ高。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0175〜0185ドル(1.0125〜0135ドル)。
ポンドは1ポンド=1.1725〜1735ドル(1.1700〜1710ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9480〜9590フラン(0.9510〜9520フラン)。
●NY円急落、144円台半ば 米物価高止まりで 9/13
13日のニューヨーク外国為替市場では、8月の米消費者物価指数(CPI)上昇率が市場予想を上回ったことで円売り・ドル買いが加速し、円相場は一時1ドル=144円67銭まで下落した。午後5時現在は144円57〜67銭と、前日同時刻比1円80銭の大幅な円安・ドル高。
●NY円、続落 1ドル=144円55〜65銭 米利上げ加速を意識 9/13
13日のニューヨーク外国為替市場で円相場は大幅に続落し、前日比1円80銭円安・ドル高の1ドル=144円55〜65銭で取引を終えた。13日発表の8月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想以上に上昇し、米利上げが加速するとみたドル買いが優勢だった。
CPIは前年同月比8.3%上昇と上昇率は7月(8.5%)からは縮小したが、市場予想(8.0%)より大きかった。エネルギー・食品を除くコア指数は6.3%上昇と7月(5.9%上昇)から伸びが拡大し、市場予想(6.0%上昇)を上回った。「幅広い項目が驚くほど強く、インフレ圧力が想定以上に強い状態が続いていることを示した」(オックスフォード・エコノミクス)と受け止められた。
米連邦準備理事会(FRB)がインフレ抑制のため、通常の3倍にあたる0.75%の利上げを継続したり、利上げ幅を拡大させたりする可能性が意識された。13日の米債券市場で長期金利は一時、前日比0.10%高い3.46%と3カ月ぶりの水準に上昇。日米の金利差拡大を見込んだ円売り・ドル買いが膨らんだ。
円の安値は144円67銭、高値は141円61銭だった。
円は対ユーロで反発し、前日比40銭円高・ユーロ安の1ユーロ=144円10〜20銭で取引を終えた。米CPIを受けてユーロ売り・ドル買いが進んだのにつれ、円買い・ユーロ売りが優勢となった。
ユーロはドルに対して3営業日ぶりに反落し、前日比0.0150ドル安の1ユーロ=0.9965〜75ドルだった。米利上げ加速を意識したユーロ売り・ドル買いが優勢となった。
ユーロの安値は0.9966ドル、高値は1.0188ドルだった。 

 

●東京円、1円5銭安の1ドル=143円30〜33銭 9/14
14日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比1円05銭円安・ドル高の1ドル=143円30〜33銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは、同1円22銭円高・ユーロ安の1ユーロ=143円11〜15銭で大方の取引を終えた。
●ロンドン外為 円、143円台前半 9/14
14日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、日本政府・日銀による市場介入への警戒感から円が買い戻され、1ドル=143円台前半に上昇した。正午現在は143円20〜30銭と、前日午後4時(144円20〜30銭)比1円ちょうどの円高・ドル安。
東京時間に日銀がレートチェックしたとの報道が流れたことで、円が急伸。ロンドン時間は、当局の姿勢をにらみながら、143円台前半を中心に神経質な展開が続いた。一時143円台後半に下落したものの、神田真人財務官が「あらゆるオプションを排除しない」などと発言したことを受けて再び押し上げられた。
対ユーロは1ユーロ=143円35〜45銭(前日午後4時は144円40〜50銭)と、1円05銭の円高・ユーロ安。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0005〜0015ドル(同1.0010〜0020ドル)。
ポンドは1ポンド=1.1550〜1560ドル(同1.1535〜1545ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9605〜9615フラン(同0.9605〜9615フラン)。
●NY円、143円前半  9/14
14日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比1円45銭円高ドル安の1ドル=143円12〜22銭を付けた。ユーロは1ユーロ=0・9973〜83ドル、142円79〜89銭。
14日に日銀が市場参加者にドル円相場の水準を尋ねる「レートチェック(水準照会)」を実施したことが判明し、政府・日銀による為替介入が警戒されてドル売り円買いが進んだ。米長期金利が低下傾向となり、日米金利差の縮小も意識された。
●NY円、反発 1ドル=143円10〜20銭 為替介入の思惑で 9/14
14日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3営業日ぶりに反発し、前日比1円45銭の円高・ドル安となる1ドル=143円10〜20銭で取引を終えた。日本政府・日銀が急速な円安・ドル高に対応して為替介入に動くとの思惑から日欧市場で円買いが進み、その流れを引き継いだ。
14日の東京市場で日銀が市場参加者に相場水準を尋ねる「レートチェック」を実施したと伝わった。レートチェックは為替介入の準備とされ、同市場で一時145円に迫った円は急速に買い直された。米市場でも為替介入を意識する円買い・ドル売りが続き、円は一時142円56銭まで上昇した。
円は買い一巡後に伸び悩んだ。13日発表の8月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回ったのをきっかけに、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを加速させるとの観測が強まっている。金融緩和を続ける日銀との政策の違いに着目した円売り・ドル買いを誘った。
市場では「為替介入が実施されても、日銀が大規模な金融緩和を続ける限り円は弱含む」(CMCマーケッツのマイケル・ヒューソン氏)との見方があった。
円の安値は143円50銭だった。
円は対ユーロで続伸し、前日比1銭30銭の円高・ユーロ安となる1ユーロ=142円80〜90銭で取引を終えた。ドルに対する円買いが、円の対ユーロ相場に波及した。
ユーロは対ドルで反発し、前日比0.0010ドル高い1ユーロ=0.9975〜85ドルで終えた。米長期金利の上昇一服で欧米金利差の拡大への警戒感が和らぎ、ユーロ買いがやや優勢となった。
ユーロの高値は1.0009ドル、安値は0.9970ドルだった。 

 

●東京円、143円台後半 9/15
15日の東京外国為替市場の円相場は、1ドル=143円台後半で取引された。午後5時現在は前日比26銭円安ドル高の1ドル=143円56〜58銭。ユーロは12銭円安ユーロ高の1ユーロ=143円23〜27銭。
朝方は政府・日銀による為替介入を警戒した円買いドル売りが先行した。午後になると米長期金利が上昇したことを受け、日本との金利差が拡大するとの見方が強まって円安ドル高が進んだ。
市場では「国内輸入企業による実需の円売りドル買いも入っていた」(外為ブローカー)との声があった。
●ロンドン外為 ユーロ、下げ渋り 0.99ドル台後半 9/15
15日午前のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで下げ渋る展開になっている。英国時間9時30分時点は1ユーロ=0.9980〜90ドルと前日の同16時時点と比べ0.0010ドルのユーロ安・ドル高で推移している。米連邦準備理事会(FRB)による大幅利上げ継続が引き続き意識され、ユーロ売り・ドル買いが優勢となっている。半面、欧州債の利回りが朝方から上昇幅を広げており、これを受けたユーロ買い・ドル売りが相場を支えている。
英ポンドは対ドルで下げ幅を縮小し、英国時間9時30分時点は1ポンド=1.1520〜30ドルと、前日の同16時時点と比べ0.0060ドルのポンド安・ドル高で推移している。
●ロンドン外為 ユーロ、対ドルで横ばい 9/15
15日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで横ばい。英国時間16時時点は1ユーロ=0.9990〜1.0000ドルと、前日の同時点と同じ水準で推移している。米連邦準備理事会(FRB)の大幅な利上げが続くとの見方がユーロ売り・ドル買いを促した。半面、インフレ抑制のため欧州中央銀行(ECB)も積極的な金融引き締めを続ける姿勢を示しており、ユーロ買い・ドル売りも入りやすい。一方向に持ち高を傾ける動きは乏しかった。
円は対ユーロで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=143円30〜40銭と前日の同時点と比べ80銭の円安・ユーロ高で推移している。日本と欧州の金融政策の違いが意識され、円売り・ユーロ買いが優勢となっている。
英ポンドは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.1490〜1500ドルと前日の同時点と比べ0.0090ドルのポンド安・ドル高で推移している。
●NY円、反落 1ドル=143円45〜55銭で終了、米金利上昇で 9/15
15日のニューヨーク外国為替市場で円相場は反落し、前日比35銭円安・ドル高の1ドル=143円45〜55銭で取引を終えた。米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大を手がかりとした円売り・ドル買いが入った。
米長期金利は前日終値の3.40%から水準を切り上げ、3.45%近辺で推移した。利回りが上昇した場面で円売りが優勢になった。
同日発表の8月の米小売売上高が前月比0.3%増と市場予想を上回った一方、自動車・同部品を除くベースでは予想に反して減少した。週間の米新規失業保険申請件数は市場予想より少なかった。経済指標は強弱まちまちだったが「米景気懸念を強める内容ではなかった」(ジェフリーズのブラッド・ベクテル氏)との声があった。積極的な金融引き締めを続ける米連邦準備理事会(FRB)と、緩和を続ける日銀との金融政策の違いが意識され、円の重荷となった。
円の下値も堅かった。日本の通貨当局が急激な円安への警戒姿勢を強め、為替介入に動くとの思惑が円相場を支えた。
円の安値は143円73銭、高値は143円16銭だった。
円は対ユーロで3日ぶりに反落し、前日比55銭円安・ユーロ高の1ユーロ=143円35〜45銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで小幅に続伸し、前日比0.0015ドル高い1ユーロ=0.9990〜1.0000ドルで終えた。FRBが大幅利上げを続ける公算が高まる半面、欧州中央銀行(ECB)も積極的な金融引き締めを続けるとみられる。前日終値を挟んでもみ合う場面が目立ったが、午後にかけてややユーロ買いが優勢になった。
ユーロの高値は1.0018ドル、安値は0.9980ドルだった。 

 

●東京円、12銭高の1ドル=143円44〜47銭 9/16
16日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比12銭円高・ドル安の1ドル=143円44〜47銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、同42銭円高・ユーロ安の1ユーロ=142円81〜85銭で大方の取引を終えた。
●ロンドン外為 ユーロ、対ドルで上昇 ECBの金融引き締め継続を意識 9/16
16日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで上昇し、英国時間16時時点は1ユーロ=1.0020〜30ドルと、前日の同時点と比べ0.0030ドルのユーロ高・ドル安で推移している。欧州中央銀行(ECB)の金融引き締め継続を意識したユーロ買い・ドル売りが優勢となっている。
ラガルドECB総裁が16日、インフレ抑制のための金融措置が経済成長を圧迫する可能性について「ありうるが、物価安定は根本的かつ重要なため、我々が負わなければならないリスクだ」と述べたと伝わった。
円は対ユーロで横ばい。英国時間16時時点は1ユーロ=143円30〜40銭と前日の同時点と同じ水準で推移している。
英ポンドは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.1420〜30ドルと前日の同時点と比べ0.0070ドルのポンド安・ドル高で推移している。16日発表の8月の英小売売上高が前月から急減した。英景気の後退懸念が強まり、ポンド売り・ドル買いが優勢となっている。一時は1.13ドル台半ばと、金融情報会社リフィニティブによると1985年以来37年ぶり安値水準まで下落した。
●NY円、反発 1ドル=142円90銭〜143円00銭 日米の金融政策会合前で調整 9/16
16日のニューヨーク外国為替市場で円相場は反発し、前日比55銭円高・ドル安の1ドル=142円90銭〜143円00銭で取引を終えた。来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)と日銀の金融政策決定会合の開催を前に様子見ムードが広がり、持ち高調整の円買い・ドル売りが優勢だった。
米連邦準備理事会(FRB)は20〜21日のFOMCで、3会合連続で通常の3倍の0.75%の利上げを決めるとの見方が多い。同会合後に公表される経済と政策金利の見通しを見極めたい市場参加者は多く、ドルの買い持ち高をいったん中立方向に戻す目的の円買い・ドル売りが入った。
日銀は21〜22日の会合で大規模な金融緩和政策を維持するとの予想が多い。だが、「日銀の為替介入の思惑もあって、結果を見極めるまで円売りに慎重な雰囲気が出ている」(ジェフリーズのブラッド・ベクテル氏)との指摘があった。
16日に米ミシガン大学が発表した9月の米消費者態度指数で示された消費者の5年先の予想インフレ率が2.8%と年初来の低水準となったのも、円買い・ドル売り要因だった。同指標はFRBが政策判断の材料として重視するとされる。
円の高値は142円85銭、安値は143円35銭だった。
円は対ユーロで反発し、前日比30銭円高・ユーロ安の1ユーロ=143円05〜15銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで3日続伸し、前日比0.0020ドル高い1ユーロ=1.0010〜20ドルで終えた。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が16日、景気の下支えよりインフレ抑制を優先する姿勢を示した。欧州の金融引き締め継続を見込むユーロ買いが優勢となった。
ユーロの高値は1.0036ドル、安値は0.9954ドルだった。 

 

●為替相場 9/12-916 9/17 
まとめ9月12日から9月16日の週
12日からの週は、全般的にドル買いが優勢だった。13日に発表された米消費者物価指数が予想ほどの鈍化とならなかったことで、事前に進行していたドル売りの動きが急速に巻き戻され、ドル買いが殺到した。ドル円は141円台から一気に144円台へと上昇、ユーロドルは1.01台後半からパリティ割れとなった。米債利回りが上昇し、来週の米FOMC会合では0.75%ポイント利上げが確実視も、一部に1.00%ポイント利上げ観測も出てきている。ドル円は14日の東京市場で144.96レベルまで一段高となった。しかし、政府からの円安けん制発言がこれまで以上に強い口調となり、介入の可能性も示唆された。日銀は複数の銀行に対してレートチェックを実施、市場では介入の準備との見方が広がった。ドル円は再び142円台まで下落する場面があった。ただ、米金融当局の大幅利上げ観測は根強く、ドル買い圧力が下支えとなった。その他主要通貨ではユーロが比較的底堅く、ポンドが軟調だった。ポンドに関してはかなり経済状況が厳しくなるなかで、来週の英中銀の金融政策会合でどこまでタカ派色が打ち出されるのか疑問の声がでていた。ドル高が強まるなかで、人民元は節目の1ドル=7.00元を上回る元安水準となった。
12日
東京市場は、ドル円が不安定に振幅。先週末に黒田日銀総裁が「1日に2円も3円も動くのは急激な動き」と円安けん制発言をしたことが背景。週明けは142.05近辺で取引を開始。朝方には143円近辺まで買い戻しも、142.30台まで下押しと神経質に振れた。中国・香港市場が中秋節出休場で流動性が欠けた面も指摘された。午後にかけては買いが強まり143.50付近を試す動きに。先週末の米株高を受けて、日経平均やアジア株が買われ、リスク選好の円売りに。米債利回りの上昇や先週末の下落に対する反発の動きも見られた。豪ドル円は96円台後半から98円台へと上昇、2015年以来の高値水準となった。ユーロ円は144円台半ばまで買われた。ユーロドルは1.00台前半から一気に1.01台に乗せて取引を開始も、1.01台後半に落ち着いた。朝方の買いは、週末にウクライナがロシア占領地域の奪還報道に反応した面も。
ロンドン市場では、ユーロ買いが先行。週末にウクライナ軍が同国東部ハルキウ州で軍事拠点となっていたイジュームなどをロシア軍から奪い返したとの報道を好感した動きや、週末にドイツ連銀のナーゲル総裁が今後の積極的な利上げ姿勢継続に言及したことなどがユーロ買いを誘った。ユーロドルは1.00台後半から1.0198レベルまで上伸。ユーロ円は145円台乗せから145.60台まで上昇。朝方の買いの後は1.01台前半、144円台半ばなど上昇一服となっている。ポンドドルはユーロに連れ高となり、1.16付近から1.17付近へと上昇、その後も高止まりした。ポンド円は東京市場からの上昇の流れを受けて高値を167円台乗せまで伸ばした。なお、エリザベス女王死去に伴って、今週予定されていた英中銀金融政策委員会は来週に延期された。ドル円は朝方に143.50付近に高値を伸ばしたが、その後は142円台半ばへと押し戻されている。
NY市場は、ドルの戻り売りが先行。ドル円は前半に売りが広がり、一時142円台前半まで下落。市場はこれまでのリスク回避の雰囲気を一服させており、為替市場はリスク回避のドル買いが一服。後半にはこの日の3年債と10年債の入札が不調だったことで米国債利回りが上昇し、142円台後半まで買い戻された。明日に米消費者物価指数(CPI)の発表が予定されており、その結果待ちの雰囲気も。ユーロドルはロンドン時間に1.02ドル台回復をうかがう動きがみられた。短期筋のショートカバーが活発に入っていたもよう。市場では米インフレのピークアウトへの期待が広がり、リスク選好の動きとなっていた。一方、ECB理事会では0.75%利上げの後も追加利上げ観測が継続。NY時間には1.01台前半に取引が落ち着いた。ポンドドルも一時1.17台に乗せた。その後も1.16台後半に高止まりしている。しかし、エリザベス女王死去で先週から10日間の喪に服しており、9月の経済活動は停滞するとの見方もあった。
13日
東京市場では、ドル円の上値が抑えられている。早朝に142円台後半から取引を開始したあとはじり安の動きが続き、午後には142.30台に軟化した。この後発表される米消費者物価指数が、エネルギー価格の上昇一服などを受けて伸びが鈍化すると見込まれており、ドル買いに慎重姿勢が見られた。ユーロドルは1.01台前半でのもみ合い。昨日の海外市場で1.0199まで上昇も、大台を付けきれず調整が入ったことで、上値トライに警戒感。この後の米CPIもにらみ、様子見ムードに。ユーロ円は144円台半ば前後での推移。昨日は東京市場で143円台前半から145円70銭台まで上昇し、144円台前半に戻すなど荒っぽい動きを見せたが、今日は大きな動きの後ということもあり、上下ともにやや動きにくい展開だった。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。この後の8月米消費者物価指数の発表(CPI)を控えて、米債利回りの低下とともにドルが軟調に推移。米CPIの市場予想は前年比+8.1%と2か月連続で前回から伸びが鈍化する見込みとなっており、インフレのピークアウト期待が広がっているもよう。米10年債利回りは低下、米株先物・時間外取引や欧州株は堅調に推移。ドル円は142円台割れに。ユーロドルはほぼ一方通行で1.01台後半へと上昇。豪ドル/ドルも0.68台後半から0.69台乗せへ。ポンドドルは序盤に1.17台乗せとなったあとも大台を維持。5−7月英ILO雇用統計では失業率が3.6%に低下、1974年以来の低水準となった。ただ、前回から上昇したものの賃金上昇は前年比+5.5%と高インフレには追い付かず。直近の食料品の値上げが12%に及んでいるとの報道もあって、庶民生活が圧迫される状況が続いている。8月ドイツ消費者物価指数・確報値はEU基準で前年比+8.8%だった。9月ドイツZEW景況感指数はマイナス61.9と一段と悪化。、冬のエネルギー不足の観測で、ドイツ産業の大部分の見通しが一段と悪化と独ZEWは分析した。ポンドは対ユーロで買われたあと、売りに転じている。ただ、全般的にはドル相場主導の展開となっている。
NY市場では、ドル買いが殺到した。この日発表された8月の米消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったことに市場は失望感を強めている。米CPIは総合指数で前年比8.3%と前回よりはやや鈍化したものの、予想を上回る数字だった。ガソリン代の負担は軽減されたものの、食品を始め、生活費がなお高騰している状況を映し出している。CPI全体の約3分の1を占める住居費は1990年代初期以来の伸びとなった。9月FOMC会合では引き続き75bp利上げ観測が優勢だが、米CPIを受けて100bp利上げ観測も台頭してきている。米株が急落、米債利回りが急上昇、ドル買い圧力が強まった。ドル円は発表前の141円台後半から一時144.70付近まで上昇。ユーロドルは1.02手前に上昇していたが、指標後にはパリティ割れとなった。ポンドドルも1.17台から一時1.15台割れと急落した。米株市場は大荒れとなり、ダウ平均は1200ドル超安で引けた。
14日
東京市場は、ドル円主導の展開。前日海外市場で144円台後半まで買われた後を受けて、朝方には144.96レベルまで高値を伸ばした。145円台には乗せ切れず。そこに神田財務官が、あらゆるオプションを排除せずに、適切な対応をしたいと発言。144.10台まで反落。日銀は予定されていた買い入れオペの増額を発表、緩和維持姿勢を示したことで再び144.80台に。その後、日経新聞が複数銀行の話として、日銀がレートチェックを実施したと報じられると、一気に売りが強まった。鈴木財務相は、財務官同様にあらゆる手段を排除せず対応していくという発言を行った後、あらゆる手段には介入を含むのかという記者団の問いに対して「そう考えてもいい」と発言。143円台に下落している。クロス円も売られ、ユーロ円は144.40付近から143.50台へ下落。円買い優勢に。ユーロドルは0.99台後半を中心に揉み合った。
ロンドン市場は、前日のドル高に調整が入った。ドル円の下げが主導。鈴木財務相や神田財務官から相次いで過度の変動や投機的な動きに対してあらゆる選択肢を用意しており、為替介入も辞さない姿勢が示されている。さらに、東京市場では日銀によるレートチェックが実施されたと報じられている。レートチェックは介入の前段階のものとみられている。ドル円はロンドン時間に入ると143円台割れから142.90近辺まで下押しされ、今日の高値から2円超の下落となった。ユーロドルなどその他主要通貨に対してもドル売りと円買いの動きが入っている。ユーロドルは0.9956近辺まで下押しされたあとは1.00台前半へ、ポンドドルは一時1.15台を割り込んだ後は1.1550超え水準へと反発。ユーロ円は一時143円台割れ、ポンド円は165円台割れとなった。ただ、米株先物が時間外取引で反発しており、リスク警戒の動きは緩和されている。クロス円の下げは次第に一服。この日発表された8月英消費者物価指数は前年比+9.9%と前回の10.1%からは伸びが鈍化したが、水準そのものは依然として高かった。ポンド相場は反応薄だった。
NY市場では、前日からの調整の動きが中心。前日のドル高が一服している。ドル円も一時142円台半ばまで伸び悩んだ。前日は米CPIを受けて失望感が過熱気味に市場に広がったが、一夜明けて落ち着きを取り戻しているようだ。朝方発表の米生産者物価指数(PPI)が予想通りだったことも安心感に繋がったようだ。また、ドル安と同時に円買戻しの動きも見られた。前日のドル円は再び145円台をうかがう展開を見せていたが、それを受けて日銀がレートチェックを行うなど、日本の当局のけん制が強まっている。ユーロドルは一時パリティ(1.00ドル)付近まで買戻されていた。しかし、積極的に買戻しを試す雰囲気までは出ず、1.00台に入ると戻り売り圧力も強まる展開。ポンドドルも買い戻しの動きが見られ、一時1.15台後半まで買い戻される場面が見られた。ただ、ユーロドル、ポンドドルともに反発力は限定的で、米CPI発表後の米積極利上げ観測は根強く残っていた。
15日
東京市場で、ドル円はジリ高の動き。前日は日銀によるレートチェック実施が報じられてドル円は下落、海外市場で142.50台まで下げたあと143円台を回復して東京朝を迎えた。朝方はやや上値重く推移し142.80近辺まで下げたが、その後はドル買いに転じた。前日の米株高を受けて日経平均が堅調に推移しリスク選好の動きとなったことや、出遅れていた実需筋が買いを入れたことなどが背景。午後には143.70近辺に上値を伸ばした。ユーロドルでもドル買いが優勢。0.9980近辺から0.9960近辺へと値幅は小さいものの、上値重く推移した。
ロンドン市場は、調整を交えながらも根強いドル買いの動き。序盤はドル売りが先行。東京市場でのドル高の流れは一服。しかし、米債利回りが上昇し続けるなかで次第にドル買い圧力が回帰している。米10年債利回りは3.40%付近からロンドン午前には3.45%台へと上昇。人民元が対ドルで2年ぶりの安値水準に下落したことがドル買いを波及させた面も。ドル円はロンドン朝方に143.80レベルと今日の安値から1円幅の上昇となった。その後は調整に押されて143.20付近まで反落も、再び143円台半ばへと買われた。しかし、前日の日本政府の円安けん制発言や日銀レートチェックの残像もあって売買は交錯。ユーロドルは0.9956レベルまで下押しされたあと、ロンドン市場では1.0000のパリティ水準まで反発した。ただ、その後はドル買いに押されて0.99台後半に戻している。ポンドドルは上値重く推移。朝方には1.1540付近まで買い戻しが入ったが、その後は対ユーロでの売りも加わって1.1488近辺まで安値を広げた。オフショア人民元は節目の1ドル=7.00人民元を上抜けており、約2年ぶりのドル高・元安水準となっている。
NY市場は、方向感に欠ける揉み合い。ドル円は143円台で上下動した。朝方に複数の米経済指標が公表されたが、全体的にまちまちの内容。小売売上高と米新規失業保険申請件数は予想よりも良好だったものの、輸入物価の下落幅は予想よりも小さかった。製造業の景況感指数はいずれもマイナス。米個人消費はなお持ちこたえていることを示唆している一方、インフレに対する懸念は軽減されていない。ユーロドルも方向感のない展開を続け、パリティ(1.00ドル)付近で一進一退。1.00台に入ると、戻り売り圧力が強まる一方で、下値ではECBがタカ派姿勢を強める中、ショートカバーも出ていたようだ。ポンドは売りが目立ち、対ドルで1.14台に再び下落したほか、対ユーロ、円でも下落。ポンドの焦点は来週22日の英中銀金融政策委員会(MPC)に移行しているようだ。英経済はファンダメンタルズ的に良い状況ではなく、インフレ抑制に必要な利上げは経済をさらに困難なものにする。そのため、英中銀はタカ派な声明を出すことができない可能性があるという。利上げ幅も0.50%ポイントが有力視されている状況。
16日
東京市場では、ドル円が神経質に振幅。序盤に売りが強まり143円台前半から142.83近辺まで下落した。政府・日銀からの円安けん制やレートチェックに市場が神経質になっていたようだ。この日は鈴木財務相が「円安にはプラスとマイナスの両面ある」などと従来からの見解を繰り返し、強い円安けん制はみられず。ドル円は143.50付近まで反発した。ユーロ円は143円台前半から一時142.95近辺まで下落し、すぐに値を戻した。ポンド円も164円台割れから164円台に戻す動き。一連の中国経済指標が発表され、鉱工業生産や小売売上高は予想以上に強い結果となった。一方、不動産投資は一段と落ち込んでおり、上海株が大幅安となった。豪ドルはやや底堅い値動きがみられている。
ロンドン市場は、ロンドン序盤にかけてドル買いの動きが強まった。この日はポンドドルの下落が相場をけん引した。英小売売上高が予想以上に落ち込んだことをきっかけに1.14台前半から一時1.1350付近まで下落。1985年以来のポンド安・ドル高水準となった。ポンドは対円や対ユーロでも売られている。経済状況が悪化するなかで、インフレ率は依然として10%近い高水準となっており、英中銀は厳しい選択を迫られる状況になっている。ユーロドルも売りに押されてパリティ水準手前から0.9945近辺まで一時下落。その後は下げ渋り。ECBは積極的な利上げ姿勢をみせており、この日のECB高官発言でも追加利上げの必要性が強調された。また、ユーロ相場をきわめて注視と発言するなど、ユーロ安けん制的な面もみられた。ただ、パリティ水準までは戻らず、ドル高圧力も根強い。ドル円は上下動。ロンドン朝方には143.69近辺まで買われたが、その後は株安とともに円買い圧力に押され、143.10台まで反落した。クロス円も軟調。ユーロ円は143円台半ばから142円台後半へ、ポンド円は164円台前半から一時163円割れまで下落した。
NY市場は比較的落ち着いた動きとなった。朝方はロンドン市場での対欧州通貨に対するドル買いの流れもあり、ドルが全般に堅調。ドル円は143.30円台まで上昇した。もっともその後はドル売りが優勢に。週末を前にしてポジション調整の意識が見られた。もっとも東京午前の安値前後がサポートとなり、値幅自体は抑えられた。来週のFOMCを前に注目されたミシガン大学消費者信頼感の1年期待インフレ率が市場予想と一致したことも相場の落ち着いた動きに寄与。ユーロドルはロンドン市場での下げから朝方0.9950台を付けていたが、一時1.0030台まで買戻しが入った。指標の弱さからロンドン市場で1.1350台を付けていたポンドドルも、一時1.1440台まで買い戻されている。クロス円は朝方軟調も、弱く始まった米国株が下げ幅を縮める中で買い戻しが入った。ユーロ円は朝の142円50銭台から143円40銭台まで上昇し、ロンドン市場での下げのかなりの部分を解消。 

 

●止まらない円安…その背景にある「日本の国力低下」の正体とは? 9/18
じりじりと下がり続ける円安の動き。それは私たちに、何を問いかけているのでしょうか?
魚が買えない?買い負けの現状
生鮮市場 鮮魚担当者「マグロはちょっと見通しが立たない。価格も上がってきている。完全に買い負けしている…」
原因は、急激な「円安」による価格高騰。中国を中心とする海外業者に「買い負け」し、魚介類の仕入れが減っているのです。
消費者「スーパーから魚がなくなることは想定外ですよね。日本国民としては悲しいねぇ」
止まらない円安 為替介入は?
いまや円安の流れは止まる気配がありません。9月14日には、一時1ドル=145円間近に迫るなど、24年ぶりの円安水準。こうした状況に、鈴木財務大臣は…
鈴木財務相「あらゆる手段を排除することなしに、やるべきことをやる」
--「介入」は含まれるか?
鈴木財務相「あらゆる手段であり、そう考えていい」
「為替介入」について初めて言及。今回は、円安抑制のため、政府が持つ大量のドルを売って円を買おうというものです。しかし、為替介入は、アメリカと同時に行う「協調介入」がないと効果は限定的とされ、今のところ、アメリカにその姿勢は見られません。
ガソリン価格が200円超?続く値上げラッシュ
こうした記録的円安に加え、ウクライナ問題によるエネルギーや食糧価格の高騰が、日本経済を直撃しています。現在、政府により輸入小麦の価格は据え置かれていますが、食料品から、電気、ガスなど様々なものの値段が上がり、今後も上昇が懸念されます。ガソリン価格も、現在1リットル当たり上限35円の補助金が年末までとされているため、年明けには1リットル200円を超えるとも予想されます。
主婦「何を手に取っても去年とかよりは高いし、去年より安いものってあるのかなって」「給料はなかなか上がらないし、出ていくものばかり上がってる」
片や日本の平均賃金はこの30年間ほとんど上がっていません。欧米との差は開き、韓国にも抜かれる状況で、家計の負担は日増しに高まりつつあります。また円安で原材料費などが高騰。商品価格に転嫁することができない中小企業の「円安倒産」も増え始めています。
帝国データバンクの調査員「(円安)倒産は景気の事象にちょっと遅れて発生するものなので、徐々に増えていく可能性がある」
専門家は、円安による日本経済の危機は、一時的なものではないと、警鐘を鳴らします。
経済評論家 加谷珪一氏「国力の低下、日本企業の競争力の低下です。80年代までの成功体験にあぐらをかいてしまって、日本の製造業は、あまり積極的な技術開発をしなかった。90年代以降、世界市場に占める日本企業の影響力は低下する一方で、円も国際的地位が低下してしまった」
かつて日本は自動車から電化製品まで性能の良い魅力的な製品を次々生み出し、世界に輸出。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称される、輸出大国に成長しました。しかしバブル崩壊後、日本経済は低迷。株価も下落するなど「失われた20年」と呼ばれる時代に突入します。そうした状況の中、登場したのがーー
安倍元総理「Buy my アベノミクス!」
日銀による異次元の金融緩和を柱とするアベノミクス。3本の矢を掲げ、株価は上昇したものの、金融緩和の出口は見つからず、円安に歯止めがかからない現状です。
経済評論家 加谷珪一氏「本来アベノミクスが目指すべきであった、日本経済の仕組みをちゃんと成長できる体質に変える、この部分はほとんど手つかずの状態で、金融緩和さえやれば経済が良くなるというような政策になってしまった。これでは成長できないのも当然。国力全体が低下している」
実際、日本の「国力低下」は顕著です。2000年に世界2位だった一人あたりのGDP=国内総生産は、28位に下落。また、スイスの調査機関が公表している「経済的競争力の国際比較」でも、1989年から4年連続1位だった日本は、現在34位に。さらに、通貨の実力を示す「実質実効為替レート」もドルやユーロなどに対し、円の実力は、51年前の水準にまで低下しているといいます。こうした状況に、専門家は…
経済評論家 加谷珪一氏「日本経済の仕組みそのものに問題がある。企業が競争力を付けて、国民の賃金が上がっていかないと、国力は増えていかない。やらなきゃいけないことは分かっていて、なぜかそれに手をつけない、それが今の日本なんだと思います」
国力低下が続く日本。打開策はとられるのでしょうか--
●来週の円は対ドルで一段と円安が進む可能性  9/18
来週の円相場は、対ドルで一段と円安が進む可能性がある。心理的な節目の1ドル=145円を前にした日本の金融当局によるけん制が円安進行を阻んでいるが、米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げやタカ派的な姿勢が145円突破の手がかりとなりそう。相場の予想変動率が高まる中、147円付近まで円安が進むリスクも意識されそうだ。
市場関係者の見方
   ステート・ストリート銀行金融市場部の貝田和重部長
○ 来週のドル・円相場の下値は141円、上値は147円のレンジを想定している。日米金融政策発表など、イベントが多く、ボラティリティーは上がりやすい
○ 週前半はFOMCや日銀金融政策決定会合などのイベントを前にしたドル全体でのポジション調整でドル・円も下押す可能性がある
○ ここまでドル高・円安をけん引している日米の金融政策のフレームワークについて、日本サイドに変化は見込みづらい一方、米国は物価にピークが確認できない中でよりタカ派になりやすく、ドル高・円安が進みやすい
○ FOMCを受けてドル・円は145円超えをトライしていく可能性が高い。ただ、145円の節目を前にレートチェックの報道が出るなど、本邦当局の動きが確認された。改めて145円トライの局面で当局の反応・対応を見極める必要があるだろう
○ 145円を超えるとオプション関連の買いフローも出やすいとみられ、一段高になる可能性がある
   注目イベント
○ 20日から米FOMC会合。21日(日本時間22日早朝)に政策発表。21日に政策発表、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が会見 ・今会合では経済予測も併せて公表。今回の予想から政策委員の政策金利見通し(ドットチャート)に2025年が加わる
○ 21、22日に日銀金融政策決定会合。22日に政策発表、黒田総裁が記者会見
○ 22日にイングランド銀行(英中銀)、スイス国立銀行(中銀)が金融政策を発表
   来週の主な予定
○ 19日:日本は休場(敬老の日)、デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁が発言
○ 20日:8月の日本全国CPI、8月の米建設許可件数、8月の米住宅着工件数、米20年国債入札
○ 21日:デギンドスECB副総裁が発言、8月の米中古住宅販売件数
○ 22日:7−9月期の米経常収支、米新規失業保険申請件数、米インフレ連動国債入札
○ 23日:日本は休場(秋分の日)、9月の製造業PMI(仏、独、ユーロ圏、英、米)、FRBのパウエル議長、ブレイナード副議長、ボウマン理事がFRB主催のイベントで発言
●日本は”痩せ我慢”するしかないのか? 円安の原因は 9/18
華字メディア・日本華僑報は15日、「日本は円安の中で“痩せ我慢”するしかないのか?」とする記事を掲載した。記事は、7日に1ドル145円近くまで円安が進んだことに言及し、「1998年前後のアジア通貨危機以来の安値となった」と指摘した。
その上で、「そもそもアジア通貨危機は、(投資家の)ジョージ・ソロス氏が東南アジア諸国の通貨を空売りしたことに端を発した金融危機であり、日本は打撃の対象外で、しかも日本は(打撃を受けた)東南アジア諸国を支援する筆頭だった。しかし、こうした支援が後に強がりだったと受け止められたのは、日本はアジア通貨危機の直撃を受けたわけではないものの、経済に間接的な影響を受けていたからだ」とし、「当時の日本はさらに政府の財政緊縮政策、消費税率の5%への引き上げなどの要因により、さまざまな経済問題が一斉に爆発し、結果的に1998年の経済はマイナス成長状態に落ちた。そしてその後、日本は長期の景気低迷に陥り、当時流行していた『失われた十年』が『失われた二十年』に変わってしまった」と述べた。
続けて、「そのため、1998年8月に円相場が1ドル147円まで下落したのは、日本自身の金融に問題が生じたことが主因であった」とし、「当時、北海道拓殖銀行や日本長期信用銀行が相次いで破綻し、日本の金融システムへの信頼が失われ、円が暴落した。政府や日銀は1997年秋から円買いドル売りを繰り返し、為替市場への介入を積極化したが、これも目立った効果は得られなかった。円がその後に堅調(相場が上昇傾向)に転じたのも、米ヘッジファンドが経営危機を起こして世界的な金融恐慌を招いたおかげであり、この際に円はリスク回避資産として人気になっていた。米連邦準備制度理事会(FRB)が景気刺激のために利下げを開始したこともあり、米国と日本の金利差は徐々に縮小していったため、1998年10月には円相場の回復が目立った」と指摘した。
記事は、「現在の円相場はどこに向かうのだろうか?」とし、「実際、ここまで円安が進んだのは日本自身の問題ではない。日本の不動産業界の景気がこうした状況を物語っている。しかし、円安が大幅に進んでいることは確かだ」と述べた。
そして、「米国と日本の金利差は円相場に影響を与える大きな要因の一つだ。現在、FRBは米国のすさまじいインフレを抑えたい一心で利上げを繰り返している。実際には米国はドル高を望んでおり、これに対して日本政府や日銀が大規模な為替介入を行うことは難しく、日本自身も『アベノミクス』で実現できなかったインフレ目標を達成したいため、金利を引き上げることはできない」と指摘。「つまり、日本政府は為替市場に介入できず、日銀は金利を上げることもできない。この状況で近いうちに円高に進むには、リスク回避通貨になることに期待を寄せるしかない。円は長い間リスク回避通貨としての役割を果たしてきたが、通常は米国経済が景気後退に見舞われた時に初めてそのような役割を果たすことができた。現在、米国はインフレを抑制している段階であり、景気後退期には入っていない。ドルが大きく下落しなければ、円もリスク回避通貨として機能する機会はない」と述べた。
最後に、「現在、円安による日本経済へのメリットは少なくなり、デメリットが多くなっている。問題は日本政府がどうすることもできないことだ」とし、「日本は円安に対して“痩せ我慢”、つまり損をしているのに平気な顔をするしかなさそうだ」と締めくくった。 

 

●東京為替:ドル・円は反発、米大幅利上げ期待でドル買い 9/19
19日の東京市場でドル・円は反発。東京市場の休場で薄商いのなか、米株式先物の軟調地合いで円買いが進み一時142円65銭まで下落。ただ、明日から開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅利上げ期待でドル買いに振れ、午後に143円53銭まで上昇した。
・ユーロ・円は143円31銭から142円80銭まで下落。
・ユーロ・ドルは1.0031ドルから0.9966ドルまで値を下げた。
・17時時点:ドル・円143円40-50銭、ユーロ・円143円10-20銭
・日経平均株価:休場
●欧州為替:主要通貨の取引はやや動意薄、ロンドン市場は休場 9/19
19日のロンドン外為市場のドル・円は、143円54銭から143円36銭まで下げた後、押し目買い興味が残されており、143円台半ばまで戻した。リスク回避的な円買いは縮小気味。
ユーロ・ドルは0.9987ドルまで反発した後、0.9967ドルまで下げたが、押し目買いが入り、0.9977ドルまで戻す展開。ユーロ・円は143円00銭まで下落後、143円23銭まで戻した。
ポンド・ドルは1.1393ドルから1.1356ドルまで下落。英女王エリザベス二世の国葬開始で動意薄の状態が続いている。ドル・スイスフランは0.9689フランから0.9662フランまで下落した。
●NY円、143円前半  9/19
週明け19日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前週末比26銭円安ドル高の1ドル=143円15〜25銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・0020〜30ドル、143円52〜62銭。
米連邦準備制度理事会(FRB)が今週開く連邦公開市場委員会(FOMC)で0・75%またはそれを上回る大幅利上げを決めるとの観測を背景に、日米の金利差拡大を見込んだドル買い円売りが優勢となった。
●週明けはドル高の動きで始まる、ドル円143円台半ば=ロンドン為替概況 9/19
ロンドン市場は、ドル高の動きが優勢。ドル円はアジア午前に142.65近辺に下げたが、その後は上昇の流れが継続。ロンドン序盤には143.57近辺に高値を伸ばし、安値からは約1円幅の上昇となっている。欧州株や米株先物は軟調に推移しており、NY原油先物も下落。米FOMC会合を控えた週とあって、大幅利上げが懸念される動きで始まっている。バイデン米大統領が中国から前例のない攻撃があれば、米軍は台湾を守ると発言したことが米中関係の緊張につながった点も指摘された。ユーロドルはアジア朝方につけた1.0029近辺の高値から下げ続けて一時0.9966近辺に安値を広げた。ただ、ロンドン時間の値動きは限定的。取引中盤にかけてはパリティ水準に戻すなど、ドル高の動きは一服している。ポンドドルは軟調。アジア朝方の1.1442近辺を高値に、その後は下げ続けて安値を1.1356近辺まで広げている。きょうはエリザベス女王国葬のため英市場は休場となっている。特段の新規材料に欠けるなかでも先週来のポンド売り圧力は継続している。対ユーロでもポンドは軟調。独連銀は、経済活動は今期はやや後退、秋から冬にかけて著しく縮小する可能性との見方繰り返したが、特段のユーロ売り反応はみられていない。
ドル円は143円台半ばでの取引。東京不在のアジア朝方につけた142.65レベルを安値に、その後は買いの流れに。欧州時間に入ると143.57レベルまで高値を伸ばした。その後は高止まり状態になっている。米10年債利回りは3.49%付近へ上昇するなど、米FOMCでの大幅利上げ観測は根強い。欧州株および米株先物は軟調に推移。
ユーロドルは0.99台後半での取引。アジア朝方につけた1.0029レベルを高値としてその後は軟調に。欧州序盤には0.9966レベルまで安値を広げた。取引中盤にかけては1.0000台を回復する場面があったが、上値も重い。ユーロ円は欧州朝方に142.65レベルまで下押しされたが、その後は下げ渋り。足元では143.57レベルまで一時上昇。全般に方向性は希薄。ユーロは対ポンドでは買われており、底堅い印象。
ポンドドルは1.13台後半での取引。アジア朝方につけた1.1442レベルを高値に、その後は売りの流れが継続。欧州序盤には1.1356レベルまで安値を広げた。足元では下げ一服も1.13台後半にとどまっている。ポンド円は163円台前半での取引。上値は163.50レベルに届かず、欧州朝方には162.88レベルまで下押しされる場面があった。ユーロポンドは0.8750付近まで下げたあとは、上昇に転じており、高値を0.8787近辺に伸ばしている。ポンド相場は、先週からの軟調な流れが継続している。
●ロンドン為替見通し=欧州中央銀行(ECB)高官の発言に要注目か 9/19
本日のロンドン為替市場のユーロドルは、エリザベス英女王の国葬のためロンドン市場が休場となることで閑散取引が予想される中、デギンドスECB副総裁やデコス・スペイン中銀総裁の講演で次回のECB理事会での追加利上げ幅を見極めることになる。
また、先週の習中国国家主席との首脳会談を終えたプーチン露大統領の「ノルド・ストリーム1」の稼働時期への言及やウクライナ情勢を巡る見解にも注目しておきたい。
タカ派のデギンドスECB副総裁は、記録的なインフレを退治するため「断固とした行動」が必要だと主張し、追加利上げの必要性を訴えており、0.75%の追加利上げを主張する可能性が高い。
デコス・スペイン中銀総裁は、9月の追加利上げの後は、「状況に応じて決定していく」と述べており、エネルギー危機のリスクが高まっている中、物価上昇と景気減速のどちらに軸足を置くのか、要注目か。
ポンドドルは、イングランド銀行金融政策委員会(MPC)での追加利上げ観測にも関わらず、物価上昇を受けた景況感の悪化懸念、エネルギー危機への警戒感から売り圧力が強まりつつある。
想定レンジ上限 / ユーロドルの上値目処(めど)は、一目・基準線の1.0066ドル、ユーロ円は9月14日の高値の144.48円。ポンドドルは、一目・転換線の1.1545ドル、ポンド円は一目・基準線の163.92円。
想定レンジ下限 / ユーロドルの下値目処(めど)は、9月14日と15日の安値の0.9956ドル、ユーロ円は9月16日の安値の142.51円。ポンドドルは9月16日の安値の1.1351ドル、ポンド円は一目・雲の下限の162.51円。 

 

●東京円、2銭安の1ドル=143円46〜48銭 9/20
連休明け20日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前週末16日(午後5時)に比べ02銭円安・ドル高の1ドル=143円46〜48銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは、同1円16銭円安・ユーロ高の1ユーロ=143円97銭〜144円01銭で大方の取引を終えた。
●ロンドン外為 円、143円台後半 9/20
休日明け20日午前のロンドン外国為替市場では、米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えてドル買い・円売りが優勢となり、円相場は1ドル=143円台後半に下落した。正午現在は143円60〜70銭と、前週末午後4時(142円90銭〜143円00銭)比70銭の円安・ドル高。
ロンドン市場はエリザベス英女王国葬に伴い19日は休場だった。
米連邦準備制度理事会(FRB)はこの日から2日間の日程で始まるFOMCで、歴史的な物価高の抑制に向け、前回会合に続いて大幅な利上げを決める見通し。大規模な金融緩和を維持している日銀の金融政策決定会合も21〜22日に控える中、日米金利差の拡大をにらんだドル買い・円売りの動きが進んだ。
対ユーロは1ユーロ=143円65〜75銭(前週末午後4時は143円35〜45銭)と、30銭の円安・ユーロ高。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=1.0000〜0010ドル(1.0025〜0035ドル)。
ポンドは1ポンド=1.1435〜1445ドル(1.1425〜1435ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9650〜9660フラン(0.9620〜9630フラン)。
●ロンドン外為 ユーロ、下げ幅拡大 1.00ドルちょうど近辺 9/20
20日午前のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで下げ幅を拡大した。英国時間9時30分時点は1ユーロ=1.0000〜10ドルと前週末16日の同16時時点と比べ0.0020ドルのユーロ安・ドル高で推移している。米連邦準備理事会(FRB)による大幅な利上げが継続するとの観測が強く、欧米金利差の拡大を意識したユーロ売り・ドル買いが優勢となっている。
英ポンドは対ドルで上昇し、英国時間9時30分時点は1ポンド=1.1430〜40ドルと、前週末16日の同16時時点と比べ0.0010ドルのポンド高・ドル安で推移している。
●NY円、143円後半に 米長期金利の上昇背景にドル買い優勢 9/20
20日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比51銭円安ドル高の1ドル=143円66〜76銭を付けた。ユーロは1ユーロ=0・9963〜73ドル、143円32〜42銭。
米長期金利の上昇を背景に、日米の金利差拡大を意識したドル買い円売りが優勢となった。
●NY円、続落 1ドル=143円65〜75銭 日米の金融政策の違い意識 9/20
20日のニューヨーク外国為替市場で円相場は続落し、前日比50銭円安・ドル高の1ドル=143円65〜75銭で取引を終えた。米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大を見込む円売り・ドル買いが優勢だった。21日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を控え、米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢が改めて示されるとの警戒感も円売りにつながった。
米長期金利は一時、前日比0.11%高い(債券価格は安い)3.60%と、2011年4月以来の水準に上昇した。金融政策の影響を受けやすい2年債利回りは3.99%と07年10月以来の高水準を付けた。米金利の上昇に伴い、円売り・ドル買いの動きが強まった。
21日に結果が発表される9月のFOMCでは3会合連続で0.75%の大幅な利上げを決める見込み。委員らの政策金利見通し(ドットチャート)やパウエル議長の記者会見でタカ派寄りの方針が示される可能性も高い。一方、日銀は21〜22日の会合で大規模な金融緩和政策を維持するもよう。日米の金融政策の違いを意識した円売り・ドル買いが活発だった。
ただ、円の下値は堅かった。投機筋の対ドルでの円売りの持ち高は積み上がっている。円の下落場面では利益確定の買い戻し需要も根強く、円の下値を支えた。
円の安値は143円92銭、高値は143円51銭だった。
円は対ユーロで反発し、前日比20銭円高・ユーロ安の1ユーロ=143円30〜40銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで5営業日ぶりに反落し、前日比0.0055ドル安い1ユーロ=0.9965〜75ドルで終えた。FOMCの結果がタカ派寄りの内容になるとの観測が強く、ユーロ売り・ドル買いが優勢となった。
ユーロの安値は0.9956ドル、高値は0.9999ドルだった。 

 

●東京円、28銭安の1ドル=143円74〜76銭 9/21
21日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比28銭円安・ドル高の1ドル=143円74〜76銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは、同1円52銭円高・ユーロ安の1ユーロ=142円45〜49銭で大方の取引を終えた。
●ロンドン外為 ユーロ、安値圏 0.99ドルちょうど近辺 9/21
21日午前のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで安値圏で推移している。英国時間9時30分時点は1ユーロ=0.9900〜10ドルと前日の同16時時点と比べ0.0090ドルのユーロ安・ドル高で取引されている。ウクライナ情勢を巡る地政学リスクの高まりで、ユーロ圏経済への悪影響を懸念したユーロ売り・ドル買いが優勢となっている。
ロシアのプーチン大統領が21日、ウクライナ侵攻に関して、戦闘継続のために部分的な動員令に署名したと明らかにした。ロシアは領土を守るために「利用可能なあらゆる手段を使う」との発言も伝わるなど、ウクライナ情勢の悪化懸念が強まった。
英ポンドは対ドルで下げ幅を広げ、英国時間9時30分時点は1ポンド=1.1330〜40ドルと、前日の同16時時点と比べ0.0080ドルのポンド安・ドル高で推移している。対ポンドでもリスク回避目的のドル買いが入った。
●ロンドン外為 ユーロ、対ドルで下落 9/21
21日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=0.9870〜80ドルと、前日の同時点と比べ0.0120ドルのユーロ安・ドル高で推移している。ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻で部分的な動員令に署名した。情勢緊迫化への懸念から、地理的に近接するユーロに売りが出た。米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を前に、タカ派的な方針が示されるとの見方もユーロ売り・ドル買いを促した。
円は対ユーロで上昇し、英国時間16時時点は1ユーロ=142円30〜40銭と前日の同時点と比べ1円30銭の円高・ユーロ安で推移している。ウクライナ情勢の激化がユーロ圏経済に悪影響を及ぼすとの懸念から、円買い・ユーロ売りが優勢となっている。
英ポンドは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.1320〜30ドルと前日の同時点と比べ0.0090ドルのポンド安・ドル高で推移している。
●NY外国為替市場 円相場一時円安進む FRBの3回連続利上げ受け  9/21
21日のニューヨークの外国為替市場ではFRB=連邦準備制度理事会が3回連続となる0.75%の異例の大幅な利上げを決めたことで直後は日米の金利差の拡大が意識され、円安が進み、円相場は一時、1ドル=144円台後半まで値下がりしました。
しかし、その後は利上げによる景気減速への懸念などから円が買い戻され、円相場は1ドル=144円前後の水準で取り引きされています。
また、ニューヨーク株式市場では、大幅な利上げが続いて景気が減速することへの懸念から売り注文が出て、ダウ平均株価は一時、400ドルを超える値下がりとなりました。
●NY円、続落 1ドル=144円05〜15銭 FRBの大幅利上げ継続の観測で 9/21
21日のニューヨーク外国為替市場で円相場は3日続落し、前日比40銭円安・ドル高の1ドル=144円05〜15銭で取引を終えた。米連邦準備理事会(FRB)は21日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で通常の3倍にあたる0.75%の利上げを決めた。インフレ抑制に向け当面は大幅な利上げを続ける見通しで、日米の金融政策の違いを意識した円売り・ドル買いが広がった。
FRBがまとめた委員らの政策金利見通しは2022年末で4.4%、23年末は4.6%となった。前回6月会合の予想(それぞれ3.4%、3.8%)から引き上げた。来年末の水準は市場予想(4.4%程度)を上回り、想定よりタカ派的と受け止められた。
円は一時144円70銭まで下落したが、その後は買いも入り下げ幅を縮小した。日銀は22日に金融政策決定会合を開く。市場の一部では現在の金融緩和を修正するとの観測があり、一方的な円売りは手控えられた。
円の高値は143円41銭だった。
円は対ユーロで続伸し、前日比1円55銭円高・ユーロ安の1ユーロ=141円75〜85銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで続落し、前日比0.0130ドルユーロ安・ドル高の1ユーロ=0.9835〜45ドルで取引を終えた。ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻で部分的な動員令に署名したと明らかにした。情勢緊迫化への懸念から、地理的に近接する欧州のユーロに売りが出た。FRBが大幅利上げを続けるとの見方もユーロの重荷だった。
ユーロの安値は0.9810ドル、高値は0.9920ドルだった。
●予想超えたアメリカ「物価高止まり」の衝撃…止まらぬ円安、政府・日銀は? 9/21
9月13日のニューヨークダウ平均株価は、FRB(連邦準備制度理事会)が大幅利上げを続けるとの警戒感から、コロナショック以来2年3か月ぶりの大幅な下落となった。原因は同日発表された8月のCPI(消費者物価指数)だ。7月に伸びが鈍化し、インフレは峠を越えたと見られていたが、8月の指数が市場予想を上回った。米国の物価が高止まりしているのはなぜか、また、日本経済への影響はどうなるのか、専門家に聞いた。
賃金・家賃は下落せず、米CPI高止まり
ダウ平均株価は13日、一時1362ドル値下がりとなり、終値は前日比で1276ドル安い3万1104ドルで取引を終えた。これは2020年6月のコロナショック以来、2年3か月ぶりの大幅下落だ。
きっかけは同日発表された8月の消費者物価指数(CPI)だ。アメリカでは40年ぶりという歴史的な物価の高止まりが続いていたが、7月のCPIはついに伸びが鈍化。インフレは峠を越えたという見方が広まり、8月についても市場予想は8.1%だった。ところが結果はそれを上回る8.3%で、市場予想を裏切る結果となった。
金融市場ではインフレ抑制のためFRBの金融引き締めが続くという観測が一気に強まり、リスク資産である株が売られ、ダウ平均は記録的な下落となった。市場の予想を裏切る結果となったアメリカの8月のCPI。物価が高止まりしている理由について専門家は次のように見ている。
岡三アセットマネジメント シニアストラテジスト 前野達志氏: 今回のCPIに関しては、賃金や家賃が高止まっています。しばらくは家賃が下がりにくく、高止まりする。粘着力があると考えた方がいいような気がします。
実際にCPIの内訳を見ると、ガソリンは前月比10.6%下落する一方、住居費は0.7%、医療サービスは0.8%上昇している。家賃など住居費や医療サービスは一度値上がりすると下がりづらく、物価高止まりの原因になっている。
――今後のFRBの利上げ幅についてはどう見ているか。
岡三アセットマネジメント 前野達志氏: 個人的には、0.75%の利上げを9月にやり、11、12月と若干小さな幅の利上げを行うと。そして、来年に入ると利上げをストップして様子を見るという状況になるのかなと思っています。
進む円安に日本政府ようやく危機感。為替介入の有無は?
市場予想を上回るアメリカの物価の高止まりは、日本にも影響を及ぼした。アメリカの8月のCPI発表後、14日の円相場は2円以上円安が進み、一時1ドル144円96銭をつけた。これまで「注視する」と繰り返していた鈴木俊一財務大臣は、「あらゆる手段を排除しない」と表現を強めた。また、日銀は14日、銀行のディーラーなどにドル円相場の水準を聞き取る「レートチェック」を実施。レートチェックは為替介入の準備とされることから、市場では為替介入は間近かという警戒感から円を買い戻す動きが広がり、一時2円近く円高方向に動くなど緊張感が高まっている。為替介入について専門家の見方は?
――144円90銭近辺でレートチェックがあったが、為替介入はあるのか。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏:  今のところ微妙だと思っています。本当に腹をくくって介入をやる気なら、レートチェックなんかやらない方がいいわけです。予告も何もなしにズバッと介入した方が、みんなびっくりして介入の効果は非常に高くなりますから。いまのところ非常にきつい口先介入を入れているということは、まだ介入をやるかどうか迷っているような段階で、145円あたりが防衛線として意識されているのかなという感じがします。
――145円は防衛線としては合理的なラインか。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 植野大作氏: 24年前のドル高円安のトップレベルが147円台ですから、そこを抜けると止まらなくなるリスクがあるので、手前の145円あたりを念頭に置いているという可能性はゼロではないと思います。
――仮に介入があった場合、効果はあるのか。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 植野大作氏: 私は薄いと思います。いま日銀が大規模緩和を一生懸命続けている状態で、いくら財務省が外為市場で円を売っても金融政策との整合性が全く取れない。「ちぐはぐ介入」になってしまうので、なかなか効果が薄い。それからもう一つ、いまのように円安を止める介入というのは自国通貨を買うために外貨準備を取り崩さなければいけないので、元手になる外貨準備が払底してしまうとできなくなる。ですから、日本政府の単独介入だと効きが甘いのではないかと思います。
――今後の中期的な為替相場の動向はどう見ればいいか。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 植野大作氏: 日本とアメリカの金融政策のレベルがあまりにも違いすぎますし、日本の貿易収支の赤字体質が定着していることを考えると、やはり介入の神通力だけだと145円で止めるのは難しいと思います。そこを抜けると24年前の147円、私はいまのところその手前で止まるのではないかと思っていますが、抜けると150円を目指すような雰囲気になっても不思議ではないと思います。
インフレ時代突入か?日本に求められる金融政策の「転換」
――アメリカのCPI(消費者物価指数)が再び上がってきており根強い。少し前までは世界中が低成長あるいはインフレが起きないことに悩んでいたが、ウクライナ戦争やコロナで突然インフレの時代に変わったと言われている。本当にインフレの時代になったのか。
東京大学 伊藤元重名誉教授: コロナという大きなイベントを通じて社会が大きく変わったという見方はいくつかあると思います。コロナ以降、特にヨーロッパやアメリカで強いのですが、いわゆる気候変動やデジタルでしっかり投資していかないとまた長期停滞に戻ってしまうという、政策の変化のようなものが浸透して日本でもそういう話になってきています。今後はこれまでのような低金利、停滞で安定の時代から、変化と金利が上がっていく中でインフレも見ながらの展開になると感じている人は多いのではないでしょうか。
――これまでは投資先がなく金融バブルだけが起きているという状態だったが、GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)があり、そこに財政資金も入っていき、新しい投資先に資金が流れていくようになった。そのことがインフレを予感させる時代になっているという認識か。
東京大学 伊藤元重名誉教授:  財政とワンセットだろうと思います。問題が複雑なのは、そういう中で財政は本当に大丈夫だろうかという懸念も一方にあるわけです。これもやはり金利の押し上げ要因になっているものですから、いい面と悪い面と両方あると思うのですが、そういう大きな時代の変化のようなものを世界全体が感じているということです。
――欧米はともかく日本はいまインフレ率が低いので、日本は無縁だという見方もあるが、そうは言っていられないということか。
東京大学 伊藤元重名誉教授: 日本は賃金が上がらないなどの要因で物価上昇率が鈍いのですが、その日本が2%を超える消費者物価指数の上昇になってきているわけです。企業の投資行動を見ても半導体分野だとか気候変動分野で次々と投資を予定しているわけですから、そういう意味ではこれまでと少し違った状況が日本でも起きているということだと思います。
――岸田政権は物価高も円安も抑えたいとなってきている一方で、日銀はこれまでの異次元緩和の流れもあり、物価高円安は好ましいと思っている節がある。日本が取るべき道はどちらか。
東京大学 伊藤元重名誉教授: 物価が2%を超えてずっと上がっていけば金融政策を変えていかざるを得ないだろうし、変えていくことは好ましいと考えている人も多いと思います。日銀の政策転換がどういう形でいつ起こるかというのが非常に大きなポイントで、これは為替に関わってきます。政府にとって複雑なのは、いま物価高というよりもエネルギーと食料が高い。生活に直結する特定の商品が高いものですから、特に貧困層や高齢者を守るためにいろいろなことをやらなければいけないというのがあるのだろうと。その先に本当にインフレ、超インフレになるのか、それとも安定的な物価の動きになるのかということは、これから様子を見ないと分からない。
――日本の企業物価指数は9.0%と相変わらず高く、これが消費者物価に波及してくる。いま物価高で実質賃金が低下しており、賃金を上げていくことが必要であり、生活を支える政策が大事なのではないか。
東京大学 伊藤元重名誉教授: そういう危機が起こった時に生活を支えていくことは非常に重要なのですが、日本の政策の欠点は「みんなにやっちゃいましょう」というので効果が弱くなってしまうのです。生活を守るためにどこに集中してインフレ対策をしなければいけないのかということをしっかりやらないと、やっても効果があまり出ないというのでは困ると思います。
――金融政策の転換はもうそこまで来ているのか。
そう思いますが、物価上昇率次第です。ショックはある程度覚悟せざるを得ないと思います。いままでやってきたことはある意味で特殊なデフレ対策だったのですから、正常軌道に乗せるという意味では転換は重要だと思います。

 

●円相場、144円25〜25銭 9/22
22日の東京外国為替市場の円相場は、午前9時現在1ドル=144円25〜25銭と、前日(143円74〜74銭)に比べ51銭の円安・ドル高となった。
●東京円、24年ぶり145円台 米利上げ決定で円売り加速 9/22
22日の東京外国為替市場で円相場が対ドルで下落し、1998年8月以来、約24年ぶりに1ドル=145円台をつけた。米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)が21日、歴史的なインフレ(物価上昇)を抑制するため、3会合連続となる政策金利の0・75%引き上げを決定したことで、運用に有利なドルを買って円を売る動きが加速した。
米国が金融引き締めを急ぐのに対し、日銀は新型コロナウイルス禍からの景気回復を支えるために大規模な金融緩和策を継続する姿勢を示している。22日には日銀が金融政策決定会合で大規模緩和の継続を決定。市場では、金融政策の違いから日米の金利差が拡大することが意識され、円安傾向が強まった。
円相場は2022年初めに1ドル=115円前後で推移していたが、FRBが利上げを始めた3月から急激な円安が進行。対ドルの年間下落率は、73年の変動相場制導入後で過去最大となっている。円相場は9月1日に140円台の節目を突破した後も下落に歯止めが掛からず、8日と14日にも145円台目前に迫った。
円安は輸出企業の収益を押し上げる一方、輸入コストの上昇を通じて家計の圧迫要因となる。円安傾向が今後も続けば国内消費が冷え込む懸念が高まる。急激な円安に危機感を強めた日本政府は、投機的な円売りをけん制。鈴木俊一財務相は14日、政府の円安対応に為替介入が含まれるかとの問いに「そう考えてもいい」と踏み込むなど、警戒感を高めていた。 
●東京円、2円3銭安の1ドル=145円77〜78銭 9/22
22日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比2円03銭円安・ドル高の1ドル=145円77〜78銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、同1円05銭円安・ユーロ高の1ユーロ=143円50〜54銭で大方の取引を終えた。
●東京円、一時145円90銭 為替介入で円急伸も 9/22
22日の東京外国為替市場の円相場は対ドルで急落し、一時1ドル=145円90銭を付けた。米連邦準備制度理事会(FRB)が大幅利上げを決定した一方、日銀は大規模な金融緩和策を維持。日米の金融政策の違いが意識され、投資家が運用に有利なドルを買った。
政府と日銀による為替介入を受け、その後の海外市場では、一時急速に円高ドル安が進んだ。
東京市場の午後5時現在は前日比2円03銭円安ドル高の1ドル=145円77〜78銭。ユーロは1円05銭円安ユーロ高の1ユーロ=143円50〜54銭。
日銀の黒田東彦総裁は22日の会見で、改めて金融緩和政策を維持する方針を強調した。
●東京外為 ドル、145円台後半=日銀政策や黒田会見受け急伸 9/22
22日の東京外国為替市場のドル対円相場(気配値)は、日銀が大規模金融緩和策の維持を決定したのに続き、黒田東彦日銀総裁が記者会見で早期の金利引き上げを否定したことなどから、1ドル=145円台後半に急伸した。午後5時現在は145円77〜77銭と前日(午後5時、143円74〜74銭)比2円03銭の大幅ドル高・円安。
前日の海外市場では、米連邦公開市場委員会(FOMC)が3会合連続で0.75%の大幅利上げを決定したのを受け、市場では日米金利差の拡大観測が一段と強まり、一時144円70銭台まで値を上げた。
この日の東京市場は144円20銭台で取引をスタート。実質的な「五・十日」ということもあり、仲値に向けて実需の買いが入り、144円台半ばまで上昇。さらに、正午前に日銀が金融政策決定会合で大規模緩和の維持を決めたと報じられると買いの勢いが加速し、一気に145円30銭台まで値位置を切り上げた。その後は、政府・日銀による介入警戒感などから上げ一服となったが、黒田日銀総裁が会見で「当面、金利を引き上げることはない」、「円安は一方的な動きで投機的要因もある」といった従来と変わらないスタンスの発言を繰り返したため、欧州勢などの買いも加わり、145円90銭近くまで上昇した。
市場からは「海外時間はドル円がさらに上昇するだろう」(FX業者)といった声が聞かれた一方で、「円安が進むことで、介入への警戒感がさらに増すことも考えられる」(大手邦銀)といった指摘もあった。
ユーロは対円で大幅上昇、対ドルでは小幅高。午後5時現在、1ユーロ=143円52〜59銭(前日午後5時、142円48〜49銭)、対ドルでは0.9845〜9845ドル(同0.9910〜0.9910ドル)。
●円相場 1ドル=145円台に 24年ぶり 年初めから約30円下落  9/22
東京外国為替市場では日銀の金融政策が発表された直後、円を売ってドルを買う動きが急速に強まり、円相場は1ドル=145円台まで値下がりしました。1998年以来およそ24年ぶりの円安水準で、ことしはじめからおよそ30円下落しました。
東京外国為替市場では、日銀の金融政策決定会合で大規模な金融緩和を続けることが発表された直後に円を売ってドルを買う動きが加速し円相場は、1ドル=145円台まで値下がりしました。
1998年以来、およそ24年ぶりの円安水準で、ことしはじめからおよそ30円下落しました。その後は値上がりしたドルを売る動きも出て1ドル=143円台半ばまで値を戻すなど乱高下する場面もありました。
市場関係者は「日銀が大規模な金融緩和策を維持することを決めたことで市場では、日米の金利差が一段と拡大することが意識され、円安ドル高が一気に進んだ。日銀の黒田総裁がこのあとの記者会見でどのような発言をするかに市場の注目が集まっている」と話しています。
円相場の下落率 「プラザ合意」以降で最大の水準に
円相場は1ドル=145円まで値下がりし、1998年以来およそ24年ぶりの円安水準となりました。
1ドル=115円台前半だったことしの初めと比べるとおよそ30円値下がりしました。
円はドルに対しておよそ20%下落したことになります。
1985年に日米欧の主要5か国がドル高の是正で政策協調した「プラザ合意」以降でみると、円相場の年間の下落率がこれまでで最も大きかったのは2013年。
この年は、黒田総裁が就任直後に打ち出した大規模な金融緩和策で急速に円安が進み、このときは年間でおよそ17%の下落となりました。
ことしに入ってからの円相場の下落率はこの2013年を超える記録的な水準となっています。
市場関係者の間では、日米の金融政策の方向性の違いによる金利差の拡大という構図が変わらないことから歴史的な円安局面は当面、続くという見方も出ています。
財務省の財務官「適切な対応とる用意 ずっとスタンバイ状態」
外国為替市場で円相場が一時1ドル=145円台まで値下がりするなど、円安が進んでいることについて財務省の神田財務官が22日午後、省内で記者団の取材に応じ、「最近、相場が大きく乱高下している。為替相場の過度な変動は家計にも企業にも非常に悪影響を及ぼすものであって、過度な変動の場合にはあらゆる手段を排除することなく、適切な対応をとる用意ができているし、そのように行動することを考えている。ずっとスタンバイの状態だ」と述べ、改めて市場の動きを強くけん制しました。
また、22日実際に市場介入を行ったかどうか問われたのに対して、神田財務官は「介入の有無について必ずしもコメントしないが、正直申し上げると、まだやっていない。しかし、いずれは介入を行う用意はある」と述べました。
トヨタ 豊田社長「円安のデメリットが拡大」
加速する円安についてトヨタ自動車の豊田章男社長は22日、都内で開かれた会合のあとの記者会見で、「自動車産業は輸出産業という捉え方をされるが、円安のメリットを受ける輸出の台数は10年前と比べるとおよそ2割減少している。一方、資材や部品の輸入が増えてきていることやエネルギー価格の高騰で、どちらかというと円安のデメリットが拡大しているのが現実だ」と述べました。
そのうえで豊田社長は、「為替はできるかぎり安定的に推移してほしいが乱高下するものなので、その中でどう体質を強くしていくかが企業努力になると思う」と述べ、為替の急激な変動にも耐えられるよう企業が備えていくことが重要だという認識を示しました。
●円、142円台半ば 為替介入で急伸―ロンドン外為 9/22
22日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、政府・日銀の為替介入をきっかけに円買い・ドル売りが加速し、一時1ドル=140円台後半に急伸した。正午現在は142円45〜55銭と、前日午後4時比1円55銭の大幅な円高・ドル安。
●ロンドン外為22日 ユーロ、対ドルで下落 欧州景気の悪化懸念 9/22
22日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=0.9810〜20ドルと、前日の同時点と比べ0.0060ドルのユーロ安・ドル高で推移している。世界の主要中央銀行が大幅な利上げを継続し、相対的に景気が弱いユーロ圏経済が悪影響を受けやすいと懸念したユーロ売り・ドル買いが優勢となっている。ウクライナ情勢を巡り、ロシアが一段の強硬姿勢を取るとの警戒感もユーロを売りを促した。
円は対ユーロで大幅に上昇し、英国時間16時時点は1ユーロ=139円40〜50銭と前日の同時点と比べ2円90銭の円高・ユーロ安で推移している。日本政府が英国時間22日午前、円買い・ドル売りの為替介入を実施した。円が対ドルで急伸し、対ユーロの円買いに波及した。
英ポンドは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.1260〜70ドルと前日の同時点と比べ0.0060ドルのポンド安・ドル高で推移している。英イングランド銀行の金融政策委員会は22日、政策金利を0.5%引き上げて年2.25%にすると発表した。市場の一部では0.75%利上げを予想する声があったため、想定していたほどタカ派的ではないと受け止められ、ポンド売り・ドル買いが優勢となった。
●NY円、一時140円半ば 9/22
22日のニューヨーク外国為替市場の円相場は対ドルで上昇し、一時1ドル=140円半ばを付けた。9月上旬以来、約2週間ぶりの円高ドル安水準。政府、日銀による円買い介入で円高が進んだ流れを引き継ぎ、ニューヨーク市場でもドル売り円買いが先行した。
午前8時半現在は、前日比3円32銭円高ドル安の1ドル=140円73〜83銭を付けた。ユーロは1ユーロ=0・9870〜80ドル、138円98銭〜139円08銭。
●NY円、一時140円35銭 為替介入で円高進行 9/22
22日のニューヨーク外国為替市場の円相場は対ドルで上昇し、一時1ドル=140円35銭を付けた。急激な円安進行を阻止するために日本政府、日銀が実施した円買い為替介入で円高ドル安が進んだ流れが、ニューヨーク市場でも続いた。
午後5時現在は、前日比1円70銭円高ドル安の1ドル=142円35〜45銭を付けた。ユーロは1ユーロ=0・9829〜39ドル、139円98銭〜140円08銭。
ロイター通信によると、米ウェルズ・ファーゴの国際エコノミスト、ブレンダン・マッケナ氏は「金融政策の違いが続く限り、円安は続くだろう」との見方を示した。
●NY円、反発 1ドル=142円35〜45銭 円買い介入も上値は重く 9/22
22日のニューヨーク外国為替市場で円相場は4営業日ぶりに反発し、前日比1円70銭円高・ドル安の1ドル=142円35〜45銭で取引を終えた。日本政府・日銀は22日、24年ぶりとなる円買い・ドル売り介入に踏み切った。介入を受けた円買い・ドル売りの流れが米国の取引時間にも引き継がれた。半面、米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大を見込む円売り・ドル買いが出て、円の上値は限られた。
円買い・ドル売り介入で日本時間の22日17時半過ぎに一時、1ドル=140円31銭近辺と介入直前から5円ほど円高に振れた。ニューヨーク時間でも円買い・ドル売りの流れが先行し、朝方に1ドル=140円35銭を付ける場面があった。
ただ、円買い・ドル売りの勢いは続かなかった。日銀は22日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和の維持を決定した。金融政策に変更がない以上、「(介入には)一時的に円安進行を鈍化させる以上の効果はない」(エバコアISIのクリシュナ・グーハ氏)との声が多い。円買い・ドル売りの勢いは次第に弱まった。
米長期金利は前日比0.18%高い3.71%と、2011年2月以来の高水準で終えた。金融政策の影響を受けやすい2年債利回りは一時、0.11%高い4.16%と07年10月以来の高水準を付けた。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ長期化観測を背景に、米金利の上昇につられた円売り・ドル買いが優勢となり、円の上値を抑えた。
円の安値は142円51銭だった。
円は対ユーロで3日続伸し、前日比1円75銭円高・ユーロ安の1ユーロ=140円00〜10銭で取引を終えた。政府・日銀の為替介入を受け、円が対ドルで上昇し、対ユーロの円買いに波及した。
ユーロは対ドルで小幅に3日続落し、前日比0.0005ドル安い1ユーロ=0.9830〜40ドルで終えた。今週は世界の主要な中央銀行が、インフレ抑制を目的に大幅利上げを実施した。相対的に景気が弱いユーロ圏経済が悪影響を受けやすいと懸念したユーロ売り・ドル買いが優勢だった。
ユーロの安値は0.9811ドル、高値は0.9888ドルだった。 

 

●ロンドン外為日 英ポンド、対ドルで大幅下落 財政悪化を懸念 9/23
23日のロンドン外国為替市場で英ポンドは対ドルで大幅に下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.0890〜0900ドルと前日の同時点と比べ0.0370ドルのポンド安・ドル高で推移している。リフィニティブによると一時は1.08ドル台後半と、1985年以来の安値水準を更新した。英政権が23日、大規模な減税策と追加の国債発行計画を発表した。財政の悪化が懸念され、ポンド売り・ドル買いが進んだ。
ユーロは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=0.9700〜10ドルと、前日の同時点と比べ0.0110ドルのユーロ安・ドル高で推移している。世界の主要中央銀行が大幅な利上げを長期間続けるとの観測がユーロ圏景気の後退懸念を強め、ユーロ売り・ドル買いが優勢となっている。
円は対ユーロで上昇し、英国時間16時時点は1ユーロ=139円00〜10銭と前日の同時点と比べ40銭の円高・ユーロ安で推移している。
●円、142円台前半 ロンドン外為 9/23
週末23日朝のロンドン外国為替市場の円相場は、東京市場が休場で薄商いとなる中、1ドル=142円台前半で取引された。日本政府・日銀による前日の円買い・ドル売り介入を受け、警戒感から小動きにとどまっている。午前9時現在は142円25〜35銭と、前日午後4時比25銭の円安・ドル高。
●NY円、143円前半 9/23
23日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比98銭円安ドル高の1ドル=143円33〜43銭を付けた。ユーロは1ユーロ=0・9690〜9700ドル、138円88〜98銭。
米連邦準備制度理事会(FRB)による大幅利上げが継続するとの見方から、米長期金利の指標となる10年債利回りが一時3・82%台と約12年5カ月ぶりの高水準まで上昇。日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
日本政府、日銀による円買い介入で22日に一時1ドル=140円台前半を付けた後は、再び円安傾向が続いている。
●NY円、反落 1ドル=143円35〜45銭 欧州通貨に対するドル買いが波及 9/23
23日のニューヨーク外国為替市場で円相場は反落し、前日比1円円安・ドル高の1ドル=143円35〜45銭で取引を終えた。世界の主要中央銀行の金融引き締めで欧州を中心とした景気後退への警戒が強い。英国の財政悪化懸念も加わり、ドルが英ポンドやユーロに対して大幅に上昇し、対円でのドル買いに波及した。
英国のトラス政権が23日、大規模な減税策と国債の増発計画を打ち出した。財政悪化に加え、すでに深刻なインフレが一段と強まるとの見方も出て債券安と株安が進んだ。英ポンドも売られ、1ポンド=1.08ドル台半ばと37年ぶりのポンド安・ドル高水準を付けた。
ユーロも対ドルで20年ぶりの安値を付けた。23日発表の9月のユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)は1年8カ月ぶりの低水準となり、3カ月連続で好不況の境目となる50を下回った。23日は景気懸念から米原油先物相場が大幅に下げ、対資源国通貨でもドルが買われた。ドル独歩高の様相となり、ドルの総合的な強さを示すインターコンチネンタル取引所(ICE)算出のドル指数は2002年以来の高水準を付けた。
円は売り一巡後は下げ渋る場面もあった。22日の日本政府・日銀による円買い・ドル売り介入を受け、市場では「再び介入があるとの見方が円相場の一定の支えになっている」(邦銀の為替ディーラー)との声が聞かれた。
円の安値は143円45銭、円の高値は142円68銭だった。
円は対ユーロで4日続伸し、前日比1円10銭円高・ユーロ安の1ユーロ=138円90銭〜139円00銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで大幅に4日続落し、前日比0.0140ドルユーロ安・ドル高の1ユーロ=0.9690〜9700ドルで取引を終えた。一時は0.9669ドルと2002年以来のユーロ安・ドル高水準を付けた。欧米の主要な株式相場が大幅に下落し、株安もリスク選好時に買われやすいユーロの売りを強めた。
ユーロの高値は0.9775ドルだった。
●日本の為替介入を「理解」 協調は否定―米財務省 9/23
米財務省は22日、日本政府・日銀が円安阻止に向けて約24年ぶりに実施したドル売り・円買いの外国為替市場介入について、急激な相場変動の抑制が目的だと「理解している」と表明した。同省報道官は、米国が今回の介入に「参加していない」ことも明らかにし、協調介入は否定した。
先進7カ国(G7)は「為替相場は市場において決定される」との認識で一致しており、ドル売り介入に踏み切るには米通貨当局の理解を得ることが不可欠。米財務省報道官は「日本は最近の円のボラティリティー(変動性)の高まりを抑えるのが目的だと述べており、日本の行動を理解している」とコメントした。
●24年ぶり“伝家の宝刀”の効果は…政府・日銀が円安受け「為替介入」 9/23
円安を止めるため、政府・日銀は22日、円を買ってドルを売る為替介入を実施しました。実に24年ぶりに抜かれた「伝家の宝刀」、この円安を食い止めることはできるのでしょうか。
愛知県小牧市の河瀬養鶏。名古屋コーチンや赤鶏など、およそ2万羽を飼育しています。しかし今、エサが悩みの種だといいます。
河瀬養鶏の河瀬社長「今年の7月に1トン当たり1万3000円の値上がりです。かなり厳しいですね」
エサには輸入したトウモロコシや大豆なども使うため、円安の今はエサ代の高騰が続いているといいます。
1日に消費するエサは実に2トン。円安の影響でかさむコストは1日で2万6000円、1ヶ月で78万円、年単位では900万円以上増える計算です。
河瀬養鶏の河瀬社長「円安がこれ以上続くと、ちょっと厳しいのかなと」
この円安ピンチに22日、政府・日銀が動きました。実におよそ24年ぶり、「円買いドル売り」の為替介入を実施。
為替介入とは、止まらない円安に対し、財務省の指示のもと日銀が大量のドルを売って円を買うことで、いわば強制的に円高に導くことです。
東京外国為替市場では一時145円台後半だった円相場が、為替介入を受けて一気に変動し、140円台後半まで円高が進む場面も見られました。
帝国データバンクによると、今年は約2万品目が値上げ、あるいは値上げの予定で、1世帯あたりの負担額は年間6万8760円増えるといいます。
小牧市の河瀬養鶏でも、名古屋コーチンの卵を1個60円から70円に、赤鶏の卵は1キロ540円を650円に一時的に値上げ。客に理解を求めながらこの状況を乗り切ろうとしています。
河瀬養鶏の河瀬社長「(為替介入は)ありがたいんですけど、まだ目に見えた効果は分からないので」
名古屋市中区のメキシコ料理店「ホットスパイスムーチョチキン」は、手巻きのタコスなどが人気の店ですが、9月から輸入品のサルサソースやメキシカンビールが1割値上げに。それでもメニューの価格は据え置いています。
ホットスパイスムーチョチキンの店長「水道光熱費とかをしっかり管理するとか、アルバイトさんとかの労働時間をお願いして短くしてもらったりとか、あの手この手でやりつないでいる感じです」
今回の為替介入に期待する一方、24年ぶりの施策には少し心配も…。
ホットスパイスムーチョチキンの店長「対策をしてくれるのはお店としてはありがたいんですけど。それが終わった時の反動とかで今まで以上に…ということも心配です」
政府・日銀が下した伝家の宝刀、為替介入。効果はいつまで続くのでしょうか。
第一生命経済研究所 首席エコノミストの永濱利廣さん「今回のドル高円安の背景というのは、アメリカのインフレがなかなか落ち着かないというところにありますので、為替介入の効果は限定的だと思います」 

 

●為替相場 9/19-9/23 9/25 
まとめ9月19日から9月23日の週
19日からの週は、円相場主導で大荒れの展開となった。高インフレを抑制するために各国中銀から利上げが相次いだ。米FOMCでは75bpの利上げが発表された。英MPCでは50bpの利上げ。スイス中銀は75bp利上げでマイナス金利から脱却した。その一方で、日銀は当面利上げは行わないとしており、超緩和政策の継続姿勢を一段と鮮明にしている。一連の動きを受けてドル円は、これまで壁となっていた145円を上回ると一時145.90レベルと24年来の高値水準をつけた。相場が青天井のムードが出ていた矢先に、日銀が円買い介入を実施。神田財務官が記者団に明確に表明した。ドル円は140.36レベルまで一時下落。5円超の急激な値動きとなった。ただ、ECBや米金融当局は協調介入を否定。日本の単独介入であることが判明すると、円買いは一服し、142円付近に落ち着きどころを見出した。今後の介入姿勢が試されることとなっている。ドル円以外の主要通貨に対しては、引き続きドル買いが優勢。ユーロドルは0.97台、ポンドドルは1.10台などへと下押しされる流れ。ドル指数の上昇トレンドには変化はみられていない。地政学リスクも再燃。ロシアが予備役の部分動員令を発表したことが株式市場を不安定にする場面もあった。各国中銀の大幅利上げとともに株式市場には逆風が吹いていた。週末には英財務相が大幅な減税を伴う景気支援策を発表したが、市場では財政の持続可能性が疑問視され、英国債が下落、ポンド売りが広がった。週末にかけてはドル円143円台、ユーロドル0.96台、ポンドドル1.08台など根強いドル高の動きで取引を終えた。
19日
東京市場は敬老の日の祝日のため休場。
ロンドン市場は、ドル高の動きが優勢。ドル円はアジア午前に142.65近辺に下げたが、その後は上昇の流れが継続。ロンドン序盤には143.57近辺に高値を伸ばし、安値からは約1円幅の上昇に。欧州株や米株先物は軟調に推移しており、NY原油先物も下落。米FOMC会合を控えた週とあって、大幅利上げが懸念される動きで始まっている。バイデン米大統領が中国から前例のない攻撃があれば、米軍は台湾を守ると発言したことが米中関係の緊張につながった点も指摘された。ユーロドルはアジア朝方につけた1.0029近辺の高値から下げ続けて一時0.9966近辺に安値を広げた。ただ、ロンドン時間の値動きは限定的。取引中盤にかけてはパリティ水準に戻すなど、ドル高の動きは一服。ポンドドルは軟調。アジア朝方の1.1442近辺を高値に、その後は下げ続けて安値を1.1356近辺まで広げている。対ユーロでもポンドは軟調。きょうはエリザベス女王国葬のため英市場は休場。特段の新規材料に欠けるなかでも先週来のポンド売り圧力は継続している。独連銀は、経済活動は今期はやや後退、秋から冬にかけて著しく縮小する可能性との見方繰り返したが、特段のユーロ売り反応はみられていない。
NY市場は、ドル買いが一服。ドル円は143円台前半へと押し戻された。ただ、全体的に様子見気分が強く、今週のFOMCの結果待ちの雰囲気も強い。市場はFRBが0.75%ポイントの利上げを行うと予想。ただ、一部からは1.00%ポイントの利上げを見込む声も出ており、確率を15%程度と見積もっている。ちなみに0.50%ポイントは完全にゼロ。注目はパウエルFRB議長の会見やFOMC委員の金利見通し(ドット・プロット)に。ユーロドルはパリティ(1.00ドル)を回復。欧州時間には今週のFOMCを控えドル買いの動きも見られ、ユーロドルは0.9965付近まで値を落とす場面も見られていた。市場からは、直近の高インフレを受けてECBは積極利上げを継続せざるを得ないとの見方が広がった。ポンドドルは1.14台まで買い戻された。きょうはエリザベス女王の国葬で英市場は休みとなっているが、ポンドは下値模索が続き、一時1.13台半ばまで下落する場面が見られた。市場からは、英政府の経済戦略の信頼性に懸念があり、ポンドはさらに下落する可能性も指摘されていた。市場ではクワルテン新財務相が示した年成長率を2.5%に引き上げるという目標が達成される見込みはないと考えられて、多くは減税が財政を危うくするリスクの方を懸念しているという。
20日
東京市場は、比較的落ち着いた値動き。きょうから開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、様子見ムードが広がった。ドル円は朝方に143円割れとなる場面があったが、その後は買い戻されて午後には143円台前半で揉み合った。ユーロドルは朝方に1.0050付近まで買われたが、その後は上値が重くなり1.0020前後での推移に落ち着いた。ポンドドルは1.14台前半を中心に推移した。午前のドル売り局面では1.1460近辺までの上昇だった。米FOMCでの見通しが分かれていることに加え、日本時間22日午前3時に結果が発表された後、同日昼頃には日銀金融政策決定会合の結果が発表され、緩和姿勢の維持が示されると見込まれることから、市場の反応がかなり不安定になる可能性が想定されている。きょうの東京市場では上下ともに動きにくい展開に。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米10年債利回りが3.49%付近から3.54%付近へと上昇する動きが下支え。米FOMCを控えて、大幅利上げ観測が広がっている。この日はスウェーデン中銀が政策金利を予想外の100bpの大幅引き上げを発表した。欧州株や米株先物・時間外取引は小高く推移していたが、この発表を受けて下落に転じた。市場の利上げ動向への関心度がうかがわれる動きだった。ドル円は米債利回り上昇に素直に反応して143円台前半から143.80近辺まで買われた。ユーロドルは1.00台前半から1.0000のパリティ水準まで軟化。ポンドドルは1.1460近辺まで買われたあとは1.1410近辺まで反落。ただ、一方通行のドル高ともならず売買が交錯している。この日は欧州債も売られており、米債との綱引きの面もあったようだ。ミュラー・エストニア中銀総裁は、今インフレと戦うべき、後になってからさらに利上げをするよりも、と利上げを急ぐべきと述べていた。ユーロ対ポンドではポンド買いが優勢。8月後半以降はユーロ買い・ポンド売りの流れが続いており、きょうは一服した格好。
NY市場は、ドル買いが継続。ドル円は一時143.90付近まで上昇。朝方発表された米住宅関連指標が予想を上回ったことや、米国債利回り上昇、そして、株安がドル買いを誘発している。米2年債は4%をうかがう展開を見せた。その後は、143円台半ばから後半での揉み合いとなった。きょうからFOMCが始まり、明日の午後に結果が発表されるが、その内容を見極めたい雰囲気も強い。注目はパウエルFRB議長の会見とFOMC委員の金利見通し(ドット・プロット)とも言われている。市場ではFRBは年末までに政策金利を4.00−4.25%まで引き上げるのではとの見方が出ている。その意味でもドット・プロットがその見方を裏付けるか注目される。ユーロドルは再びパリティ(1.00ドル)を割り込んでいる。本日は1.00台半ばまで一時上昇していたが、上値は依然として重いようだ。ポンドドルは1.13台に下落。目先は直近安値の1.1350ドルが下値メドとして意識される。ポンドはトラス政権が計画している財政緩和策と英中銀の金融政策引き締めの恩恵を受けそうにないとの見方が出ている。通常、財政緩和策と金融政策の引き締めはポンドをサポートするが、外国人投資家を中心に財政支援策の財源がどのように調達されるかを懸念しており、ポンドのサポートにはならない可能性も。
21日
東京市場で、ドル円は堅調に推移。ドル円は前日のドル買いで143円台後半まで上昇して東京朝を迎えた。調整の動きが先行し、一時143円台半ば割れに。しかし、午前中に日銀が臨時の買いオペを通知。明日にかけて行われる日銀決定会合を前に緩和姿勢を示したとして円売りの反応が広が他。午後には144円台を付けている。ユーロ円は朝方に143円ちょうど近くまで下げたあとは、143.60台まで上昇。しかし、ロンドン市場に入るところで一気に円買いの動き。ドル円は143.7台まで.ユーロ円は142.60台まで急落。豪ドル円が96.20近辺から95.70台を付けるなど、ドル円、クロスが厳しい下げに。ロシア関連報道に反応したもよう。朝から落ち着いた動きを見せていたユーロドルは0..9930台まで下落。対円での下げから0.9950を割り込む動きに。
ロンドン市場は、ユーロ売りの動きが広がった。日本時間午後3時頃に、ロシアのプーチン大統領が予備役の部分動員令に署名と報じられたことが背景。ウクライナをめぐる地政学リスクが再認識されてユーロ売りとともに円買いやドル買いの動きが強まった。ユーロドルは0.99台後半から0.9885近辺まで急落。ユーロ円は143円台半ばから一時142円台割れ、ユーロポンドは0.87台後半から前半へと下げた。ドル円は144円をつけたた後での報道。一時143.35レベルまで下押しされた。ポンドドルは1.13台後半から1.13割れ目前まで、ポンド円は164円手前水準から一時162.30付近まで下落した。欧州株や米株先物も一時下落。ただ、その後は米FOMCを控えていることもあり、一方向への動きに調整が入っている。ドル円は144円台乗せへと再び上昇。日銀の超緩和策継続と米大幅利上げの観測が下支えに。クロス円も下げ渋りとなっている。下げ幅のきつかったユーロドルは0.99台前半に落ち着いている。市場では、今回FOMCでの75bp利上げ観測が有力、金利やインフレ見通し引き上げ、成長見通し引き下げ、失業率見通し引き上げなどの見方が広がっている。
NY市場では、FOMCを受けて相場が激しく上下動。政策金利は0.75%利上げと予想通りではあったものの、FOMC委員の金利見通し(ドット・プロット)で22年末の金利見通しの中央値が4.375%と予想よりも高かったことでドル買いの反応を強めた。23年末は4.625%となっている。ドル円は144.70円付近まで急上昇したものの、今度はパウエルFRB議長の会見を受けて、143円台に一気に伸び悩んだ。議長は「いつか利上げペースを落とすのが適切となる。労働市場は幾分軟化する可能性が非常に高い。いつか利上げペースを落として効果を見極める可能性」などと、幾分タカ派色を和らげる発言を行ったことから、米国債利回りの下げと伴に為替市場はドル売りの反応を強めた。一方、議長は「景気を維持したまま米経済をソフトランディングさせるのは非常に困難」との見解を示している。米株式市場が一気に売りを強め、終盤にはリスク回避の再び144円台へとドル買いが見られた。ユーロドルも上下動したものの、結局、0.98ドル台に下落。一時0.98ドル台前半まで下落し、年初来安値を更新。ポンドドルは一時1.12ドル台半ばまで急落。1985年以来の安値水準を更新。
22日
東京市場では、日銀決定会合をめぐりドル円が振幅。日銀金融政策会合を前に144円台半ば超えまで上昇。日銀会合で従来の緩和策維持を示したことで、いったん円売りが入り、節目の145円を超えて145.3レベルを付けた後、いったん143円50銭台まで急落する荒っぽい展開となった。レートチェックのうわさも流れたが、はっきりとしない中でじりじりとドル買いが入り、午後には145円台を回復する場面が見られた。介入の実施に重要な役割を果たす神田財務官が13時半に、介入はいつでも実行できる旨を発言したが、相場への影響は限定的なものにとどまった。ユーロドルは午前中のドル買い局面で0.9809まで軟化。その後は日銀後のドル円の振幅もあった0.9830台を付ける小動き。ユーロ円は、朝方141円台半ば付近に下げた後、日銀後の振幅に142.60台まで買われ、すぐに141.20付近に急落。その後142.60前後に買い戻しと不安定な動きだった。
ロンドン市場は、ドル円主導の荒れ相場。日銀が超緩和政策を維持し、米FOMCをはじめとした海外の中央銀行の利上げ継続姿勢と際立った違いが示された。黒田日銀総裁会見の後に、ドル円は145.90レベルまで高値を伸ばした。しかし、突然に145円割れと急落、その後も下げ続けて143円台割れに。この段階で神田財務官が介入を行ったことを記者団に表明。その後も介入は続き140.70レベルまで押し下げられた。鈴木財務相と神田財務官が夕刻に会見を開き、日本の単独介入であることが示されると、143円台乗せまで反発、しかし、足元では再び142円割れに。急速に進行するドル高・円安の動きは介入で食い止められたものの、ドル指数が上昇する流れには目立った変化はみられていない状況。この日はスイス中銀が75bp利上げでマイナス金利から脱却した。想定通りの結果に、スイスフランは売りで反応。英中銀は50bp利上げで売りの反応。政策委員9名中で、5名が50bp、3名が75bp、1名が25bpの利上げを支持した。25bp支持はサプライズだった。また、インフレのピークアウト見通しや今年の第2−3四半期のマイナス成長見通しなどがポンド売り材料となっていた。ドル円急落で1.12台後半から1.13台半ばへと上昇していたポンドドルは、1.12台後半へと一時反落した。ユーロドルは0.98台前半から一時0.99台をつけたあと、0.98台後半に落ち着いた。各国中銀が利上げを発表するなかで、トルコ中銀は予想外に利下げを発表。リラは対ドルで再び最安値を更新した。
NY市場は、ドル円に買い戻しが入った。NY朝方に140.36レベルまで一段安となったあとは、全般的なドル買いが続くなかで142円台に戻している。今回の為替介入は、米財務省は容認姿勢を示したものの、他国とのコンセンサスはなく、日本の単独介入と思われる。海外勢からは持続性に疑問も示され、円安の流れに変化を与える可能性は低いとの辛辣な評価が相次いでいる。持続性が無ければ、インフレ抑制への効果もほとんど期待できない。ただ、あえて好意的に取れば、今後、145円の水準に心理的プレッシャーが形成される可能性があるほか、円安効果もあり、日本の外貨準備はかなりの含み益が積み上がっているものと思われる。介入の形で利食いを出すことによって、何らかの財源を捻出の効果もあるのかもしれない。前日のFOMCでFRBがタカ派姿勢を更に強めていることが示唆されたことから、市場のドル買いの雰囲気は根強い。ユーロドルは下値模索が続き、0.98台での推移が続いた。ポンドドルも英MPC後の振幅を経て、NY後半には1.12台後半で上値重く揉み合っている。
23日
東京市場は秋分の日の祝日のため休場。
ロンドン市場は、ポンド主導でドル買いが広がっている。東京不在のアジア市場では様子見ムードが広がった。日銀の円買い介入の気配はみられず、ドル円は142円付近、ユーロドルは0.98台前半、ポンドドルは1.12台半ば付近での揉み合いが続いた。ロンドン時間に入るとユーロドルやポンドドルの売りが先行、ドル買い圧力が再燃している。欧州株や米株先物が軟調に推移し、リスク警戒的なドル買いが入ったほか、ユーロ圏や英国の9月PMI速報値が弱含んだことで景気後退が意識された面もあった。さらに、クワーテング英財務相が大幅減税を伴う景気支援策を発表。5年間で1610億ポンドのコストとなることが示された。市場ではインフレ高進が警戒され、11月の英中銀会合で100bp利上げが織り込まれている。また、大規模な景気支援策が財政持続性に不透明感を広げ、英国債が下落、ポンド相場が一段安となった。ポンドドルは一時1.1020付近まで急落した。各国に債券売りが波及し、米10年債利回りは3.82%まで上昇。ドル買いの動きがひろがってユーロドルは0.97台前半まで下落。ドル円は143.27レベルまで反発した。ただ、143円台に入ると一気に売り戻される場面があり、前日の円買い介入の余波で市場は神経質になっているもよう。
NY市場はリスク回避の雰囲気が広がり、為替市場はドル買いが強まった。前日のドル円は日本の当局による為替介入で一時140円台まで急落する場面が見られた。しかし、根強いドル買いが続く中で、きょうは143円台まで買い戻されており、為替介入による下げの半分を戻している。為替介入によってこれまで以上に145円超えに慎重になっていることが想定される中で、再び上値を試しに行くか注目される。 

 

●24年ぶりの円安局面で注目 「外貨預金」の仕組みと手数料・税金の注意点 9/25
2022年初頭から急速に円安・ドル高が進行中で、9月22日には一時1ドル=145円台をつけるなど、24年ぶりの円安水準となっている。日本円に比べて外貨の価値が高まっている中で、資産を外貨で保有すべく「外貨預金」の人気も高まっているという。『世界一楽しい!会社四季報の読み方』などの著書がある個人投資家で株式投資講師・藤川里絵さんが解説するシリーズ「さあ、投資を始めよう!」。今回は、「外貨預金の仕組みと始め方」について。
前回は、資産を自国の通貨・円だけで持っていることのリスクについて解説しました。今のように円安が進行すると、貯金している100万円は、同じ100万円であってもその価値はどんどん目減りしていることになります。株や債券を分散するように、通貨も分散して持つのが賢い資産運用と言えるでしょう。その手段のひとつとして外貨預金について説明します。
外貨預金の仕組み
外貨預金の仕組みは、基本的に円預金と同じなので難しく考える必要はありません。預ける通貨が、円以外の通貨であれば外貨預金となります。通常の円預金では円で利息を受け取りますが、外貨預金の場合は、外貨で受け取ることになります。
金利は、その国の政策金利を基準に決められますので、政策金利が高い国の通貨で預金をすれば、利息がたくさんもらえます。日本では長くマイナス金利が適用されているので、銀行預金の金利もほぼゼロに近い状態です。一方、海外では政策金利が引き上げられていますので、受け取れる利息が多くなり、そのことが最近の外貨預金人気の要因のひとつとなっています。
外貨でお金を預けるためには、まずは外貨を購入しなくてはいけません。といっても、いちいち自分で外貨を買ってから、その外貨を銀行に預けるといった手間は必要なく、外貨預金をするタイミングで自動的に外貨を購入することになります。
手数料はかかる?
ニュースなどで「今現在の為替は1ドル=113.24円です」と耳にすることがあります。これは、1ドルと113.24円が等価ということになりますが、等価で交換できるわけではありません。円から外貨にしたり、外貨から円に戻すときは、為替手数料がかかります。
外国為替の取引における外貨との交換のレートのことを為替レートと言います。仮に為替レートが、1ドル=100円のとき、ドルに交換するには、手数料をプラスしたレート(買付レート=TTSレート)で交換することになります。逆に、ドルを円に交換するには、手数料を引いたレート(売却レート=TTBレート)で交換します。
為替レートが変わらなくても損をする?
仮に1米ドルあたり15銭の手数料がかかる銀行で、1ドル=100円のときに100万円を外貨預金するとしましょう。預けるときは、1ドル100.15円で交換されますので、9985.02ドルになります。その後、同じく1ドル100円のときに円で引き出すとすれば、1ドル99.85ドルで交換されますので、預けた9985.02ドルは、997,004円になります。つまり為替レートが同じでも、手数料分のお金は減ってしまいます。
それを避けるための方法は以下の3つです。
   【1】円高のときに外貨預金に預けて、円安のときに外貨預金を引き出す。
   【2】手数料をカバーできるくらい長期間預けて、金利を稼ぐ。
   【3】手数料ができるだけ安い金融機関を選ぶ。
【1】を実践するためには、交換する外貨の過去の為替レートを調べて、だいたいどのくらいの幅で動いているかを確認することをおすすめします。たとえば米ドルを過去20年間でみれば、高いところで145円(最近がそうですね)、安いところで75円、100〜120円の間に収まっている期間がいちばん長くなっています。となると、1ドルが100円以下のときに預金して、120円以上になったときに引き出すのが理想的に見えますが、為替のタイミングをはかるのはなかなか難しいので、時間を分散して預け入れ、引き出しをするとよいでしょう。
どんな通貨を選ぶべき?
オーソドックスなのは、世界でもっとも使われている通貨・米ドルです。為替レートも日々ニュースなどで気軽に知ることができますし、世界中でいちばん信用力が高い通貨とされています。とはいえ、米ドルだけを持つのでなく、できればリスク分散するために、複数の通貨を持つことをおすすめします。
新生銀行での取り扱い外貨預金の人気ランキングでは、1位米ドル、2位豪ドル、3位NZドルとなっています。資源価格が高騰していますので、資源国であるオーストラリアやニュージーランドの通貨が人気なのでしょう。
注意点は、金利の高さだけで通貨を選ばないことです。トルコリラやブラジルレアルなど、新興国の通貨は金利が高いですが、為替の変動が激しく、もらえる利息以上に、為替差損を負ってしまうリスクが高まります。
外貨預金の税金は?
外貨預金については、利息と為替差益について税金がかかります。
【1】利息にかかる税金
利子所得として、20.315%(所得税及び復興税特別所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかります。円預金と同様に、利息は自動的に引かれていますので確定申告は不要です。
【2】為替差益
引き出すときに、預けたときよりも円安になっていれば、為替差益が発生します。その場合は雑所得として所得税+住民税がかかります。税率は、所得によって変わります。基本的には、確定申告が必要ですが、以下の場合は、所得税の申告が不要となります。
・年収2000万円以下の会社員で、給与所得・退職所得以外の所得(為替差益で得た利益を含む)の合計額が20万円以下の場合
・自営業者やフリーランス、無職などで、年間の所得の合計額が48万円(基礎控除額)以下の場合
外貨預金はしたほうがいい?
24年ぶりの円安のタイミングで、外貨預金をスタートするのがベストかと聞かれると、正直、イエス!とは言い難いところがあります。ただ、この先さらに円安に進行する可能性もありますので、少しずつ時間分散してスタートしてみる手はあると思います。長期間預けていれば、多少の為替差損は利息で相殺できます。
ひとつ最後に大事な注意点をお伝えしておきます。外貨預金は、預金保証の対象外です。金融機関が破綻した場合は、預けていたお金が戻ってこない可能性がありますのでご留意ください。
外貨預金は、円だけで資産を持つリスクを分散するために有効な手段です。あらためて口座開設しなくても、普段使っている銀行で始められるというのも気軽で魅力ですよね。ただ、若干、為替手数料がお高めです。もっと有利に外貨運用をするには、FX(外国為替証拠金取引)という選択肢があります。FXというとなんとなく危険なイメージを持たれがちですが、使い方によっては外貨預金よりも賢くリスクを抑えた運用が可能です。
まとめ
・通貨を分散させるために外貨預金は有効
・為替レートが変わらなくても損をする可能性には注意
・世界一信用度が高い米ドルが人気

 

●1ドル=145円を防衛ラインに介入続けられず=篠原元財務官 9/26
世界金融危機前後の2007年から2年間、財務官を務めた篠原尚之氏はロイターとのインタビューで、政府・日銀による為替介入について「1ドル=145円を防衛ラインに介入を続けることはないだろう」と語った。投機的な動きを背景に乱高下する為替市場に対応した日本の立場に、米国はあえて反対しなかったとの見方も示した。
日本は1998年6月を最後に円買い介入を行っていなかった。24年3カ月ぶりとなる22日の円買い介入について、篠原氏は「引き続き金融政策の緩和は力強くやっていく必要はあるが、為替市場が乱高下した際は介入するということだろう」と述べた。インタビューは24日に実施した。
もっとも、「介入で相場の大きな流れを変えることは不可能」とし、「(円買い介入を)頻繁にやったり、マーケットに水準を意識させてしまうやり方をすれば米国が許容できないのではないか」と指摘。一定の防衛ラインを念頭に、介入を繰り返すことに否定的な見解を示した。外貨準備を使う円買い介入には量的な制約もあるとした。
今回の為替介入を米政府が容認する立場をとったことについては「乱高下に対応したという日本の説明であれば、米国はあえて反対しないということだろう」と解説。主要7カ国(G7)は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きが「経済・金融の安定に悪影響を与え得る」とする認識を共有している。
篠原氏はインタビューの中で、日銀の黒田東彦総裁が当面は政策金利引き上げを考えていないと発言した直後の円買い介入だったため「アクセルとブレーキを一緒に踏んでしまった印象を受ける」とも話した。
金融政策決定会合後に行った22日午後の記者会見で黒田総裁は当面は金利を引き上げる必要はないとした上に、金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)の変更も「2―3年はない」と表明した。
篠原氏は「従来より(緩和継続への)決意を固くした印象。方向性としてはマーケットにどんどん円を流し続けると言っているに等しい」と語った。「一方でドル売り(円買い)介入をした。これは市場から円を吸い上げる方向のオペレーションで、アクセルとブレーキを一緒に踏んだ状態」と指摘した。
「車はアクセルとブレーキを両方踏み続けるとブレーキが焼けてしまうか、ハンドルがコントロールできなくなる。このまま(の状態を)ずっと続けるわけにはいかないだろう」と篠原氏は語った。
篠原氏は、財務官退官後の10年から国際通貨基金(IMF)の副専務理事を5年間務め、100年に1度とされる金融危機の事後処理を担った。
●必要に応じて対応をとる考えに変更ない=為替で鈴木財務相 9/26
鈴木俊一財務相は26日、投機的な動きを背景に急激な為替変動が続けば「必要に応じて対応をとる考えに、今のところ変更はない」と述べた。同日午前の閣議後会見で語った。
政府・日銀は22日に約24年ぶりとなる円買い介入に踏み切った。鈴木財務相は「先般の介入は投機による過度な変動に適切な対応をとったもの」とあらためて説明し、介入効果について「一定の効果が認められると私は思っている」と述べた。
そのうえで、鈴木財務相は「昨今の急激な、しかも一方的な、市場における投機筋の動きというものを背景にした動きを深く憂慮しながら、これからもしっかりと緊張感をもって市場の動向をみていく」との考えを述べた。
日銀が金融緩和の継続を決定し、黒田東彦総裁が当面は金利を上げる考えがないと表明した直後の為替介入だったことに関しては「為替相場はいろいろな要因で決定される」と言及。「金利差が拡大したことのみをとらまえて、それを要因と決めつけるわけにいかない。一概に申し上げることは難しい」と語った。
政府・日銀の間には「共通する認識がある」とも指摘し、「(黒田総裁の)発言の中にも、急激な円安に対する強い憂慮の念についての発言があった。こういう点について私どもと日銀は共有した認識をもっている」とした。
会見では、今後も「政府・日銀がよく連携しながら、こうした問題に対してしっかりと対応していきたい」との考えも述べた。
●異次元の円安だが「ドル預金」が危険な理由 資産防衛のために何ができる 9/26
輸出立国だったころはメリットもあったにせよ、いまは円安に傾けば物価が上がって日本の国力は下がり、生活者は追い込まれるだけだ。なのに異次元緩和とやらで富める人の資産をむしばみながら、急激で異常な円安を招いて貧しい高齢者も追い込む。戦犯は――。
「日銀がアホだと寿司が値上がりする」。一見、唐突な言い回しのようで、「風が吹けば桶屋が儲かる」などよりはるかに堅固な因果関係で結ばれている。
事実、回転ずし大手のくら寿司は価格を全面的に見直し、創業以来38年間守ってきた1皿100円を今月で終了するという。急激な円安で原材料が値上がりし、この2年で仕入れ値は、マグロが1.6倍、サーモンが2倍になったそうだ。
むろん回転ずしは氷山の一角で、食料品のほか日用品からガスや電気料金まで続々と値上がりし、われわれの生活を脅かしつつある。それどころか、一億総貧困化につながりかねないほどだが、まずは、いまなにが起きているのかを把握するところから始めたい。
日本と海外との物価の比率は、約50年前と同じ
円はあれよという間に下がり、1ドル144円台をつけるまでになった。半年で25円以上も下がり、24年ぶりの円安水準に達したが、
「実質実効為替レートで言うと、現在は1971年と同じくらいの円安です」
と話すのは、ニッセイ基礎研究所上席エコノミストの上野剛志氏である。
「実質実効為替レートとは、一言で言えば、国内の財・サービスの価格と、外国の財・サービスの価格を円建てで比較して、割安なのか割高なのかを示したもの。つまり日本と海外との物価の比率が、現在は1971年と同じだということです。世界各国でインフレが加速するなか、日本は海外と比べて物価上昇率が低い。そのために物価差が生じて、海外の製品は国内製品に比べて割高感が高まっています。そこに円安が重なり、二重に割高になってしまっているのです」
円安メリットが受けられない
その影響は、本来なら悪いことばかりではないという。「輸出が有利になる、インバウンドを誘致しやすくなる」(上野氏)というメリットもあるからだが、
「いまはコロナの水際対策もあって、円安メリットを受けづらい状況です。一方、円安のデメリットとしては、輸入企業のコスト増加や消費者の購買力低下が挙げられます。ただ、いまの状況は国際的な資源高が影響していて、その点は円安と別に考えるべきですが、それでも、海外での資源価格の上昇という負の影響を、円安が増幅しているとはいえます。そして、これだけ急激に円安が進むと、プラスの影響を受ける人とマイナスの影響を受ける人との格差が広がって、後者の痛みは大きくなります。マイナスの影響を受けるのは、輸入企業のほか、海外資産を多く持っている特殊な方を除いた一般の消費者。賃金上昇率よりも物価上昇率のほうが高く、購買力が実質的に低下し、負の影響が強まっていると思います」
気になる物価の見通しだが、上野氏は、
「生鮮食品を除く物価上昇率は、7月が前年比2.4%。しかしこれまでの価格上昇分で、特に食品の輸入価格が相当上がっており、国内価格への転嫁が進んで年内に3%に達するでしょう」
という見通しを示す。そして、この急激で異常な円安をもたらした元凶が、日銀の黒田東彦総裁が主導し、もう9年間も続く「異次元緩和」であることは、衆目の一致するところである。
異次元すぎる金融緩和
異次元緩和とはごく簡単に言えば、大量の資金供給と超低金利という劇薬のような金融政策。それがわれわれ一般消費者にどんな影響を与えているか。評論家の大宅映子さんの話に、端的に映し出されている。
「私が結婚したころは、定期預金の利息は5%くらいありましたが、今の0.002%なんていう利息では、銀行に行く足代にもなりません。昔、コンサルティング会社にお勤めの方に、“大宅さん、1億貯めればなんとかなるよ”と言われましたが、1億貯めてもダメな時代になりました」
というのは低金利政策の影響。がんばって資産を形成してもまったく利息が得られず、安心して暮らせない時代になってしまったわけだ。続いて円安の影響だが、大宅さんは物価の上昇ではすまない根源的な影響を見抜いている。
「物価が上がって大騒ぎしているのは、日本人が国際人でない証拠だと思います。円安傾向になったとき、普通の生活者からはほとんど文句が出ませんでした。もっと世界とつながる感覚があれば、海外に行けないし、輸入品も高くなる、と思っていいのに、物価が上昇して初めて慌てています。私もコロナ前は一家でハワイによく行きましたが、円安では難しい。“円安”ではなく“円弱”と言うべきです。円が強ければ多くのモノが買えますが、弱くなれば少ししか買えないのですから。バブルのころアメリカ人に“日本人は金持ちになったからって、ランチに2千円も払うなんて”と言われましたが、いまアメリカで、2千円ではランチを食べられません」
恐ろしく衰退している日本の姿が浮かんでくる。
中央銀行としては歴史的に初めて
さて、慶應義塾大学大学院の小幡績准教授に、異次元緩和の悪影響と、もたらされた円安の弊害、それを是正する手立てについて説明してもらおう。
「異次元緩和という呼び名が示す通り、日銀は異常なカタチで金融緩和を続けています。金融緩和には専門的に言うと、伝統的金融政策と非伝統的金融政策があります。そもそも量的緩和が非伝統的な緊急的対応ですが、黒田さんが日銀総裁になると、ただの量的緩和では足りず、異次元なほどドカンと行いました。その量が莫大で、そのうえいまはイールドカーブコントロールを行っています。要は10年国債の金利をゼロにすると宣言したのです。中央銀行は伝統的に、コールレートという1日かぎりの金利を、ゼロにしたり上げたりします。短期金利をコントロールし、あとは民間金融機関の金融取引を通じて、世のなかの金利が決まっていく。それが伝統的なあり方ですが、日銀は中央銀行としては歴史的に初めて、10年物の金利をこうする、と宣言しました」
「一般的な金融緩和に修正すればいい」
こうなると金融市場で金利が決まる余地がなく、この日銀のやり方を小幡准教授は、「社会主義以上の極端なこと」と評する。
「10年国債の金利を抑え込むなど、日本だけが普通の金融緩和を超えて異常なことを行っているので、世界中の物価が上がって金利が上昇しはじめたとき、日本だけ極端に為替レートが下がるのです。たしかに現在は、ユーロもウォンもドルに対して弱くなっていますが、それにしても円だけが他国の通貨よりも極端に安いのは、日本だけが異常なやり方、かつ異常な規模の金融緩和を行っているからです。黒田総裁は、“いま金融緩和を止めたら景気が大変なことになる”“利上げをするときではない”などと言っていますが、そんなことをする必要はありません。一般的なゼロ金利の金融緩和に修正すれば、景気に悪影響もなく、為替レートもアメリカが利上げする前の1ドル110円程度の水準にまで戻るはずです」
日銀が異次元の政策だけ修正すれば、状況はかなり好転するというのである。
妥当な為替水準は1ドル110〜120円
ところが黒田総裁は意固地な姿勢で、計り知れないダメージを与えている。小幡准教授が続ける。
「日本が貿易黒字国だったのは遠い昔で、いまは大変な貿易赤字です。輸入品目の多くが原油などのエネルギー関連で、小麦など食料品が続き、いずれも必需品なので、値段が上がっても輸入せざるをえません。そもそも原油や小麦は国際的に価格が2倍程度になっていましたが、為替レートが極端に下がった結果、2倍で済むところを3倍支払っているのが現状です。しかし、それが2倍で済めば支払額が4兆円くらい減ります。その分が国民に還元されれば、(住民税非課税世帯に)5万円なんて配らなくていいし、5万円を配るための約1兆円の予算も要らなくなります。各家庭もガソリン代や電気代を年間10万円くらい節約でき、結果的に景気もよくなります」
円高に傾くと景気が悪化したのは、日本が大きな貿易黒字を抱えていた大昔の話なのである。
「基本的に為替は妥当な水準で安定しているべきです。今回のように短期間に3割も動くと困りますし、1ドル140円は妥当な水準からかけ離れています。IMF(国際通貨基金)などの国際機関は、同じ物の値段は世界的に同じであるべきだという考え方で、それに基づいて購買力平価を算定すると、1ドル90〜95円が妥当だとされています。ただ、貿易赤字が増えた日本は外国からモノを買う必要があるので、ドルの上昇と円の下落は、一定程度は仕方ない。それを加味しても、妥当な為替水準は1ドル110〜120円といわれています。経済学的にいかなる考え方によっても説明できない過度な円安は、誰にとってもよくないです」
長期的には円高が理想的
結局、「通貨は強いほうが長期的に国は富む」と小幡准教授は言う。
「円が強くなって国富が増えると、日本の経済規模が拡大します。円がドルに対して強くなれば、ドル換算額が増えて日本の国際的な影響力が高まり、日本企業による海外の企業の買収も可能になります。一方、このままどんどん円安に振れれば、日本の大企業が中国企業に買われることだってありえます。不動産も同様です。だから為替は妥当な水準で安定しているべきで、なおかつ長期的には円高方向に進んでこそ、国の経済力は増します」
それでも黒田総裁は、異次元緩和にこだわり続けている。上野氏が指摘する。
「異次元緩和はこの9年、うまくいっていませんが、だからといってやめられないのです。目指していた賃上げを伴う物価上昇を実現できておらず、その意味で黒田総裁に責任はあるでしょう。しかし、そもそも日銀だけでは無理な話なのです。賃金を上げるには生産性を引き上げて企業の稼ぎを増やし、その状態を持続させて労働者にしっかり分配する、という仕組みが欠かせません。政府と企業、日銀が一丸となればできたかもしれません」
的外れなコロナ対策も問題
ところが、政府は日銀に丸投げして、あとは知らんぷり。異次元な状態を放置した。せめて円安を利用し、なんらかの施策を打ち出せないものか。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が言う。
「異常な円高を放置したために、生産拠点が海外に移ってしまい、多くの分野で国内自給率が下がったからこその円安です。生産拠点の国内回帰を図る、経済安全保障を考えて中国にあるアメリカ企業の生産拠点を日本に誘致する、といった施策が望ましいです。あるいは原発を再稼働させてエネルギー自給率を高める。農地法を改正して企業を農業に進出させ、食料自給率を高める。それに水際対策を緩和してインバウンドを自由にすれば、円の需要が高まって円安が是正されると思う。しかし、そうしたことができていません」
そして、そもそも、的外れなコロナ対策も円安を助長した一因だと指摘する。
「日本はコロナ対応において、世界に完全に遅れています。欧米ではマスクを外して日常生活を取り戻しているのに、日本はワクチン接種も遅れ、水際対策も後ろ向きで、それも円安の一因でしょう。もっとインバウンドが来れば、円の需要は高まりますから」
消費者に何ができる? 
元JPモルガン東京支店長の藤巻健史氏は、円安の原因をこう説明する。
「現在の世界的インフレの原因は、お金を刷りすぎているから。それに気付いた欧米諸国の中央銀行は、お金を吸収しはじめています。一方、日本銀行は国債を購入し続けないと、国は国債を完売できずにデフォルト(債務不履行)を起こしてしまいます。そこで日銀は国債を買い、購入金をバラまき続けざるをえないのです。このスタンスの違いが次のステップでの円安ドル高につながり、円はさらに暴落すると思います」
さらなる円安とは恐ろしい。だから「円に対して強い海外資産を買おう」という声も上がるが、永濱氏はそれに警鐘を鳴らす。
「いずれドル高はピークアウトし、次にはドル安になるとすれば、いまドルを買うと高値づかみしてしまう可能性があるので、下手に動かないほうがいい」
異常な円安も長くない、と考えたほうが心は健康でいられるかもしれない。ともあれ、意固地な日銀と無策な政府の間で追い込まれたわれわれは、どうすべきか。永濱氏が提案する。
「一般には物価が上がると、みな購買意欲が高まって早く買おうとし、景気は過熱に向かいますが、日本の場合、デフレマインドが染みついていて節約してしまう。結果、購入を控えたばかりに高値づかみすることがあるので、買いたいモノがある人は、急いで買ったほうがいいです。そうしてみんなが買い物をして経済が戻れば、日銀も利上げできるかもしれません。また、スマホの通信料を払いすぎている人が多いので、積極的に見直す。電気やガスの契約を見直す。スマホのアプリを使えるなら、フリマ(フリーマーケット)アプリを使って、不要なものを売って必要なものを安く買う、という手もあります」
「投資のリスクを背負うときではない」
経済ジャーナリストの荻原博子さんも「外貨預金は目減りする危険性があるから手を出さないほうがいい」とし、「節約するしかない」と説く。
「給料は増えず、年金は2年連続で減っている。しかも、この10月から雇用保険料が上がり、後期高齢者の医療負担が2割になる。どうしようもない部分が上がっているなか、物価も上昇しているのだから、お金を使わないという方法しかありません。岸田内閣は石油元売りに補助金を出しただけで、あとは低所得者に5万円など場当たり的に行うだけ。一時、老後に2千万円必要だという話が騒がれましたが、あれは100歳近くまで夫婦二人で生きるなら2千万円必要だという話でした。投資などでリスクを背負うときではありません」
経済アナリストの森永卓郎氏は、いまの円安の原因を「日本の財政がよくない、日本が弱い、というイメージがあって、円が投機筋の標的になっているから」だと見たうえで、一般消費者に対してはこう勧める。
「外貨預金や外国株を持っている人は、いま叩き売るのがいいでしょう。1ドル150円になったら100%売りです。アメリカが年内は金利を上げるので、しばらく円安傾向だと思いますが、この状況はあと半年ほどしか続かないでしょうから、がまんするのが一番いいと思います」
やはり、いまは耐え忍ぶことを勧めるのである。最後に大宅さんの声を。
「日銀が緩和しても、だれも元気にならず、企業が内部留保をため込むだけでした。政府も5万円給付など、誰の税金をいつまで配り続けるつもりでしょう」
異常な円安に対し、われわれはせめて悲鳴を上げ続けるということか。こういう中央銀行と政府のもとで、座して死を待つことだけは遠慮したいから。 
●東京円、1円95銭高の1ドル=143円82〜84銭  9/26
26日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前営業日の22日(午後5時)比1円95銭円高・ドル安の1ドル=143円82〜84銭で大方の取引を終えた。
●1ドル=144円台に逆戻り、鈴木財務相「介入は一定の効果が認められた」  9/26
26日の東京外国為替市場は再び円安が進行し、円相場は一時、1ドル=144円台前半をつけた。22日夕に政府・日本銀行が24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入を実施し、1ドル=140円台まで円高が進んだが、日米金利差を背景にドル買い・円売りの動きは根強い。介入効果は限定的との見方が強まっている。
26日の東京市場は午後5時、前営業日の22日(午後5時)と比べて1円95銭円高・ドル安の1ドル=143円82〜84銭で大方の取引を終えた。
鈴木財務相は26日の記者会見で「介入は一定の効果が認められた」と述べた。今後も急激に円安が進めば、「必要に応じて対応を取る」とけん制した。
26日の東京株式市場は全面安となり、日経平均株価(225種)の終値は22日と比べて722円28銭安の2万6431円55銭だった。前週末の米欧の株安を嫌気し、終値としては7月中旬以来、約2か月半ぶりの安値水準だった。半導体関連や自動車株を中心に幅広い銘柄で売りが膨らんだ。
●ロンドン外為 円、144円台前半 9/26
週明け26日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、日米金利差の拡大観測から円売り・ドル買いが進み、1ドル=144円台前半に下落した。正午現在は144円20〜30銭と、前週末午後4時(143円25〜35銭)比95銭の円安・ドル高。
海外市場の流れを引き継ぎ143円台後半で始まった後、ドル買いが優勢となった。日本政府・日銀の介入への警戒感が強い中、円の下値を探る展開が続いた。
対ユーロは1ユーロ=139円05〜15銭(前週末午後4時は139円00〜10銭)と、05銭の円安・ユーロ高。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=0.9640〜9650ドル(0.9700〜9710ドル)。
ポンドは1ポンド=1.0740〜0750ドル(1.0890〜0900ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9900〜9910フラン(0.9810〜9820フラン)。
●ロンドン外為 英ポンド、対ドルで下落 財政の持続性を懸念 9/26
26日のロンドン外国為替市場で英ポンドは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.0780〜90ドルと前週末の同時点と比べ0.0110ドルのポンド安・ドル高で推移している。英トラス政権が前週末に打ち出した大規模な減税と国債増発計画が、財政の持続性への懸念を強めており、ポンド売り・ドル買いが優勢となっている。26日のアジアの取引時間帯には一時1ポンド=1.03ドル台と1985年に付けた水準を下回り、変動相場制移行後の最安値を付けた。
ユーロは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=0.9640〜50ドルと、前週末の同時点と比べ0.0060ドルのユーロ安・ドル高で推移している。高インフレと主要中央銀行の大幅利上げの長期化が、ユーロ圏景気の後退懸念を強めており、ユーロ売り・ドル買いが優勢となっている。
25日投開票のイタリアの上下院の総選挙で、野党の極右「イタリアの同胞(FDI)」が第1党に躍進し、右派政権が誕生する見通しとなった。今後、欧州連合(EU)に懐疑的な姿勢が強まるとの警戒感もユーロ相場の重荷となった。
円は対ユーロで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=139円20〜30銭と前週末の同時点と比べ20銭の円安・ユーロ高で推移している。対ドルでの円売りが、対ユーロに波及した。
●NY円、144円後半  9/26
週明け26日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前週末比1円35銭円安ドル高の1ドル=144円68〜78銭を付けた。ユーロは1ユーロ=0・9603〜13ドル、138円91銭〜139円01銭。
米連邦準備制度理事会(FRB)による大幅利上げが継続するとの見方が強まって米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
●NY円、続落 1ドル=144円70〜80銭 米長期金利の上昇受け 9/26
26日のニューヨーク外国為替市場で円相場は続落し、前週末比1円35銭円安・ドル高の1ドル=144円70〜80銭で取引を終えた。米連邦準備理事会(FRB)など世界の主要中央銀行による金融引き締めの長期化観測で米長期金利が大幅に上昇した。日米金利差の拡大を受けた円売り・ドル買いが優勢になった。
米長期金利は一時、前週末比0.25%高い3.93%と2010年4月以来、12年ぶりの高水準を付けた。利上げに積極的なFRBに対し、日銀は金融緩和を継続する方針を掲げる。日米の金融政策の違いを意識した円売り・ドル買いも出やすかった。
ドルが欧州通貨に対して大幅に上昇し、対円のドル買いに波及した面もあった。英国のトラス政権が前週末に打ち出した大規模な減税策と国債の増発計画が財政悪化への懸念を強め、英ポンド売り・ドル買いが週明けも優勢だった。海外市場の取引時間帯には一時1ポンド=1.03ドル台と、1985年の水準を下回り、英ポンドは変動相場制移行後の最安値を付けた。
ドイツのIfo経済研究所が26日に発表した9月の企業景況感指数は2020年5月以来の低水準となり、ユーロ圏の景気懸念が強まった。米景気の相対的な底堅さも意識され、ドルは幅広い通貨に対して買われやすく、ドルの総合的な強さを示すインターコンチネンタル取引所(ICE)算出のドル指数は02年以来の高水準を付けた。
円は144円台後半では底堅く推移した。前週の日本政府・日銀による円買い・ドル売り介入を受け、市場では再び介入する可能性が意識され、円相場の一定の支えとなった。
円の安値は144円79銭、円の高値は143円80銭だった。
円は対ユーロで横ばいとなり、前週末と同じ1ユーロ=138円90銭〜139円00銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで5日続落し、前週末比0.0085ドルユーロ安・ドル高の1ユーロ=0.9605〜15ドルで取引を終えた。ユーロの安値は0.9599ドル、高値は0.9689ドルだった。 

 

●東京円、144円台前半 金利差拡大観測から再び円安 9/27
27日午前の東京外国為替市場の円相場は、1ドル=144円台前半で取引された。政府、日銀は22日に円を買ってドルを売る為替介入を実施し円相場は一時140円台前半まで急騰したが、日米の金利差拡大観測から再び円安が進んでいる。
午前10時現在は前日比61銭円安ドル高の1ドル=144円43〜46銭。ユーロは08銭円高ユーロ安の1ユーロ=139円11〜19銭。
前日の米国では米連邦準備制度理事会(FRB)高官が金融引き締めに前向きな姿勢をみせた。米長期金利が上昇し、円を売って運用に有利なドルを買う動きが強まった。
●円相場 再び円安進み 一時 1ドル=144円台後半も  9/27
27日の東京外国為替市場は、今月22日の政府・日銀の市場介入のあと再び円安が進み、円相場は、1ドル=144円台で推移しました。144円台後半まで進むと、今後、市場介入が再び行われることへの警戒感も出て、いくぶん円高方向に進みました。
午後5時時点の円相場は、26日と比べて、44銭円安ドル高の1ドル=144円26銭から28銭でした。
ユーロに対しては、26日と比べて3銭円高ユーロ安の1ユーロ=139円16銭から20銭でした。
ユーロはドルに対して、1ユーロ=0.9646から48ドルでした。
市場関係者は「午前中、1ドル=144円台後半まで円安が進行する場面もあったが、一部の投資家の間で今後、円買い介入が再び行われることへの警戒感も出ていくぶん円高方向に押し戻された。ただ、アメリカの長期金利は一段と上昇が進み、日米の金利差を意識した取り引きが行われやすい構図は続いている」と話しています。
●ロンドン外為 円、144円台前半 9/27
27日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、材料難から積極的な取引は手控えられ、1ドル=144円台前半で小動きとなった。正午現在は144円25〜35銭と、前日午後4時(144円30〜40銭)比05銭の円高・ドル安。
米長期金利の上昇が一服し、朝方から狭い範囲での値動きが続いた。市場では、コンファレンス・ボードの米景気先行指標総合指数など、この日発表される米経済指標を見極めようとの雰囲気が強い。
対ユーロは1ユーロ=138円85〜95銭(前日午後4時は139円20〜30銭)と、35銭の円高・ユーロ安。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=0.9625〜9635ドル(0.9645〜9655ドル)。
ポンドは1ポンド=1.0795〜0805ドル(1.0785〜0795ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9865〜9875フラン(0.9810〜9820フラン)。
●ロンドン外為27日 ユーロ、対ドルで下落 ユーロ圏の景気後退懸念 9/27
27日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=0.9620〜30ドルと、前日の同時点と比べ0.0020ドルのユーロ安・ドル高で推移している。インフレ長期化とそれに対応する金融引き締めがユーロ圏の景気後退を招くとの警戒感が強く、ユーロ売り・ドル買いが優勢となっている。イタリアの総選挙で右派政権が誕生する見通しとなり、欧州連合(EU)との緊張が高まるとの懸念もユーロ相場の重荷となった。
円は対ユーロで横ばい。英国時間16時時点は1ユーロ=139円20〜30銭と前日の同時点と同水準で推移している。
英ポンドは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.0770〜80ドルと前日の同時点と比べ0.0010ドルのポンド安・ドル高で推移している。英トラス政権の経済政策運営への懸念が、引き続きポンド売り・ドル買いを促した。
●NY円、続落 1ドル=144円80〜90銭で終了 米長期金利の上昇で 9/27
27日のニューヨーク外国為替市場で円相場は小幅に3日続落し、前日比10銭円安・ドル高の1ドル=144円80〜90銭で取引を終えた。米長期金利が一時3.99%と2010年4月以来、12年ぶりの水準に上昇し、日米金利差の拡大を手がかりとした円売り・ドル買いが優勢だった。
欧米の主要中央銀行の金融引き締めが長期化する見通しが強まり、米長期金利の上昇が続いた。27日はセントルイス連銀のブラード総裁がインフレ抑制のために粘り強く金融引き締めを続ける必要性を主張し、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「現在の引き締めペースは適切だ」と述べた。インフレ抑制を優先して大幅利上げを続ける米連邦準備理事会(FRB)と緩和を継続する日銀との金融政策の違いも意識された。
主要中銀の急激な金融引き締めが欧州を中心とした景気懸念につながっており、対ユーロなどでドル買いが続いたのも円の重荷となった。
一方、145円に近づくと円は下げ止まった。日本政府が再び円買い・ドル売り介入を実施する可能性が意識され、円相場を下支えた。
この日の円の安値は144円90銭、高値は144円39銭だった。
円は対ユーロで小幅に上昇し、前日比5銭円高・ユーロ安の1ユーロ=138円85〜95銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで6日続落し、前日比0.0015ドル安い1ユーロ=0.9590〜0.9600ドルで終えた。イタリアで極右政権が誕生する見通しとなり、同国や欧州経済を取り巻く不透明感が一段と強まった。
ユーロの安値は0.9570ドル、高値は0.9648ドルだった。
●NY外国為替市場 円相場1ドル=145円に迫る水準まで値下がり  9/27
政府・日銀の市場介入で動向が注目される円相場ですが、27日のニューヨーク外国為替市場ではアメリカで大幅な利上げが続くとの見方を背景に円を売ってドルを買う動きが出て一時、1ドル=145円に迫る水準まで値下がりしました。
27日のニューヨーク外国為替市場ではアメリカで大幅な利上げが続くとの見方が広がっていることなどから長期金利が上昇したことを受けて円を売ってより利回りが見込めるドルを買う動きが出ました。
このため、円相場は一時、1ドル=144円90銭をつけて145円に迫る水準まで値下がりしました。
市場ではアメリカの長期金利の上昇が続いて日米の金利差が拡大すれば再び円安が進むおそれがあるとの見方が強まっている一方、政府・日銀によるさらなる市場介入への警戒感も広がっています。
市場関係者は「22日に政府・日銀が市場介入を行った際の円相場が1ドル=145円台だったことから、145円台まで再び円安が進めば市場介入が行われるのではないかとの観測も出ていて、神経質な値動きが続いている」と話しています。 

 

●東京円、29銭安の1ドル=144円55〜58銭 9/28
28日の東京外国為替市場の円相場は、午後5時、前日(午後5時)比29銭円安・ドル高の1ドル=144円55〜58銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、午後5時、前日(午後5時)比71銭円高・ユーロ安の1ユーロ=138円45〜49銭で大方の取引を終えた。
●ロンドン外為 円、144円台後半 9/28
28日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、様子見ムードが強まり、1ドル=144円台後半でのもみ合いとなった。正午現在は144円65〜75銭と、前日午後4時と同水準。
朝方から144円台後半の狭い範囲での値動きが続いた。日米金利差の拡大観測からドルの先高観は依然として強いものの、日本政府・日銀による介入警戒感も強く、積極的なドル買いは手控えられた。
対ユーロは1ユーロ=138円40〜50銭(前日午後4時は139円20〜30銭)と、80銭の円高・ユーロ安。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=0.9565〜9575ドル(同0.9620〜9630ドル)。
ポンドは1ポンド=1.0650〜0660ドル(同1.0770〜0780ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9895〜9905フラン(同0.9830〜9840フラン)。
●ロンドン外為 ユーロ、対ドルで横ばい 9/28
28日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで横ばい。英国時間16時時点は1ユーロ=0.9620〜30ドルと、前日の同時点と同じ水準で推移している。ロシアと欧州を結ぶ天然ガスパイプラインで損傷が見つかり、欧州のエネルギー供給不安が再燃した。ウクライナに侵攻するロシアが攻撃を激化させるとの観測もユーロ売り・ドル買いを促した。
半面、英イングランド銀行(中央銀行)が28日、英国債を一時的に買い入れると発表し、リスク回避の動きがやや後退した。ドイツやフランスの主要株価指数が上昇に転じるなか、対ドルでユーロが買い直された。
円は対ユーロで横ばい。英国時間16時時点は1ユーロ=139円20〜30銭と前日の同時点と同水準で推移している。
英ポンドは対ドルで下落し、英国時間16時時点は1ポンド=1.0740〜50ドルと前日の同時点と比べ0.0030ドルのポンド安・ドル高で推移している。英トラス政権の経済政策への市場の警戒感は根強く、ポンド売り・ドル買いが優勢となった。一方、英中銀の国債買い入れ発表が市場に一定の安心感を与え、ポンドの下げ幅は午前から縮小した。
●NY円、144円前半 米長期金利低下でドル売り円買い  9/28
28日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比72銭円高ドル安の1ドル=144円06〜16銭を付けた。ユーロは1ユーロ=0・9733〜43ドル、140円26〜36銭。
米長期金利の低下を受け、日米の金利差縮小を意識したドル売り円買いが優勢となった。
●NY円、反発 1ドル=144円05〜15銭 米長期金利の低下で 9/28
28日のニューヨーク外国為替市場で円相場は4営業日ぶりに反発し、前日比75銭円高・ドル安の1ドル=144円05〜15銭で取引を終えた。英イングランド銀行(中央銀行)が28日、金融市場の安定化に向け英国債を一時的に買い入れると発表した。これを受けて英長期金利が急低下し、米長期金利も下げた。日米金利差の縮小を受けた円買い・ドル売りが優勢になった。
円の高値は143円91銭、安値は144円75銭だった。
円は対ユーロで反落し、前日比1円40銭円安・ユーロ高の1ユーロ=140円25〜35銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで7営業日ぶりに反発し、前日比0.0145ドルユーロ高・ドル安の1ユーロ=0.9735〜45ドルで取引を終えた。英中銀による英国債買い入れで英国債相場の先行き不透明感が後退し、ユーロを支えた。
ユーロの高値は0.9751ドル、安値は0.9560ドルだった。
英ポンドは対ドルで上昇し、前日比0.0150ドルポンド高・ドル安の1ポンド=1.0880〜90ドルで取引を終えた。英中銀による英国債の買い入れが投資家心理の改善につながり、ポンド買いが優勢だった。 

 

●東京円、12銭安の1ドル=144円67〜68銭 9/29
29日の東京外国為替市場の円相場は午後5時、前日(午後5時)比12銭円安・ドル高の1ドル=144円67〜68銭で大方の取引を終えた。対ユーロでは、同1円22銭円安・ユーロ高の1ユーロ=139円67〜71銭で大方の取引を終えた。
●ロンドン外為 〕円、144円台後半 9/29
29日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、手掛かり材料に欠ける中、1ドル=144円台後半で小動きとなった。正午現在は144円65〜75銭と、前日午後4時(144円55〜65銭)比10銭の円安・ドル高。
様子見ムードが強く、積極的な取引は手控えられた。市場では、この日発表される4〜6月期の米国内総生産(GDP)確定値など米経済指標を見極めようとの雰囲気が強い。
対ユーロは1ユーロ=140円45〜55銭(前日午後4時は139円20〜30銭)と、1円25銭の円安・ユーロ高。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=0.9705〜9715ドル(0.9625〜9635ドル)。
ポンドは1ポンド=1.0820〜0830ドル(1.0740〜0750ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9785〜9795フラン(0.9805〜9815フラン)。
●NY円、144円半ば 9/29
29日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比35銭円安ドル高の1ドル=144円41〜51銭を付けた。ユーロは1ユーロ=0・9810〜20ドル、141円60〜70銭。
日本と米国で金融政策の方向性が異なるのを背景に、日米金利差拡大を意識した円売りドル買いが先行した。一巡後は、ポンドやユーロに対してドルが売られた影響で円を買い戻す動きも出た。
●NY円、反落 1ドル=144円40〜50銭 日米金利差の拡大で円売り 9/29
29日のニューヨーク外国為替市場で円相場は反落し、前日比35銭円安・ドル高の1ドル=144円40〜50銭で取引を終えた。米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大を見込む円売り・ドル買いが優勢となった。朝方発表の米雇用指標の改善も円の重荷だった。
米長期金利が終値で3.79%と前日から0.06%上昇し、円売りを促した。朝方発表の週間の米新規失業保険申請件数が5カ月ぶりの低水準となり、市場予想より少なかった。米労働需給の逼迫が続いていると受け止められ、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが長期化するとの見方から円売り・ドル買いが出た面もあった。
取引終了にかけて円は底堅く推移した。30日発表の8月の米個人消費支出(PCE)で、FRBがインフレ指標として重視するPCE物価指数を見極めたいとのムードが広がった。円の対ドルの売り持ち高をひとまず中立方向に戻す目的の円買いが入ったという。
円の安値は144円78銭、高値は144円26銭だった。
円は対ユーロで続落し、前日比1円35銭の円安・ユーロ高となる1ユーロ=141円60〜70銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで続伸し、前日比0.0075ドル高い1ユーロ=0.9810〜20ドルで終えた。ドイツの9月の消費者物価指数(CPI)が市場予想以上に上昇し、欧州中央銀行(ECB)の利上げ加速を見込むユーロ買いが優勢となった。この日の高値は0.9815ドル、安値は0.9683ドルだった。
英ポンドは対ドルで続伸し、1ポンド=1.1115〜25ドルと前日比0.0235ドルのポンド高・ドル安で終えた。前日に英イングランド銀行(中銀)が発表した一時的な国債購入を受け、ポンドに買い安心感が続いた。  

 

●東京円、36銭高の1ドル=144円31〜33銭 9/30
30日の東京外国為替市場で、円相場は午後5時、前日(午後5時)比36銭円高・ドル安の1ドル=144円31〜33銭で大方の取引を終えた。
対ユーロでは、午後5時、前日(午後5時)比2円22銭円安・ユーロ高の1ユーロ=141円89〜93銭で大方の取引を終えた。
●東京円、144円台前半  9/30
30日の東京外国為替市場の円相場は、1ドル=144円台前半で取引された。
午後5時現在は前日比36銭円高ドル安の1ドル=144円31〜33銭。ユーロは2円22銭円安ユーロ高の1ユーロ=141円89〜93銭。
朝方は、前日の米株式相場の下落を手掛かりに、ドルを売って円を買う動きが先行した。その後、輸入企業が月末の支払いに必要なドル資金を調達する動きが出て、円が売られた。夕方になると、米長期金利の低下を売買材料に円を買い戻す取引が活発になった。
市場では「円買いドル売りの再介入への警戒感が根強く、円が下げ渋る場面があった」(外為ブローカー)との声が聞かれた。
●ロンドン外為 円、144円台半ば 9/30
週末30日午前のロンドン外国為替市場の円相場は、手掛かり材料難で様子見ムードが強まり、1ドル=144円台半ばで推移した。正午現在は144円40〜50銭と、前日午後4時(144円60〜70銭)比20銭の円高・ドル安。
海外市場の流れを引き継ぎ144円台前半で始まった後、やや円売り・ドル買いが先行した。市場では、米国のインフレを見極めようと、この日発表される8月の米個人消費支出(PCE)・物価が注目されている。
対ユーロは1ユーロ=141円00〜10銭(前日午後4時は141円20〜30銭)と、20銭の円高・ユーロ安。ユーロの対ドル相場は1ユーロ=0.9760〜9770ドル(0.9760〜9770ドル)。
ポンドは1ポンド=1.1065〜1075ドル(1.1025〜1035ドル)、スイス・フランは1ドル=0.9790〜9780フラン(0.9805〜9815フラン)。
●ロンドン外為 ユーロ、対ドルで上昇 欧州株高で 9/30
30日のロンドン外国為替市場でユーロは対ドルで上昇し、英国時間16時時点は1ユーロ=0.9790〜9800ドルと、前日の同時点に比べ0.0030ドルのユーロ高・ドル安で推移している。ドイツやフランスの主要株価指数の上昇で、投資家のリスク回避姿勢が後退しユーロ買い・ドル売りが優勢となっている。
欧州連合(EU)統計局が30日発表した9月のユーロ圏消費者物価指数の伸び率は前年同月比10.0%と前月から加速し、統計を遡れる1997年以降で初めて2ケタを記録した。欧州中央銀行(ECB)の大幅利上げ観測が改めて意識されたのもユーロ相場を押し上げた。
円は対ユーロで下落し、英国時間16時時点は1ユーロ=141円70〜80銭と前日の同時点と比べ50銭の円安・ユーロ高で推移している。
英ポンドは対ドルで上昇し、英国時間16時時点は1ポンド=1.1160〜70ドルと前日の同時点と比べ0.0130ドルのポンド高・ドル安で推移している。英国のトラス首相とクワーテング財務相が30日、政府の財政運営を監視する同国の予算責任局トップらと協議した。与党・保守党の支持率急落でトラス政権の経済対策に党内からも批判が強まる可能性があり、政策の一部撤回や修正があるとの観測がポンド買い・ドル売りを誘った。
●NY円、144円後半 9/30
9月30日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比29銭円安ドル高の1ドル=144円70〜80銭を付けた。ユーロは1ユーロ=0・9795〜9805ドル、141円92銭〜142円02銭。
朝方発表された8月の米個人消費支出(PCE)物価指数の前年同月比上昇率が引き続き大きくなり、米連邦準備制度理事会(FRB)が大幅な利上げを続けるとの見方が強まった。米長期金利が上昇し、日米金利差拡大を意識した円売りドル買いが優勢となった。
●NY円、続落 1ドル=144円70〜80銭で終了 米物価指標上振れで 9/30
9月30日のニューヨーク外国為替市場で円相場は続落し、前日比30銭円安・ドル高の1ドル=144円70〜80銭で取引を終えた。米物価指標がインフレ圧力の根強さを示した。米連邦準備理事会(FRB)が大幅利上げを続けるとの見方が改めて強まり、円売り・ドル買いを誘った。
30日朝発表の8月の米個人消費支出(PCE)物価指数でエネルギー・食品を除くコア指数が前月比0.6%上昇と7月(0.0%)から伸びが加速した。インフレが高止まりするとの見方が強まった。
FRBのブレイナード副議長が30日の講演で、「インフレが目標に戻っているとの確信が持てるよう、金融政策は当面、引き締め的になる必要がある。時期尚早な(緩和方向への)政策転換を避ける」と述べた。米長期金利が午後に上昇に転じ、日米金利差が拡大したのも円の重荷となった。
円の安値は144円81銭、高値は144円43銭だった。
円は対ユーロで3日続落し、前日比30銭円安・ユーロ高の1ユーロ=141円90銭〜142円00銭で取引を終えた。
ユーロは対ドルで3日ぶりに反落し、前日比0.0015ドル安い1ユーロ=0.9795〜0.9805ドルで終えた。米物価指標を受けて、対ユーロでもドルが買われた。ユーロは下げ渋る場面もあった。30日発表の9月のユーロ圏の消費者物価指数が前年同月比10.0%上昇と前月から伸びが加速し、欧州中央銀行(ECB)が大幅利上げを続けるとの見方が強まった。
ユーロの安値は0.9734ドル、高値は0.9818ドルだった。
英ポンドは対ドルで続伸し、前日比0.0045ドル高い1ポンド=1.1160〜70ドルで終えた。英政府が大規模減税などの経済政策の修正に動くとの観測が浮上し、ポンドの買い戻しを誘った。

 

●為替相場 9/26-9/30 10/1
まとめ9月26日から9月30日の週
26日からの週は、ポンド相場が波乱の展開となった。前週末に発表されたトラス英政権の大型減税を主軸とした経済支援策を受けてポンドが下落。財源なき減税で財政の継続性に疑問が広がり、英国債が急落した。この流れを受けて週明けの東京市場ではポンド相場が急落、ポンドドルは1.09付近から1.0350レベルまで下げ、史上最安値を記録した。続くロンドン市場では英国債利回りが急低下。市場にはポンド防衛のための英中銀緊急利上げ観測が高まり、ポンド相場には買戻しが入った。ベイリー英中銀総裁は緊急で発言を行っており、「必要なだけの金利変更を躊躇しない」と述べる一方で、「英中銀は次回の金融政策委員会(MPC)でポンド安と財政計画を評価する」と述べた。しかし、即日の行動はなかった。不安定な相場展開を受けて、世界的に株安、債券安、ドル高とリスク回避の動きが広がった。28日には英中銀が英長期国債の一時購入措置を発表。英国債の急落が食い止められたことで相場の歯車は一気に逆方向に回転、リスク警戒感が緩和されるとともにドル安方向へと動いた。ユーロドルは0.95台まで下落したあとは、0.98台までの反発。ポンドドルは1.12付近までの上昇。英国債利回りの急低下で、一時4%台をつけた米10年債利回りも上昇一服となった。ドル円は日銀の円買い介入への警戒感が残るなかで145円付近では買いが躊躇されている。ひとまず相場は落ち着いた。日銀の介入額は約2.8兆円だったと公表された。
26日
東京市場では、ポンドが急落、乱高下となった。トラス新政権での大規模な減税を含む景気支援策が先週金曜日に打ち出され、財政赤字懸念や物価の高騰懸念が広がる形で、金曜日の海外市場でポンドが大きく売られた。ポンドドルは1.12台から節目の1.10を割り込んで1.08台まで値を落として週の取引を終えた。週明けオセアニア市場で1.07台までさらに値を落としたポンドドルは、その後いったん買い戻しが入ったが、東京午前に再び売りが出ると、史上最安値を更新してストップを巻き込む形で1.0350前後まで大きく値を崩した。23日に景気支援策を実際に発表したクワーテング財務相が、週末に英BBCのインタビューに答え、市場の混乱に動じず、積極的な支援を行う姿勢を発表。減税についてまだ追加があると発言したことなどが、ポンド売りにつながった。さすがに1.03台までは売りすぎとの思惑もあり、買い戻しが入ったものの1.06前後までと、先週末の水準よりはポンド安圏での推移に。ユーロはポンドへの連れ安に加え、核攻撃危機が懸念されるウクライナ情勢への警戒感、さらには極右政権が勝利し、G7で初となる極右の首相が誕生するとみられるイタリアの状勢などが重石。ユーロドルは0.9550近辺まで一時下落した。ドル全面高の流れの中で、ドル円は144円台を回復した。ただ、午後には一気に60銭ほど急落する場面もあり、相場動向は依然として不安定。
ロンドン市場は、ポンドが買い戻されている。東京午前に1.08台から一気に1.0350近辺まで急落する場面があった。その後は1.05台に買い戻される動きがみられた。ロンドン朝方には1.06台を回復、その後も買い戻しの動きが続き1.0800近辺の戻り高値をつけた。しかし、先週末終値1.0859レベルまでは戻せず1.07台に再び沈んでいる。週明けも英債が売られ、利回りは上昇。買戻しで始まった欧州株は下げに転じている。一部報道によると、英保守党は英中銀の介入を期待しているという。ポンドドル1週間ボラティリティーは30%近くに上昇している。今後もポンド相場をめぐる荒っぽい展開は続きそうだ。対円や対ユーロでもポンドは買い戻されている。ユーロドルは0.96台半ばから0.9710近辺でのレンジ相場。足元では0.9650割れと上値を抑えられている。ドル円は144円台前半から一時143.50付近まで下落。しかし、ロンドン時間に入ると再び買われ、高値を144.30台に伸ばしてきている。黒田日銀総裁は、為替介入を適切と賛同していたが、市場ではその効果を疑問視する声も上がっている。ドル指数はポンドドルの買い戻しも上昇の流れを維持。週末のイタリア総選挙では、極右政党「イタリアの同胞」を中心に右派連合が議会を過半を占める勢い。EU政策との対立などの可能性が指摘されており、イタリア債が売られている。ユーロ相場の上値が抑えらえている一因となっているもよう。
NY市場では、リスク回避のドル買いが継続。ドル円は一時144.80近辺まで上昇した。米国債利回りが上げを加速させており、米株がきょうも売られる中、為替市場はドル買いが続いている。先週の日本の財務省による為替介入時の下げの約8割を戻す展開。ただ、145円より上には慎重な雰囲気も。市場推計では22日の介入規模は3兆円程度と伝わっていた。日本の外貨準備の規模、および、過去の介入規模からすれば、まだ財務省に余力は十分ありそうだ。ユーロドルは0.97付近が重く、一時0.96台割れへと軟化。この日は9月ドイツIfo景況感指数が84.3と予想を下回り、パンデミック時の2020年5月以来の低水準となった。GDPの縮小を示唆している。ポンドドルはロンドン市場で1.09台まで反発したが、NY時間に入ると再び売られて1.06台に下落。東京午前のフラッシュクラッシュからは回復も、依然上値は重い。市場ではポンド下落により英中銀が緊急利上げを実施するのではとの見方が広まっており、短期金融市場では11月までに1.75%の利上げを織り込む動きが出ている。ベイリー英中銀総裁は緊急で発言を行っており、「必要なだけの金利変更を躊躇しない」と述べる一方で、「英中銀は次回の金融政策委員会(MPC)でポンド安と財政計画を評価する」と述べた。
27日
東京市場では、調整的なドル売り。ドル円は144円台での推移。昨日の海外市場で144.70台まで上昇したあと、東京市場ではやや調整の動き。144.05付近まで軟化も大台割れには至らず。米株先物が時間外取引で反発、アジア株も堅調とリスク警戒は後退。一方、介入警戒感もあり上値追いには慎重だった。ユーロドルは下落一服。朝方に0.9580台まで下押しされたあとは、午後にかけて0.96台半ばへと反発。ポンドドルは、昨日東京朝に1.03台半ばを付けた後、英中銀の緊急声明発表の報道などに1.09台を回復。声明が今後の利上げの可能性を示すも、即時の行動を示したものでなかったことから1.06台へ軟化していた。東京市場では、1.08台まで買い戻されている。この後に発言予定の英中銀チーフエコノミストによる強気発言などへの期待感もあったようだ。
ロンドン市場は、ポンド相場が落ち着いた。ポンドドルはロンドン序盤に1.0838レベルの高値をつけたが、その後は1.0770付近までのレンジ相場が続いている。前日はポンド相場急落を受けて市場に英中銀の緊急利上げ観測が高まったが、きょうは市場の利上げ幅見通しがやや縮小している。11月英中銀会合時点で1.5%利上げが織り込まれている。ユーロドルはロンドン早朝に0.9671近辺まで上昇したあとは上値を抑えられ、0.96台割れ目前まで下げた。ロシア産天然ガス供給に再び不透明感が広がったことに反応していた。ただ、大台割れには至らず0.96台前半での揉み合いに落ち着いた。ドル円は144円台後半からじり安の動きとなり、ロンドン朝方には144.06レベルまで下押しされた。その後は144円台前半での揉み合い。米債利回りが低下しており、10年債は3.90%付近から3.80%台へと低下。欧州株や米株先物・時間外取引は堅調に推移。原油先物も反発。全般に前日のパニック的な相場展開から落ち着いた印象となっている。ただ、英FT指数が依然として上値重く推移、英緊急利上げ観測は残っており、ポンド相場をめぐる状況は引き続き不透明だ。
NY市場では、リスク回避のドル買いが優勢。ドル円は145円をうかがう展開を見せた。先週の財務省による為替介入で145円から上の水準には慎重さも見られるものの、下値では買いも根強いようだ。米金利先高観も去ることながら、リスク回避の雰囲気がドルを押し上げている。FRBが市場の想定以上に積極的にインフレ抑制に努める姿勢を強調する中で、世界の成長見通しは不透明感を強めている。そのため、ドルは利回りの優位性と安全資産としての性質から恩恵を受け続けるとみられている。ユーロドルは上値の重い展開が続いており、0.95台に再び値を落とす展開。ECBの大幅利上げ期待は高まっているものの、ユーロの買い戻しが活発化する気配は見られていない。きょうも欧州のガス価格が急上昇する中で、景気への不安感は根強い。ポンドドルは前日の急落からの買い戻しが見られてはいるものの上値は重い。1.08台が重くなり、一時1.0650付近まで下落した。前日のベイリー英中銀総裁は、市場の一部で囁かれた緊急利上げには消極的な見解を示した。ただ、市場は11月の金融政策委員会(MPC)での大胆な利上げを見込む声が大きくなりつつある。
28日
東京市場では、リスク回避のドル高・円高の動き。世界的な景気悪化見通しが背景。インフレ懸念が根強いなかでトラス英新政権の舵取りが不安視されているほか、11月の米中間選挙後のバイデン政権の舵取りも不透明。バイデン米大統領の支持率低迷が示唆するように、民主党は劣勢である。ロシアがウクライナの一部地域の併合を今週中にも発表する見通しであり、その後の軍事衝突の拡大も危惧されている。ロシアとドイツを結ぶノルドストリームからガス漏れが発生し、妨害工作が疑われていることも不透明な要因。ユーロ円は138.06付近、ポンド円は153.80付近、豪ドル円は92.26付近まで円高推移。ユーロドルは0.9543付近、ポンドドルは1.0632付近、豪ドル/ドルは0.6377付近までドル買いが優勢となった。ドル円は144.40付近まで一時的に円買いが強まったが、すぐに144円台後半に切り返している。ドル買い圧力が根強いことがドル円の下値を支えている。
ロンドン市場は、全般にドル高水準での取引が継続している。米10年債利回りは一時4%を上回った。そのなかで、ポンド相場が英中銀の発表を受けて混乱している。英中銀は長期債の一時購入を発表、本日から10月14日まで入札を実施する。これにポンド相場は反射的に買われた。英30年債利回りは記録的な大幅低下となっている。ポンド買いは続かず反落。英中銀はQTの開始時期を10月31日に延期すると発表している。ポンドドルは1.06台後半から1.0838近辺まで急伸したあと、すぐに1.0625近辺まで反落。その後は再び売り込まれて1.05台半ばに下落。ドル指数は序盤に高値を伸ばしたあと、ポンド相場の乱高下で一時下げたが、前日比プラス圏を維持している。ドル高圧力は根強い。ドル円は144.50近辺から144.80近辺での振幅。ユーロドルは0.9536近辺に安値を広げたあとは0.9602近辺まで反発。その後は0.95台に戻しており、上値も重い。ポンドを除くと比較的狭いレンジでの推移となっている。
NY市場では、ドルの戻り売りが強まった。ドル円は一時143円台に下落。本日は米株式市場が急反発しており、リスク回避の動きが一服しているほか、米国債利回りも急低下していることから、ドルは戻り売りが強まっている。米10年債はロンドン時間に4%台まで上昇していたものの、NY時間に入って一時3.69%台まで急低下した。トラス英首相の大型減税を含む経済対策の発表で英国債とポンドが不安定になっている。英国債は急速に売られ、利回りが急上昇していたが、英中銀がきょう長期の英国債の無制限購入を発表し、ひとまず落ち着いている。それを受け英国債と伴に米国債利回りも急低下した格好。ポンドドルは買い戻しが膨らみ、ストップを巻き込んで一時1.09台まで急速に戻す展開。英中銀の発表でひとまずポンド売りは落ち着いた。英中銀は本日のオペで10.25億ポンドの長期債を購入したと発表していた。英中銀の英国債購入は市場を落ち着かせる行動ではあるものの、同時に量的緩和(QE)拡大にもなる。現行の方向感とは真逆の行動。ただ、NY時間に入ってのドルの戻り売りで、短期のショート筋によるショートカバーが活発に出たようだ。ユーロドルも0.97台半ばまで買い戻しが入った。ECBの大幅利上げ期待が高まっており、10月の理事会では0.75%ポイントの利上げがコンセンサスになりつつある。
29日
東京市場では、ドル円が底堅く推移。米債利回りの上昇とともに、ドルの買い戻しが優勢となった。昨日の米株も反発もあり、日経平均がプラス圏推移となったこともドル円を下支えした。144円台後半へと上昇している。昨日の海外市場で0.97台半ばを付け、その後0.97台前半で東京朝を迎えたユーロドルは0.9650台まで値を落とした。昨日の英中銀による長期債購入を受けて1.09台を付けたポンドドルは1.07台後半の推移。ドルはほぼ全面高に。クロス円はドル主導で方向感なく推移。ユーロ円は140円台からユーロの下げに139.59近辺まで下げた後、少し戻す展開。
ロンドン市場は、ポンド相場の混乱がひとまず落ち着いた。ロンドン時間に入ると英長期債利回りが上昇、欧州株や米株先物が下落とふたたびリスク警戒の動きが先行した。トラス英首相は「自身の経済支援策は英国にとって正しい計画だ、減税があらゆる人々の助けに、英経済成長に寄与することで」と演説した。その後次第にポンドドルは買われ、1.0897近辺まで上昇。英中銀の一時購入措置を警戒して、英30年債利回りは序盤の上昇を解消している。ユーロドルは0.9636近辺まで下げたあとは0.97台乗せまで反発。ポンドドルに動きに連れている。一連のECB当局者発言には目立った反応を示さず。10月理事会では、ほぼ75bp利上げがコンセンサスとなりつつあるようだ。ただ、一部には慎重な意見も聞かれた。ドル円は序盤に144.80近辺まで買われたあとは、144円台後半に高止まりしている。米10年債利回りは3.86%台まで上昇したあとは落ち着いた展開になっている。
NY市場では、欧州通貨にショートカバーが強まった。ポンドドルは買い戻しを強め、1.11付近まで一時上昇。ストップを巻き込んでショートカバーが活発化したようだ。短期筋がここ数日で大量に積み上げたポンドショートを巻き戻し、月末を前にしたポジション調整を活発化させたもよう。きょうの英国債利回りは上昇はしているものの、小幅な動きに留まっており、落ち着きを取り戻している。英中銀は本日も英国債を14億ポンド購入したようだ。しかし、トラス政権が大型減税計画を撤回しない限り、ポンド回復は長続きしそうにないとの声も。ユーロドルはNY時間に入って買い戻しを加速させ、一時0.98手前まで急速に戻した。ロンドン時間の序盤には0.9635ドル付近まで下落。ポンドの買い戻しとともにユーロも対ドルで買い戻しが膨らんだもよう。市場ではECBの大幅利上げ期待が高まっており、10月の理事会では0.75%ポイントの利上げがコンセンサスとなっている。ドル円は買いが優勢となり、一時144円台後半まで上昇。ただ、財務省による為替介入への警戒感もあり、145円台には慎重な雰囲気。
30日
東京市場では、前日海外市場でのドル安を受けた水準で振幅。ドル円は144円台での推移が続いた。朝方の144.30近辺を安値に144.77近辺まで上昇。午後には144.50付近へと押し戻されている。米債利回りが小幅低下しており、ドル円の上値を抑えた。ただ、月末とあって一方向への動きとなるムードはなかった。145円付近では日銀の介入への思惑も広がりやすい状況。ユーロドルは0.9790付近から0.9840台までのレンジ。前日の上昇の動きにやや調整が入ったが、下押しは限定的。水曜日の英中銀による長期債購入がきっかけとなりポンドは上昇基調が続き、東京朝にポンドドルは1.1203近辺まで高値を伸ばした。その後は1.1070付近まで売りが入る場面があった。午後には1.11台乗せと下げ渋り。
ロンドン市場は、ドル売りが先行も続かず、足元ではドル買い方向に転じている。この日も債券利回りが低下しており、英中銀の長期債一時購入措置を受けた展開で始まった。ポンドは前日の上昇の流れを受けて買いが先行。ポンドドルは一時1.12台に乗せた。欧州株や米株先物が買われ、全般にドル売りが先行。ドル円は144.20付近に下落、ユーロドルは0.9850付近に上昇した。しかし、好ムードは続かず。英政府と予算責任局(OBR)が協議したあと、英財務省は、財政計画を変更せず、OBRに経済予測作業を急ぐよう求めず、としている。OBR側も経済予測はこれまで通り独自の判断に基づくとしている。早期に予測が発表されないことに失望売りに反応がみられ、ポンドドルは1.11台割れから1.10台後半へと下落。欧州株は上げ幅を縮小、全般的にドル買いに流れが変化。ユーロドルは0.97台半ばへと反落、ドル円は144円台半ばへと反発している。ロシアのウクライナ4州の編入を受けて、EUなどが対ロ制裁を強化するとしており、リスク回避圧力が広がる面も指摘される。クロス円は総じて軟調な展開に。ユーロ円は142円付近から141円付近へ、ポンド円は162円付近から160円台割れへと下落している。この日発表された英GDP確報値は予想外に前期比プラスに上方改定された。ユーロ圏消費者物価速報は前年比+10.0%に達した。財務省は為替介入額は2.8兆円だったと公表した。
NY市場でドル円は堅調な値動きを続けた。きょうは9月期末の取引の中、ドル円は144円台前半まで伸び悩む動きを見せていたが、底堅さを堅持した。ただ、財務省の介入への警戒感から145円台にはなお慎重。一方、ドル高期待が根強く、144円ちょうど付近に接近すると買いオーダーも活発に出るようだ。そのような中、ドル円は144円台での上下動が続いている。 

 

●為替相場 10/3-10/7 10/8 
まとめ10月3日から10月7日の週
3日からの週は、米経済統計結果をめぐりドル相場が振幅した。週初は米ISM製造業景気指数やJOLT求人件数などが弱い内容となり、市場の米大幅利上げ観測がやや後退。株高・債券利回り低下、ドル安とリスク警戒の動きが緩和された。ただ、この動きは長続きせず、週末の米雇用統計を控えて再び警戒感が広がった。週央以降に発表された米ADP雇用統計やISM非製造業景気指数が比較的強い内容だったことも影響した。また、一連の米金融当局者らからもインフレ対応はまだ道半ばとの発言が相次いでいる。週初の楽観ムードは消えて、再び株安・債券利回り上昇、ドル高へと方向が変化した。また、先週は大きな動きをみせたポンド相場だが、今週は上記のドル相場の振幅とともに頭打ち感がでている。トラス英首相は所得税の最高税率引き下げを撤回したものの、大型減税を軸とした政策方針は堅持している。来週14日までの期限とされる英中銀の長期債一時購入措置の行方も不透明だ。格付け会社からは英格付け見通し引き下げが相次いだ。ECBについては直近の理事会議事録では一部に50bp利上げにとどめる意見もあった。米FOMCほどは足並みが揃っていない印象を与えた。ユーロドルはパリティ付近で上値を抑えられた。豪中銀は予想外の25bp利上げにとどめた。一方、NZ中銀は予想通りの50bp利上げ。OPECプラスの大幅減産方針を受けて、原油先物が上伸した。そして、週末の米雇用統計では失業率が予想外に低下、雇用増は前回から低下も、市場予想を上回る強い内容だった。発表を受けて米債利回りが急上昇、米株先物が急落、為替市場ではドル買いの動きが広がった。
3日
東京市場では、ドル円が上値を試した。前週末からの上昇の流れを受けて、一時145円を超えて145.30近辺まで上伸。市場では介入実施後の心理的な節目145円を超えたことで、ストップロス注文が発動されたようだ。ただ、上値も重く再び144円台へと反落、144.70付近まで下落と荒っぽい値動きとなった。午後には145円を挟んで売買が交錯した。ポンドは週末にトラス新政権による所得税最高税率引き下げ法案について、採決を先送りする見通しとの報道が朝方の買いを誘った。しかし、ユーロドルでのユーロ売りドル買いもあり上値が重くなると、ポンドドルは1.10台後半まで値を落とした。その後、英BBCが同方針を撤廃する見通しと報じ、ポンド買いが一気に強まり、1.12台後半まで上昇。お金持ち優遇として相当評判の悪かった方針の撤廃を好感する動きが広がった。
ロンドン市場は、ポンド買いが一服。東京午後には一部報道で英財務相が所得税の最高税率引き下げを撤回すると伝わり、ポンドが急伸した。ポンドドルは1.11台割れ水準から一時1.1281近辺まで買われた。ただ、実際に英財務相が撤回表明を行ったあとは、市場はポジション調整の売りに1.11台半ば付近まで反落。その後は1.12を挟んだ取引が続いており、先週末よりはポンド高水準を維持している。対円は160円台後半から163円台乗せとなった後は、ロンドン時間には162円台を中心とした振幅。対ユーロでもポンド高水準は維持されている。ユーロドルは0.98を挟んだ上下動を繰り返す中で、一時0.9753近辺に下抜ける場面も再び0.9780付近に下げ渋り。ややドル買い方向に傾く動き。対ポンドでの売りが重石となった面も。ユーロ圏製造業PMI確報値は引き続き50割れ水準と冴えなかった。ドル円は東京昼過ぎに144.60台から145.30付近まで神経質に振幅した後は、レンジ内にとどまっている。ロンドン時間には底堅く推移しており、145円台前半に再び上昇。欧州銀の信用不安を受けて欧州株が軟調に推移しており、リスク警戒のドル高圧力の面も指摘される。
NY市場では、ドル売りが強まった。米国債利回りが急低下し、ドルも連れ安となった。米ISM製造業景気指数が景気後退を示唆する弱い内容となったこともドルの戻り売りを加速させた材料。日本の財務省の為替介入への警戒感がある中、ロンドン時間にドル円は9月22日の介入時以来の145円台を回復していたが、NY時間に入って一時144円台前半まで伸び悩んだ。ただ、底堅さは堅持しており、144円台をしっかりと維持した。ユーロドルは買い戻しが加速し、0.98台を回復。目先は0.9850レベルと21日線が控える0.9890付近にレジスタンスがあり意識される。先週発表の9月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値で、総合指数が前年比10.0%とインフレが予想以上に上昇したことで、10月末のECB理事会での大胆な動きへの圧力が強まっている面も。ポンドドルも買い戻しが加速し、1.13台を回復。先週は波乱のポンドだったが、英中銀の英国債市場への介入でひとまず安心感が広がり、ポンドは買い戻しが続いている。きょうはトラス首相が英最高税率の引き下げを撤回したこともポンド買戻しをサポートしている。
4日
東京市場では、豪中銀の小幅な利上げが豪ドル売りを誘った。豪中銀は政策金利を0.25%引き上げた。利上げは6会合連続。ロウ総裁は以前から今後の利上げ幅縮小の可能性を示唆していたが、消費者物価指数の高さなどから、今回までは0.50%という見方が広がっていた。豪ドルは0.6500台から0.6450近くまで急落。その後は少し戻すも0.6480前後と、発表前よりも豪ドル安に。欧州通貨は基本的に堅調。ユーロドルは朝方0.9840近くまで上昇した後、ユーロ円の売りなどに0.9800台まで反落。午後は欧州通貨買いが強まる中で0.9845前後まで再び上昇。ポンドドルも同様に朝に1.1340近くまで上昇後、いったんの調整に1.1280台まで軟化。その後1.1350超えへと買われた。ドル円は堅調。朝方に144.40台に軟化も、その後は144.90台まで上昇。午後も高止まりに。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。英米など主要国の債券利回りが低下し、欧州株や米株先物が堅調に推移。全般的にリスク選好の動きとなっていることが背景。そのなかで、次第にユーロ高の面も広がっている。特に対豪ドルでのユーロ買いが鮮明。ユーロドルは0.98台半ばから買われ、ロンドン午前には0.9904近辺まで高値を伸ばしている。一方で、ポンドドルは1.13台前半から序盤に1.1429近辺まで買われたあとは、1.13台前半へと反落。豪ドル/ドルは0.64台後半から0.6547近辺まで高値を伸ばすも、その後は再び0.6470近辺へと上に往って来いとなっている。ユーロポンド、ユーロ/豪ドルはともに堅調に推移している。今週急落したクレディスイス株が急反発しており、欧州株のムードが好転した面が指摘される。また、この日25bpの利上げにとどめた豪中銀と、今後も積極利上げが期待されるECBとのスタンスの差が意識された可能性もありそうだ。8月ユーロ圏生産者物価指数は前年比+43.3%と過去最高を記録。エネルギーを除くと前回からは伸び鈍化となったものの、今後の冬季に向けたエネルギー価格高騰を考えると、水準は一段と上昇する公算が高い。ドル円は144円台後半での取引に終始。
NY市場では、ドル売りが加速。10月相場に入って雰囲気が一変しており、米国債利回り低下およびリスク選好のドル売りが強まっている。序盤のドル円は144円台後半で上下動していたが、8月の米求人件数が予想以上に減少したこともあり、143円台まで急速に下落した。一部からはFRBの利上げサイクル終了への期待も台頭しているようだ。来年に到達が予想されている今回の利上げサイクルのターミナルレート(最終着地点)に対する市場予想が先週の4.75%から4.39%程度に低下。ユーロドルは買い戻しが膨らみ、パリティ(1.00ドル)手前まで回復。きょうの上げで21日線を上回る動きが見られており、リバウンド相場に入るか注目の動き。市場では欧州のエネルギーショックの影響で、ECBはFRBよりも引き締めを長く続けざるを得なくなるとの見方も。ポンドドルは買い戻しが膨らみ、1.14台を回復。英財務相が金融市場を安心させるために、中期財政計画の発表を前倒しするとの報道も好材料だった。ただ、クワーテング財務相はあとで否定している。市場で一時高まっていた英中銀利上げの可能性はほぼ排除されている。英国債は逆イールドが解消し、イールドカーブもフラットな状態に戻り、安定を取り戻しているようだ。
5日
東京市場では、ドル円相場が振幅。前日NY市場での下落の流れを受けて、朝方には143.50台まで下落する場面があった。しかし、すぐに買いが入り144円台を回復、144.30近辺まで買われた。午後には144円台前半で揉み合っている。ユーロドルは1.0000のパリティ水準に接近も0.9990付近までの上昇。その後は0.9960-80レンジで揉み合った。ユーロ円は朝方に144円台をつけたあとは、ドル円の売りやユーロドルの上値の重さに143.30台まで反落。その後は143.90近辺まで再び上昇、午後には143.60-80でのレンジ取引に。NZ中銀は市場予想通り0.5%の利上げを決定。声明では今後の引き締め姿勢継続を示し、市場が期待した利上げ幅縮小に向けた動きを見せなかったことや、レビューの中で0.75%利上げも検討されたことが示された。発表後はいったんNZドルが買われ、対ドルで0.5720前後から0.58台を付ける動きを見せた。しかし、その後調整が入り、上昇分を解消する動きに。発表後いったん上昇したNZ債利回りが低下したことで、NZドル買いは続かず。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。前日までの債券高(利回り低下)や株高の流れがきょうは逆回転している。市場は米経済統計に敏感になっており、この後の米ADP雇用統計やISM非製造業景気指数の発表を控えて、ロンドン市場では前日のドル売りにポジション調整が入っているもよう。米10年債利回りは3.63%付近から3.71%台まで上昇。前日に大幅高となった欧州株は反落している。ユーロドルはパリティ水準の手前で上値を抑えられると、0.9910台へと反落。ポンドドルは一時1.15台手前まで買われたが、その後は1.1365付近へと下押しされている。ドル円は144円付近でサポートされたあとは144.50台までと比較的小幅の上昇。介入警戒感が積極的な上値追いを躊躇させている面も。クロス円は軟調。ユーロ円は144円台乗せから143円台前半へ、ポンド円は165円後半に買われたあとは164円台割れへと下落している。トラス英首相は財務相と足並みをそろえていることを強調、成長優先、競争力強化、減税実施などを表明しているが、ポンド相場の反応は冷淡だ。ユーロ圏や英国の非製造業PMI確報値はいずれも低下傾向が継続、小幅の改定には反応薄だった。
NY市場では、リスク回避ムードが再燃しドル買いが優勢。ドル円は東京時間に143円台半ばまで下落していたが、NY時間にかけて144円台後半まで戻している。再び145円をうがかう展開も見せたが、後半になって米株が序盤の下げを取り戻したことから、ドルは伸び悩んだ。米ADP雇用統計やISM非製造業景気指数はともにFRBのタカ派姿勢を正当化する内容となった。米国債利回りも上昇し、米株式市場も戻り売りが強まった。この日はデーリー・サンフランシスコ連銀総裁の発言が伝わっていたが、市場で出ている2023年の利下げ観測には否定的な見解を示したほか、利上げペースにとってはコアインフレが重要で、それの横ばいか低下を見たいと述べていた。ユーロドルは戻り売りに押され、0.98台に下落。パリティ(1.00ドル)回復を試す動きも見られていたが、達成できずに失速した。この日発表のユーロ圏PMI確報値は総合、非製造業ともに前回から低下、景気減速が広範囲に及んでいることが示されていた。ポンドドルも戻り売りに押され、一時1.12台に下落。ただ、後半には1.13台半ばまで戻している。対円、ユーロでもポンドは軟調に推移。トラス英首相が与党保守党の会議に出席し、所得税の最高税率引き下げ計画は撤回したものの、減税策の残りの部分は実施すると述べた。首相は、「高税率、低成長のサイクルから脱却することを決意した」と述べ、ポンドはネガティブな反応を見せていた。
6日
東京市場では、前日のドル買いにやや調整が入った。ユーロドルは前日にパリティ手前まで買われた後は、リスク回避の動きに0.98台前半まで一時下落。東京市場では0.99台前半まで買い戻され、その後は狭いレンジでの揉み合いとなった。ポンドドルも同様に前日の下げからの反発の動きに1.13台前半から1.1380付近まで上昇。ただ、いずれも積極的な上値追いとはならず調整の範疇にとどまった。ドル円は144.40から144.70レベルでの上下動にとどまっており、方向性は希薄だった。早くもあすの米雇用統計待ちのムードがでていたようだ。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。序盤に買いが先行した欧州株や米株先物・時間外取引が足元では下げに転じている。明日の米雇用統計の結果に対する不透明感から、リスク警戒の動きが広がっている。ドル買いの動きは、リスク動向に敏感な豪ドル/ドルのほか、ポンドドルの下げが主導している。ポンドドルは1.13台半ばから1.12台半ば割れ水準へと下落、100ポイント超の下げに。ポンド円は164円台から162円台後半へと下落。対ユーロでも売られているほか、対豪ドルでもやや売りに押されている。英トラス政権の経済政策に対する根強い不信感が反映されているもよう。また、英中銀の債券購入一時購入の期限、10月14日以降の対応についての不透明感もあるようだ。インフレ期待や住宅ローン金利が上昇するなかで、英中銀の対応は困難なものに。ユーロドルの下げは0.9920台から0.9870台までと比較的小幅にとどまっている。ユーロ円は143円台前半から一時143円割れ。ドル円は144.50付近でサポートされると、144.77近辺まで買われている。
NY市場は、ドル買いが優勢。ドル円は145円台を回復した。米株式市場でダウ平均が一時400ドル超まで下げ幅を拡大するなど、リスク回避の雰囲気がドル買いを誘発した。目先は財務省による為替介入後の高値145.30円が上値メドとして意識される。ユーロドルは戻り売りが優勢となり、0.97台に下落。21日線を再び割り込む展開に。ポンドドルは一本調子の下げを演じた。ロンドン時間の1.13台半ばから、NY時間に入ると一時1.11台前半まで下落し、再び21日線を下回っている。週前半に発表になった米経済指標が弱い内容だったことで、FRBのタカ派姿勢が緩むのではとの期待から、ドルは戻り売りが活発に出ていたが、明日の米雇用統計を前にリスク回避のドル買いが再び広がりつつある。現段階で非農業部門雇用者数(NFP)が25万人増、失業率は3.7%と低水準が見込まれている。予想通りであれば、FRBのタカ派姿勢を正当化する内容と思われる。カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁は「政策スタンス変更のハードルは非常に高い」と述べた。エバンス・シカゴ連銀総裁も来年春までに政策金利は4.50−4.75%への上昇を予想している。今週も複数のFOMC委員の発言が伝わっていたが、いずれもタカ派姿勢を堅持していることを強調し、市場で観測が出ている来年の利下げ期待を否定している。
7日
東京市場は、揉み合いが続いた。このあと日本時間午後9時30分に発表される米雇用統計を前に、市場は様子見ムードの強い展開となった。ドル円は、前日の海外市場で米株安を受けたリスク警戒のドル買いと、ウォラー米FRB理事をはじめとするFRB関係者のタカ派発言を受けたドル買いで145円台に乗せた。東京市場では145円挟みと前日からの高値圏で売買が交錯、目立った方向性は示していない。ユーロドルは0.98を挟んだ水準での売買が続き、前日からの安値圏で推移した。ユーロ円は142円付近で底ばい状況が続いた。日経平均はやや売られており、調整ムード。
ロンドン市場は、ドル買いが先行も、その後は調整に戻されている。米雇用統計発表を控えて神経質な値動きとなっている。ドル円は145円を挟んだ上下動。145.14近辺まで買われたあとは144.72近辺まで一時下落。その後は145円手前へと下げ渋っている。神田財務官が、「為替平衡操作の弾薬について制約を感じたことはない」と発言したことには目立った反応はみられなかった。米債利回りが小幅に上昇、欧州株や米株先物は前日終値を挟んだ取引が続いている。ユーロドルは0.9766近辺に安値を広げたあとは、一時0.98台を回復。足元では上値重く再び0.97台に。ポンドドルは1.1116近辺まで下押しされたあとは反発し、1.1225近辺まで上昇。その後も1.12付近に高止まり。対ユーロでもポンドは堅調。ラムスデン英中銀副総裁は9月MPCで持続的インフレが75bp利上げ投票につながったとした。11月MPCがどれだけ強い内容となるのかがカギなどとタカ派姿勢を示した。また、ECB関係者からは、「ボーナス巡り慎重に対応するよう銀行側への圧力強める」と銀行の財務状況に対する懸念が示されていた。
NY市場はドル買いが加速し、ドル円は一時145.45円付近まで上げ幅を拡大した。9月22日の財務省の為替介入以降の最高値である145.30円を突破する動きが出ている。朝方発表の米雇用統計がFRBのタカ派姿勢を正当化する内容となったことから、発表後にドル買いが強まった。 

 

●為替相場 10/10-10/14 10/15 
まとめ10月10日から10月14日の週
10日からの週は、ドル円が148円台に上昇、32年ぶりの高値水準となった。米生産者・消費者物価指数がいずれも予想を上回る伸びを示したことが、米金融当局の大幅利上げ観測をより確かなものとした。市場では11月・12月にそれぞれ75bp利上げを織り込んでいる。加えて、黒田日銀総裁が緩和継続姿勢を再確認しており、日米金利差拡大見通しが意識された。パニック的な円安の動きとはならず、円買い介入は封印されている。ドル相場全体を見渡すとドル高一辺倒でもなく、対欧州通貨を中心にドル安に傾く局面もあった。なかでもポンドドルが堅調。英中銀は14日で長期債などの一時購入措置の終了を確認する一方、その後も流動性支援措置は継続すると表明。10月31日に前倒し発表される英政府の中期財政計画およびOBR経済予測については、減税案の方向転換に向けて作業中との報道が好感された。週末にはクワーテング英財務相が更迭され、新財務相には元外相のハント氏が指名された。一連の動きを受けて、市場の不透明感がかなり払拭された。ポンドドルは1.10台割れとなったあと1.13台へと一時上昇。ユーロドルは米消費者物価指数発表後に0.96台前半に下落する場面があったがその後は一時0.98台を付ける動き。ただ、週末には再びドル買いに押されている。ミシガン大指数が良好で、1年および5−10年先のインフレ期待も予想以上に上昇した。
10日
東京市場はスポーツの日の祝日のため休場。
ロンドン市場は、先週からのドル買い圧力が継続。ドル円は週明けのアジア市場で一時145.67レベルと高値を伸ばした。9月22日の為替介入直前の高値145.90レベルに再接近。その後は145円台前半へと調整が入ったが、足元では145円台半ばと底堅い動き。ロンドン序盤は対欧州通貨でのドル買いが目立った。ユーロドルは0.97台割れから0.9682近辺に安値を広げた。ポンドドルは1.11付近が重く、1.1027近辺まで下落。その後、英中銀が14日の英長期債一時購入期限までの購入額増額を発表、英政府が10月31日に中期財政計画とOBR経済見通しを前倒しで発表すると報じられると、ポンド売りが一服する場面があった。一方、週末のクリミア大橋の爆発に対するロシア側からの報復措置としてウクライナ首都キーウに複数攻撃が実施されている。欧州の地政学リスクによるユーロ売りの面が指摘される。このあとのNY市場はコロンブスデーのため米債券市場が休場となる。手掛かりに欠けるなかで、先週末の米雇用統計を受けたドル高の圧力は根強い。欧州株や米株先物は売りが優勢だが、手掛かり難のなかで安値を拾う動きも散見された。ただ、クロス円の上値は重く、総じて円高の動きが優勢。
NY市場では、ドル買いが継続。ドル円は底堅さを維持し、145.80台へと高値を伸ばした。先週末の米雇用統計を無難にこなし、来月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75%利上げ期待が強まる中で、ドル買いの流れが継続している。週末にロシア本土とクリミア半島を結ぶクリミア大橋が爆破されたことや、10日にロシアがウクライナの首都キーウを含む複数都市に大規模な弾道ミサイル攻撃を実施したことなどによるウクライナ情勢の深刻化への懸念も、リスク警戒でのドル買いを誘ってドル円の支えとなった。ただ、米国とカナダが休日で、株式市場では取引があるものの、債券市場は休場、為替市場は動意薄となった。ユーロドルは0.97を挟んだ安値圏で揉み合い。ユーロ円はドル円の上昇とともに141円台割れから141.30台までの小反発。
11日
東京市場では、ドル高水準での揉み合い商状。ドル円は145円台後半での推移で、下値は145.55付近、上値は145.80台までのレンジ取引が続いた。前回介入が入った水準が迫り、介入警戒感もあって上値トライに慎重。もっとも流れはドル買いで、下値もしっかりという動きにくい展開だった。ユーロドルは0.9670台へと下値を広げる場面があったが、売りは続かず0.97台前半に下げ渋った。前日からの安値圏での取引に終始。ウクライナ情勢に対する警戒感が指摘された。ポンドドルは1.11付近で上値を抑えられると1.1020付近まで下押しされた。財政赤字懸念が継続しており、ポンドは上値の重い展開だった。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。ただ、米債利回りの上下動に反応した面が強く、東京市場でのドル高の動きに調整が入る形。全般的には方向性が希薄。ドル円は東京市場で145.86レベルまで買われたあとは、介入警戒感もあって145.50近辺まで反落。 ユーロドルは0.9672近辺を安値に0.9725近辺まで反発。東京高値を上回ったものの相場は走らずその後はレンジ内にとどまっている。ロシア外相が米国が真剣に提案するのであれば、米ロ首脳会談を検討すると発言、ユーロ買いの反応がみられたが、レンジからは抜け出せず。ポンドドルは1.0998近辺まで下押しされた後は買い戻されて1.1080台まで反発。対ユーロでもポンドは堅調に推移している。英中銀は14日までの英長期債一時購入措置で、昨日は規模の倍増を発表。きょうはさらにインフレ指数連動債の購入についても発表している。ただ、いずれの通貨も東京市場からのドル高の動きが調整される程度の動き。明日の米生産者物価指数、明後日の米消費者物価指数待ちのムードもあるようだ。
NY市場は、終盤になってリスク回避の動きを強め、ドルが買われた。ベイリー英中銀総裁の発言が伝わり、総裁は債券購入プログラムについて「週末までにわれわれは手を引く。市場への介入は一時的なものになる」などと述べたことが背景。市場の一部からは延長があるのではとの期待も出ていた。一時1.11台半ばまで買い戻しが入っていたポンドドルは発言を受けて一気に失速し、1.10台を再び割り込んだ。ユーロドルは0.97ドル台後半まで買い戻されていたが、0.97ドル台前半へと再び軟化した。ユーロ圏の経済見通しが弱いことと、FRBのインフレ抑制への固い決意が引き続きユーロドルを圧迫している。ドル円は取引終盤に米株式市場の下落とともに145円台後半へと上昇した。前半の145円台半ばまでの下げを帳消しにしている。根強いFRBの利上げ期待とリスク回避のドル高の中で、ドル円は財務省の介入水準まで戻っている。
12日
東洋市場では、ドル円が146円台に乗せた。介入が実施された9月22日の高値145.90レベルを上回り、さらに146円台乗せ。146円を挟んで神経質に売買が交錯したあと、高値を146.39近辺まで伸ばした。介入警戒感があり、上値トライはゆっくりとなっている。ただ、押し目が限定的な分、上方への意識は継続している。ポンド相場が荒っぽい値動きを示した。ポンドドルは前日に1.12近くから1.0950台まで大幅下落した。ベイリー英中銀総裁発言が売りを誘った。東京市場ではさらに1.0924近辺まで一時下落。しかし、英紙FTが匿名の複数銀行関係者からの情報として、英中銀が長期債購入の延長を示唆と報じるとポンドが急伸、1.1050超えとなった。ポンド円は160円台割れ水準から161.30台まで買われた。
ロンドン市場は、ポンドが堅調。英中銀は予定通り14日で英長期債一時購入を終了すると表明。一方、LDIの状況を監視しつつ、14日以降も新たな流動性支援措置を講じるとしている。英30年債利回りは債券購入開始以来、初の5%台へと上昇。欧州株、米株先物ともに序盤の下げを消しており、リスク動向的には好感されたようだ。ポンドドルは1.10を挟んだ上下動から上放れて1.11台目前まで上昇。ポンド円も160-161円での神経質な振幅から162円台乗せへと買われている。前日のNY市場後半のポンド売りを解消する動きに。ユーロドルは0.97台前半を中心に狭いレンジ取引。対ポンドではユーロ安、対円ではやや円安方向に振れている。ドル円は146.56近辺に高値を伸ばしている。米債利回り上昇に反応するとともに欧州株高で円安となる面も指摘される。問題は上昇のスピード。146円ちょうど付近からゆっくりと着実に上昇する動きとなっており、日銀の為替介入が入るタイミングを計りにくい状況となっている。
NY市場では、ドル円が一段高。146円台後半から147円に迫る動きをみせた。米生産者物価指数(PPI)が予想を上回ったことや、ワシントンで開催された国際金融協会(IIF)の会合に黒田日銀総裁が出席し、「物価安定目標達成するまで金融緩和を継続」と述べたこともドル円の買いをサポートした。午後になって9月分のFOMC議事録が発表され、為替市場はドル売りの反応が見られた。議事録では「少な過ぎは多過ぎよりも代償が大きい」とタカ派姿勢を強調する一方で、一部からは「リスク軽減のために引き締めを調整する必要がある」との主張も出ていることが明らかとなった。引き続きタカ派色が強い内容ではあったものの、予想ほどタカ派一辺倒という印象でもなかった。ただ、ドル売りは一時的な反応に留まっている。前回の介入ラインを突破してきており介入警戒感は根強いものの、着実に150円への流れが続いているようだ。ユーロドルは方向感のない展開。0.96台に値を落とす動きが見られたものの、下値押す気配もなく、0.97ドルちょうど付近での推移を続けた。一方、ポンドドルは買い戻されて、1.10台後半へと上昇。英中銀は差し入れられる担保要件を拡大したオペを11月10日まで継続すると発表。資産運用から得られるキャッシュフローと支払いを近づけようとする戦略を取っているファンドを保有している確定給付型年金基金からの、マージンコール(追加担保の拠出要求)に伴う現金需要に対応できるようにするための措置。
13日
東京市場は、ドル高水準での揉み合い。ドル円は前日の海外市場で、米生産者物価指数の好結果もあり146.90台まで買われる場面があった。東京市場では朝方に146.90台をつけたが、147円手前では売りに上値を抑えられた。調整に押される動きは146.68近辺まで。基本的にはドル高の流れが続いており、下値はしっかりとしていた。上値では介入警戒感もあるが、値動きは落ち着いていた。ユーロドルは前日海外市場で0.96台を付ける場面があったが、東京市場では0.97ちょうどを挟んだ推移。米消費者物価指数の発表待ちに。ポンドドルも1.11を挟む展開。 昨日英中銀が暫定的な拡大担保レポ・ファシリティー(TECRF)を11月10日まで延長すると決めたことで、金融市場の流動性懸念が少し後退したことでポンド買いとなったが、長期債価格の下落懸念が根強いだけに、上値も重い。
ロンドン市場は、ポンド買いの動き。前日に英中銀が長期債などの購入額を45億ポンドに拡大し、開始以来の最大規模となった。市場では14日の終了期限まで、積極的に債券市場の鎮静化が図られるとの観測が広がっているようだ。英30年債利回りは前日に5%をつけたが、今日のロンドン時間には4.4%付近まで大幅に低下した。さらに、トラス首相が減税案の方向転換に向けて作業中だと報じられたこともポンド買いを誘った。ポンドドルは1.10台後半から1.13手前水準へと上伸。ポンド円は162円台から165円台へと買われた。英長期債利回り大幅低下を受けて米10年債利回りは3.93%付近から3.88%台へと低下、ドル相場の重石に。ユーロドルは0.9685近辺を安値に一時0.9750台まで上昇。豪ドル/ドルは0.6265近辺から0.6299近辺まで上昇。ドル円は146.70-90レベルでの揉み合いが続いており、模様眺めとなっている。
NY市場ではドル相場が大きく変動した。注目の9月米消費者物価指数(CPI)が強い内容を示し、改めてFRBのタカ派姿勢を裏付ける内容となった。為替市場ではドル買いが強まった。ドル円は一時147.67付近まで上昇、32年ぶり高値水準となった。その後、数十秒の間に一気に146.50付近まで1円以上急落する場面が見られた。市場が円買い介入に神経質になっている面が伺われた。その後は147円台に再び戻す展開。米株式市場が急落から急伸に転じたことで、リスク回避のドル買いが一気に後退している。特段の好材料はないが、全体的に悪材料出尽くし感が出たか。ドル円は147円挟みに。ユーロドルは買いが優勢。米CPI直後には0.9635近辺まで下落する場面も見られたが、すぐに買い戻しが入り0.98近辺まで上値を広げた。ポンドドルはロンドン市場で1.13台手前まで上伸したあと、米CPI直後に1.1150付近まで反落。その後は1.1380付近に高値を伸ばす力強い値動きだった。米株が急反発したことで、クロス円は総じて上昇した。ユーロ円は142円台割れから144円付近へ、ポンド円は164円台から167円付近へと上伸。
14日
東京市場は、比較的落ち着いた取引。ドル円は147円台を維持している。朝方に147.40台をつけたあとは147.06近辺まで一時反落。介入警戒感もあって147円台半ばからの買いには慎重姿勢がみられた。その後は再び147.40付近へとじり高の動きとなった。ユーロ円は144円ちょうど付近で取引を開始すると午前に144.34近辺まで買われた。その後は144円台前半での揉み合いと前日からの高値圏で推移している。ユーロドルは0.97台後半から一時0.9808近辺まで買われたあとは、0.97台後半で買い一服。前日の海外市場での激しい振幅の後で、東京市場は模様眺めムードが広がった。株式市場は堅調に推移しており、リスク警戒感は後退している。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。ドル円は147円台でじりじりと値を上げる動きとなり、ロンドン序盤に高値を147.78近辺まで伸ばした。前日NY市場でつけた32年ぶり高値水準147.67レベルをさらに上回った。その後も下げも147.50付近までにとどまっている。ユーロドルやポンドドルは上値重く推移。前日の上昇の動きに調整が入っている。ユーロドルは0.98付近で上値を抑えられると、0.9719近辺まで反落。ポンドドルは1.13台半ばが重くなると1.1231近辺まで下押しされている。ただ、ポンドには散発的に買いが入る場面も。トラス英首相が本日中に記者会見を開く予定。事前の各報道によると、法人減税引き上げ凍結が撤回される見込み、クワーテング英財務相が更迭される見込みなどが報じられている。
NY市場はドル買いが優勢となり、ドル円は一時148円台後半まで上げ幅を拡大した。この日発表の10月調査分のミシガン大消費者信頼感指数をきっかけに、リスク回避の雰囲気が広がりドル買いが強まった。指数が予想を上回ったほか、1年および5−10年先のインフレ期待も予想以上に上昇し、ネガティブな雰囲気が広がっている。150円をターゲットに入れた感もあるドル円だが、いまのところ財務省が出てくる気配がないことも、上値追いの安心感につながっているのかもしれない。 

 

●為替相場 10/17-10/21 10/22
まとめ10月17日から10月21日の週
17日からの週は、ドル円が節目の150円をつけた。米債利回りの上昇とともに、基調としてのドル高の流れが継続。市場では年内あと2回の米FOMC会合で、それぞれ75bpずつの利上げを織り込んでいる。米長期債利回りが上昇、年初来の高水準を伸ばした。一方で、日銀の緩和継続姿勢は揺るぎない状況。日米金利差拡大観測が根強いドル高・円安の流れを形成した。さらに週末には151円台に乗せ、9月22日の明確な円買い介入からほぼ1カ月で11円程度の円安進行となった。週前半には覆面介入がうわさされる動きもあったが、流れに変化はみられず。しかし、週末金曜日のNY市場では152円手前から146円台へと急反落。正式な確認は取れないものの円買い介入との報道がかけめぐった。ポンド関連では、週明けにハント英新財務相が、ほとんどの減税策を撤回したことが市場に安心感を与えた。さらに、20日にはトラス首相が辞任した。一連の経済政策が市場の混乱を招いたことに対する引責辞任。ポンド相場は一時、買いの反応を示したが、すぐに収束している。今後の政治情勢については引き続き不透明だが、財源無き大幅減税計画による混乱した相場展開はひとまず一段落した。ただ、来週のECB理事会では75bpの大幅利上げが想定されており、ポンドは対ユーロでの売り圧力に押されている。
17日
東京市場は、小幅の値動き。ドル円は先週末に148.86レベルまで買われた。週明け早朝のオセアニア市場では148円半ば割れへと下押しが入ったが、すぐに買い戻されてじり高に。午後には148.80付近へと上昇。介入警戒感も下値がしっかりとしていた。ユーロ円も145円台乗せと底堅い動き。ユーロドルは0.97台前半からじり高となり、午後には0.9750超えへと上昇。値幅は限定的だった。ポンドドルは1.12台前半での揉み合いから午後には1.13手前まで上昇。この後のハント新財務相が中期財政計画について本日声明を発表する。同件についての期待感がポンド買いに。トラス首相が週末に消費税減税について2024年までの延期を発表したことがポンド買いを誘った面も指摘された。先週末に大幅下落となった米株は、週明けの時間外取引で反発している。
ロンドン市場は、ポンド相場が神経質に振幅。この日、ハント英財務相が中期財政計画について声明を発表すると報じられたことが市場の注目を集めた。事前に所得税の1ポイント引き下げを2024年まで延期するとの報道が流れていたが、ハント財務相の発表内容はより減税措置の撤回を鮮明なものとした。所得税減税については無期限に撤回とされた。その他、大方の措置をUターンさせており、節約効果は320億ポンドと発表されている。これを受けて1.12台で神経質な上下動を繰り返していたポンドドルは一時1.1331近辺まで買われた。英長期債利回りが大幅低下、欧州株、米株先物ともに上昇と市場は歓迎ムード。ただ、ポンド買いの動きはすぐに一巡、ポンドドルが1.12台に反落する動きが全般的なドル買いの動きにつながった。特に上昇の機会をうかがっていたドル円が買われ、高値を148.89レベルまで伸ばしている。先週末の高値を上回り32円ぶりの高値水準に。ユーロドルはポンドドルにつれた動きにとどまっており、0.97台半ばを軸とした振幅。クロス円は株高の動きを受けて底堅く推移。ポンド円は一時168円台乗せ、ユーロ円は145円台乗せに。
NY市場はドル売りが優勢。リスク回避の動きが一服したことが背景。ハント英新財務相が前財務相が示した減税計画を撤回する一と発表。今回の方向転換で合計320億ポンドが節約でき、市場には安ど感が広がった。ポンドドルは買い戻しが続いて、一時1.14台乗せ。ポンド円も170円台まで急上昇した。ポンド円は年初来高値を更新している。ユーロドルにも買い戻しが膨らみ、0.98台半ばまで一時回復した。全般にドル売りが優勢となるなかで、ドル円には戻り売りが強まる気配はみられず。上値追いが続いて一時149円台に上昇、1990年以来の高値を更新した。クロス円の上昇がドル円をサポートした面もあった。FRBのみならず、ECBや英中銀も大幅利上げ観測が強まる一方、日銀に動く気配はなく、金融格差拡大観測が円売りをサポートしている状況に変化はない。
18日
東京市場は、揉み合い商状。ドル円は朝方に149円台をつけたあとは、介入警戒感などが上値を抑えて、午前中は調整の動き。押し目は148.70割れまでと限定的。午後にかけては148円台後半での推移が続いた。ポンドドルはハント英財務相の大規模減税の撤回を受けて前日は1.14台を回復。その後調整に1.13台半ばで東京市場を迎えた。午前は調整売りに押されて1.1330台まで軟化。午後に入って英紙FTが英中銀が31日に開始を延期していた量的緩和の後退(資産売却)について、再延期すると報じたことでポンド買いが強まり1.14台を一時回復。その後、再び1.1350台と振幅した。ポンド円は168円台後半から170円手前までの上下動。ユーロドルは0.9820台から0.9860台まで小幅に上昇、ユーロ円も146円台前半から後半へ買われた。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。ドル円はロンドン序盤には149円台乗せから一時149.29近辺まで上伸。1990年8月以来、32年ぶりの高値水準をつけた。しかし、その直後に一気に148.20付近まで急落。その後すぐに値を戻し、再び149円台に乗せている。先週の米CPI後の急変動と似た値動き。介入の思惑を呼ぶ動きとなっていた。米債利回りが上昇しており、全般的にドル高の動きを下支えしている。東京午後には英FTが英中銀がQTを再延期すると報じた。ポンド買いの動きが広がり、対ドルで1.14台乗せ。その後、ロンドン時間にかけては上昇一服し、上値重く推移。英中銀が英FTの記事を不正確だとして否定すると、売りが強まり1.13台割れから1.1250台へと下押しされている。ユーロドルはロンドン朝方に0.9874近辺まで買われたあとは、上値が重くなり、ポンドドルとともに下げて0.9810付近に下押しされている。ポンドは対円や、対ユーロでも軟調に推移しており、前日のハント英財務相の大型減税の撤回を受けたポンド買いは続かず。一方、欧州株、米株先物は続伸しており、全般的なリスク警戒の動きは後退している。
NY市場では、ドル円が堅調。リスク回避ムードが一服するとともに、米債利回りが上昇に転じており、ドル円を下支え。一時149.40付近まで高値を伸ばした。きょうもロンドン市場で短時間に急速に1円以上急落する場面が見られていた。先週の米消費者物価指数(CPI)発表後にも似たような動きがあったが、直後に戻している。日銀の当座預金残高が減少しており、市場では財務省の覆面介入も取り沙汰されている。しかし、単独介入ではやはり勢いが限られることから、介入をしても下値ではファンド勢が待ち構えているとの指摘も。ユーロドルは0.98台半ばを中心に方向感のない上下動に終始。ポンドドルはNY時間に入ってからは下げ渋り。1.12台後半から1.13台前半での取引に落ち着いた。英政府が大半の減税計画を撤回したことで、安心感からポンドは買い戻しが膨らんだが、減税撤回で今度は英国の弱いファンダメンタルズがポンドのさらなる上昇余地を制限するはずだとの指摘もでていた。
19日
東京市場は、揉み合い商状。ドル円は149円台前半での狭いレンジ取引が続いた。149.11レベルを安値に前日からのドル高・円安水準を維持している。介入警戒感はかなり強く、昨日NY市場でつけた149.38レベルに高値を試す勢いには欠けた。ユーロドルは0.98台での推移が続いた。昨日の海外市場でも0.98台での方向感の見えない振幅。ユーロ円は朝方に147.26近辺まで上昇した後、じりじりと値を落とした。ポンド相場は午後3時発表の英物価統計が注目材料。英消費者物価指数前年比は+10.0%予想に対して+10.1%と7月に並ぶ直近で最も高い水準に。発表までは様子ムードが強かったポンドドルは1.13台前半を中心とした推移。発表後は1.13割れへと軟化した。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米債利回りの上昇が下支え。米10年債利回りは一時4.10%近くまで上昇。ドル指数は21日線超えへと上昇。ポンドドルの下げがドル買いを先導。9月英消費者物価指数が前年比+10.1%に再び上昇、根強いインフレ圧力が英経済に悪影響となることがポンド売りを誘ったもよう。ポンドドルは1.13台割れから1.1230近辺まで安値を広げている。ポンドドルに追随した動きのユーロドルもロンドン昼に向けて下げ足を速めた。0.98台割れとなると安値を0.9760近辺に広げている。ユーロ圏の9月消費者物価指数・確報値も前年比+9.9%の高インフレ。ドル円は149円台前半でじり高の動きを示していたが、欧州通貨の下落とともに取引中盤には149.50を上回ると149.72近辺に高値を伸ばしている。32年ぶり高値水準を更新するとともに、150円を視野に入れている。ただ、日銀の円買い介入への警戒感もあって上昇の勢いはやや慎重。ユーロ円やポンド円は軟調に推移している。ドル円相場は新たな材料に欠けるなかで、淡々と水準を上げる展開になっている。
NY市場では、ドル円がじり高の動き。150円の節目に接近、介入警戒感は強いものの、底堅い値動きが続いている。市場では財務省による為替介入はドル円の水準よりもむしろ、上昇スピードに左右されるとの指摘が出ている。前回の介入を考慮しても、円のレベルそのものではないという。このところのドル円は上昇は続いているものの、スピードは以前よりはゆっくりとしたアプローチが見られている。それが狙いだという。FRBがタカ派姿勢を緩めない限り、ドル高は続き、直近の下落は一時的と見られている。FRBのタカ派姿勢は2023年まで続き、11月FOMCでの利上げも0.75ポイントが確実視されている。ユーロドルは0.97台に軟化。市場ではECBへの見方に違いが出ている。一部からは、ECBは10月理事会で0.75%ポイントの利上げ後、12月に利上げを一時停止する可能性があるとの見方も。一方、ECBは10月に0.75%ポイントの利上げを実施し、2023年半ばまで利上げを継続するとの見方は根強い。ポンドドルは戻り売りに押されて一時1.11台まで下落。トラス英首相が、ブレーバーマン英内相を国家安全保障巡る違反で解任した。トラス首相にさらなるプレッシャーを与えることは必至に。
20日
東京市場で、ドル円は高値圏で揉み合い。150円手前の売りが上値を抑えるものの、下値はしっかり。NY市場で149.90前後を付けた後、東京朝にかけていったん調整も149.70台まで。東京勢の本格参加で149.90台に乗せるも、その後はレンジ取引が続いた。ユーロドルはドル高圧力が重石となり、昼過ぎまでは軟調で0.9750台を付けたが、その後反発した。中国が新型コロナでの入国者管理期間を短縮との報道にユーロ買いで反応していた。ポンドドルは1.12割れから1.1230台に上昇。ドル人民元は7.2430前後から7.2230前後までの急落。その後戻して7.23台前半推移に。
ロンドン市場では、ドル円が一時150円台をつけた。午前に一時150円の大台を付ける場面が見られた。1990年8月以来の高値圏。米債利回りの上昇などからロンドン時間に入ってドル高が強まり、150円を瞬間付けてすぐに149.60台まで下落。その後150円台にすぐに切り返して150.08レベルまで上昇し、またすぐに149円後半へ落とすなど、相当に荒っぽい動きを見せた。150円ちょうど前後でのオプション取引に絡んだ注文が多かったとみられており、不安定な動きに寄与。ユーロドルは0.97台後半の推移が続いた後、ポンドドルでのポンド買いなどに0.98台を回復。ポンドドルは1.1220を挟んでの推移から、一時1.1170近くまで値を落とした後、一転してポンド買いに。英政府が会見を開くとの報道に、トラス首相が退任するとの見通しが強まり、ポンド買いが広がった。減税政策に絡んだ混乱もあって、トラス政権が続いた場合、ポンドは不安定な動きが続くのではと見られていた。その後トラス首相は実際に辞意を表明し、ポンドドルは1.13台を付けている。
NY市場では、ドル買いが優勢。ドル円は一時150.30近辺まで上値を伸ばした。序盤は株高・ドル売りの動きが先行したものの、米株が伸び悩んだことで、後半にドル買いの動きが復活した。財務省による介入への警戒感も強くある中で、149円台半ばまで下落する場面も見られていたが、買い戻しが強まり、150円を突破している。財務省の方針はあくまで急激な変動には対応するという姿勢で、ドル円を押し下げようという意図はない。それが米国とのお約束でもあろう。そのような中で、タカ派なFRBと慎重な日銀との格差拡大を材料に、もう一段の上げを期待した買い意欲は強い。ユーロドルも伸び悩んだものの、序盤は買い戻しが優勢となって一時0.9840台まで上昇。ただ、取引後半には再び0.98台を割り込んだ。ポンドドルも一時1.13台まで上昇する場面が見られたものの、後半になると戻り売りが強まり、1.12ドルちょうど付近まで下落。きょうはトラス首相の辞任が発表された。経済対策にまつわる混乱の責任を取った格好。一部報道ではジョンソン前首相が立候補を表明すると伝わっていた。
21日
東京市場では、ドル円が150円台でしっかりとした動き。昨日の東京夕方に150円台を付けた後、少し調整されるも、NY市場では150.29レベルまで上値を伸ばしていた。東京市場に入ってからも150円台は維持されており、米債利回りの上昇とともに150.43近辺までじり高の動きを示している。米10年債利回りは4.22%付近から4.26%台へと上昇、年初来の最高水準を伸ばしている。その他通貨でもドル高が目立ち、ユーロドルが0.9780台から0.9760台へ、豪ドルドルが0.6280台から0.6250台へなどの動きが見られた。もっとも値幅は全般に限定的。ドル円の上昇の勢いもあり、ユーロ円が147円台を付けるなど、クロス円はしっかり。
ロンドン市場は、ドルが全面高となっている。米10年債利回りが4.24%付近から4.29%近くまで上昇する動きがドル買いを誘引している。背景には根強い高インフレを抑制するために、年内あと2回の米FOMC会合でそれぞれ75bpの大幅利上げ観測が広がっていることが指摘される。ロンドン序盤はポンドドルの下げが主導。トラス英首相の辞任のあと、次期首相選出のための保守党党首選が急がれている。ただ、不祥事で辞任したばかりのジョンソン元首相や党首選に敗北したばかりのスナク元財務相が主力候補となっており、今後の不透明感は拭えない。来週のECB理事会で75bpの大幅利上げが想定されていることも対ユーロでのポンド売りとなって加わっている。その後はユーロドルも追随して軟化している。ドル円は150.50を上回るといったん151円手前で売買が交錯したが、ひとたび151円台に乗せると騰勢を強めて151.59近辺へと上昇。1990年7月以来の高値水準を更新している。クロス円は欧州通貨主導で売りが先行したが、ドル円の151円台乗せからは買戻しが入っており、円安相場の様相を呈している。ユーロ円は147円台後半に高値を伸ばす動き。通貨ごとにスピード感が錯綜しているが、着実にドルは買われている。
NY市場でドル円は急落。本日のドル円は152円手前まで上値追いを加速させていたが、NY時間に入って146円台まで5円以上急落する場面が見られた。財務省が為替介入を実施した可能性が高そうだが、一部報道では「政府・日銀が円買い・ドル売りの為替介入」と伝えていた。一方、神田財務官は「為替介入の有無についてはコメントしかねる」と述べていた。  

 

●利上げ否定 急速な円安望ましくない 物価見通し上方修正、金融緩和維持 10/28
日銀は28日、金融政策決定会合を開き、大規模金融緩和策の維持を全員一致で決めた。
会合後に記者会見した黒田東彦総裁は、「今すぐ金利引き上げや(金融緩和の)出口が来るとは考えていない」と指摘、改めて利上げを否定した。一方、最近の急速な円安については「経済にとってマイナスであり望ましくない」と述べた。
インフレ対策で利上げを進める米国との金利差拡大が円安の主因とみられているが、黒田氏は「日米の金利差拡大だけに着目して最近の為替動向を説明することは一面的」と一蹴。海外経済の減速やウクライナ情勢など日本経済を取り巻く不確実性は高く、「金融緩和を継続することが適当」と政策の正当性を強調した。
日銀は最新の景気予測となる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表し、今年度の物価上昇率見通しを2.9%(7月時点は2.3%)に引き上げた。先行きも2023年度1.6%(同1.4%)、24年度1.6%(同1.3%)に上方修正した。 
●為替相場 10/24-10/28 10/29
まとめ10月24日から10月28日の週
24日からの週は、ドル売りが優勢。一連の米経済指標が弱含みとなったことをきっかけに、今後の米金融当局の利上げペースが鈍化することが先取りされている。米債利回りは週を通して低下傾向を示し、米10年債利回りは4.3%程度でピークアウトすると4%割れへと低下。ドル売りの動きを側面から支えた材料としては、ドル円とポンドドルの動向がある。ドル円にとっては度重なる政府・日銀の介入(覆面介入)によって、市場には150円が上値の心理的な壁となったことがドル高の調整につながっている。米国の容認姿勢も安心感を与えた。ただ、週末の日銀決定会合後の会見で黒田総裁は「今すぐ利上げ・出口来るとは考えていない」と発言、さらに日銀の11月国債買い入れ予定で、超長期ゾーンの買い入れ回数増加と緩和策が強化、円安の反応をみせた。日米金利差拡大観測が再認識される面もあり今後の動向が注目される。 ポンドドルにとっては、トラス前政権の打ち出した財源無き大型減税策がポンド急落を招いたのだが、紆余曲折がありながらも財政規律を守るスナク政権に移行できたことがポンド買いを誘った。一時1.16台とトラス前政権による混乱前のポンド高・ドル安水準を回復した。カナダ中銀は50bpと市場予想75bpを下回る利上げ幅にとどめた。市場に利上げペースの減速を印象付けた面があった。ECB理事会では市場の想定通り75bp利上げが実施された。ECB総裁会見での経済減速見通しを受けてユーロドルが下落、ドル売りが一服する場面があった。来週は米FOMCにおけるパウエルFRB議長の会見内容が注目される。近い将来の利上げペース鈍化についての言及があるのかどうか、市場は強い関心を持っている。そして、米雇用統計、その次の週の米消費者物価指数と続く。ドル相場に関する材料は豊富だ。
24日
東京市場は、ドル円が激しく振幅。先週末に152円手前から145円台まで値を落としたドル円、その後148円台を付け、147円台後半で週の取引を終えた。週明けは同水準近くでの推移の後、円安が進行。149円台後半までと朝から2円超の上昇を見せたところで、一気の円買いが入った。介入とみられる動きであるが、当局はノーコメント。この動きで145円台まで値を落としたものの、その後買い戻しが強まり、149円ちょうど前後まで。149円ちょうど前後で完全に上値が抑えられるも、下値もしっかりで、朝の振幅が収まり東京勢が入ってからは動きが膠着した。ポンドドルは英国23日、日本時間24日早朝にジョンソン前首相が保守党党首選の不出馬を表明し、ポンド買いに。先週末に1.13ちょうど前後で引けたポンドドルは1.14台まで上昇。167円ちょうど前後で引けたポンド円は168円台に乗せ、さらにその後のドル円の149円台後半までの上昇に168円80銭前後まで買われた。ポンド円はドル円の急落に165円台を付け、168円台に戻すという不安定な動き。その後さらに169円台まで上値を伸ばしている。ユーロはポンドに準じた動き。朝のポンド高に0.99近くまで上昇したユーロドルは、その後0.98台での推移。ドル円の上昇にも支えられ147円台前半まで上昇したユーロ円は143.80近辺まで急落。その後146円台後半へ戻した。
ロンドン市場は、比較的落ち着いた展開。ドル円は東京朝方の乱高下のあと買戻しが入り148円台後半でしばし膠着。ロンドン時間に入ると米債利回りの下げ渋りとともにじりじりと買われて149.40台まで買われている。ただ、円買い介入への警戒感もあって一段の上値追いには慎重。市場筋の推計によると21日の介入規模は過去最大の5.4〜5.5兆円に上るとみられた。英国では保守党党首選でスナク元財務相が党所属議員の半数を上回る支持を得たと報じられている。週末にジョンソン元首相やモーダント候補が相次いで出馬を撤回しており、スナク首相の誕生がほぼ確定的となった。英国債が買われ、市場は歓迎しているもよう。ただ、ポンド相場は静かな展開。対ドルでは1.13台を離れず。ポンド円は169円を挟んだ上下動に落ち着いている。ユーロ相場も静か。米債利回りの上昇がややドル買い圧力となりユーロドルは0.98台半ばから0.98手前水準まで小幅に軟化。ユーロ円は146円台後半を中心に底堅く推移している。この日発表されたユーロ圏や英国の10月PMI速報値は高インフレやエネルギー不安を受けていずれも低下したが、市場は目立った反応を示していない。中国での新体制発足を受けて中国株などが大幅安となり、リスク回避圧力で豪ドルが軟調だが、その他主要通貨の反応は限定的。
NY市場で、ドル円は軟調に推移。一時148円台に下落。先週末のNY時間に財務省による大規模な為替介入が入ったと思われ、本日の東京時間やロンドン時間にもその気配が見られていた。この日発表の日銀当座預金増減要因の財政等要因のデータからは、金曜日の深夜の介入は5.5兆円規模との推測も出ている。150円を意識した介入とも思われ、市場も慎重になっているようだ。ただ、FRBのタカ派姿勢と日銀の金融緩和継続姿勢に変化がない限り、ドル円の上昇トレンドに変化はないものと思われ、下値では活発な押し目買いが引き続き入っている。ユーロドルは0.98台後半へと買い戻された。木曜日のECB理事会では75bp利上げが確実視されているが、市場では織り込み済みとみられている。12月理事会が焦点に。今後数四半期に及ぶエネルギー主導の景気後退による暗いユーロ圏の経済見通しを考慮すると、ユーロドルの強気シナリオは描きづらい。ポンドドルは緩やかな戻り売りに押され、1.12台に値を落とした。リスク回避の雰囲気が一服しており、ドル買いの動きも一服しているものの、ポンドの上値は重い。
25日
東京市場は、落ち着いた展開。ドル円は東京序盤に148円台半ばまで軟化する場面があったが、下値は堅くすぐに148円台後半に戻している。しかし、政府・日銀による円買い介入への警戒感から上値は抑えられ、前日終値を挟んでもみ合いとなっている。ポンドはしっかり。英与党・保守党の党首選挙でスナク元財務相が選ばれ、首相に就任することになったことを受けて、英経済への不透明感が後退。ややポンド買いが優勢に。午前にポンドドルは1.1325付近、ポンド円は168.70付近まで一時上昇したあと、上げ一服となっている。ユーロは上げ一巡。午前にユーロドルは0.9899付近まで、ユーロ円は147.42付近まで上昇したものの、その後は上値重く推移した。
ロンドン市場は、全般に動意薄。ドル円は東京市場からの148円台後半での膠着状態が継続。先週末から度重なる覆面介入とみられる激しい値動きがあり、投機的な行動がひとまず封鎖された格好。今後、米国との調整がスムーズに行くのかとうかが懸念されるが、現時点では小康状態を保っている。欧州通貨がまちまちの動き。ポンドが堅調に推移する一方で、ユーロは上値が重い。ユーロポンドが下落している。ポンド相場にとってはスナク英首相の誕生が市場の安定に寄与しているようだ。一方で、その経済手腕についてはまだ未知数な面があり、31日の中期財政計画の発表までは予断は許されない。ユーロポンドの下落には前日の上昇に対する調整の面もあったようだ。ユーロ相場にとっては10月独Ifo景況感指数が予想を上回ったことは好材料だが、Ifoエコノミストによると第4四半期がマイナス0.6%成長と予測されており、冬季のリセッションの公算が高まっていると指摘された。ポンドドルは1.1270近辺を安値に1.1340近辺まで上昇。一方、ユーロドルは0.9880近辺が重くなり、0.9850付近まで軟化している。ユーロポンドは0.8750付近から0.87台割れ水準へと下落している。
NY市場では、ドル売りが強まった。この日発表の米消費者信頼感指数を受けてドル円は一時147.55付近まで売りが強まる場面が見あった。米国債利回りが急低下しており、米株式市場に買い戻しが続いていることがドルの戻り売りを後押しした。市場ではFRBが利上げペースを緩めるとの思惑が広がっている。直近発表になっている米経済指標に弱い内容が多いことがその背景。しかし、FRBがタカ派政策を後退させるのは時期尚早であり、それは高インフレとの闘いを危うくするリスクがあるとの指摘も。11月1−2日にFOMCが開催されるが、それに向けて一旦調整の流れが出る可能性があるのかもしれない。ユーロドルは買い戻しが加速。一時0.9975ドル付近まで買い戻された。パリティ水準を意識する動きに。ポンドドルは1.14ドル台後半まで買い戻された。目先は今月初めに上値を拒んだ1.15ドルの水準を回復してくるか注目される。スナク氏が首相に就任。市場は安堵感を示している。
26日
東京市場で、ドル円は小幅の振幅。前日海外市場での下落の後はいったん調整の動き。昼前には148.41近辺まで買われた。日経平均が堅調だったことや、昨日変動許容幅ぎりぎりまで進んだ元安の動きが落ち着き、リスク警戒の動きが後退したことなどもドル円の支えに。しかし、午後に入ると上値が重くなり、148円台割れとなっている。ユーロドルは午前中のドルの買い戻し傾向で0.9950割れも、午後に買い戻された。前日海外市場に見られたユーロ買いの勢いがなく、落ち着いたレンジに。午前中の消費者物価指数が強めに出た豪ドルは、対ドルで0.6410台としっかりとした推移。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。前日から引き続き米債利回りの低下がドル売り圧力に。10年債利回りは4.10%付近から一時4.02%台に低下。市場では今後の米利上げペース鈍化観測が広がりつつある状況。また、この日のドル売りは対ポンドが主導している。ポンドドルは1.14台半ばから一時1.16台乗せまで買われた。トラス前英首相の就任時の水準まで戻している。対円や対ユーロでもポンド買いが優勢。スナク英首相の誕生を市場は引き続き歓迎している。前日には英財務相と英中銀総裁が会談し、両者は英経済に対する信頼と安定を回復するために緊密に協力することで合意した。きょうは英政府が中期財政計画とOBR経済予測の発表を11月17日に延期することを発表。中期的な債務削減を示す、政治的に不人気な選択もいとわず、正しい決断のために延期した、などとしている。ユーロドルも連れ高となり、約1カ月ぶりにパリティ水準(1ユーロ=1ドル)を回復した。ドル円は148円台割れから一時146円台後半まで下落した。その後はドル売り一服となっているが、前日よりもドル安の水準は維持している。
NY市場でもドル売りの地合いが続いた。ドル円は146円台前半まで下落した。本日も米国債利回りが低下し、ドル円を押し下げた。市場では、FRBが近く利上げペースを減速させるとの見方が広がっている。このところ弱い米経済指標が相次いでおり、米国債利回りも低下する中で、市場にその見方が広がっている。11月2日の米FOMCの結果発表を確認するまでは、利上げペース減速を意識した取引が続く可能性がありそうだ。ユーロドルはパリティ(1.00ドル)を回復。1.00ドル後半まで上昇した。明日のECB理事会を前にリバウンド相場に復帰するか、注目の展開に。ポンドドルは強い上値抵抗が観測された1.15を突破し、1.16台まで一気に上昇した。市場にリスク選好の雰囲気が広がる中、景気敏感通貨の位置づけのあるポンドは買い戻しを膨らませているもよう。前日にスナク政権が誕生し、ポンドにはひとまず安心感が広がっている。英政府は財政計画発表を11月17日に延期すると発表していたが、特にポンドへのネガティブな影響は見られなかった。カナダ中銀の金融政策委員会の結果が発表され、予想外の0.50%ポイントの利上げに留めた。これを受けカナダドルは売りの反応を強め、カナダ円は一時107円台半ばに急落。ただ、リスク選好の雰囲気が広がる中で、売り一巡後は買い戻しが強まり下げを戻した。
27日
東京市場では、午後にドル円が急落。午前は前日の下げを受けて146円台前半での揉み合い。午後に146円を割り込むと、一気に円買いが加速、145.11近辺まで安値を広げた。 円独歩高となっており、ユーロドルなどの動きは限定的。米10年債利回りも目立った動きを見せていない。ユーロ円は147円台での推移から146.20台へと下落。ポンド円は午前に170円付近まで買われたあと169円台後半で推移していたが、午後には168.70台まで下落した。円買い材料は特に見られず、欧州勢の本格参加を前に、短期筋からのポジション調整が入ると、買い注文が薄くなっていたところで値が大きく動いた形か。
ロンドン市場は、ドルの買い戻しが優勢。このあとのECB理事会の結果発表、ラガルド総裁会見、米GDP速報値発表などを控えて、先週末からのドル安の流れに対して調整が入っている。ドル円は東京午後に146円台割れから145.11レベルまで下落したが、ロンドン時間に入ると一転して買われている。米債利回りの上昇とともに146.48レベルまで買われ、本日の高値を更新。ユーロドルは東京朝方の1.0094近辺を高値にその後は上値重く推移。ロンドン時間には1.0050割れから安値を1.0030近辺まで広げている。ポンドドルも1.1645近辺を高値に上値を抑えられて、ロンドン時間には1.1550近辺に安値を更新。クロス円は主にドル円の値動きに連動しており、ユーロ円は147円台から146.50付近で下に往って来い。ポンド円は170円手前が重くなり、169円台割れまで下押しされたあとは、ロンドン時間には169円台前半で下げ渋りとなっている。米10年債利回りは4.00%付近から4.08%近辺へと上昇。欧州株は独仏指数など欧州大陸市場が軟調。英株は底堅く推移。いずれもイベントを控えた調整の動きにとどまっている。
NY市場では、ECB理事会にユーロ売りの反応を示した。ユーロドルはパリティ(1.00ドル)を割り込む動きが見られている。ECBはこの日の理事会で0.75%ポイントの利上げを決定し、中銀預金金利を1.50%まで引き上げた。ユーロドルは売られ、ネガティブな反応を見せた。0.75%ポイントの利上げは予想通りで驚きはなかったものの、以前ほどのタカ派な雰囲気はなかったようだ。ラガルド総裁は会見で、経済活動は第3四半期に著しく減速した可能性が大きいとし、第4四半期と23年第1四半期はさらに減速するとの見方も示した。これらを受けて短期金融市場でも利上げ期待が後退しており、今回の利上げサイクルのターミナルレート(最終着地点)の予想を従来の3.25%から2.75%程度に低下させている。ポンドドルは上昇一服も、1.15台をしっかりと維持。リバウンド相場の流れは継続。ただ、市場は英中銀の11月の利上げ予想を後退させている。スナク新政権が財政健全化に向けた緊縮の道筋を示したことが背景。短期金融市場では11月の利上げ幅は0.75%ポイントを下回る水準で織り込んでいる。ドル円は戻り売りの動きで147円近辺が重かった。一時145.70前後まで下押しされたあとは、146円台前半での揉み合いに。米GDP速報値は予想通りの上昇で、テクニカル・リセッションを脱した。デフレータの伸びは鈍化した。米耐久財受注は伸びを欠いた。米債利回りは引き続き低下している。
28日
東京市場では、ドル円が神経質に振れた。この日注目された日銀金融政策決定会合では想定通り金融政策が据え置かれた。ドル円は146.86近辺まで買われたあと、すぐに145.99レベルまで反落。その後は146円前半から半ばで激しく売買が交錯した。展望リポートでは、物価目標が引き上げられ、成長見通しが引き下げられたが、市場の想定内の内容だった。黒田日銀総裁会見待ちとなっている。ユーロドルやポンドドルには買戻しの動きがみられた。ユーロドルは1.0000手前まで、ポンドドルは1.1600手前水準まで反発も、その後は上値を抑えられている。全般に方向性に欠ける相場展開だった。
ロンドン市場は、ドル高とともに円安が進行。ドル円は146円台半ばから147円台後半へと上伸している。この日の日銀決定会合では市場想定通り金融政策が据え置かれた。注目の黒田日銀総裁会見では、超緩和政策の継続姿勢が堅持されている。特に、「今すぐ利上げ・出口来るとは考えていない」との発言が円売りを誘った。また、日銀は11月の国債買い入れ四半期予定で、超長期ゾーンの回数を増加させた。四半期予定を初めて変更している。市場は緩和策の強化と受け止めたもよう。ドル円とともにクロス円も買われ、ユーロ円は146円付近から一時147円台乗せ、ポンド円は169円付近から170円台前半へと上昇している。全般的にドル買い圧力も広がった。米10年債利回りが3.92%付近から一時4.01%台まで上昇したことが背景。ユーロドルはパリティ付近が重くなると、0.9927近辺まで下押しされた。ポンドドルも1.16付近で上値を抑えられ、1.1504近辺まで一時下落。その後はクロス円の上昇もあって売買が交錯。ECBが専門家予測調査を公表し、2022年から24年にわたるインフレ見通しが引き上げられた。一方、2022年GDP見通しが小幅に引き上げられたものの、23−24年見通しは引き下げられている。失業率見通しも調査対象期間を通して引き上げられた。昨日のECB理事会ではインフレ抑制のために75bpの大幅利上げが発表され、今後の追加利上げも示唆された。欧州の成長見通しに不透明感が広がっている。
NY市場ではロンドン市場で進んだドル買いの流れが継続も、週末を前に積極的な取引が手控えられた感があり、動きが落ち着いた。ロンドン市場で見られた米債利回りの上昇が一服したことも、ドル買いを抑える形に。ドル円は147円台半ばを割り込む動きが見られたが、下がると買いが出る流れ。米ダウ平均株価の上昇が続いたことも、ドル円の支えとなった。ユーロドルは振幅。ロンドン市場で一時0.9930割れまで下押しされた後、再びユーロ買いドル売りが強まり、0.9990台を付けたが、パリティ手前の売りが崩せず0.9930前後まで値を落とした。東京午前の高値を超えず、ロンドン市場の安値をつけずと、一日のレンジの中での動きに。
●日銀が金融緩和策を変更すると一体どうなるのか 10/29
慶應義塾大学の准教授である小幡績氏は、今回の原稿のテーマについて「やっぱり日本銀行の金融政策にしようか、それとも財務省の為替介入にしようか、いや、政府の経済政策という名のバラマキ政策でいくか」、あれこれ迷っていた。
迷いすぎているうちに、いつの間にか自宅の書斎(通称「洞窟」)で寝入ってしまっていた……。以下は、どうやら夢の中で見た光景のようだ。
日銀は2023年も不自然な金融緩和を継続? 
2023年4月、日銀の総裁に就任した灰色太郎氏は、金融政策決定会合で政策変更を行うべきかどうか迷っていた。
日銀は金融政策の柱の1つとして、イールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)を2016年から導入していた。これは短期金利をマイナスにするだけでなく、10年物国債の金利水準を0%程度にしようと目標を定め、国債買い入れを行う政策である。これによって、短期から長期まで、金利全体の動きをコントロールするのが目的だ。
この政策は2023年の今も継続しており、その金利目標水準も0%程度でまったく変わっていなかった。乖離許容幅については、0.1%だったのを2021年3月に0.25%に変更した。
だが、乖離許容幅といいながら、実質的には長期金利国債10年物利回りを0.25%にくぎ付けにするために、連続指し値オペというものを2021年3月に導入し、2022年4月末からは毎日行うこととした。この連続指し値オペはすでに1年近く行われていたため、10年物国債の取引はほぼ消滅し、国債市場は仮死状態といわれていた。
この異常な力任せの緩和を継続していたため、円は極端に安い水準となっていた。それでも、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)の強烈な利上げは2023年1月に一段落し、短期金利は4.75%で横ばいとなっていた。
一方、欧州はロシア・ウクライナ情勢が膠着したままであることもあり、インフレが止まらず、ECB(欧州中央銀行)は利上げを継続していた。この結果、ユーロは上昇し、一時は1ユーロ=1ドルを割り込んだユーロドル相場は、1ユーロ=1.15ドルの水準まで回復していた。
そのほかの国の通貨も、極端なドル高の反動でおおむね戻していた。しかし、円だけは戻りが極めて弱く、1ドル=140円前後で推移していた。ただし、変動は激しかった。なぜなら、金融政策決定会合のたびごとに「日銀総裁交代前に政策変更か」という市場の仕掛けが行われたからだった。
財務省はその都度為替介入を行ったが、この乱高下を利用して、トレーダーたちは細かく稼いでいた。いわば、介入を誘い、それをネタに小銭を稼いでいたのだ。世界で、為替はほとんど注目されなくなった中で、日本円だけがトレーダーのおもちゃにされていた。
このような状況の中で、発足した日銀の新執行部は内部でもめていた。「とにかく市場で波乱を起こさないように現状維持で行こう」という薔薇色桃子新副総裁と、「国債市場の仮死状態をこのまま続ければ本当に国債市場は死んでしまう」と懸念する赤色勇新副総裁と、意見が激しく対立していた。
金利ターゲットは0.25%、指値オペは0.5%に? 
灰色総裁は、強硬に政策変更を主張する赤色副総裁に尋ねた。「では、君はいったいどんな具体案があるというのか?」
「ここは、YCCを結局は終了しなくてはいけません」
「それでは、奴らは、われわれを攻撃してくるだろう!  どうするんだ!」
「いずれにせよ、YCCはやめないといけません。そのときはいずれ攻撃を受けます。もうすでに国債市場の歪みは拡大していますが、遅らせれば遅らせるほど、ひどくなってしまいます」
「いきなりYCCを止めたらどうなると思っているだ! ただじゃすまないぞ!」
「もちろんです。いきなりはやめません」
「は?  なんだ。やめないのか。じゃあ、どうするんだ?」
「ターゲットをゼロ程度から、0.25%に引き上げます。乖離許容幅は0.25%のままです。そこで、指し値オペは0.5%にします」
「それじゃあ、利上げじゃないか!  メディアがついに『日銀利上げ、市場圧力に屈した』と書き立てて、俺は記者会見で攻め立てられるぞ!」
「仕方ありません。いきなりYCCを終了すれば、10年物の金利がどこまで上がるか、まったく予測できません。市場も同じです。乱高下で大混乱します。0.25%ターゲット、指し値0.5%のほうが、はるかにましです」
「甘い!  それじゃ、次の利上げを狙って、市場は国債を売り浴びせてくるぞ。それこそ大混乱だ」
「そこで、その次の会合で、また0.25%引き上げます」
灰色総裁は気色ばんだ。
「それでは、追い込まれっぱなしじゃないか」
「はい」
「はい、じゃないだろ!」
「その次の会合で、0.75%ターゲットとし、乖離許容幅0.25%とすると上限は1%となりますが、ここでは、指し値オペを0.9%にして、とことん買い支えます」
「どういう意味があるんだ?」
「もうこれで利上げは終わり、というメッセージです。1%は死守するラインで、それを突破されないように、その前にも死守ラインを設け、とことん頑張るんです」
「それで?」
「やつらが攻撃をあきらめるまで0.9%で買い続けます。彼らは1%までは後退するだろうと攻撃すると思いますが、そこで0.9%とことん買い続ければ、彼らも弾が尽きます。そうすれば、0.9%で無風になります。そこで、YCCをやめると発表するのです」
「そうすると?」
「ここで、もしもう一度攻めてくれば、再度0.9%で守ります。しかし、彼らは弾が尽きているので、補充しても迫力はないはずです。つまり、YCCをやめるタイミングの前に、彼らを疲弊させておくのです。それにより、YCCをやめた直後の戦いでは、勝ちやすくなります。彼らが力尽きた直後に、YCCをやめるんです」
「なるほど。うまくいきそうだな」
「いえ、やってみないとわかりません」
「おい!  勧めておいて、なんだそれは!  俺を罠にかけるのか!  そんな不確実なことができるか!」
「勝負はやってみないとわかりません。時の運です」
「お前な……。お前はクビだ!」
「総裁は副総裁をクビにはできません」
「なに!!  いつのまにそんな反抗的に……。わかった。もう帰りたまえ」
「はい」
灰色総裁はつぶやいた。
「あいつめ。なんてやつだ。しかし、あいつの言うのも一理あるな。このままずっと何もしないわけにもいかない。世界の金利市場の実勢を鑑みれば、日本国債の金利上昇もやむをえまい。しかし、かといって利上げはできない。う―――ん……」
指し値オペを0.5%にした日銀、利回りは瞬時に0.75%に
その3日後の政策決定会合後の記者会見で、灰色総裁は政策変更を発表した。それは、乖離許容幅を±0.25%から±0.5%に拡大する、というものだった。連続指し値オペは継続するが、0.5%で無制限に買い入れる、というものだった。
国債市場は直ちに反応し、利回り0.5%まで上昇したが、その後、海外先物市場ではそこで止まらず、あっという間に0.75%まで上昇した。次の乖離許容幅の拡大を織り込んだものだった。
国内メディアも、灰色総裁を一斉に攻撃した。
「総裁、これは利上げですか、利上げではないんですか?  どっちなんですか!」
「利上げではありません。強力な緩和を継続し、わが国の物価動向は……、景気も……」
「なぜ指し値の利回りが切り上がったんですか?  利上げを利上げでないと言い逃れしているだけじゃないですか!」
「いえ、そんなことはありません……」
「では、なんなんですか!」
別の記者も攻撃した。
「国債利回りが0.5%を突破して、海外市場では0.75%までいったんですよ!  見透かされてますよ!」
さらに別の記者もかさにかかって、非難する。
「国債だけではなく、円も売り浴びせられてますよ!  本来利回りが上昇したら、円高になるはずでしょ!  債券安、為替安、日本売りです!  それも、総裁の政策変更のせいです!」
「いえ、ですから……うっ……」
「総裁、総裁!  大丈夫ですかっ?」
灰色総裁は不眠と疲労、そしてもちろん心労で記者会見の場で倒れてしまい、緊急入院となった。幸い、命に別状はなかったが、絶対安静となり、医者は公務に復帰するのは1カ月以上かかるとのコメントだった。
慌てた官邸は日銀と緊急に話し合い、臨時の措置として薔薇色桃子副総裁を総裁代行とすることを決定した。
薔薇色総裁代行は事態を悪化させ、円は大暴落
薔薇色総裁代行は翌日、臨時政策決定会合を開くこととした。この混乱を収束させるためということだった。
臨時政策決定会合では、政策は元に戻されることとなった。つまり、10年物0%程度、乖離許容幅0.25%で、連続指し値オペは無制限で0.25%となったのである。
しかし、この政策の後戻りは、当然、事態をさらに悪化させてしまった。国債市場では売りが殺到し、買い入れ対象の国債はすべて日銀が保有する結果となり、オペの意味がなくなった。そして、海外の先物市場では金利がさらに急騰した。
そして、円が大暴落し始めた。アメリカの利上げペースが緩和され、ドルの全面高局面が終了し、ドル円も落ち着き、水準を切り下げていたが、灰色総裁の乖離許容幅拡大で、円安が再度進み始めてしまったところだった。それが、一瞬で大暴落となってしまった。これで、日本国中がパニックとなった。
しかし、最も悪い影響は国債の新発市場で起きた。誰も、国債の入札に応じなくなったのである。長期国債だけでなく、短期国債でも、どんな期間の国債でも、入札がすべて不調となった。日銀の政策の先行きが不透明すぎて、短期金利に対してまで、国内市場ですら疑心暗鬼になってしまい、国債市場は全面的に死んでしまった。
財務省だけでなく、官邸も、いや国全体が、薔薇色総裁代行を攻撃した。
薔薇色総裁はこれに耐え切れず、総裁代行だけでなく、職そのものを辞任し、行方がわからなくなってしまった。周辺からは、海外に渡航し、欧州のある国でひっそり過ごしているというウワサがどこからともなく聞こえてきた。
ついに、灰色総裁に強硬論を唱えていた赤色副総裁の出番となった。彼は、かつて、といってもこの間10日も経っていないが、灰色総裁に打診した持論の金融政策を実施した。
しかし、時すでに遅しだった。この大混乱のあとに至っては、まっとうな政策だろうが何であろうが、日銀の動きは全面否定された。国会ではなんと日銀解体論が吹き荒れ、これはさらに円の暴落をもたらした。
いよいよ、日本沈没か……。新聞でもテレビでも、この見出しが躍ったが、人々は目を背けるように、この話題に触れないようになった。テレビはこの問題を扱うと消されてしまうため、ワイドショーでは他愛もない芸能人のスキャンダル特集を流すスタイルに戻ってしまった。
そして、目をつぶる日本国民のこの状態こそが、日本を本当に沈没させる理由だった。破綻の日は刻々と近づいてきた……。
灰色総裁も、薔薇色・赤色副総裁も幻だった? 
青色静氏は目を覚ました。「ああ、ひどい夢だったな。疲れているのかな」
青色氏は、翌日の日銀総裁就任を控え、疲労と寝不足から、自宅の風呂につかりながら、寝てしまったようだった。
「日本も俺もおぼれ死ぬわけにはいかない。やはり淡々と金融政策は非常事態の政策から、普通の緩和に戻さなければいけないな。市場に攻撃されても、メディアに攻撃されても、正しい政策を地味に淡々とかつ不屈の精神でやりきらないといけない」
再度、決意を固めた。
青色新総裁は、最初に政策決定会合でYCCのターゲットを0.25%上げた。指し値オペは0.5%で行ったが、連日はやめ、不意打ちに変更した。そして、無制限ではなく、大規模でない買い入れ額に設定した。売りが殺到しても、売り手は全額を売り切れるわけでなく、割り当てとなったために、空売りにはリスクが伴うようになった。
一方、日銀の買い入れは、限定された金額の指し値オペと、通常の買い入れ額を指定したオペを併用し、かつ不意打ち戦略を取った。市場の混乱、ある程度の乱高下は受け入れつつも、ともかく投機的取引に対するリスクを高めて、投機家を追い出すことを最優先にした。
さらに青色総裁は、官邸、財務省とも「あうんの呼吸」で買い入れを行った。
ドル円相場は、ドルの金利上昇一服により落ち着いていたが、日本国債市場の乱高下により、また円安へ向かい、為替市場も激しく乱高下し始めた。
これを抑えるために、財務省は円買い介入を行った。しかし、これは2022年秋の介入とは異なり、日銀の政策変更または国債買い入れと連動していた。
日銀が利上げを発表した直後に、円買い介入を大規模に行い、円はそのたびに大幅に上昇し、乱高下しつつも円は値上がりしていった。また、日銀が買い入れオペを通告した直後にも、小規模の介入を行った。
青色総裁は官邸・財務省と危機を乗り切った……
この結果、市場では、日銀の買い入れオペごとに介入期待が高まり、円は上昇していった。買い入れ額が小さくとも、介入額が小さくとも、相乗効果とアナウンス効果、投機家の深読み効果で、買い入れ、介入の効果は倍増した。
青色氏の評判は、利上げ当初は賛否両論だったが、次第にメディアも称賛するようになり、青色氏は中央銀行総裁として、世論も市場も支配し始めた。これこそが中央銀行総裁として重要なことだった。黒田東彦氏の就任当時と政策の方向は異なっていたが、支配という意味では似たような状況だった。
だが、青色氏は「その先」を考えていた。いずれ、世界は大不況になる。そのときにこそ、本当の日本経済の危機がやってくる。そのときに、金融政策、中央銀行への信頼が十分にある状態にしておかなければならない。自分の名声に酔うどころか、さらに気を引き締めていたのであった……。
小幡氏は、ここで目を覚ました。
はたして、これは悪い夢だったのか、それともいい夢だったのか。正夢だったのか。それともありえない理想を夢見ただけだったのか。青色氏のような人はどこにいるのだろうか……。
いずれにせよ、忘れないうちに、この夢を利用して原稿を書いてしまおう。小幡氏は、ヘッドフォンから流れてくる、ジョルジュ・エネスクのバッハ無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番を聴きながら、筆を進めたのであった……。 

 

●為替相場 10/31-11/4 11/5 
まとめ10月31日から11月4日の週
31日からの週は、ドル買いが優勢だったが、週末にはその動きが巻き戻されている。米FOMCをめぐって市場の思惑が交錯し、神経質な動きをみせた。利上げ幅は4回連続の75bpとなった。声明では今後の利上げペース鈍化が示唆された。市場の12月利上げ観測は50bp利上げが優勢になっている。しかし、パウエルFRB議長会見では、インフレ抑制姿勢が強調されたほか、従来の想定よりもターミナル・レート(利上げ最終水準)が高くなる見通しが示された。ドル相場は乱高下したあとにドル高方向に傾斜した。豪中銀は市場予想通り25bpの小幅利上げにとどめた。英中銀は75bpの大幅利上げを実施した。7対2の票割れとなり、25bpと50bp利上げが1票ずつだった。ペイリー英中銀総裁は、市場の想定よりも低い水準の利上げにとどまると指摘した。米金融当局は積極的な利上げ姿勢、絶対的な金利水準の両面で、その他中銀よりはタカ派であることがドル買いを誘ったようだ。週末にかけてはドル高一服。中国のゼロコロナ政策の緩和期待で中国・香港株が連日買われ、リスク警戒感が緩んだ。対ドルで人民元が買われ、豪ドルも堅調に推移している。金曜日の米雇用統計では、雇用者数が予想を上回り、前回値も上方修正された。一方で、失業率は予想以上に上昇。強弱まちまちとなるなかで、初動反応のドル買いは続かず一気にドル売りが強まって週の取引を終えた。
31日
東京市場で、ドル円は振幅。序盤は円売りが先行し、147.90付近の先週末高値を上抜けると、148.28近辺まで買われた。先週末の海外市場で株高を受けたリスク選好の動きや、日銀決定会合後の黒田総裁会見で今後の緩和姿勢維持が強調されたことが円売りを強めた経緯があった。週明けは日経平均の堅調な動きとともに、月末とあって実需の円売りフローが入ったとの観測もあった。しかし、買い一巡後は再び148円台割れと午前の上げを戻した。ユーロ円も146円台後半から147円台後半に買われたあと、147.10付近まで反落した。ポンド円は170円台から172円台乗せ、その後171円台前半へ押し戻されている。欧州通貨は対ドルで揉み合い。ユーロドルは0.9940-70レンジ。ユーロドルは1.16挟みで推移。豪ドルは9月豪小売売上高が予想を上回ったことを受けて対ドルで0.6430付近、豪ドル円は95円台乗せまで買われた。今週は米FOMCなどイベントが多く、取引後半は調整気味だった。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米10年債利回りが4.02%付近から4.07%付近へと上昇したことに反応。背景として今週の米FOMC会合を目前に控えて、先週の利上げペース鈍化観測に修正が入っている点が指摘される。WSJのFEDウォッチャーがターミナル・レートの引き上げ観測について言及したことが市場で話題になっていた。米金融当局者がブラックアウト期間で情報不足となるなかで、市場は新たな情報に飛びついた格好。ドル円は148円台乗せから148.70近辺に高値を更新。財務省が公表した月間市場介入額が過去最大の6兆3499億円だったにもかかわらず、足元で148円台の円安・ドル高水準であることも影響しているようだ。ポンドドルは1.16付近から1.1530近辺へと安値を広げている。ポンドには対ユーロでの売り圧力も加わっている。ユーロドルは一時0.9914近辺まで下落したが、その後は0.99台前半で下げ渋り。10月ユーロ圏消費者物価速報は前年比+10.7%と前回の10.0%から一段と上昇。第3四半期GDP速報値は前期比+0.2%と伸びが鈍化したが、プラス圏を維持した。ロンドン時間にはドル円の上昇とともに、クロス円も堅調。ユーロ円は147.73近辺に高値を更新。ポンド円も171円台前半から後半へと下げ渋り。
NY市場は、ドル買いが優勢。先週まではFRBが利上げペースを緩めるのではとの期待が広がっていたが、今週のFOMCを前にその期待を後退させるような報道も流れていた。今回のFOMCは0.75%ポイントの利上げが確実視されているが、そのこと自体は十分織り込み済み。注目はパウエル議長が利上げペースについてどういった言及をして来るのかが注目されている。一部からは「ドルは今週、上昇トレンドを再開する可能性がある。インフレが高く、賃金も堅調に伸びていることから、FRBがハト派に転じると期待するのは時期尚早」といった声の一方、「パウエル議長はFRBが12月に利上げペースを減速させる計画があるのか質問され、0.50%ポイントの利上げに留める可能を示唆する可能性がある」との見方も。ドル円は一時148.85近辺まで上昇。ドルを買う権利の売買がオプション市場で観察された。ユーロドルは0.98台へと軟化。市場では12月ECB理事会での利上げについて50bpと75bpで見方が分かれている。ポンドドルは1.15台を割り込んだ。英政府はきょう、スナク首相とハント財務相の会談を受けて、英財政のブラックホールを修復するために、すべての英国人が今後数年間でより多くの税金を支払う必要があると発表したことでポンド売りを助長した面もあった。 
1日
東京市場では、ドル売りが優勢。前日の海外市場で進んだドル高の動きに調整が入っている。ドル円は米10年債利回りの上昇一服とともに下げている。朝方には148.80台をつけていたが、海外市場の高値に届かず調整が入ると、148.10近辺まで反落。午後も買戻しは限定的で、148円台前半で揉み合っている。ユーロドルは朝方の0.9880台からじり高の動きをみせて、午後には0.9920台まで上昇している。豪中銀金融政策理事会では政策金利が大方の予想通りに25bp引き上げられて2.85%と発表された。先週発表の第3四半期の消費者物価指数が上振れたことで市場の一部には50bp利上げ観測もあったことから、豪ドルは売りに反応。豪ドル/ドルは0.6450付近から0.6410割れへと反落。豪ドル円は95円台前半で神経質に振幅した。
ロンドン市場は、米債利回りの低下とともにドル売り圧力が広がっている。そのなかでもドル円の下げが目立っている。クロス円とともに下落しており、円高の面も。この日は前日と逆の動きで、米10年債利回りは4.05%付近から足元では3.94%付近へと大幅低下。米株先物や欧州株は堅調に推移している。米FOMCを控えて、市場には再び今後の利上げペース鈍化の思惑が広がっているもよう。これまで日米金利差拡大観測がドル円相場を大きく押し上げてきただけに、潮目の変化の思惑には敏感に反応しているようだ。この日の豪中銀理事会での利上げ幅が25bpにとどまったことも市場心理に影響か。ドル円は東京午前につけた高値148.82レベルから、ロンドン時間には146.99レベルまで大きく値を下げている。クロス円も軟調。ユーロ円は147円近辺から146.05近辺へと軟化。ユーロドルはドル売り圧力で一時0.9948近辺まで買われたが、対円での売りもあって0.99台前半での揉み合いとなっている。ポンド円は171円手前で上値を抑えられると、169.67近辺まで下落。ポンドドルは1.15台乗せから一時1.1552近辺までの上昇となっている。
NY市場では、ドル買いが強まった。きょうからFOMCが始まり、明日結果が発表される。その中で、きょうの為替市場はNY時間に入ってドル買いが強まり、ドル円は148円台を回復した。10月の米ISM製造業景気指数は予想範囲内だったものの、景気判断基準の50はかろうじて維持した。ただ、仕入価格が50を下回っており、インフレ低下への期待を示唆する内容だった。 一方、同時刻に発表になった9月の米求人件数に市場は敏感に反応した。米求人件数は予想外の増加を見せ、引き続き労働市場のひっ迫を示し、FRBのフラストレーションが溜まりそうな内容となった。ユーロドルは売りが強まっている。ロンドン時間には0.99台半ばまで買い戻されていたものの、NY時間には0.98台に再び下落している。ポンドドルも売りが強まっている。きょうは心理的節目となっている1.15台を一時回復していたものの、NY時間に入って1.14台半ばまで再び下落する展開。英国は政治的安定が得られたことが逆に、英ファンダメンタルズの悪化を表面化させ、ポンドは再び下落に転じる可能性があるとの指摘も。
2日
東京市場では、円買いの動きがみられた。ドル円は午前中に148円台前半から147.10台まで軟化。黒田日銀総裁が衆院財政金融委員会で「物価目標が見通せるのであれば前段階でイールドカーブコントロール(YCC:長短金利操作)を柔軟化していくことは、一つのオプションとしてありうる」と発言したことを材料視して円買いが広がった。現状について、金融緩和を継続することで日本経済を支えることが適切との姿勢を崩していないが、将来の話とはいえYCC柔軟化に触れたことが市場の反応につながった。午後には円買いは一服し、一時147.60台まで買い戻された。クロス円も軟調。ユーロ円は146円台半ばから145円台半ばまで下落。その後の戻りは146円付近で上値を抑えられた。ユーロドルは0.9870付近から一時0.9900近辺まで小高い動き。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。このあとNY午後に米FOMC会合結果発表を控えて、前日のドル高の動きに調整が入る格好となっている。序盤にドル円は147円台半ばから147円手前水準へと軟化、その後の反発も限定的。足元では146.80台まで一段安に。ユーロ円やポンド円も軟調に推移しており、円買いが優勢。東京時間に黒田日銀総裁が、目先は緩和継続も、今後のYCC拡大について言及したことが円買い圧力となる面も指摘される。ユーロドルは0.98台後半で下げ渋ると、ロンドン序盤には0.9910台まで反発。その後は0.99付近で推移している。ポンドドルはやや上値が重いが、1.15を挟んでの揉み合いに終始している。米10年債利回りは前日終値4.04%前半を挟んだ上下動に終始。欧州株、米株先物ともに方向感に欠ける取引となっている。今回の米FOMCでは75bp利上げが市場のコンセンサスとなっており、焦点は次回12月の利上げ幅見通しや今後の利上げペースに関するパウエルFRB議長会見の内容に集まっている。
NY市場では米FOMCをめぐってドル相場が乱高下した。午後にFOMCの結果が発表され、政策金利は大方の予想通りに0.75%ポイントの利上げを実施。ただ、声明では、政策を十分に制限的とするための適切な利上げペースを決定する際に「累積的な引き締めとそれに伴う遅れを考慮する」との文言が追加された。市場では引き締めペースの減速を示唆するものと捉え、為替市場はドル売りが強まった。しかし、その後のパウエルFRB議長の会見でドルはその下げを取り戻す動きとなった。議長は「最終的な金利水準は従来予想よりも高くなった。利上げを減速させる時期は早ければ次の会合にも到来。利上げの打ち止めを考えるのは時期尚早」と述べ、敏感に反応した模様。会見終盤になると今度はドル買いが加速。議長は「最新のデータは9月のドットが低かったことを示唆している」との発言した。今後、利上げペースを減速させる可能性はあるものの、一方でターミナルレート(最終着地点)は想定よりも高くなる可能性を示唆していた印象もある。ドル円はいったん145円台まで下落したが、148円付近まで急上昇する動きとなった。ユーロドルの上下動。いったん0.9975近辺まで上昇したが、終盤は0.98ドル台前半まで下落した。ポンドドルは1.1565近辺まで上昇したあと、1.14ちょうど付近まで下落。
3日
東京市場は文化の日のため休場。
ロンドン市場は、ドル高の動きが継続。昨日の米FOMCの後に強まったドル高の動きが、今日のロンドン時間にも再燃した。特に英金融政策委員会(MPC)を控えたポンドに対するドル買いが強まっている。ポンドドルは1.14付近から1.13台割れ、1.1235近辺まで下押しされている。ユーロドルも0.98台割れから0.9730近辺へ、豪ドル/ドルは0.63台後半から0.6280近辺へと下落。米10年債利回りは4.12%付近から4.20%付近へ一段と上昇。ドル円は147円台前半から買われてロンドン時間には148.40台まで上昇している。ただ、ドル円の上昇ペースはやや鈍く、クロス円は全般に軟調。ユーロ円は144円台前半へ、ポンド円は166円台後半へ、豪ドル円は93円台前半へと軟化。前日の米株大幅安を受けて、きょうのアジア株、欧州株も売り圧力に押されている。米株先物も時間外取引で続落。パウエルFRB議長が利上げの終着水準を従来より高めとしたことが市場に不透明感を広げたようだ。この後の英中銀政策金利は75bp利上げが見込まれているが、成長やインフレ見通しなどが景気後退を招くリスクを示すことも想定されており、米国ほどのペースで今後の利上げが続くのか疑問の声もでているようだ。この日は、ノルウェー中銀が予想外の25bp利上げにとどめている。
NY市場では、FOMC後のドル買いの流れが続いた。米国債利回りは上昇し、株式市場も一時戻り売りが強まる中、為替市場ではリスク回避のドル買いが復活している。 前日のFOMCに対して市場からは、「FRBは利上げペースを減速させる可能性はあるものの、今回の利上げサイクルのターミナルレート(最終着地点)は想定よりも高くなる可能性を示唆した。事前の期待ほどFRBはタカ派色を緩めていないとの印象」といった声がでていた。ドル円は前日に145円台まで下落する場面が見られたが、きょうは148円台に戻しており、再び150円台を試すか注目の展開が見られた。ユーロドルは戻り売りの流れが続いた。きょうは0.9730近辺まで一時下落し、再び21日線を下回った。ポンドの下げが目立ち、対ドルでは1.11台まで下落。対ユーロ、円でも下落。この日の英中銀金融政策委員会(MPC)がポンドを圧迫した。英中銀は市場の予想通りに0.75%ポイントの利上げを実施し、政策委員の投票行動も7対2での決定となった。ただし英中銀は、この先の大幅利上げの見通しを強く打ち消した。「市場の予想通り金利が上昇すれば2年に渡るリセッション(景気後退)に繋がる」と警告。ターミナルレート(最終着地点)も「市場が織り込んでいるよりも低くなる」との見通しも示した。前日のFOMCとは真逆。ベイリー英中銀総裁の会見でもその点を指摘している。きょうのMPCを受けて短期金融市場では、2023年前半までに4.50−4.75%程度まで引き上げて利上げサイクル終了と見ているようだ。
4日
東京市場では、ドル売りの動きが優勢。ドル円は朝方には前日からのドル買いの流れを受けて148.40近辺まで買われたが、その後はドル売りに転じている。148円を挟んだ揉み合いから午後には147.80台まで軟化している。中国企業の米株式市場での上場廃止が回避される可能性があるとの見方や、ゼロコロナ政策緩和期待などからドル安元高が進んでおり、アジア市場でのドル安基調に寄与した面も。さらに、昨日の英中銀金融政策会合(MPC)後にポンド売りが強まり、1.11台半ば前後を付ける動きを見せていたポンドドルには買い戻しが強まった。東京時間には1.12台を回復するポンド高・ドル安となったことなどもドル高の調整につながったようだ。香港株が3月以来の上昇率となる8.5%高を付けるなど、中国・香港株の上昇がクロス円を支えた面もあった。リスク動向に敏感な豪ドルは、対円で一時94円近辺に上昇、対ドルでも0.63台半ばへと上昇している。
NY市場は朝方発表の米雇用統計は強い内容でFRBのタカ派姿勢を正当化する内容だった。しかし、為替市場は逆にドル売りが強まっている。ドル円は発表直後に148円台に上昇したあとは、146円台まで急速に戻り売りに押される展開。ドル円は21日線を下回る展開を見せており、来週以降に145円割れを試す展開になるか注目される。 

 

●為替相場 11/7-11/11 11/12 
まとめ11月7日から11月11日の週
7日からの週は、ドル相場が大幅に下落した。米消費者物価指数が予想以上の伸び鈍化となったことが背景。前週には米利上げペースの鈍化観測やターミナルレートの引き上げなど今後の米金融政策について様々な見方が交錯した。前週末の米雇用統計では、雇用者数がしっかりと伸びる一方で、失業率が予想外に悪化したことに市場はドル売り反応を示していた。そして、次の焦点は10日発表の米消費者物価指数となった。事前のマーケットはドル売りに対する調整でややドル高方向に振れた。しかし、結果は前年比+7.7%、コア前年比+6.3%とそろって予想以上に伸びが鈍化した。ドル相場は急落。特に、ドル円は146円台から140円台まで、約6円幅の大幅下落となった。米債利回りは急低下、ユーロドルやポンドドルなど各主要通貨でドルが売られた。短期金融市場では12月FOMCでの50bp利上げを織り込む動きが強まった。利上げぺース鈍化期待が好感されて、10日のNY株式市場ではダウ平均が1200ドル高となった。ただ、ドル円の下落スピードは速く、クロス円は円高方向に押されている。金曜日にはさらにドル安が進行。ロンドン時間にドル円はあっさりと140円の大台を割り込むと138円台へと下落。ユーロドルは1.03台、ポンドドルは1.18台へと上昇してこの週の取引を終えた。米中間選挙は話題にはなったものの、相場への影響は限定的だった。上院で勢力が拮抗、下院では共和党が優勢となっているが、まだ議席数は定まっていない。
7日
東京市場は、ドル買いの動き。週明けオセアニア市場でドル高方向にマド空けして取引を開始した。ドル円は146.60前後から一気に147.20台へと上昇。中国政府がゼロコロナ政策を堅持すると5日に表明したことに反応した。先週末のドル売りへの反動もあったようだ。ただ、買い一巡後は146.70台まで押し戻される場面があった。その後は再び147.30台に上昇。週明けの香港株式市場が堅調な動きとなり、リスク警戒の動きが後退した。ユーロドルは0.9900付近まで値を落として取引を開始。その後は0.9950付近まで反発。午後も底堅く推移した。ユーロ円は早朝に146円付近から145.50近くまで下落したあとは、146.40近辺へと反発した。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。先週末の米雇用統計後の流れを引き継ぐ形。欧州株は売りが先行して取引を開始したが、米株先物のプラス圏回復とともに下げを消している。特に、独DAX指数は1%超高と堅調。先週末の米雇用統計では雇用者数が予想以上に上昇したが、失業率が悪化しており、市場には米利上げペース鈍化観測が再燃した経緯があった。12月米FOMCでは50bp利上げが6割程度織り込まれている。米債利回りが小幅上昇から低下に転じる動きもあって、ロンドン時間はドル売りが広がっている。ドル円は147円台半ばまで買われたあとは146.40台まで下落。ユーロドルは0.9920台まで小安く推移したあとは上昇に転じ、一時1.0007近辺まで買われた。ポンドドルは1.13台割れとなったあと、買いが強まり1.1470近辺まで高値を伸ばした。ポンドは対円や対ユーロでも堅調。ポンド円は166円台後半から168円台乗せ。ユーロポンドは0.8790付近から0.8710付近へと下落。この日は目立った新規材料はみられず。
NY市場は、ドル売りが優勢。ドル円は一時146円台前半に値を落とした。先週末の米雇用統計は強い内容だったものの、市場はリスク選好の雰囲気を強めた。週明けもその流れが続いている。ユーロドルはパリティ(1.00ドル)付近まで上昇。目先は、パリティが維持できるか否かと、100日線が来ている1.00台半ばが上値メドとして意識される。ポンドドルは買い戻しが続き、一時1.14台後半まで戻した。きょうの上げで21日線を再び回復している。今週は明日の米中間選挙と木曜日の米消費者物価指数(CPI)に注目が集まっている。米中間選挙はドルに下降リスクをもたらすとの指摘がある。下院は共和党が勝利しそうな気配だが、上院は世論調査が拮抗している。下院での共和党の勝利だけであれば、市場も織り込んでおり、ドルへの影響は比較的限定的になるが、上下両院とも共和党となれば、ボラティリティが高まる可能性も。
8日
東京市場で、ドル円は146円台での取引が続いた。朝方には円買いが優勢となり、146.32近辺まで下落。その後はすぐに買い戻されて下げを解消。146円台半ばから後半で揉み合った。午後には146.81近辺まで買われた。昨日大きく上昇したクロス円は高値圏もみ合い。NY市場午後に147円ちょうど前後を付けたユーロ円は147円付近では上値が重くなり、午後に至るまで146円台後半推移が続いた。ユーロドルは前日海外市場で1.0030台まで買われたが、東京市場では1.00台前半から上値重く推移し、午後には一時1.0000割れとなる場面があった。全般に動意薄の展開となっていた。
ロンドン市場は、円買いが優勢。このところ連騰していた香港株がこの日は反落。中国で再び新型コロナ感染が拡大していることが重石。また、米中間選挙の結果を見極めたいとのムードや、10日の米消費者物価指数を控えたポジション調整の動きも指摘された。ドル円は146.93近辺まで買われたあとは、売りに転じて安値を146.15近辺まで広げた。ユーロ円は146円台後半から前半へと下げ、安値を146.13近辺に更新。ポンド円も168円台半ばから167.50付近へと下押しされている。ただ、欧州株や米株先物は売り先行も、次第に下げ渋っており、リスク回避の動きは一服。デギンドスECB副総裁やナーゲル独連銀総裁は、第4四半期や来年第1四半期の経済鈍化を示唆しつつも、利上げ継続姿勢を堅持していた。また、ピル英中銀チーフエコノミストは、利上げの必要性を示しつつも、前倒しについては懐疑的。トラス前政権時の混乱を受けて、今後のある時点で、より広範な経済見通しについて考慮する必要性を指摘した。ドル相場は東京市場からの調整的なドル高の動きが先行。ユーロドルは0.9973近辺まで下押しされたが、足元では下げ一服。一方、ポンドドルは1.1445近辺まで下押しされた後の反発は限定的で、再び下値を試している。
NY市場では、リスク選好の動きでドル売りが加速した。ドル円は戻り売りが加速し、ストップを巻き込んで145.30円付近まで下落する場面があった。21日線を下回っている。ユーロドルは1.00台後半へと上昇。10月には上値を抑えていた100日線に到達している。ポンドドルも買い戻しが強まり、節目の1.15ドルを一気に回復。ストップを巻き込んで1.16付近まで急上昇した。再び21日線を上放れている。米中間選挙待ちとなるなかで、市場では共和党が圧勝した場合、民主党バイデン政権の政策実行が今後難航することが予想されている。将来的には米経済の急減速とともに、FRBには金融緩和圧力がかかることが警戒されるという。きょうは英中銀のピル・チーフエコノミストの講演が伝わっていた。英経済はリセッション(景気後退)に向かっているとの認識を示していたが、労働市場は依然としてタイトが状況が続いていると言及。パンデミックで60万人以上の人々が労働市場を一旦脱却したが、完全に戻り切ってはおらず、雇用主も賃金を上げざるを得なくなっているという。それは追加利上げの必要性を示唆するとみられているもよう。現在のところ、次回12月の英中銀金融政策委員会(MPC)では0.50%ポイントの利上げ期待が有力。
9日
東京市場で、ドル円は145円台での振幅が続いた。米中間選挙で予想外に民主党が健闘しており、散発的なドル買いを誘っていた。朝方はドルが軟調で145.20付近まで下落。開票作業が続くなかで、民主党優勢の州の報道で145.80台まで買われた。共和党優勢の報道では再び145.20割れまで反落。午後には再びドル買いが優勢に。共和党の圧勝ムードが広がっていた下院で、意外にも接戦となっている。上演は互角の戦いが続いている。ユーロドルも方向感がなく、1.00台後半での推移が続いた。ユーロ円は146円台でドル円とともに振幅した。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。明日の米消費者物価指数の発表を控えて、調整の動きが入っている。株式市場でも欧州株や米株先物が反落。中国での新型コロナ感染拡大を受けて上海・香港株が下げたことも調整ムードを誘った。注目の米中間選挙では共和党が早くも下院での勝利を宣言。一方、上院では依然として民主党との勢力が拮抗している。民主党の善戦も伝えられているが、バイデン政権と米議会とのネジレ現象となる公算が高まっているようだ。ドル円は前日のドル売りを受けて安値を145.18近辺まで広げたが下値は堅く、145.90近辺まで反発した。ただ、145円台からは離れず神経質な振幅を繰り返している。ユーロドルは1.00台後半から前半へと軟化、ユーロ円は146円台後半から前半へと軟化。ポンド売りが目立っており、ポンドドルは1.15台割れから1.14台前半へ、ポンド円は168円付近から166円台半ばまで下落。ポンドは対ユーロでも売られている。豪ドルなどオセアニア通貨も安く、リスク動向に敏感な通貨に弱い動きがみられた。
NY市場では、ドル買いが優勢。ドル円は146円台を回復している。午後には146.80近辺まで買い戻された。この時間になっても米中間選挙の結果は未だ確定していない。上院は拮抗しており、下院は予想通りに共和党が優勢となっているが、民主党も善戦しており、予想ほどの差は拡大していないようだ。市場からは、米中間選挙の結果が米財政政策や金融政策に重大な影響を与えることはないとの見解も出ている。市場の関心はむしろ、明日の10月の米消費者物価指数(CPI)に移っているのかもしれない。12月FOMCでの利上げ幅に対する見方にとって重要な指標となる。ユーロドルは戻り売りに押された。パリティ(1.00ドル)付近まで下落している。ロシアのショイグ国防相がロシア軍に対して、ウクライナ南部の都市ヘルソン市からの撤退を命令したと伝わり、買いが強まる場面が見られたものの、一時的な動きに留まった。ポンドドルは1.13台へと急速に下落。21日線を下回った。 市場からは、英労働市場は依然としてタイトな状況だが、労働者需要の鈍化に伴い2023年には緩むとの声がでていた。ここ数カ月の求人数の減少で労働市場の圧迫感がすでに小さくなっていることを示す兆候があるという。
10日
東京市場は、ややドル売りの動き。前日海外市場で進行したドル高に対する調整が入っている。ドル円は146円台半ば付近からじりじりを値を下げた。午後には146円割れ目前まで軟化。中国での感染者拡大報道が、同国のゼロコロナ政策緩和期待が後退。リスク警戒の中国株・香港株売りが優勢となった。ユーロ円は前日NY市場で一時147円台をつけたが、その後は上値を抑えられている。東京市場では146円台前半まで軟化している。ユーロドルは0.99台後半から1.00台前半へとじり高。総じてドル売り優勢となったが、新規材料はみあたらず、米雇用統計待ちとなるなかで、ポジション調整が入る形となっていた。
ロンドン市場は、米消費者物価指数発表を控えてドル買いが優勢。米10年債利回りは4.06%付近に低下したあとは、4.11%付近へと上昇、前日終値水準を上回った。ユーロドルの下げが主導し1.0043近辺を高値に、パリティ(1.00)を割り込むと、0.9937近辺まで安値を広げている。ドル円は連れ高となって146.59近辺に高値を伸ばしている。ポンドドルは1.14台が重くなっており、1.1360台から1.1390台での揉み合い。ドル指数は前日から一段と上昇。また、ユーロ売りの面も。ユーロ円は146円台後半から145円台後半へと下落。ユーロポンドは0.88台乗せに買われたあとは、売りに転じて0.87台前半に下押しされている。この日公表された最新のECB経済報告では、インフレ抑制のために今後も利上げする必要性が示された。ただ、欧州経済が第3四半期以降、来年初頭まで弱体化することも指摘されていた。エストニアの首相は、ECBは利上げに関して過度な行動を控えるべきだ、と経済状況に対するいら立ちを隠せなかった。
NY市場では、ドルが急落。10月の米消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったことで、FRBの利上げペース縮小期待が一気に高まった。米CPIは総合指数が前年比で7.7%に低下したほか、特に市場が注目しているコア指数が前年比6.3%に低下していたことは市場に驚きを与えたようだ。米CPIを受けて短期金融市場は、12月FOMCでの0.75%ポイントの利上げ期待を大きく後退させ、0.50%ポイントの利上げ期待が大きく上昇。ドル円は指標発表後に節目の145円をブレイクし、ロング勢の見切り売りが加速。モデル系の売りも巻き込んで、取引終盤には140円台前半まで急落した。ユーロドルは買い戻しが強まり、1.02台まで上昇、100日線を上放れた。ポンドドルも1.17台まで急伸し、100日線に顔合わせした。ドル相場は米インフレのピークアウト観測を受けて下落したが、欧州や英国ではインフレが高止まりしており、今後の動向が注目される。
11日
東京市場では、前日のドル急落に対する調整が入った。ドル円は前日の米CPIの伸びが予想を下回ったことで、146円付近から140円台前半まで急落した。きょうは買戻しの動きが入り、午前中に142.50手前まで反発。しかし、その後は再び上値を抑えられて141円台半ばへと沈んでいる。クロス円も同様に買戻しが入り、ユーロ円は145円ちょうど付近、ポンド円は166円台乗せ水準まで反発した。午後にはそれぞれ144円台、165円台へと再び軟化している。日経平均は前日の米株急騰を受けて買われ、817円高で取引を終了した。ユーロドルは1.01台へ小緩んだあとは再び1.02台乗せ。ポンドドルも1.16台前半まで軟化したあとは1.17台を回復。ドル売り基調は維持されている。
ロンドン市場では、ドル円が再び急落している。東京市場で142円台半ばまで反発したあとは、再び売りが強まっている。前日安値140.20付近を割り込むと、一気に売りが加速。139円台割れから138.78近辺まで安値を広げた。前日の米消費者物価指数の伸び鈍化を受けたドル売り圧力は幅広く観察されており、ユーロドルは1.0280近辺、ポンド円は1.1774近辺まで高値を伸ばしている。ただ、ドル円ほどのドル売りスピードはみられず、クロス円が急落。ユーロ円は144円台から一時142.57近辺、ポンド円は166円付近から一時163.07近辺まで下落した。売り一巡後は売買が交錯する神経質な展開となっている。米株先物や欧州株は引き続き堅調だが、上げ幅を縮めるなど週末を控えた調整の動きも散見される。このあとのNY市場はベテランズデーのため米債券市場は休場となる。前日からの勢いでドルは売られているが、やや手掛かり難の面もある。英第3四半期GDPは前期比−0.2%とマイナス成長に陥ったが、市場予想は上回った。欧州委の秋季経済予測では、来年の成長を大幅に下方修正してわずか0.3%とした。
NY市場は、ベテランズデーのため米債券市場は休場、銀行は休業日。手掛かり難となるなかで、前日からのドル売りの流れが継続した。ドル円は138円台半ばへと下落。ユーロドルは1.03台後半、ポンドドルは1.18台半ばへと買われた。ミシガン大学消費者信頼感は予想以上に低下した。1年先のインフレ期待が一段と上昇したことが背景。 

 

●為替相場 11/14-11/18 11/19 
まとめ11月14日から11月18日の週
14日からの週は、ドル相場の方向性が定まらない展開だった。一連の米インフレ指標の鈍化を受けたドル売りの流れは停滞している。市場では次回12月FOMCでの50bp利上げを織り込んでおり、4回連続した75bpの大幅利上げペースは終了する見込み。一方で、ブラード総裁に代表されるタカ派メンバーが米利上げのターミナルレート観測を引き上げていることがドル買い圧力となっていた。これに加えて、ポーランドにミサイルが着弾したことがリスク警戒のドル買いを誘う場面もあった。各主要通貨に対してドル相場は先週までのドル安の水準を維持しているが、一段の流れは限定的。ドル円は137円台から140円台での振幅。ユーロドルは1.03台での取引に終始。ポンドドルは一時節目の1.20台をつけたが、1.17台から1.19台での取引へと収斂した。英秋季財政報告が注目されたが、増税と緊縮財政という事前の見方を踏まえた内容だった。英予算責任局が来年の成長見通しをマイナスへと引き下げたがポンド売り反応は一時的にとどまった。
14日
東京市場は、先週末のドル売りに調整が入る展開。ドル円は138円台後半で取引を開始。買い戻しの動きに早朝には139円台乗せから139.90近辺まで一気に上昇。仲値前後で売買が交錯したあと、138.80近辺まで下落。午後には再び139.60付近に上昇と激しく振幅した。ユーロドルも1.03台で振幅したあと、午後には1.03台割れへと軟化。総じてドル買いに。一方、人民元は堅調。中国のゼロコロナ政策緩和への期待が背景。ドル/人民元は7.03付近から一時7.03台前半で下落。午後にはドル買いもあって7.06台までの戻りだった。ドル主導の展開でクロス円は方向性に欠けた。ユーロ円は143円台半ばから144円台半ばで上に往って来いだった。
ロンドン市場では、円売りが優勢。先週末のドル安や円高の動きに対して、週明けは調整が入っている。ドル円はロンドン朝方には139.50付近で値動きが落ち着いていたが、対欧州通貨や豪ドルなどでのドル売り先行とともに、クロス円に買いが入った。ドル円は140円台乗せから140.74近辺へと高値を伸ばしている。欧州株が堅調に取引されるなかで、ポンド円は163円台後半から165円台半ばまで、ユーロ円は143円台後半から144円台後半へと上昇。一方、先週の急速なドル安のあとで、ドル相場には買戻しの動きも散見されている。ユーロドルは1.03台半ばまで買われたあと1.03台割れへと反落、ポンドドルも1.18台前半に上昇後は、1.17台半ばへと押し戻されている。ドル円、クロス円が一貫して買われるなかで、ユーロドルやポンドドルは上に往って来いと方向性に欠けた。米中首脳会談が対面で実施され、双方とも協力的な姿勢を示した。パネッタECB理事は、引き締めは中期的な根拠に基づいて行うべきと、引き締め過ぎに警戒感を示していた。
NY市場では、再びドルが買われた。ドル円は一時140円台まで買い戻される場面があった。ただ、終盤にかけては139円台へと上昇一服。ユーロドルは1.02台に軟化する場面があったが、その後は1.03台に戻した。ポンドドルは一時1.17台前半に下落した後、終盤には1.18付近まで買い戻された。先週の米消費者物価指数後のドル売りに、週明けは調整圧力がみられた。ウォーラーFRB理事が金利をさらに上げる必要があると警告したこともドルの買戻しにつながったようだ。この発言は少なくとも今後1週間はドル売りのペースを緩めることに貢献するとの声も出ている。市場からは、単月の数字でトレンドが決まるわけではなく、市場の楽観的な見方は時期尚早との声も聞かれた。利上げのスピードは緩めるが、最終的な金利水準には変更はないといった状況。
15日
東京市場は、ドルがじり高となった。ドル円は前日NY終盤に139円台後半へと軟化していたが、早朝にかけては下げ渋っていた。午前中に140円台半ばまで上昇したあと揉み合いを経て、午後には140.60台まで買われている。ただ、前日海外市場での高値には届かず140円台前半に落ち着いた。ユーロドルは1.03台前半と前日NY終盤に下げた水準での揉み合い。レンジは23ポイントと値動きは限定的だった。ユーロ円はドル円とともに買われて145円台を回復した。豪ドルなどその他通貨も落ち着いた動き。中国小売売上高は弱い結果も、香港株などは堅調に推移しており、リスク動向は落ち着いている。
ロンドン市場では、ドル売りが優勢。米生産者物価指数の発表を控えて、米10年債利回りが一時3.80%台まで低下したことに反応。市場では、先週の米消費者物価指数の伸び鈍化が強烈なドル売り反応を巻き起こしたことが想起されている面もあるようだ。このところのドル売りの流れを受けてユーロドルは1.04台前半、ポンドドルは1.18台後半へ一段と買われている。ドル円は東京市場で140円台後半まで買われたが、ロンドン朝方には一転して下落、安値を139.05近辺まで広げている。米株先物が時間外取引で反発、欧州株もやや買いが優勢。この日発表された11月ドイツZEW景況感指数は予想以上に改善した。ただ、引き続きマイナス圏は脱却できず。ZEWによると、今回の改善は早期のインフレ鈍化期待が影響しているという。G20では習主席と西側諸国首脳との会談が相次いでいる。政治的な対立を封印し、経済優先ムードが醸し出されているようだ。
NY市場では、ドル相場が下に往って来いとなった。序盤はリスク選好の雰囲気が広がり、米株高、米国債利回り低下の中、ドルは戻り売りが再び強まった。この日発表の10月の米生産者物価指数(PPI)が予想を下回ったことで、ドル売りの動きが加速し、ドル円は137円台に一時急落。ただ、急ピッチな下落に過熱感も出ており、その後は139円に急速に戻した。ロシアのロケット弾がNATO加盟国のポーランドに着弾し、2人が死亡したと伝わった。ポーランドのモラウィエツキ首相は、臨時の国家安全保障会議を招集。このニュースをきっかけに一気に市場はリスク選好の雰囲気を後退させたことも、ドル買い戻しを誘った。ユーロドルは1.0480近辺まで上昇したあと、1.02台まで一時下落。ポンドドルも序盤に1.20台を付ける場面があったが、短期的な過熱感もあって1.18台へと急速に伸び悩んだ。
16日
東京市場では、ドル買いが優勢。ドル円は朝方に138.70台まで下落したが、その後は反発。140円台前半まで買われた。ポーランドにミサイル着弾との報道にG7緊急会合が実施されるなど緊迫した状況が円買いを誘ったが、ミサイルはウクライナの防空システムによるものとの可能性が報じられると市場に警戒感が緩和された。ユーロ円は朝方に143.60付近まで下落したあと、145.20台まで大きく買われた。その後は144円台後半に落ち着いた。前日NY市場での下落を取り戻している。ユーロドルは1.03台で売買が交錯も、前日NY市場でのレンジ内にとどまっており、方向性に欠けた。
ロンドン市場では、ドル売りが優勢。前日NY市場でのリスク警戒のドル買いが巻き戻される形になっている。ドル円は東京午後まで140円台に乗せる動きがみられたが、その後は売りに転じてロンドン時間には139.10台まで反落した。ユーロドルは地理的に近いこともあって堅調な動き。1.03台半ばから1.0438近辺に高値を伸ばしている。ポンドドルは1.18台で方向性なく上下動していたが、ロンドン序盤には1.1942近辺まで買われた。ただ、前日に1.20の節目水準に乗せたあとは上値が重い印象。この日発表された10月の英消費者物価指数は前年比+11.1%と41年ぶりの高い伸びとなった。また、スナク英首相は、インフレに断固とした行動取る必要とした。ただ、いずれにもポンド買いの反応は乏しかった。デギンドスECB副総裁は、インフレを目標に収束させるため、金融政策の正常化を続けると述べた。ジョージ・カンザスシティー連銀総裁は、来年の利上げペースを鈍化させること理にかなう、としながらも、真の問題は利上げ終了が早すぎることであろう、やるべきことはまだ多くあると述べた。インフレ指標の伸び鈍化傾向も、市場が楽観的になる過ぎることを戒める面があったようだ。
NY市場は、方向性に欠けた。10月米小売売上高は前月比1.3%増と予想を上回った。強めの結果となったことで、先週の米物価統計を受けたドル売りの一服感につながったようだ。FRBのスタンスを複雑にする内容との指摘がでていた。ただ、一部からは小売の好調は消費者が早めのホリデー・ショッピングを行った影響との指摘もあった。この場合、11月と12月の支出を奪うとみられている。ユーロドルはロンドン時間に1.04台まで上昇したが、NY時間にかけては1.03台へと値を落とした。ECB理事からは12月理事会では75bpではなく、50bpの利上げを支持しているとの見方が報じられた。ポンドドルは戻り売りが優勢となり、1.18台へと反落した。この日発表された英消費者物価指数は41年ぶりの高水準だったが、英中銀の利上げ期待が高まった様子はみられず。短期金融市場では12月利上げ幅観測は50bpと75bpの中間で推移している。 市場からは、高インフレの半面、弱い経済成長という要素を考慮すると、ポンドは引き続きアンダーパフォームが予想されるとの指摘も。
17日
東京市場で、主要通貨はレンジ取引が続いた。ドル買い・円買いが先行。中国で1日当たりの新規感染者数が2万人を超え、ゼロコロナ政策の緩和期待が後退したことが背景。ユーロドルは1.04手前から1.0360前後を付け、ドル円も昼過ぎにかけて139.80付近まで上昇した。ドル/人民元は中国市場オープンからさらに上昇。7.14台までドル高・元安が進んだことがドル高につながった面も。午前9時半に発表された豪雇用統計はかなり強い内容も、豪ドル買いは進まず。この背景にも中国懸念があるとみられる。豪ドル/ドルは0.6750手前が重くなり、その後0.67割れに。午後にはロンドン勢の本格参加を前に一転してドル売りが広がった。ドル円は昨日の140円台での重さが意識されており、売りが出やすい展開となった。ユーロドルも1.0380台まで買い戻しが入った。
ロンドン市場では、ドル相場が神経質に振幅。米債利回りの上下動に反応しながら、序盤はドル売り、その後ドル買いへと転じている。この日はハント英財務相が英秋季財政報告(財政計画)を発表。所得税増税、エネルギー会社の過剰な利益に対する大幅課税などが盛り込まれた。ほぼ想定された内容となっている。英OBR(予算責任局)のGDP予測が来年にマイナス1.4%と従来のプラス1.8%から引き下げられたことにポンドは売りの初動反応を示したが、すぐに一服した。ポンドドルは序盤に1.19付近から1.1950台まで上昇。その後は売りに転じると1.18台半ばへ下落。英財政報告で一時1.1802近辺まで一段安も、その後は下げ渋っている。ユーロドルは序盤に1.04台乗せへと買われたあと、売りに押されて1.03台前半へと反落。ドル円は139円台半ばから一時138円台後半まで下落も、その後は140円台をつけるなど反発した。米10年債利回りは3.67%台から3.74%台で上下動しており、上昇の動きが優勢だった。欧州株や米株先物は総じて軟調に推移している。ユーロ圏消費者物価指数・確報値は前年比+10.6%と速報から0.1%ポイント下方修正されたが、過去最高水準であることに変わりなかった。
NY市場では、ドル買いが優勢。FOMC内でもタカ派の急先鋒として知られるブラード・セントルイス連銀総裁が「政策金利はまだ十分に制限的と見なされるゾーンにはない」と述べたうえで、ターミナルレート(最終着地点)の5−7%のレンジにも言及したことが、米国債利回り上昇と伴にドルの買い戻しを誘った。5.00−5.25%は最低水準だとも述べていた。ドル円は140円台を回復すると、一時140.80付近まで買われた。ユーロドルは1.0300付近まで下落。今日の下げで200日線で上値を阻まれた格好となった。ポンドドルも戻り売りが強まり、一時1.17台に下落。きょうはハント英財務相が秋季財政報告を議会に提出した。インフレ抑制に向けて、ここ10年で最大規模の増税案と歳出削減を打ち出している。大方、事前に伝わっていた内容と同じだったものの、ポンドは軟調な反応が見られた。対ドルのみならず、対ユーロでも下落。市場では英インフレが高く、今後も英中銀は利上げを継続することが予想されるものの、同時にリセッション(景気後退)への警戒感も強まっていることから、英インフレ指標の強さの割には、英中銀はこれまでのような積極利上げはできないと見ているようだ。
18日
東京市場は、円買いの動きが優勢。ドル円は朝方に140円台半ばまで買われたが、その後は売りに転じている。北朝鮮のミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に落ちた可能性との報道を受けてリスク警戒の円買いが広がり、昼過ぎに139.65レベルを付けた。その後はロンドン勢の本格参加を前に一時140円台を回復。ユーロ円は145円台半ば超えまで買われたあとは、145円台割れまで下落。ポンド円は166.80付近を高値に166.30付近へと軟化した。ユーロドルは1.03台後半で方向感なく推移した。
ロンドン市場では、売買が交錯し方向性が見出しにくい展開。今週の一連のイベントを通過して、きょうはそれほど注目に値するような経済指標の発表予定はない。前日のNY市場ではタカ派として知られるブラード・セントルイス中銀総裁がターミナルレートを5−7%と示唆したことがドル買いを誘った。一方、きょうは比較的ハト派とみられるコリンズ・ボストン連銀総裁のイベントあいさつを控えており、前日のドル買いに調整の動きが入る面もあるようだ。米10年債利回りは3.74%から3.82%で振幅しており、明確な方向性を示していない。欧州株や米株先物・時間外取引は堅調に推移。ドル円は139円台後半に下押しされたあとは140円台前半まで反発も、再び139円台後半と上に往って来い。ユーロドルは前日終値1.0362レベルを軸として1.0350割れ水準から1.04台手前までの上下動が続いている。ポンドドルはやや底堅い動きで1.18台後半でサポートされると一時1.1950付近まで上昇。その後も1.19台で取引されている。ユーロ円は145円台前半、ポンド円は166円半ばから167円台乗せで上に往って来い。
NY市場は方向感のない展開が見られ、ドル円も140円付近での上下動に終始した。終盤にはやや買いが優勢となったものの、全体的には様子見気分が強い。FOMC内でもタカ派の急先鋒として知られるブラード・セントルイス連銀総裁の発言で、市場はFRBの早期政策転換への期待を後退させ、ドルは戻り売りを一服させている。一方、米インフレにピークの兆候も見られる中で、従来のドル買い戻しを強める気配までは見られていない。そのような中で、次のきっかけ待ちの雰囲気も広がっているようだ。 

 

●為替相場 11/21-11/25 11/26 
まとめ11月21日から11月25日の週
21日からの週は、ドル安方向に傾斜した。週明けは前週からのドル高の動きで始まった。ブラード総裁がターミナルレート見通しを引き上げたことや、中国での新型コロナ感染拡大がドル買いにつながった。しかし、その動きは次第に収束。一連の米経済指標はまちまちだったが、直近の経済状況を示すPMI速報値が弱含んだことや、米FOMC議事録で次回12月会合での利上げ幅縮小が示唆されたことがドル売りの動きを強めた。ドルの相手先通貨の動向も影響。NZ中銀が予想通り75bpの大幅利上げを実施、今後の追加利上げも示唆した。OECD経済見通しでユーロ圏のインフレ抑制には市場想定以上の利上げが必要である点が指摘された。インフレ鈍化の兆候がある米国とくらべて、ユーロ圏や英国は目先のインフレ鈍化の動きがみられていない。ドル円は142円台から138円台へと軟化。ユーロドルは1.02台から1.04台へ、ポンドドルは1.18付近から1.21台へと上昇した。週の後半にかけては、24日の米国市場が感謝祭(サンクスギビング)で休場。25日が株式、債券などの市場が短縮取引となる中、取引参加者が少なくなるなかで、やや不安定な動き。木曜日のドル売り円買いから、金曜日海外市場ではドル円の買い戻しが目立つなど、一方向の動きにはならず。
21日
東京市場は、ドル買いがやや優勢。先週木曜日にブラード・セントルイス連銀総裁が政策金利は最低でも5−5.25%と発言。4.75−5.00%がターミナルレート(利上げの終着点)になるとの市場の見方を牽制していた。以前に、同総裁の言動が利上げ開始を促したこともあり注目されていた。ドル円は140円台に乗せて先週の取引を終了した。週明けは140円台前半で値固めをして、140円台半ばをうかがう動きに。中国で新型コロナウイルス感染が広がり、北京市で約半年ぶりに新型コロナウイルスによる死者が確認されたことを嫌気、ドル買い・元売りの動きが広がったこともドル高に寄与した。ドル/人民元は7.17レベルに迫る動きとなった。ユーロドルは1.0320前後で取引を開始、午後には1.0270台まで軟化した。ポンドドルは1.19台から1.1820付近へと連れ安に。
ロンドン市場では、リスク警戒のドル高・円安の動きが広がった。ドル円は142円に迫っている。アジア市場で見られた中国懸念がリスク回避のドル買いを誘った面がある。中国では新型コロナの感染が拡大。約半年ぶりに北京でも死亡者が確認されたことで、ゼロコロナの緩和期待が大きく後退。アジア市場での香港や中国株の下げを誘った。リスク回避の動きから豪ドルやユーロなども対ドルで売りが出ていた。ユーロに関してはレーンECB専務理事が、12月の追加利上げについて(9月、10月と行った)0.75%利上げを行う可能性は低くなったと発言し、ユーロ売り圧力となっていた。ユーロドルは1.0320台で上値を抑えられた。一方、ユーロ円はドル円の上昇に連れて144円台前半から145円台乗せへと上昇。ややまちまちな面もあった。
NY市場では、ドル買いの動き。中国で感染が再拡大しており、一部の都市でロックダウンが再び導入され、中国政府が大都市での地区検査を義務付けると発表している。北京での死者の報告も出ており、市場は中国経済への警戒感を再び高める中、為替市場ではリスク回避のドル買いが優勢となっている。ドル円は142円台に乗せており、100日線の水準を回復。ユーロドルは1.02台前半まで下落、200日線に上値を抑えられた。12月のECB理事会では利上げ幅が75bpから50bpに縮小するとの見方がでていた。ポンドドルも軟調で、一時1.17台まで下落した。ただ、リバウンド相場の流れは維持している。12月英MPC(金融政策委員会)では、景気との兼ね合いで、どの程度の積極利上げが行えるのかまだ不透明だ。
22日
東京市場では、ドル円がやや軟調な動き。前日には中国での新型コロナ感染拡大を受けて、リスク回避のドル買いに142円台まで上昇した。東京朝方もその流れを受けて142.24近辺まで買われた。しかし、その後は売り優勢に。新型コロナ関連の目立った新規材料は出ず、警戒感が一服している。人民元が買われ、中国株式市場の上昇もあって前日の動きに調整が入った。ドル円は一時141.60台まで軟化。その後も141円台後半での推移。クロス円も同様の動きで、ユーロ円は145円台後半から145円台前半へと一時反落。ポンド円は168円台前半から一時168円台割れに。ユーロドルは午前の取引で1.0240台から1.0260台まで小幅上昇し、午後は調整揉み合いになった。
ロンドン市場では、ドル売りが優勢。欧州株、米株先物・時間外取引がいずれも堅調に推移、リスク警戒のドル買いが巻き戻された。米債利回り低下もドル売り圧力に。株高の背景には、中国の新型コロナ感染拡大もきょうは死亡者の報道がでていないこと、原油相場の反発などが指摘される。イースター休暇を控えて、一方向への動きが続きにくい面も。ドル円は142円付近が重く141.10近辺まで下落。ユーロドルは1.0250付近から1.0290近辺まで上昇。ポンドドルは1.1820台でサポートされると一時1.1884近辺に高値を伸ばした。クロス円は軟調。ドル円の下落スピードが速く、ユーロ円は145.60付近から一時145円台割れ、ポンド円は168円付近から167.35近辺まで軟化した。ECB高官からの発言が相次いだが、12月利上げ幅についての明言は避けられている。ホルツマン・オーストリア中銀総裁は、現時点でのデータではとの前置きをつけて75bp利上げを支持していた。OECD世界経済見通しでは来年は成長鈍化もリセッションには至らずとの中心シナリオを据えていた。
NY市場でも、リスク回避のドル買いが一服。。感謝祭ウィークで全体的に様子見気分が強い中、先週からのドル買い戻しを推し進めることに懐疑的な見方が出ているようだ。ブラード・セントルイス連銀総裁やコリンズ・ボストン連銀総裁はタカ派な発言を行い、市場の利上げペース縮小観測をけん制していた。しかし、前日のデーリー・サンフランシスコ連銀総裁やメスター・クリーブランド連銀総裁の発言は、利上げに対して比較的慎重なアプローチが好ましいとの姿勢を示している。あすのFOMC議事録待ちのムードも。ドル円は141円台前半の下落した。ユーロドルは一時1.03台に上昇。OECDが世界経済見通しを発表しており、ECBは高止まりするインフレを抑えるには、主要金利をさらに引き上げる必要があると警告した。ポンドドルは買い戻しが優勢となり、一時1.19台をつけた。ポンド相場は悪材料が多い割には下がらない点が市場関係者の中で話題になっていた。
23日
東京市場は、勤労感謝の日の祝日のため休場。
ロンドン市場では、ドル安が一服している。前日NY市場からきょうのアジア市場にかけてはドル売りの流れが続いた。ロンドン序盤にかけて一段のドル売りが入ったあと、ロンドン勢の本格参加とともにドル買いの動きが入っている。ドル円は朝方に141円台半ばから141円手前まで下押しされたあと、ロンドン時間には141.61近辺まで高値を伸ばした。ただ、買いも続かず141円台前半での揉み合いに。ユーロドルはアジア市場からのじり高の流れが付き、一時1.0349近辺まで買われた。その後は売りに転じると一時1.03台割れとなる動き。ポンドドルは1.19台乗せでは売りが入る展開だったが、下値も1.1870台までと底堅く推移。一連の欧州や英国のPMI発表を通過すると一時1.1936近辺まで買われた。ユーロ売り・ポンド買いのフローがポンドの下支えとなったほか、英最高裁がスコットランド独立を問う住民投票の実施案を却下したことにポンド買いを誘ったもよう。ただ、全般的には米FOMC議事録待ちのムードが支配的で、調整色の強い相場展開だったようだ。
NY市場では、再びドル売りが広がった。米新規失業保険申請件数や米PMIのデータが弱い内容となったことをきっかけにドル売りが強まった。感謝祭ウィークで市場参加者が少なくなっていることも、急速な売りにつながったようだ。午後に11月1−2日分の米FOMC議事録が公表され、ドルは下げ幅を拡大した。大半が利上げペースの早期減速を支持していたことが明らかになったほか、様々な委員がターミナルレート(最終着地点)を以前よりも高い水準で見ていることが示された。新たな発見は何もなかったが、改めて12月FOMCの利上げは0.50%ポイントとの見方を裏付ける内容ではあった。ドル円は139円台前半まで下落。ユーロドルは1.04台に上昇。ポンドドルは1.20台を回復すると、一時1.2080近辺まで高値を伸ばした。
24日
東京市場では、前日海外市場からのドル売りが継続。前日NY市場で米PMI速報値が予想を大きく下回り、景気判断分岐点の50も下回る弱い結果となったことが背景。その後の米FOMC議事録で12月利上げ幅縮小見通しが示されたこともドル売りを強めた。ドル円は139.10ダウまで下落、139円台半ばで東京朝を迎えた。東京勢も売りを進めて午後には138.60付近まで一段安となった。ユーロドルは前日の海外市場で買いに慎重姿勢がみられた1.04台にしっかりと乗せた。高値を1.0448近辺まで伸ばしている。クロス円はドル主導の相場展開で、方向感がつかみにくかった。ユーロ円は145円付近から144円台半ばでの振幅。前日海外市場からの安値圏で推移した。
ロンドン市場では、ドル売りが優勢。ただ、米感謝祭を控えた調整の圧力もあり、通貨ごとにまちまちの動き。ドル売り傾向が目立ったのがドル円で、139円台では売りが入り、安値を138.06近辺まで広げている。クロス円の下落も伴っており、円買いの面も強い。次に、ポンドドルが底堅く、一時1.2132近辺まで高値を伸ばした。ラムスデン英中銀副総裁が、より一層の利上げが必要になると予想、国内要因によるインフレの圧力が緩和され始めていることはまだ確信できず、などと述べたことがポンド買いを誘った。ポンドは対円では売りに押されているが、対ユーロでは堅調に推移している。ユーロドルは上昇一服。調整圧力に押されて1.04台割れから1.0382近辺まで軟化している。11月独Ifo景況感指数は86.3と市場予想85.0を上回った。Ifoエコノミストは、ドイツ経済は希望のシグナル送っている、と企業見通しが改善する兆候を指摘していた。しかし、ユーロ買い反応はほとんどみられていない。トルコ中銀は政策金利を予想通り9.0%に引き下げ、利下げサイクルの終了を表明した。リラ相場は振幅も、特段の方向性はみせなかった。欧州株や米株先物は堅調に推移しており、前日の米FOMC議事録での利上げペース鈍化見通しを受けた好ムードが続いている。
NY市場は、感謝祭の祝日のため休場。
25日
東京市場では、午前中に一時ドル買い円売りが強まった。目立った新規材料が出たわけではなく、木曜日海外市場でのドル安円高に対して、利益確定のドル買いなどが入ったと見られた。ドル円は139円05銭前後まで上昇。ユーロドルが1.04を割り込む動きなども見られた。木曜日の動きが円買いの面も強かったこともあり、クロス円で円売りの動き。ユーロ円は144円台前半から144円68銭前後まで上昇。もっとも今晩の米国市場はオープンしているとはいえ、株式、債券市場は短縮取引、前日から連休をとっている参加者も多い中、市場は様子見ムードが広がっており、値幅は限定的なものに抑えられた。ドル円は139円台での買いに慎重で、その後上昇分を解消。午後に入ると、いったんはドル売りの動き。米債利回りの低下が見られ、ベンチマークとなる米10年債利回りが3.67%台から3.65%割れを付ける中で、ドル売りが入った。ドル円は朝の水準を割り込み138円38銭まで。ユーロドルが1.0429、朝方1.21割れを付けていたポンドドルが1.2128までの上昇を見せた。もっともこちらも動きが続かず、ドル安分をその後解消。
ロンドン市場では米債利回りの上昇などを材料にドル高円安の動きが強まった。東京午後に米10年債利回りは10月5日以来の低水準となる3.65%割れを付けたが、ロンドン市場に入って利回りが上昇し、3.7%台を回復する中でドル円が買われた。東京午後の138円30銭台からロンドン市場で139円60銭前後までと1円を超える上昇に。ユーロドルもドル高基調の中、東京市場での1.04台前半から1.0380台まで下落した。その後エストニア中銀総裁が積極的な利上げに前向きな姿勢を示したことで、ユーロ買いが入り、1.0420台まで回復。ユーロ円はドル円の上昇に、対ドルでのユーロ買いが加わり、東京市場午後の144円20銭台から145円10銭台まで一時大きく買われた。その後はドル全面高基調に押されてユーロドルが再び1.03台へ下落。ユーロ円も高値から調整が入っている。
NY市場でドル円は買い戻しが優勢となっており、139円台に戻している。きょうは感謝祭明けの金曜日で市場参加者も少なく、動意薄の展開も見られた。ユーロドルはNY時間にかけて売りが優勢となり、1.03ドル台半ばに一時下落していたものの、NY時間に入って買い戻しが膨らみ、1.04ドル台まで戻す展開となった。 

 

●為替相場 11/28-12/2 12/3 
まとめ11月28日から12月2日の週
28日からの週は、ドル売りが広がった。これまでも一連の米物価指標の伸び鈍化やセンチメント系指標の弱い結果などでドル売りに傾いていたが、今週はパウエルFRB議長講演で、次回12月FOMC会合での利上げ幅縮小見通しが示されたことがドル売りの決定打となった。米債利回りの低下とともにドルが下落、ドル指数は明確に200日移動平均線を下回った。週明けには、中国での感染拡大のなかで、厳しいコロナ規制に対する抗議デモが市場に不安感を与えた。株安やリスク警戒のドル買いにつながる場面がみられた。しかし、衛生当局がコロナ規制の行き過ぎを是正する姿勢を示し、感染による死者数が落ち着いたこともあってリスク警戒の動きは収束した。市場全般にドルが売られやすい状況となる面もあったようだ。週末には注目の米雇用統計が発表された。非農業部門雇用者数(NFP)は26.3万人増と予想(20万人増)を上回ったほか、失業率も3.7%と前回と変わらずに歴史的な低水準が続いている。平均時給も前月比0.6%の上昇と予想(0.3%上昇)の2倍の上昇となった。インフレ抑制を目指すFRBにとって労働需要は依然としてタイトであることが示された。
28日
東京市場は、円高の動き。中国での新型コロナ感染拡大、抗議活動の高まりなどを受けてリスク回避の圧力が広がった。香港株などが大幅安となっている。ドル円は朝方につけた139.50手前を高値に138.34近辺まで大幅下落。米債利回り低下も売りを誘った。ユーロドルは1.04台から1.0341近辺まで、ユーロ円は145円手前から143.25近辺まで大きく下げた。豪ドルは、10月の豪小売売上高が予想外にマイナス圏となり豪ドル売りが出たところに、最大の輸出先である中国の懸念が広がる形で下げが加速。豪ドル/ドルは0.67台半ば手前から0.6666前後まで、豪ドルは93.70台から92円台半ば割れまでの下げとなった。
ロンドン市場では、ユーロ買い主導でドル安が継続。今週のユーロ圏消費者物価指数の発表を控えて、市場では12月ECB理事会での大幅利上げへの思惑が広がっているもよう。この日はクノット・オランダ中銀総裁やカジミール・スロバキア中銀総裁が高インフレ継続に対する警戒感を強めていた。ユーロドルは1.03台半ばから1.04台後半へ、ユーロ円は143円手前から144円台半ばへと上昇。対ポンドでのユーロ買いも広がっている。また、アジア・東京時間からのリスク回避の動きも継続。欧州株や米株先物が下げている。ドル円は東京市場からの売り圧力が継続し、一時137.50近辺まで安値を広げた。クロス円はユーロ円以外は上値を抑えらえられている。ポンド円は166円台、豪ドル円は92円台、NZドル円は86円付近と、東京市場からの安値圏を踏襲している。ただ、足元では下げ渋りの動きもみられており、中国政府によるゼロコロナ政策の緩和への期待も一部にはでてきているもよう。
NY市場では、一転してドル買い戻しが加速。今週は重要イベント目白押しの週だが、それを巡ってタカ派的な観測も出ている模様。ドル円はロンドン時間に137円台半ばまで下落したが、NY時間に入ると一時139円台まで買い戻されている。一方、中国で実施されているゼロコロナ政策に対して北京や上海などの大都市で大規模な抗議活動が続いており、それを嫌気した円高の動きも出ており、ユーロ円やポンド円といったクロス円は下落している。ユーロドルは1.03台前半まで下落し、200日線を割り込んだ。ポンドドルはロンドン時間に1.21台まで上昇していたが、1.20台を割り込むと1.19台半ばまで下落した。200日線が控える1.2175付近が上値のポイント。
29日
東京市場では、ドル売りが優勢。中国で29日の新型コロナの新規感染者数が6日ぶりに前日比減少に転じたことや、中国各地で行われていた大規模デモが収束したことが背景。さらに、中国衛生当局が午後4時に会見を行うとの報道が、ゼロコロナ政策緩和への期待感となりドル全面安につながったようだ。ドル円は139.30台まで買われたあと、138.40台まで下落。ただ、クロス円の下支えがあり、下押しは限定された。ユーロドルは1.0330台から1.0390台まで上昇。ユーロ円は143.30台から144円台乗せまで買われた。豪ドル/ドルは0.6640前後から0.67台乗せまで買われたあと、高止まりに。人民元が買われた。前日の下落を戻して、ドル/人民元は7.21付近から7.15台まで下落。
ロンドン市場では、ドル売りが優勢。ドル円は137.87レベルまで本日の安値を広げた。東京市場で一時3.72%付近まで上昇した米10年債利回りは、ロンドン時間に入ると3.64%台まで低下した。中国衛生当局は高齢者向けワクチン接種の強化を示した。市場では経済再開のカギとなると評価している。また、一部地方当局にみられるような過剰かつ一律的なコロナ規制に苦言を呈したことも市場に好感されたようだ。豪ドルなどオセアニア通貨が買われており、ドル売り圧力に波及した面も。 ただ、ユーロドルは1.03台後半で売買が交錯しており、ドル安方向には傾斜せず。ポンドドルは1.19台後半から一時1.2064近辺まで買われたが、その後は再び1.20台割れとなる場面があるなど方向性は定まらず。スペイン消費者物価指数が4か月連続の伸び鈍化となったことや、ドイツの一部州の消費者物価指数の伸びが鈍化したことが上値を重くしたもよう。英国では住宅ローン承認件数が予想を下回っており、いずれも市場の大幅利上げ観測の矛先を鈍らせていたようだ。
NY市場では、前日のドル買いの動きが一服した。明日のパウエルFRB議長の講演と金曜日の米雇用統計の結果を見極めたい雰囲気も出ており、前日の動きに調整が入っている。中国の一連の報道で前日のリスク回避のドル買いが一服した面も指摘される。ドル円は一時137円台まで下押しされた。ユーロドルは下げ一服も、上値は重い。買い戻しの雰囲気まではでていない。あすのユーロ圏消費者物価速報値が注目されている。12月ECB理事会での利上げ幅については50bpと75bpに分かれており、やや50bpが優勢。ポンドドルは一時1.20台を回復したが、その後は1.19台での推移となった。英インフレの高さと経済見通しの弱さを背景に、英国債利回りは逆イールドが続いており、ポンドの重石となっている。投資家は英中銀がインフレ抑制するために12月に0.50%ポイント、2月にさらに0.50%ポイントの利上げを行うと予想している。
30日
東京市場は、小動き。月・火とドル相場が振幅したあと、今晩のパウエルFRB議長講演を控えて様子見ムードが広がった。12月の米FOMCを控えて、今週土曜日からブラックアウト期間に入る。その前のパウエル議長講演に市場の注目が集まっている状況。ドル円は139円手前から138円台半ば割れまで下落したあとは138円台後半での揉み合いに。ユーロドルは1.0319近辺まで下落したあと、1.0360付近まで反発。ユーロ円は143円台前半から半ばでの揉み合い。豪ドル/ドルは0.66台後半から0.67台乗せ水準までの推移。中国で連日の新型コロナの新規感染者数減少を記録も、北京・上海など主要都市圏では増えるなどまちまちの状況。
ロンドン市場では、円安・ドル安の動き。ドル円は一時139円台に乗せた。ユーロ円は143円台前半から一時144円台乗せ、ポンド円は165円台半ばから167円手前まで買われた。クロス円の上昇にユーロドルは一時1.0381近辺、ポンドドルは1.2029近辺まで高値を伸ばした。中国の広州市の一部地区でロックダウン措置の解除が報じられており、経済再開への期待が高まっている。香港株が大幅高となった流れを受けて欧州株も堅調に推移、リスク選好ムードが広がっている。11月ユーロ圏消費者物価指数速報値は前年比+10.0%と前回の+10.6%から予想以上に伸びが鈍化した。インフレピークアウトの兆候として市場に好感された面も。ただ、ECBの利上げペース緩和観測にもつながることから、ユーロ相場は対ポンドや対スイスフランなどでは売りに押されている。取引中盤にかけては、パウエルFRB議長の講演待ちでやや円安・ドル安の動きに調整が入っている。
NY市場では、取引後半のドル売りが強まった。午後にパウエルFRB議長の講演が伝わり、ドルは前半の上げを失う展開となった。 議長は「利上げペースを緩める時期が早ければ12月に来るかもしれない」と述べたほか、「金利のピークは9月の予測よりも幾らか高い可能性が高い」とも語った。全体的には前回のFOMC後の会見とトーンは同じであるものの、具体的に12月に言及してきたことで、市場は12月FOMCでの50bpの利上げ期待を高めている。CMEのFEDウォッチでは確率が75%まで一時上昇。前日は65%程度だった。ドル円は140円台をうかがう動きがみられていたが、パウエル議長講演を受けて一時137円台まで急速に下落した。ユーロドルは前半に1.03台割れとなる場面があったが、後半には1.04台を回復。ポンドドルは一時1.19ちょうど付近まで下落していたが、一気に1.20台後半まで上昇した。きょうは英中銀のチーフエコノミストのピル委員の講演が伝わっていたが、EU離脱も英国の高インフレの一因との見解を示していた。
1日
東京市場は、ドル安の流れが継続。ドル円は前日に137円台まで下落したあと、138円台を回復して取引を開始。東京勢は再びドル売りを強め、NY安値を割り込むと午前中に136円台半ばまで下落。その後は137円付近が重くなり、午後には136.21近辺まで一段安となった。ユーロドルは1.04ちょうど付近で取引を開始。午前中に1.0440台、午後には1.0451近辺まで上昇。ドル主導の展開ながら、ドル円の下げが一番きつかったこともあり、クロス円は重い。ユーロ円はパウエル発言前の144円台後半から143円台半ば割れまで値を落として東京朝を迎えた。東京市場午前に142円台半ば割れ、午後に142.30前後まで値を落とした。
ロンドン市場でも、ドル売りが継続。ロンドン序盤にはドル円は135.84近辺、ユーロドルは1.0464近辺までドル売りが進行。その後は米債利回りの低下に調整が入り、ドル円は136.66近辺、ユーロドルは1.0394近辺までのドル買戻しがみられた。しかし、米10年債利回りが再び低下、一時3.59%台に低下して2か月ぶり低水準となると再びドル相場の上値が抑えられている。この局面ではポンドドルの上昇が目立っており、1.2164近辺に高値を伸ばしている。200日線を上回る動きとなっており、今後上昇に弾みがつく可能性も指摘される。英中銀調査によると、英企業はインフレ率について、1年後に7.2%、3年後に3.9%と予測しており、根強いインフレ警戒感が示されていた。ユーロ圏や英国の11月製造業PMI確報値は引き続き50割れ水準低迷した。一方、10月ユーロ圏失業率は6.5%と過去最低水準に低下している。
NY市場では、さらにドル売りが進行。11月のISM製造業景気指数が発表され、49.0と景気判断基準である50を割り込んだ。前日のパウエル議長の講演を追認する内容だが、米株式市場が下げ幅を拡大する反応を見せたことがむしろ、ドル円を圧迫していた面もありそうだ。ドル円は135円台前半まで下落。ユーロドルは1.05台を回復、200日線を上放れている。ポンドドルは一時1.23台まで上げ幅を拡大する場面がみられた。今日の上昇で200日線を上回っており、テクニカル的にも上昇シグナルが点灯しそうな状況に。もっとも、ポンドドルの場合は英固有の材料よりも、米国の材料に動きを依存させている。その意味でも明日の米雇用統計に対する市場全体の反応は注目される。この日は、FRBがインフレ指標として参照している10月のPCEデフレータも発表になっていたが、前月比の伸びが市場予想を下回っていた。ただ、個人消費支出は伸びが加速しており、FRBが利上げを継続する中でも、景気後退を引き起こすことなくインフレを抑制できるとの期待を生じさせる内容ではあった。
2日
東京市場では、ドル安傾向が継続。ドル円は米債利回りの低下とともに、朝方に135.05近辺まで下落した。その後は仲値にかけて本邦輸入勢などからドル買いが入り、135.60付近まで反発。その後は再び売りが優勢となって、135.01近辺に安値を広げた。大台割れには至らずも、上値の重さが示された。ユーロドルは前日からの高値水準を維持。朝方に1.0539近辺に高値を伸ばし、その後は1.05台前半に高止まりしている。ユーロ円は142円台半ばが重く、一時142円台を割り込んだ。その後は142円台前半で落ち着いた。日経平均が下落しており、リスク回避の円買いの動きも散見された。
ロンドン市場では、ドル円が大幅下落。東京市場では135円手前で揉み合っていたが、ロンドン朝方に135円台割れとなると動意付いた。テクニカルポイントとして注目される200日線が134.50付近に位置しており、この水準を下回ると下げが加速。一時133.63近辺まで安値を広げた。8月16日以来の安値水準となった。米雇用統計発表を前に、ポジション調整の動きが強まった格好だ。クロス円も総じて円高方向に振れた。ユーロ円は140円台後半、ポンド円は164円手前まで下落。米債利回りの上昇が一服し、ドル相場はややドル安の動きをみせたが、ユーロドルは1.05台半ば、ポンドドルは1.32手前までの小動き。10月ユーロ圏生産者物価指数は前月比−2.9%、前年比+30.8%と前回および市場予想を下回ったが、特段の反応はみられず円相場以外は様子見となっている。
NY市場でドルは上に往って来いの展開となった。朝方はこの日発表になった米雇用統計が予想以上に強い内容となったことでドル買いが強まった。一時133円台まで売りが加速していたドル円も136円付近まで反転する展開。しかし、ドル買いが落ち着くと、ドルは急速に戻り売りが強まっている。ドル円も134円台前半まで伸び悩んだ。ドル売りの明確な材料は見当たらないが、米雇用統計を受けて短期金融市場では、ターミナルレート(最終到達点)の織り込みは前日の5.00%以下から5.00ー5.25%水準に上昇させている。しかし、12月FOMCでの0.50%ポイント利上げまでは見方を変えておらず、75%程度の確率を維持している状況。 

 

●為替相場 12/5-12/9 12/10  
まとめ12月5日から12月9日の週
5日からの週は、ドル安の流れが一服した。前週末の米雇用統計や週明けの米ISM非製造業景況指数が予想外に強含んだことがドル買い圧力となった。また、中国がコロナ規制に対する緩和措置を続々と発表したことが、ドル円主導のドル買いやクロス円の上昇につながる面もみられた。しかし、リスク選好的な動きは続かず、週半ば以降はドル売りが盛り返すなど方向性の定まらない相場展開が続いた。次週には米FOMCと米消費者物価指数、ECB理事会と英金融政策委員会(MPC)などの注目イベントが予定されており、市場が積極的な取引を手控えた面もあった。豪中銀は予想通り25bp利上げを実施。カナダ中銀は事前予想が25bpと50bp利上げに二分されるかなで、50bp利上げを実施した。ただ、いずれも市場反応は限定的だった。週末に発表された米生産者物価指数はサービス業が牽引し予想以上の上昇となった。インフレ圧力の根強さが示され、FRBの利上げ継続を正当化する内容ではあった。
5日
東京市場では、ドル円が134円台で落ち着いた推移。先週末の米雇用統計後に136円に迫ったあと、134円台まで下落と振幅した後の週明け相場。朝方は仲値関連のドル買いで上昇、134.77近辺をつけた。一方、ドル安・元高の動きとともに次第にドル売り圧力に押された。ドル円は134.10台まで下落。午後には134.60付近へ下げ渋った。ユーロドルは午前のドル安で、先週末上値を抑えた1.0550前後の水準を超え、1.0570台に上昇。中国リスクの後退がユーロ買いにつながり、午後に入って1.0580台を付けている。中国では北京、深センなどで新型コロナでの規制を緩和する動きが広がり、中国経済の鈍化懸念が後退する形で元高となった。ドル/人民元は一時6.94台に下落した。
ロンドン市場では、ドル買いが優勢。ドル円は134円台前半から135円台半ばへと上昇。ただ、先週末の米雇用統計直後につけた136円手前の高値には届かず。ユーロドルは東京市場で1.05台後半に買われたあとは上値が重くなった。ロンドン時間には1.0520付近まで下押しされた。東京早朝の安値1.0514近辺には届かず。ポンドドルは1.23台半ば近辺まで買われていたが、ロンドン時間には軟調な流れに転じている。安値を1.2230台へと広げている。米10年債利回りは3.51%付近へとやや低下。欧州株や米株先物は調整圧力が優勢。NY原油先物は82ドル近くまで再び買われている。ただ、中国でのコロナ規制緩和の動きが報じられるなど、リスク警戒の動きは一服。
NY市場は、ドル買いが継続。ドル円は136円台に乗せると、136円台後半まで上昇している。134.60付近の200日線にサポートされた形。米ISM非製造業景気指数が予想を上回ったほか、サービス業のインフレが続いていることが示されたことも、ドル買い戻しを加速させた。株安や利回り上昇もみられ、ドルが支援された。ユーロドルは1.05台を割り込み、1.04台後半へと下落した。ポンドドルも下落。ロンドン時間には1.23台を付ける場面もあったが、その後は売りに押されている。NY時間には1.21台後半まで下落した。総じて、強い米経済指標結果にドル買いの動きが広がっていた。
6日
東京市場では、ドル相場が振幅。ドル円は朝方に136.50割れと下押しされたあとは137.17近辺まで上昇。午後には伸び悩んで136円台後半に押し戻された。午後には米債利回りが上昇したが、137円台に乗せると上値を抑えられていた。ユーロドルは朝方に1.0520付近まで強含んだあと、午後には1.0480台まで下落。上に往って来いの展開だった。豪ドルは堅調。豪中銀が25bpの利上げを決定し、声明で今後さらなる利上げが想定されるとしたことが背景。豪ドル/ドルは0.6738近辺、豪ドル円は92.25近辺まで上値を広げた。
ロンドン市場では、ドル買いが一服、円買いが優勢になった。欧州株が軟調に取引されたことを受けて、ドル円とともにクロス円も下押しされている。また、3.60%台まで上昇していた米10年債利回りが3.56%台に低下しており、全般にリスク警戒の動きとなっている。ドル円はロンドン朝方に137.43近辺まで買われたあとは、137円台割れから136.50付近へと反落。ユーロ円は144.00近辺まで買われたあと143.50割れへと下落。ポンド円も167.50付近の高値から166.10台へと下押しされている。ポンドは対ユーロでも軟調で、前日NY市場の動きを戻している。ドル買いの動きは一服し、ユーロドルは1.04台後半から1.05台乗せ水準へと下げ渋り。一方、ポンドドルは1.22台乗せでは売りが入り、1.21台後半で上値重く推移している。ただ、いずれも前日の水準からは大きく離れず、調整含みの動きにとどまっている。
NY市場では、ドルが買われた。米株が大幅続落となり、為替市場はリスク回避のドル買いが強まった。先週の米雇用統計に続いて今週のISM非製造業景気指数などの米経済指標で予想を上回る内容が相次ぎ、それがFRBの利上げが想定以上に長期化するのではとの警戒感につながったようだ。ドル円はロンド時間には135円台に一時下落したが、NY時間後半には137円台を回復した。ユーロドルは1.04台へと伸び悩んだ。ヘロドトゥ・キプロス中銀総裁の発言が伝わり、「金利は現在、金融政策が緩和的でもなく制限的でもない中立の水準に非常に近い」と述べていた。ポンドドルは1.21台まで下落。ロンドン時間に発表された11月英建設業PMIは予想を下回っていた。
7日
東京市場では、ドル高の動きが継続。日経平均が下げるなど、リスク警戒の動きがドル高につながった。ドル円は137円を挟んだ上下動のあと、午後には前日高値を上回って137円台半ばへと買われた。ユーロドルは1.0455から1.0477までの狭いレンジ推移。ユーロ円は143円台で取引されるなかで、ドル円とともに一時143.80台まで買われた。中国のコロナ規制緩和が目立つ中で、ドル/人民元は6.99台から6.97台前半へと下落、人民元高が優勢だった。
ロンドン市場では、ユーロが堅調。序盤に米債利回りの低下がユーロドルを下支えしたことに加えて、ECB調査で消費者が今後12カ月間のインフレ期待を高めていること、ユーロ圏GDP確報値が予想外に上方改定されたことなどが買いを誘っていた。ユーロドルは1.04台半ば割れへ軟化したあと、1.05台乗せまで上昇。ポンドドルはやや遅れて買われ、1.21台前半から後半へと上昇している。ドル円はロンドン朝方に137.86近辺まで高値を伸ばした。その後は売買が交錯し137円台前半から半ばで揉み合っている。中村日銀審議委員が当面の政策の微調整や変更の必要性を否定したことが円売りに作用した面も指摘される。また、中国が一連のコロナ規制が一段と緩和したが、香港株はむしろ売りを強めて引けており、リスク動向はやや不安定だった。NY原油先物は一時72ドル台と年初来安値を更新。カナダドルや豪ドルは上値重く推移。
NY市場は、ドル売り優勢も、神経質に売買が交錯した。ドル円は上昇一服となり、137円台割れから136円台前半まで反落した。特段のドル売り材料は見当たらないがこのところの急速なドル買い戻しに一服感がでていた。NY勢は来週の米FOMCと消費者物価指数待ちで手をこまねいているとの声が聞かれた。ユーロドルは1.05台を回復。ロシアのプーチン大統領が「世界で核戦争のリスクが上昇しつつある」と述べたことで瞬間的に売りが強まる場面が見られたが、一時的な反応に留まった。ポンドドルも1.22台を回復。来週のECB理事会の英金融政策委員会を控えて、両通貨とも方向性は一定していない。カナダ中銀は50bpの利上げを実施し、政策金利を4.25%とした。市場では利上げは確実視されていたが、利上げ幅は50bpと25bpで完全に見方が二分していた。市場は、カナダ中銀は政策金利を4.25%まで引き上げて、今回の利上げサイクルを一旦停止すると見ている。カナダ中銀は声明で「追加利上げの必要性を“検討”している」と述べるに留まった。カナダドルは一時買われたが、すぐに売り戻されている。
8日
東京市場は、ドルが買い戻された。ドル円は前日海外市場での下げから反発、136円台後半から午後には137.24近辺まで買われた。香港株の大幅高を受けて全般的なリスク選好の動きが円売りを誘った格好だった。ユーロドルは1.05ちょうど付近で落ち着いた値動きだった。前日海外市場での上昇が一服して、上値を抑えられている。ただ、一段の下押しの動きは見られず。ユーロ円はドル円とともに買われ、143円台前半から144円を付けた。ポンド円は166円台前半から167円台乗せ。
ロンドン市場は、方向性に欠ける取引。ドル円は136.50台では下げ止まるも、上昇も137円台乗せでは売りが入っている。米10年債利回りは3.44−3.46%付近での揉み合いと動意薄。欧州株が小安い一方で、米株先物は前日終値付近での小動き。ユーロドルはロンドン朝方につけた1.0531近辺を高値に1.0490近辺までのレンジで推移。ポンドドルは序盤に1.2215近辺まで買われた後は1.2155近辺に下押しと上値が重い。きょうはユーロ買い・ポンド売りのフローが入っており、前日NY市場での下げを戻している。ユーロ円は143円台後半から144円付近での推移。ポンド円は167円台乗せでは売りが入り、166円台半ばへと軟化。ただ、いずれも前日からのレンジ内での取引にとどまっている。中国や香港のコロナ措置に追加緩和の動きがみられた。ロシアはウクライナで失った併合地域の奪還を目指すと表明。ただ、いずれの好悪材料にも特段の反応はみられなかった。
NY市場では、ドル売りが優勢。米株式市場に買い戻しが入り、今週に入ってのリスク回避ムードが一服した。ドル円は一時137円台に上昇したあとは、NY時間には136円台前半まで下押しされた。引けにかけては136円台後半に下げ渋り。ユーロドルは1.05台前半から1.05台半ばへと上昇した。ポンドドルは1.21台半ばまでの下げを戻して1.22台半ばへと上昇した。全般に調整色が強かった。来週の米消費者物価指数(CPI)やFOMCを巡って様子見気分も強く、積極的な動きまでは見られていない。明日は米生産者物価指数(PPI)の発表もあり、インフレの鈍化傾向が期待されているが、その数字を確認したい意向もあるようだ。
9日
東京市場は、ドル安・円高の動きが優勢。仲値公示と前後して本邦輸出企業からの大口の円買い・ドル売り取引が持ち込まれたもよう。ドル円は136円台後半から136円台前半へと下落したあと、昼過ぎには135.77近辺まで下値を広げた。その後は136円台を回復も伸びを欠いている。クロス円も同様の動き。ユーロ円は144円台半ばから143円台後半へ、豪ドル円は92円台後半から前半へと下げた。米債利回りが低下するなかで、ドル売りの動きも波及。ユーロドルは1.05台半ばから後半へ、ポンドドルは1.22台前半から後半へと上昇。前日海外市場からのドル安の流れを踏襲している。
ロンドン市場は、方向性が定まらない展開。米生産者物価指数の発表を控えて、短期的なポジション調整の動きに終始している。東京時間に低下した米10年債利回りが前日終値付近へと戻す動きに、ユーロドルは1.05台後半から1.0550付近までじり安の動き。ポンドドルも1.22台後半から1.22台前半に下げたが、下げ足はユーロと比べると鈍い。ドル円は東京午後につけた135.77近辺を安値に136.50手前まで買い戻しが入った。しかし、買いも続かず136円ちょうど付近へ押し戻されている。クロス円も上下動。ユーロ円は144円台に乗せた後は売りに押されて143.50台まで反落。ポンド円は167円台乗せでは売りに押されており、一時166.50付近まで下げた。ただ、欧州株、米株先物いずれも底堅く揉み合っており、特段のリスク回避の動きはみられていない。
NY市場はこの日発表の米生産者物価指数(PPI)やミシガン大消費者信頼感指数を経て、ドルの買い戻しが優勢となった。ドル円は135円台半ばに下落してNY市場に帰って来たものの、両指標を受けて136円台後半まで一時買い戻されている。米国債利回りが上昇していることもドル円の上げをフォローしたようだ。 

 

●為替相場 12/12-12/16 12/17 
まとめ12月12日から12月16日の週
12日からの週は、主要中銀の金融政策会合が相次いだ。米国、英国、欧州、スイスなど。いずれも50bpの利上げを発表している。ただ、来年に向けたタカ派度はかなりまちまちなものとなってきそうだ。米国はターミナルレート水準の見通しを5%台に引き上げてきた。ただ、市場での織り込みは5%を下回っており、今週発表された米CPIは予想以上の伸び鈍化を反映している。ドル相場は売買が交錯しており、方向性が定まらず。英中銀は利上げ幅に関する各委員の票が割れた。9名中で2名の委員が据え置きを主張したことがポンド売りを誘った。ECBはインフレ見通しを引き上げ、ラガルド総裁からは今後の50bpペース利上げ継続の可能性が示唆された。ユーロ買いの動きが広がった。スイス中銀も追加利上げの可能性を示唆した。日銀に関しては、新体制で来年中にも金融政策の点検・検証行う可能性、との一部報道に円買いの反応を見せる場面があった。ドル指数は下げ一服となったが、ここ2か月間の低下の流れには目立った変化はみられていない。
12日
東京市場は、ドル買いが優勢。先週末の米生産者物価指数が予想を上回る伸びを示し、ドルが買われた流れが継続している。ドル円は136円台前半でサポートされると、先週末の高値を上回り午前中に137円台に乗せた。仲値にかけて本邦実需筋からドル買いが入っていた。136.80付近へとやや調整売りも入ったが、午後には137.13近辺に高値を伸ばしている。ユーロドルは朝方に1.0540付近まで小高く推移も、その後はドル買いに押されて1.0506近辺まで安値を広げた。先週末安値をわずかに更新している。ドル相場主導の展開のなかで、ユーロ円は方向が定まらず。143円台後半から144円台前半で振幅した。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。先週末は米生産者物価指数やミシガン大学消費者信頼感指数速報値が予想を上回ったことを受けて、ドル買いの動きが広がった。しかし、週明けのロンドン市場では米債利回りの低下とともにドルが売られた。欧州株や米株先物は売りが先行も次第に底堅さを示している。明日の米消費者物価指数の発表を控えて、調整的な動きに。ドル売りが顕著なのがユーロやポンドといった欧州通貨。ユーロドルは1.05台前半から後半へ、ポンドドルは1.22台前半から1.23手前まで上昇。先週末の下げを解消する動き。一方、ドル円は137円台が重くなり136.60台へと軟化。ただ、欧州通貨と比較すると値幅は限定的。クロス円は買われており、ユーロ円は144円台乗せ、ポンド円は167円台前半から後半へと水準を上げている。10月の英GDPが前月比+0.5%と前回の−0.6%から回復したが、ポンド相場独自の値動きはみられていない。また、ハント英財務相は、インフレがピークに達したのかどうかはわからない、景気が回復する前に一段と悪化する公算高い、と英BBCで語った。
NY市場では、ドル円が堅調。一本調子で買われて137円台後半に上昇した。米株式市場に買い戻しが強まったことや、午後の米10年債入札結果で米国債利回りが上昇したことがドル円を押し上げたようだ。円安の動きも支援した。ユーロドルは底堅く推移、1.05ドル台に高止まりしている。ポンドドルは1.22台での推移。1.23台を何度か試しているが、いまのところは慎重なようだ。明日の米消費者物価指数、週央からの米FOMC、英中銀、ECB理事会などの政策金利発表を控えて、各通貨がまちまちの動きを示していた。
13日
東京市場では、ドル円が一時138円に迫った。朝方には137.50割れへと下げたが、その後はすぐに前日からのドル買いの流れに回帰した。前日海外市場での高値を上回ると137.90近辺に高値を伸ばした。売買が交錯したあと、午後には137.97近辺まで上昇。ただ、138円手前の売りに押されて137.50台に上昇一服した。ユーロ円もしっかりで、朝方に145.30台まで上昇。その後は少し調整も145円台を維持している。ユーロドルは1.0530台から1.0550超え水準での揉み合い。前日からのドル高水準を維持した。
ロンドン市場は、方向感に欠ける取引。NY朝方に発表される米消費者物価指数の内容を見極めたいとのムードが強い。米債利回りも方向性をみせず。欧州株や米株先物・時間外取引は前日の米株高を受けて底堅く推移。ドル円は137.30近辺まで下げたあとは137.80近辺まで反発。ユーロドルは1.0560近辺まで上昇したあとは、1.0530近辺へと軟化。ポンドドルは1.23台に乗せる場面があったが、上値は重く1.2250割れ水準まで一時下落。クロス円はユーロ円が145円挟み、ポンド円は168.50付近から169円台乗せで下に往って来い。朝方に発表された英雇用統計は雇用増、賃金上昇とポンド買い材料ではあったが、買いは続かなかった。英中銀金融安定化報告では、来年の金融圧力の高まりを警戒も、金融危機時よりはしっかりとした状況であるとした。独ZEW景況感指数は前回から改善したが、10カ月連続でのマイナス圏だった。
NY市場では、ドル売りが強まった。米消費者物価指数(CPI)が予想を下回り、インフレの鈍化傾向が続いていることが示されたことに反応した。総合指数が前年比7.1%、コア指数が6.0%と伴に前回から鈍化し、予想も下回った。FRBは明日のFOMCで0.50%ポイントに利上げ幅を縮小することが見込まれているが、その見方を正当化する内容ではあった。米国債利回りが急低下し、為替市場ではドルが急落。ドル円は発表の137円台から一気に134円台に一時急落した。ユーロドルはこれまでレジスタンスとなっていた1.06ちょうどを突破して大台乗せ。ポンドドルは一時1.24台半ばまで上げ幅を拡大した。米CPIを受けて市場にリスク選好の雰囲気も広がっており、景気に敏感なポンドのフォローとなる面も指摘された。
14日
東京市場は、ドル売りが一服。前日の米CPIが予想を下回ったことを受けたドル売りにやや調整が入った。ドル円は早朝に135.74近辺に下げ渋ったあとは東京時間に入ると米債利回り低下とともに135.29近辺まで反落。午後には135.50を挟んだ揉み合いに落ち着いた。ユーロドルは1.06台前半、ポンドドルは1.2350を軸とした上下動。いずれも前日からのドル安圏でのレンジ取引に終始した。米FOMCの結果発表を控えて様子見ムードが広がった。
ロンドン市場は、ドル売りが再燃。東京市場では米FOMCの結果発表を控えて様子見ムードが広がったが、ロンドン時間に入ると再びドル売りが入った。なかでもドル円の下げが目立っている。日銀が新体制で来年中にも金融政策の点検・検証行う可能性との報道に反応し、135円台前半から一時134.54近辺まで急落、前日安値を下回った。クロス円も総じて円買いに押されている。一方、ユーロドルやポンドドルなどは日銀関連報道の前からじり高の動きとなっており、ドル売り圧力も根強い。ユーロドルは1.06台前半での揉み合いを上放れると1.0672近辺に高値を更新、前日高値にほぼ並んだ。ポンドドルも1.23台半ばでの取引から1.2404近辺まで買われている。朝方に発表された英消費者物価指数は前年比+10.7%と前回や予想値を下回ったが、ポンド売りは一時的だった。また、あすのECB理事会を控えて関係者から今後3年間はインフレ率が目標の2%を上回って推移するとの新たな見通しが示唆されていた。また、QT計画の概略についても発表されるという。
NY市場は、目まぐるしく振幅した。注目の米FOMCでは、政策金利は予想通りに50bpの利上げとなったが、FOMC委員の金利見通し(ドット・プロット)は2023年末の中央値が5.125%、24年末が4.125%となった。ターミナルレート(最終到達点)は23年に5.00−5.25%が示唆され、23年の利下げは想定していないことが示唆された格好。前日の米消費者物価指数(CPI)を受けて、市場はターミナルレートの予想を5%以下に引き下げていたが、それよりも高い水準。その後のパウエルFRB議長の会見でも「しばらくは制限的な政策スタンスが必要。23年の金利見通しがターミナルレートを意味する。ターミナルレートの予想を引き上げないと確証持って言えない」と述べた。「利上げのスピードはもはや重要ではない」とも言及している。今回のFOMCは全体的に市場の緩和期待に反するタカ派な印象ではあった。為替市場はFOMCの結果とパウエルFRB議長の会見が始まった直後はドル買いの動きが強まったものの、終盤に急速に伸び悩んでいる。ドル円は136円付近まで急伸後、一時134円台に急反落、その後は135円台前半で売買交錯。ユーロドルは1.06台前半まで下落も、1.06台後半に戻した。ポンドドルは1.23台半ばに下落後、1.24台に戻している。
15日
東京市場は、方向性の定まらない動き。ドル円は朝方に135.24近辺まで弱含む場面があったが、その後は米10年債利回りの上昇などを背景にドル買いがやや優勢となり、午後には135.88近辺まで買われた。東京終盤にかけては135円台半ばへと伸び悩んだ。ユーロドルはドル買いに押され気味で、1.0646近辺まで下落。ポンドドルは1.2377付近まで軟化したあと、下げ渋りに。豪ドルは軟調。11月の中国小売売上高と鉱工業生産指数の冴えない結果を受けて売られ、対ドルは0.6822近辺、対円は92.57近辺まで下落した。NY原油先物の下落も重石となっていた。
ロンドン市場は、ドル買いが広がっている。昨日の米FOMCでターミナルレート水準の見通しが引き上げられ、パウエル議長からもインフレ抑制まで利下げは行わないなどタカ派姿勢が示されていた。アジア時間には各中銀から追随利上げの動きがみられたほか、欧州でもスイスやノルウェー中銀が利上げを発表。そして、このあとには英中銀とECBが追加利上げに動くことと想定されている。欧州株や米株先物は大幅安となっており、リスク警戒ムードがドル買いにつながっている。また超緩和政策を維持する日本と米欧各国との金利差拡大観測も再燃しているようで、ドル円とともにユーロ円やポンド円も高値を伸ばしている。ドル相場は前日FOMC後の上下動からドル高方向に上抜けたことで、ドル買いが加速する面もあったようだ。ドル円は136円台乗せから136.90付近に上昇。ユーロドルは1.0606近辺、ポンドドルは1.2296近辺まで安値を広げた。その一方で、ユーロ円は145.30近辺、ポンド円は168.82近辺に高値を伸ばしている。豪ドルは対ドル、対円ともに軟調。ドル買いと円売りが交錯する中で、まちまちの動きとなっている。
NY市場では、ドルが急伸した。米金融当局のタカ派が改めて確認されたことに加えて、米株式市場でダウ平均が一時950ドル超急落し、リスク回避のドル買い圧力となった。ドル円は一時138円台まで急上昇した。前日は、FOMCの結果とパウエル議長の会見を受けて目まぐるしい動きが見られたが、きょうは再びドル高方向へと突き抜けている。ユーロドルは上に往って来いの展開。ECB理事会とラガルド総裁の会見を受けてユーロドルは一旦買いが加速し、1.0735付近まで急上昇した。本日のECB理事会は予想以上にタカ派な印象だった。来年のインフレ見通しを上方修正した上で、追加利上げを示唆した。ただ、NY市場ではドル買いが強まり、ユーロドルは買いが一巡すると一時1.05台に急速に伸び悩んだ。ポンドドルは1.21台に急落した。英中銀金融政策委員会(MPC)では市場の予想通りに0.50%ポイントの利上げを打ち出した。ただ、委員の投票行動が3つに別れ、ベイリー総裁を含む6人が0.50%ポイントの利上げを支持。マン委員が0.75%ポイント利上げ、テンレイロ、ディングラ両委員は据え置きを主張した。ベイリー英中銀総裁は「インフレはピーク過ぎた可能性に言及したう上でリスクは上振れ」とし、議事要旨では、英経済はリセッションに入り、第4四半期は0.1%のマイナス成長を見込んでいた。FRBやECBとは逆に、ハト派な印象を強めたようだ。
16日
東京市場は、ドルが売り戻された。前日のNY市場では米FOMCを再評価したドル買いが強まったが、後半には調整が入って東京市場を迎えた。東京市場ではドル売りが優勢。ドル円は昼前に136.96近辺まで下押しされた。日経平均の下落がドル円の重石となる面があった。その後は137円台前半での推移。ユーロ円は146円台後半から一時145円台に下落したあと、146円台前半に戻した。ユーロドルはドル高の調整で1.0620台から1.0660台まで買われた。来週からクリスマスシーズンで取引が閑散とすることもあり、行き過ぎた動きにはやや警戒感が出ていた。
ロンドン市場は、ややドル買いと円買いに押されている。欧州株や米株先物・時間外取引が軟調に推移、NY原油先物は一時74ドル台割れへ下落。リスク警戒の背景には今週の一連の中銀金融政策会合でいずれも利上げ継続姿勢が示されたことがあるようだ。ポンドドルは1.22台を割り込むと一時1.2120近辺まで安値を広げた。ポンド円も167円台から166.10付近まで下落。ユーロドルは1.0650付近から1.0610近辺へ、ユーロ円は146円台割れから145.50近辺まで軟化。ドル円は137円を挟んだ揉み合いが続いており、ドル高と円高に挟まれて動きにくい状況。一連の欧州PMI速報値は予想を上回る結果が多かったものの、水準はいずれも50割れだった。英PMI速報値は製造業が悪化、非製造業が改善とまちまち。ユーロ圏消費者物価指数確報値は前年比+10.1%に小幅上方改定された。ただ、いずれの指標にも反応薄だった。
NY市場は米株式市場の売りが続くなど、リスク回避の雰囲気は継続する中、ドル円は一時136円台前半に下落した。前日のドル円は一時138円台まで急伸していたものの、きょうは戻り売りが強まっている。21日線で蓋を被せられた格好となっており、10月からの下落基調は続いているようだ。目先は200日線が135円台半ばに来ており、下値メドとして意識される。 

 

●為替相場 12/19-12/23 12/24 
まとめ12月19日から12月23日の週
19日からの週は、円買いの動きが強まった。無風で通過するとみられた日銀決定会合でYCC変動幅拡大が発表されたことに、市場はサプライズの円買いを強めた。会合後の会見で黒田日銀総裁は、あくまでも市場機能の改善措置であることを強調し、利上げではないと主導した。しかし、市場では実質的な利上げだとの見方が広がった。ドル円は137円台から一時130.50台まで急落。クロス円も同様の大幅下落となった。週後半はクリスマスを控えていることもあり落ち着いた展開になった。ただ、ドル円の反発は一瞬の133円台乗せまでにとどまっており、根強い円買い圧力が残っている。クリスマス週とあって、円関連を除くと全般に取引動意は限定的だった。ユーロドルは1.06を挟む展開、ポンドドルは1.20-21台での取引が続いた。ドル指数はこのところの低下傾向が一服も、ドル高方向への動きも限定的だった。
19日
東京市場は、ドル円が神経質に上下動。週末に共同通信が報じた岸田政権ができるだけ早期に実現としてきた日銀との共同声明を改正する方針を固めたとの報道を受けて、従来の日銀の緩和姿勢が後退するとの期待が広がった。ドル円は135円台後半に値を下げて取引を開始したあと、いったん136.60付近まで反発も再び135.77レベルまで下落した。その後、松野官房長官が定例会見で共同声明を改正する方針を固めた事実はないと否定、ドル円は再び136円台乗せに。ユーロ円も振幅、144円台後半から143円台後半へ下落したあと、午後には再び144円台後半に戻した。ユーロドルは1.0582レベルと先週末安値を下回ったが、1.06台へと買い戻された。
ロンドン市場は、ドル売りが先行も続かず。ドル円は136円台割れから一時135.76近辺に安値を広げたが、その後は欧州株が堅調なことや米債利回りが小幅上昇したことなどを受けて136円台前半へと買い戻されている。ユーロドルは上に往って来い。1.06手前から1.0658近辺まで高値を伸ばしたあとは、1.0610付近に押し戻されている。独Ifo景況感指数が予想を上回る改善となり、Ifoエコノミストも本日のデータで景気後退の可能性が低下と高評価だった。ただ、対ポンドでの売りが入るなどユーロ買いは続かず。ポンドドルも1.21台後半から1.2242近辺まで買われたあとは、再び1.22台割れと振幅。対ユーロでの買い戻しが入った分、やや底堅く推移している。ユーロ円は144円台後半での推移。ポンド円は165円台後半から166円台前半へと小高い。全般的には目立った方向性は見いだせず、先週末の値動きに対する調整の動きが中心だったようだ。
NY市場では、ドル円の値動きに収束感がみられた。東京、ロンドン市場と振幅がみられたが、21日線137.60付近と200日線135.65付近の間での推移にとどまっている。クリスマス休暇に向けて次第に収束感が強まっている面もある。次のアクション待ちといった雰囲気。ユーロドルはロンドン時間に1.0660近辺まで上昇したものの、一時1.05台に伸び悩む展開。先週のFOMCやECB理事会を通過して、ユーロドルは次第に上値が重くなって来ている雰囲気はあるものの、1.06ドルの水準は維持しており、11月からのリバウンド相場は継続。ポンドドルも1.21ドル台前半に一時下落。21日線が1.2145付近に来ており、その水準を下抜ける場面もみられた。
20日
東京市場は、急激な円高の動きがみられた。無風が見込まれていた日銀金融政策決定会合で、長期金利の変動幅を従来のプラスマイナス0.25%から0.5%に拡大すると発表したことが背景。サプライズな結果にドル円は137円台から133.10付近まで急落した。クロス円でも軒並み円高が進行、ユーロ円は145円台後半から140円台まで、ポンド円は167円台から160円台まで急落した。ユーロドルやポンドドルもクロス円急落で上値を抑えられている。日銀は臨時オペを実施、10年超-25年の1000億円買い入れなどとともに、1-3、3-5年の指値オペを実施した。買い入れオペ(緩和政策)を行うことで、事実上の利上げとなる変動幅拡大との調整を図った形。声明で追加緩和姿勢が示されるなど、市場のインパクトを軽減する姿勢を示していたが、市場は変動幅拡大を強く見た格好。日本10年債利回りは一時0.45%台まで上昇した。
ロンドン市場は、円買いが継続。ドル円は東京市場で137円台から133円台へと急落。ロンドン市場ではさらに132.00近辺まで下値を広げた。ユーロ円は140円台前半、ポンド円は160円台前半、豪ドル円は88円ちょうど付近まで安値を広げている。黒田日銀総裁は会見で、「今回の措置は利上げではない、市場機能改善による緩和効果波及のため」と強調したが、市場では実質利上げとの見方が優勢だった。また、急速な円高進行について、鈴木財務相や神田財務官からは具体的なコメントは差し控えられていた。円相場が主役だったことで、ユーロドルやポンドドルは方向感に欠ける振幅。ユーロドルは1.05台後半に下落したあと1.06台前半へと上昇。ポンドドルは1.20台後半に下落したあと、1.22付近まで反発した。米10年債利回りは3.58%付近から一時3.70%付近まで上昇したが、ロンドン時間には3.64−3.67%に落ち着いている。欧州株、米株先物は軟調も、下げ幅は限定的。
NY市場で、ドル円は一時130円台半ばまで急落した。日銀が予想外のYCC変動幅拡大を発表した影響が続いている。きょうの決定会合での緩和政策修正は全く予想されていなかったことから、2016年1月にマイナス金利導入を決めて以来、間違いなく市場にとって最大のサプライズだった。市場からは、「今後、日本の企業や投資家からの自国へのレパトリ(資金回帰)の動きが例え緩やかだったとしても、来年の日銀の更なるタカ派措置に備え、円は今後買われる可能性がある」との声も出ている。本日の日銀をきっかけに昨年から続いていた上昇トレンドに大きな変曲点が訪れたとの声も。円相場主導の展開となるなかで、ユーロドルは1.06台での上下動、ポンドドルは1.21台での上下動に終始した。
21日
東京市場は、ドル円の下落が一服。前日の大荒れ相場の翌日でややドル買い・円売りが入った。前日NY市場で130.58近辺まで下落したあと、131円台後半まで戻して東京市場を迎えた。日経平均はマイナス圏で取引を開始、一時300円近い下げとなったあと、プラス圏に浮上すると円売りの動きが加わった。ドル円は132.30付近まで上昇する場面があった。その後は132円を挟んで売買が交錯した。ユーロ円は前日海外市場で138円台まで下落したあとは139円台後半へと下げ渋った。東京市場では140円台半ば超えまで一時買われた。ユーロドルは1.06台前半から1.0600付近へと小安い。
ロンドン市場は、前日の急速な円高の動きは一服。ただ、ドル円やクロス円は上値を抑えられている。ドル円はロンドン時間に入ると上値が重くなり131.50台まで再び軟化。その後は売買が交錯して131円後半へと落ち着いた。クロス円も同様に流れとなり、ロンドン時間には軟調も、前日安値には届かずとなっている。ユーロ円は140円台前半から139円台後半へ、ポンド円は161円手前から159円台後半へと軟化している。ポンドは対ユーロでも軟調。英国では医療関係者などのストの動きが報じられている。ポンドドルは1.21台後半から前半へと下落。ユーロドルは1.06台前半を離れず揉み合いに。総じて前日の日銀起因の円高は一服しており、クリスマス週の様子見ムードが広がっている。
NY市場で、ドル円は132円台まで買い戻しが入った。クリスマス週で市場参加者も少なくなっている中、株高がドル円をサポートしていた。ただ、ドル円は前日の急落から下げ止まっているものの上値は重い印象。前日の日銀のサプライズ変更を受けてドル円は一時130円台半ばまで急落したが、急落の割には戻りが鈍い。一部からは、来年の円高期待を表しているとの見方も出ているようだ。NY市場では、クリスマス週の薄商い、米経済指標、そして今後の金融政策を見極めようとする心理が混在していた。ユーロドルは一時1.05台も大方は1.06台での推移。ポンドドルは上値の重い展開で、一時1.20台半ばまで下落した。
22日
東京市場は、動意薄の展開。ドル円は午前に米債利回りの低下とともに132円台半ばから131.65近辺まで軟化。その後は132円付近まで下げ渋るも、大方は131円台後半で推移した。ユーロ円は午前に140円台割れまで沈んだあとは140円台を回復、午後は140.30付近に値動きが落ち着いた。ユーロドルはジリ高の展開で、午後には1.0649近辺に高値を伸ばした。
ロンドン市場では、ややドル買いの動き。ドル円は132円台を回復。、値幅は限定的ながら下値しっかり感がみられる展開。ユーロドルは1.0650超え水準から1.0610台までユーロ安・ドル高の動き。米10年債利回りが3.63%近辺から3.65%台へと上昇、ドル買いを下支えした。ユーロ円は140.60台まで買われたあと、140.10台まで反落。総じて、値幅自体は限定的。クリスマスシーズンに入り取引自体が低調となっている。トルコ中銀は政策金利を9%で据え置いた。前回会合後に利下げサイクル終了の意向を示しており、据え置きは市場予想通り、相場への影響は限定的。
NY市場は、ドル買いが優勢。ドル円は132円台を回復。第3四半期の米GDP確報値が上方修正されたことや、米新規失業保険申請件数が予想を下回ったことをきっけにドル買いの反応を見せた。また、米株式市場に再び売りが強まっており、ダウ平均が一時800ドル超下落する中、リスク回避のドル買いも見られた。 ただ、ドル円は日銀サプライズによる急落からの買い戻しが出ているものの、急落の割には戻りが鈍い印象もある。クリスマス休暇を前に市場参加者も少なくなる中、市場のモメンタムは低下しているようだ。 ユーロドルは1.05ドル台に値を落としたものの、下値を積極的に試す動きまでは見られてない。ポンドドルは瞬間的に1.20台を割り込む動きが見られた。
23日
東京市場は、落ち着いた展開。ドル円は下値がしっかりとなり、132円台前半から後半へと上昇。午後には132.81近辺に高値を伸ばした。値幅自体は限定的。取引参加者がかなり少なくなっており、勢いに欠けた。昨日の米株安を受けて日本株だけでなくアジア株も売りがでているが、ドル円、クロス円はやや円売り。日銀会合後の調整がじりじりと出ている印象だった。ユーロ円は140円台前半から140.80台までの上昇。ユーロドルは1.06を挟んで揉絵だった方向性はみられず。豪ドル/ドルは0.66台後半で底堅く推移した。
ロンドン市場は、落ち着いた取引が続いている。クリスマスの週末を控えて、ロンドン欧州勢には休暇を取っている参加者も多い模様。積極的な取引は手控えられている。ドル円は東京市場で実需の買いが入ったあとは、132円台後半での揉み合いが続いている。ロンドン序盤に下押しで132.50割れとなるも、その後は132.70付近まで底堅く推移している。ただ、133円台をうかがうほどの動意はみられていない。ユーロドルは1.0631近辺に高値を伸ばしたあとは一時1.06台割れ、その後は1.06台前半に落ち着いている。ポンドドルはやや騰勢が勝っており、1.2050割れから1.2082近辺へと小幅に高値を伸ばしている。欧州株や米株先物がおおむね堅調に推移。米10年債利回りは3.70%台へと小幅に上昇。クロス円はユーロ円が140円台後半での揉み合い、ポンド円が159円台後半から160円台乗せへと小高く推移している。この日は目立った英欧経済統計の発表や金融当局者の発言報道はなかった。
NY市場ではきょうもドル円は買い戻しの流れが続き、一時133円台に上昇した。たた、上値が重く、日銀サプライズからの戻りが鈍い雰囲気に変化はない。クリスマス休暇を前に市場参加者も少なくなって来ている中、市場のモメンタムは低下していたようだ。 

 

●為替相場 12/26-12/30 12/31 
まとめ12月26日から12月30日の週
26日からの週は、年末相場となるなかで方向性がはっきりしなかった。ドル円は日銀決定会合後の急落からの買い戻しがみられて134円台半ばまで上昇も、週後半には131円台へと売り戻された。ユーロドルは1.06台を中心とした上下動に終始。ポンドドルは1.20台割れでは買われ、1.21台乗せでは売られている。クリスマス休暇から年末相場の時期とあって、目立った経済統計や金融当局者の発言はみられず材料難だった。米債利回り動向や株式動向をにらみながらの神経質な相場が続いた。ドル指数はクリスマスまでの低下傾向は一服しているが、反発の動きも乏しかった。来年の相場を控えて、市場参加者は一休みといった一週間だった。
26日
東京市場は、ドル円が振幅。この日はクリスマスの振り替え休日で、日本や中国などごく一部を除いて休場となっている。アジア時間でも香港、シンガポール、豪州、NZなどが休場となっており、取引参加者はかなり少ない。また欧州、米国の市場も休場で、夕方以降取引が極端になくなると見込まれている。こうした中、ドル円は午前中に売りが入ると132.32近辺まで下落した。その後は買い戻されて132.60台をつけた。ユーロ円も141円台割れから130.30台まで下落したあと、140.90台まで戻した。ユーロドルは1.06台前半での推移が続いた。
ロンドン・NY市場はクリスマス関連の祝日で休場。
27日
東京市場は、ドル円が堅調。仲値にかけてドル手当ての注文が持ち込まれ、132.60台から133.17近辺まで上昇。その後は133円台割れから再び133.10台と売買が交錯した。午後は133円台割れ水準での推移が続いた。ユーロ円はドル円とともに141.10台から141.70付近まで上昇したあとは、141円台半ばで推移した。ユーロドルは朝方の1.0630近辺から1.0660近辺まで買われたあと、はレンジ相場を形成している。ドル円を中心に年末特有のフロー主導相場だった。
ロンドン市場は、円売りが優勢。中国株の上昇に続いて、取引が再開した欧州大陸株が堅調に推移しており、リスク選好の動きが広がっている。背景には、中国が入国の際のコロナ検査を緩和したことや、来年初頭から中国本土の居住者の海外旅行ビサ再開などが経済再生への期待を広げていることがある。ドル円は132円台から133円台に乗せると、前日の高値を上回り133.37近辺に高値を更新。クロス円も総じて堅調で、ユーロ円は142円台乗せ、ポンド円は161円台手前へと上昇。米10年債利回りが3.77%台へと上昇。ドル相場はドル買い圧力を受けつつも、リスク選好のドル売りが交錯している。ユーロドルはドル売りが勝って1.06台後半へ上昇も、ポンドドルは1.21台では上値が重くなり1.20台半ばへと押し戻されている。ユーロ買い・ポンド売りのフローも入っていた。
NY市場は、ややドル買いの動き。ドル円は133円台半ばまで上昇。中国政府が厳格なゼロコロナ政策を転換し、1月初旬に海外からの入国者の検疫要件を解除すると発表したことから、市場にはリスク選好の雰囲気が広がっている。ただ、ドルは年末年始で動きが鈍く、狭いレンジ内での取引に留まっている状況。米株式市場も買い先行で始まる中、リスク選好の円安が復活しており、ドル円、クロス円とも底堅い動きをしている。また、米寒波は大きな打撃を与えないとの見方もでていた。ユーロドルは1.06台前半から半ばでの推移。クリスマス休暇前の水準を踏襲している。リバウンド相場の流れには変化はみられていない。ポンドドルはロンドン市場で軟化したあと、1.20台前半で上値重く揉み合った。デギンドスECB副総裁は、「ユーロ圏は非常に困難な経済状況に直面しており、個人と企業が試されることになるだろう」と述べていた。
28日
東京市場は、ドル円が堅調。午前の取引で133円台前半から134.40付近まで買われた。1円超のドル高円安となった。日銀金融政策決定会合後の円買いに対して調整の動きが広がっていること、受渡日が年内最終日となることで外貨買い需要が広がったことなどが支えとなった。日銀の主な意見では、先日のイールドカーブコントロール(YCC)の調整は緩和解除や出口戦略ではないとの意見が複数の委員から出ていたことが明らかになったこともドル円の買い戻しをサポート。高値を付けた後は調整が入り134円ちょうど前後での推移。ユーロ円は142円台割れ水準から143円手前まで上昇した後、少し下げての揉み合いに。ユーロドルは1.06台前半で落ち着いた値動きだった。
ロンドン市場は、年末相場で方向感に欠ける展開。この日は英株式市場が連休明けで堅調に再開している。ただ、前日の米ナスダック指数の下落もあって独仏株式市場はやや売りに押されている。米株先物は反発の動きも、値幅は限定的。この日は主要な英欧経済統計発表や金融当局者の講演イベント予定はみられていない。豪ドルが堅調に推移しており、中国の経済再開の動きが好感されているもよう。ただ、ドル円、ユーロドル、ポンドドルなど主要通貨ペアは方向性に乏しい振幅となっている。米債利回りはやや低下しているが、ドル指数は前日比小幅高水準での揉み合いが続いている。ドル円は134円を挟んだ振幅。ユーロドルは1.06台前半から半ばでの取引。ポンドドルは1.20台前半から後半へと上昇。ユーロポンドは売りに押されているが、目立った材料は出ていない。
NY市場では、ドル買いが優勢。ドル円は朝方に133.50付近まで下落したあと、米債利回りが上昇に転じたことや、米株式市場が不安定な動きとなるなか、リスク回避のドル買いで134円台半ばへと再び買われた。市場では中国のゼロコロナ政策の終了が逆に、世界中での感染増加につながるのではとの警戒感が広がっている。欧州や米国で中国からの渡航者に対する検査を厳しくする措置が発表されていた。ユーロドルは1.06台前半へと伸び悩んだ。朝方には1.0675近辺まで上昇していたが、1.06台前半へと押し戻された。ポンドドルは一時1.21台まで回復していたものの滞空時間は短く、1.20台前半まで押し戻された。典型的な上値の重い値動きが続いている状況だった。
29日
東京市場は、円買いが優勢。日経平均の下落を背景としたリスク回避の円買いや、米10年債利回りの低下を受けたドル売り・円買いの動きがみられた。ドル円は序盤から円高方向に振れ、昼頃には133円台半ばと前日終値から1円近く下げた。午後には米10年債利回りの低下が一服したことで、133円台後半に戻したが、終盤には再び売られて133.47近辺に安値を広げた。クロス円も総じて円高傾向となり、ユーロ円は142円台割れから141.85近辺まで下落。年末年始を控えて市場参加者が少なくなるなか、ユーロドルは様子見ムードが広がっており、1.06台前半で小動きとなった。
ロンドン市場は、調整主導で方向感が見えにくい展開。ドル円はロンドン時間に入ると133.90近辺まで反発し、その後は揉み合いが続いている。米10年債利回りが3.83%台から3.87%台で下に往って来いとなっており、方向性を見せないことがドル相場にも反映されている。ユーロドルはやや買いが優勢。1.0610付近から1.0658近辺まで一時上昇、その後は1.06台前半に落ち着いている。ECB経済報告が公表されており、直近理事会での75bp利上げについて説明された。インフレ率が高過ぎるとの認識で、今後の利上げ継続姿勢が示されていた。ポンドドルは1.2010付近から1.2060付近での振幅。対ユーロではやや売りに押された。欧州株や米株先物は落ち着いた取引が続いており、ユーロ円は142円台割れから142円台前半へと買戻しが入る一方、ポンドドルは160円台後半でので底這い状態が続いている。総じて、年末相場のムードが広がり積極的な売買は行われていない印象。
NY市場では、ドル売りが優勢。米新規失業保険申請件数が前回から増加したことをきっかけにドル売りの反応が強まった。米株式市場で買い戻しが膨らんでおり、リスク回避のドル買いが一服したこともドル売りに。ドル円は133円台後半から一時132円台まで下落。週前半の上昇を戻している。年末で市場参加者が少ない中、流動性が低下しており、荒い値動となっている。ユーロドルは買い優勢だが、1.07台には届かず1.06台での上下動に変化はみられず。ポンドドルも買い優勢で1.2080付近まで買われる場面があった。ただ、上値追いまでには至らず、200日線が位置する1.2050付近に落ち着いた。米株式市場は堅調な動きをみせた、クロス円は上値重く推移。ユーロ円は141円台後半、ポンド円は160円台前半へと軟化した。
30日
東京市場は、円買いが優勢。ドル円は朝方の133.00付近での揉み合いを下放れると仲値公示に向けて132.39近辺まで安値を広げた。その後は下げ一服も戻りは132.70台までにとどまっている。ユーロ円も141円台後半から141円台前半へと下落。いったん141.50付近まで反発も、午後には141円割れを試す動きとなっている。ユーロドルは1.0650-60での揉み合いが続いたあと、足元ではやや売られて1.0640台で推移している。年末で仲値関連の円買いが入ったもよう。中国のコロナ感染拡大を警戒する面も指摘される。
ロンドン市場は、円高の動きが広がっている。特段の新規材料はでていないが、ドル円は28日NY市場につけた134.50近辺を戻り高値として再び下押しの流れに入っている。ロンドン朝方に132.50付近を下抜けると一時131.55近辺まで安値を広げた。その後は132円台を回復する場面もあったが、再び131円台後半へ押し戻されている。クロス円も円高の流れ。ユーロ円は一時140.50割れ、ポンド円は158.50割れまで下押しされた。足元では下げ渋りも東京市場の水準には戻しきれていない。ドル相場はややドル売りの動きが波及している。ユーロドルは引き続き1.06台での推移だが、1.0640付近から1.0680付近へと買われている。ポンドドルは1.20台での振幅で方向性に乏しい。ユーロ対ポンドでは振幅もややユーロ買いの動きとなっている。米10年債利回りは3.82%付近から3.85%付近へと上昇。欧州株や米株先物は上値重く推移している。全般にテーマ性に欠ける値動きで、年末を控えたポジション調整に終始している。
NY市場でドル円は昼過ぎから急速に売りが強まり、130円台に下落する場面が見られた。日本経済新聞が日銀が1月に示す消費者物価指数(生鮮食品を除く=コア)の前年度比上昇率の見通しを前回(10月時点)から上方修正する検討に入ったと伝えたことに敏感に反応した模様。2022年度(2.9%)、23年度(1.6%)の見通しの小幅上方修正を検討するほか、24年度(1.6%)も2%近くに引き上げる公算が大きいという。年末で流動性が低下している中、ドル円は急落した。 

 

●為替相場 1/2-1/6 1/7 
まとめ1月2日から1月6日の週
2日からの週は、ドル円が反発した。年明け相場で129.58近辺まで下値を広げた後は上昇の流れに転じた。薄商いのなかでの急落で売り一巡となっている。中国のコロナ規制緩和、開放政策への転換で中国・香港株が持ち直したことや、予想外の暖冬でエネルギー価格が低下し欧州株が堅調な年明け相場となったことなどがリスクセンチメントを好転させた。また、米FOMC議事録や一連の米経済統計の強含みなどで積極的な利上げ姿勢が再認識されたことがドル買いにもつながった。さらに、日銀関連では関係者発言としてYCCの再修正を急がずとしたことが円売りを誘う局面もあった。18日の日銀決定会合が意識されるなかで、円高一服となっている。ドル円は一時134円台をつけた。クロス円も総じて円安方向に振れるなかで、ドル指数は昨年末の停滞した動きからドル高方向に抜け出す動きとなった。ドル円上昇がドル高を主導した。しかし、週末の米雇用統計やISM非製造業景気指数を受けてドルは急速に戻し、ドル円は132円台に下落。
2日
ニューイヤー関連の祝日で世界的に休場が相次いだ。欧州の一部市場で取引されたが、ドル円は130円台後半、ユーロドルは1.06台後半、ポンドドルは1.20台後半を中心とした揉み合いが続いた。
3日
東京市場は正月休みのため休場。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。ドル円は年初の薄商いのなかでオセアニア市場で131.40近辺まで買われた後はすぐに売りに押された。アジア午後には129.52近辺まで下落。その後は下げ渋るなか、ロンドン勢はドル買いの動きで参入。ユーロドルは1.06台半ばから1.05台前半へ、ポンドドルは1.20台後半から1.19ちょうど付近まで急落した。米債利回りが低下し、欧州株や米株先物が堅調に推移するなかで、特段のドル買い材料はみあたらなかった。ドルが全面高となるなかで、ドル円も130.95近辺まで反発。しかし、131円台には乗せ切れずに130円台半ばから後半で売買が交錯している。クロス円は上値が重い。ユーロ円は138円台半ばから一時137.50割れ水準まで下落。ポンド円は156円台後半から155円台前半まで下落した。今週は米FOMC議事録や米雇用統計などのイベントを控えており、ドル相場に思惑が交錯しやすい。また、月半ばには日銀決定会合を控えており、政策修正観測を背景に円買い圧力も根強いようだ。
NY市場では、ドル円が反発。一時131円台まで買い戻された。ドルの買い戻しが強まった一方、日銀の政策変更と世界的な景気後退などから円高期待も高まっている模様。きょうのドル買い戻しについては、昨年末に薄商いの中で、今年はさらにドル安が進むというバイアスがかかっていた。本日の動きの一部は、こうしたフローの反転だとの声も出ていた。ユーロドルは1.05台前半まで一時下落。その後の反発は1.06台手前までだった。全般に1.05台で上値重く推移した。ポンドドルは反発。ロンドン時間には1.20台後半から一気に1.19付近まで下落したが、その動きに1.2050台まで反発が入った。しかし、上値は重く再び1.19台半ばへと押し戻された。薄商いのなかで荒っぽい値動きも、総じてドル買いが優勢だった。
4日
東京市場では、ドル円が131円を挟んで神経質に振幅。朝方は131.45近辺まで上昇したが、その後は一転して下落。130.58近辺まで下押しされたあとは130円台後半での取引に落ち着いた。昨日放送された文化放送のラジオ番組(12月19日収録)で、岸田首相が日銀との共同声明(アコード)の修正が必要か否かについて新総裁と協議と述べたことが円買いを誘う場面があった。ユーロ円は138円台半ば超えまで買われたあとは138円台前半に落ち着いた。ユーロドルは1.0541近辺まで軟化した後は1.05台後半へと買い戻された。
ロンドン市場は、ドル売りが先行した。米10年債利回りが前日終値水準を下回り、一時3.67%付近まで低下したことに反応。また、欧州株や米株先物が堅調に推移しており、リスク警戒のドル買いが緩和されたこともあった。ドル円は一時129.93近辺まで下落。その後は130円台半ばへと下げ渋っている。ドル売り圧力でユーロドルは1.05台後半から1.06台乗せ、ポンドドルは1.19台後半から1.20台後半へと上昇。特に、リスク動向に敏感な豪ドル/ドルは0.67台後半から0.68台後半へと上値を伸ばしている。序盤はドル円の売りに押されたクロス円も上昇に転じた。ユーロ円は138円台割れから138円台半ばへ、ポンド円は156円台後半から157円台後半まで上昇。独仏ユーロ圏の非製造業PMI確報値はいずれも上方改定された。一方、英住宅ローン承認件数が減速、消費者信用残高は増加と家計の厳しい状況が浮き彫りとなっていた。ただ、ユーロ・ポンドいずれも目立った反応はみせなかった。
NY市場では、円売りの動きが目立った。欧州株に続いて米株式市場も堅調に推移し、リスク選好的な円売りにつながった。12月のISM製造業景気指数が発表され、48.4と判断基準の50を2カ月連続で下回った。米製造業がFRBの利上げの影響を受け、将来の需要低迷に備え続けていることが示された。午後に12月FOMC分の議事録が公表され、為替市場はドル買いの反応が見られた。議事録ではインフレリスクを重要な要因と見ており、インフレがより持続的になる可能性があることを指摘していたことが明らかとなった。ただ、大きな反応には至っていない。ドル円は131円台を回復すると買いが加速、一時132.70付近まで買われた。円売りとドル買い双方に押し上げられた。クロス円も上昇。ユーロ円は138円台後半から140円台後半まえ、ポンド円は157円台後半から160円台乗せまで上伸した。ロンドン時間に1.06台乗せとなったユーロドルは売買が交錯し、1.06を挟んで振幅した。ポンドドルは1.20台を維持しつつも神経質に上下動した。
5日
東京市場では、ドル円が振幅。前日海外市場で130円割れ水準から132円台まで大幅上昇。高値圏で東京朝を迎えると、131.60台まで小反落。特段の材料はなく、不安定な動きのなかで調整が入った。その後は再び上昇。132円前後で少しもみ合った後、午後は132円台後半まで上昇し、午前の下げ分を解消した。米株安の動きが広がりリスク警戒のドル買いが入ったこと、米10年債利回りが上昇したことなどに反応。ユーロ円はドル円の下げ局面で140円割れを付けるも、その後140.60台へと上昇。ユーロドルは1.0631から1.0600付近で振幅した。
ロンドン市場は、全般に落ち着いたムード。ドル円は買い一時132.90近辺まで高値を伸ばしたが、その後は132.50割れへと売り戻されている。ユーロ円も141.09近辺まで買われたあとは140円台後半へと小反落。いずれも前日からの円安水準は維持している。ポンドには対ユーロでの売りが入り、ポンド円は一時159円を割り込んだが、すぐに買い戻された。ドル相場は方向感に欠ける取引。ユーロドルは1.0591近辺まで下押しされたあとは1.0630付近まで下げ渋り。ポンドドルは1.2000近辺まで下押しも、1.20台前半で下げ一服。欧州株や米株先物は前日の上昇のあとで、調整売りに押されるも、足元では下げ渋りとなっている。米10年債利回りは3.68%台から3.72%付近での上下動で方向性に欠けている。伊CPIはようやく小幅の低下と、ピークアウトの兆し。英非製造業PMI確報値は若干の下方修正にとどまった。
NY市場は、ドル買いが強まった。12月のADP雇用統計は23.5万人増と予想(15万人増)を上回ったほか、12月最終週の米新規失業保険申請件数も20.4万人と9月下旬以来の低水準となったことが背景。インフレはピークの兆候も見せ始めているが、労働市場が底堅い場合、インフレが思ったほど鈍化せずに、FRBの引き締め政策も長期化の可能性が高まる。今回の数字からは、市場の早期利下げ期待は正当化されそうにはないようだ。ドル円は一時134円台まで上昇、その後133円付近まで反落して下げ止まった。ユーロドルは1.05台前半に、ポンドドルは1.18台まで下落した。ただ、ユーロにはECBの利上げサイクルがFRBよりも長引くとの見方がでていた。一方、英中銀は今年中に利下げを実施するとの観測があった。
6日
東京市場は円売りが優勢。ドル円は前日海外市場での振幅のあと133円台前半で取引を開始。昼前には133.80付近まで再び買われた。中国政府が不動産規制である3つのレッドライン(三条紅線)の緩和方針を示したことで、香港。中国をはじめとする株高や、人民元、豪ドルなどの買いを誘い、リスク選好からドル円でも円売りが強まった。午後にはさらに133.40付近まで上昇。通信社が複数関係者の話として、日銀は12月のYCC修正の影響を見極めるため、YCCの再修正を急いでいないと報じたことに反応した。クロス円も上昇。ユーロ円は140円台前半から141円台前半まで買われた。ユーロドルは前日に下落した1.05台前半での推移で、1.0510付近までじり安となった。
ロンドン市場は、ドル高の地合いが継続。前日のNY市場では米ADP雇用統計や新規失業保険申請件数の強い内容を受けて、ドル買いが強まった。今日もその流れが継続している。特にドル円は堅調。東京朝方の133円台前半からロンドン序盤には134.59近辺まで高値を伸ばした。昨年12月20日以来の高値水準。日銀は次回18日の会合で前回の変動幅拡大の結果を評価したいとし、一段のYCC変動幅拡大を急がずとの関係者発言もドル円の上昇を後押しした。ユーロドルは前日の下落のあとしばらく1.05台前半で揉み合ったが、ロンドン時間に入ると一時1.0497近辺まで下値を広げた。ポンドドルは1.19台前半でじり高となっていたが、ロンドン勢は売りを強め、安値を1.1850近辺まで広げている。対ユーロでもポンド売りが優勢。英建設業PMIが低下するなど英経済が弱っている状況が示された。この日発表された12月ユーロ圏消費者物価速報は前年比+9.2%と予想以上に伸びが鈍化したが、コア前年比は+5.2%と過去最高水準を記録。根強いインフレ圧力が示された。欧州株や米株先物は米雇用統計待ちで小動き。
NY市場は2つの米経済指標を経てドル売りが強まった。12月の米雇用統計とISM非製造業景気指数が発表され、平均時給の伸び鈍化は幾分安心感をもたらしたほか、ISM指数も判断基準の50も下回った。ドル円は米雇用統計発表前は強い内容を期待して135円をうかがう展開も見せていたが、ネガティブ・サプライズに一気に132円ちょうど付近まで急落。本日の21日線は133.85付近に来ているが、その水準で上値を抑えられた格好。 

 

●為替相場 1/9-1/13 1/14 
まとめ1月9日から1月13日の週
9日からの週は、ドル売りと円買いが強まった。ドル安は、木曜日に発表された米消費者物価指数が事前予想通りに大幅に伸び鈍化となったことが主因。先週末の米雇用統計での賃金上昇鈍化や米ISM非製造業景況指数の予想外の低下とともに、ドル売りの流れが強まっている。2月FOMC会合での25bp利上げ観測が一段と高まった。ドル円は133円付近で上値を抑えられ、米CPI後には128円台まで下落した。ユーロドルは1.07台で底堅く推移したあと、1.08台乗せ。ポンドドルは1.21台での取引から一時1.22台乗せとなる場面があった。円相場は円高に振れた。次週18日の日銀決定会合結果発表を控えて、日銀が大規模緩和の副作用を点検するとのメディア報道に反応した。これを受けて週末には本邦10年債利回りが0.50%を上回る動きをみせた。ドル円は127円台へと一段と売られて週の取引を終えた。クロス円でも円高が進行。ユーロ円は142円台から128円台へ、ポンド円は161円付近から一時155円台まで下落した。
9日
東京市場は成人の日で休場。
ロンドン市場は、リスク選好の動き。先週末のNY市場で米雇用統計、米ISM非製造業景況指数の結果内容を受けて米債利回りが低下、米株や欧州株が大幅高となった。賃金上昇の伸び鈍化や非製造業指数の予想以上の落ち込みが、インフレ鈍化や米利上げペース鈍化期待につながっていた。週明けもアジア株が堅調に取引をスタート。続く欧州株や米株先物も騰勢を維持している。為替市場ではドル円やクロス円が堅調に推移。ドル相場はドル安の動きが先行も、足元ではややその矛先は鈍っている。円相場主導の展開になっている。ドル円はアジア市場で131.31近辺まで安値を広げたあと、ロンドン時間には132.66近辺まで反発。クロス円も堅調で、ユーロ円は140.17近辺を安値に141.57近辺へ、ポンド円は159.31近辺から161.24近辺まで上昇している。米10年債利回りは3.56%付近から3.60%付近へと下げ一服。NY原油先物は74ドル台から76ドル台へと上昇している。
NY市場は、ドル売りが優勢。先週末からの流れを受けて、週明けNY市場も株高となりリスク選好ムードが広がった。ドル円は一時131円台半ばに伸び悩んだ。ドル安と同時に円安もみられ、ドル円の下値はサポートされているものの、21日線を下回る水準で推移しており、昨年10月以降の下げトレンドを継続している。ユーロドルは買い戻しが加速し、1.07台半ばまで上昇。1.06台前半の21日線を上放れている。ユーロ圏のコアインフレと経済活動のデータは予想を上回って推移しており、ECBのタカ派スタンスを維持しやすくしているという。半面、米経済指標のサプライズはネガティブな内容が多く見られている。ポンドドルは一時1.22台まで回復。先週末の米経済指標を経てセンチメントが改善しており、主要通貨の中でもリスクに敏感なポンドは買い戻しが膨らんでいる。きょうの上げで200日線を上放れる動きを見せ、21日線も回復している。一方、ピル英中銀チーフエコノミストは、英雇用指標は変わり始めており、労働市場の減速はインフレリスクを低下させる可能性に言及していた。
10日
東京市場は、円買い先行もその後は調整が入った。朝方に発表された東京消費者物価指数(生鮮除く)前年比が+4.0%と約40年ぶりの高水準となった。これを受けて日銀の政策修正への思惑が広がりドル円は131.30台まで下落した。しかし、前日安値には届かず。午後には132円台を一時回復したあと、131円台後半に落ち着いた。ユーロドルは様子見ムード。朝から1.0721から44レベルまでの23ポイントレンジとなっている。ポンドドルも1.21台後半で目立った方向性が見られず。
ロンドン市場は、方向性がはっきりせず。NY時間にパウエルFRB議長がスウェーデン中銀主催の国際シンポジウムで「中央銀行の独立性と権限」に関する討論会に参加する。今年初の発言機会であり、米雇用統計後で次に米消費者物価指数の発表を控えるタイミングとなるなかで、市場の関心が集まっている。ロンドン市場ではイベントを控えて様子見ムードが広がっている。ドル円は132円を挟む振幅で、132.29を高値に131.70台までの値動き。ユーロ円は141.93近辺まで買われたあとは141.50割れまで反落し、その後はレンジ取引に。ユーロドルは前日に買われた高値圏で動意薄。本日これまでのレンジは1.0721から1.0752までと狭い。欧州株や米株先物は調整売りに押されているが、NY原油先物は74ドル割れから75ドル台へと反発。米10年債利回りは3.55%付近へと小幅上昇。いずれも調整の動きが主体となっているようだ。
NY市場は、全体的に様子見ムードが強かった。市場はパウエルFRB議長が本日の講演でタカ派な言及をするのではと警戒していた。しかし、議長は経済や政策の見通しについての直接の言及をしなかったことからドルは上げを戻している。ドル円はNY朝方に132.50付近まで買われたあとは、131.60台まで反落。その後は132円付近での取引に落ち着いた。次の材料として市場は木曜日の米消費者物価指数の結果待ちになっていた。ユーロドルは上昇一服も、1.07台でのしっかりとした値動きが続いた。昨年末まではユーロに悲観的な見方も多かったが、想定外の暖冬と天然ガス価格の下落がその見方を逆転させているようだ。米大手銀からは、もはやユーロ圏のリセッション(景気後退)を予想していないとの声もでていた。ポンドドルは1.21台半ばでの推移。米株高を受けて景気に敏感なポンドも買いの流れを維持している。
11日
東京市場は、ドル円が上に往って来い。買いが先行し午前中は132.20台から前日海外市場でつけた132.47レベルを超えて132.58レベルまで上昇。ユーロ円も141円台から142.27レベルに上昇と、円安の動きが優勢。日経平均の上昇などリスク選好の動きが背景。しかし、午後には一転してドル売りが優勢に。ドル円は132.10台へと下落。ユーロドルは1.0757近辺まで買われた。米債利回りがやや低下、その後下げ止まりもドル売りは続いた。11月の豪小売売上高、月次消費者物価指数は、ともに市場予想を上回った。ただ、豪ドル買いの動きはすぐに収束、限定的な動きにとどまった。一方、午後にはドル安のなかで豪ドル/ドルは0.69台乗せへと買われた。
ロンドン市場は、ドル買い先行も続かず。ドル円は132.75近辺に高値を伸ばしたあと132円台前半から半ばへと押し戻されている。欧州株や米株先物は堅調に推移。あすの米消費者物価指数発表を控えて、インフレ率鈍化期待は温存されているもよう。ユーロドルは1.1757レベルを高値に一時1.0726レベルまで下押しされたが、再び1.07台半ばへと下げ渋り。ユーロ円は142.51レベルまで買われたあとは142円台前半に高止まり。一方、ポンドは上値重く推移。ポンドドルは1.2178レベルの高値をつけたあとは1.2120台に軟化している。ポンド円も161.21レベルを高値に160.50付近まで下押しされている。ユーロ買い・ポンド売りが持ち込まれた。仏中銀総裁やオーストリア中銀総裁からは、今後数カ月の追加緩和が必要、コアインフレはピークに達していないとの発言が報じられており、積極的な利上げ姿勢が示されていた。この日は特段の英中銀当局者の発言はないが、先だって利上げを開始、景気後退が懸念される英国とは今後の利上げ姿勢の違いが想起されていたようだ。
NY市場では、ドルが弱含み。ドル円は132円台での推移。ドルは軟調なもののリスク選好の円安がドル円を下支えした。ただ、市場では明日の米消費者物価指数(CPI)の発表を見極めたい雰囲気が強まり、基本的には様子見姿勢が強い。一部からは、明日の米CPIの結果を確認し、米利上げペース鈍化を材料にドルは売られるとの見方も出ている。ユーロドルは上値追いの流れを続けて1.0775付近まで一時上昇した。21日線の上での推移が続いている。市場はユーロ圏のインフレ固着への懸念で、FRB以上にECBの利上げ期待を高めている雰囲気も。ポンドドルはやや戻り売りに押されたものの、1.21台で底堅く推移した。ポンドにとっては英中銀の利上げペース鈍化観測の一方、リスクセンチメントに反応しやすい面も指摘されていた。
12日
東京市場は、円買いが優勢。東京朝方に、日銀が大規模緩和の副作用を点検するとのメディア報道が流れたことがきっかけ。ドル円は132円台割れへと軟化。午後には131.37近辺まで安値を広げた。前日終値からは1円以上の下落となった。クロス円も総じて下落。ユーロ円は午前からの円買いの動きが重石となり、午後には141.54付近とこの日の安値を更新した。ユーロドルは米10年債利回りの低下でややドル安傾向となり、一時1.0775付近まで強含んだ。その後は今晩の12月米消費者物価指数(CPI)発表を前に徐々に様子見ムードが広がり、値幅は限定的となった。
ロンドン市場は、再び円買いが強まった。東京朝方の日銀に関するメディア報道を受けてドル円は一段と売られ、ロンドン市場でも安値を130.86近辺まで広げた。円は全面高となり、ユーロ円は141円台割れ、ポンド円は159円台前半、豪ドル円は90円台前半に安値を広げている。この日は米消費者物価指数(CPI)の発表を控えており、発表後のドル相場の急変動が警戒されるなかで、円相場の材料でドル円が先立って下落した格好。ユーロドルは1.07台での上下動に終始しており、米CPI待ちムード。ECB調査で消費者のインフレ期待がやや後退した。一方、ECB経済報告では根強いインフレリスクが警戒されていた。ポンドドルは1.21台での上下動のなかで高値を1.2190近辺まで伸ばした。対ユーロでのポンド買いも観測されている。英国とEUが新たな交渉で離脱後の問題解決に向け最終的合意目指すとの一部報道が好感された面があったようだ。
NY市場では、米CPI発表を受けてドル売りが強まった。12月の米CPIは予想範囲内の内容となった。総合指数は前月比で0.1%低下し、前年比では6.5%に鈍化した。また、コア指数も前年比で5.7%に伸びが鈍化。ガソリンが前月比で9.4%低下したほか、輸送、中古車、航空運賃の下げが寄与した。インフレの伸び鈍化を示す内容ではあるが、依然として高水準ではあり、FRBが注目しているサービスインフレもなお上昇が続いている。市場の一部からは予想を下回るのではとの期待も出ていただけに、発表直後は若干失望感も出ていた。しかし、次回のFOMCでの利上げは0.25%ポイントとの見方を市場はさらに強めたようで、FF金利先物市場では、その確率を90%近辺まで引き上げている。また、同時刻に伝わったハーカー・フィラデルフィア連銀総裁の「今後は0.25%ポイント利上げが適切になる」との発言もドル売りを誘っていた。ドル円は一時128円台に急落。ユーロドルは1.08台半ばへ、ポンドドルは1.22台に上昇した。
13日
東京市場は、円買いが先行。ドル円は午前の取引で128.66近辺に安値を広げた。前日の米消費者物価指数が予想通りの伸び鈍化となったことで、ドル全般に軟化した経緯がある。また、円相場にとっては、来週の日銀金融政策決定会合を前にして、大規模緩和の副作用を点検との報道があったことが円買いを誘った。午後には129円台前半で取引は落ち着いたが、日経平均が330円安で引けるなど円高とリスク回避の負のスパイラルが上値を抑えたようだ。ユーロ円は139円台後半に安値を広げたあとは、140円付近で揉み合い。ユーロドルは1.0868近辺に上昇したあとは1.08台前半から半ばに高止まりした。
ロンドン市場は、円高圧力が継続。ドル円は序盤に128.11近辺まで下落、昨年5月末以来の安値水準となった。その後は128円台半ばへと調整が入った。ユーロドルは買いが先行し1.0868近辺の高値をつけたあとは、調整売りに押されて1.0810付近へと反落。ポンドドルも同様に1.2248近辺まで買われたあとは1.2180台へと反落。クロス円の上値が重い。ユーロ円は序盤に140円付近から139円手前まで下落し、その後138円台半ばまで反発。しかし、上値は重く139円台割れまで再び下押しされた。ポンド円も157円台から156.60付近まで下落。その後一時157円台へと反発も再び156円台後半へ。この日は本邦10年債利回りが一時0.545%に上昇するなど、来週の日銀金融政策決定会合でのYCC変動幅拡大や撤廃への思惑が根強いようだ。 

 

●為替相場 1/16-1/20 1/21 
まとめ1月16日から1月20日の週
16日からの週は、17日、18日の日銀金融政策決定会合に大きく振り回される展開となった。12日の新聞記事で大規模緩和の副作用を点検と報じられたことで、今回の日銀会合で長短金利操作(YCC)の再修正もしくは撤廃に動くのではとの期待が広がり、円高が強まった流れが継続する形で、16日の市場で127円23銭前後までと、昨年5月以来の安値を付けた。その後は少し落ち着きを取り戻し、日銀会合前の調整もあって129円台を回復する場面が見られたが、日本10年国債利回りが0.5%を超えるなど、債券市場でのYCC再修正期待が広がる中、128円台前半で会合結果を迎えた。共通担保オペ拡充などの決定があったが、注目されたYCCは現状維持となり、131円台半ば超えまでドル円は急騰。ただ、日本勢を中心に現状維持見通しを見込む動きが大勢であったことや、新総裁体制下となる4月以降に緩和後退が進むという見通しが維持されたことで円安に対する調整が入り、さらに米生産者物価指数や小売売上高の弱さもあって127円台まで急落と荒っぽい動きを見せあ。その後128円台を中心とした推移が見られたが、週末を前に株高などをきっかけにドル高円安が強まり、130円台を回復している。
16日
東京市場は、円買い先行も一服。ドル円は朝方に128円台乗せまで上昇も、昼前には127.23近辺まで下落、昨年5月30日以来のドル安・円高水準となった。午後には127円台後半へと買い戻されている。ユーロ円は138円台前半から139円手前まで買われたあとは138円台半ばを挟み取引に落ち着いた。週明けも本邦10年債利回りが0.5%を一時超えたことが、円買い圧力となっていた。米国勢がキング牧師の日で休場となることで取引参加者が少なくなっており、急速な円買いに対して警戒感が出ていた。ユーロドルは1.0830付近から1.0874近辺まで上昇した。先週の米CPI発表後のドル売り圧力は根強い。
ロンドン市場は、円高とドル安に調整が入った。ドル円は買戻しが優勢になっている。ロンドン時間に入ると128円台回復から一時128.87近辺まで上昇した。その後は買い一服も128円台は維持している。ユーロ円も138.20近辺を安値に一時139.28近辺まで反発。その後は139円を挟んで高止まり。ユーロドルは上値重く推移。ロンドン序盤に1.0802近辺まで下押しされ、足元では1.08台前半で推移している。このあとのNY市場ではキング牧師記念日のため株式と債券市場が休場となる。手掛かりに欠けるなかで、ひとまず短期ポジションに手仕舞いが入った格好。市場は18日の日銀金融政策決定会合の結果を注視しており、ドル円やクロス円の1週間ボラティリティーは20%超の高水準。世界経済フォーラム(WEF)の最新の調査によると、今年は世界的なリセッションとなる可能性が高いとしたが、年末までには生活水準の危機は緩和されるとの見方が大勢を占めていた。
NY市場は「キング牧師生誕記念日」のため休場。
17日
東京市場は、ドル買いが優勢。ドル円は朝方に128.22近辺まで下押しされたが、再び買われて129円台乗せから昼前には129.20付近まで高値を伸ばした。朝の安値からは約1円の上昇となった。ユーロドルは1.0830台から1.0807近辺へと軟化、ドル買いに押された。ユーロ円は139円台半ば超えまで上昇、円売りも優勢だった。午後には値動きが落ち着き、ドル円は128.60前後、ユーロドルは1.0830台を一時回復とドル買いは一服した。円売りに関しては、目立った材料が出たわけではなく明日の日銀金融政策決定会合をにらんだ展開。先週後半から今週初めにかけて、今回の会合でYCCの再修正があるとの期待が広がっていたが、直前になって、YCCの再修正まで見込むのは行き過ぎた期待感との思惑が広がっており、円買いに対する調整が入ったものと見られる。
ロンドン市場は、ポンド買いが優勢。ロンドン朝方に発表された9−11月英ILO雇用統計で、賃金の伸びが予想を上回ったことに反応した。ポンドドルは発表前に1.2170近辺まで下落していたが、発表後は上昇に転じると高値を1.2230近辺に伸ばした。その後は再び1.22台割れとなるも1.22台に戻している。ポンド円は157円付近の揉み合いを上放れて157.50付近へ上昇。ユーロポンドは0.8880台から0.8850台へと下落した。その他の主要通貨は方向性に欠ける上下動。ドル円は128.50割れから129円台乗せまでの往来相場、ユーロドルは1.0810付近から1.0840付近で何度も振幅している。独ZEW景況感指数は予想以上に改善、昨年2月以来のプラス圏を回復した。ただ、現況指数の弱さもあってユーロ買い反応は続かず。米10年債利回りは上昇して取引を再開。欧州株や米株先物は売り優勢に推移している。全般に方向性には乏しく、明日の日銀決定会合の結果待ちのムードになっている。
NY市場では、米株反落でドル円が伸び悩んだ。これまでのリスク選好の動きが一服しており、128円ちょうど付近まで反落した。その後は128円台前半で揉み合っている。あすの日銀決定会合の結果発表については、政策の再調整をめぐり様々な観測が飛び交っている。YCCの10年物国債利回りの許容変動幅の拡大、YCCの終了、基準点の5年物への変更、スワップ金利への介入など。ドル円相場は落ち着きなく振幅することとなっていた。ユーロドルは大幅反落。ロンドン市場で1.08台前半から1.0870付近まで上伸も、NY時間に入ると流れが反転、1.0770台まで反落した。ECB理事などから、ラガルドECB総裁が12月に示したよりも遅いペースで利上げを行うことを検討し始めている、との報道が伝わった。2月の0.50%ポイントの利上げの可能性は依然として高いが、続く3月の理事会での0.25%ポイントの利上げを行うとの見通しが支持を集めているという。3月理事会でのスタッフ見通しがカギになるもよう。一方、ポンドドルは1.22台後半と本日の高値圏で推移した。ロンドン朝方に発表された英賃金上昇の伸びが引き続き材料視されており、対ユーロなどでもポンド買いが続いた。
18日
東京市場は、日銀決定会合をめぐり円売りが強まった。ドル円は早朝に128円台割れとなったあとは129円付近まで反発。その後再び128円台前半で日銀決定会合の結果発表を迎えた。日銀はYCC変動幅を据え置いた。共通担保オペ拡充なども発表された。市場では変動幅拡大もしくは撤廃との見方が優勢だったことで据え置き発表に10年債利回りが急低下、円売りが殺到した。ドル円は130円台乗せから131.58近辺まで急伸。ユーロ円は138円台半ば付近から141円台後半まで上伸。ポンド円は157円台後半から161.50超えまで買われた。日銀展望レポートでは経済成長見通しの引き下げがみられたが、23年度の物価見通しが据え置かれるなど、物価については慎重な姿勢が見られた。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。この日の注目イベント、日銀決定会合でYCC変動幅が据え置かれたことを受けて、ドル円は128円台から131円台まで急伸した。しかし、高値131.58レベルをつけたあとは上値重く推移。黒田日銀総裁会見では「長期金利の変動幅をさらに拡大する必要はない」と明言も、円売り反応は限定的だった。ロンドン勢が全般的にドル売りを進めるなかで129円手前へと大きく反落している。ユーロドルは1.07台後半から1.08台後半へ、ポンドドルは1.22台後半から1.23台半ばへと上昇している。米10年債利回りは日銀決定会合時に3.55%付近から3.46%台まで急低下したあとは、3.50%以下の低水準で揉み合っている。特段、新たなドル売り材料が出たわけではないが、日銀イベントを通過して米経済統計の鈍化傾向に基づいたドル売り基調に回帰している。この日は英欧消費者物価指数が発表されており、いずれもヘッドライン前年比の伸びが鈍化する一方、コア前年比は底堅さを維持していた。また、仏中銀総裁は、「ラガルド総裁の50bp利上げガイダンスは引き続き有効だ」としており、インフレ抑制に意欲的な姿勢を示していた。
NY市場では、ドル売りが先行も後半には戻す動き。12月の米小売売上高と米生産者物価指数(PPI)がともに予想を下回りFRBの利上げペース縮小観測を裏付ける内容となったことがドル売りを加速させた。ただ、後半になると米株が大幅安となるなど景気の先行き不透明感も強まったことから、リスク回避のドル買いも見られた。ドル円は一時127円台に下落、日銀の決定を受けたこの日の上げをNY時間にかけて完全に失った格好。ユーロドルは1.08台後半まで上昇する場面が見られたが、米株が次第に下げ幅を拡大する中、1.07台に伸び悩んだ。ダボス会議に出席していたドイツのショルツ首相が、ドイツ経済はリセッション(景気後退)を回避できると自信を示していたが、市場からも同様の声が出ていた。ポンドドルは買いが強まり、一時1.2435付近まで上昇し、先月に上値を拒んだ水準に並ぶ場面も見られた。ただ、その後は1.23台前半に伸び悩む展開。英国ではサービス関連のインフレが依然として高水準で、英中銀の追加利上げを正当化するとの見方が多かった。
19日
東京市場は、ドル円の上値が重かった。前日海外市場では127円台まで大幅下落。その後の買い戻しは129円手前まで。東京市場では米株に続いて日経平均も下落するなか、ドル円はじり安となった。午後にはやや下げ足を速めて再び128円台を割り込んでいる。一時127.76近辺と前日NY終値からは1円超のドル安・円高進行となった。ユーロ円も円買いに押されて137.92近辺まで下落、およそ2週間ぶりの安値水準となった。ユーロドルは1.07台後半から1.08近辺での揉み合いに終始。豪雇用統計の冴えない結果を受けて、豪ドル円は88円台後半から88.12近辺まで下落した。
ロンドン市場は、ユーロが堅調。欧州株や米株先物が軟調に推移しているが、為替市場では円安・ドル安の動き。前日の値動きに調整が入る形になっている。そのなかで特にユーロ買いの動きが目立っている。クノット・オランダ中銀総裁が「ECBは複数回の50bp利上げを計画している、50bp利上げを1回実施しただけでやめることはないだろう」と述べたことに反応した。また、ラガルドECB総裁がインフレ抑制に意欲を見せたことも下支えとなった。ユーロドルは1.07台後半から1.0838近辺に高値を伸ばした。ユーロ円は東京午後に138円台割れを示現した後は買いの流れが続いて139.43近辺に高値を更新している。ユーロは対ポンドでも堅調。ポンド円は1.23台前半での揉み合いに終始している。ポンド円は円安に流れが転じて157円台後半から158.60付近へと下げ渋り。ドル円は前日からの安値圏で下げ一服。127.76近辺を安値に128.60付近へ買い戻されている。
NY市場は、128円台での推移となった。18日に127円台まで下げた後、129円手前が重くなったこともあり、ロンドン市場からNY朝にかけて128円台後半まで上昇した後、上値追いの勢いに欠ける展開となった。もっとも、下値もしっかりで上下ともに動きに乏しい落ち着いた動き。ユーロドルは朝方1.07台を付けるなど、ドル高の流れが優勢となったが、18日の仏中銀総裁に続いてオランダ中銀総裁が0.5%利上げの継続必要性に言及。12月のECB理事会議事要旨で0.75%利上げ主張が複数見られたことなどもあって、1.08台に買い戻しが入っている。
20日
東京市場は前日海外市場でのドル高に対する調整が朝方入ったものの、すぐにドル高円安基調に転じ、129円30銭近くまで上値を伸ばした。21日から春節に入る中国市場が堅調、香港市場も中国本土株の堅調な動きもあって大きくプラスなど、アジア株の堅調地合いと、米株先物の買い戻しなどがリスク選好の円売りにつながった。ユーロ円が朝の139円00銭台から午後に140円台まで。ポンド円が159円00銭台から159円98銭までとクロス円も軒並みの円売りとなっている。
ロンドン市場では序盤に東京午後の円売りの調整が入ったものの、その後再び円が大きく売られた。ドル円は128円70銭台までいったん調整が入った後、130円台まで大きく買いが進んだ。強く始まった欧州株の動きにリスク選好の円売りが入ったことや、その後米債利回りの上昇が見られドル買いにつながったことなどがドル円を支えた。クロス円も軒並みの上昇で東京午後の円売り局面では160円に届かなかったポンド円は160円80銭台までと大きく上値を伸ばした。円主導の展開でユーロドルなどは値幅が限定的。序盤のドル円の下げ局面でドル安基調から1.0860手前まで上昇した後、1.0810台を付けるなど、ドル高の動きが広がったが、対円でのユーロ買いなどから、ドル円に比べると動きが落ち着いていた。
NY市場のドル円は買い戻しが強まり、一時130円台半ばまで回復する場面も見られた。アジア株や欧州株が堅調で、前日までの米株式市場の下落に伴うリスク回避が一服する中、円安がドル円を押し上げていた模様。下値では実需の買いも観測され、日銀の早期緩和解除への期待が大きく後退する中、ドル円は買い戻しが膨らんだようだ。一方、きょうは米株の下げも一服し、リスク回避のドル買いが後退。後半のドル円は伸び悩む動きが見られた。 

 

●為替相場 1/23-1/27 1/28
まとめ1月23日から1月27日の週
23日からの週は、売買が交錯して方向性が見出しにくかった。ドル指数はこれまでのドル安の流れを維持しつつも、一段の下押しの動きは緩やかになっている。株式市場が堅調であることからドル円やクロス円は下支えされている。ただ、今週に入ってから一段高の動きが顕著なのは豪ドル円くらいで、全体では高止まり状態が続いた。豪ドル買いは同国のインフレの上振れが背景にある。米経済指標は年初から弱めの結果が続いていたが、今週発表された米PMI速報値、GDP速報値、耐久財受注、新規失業保険申請件数などはいずれも回復傾向が示されていた。高インフレの影響についてはまだ予断を許さないものの、中国の経済再開の動きや欧州の暖冬によるエネルギー危機の解消など明るい材料が多くなっているようだ。また、米企業決算ではIT関連の決算が無事に通過しており、ナスダック指数が堅調だった。来週は米国、英国、欧州の中央銀行が金融政策を発表する。また、週末には米雇用統計発表が控えている。政策金利については上げ幅の見通しが市場でほぼ固まっており、市場の安定に寄与していた。ドル円は129円から131円、ユーロドルは1.08台半ばから1.09台前半、ポンドドルは1.22台後半から1.24台前半で上下動した。
23日
東京市場は、ドル売り先行も午後にはドル買い優勢に。ドル円は先週末の流れを受けてドル売り・円買いが先行。昼にかけて129.04近辺まで値を落とした。先週金曜日にタカ派で知られるウォラーFRB理事が、次回のFOMCでの0.25%への利上げ幅再縮小見通しに言及したことで、大幅利上げ継続期待が後退、ドル売りが入りやすい地合いとなった。米10年債利回りの低下などもドル売りを誘った。午後に入って一転してドル買い円売りとなった。先週の日銀金融政策会合で拡充が決まった共通担保資金供給オペについて、5年物1兆円の実施が通告され、円売りにつながった。応札は3.1兆円となっており、公表後に円売りが強まって朝の高値を超えて129.90台を付けた。ユーロ円は午前中140円台後半での推移となっていたが、午後のドル円の上昇に141円台半ば超えまで上昇。ユーロドルは午前中のドル売りに1.0850ドル前後から1.09ドル前後へ上昇。午後はユーロ円の買いなどが支えとなり、高値圏で揉み合い。
ロンドン市場は、ドル買い・円売りが優勢。ドル円はロンドン時間でも買いが継続し、130.30付近まで一段と上昇。東京市場午後からの流れとともに、堅調な動きで始まった欧州株式市場動向も下支えに。129.60台まで調整が入ったが、再び130.40台をつけた。ユーロ円は東京昼頃につけた140.60台を安値にロンドン午前には142円台を付けた。その後はドル円の調整とともに141円台前半まで反落。対ドルでのユーロ売りが出た分、ドル円に比べて上昇の勢いが見られず午前の高値に届いていない。株高を好感したリスク選好もあって豪ドル円が堅調。東京昼頃につけた90.10台の安値から91.20台まで1円超の上昇。その後の押し目も限定的。ドル相場はドル買いが優勢。ユーロドルは1.0920台まで買われたあとは、1.0870割れへと反落。豪ドル/ドルは0.7010台に上昇したあとは0.6980台へと上昇一服。
NY市場では、ドル買いが強まった。ドル円は130.90近辺まで一時上昇。131.10付近の21日線をうかがう動きとなった。ドル買いの具体的な材料は見当たらないものの、米国債利回りが上昇していたことが、ドル買い戻しを誘発したようだ。一部からは、市場が米インフレの伸び鈍化と米金利上昇を見極めようとする中でドルは高くなっているとの指摘も出ていた。インフレについて、コア指数の鈍化について疑問の声がでていた。一方、日銀が実施した5年物の共通担保資金供給オペの応札を受けて円金利が低下したこともドル円の買い戻しをサポートした。ユーロドルは戻り売りに押されて、1.08台半ばへ伸び悩んだ。ただ、市場では上向きの流れを期待する面も。タカ派なECBへの期待がユーロをサポートしている。市場では今年のユーロ圏経済を上方修正する動きが出ている。ポンドドルは一時1.23台前半まで下落した。先週の英消費者物価指数(CPI)と英雇用統計のデータがインフレ鈍化の兆候を示さなかったことから、英中銀は次回2月の政策委員会(MPC)で0.50%ポイントの利上げを行うとの強気な見方が広がっている。一方で、英経済の先行きへの見通しが暗い中で、英中銀が慎重姿勢を堅持するとの見方もあった。
24日
東京市場では、前日の円売りが一服した。前日の市場で、日銀共通担保資金供給オペの影響から円売りが入り130.90近辺を付けたドル円は、その後も130円台後半でしっかりした動きとなって東京朝を迎えた。中国、香港、シンガポールなどが春節で休場となり、取引参加者が少ない中でドル円は上値の重い展開。共担オペ実施後に低下が目立っていた日本国債利回りが回復傾向を見せ、10年国債利回りが0.37%台から0.40%台を回復する中で円買いとなり、130円手前まで軟化。クロス円でも円売りの調整が見られ、午前中に142円台を付けていたユーロ円は141.50台まで下落。161.70台を付けていたポンド円は161.10台をつけた。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。英PMIの悪化を受けてポンドドルが急落したことがドル買い圧力に波及。この日は1月の英欧PMI速報値が発表された。総合指数はユーロ圏が50.2と前回の49.3、市場予想49.8を上回る結果だった。景気判断分岐点50を予想外に上回っている。一方で、英国は47.8と前回49.0や市場予想48.8を下回っている。予想以上の景況感の落ち込みとなった。東京市場からのドル売りの動きが一巡したあと、ポンドドルは1.24台乗せから一時1.2302近辺まで急落。ドル円は129.73近辺まで下落したあと130.40近辺まで反発。ユーロドルは1.09手前まで買われたあと、1.0852近辺まで下落した。米10年債利回りは3.52%付近から一時3.48%台まで低下したあとは3.50%付近で推移。欧州株は寄り付きに買われたあとは上値が重くなり、英独仏の主要3指数がマイナス圏に反落している。ドル指数は東京市場での低下から反発し、前日終値付近まで上昇している。
NY市場では、ドル相場が上下動。序盤はドル買いが強まり、ドル円は一時131円台に上昇する場面が見られた。しかし、買いが一巡すると戻り売りが強まり、一時129円台まで急速に戻す展開が見られた。景気への不透明感もある中、米株にらみの展開になっている。序盤に米株が売り先行で始まったことから、リスク回避のドル買いが強まったものの、米株が買い戻されたことでドルは戻り売りに押された格好。序盤の米株の下げについては、NY証券取引所(NYSE)のシステムトラブルが大きく関係した面もあったようだ。ユーロドルは一旦売りが強まったものの、徐々に買い戻しが強まった。一時1.0835付近まで下落していたが、1.08台後半に戻す展開となり、リバウンド相場の流れをしっかりと堅持している。ECBは2月の理事会で0.50%ポイントの利上げを行い、中銀預金金利を2.50%に引き上げることが確実視されている。声明やラガルド総裁の会見を通して、利上げペースの減速を示唆する可能性はまだないとの指摘が出ている。ポンドドルは一時1.22台に値を落としたものの、1.23台に戻す展開。エネルギー価格の下落で英中銀が成長見通しを上方修正する可能性があることから、英金利は予想以上に高止まりする可能性があるとの見方があった。
25日
東京市場は、リスク選好の動きでドル円、クロス円が上昇。ドル円は朝方につけた130.04近辺を安値に130.50超えまで上昇。クロス円もしっかり。ユーロ円は朝の141.50台から一時142.30台を付けている。対円での上昇もあってユーロドルが1.09台を付けるなど、値幅は小さいもののこちらも堅調。中国、香港が休場で参加者が少ない中、日経平均の上昇などを受けたリスク選好が支えとなった。オセアニア通貨が堅調。豪消費者物価指数が強めの結果となり、次回の豪中銀金融政策会合での25bp利上げ観測が強まった。市場では据え置きとの見方が後退。豪ドルは対ドルで0.71台乗せ、対円で91円台後半へと上昇。朝方に発表されたニュージーランド消費者物価指数も予想を上回ったが、NZドル買い反応は一時的にとどまった。対ドルは0.6520付近に買われたあと0.6460台まで反落。対円でも85円手前で上値を抑えられた。
ロンドン市場は、円買いが優勢。ドル円は一時129.81近辺まで下押しされ、東京市場での上昇を帳消しにしている。米10年債利回りが3.47%付近から3.43%付近へと低下しており、ドル円の上値を抑えた。時間外取引の米株先物が軟調。特にIT関連主導のナスダック先物の下げが目立っている。マイクロソフトなどの決算内容が芳しくなかったことをきっかけに、年頭からの大幅上昇に調整が入っている。クロス円も下落。ユーロ円は142円台から141円台前半へ、ポンド円は161円手前から159円台後半へと下落。リスク警戒的なドルが買いも入り、ユーロドルは1.09台乗せとなったあとは1.08台後半へと反落。ポンドドルは1.23台前半での揉み合いを下抜けて、一時1.22台後半に下げた。この日発表された12月英生産者物価指数は前月比がマイナスに、前年比が伸び鈍化となった。1月独Ifo景況感指数は4か月連続での改善、7カ月ぶりの高水準と強い内容だった。ただ、いずれの指標にも相場は目立った反応は示さなかった。
NY市場では、ドル売りが強まった。きょうはマイクロソフトの決算を受けて米株に一時売りが強まるなど、リスク回避の雰囲気が広がっていた。ただ、為替市場ではドル買いの動きは出ていない。むしろ、FRBのタカ派姿勢後退への期待に焦点を当てている雰囲気も出ていた。ドル円は一時129円台前半まで下落した。130円台では戻り売り圧力が強かった。ユーロドルは1.09台を回復。直近高値は1.0925ドル付近だが、その水準に顔合わせしており、心理的節目の1.10を試す展開が続いている。また、ECBは他の中銀とは異なり、2月も3月も50bpの利上げ実施が見込まれている。一部のECB理事からも、その観測に肯定的な発言が相次いでいる状況。ポンドドルは買いが優勢となり、1.24付近まで上昇した。ただ、ポンドにとっては英国の弱い成長と高インフレといった難題が英中銀の利上げ姿勢を鈍らせるとの見方もあった。ポンド相場上昇はユーロ高に連れたものとみられている。
26日
東京市場では、円買いが先行。前日海外市場の流れを受けて、ドル円は午前に一時129.10近辺まで下落。昼前には129.60付近に下げ渋り、いったん下げを消した。午後には新発10年債利回りが一時0.46%台まで上昇して再び円が買われ129.03近辺まで下落。その後は米債利回りの低下一服とともに129.40近辺まで戻した。ユーロ円も午前に141円割れとなったあと141.30台まで反発、その後の円買いで140.87近辺に安値を更新した。円相場の振幅を横目にユーロドルは1.09台前半での揉み合いが続いた。
ロンドン市場は、円安とドル高が混在した。序盤は、欧州株の反発を受けてリスク選好の動きが優勢になり円安の面が強かった。ドル円は東京午後につけた129.03レベルを安値に買いが継続、一時130.00レベルまで高値を伸ばした。クロス円はユーロ円が140円台後半から141円台後半へ、ポンド円が160円付近から一時161円台乗せまで上昇。米10年債利回りが3.43%台から3.48%付近まで上昇し、ドル買い圧力となる面もあった。当初上値を試していたユーロドルやポンドドルは反落している。ユーロドルは1.0929近辺を高値に1.0893近辺まで反落。ポンドドルも1.2430近辺まで高値を伸ばしたあとは、1.2374近辺まで反落した。このあとの第4四半期の米GDP速報値の発表を控えて、売買が神経質に交錯。独経済相は年内にはインフレが緩和される見込みとした。IMFは日銀はさらに柔軟な長期金利変動を検討すべきだと指摘した。ただ、いずれにも目立った反応は見られなかった。
NY市場では、ドル買いが優勢。朝方発表になった第4四半期の米GDP速報値が予想を上回ったことや、米新規失業保険申請件数も労働市場の強さを示したことが背景。直近発表の米経済指標は弱い内容が多く、それがFRBが予想よりも早く慎重姿勢に転じるとの見方に繋がっていた。米地区連銀総裁などのFOMC委員は否定しているものの、市場には年内の利下げ観測が根強く残っている。しかし、きょうの強い米経済指標はその見方を一服させたのかもしれない。ただ、米GDPについては個人消費が予想を下回り、在庫の増加が主な要因となっていた。ドル円は130円台半ばまで一時上昇、21日線に顔合わせした。ユーロドルは戻り売りに押されて一時1.08台半ばに反落。その後は1.08台後半に下げ渋った。ポンドドルは一時1.23台半ばまで下落したが、取引後半には1.24台に戻した。
27日
東京市場は、円買いが優勢。朝方に発表された1月の東京消費者物価指数が1981年5月以来の高水準となったことがきっかけ。日銀の緩和策再修正への思惑が広がったことで、新発10年債利回りが上昇し、円高につながった。ドル円は130円台割れから129.50近辺まで下落した。しかし、午後に入ると米債利回りの上昇に加えて、日銀の共通担保資金供給オペレーションが31日に実施されるとの発表などを受けて130円台を回復している。ユーロ円は141.85近辺を高値に一時141.09近辺まで下落した。その後の戻りは141円台半ばまでと限定的。ユーロドルが1.0900近辺から1.0870近辺へと下げており、ユーロ円の上値を抑えた。
ロンドン市場は、ドル買いが一服している。米10年債利回りは3.50%付近から3.55%台まで上昇しており、前日の米GDP速報値などが予想を上回った後の流れが継続している。東京午後には米債利回りの上昇がドル買い圧力となっていた。しかし、ロンドン時間に入ってからは利回り上昇継続も、ドル売り方向に転じている。ドル円は130円台前半に上昇したあとは129円台後半へと反落。ユーロドルは1.08台後半で下げ渋り。ポンドドルは1.23台後半での揉み合いとなっている。ポンドは対ユーロで上値重く推移。ユーロ円が141円台前半で下げ止まり一時141円台半ばへと反発。一方、ポンド円は161円付近が重くなり160.50近辺まで軟化している。ただ、きょうは目立った英欧経済統計発表はなく、週末を控えた調整ムードが漂っている。
NY市場は、落ち着いた動きとなった。ドル円はいったん下値を試すも、東京午前の安値をつけず、その後130円を超える場面も続かずという展開。昼前からは129円90銭前後で目立った動きを見せず、様子見ムードが広がった。ドル円が安値から買い戻された局面はユーロドルやポンドドルなどでもドル高が見られた。ユーロドルは火曜日につけた週の安値1.0835に迫る場面が見られた、ポンドドルも同様に1.2350割れまでつけたが、その後買い戻された。 

 

●為替相場 1/30-2/3 2/4
まとめ1月30日から2月3日の週
30日からの週は、米英欧と主要中銀の金融政策が発表された。米FOMCでは25bp利上げ、英中銀とECBはそれぞれ50bp利上げが発表された。事前の市場の見通しと一致した。ただ、いずれも通貨も発表後に売りの反応を示しており、タカ派方向に織り込んだ向きのポジション調整がみられたもよう。いずれも中銀も足元のインフレを抑制する姿勢は崩しておらず、今後も利上げを継続ことが示された。ただ、インフレ鈍化の兆候や景気減速への警戒感の度合いは増してきており、あと数回での利上げ停止が見通せる状況にもなってきているようだ。特に英国ではその兆候がみられていた。局面ごとにはドル買いが入ったが、昨年後半からのドル安の流れの大枠には目立った変化はみられていない。ドル円は130円台から128円台へと軟化。ユーロドルは1.08台から一時1.10台乗せのあと、1.09付近へと上下動。ポンドドルは1.23台から一時1.24付近の上昇したあと1.22付近に下落と振幅。ドル指数は昨年4月以来の低水準に一時低下した。週末の米雇用統計は衝撃的な数字が発表され、雰囲気を一変させている。1月分の米雇用統計で非農業部門雇用者数(NFP)が51.7万人増と予想(19万人増)を大きく上回ったほか、失業率も3.4%に低下した。NFPは前回分も上方修正されている。注目の平均時給もなお高い水準。ドル安を見込んでいたショート勢からの買い戻しが強まり、ドル円も131円台に急伸した。
30日
東京市場では、一時円買いが強まる場面があった。ドル円は129円台後半から130.29近辺まで買われ、午前は円売りが優勢。仲値関連の買いや日経平均の上昇を背景に、ドル円、クロス円が上昇した。午後に入ると一気に円高の動きに転じた。令和臨調(令和国民会議)が政府・日銀に新たな共同声明を出すように提言したことに反応した。ドル円は129.21近辺まで高値から1円超下落。ユーロ円は141.60台の高値から140.50台まで反落。その後は、円買いは一服した。
ロンドン市場は、ユーロ買いが優勢。今週は米英欧の中央銀行がそれぞれ金融政策を発表する予定になっており、市場は経済動向、特にインフレ動向に敏感に反応している。この日発表された1月スペイン消費者物価指数でコア前年比が+7.5%と前回の+7.0%から一段と上昇し、ユーロ買いの反応が広がっている。市場では根強いインフレ動向に今週のECB理事会での50bp利上げへの思惑がより一層高まっているもよう。ユーロ圏景況感の一段の回復の動きも後押しした。一方、第4四半期ドイツGDP速報値は前月比−0.2%と大方の市場予想変わらずから下振れしたが、ユーロ売り反応はほどんとみられなかった。ユーロドルは1.0850付近から1.09台乗せへと上昇。ユーロ円も140.50台まで下げたあと、流れが反転して141円台後半へと上伸した。対ポンドでもユーロ買いが先行。ポンドドルはユーロドルに追随する格好で1.24台乗せ、ポンド円は161円台乗せへと上昇している。ドル円も一時130円台を回復。米債利回り上昇、クロス円の上昇が下支えとなったほか、黒田日銀総裁が緩和継続姿勢を堅持したことが東京午後の下げを戻す動きにつながったもよう。
NY市場では、ドルが買い戻された。ドル円は130円台半ばまで上昇した。ユーロドルは1.09台に上昇していたものの、その水準は維持できずに1.08台半ばまで伸び悩む展開。ポンドドルは1.23台半ばに下落した。全般的に方向性がみいだせない振幅している。為替市場はこのところのレンジ内での値動きに終始している状況だが、今週のFOMCやECB理事会、英中銀政策委員会、そして、米雇用統計など重要イベントが目白押しの中、結果を受けた市場の反応を待ちたい姿勢のようだ。市場ではFRBの25bp利上げ、ECBと英中銀の50bp利上げをそれぞれ織り込んできている。
31日
東京市場では、NZドルが売られる場面があった。アーダーン前首相の退任をうけて就任したヒプキンス新首相が新体制を発表。焦点となっていたロバートソン財務相の留任が決定したことを嫌気した売りが出ていた。同財務相の緊縮政策姿勢が警戒された。NZドルは対ドルで午前の0.6470台から0.6430台を付けている。ドル円は午前中は円買いに押されて130円台半ばから130.06近辺まで下落。午後には130.30台に反発と方向性に欠ける振幅だった。ユーロドルは1.0850を挟んだレンジ取引。昨日は1.09台をつけたが、節目の1.10は遠く、調整が入った格好。
ロンドン市場は、ドル買いと円買いが優勢。欧州株、米株先物はともにマイナス圏で推移と調整の動き。イベント前で明確な材料に欠けていることや月末相場でもあって、通貨ごとに値動きはまちまちな面があった。ドル円は130円手前まで下押しされたあとは130.50手前まで買い戻されている。ユーロ円も141円を挟んで同様の動き。ポンド円は161円が重く160円台前半に下落し、戻りは限定的。豪ドル円は原油や金など資源安もあってリスク回避の売り圧力に押され続けた。対円で91円台前半へと下落。ユーロドルは1.08台半ばから1.08台割れ目前まで下げたが、大台割れは回避されている。ポンドドルは1.23台後半から1.2310付近まで下落し上値重く推移。豪ドル/ドルは0.70台前半から足元で0.70台割れと売られ続けている。第4四半期ユーロ圏GDP速報値は前期比+0.1%と事前予想のマイナスは回避した。1月独失業者数は予想外の減少、失業率も6カ月連続で5.5%で安定していた。一方、ECB信用調査では、第4四半期に続いて第1四半期も銀行による信用基準の引き締めが継続するとした。英クレジット残高や住宅ローン承認件数の減少も高インフレ、金利高の影響を鮮明に示していた。
NY市場では、ドル売りが先行した。朝方発表の米雇用コスト指数が3四半期連続で伸びが鈍化したことに敏感に反応。きょうは月末とあって、インフレ鈍化の期待を示す指標を機にポジション調整のドル売りが活発に出た面も。ドル円は一時129円台に下落。ただ、取引後半には130円台に戻している。ユーロドルは買い戻しがみられた。ロンドン時間には1.08ちょうど付近まで下落したが、1.07台後半の21日線にサポートされる形でNY時間には1.08台後半へと買われた。ECB理事会では50bp利上げが確実視されており、3月以降のシグナルの強さに注目が移行していたようだ。ポンドドルは一時1.22台に値を落とす場面があった。ドル売りが優勢のなかではポンドは弱い動き。今週の英MPCでは50bp利上げが織り込まれているが、英住宅市場のリスクが増すなかで今後の追加利上げには市場から疑問が呈されていた。
1日
東京市場で、ドル円は130円を挟んだ振幅に終始した。130.10台から129.80台まで軟化したあとは130円台を回復、午後には130.30台まで買われた。今晩の米FOMC会合では25bp利上げがほぼ確定的で、パウエル議長の会見や声明が注目されている。その他の通貨も方向性をみせず、落ち着いた動き。ユーロドルは1.0582-75の23ポイントレンジにとどまっている。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。米債利回りの低下、米株先物の軟調な動きなどを受けてドル安とともに円高の動きに。ドル円はロンドン朝方には130.41近辺に高値を伸ばした。しかし、米10年債利回りが3.51%付近から3.46%台に低下する動きや米株先物が前日高の調整に軟調なことなどで130円台割れから129.70台まで下押しされた。ユーロドルはドル売り圧力でじり高となり、高値を1.09手前へと伸ばしている。ポンドドルは1.23台前半での揉み合いと方向性に欠ける動き。クロス円はドル円と同様に下落に転じており、ユーロ円は141円台後半から141円台前半へ、ポンド円は160円台後半から一時160円台割れへと軟化。ユーロ圏消費者物価速報は前年比+8.5%と前回の+9.2から%から伸びが大幅鈍化した。一方、コア前年比は+5.2%と前回から引き続い過去最高水準にとどまった。ユーロ圏失業率は6.6%の低水準を維持した。
NY市場では、取引後半にドル売りが加速した。午後にFOMCの結果が発表され、FRBは大方の予想通りに利上げ幅を0.25%ポイントに縮小して来た。その後のパウエル議長の会見を受けてドル売りが加速している。議長の会見はタカ派姿勢の継続は強調していたものの、停止まであと2回の利上げを検討していることや、利上げ停止後に再開する選択肢は検討していないこと、そして、財のディスインフレ過程は始まっていることなどに言及していた。タカ派な会見ではあったものの、思ったほどではないといった印象だ。議長は年内の利下げ観測を否定していたが、本日の会見を受けても、市場は年内利下げ期待を変えていない。ドル円は129円台後半へ買われる場面があったが、その後は128円台半ばまで急落した。ユーロドルは一時1.09台割れも、その後は1.10台乗せまで急伸。1.10台は昨年4月以来の高値水準。ポンドドルは1.22台後半に下押しされたあと、一気に1.23台後半へと買われた。
2日
東京市場は、ドル売り先行のあと値動き一服。ドル円は前日のドル安の流れを受けて米債利回り低下とともに下値を広げた。朝方には1月19日以来およそ2週間ぶりの安値水準となる128.18付近まで一時下落した。しかし、その後は米10年債利回りの低下が一服したことなどから下げ渋り、午後は128円台半ばでの取引に落ち着いた。ユーロ円も141円台後半から141.20台まで下落したあと141円台後半に戻した。ユーロドルは前日の上昇のあと高止まり。朝方にドル安の流れを受けて、昨年4月以来およそ10カ月ぶりの高値水準となる1.1033付近まで上昇した。午後に入ってもこの日の高値圏を維持しており、1.10台前半で揉み合いとなった。英欧中銀金融政策発表を控えて、取引後半は模様眺めとなった。
ロンドン市場は、ドルが買い戻されている。前日の米FOMCでは予想通り25bp利上げが発表され、従来から利上げ幅が縮小した。パウエルFRB議長会見ではインフレ抑制のための利上げ継続が謳われたが、インフレ鈍化の兆候が見られ始めている点が歓迎されていた。市場では債券利回り低下、株高、ドル安の動きが広がった経緯がある。東京市場でも一段のドル安の動きがみられたあと、ロンドン時間に入ると買戻しの動きが入っている。ドル円は128円台後半から一時129円台乗せ、ユーロドルは1.10台割れから1.0980付近へと下押し。ポンドドルの下げがきつく、1.24台手前から1.2310付近へと比較的大幅の下げとなっている。ユーロ円が141円台後半を中心に底堅く推移する一方、ポンド円は159円台半ばから158円台後半へと下落して本日安値を更新している。ユーロ対ポンドでも明確にポンドが売られている。このあとに英中銀とECBが金融政策を発表する。いずれも50bp利上げ観測が広がっている。
NY市場では、ドルの買い戻しが強まった。きょうのECB理事会、英中銀金融政策委員会(MPC)を終え、今週の主要中銀の政策会合は一通り出揃った。ECBや英中銀は利上げに向けたタカ派姿勢を堅持する一方、FRBはあと2回の利上げで今回の利上げサイクル終了の可能性も示唆し、方向感に違いも出ている。明日の米雇用統計の発表を前にポジション調整や材料出尽くし感からのドルのショートカバーが出たのかもしれない。英中銀が金融政策委員会(MPC)は大方の予想通りに50bpの大幅利上げを打ち出し、追加利上げの必要性にも言及した。ただ、ポンドは売りの反応を示した。市場からは、英中銀が声明で弱気な景気見通しに言及したことがポンド売りを誘ったとの指摘も出ている。英経済はパンデミックやEU離脱前よりも縮小したままで、英中銀も景気後退を予想。英中銀はこの状態は2026年まで続くと見ているとも述べていた。ECB理事会では大方の予想通りに50bpの大幅利上げを実施した。声明では3月も50bpの利上げの意向を明確にした。ラガルドECB総裁は「短期的には弱い状態が続く見通し。インフレ見通しに対するリスクはより均衡した」としており、ユーロ売りに反応した。ユーロドルは一時1.08台に下落。ポンドドルは1.22台へと下げ幅を拡大。ドル円は128円で振幅したあと128円台後半に落ち着いた。
3日
東京市場は、静かな取引。一昨日の米FOMC、昨日の英中銀とECBの金融政策発表を通過したあと、今晩の米雇用統計を控えており、動意に欠ける展開が続いた。ドル円は128円台での取引に終始しており、レンジは128.45から128.83までにとどまっている。ユーロ円は昨日のECB理事会後に売られたあと、140.50付近で上値を抑えられており、午後には139.94近辺まで一時軟化。その後は140円台をかろうじて回復して揉み合っている。ユーロドルは前日からの安値圏で底這い。レンジは1.0888から1.0912と限定的な値動き。
ロンドン市場は、欧州通貨が買い戻されている。前日の海外市場ではドル買いに押されてユーロドルやポンドドルが下落したが、きょうは米雇用統計発表を控えて調整が入っている。ユーロドルは1.0882近辺、ポンドドルは1.2183近辺まで安値を広げたあとは、買い戻されている。ユーロドルは1.0937近辺、ポンドドルは1.2266近辺まで反発した。ドル円が128.40台から128.70台で揉み合いとなるなか、ユーロ円は140円付近から140.50台まで、ポンド円は156.70付近から157.60付近まで反発している。米IT大手決算が冴えなかったことで米株先物、特にナスダック先物が下落している。欧州株も連れ安となっている。ただ、為替市場では特段のリスク回避の動きはみられていない。前日のECB理事会では次回3月も50bp利上げを実施することが示唆されたが、今日の一連のECB高官の発言からも追認する内容が相次いだ。ECB経済報告では2023・24年のインフレ予測が引き上げられた。一方、英中銀チーフエコノミストは、年内にインフレが低下、利上げの行き過ぎを戒めていた。
NY市場はドルが急伸。ドル円も買い戻しが強まり131円台に急伸した。この日発表の米雇用統計の衝撃的な数字が前日までの市場の雰囲気を一変させている。1月分の米雇用統計で非農業部門雇用者数(NFP)が51.7万人増と予想(19万人増)を大きく上回ったほか、失業率も3.4%に低下した。NFPは前回分も上方修正されている。注目の平均時給もなお高い水準。ドル安を見込んでいたショート勢からの買い戻しが強まり、ドル円は本日安値から280ポイント超急伸する場面も見られた。 

 

●為替相場 2/6-2/10 2/11
まとめ2月6日から2月10日の週
6日からの週は、ドル買いが一服している。前週末の強い米雇用統計を受けたドル買いにやや調整が入る格好となった。パウエルFRB議長のその他米金融当局高官らの発言が相次いだが、いずれもインフレの持続性に警戒感を示していた。ただ、パウエル議長はディスインフレの兆候がある点も指摘しており、強弱感は混在した。来週の米消費者物価指数待ちの雰囲気もあった。また、円相場にとっては近々発表される次期日銀総裁人事への関心が高まった。黒田総裁に近いとされる雨宮副総裁が本線とみられているが、一部報道では白川前総裁に近い山口元副総裁についても言及があり、瞬時に円買いが入る場面があった。ユーロ対ポンド相場ではポンド買いが優勢だった。英経済については英中銀やIMFなどリセッションを警戒する論調が多かったが、英王立経済社会研究所はリセッションを回避できるとの見方を示していた。ドイツ消費者物価指数速報値の伸びは市場予想を下回った。スウェーデン中銀は予想通り50bp利上げを発表。声明では今後の追加利上げの可能性やQT開始についての言及があり、クローナ買いの反応がみられた。週末には市場のムードを一変させる報道が飛び込んだ。報道各社が日銀新総裁人事について政府は植田和男氏を起用する方針固めるとしている。黒田体制を踏襲するとみられた雨宮副総裁が総裁就任の打診を断ったとしており、市場は急速に円高方向に傾斜した。その後、植田氏の「日銀の金融政策は適切、緩和的な政策を継続する必要」との発言が報じられ、円高は一服した。
6日
東京市場では、日銀人事をめぐる報道で円相場が激しく振幅。ドル円は、先週末の米雇用統計が驚異的な好結果となったことを受けて131円台まで上昇して先週の取引を終えた。6日の午前2時ごろ、日経新聞がWEBサイトに政府・与党が雨宮副総裁に日銀の次期総裁就任を打診と報じたことで、一気に円売りが進んで週明け取引を開始。オセアニア市場で132.56レベルの高値を付けたドル円は、鈴木財務相が何も聞いていないと発言したことを受けて131.50台まで下落。その後132円台を回復し132.40前後まで上昇も、磯崎官房長官がそのような事実はないと否定したことで131.70台まで下落するなど不安定な値動きを見せた。その後再び132円台を回復の場面が見られたが、午後は調整もあって上値が重くなり131円台後半推移となった。ユーロ円も同様に143円手前まで値を飛ばしたあとは、乱高下している。午後には142円台前半に落ち着いた。ユーロドルは円相場の混乱を横目に先週末の下落した1.07台後半から1.08付近での揉み合い。
ロンドン市場は、根強いドル買いの動き。先週末の米雇用統計が予想を大きく超える強い結果となったことが背景。週明けのマーケットでも米10年債利回りが3.61%付近に一段と上昇、1月10日以来の高水準となっている。ドル円は日銀人事をめぐる報道で早朝に132.56近辺まで買われた後は、政府関係者らがこれを否定したことで131.52近辺まで反落する場面があった。しかし、ロンドン時間には再び132円台に乗せて132.20台へと上昇している。ユーロドルは1.08付近が重くなると1.0760近辺に安値を更新。ポンドドルは1.20台半ばから1.2022近辺に安値を更新。週明けはいずれも先週末よりもドル高水準を広げる動きとなっている。米金融当局の利上げ姿勢が長期化することが懸念されたことに加えて、トルコでは大規模地震が複数回にわたって発生、被害拡大が懸念されている。米株先物、欧州株は軟調に推移。ただ、ドル円の買いが目立つなかで、クロス円は先週末からの円安水準で推移し、ユーロ円は142円台前半、ポンド円は159円付近で揉み合っている。
NY市場では、ドルが一段と上昇。先週末の米雇用統計を受けたドルの見直し買いが続いた。ドル円は132.90付近まで一時上昇、21日線を上放れる動きとなった。米雇用統計を受けて市場では、FRBの利上げ継続観測が強まっており、米国債利回りはきょうも大幅に上昇しドル円をサポートしている。円安の動きもドル円の上げをフォロー。日本政府が日銀の黒田総裁の後任候補として雨宮副総裁に就任を打診したと報じられた。ユーロドルは1.07台前半まで下落、21日線を下放れる動きとなり昨年9月末マラの上昇トレンドに黄色信号が点灯し始めている。市場からは、「ラガルドECB総裁は先週木曜日の理事会後の会見で、ECBのインフレ対策への決意を市場に納得させることができず、そのためユーロは短期的に上昇に苦悩する可能性がある」との見方が出ている。ポンドドルは心理的節目の1.20ドルをうかがう展開。21日線を下放れており、目先は1.19台半ばの200日線を試すのかが注目されている。マン英中銀委員は「われわれは軌道を維持する必要がある」「インフレ期待に大幅な上昇リスクが依然として存在し、次の動きは据え置きよりも追加利上げになる可能性が高い」と述べていた。
7日
東京市場では、ドル円の上値がやや重かった。朝方に132円台後半で取引を開始したが、その後は一転してドル安・円台の動きが優勢になり、昼過ぎには132.10台まで下落。その後の戻りは限定的。昨日のドル高で1.0710ドル前後まで下落したユーロドルは昼前に1.0740台を回復。ドル買いの過熱感が警戒されたもよう。ユーロ円はドル円とともに上値の重い展開となり、朝の142円台前半から午後には142円割れまで下落。 豪中銀金融政策会合は、市場予想通り9会合連続での利上げを決定した。声明で今後数回の利上げが必要になる旨を示し、豪ドル買いが優勢となった。市場では次回3月での利上げ打ち止めを見込んでいた。対ドルで0.6910ドル台から0.6950超えへ上昇。豪ドル円も91.50割れから91.90台に上昇。その後は少し調整が入ったが、発表前の水準には届かなかった。
ロンドン市場は、パウエル発言を控えて売買が交錯。ドル買い・円買いの動きで取引を開始。ドル円は132.30付近が重くなると132円台割れから一時131.70レベルまで安値を広げた。クロス円も軟調で、ユーロ円は142円近辺が重くなると一時141.17近辺まで下落。ポンド円は159.50付近が重くなると、一時158.13近辺まで下落。円買いとともにドル買いも先行。ユーロドルは1.0740付近から一時1.0697レベルまで下押し。ポンドドルは1.2050付近から一時1.1987レベルまで下押し。その後はユーロドルは1.0735近辺、ポンドドルは1.2040近辺まで反発した。ただ、反発力は限定的で、先週後半からのドル高の流れには目立った変化はみられていない。ロンドン時間には、NY午後のパウエル米FRB議長のインタビューを控えて神経質な値動きを示している。パウエル議長は、利上げの先行きが見えてきたとの印象を与えるのか。もしくは、米雇用統計の強さに警戒感を示すのか。市場では様々な思惑が交錯している。
NY市場は、ドル相場が上下動の末、売りに押された。午後にパウエルFRB議長のイベントでのパネル・ディスカッションが伝わった。序盤の議長発言は先週のFOMC後の会見と同様に追加利上げの必要性を示唆するなどタカ派な雰囲気ではあったが、先週末の米雇用統計を受けて市場が警戒していたほどはタカ派色が強まっていないとの印象だったようだ。「財のセクターでディスインフレが始まった。今年は大幅なインフレ低下の年になることを期待」などと述べていた。ドルは一旦戻り売り強まったが、今度は議長のタカ派な発言に敏感に反応し買い戻されている。議長は「強い雇用指標が続けば、ターミナルレートはもっと高くなる可能性。2%のインフレ達成には今後長い道のりがある」などと述べていた。ドル円は132円付近から一旦130円台半ばまで下落。その後の反発は131円台前半まで。ユーロドルは1.0765付近まで上昇したあと、1.07台前半に戻したがロンドン時間につけた1.06台までは届かず。ポンドドルは1.20台後半から1.20ちょうど付近で上下動。ポンドの上値は重い印象。 市場では英中銀の追加利上げ観測が根強い一方で、年内に英中銀が利下げに転じる可能性も指摘されている。英住宅市場の低迷が警戒されているもよう。
8日
東京市場は、比較的落ち着いた値動き。ドル円は131円挟みの展開。朝方には130.72近辺まで軟化も、その後は131.38近辺まで上昇。前日のパウエル議長の発言内容はFOMC後から特に変わっておらず、5月までの利上げを示唆するものであって、ドル買いの流れは変わらずとの見方が広がった。また、財務相や官房副長官がまだ決まっていないと否定したとはいえ、雨宮副総裁が新総裁に就任するとの見方が依然強い中で、円売りが入りやすい地合いにもなっていた。ユーロ円はドル円に準じた動き、朝の円高進行で140.29近辺まで軟化したあと、一気の円売りに140.90台まで反発。その後はレンジ内で推移した。ユーロドルは1.07台前半で12ポイントレンジと膠着した。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。前日のNY市場後半のパウエル米FRB議長発言は、インフレ抑制姿勢や強い米雇用統計を受けたターミナルレート水準上昇の可能性が指摘されたが、市場では財(モノ)のセクターにディスインフレの兆候がみられるとの内容に飛びついていた。株式やドル相場は神経質に振れつつも、ドル安・株高で取引を終えた経緯があった。きょうのロンドン市場でも欧州株が買われ、市場は好ムードとなっている。為替市場では再びドルが軟調に推移し、ドル円は131円台前半から一時130.60付近まで下落。ユーロドルは1.07台前半から1.0761近辺まで買われた。ただ、いずれも前日NY市場でのドル安値水準には届かず。一方、ポンドドルは1.20台半ばから1.2110近辺まで買われ、前日高値を更新した。英国立経済社会研究所(NIESR)は、英国は2023年にテクニカル・リセッションを回避する可能性が高いとの見方を示しており、英中銀よりも楽観的な内容が示されていた。ユーロ円が140円台後半から半ばでやや上値重く推移する一方、ポンド円は158円付近から一時158.40台に高値を伸ばしている。対ユーロでもポンド買いが優勢だった。
NY市場では、ドル買いが優勢。ドル円は131円台に戻している。ユーロドルは1.07台での上下動。ポンドドルはロンドン時間に1.21台を回復していたが、NY時間には維持できずに1.20台へと伸び悩んだ。この日伝わったFOMC委員の発言はタカ派色が強く、市場の想定以上の利上げ及び高金利維持に言及していた。想定以上の利上げへの警戒感や、景気の先行きに対するリスクも意識される中でドル買いが根強く出ていた。一部からは、今回のFRBの利上げサイクルのターミナルレート(最終到達点)は6.00%超になる可能性も指摘されていた。ただ、先週の米雇用統計は予想外の強さを示したものの、市場の年内利下げ期待はなお温存されている状況。いまのところ市場のコンセンサスは5.00%−5.25%との見方で概ね変化はない。来週の米消費者物価指数(CPI)など次の材料を確認したい意向も見られる。
9日
東京市場は、ドル円が振幅。午前に国内輸入企業からとみられる買いで上値を広げ、前日高値を上回る131.83付近まで一時上昇したものの、その後は上げを帳消しにして、131円半ばまで押し戻された。午後に入り、近日発表予定の日銀次期総裁人事について、自民党議員が山口元副総裁の場合だと党内がまとまらないと発言したという一部報道を受け急落。この日の高値から1円以上のドル安・円高水準となる130.80付近まで下落した。その後、すぐに131円台後半まで値を戻した。ユーロ円は、午前の円売り局面で141円台に乗せたあと、上げ一服となっていたが、午後に入り、140円台半ばから141円台前半で振幅。その後は、141円ちょうど付近で推移している。ユーロドルは強含み。午後にこの日の高値を更新し、一時1.0738付近まで上昇した。
ロンドン市場は、ドル売りが継続。米債利回りがやや低下、欧州株や米株先物・時間外取引が堅調など前日NY市場でのドル高・株安・債券利回り上昇などの反動がでている。ロンドン朝方にはドル円が波乱の展開となった。日銀人事関連の報道を受けて131円台前半から130.80近辺まで急落後、すぐに131.70近辺に反発を荒っぽい値動きを示した。ロンドン時間に入ると全般的なドル売りの流れに押されて130.75近辺に安値を広げている。ユーロドルは東京市場で1.07台前半でじり高の動きを示したが、ロンドン市場でも買いが広がり、高値を1.0778近辺に伸ばしている。1月ドイツ消費者物価指数は前年比+8.7%、EU基準前年比+9.2%といずれも市場予想を下回ったが、ユーロ売り反応は限定的だった。ポンドドルは1.21台乗せから一時1.2159近辺まで高値を更新した。先週の英経済報告の証拠を示す目的でベイリー英中銀総裁らが議会証言を行っている。インフレに関する認識は硬軟両面が示されているが、ポンドは底堅く推移しており、インフレが予想以上に持続するリスクを警戒していたようだ。また、スウェーデン中銀は予想通り50bp利上げを実施した。声明で今後の追加利上げやQT開始について言及されたことでクローナ買いの反応が広がっていた。ドル安圧力となる一因ともなったようだ。
NY市場は、ドルが下に往って来いとなった。序盤はドル売りが優勢となり、ドル円は130円台前半まで下落していたが、後半になって131円台半ばまで買い戻された。ドル円は日銀総裁人事のニュースで上下に振らされているが、基本的にはFOMC、米雇用統計を通過して、来週の米消費者物価指数(CPI)など次の材料待ちの雰囲気が強く、131円を挟んで方向感のない展開が続いている。ユーロドルは上に往って来いの展開。一時1.07台後半まで上昇していたが、後半になって1.07台前半に伸び悩んだ。ポンドドルは一時1.21台後半まで上昇後、1.21台前半に伸び悩んだ。ここ数日のFOMC委員のタカ派な発言もあり、FRBが予想以上の利上げを実施し、高金利の状態を長期させるのではとの見方も出ている。米国債市場では政策金利に敏感な米2年債利回りが昨年11月以来の4.50%を一時突破した。この日の30年債入札が不調だったこともあり、10年債や30年債といった長期ゾーンの利回りも上昇し、ドルの買い戻しをサポート。また、米株式市場が下げに転じたことも、リスク回避のドル買いを呼び込んだようだ。
10日
東京市場は、落ち着いた値動きだった。ドル円は午前に131.88近辺まで買われたあと131.50割れ水準まで一時下落。前日海外市場での上昇を受けた円安・ドル高水準に高止まりしている。一方向の動きにならず、様子見ムードが広がっている。14日の日銀正副総裁の指名と米消費者物価指数待ちの展開。週末日銀正副総裁に関する報道などが出た場合に週明け大きく動いて始まるリスクがあるだけに、週末越えのポジション維持に慎重姿勢がみられた。黒田日銀総裁、雨宮副総裁が議会で発言していたが、従来の主張と目立って変わった部分がなく、相場への影響は限定的なものに留まった。ユーロ円は141円ちょうどから半ばでの推移。日経平均はプラスもアジア株が全般に下げておりリスク警戒ムードも、円相場は静か。ユーロドルは1.07台前半での揉み合い。
ロンドン市場は、日銀総裁人事報道でドル円が乱高下した。東京市場でドル円は131円台半ばから後半で高止まりしていた。ロンドン早朝に、突然円が急伸した。 日経が「政府、日銀新総裁に植田和男氏を起用する人事固める」と報じたことに鋭く反応している。市場では次期総裁候補として黒田日銀総裁に最も近いとされる雨宮副総裁が指名されるとの見方が濃厚だっただけに、植田氏という未知の総裁候補が浮上したことで反射的な円買い反応につながった。ドル円は一気に129.81近辺まで下落、高値から2円超の下げとなった。その後、売り一服となったあと、再び131.40付近まで急反発。植田氏に報道各局がインタビューし、「日銀の金融政策は適切、緩和的な政策を継続する必要」と述べたことが円売り反応につながった。その後は131円を挟んだ取引へと一服している。クロス円も激しく振幅。ユーロ円は141円台前半から139円台半ばへ下落したあと140円台後半まで反発、その後は140円台前半で推移している。ドル円、クロス円ともに日銀人事報道前の円安水準には戻しきれていない。米株先物や欧州株が軟調に推移しており、週末を控えた調整ムードも加わったようだ。ユーロドルは1.07台半ばから1.07台割れ、ポンドドルは1.21台前半から1.20台後半まで一時軟化した。円相場は荒い値動きとなったが、ドル相場全般には前日からのドル高圧力は緩やかに続いている。
NY市場はドル買いが続き、ドル円は131円台半ばに戻した。一部からは、昨年10月頃からのドル安トレンドは一時的に止まる可能性があるとの指摘が出ている。市場がFRBに対する見方を見直しており、景気の不透明感による逃避買いにも支えられ、ドル安トレンドが一時的に止まる可能性があるという。1月末に比べ、ターミナルレート(最終到達点)が想定よりも高くなるのではとの見方が市場に増えつつあり、今年後半の利下げに対する期待も縮小している。 

 

●為替相場 2/13-2/17 2/18 
まとめ2月13日から2月17日の週
13日からの週は、ドル高が優勢となった。ドル円は10日に政府が日銀新総裁に起用を決めたと報じられた植田和男共立女子大学教授(元日銀審議委員。東京大学名誉教授)が「緩和の継続が必要」と発言するなど、ハト派姿勢が見られるとの認識が広がったことで週明けから円売りが優勢となった。13日からの週でもっとも注目されていた指標である14日の米消費者物価指数(CPI・1月)は前年比、コアの前年比がともに12月の伸びを下回ったものの、市場予想を超える伸びとなる堅調な結果を示した。さらに15日の米小売売上高が予想を大きく上回る好結果となり、ドル高基調が継続した。16日に発表された米生産者物価指数も市場予想を超える伸びとなりドル高基調を支えた。米FRB関係者発言もドル高に寄与した。FOMCの副委員長も兼ねるNY連銀のウィリアムズ総裁は14日、インフレはなお高すぎると発言。また、2023年末時点での政策金利水準5.00-5.25%見通しについて、適切と思われると発言した。16日にはタカ派で知られるメスター・クリーブランド連銀総裁が0.25%に利上げ幅を縮めた前回のFOMCで0.5%とする説得力ある経済的論拠があったと発言。同じくタカ派のブラード・セントルイス連銀総裁は次回3月のFOMCで0.5%利上げを支持する可能性を排除しないと発言している。力強い米経済指標結果と、FRB関係者のタカ派発言を受けて、ドル円は1月6日に付けた高値を超えて、昨年12月20日以来のドル高円安圏を付けた。EU経済予測では23年経済成長率見通しが上方修正され、リセッション回避の可能性も示されたことで、週前半は買いが目立ち、1.08台を付ける場面が見られたユーロドルも、その後のドル高基調に1.06台前半へ値を落とした。
13日
東京市場は、ドル円が堅調。朝方に131.14近辺に下押しされたあとは買いの流れに転じた。昼過ぎには132円台に乗せている。クロス円も上昇。ユーロ円は140円割れ水準から午後には141円近辺へ、ポンド円は157円台後半から159円台乗せへと上昇。ユーロドルは1.06台後半、ポンドドルは1.20台半ばを中心に揉み合い。円安が優勢になった背景には、日銀総裁人事の一服がある。先週末に政府が新総裁起用を決めた植田氏は、報道後に記者団に対して詳しくは話せないとしたうえで「緩和の継続が必要」と発言。同氏は日銀審議委員時代、1999年のゼロ金利政策導入、2001年の量的緩和導入における理論的支えとなったと言われており、当時の速水総裁がゼロ金利解除を決めた際も、一度目は反対票を投じるなど、緩和的な姿勢が目立っていたことなどから、円売りが入りやすくなっている面が指摘された。また、日銀総裁人事という大きな材料が一服したことで、市場は3日の米雇用統計以降に強まったドル高の流れに復している面も。
ロンドン市場は、円安が進行。先週末は日銀人事をめぐる報道で混乱した市場だが、新総裁と目される植田氏が現時点では緩和策を継続することが適当と明言したことが円売りにつながった。その流れは週明けにも再燃している。ドル円はロンドン時間には132.77近辺まで高値を伸ばし、2月6日以来のドル高・円安水準となった。ユーロ円は141円台乗せから高値を141.73近辺に更新。ポンド円は159円台乗せから159.88近辺に高値を伸ばしている。ユーロ対ポンドではややユーロ買いが優勢。EU経済予測では23年経済成長率見通しを従来の0.3%から0.9%へと上方修正した。第4四半期から第1四半期にかけてのリセッション回避見通しも示されている。欧州株は先週末の下げから反発、米株先物はまちまちだが、ナスダック先物は反発している。米10年債利回りは3.73%付近から3.75%付近での揉み合い。
NY市場は、あすの米消費者物価指数発表を控えて様子見姿勢。全体的にはドル自体は様子見の雰囲気が出ているものの、円安の動きがドル円を押し上げている。市場からは、明日の米CPIを始め、水曜日の米小売売上高と鉱工業生産を含む1月分の米経済指標は天候の大幅改善もあり、12月に比べて好調な数字が予想されるという。見込み通りであれば、今週のデータは次回3月FOMCに続いて、5月も0.25%ポイントの利上げ予想を十分に正当化するとしている。ドル円は序盤に132.90付近まで一段高も、その後は132円台前半へと反落した。ユーロドルには買い戻しが出ており1.07台を回復。ポンドドルも買い戻されて1.21台を回復。ユーロ円は142円台前半まで買われたあと141円台後半での揉み合い、ポンド円は161円台乗せとなったあと160円台後半での揉み合いとなった。円安の水準は維持した格好。
14日
東京市場は、ドル売りが優勢。米CPIにドル高の調整が進んだ。前日NY市場午後からのドル安・円高傾向が続く中でドル円は午後には131.80割れをつけた。昨日の海外市場で132.90台まで上昇も、今晩の米消費者物価指数発表を前に行き過ぎたドル買いへの調整の意識が広がり、ドル高の調整が進んだ。5年物共通担保オペは1兆円の入札に対して3兆円超の応札となったが、目立った反応は見せなかった。政府は日銀の正副総裁人事案を国会に提出したが、先週金曜日既報通りの人事となったことで、こちらも大きな反応は見せなかった。ユーロ円は141.50台までのユーロ安・円高となった。一方、ユーロドルは1.07台前半でじり高となり、1.0740近辺まで上昇した。
ロンドン市場は、ドル円、クロス円に買戻しが入っている。欧州株や米株先物・時間外取引が底堅く推移しており、リスク選好的な円売りがみられている。また、米消費者物価指数の発表を日本時間午後10半に控えて、東京市場での円高の動きに調整が入った面も指摘される。英雇用統計で賃金上昇が加速したことを受けてポンド買いが先行、続いてユーロ買いも強まっている。第4四半期ユーロ圏GDP改定値は前期比+0.1%と速報値から変わらず。昨日のEU経済予測でのリセッション回避の見方を裏付ける結果だった。ドル円は132円付近での揉み合いから上抜けて132.30台まで反発。ポンド円は160円台前半から161円台前半へ、ユーロ円は141円台後半から142円台前半へと買われ、それぞれ本日の高値を伸ばしている。対ドルでも欧州通貨は堅調。ポンドドルは1.2150付近から1.22台乗せ水準へ、ユーロドルは1.0720台から1.0760台へと買われた。ユーロ対ポンドではポンド買いが優勢だった。
NY市場では、ドル買いが強まった。米消費者物価指数(CPI)は前年比+6.4%とほぼ予想通りの結果だった。発表直後はドル売りが強まり、ドル円も131円台に急速に下落した。しかし、売りが一巡すると、今度は買い戻しが強まる激しい展開が見られ、ドル円は133円台まで急上昇している。ユーロドルは軟調。米CPI発表直後は1.08台に上昇する場面が見られたものの、その後、1.07台前半に押し戻された。ポンドドルは売りに押された。一時1.21ドル台前半に下落し、上値の重い展開が続いている。米CPIは予想通りではあったものの、持続的インフレを示す内容でもあった。パウエルFRB議長が注目する住居費を除いたコアサービスのインフレ、いわゆるスーパーコアも前月比0.3%の上昇と伸びは緩いものの有意義な低下までは見られていない。先日の米雇用統計後のタカ派なFRBを正当化する内容との受けとめだったようだ。米CPIを受け短期金融市場は3月に続き、5月も0.25%の利上げ期待が高まっているほか、6月利上げの可能性も視野に入れ始めている。また、年内利下げ期待も後退している。ただ、米CPI発表後に伝わった、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁の発言は「われわれはまだ仕事が終わっていないが、恐らく金利は十分抑制的な領域に近づいている」と述べていた。また、ウィリアムズNY連銀総裁も「FF金利の年末のレンジは5.00−5.25%が適切」と述べている。市場の一部からは、FRBは発表前とスタンスはそれほど変化はないのではとの見方も出ているようだ。
15日
東京市場で、ドル円は下に往って来い。午前中は133円台から132.50台まで軟化した。前日の米消費者物価指数の予想を上回る伸びを受けて、米債利回り上昇とともにドル高となったが、その動きに調整が入る格好となった。米10年債利回りが3.74%付近と低下傾向となったことも重石。しかし、午後にかけては再びドル買いの流れとなって133円台を回復、往来相場となった。ユーロ円も1ドル円とともに142円台での振幅がみられた。ユーロドルは午前中のドル安局面で1.0740台まで上昇、その後はドル高に押されて1.0710台と小幅の値動きにとどまった。
ロンドン市場は、ドル買いが継続。特にポンドドルの下落がドル高に寄与した。朝方に発表された英消費者物価指数の伸びが前年比+10.1%と前回および市場予想を下回ったことが背景。ポンドドルは1.21台半ばから1.20台後半へと軟化している。対円では161円台後半から161円割れ水準へと下落、対ユーロでもポンド売りが進行している。市場では英利上げ継続に関して欧州ほどの継続性には確信を持てなくなっているようだ。ユーロドルは1.0700付近まで売りが先行したが、1.07台前半で下げ渋り。ドル円はロンドン時間には高値を133.49近辺まで伸ばし、その後も高値圏揉み合いとなっている。前日の米消費者物価指数発表後のドル高の地合いには目立った変化はみられていない。クロス円はまちまち。ユーロ円が一時143円台乗せと堅調なのに対し、ポンド円は161円台割れへと軟調。ドル買い基調のなかで、ポンド安が目立つ展開となっている。
NY市場では、連日のドル高。前日の米消費者物価指数(CPI)を受けたドル買いの流れが継続し、この日発表された米小売売上高も強い内容で、FRBのタカ派姿勢を裏付ける内容となった。短期金融市場では、FF金利が5.25%より上の水準のターミナルレート(最終到達点)も織り込み始めている。米小売売上高は前月比3.0%増と予想(1.7%増)を大きく上回ったほか、自動車とガソリンを除いた売上高も2.6%増と予想(0.9%増)を大きく上回った。13の全カテゴリーが増加。米個人消費は昨年末の減速から立ち直り、今年に入って幸先の良いスタートを切ったことが示された。歴史的な低失業率と堅調な賃金上昇で、借入コスト上昇や高インフレの高止まりの中でも、多くの米消費者が商品やサービスへの支出を続けることができたことが示された格好。ドル円は134.30付近まで一時上昇。ユーロドルは1.0665近辺、ポンドドルは一時1.20台割れまで下落。ただ、市場にはECBの追加利上げ観測は根強く残っている。
16日
東京市場では、前日のドル高に調整が入った。ドル円は134円が重くなり、昼前後には133.64近辺まで下押しされた。しかし、午後には米債利回りの低下が一服するとともに133.90台までじりじりと値を戻している。ユーロドルは午前のドル安局面で1.0715近辺まで買われた。午後には上値が重くなり、1.07ちょうど付近へと軟化している。ユーロ円はドル円に沿った値動き。序盤に143円ちょうど付近まで下落も、大台割れには至らず午後には143.40付近へと値を戻している。
ロンドン市場は、揉み合い商状となっている。前日の米小売売上高などの強い結果を受けたドル高の動きは一服しており、NY後半から東京市場にかけてドル相場は売り戻しの流れとなっている。ロンドン序盤にもう一段のドル売りが入ったが、その後は下げも一服している。このあとのNY市場では、米生産者物価指数、米住宅着工件数・建築許可件数、フィラデルフィア連銀景況指数、新規失業保険申請件数などの発表が予定されている。ドル円は133.61近辺まで下げたあと134円付近までのレンジ。ユーロドルは1.0722近辺に買われたあとは1.0690割れ水準まで、ポンドドルは1.2074近辺まで上昇後は1.2040付近までのレンジ取引となっている。そのなかでは欧州株が活気づいている。仏CAC指数が過去最高値を更新した。ECB経済報告では、3月利上げが示唆されたが、そのあとについてはは金融政策の経路を評価すると指摘するにとどめていた。株式市場では利上げ停止の思惑につながった模様。
NY市場では朝方ドル高が優勢となり、ドル円は134円46銭、ユーロドルは1.0650台を付けた。22時半発表の米生産者物価指数(PPI)が市場予想を大きく上回る伸びとなり、引き締めの長期化見通しが広がった。また、メスター・クリーブランド連銀総裁が0.25%に利上げ幅を縮めた前回のFOMCで0.5%とする説得力ある経済的論拠があったと発言。ブラード・セントルイス連銀総裁が次回3月のFOMCで0.5%利上げを支持する可能性を排除しないと発言したことなどが示され、ドル買いにつながった。米10年債利回りが一時3.87%まで上昇し、ドルを支えた。ただ、ドル円の目先の節目となる135円を前に午後はドル高が一服、133円台後半を付けるなどの動きを見せた。ユーロドルも1.0700近くまで買い戻しが一時入った。ただ、ユーロドルはその後再びユーロ売りに転じるなど、ドル売りの動きは続かなかった。
17日
東京市場でドル高基調が再び強まり、ドル円は1月6日の高値を超え、昨年12月20日に日銀が金融政策会合でYCC修正を決定し、円買いが一気に強まった時以来のドル高円安圏を付けた。昨日も上昇が見られた米長期債利回りが午前中に3.90%近くまで上昇し、ドルを支えた。ユーロドルも前日NY市場のユーロ安ドル高圏を割り込み1.0630台を付けた。ポンドドルが1.1950割れを付けるなど、ドルは全面高。また、ドル高圏を付けた後の押し目がほとんどなく、ドル円は134円台後半推移が続いた。
ロンドン市場に入ってもドル高基調が継続した。ドル円は節目の135円ちょうどに向けてじりじりと上昇。目立った押し目がなく地合いの強さが意識される中で、135円台を示現する動きとなった。その後はいったん調整が入り134円70銭台を付けたが、ドル高基調が継続する中でその後再び135円台を回復し135円10銭前後を付けている。ユーロやポンドに対してもドル高が進んでおり、ドルはほぼ全面高。ユーロドルは対ポンドでのユーロ買いポンド売りが入り、少し調整の場面が見られたが、欧州通貨や米株先物の売りを受けたリスク警戒でのユーロ売りドル買いに押されて1.0610台を付けている。
NY市場はドルの戻り売りが優勢となり、ドル円は134円台前半に伸び悩んだ。ロンドン時間の朝方には瞬間的に135円台を付ける場面も見られていた。きょうのドルの戻り売りは、バーキン・リッチモンド連銀総裁が「データへの柔軟な対応を可能にするため0.25%ポイントの段階的な利上げを支持する」と述べたことに反応した可能性もありそうだ。 

 

●為替相場 2/20-2/24 2/25
まとめ2月20日から2月24日の週
20日からの週は、ドル買いが優勢だった。米FOMC議事録では、大方のメンバーが25bpを支持し、結果もその通りとなった。その一方で、数名のメンバーが50bp利上げを支持していた。さらに、タカ派で知られるブラード総裁は、ターミナルレートが優に5%を上回るとの見方を示した。一連の米経済指標は利上げ継続が長期化することを示唆。PMI速報値が予想・前回を上回った。GDP改定値が下方修正される一方、GDPデフレータな上方改定されており根強いインフレ圧力が示された。新規失業保険申請件数は改善。そのなかで住宅関連指標は弱福んだ。中古住宅販売件数は減速、住宅ローン申請指数は2週連続のマイナスだった。英国のPMIの上振れでポンド買いが広がる場面があった。ユーロ圏消費者物価指数・確報値は前年比とコア前年比がともに上方改定され、特にコア前年比は過去最高水準となった。ただ、ポンドもユーロもドル買い圧力には抗しきれず、対ドルでの水準を切り下げている。ドル円は週末の日銀正副総裁の所信聴取めぐって動きにくい展開だった。おおむね134円台での取引に終始しており、135円台に乗せると上値を抑えられた。金曜日の所信聴取では、緩和継続姿勢が明言され、経済状況に応じた微調整の可能性も示唆されるなど、模範解答的な対応で無難に通過している。週末の海外市場ではドル買いが一段と強まるなかで、ドル円は136円台に乗せている。米PCEデフレータが上振れしたことで、ドルは一段高となった。
20日
東京市場で、ドル円は序盤しっかりも、その後ドル売りが入る展開。先週末に節目となる135円台を一時付けた後、週末を前にしたドル高の調整が入り、134.00台を付けた後、少し戻して週の取引を終えた。週明け序盤はドル買いが優勢となり、午前中に134.54レベルを付けた。このところの一連の米経済指標の強さもあって、5月どころか6月のFOMCまで利上げを続けるとの思惑が広がっており、ドル高基調が続いている。 もっとも今日は米国がプレジデントデーの休場ということもあり、積極的なドル買いにも慎重姿勢が見られた。ユーロドルは先週末のドル高局面で1.0610台を付けた後、1.0690台まで上昇。週明けも1.06台後半で始まった。午前中はドル円と同様にドル買いがやや優勢で1.0673を付けたが、押し目はそこまで。その後はユーロ買いが優勢となった。もっとも1.07手前の売りを崩すだけの勢いが見られず。ユーロ円はドル円の上昇もあって午前中に143.60台まで上昇。その後は調整が入って143.10台を付けている。
ロンドン市場は、ドル売りが先行も続かず。先週末にドルが売られて引けたあと、週明けもほぼ同水準での取引が続いている。ドル円は東京午後につけた133.96近辺を安値にロンドン序盤には134.37近辺までの反発。その後は134円手前水準へと再び軟化している。ユーロドルは1.0705近辺に高値を小幅更新したが、その後は1.0670台まで小反落。ポンドドルも1.2057近辺まで買われた後は、1.2015付近まで下押しされた。ただ、目立った調整には至らず売買が交錯している。欧州株は買い先行も、次第に売りに押されている。足元ではほぼ先週末終値水準を巡る取引に落ち着いてきている。クロス円はドル円とともに振幅。ユーロ円は東京午後につけた143.19近辺の安値から、ロンドン序盤には143.60付近まで反発。しかし、上値も重く143円台前半に押し戻されている。ポンド円も161.75近辺まで買われたあとは161.18近辺まで反落。欧州株動向をにらんで振幅している。このあとのNY市場はプレジデンツデーの祝日のため米株式および債券市場が休場となる。この日は目立った経済統計発表もなく、全般に模様眺めとなっている。
NY市場は、プレジデンツデーのため休場。
21日
東京市場は、落ち着いた値動き。ドル円は午前中に一時134.15付近まで弱含んだあと、米10年債利回りの上昇を受けて134円台半ばまで上昇するなど、方向性の定まらない動きとなった。正午ごろに134.50付近の高値をつけたあと、午後は手掛かり難のなかで伸び悩み134円台前半での小動きとなった。ユーロ円は序盤に143.59付近まで上昇したが、昼ごろには143.17付近まで軟化。午後には上下動が一服して前日NY終値付近に戻した。ユーロドルは下げ一服。午前にユーロ売りドル買いが優勢となると、一時1.0662付近まで弱含んだ。しかし、午後は下げ渋り、この日の安値圏で小動きとなった。
ロンドン市場は、ポンドが急伸している。この日発表された欧州や英国のPMI速報値で、欧州は製造業が悪化、非製造業が改善とまちまちだったのに対して、英国ではいずれも改善する強い内容だったことがポンド買いにつながった。それまでは米債利回りの上昇を受けてドル買いが先行、ドル円は134円台前半から134.85近辺へ、ユーロドルは1.06台半ば、ポンドドルは1.20付近へと上値重く推移した。一連のPMIでは、まずフランスが製造業が冴えないものの非製造業、総合指数の改善を受けてユーロが買われた。ユーロドルは一時1.0689近辺、ユーロ円は143.99近辺まで上昇。しかし、ドイツやユーロ圏PMIでも同傾向の内容となるとユーロが反落、ユーロドルは1.0640台、ユーロ円は143.50割れへと反落。ポンドドルも1.20台割れへと連れ安になった。英PMI速報値は製造業、非製造業がいずれも改善をみせ、市場は一気にポンド買いに走った。ポンドドルは1.20台割れから1.2114近辺へ、ポンド円は161.50付近から162.90付近へ急伸した。対ユーロでもポンドが買われている。ユーロドルは1.0560挟みの振幅、ドル円は134円台半ばから後半で売買が交錯している。独ZEW景況感は改善したが、現況指数は引き続き低水準でユーロ相場は反応薄だった。
NY市場では、米株が下落しリスク回避のドル買いが広がった。米株式市場では主要3指数がいずれも2%安の大幅下落となった。米利上げ期待が引き続き市場心理を圧迫している。先週発表された米インフレ指標や小売売上高を受けて、市場は予想以上のFRBの利上げや高金利長期化への懸念を強めている。市場からは「今週のデータも市場にとって厄介な問題を明確にする可能性がある」との指摘も出ている。短期金融市場では、FRBがターミナルレート(最終到達点)を5.25−5.50%まで引き上げるとの見通しを織り込んでいる。明日はFOMC議事録が公表される。ドル円は一時135円台乗せ、ユーロドルは上値重く1.06台半ばでの推移。ただ、ユーロドルは1.06台前半では底堅さもみられた。PMIでのサービス業の強さからコアインフレの高止まりが警戒されたようだ。一方、ポンドドルは買いが優勢となっており、1.21台を回復している。この日発表の2月調査分の英PMIが予想外の強さを見せたことから、ポンド買いが膨らんだ。
22日
東京市場は、ドル高調整が入った。ドル円は135円台の重さが嫌気され、午前中に134.50台まで反落した。明日の東京市場が休場となるためポジション調整が入った格好。しかし、調整一巡後は午後にかけて買戻しが入り135円手前水準へと戻した。今晩の米FOMC議事録次第ではドル高が強まる可能性があり、ドル高の調整は盛り上がらず。一方135円台の買いにも慎重。ユーロドルは1.06台半ばで小動き。朝からのレンジは18ポイントにとどまっている。ユーロ円はドル円の調整局面で143円台半ば割れも、その後買い戻しが入り朝の水準である143.80付近へ戻した。午前10時の金融政策会合結果発表で0.5%の利上げを決めたNZドルは、発表後の声明でインフレ対応が強調されたこともあり、少し買いが入ったが、想定内の内容でもあり動きは限定的。午前9時半の第4四半期賃金指数が前年比で市場予想ほど伸びなかった豪ドルは、0.6860台から0.6830台へ急落後、いったんも共水準に戻したが、上値が重くなり、午後に0.6830割れを付けている。
ロンドン市場は、ややドル買いが優勢。ポンドドルは前日にの幅上昇に調整売りが入った面が指摘される。ポンド相場は昨日発表された2月英PMI速報値が強い内容だったことで買われ、ポンドドルは100ポイント超の大幅上昇となった。きょうは1.21台前半での揉み合いから次第に売りが優勢となり、1.2064近辺まで反落している。ポンドは対円では一時163円台割れ、対ユーロでもポンド売りが先行した。また、NY午後の米FOMC議事録発表を控えて調整含みの面も指摘される。米10年債利回りは3.92%台に低下したあと3.96%台まで上昇と神経質に振幅。ユーロドルは1.0660付近から次第に売られて1.0625付近に安値を広げている。ユーロ円も欧州株の軟調とともに143円台後半から前半へと下落。2月独Ifo景況感指数は91.1と前回の90.1から改善したが、市場予想とほぼ一致しており、発表時にユーロ相場の反応は乏しかった。ドル円は134.60付近から135円付近での振幅と、東京市場からのレンジ内にとどまっている。
NY市場は、ドル買いが優勢。午後に公表されたFOMC議事録を受けて為替市場は一旦売買が交錯したものの、次第にドル買いが優勢になった。議事録では数名の委員が50bp利上げが好ましいまたは支持できると言及していたことが明らかになった一方で、ほぼ全員が25bpの利上げを支持したことも明らかになった。事前に想定された範囲でもあり、現在の状況よりもタカ派な印象はない。このところ市場に広がっているタカ派な雰囲気は前回のFOMC後に発表された米経済指標の強さによるものであり、前回のFOMCにそれは反映されていない。ただ、イベントを通過したことで改めてドルを買う動きが出ていたようだ。ドル円は一時134.40近辺まで下落していたが、再び135円をうかがう展開。ユーロドルは下値模索が続いており、1.06台割れを試す動き。ポンドドルも戻り売りに押されて1.20台半ばまで下落。
23日
東京市場は天皇誕生日のため休場。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。前日の米FOMC議事録では大半のメンバーが25bp利上げに賛成したが、数名のメンバーが50bp利上げを支持したことが示されていた。ドル相場は上下動したあと、ドル高に振れた経緯がある。東京不在のアジア市場ではやや調整にドルが売られたが、ロンドン時間に入ると米債利回り上昇とともに再びドルが買われている。ユーロドルは1.0630付近が重くなると、1.06台割れへと下押し。ポンドドルは1.2070台から1.2010台へと下落。ドル円は134円台後半から135円乗せをうかがうジリ高の動き。欧州株や米株先物は反発の動きを示しているが、ドル円の上昇が鈍いことで、ユーロ円は142円台後半、ポンド円は162円台前半へと下押しされている。この日発表された1月ユーロ圏消費者物価指数・確報値は前年比+8.6%、コア前年比+5.3%と速報値から小幅に上方改定された。コア前年比は過去最高水準となった。マン英中銀委員は、さらなる引き締めが必要、転換点はすぐには訪れずと述べた。今年と来年のインフレ持続を懸念した。トルコ中銀は政策金利を50bp引き下げ8.50%とした。市場では100bp利下げ予想が多かったことで、ややリラ買いの動きがみられている。
NY市場は、ドル買いが続くも総じて様子見だった。朝方発表された米GDP改定値は下方改定されたが、物価関連指標が上方改定されドル買いを誘った。米新規失業保険申請件数が減少、雇用の力強さも示された。ドル円は135円台乗せへと上昇。しかし、勢いはさほどなく135円台を駆け上がる気配まではない中、134円台に伸び悩んでいる。明日に植田次期日銀総裁候補の所信聴取が控えていることもあるようだ。ユーロドルは約7週間ぶりに1.05台へ値を落とした。最近はECB理事よりもFOMC委員の発言のほうがタカ派に聞こえることや、この日の2月のドイツIfo景況感指数が予想を下回ったことなどからユーロドルは上値の重い展開が続く可能性が高いとみられているようだ。ポンドドルは一時1.20台を割り込む場面がみられた。市場からは、英中銀が見せている慎重な政策スタンスは、インフレが英中銀の予想以上に持続した場合、ポンド安を招く可能性があるとの指摘が出ている。英中銀は前回の金融政策委員会(MPC)で、年内にインフレが低下するという楽観的見通しに基づき、利上げサイクルが終了に近いことを示唆した。
24日
東京市場では、ドル円が134円台で神経質に振幅した。注目の植田氏の国会での所信聴取は、現状政策の当面継続を印象付けるハト派姿勢が見られたが、基本的には想定内。YCCについては将来的には修正も、具体的な言及を避けており、うまくかわしたという印象を与える答弁となった。午後に入って内田日銀理事と氷見野前金融庁長官の副総裁候補所信聴取が行われたが、こちらも目立った材料にはならず、現行政策を続ける姿勢を示すものとなった。ドル円は134.06から134.91のレンジで激しく振幅したが、午後には134円台後半に落ち着いた。ユーロ円は142.20付近から142.90台の振幅後、142円台後半に落ち着いた。ユーロドルは1.06付近で20ポイント程度の小動きだった。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米債利回り上昇とともにドル買いが先行、ドル円は135円台に再び乗せている。この日の植田日銀総裁候補の国会での所信聴取では、当面の緩和継続姿勢、政府との共同声明の堅持などが示された。波乱なく通過したことで、ドル円相場が動きやすくなった面があるようだ。米10年債利回りが3.90%付近に上昇する動きに、ドル円は135.25近辺まで買われた。ただ、前日高値135.36近辺には届かず。ドル指数は前日レンジ内に高止まりしている。ユーロドルは1.0580近辺まで下げたあとは1.05台後半で揉み合いに。ポンドドルは1.20ちょうど付近でサポートされ1.20台前半での揉み合いとなっている。豪ドル/ドルは上値が重く0.68台割れから0.6778近辺まで下押しも、その後は安値付近での取引が続いている。クロス円はドル円とともに堅調な動き。ユーロ円は142円台後半から143.22近辺まで上昇。ポンド円は162円付近から162.64近辺に高値を伸ばした。ただ、いずれも前日の円安水準には届かず、調整の域をでていない。このあとのNY市場での米PCEデフレータ待ちとなっている。ナーゲル独連銀総裁は、3月以降の追加的な大幅利上げの可能性を排除せずと述べたがユーロ相場は反応薄だった。
きょうのNY市場はドル買いが加速し、ドル円は136円台半ばまで上げ幅を拡大した。朝方に1月分の米PCEデフレータが発表され、予想を上回るインフレの強さを示した。FRBのタカ派姿勢を裏付ける内容で、為替市場ではドル買いが加速している。PCEデフレータはFRBがインフレ指標として参照。 

 

●為替相場 2/27-3/3 3/4
まとめ2月27日から3月3日の週
27日からの週は、ドル相場が神経質に上下動。米経済指標をにらむ展開が続いた。前週末の米PCEデフレータの上振れがドル高を招いたあと、週前半に発表された米耐久財受注、シカゴPMI、米消費者信頼感指数などが予想を下回り、ドル売り圧力がみられた。しかし、週央以降に発表された米ISM製造業景気指数、新規失業保険申請件数、米単位労働費用などは強含んでおり、ドル買い圧力となった。ややサプライズだったのが、ボスティック・アトランタ連銀総裁の「夏の中盤から終盤までに利上げ休止あり得る」との発言。ただ、米債利回りの上昇基調に目立った変化はなく、ドル相場にも崩れはみられなかった。個別通貨では円安が目立った。一時137円台をつけており、1月半ばから約10円の上昇となっている。米高金利の長期化観測とともに、日銀の植田新体制が緩和継続で発進するとの思惑がドル円を押し上げた面もあったようだ。ユーロ買い・ポンド売りの動きも際立っていた。欧州各国でコアインフレの一段と上昇するなど粘着性の強いインフレが観察されており、ECBの利上げ継続姿勢は確固たるものとなっている。一方、英国では景気後退への警戒感があり、英中銀総裁は追加利上げについて明言を避ける状況だった。
27日
東京市場で、ドル円は高値を付けた後調整が入った。先週末には米PCEデフレータが上振れしたことでドル高が進行した。週明けの朝方にはドル円は136.55近辺に一段高となった。しかし、その後は調整が入り、昼前には136.01近辺まで反落した。大台割れは免れて午後には136円台前半で推移した。植田日銀新総裁候補による金曜日の衆院に続いて実施された参院での所信聴取は、金曜日の内容を踏襲するものとなり相場への影響は限定的にとどまった。ユーロドルは狭いレンジでの取引に終始した。1.0550前後での推移から、ドル売りの動きが出た際に1.0560前後まで上昇。その後のドル円でのドル買いに1.0540割れまでと動き自体は見られたが値幅は21ポイントとなっている。ドル主導の展開が意識される中、ユーロ円は143円台後半推移が続いた。
ロンドン市場は、ドル買いが一服。特に欧州通貨に買い戻しが入っている。ユーロドルはロンドン朝方に1.0533近辺に先週末からの安値を広げたあとは、1.0570付近へと反発。ポンドドルも1.1923近辺まで下押しされたあとは、1.1980台へと反発している。先週末は米PCEデフレータが予想を上回ったことで米利上げ長期化が警戒され、米債利回り上昇、米株下落などとともにドルが買われていた。週明けは直近の米インフレ関連指標が出そろったあとで材料難。調整の動きが主導しているもよう。株式市場では欧州株や米株先物が反発しており、為替市場ではクロス円が上昇。ユーロ円は143円台後半から144円台乗せへ、ポンド円は162円台後半から163.40付近へと高値を伸ばしている。ドル円はロンドン朝方に136.00近辺まで軟化したが、その後は136円台前半での揉み合いと、先週末からの高値水準を維持している。この日、参院での植田日銀総裁候補の所信聴取では先週末と同様に緩和継続姿勢が表明され、特段の波乱はみられなかった。
NY市場では、引き続きドル買いが一服。米株式市場が一時買い戻されたこともあり、リスク回避のドル買いは落ち着いた。朝方発表の米耐久財受注が弱い内容となったこともドル売りを加速させ、ドル円は一時135円台に値を落とす場面が見られた。その後は136円台に戻している。ただ、最近の堅調な米経済指標がFRBの追加利上げ期待を後押しし、ドル高が当面続く可能性があるとの見方は根強い。ユーロドルは1.06台に買い戻された。短期金融市場はECBは金融引き締めを来年まで続けると予想しており、ターミナルレート(最終到達点)への到達予想を初めて24年まで後ずれさせている。ポンドドルも1.20台半ばまで反発。EU離脱後の北アイルランド国境のプロトコル(手続き)を巡る英国とEUの対立解消に向け、スナク英首相とフォンデアライエン欧州委員長が本日会談し合意に達した。ポンドも若干買いの反応を見せたが、市場からはポンドを大きく支援する材料にはならないと見られていた。
28日
東京市場は、落ち着いた値動き。ドル円は136円台前半で26銭レンジにとどまった。ドル高基調が意識されているものの、今月これまで大きく上昇してきただけに、ここからのドル買いにはやや慎重。ただ、昨日の市場で135円台での買い意欲が見られたことで、下値もしっかりという展開になった。ユーロドルは33ポイントレンジ。1.06台を割り込み、ややドル高が優勢となったが、大きな動きにはならなかった。昨日は北アイルランドとの国境での問題を巡る英首相と欧州委員長との合意を受けてやや上昇したポンドも、1.2060台から1.2030台までポンド安ドル高となったが、値幅自体は限定的となった。
ロンドン市場は、月末相場でフローが交錯。方向性が明確だったのがユーロ買いの動き。フランスとスペインの消費者物価指数の上振れで、短期金融市場ではECB政策金利の4%の上昇を完全に織り込んだ。レーンECBチーフエコノミストは、しばらくの間、金利を高水準に維持すべきと指摘している。ユーロ買いが先行し、ユーロドルは1.06台前半へと高値を伸ばしている。序盤には米債利回り上昇とともにドル円が136円台前半から136.85近辺まで上伸。ユーロ円も144円台前半から145円台に乗せている。続いてポンド買いが強まり、対ドルでは1.20台前半から1.21台乗せまで上昇。ポンド円は164円付近から165.50台まで高値を伸ばしている。ユーロポンドは買いが先行も、反転して下落と忙しい動き。豪ドルは東京市場からロンドン序盤にかけては売りが続いたが、足元では反発の動きとなっており、方向性が錯綜している。月末相場で一貫した流れが見出しにくい展開になっている。このあとのロンドンフィキシングを警戒する声もでている。
NY市場で、ドル円は一時135円台に下落。戻り売りに押されたが、ドル買いも根強く後半には136円台を回復した。市場では円安期待が再び台頭しており、ドル円は142円まで上昇する可能性まで指摘されている。ドル高期待が根強いほか、日銀の本格的な緩和解除が当初の想定よりも遅れる可能性を挙げていた。ユーロドルは1.06台半ばまで上昇したあとは、1.05台へと反落。今月のユーロドルは下向きの流れを強めていたが、月末になってその動きも一服し、短期筋のショートカバーが出ていた模様。ただ、ドル高期待も根強い中、ユーロドルは下値警戒感が強まっている。ポンドドルも一時1.21台を回復したが、後半には1.20台半ばまで伸び悩んだ。ポンドドルは昨年12月から概ね1.19−1.24ドルの間を上下動する展開となっているが、現在はそのレンジ内に収まっている状況で、次の大きな展開待ちの雰囲気に変わりはない。
1日
東京市場で、ドル円は前日と同様に落ち着いた展開。ドル高が先行して136.47近辺まで買われたが、その後は136円台前半での取引が続いた。前日の値動きから、137円付近の重さが意識されていた。ユーロドルは1.05台後半での推移が続いた。その他目立ったところでは豪ドルの振幅。9時半の豪第4四半期GDPが弱かったことでいったん売りが出たが、その後買い戻された。主要輸出先である中国のPMIが10年ぶりの高水準となり、豪ドルの買い戻しを誘った。中国PMIの好結果を受けて人民元買いも目立ち、ドル人民元は昨日の海外市場で下値を支えた6.93を朝方割り込み、その後もドル安元高の流れが続いて6.9030前後を付けている。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。欧州株や米株先物が買われるなかで、ユーロドルやポンドドル買いが先行。ユーロドルは1.05台後半から1.06台に乗せるとその後1.0670付近まで高値を伸ばしている。一方、ポンドドルは1.20台前半から1.2090付近まで買われたあとは、1.20台前半へと失速。ドイツ各州ごとに発表される最新の消費者物価指数データが引き続き高水準だったことに加えて、ナーゲル独連銀総裁が3月以降も大幅利上げの可能性があると発言した。インフレ高止まりが長期化することも警戒されている。一方で、ベイリー英中銀総裁は、金利のさらなる引き上げが適切となる可能性あるが、何も決定していないとやや及び腰の印象を与えている。これまでの利上げが経済全体にどのように作用しているのかを注意深く監視とも述べていた。ユーロドルが一段と高値を伸ばす一方で、ポンドドルは1.2013近辺に本日安値を広げる場面があった。ユーロ買い・ポンド売りが進行している。ドル円は136円台前半での揉み合いを下放れており、136円台割れから一時135.62近辺まで安値を広げた。ユーロドルなどでのドル売りが波及するとともに前日安値を下回ってストップ売りが出た面も指摘される。
NY市場で、ドル円は下に往って来いの展開。ロンドン時間にはドル売りからドル円も135円台前半まで下落する場面が見られたものの、135円に接近すると押し目買いも活発に入るようで、NY時間に入ると136円台に戻した。ISM製造業景気指数を受けて米国債利回りが上昇していることもドル円の買い戻しをサポートした。米10年債利回りは11月10日以来の4%台に上昇している。ただ、2月からドル買いが続いたことで、市場は米経済の強さをかなり織り込んできている節もある。今月発表される米指標などの新たな材料を確認したい意向も強いようだ。ユーロドルは買いが優勢となり、一時1.06ドル台後半に上昇。ドイツの消費者物価指数(HICP)速報値が予想以上に強い内容となったことがユーロドルの買い戻しをサポート。前日の米消費者信頼感指数など、今週になって発表されている米経済指標は弱い内容も見られる。その一方で、本日のドイツ、前日のフランスやスペインのHICPは強い内容が相次ぎ、ECBのより積極的な利上げへの期待を裏付けている。ポンドドルは軟調な動きをみせ、一時1.19台半ばまで下落した。ロンドン時間にベイリー英中銀総裁の発言が伝わっていたが、「現時点では何も決まっていない」と述べていたこともポンド売りを誘ったようだ。その後は1.20台に戻している。ECBと比較するとタカ派度が不透明とみられていた。
2日
東京市場では、ドル買いが優勢。ドル円は朝方に136.02近辺まで下押しされたが、大台割れは回避した。その後は136円台前半から半ばをうかがう動きに。午後には米債利回りの上昇とともに136.50超えから高値を136.72近辺に伸ばした。米10年債利回りは4%の節目を上回り、4.02%付近に上昇している。ユーロドルもドル高圧力に押されて、1.0673近辺を高値に午後には1.0635近辺に安値を広げた。ユーロ円は145円台前半での高止まりが続いたあと、午後には145.45近辺に高値を伸ばした。香港・上海株や日経平均などこの時間帯の株式市場はやや上値重く推移している。
ロンドン市場は、根強いドル買いの動き。米10年債利回りが一段と上昇している。4%の節目水準を上回ると、一時4.04%と昨年11月10日以来の高水準となっている。ドル円は序盤に136.87近辺まで上昇、2月末高値に迫った。しかし、その後は136.20台まで失速、調整の動きに押された。足元では再び136円台後半へと上昇。関係者発言として日銀はYCC修正の効果見極め、3月会合で現行緩和継続、と報じられた。一瞬の円売りのあとすぐに円買いが入るなど神経質な反応がみられていた。ユーロドルは軟調な流れ。ロンドン市場では安値を1.0610台へと広げている。ラガルドECB総裁は3月利上げ後も引き締め継続が必要となる可能性を指摘した。また、2月ユーロ圏消費者物価速報ではコア前年比が+5.6%と前回の+5.3%から一段と上昇、過去最高水準を記録した。しかし、ユーロ買いよりもドル買いの動きがまさっている。ポンドドルは序盤に1.1956近辺まで下落したあと、いったん1.20台に反発も、すぐに1.19台後半に押し戻されている。英中銀の企業インフレ期待調査では、今後1年の物価引き上げ見通しがやや鈍化していた。ただ、ユーロ買い・ポンド売りなどの反応は限定的だった。クロス円は上値重く推移。欧州株や米株先物が上値重く推移。ユーロ円は145.50台まで上昇したあと、一時145円台割れまで反落。ポンド円は164円手前まで小高く推移したあと、163.30付近まで反落した。
NY市場は、ドル買いが優勢。朝方発表の米短労働費用や新規失業保険申請件数が強い米労働市場を示唆し、米債利回りが一段と上昇したことが背景。3月相場に入ってもFRBのタカ派姿勢への警戒感が強まっており、市場はターミナルレート(最終到達点)の予想を引き上げ、年内と見られていた利下げ開始期待も後退。米国債利回りも10年債、30年債とも11月以来の4%台に再び上昇。ドル円は一時137円台に上昇した。ボスティック・アトランタ連銀総裁の発言が伝わり、「夏の中盤から終盤までに利上げ休止あり得る」と述べたことに敏感に反応する場面もあったが、ドル買いの流れに変化はなかった。ユーロドルは売りが優勢となり、1.05台に下落。ポンドドルも1.19台前半まで下落した。ECBに関しては3月会合での50bp利上げ、その後も追加利上げが示唆されている。一連の物価統計も上昇。ただ、ユーロ買いの動きは鈍かった。一方、英中銀は追加利上げについての明言が避けられており、ポンド相場自体に売り圧力がある面も指摘されていた。
3日
東京市場は、ドル買いが一服。ドル円は前日海外市場で137円台を付ける場面があったが、東京朝方には136円台後半で取引を開始。週末を前に上値を試す勢いはみられず、136円台半ばへと調整売りが入った。米債利回りの上昇が一服したことが上値を重くした。ただ、136円台半ばでは下げ渋っている。ユーロ円は144円台後半から145円台乗せをうかがう動きがみられたが、大台に乗せると上値を抑えられていた。ユーロドルは1.06台を挟む水準から1.0610台へとじり高の動き。易・中国人民銀行総裁が「7.0000はもはやハードルではない」と発言したことで、やや人民元売りがみられた。ドル/人民元は6.88近辺から6.90台へとドル買い・人民元売りが入った。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。米10年債利回りが4.04%台から一時4.00%割れまで低下、ドル相場を圧迫している。前日NY市場でボスティック・アトランタ連銀総裁が「夏の中盤から終盤までに利上げ休止あり得る」と述べており、利上げ継続一辺倒となっていた市場のセンチメントがやや冷やされた面もあったようだ。来週末には米雇用統計の発表が予定されており、ドル高の流れに調整が入りやすい面も指摘される。ドル円は136.70付近で上値を抑えられると一時136.12近辺まで安値を広げた。ユーロドルは1.06台前半でじり高となるなかで、一時1.0629近辺に高値を伸ばした。ただ、ユーロ圏非製造業PMI確報値が52.7と速報値53.0から下方修正されており、対ポンドなどでのユーロ売りがでていた。また、デギンドスECB副総裁は、3月以降の利上げについてはデータ次第とやや慎重姿勢だった。ポンドドルは1.19台後半から買いが継続しており、高値を1.2004近辺に伸ばしている。英非製造業PMI確報値は53.5と速報値53.3から上方修正されており、ユーロ圏とは対照的な結果となっていた。欧州株や米株先物・時間外取引は堅調に推移しているものの、ドル円とともにクロス円も下押しされている。ユーロ円は145円台が重くなると144.40付近まで下落、ポンド円は163円台半ばから一時163.15近辺まで下押しも、その後は買い戻しが入った。
NY市場でドル円は戻り売りに押され、135円台に値を落とした。ドル先高観が根強い中で、前日のドル円は137円台に上昇する場面が見られていたが、きょうは米国債利回りが上げを一服させており、ドル円も戻り売りに押されている。依然として137円台前半に来ている200日線の下での推移が継続。  

 

●為替相場 3/6-3/10 3/11 
まとめ3月6日から3月10日の週
6日からの週は、米金融政策動向をにらんでドル相場が振幅。パウエル米FRB議長の上下両院での半期に一度の議会証言が注目された。市場ではバランスの取れた内容が期待されていたが、パウエル議長は上院で「正当化されるなら利上げスピード加速の用意」と述べたほか、「利上げの到達水準は想定より高くなる可能性が高い」と予想以上にタカ派的な証言をした。週初からやや調整気味だったドル相場は一気に上昇、ドル円は138円手前水準まで上昇する場面があった。ユーロドルは1.05台前半、ポンドドルは1.18付近まで一時下落。その次の日の下院証言では「利上げペースについて何も決定していない」とややトーンダウンしたが、市場での利上げ観測の強さには変化は見られず。その他中銀ではカナダ中銀が利上げを打ち止め、豪中銀はインフレのピーク近しとするなどこれまでの利上げ姿勢にブレーキがかかる面がでていた。米利上げ姿勢の強さが浮き彫りとなっている。週末には黒田総裁の任期中最後の日銀決定会合の結果が発表された。事前の市場では一部にYCC変動幅拡大や撤廃などのサプライズを想定する向きがあったが、従来通りの据え置きと発表された。一瞬、円安に反応もほどなく落ち着いた。その後の注目イベントである米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)は前回から大きく伸びが鈍化したものの、31.1万人増と予想(22.5万人増)を上回り堅調な雇用情勢を示した。タカ派なFRBを正当化する内容ではあるが、失業率が3.6%に悪化し、平均時給も前月比0.2%上昇に伸びが鈍化し、予想も下回った。米債利回りの低下とともに、ドルが売られた。ドル円は134円台に下落した。一部米金融機関の破綻が米株安につながり、今後の米利上げペースに不透明感が広がる面も指摘された。
6日
東京市場では、先週後半からのドル安傾向が続いた。2日の米ボスティック地区連銀総裁の今月FOMCでの25bp利上げ支持発言をきっかけに、行き過ぎた利上げ期待に対する調整が入っており、米債利回りの低下などが見られる中で、ドル円も上値を抑えられた。ドル円は朝方に136.10近辺まで買われたあと昼過ぎには135.30台まで下落。米10年債利回りが3.96%台から3.93%台に低下する動きに反応。午後には米債利回り低下が一服、日経平均の上昇を受けた円安の動きも加わって135.80付近まで買い戻された。ユーロ円は144円台前半から半ばでの振幅が続いた。ユーロドルは1.06台前半から半ばへと小高く推移。午前中は中国売りの動きが見られた。全人代での経済成長見通しが1994年の目標発表開始以降最も低い約5%とされたことで、景気支援が低調になるのではとの思惑が広がった。中国株や香港株が売られたがその後は反発が見られたことで、中国人民元売りも抑えられた。
ロンドン市場は、ドルが買い戻されている。ドル円は東京市場で135.37近辺の安値をつけたあと、買い優勢に転じるとロンドン午前には136円台に乗せている。ユーロドルは東京早朝につけた1.0613近辺を安値に、ロンドン朝方には1.0657近辺まで上昇。その後は売りが優勢になり1.0620台へと反落している。ポンドドルは1.2020-40レベルでの揉み合いが続いたあと、次第に売りに押されて本日安値を1.2000近辺に更新。いずれも先週末NY市場でのドル売りの動きに調整が入る格好となっている。そのなかでは豪ドル/ドルは軟調。東京昼につけた0.6770近辺を高値にその後は売りに押されている。足元では安値を0.6725近辺まで広げている。先週末のNY市場からも一段安となっている。週末の全人代で中国の成長目標が5.0%に引き下げられたことが豪ドル売りにつながっているもよう。欧州株は高安まちまち。米株先物は前週末終値を挟んだ揉み合い。米10年債利回りは3.95%付近から3.91%付近に低下。各市場とも方向性がばらばらとなっている。明日のパウエル米FRB議長の議会証言待ちのムードが広がっているようだ。
NY市場では、イベント待ちの中でドル円は136円付近で方向感のない展開が続いた。東京時間に135.40近辺まで下落していたものの海外市場に入って買い戻しが優勢となっている。ただ、明日にパウエルFRB議長の議会証言が控えていることや、週末には米雇用統計の発表が控える中で、様子見気分も強い。パウエルFRB議長の議会証言については、タカ派姿勢の継続が予想されるが、これまでと変化はなく、バランスを取ってくるものと見られている。ユーロドルは1.06ドル台後半まで上昇しており、21日線を回復する動きが出ている。市場からは、ECBは夏までに少なくとも1.00%ポイントの追加利上げを行う可能性が高く、それはFRBの引き締めに伴うドル高に対してユーロを支えるとの指摘が出ていた。ポンドドルは1.20台前半で方向感のない展開。市場からは、ポンドは最近のレンジ取引から抜け出すきっかけを見つけるのが難しく、今週も方向感が出ない可能性があるとの見方が出ていた。
7日
東京市場で、ドル円は136円挟みで推移した。10日の日銀金融政策決定会合結果発表、10日の米雇用統計などをにらみ、動きが出にくい展開となっている。今日に関しては今晩0時からのパウエルFRB議長の上院銀行委員会での半期議会証言も注目されている。基本的に米国の金融引き締め姿勢が継続されると見られる中、ドル高基調が継続も、イベントを前に上をトライするだけの勢いに欠ける展開。ユーロドルは一時1.0690台を付けた。値動きは限定的も前日海外市場からの上昇基調が継続。ただ、節目の1.07台手前を買い上げる勢いには欠けていた。豪中銀は市場予想通り25bpの利上げを決定した。声明では「月次CPIは物価上昇がピークをすでに迎えていることを示唆」との表現があり、豪ドル売りを誘った。豪ドルドルは0.6740前後から0.6700割れまで売りが出た。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。前日海外市場ではドル売りが優勢だったが、このあとのパウエルFRB議長の議会証言を控えて買戻しの動きがでている。ドル円は136円付近から135.50台で下に往って来い。ユーロドルは1.07手前から1.0650台へと下押し。ポンドドルは1.20台後半へと買い先行も、売りに転じて1.20付近へと下押しされている。ユーロ円は145円台前半から144円台後半へと軟化もその後は下げ渋り。ポンド円は163円台後半から163円台前半へと軟化し、戻りは鈍い。ポンド相場は序盤に英住宅価格指標の上振れで買われたが、その後はマン英中銀委員が米金融当局のタカ派度の織り込み次第ではポンドが下落する可能性が指摘されて売られていた。ECB消費者インフレ期待では3年後の予測が2.5%と前回の3%から大幅に低下していた。米10年債利回りは3.97%台から3.92%台へと低下しており、前日の動きの調整となっている。ロンドン時間にはドル相場と米債利回りの連動性は薄い。欧州株や米株先物・時間外取引は小幅高での揉み合い。イベントを控えて、各市場とも別個の動きとなっている。
NY市場では、ドル買いが強まった。この日はパウエルFRB議長の上院での議会証言が行われ、市場にタカ派な雰囲気が広がった。議長は「正当化されるなら利上げスピード加速の用意」と述べたほか、「利上げの到達水準は想定より高くなる可能性が高い」とも言及。議長が利上げペースに言及したことで、想定以上にタカ派な印象が市場に広がり、為替市場はドル買いが強まった。市場では今回の議長の証言はタカ派姿勢は継続するものの、バランスを取って来るのではとも見られていただけに、想定よりもタカ派な印象が強いようだ。米10年債が一時4%台を回復する場面が見られたほか、政策金利に敏感な2年債は5%台に上昇し、2007年以来の高水準となった。ドル円は137円台へと上昇。ユーロドルは再び1.05台半ばへと下落。ポンドドルは1.18台前半まで下落した。
8日
東京市場では、ドルが一段高。ドル円は137円台半ばで上値が抑えられていたが、昼前後に137.90台まで買われた。今年に入ってからすでに10円超の大幅な上昇となっている。その後は137円台後半の高止まり。ユーロドルが1.0550前後から1.0520台へと下押しされ、前日から一段とドル高が進行した。米債利回りの上昇、とくに政策金利との影響が大きい2年債利回りの上昇が目立っており、ドル高につながっている。2年債利回りはパウエル発言前まで4.85%前後での推移。その後の上昇で朝方は5.02%前後を付けていた。午後には5.08%台まで上昇している。3月の米FOMCで50bpの利上げを行うとの見通しが、70%超えまで強まった。ターミナルレートとして5.5%超の水準を見込む動きが80%を超えている。
ロンドン市場は、前日からのドル高圏での取引が継続。ドル円は東京午後に137.91近辺まで買われたあと、ロンドン市場では137.50付近での揉み合いが続いている。ユーロドルは1.0525近辺まで下押しされたあとは、1.05台前半から半ばでの揉み合いに。ポンドドルも同様に1.1810近辺を安値に1.1840付近に膠着している。このあとには再びパウエル議長の議会証言が行われる。また、米ADP雇用統計やJOLT求人数など雇用関連指標が発表される。金曜日には米雇用統計発表を控えている。この時間帯はイベントの狭間で動きにくい状況。1月ドイツ小売売上高は前月比−0.3%と予想外の低下、同鉱工業生産は+3.5%と回復した。ディングラ英中銀委員は金利据え置きが望まれるとした。ビスコ仏中銀総裁は、ECBの他のメンバーの今後の利上げに関する発言を、理事会ではそのようなガイダンスを与えないことで合意したのにもかかわらずと批判した。米株先物は時間外取引で下げ一服。ユーロ円は145円挟み、ポンド円は162円台半ばから後半で方向性に欠ける動き。
NY市場で、ドル円は下に往って来い。前半は戻り売りが優勢となり、一時136円台半ばまで下落する場面が見られた。きょうもパウエルFRB議長の下院での議会証言が行われたが、議長は「利上げペースについて何も決定していない」と強調していた。それもあってドルは戻り売りが優勢となったものの、前日に広がったタカ派な雰囲気は払拭されてはいない。ドル円も下値での押し目買いも出て、137円台に買い戻される展開となった。ユーロドルは下げ一服。アジア時間に一時1.05ドル台前半まで下落する場面が見られたが、1.05ドル台半ばまで下げ渋った。ポンドドルは下げ渋る動き。ただ、積極的に買い戻そうという動きまでは見られず、1.18台での上下動が続いた。カナダ中銀が金融政策委員会の結果を公表し、大方の予想通りに政策金利を据え置いた。声明では、これまで使用していた「過剰需要」への言及が削除された。一方で「インフレ抑制のために必要であれば、再利上げを行う用意がある」とも述べた。結果発表後にカナダドルは売りで反応し、カナダ円は一時99円台前半まで下落。
9日
東京市場は、明日のイベントを前に調整が広がった。ドル円は海外市場での振幅後、再び調整が入り136円台後半推移となった。明日の日銀金融政策決定会合結果発表や米雇用統計を前に、ドル買いに調整が入っている。 パウエル議長が下院での議会証言で利上げについてはまだ何も決まっていないと発言したことがドル売りのきっかけだった。日銀金融政策決定会合については、黒田総裁にとって最後となる会合で、次に託すためイールドカーブの歪みを解消してくるとの期待がごく一部で見られ円買いとなっている面がある。 昨日下げたユーロドルは1.0538-1.0556の18ポイントレンジ。次の方向性をにらむ展開。 ユーロ円はドル円の調整に合わせて144円台後半から144.30近辺まで軟化した。
ロンドン市場は、ドル売りと円買いが混在している。あすの米雇用統計や日銀金融政策決定会合結果発表を控えて、これまでのドル高や円安の動きに調整が入っている。ドル円の下げが目立っており、東京市場で137円台割れとなったあと、ロンドン市場ではさらに前日安値を下回り、136.05付近まで下値を広げた。ユーロドルは1.0680近辺、ポンドドルは1.19ちょうど近辺に本日の高値を伸ばした。米10年債利回りは4%の節目水準をやや下回っているが3.97%台までと比較的小幅の低下に留まっている。ドル円とともにクロス円が軟調。ユーロ円は143.70付近、ポンド円は161.60付近に下押しされている。あすの日銀決定会合は黒田総裁の任期中最後の会合となる。市場では緩和継続姿勢を維持することが見込まれているが、一部にはYCC変動幅拡大や解除などのサプライズを想定する声もでている。通貨オプション市場ではドル円の翌日物ボラティリティーが40%超と1月18日に日銀がYCC変動幅を拡大したサプライズ会合時以来の高水準となっている。ロンドン午前には主要経済統計発表はなかった。米新規失業保険申請件数の発表待ちとなっている。
NY市場で、ドル円は一時135円台に下落。この日発表の米新規失業保険申請件数が予想以上に増加したことから、タイトな米労働市場への懸念が一服し、ドル売りが優勢となった。ただ、全体的には明日の米雇用統計や日銀決定会合への反応を確認したい雰囲気が強かった。取引後半は136円台での揉み合いに終始している。ユーロドルには買い戻しが入り、1.05ドル台後半まで戻した。ただ、ドル高期待も根強い中、1.06台には慎重な雰囲気だった。ポンドドルは1.19台を回復。200日線が1.19ドルちょうど付近に来ているが、その水準を回復した。あすの米雇用統計では前回急増した非農業部門雇用者数(NFP)は22万人増程度が予想されている。前回があまりに強過ぎたことから反動も期待されるものの、それでも予想通りであれば、今週のパウエルFRB議長の議会証言で高まったFRBのタカ派姿勢を正当化する内容ではある。一部からは明日の米雇用統計がドル高期待の梯子を外す内容になるリスクを警戒している向きもいる。一方、日銀は明日が黒田総裁の最後の決定会合となる。市場では据え置きが濃厚と見られているが、海外勢中心に何らかのタカ派なサプライズがあるのではとの警戒もあるようだ。
10日
東京市場では、日銀決定会合での現状維持発表を受けて円売りが強まった。日銀会合前のドル円は調整ムードが強く、一時135.80台まで下落する場面があった。日銀は午前11時30分過ぎといつもよりも少し早めに現状維持を発表した。ドル円は一気に買われ、高値を136.97近辺まで伸ばした。現状維持は大方の予想通りであったが、海外勢を中心にYCCの再修正・廃止の思惑もあったことで円売りに反応した。ユーロ円は144円割れから145円手前水準まで上昇。豪ドル円は89.20台を安値に90円台乗せへと買われた。
ロンドン市場は、米雇用統計を控えて値動きがまちまち。円相場は上下動。東京昼前に日銀が金融政策の据え置きを発表し、円売りに反応したが、ロンドン序盤には円が買い戻された。しかし、足元では再び円安方向に振れている。米銀行株の急落の影響で欧州株も下落。一方、米債利回りはロンドン時間には低下一服。米雇用統計が注目されるなかで、この時間帯は一方向への値動きが続きにくくなってるようだ。ドル円は136円台で下に往って来い。足元では高値を136.99近辺まで伸ばしてきている。ユーロ円も144円台後半から144円手前まで下落したあと、再び買われて145円台乗せとなっている。ポンド円は163円付近から162.50付近まで下押しされたあとは、騰勢を強めており164円台に乗せている。ロンドン朝方に発表された一連の英経済統計のなかで、1月の月次GDPが前月比+0.3%と前回の−0.5%から回復、市場予想も上回ったことがポンド相場に好感されたようだ。対ドルでも1.19台前半から一時1.20台乗せまで上昇。対ユーロでもポンド買いが優勢になっている。ユーロドルは1.0580付近から1.06台乗せ水準と狭いレンジで揉み合い。ドル指数は前日比小幅安での揉み合い。全般に米雇用統計待ちムードとなっている。
NY市場はこの日発表になった米雇用統計を受けてドル売りが強まった。ドル円は一時134円台前半まで見切り売りが強まり、21日線をブレイクしている。また、資本毀損に伴う経営危機が浮上していたSVBファイナンシャル<SIVB>が破綻し、他の地銀にも動揺が走っている。金融システムへのリスクが意識されていることも、市場の金利見通しに影響していた可能性もありそうだ。 

 

●為替相場 3/13-3/17 3/18 
まとめ3月13日から3月17日の週
13日からの週は、金融不安を背景にリスク動向が不安定になった。先週に米商業銀行シリコンバレーバンク(SVB)が破綻、その後も米2銀行が破綻した。週末には米金融当局が預金者保護をいち早く表明した。しかし、週明けもリスク警戒の動きが広がった。米ファースト・リパブリック銀行株が急落したほか、欧州金融大手クレディスイスも筆頭株主が追加支援を否定、経営不安から株価が急落。週後半には米ファースト・リパブリック銀行には支援の動きが、クレディスイスにはスイス中銀の大規模融資策などが発表され、急速な株価下落は落ち着いた。ただ、積極的にリスクをとる状況にもなく、不安定な相場展開が続いている。来週の米FOMCに対する見方も、金融不安が発生する前に台頭していた50bp利上げ観測は消え、一時利上げ見送り観測もみられた。その後は次第に25bp利上げに見方が固まってきている。ECB理事会では金融不安を受けた利上げ幅縮小の見方もでていたが、事前のコミット通りに50bpの大幅利上げが実施され、インフレ抑制を優先する姿勢が示された。ただ、金融不安を受けて今後の政策見通しについての言及は手控えられた。株安と米債利回り低下でドル円は131円台まで一時下落。クロス円もリスク回避の動きに下押しされた。ドル相場はリスク警戒のドル買いが優勢。ユーロ相場の軟調さも目立った。
13日
東京市場は、金融不安をにらんで不安定な動き。先週金曜日に米商業銀行シリコンバレーバンク(SVB)が破綻したことを受けて、一時ドル安・円高が強まった。先週金曜日に134.10台までドル売りが進んだ後、135円台を回復して週の取引を終えた経緯がある。週明け早朝に再び134.56近辺まで下押しされたが、米当局がSVB及び週末に破綻が報じられたシグネチャーバンクの預金を保護する姿勢を示したことで、135円台乗せへと上昇。しかし、今回のSVB破綻を受けて、今月のFOMCでの50bp利上げ見通しが大きく後退。米大手銀行ゴールドマンサックスは利上げを見送るとの見通しを示しており、米株高・ドル安につながった。米2年債の利回り低下などが見られる中で、133円台後半へと反落。午後には新発10年国債利回りが0.30%台に低下、米株先物が時間外取引で上昇、アジア株高などで134円台後半へ再び上昇。ユーロ円も143円台割れ水準から143円台後半で振幅した。ユーロドルは1.0660台まで下落したあと1.0730台まで上昇。午後は高止まりとなった。
ロンドン市場は、リスク回避の動きが再燃。週明けも欧州株が銀行株主導で急落、逃避先として主要国債券が買われた。独DAX指数は一時3%超安、独2年債利回りは一時50bp超低下した。米SVB破綻の影響が引き続き警戒されている。米当局は預金全額保護や緊急融資などの施策を発表したが、市場の不安は収まらず。時間外取引では米ファースト・リパブリック銀行株が一時60%安と売り込まれている。主要国中銀の利上げ観測にも大きな影響がでている。3月米FOMCについては金利据え置き観測が約4割に上昇、25bp利上げは約6割に低下している。ECBのターミナルレートについては3.50%を下回る水準へと市場の織り込みが低下。ドル円は134円台後半から一時132.95近辺まで下落。ユーロ円は144円台乗せから流れが反転して一時141.90台まで下落。ポンド円も163円付近から160.65近辺まで下落した。足元では下げ一服も戻りは限定的。ユーロドルは1.07台を維持できず、1.0660付近へと反落。ポンドドルは1.21台割れから1.2050付近まで反落した。独連銀は危機管理チームが会合し、SVB破綻で起こり得る影響を分析すると発表。ユーログループ議長や仏財務相は欧州への影響は限定的と、市場の不安を鎮めることに注力していた。
NY市場では、ドル売りが強まった。ドル円は一時132円台前半まで一気に下落する場面があった。ただ、取引後半には米株がプラスに転じたことで、ドル円も米債利回りとともに下げ渋り133円台へと戻した。市場では米地銀の資本棄損に伴う流動性への不安が強まっている。先週はカルフォルニア州の地銀SVBが破綻したが、その余波でNY州のシグネチャー・バンクも事業停止となった。米金融システムへの警戒感が強まり、他の米地銀にも同様の不安感が広まっている。米当局はSVBの顧客の預金保護を発表したものの、市場の不安は収まらないようだ。この状況を受けて米利上げ期待が一気に後退し、来週のFOMCでの50bp利上げの可能性を完全に後退させているのみならず、25bp利上げの可能性も不透明になっている。短期金融市場では25bp利上げの確率を完全に織り込めず、据え置きの確率を48%程度まで高めている。ドル円にはリスク回避の円高および、米利上げ期待後退によるドル安の二重の逆風が吹いていた格好。ドル売り圧力を受けて、ユーロドルは1.07台に上昇。これまでのところ欧州当局者はSVB銀の問題が欧州への波及リスクがあるとは考えておらず、米国の状況は特異なものとしている。それでも市場はタカ派なECBへの見方を後退させている状況。ポンドドルは1.22ちょうど付近まで一時買われた。
14日
東京市場では、前日のドル安にやや調整が入った。朝方はドル売りが優勢となりドル円は132.59近辺まで下落。その後は133円台乗せから133円台後半へと反発。政策金利動向との連動性が高いとされる米2年債利回りが前日の急低下から一転して上昇、ドル円は134.03近辺まで買われた。ただ、買いも続かず133円台前半へ下落と、前日からの神経質な相場展開が続いた。ユーロ円は朝方に142.63近辺の安値をつけたあとは143.40台まで反発する場面があった。ユーロドルは米債利回りの上昇で1.07台割れと、調整に押された。
ロンドン市場は、リスク回避の動きが一服。米SVB破綻を受けたリスク回避の動きは前日NY市場ではやや落ち着きを取り戻しつつあった。しかし、きょうの東京・アジア市場ではまだ不安定な面もみられた。ロンドン早朝にクレディスイスが財務諸表の報告手続きに関して「重大な弱点」があったと報じられると米債利回り低下とともにドル円やクロス円が一時下落。しかし、ロンドン時間に入ると米債やドイツ債などが買われ、株式市場も下げ渋った。前日に大幅安となった米ファースト・リパブリック銀行株が時間外取引でようやく下げ止まったことが好感された面も。また、注目イベント米消費者物価指数の発表を控えて、短期筋から調整が入った面も指摘される。ドル円は一時133.20付近まで下落も、その後は買いが優勢となり高値を134.33近辺に更新。ユーロ円も142.50付近までの下落後は143.83近辺まで買われた。ユーロドルは独債利回りの上昇もあって1.06台後半から1.07台乗せへと上昇。ポンドドルは1.2188近辺まで買われたあとは1.2150付近での揉み合いとなっている。ポンド円は162円台前半から163.25近辺まで一時上昇。11−1月の英ILO雇用統計で、失業率は3.7%と前回からの低水準を維持し、週平均賃金は前年比+5.7%と前回の+6.0%から伸びが鈍化した。
NY市場では、ドル円が上昇。前日までの米金融システムへの警戒感が一服し、ドル円は一時134円台後半まで買い戻しが入った。中小の米金融機関3行が破綻したが、きょうの市場は落ち着きを取り戻している。預金保護の措置など米当局の対応も早かったためか、金融システム全体への感染拡大は回避されるとの楽観論も出ているようだ。市場は、米金融システムへの不安感が強まる中で来週のFOMCがどうなるのか注目している。きょうは米消費者物価指数(CPI)が発表になっていたが、インフレ圧力の持続を示し、サービスインフレも上昇が続いていた。FRBのタカ派姿勢を裏付ける内容となっており、来週のFOMCでの利上げを正当化する内容。短期金融市場では0.50%ポイントの大幅利上げは完全に後退させているものの、0.25%ポイントの利上げ期待は高まっている。確率は70%程度で織り込んでいる一方、据え置きは30%程度に低下している。ユーロドルは1.07台で堅調に推移。米銀の信用不安を受けて市場は、FRBのみならずECBの利上げ期待も後退させている。ただ、きょうの市場の落ち着きから、今週のECB理事会ではラガルド総裁のコミット通りに、50bpの大幅利上げが実施されるとの見方に市場の意識も戻りつつあるようだ。ポンドドルは一時1.22台に上昇も、全体的には1.21台での上下動が続いた。米地銀の破綻で米金融システムが不透明感を増す中、来週の英中銀の25bpの利上げ予想に対するリスクは下方にシフトしたという。短期金融市場では半々の可能性で織り込まれている。
15日
東京市場は、神経質さを残しつつも落ち着いた展開だった。前日海外市場でリスク警戒の動きが後退していた。ドル円は134円台前半で東京市場を迎え、午前中は134.60付近まで上昇。ただ、日経平均が買いを維持できず売られたことで、134.03近辺まで反落。午後には再び買われで134.60台へと上昇、朝方に高値を更新した。今月のFOMCでの金利据え置き観測が後退し、25bp利上げの織り込みが進む中で米債利回りの動向が落ち着きを取り戻していた。ユーロ円は144円付近から144円台後半へとじり高の動き。ユーロドルは1.0760付近まで下落したあとは、1.0730付近へと上昇。豪ドルも一時0.67台乗せと、総じてリスク警戒後退によるドル売りが優勢だった。
ロンドン市場は、リスク回避の動きが再燃。一連の米銀行破綻の影響は一服しているが、今後は欧州発の金融不安が広がっている。クレディスイス(CS)の筆頭株主が追加支援を否定と報じられたことがきっかけ。CS株は一時25%安となり、上場来安値を更新した。欧州株は銀行株主導で大幅安となっている。米独債など主要債券が買われ、利回りが急低下。米10年債利回りは3.70%付近から3.50%付近に低下。金相場の安全資産買いも再燃。原油相場は供給過剰報道もあって下落。為替市場ではユーロ売りを軸に、円買いとドル買いが強まっている。東京・アジア市場で買われたドル円は135.11近辺を高値に下落に転換。安値を133.40近辺まで広げている。ユーロ円は145円手前まで買われていたが、一気に下げに転じて安値を141.50近辺に広げた。ユーロドルは1.07台割れから1.0586近辺に下落。あすはECB理事会が金融政策を発表するが、それに先立って関係者が「あすのECB会合では今後数年間はインフレが高止まりするとみているため、50bpの利上げに傾いている」と述べたことも欧州株の重石となったようだ。
NY市場でも、リスク回避の動きが広がった。米銀破綻の動きが一服したのもつかの間、今度は経営難に陥っているクレディスイス(CS)への懸念が重石になった。同行の筆頭株主であるサウジ・ナショナル銀行が「追加の流動性支援の要請があってもこれ以上は支援を行うことは絶対にない」としたことが不安感を引き越している。クレディスイスのCDSは深刻な懸念を示す水準に到達した。この日は1月の米小売売上高と米生産者物価指数(PPI)が発表され、FRBの利上げペース縮小観測を裏付ける内容となったことも、ドル円の下げを加速させた。ドル円は一時132円台前半まで急落。ただ、終盤には買い戻しも出て、一時133円台後半まで戻した。「スイス当局がクレディスイス安定化へ選択肢を討議」と伝わったことが買戻しを誘発した。ユーロドルはロンドン市場での急落を受けて、NY時間にも1.05台前半まで下落した。ラガルド総裁は50bpの利上げにコミットしているものの、今回のSVBの破綻からの一連の動きを見て、短期金融市場は利上げ幅を25bpに緩める可能性を高めた。ポンドドルも一時1.20台前半まで急落。きょうはハント英財務相が春季予算案を議会に提出し、今年はリセッションを回避できるとの見通しを示した。クレディスイスの信用不安もあってポンドの反応は限定的だったが、市場では本日の春季予算案を受けて、英中銀は利上げを行い易くなったとの指摘も出ている。
16日
東京市場は、イベント控えて方向感に欠ける振幅。ドル円は朝方に132円台半ばに軟化したあとは反発。スイス金融大手クレディスイスが、スイス中銀から最大500億フランを借り入れると発表すると、133円台半ばまで上昇した。下に往って来いとなったあとは再び値を落とし、132.60付近まで一時下落している。ユーロ円はドル円と同様に、午前には下に往って来いとなり、午後には140円台半ばまで下落も、再び141円台回復と振幅した。ユーロドルは午後にかけて買われ、1.0615付近に高値を更新。日本時間今夜10時15分に、ECBが金融政策を発表する。クレディスイスの経営危機を受けた金融不安が広がるなか、利上げ幅に注目が集まっている。NZドルは軟調。朝方に発表された第4四半期GDPが市場予想を下回ったことが背景。NZ円は81.62近辺まで下落、1月16日以来1か月ぶりの安値水準となった。
ロンドン市場は、ユーロ相場が下げ渋っている。前日はクレディスイスの経営不安を背景に同社株が上場来安値を更新となり、市場全般にリスク警戒の動きが広がった。しかし、クレディスイスがスイス中銀から最大500億フランを借り入れる計画を発表したことで事態は落ち着いた。欧州株の開始時には同社株は40%高と反発。欧州株は銀行株主導で買い戻されている。ただ、この後の一連の米経済指標発表やECB理事会の結果待ちのムードが広がるなかで、各市場の値動きは落ち着いてきている。ドル円は132円台半ばから133円台前半での上下動。ユーロドルは一時1.0635近辺、ユーロ円は141.58近辺に本日の高値を伸ばしたあと、上昇一服となっている。対ポンドではユーロ買い優勢を維持。ポンド相場はリスク動向の回復を受けて買い先行も、その後は調整売りに押されており、上値が重い印象。ポンドドルは一時1.21台乗せも、1.2050割れへと反落。ポンド円は161円台乗せも160円台割れへと反落。
NY市場では、ECB理事会や米指標発表などで神経質な動きをみせた。ECB理事会はクレディスイスなどの金融不安のなかで利上げ幅に注目が集まった。市場では上げ幅縮小や利上げ見送りといった見方もでていた。しかし、市場の予想に反してコミット通りに50bpポイントの大幅利上げを実施した。ただ、今回は金利の道筋についてのヒントは出さなかった。利上げを見送る、もしくは0.25%ポイントに縮小すれば、金融システムの問題が存在することを認めた形となることを避けたかったのかもしれない。インフレ見通しは積極利上げ姿勢を反映して前回12月時点から引き下げられた。また、住宅着工や新規失業保険申請件数などの米経済指標は米経済回復を示すものとなった。金融不安関連では、複数の金融機関による預金の形でのファースト・リパブリックへの300億ドルの支援が決まりそうなことなど、とりあえず小康状態となったことが好感された。ドル円131円台に下落する場面もあったが、133円台半ばへ急速に戻している。ユーロドルは1.06を挟んで売買が交錯した。ECB理事会後のラガルド総裁の会見はタカ派姿勢は崩していない。総裁は「インフレが高過ぎる状態が長く続くと予想している」と述べていた。ポンドドルはロンドン時間に一時1.20台前半まで下落したが、NY時間にかけて1.21台に買い戻された。
17日
東京市場では、ドルが上値重く推移した。前日NY市場ではドル買いが入ったが、取引終盤には一服。東京アジア時間には調整のドル売り傾向が続いている。経営状況への懸念が見られた米中堅銀行ファーストリパブリックバンクに対して、米JPモルガンチェース、シティグループ、BofAなど大手銀行11行が合計300億ドルの預金を預け流動性を確保する方針を示したことで、懸念がいったん後退した。東京市場では株が反発して始まるなど、リスク警戒の動きが後退した。ドル円は133円台後半から132円台後半へと軟化。ユーロドルは1.0600付近から1.0650付近へと上昇している。ユーロ円は前日NY市場で買われた高値水準を維持、141円台後半で高止まりしている。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。東京市場ではドルがじり安の流れとなり、ロンドン朝方まで継続した。クレディスイスや米ファースト・リパブリック銀行に支援策が打ち出されたことがリスク警戒の動きを緩和させていた。欧州株も買いが先行、米株先物も一時プラスに転じた。しかし、クレディスイス株の反発力は鈍く、下げに転じたことで再びリスク警戒のドル買いが優勢になっている。ユーロドルは1.0670近辺まで上昇したあと、1.06台前半へと反落。ポンドドルも1.2177近辺を高値に1.2120台まで反落した。ドル円はクロス円の売り圧力もあって売買が交錯133.30付近に買われる場面もあったが、足元では132.50台へと安値を広げる動き。ユーロ円は142円台乗せから141円ちょうど付近へと下落。ポンド円は162円付近から161円台割れへと下落。リスク警戒の円買いの動きが加わった。米10年債利回りは3.58%付近から3.48%付近へと低下している。週末にかけて不安定な相場となっている。
NY市場でドル円は戻り売りが強まり、一時131円台半ばまで下落した。前日安値が131.70付近にあったが、それを下回る動きも見られた。今週は金融システムを巡って波乱の1週間となったが、クレディスイス問題はスイス中銀の支援、米地銀も米政府を中心に具体的な支援策が打ち出されたことから、ひとまず落ち着きを取り戻している。しかし、市場の不信感は根強く、ドル円の上値は重い。米株式市場も銀行株への売りが続くなど軟調に推移しており、ドル円を圧迫した。 

 

●為替相場 3/20-3/24 3/25
まとめ3月20日から3月24日の週
20日からの週は、ドル売りと円買いが交錯した。米国や欧州で表面化した金融不安の状況下で、米英スイスなど主要国の金融政策会合が注目を浴びた。最も注目度の高い米FOMCでは大方の市場予想通り25bpの利上げが発表された。一方、メンバーらの金利見通しは事前の引き上げ予想に反して据え置かれた。インフレ対応を優先しつつも、金融不安の影響も垣間見られていた。これを受けてドル相場は売りに反応した。英中銀は予想通り25bpの利上げを発表。票割れは前回と同様の7対2で、反対票は据え置き主張だった。据え置き派の増加がある程度見込まれていたことからポンド買いの反応がみられた。スイス中銀は50bpの大幅利上げを継続し、インフレ抑制を最優先している。アジア各国やノルウェー中銀なども利上げを実施しており、全般にインフレ対応が優先される格好だった。ただ、利上げペースが鈍化していることもあって、一部には利上げ停止が近いとのニュアンスも醸し出されていた。今後、各中銀間で利上げペースや停止時期に関する差異が出てくる可能性も指摘される。一方、金融不安の状況は続いている。イエレン米財務長官の預金保護に関する発言に神経質な反応をみせるなど株式市場は不安定だった。米債利回りは神経質に上下動も、低下傾向は継続した。欧州ではUBSによるクレディスイス買収でAT1債が無価値化した。その余波で投資家は疑心暗鬼になっており、その他銀行株にも売りが波及した。金融不安は次の段階に入っている。ドル円は一時129円台、ユーロドルは1.09台、ポンドドルは1.23台までドル売りが進行する場面があった。ドル円の下げには株安によるリスク回避の円買いも加わった。クロス円は週央までの上げを消す動きが相次いで週末を迎えた。ただ週の引けにかけてはドル買い円売りが入り、最後の調整が見られるなど、行き過ぎた動きには警戒感が出ていた。
20日
東京市場は、不安定な相場展開だった。経営難が報じられているクレディスイス(CS)に対して、スイス当局が主導する形で、同国の金融大手UBSが買収することで合意。さらに朝方、日本銀行が米FRB、ECB、英中銀、カナダ中銀、スイス中銀などの中央銀行が協調して、ドルスワップ取り決めに基づく流動性供給を強化することを発表。リスク警戒の動きがやや後退する動きが見られた。ドル円は先週末の131円台後半から早朝には132円台半ばへと上昇。東京朝にはいったん131円台後半に戻したが、中銀による協調などの対応を好感する形で132.60台に再び買われた。しかし、株式市場は冴えない動きを続けた。CSの買収に際して、CSの発行したAT1債の元本毀損が報じられ、本来AT1債よりも劣後するはずの株式は一定額の価値が残るという異例の状況が生じたことへの警戒感が市場で広がり、アジアのいくつかの銀行が発行したAT1債の価格が低下。再びドル売り・円買いとなった。ドル円は上昇分を解消し円台後半での推移となっている。ユーロ円はドル円同様に振幅を見せ、140.60前後から141.70台まで上昇後、上げを解消した。ユーロドルはCS買収を受けて少し買われたものの、上値は重かった。1.06台後半を中心とした推移になっている。
ロンドン市場では、リスク警戒の動きが強まった。米国債価格が急騰(債券利回りは急落)となり、ドル円相場を圧迫している。先週末のリスク警戒によるドル売り円買いから東京午前にいったん上昇。東京朝方には週末のスイス金融大手クレディ・スイスに対するスイス中銀主導での同業UBSによる買収を受けた破綻リスク後退や、米、欧、英、日、スイス、カナダの各中銀協調でのドルの流動性供給などの措置が市場に好感されたが、クレディスイスの買収においてAT1債が無価値になるなど、かなり急激な措置を実施したことへの警戒感が広がった。ドル円はドル安と円高の両面から押し下げられ、130.50台まで一時下落。ユーロ円はドル円の下落とともに東京午前の141円台後半を高値にロンドン時間には138円台まで大きく下げた。ただ、その後は調整が入り反発、140.80付近へと大きく買われた。ユーロドルは1.06台後半から一時1.0630近辺まで下落。その後は一転して買われ、1.07台を回復した。
NY市場では、リスク回避の動きが一服。米株式市場で銀行株が買い戻され、一連の金融不安の動きは後退している。ドル円は131円台後半へと反発している。ユーロドルは買い戻しが優勢となって、1.07台を回復している。ポンドドルも1.22台後半まで上昇した。ただ、金融不安への不透明感はまだ残っているようだ。金融システムの問題が落ち着いたとしても、今後、銀行の融資が厳格化されることも予想される。米経済は景気後退に入るとの見方も。クレディスイスの場合、もともと経営不安が強まっていたところに米地銀の預金の取り付け騒ぎが問題に追い打ちをかけた格好となった。米銀とは違った不安が急速に高まった格好だが、ユーロ圏の金融機関も南欧中心に信用不安を引き起こさないか。また、主要国の金融機関にも経営不安がくすぶっている。一連の事態を受けて、市場では今週の米FOMC、英金融政策委員会(MPC)での政策金利据え置き観測も一部には広がってきている。
21日
東京市場は春分の日の祝日のため休場。
ロンドン市場は、ユーロ買い主導で円安・ドル安となっている。UBSがクレディスイスを買収することが報じられたことが、市場にひとまず安ど感をひろげている。欧州株が大幅に買われ、主要国債券は売られ、利回りが上昇している。欧州金融不安が一段落したことを受けて、ユーロ買いが強まっている。ユーロドルは1.07台前半から後半へ買われ、高値を1.0770近辺に伸ばしている。ユーロ円は140円台後半から142円台半ばへと上昇、高値を142.51近辺に更新。対ポンドでもユーロは買われており、ユーロポンドは0.87台前半から0.8790台に高値を伸ばしてきている。市場全般にリスク警戒の動きが後退するなかで、ドル円は米債利回り上昇とともに131円台前半から132.43近辺まで買われた。ポンドドルは対ユーロでもポンド買いの影響もあって1.2230付近から1.2250付近で売買が交錯。ポンド円は161円台乗せから162.26近辺へと買われているが、ユーロ円ほどの勢いにはなっていない。3月独ZEW景況感指数は13.0と前回の28.1から低下し、市場予想も下回ったが、ユーロ買いの勢いには影響していない。
NY市場では、ドル円が132円台に反発した。前日は一時130円台半ばまで下落する場面が見られていたが、UBSによるクレディスイスの買収および主要中銀による流動性供給強化の発表で金融システムへの懸念はひとまず一服しており、ドル円も買い戻しが強まっている。きょうからFOMCが始まっており、明日結果が発表されるが、今回の件でFRBがどう対応してくるか確認したい雰囲気も強い。それに向けたポジション調整が入った。利上げは実施されるものの、FRBはこれまでよりは慎重なトーンも示し始めるのではとの見方も出ていた。ユーロドルは一時1.07台後半まで買われた。ドルの戻り売りとともに、ECBの利上げ期待がユーロの下値を支えている面も指摘された。一方、ポンドドルは上値が重かった。1.22台半ばから一時1.21台後半まで下落した。その後は下げ渋りも1.22台前半までにとどまっている。市場では今週の英中銀金融政策委員会(MPC)に関して据え置きと小幅利上げで見方が分かれており、それを警戒したポンド売りが出ているとの指摘があった。 
22日
東京市場では、リスク警戒が後退も、FOMCを控えて慎重な動き。前日NY市場で米地銀ファーストリパブリック株が反発し、リスク警戒が緩和されていた。東京市場での時間外取引で同行株に再び売りがでると、ドル円は132.26近辺まで下落したが、午前中にはNY高値を超えて132.78近辺まで買われている。午後には132円台半ば付近で揉み合った。ユーロドルは1.0765-1.0777のわずか12ポイントレンジにとどまっている。FOMC待ちのムードが広がった。FOMCに関してはSVB破綻までは50bp利上げ見通しが大勢となっていたが、その後は据え置き見通しが一時優勢になるなど不安定な状況を経て、25bp利上げで見通しがほぼ一致している。ただ、今後についてはターミナルレート見通しがかなり振れており、不透明感が強い。
ロンドン市場は、米FOMC待ちとなるなかで、やや円売りが優勢。序盤はポンド買いが先行した。2月の英消費者物価指数が前年比+10.4%と市場予想+9.9%、前回の+10.1%を上回ったことが背景。明日の英金融政策委員会(MPC)での政策発表を控えて、市場は敏感に反応している。ポンドドルは1.22台前半から1.2297近辺まで上昇。ポンド円は162円台乗せから高値を163.34近辺まで伸ばした。対ユーロでもポンド買いが入っている。ポンド買いにつれてユーロも上昇。対ドルでは1.07台後半で高値を1.0795近辺に更新、対円では142円台半ばから143.30台へと高値を伸ばしてきている。欧州株や米株先物はやや売りが入る場面があったが、下値は堅く前日比プラス圏へと浮上している。米10年債利回りは3.57%から3.60%での揉み合いから、足元ではやや上昇している。金融不安がひとまず一服しており、落ち着いた相場展開となるなかで、米FOMCの発表を迎える態勢になっている。
NY市場では、FOMCを受けてドル売りが強まった。FOMCの結果が午後に発表され、政策金利は予想通りに25bpの利上げを実施し、誘導目標を4.75−5.00%に引き上げた。一方、注目のFOMC委員の今年末の金利見通し(ドット・プロット)の中央値は5.125%に据え置かれた。一部からは、金融システムへの不安はあるものの、インフレとは区別してドット・プロットを上方修正させるとの見方もあっただけに、慎重な雰囲気もあったようだ。これを受けてドル売りが強まった格好。その後にパウエルFRB議長の会見も行われ、議長は今回のFOMCで利上げ停止を検討したことを明らかにしたうえで、利上げに強いコンセンサスがあったと述べていた。従来のタカ派姿勢も垣間見せ、「年内利下げは見込んでいない。想定より高い水準への利上げ必要なら、そうする」などと述べていたものの、ドル売りの動きが継続。ドル円は131円台前半へと急速に下落した。ユーロドルは一時1.09台まで急伸。ポンドドルは1.23台に上昇した。ユーロにとってはECBの利上げ期待、ポンドにとっては今日発表された英CPIの上振れも支援材料となっていた。
23日
東京市場では、ドル売りが優勢。ドル円は前日FOMC後のドル売りが継続し、米債利回りの低下とともに午後には130.42近辺まで安値を広げた。2月10日以来、約6週間ぶりの安値水準となった。東京終盤にかけては下げ一服となったものの、戻りは鈍く、130円台後半でもみ合う展開が続いた。ユーロドルは朝から堅調に推移。午後に入り、前日高値に迫る1.0911付近まで一時上昇した。ユーロ円は下げが一巡。午前のドル円に追随して、正午ごろに142.19付近まで下落したが、その後は下げ渋り、午前の下げを帳消しにする場面があった。日本時間本日17時30分にスイス中銀政策金利、21時00分に英中銀政策金利が発表される予定となっており、その結果に注目が集まっている。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。英中銀の金融政策発表を控えて、米債利回り上昇とともに、前日の米FOMC後からのドル売りの流れに調整が入っている。ドル円は東京昼過ぎにつけた130.42近辺の安値からロンドン時間には131.40台へと反発、下げを戻している。ユーロドルは1.0930近辺まで買われたあとは、1.0860台まで反落。ポンドドルは1.2344近辺を高値に1.2280台まで反落。ドル指数は東京市場から下に往って来いの振幅となっている。米株先物の反発を受けて買われていたクロス円は上昇一服。スイス中銀やノルウェー中銀など相次ぐ欧州中銀の利上げ発表で欧州株が売られており、円売りの矛先が鈍っている。ユーロ円は143円台割れへ、ポンド円は161円台での上下動となっている。スイス中銀は50bp利上げ、ノルウェー中銀は25bp利上げと利上げ幅はいずれも予想通りだったが、いずれも今後の追加利上げについて示唆した。金融不安よりもインフレ対応を急ぐ姿勢を示した。この後の英中銀金融政策発表では25bp利上げが予想されている。各委員の票割れが注目されている。
NY市場では、次第にリスク回避ムードが高まった。終盤に入って市場はリスク回避の雰囲気を強めた。ドル円は再び売りを強め、一時130.30円付近まで下落する場面が見られた。ドル売りというよりも円高の動きがドル円を圧迫。要因は米株式市場が失速し下げに転じたことだが、序盤は反発して始まった銀行株に徐々に売りが強まり、市場の雰囲気を圧迫した。ただ、一時買い戻しも出ていた。イエレン米財務長官の議会証言の事前原稿が伝わり、「正当化されるなら預金保護で追加措置を準備」と述べたことに敏感に反応。ユーロドルも後半に失速。ロンドン時間の朝方に1.0930近辺まで上昇する場面も見られたが、NY時間の終盤に1.08台前半まで下落した。ポンドドルも伸び悩む動きが出ているものの、きょうは一時1.23台半ばまで上昇する場面が見られた。本日は英中銀金融政策委員会(MPC)が開催されたが、予想以上にタカ派な印象だったことがポンドの下値をサポート。追加利上げの可能性に含みを持たせたほか、成長見通しを上方修正した。2月時点では第2四半期はマイナス成長を予想していたが、若干のプラス成長に上方修正している。一方、インフレについては大幅な上振れがあったが、今後数カ月で急低下するとの見方を変えていない。委員の投票行動も前回と同様に9名のうち7名が引き上げを支持し、2名が据え置きを主張した。
24日
東京市場では、円買い圧力が広がった。欧米の金融システムに対する根強い不安などからリスク警戒の動きが続いた。日経平均の下落とともに、ドル円は前日安値を下回った。午後には米債利回りの低下も加わって130.06近辺まで安値を広げた。2月10日以来、6週間ぶりの安値水準となっている。ユーロ円も前日からの売りの流れが継続して、午後には140.89付近に安値を広げた。ユーロドルは昼頃に1.0817近辺まで下落、前日安値を下回ったが、1.08台前半からは離れず、安値圏での揉み合いが続いた。
ロンドン市場は、ユーロ売りが主導して円高・ドル高が進行している。欧州の金融不安が拡大しており、ドイツ銀行株は一時14%安と急落。銀行株が全面安となっている。独仏株価指数はいずれも2%を超える下げ。欧州債や米国債が買われ、利回りは低下している。USBがクレディスイスを買収することで、クレディスイスのAT1債が無価値化する。これを嫌って投資家は主要銀行のAT1債売りに走っている。CDSは上昇しており、危機的な様相を呈している。ユーロ相場は欧州株の取引き開始とともに急落。ユーロドルは1.08台前半から1.07台前半へ、ユーロ円は141円台前半から139円手前水準へと下落。その他主要通貨に対してもユーロは売られている。リスク回避の円買いやドル買いが波及して、ポンドドルは1.22台後半から1.22台割れへ、ポンド円は160円付近から158円台前半へと下落。ドル円は130円の節目水準を割り込むと129.60台まで下押しされ、年初来の安値水準を更新している。3月ユーロ圏PMI速報値は改善、同英国PMI速報値は低下したが、市場反応はほとんどみられず。リスク動向に視線が集まる展開になっている。
NY市場では円売りの動きが広がった。ドル円は130円90銭台まで一時上昇。朝からの下げ分をすべて解消している。週末を前にリスク警戒の動きが後退。序盤は売りが目立った米株は、主要3指数がいずれもプラス圏で引けた。ダウ平均は安値から400ドル以上上昇。ハイテクの一部に売りが出たことで、ダウなどがプラス圏推移の中でも冴えない動きを見せたナスダックもプラス圏を回復して引けた。週末越えのポジション維持を嫌った調整なども出ていた。ロンドン市場で大きく下げたユーロ円やポンド円も大きく買い戻され、東京朝の高値には届かないものの、ロンドン市場での下げ分を解消する動き。ドイツ銀行株安をきっかけとしてロンドン市場で対ドルでも売られていたユーロは、買い戻しが入ったものの、限定的にとどまっている。 

 

●為替相場 3/27-3/31 4/1
まとめ3月27日から3月31日の週
27日からの週は、リスク選好ムードが広がり円売りとドル売りが優勢だった。一連の金融不安の動きが一服したことや、、欧州などでインフレ指標の伸びが鈍化したことが、今後の中銀利上げ打ち止め観測を高めたことが株式市場などに好感された。米ナスダック指数は強気相場入りとなった。また、年度末・月末・四半期末で実需取引が持ち込まれたことも円安に作用していた。ドル円は130円台から133円台へと上昇。ユーロ円は140円台から145円台へ、ポンド円は159円台から165円台まで上昇。ドル売り傾向も継続し、ユーロドルは1.09台、ポンドドルは1.24台に上昇した。ドル指数は3月に入ってからの低下傾向を維持している。週末を前にドル円が高値から調整の動きが見られるなど、一方向の動きに対する警戒感も見られた。
27日
東京市場では、円売りが優勢。ドル円は先週末の海外市場で129.64レベルと2月3日以来の安値をつけたが、引けにかけては130円台後半に戻した経緯があった。週明けはいったん130円台半ば割れまで調整されたが、すぐに買いに転じると午前中には131.05レベルまで高値を伸ばした。米株先物が時間外取引で堅調に推移し、リスク警戒が後退した。ユーロ円も一時141円台に乗せた。午後にはドル円とともに値動きが一服。ユーロドルは1.07台後半を中心とした値動き。また、欧州金融機関に対する警戒感がおり、ロンドン勢の参加待ちに。日経平均は比較的しっかりとなったものの、10時半に発表された中国の工業企業利益(1−2月)が前年比−22.9%と大きく落ち込み、中国売りが広がったこともあって、アジア株式市場全体ではさえない動きとなったことでリスク警戒後退の動きも一服した。
ロンドン市場では、クロス円を中心に円が売られた。リスク警戒の動きが後退している。米当局が銀行向け緊急融資ファシリティー拡張などの追加的な銀行支援策検討との週末報道を受けて、時間外市場でファーストリパブリックバンク株が上昇。先週末の株高を好感して東京、欧州の株式市場がしっかりとした動きを見せたことなどが好感され円売りとなった。ドル円は東京朝方の高値を超えて131円台半ばまで買われた。ユーロ円は140.60付近まで調整売りが入ったあとは141.70台へと上昇。ポンド円は振幅を伴いながらも159円台から161円台乗せへと上昇。リスク警戒の動き後退による対ドルでの欧州通貨買いも目立っており、ユーロドルやポンドドルがしっかり。特にポンドは英債利回りの上昇などを巻き込んで大きく買われ、ポンドドルはロンドン朝の1.2220前後から1.2270台まで上昇。ユーロドルは1.0780台がやや重く、ロンドン朝の上昇からいったん1.0750割れまで調整が入ったが、その後独Ifo景況感指数の好結果や、スペイン中銀総裁のユーロ圏金融機関悪いシナリオにも用意周到との発言などから買い戻しが入り、1.0780手前まで再び上昇。
NY市場では、ドル円が一段と買われた。131円台後半まで一時上昇した。きょうドイツ銀株が買い戻されており、不安は一服している模様。米銀株も買い戻された。しかし、FRBの利上げサイクルの停止および、場合によっては年内の利下げ観測も浮上する中、ドルを積極的に買う動きはない。。そのほか、景気のハードランディングへの不安もみられた。ロシアがベラルーシに戦術核兵器を設置するという地政学的緊張も再燃しており、市場にとっては依然としてすっきりしない状況が続きそうだ。ユーロドルは1.08付近まで上昇。一部調査によると、ユーロドルは過去数カ月間、ユーロ圏と米国の間の長期債利回りの格差に敏感であるとの指摘があった。金融不安が後退する中でポンドドルは買いが優勢となり、1.22台後半まで戻した。先週の英中銀金融政策委員会(MPC)は予想以上にタカ派色が強かった印象で、利上げ停止を期待していた市場も見直しを迫られ、短期金融市場では年内にあと1回か2回の利上げを織り込む動きが見られていた。
28日
東京市場は、調整含みの動き。ドル円は午前中に131円台後半から130.50台までドル安・円高が進んだ。北朝鮮の金総書記にによる核兵器いつでも使用できるように準備しておくべき発言や、年度末を前にした実需がらみでの円買い、米債利回りの低下を受けたドル売りなどが見られた。米2年債は3.96%前後から一時3.89%まで低下した。 ドル円は午後に入っても上値の重い動き。小幅ながら午前の安値を割り込み130.51レベルを付ける場面が見られた。安値を付けた後は少し戻しているが、130円台後半での推移にとどまった。ユーロ円は午前中の円買いに142円台から141円台前半へ下げた。午後に入って141.05レベルまで下げ幅を広げたが、大台は維持して少し戻している。ユーロドルは1.08を挟んだ振幅にとどまった。午前9時半の豪小売売上高は市場予想通りで、反応は落ち着いていた。豪ドル/ドルは0.6650割れから0.67手前へと上昇。豪ドル円は87円台半ばから前半でやや上値が重かった。
ロンドン市場は、不安定な相場展開。東京午後からロンドン序盤にかけては株高、米債利回り上昇などリスク選好的な動きがみられた。先週に不安定な値動きをみせたドイツ銀株が上昇して取引を開始、安ど感を広げていた。ドル円は130.50付近の安値から一時131.30近辺まで反発。ユーロ円は141円付近から一時142円台乗せ、ポンド円は160円台後半から161円台後半へと反発。しかし、この流れは続かず。米株先物が下げに転じ、欧州株も序盤の上げを失っている。ドイツ銀株が再び売られ、一時3%安となる動きが警戒感を誘った。ドル円は再び130円台後半へと押し戻され、131円挟みで不安定に売買が交錯している。ユーロ円は141円台後半で売買交錯、ポンド円は一時160円台後半まで押し戻されたあと161円台前半で取引されている。ユーロドルは一時1.0834近辺に高値を伸ばしたが、その後は1.08台前半で高止まり。ポンドドルは1.2330近辺まで買われたあとは1.2280付近まで反落、そして1.23台前半に下げ渋りと方向性定まらない動き。タカ派で知られるミュラー・エストニア中銀総裁は、「おそらく利上げする余地があるだろう」と自説を展開しつつも、「次回のECB会合ではより様々な意見がでてくるだろう」と付け加えた。ベイリー英中銀総裁は、「世界のマーケットが銀行を試している、弱さの兆候探して」と現在の状況を表現した。
NY市場は、ドル相場の上値が重かった。ドル円は一時130.40近辺まで下落する場面があり、その後は下げ渋りも上値では戻り待ちの売りも多そうな雰囲気だった。米国やスイス当局の対応もあり、金融不安は一服しているもののドル売り圧力が根強く、ドル円の上値を圧迫している。市場では、FRBの早期利上げサイクル停止および、場合によっては年内の利下げシナリオが浮上している。FRBは年内の利下げについては否定しているが、投資家はドルに積極的になれないようだ。短期金融市場では5月か6月のFOMCで0.25%ポイントの利上げをあと1回、それで今回の利上げサイクルをひとまず停止との見方を織り込んでいる。景気のハードランディングによるリスク回避の円高への警戒感も。ユーロドルは1.ドル台半ばまで上げ幅を伸ばした。先週の金融不安台頭による下げをほぼ解消している。市場からは、ECBとFRBの政策金利差が収束するにつれてユーロはさらに上昇する可能性があるとの指摘が出ている。ECBのメンバーは追加利上げを示唆し続けており、ユーロはさらに上昇する可能性があるという。ポンドドルは1.23台半ばまで上げ幅を伸ばし、先週の高値に顔合わせした。将来の金融政策に関する英中銀とFRBのシグナルが異なると指摘。ベイリー英中銀総裁は前日に比較的タカ派的な発言を行った。総裁は「英銀行システムは健全な状態にあり、インフレ圧力が持続すれば追加利上げが可能」との見解を示した。
29日
東京市場では、ドル円が大きく買われた。朝方の130円台から午前中に大きく上昇。安値から1円以上高い131台後半へと高値を更新。仲値にかけてのドル買いが目立ち、年度末を前にした仲値需要がドル円を支えたもよう。その後の調整は限定的で、堅調地合いを維持。131円台後半推移が続いたあと、東京午前の高値を超えて132円に向かう動きとなった。日経平均の300円を超える上昇。アリババの急騰などで2%を超える上昇となった香港ハンセン指数など、アジア株の堅調な動きが円売りを支えた。衆院で答弁した内田日銀新副総裁が金融市場の安定が大事と発言。40年債の入札が好調となったことなども円売りにつながった。ユーロ円も141.70台から142.90台まで大きく買われた。ユーロドルは1.08台前半で小高く推移。
ロンドン市場は、円安・ドル安の動きが広がった。欧州株や米株先物・時間外取引が堅調に推移し、リスク警戒感は後退している。きょうはアリババの企業分割が話題となっており、同社株が大幅高。香港株をはじめとしたアジア株や日本株も買われており、リスク動向は改善。また、米短期金融市場での5月FOMC見通しは据え置き観測が増加しており、25bp利上げとは約6対4の割合で織り込んできている。米10年債利回りは3.57%付近から3.53%付近まで一時低下し、ドル売り圧力となる面も。円相場にはリスク動向に加えて、年度末などの円売りフローの観測もみられた。ドル円はロンドン序盤に132.09近辺に高値を伸ばし、その後131.50台まで反落も、再び132円付近へ上昇する動き。クロス円も堅調で、ユーロ円は142円台後半から143.20台へ、ポンド円は162円台半ばから162.90台へ一段と上昇。ユーロドルは1.0810台に下押しされたあとは1.0860台に高値を更新。ポンドドルも1.2305付近に軟化したあとは、1.2360付近へと買われている。カジミール・スロバキア中銀総裁は、「利上げを継続すべき、おそらくペースは緩やかに」、レーンECBチーフエコノミストは「基本シナリオではより一層の利上げが必要に」などとやや慎重さは加わったものの利上げ継続姿勢を示した。
NY市場では、ドル円が一段と上昇。132円台後半まで買われた。ドル売り圧力は一服したが、それ以上に円売り圧力がドル円を下支えしていた。月末、期末、日本の年度末の接近ということもあり、実需の買いも出ていたもよう。金融不安がひとまず一服していることもあり、リスク選好の円売りを指摘する向きもいる。 FRBの利上げサイクルもメドが見え始めている中、このところ市場では金融不安をきっかけに、逃避通貨としての円を見直す動きが復活している。ただ、今回の金融不安の台頭で、今後米銀を始めとした各国の金融機関が融資を厳格化してくることが想定され、景気の下振れリスクが高まるのではとの警戒感も。ユーロドルは1.08台前半に値を落とした。ただ、このところの上昇トレンドは維持している。先日のECB理事会では0.50%ポイントの大幅利上げは実施したものの、ガイダンスからは次回以降の利上げ示唆の言及は削除された。今回の銀行危機に配慮したものだが、その後のECB理事の発言からは追加利上げを志向していることがうかがえる。ポンドドルは1.23台前半と、上昇一服。本日発表の2月の個人向けの英住宅ローン貸付の月間増加額は7億ポンドと前回の20億ポンドから急減し、パンデミック期を除けば2016年4月以来の最低額となった。一方、住宅ローンの承認件数は6カ月ぶりに上昇したものの、4万3500件とパンデミック前の水準を35%ほど下回る水準に留まった。
30日
東京市場は、前日海外市場で進行したドル高の水準で売買が交錯。ドル円は前日に130円台後半から132円台後半まで大きく上昇。その後、東京朝にはやや上値を抑えられて132円台半ばへと弱含んだ。午後に入り、米債利回りが一時下げに転じたことからドル円も一段安となり、132.36近辺まで下落、この日の安値を更新した。ユーロ円も軟化して午後には143.51近辺に安値を広げた。ユーロドルは方向性が定まらず。午前に1.0826近辺まで軟化も、午後には1.08台半ばへと戻して下げを帳消しにする場面があった。
ロンドン市場は、株高とともに円売りとドル売りが入った。なかでもユーロ買いが主導している。欧州株高の背景には、このところの金融不安が一服したことや、前日のアリババ株急騰などで市場ムードが好転したことがある。これらに加えて、きょうは3月スペイン消費者物価指数・速報値が前年比+3.3%と2月の+6.0%から急減速したことも好材料となっていた。ユーロ相場は弱いインフレの伸びに一時売り反応も、すぐに買いが入った。ユーロドルは1.08台前半から1.08台後半へ、ユーロ円は143円台前半に下げたあと、144円台乗せに。ユーロはポンドや豪ドルなどその他主要通貨に対しても堅調。ポンドドルは1.23台前半から一時1.23台後半まで買われたが、対ユーロでの売りに1.23台前半へと押し戻されている。ポンド円は163円台前半から一時164円台乗せも、足元では163円台半ばへと失速。ドル円はロンドン朝方に132.20付近まで軟化したあとは132.90付近に高値を伸ばした。その後は132円台半ばに押し戻されている。欧州株、米株先物・時間外取引はともに堅調に推移しており、リスク選好ムードが続いている。5月米FOMCについて、市場では約6割が据え置き、約4割が25bp利上げを織り込んでおり、前日から状況に変化はみられていない。
NY市場は、全体的にドル売りが優勢。その中でドル円は買いが続き、一時132円台後半まで買われた。ドル売り圧力は続いているものの、円売りがドル円を下支えしている。月末、期末、日本の年度末もあり、前日同様に実需買いも出ていたようだ。金融不安がひとまず一服し、米株式市場も買戻されている。米金利のピークが近く、金融不安もさらに緩和されるとの期待から、市場のムードは高まっている。ユーロドルは上値追いが続いており、一時1.0925近辺まで上げ幅を拡大。3月のドイツの消費者物価指数(HICP)の速報値が発表になっていたが、ガス価格の下落で前回からは低下していたものの予想は上回っていた。金融不安が後退する中で市場では、ドイツのインフレが予想を上回ったことでECBは再び利上げに趣きを置くとの見方が広がっており、ユーロも上昇。明日はFRBが参照しているインフレ指標である2月のPCEデフレータが発表される。ポンドドルも1.23台後半まで上昇。市場では英経済への悲観論が和らいでおり、ポンドを下支えしている。明日発表されるFRBが最も注目しているコアPCEデフレータは前月比で0.4%上昇、前年比では4.7%の上昇が予想されている。
31日
東京市場では、ドル円が振幅した。午前に国内輸入企業からとみられる買いで132円台後半から一時133.51近辺まで買われた。17日以来2週間ぶりのドル高・円安水準となった。今日は月末・年度末のため実需絡みとみられる取引が活発だったほか、日経平均やアジア株が堅調に推移していることもリスク選好の円売りを誘った。午後にかけては円売りの動きが一巡し、午前の上げを帳消しにする場面があった。日本時間今晩に発表される2月の米PCEデフレータなどの結果を見極めたいとの見方から様子見ムードが広がり、132円台後半から133円ちょうど付近で小動きとなった。ユーロ円は、午前の円安局面で昨年12月20日以来およそ3カ月ぶりの高値水準となる145.67付近まで上昇。午後は144円台後半での揉み合いに落ち着いた。昨日の海外市場で1.0926付近まで上昇したユーロドルは、午前に前日高値に顔合わせする場面があったものの、上げは持続せず、午後は1.09台を割り込んでいる。
ロンドン市場はドルが買い戻されている。ドル円は東京市場で133.50付近から132.70付近へと下げたが、ロンドン時間に入ると再び堅調な動きをみせている。日銀が4−6月の国債買い入れ額のレンジを拡大との報道が一瞬円高につながったが、緩和強化との見方からその後円安に復した。ユーロ圏消費者物価指数が全般に弱く出たことで、ユーロドルは1.09台割れから1.0860台へと安値を広げている。ユーロ対ポンド相場ではユーロ売りが入るなどユーロ安が広がった。前日のドイツ消費者物価指数の弱さなどもあり、ユーロ安が入りやすい地合い。
NY市場は落ち着いた動きながらドル円、ユーロドルともに上値の重い展開となった。ドル円はロンドン市場の動きに対する調整が主体と見られる。米PCEデフレータが市場予想よりやや弱く出たことなどがドル売り円買いのきっかけ。もっとも次回FOMCでの見通しは、利上げと据え置きが拮抗した状況が変わらず。前回予想よりもかなり強く出たこともあり、事前の期待が見られた分の反動でのドル売りという面があった。ユーロドルはロンドン市場での流れが継続し、安値を広げた。物価鈍化見通しが追加利上げ期待を抑える形になっている。 

 

●為替相場 4/3-4/7 4/8 
まとめ4月3日から4月7日の週
3日からの週は、ドル売りが優勢だった。週明けはOPECプラスの予想外の減産発表を受けて、原油先物が急騰。インフレ懸念から米利上げ観測が強まった。市場での5月FOMC観測は25bp利上げが優勢となり、米債利回り上昇とともにドル買いが入った。しかし、その後の一連の米経済統計が弱含んだことで、米債利回り低下、5月FOMC観測は据え置きが有力となり、ドル売りの流れに回帰した。月曜日の米ISM製造業景気指数に続いて、米JOLTS求人数、米ADP雇用統計、米ISM非製造業景気指数、米新規失業保険申請件数など連日の米景気鈍化につながる結果となった。ドル安を側面から支えたのがユーロ高、ポンド高の動きだった。ユーロ圏では根強いコアインフレ上昇が意識され、英国では予想よりも経済状況が回復しているとの見方が広がり、両通貨には独自に買い圧力がみられていた。NZドルは中銀が予想外の50bpの大幅利上げを発表し買われた。一方で、豪中銀は政策金利を据え置き、市場に利上げ休止観測が広がった。豪ドルが独歩安となる場面があった。全般的には金融不安の影が薄れており、各国経済統計や金利見通しなどファンダメンタルズ材料が主役となった週だった。週末にはイースター休暇のなかで米雇用統計が発表された。失業率が予想外に低下し、労働参加率も上昇。米債利回り急伸とともにドル買いの反応が広がった。また、米株先物が買われており、クロス円が上昇。ドル円が高止まりするなかで、ユーロドルやポンドドルの下落は一服した。
3日
東京市場は、ドル円が振幅。全般的にはドル買いが優勢。週末にOPECプラスが協調減産を発表。予想外の減産にNY原油先物が急騰し81ドル台後半を付けた。ドル高が一気に進む展開となり、ドル円は先週末の132円台後半から133円台前半に急騰して取引をスタート。133円を挟んで激しく振幅したあと、133.59近辺まで買われた。NY原油の上昇が米国のインフレ期待につながり、ドル高が進むという流れ。CMEのFedWatchツールによると、次回5月の米FOMCについて、先週末時点では金利据え置きが多数派となっていたが、減産発表の影響で25bp利上げ見通しが据え置き見通しを上回った。ドルは、ほぼ全面高。ドル円と違って一方向の動きとなっており、ユーロドルは1.0840台から1.0780台へ、ポンドドルは1.2340前後から1.2270台へ下落。ただ、産油国通貨には買いが出ており、ドルカナダは朝方に1.3480台と、2月21日以来のドル安カナダ高水準を付けた。カナダ円は98.80台と3月10日以来の高値水準。ノルウェークローネなど、その他の産油国通貨も朝方に買いが入っていた。豪ドルは対ドルで0.67台を回復した後はドル高の勢いに押され0.6650台まで軟化。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。週明けのオセアニア市場では原油が急騰した。週末にサウジなどOPECプラスが予想外の減産方針を表明したことが背景。市場ではインフレ警戒から米利上げ観測が高まり、米債利回り上昇とともにドル買いの動きがみられた。ドル円は東京午後に133.76近辺まで高値を伸ばした。しかし、ロンドン時間に入ると米債利回りが低下に転じ、ドルも売り戻されている。ドル円は133.20付近に反落。上に往って来いの値動き。ユーロドルは1.08台割れへと軟化したあと、ロンドン時間には買いが優勢になり高値を1.0870付近に伸ばした。ポンドドルは1.22台後半から1.2360付近に上昇。豪ドルやカナダドルなど資源国通貨や石油関連通貨も買われている。欧州株では石油株や銀行株が堅調。リスク選好ムードもドル売りにつながっている。クロス円は円安方向に振れてユーロ円は144円台後半、ポンド円は164円台後半に高値を伸ばしている。独仏ユーロ圏、英国などの製造業PMIは確報値ということもあり、市場は反応薄だった。NY原油相場は80ドル付近に高止まりしており、OPECプラス会合の行方を見守っている。
NY市場では、ドル売りが強まった。米ISM製造業景気指数が弱い内容となったことで米国債利回りが急低下したことが背景。ドル円は132円台前半まで急速に下落した。金融不安の後退で市場のセンチメントは改善しているが、弱い米指標を受けて景気先行きへの不透明感から市場の年内利下げ期待は根強いようだ。早ければ夏以降にも実施される可能性を留意する動きを織り込んでいる。ECBや英中銀が予想以上にタカ派姿勢を堅持していることもあり、ドルを積極的に買うインセンティブに乏しい。ユーロドルは買い戻しが強まり、一時1.09台に上昇。アジア時間の1.07台から戻している。NY時間に入ってECB理事のホルツマン・オーストリア中銀総裁の発言が伝わっていたが、「5月の理事会での50bpポイントの大幅利上げの選択肢は残されている」と述べていた。ポンドドルも買い戻されて1.24台まで上昇。これまで4月はポンド買いが強まる季節と言われてきた。配当の支払いなどもあり、歴史的にポンドにとってプラスの月ではあったが、ストラテジストの分析によると、近年この関連性は薄れて来ているという。
4日
東京市場では、ドル円が買われた。朝方には前日NY市場の安値を割り込み、132.17近辺まで下落した。その後は一転して上昇。NY原油がしっかり。一時81ドル台を付ける中、米インフレ期待が再燃してドル高となった。午後に入ってもドル高基調が継続し、132.98近辺に高値を伸ばした。ユーロドルは東京朝方に1.0910近辺へと買われたが、午後に入るとドル高の動きから1.0880台へと下落した。13時半の豪中銀金融政策理事会は市場予想通り政策金利を据え置いた。利上げを見込む動きが3割ほど見られたため、相場への影響が期待されたが、声明で必要であれば追加利上げを実施する姿勢を示したことなどから、豪ドル売りは限定的なものにとどまった。豪ドル/ドルは0.6780台で発表を迎え、その後の下落は0.6758前後までにとどまった。豪ドル円は89.90台から89.70割れまでの限定的な下げだった。
ロンドン市場は、ドル安・円安の動き。欧州株が堅調に推移、まちまちの動きだった米株先物も主要3指数がそろってプラス圏を回復している。特段の新規材料はみられていないが、前日の米ISM製造業景気指数が予想を下回ったことが、米金融当局の引き締め姿勢緩和への期待につながった面が指摘される。原油相場は引き続い底堅く、NY原油先物は81ドル台で取引されている。クレディスイスCEOは株主総会で謝罪した。ECBの消費者期待インフレ調査によると、今後12カ月のインフレ予想が4.9%から4.6%に低下した。ハト派で知られるテンレイロ英中銀委員は、「CPI目標の達成には、より金融政策を緩めること必要」「現在の高金利は急激な反動を招くだろう」と主張した。いずれにも市場は直接的には反応していないが、株式市場などの好ムードにはつながったようだ。ポンド買いが目立っており、対ドルで1.24付近から一時1.25台乗せ、対円で164円台後半から166円台乗せへと上伸。ユーロドルは1.08台後半から1.09台前半へ、ユーロ円は144円台半ばから145円台前半へと買われている。ユーロは対ポンドでは売られている。ドル円は132.50付近に下押しされたあとは一時133円台乗せと下値が堅かった。
NY市場では、前日と同様にドル売りが強まった。ドル円は131円台に急落。2月の米求人件数が予想以上に減少したことで、米国債利回りが急低下、ドル円も戻り売りを強めた格好。2月の米求人件数は993万件と前回の修正値から大幅に減少した。1000万割れは2021年5月以来で、一部の産業における労働需要の冷え込みを示唆している。ただ、FRBにとっては依然タイトな状況を示す内容ではある。前日はISM製造業景気指数が予想以上に弱い内容だったが、本日の米求人件数と伴に、米経済の軟化を示す指標が相次いでおり、米経済の先行きに対する不安感に市場の意識が傾いているのかもしれない。米株式市場も戻り売りが優勢となっており、円の買い戻しがドル円を圧迫した面も。ユーロドルは上値追いが続き1.09台を回復。一時1.0975付近まで上昇し、1.10ドルの節目と2月に付けた年初来高値1.1035付近を視野に入れている。ポンドドルも買われ、1.25台を一時回復。12月と1月に上値を拒んでいた1.24台前半から半ばの水準を突破し、年初来高値を更新した。このところの英経済指標の堅調さや、外的ショックに対する英銀行セクターの堅剛さ、そして、英中銀のタカ派スタンスにより、ポンドは年初来で主要通貨の中で最も良好なパフォーマンスを示している。英中銀チーフエコノミストのピル委員の発言が伝わっていたが、「英国のインフレは受け入れがたいほど高く、持続的なインフレは金利上昇を正当化する」と、追加利上げの可能性を示唆した。
5日
東京市場では、NZドルが急伸。NZ中銀は予想外に50bpの大幅利上げを実施した。市場予想はほとんどが25bp利上げだった。景気減速の兆しがあることを認めたものの、インフレを目標に戻すために需要減が必要という姿勢を示した形。前日の豪中銀が据え置きとなっていたこともあり、かなりサプライズな大幅利上げとなった。NZドルは一気に買われ、対ドルで0.6300台から0.6370台に上昇。対円は83円割れから83.90近辺まで買われた。一方、豪ドルは軟調。ロウ豪中銀総裁は、総裁が金融引き締め姿勢の継続を示したが、豪ドル買い反応は限定的。前日の豪中銀の据え置きと、今日のNZ中銀の大幅利上げという対照的な動きが相場に影響した。対NZドルで1.0611まで下落し年初来安値を更新している。豪ドル円は88円台半ば、豪ドルドルは0.6730台まで下落した。
ロンドン市場は、ドル売りが一服。欧州株や米株先物・時間外取引は小安く推移。米債利回りは前日の低下の動きからやや調整されている。前日のNY市場では米JOLTS求人数が減少したことがドル売りにつながった。きょうはこのあとに米ADP雇用統計や米ISM非製造業景気指数などが発表される。指標発表前の調整の面が強いようだ。ドル円はロンドン序盤に131.24近辺に安値を広げたあとは下げ一服となり131円台後半で揉み合っている。ユーロドルは1.0965近辺まで買われる場面があったが、その後は上値重く1.09台前半に軟化。ポンドドルも1.25台に一時乗せたあとは1.2450台へと下押し。豪ドル/ドルは東京市場から引き続き軟調で、0.67台を割り込んでいる。NZドル/ドルは0.63台割れと、中銀の大幅利上げを受けた上昇を解消した。クロス円でも豪ドル円やNZドル円は軟調。ポンド円やユーロ円は序盤に下げたあとは揉み合いとなっている。ユーロ圏非製造業PMI確報値は55.6から55.0へと下方改定され、同英PMI確報値は52.8から52.9へと小幅に上方改定された。独有力経済研究所の合同経済予測では、ドイツ経済は冬季の景気後退を回避する見込みとされ、2023年通年成長を+0.3%と予測、昨年秋の−0.4%予想から上方修正された。クロアチア中銀総裁やスロベニア中銀総裁らはコアインフレの上昇に警戒感を示し、追加利上げの必要性を指摘した。
NY市場では、ドル円が下落。一時130.60円近辺まで下落する場面が見られた。米ADP雇用統計が予想を大きく下回ったほか、米ISM非製造業景気指数も予想を下回り米債利回り低下とともにドル円相場を圧迫した。発表後の動きが一巡すると押し目買いも入り131円台に戻したものの、きょうの下げで再び下向きの流れを強めている。今週発表のISM製造業景気指数、前日の米求人件数、そして、この日のADP雇用統計、ISM非製造業景気指数も弱い内容となったことから、市場は米景気の先行き警戒感への意識を強めているようだ。市場は早ければ夏以降に利下げのシナリオを織り込む動き。ユーロドルは戻り売りに押されて一時1.08台に反落。ポンドドルも1.24台半ばへと伸び悩んだ。3月調査分のISM非製造業景気指数は51.2と前回から大幅に低下。判断基準の50は上回っているものの、この先の不安感を高める結果となった。力強さを残していたサービス業にも次第に黄色信号が点灯し始めていることが示唆されていた。ADP雇用者数は14.5万人増と市場予想21万人増、前回の26.1万人増を大きく下回った。
6日
東京市場で、ドル円は下に往って来いとなった。朝方は円買いが先行し、131円台前半から130.78近辺まで下落。前日までの一連の米経済指標の弱さが米景気鈍化懸念のリスク回避につながった。ただ、あすには3月米雇用統計発表を控えていることからポジション調整が入り、午前の下げを帳消しにして131円台前半へと戻した。ユーロ円も午前中には3月29日以来およそ1週間ぶりの安値水準となる142.55付近まで一時下落。午後は下げ一服となり、143円台を回復した。ユーロドルは午前に1.0885前後まで弱含んだあと、午後は安値圏もみ合いとなった。
ロンドン市場は、ドル売りが先行も持続性に欠ける展開。明日のイースターと米雇用統計を控えて、次第に様子見ムードが漂ってきている。ドル円は東京市場からの買い戻しの流れで131円台半ばへと上昇。ただ、一方的な動きにはならず131円台前半での揉み合いが続いた。一時131.57近辺まで買われたが、上値追いの勢いには欠けて131円台前半に戻している。欧州株は小高く推移、米株先物は高安まちまちも値幅は限定的。米債利回りは低下の動きが先行したが、次第に下げ渋りとなっている。ユーロドルは1.0917近辺までの反発をみせたあとは1.09ちょうど挟みで揉み合っている。ポンドドルも1.24台半ばから一時1.2487近辺まで買われたあとは、再び1.24台半ばでの揉み合いに。ユーロ円は欧州株高もあって買いが先行したが143円台前半を中心とした取引にとどまっている。ポンド円も買いが先行したが164円は付けきれず163円台前半まで反落したあとは163円台後半での推移。ユーロ対ポンドの取引も方向性はみられていない。この時間帯に発表された経済指標については、ドイツと英国の建設業PMIはいずれも前回から低下したが、反応薄だった。レーンECBチーフエコノミストが5日に講演した内容が報じられており、5月会合までに基本シナリオに戻れば、利上げが適切に、と述べていた。
NY市場では、米経済統計をめぐり振幅も方向性は見いだせず。ドル円は朝方発表の米新規失業保険申請件数が予想を上回る数字だったことで瞬間的にドル売りが強まり、131円ちょうど付近に急速に下落する場面が見られた。しかし、直ぐに買い戻しが強まると131.90近辺まで買われた。その後は131円台後半で推移した。ユーロドルは1.09ドルちょうどを挟んで方向感のない値動きが続いていたが、やや買いが出ており、1.0930付近での推移に落ち着いた。ポンドドルは戻り売りが優勢となり、一時1.24ドル台前半まで下落する場面が見られた。ただ、下押す動きまではなく1.24台は維持した。3月からの上昇トレンドはしっかりと堅持している。ユーロ対ポンド相場では、ユーロ買いが優勢だった。市場では欧州のコアインフレの上昇やタイトな労働市場を受けて、金融環境もしばらく十分に制限的な領域にはない可能性があり、ECBは中銀預金金利のターミナルレート(最終到達点)4.00%に向けて、0.25%ポイント刻みで利上げを継続するとの見方があった。
7日
東京市場は、落ち着いた値動きが続いた。今日はグッドフライデーで香港、豪州が休場となりアジア市場での参加者が少なくなっていることに加え、このあとの欧米市場も休場となる。日本時間午後9時30分には3月の米雇用統計の発表を控えていることも影響。相場には勢いが見られず、動意に欠けた展開に。ドル円は朝方に前日高値を上回る131.92近辺まで買われたが、その後は伸び悩んで131円台後半での小動きとなっている。 ユーロドルは1.09台前半を中心とした推移。ユーロ円は午前に一時144円ちょうど付近まで強含んだものの上値は重く、その後は143円台後半で小動きとなった。
ロンドン市場では、グッドフライデーの休場が相次ぐなかで、取引中盤に米雇用統計が発表された。雇用増は市場予想を小幅に上回る程度だったが、市場にインパクトを与えたのが予想外の失業率の低下だった。3.5%と1月の最低水準3.4%に次ぐ低水準となった。労働参加率の上昇も労働市場の強さを示していた。平均時給は前月比ではやや伸びが加速も前年比は伸びが鈍化した。発表直後は米債利回り急伸とともにドル買いが殺到。ドル円は131円台後半から132円台乗せへと上昇。ユーロドルは1.09台割れ、ポンドドルは1.24台割れとなった。一方で、ユーロ円は144円台乗せ、ポンド円は164円台乗せへと買われており、ユーロドルやポンドドルは下げ渋っている。米株先物はマイナス圏からプラス圏へと転じている。
NY市場は、グッドフライデーのため休場。債券市場は短縮取引。 

 

●為替相場 4/10-4/14 4/15 
まとめ4月10日から4月14日の週
10日からの週は、ドル売りが進行した。注目の米インフレ指標が鈍化したことが背景。消費者物価指数ではコ ア指数が高止まりも、総合指数が予想以上に低下した。続く生産者物価指数も予想以上に伸びが鈍化しており、市場では米債利回り低下とともにドル売り圧力が強まった。ただ、5月FOMCについては引き続き25bp利上げ観測が優勢で、今後の利上げ停止や、年内の利下げ開始観測が高まった格好となった。ユーロドルは1.08台から節目の1.10台に乗せ、ポンドドルも1.23台から1.25台に乗せておりいずれも年初来高値を更新した。ユーロにとってはECBの利上げ継続姿勢が、ポンドにとっては英経済のリセッション回避の見方が強まったことで追加利上げ観測が再燃、側面からドル安の動きにつながっていた。ドル円は134円付近から一時132円付近に軟化した。上値重く推移したが、クロス円の上昇もあって下落の矛先はやや鈍かった。株式市場の堅調や、上田日銀新体制での緩和継続姿勢などが円売りにつながっていた。ユーロ円は144円台から146円台へ、ポンド円は164円台から166円台まで買われた。
10日
東京市場は、円売りが優勢。週明けは、イースターマンデーでオセアニア市場や、香港市場が休場。この後も、欧州、英国市場などが休場となり取引参加者が少ない状況となっている。ドル円は朝方に131.80台まで軟化したが、その後は一転して買われた。午後には132.80台まで高値を伸ばした。ゴトー日ということで仲値関連でのドル買いが入ったことや、日経平均が堅調となるなどリスク警戒後退がドル円を支えた。米債利回りはやや低下傾向も、影響は限定的。ユーロドルは1.09ちょうど前後での推移が続き、動意薄だった。
ロンドン市場は、イースターマンデーのため休場。
NY市場では、ドル買いが強まった。ドル円は一時133円台後半に上昇。日銀の植田新総裁がYCC(イールドカーブコントロール)とマイナス金利の維持を表明したことが、ドル円の買いにつながったようだ。また、先週末の米雇用統計で失業率が予想外に低下したことなどを受けて市場では5月FOMCでの利上げ期待を高めている。先週までは、利上げはすでに打ち止めとの観測も出ていたが、米地区連銀総裁などFOMC委員からは、もう少し利上げが必要との認識が繰り返し示されていた。ユーロドルは1.09台から1.08台前半まで一時下落。ポンドドルは一時1.23台半ばまで値を落とした。
11日
東京市場は、前日のドル買いの動きが一服。ドル円は133円台を維持しつつも、133円台後半から前半へと反落している。午後には133.23近辺に安値を広げた。ユーロドルは前日海外市場での下落の反動でじり高の動き。1.0850付近から1.0890台へと買われた。ユーロ円は145円台割れ水準から145.40近辺へと小高く推移した。
ロンドン市場では、ドルが軟調。明日の米消費者物価指数を控えて調整の動きが入っている。米債利回りの低下とともにドル相場にも調整圧力が働いている。米10年債利回りは3.42%付近から3.38%付近へと低下。ドル円は133.50付近から一時133円台割れまで下押し。ユーロドルは1.08台後半から1.09台前半へ、ポンドドルは1.24台前半から半ばへと上昇。クロス円は方向感に欠ける動き。ユーロ円は145円付近から145.50手前水準で、ポンド円は165円台前半から後半での揉み合いが続いている。2月ユーロ圏小売売上高は前月比、前年比ともにマイナスの数字と冴えない結果だったが、特段のユーロ売り反応はみられなかった。
NY市場は、方向性に欠ける値動き。ドル円は133円台前半から133.80付近へと再び上昇。、米株がしっかりと推移したほか、米国債利回りもプラス圏を維持する中、ドル円は後半になって買い戻しが膨らんだ。ユーロドルは東京市場でのじり高の流れを受けて、1.09台を回復した。市場からは、ドイツ経済に対する楽観的な見方が相次いで出ている。先週は2月のドイツ鉱工業生産が発表になっていたが、それを受けてエコノミストからは、ドイツ製造業は年明けに回復し、それによって、同国の成長見通しをより楽観視できるようになったとの指摘が出ている。ポンドドルは1.2410付近に反落したあとは1.24台前半で下げ渋り。ユーロ対ポンドではユーロ買いが優勢だった。一部からは、英中銀が利上げサイクルを一時停止するとの見通しがでていた。
12日
東京市場は、ドル円が一時134円台に乗せた。日経平均の力強い動きなどが支えとなっていた。その後は米消費者物価指数発表を控えていることもあって、利益確定の売りなどに少し調整が入っている。ユーロドルは1.09台での推移。月曜日のドル高局面で1.08台前半を付けたユーロドルは、その後じりじりと上昇。昨日の海外市場でも堅調な動きを見せると、東京市場に入っても流れが変わらず。午後に入って海外市場の高値を超えて1.0937近辺まで買われた。ドル円が堅調な動きを見せる中、対ドルでのユーロ買いもあり、ユーロ円は146.30台まで上昇。株高の動きが円売りを誘った面も見られた。ポンド円が166.50超えを付けるなど、円安の動きが目立った。
ロンドン市場は、揉み合い商状が続いている。米消費者物価指数の結果を見極めたいとのムードが広がっている。欧州株が堅調、米株先物は時間外取引で高安まちまち。米10年債利回りは上昇。ドル円は他市場の動向には目立った反応をみせず、東京昼過ぎに134.05近辺まで買われたあとは133円台後半での取引に終始している。ユーロドルは1.0911-1.0937までの狭いレンジ取引。欧州株高の割には円安の動きはほとんどみられず、ユーロ円は146円ちょうど付近から146円台前半での揉み合い。ポンド相場は対ユーロでの売り圧力が続いており、上値が重い。ポンドドルは1.2440台から1.24ちょうど近辺へと軟化、ポンド円は166.50台から165.80付近へと軟化している。ポンド売りに関して、特段の新規材料はみられていないが、英欧中銀の利上げ余力について市場の見方に差異があることが指摘されている。
NY市場では、ドル売りが強まった。この日発表の3月の米消費者物価指数にドル売りの反応を見せている。総合指数は前年比+5.0%とエネルギー価格の低下でインフレの鈍化傾向を示した。一方、コアインフレは前年比+5.6%に上昇、依然として鈍化傾向までは見られていない。先週の米雇用統計と今回の米CPI結果から、短期金融市場では5月FOMCでの25bpの利上げの確率を70%以上で見ているものの、同時に利上げ停止および年内の利下げへの期待も高めたようだ。今回の数字は先行きのインフレ鈍化の兆候も示したが、サービスセクターでの根強いインフレを浮き彫りにしており、FRBは少なくともあと1回は利上げを実施する可能性が高いとの指摘も聞かれる。発表直後にはドル円が133円台後半から132円台後半まで急落。ユーロドルは買いが加速し、心理的節目の1.10ちょうどを付ける場面があった。ポンドドルも1.24台後半に上昇。NY後半にはドル売りは一服したが、米CPI発表前のドル高水準には戻り切れず。
13日
東京市場は、落ち着いた値動き。ドル円は東京朝方に北朝鮮が弾道ミサイルを発射したとの報道を受けてリスク回避の円買いが入り、一時133円割れに沈んだ。しかし、影響は限定的で、午後にかけては米債利回りの上昇を背景に133.36近辺まで強含んだ。ユーロドルは昨日のドル安局面で1.10ちょうど付近をつけたあと、東京序盤では一時1.1005付近まで上昇した。その後は伸び悩み、前日終値を挟んで小動きとなった。ユーロ円は午前に一時146.60付近まで強含む場面があったが、上げは持続せず。午後は146円台前半から半ばで揉み合いとなった。午前に発表された豪雇用統計の好調な結果を受けて上昇した豪ドルは、午後は上げが一服。豪ドル/ドルは0.6721付近まで、豪ドル円は4日以来7営業日ぶりの高値水準となる89.51付近まで上昇したあと、午後はやや押し戻されている。
ロンドン市場は、ドル安と円安の動きが交錯。そのなかで目立ったのがユーロドルの上昇で、1.10台にしっかりと乗せると1.1032近辺まで高値を伸ばし、2月2日の年初来高値水準に並んだ。ポンドドルも堅調で、1.25台乗せから高値を1.2529近辺に更新。昨年6月9日以来の高値水準となった。クロス円も堅調で、ユーロ円は146円台前半から146.90付近へ、ポンド円は166円台前半から166.80台へと上昇している。ユーロ対ポンドではユーロ買いが優勢。ECBの利上げ継続観測が下支えとなっていたようだ。ドル円は下に往って来い。売りが先行して133円台前半から一時132.90近辺まで下押しされたが、その後は133.30近辺へと買い戻されている。ドル売りと円売りが交錯したことでドル円は方向性に欠けた。全般的には昨日の米消費者物価指数発表後のドル安・円安の動きが再燃する格好となっている。欧州株は高安まちまち。米10年債利回りは3.39%付近から3.43%付近へ上昇。
NY市場は、前日の流れを引き継いでドル売りが優勢。朝方発表になった3月の米生産者物価指数(PPI)の伸びが大幅に鈍化したことで、ドル売りの動きが見られた。米PPIは総合、コアとも前月比で予想外の低下となり、パンデミック以降では最大の低下となった。サプライチェーンの正常化やコモディティ価格の下落が背景。ドル円は133円台前半から132円付近まで一時急落。その後は132円台半ばから後半に下げ渋った。米株が底堅く推移、加えて植田日銀新総裁の緩和継続姿勢がドル円を下支えした。ユーロドルは買いが続いており、1.10台を固める動き。一時1.1070ドル付近まで上昇し、年初来高値を更新した。市場では、ECBがよりタカ派な金融政策を取るというコンセンサスが強まっており、短期金融市場では、ECBは9月までに計75bpの利上げを実施する可能性を織り込んでいる。これは3月初旬のSVBの騒動以来初めて。ポンドドルも1.25台に再び乗せると、一時1.2535近辺まで買われ、年初来高値を更新した。本日は2月の英月次GDPが発表され前月比で横ばいとなった。一部からはマイナス成長の予想も出ていたが、それは回避されている。リセッション回避の見方で追加利上げ期待が再燃した。
14日
東京市場は、小幅の値動き。ドル円は132円台前半から半ばでの揉み合いとなるなかで、米債利回りの低下が上値を抑えている。ユーロドルは30ポイントの狭いレンジだが、下値がしっかりとした値動き。一時1.1076付近に高値を伸ばし、昨年4月以来およそ1年ぶりの高値水準となっている。ドル指数も約1年ぶりの低水準に。ユーロ円は、ユーロドルの上昇が支えとなり午後に入って146.71近辺にこの日の高値を更新した。前日の米生産者物価指数の下振れを受けたドル売り圧力が継続も、やや模様眺めムードが漂っていた。
ロンドン市場は、ややドルが買い戻されている。ロンドン序盤は、前日からのドル安水準を受けた揉み合いが続いたが、米銀大手JPモルガン決算で純金利収入予想が引き上げられたことを受けて同社株が時間外取引で大幅高、ダウ先物が時間外で上昇に転じ、米債利回りが上昇している。これを受けてドル相場もややドル高方向に動意付いている。ドル円はロンドン序盤に132.20付近に軟化したあと、132.70付近に反発。ユーロドルは東京午前に1.1076近辺に高値を伸ばした後は上値が重くなり、足元では1.1050割れ水準に反落。ポンドドルは東京市場で1.2546近辺まで一段高となったあとは上値重く推移し、ロンドン市場では1.25台割れへと軟化している。クロス円は方向感なく振幅。ユーロ円は146円台で下に往って来い。ポンド円は166円台前半から一時165.40台まで下落、その後は166円手前までの反発となっている。欧州株はプラス圏での揉み合い、NY原油先物は一時82ドル割れも82ドル台半ばへと下げ渋り。ボスティック・アトランタ連銀総裁は「最近の動向はもう1回の利上げを行うことと矛盾せず」、ラガルドECB総裁は「ユーロ圏のインフレ率は低下が継続する見通し」「基調的なインフレ圧力は依然として強い」などとしたがいずれも市場は反応薄だった。
NY市場はドルの買い戻しが強まり、ドル円は133円台後半まで上げ幅を拡大した。本日の上げで21日線がサポートされ、100日線も再び上回って来ている。依然としてリバウンド相場の可能性を残す値動きではある。 

 

●為替相場 4/17-4/21 4/22 
まとめ4月17日から4月21日の週
17日からの週は、ドル相場の方向性が混とんとした。前週末にドル安の動きが一服すると、週明けはドル高方向を試す動きとなった。しかし、次第にドル売りの動きが交錯し、日替わりで相場が上下動した。ドル円は135円台をつけて1カ月ぶりの高値水準となったが、その後は133円台に押し戻された。もっとも米PMI後にドル高が入り、134円台で週の取引を終えた。ユーロドルは1.10付近で上値を抑えられているが、下値も1.09台割れには至らず。ポンドドルは1.23台半ばから1.24台後半で振幅している。月末の日銀金融政策決定会合、5月第一週の米FOMCとECB、5月第二週の英MPCと金融政策発表予定を控えて、思惑が交錯。一方向には動きにくい状況だった。
17日
東京市場では、ドル円が堅調。先週末の海外市場ではインフレ懸念が強まり、5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げ期待が広がった。週明けもドル高の流れが継続し、ドル円は134.22近辺まで高値を伸ばした。134円台では利益確定の売りも出たが、押し目は限定的だった。ユーロドルは1.09台後半で推移した。1.10がやや重いものの、安値も1.0960台までとユーロ自体は底堅かった。5月FOMCの追加利上げ期待に関しては、一時90%を超えるところまで織り込みが進み、その後少し落ち着くも、先週末の水準を超え84%前後の織り込みとなってドルを支えた。
ロンドン市場は、先週末からのドル高水準で売買が交錯。この日は目立った英欧経済統計発表はなく、手掛かり難。ドル円は134円付近での推移が続いており、東京午後につけた134.22近辺を高値に133.80台までのレンジで取引されている。ユーロドルはロンドン序盤に1.1000近辺まで買われたあとは1.0960台まで反落、その後は1.09台後半で揉み合っている。ポンドドルも同様に1.2428近辺まで買われたあとは、一時1.2374近辺まで下押し、その後は1.24付近に下げ渋っている。欧州株は買いが先行したが、先週からの続伸の動きで週明けは利益確定売りも散見され、上げを消している。ユーロ円は147円挟み、ポンド円は166円挟みで上下動も方向性は示さず。市場では5月米FOMCでの25bp利上げ観測がほぼコンセンサスとなるなかで、先週末からは6月FOMCでの追加利上げについての観測も高まりつつある。ECBについてはカザークス・ラトビア中銀総裁が、5月会合では25bpと50bpの利上げ選択肢がある、と発言。ナーゲル独連銀総裁は、コアインフレが夏休み前に鈍化することに期待、それでもインフレ率は高過ぎ、金利についてさらなる行動が必要だ、と述べた。
NY市場では、ドル買いが優勢。ドル円は134円台半ばに上昇。米国債利回りが上昇し、ドル円の買い戻しをサポートした。ユーロドルは戻り売りが優勢。一時1.09台前半まで下げ幅を拡大し、1.10ドルから遠ざかる動きを見せている。ポンドドルは戻り売りが優勢となり、1.23台半ばまで一時下落。先週までの米経済指標を受けて、市場はFRBの利上げに対して若干強気になっているようだ。5月FOMCでの0.25%ポイントの利上げを確実視しているほか、6月も利上げが実施されるのではとの観測を織り込む動きが一部出ている。ただ、いまのところ短期金融市場では、6月利上げの確率は20%程度に収まっている。今週は4月調査のユーロ圏PMI速報値と独ZEW景況感指数の発表が予定されている。今週発表の主な英経済指標は明日の英雇用統計と、水曜日の消費者物価指数(CPI)を始めとした一連のインフレ統計、そして、金曜日には英PMI速報値が予定されている。
18日
東京市場では、先週末からのドル高が継続。ドル円は朝方に134.30台割れも、再び買いが強まり134.71レベルと3月15日以来の高値を付けた。その後は利益確定の売りなどに上値が抑えられた。135円手前の売りが意識されている。午後は総じて頭の重い展開。値幅は小さいものの134.30台での推移となっている。ユーロドルは1.09台前半での推移。昨日の海外市場でドル高の動きから1.10前後から1.0910台まで一時下落。少し戻して東京を迎えると、下値はしっかりも、上値も重いという展開に。ポンドドルも同様に狭いレンジでの推移から、15時の雇用統計に向けて少し上昇。週平均賃金の上昇を好感して1.24ドル台を付けている。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。先週末から昨日にかけてのドル買いの動きは一服し、調整が入る形。朝方に発表された英雇用統計で賃金の伸びが予想を上回ったことでポンドドルが上昇、ドル円やユーロドルにもドル売りを広げた面もあった。ポンドドルは1.23台後半から1.2440台へと上昇している。ユーロドルは連れ高となり、1.0930台から1.0980台まで買われている。4月独ZEW景況感指数は4.1と前回の13.0から予想外の大幅低下となったが、ユーロ売りの反応は軽微にとどまっていた。ドル円は東京午前の134.71近辺を高値に、その後は上値重く推移。足元では134円ちょうど付近まで下押しされている。欧州株や米株先物・時間外取引が堅調に推移する一方、米債利回りはやや低下している。市場での米FOMC観測は5月25bp利上げが86%の織り込みと、ほぼ確定的になっている。焦点の6月については25bp利上げが23%程度、据え置きが67%程度、残り10%程度が5月での利上げ休止となっている。前日から目立った状況変化はみられていない。ドル指数の反発は21日線に上値を抑えられた格好となっており、3月からの低下の流れは維持されている。
NY市場でも、ドル売りが優勢だった。ドル円は伸び悩む動きが見られた。東京時間に一旦134.70円付近まで上昇したものの、135円を試すことなく一時133円台まで伸び悩んでいる。ユーロドルは1.09台後半まで買い戻された。ポンドドルは1.24ドル台に反発。今月の米雇用統計から米CPI、米PPIなど一連の指標を通過して、市場は5月FOMCでの25bpポイントの利上げ予想を固めたほか、もう一段の利上げの可能性も若干だが織り込んでいる。一方、年内利下げ期待は後退させており、先日までは早ければ夏以降にもと見ていた利下げ期待を秋以降に後退させているようだ。そのような中で前日までのドルは買い戻しが強まっていたが、そのポジション調整も一段落しているようだ。ブラード・セントルイス連銀総裁とボスティック・アトランタ連銀総裁の発言が伝わっていたが、利上げの必要性に言及したほか、ボスティック総裁はあと1回の利上げの後は据え置きを支持すると述べた。また、タカ派のブラード総裁は、ウォール街では今後6カ月程度で経済がリセッション(景気後退)に陥るとの見方が非常に強いが、そうした見方はこのような景気拡大を読む上であまり適切ではないとの認識を示していた。労働市場が支援するという。
19日
東京市場では、振幅しながらもドル買いが優勢だった。ドル円は朝方に133.96近辺まで下押しも、その後はドル買いが強まった。134.30台へと上昇、午後には134円台半ば超えに。15時発表の英消費者物価指数(CPI)は予想を上回り前年比10.1%となった。ドル高圧力で1.24台前半で軟調な推移だったンドドルは1.2440台まで上昇している。ポンド円はドル円の上昇もあって発表前の166.90近辺から167.30台へ買われた。ユーロドルは1.09台後半での推移。ポンドドルの値動きをなぞる展開にとどまった。ユーロ円はドル円の上昇もあって朝の147.00台から147.40台まで上昇。その後のユーロドルの上昇に147円台半ば超えへ上昇した。
ロンドン市場は、ドル高とポンド高の綱引き。米債利回りの上昇とともにドル円は1カ月ぶりに135円台をつけた。日銀関係者が「4月決定会合でのYCC修正、日銀内で慎重な意見広がる」と発言したことが円売り反応につながった面もあった。ただ、135円台での売り圧力も強く134円台後半に押し戻された。ユーロドルは1.09台後半から1.0920台まで下押しされている。ポンドは買いが先行。3月の英消費者物価指数は前年比+10.1%と引き続き二桁台の高インフレが続いたことがポンド買い反応を強めた。ポンドドルは1.24付近から一時1.2470台まで上伸した。ただ、全般的なドル高圧力のなかで足元では1.24台割れへと反落。欧州株は英国の根強いインフレを警戒して軟調。クロス円は上に往って来い。序盤はポンド買いにつれてポンド円は166円台後半から168円手前まで上昇したが、その後は167円台前半に押し戻されている。ユーロ円も147円台前半から147.80台まで買われたあとは、再び147円台前半へ戻している。英中銀の5月会合について、市場では25bp利上げ観測が高まっている。5月米FOMCについては引き続き25bp利上げ観測がコンセンサスとなっているほか、6月会合では25bp追加利上げが3割弱まで織り込まれてきている。
NY市場では、ドル売り先行も戻す展開。ドル円は134円台前半まで一時下落。ロンドン時間には一時135円台に上昇したものの、その滞空時間は短く、134円台に再び伸び悩んでいる。しかし、NY時間の終盤にかけて下げを取り戻している格好。市場では、FRBの追加利上げが再び意識される中、為替市場はドル買い戻しの動きが出ている。ドル円も上値追いの動きを見せる中で本日は、日銀内で来週の決定会合でのイールドカーブコントロール(YCC)修正に対して、日銀内で慎重な意見が広がっていると伝わったこともドル円を135円台に押し上げた。しかし、135円台では利益確定売りも多く見られ、オプション絡みの売りも多数観測されていた。ユーロドルは1.09台後半まで買い戻される場面が見られた。ただ、1.10ドルに慎重になっているようで、1.09台半ばに伸び悩んでいる。ポンドドルは1.24台半ばまで買い戻されている。ロンドン時間にはドル買いが強まっていたことから、ポンドドルは一時1.23ドル台に値を落とす場面も見られた。
20日
東京市場は、方向感に欠ける取引。ドル円は午前に5・10日(ゴトービ)関連で国内輸入企業から買いが入り、134.97近辺まで上昇。しかし、135円手前では売りに押され、午前の上げを帳消しに。取引終盤には134.55近辺まで弱含んだ。ユーロドルは1.09台半ばから後半で小動き。ユーロ円は午前に147.83近辺まで上昇も午後には前日終値付近で揉み合った。NZドルは軟調。朝方に発表された第1四半期のNZ消費者物価指数(CPI)の市場予想を下回る結果を受となったことが背景。午後にこの日の安値を更新した。NZドル/ドルは、3月16日以来およそ1カ月ぶりの安値水準となる0.6149付近まで、NZドル円は、82.88付近まで一時軟化した。
ロンドン市場は、売買が交錯するなかで、ややドルが軟調。米10年債利回りは3.59%付近から一時3.54%付近に低下。欧州株は調整に押されている。米欧金融当局者が利上げ継続姿勢を示したことや、昨日の英消費者物価指数が高水準だったことなどで、市場には追加利上げへの警戒感があるようだ。ただ、ドル指数は前日レンジ内での動きにとどまっており、新規材料待ちとなっている。ドル円は134.40付近から134.80台で振幅。ユーロドルは1.0950割れ水準から1.0980付近、ポンドドルは1.2420付近から1.2450付近での上下動。足元ではややドル安水準で推移している。クロス円も神経質に上下動。ユーロ円は147.30付近に下押しされたあと147.80付近まで買われて、下に往って来いに。ポンド円も167.10付近まで下押しされたあとは167.60付近までの振幅となっている。
NY市場では、ドル売りが優勢。この日発表されたフィラデルフィア連銀景気指数や米中古住宅販売件数が予想を下回ったことで、ドル売りの反応が見られた。米株式市場も軟調に推移していたことから、ドル円は売りの反応を見せている。134円ちょうど付近まで下落し、かろうじて大台を維持した。FRBの5月利上げはほぼ固まったようだが、その先が不透明で、市場もポジションを傾け難い状況にあるようだ。ユーロドルは一時1.09台後半まで買われた。3月のECB理事会の議事要旨が公表されていたが、理事の大多数が、50bpの大幅利上げの決定を支持していたことが明らかとなった。市場は5月の理事会での利上げ幅についてのヒントを得たがっている。25bpの利上げは確実視しているものの、50bpの利上げがあるかどうかを探っている状況。ポンドドルは1.24台半ばへ買い戻された。今週の英雇用統計や消費者物価指数(CPI)を受けて、市場では英中銀の利上げ期待が高まっている面も。 
21日
東京市場は、円買いが優勢。ドル円は、3月の日本消費者物価指数(CPI)生鮮食品・エネルギーを除くコアコアの結果が+3.8%と強い結果となり、来週開催の日銀金融政策決定会合を前に緩和修正への警戒感から円が買われ、午前に134円割れに沈んだ。アジア株の下落を受けたリスク回避の円買いなども影響して、午後にこの日の安値となる133.70付近まで一段と下落した。クロス円は軒並み軟調。ユーロ円は146.56付近、豪ドル円は89.65付近まで下落した。ユーロドルは1.09台後半で小動き。このあとの海外市場で4月のユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)などの発表が予定されており、その結果を見極めたいとの様子見ムードが広がった。
ロンドン市場は、ドル相場が振幅も方向性には欠けている。ドル円は一時134円台乗せもその後は133.67近辺に安値を広げている。ユーロドルは売りが先行して1.0938近辺に安値を広げたが、その後は1.0980台まで反発と下に往って来い。ポンドドルは軟調で1.24台割れから1.2377近辺に安値を広げており、反発力は鈍い。ポンド円は売られ続けて165.50付近まで軟化。対ユーロでのポンド売り圧力も継続している。ポンドとともに豪ドルも軟調。対ドルではロンドン序盤に0.6678近辺に、対円では89.40近辺に安値を広げており、その後も安値圏で揉み合っている。鉄鉱石価格の下落など中国景気への不透明感が背景のようだ。また、この日発表された欧州や英国の4月PMI速報値は総合指数がいずれも改善していた。ECB高官らはコアインフレ長期化への警戒感、景気制限的な領域での金融引き締め策の必要性が示されていた。英国関連ではパワハラ問題の調査を受けてラーブ英副首相の辞任が伝えられており、ポンド相場を心理的に圧迫した面も指摘される。
NY市場は朝に発表された米4月のPMI速報値が予想に反して3月から改善されたことで、ドル高が強まった。SVB破綻の影響で小幅ながら鈍化するのではと見込まれていた。ドル円はロンドン朝に134円台を回復した後、ドル安が強まり、米PMI発表前には133円50銭台を付けていたが、発表を受けて134円台を回復。その後も買いが続き134円49銭まで上値を伸ばした。ユーロドルが1.0990台から1.0940台を付けるなど、ドルは全面高となった。もっとも対ユーロでのドル買いにすぐに調整が入ると、ドル円も上値から調整が入った。 

 

●為替相場 4/24-4/28 4/29 
まとめ4月24日から4月28日の週
24日からの週は、円売りが強まった。週末金曜日の日銀金融政策決定会合で緩和継続姿勢が強調されたことが背景。事前のマーケットでは植田新体制初の会合で何らかの出口戦略に向けた動きが示されることが期待された面があった。コロナ関連や金利に関するフォワードガイダンスの文言が削除されるとともに、新たに発表されたレビューは1年から1年半かけて実施されるとした。市場では緩和継続が長期化すると判断し、円売りが強まった。ドル円は133円台から136円台まで上伸。一方、ドル相場はその他主要通貨に対して引き続き決め手に欠ける値動きが続いた。5月第1週の米FOMCとECBの金融政策発表を控えて、売買が交錯した。ユーロドルは1.09台後半から1.10台後半で、ポンドドルは1.23台後半から1.25台前半での振幅が続いた。注目の米第1四半期GDP速報値は前期比年率+1.1%と減速したが、GDPデフレータが予想外に上昇しており、ドル相場が振幅する場面があった。週末にかけてドル指数が上値を模索する動きとなっているが、ドル円急騰の影響が色濃かった。
24日
東京市場では、ドル円が堅調。序盤には前週末のドル高の対する調整で133.89近辺まで弱含んだ。中盤にかけては日経平均の上昇や植田日銀総裁が金融緩和継続姿勢を表明したことで円売りが優勢となり134.40台まで買われた。午後には134.48近辺に高値を更新。しかし、前週末高値134.49レベルには届かず上昇一服。ユーロドルは午後に入りジリ安となり、一時1.0972付近まで弱含んだ。ユーロ円は昼過ぎに一時147.66付近まで上昇したが、その後は147円台半ばまで押し戻されている。
ロンドン市場は、ユーロ買いが優勢。ユーロドルやユーロ円の上昇とともに円安・ドル安の動きに波及している。序盤はやや調整ムードで欧州株の軟調スタートや米債利回りの低下とともにドル円、クロス円が下押しされた。しかし、4月独Ifo景況感指数が予想を上回る結果となると、ユーロドルは1.09台後半から1.10台乗せへ、ユーロ円は147円台前半から148円台乗せへと上伸。ユーロは対ポンドでも買われた。ドル円は序盤に134.10台まで下げたあと、134.67近辺に高値を伸ばしている。ユーロ円は147円台前半から148.30付近に高値を更新。ポンド円もつれ高となり166円台半ばから167.50台へと上昇。Ifoエコノミストによると、ドイツ経済は勢いに欠けているものの、米中経済の力強さが下支えしており、製造業の輸出期待は上昇してきている、という。また、銀行問題は企業のセンチメントに影響を与えていない、と分析した。独連銀は、ドイツ経済は第1四半期に拡大する可能性、期待を上回る見込みとした。
NY市場は、全体的にドル売り優勢。ドル円は134円台で方向性に欠ける値動きが続いた。134.70付近まで一時上昇も、NY時間に入るとドル売りに押されたが、134円台は維持している。クロス円での円安がドル円の下値をサポートした。ユーロドルは海外市場に入って買いが膨らみ、1.10台を回復。ポンドドルは買い戻しが出ており、1.24台後半に上昇。市場は、来週のFOMCでの25bpの利上げを確実視しているものの、一部で出ている6月利上げについては、まだ未知数といったところ。先週の土曜日からFOMC委員が、FOMCが終了するまで発言を控えるブラックアウト期間に入っており、手掛かり材料は経済指標のみになるが、今週は第1四半期のGDP速報や、週末にはPCEデフレータの発表がある。
25日
東京市場は、ドル売りが一服。ドル円は前日のドル売りの流れを受けて朝方に134円台割れとなる場面があった。その後はすぐに134円台に戻して、134円台前半での推移。午後には134.42近辺まで買われた。ユーロドルは午前中に1.1067近辺まで買われたあとは、1.1050前後での取引に落ち着いた。ユーロ円は148円台での推移。朝のドル円の下げに148.05近辺まで下落も、大台を維持したこともあり、その後買いが強まり、148円台半ば超えに。ロンドン勢の本格参加を前にドル円が少し下げており、高値から調整が入っている。今週後半の米第1四半期GDP速報値やPCEデフレータ、日銀金融政策決定会合などを控えて、上下ともにやや動きにくい展開となった。
ロンドン市場は、ドル買いと円買いが優勢。欧州株や米株先物・時間外取引が軟調に推移。英独米など主要国債券利回りが低下している。米中の政治対立が懸念されていることや、このあとのNY株式市場でマイクロソフトとアルファベットといったIT巨大企業の決算が発表されることから事前にポジション調整が入る面もあるようだ。ドル円はドル買いが先行して134.47近辺まで買われたが、円買い圧力とともに134円台を割り込むと、一時133.82近辺まで安値を広げた。クロス円も総じて軟調。ユーロ円は148.60台まで買われたあとは売りに転じており、安値を147.60付近へ更新。約1円幅の下落となっている。ポンド円も167.80近辺が重くなると166.90割れ水準へと下押しされている。リスク警戒的なドル買いの動きも広がっており、ユーロドルは1.1016近辺、ポンドドルは1.2447近辺に本日の安値を広げている。
NY市場では、リスク回避の円高・ドル高の動き。ドル円は133円台半ばに下落。午後になって売りが加速し、一時133.40円付近まで下げ幅を拡大。ユーロ円は146円台前半、ポンド円は165.50割れまで下押しされた。米株式市場で売りが強まり、ダウ平均が300ドル超下げ幅を拡大する中、リスク回避の円高が強まった。米地銀のファースト・リパブリックが急落し、米株全体を圧迫。市場では米銀システムへの不安が再燃した。ユーロドルは戻り売りに押され、1.09台に値を落とした。ただ、下押す動きまでは見られず、21日線より上の水準はしっかりと維持され、上昇トレンドは継続している。ポンドドルは戻り売りに押され、一時1.23台に下落。
26日
東京市場では、リスク警戒が継続も方向性に欠けた。ドル円は朝方に133.80台まで反発も、その後は133.50割れへと下落。133円半ばから後半にかけて不安定な動きが続いた。ユーロ円は146円台後半での取引が続いた。ユーロドルは1.09台後半での小動き。午前中に消費者物価指数が発表された豪州は、総合が比較的強めに出たが、刈り込み平均が予想を下回った。今後の追加利上げ期待が打ち消されるほどの弱さではなく、豪ドルは少し重かったが、直後の動きは限定的。その後も頭の重い展開となったが、豪消費者物価指数を受けてというよりも、リスク警戒の動きからの資源国通貨売りと見られる。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。特にユーロドルやポンドドルが上昇。前日はリスク警戒の動きがドル買いや円買いにつながっていたが、今日はその反動が出た格好。株式市場は前日の米株安を受けて欧州株が軟調も、前日NY引け後に発表されたマイクロソフトとアルファベットの決算が良好だったことを受けて、ナスダック先物は時間外取引で上昇している。ドル相場との連動性が高い米10年債利回りだが、きょうは前日終値付近で方向感なく推移している。全般に前日からの調整色が強いようだ。ユーロドルは1.09台後半での揉み合いを上放れると1.1063近辺まで高値を伸ばした。ポンドドルも1.24台前半から1.2491近辺まで上昇。ドル円は133.80付近が重くなると、安値を133.30近辺に広げている。ユーロ円は146.50付近から147.60付近まで上昇したあとは買い一服。ポンド円も165円台後半から一時166.72近辺に買われたあとは値動きが落ち着いた。取引序盤に発表されたドイツとフランスの消費者信頼感はいずれも改善を示した。
NY市場では、売買が交錯。ドル円は133円台で激しく上下動した。懸念が伝えられているファースト・リパブリックに関する報道で米国債利回りとともに売買が錯綜したようだ。同銀の救済計画の一環としてアドバイザーが、新株の買い手候補を揃えたと報じられたことや、FRB貸出へのアクセスが制限される可能性があるとも伝わった。米耐久財受注速報値が予想を上回ったが、ドル買い反応は一時的。全体的にはドル売りの動きがドル円の上値を抑えている。前日発表の米大手IT企業の決算で、市場に安心感が広がっており、米株式市場も警戒感を一服させる中で、リスク選好のドル売りも。一部からは米債務上限問題がドルの上値を圧迫しているとの指摘も出ている。ユーロドルは一時1.10台後半まで上昇し、1.11台をうかがう場面も見られた。その後は1.10台前半に落ち着いた。ポンドドルは一時1.25台を回復したが、1.24台後半に押し戻された。
27日
東京市場は、小動き。ドル円は朝方の日経平均の下げなどで133.40付近まで下げたが、その後は133円台後半に戻した。ユーロドルは1.10台でのしっかりとした動き。1.11手前の売りを意識して上値トライに慎重も、地合いは堅調。ユーロ円は147円台での推移。対ドルでのユーロ買いが支えも、148円には届かず。今晩の米第1四半期GDPなどイベントを控えて動きにくくなっている面もある。明日の米PCEデフレータ、今日、明日の日銀金融政策決定会合など、重要イベントが目白押しとなっており、イベント前に積極的な動きがやや取りにくい状況だった。
ロンドン市場は、方向性に欠ける取引。日本時間午後9時30分に発表される第1四半期の米GDP速報値の結果内容を確かめたいのとムードが広がっている。欧州株は序盤に売り先行も、米株先物の堅調な動きとともにプラス圏へと持ち直している。米10年債利回りは3.43−3.47%での上下動。ドル円は東京市場でじり高となったあと、ロンドン序盤には133.94近辺と前日高値水準に並んだ。しかし、買いは続かず、取引中盤にかけては133.50割れへと反落している。ユーロ円も147.99近辺まで買われたが、148円台乗せには至らず147.50割れへと反落。ポンド円は167.03近辺まで買われたあとは166.30付近に下押しされている。ユーロドルは1.10台半ばを軸とした上下動、ポンドドルは1.24台半ばから後半で小幅の振幅。4月ユーロ圏景況感は改善が見込まれていたが、99.3と前回99.2とほぼ同水準だった。
NY市場では、米GDP結果を受けてドル買いが強まった。第1四半期の米実質GDPは前期比年率換算で1.1%増と予想(1.9%増)を下回り、個人消費も3.7%増と予想を下回った。景気の鈍化を示す内容ではあるが、市場のインフレ警戒感が強い中で、GDPデフレータやPCEコアデフレータが前回を上回り、予想も上回ったことに敏感に反応した。今回の米GDPの数字は来週のFOMCでの25bpの利上げ期待を正当化し、利上げが確実視されている状況を追認する内容。ドル円は一時134円台に上昇した。ユーロドルは戻り売りに押され、一時1.10台を割り込む場面も見られた。ポンドドルは一時1.24ドル台半ばまで下落する場面が見られた。
28日
東京市場は、日銀会合受けて円安が進んだ。ドル円は午前に振幅。日経新聞がフォワードガイダンスの修正を議論と報じると133.62近辺まで下落。しかし、今回はYCC修正はないとの見通しが報じられると134.30付近に上昇。日銀の発表が待たれるなかで133.38近辺まで一時下落。日本時間午後1時ごろに日銀は金融緩和策継続を発表。コロナに関する文言が削除され、金利に関するフォワードガイダンスも削除された。一時円買いの反応も、緩和の維持が示されたことや、植田総裁が言及していたこれまでの金融政策の点検・検証について、1年から1年半程度の期間をかけて多角的にレビューするとされたことで、緩和の維持が長期化するとの思惑が円売り反応を強めた。ドル円は135.13近辺に上伸した。ユーロ円は146.92近辺を安値に148.67近辺までのレンジ。ユーロドルは朝から軟調に推移したが、ドル円のドル高につれて1.1030台から1.1006近辺まで下落した。
ロンドン市場は、円売りが一段と進行。植田新体制となってから初の日銀決定会合は金融緩和継続が打ち出された。市場にはYCC修正などへの思惑があったことから、一気に円売りが強まった経緯がある。その後の植田日銀総裁会見でも具体的な出口への道筋への言及はみられず、市場ではより長期間の緩和継続観測が広がった。ドル円はロンドン早朝に135円台に乗せた後も買われ続け、一時136.18近辺まで高値を伸ばした。東京市場での安値からは2円70銭超の大幅上昇となり、3月10日以来のドル高・円安水準となった。円安進行はクロス円でも顕著で、ユーロ円は149.50台、ポンド円は169.50付近に高値を更新している。ドル相場はドル円の動きが波及して、ドル高圧力が優勢。ユーロドルは1.09台後半、ポンドドルは1.24台半ばへと軟化した。第1四半期ユーロ圏GDP速報値は前期比+0.1%と前回の−0.1%から上昇も、市場予想+0.2%には届かなかった。何とかリセッションは回避も、力強さに欠ける成長となっている。
NY市場は円売りが強まる中、ドル円は136円台に急伸した。植田総裁就任後初となる日銀決定会合の結果が発表されたが、現状の金融緩和策を据え置いた。マイナス金利も温存している。また、金融緩和策について最大1年半程度の多角的なレビュー期間を設けることも発表。一方で先行きの政策指針となるフォワードガイダンスの撤廃を発表した。植田総裁は会見で、粘り強く緩和措置を続けて行く方針を強調した。市場からは、135円台を固められるようであれば、138円台が視野に入るとの見方も出ている。きょうの上げで140円までの上昇の可能性も指摘されているようだ。

 

●為替相場 5/1-5/5 5/6 
まとめ5月1日から5月5日の週
1日からの週は、ドル安と円高が交錯。米FOMCやECB理事会など政策金利発表が相次いだ。米FOMCは25bp利上げとともに今後の利上げ停止を示唆、ただ明言は避けていた。株式市場などで期待されていた利下げ開始については否定されている。ECB理事会では25bp利上げを発表。大方の市場予想と一致した。ただ、一部には50bp利上げの意見もあったようだ。ラガルドECB総裁は利上げ継続姿勢を示している。米欧双方とも金融不安のなかで、インフレ抑制への対応姿勢を示す格好となっていた。また、それらに先立って発表された豪中銀は予想外の利上げを発表した。目下の課題はやはりインフレ対応ということが確認されている。きょうの豪中銀金融報告でも、インフレ目標に戻すために必要なことを行うと明言していた。一連のイベントを経て、為替市場ではドル売り圧力が優勢。それとともに円買いの動きが加わっている。各国中銀発表はそれほど市場にサプライズを与えなかったが、米地銀の破綻など金融不安がクローズアップされている。ファーストリパブリック銀行の破綻処理からのJPモルガンによる買収、さらにパックウェスト銀行やウエスタン・アライアンスなど複数の地銀で身売りの可能性などが報じられている。株式市場は不安定化しており、リスク回避による円高圧力が広がった。ドル円は一時133円台と前週末の日銀決定会合後の円安の動きをほぼ解消した。ただ、週末に発表された米雇用統計を受けてドル円は135円台まで一時買い戻されている。
1日
東京市場は、円売りの流れが継続。週明けのアジア市場は、メーデーで多くの市場が休場。中国、香港、シンガポールが休場、豪州も一部地域が祝日となるなど、取引参加者がかなり少ない中で、円売りが継続した。日経平均が寄り付きから上昇し、ドル円、クロス円を支えた。ドル円は朝方の136.14近辺を安値に昼過ぎから午後には136.90台に高止まりした。先週末に約14年半ぶりに150円台に乗せたユーロ円は、150.85近辺に高値を更新した。経営危機が報じられている米中堅銀行ファーストリパブリックバンクの救済期待、日銀の緩和姿勢などが日本株の買いにつながり、リスク選好の動きが広がったもよう。ユーロドルはややドル買いに押されて1.1002近辺まで軟化。
ロンドン市場は、英欧がメーデーで取引動意に欠ける展開。ドル円は先週末の日銀決定会合後の円売りの流れを受けてロンドン早朝には136.98近辺まで買われた。しかし、137円手前の売りは厚く、ロンドン時間には136.60台へと押し戻されている。クロス円は東京午後に買いがピークアウトしている。ユーロ円は150.85近辺を高値にロンドン序盤には150.30近辺へ、ポンド円は172.01近辺を高値に170.90台まで反落した。ユーロドルは1.10台前半から1.0988近辺まで軟化したあとは1.10台乗せへと下げ渋り。ポンドドルは1.25台後半から1.2515近辺まで下げたあとは下げ一服。ユーロ買い・ポンド売りが入っていた。全般的には調整含みの値動きに終始している。明日の豪中銀理事会を控えて、豪ドルは比較的堅調に推移している。ただ、市場では今回も政策金利を据え置く見方が有力となっている。
NY市場では、ドルが買われた。米ISM製造業景気指数が予想を上回ったことに反応。特に、雇用指数が50を上回ったことや仕入価格が急上昇したことがドル買いに繋がったようだ。きょうから5月相場に入って、ドル円は先週からの上げを加速させ、137円台半ばまで上昇した。ユーロドルは再び1.09台に下落。ポンドドルも再び1.24台に下落。先週は植田総裁就任後初となる日銀決定会合が行われたが、現状の金融緩和策を据え置いた。これを受けて市場では、日銀が出口戦略に舵を切る時期を後退させる動きが出ている。そのような中、今週の最注目はFOMCということになりそうだ。25bpの利上げが確実視るなかで市場は6月以降のヒントを探している。パウエルFRB議長が利上げ停止の可能性に傾斜するかどうかが注目される。
2日
東京市場では、豪ドルが買われた。豪中銀が予想外の利上げを発表したことが背景。事前の短期金利市場での織り込みは約7割が据え置きとなっていた。サプライズな25bpの利上げ決定に豪ドルは急騰。対ドルは発表前の0.6630付近から0.6710付近まで上昇。対円でも91.20台から92.40付近まで上値を伸ばした。声明では、インフレターゲットへ戻すために引き締めが必要という見解を示された。追加利上げの可能性は示唆したが、経済状況や見通し次第としている。ドル円は豪ドル円の上昇ともに一時137.70台まで買われた。
ロンドン市場では、ユーロが売られた。ECB四半期銀行貸出調査で、第1四半期の銀行による与信基準の厳格化が予想を超えており、今後のユーロ圏景気に対する警戒感が広がったことが背景。その後発表されたユーロ圏消費者物価指数はほぼ予想通りで、ユーロ売りの流れには変化を与えなかった。今回の貸出調査を受けて、今週のECB理事会での50bpの大幅利上げ観測が後退した。ユーロドルはロンドン早朝に1.10台乗せのあと売りが強まり1.0950台割れとなった。ユーロ円は2008年10月以来の高値151.61レベルをつけたあと、一時150.30台まで下落した。ドル円は東京午後の高値から137.20台まで調整売りが入った。豪ドル円は91.80前後まで下げている。
NY市場では、リスク回避の円買いが広がった。朝方発表の3月の米求人件数が959万件に減少。2カ月連続で1000万件を下回ったことで、市場はネガティブな雰囲気を強めた。米株式市場で米地銀株が大幅安となり、米銀への根強い懸念も市場を圧迫。米国債利回りや米株式市場も下げ幅を広げる中、為替市場ではドル売りと伴にリスク回避の円買いが強まった。ドル円は137円台を割り込むと一時136円台前半まで下落。ユーロドルは1.09台半ば割れ水準から1.10ちょうど付近まで反発。ポンドドルは1.24台で下に往って来いの上下動。
3日
東京市場は憲法記念日の祝日で休場。
ロンドン市場は、円高とドル安が進行。ドル円は136円付近から135.50台割れへと下落。NY原油先物が一時69ドル台前半と大幅下落となっていることや、米10年債利回りが3.43%台から3.38%台まで低下していることなどがドル円相場を圧迫。クロス円も軟調。ユーロ円は150円付近から149.50台割れ、ポンド円は170円台前半から169.50台割れまで下押しされている。欧州株や米株先物は前日の下落の反動で小高いが、市場全般に見るとリスク警戒の動きが優勢。きょうの米FOMCでは25bp利上げが確実視されているが、昨日の米求人件数の低下を受けて6月会合での据え置き観測が一段と高まっている。ドル相場は売りが先行。前日海外市場からの流れを受けてユーロドルは1.1047近辺、ポンドドルは1.2534近辺まで高値を更新した。足元では米FOMCを控えていることもあって、ドル売りは一服している。この日発表された3月ユーロ圏失業率は6.5%と予想外に前回の6.6%から低下した。過去最低水準となったが、ユーロ相場は特段の反応を示さなかった。
NY市場は、FOMCを受けてドルが一段と売られた。FOMCでは予想通りに25bpの利上げが実施された。ただ、声明からは追加利上げを示唆する文言が削除され、市場の利上げ停止の観測を裏付ける内容となっていた。しかし、「今後に必要となる追加引き締めの程度は経済次第」とも述べている。パウエル議長の会見では、「銀行の状況は3月上旬以降、広範に改善した。データに基づいて会合ごとに決定する」などと述べていた。「インフレ抑制のプロセスはまだ長い道のり」とのこれまでの言及もあった。また、早期の利下げ開始の可能性には否定しており、株式市場が下落した。ドル円は発表直後に135円台割れも、すぐに135円台後半まで反発。その後は株安とともに円買い圧力を受けて135円台を再び割り込んだ。ドル売り圧力でユーロドルは1.10台を回復、一時1.1090付近まで買われた。ポンドドルは1.25台を回復すると、1.2590付近まで買われた。
4日
東京市場はみどりの日の祝日で休場。
ロンドン市場は、前日からのドル売りが一服し。ECB理事会の金融政策発表を控えて、特にユーロドルに調整が入り、ロンドン朝方に1.1091近辺まで高値を伸ばしたあと、米債利回りの上昇を受けて1.1037近辺まで下押しされた。その後は1.10台後半へと再び上昇。ポンドドルも1.2593近辺まで買われたあとは1.2553近辺まで反落。ただ、対ユーロでのポンド買いが入っており、下げ幅はユーロドルほどではなかった。ドル円は東京午後からロンドン早朝にかけて134.15近辺まで下押しされ前日からの安値を広げたが、その後は134.82近辺まで反発。134円台半ばに落ち着きどころを見出している。欧州株はマイナス圏推移、米株先物は前日の下落から反発も、戻りは限定的。昨日の米FOMC後のパウエル議長会見では早期の利下げ開始について否定的だった。株式市場では利下げ開始を期待しすぎた面もあったようだ。また、米地銀パックウェスト株の下落が金融不安を再燃させた面もあった。ただ、ECB理事会を控えた様子見もあって、調整含みの値動きが続いている。
NY市場はリスク回避の円高の動き。米地銀への懸念が再燃したことが背景。パックウェストやウエスタン・アライアンスなどが身売りの可能性など選択肢を検討と報じられている。ウエスタン・アライアンスは報道を否定したが、市場では米地銀への不信感が再燃している。ドル円は前日のFOMC後の売りに加えて、リスク回避の円高圧力が重石となり一時133円台半ばに下落。先週末の日銀決定会合後の円安の動きを消した。ユーロドルは1.10台後半から1.09台後半まで下落。ECB理事会では大方の予想通りに25bpの利上げを実施した。一部のタカ派な理事からは50bpの利上げの主張もあったようだが、最終的に全会一致で決まったようだ。ECBはFRBとは違い、追加利上げの可能性を強調している。ラガルド総裁は会見で、利上げを止めるつもりはないとの認識を強調していた。資産購入プログラム(APP)で購入した債券の満期償還金の再投資を7月に停止する方針も示した。ポンドドルは11カ月ぶりの高値となる1.2595近辺まで買われた。対ユーロでのポンド買いが強まっていた。
5日
東京市場は子供の日の祝日で休場。
ロンドン市場は、落ち着いた相場展開。米雇用統計待ちのムードが広がるなかで、欧州株や米株先物・時間外取引が堅調に推移し、米債利回りも小幅に上昇、原油先物も反発している。リスク警戒の動きは一服している。ドル円はアジア市場で134.31近辺から133.89近辺まで下げていたが、ロンドン時間には134.20台まで反発している。ユーロ円は148円付近での取引が続く中で147.69から148.13でのレンジ取引。ポンド円は買いが先行し、169.40付近まで買われたあとは168円台後半から169円台前半での振幅にとどまっている。米債利回りの上昇とともにユーロドルは1.1050付近が重くなり、1.10台前半で揉み合っている。ポンドドルは1.2634近辺に高値を伸ばしたあとは1.26台前半に高止まり。ポンドは前日からの対ユーロでの堅調な流れが継続している。この日発表されたドイツ製造業新規受注、フランス鉱工業生産、ユーロ圏小売売上高など一連の欧州経済統計はいずれも弱含んだが、指標に対するユーロ売り反応はほとんど見られなかった。ECB専門家調査では2025年インフレ見通しが2.2%に引き上げられ、インフレ目標達成が後ずれした。
NY市場でドル円は急速に買い戻しが膨らみ、一時135円台を回復する場面も見られた。この日発表の4月の米雇用統計がマクロ環境の逆風にもかかわらず、米労働市場が力強さを維持していることが示されたことから、ドルの買い戻しが強まっている。ただ、きょうのところは135円の水準は強い上値抵抗となった模様。 

 

●為替相場 5/8-5/12 5/13
まとめ5月8日から5月12日の週
8日からの週は、ドル買いと円買いが交錯した。米消費者物価指数、同生産者物価指数の伸び鈍化が示されたことで、発表直後にはドル売りが入る場面があった。ただ、米金融不安が根強いなかで、さらに米政府の債務上限問題がクローズアップされたことで、市場全般にリスク回避の圧力がかかった。円買いとともにドル買いの圧力が広がっている。ドル円は135円台から一時133円台に下落。ユーロドルは1.10台から1.09台へ、ポンドドルは1.26台から1.25台へと下押しされている。英中銀は市場の想定通り政策金利を25bp引き上げて4.50%とした。23-24年の経済成長見通しを大幅に引き上げるとともに、インフレ見通しも引き上げられた。今後の追加利上げの可能性が示唆された。ECB消費者インフレ期待調査でもインフレ見通しが引き上げられた。英欧の利上げ継続が長期化するとの観測がリスク回避圧力となった面も指摘された。インフレ期待の低下を受けたNZドル売りや、ロシアに対する武器提供を米国に批判されている南アのランドが売られた。特に南アランドは対ドルで連日の最安値更新となっており、側面からドル高圧力につながる面もあった。
8日
東京市場で、ドル円は135円を挟んだ振幅。週明けの朝方には買いが先行、先週末の高値を上回る135.30近辺まで買われた。その後は、売りに転じて134.60台まで反落。先週末の強い米雇用統計を受けたドル買いは一服。ロンドン市場が英チャールズ国王戴冠式関連での祝日で休場となっており、取引参加者が少なくなることもあり、いったんポジション整理が広がった形。ユーロ円も149.09近辺まで買われたあとは148円台後半に軟化して揉み合いに。ユーロドルは朝のドル高で1.1010台を付けたが、その後1.1040台まで上昇。1.10台での推移が続く中、盛り上がりに欠けるものの、ややしっかりという印象。
ロンドン市場は、ドル安の動き。先週末の米雇用統計が雇用増、失業率低下と予想外の強い結果内容となったことで、米景気後退懸念が緩和され、米株や欧州株が大幅高となった経緯がある。週明けのロンドン時間でも欧州株や米株先物が小高く推移し、先週末からの高値圏を維持。米債利回りが上昇、原油先物が上昇とリスク選好パターンの相場展開に。ユーロドルは1.1050台に高値を伸ばしたあと、いったん調整売りが入ったが再び1.1050付近へと上昇。ポンドドルは1.2650付近からやや下押しされたあと1.2670付近へと高値を更新。リスク動向に敏感な豪ドル/ドルは0.6790台、NZドル/ドルは0.6350付近へと高値を伸ばす動き。NY原油先物が時間外取引で73ドル台乗せへと上伸しており、ドルカナダは1.3330台へとドル売り・カナダドル買いに。今週水曜日の米消費者物価指数発表まで米経済統計の手がかりには欠けている。
NY市場は、方向性に欠ける値動き。ドル円は135円を挟んで上下動しており、方向感がない。午後になってFRBが第1四半期の銀行融資担当者調査を公表しており、信用状況がタイト化しているほか、法人からの融資需要も軟化していると発表したことで、ややリスク回避の雰囲気も出ていた。ユーロドルはNY時間に入って伸び悩む動きが見られているものの、1.10台は維持。ポンドドルは、チャールズ英国王戴冠式の振替休日で英国勢は祝日となっている中、上値追いの動きが続いており、1.2670付近まで一時上昇した。今週は英中銀金融政策委員会(MPC)が予定されているが、直近の英経済指標が予想外の回復力を示していることから、25bpの追加利上げが確実視されている。ただ、2名のハト派な委員からは反対票が投じられる可能性もあり、採決は7対2での決定になるのではとの見方も出ている。
9日
東京市場では、前日から引き続きドル円が135円挟みで振幅。朝方に135.32近辺まで上昇。先週末の米雇用統計後の高値をわずかに更新した。その後は調整に押されて134.84近辺まで反落した。明日の米消費者物価指数(CPI)を前に135円台を買い上げる動きにはやや慎重姿勢が見られる。 ユーロドルは朝方1.10台を割り込むと、その後は1.0990を挟んでの推移が続いた。ユーロ円は朝方のドル円の上昇で148.69近辺まで買われたが、対ドルでのユーロの重さもあり148.20台まで値を落とした。豪ドル/ドルは0.6780、ポンドドルは1.2610を挟んでの推移と、落ち着いた動きとなった。
ロンドン市場は、調整ムードが広がっている。NY原油先物が72ドル台へと反落、欧州株や米株先物・時間外取引が軟調に推移、米10年債利回りが3.51%台から3.47%台へ低下。明日の米消費者物価指数の発表を控えてポジション調整が入る格好。為替市場はやや円高、ドル高に振れている。ドル円は一時134.72近辺まで軟化。ユーロ円は一時148円台割れ、ポンド円も一時169.80台まで下押しされた。リスク動向に敏感な豪ドル円は91円台後半からロンドン序盤には91.10近辺まで下落。ユーロドルは1.10付近で上値を抑えられており、1.0970-80レベルで底這い状態。ポンドドルは1.26台前半から一時1.26台割れとなる場面があった。豪ドル/ドルは0.67台後半で上値重く推移している。この日は一連のECB当局者の発言が報じられているが、いずれもインフレ目標に戻すために追加利上げが必要との主旨の内容だった。レーンECBチーフエコノミストは、インフレ2%目標に戻すためには金利が主要な手段となる、と述べた。
NY市場で、ドル円は135円を挟む上下動。先週はFOMCや米地銀問題などで下値警戒感が強まったものの、週末の米雇用統計を受けて一気に買戻しが膨らんだ。ただ、更なる上値追いには慎重な雰囲気もあり、様子見気分が強い。市場は明日の米消費者物価指数(CPI)に注目している。現在の予想からは、総合指数とコア指数がとも前回同様の高水準での推移が続くとみられている。ユーロドルは戻り売りに押され、1.10台を維持できず再び1.09台半ばまで一時下落した。ポンドドルも戻り売りに押され、一時1.25台に値を落とす場面が見られたものの、下値での買い意欲も強く1.26ドル台は維持されている。今週は英中銀金融政策委員会(MPC)が予定されているが、インフレが上昇していることから、25bpの利上げを行う可能性が高い。しかし、これまで実施して来た利上げが経済を減速させるという理由から、今後については驚くほどタカ派な発言をすることはないとも見られているようだ。
10日
東京市場は、米消費者物価指数を控えて様子見ムード。ドル円は朝方に135.34近辺まで買われたが、前日高値135.36近辺には届かず135.07近辺まで下落。その後は揉み合いが続いたが、ロンドン勢の本格参加直前には再び135.40近辺へと買われている。ここにきて6月の利上げ期待が広がっており、先週のFOMC直後の8%前後から25%前後に上昇、ドル買いがやや優勢となっている。ユーロドルは海外市場のドル買い局面での1.0950割れからじりじりとした買い戻しが昼過ぎまで続き1.0977まで強含んだ。ロンドン勢の本格参加前になってドル買いが入って1.0960台での推移。ユーロ円は148円台半ばへと上昇。ドル円の上昇傾向が支えとなっている。
ロンドン市場は、円高・ドル高の動き。米消費者物価指数の発表を控えて、東京市場での値動きに調整が入っている。寄り付きは買いが先行した欧州株だが、すぐに売りに押される展開となっている。米株先物もマイナス圏に下押しされている。いずれも値幅は限定的ではあるが、調整が入る展開。NY原油先物も73ドル台から72ドル台へと軟化している。ドル円は135円台前半で一時135.47近辺まで買われたあとは、欧州株安とともに反落している。ユーロドルは1.0980付近まで買われたあと、1.0950割れへと下落。ユーロ円も148.67近辺の高値をつけたあと一気に148.03近辺まで反落した。ラガルドECB総裁は、「われわれにはまだすべきことある」とインフレ抑制のための追加利上げを示唆する一方、「リセッションは2023年の基本シナリオではない」とこれまでの利上げ過程が行き過ぎていない面も主張していた。
NY市場は、ドル円が下落。米消費者物価指数(CPI)を受けてドル売りが強まり、ドル円は134円台前半まで急速に下落した。発表前は135円台だった。本日の下げでドル円は再び21日線割れを試す展開が見られている。また、次第に市場はリスク回避の雰囲気も強め、円高の動きもドル円を圧迫したようだ。米CPIは全体的に前回とほぼ変化はなく、高インフレの状態が続いていることを示したものの、予想範囲内だったこともあり、安心感が広がった模様。一部からは、FRBが特に注目しているとされる住居費を除いたコアサービス価格、いわゆるスーパーコアが計算値で前回の前月比0.4%から0.1%に鈍化したことが安心感に繋がったとの指摘も聞かれる。CMEが公表しているフェドウォッチでは、6月の据え置きの確率がほぼ100%になっているほか、7月の利下げ期待が42%程度に上昇。9月までであれば80%近くまで高めている状況。ユーロドルは一時1.10台を回復する場面も見られた。ただ、1.10台に入るとオプション勢などの戻り売り圧力も強まるようで、大台は維持できていない。ポンドドルは米CPIを受けて一旦1.26ドル台後半まで上昇したものの、1.26台前半に伸び悩んだ。米CPI後の上げを帳消し、上に往って来いとなった。
11日
東京市場は、ドル売りが一服。ドル円は前日の米消費者物価指数発表後のドル売り地合いを受けて朝方には133.89近辺まで下落。5日以来、約1週間ぶりの安値水準をつけた。その後は、米10年債利回りの低下が一服すると134円台を回復。午後には134.30台まで切り返した。ユーロ円は、朝方のドル円の下げに連動して一時147.12付近まで下落した。しかし、その後は下げ一服となり、午後は147円台前半で小動きとなっている。ユーロドルは揉み合い。午前にいったん1.0998付近まで強含んだあと、午後は一転して1.0970付近まで軟化した。前日終値を挟んで方向感は限定的。
ロンドン市場は、ドル買いと円買いが交錯。英中銀の金融政策発表を控えて、ドル買いの動きが先行した。前日の米消費者物価指数発表後のドル売りを巻き返す動き。ドル円は134円付近から一時134.84近辺まで反発。ユーロドルは1.0980付近から1.0920付近へと下落。ポンドドルも1.26台割れから1.2565近辺まで下押しされた。日本時間午後8時に発表された英中銀金融政策は、市場予想通りの25bp利上げで政策金利は4.50%に引き上げられた。特筆すべき点は成長予想が大幅に引き上げられたことだ。2023年、24年ともに2月時点でのマイナス成長予測から今回はプラス成長へと引き上げられた。インフレについては減速予測となったが、そのペースは2月時点よりも緩やかなものに修正されている。ポンド相場は発表を受けて買いの反応を示した。英中銀は今後の追加利上げの可能性も示唆しており、欧州株や米株先物は売りに反応している。為替市場では円買い圧力が再燃している。ポンド円は英中銀発表後の上昇を消している。
NY市場は、リスク回避の動きが再燃。4月の米生産者物価指数が予想を下回ったことから、前日の米消費者物価指数と同様に利上げ停止と年内の利下げ期待を正当化する内容となった。一方、米地銀への不信感が再び強まっており、リスク回避の円買いも出ていた。米地銀のパックウェスト<PACW>が5月5日に終了した週に預金が約9.5%減少したことを明らかにした。大部分は5月3日に伝わった身売りを含め戦略的選択肢を検討との報道後の5月4日と5日に発生したという。米株式市場がネガティブな反応を見せるなかで、ドル円は一時133円台に下落した。しかし、後半には米株式市場の下げが一服する中でドル円も買い戻しが見られ、134円台半ばに戻した。ユーロドルはNY時間に入って戻り売りが強まり、一時1.09ちょうど付近まで下落する場面が見られた。ポンドドルも戻り売りが強まり、一時1.24台に下落した。英中銀発表後に売買が交錯したあと、ポンドは対ユーロでの売りが強まり、NY市場でもその流れが続いた。きょうはECBが月次調査を公表し、ユーロ圏消費者のインフレ期待が3月に大きく上昇したことが明らかになっている。
12日
東京市場は、円売りが優勢。前日のNY市場後半以降は為替市場は静かな相場展開が続いている。そのなかで、東京市場では日経平均が買われ、1年半ぶりの高値水準となり、米株先物も小高く推移。ややリスク選好の円売り圧力がみられている。ドル円は134.50付近から134.80付近へとじり高の動き。クロス円も買われており、ユーロ円は147円付近から147.30台へ、ポンド円は168.50付近から168.80台へと上昇。全般的には値幅は狭く、落ち着いたムードが続いた。
ロンドン市場は、ドル買いと円買いの動きが入っている。東京市場からロンドン序盤までの円安・ドル安の流れが一服した格好。ただ、欧州株や米株先物・時間外取引は堅調に推移。米10年債利回りも3.37%付近から3.41%付近に上昇。NY原油先物は70ドル台から71ドル台へと下げ渋り。総じてリスク動向は落ち着いたものとなっている。今週の一連の米物価統計や英金融政策発表を通過し、次の焦点となっている米債務上限問題については協議が来週早々へと延期されており、きょうは手掛かり難となっている。ドル円は134.90近辺まで買われたあとは134.60台へと上昇一服。ユーロ円は147.47近辺に高値を伸ばしたあとは、急速に売られて147円台割れとなっている。ユーロドルも1.0935近辺まで買われたあとは1.0899近辺まで反落、ほぼ1カ月ぶりの安値水準に。この日はインフレ期待の低下を受けたNZドル売りや、ロシアに対する武器提供を米国に批判されている南アのランドが売られている。特に南アランドは対ドルで連日の最安値更新となっており、側面からドル高圧力につながる面も指摘される。
NY市場はミシガン大学消費者態度調査で示された1年先及び5−10年先インフレ見通しが市場予想を上回る強さとなったことを受けて、ドル買いとなった。ドル円は134円80銭前後で発表を迎え、発表直後に135円台に乗せた。ミシガン大学消費者信頼感指数自体は弱かったこともあり、その後いったん発表前の水準を割り込むところまで売りが出たが、米10年債利回りの上昇などが見られる中でドル高が再び強まり、135円台に再び乗せると、ドル高の勢いが強まり135円台後半まで上値を伸ばした。ユーロドルが1.0850割れまでユーロ安ドル高となるなど、ドルはほぼ全面高となった。 

 

●為替相場 5/15-5/19 5/20
まとめ5月15日から5月19日の週
15日からの週は、リスク選好の円安と、ドル高が共存した。一連の米経済指標の力強さが米株式市場に評価され、目先の追加利上げ観測や近い将来の利下げ開始時期が後ずれしてきていることなどが、ドル買い圧力となった。特に日本株の好調さとドル円相場上昇が際立った。米著名投資家が日本株買いを進めていることが報じられたことをきっかけに、海外投資家からの日本株への視線が熱くなっているもよう。ドル円相場にとっては、日米金利差縮小観測が後退したことが押し上げ圧力になった面もあった植田日銀総裁は週末の講演で、緩和継続姿勢を堅持した。米債務上限引き上げ問題については、デフォルト回避の見方が一時優勢となり、警戒ムードが後退した。これについては週末21日のバイデン米大統領の会見が注目されている。日経平均がバブル後の高値を更新するとともに、ドル円は138円台後半へと買われている。しかし米債務上限問題についての政府と共和党の担当者レベル協議が決裂したことで、週末の市場で一気にドル売りが入り137円台半ば割れを付けるなど、不安定要素が続く形となった。
15日
東京市場は、円売りが優勢。ドル円は先週末の流れを受けて上昇。朝方に135.59近辺まで小反落も、仲値にかけて再び買われて136円をつけた。調整は135.70台までにとどまり午後には日経平均の上昇とともにリスク選好の円売りが加わって136.20台に高値を伸ばした。クロス円も軒並みの上昇。ユーロ円は朝方の147.20台から午後には148円台乗せ。豪ドル円は90.10台を安値に91円台に乗せた。午前中はドル円の上昇に合わせてドル買いが出る場面が見られたユーロドルは、1.0850割れを付けた後、一転して買いが優勢となった。対円でのユーロ買いなどが支えとなった。
ロンドン市場では、リスク選好の動きが優勢。ドル円は東京市場の流れを受けて136.26近辺に買われたあと、いったん利益確定売りに135.80台まで反落。その後再び買われて136.30台を直近高値を更新した。アジア株が午後に貼って買われるなど、リスク選好の動きが優勢。ユーロ円もしっかり。ドル円の上昇もあって朝方に148円台を付けた後、いったん147.60台に反落。その後ドル円が上昇する中で148円台にしっかり乗せ、148.10台を付けた。ポンド円は朝方の調整で169.50近辺で下げ止まると170.30台へと買われた。ドル相場は方向感に欠けた。ユーロドルは1.08台後半での振幅、ポンドドルは1.25台乗せへとやや買われた。週末のトルコ大統領選を受けて、トルコ株安などが見られたが、現政権のトルコリラ安防衛姿勢もあり、為替市場への影響は限定的なものにとどまっている。
NY市場では、ドル買いが一服。ドル円は136円付近での推移。朝方発表になったNY連銀景気指数が予想を大幅に下回ったことでドル売りが強まり、ドル円は一時135円台に値を落としたものの、売り一巡後は直ぐに戻している。ユーロドルは1.08台後半へと上昇、ポンドドルは1.25台を回復した。焦点となっている米債務上限問題で、バイデン大統領と共和党が妥協点を見い出せるのではとの楽観的な雰囲気が市場に広がっているようだ。大統領は先週末に、「デフォルト(債務不履行)を回避するための交渉は進んでおり、交渉担当者は数日のうちに理解をより深めるだろう」と語っていた。大統領とマッカーシー下院議長(共和)らの議会指導者が16日にも再度会談する予定。ただ、バイデン大統領が共和党が要求している歳出削減をどこまで呑むのかを警戒している向きも少なくない。歳出削減が大きいようであれば、景気に影響しかねないと考えているようだ。
16日
東京市場は、方向感に欠ける値動き。ドル円は136円を挟む推移で、動意をみせず。前日NY株式市場が債務上限問題などの様子見ムードで動意薄だったことが背景。ユーロドルは1.0868-1.0885の狭いレンジ取引にとどまった。アジア株は比較的堅調で始まったが、中国鉱工業生産、小売売上高、不動産投資などの指標が市場予想を下回ったことで、中国売りの動き。対中輸出の大きい豪ドルなどでも売りが出ており、豪ドルドルは0.6700を挟む推移から0.6670台へと軟化。豪ドル円は91.26近辺を高値にから90.70台へと下押しされた。ドル人民元は6.96台乗せ、上海総合が小幅マイナス圏と、中国売りの動きがやや優勢。
ロンドン市場は、ドル売り先行も続かず。米債利回り低下とともに、ドル円は135.70付近に軟化、ユーロドルは2営業日ぶりの1.09台乗せとなる場面があった。その後は、ドル円は135.90台まで上昇、ユーロドルは1.0880付近へと買い一服。ポンドドルは振幅。英雇用統計は失業保険申請が予想を大きく上回ったことに加え、失業率が悪化するなど弱めの結果となった。英中銀による追加利上げ期待は継続しているものの、慎重な見通しがやや強まる形でポンド売りとなった。対ドルでは1.25台割れから1.2460台まで下落。しかし、その後はショートカバーが入ると1.2550手前まで反発した。豪ドル/ドルは朝方に0.6660台まで一段安となった。しかし、その後は下げ一服となり、0.66台後半で揉み合った。
NY市場ではドル買いが優勢。朝方発表の4月の米小売売上高はガソリンと自動車を除いた指数が予想を上回り、堅調な個人消費を示した。それを受けて為替市場は米債利回り上昇とともにドル買いで反応した。また、本日じゃ米債務上限問題でバイデン大統領とマッカーシー下院議長(共和)ら議会指導者らが再度会談するが、市場では妥協点を見い出せるとの楽観的な雰囲気が広がっている。マッカーシー議長は何も進展がないと強硬姿勢を堅持しているものの、バイデン大統領からは楽観的な発言も聞かれている。ドル円は136円台半ばに再浮上した。ユーロドルは1.08台半ばまで一時下落。ポンドドルは1.24台へと再び軟化。この日発表の5月のZEW景気指数がマイナス10.7に低下し、12月以来のマイナス圏に転じた。英国1−3月の平均失業率は3.9%に上昇し、雇用者数は2021年初頭以来の前月比での減少となった。給与の伸びは加速したが、賞与を除く週平均賃金の伸びは予想を下回っていた。欧州通貨売り圧力が側面からドルを下支えした面も。
17日
東京市場は、ドル買いとともに円売りが進んだ。昨日の米小売売上高の結果を受けて、30日物FF金利先物市場での6月の利上げ期待が22%程度まで戻ってきており、ドルを支えた。このところの警戒材料であった債務上限問題について、楽観姿勢が見られていること、バイデン大統領がG7に向けて移動中で新規の材料が出にくいことなどが、リスク警戒後退につながっている面がある。また日本国債の利回り低下による円売りも見られた。10年国債は直近370回債で0.352%台と中心限月としては4月初め以来の低水準まで低下。370回債としては最も低い水準となっている。ドル円は136.80台へと上昇。ユーロドルは1.0850付近まで下落。ユーロ円は朝の148.00台から148.50台に上昇。ポンド円は朝の170.10台から170.60前後に上昇、円が全面安となっている。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。前日NY市場で米小売売上高が発表されたあとの流れが継続している。ドル円にとっては新発長期債利回りが低下したことが円売りにつながった面も指摘される。ロンドン時間に入るとユーロやポンドがドル買いを主導。ユーロドルは1.08台後半から1.0820付近へ、ポンドドルは1.24台後半から1.2420付近へと安値を広げた。ドル円は137.00付近の売り注文で売買が交錯したあと、137円台乗せから高値を137.17近辺まで伸ばした。ただ、137円台では売りに押されており137円挟みで売買が交錯している。クロス円はまちまち。ユーロ円は148.60台に高値を伸ばしたあとは148.10台まで一時反落。一方、ポンド円は170円台前半での揉み合いから170.70付近へと底堅い値動き。ユーロポンドは買い先行も、その後は売りに押されており、足元ではポンド買いに分がある。ハント英財務相やベイリー英中銀総裁などがインフレ抑制に強い決意を示したのに対して、デコス・スペイン中銀総裁は「ECBの引き締めサイクルの終わりに近づきつつある」との認識を示していた。
NY市場では、米債務上限問題の行方に楽観的ムード広がった。ドル円は一段と上昇。前日のNY市場の流れを引き継いでドル買いが優勢となる中、ドル円は137.50台へと上昇。市場は米債務上限問題の協議の行方を見守っているが、議会指導者とバイデン大統領が合意に達し、デフォルト(債務不履行)を回避できるとの楽観的ムードが広がっており、円安の動きもドル円をサポートしたようだ。バイデン大統領、共和党のマッカーシー下院議長が会見を行っており、「デフォルトにはならないと確信。21日に会見を開く予定だ」と述べた。一方、マッカーシー下院議長は昨夜、スタッフレベルの債務上限交渉に少し参加したことを明らかにしたうえで、「今週中の合意は可能だ」と述べていた。ユーロ円は149円台乗せ、ポンド円は172円付近まで買われた。ユーロドルは1.08台前半まで一時下落。その後、1.08台半ばに向けて下げ渋った。ポンドドルはロンドン時間に1.24台前半まで下落したが、NY時間に入ると1.25台まで買い戻され、下げを解消した。
18日
東京市場は、ドルが底堅く推移。ドル円は序盤に137.29近辺まで下押しされたあとは、日経平均の大幅高とともに上昇。午後には137.74近辺まで高値を伸ばした。ユーロ円は149円を挟んだ振幅。ドル円と同様に下に往って来いとなった。ユーロドルは午後に入ってジリ安となり、1.0827近辺まで弱含んだ。豪ドルは軟調。午前に発表された4月豪雇用統計が弱かったことで、豪中銀による追加利上げ観測が後退したことが背景。豪ドル/ドルは0.6632近辺まで、豪ドル円は91.10近辺まで下落する場面があった。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。ドル円は序盤に米債利回り上昇とともに137.94近辺まで高値を伸ばし、年初来高値を更新した。ただ、138円台乗せの勢いには欠けて137.70-80レベルに高止まりしている。ユーロドルは東京午後からの下落の流れを受けてロンドン午前に1.0806近辺まで安値を広げている。ポンドドルも売られ続けており、安値を1.2426近辺に更新した。ドル全般に買われており、ドル指数は3月27日以来の高水準となっている。5月に入ってからはドル買いが優勢だが、米雇用統計、米物価統計、そして今週の米小売売上高と米景気動向の強さが示されたことが市場での追加利上げ観測につながっていることがその背景として指摘される。また、植田日銀体制が緩和継続を表明していることや、米債務上限問題についての楽観的な見方が広がっていることがドル円相場を押し上げている面もある。昨日の米株上昇に続いて、きょうも各国株式市場が堅調に推移している。
NY市場では、ドルが一段高。この日発表のフィラデルフィア連銀指数などの米経済指標が予想を上回ったほか、ローガン・ダラス連銀総裁の発言を受けて短期金融市場で6月の米利上げ確率が上昇し、ドル円は上げ幅を伸ばした。総裁は「まだ利上げ停止の論拠が見当たらない」と述べていた。米債務上限問題に関しては何も具体的な進展は伝わっていない。しかし、市場は楽観的なムードが広がっている。その点はリスク選好の円安材料。ドル買い・円安の二重の追い風の中で、ドル円はしばらく上値を試すのではとの期待につながっていた。引けにかけて138.70付近まで高値を伸ばした。ユーロドルは重要なサポート水準である1.08をブレイク。一時1.0765付近まで下落した。ポンドドルは一時1.23台に下落した。
19日
東京市場では、ドル円が上値重く推移。前日海外市場ではドルが買われたが、東京朝方には利益確定とみられる売りで一時138.28付近まで軟化した。4月の日本消費者物価指数で生鮮食品とエネルギーを除くコアコアが1981年9月以来およそ42年ぶりに4%台を突破し、日銀の緩和修正観測から円買いが優勢となったことも、ドル円の下押し要因となった。東京終盤には再び138.15付近とこの日の安値を小幅に更新。ユーロ円も午後に149円割れに沈み、一時148.91付近まで下落した。ユーロドルは、午前に前日安値を下回る1.0760付近まで弱含んだが、値幅自体は限定的。
ロンドン市場は、ドル安と円安の動きが再燃している。ドル円は137.97レベルと一時138円台割れとなるも、すぐに138円台前半に下げ渋った。クロス円は東京市場での下落から反発。ユーロ円は148.75レベルまで下落したあとは、足元で149.30付近まで反発。ポンド円も171.25近辺まで下落したあとは172円手前水準まで買い戻されている。さらに堅調なのがオセアニア通貨で、NZドル円は東京朝方につけた高値を上抜けて、足元では86.80付近に高値を更新している。豪ドル円も91円台後半で底堅く推移するなかで、一時91.98レベルに本日の高値を更新した。ユーロドルは一時1.08台乗せ、ポンドドルは1.24台前半に高値を伸ばすなど、前日海外市場での下げから反発している。欧州株が堅調に推移しており、独DAX指数は最高値を試す展開となっている。また、東京市場では全国CPIの上昇が日銀金融政策修正観測につながって円が買われたが、東京夕方の植田日銀総裁講演では緩和継続姿勢が微動だにしなかったことで円が売り戻された面もあったようだ。
NY市場序盤でドル高が優勢となり、ドル円は18日NY市場夕方からきょうの東京朝にかけての138円70銭台に迫る138円65銭を付けた。米債務上限問題に対する楽観的な見方が広がり、リスク選好の動きとなった。しかし、米債務上限問題について米政府と議会共和党の非公式協議が決裂し、同問題への懸念が一気に再燃する形でドル売り円買いとなった。ドル円は138円60銭前後から137円43銭まで急落した。下げ一服後は買い戻しが入り、138円台を回復するなど、ドル高円安基調が継続しているものの、債務上限問題が強まる中でのドル円ロングポジションの維持への警戒もあり、上値が抑えられた。ユーロ円などクロス円でもリスク警戒の円買いが広がった。ユーロ円はドル円の上昇などに支えられて朝方149円80銭前後を付けた。その後少し下げて債務上限問題での急落となり、148円70銭台と高値から1円超の下げとなっている。 

 

●為替相場 5/22-5/26 5/27
まとめ5月22日から5月26日の週
22日からの週は、ドル高の流れが強まった。主要通貨のなかでは、NZドルや豪ドルなどオセアニア通貨に対するドル買いの動きが目立った。特にNZドルの下げが大きく、NZ中銀が利上げ発表とともに今後の利上げ休止を示唆ことに反応していた。豪ドルにとっては全般的に世界の株式市場が軟調だったことが響いたようだ。米国の債務上限問題が投資心理が影を落としている。一部格付け会社は米国の格付け見通し見直しを示唆した。オセアニア両通貨に次いで円が売られている。ドル円相場は連日の上昇。昨年の152円手前の高値水準にはまだ遠いものの、週後半には節目となる140円台をつけた。週明けの137円台からは約3円幅の急ピッチな上昇となっている。米GDPの上方改定など強い米経済指標と、それにともなう市場の米利上げ継続観測がドル高のドライブとなっていた。円相場にとっては、日銀の強い緩和継続姿勢も日米金利差拡大観測の再燃につながっていたようだ。日本株が人気化し、日経平均はバブル後の高値を更新した。週末は米英市場の三連休を控えて、ドル高に調整が入る場面がみられた。しかし、米PCEデフレータや米耐久財受注が上振れしたことで、再びドル買い反応が広がった。
22日
東京市場は、ドルが下に往って来い。米債務上限問題への警戒感が強く、バイデン大統領はG7サミットからの帰国の飛行機内で共和党のマッカーシー議長と協議。さらに本日にも協議再開と報じられているが、政府と共和党側の主張の溝がまだ深く、合意の目途が立っていない。ドル円は朝方の138.03近辺を高値に137.50前後まで下落。ユーロドルが1.0800ドル台から1.0830ドルを付けるなど、ドル全面安の動きとなった。その後は調整の動きが広がった。ドル円は午後に入って137.90台まで回復しており、午前の下げ分のほとんどを取り返した。マイナス圏スタートとなった日経平均がプラスに転じると午後には200円超の上昇となった。午前中から堅調な香港ハンセン指数を始め、韓国総合などもしっかりとした動きとなっており、リスク選好の動きがドル円、クロス円の支えとなっている。ユーロ円は148.84近辺まで下げたあと、149.10台まで反発。
ロンドン市場は、ドル買いが一服している。ドル円は東京市場で137.50付近まで下落したあとは買いが優勢となり、ロンドン早朝にかけて138.04近辺まで買われた。しかし、ロンドン市場の取引が本格化してからは、売買が交錯しており137.80-138.00レベルに高止まりしている。ユーロやポンドは下に往って来い。ユーロドルは1.08台前半から一時1.0796近辺まで下落も、その後は1.0830付近へと買い戻されている。ユーロ円は149円を挟んだ上下動で、足元では149.35近辺に高値を伸ばしている。ポンドドルは東京午前の1.2472近辺を高値にロンドン朝方には1.2414近辺まで下落。その後は1.2465近辺までの反発。ポンド円は171.20付近を安値に171.90付近までの上下動。総じて、先週末の取引レンジを踏襲しており、方向性には乏しい。今日は主要な経済指標発表がみられないほか、引き続き米債務上限問題の行方を見守りたいとのムードもあるようだ。北米市場では、カナダがビクトリアデーのため休場となる。
NY市場は、ドル買いが再開している。ドル円は138円台を回復。米国債利回りが上昇に転じており、ドル円の上げをサポート。朝方にFOMC委員の中でもタカ派の急先鋒として知られるブラード・セントルイス連銀総裁の発言が伝わり、「今年あと2回利上げを余儀なくされる」と述べていたこともドル円の買い戻しをサポートしたようだ。急速に売りに押される場面が見られたが、直ぐに戻している。ペンタゴンが攻撃されたとのフェイク画像に反応したもよう。ユーロドルは上値の重い展開が続き、一時1.08台を割り込む場面も見られた。ビルロワドガロー仏中銀総裁の発言が伝わっていたが、ECBは今後3回で利上げ停止もあり得るとの見解を示していた。ポンドドルも上値の重い展開で1.24台前半に下落した。英中銀は量的引き締め(QT)のペースを上げつつも、来年には利下げ開始する可能性があるとの指摘が出ている。
23日
東京市場では、ドル円が上下動。前日までのドル高円安の勢いが続く形で、朝方138.80近辺に上昇した後、いったん138.40台に調整。昼前に138.87近辺まで再び上昇し、11月30日以来の高値を付けた。後場スタート前に経済産業省が半導体輸出規制を7月23日から施行と発表。199円高で引けていた前引けから、東京エレクトロンの売りなどに一気の株安となり、リスク警戒の動きが広がった。ドル円は午前の安値を割り込んで138.36近辺まで下落した。ユーロ円は150円台に乗せる場面があったが、その後はドル円とともに下落、149.56近辺まで下押しされた。ユーロドルはやや上値が重く、1.0800付近へと軟化。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。前日のブラード総裁やカシュカリ総裁などのタカ派発言を受けて、市場での6月FOMC観測では一定の割合で利上げを織り込む動きが残っている。米債利回りの上昇とともに、今日はドル買いの動きが再燃した。一連の欧州や英国の5月PMI速報値が弱含んだことでユーロやポンドに売り圧力がかかったことがドル高につながる面も。また、欧州株や米株先物が調整に押され気味となっており、取引序盤にはドル円、クロス円が軟化した。ドル円は138.20台まで軟化したあと138.50台へと戻しており、円高とドル高が交錯。ユーロドルは1.08台割れから1.0770付近へ、ポンドドルは1.24台割れから1.2370台へと下落。クロス円も軟調で、ユーロ円は149.20付近へと下落。ポンド円は171.30付近まで下げた。ポンドは取引序盤に対ユーロでの売りが入った。あすの英消費者物価指数発表を控えて、インフレの伸び鈍化が見込まれることが影響した面も。ただ、この日の議会証言ではベイリー英中銀総裁などが食品価格インフレを過小評価していたと述べていた。一方、インフレが低下する良い理由がある、と従来からの見解も示した。
NY市場では、ドル買いが継続。ドル円は138.85付近まで一時上昇。しかし、139円台を試すことなく伸び悩み。ただ、下押しも限定的で、上値追いの流れは堅持した。米債務上限問題については、イエレン財務長官が早ければ6月1日にデフォルトに陥る可能性が高いと繰り返し警告している。前日の現地時間の夕方にバイデン大統領とマッカーシー米下院議長の会談が行われたが、予想通りではあるが、具体的な合意はなく継続協議となっている。ただ、市場はまもなく解決されると楽観的に見ているようだ。ユーロドルは一時1.0760近辺まで下落し、ここ数日のサポート水準を試している。ポンドドルは1.2375付近まで下落も、その後は1.24台を回復している。明日は4月の英消費者物価指数(CPI)が発表される。内容次第ではポンドドルは更に下げを加速させるリスクも。
24日
東京市場では、NZドルが急落した。11時にNZ中銀金融政策会合の結果が発表され、大方の予想通り0.25%の利上げとなった。一部で0.5%利上げの期待があったことで、NZドル売りに反応。声明では今回の利上げで金利がピークに達したことが示され、2024年第3四半期での利下げが示唆された。オア総裁は据え置きと利上げで難しい判断で会ったとしており、市場の一部が期待していた0.5%利上げではなく、据え置きか0.25%の選択であったことを示した。NZドル/ドルは0.62台半ばから0.61台半ばへ、NZドル円は86.60付近から85.20台へと急落。ドル円は138円台で上値重く推移。株安や米債利回り低下などが重石。
ロンドン市場は、根強いドル高圧力が広がっている。NZ売りが継続し、対ドルでは0.61台前半へと一段安。ポンドドルは買いが先行。4月英消費者物価指数が前年比+8.7%と前回の10.1%から低下したものの、市場予想+8.2%を上回ったことがポンド買い反応を誘い、ポンドドルは1.2470付近まで買われた。しかし、その後はドル買い圧力とともに反落、安値を1.2360台まで広げている。ユーロドルは1.0795近辺まで買われたが、その後は反転して1.0750割れまで安値を広げた。5月独Ifo景況感指数は91.7と前回の93.4や市場予想93.0を大きく下回った。独連銀は、第2四半期のドイツ経済は小幅成長となる見込み、とかろうじてリセッションが回避される見方を示している。欧州株が大幅安となり、米株先物も下げに転じている。インフレ圧力が警戒されるなかで、これまでの上昇の動きに調整が入る格好。ドル高とともに円高の動きがみられ、ユーロ円は149円台半ばに買われたあとは148.80台まで反落、ポンド円も172.80近辺まで買われたあとは171.20台まで下落する場面があった。ドル円は138.20台まで下落したあと138.70台まで反発も、足元では138.50付近での推移と方向性に欠けた。
NY市場では、ドル買いが優勢。ドル円は139円台に上昇した。午後にFOMC議事録が公表され、若干ドル売りの反応が見られたものの、一時的な反応に留まった。ドル円は139円ちょうど付近まで値を落としたが、大台は維持。議事録では、追加利上げへの支持を巡ってFOMC委員の意見が分かれていたことが示されたほか、データ依存のアプローチを強調、利下げについては可能性が低いとしていた。このところのFOMC委員からのタカ派な発言がドル買いを誘発しており、その意味でも本日の議事録で何らかのヒントが出るか注目されたが、新たな材料はない。ただ、市場が警戒していたほどタカ派ではない印象もあった。米債務上限問題については、依然として具体的な合意はなく、にらみ合いの状況が続いている。ユーロドルは1.08付近では上値が重く、1.07台半ばから後半で推移した。ただ、対円や対ポンドでは底堅く推移している。ドイツ経済が今後数年間、リセッション(景気後退)に陥ることはないかもしれないが、短期的、長期的ないくつかの課題により、成長はせいぜい控えめなものに留まるとの見方がでていた。ポンドドルは1.24台では売りに押され、1.23台後半から半ばに軟化した。ロンドン朝方に発表された英消費者物価指数では粘着性のインフレ圧力が示されたが、ポンド買いは一時的にとどまっていた。
25日
東京市場では、ドル円は高値圏での揉み合い。朝方に格付け会社フィッチ・レーティングスが米国の格下げの可能性を示唆したことから、一時138.83近辺まで急落した。しかし、影響は限定的で、その後は米10年債利回りの上昇などを背景にドル買いが優勢となり、朝方の下げを帳消しにして、一時付近まで上昇。昨年11月末以来およそ半年ぶりの高値水準となった。朝方にドル円の下げに連動して149.30付近まで下落したユーロ円は、昼頃に150円ちょうど付近まで買われたあと午後は149円台後半で小動きとなった。ユーロドルは1.07台半ばから前半までドル高が進み、午後に入って3月24日以来およそ2カ月ぶりの安値水準となる1.0730付近まで下落した。NZドル/ドルは、昨年11月以来およそ半年ぶりの安値となる0.6076付近まで水準を切り下げた。
ロンドン市場は、根強いドル高圧力がみられた。ドル円はロンドン序盤に139.30付近まで下押しも、再び139.60付近へと底堅く推移している。欧州株が売られているが、次第に下げ幅を縮小。米10年債利回りは3.73%台から3.76%付近へと小幅上昇。ユーロドルは東京市場から引き続き上値が重く、一時1.0714近辺まで安値を広げた。ポンドドルは買戻しが入り、1.2330台から一時1.2387近辺まで上昇。その後は1.23台後半で推移している。きょうはユーロ売り・ポンド買いが優勢。クロス円はドル円とともに下に往って来い。ユーロ円は150円付近が重くなると149.30近辺まで一時下げたが、その後は149円台後半へ下げ渋り。ポンド円は172円近辺で下げ止まりと高値を172.77近辺に伸ばした。この日発表された第1四半期のドイツGDP確報値は前期比−0.3%と下方改定され、2期連続のマイナス成長が確定した。ドイツ消費者信頼感も引き続きマイナスの数字だった。ポンドに関しては新たな材料はでていないが、前日の英インフレ指標が高水準にとどまったことで、市場は年内にあと1%の利上げを完全に織り込んでいる。トルコ中銀は予想通り政策金利を据え置き、市場反応はほとんど見られなかった。
NY市場では、ドル円が一気に140円台を回復した。朝方発表の第1四半期の米GDP改定値が上方改定されたことや米新規失業保険申請件数が予想を下回ったことがフォローとなった。一部のFOMC委員からのタカ派な発言や、依然として強い米経済指標が続いており、ここに来て市場はFRBの追加利上げへの期待を高めている。短期金融市場では6月FOMCでの利上げと据え置きの確率が五分五分となっているほか、7月までの利上げを75%程度で織り込んでいる状況。日銀が依然として慎重姿勢を維持している中で、日米の金利差拡大への期待がドル円を押し上げたようだ。ユーロドルは上値の重い展開が続き、1.07台前半まで下げ幅を拡大。ただ、ECBの利上げ継続期待は根強く、市場ではあと2回は利上げを想定され、3回目については指標次第との見方を強めているようだ。ビルロワドガロー仏中銀総裁やクノット・オランダ中銀総裁といったECB理事の発言が伝わっていたが、6月と7月は利上げを実施し、夏休み明けの9月は指標次第とのスタンスを示唆していた。ポンドドルは戻り売りが続いており、1.23ドル台前半まで下落。4月初め以来の安値水準。米大手銀からは、英中銀は5.25%まであと3回利上げする可能性があるとの見方が出ていた。
26日
東京市場で、ドル円は高値からやや調整されている。来週月曜日は米国、英国が休場。3連休を前に市場では利益確定の動きが広がっている。ドル円は朝の140円台から139円70台割れへと反落。日経平均の大幅上昇などリスク選好の動きが見られるが、これまでのドル高の勢いにいったん調整が入った形。ユーロドルは昨日の海外市場で1.0700台を付けたが大台を維持。今朝は1.0710台なで軟化も、その後は1.0740台まで買われている。このところ売りが目立っていた豪ドルは0.65を一時割り込んだが、その後0.6510台での推移。債務上限問題については、ぎりぎりでデフォルト回避との楽観論が一般的であるが、3連休を前に少し慎重な見方があり、ドル買いの動きが鈍った。ドル主導でクロス円は大きな動きにならず。ユーロ円はドル円の売りに149.92近辺まで下げたが、その後少し戻している。
ロンドン市場はドル売りが優勢。今週はドル買いの流れが続いたが、週末の米英市場の3連休を控えて調整が入る形となっている。米債利回りの低下がドルの上値を抑えている。10年債利回りは3.82%台から3.77%台へと低下。欧州株や米株先物・時間外取引は前日終値を挟んで振幅しており方向性に欠ける動き。このあとのNY市場で発表される最新の米PCEデフレータなどの結果を見極めたいとのムードもあるようだ。
NY市場でドル円は上値追いの動きが加速。ロンドン時間には利益確定売りも出て、一旦139円台半ばまで値を落としていたものの、NY時間に入って再び140円台に戻す展開。この日発表の4月のPCEデフレータがインフレの粘着性を示す内容となったことがドル円の買い戻しを強めた。 

 

●為替相場 5/29-6/2 6/3
まとめ5月29日から6月2日の週
29日からの週は、ドル高が一服。6月米FOMCに関する市場の見方が、据え置きに傾いたことが背景。2名のFRB高官が利上げの一時停止を示唆したことがインパクトを与えた。金曜日の米雇用統計に注目が集まるなかで、米ISM製造業景況指数の低下や単位労働費用・確報値の下方改定なども米債利回り低下とともにドル売り圧力となった。また、週後半には懸案となっていた米債務上限問題については議会で法案が通過しており、デフォルト回避が確実となったことがリスク警戒のドル買い圧力を軽減させた面があった。ドル円は週央に一時142円手前まで買われたが、財務省・金融庁・日銀による三者会合が開催されると138円台へと反落。介入示唆などの強いメッセージはなかったが、円安けん制に一定の効果はあったようだ。ユーロに関してはインフレの伸びが鈍化したが、その後のラガルドECB総裁の発言ではインフレは高すぎるなどとして追加緩和の必要性が指摘された。同様に追加利上げ観測が根強いポンドとともにユーロも買われて、側面からドル売り圧力を広げた面があった。注目の米雇用統計は強弱まちまちの内容となり、非農業部門雇用者数(NFP)は33.9万人増と予想を上回り、労働市場の力強さを示したが、失業率は3.7%に大幅上昇し、平均時給も落ち着きを示した。 きょうの米雇用統計はFRBのもう一段の追加利上げが正当化される内容ではあるが、6月については一旦停止し、ひとまず様子見というシナリオを市場は有力視している模様。短期金融市場での6月据え置きの確率は現時点で65%程度で見ている。市場はむしろ、7月利上げの可能性にシフトしているようで、確率は現時点で75%程度で見ている状況。翌日物金利スワップ(OIS)市場では7月までの0.25%ポイントの利上げを現時点で80%まで織り込む動き。
29日
東京市場は、一時ドル円が買われた。週末に、米バイデン大統領と、共和党のマッカーシー下院議長は、債務上限の引き上げについて27日に原則合意。さらに28日にも電話協議を続け最終合意となった。31日に両院議会で可決されれば、債務上限問題は来年の大統領選後まで問題になることはない。ドル円は、朝方に140.92近辺まで高値を伸ばした。しかし、その後は売りが優勢に。英国、米国と祝日で休場となっており、参加者が少ない中で、高値でのドル買いに慎重な姿勢が見られた。午後には140.30付近へと下落。ユーロ円はドル円の上昇に一時151.07近辺まで買われたが、その後は150円台へ反落。 ユーロドルは1.07台前半での推移。週末の大統領選決選投票で現職のエルドアン大統領が勝利したことを受けて若干リラ売りが出ており、ドルリラは20.04台での推移。
ロンドン市場は、やや調整の動き。ドル円やクロス円の上値が重く、ドル相場は方向性に乏しく振幅している。週末の米政府と共和党との協議で債務上限問題で原則合意したことが市場の警戒感を落ち着かせたほか、次の注目イベントである米雇用統計を金曜日に控えていることで、目先は手掛かり難となっている。加えて、英国がスプリング・バンク・ホリデー、米国がメモリアルデーのため休場となっており、取引は不活発。ドル円はロンドン午前には140.20付近へと下押しされている。クロス円も軟調で、ユーロ円は東京朝方の151.07近辺を高値に足元では130.24近辺まで下落。ユーロドルは1.07台で上に往って来い。ユーロは対ポンドなどでも上値が重い。週末のスペイン統一地方選での与党勢力が大敗を受けて、サンチェス首相が7月23日の総選挙を実施すると表明した。経済統計などの材料がない中で、ユーロ売りにつながった面も。エルドアン大統領が再選されたトルコではリラ安・株高となっている。
NY市場はメモリアルデーのため休場。
30日
東京市場は、ドル相場が振幅。ドル円は買いが先行し、140.50超えへ上昇。その後は米債利回り低下とともに140円台割れ。午後には再び買われて140.60台に高値を伸ばした。ユーロドルは上値重く推移も1.0700手前の買いが下値を支えた。しかし、午後には1.07台割れからストップ注文を巻き込んで1.0680台へと下落した。中国売りの動きが見られ、ドル人民元は年初来高値を更新する7.0980元台までドル高・元安が進行した。オフショア人民元は7.1095付けている。ドル高の流れと、中国売りからのオセアニア通貨も売られ、豪ドル/ドルは0.6550付近から0.6500近くへと下落した。
ロンドン市場は、ドル高が一服。東京市場からのドル買いの流れが一巡したあとは、米債利回りの低下とともにドル売りが優勢に。ドル円はロンドン早朝に140.93近辺と前日高値をわずかに更新した。しかし、財務省・金融庁・日銀の情報交換会合が開催されるとの報道に140円台前半に急落。神田財務官は、為替動向を注視し必要あれば適切に対応すると表明した。ただ、具体的な水準に言及せず、変動幅が重要との認識を示したことで、市場は市場介入への切迫したムードは感じ取らなかったようだ。一時140円台後半へと買い戻された。しかし、米債利回り低下とともに全般的にドル売りが優勢となるなかで140円手前まで軟化。ユーロドルは下に往って来い。序盤に1.0673近辺まで下押しされたあとは上昇に転じると高値を1.0736近辺に更新。ポンドドルも1.2327近辺まで下げたあとは上昇に転じて高値を1.2430付近に伸ばしてきている。ユーロ売り・ポンド買いのフローが入っている。この日発表された5月スペイン消費者物価指数の伸びが予想以上に鈍化したことがユーロ売り圧力となった面も。ポンド円が173円付近を安値に174円台乗せへと高値を更新する一方で、ユーロ円は149.75近辺から150.60付近で下に往って来いの動きにとどまっている。
NY市場は、ドル買いが一服。ドル円は139円台へと反落している。ユーロドルは下げ一服となって1.07台を回復。ポンドドルは1.24台に乗せた。米債務上限問題の不透明感が払しょくされつつあるなか、市場は米利上げ動向に視線を戻しているようだ。市場は6月13、14日のFOMCでの利上げ確率を60%程度で見ている。追加利上げを見込んではいるものの、確信までには至らない状況。7月FOMCまでであれば、1回ないしは2回の利上げの可能性を75%程度で見ている状況。なお、6月、7月の連続利上げの可能性は20%程度。いつもの通りに経済指標次第といった雰囲気で、その意味では金曜日の米雇用統計、そして、FOMC結果発表前日13日の米消費者物価指数(CPI)を確認したい意向も強い。現時点ではどちらの指標の予想も前回から若干の低下が見込まれている。ECBについて、市場は6月、7月の追加利上げを見込んでいる。一部からは、英中銀が追加利上げに踏み切るようであれば、ポンドは恩恵を受けるとの指摘が出ている。
31日
東京市場は、リスク警戒の動きが広がった。中国製造業・非製造業PMIが弱い結果だったことで、朝から中国売りの動きがみられた。午後に入ると、アジア株全体の下げや日経平均の一時500円を超える下げ、ダウ平均先物の100ドル超の下げなどから、リスク警戒の動きが広がった。ドル円は139円台後半で推移したあと、午後には139.30台まで下落。クロス円も円買いに押され、ユーロ円は149円台割れ、ポンド円は172円台後半へと下落。中国売りで資源国通貨が弱い。NZドルは対ドルで0.60台割れに。豪ドルは月次CPIが強かったことで売買が交錯、NZドルほどは下げていない。対円では84円台半ばから83円台後半に軟化した。
ロンドン市場は、ドル買い圧力が継続も、円買いは一服。ドル円は朝方に一時139.32近辺まで安値を広げた。しかし、ロンドン時間に入るとドル全面高となるなかで140.06近辺まで高値を伸ばす場面があった。欧州株は売られているものの、次第に下げ幅を縮小しており、悲観的なムードはやや落ち着いている。フランス消費者物価指数が予想以上の鈍化を示したことで、ECBの追加利上げ観測の矛先がやや鈍ったことが影響した面も指摘される。ユーロドルは1.07台を下回っており、序盤には1.0659近辺まで下落。その後は1.06台後半で下げ一服。ユーロ円は149円台半ばを割り込むと一時148.86近辺に安値を更新、その後はドル円の反発とともに149.50付近まで買い戻されている。ただ、米債利回りが低下するなかでのドル買いとなっており、リスク警戒圧力は根強い。ポンドドルは1.23台半ば、豪ドル/ドルは0.64台後半の安値圏で底這い状態となっている。一連のECBメンバーの発言では、インフレの根強さに対応が必要であることを示しつつも、経済にショックを与えないようなやり方を模索していることが示されていた。
NY市場では、ドル買い先行も、午後にはドル売りが優勢となった。午後になって伝わった2名のFOMC委員の発言で、FRBが6月利上げを見送る可能性が再浮上しており、ドル売りが強まった。短期金融市場では据え置きの確率が一気に70%まで高まっている状況。ジェファーゾンFRB理事とハーカー・フィラデルフィア連銀総裁の発言が伝わり、ともに6月利上げを見送るべきとの考えを示唆した。ただ、利上げサイクルの終了は意味しないとの考えも示している。来週から6月14日のFOMC結果発表まで委員が発言を控えるブラックアウト期間に入る。その直前での発言でもあり、市場も敏感に反応している面もありそうだ。ドル円は朝方の米求人件数が強かったことで一時140.40付近まで買われたが、午後には139円台前半へと下げ幅を拡大。ユーロドルは1.06台前半まで下落したあとは、1.06台後半へと反発。ポンドドルは1.23台後半で売買が交錯したあと、午後には1.2440付近まで上昇した。先週の英消費者物価指数(CPI)の発表以降、市場は英中銀の利上げ期待を高めており、今後4回の政策委員会(MPC)で25bpずつの利上げを行うと予想している。
1日
東京市場では、ドル円が堅調。前日海外市場でのドル売りの流れを受けて、東京朝方には一時139円台割れとなる場面があった。その後は一転して買われ139円台半ばへと上昇。午後には米10年債利回りの上昇や日経平均の堅調な推移とともに一段高となり139.72付近に高値を更新した。朝に148.63付近まで弱含んだユーロ円は、昼前には149.19付近まで上昇。午後は149円ちょうど付近から前半で小動きとなった。ユーロドルは午後に一時1.0673前後まで弱含んだ。豪ドルは上昇。午前の中国財新PMIの好調な結果を受けて、対中輸出の大きい豪ドルが買われ、豪ドル円は90.99付近まで、豪ドル/ドルは0.6520付近まで上昇した。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。ユーロドルは1.0660付近まで下押しされたあとは、上昇に転じると1.0715近辺に高値を伸ばしている。ポンドドルも1.24付近まで下げたあとは1.2470付近に高値を更新。ドル円は140円手前まで買われたあとは、139.50台へと反落している。欧州株の反発とともに米10年債利回りは3.68%台まで上昇したが、その後は3.66%台と上昇一服。この日の中国財新製造業PMIの改善を受けてリスク警戒の動きが後退し、クロス円は堅調。ユーロ円は149.70付近、ポンド円は174円台乗せまで買われている。リスク動向とともに米欧などの金融政策の差異が注目された面も。前日NY市場では複数のFRB高官が6月FOMCでの利上げ休止を示唆し、市場では据え置き織り込みが6割に上昇。一方で、今日のユーロ圏消費者物価速報は伸びが鈍化したものの、ラガルドECB総裁のインフレ抑制姿勢には変化はみられず、目標水準に戻すまでは追加引き締めを続けることが確認されている。英中銀に関する市場の見方も利上げ継続となっており、米国と英欧の金融当局の利上げ姿勢の熱度の差がユーロドルやポンドドルを押し上げた面があったようだ。
NY市場では、引き続きドル売りが優勢。朝方発表のADP雇用統計が強い内容となったことで買い戻しが強まる場面が見られたものの、動きが一巡すると、再び売りが優勢となる展開。この日のISM製造業景気指数が弱い内容だったこともドルを圧迫した。明日の米雇用統計の結果待ちの雰囲気が強い中、前日のFOMC委員の発言で、今月の追加利上げ期待が一気に後退しているほか、米下院で債務上限法案が通過したことで、デフォルト(債務不履行)回避への安心感も広がり、ドルは売られやすい状況となっているようだ。短期金融市場では、今月のFOMCでの据え置きの確率を75%超で見ている。ドル円は一時138.50割れ水準まで下落。その後も138円台後半にとどまった。ユーロドルは1.07台半ばへ一段と上昇。ポンドドルも買われ、1.25台乗せから1.25台半ばに迫る動きとなった。
2日
東京市場は、米雇用統計待ちで目立った方向性みられず。ドル円は138.80台で東京朝を迎えると堅調な株式動向を受けて139円台に上昇する場面があった。しかし、市場では今月の米FOMCでの金利据え置き期待などもあってドル高には慎重な姿勢がみられた。昼過ぎには138.60台へと反落。午後には再び139円付近まで上昇。香港株が急騰して一時700ポイント近い上昇。日経平均も一時31500円超えに。ユーロドルは雇用統計待ちで動意なく推移、朝からのレンジは1.0758-1.0770のわずか12ポイント。動きがやや目立ったのが豪ドル。中国人民元の大幅高や、午前に豪労使協定機関が発表した最低賃金引き上げを受けて、物価上昇見通しが広がったことで、年内あと2回の利上げ期待が強まったことなどが豪ドル買いを誘った。豪ドル/ドルは朝の0.6560台から06610台まで上昇。
ロンドン市場は、米雇用統計発表待ちで模様眺めとなっている。昨日の海外市場ではドル売りが強まり、きょうはその水準を踏襲しての揉み合いとなっている。今週は複数の米FRB高官が6月FOMCでの利上げ一時休止を支持しており、短期金融市場では据え置きを織り込む動きが優勢になっている。また、懸案となっていた米債務上限問題についても上下院で法案が通過しており、デフォルトの危機は去っている。株式市場にとっては好材料が相次いでおり、欧州株や米株先物・時間外取引は堅調に推移している。利上げ観測が再燃していう豪ドルが小幅に高値を伸ばしたほかは、ドル円は138円台後半、ユーロドルは1.07台後半、ポンドドルは1.25台前半など前日からのドル安圏で揉み合っている。クロス円は東京市場でやや買われたあと、ロンドン時間には高止まり状態となっており、取引動意は薄い。
NY市場はこの日発表の米雇用統計を受けてドル買いが優勢となり、ドル円も買い戻しを強めた。一時140円台に上昇。米雇用統計は強弱まちまちの内容となり、非農業部門雇用者数(NFP)は33.9万人増と予想を上回り、労働市場の力強さを示したが、失業率は3.7%に大幅上昇し、平均時給も落ち着きを示した。 

 

●為替相場 6/5-6/9 6/10 
まとめ6月5日から6月9日の週
5日からの週は、ややドル売りが優勢。次週の米FOMCが注目されるなかで、市場では据え置き観測が優勢。一方で、7月については追加利上げ観測が優勢。そのようななかで、豪中銀とカナダ中銀がインフレ圧力を背景に予想外の利上げを実施した。豪ドルやカナダドルが買われる動きがドル売り圧力に波及する面があった。一方で、各国債券とともに米国債利回りも上昇、ドル売りにブレーキがかかる面もあった。米経済統計では木曜日の新規失業保険申請件数が予想以上の増加となったことで、雇用市場が抑制されてきているとの観測とともにドル売りが広がった。ユーロドルやポンドドルも買われて、ドルが全般的に軟調となっている。ドル円に関しては来週の日銀決定会合に関して、大規模緩和を継続するとの関係者発言もあって日米金利差拡大観測が下支えとなった。139円台割れでは買いが入る一方で、140円台では先日の三者会合の影響もあって高値警戒感で上値を抑えられた。ウクライナ南部へルソン州でのダム爆破でウクライナ情勢が再び緊迫化しているが、相場への影響は限定的にとどまった。
5日
東京市場では、先週末からのドル高水準での揉み合い。先週末の米雇用統計で、非農業部門雇用者数の伸びが予想を大きく超えたことを受けたドル買いの流れが継続している。ドル円は午前の取引で140.26近辺と先週末高値を上回った。日経平均が大幅高となったこととの相乗効果もあった。その後の調整も140円付近では下げ止まった。ユーロ円は150円を挟んだ振幅。ユーロドルは1.0690付近まで軟化したあと、1.07台にかろうじて乗せる限定的な値動きだった。
ロンドン市場は、ドル買い圧力が継続。ドル円主導の値動きとなり、ロンドン序盤には高値を140.45近辺まで伸ばした。米10年債利回りは3.74%台へ一段と上昇している。一方、株式市場は欧州株、米株先物・時間外取引はいずれも高安まちまちとなっており、調整の動きが交錯。ドル円は140円台前半での揉み合いに落ち着いた。ユーロドルはロンドン序盤に1.0683近辺まで下落し、小幅ながら先週末からの安値を広げた。ポンドドルはロンドン午前も上値重く推移しており、安値を1.2382近辺に更新。ユーロ円は150.20近辺に高値を伸ばしたあとは150円挟みの揉み合い。一方、ポンド円は上値が重く174円台割れから173.75近辺へと軟化している。ロンドン時間にはユーロ買い・ポンド売りのフローが入っている。ただ、この日発表された独仏ユーロ圏の非製造業PMI確報値はいずれも下方改定された。英非製造業PMI確報値は若干の上方改定だった。また、週末のインタビューでブイチッチ・クロアチア中銀総裁は、インフレリスクは依然として上振れしている、との認識を示していた。
NY市場では、ISM非製造業景気指数を受けてドル売りが強まった。ISM指数は50.3と判断基準の50寸前まで低下し、これまで力強さを維持していた米サービス業の景況感にも黄色信号が点灯し始めていることが示された。仕入れ価格は2020年5月以来の低水準となった。市場は先週末の米雇用統計を受けて、来週のFOMCは据え置きを有力視しているものの、7月は追加利上げを見込んでいる。本日の数字はFRBが一旦様子を見る必要があることを促す内容。このところの上昇でドルの上値が重くなっていただけに、一気に見切り売りが出た格好。ドル円は一時139円台前半まで急落した。ユーロドルは1.07台に買い戻された。きょうはラガルドECB総裁が欧州議会で証言を行っていたが、インフレ圧力はなお根強く、金利を一段と引き上げる必要があるとの認識を示していた。ポンドドルも一時1.24台半ばまで買い戻された。市場からは、英賃金の伸びを抑制するには労働者の増加だけでなく、利上げが必要になるとの指摘が出ていた。
6日
東京市場では、豪ドルが買われた。豪中銀政策金利がサプライズとなった。大方の予想に反して25bpの利上げとなり、豪ドル高となった。前回5月の会合後、今回の会合では金利据え置きという見通しが広がっていた。豪ドル/ドルは0.6625前後から0.6681まで、対円では92.45近辺から93.14近辺まで上昇した。その他主要通貨は落ち着いた動きとなるものが多くユーロドルは1.07台前半の23ポイントレンジ。ポンドドルは1.24台での30ポイントレンジにとどまった。ドル円は139円台半ばを挟む推移が続いた。いずれも前日米ISM指数を受けたドル安圏での取引だった。豪ドル/ドル上昇に引きずられてややドル売り優勢も値幅は限定的。
ロンドン市場は、ドル買いと円買いが優勢。ロンドン序盤までは予想外の豪中銀利上げを受けた豪ドル買いの影響でドル売り圧力が優勢だったが、ロンドン時間に入るドル買いに転じている。ウクライナ情勢が再び緊迫化しており、欧州株などが上値重く推移、リスク回避圧力に。また、ECB消費者インフレ期待調査では「インフレ期待が著しく低下、前月の上昇の大部分を戻している」としており、ユーロ売りにつながった面も。クノット・オランダ中銀総裁はインフレ目標に戻ること確認するまで引き締めを継続とこれまでの主張を展開したが、これはステップ・バイ・ステップのやり方で行うべき、とやや慎重さもみられた。ユーロドルは1.0730付近まで買われたあと、1.0680台まで下落。ユーロ円も149.60付近から下放れて一時149円台割れとなった。ポンドドルは1.24台半ばから1.24手前水準へ、ポンド円は173円台後半から172.70付近まで下押しされた。ドル円は売りが先行して139.10近辺まで下落した後は、クロス円の下げ渋りとともに139.40台に反発。
NY市場では、ドル買いが優勢。ドル円は買い戻しが強まり、一時140円手前まで買い戻された。前日は弱い米ISM非製造業景気指数をきっかけにドルの戻り売りが強まり、ドル円も139円台前半まで下落。140円を再び割り込んでいたが、下値でのドル買い意欲も根強い中、ドル円は水準を維持している。一部からは、ドル円は今年に入ってから日米の長期ゾーン利回りの格差よりも短期ゾーンの格差とより密接に連動しているとの指摘も聞かれる。これは来週の日銀決定会合よりも、FRBの決定の方が大きな影響を与える可能性が高いことを示しているという。ユーロドルは1.06台に再び下落。ECBの政策金利のピークが9月ではなく7月前倒しになると考える理由は僅かながら増えている。ポンドドルは一時1.23台に下落した。21日線で上値を抑えられた格好となっており、戻り売りの流れが続いている。
7日
東京市場では、ドル円の頭が重い展開。一時139.10台まで下落した。日経平均が600円弱の下げで引けるなど株安の動きがリスク警戒の円買いを誘った。前日140円を付けきれずいったんドル安・円高となっており、短期筋のポジション調整を誘った面も。ユーロ円は朝の149.39近辺から148.60台まで、ポンド円は173.50台から172.80台まで下落した。目立った動きを見せたのがトルコリラ。東京時間にもかかわらず朝からリラ安が優勢で、対ドル、対円での史上最安値を更新している。連日のリラ安のなかで投資家のポジション調整が入ったとの観測もきかれた。
ロンドン市場は、ドル安・円安の動きが優勢。東京市場では日経平均の急落を受けて円高・ドル高とリスク回避の動きがみられたが、ロンドン市場では流れが反転している。きっかけとなったのがOECD世界経済見通し。今年の世界経済成長予測が上方修正されている。特に英国は従来のマイナス成長見通しからプラス成長へと引き上げられている。売りで始まった欧州株は下げ渋っており、英FT指数は上げに転じている。為替市場ではユーロドルが1.06台後半に下押しされていたが、反転上昇して1.07台を回復。ユーロ円も148円台後半から149円台に乗せ、東京市場での下げを解消。ポンドドルは一時1.24台割れも、その後は1.2450超えに高値を更新。ポンド円は172円台後半に下押しされたあと、173円台半ば超えに高値を伸ばしている。ユーロ対ポンドではユーロ買い優勢からポンド買い優勢に転じた。ドル円は下げ一服。東京市場からの下げでは139円台は維持されており、ロンドン時間には139円台半ばを試した。トルコリラは再び最安値を更新した。トルコ当局が為替介入姿勢を弱めるとの見方が広がっている。
NY市場で、ドル相場は振幅。序盤はドル売りが先行したものの、次第に買い戻しが優勢に。ドル円は140円台に上昇した。カナダ中銀が予想外の利上げを実施したことで米国債利回りが上昇しており、ドルをサポートしている模様。来週のFOMCは据え置きが予想されているものの、きょうのカナダ中銀の決定を受けて、FRBも予想外の利上げを実施してくるのではとの思惑も出ているようだ。短期金融市場では80%程度だった据え置きの確率が65%程度に低下している。ユーロドルは買いが優勢となり、一時1.07台半ばまで戻していた。しかし、NY時間に入って次第にドル買いが優勢となったことから、一時1.06台に値を落とした。ポンドドルは一旦1.25ドルちょうど付近まで上昇していたものの、NY時間に入ってからのドル買い戻しで、一時1.24台前半まで伸び悩んだ。カナダ中銀が予想外の25bpポイントの利上げを実施した。カナダ中銀は持続的な需要超過と予想を上回る第1四半期のGDP、そして、最近の総合インフレの上昇を理由に挙げている。カナダ中銀は明らかにインフレが許容できる時間内に目標に戻らないと以前よりも懸念している。注目すべきは、ガイダンスで追加利上げへの言及がなかったことだが、市場では7月も追加利上げがあるのではとの期待も高まっており、カナダ円は104円台後半まで上昇する場面があった。
8日
東京市場は、ややドル安。前日NY市場でのドル高の動きに調整が入った。カナダ中銀が予想外の利上げを発表、その後の米債利回りの上昇でドル高が進行した経緯がある。ドル円は139円付近から140円台に乗せた。東京市場では午前に140円を挟んだドル高圏で推移したが、次第にドル売り・円買いに押されて午後には139.60台へと軟化した。日経平均の続落も重石に。ユーロドルは朝方に1.07台割れとなったが、東京勢の本格参加後には1.0710付近へと上昇。底堅く推移している。ユーロ円は149.60付近から149.80付近で振幅した。ロンドン早朝にかけてトルコリラが再び最安値を更新している。
ロンドン市場は、ドルが小安い。ユーロドルは1.07付近でサポートされると1.0730台へと上昇。ユーロ円は欧州株の下げ渋りもあって149.60近辺から一時150円台乗せへと上昇。これに対して、ポンドは伸びを欠いており、ポンドドルは1.2440付近から1.2480付近まで買われたあとは1.2450台へと押し戻されている。ポンド円は174.40付近まで買われたあとは174円台前半での揉み合いに落ち着いている。対ユーロでポンドは上値重く推移している。この日発表された第1四半期ユーロ圏実質GDP確報値は前期比マイナス0.1%と改定値プラス0.1%から下方修正された。2期連続のマイナス成長となり、テクニカル・リセッションとなった。ただ、ユーロ売り反応は見られず。ドル円は東京午後からの揉み合い水準を踏襲して139.60台から139.80台での静かな取引が続いている。米10年債利回りは3.80%付近と前日終値水準を挟む動きにとどまっている。前日の値動きに対する調整の色合いが濃い展開となっている。
NY市場では、ドル売りが強まった。米新規失業保険申請件数が労働市場の軟化を示唆したことから、米国債利回りの低下とともに売りが膨らみ、ドル円は138円台に下落した。ユーロドルは1.07台後半へと再び買われ、ポンドドルは1.25台半ばへと上伸。米新規失業保険申請件数は26.1万件と前回の23.3万件から増加。2021年10月以来の高水準の増加となり、企業のレイオフ発表が実際の雇用削減につながり始めた可能性が示唆されている。前日はカナダ中銀が予想外の利上げを実施したことから、カナダ債と伴に米国債利回りも上昇し、ドル円は140円台を回復していた。カナダ中銀の利上げで来週のFOMCへの思惑が高まった格好で、短期金融市場では利上げの確率を若干上昇させている。それでも30%程度で、据え置きと見ている向きが圧倒的に多い。
9日
東京市場は、リスク選好の円売りが優勢。前日の米株高を受けて日経平均が大幅反発、為替市場では円売り圧力が広がっている。ドル円は朝方の138.76近辺から上昇基調で推移、139円台乗せから午後には139.39近辺まで高値を伸ばしている。クロス円も全般に堅調。ユーロ円は149円台後半から150円台前半へ、ポンド円は174円台半ばから175円台乗せを試す動き。豪ドル円は93円台前半から後半へと上伸している。一方、ドル相場自体は揉み合い。ユーロドルは1.0770-1.0780台の狭いレンジに高止まりしている。
ロンドン市場は、ややドル買いが優勢。前日のNY市場でのドル売りに対する調整が入っている。ドル円の買いが先行し、一時139.73近辺まで上昇。ドル売りへの調整に加えて、関係者が来週の日銀決定会合でのYCCなど緩和策の維持を確認したことが円売り圧力となった面があった。ただ、NY市場を控えて買いも一服し、139円台半ばに落ち着いている。ユーロドルは1.0780付近から一時1.0750台へ、ポンドドルは1.2570付近まで買われたあとは1.2530台まで軟化する場面があった。欧州株は売りが優勢だが、下げ幅は限定的。全般に週末調整のムードとなっている。クロス円は序盤の円安局面でユーロ円が150.40台、ポンド円が175.20台へと買われたあとは値動きが一服している。トルコリラは再び最安値を更新している。新中銀総裁が任命され、政策の正常化が期待されているが、為替市場では引き続きリラ売り圧力が優勢。ノルウェークローネが堅調。この日発表された同国のインフレ指標が強含んだことが利上げ観測につながった模様。
NY市場では、朝方カナダ雇用統計の予想を超える弱さを受けたリスク警戒の動きにドル売りとなった、米債利回りの低下などがドル売りを誘い、ドル円は139円00銭台を付けた。大台を維持して切り返すと、139円60銭前後が重くなり、その後は落ち着いた動きとなった。来週の米FOMCなどを睨み、週末越えのポジション作成に慎重。落ち着いた動きとなった。雇用統計後に対ドルで一時急落したカナダは、その後発表前の水準に戻した。行き過ぎた動きへの警戒感、今週の中銀会合でのサプライズ利上げ後のカナダ買い基調などが見られる。 

 

●為替相場 6/12-6/16 6/17 
まとめ6月12日から6月16日の週
12日からの週は、円安が進行した。今週は米FOMCを始めとして、ECB、日銀の主要中銀の金融政策会合が実施された。為替市場は各中銀のスタンスの強弱の差に反応している。最も明確な動きが円売り。日銀の大規模緩和の継続姿勢が際立った。一方、米欧ではECBのタカ派度が意外にも強かったことで、ユーロ買いが強まっている。ラガルドECB総裁は7月利上げについて明言し、利上げ停止や休止について議論せずとした。米国は今後の利上げ2回との見通しに驚きはあったものの、今回は据え置きだった。パウエル議長会見では利上げペースを緩める方向性が示されていた。円以外の通貨に対しては、全般的にドル売りが優勢となっている。ドル円は139円台から141円台まで上昇。クロス円も総じて高値を伸ばす動きだった。同時にドル安も進行してユーロドルは1.09台、ポンドドルは1.28台に乗せる動きをみせた。金融政策スタンスの差が円安をドライブしており、来週の英中銀やスイス中銀での利上げ観測が一段と円安を招くのかが注目されている。
12日
東京市場は、様子見ムードが広がった。あすの米消費者物価指数や明後日の米FOMCを控えて動きにくい展開だった。ドル円は朝方は上値重く139.30割れへと軟化も、すぐに戻して139円台での落ち着いた値動きとなった。ユーロドルは1.07台で、20ポイントレンジと同意に欠けている。人民元は今月中に追加緩和との思惑が一部で広がったこともあり、朝から元安の動き。ドル/人民元は直近の高値を超えて、11月以来のドル高・元安となる1ドル=71472元を付けた。米ゴールドマンサックスが今月の会合での40%への利上げ見通しを発表したドルリラは、金融政策正常化による介入後退の期待が強まり、朝方1ドル=23.65リラを付け、対ドルでの史上最安値を更新。その後は少し調整が入っている。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。週明けの欧州株が堅調に取引を開始するなかで、円売りとドル売りが併存する形で取引をスタート。クロス円の上昇が先行し、ユーロ円は150円台乗せから150.35近辺に、ポンド円は175円台半ば超えから175.77近辺に、豪ドル円は94円台前半で高値を94.42近辺へと伸ばした。しかし、円売りは続かず。欧州株や米株先物が次第に上げを消すと米債利回りも反落、円買いとドル売りが交錯する形に流れが変化している。ドル円は139.60台で上値を抑えられると139.07近辺まで安値を広げた。ユーロ円は一時149.70台、ポンド円は175円台割れ、豪ドル円は94.10台へと押し戻された。この日は手掛かりとなる経済統計発表に欠けており週央の米FOMCでの利上げ休止観測が意識された面があったようだ。また、ハスケル英中銀委員が複数回の追加利上げの可能性を示唆したほか、週末にはハト派のテンレイロ委員の後任によりタカ派色の強いとみられるグリーン氏が指名されるとの報道もあった。しかし、この日はユーロ買い・ポンド売りが優勢になっており、イベントを控えて調整色が濃かったようだ。トルコリラは再び最安値を更新。ドル安地合いでもリラ買い方向には動いていない。
NY市場で、ドル円は139円台後半まで上昇。NY時間に入って米債利回りが一時上昇に転じたことで、次第にドル買いが優勢となった。アドビが公表したデータによると、オンラインショッピングでは裁量消費財の価格低下は顕著なものの、食品価格は依然として高水準で推移していることが明らかとなった。全体的には今週のFOMCを控えて様子見気分が広まっており、結果待ちの雰囲気が強い。ユーロドルはNY時間にかけて1.07台後半まで上昇したものの、NY時間に入るとドル買いに押されて1.07台半ばに伸び悩んだ。ポンドドルも戻り売りに押されて、一時1.25台を割り込んだ。米大手銀のストラテジストからは、ECBは今週の理事会で利上げを行う可能性が高く、今後さらにもう1回の利上げを行うことを示唆するとの見方を示した。ポンドは明日の英消費者物価指数の発表待ちに。
13日
東京市場では、米消費者物価指数の発表待ちのムード。週央には米FOMCも控えており、主要通貨は落ち着いた値動きとなった。ドル円は139円台半ばを中心に推移。米FOMCでの政策金利据え置き期待もあって、昼過ぎには139.33近辺まで軟化も、その後は買い戻された。ユーロドルは1.07台後半での推移。午前中からじり高となり、1.0750台から1.08手前まで上昇も、大台手前の売りに上値を抑えられた。ユーロ円は150円付近から150.60近辺まで上値を伸ばした。中国人民銀行は11週間物レポレートを従来の2%から1.9%に引き下げた。15日の中期貸出制度(MLF)、20日の最優遇貸出金利(LPR)の引き下げ期待も強まり、元安となった。ドル人民元は直近のドル高水準を超える7.1672を付けた。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。米消費者物価指数の発表を控えて、インフレ鈍化見通しが優勢になっている。ロンドン朝方はポンド買いが先行。一連の英雇用統計が予想以上に強含んだことに反応した。7月に退任するテンレイロ英中銀委員の後任となるグリーン氏の議会証言が行われ、持続的インフレに警戒感を示していた。ポンドドルは1.25台前半から後半へと買われ、ドル売り圧力につながった面があった。ユーロドルも連れ高となるなか、6月の独ZEW景況感指数が発表され、−8.5と予想外に改善したことがユーロ買いにつながる面も。ユーロドルは1.07台後半から一時1.08台乗せへと買われた。ただ、現状指数は悪化し、期待指数もマイナス圏のまま。ZEWは専門家が今年後半の経済状況改善を予想していないこと意味すると慎重な見方を示した。中国が広範囲で景気刺激策を検討との報道があり、欧州株は買いが先行。クロス円を押し上げた。ユーロ円は150円台前半から後半へ、ポンド円は強い英雇用統計で175円台乗せとなった後も小幅に高値を伸ばした。そのなかで、ドル円は139.50付近での揉み合いを続けている。米債利回りとともに米消費者物価指数待ちの構えとなっている。
NY市場では、米CPI結果を受けて一時ドル売りが強まった。5月の米消費者物価指数(CPI)が予想とほぼ一致し、依然として高水準ではあるものの、前回からは鈍化傾向を示した。市場では今回の米CPIを受けて、明日結果が発表されるFOMCでの利上げ一時停止を確実視しており、短期金融市場では90%以上の確率で据え置きが見込まれている。ただ、市場の見方に変化はなく、今回のFOMCは利上げを一時停止するものの、声明や経済見通し、FOMC委員の金利見通し(ドット・プロット)、パウエル議長の会見などから、もう一段の追加利上げの可能性を示唆する見られている。CPI発表直後は米国債利回り低下と伴に為替市場はドル売りが強まり、ドル円も139円台前半に下落した。しかし、売り一巡後にドル円は140円台を回復する展開。米株が堅調に推移しており、円安の動きも出ていた。ユーロドルは米CPIを受けて上下動も、全般的には買い戻しが優勢で、一時1.08台に乗せた。今週のECB理事会では利上げが確実視されている。ポンドドルは1.26台を回復した。ロンドン朝方の英雇用統計の強い結果が英中銀の追加利上げ期待につながった。
14日
東京市場は、小動き。米FOMC発表やパウエル議長会見をNY午後に控えて様子見ムード。市場では昨日の米CPIが予想をわずかながら下回る伸びとなったことで、政策金利据え置き観測が一段と高まっている。今回予想通り利上げを見送った場合、7月に利上げを行うとの見通しが過半数を超えており、声明、会見、経済見通しの状況が注目されている。、事前に動きにくい状況となっている。ドル円は140円を挟んで売買が交錯したあと、140.10台へと小幅上昇。ユーロドルは1.0790前後での揉み合いからロンドン朝方には1.0770台へ小安く推移。ややドル買いが入る程度の値動き。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。米生産者物価指数(PPI)とその後の米FOMCの注目イベントを控えてドルが売られている。前日の米CPIの伸び鈍化を受けて、ドル売りが広がった経緯があり、米PPI発表前からドルが軟調に推移している。また、米FOMCについては政策金利据え置き観測が大多数となっている。ドル円が140円を挟んで売買が交錯する一方で、ユーロドルは1.07台後半から1.08台乗せ、ポンドドルは1.26付近でサポートされたあと、1.2650付近に高値を伸ばしている。欧州株の堅調な動きもあって、ユーロ円は151円割れ水準から151.37近辺に高値を更新。ポンド円は176円台半ばから177.15近辺まで高値を伸ばした。米10年債利回りは前日終値3.814%付近で上下動と方向性に欠けている。南アランドは同国の企業景況感の悪化にもかかわらず、このところの堅調な流れを維持している。トルコリラは、エルドアン大統領がトルコ新財務相の路線を受け入れたと表明したことで、買戻しが入っている。
NY市場では、午後の米FOMCを受けてドル買い反応が広がった。FRBは市場の予想通りに利上げを一時停止したものの、注目のFOMC委員の金利見通し(ドット・プロット)であと2回の利上げを示唆した。市場ではあと1回と見られていただけにサプライズとなった。短期金融市場では年内の利下げの可能性が完全に後退し、7月の追加利上げの可能性を高めている。確率は70%に上昇。ただし、2回目の追加利上げについて市場は、まだ可能性は低いと捉えている。FRBは声明で追加利上げは指標次第と言及しており、2回目の追加利上げについては、この先の指標を確認したい意向のようだ。その後のパウエルFRB議長の会見で「休止は利上げペースを緩やかにすることの継続。ゴールに近づくにつれ、利上げは控えめにするのが筋」などと、比較的タカ派なトーンが控え目だった。ドル円は140円台を回復したあと。139円台に戻した。ユーロドルは1.08ちょうど付近まで下落したあと、1.08台前半に落ち着いた。ポンドドルは1.26台前半に下押しされたあとは1.26台半ばに落ち着いた。
15日
東京市場は、円安が進行。前日に米FOMCを終えて、明日の日銀決定会合を控えるタイミングで一気にドル円が140円付近から141円台に乗せた。FOMCでは経済見通しの上方修正とともに、メンバーの金利見通しで市場の想定を上回るあと2回の引き上げ見通しが示された。一方で、明日の日銀会合では大幅緩和策の維持が見込まれており、日米金利差拡大観測が広がっている。クロス円も買われて、ユーロ円は151円台から152円台後半へ、ポンド円は177円台前半から178円台後半へと上伸した。ユーロドルは1.08台半ばから1.08ちょうど手前水準へと軟化も、ユーロ円の上昇に下支えされて1.08台割れは回避されている。人民元は中期貸出制度(MLF)の引き下げを受けて、朝方は売りが先行も午後には買いが進行した。中国買いの動きとなっていた。
ロンドン市場は、ECB理事会発表を控えてユーロが堅調。ユーロドルは1.0804近辺を安値に1.0850付近へと反発。ユーロ円は円安圧力も加わり高値を153.11近辺に更新。対ポンドでもユーロが買われている。ECB理事会では25bp利上げが市場に織り込まれている。発表を控えて昨日の米FOMCの据え置きとの対比が意識された面も。今後についても市場はECBのさらに1回の追加利上げを織り込んでいる。ドル円は一時141.50近辺まで高値を伸ばした。あすの日銀金融政策決定会合での大規模緩和継続見通しを受けて、あと2回の利上げ見通しを示した米FOMCとの中期的なスタンスの差が円売り圧力となっている。ドル円はユーロドルの上昇を受けて一時140.85近辺まで反落も、再び141円台乗せと根強い円売り圧力が観察されている。株式市場は売りが優勢。北朝鮮から弾道ミサイルの可能性あるもの発射、オランダの欧州最大のガス田が年内に閉鎖との関係者情報などが報じられたが、いずれもに特段の反応はみられなかった。
NY市場では、ユーロ買いが強まった。その影響でドル安の動きも広まった。ECB理事会では予想通り25bp利上げが発表された。コアインフレ見通しの引き上げや、ラガルドECB総裁会見での7月利上げ見通しの明言、利上げ休止や停止について議論されず、など想定以上のタカ派ぶりが示されたことが、ユーロ買いにつながった。ユーロドルは1.08台前半から1.09台半ばへと急伸。ポンドドルも1.26台半ばから1.27台後半へ、豪ドル/ドルは0.68付近から0.69手前まで買われた。ドル円も141.50レベルを高値に140円台前半へと反落している。また、この日発表された米小売売上高の好調や新規失業保険申請件数の高止まりなどが市場の米経済のソフトランディング期待を広げて、米株が買われた。クロス円は東京市場から引き続き右肩上がりの値動きを示し、円安が進行した。ユーロ円は153円台、ポンド円は179円台、豪ドル円は96円台半ばへ高値を伸ばした。
16日
東京市場は、日銀会合を受けて円売りが優勢。ドル円は午前の取引で139.85近辺まで下押しされた。前日NY市場での軟調な流れを引き継いでいた。その後、140円台を回復したところで日銀会合の結果発表を迎えた。予想通りの政策金利据え置き、YCCや資産買入方針についても現状維持とした。声明内容にも目立った変化はみられず。ドル円は140.77近辺まで急伸、やや調整が入るも再び140.80近辺に高値を更新した。クロス円も同様に動き。ユーロ円は153円手前まで軟化したあと、154円を試す動きに。ポンド円は179円台割れのあと、節目の180円をつける動き。今回も一部海外勢を中心にみられたYCC修正期待は空振りとなった。
ロンドン市場は、円安が再び進行している。東京昼前に日銀は政策金利据え置きとともに、YCCを始めとした緩和策の維持を発表、円売りに反応した。ロンドン早朝の植田日銀総裁会見では緩和継続の必要性が丁寧に説明され、ドル円は再び141円台に乗せると高値を141.40近辺に更新した。しかし、前日海外市場でつけた141.50レベルには届かず調整売りに140.80近辺まで反落。その後、ふたたび141円付近へと底堅い値動きとなっている。東京市場からの円安の流れを受けてクロス円も堅調。ユーロ円は154.70付近、ポンド円は180.85付近、豪ドル円は97.26付近に高値を伸ばした。前日の米株高を受けてきょうも欧州株も堅調に推移しており、リスク選好の円売りも加わったもよう。前日にECB理事会を終えて、きょうはタカ派のECBメンバーらが7月に加えて、9月の利上げの可能性も指摘していた。ただ、ユーロドルは1.09台半ば、ポンドドルは1.28付近など前日からの高値水準で売買が交錯しており、比較的小幅に値動きが続いている。
NY市場でドル円は上値追いの流れが継続しており、141円台後半に上昇している。本日は日銀決定会合が行われたが、大方の予想通りに金融政策は据え置きとなった。植田総裁が会見で、消費者物価は年度半ばにかけてプラス幅を縮小していくとし、粘り強く金融緩和を継続する方針を示したこともあり、円相場は円安の反応が見られている。 

 

●為替相場 6/19-6/23 6/24 
まとめ6月19日から6月23日の週
19日からの週は、円安が進行した。先週の米FOMCやECBなどに続いて、この週も英中銀、スイス中銀などの金融政策がされた。いずれもインフレ抑制にために利上げを実施している。また、パウエルFRB議長の半期に一度議会証言にも注目が集まった。直近のFOMCで政策金利が据え置かれたことについては、利上げの行き過ぎを避けるためと説明した。ただ、インフレ抑制のために、まだ利上げが継続する必要とし、年内利下げの市場観測の芽を摘んだ。各国中銀の利上げを受けてドル安に傾く場面があったものの、週末にかけてはドル高の動きが優勢となった。ドル相場の方向性がやや錯綜したこととは対照的に、円相場は円安方向にはっきりと振れている。日銀の大規模緩和を長期的に維持する姿勢と、各国中銀が金融引き締めを続けていることの対比がより鮮明となったことが背景。週末にかけて、ドル円は昨年11月以来となる143円台に乗せた。クロス円も連日のように大台を円安方向に塗り替えている。特に、スイス円は変動相場制移行後の最高値を記録した。一方、新体制となったことで注目されたトルコ中銀の利上げは、市場予想を下回る上昇幅にとどまり、リラは最安値を記録している。ただ、週末にかけては調整ムードが広がった。独仏PMIが予想以上に低下したことでリスク回避の動きとなり、ユーロ売りを軸として円買いとドル買い方向への動きがみられた。
19日
東京市場では、ドル円が反落している。午前中は先週末の日銀決定会合で金融緩和を長期維持する姿勢を受けた円安の水準を維持した。ドル円は金曜日の高値を超えて141.97近辺まで上昇。ユーロ円は155.33近辺、ポンド円は182.12近辺まで高値を伸ばした。しかし、午後にかけては調整売りに押されている。ドル円は142円手前の売りを崩せず、141.44近辺まで反落。ユーロ円は154.66近辺、ポンド円は181.22近辺まで反落した。本日は米国市場が休場(ジューンティーンスの祝日)となっており、大台を超えて円売りが進むだけの勢いに欠ける展開となった。日経平均が335円安となるなど、株安の動きが目立った。香港ハンセン指数が1.1%安となるなど、アジアの株安も円高を誘った。ユーロ円は154円66銭まで、ポンド円は181円22円までと、クロス円でも円買いが目立った。円主導の展開でユーロドルなどドルストレートは小動き。ユーロドルは1.09台前半での14ポイントレンジ。米ゴールドマンサックスが中国経済成長率見通しを引き下げたことで豪ドルは軟調。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。全般に週末を挟んだドル買いの動きが継続。ドル円はじり高の値動きのなかで一時142.00近辺に高値を伸ばした。7カ月ぶりのドル高・円安水準。その後は141円台後半で上昇一服。引き続き日銀の大規模緩和継続を受けた日米金利差拡大観測がドル円相場を下支えした。ユーロドルは1.0940付近で上値が重くなると、一時1.0907近辺と先週末の安値を広げている。先週末からの調整的なドル高とともに、ユーロには対ポンドでの売り圧力もみられている。今週木曜日の英中銀の金融政策発表では25bp利上げ市場コンセンサスとなっているほか、年内であと100bp超の利上げを市場は織り込んでいる。ECBよりもタカ派度が高い。ポンドドルもドル買い圧力で上値は重く、1.2801近辺に安値を広げているが、値動きは鈍い。欧州株は先週末の米株安を受けて軟調に推移しており、ユーロ円は155円台割れ、ポンド円は181円台後半と上昇は一服している。
NY市場は奴隷解放記念日(ジューンティーンス)のため休場。
20日
東京市場では、円相場が神経質な動き。ドル円は142円付近の売りをこなすと、朝方には142.20近辺まで上昇。鈴木財務相が円安けん制発言を行ったが、142円台を維持。再び買われて142.25近辺に高値を伸ばした。しかし、西村経産相が円安けん制発言を行うと、昼前には141.50台まで円買いが進行した。午後には再び買い戻しが入り142円台を回復した。ユーロ円は155.30台まで買われたあと、154.50台まで反落。午後には155.20台へと上下動。ユーロドルは1.09台前半での推移。ドル買い圧力を受けて午前に1.0911近辺まで軟化も動きはそこまで。
ロンドン市場は、円高・ドル高の動きが優勢。この日は中国金融当局がLPRを引き下げたが、市場では特に5年物の引き下げ幅が不十分であるとしてリスク警戒の動きを招来している。香港・上海株の下落に続いて米株先物・時間外取引や欧州株も軟調な推移。主要国の債券利回りが低下、米10年債利回りは3.76%台で取引されている。ドル円は142円台に乗せる場面があったが、ロンドン時間に入ると売りに押されて141.36近辺に安値を広げている。クロス円も東京午後には買いが優勢だったが、下落に転じている。特にポンド円が軟調で、181円台後半から180円台半ば割れに。ポンドは対ユーロでも軟調。あすには英消費者物価指数が発表され、明後日には英金融政策委員会(MPC)の結果が発表される。きょうはこれまでのポンド買いにポジション調整が入っている。ポンドドルは1.28台に一時乗せたあとは1.2750台まで反落。ユーロ相場は対ポンドで買われている分、底堅い。ユーロドルは1.09台前半で一時高値を1.0946近辺に伸ばした。ユーロ円は155円台割れと軟調だが、下げは154.50付近までにとどまっている。レーン・フィンランド中銀総裁は、エネルギーと食品を除くインフレ率は徐々にしか低下していない、とコアインフレの鈍化が遅々としている点を指摘した。
NY市場では、ドル円の上値が重かった。一時141円台前半へと軟化。東京時間には142円台を付ける場面もあったが、株式市場が軟調に推移していることで利益確定売りが出たようだ。ただ、日米金利差拡大観測に基づいた円安の流れは根強く、今日の動きはあくまでも調整の範疇との見方が優勢。当局の介入警戒も、米財務省の為替報告書で日本は為替操作国の監視リストから除外されている。現状では悪い円安論も影を潜めている。ユーロドルは一時1.09台割れと上値が重かった。ECB当局者らからは7月利上げに言及する声が多いが、9月についてはデータ次第との慎重な発言が聞かれている。ポンドドルは1.27台前半へと軟化。英中銀のターミナルレートが6.00%になる見方が織り込まれてきているが、明日の英消費者物価指数や明後日の英金融政策委員会(MPC)を控えて調整が入る面も。
21日
東京市場では、円安の動き。ドル円は141円台前半から仲値にかけて141円台後半に上昇、午後には141.86近辺に高値を伸ばした。日経平均の反発との相乗効果もみられた。ユーロ円は154.30台から154.80台まで、ポンド円は180.30台から一時181円台まで買われた。円相場主導の展開となるなかで、ユーロドルは1.0910台を中心とした落ち着いた値動きだった。中国売りが継続、香港ハンセン指数が300ポイント超の下落、オフショア人民元が対ドルで節目の7.20台をつけるなど元安の動きが広がった。リスク選好の動きにやや水を差している。
ロンドン市場は、ややドル高の動き。ただ、このあとのパウエル米FRB議長の議会証言を控えて、値動きは限定的となっている。ドル円は東京市場からの上昇の流れを受けて142.17近辺まで買われたが、その後は141.70付近まで反落。植田日銀総裁は全国信用金庫大会でのあいさつで「経済物価金融情勢に機動的に対応、粘り強く金融緩和」との発言内容を繰り返しており、日米金利格差拡大観測に基づく円安の流れには特段の変化はみられていない。ポンドドルがドル高の動きをけん引している。この日発表された5月英消費者物価指数は前年比+8.7%と鈍化することなく高水準を維持。コア指数は前年比+7.1%と前回から伸びが加速した。発表時には1.2802近辺まで買われたが、その後は売りに押されている。ロンドン午前に1.2691近辺まで反落。市場では明日の英中銀の25bp利上げを織り込んでおり、一部には50bpとの観測も聞かれているが、ポジション調整圧力が勝ったようだ。ポンドは対円でも181円台から一時180円台割れ、対ユーロでもポンド売りが優勢になっている。ユーロ相場は小動き。対ドルでは1.0910-30レベルでの小幅の振幅。対円では154円台半ばから155.35近辺までの往来相場となっている。カジミール・スロバキア中銀総裁は9月の金利動向についての明言を避けた。独Ifo経済見通しでは、今年のドイツ成長予測を−0.1%から−0.4%へと引き下げた。
NY市場では、ドル安と円安が交錯。ドル円は142.35近辺と昨年11月以来の高値水準をつけた。パウエルFRB議長の下院での議会証言が行われ、その事前原稿で「金利は年末までに幾分高くなると当局者は見ている、インフレを2%に戻すにはまだ長い道のり」と言及していたことで、ドル円は米国債利回りの上昇と伴に買いが強まった格好。一方、議会証言が始まってからは、議員の質問に対して「6月休止とドットプロットの上方修正は完全に一貫している。もっと緩やかなペースで金利を上げるのが理に適っている公算」などと述べていた。ドル売りが強まっている。取引後半には米国債利回りが下げに転じ、ドル円は141円台後半に戻した。ユーロドルは1.09台後半へ、ポンドドルは1.27台後半へと上昇。その中で、クロス円が買われ、総じて円安の動きが広がっている。日米の金利差が更に拡大するとの見方が根強い。ユーロ円は155円台後半へと一段高。ポンド円は181円台を回復している。ただ、ポンド相場の戻りは限定的で、高インフレと英中銀の利上げが経済に打撃を与えかねないとの警戒感もでていたようだ。一方で、ECBについてはカジミール・スロバキア中銀総裁がコアインフレの抑制が確認された場合のみ、利上げを一時停止することができるとしており、利上げ停止に向けたハードルは高いとの印象を与えていた。
22日
東京市場は、小動き。ドル円は日経平均の下落でリスク回避の円買いが入ると141.60台まで一時下落。しかし、取引終盤には141.80台に戻している。ユーロ円は155.60-80レベルでの揉み合い。ユーロドルは1.0990前後での小動き。中国の景気悪化懸念がくすぶっているほか、NY原油の時間外取引の下落から資源国通貨である豪ドルが売られている。豪ドル/ドルは0.6757付近まで、豪ドル円は一時95.78付近まで軟化した。本日はスイス、ノルウェー、英国、トルコの政策金利の発表や、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言などが予定されており、その結果を前に積極的な取引を手控える気分が強まった。 
ロンドン市場は、各国中銀利上げ発表で円売りが広がった。この日はスイス中銀、ノルウェー中銀、英中銀とトルコ中銀が相次いで政策金利引き上げを発表。ポンドやユーロなどの欧州通貨が買われた分、相対的にドルが売られている。さらに、日銀が大規模緩和を長期的に継続する姿勢を示していることで、円相場との対比が強まり、クロス円主導で円安が進行した。為替市場では各国の金融政策スタンスの差が相場を動かしている。相次ぐ利上げで欧州株や米株先物は下げている。ドル円は一時142.16近辺に高値を伸ばした。その後の振幅も下値は堅い。ポンドドルは英中銀発表直後に1.2837近辺まで急伸後、一気に1.2739近辺まで反落。足元では1.27台後半に落ち着いた。ポンド円も182.45近辺の高値をつけたあとは180.72近辺に安値をつけ、181円台後半へと戻している。ユーロドルは一時1.1012レベルと心理的節目の1.10台に乗せた。ユーロ円は156.51近辺に高値を伸ばし、その後も156円台にとどまっている。スイス中銀は25bp利上げと予想通りの利上げ幅だったが、対円で一時159円台まで買われ、フランは変動相場制移行後の最高値を記録した。ノルウェー中銀は50bpと予想以上の利上げ幅で、クローナ買いに。注目のトルコ中銀は15%への利上げを発表。市場予想20%を下回ったことを受けてリラ相場が急落し、市場最安値を更新している。
NY市場では、円売りが一段と強まった。ドル円は上値追いが続き、143円台に上昇。各国中銀がタカ派色を強めるなかで、円安が強まった。金融緩和を唯一継続している日銀と各国中銀との金融格差は拡大が見込まれている。加えて、きょうもパウエルFRB議長が上院で議会証言を行っており、「FOMC参加者の大多数があと2回の利上げ見込んでいる」と述べたこともサポートしたようだ。本日は野口日銀審議委員の発言が東京時間に伝わっていたが、賃金の伸びを理由にイールドカーブコントロール(YCC)政策は当面調整が必要とは考えていないと述べていた。また、足元の円安についても、インバウンドや生産拠点の国内回帰期待などメリットを強調。ユーロドル1.10台をつえkたが、その後は1.0950付近へと反落。英中銀発表をめぐって激しく上下動したポンドドルは1.28台に乗せたあとは1.27台前半まで反落している。。英中銀の積極利上げが経済に打撃を与えかねないとの解釈が出ていた。市場では年内残りのすべてのMPCでの利上げを見込み、ターミナルレート(最終到達点)を6.00%まで引き上げるシナリオを完全に織り込んでいる。それ以上の可能性も見ているようだ。
23日
東京市場は、円安の動きが強まった。ドル円は前日の海外市場で143円台まで買われたあと、東京朝方には142.80付近まで下押しされた。その後は143円付近に戻して揉み合いに。取引終盤には再び買われて142.40台まで高値を伸ばした。ユーロ円も朝方に156.30台まで軟化したあと、156.80付近まで買われた。ユーロドルは1.09台での推移。昨日海外市場では一時1.10台を回復。東京市場では1.0950台でスタート後、ユーロ円の調整に1.0950を割り込むと、その後対ドルでのユーロ売りが午後まで続き1.0927を付けた。昨日の利上げが不十分との思惑が広がっているトルコリラは、海外市場で付けた1ドル=24台での動きから、東京市場午前に25.48まで上昇。その後少し調整が入るも25リラ台前半推移が続いている。中国売りの動きが優勢。香港ハンセン指数が一時400ポイントを超える下げとなった。中国市場は休場となっているが、オフショア人民元は対ドルで1ドル=7.2286までドル高元安となった。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。この日発表された6月のフランスとドイツのPMI速報値が予想以上に弱含んだことが欧州景気に対する不透明感につながった。ユーロ売りが強まり、ユーロドルは1.09台割れから1.0840台まで急落した。ユーロ円も156.50付近から一気に155円付近まで下落。対ポンドでもユーロが売られるなど、ユーロ売り一色となった。英PMI速報値も弱含んだが、ポンド売りは軽微にとどまっている。ポンドドルは1.2680台に下押しも1.27台をすぐに回復。ポンド円は181円台前半に下落したあと182円台に戻している。短期金融市場では英中銀のターミナルレートを6.25%と見込む動きとなっている。ドル円は東京午後に7カ月ぶり高値となる143.45近辺まで買われたあと、ロンドン序盤には142.70台まで反落。しかし、足元では143円台に乗せてきており、上値追いの流れは維持している。ユーロ売り主導でドルが堅調に推移しており、ドル指数は10日線を上回った。
NY市場でドル円はNY時間に入って再び買いを加速させ、143円台後半まで上げ幅を拡大した。一時142円台に値を落としていたが、142円台半ばの水準が強固にサポートされたことで、投機筋を中心に再び買いを強めている模様。しかし、ここに来て市場では景気後退への懸念が広がっており、米国債利回りも低下している。
今週はパウエルFRB議長の議会証言や英中銀の予想外の大幅利上げがあったが、従来よりもタカ派なシグナルが出されたと受け止められている。先週のFOMCの金利見通しでは年内あと2回の利上げが示唆されていたが、市場はあと1回と見ていた。しかし、今週のパウエル議長の議会証言を経て、あと2回の利上げ観測も出ている状況。インフレとの闘いがまだ終わっていない兆候を強めたことで、世界中の投資家が安全資産にシフトしているようだ。 

 

●為替相場 6/26-6/30 7/1
まとめ6月26日から6月30日の週
26日からの週は、ドル高と円安の動きが際立った。両面からの支援でドル円は143円台から145円台まで緩やかかつ着実に上昇している。日本政府からは連日、円安けん制発言があり、昨年9月の円買い介入が実施された145円にも到達しているが、大きな調整は入らず。注目されたECBフォーラムでの植田日銀総裁、パウエルFRB議長、ラガルドECB総裁、ベイリー英中銀総裁による討論会では、日銀の大規模緩和姿勢と、その他中銀の金融引き締め継続姿勢の対比がより一層鮮明となった。植田総裁はジョークを交える余裕をみせており、市場に緩和継続が揺るぎないとの印象を与えたようだ。金曜日発表の東京都区部消費者物価の伸びが落ち着いたことが、日銀の緩和継続の長期化観測につながった面もあった。また、一連の米経済指標の強さがドル高圧力となり、特に週後半にはドル買いの動きが強まっている。ドル円の上昇とともにユーロドルは1.09台から1.08台へ、ポンドドルは1.27台から一時1.26台割れまで下落した。
26日
東京市場は、ドル円がやや上値重く推移。先週末に143.87近辺まで買われたあと、週明けは調整の入っている。中国市場で元安が進行したことをきっかけにリスク回避の動きが広がった。NY原油先物が下落、アジア株が軟調に推移。ドル円は143円台での上下動も、上値は143.60付近で抑えられ、午後には143円台前半で取引されている。ユーロ円は156円台後半から前半へと調整。ただ、全般的に円買いの動きは限定的で、先週末にみられた円売り圧力が残る形となっている。ユーロドルは1.0900付近での小動き。人民元は軟調。1ドル=7.20元を上回り、7.2197近辺までドル高・元安が進んだ。
ロンドン市場は、円買いが優勢。東京午前の神田財務官に続いて夕刻には松野官房長官も、円安の動きに警戒感を示している。いわゆる口先介入が円買いの反応を広げた。ドル円は143円台半ばから一時142.94近辺まで下押しされた。クロス円も下げており、ユーロ円は156円台割れ、ポンド円は182円台割れとなる場面があった。また、先週末の米株安を受けて週明けの株式市場も軟調。欧州株や米株先物が上値重く推移しており、リスク警戒的な円買い圧力も根強い。ユーロにとってはこの日発表された6月独Ifo景況感指数が予想以上の悪化を示したことが重石に。企業担当者へのアンケートではドイツ第2四半期GDPが再びマイナス成長に陥る可能性が高まってきているとした。一方で、独連銀月報ではドイツ経済は底打ちし、第2四半期は微増となる見通しと見方が分かれた。ユーロドルは1.09を挟んで下に往って来い。ユーロは対ポンドでも序盤の下落を消している。一方、対円では引き続き円高圧力が優勢で、ユーロ円は156円付近で上値を抑えられている。
NY市場では、ドル円が再び買われた。NY時間に入ると143.70近辺まで一時上昇。きょうは戻り売りに押され、一時142円台に値を落とす場面も見られていた。週明けの東京市場では日本の当局からの口先介入が複数伝わり、過熱感も出ていたドル円は一旦利益確定売りが出た格好。しかし、下値では押し目買いも活発に入り143円台は維持されている。米商品先物取引委員会(CFTC)の最新データによると、短期筋は円の売り越しを拡大し続けている状況。ユーロドルは1.09ちょうど付近で方向感に欠ける、狭い範囲での値動きが続いた。いまのところ、7月のECBの利上げはほぼ確実視されているものの、夏休み明けの9月についてはなお見解が分かれている。短期金融市場でも概ね半々で織り込んでいる状況。ポンドドルも1.27を挟んでの小幅の値動きに終始している。先週の重要イベントを通過して、次の材料を待っている模様。投資家はポンド高に賭けているが、それは成長リスクを無視している可能性があるとの指摘が出ている。
27日
東京市場で、ドル円は下に往って来い。午前に143.29近辺まで下落も、午後にはロンドン勢の参加を受けて143円台後半へ上昇。円と同様に対ドルでの売りが目立っていた中国人民元が、中国人民銀行による対ドル基準値の元高設定をきっかけに元買いに転じ、中国国有銀行によるオフショア人民元市場でのドル売り・元買いが報じられたこともあって、大きく元高となった。香港ハンセン指数の大幅上昇なども見られ、中国買いの動きがリスク選好につながる形となった。ユーロ円は156.80台、ポンド円は182.80台まで買われた。ユーロドルは1.0902前後まで軟化した後、午前中に1.0935まで上昇する場面が見られた。その後は少し戻しての揉み合い。
ロンドン市場は、ユーロ買いが優勢となるなかで、ドル円が144円に迫った。複数のECB高官からタカ派姿勢が示された。ラガルドECB総裁は、「7月利上げを表明、必要な限り利上げを続ける、あまりにも急激な政策転換への期待は防ぐ必要、金利がピークに達したとすぐに言うことできず」などと発言しており、市場にECBの利上げが長期化するとの印象を与えた。ドル円はユーロ円とともに買われて一時143.94レベルと年初来高値を更新した。しかし、144円台には届かず143円台後半で上げ一服。政府・日銀による為替介入への警戒感があるもよう。ユーロドルはECB後半のタカ派姿勢を受けて買われ、1.09台前半から1.0950台へと高値を伸ばしている。ユーロ円は157円台乗せから157.45近辺まで買われて、その後も高止まり。その他主要通貨はまちまち。ポンドは1.2758近辺まで買われたあとは、対ユーロでの売り圧力もあって1.27台前半に押し戻されている。ポンド円の上昇は緩やかだが、高値を183.12近辺まで広げている。豪ドルは対ドル0.87台割れ、対円96円付近などまで反落しており、ECB利上げの長期化が警戒感を広げているようだ。
NY市場で、ドル円は144円台に上昇。この日発表の米経済指標が予想外に強かったことで、米国債利回りの上昇と伴にドル円に買い戻しが膨らんだ。耐久財受注・速報値やコンファレンスボード消費者信頼感指数などが強含んだ。ドルに買い戻しの動きがみられ、ユーロドルは.1.09台後半から前半へと一時下落。ただ、ユーロ自体の強い流れもあって1.09台半ばから後半へと下げ渋った。ラガルドECB総裁のタカ派発言がユーロ買いの背景。ポンドドルは緩やかに1.27台半ばまで上昇。先週から調整が続いていたが、きょうはその動きも一服している。今週はポルトガルのシントラでECBフォーラムが行われているが、ラガルドECB総裁を始め、植田日銀総裁、パウエルFRB議長、ベイリー英中銀総裁が明日のフォーラムで討論会を行う。現地時間の午後、日本時間では28日22時半頃に討論会は始まる。日銀以外は当初の想定以上に利上げを継続するタカ派姿勢を強調している一方、日銀は緩和姿勢の継続を強調している。その格差を確認する内容となるか注目される。
28日
東京市場で、ドル円は揉み合い。主要通貨は総じてこの後22時半のパウエルFRB議長、ラガルドECB総裁、ベイリー英中銀総裁、植田日銀総裁のパネルディスカッション待ち。金融引き締め姿勢を米、欧、英が示してくると見られ、ドル円、クロス円ともにしっかりの動きが期待されているが、植田日銀総裁がYCC修正についての言及をしてくる可能性が意識されていることもあり、イベント前に外貨買い・円売りを進めにくい状況となっている。ドル円は調整主導で144円ちょうど近辺から143.73近辺まで下落も、日経平均の大幅高とともに144円台を回復。ユーロ円は157.40台から157.70付近までの振幅。ポンド円は183.07近辺から183.30前後での揉み合い。ユーロドルは1.0950付近での取引に終始している。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。NZドル、豪ドル、カナダドル、ポンドなどに対するドル買いが鮮明。ただ、米債利回りは低下、欧州株は堅調に推移と目立ったドル買い材料はみられていない。このあとのNY時間にはECBフォーラムの目玉イベントとして米FRB議長、日銀総裁、ECB総裁、英中銀総裁による討論会が開催される。注目イベントを控えたポジション調整の色合いが濃かったようだ。ドル円は一時144.25近辺まで買われ、年初来高値を更新も、その後は143.80台まで反落するなど144円を挟んだ上下動。やや円買い介入が意識された面も。ユーロドルは序盤に1.0936近辺まで下押しされたあとは1.0960付近に反発と方向性に欠けている。ポンドドルは1.27台前半から1.2680台まで下落、上値が重い。豪ドル/ドルは同国インフレが予想以上に鈍化したことで東京時間に0.66台後半から0.6620付近まで下落。その後は0.66台前半での揉み合いが続いている。NZドル/ドルは豪ドル以上に軟調で、0.61台を割り込んでいる。一連のECB高官らの発言が報じられた。デギンドス副総裁、レーン・チーフエコノミスト、ブイチッチ・クロアチア中銀総裁など多くのメンバーはタカ派姿勢を鮮明している。ただ、9月利上げについては不透明との論調が多い。センテノ・ポルトガル中銀総裁はすでにターミナルレートに近づいていると過度の引き締めに警鐘を鳴らした。
NY市場では、ドル円の上値追いが継続。一時144.60近辺まで上昇する場面があった。ただ、本日については、これまでの円安というよりもドル高がドル円を押し上げている。きょうはポルトガルのシントラで開催されているECBフォーラムで日米欧英の各中銀総裁の討論会が行われていた。為替市場は売買は交錯したものの大きな動きまでは出ていない。パウエルFRB議長は「連続利上げの可能性を選択肢から外さず」とタカ派姿勢に言及する一方、植田日銀総裁は「基調インフレは目標を下回る。円は世界の政策など多くの要因に影響される」などと緩和継続姿勢を強調していた。これを受けてドル円は144.60円近辺まで上昇したが、大方の予想通りで目新しいヒントは何もなかった。ユーロドルは1.09台前半に下落、ポンドドルは1.26台前半まで一時下落。ユーロドルは7月以降のECBの動向を探る展開となっている。最近の金利の急上昇が英経済に打撃を与え、ポンドは下半期に弱含みで推移する可能性が高いとの指摘が聞かれる。
29日
東京市場では、ドル円が振幅。午前は前日の海外市場でパウエルFRB議長のタカ派発言からドル高が進み、昨年11月以来およそ7カ月ぶりの高値となる144.62付近まで上昇した。その後は、日本政府による為替介入への警戒感などから伸び悩み、一時144.14付近まで軟化した。午後には米10年債利回りの上昇や米株価指数先物の時間外取引の上昇などを受けて再び144.60付近まで上昇。ユーロドルは軟調に推移。午後のドル高局面で下値を広げ、23日以来およそ1週間ぶりの安値水準となる1.0881付近まで下落した。ユーロ円は、午前に一時157.25付近まで軟化したあと、ユーロドルの下げもあって戻りは鈍く、午後はこの日の安値圏でもみ合う展開となった。5月の豪小売売上高の好調な結果を受けて豪ドル/ドルは0.6627付近まで上昇したが、午後は0.6610前後で小動き。豪ドル円は95円半ば前後でもみ合いとなった。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。東京市場で進んだドル高の流れを帳消しにしている。ドル円は東京朝方に144.14近辺まで下押しされたあとは買いの流れが続いた。ロンドン朝方には144.70レベルと年初来高値を再び更新した。しかし、一気に144.20付近へと急反落。市場は昨年の円買い介入時に意識された145円に接近したことでかなり神経質な動きをみせている。急反落した後のタイミングで、鈴木財務相から定番の円安けん制発言が報じられている。ユーロドルも下げを消す動き。1.0922近辺に安値を広げたあとは買戻されて1.0930付近へ上昇。ポンドドルも1.2615近辺に安値から反発して高値を1.2660台へと伸ばす動き。パウエルFRB議長はスペイン中銀のイベントで、昨日に続いてタカ派姿勢を示したが、ドル買い反応は限定的だった。欧州株は英株が軟調、独仏株が堅調とまちまち。米債利回りは東京市場から引き続き上昇傾向。原油先物は堅調な動き。リスク動向は比較的安定している。ユーロ円は一時158円に接近したが、ドル円の反落とともに157円台半ばへと戻している。ポンド円も182円台での上下動と方向性に欠ける動き。
NY市場では、ドルが買われた。朝方発表の米GDP確報値の上方改定や米新規失業保険申請件数が米労働市場の強さを示したことなどが背景。ドル円は一時144.90近辺まで上昇、財務省が昨年に円買い介入を実施した145円の水準を試す動きが続いている。市場は依然として各国中銀の金融格差に焦点を当てた値動きを続けており、前日のECBフォーラムでの植田日銀総裁とパウエルFRB議長の金融政策への格差を再確認したことで、ドル円はさらに勢いづいている格好。財務省の口先介入もあり、ロング勢も上値に慎重にはなっているものの、上値攻めのタイミングを見計らっている面のほうが強いようだ。ユーロドルは1.08台に下落、ポンドドルは一時1.26台割れとなる場面があった。ユーロにとってはあすの6月ユーロ圏消費者物価指数・速報値が注目材料。ECBは7月利上げは確実視されているが、9月については見方が分かれている。インフレ動向如何では9月の追加利上げ観測が高まることに。ポンドについては根強いインフレにより英中銀がタカ派姿勢を強めており、金利差拡大観測と景気減速懸念が交錯している状況。ベイリー英中銀総裁のECBフォーラム発言で、利上げ継続姿勢があたらめて確認されている。
30日
東京市場で、ドル円は節目の145円台をつけた。しかし、その後は調整主導で144円台に押し戻されている。朝方にドル円が買われた背景には、仲値に絡んだ円売りや、6月の東京消費者物価指数が予想を下回る伸びに留まったことが指摘された。145.07レベルと7カ月ぶりのドル高・円安水準となっている。大台超えを果たしたこともあり、高値からは調整売りの動きが広がった。鈴木財務相による行き過ぎた動きには適切に対応との発言も、ドル売り・円買いを誘った。145円超えトライで上昇した分を打ち消して144.60台へと軟化した。ユーロ円は157.58近辺まで上昇したあとは157円台前半での揉み合いに。ユーロドルは前日の海外市場で米指標の強さを受けて1.09台前半から1.08台後半へと下落した。東京市場でも1.08台後半と前日からの安値圏での揉み合いが続いた。
ロンドン市場は、ドル円の上昇が一服している。東京午前に7カ月ぶりの高値145.07近辺まで買われたあとは、ポジション調整や介入警戒感などで上値重く推移している。ロンドン朝方には144.44近辺まで下押しされた。その後は、米債利回りの上昇がドル相場の下支えとなり144円台後半で売買が交錯している。欧州通貨はまちまち。ポンドが堅調な一方で、ユーロが軟調。ポンドドルは1.2599近辺まで下押しされたあとは1.2650付近へと上昇。ユーロドルは1.0870台から一時1.0835近辺まで下落、その後は1.08台半ばと戻りは鈍い。英GDP確報値が前期比0.1%とプラス成長確定となる一方、ドイツ雇用統計では失業率が上昇、失業者数が予想以上に増加、ユーロ圏消費者物価速報は前年比+5.5%と前回の+6.1%から鈍化した。ユーロポンドは軟調に推移している。インフレ鈍化などを受けて欧州株は堅調に推移しているが、ポンド円が182円台前半から一時183円台乗せと堅調である一方で、ユーロ円は157円台割れから一時156.70付近まで下落している。
NY市場のドル円は利益確定売りに押され、144円台前半に伸び悩んだ。円買いというよりもドル売りがドル円を押し下げている。この日発表の5月のPCEコアデフレータが予想を若干下回ったことでドル円の戻り売りに拍車をかけた。コアデフレータは前年比4.6%と予想を下回り、前回からも若干鈍化した。 

 

●為替相場 7/3-7/7 7/8 
まとめ7月3日から7月7日の週
3日からの週は、円買いにドル円やクロス円が下押しされた。円買いの背景には世界的な株式市場の調整の動きがある。中国や欧州の景気関連指標が弱含んだことが景気減速への警戒感を広げたほか、中国の金属輸出規制をめぐって米中が対立していることなどが株式相場を不安定化させた。米英欧など主要中銀のインフレ抑制に対する姿勢は引き続き強く、円相場にとっては金利差拡大観測からの円売り圧力はあるものの、この週はリスク回避の円買いに押される展開だった。木曜日に発表された米ADP雇用統計や米ISM非製造業景気指数が強含んだ時の市場反応も、米株安を受けた動きとなっており、リスク動向に敏感な相場の地合いが示されていた。週末の米雇用統計では非農業部門雇用者数(NFP)が20.9万人増と予想を下回った。これを受けてFRBのタカ派姿勢が緩むのではとの期待から、為替市場ではドル売りの反応が見られた。
3日
東京市場で、ドル円は144円台で振幅。先週末に145円台をつけたことで一端の達成感もあり、朝方は調整に144.23近辺まで下落。その後は再び上昇。中国本土株や香港株などが軒並み大幅高、日経平均の堅調な動きなどでリスク選好の円売りが入った。ドル円は144.69近辺まで上昇。午後には本邦10年債利回りが6月16日以来の0.4%台に乗せる動きが円買いにつながり144.50割れに。ユーロドルは朝から落ち着いた動き。1.0901-1.0918の17ポイントレンジとなっている。ユーロ円はドル円の反発もあり、昼前に157円80銭台まで上昇。その後は調整売りが入っている。豪ドルは明日の豪中銀金融政策会合での金利据え置き期待もあり、朝方売りが優勢となった。対ドルで0.6637、対円で96円を割り込む動きを見せたが、米中関係の改善期待が豪ドルの買いを誘い急反発。豪ドル円は96.40台を一時回復。豪ドルドルも0.6670台を付けた。
ロンドン市場は、ドルに買戻しが入っている。このあとのNY市場で米ISM製造業景気指数の発表を控えており、先週末のドル売りに調整が入る形となっている。ドル円は144円台で振幅を伴いながらの上昇。ロンドン序盤にかけて144.88近辺まで高値を伸ばしたあとは144.50台に反落するなど神経質な動き。145円台に接近すると介入警戒感が上値を抑えやすくなっているもよう。ただ、流れ自体は上向きとなっている。米債利回りの上昇傾向が下支えとなっていた。ユーロドルは1.0920付近が重くなると、一時1.0871近辺まで下落。その後1.09付近へと下げ渋っている。ポンドドルも1.27付近から一時1.2659近辺まで下落、その後の反発は限定的。この日発表されたユーロ圏製造業PMI確報値は43.4と速報値43.6から下方修正された。一方、英PMI確報値は46.2から46.5へと上方修正された。いずれも景気判断分岐点の50を下回っており、両通貨の上値は重かった。このあとのNY市場では明日の米独立記念日祝日を控えて株式・債券市場が短縮取引となる。
NY市場では、弱いISMでドル売り反応もすぐに戻す展開。ISM製造業景気指数が予想を下回る弱い内容となったことで、ドル円は一時144円ちょうど付近まで下落する場面が見られた。しかし、売りが一巡すると直ぐに買い戻しが入り、144円台後半に戻す展開。下押す気配は全くないようだ。先週末に発表になった米商品先物協会(CFTC)の建玉報告によると、ドルロングの解消が続いていることが判明も、それ以上の円ショートが拡大、投機筋の円売り越しは2018年以来の水準に拡大していた。ユーロドルは1.09付近で一進一退。6月のECB理事会や消費者物価指数(HICP)の発表を受けて概ね材料が出揃い、市場は次の材料を待っている状況のようだ。ポンドドルは方向感のない展開が続き、1.26台後半での振幅に終始。足元の英雇用統計や消費者物価指数(CPI)の予想外の強さから、英中銀はFRBやECBよりも長期に渡って利上げを続けると見込まれている。しかし、ポンドは以前ほどのポジティブな反応は見せていない。為替市場が金融政策の動向に左右されるのではなく、いずれファンダメンタルズ主導に切り替われば、ポンドは苦戦する可能性があるとの指摘が出ている。
4日
東京市場は、米休場を控えて落ち着いた値動き。ドル円は朝方に144.40台に軟化も、その後は144.60台まで買い戻され揉み合いに。本日は米国が独立記念日で祝日となっており、取引参加者が少ないこともあって、上下ともにやや動きにくい展開。下値しっかり感が意識されているものの、145円を超えてのドル買い円売りをためすだけの勢いが見られず。ユーロドルは1.0900前後で落ち着いた動き。朝は1.0910台での推移。その後は少し上値が重くなっているものの、値幅は抑えられている。豪中銀金融政策会合は大方の予想通り政策金利を据え置いた。発表後は豪ドル売りとなった。豪ドルドルは0.6680前後から0.6640台まで軟化。豪ドル円も96.70前後から96.00台まで一時下落。先週の豪消費者物価指数発表までは利上げ期待が大勢を占め、直近でも一部で利上げ期待が残っていたようだ。
ロンドン市場は、方向感に欠ける取引となっている。欧州株はほぼ横ばいで取引を開始したあと、米株先物が小幅調整に押されたことを受けて、上値が次第に重くなっている。ドル円は144.60台から一時144.30付近へと軟化。ユーロドルは1.0815近辺に買われたあとは1.0890付近へと軟化。ユーロ円は157円台後半から157.30付近に軟化。一方で、ポンドは堅調に推移。対ドルでは1.27台割れから1.2710台へ、ポンド円は183.20台に下押しされるも183.60台へと反発している。ユーロ売り・ポンド買いのフローが持ち込まれている。ただ、目立った材料はみられず、NY休場を前にポジション調整が入る格好となっている。
NY市場は米独立記念日のため債券・株式市場が休場。
5日
東京市場は、材料難で値動きは限定的。ドル円は144円台での推移が続き、144.40付近から144.60台までの値動き。前日と同様の水準にとどまった。ユーロドルは朝方1.0890台まで上昇も、その後は1.0870割れと先週金曜日以来の安値を付けた。こちらも様子見ムードが強い中、値幅自体は小さいものの、やや上値が重い印象。ユーロ円は157円台前半での推移。158円ちょうど前後が重くなっている。人民元は中国人民銀行による対ドル基準値のドル安設定などで、7.21台を付けるなど朝はドル安元高となった。しかし、中国財新PMIが弱かったことで、一転して元売りに。午後も7.23台後半のドル高・人民元安値圏でのもみ合いが続いた。
ロンドン市場は、リスク警戒の円買いが優勢。中国財新非製造業PMIに続いて、欧州時間にはスウェーデン、スペイン、イタリアなどの非製造業PMIが悪化した。ユーロ圏非製造業PMI確報値も下方改定されている。ナーゲル独連銀総裁は追加利上げの必要性を繰り返した。一方で、ECB消費者インフレ期待は前回から低下している。ビスコ伊中銀総裁は、イタリアのGDP回復は鈍化しているとして、利上げに慎重な姿勢を示した。市場では次第に利上げ継続の負の面が意識されてきている印象。ドル円144.70台まで買われていたが、ロンドン時間に入ると売りに転じて、安値を144.20付近に広げた。ユーロ円は157.70台まで買いが先行も、一連のPMIの悪化で反転下落、安値を156.80近辺に更新。ポンド円は184円付近までの買いで上値を止められると、183.15近辺まで安値を広げた。リスク動向に敏感な豪ドル、NZドル、カナダドルなども円買い圧力を受けて下落した。ドル相場はややドル買いが優勢だが、ユーロドルは1.08台後半から1.09台乗せでの振幅。ポンドドルは1.27台割れから1.27台前半での振幅。神経質な値動きも方向性には欠けている。円相場主導の展開となっている。
NY市場では、米FOMC議事録への反応は限定的だった。午後にFOMC議事録が公表され、FOMC委員のほぼ全員が一時停止を適切または容認できると判断した一方、大半の委員が年内の追加利上げを予想していたことが明らかになった。タカ派な利上げ一時停止だったことを確認する内容ではあるが、目新しい内容もない。一部の委員は利上げを支持していた。タイトな労働市場のほか、インフレが2%目標に向かって減速している兆しが比較的乏しいことを理由に挙げていた。為替市場は発表直後はややドル売りの反応を見せたものの、次第にドル買いに転じている。ただ、大きな反応には至っていない。ドル円は144円台での上下動が続いている。次第に膠着感が強まってきているが、週末の米雇用統計を始めとした米経済指標を確認したい意向が強いものと見られる。ユーロドルは1.08台後半で上値重く推移。ユーロドルのボラティリティーは6%台に低下しているが、今後の変動を警戒する声も出始めていた。ポンドドルは1.27付近で一進一退。今週のポンドは主要なイベントもなく、米経済指標を受けたドルの反応に左右される展開も予想されている。
6日
東京市場は、リスク回避の円買いが強まった。ドル円は前日海外市場で144円ちょうど付近まで下落も、その後は144円台後半に買い戻されていた。東京市場では、日経平均やアジア株の軟調な推移を背景に再び売りが強まった。午後には節目の144円を割り込み、前日比1円近いドル安・円高の143.68近辺まで下値を広げた。ユーロ円も午後には156円台割れから155.85付近まで下落。ポンド円は182.57近辺に下落し、約1週間ぶりの安値水準となった。ユーロドルは午後に6月15日以来3週間ぶりの安値となる1.0834付近まで弱含んだあと、下げを帳消しにしている。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。東京市場での円買いの動きが一服するなかで、ドル円単体だったドル売りの動きは豪ドル、ユーロ、ポンドなどその他主要通貨にも広がっている。このあとのNY市場ではADP雇用統計、新規失業保険申請件数、非製造業PMI、ISM非製造業景気指数、貿易統計など一連の米経済統計の発表を控えており、前日のドル高に調整が入る面があったようだ。欧州株や米株先物は軟調に推移。英国では根強いインフレ圧力が追加利上げ観測を高めている。英中銀調査では1年先のインフレ率予測がやや引き下げられる一方で、3年先は引き上げられている。市場では英中銀政策金利が6.5%まで引き上げられることを織り込んだ。英国とドイツの建設業PMIはいずれも過去最低水準に準じる低水準となった。度重なる利上げの悪影響がみられ始めた面も指摘される。ただ、ベイリー英中銀総裁はインフレを抑え込むこと最重要課題との姿勢を示している。ポンドドルは1.27付近から1.2780付近に上伸。ポンド円は182.50付近の安値から183円台後半へ上伸。ユーロドルは1.08台前半から1.0890付近に上昇。ユーロ円は156円台割れから買われて156.70台まで買い戻されている。ドル円はロンドン序盤には143.56近辺まで安値を広げた。その後は一時144円台を回復も再び143円台後半と落ち着かない値動きに。
NY市場では、ドル買いが強まった。ADP雇用統計で雇用者数が予想外の増加となったことや、ISM非製造業景気指数も予想を上回り、FRBのタカ派姿勢を再確認する内容だったことで、米国債利回りの上昇と伴にドル買いが優勢となっている。東京・ロンドン市場でドル円は売りが強まり、143.50台まで下落したが、強い米指標結果を受けて144.65付近まで反発する場面がみられた。今日の強い指標を受けて市場では45%程度の確率で年内あと2回の利上げを織り込んでいる。ロンドン時間に買われていたユーロドルは1.09付近から1.08台前半まで一時下落。その後は1.08台後半に落ち着いた。ポンドドルはロンドン時間に1.27台後半まで上伸する場面があったが、強い米指標で1.26台後半まで急反落。その後は1.27台前半まで買い戻された。ポンド相場は強い利上げ期待と景気後退の可能性の狭間で神経質に売買が交錯している。
7日
東京市場は、円買いが優勢。ドル円は朝方に143.80台に下落したあと144.20近辺まで買われる神経質な値動きをみせた。その後は日経平均やアジア株などの下落がリスク警戒の円買いにつながり上値の重い展開となった。午後には144円付近での揉み合いを下放れて、前日安値を下回ると安値を143.53近辺まで広げた。ユーロ円も156.90台を高値に156.20台まで下落。ポンド円は183.50台から182.80台に下落。市場の期待する中国の景気支援策について、中国首相が的を絞った政策を実施と発言も、具体的な案に触れず、期待後退の動きが広がったことがリスク警戒につながった。
ロンドン市場は、リスク警戒の円買いが先行。欧州株や米株先物の下落とともに、円買い圧力が広がった。ドル円はロンドン序盤には142.88近辺まで安値を広げた。しかし、注目の米雇用統計発表を控えて欧州株の下げは一服、米債利回りが再び上昇となると143円台を回復。戻りは鈍いもののクロス円も下げ一服。ユーロ円は155.44近辺を安値に156円付近へ、ポンド円は182.02近辺を安値に182.円台後半へと下げ渋っている。ただ、東京市場からの下げを戻す動きには至っていない。ユーロドルは1.0870付近から1.09ちょうど付近での上下動。ポンドドルは1.2726近辺に下げたあとは1.2770付近に上昇と小高い。対ユーロでもポンド買いとなっている。前日に6.5%までの英政策金利上昇が市場に織り込まれたこともあって、ポンドには買い圧力がかかってるようだ。一方、ECB高官の見方は分かれている。デギンドス副総裁は、データ次第としながらも我々の仕事はまだ終わっていないとタカ派姿勢を堅持。一方、ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁は、物価と賃金のスパイラルはまだ発生していない、として金融政策の慎重さを求めた。
NY市場でドル円はNY時間に入って戻り売りを加速させ、142円台前半まで下げ足を速めた。本日は高値から一気に200ポイント超下落し、本日142.60付近に来ている21日線も下抜けている。この日は米雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数(NFP)が20.9万人増と予想を下回った。これを受けてFRBのタカ派姿勢が緩むのではとの期待から、為替市場ではドル売りの反応が見られた。 

 

●為替相場 7/10-7/14 7/15 
まとめ7月10日から7月14日の週
10日からの週は、これまでのドル高に対する調整売りが強まった。ドル円は6月30日に節目となる145円台を一時付けた後、144円台を中心とした推移が続いていた。7日に発表された米雇用統計を前にドル買いポジションの調整が始まり、雇用統計が弱く出たことでドル売りが加速する形で142円00台まで一時下げて、10日の週明けにいったん142円60銭台まで買い戻されたが、その後ドル安に復した。12日に発表された米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回る弱い伸びとなり、ドル売りが加速。さらに13日発表の米生産者物価指数(PPI)も弱めに出てドル売りが強まった。7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ期待は継続しているが、今月の利上げで打ち止めになるとの期待が広がり、ドル売りにつながっている。ドル円は137円台前半まで一時ドル安が進んだ。米国の複数回利上げ期待の後退を受けたドル売りは、ユーロドル、ポンドドルなどでも目立ち、ユーロドルは1.1240台と2022年2月以来のユーロ高ドル安圏を付けた。ポンドドルも2022年4月以来の1.30超えを付け、1.3140台まで上値を伸ばした。
10日
東京市場は、ドル円が買い戻された。先週末は米雇用統計で雇用者数の増加が予想を下回ったことを受けてドル売りが広がった。ドル円は142.00付近まで下落。週明けは142.10台で取引を開始。その後はドル買いが強まった。先週末に円高進行を受けて午前は売りに押された日経平均が午後には買い戻され、ドル円も反発、143円台をつけた。その後は142.60台へと上昇は一服している。ユーロドルでもドル高が進んだ。朝の1.0970前後での推移から、じりじりとユーロ安ドル高となり1.0950割れを付けている。先週末のドル売りで1.08台後半から1.09台後半まで上昇しており、その分の反動が週明けに出た形。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。ただ、通貨ごとに値動きはまちまち。円やユーロが比較的強い一方で、豪ドルやポンドは軟調。ドル円はロンドン時間に入ると142.20付近に軟化し、戻りも限定的。東京市場で買われたクロス円も反落している。ユーロは底堅い動き。対ドルでは1.0973近辺まで買われ、先週末の高値水準に並んだ。ただ、上値追いには至らず1.09台後半に高止まり。ユーロ円はロンドン時間には155.70台まで反落し、156円台前半へと下げ渋り。ポンド円は対ユーロでの売り圧力がみられた分、上値が重い。対ドルで1.28台前半から1.28台割れへと軟化、対円では183円台乗せまで買われたあとは182円付近まで安値を広げる場面があった。豪ドルが軟調。東京午前に発表された中国物価統計の低迷が売りを誘っており、豪ドルはほぼ一方通行で下落している。対ドルでは0.66台後半から0.66台前半へ、対円では95円台半ばから94円台半ばへと下押しされた。先週末の米雇用統計を通過し、今週水曜日の米消費者物価指数発表を控えたタイミングで、きょうは目立った指標材料はみられず手掛かりに欠ける動きとなっている。
NY市場では、ドル売りが強まった。ドル円は141円台前半まで下落。先週末の米雇用統計後の下げを受けて、ドル円は上値へのモメンタムを一旦失ったようだ。きょうの下げで21日線を下放れる動きが見られており、テクニカル勢の売りも出ている模様。ユーロドルは1.10台まで上昇。ポンドドルは一時1.2750付近まで下落していたものの、NY時間に入って1.2865付近まで買い戻された。この日は複数のFOMC委員からの発言が伝わっていたが、追加利上げの必要性を強調していた。しかし、景気の先行き不安も台頭しつつある中、ドルのフォローとはなっておらず、円安の動きも見られていない。今週は12日水曜日に米消費者物価指数(CPI)が発表になり、それを受けてもドル円に反転が見られなければ、さらに下押すリスクが警戒される。ECBや特に英中銀の追加利上げ観測が根強く、側面からドル売り圧力となる面も指摘されている。
11日
東京市場で、ドル円が軟調に推移。先週後半から強まったドル安・円高基調が継続している。141円台前半で売買が交錯したあと、昼前には売りが広がった。米債利回りの低下は比較的小幅にとどまっており、直近に積み上がったドル買い・円売りポジションに調整が広がる格好。141円割れで短期筋のストップ注文が発動され、140.60台まで下落。その後も戻りは141円には届かず、再び140.57近辺に安値を広げた。ユーロ円は155.60近辺を高値に154円台へと下落。ユーロドルはドル安に支えられて、1.10ちょうど付近から1.1022近辺へと小高い動き。
ロンドン市場は、円買いが優勢。明日の米消費者物価指数でインフレの伸び鈍化が想定されており、日米金利差拡大観測がやや後退しているもよう。海外勢を中心に日銀のYCC調整観測が根強いことも円買いを誘ったようだ。米10年債利回りが4.00%付近から3.94%台まで低下するなかで、ドル円は安値を140.16近辺まで広げた。ユーロ円は155円台割れから154.30付近へ、豪ドル円は94円台前半から93.56近辺へ安値を広げた。その中ではポンドはやや底堅い動き。朝方に発表された英雇用統計で平均時給が前年比+6.9%と前回の+6.5%から伸びが加速したことが背景。ポンド円は181円台後半に一時上昇。その後は円高圧力とともに181円台を割り込む場面があったが、足元では181円台前半から半ばで推移している。一方、ユーロ相場は軟調。独ZEW景況感が予想以上に落ち込んだことが背景。ユーロドルは1.1027近辺を高値に1.0997近辺まで反落した。対するポンドドルは1.28台後半から一時1.2935近辺まで買われている。ドル指数は低下、5月11日以来の低水準となった。
NY市場で、ドル円は上値重く推移。ロンドン時間に一時140.15付近まで下落したあと、NY時間に入ると141円手前まで買い戻される場面があったが、再び売りに押されて140円台前半と上値が重くなっている。140円割れを試しそうな気配が十分に高まっている。先週の米雇用統計を受けた反応をきっかけに、ドル円は上値へのモメンタムを一旦失ったようだ。円キャリー取引の巻き戻しが活発に入っており、テクニカル勢の売りもそれに加わる中、ドル円は売りが加速している。ユーロドルは上値追いの動きが継続し、1.10台に上昇した。ポンドドルは1.29台に上昇し、年初来高値を更新した。完全に上向きの流れに復帰している。あすの米消費者物価指数の伸び鈍化が予想されるなかで、総じてドル売りが強まった。
12日
東京市場では、ドル円が140円台を割り込んだ。朝方に140円の大台を割り込むと、ストップを巻き込んで一段安となり139.37近辺に安値を広げた。その後の戻りは139.70台までにとどまり、139.50付近での推移に落ち着いた。ユーロ円はドル円の下げとともに154.60台から153.70台まで下落。ユーロドルはじりじりとドル安が進み1.1037近辺まで上昇した。米消費者物価指数(CPI)の伸びが鈍化するとの見通しが、ドルの重石となっている。NZ中銀は市場予想通り政策金利を据え置き、利上げを打ち止めとした。専門家予想では完全に据え置きが織り込まれ、短期金利市場でも90%以上の織り込みとなっていたため、目立った動きはなかったが、若干のNZドル売りとなった。声明では当面は現状水準を維持することがターゲットに向かうために必要との認識が示された。
ロンドン市場は、ややドルに買戻しが入っている。ドル円はロンドン朝方には139.31近辺まで安値を広げた。その後は売り一服となり139.75付近まで買い戻され、揉み合いとなっている。米消費者物価指数の発表を控えて、下落は一服。ユーロドルは前日からの上昇の流れを受けて東京午後に1.1037近辺まで買われた。その後はロンドン時間にかけて上値を抑えられ、1.1010台での取引に落ち着いている。ポンドドルは軟調。東京市場で1.2969近辺に高値を伸ばすも、その後は調整売りに押されて1.2910台へと安値を更新している。対ユーロでの売り戻しが入っている。ユーロ円が153円台後半で揉み合う一方で、ポンド円は180円台後半から前半へと軟化している。欧州株は米インフレ鈍化期待で堅調に推移。米債利回りは低下一服。日本時間午後9時30分の米消費者物価指数の結果待ちとなっている。
NY市場では、米CPI発表を受けてドルが急落。米消費者物価指数(CPI)はインフレの鈍化傾向を鮮明にした。総合指数が前年比3.0%まで鈍化したほか、コア指数も4.8%と予想の5.0%を下回った。また、パウエルFRB議長が注目している住居費を除くサービス業の指数であるスーパーコアも計算値で前月比変わらず、前年比で4.0%まで低下。2021年以来の低い伸びとなっている。 FRBはあと2回の追加利上げの可能性を強調しているが、今月のFOMCについては0.25%ポイント利上げの見方に変化はないものの、市場とFRBの見解が分かれている9月以降の2回目の利上げについては見送られるとの見方を強めている。市場は本日の米CPIを受けて、今月の利上げが最後になるとの期待を更に強めたようだ。ドル円は138円台前半まで急落。ユーロドルは一気に1.11台に上昇。ポンドドルは心理的節目の1.30台を回復する場面があった。カナダ中銀が政策委員会の結果を発表し、予想通りに25bpの利上げを実施した。一部からは据え置きの見方も出ていただけに、結果を受けてカナダドルは買いの反応が見られていた。声明では追加利上げの示唆は無かったものの、インフレの2%目標への戻りの時期を2025年半ばと予想。前回や前々回から後ずれしており、追加利上げの選択肢を残す格好となった。
13日
東京市場で、ドル円は138円台での上下動。前日のNY市場で6月の米消費者物価指数が市場予想を下回る結果となったことで、138.16付近まで下落した。東京市場朝方には米債利回り低下を受けて138.08近辺に安値を更新。しかし、その後は日経平均の上昇や米債利回りの低下一服を受けて買い戻され、午後には高値を138.83近辺に更新した。ユーロ円は朝方に154円台割れも、午後には154.62近辺まで反発。ユーロドルは午前中のドル売り局面で昨年3月以来の高値水準となる1.1149近辺まで上昇する場面があった。アジア株の堅調な推移とともに、リスク動向に敏感なオセアニア通貨買いが優勢となった。豪ドル/ドルは約3週間ぶり高値水準の0.3820付近、NZドル/ドルは約2か月ぶり高値水準となる0.6339近辺まで買われた。
ロンドン市場は、ドル安と円安が続いている。東京市場では値動きが停滞していたが、ロンドン時間に入ると米債利回りが一段と低下、欧州株や米株先物が堅調に推移するなかで、ドル安と円安が再燃。ロンドン早朝に発表された5月英GDPが前月比−0.1%とマイナスに転じたが、市場予想−0.3%を上回ったことでポンド買いの反応を示した。この動きに追随してユーロドルや豪ドルなども上昇、クロス円も上値を伸ばしている。ドル円は138円台半ばを中心に上下動も、前日からのドル安・円高水準での取引にとどまっている。ポンドドルは1.30台にしっかり乗せると1.3080付近へ、ユーロドルは1.1150付近から1.1174近辺へと高値を伸ばしている。ポンド円は180円付近から181円台乗せ、ユーロ円は154円付近でサポートされると154.80付近に上昇。対ユーロでのポンド買いの動きもみられた。この後の米生産者物価指数(PPI)でもインフレ鈍化が予想されており、ドル売りが先行した格好。
NY市場では前日の米CPIに続いて、米生産者物価指数(PPI)が弱く出たことでドル売りが強まった。PPIは前年比+0.1%となった。7月の利上げ見通しは継続しているが、7月の利上げで打ち止めになるとの期待が広がっており、ドルの上値を抑えている。ドル全面安となりユーロドルは2022年3月以来の1,12ドル台までユーロ高ドル安となった。ポンドドルも昨年4月以来となる1.30ドル超えを果たすと、1.31台まで上値を伸ばした。ドル高の調整ではなく新たなドル安局面に入っているとの期待が積極的なドル売りにつながっている。ドル円は137円90銭台まで一時値を落とし、その後の戻りも鈍い。
14日
東京市場は前日のドル安の流れを受けて、午前中はドル安円高が強まった。ドル円は138円00銭台でスタートすると5月17日以来のドル安円高圏となる137円25銭までドル売り円高となった。ユーロ円が155円台から154円18銭を付けるなど、この時間帯は円買いが主導しての動きとなった。その後昼前に137円60銭台まで回復も、137円40銭割れとなるなど、昼過ぎまで円高傾向が続いた。ロンドン勢が入ってくる時間帯になりドル高の動きが優勢となり、137円台後半から138円台へと買い戻しが入る展開。ユーロドルは朝方ユーロ円の下げに1.1210台を付けた後、いったんユーロ買いドル売りが強まり、前日の高値を超えて2022年2月以来となる1.1240台を付けた。ロンドン勢が入ってくると急速にユーロ売りドル買いが強まった。
ロンドン市場に入ってドル円の買い戻しが一気に強まった。東京午前に安値を付けた後、東京午後は少し買い戻しが入る展開。ロンドン勢が本格参加してくると、ドル買いが一気に強まり、東京朝の水準を超えて、短期筋のストップロス注文を巻き込んでドル買いとなった。先週からのドル安の勢いが早すぎるとの意識もあり、調整が強まる展開となった。ユーロドルは朝のドル買い局面で1.1200台を付けたが、大台を維持した。対円での買いが支えとなった。ユーロ円は朝の水準を超えて大きく買いが入った。東京午前の安値から1円半以上の大きな買い戻しとなっている。
ドル円はNY時間にかけて買い戻しが強まり、一時139円台まで戻される場面が見られた。この日発表のミシガン大消費者信頼感指数が予想以上に強い内容となったことでドル買いが強まっている。本日は東京時間に137円台前半まで下落し、200日線に顔合わせしていたが、今週のあまりの急激な下げに、短期的な値ごろ感も出ているものと思われる。 

 

●為替相場 7/17-7/21 7/22 
まとめ7月17日から7月21日の週
17日からの週は、ドル買いが優勢。先週まで6営業日連続でドル安となった相場に調整が入った。また、側面からのドル高材料も多かった。ドル円にとっては、植田日銀総裁が緩和姿勢の維持を再確認し、市場の一部に高まるYCC修正観測に冷水を浴びせた。ポンドドルは、よりストレートだった。6月英消費者物価指数の伸びが予想以上に鈍化したことで、市場での英政策金利ターミナルレート観測が引き下げられている。ユーロドルにとっては、タカ派と目されているクノット・オランダ中銀総裁やナーゲル独連銀総裁らが9月の追加利上げについての明言を避けたことがユーロ相場の上値を抑える面もあった。木曜日のNY市場では米新規失業保険申請件数が低下したことに敏感に反応、ドル買いが強まる場面もあった。総じて、来週の日米欧中銀の金融政策発表を控えて、調整の動きが中心だった。週末にはドル円が急伸。関係者の発言として「日銀は現時点でYCC修正の必要性乏しいとみている」と報じられたことに鋭く反応。YCC修正観測に基づく市場の円買いポジションが急速に巻き返された。ドル指数は一段高となっている。
17日
東京市場は海の日の祝日で休場。
ロンドン市場は、円買いが優勢。東京不在のアジア時間に発表された第2四半期の中国GDPが前期比+0.8%と前回の+2.2%から減速したことが、リスク警戒の動きを広げた。上海株が下げたあと、欧州株や米株先物・時間外取引も軟調に推移している。特に国際的な高級ブランドメーカーを抱える仏CAC指数の下げが大きく。中国需要に対する懸念が広がっているもよう。米10年債利回りは3.82%台から一時3.76%台に低下。サウジの自主減産延長の一部報道で買われたNY原油先物も上値重く、再び安値を広げる動き。ドル円は138.75近辺で上値を抑えられると138.00レベルまで下落。ユーロ円は156円手前から155.10付近へ、ポンド円は181円台後半から180.50台まで下落。ドル相場は小安い。ただ、ユーロドルは1.12台前半、ポンドドルは1.30台後半から1.31台乗せ水準での振幅にとどまっており、ドル円の下落がドル指数は小幅に低下させるにとどまった。
NY市場は、方向感に欠ける展開。ドル円は一時139円台乗せとなったが、上値では戻り待ちの売りも多く再び138円台に値を落とした。ユーロドルは1.12台半ばへと上昇しているが、全体的には様子見気分が強まっていた。ポンドドルは1.30台後半での推移。一部からは、来週のFOMCでの利上げ決定前にドルが短期的に下支えされる可能性があるとの指摘も出ている。イベントを控えて投資家はより慎重姿勢で臨むことから、ドルは最近の下落分を取り戻す可能性があるという。市場は来週の利上げを確実視しているものの、9月以降については見方が分かれている。先週の米消費者物価指数(CPI)を受けて、市場にはFRBの利上げ打ち止め観測が高まっているが、FRBは9月以降も利上げを断念しない可能性もある。だた、9月FOMCまでに米雇用統計、米消費者物価指数(CPI)とも2回数字を確認できる。その結果を待ちたい雰囲気も。
18日
東京市場で、ドル円は振幅。朝方に138.92近辺の高値を付けた後は、売りに押される展開。中国売りの動きが目立ち、香港ハンセン指数、中国上海総合指数などがほぼ全面安になる中で、リスク警戒の円買いが強まり、午後に138.32近辺まで下落した。ユーロ円もリスク警戒の円買いに押されて、朝方の156.10台から155.70台まで下落。ポンド円は181.60台から181.10台まで下落。リスク警戒の動きから米債利回りの3.80%台から3.78%台へと低下、ユーロドルは昨日上値を抑えた1.1250手前の売りをこなし、1.1264近辺まで買われた。
ロンドン市場は、ドルが上値重く推移。米債利回りの低下とともにドル円は138円台半ばから138.09近辺まで下押しされた。ユーロドルは高値を1.1276近辺に伸ばした。しかし、クノット・オランダ中銀総裁が「7月より後の利上げはあり得るが、確実ではない」「コアインフレは横ばい状態になったもよう」と発言したことがややハト派的と捉えられ、独債利回り低下を誘った。ユーロドルは1.1230付近まで一時反落。取引中盤にかけて、イエレン米財務長官は米雇用需要の高まりが後退してきていると指摘した。ドル売りとの綱引きでユーロドルは1.12台半ばへと下げ渋っている。ポンドドルは1.30台後半での揉み合いを上抜けると1.3126近辺に高値を伸ばし、その後は1.31付近で推移。明日の英消費者物価指数発表を控えて、コア前年比が+7.1%に高止まりする予想となっている。欧州株や米株先物・時間外取引は売買が交錯しており、方向性は希薄。ユーロ円は156円付近が重く、一時155.30付近と軟調。一方、ポンド円は180.70付近に下押しされたあとは181円台を回復と反発している。ユーロ対ポンドではユーロ売りが優勢。
NY市場では、ドル円が139円台まで上昇。一時137円台に下落する場面があったが、米株式市場が大幅高となり、リスク回避ムードが一服する中で、G20に出席している植田日銀総裁発言に敏感に反応したようだ。総裁は「日銀が目指す持続的・安定的な2%の物価目標までに距離があるとの認識に変化がなければ、粘り強く金融緩和を続ける姿勢も変わらない」との見解を示した。日銀が来週の決定会合で発表する展望レポートで、2023年度のインフレ見通しを上方修正するとの一部報道もあり、日銀は来週の決定会合でYCCの許容変動幅を拡大してくるのではとの期待も高まっている。しかし、上記の発言はその期待を後押しする内容ではない。本日は6月の米小売売上高が発表され、前月比0.2%増と予想を下回る内容となった。ただ、GDPの算出に使用される飲食店、自動車、建材、ガソリンを除いた売上高は前月比0.6%増と予想を上回っていた。なお力強い労働市場とインフレ圧力の緩和が引き続き消費を支えている。ユーロドルは1.12台前半に値を落とした。ポンドドルはNY時間に入ると戻り売りに押されて一時1.30台前半に下落した。
19日
東京市場では、ドル高・円安の流れが強まった。朝方に138.77近辺まで調整売りが入ったが、すぐに139円台を回復。139円を挟んで売買が交錯したあと、午後には139.42レベルまで高値を伸ばした。海外勢を中心とした今月の日銀会合でのYCC修正の期待が、昨日の植田総裁発言で後退しており、円売りが入りやすい地合いとなっている。ユーロ円は朝方に155.80台まで軟化したあと、156.49近辺まで上昇した。ユーロドルは昨日のドル高局面で1.1200台まで軟化も、大台は維持していた。東京市場では1.12台前半で底堅く推移している。英消費者物価指数の発表を控えたポンドドルは1.30台前半で揉み合っている。
ロンドン市場は、ポンド相場が急落した。日本時間午後3時に発表された6月英消費者物価指数で前年比が+7.9%と前回の+8.7%から伸び鈍化、市場予想+8.2%も下回ったことが背景。ポンドドルは1.30台前半から一気に1.29台前半へと下落。ポンド円は181円台半ばから180円台前半へ急落。対ユーロでもポンド売りが強まった。インフレ鈍化で欧州株は堅調に推移。ドル円はポンドドル下落がドル買い圧力となったことや、欧州株高、前日の植田日銀総裁の緩和継続姿勢の確認などで139.90台へと上昇している。ユーロドルはポンドドル急落につれて安値を1.12台割れ水準に広げたが、対ポンドでのユーロ買いが下支えとなって1.12台前半に戻している。ユーロ円はユーロ買いと円売りの双方で上昇、一時157円台に乗せた。足元ではドル買い圧力が継続しており、ポンドドル1.2910台、豪ドル/ドル0.6750台へと安値を広げてきている。ポンド安や円安の材料で相対的にドルが買われている印象。
NY市場は、ドル買いが強まった。ドル円は一時140円寸前まで買われた。下げて始まった米国債利回りがNY時間に入って前日付近まで戻していることがドルの買い戻しを誘った。米株式市場が強い動きを見せており、米経済のソフトランディングへの期待がドルを後押ししている。円安の動きもドル円をサポート。ただ、節目の140円に接近すると、オプション勢の防戦売りや戻り待ちの売りオーダーも多数観測され、いまのところ大台は回復できていない。ユーロドルは一時1.11台へと反落。ユーロドルは前日に15カ月ぶりの高値をつけたが、ここからは苦戦する可能性もあるとの指摘が出ていた。いくつかのテクニカル指標に買われ過ぎのサインが示現しているという。ECB理事の中でもタカ派として知られるナーゲル独連銀総裁のインタビューが伝わっていたが、来週の利上げはほぼ確実だが、その先の金融政策については、今後発表される経済指標次第と述べていた。前日のクノット・オランダ中銀と同様に、これまでのタカ派色が若干緩んでいる印象もある。ポンドドルは1.28台後半まで一段安となったあとは、1.29台前半に下げ渋り。英インフレではサービスインフレの底堅さが指摘されていた。
20日
東京市場で、ドル円は下げ一服。ドル円は前日海外市場で140円寸前まで買われたが、大台に乗せきれず反落した経緯があった。東京市場では139.11近辺まで一段と軟化。ただ、その後は下げ一服となり、午後には139円台半ばまで戻した。ユーロドルは午前のドル安局面で1.1229近辺まで買われたが、その後は伸び悩んだ。ユーロ円は156円台前半で小動き。豪ドルが買われた。6月の豪雇用統計の好調な結果を受けて豪中銀による追加利上げ観測が強まり、豪ドル/ドルは0.6840付近、豪ドル円は14日以来およそ1週間ぶりの高値となる95.24付近まで一時水準を切り上げた。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米債利回りの上昇が手掛かりとなっている。米10年債利回りは3.76%付近から3.79%台へと上昇。ドル円は序盤に139.70近辺まで買われ、東京午前の下げを帳消しとした。その後は139円台半ば付近での揉み合いに。ユーロドルは1.1197近辺まで一時下落。その後の戻りは1.1210台までと限定的で、再び1.12ちょうど付近に下げている。ポンドドルは上値が重く、1.29台割れから安値を1.2889近辺に広げた。一方で、豪ドル/ドルは雇用統計の強さを受けて買い圧力が継続、高値を0.6847近辺まで伸ばした。前日の英インフレ鈍化の余波を受けて、欧州株や米株先物・時間外取引は堅調に推移。ただ、クロス円はまちまち。ユーロ円は156円台前半から半ばで揉み合う一方で、ポンド円は180円台前半から179円台に下落している。豪ドル円は買いが継続しており、95.40台に高値を伸ばしている。トルコ中銀は政策金利を15.0%から17.5%に引き上げた。大方の市場予想18.5%を下回ったがリラ売りの反応は限定的。
NY市場では、一段とドル買いが進行。ドル円は140円台を回復すると、140.50付近まで上昇。140円ちょうど付近には売り注文が多数観測されていたが、ストップを巻き込んで一気に駆け上がった。ドル全般に買い戻しが波及した。米新規失業保険申請件数が強い米労働市場を示唆したことがきっかけとなった。来週のFOMCやECB、日銀決定会合のイベントを前にドルショートを解消しておきたいムードも強まった。FRBは来週のFOMCでの利上げが確実視されている。ただ、9月以降については未知数の部分が多く、追加利上げ、据え置き、どちらにも可能性をオープンにして置くのではと見られている。ユーロドルは1.11台前半まで下落。短期のフェアバリューモデルによると、ユーロドルは依然として2.5%程度の割高感があるとみられた。ポンドドルは一時1.2840付近まで下落。前日の英消費者物価指数は総合、コア指数とも予想を下回り、インフレ鈍化の兆候が示されていた。ただ、英中銀が注視しているサービスインフレは依然として高水準が続いており、市場も8月3日の金融政策委員会(MPC)での0.50%ポイントの大幅利上げの可能性は温存。
21日
東京市場は、来週の中銀イベントを前に様子見ムードが広がった。ドル円は、朝方に6月の日本消費者物価指数(CPI)の総合と生鮮食品を除くコアが前月を上回ったことから、日銀の緩和修正観測を背景に円が買われ、一時139.75付近まで弱含んだ。しかし、その後は下げを帳消しにして、午後には140.33付近まで上昇。来週の日米中銀イベントを前に方向感に欠けた展開となった。ユーロ円も朝方に155.59付近まで下落した後は午後に156.29付近まで反発。ユーロドルは前日の下落の動きにやや調整が入っているが、1.1129から1.1145までの狭いレンジでの取引にとどまっている。
ロンドン市場は、円相場が急落している。関係者発言として「日銀は現時点でYCC修正の必要性乏しいとみている」と報じられたことに反応した。ドル円は140円台前半での揉み合いを上放れると一気に141.96近辺まで買われ、142円に迫った。その後、神田財務官が「為替相場、過度の変動は望ましくない」と定番の円安けん制発言を行ったが、一瞬141.50を割り込んだ後は再び141.80付近に買い戻されている。円が全面安となるなかでユーロ円は156円台前半から158.05近辺まで急伸。ポンド円は180円台後半から一時182.52近辺まで、豪ドル円は95円台前半から95.79近辺まで高値を伸ばした。ドル円の上昇がややドル買いの動きを広げたが、ユーロドルは1.11台前半での取引にとどまっている。ポンドドルは1.29付近で上値を抑えられると一時1.2840近辺まで下落。豪ドル/ドルは0.6780台から0.6744近辺まで下げた。ドル円の急伸を受けてドル指数は10日線を明確に上回っており、7月12日以来のドル高水準に反発している。
NY市場は落ち着いた動きとなった。ロンドン市場での円安進行の後、いったん調整が入る場面が見られたが、141円20銭台までの押し目にとどまり、午前中に141円台後半を回復。午後は141円台後半で膠着した。来週の市場で米FOMC、ECB理事会、日銀金融政策決定会合と主要通貨の中銀会合が相次ぐなどイベントを控える中で、ドルの上値追いに慎重姿勢が見られる一方、下値もしっかりで動意に欠ける展開となった。ユーロドルは東京市場からの1.11台前半推移の中で、レンジの中心付近でもみ合いとなっており、こちらも動意に欠ける展開。  

 

●為替相場 7/24-7/28 7/29 
まとめ7月24日から7月28日の週
24日からの週は、円買いが強まるとともにドル相場も堅調だった。この週は米FOMC、ECB理事会、日銀金融政策決定会合を主要中銀の金融政策発表が相次いだ。米FOMCとECB理事会はいずれも予想通り25bpの利上げを実施した。ただ、9月利上げについての明言はみられず利上げ継続姿勢はトーンダウンした印象。パウエル議長、ラガルド総裁はともに今後についてはデータ依存とした。ラガルド総裁からは、需要の弱さを指摘する声も上がり、利上げ継続の矛先が鈍った。ドル、ユーロともに売りの反応も、ドルに関してはその後発表された米GDP速報値などの強い結果で持ち直している。来週に英MPCを控えるポンドも、大幅利上げ観測が後退しており、上値を抑えられた。ドル相場はFOMC後に売られた以外はドル高の流れを維持している。ドル指数は7月10日以来の高水準を回復した。その中で、ドル円相場は例外。円買いが強まり水準を下げている。金曜日の決定会合を控えて市場には日銀がYCC修正に動くとの思惑が広がり、ドル円の値動きがボラタイルになった。木曜日NY時間に日経が日銀がYCC修正を議論と報じらことで、円買いが強まった。金曜日の決定会合では長期金利の0.5%をめどとして柔軟に対応する1%で指値オペを実施すると発表。ドル円は141円付近から138円付近で乱高下する場面があった。クロス円では円高の動きがより鮮明で、日銀がYCC修正に動いた影響が強く示された。ユーロ円は156円台から一時151円台へ、ポンド円は181円台から一時176円台へ下押しされた。また、来週に豪中銀理事会を控えて、豪ドルが軟調。対円は95円台から一時91円台まで下落。小売指標などの弱い結果を受けて、利上げと据え置きの見通しが拮抗している。
24日
東京市場は、落ち着いた動き。ドル円は141円台後半でスタート。週末には読売新聞が日銀会合で長期金利の上限について議論などと報じたが、朝は141円台後半でのしっかりした動きが続いた。磯崎官房副長官が日銀は共同声明に沿って必要な措置を適切に講じることを期待などと発言したことがやや円買いにつながり、昼前に141.35レベルまでドル安・円高となったが、動きはそこまで。午後は141円台半ばを挟んで様子見ムードが広がる展開。目立った動意が見られず揉み合いとなっている。ユーロ円は157円台後半から前半に下げたあとは157円台半ばに落ち着いた。ユーロドルは1.11台前半で膠着。今週は米FOMC、ECB理事会、日銀会合などが予定されており、週初から積極的な動きが出にくい地合い。
ロンドン市場では、ユーロとポンドが売られている。独仏ユーロ圏、英国などの7月PMI速報値が製造業、非製造業ともに予想以上の悪化となったことが背景。景気見通しの悪化とともに、市場での英中銀やECBのターミナルレート観測が引き下げられている。ユーロドルはロンドン朝方にはポジション調整的な買いで1.1147近辺に高値を伸ばした。その後は一連のPMIの悪化を受けて急落、一時1.1066近辺に安値を広げた。ユーロ円も157円台後半から156.30台まで下押しされた。ポンドドルは1.2884近辺に高値を伸ばしたあと、ユーロドルとともに下落。さらに英PMIの結果を受けて1.2808近辺まで安値を広げた。ポンド円は182円台割れから181.02近辺まで下落。ドル円はクロス円の下落や、欧州債利回り低下に連れた米債利回りの低下を受けて軟調に推移。141.60付近で上値を抑えられると、一時141.05近辺まで下落した。関係者の発言として、「日銀が23年度物価見通しを2.5%程度に大幅上方修正の公算大」と報じられたことに円買い反応がみられる場面もあった。ドル指数は欧州通貨安を背景に続伸している。
NY市場では、ドル買いが優勢。ドル円は140円台に下落する場面があったが、全体的にはドル買いが続いており、NY時間に入ると141円台半ばに戻している。先週末は日銀の報道に円安が進み、ドル円は141円台後半まで買い戻されたが、今週の重要イベントを前に上げが一服している。今週は26日にFOMCの結果が公表される。0.25%ポイントの利上げが確実視されており、市場の注目は次回9月以降に集まっている。ユーロドルは売りが続き、1.10台半ばまで下落。きょうは7月のユーロ圏PMIが弱い数字だったことがユーロ売りを加速させていた。新規受注や生産見通しは今後数カ月間のさらなる落ち込みを示唆しており、景気の先行き警戒感を強める内容となった。ポンドドルは今日も下落が続き、一時1.27台まで下落。この日の7月調査の英PMI速報値が予想を下回ったことでポンドは下げを加速させ、ポンドドルは2週間ぶりの安値となった。製造業は引き続き弱い動きを見せているほか、サービス業も予想を下回った。これにより総合指数は判断基準の50はかろうじて上回ってはいたものの、1月以来の水準に低下している。
25日
東京市場は、若干の調整も総じて落ち着いた動き。ドル円は141円台での推移。朝方に141.62近辺まで買われたが、米FOMCを控えて上値トライも慎重、昼前から調整が入った。141.21近辺まで下げたあとは141円台半ばへ。ユーロ円は156円台での推移。前日海外市場では156.20台まで下落したが、少し戻しての揉み合いとなっている。ユーロドルは1.10台後半での小動き。前日の下落を受けて上値は重いものの値動きは限定的にとどまっている。
ロンドン市場では、ユーロが軟調。7月ドイツIfo景況感指数が87.3と市場予想88.0や前回値88.6を下回ったことに反応。東京市場では総じてドル高に対する調整の動きが優勢だったが、ユーロドルは1.1087近辺を高値に指標発表後には1.1040近辺へと安値を伸ばしている。この動きとともに次第にドル高の動きが再燃。ドル円は141.20-60レベルでの振幅となっているが、足元では141.50台へと底堅い動き。ポンドドルはロンドン序盤につけた1.2865近辺の高値から1.2820台へと反落している。中国の不動産規制緩和の報道が好感された買われた豪ドル/ドルも0.6779近辺で頭打ちとなり0.6760付近に落ち着いている。欧州株や米株先物・時間外取引はやや買いが優勢。ただ、クロス円はユーロ円の下げの影響を受けて上昇一服。ユーロ円は156.90付近を高値に一時156.10付近まで下落。ポンド円は182円をつけたあとは181.50割れへと反落。豪ドル円は95円台後半で上昇一服し、高止まり状態となっている。
NY市場で、ドル円は140円台に下落。一時140.80近辺まで下押しされた。全体的には明日のFOMCの結果待ちといった雰囲気だが、その中でここ数日のドル買い戻しの調整が出ているものと思われる。明日のFOMCは25bpの利上げが確実視されているものの、市場はそれを完全に織り込んでおり、次回9月FOMCのヒントが何か出るか注目している。パウエル議長はあと2回の利上げの可能性を強調しており、その姿勢に変化はないとの見方も出ている。ただし、9月については、あと2カ月分のデータを確認できることもあり、今回はオープンにして置くものとも見られている。ユーロドルはやや上値が重いが1.10台は維持している。ポンドドルはNY時間に入ると買いが優勢となり、1.2865近辺まで反発した。21日線が1.28ドル台半ばに来ているが、その水準を回復しており、1.28ドルで一旦下げ止まっているようだ。
26日
東京市場では、ドル買い先行も午後には様子見となった。ドル円は140円台後半で揉み合ったあと、ドル買いが入ると141.19近辺まで上昇。その後は141円ちょうど付近での揉み合い。午後はほとんど同意をみせず、FOMC待ちとなっている。ユーロドルはドル買い局面で昼前に1.1038近辺まで軟化も、その後は1.1060付近まで反発。朝方のレンジは22ポイントと動意薄だった。ユーロ円はユーロドルの買い戻しもあって底堅く推移も156円は付けきれず、155円台後半での取引に終始した。豪ドルは豪インフレの伸びが鈍化したことで売られた。対ドルは0.68手前から0.6730付近まで一時下落。対円は95円台後半から一時95円台割れに。
ロンドン市場では、ドル売りが優勢。米FOMCの結果発表やパウエルFRB議長会見をNY市場後半に控えて、ロンドン時間は調整の動きが広がっている。ドル円の下げが主導しており141円付近から140.20台へと軟化している。クロス円も下げており、円高の面も。ユーロ円は156円手前で上値を抑えられると一時155.20台まで下落、ポンド円は182円ちょうど付近を高値に180.90付近まで下押しされた。ただ、ドルが全般に売られるなかでユーロドルは1.10台半ばから1.1080台へ、ポンドドルは1.28台後半から1.2920台へと上昇。クロス円は序盤の下げをやや戻している。東京市場で豪インフレの伸びが予想以上に鈍化したことで豪ドルが売られたが、ロンドン市場でも一段安。豪ドル円は95円台割れから94.75近辺に安値を広げている。対ドルでも上値を抑えられ、0.67台後半から半ばへと小安く推移。欧州株や米株先物・時間外取引は軟調に推移。原油先物も売られるなど、リスク警戒感も広がっている。
NY市場では、ドル売りの反応が強まった。午後にFOMCの結果が発表され、予想通りに25bpの利上げを実施した。ただ、次回9月に関しては選択肢をオープンにしている。その後のパウエル議長の会見では今後の利上げはデータに依存するアプローチをとる意向を強調。次回の9月の利上げの可能性を残してはいるものの、市場は利上げを見送るとの見方を強めているようだ。短期金融市場では9月利上げの確率を20%程度で見ている。議長の会見を受けてドル円は一時140円を割り込む場面が見られた。ただ、議長は改めて年内の利下げの可能性には否定的な見解を示したほか、2025年まで2%目標は達成できない可能性にも言及しており、ドル円も140円台前半に戻した。ユーロドルは買われ、1.1050台から一時1.11台乗せとなった。その後は1.10台後半で推移している。ポンドドルも1.29割れ水準から1.2960付近まで一時上昇した。ポンドは対ユーロでも堅調に推移した。
27日
東京市場は、ドル相場が振幅。前日米FOMC後のドル売りを引き継いでドル売りが先行。ドル円は1週間ぶりの安値となる139.38近辺まで一段と下落した。その後は反発、午後には140.20台と午前の下げを帳消しにした。日経平均が上昇に転じたことや、アジア株の堅調な推移からリスク選好の円売りが優勢となったことが下値を支えた。日銀金融政策決定会合の結果発表を明日に控え、神経質な動きが続いている。ユーロ円は155円台割れから午後には155円台後半まで買い戻された。ユーロドルはドル安調整で1.11台割れへと反落。ロンドン時間のECB理事会待ちに。午後の円売り傾向を背景に、リスク選好に敏感なオセアニア通貨は堅調に推移した。豪ドル円は95.42付近まで、NZドル円は87.62付近まで一時上昇した。
ロンドン市場では、ユーロが堅調に推移。ユーロドルはロンドン市場で1.11台乗せから1.1150付近まで上昇している。このあとのECB理事会については今回は25bp利上げ観測と米国と同様だが、利上げ開始が遅かったこともあり、今後の追加利上げ継続の見方が有力となっている。この点についてはラガルドECB総裁会見がカギとなる。欧州株や米株先物が買われるなどリスク選好の動きがみられるなかで、ユーロ円は155円台前半から156.20付近へと上伸。ユーロは対ポンドでも買われている。ドル安や円安とともにユーロ高の面も垣間見られている。ポンドドルはユーロドルにつれ高となり一時1.2996近辺まで買われたあとは、1.2950台へと反落。ポンド円も181.90台まで買われた後は181.50割れへと一時反落。上値追いは限定的。ドル円は東京市場で下に往って来いとなったあと、140円挟みでの揉み合いからやや買われている。
NY市場では、円相場が激しく上下動。ドル買いが先行。米GDP速報値、新規失業保険申請件数、耐久財受注など一連の米経済指標が予想を上回ったことに反応した。ECB理事会とラガルド総裁の会見を受けてユーロ売りが強まり、それがドル買いを加速させた面も。ユーロドルは1.11台割れからさらに1.10台を割り込んだ。ロンドン市場午前の上昇を解消するとともに、下値を広げている。ポンドドルも1.29台割れから1.28台割れまで下落。NY午後には 日銀は28日に開く金融政策決定会合でイールドカーブコントロール(YCC)の修正案を議論すると報じられた。長期金利の操作の上限は0.5%のまま据え置くものの、市場動向に応じて0.5%を一定程度超えることも容認する案が浮上しているという。円買いが急速に強まり、序盤に141円台に乗せたドル円は一気に139円台に突入、一時138円台に下落する場面もあった。クロス円も全般的に下落。ユーロ円は155円付近から152円台へ、ポンド円は181円付近から177円台まで急落している。ポンドにとっては来週の英MPCが注目されているが、市場では50bpの大幅利上げ観測が30%程度まで低下している。
28日
東京市場は、ドル円が乱高下した。前日NY市場で日経が日銀がYCC修正を議論と報じたことで、ドル円は141円台から138円台後半まで急落した。この流れを受けてきょうは日銀金融の結果が発表された。日銀は長期金利の0.5%をめどとして柔軟に対応すると発表。1%で指値オペを実施するとした。YCC柔軟化(修正)が発表されている。発表とともにドル円は139円台から一気に141.07近辺まで急伸、その後138.07近辺まで急落を激しく振幅。植田日銀総裁会見とともに139円台に戻す動きとなっている。ユーロ円は155円手前まで急伸したあと151.40付近まで下押し、その後153円を挟む水準に落ち着いた。相当に荒っぽい動きとなった背景には、日銀の発表がやや分かりにくく、海外勢が反応に惑った部分がありそう。ユーロドルは1.09台での推移。ユーロ円が安値を付ける際にいったん下げ、少し戻したところで、ドイツ・ノルトライン-ヴェストファーレン州のCPIが弱く出たことで1.0950割れまで下落。その後1.0985前後へ戻している。
ロンドン市場では、ドル買いが一服している。ドル買いが先行したが、次第にポジション調整的なドル売りが優勢になっている。ユーロドルは一時1.0944近辺に安値を広げた後は下げ一服から反発の流れとなり高値を1.10台乗せへと伸ばしている。ポンドドルも東京午後につけた1.2763近辺を安値に、1.27台後半での揉み合いを経て、ロンドン市場では1.28台乗せから1.2870台へと高値を伸ばしている。対ユーロでもポンドは堅調な動き。来週の英金融政策委員会(MPC)での追加利上げが意識されているもよう。ドル円は今日の主役だった。東京昼過ぎの日銀決定会合ではYCCの柔軟化が打ち出された。東京市場での激しい振幅は次第に落ち着き、ロンドン序盤には140円台を回復する場面があった。その後はドル売り圧力とともに139円付近へと軟化している。植田日銀総裁会見では、緩和継続の基本姿勢を示しつつも、物価上振れ顕在化してからの対応は後手に回り混乱する、と今回の措置導入を説明した。YCCによる長期債上限は事実上0.5%から1.0%に拡大されている。
NY市場でドル円は買い戻しが活発化し、141円台に戻した。本日の日銀決定会合による下げを完全に解消。本日は一時138円台前半まで急落していた。ユーロドルはNY時間にかけて買い戻しが優勢となり、1.10台を回復。きょうはドル高が一服し、ユーロドルも買い戻しが膨らんだ。ただ、1.1050付近に21日線が来ており、いまのところは上値を抑えられている。 

 

●為替相場 7/31-8/4 8/5 
まとめ7月31日から8月4日の週
31日からの週は、ドル高が進行した。7月中旬からのドル高傾向が続いている。ただ、この週のドル高はリスク回避的な背景があった。格付け会社フィッチが米国の格付けを一段階引き下げたことで、米債が売られ(利回りは上昇)、世界的に株式市場に調整圧力が広がった。米債利回り上昇が金利面からドルを下支えし、株安がリスク警戒面からドル買いや円買いを誘った。ドル円はYCC柔軟化後に、長期債利回りが上昇する局面で臨時オペを実施している。ドル円は144円手前まで上昇する場面があった。しかし、世界的な株安の動きに142円付近まで下押しされるなど総じて上昇一服。リスク動向に敏感な豪ドル/ドルは0.67台から0.65台へと下落。ポンドドルは英金融政策委員会(MPC)での利上げ幅が25bpにとどまったことで、一部に50bpを予想していた向きの失望売りを誘った。市場のターミナルレート予想は低下し、ポンドドルは1.28台から1.26台まで一時下落。ユーロドルは1.10台から1.09台へと水準を下げた。ドル買いに押されつつも、対ポンドでは買われており、下落幅は限定的だった。ただ、週末の米雇用統計でが雇用増が市場予想を下回り、ドルが売り戻されて週の取引を終えた。ドル円は141円台半ばまで一段と下げた。
31日
東京市場は、円売りが強まった。先週末の日銀金融政策決定会合でYCC柔軟化が打ち出されたことで海外市場で円が売られた。ドル円は138円台から141円台まで3円幅で乱高下したあと、141.10台まで上昇して取引を終えていた。週明けは調整が入り140.70付近まで反落。円債利回りの上昇が円の買い戻しにつながった。しかし、日銀は臨時オペを実施。緩和継続をアピールしたことで一気に円売りが強まった。141.95近辺まで買われている。ユーロ円は155.11近辺まで下押しされたあと156.28近辺まで上昇。ポンド円も180.80台から182.40台まで上昇した。対円での動きが中心となり、対ドルでは落ち着いた動き。ユーロドルはやや上値が重く、朝の1.1030台から1.1005近辺へと小安い。先週末米PCEデフレータの鈍い伸びを受けたドル売りに上昇したが、週明けは調整が入った形。
ロンドン市場では、円安とともにドル安の動きが優勢。円安は東京午前に日銀が臨時オペを通知し、長期金利の上昇を抑え込んだことが背景。先週末に日銀がYCC柔軟化を打ち出したあとは、円買いよりもむしろ円安が進行しており、週明けもその流れが継続している。ドル円はロンドン朝方に142円台に乗せると、その後も買われて142.50近辺まで高値を伸ばした。クロス円も堅調。ユーロ円は156円付近から157円台乗せ、ポンド円は182円付近から183円台乗せ、豪ドル円は95円台乗せから85.50付近にそれぞれ高値を更新している。序盤に売りが先行した欧州株や米株先物も下げ渋りからプラス圏を回復とリスク選好の動き。中国が不動産支援に加えて消費回復にも意欲を見せたことが好感されているもよう。豪ドル買いの勢いが目立っている。欧州通貨ではユーロ買い・ポンド売りの動きもみられている。ユーロドルが1.10台前半で高値を1.1040付近に伸ばす一方で、ポンドドルは1.2830台から1.2860台での振幅にとどまっている。この日発表されたユーロ圏第2四半期GDPが前期比+0.3%と回復したことや、同7月消費者物価速報でコア前年比が+5.5%と低下予想に反して前回並み高水準にとどまったことなどが材料視されたようだ。
NY市場で、ドル円は伸び悩むも142円台で推移。NY時間に入って一時142.70付近まで一段高。その後は142円台に高止まりしている。週明けになってドル円は更に上げ幅を広げる格好となっているが、日銀が金融緩和修正の方向に本格的に舵を切ったとしても、米欧との金利差は相当程度あり、調達通貨としての円の魅力は当面続くとの見方もあるようだ。また、日銀がYCC修正に踏み切ったのは中途半端な試みで、非常に不可解な動きだったとの指摘も聞かれる。YCCの方針は維持され、目途としての上下0.5%は維持された。ただ、上限は最大1.0%まで動く目標になったという。ユーロドルは伸びを欠き、取引終盤には1.09台に値を落とした。市場は先週のECB理事会を受けて、9月の利上げは見送られるとの見方を固めており、第3四半期以降の景気減速への警戒感も強まる中、この先の数字を確認したい意向が強いもよう。ポンドドルは方向感がなく、1.28台での振幅。今週は英中銀金融政策委員会(MPC)の発表が控えており、ポンドに関しては、その結果待ちの雰囲気が強い。
1日
東京市場は、円売りが優勢。ドル円は142円台前半で取引を開始、午前中に142.79近辺まで買われて前日高値を更新。主要金融関係閣僚が相次いでYCC修正について金融緩和の持続性を高めるものという認識を示したことや、日経平均の堅調な動きを受けたリスク選好の動きなどが下支えとなった。午後には。日本10年国債の入札で最高落札利回りが0.603%と2014年6月以来の高水準となったが円買いは目立たず、日経平均がさらに上昇する中で142.84近辺まで一段高となった。ユーロ円は157円手前まで上昇。ユーロドルはやや上値が重く1.0980付近に軟化、1.10付近が重くなっていた。豪中銀は政策金利を2回連続で据え置いた。市場ではやや利上げ観測が優勢だったことから、豪ドル売りの反応。対円では95円台半ばから一時95.08近辺まで下落。
ロンドン市場では、ドル買いが優勢。豪ドル/ドルの下げが主導している。この日の豪中銀理事会で政策金利が2回連続で据え置かれたことが豪ドル売りを誘った。事前の見通しは25bp利上げ観測がやや優勢も、据え置き観測もあり見方が分かれていた。また、午前に発表された中国財新PMIが50割れとなったことも重石だった。東京時間に0.67台割れとなったあと、ロンドン時間には0.6620台まで下押しされている。この動きとともにNZドルやカナダドルなど景気敏感な面のある通貨も下落し、ドル買いにつながった。ユーロドルは1.10付近が重くなると1.0960台まで軟化。ポンドドルはしばらく1.28台前半で揉み合っていたが、足元では1.2790付近へ下押しされている。英欧製造業PMI確報値はいずれも50割れとなり、製造業の景況感の弱さが示された。ドイツ雇用統計の改善には目立った反応はみられなかった。ドル円は東京市場で142円台前半から後半へと買われたあとは高止まり状態。足元では高値を142.93近辺に小幅更新している。一連の米企業決算を受けて米株先物が下げ渋りとなっており、やや円安で反応した面も指摘される。
NY市場で、ドル円は143円台を回復。全体的にドル高の流れが続いたことに加えて、前日には日銀の臨時オペもあり、YCC柔軟化後も円金利が抑制的に推移していることもドル円を下支えした。この日発表の米経済指標は予想を下回る弱い内容となったものの、ドルは堅調な推移を持続している。インフレの鈍化、FRBの利上げサイクル終了、そして、景気後退は回避され、米経済のソフトランディングへの期待が市場に広がっている。景気の行方に為替市場の焦点がシフトすれば、シナリオはドル高との見方は根強い。ユーロドルは下値模索が続き、一時1.09台半ばまで下落した。ただ、この日発表された6月ユーロ圏失業率が低下するなど雇用の強さがECBの追加利上げ観測につながる面も指摘された。ポンドドルは下げ幅を拡大し1.27台半ばまで下落した。強いサポートの観測されていた1.28の水準を下回ったことで、先週に見られた反転の兆しは一旦完全に消滅している。英中銀は今週の英中銀金融政策委員会(MPC)で利上げを実施すると広く予想されている。ただ、当初期待されていた大幅利上げの可能性は後退させており、25bpの通常の利上げに留めるとの見方が有力視されている。
2日
東京市場では、午後に円買いが強まった。ドル円は前日海外市場で143.55近辺まで買われた。東京早朝は143.30前後で取引されていたところ、格付け会社フィッチが米国の格下げを発表、売りが急速に植われて142.75近辺まで下落した。格付けはAAAからAA+に一段階引き下げられ、見通しは安定的とした。その後、再び143.30台まで買い戻された。今回の格下げでの機関投資家などの投資状況への影響はそれほどないという見方や、格下げ後に米債利回りが若干低下(米債券価格が上昇)し、市場もこの格下げを深刻にとらえていないとの思惑がドル買い円売りを誘った。しかし、午後には再び142.60台まで下落、安値を広げた。日経平均が後場に840円超安と一段と下落し、リスク警戒の円買いにつながった。日銀の定例オペが増額されなかったことで10年債利回りが直近で最も高い0.62%台を付けたことも円買いに。リスク警戒の動きはアジア全般に広がっており、日経平均だけでなく香港、韓国などの市場での株安が見られた。中国株に関しては景気支援策を好感も、未成年のスマホ規制を発表したことでハイテク株に売りが出ていた。豪ドル円は午前の94.80台から94円ちょうど前後へ値を落とした。
ロンドン市場では、リスク回避の円買いが先行。昨日のNY終盤にフィッチが米格下げを発表したことがきっかけだった。東京市場からの株安・円高の流れを受けてロンドン序盤にはドル円は142.24近辺まで安値を広げた。しかし、欧州株や米株先物・時間外取引が下げ一服となったことで142.70台へと下げ渋っている。ユーロ円も156円前半から後半へ、ポンド円は一時182円台割れから182円台半ばへと反発。ただ、東京市場からの円買いを戻すには至らず、欧州株なども引き続きマイナス圏を脱していない。円相場の振幅を横目にドル相場自体は大きな動きを示していない。ユーロドルは1.09台後半でやや上値重く推移。あすに英政策金利発表を控えるポンドドルは1.27台後半で売買が交錯している。このあとのNY市場では米ADP雇用統計が発表される。結果を見極めたいとの短期ポジション調整も入っているようだ。
NY市場で、ドル円は143円台に戻した。東京からロンドン時間にかけては円高がドル円を押し下げていた。株式市場が売りに押され、リスク回避の円高が広がっていた。ただ、NY時間に入ると、米ADP雇用統計が強い内容となったことでドル高がドル円を下支えしている。金曜日の米雇用統計が強い内容になるのではとの見方も出ている。ただ、両指標は必ずしも方向が一致するわけではない点は留意されたい。また、今回の米国の格下げは長期的に米国の一流の地位を損なうものではなく、影響は一時的との声も多い。株式市場については、ソフトランディングへの期待で楽観的になっていた半面、急ピッチな上昇で高値警戒感も出ていた。「今回の米国の格付下げは、ちょうど良い利益確定売りの口実を与えた」との指摘も。ユーロドルは下値模索が続き、一時1.0920付近まで下落。9月ECB理事会での利上げ織り込みは30%程度に低下している。ポンドドルは一時1.26台に下落。明日は英中銀金融政策委員会(MPC)の結果が発表され、ポンドにとっては最注目となる。市場は一時期高まっていた50bpの大幅利上げの可能性を後退させており、25bpの通常利上げを有力視している。
3日
東京市場では、円売りが優勢。ドル円は午前の揉み合いを経て、午後には7月7日以来、約1カ月ぶりの高値となる143.89近辺まで買われた。日銀が臨時オペを通知し、金利上昇を抑える姿勢を示したことが支えとなった。その後は143円台半ばまで押し戻されている。日本10年債利回りは0.65%台から0.63%まで上げ幅を縮小したあと、再び0.64%台に乗せた。ユーロドルは、午後に1.0919付近まで弱含んだあと、下げを帳消しにしている。ユーロ円は、ドル円同様に午後に157.23付近まで上昇したあと、伸び悩んでいる。
ロンドン市場では、リスク回避の円買いに押される展開。フィッチの米格下げの影響が続いており、米債が売られる(利回り上昇)とともに欧州株や米株先物が続落している。ドル円は東京午後の上昇を打ち消すと、安値を142.76近辺まで広げている。クロス円も総崩れ、ユーロ円は157円台乗せから156円台割れまで下落。英中銀政策金利発表を控えたポンド円は売り圧力がさらに強く、182.70台から180円台後半へと下落、さらに英中銀が25bp利上げと大方の予想通りとなり、一部の50bp利上げ派の売りを誘った。ただ、事前に売られていたこともあって180.45近辺まで下げたあとは181円付近へと下げ渋っている。ベイリー英中銀総裁はインフレは年内を通じて低下する公算大とこれまでの認識を繰り返した。ドル相場はドル買いが優勢。ポンドドルが1.27台割れから1.2620付近まで下げたほか、ユーロドルは一時1.0912近辺まで小幅に下げた。ただ、ドル円の下げがドル高にブレーキをかけて、ドル指数の上昇は小幅にとどまった。ドル指数は引き続き7月7日以来のドル高水準となっている。
NY市場では、ドル買いが一服。ドル円は東京時間に143円台後半まで上昇したが、NY時間に入ってからは一時142円台前半まで下落。米国債利回り上昇と世界的な株安を背景に、リスク回避からドルは堅調に推移していた。ただ、明日の米雇用統計を前に投資家は警戒感を強め、ドルロングのポジション調整を出していた可能性もありそうだ。ユーロドルは1.09台半ばまで買い戻された。市場はECBの9月利上げの可能性を後退させてはいるものの、それへの言及も根強くある状況。ECBがコアインフレに重点を置いていることが、その大きな背景にあるようだ。きょうはドイツの6月の貿易収支が発表になっていたが、この結果を受けて市場からは、「ドイツの輸出は経済を牽引していない」との指摘がでていた。最近発表されたデータは追加利上げが必要であることをほとんど示唆していない。金利がすでにターミナルレート(最終到達点)に達している可能性も。ポンドドルは一時1.27台まで買い戻され、ロンドン時間の下げを完全に取り戻した。英中銀は予想通りに25bpの利上げを実施し、政策金利を5.25%に引き上げた。声明では「インフレが持続すれば金利は上昇する可能性」との文言を維持し、追加利上げの可能性に含みを持たせている。ただ、経済の回復力も監視していることを示す一行を追加したほか、現在の政策が「制限的」とみられていることも新しく加えた。短期金融市場ではターミナルレート(最終到達点)の予想が低下し、現在は5.75%で利上げ終了との見方。一部で注目されていた量的引締め(QT)のぺース拡大については、10月以降の保有国債の売却を来月に決定すると述べていた。
4日
東京市場は、米雇用統計を控えて小幅の振幅にとどまっている。ドル円は午前の取引で142.88近辺に高値を伸ばした。米雇用統計を控えて前日海外市場での下落に調整が入ったほか、仲値に絡んだ本邦輸入業者からのドル買い・円売り注文が入ったこともドル円の上昇につながった。しかし、仲値公示後は売りが優勢となり142.32近辺まで下落。米債利回りの上昇一服が上値を抑えた。ユーロドルは1.0950を挟んでの小動き。米雇用統計を前に様子見ムード。豪ドルは、中国による豪州産大麦関税の撤廃報道で一時上昇も、その後動きが落ち着いた。
ロンドン市場では、ドル買いの動きが優勢。ドル円は東京午前に142.90付近まで買われたあとは売りの流れとなり、一時142.30付近まで下押しされた。その後は142円台半ばから前半で揉み合ったが、ロンドン時間に入ると米債利回りの上昇とともに142.80付近へと再び上昇している。欧州株や米株先物は小反発したこともドル円の下支えとなっていた。ただ、これまでのところ東京レンジ内での取引とドル買いは調整の範疇にとどまっている。米雇用統計の結果を見極めたいとして一方向への値動きは続かず。ユーロドルは1.0960付近から1.0935近辺へとじり安。前日NY終盤から東京午前にかけての上昇を戻している。ECBは基調インフレが今年前半にピークに達した可能性が高いと指摘、レーンECBチーフエコノミストはインフレは年後半に大幅に低下するとした。9月理事会で政策金利を据え置く可能性がでているが、ユーロ単体での売りの動きは特段みられていない。ポンドドルは1.2740付近の高値を東京市場でつけたあとはじり安となり、1.27台割れ水準へと軟化。ロンドン時間は安値付近での揉み合いと動意薄。対ユーロではややポンド売り。ユーロ円は156円台前半、ポンド円は181円台前半での揉み合いと方向性に欠けている。
NY市場はドル売りが強まり、ドル円は141円台に下落。一時141.55付近まで下落。この日発表になった米雇用統計を受けて売りが強まった。非農業部門雇用者数(NFP)が予想を下回ったことで、雇用ひっ迫への懸念は後退。しかし、失業率は前回から低下し、平均時給も前年比で4.4%と予想を上回り、高い水準が続いていることから、市場が期待しているFRBの利上げサイクル終了を正当化するまでの内容ではない。短期金融市場でも見方に大きな変化は出てない。ただ、今週発表の雇用指標が強かったことから、米雇用統計も強い内容になるのではとの見方も高まっていただけに、その意味では安心感も広がっていたようだ。 

 

●為替相場 8/7-8/11 8/12 
まとめ8月7日から8月11日の週
7日からの週は、円売りが優勢だった。中国貿易統計、中国不動産債務問題、イタリアの銀行課税、地政学リスクによる原油高などさまざまなリスク警戒の材料がでている。そのなかで、ドル円相場は着実に水準を上げ、クロス円も堅調な足取りを示している。各主要国の金融政策がインフレと景気をにらんで今後の見通しが定まらないなかで、日銀の揺るぎない緩和政策継続姿勢が再び市場のテーマとしてクローズアップされているようだ。この週に発表された日本の賃金統計では15カ月連続で実質賃金が低下しており、緩和継続の必要性を裏打ちしていた。木曜日には注目の7月米消費者物価指数が発表された。前年比は+3.2%と市場予想+3.3%を若干下回ったが、前回の+3.0%からは上昇していた。ドル相場は売りの初動をみせたが、すぐに切り返してドル高方向の動きでNY市場を終えていた。ただ、ドル指数の流れをみると、先週までの上昇のあとは高止まり状態となっており、今週は上下動を繰り返している。8月に入ってからは明確な方向性に欠けている。
7日
東京市場は、ドル売りが一巡し、ドル買いが優勢になった。ドル円は先週末の米雇用統計後のドル売りの流れを受けて、売りが先行し141.52近辺まで安値を広げた。しかし、141.50レベルの買いを崩せずに反転した。日経平均のプラス転を受けたリスク選好の円売りもあって142円台を回復。昼過ぎには142.30近辺まで上昇。午後は142円台前半で揉み合った。ユーロドルは1.1010台からドル買いに押されて1.0980付近まで下落。ECBの追加利上げ期待の後退で上値が重い展開。ポンドドルは1.2760台から1.2718近辺まで下落。ただ、午後に入るとクロス円の買いとともにユーロやポンドの売りは一服した。
ロンドン市場では、ドルがじり高の動き。米10年債利回りが4.05%付近から4.12%付近へと上昇しており、ドル相場を下支えしている。ただ、市場からは先週末の米雇用統計後のドル売りの反動にとどまっているとの見方も。ロンドン時間にはドル円は142円台前半で揉み合うなかで一時142.45近辺まで高値を伸ばした。ユーロドルは東京市場で1.10台が重くなったあと、ロンドン時間には1.0965近辺に安値を広げている。ポンドドルはロンドン朝方に1.2713近辺まで下押しされたあとは、1.27台前半で売買が交錯。クロス円は小動き。ユーロ円は156円台前半で揉み合い、ポンド円は181円を挟んでの揉み合いから小幅に高値を伸ばしている。ユーロ対ポンドではややユーロが軟調も、先週末のレンジ内にとどまっている。
NY市場では、ドル相場が上下動。ドル円はNY朝方には戻り売りに押された141円台に反落する場面があった。しかし、すぐに142円台に戻して142.60付近に高値を伸ばした。先週末の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)は予想を下回り、歴史的な基準値でもある20万人増を下回ったものの、失業率や平均時給は米労働市場の力強さを依然として示しており、市場のFRBの利上げサイクルの見通しに大きな変化を与えなかった。その意味では今週の米消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)が何らかのヒントを与えてくれるか待っている状況のようだ。ユーロドルは1.0965近辺まで下押しされたあとは、1.10ちょうど付近まで戻した。きょうはドイツの6月の鉱工業生産が発表になり、予想を大きく下回る減少となっていた。新規受注がしばらく下降線を辿っていることから、生産高は引き続き低迷し、ドイツ経済は下半期に縮小する可能性が高いという。ポンドドルはNY時間に入ってからは買い戻しがみられ、1.27台後半まで上昇。高水準の英インフレと、それが中期的に持続するリスクが英中銀の早期利下げの可能性を低くしているとの指摘がみられた。
8日
東京市場は、リスク警戒のドル買いが広がった。格付け会社ムーディーズ・インベストメントが米BNYメロン、ステート・ストリート、USバンコープなどの複数行を格下げ方向で見直ししたことや、M&Tバンクなど中小銀行10行を格下げしたことに反応した。米株先物が下落、米債利回り低下とともにドルが買われた。リスク感応度の高い豪ドル、NZドルなどの対ドルでの売りが目立った。一方で、円相場は円売りが優勢。朝発表された日本の賃金統計が予想外に伸び鈍化となったことで、日銀の緩和策長期化期待につながった。ドル円はドル高と円安の両面から支えられて、朝方の142.41近辺から143.43近辺まで上昇。ユーロ円は156.69近辺から157.75近辺まで上昇。ユーロドルは1.1006近辺から1.0977近辺まで一時下落。NZドル円は87.30台から87円台割れへと下落。
ロンドン市場では、リスク警戒のドル買いが優勢。この日発表された7月中国貿易統計で輸出・輸入がいずれも大幅減となったことが同国の景気に対する不透明感を広げた。また、東京昼頃に「格付け会社ムーディーズがUSバンコープ、BNYメロン、ステートストリート含む米銀6行を格下げする方向で検討」、ロンドン早朝に「イタリア政府 銀行の余剰利益に対する課税を閣議決定」などと報じられた。欧州株は銀行株や資源株などが主導する形で下落している。リスク警戒が強まるなかで、米10年債利回りは4.08%付近から3.99%台へと低下。為替市場ではドル買いと円買いに。ドル円は東京市場で142円台半ばから143.43近辺まで買われたが、ロンドン時間には一時143円台割れとなったあと、143円台前半で揉み合っている。ユーロドルは1.1011近辺まで買われたあと、方向転換して1.0950台へと安値を広げている。ポンドドルも1.27台後半から1.2720付近へ下落、豪ドル/ドルは0.66台半ばから0.65台割れ目前まで下落。リスク回避圧力でクロス円も軟調。ユーロ円は157.50超え水準から157円台割れへ、ポンド円は182円台後半から182円ちょうど付近へ軟化。豪ドル円は93円台後半から93.10付近へと下落している。
NY市場では、ドル買いが優勢。米株式市場に売りが強まるなど、リスク回避の雰囲気が強まる中、為替市場はドル高の動きが見られた。一方、ドル円については円高も見られ、143円台で売買交錯。中国の貿易収支が予想以上に弱い内容が示されたことから、中国経済への不透明感が更に高まっていることで市場に警戒感が広がっている。ただ、日本の厚労省がこの日公表した6月の毎月勤労統計(速報値)が日銀の金融緩和姿勢を正当化し、円安基調が続くのではとの見方が出ていた。ユーロドルは1.09台半ばまで下落。 きょうはドイツの7月の消費者物価指数(HICP)確報値が発表されていたが、それを受けて、ドイツのインフレは今後数カ月でさらに鈍化するとの見方も出ている。ポンドドルは一時1.26台に下落。きょうは7月の英既存店売上高が発表になっていたが、前年比で1.8%と昨年10月以来の低い伸びとなっていた。一部からは、直近の英経済指標に軟化が見られていることから、英中銀は次回9月の金融政策委員会(MPC)で、利上げを一時停止するのではとの見方も。ただ、根強いインフレ状況もあって、利上げ停止観測は時期尚早との意見もあった。
9日
東京市場で、ドル円は143円台前半での推移。明日の米消費者物価指数(CPI)を前に様子見ムードが広がった。昨日の海外市場ではリスク警戒の動きがやや優勢となったが、ドル円はドル買いと円買いが交錯し動きにくい展開となった。143.30付近から143.10前後まで軟化も、143.40付近に反発と方向性に欠けた。米債利回り動向も一方向には傾かず。ユーロドルは1.0952-1.0979までの狭いレンジにとどまった。ユーロ円は157円を挟んでの推移。若干動きが出たのがオセアニア通貨で、対ドル、対円で一時買われた。中国消費者物価指数のマイナス転は相場に大きな影響を与えず。中国人民銀行の中心レート元高設定や、介入と見られる中国国有銀行のドル売り・元買いなどに加え、中国当局の景気支援への期待感などが買いにつながった。NZ中銀が発表した2年インフレ見通しが前回から小幅ながら上昇したことはNZドル買いにつながった。豪ドル円は93円台半ばから一時94円台乗せ。NZドル円は86円台後半から87円台乗せでの上下動。
ロンドン市場では、ユーロが堅調に推移。前日に株安を招いたイタリア政府の銀行超過利益に対する課税について、きょうは課税額が銀行資産の0.1%を超えないとの上限を設けると表明した。銀行株が買い戻され、欧州株全般にリスクセンチメントが改善した。独仏株価指数は1%超高となっている。ドル円は143.00付近まで軟化したあと、143.40付近まで反発。ユーロ円は157円台割れでは買いが入り、高値を157.50台に更新。ユーロドルは1.09台後半で一時1.0990付近まで買われている。ただ、ポンドは対ユーロで売られた影響で、対ドルでも1.2780台まで買われたあとは1.2730付近に反落、対円は183円をつけたあとは182.50割れまで反落と上値を抑えられている 明日の米消費者物価指数発表を控えて、前日の動きに調整が入る面もあり、全般的には方向性が定まらない展開となっている。
NY市場は、ドルが底堅く推移。市場ではリスク回避の雰囲気も流れる中で、根強いドル高が続いている。ただ、明日の米消費者物価指数(CPI)の発表待ちムードもあって方向感は出にくい状況。ドル円は143円台半ばで売買交錯後に143円台後半へと水準を上げている。ユーロドルは1.10台に迫る動きがみられたが、上値は重く1.09台後半での推移にとどまった。ポンドドルは1.27台半ばから1.27台前半へと軟化。この日は主要な米経済指標発表はみられず、市場の焦点は米CPIに集まっていた。
10日
東京市場は、ドル円が堅調。前日海外市場で143円台前半から後半に上昇した流れを受けて、午前には前日高値を上回った。午後には一段高となり144円台を回復、7月7日以来およそ1か月ぶりの高値水準となる144.10付近まで買われた。今夜発表される7月の米消費者物価指数(CPI)を控えたポジション調整とみられる動きや、日経平均が一時300円超の上げとなった影響からリスク選好の円売りが優勢となった。ユーロ円は、午後に円安の流れを受けて上値を試し、2008年以来15年ぶりの高値となる158.38付近まで水準を切り上げた。ユーロドルは、米CPIを前に様子見ムードが広がり、1.0980前後で小動き。
ロンドン市場では、ドル売りが優勢。ドル円は144円台に乗せたあと、ロンドン時間には143円台後半へと反落。ただ、下押しの動きも限定的となっており、この後発表される米消費者物価指数(CPI)の結果を見極めたいとのムードが広がっている。欧州株や米株先物が堅調に推移しており、クロス円の上昇がドル円の下げを限定的としている面も。ユーロ円は158円台後半、ポンド円は183円台後半へとじり高の動きとなっている。ドル指数が10日線のサポートを下回るなど全般的にドル売りが優勢で、ユーロドルは1.10台乗せから1.1030付近へ、ポンドドルは1.27台前半から1.2770台へと高値を伸ばしている。米10年債利回りは4.02%台に上昇したあと、3.99%台に低下と方向性が定まらない。
NY市場では、ドル円の上値追いが続いた。この日の米消費者物価指数(CPI)は前年比+3.2%と予想+3.3%を若干下回る程度ではあったが、インフレ鈍化を示唆するには十分な内容だった。短期金融市場ではFRBの年内利上げの確率を低下させている。少なくとも9月FOMCでの利上げはほぼないと見られている状況。これを受けて為替市場では一旦ドル売りの反応が見られ、ドル円は143円台前半に下落したが、動きが一巡すると逆にドルの買い戻しが強まった。144円台後半に高値を伸ばしている。本日の米CPIは、ディスインフレ、FRBの利上げサイクル終了、そして、底堅い米経済といったソフトランディングのシナリオに沿った内容でもあり、その場合、為替市場はドル買いとの見方も根強くあるようだ。イベントを通過したことで、円キャリー取引が復活しているとの指摘も。次の焦点は8月下旬にワイオミング州のジャクソンホールで開催されるFRBのシンポジウムに。ユーロドルは一瞬1.10台後半に買われたが、すぐに切り返して売られ、1.09台後半に下落。ポンドドルも1.28台に乗せたあとは1.27台割れへと急反落した。 
11日
東京市場は、山の日の祝日のため休場。
ロンドン市場は、小幅の値動きにとどまっている。全般に昨日の海外市場で見られたドル高の動きを受けて、ドル高圏での推移となっている。ドル円はアジア朝方に144.90近辺まで買われ、145円の大台に迫った。しかし、上値を抑えられてロンドン序盤には144.55近辺まで軟化した。その後は144.50台での揉み合いが続いており、総じて動意薄。ユーロドルはアジア時間に1.0990付近での取引が続いたあと、ロンドン序盤には1.1003近辺まで買われた。しかし、前日からの反発の動きは限定的で再び1.0976近辺まで下落。足元では1.0990台とレンジ内にとどまっている。ポンドドルは買いが優勢。日本時間午後3時に発表された英GDP指標が予想から上振れしたことが買いを誘い、1.2670台から1.2720台へと買われた。その後は買い一服も下値は堅い印象。欧州株は前日高の反動で軟調に推移。ユーロ円は159.22近辺まで買われたあとは158.72近辺まで一時下落。ポンド円は183.50付近から184.12近辺まで買われたあとは183円台後半での揉み合いとなっている。
NY市場は、この日発表の米生産者物価指数(PPI)が全体的に予想を上回る内容となったことから、為替市場はドル買いの動きが優勢となった。ドル円はアジア時間に144円台後半に上昇した後、ロンドン市場に入って144円台半ばに伸び悩んでいた。しかし、米PPIを受けて再び144円台後半に戻し、145円台を試す展開が見られた。  

 

●為替相場 8/14-8/18 8/19 
まとめ8月14日から8月18日の週
14日からの週は、ドル買いと円買いが交錯。米FOMC議事録で今後の利上げの可能性が示唆されたことが、日銀の緩和策長期化観測と対照的であることから、ドル円相場を押し上げた。一時146円台半ばと、昨年の政府・日銀の為替介入実施水準を上回る円安・ドル高水準となった。英国の賃金上昇率の加速やコアインフレの高止まりを受けて英中銀の追加利上げ観測が高まり、ポンド買い・円売りとなったこともドル円相場を下支えした。しかし、その一方で中国発のリスク回避圧力も強まっている。同国不動産大手の碧桂園(カントリー・ガーデン)の債券利払い停止がデフォルト懸念を広げた。さらに、2年前に危機が発生した中国恒大がここにきてNYで連邦破産法15条の適用を申請した。中国売りの様相を呈するなかで、人民元安が進行し、リスク警戒のドル高圧力となった。世界的に株式市場に調整圧力がかかったことで週後半には円が買い戻される動きもみられている。中国当局は為替市場や株式市場での対応を示したが、市場に広がる中国経済先行きに対する不透明感を払しょくするには至っていない。
14日
東京市場で、ドル円は高値を伸ばした。午前に145.22近辺まで上昇、先週末高値を更新した。その後すぐに144.66近辺まで急反落も、144.90台と先週末終値付近に落ち着いた。ドル高の流れが継続するなかで、口先介入に対する警戒感も交錯していた。ロンドン朝方にかけては144.70台へと小緩んでいる。ユーロ円はドル円とともに158円台で上下動も、午後にはやや売りに押されている。ユーロドルは1.0930割れ水準から1.0960付近で売買が交錯した。豪ドルが軟調。中国不動産大手カントリーガーデン株が下落、中国売りの様相を呈した。香港ハンセン指数は一時500ポイント超の下げとなり、豪ドル円は94.20台から93.50へと下落した。
ロンドン市場は、円売り圧力が優勢。週明けのアジア・東京市場では、中国不動産大手の碧桂園(カントリーガーデン)が利払いできない事態に陥ったことがリスク回避の動きを広げ、香港・上海株とともに日経平均も下落した経緯がある。欧州序盤も株安の動きが先行したが、米株先物とともに次第に下げ渋っている。ロンドン時間にはリスク警戒の動きは一服している。ドル円は東京午後に144.70台まで下押しされる場面があったが、欧州株の反発とともに買われ、145円台乗せ水準に上昇している。ただ、東京午前につけた高値145.22レベルには届いていない。ユーロ円は158.20付近まで下落したあとは158.80付近へと上昇、東京高値158.85レベルに迫った。ポンド円は183.50割れから184.30台まで上昇。ただ、足元では上値追いの動きは一服している。ドル相場はドル買い一服。ユーロドルは1.0920台から1.0960付近に反発。ポンドドルは1.2660台から1.2715近辺まで買われた。ポンドは対ユーロでも堅調に推移している。
NY市場では、ドル買いが強まった。ドル円は145.58近辺まで上昇。先週の米インフレ指標を通過して、米国債利回りが再び上昇。ドル円は日米の金利差を意識した買いが活発化している。米国債市場ではインフレ調整後の実質利回りを示す10年物インフレ連動債の利回りが1.82%まで上昇し、2009年以来の高水準に接近した。また、ドルが人民元やルーブルに対して買われているほか、アルゼンチンペソの切り下げもドル買いのフォローとなったもよう。ファンド勢はドルショートの縮小を続けているとの見方も。、雇用を始め、足元の経済が底堅く推移している中、FRBは高水準の政策金利を市場の予想以上に長期に渡って継続するのではとの見方が広がっていた。ユーロドルは1.0870付近に一時下落もその後は1.0930台まで反発した。ポンドドルは1.2615付近まで下落したあと、一時1.27台乗せ水準まで反発した。ポンド相場にとっては15日の英雇用統計で賃金動向、16日の英消費者物価指数が注目されている。
15日
東京市場では、ドル円が再び上昇。前日NY終盤の買いの流れを受けて東京朝方には145.59近辺と前日高値をわずかながら更新した。その後の調整売りは145.30台までと限定的。午後に入って鈴木財務相が行き過ぎた動きには適切な対応取りたい、投機筋の動きあればしかるべき措置を取るなどの発言を行い、午前の安値に並ぶ場面が見られたが、すぐに145円50近くまで戻すなど、下値しっかり感が継続した。昨日NY午前のドル高局面で1.0875を付けたユーロドルは1.09台前半に戻して東京朝を迎え、東京市場では1.0900-1.0918の18ポイントレンジ。ポンドドルも1.26台後半の22ポイントレンジと落ち着いた動き。人民元が売られた。中国人民銀行が1年物貸出金利(MLF)を予想外に引き下げたことに反応。人民元は対ドルで昨年11月以来の安値となった。
ロンドン市場は欧州通貨が堅調。ロンドン朝方発表の英雇用統計で週平均賃金の伸びが前年比+8.2%と前回の7.2%(6.9%から上方修正)から加速したことが背景。市場での追加利上げ観測が高まり、英欧債利回りの上昇がポンドやユーロ買いにつながっている。ユーロドルは1.0945近辺、ポンドドルは1.2730近辺に本日の高値を更新。ドル円は145円台半ばから後半で上下動。鈴木財務相や神田財務官から従来通りの円安けん制発言が行われたが、円買い反応は乏しくドル円は145.87近辺まで一時上昇。その後は欧州通貨買いに伴うドル売り圧力に145.50付近へと押し戻されている。ただ、クロス円は堅調で、円売り圧力は健在。ユーロ円は158円台後半から159円台前半へ、ポンド円は184円台半ばから185円台前半まで買われ、その後も高止まり状態に。短期金融市場では9月会合について英中銀の25bp利上げを完全に織り込み、ECBについては25bp利上げを5割程度織り込んだ。欧州株は軟調に推移、リスク動向に敏感な豪ドルやカナダドルなどは原油安もあって売られている。ロシア中銀は臨時会合で利上げを発表。中国人民銀はMLF金利に続いてSLF金利の引き下げを発表した。欧州通貨高の分、ドル指数は反落しているが、ドル高の流れ自体は継続している。
NY市場では、ドル円の上値追いの流れが継続。米小売売上高の上振れに一時買われたあと、145円台前半に調整売りが入ったが、その後は再び145円台半ばに戻した。ただ、介入警戒感もあって、東京高値145.59近辺には届かず売買が交錯した。先週からのインフレ指標や米国債の過剰供給の問題もあり、ここに来て米国債利回りが上昇しており、実質利回りも2009年以来の水準に上昇。ドルを押し上げている。一方で、日銀はイールドカーブコントロール(YCC)の変動許容範囲は拡大させているものの、緩和姿勢は強調しており、10年物日本国債の利回りも0.6%台の上げに留まっている状況。日米の利回り格差拡大への期待からドル円は上値追いの動きを継続している。ユーロドルは上下動を伴いながらの下落。1.0950付近まで買われたあと1.09台割れに。この日の独ZEW景況感指数は予想ほど悪化しなかったが、現況指数は一段と落ち込むなどまちまちの内容だった。ドイツの経済見通しは今後数カ月間、株式やその他のリスク資産が圧力を受ける中で、再び弱くなる可能性との見方があった。ポンドドルも1.2750超えへ買われたあと、1.27付近に下落。あすの英消費者物価指数を控えて、調整が入る面も。
16日
東京市場で、ドル円は145円台での振幅。午前の買いに145.70台をつけたが、日経平均の下落などリスク警戒もあって昼前には145.40台に反落。ただ、レンジは28銭と小幅にとどまった。高値警戒感と下値での買いが交錯している。ユーロドルは1.0899から1.0918までの19ポイント、ユーロ円は158.64から158.90までの26銭レンジにとどまった。NZ中銀会合では市場予想通り政策金利が据え置かれた。ただ、スモールチャンスという表現ながら、利上げの可能性が全くなくなったわけではないことを示したことや、当面の引き締め的な金利水準を維持するとの表現で、早期の利下げ期待を牽制している。NZドルは買われ、対ドルで0.59台後半へ、対円で86円台後半へと上昇した。
ロンドン市場は、ポンド買いが優勢。日本時間午後3時に発表された英消費者物価指数が前年比+6.8%と前回+7.9%から伸び鈍化も、市場予想+6.7%を上回ったことに反応した。コア前年比も+6.9%と市場予想+6.8%を上回った。前日の英賃金上昇加速とともに英中銀の追加利上げ観測を裏付ける結果内容となっている。ポンドドルは1.27付近から1.2760台へ、ポンド円は184.60台から185.80付近へと上昇。円売りやドル売りに波及し、ドル円は145.30付近から145.60台へ、ユーロ円は158.70付近から159.10付近へ上昇。ユーロドルは1.09台前半で1.0935近辺までじり高となった。欧州株は売り先行で取引を開始したが、次第に下げ渋っている。独仏株価指数はプラスに転じた。一方、英FT指数は引き続きマイナス圏に低迷している。ユーロ圏GDP改定値は速報値から変わらず。同鉱工業生産は予想を上振れしたが、ユーロ買い反応はみられず。足元ではポンドとともにユーロも買い一服となり、NY市場待ちとなっている。ドル円は足元で145.75付近の高値を伸ばす動きとなっている。
NY市場では、取引終盤にドル買いが強まった。NY午後にFOMC議事録が公開されたが、「インフレリスクは一段の引き締めを必要とする可能性」と言及し、追加利上げの可能性を示唆していた。また、大半のFOMC委員はインフレに重大な上昇リスクがあると見ていることも明らかとなった。きょうもドル円は上値追いが続き、昨年11月以来の146円台に上昇。昨年に日本の財務省が実施した介入水準に到達している。市場からは介入への警戒感があるようだが、介入リスクに備えるのはまだ時期尚早との声も多い。少なくとも150円まではないという。昨年と違い、円安に対する日本の政府への圧力は弱まっているようだ。内需が底堅く、原油価格も昨年より下落していることから、政治的圧力は小さいという。日銀のイールドカーブコントロール(YCC)政策の追加調整も当面は無さそうで、円キャリー取引は日銀がマイナス金利政策を放棄するまで続く可能性もあるという。ユーロドルは下値模索が続いており、再び1.08ドル台に下落。一方で、ポンドドルは終盤に伸び悩んだものの、一時1.2765ドル付近まで買い戻される場面も見られていた。根強い英インフレ圧力を背景に、ポンドには対ユーロでの買いも入っていた。
17日
東京市場で、ドル円は高値圏推移を続けた。前日NY後半の米FOMC議事録で「インフレリスクは一段の引き締めを必要とする可能性」と示され、追加利上げの可能性が示唆されたことがドル買いを誘った。ドル円は東京朝方に146.56近辺まで買われ、一段高となった。中国売りの動きが今日も広がっており、リスク警戒の動きから日経平均も大幅安に。高値からの円売りに慎重姿勢が見られたが、下値もしっかり。146.40前後での推移が午後まで続いた。ユーロドルは1.08台後半での推移。ドル高基調の中でやや上値が重く、1.0890前後からじり安となった。豪雇用統計は予想外の雇用減となり、失業率も悪化した。豪ドルが下落。対ドルではドル高基調もあって0.64台前半から0.6360付近まで下落、その後も戻りも限定的。中国売りの影響もみられた。
ロンドン市場は、ドル相場が上下動。ロンドン序盤には欧州株が売りに押されて取引を開始、再びリスク警戒的なドル買いが持ち込まれた。ロンドン昼にかけて関係者として「中国当局が国有銀行に為替介入の強化を今週指示」と報じられると市場のムードが一変。まず、ドル売り・オフショア人民元買いの動きが広がった。これが主要国通貨にもドル売り圧力となり、全般にドル売り方向に転じている。欧州株はほぼ下げを解消。ドル円は146円台前半での振幅を経て、146円台割れへと下落している。ユーロドルは1.08台後半での上下動のなかで足元では1.0890近辺まで高値を更新。ポンドドルは1.27台割れ目前まで下押しされたあと、1.2750台へと高値を伸ばしている。ただ、米債利回りは上昇していた。
NY市場では、終盤に入ってドル円に売りが強まった。米株式市場でナスダック、ダウ平均が下げ幅を広げ、リスク回避の雰囲気が出ていた。中国不動産大手、恒大集団がNYで連邦破産法15条の適用申請との報道に反応した面も。ドル円は146円台前半から再び145円台後半に下げている。前日の米FOMC議事録後のドル買いが一服しており、146円台が重くなっている。ユーロドルはNY朝方にかけて1.09台に乗せたが、その後は売りに押されて1.0870付近に下落している。ポンドドルは1.27台後半へと買われたあと、1.27台前半に押し戻された。ただ、ポンドは対ユーロでは堅調に推移している。今週発表の英賃金データと、コアインフレの粘り強さを示唆するインフレ指標から、市場は英中銀があと3回利上げを実施すると予想しており、ポンドの下値をサポートしているようだ。 
18日
東京市場では、ドル円が売られている。前日NY市場で中国経済先行き不安、米FOMCの利上げ継続姿勢などを受けて米株が下落し、円買い圧力となった流れを引き継いでいる。米10年債利回りの低下がドル売り圧力となった面も指摘される。前日NY終盤には中国恒大がNYで連邦破産法15条の適用を申請しており、中国売りの様相を強めた。きょうのアジア株式市場では、香港ハンセン指数、上海総合指数がともに下落している。ドル円は145円台後半から前半へと下落。ユーロドルは1.08台後半で買い先行後も売り戻されている。ユーロ円は158円台半ばが重くなり、158円台前半での揉み合いからやや下値を探る動きになっている。
ロンドン市場は、リスク回避の円買いは一服している。ドル円はロンドン序盤に欧州株の下落や米債利回りの低下とともに軟化、145.15近辺に安値を広げた。その後は、欧州株の下げ幅縮小、米債利回り低下一服などで145.60台まで反発。しかし、米債利回りが再び低下しており、ドル円は145円台半ばでの揉み合いとなっている。中国証券当局は、大手不動産デベロッパーの債券デフォルトリスクを着実に解消へ、と述べているが具体策はまだ見えない。上場会社の自社株買いを推奨するなど株価対策も、人民元買いの介入と同様に抜本的な景気対策ではない。欧州株や米株先物は下げ一服も依然としてマイナス圏で取引されている。ユーロ円は157円台後半から158円台前半へ、ポンド円は184円台半ばから185円台前半までの下げ渋り。米10年債利回りは4.27%台から4.21%台へと一方的に低下する流れとなっている。しかし、リスク警戒のドル買い圧力があるなかで、ユーロドルは1.08台後半、ポンドドルは1.27台前半などで上値重く推移している。
NY市場では序盤にドル高が強まったものの、その後はドル売りとなった。米10年債利回りがロンドン市場での4.21%台から4.28%近くまで上昇する中でドル買いとなり、ドル円は145円70銭台を付けた。米株が序盤に下げ、ダウ平均が寄り付き直後に200ドル超の下げとなるなどリスク警戒の動きが広がり、ドル買いを誘った。その後米債利回りは4.22%前後と上昇分のほとんどを打ち消した。ドル高の動きも一服となり、売りが出ると、その後は米債利回りの低下が収まっても下げが止まらず。ドル円は一時145円割れを付けた。もっとも週末を前に145円割れでのドル売りには慎重姿勢が見られ、その後145円台前半推移となった。序盤に欧州通貨安ドル高となったユーロドル、ポンドドルなども買い戻しが目立つ展開となっている。 

 

●為替相場 8/21-8/25 8/26 
まとめ8月21日から8月25日の週
21日からの週は、週末のジャクソンホール会議でのパウエル議長講演が注目された。それまでは週を通してドル買いが優勢となった。中国当局が利下げ、人民元買い、株価下支え、不動産規制緩和策など、不動産危機の状況に対処する姿勢をとった。しかし、人民元安や上海・香港株安の流れを反転されるには至らず。また、ユーロ圏や英国、米国などの最新のPMI速報値が発表され、いずれも前回から弱含む結果が相次いだ。特に、製造業にみならず非製造業にも悪化が広がったことが景気先行き不安につながった。IT企業の好決算に沸いたナスダック指数の上昇にも陰りがみられている。週後半にはパウエル議長のタカ派姿勢を警戒するムードも加わり、全般的にドル買い優勢となった。パウエル議長講演では、必要とあれば追加の金融引き締めを行う可能性が示された。しかし、データを確認し慎重なポジションを取ることも示されたことで、発表直後のドル買いの後、一転してドル売りとなった。もっとも全体を通すとインフレ対峙姿勢の強い物であり、ドル売り一服後は再びドル高となり、年初来高値を更新する動きを見せている。
21日
東京市場では、ドル円が145円台で推移した。先週末の市場ではポジション調整の動きもあり一時145円割れを付けたがすぐに買い戻しが入るなど下値しっかりの展開が続いた。一方で介入警戒感や中国警戒でのリスク回避の動きもあって上値も重く、上下ともに動きにくい展開。 24日-26日のジャクソンホール会議を前に慎重な姿勢も見られた。ユーロドルは朝から17ポイントレンジと落ち着いた動き。ドル人民元は元安が進んだ。10時15分に中国人民銀行は最優遇貸出金利を発表。1年物を0.10%引き下げたが、市場予想の0.15%を下回る下げに留まった。また5年物は0.15%利下げ見通しに反して据え置きとなった。この結果を受けていったん元買いとなったが、同時に発表された対ドル基準値が市場の期待するほどの元高とならず、すぐに元安に転じた。
ロンドン市場は、ドル円、クロス円が買われている。欧州株が堅調に推移、ロンドン時間に入ると米株先物も買われている。中国の国有銀行がオフショア人民元買いを実施しているもようで、元安の動きが一服。また、英住宅価格やドイツ生産者物価指数の低下が英欧中銀のタカ派姿勢を緩和させる期待も。米10年債利回りは4.30%付近へと上昇しており、今週末のパウエル米FRB議長講演が注目されるなかで、日米金利差拡大観測がドル円を下支えした面も指摘されている。ドル円は145円台半ばから146円手前水準へと上昇。クロス円も円安が進行しており、ユーロ円は158円台前半から159円付近へ、ポンド円は185円台前半から後半へと上昇。豪ドル円は93円台前半から93円台半ばへと買われている。また、原油先物が上昇していることでカナダ円は107円台前半から108円手前水準に上昇。週明けは目立った経済統計発表や発言イベントはなく、リスク動向や金利に関する思惑で動いていた。
NY市場では、ドル円が146円台で推移。先週末に一時145円を割り込む場面があったものの、週明けは買い戻しが入り、146円台に戻した。一時146.40前後まで上昇。米国債利回り上昇と円安がドル円を支援しているようだ。米10年債利回り一時4.34%まで上昇し、2007年11月以来の高水準となった。ユーロドルは1.09台に乗せる場面があったが、上値を抑えられる展開が続き、1.08台に再び軟化した。中国経済に対する不安の高まりに加え、ユーロ圏経済への先行き不透明感も強まる中で、ユーロに対する投資家心理は悪化しており、ユーロドルはしばらく苦戦する可能性があるとの見方も。今週は、水曜日のユーロ圏PMI速報値と、金曜日にラガルドECB総裁もジャクソンホールで講演を予定している。ポンドドルは1.27台での上下動、方向感のない展開だった。今年は意外にも好パフォーマンスを見せているポンド相場だが、景気回復を伴わなければその動きも危ういとの見方もある。
22日
東京市場では、ドル高・円安に調整が入った。NY市場同様に146円台では買いが続かず、ドル売りとなった。植田日銀総裁と岸田首相の会談報道を受けた円買いや、円債利回り上昇を受けた円買いに145.85近辺まで下げた後、146円前後に戻しての揉み合いとなった。17日に付けた直近高値146.56の手前にドル売りが入っていると見られ、上値追いに慎重。当局の対応警戒もあった。その後、岸田首相と植田総裁の会談では為替相場の変動についての議論がなかったと報じられたことで、少し円売りとなっている。ユーロドルは落ち着いた動き、若干ドル安も1.0910台までの上昇に留まった。ユーロ円はドル円同様に調整売りが少し入ったが、対ドルでのユーロ買いに相殺され159.40台から159.20前後までの値動きに留まった。
ロンドン市場は、調整主導の展開。24−26日のジャクソンホール会議、そのなかでの25日のパウエルFRB議長講演などを控えて直近までの値動きに調整が入っている。米債利回りは上昇一服。10年債利回りは4.30%台へと低下している。株式市場は堅調。ようやく香港・上海株が反発したことが好感されている。前日に引き続きナスダック先物も上昇。為替市場ではドル円は146円台、ユーロ円は159円台と直近高値付近からの売りが入りドル円は145.50付近、ユーロ円は158.50付近へと下押し。ユーロドルも1.09台では売りが優勢となり、1.08台後半に押し戻されている。ポンドは対ユーロでの買いが入っている分、下げは限定的。ただ、ポンドドルは1.2800近辺で上値を抑えられている。ポンド円は186円台半ばから186円台割れに。中国株の反発を受けて豪ドルやNZドルは堅調。豪ドル/ドルは0.64台半ばへ、NZドル円は0.59台後半へとじり高の動き。豪ドル円は93円台後半から94円ちょうど付近、NZドル円は86円台後半で堅調に推移している。ロンドン・欧州時間には目立った経済統計はみられず、総じて新規材料には欠けている。
NY市場は、方向感に欠ける動き。NY時間に入ってドル買いが優勢となり、ドル円は一時146円台に戻す場面が見られた。ロンドン時間には145円台半ばまで下落していた。為替市場は米国債利回りの動向を注視しており、NY時間に入って米国債利回りが再び上げに一時転じたことから、ドル買いで反応している模様。ただ、ドル円の状況に変化はなく、145円台と146円台の間を方向感なく行き来した。金曜日のジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演を控えて様子見の雰囲気が強い。ユーロドルは下値模索が続き、一時1.0835近辺まで下落した。あすのユーロ圏PMI速報値への警戒感がみられていた。ポンドドルはロンドン時間の序盤に1.28ちょうど付近まで買い戻されていたものの、NY時間にかけて戻り売りに押され、1.27台前半まで伸び悩んでいる。ロンドン時間に英産業連盟(CBI)が製造業の8月の受注見通しを公表していたが、英製造業の低迷が引き続き示されていた。生産量も前回から大幅に低下している。
23日
東京市場は、比較的落ち着いた値動き。ドル円は145円台後半で33銭程度のレンジ取引。ユーロドルはドル安がやや優勢で朝の1.0840台から1.0860台を付けている。もっともこちらも20ポイントレンジとドル円以上に限られた値動き。ユーロ円は対ドルでのユーロ買いもありしっかり。午前中はドル円の下げなどに159.20台から157.90前後を付ける動きも、昼前に158.10台を回復。午後はややしっかりとなった。この後のドイツ、フランスおよびユーロ圏、英国、米国の購買担当者景気指数(PMI)などを前に、積極的な動きは手控えられていた。
ロンドン市場では、欧州通貨が下落。この日発表された8月のドイツ非製造業PMIが47.3と前回の52.3から大幅に低下、景気判断分岐点50を今年初めて割り込んだことがきっかけ。続いて発表された英PMI速報値でも製造業、非製造業がともに低下したことがユーロやポンドの下落に追い打ちをかけた。内需のバロメータとなる非製造業の景況感悪化が今後のECBや英中銀の追加利上げ観測をやや後退させている。英独債券利回り低下とともにユーロドルは1.08台後半から1.08割れ目前の水準へ、ポンドドルは1.27台半ばから1.26台前半へと急落させている。当初はユーロ売りが先行も英指標発表後はポンド売りが強まっている。ドル円はクロス円の下落、米債利回りの低下とともに145円台後半から145.20台まで一時下落。その後も145円台後半には戻し切れていない。
NY市場では、ドル円が144円台に下落。ここ数日、146円台に何度か乗せるものの、いずれも跳ね返されており、金曜日のジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演を前に、ロング勢からの見切り売りが出ていたようだ。きっかけは欧米の企業のPMIで、いずれも弱い内容となり、欧州債と伴に米国債利回りも大きく低下し、ドル円を圧迫した。PMIは企業の先行きに対するセンチメントを計る指標であるが、製造業は引き続き弱さを示す一方、底堅さを堅持していたサービス業も弱さが示されたことが、ネガティブ・サプライズとなった。欧米の中銀は特にサービス業の強さに注意を払っているが、本日のPMIは、市場のタカ派な期待に一定のブレーキをかけたようだ。ユーロドルは下に往って来いの展開。ロンドン時間には一時1.08ちょうど付近まで下落したが、NY時間に入って1.0870付近まで一時買い戻された。ポンドドルも下に往って来いの展開。ロンドン時間に発表になった英PMIが弱い内容となったことで売りが強まり、一時1.26台前半まで下落する場面が見られた。しかし、NY時間に入ってロンドン時間の下げの大半を取り戻した。
24日
東京市場は、円売りが優勢。ドル円は朝方に144.60近辺まで軟化も、アジア株や米株先物・時間外取引の上昇を受けたリスク選好の動きで反発。午後には日経平均が一時280円超の上昇となったことも支援材料。145.20近辺まで買われた。クロス円もおおむね堅調。ユーロ円は朝方に157.11近辺まで軟化も午後には157.89近辺に高値を伸ばした。ポンド円は東京終盤に184.77近辺の高値を更新。ユーロドルは1.08台後半で18ポイントレンジでの取引にとどまった。
ロンドン市場は、ドルに買戻しが入った。前日NY市場では予想を下回る米PMI結果にドル売りが強まった経緯がある。ドル円はロンドン朝方に一時145円台割れとなったあとは再び買われ、高値を145.48近辺に伸ばしている。ユーロドルは東京市場で1.0877近辺に高値を伸ばしたあと、ロンドン市場では安値を1.0847近辺に広げている。ポンドドルも1.2729近辺を高値に1.2668近辺に安値を広げている。米10年債利回りは前日終値4.19%付近を軸に揉み合い。欧州株は米エヌビィディアの好決算を受けたナスダック先物の上昇を受けて堅調に推移。ドル主導の展開のながで、クロス円はまちまち。ユーロ円は157円台半ばで下げ止まりと157円台後半へ買われている。ポンド円は184円台後半まで買われたあとは184円台前半から半ばで揉み合い。豪ドル円は94円台乗せまで買われたあとは93円台後半へと押し戻されている。
NY市場でも、引き続きドルが堅調。ドル円は145.90台へと反発し、146円台に迫った。前日は欧米企業のPMIが揃って弱い内容となったことで、景気の先行き不透明感が強まり、米国債利回りの低下と伴にドル円も戻り売りが優勢となっていた。しかし、明日のパウエルFRB議長のジャクソンホールでの講演を控え、ドル円は買い戻しが強まった。この日発表の米新規失業保険申請件数が予想を下回り、堅調な労働市場を示したこともドル円の買い戻しを加速させていた。明日のパウエルFRB議長の講演だが、市場ではタカ派色を残す内容になるとの見方が優勢となっている。ユーロドルは1.08台前半へと再び下落。ユーロ圏経済の低迷を示唆する証拠が増えており、市場ではECBが9月に金利を据え置く可能性を高めている。ポンドドルは1.25台に下落。前日発表の英PMIは利上げが英経済にますます重くのしかかっていることを示し、9月の25bpの利上げがピークになる可能性も残す内容との指摘も一部に出ていた。
25日
東京市場は、ドル高水準で売買が交錯。ドル円は午前に米10年債利回りの上昇などを受けて一時146.21近辺まで買われた。前日NY市場から一段高となった。しかし、午後には日経平均やアジア株の下落でリスク回避圧力を受け、145円台後半に押し戻される場面があった。取引終盤には中国の不動産ローン規制緩和などについて報じられ、上海・香港株が買いに反応、米債利回りも上昇した。ドル円は146.26レベルまで高値を伸ばした。ユーロ円は昼過ぎに157.37近辺まで下押しされたあとは157.80付近まで反発、下げを消す場面があった。ユーロドルは前日からのドル高の流れを受けて一時1.0777近辺まで安値を広げた。ただ、値幅自体は限定的だった。
ロンドン市場は、ユーロ相場が下に往って来い。第2四半期ドイツGDP確報値が前期比横ばいと速報値から変わらず。2四半期続いたマイナス成長は終了したが、回復力の弱さが示された。ジャクソンホール会議が開催されるなかで複数の関係者から、議論は続いているが、ECBの利上げ停止の可能性が高まっている、とみていることが報じられた。さらに8月ドイツIfo景況感指数が85.7と市場予想や前回値を下回った。一連の弱い内容にユーロが売られ、対ドルでは一時1.0766近辺、対円では157.24近辺まで安値を広げた。しかし、その後は反発。欧州株が下げ渋りプラスに転じたことや、ナスダック先物が下げを消したことなどが買戻しを誘った。パウエル議長講演を控えた調整の動きも指摘される。ユーロドルは1.08台乗せへ、ユーロ円は再び157.80付近へと買い戻されている。ポンドは対ユーロでの買いが下支えとなっている。ポンド円は1.25台後半から1.26台乗せ、ポンド円は183円台半ばから184円台乗せへと買われている。ドル円はロンドン朝方に146.26近辺に高値を伸ばしたあとは146円を軸とした上下動が続いている。
NY市場では、パウエル議長の発言を受けての乱高下となった。追加利上げの可能性を示した発言にドル円は146.10台から146.30前後まで急騰後、すぐにドル売りとなり、145.70台を付けた。今後に慎重な姿勢が示されたことに注目した動きと見られ、ユーロドルが1.0800台から1.0842を付けるなど、ドルは全面安となった。その後は一転してドル高となった。雇用のゆるみなども許容しての強いインフレ対応の意識がドル買いにつながったと見られる。ドル円は下げ分を解消するだけでなく、年初来高値を更新して146.63まで上昇。ユーロドルが1.0760台まで、1.2650台を付けていたポンドドルが1.2540台を付けるなどの動きとなった。動き一服後は週末を前にした調整にドル売りが少し出ている。 

 

●為替相場 8/28-9/1 9/2 
まとめ8月28日から9月1日の週
28日からの週は、米経済指標をにらんでドル相場が振幅した。ドル円は週明けに147円台乗せと年初来高値を更新したあとは、145円台に下げる動き。ユーロドルは1.07台から1.09台、ポンドドルは1.25台から1.27台での振幅。ドル指数は前週25日に上昇がピークアウトし、この週は低下の動きが中心となった。特に、週央には米JOLTS求人件数が予想外の大幅減少となったほか、コンファレンスボード消費者信頼感指数が予想を下回った。木曜日に発表された米ADP雇用者数の伸びも前回から鈍化、第2四半期GDP改定値が下方修正されるなど、ドル売り材料が連発した。ただ、水曜日のPCEデフレータの下げ止まりや新規失業保険申請件数、シカゴPMIなどの改善でドル指数は下げ止まった。欧州や英国の景気動向が不安視されるなかでユーロやポンドに売り圧力がかかったことがドル安にブレーキをかけた面もあった。ただ、全般的にはドル売り優勢のなかで週末の米雇用統計を迎えている。米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)は予想を上回ったものの、失業率が悪化し、平均時給も伸びが緩んだことから、FRBの追加利上げへの期待が後退した。しかし、一旦はドル売りで反応したものの、米国債利回りが切り返したことから、ドル買いに転じている。
28日
東京市場では、ドル円が上値重く推移。先週末のパウエル米FRB議長のジャクソンホール会議での講演で、追加利上げの可能性に言及したことを受けてドル買いが強まった。ドル円は146.63近辺と昨年11月以来の高値水準となった。土曜日に植田日銀総裁が緩和の維持姿勢を示したこともあり、週明けもドル高・円安の流れが続き、朝方に146.61近辺までと金曜日の高値に迫る動きが見られた。中国が15年ぶりに株式取引にかかる印紙税を引き下げたことで中国本土株、香港株の大幅高が見込まれたことがリスク選好としてドル円、クロス円を支えた面も。しかし、買いは続かず午後には146.20台まで反落した。5%を超えて始まった中国上海総合が1%台の上昇に落ち着くなど、株高の動きが一服する中で、上値が重い展開となり、午後に入ると米債利回りの低下も見られた。ユーロ円は朝方に157円台をつけたあとは158円台前半で底堅く推移した。ユーロドルは朝方の1.0790台を安値にその後は1.08台前半で推移した。中国の株高などを受けて豪ドルはしっかりとし、対ドルで0.64付近から0.6440近辺へと買われた。
ロンドン市場は、やや円安の動き。英国市場はサマーバンクホリデーで休場。序盤に円安が優勢となった後、取引参加者が少ない中で動きが膠着した。ドル円の下げは146.27近辺までにとどまり、146.60付近まで買い戻された。ユーロ円は158.10台から158.50台へと戻している。ユーロドルは1.08台割れ水準から1.0820台での揉み合い。ポンドが軟調。ユーロ買い・ポンド売りが入り、ユーロポンドは0.85台後半から0.86台に迫る動きとなった。ポンドドルは朝方に1.26台割れから1.2550台へと軟化。ポンド円も184.50台から184.10台へと下げる動きをみせた。英国勢不在のなかで調整的な動きだった。
NY市場では、ドル円が上値を試す動き。ドル円は伸び悩む動きでは146円台を維持、一時146.75近辺まで買われて、年初来高値を更新した。先週末のパウエルFRB議長の講演を無難に通過し、為替市場はドル買いの流れが継続している。一部からは、米国外の経済が弱含みに見える中で、投資家は依然としてドルを選好しているとの指摘も出ている。経済の弱さは米国内よりも米国外の方が大きいという見解が強まっており、投資家は引き続き他の主要通貨よりもドルを選好しているという。ユーロドルはジャクソンホール会議を通過して一服感がでており、1.08台前半での狭い範囲での振幅が続いた。ポンドドルは下げを一服させたものの、依然として上値は重い印象。100日線が1.2640付近に来ており、その水準よりも下での推移が続いている。英インフレの高さから英中銀はFRBやECBよりも利上げを継続すると見られている。しかし、ここに来て、企業景況感や住宅市場の低迷が顕著になっており、景気後退への懸念も台頭している。
29日
東京市場は、ドル円が高値圏での揉み合い。昨日の海外市場で146.74近辺と年初来高値を更新。その後は少し調整が入った。東京市場では146.31から146.56までの25銭レンジ。米債利回りの振幅に敏感に反応したが、新たな方向性はみられず。ユーロドルは1.0814-1.0838の28ポイントレンジ。ユーロ円は158.40から158.66までのレンジ。午後に入って少し下げる程度の小動き。アジア株式市場の動きなども比較的落ち着いており、主要通貨は目立った動意を見せていない。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。ドル円は146.30台から146.50台での揉み合いが続いたあと、米債利回りの上昇をきっかけに買われ、ロンドン昼にかけては146.90近辺へと上伸。前日高値を上回り、年初来高値を更新。昨年11月以来のドル高・円安水準となった。ロンドン朝方は独GfK消費者信頼感が予想以上に悪化したことで、ユーロ売りを誘った。ただ、ユーロドルは1.0810割れまで下げたあと1.0830付近までいったん反発。その後は再び1.08台割れ目前へと軟化している。ユーロ円は下に往って来い。ユーロ売り先行とともに158円台後半から158.20台まで下押しされたが、その後はドル円とともに上昇、高値を158.80付近へと伸ばしている。ポンドドルは1.2640レベルが重くなると1.26台割れから1.2585近辺に下げている。ポンド円は184円台後半で売買が交錯し、方向性に欠ける動き。米10年債利回りが4.17%台から4.21%付近へと上昇しており、ドル高圧力となっている。週明けからの調整的なドル売りは一巡した格好。ドル指数は再び上昇している。欧州株は堅調に推移も、米株先物は前日終値付近で揉み合っている。
NY市場は、ドル売りが強まった。朝方はドル買いが加速し、ドル円は147円台に乗せる場面があった。月末関連のドル買いが出たもよう。しかし、この日発表の米経済指標が予想を大きく下回ったことで、米債利回りの急低下とともにドル円は145円台へと急落した。7月の米JOLTS求人件数と8月調査の米消費者信頼感指数が発表され、特に米求人件数は882.7万人と予想(950万人)を大きく下回り、約2年ぶりの低水準となった。FRBの利上げキャンペーン停止が近いとの市場の見方を裏付ける内容となった。ユーロドルは序盤に1.07台に下落したものの、予想を大きく下回る米経済指標を受けて、1.08台後半まで買い戻された。ポンドドルはNY時間に入って上昇し、1.26台半ばを回復。英国が休場だった前日からの上昇幅を拡大した。
30日
東京市場は、ドル安に対する調整が入った。ドル円は前日の海外市場で147.37近辺と年初来高値を更新したあと、弱い米経済指標を受けて145.67近辺まで急反落した。東京市場では調整買いが優勢となり、146円台を回復している。ユーロドルは前日海外市場で1.0892近辺まで買われたあと、東京市場では1.0880台から1.0850台へと反落している。ユーロ円はドル円の買い戻しとともに158円台半ばから159円手前へと上昇した。豪ドルは下に往って来い。7月豪消費者物価指数が約1年半ぶりに前年比5%を割り込む弱いものとなったことが背景。豪中銀の利上げ再開期待が後退した。豪ドル売りに反応したが、その後は買い戻しが入っている。対ドルは0.64台半ばから後半で、対円は94円台での上下動。
ロンドン市場は、欧州通貨が堅調。東京市場でみられたドル売りに対する調整の動きは一巡している。ユーロドルは1.08台後半で揉み合うなかで、再び1.0894近辺まで買われている。ただ、1.09台乗せには至らず。ユーロ円は159円台乗せから高値を159.42近辺へと更新。ポンドドルは1.26台前半へと調整の動きに押された後は、1.2670近辺まで買われ、前日高値を上抜いた。ポンド円は184円台半ばから185円台に乗せ、高値を185.37近辺に伸ばしている。ドル円は146.54近辺まで買われたあとは146円台前半での揉み合い。欧州株は堅調に取引を開始も、次第に売りに押される展開に。ユーロにとってはインフレ指標が注目されていた。この後発表される全国版のドイツ消費者物価指数に先立って発表された各州ごとの数字が再びインフレの再燃を示したことがユーロ買いを誘った。一方で、ユーロ圏景況感などセンチメント系指標は引き続き弱含んだ。英国でも消費者信用残高や住宅ローン承認件数などが冴えない数字だった。材料的にはまちまちだった。それでも欧州通貨買いが優勢だった背景には、まだ前日の米JOLTS求人件数の減速の影響が残っているのか、米国と英欧との利上げスタンスの差が意識された面もあったようだ。
NY市場では、ドル売りが優勢。この日発表のADP雇用統計とGDP改定値がインフレ鈍化への期待を裏付ける内容となったことで、米国債利回りが下げ、ドル売りが強まった。連日、米指標の弱い結果がドル売りにつながっている。ADP雇用統計は雇用増加数が17.7万人増と予想を下回り、増加幅は過去5カ月で最も小さかった。ドル円は146円台割れから145.50台まで下落。ユーロドルは1.09台乗せから1.0950手前水準まで上昇。きょうはドイツとスペインの消費者物価指数の速報値が発表になっていたが、ドイツのインフレは予想ほど低下せず、スペインは逆に加速していた。9月に再び利上げに踏み切るかどうかを思案中のECBに域内の物価圧力の一面を示した格好。ポンドドルは買い戻しが優勢となり、1.27台を回復した。ただし、ポンド関連のイベントは少なく、米経済指標を受けたドルの動きに左右されている。
31日
東京市場で、ドル円は軟調に推移。前日NY市場では米ADP雇用者数や米第2四半期GDP改定値が弱含んだことを受けて一時145円台半ばまで下落。その後は146.20台まで買い戻されていた。東京午前には再び軟化し、昼頃には145.76近辺まで下押しされた。日本時間今夜に発表される7月の米個人消費支出(PCE)デフレータや、明日の8月の米雇用統計を前に、ポジション調整とみられる売りが重石となった。午後は下げ一服も146円付近での小動きとなっている。ユーロ円は一時159.19近辺まで下落、午後には安値圏での揉み合いに。ユーロドルは1.09台前半での上下動。前日からの高値圏で推移した。
ロンドン市場は、ユーロ売り主導の展開。シュナーベルECB理事が「経済活動は明確に鈍化している、成長見通しは6月の予測より弱い」と発言したことに反応した。一方で、インフレについては「基調的な物価圧力は引き続き頑固に高い」と発言している。また、ホルツマン・オーストリア中銀総裁からは「金利はまだピーク水準に達していない、あと1、2回の利上げの公算も」とインフレ高止まりを警戒したタカ派らしい発言があった。ユーロ圏消費者物価速報は前年比+5.3%と前回と同水準も市場予想は上回った。コア前年比は+5.3%と前回の+5.5%から鈍化、市場予想と一致した。ユーロ売り反応は欧州景気に対する不透明感の面が強かったようだ。市場の9月理事会での利上げ観測はやや低下。ユーロドルは1.09台前半から1.08台後半へユーロ円は159円台半ばから158円台半ばへと下落。対ポンドでもユーロは軟調。全般的にドル買いや円買いの動きが広がり、ポンドドルは1.27台割れ、ポンド円は一時185円台割れへと軟化。その中で、ドル円は146円付近から145.70台までの揉み合いが続いている。
NY市場は、ドル円、クロス円が下落。ドル円は146円台では売りが入り、145.30台まで下押しされた。本日の米国債利回りは低下しているものの、特段の売り材料は見当たらない。本日は8月末の取引で、月末に絡んだ実需の売りがロンドンフィキシングにかけて出ていたようだ。ドル円とともにクロス円も軟調、ユーロ円は159円台割れからさらに158円台も割り込むと157円台半ば付近まで下げた。ポンド円も185円台から一時184円台割れまで下落。ドル円以外の通貨ではドル買いが優勢。ユーロドルは1.09台割れから1.08台前半へ、ポンドドルは1.27台が重くなると1.26台半ばへと軟化。PCEデフレータはインフレの落ち着きを示しているものの、個人消費支出が強い数字となっており、FRBの勝利宣言には程遠く、インフレ抑制を目指すFRBにとって新たな懸念材料とも受け止められている。
1日
東京市場では、ドル円が一時下落した。人民元相場が買われたことにドル売り反応が広がる場面があり、ドル円は145.70付近から145.20付近まで下落。しかし、その後は145円台半ばへ下げ渋っている。中国人民銀行が外貨預金準備率を引き下げたことで元高が進み、ドル/人民元が7.2402近辺まで一時下落。その後は、7.26台へと戻しており、ドル売り圧力も後退した。次第に米雇用統計待ちのムードに移行した。ユーロドルは1.0850前後での推移。ユーロ円は157円台後半での振幅にとどまっている。
ロンドン市場は、方向感に欠ける振幅。米雇用統計待ちで積極的な売買は手控えられている。ドル円は145.50付近での揉み合い。東京午前に145.24-145.70のレンジを示現したあとは、次第に値動きが収束してきている。ポンドドルは売りが先行し1.2640近辺まで下落。ロンドン朝方に発表された英ネーションワイド住宅価格が一段と低下したことに反応した。しかし、売りは続かず1.2690近辺に高値を伸ばした。足元では1.26台後半での揉み合い。8月英製造業PMI確報値は過去最低水準を記録したが、速報値からは改善したこともあり、特段の反応はみられず。ピル英中銀チーフエコノミストは、英国ではまだコアインフレの下方転換をみていないとした。ユーロドルは朝方に1.0829近辺まで安値を広げたが、すぐに買い戻されて1.0860近辺に高値を更新。8月ユーロ圏PMI確報値は速報値から小幅下方修正され、50割れは14カ月連続に及んでいる。ビルロワデガロー仏中銀総裁は、9月14日の次回ECB会合について、選択肢はオープンと述べた。ユーロ円は157円台後半、ポンド円は184円台前半での推移に終始している。
NY市場はこの日発表の米雇用統計を受けて一旦ドル売りが強まったものの、売りが一巡するとドル買いが強まる展開となった。米雇用統計を受けて米国債利回りが低下したが、切り返したことで、ドル買いが復活しているようだ。ドル円は米雇用統計発表後に一旦144円台半ばまで下落したものの、146円台に急速に切り返す展開が見られた。 

 

●為替相場 9/4-9/8 9/9 
まとめ9月4日から9月8日の週
4日からの週は、ドル高が進行した。ドル円は147円台後半へと上昇し、年初来高値を更新した。ユーロ、ポンド、豪ドルなど各主要通貨に対してもドルは堅調に推移し、ドル指数は3月10日以来のドル高水準となった。米経済指標は非製造業関連の景気指標が英国や欧州と比較すると底堅い内容となっていた。雇用関連指標でも失業保険申請動向、単位労働費用などに力強さがみられた。来週のECB理事会を控えて全般的には慎重な見方が多く、市場では据え置き観測が優勢。約3分の1程度しか25bp利上げを織り込んでいない。複数のドイツ経済研究所が今年の成長見通しを引き下げた。また、英中銀総裁が「金利についてはサイクルの頂点に近い」との認識を示したことがポンド相場を圧迫。中国経済に対する不透明感が広がり人民元安・ドル高が進行。日本では神田財務官などが円安けん制発言を行ったが、円買い反応は限定的だった。週前半を中心に生産国の減産見通しを受けて原油相場が高騰しており、インフレ警戒がドル高につながる面もあった。複合的な材料でドルが買われた。
4日
東京市場は、米国休場を控えて小動き。週明けの東京市場は主要通貨に目立った動きがなく、落ち着いた展開となった。先週末のドル円は米雇用統計が弱含んだことで144.40台まで下落したあと、急反発し146.20台で引けた。週明けも同水準でスタート。金曜日の高値146.29レベルには届かず、146円割れも試せず、24銭の狭いレンジでの推移となった。ユーロドルも1.07台後半で朝から19ポイントの狭いレンジ。先週末には1.0880台を付けた後に1.0770台へユーロ安・ドル高となっていた。アジアの株式市場はしっかり。米利上げ観測が後退したことが背景。利下げ開始の前倒し期待が広がっており、世界的に株の支えとなっている。リスク選好の円売りが見られ、ユーロ円は40銭レンジとドル円を上回る値幅での動き。豪ドル円などクロス円全般に買いが入っている。
ロンドン市場は、ユーロやポンドなど欧州通貨が堅調。先週末の米雇用統計で非農業部門雇用者数の伸びが予想を上回るも前回値が下方修正され、失業率が予想外の上昇、賃金の伸びも落ち着いたことなどを受けて、市場には米経済のソフトランディングへの期待が広がっていた。週を跨いで世界的に株式市場が堅調に推移している。ロンドン時間には欧州株高とともに、米債利回りの手掛かりに欠けるなかで英独債利回りが上昇。ポンドやユーロといった欧州通貨が買われている。ユーロドルは東京朝方の1.0772レベルを安値にじりじりと上昇、ロンドン朝方には1.0807レベルに高値を伸ばした。その後も1.08ちょうど付近で推移している。ユーロ円は157.33レベルの安値からロンドン序盤には158.18レベルまで本日の高値を更新している。足元でも158円台に高止まりしている。ポンドドルは1.26付近から1.2643近辺まで、ポンド円は184円台前半から185.01近辺まで上昇。ポンドは対ユーロでも買われている。ドル円は東京朝方につけた146.02レベルを安値に、ロンドン序盤には146.46レベルまで買われ、その後も146円台前半に高止まりしている。
NY市場は、レーバーデーの祝日で休場。
5日
東京市場は、ドル高の動き。朝からドル高・円安の動きが優勢となるなかで、中国財新サービス業PMIの弱さなどを受けたドル高・人民元安をきっかけにドル全般に買われた。ドル円は前日に上値を抑えた146.50付近を上回っている。午後には146.80台まで上昇、8月29日以来の高値水準となった。ユーロドルは1.0780付近へと軟化。ユーロ円は158.40付近へとやや水準を上げた。豪ドルが軟調。午前の中国財新サービス業PMIが弱かったことに加えて、豪中銀金融政策会合で政策金利据え置きとなったあとも軟調に推移。豪ドル/ドルは朝方の0.6465前後から午後には0.6405近辺まで下落。豪ドル円は94円割れ目前へと軟化。
ロンドン市場は、ドル買いが継続している。東京市場では中国財新PMIの低下を背景に豪ドル/ドルが下落、ドル買い圧力が波及した。ロンドン序盤には一連の欧州や英国の非製造業PMIが景気判断分岐点の50を下回り、ユーロドルやポンドドルが下押しされている。欧州株は売り先行で取引を開始したが次第に下げ渋ると、クロス円とともにドル円が買われている。ドルが全面高となるとともに、円売りの面も加わっている。ドル円は147円台乗せから147.30付近へ上昇、年初来高値に迫っている。豪ドル/ドルは0.6365近辺まで安値を広げており、引き続き上値が重い。ユーロドルは1.07台後半から1.0730台へと下落。ポンドドルは1.26台前半から一時1.2530付近まで下押しされた。足元では円売りの面もみられており、クロス円が反発。158円台前半から157円台後半へと下落したユーロ円は再び158円台前半に戻している。ポンド円は185円台割れから184円割れ目前まで下落したあと、185円ちょうど付近まで反発。米10年債利回りは三連休明けの時間外取引で4.22%付近へと上昇している。 
NY市場で、ドル円が一段と上昇。ドル買いが優勢となる中で、ドル円は上値追いの動きとなった。147円台後半まで上昇し、昨年11月以来の高値を更新した。。米国債利回りが上昇しており、ドル円をサポート。中国とユーロ圏の景気減速の新たな兆候を受け、きょうの市場はややリスク回避の雰囲気が出ていた点もドルをサポートしている。きょうはウォラーFRB理事のインタビューが伝わり、「差し迫って何かをする必要があると示すものは一切ない」と述べていた。市場では9月FOMCでの据え置きの確率を95%とほぼ確実と見ており、同理事の発言はその見方を正当化する内容ではある。市場ではFRBが今月中に引き締めサイクルを停止しても、金利は高止まりするとの見方から、米国債利回りが上昇し、ドルをサポートし続けている。ユーロ圏や英国、中国と違い、米経済はソフトランディングへの期待が高まっている。そのような雰囲気の中で、ドルは上値追いが続いているようだ。ユーロドルは下値模索が続き、1.07台前半まで下げ幅を拡大。ポンドドルも上値の重い展開が続いた。一時1.25台前半まで下落。
6日
東京市場は、ドル高に対する調整が入った。前日の海外市場でドル円が147.80近辺まで上昇したことを受けて、朝方に神田財務官が「こういった動きが続くならあらゆる選択肢を排除せず対応」と約2週間ぶりに円安けん制発言を行った。ドル円は147.37近辺まで一時下落。ただ、市場ではすぐには介入実施はないと捉えて下げは一服、再び147.82近辺まで上昇した。中国人民銀行の元安阻止姿勢が弱いという思惑もあって、ドル人民元が昨年11月以来のドル高元安となる7.32台を付ける動きが見られ、ドル円でのドル買いを支えた面も。しかし、その後はドル高の調整が目立った。午後には147.02近辺まで反落。米債利回りの低下や元安が一服したこと、あたらめて介入警戒感がみられたことなどがドル買いポジションの調整につながったようだ。
ロンドン市場は、ドル買いが一服。ドル円はロンドン時間に入ると再び買われているが、上値は147.60手前で抑えられている。足元では147円台前半に落ち着いている。米10年債利回りが4.24%付近から4.27%付近で方向感なく推移しており、一段のドル高には手掛かり難。また、神田財務官の発言を受けて、上値追いには慎重になっている面も。ユーロが底堅く推移。ユーロ円は東京午後の円高局面で158.50付近から157.80付近まで下落したが、ロンドン時間に入ると147.60付近まで反発。14日のECB理事会発表を控えて、あすからはECB当局者のブラックアウト期間に入る。これを控えて、クノット・オランダ中銀総裁やカジミール・スロバキア中銀総裁から追加利上げの必要性が示されており、ユーロ買い圧力となったもよう。ユーロドルは1.07台前半での揉み合いから半ばを目指す動き、ユーロポンドは0.85台前半から後半へと水準を上げてきている。ポンドドルは1.25台後半から半ばへと押し戻されている。ポンド円は185.50付近が重くなり、一時185円台割れとなった。前日までの原油高が一服したことや、ECB当局者のタカ派発言を受けたユーロ買い・ポンド売りに押された面が強いようだ。
NY市場では、ドル買いが再燃。米ISM非製造業景気指数が予想を上回り、6カ月ぶりの高水準に上昇したことで、米国債利回りの上昇と伴に、ドル円は一時147.70近辺とロンドン時間の下げを取り戻している。この日のISM指数は、世界的に企業景況感が低下傾向にある中で、米サービス業のセンチメントがまだ持ち堪えていることを示した。消費者の需要と米経済全体の持続的な強さを浮き彫りにし、家計支出の持続性は労働市場を支えると伴に、米景気後退を回避できるという期待を高めている。今月のFOMCでの据え置きは依然として有力視されているものの、年内あと1回の追加利上げの可能性を再び高め、11月にあと1回の利上げの確率を50%程度に再び上昇させている。FRBの長期に渡る高金利維持への警戒感も強まった。ユーロドルは再度下値模索の動きが出ており、1.07台割れを試す動きがみられた。ポンドドルは下値を切り下げ、1.25台を割り込む動きが見られた。カナダ中銀が金融政策の結果を発表。カナダ中銀は声明で「粘り強いインフレを懸念しており、追加利上げの要因はある」と追加利上げの可能性は残していた。
7日
東京市場では、ドル円が上下動。ドル円は、前日の海外市場で発表された8月米ISM非製造業景況指数の市場予想を上回る結果を受け、147円台前半から後半まで上昇した。その流れを引き継いで、東京朝方には年初来高値を更新。昨年11月以来10カ月ぶりの高値となる147.87付近まで上値を伸ばした。しかし、その後は上値の重い展開となり、朝方の上げを帳消しにして、147円台半ばへと伸び悩んだ。午後に日経平均の下げ幅が一時250円超まで拡大したことなどから、ややリスク回避の円買いが優勢となり、ユーロ円は一時158.11付近まで下落。ユーロドルは1.07台前半で小動き。NY原油の時間外取引の下落を受け、資源国通貨である豪ドルが売られた。豪ドル/ドルは0.6362付近まで、豪ドル円は93.87付近まで軟化する場面があったが、その後は下げを解消している。
ロンドン市場は、欧州通貨が軟調でドル相場は底堅く推移。ポンドドルの売りが先行し、1.25ちょうど付近から1.2450付近へと下落。昨日の英議会証言でベイリー英中銀総裁が「金利についてはサイクルの頂点に近い、CPIをより早く目標に戻すことは最適ではない」と発言したことで、市場の英利上げ観測がやや後退したことが背景。加えて、英中銀のインフレ調査でインフレ予想が引き下げられたことや、英バーミンガム市の財政破綻なども話題となっていた。ユーロドルは1.0730付近から1.07台割れ目前へと軟化。ポンドドルの下げにつれ安となったほか、この日発表された第2四半期のユーロ圏GDP確報値が下方修正されたことも重石に。ドル指数は再び105付近に上昇し、前日につけた今年3月以来のドル高水準に迫っている。ドル円は147.37近辺まで下押しされ、足元では揉み合いとなっている。ユーロ円は158円台半ばを高値にロンドン時間には158円台割れから157.80付近へと軟化。ポンド円は184円台後半からロンドン時間には184円台を割り込むと、183.60付近まで下落した。米10年債利回りは4.26%付近まで一時低下。欧州株は売りが先行したあと、ユーロ圏GDPの下方改定でプラスに転じている。
NY市場では、ドル円の上値追いは一服も、状況に変化はみられず。戻り売りで147円台前半に値を落としている。全体的にはドル買いの流れは続いているものの、動きに一服感も出ており、ドル円も利益確定売りが出ていたようだ。ただ、市場ではFRBの金融政策の行方や年内の追加利上げに対する懸念が再燃している。FRBが追加利上げを正当化するために、最近の強い米経済指標を利用するのではないかという懸念が高まっているようだ。この日発表の米新規失業保険申請件数も労働市場の強さを示していた。短期金融市場では9月FOMCは90%超の確率で据え置きを見込んでいるものの、11月FOMCでの追加利上げの確率は40%を超えている。ユーロドルは緩やかな売りに押され、1.06ドル台に下落。来週のECB理事会の動向が注目されている。追加利上げの可能性も捨て切れないものの、短期金融市場では25bpの利上げの確率は35%程度で織り込んでいる状況。ポンドドルは一時1.24台半ばまで下落。ベイリー英中銀総裁が前日の議会証言で「金利についてはサイクルの頂点に近い」と述べていた。市場からは、総裁の証言は利上げ一時停止の地ならしをしているように見えるとの声もあった。
8日
東京市場では、ドル円が振幅をみせた。朝方につけた147.38近辺を高値に鈴木財務相の円安けん制発言や、中国政府のiPhone使用制限報道などを受けた米中関係の悪化懸念などを受けて一時ドル売り円買いが強まった。今週5日に147.80付近の高値を付けた後にサポートされた147.00付近を割り込むと146.59近辺まで急落した。しかし、すぐに147.20台まで買い戻され、その後は147円台前半での揉み合いに落ち着いた。ユーロ円はドル円の下落とともに157.01近辺に安値を更新したあとは、157.90近辺と朝方の水準を上回る上昇となった。ユーロドルは海外市場での下落から反発、1.07台割れから1.0726近辺まで買われた。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。東京市場ではドル円が147円台前半から一気に146円台半ば付近まで下落する場面があるなど調整含みの動きがみられた。ドル円はすぐに147円台に戻したが、ユーロドルはポンドドルはドル高の調整圧力で買われた経緯がある。ロンドン朝方にはユーロドルは1.0728近辺、ポンドドルは1.2510近辺まで高値を伸ばした。しかし、ロンドン勢の本格参加とともに流れが反転。ユーロドルは1.07台割れへ、ポンドドルは1.2470付近へと反落している。ドル円は147円台前半で売買が交錯するなかで一時147.46近辺まで本日の高値を伸ばし、その後も高止まりしている。ドル指数の調整は浅く、再び105台と前日につけた3月10日以来のドル高水準に接近している。米10年債利回りは4.25%台から4.20%台で下に往って来い。欧州株は買い先行も続かず、マイナス圏に沈んでいる。8月独消費者物価指数・確報値は速報値から変わらず、市場は反応薄だった。来週14日のECB理事会発表を控えて、ECB当局者らはブラックアウト期間に入っており、特段の発言報道はみられず。
NY市場でドル円は堅調な推移が続き、147円台後半まで上げ幅を拡大。昨年11月以来の高値を更新した。鈴木財務相の発言もあり、東京時間の早朝にはストップを巻き込んで一時146.60近辺まで急速に売られていたが、直ぐに買い戻されている。市場ではドル高が想定以上に続くのではとの見方が強まる中で、146円台に入ると押し目買いが活発に入るようだ。 

 

●為替相場 9/11-9/15 9/16 
まとめ9月11日から9月15日の週
11日からの週は、ドル高・ユーロ安・円安の動きが中心となった。各国中銀に対する見方が相場を動かしている。FOMCについては来週の会合では据え置き、年内あと1回の利上げの見方が堅持されている。米消費者物価指数や同生産者物価指数の発表を通過しても金利先行きに関する市場の見方に変化はみられていない。一方、ECBは利上げと据え置きの見方が拮抗するなかで発表を迎えた。25bp利上げの発表で一時ユーロ買い反応もすぐに売りが強まった。ECBスタッフ経済見通しで来年のインフレ上方修正については事前に観測報道が流れていた。しかし、成長率見通しが23年から25年の全期間で大幅に下方修正されたことが市場のサプライズとなり、ユーロ売りにつながった。また、今回の利上げをもって打ち止めとの見方が広がった。ユーロ売り・ドル買いの動きが鮮明となった。日銀については来週末の決定会合を控えて植田総裁関連の報道が話題になった。先週末の読売新聞の植田総裁に対するインタビュー記事で「マイナス金利政策を柱とした大規模な金融緩和の解除に向けて、年内にも判断できる材料が出そろう可能性がある」とマイナス金利の解除に言及したことが週明け東京市場での円買いを誘った。しかし、週末には「日銀内で植田総裁の発言内容と市場の解釈とのギャップを指摘する声が出ている」との関係者発言で円安が進行した。一連の中国経済指標がやや強含んだこともあってリスク選好的な円売りの面も加わった。来週の英金融政策委員会(MPC)を控えて、ポンド相場は様子見ムードが強く、ユーロ相場に連れた値動きに終始した。
11日
東京市場は、円買いが強まった。植田日銀総裁が週末の報じられた読売新聞のインタビュー記事で「マイナス金利政策を柱とした大規模な金融緩和の解除に向けて、年内にも判断できる材料が出そろう可能性がある」とマイナス金利の解除に言及したことが背景。ドル円は先週末に147.80台とほぼ高値付近で引けたが、週明けには147.00前後まで円高が進んで取引を開始。朝方には146.64近辺まで下落した。その後、147.28近辺まで反発も、マイナス金利解除の可能性をいうインパクトの強さに売りが強まった。日銀が5年物共通担保オペを実施と報じられが、円売り反応は限定的。さらに中国人民銀行が外国為替メカニズムに関する会議開催、投機に断固として終止符を打つとコメントしたことで元高が一気に進み、ドル円でも円高が進行、145.99近辺まで下げた。クロス円も軒並みの下落。ユーロ円は157円台後半から156円台後半に下落。ユーロドルは1.0710付近から1.0740付近へ上昇。週末には著名FED ウォッチャーのニック・ティムラスWSJ記者が9月のFOMCでの据え置きと今後の厳しい議論に言及し、ドル売りも入った。
ロンドン市場では、ドル円が反発。東京市場に続いてロンドン朝も下げが続き145.91近辺の安値を付けた。しかし、その後は海外勢は下値での買いに回り、147円近くまで上昇した。米国の引き締め姿勢が長く続くことで、日米金利差を狙ったドル買い円売り傾向が続くとの思惑がドル買い円売りを誘い、下がったところを買い場と見た参加者からのドル買いが入ったものと見られた。ただ、東京市場から材料的な変化はなく、調整主導の展開だったようだ。ユーロ円は156.59近辺まで下げた後、買い戻しが強まった。ユーロドルは1.07台前半での推移。週末に著名なFedウォッチャーとして知られる米紙記者が今月のFOMCでの金利据え置きと今後についての厳しい議論に言及。ドル売りが少し強まったが、1.0750手前の売りが重く、もみ合いに終始した。
NY市場では、ドル買い一服もドル円は下げ渋る動き。ドル円は海外市場に入って買い戻しがでており、一時147円ちょうど近辺まで上昇。東京時間には、日銀の植田総裁が読売新聞のインタビューで年内の政策変更に含みを持たせる発言を行ったことで円買いが強まり、ドル円は一時145円台まで下落する場面も見られた。市場では、ドルロング・円ショートがかなり積み上がっていたこともあり、植田総裁のインタビューに市場もかなり敏感に反応していた印象。しかし市場では、ドル高が想定以上に続くとの見方が根強い中で、下押しは絶好の買いの好機と見ている投資家も多いようだ。来週のFOMCで利上げを見送ることでメンバーのコンセンサスが得られたと報じられたことも心理を後押ししている。ただ、このところ強い米経済指標が相次いでいることで、FRBが想定以上の追加利上げに踏み切るのではないかという見方が再燃している。ユーロドルはやや買い戻しも、1.07台前半での取引に終始。ユーロ円はドル円とともに157円付近から157.80近辺へと下げ渋り。ポンドドルは買い戻しが優勢となっており、1.25台を回復。マン英中銀委員の発言が伝わっていたが、他の委員とは違い、インフレ退治に向けた追加利上げを支持する考えを示唆していた。
12日
東京市場で、ドル円は146円台後半を中心とした推移。昨日の海外市場では147円ちょうど近くまで上昇したが、147円をぎりぎり付けきれずに146円台半ばで東京朝を迎えた。東京市場では上下ともに動きにくい展開。146円台前半には買いが入り、一方147円を付けきれずに上値が抑えられている状況。146円台半ば割れから146.80台までの振幅だった。ユーロ円は157円台での推移。午後はドル円の上昇もあり157.78近辺まで上値を伸ばした。ユーロドルは午前中にドル売り元買いが入った局面で1.0740台から1.0769台まで上昇。直ぐに戻して揉み合い、午後は若干ドル買い傾向も1.0730台までと落ち着いた動き。ポンドは15時の雇用統計で平均時給が上昇し、インフレ懸念が広がる形で1.2510台から1.2530まで急騰もすぐに元の水準に戻している。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。明日の米消費者物価指数の発表控えて、前日のドル売りに調整が入っている。ドル円はじりじりと買い戻される流れ。ロンドン中盤にかけては一時146.98近辺と、147円の大台手前まで高値を伸ばした。ユーロドルは東京午前に1.0769近辺まで買われたあとは売りに転じている。ロンドン序盤には1.0712近辺に安値を更新。ポンドドルはロンドン朝方につけた1.2530近辺を高値に、その後は売りに押されて1.2463近辺に安値を更新。ユーロ対ポンドではポンド買いが先行したあと、すぐにユーロ買いに方向転換している。この日発表された英雇用統計では賃金の伸びが依然として高水準である一方、雇用者数は減少、失業率は上昇となっていた。ポンドは一瞬、賃金上昇に反応も、すぐに売り戻されていた。次期英中銀副総裁となるブリーデン氏の議会証言では、「インフレ期待に関する見通しがカギ、現在までの引き締めのインパクトを精査している」などと現状を分析しきれていない印象を受けた。また、9月独ZEW景況感指数は2か月連続の改善となり、ユーロ相場の下支えとなっていた。ただ、現状指数が悪化しており、厳しい経済状況は続いている。
NY市場で、ドル円は147円台を回復した。前日は日銀の植田総裁の新聞でのインタビューで年内の政策変更に含みを持たせる発言を行ったことをきっかけに円買いが強まり、一時145円台まで下落していた。しかし、明日の米消費者物価指数(CPI)の発表を控える中で、下値では押し目買いも活発に出ていたようだ。 明日の米CPIだが、今回はエネルギー価格上昇がけん引し、総合指数は再び上昇する可能性が高いが、コア指数は落ち着きを示すものと見込まれている。ユーロドルは1.07台前半で膠着した値動きが続いた。明日の米消費者物価指数(CPI)や木曜日のECB理事会を控えて、ユーロ相場は様子見気分が広がった。ECB理事会について、市場は政策金利引き上げと据え置きで二分されている。ややインフレ警戒ムードが広がってきているようだ。ポンドドルはNY時間に入って下げを一服させているものの1.24台での推移と上値は重い。ロンドン朝方の英雇用統計では、失業率が前回から悪化、週平均賃金は伸びが記録を更新し続けている。労働市場は緩みの兆しが示された格好だが、スタグフレーションのリスクを浮き彫りにしたとの見方も出ている。英中銀が安心できる内容ではなく、間違いなくインフレへの影響を懸念するとの指摘も多い。
13日
東京市場では、ややドル買いが優勢。ドル円は前日の海外市場で147円台を回復したことを受けて、午前中はドル高・円安が優勢となり147.45近辺まで上昇した。今晩の米CPIでは総合指数の伸びが強まると見込まれており、ドル高・円安の流れが続くという見通しが広がっている。午前に高値を付けた後、午後は動意に欠ける展開が続いた。堅調地合いは維持しているもののCPIを前に上値追いには慎重な姿勢も見られた。昨日のNY市場午後にロイター通信が明日のECB理事会で示されるスタッフ予想で2024年のCPI見通しが前回6月の3.0%を超える水準になると報じられた。ユーロドルは朝方に1.0765近辺まで上値を伸ばした。その後は少し売りが入って様子見に。ポンドは15時の月次GDPが予想を超える減少となり、売りが出た。同時に発表された鉱工業生産、製造業生産などもいずれも前月比マイナス圏となっており、英経済への懸念が広がった。
ロンドン市場は、ややドル買いが優勢。全般的にはこの後の米消費者物価指数発表を控えて、結果待ちのムード。値動きが目立ったのがポンド相場。ロンドン朝方に発表された7月の英月次GDPが前月比−0.5%と前回の+0.5%から落ち込み、市場予想−0.2%を下回ったことで売りに反応した。ポンドドルは1.2490付近から1.2442近辺まで急落。ポンド円は184円台割れから183.20近辺まで下落した。ただ、3カ月ごとのデータはプラス成長にとどまっており、公務員ストライキや雨天による小売、建設などへの影響といった要因分析もあった。いったん1.2480台まで反発している。しかし、総じてドル買いが優勢となるなかで上値は抑えられている。ユーロドルは1.0750台から1.0730付近へと小安く推移。ユーロ円は157円台前半での揉み合い。前日に「ECBはユーロ圏インフレ率が来年3%超に高止まりと予想」との報道でユーロは買われたが、きょうはドイツ経済の成長鈍化懸念が広がりユーロ買いに調整が入っている。ユーロ圏鉱工業生産が前回から低下したこともユーロ売り材料。ただ、値動き自体は小幅。ドル円は東京市場で147.45近辺まで買われたあとは、147円台前半で高止まり状態が続いている。米消費者物価指数は前年比、前月比ともに前回から伸びが加速する予想となっており、米債利回りの上昇とともにドル相場が底堅く推移している。
NY市場では、注目の米CPI発表も方向感は出せず。朝方に注目の米消費者物価指数(CPI)が発表になったが、コア指数の前月比が予想を上回り、為替市場はドル買いの反応を見せた。ドル円も147.75付近まで上昇する場面が見られた。しかし、直ぐに戻しており、反応は限定的となっている。本日の米CPIはFRBの追加利上げの可能性を残す結果となった。食品とエネルギーを除いたコア指数は前月で0.3%上昇し、2月以来の加速となっている。また、食品とエネルギーを含んだ総合指数は前月比0.6%上昇と、過去1年以上で最も高い伸びとなったが、エネルギー価格の上昇が反映された。総合指数の上昇分の半分以上はガソリン価格の上昇だった。また、パウエル議長が注目しているスーパーコア(住居費を除くサービス業)も計算値で前月比0.4%の上昇となった。全体的には予想よりも高めの内容で、短期金融市場でのFRBの利上げ期待は、来週のFOMCの据え置き観測に変化はないものの、11月の追加利上げ期待を若干上昇させた。ただ、市場は無難な通過といった雰囲気で、ドル円も落ち着いた動きを見せている。ユーロドルは1.07台での推移が続いた。ポンドドルは一旦1.24台前半まで下落していたが、NY時間にかけて、一時1.25ドルちょうど付近まで買い戻された。
14日
東京市場では、ドル円が軟調。147.50手前水準から米10年債利回り低下を受けてドル安方向に振れた。昼過ぎには前日安値を並ぶ147.02近辺まで下落。午後にかけては値動きは落ち着いた。日本時間今夜9時30分に発表される8月の米小売売上高や米生産者物価指数(PPI)を控えて積極的な取引を手控える気分が広がっていた。ユーロドルは午前のドル安の動きを受けて午後には1.0752近辺まで買われた。一方、ユーロ円は午前に157.92近辺まで下落したあとは下げ一服。ECB理事会の結果発表待ちに。豪ドルは堅調。8月の豪雇用者数が市場予想を上回ったことに反応。対ドルで0.6453近辺まで買われ、5日以来の高値水準となった。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米債利回りの上昇とともに、東京市場でのドル安の動きに調整が入っている。米10年債利回りが4.22%付近から4.26%付近へと上昇する動きに、ドル円は147円手前水準から147.40付近まで買い戻しが入った。ユーロドルは1.0750台まで上昇したあと、売りに転じるとロンドン序盤には1.0725近辺に本日の安値を更新。ポンドドルも1.25台乗せからは売りに押し戻されており、1.2461近辺に安値を広げている。ECB理事会を控えてポジション調整主導の展開となっているもよう。そのなかでユーロ対ポンドではユーロ買いが優勢になっている。ユーロ円が158円台前半での揉み合いとなる一方、ポンド円は184円付近から183円台後半へと上値重く推移している。ECB理事会についての市場の見方は二分されている。エコノミスト予想はやや据え置き派が優勢。一方、短期金融市場では25bp利上げの織り込みが優勢。この日発表されるECBスタッフ経済見通しで、来年のインフレ予測が3%を上回るとの観測が利上げ見通しを引き上げている。政策金利や経済見通しの発表にあとには、ラガルド総裁会見が控えており、インフレと景気のバランス感が注目されている。
NY市場では、ユーロ売りが強まった。ユーロドルは戻り売りが強まり、一時1.06台前半まで下落、5月末につけた年初来安値に並んだ。この日のECB理事会は市場が開始前までに急速に利上げ期待を上げていたが、その通りの結果となった。ECBは25bpの利上げを実施し、中銀預金金利を4.00%に引き上げている。ただ、ユーロは逆にネガティブな反応を見せた。同時発表になった成長見通しを23年から25年まで、すべて下方修正したことで、ECBは景気に軸足を移し始めたのではとの雰囲気が市場に広まった。ラガルド総裁は「ピークに達したかは言えない」と述べ、利上げサイクルの終了には言及しなかったものの、市場では、利上げは今回が最後で、ECBは今後、金利を高水準で維持する方向にかじを切ったと見られている。ポンドドルも下げ幅を拡大し、一時1.24ちょうど付近まで下落。ユーロに連れ安となった。ドル円は147円台で上下動した。この日の米生産者物価指数(PPI)や米小売売上高は予想以上に強い内容となったものの、エネルギー価格の上昇がその大部分を占め、他の分野ではインフレの落ち着きも示唆されていた。前日の米消費者物価指数から今日の一連の指標発表を終えて、市場ではこの先のFRBへの見方を変えていない。来週のFOMCは据え置きを確実視しているほか、年内あと1回の追加利上げの有無は見方が五分五分となっている状況。
15日
東京市場は、オセアニア通貨が堅調。午前に発表された8月の中国鉱工業生産指数や小売売上高の強い結果を受けて、対中輸出の大きいオセアニア通貨が買われた。また、NY原油の時間外取引が、昨年6月以来1年3カ月ぶりの高水準となる1バレル91ドル台まで一時上昇したこともオセアニア通貨の支えとなった。豪ドル/ドルは4日以来9営業日ぶりの高値となる0.6474付近まで、豪ドル円は8月1日以来1カ月半ぶりの高値となる95.55付近まで水準を切り上げた。NZドル/ドルは0.5936付近まで、NZドル円は8月10日以来およそ1カ月ぶりの高値となる87.61付近まで上昇した。ドル円は147.40付近での揉み合いが続いたが、午後に「日銀内で植田総裁の発言内容と市場の解釈とのギャップを指摘する声が出ている」との関係者発言が伝わると一時147.69近辺まで買われた。ただ買いは続かず元の水準に。ユーロドルは1.06ぢあ半ば、ポンドドルは1.24台前半と前日の下げからの小戻しにとどまった。
ロンドン市場は、円売りが優勢。来週末には日銀金融政策決定会合の結果が発表される。これを意識して今週は植田総裁関連の報道に円相場が神経質に反応する地合いとなっている。きょうは東京午後に「日銀内で植田総裁の発言内容と市場の解釈とのギャップを指摘する声が出ている」との関係者発言が報じられると円売りの動きが広がっている。ドル円は147.40付近から足元では147.90台へと上昇、148円に迫る勢いを示している。クロス円も総じて買われ、ユーロ円は157円付近から157円台後半へ、ポンド円は183円付近から184円手前水準まで上昇。前日のECB理事会では利上げ発表も、市場では打ち止め感が広がっており、株式市場は堅調。円売りを下支えした面も指摘される。クロス円の上昇につれて、ユーロドルやポンドドルは小高く推移。ユーロドルは1.06台前半から後半へ、ポンドドルは1.24台前半で下げ渋り。ただ、足元ではややユーロ買い・ポンド売りのフローが入っており、ポンドの上値は重くなってきている。ラガルドECB総裁は、「必要な期間、制限的な水準に金利を設定し続ける」「利下げについては議論していない、言葉を発したことない」など現行の水準をしばらく維持することを示唆した。
NY市場でドル円は上値追いの動きが続き、147円台後半まで上昇。一時147.95付近まで上昇し、昨年11月以来の高値を一時更新した。上値に慎重な雰囲気はあるものの、着々と150円に向かっているようだ。財務省による為替介入も警戒されそうだが、このスピードであれば介入はないとの声も聞かれる。 

 

●為替相場 9/18-9/22 9/23 
まとめ9月18日から9月22日の週
18日からの週は、米英日などの主要中銀の金融政策発表が相次いだ。週前半はイベント待ちムードで方向性が乏しかった。まず米FOMC会合結果が発表された。政策金利を大方の予想通り据え置きとしたが、FOMC委員の金利見通しで年内あと1回の利上げが示唆され、来年の金利水準が引き上げられた。パウエル議長会見でもタカ派のトーンが維持されている。市場は米高金利が長引くとの観測とともに米債利回り上昇、ドル高圧力が広がった。木曜日の英中銀(金融政策委員会・MPC)についてはエコノミスト予想では25bp利上げが優勢だったが、発表前日の英消費者物価指数が予想を下回る伸びにとどまったこと受けて、短期金融市場の織り込みは据え置きと利上げがほぼ五分五分となった。据え置きを5対4の僅差で決定するとポンド売りが広がった。スイス中銀は市場の利上げ予想に反して、据え置きを発表。足元の消費者物価の落ち着きで利上げは見送られた。この日はトルコ中銀が予想通り25%から30%に政策金利を引き上げた。スウェーデン中銀とノルウェー中銀も予想通りの利上げを発表。いずれも今後の追加利上げに言及した。金曜日の日銀決定会合ではマイナス金利を継続、従来からの政策が踏襲されている。植田日銀総裁からも「政策修正の時期は決め打ちできない」「施策への基本的な考え方について、従来から変化はない」など政策修正に関する新たな情報は得られなかった。全般的に米金融当局のタカ派姿勢が勝った格好でドル買いが優勢だった。ドル円は148円台に乗せて年初来高値を更新。ユーロドルは1.06台、ポンドドルは1.22台へと沈んでいる。
18日
東京市場は敬老の日の祝日で休場。
ロンドン市場は、円高の動きが一服。先週末の米株安を受けて東京不在のアジア株は軟調に推移。ドル円は週明け朝方の147.88近辺を高値に軟化、ロンドン早朝には147.56近辺まで下押しされた。欧州株も軟調に推移しているが、ドル円の下げは一服。米債利回りの上昇局面で147.70台まで下げ渋ったあとは147.60-70レベルに落ち着いている。ユーロやポンドは対ドル、対円ともに下に往って来い。ユーロ円はロンドン朝方に147.35近辺まで下押しされたあとは157.50-60レベルに下げ渋り。ポンド円は183円付近から182.70台まで下落したあとは183.20付近まで買い戻された。ユーロドルは1.0656から1.0678までのレンジ。ポンドドルは1.2370から1.2410までのレンジ。米10年債利回りは4.34%付近から4.35%台での揉み合い。週央以降の米FOMC、英MPC、日銀などの金融政策発表を控えて、週明けは調整の動きを交えつつも、全般に動きにくい展開となっている。カジミール・スロバキア中銀総裁は、9月利上げが最後であること望むとしながらも、来年3月の予想まではインフレ目標に向かっていること明確に確認できずとして利上げ終了の判断を留保した。デギンドスECB副総裁は、基調的インフレは最悪の状況を過ぎたと述べた。独連銀月報では、ドイツ経済が第3四半期に縮小する公算が高いとした。
NY市場では、方向感のない取引。ドル円は147円台での上下動が続いた。今週のFOMCや日銀決定会合の結果待ちの雰囲気が強く、様子見気分が広がっていた。FOMCについて投資家の間では、据え置きがほぼ確実視されているが、ここからFRBがどのような姿勢を取るのかを見極めようとしている。FOMC委員の金利見通し(ドット・プロット)は注目を集めそうだ。ユーロドルは買い戻しの動きが出て、1.07ちょうど付近まで下げ渋る場面が見られた。ECBは先週に追加利上げを実施したが、市場からはこれが今回の利上げサイクルの最後との見方も少なくない。インフレは依然としてECBが安心できる状況にはないが、足元のユーロ圏経済への不透明感がECBにブレーキをかけると見られている。ポンドドルは1.23台後半での一進一退が続いた。今週のFOMCや英中銀の政策委員会(MPC)を控えて、その結果を見極めたい雰囲気が強い。アナリストからは、ポンドドルは今後数カ月苦戦を強いられるとの指摘が出ている。英国の低成長に対する懸念から、ポンドはドルや資源国通貨に対して上昇しにくいという。
19日
東京市場は、ややドル高。今日、明日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、主要通貨は落ち着いた動き。ドル円は朝に147円.51近辺まで軟化した後147.80前後まで上昇と、ややドル高が優勢となったが、先週金曜日の高値に届かず、値幅は落ち着いている。 ユーロドルは朝方1.0697近辺まで上昇も、1.07前後が重く、1.0670台に落としている。米10年債利回りが朝の4.295%台から4.31%台へ上昇しており、ドル高に寄与。 日経平均は一時400円を超える下げ。午後は少し戻し300円弱の下げまで下げ幅を縮小も、相場への影響は限定的。ドル主導の展開でユーロ円は157円台後半での揉み合いが続いた。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。ロンドン時間に入ると米10年債利回りが4.30%まで低下。これに反応してドル売り方向へと転じている。ドル円はロンドン朝方に147.89近辺まで高値を伸ばしたあとは、147.60付近へと反落。東京朝方の安値147.51近辺に接近した。ユーロドルは1.0675近辺までじり安となったあと、前日高値1.0699近辺を上回ると1.0710近辺に高値を伸ばしている。ポンドドルも1.2770付近から一時1.24台乗せ、豪ドル/ドルは0.6420台から0.6460付近に高値を更新。米FOMCを控えた手掛かり難の相場展開となるなかで、ドル相場は米債利回り動向に振り回されている。欧州株は売りが先行したが、次第に下げを消している。ユーロ円は157円台後半での揉み合いを上放れると高値を158.06近辺に伸ばした。ポンド円は183.10近辺から182.70近辺で下に往って来い。豪ドル円は95円ちょうど付近から95.40付近へと堅調な動き。NY原油先物はこの日も堅調。93ドル手前まで一時買われた。
NY市場は、ドルが下げ渋り。原油高で米国債利回り上昇 FOMCのタカ派姿勢への警戒がみられた。明日のFOMCの結果発表を控えて全体的に様子見の雰囲気が続いている中で、ドル円はNY時間に入って147円台後半に上昇。原油相場の高騰が続いており、WTIは93ドル台後半まで一時上昇した。これに伴って米国債利回りも上昇し、ドル円をサポートしている。明日のFOMCでタカ派色が強まるのではとの見方も。金利については据え置きが確実視されているが、注目はFOMC委員の金利見通し(ドット・プロット)や経済見通しで、それがタカ派な雰囲気を強めるかどうかが焦点に。ユーロドルは一旦1.0720付近まで買い戻されていたものの、原油高と米国債利回りの上昇が続く中で、NY時間に入って1.06台に戻した。ポンドドルは依然として上値が重く、1.23台での推移が続いた。今週は木曜日に英中銀の金融政策委員会(MPC)もあり、ポンドにとっては最注目となる。市場は25bp利上げを確実視しているものの、英経済の先行きに不透明感が台頭する中で、11月以降の利上げについては慎重なスタンスを示すのではとの見方も。
20日
東京市場では、ドル円は147円台後半での取引に終始している。米FOMCの結果発表を日本時間21日午前3時に控えており、発表までは動きにくい展開。147.95前後と直近高値水準まで上昇も、148円を付けきれず。ユーロドルは1.06台後半推での移で、こちらも米FOMCを前に動きにくい。ポンドは午後3時の英物価統計が弱めに出たことで一気に売りが出た。エネルギー価格上昇の影響で世界的に物価の下げ止まり傾向が見られ、英中銀のインフレターゲット対象であるCPI前年比は前回からの上昇が見込まれていたが、予想外に前回から伸びが鈍化。その他物価統計も軒並み弱めに出てポンド売りが広がった。ポンドドルは1.2380前後から1.2330台を付けている。
ロンドン市場は、ポンドが売られている。日本時間午後3時に発表された8月英消費者物価指数が前年比+6.7%と市場予想+7.0%を下回ったことが売りを誘った。ポンドドルは1.24台手前水準から一気に1.2334近辺まで下押しされた。しかし、その後は買戻しの動きで1.2370台まで反発。ポンド円は183円台前半から182円台半ばで激しく振幅。足元では182.80付近と上値が重い。明日の英金融政策委員会(MPC)を前に、市場では利上げ観測が後退してきている。英債利回りの低下とともに米債利回りも低下しており、全般的にはドル売り圧力が優勢。ユーロドルは1.0680付近での揉み合いを上放れると1.0705近辺に高値を更新している。対ポンドでのユーロ買いが下支えとなる面も指摘される。ドル円は一時148円台乗せ。ポンドドルの急落をきっかけ147円台後半から148円をうかがう動きがみられた。いったん148.00レベルで上値を阻まれたが、その後すぐにブレイク。一時148.17近辺と年初来高値を更新した。ただ、総じてドルが売られるなかで147.80台へと押し戻されている。米FOMCを控えて一方向への値動きは続きにくい状況。
NY市場では、米FOMCを受けてドル買いが強まった。午後になってFOMCの結果が公表され、政策金利は予想通りに据え置かれた。今回はFOMC委員の金利見通し(ドット・プロット)も公表され、年内1回の追加利上げの可能性を示唆したほか、2024年は年末までに中央値で5.00−5.25%を見込んでいた。6月のドット・プロットでは2024年末までに4.50−4.75%まで利下げを予測していた。パウエル議長は「引き締めは慎重に進める」と述べたものの、追加利上げに前向きな姿勢も堅持していることから、米国債利回りの反応と伴にドルも買われていた。ドル円は147円台半ばまで下げていたが、一連の動きを受けて148円台回復している。ユーロドルは1.07台に買い戻されていたが、再び1.06台後半に押し下げられた。ポンドドルも再び下値模索となり1.24台前半から1.23付近へと下落した。
21日
東京市場は、米FOMCを受けたドル高水準が継続。朝方にパウエル議長会見後の高値を超えて、148.46近辺と年初来高値を更新した。その後は148.50手前の売りに上値を抑えられ、昼前に148.19近辺まで下げたが、午後には148.40前後に戻すなど、ドル買い圧力が根強かった。ユーロドルは1.0650付近から午後には1.0617近辺へと軟化。ポンドドルも1.23台前半から大台割れ目前まで売られている。昨日の英物価統計を受けて短期金利市場で据え置き期待が強まり、物価統計前の利上げ見通しが8割以上という状況から据え置き見通しが半分を超える状況になっていることもポンドの重石。このあと英中銀が政策金利を発表する。ユーロ円は158円付近から157円台前半に下げた後、157円台後半に戻す動き。
ロンドン市場は、ポンド売りが進行。英MPCの発表を控えて短期市場では利上げと据え置きの織り込みが拮抗していた。前日の英消費者物価指数が予想を下回る伸びにとどまったことが影響した。事前にポンド売りが優勢となるなかで、発表を迎えた。結果は5.25%での据え置き。票割れは5対4の僅差だった。ただ、ベイリー、ブロードベント、ディングラ、ピル、ラムスデンなどの主要メンバーが据え置きを主張していた。労働市場の低迷、8月消費者物価や企業景況感の低下などを据え置きの理由に挙げた。一方で利上げ派は、インフレ圧力の持続、8月のサービスCPIの低下は一過性の可能性高いことなどを指摘していた。ポンドドルは発表前に1.23台前半から1.23台割れへと軟化、発表後には1.2239近辺まで急落した。ポンド円も182円台後半から売られ始め、発表後には180.80台まで下落した。対ユーロでもポンド売りが進行。また、前日の米FOMCでのタカ派姿勢の影響も残っており、欧州株や米株先物・時間外取引が軟調に推移。ドル円は東京朝方の年初来高値から反落し、148円台割れから147.70近辺に本日の安値を更新。ポンド円とともにユーロ円も軟調な動きを示し、158円付近から157.20付近まで下落した。
NY市場では、ドル買いが一服。ドル円はNY時間に入って戻り売りに押され、147.30近辺まで一時下落した。前日の米FOMCを受けてのドル買いが一服しており、ドル円も利益確定売りが出ていたもよう。明日は日銀決定会合が予定されており、据え置きを確実視しているものの、前回にサプライズの実質利上げを実施した植田総裁の会見に注目が集まっている。先日の植田総裁のインタビュー報道で市場は円高に敏感に反応していたが、報道の内容と市場の認識にズレが生じたとも見られており、その真意も確かめたいところではある。売ユーロドルはNY時間にかけて買い戻され、1.06台前半から後半へと下げ渋り。前日の米FOMC後に下落に調整が入っている。ポンドドルも英MPC後の下落に調整が入り、1.2240近辺を安値に1.23ちょうど付近まで戻した。市場では一部に英中銀の利下げの声も出始めているが、ベイリー英中銀総裁は利下げ検討は時期尚早と釘を刺した。
22日
東京市場では、日銀会合後に円売りが強まった。ドル円は148円台を回復し、148.26円付近まで上昇した。今月の植田日銀総裁の発言を背景に市場では金融緩和策の修正観測が高まっていたが、今回は従来からの緩和が継続、修正が見送られた。ただ、このあとは植田日銀総裁の会見が行われる。クロス円も日銀金融政策決定会合の結果公表後に水準を切り上げた。ユーロ円は157.97付近、ポンド円は182.05付近、豪ドル円は95.25付近まで上昇した。
ロンドン市場では、ドルが堅調。ドル円は日銀決定会合を無難に通過、植田日銀総裁会見での緩和維持姿勢を確認すると148.42近辺まで上昇。前日につけた148.46近辺の年初来高値水準に接近した。ただ、その後は米債利回りの上昇一服とともに148円台前半での揉み合いに落ち着いた。ユーロドルは1.06台後半へと買われたあとは1.0610台まで下落。フランスPMI速報値が大幅低下したことに反応した。その後に発表されたドイツPMI速報値の改善に反発する場面もあったが、上値重く推移。ポンドドルは1.22台後半から1.22台前半へと下落。前日の英中銀政策金利据え置きを受けたポンド売り圧力が継続している。英PMI速報値はまちまちの内容となりポンド売り一服も、反発は限定的。欧州株は序盤の売りからやや下げ渋りも、クロス円は上値を抑えられている。ユーロ円は158円台を維持できず。ポンド円も182円台乗せからは売りに押されて181円台半ばへ。中国株の堅調な動きを受けて、豪ドルやNZドルは底堅い動きとなっている。
NY市場は週末を前に一方向の動きにならず。ドル円はロンドン市場で付けた148円42銭から、148円割れまで一時調整売りが入ったが、すぐに買い戻された。米債利回りの低下がドル売りにつながったが、日米金利差を意識したドル高円安の流れに下がったところではドル買いが出た。ユーロドルは1.0650前後。ドル円でドル売りが入った局面で今日の高値を更新する1.0672を付けたが上値トライはそこまで。ポンドドルも朝のドル安トライの後は売りが出た。 

 

●為替相場 9/25-9/29 9/30 
まとめ9月25日から9月29日の週
25日からの週は、月末・四半期末を控えてドル高の流れに調整が入った。9月に入ってから為替相場はドル買いトレンドを形成している。米英欧日などの中銀の金融政策発表を経て、米政策金利の年内あと1回の利上げ、来年の金利水準見通し引き上げなどのタカ派姿勢が突出した。日銀は相変わらず従来からの緩和姿勢を崩さず。ECBや英中銀については今後の利上げ打ち止め観測が市場に広がる状況となっている。そのなかで、ドル円は149円台後半まで水準を上げてきており、市場には政府・日銀による為替介入への警戒感が高まっている。ドル円は148円台へと反落。また、上昇過程を続けている米債利回りも、週後半には低下しており、ドル高に対する調整圧力となっている。ユーロドルは1.04台まで下落したあとは1.06台に反発。ポンドドルも1.21台まで安値水準を広げたあとは1.23台へと反発。株式市場は週後半には持ち直しの動きとなり、リスク選好的なドル売りや円売りが入る場面もあった。
25日
東京市場で、ドル円はわずかに直近高値更新。先週後半のドル高の流れを受けて、148.25付近から一時148.48近辺まで上昇、21日高値148.46近辺をわずかに上回った。その後は148.50手前の売り注文に上昇を阻まれ揉み合いに。ユーロドルは1.0650前後での15ポイントレンジ。米FOMC後のドル高を意識も、ここからさらにドル買いを進める勢いが見られず、週明けは様子見ムードで始まっている。ユーロ円はドル円が高値を目指した局面で158.10台を付けたが、その後調整が入って157.90台を中心とした推移。
ロンドン市場は、ドル買いが継続。ドル円は揉み合いを上放れて、高値を148.66近辺まで伸ばし、年初来高値を更新。米債利回り上昇、ユーロ売りからのドル買い圧力の波及などに加え、植田日銀総裁や内田副総裁らが緩和継続姿勢を改めて示したことがドル円の上昇につながった。ユーロ相場は売りが先行。カザークス・ラトビア中銀総裁、ビルロワデガロー仏中銀総裁、デコス・スペイン中銀総裁などが過度な利上げに対する警戒感を示したほか、9月独Ifo景況感指数が一段と低下したことがユーロ売りを誘った。ただ、米債利回りとともに独債利回りも上昇し、ユーロ売りの動きは一服。ユーロドルは一時1.0624近辺まで下落したあとは1.06台前半で下げ渋り。ユーロ円は158円台割れから157.76近辺まで安値を広げたあとは再び158円台を回復。ポンドドルはユーロドルとともに売りが先行し、1.2213近辺に安値を更新。その後は1.22台前半で下げ渋っている。ポンド円は181.50割れとなったあとは181.90付近へと反発している。英CBI発表の小売関連指標が前回の過去最低水準から改善した。
NY市場では、ドルが一段高。本日も米国債利回りが上昇。10年債利回りは2007年10月以来、30年債は2011年4月以来の高水準に上昇。先週のFOMCでFRBは、年内の追加利上げの可能性に含みを残したほか、引き締めの長期化の可能性も示唆し、「より高く、より長く」というFRBの姿勢を改めて強調する内容となった。ドル円は149円に迫る動きを見せた。昨年10月以来の高値水準。上値では期末絡みの売りも観測されていたが、下値での買い意欲は依然として強く、150円を視野に入れた動きを続けている。ドル円は介入警戒感が高まりそうな水準に入ってきたが、まだ緩やかな上昇軌道で推移しており、決してボラティリティは高まってはいない。ユーロ円やポンド円などのクロス円では円高の動きが見られている。ユーロドルは1.05台に下落し、3月以来の安値水準を更新。きょうもポンドドルは下値模索が続き、3月以来の1.21台に一時下落する場面が見られた。
26日
東京市場では、ドルが底堅く推移。米債利回りは東京市場でも4.562%と2007年以来の高水準をつけドル相場を下支え。ドル円は前日海外市場で148.96近辺まで買われたあと、東京時間には148.70-148.97レンジで推移し、前日高値をわずかに更新した。ユーロドルは1.05台後半での推移。昨日海外市場で1.06を割り込んだあと、1.0600前後が重くなっている。ただ、1.05台を売り込むには慎重。ユーロ円は昨日ユーロ売りの動きに157円台半ば割れまで下げた。東京市場でドル円が朝方少し下げた局面で157.30台を付けたが、その後のドル高・円安もあって、157円台後半へ上昇。
ロンドン市場は、米債利回り低下とともにドル買いが一服。東京午後からロンドン朝方にかけてはドル買いの動きが先行した。ドル円は149円台乗せから149.19近辺まで買われ、年初来高値を塗り替えた。しかし、その後は米債利回りが低下する動きやタイミング良く鈴木財務相の円安けん制発言が入ったことで148.80付近まで下押し。149円台が重くなった。ユーロドルは序盤に1.0570近辺まで下押しされたあとは、1.06ちょうど付近へと買い戻された。ポンドドルは1.22付近から1.2168近辺まで下押しされたあとも1.21台後半にとどまっている。調整主導も、ドル指数の高止まりに示されるように流れ自体に変化はみられず。欧州株や米株先物・時間外取引は軟調に推移。高金利が経済の重石となることが警戒されている。円相場はまちまち。ポンド円や豪ドル円は上値重く推移も、ユーロ円は下げ渋り。この時間帯のユーロ相場はその他主要通貨に対して幅広く買われている。ECB当局者らからは一段の利上げには否定的だが、利下げ時期について検討することも否定、インフレ目標達成は2025年など、金利が高水準でより長期にわたって維持される見込みが示唆されている。
NY市場で、ドル円は149円台を回復。FRBが高金利を長期化させるとの見方がドルをサポート。一方、それはソフトランディングへの期待を薄れさせ、投資家はリスク資産への投資を手控えている。リスク回避のドル買いが出ている面もあるようだ。また、米政府機関閉鎖の可能性が高まっていることもリスク回避の雰囲気を高めている。為替介入ついては、ドル円の上げはまだ緩やかな上昇軌道に留まっており、ボラティリティは高まっていない。ユーロ円やポンド円などのクロス円では逆に円高の動きも見られ、円安よりもドル高の面が強く、現在の市場の動きは財務省に介入への正当な理由を与えていないものと思われる。ユーロドルは上値重く、1.0560近辺まで一時下落。ポンドドルは下値模索が続き、1.21台で推移した。先週の英中銀金融政策委員会(MPC)で金利先高観が大きく後退し、これまでの追加利上げ期待の下支えをなくしている。ポンドは対ユーロ、円でも下落。
27日
東京市場では、調整の動きがみられた。午前中に中国当局が元安牽制を行い、オフショア市場で介入と見られる国有銀行の元買いが入ったとの報道などにドル安・元高となり、ドル全般の売りにつながった。昨日149円台を一時付けたドル円は149.00台から148.86近辺まで調整が入ったが、動きはそこまでに留まった。中国人民元買いの動きが一服し、すぐに元売りに回ったこともあり、円買いの動きも収まり午前中の下げ分を解消。午後は149円台でしっかりの展開。ユーロドルは1.05台後半、ユーロ円は157円台での推移。豪ドルは中国買いや豪州の月次CPIが強含んだことで一時買いが入り、対ドルで0.64台に乗せた。ただ、午後には人民元売りとともに0.63台後半に押し戻された。
ロンドン市場は、ドル高圧力が根強い。序盤は米債利回りの低下とともに調整の動きが入った。ドル円は149円台割れとなる場面があった。しかし、米10年債利回りが4.50%台を下回る動きに反して再び149円台乗せから前日高値を上回り、149.23近辺まで上昇。年初来高値を更新。ユーロドルは1.0560付近から一時1.0570台まで小反発したが、上値は重く1.0550台と前日からの安値を小幅に広げている。ポンドドルは前日からの安値圏での揉み合い。ロンドン序盤には1.2160台へと小反発も、その後は1.2140付近まで下押しされた。ドル高調整の動きは限定的となっており、ドル高の流れを維持している。欧州株は買いが先行したが、上値は重くマイナス圏に沈んでいる。中銀がインフレに対抗して高金利をより長期間継続するとの見方が広がっており、株式市場にとって逆風が吹いている。クロス円は小動き。ユーロ円は157円台半ば、ポンド円は181円台前半などで推移。
NY市場では、ドル高が継続。ドル円は一時149.70円付近まで上昇。150円を視野に入れた動きが続いている。財務省による介入警感も出ているようだが、現在の緩やかな円安では口先介入に留まり、実弾介入はハードルが高いとの見方も少なくないようだ。機関投資家の月末リバランスに伴うドル需要の増加の指摘も出ているが、一方でドル高の過熱感も否めず、テクニカル的には調整の可能性を示唆するサインが点灯し始めているとの見方も。ユーロドルはNY時間に入って上値の重い展開が見られ、心理的節目の1.05を一時割り込んだ。FRBは年内あと1回の追加利上げを実施後、しばらく高金利を維持すると見られている。一方、ECBは利上げサイクルがすでに終了し、来年には利下げシナリオが浮上している状況。ポンドドルは一時1.21台前半まで下げ幅を拡大し、3月以来の安値水準を更新。本日で6日続落。米英の将来の金融政策への期待がかい離を拡大させており、ポンドは対ドルで下落を続けている。
28日
東京市場では、ややドル高調整も値動きは限定的。ドル円は、ドル高の過熱感警戒や介入警戒感からのドル売り・円買いが入り149.20台まで一時売りが出た。前引け前に売りが出て、午後に入っても一時売りが強まって600円を超える下げとなった日経平均の動きなども、円買いに寄与した。もっとも昨日東京市場での水準よりもドル高円安圏での推移であり、調整の動きは限定的なものに留まっている。日経平均も安値からは100円以上戻しており、円買い一服につながった。ユーロドルは1.05台を回復して取引を開始し、午前には1.0516近辺まで買われた。その後は1.05挟みで売買が交錯している。ユーロ円は157円挟みでの推移。ドルは午前の小売売上高がやや冴えなかったものの、比較的しっかりの動き。NY原油の上昇などを受けた資源国通貨全般の買いが下支え。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。月末・四半期末などが近づくなかでこれまで進行してきたドル高の流れに調整が入っている。また、きょうは米GDP確報値と新規失業保険申請件数、あすに米個人所得・支出とPCEデフレータなどの発表を控えて、いったんドル買いポジションを軽くする動きも指摘される。ロンドン朝方にややドル高方向への動きをみせたあとは、英独債利回りが上昇して取引を開始したことをきっかけに、ポンドドルやユーロドルが買われている。ポンドドルは1.21台前半から一時1.22台乗せ、ユーロドルは1.05台割れ水準から1.0540付近へと上昇。この動きに連れてドル円も149.50付近が重くなり、149.20近辺へと軟化した。米債利回りの上昇には反応薄。ドル売りが広がるなかで、クロス円は反発。ユーロ円は156円台後半から157円台前半へ、ポンド円は181円台前半から182円台乗せへと上伸。豪ドル/ドルや豪ドル円も買われている。欧州株や米株先物・時間外取引はまちまちの動きで方向性は希薄。
NY市場では、引き続きドルの上値が重い。ドル円も戻り売りに押された。原油高、米国債利回り上昇がドルをサポートし、ドル円を150円に向けて押し上げているが、ドル自体に高値警戒感が高まってきていることや介入への警戒感もあり、きょうは上げを一服させたようだ。月末および四半期末が接近する中で、本日は急速に進んだドル高の調整が出ているのかもしれない。ドル円は149円台前半での弱保ち合いに。ユーロドルは買い戻しがみられ、一時1.0580付近まで反発。きょうは9月のドイツ消費者物価指数(HICP)速報値が発表になっていたが、前回の6%台から4%台に鈍化していた。明日のユーロ圏も同様の結果となりそうだ。ただ、ユーロドルがどの程度反応するかは未知数。ポンドドルも買い戻しが膨らんだ。今週は一時1.21台前半まで下落していたが、本日は100ポイントほど買い戻されて1.22台を回復。
29日
東京市場は、ドル円の上値が重い。149円台前半から一時149.50付近まで買われる場面があった。午後1時に日銀は臨時オペを通告したことに反応。日本長期債が0.77%まで上昇したことなどを受けての対応だった。しかし、米債利回りが低下に転じたことをきっかけに、149円台割れを試す動きとなっている。米10年債利回りは4.60%付近から4.56%付近へと低下した。ユーロドルは1.05台後半と、前日からの高値水準で揉み合っている。米債利回り低下を受けてロンドン早朝に1.0586近辺まで買われた。ユーロ円は158円台乗せでは上値が重くなり、157.70台へと押し戻されている。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。米債利回りが低下、欧州株や米株先物・時間外取引が堅調に推移するなかでリスク選好的な動きとなっている。ユーロ圏消費者物価速報が予想以上の鈍化を示したこともECB利上げの打ち止め観測につながったもよう。ユーロドルが1.06台乗せ、ポンドドルが1.22台後半へと上昇したほか、リスク動向に敏感な豪ドル/ドルは0.65付近、NZドル/ドルは0.6050付近に高値を伸ばしている。ドル円は売りが先行し、149.50付近から148.53近辺まで下落した。しかし、その後は149円台を回復してきている。クロス円も序盤の下げを消して高値を伸ばす動き。ユーロ円は157円台半ばから158円台前半へ、ポンド円は182円台割れから183円手前水準へ、豪ドル円は96円台前半から後半へ、NZドル円は89円台半ばから90円台乗せへと高値を伸ばしている。中国の大型連休での消費期待も一部には指摘されていた。
NY市場は、ドルが買い戻されドル円は149円台半ばまで買い戻された。本日は一時148円台半ばまで下落していたが、日本時間0時のロンドンフィキシングにかけて、ロンドン時間までの下げを解消した。月末および期末に絡んだ調整はドル買い需要だったようだが、それも大方終了していた中で、ドルは上値での戻り売りが出ていた。しかし、基本的な流れに変化はなく、下値では10月相場のドル高を期待した買いが入るようでドル円の下値をサポートしている。 

 

●為替相場 10/2-10/6 10/7 
まとめ10月2日から10月6日の週
2日からの週は、ドル相場主導の展開。週前半には前週から続くドル買い圧力が先行、米債利回りの上昇とともにドル円は150円台に乗せる場面があった。米JOLT求人件数が予想外の大幅増となったことに反応した。しかし、150円を付けた直後に大口の売りが入り147円台前半まで急落。その後は149円台を回復。鈴木財務相など関係者は、為替介入に関する質問にノーコメントを貫いた。週後半は米雇用統計発表を週末に控えて、米債利回りの上昇に調整が入ると、ドル相場も売りに押された。ドル円は148円台を中心に推移した。ユーロドルは1.04台半ばまで直近安値を広げたあとは、1.05台へと買い戻された。ポンドドルも1.20台半ばまで下落したあとは、1.22近くまで反発。米雇用統計は、予想以上に雇用者数が増加した。米債利回りが大幅上昇、ドル買いが強まった。しかし、4.885%まで上昇した米10年債利回りが低下すると一転してドル売りとなり、ユーロドルやポンドドルで米雇用統計前の水準を超えてのドル安となった。ドル円も149円00銭台まで下げる場面が見られたが、米株高を受けた円売りにしっかりとなった。
2日
東京市場は、ドル買いが優勢。先週末NY市場でドル円は149円台に乗せて引けた。その流れを受けて週明け東京市場でもドル買いが継続。午後には149.82近辺と年初来高値を更新した。日経平均は午前中に500円超の上昇となったが、午後には調整が入りマイナスで引けた。ただ、ドル円の調整は浅く、149円台後半での推移。ユーロドルは落ち着いた値動きのなかで1.0570台から1.0550台へとややドル買いに押された。豪ドル売りが目立った。世界銀行が中国の経済成長見通しを引き下げたこと、週末報じられた中国のPMIは国家統計局によるPMIが強く出たものの、中小企業が中心の財新PMIが弱く出たことで、警戒感が広がった。また、今月就任したブロック豪中銀新総裁の下での初会合が明日行われることを受けて、少し警戒感が出ていた。 豪ドル/ドルは朝の0.6440台から0.6390台を付けている。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米債利回り動向に対してドル相場が敏感に反応。ユーロドルはロンドン朝方に米10年債利回りが4.60%付近に低下すると、高値を1.0592近辺に更新。先週末のドル買いの動きにやや調整が入った。しかし、米債利回りが4.63%付近に上昇したことでドル買いが優勢になり、1.0532近辺まで下押しされている。ポンドドルも同様に1.2220近辺まで買われたあとは、1.2148付近へと下落。いずれも本日の安値を広げている。この日は独仏ユーロ圏、英国などの製造業PMI確報値が発表されたが、多少の改善をみせつつも引き続き50割れにとどまっており、目立った市場反応はみられなかった。ユーロ圏失業率は6.4%と過去最低水準にとどまった。ドル円は149円台後半に高止まりしている。東京午後に149.82近辺まで買われ、年初来高値を更新した。その後は売買が交錯して149円台後半での揉み合いが続いている。総じて、ドル高の流れが継続している。このあとのNY市場ではパウエルFRB議長の発言機会が予定されており、事前にドルが買われている面も指摘される。
NY市場では、ドル買いが継続。ドル円は150円台をうかがう展開がみられ、149円台後半に高止まり推移した。介入警戒感もあり上値に慎重にはなっているものの、戻り売りを強める動きも見られていない。懸念されていた米政府機関閉鎖も議会が45日分のつなぎ予算を承認し、土壇場で回避された。つなぎ予算を成立させたことで、米格下げへの懸念からひとまずは安心感につながった。ただ、11月中旬には再び期限が訪れ、予断を許さない状況に変わりはない。市場ではFRBのタカ派的スタンスは長期化するとの警戒感が高まりドルを下支えしているが、今週末の米雇用統計はそれを覆すほどの内容ではないとも見方も広がっていた。ユーロドルは下値模索が続き、きょうも再び節目の1.05を割り込み、なお下値が見えない状況が続いている。アナリストからは、経済見通し悪化でユーロは更に脆弱になるとの見方もあった。ポンドドルも再び下値模索が加速し、3月以来の安値水準での推移となっている。目先は心理的節目の1.20ドルを試しに行くか注目される。市場は英中銀の利上げ期待を後退させているが、それでもあと1回の追加利上げを織り込む動きが出ている。本日はタカ派として知られるマン英中銀委員の発言が伝わっていたが、内需が底堅く、物価上昇圧力がより持続するという自身のメインストーリーは変えていない。
3日
東京市場で、ドル円は小幅ながら高値を更新。前日海外市場で米10年債利回りが上昇した流れを受けて、東京時間にも4.7%付近の高値水準で推移。ドル円はじりじりと上値を試す展開となり、149.93近辺に直近高値を更新した。朝からのレンジは14銭にとどまった。ユーロドルは1.0460前後まで下げ、豪ドルは0.6309近辺まで下げるなどドルは全面高となった。米FRBの引き締め姿勢継続がドル高につながっている。日経平均は大幅安。休場明けの香港株式市場も大きく下げており、リスク警戒のドル買い・円買いも出ており、クロス円は軒並みの下げとなっている。
ロンドン市場でも、ドル買い圧力が残っている。序盤は米債利回りが低下したことで調整の動き。ドル円は149.93近辺と年初来高値を更新したあと、149.65近辺まで反落。その後は再び米債利回りが上昇し、149.90付近へと上昇。150円の大台が意識されるなかで、神経質な上下動となっている。ユーロドルは1.0460近辺を安値に、1.0493近辺まで上昇。その後も高止まりしている。ドル売りとともにユーロ自体の買いも。レーンECBチーフエコノミストは、「賃上げによる物価上昇圧力が残っている」「インフレ目標はまだ達成していない、より多くの仕事を成すべき」と発言しており、追加利上げの可能性を示唆したと市場は受け止めたもよう。ユーロ円は156.70台から157円台を回復。対ポンドでもユーロ買いが優勢。ポンドドルは1.20台後半で上に往って来い。1.21手前は重く、足元では1.2050台に安値を広げてきている。ポンド円は180.60付近まで下押しされたあと、一時181円台を回復したが、再び180円台後半に軟化している。ユーロと比較すると上値が重くなっている。米10年債利回りは4.66%台まで低下したあとは、4.72%台へと上昇、根強いドル買い圧力に。 
NY市場で、ドル円は波乱の展開となった。米求人件数が予想外に強い内容となったことから、ドル円は心理的節目の150円台に一時上昇した。しかし、そこから短時間に急速に売りが強まり、瞬間的に147円台半ばに急落する場面が見られた。その後は再び149円台まで戻した。ドル円とともにユーロ円などクロス円も乱高下した。日銀のイールドカーブコントロール(YCC)修正以来の大きな値幅となり、市場の中には財務省による介入観測が広がった。しかし、財務省幹部はノーコメントとした。8月の米求人件数は961万件と予想(883.1万件)を大きく上回った。春以降、労働市場の軟化傾向が顕著となっており、今回は前回から反発は予想されていたものの、傾向は継続すると見られていた。その分、大きなサプライズとなった格好。ユーロドルは一時1.04ドル台半ばまで下げ幅を拡大。ポンドドルは1.20台後半での上下動に終始。ドル高基調のなかで、一部にはユーロドルのパリティー(1.00)やポンドドルの1.20割れを見込む声もでていた。
4日
東京市場は、方向感に欠ける値動き。ドル円は前日海外市場での乱高下のあと、朝方には149円台割れへと軟化した。その後はドル買いが優勢。米長期債利回りの上昇が依然として目立っており、10年債利回りが4.85%を付ける中で、昼にかけて149.32近辺まで上値を伸ばした。米債利回り上昇が一服したこともあり、その後は少し調整が入り149.10台へと下げた。神田財務官は昨日の動きについて介入についてはコメントしないと発言。ただ、値動きの激しさから介入と見る参加者が多く、介入実施でも下げ幅が3円もなかった状況にドル高・円安警戒が広がっていた。ユーロドルもドル高の流れから昼過ぎに1.0457近辺に下落。その後は米債利回り上昇の一服もあって1.0470台まで上昇。ユーロ円はドル円の上昇もあって朝の155.90台から156.30近辺まで上昇。ポンドドルはドル高基調の中1.2060近辺まで一時下げた。1.20台前半にはポンド買いが入っていると見られ、下げ止まった。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。米債利回りの上昇が一服したことに反応。序盤にかけてはややドル買い。米10年債利回りが4.88%付近へと上昇すると、ユーロドルは1.0450付近、ポンドドルは1.2037近辺に安値を広げた。しかし、米10年債利回りの上昇は一服、4.78%台に下げている。ドル売りに流れが転換して、ユーロドルは1.0510台、ポンドドルは1.2140付近に高値を伸ばした。ドル円は149円付近で売買が交錯。前日の介入と思われる急速な下落とその後の反発を受けて短期的には方向感を失っているようだ。東京昼前につけた149.30付近を高値に、ロンドン朝方には148.74近辺まで下押し。その後は149円を挟んだ水準で揉み合っている。ユーロ圏と英国の非製造業PMI確報値では英国の上方改定が大きかったことでポンド買い・ユーロ売りの動きもみられた。また、ラガルドECB総裁は「ECBの十分に景気抑制的な金利スタンスを繰り返し強調」、センテノ・ポルトガル中銀総裁は「インフレ率は上昇時よりも急速に低下している」、ベイリー英中銀総裁は「インフレとの闘いの仕事は終わっていない」「英インフレ率、年内に5%以下に低下の可能性」などと発言した。
NY市場では、ドル買いが一服。9月のADP雇用統計が8.9万人増と予想を大きく下回り、米国債利回りが低下したことが背景。市場では10月相場に入ってFRBのタカ派姿勢が長期化するとの観測から、米国債利回りの上昇、ドル高、株安の動きが強まっている。もうしばらくドル買いが続き、ドル円も150円を再び突破してくるとの観測が根強い一方で、米国債利回りの上昇がかなり過熱しており、それに伴うドル高もそろそろ限界が見えてきているのではとの指摘も出ている。いずれにしろ、金曜日の米雇用統計の反応を待ちたい雰囲気のようだ。ドル円は149円付近で底堅く推移。ユーロドルは買い戻しが優勢。ユーロドルは下値模索が続き、一時1.04台半ばまで下落していたものの、本日は1.05台を回復する動き。ポンドドルも買い戻しが優勢。一時1.20台前半まで下落し、節目の1.20ドルをうかがう動きが見られていたものの、本日は1.21台半ばまで回復している。昨日のドル円急落について、日銀当座預金残高の予想と民間短資会社の推計に基づく試算から、前日のNY為替市場での日本当局の介入の可能性は低いと伝わり、話題になっていた。
5日
東京市場では、ドル売りの動き。米債利回り動向をにらんだ展開となり、午前には米10年債利回り低下とともに、ドル円は149円ちょうど付近から148.26近辺まで急落。その後は利回り低下一服を受けて148円台前半で揉み合った。政府・日銀による為替介入への警戒感や、明日の米雇用統計の発表を前に様子見ムードが広がっており、戻りは限定的だった。ユーロドルは午前のドル安の流れを受けて1.0529近辺まで買われたあと、午後にかけて1.0520台に高止まりしている。ユーロ円は午前のドル円の下落を受けて一時156円ちょうど付近まで軟化した。その後は下げ一服となったが、戻りは鈍く、午後は156円台前半での推移が続いた。豪ドル/ドルは午前のドル売り局面で堅調に推移したあと、午後に入って一段高となり、一時0.6378付近まで上昇。
ロンドン市場は、ドルが反発。米債利回り動向に敏感な反応をみせた。米10年債利回りは4.71%割れ水準に低下したあと、ロンドン序盤には4.75%付近まで上昇。その後は4.71%台に低下と神経質に上下動。ドル円相場は、一昨日の150円台から147円台にわたる大幅変動後は、その他主要通貨以上に変動幅が大きくなる傾向にある。きょうも東京朝方に149.12近辺の高値をつけたあと、148.26近辺まで急落。ロンドン時間にかけては再び149円台乗せまで買い戻しが入った。足元では148円台後半で推移。ユーロドルは1.0502から1.0529までの狭いレンジで上に往って来い。ポンドドルは1.2163近辺まで買われたあとは、1.2116近辺に安値を更新とやや弱めの値動き。対ユーロでポンド売りが入っていた。クロス円はドル円相場に沿った値動き。ユーロ円は東京市場で156.09近辺まで下落した後、ロンドン序盤には156.79近辺に高値を伸ばした。ポンド円は180.30近辺を安値に181円手前まで買い戻された。
NY市場は、再びドル売りが優勢。あすの米雇用統計を控えて全体的には方向感なく推移している。ドル円は149円付近まで買い戻されたあと、一時148円台前半へと再び軟化。21日線148.25レベルに接近した。大きな流れに変化はなく、ドル高期待から下値は固いものの、上値にも慎重になっている様子もかがえる。日本の財務省が150円台で介入を実施したのかどうかは未知数だが、上値への心理的な圧迫感は醸成されているようだ。 ユーロドルは下げ渋る動きを見せ、1.05台に戻している。ただ、積極的に買い戻す動きも見られず、依然として上値は重い。ポンドドルの買い戻しも続いており、1.21台後半まで買われた。基本的に上値の重い展開に変化はないものの、明日の米雇用統計を前にポジション調整が続いているようだ。
6日
東京市場は、ドル買いが優勢。ドル円は材料難のなか148円台半ばでを挟んで揉み合いとなったが、後尾に入ると買われ、148.91近辺に高値を伸ばしている。米10年債利回りが上昇に転じて、4.73%台を一時回復したことがドル買いを誘った。ユーロドルはドル高を背景に一時1.0534近辺に安値を広げた。ユーロ円はドル円とともに買われ、高値を156.93近辺に伸ばしている。日本時間今夜9時30分には9月の米雇用統計の発表が予定されており、その結果に注目が集まっている。また、日本時間の明日午前1時30分にはバイデン米大統領が雇用統計について発言する予定となっている。
ロンドン市場は、円安とドル安が併存しており、リスク選好的な値動きとなっている。ドル円は東京市場から引き続き堅調に推移しており、高値を149.07近辺まで伸ばしてきている。ユーロ円は157円台乗せから157.39近辺に高値を更新。ポンド円は181円台前半から182.05近辺まで上昇している。米10年債利回りが4.71%付近から4.75%付近まで上昇するなかで、ユーロドルやポンドドルが買われている。ユーロドルは1.0530付近から1.0562近辺へ、ポンドドルは1.2165近辺から1.2217近辺へと上昇している。米雇用統計発表を控えて積極的な取引は手控えられているが、欧州株・米株先物がともに堅調に推移していることがリスク選好的な値動きにつながっているもよう。
NY市場は、米雇用統計、非農業部門雇用者数が予想を大きく上回る伸びとなり、前回値も大きく上方修正されたことでドル高となった。米追加利上げ期待が上昇し、年内の見通しが利上げと据え置きでほぼ拮抗する状況にまでなったことで、米債利回りが一時上昇。4.885%を付ける中でドル高となった。ドル円は149円00銭台で発表を迎え149.53銭、ユーロドルは1.0560前後で発表を迎え1.0483まで、ポンドドルは1.2210前後で発表を迎え1.2100台までのドル高。米債利回りが低下すると流れが一変し、ドル円は149円00銭台、ユーロドルやポンドドルは雇用統計前の水準を超えてのドル安となった。株高を受けたクロス円の上昇も目立ち、ユーロ円が156円台後半から158円20銭台を付けるなどの動きが見られた。 

 

●為替相場 10/9-10/13 10/14 
まとめ10月9日から10月13日の週
9日からの週は、ドル相場主導の展開。10月に入ってからのドル安の流れを受けて、週前半から週央にかけてはドル売りが優勢だった。複数の米金融当局者から追加利上げに慎重な見方が示され、市場に利上げ打ち止め観測が広がったことが背景。週末のハマスとイスラエルの攻撃・報復の応酬が地政学リスクとして利上げしにくいムードを醸成した点も指摘された。しかし、木曜日には注目度の高い米消費者物価指数が市場予想を上回る伸びを示したことで、一気にドル高方向の動きに転じた。ただ、10月に入ってからのドル安の流れを変えるほどの値動きではなくドル指数の上値は引き続き重い。ドル円は週前半に148円台前半まで下げたあと、週後半には149円台後半と150円をうかがう動きをみせた。ユーロドルは1.06台前半へと水準を上げたあと、1.05台前半へと反落。ポンドドルも1.23台乗せのあとは、1.21台半ば付近まで下げた。
9日
東京市場はスポーツの日の祝日で休場。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。週末にハマスとイスラエルの攻撃・報復の応酬が繰り返され、民間人にも多大の死傷者が出たことがリスク回避のドル買いにつながっている。欧州株や米株先物・時間外取引は軟調に推移。原油先物や金先物は買われている。ただ、ロンドン時間に入ってからのドル買いの値動きは限定的なものにとどまり、ユーロドルは1.0550割れから1.0520近辺まで、ポンドドルは1.22付近から1.2160台までの下げ。ユーロ円は157.50付近から156.90近辺へ、ポンド円は182円台割れから181.40台へと軟化している。ドル円は149.10-20レベルでの膠着状態が続いている。週明けのオセアニア市場開始時にみせたドル買い・円買いの動きのあとは比較的落ち着いた値動きになっている。このあとの米国市場はコロンブスデーのため米債券市場が休場となる。カナダ市場は感謝祭のため休場。主要な経済統計発表予定はなく、手掛かり難となる。
NY市場では、ドル売りが優勢。ドル円は148円台半ばに下落。本日のNY為替市場はコロンブスデーで銀行休業日のため、参加者は少ない。そのような中で、ロンドン時間にはハマスによるイスラエルへの大規模攻撃で1100人以上が死亡したと伝わり、リスク回避のドル買いが見られていた。しかし、NY時間に入ってジェファーソンFRB副議長やローガン・ダラス連銀総裁の発言が伝わり、これまでよりも慎重さを滲ませた内容となっていたことから、ドルは戻り売りが強まった。先週の米雇用統計を受けてもFRBの利上げ期待が高まっていないことも、ドルの戻り売りを誘った可能性。短期金融市場では11月FOMCでの据え置きの確率を85%、12月FOMCまででは74%で織り込む動きを見せている。ユーロドルはロンドン時間に1.05台前半に下落していたが、NY時間に入って1.0570付近まで買い戻された。ポンドドルもNY時間に入って買い戻しが膨らみ、1.22台に戻した。中東情勢の緊迫化で一時1.2170付近に下落する場面も見られていた。
10日
東京市場は、米債利回り動向をにらんだ上下動。休場明けとなった米債券市場時間外取引は、中東情勢を受けた安全資産への資金逃避もあって大きく上昇(利回りが低下)。ドル売りにつながり、ドル円は前日海外市場の安値を割り込んで148.17近辺名で下落。すぐに148.60台まで反発と不安定な動き。その後も148.30近辺まで下げる場面が見られたが、昼前からはドル高・円安が優勢となって148.70台まで上昇。午後に入って日経平均の上昇幅が800円を一時超える動きがリスク警戒の円買いを後退させる形となった。ユーロドルは1.05台後半での推移が続いた。米債利回り上昇一服でのドル売りと、リスク警戒のドル買いが交錯している。ユーロ円はドル円の下げ局面で156.77近辺まで下落したあと、157円台を回復。
ロンドン市場は、ドル売りと円売りが混在。前日の米株上昇を受けて、中東地政学リスクを受けた動きは一服。また、米10年債利回りは三連休明けで大幅低下したが、ロンドン時間には下げ一服。為替市場ではドル売りが優勢となっているが、次第に落ち着いてきている。ドル円は東京午後に日銀が物価見通しを引き上げるとの関係者発言報道で円買いが入ったが、すぐに収束。148円台半ばから149.07近辺まで買われた。その後は149円付近で高止まり状態。ユーロドルは1.0550台へと軟化したあと、ロンドン時間には上昇に転じて1.0611近辺に高値を伸ばした。その後は1.05台後半へと上昇一服。ポンドドルも1.2210台へと下げたあと、1.2276近辺に高値を更新。足元では1.22台半ばと値動き一服。クロス円は堅調。欧州株の大幅高とともに買われ、ユーロ円は157円付近から157.98近辺まで上伸。ポンド円は181.50付近から182.80付近まで買われた。IMF世界経済見通しでは今年の成長見通しを据え置き、来年は小幅に下方修正した。米国の好調と中国の停滞が示されるとにも、世界的な成長の偏在化を懸念していた。また、関係者によると中国は財政赤字拡大を容認し、成長目標達成のために新たな刺激策を検討しているもよう。
NY市場では、ドル売りが優勢。ドル円は一時148円台半ばまで値を落とした。取引が再開した米国債利回りが低下していることもドル売り材料。市場ではFRBの利上げサイクル終了への期待が広まる中で、前日からFRB高官の発言に敏感になっている。本日はボスティック・アトランタ連銀総裁の発言が伝わっていたが、「金利をこれ以上引き上げる必要があると思わない」と前日のFRB高官と同様に慎重姿勢を示していた。一部からは「明らかにトーンが変わった」との声のほか、米国債利回りの上昇がピークに達したとの見方も。ユーロドルは買い戻しが膨らんでいる。本日の21日線が1.0605付近に来ているが、その水準に到達した形となっている。IMFはきょう、最新の世界経済見通しを発表し、ユーロ圏の成長見通しを下方修正していた。2023年を0.7%、24年を1.2%とし、前回7月から下方修正。ポンドドルも買い戻しが膨らんだ。本日の21日線が1.2265付近に来ているが、その水準を上抜けており、明日以降の展開が注目される。IMFがこの日発表した新たな予測によると、来年の英経済は高金利の影響を受けて、世界の主要国の中で最も低い成長を記録すると見られている。
11日
東京市場は、ドル高・円安がやや優勢。ドル円は前日の海外市場で149円台を一時回復も、続かなかったこともあり、朝方はドル売り円買いが優勢となった。NY市場での安値を割り込み148.43近辺に下落。その後アジアの株高を好感した円売りなどに、少し戻してもみ合いとなった後、午後に入っての米債利回りの回復などを好感してドル高が進んだ。148.95近辺と今日の高値を更新。ユーロ円は157.94近辺に上昇、株高を受けての円売りが目立った。ユーロドルは狭いレンジの中で若干のドル高。1.0614から1.0599へと軟化。前日の米株式市場でダウが3連騰となっており、全体を支えた。アジア市場でも朝から全般に堅調。香港ハンセン指数は一時2%を超える上昇となった。米10年債利回りは朝の4.65%前後から、昼にかけて4.62%前後まで下げた。その後4.65%近くまで戻しており、ドル買いの材料となっていた。
ロンドン市場は、中東地政学リスクをにらんだ動き。レバノンからイスラエルに向けてミサイル発射との一報に米債利回りや欧州債利回りなどが低下。ドル売りや欧州通貨売りが交錯した。ドル円やクロス円は欧州株安とともに円高圧力を受けている。ドル円は149円手前まで買われていたが、米10年債利回りが4.65%付近から4.54%付近に急低下すると148.60近辺まで下落した。ユーロ円は158円台乗せ水準から157.50台へ、ポンド円は183円台乗せ水準から182.50付近まで下落した。欧州株は売りが先行、リスク回避の動きが広がった。ただ、次第に株式は下げ渋り、為替市場の円高の動きも落ち着いた。ユーロドルは米債利回り低下で1.0628近辺まで買われたあと、欧州債利回り低下で1.0593近辺まで反落。その後はレンジ内での揉み合いに。ポンドドルも1.2270から1.2304までのレンジで振幅している。
NY市場では、ドル相場が方向感なく上下動。ドル円は149円台前半での推移となった。午後になってFOMC議事録が公表されたが、為替市場は若干ドル安の反応が見られた。議事録では、慎重に進めることができると全員が合意し、この先の慎重姿勢を強調する内容となっていた。一方、金利は当面、制限的なままであるべきとの考えでも全員が合意している。利上げサイクルは終了の可能性を示唆しているものの、FRBは現在の高金利を当面維持する意向も強調した。9月の米生産者物価指数(PPI)も発表になっていたが、ガソリン価格の上昇が影響し、予想を大きく上回る内容となった。ただ、発表直後はドル買いの反応を見せていたが、一時的な反応に留まっている。ユーロドルは1.06の大台を挟んで方向感のない展開となった。きょうはドイツの9月の消費者物価指数(HICP)の確報値が公表されていたが、速報値と変わらずの内容となった。ポンドドルも1.23レベルを挟んで上下動。対ユーロではポンドは買い戻しが続いている。ユーロ圏のデータが非常に弱く、ポンドに弱気になり過ぎるのは非常に難しいという。
12日
東京市場は、全般的に落ち着いた動き。ドル円は、東京朝方に一時149円割れに沈む場面があったが、下値は広がらず、すぐに149円台を回復した。昼頃にかけては、日経平均の上昇などからリスク選好の円売りがやや優勢となり、一転して149.27付近まで上昇。ただ、日本時間今夜9時30分に9月の米消費者物価指数(CPI)の発表を控えていることから上値追いには慎重姿勢がみられ、東京終盤には149円ちょうど付近まで押し戻される場面があった。ユーロ円は円売りの流れもあって午後に一時158.61付近まで上昇。ユーロドルは東京終盤に一時1.0637付近まで強含んだが、値動き自体は小幅にとどまっている。
ロンドン市場は、米消費者物価指数の発表を控えての揉み合い。米10年債利回りが4.57%台から4.53%台で上下動する動きにやや反応する程度。東京市場ではややドル売りの動きがみられたが、ロンドン時間に入るとその動きを解消している。ドル円は東京午前の149.27近辺を高値に、ロンドン朝方には148.96近辺まで軟化。その後は149円台に戻して揉み合っている。ユーロドルは1.0640付近を高値に1.0620付近へと小反落。ポンドドルは1.2330付近を高値に1.2293近辺まで軟化とやや上値が重い。欧州株や米株先物・時間外取引は堅調に推移しているが、クロス円は調整の動きで上値が重い。ユーロ円は158円台後半から前半へ、ポンド円は183円台後半から前半へと売り戻されている。センテノ・ポルトガル中銀総裁、ウンシュ・ベルギー中銀総裁、ビルロワデガロー仏中銀総裁など一連のECB高官からは金利据え置きを示唆する意見が聞かれた。ピル英中銀チーフエコノミストからは、一段の利上げか据え置きかについての判断は微妙なバランスが必要と判断を保留していた。
NY市場では、ドル買いが復活している。9月米消費者物価指数は、前年比+3.7%と前回と同水準だった。インフレ鈍化が期待したほど進んでいないことを示唆したことから、為替市場ではドル買いの反応が強まった。米国債利回りも上昇。市場ではFRBの利上げサイクル終了観測が広がっていたが、今回の米CPIはその期待に水を差す結果となった。短期金融市場では年内の追加利上げの確率を35%程度で見ている。11月は据え置きを有力視しているものの、12月の見方は割れている状況。ドル円はNY時間に入ってじり高の展開を見せ、149円台後半まで上昇し、再び150円を試しそうな展開を見せている。今週のFRB高官の慎重な発言や前日のFOMC議事録から、ユーロドルは戻り売りに押され、1.05台前半まで下落。本日は9月理事会分のECB議事録が公表されていた。25bpの追加利上げを決定した理事会ではあったが、拮抗した判断と認識していたことが明らかとなった。理事らは「引き締め過ぎ」と「引き締め不足」の両リスクはより均衡したと判断していた。ポンドドルも1.21台まで下落した。きょうは8月の英月次GDPが公表されていたが、前月比0.2%のプラス成長となっていた。一方、前回7月分は0.6%のマイナス成長に下方修正された。8月の回復にもかかわらず、第3四半期はマイナス成長との見方は根強い。
13日
東京市場は、小動き。前日のNY市場では、米消費者物価指数の比較的強い結果を受けて、ドルは全面高となり、ドル円は149円台前半から149.80台まで上伸。150円手前の売りが上値を抑えているが、ユーロドルなどほとんどの通貨に対してドル高が進む中で、下がると買いが出る流れとなった。午後に入ると米債利回りが若干低下し、ドル売りを誘った。ユーロドルが1.0550台を回復するなど、ドル高調整が目立った。もっとも値幅自体は限定的で、ドル円は149.50台までの動きにとどまっている。ドル円レンジは149.57から149.83まで、ユーロドルは1.0528から1.0551まで、ポンドドルは1.2175から1.2208までと比較的狭いレンジの限定されている。
ロンドン市場は、ドル買い・円買いの動きが優勢。序盤は前日の米CPIを受けたドル高水準からの調整の動きがみられた。ユーロドルは1.0559近辺、ポンドドルは1.2225近辺まで反発する場面があった。しかし、NY原油先物が86ドル台へと急騰、米10年債利回りが4.61%台に低下、欧州株が下げ幅を拡大など中東地政学リスクを受けた警戒の動きを示してきている。為替市場でもドル買いや円買いの動きが再燃している。ユーロドルは1.0510台へ、ポンドドルは1.2160台へと安値を広げてきている。ユーロ円は158円付近から157.30台へ、ポンド円は183円手前水準から182円台割れへと安値を広げている。ドル円は本日これまでのレンジ149.56-149.83が示すように前日からの調整は浅く、高止まり状態が続いている。ドル指数はロンドン序盤までの下げを戻して、前日高値を上回っている。
NY市場はドル買いが優勢となる中で、ドル円は149円台半ば付近での上下動に終始した。この日発表のミシガン大消費者信頼感指数で消費者のインフレ期待が予想以上に上昇したことをきっかけにドル買いが優勢となった。一方で、円買いも見られ、ドル高・円高の中でドル円は膠着した展開。 

 

●為替相場 10/16-10/20 10/21 
まとめ10月16日から10月20日の週 16日からの週は、ドル相場が底堅く推移した。中東情勢が緊迫化するなかで、リスク動向が錯綜していることが背景。ガザ地区に対するイスラエルの地上戦が懸念されるなかで、市場は固唾をのんで状況を見守っている。バイデン米大統領がイスラエルを訪問し、人道支援を約束した。ただ、米国のイスラエル側寄りの姿勢は明白。今後のイランなどの介入の危険性もはらんでおり、楽観視はできない状況となっている。株式市場は圧迫される一方、米債利回りや原油先物が上昇するなかで、ドル相場が下支えされている。パウエルFRB議長は、今後の利上げの可能性を残す発言をしており、市場の利上げ打ち止め観測をけん制した。ただ、市場金利の上昇により政策金利引き上げの必要性が低下、との認識も示してしており、やや慎重姿勢へとトーンダウンした印象もあった。ドル円は介入警戒感もあるなかで、再び150円付近に上昇。ユーロドルは1.05台、ポンドドルは1.21台を中心に振幅するなかで、ユーロ買い・ポンド売りの動きがみられた。
16日
東京市場は、静かな週明け相場。ドル円は149.50を挟んでの推移が続いた。上下ともに目立った動意が見られず、落ち着いた週のスタートとなっている。中東情勢などをにらんでリスク警戒の動きが円買いを誘う一方、リスク警戒のドル買いも出ており、ドル円はドル買い円買いで動きにくい展開。150円手前の売りも意識されており、膠着相場につながっている。ユーロドルは1.05台前半での推移。先週末のドル高局面で1.05を割り込む動きを見せたが、その後はじりじりと上昇。週明けも買い戻しが優勢となっているが、値幅自体は落ち着いており、ゆっくりとした動き。ユーロ円は157円台前半での推移。対ドルでのユーロ買いもあって、比較的しっかりも、動きは限定的。
ロンドン市場は、ややドルの売り戻しが優勢。先週後半の米消費者物価指数発表後のドル高の動きに、週明けは調整が入る格好。値動きは比較的緩やかなものにとどまっている。イスラエル関連の新たな展開待ちとなっており、為替市場は模様眺めムードが広がっている。ドル円は149.40近辺から149.60近辺で売買が交錯。米10年債利回りは4.64%付近から4.69%付近へと上昇も目立ったドル買いの動きはみられず。その他主要通貨はややドル売りの動き。ユーロドルは1.0520付近から1.0540台まで小高く推移。ポンドドルは1.2150付近から1.2180付近まで買われたあとは、1.2150割れまで小反落。ピル英中銀チーフエコノミストが、賃金の低下傾向を指摘しており、市場に英中銀の利上げ打ち止め観測がみられた。ユーロ買い・ポンド売りのフローが優勢。神田財務官が、市場が変な動きになれば適切に対応することが必要、などと述べたが、一般論的な話題の中での発言でもあって市場は反応薄。イエレン米財務長官の、米国では高水準の金利が続く可能性、との発言にも目立った反応はみられていない。 
NY市場は、ドル売りが優勢。一方で円安の動きも見られ、ドル円は149円台半ばでの膠着が続いた。中東情勢は依然として混迷を続けているものの、米株式市場が大幅高となっており、先週のリスク回避の雰囲気は一服している。そのような中で、先週のドル高・円高からドル安・円安の動きに変化しているが、同方向であることから、ドル円は方向感が出づらくなっている模様。市場の関心は、金利よりも地政学リスクや、今週から発表が本格化する米企業決算に移っている模様。ユーロドルは買い戻しが優勢となり、1.05台半ばに戻している。ポンドドルも買い戻しが出ており、1.22ドルちょうど付近まで上昇。FRBの金利動向を材料にしたドル買いの勢いは短期的に衰えるかもしれないとの声も出ている。投資家がドルの更なる上値追いに躊躇し始めており、ドル高の勢いも緩和しているという。今週はパウエルFRB議長の講演が予定されている。FOMC委員は今週の土曜日以降、再来週のFOMCに向けて発言を控えるブラックアウト期間に入るが、その前のパウエル議長の講演となる。ただ、先週のインフレ関連指標はインフレの粘着性を示す内容となったが、市場では早期の追加利上げ期待を強める展開までは見られていない。
17日
東京市場では、動意に欠ける展開が続いた。先週末に強まった中東情勢緊迫化を受けたリスク警戒の動きは、事態の膠着を受けてやや後退し、株高・ドル安・円安が昨日海外市場で広がった。今日も東京、アジアの株式市場が堅調な動きとなり、日経平均は300円超上昇している。昨日海外市場から目立った状況の変化がなく、ドル円はどちらにも動きにくい展開。朝からのレンジは149.48から149.64と16銭に留まった。 昨日はリスク警戒後退でのドル安でしっかりした値動きだったユーロドルは、この時間帯目立った動意を見せず、1.0544-1.0562とこちらも狭いレンジでの動きに留まった。NZ第3四半期消費者物価指数が前年比+5.6%と市場予想の+5.9%、前期の+6.0%を下回る伸びに留まったことで、NZドル/ドルは0.5920ドル台から一時0.5900割れを付けた後、少し戻すも0.5914ドルまでにとどまり、午後に入って再び0.5900割れを付けるなど、やや軟調地合い。
ロンドン市場は、ドル円が一時急落。日銀が24年度の物価見通しを2%以上に上方修正の公算大きい、23年度については3%に近い水準に上方修正する見込みと複数の関係者からの発言として報じられたことに反応。ドル円は米債利回り上昇とともに149.70近辺まで買われていたが、報道を受けて一気に148.84近辺まで下落。その後、すぐに149.50付近へと買い戻されている。先日の米JOLTS求人者数が強かったことを受けて150円台に乗せた直後に急落、急反発となった値動きに酷似している。ドル円の荒っぽい値動きが入るまでは、ドル相場はややドル買いに傾いていた。あすのバイデン米大統領のイスラエル訪問を控えて、期待とリスク回避が交錯する動きだった。ユーロにとっては独ZEW景況感指数の予想以上の改善を受けたユーロ買いが入った。一方、ポンドにとっては英就業者数の予想外の減少、週平均賃金の伸びがやや落ち着いたことなどが売りを誘った。ユーロドルが1.0530台から1.0560台で神経質に上下動する一方で、ポンドドルは1.22付近から1.2150付近へと軟調に推移。ユーロ円はドル円の急速な動きとともに158円台乗せから157円台前半へ、その後157円台後半に戻した。ポンド円は182円台割れから181円手前まで下落したあとは、181円台後半に戻した。 
NY市場では、ドル買いの動き。9月の米小売売上高が予想を上回る強い内容となり、米国債利回り上昇と伴にドル円も買いの反応が見られた。ドル円は一時149円台後半に上昇し、150円を再びうかがう動きが見られた。ただ、全体的には様子見の雰囲気が強い中で、その水準には慎重だった。中東情勢は依然として緊迫化しているものの、外交努力が続いていることもあり、市場もひとまず行方を見守っているようだ。そのような中でドルと円の方向感が同じであることから、ドル円の値動きは膠着している。ユーロドルは買い戻しが優勢となり、一時1.05台後半まで戻した。ドイツのZEW景況感指数はインフレ期待の低下で予想以上に改善した。ZEWは「最低点は過ぎたようだ。10月の金融市場専門家の景気予想には顕著な上昇が見られる」「インフレのさらなる低下への期待や、回答者の4分の3以上がユーロ圏の短期金利の安定を予想していることに起因している」としていた。ポンドドルは一旦1.2135付近まで下落したものの、一時1.22ちょうど付近まで切り返した。この日発表された英週平均賃金の伸び鈍化は1月以来で、ピークを打った可能性も示唆されている。一部からは、今回のデータは次回11月2日の英中銀金融政策委員会(MPC)は据え置かれるとの見方を裏付けるとの指摘も出ている。
18日
東京市場は、引き続き動意薄。ドル円は昨日の米小売売上高を受けたドル買いに149.80台まで上昇。高値圏でNY午後の推移が続くと、東京朝も149.84近辺まで買われ、しっかりした動きを見せた。昼前から利益確定の売りなどが見られ、149.50割れまでいったん売られたが、その後149.70前後まで戻した。ユーロドルは1.05台後半推移となった。昨日は独ZEWの好結果で1.0590台へ上昇。その後の調整に午前中1.0560台を付けたが、英物価統計が強含んだことで、1.0590台へ上昇。ユーロ円も158.10台から158円半ばトライの展開に。ポンドドルは15時の英消費者物価指数が前回から小幅な鈍化との見通しに対して前回並みの伸びとなりポンド高となった。1.2180台から1.2210台へ上昇。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。ユーロドルは、ポンドドルの上昇もありロンドン市場朝方1.0590台まで上昇。その後、イスラエルのガザ病院攻撃など中東情勢を受けたリスク警戒の動きもあって1.0550台を付けている。ポンドドルは9月英消費者物価指数が前年比+6.7%と市場予想を上回り、前回と同水準の伸びとなった。これを受けてポンドドルは1.2180付近から1.2210台まで上昇。その後は米債利回り上昇を受けたドル買いが交錯した。ドル円は149円台後半でのレンジ取引に終始した。クロス円はドル買い圧力でユーロやポンドが圧迫されたことで軟調。ユーロ円は158.55近辺から158円台割れ。ポンド円は182.70近辺まで買われたあとは、182.20近辺まで下落。英物価統計前の水準を割り込んだ。リスク警戒の動きが広がったことが影響していた。
NY市場では、リスク回避のドル買いが優勢。中東情勢が再び緊迫化しており、リスク回避のドル買いの反応が見られている。そのような中でもドル円は149円台後半での膠着した値動きが続いた。150円をうかがう動きも見せているが、依然として慎重なようだ。明日はパウエルFRB議長が講演する。このところのデータはインフレの粘着性が示されているにもかかわらず、直近のFRB幹部からの発言に変化はなく、慎重姿勢を意識した内容となっている。景気後退への不安感、原油高騰、米国債利回りの急上昇など懸念事項が多く、足元のインフレはまだ根強いものの、これ以上の利上げには消極的になっているようだ。議長の発言も同様の雰囲気になるのではとの観測が広がっている。ユーロドルは再び売りが強まり、1.05ドル台前半まで下落。来週のECB理事会では、前回の理事会以降のECB理事からのメッセージは明確であり様子見姿勢に徹するとみられている。ポンドドルは一時1.21台半ばまで下落。英消費者物価指数は予想を上回ったものの、市場では英中銀は次回の金融政策委員会(MPC)で利上げを見送るとの見方は根強い。
19日
東京市場は、落ち着いた動き。ドル円は、前日の海外市場で米10年債利回りが約16年ぶりの高水準となったことから、一時149.94付近まで上昇した。しかし、東京序盤には、9月の日本貿易収支が予想外の黒字だったことからやや円買いが優勢となり、一時149.67付近まで弱含んだ。米10年債利回りは前日を上回る4.96%台まで上昇を続けたものの、中東情勢や為替介入への警戒感から、150円台に乗せる動きはみられず。午後は149.80前後を中心に動意に欠ける展開となった。ユーロドルは前日終値を挟んで小動きとなり、13ポイントレンジにとどまった。クロス円はやや円高方向に振れ、ユーロ円は157.69付近まで、ポンド円は181円台半ばまで弱含み。9月の豪雇用者数や中国新築住宅価格の弱い結果を受けて豪ドル売りが優勢。豪ドル/ドルは0.6296付近まで、豪ドル円は94.32付近まで一時下落した。
ロンドン市場は、ドル買いが先行。米10年債利回りが2007年以来の4.97%台を一時付ける中、ドル円は149.90台を付ける場面が見られた。もっとも直近の動き同様に150円手前ではドル売りが出た。10月3日に150円台を付けた後、147円40銭台まで急落した展開が意識されており、上値追いに慎重姿勢が見られる。一方、ユーロドルは1.0530割れから1.0560台へと上昇した。対ポンドでのユーロ買いが観測された。ユーロポンドは0.86台後半から0.87台に乗せている。米債利回りが4.97%台を付けた後、少し戻したことなどもドル売り・ユーロ買いにつながった。ユーロ円は157円台後半から158.20台まで上昇。ポンドドルは1.21台割れとなったあと、下げ一服。ポンド円は181円台半ばから前半で下に往って来い。
NY市場は、パウエルFRB議長講演を受けて、ドル相場が目まぐるしい反応を示した。「FOMCは慎重に進めている」との発言にドル売りの反応を見せた後、「金利の高さ、期間が十分ではない可能性がある」と述べると今度はドル買いに転じ、「FRBは利回り上昇を見守るしかない。利回り上昇は利上げの必要性低下を意味し得る」と述べると、ドルは下げに転じる展開。ただ、いずれも方向感を出す動きまでには至らず、次の材料を探している雰囲気に概ね変化はない。ドル円は結局、149円台後半でのレンジ相場で落ち着いている。ユーロドルも上下動。一時1.06ドル台に上昇も、取引終盤は1.05台後半での推移。ポンドドルも1.21台半ばから後半で上下動。
20日
東京市場は、小動き。ドル円は149.70付近で取引を開始、米10年債利回りが5%に接近したことで午前中に149.94近辺に高値を伸ばした。しかし、米債利回り上昇が一服すると149.80台まで小幅下落。150円超えのドル買いには慎重姿勢が継続している。ユーロドルは1.05台後半推移。昨日は一時1.06台を付けたが、少し調整が入った水準での揉み合いとなった。ポンドドルは1.21台前半推移。15時の英小売売上高が予想を下回ると、少し売られている。ユーロ円はドル円が149.90台を付けた局面で158.61近辺まで買われたが、その後は少し調整が入っている。
ロンドン市場は、ややドルに売り戻しが入っている。米10年債利回りが昨日の4.99%付近からロンドン序盤にかけて4.92%台まで低下したことに反応。ユーロドルは1.0565近辺までじり安となっていたが、ロンドン時間に入ると1.0595近辺まで反発し、その後も高止まり。ポンドドルはロンドン朝方に1.2093近辺まで下押しされた。9月の英小売売上高が予想以上に低下したことが売りを誘った。しかし、米債利回りの低下を受けて1.2130付近に下げ渋り。ドル円は植田日銀総裁が緩和継続姿勢を堅持したこと受けて149.99近辺まで買われた。しかし、その直後に149.69レベルまで急落。すぐに149.90台に戻す神経質な動きをみせた。150円の節目付近での取引で、介入警戒感もあるようだ。ユーロ円は158円台半ばから158.87近辺まで上昇し、高止まり。ポンド円は182円手前から181.30付近まで下落したあと、181円台後半に買い戻される動き。中東地政学リスクや米高金利長期化などを警戒して、欧州株は軟調に推移。原油先物は買われている。
NY市場でドル円はやや戻り売りが出て、一時149.80付近に値を落とす場面が見られた。本日は米国債利回りが下げており、米10年債も一時4.90%付近に戻す中で、ドル円も戻り売りが出た模様。150円手前での振幅を続けていたが、150円をトライする動きは依然として出ず、週末ということもあり、短期筋の見切り売りが若干出ている可能性もありそうだ。ただ、直ぐに元の位置に戻している。  

 

●為替相場 10/23-10/27 10/28 
まとめ10月23日から10月27日の週
23日からの週は、ドル相場が上下動。米長期債動向をにらんで神経質な動きをみせた。米10年債利回りが節目の5%を上回る場面があり、ドル高圧力が強まった。ドル円は150円台にしっかりと乗せると150.70台まで上昇、年初来高値を更新した。ただ、高値を付けた直後に150円台割れとなる動きがあり、市場が政府・日銀の介入警戒感に神経を尖らせている面が指摘された。米新築住宅販売件数の大幅な伸びや第3四半期の米GDP速報値の上振れなど、ファンダメンタルズ面からのドル高支援もあった。ただ、週後半には米債利回りが低下している。特段の材料はみられていないが、市場では5%水準を一つのメドとしていた面があり、ポジション調整が進んだ。週末にかけては目立った材料もなく、来週の米FOMCや日銀決定会合などをにらんで揉み合いが続いた。ユーロドルやポンドドルもおおむね米債利回り動向に左右されていた。ECB理事会では大方の予想通り政策金利を据え置いた。PEPP再投資の早期終了などは議論されず。ほぼ無風状態で通過した。ポンドにとっては来週に英金融政策委員会を控えているが、市場では金利据え置きが有力とみているようだ。イスラエルがガザ地区に対する地上戦を開始、各国長期債利回りの上昇、など株式市場にとっては逆風が吹いている。米企業決算シーズン入りしており、今後の業績見通しの変化に市場の関心が注がれた。IT企業間の格差などが指摘されていた。週末にかけては調整の動きが見られ、ドル円は150円台を維持できず149円台半ば前後に落として週の取引を終えた。
23日
東京市場は、ドル円が一時150円台乗せ。週明けオセアニア市場で150.11近辺を付けて高く取引を開始。その後、すぐに149円台後半に値を落とした。149.74近辺まで下押しされたあとは、米債利回りの上昇もあって149.90台での取引に落ち着いた。ユーロドルは朝方1.06台を付ける場面が見られたが、米債利回りの上昇もあってその後1.057近辺3まで下げた。ユーロ円は早朝のドル円の上昇時に159.05近辺の高値を付けた後はじりじりと下げ、昼前に158.52近辺まで軟化。午後は158.60前後で膠着している。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米10年債利回りが5%の節目水準をしっかりと上回る動きとなったことが背景。東京朝方の4.94%付近からロンドン時間には5.01%台まで上伸し、2007年以来の高水準となった。米金融当局の高金利長期化観測や、地政学リスクを抱えて米財政赤字が一段と拡大することが懸念されるなかで米国債増発の思惑が広がったことなどが利回り上昇につながっているようだ。ただ、ドル買いの動きが通貨ごとにまちまち。ドル円は東京早朝に105.11近辺まで買われたあとは、上昇一服。ロンドン序盤にはややドル安に振れて149.80台へと軟化。その後は150円手前水準へ再び上昇している。ユーロドルは東京時間に1.0570付近まで低下したあと、ロンドン時間には1.06台に乗せる場面があった。その後は1.06を挟んで売買が交錯している。ポンドドルはロンドン朝方に1.2180台へと買われたが、その後は1.2150割れまで反落。上に往って来いの動き。豪ドル/ドルは欧州株や米株先物が軟調、銅先物の下落などを受けて一時0.63台割れと軟調な動きを示した。
NY市場では、ドルが下落した。ドル円は149.55付近まで一時売られた。一時5%台に上昇した米10年債が急速に下げに転じたことがドル売りを誘発。特に材料は見当たらないものの、10年債利回りの5%は短期的にピークの水準とも見られており、値ごろ感の債券買い戻し(利回り低下)が入ったのかもしれない。今週は来週のFOMCに向けて委員が発言を控えるブラックアウト期間に入っているが、先週のパウエルFRB議長の講演内容からすると、今回は利上げは見送るものの、追加利上げはもうないとの市場の観測には一石を投じていたようだ。加えて、FOMCの前にある日銀決定会合に注目が集まっている模様。展望レポートでのインフレ見通しの上方修正は市場もほぼ確実視しているようだが、それに伴ってイールドカーブ・コントロール(YCC)も修正するのではとの思惑が広がっている。その場合、短期的に積み上がっている円ショートの巻き返しが過度に加速する可能性は警戒される。ユーロドルは一時1.0675近辺まで買い戻された。今週はECB理事会が予定されているが、市場では据え置きが確実視されている。一方、足元のインフレは緩みつつあるとはいえ、なお高水準での推移が続いており、ECBは追加利上げの可能性は残すものと見られている。ポンドドルも買い戻しが膨らみ、1.22台半ばを回復。あすのPMI速報値や雇用統計待ちに。
24日
東京市場は、小動き。前日海外市場で米債利回りが低下したことで、149.60台で取引を開始。朝方は米10年債利回りが4.87%台へ上昇、149.79近辺まで買われた。ただ、日経平均が小幅高からマイナスに転じると円買い圧力も。米債利回りも再び低下。149.50前後へと戻した。午後には149円台後半に戻して揉み合いに。ユーロドルは1.06台後半の22ポイントレンジ。昨日は米債利回りが上昇一服となった局面でユーロ買いとなり、1.0670台まで上昇した。ユーロ円はドル円の底堅さとユーロドルの堅調な動きを受けて159.92近辺まで上昇、160円に迫る動きとなっている。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米債利回り動向に敏感に反応。序盤にかけては米10年債利回りが一時4.80%割れまで低下、ドル売りが優勢だった。ドル円は149.32付近まで下落。しかし、その後は米債利回りが4.86%付近に上昇すると、ドル円も149.80台へと買われて本日の高値を更新している。ユーロドルは序盤に1.0694近辺まで買われたあとは、売りに押されている。足元では1.0620台へと安値を広げている。この日発表された独仏ユーロ圏などのPMI速報値が景気低迷を示したことが重石になった面もあった。ポンドドルは1.2289近辺まで買われたあとは、売りに転じており、安値を1.2210付近へと広げている。英PMI速報値は欧州ほどの落ち込みはみえていないが、依然として景気判断分岐点50を下回った。序盤は対ユーロで堅調だったポンド相場も次第に上値が重くなってきている。欧州株は売りが先行も、米株先物とともに下げ渋っている。ただ、クロス円は軟調で、ユーロ円は160円手前から159円付近まで下落、ポンド円は183円台後半から183円台割れへと軟化している。
NY市場で、ドル円は149円台後半での小動き。ドル円はNY時間かけてやや買い戻しが出ていた。前日に米10年債が一時5%台に上昇したが、直ぐに4%台に押し戻されたことから、ドル円も上げが一服。米10年債利回りの5%台は短期的にピークの水準とも見られており、値ごろ感の買い戻し(利回り低下)が入っているようだ。ただ、下押す動きもなく、150円をターゲットにした値動きは継続。来週のFOMCの見方については変化はない。今回は据え置きが確実視されているが、パウエル議長は追加利上げの可能性は残すと見られている。ユーロドルはNY時間にかけて戻り売りが優勢となり、1.05台に値を落とした。この日発表のユーロ圏のPMIが予想を下回ったことがユーロドルの上値を圧迫した。ポンドドルは1.21台に伸び悩んだ。本日は英国家統計局が実験データを使って6−8月の英雇用統計を発表。英国は8万2000人の雇用を失ったが、失業率は4.2%の低水準に留まり、労働市場は以前考えられていたよりも若干タイトなことを示唆していた。
25日
東京市場は、小動き。ドル円は149.80から149.92までと前日からのドル高・円安水準に膠着した。ユーロドルは昨日のドル全面高の中で昨日の海外市場で1.07近くから1.0580台まで落とした反動もあり、比較的しっかり。午後に入って1.06台を回復し1.0607を付けている。ユーロ円は158円台後半での推移。上下ともに動きにくい展開。冷え10年債利回りは5%台を付けたことで一服感が広がった。4.805%付近から4.84%付近へと上昇も、値動きは限定的。豪ドルが買われた。第3四半期の豪消費者物価指数が上振れしたことが背景。次回豪中銀会合での利上げ織り込みが60%超となった。豪ドル/ドルは0.6350台から0.6380台まで買われた。ただ、午後には米債利回りの低下が一服し、ドル買いに押されて0.6370台に落ち着いた。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。引き続き米債利回り動向をにらんだ展開となっている。米10年債利回りは4.80%台から4.87%付近へと上昇。ドル指数は再び10+21日線を上回っている。ドル円は149円台後半での取引を離れていないが、一時149.95近辺まで本日の高値を伸ばしている。ユーロドルは東京市場で1.06台に乗せたが、ロンドン時間に入ると上値が重くなっている。10月独Ifo景況感指数が86.9と市場予想や前回値を上回る好結果に一時ユーロ買い反応がみられたが、ドル高圧力には抗せず1.0566近辺に安値を広げた。ポンドドルは1.2176近辺を高値に1.2114近辺までほぼ一方通行で下げている。対ユーロのポンド売りも観測された。クロス円は軟調。ドル円が150円を付けきれないなかで、対ドルではユーロやポンドが下落しており、ユーロ円は158円台後半から158.50割れへと下落。ポンド円は182円台前半から181円台後半へと下落。欧州株や米株先物は長期債利回り上昇が上値を圧迫しているが、底堅さもみられて売買が交錯している。
NY市場で、ドル円は再び150円台に上昇。取引終盤に、昨年10月以来およそ1年ぶりの高値となる150.31付近まで水準を切り上げた。ただ、駆け上がることもなく、150円台前半で売買が交錯した。本日は強い米住宅指標の発表や、5年債入札が不調だったこともあり、米国債利回りが上昇している。明日のECB理事会や米GDPの発表がドル高を誘発するとの見方も出ている。特に米GDPについては強い数字が予想されており、エコノミストの上方修正も相次いでいる。ただ、慎重な雰囲気に変化はなく、日銀が来週の決定会合でイールドカーブコントロール(YCC)を再修正してくるのではとの観測と、底堅い米経済との綱引きが続いている。ユーロドルは1.05台で上下動。明日はECB理事会が開催される。今回は据え置きが確実視され、声明やラガルド総裁の会見も、特に金利についての言及は限定的になるとの見方が優勢。ポンドドルは1.21台前半に下落。
26日
東京市場では、ドル円が堅調。東京朝方に、いったん150円ちょうど付近まで調整が入る場面があったが、150円割れには沈まず、その後は一転して150.63付近まで上昇した。昨日4.96%台を付けた米10年債利回りは、この日の午後に一時4.98%台まで上昇し、ドル高の動きを支えた。また、日本10年債利回りは2013年以来10年ぶりの高水準となる0.89%台まで一時上昇。鈴木財務相や村井官房副長官の円安けん制発言の影響は限定的だった。ドル全面高のなか、ユーロドルは19日以来1週間ぶりの安値となる1.0540前後まで、ポンドドルは4日以来およそ3週間ぶりの安値となる1.2074付近まで水準を切り下げた。ユーロ円は午前に158円台半ばまで弱含んだあと、午後は底堅く推移した。豪ドルは下げ一服。早朝にブロック豪中銀(RBA)総裁が前日発表された豪消費者物価指数についてほぼ予想通りとの認識を示したことを受け、豪追加利上げ観測がやや後退。
ロンドン市場は、ドル相場が神経質に振幅。米債利回りの上昇を受けてドル買いが先行した。その後は米債利回りの上昇一服とともにドル買いも一服。しかし、足元ではドル相場に底堅さもみられている。前日の米新築住宅販売が予想以上の強さを示したことがドル買いを誘ったことは記憶に新しいが、きょうはさらに注目度の高い第4四半期の米GDP速報値が発表される。市場予想は前期比年率+4.5%と前回の+2.1%の倍以上の伸びを想定している。ECB理事会では政策金利据え置き見通しが広がっており、米欧金利差への思惑でユーロドルは売られやすい面があるようだ。朝方に安値を1.0530付近に広げた後の戻りは1.0550台までにとどまっている。ポンドドルも1.20台後半での取引に終始しており、1.21台は重い。動きが激しかったのがドル円相場だ。朝方に150.78近辺まで上昇、年初来高値を更新した。しかし、その直後に150円台割れまで急落。すぐに150.60付近まで戻す動き。足元ではやや上値を抑えられて150円台前半で推移している。欧州株や米株先物が軟調であることや、政府・日銀の為替介入への警戒感がドル円の上値を重くしているもよう。クロス円も上値が重い。ドル円の乱高下とともに振幅したあと、ロンドン時間にはユーロ円は158円台後半から前半へ、ポンド円は182円台乗せから181円前半へと軟化している。
NY市場は、ドル買い一服。ドル円は150円台前半に伸び悩んだ。ただ、150円台は維持した。第3四半期の米GDP速報値は個人消費がけん引し、4.9%増と強い内容となった。強かった事前予想をさらに上回り、2021年以来の急成長となった。しかし、市場では米国債利回りが下げ、為替市場はドル売りの反応を見せた。多くのエコノミストは、借入コストが高額商品の購入を制限し、学生ローン返済も再開されるため、第4四半期の成長は鈍化を予想している。今回の強い数字をもってしても、来週のFOMCでの金利据え置くとの市場の見方に変化はないようだ。ユーロドルは1.05台前半まで一時値を落としたが、1.0560付近まで買い戻されている。この日はECB理事会が開催され、予想通りに中銀預金金利を4.00%に据え置いた。ECBは声明で「金利をこの水準で十分に長く維持すれば、インフレを目標の2%に戻すことに大きく貢献するだろう」とあらためて強調し、2022年7月から10回連続の利上げサイクルの終了を示唆している。ただ、ECBは金利据え置きは今後の利上げは一切ないという意味ではないと説明したが、市場は終了と見ているようだ。市場の注目はパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)で購入した資産の早期縮小だったが、こちらも議論はしなかったとし、2024年末の再投資停止を再確認と繰り返し述べていた。利下げについては時期尚早と否定。ポンドドルはNY時間に入って下げ渋る動きを見せ、1.21台に戻した。
27日
東京市場は、円安の動きにやや調整が入った。来週に米FOMCや日銀決定会合などの注目イベントを控えて、いったん週末調整が入る格好となっている。ドル円は150円台前半での揉み合いのなかで、次第に上値が重くなり取引終盤には150.08近辺まで軟化した。ユーロ円も158円台後半から158.50付近へと上値重く推移している。ユーロドルは1.0560前後での揉み合いで、動意は限定的となった。そのなかで、豪ドルは強含み。序盤に発表された豪生産者物価指数の前期比が前回値を上回ったことや、日経平均の上昇からリスク動向に敏感な豪ドルが買われ、豪ドル/ドルは0.6351付近まで、豪ドル円は95.32付近まで一時上昇した。
ロンドン市場は、週末調整ムードが広がっている。米10年債利回りが4.84%台から4.88%台で方向感に欠ける上下動となるなかで、為替市場ではややドル売りが入っている。ドル円は東京朝方の150.40近辺を高値に上値重く推移、ロンドン序盤には150円台割れとなる場面があった。豪ドル/ドルは0.63台前半から0.6350超え水準へと買われている。一方、ユーロドルやポンドドルは方向性を示していない。ユーロドルは1.0540台から70付近ポンドドルは1.2110台から40台での上下動となっている。クロス円はドル円とともに軟調で、ユーロ円は158円台後半から前半へと軟化。ポンド円は182円台前半から一時182円台割れとなっている。米株先物は先日の下落から反発し、プラス圏での揉み合いに。欧州株は英独市場が買われるも、仏市場は軟調とまちまち。イスラエルのガザ地上戦が始まるなかで、NY原油先物は85ドル台へと買われている。
NY市場はロンドン市場からの調整ムードが継続。中東情勢警戒の動きなども見られ、ダウ平均が朝の小幅安から下げ幅を広げる展開となり、金スポットが5月以来の1オンス=2000ドル超えを付けるなどの動きの中、円買いの動きが広がった。ドル円はNY市場午後に入っても売りが続き149円50銭をい©時事割り込んだ。クロス円も軒並みの下げとなっており、対ドルでのユーロ買いにNY午前に158円50銭超えを付けたユーロ円が158円割れ、東京市場で182円台半ばを付けていたポンド円が181円05銭を付けるなど軒並み下げていた。ユーロドルはドル安局面で1.06をトライする動きとなったが、1.0597までにとどまり、その後対円での売りもあって少し調整が入った。 

 

●為替相場 10/30-11/3 11/4 
まとめ10月30日から11月3日の週
30日からの週は、ドル相場が上下動。日米英の各中銀の金融政策会合をにらんでドル相場が振り回される展開になっている。ドル円は週明けに149円割れとなったあと151円台後半まで買われて、年初来高値を更新した。その後は売り戻されて150円台で推移している。日銀はYCCの柔軟化を発表、1%をある程度上回る水準を容認した。ただ、市場には事前にYCC撤廃やマイナス金利解除といったより強い措置を期待するムードもあったことから円売りが強まった経緯がある。米FOMCは大方の予想通り政策金利の据え置きを発表した。パウエルFRB議長は慎重な姿勢を示しつつも、利上げのオプションを残した。利下げについては考えていないと表明。タカ派的な据え置きとなったものの、市場では米債利回りが低下、ドル売り圧力が広がった。米四半期定例入札計画では増額が発表された、市場予想ほどではなかったことで長期債利回りが低下する面もあった。英中銀も政策金利を据え置いた。6対3の票割れとなり、3名は25bp利上げを主張した。ベイリー英中銀総裁は利下げの検討は時期尚早とし、追加利上げが必要となるのかどうか注視するとした。インフレ見通し引き上げ、成長見通し引き下げも発表された。ポンド買い反応がみられたが持続性はみられなかった。週末の米雇用統計は予想を下回る内容となったことでドル売りが強まり、ドル円は一気に149円台前半まで一時下落していた。
30日
東京市場は、小動き。ドル円は午前に149.50付近から149.82近辺まで上昇。月末を前にしたごとうび(五・十日)ということもあり、本邦輸入企業によるドル買い注文が入ったと見られた。午後に入るとドル売りが優勢に。日経平均の下げを受けたリスク警戒の円買いなどが重石となり149.53近辺に押し戻された。ユーロ円は158.24近辺まで上昇した後、対ドルでのユーロ売りやドル円の上昇一服を受けて157.91近辺まで下落。ユーロドルは1.0578近辺まで買われたあと、1.0555近辺まで反落。値幅は狭い。午前9時半発表の小売売上高が予想を上回る強い伸びとなった豪ドルは、朝の0.6332から昼過ぎに0.6360近辺まで上昇した。その後は少し調整が入り0.6350前後での推移となっている。
ロンドン市場では、ドル円、クロス円が上昇。ドル円は米債利回り低下とともに149.29近辺まで一時下落。しかし、米債利回りが上昇に転じると149.70近辺まで反発した。ユーロ円は157.70付近へ下げたあと、一転して158.60台まで上昇。ポンド円も181円台割れへと下落後、181.80近辺まで買われた。米10年債利回りは序盤に4.87%から4.83%台まで低下、その後は4.89%付近へと上昇した。ユーロドルは1.0550割れから1.06手前へと上昇、ポンドドルは1.21台割れから1.2150付近で振幅。それほど目立った英指標の発表はなかったが、今週木曜日に英中銀金融政策会合を控える中で、やや動きが不安定だった。材料難のなかで、ポジション調整主導の展開だった。
NY市場では、ドル円が下落。日銀が明日開催の決定会合でイールドカーブ・コントロール(YCC)の再修正を議論すると伝わった。現在1%としている長期金利の事実上の上限を柔軟にし、一定程度1%を超える金利上昇を容認する案が有力だという。米金利上昇を背景に日本の長期金利は1%に迫っている。日銀が金利を抑えつけることで、市場機能のゆがみが膨らむ事態を避ける狙いがある。また、連続指し値オペの運用などを改めることを検討するという。この報道を受けてドル円は急速に売られ、一時148円台に下落した。ユーロドルは買い戻しが膨らみ、1.06台を回復。ポンドドルは1.21台半ばまで買い戻された。10月独消費者物価速報値は前年比+3.0%と2021年6月以来の低い伸びとなった。予想も下回った。今週の英中銀金融政策委員会(MPC)では政策金利据え置きがほぼ確実視されている。いずれもユーロ売りやポンド売り材料ではあるが、今日の市場は調整の動きが入っていた。
31日
東京市場では、日銀決定会合後に円売りが強まった。ドル円は前日海外市場の流れを受けて149.03近辺まで下落したが、午前中には149.50台まで上昇。日銀金融政策決定会合の発表が12時半近くとやや遅かったことで、警戒感から円買いが入り149.30台に弱含んで発表を迎えた。日銀金融政策決定会合はこれまで指値オペによる上限とされていた長期金利利回り1%について、1%を「めど」とすると変更。指値オペの設定については市場動向などを見て決定と、ある程度1%を超える状況を容認する形でYCCの再柔軟化を決定した。市場はマイナス金利解除などといったかなりしっかりした変更を期待していたと見られ、発表後は円売りが強まる展開となった。0.93%近くで推移していた日本国債10年物利回りが0.902%に低下したことも円売りにつながった。ドル円は一気に150円台に乗せた。その後、円債利回りは上昇したが、米債利回りも上昇、ドル円は底堅く推移した。ユーロ円も158円台前半から159円付近に上昇。ユーロドルは1.0620付近から1.0590付近へと小安い。
ロンドン市場は、円売りが強まっている。この日の日銀決定会合ではYCCの柔軟化が発表されたが、前日の日経報道で織り込み済みだった。むしろ、市場の一部にはマイナス金利解除やYCC撤廃といった声もでていたことで、一気に円売りが広がった。ロンドン朝方には植田日銀総裁会見が行われ、従来からの緩和継続姿勢が堅持されていることを印象付けた。また、財務省が外国為替平衡操作の実施状況 (9月28日-10月27日)をゼロと公表。10月3日のドル円急落が介入ではないことが判明した。これを受けて150円台に乗せていたドル円は一時150.76近辺まで一段と買われている。その後も高止まり。ロンドン時間に入るとクロス円も一段と上昇。ユーロ円は160円台後半へ、ポンド円は183円台後半へと上伸している。米債利回りが低下したことで、ユーロドルが1.06付近から1.06台後半へ、ポンドドルが1.21台半ばから1.22ちょうど付近へと上昇したことも、クロス円上伸に寄与した。欧州株は米株先物・時間外取引は堅調に推移。円売り一色の展開となっている。
NY市場では、ドル円が151円台へと一段高。きょうの為替市場は日銀決定会合を経て急速に円安が進み、ドル円は一気に151円台を固める展開となった。NY時間に入ってドル買いが優勢となっていることもドル円の上げを後押ししている。NY中盤には151.70付近まで上伸。ただ、介入警戒感もあって、一時151円手前まで反落する場面があるなど神経質な動きだった。その後は151.50付近に高止まりして取引を終えた。ユーロ円は一時160.80付近、ポンド円は183.80付近まで上伸した。ユーロドルは1.06台後半から1.05台半ばへと反落。ポンドドルは1.22付近から1.21台前半へと反落。ドル相場全般に上下動していた。あすの米FOMC発表を控えて、一方向には動きにくい面がみられた。
1日
東京市場は、ドル円の上昇が一服。151.60台と前日の高値近くで朝を迎えると、東京勢は介入警戒感もあって円買いとなった。神田財務官が「短い間に数円動いている。一方的で急激な動きを懸念していて、過度な変動にはあらゆる手段を排除せず適切な行動をとる。」と発言、為替介入について「スタンバイだ。マーケットの状況を緊張感を持って見ているなかで判断する。」と記者の質問に答える形で発言したことも円買いとなり151.10台まで一時下落。日銀は午後に入って臨時の買いオペを通知。3年超5年以下1000億円、5年超10年以下3000億円の買いオペだった。ドル円はやや買われたが、151円台前半での推移が続いた。ユーロ円は160円台割れから159.80付近まで軟化。ユーロドルは1.0580付近から1.0560台へと小安く推移。
ロンドン市場は、調整的な動き。米FOMCの結果発表、パウエルFRB議長会見、その前には米ADP雇用統計やJOLTS求人件数、ISM製造業景気指数などの発表を控えており、ややドル買いが優勢になっている。ユーロドルは1.0580付近を高値に1.0540付近へと軟化。ポンドドルはロンドン朝方に発表された英住宅価格が予想外の伸びを示したことで1.2160付近へ買われたあとは、ドル買いに押されて1.2130付近に下げている。ドル円は151.20付近に膠着している。東京時間に神田財務官が為替介入について「スタンバイ」できていると発言しており、ドル円の上値を抑えた。クロス円も上値が重い。ユーロ円は160円付近が重くなると159.50割れ水準へと軟化している。ポンド円はいったん184円付近まで買われが、その後は183.50割れ水準へと下押しされている。米債利回りは小幅低下。原油先物は下げ渋り。米株先物は調整売りに押されている。
NY市場では、ドル円が下落。米国債利回りが急低下しており、ドル円の戻り売りを誘っていた。米財務省がこの日発表した来週の四半期定例入札の規模が予想ほど拡大していなかったことや、ISM製造業景気指数が予想を下回ったことが利回りの下げを加速させた。ドル円は150円台に下落した。午後にFOMCの結果が発表され、政策金利は予想通りに据え置かれた。声明は若干の変更があったものの概ね前回と変わらない。注目のパウエル議長の会見だが、「これまでの進展を考慮し、FOMCは慎重に進めるべき」と慎重姿勢を示す一方で、「潜在成長を上回るGDPで利上げが正当化される可能性。利上げ停止後の再利上げは困難との考えを否定」とも言及し、追加利上げの可能性は温存している。なお、利下げについては考えも話もしていないと述べていた。予想通りに「タカ派な据え置き」といった雰囲気だが、短期金融市場での追加利上げの期待は若干後退している。ドル円は150.65近辺へと軟化した。ユーロドルは一時1.05台前半まで下落し、1.05ドル割れをうかがう展開も見られていたものの、FOMCを受けて下げ渋っている。ポンドドルは1.21台で上下動。
2日
東京市場では、ドル売り先行後に動き一服となった。前日海外市場でのドル売りを受けて、午前の取引でドル円は151円ちょうど付近から150.15近辺まで大きく下落。米10年債利回りが一時4.70%台まで低下したこともドル売りを誘った。午後は米10年債利回りの低下が一服したことから下げ渋り、150.40台まで買い戻された。東京終盤は150.40付近に値動きが落ち着いた。ユーロ円は、ドル円同様に午前に159円ちょうど付近まで下げたあと、159.40台まで戻している。ドル円以外のドルストレートはドル全面安。ユーロドルは1.0580付近から一時1.0602付近まで上昇したあとは、1.0600前後で小動き。ポンドドルは1.2170前後から1.2196付近まで上昇したあとは伸び悩んだ。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。前日の米FOMC後のドル売りの流れが再開している。米債利回り動向に敏感に反応しており、ロンドン早朝には米10年債利回りが4.71%前後から4.74%台に上昇する動きにドルが買い戻される場面があった。しかし、ロンドン時間に入ると再び米債利回りが4.70%付近へと低下している。ドル円は一時150.58近辺に反発も、その後は150円台前半へと押し戻されている。ユーロドルは1.06台割れとなる場面があったが、すぐに1.06台を回復。高値を1.0640付近へと伸ばしてきている。ポンドドルは1.22付近が重く、ロンドン朝方には1.2150付近へと軟化。英金融政策委員会(MPC)を控えて英債利回りが低下したことが売り圧力となる面もあった。対ユーロでもポンドは軟調に推移している。しかし、対ドルでは1.22手前水準へと再び買い戻されており、ドル売り圧力が根強い。前日米FOMC後の株高の流れが続いており、きょうも欧州株、米株先物がともに堅調に推移している。英MPCでは政策金利据え置きが発表され、票割れは6対3だった。インフレ見通しを引き上げ、成長見通しを引き下げた。ポンド買い反応がみられたが、一時的な動きにとどまった。
NY市場では、ドル相場が下に往って来い。ドル円は売りが先行し、一時150円台割れとなった。本日も前日からの流れを引き継ぎ、米国債利回りが低下。前日に米財務省が発表した来週の四半期定例入札の規模が予想を下回ったことや、FOMCは大方の予想通りではあったものの、米国債利回りが低下の反応を見せ、ドル売りを誘発している。ただ、ドル円の上値期待は根強く、150円割れでは押し目買いも活発に出るようだ。150円台半ばへ再び上昇して、値動きが落ち着いた。FRBの利上げサイクル終了への期待は高まっているものの、ドル円が本格的に下げトレンドに転じるにはFRBの利下げ期待が台頭する必要があるとの指摘も。ユーロドルはいったん1.0665付近まで上昇していたものの、1.06台前半に伸び悩んだ。ポンドドルは1.22を挟んだ上下動。本日は英中銀金融政策委員会(MPC)の結果が発表され、予想通りに金利を据え置いてきた。英中銀は成長見通しも下方修正しており、なお追加利上げの可能性は保持しているものの、市場では英中銀の利上げサイクルは終了との見方が強まっている。むしろ、英中銀は市場が利下げ期待を抱くことを強くけん制しているようで、ベイリー総裁は会見で「利下げについて考えるのはあまりに時期尚早」と語っていた。
3日
東京市場は文化の日の祝日で休場。
ロンドン市場は、米雇用統計待ちのなかで、ややドル売りの動き。米債利回り動向をにらんだ値動きに終始している。ロンドン朝方に米10年債利回りが4.67%台に上昇すると、ドル円は150.40近辺に買われた。その後、米債利回りが4.64%台に低下したことで150.10台へと安値を小幅に広げている。ユーロドルは1.0620付近に下げたあと、上昇に転じて高値を1.0650近辺に伸ばしている。ポンドドルも1.2185近辺に下押ししたあと1.22台乗せから1.2230近辺に高値を更新。総じてドル売りが優勢となっているが、前日からのレンジ取引にとどまっており、調整の域を出ない動き。欧州株は買いが先行したが、足元では下げに転じる場面もあり方向性に乏しい。ユーロ円は159円台後半から一時160円台乗せも、再び159円台後半に戻している。ポンド円は183円台前半から183.60台まで小幅に上昇。10月英非製造業PMI確報値が速報値から上方改定されたことで、ポンド買い反応がみられた。9月ユーロ圏失業率は6.5%と前回の6.4%からわずかに上昇、ユーロ買いが一服する場面があった。
NY市場はこの日発表された10月の米雇用統計が予想を下回る内容となったことでドル売りが強まり、ドル円は一気に149円台前半まで一時下落した。21日線も下回った。短期金融市場では12月の追加利上げはないと見ている。90%の確率で据え置きを予想。本日の米雇用統計はその雰囲気を裏付ける結果となったようだ。 

 

●為替相場 11/6-11/10 11/11 
まとめ11月6日から11月10日の週
6日からの週は、ドル買いが優勢。先週の米FOMCがややハト派色が色濃いとの印象だったことや、先週末の米雇用統計の弱い内容を受けた米債利回り低下などで、週明けはドル安の動きで始まった。しかし、調整の動きを交えながら連日、ドルが買い戻された。来週前半に米消費者物価指数の発表を控えて、今週は主要統計発表に乏しい1週間。市場では各国中央銀行高官らの発言に視線が集まった。英米欧の各中銀高官らから、インフレ目標が見通せるまでは金利を高止まりさせておくべき、との論調が相次いだ。さらに、利下げ開始の議論は時期尚早との発言も相次いだ。まだまだインフレ退治には長い道のりが想定されるなかで、市場の早期利下げ開始観測に釘を刺す格好となった。パウエルFRB議長は、「十分な引き締めを行ったと確信していない」「適切となれば、躊躇なく追加利上げを行う」などと述べた。ドル円は151円台に上昇。植田日銀の緩和継続姿勢には根強いものがあり、日米金利差が円安圧力となる面も指摘される。金曜日NY市場午後に151円60銭を付けるなど、週末までドル高円安が続いた。ドルに次いで、ユーロも堅調だった。対ドルではやや上値を抑えられたが、対円や対ポンドではユーロ買いが優勢。来週は英消費者物価指数の発表が予定されている。前年比の伸びが5%を下回る予想となっており、事前にポンド売り圧力がみられた面も指摘される。ユーロ円と比較してポンド円の上昇は伸びを欠いた。
6日
東京市場は、ドル安一服。先週金曜日の海外市場では、注目された米雇用統計が弱い内容だったことで、ドル売りが強まった。ドル円は149.21近辺まで下落。週明けも149.25近辺と、ドル売り優勢で取引開始。しかし、その後は買い戻しが入った。先週末にダウ平均が5日続伸となり、週明けの日経平均が一時800円超の大幅高で、リスク選好の円売りが優勢になった。昼にかけて149.67近辺前え買われた。午後には149.50台を中心に高止まりした。ユーロ円も160.10付近から160.68近辺に上昇。豪ドル円、ポンド円などでも円売りが優勢。ユーロドルは先週末のドル全面安のなかで1.0740台と9月14日以来の高値をつけていた。週明けには1.0722-1.0739レンジと高値圏揉み合いとなった。
ロンドン市場は、欧州通貨が堅調。ポンドドルやユーロドルが買われて、ドル指数は先週末から一段と低下している。この日はドイツ国債やイタリア国債などの利回りが上昇しており、ユーロドルは1.07台前半から1.0756近辺に高値を伸ばしている。ポンドドルも1.23台後半から1.24台に乗せると、高値を1.2424近辺に更新。一連の欧州非製造業PMIは引き続き冴えない水準となったが、ユーロ売り反応はほとんどみられず。週末にラガルドECB総裁が2025年のインフレ目標達成について強い意思を示したことが影響したようだ。先週末に発表された米雇用統計が弱含んだことを受けて市場では米利上げ打ち止め観測が優勢となっており、週明けもドル安が継続した。ただ、ドル円は149.50を挟んだ揉み合いに落ち着いており、米国と欧州との金融政策スタンスの差を敏感に感じ取った面も指摘される。ユーロ円やポンド円も堅調。ユーロ円は160.94近辺まで買われて、年初来高値を更新。ポンド円も185.86近辺まで高値を伸ばした。日銀の植田総裁は物価目標2%の達成について「確度が上がってきた」と述べる一方、「年内に物価目標実現を判断できる可能性は低い」と示唆した。日欧などでも金融政策スタンスの差が意識されたようだ。
NY市場では、ドル買いが優勢。米国債利回りが上昇し、ドル円の買い戻しをサポート、150円台を回復した。FRBが利上げサイクルを終了したとしても、一方で日銀が大胆な引き締めに動く可能性も低く、日米の利回り格差は相当程度維持されるとの見方が根強い。そのような中で、下値での押し目買いがみられた。FRBがこの日発表した第3四半期の銀行融資担当者調査で前四半期からの改善が示されたことも利回りを押し上げた。ただ、全体的には融資基準はタイトになっており、ローン需要も弱まっていると報告。ユーロドルは、ロンドン時間に買われたあと、1.07台での小幅な値動きに終始。市場ではECBは利上げ終了との見方が強まり、この先の景気後退の見方も強まる中で、積極的に戻りを試す動きまではまだ出ていないようだ。ポンドドルは一旦1.24台前半まで上昇していたものの、NY時間に入って1.23台に伸び悩む展開を見せている。今週は第3四半期の英GDP速報値が発表される予定。予想は前期比0.1%のマイナス成長が見込まれている。市場の一部からは、英経済はすでにリセッション(景気後退)に入っているとの見方も。
7日
東京市場では、ドル買いが優勢。ドル円は朝方に149.90台に軟化したが、ドル全般にしっかりとした動きをみせるなかで、午後には150.30台まで上昇した。米10年債利回りは前日に4.666%まで上昇した。東京朝方に4.624%まで低下も、昼にかけて4.65%近くまで再び上昇した。午後には利回り上昇は落ち着いたが、ドル買いの流れは継続した。ユーロドルは朝の1.0722近辺から昼には1.0706近辺まで下落、ドル買い圧力に押された。ユーロ円は前日に161円付近が重かったことで、午前中に160.69近辺まで軟化。その後はドル円とともに買われて161円ちょうど手前まで上昇。豪中銀は予想通り25bp利上げを決定した。声明では今会合での利上げ打ち止め感がみられ、豪ドル売りにつながった。対ドルは0.6480台から0.6501レベルをつけたあと、0.6430付近まで反落。豪ドル円は97円台半ばから96円台半ばへと1円近い下げ。豪州3年債利回りが低下している。
ロンドン市場は、ドル買いの動き。特段の目立った材料がない中で、先週末の米雇用統計後のドル安に対する調整が入る格好。ただ、通貨ごとにスピードはまちまち。東京市場では米債利回りの上昇を受けたドル円の上昇、豪中銀の利上げ発表後に今後の利上げ打ち止め感が強まったことが豪ドル/ドルの下げにつながっていた。一方、ロンドン時間に入るとユーロドルやポンドドルの下げが勢い付いている。ユーロドルは1.07付近で売買が交錯したあと、1.0680付近へと下落。ポンドドルは1.23台前半から1.2290付近へと下押し。この時間帯には米債利回りが一転して低下しているが、ユーロやポンドの軟調な動きには特段の影響を与えなかった。独鉱工業生産の下振れや、英調査会社による食品価格の伸び鈍化などの報道も材料として加わった。ドル円は序盤に150.49近辺に高値を伸ばしたあとは、150円台前半で上昇一服。クロス円は円高方向に振れている。ユーロ円は161円台乗せとなったあとは売りに押されて160.50台へと反落。ポンド円は185円台前半から184.80付近に下押し。豪ドル円は96.50付近へ一段安となった。
NY市場では、連日のドル買い優勢。ドル円は下値での買い意欲が強く、150円台での推移が続いた。FRBの利上げサイクルがストップしたとしても、一方で日銀が大胆な引き締めに動く可能性も低い中で、日米の利回り格差は相当程度維持されるとの見方が根強く、ドル円をサポートしている。本日は厚労省が9月の毎月勤労統計を発表していたが、賃金上昇率はインフレの影響を加味した実質で18カ月連続のマイナスだった。日銀が引き締めに動きことは困難な状況だ。ユーロドルは戻り売りが優勢となり1.06台に下落。ドイツの9月の鉱工業生産が予想以上に減少していたこともユーロを圧迫したようだ。ポンドドルも戻り売りに押され、1.22台に下落している。短期金融市場では、英中銀が来年中に累計で75bpの利下げを実施するとの見方を初めて織り込んだ。ピル英中銀チーフエコノミストが、市場のプライシングに違和感はないと示唆したことが手掛かりとなっている。英中銀は今月発表される10月分の消費者物価指数(CPI)は5%を下回るとの見通しを示していた。
8日
東京市場は、ドル相場がしっかり。ドル円は150円台での推移を続けている。前日のダウ平均が7日続伸となるも、今日の日経平均は続落と冴えない。リスク選好の動きは目立っていないものの、ドル円は下がると買いが出ている。 前日のNY市場で4.541%台まで下げた米10年債利回りが4.6%に迫るなど下げ止まりを見せたことや、衆院で答弁を行った植田日銀総裁が粘り強い緩和の継続を示したことなどがドル買い・円売りにつながった。ユーロドルは朝方1.0700前後を付ける動きとなったが、その後ドル買いが優勢となり1.0680台に軟化。値幅自体は18ポイントとかなり狭いものとなっている。ユーロ円はユーロドルが小幅な動きに留まる中でドル円が堅調となり、161円ちょうど前後に上昇。
ロンドン市場は、ドル買いが継続。東京午後からロンドン朝方にかけては米債利回りの上昇とともにドルが買われた。その後、米債利回りが上昇を消す動きとなったが、ドル安方向には反応薄。ドル円はじりじりと高値を伸ばし、150.80近辺へと上昇。前日高値を上回っている。ユーロドルは1.06台後半で上値重く推移しており、足元では安値を1.0660付近に広げている。ポンドドルも1.22台から軟化しており、1.2240付近まで下押しされた。クロス円は上昇一服。ユーロ円は161円台に一時乗せたあとは、160.70付近まで軟化。ポンド円は185円近辺から184.50台まで軟化。ただ、足元では下げも一服。欧州株は売りが先行も次第に下げ渋っている。米10年債利回りは4.57%付近から4.61%付近で上に往って来い。ベイリー英中銀総裁やマクルーフ・アイルランド中銀総裁は利下げの議論は時期尚早とした。レーンECBチーフエコノミストは最近のユーロ圏インフレ率2.9%に低下、「あまり安心すべきではない」とインフレ警戒感を解いていなかった。ドル指数は今週に入って3営業日連続で上昇、先週末の米雇用統計を受けたドル売りに対する調整が続いている。
NY市場では、円安の動きがみられた。NY時間に入ってドル売りが再開した。米国債利回りが低下しており、ドルを圧迫している。ユーロドルは1.07ドル台に再浮上。ポンドドルも一時1.23ドル付近まで買い戻された。しかし、ドル円は151円台に一時上昇しており、円安がドル安に勝った。特に対クロスでの円売りが強まり、ユーロ円が161.70円近辺まで上げ幅を伸ばしたほか、ポンド円も一時185.65円付近まで上げ幅を拡大した。各国中銀で利上げキャンペーンの終了が取り沙汰されており、来年の利下げも織り込む動きが出ているものの、それ以上に日銀は思い切った緩和解除に出られないとの見方が円の上値を重くしているもよう。今週に入ってFOMC委員の発言がいくつか伝わっているが、先週のFOMC後に市場がイメージしたよりは若干タカ派な印象も。米地区連銀総裁などのFOMC委員は追加利上げの可能性をしっかりと温存し、市場の利下げ期待については完全に否定している。
9日
東京市場で、ドル円は底堅く推移した。前日海外市場で日米金利差を背景にドル高・円安が進行し、一時151.06近辺まで上昇した。東京市場では介入警戒感などから上昇一服し、150円台後半に伸び悩む場面があった。しかし、取引終盤に米10年債利回りが上昇に転じると、午前の下げを帳消しにして151.09近辺と前日高値を小幅更新した。ユーロ円も同様に前日高値を上回る161.74近辺まで上昇。ユーロドルは午後に安値を広げ、1.0702付近まで弱含んだ。日経平均の大幅な上昇から、リスク動向に敏感なオセアニア通貨が買われ、NZドル/ドルは0.5930付近、NZドル円は89円台半ばまで一時上昇した。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米10年債利回りが4.49%付近から4.54%付近に上昇しており、ドル相場を下支えした。ドル円は振幅をみせつつも151円台に再び乗せた。ロンドン朝方に151円台に乗せたあと、150.77近辺まで一時下落。市場が介入警戒水域で神経質となったことや、輸出企業の円買いなどの観測もあったもよう。しかし、植田日銀総裁が根強い緩和継続姿勢を示したことで米債利回り上昇とともに151.20付近まで上昇。ユーロドルは東京市場で1.07台乗せ水準に高止まりしていたが、ロンドン時間に入ると1.07台割れから1.0680近辺へと軟化。デギンドスECB副総裁やビルロワデガロー仏中銀総裁は、利下げの議論は時期尚早とする一方で、追加利上げについても否定的。インフレのトレンドが下向きである点も指摘した。ポンドドルは上に往って来い。ピル英中銀チーフエコノミストが、サービスインフレや賃金などについて根強いインフレ圧力に警戒感を示したことにポンド買いが先行。ポンドドルは一時1.23台に乗せた。しかし、米債利回り上昇を受けた全般的なドル買い圧力に1.2250台へと押し戻されている。欧州株や米株先物は総じて堅調推移。ただ、クロス円の円売りの動きは明確ではなく、ユーロ円は161円台半ばで揉み合い、ポンド円は185円台前半から後半で上に往って来いとなっている。
NY市場では、ドル相場が振幅も、後半の取引でドル買いが優勢となった。ドル円はロンドン午前に151.20付近まで買われたあと、上昇一服となると150.80台まで反落する場面があった。しかし、その後は買いが復活している。午後にパウエルFRB議長のIMFでの討論会が伝わったが、「十分な引き締めを行ったと確信していない」と発言している。議長は「適切となれば、躊躇なく追加利上げを行う」とも述べていた。先日のFOMCを受けて市場にはハト派な雰囲気も広がっていたが、きょうの議長の発言はその雰囲気に冷や水を浴びせた格好となった。この日の米30年債入札を受けて米国債利回りが上げ幅を拡大したこともドルの買い戻しをサポートした。取引終盤には151.40付近へと高値をのばした。ユーロドルは序盤に1.0720台まで買われたが、その後はドル買いに押されて下落。バウエル発言後には1.0660台まで下押しされた。ポンドドルも1.23手前まで買われたあとは、下落に転じた。取引終盤には1.2210付近まで下落。クロス円は米株安の反応もあって軟調。ユーロ円は161円台後半から前半へ、ポンド円は185円台半ばから184円台後半に下げた。
10日
東京市場では、ドル相場が前日からのドル高圏で推移。ドル円は前日NY終盤にパウエル米FRB議長が、必要なら追加利上げを行う考えを示したことでドル高が進行、一時151.39付近まで水準を切り上げだ。東京午前には米10年債利回りの上昇が一服したことを受けて、151.22近辺まで弱含む場面があった。しかし、その後は再び買われて1日以来およそ1週間ぶりの高値となる151.41近辺まで買われた。ユーロドルは1.06台後半で12ポイントレンジにとどまっている。水準的には前日からのドル高・ユーロ安水準に張り付いている。ユーロ円は午前に161.36近辺まで下落したあと、午後には161円台半ばへと下げ渋った。
ロンドン市場は、ドル買いが先行もその後は一服している。昨日のNY終盤にパウエルFRB議長がタカ派姿勢を示したことで、ドル買いや株安の動きが広がった。東京市場では値動きが停滞したが、ロンドン時間に入ると再びドル買いの動きがみられた。序盤は前日の調整で低下していた米債利回りが再び上昇し、ドル買いにつながっている。ドル円は151.50付近へと上昇、年初来高値を意識する水準へと上昇。ユーロドルは1.0656近辺に安値を広げたあとは、1.0690付近へと反発。ポンドドルは1.22台前半の取引が続くなかで一時1.2207近辺に安値を広げた。ただ、いずれも日中の値幅は限定的。この日発表された英月次及び四半期GDPはいずれも市場予想を上回ったが、ポンド買い反応はほどんとみられなかった。むしろ、低成長が続いたことがポンド相場を圧迫した面もあるようだ。ポンドは対ユーロで軟調に推移している。
NY市場では米債利回りが持ち直したこともあり、ドル高がやや優勢となった。0時発表の米ミシガン大学消費者信頼感調査において、1年期待インフレ率と長期期待インフレ率がともに予想外に上昇したことが長期債利回りの反発につながり、ロンドン市場からNY市場朝にかけて低下していた米10年債利回りが低下分を解消する動きとなってドルを支えた。ドル円は午後に入って151円60銭と週の高値を更新し、10月31日に付けた直近高値151円72銭を意識する展開となった。ユーロドルは1.06台後半のレンジ取引。午前中に1.0693を付けたが、米債利回りの低下一服で1.0660台に落とし、その後1.0680台を回復と一方向の動きにならなかった。 

 

●為替相場 11/13-11/17 11/18 
まとめ11月13日から11月17日の週
13日からの週は、ドル売りが優勢。火曜日に発表された10月米消費者物価指数の伸びが予想以上に鈍化したことがドル売りを誘った。その後発表された米小売売上高は強含み、ドル買い反応。さらに米新規失業保険申請件数は増加して、ドル売り反応。各局面ごとにドル相場が振幅をみせたが、全般的にはドル安水準からは離れていない。ユーロドルは1.0付近から1.09手前水準まで上昇。ポンドドルは1.22台から一時1.25付近まで上昇した。ただ、英消費者物価指数の伸び鈍化や英小売売上高の低迷などもあり、ポンドの上昇力はユーロドルほどではなかった。対ユーロでのポンド売り取引も活発だった。ドル円もドル売りに押されて151円台後半から150円ちょうど付近まで一時下落したが、その後はクロス円の上昇とともに151円台に戻すなど円売りの動きが交錯した。根強い緩和継続姿勢を示す日銀の存在が円安圧力となっている。しかし、週末には米債利回りの低下とともにドル売り圧力が再燃。ドル円は149円台に突入と下げ足を速めた。英国の一連の弱い経済統計や、短期金融市場でのECB早期利下げ開始観測などでクロス円にも売り圧力がかかり、短期的な円売りポジションを解消する動きが入った。ドル円が下方向に動いたことで、週末にはドル全面安の様相を呈した。
13日
東京市場で、ドル円は年初来高値を更新。先週末にパウエルFRB議長がややタカ派な発言をしたことで、ドル円は151.60近辺まで上昇した。週明けは少し調整が入り、朝方には151.37近辺まで小反落。しかし、ドル高・円安の流れが継続するなかで、先週末高値を上回り、10月31日高値151.72レベルも上回る動き。値動きはゆっくりとしたものだが、151.79近辺まで買われた。昨年秋の151.95レベルが視野に入る。 介入警戒感があり、上値トライに慎重も、地合いが強く下がらない。米10年債利回りが朝の4.64%前後から昼過ぎに4.6657%まで上昇する中でドル高も見られた。もっともユーロドルの値幅が1.0681-1.0691の10ポイントにとどまるなど、ドル円以外のドルベースでの動きは限定的。ユーロ円は節目の162円を超えて162.20付近まで上昇。円安の面も強かったようだ。
ロンドン市場は、ややドル売りの動きが入っている。明日の米消費者物価指数(CPI)の発表を控えて調整が入りやすいなか、米10年債利回りが小幅低下したことに反応している。ユーロドルは1.06台後半で揉み合うなかで、一時1.07台乗せ水準まで買われた。ポンドドルも1.22台前半でじり高の動きを示す中で、一時1.2250台まで買われる場面があった。クロス円の上昇圧力もみられ、ユーロ円は162円台前半、ポンド円は185円台後半で底堅く推移している。ドル円は東京市場からの買いの流れを受けて、一時151.86近辺まで上昇、年初来高値を更新した。昨年10月21日の151.95レベル以来の高値水準。この時は政府・日銀が大規模介入を実施していたが、きょうは静かな値動きが続いている。鈴木財務相は型どおりの円安けん制コメントを発したが、反応は限定的だった。この日は目立った経済指標発表予定はなく、欧州株が堅調に推移し米債利回りがやや低下するなかで、為替市場は小動きにとどまっている。
NY市場では、ドル円に突然売りが強まった。151.92近辺の高値をつけた直後に一時151.20円近辺まで短時間に急落する場面が見られた。市場の一部では介入の憶測も流れていたが、オプション関連取引など市場の自発的な動きとの見方も出ており、151.60円付近まで戻す展開となった。介入については真偽のほどは不明。先週のパウエルFRB議長の討論会で市場には若干タカ派的なトーンが広がったものの、米10年債利回りを5%に押し上げるには至らなかった。米株式市場が上昇するなど市場の雰囲気も改善され、リスク選好の円安がドル円の下値を引き続きサポートしているようだ。ユーロドルはNY時間に入って買い戻しも見られ、1.07ちょうど付近まで回復。デギンドスECB副総裁のコメントが伝わっていたが、一時的にインフレ加速の恐れがあると警戒感を示した。ただ一方で、全体的な流れは減速方向だとも述べている。ポンドドルも買い戻しが続き、1.22台後半まで戻している。焦点は今週発表の英消費者物価指数(CPI)と英雇用指標に移る。サービス業のインフレが英中銀の予想を大幅に下回ることから、データは英中銀による利上げ停止の継続を支持すると見られているようだ。
14日
東京市場は、全般に小動き。ドル円は朝から16銭(151.62から151.78)の狭いレンジでの取引に終始した。昨日の海外市場で年初来高値を超えて昨年秋以来になる151.90台まで上昇したが、オプション取引に絡んだ大口の売りに151.21付近まで急落。その後ドル買いが入って戻してきたものの前日の高値及び昨年秋の高値をトライするだけの勢いに欠けた。主要通貨は軒並みの小動きでユーロドルは1.07付近で9ポイントレンジと、ほぼ膠着した。ユーロ円は162円台前半で17銭レンジとこちらも小動き。本日22時半の米消費者物価指数を前に、昨日の高値超えには慎重も、地合いはドル高円安が継続で、上下ともに動きにくい状況。対オセアニア通貨で小幅ながらドル高が見られ、豪ドル/ドルは朝の0.6384近辺から0.6363近辺、NZドル/ドルは0.5886近辺から0.5865近辺へ下げている。米債利回りは低下傾向となったが、ドルは比較的しっかり。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。米消費者物価指数の発表をNY序盤に控えて、米債利回りが低下していることに反応。ポンドドルにとっては、英雇用統計で賃金の伸び率が予想を上回ったことが買いを誘う面もあった。1.22台後半から一時1.2308近辺まで買われた。ユーロドルにとっては、11月独ZEW景況感指数が予想を上回り、7カ月ぶりのプラス圏に浮上したことが買いにつながった。1.07ちょうどを挟む揉み合いを上放れると、一時1.0730付近まで買われた。そのなかで、ドル円は前日NY市場での乱高下のあとは151円台後半で静かな取引が続いている。クロス円は堅調。ユーロ円は162円台前半から後半へ、ポンド円は186円台前半から後半へと水準を上げている。ただ、ロンドン昼に向けて、ドル安や円安の勢いは一服してきている。日本時間午後10時半の米消費者物価待ちになっている。前年比+3.3%と前回の+3.7%から伸びが鈍化する予想となっている。
NY市場では、米消費者物価指数(CPI)を受けてドル売りが強まった。前年比が+3.2%と市場予想+3.3%を下回ったことに鋭く反応した。前月比が横ばいと予想を下回ったほか、コア指数も0.2%上昇と予想を下回っていた。ガソリン価格が全体を押し下げた。注目を浴びている住宅を除いたコアサービスインフレ、いわゆるスーパーコアも計算値で前月比0.2%と前回の0.6%から大きく低下。パウエルFRB議長は追加利上げの可能性を温存しているものの、今回の米CPIは市場に広がっている利上げ終了観測を正当化する内容となった。ドル円は発表前の151.70付近から150円台前半まで急落。ユーロドルは1.08台後半へと上伸、100日線と200日線を一気に回復し、リバウンド相場に加速のサインが出ている。ポンドドルも1.25台まで一気に上昇、200日線を一気に回復し、リバウンド相場に加速のサインが出ている。
15日
東京市場は、リスク選好の円売りの動き。ドル円は前日NY市場でドル売りが強まったが、東京市場では買い戻しの動きとなっている。午前中に150.79近辺まで上昇。ゴトウビということで仲値がらみの実需買いが入ったと見られた。その後150円50銭前後へ一時調整が入ったものの、下値はしっかり。日経平均が800円を超える上昇となるなど、株高の動きが優勢。ハンセン指数は日経を超える3%超の上昇となっており、リスク選好の円売りが広がった。ユーロ円は163.92近辺まで上昇。豪ドル円は97.99近辺まで上昇と、クロス円も軒並み買われた。昨日のCPI米後のドル売りで急騰したユーロドルは、円相場主導の展開の中、東京市場では様子見ムードが広がり、1.0866-1.0884の18ポイントレンジ。ポンドドルはポイントの1.2500を付けたものの、大台を超えての上昇には慎重。
ロンドン市場は、ドル売りが一服。英インフレ指標の伸びが予想以上に鈍化したことがポンドドルの売りを誘い、ややドルが買い戻されている。ユーロドルも連れ安となるなかで伊消費者物価確報値が下方改定され、ユーロにも売り圧力がみられた。また、EUは今年の成長率予測を従来の0.8%から0.6%へと引き下げた。高いインフレ率、金利、外需の低迷が予想以上に成長率に大きな打撃を与えたとしている。ユーロドルは1.0880台から1.0840台まで軟化した。ポンドドルは1.25付近が重くなると1.2450台まで軟化。欧州株は前日の米消費者物価に続いて英欧でのインフレ鈍化を好感して堅調に推移している。ただ、クロス円は調整的な売りに押されており、ユーロ円は164円手前水準から163円台割れ目前まで一時下落。ポンド円は188.20台から187.30台へと下落している。ドル円は米債利回りの下げ渋りとともに、前日NY市場での下げが一服しているが、150.80付近で上値を抑えられると、ロンドン時間には150.30近辺まで再び下げている。
NY市場では、ドルの買い戻しが強まった。この日は米小売売上高と生産者物価指数(PPI)が発表になったが、双方まちまちの内容となり、ドル円は激しく上下動した。150円割れ目前まで下落も、その後は151円台を回復している。米PPIは前日の米消費者物価指数(CPI)に続き、ガソリン価格低下を反映して予想以上に低下していた。インフレ鈍化を示唆する内容。一時ドル売り反応がみられた。一方、米小売売上高が予想ほど落ち込まなかった。米国債利回りが上昇し、ドル売り一巡後にドル買いを誘った。短期金融市場では、利上げ終了への期待感は変えていないが、前日の米CPIで高まった来年の利下げ期待は後退した。ユーロドルは1.08台で上下動。1.0880台まで買われたあと、1.0830台まで下落する場面があった。下押す動きまでは見られず、リバウンド相場の流れはしっかりと堅持。ポンドドルは戻り売りが優勢となり、1.24ちょうど付近まで下落する場面があった。ユーロと比較すると上値が重かった。この日発表の英CPIが予想を下回ったこともポンドを圧迫していた。 
16日
東京市場は、小動き。ドル円は前日の上昇が一服し、午前には151.12近辺に押し戻された。しかし、下押しは浅く、午後には151.30前後に戻しての揉み合いとなった。米10年債利回りは、前日に4.55%まで上昇したが、この日は4.50%割れへと低下、ドル円の重石となっていた。クロス円は軟化、日経平均やアジア株の下落を背景に、リスク警戒の動きで円が買われた。ユーロ円は一時163.84近辺まで下落。ユーロドルは、ユーロ円の下げとともに一時1.0830近辺に弱含んだが、値動きは小幅。10月の中国新築住宅販売価格が前回値を下回ったことから、中国と経済的な結び付きの強いオセアニア通貨が売られた。豪ドル円は97.76付近まで、NZドル円は90.31付近まで下落、午後はこの日の安値圏で推移した。
ロンドン市場は、ドル売りが先行したあと一服。前日のNY市場では米小売売上高が予想を上回ったことなどを受けてドル買いが広がった。今日の東京市場でも小幅ながらドル買い優勢となっていた。しかし、ロンドン時間に入ると米債利回りの低下とともに、ドル買いも一服。ドル円は151.43近辺に高値を伸ばしたあとは、151.15近辺まで反落。米10年債利回りは4.52%台から4.48%台まで低下した。ユーロドルは1.0830-40レベルでの揉み合いを上放れると1.0860付近に高値を伸ばしており、東京午前のドル買い・ユーロ売りの動きを消した。ポンドドルはやや上値が重く、1.2377近辺まで一段安となったあと1.24台をかろうじて回復している。ただ、東京市場での下げを戻すには至っていない。ユーロ買い・ポンド売りのフローも入っていた。足元では米債利回り低下の一服とともに、ドル売りも一服。ポンドも対ユーロで買い戻されるなど方向感に欠けている。
NY市場で、ドル円は一時150円台前半まで下落。NY市場前半はドル売りが優勢となり、ドル円は150.20台まで下落した。この日発表の米新規失業保険申請件数が予想を上回り米労働市場の軟化を示した。米輸入物価も予想以上の低下となった。米国債利回りが低下し、原油相場も一時72ドル台前半まで急落する中で、ドル円は本日150.45円付近に来ている21日線を割り込む場面が見られた。ドルは後半に買い戻されたが、それ以上に円高がドル円を圧迫していた面もあったようだ。実際、ユーロ円やポンド円などクロス円の下げはきつかった。好調を続けていた米株式市場が上げを一服させたことも円を買い易くしたようだ。世界最大の小売企業のウォルマートのCEOが「今後数カ月で米国のデフレが顕在化する可能性がある」と警告したことなども市場のリスク心理を冷え込ませていた。ユーロドルは一時1.0895近辺まで上昇、その後は1.0850付近に反落した。ポンドドルは前日の下げが一服して、一時1.24台半ばまで買われた。その後は1.24台前半に落ち着いた。
17日
東京市場は、小動き。昨日米新規失業保険申請件数が予想を超える増加を示したことでドル売りが進み150.20台を付けたドル円は、150.70台に買い戻されて東京朝を迎えた。朝方4.45%台に上昇した米10年債利回りが昼にかけて4.42%台を付ける中で150.42近辺まで売りが出た。午後に入って米債利回りが再び上昇し、4.455%と朝の水準を超えて上昇する中で150.60台を回復する動きとなった。ユーロドルは朝からわずか9ポイントのレンジと膠着。1.0850を挟んでの推移。1.09手前には売り、1.08台前半では買いが出る流れ。ユーロ円は対ドルでユーロが膠着している分、ドル円の動きに準拠。163.20台まで下げた後、163.50台を回復した。
ロンドン市場は、ドル円が149円台前半に下落している。ロンドン朝方には英小売売上高が予想外の弱い数字となりポンドが下落。また、ユーロも売りが先行。ビルロワデガロー仏中銀総裁が、インフレ鈍化を受けて利上げ停止が正当化されると発言。短期金融市場ではさらに来年の早期利下げ開始観測、1%ポイント利下げなどを織り込んでいる。しかし、米債利回りが小幅に上昇したあと、低下の動きに転じると全般的にドル売り圧力が広がった。ポンドドルは1.23台後半に下げたあと1.24台前半へ、ユーロドルは1.08台前半に下落したあと1.08台後半へと振幅。値動きが目立ったのがドル円相場だ。150.50付近での揉み合いを下放れると、150円台割れから149円台後半へと下落。さらに149.20付近へと下押しされた。ユーロ円は163円台半ばから162円台前半へ、ポンド円は187円付近から185円台前半まで下落。円が全面高に。米国とともに英国や欧州でも利上げ停止観測が広がるなかで、次第に早期利下げを織り込む動きに。日米や日欧などの金利差を背景にこれまで保持してきた円売りポジションの一部に、週末調整が入った格好。
NY市場はドル売りが優勢となり、ドル円は節目の150円を割り込んだ。ストップを巻き込んで一時149円台前半まで下落。150円の水準には買い圧力も観測されていたが、比較的あっさりと割り込んだ印象だ。21日線も下放れており、下値警戒感を高める展開が見られている。

 

●為替相場 11/20-11/24 11/25 
まとめ11月20日から11月24日の週
20日からの週は、ドル売りが一服した。週明けは前週からのドル売りの流れが継続して取引を開始した。ドル円は147円台前半まで一時下落した。しかし、週後半の米感謝祭祝日に向けて次第にポジション調整の動きが入った。金曜日もブラックフライデーのため債券市場などが短縮取引となり、ロングウィークエンド状態となった。ドル円は149円台での取引に落ち着いた。ユーロドルは週前半に1.09台後半まで一段高となったが、その後は1.08台半ばまで反落。週後半には1.09を挟む水準に落ち着いた。ユーロ円は163円台前半から161円台前半まで下げたあとはレンジ内で下げ渋り。FOMC議事録は直近の米雇用統計や米消費者物価指数の発表前のもので、タカ派トーンが前面に打ち出されていた。ECB理事会議事録では政策金利据え置きの正当性が説明されたが、追加利上げの門戸は開かれているとした。また、利下げの議論は時期尚早とした。日銀関連のニュースは乏しいが、市場では来年の春闘の動向を踏まえてマイナス金利を解除するとの思惑が醸成されつつあるようだ。ただ、特段の円買いの動きはみらなかった。
20日
東京市場は、ドル売りが優勢。ドル円は先週末に149.20付近まで下落したあと、149円台後半で引けた。週明けは149.70付近で取引を開始。ゴトウビ関連のドル買いもあり上値を試したが150円を付けきれず反落。朝の水準を割り込み149.40-50割れから下げが加速、148.70近辺まで大きく下げた。日経平均が500円安となるなどリスク回避の円買いもあり、クロス円も軟調。ユーロ円は163.56近辺を高値に162.52近辺まで1円超の下落。ユーロドルは朝の1.09割れから1.0936近辺まで上昇。ポンドドルは1.2440台から1.2496近辺まで上昇とドルは全面安。ドル人民元で先週末終値の7.21元台半ばから7.19台までドル安・元高で始まり、いったん7.2068元前後に下げ渋りも、その後7.1709近辺と8月以来の安値水準となった。
ロンドン市場は、ドル円が148円台前半へ一段と下落している。クロス円の下げを伴っており、円高の動きが優勢。また、米債利回りの上昇一服とともにドル安圧力もみられている。ドル円はロンドン時間に入ると149円台を再び割り込んで148.20近辺まで安値を広げている。米債利回りの上昇局面でもドル円は軟調だった。クロス円も全面安。ユーロ円は162円台後半から前半へ、ポンド円は186円付近から184円台後半へ、豪ドル円は97円台後半から前半へと下げている。円高の動きは先週後半から続いており、調整的な圧力が働き続けている。序盤の米債利回り上昇が一服すると、ドル売りの動きが加わった。ユーロドルは1.0940近辺、ポンドドルは1.2510近辺、豪ドル/ドルは0.6563近辺に本日の高値を更新した。ただ、クロス円の下落圧力もあって、ドル安の動きは限定的だった。週明けは注目指標発表に欠けており、先週後半の流れを引き継ぐ格好となっている。
NY市場では、先週末から引き続きドル売りが優勢。ドル円は148円台前半まで下落した。先週の米インフレ指標や小売売上高といった重要イベントを通過したが、市場はFRBの利上げサイクルはすでに終了との見方を固めつつある。同時に来年の利下げ期待も台頭させており、第2四半期以降の利下げ開始を見込んでいる状況。短期金融市場では来年3月の利下げも織り込む動きが出ているが、確率はまだ30%程度。そのような中で、7月以降のドル高に巻き戻しが続いており、ドル円も戻り売りに押されている格好。今週は感謝祭ウィークで、週後半にかけて市場参加者も少なくなることが予想される中、ポジション調整が出ているものと思われる。ユーロドルは買い戻しが続き、1.09台半ばまで上昇。ポンドドルも買い戻しが続き、1.25台を回復。ユーロドルについては見方が分かれており、今回のリバウンド相場は短期で終わるとの見方の一方、本格的な上げ相場に発展するとの見方も。スナク英首相は、インフレを年内に半減させる目標を達成したため、減税に着手することが可能だと表明した。週内にハント財務相が発表する経済計画に減税が盛り込まれることを示唆している。
21日
東京市場では、先週末からのドル安・円高の流れが継続。ドル円は148.40付近で取引を開始、揉み合いを経て、前日安値、148.00レベルなどを割り込むと売りが強まった。午後には147.25近辺まで安値を広げ、朝から1円超の下落となった。その後は買い戻しがでて147.70台へと反発。目立った新規材料が見られず先週の米物価統計を受けたドル売りや、ドル円の買いポジション解消のためのドル売り円買いが主体と見られる。ユーロ円は162.40台から161.46近辺まで下落したあと、161.90付近に下げ渋り。ユーロドルは1.0940前後から1.0965近辺まで上昇。ドル安傾向が支えとなったが、値幅は落ち着いている。豪中銀会合の議事要旨では追加利上げの可能性を示し、少しタカ派な内容となったが、影響は限定的。豪ドル円は97円台を割り込んで96.94近辺まで下落した。豪ドル/ドルは0.6580台まで買われた後は調整に押されている。
ロンドン市場は、引き続きドルが軟調。そのなかで、円高圧力も根強い。ドル円は147.15近辺まで安値を広げ、9月14日以来の安値水準となった。クロス円も下押しされ、ユーロ円は161.25近辺、ポンド円は184.50割れ水準まで一時下落。その後は米債利回り低下一服もあって売買が交錯している。また、ポンド買い・ユーロ売りの動きも顕著。ポンド買いの材料としては、英財政赤字が想定ほど膨らまず、減税の余地があるとの見方があったことや、英議会証言でベイリー英中銀総裁やラムスデン英中銀副総裁などの発言があった。両氏とも金利据え置きをかなりの長期間にわたり必要との認識を示している。最新のインフレ低下を歓迎も、賃金や中東地政学リスクによる根強いインフレ圧力にも警戒感を示した。ポンドドルは一時1.2554近辺まで高値を伸ばし、ドル売り圧力の一端を担っていた。一方、ユーロドルは東京午後につけた1.0965近辺を高値に、ロンドン時間には買い一服。一時1.0940近辺まで反落している。シムカス・リトアニア中銀総裁は、インフレ圧力の根強さを指摘しつつも、12月の追加利上げについて言及する理由はない、と明言した。
NY市場では、ドル円に買い戻しが膨らんだ。東京時間には一時147円台前半まで下落する場面も見られていたが、NY時間に入って148円台に戻し、1日を通して下に往って来いの展開が見られた。特段ドルの買い戻しを誘発する材料は見当たらないが、この日のFOMC議事録が、予想通りではあったものの、市場の見方よりはタカ派な内容であったことがドル買い戻しを誘発したもよう。ただ、事前の予想通りではあった。ドルは議事録発表前から買い戻しが強まっていた。FOMC議事録だが、全員が金利について慎重に進めることで合意した一方、金利は当面制限的と判断していたことが明らかとなった。インフレの進展が不十分な場合は、追加引き締めを検討するとも述べている。予想通りに追加利上げの可能性を残すタカ派な内容ではあった。ユーロドルは1.09台半ばから1.09台割れへと下落、上昇一服となった。ラガルドECB総裁の講演が伝わっていたが、「ECBは時期尚早に結論を急ぐべきではない」との認識を示していた。「目標未達のリスクが高まれば行動できる」とも述べていた。追加利上げに可能性を残す内容ではあったが、市場はECBの利上げサイクルはすでに終了との見方を固めている。ポンドドルは1.25台半ばまで上昇したあとも、1.25台を維持。
22日
東京市場では、午後に入ってドル円が上昇。ドル円は148.30台で取引を開始。いったん148.02近辺まで売られたが、大台は維持した。揉み合いを経て午後にはドル高・円安の流れとなり、148.80付近へと上昇。朝方4.38%台を付けていた米10年債利回りは4.42%近くまで上昇したこともドル円の支えとなっている。明日は米国と日本が休場。明後日の米国は一応市場が開いているものの、例年参加者が極端に少ない。昨日のドル安局面で売りに回った投資家からのポジション調整が入ったもよう。ユーロ円も161円台後半から162円台を回復、162.31近辺に高値を伸ばした。ポンド円は185円台後半推移から186.38近辺まで上昇した。ユーロドルは1.09台前半での揉み合いに終始した。
ロンドン市場は、ドル買いが先行したが、次第に一服している。ドル円は米債利回り上昇とともに149.35近辺まで買われたが、その後は米債利回りの低下とともに反落、148円台後半に押し戻されている。ユーロドルは1.0883近辺まで下落したあと、1.09付近での揉み合いに落ち着いた。ポンドドルも1.2507近辺まで下押しされた後は1.2530付近での揉み合いに。豪ドル/ドルも売りが先行し、0.6528近辺まで一時下落した。しかし、ブロック豪中銀総裁が、内需主導のインフレが課題だと指摘、インフレ圧力継続の場合は、より大幅な引き締めが正しい政策対応だと発言。豪ドル買いの反応が広がって0.6560台へと買い戻された。ドル指数は反発の動きをみせたが上値も重い。200日移動平均付近へと押し戻されている。11月に入ってからのドル安の流れには目立った変化はみられていない。NY市場での一連の米経済指標待ちとなっている。
NY市場では、再びドルが買われた。ドル円は一時149.75円近辺まで上昇し、再び150円台回復をうかがう展開を見せている。米新規失業保険申請件数が労働市場の底堅さを示したことや、ミシガン大消費者信頼感指数の確報値が上方修正されたことをきっかけにドル買いが強まり、米国債利回り上昇と伴にドル円も買い戻しを強めた。米感謝祭に向けたロングポジションの調整も一巡し、下値では本邦の輸入企業の買いも観測。今月初めの米雇用統計から先週のインフレ指標までを受けた米国債利回りの下げも一服している。ユーロドルは1.08台に値を落とした。ポンドドルも戻り売りに押され、一時1.24台半ばに下落。本日はハント英財務相が秋季予算案を公表し、予想通りに減税策を打ち出してきた。一方、成長見通しは下方修正している。スナク政権は来年見込まれる総選挙を前に景気浮揚を図ろうと目論んでいるようだ。
23日
東京市場は勤労感謝の日のため休場。
ロンドン市場は、ドル売りが先行したあと揉み合いとなっている。東京市場が勤労感謝の日で休場となるなか、アジア市場ではドル売りが優勢だった。前日のNY市場で買われたドル相場に調整が入る格好。NY市場が感謝祭のため米債券市場が休場となっており、金利面からの手掛かりに欠ける状況。調整主導の展開がみられた。ドル円は149.60付近からロンドン朝方には148.90付近へと下押しされた。しかし、ロンドン時間に入ると買戻しの動きが入り、149.30付近まで下げ渋り、その後は揉み合いとなっている。ユーロとポンドにとってはこの日発表のPMI速報値が材料を提供した。まず、仏PMIが弱含むとユーロ売りの反応。続いて独PMIが強含むとユーロ買いの反応がみられた。ユーロ圏全体の数字も強かったが、ユーロ相場は売買が交錯して揉み合っている。ユーロドルは1.09台割れから1.0930付近で振幅した。その後発表された英PMIは非製造業と総合指数がいずれも7月以来の50超と回復の動きが著しかった。これを受けてポンド買いが強まった。ポンドドルは1.25手前水準から1.2560台へと急伸。対円や対ユーロでもポンド買いが優勢となっている。ロンドン市場では売買が交錯しているものの、アジア時間からのドル安の流れを覆すほどの動きにはなっていない。NY市場休場を控えて、次第に動意薄となってきている。
NY市場は感謝祭のため休場。
24日
東京市場は、円買いが優勢。ドル円は午前に前日高値を小幅に上回る149.71近辺まで強含んだが、その後は伸びを欠き、前日終値を挟んだ揉み合いとなった。午後に入ると次第に売りが優勢となり、149.20付近まで下落した。クロス円も上値が重い。ユーロ円は162.73近辺、ポンド円は187.14近辺まで安値を広げている。ユーロドルは1.09を挟んだ揉み合い。1.0895から1.0912までのレンジにとどまっている。
ロンドン市場は、ややドル売りの動き。ポンドドルが堅調に推移しており、1.25台前半から後半へと上昇している。ただ、全般的には感謝祭ウィークの真っ只中とあって動意薄だ。ユーロドルはポンドドルとともに買われたが、足元では続かず。前日終値1.0905レベルを挟んだ振幅にとどまっている。ドル円は東京市場での下げを戻している。149円台前半から後半で下に往って来い。米債取引が再開しており、米10年債利回りは4.44%付近から4.48%付近に上昇も目立ったドル買いにはつながっていない。本日NY市場ではブラックフライデーの短縮取引となる。第3四半期独GDP確報値は前期比マイナス0.1%と速報値から変化はみられず。11月独Ifo景況感指数は87.3と前回から改善も市場予想には届かなかった。
NY市場は比較的落ち着いた動き。ロンドン市場で買いが出たユーロドルにポジション調整の売りが入り、米サービス業PMIの好結果を受けたドル買いもあって1.0890割れを付けたが、東京朝の安値に届かず1.09台を回復するなど、限定的な動きにとどまった。ドル円は149円台半ばを挟んでの推移。感謝祭明けで米国市場は一応再開しているものの、昨日から連休を取っている参加者が多く、取引が全般に閑散とした中で、一方向の動きにならず、様子見ムードの強い展開となった。 

 

●為替相場 11/27-12/1 12/2 
まとめ11月27日から12月1日の週
27日からの週は、ドル売りが優勢。11月相場の流れを受けてドル売りが先行して取引を開始した。米インフレ指標の低下傾向を受けて、市場には早期利下げ開始観測が広がった。そのなかで、タカ派で知られるウォラーFRB理事が、インフレの低下が進展しているとの認識を示したことが、一段のドル売り反応につながった。しかし、その後はドル売りは一服。週末、月末などでドルが買い戻されたことや、デーリー・サンフランシスコ連銀総裁やウィリアムズNY連銀総裁がタカ派姿勢を示したことに反応した。今週末から米金融当局者が金融政策や経済見通しに関する発言を差し控える「ブラックアウト期間」に入ることから、当局者発言に敏感に反応する面もあったようだ。ドル円は149円台後半から146円台後半へと急ピッチに売られた反動もあって148円台に買い戻された。ドル円の値動きが大きかったことで、クロス円も売りに押された。ユーロ円は163円台から160円台まで軟化。ポンド円は188円台から186円台まで下押しされる場面があった。米雇用統計発表が来週末8日となることから、月替わりの週は材料難だった。発言に対する反応や、月末フロー主導の展開だった。
27日
東京市場は、中国発のリスク回避で円買い。ドル円は朝方に149.67近辺まで買われた後は一転して円買いに押された。中国工業利益が予想を大きく下回る弱さを見せ、中国シャドーバンキング大手中殖企業集団が投資家に対して約5.4兆円の資金不足を報告したとの報道が出たことなどでリスク回避ムードが広がった。149円台割れからストップロスを巻き込んで148.89近辺まで下落。149円台に戻したものの上値は重かった。ユーロ円も163.70近辺を高値に162.94近辺まで下落。ポンド円は188.53近辺から187.61近辺まで下落。日経平均はプラス圏スタートもマイナスに転じて、一時200円超安となった。ユーロドルは1.09台での推移で方向性に欠けた。
ロンドン市場は、調整を交えながらもドル安の流れを維持。ドル円は東京市場での中国発リスク回避相場を受けてロンドン朝方には148.78近辺まで安値を広げた。その後は米債利回りの下げ一服もあって149.30台まで反発。しかし、調整の域は出ず、再び149円付近へと軟化している。欧州株や米株先物がマイナス圏で上値重く推移、NY原油先物が週明けの77ドル付近からロンドン時間には74ドル付近まで下落するなど、リスク警戒的な状況が続いている。米10年債利回りは東京朝方に4.51%付近にいったん上昇も、その後は低下傾向。ロンドン序盤にやや下げ渋るも、再び4.46%付近に低下している。ユーロドルは1.09台前半から一時1.0959近辺まで高値を伸ばした。ポンドドルは1.26台乗せから1.2627近辺まで買われた。この時間帯はかなり神経質に売買が交錯している。ユーロ円は163円台前半、ポンド円は188円を挟んで上下動。ドル円の下げ圧力もあり、いずれも反発局面は長続きせず。
NY市場では、ドル売りが優勢。ドル円は149円台が重くなり、取引終盤には148.60付近まで下押しされた。FRBについての市場の見方に変化はなく、利上げサイクルはすでに終了、来年第2四半期以降の利下げを織り込んでいる。場合によっては3月の利下げ開始の可能性が23%程度で織り込まれている状況。ユーロドルは取引序盤に1.0920台まで下押しされた後は、反転上昇1.0960付近と東京高値に接近、下に往って来いとなった。本日はラガルドECB総裁の議会証言が行われていた。PEPPの再投資は少なくとも2024年まで継続することにコミットした。ただ、一部理事からは見直すべきとの主張もあり、見直し協議の可能性にも言及している。ポンドドルは上昇一服となり、1.26台前半での上下動に終始した。今週はポンド関連の重要な経済指標も少なくドルの値動きに左右されそうだ。
28日
東京市場では、円買いの動きがみられた。朝に日経が報じた日銀がマイナス金利解除に向けて地ならしとの観測記事が円買いを誘った。ドル円は前日の円買いの流れもあり、上値重く推移。148.50近辺を割り込むと、昼前には147.98近辺まで安値を広げた。日経平均も上値重く推移、リスク警戒の円買いも加わった。午後には少し買い戻しが入ったが、148円台前半までと戻りは限定的。日経平均も一時プラス転したが、伸びを欠いた。ユーロ円は163円手前から162.20付近まで下げ、その後は162円台前半の安値圏にとどまった。ユーロドルは1.09台半ばで狭いレンジ揉み合い。ポンドドルは1.26台前半で推移。ドル相場は小動きだった。
ロンドン市場は、東京市場での値動きを戻す動き。ドル円は東京市場で148.70レベルの前日終値水準から一時148円台割れまで下落。しかし、すぐに148円台に戻すとロンドン時間には米債利回り上昇とともに148.83近辺に高値を伸ばして下に往って来いに。東京早朝に「マイナス金利解除、日銀が地ならし ショック回避探る」との日経報道が円買いを誘ったが、ロンドン時間にかけては日銀の基調インフレ指標の上昇鈍化が円売りの反応につながった面も指摘される。ユーロドルは1.09台後半から前半で下に往って来い。ポンドドルも1.26台前半で同様の動き。いずれの主要通貨ペアも前日終値付近に戻す動きとなり、全般的に方向性は希薄。ナーゲル独連銀総裁は、利下げについての議論についても時期尚早としており、インフレ見通し次第では再利上げが必要との認識を示した。まだ、インフレ見通しには不透明感、不確実性が高いことを印象付けていた。サウジがOPECプラス参加国に減産を要請と報じられ、原油先物が上昇。カナダドルが買われている。カナダ円は109円台乗せ、ドルカナダは1.36台割れとなっている。
NY市場では、FOMC委員の発言でドルが売られた。複数のFOMC委員の発言が伝わり、インフレ(低下)の進展を強調した。ボウマンFRB理事は若干タカ派な雰囲気を見せていたもの、ウォラーFRB理事やグルーズビー・シカゴ連銀総裁は追加利上げに消極的な雰囲気を醸し出していた。市場が期待している利下げには言及していないが、アナリストからは「市場は来年の利下げに前向きと解釈している」と指摘も出ていた。ドル円は148円台を割り込むと、147円台前半まで下落した。ユーロドルは8月以来の1.10台を一時回復した。ただ、大台乗せでは売りが入り、1.09台後半に押し戻された。水準的には前日比プラス圏を維持した。ポンドドルも一時1.27台を回復する場面がみられた。9月初め以来の高値水準となった。ただ、ポンドはユーロに比べれば、今後上値は重くなるとの指摘も。先週の秋季予算案で発表された財政支援策とリスク選好の高まりにより、直近上昇していたポンドがさらに買われる可能性は低いという。 
29日
東京市場では、ドル円が一段と下落。前日のNY市場でウォラーFRB理事にがインフレ進展に言及し、市場では早期利下げ観測が広がったことが背景。米10年債利回りが4.276%に一段と低下する動きとともに、ドル円は147円台割れから146.67近辺まで安値を広げた。午後には調整買いで147.30付近まで反発も、米債利回りの戻りが鈍いこともあって上値は抑えられた。ユーロ円はドル円の下落とともに161.55近辺まで下落したあとは、下げ一服。ユーロドルはドル安の流れのなかで、午前中に1.1017近辺に高値を更新。その後は1.10ちょうど付近で推移した。ロンドン時間に発表される独消費者物価速報(11月)待ちのムードも。
ロンドン市場では、ドルの買い戻しが優勢。ドル円は東京市場で146円台後半に下落したが、ロンドン時間に入ると買い戻され、東京午前の下落を解消して一段とドル高が進行、147.80付近まで戻した。今週は月曜日の149円台後半の高値から約3円幅の下落となり、スピード調整が入った格好。米10年債利回りが4.25%台から4.30%台を回復したこともドル円の反発を後押しした。ユーロドルは東京午前に1.1010台に上昇したが、ロンドン時間には1.0970前後まで反落。この後に発表される独消費者物価の伸び鈍化観測も重石に。ユーロ円はドル円の買い戻しとともに162円台を回復。NZドル/ドルは反落。東京午前のNZ中銀金融政策会合で政策金利は市場予想通り据え置きとなったが、声明などでのタカ派姿勢が目立ち0.6150台から0.62超えまで急上昇した。ロンドン時間にはドル全般の上昇にじりじりと下げ、会合後の上昇分を解消している。
NY市場では、再びドル円の上値が重くなった。前半はドル売りの一服でドル円は147円台後半まで買い戻されたが、後半には147円台前半へと下落した。ドル円は今週に入ってからの下落で、再び下値に意識が向かっており、オプション市場ではファンド勢がプット(売る権利)の買いを積極的に購入しているとの観測も流れている。市場は、前日のFRB理事の発言で来年の利下げ期待を一層強めており、短期金融市場では5月の利下げ開始を有力視し始めている。場合によっては3月との見方も高めている状況。ウォラーFRB理事は前日の講演で「現在の政策が景気を減速させ、インフレを2%に戻すのに十分な位置にあるとますます確信している」と述べていた。市場が期待している利下げには言及していないが、市場からは「市場は来年の利下げに前向きと解釈している」と指摘も出ていた。やや拡大解釈とも思われるが、ドルの下値警戒感を高めている市場を刺激したようだ。ユーロドルは1.09台後半でやや上値重く推移。下押しの動きまではみられず。11月のドイツ消費者物価指数速報値は、前月比マイナス0.7%、前年比2.3%と予想以上にインフレが低下した。食品、アルコール、タバコのインフレは上方サプライズとなる可能性を示唆していた。
30日
東京市場は小動き。ドル円は147円ちょうどを挟んで落ち着いた値動きだった。早朝に146.85近辺まで軟化も、その後は147円前後に戻して揉み合いに。日本時間今夜10時30分発表の10月の米PCEデフレータなどの発表を控え、様子見ムードが広がっている。ユーロ円はドル円と同様に朝方に161.14近辺まで下押しされたあと、午後には161円台前半で動意に欠ける展開となった。ユーロドルは序盤に1.0984近辺まで強含んだが、午後は前日終値付近に戻した。オアNZ中銀総裁が当面は利下げを行うつもりがないと発言したことなどから、NZドル/ドルは0.6182付近まで、豪ドル/ドルは0.6649近辺まで上昇。その後は伸び悩んでいる。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。ユーロドルの下げが主導した。11月のフランス消費者物価指数が前年比3.4%と市場予想を大きく下回る低い伸びに留まった。昨日のドイツ消費者物価指数の弱さと合わせ、ユーロ圏のインフレ鈍化傾向が意識された。ECBの早期利下げ開始期待が強まり、ユーロ売りに。ユーロドルは1.0960前後のサポートを割り込むと、1.09台前半へと下落。さらに、ユーロ圏消費者物価指数も予想を下回る前年比2.4%と、インフレ目標2%を視野に入れたことで1.0910近辺に一段安となった。米10年債利回りの上昇もドル買いを誘った。ドル全般に上昇するなかで、ドル円は147円付近の揉み合いを上放れると、147.70台まで上値を伸ばした。ポンドドルは1.2700挟みから1.2630台へと下落した。ユーロ円は161.40付近から一時160.60付近まで下落も、その後161円台前半を回復と下に往って来い。ポンド円も同様の動き。
NY市場では、ドルの買い戻しが加速した。ドル円は148円台半ばまで戻す場面がみられた。月末に絡んだ買いが中心と思われるが、この日のデーリー・サンフランシスコ連銀総裁の発言が利下げ期待に否定的な見解を示したことから、ドル買い戻しを加速させるきっかけとなったようだ。総裁は「いまは利下げを全く考えていない」と述べていた。その後は147円台に再び戻すなど、神経質に売買が交錯した。市場の意識は下向きに変化しつつあり、戻り待ちの売りから上値は重い。市場は来年の利下げ期待を一層強めており、短期金融市場では来年3月の利下げ開始の見方まで高めている。明日のパウエルFRB議長のスピーチがブラックアウト期間入りを前に注目される。ユーロドルは1.08台まで下落。ドルの要因もさることながら、本日はユーロ圏消費者物価指数速報値が発表され、それもユーロドルを押し下げていた。ただ、CPIはほぼ全カテゴリーに渡って低下したが、前月比で見ると食品だけは上昇していた。それを受けて一部からは、インフレは冷え込んだものの粘着性は残り、ECBはスタンスを変えないと見る向きもいるようだ。ポンドドルも戻り売りが強まり、一時1.26ちょうど付近まで下落。ポンドドルはこのところ上昇が続き、過熱感も高まっていたことから、きょうの下げはちょうど良い冷や水となったようだ。きょうはグリーン英中銀委員、前日はベイリー英中銀総裁の発言が伝わっていたが、両者とも市場の利下げ期待には否定的な見解を示していた。
1日
東京市場は、ドル売りが先行。米債利回り動向をにらんで、神経質に上下動している。午前はドル売りが先行。米10年債利回りが4.30%台へと低下すると、ドル円は148.20付近から147.60付近まで下落した。しかし、午後にかけては米債利回りが4.33%台へと上昇、ドル円は148.25近辺にわずかに高値を更新した。下に往って来いとなっている。ユーロ円は午前に161円台割れも、午後には161.60付近へと高値を伸ばした。ユーロドルはドル売り局面で1.0880台から1.0910台へと上昇。ドル買い局面の動きは1.09台割れまでと限定的。その後は1.09台前半で底堅く推移している。NYタイムの米ISM製造業景気指数やパウエルFRB議長の発言待ちに。
ロンドン市場はドル売りが先行。米10年債利回りが4.34%付近から4.30%台へと低下したことに反応。しかし、足元では4.33%付近まで戻しており、ドル買戻しも交錯している。ドル円は米債利回り動向に素直に反応し、148.31近辺まで買われたあと、147.70付近まで下落。その後は148円付近まで戻している。ユーロとポンドは独自の動きがみられた。ユーロドルは米債利回りが低下する局面でも売りが先行、1.09台割れとなった。その後の戻りも鈍く、再び1.8380台に安値を広げている。一連の欧州製造業PMIが50割れ水準に低迷しており、ユーロの上値を抑えた。また、米大手金融機関のゴールドマン・サックスがECBの利下げ開始時期観測を前倒ししたこともユーロ売り材料となっていた。一方で、ポンドは堅調。ポンドドルは1.2630付近から米債利回り低下とともに1.2675近辺に高値を更新。その後は1.2650付近に売り戻しが入っている。ただ、ユーロ売り・ポンド買いのフローが持ち込まれており、ポンド自体は底堅く推移している。ハスケル英中銀委員は、英国の失業率は低く、金利は高止まりする可能性ある、とタイムズ紙で述べていた。ユーロ円は161円台後半から一時161円台割れまで下落。一方、ポンド円は187.50台に高値を伸ばしたあとの反落でも187円台を維持している。
NY市場でドル円は146円台に下落した。本日の100日線が147.15円付近に来ており、再びその水準を下回る展開。この日はパウエルFRB議長の講演が行われ、それを受けて米国債利回りが低下し、ドル円も戻り売りが強まった。議長は「金融緩和の時期を推測するのは時期尚早。適切であれば追加引き締めの用意」とこれまでのタカ派的な発言を繰り返した。ただ、「政策金利は抑制的な領域に深く入った」とも述べている。以前はこの点を「いまは抑制的過ぎる証拠はない」と述べていた。 

 

●為替相場 12/4-12/8 12/9
 

 

●為替相場 12/11-12/15 12/16 
まとめ12月11日から12月15日の週
11日からの週は、ドル売りが強まった。米FOMCが予想外のハト派姿勢をみせたことが背景。FOMCメンバーの来年の金利予測で75bp利下げが示された。パウエルFRB議長は利下げ開始に関する議論を行ったことを表明した。一方で、英中銀やECBは米国と同様に金利据え置きを発表も、声明などでは利下げの議論について時期尚早との従来からの姿勢を堅持した。ユーロドルは一時1.10台乗せ、ポンドドルは1.28の大台に迫る動きとみせた。ドル円は146円台から一時141円割れまで大幅に下落。来週19日の年内最後の日銀決定会合を控えて、市場にマイナス金利解除の観測が広がったことが背景。植田日銀総裁発言や関係者発言報道などに敏感に振幅する場面があった。円関連の短期ボラティリティーが急上昇しており、ドル安とともに円高リスクが高まる週となった。
11日
東京市場は、ドル円が底堅く推移。前週末の米雇用統計が強含んだことを受けてドル円は145円台へと買われた。週明け東京市場では朝方の144.78近辺を安値に、その後は買いの流れが再燃。午後には145.67近辺まで水準を上げた。ユーロ円も買われ、155.70付近を安値に156.78近辺まで1円幅で上昇、午後は高止まりに。ユーロドルは1.07台後半での揉み合いに終始した。米雇用統計の好結果を受けて米国の早期利下げ開始期待が一服したことがドル売りの調整を促したことや、日経平均の大幅高を受けたリスク選好の動き、また今週の米消費者物価指数やFOMCなどの重要イベントを前に行き過ぎた円買いへの警戒感などが重なっていた。
ロンドン市場は、円売りが優勢。ブルームバーグが日銀関係者の話として、日銀は今月マイナス金利解除を急ぐ必要はほとんどないと認識していると報じたことが円売り反応を広げた。ドル円は145円台半ばから一時146.45近辺まで買われた。先週の植田総裁発言を受けた円高の動きをほぼ戻す格好となった。クロス円も買われ、ユーロ円は156円台半ばから157円台半ばへ、ポンド円は182円台半ばから183.90付近へと上昇している。ユーロドルは一時1.0780付近、ポンドドルは1.2580付近へと高値を伸ばしている。対ユーロではややポンド買いが優勢。米10年債利回りは一時4.26%台に上昇。欧州株や米株先物・時間外取引は英FT指数が軟調なほかは、先週末終値付近での揉み合いとなっている。きょうは目立った経済統計発表は見当たらず、全般的には明日の米消費者物価指数の結果を見極めたいとのムードが広がっている。
NY市場は、静かな取引が続いた。ドル円は146円台半ばでは上値を抑えられ上昇一服。ただ、146円台は維持しての高止まりとなった。先週は、日銀の植田総裁や氷見野副総裁の発言で早期のマイナス金利解除への思惑が高まり一時141円台まで急落していた。ただ、先週末に発表になった米雇用統計が予想を上回ったことや、「マイナス金利やイールドカーブコントロール(YCC)撤廃などを急ぐ必要はほとんどない」といった日銀関係者のコメントが伝わったこともあり、市場は冷静になっている。ユーロドルはやや上値重く、1.07台半ばでの推移。今週のECB理事会では金利据え置きが確実視されている。市場は来年の利下げ期待に対するヒントを探りたがっている状況。ポンドドルはロンドン時間に1.25台後半に上昇したが、NY市場では1.25台半ばに伸び悩んだ。明日は英雇用統計となっている。
12日
東京市場では、ドル安・円高の動き。ドル円は146.10付近で取引を開始し、その後は売りが優勢、145円台半ばへと軟化した。米消費者物価指数発表を控えており、調整売りが入った。日経平均が午前の上げを午後には解消する場面があり、円買いとなった面も指摘された。米長期債利回りが4.28%台から4.20%台に低下したことがドル売りを誘った面も。ユーロ円は157円台前半から156円台半ばへ、ポンド円は183円台半ばから182円台後半へと下落。ユーロドルは1.07台後半でわずか11ポイントレンジにとどまった。
ロンドン市場は、米消費者物価指数発表を控えてドル売りが優勢。米10年債利回りが4.24%付近から4.19%割れ水準まで低下しており、米インフレ鈍化が期待されているもよう。序盤はポンド売り・ユーロ買いの動きがみられた。ロンドン朝方に発表された8−10月の英ILO雇用統計で賃金の伸びが予想以上に鈍化したことがポンド売りを誘った。一方、その後発表された独ZEW景況感は予想を上回った。週後半には英中銀とECBの金融政策発表を控えており、これまでのポンド買い・ユーロ売りの流れに調整が入りやすい面も指摘される。ユーロドルは1.07台後半から1.08台乗せへと上昇。ポンドドルは1.25台後半から一時1.2550割れへと下落も、その後は買い戻されている。ドル円は上値重く推移しており、145.18付近に安値を広げている。クロス円はまちまち。ユーロ円は156円台後半で下げ渋り。ポンド円は183円台割れから182円台半ばへと軟化している。欧州株は堅調。独DAX指数が連日、最高値を更新している。
NY市場では、ドルに買い戻しが入った。注目の11月米消費者物価指数は予想通りの結果だった。エネルギー・食品を除くコア指数も予想通りの内容。ドル円は発表直後に売り反応をみせ144.70台まで下落も、すぐに切り返して145.60台まで反発、その後は145円前後に落ち着いた。パウエル議長も動向を気にしている住居費を除くサービスインフレ、いわゆるスーパーコアが計算値で前月比が0.4%と前回の0.2%から上昇したことは注目される。あすのFOMCを控えて方向性定まらない展開だった。ユーロドルは米CPI発表直後に1.08ドル台に乗せる場面があったが、その後は1.07台後半へと反落した。ポンドドルは1.26台乗せから1.25台前半まで反落、その後は1.25台後半に下げ渋り。
13日
東京市場は、FOMC待ちのムードで小動き。ドル円は午前中に145.19近辺まで売られたが、すぐに145円台半ば超えまで上昇。午後には145.70付近まで買われたあとは値動きが落ち着いた。ユーロ円は157円を挟んだ推移で、昨日海外市場でのレンジ内にとどまった。ユーロドルは1.0784-1.0800の狭いレンジ取引。NZ議会が本日、NZ中銀の責務を物価安定に戻す法案を可決した。NZ中銀は2018年から雇用の最大化と物価の安定という二つの責務が与えられていたが、物価の安定のみにもどす形となった。本来はタカ派材料であるが、NZドル相場はやや売りで反応。対ドルで2週間ぶり安値を付けた。
ロンドン市場は、ユーロやポンドなど欧州通貨が軟調。ロンドン朝方に発表された10月の英月次GDPが前月比−0.3%と予想以上の低下となった。ポンド売りの反応が広がり、ユーロも連れ安となった。加えて、10月ユーロ圏鉱工業生産も予想以上のマイナスとなった。ポンドドルは1.25台後半から1.2510付近へ、ユーロドルは1.08手前で上値を抑えられると1.0773近辺まで下落。クロス円も上値が重く、ユーロ円は157円台半ばまで買われたあと157円付近に反落。ポンド円は一時183.15近辺に高値を伸ばしたあとは182.30付近に安値を広げている。ユーロ対ポンドではポンド売りが優勢。欧州株は総じて小高く推移しており、弱い経済指標が中銀の早期利下げ開始期待につながっているようだ。ドル円は146円目前まで買われたあと、145.60台へと押し戻されている。岸田首相は人事交代会見で、金融政策にも触れており、日銀には政府の取り組みも念頭に適切な判断期待したい、と述べた。全般的には米FOMCを控えていることもあり、前日レンジから離れずの取引となっている。
NY市場では、ドル円が142円台に急落した。午後に発表になったFOMCの結果を受けてドル売りが強まった。FOMCはハト派サプライズとなった。政策金利は予想通りに据え置かれたが、FOMC委員の金利見通し(ドット・プロット)で、来年末時点の金利予想の中央値が4.625%(4.50−4.75%示唆)となっており、これは現行から計0.75%の利下げを見込んでいる。そこまでの利下げ予想は市場も想定していなかったであろう。また、声明でも、これまでの「必要なら追加利上げ実施」のところを「その度合いを精査する」に変えている。FRBはスタンスを市場の期待に傾け、本日のFOMCはハト派サプライズとなった印象が強い。その後のパウエル議長の会見でも「勝利宣言は時期尚早」と述べる一方で、利下げのタイミングを協議したことも明らかにしていた。短期金融市場では来年の利下げ幅を計1.50%近くまで織り込む動き。ユーロドルは一時1.09付近まで上昇。ポンドドルは1.26台へと買われた。ドル全面安となっている。クロス円はドル円急落とともに下落した。日米金利縮小観測を受けた円買いが入った。
14日
東京市場では、ドル円が続落。前日の海外市場で来年の米利下げ観測が強まり、ドルが売られた流れを引き継いで、東京午前に142円台後半から141円台後半まで下落した。午後に入り、米10年債利回りが一時3.96%まで低下したことなどからドル売りが加速し、7月31日以来およそ4カ月半ぶりの安値水準となる140.97付近まで急落した。取引終盤にかけては141円台後半まで戻す場面があったが、米10年債利回りが低水準で推移していることから戻りも一服、141円半ばに落ち着いた。ユーロ円はドル円につれ安となり、昼過ぎに一時153.87付近まで下落。ユーロドルは昼過ぎに1日以来およそ2週間ぶりの高値水準となる1.0915付近まで上昇した。11月の豪雇用者数が市場予想を大きく上回ったことから豪ドルが買われ、NZドルも、つれ高となった。
ロンドン市場は、ドル売り圧力が根強い。この後の英中銀とECBの金融政策発表を控えて、ポジション調整が入りやすい状況となるなかで、前日の米FOMCでみられたハト派への姿勢転換を受けたドル安圧力に押されている。米10年債利回りが引き続き低下しており、ロンドン序盤には3.93%台まで一時低下。ドル円は下げ一服。ロンドン序盤に142円台を回復したあとは141円台前半から後半で推移している。ユーロやポンドは神経質な動き。市場での英欧中銀の来年利下げ観測が高まる一方で、米国の利下げ観測も一段と織り込まれている。ユーロドルは1.0870台から1.0930付近、ポンドドルは1.2610付近から1.2680付近で売買が交錯しているが、足元では高値を伸ばす動き。きょうはスイス中銀が2会合連続で政策金利を据え置いた。今後の追加利上げに関する文言を削除した。ノルウェー中銀は据え置き観測が優勢だったが、利上げを実施、クローネ相場が急伸した。ただ、今後の利上げ打ち止め感もみられている。株式市場は、主要中銀が来年利下げに動くことが期待されるなかで、全面高商状。前日の米ダウ平均に続いて、独仏株価指数も最高値を更新している。
NY市場では、ドル円が反発。東京市場で瞬時140円台まで下落する場面があったが、その後は値ごろ感からのショートカバーに入り、NY時間には一時142円台まで戻した。ただ、前日からの急落で下向きの流れが更に加速した雰囲気もあり、上値では戻り待ちの売りオーダーも数多く並んでいたようだ。前日のFOMCを受けてエコノミストからもハト派な予想が相次いでおり、FRBは5月から計1.50%ポイントの利下げを実施し、25年初頭にはさらに計1.00%ポイントの利下げを実施する可能性があるとの見方が出ている。ユーロドルは一時1.10台を回復。ECBは声明でインフレ目標の2%達成には政策金利を現行の高水準に据え置く必要があるとの姿勢を強調した。ラガルド総裁も「利下げは議論しなかった」として、市場の利下げ期待を完全に後退させている。また、ECBはパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)で保有した国債の再投資を来年下半期から縮小し、来年末までには終了する方針も示している。前日のFRBとは真逆にタカ派姿勢を強調する内容となった。ポンドドルは買われ、一時1.28台に迫る動き。英中銀は政策金利を予想通りに据え置いた。注目されていた委員の投票行動は9名の委員のうち前回と変わらずに3名が利上げを主張していた。利上げを主張する委員がいることは予想通りではあったものの、前日のFOMCでFRBがハト派姿勢にシフトした後では、タカ派な印象も強かったようだ。ベイリー英中銀総裁も「利下げに関する議論は時期尚早」と述べていた。ただ、市場は来年の利下げ期待を若干後退させたものの、計1.00%ポイント以上の利下げ予想は変えていない。
15日
東京市場は、円相場が方向性なく振幅した。朝方からは円売りが優勢となった。ドル円は142.47近辺、ユーロ円は156.49近辺まで買われた。米債利回り上昇や、ゴトー日関連のドル買い需要などが影響したもよう。日経平均が一時400円高となったことも円売り材料に。しかし、この動きは続かず、午後にかけてはドル円は141.57近辺、ユーロ円は155.67近辺まで反落。日経平均は284円高で引けた。ドル円は142円前後、ユーロ円は156円前後と、いずれも前日終値付近に戻した。
ロンドン市場は、根強い円買いの動きとなっている。ロンドン序盤に米債利回りが低下、ドル円は142円付近から141.47近辺に安値を広げている。欧州通貨はまちまち。ユーロドルは一連の12月欧州PMI速報値が弱含んだことを受けて売りに押され、1.0990付近から一時1.0950割れ水準まで下落。ユーロ円も上値が重く156円付近から155円手前まで下落。一方、ポンドドルはやや売りに押されたあと、12月英非製造業PMI速報値が予想以上に回復したことで1.27台半ばから1.2790付近まで上昇した。ポンド円は180.50割れまで下げた後は181円台を回復している。独連銀は来年のドイツ経済成長見通しを従来の+1.2%から+0.4%へと大きく下方修正した。前日のECB理事会を終えて、ECBメンバーはタカ・ハトそれぞれの見方を示しているが、現在の金利水準をしばらく継続することでは認識が一致していた。
ドル円はNY時間に入って上下動した。141円台でNY時間に入ってきたものの、ウィリアムズNY連銀総裁の発言でドル買いが強まり、ドル円は142.40円近辺まで一気に上昇した。総裁は「現在、利下げについて全く協議していない。3月利下げについて考えるのは時期尚早」などと述べ、FOMC後の市場のムードをけん制してきたようだ。ただ、ドル円は上値での戻り売り圧力も形成されているようで、200日線が控える142.50円付近を試す前に141円台に失速している。200日線は上値レジスタンスとして機能し始めている模様。終盤になって142円台に再び戻したものの、200日線の水準には慎重なようだ。  

 

●為替相場 12/18-12/22 12/23 
まとめ12月18日から12月22日の週
18日からの週は、日銀決定会合をめぐってドル円相場が激しく振幅した。前週に植田日銀総裁が「年末から来年にかけてはチャレンジングになる」と発言したことで、市場はマイナス金利解除が早まるとの思惑を強めていた。146円付近から141円台割れまで下落する動きをみせていた。週明けには買戻しが入った。19日の日銀決定会合では政策金利が据え置かれ、緩和継続が示された。また、植田総裁会見ではチャレンジングとの言葉について、仕事への意気込みを表したもので金融政策とは関係ない、と説明した。ドル円は145円手前水準まで一時上昇。しかし、日本政府がインフレ見通しを引き上げたことなどで、市場でのマイナス金利解除観測は根強く残った。週後半は年内イベント終了からクリスマス休暇ムードが広がり、再びドル安基調に回帰している。木曜日の米GDP確報値が下方改定されたことで、来年の米利下げ開始観測が再燃し、ドル売り圧力が広がった。ドル円は141円台まで再び軟化。ドル指数は水準を下げており、7月末以来のドル安水準となった。
18日
東京市場で、ドル円相場は方向感に乏しい動き。朝方は142円台前半で推移したが、日経平均の下落や米債利回りの低下などを背景に、円高・ドル安が進んだ。しかし、日銀の金融政策決定会合や植田総裁の会見を控えて、積極的な取引は手控えられた。午後に入っても142円台で小幅な値動きにとどまった。ユーロドルやポンドドルは、ドル安傾向が続いた。ユーロドルは1.08台後半から1.09台前半に上昇し、ポンドドルは1.27台前半で回復した。ユーロ円は、ユーロ高に支えられて154円台後半から155円台前半に買われた。
ロンドン市場は、円売りが優勢。明日の日銀会合をにらむ動き。日銀はマイナス金利政策の見直しを検討しているとの観測で円買いポジションが積み上がっていたが、明日の日銀会合結果発表を前に調整が入った格好。米債利回りの下げ止まりも加わり、ドル円は142円台前半から142.80付近へと買われた。ユーロ円も155円台を回復。ユーロドルは先週末の下落から反発し1.0930付近まで買われたが、ドイツIfo景況感指数の弱い結果もあり1.09ちょうど付近に伸び悩んだ。
NY市場で、ドル円は143円台まで一時上昇した。明日の日銀会合やクリスマス週に向けた市場の調整が影響したもよう。ドル円は200日線を回復したが、下向きのトレンドは変わらず。日銀会合では政策変更はないもの予想されるが、マイナス金利解除に関する発言に市場は神経質だ。ユーロドルは買い戻しが入り、1.09台を回復。ECBは早期利下げを否定しているが、市場は来年4月の利下げを織り込んでいる。ドイツIfo景況感指数はリセッションを示唆しており、ECBの早期利下げ観測は根強い。ポンドドルは戻り売りが優勢となり、1.26台前半まで下落。英中銀は利下げ期待を否定しているが、市場は来年6月の利下げを織り込んでいる。消費者物価指数は鈍化傾向にあるものの、賃金上昇率やサービス・インフレは高水準にある。英中銀は米国や欧州よりも後の利下げ開始とみられている。
19日
東京市場では、日銀金融政策決定会合が終わった後、円安が急速に進んだ。前日海外市場では、ドル円は143円台に達した。日銀会合前にポジション調整の動きが入ったもよう。朝方は円安に対する反動でドル円は142.25近辺まで下落したが、日銀会合後は143円台に再び上昇した。日銀はマイナス金利やYCCを据え置き、必要なら追加緩和を行うという従来の姿勢を維持した。これは事前予想通りだったが、海外勢は来年初めにマイナス金利を解除するための前段階として、声明の表現を変えるという期待があった。声明が変わらなかったことで円売りが強まった。クロス円も同様に買われ、ユーロ円やポンド円も大きく上昇した。ユーロドルはほとんど動かず。
ロンドン市場では、植田日銀総裁会見を受けて円売りが強まった。海外勢を中心に早期のマイナス金利解除に向けて地ならしが見られるのではとの期待があったが、日銀の声明はこれまでの緩和姿勢を踏襲。植田総裁の会見では、マイナス金利解除の見通しは示されなかった。また、来年がチャレンジングになるという発言は、仕事への意気込みを表したもので、金融政策とは関係ないと説明した。市場はこれらの発言を受けて円安の動きを一段と強めた。ドル円は144円台に乗せたあともドル高・円安が止まらず。144.90台まで買われ145円に迫る動きを見せた。ユーロ円は155円台から158.50超え水準まで上昇した。一方、ユーロドルは1.09台での小動きにとどまった。
NY市場では、ドル円が一時145円をうかがう展開も、その後は伸び悩んだ。日銀の政策決定会合を受けて、円安が進行。ドル円は一時145円に迫ったが、市場のFRBの利下げ期待が根強い中でドルの上値も重くなった。NY時間後半には143円台に伸び悩んでいる。ユーロドルはユーロ圏のインフレが高止まりしていることや、ECB理事の利下げ否定的な発言が下支えとなり、1.09台後半まで上昇。本日はカザークス・ラトビア中銀総裁の発言が伝わっていたが、インフレに対する勝利宣言は時期尚早としたうえで、賃金の伸びが確実に鈍化し、インフレに新たなリスクが生じないよう、ECBは政策金利を現行水準に維持する必要があるとの認識を示していた。ポンドドルは1.27台半ばまで一時買われた。英中銀はタカ派色を堅持しているものの、市場はここ数カ月、英中銀のレトリックよりも、むしろハードデータに注目してきた。明日の英消費者物価指数(CPI)は最注目となる。
20日
東京市場は、ドル円が売りに押された。昨日のロンドン市場での上昇から一転、NY市場と本日の東京市場で下落した。144円台での買いに慎重姿勢が見られたことに加え、米債利回りの低下がドル売りを誘った。米10年債利回りは昨日NY市場午後に3.93%台まで上昇した流れを受けて、3.92%台で東京朝の時間外市場を迎えたが、その後は3.907%付近へと低下した。ユーロ円も同様に158円台から157円台前半へと円高に振れた。ユーロドルは1.0960台後半で小動き。英消費者物価指数を控えてポンドドルは1.27台前半で様子見ムードが強まった。
ロンドン市場は、ドル安に対する調整がやや入っている。その動きを後押ししたのがポンド安。ロンドン早朝に発表された11月の英消費者物価指数が前年比+3.9%と約2年ぶりの低水準に鈍化、ポンドドルは1.27台前半から1.2650割れまで急落した。米債利回りが低下するなかで、ドル円は143円台後半から前半へと素直に軟化も、ユーロドルはポンドドルに連れて安値を1.0950割れ水準に広げている。ただ、ドル指数は前日の低下からの小反発にとどまっており、調整の範疇を出ない。クロス円は全般に軟調。ユーロ円は157円台後半から一時157円を割り込んだ。ポンド円は182円台後半から181円台前半まで急落した。米株先物が時間外取引で小反落。欧州株は英利下げ開始時期の前倒し観測を受けて堅調。独仏株は序盤の上げを消す動きとなっている。米10年債利回りは3.90%の節目水準を下回り、3.88%台まで低下している。
NY市場では、値動きが落ち着いた。ドル円はNY時間に入って143円台後半まで一時買い戻された。しかし、終盤には最高値更新を続けていた米株式市場に調整の動きが強まり、円高の動きが見られた中で143円台半ばに伸び悩んだ。年内の主要イベントも概ね終了して、市場はクリスマスムードといったところだが、来年の米利下げ期待が根強くドルの上値も重い中で、ドル円の買い戻しも簡単ではないようだ。ユーロドルは緩やかな戻り売りに押され、一時1.0935付近まで値を落とす場面が見られた。下押す動きまではないが、市場のECBによる利下げ期待が根強い中で、1.10台には慎重なようだ。ポンドドルは戻り売りが優勢となり、一時1.26ドル台前半まで下落する場面が見られた。ロンドン時間に発表されていた英消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったことで、市場の利下げ期待を一層強めたようだ。
21日
東京市場では、リスク回避の円買いが優勢。日経平均の大幅安や政府インフレ見通しの引き上げなどが背景。ドル円は一時142.81近辺まで下落し、200日線を割り込んだ。その後は143.10付近への買い戻しを見せたものの、米利下げ期待が根強くドルの上値を抑えた。午後には143円前後で揉み合った。ユーロ円やポンド円も軒並み下落し、この日の安値圏で推移した。ユーロ円は156.37近辺、ポンド円は180.44近辺まで一時下落した。ユーロドルは1.0956ドルまで上昇してこの日の高値を更新したが、ECBによる利下げ開始観測が根強いことで、ユーロの上値も限定的だった。
ロンドン市場は、方向性に欠ける取引。先週から週前半の一連の主要国中銀イベントを通過して、次第にクリスマス相場の様相を呈してきているようだ。ドル円はロンドン序盤には143.40付近まで買戻しが入ったが、再び143円台割れ水準と上値が重い。ユーロドルは1.0935近辺まで下押しされたあとは、1.0960台へと買われており、やや買いが優勢。ポンドドルも1.26台での上下動で、1.2610台から1.2660付近へと小高い動き。ユーロ対ポンドでは、前日の流れを受けてポンド売りが先行した。ただ、いずれも一方的な値動きとはならず、売買は交錯。米株先物は時間外取引で反発も、欧州株は前日米株安を受けて軟調に推移している。米10年債利回りは3.85%付近から3.88%台へと小幅の上昇。トルコ中銀は予想通り政策金利を42.5%に引き上げたが、これまでと同様にリラ買い反応は限定的だった。
NY市場は、ドル売りが優勢。ドル円はNY時間に入って戻り売りが加速し、一時142.05付近まで下落。この日発表の第3四半期の米GDP確報値が下方修正されたことでドル売りが強まった。前日は米株式市場の急落でリスク回避の円高も見られていたが、状況に変化はない。今週は日銀決定会合を受けて円安が一旦強まり145円をうかがう展開も見せていたが、結局は届かずに失速。本日142.70付近に200日線が来ているが、その水準も再び割り込んでいる。明日以降、下値が警戒される動きではある。FOMC委員からはけん制発言が相次いでいるものの、市場は来年のFRBの利下げを計1.50%ポイント織り込んでいる。一部には来年3月利下げ開始期待も。ユーロドルは買い戻しが強まり、1.10台を回復する場面があった。ポンドは対ドルでは上昇したものの、対ユーロでは下落し、上値が重い印象。前日の英消費者物価指数(CPI)が市場の早期利下げ期待を一層強めており、ポンドの上値を重くしているようだ。 
22日
東京市場では、ドル円が振幅。前日NY市場の流れを受けて朝方に141.87近辺まで一段と下落した。しかし、その後は買戻しが優勢となり、午後にかけては142.56近辺まで反発。ロンドン勢に参加を控えて142円台前半に落ち着いた。ユーロドルは1.10台では売りが優勢となり、1.0996近辺まで小安く推移。ポンドドルは1.2680-90付近での揉み合いと前日終値を離れず。ユーロ円は156円台、ポンド円は180円台を中心に、前日終値を挟んだ上下動に終始している。 午後は総じてレンジ相場となった。月曜日がクリスマスで世界的に休場となることから、積極的な取引は控えられた。
ロンドン市場では、ドル売りが優勢。クリスマス休暇を前に、市場参加者は様子見ムードになっている。全般に為替レートの変動は限定されているが、ドルは他の主要通貨に対して軟調。ユーロドルは1.10台を割り込んだ後、買い戻しが入って1.1020台まで上昇した。これは8月10日以来のユーロ高・ドル安水準。ポンドドルも買われ、1.2680付近から1.2730台まで高値を更新した。英国の小売売上高が予想よりも増加したことが好感された一方、英国の第3四半期GDPが予想を下回ったことで、発表当初は売買が交錯。その後、米国の10年債利回りが3.91%から3.86%に低下し、ドル売り圧力に。ドル円は東京市場で142.56円まで上昇した後、ロンドン市場では下落し、一時142円を割り込んだ。ただ、前日のNY市場の終値付近に戻った形で、方向性は希薄。
NY市場でドル円は買い戻しが優勢となり、142円台半ばに戻す展開。本日もドル円は下向きの流れが続き、一時141円台まで下げ幅を拡大。東京時間に一旦141円台に下落していたものの、海外時間に入って下げ渋る動きも見せていた。しかし、積極的に買い戻そうという雰囲気もない中で、この日発表の11月のPCEデフレータが市場の早期利下げ期待を正当化する内容となったことでドル円は再び141円台に一時下落。ただ、クリスマス休暇前というこもあり動意は薄い。積極的にポジションを傾けようという動きもなく、ドル円は142円台下げ渋っている。 

 

●為替相場 12/25-12/29 12/30 
まとめ12月25日から12月29日の週
25日からの週は、ドル安が進行した。米欧市場のクリスマス休暇と週末の年末年初に挟まれた週とあって、取引は閑散となった。主要な経済統計については、年明けの週の米雇用統計待ちに。金融当局者からの発言もほとんど見られなかった。そのなかで、前週からのドル安と円高の流れが淡々と継続した。週後半にはロンドンフィキシングや米債入札結果などをきっかけにドルに買戻しが入ったが、これまでのドル安の流れには特段に変化はみられていない。市場での米国の早期利下げ開始観測は根強く続いていた。日銀に関しては、直近会合の主な意見が公表されたが日銀内部での見方は分かれており、決め手には欠けた。そのなかで、なかなか時期は定まらないものの来年のマイナス金利解除観測が市場では既定路線化しているようだ。円安の反応は長続きせず。また、ECBでタカ派として知られるホルツマン・オーストリア中銀総裁が、来年の利下げ開始を保証することはないと発言したことで、対ポンドなどでユーロが買われる動きもみられた。全般に新規材料に欠けるなかで週後半には調整が入ったものの、従来からの流れが継続する形で年末を迎えている。
25日
東京市場は、取引参加者が少なく閑散とした取引。動きがある程度見られるものの、取引量自体はかなり少ない。この後、クリスマスのために欧米市場が基本的に休場となること、アジア市場も日本と中国を除いて基本休場となっており、取引参加者が極端に少ないことなどが背景にある。ドル円は142.56近辺にまで小幅買われたあとは、142.14近辺まで下げた。その後の買い戻しは142.40前後まで。ユーロドルは1.1015付近から一時1.0994近辺まで下落。1.10台割れのストップ注文をつけていた。ユーロ円は157円付近から一時156.30近辺まで売られた。
ロンドン・NY市場はクリスマスのため休場。
26日
東京市場は、休暇ムードが継続し落ち着いた取引。東京・アジア市場は、豪州、NZ、香港市場が休場で取引参加者が少ないこと、この後の欧州市場が休場となることなどから、目立った動意を見せず。ドル円はやや上値重くも142.30台から142.10台までの値動きにとどまった。ユーロドルは1.10台前半、ユーロ円は156円台後半で、狭いレンジの推移。ドル/人民元は若干ドル高・元安。中国株の軟調地合いや、中国人民銀行の流動性供給で翌日物レポレートが低下したことなどが元安につながった。
ロンドン市場は、ボクシングデーのため休場。
NY市場は、小幅の値動き。ドル円は欧州勢がクリスマス休暇中で休みの中、142円台半ばでの小動きに終始した。ユーロドルは堅調な動きを続け、1.10台半ばに上昇。ポンドドルはロンドン勢がクリスマス休暇で休みの中、動意薄の展開となったが、ドルが軟調に推移していることで1.27台で推移した。しかし、対ユーロでは下落が続くなど、ポンドは12月中旬以降軟調な動きが続いている。来年の主要国の利下げ開始観測には変化はみられず。そのなかで、日銀についてはマイナス金利解除観測が継続している。米欧の実質金利は、やや欧州のほうが景気抑制度が低いとの見方があった。英国については中銀はタカ派姿勢を保持している一方、短期金融市場では来年中に5回以上の利下げを行うことを織り込んでいる。
27日
東京市場は、朝の日銀主な意見で一時円売りの動き。18日・19日の日銀金融政策決定会合の主な意見が今朝公表された。その中で、出口戦略に向けたタイミングが近づいているとの意見があった一方で、現在、慌てて利上げしないと、ビハインド・ ザ・カーブになってしまう状況にはなく、少なくとも来春の賃金交渉の動向を見てから判断しても遅くはないといった意見があり、1月の会合でのマイナス金利解除期待が後退する形で円売りとなった。この内容を受けて短期金利市場での1月会合でのマイナス金利解除見通しは27.5%から一時2.3%まで低下していた。ドル円は142.30台から142.85近辺まで上昇した。ユーロ円は157円台で振幅も、ドル円とともに円売りが優勢。ユーロドルは1.10台前半での小動き。
ロンドン市場は、ややドル安・ポンド安の動き。ただ、ロンドン勢の取引が再開も、依然としてクリスマス気分は抜けず小動き。この日は主要経済統計発表はなく、手掛かり難。ドル円は142円台後半から半ばでの揉み合い。東京午前には日銀主な意見で緩和政策継続が示され円安となったが、持続性はみられず。ロンドン朝方に1−3月の日銀国債買い入れ計画が発表され、中長期の下限引き下げ、超長期回数減が発表されたことに円買い反応も、続かず。欧州通貨ではポンド売りが先行。対ユーロでのポンド売りが主導している。ポンドドルは1.27台前半から一時1.27台割れまで下落。その後は1.27台前半で下げ一服。ユーロドルは東京昼過ぎの1.1029近辺を安値に、ロンドン時間には1.1059近辺まで買われている。ドル指数はクリスマス前から一段と低下したが、小幅にとどまっている。
NY市場では、ドル売りが強まった。FRBの金融政策に敏感な米2年債利回りが4.25%を割り込んでおり、5月以来の低水準となった。米5年債入札が好調な入札となり、米国債市場では利回りが下げ幅を広げた。来年のFRBの早期利下げ期待が強いほか、景気後退への懸念も。ドル円は142円台半ばから141円台半ばまで下落した。ユーロドルは上値追いが続いており、1.10台後半から1.11台に上昇した。今年7月以来の高水準に。ポンドドルも買い優勢となり、1.27台半ばから買われ一時1.28台を付ける場面も見られた。ただ、1.28付近でば売買が交錯して揉み合った。先日の英中銀金融政策委員会(MPC)で英中銀はタカ派姿勢を強調していたが、英消費者物価指数(CPI)やGDPなど足元の指標が弱い内容が相次いだ。ポンドにはユーロ相場ほどの力強さはみられていない。
28日
東京市場では、前日NY市場からのドル売りが継続。ドル円は東京午前に141.17近辺まで下落。その後は仲値関連の外貨買い・円売りで141.60台まで上昇。しかし、午後には再び141.10付近へと下落した。米国の早期利下げ開始期待が根強く、ドル売りにつながっている。3月の利下げ開始を織り込む勢いを見せており、日米金利差縮小見込みからのドル売りとなっている。ユーロドルは1.11台前半での小動き。ユーロ円はドル円とともに157円台半ばから156円台後半で上下動。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。ドル円は141円台を明確に下回ると、安値を140.65近辺に更新。7月28日以来のドル安・円高水準となった。その後の戻りは限定的で、141円台では再び売りに押し戻されている。この時間帯は米債利回りの低下は一服しているが、引き続き日米金利差縮小観測がドル円相場を圧迫しているようだ。ユーロドルは一時1.1139近辺まで買われ、7月27日以来のユーロ高・ドル安水準となった。ホルツマン・オーストリア中銀総裁が「現時点で利下げについて考えることは時期尚早、2024年の利下げを保証することはない」と発言したあと、しばらくして買いが強まっていた。ポンドドルは序盤に1.2827近辺まで高値を伸ばす場面があったが、対円や対ユーロでの売り圧力に上値を抑えられ1.28挟みの水準に反落している。クロス円は総じて上値重く推移しており、ユーロ円は156円台後半から半ばでの推移。ポンド円は180円台後半から一時180円台割れまで下押しされている。
NY市場では、ドルが買い戻された。ドル円はロンドンフィキシング前までは売りが優勢で、140.25近辺まで一時下落。その後は急速に買い戻されて141円台を一気に回復した。本日の約定の受け渡しは1月4日になり、実質的に来年の商いとなる。薄商いの中で、フィキシングに絡んだ実需の動きが激しく上下動させた可能性もありそうだ。ユーロドルはロンドン市場で1.1140付近まで上昇したあとは、NY市場では上値を抑えられた。フィキシング前後に激しく振幅したあと1.1060付近まで反落した。ポンドドルは一本調子の下げとなり、1.27台前半まで下落した。ただ、対ユーロでのポンド売りは一服している。ブルームバーグの調査によると、エコノミストは24年の英経済はリセッション(景気後退)を回避し、下期には景気が加速するとの見方が示されていた。
29日
東京市場は、年末年始を前に様子見ムード。ドル円は141円台での推移。午前中は141.40台から141.67近辺まで上昇した。昼にかけては上昇も一服、141円台前半に押し戻されての揉み合いとなった。ユーロドルは年末相場らしく1.10台後半で動意無く揉み合っている。ユーロ円は午前に156.93近辺まで買われたあとは、156円台前半へと反落、上に往って来いに。やや動きが出たのが中国人民元。中国人民銀行が対ドル基準値をドル安方向に寄せたことを受けてドル安・元高が進行。ドル人民元、ドルオフショア人民元ともに7.10を割り込むと、売りが強まる場面が見られた。ドル人民元は7.0880を付け、6月2日以来のドル安・元高となった。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。前日の海外市場から引き続き米債利回りが上昇しており、為替市場でのドル買戻しを誘っている。ドル円はロンドン朝方にかけて141.14近辺まで下押しされたが、その後は米10年債利回りが3.83%付近から3.89%付近に上昇する動きに141.90近辺まで高値を伸ばした。ユーロドルは1.10台後半に上昇したあとは、一時1.1044近辺まで下落。足元では1.1060台に下げ渋りと方向性に欠ける動き。ポンドドルも1.2770付近に高値を伸ばすも、1.2701近辺まで一時下落。足元では1.2730付近に下げ渋り。ドル指数は前日に7月27日以来のドル安水準をつけたあとは、反発している。週末、年末を控えて調整的な値動きとなっている。ただ、ドル安の流れ自体には大きな変化はみられていない。クロス円は、まちまち。ユーロ円は156円台、ポンド円は180円台前半での振幅で、概ね前日比プラス圏で推移している。ドル安に調整が入っていることで金相場が反落、豪ドルは売りに押されている。一方、原油相場は安定した推移で、カナダドルは対ドルでは軟調も、対円では揉み合いとなっている。きょうはこのあとのNY市場でシカゴPMIが発表される程度で、手掛かり難の年末相場となっている。ドル円は141円台後半での取引。141.40台の前日終値水準を挟んだ上下動となっている。ロンドン朝方につけた141.14近辺を安値に、その後の141.91近辺を高値に振幅している。米債利回りが反発しており、ややドル買い圧力が優勢になっている。
NY市場は前日からのドル買い戻しが続き、ドル円は一時141円台後半まで買い戻される場面も見られた。しかし、本日の米株式市場が下げに転じたことや米国債利回りも上げを縮小する中で、リスク回避の雰囲気も広がっている。ドル円も次第に戻り売りが強まり、一時140円台に再び下落した。 

 

●為替相場 2024/1/1-1/5 1/6 
まとめ1月1日から1月5日までの週 1日からの週は、ドル高とともに円安が進行した。そのなかでドル円の上昇が際立っている。1日に発生した令和6年能登半島地震が、日銀の早期マイナス金利解除観測を後退させたことが円売り圧力となった。また、米FOMC議事録では「金利は予想よりも長くピークに留まる可能性。政策金利は当面の間、制限的な水準に留まる」と指摘しており、「より高く、より長く」の金利環境の可能性を強調した内容となった。FOMC会合後のようなハト派ショック反応はみられず、ドル高につながった。中東情勢ではガザ地区をめぐるイスラエルの攻撃が続くなかで、紅海でのイランの行動などが加わり、原油相場が不安定化している。インフレ警戒の芽が再び出てきた面も。ドル円は日米金利差相場が再燃して140円台から145円台へと上昇。ユーロドルやポンドドルはドル高圧力でやや水準を下げ、ユーロ円やポンド円は円安圧力に買われた。週末の米雇用統計は予想を上回る力強い内容となり、ドル円は一時146円手前まで急上昇する場面が見られた。ただ、今年に入ってドル円は急速に上昇していることもあり上値では短期筋の利益確定売りが出ている。
1日
世界的に元日・ニューイヤーデーのため休場。
2日
東京市場は三が日のため休場。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。昨年末から米債利回りの上昇とともに、為替市場ではドル安調整的な動きがみられている。年明けもその動きが継続。ドル円は東京不在のアジア朝方につけた140.82近辺を安値にロンドン市場では141.77近辺まで高値を伸ばした、米10年債利回りが一時3.95%付近と昨年末から一段と上昇したことがドル高圧力となっている。加えて、1日に発生した令和6年能登半島地震が日銀による早期マイナス金利解除を困難にする可能性が指摘された。ユーロドルは1.1050付近が重くなり、ロンドン時間には一時1.10台割れまで下落。仏独ユーロ圏の一連の製造業PMI確報値が上方改定されたが、米債利回り上昇とともにドル買いに押された格好。ポンドドルは買いが先行して1.2760近辺まで買われたあとは英製造業PMI確報値が下方改定されたこともあって、反落。安値を1.2670付近へと広げている。クロス円はアジア時間に買われたが、ロンドン時間には売り戻されている。ユーロ円は156.30台から155円台後半へと反落、ポンド円は180.65近辺を高値に、179.50台へと反落。欧州株は序盤は堅調も、足元では米株先物とともに上値が重くなってきている
NY市場では、ドル高と円安の動きが優勢。ドル円は一時142円台に上昇する場面が見られた。1日に能登半島で大規模な地震が発生。被害の大きさが明らかになるにつれて、日銀のマイナス金利解除がしばらく困難になったとの指摘が出ている。1月のマイナス金利解除はもちろん、4月も難しいのではとの見方も出ているようだ。一方、年初の市場は、株式市場でIT・ハイテク株に売りが強まるなど、リスク回避の雰囲気も垣間見られた。ドル円は次第に上値が重くなり141円台に値を落とした。ドル高が優勢となるなかで、ユーロドルは1.09台に軟化。1.10台を維持できず、1.0940付近まで一時下落した。ポンドドルも戻り売りが加速、1.26台前半まで下落した。今日の下げで1.2665付近にきている21日線を下回っている。米債利回りの上昇がドル買いにつながっていた。
3日
東京市場は三が日のため休場。
ロンドン市場は、ドル円が142円台後半へと上昇している。序盤は円売りが先行。ドル円が142円付近から142円台半ばへ買われる動きに、クロス円も買われた。その後は米10年債利回りが3.94%付近から3.98%台へと上昇し、ドル全般に上昇している。ドル円は高値を142.80付近に伸ばし、その後も高止まり。ユーロドルは1.0965近辺まで買われたあと、反転して1.0920台へと安値を広げてきている。ポンドドルも1.2650台に乗せたあと、1.2620付近へと反落。ユーロ円は円売り圧力で155.50付近から一時156円台に乗せたが、足元では155円台後半へと押し戻されている。ポンド円は比較的堅調で、179円台前半から180円台前半まで買われたあとも、180円台を維持している。ユーロ対ポンドではユーロが軟調に推移している。NY原油は一時69ドル台前半まで下落、欧州株は長期債利回り上昇を嫌って軟調に推移している。金曜日の米雇用統計をにらんで調整圧力が優勢になっているようだ。
NY市場では、ドル円が143円台に急上昇。200日線が143円台前半にきているが、その水準を一気に上抜いて143.75付近まで買われた。今年に入って米株式市場が軟調なスタートを切るなど、昨年末までと逆の動きが出ている。その流れに伴って為替市場も、米国債利回り上昇と伴にドルの買い戻しが強まっており、ドル円も反転の動きを見せている。午後のFOMC議事録では「金利は予想よりも長くピークに留まる可能性。政策金利は当面の間、制限的な水準に留まる」と指摘しており、「より高く、より長く」の金利環境の可能性を強調した内容となった。ただ、3月までの利下げ開始への期待はさほど変化はなく、80%程度の確率で推移している。ユーロドルは売りが加速し、一時1.08台まで下落。一方、ポンドドルは上げ渋る動きがみられ1.26台後半での推移。市場では、英中銀は今年の利下げが見込まれているが、FRBやECBよりは利下げ開始は遅いとみられている。
4日
東京市場では、ドル円が堅調。ドル円は朝方に前日のドル高の反動や日経平均が一時770円超の大幅安となったことから142.86近辺まで下落した。しかし、その後はすぐに13円台を回復。午後には143.88近辺に高値を伸ばし、朝方の安値から1円超のドル高・円安水準となった。昨年12月21日以来の高値水準に。米10年債利回りが3.93%台に上昇、日経平均の下げ幅縮小が下支えとなっていた。クロス円は軒並み買われた。ユーロ円は156円付近から157円台乗せ。ポンド円は182円台前半、豪ドル円は97円手前へと水準を切り上げた。ユーロドルは1.09台前半での小動き。
ロンドン市場は、ドル円が144円台に上昇している。年明け以降、連日1円超の値幅での上値追いが続いている。きっかけとなったのが能登半島地震で、日銀の早期マイナス金利解除観測が後退したことがあるようだ。ロンドン時間に入るとユーロ円やポンド円とともに一段高となっている。仏独ユーロ圏、英国などの12月非製造業PMI確報値がいずれも速報値から上方改定されたことを受けて、ユーロやポンドが買われている。ドル円の144円台乗せとともに、ユーロ円は158円付近、ポンド円は183円台前半へと高値を伸ばしている。また、米債利回りの上昇が日米金利差拡大を想起させた面も指摘される。米10年債利回りは3.90%付近から3.95%台へと再び上昇している。あすの米雇用統計発表を控えた調整の動きも警戒されるが、年初からの円売りの流れは継続している。
NY市場では、ドル円の上値追いが続き144円台後半まで一時上昇。前日はドル買いがドル円を押し上げ、200日線を上抜く動きを見せたが、本日は全体的にドルは売り優勢で、円安がドル円を押し上げた。また、NY時間に入って発表になった米雇用指標が底堅い労働市場を示唆したことから、米国債利回り上昇とドル買いも加わり、さらにドル円を押し上げている。本邦勢が正月休みから復帰しているが、能登半島地震の影響から日銀のマイナス金利解除の観測が後退している。ユーロドルは下げが一服し、1.0970付近まで買い戻される場面がみられた。短期金融市場では現在、3月の利下げ開始をFRBは70%程度、ECBは50%程度で見ている。ポンドドルはNY時間に入って戻り売りが優勢となり、1.26台に再び下落。ロンドン時間には1.27台まで上昇し21日線を上放れる展開も見せていたが、NY時間に入って21日線付近まで戻す展開。本日は11月の消費者信用残高と住宅ローン承認件数が公表されていたが、いずれも予想を上回る内容となり、マネーサプライの減少ペースは緩やかになった。市場では5月の利下げ開始を見込んでいるようだ。
5日
東京市場では、ドル高の流れが継続。ドル円は昼過ぎに144.95近辺まで高値を伸ばした。年明けに入って続くドル高・円安の流れが継続。米債利回りの上昇などが支えになっている。目立った新規材料はなく、能登地震を受けた1月の日銀会合でのマイナス金利解除期待の後退、米FOMC議事要旨を受けた米国の早期利下げ開始期待の後退などがドル円を下支えする展開が続いた。高値を付けた後は午後に144.60台まで調整が入った。ユーロ円はドル円の上昇もあって158円68銭を付けた後、ドル円の高値からの調整に158円台前半へ。ユーロドルはドル高の影響で1.0950付近から1.0930台へと小安い動き。人民元は対ドルで一時7.17元台まで上昇、12月13日以来のドル高・元安水準となった。
ロンドン市場は、米雇用統計を控えてドル買いが優勢。米10年債利回りが4.00%の節目を上回り、4.04%台へと上昇、ドル買い圧力に。ドル円は144円台後半から一気に145円台に乗せた。144円台に押し戻される場面があったが、その後は再び買われて145.38近辺に高値を更新。ユーロドルは1.09台半ばから1.09台割れ寸前まで下落。ポンドドルは1.27手前水準から1.26台半ばへと軟化。ユーロ対ポンドではややポンド買いの動き。この日発表された独小売売上高が弱含む一方で、英住宅価格指数は3カ月連続の上昇と対照的な結果だった。ただ、その後発表されたユーロ圏消費者物価速報が前回から伸び加速となりユーロが買い戻される場面もあった。ユーロ円は158円台で上下動、ポンド円は183円台前半から一時184円台乗せとなったあと183円台後半での推移。欧州株は下落。短期金融市場では今年の英中銀やECBの利下げ観測が縮小しており、ややインフレ警戒が再燃しているもよう。足元では、米雇用統計発表を控えて一段のドル買いは一服している。
NY市場は、朝方発表の米雇用統計を受けてドル買いが強まり、ドル円は一時146円手前まで急上昇する場面が見られた。ただ、今年に入ってドル円は急速に上昇していることもあり、上値では短期筋の利益確定売りが出ている。米雇用統計発表後に短期金融市場では3月利下げ開始の確率が半々まで低下させていたが、その後のISM非製造業景気指数が予想を下回り、判断基準の50に接近したことで、再び早期利下げ期待が高まり、3月の利下げ開始の確率が70%まで戻す展開。ドル円は146円付近まで急上昇後に、今度は143円台に急速に下落している。 

 

●為替相場 1/8-1/12 1/13 
まとめ1月08日から1月12日の週
8日からの週は、週後半の米消費者物価指数の発表を控えてドル相場は方向感に欠ける上下動となった。ドル指数は102から103までの間で神経質な上下動を繰り返した。そのなかで浮上したのが円安の動き。能登半島地震の影響で早期の日銀マイナス金利解除観測が後退したことが背景。また、新NISAの開始に加えて、日本株には海外勢からも資金が流入したようで、日経平均がバブル後高値を更新した。リスク動向に改善がみられ円安に寄与した面も指摘されている。ドル円は140円台から145円台へと上昇。クロス円も買われた。そして、注目の米消費者物価指数は前年比+3.4%、コア前年比+3.9%とともに市場予想を超える伸びを示した。この結果を受けてドル円は昨年12月11日以来の高値となる146円41銭まで上昇。ただ、米国の早期利下げ期待が継続したこともあって、高値からは調整売りが入り、翌日12日東京市場で144円80銭台を付ける動きとなった。
8日
東京市場は成人の日のため休場。
ロンドン市場は、方向感に欠ける取引。先週末の米雇用統計は雇用増が予想を上回る強い結果だったが、ドル買いの動きは続かず激しくドル相場が振幅した。週明けのマーケットは先週末終値水準を軸とする振幅も値幅は限定的。週後半に米消費者物価指数発表を控えるなかで手掛かり難に。ドイツ製造業受注やユーロ圏景況感がやや持ち直すもユーロ圏小売売上高は減少と、欧州経済指標は決定打とはならず。ユーロドルは米債利回りの振幅とともに1.09台前半から半ばでの上下動にとどまっている。ポンドドルは1.27台前半から1.26台後半へと売りが先行したが、その後は1.27台に戻している。ドル円はアジア時間に145円手前まで買われたが、1大台には届かず反落。ロンドン朝方に144.10付近まで下押しされた。その後は144円台前半から半ばで売買が交錯している。米10年債利回りは4.06%台へ上昇したあと、4.01%台まで低下。その後は下げ一服。欧州株や米株先物はやや上値重く推移。NY原油先物は下押し。中国景気の先行き不安などで上海株や香港株が下落している、リスクセンチメントは慎重になっている。
NY市場は、ドル売りが優勢。ドル円は143円台に一時下落した。NY連銀が発表した12月の消費者調査によると、米消費者の短期的なインフレ期待は低下し、2021年1月以来の低水準となった。米国債利回りが下げており10年が一時4%を下回る中で、ドル売りが復活した。先週の米雇用統計は力強い労働市場を示唆し、市場では3月までの利下げ開始期待が後退。現在は65%程度の確率に低下している。ただ、FRBが3月に利下げを行う可能性を市場がまだ信じているため、短期的にドル下落の可能性があるとの見方も。一方で、ボウマンFRB理事は、インフレの進展が停滞すれば利上げも辞さない、と述べた。ドル円は取引終盤に144円台へと下げ一服。ユーロドルは買い戻しが膨らみ、一時1.09台後半まで上昇。ただ、1.10台での売り圧力も相当程度観測される中で、その水準にはいまのところ慎重なようだ。ポンドドルは一旦1.26台まで値を落としていたものの、NY時間に入って1.27台半ばに上昇した。
9日
東京市場では、ドル安・円高の動き。ドル円は朝方に144.28近辺まで買われたが、東京勢が本格参加してくると米債利回り低下とともに売りに押された。午前中に143.42近辺まで下落。昨日NY市場で3.96%台から4.03%台まで上昇した米10年債利回りが東京市場に入って4.02%前後で落ち着いたことも、ドル高の一服を誘った。ただ、午後には143.90台まで反発している。ユーロドルは1.0950台を中心とした推移。昨日のドル安局面での高値が1.0970ドル台にとどまるなど、1.10超えのユーロ買いに慎重。ユーロ円は午前中にドル円の下げを受けて158円ちょうど前後から157.20台まで下落。午後は少し戻し、ドル円同様にロンドン勢の本格参加を前に157.60前後まで上昇した。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米10年債利回りが4.01%付近から4.05%近くまで上昇、ドル買い圧力となっている。ドル円は東京午前に144円台前半から143.40台まで下落したが、その後は反発。ロンドン朝方には144.32近辺に高値を伸ばした。その後は144円を挟んだ取引が続いている。ユーロドルは1.0966近辺を高値に、ロンドン時間には1.0930付近へと軟化。ポンドドルも同様に1.2765近辺から1.2710台へと下げている。米株先物は時間外取引で反落。欧州株もやや上値重く推移。ただ、ロンドン時間に円高圧力は比較的軽微。東京時間の値動きをたどるものにとどまっている。ユーロ円は158円手前が重くなり、154円台前半に軟化。ポンド円は183円台後半から183円手前水準まで下押し。11日発表の米消費者物価指数待ちとなっており、昨日と同様に方向性を探る展開が続いている。
NY市場で、ドル円は下げ渋り。前半は143円台に下落したが、200日線のある143.40付近ではサポートされて、取引後半には144円台半ばへと買い戻されている。FRBが利下げに踏み切るという市場の確信により、年初からのドル高は動きが一服。先週の米雇用統計は労働市場の底堅さを示したが、市場は3月までの利下げ開始期待をなお排除はしていない。現在は60%程度の確率で見ている状況。その意味でも週後半の2つの重要なインフレ指標を待つことに。ユーロドルは緩やかな戻り売りに押され、1.09台前半に値を落とした。ポンドドルは戻り売りが優勢となり、5日ぶりに反落。ただ、1.27台は維持し、本日1.2695付近に来ている21日線の上も堅持している状況。
10日
東京市場は、円売りが優勢。日本の実質賃金が予想以上に低下、20カ月連続のマイナスとなったことで、市場には日銀の早期マイナス金利解除観測が後退した。ドル円は朝方につけた144.32近辺を安値に、その後は買いの流れが続き、昼前後には144.94近辺まで上昇。あすの米消費者物価指数を控えて145円台トライには慎重となったが、押し目も144.70割れまでと限定的。TOPIXの終値がバブル後の最高値を更新、リスク選好の動きが円売りにつながった面も。ユーロ円は朝の157.77近辺から昼過ぎには158.46近辺の高値を付けた。午後も158円台前半に高止まり。ユーロドルは1.0926-36の狭いレンジ取引。
ロンドン市場は、米債利回り低下でドル安の動き。東京市場での円売り圧力を引き継いで、ドル円は一時145.15近辺まで高値を伸ばした。しかし、その後は米10年債利回りが4.03%手前で上昇一服、一時3.98%割れまで低下したことで、ドル安と円安がドル円の値動きを相殺し、144円台後半から145円付近で売買が交錯している。ドル安の動きは対欧州通貨などで顕著。ユーロドルは1.09台前半から半ば超えへ、ポンドドルは1.27台割れ水準から1.27台前半へと上昇。クロス円は東京市場から引き続き堅調で、ユーロ円は158.80付近、ポンド円は184.55付近へと安値から約1円幅で高値を伸ばしている。円安の動きは、東京朝方に発表された実質賃金が予想以上に低下し、20カ月連続のマイナスとなったことで、日銀の早期マイナス金利解除観測が後退していることが背景。
NY市場では、ドル円が145円台後半まで上昇した。明日の12月の米消費者物価指数(CPI)の発表を控え、全体的には様子見気分が広がる中で、ドル円は上値追いの動きが加速した。市場は3月利下げ開始の可能性をまだ排除できない中で、明日の米CPIは総合インフレの鈍化が一服すると見られている。これまでインフレ鈍化の主因となっていたガソリン価格が12月は小幅に上昇していたことが要因。円安もドル円を押し上げていた。東京時間に11月の毎月勤労統計が発表になっていたが、現金給与総額が前年比0.2%増と予想を大きく下回っていた。能登半島地震への救済支援もあって、少なくとも今月の日銀決定会合ではマイナス金利の解除は無さそうだ。ユーロドルは1.09台の狭い範囲での推移が続いている。シュナーベルECB専務理事の発言が伝わっていたが、利下げの議論は時期尚早との見解を繰り返し言及していた。ポンドドルは買い戻しが優勢となっており、1.27台半ばに上昇。ベイリー英中銀総裁や複数の英中銀委員の議会証言が行われていたが、利下げ可能性についての直接的なコメントは伝わっていなかった。
11日
東京市場では、ドル円が軟化。午前の取引で145.80付近から145.30台まで下落した。前日のドル高・円安に反動がみられた。米10年債利回りの低下や、米消費者物価指数の発表を控えたポジション調整とみられる売りが入った。午後には145.28近辺までわずかに下値を広げた。ユーロ円も軟調に推移。160円付近が重く、159円台後半から半ばで推移している。ユーロドルは1.0970付近から1.0980付近までの小動き。
ロンドン市場は、ややドル買いの動き。ただ、米債利回りは低下しており、米消費者物価指数発表を控えて各市場まちまちの動き。欧州株や米株先物は買いが先行したが、上げを消す動きがみられており方向性は希薄。ドル円は東京市場での下落が一服し、145円台前半から半ばへと下げ渋り。ユーロドルは1.0990付近まで小幅に買われたあと、1.0960付近に安値を広げる動き。ポンドドルは1.2770台まで買われるも、その後は1.2730台まで反落。クロス円はやや円高に。ユーロ円は160円付近で上値を抑えられると、159.50割れへと軟化。ポンド円は185.80台を高値に185.20台へと下押しされた。仏中銀総裁は「フランス経済は減速しているものの、懸念されていたよりは堅調」「インフレ率は、今後数カ月で3%下回るだろう」などと述べていた。
NY市場では注目された米消費者物価指数(CPI)を受けてドルが振幅した。145円30銭前後で発表を迎え、CPIは前年比+3.4%と市場予想の3.2%、11月の3.1%を超える伸びを示した。食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+3.9%と11月の4.0%からは鈍化したものの、市場予想の3.8%を超える伸びとなった。この結果を受けてドル円は146円41銭まで上昇。昨年12月11日以来の高値を付けた。もっとも、米国の早期利下げ期待が継続したこともあって、その後はドル売りとなり、夕方には米CPI発表前水準に戻した。発表前に1.0990ドル台まで上昇していたユーロドルは、発表後に1.0930前後までドル高が進んだ。ただこちらも続かずNY午後に1.0980台まで上昇。クロス円はドル円の上昇を受けていったん上値をトライ。ユーロ円は160円の大台を超えて160円18銭まで上値を伸ばした。もっともドル円の下げもあってすぐに159円台後半に戻し、その後159円台半ば割れまで下げている。
12日
東京市場でドル円は前日の高値からの調整売りが続き、朝方145円を割り込んだ。その後いったん145円40円台まで戻したが、前日にいったん146円41銭まで上値を試したことで一服感が出ており、昼頃にかけて再びドル売りが強まると、144円85銭まで下げている。その後は145円台前半を中心とした推移となった。ユーロドルは1.09代後半での推移が継続した。ユーロ円はドル円の下げもあって159円00銭台まで一時売りが出たが、大台を維持したこともあり、少し戻してもみ合いとなった。
ロンドン市場でドル円は145円ちょうどを挟んでの推移。米債利回りの低下や米株先物時間外の売りなどに円買いが入る場面も、東京市場の安値を割り込まず反発。高値も東京市場の高値を超えずと、レンジ内での動きに留まった。リスク警戒の動きからドル高円高となっており、ユーロドルは1.0950を割り込む動き、ポンドドルは1.2780前後から1.2720前後まで下げている。クロス円も軒並みの低下で、ユーロ円は159円を割り込む動き。ポンド円の下げがより厳しく、朝の185円50銭台から下落し、ポイントとなる185.00を割り込み184円70銭前後を付けた。
NY市場はこの日発表の米生産者物価指数(PPI)を受けてドル売りが強まり、ドル円は144円台に下落している。12月の米PPIは前日の消費者物価指数(CPI)と違い、予想を下回った。3カ月連続で低下し、企業レベルでのインフレは鈍化傾向が続いている。この数字はいずれ消費者物価に反映される可能性があるが、これを受けて短期金融市場ではFRBの利下げ期待が高まっており、年内の合計の利下げ幅予想が1.60%ポイントまで拡大している。ドル円は節目の145円を再び割り込んでいるが、早期にその水準に戻せるか注目される。今週は145−150円へのレベルシフトの期待も高まったが、現状からはその期待は後退しそうな気配となっている。 

 

●為替相場 1/15-1/19 1/20 
まとめ1月15日から1月19日の週
15日からの週は、ドル高と円安が進行した。市場に米FOMCの早期利下げ開始観測が広がるなかで、米金融当局者からはこれをけん制する発言が相次いだ。次第に市場観測も後ずれしてきており、米債利回りの上昇とともにドル高の動きにつながった。米小売売上高、新規失業保険申請件数などが強い内容となったこともドル高を支援した。ダボス会議が開催されるなかで、ECB当局者らからは米国と同様に市場の3月利下げ開始観測を時期尚早とする見方が相次いだ。来週の日銀決定会合では、能登半島地震の影響もあってマイナス金利解除は見送られるとの見方が強まっており、日米や日欧などの金利差に着目した円売りが広がった。英国はインフレ指標が上振れする一方で、小売指標が下振れるなどまちまちだったが、全般的には英中銀の利下げ開始が後ずれするとの見方が優勢になっている。ポンド相場は対円や対ユーロなどでの買いが鮮明だった。中東での地政学リスクが広がりをみせていることで、原油先物などが上昇。世界的にインフレ圧力が対する不透明感も増した。
15日
東京市場は、円安の動き。ドル円は先週末終値144.90付近で取引を開始、その後ドル高の動きに。前週末の米ダウ平均の弱さから慎重に始まった東京株式市場は前場引けにかけて日経平均が上昇。親米派の勝利で警戒感のあった台湾加権指数がしっかりした動きとなったことなども好感し、リスク選好の円売りとなった。ドル円は午前中に145.20台まで上昇、昼にかけて一服したあと、午後には再び高値付近に。今日は米国市場が休場ということで、上値追いに慎重な姿勢が見られたが、下値はしっかりとなっている。ユーロ円も158円台後半から一時159.20近辺まで買われた。ユーロドルは1.0940台から1.0960台に上昇。週明け対円でのユーロ買いに支えられて少ししっかり。先週来の1.09台での取引にとどまった。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。きょうはキング牧師記念日で米債券市場が休場となる手掛かり難ではあるが、ドル相場は堅調に推移。先週の一連の米インフレ指標を通過して、市場での米早期利下げ観測がやや後退したことが影響しているようだ。ドル円とともにユーロドルやポンドドルなどでもドルが買われた。一方、東京市場でみられたクロス円の上昇の矛先はやや鈍っている。ドル円は145.82近辺と先週末の高値を上回った。ユーロドルは1.09台での取引が続くなかで、1.09台後半から前半へと反落、安値を1.0930台に広げている。ポンドドルも1.27台後半から前半に下げており、安値を1.2710台に更新した。ユーロ円は159.50台、ポンド円は185.50台に本日の高値を伸ばしたが、足元では伸びを欠いている。ただ、東京市場からの円安の流れには目立った調整は入らず。先週から引き続き、ドル円の上昇の流れが目立つ格好に。欧州株や米株先物はやや売りに押されており、調整ムード。ドイツは2023年通年の成長率が−0.3%となった。第3四半期成長が横ばいと上方改定されたことで、第4四半期との2期連続のマイナス成長は回避されたが、通年でのマイナス成長はドイツにとって頭の痛い状況だ。
NY市場はキング牧師記念日のため休場。 
16日
東京市場は、ドルがほぼ全面高。ドル円は朝方に145.60付近まで軟化したあと、その後は反発。仲値関連のドル買いなどで146円台に上昇。仲値後に売買が交錯したが、米債利回りの上昇などでドル高の流れが再開、午前中には146.20付近まで買われた。午後も底堅く推移し、一時146.27近辺に高値を伸ばした。米10年債利回りは3.98%付近から4.01%付近へ上昇。ユーロドルは朝方の1.0950付近から1.0913近辺まで下落。引き続き1.09台は抜け出せず。ユーロ円は日経平均の冴えない動きに円買いが入り、159.60台から159.24近辺まで下落。しかし、すぐに反転して下落分を取り戻した。
ロンドン市場は、ドル高が進行。ドル円はロンドン時間に入ると146.75近辺に高値を更新。昨年12月7日以来の高値水準に。引き続き日銀のマイナス金利解除観測の後退や新NISA関連の外貨買い需要などの思惑が広がった。その他通貨でもドル買いの動きが広がった。ユーロドルは1.09台を下抜けして1.0870台に下押し。ポンドドルは1.27台割れから1.2620付近へと下落。ポンドにとってはロンドン朝方発表の英雇用統計で、賃金の伸びが予想以上に鈍化したことも売りを誘った。また、ユーロにとっては最新のECB消費者インフレ期待が1年先、3年先ともに前回から下振れしたことが重石となった。独ZEW景況感は予想以上に改善していたが、現状指数は引き続き低迷。ZEWの回答者の過半はECBや米FRBの早期利下げ開始を期待していた。しかし、このあとのNY市場で予定されているウォラー米FRB理事の講演に注目が集まるなかで、市場ではタカ派の発言内容が警戒される面もあるようだ。欧州株および米株先物は軟調に推移。
NY市場は、ドル買いが優勢。ドル円は147円台まで上げ幅を拡大、1カ月ぶりの高値水準を更新。ウォラーFRB理事が「インフレ再燃しなければ、今年の利下げ可能」と述べる一方で、「以前ほど迅速に利下げしたり急いだりする理由ない」と述べたことも、ドル円を押し上げたようだ。本日は米国債利回りが上昇するなど、市場は早期利下げ期待を後退させている。市場は少し先走り過ぎたとの指摘が出ているほか、米国債利回りは当面、現行水準から低下することはないと思われるといった声も。ユーロドルは1.08台に下落、ポンドドルは1.26台前半に下落とドル買いが広がった。ECB理事の発言も複数伝わっていたが、ビルロワドガロー仏中銀総裁は、「ECBは今年利下げに踏み切る可能性が高いが、時期は未定」と述べていた。インフレとの闘いでの勝利宣言は時期尚早だが、ECBは今年利下げを実施する可能性が高いという。この日の英雇用統計では週平均賃金の伸び鈍化がポンド売りを誘っていたが、依然としてインフレを上回る水準、失業率も4.2%で低位安定。英中銀の早期利下げを妨げる可能性が指摘されていた。
17日
東京市場は、ドル高が継続。ドル円は朝に147.50近くまで上昇。その後、米10年債利回りが4.075%前後から4.035%近くへ下げる中で、いったん147.10台へと調整売りが入ったものの、NY午後と同様に147円台を維持したこともあって、午後にはドル買いが再び強まり147.70台まで上昇。先週末の米生産者物価指数発表後に80%強だった3月の米利下げ見通しが65%程度まで低下、ドル買いにつながっている。ユーロドルは1.0885近辺まで買われたあとは、売りが再開、午後には1.0850台と昨日安値を割り込んだ。ユーロ円はドル円の上昇に支えられて160.51近辺まで上値を伸ばした。ユーロドルの下げに比べてドル円の上昇の勢いが強く、クロス円はしっかり。
ロンドン市場は、ドル円、クロス円が上昇。米早期利下げ開始観測の後退に加えて、この日発表された英消費者物価指数の伸びが予想外に上昇したことがポンド買いを誘った。市場では今年の英中銀の利下げ幅見通しが12月以降で最小となっている。また、一連のECB当局者発言が報じられるなかで、3月など早期の利下げ開始は時期尚早との見方が相次いだ。ラガルドECB総裁は夏の利下げ可能性が高いとして、早期利下げ観測をけん制している。ユーロ相場もポンドにつれ高。ドル円は147円台前半から後半へと上昇、昨年12月初頭以来の高値水準に。ポンド買いが主導するなかでポンド円は186円付近から187円台前半へと上伸。ユーロ円は160円台前半から後半へと買われている。ドル相場はまちまち。米債利回りが上昇一服で揉み合うなか序盤はドル買いが先行したが、次第にその動きは一服。ポンドドルは1.26付近から1.27台手前へと買われている。ユーロドルは1.08台半ばから後半での振幅。欧州株は軟調。中国・香港株が人民銀の利下げ見送りを受けて大幅安となったことや、英欧の早期利下げ観測が後退したことなどが重石に。
NY市場では、ドル円の上値追いが継続。12月の米小売売上高が予想を上回る内容となったこともあり、米国債利回りの上昇と伴にドル円も上げ幅を拡大、148円台半ばまで買われた。市場ではFRBの早期利下げ期待が後退しており、短期金融市場での3月までの利下げ開始確率は一時50%に接近する場面も見られた。エコノミストなどからは3月利下げ開始は行き過ぎとの声も多かったが、市場も改めて認識し始めているようだ。ユーロドルは下げ渋ったものの、買い戻しの機運も高まらず、1.08台での推移を続けている。市場は、FRBの3月利下げの可能性を大きく後退させているが、ECBについても3月利下げの可能性は大きく後退させている。利下げ開始は4月との見方を有力視している状況。FRBは5月が有力になりつつあるようだ。ポンドドルは1.26台後半まで買い戻された。ロンドン早朝に英消費者物価指数が予想外の伸びを示したことで、根強いインフレ圧力が認識されている。市場の一部からは、英中銀は自らのガイダンスに沿って、1月に物価が再び下がらなければ、利上げを行う必要があるとの声まで出ている。
18日
東京市場では、やや調整の動き。ドル円は前日NY市場で148円台半ばまで買われたあと、148円台前半で伸び悩んだ経緯があった。東京市場では米10年債利回りが4.08%付近まで低下、ドル高の反動もあって148円台を割り込んだ。午後には147.70台まで一時下落した。ユーロ円は161円台前半、ポンド円は187円台後半での推移。ユーロドルは1.09付近で上値を抑えられている。豪ドル円は、午前に発表された12月の豪雇用統計の弱い結果を受け、いったん96.72付近まで弱含んだが、午後は前日終値付近まで戻しての小動き。
ロンドン市場は、ドル高や円安の流れが一服。米10年債利回りが4.07%付近まで低下。新たな金融当局者発言や市場に影響を与えるような経済統計発表はみられず、調整の動きが中心となっているようだ。ドル円は148円台前半から軟化、ロンドン時間には147.66近辺に安値を広げた。クロス円も上値が重く、ユーロ円は160.80近辺、ポンド円は187.35近辺まで反落する場面があった。ただ、下押しの動きも足元では落ち着いている。ドル相場も前日までの上昇の流れは一服。ユーロドルは1.09台、ポンドドルは1.27台に乗せる場面があった。ただ、その流れも一巡してユーロドルは1.08台後半、ポンドドルは1.26台後半で揉み合っている。
NY市場では、ドル買いが再燃。この日発表の米新規失業保険申請件数が予想以上に減少し、米労働市場の底堅さを示したことで、米国債利回りが上昇に転じ、ドル円は148円台を回復している。このところの急ピッチな上昇で高値警戒感も出ており、上値での利益確定売りも活発に出始めているようだ。調整が出てもおかしくはないが、一方で戻りを試す気配もいまのところない。市場ではFRBの早期利下げ期待が後退している。FRBの利下げを巡る市場の楽観論は巻き戻される可能性が高く、それがドル高に拍車をかけ、ドル円は上昇が続くとの見方があった。ユーロドルは1.0850付近まで一時軟化。ポンドドルは1.26台後半で上下動した。ECB議事録が公表されていたが、金利上昇の効果の大部分はまだ実際に表れておらず、影響が最も表れるのは今年初めだと述べていた。今週発表の英雇用統計や消費者物価指数(CPI)を受けて、英中銀の早期利下げ期待が後退しており、現在、短期金融市場では6月の利下げ開始を最有力視している。
19日
東京市場では、円売りが優勢。ドル円は午前に日経平均の大幅高などリスク選好の動きで円が売られると148円台半ばまで買われた。その後、昼前に鈴木財務相の「為替相場を注視している」という発言が伝わると伸び悩み、上げを帳消しにする場面があった。もっとも反応は限定的で、午後に入って再び円売りが強まり、昨年11月末以来およそ1カ月半ぶりの高値となる148.74付近まで水準を切り上げた。。米10年債利回りは一時4.16%台まで上昇。ユーロ円も昨年11月末以来、およそ1カ月半ぶり高値となる161.80付近まで買われた。ポンド円は2015年8月以来8年5か月ぶりの高値となる188.85付近まで上昇。
ロンドン市場は、ドル買いが一服している。ドル円は一時147円台後半に下落。米10年債利回りが4.17%付近から4.13%付近へと低下したことに反応。今週は市場の先走った早期利下げ期待に金融当局者がブレーキをかける動きが相次いだが、その動きも今日は落ち着いている。これまでのところ、目立った金融当局者発言はみられていない。あすから米金融当局者がブラックアウト期間に入る。このあとのNY時間でのグールズビー・シカゴ連銀総裁、デイリー・サンフランシスコ連銀総裁の発言予定が待たれる。そのなかで、ポンド売りが目立った。ロンドン朝方に発表された12月英小売売上高が予想以上に落ち込んだことに反応。ポンドドルは1.26台後半、ポンド円は187円台半ばへと軟化した。ユーロドルは1.08台後半での揉み合い、ユーロ円は一時161円台割れとポンド円の下落につれ安。クロス円が軟調で円高の動き。今週の円安の流れに週末調整が入る面も指摘される。
NY市場は一時148円50銭台を付けるなど、ドル高基調が優勢となったが、週末を前に動きが続かず、その後調整が入った。押し目は148円03銭までにとどまっており、ドル高円安基調が継続。堅調な米株式市場動向などもドル買い円売りを誘った。ただ週末を前に上値追いにも慎重で、午後は動きが膠着した。0時に発表された米ミシガン大学消費者信頼感は予想を大きく上回る好結果となったが、同時に発表さたインフレ見通しが低下したことや、同時刻に発表となった中古住宅販売件数が弱めの結果となったことで一時ドル売りとなった。ただ、下がったところではすぐにドル買いが出ていた。ユーロドルは1.08台後半での落ち着いた推移が続いた。ユーロ円はドル円の上昇などに支えらえて、ロンドン市場での安値から買いが入ったが、161円台半ば前後までの動きにとどまった。 

 

●為替相場 1/22-1/26 1/27 
まとめ1月22日から1月26日の週
22日からの週は、日銀決定会合、ECB理事会、最新の米GDP速報値など重要度の高いイベントが多かった。しかし、ドル相場も円相場も際立った方向性は示されていない。第4四半期の米GDP速報値は、前期比年率+3.3%、個人消費+2.8%など市場予想を上回ったが、デフレータは+1.5%と伸びが鈍化した。ドル相場に対する決定打とはならなかった。来週には米FOMC会合と米雇用統計などを見極めたいとのムードが広がった。円相場は円安の流れが一服し、調整が入っている。日銀決定会合では予想通り政策金利が据え置かれた。注目の植田日銀総裁会見では、「物価目標実現の確度、引き続き少しずつ高まっている」と自信をにじませた。具体的なマイナス金利解除時期についての言及はなかったが、前向きの印象を市場に与えて、円買い反応が広がった経緯がある。米債利回りが上昇一服となる一方で、マイナス金利解除期待から本邦長期国債利回りは上昇している。ただ、円高方向へのトレンド性までは確認できていない。ECB理事会では、市場の想定通りに主要政策金利が据え置かれた。注目のラガルドECB総裁会見では、ダボス会議での夏の利下げ開始の示唆について再確認されている。当初は、市場における3月利下げ開始観測をけん制する意図での発言だったのだが、一連の弱い欧州経済統計を受けて、市場では利下げ開始へのゴーサインのようにとらえる面もでてきているようだ。ユーロ相場は緩やかではあるものの、下降トレンドを形成してきている。米株や日本株は週前半に高値を伸ばしたが、後半に入ると調整の動きが交錯した。原油先物は紅海など中東情勢の緊迫化を受けて堅調に推移した。
22日
東京市場は、調整が入る動き。ドル円は先週末に148.80近辺と11月28日以来の高値をつけたあとは、高値警戒感でやや下げて週の取引を終えていた。週明けは148.10台から取引を開始、昼前には147.74近辺まで下落した。その後はロンドン早朝にかけて148円台を回復。米10年債利回りは4.14%台から4.105%近辺まで下落したあと下げ止まり。ユーロドルは1.0890付近から1.0909近辺まで買われたが、狭いレンジ取引に終始。ユーロ円は161.50台から161.10付近まで一時低下。その後は161.40台まで反発。日経平均が一時600円超の上昇と、リスク選好の円売りを誘った。ポンド円は188.30付近から187.70台で下に往って来い。
ロンドン市場は、先週末NY終値付近での推移。米10年債利回りが4.10%台から4.13%台で方向感なく上下動する動きに、ドル相場も上下に揺れ動いている。ドル円は147.74付近から148.33付近までのレンジ。ロンドン序盤には買いが先行も、その後は上値を抑えらえて 148円付近に落ち着いている。ユーロドルは1.0885から1.0909までのレンジ。ロンドン時間は上値を抑えられているが、下押しも限定的。ポンドドルは1.2687から1.2725までの上下動。欧州株は先週末NY株式上昇を受けて、堅調にスタート。足元ではプラス圏で揉み合っている。週明けは目立った経済統計発表の予定はみられず。主要中銀当局者は金融政策会合を控えてブラックアウト期間で発言を手控えている。また、明日の日銀決定会合ではマイナス金利解除は見送られることが市場コンセンサスとなっており、特段の思惑・観測報道も流れてこない。ユーロ円は161円台前半、ポンド円は188円台前半を中心とした揉み合いが続いている。
NY市場は、模様眺めムード。ドル円は148円を挟んだ上下動。日銀が決定会合をきょうから開催し、明日結果が発表される。震災を考慮し、今回は市場が期待しているマイナス金利解除はなく、据え置きが確実視されている。そのような中で植田総裁の会見が注目されており、マイナス金利解除に関して何らかのメッセージを発するか注目されている。ユーロドルは1.08台後半で、じり安の動き。今週はECB理事会が開催されるが、据え置きが確実視されている。市場の注目は声明やラガルド総裁の会見だが、市場で期待が高まっている4月利下げの可能性を示唆することはないと見られている。ポンドドルは1.27台前半での狭いレンジ取引。次のアクション待ちといった雰囲気も強い。今週はポンド関連のイベントは少なく、ドルやユーロの動きに左右される値動きが見込まれる。そんな中でも24日に1月調査の英PMI速報値が発表になり、動向が注目される。
23日
東京市場では、日銀会合をにらんだ動き。ドル円は前日海外市場で安値から反発を見せた流れもあり、比較的しっかりの展開で始まった。148円台前半で日銀決定会合の結果待ちに。日銀金融政策決定会合は市場予想通り現状の緩和政策を維持した。声明や展望レポートでの文面も基本的に前回までを踏襲とサプライズ感の少ない結果となった。注目された物価見通しは2024年度の見通し中央値が+2.4%と、予想されていた+2.5%を下回ったことで、円売りがやや優勢となり、直後に148.55近辺まで上昇。すぐにドル売りが入ると、一転して下を試す不安定な動きとなり147.80台まで反落。15時半からの植田日銀総裁会見を前に、上値重く推移した。ユーロドルは1.0870台から1.0908近辺まで小高く推移。ユーロ円は161.72近辺を高値に161.10割れ水準まで下落と、不安定な動き。
ロンドン市場は、円買いが優勢。日銀が予想通り政策金利を据え置きとしたあと、市場の注目は植田総裁会見に集まった。会見では「物価目標実現の確度、引き続き少しずつ高まっている」と自信をにじませた。具体的なマイナス金利解除時期についての言及はなかったが、前向きの印象を市場に与えて、円買い反応が広がった。ドル円は148円付近から一時146.99近辺まで下落した。その後は米債利回りの上昇とともに147円台後半へと買い戻されているが、発表時の円安水準には届いていない。クロス円も売りが先行した後は戻し切れず。ユーロ円は一時160.50割れ水準、ポンド円は187円台前半まで下落した。ロンドン時間のドル相場はドル買いが優勢。米10年債利回りが4.08%台から4.13%付近に上昇していることに反応。ユーロドルは1.09台乗せから流れが反転して1.0860台へと安値を広げている。ポンドドルは1.27台半ばへと買われたあとは、一転して1.2710付近へと反落。ただ、東京市場から通してみると、ドル指数は下に往って来いと方向感に欠けている。
NY市場では、ドル円が買い戻されている。NY時間に入ってドル買いが強まったことから148円台半ばまで上げ幅を拡大した。市場での日銀マイナス金利解除観測は引き続き高いが、マイナス金利解除をしてもその後に日銀が積極的に誘導目標を引き上げていくとみる市場参加者は少なく、限界があるとみられているようだ。一方、FRBの早期利下げ期待が後退する中で、ドル買い圧力はまだ根強く、ドル円は下値をサポートされている。150円を再び試に行くとの見方も少なくないようだ。ユーロドルは一時1.0820付近まで下落、6週間ぶりの安値を更新。。米株式市場が上げ一服となり、リスク回避のドル買いも出ていたようだ。今週はECB理事会が25日木曜日に開催されるが、データ次第のアプローチを強調する可能性が高いとの見方が出ている。短期金融市場では4月の利下げ開始を予想。しかし、エコノミストからはECBの利下げ開始は6月が有力で、今回の理事会でも夏からの利下げを示唆する可能性が高いとの指摘が少なくない。ポンドドルは一時1.2650付近まで下落。 短期金融市場は英中銀の今年の利下げ見通しが後退しており、今年の利下げ幅は計1.00%ポイント未満まで縮小している。
24日
東京市場では、円買いがやや優勢。ドル円は朝の148.40前後から午後には147.76近辺まで下落。その後も148円付近が重くなっている。日本国債10年物利回りが0.738%まで上昇するなど日本国債利回りが上昇。昨日の植田日銀総裁会見を受けて、日銀のマイナス金利解除期待が強まったことが背景。日本の利回り上昇がドル円などでの円買いを誘った。ユーロ円は161.08近辺から160.48近辺まで下落。昨日のダウ平均の下げもあって日経平均が大きく下落、リスク警戒の円買いにつながった。一方、ユーロドルは昨日海外市場で1.0910台から1.0820台まで下げた分の反動高の流れが続き1.0860台まで上昇した。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。米債利回り低下がドル相場を圧迫、前日の上昇を消す動きに。この時間帯に主導したのがポンドドルの上昇で1月英PMI速報値の強い結果に反応。1.27台前半での強保ち合い状態から一気に1.2770台まで買われた。ユーロドルも連れ高となり1.08台後半から一時1.09台に乗せた。ユーロ圏PMI速報値は、製造業が改善もサービス業は予想外の悪化となり、ユーロはポンドほどは買われなかった。ドル円は一時147.40付近まで下落。米債利回り低下とは対照的に本邦長期国債利回りは上昇、日銀のマイナス金利解除観測が再燃しているようだ。また、この日は中国人民銀行の預金準備率0.5%ポイント引き下げが報じられ、香港株が上げ幅を拡大した。中国との経済関係が深く、リスク動向に敏感な豪ドルが買われ、対ドルでは0.66台乗せへと高値を伸ばした。NY原油先物も74ドル台後半で小高く推移。ドルカナダは安値を1.3450割れまで広げた。米債利回り低下のほかにも、各通貨ごとにドル安材料がみられた。
NY市場では、ドル相場が上下動。前半はドル売りが優勢となり、ドル円は一時146円台に下落した。ただ、この日発表になった米PMIが予想を上回る内容となったことをきっかけに、米国債利回りとともにドルも買い戻され、ドル円は147円台に戻す展開、100日線も回復している。前日の日銀決定会合の反応は円高だったが、根強いドル買いが下値をサポートし、前日のドル円は148円台に戻していた。日銀は近い将来のマイナス金利解除の意向を示唆していたようだが、ドル円についてはやはりFRBの動向が中心のようだ。短期金融市場では一時期高まっていた3月までの利下げ開始期待が後退し、現在は5月までの利下げ開始がメインシナリオとなっている。ユーロドルは1.09ドル台を回復したものの、その後はドルの買い戻しも見られて1.08台に伸び悩んだ。市場では、ECBは夏以降に利下げに踏み切るとの観測が広がっており、6月が有力視されている。ポンドドルはロンドン時間に買われた流れを受けて、1.27台半ば付近に高止まりした。
25日
東京市場では、ドル円が底堅く推移。午前はゴトー日(5・10日)関連とみられる国内輸入企業からの買いで147.85近辺まで上昇。その後は、米10年債利回りが低下に転じたことなとで147.50台まで伸び悩んだ。しかし、午後には再び買われて147.86近辺とこの日の高値を小幅に更新した。日経平均が午後にプラスサイドを回復したことや、アジア株の上昇がリスク選好の円売りを誘った。日本10年債利回りは、日銀による早期のマイナス金利解除観測に支えられ、昨年12月12日以来の高水準となる0.75%台まで一時上昇した。ユーロ円も午後には円安方向に振れ、この日の高値となる160.83近辺まで買われた。ユーロドルは午前のドル買い局面で一時1.0870付近まで弱含んだあと、下げが一服し、この日の安値圏で小動きとなった。
ロンドン市場は、様子見ムード。この後発表されるECB理事会の結果や、米GDP速報値、米耐久財受注などの結果を見極めたいとの姿勢となっている。東京時間から米債利回りが低下傾向を示していることで、為替相場はややドル安に傾いているが、各通貨ともレンジは限定的。ドル円は147円台後半での取引で、足元では147.50付近へとやや上値が重くなっている。ユーロドルは1.08台後半での取引となるなかで、一時1.0900近辺まで上値を伸ばした。独Ifo景況感指数は予想外に低下したが反応薄だった。ポンドドルは1.27台前半でじり高となっている。英CBIの小売関連指標は落ち込んだが、ポンド売り反応は限定的だった。米10年債利回りは東京朝方の4.19%付近からロンドン朝方には4.14%台まで低下、その後は下げ一服。ドル指数はじり安、欧州株は小安く推移。原油先物は中東地域の緊張や米在庫減、中国景気支援策期待などで堅調な動き。
NY市場では、ラガルド会見でユーロ売り優勢、ドル円は147円台で下に往って来い。この日発表の第4四半期の米GDP速報値を受けて、ドル円は米国債利回りの低下と伴に売りの反応が見られていた。米GDP速報値は前期比年率換算で3.3%と予想を上回った。個人消費も2.8%増と予想を上回り、GDPに貢献。一方、デフレータは1.5%と予想を下回り、PCEコアデフレータは2.0%と予想と一致した。成長は予想以上に好調なものの、インフレは落ち着きつつあり、ソフトランディングシナリオに沿った内容となっている。短期金融市場では利下げ期待が若干上昇した。ユーロドルは売りが優勢となり、一時1.08台前半まで下落。ECB理事会後のラガルド総裁の会見を受けて、市場は利下げ期待を高めた。総裁は「データは短期的な弱さを示唆。雇用需要は減速している。12月のインフレの反発は予想よりも弱かった」などと述べている。また、ダボス会議での夏以降の利下げの可能性との自身の発言を再確認したが、利下げはまだ議論されていないとも強調していた。短期金融市場では4月の利下げ開始を88%まで高めた。ポンドドルは1.26ドル台に値を落とした。ただ、下押す動きまでは見られず、21日線を挟んでの方向感のない展開。英中銀はECBなどよりも利下げ開始が遅れるとの見方がでていた。
26日
東京市場は、小動き。ドル円は147円台半ばから後半で揉み合っており、前日NY終値水準から離れずの相場が続いた。ユーロ円はおおむね160円台前半、ポンド円は187円台半ばから後半での小幅なもみ合いにとどまっている。豪ドル円は97.46円付近まで強含んでいるが、値幅は限定的となっている。ドルストレートも動意薄。ユーロドルとポンドドルは、前日のニューヨーク終値を挟んだ非常に狭いレンジ内で振幅している。昨日発表された昨年10−12月期の米国内総生産(GDP)が堅調だったことはドルを支えているものの、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が利下げの可能性を再び示唆する可能性があり、値動きが抑制されているもよう。
ロンドン市場は、方向性に欠ける振幅。ドル相場は米債利回り動向に神経質に反応しており、円相場は欧州株や米株先物の動きをにらむ面があった。また、この日は市場でのECB早期利下げ開始観測に対して、ECBタカ派メンバーからのけん制発言も相次いだ。一方で、ECB専門家予測調査では、インフレ予想が2024年・25年といずれも下方修正、同期間のGDP成長率予想はいずれも下方修正された。1月の英独消費者信頼感は対照的。英国が改善する一方で、ドイツは悪化した。ユーロドルはロンドン朝方かけて1.0810台まで下落した後は1.0870台へと上値を伸ばす動き。ポンドドルも1.2670台まで下落したあとは高値を1.2740台に更新している。ドル円は米債利回りの上昇とともに148.10付近まで買われたが、米債利回りが上昇一服となると147.60台へと押し戻されている。クロス円も下押しされたあとは買いが優勢に。ユーロ円は159.80付近まで下落したあと、160.50付近へ上昇。ポンド円も187.30台から188.10台乗せまでの値動き。欧州株は総じて堅調に推移、米株先物はマイナス圏推移も下げ渋ってきている。
NY市場は米PCEデフレータで振幅した後、ドル高が優勢となった。PCEコア前年比が予想を0.1%下回ったことでいったんドル売り。ドル円が147.46と東京午前の安値を割り込む動きを見せたが、すぐに反転した。米債利回りが上昇したこともあり、ドル円が148円20銭前後、ユーロドルが1.0850ドル台までの動きとなった。来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)での現状維持見込みだけでなく、3月のFOMCでの利下げ開始期待も後退しており、3月の利下げ開始に備えて今回のFOMCで何らかのヒントを出す必要もなく、現状維持を示すとの思惑が広がっており、ドルが買われやすい地合いとなっている。 

 

 
 

 

 
 
●お役人 七不思議
国家予算 右肩上がり
税金のバラマキ 効果の無いこと認めない
民間給与 横ばい
お役人給与 右肩上がり
民間会社 新卒採用縮小
公務員 毎年一定確保
過ち 失敗 もみ消し なかったことにします 
お役人 毎年 昇給昇格
定年まで勤務
公務員年金 不動
キャリア官僚
間引き  天下り文化 健在 何とか機構
日銀 マイナス金利
お金足りなければ 紙とインキ 印刷無制限
●日本の国力
低成長 低金利 経常赤字 
日本売りが始まる
過去の遺産で食いつなぐ「債権取り崩し国」
GDPの低迷
少子化 労働人口の減少
結婚しない 結婚してもペットが子供がわり
物づくり 先端技術
安い労働力求め 海外に工場進出
円安で国内帰還  結果的に技術流出
    子供の学力低下
    ゆとり教育の失敗 後を引きずる
    教わらないことは 知らない
    人材育成 ほったらかし
    基本 「face to face」 
    相手の目を見て 話できない
    物づくりの付加価値
    減少の一途 職人文化の消滅
    背中から 覗かない
観光立国 おもてなし
コロナ禍でお休み 入国規制
円安 ドル高
外為 為替相場
 
 
 
 


2022/4-
 
●円安の進行に「まったく違和感がない」3つの理由 「債権取り崩し国」へ 2022/3
3月11日、ドル円相場は一時1ドル=117円台まで上昇し、年初来高値を更新した。
筆者はこの動きにまったく違和感がない。日本の政治・経済状況を踏まえると、「円建て資産」に投資する材料は乏しいからだ。
具体的な材料は複数挙げられるが、以下では、1成長率、2金利、3需給という論点で整理したい。
コロナ対策が招いた「低い成長率」
一般的に、為替相場の変動は成長率の強弱が通貨の強弱にリンクするほど、単純な世界ではない。
しかし、その単純な世界が少なくとも過去1年のG7(主要先進7カ国)通貨の世界では成立していた(下図)。
欧米ではアフターコロナを見据えて2021年春から行動制限を完全に解除し、2020年の遅れを取り戻すように、2021年には潜在成長率の2〜3倍のペースで走り抜けてきた。一方、日本はつねに新規感染者数の水準に拘泥し、何らかの行動規制をしながら歩んできた。この違いが成長率の違い(=通貨の強弱)につながった格好だ。
成長率の違いは2つめに説明する金利にも関係してくる。旺盛な需要を復元できた欧米経済では物価や市中金利は上昇した。だからこそ金融政策の正常化に関する議論が盛り上がり、2022年はその実行へと歩を進めようとしている。
一方、日本はいまだに首都圏を中心にまん延防止措置を敷き、飲食店などは時短営業を強いられている。日々の新規感染者数の水準を社会的関心事として、依然、大きなヘッドラインと共に報じている。
こうした世相が変わる雰囲気はなく、今後も政府・与党から出てくる防疫政策は大きく変わらないだろう。コロナに対する向き合い方の違いが成長率格差や金融政策格差ひいては通貨の強弱につながってきたことは疑いようがない。
もともと日本の成長率は低いが、「2020年の低成長に対する2021年の反動」は地力には関係なく訪れるはずである。それがなかったのは、日本固有の他の要因が作用したと考えざるをえない。
日本だけが「ゼロ金利」
金利に関しては、目下勢いづく円安相場に日本銀行が危機感を持ち、正常化を検討するならば多少、変わりうる。
しかし、2021年来、黒田日銀総裁は再三にわたって「悪い円安」「円安の弊害」を指摘する声に反意を示し2022年に入ってからも「大規模緩和は(経済に)プラスなので、粘り強く続けて目標を達成することが一番重要」と主張している。
ウクライナ侵攻で資源価格の高騰した現状でもこの見解は変わらないのだろうか。いずれにせよ、日銀が正常化プロセスを検討しないかぎり、内外の金融政策格差は顕著に拡大する。
現時点で、先進国中銀の中で利上げをしたのはイングランド銀行だけで、政策金利の「格差」が開くのはこれからの話だ。「日本だけゼロ金利」という環境の下で、2005年〜2007年に円キャリー取引(円で調達して外貨で運用)が活発化した。今から起きようとしていることはそれに近いのではないか。
最も根深い円安要因は、3つめの需給だ。ここでいう需給は短期ではなく、長期的な話だ。
「円」が国際的に安全資産と呼ばれてきた最大の理由は、日本が多額の経常黒字をコンスタントに稼ぎ、結果として「世界最大の対外純資産国」というステータスを保持してきたからだった。
世界最悪の政府債務残高やハイペースで進む少子高齢化、結果としての低成長にもかかわらず、円や日本国債が安定的に推移してきたのは、「鉄壁の需給環境」があったからだ。
近年では貿易黒字こそ失ったものの、それを補って余りある第一次所得収支(主に対外金融債権・債務から生じる利子・配当など)の黒字により経常黒字は高水準を維持できていた。貿易収支ではなく所得収支で稼ぐ。「成熟した債権国」の姿である。
為替の2大論点に変調
しかし、経常黒字と対外純資産という為替を語るうえでの2大論点に、明らかに変調が見られはじめた。
前者に関しては、2022年1月には史上2番目の経常赤字が記録された。資源価格の騰勢による貿易赤字の拡大が理由で、これが止まらないかぎり、状況は大きく変わりそうにない。所得収支で稼ぐ以上に貿易収支の赤字が大きくなるという、「債権取り崩し国」の姿である。
かろうじて経常黒字を確保したとしても、それは第一次所得収支黒字によるもので、貿易赤字が巨額である状況は大きく変わらない。
為替市場において重視されるべきは円の買い切り・売り切りにつながる貿易収支である。貿易収支が黒字ならば、稼いだ外貨を円に転換するため、円が買われる。第一次所得収支黒字は有価証券の利子・配当などが多く、これらは外貨のまま再投資される割合が非常に高いと推測され、「円買い」につながらない。
第一次所得収支黒字に依存してきた日本の経常黒字は、円相場を支えるという観点に立てばかなり前から「張り子の虎」だった。また、経常収支と対をなす金融収支(直接投資や証券投資など)においては過去10年で対外直接投資が猛烈な勢いで増えてきた。
結果、日本の基礎収支(経常収支+直接投資)は断続的に外貨への流出につながる構造になっている(下グラフ)。円安が肯定されやすい地合いだ。このような需給の変調が見え始めたのはこの10年で、最近のことではない。
ただ、短期的な変化に反応しやすい為替市場では「経常赤字に転落」という事実がクローズアップされやすく、過去2番目の経常赤字が発表された2022年3月8日の後、ドルが対円で高値を更新したことは偶然ではないだろう。
「落日の円」には厳しい評価が下る
経常赤字が続けば、対外純資産の累増も止まりかねない。円安になれば価格効果で残高が増える効果もあるが、残高の伸びが鈍化すれば、毎年巨額の貿易黒字で日本を猛追するドイツが世界最大の対外純資産国のステータスを奪うかもしれない(下グラフ)。
世界最大と世界第2位で本質的な差があるとは思わないが、30年間維持してきたステータスを失うことについて、為替市場が冷静な対応をしてくれるだろうか。「落日の円」に対する評価は厳しいものになると筆者は考える。
目先の為替見通しだけを考えれば、場合によってはFRB(連邦準備制度理事会)が実体経済への影響に配慮して正常化プロセスを停止し、それがドル安を招くという可能性もある。
そうなればアメリカの金利は低下に転じて「ドル売り・円買い」が優勢になるかもしれない。また、すでにアメリカの経常赤字は金融バブル絶頂だった2006年当時に匹敵するほど膨らんでいる。これを「ドル安要因」として指摘する向きもある。
だが、ドル安が円高に直結すると当然のようにみるべきではない。
過去1年間を見ると、「ドル安でも円安」というシーンは何度もあった(上グラフ)。ドル以前の問題として、上述した1〜3のすべてで劣後感がにじみ出る円を回避しようという大きな流れがあるのではないか。現下の円安は「日本売り」というテーマなのではないかという理解である。
円にアピールポイントがない
このように、成長率、金利、需給のいずれに照らしても円はアピールポイントがない。つまり、円高に振れる要素がないのだ。
今のように、有事などの理由で金融市場全体がリスクオフ(リスク回避)局面になった場合、いずれの国も成長率や金利で差がつきにくくなるので、需給で優勢な通貨が選ばれやすくなる。これが、以前は「安全資産としての円買い」に作用していた。
しかし、その条件も崩れてきた。ウクライナ危機を受けたリスクオフムードで円が安全資産として見られる雰囲気はほとんど感じられない。厳しい話だが、需給でも評価してもらえない円は何のアピールポイントもない。単なる低成長で低金利の通貨である。
さらに、FRBもECB(欧州中央銀行)もまずはインフレ抑制を優先し、成長を犠牲にしても、金利を引き上げる方向にある。同じことが日本にできるだろうか。おそらく難しいだろう。行動規制を解除して成長率を復元することすらできない国が利上げに踏み切れるはずがない。
「経済より命」という政治的決断は民主的意思の結果でもあり、筆者は異論を挟むつもりはない。だが、結果として起きていることが低成長・低金利ゆえの円安であることを為政者には分かってもらいたい。
現在、欧米が金融政策の正常化を議論できるのは、2021年に大幅な成長率を実現したという前提があって、減速するだけの「のりしろ」を持っているからだ。1年間の大半を行動規制で過ごした日本とは基礎体力で大きな差があるのだ。
アベノミクス越えの円安
昨年来、筆者は2022年上半期中に120円、2022年中に123円という見通しを掲げてきた。
今のところ、このシナリオどおりに走っているように思う。あえて懸念点を挙げるとすれば、ウクライナ危機とそれに伴う資源高が経常赤字をもたらすという動きは想定外であったため、需給悪化を理由として、さらなる円安方向への修正を検討する余地が出てきているように思う。
年内の上値メドとして2015年6月に付けた高値125.86円も視野に入る。実質実効レートで見ればこの時点を下回ったという、いわゆる「黒田ライン突破」が大きく取り上げられている。が、名目レートでみるとまだ当時と比べれば円高気味だ。しかし、名目でもこれを突破すれば、名実ともに「アベノミクス越えの円安」が2022年のテーマになる。 
●「成熟した債権国」としてのマクロ政策はどうあるべきか 2022/2
2月16日の衆院予算委員会第一分科会で、黒田東彦日銀総裁は現時点でバランスシートや政策金利の調整を検討する段階ではないと強調した。
今や緩和を継続することによって得られるメリットは相当見えにくくなっている一方、ただでさえ高い輸入物価が円安で押し上げられるデメリットの方が注目されやすい状況にある。だが、頑として日銀の基本姿勢は変わらなそうである。
所得流出の危機
もちろん、金融緩和は円安の一因に過ぎないだろう。しかし、実質実効ベースで半世紀ぶりの低い購買力が悲観されている時に、わざわざ緩和継続を強調する情報発信はやはり理解が難しい。
今の日本経済にとって最悪のシナリオは、制御の難しいヒステリックな円安が起きることで資源高と通貨安が併存することではないのだろうか。そのような事態は資源輸入国にとって激しい「所得流出」と同義である。
日銀が緩和を修正しても円高になる保証はないが、円安抑止の一助にはなり得るだろう。最悪の展開は金融市場から円安抑止を催促される格好で政策を調整する流れであり、このパターンにはまると際限なく引き締め措置を求められる可能性が高い。
かつて、白川方明前総裁の下で日銀が円高抑止の最中に際限なく緩和措置を求められたことの逆パターンである。それゆえに「円安は日本経済にとって痛手」とテーマ化される前に少しずつでも円安抑止のための方策を検討、実施することが賢明と思われる。
今回の答弁で黒田総裁は「現時点で緩和からの出口を検討する段階にない」とも明言している。
もちろん、「検討していない」ことと「検討しているが言わない」ことは違うので、内部では粛々と検討が進められているのかもしれない。ただ、以下で見るように、円相場の構造自体がかつてとは大分異なっており、円高への軌道修正自体が自然体ではさほど期待できないことも金融政策運営上、勘案すべき事態になっているように筆者は思う。
基礎収支に見る円の構造変化
「円相場の構造自体が、かつてとは大分異なる」という事実に着目した場合、やはり貿易赤字の慢性化や対外直接投資の増加といった国際収支上の構造変化が目につく。円が安全資産とみなされる最大の理由としては「世界最大の対外純資産国」という潤沢な外貨建て資産の存在が持ち出されることが多い。
そこで一国の対外資産・負債残高に変化をもたらす伝統的な計数として、基礎収支の考え方がある。基礎収支で純流入が続けば対外純資産は増えやすいし、純流出が続けば対外純負債は増えやすい(資産価格の変化でも対外資産・負債残高は変動するのであえて「やすい」というあいまいな表現にとどめる)。
基礎収支は現在ほど国際資本移動が活発ではなく長期資本と短期資本の判別が容易だった時代に、一国の通貨の信用力に大きな影響を与える計数として注目された。だが、活発な国際資本移動が常態化した今、為替市場の思惑に沿って当該国の通貨が売られ続ければ、基礎収支が健全でも対外支払いが困難になるケースも想定される。そのため基礎収支の意味は時代とともに薄れているとも言われる。
とは言え、対外決済能力以前の問題として、基礎収支の姿が従前のそれと明確に変化しているとすれば、当該国にとって無視できない構造変化として注目する価値もある。
経常収支とネット直接投資を合計した計数を基礎収支と見なし、そのすう勢を1990年代後半から追ってみると、日本の基礎収支は純流入が続いてきたが、2012─13年ごろを境として断続的な純流出に直面していることが分かる。
例えば、毎月の基礎収支に関し、2002年1月から2011年12月までの120カ月間(10年間)の平均を取るとプラス9530億円であったのに対し、2012年1月から2021年12月までの120カ月間の平均を取るとマイナス183億円と純流出(概ね均衡)である。
もっとも、日本の対外純資産はこの間も増加を続け、それが世界最大である状況は今も変わってはいないが、それは外貨を順当に稼ぐという数量要因ではなく、円安による価格要因が寄与した部分も相当に大きかったと言える。
実際、2013年以降、円相場はそれ以前のようなパニック的な騰勢に見舞われていないのは周知の通りである。その背景に基礎収支の変質がある可能性は否めない。図に示せば良く分かるが、こうした基礎収支のすう勢変化はネット直接投資の純流出が過去10年間で顕著に大きくなったことに起因している。
「成熟した債権国」の相場観と日銀
ちなみに基礎収支だけを見ていると、経常黒字の水準はさほど変わっていないことも目を引く。経常黒字に関し、2002─2011年累積額と2012─2021年累積額を比較してみると、経常収支は約プラス172兆円から約プラス144兆円と減少しているものの、依然高水準である。
これは、貿易黒字が消滅した分、第1次所得収支が増えているからであり、国際収支発展段階説における「未成熟な債権国」から「成熟した債権国」へ着実に歩を進めた格好である。
実際に見てみよう。上記の2つの数字(2002─2011年累積額と2012─2021年累積額)を比較すると、貿易収支は約96兆円の黒字からから約8兆円の赤字へと変化しているが、第1次所得収支は約125兆円から約195兆円へ大幅に黒字が拡大している。
その結果、経常黒字の減少は限定的なもので済んでいる。理論上、次に到来する段階は「債券取り崩し国」であり、貿易収支の赤字に加え第1次所得収支も赤字へ向かい、代わりに海外からの資本流入に依存するという姿が想定される。もちろん、そうなるまでの時間軸は長く、例えば上で見たように10年程度の時間軸とともに確認する変化だろう。
しかし、「未成熟な債権国」から「成熟した債権国」へ段階が進んだ時点で、アウトライトの円買いをもたらす貿易黒字は消滅しており、第1次所得収支の黒字の多くが円転されずに外貨のまま再投資(もしくは留保)されるという実務的な事実がある。
このような変化を踏まえれば、「円高への軌道修正自体がもう自然体ではさほど期待できない」という円の価値にまつわる意識変化、およびこれに伴う危機感が日銀に抱かれても良いだろう。持つべき通貨への相場観は「未成熟な債権国」と「成熟した債権国」では違って当たり前である。
今、我々が目にしている資源高が脱炭素社会に向かう中での構造的変化と言われていることを思えば、なし崩し的に「物価が上がっていないから緩和を続ける」と言い続けるのではなく、資源輸入国かつ「成熟した債権国」の通貨としての円の価値にも配慮しながら、財政・金融政策を調整する発想も重要に思える。
この点、日本社会においては2013年以降の異次元緩和を経て「円安イコール良いこと」と見なす価値観が確実に変わってきており、為政者の意識変化より若干先を行っているようにも思える。そうした価値観の変化を促したという意味で「黒田緩和」には有意義な面もあったように思う。 
●日本経済の長期低迷の要因と今後の課題 2021/10
経団連は9月29日、経済財政委員会(柄澤康喜委員長、永井浩二委員長)をオンラインで開催し、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストから、日本経済の長期低迷の要因と今後の課題について説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。
企業の慎重な行動が長期停滞をもたらす
日本の潜在成長率は2000年代以降、1%を大きく割り込んだまま低迷している。10年代は、収益性の低下や生産性の低い労働に代替され、資本投入はマイナスになった。技術進歩などを示す全要素生産性(TFP)上昇率も低下している。失業率が大幅に改善し、完全雇用に到達した後も、政府や日銀は、追加財政や超金融緩和を続け、資源配分に大きな歪みが生じている。
企業は繰り返す危機を背景に、貯蓄超過を継続しており、無形資産投資や有形資産投資、人的資本への投資を抑制したままである。また、古いビジネスモデルのまま海外経済への依存を高め、国内の新たな需要創出ができていない。
わが国の非正規雇用はグローバル競争の激化を背景に、今や雇用全体の4割近くに達している。非正規雇用が増加したのは、政府が00年代に社会保障給付を賄うため社会保険料を引き上げ続けたことも影響している。非正規雇用は、好況期に賃金が上がっても、不況期に備え貯蓄するため、消費が回復しない。
その結果、完全雇用になっても消費が低迷し、企業は低い成長期待を背景にコストカットを続ける。企業部門の貯蓄超過は解消されず、自然利子率と潜在成長率の低迷が続く。
以上が日本経済の長期停滞の真因であろう。
イノベーション創出と財政健全化に向けて
日本企業は他国と比べ、マークアップ率や収益性が低く、プロダクト・イノベーションが乏しい。その一因として、経営者が雇用リストラや事業売却を避ける傾向が挙げられる。経営者が雇用維持の責任を負ったままでは、イノベーションは進まない。例えば、グリーン成長戦略は産業構造の転換が不可欠であり、これと整合的な労働政策は、雇用調整助成金のように、企業に雇用保蔵を求める制度ではない。北欧のような積極的労働市場政策に転換する必要がある。
財政健全化がこれまで失敗してきたのは、高い経済成長率見通しを前提とし、税収増を見込み、歳出削減努力を怠ってきたことが要因である。他の先進国と同様、日本においても、独立した中立機関による長期の財政見通しを示していくべきである。
経済格差の時代には、資本課税が本来必要である。資本所得課税と労働所得課税の性質を持つ消費増税を行うと同時に、逆進性対策ともなる社会保険料の引き下げを行うと、実質的に資本課税を強化することができる。その際は、被用者保険の適用範囲を拡大する必要もある。0.5%弱の低い潜在成長率を考慮すると、消費税率は、2〜3年に一度、0.5%引き上げる程度にとどめるのが妥当と考える。 
●こんなに頑張っているのに、なぜ日本だけGDPが回復しないのか 2021/4
春だというのに暗い気分になりそうな、景気の悪い話が聞こえてきた。
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問の野口悠紀雄氏の「弱いGDP回復力、コロナで日本の国際的地位は低下する」(ダイヤモンドオンライン 4月1日)によれば、IMF(国際通過基金)の推計をもとに中国、フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、アメリカ、日本の2019年から21年へのGDP増加率を比較したところ、日本が0.46%と最低だった。
中国(14.5%)を筆頭に、ドイツ(11.8%)、フランス(7.4%)などほとんど国が2%以上成長をしている。1日ウン万人という新規感染者が出て、いまだにロックダウンを繰り返し失業者も大量にあふれている国でさえ、着々と経済が回復しているにもかかわらず、日本だけがパッとしないのである。
このような状況に対して、「日本経済の回復が遅いのは、経済活動より感染封じ込めを重視しているからだ」とコロナを言い訳にする人たちもいるが、実はコロナのはるか以前から、日本のGDP成長率は先進国の中でダントツに低かった。
要するに、もともとパッとしていなかったところ、周りの国々がコロナ危機の中でもたくましく成長をしてしまったものだから、パッとしなさ具合がさらに際立ち、結果、諸外国から完全に置いてけぼりをくらってしまったような形なのだ。
なんてことを指摘すると、「日本の強さはGDPだけでは測れない!」「日本だけがこんな低いのはおかしい、IMFの推計が間違っているのだ!」などと現実逃避をしたくなる方もいらっしゃるだろう。筆者もそのお気持ちは痛いほど分かるし、心情的にはこんなデータはまったく納得がいっていない。というか、怒りさえ感じる。
日本人はこの1年間、みんなで手を取り合って日常を取り戻すために必死で頑張ってきた。にもかかわらず、よその国よりも経済回復していないなんて、なぜこんな理不尽な話が許されるのかと強い憤りを感じるのだ。
結果が伴わないシステム
客が来なくても店を開ける。売れなくても売り場に立つ。多くの日本人がそんな心がポキンと折れそうなつらい戦いを続けたのが、この1年だった。
ようやく経済活動が復活できそうな明るい兆しが見えた途端、新規感染者がドカンと増えることの繰り返しに、「このままじゃコロナの前に死んでしまうだろ!」と不満を言いたいところをみなグッと抑え込んだ。「医療従事者の皆さんはもっと大変だ」と自分に言い聞かせながら、身も心もボロボロになりながら働き続けた人が職種を問わず、たくさんいらっしゃるはずだ。
それがうかがえるようなデータもある。3月に米マイクロソフトが発表した「Work Trend Index」によれば、コロナ禍で疲れを感じている社員がグローバルでは39%、アジア全体では36%のところ、なんと日本では48%と突出して高くなっている。ストレスについても同様で日本の社員は45%で、グローバルの42%、アジアの39%を上回っている。
こんなにも、よその国よりもストレスを抱えて疲弊するほど頑張っていたのだから、ある程度はその努力が報われていてもおかしくはない。しかし、現実はケタ違いに感染者があふれ、ロックダウンで失業者があふれていたような国よりも経済は冷え込んでいる。神も仏もないのか、と嘆きたくなるシビアな結果だ。
では、なぜこうなってしまうのか。頑張りが足りなかった、サボって足を引っ張るような連中がいた、などいろいろなご意見はあろうが、筆者はシンプルに日本社会のシステムが、ブラック企業のそれと根本的なところで同じだからではないか、と考えている。
お勤めした経験のある方ならばよく分かると思うが、ブラック企業というのは社員がどんなに不眠不休で働いても、気合と根性で仕事を取り続けても、会社の成長に結び付かない。瞬間風速的に売り上げは立つが、人力に100%依存したビジネスモデルなのでどこかで必ず限界に達する。競合にあっさり敗れるか、労務問題やパワハラ問題などで火を吹く。つまり、「個人が命をすり減らしながら頑張っても、結果が伴わないシステム」なのだ。
そして実はこれはブラック企業だけに限った話ではない。日本の善良な労働者の多くは、そういう意識がないだろうが、日本経済は「個人の労働力」に徹底的に依存して、それを骨までしゃぶるシステムで成り立っているわりに、命をすり減らすほど頑張った個人への見返りが異常に少ない。
その証左が、今や日本名物ともなった「低賃金重労働」だ。
「実質的失業者」問題
日本人労働者の賃金が先進国の中で際立って低いことは、さまざまな客観的なデータが示す事実であり、最近ではいよいよ韓国にまで抜かれてしまったと話題になった。
しかも、責任感からタダで働く、いわゆるサービス残業がまん延しているようにハードな働きぶりで知られている。有給取得率も低いし、精神的にもかなり追い込まれる。NHKも参加している国際比較調査グループ(ISSP)によれば、日本のパワハラ比率は25.3%と世界37カ国中第4位であり、主要先進国の中で際立って高い。
ちなみに、このような日本のブラック企業化は、外国人犯罪も増やしていく。
「低賃金重労働」がデフォルトなので当然、若者は少しでも条件がいい企業にわっと押し寄せて、重労働のわりに賃金が低い業者には誰も寄り付かなくなる。そこで言葉巧みに中国やベトナムから安価でこき使える、いわゆる「外国人労働者」を大量に迎え入れたわけだが、それらの国でも経済成長著しく賃金が急速に上がっている。そうなれば当然、「なんで安い給料でこんなにコキ使われるのだ」と不満が募るので、職場から逃げ出して不法滞在状態になる外国人も増えていく。その中には、犯罪に流れる者も出てくる。
21年2月、群馬県警が20年中に摘発した在日外国人(永住者、特別永住者などを除く)が433人と過去10年で2番目に多く、このうちベトナム人が212人と国籍別で最多になったというニュースがあったが、こういう話が全国で雪だるま式に増えていくのだ。
「確かに、日本の低賃金や長時間労働は問題だが、だからといって、それをブラック企業と重ねるなんて話が飛躍しすぎる」というご意見もあろうが、ほかにも共通点は山ほどあるのだ。
例えば、ブラック企業のブラックたるゆえんの一つに、バイトや派遣労働者という雇用が不安定な人たちの弱さにつけ込んで、徹底的に使い倒すという卑劣な手法があることが知られているが、実はこれは日本経済の根幹をなすシステムでもある。
それを象徴するのが、「実質的失業者」だ。
これは野村総合研究所が、パート・アルバイトのうち、「シフトが5割以上減少」かつ「休業手当を受け取っていない」人たちのことを定義したもので、統計的な「失業者」「休業者」は含まれない。
分かりやすく言えば、雇い主から「ごめんね、コロナで厳しいから今月はシフト半分で」なんてことを言われながらも本来もらえるはずの休業手当ももらえず、給料半額でしのいでいるパートやアルバイトの方たちのことだ。
労働搾取の構図
そんな気の毒の人たちがいるなんて、と驚く正社員の方たちも多いかもしれないが今、飲食店、ホテルなどサービス業の現場にはこの「実質的失業者」が山ほどいる。野村総合研究所が2月に、全国20〜59歳のパート・アルバイト就業者6万4943人を対象に調査をした結果と、総務省の労働力調査を用いて推計したところ、21年2月時点で、全国の「実質的失業者」は、女性で103.1万人、男性で43.4万人にのぼったという。
では、なぜこのおよそ150万人もの方たちは、こんな常軌を逸したブラック労働に甘んじているのかというと、立場が弱いからだ。「シフトを減らすなら休業手当くださいよ」「それじゃ食ってけないから、ほかのバイトと掛け持ちします」などと不満を言って、雇い主の機嫌を損ねたら、もっとシフトが減らされてしまうかもしれないし最悪、クビになってしまうかもしれない。だから、どんなに理不尽なことを言われても、それに従うしかないのだ。
この労働搾取の構図は、ブラック企業で異常な働き方を命じられても、ただただ従うしかない派遣やバイトの方たちとまったく同じである。
このように弱い立場の人をこき使わなければ成立しない産業が残念ながら、日本の中にはたくさんある。良い悪いという話ではなく、これが偽らざる日本の姿なのだ。
もちろん、このように言われたところで「はい、そうですか」とすんなりと受け入れられない人がほとんどだろう。ブラック企業のような悪い連中はほんのひと握りであって、ほとんどの日本人は搾取だなんだとは無縁だ。そう思う方が圧倒的に多いはずだ。
ただ、日本のシステムがブラック企業のそれと同じだということの動かぬ証は、実はわれわれのすぐ身近にある。それは、「精神論」だ。
名ばかり管理職
ブラック企業の特徴の一つに「精神論の押し付け」がある。「夢は必ずかなう」「会社は家族」「感謝を忘れない」などのパワーワードを連呼して、個人が死ぬ気で頑張れば、どんなむちゃな目標も実現できるという洗脳を施して、過重労働や長時間労働を「自分の意思で行う」ように仕向ける。
また「名ばかり管理職」のように、責任感があるような肩書きを与えることで、「そんなことじゃ信頼されるリーダーになれないぞ」と尻を叩いて、精神論の押し付けを「下」の人間にまで波及させる。
実はこれも日本社会あるあるで、苦しくなればなるほどこのように「精神論の押し付け」によって、面倒な問題を個人に丸投げする動きが活性化するのだ。その最たるものが、東京都が新たな感染対策として打ち出した「コロナ対策リーダー」だ。
これは、都内の飲食店の店長や店員の中からeラーニングで感染対策のポイントを学び、率先して感染防止策に取り組む「コロナ対策リーダー」を登録してもらうというものだ。
「飲食店の感染を抑えるためにも必要な取り組みじゃないか」と感じる方も多いかもしれないが、「リーダー」になったところで何かの権限を与えられるわけではない。マスク会食しない客に対して「私、コロナ対策リーダーなんで」とステッカーを見せびらかしても「だからなに?」とあしらわれるのが関の山だ。
では、どんな効果があるのかというと、居酒屋側に責任感を押し付けて、自分から進んで客に「マスクをしてください」と注意するように仕向けることだ。実際、夕方のニュースを見ていたら、コロナ対策リーダーに登録したという居酒屋店主が「やる気が出てきました、命を預かっているという自覚がでた」と述べていた。
ここまで言えばもうお分かりだろう、「コロナ対策リーダー」とはブラック企業でいうところの「名ばかり管理職」と同じなのだ。
肩書きと責任を与えるだけで権限や見返りは一切与えない。そんな丸腰の個人を戦いの最前線に立たせて、難局を乗り切ろうという戦い方を日本の為政者はよく好む。「頑張れ」「今こそ一つに」と音頭を取ってさえいれば、根本的な対策やシステムの改革などに手をつけなくていい。つまり、個人に問題を丸投げすることで「現状維持」ができるのだ。
実際、居酒屋の間からはこの制度について、「正直、仕組みに違和感がある。店舗ごとの取り組みでいいのではないか。国の対策としてしっかりやってくれたほうがいい。こういったもの一つ一つの負担が現場には重い」(TOKYO MX 3月22日)という疑問の声も少なくない。
日本人の根性が足りない
コロナ禍になってから、日本社会は前にも増して「根性」や「気合い」が語られるようになった。
欧米よりも感染者数が少ないのは、「日本人が自粛を頑張ったから」。逆に、ちょっとでも感染者が増えると「若者の気がゆるんでいる」。ワンチームで一生懸命取り組めばコロナはきっと撃退できる。そんな高校球児のようなムードがそこかしこに漂っているので、首相の演説も具体的な対策より、「全力で取り組みます」という気合をいかにアピールするかに終始している。
日本人が追いつめられるほど精神主義に傾倒するのは、動かし難い歴史の教訓だ。そのうち、「GDPがちっとも成長しないのは、最近の日本人の根性が足りないからだ」とか言い出す日もそう遠くないのではないか。 
●日本が「債権取り崩し国」になる日が早まった  2020/10
日本経済が抱えていたデジタル化の遅れなどの問題点が、新型コロナウイルスの流行によって明らかになり、改善の取り組みが本格的に進められようとしている。日本の生産性の低さの一因が、このような負のレガシーの蓄積にあることは間違いない。経済が抱えるさまざまな負のレガシーは往々にして問題が生じてから対処される。コロナは禍(わざわい)ではあるが、これをチャンスだと考え、抜本的な改革を行って経済を前に進めていくべきだろう。
もっとも、前に進むことによって一段と経済が成熟することの「不安」も存在する。筆者が最も懸念するのが「国際収支の発展段階説」における6つ目(最後)のフェーズである「債権取り崩し国」へ日本がシフトすることである。
今の日本は第5段階の「成熟した債権大国」
「国際収支の発展段階説」とは、一国の経済発展に伴う貯蓄と投資のバランスの変化をサイクルとして捉えたもので、対外的な資金の流れとしての国際収支構造の変化を説明するものである。1950年代に経済学者のクローサーやキンドルバーガーによって提唱された概念だ。
日本の経常収支は新型コロナの流行前で月に1〜2兆円程度の黒字で、コロナ後でも1兆円前後の黒字を維持している。経常収支のうち、貿易・サービス収支はほぼゼロの状態が続いており、経常黒字のほとんどは直接投資や証券投資を合計した第1次所得収支となっている。
貿易・サービス収支は明確に赤字が定着しているわけではないが、2014年以降に原油価格が大幅に下落して輸入コストが低下したことで、なんとか赤字定着を免れている面がある。それまでの数年間は赤字続きであったことを勘案すると、日本は「成熟した債権国」の特徴である貿易・サービス収支の赤字、所得収支の大幅な黒字、経常収支の黒字(=資本収支の赤字)にすべて当てはまっている。
所得収支によって経常黒字は維持されている
すでに日本経済は財の貿易やサービスによって黒字を積み上げるフェーズは終えており、これまで積み上げてきた対外資産による所得収支の黒字によって経常黒字が維持されている、いわゆる「投資立国」の状態だ。
コロナ後経済の「新状態」がどのような姿になるか、現段階で見通すことは困難だが、「国際収支の発展段階説」のフェーズが1つ進むことで「債権取り崩し国」にシフトする可能性は十分にあるだろう。少なくともコロナ禍においては、貿易・サービス収支が赤字となり、所得収支の黒字が減少して、経常黒字も減っている。いずれも「債権取り崩し国」に近づく方向の変化である。そして、この傾向は当面続く可能性が高い。
貿易・サービス収支については小幅な赤字が続く可能性が高い。世界経済が低迷した状況では輸出が伸び悩むだろう。パンデミックの影響で特にインバウンド(外国からの訪日客による)消費の取り込みが困難になる中、サービス収支の改善も見込みにくい。
第1次所得収支が減るおそれ
足元の第1次所得収支の黒字は、直接投資と証券投資の黒字がおおむね半分ずつとなっているが、世界経済の悪化によって直接投資の黒字が大きく減少する可能性が高い。直接投資の利回り(直接投資の残高に対する直接投資収益の年間リターン)は世界経済の成長率に連動しやすく、2009年の世界金融危機時には利回りが半分以下となった。
また、政府はコロナ禍の教訓として強固なサプライチェーン(供給網)の構築を目指しており、主に中国から分散させるための「生産拠点の国内回帰」に補助金を出している。むろん、人口減少社会において需要不足と働き手不足の双方を補うべく、一定の対外直接投資の増加は続くとみられるが、仮に対外直接投資が伸び悩めば、直接投資収益の減少も避けられない。
証券投資についても、金融緩和競争によって債券利子率が低下する中、これまで以上に黒字の減少傾向が続くだろう。
国内での国債の安定消化はいつまで続くか
貿易・サービス収支の赤字と第1次所得収支の黒字を合計した経常収支が赤字化すると、日本は海外の主体に資金不足を補ってもらう必要が出てくる。その際には、企業部門だけでなく日本政府のファイナンス(国債発行)も海外投資家に依存することになる。日本が名目GDP(国内総生産)の200%を上回る債務残高を抱えながら安定的に国債を発行することができている最大の要因は国内消化率の高さである。経常収支が赤字化し、国債の買い手のうち外国人投資家の割合が増えれば、国債の安定消化に対する不安も高まるだろう。
むろん、現在は日本銀行が国債を大量に買い入れることによって市場が「抑圧」された状態にある。経常収支の赤字が定着したとしても気にする状況ではない。しかし、いつかは日銀による国債の大量購入は終わりを迎える。その際には海外投資家の保有比率が意識されるだろう。新型コロナウイルスの感染拡大という事象が、グローバルなファイナンス構造の変化を通じて国債市場に与える影響を意識しておく必要がある。  
●日本経済低成長からの脱却 2019/6
日本経済はアベノミクスで好調さを取り戻しているが、低成長は相変わらずで、今や日本の1人当たりGDPはOECD加盟国の中でも平均を下回る水準である。そんな中、高い成長率を実現しているのがスウェーデンである。かつて大きな国民負担率で有名だったスウェーデンが、今日、新興国並みの成長を遂げて国民負担率を引き下げている仕組みをヒントに、日本経済が低成長からの脱却を図るために必要な取り組みについて、国家公務員共済組合連合会理事長の松元崇氏にご教示いただいた。少子化だから現在の低成長はやむを得ないなどと嘆いてはいられない。慢性的な低成長から脱却するには社会保障制度や教育制度の見直しが必要であり、働く世代の再チャレンジを支援するなどの生産性を向上させる仕組みの構築が求められている。
日本企業の国内投資離れ
松元崇写真日本の1人当たりGDPは、1995年に世界3位、2000年に世界2位だったが、徐々に順位を下げ、2015年からは26位という低水準にとどまっています。26位というのはOECD諸国中で低水準です。マクロ的に見ても、図表1でご覧いただけるように、世界の中での日本のシェアは半分以下になっています。日本の低成長には少子化が原因であるという指摘がありますが、図表22に示した通り、明治の文明開化以来、日本は人口の増減とはほとんど関係なく成長してきました。
人口の減少とは労働力が希少な資源になるということです。経済学では希少な資源の価値は高まると教えています。とすれば、人口が減少している国の労賃は上がるはずで、1人当たりGDPも上昇しなければなりません。人口が減少している日本の1人当たりのGDPは増加していかなければならないはずです。ところが、日本では、逆の現象が生じています。
経済学の基本原則に反する日本の状況は少子化だからではなく、日本企業が国内で成長のための投資に消極的になってしまったことが主な原因と考えられます。日本企業は、海外投資や省力化投資には積極的ですが、そのような投資では日本の成長力は高まりません。
海外投資は盛んでも国内投資が行われない結果、国内では貸出先がなく、銀行の貸出金利は下がる一方です。特に、地方銀行の経営は大変苦しくなっています。日本の銀行の海外向け与信シェアは、今や、米国や英国を抜いて2015年から世界一となっていますが、その背景にあるのが国内に貸出先がないからというのでは情けないことです。いずれにしても海外への投資では日本の成長力は高まりません。
省力化投資は成長に寄与するように思われていますが、実はほとんど成長に寄与しません。分かりやすい例が日本のコメづくりです。コメづくりは戦後最も省力化投資を行ってきた産業分野です。積極的に省力化のために農機を導入してきました。その結果、かつては1反(10R)当たり150時間以上要していた作業が、今や30時間もかからずに済み、5分の1以下の労働時間に省力化されています。それによって兼業が可能になり、農家の農外所得は増えました。しかしながら、コメづくり農業は機械化貧乏になり、農業所得は赤字になりました。コメの省力化投資は成長力向上に寄与しなかったのです。
図表9は成長会計です。経済成長をもたらすのは資本と労働力と技術革新ですが、それらの3つの要素を分析して、日本とスウェーデンを比較しています。これを見てすぐにわかるのは、日本の図表には資本がほとんど登場しないことです。日本企業が成長のための国内投資を行っていないことが一目瞭然です。それは、戦後、我が国で定着した我が国独特の終身雇用制という硬直的な雇用慣行に足を引っ張られているからだと考えられます。我が国の終身強制は、かつて我が国の高度成長をけん引しましたが、選択と集中の時代になった今日、成長の足を引っ張るようになっています。選択と集中の時代は、リスクのある投資が多くなりますが、失敗した場合に終身雇用制のある国内よりも、海外での投資の方が柔軟な対応ができるからです。
科学立国の危機
日本企業が成長のための国内投資を行わなくなったのは、1990年代以降のことです。図表10の成長会計の推移を見ると、1990年頃までは投資が成長に対して主役の一角を占めていたのに、2000年頃より縮小していったのがご覧いただけます。その結果、日本は科学技術立国でなくなってしまっています。日本は今日でも毎年のようにノーベル賞をとる科学技術大国です。しかしながら、いくら優れた科学技術があっても、企業が国内でそれを生かす成長のための投資をしなくなれば国の成長には結び付かなくなります。日本は、もはや科学技術を生かして成長する科学技術立国ではなくなってしまっているのです。
図表17、(2)は研究開発効率の国際比較です。1990年頃には日本は研究開発費を効率よく成長につなげ、世界最高水準の研究開発効率を示していました。ところがその後、研究開発効率は低下を続け、2010年には世界最低の水準にまで落ち込んでいます。その結果、図表7でご覧いただけるように、1人当たりの労働生産性や国民所得も伸び悩んでいるのです。
労働生産性や国民所得が伸び悩む結果、もたらされるのが実質的な国民の負担増です。図表24は、高齢化で大変だということで使われる資料です。現在2人で1人の高齢者を支えているのが、やがて1人で1人の高齢者を支えなければならなくなる、大変だというわけです。しかしながら、支える側の所得が倍になれば、実質2人で1人の高齢者を支えているのと同じことになるはずです。そうならないということは、実質的な負担増になるということです。そういった議論が出てこないのは、現在の低成長で所得が伸びないのが、少子化が原因で仕方がないと思い込んでしまっているからです。
成長戦略の鍵となる社会保障
図表25の上のグラフは、財務省の資料に出てくる社会保障支出と国民負担率のグラフです。1990年から日本の矢印がロケットのように急上昇しているのは、社会保障支出の増加を借金でまかなっているためです。借金もいずれは国民負担になりますので、このグラフを借金も含めた潜在的国民負担率で作り直してみたのが、図表25の下のグラフです。それは、政府規模そのもののグラフでもあります。大方の国が借金で歳出をまかなっていますので、各国の位置は上のグラフよりも全体的に右側にずれています。しかしながら、日本ほど借金でまかなっている国はありませんので、日本のずれが一番大きくなっています。現状のまま推移した場合、2060年には日本は今日の主要西欧諸国を全て追い越して、潜在的国民負担率の一番高い国になってしまいます。しかし、これは「日本の少子化=低成長」という認識の延長線上の話です。日本が慢性的な低成長から脱却すれば、この姿は変わってきます。
実はこの姿を変えたのがスウェーデンです。それはビル・エモット氏が『「西洋」の終わり 世界の繁栄を取り戻すために』という著書の中で指摘していることです。スウェーデンの政府規模は1993年に対GDP比で72%にもなっていました。しかし経済が成長した結果、2007年には49.7%になり、14年間で約22%減少しました。政府規模、すなわち潜在的国民負担率がそれだけ低下したということです。そして、図表25の下のグラフでご覧いただけるように、今やスウェーデンの潜在的国民負担率はドイツ、フランス、イタリア、さらには英国よりも低くなっています。かつて大きな政府で有名だった国が、主要先進国の中で、最も小さな政府になっているのです。高い成長率を続けてきたスウェーデンのように、日本も今の低成長から脱却すればこういったことが可能になるのです。
対GDP比で22%減少ということは、日本の550兆円のGDPの感覚でいえば、120兆円あまり国民の負担が軽減されたということです。かつては大きな政府では低成長になると言われていました。しかし、今や、それは過去の話です。今や国民負担率が大きいか小さいかは、経済成長率が高いか低いかには関係がありません。むしろ米国を例外とすると、図表26でご覧いただけるように、国民負担率の大きい国のほうが高い成長率を示しています。ちなみに、この図表では、日本だけが成長率競争の蚊帳の外です。
図表9の説明にあるように、福祉国家スウェーデンは、充実した社会保障、米国並みの市場メカニズムと人材育成でイノベーション力を発揮し、新興国並みの成長を実現しました。選択と集中で転職が当たり前になった今日、国民が再チャレンジすることを支援する充実した社会保障の仕組みを持った国の成長率が高くなっているのです。一人一人の国民が作り出す付加価値が全て積み上がって一国のGDPとなります。国が再チャレンジを支援することで一人一人の国民が作り出す付加価値が上昇する、国民が生涯を通じてその能力をフルに発揮することになる、そういったメカニズムを通じて国全体のGDPも増加するのです。
とはいっても、米国も高い成長率を実現しており、小さな政府の米国型でもいいのではないかという話があります。日本は、これまで小さな政府でやってきたのですから、それでいいではないかということです。日本は人口1000万人にも満たないスウェーデンと違って、大きな国なので、スウェーデンのようなことはできないと考える方もいらっしゃるでしょう。それは国民の選択の問題です。何よりも、スウェーデンのような仕組みを創り上げるには大きなコストが伴います。将来的に成長すれば大きく国民負担率を縮小することになるはずだといっても、当面その負担を国民に求めていくのは政治的に大変難しいことです。それができないとなれば、否応なしに米国型にならざるを得ないことになります。
ただ、米国型には、いくつか問題があります。まずは、激しい格差社会になってしまうという問題があります。図表5はブランコ・ミラノヴィッチ教授によるエレファントカーブです。IT化によって世界中どこでも何でも生産できるようになった。そのような世界では、発展途上国の成長が先進国を上回るようになった。同時に、高所得者の所得も大きく伸びるようになったことを示しています。象の鼻の部分です。それは、米国のように政府が何もしないと大変な格差社会になることを示しています。
もう1つの問題は、米国型では日本の中小企業の低生産性構造が是正されないことです。日本がこれまで日本型の小さな政府を実現できたのは、ヨーロッパ諸国なら政府が行ってきた社会保障の多くの部分を企業任せにしてきたからです。そういった中で、中小企業が潰れないようにという護送船団行政が行われてきました。日本が小さな政府を続けようとすれば、この護送船団行政を改めるわけにはいきません。それではわが国の中小企業の低生産性構造はそのままになり、低成長からの脱却も難しいことになります。米国型で高成長を実現するのは難しいということです。
国が成長せずとも、企業は発展する
ミラノヴィッチ教授は、今日のように企業の生産活動が容易に国境を越えていくグローバル化した世界では、リカードの比較生産費説が成り立たなくなっているとしています。リカードの比較生産費説は自由貿易を基礎付ける経済学の基礎中の基礎と言われる理論ですが、それが、成り立たなくなっているというのです。
かつてリカードは、比較生産費説の説明にポルトガルでのワインの生産と英国での布地の生産を例に、それぞれの国でワインと布地が生産され、自由に交易されることによって両国が共に豊かになれると説きました。しかしながら、今日の世界ではワインも布地もどちらもポルトガルで生産されるようになり、英国には何も残らないという事態が起こり得るというのです。ただし、その場合、ポルトガルでのワインと布地の生産を担うのは、ポルトガルの企業ではなくて英国の企業かもしれないとしています。
それは、わが国の経済が停滞しても、日本の企業は世界で隆々と発展していけるということです。日本が科学技術「立国」ではなくなっても、日本の企業は、科学技術「大国」の日本の技術を生かして世界で活躍していけるということです。日本の企業は、グローバルに通用する人材も多く抱えているはずです。
起業家精神が経済成長を促す
最後に、最近話題になっているMMT理論とシムズ理論についてお話しします。両理論は、財政出動すべきだという点は同じですが、かたやインフレにならないと主張し、かたやインフレになると正反対のことを主張しています。そのようなことになるのは、それぞれが理論と言っていますが、理論ではなくてモデルだからです。モデルは前提の置き方でいかような結論も導けます。例えば、マルクス主義経済学では労働価値説という前提を置いて資本家が労働者を搾取しているという結論を導きました。
ここで申し上げたいのは、MMT理論によるにせよシムズ理論によるにせよ、ケインズ経済学という理論の中のモデルだから財政出動で成長率を引き上げることはできないということです。それは、日本の低成長を何とかしたいというのであれば、よく理解しておかなければならないことです。ケインズ経済学は景気回復の理論であって、経済成長の理論ではないからです。そこからは、経済成長につながる話は出てこないのです。ちなみに、成長理論を唱えたシュンペーターも、財政出動で経済が成長するとは言っていません。ケインズは、それでは経済成長のために何が必要なのかと問われて、「アニマルスピリット」と答えたそうです。
財政出動で経済を刺激すれば、一時的に「景気」は良くなります。しかしながら、それは恒久的な経済の「成長」にはつながりません。そんなことで経済を刺激しても、当初の財政出動の効果がなくなれば景気は元に戻ってしまいます。経済成長率は元のままです。そのような政策は、いわば朝三暮四の政策です。サルに栃の実を朝三つ、暮4つと言ったら騒ぎになった。そこで、朝4つ暮三つと言ったら喜んだ。何も変わらないのにということです。ちなみに、最大のMMT理論の実践国が日本だという話がありますが、その日本の経済成長率は先進諸国の中で最低低水準で、世界の中で縮み続けているのです。財政出動で成長率が高まらないというお手本が、日本だということです。
日本の生産性が低いということは、実は成長の余地が大いにあるということです。今日、生産性の低い発展途上国が大いに成長しているのは、生産性が低いところから成長しているからです。それと同じことが、日本にも出来るはずです。何しろ、図表6でご覧いただけるとおり、日本の生産性は米国と比べて8割の分野で半分以下、4割の分野で3分の1以下なのです。みんなが少子化ゆえに現在の低成長で仕方がないと嘆いているようでは、そこから脱却することはできません。成長するための国民的な議論を始めなければならないと思います。
質疑応答
Q:硬直的な雇用慣行が2000年以降の日本の経済停滞の原因だという点は、裏返せば、労働流動化が経済成長を促進するという見方もできると思います。2019年6月25日の日本経済新聞の「経済教室」で猪木武徳先生が労働移動のコストについて言及されていますが、その辺についてお考えをお聞かせください。
A:労働流動化が経済成長を促進するようになるはずだというのはその通りですが、猪木先生がおっしゃっていたように、現状で労働移動には社会的に相当なコストがかかります。日本では企業による雇用保障が国民の生活を支えてきたため、企業から解雇されると労働者は路頭に迷ってしまいます。それを避けるために労働者は企業にしがみ付くことになります。裁判所もそれを認めることになります。そこで労働移動のコストが高くなっているのです。競争至上主義の米国では、次の職探しも割と簡単なため、労働移動のコストは高くありません。欧州の場合は解雇されてから次の就職までの間、国が社会保障などで面倒をみます。とりわけスウェーデンでは流動化に伴う社会的コストがあまり発生しない形になっています。雇用の流動化については一人一人の国民の幸せを考慮しつつ進めるべきであり、そのための仕組みをどう創り上げるかは、国民の選択によることになると思います。
Q:日本の低経済成長を克服するためには、どのように日本企業の意識を変えていけばよいのでしょうか。
A:それぞれの企業の試行錯誤だと思います。海外展開を図っている企業は、まずは海外のビジネスをしっかり行っていくことです。ビジネスのスタイルは日々変わっていきます。米国の企業も最適な経営戦略を日々試行錯誤しています。海外に人を派遣し、子会社を経営させてみる。その人材を全体の経営のトップとして配置するなど、さまざまな工夫が必要だと思います。国内で事業をもっぱら行っている企業は、人材の最適配置、中途採用者のマネジメント、女性の労働力活用について、試行錯誤しながら最適なやり方を模索していくことだと思います。中小企業にとっては国全体の仕組みや制度が変わらないと難しい面もありますが、経営者は自分の企業の従業員の幸せを念頭に置きながら、市場の流れを踏まえて経営していくことが必要です。
Q:松元理事長としては今後の日本のあるべき姿としてノルディックモデルを追求していくべきとお考えですか。その場合、移民との関係や施策についてのお考えをお聞かせください。
A:ノルディックモデルに固執するわけではありませんが、今の日本の雇用慣行を見直していく1つの手掛かりにはなると思っています。スウェーデンの経済成長を支えているものには、雇用慣行以外に教育制度もあります。スウェーデンでは高校卒業後、多くの人は、まずは就職します。その上で自分のやりたいことを見つけると、現在の仕事をやめて必要な専門知識を学ぶために大学に入学するのが一般的とのことです。そのような状況で学生を受け入れる大学は実学志向になっていますので、人生の途中でいつでも大学で勉強し直して再チャレンジをするのが非常にしやすい仕組みになっているとのことです。私はスウェーデンの今日の高成長は、結果としてそうなっているのだと思っています。スウェーデンは第一次世界大戦の前は、北極圏に近くほとんど森林資源しかない、欧州の中でも貧しい国で、女性の社会的地位も低かったのです。ところが第一次世界大戦で中立を守ったために、大いに発展しました。しかし、発展した結果として出生率が下がってしまった。そこで出来上がったのが今のスウェーデンの社会保障制度です。それが、戦後うまくいったものの、1980年代の終わりには行き詰まってしまいました。それが1990年代からの選択と集中の時代に、再びうまく機能するようになって高成長をもたらし、今やスウェーデンは欧州の中でも国民負担率が低い国となっているのです。どの国も浮き沈みがあり、試行錯誤しながら出来上がってきたのです。残念ながら、日本は今低迷しています。浮かび上がるには今の日本の状況について、本音で議論する必要があります。移民の件はそれぞれの国の政治が決める話です。日本では技能労働者としての受け入れが、現状における国民的コンセンサスだと思います。ドイツにしてもスウェーデンにしても、受け入れ過ぎれば問題が生じると思います。本来寛容な国であったはずの米国でも移民問題が争点として浮上しています。国民の選択の問題だと思います。 
●マクロ経済展望:低成長が当たり前の時代に 2003/10
1. はじめに
現在、日本経済は大転換の時代を迎えている。90年代以降の長期不況から未だに脱しきれない中で、日本経済の低迷をもたらす要因が大きくなってきている。財政破たん懸念、少子高齢化、デフレ長期化などは経済成長を抑えるリスク要因といえよう。これらのリスクを回避する政策を実施しなければ、持続的な経済成長を達成することは難しい。
日本経済の将来についてはさまざまのシナリオが描けるが、今回の長期展望では、持続成長シナリオの下での将来動向を見通した。マクロ経済展望では、経済成長率、最終需要項目、物価・賃金、為替レートなどの将来動向を明らかにする。
2. 持続的成長のための条件
持続成長を達成するための条件は何か。デフレ対策、財政改革、内需振興策、雇用対策の少なくとも四つの政策を総合的に実施する必要がある。
第一に、早急に政策総動員によって足元のデフレ進行を食い止めなければならない。デフレは複合要因によるものであるが、特に、需要低迷の影響が大きい。デフレが終息し景気が回復に向かうまでは、大幅な歳出削減は避けるべきである。現在の金融緩和政策を継続するとともに、これまでの厳しい引き締め財政を緩める必要がある。
第二に、抜本的な財政改革により財政再建を図る必要がある。構造改革だけでは、成長を押し上げ税収の増加を図ることは難しい。膨大な財政赤字を前にして、もはや大幅な増税は避けられない。社会保障制度の抜本改革も必要である。
第三に、新しい需要の拡大をもたらす内需振興策が必要である。その政策の柱は、21世紀を担う成長分野に補助金や低金利で公的資金を重点配分することである。また、社会資本も従来型の土木事業から新産業の育成に役立つ分野へ投入する必要がある。
第四に、2010年頃までは需要不足で多くの失業者が出るため、雇用対策を拡充し国民の痛みを緩和することが必要である。しかし、長期的には、将来の労働力不足への対策が必要となる。女子、高齢者、若年者の労働参加を容易にする制度が必要である。
3. 展望の前提条件
いかなる展望も前提条件付きのものである。
・原油輸入価格(CIFベース)は、2025年には1バレル当たり41ドルにまで上昇し、2000〜2025年間では年率1.5%の上昇を見込んだ(世界エネルギー展望参照)。原油価格の大幅な上昇はなく、世界の物価上昇は緩やかなものにとどまると想定した。
・人口は、2006年頃をピークに減少傾向に転じ、2025年には1億1,800万人となる。2000〜2025年間では890万人(年率0.3%)の減少を見込んだ(人口展望参照)。
   図1 実質成長率と物価上昇率
   図2 最終需要項目の動き
・財政については、財政再建のため厳しい緊縮財政を見込んだ。消費税率は2006年から2015年まで毎年1%ずつ引き上げられ15%まで上昇する、公的年金の保険料率上限制度の導入と年金給付の抑制がなされると想定した。
4. 実質経済成長率は平均1%程度、低成長が当たり前に
展望結果によれば、金融緩和に加えて公共投資の緩やかな拡大、設備投資のストック調整一巡の効果で、景気は緩やかながらも回復に向かう。しかし、景気が回復軌道に乗ると、財政破たんを回避するための財政再建が最も重要な政策課題となり、2010年頃までには、大幅増税、社会保障費を含む歳出抑制を柱とする本格的な緊縮財政が実施されるだろう。そうなれば、再び景気は低迷する。
新成長産業の拡大や新商品の開発などによる需要創出効果を見込んでも、消費税増税で、家計部門の民間消費と民間住宅投資は低調となる。また、公的需要も財政再建のため平均では横ばいとなる。高齢社会、IT社会に対応した新成長産業などによる民間投資の拡大は期待できるものの、これら国内需要の低迷の影響で民間設備投資の伸びも限定的なものとなる。純輸出(輸出―輸入)は黒字で景気を下支えるものの、円高が進展するため大きな効果は期待できない。
2015年以降では、増税のマイナス影響が一巡し、情報関連、高齢化対応の新商品・新サービスを中心に消費が伸びるだろうが、本格的な人口減少時代に入り、就業者数の減少テンポが速くなり、これが消費の伸びを抑える。
以上の結果、2000〜2025年間の実質GDP成長率は平均では1.0%と低い水準にとどまり、低成長が当たり前の時代となる(図1、2)。低成長に規制改革の影響が加わり、競争が激化するであろう。成長テンポは産業によって大きく異なり、IT関連産業などは伸びるが、繊維などは人口減少の影響もあってマイナス成長となる(産業構造展望参照)
一人当たり実質GDP成長率で見ると、後半になると労働力不足対策で設備投資が増え生産性が上昇するため、1.6%の伸びにまで高まり、全期間平均でも1.3%の伸びとなる。一人当たり実質成長率でみれば、将来は必ずしも悲観的なものではない。
5. 財政破たんはかろうじて免れる
このように、新成長産業の育成・拡大の効果を見込んでも、財政再建や人口減少などの制約から、日本経済の成長力に大きな期待はもてそうにない。しかし、財政再建と同時に新成長産業を拡大していけば、中央政府(国)の財政のプライマリー・バランス(基礎的収支)は2015年頃には赤字から黒字基調に転じ、国債残高の伸びが名目GDPより低くなり、将来、国家財政が破たんし日本経済が破局に向かう恐れはなくなる(財政展望参照)。しかし、このような持続成長を達成するには、新成長産業の創出など本格的な内需振興策が不可欠である。
6. 需要創出型の構造改革が必要
21世紀の初め5年ほどの間で、日本経済が持続的成長への足掛かりをつかむことが望まれたが、現実にはデフレの長期化や厳しい引き締め政策などから逆の方向に動いてしまった。成長の柱と期待されたIT産業も世界的な規模で低迷している。経済停滞で税収が大幅に落ち込み、財政赤字が膨らみ国債が累増し、もはや大幅増税なしには財政再建を図ることは難しい状況にまで追い込まれている。
短中期的には、デフレからの脱出が喫緊の課題であるが、長期的な視野で見ると、本格的に人口が減少する中で、財政赤字問題をいかにして解消していくのかが、最大の課題である。新成長産業の育成・拡大を図るとともに、緊縮型の財政再建を実施することで、将来予想される財政破たんといった事態は避けられるであろう。
日本経済の再生にとって最も基本的なことは、高齢化、情報化、環境、新エネルギーなどに対応した、21世紀型の新産業を早急に育成し、新技術、新サービスを開発していくこと、そのための政策を力強く実施していくことである。 
●われわれは貧困化している!? 労働賃金減少は先進国で日本だけ 2021/3
はじめまして! 小川製作所の小川と申します。今回から統計データという事実(ファクト)から、中小製造業の生きる道を探っていくという連載記事を書かせていただくことになりました。どうぞお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
はじめに
突然ですが皆さんは、先進国でわれわれ「日本だけ」労働者の給与が減っているということをご存じでしょうか? それどころか、国として最も重要な経済指標であるGDP(国内総生産)も停滞が続き、右肩上がりで成長し続ける世界の中で、日本だけすっかり置いていかれているようなのです。
日本は経済規模ではまだGDP世界第3位を誇りますが、それは先進国の中で「人口が多いから」というのは多くの皆さんがうすうす気付いているのではないでしょうか。1人当たりの経済指標を見ると、日本は今では世界のトップレベルでも何でもない「凡庸な先進国」というレベルです。しかもこの状況が改善するどころか、現在も絶賛停滞中で、どんどん他の国に抜かされている状況なのです。まさに、「衰退先進国」とも表現できるような状況です。
最近になり、ようやくテレビなどでもこのような事実を報道されるようになりましたが、事態はわれわれが感じているよりもずっと危機的だといえます。このように聞くと「なぜ日本だけがこのような状況なのか」「そしてわれわれがその状況を打開できる余地があるのか」ということが、とても心配になりますね。
今回は、日本の経済統計を可視化し共有ながら「われわれ現役世代(特に中小製造業)がこの日本の停滞を打破できるヒントはないか」ということを一緒に探る趣旨で執筆の機会をいただきました。
申し遅れましたが、私は零細町工場のいわゆる“アトツギ”として毎日全身真っ黒になりながら金属加工をしている研磨職人“兼”経営者です。ライフワークで経済統計をグラフ化しブログやTwitterで共有させていただいています。
この連載では、われわれ企業で働く人々が、沈みゆく経済大国日本の中で、今後生き延びていくために必要な考え方や、目指すべき方向性とはどのようなものかを、一緒に統計データを共有しながら考えていきたいと思います。
連載全てを通じてキーメッセージだと考えているのは「国内経済」で「中小企業」の「経営者」が「付加価値」を重視した経営に転換していくことです。実は国内経済では、中小企業こそ主役だといえます。その経営者は、まさに日本経済復活のためのキーパーソンです。すなわち、中小企業経営者が長期的視野で考え、利益ではなく付加価値を最大化する経営に転換していくことが、日本経済を再び成長させるための大きな原動力になるのではないかと考えているのです。
私はこれまでさまざまな統計データから数百の統計グラフを作成し、それを150以上のブログ記事にまとめてきました。その上でこの考えに至ったエッセンスを、この連載でまとめていきたいと考えています。
ショックを和らげるためにあらかじめお伝えしておくと、これから出てくる統計データは日本の停滞や没落を裏付けるような悲観的なものばかりです。ただ、その中にも、日本経済が復活を遂げ、われわれが将来にわたり、より豊かになるために必要なヒントがちりばめられていると考えています。
加えて白状しておきますと、私は経済学の専門家でも何でもありません。単なる零細町工場の「アトツギ」ですし、専門は「工学」で、仕事は「製造業」です。ですから、この連載では日本経済を学術的な側面から語るようなことはできませんし、むしろ経済学の“常識”とは異なる意見となるかもしれません。ただ、それは自らが労働者としても働く実経済の当事者として、実際のビジネスで感じ取ってきた経験と、これから皆さんと共有していく「統計データ=ファクト」に基づく意見です。それをどのように解釈して、自らの糧としていくのかは、この記事を読まれた皆さん次第です。
この連載では、以下の順番で記事を展開していくつもりです。
1 日本経済の現状を知る
2 その中で起きている変化と課題を把握する
3 あるべき企業の姿を見定める
4 今後考えていくべき方向性を共有する
内容については、主に私と同じような中小製造業のアトツギの皆さんや、企業でエンジニアなどとして働く労働者の皆さんを思い描きながら、話を進めていきます。それでは、まずファクトに基づき、日本経済の現状を知ることから始めていきましょう!
労働者が貧困化しているという衝撃
まず私が最もショックを受けた統計データを紹介します。図1をご覧ください。
   図1 平均給与の推移
このグラフは、日本人労働者の平均給与の推移です。青が男性、赤が女性、緑が男女合計のグラフを示しています。日本人の労働者は、1997年までは右肩上がりで平均給与が増加していましたが、1997年をピークにして減少に転じています。直近では増加傾向ではありますが、まだピーク時を超えているわけではありません。
つまり、日本人労働者の平均給与が下がっており、貧困化しているといえるのです。日本も他の先進国同様に、経済成長を続けていると考えていましたが、実際に統計を見てみると、このようにショッキングな事態に陥っています。
労働者と一言でいっても、消費者としての面、納税者としての面、家族の一員としての面など、さまざまな側面を抱えており、そもそもが国民の一員です。その国民一人一人の収入が減っているというわけですから、人口がそれほど大きく増えているわけではない日本という国の収入が減っていることが分かります。
具体的に数字を見ていきましょう。例えば、男性労働者の平均給与は、1997年は577万円だったのが、2019年では540万円と実に約40万円も減少しています。2020年はコロナ禍が直撃していますので、最新データが出れば、おそらく減少に転じていることでしょう。
ただ、グラフをよく見てみると、男性に比べると女性は、やや停滞しているものの上昇基調にあります。どうやら主に男性労働者に異変が起きていることが分かります。
図2をご覧ください。
   図2 平均給与 男性 事業所規模・年齢層別
図2は日本の男性労働者について、企業規模や年齢層別に平均給与をグラフ化したものです。
少し説明が必要かもしれません。グラフは30歳未満、30代、40代、50代、60代の年齢層別、中小企業、中堅企業、大企業の企業規模別でグラフ化しています。企業規模については、本来正式な定義がありますが、統計データを整理する都合上、今回は便宜的に、中小企業を100人未満、中堅企業を100人以上1000人未満、大企業1000人以上と定義しています。
横軸が、そのカテゴリーの人数、縦軸が平均給与を示しています。そしてそれぞれのカテゴリーの矢印が、1999〜2018年の変化を表しています。矢印の起点が1999年の状態、矢印の先端が2018年の状態を表しています。
これを見ると、40代と60代の人数が大きく増え、30歳未満の人数が大きく減っているのが分かります。ただ、それ以上に重要なのが全ての矢印が「下向き」であることです。男性労働者は、企業規模、年齢層関係なく、みんな給与が減っているのです。日本経済の中で、男性労働者にはいわゆる「勝ち組」がなく「総じて貧困化が進んでいる」というのが統計から見る実態のようです。
労働者の収入が減っているのは日本だけ?
それでは、労働者の収入が減っているのは、日本だけの現象なのでしょうか? 他の国はどのような状況にあるのかを確かめていきましょう。
多くの統計データを見てきて感じるのは、日本国内の統計データを見ているだけでは、その数字の意味を本質的には把握できない、ということです。同じような先進国の傾向と相対化し、見比べてようやく、日本で起きていることが見えてきます。この連載では、主に先進国に分類される国々で構成される「OECD(経済協力開発機構)」のデータで国際比較をしていきたいと思います。
図3は平均所得の推移を国別でグラフ化したものです。
   図3 平均所得 推移 名目・ドル換算
他国と比べる際には、通貨や人口が異なりますので、比較できるように単位や水準を統一しなければいけません。私が、最も実態に即した比較ができると考えるのは、「1人当たり」の「名目値」「ドル換算」の数値です。
物価の変化を踏まえた「実質値」を使うのが経済学的には一般的なのかもしれませんが、デフレで名目値の成長が必要な日本の状況からすると、まずは名目値の変化に着目する必要があると考えます。ドル換算値は、それぞれの国の通貨とドルとの為替変動の影響を受けます。米国以外の国のグラフがジグザグになっているのは、主にこの為替の影響によるものです。少し見にくいかもしれませんが、傾向は把握できるのではないでしょうか。
さて、図3を見ると日本(青)はほぼ横ばい傾向ですが、米国をはじめ他国は、傾向的には右肩上がりのグラフになっています。1990年代に上の方にあった日本の位置は、最近では他の国に抜かれて中位に埋もれています。
さらに、こうした傾向をより分かりやすく示すために、ある年だけで切り出して、数値の高い順に並べたデータを見てみましょう。
図4は2019年の数値を基にしたグラフです。
   図4 平均所得 2019年 名目・ドル換算
これを見ると、日本の平均給与は4万384ドルでOECD35カ国中20番目の水準です。米国の6万5836ドル、ドイツの4万7490ドルなどと比べると大きく差をつけられています。G7の中では6番目、OECDの平均値である4万1457ドルにも届かないレベルとなっています。実は、世界で3番目の経済大国であるはずの日本の労働者の所得水準は、先進国の中では平均値未満のグループに属しているということが分かります。
1997年にはOECDで3位だった
それでは過去はどうだったのでしょうか。1997年のデータを基にしたのが図5です。
   図5 平均所得 1997年 名目・ドル換算
今後のデータで明らかとなっていきますが、1990年と1997年は統計データで見る限り、日本経済で大きな転換点となった年です。1990年はもちろん、バブル崩壊の年です。一方、1997年は所得やGDPのピークとなった年です。
実は1997年の日本人の平均所得は、3万8823ドルと、スイスやルクセンブルクに次いでOECDで3番目の堂々たる高水準でした。OECDの平均値2万2468ドルの1.5倍以上です。かつての日本はこれほどまでに、高い水準の経済力を誇っていたわけですが、現在はこの平均値にも満たないレベルになっているというわけです。
こうしてみると、明らかに、日本の労働者の所得は、国際的に見て下がっているのです。しかも、このように明らかに衰退しているのは、主要国では日本くらいです。ドル換算のデータでは分かりにくいので、自国通貨での成長率に直したグラフを見てみると一目瞭然となります。図6は、2000年を基準にした、各国の平均所得の成長率を示しています。
   図6 平均所得 名目値 成長率
ご覧のように、平均所得が減少し、地をはうように推移しているのは日本だけです。他の多くの国は右肩上がりで成長しているのです(実質値にしても、傾きは緩くなりますが、傾向は変わりません)。ドイツが年率で約2%成長、米国や英国、カナダが年率約3%の成長、韓国が年率約4%の成長となっています。日本だけが、なぜか成長しておらず、むしろ停滞しているという事実にがくぜんとします。
このような状況はなぜ生まれたのでしょうか。日本経済に一体何が起こっているのでしょうか。次回以降で、少しずつ日本経済の現状を明らかにしていきたいと思います。 
●成長しない日本のGDP、停滞の20年で米国は日本の4倍、中国は3倍に 2021/4
前回は、われわれ労働者の平均所得が実は減少していて、右肩上がりで所得が上がり続ける先進国の中ですっかり置いていかれている事実を共有しました。
日本経済の変調は、労働者の所得だけではありません。さまざまな経済指標でその変調ぶりを確認することができます。そこで、第2回となる今回は、国の経済の指標として最も重視されている「GDP(国内総生産)」を基に、日本経済の現状を掘り下げていきたいと思います。
そもそもGDPとは何か
「GDP」もそうですが、経済用語として出てくる「付加価値」や「生産性」など重要な指標ほど、曖昧な解釈やイメージで捉えられがちです。GDPと、われわれ企業の事業活動と密接に関係のある付加価値や生産性は深い関係があります。
まずは、手始めに「GDP」の定義について確認してみましょう。GDPは、Gross Domestic Productの略で、日本語では「国内総生産」とも呼ばれています。内閣府が公開している「用語解説」によれば、GDP(国内総生産)は「居住者たる生産者による国内生産活動の結果、生み出された付加価値の総額である」と説明されています。
この「付加価値」とは「産出額から中間投入を控除したもの」です。より具体的にいえば、「産出額」とは企業活動でいう「売上高」に当たります。「中間投入」は「仕入れ」に相当します。つまり、付加価値とは、企業活動における粗利とほぼ同じ意味だといえます。別の言い方をすれば、付加価値とは私たちが自分の仕事を通じて加えた金額的な価値となります。そして、国内で生み出された付加価値の合計がGDPということになります。GDPには「金融投資」による配当金や、海外での事業活動による利益などは含みません。
GDPには、生産活動によって生み出された付加価値を合計した「生産面」と、給与所得や営業余剰などの付加価値の分配を合計した「分配面」、消費支出や資本形成などの支出を合計した「支出面」の3つの側面があります。そして、この3つの指標はいずれも同じになる「三面等価の原則」もよく知られていますね。つまり「生産=分配=支出」が成り立つということになります。
ここまで見てきたように、GDPはその国の経済活動を知るための最も基本となる指標といえます。そして、われわれ企業による事業活動の成果そのものでもあるわけです。
日本のGDPは20年以上も停滞
日本の経済統計で、GDPを扱っているのは、内閣府が公表している「国民経済計算」です。まずは、この国民経済計算における、GDPのグラフから見ていくことにしましょう。
   図1 日本の国内総生産(GDP)名目値 暦年
図1は、日本のGDP支出面の推移をグラフ化したものです。GDPの統計データは、生産面や分配面もありますが、この支出面のデータが一般的なものとして活用されています。
グラフでは、経済に関する重要なイベントのあった年に赤線を入れています。1990年のバブル崩壊、1997年の消費税増税と金融危機、2008年のリーマンショックです。民間最終消費支出を青色、政府最終消費支出を赤色、総固定資本形成(民間)を緑色、総固定資本形成(公的)をピンク色、財貨・サービスの純輸出をオレンジ色で示しており、GDP支出面はその総和となります。
最終消費支出は、民間(ほとんどが家計支出)や政府による、新規の財貨やサービスへの消費支出を合計したものです。総固定資本形成は、建造物や機械などの固定資産への支出ですね。つまり投資(設備投資)です。純輸出は、輸出から輸入を差し引いた正味の金額で、海外との貿易収支です。まとめると、GDPの支出面は、消費と投資と純輸出から構成されているといえます。
これらを踏まえてあらためて図1を見ると、GDPの合計値は、1997年でピークとなった後、減少および停滞をしており、リーマンショックを底にしてまた上昇傾向になっているという傾向が読み取れます。最近では上昇傾向にあるものの、長期視点で見れば、長い間停滞していることが分かります。1997年のピークを超えたのは、2015年になってからのことで、なんと日本は20年以上もほぼ経済が成長していないということになります。
図1からは、民間最終消費支出(青)がGDPの大部分(約55%)を占めることが分かりますが、この項目も停滞しています。民間最終消費支出は、私たち国民の消費ですが、この20年間で人口もほとんど変わりませんので、1人当たりの消費がほとんど変化していないということがいえます。さらに、総固定資本形成=投資も停滞しています。唯一上昇傾向がある政府最終消費支出も上昇の程度が鈍化しているように見えます。
これらの事実(ファクト)から見ても、日本経済は民間の消費や投資が停滞・減少していて、全体としても「停滞」していることがよく分かるのではないでしょうか。このように書くと、物価変動を加味した「実質値」では成長している、というご指摘をいただくと思いますが、「物価」や「名目値と実質値の違い」については今後取り上げていきたいと考えています。
主要国で経済成長がないのは日本だけ
日本経済の状況を把握するためには、自国のデータだけではなく、国際比較をすることが重要です。日本のように経済が停滞しているのは、他の国々も同じなのでしょうか。OECD(経済協力開発機構)の統計データから、GDPの国際比較を行っていきます。
図2は、OECD各国のGDPの時系列データです。名目値のドル換算値を示しています。また、OECD加盟国だけでなく、中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカのいわゆるBRICSも追加しました単位はG$(ギガドル)です。ギガは10の9乗ですね。
   図2 GDPの国別推移 名目値 ドル換算
さて、グラフを見てみると、まず目につくのが、米国の圧倒的な存在感と、中国の急伸、そして日本の停滞ではないでしょうか。1995年までは、ドル換算値でも日本のGDPは右肩上がりでしたが、その後停滞しています。
その間も米国はずっと成長し続けています。さらに、中国が急伸して日本を抜き去りました。また、日本はドイツなどの他の先進諸国に追い上げられている状況も見て取れるのではないでしょうか。こうして見ると、経済が停滞しているのは、主要国では日本だけのようです。
GDPはその国の経済規模そのものを表しますので、中国は今や世界第2位の経済大国です。日本は第2位から第3位へと転落しているわけですが、このままだとその地位すら危ういように見えます。
日本停滞の間に米国は4倍、中国は3倍の規模に
もう少し分かりやすく、特徴的な年を切り出して、GDPの大きい順に並べたグラフも見てみましょう。図3は、日本のGDPがピークとなった1997年の時のグラフです。
   図3 1997年のGDPの国別比較 名目値 ドル換算
1997年の日本のGDPは4415G$で堂々の第2位です。米国(8578G$)の半分程度の水準があり、第3位のドイツにも2倍程度の差をつけています。
一方、図4は2018年のグラフです(インドだけ2017年のデータとなります)。
   図4 2018年のGDPの国別比較 名目値 ドル換算
2018年の日本のGDPは4955G$で「世界第3位の経済大国」という立場を維持しています。しかし、その相対的な水準は1997年と比べると大きく低下しています。首位米国の約4分の1の水準で、中国と比較しても約3分の1という状況です。4位のドイツとの差も縮まっており約1.3倍という水準となっています。
つまり、1997年と比較して米国との差は大きく広がり、最近抜かされたばかりの中国はすでに日本の3倍の経済規模になっています。また、ドイツをはじめとするその他の国々との差も詰まっています。国内で20年以上も経済が停滞している間に、国際的な存在感は明らかに低下していることが明確に示されているのではないのでしょうか。
その間、国内経済が穏やかで安定していたということはいえるかもしれませんが、世界の各国は右肩上がりで成長しているわけです。全体が急速に成長している世界の中で、「停滞している」ということは相対的に見て「国際的に後退した」ということがいえます。
経済が成長しなくなった日本経済
図5は1980年の各国のGDPを1.0とした場合の、成長率を表したグラフです。1980年の時点に対して、何倍になったかを数値として表現しています。
   図5 1980年を1.0とした場合のGDP成長率推移 名目値
この40年ほどで、カナダや米国は約7倍、イタリアが約8倍、フランスが約5倍で、低成長のドイツでも4倍近くGDPが増大しています。中国や韓国はもはやこのグラフの枠に収まらない成長率となっています。直近の2020年のデータが反映された国では、コロナ禍の影響で成長率が下がっている様子も確認できますね。
ただ、日本だけ1990年ごろから停滞が続き、2019年で2倍強といった低成長となっています。どうやら日本は、前回紹介した労働者の平均所得だけでなく、そもそもの国全体の経済活動自体が停滞しているようです。
現在、日本は世界第3位のGDPを誇る「経済大国」という立場を維持しています。しかし、経済が停滞し続けていることで、その存在感は年々薄れてきているようです。今後もこの傾向が続くようだと、世界第3位を保ち続けるのも難しいかもしれません。
それでは、そもそも、なぜ日本は経済大国となることができたのでしょうか。
多くの皆さんが気付いていることだと思いますが、日本は1億人以上もの人口を抱えている「人口大国だったから」という点が最も大きな理由です。人口が多ければ、たとえ一人一人の生み出す付加価値が低くても、合計値であるGDPは大きくなります。中国が先進国と位置付けられていなくても、GDP世界第2位の経済大国であるのはそういう要素が大きく影響しています。
ただ、日本は、先進国の中でもより早く大きく人口が減っていくことが確実視されている国です。人口が減る中で今のやり方を続けていれば、経済規模を維持していくことが難しいのは明らかです。その中で、より一層、一人一人の経済的豊かさや、労働者1人当たりの生産性を重視していくことが求められているのです。
次回は1人当たりの豊かさに焦点
さて、今回はGDPの推移をさまざまな角度から取り上げることで、国としての経済規模の推移と課題について紹介してきました。ここまで見てきたように、日本は、バブル崩壊後から長い間、国全体としての経済成長が停滞してしまっているということが分かりました。そして、急速に成長し続ける世界各国の中で「唯一停滞している先進国」という特殊な立場にあることが見えてきました。
それでは、1人当たりの豊かさについては、どのように変化したのでしょうか。GDPは国全体の経済規模を表しますが、人口1人当たりのGDPは国民一人一人の豊かさのレベルを表す指標となるはずです。次回以降で1人当たりの指標について取り上げていきたいと思います。 
●今や“凡庸な先進国”へ、一人当たりGDPに見る日本の立ち位置の変化 2021/5
前回は、われわれ労働者の生み出す仕事の価値(付加価値)の国としての合計金額である「GDP(国民総生産)」について取り上げました。日本は中国に抜かれたものの、現在も世界第3位のGDPを誇る経済大国です。ただ、それは日本が1億人以上もの人口を保有する「先進国有数の人口大国だから」という理由があることを指摘しました。
それでは人口の影響を取り除いた平均値である「1人当たりGDP」としてはどうなるのでしょうか。今回は、国民1人当たりの豊かさを示す指標でもある「1人当たりGDP」にフォーカスします。
先進国の中で2番目に人口が多い日本
まず、それぞれの国の人口から確認してみましょう。図1はOECD(経済協力開発機構)38カ国の2019年の人口データです。
   図1 OECD諸国の2019年の人口
3億人以上の米国が、先進国では圧倒的に人口の多い国となります。ただ、日本はその米国に次いでOECDで2番目に人口の多い「人口大国」であることが分かります。現在も1億2600万人もの人口を擁し、8300万人程度のドイツや6700万人程度のフランス、英国よりもはるかに多い規模の人口を抱えています。
ただ、こうした状況が今後変化していくというところが、本連載でも繰り返し述べている危機感につながってくるのです。少子高齢化は先進国共通の課題となっており、特に日本では今後人口が加速度的に減少することが確実視されています。人口の推移や、年齢構成の変化なども大変興味深いテーマですが、これらの課題については、今後詳細に紹介するつもりです。
1人当たりGDPは世界3位から中位に転落
日本は先進国と呼ばれる国々で構成されるOECDの中で2番目のGDPを誇り、2番目の人口を擁することが確認できました。人口が多ければ、その国で生み出される付加価値の合計値であるGDPが大きくなるのは当然ですね。
ただ、今のように経済が停滞した状態のまま人口が減れば、GDPも減少することは必然です。その際に、労働者でも消費者でもある私たちが、今よりも世界での存在感が薄れ、ますます困窮してしまう可能性すらあるのではないでしょうか。少なくとも、今後数十年間は人口の減り続けると予想されている日本で、われわれは今後どのような経済を目指していけばよいのでしょうか。
そのために重要な観点は、合計値ではなく一人一人の指標に目を向け、1人当たりの労働や生活の価値を上げていくことだと思います。その出発点として、日本の1人当たりのGDPがどの程度なのか、現在地を明らかにするのはとても大きなステップだと考えます。
そこで、まずはOECD各国の1人当たりGDPについて、長期推移から見ていきましょう。図2が、1人当たりGDPの長期推移グラフとなります。
   図2 OECD諸国の1人当たりGDPの推移
OECD全ての国のグラフを入れているので、少し見難いかもしれませんがご容赦ください。ドル換算値なので、米国(赤色)以外の国は、為替の影響を受けジグザグとした推移となりますが、全体的な傾向は読み取れると思います。
日本(青色)は、1980年代後半と、1990〜1995年で急激に1人当たりGDPが増大しています。1995年にはルクセンブルクやスイスに次いで、1人当たりGDPでも世界で3番目の水準にありました。1995年は米ドル/円の為替が大きく円高に振れたタイミングで、ドル換算値は大きく変化が出ていますので、その点はあらかじめご承知いただきたいと思います。
ただ、日本の1人当たりGDPは、ピークである1995年以降はずっと横ばいの停滞状態が続いています。その間、米国は大幅な伸長を続けており、ドイツやカナダなども成長が続いていますね。直近では、日本は先進国の中でも中位に埋もれています。OECDの平均値を黒線で表現していますが、2013年ごろからこの平均値に追い付かれ、同程度の推移となっています。
1人当たりGDPが低迷し“普通の国”となった日本
前回紹介した通り、日本としてのGDPのピークは1997年となります。そこで、当時の状況を切り取って1997年と2019年の一人当たりGDPを国別で順番に並べたグラフを見てみましょう。図3が1997年の、1人当たりGDPの国別比較のグラフとなります。
   図3 OECD諸国の1997年の1人当たりGDP
日本は3万5035ドルで、ルクセンブルク、スイス、ノルウェーに次いで4番目の水準でした。6位の米国(3万1424ドル)とも1割以上の差をつけており、OECD平均値1万8926ドルの2倍近くの高水準となっています。本連載の第1回でご紹介した通り、この時期における労働者の平均賃金も日本はOECDで3番目という水準でした。
次に、直近の1人当たりGDPについても確認してみます。図4が2019年の一人当たりGDPの国別比較グラフです。
   図4 OECD諸国の2019年の1人当たりGDP
順位を見てみると米国が6位を堅持しています。ただ金額は6万5240ドルとなっており、1997年の3万1424ドルと比べて2倍以上に成長しています。一方、日本は、4万292ドルで37カ国中19番目の水準にまで後退しています。G7の中では、ドイツやカナダ、英国に抜かれ、フランスとほぼ同等の水準です。OECDの平均値4万400ドルよりも下回っているという状況です。
残念ながら、日本は1人当たりGDPでも平均値程度の「凡庸な先進国」という立場となっていることは明らかです。しかも、停滞を続けていますので、このままだとさらに下位の国々に追い抜かれてしまう可能性すらあるわけです。こうした立ち位置の変化というものに目を向ける必要があります。
日本だけでなく米国以外のG7各国も“凡庸化”
ちなみに、第1回でも紹介しましたが、平均所得も2019年にはOECD中20位となっています。ご存じの方も多いと思いますが、実は平均所得と1人当たりGDPは極めて強い相関があるといわれています。
図5は、横軸に1人当たりGDP、縦軸に平均所得をとった相関図です。それぞれの国を、人口に応じた大きさのバブルで示してあり、バブルチャートとも呼ばれます。1997年のデータを基にしています。
   図5 1997年の平均所得と1人当たりGDPのバブルチャート
ご覧の通り、全ての国がほぼ一直線上に並びます。このような状態を「正の相関」があると表現します。正の相関はどちらか一方が増えると、もう片方も増える関係にあるということです。
この場合は、1人当たりGDPと平均所得は強い正の相関があるということになります。経済統計を見る際には、このような関係を「因果関係」ではなく「相関関係」として見る姿勢が大切なようです。
因果関係は「どちらか一方が増えた“から”もう一方も増えている」というように、原因と結果をひも付けようとする見方です。一方、相関関係はあくまでも「こちらも増えているし、あちらも増えている」という事実を述べるだけの見方です。まずは、統計データを見るときはフラットな姿勢で「相関関係があるかどうか」という見方をしておくと良いと考えます。
さて、脱線いたしましたが、話を戻します。1997年の時点では日本は、スイス、ルクセンブルクに次いで「右上」に位置し「最先進国」の1つとして全体をけん引する存在であることが、視覚的にも明らかに分かります。米国以外にもドイツや英国、フランスなどの国々よりも右上に位置しています。G7各国も全て平均より右上の領域に属していて、先進国の中でも存在感を発揮していることが見て取れますね。
しかし、2019年の様子を見ると、この状況は大きく変わっています。図6が2019年のバブルチャートとなります。
   図6 2019年の平均所得と1人当たりGDPのバブルチャート
全体として正の相関が強いことは変わりませんが、最も大きく変化しているのが、わが国日本の立ち位置です。1997年には最も右上に位置する国の一つつだったのが、2019年には平均値のど真ん中(厳密にはやや左下)に位置しています。米国はおろか、カナダ、ドイツ、英国、フランスよりも左下に来ています。
さらに付け加えると、これらの米国以外のG7各国についても「真ん中」周辺に集中していることが分かります。日本以外のこれらの国も、日本ほどではないにしても相対的にその存在感が薄れてきているということがいえそうです。
経済的には“凡庸な先進国”となった日本
今回は、1人当たりGDPという重要な経済指標について、統計データに基づくファクトを共有させていただきました。バブルチャートで日本の位置を可視化することで、平均所得と1人当たりGDPは強い相関がある事もご紹介しました。
そして、日本はかつて先進国をけん引する“最先進国”の1つでしたが、現在はどちらもほぼ平均値の“凡庸な先進国”となっています。
1人当たりGDPは、国民全体の1年間の付加価値を、総人口で割った数値です。大人も子供も高齢者も頭数としてカウントしています。言い方を変えれば「国民1人が1年間に稼ぐ付加価値の平均値」という意味になりますね。ある期間に稼いだ付加価値は「生産性」とも表現できますので「国民1人当たりの平均的な生産性」と言い換えることもできます。
こういう話をすると「日本は少子高齢化が最も進んでいて、高齢者が多いのだから、1人当たりGDPにしたら数値が低くなるのは当然ではないか」といったご指摘をいただくかもしれません。実際に、少子高齢化や人口減少は日本だけの問題ではありませんので、こうした指摘は必ずしも当たらないとは思いますが、この点についてはまた別の機会で触れようと思います。
ただ、このようなご指摘で言いたいことは「労働者1人当たりの生産性」では「わが国はまだまだ高い水準であるはずだ」ということなのだと思います。「労働生産性」は「労働者1人が一定期間に稼ぐ付加価値」ですね。今回の1人当たりGDPと近い意味を持ちますが、さらにわれわれ企業の活動とより密接に関係する指標といえます。 
●平均値から1割以上も低い日本の「労働生産性」、昔から低い理由 2021/6
第1回では主に「労働者の平均所得」、第2回では「GDP(国内総生産)」、第3回では「1人当たりGDP」について取り上げてきました。いずれの指標でも右肩上がりで成長を続ける世界の中で、日本だけが停滞している状況が確認できたと思います。
また、前回取り上げた「1人当たりGDP」は「国民の平均的な生産性」ともいえるかもしれません。「生産性」というのは、経済を評価する中で重要な指標です。ただ、近年はこの「生産性」という言葉が、あいまいな解釈のまま議論され、言葉だけが独り歩きしているような印象があります。
そこで今回は、付加価値やGDPとも関係の深い「労働生産性」について取り上げたいと思います。
そもそも生産性とは何か
生産性とは、投入する資源(従業員数や労働時間など)に対する、産出量(付加価値額や生産量)の割合です。一定の資源投入量で、どれだけの価値を生み出すかという効率を表す指標といえます。
生産性の中で特に経済統計でよく使われる指標が「労働生産性」です。労働生産性は「労働者1人が1時間当たりに稼ぐ付加価値」という意味です。式に表すと以下のような形となります。
   労働生産性 = 労働者1人当たり付加価値 ÷ 労働時間
この中で、付加価値は「産出額から中間投入を控除したもの」となります。計算式としては、次のような形で表せます。
   付加価値 = 人件費 + 支払利息等 + 動産・不動産賃借料 + 租税公課 + 営業純益
実感としては、付加価値は「粗利」に近いものだと考えていただければ良いと思います。労働者や機械が「単位当たりに産出する生産数」も生産性といえますが、ここまで紹介した労働生産性とは意味が異なりますね。特に、日本の製造業で生産技術や生産管理などに携われている方は、この生産数に対する生産性を重視していると思います。このような単位当たりの生産数は、労働生産性と明確に分ける意味で、本稿では「生産効率」と呼ぶことにします(勝手な造語になってしまいますが、ご容赦ください)。
労働生産性と生産効率は、概念は似ていますが、全く異なりますので、混同しないようにご注意ください。特に製造業では、高い「生産効率」を誇っているけれども、「労働生産性」の低い企業もたくさんあると思います。
日本の平均労働時間は1990年代から減少傾向
労働生産性を議論するには、まず計算式の分母である労働者の平均的な労働時間を知る必要があります。図1は先進国だとされる各国で構成されるOECD(経済協力開発機構)各国の労働者の平均労働時間の推移を表したグラフです。
   図1 OECD諸国の平均労働時間推移
日本を含め各国とも右肩下がりで、年々労働時間が短くなっている傾向であることが分かりますね。日本は長時間労働のイメージがありますが、それは1990年のバブル崩壊あたりまでで、その後は急速に平均労働時間が短くなっています。もちろん、この統計データにはいわゆる「サービス残業」の時間は含まれませんので、あらかじめご留意ください。
直近(2019年)の各国の平均労働時間は以下の通りとなります。
・韓国:1967時間
・米国:1779時間
・イタリア:1718時間
・日本:1644時間
・英国:1538時間
・ドイツ:1386時間
・OECD平均:1667時間
日本は米国や韓国、イタリアよりも労働時間が短く、既にOECDの平均値すら下回っていることになります。
日本の労働生産性は特に中小製造業で停滞
この平均労働時間を用いて、日本の法人企業の労働生産性を推定したものが次のグラフ図2となります。日本の法人企業の企業規模別の労働生産性を示しています。
   図2 日本の法人企業における企業規模別の労働生産性
図2では、法人企業統計調査の1人当たり付加価値の数値を、OECDの平均労働時間で割った推定値としています。ここでの企業規模は、中小企業が資本金1億円未満、中堅企業が資本金1億円以上10億円未満、大企業が資本金10億円以上としています。公式な定義とは異なりますが、便宜的にこのように区分しています。
ここであらためて図2を見ると、中小零細企業と、中堅企業、大企業とで大きく労働生産性に差があることが分かります。中小零細企業と中堅企業はそれぞれ3000円/時間と、4000〜4500円/時間程度で停滞しています。これに対し大企業の労働生産性は右肩上がりが続き、直近では8500円/時間程度にまで達しています。中小零細企業と大企業の労働生産性は実に3倍近くにまで差があることになります。
ただ、法人企業のうち約7割の労働者は、中小零細企業で働いている点についても留意が必要です。労働者の圧倒的多数は中小零細企業で働いているのです。「日本の労働生産性が低いのは、中小企業が足を引っ張っているためで、中小企業を統合して大規模化することで労働生産性を高める必要がある」といった意見はこのようなところから出てきているのだと思います。
日本企業の労働生産性の平均値は大体4000〜4500円/時間といったところで、停滞気味ではありますが、近年やや上向きつつあるようです。「労働者が1時間で稼ぐ付加価値(≒粗利)が平均で4000〜4500円」という数値はぜひ覚えておいてください。これはわれわれ中小製造業の値付け感(時価単価)とも大いに関係があります。時間単価と労働生産性については、今後考察していきます。
主要国で労働生産性がとりわけ低い日本
それでは、この労働生産性について、日本の水準は世界各国と比べるとどのようになるのでしょうか。例によってOECDのデータから、日本の立ち位置を確認してみましょう。図3が各国の労働生産性(Productivity: GDP per hour worked)の推移を示すグラフです。
   図3 OECD諸国の労働生産性(名目 ドル換算)
労働生産性をドル換算値で見ても、日本は円高だった1995年をピークに停滞気味です。他の国はリーマンショック後にやや停滞傾向が見られますが、全体的な傾向としては右肩上がりです。日本の労働生産性は直近では44.6ドル/時間です。1ドル105円とすれば、4700円/時間で図2の平均値とほぼ一致します。
日本の労働生産性は、経済が絶頂期だった1990年代後半に高い水準を示しますが、平均所得や1人当たりGDPがOECDで3〜4番目の高水準だったことを考えるとそれに比べて見劣りします。直近では、OECDの平均値にも抜かれ、先進国では下位に位置しています。
残念ながら「日本の生産性は低い」という指摘は本当のようです。
経済絶頂期でも振るわなかった日本の労働生産性
それでは、日本経済のピークであった1997年の状況を各国で比較してみましょう。図4が1997年の労働生産性のグラフです。
   図4 OECD諸国の1997年の労働生産性(名目 ドル換算)
日本は34.9ドル/時間で、34カ国中13位です。OECD平均が26.2ドル/時間、ドイツが38.6ドル/時間ですのでそれなりに高い水準ではあります。ただし、前回までに見てきたように、このころ平均所得は3万8823ドルで3位、1人当たりGDPは3万5035ドルで4位の水準でした。これに比べて明らかに労働生産性だけ見劣りする状況です。
図1を見ても明らかなように、このころの日本は平均労働時間が下がってきたといっても、他国と比べると長い時間働いていたわけですね。つまり、当時は長時間労働により稼いでいた面があり労働生産性を十分に高められていなかったということがいえそうです。
労働生産性は既に先進国下位に転落
さらに、現在の様子を見てみましょう。図5が2019年の労働生産性のグラフです。
   図5 OECD諸国の2019年の労働生産性 (名目 ドル換算)
米国やドイツ、フランス、英国、カナダは平均値以上をキープしていますが、日本は44.6ドル/時間で平均値の51.6ドル/時間を大きく下回っています。順位も35カ国中20位と下位にまで落ち込んでいますね。
直近では、1人当たりGDPも平均所得も20〜21位です。ただ、これら2つの指標は水準としては平均値をやや下回る程度ですが、労働生産性については平均値より1割以上小さい水準です。先ほどの国内統計データで、日本企業の労働生産性は4000〜4500円時間時間が平均値というデータを示しましたが、実はこの水準は先進国の中では低い方なわけです。同じ工業立国のドイツでは6500円/時間(61.5ドル/時間)、米国は8100円/時間(77ドル/時間)が平均値ということになりますので、大きな差があります。
なぜ「働き方改革」が必要なのか
本連載では今回に「平均所得」「1人当たりGDP」「労働生産性」と経済統計を見る上で重要な3つの指標についてご紹介してきました。そこで、これら3つのOECD内における水準を1つのグラフにまとめてみましょう。図6は、1人当たりGDP、平均所得、労働生産性について、OECD内での偏差値を示したものです。
   図6 1人当たりGDP、平均所得、労働生産性の偏差値推移
偏差値は、その数値が平均値からどれだけ離れているかの度合いを示す数値ですね。平均値が50です。つまりこのグラフが、先進国の中での日本経済を示す成績表のようなものです(為替の影響は受けます)。
特徴的なのは、この3つの指標は強い正の相関があることです。正の相関があるというのは、どちらかが増えると、もう一方も増えているという関係ですね。グラフを見て明らかなように、これら3つの指標はほぼ完全に連動して推移していることが分かります。つまり、労働生産性を上げれば、平均所得や1人当たりGDPも上がるだろうということです。「日本経済を良くするために労働生産性を上げるべき」という意見はこのような関係から導き出されているものと思います。
特に1人当たりGDPと平均所得の偏差値はほぼ一致して推移していますね。一方、労働生産性については、形は一致していますが、数値的には残り2つの指標よりも低いことが分かります。
日本は1995年に、平均所得も1人当たりGDPも偏差値68という極めて高い水準でした。しかし、直近では偏差値50でまさに「凡庸な先進国」です。一方、労働生産性は1995年でも偏差値60弱で、直近では偏差値48です。
日本の経済は、とりわけ「労働生産性が低い」ことは明らかです。日本特有の悪習である「サービス残業」はこの計算には入らないので、実態としてはさらに労働生産性は低い可能性があります。つまり、日本は1時間当たりに稼ぐ付加価値が低いという課題を経済的に良い時期から抱えており、それを解消できていないということが分かってきました。
近年盛んに「働き方改革」で労働時間の短縮が叫ばれているのは、こういった背景があるからです。労働生産性こそ、大きな改善の余地がある、という見立てですね。
私自身も、大企業でも中小企業でも働いたことのある身として、大いに実感するところがあります。まず、非製造部門では、提案のための提案資料作りや“超”大人数での会議、合意形成のための根回し、稟議資料のハンコの数など、挙げたらきりがありませんが、意思決定のための時間や労力が膨大にかかります。この辺りは、改革しないといけないと、切に思います。
「生産効率」は高いのになぜ「労働生産性」が低いのか
一方で、製造部門における「生産効率」は極めて高いのではないでしょうか。乾いた雑巾をさらに絞るような、無駄を省き効率化を図る努力は、各社相当力を入れています。DX(デジタルトランスフォーメーション)など、さらに効率化を図る手段が登場してきていますが、日本人としてはこういった最適化は得意とするところですね。
間接部門の非効率はありながら、製造現場は極めて高い「生産効率」を誇るのに、なぜ日本の企業は「労働生産性」が低いのでしょうか。私は、ビジネスの「値付け」が低いことが根本的な原因だと考えています。
「労働生産性」の定義を思い出してほしいのですが、労働生産性は付加価値を労働時間で割ったものです。同じ付加価値であれば、労働時間を短縮することで労働生産性は上がります。しかし、既に効率化されている工程をさらに短縮したところで、労働生産性の向上は微々たるものですね。
日本のビジネスでは「生産性を高める」場合には多くの経営者やコンサルタントなどは「無駄を省く」「コストをカットする」「工程時間を短縮する」という思考に走りがちです。つまり、「労働生産性」の式で言えば「分母=労働時間」を小さくすることです。これは間接部門で大いにやってほしい改革ではありますが、製造部門では既に十分以上に取り組んでいます。
しかし「分子=付加価値」を大きくすることに着目する人はそれほど多くはいません。本来、商売の基本は、高く買ってもらうことのはずです。当然、付加価値は、売値を上げることでも上がりますね。「売値はお客様や市場が決めるものだ」や「プロダクトアウトではなくマーケットインの思考をすべきだ」という価値観が極端に広まりすぎていて、自ら正当な対価とは何かを考えることを放棄してしまっている経営者も多いと考えます。
日本のビジネスでは、高く買ってもらう努力よりも、安くする代わりに大量に買ってもらうビジネスモデルが優先されている傾向のようですね。つまり、値付けを安くし、大量に生産して、大量に売るというまさに「規模の経済」を軸としたビジネス観です。残念ながら、この後人口が減っていき、消費者も減っていく日本において、規模の経済によって成長することには限界があります。
今回の労働生産性の数値を見てまず考えるべきは、労働の効率化よりもむしろ、労働に対する適正な価値とは何かということでしょう。実は労働生産性の定義からも明らかなように「安すぎる仕事を適正価格に値上げすること」でも、大きく労働生産性が向上します。企業経営者はこの当然のことについても、もう少し真剣に向き合う必要があるのではないでしょうか。
また、自動化された手段に代替されていくビジネスは、今後労働者が不要になっていきます。特に「底辺への競争」ともいわれるグローバルビジネスなどで「規模の経済」を軸としたビジネスほど、労働者が自動化された手段に代替されやすいと思います。このようなビジネスでは、国内の労働者よりも新興国の労働者へ、新興国の労働者よりも自動化された手段へ、といった具合に安さを追い求めていく方向性になりがちです。
既にグローバルビジネスに組み込まれているビジネスは、今後はさらに新興国ではなく自動化された手段もライバルになっていきます。企業経営者はこのような「時代との競争」を戦いながら、真に価値を生み出す「人の仕事」をどのように創り出すかが求められているように思います。
その1つの方向性が、国内中小企業が規模の経済では成立しないニッチ領域で、高付加価値となる仕事を展開する「多様性の経済」という軸ではないでしょうか。人口が減少する日本において、この多様性の経済を少しずつ成長させていく必要性を感じています。この多様性の経済については、今後ことあるごとに触れていきますので、その際に少しずつご紹介していきます。
先進国の中では凡庸で労働生産性が特に低い日本の労働環境
今回まではまず、日本経済の現状を知ることに重点を置いて、経済統計というファクトを共有してきました。平均所得、1人当たりGDP、労働生産性といった主要な経済指標について、日本の現在地を確認できたのではないかと思います。そして、いずれの指標でも日本は最先進国の一角から「凡庸な先進国」に落ちぶれてしまっていること、とりわけ労働生産性が低いことをご理解いただけたのではないでしょうか。そして、労働生産性が低いということは、労働者が怠慢なわけではなく「値付けが低すぎるビジネスが多い」ということをご理解いただければと思います。
次回からは、この20〜30年ほどでの日本経済の「変化」について、ご紹介していきたいと思います。失われた〇〇年といわれるうちに、停滞しているように見えて、実は変化していることも多いですね。何が変化していて、何が停滞しているのか、明らかにしていきたいと思います。
主要な観点は「人口や世帯構成」「物価やデフレ/インフレ」「為替・物価水準」といったあたりです。また、日本企業の変質と「日本型グローバリズム」とも呼べる特有の変化についても共有していきたいと思います。普段は目にしないような統計データが続くかもしれませんが、引き続きお付き合いいただければ幸いです。 
●本当に日本は「デフレ」なのか、「物価」から見る日本の「実質的経済」 2021/7
ここまで、第1回では主に「労働者の平均所得」、第2回では「GDP(国内総生産)」、第3回では「1人当たりGDP」、第4回では「労働生産性」について取り上げてきました。
日本経済のある意味で“成績”を示すこれらの指標で見ると、日本は最先進国の一角から既に「凡庸な先進国」へと大きく後退してしまったことが分かりました。さらに、この中でもとりわけ「労働生産性」が低いという特徴も見えてきました。ここまでを通じ「日本経済の現状」を整理できたところで、今回からはこの数十年で変化した(あるいは変化しなかった)部分を確認していきます。
具体的には「物価」「為替」「人口」など経済統計を考えるときにパラメータとして機能する指標となります。この中でも特に「物価」はインフレやデフレ、名目値や実質値といった指標に関わり、経済統計への理解をややこしくする存在だといえます。今回はこの「物価」に注目して話を進めていきたいと思います。
そもそも物価とは何か
「物価」とは、言葉の通り「モノの価格」のことです。経済学では特に「経済全体でのモノやサービスの一般的な価値と価格の関係性を示すもの」として使用される言葉です。
例えば、20年前に200円だった雑誌が、現在では300円に上がって値段が上がっていることがあります。その雑誌の内容が変わらなければ、100円分値上がりしたことになります。このような個々の値段を総合的に1つの指標として平均化し、まとめたのが「物価」です。20年前と今とで、給料が一緒だったとしても、物価が2倍に上がっていたら、その分実際に買えるものが減りますので「実質的」に貧しくなりますね。逆に物価が半分になれば、2倍のモノを買うことができます。
物価とは、このように時の推移とともに、実質的に豊かになったかどうかを図るための指標の役割を果たします。物価は、モノとお金の相対的な価値の変化という意味も持つ点を覚えておきましょう。
物価を表す指標で代表的なものは「消費者物価指数」と「GDPデフレータ」です(本稿では「デフレーター」を「デフレータ」として統一して表記します)。
「消費者物価指数(CPI: Consumer Price Index)」は「日常生活で私たち消費者が購入する商品の価格の動きを総合して見ようとするもので、私たちが日常購入する食料品、衣料品、電気製品、化粧品などの財の価格の動きのほかに、家賃、通信料、授業料、理髪料などのようなサービスの価格の動きも含まれます」(総務省「消費者物価指数のしくみと見方」より引用)。
一方の「GDPデフレータ」は、GDPについてのデフレータです。デフレータとは「名目価額から実質価額を算出するために用いられる価格指数」です。そして「デフレータで名目価額を除して実質価額を求めることをデフレーション」(内閣府 国民経済計算「用語解説」より引用)と呼びます。
2つの指標とも物価を表すものですが、消費者物価指数は私たち消費者が購入するような身近なモノやサービス、GDPデフレータは経済活動全体としてのモノやサービスの価格を表したものとして理解するとよいでしょう。
それではまず、この2つの指標の長期推移を見てみましょう。図1は物価の推移データとなります。
   図1 日本の物価推移
大切な観点は、物価は必ず基準年に対して何倍になったかという、相対的な数値として表現されるという部分です。図1は1970年を基準値(100)とした場合の、物価の変化を表しています。
これを見ると、消費者物価指数もGDPデフレータも1990年代中盤をピークにして、減少し停滞しています。ただ、最近になり、少し上昇傾向を示しているといえます。
1970年時点と比べると、消費者物価指数は約3倍、GDPデフレータは約2倍になっています。全体的にモノやサービスの値段が50年間で2〜3倍ほどに上がったということになります。
また、GDPデフレータは消費者物価指数よりもずいぶんと低い数値になっています。GDPデフレータには、消費者物価指数では観測されない、企業間取引なども含まれるためこのような乖離(かいり)が起こるようです。
消費者物価指数とGDPデフレータそれぞれの内訳
参考までに、消費者物価指数の詳細内訳の推移グラフも見てみましょう。図2が消費者物価指数の1970年を基準値(100)としたときの、総合値を構成する各項目の推移です。
   図2 消費者物価指数の詳細推移グラフ
当然ですが、総合値よりも高い項目もあれば、低い項目もあります。「家具・家事用品」は「総合値」よりも大きくマイナスで推移しているのに対して「教育」は大きくプラスです。1990年代以降は全体的に停滞気味です。
このように、消費者物価指数は各項目を案分して、1つの指標としてまとめているわけです。当然、この項目はさらに詳細の細項目を案分してまとめている指標になりますし、その細項目はさらに個別の品目の価格を案分してまとめた指標となります。例えば、「食料」は「魚介類」や「肉類」「野菜」「果物」などを総合した指標です。そして、「肉類」も「豚肉」や「牛肉」などを総合した指標となるわけですね。最終的には個別の販売価格の変動を観測したものに行き着くわけです。
GDPデフレータも同様に、GDPを構成する項目を総合した指標となります。図3がGDP生産面を構成する産業ごとのデフレータです。1994年基準のグラフとなります。
   図3 GDPデフレータ(生産面)の詳細推移グラフ
GDPデフレータについても総合値に対して、高い項目や低い項目があります。
注目はやはり工業(製造業)です。日本で最も規模の大きな産業の1つですが、右肩下がりで物価が下がっていることになります。1994年の水準に対して、現在は約7割という状況で、30年弱の間に3割程度も価格が下がっているという状況です。また、その他も全体的に横ばいか減少している産業が多いといえます。建設業がやや増加基調であることと、金融業が特徴的な推移をしています。私たちが普段消費者として購入したり、ビジネスで接したりするようなモノやサービスの価格と、物価指標との関係をご理解いただけたのではないでしょうか。
日本は本当にデフレなのか
それでは、日本の物価変動は、他の国々と比べるとどのような特徴があるのでしょうか。国際比較をしてみましょう。図4は1980年を基準値(100)としたGDPデフレータの推移です。
   図4 1980年基準のGDPデフレータの各国グラフ
日本と比べると他国は、物価が右肩上がりで上昇していることが分かります。各国の1980年時点との物価を比較すると、米国で2.6倍、ドイツで2.0倍、イタリアで5.4倍もの水準に達します。日本は1.1倍程度で、ピーク時でもせいぜい1.2倍程度です。このように、実は日本だけ「物価が上がっていない」という大きな特徴があります。
しかも、数年程度のレベルではなく、40年近くも物価がほとんど変わっていないのです。これは「物価が安定している」と見ることもできますし「物価が上昇するのが当たり前の世界で置いて行かれている」という見方もできます。
経済用語に「インフレーション」(以下、インフレ)や「デフレーション」(以下、デフレ)という用語がありますね。ニュースなどでも「デフレからの脱却」などと聞くこともあるのではないでしょうか。「インフレ」は物価が継続的に上昇していく現象、「デフレ」は物価が継続的に下落していく現象です。
インフレとデフレは需要と供給のバランスによって説明されるのが一般的です。需要よりも供給が多いと、モノやサービスが売れなくなるので、企業は値段を下げてより売れるように調整するので、デフレになります。逆に供給よりも需要が多いと、企業はより高い値段をつけるようになり、インフレになります。このように、需要と供給がバランスを取れるように、物価が変動するという解釈ですね。
さらに一般的には、デフレは貧困化を伴うと言われます。需要よりも供給が多いので、企業はモノやサービスを売れるように値段を下げますが利益を出すために人件費や経費を削減します。また、将来の需要増も見込めないため、投資も控えます。人件費(消費者の所得)や投資は本来新たな需要を生むものですので、それらを削減することはさらに需要を減らし、経済が縮小していくことになります。このようにして物価と経済が連動して縮小し続けることを「デフレスパイラル」と呼びます。
図4を見る限りでは、日本以外の先進国は軒並み物価が上昇し続けているので、「インフレ」であることが分かります。一方で、日本の物価は横ばいです。「継続して物価が下落し続けている」というわけでもないので、デフレスパイラルとまではいえません。むしろ、ここ数年ほどは若干上昇傾向なので、「極めて穏やかなインフレ」ともいえます。
日本はデフレではなく「相対的デフレ期」
「ファクト」を通じてここまでで見えてきたものをまとめますと「日本はデフレか」という質問に対する答えは微妙なものだといえます。以下がその理由です。
・継続して物価指標が下がり続けているわけではない
・特に近年はわずかながら上昇傾向にある
・消費者物価指数とGDPデフレータに乖離(かいり)がある
・物価指標の詳細を見ると、項目によって上がったり下がったりしている
このようなことから、日本は30年程の間、デフレでもインフレでもない、物価が停滞した状態が続いているといえます。ただし、前回までに見てきた通り、労働者は以前よりも貧困化し、日本経済は成長している世界の中で取り残されつつある状況ですね。
日本はデフレではないけれど、物価が停滞していて、インフレが当たり前の世界の中においては相対的に物価が下落していきますので「相対的デフレ期」とでも表現してはどうかと思います。
実質GDPとは?
さて、「物価」についてもう少し掘り下げていきます。ここからは「物価」と関連も深い「名目値」と「実質値」について考えていきます。皆さんもニュース報道などで「実質GDPが〇%の上昇」などと聞くことも多いのではないでしょうか。その言葉の持つ意味を解説していきます。
今まで、本連載で取り上げてきた数値は全て「名目値」です。名目値とは、観測される金額そのままの数値です。当然物価が変われば、その分「お金の価値」も変わりますね。そこで、物価の変動分だけ金額を割り引いた数値が「実質値」となります。つまり、実質値とは次のように計算される数値です。
   実質値 = 名目値 ÷ 物価(デフレータ)
例えば10年間で名目GDPが3倍、物価が2倍になったとすると、実質GDPは3÷2で1.5倍になったということになります。
私たち製造業の生産活動で考えてみます。例えば、ある製品を10年前は1個当たり付加価値100円で1000個作っていたとします。そして、現在は200円で1000個作っているとします。これを付加価値の合計(GDP)で見ると、10年前は10万円、現在は20万円となりますので、2倍となっています。しかし、作っている生産量は1000個で同じですね。金額としての名目上の付加価値は2倍、物価も2倍になっていますが、生産数量は変わらない状況が生まれているのです。
実質値を求めると、このように金額によらない数量的な変化を表すことになります。逆に、名目上での成長があっても、物価が上昇していれば、実質的な成長は目減りするという状況も生まれます。次ページでは、具体的な例で紹介していきます。
米国、ドイツ、フランスと日本の決定的な違いとは
図5〜7は、米国、ドイツ、フランスの名目GDPと実質GDPの推移を示したものです。実質GDPは1991年を基準にしています。
   図5 1991年基準の米国の名目GDPと実質GDPの推移
   図6 1991年基準のドイツの名目GDPと実質GDPの推移
   図7 1991年基準のフランスの名目GDPと実質GDPの推移
各国ともインフレなので、名目GDPよりも実質GDPが下回ったグラフとなっています。物価が上昇した分だけ、実質的な経済成長が追い付いていない状況が生まれています。
同様に日本の状況も見て見ましょう。図8が日本の名目GDPと実質GDPのグラフです。
   図8 1991年基準の日本の名目GDPと実質GDPの推移
図5〜7と図8を見比べてみてください。何か違和感がないでしょうか。
前者と後者の違いで明確な違いが、名目GDP(赤)と実質GDP(青)の位置が逆だということです。日本は、名目GDPよりも実質GDPが上になっています。さらに、日本は名目GDPが横ばいなのに、実質GDPは右肩上がりに増加しているように見えます。
これらのグラフは物価と実質値の関係を説明しやすくするために、意図的に1991年基準としたものです。統計データ上は実質値とは「基準年と物価が変わらなかったとした場合の、経済活動の数量的な推定値」となるわけです。
日本の場合は、現在よりも基準年(1991年)の方が物価が高かったので、現在は名目値よりも実質値の方が高くなっているというわけです。この場合は、1991年の物価であれば、現在は600兆円を超えるGDPに相当する経済活動をしているということになりますね。しかし、実際に観測される名目上のGDPは550兆円ほどです。
実質値で経済を評価することは極めて重要なことだと思います。ただ、日本の場合は物価がマイナスから横ばい傾向で、実質値で評価すると名目値における本質的な停滞が隠れてしまいます。そこで、本稿ではまず名目値を優先して取り上げています。
もし皆さんが、実質値、名目値、どちらかのデータしか見たことがなければ、もう一方の値がどのように変化しているのか、興味を持つとよいでしょう。
企業が「モノやサービスの値段を上げられていない」
今回は、経済統計上の変化を表す指標の中で「物価」について紹介しました。日本は物価については、先進国の中で特徴的な推移をしています。つまり、1990年中頃から物価が低下し、停滞する「相対的デフレ期」が継続しています。近年はやや上昇傾向ですが、今回のコロナ禍でどうなるかは、今後見ていく必要があるでしょう。
物価とは個々のモノやサービスの価格を総合した指標ですので、私たち企業が販売するモノやサービスの販売価格とも密接な関係があります。つまり、私たちからすると、この数十年間「モノやサービスの値段を上げられていない」ということになります。
逆にいえば、インフレが定着している日本以外の国では、モノやサービスの値段を上げていくのが「当たり前」です。日本だけが、値段を上げられていない異常事態ということになります。これが“相対的”デフレという意味です。インフレが当たり前の世界の中で、唯一物価が停滞しているということは、相対的には物価が下がっていることになりますからね。
では、なぜ日本では物価が上がらないのでしょうか。
実は、今回紹介した消費者物価指数やGDPデフレータは1つの国内における物価の変動を表しただけの指標です。国際的にその国の物価が高いのか低いのかは、物価指標からだけでは分かりません。日本の物価が停滞するヒントは「為替」や「物価水準」にあるかもしれません。消費者物価指数やGDPデフレータなどの物価指標と物価水準(Price Level)は似ていますし、関係もありますが、少し違う指標です。 
●日本は本当に「貿易立国」なのか、ファクトに見える真実 2021/8
ここまで、まずは「日本経済の現状」として、第1回では主に「労働者の平均所得」、第2回では「GDP(国内総生産)」、第3回では「1人当たりGDP」、第4回では「労働生産性」について取り上げてきました。これらの指標を見ると、日本は1990年代の最先進国の一角から、今や「凡庸な先進国」にまで後退し、特に「労働生産性」が低いという特徴が見えてきました。
また、第5回からは、経済の変化に着目点を移し、まずは「物価」にフォーカスしました。日本の物価は1990年代中頃からほとんど上がっていません。継続して物価が増加する「インフレ」が当たり前の世界の中で、唯一「物価が停滞する国」であるようです。これだけ長期間物価が停滞するということは、私たち企業からすると「モノやサービスの値段を上げられていない状況が長く続いている」という意味にもなりますね。
さて今回は、もう1つの重要な変化の指標である「為替レート」について着目します。そして、物価との関係も深い「物価水準」、輸出入などの「貿易」についてのファクトを共有していきたいと思います。
為替レートとは何か
為替レートとは、ある国の通貨と、他国の通貨の「交換比率」です。例えば、日本の円と米国のドルの交換比率が「ドルー円為替レート」となります。ニュースなどでも「現在のドルー円為替レートは、1ドル〇円」と耳にすることも多いことでしょう。ちなみに現在(2021年)は105〜110円/ドルくらいですね。
本連載でも異なる国の経済指標を比較するために、基軸通貨であるドル換算値の統計データを多用しています。その換算に用いるのも、為替レートです。
具体的には、ある年の日本のGDPが500兆円、為替レートが100円/ドルであったとすると、日本のGDPのドル換算値は、500兆÷100=5兆ドルとなります。これは、実際に5兆ドルを持っているわけではなく「ドルの単位に直したらこのような数字になる」という換算値です。当然、円高の年であればドル換算値はより大きな数値となりますし、円安の時はより小さく評価されます。
為替レートは「1ドルでどれだけの円と交換できるか」という見方で考えると、円安や円高の感覚がつかみやすくなります。例えば、100円/ドルの為替レートで考えてみましょう。これは1ドルで100円と交換できるということになります。
この時、10円分円安になると、円が安くなって1ドルで交換できる円が増えます。そのため、100+10=110円/ドルとなります。一方、10円分円高になるというのは、円が高くなって1ドルで買える円が減るということを意味します。そのため、100−10=90円/ドルとなります。円安と円高は取り違えやすいので、ここでしっかりとイメージを定着させていただければと思います。
この為替レートは、通貨の交換比率というだけではなく、貿易や経済活動にも大きく影響を与えるものです。円安になると、相手国から見て日本の製品が割安になるので、日本からの輸出が増え、輸出産業が活発化するといわれています。逆に円高になると、輸出が低調になり、国内の物価が他国に対して割高になるため、企業は海外進出による現地生産を促進するとされています。
また、円安になると、輸出型企業の業績向上が見込まれるため、日経平均株価が上がるという関連性も指摘されますね。為替レートの変動は、このように経済活動そのものに直接的に影響を与える指標だといえます。
対ドルの円の価値は50年で3倍に
それでは、日本の為替レートについて、実際の推移を見てみましょう。
   図1日本の為替レートと購買力平価の推移
図1は、1960年からのドルー円為替レート(青)の推移を示しています。数値は年間の平均値です。同じグラフに購買力平価(赤)も併記していますが、購買力平価については後ほどご説明します。
1970年まで、日本の円はドルに対して360円/ドルで固定されていました。為替レートを固定する固定相場制ですね。それが1973年に変動相場制へと移行し、段階的に円高方向への推移が始まります。1980年代前半までは200〜250円/ドル程度でしたが、1985年のプラザ合意を機に、急激に円高が進むことになりました。
これがきっかけで、日本の不動産や株式バブルが発生したと見られていますね。1995年には100円/ドルを割り込み、その後は上下しながらも100〜130円/ドルの間で推移します。2008年のリーマンショックを機に急速な円高が進み、一時は80円/ドルを割り込む水準まで達しました。このあたりは記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。輸出産業が大きくダメージを受け、海外生産を進めた企業が急激に増えたのも2010〜2012年あたりですね。その後は2016年ごろから105〜110円/ドルで安定している状況です。このように紆余曲折はあったものの、為替レートとして見た場合、この50年の間に、ドルに対する円の価値が3倍以上高まったということになります。
購買力平価と物価水準の関係
一方で、もう1つの指標である「購買力平価」(Purchasing Power Parities)とは何でしょうか。なかなか聞き慣れない用語ですので、説明していきます。
購買力平価とは「為替レートは自国と相手国の購買力の差によって決まる」という仮定に基づいた、通貨の交換比率を表す指標です。簡単にいえば、あるグローバルチェーンのハンバーガーが、米国で2ドル、日本では200円で販売されていたとしたら、実際的なドルー円の交換比率は200÷2=100円/ドルであるということです。もちろんこのハンバーガーは、それぞれの国で同じ価値を持つことが前提となります。これを「一物一価の原則」といいます。
これらの指標を総合した通貨全体としての交換比率が「(絶対的)購買力平価」となります。この購買力平価は理想的な交換比率を示していて、実際の為替レートも「購買力平価に近づいていく」と説明されます。ただ現在は、購買力平価は両国間の物価水準の違いに連動するとされる「相対的購買力平価」が用いられる方が一般的です。相対的購買力平価は、以下の式で求められます。
   相対的購買力平価 = 基準年の為替レート × 自国の物価指数 ÷ 相手国の物価指数
この計算で出てくる物価指数がまさに、GDPデフレータになるわけです。ある基準年の為替レートに対して、両国の物価の比率を掛け合わせたものになります。
また、為替レートと購買力平価の間には「物価水準」(Price Level)という指標が隠れています。図1を見て明らかなように、為替レートと購買力平価には乖離(かいり)がありますが、実はこの乖離している割合が「物価水準」となります。つまり、物価水準は次の式で算出されます。
   物価水準 = 購買力平価 ÷ 為替レート
実際の取引に伴う交換比率が、お金同士の交換比率に対してどれだけ割高(あるいは割安)かを表したものです。この場合、日本の円は、ドルに対してどれだけ割高(割安)に評価されているかということになります。
先ほどのハンバーガーの例で見てみましょう。
ある時点で、日本のハンバーガーが200円、米国のハンバーガーが2ドル、為替レートが50円/ドルだったとします。この場合、購買力平価は、200÷2=100円/ドルとなります。しかし、実際の為替レートは50円/ドルです。この乖離が物価水準となります。つまり、100÷50=2となり、日本は米国に対して2倍の物価水準だといえるということになります。
もう少し身近にイメージできるようにかみ砕いて説明します。例えば、あなたが米国に住んでいるとします。米国国内ではハンバーガーを2ドルで食べることができます。一方、出張で日本に行って、ハンバーガーを食べようとすると、日本では200円必要なので、ドルを円に換金します。日本でハンバーガーを食べるのに必要な200円を手に入れようとすると、200円÷50円/ドル(為替レート)=4となり、4ドル必要になります(手数料は無視します)。
つまり、米国では2ドルでハンバーガー1個を食べられるのに、日本では4ドル必要になるということになります。これが物価水準の違いで、この条件下では、米国と日本に2倍の物価の違いがあるということになります。例えば、スイスなどは「物価が高い国」というイメージがあると思いますが、この場合の物価とはこの「物価水準」を指しています。
スイスより物価水準が高かった日本
それでは各国の物価水準を見てみましょう。図2がOECD各国の物価水準の推移です。米国(ドル)を1.0とした場合の相対的な比率として表現しています。
   図2 各国の物価水準推移
消費者物価指数やGDPデフレータは、あくまでも国の中での物価変化を示しています。物価水準を見ると、物価の国際的な比較が可能となります。厳密性という意味では疑問が残りますが、参考になる指標だと考えます。
これを見ると、日本は1980年代後半から2000年代前半まで、高い水準を続けています。特に、1995年には1.86という極めて高い水準となっていました。これは、米国の2倍近くの物価水準で、その他の国を見ても、スイスより「物価が高い国」だったわけですね。この頃は、日本から見ると、他国のモノやサービスが極端に安く見えたのではないでしょうか。実際に、この頃には日本企業による海外企業の買収などが話題となりました。
一方で、1995年以降は、日本の物価水準は、上下はあるものの、傾向的には減少傾向だといえます。最近では米国を下回り、0.97まで低下しています。これは、対米国の物価水準が、25年間で約半分になったことを示しています。
このグラフからも分かる通り、日本国内の物価が「相対的デフレ期(前回参照)」により停滞している間に、国際的な物価水準が低下してきた様子が見て取れます。そして同時に、日本の製品がなぜ海外で売れなくなり、企業が海外進出を進めたのかということもこのグラフを見れば納得できるのではないでしょうか。物価水準で見ると、1990年代〜2010年代中頃まで、日本で作ったモノは、海外から見れば割高だったわけです。
経済力とも強い関連性がある物価水準
実は、図3のように、物価水準は1人当たりGDPとも強い相関があります。
   図3 物価水準と1人当たりGDPの相関
図3は横軸に物価水準、縦軸に1人当たり名目GDPをとり、それぞれのOECDの平均値に対する割合をプロットしたものです。1997年から2019年までの変化を描いています。このグラフを見て明らかなように、物価水準が高いほど、1人当たりGDPも高いという正の相関があることが分かります。つまり右上に進めば進むほど、経済力が強いということがいえます。
日本(青)は右上の領域から直近では中心付近へと、大きく後退しています。右上の領域の「強い経済」という立場を維持できずに、平均付近まで後退しているという動きが見て取れます。逆に韓国(茶)は左下の領域から徐々に中心へと移動してきていますね。ドイツ(緑)は比較的中心付近の位置を維持しています。輸出に有利な比較的物価水準の低い状態を維持しつつ、1人当たりGDPはやや高めの位置です。スイス(深緑)やルクセンブルク(深緑)は右上の領域での推移を維持しています。つまり、物価水準の高い、経済の強い国であり続けているわけです。
日本は本当に貿易立国なのか
為替レートと経済の関係で、もう1つ重要なことは、輸出や輸入といった貿易との関係です。日本は自動車産業など、輸出型産業が多いので、「円安」の方が都合が良いといわれていることを先述しましたが、一方で円安の場合は、エネルギーや資源などの輸入が割高となります。つまり、輸出型の経済であれば円安が都合がよく、輸入型の内需の強い経済であれば円高の方が都合が良いことになります。ここでは日本が「貿易立国」だというイメージが現在も当てはまるかを考えてみましょう。
図4は輸出額のGDPに対する割合を国ごとに示したグラフです。
   図4 各国のGDPに対する輸出の割合(2018年)
輸出が多いイメージのあるドイツや韓国は、それぞれ47%、44%と主要国では高い水準であることが分かります。一方で日本はわずか18%です。この数値は、OECD36カ国中35番目で、内需大国の米国の次に低い水準になります。実は、日本は経済規模の割には、輸出の極めて少ない国だということになります。
念のためにもう1つグラフを見ていただきましょう。図5は、人口1人当たりの各国の輸出額をグラフ化したものです。
   図5 各国の人口1人当たりの輸出額推移
人口1人当たりの輸出額で見ても、日本は非常に小さい水準であることが分かります。工業立国だとされているドイツは、輸出が非常に多く、金額で言えば日本の3倍くらいの水準になります。
さらに、純輸出額についても見てもらいましょう。図6は各国の人口1人当たりの純輸出額の推移を示しています。純輸出額は輸出額から輸入額を差し引いたもので「貿易収支」とも呼ばれます。GDP支出面に直接加えられる数値でもあります。
   図6 各国の1人当たり純輸出額推移
現在の日本(青)も含めて多くの国では、輸出額と輸入額はほぼ均衡していて、差し引きの純輸出額はほぼ相殺されてゼロ付近で推移しているケースが多いように見えます。この純輸出額で見ると、日本は確かに1990年代中頃まではプラスで推移していたことが分かります。常に輸出が超過していたわけですね。その後は、ドイツ(緑)や韓国が(茶)大きく純輸出を伸ばす中で、マイナスやゼロ近辺にとどまります。一方、米国は大きく輸入が超過している国だということが分かります。
このように、各国の状況を比較してみると、実は日本は、ドイツや韓国のような貿易型の経済ではなく、米国に比較的近い内需型の経済であることが見えてきます。貿易立国が字の通り「貿易で成り立っている国」とするのであれば、それはドイツや韓国のように、輸出で経済が成り立っている国であり、日本はこうした姿には当てはまりません。
「日本は貿易立国で為替レートは円安の方が良い」というイメージがありますが、これらのグラフや数値から見ると、この考え方ははたして正しいのでしょうか。本稿ではその是非を議論することが本題ではありませんのでここには深入りしませんが、ぜひ輸出や輸入、為替レートの関係について考えてみていただきたいと思います。
なぜ日本の輸出額はこんなに少ないのか
今回は、海外との通貨の交換比率である為替レートについて取り上げました。日本は、1973年の変動相場制への移行以来、全体的には円高が進んで停滞しています。一方で、物価と為替レートの関係から、国際的な物価の程度を比較できる「物価水準」についても紹介しました。日本は円高の進展もあり、1995年をピークに極めて物価水準の高い期間がありました。しかし、国内の物価が停滞するのと並行して、この物価水準も相対的に下がってきています。
また、為替に関連して、輸出についてもファクトを確認しました。貿易立国というイメージの強い日本ですが、輸出額は対GDP比で見ても、1人当たりの数値で見ても、先進国で極めて小さい水準であることが分かりました。日本経済の実態は、貿易立国ではなく、内需型経済に依存する国だということが明らかになったと考えます。
それではなぜ、製造業が盛んで工業品の輸出が多いと思われる日本で、こんなに輸出額が少ないのでしょうか。
それには、もともと内需型であったという面もありますが、輸出型の産業の多くが既に海外進出を進めていて、輸出よりも現地生産を増やしているという側面が大きいようです。実は、日本では「日本型グローバリズム」とも呼べるような特殊なグローバル化が進んでいます。
●工業が縮小する工業立国である日本、歪な「日本型グローバリズム」とは 2021/9
ここまでで「日本経済の現状」として、日本は平均所得などの主要な経済指標で見ると、1990年代の最先進国の一角から、今や「凡庸な先進国」にまで後退し、特に「労働生産性」が低いという特徴が分かりました。第5回からは「経済の変化のポイント」に着目点を移し、まず日本は「物価」が停滞していることを取り上げました。そして前回の「日本は本当に『貿易立国』なのか、ファクトに見える真実」は「為替」が長期的にみて円高に推移する中で、1990年代に国際的な「物価水準」が極めて高い時期があり、その後徐々に低下していく状況にあることが見えてきました。
日本は1990年代の経済が強く物価の高い国から、長い停滞を経て現在は凡庸で主要国の中で中程度の物価の国へと立ち位置を変化させたことになります。また、為替とも関係の深い輸出や輸入などの「貿易」についてもファクトを確認したところ、日本は輸出も輸入も先進国の中では極めて少ない水準で、ドイツや韓国のような「貿易立国」というよりも、むしろ「内需型経済」であることが確認できました。
なぜ日本は、ドイツや韓国のように工業が盛んであるにもかかわらず、貿易が少ないのでしょうか。その要因は「日本型グローバリズム」とも呼べるような日本特有のグローバル化にありそうです。今回は、企業のグローバル化について焦点を当て、ファクトを共有していきます。
GDPの産業別推移に見る国ごとの特徴
本連載第2回で各国の国内総生産(GDP)は、支出面、生産面、分配面があることを述べました。この中でもよく知られているのが、消費や投資など支出面のGDPですね。日本は、家計の消費支出が停滞し、投資(総資本形成)が減少しています。その反面、政府の消費支出が増大していて、全体としては30年近くGDPが停滞しています。
では、このような支出面だけでなく、生産面についてはどうなっているのでしょうか。今回はまずGDPの生産面についてファクトを共有するところから始めましょう。図1は米国のGDPにおける生産面のグラフです。
   図1 米国の名目GDPにおける生産面の各種推移
GDPの生産面における指標は、第一次産業や工業、一般サービス業など、産業ごとの付加価値(GDP)を表したものになります。どのような産業の規模が大きく、成長しているかを読み取れるため非常に興味深いものとなっています。
この産業の分け方は国際標準産業分類(ISIC rev4)に従ったものになっています。第一次産業には農業、林業、漁業が含まれます。一般サービス業には販売業、運送業、修理業、飲食業、宿泊業などが入ります。専門サービス業は専門技術職、士業などが対象となります。
米国では工業と一般サービス業の規模が大きく、成長もしていますが、それよりも公務・教育・保健の比率が大きい産業構造であることが分かります。公務の中に「防衛産業」も含まれますので、その影響も大きいのではないでしょうか。
工業が縮小する工業立国である日本
同様に他国についても見てみましょう。図2がドイツ、図3が韓国のGDP生産面のグラフです。どちらも工業立国らしく、工業が最大産業で大きく成長していることが確認できますね。その他の産業もおおむね右肩上がりであることが分かります。
   図2 ドイツの名目GDPにおける生産面の各種推移
   図3 韓国の名目GDPにおける生産面の各種推移
それでは、日本はどうでしょうか。図4が日本のGDP生産面についてのグラフです。
   図4 日本の名目GDPにおける生産面の各種推移
ドイツや韓国と同様に工業が最大の産業ですが、大きく様相が異なりますね。まず、全体的にどの産業の付加価値も横ばいです。そして最大産業である工業が、近年持ち直し気味ではあるものの、1997年から減少し停滞しています。
1997年には140兆円だったのが、直近では130兆円弱にとどまり、20年以上前の水準すら超えていません。建設業も減少した後は停滞が続いており、1997年から10兆円ほど減少しています。
こうして見ると、最大産業の工業が、増加どころか縮小しているのは驚きの状況ではないでしょうか。そしてその工業に替わるような成長産業と呼べる産業も見当たりません。公務・教育・保健と専門サービス業が、やや規模も大きく増加基調である程度でしょうか。
ここではまず、日本の産業ごとの付加価値が全体的に停滞していて、特に工業(製造業)が減少しているという点を覚えておいていただきたいと思います。
日本企業における海外事業は右肩上がりに成長
さて、今回のテーマの「企業のグローバル化」について話を進めたいと思います。皆さんは企業のグローバル化というとどのようなことを思い浮かべるでしょうか。
企業のグローバル化には大きく3つの側面があります。1つ目は輸出や輸入など海外との取引である「貿易の活発化」です。こちらについては主に前回取り上げました。日本の場合、年々貿易額は増えていますが、経済活動全体に占める割合は小さく、先進国の中では「貿易が少ない国」だといえます。
2つ目は、企業の株式の中で外国資本が存在感を増す「企業所有の国際化」です。日本も外国人投資家の存在が大きくなっているといわれています。この点については、いずれ機会があれば取り上げていきたいと思います。
そして3つ目が、企業の海外事業の活発化による「企業活動の多国籍化」です。企業が多国籍化し、本社の所在する国とは半ば独立して事業活動を広げています。今回はこの企業活動の多国籍化に焦点を当ててみましょう。
企業の多国籍化は、企業が本社の所在する国と異なる外国で事業を行うことを意味しますが、具体的には「支店」と「現地法人」の2つの手段があります。近年では、現地法人を設立した多国籍化が増えているようです。
本社企業からすると、現地法人でビジネスをすることで、その利益を配当金として還流させることが可能で、この配当金は営業外利益として利益に加算されます。本社企業には当然、税引き前の当期純利益に対して法人税などが課されますが、この配当金に対しては「受取配当金等の益金不算入」という制度が適用され、日本では税金がほぼ課せられません(もちろん現地国では納税しますので、2重課税を避けるという意味です)。
このように、企業の多国籍化は、本社企業にとっては海外に活動の幅を広げるとともに、その果実を本社にも還流させる手段となります。日本では、先に取り上げたように国内経済が停滞していますので、新たな市場を求めての海外進出が加速しているといわれています。図5は日本企業の現地法人の状況をまとめたグラフです。
   図5 日本企業における現地法人の企業数と常時従業者数の推移
これを見ると、現地法人の企業数も、現地で雇用された従業者数も右肩上がりで増大しています。2018年の時点では、現地法人が約2万5000社で、約600万人の現地従業者を雇用していることになります。日本の労働者が5000万〜6000万人といわれていますので、その約10分の1にあたる労働者が、日本企業によって海外で雇用されていることになります。
では、これらの海外現地法人の売り上げや利益は伸びているのでしょうか。図6が日本企業の現地法人の売上高、経常利益、当期純利益をまとめたものです。
   図6 日本企業における現地法人の売上高・経常利益・当期純利益
グラフでは、いずれも右肩上がりで増大していることが見て取れます。日本企業の売上高は全体で1500兆円(法人企業統計調査)ほどですが、1990年のバブル崩壊以降停滞しています。現地法人の売上高が直近で300兆円ほどですので、国内全体の5分の1にあたる規模の事業が、既に海外の現地法人で行われているわけです。日本の国内事業が横ばいなのに対して、海外事業は大きく成長していることが分かります。
企業の多国籍化で置かれた日本の特殊な状況
さて、ここであらためて企業活動の多国籍化について考えてみたいと思います。企業の多国籍化を考えた場合、本来は2つの方向性で行われるべきです。2つの方向性というのはすなわち、自国企業の他国への海外進出(流出: Outward Activity)と、他国企業の自国への進出(流入: Inward Activity)です。
「流出」は、自国企業が他国で現地国民を雇い、生産活動を行い(付加価値の創出)、利益を上げて税金を納めます。そして、利益の一部を本社企業へと還流するというものですね。日本と現地国での関係で見れば、企業活動に付随する付加価値(GDP)、雇用、税収は現地国のものとなり、利益の一部として本社企業に還流したものが日本のものとなります。
一方で、他国企業が自国へ進出してきた「流入」の場合は、自国民が雇用され、自国での生産活動が行われて、自国へ納税され、利益の一部が配当金として他国へ還流していくという仕組みとなります。
本社企業へ還流する「利益」と、現地国で行われる「生産活動」のどちらを重視するかで、「流出」や「流入」のイメージは変わると思いますが、本稿では後者を重視します。
実は日本は、日本企業の他国への流出は盛んですが、他国企業の日本への流入がほとんどない特殊な状況です。特に製造業でその傾向が顕著なようです。実際に統計データ(ファクト)で確認してみましょう。図7は各国の多国籍企業(製造業)の本社所在国以外での売上高(流出)を並べたグラフです。
   図7 2018年の多国籍企業(製造業)における「流出」売上高の各国別比較
大きい順から米国、日本、ドイツとなっており、各国の経済規模に応じたような順位になっていますね。日本は米国に次いで2番目に大きな水準で、1037G(ギガ)ドル(約120兆円)の売上高を海外で行っていることになります。Gは10の9乗の意味となります。
一方、図8は、当該国以外の多国籍企業の進出による「流入」売上高のグラフです。他国からどれだけの事業が自国に進出してきているかが分かります。
   図8 2016年の多国籍企業(製造業)における「流入」売上高の各国別比較
米国(1682Gドル)やドイツ(667Gドル)はやはり大きな数値ですが、日本は103Gドル(約12兆円)でこれらの国と比べると格段に小さな水準で、全体では13番目と中位に属します。日本は明らかに流出に対して、流入が少ないといえます。
この差異を分かりやすく図示したのが図9となります。こちらは売上高についての流入と流出の差額です。
   図9 2016年の多国籍企業(製造業)における流入と流出の差額(正味)の各国別比較
正味ではプラスの国もあればマイナスの国もあります。プラスの国を見るとカナダやイギリスの他では、ハンガリーやポーランドなど比較的新興地域の国が多いように見えます。一方で、マイナスの国はイタリア、ドイツ、フランス、米国、日本などです。特に日本は、流出が2番目に多い水準だった割に、流入が極端に少ないため、正味では米国を抑えて最もマイナス額が大きい国となっています。このように日本は、企業の多国籍化によるグローバル収支で見ると、大きくマイナス(流出過多)の状況にあることが分かります。
流出に偏った「日本型グローバリズム」とは
ここまでで、日本企業のグローバル化は、他の先進国と比べると、流入が特に少なく、流出一方に偏った特殊な状況であることが見えつつあります。念のため、流出に対する流入の割合も確認してみましょう。図10が流出に対する流入の割合をグラフ化したものです。
   図10 2016年の多国籍企業(製造業)における流出に対する流入の割合の各国別比較
スロバキアやハンガリーなど発展中の国は、極端に流入が多い状態ですので特に大きな数値となっています。ただ、カナダが207.7%、イギリスが131.1%と流出より流入の方が多い状況になっています。イタリア、ドイツ、米国も70%前後ですので流出と流入が双方向で多く生まれていることが分かります。
こうしてみると、日本だけが9.9%と、流入が流出の10分の1未満という「一方的なグローバル化」が進んでいることになります。
では、売上高だけでなく、現地雇用者数でも確認してみましょう。図11が現地雇用者数の流出に対する流入の割合です。
   図11 2016年の多国籍企業(製造業)における現地雇用者数の流出に対する流入割合の各国別比較
ハンガリー、ポーランドなどは大きく流入の超過、カナダ、イギリスは100%前後で同程度、ドイツ、イタリア、米国は50%前後で双方向的であることが分かります。数値の前後はあれど、おおむね売上高の比率と似た傾向を示しているといえるでしょう。
ただ、こうした中で日本は3.7%と極端に低い水準となっています。これは、日本企業が海外現地法人で雇用している人員(約400万人)に対して、海外企業が日本で雇用している日本人が3.7%の割合でしかないということを示しています。このように、他国では流入超過や双方向的な企業のグローバル化が進む中で、日本だけが流出に偏ったグローバル化が進んでいることになります。
こうした状況は、厳密にいえばルクセンブルクやスイスも近い状態にあるものの、経済規模を考慮すると日本の置かれている状況は特殊です。「日本型グローバリズム」とも言うべき、日本特有の状況に置かれているといえるでしょう。
日本型グローバリズムにおける国内製造業への影響
さて、こうした「日本型グローバリズム」とも呼べる状況について、国内の事業者や消費者でもある労働者は、どのように捉えるべきなのでしょうか。
日本企業が海外進出を進めて、そこで大きく稼いでいると、その活躍ぶりに誇らしい気持ちになる人もいるかもしれません。逆に、外国企業が日本へ進出してくると、抵抗を感じる人もいるかもしれません。
ここまでファクトを通じて見てきたのは、積極的に海外進出を進め利益が増える日本企業の躍進と、その反対に外国企業がほとんど進出してこない国内経済の停滞でした。日本でこのように流出に偏ったグローバル化が進むということは、その差し引き分だけ国内で生まれたかもしれない生産活動(付加価値創出=GDP)、雇用、税収が目減りしている可能性を示しています。
特に海外生産が進む製造業では、図1のように国内での付加価値(GDP)の縮小が顕著です。こうした背景として、日本型グローバリズムが大きく影響していることは間違いないように考えます。
それでは、なぜ外国企業は日本へこれほど進出してこないのでしょうか。
まずは、言語や商習慣の違いなどの壁があることはもちろんですが、海外から見ると物価水準が高く進出するメリットを感じないのかもしれません。また、経済がこれだけ停滞している国での投資に魅力を感じないこともあるでしょう。
一方、日本企業はどんどん海外へ進出している状況です。学校の教科書でも「産業の空洞化」と書かれているくらいですね。もちろん、日本企業が海外進出しているビジネスは、日本で生産活動をするよりも利益が出るという「合理的な判断」のもと推進されているものだと思います。
つまり、国内で生産して輸出していた事業も、物価水準の高い日本で生産するのが「割高」なため、合理的判断として現地生産に切り替えていったということになるのではないでしょうか。このため、日本では国内生産からの輸出よりも、海外進出しての現地生産の方が優先的に進んでいるという側面があると考えられます。
海外進出がこのように一方的に進むと、企業の利益は増えますが、国内産業の付加価値は減ります。一見矛盾しているように見えるこの2つの事象は、企業の海外進出の構図を理解すると納得できるのではないでしょうか(もちろん、経済停滞の全てがこの日本型グローバリズムによるものではないと思います)。
そして、これらの背景が「なぜ日本は輸出が少ないのか」という問いの答えとも合致します。前回取り上げた通り、日本の輸出依存度(輸出額の対GDP比)は約18%と、先進国では内需大国米国に次いで2番目に小さい水準です。多くの輸出型産業が「国内生産して輸出」という手段から、「海外生産」に切り替わった結果、「経済規模の割に輸出が少ない状態」に至ったということになります。
日本は輸出が約100兆円ですが、海外現地法人の売上高が約300兆円と既に3倍の規模になっています。海外事業を通じて得られた利益が、本社企業の従業員の賃金アップに寄与していれば、国内経済にも大きくプラスの影響があると思います。
しかし、日本では労働者の賃金がむしろ減っている状況であるのは、本連載第1回でも見てきた通りですね。特に海外生産を進めるような大企業の多くは、国内の労働者を減らし人件費を抑制する一方で、株主への配当金と社内留保を増やしています(このあたりの日本企業の変化については、後日詳細に取り上げる予定です)。
現在の日本は、企業はもうかっていますが、労働者は貧困化している状況が生まれています。本来最も重要な、国内の消費者でもある労働者が困窮する結果となっているわけです。このように個々では合理的な判断で進めたことが、全体では予期せぬ事態に陥ることを「合成の誤謬(ごびゅう)」と言いますね。
現在日本で起こっていることは、国内経済が停滞する中で、企業が利益を求めるために合理的に行動した結果、付加価値が停滞し、人件費が抑制され、消費者でもある労働者が困窮することで、結果的にさらなる経済停滞を引き起こしているという面があります。このような「自己実現的な経済収縮」を引き起こしているのが、日本経済の姿ではないでしょうか。
国内経済の成長に必要な視点とは
企業のグローバル化に取り残されたのは、国内の多くの事業者と、消費者でもある労働者(多くの国民)、そして政府です。海外進出した企業の現地法人は、日本からは半ば独立した存在ですので、国内経済とはほぼ切り離された状況といえます。
そういう意味では、現在の「日本型グローバリズム」におけるグローバル化は、日本国内を豊かにはしてくれません。日本国内に残されたわれわれ自身が、国内でより豊かになっていくための経済活動を再構築していかざるを得ない段階に入っているといえます。
前回取り上げた通り、現在日本は「相対的デフレ期」によって、外国と比べると相対的に物価が下がっています。特に製造業では物価の低下が著しいですね。最近では「安い日本」という言葉もよく使われるようになりました。逆に言えば、海外のモノやサービスが年々高くなっていっています。日本は現在、海外から見ても標準的な物価水準に収まりつつあるということは、今までのように現地生産を進めるだけでなく、国内生産からの輸出でもメリットの出せる産業も出てくるはずです。
このような状況から考えると、これまでの海外進出一辺倒の方向性から、もう一度考え直す転機に入っているともいえるのではないでしょうか。そして、これらを解決するための、最も重要な観点が、国内経済を担う消費者でもあり労働者の労働への対価である「値付け」と「賃金」を継続的に上げていくことだと考えています。
残念ながら、現在労働者は多くの企業で「コスト」と見なされ、この価値観がより安い賃金を求めて海外進出を進める大きな要因となっています。本来、企業から見れば、従業員は将来にわたって付加価値を稼ぐための人材であり「投資対象」であるべきです。
国内経済を考える場合には、企業経営者は長期的な視野に立って、消費者でもある労働者に人材投資をしながら、その仕事の付加価値を高めていく姿勢が必要ではないでしょうか。そのためにも、「多様性の経済」を育て、規模の経済の価値観とバランスを取っていくことが必要と思います。
「多様性の経済」は、主に国内の中小企業が、適正規模で適正付加価値の国産ビジネスを展開し、短期的な利益よりも長期的な付加価値の向上を目指す価値観です。安く大量に売るという「規模の経済」によるグローバルビジネスだけが、われわれの経済活動ではありません。
逆に安く大量に売るビジネスにばかり価値を置きすぎたために、安いモノが溢れ、値上げができずに物価も停滞し、さらにより安く売るために人件費や仕入れ(他社の付加価値)を抑制するような停滞のスパイラルに陥っています。
また、既に「大企業ほど労働者が不要になる」という矛盾が多くの大企業で発生しています。規模の経済を追うビジネスほど、新興国への海外流出からさらに自働化が進み、かえって労働者が不要となるためです。
実は、国内企業の99%以上を占め、労働者の7割を雇用している国内経済の主役は中小企業です。そして、中小企業を主体としたニッチ産業は非常に多く存在します。高級品のビジネスに限らず、このような産業は国内でもあらゆるところに存在し、適正規模、適正付加価値が成立しやすい領域だと思います。
今後人口が減少していく日本においては特に「多様性の経済」を少しずつ育て「規模の経済」とバランスを取っていくことが必要なのだと考えます。次回はこの人口の変化について取り上げていきたいと思います。 
●「人口減による経済停滞」は本当か 自己実現型停滞から脱するために 2021/10
ここまで見てきたように、「日本経済の現状」を平均所得などの主要な経済指標で見ると、1990年代には最先進国の一角にありましたが、今では「凡庸な先進国」にまで後退しています。
「変化のポイント」として、連載の第5回、第6回では、日本は「物価」が停滞していて、長期的に見ると「為替」が円高に推移しているという点について紹介しました。その中で、1990年代に国際的な「物価水準」の極めて高い時期があり、国内の物価停滞と共に、徐々に低下していく「相対的デフレ期」とも呼べる状況であることが分かりました。日本は1990年代の経済が強く物価の高い国から、長い停滞を経て現在は凡庸で中程度の物価の国へと立ち位置を変化させたということになります。
また、第7回でも触れた通り、「貿易」については、日本は輸出も輸入も先進国の中では極めて少ない水準で「内需型経済」であることを確認しました。その背景には「日本型グローバリズム」とも呼べるような、流出に偏った日本特有の経済のグローバル化も影響していることが分かりました。
さて、今回はこれらの前提を踏まえ「内需型」への影響が大きい人口の問題を取り上げたいと考えています。日本は「少子高齢化」が進み、人口が減っていくと予想されています。日本の経済停滞の主因を、この少子高齢化や人口減少に求める意見も多いようです。この「人口の変化」についてファクトを共有していきたいと思います。
人口が緩やかに減少する日本
日本の経済が停滞するのは「少子高齢化により人口減少が目に見えており、市場が拡大しないから当然だ」という意見も多いようです。まずは、日本の人口について、現在はどのような状況なのか、ファクトから見ていきましょう。
図1が日本の人口の推移です。2018年までは実績値、2019年以降は推定値となります。緑色が20歳未満の若年人口、青が20〜64歳の生産年齢人口、赤が65歳以上の高齢人口を示します。
   図1 日本の人口推移
日本の総人口は2008年をピークとして、既に減少局面に入っています。内訳を見てみると、若年人口が減少し、高齢人口が増加していることが分かります。2019年以降は、高齢人口は一定水準で推移し、若年人口と生産年齢人口が徐々に減少していくと推定されています。現在のところ日本の総人口は1億2600万人程度ですが、2050年には1億人前後まで減少すると考えられています。
表1に具体的な数値をまとめてみました。
   表1 日本の人口
2018年に65歳以上の高齢人口は28.1%ですが、2050年には37.7%にまで増大していると見られます。一方で、生産年齢人口は、55.0%から47.8%に変化するという推定です。今後は約30年かけて総人口が2割減る見通しとなっていますが、その内訳を見れば少子高齢化がさらに進むことになります。
少子化と非婚率の関係とは
図2に日本人の出生、婚姻、死亡、増減数について推移をまとめたグラフを示します。
   図2 日本人の出生・婚姻・死亡・増減数の推移
これを見ると、出生数は右肩下がりで減少しています。団塊の世代(1947〜1949年生まれ)では年間に250万人以上の出生数があったのに対して、直近では80万人台に減少しています。年間の出生数は実に3分の1にまで減っていることになります。
一方で死亡数は右肩上がりで増加していますので、差し引きで大きく減少している状況です。その結果、2008年には初めて総人口が減少に転じました。人口減少の要因として、出生数が減少していることはよく知られていると思いますが、あまり注目されていませんが、死亡数が増加しているという側面もあるようです。
興味深いのは、1993年頃から出生数と婚姻数との比率(黒線)が1.5前後で横ばいとなっている点です。結婚して子供を持つ人数は変わらないか、やや上昇傾向ですらあります。つまり、少子化は「結婚してから持つ子供の人数が減っている」というよりも「結婚する人自体が減っている」ことで深刻化しているともいえそうです。
それでは、この「結婚した人の人数」についてのファクトを見ていきましょう。図3は日本人の50歳時の未婚割合を示します。
   図3 50歳時の未婚割合
このデータは死別や離別は別項目として集計されているので、純粋に50歳までに1回も結婚していない人の割合となります。日本では男性は1960年頃を底にして徐々に未婚割合が増加し始め、1990年代以降で急激に増加しています。今では、男性の4人に1人が未婚という状況です。
2014年に行われた「結婚・家族形成に関する意識調査」では、次のような報告がありました。
Q 結婚生活をスタートするにあたって必要な年収は?
A 497.9万円(未婚者)
Q 現在結婚していない理由は?(複数回答可能)
A 男性(20代、30代)の回答
2位:結婚後の生活資金が足りないと思うから(35.2%)
6位:結婚資金が足りないから(21.9%)
7位:雇用が安定していないから(20.3%)
結婚するためには一定以上の収入が必要と考えられていて、未婚の理由に経済的理由が多いということが目立ちます。このようなことからも、日本の少子化は、非婚化とも密接に関わっており、さらに非婚化は男性労働者の貧困化とも関係が深いということがいえるのではないでしょうか。
連載の第1回「われわれは貧困化している!? 労働賃金減少は先進国で日本だけ」では、労働者の貧困化について取り上げましたが、日本では特に男性労働者の平均所得が下がっているのが特徴的です。少子化は「多様化の進む成熟した国家の宿命」のように報じられることも多いようですが、日本の場合は経済的な要因で進んでいる面もあるといえます。
そう考えると、逆に経済成長によって、少子化にも歯止めをかけられる可能性もあるのではないでしょうか。ここからは人口が増えている他の国々の状況を見てみましょう。
人口が増える国、減る国
それでは、日本のこのような少子高齢化や人口減少と他の国々との比較を、ファクトを基に確認していきましょう。図4はOECD各国と中国、インドについて人口の増減率をまとめたグラフです。1970年時点を基準としています。
   図4 各国の人口増減率推移
こうして見ると、実はG7など主要国でも、人口の増える国と減る国に分かれていることに気付きます。米国やカナダ、英国、フランスはこのまま増加を続けそうです。一方で、日本だけでなくイタリア、ドイツ、韓国、中国などは徐々に減少局面に入っていきます。また、ラトビア、リトアニア、ハンガリーなど既に人口減少が進んでいる国もあります。
それでは、人口に占める生産年齢人口の比率はどのように変化しているのでしょうか。同じくOECDのデータを見てみましょう。図5は全人口に占める生産年齢人口の比率をグラフ化したものです。国の経済成長を考える上では、生産年齢人口の労働で、全人口の生活を支えていくことになりますので、とても重要な指標と言えます。
   図5 各国の生産年齢人口推移
日本は1990年代に比較的高い数値でしたが、その後は右肩下がりに低下しています。2018年には55%程度、2050年には48%になると想定されています。確かに日本は、先進国の中では他国に先行して生産年齢人口比率の低下が進みますが、それは日本だけではありません。インドなどの国を除けば、ほとんどの国が2050年で48〜56%程度の範囲に入ります。
こうして見ると、少子高齢化による生産年齢人口比率の低下は、どの先進国でも共通の課題だといえます。多少の時期や程度の差はありますが、日本ばかりが特殊な状況ではないということは人口問題のポイントではないでしょうか。
人口変化と経済成長の関係とは
日本をはじめ、成長期の多くの国では、人口の増加に伴って経済が成長し、生活が豊かになっていくという循環がありました。しかし、今後多くの国で直面するのは、人口が減ったり、生産年齢人口の比率が下がったりしていく中で、どのように「一人一人の生活を豊かにしていくか」ということではないでしょうか。
もちろん、経済規模(GDP)は、人口と極めて強い相関があります。特に1人当たりの生産性の近い先進国においては、人口とGDPがほぼ比例する関係となっています。
まずは人口とGDPの相関性について確認してみましょう。図6がOECD各国とBRICsにおける人口とGDPの相関図(バブルチャート)です。横軸に人口、縦軸にGDPとしています。両軸とも対数表記としていて、バブルの大きさは各国の1人当たりGDPを表しています。
   図6 各国の人口とGDPの相関図
当然ですが、人口と経済規模(GDP)は強い相関があることが分かります。基本的には人口が多いほど経済規模が大きいことになります。日本はこの中では5番目に人口が多く、3番目に経済規模(GDP)が大きい国です。
しかし、ここまでさまざまなファクトを通じて本連載で述べてきた通り、「経済規模が大きいこと」と「国民一人一人が豊かであること」とは必ずしも一致しません。国民の豊かさは「1人当たりGDP」などの1人当たりの指標で表されるべきです。
そして、今まで見てきた通り、1人当たりGDPは平均所得や労働生産性と強い相関があります。つまり、「1人当たりGDP」が大きければ「平均所得」や「労働生産性」も高い水準にあるということになります。
図6を見て分かる通り、どの領域にも「1人当たりGDP(=バブルの大きさ)」が大きい国も小さい国も存在します。つまり、「1人当たりGDP」と「人口」や「経済規模」には「明確な相関がない」ことが分かります。
それでは、よくいわれるような「人口が増加するほど経済は成長する」という点について検証してみましょう。図7はOECD各国の人口の増減率(横軸)と1人当たりGDP成長率(縦軸)の相関図です。バブルの大きさは2018年の1人当たりGDPの大きさを表します。数値はいずれも1997年から2018年の変化率としています。
   図7 人口増減率と1人当たりGDP成長率の相関図
日本は人口も1人当たりGDPもほぼ変化がありません。ドイツは人口の変化がほぼありませんが、1人当たりGDPは2倍近くに成長しています。リトアニア、ラトビア、エストニア、ハンガリー、ポーランドなどは、人口が停滞または減少しているにもかかわらず大きく経済成長しています。
このグラフを見て、どのように解釈するかは非常に難しいですね。一方で、これらの国と日本を外れ値として除外すれば、人口の増加率と1人当たりGDPの成長率は緩やかな正の相関(青い点線)があるようにも見えますね。
「人口が増加すると経済成長しやすい」ということはこの図からも見て取ることができます。しかし、「人口が減っても経済成長している国がある」ということも同時に表現されているように捉えています。つまり、人口が減る社会においても、国民一人一人が豊かになれる方法というのは存在するということです。
これから目指すべき「経済成長」とは
今回は、経済規模と関係の深い「人口の変化」について取り上げてきました。その国の経済的な豊かさとは、「経済規模」ではなく、「1人当たりGDP」や「平均所得」「労働生産性」などの1人当たりの指標で測られるべきと思います。つまり、今後は各国とも人口が停滞したり減少していったりする中で、GDPなど経済全体の規模ではなく、1人当たりの指標の成長を目指すべきということになるのではないでしょうか。
ただ、日本は世界3位の経済規模を誇りますが、1人当たりの指標では先進国で中位です。しかも成長が当然の世界の中で、唯一停滞が続く国ですので、このままだと今まで日本よりも貧しかった国にも追い抜かれていき、もはや先進国とも呼べないほどに落ちぶれてしまう可能性もあります。
日本の経済停滞に対して良く言われるのが「日本は少子高齢化で人口が増加しないから経済成長できない」という意見です。なぜ「人口が増加しないと経済成長できない」という見方が強いのでしょうか。もちろん「安全保障」や特定の先端分野での「技術開発力」などの側面では、ある程度以上の人口や経済規模を維持することが必要であることはいうまでもありませんが、ここまで見てきたように人口減少していても経済成長を続けている国が存在していることは事実です。
この要因として、筆者は「規模の経済」に依拠した経済観から脱せていないからではないか、と考えます。
多くの人々の中で、人口(=国内市場)が増加していくのであれば、少しずつ販売量の増加も見込めるので、経済規模を拡大していきやすいという経済観の前提があるのではないでしょうか。ただ、今後日本は先進国として世界に先駆けて人口が減っていく国です。今後はこのような経済の捉え方ではなく「適正な規模で適正な付加価値の提供」という経済観にいち早く転換していく必要があると思います。
画一的なモノやサービスを大量に安価に生産して、大量に売買することだけを経済活動として考えるのならば、やはり日本国内は魅力のない市場になってきてしまいます。一方で、国内で日本人が生産した多様なモノやサービスを、同じ日本人が適正価格で消費していく社会というものも、グローバル経済と共存しながら実現していけるのではないかと考えます。
筆者はこのように、主にグローバルビジネスなどの「規模の経済」と、主に国内中小企業を中心とした「多様性の経済」の双方でバランスを取った経済の在り方が、日本経済の停滞から脱する方向性ではないかと感じています。
日本経済は「自己実現的」に停滞
日本は、そもそも内需の強い経済です。それが、いつの間にか経営者も労働者も消費者もグローバル経済の価値観にばかりとらわれ、より安く大量に生産し、安く大量に売りさばくという経済観が固定してしまったように思います。
そして、最も大切な消費者でもある労働者をコストと見なすようになってしまいました。国内でこんなにも安いものがあふれているにもかかわらず、相変わらずより安く、大量に作って売る「規模の経済」を追い求めてばかりいます。
経済活動は基本的に「代行業」として考えられます。つまり誰かの仕事は、それを消費する誰かのために行われています。労働者をコストと見なして、仕事を安くすると、結局は消費者の購買力が落ち、安いものしか売れなくなります。今の日本の状態は、まさにそれを裏付けているように感じているのです。
さらに、労働者の賃金が低下すると、消費者の購買力が落ちるだけでなく、非婚化や少子化へとつながることも今回あらためて明らかになったのではないでしょうか。そして、企業は停滞する国内から、海外へ活路を求め、一層の国内経済の収縮を加速しています。つまり、自らで価値を下げるサイクルに落ち込んでいっているわけです。このように日本経済は「自己実現的」に停滞している状況にあると思います。
日本経済の停滞は、人口の変化はもちろんですが、「企業の変質」も大きいと考えられます。次回からは「企業の変質とあるべき姿」についてファクトを共有していきたいと思います。
●国内投資を減らす日本企業の変質と負のスパイラル 2021/11
ここまでの連載で、「日本経済の現状」は、平均所得などの主要な経済指標で見ると1990年代の最先進国の一角から「凡庸な先進国」にまで後退していることを示してきました。
「変化のポイント」として第5回、第6回では、「物価」が停滞し長期的に見ると「為替」が円高に推移していることを示しました。1990年代に国際的な「物価水準」が極めて高い時期があり、国内の物価停滞とともに徐々に低下していく「相対的デフレ期」とも呼べる状況であることが分かりました。日本は1990年代の経済が強く物価の高い国から、長い停滞を経て、現在は凡庸で中程度の物価の国へと立ち位置を変化させたことになります。
また、グローバル化の流れの中で「日本型グローバリズム」とも呼べるような流出に偏った日本特有の経済のグローバル化にあることを第7回では紹介しました。ここでは、日本は輸出も輸入も先進国の中では極めて少ない「内需型経済」であることを確認しました。さらに、第8回では、人口について取り上げています。日本は「少子高齢化」により人口が減少し市場が縮小すると見られていますが、人口が減少しても経済成長している国も多く存在しています。そのために必要な「一人一人の生活を豊かにしていくか」という考え方の重要性を訴えました。
ここまでさまざまなファクトを見てくると、日本経済は1990年のバブル崩壊と、1997年が大きな転換点だといえそうです。その中でも、1990年のバブル崩壊を機にまず「企業」が変質してしまった点が特徴的です。今回は、経済における企業の役割と、日本企業の変質についてファクトを共有していきたいと思います。
経済の主役は「家計」と「企業」
経済においては通常「家計」「企業」「政府」「金融機関」「海外」が経済主体と呼ばれて区分されます。
政府は地方政府と中央政府を合わせた「一般政府」、企業は「非金融法人企業」を指します。また、中央銀行(日本の場合は日本銀行)は、統計上は金融機関に含まれます。経済活動の「支出面」で見れば、われわれの「家計」が支出面の大部分を占める主役といえます。一方で「生産面」では「企業」が主役といえます。そして、この両者は、連動して成長していくというのが資本主義経済の基本形です。
経済活動においては、われわれ企業は「資本」を投下して「投資」を行い、生産性を向上させて付加価値(≒粗利)を増やし、事業を拡大していきます。投資の際には、主に「金融機関」から「借入」を行います。一方で、付加価値を生み出すために、労働者を雇用し「給与」を支払います。労働者は、消費者でもありますので、この給与所得を「消費」や「投資」(主に住宅購入など)に充てます。そうすると、企業からすれば需要が増えるため、さらに投資を拡大して生産能力を上げ、利益を拡大し、労働者への給与も増やすことができるようになります。基本的には、このように企業が負債を増やし、事業を拡大していくのと、家計の所得が増大していくのが並行して進むのが経済活動の理想的な姿だといえます。
この経済活動の拡大はGDPの増加や、労働者の平均所得の増大としても観測されます。しかし、現在の日本は本連載でこれまで共有してきたように、GDPや平均所得が先進国で唯一25年近く停滞していて、困窮する世帯が増えている特殊な状況です。
経済活動を可視化するもう1つの方法として「お金がどこに貯まっているのか」「負債を増やしている主体は誰か」といった観点で見ることがあります。そうすると、どの主体がどのような役割を担っているのかが明確に分かります
「お金」は誰かが負債を負うことで増えていきます。これを信用創造といいますね。家計であれば住宅ローン、企業であれば融資による借入、政府であれば国債などです。そして、経済主体ごとの金融資産と負債を全て足し合わせると、必ず「ゼロ」になります。「誰かの負債は誰かのお金」という関係です。このような観点で見ると、「企業」が主に負債を増やし、「家計」の金融資産が増えていくというのが資本主義国の「経済のカタチ」です。今回はまずはこの辺りから、ファクトを確認していきましょう。
日本の経済のカタチ
図1は、日本の各経済主体の金融資産です。
   図1 日本の各経済主体における金融資産
   図2 日本の各経済主体における負債
赤い線は1990年のバブル崩壊、1997年の金融危機、2008年のリーマンショックのタイミングを表しています。また、このグラフはあくまでも「お金」を表すもので、建物や機械設備などの「固定資産」は含まれませんので、ご注意ください。金融機関の金融資産や負債が今や4000兆円もの規模というのは驚きの数値ですが、これらは相殺されてほぼゼロになります。
注目いただきたいのは「家計」と「企業」(非金融法人企業)です。1990年のバブル崩壊までは、「企業」は金融資産も負債も増大していますが、それ以降は多少のアップダウンがありつつ、ほぼ横ばいです。一方で、「家計」は金融資産が増大し、1997年以降に負債が横ばいの状況が続いています。その代わり、政府と海外の負債が増大しています。特に政府は1993年ころから、海外は2003年ごろから急激に負債を増やしています。
日本の資産と負債の関係性
図3は日本の各経済主体の純金融資産をグラフ化したものです。つまり金融資産(図1)から負債(図2)を差し引いた差額をプロットしたものになります。国の「経済のカタチ」を表す重要なグラフだといえます。
   図3 日本の各経済主体における純金融資産
厳密には負債側に「株式」が含まれるなど、一般的な純金融資産と異なる点もありますが、ここでは便宜上「純金融資産」「純金融負債」と表記します。差し引きの金融資産として、どの主体がプラス(金融資産が超過)でどの主体がマイナス(負債が超過)なのかを表していると考えてください。合計値は必ずゼロとなります(若干の誤差が含まれます)。
まず特徴的なのは、「家計」の純金融資産が一方的に増大していることです。経済が停滞しているといわれていますが、統計上は家計の純金融資産は増えていることになります。当然、家計の純金融資産が増えるということは、他の主体の純金融負債が増えることを意味しますね。図3を見ると明らかなように、バブル崩壊までは企業が純金融負債を増やす存在でした。
企業の純金融負債と家計の純金融資産が鏡に映したように対照的に推移していますので、模範的な経済のカタチをしていたということがいえます。しかし、バブル崩壊後は企業の純金融負債が停滞、あるいは目減りしています。その代わりに「政府」と「海外」が純金融負債を増やしています。つまり、家計の資産が増える反対側で、本来は企業の負債が増えるはずがそうならないため、代わりに政府と海外が負債を増やしている状況と言えます。
この関係性は、現在の日本経済の状況を理解するのに極めて重要な事実だといえます。また、一見すると家計の純金融資産が増えていて、私たち国民が豊かになっているように見えます。実はこの家計の金融資産の中には、年金受給権や保険受給権など「まだ手元にないけど将来もらえるはずのお金」が500兆円ほど含まれます。さらに、家計の金融資産で最も多い現金・預金の大部分は高齢世帯に偏在していて、現役世代は貧困化しているという事実もあります。豊かに見える家計も、内実は現役世代の困窮や格差の拡大が含まれている点にご注意ください。
米国やドイツの「経済のカタチ」
このように、企業の負債が停滞しつつ、政府や海外が純金融負債を増やしている状況は、一般的なのでしょうか? OECDのデータで、他の国とも比較してみましょう。
   図4 米国の各経済主体における純金融資産
   図5 ドイツの各経済主体における純金融資産
   図6 英国の各経済主体における純金融資産
   図7 日本の各経済主体における純金融資産
図4、図5、図6はそれぞれ米国、ドイツ、英国のグラフです。念のため同じOECDのデータで日本のグラフを作ったものを図7に掲載します(図3とほぼ一致します)。
どの国も基本的には企業が純金融負債を増やし、家計の純金融資産が増えている関係が見て取れると思います。2008年のリーマンショック以降は、ドイツの場合はさらに海外が純金融負債を増やしていますし、英国と米国の場合は政府が純金融負債を増やしています。主として負債を増やしているのは企業ですね。
日本だけ企業の純金融負債が目減りしていて、家計の純金融資産の伸びも緩やかです。これらのグラフを見ても、どうやら日本だけ「企業」が変質しているといってもよい状況だといえます。
日本企業の「変質」の正体
いったい日本の企業に何が起こっているのでしょうか。
企業は負債を増やして「事業投資」を行い、付加価値を増大させて、労働者の給与を上げていく経済におけるエンジンともいえる存在です。その企業が日本だけ変質しているという極めて重大な事態に陥っていることは明らかなようです。日本の統計で、企業の状況を集計しているのは「法人企業統計調査」です。この統計データから日本企業の変質の実態を可視化してみましょう。
図8は日本の法人企業の、売上高、付加価値、人件費、営業利益の推移をグラフ化したものです。
   図8 日本の企業における売上高、付加価値、人件費、営業利益
直近では売上高1500兆円、付加価値(GDP)320兆円、人件費180兆円ほどです。GDP(約550兆円)の約6割を法人企業が稼いでいる計算になります。当然ですが、現在までに見てきたGDPや平均所得のグラフと同じような推移です。
売上高や付加価値(GDP)は1991年をピークに停滞が続いています(付加価値は近年増加基調ではあります)。また、人件費は1995年をピークに横ばいが続いています。実は労働者数はこの停滞が続く時期でも大きく増えているのですが、図8のように人件費の総額は横ばいです。ですから、第1回で見たように労働者の平均所得が下がっているわけですね。
消費者でもある労働者への対価(=給与)を増やすことができていないわけです。労働者数は増えても、給与の総額は一定ですので、労働者全員でワークシェアリングをしているような状況だといえます。本連載で見てきた日本全体の経済停滞と、日本企業の停滞が強く関係している状況をご確認いただけると思います。
一方で、企業の利益や配当金などをまとめたのが図9です。
   図9 日本の企業における配当金、社内留保、当期純利益、営業外損益
営業外損益は2003年以降プラス側で増大していて、当期純利益もリーマンショックの影響が大きい時期を除けば近年は大きく増大して空前の規模となっています。当期純利益の分配として、配当金や社内留保も大きく増大しています。日本企業は、売上高や付加価値、人件費などは横ばいですが、利益を増やすことができている状況です。
もちろん、生産効率の向上やコストカットなど「企業努力」によるものも大きいとは思いますが、第7回でご紹介したような海外進出による「海外現地法人」からの利益の還流や、金融投資による配当金なども大きく営業外利益の増大に寄与していると言えます。また、利益は増大していますが法人税は横ばいである点も特徴的です。
金融資産と利益ばかり増える日本企業
図10は日本企業の資産や負債、純資産をまとめたグラフです。
   図10 日本の企業における資産と負債の詳細
図8と図9が日本企業全体の売上高や利益などフロー面(損益計算書の内容)を表すのに対して、図10はストック面(貸借対照表の内容)を表していると考えると分かりやすいのではないでしょうか。
図10では、資産はプラス側、負債はマイナス側で表現してあります。極めて特徴的なグラフですので、ぜひじっくりと眺めていただきたいと思います。日本企業は資産側も負債側もほとんどの項目でバブル崩壊以降横ばいが続いています。唯一右肩上がりで増大しているのが、資産側の「有価証券 他」ですね。つまり金融投資です。
そして、純資産は右肩上がりで増大しています。特に純資産や有価証券の増大が著しくなるのは、くしくもGDPが本格的に停滞を始める1997年(厳密には1998年)を起点にしています。冒頭で、本来の企業の役割は「借入を増やして事業投資を行い、付加価値を増大させること」と述べましたが、現在の日本企業の「借入」は横ばいです。そして、事業投資されていたら増えるはずの「有形固定資産」も横ばいです。つまり、日本企業は「事業投資」を増やしていません。
資産の中では「有価証券 他」のみ一方的に増えていますので「金融投資」あるいは「海外投資」ばかりが増えている状況です。日本製造業の海外進出も「対外直接投資」(現地法人の株式)としてこの項目に含まれるはずです。このことからも、日本企業は国内における事業投資は増やさず、金融投資や海外投資によって利益と資産を増大させる存在へと「変質」していることが見て取れます。
われわれ企業の目的とは?
当然、企業がこのような活動を続けていたら、国内の労働者に還元する必要はなくなりますので、現在までに見てきたような労働者=消費者の貧困化が進むことにつながっているわけですね。そして、国内経済が停滞していて、市場が拡大しなければ、企業は投資を控えますので、さらに市場が縮小していくという負のスパイラルに入っていきます。
日本経済はこのような「自己実現的な経済停滞」が続いている状況だともいえます。長引く「相対的デフレ期」によって、国内では物価が停滞する一方で、国内で生産して輸出するというビジネスも成立しにくい状況が続いてきました。人口もこれから減少していくことがほぼ確実な状況です。
つまり、日本企業から見ると、日本国内に投資する意義が薄れ、より稼げる海外や金融投資へと軸足を移しているわけですね。はっきり言ってしまえば、国内の事業者や労働者、そして政府も企業から半ば見捨てられてしまっている状況と言えます。このように個別企業としては利益を増やすために合理的な判断のもと企業活動が行われていますが、国内の経済全体としてはかえって停滞が続くという「合成の誤謬(ごびゅう)」が続いています。
なぜ、このような「合成の誤謬」から抜け出せないのでしょうか。
もちろん、人口動態の変化や、それに伴う社会保障費の増大、あるいは消費税増税などにより消費者の購買力が減っているなどの要因もあると思います。
ただ、経済活動の主体である企業と家計ですが、モノやサービスの値段を決めるのも、消費者である労働者の給与を決めるのも「企業」ですね。そして当の企業が、事業活動の変質により、自己実現的に経済停滞を引き起こしているという側面があるように思います。
特に企業の変質のポイントは以下の2つではないでしょうか。1つ目は、仕事の価値である「付加価値」の長期的な増大ではなく、短期的な「利益」を追うことに比重をかけ過ぎている点です。2つ目は、消費者でもある労働者を「投資対象」ではなく「コスト」と見なしてしまっている点です。
これらは短期的には合理的な判断なのかもしれませんが、長期的に見れば国内経済を衰亡させる判断であることは自明なように思います。企業は「利潤」を追求する存在ではありますが、短期的に利潤を求めるあまりに国内の基盤そのものが脆弱化しているように思います。このように変質してしまった企業活動を正常化していくことが、これからの日本経済を成長軌道に戻すに当たって重要だと考えます。
一方で近年では、生産性の低い中小企業が多過ぎることが、経済成長の足を引っ張っているといった言説も増えているようです。本当に日本では、中小企業が多いことで経済成長が阻まれているのでしょうか。中小企業は、国内経済の主役とも呼べる存在です。
今回見てきた、付加価値→利益、事業投資→金融投資、労働者→株主、長期→短期という企業の変質が進む中で、私たち中小企業の果たすべき役割とはどのようなものでしょうか。次回はいよいよ日本の中小企業についてのファクトを共有していきたいと思います。
●日本の中小製造業は本当に多すぎるのか、その果たすべき役割とは? 2021/12
ここまでの連載の中で、日本は1990年代は経済的に強く物価水準の高い国だったということを見てきました。しかし、長い停滞を経て、現在は凡庸な経済水準で先進国の中では、ちょうど真ん中程度の物価水準の国へと立ち位置を変化させてきました。
この経済停滞の主因は「少子高齢化による人口減少」と位置付ける専門家も多いのですが、ここまで見てきたように問題がそれだけではないことは数々の「ファクト」が示しています。特に、前回の「国内投資を減らす日本企業の変質と負のスパイラル」で取り上げたように「付加価値よりも利益」を、「労働者よりも株主」を、「事業投資よりも金融投資」を優先する企業の変質にも、日本経済停滞の大きな要因がありそうです。
一方で「日本には中小企業が多すぎる」「中小企業は生産性が低いために全体の足を引っ張っている」といった言説も耳にすることが多くなってきました。そこで、今回はファクトを通じて「日本における中小企業の立ち位置や、役割とは何か」に迫っていきたいと思います。
日本の中小企業はむしろ少ない?
企業の規模については、国によってそれぞれ定義の仕方が異なります。日本でも業種によって従業員数、資本金などで細かく中小企業の要件が決められています。例えば、日本の製造業では、中小企業の定義は「資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人」だと定められています。
一方で、国際比較を行うには、その条件をそろえて比較する必要があります。OECD(経済協力開発機構)の統計データでは、従業員数250人未満を中小企業(Small Business Enterprise)だと位置付けています。そこで、まずは国際比較をするために、中小企業の数についてこのOECDでの統計データを基に見ていきましょう。
図1は中小企業(従業員数1〜249人)の企業数を、数の多い国順に並べたグラフです。ここに含まれる企業は、非金融機関の法人企業となります。銀行などの金融機関や、個人事業などは含まれません。
   図1 中小企業数(2017年)
米国や日本の企業数が多く、その国の経済規模に応じた企業数があるように見えます。日本は先進国の中では、確かに中小企業の数が多い方のようです。一方で、本連載で何度も触れてきましたが、各国で抱える人口は異なりますので、その国の本当の実力値を知るには人口当たりの数値で比較した方が公正です。そこで、図1のグラフを人口当たりに集計しなおして、表現してみましょう。
図2が、人口100万人当たりの中小企業数を表したグラフです。
   図2 100万人当たりの中小企業数(2017年)
上位にはチェコやスロバキアなどの発展中の国や、リトアニアなどの人口の極端に少ない国などが並びます。イタリアがその中に混じって上位に属していることが目立ちますが、その他のG7各国は下位に属しています。
その中で、日本は人口100万人当たり2万2000社と、OECD33か国中31番目の水準です。実は日本は人口当たりで見れば「中小企業の数が少ない国」といえます。少なくとも、日本が「中小企業ばかりの非効率な国」ではないということはファクトから見ると明らかだといえるでしょう。
また、全企業に占める中小企業の割合で見ても、OECDのどの国の割合も99.2%(スイス)〜99.9%(ギリシャ)の範囲内となっています。日本は99.6%で、OECDの中でも下位になります。「日本の企業の99%以上が中小企業だ。この比率が多いことが問題だ」という論法が展開されることがありますが、こうして数値を見てみると日本の比率は何も特別なことではなく、どの国でも企業の内の圧倒的多数が中小企業ということになります。
日本における中小企業の実態とは
それでは、日本企業における中小企業の実態について、もう少し詳細を見ていきましょう。前回と同様に「法人企業統計調査」から中小零細企業、中堅企業、大企業の企業規模ごとに統計データ(ファクト)を可視化していきます。
本稿では、厳密な定義とは異なりますが、資本金1億円未満を中小零細企業、1億円以上10億円未満を中堅企業、10億円以上を大企業として扱います。
それでは、企業の活動の中で、中小零細企業の占める度合いを確認していきましょう。企業の数でいえば中小零細企業は全体の企業数の99%以上を占める圧倒的多数派です。それでは、企業で働く労働者の人数ではどうでしょうか。
図3に企業規模別の従業員数(年間平均値)を示します。黄色いラインが、その中で中小零細企業の占めるシェア(右軸)を表します。
   図3 日本企業の企業規模別従業員数
ファクトを見てみると意外ですが、日本の企業に勤める労働者は、実は右肩上がりで増え続けています。少子高齢化により生産年齢人口は減りつつありますが、高齢の労働者や女性の労働者が増えているためです。
日本経済のピークだった1997年では3700万人程度でしたが、直近では4300万人程度まで増えており、2割近くは増加していることになります。ただし、前回確認した通り、人件費の総額は横ばいなので、1人当たりの所得が減少し、労働者全体で「ワークシェアリング」をしているような状況が続いています。
この中で、中小零細企業に勤める労働者は、増加傾向が続いていて直近で2900万人程度と、全体の7割近くを占めます。一方で、大企業の労働者数は停滞気味です。企業に勤める労働者の内、7割もの大多数が中小零細企業で働いているということは重要な事実だと考えます。中小零細企業の労働者の方が、多数派であるということですね。
それでは、仕事の価値である「付加価値」と、労働者にとっての対価となる「収入」についてはどうでしょうか。図4に企業規模別の付加価値(GDP)、図5に従業員の収入のグラフを示します。従業員の収入は給与と賞与の合算値としています。
   図4 日本企業の企業規模別付加価値(GDP)
   図5 日本企業の企業規模別従業員収入
中小零細企業は、付加価値も従業員の収入も1995年当たりから停滞しています。大企業の付加価値はアップダウンがありながらも増加傾向で、従業員の収入はややマイナス気味で横ばいです。
直近では企業の稼ぎ出す付加価値320兆円の中で約50%の160兆円ほどが中小零細企業によるものです。そして、企業から支払われる従業員の収入160兆円の内、約52%の85兆円ほどが中小零細企業によるものとなります。従業員が70%程度に対して、付加価値も従業員の収入も随分と目減りしているようです。
利益も資産も増える日本企業
さらに企業の経常利益についても見ていきましょう。図6は経常利益のグラフです。
   図6 日本企業の企業規模別経常利益
日本企業の経常利益の合計は、バブルであった1990年周辺で極大化しますが、その後減少し、再度1990年代中頃から上昇基調となります。最近ではどの企業規模でも過去最大の経常利益となっていますが、特に大企業の増加が大きいのが見て取れます。一方で中小零細企業のシェアは年々減少していき、直近では30%を切る程度まで落ち込んでいます。
このように付加価値や経常利益などのフロー面では、明らかに大企業に比べて中小零細企業が弱まっているという状況が見えます。付加価値を「稼ぐ力」や、利益を「もうける力」が弱いということです。ただし、あまりもうからないイメージの中小零細企業でも、直近では実は経常利益は過去最高の水準に達していることは意外な事実なのではないでしょうか。
ここまで確認してきた通り、現在のところ日本の企業は、大企業も中小零細企業も、稼ぎ出す付加価値が停滞していても、利益を出せるように変質しています。そして、図7に示すようにストック面では、純資産が大企業だけでなく中小零細企業でも右肩上がりで増大している状況です。
   図7 日本企業の企業規模別純資産
このグラフをよく見ると、くしくも日本の経済絶頂期である1997年から急激に純資産が増大し始めています。1997年はGDPの停滞が本格化し、平均所得が下がり始めるターニングポイントでしたね。実はこのタイミングから企業の資産が急激に増大を始め、一方で労働者の貧困化が進み、本格的な経済停滞が始まっているわけです。
1人当たりの指標で見る格差
ファクトで見ると日本企業は付加価値を稼げなくても、人件費や仕入れを抑制し、利益を稼ぎ、純資産を増やしています。これは、大企業だけでなく、中小零細企業でも同じような状況です。ただ、大企業と中小零細企業には稼ぐ力などに格差があるようです。1人当たりの指標に直すことで、その格差を可視化してみましょう。
図8は従業員1人当たりの1年間に稼ぐ付加価値を表したものになります。企業規模ごとの労働者の生産性と呼べるものですね。オレンジ色(右軸)が大企業と中小零細企業との格差を表します。
   図8 日本企業の企業規模別の1人当たり付加価値
直近では、大企業で1400万円、中小零細企業で550万円ほどとなります。平均値で約720万円です。中小零細企業の1人当たり付加価値は1990年ごろにピークとなり、減少後停滞しています。一方で、大企業では、多少の上下はありながらも増加傾向です。大企業と中小零細企業には2.5倍もの生産性の格差があることになります。
日本の労働者の平均労働時間は直近で約1680時間(OECD統計データより)です。この平均労働時間で、1人当たりの付加価値を割ると、1時間当たりに稼ぐ付加価値である労働生産性を推定できます。
2018年の数値で換算すると、中小零細企業で1時間当たり3243円、大企業で1時間当たり8232円、日本企業平均では1時間当たり4346円となっています。OECDの労働生産性の平均値が1時間当たり5400円相当で、同じ工業国のドイツでは1時間当たり6700円相当(1ドル105円換算)ですので、いかに日本の中小零細企業の労働生産性が低いかが分かりますね。
図9は企業規模ごとの従業員の平均収入となります。
   図9 日本企業の企業規模別の平均収入
直近では大企業で580万円、中小零細企業で300万円ほどとなります。平均値では約370万円です。大企業と中小零細企業には約2倍の収入格差があることになります。OECDの平均所得の平均値が446万円相当、ドイツの平均所得が512万円相当ですので、やはり中小零細企業の水準はかなり低いといえます。
このように、大企業と中小零細企業では、労働者1人当たりの指標では大きな格差が生じていることは事実です。さらに、中小零細企業の水準は先進国の中でも極めて低い水準にあるということが分かります。「中小企業は生産性が低い」といわれるのも、この数値を見れば納得せざるを得ません。
日本経済の抱える企業の変質という重大問題
この連載では、ここまでさまざまなファクトを通じて、日本経済の現状と、変化のポイントを見てきました。
日本の経済は停滞しており、消費者でもある労働者の所得が減り、現役世代が困窮しています。一方で、企業は金融投資や海外投資により、経済が停滞していても利益を出せる主体へと変貌しています。
このような状況は、確かに現在のところ企業にとって都合がよく、利益も資産も右肩上りで増大はしています。ただ、このように企業が利益ばかりを追い、実質的な付加価値増大を軽視する姿勢は継続性のある活動といえるのでしょうか。
日本は1990年代に極めて高い経済水準を誇り、その後他国が成長する中で先進国の中で唯一停滞を続ける国です。現在は先進国の中では中間程度の経済水準まで後退しています。当然ですが、この先も経済停滞が続けば、今度は先進国下位、さらには先進国とも呼べないような経済水準へと衰退していくことになります。
特に、このまま国内物価が停滞し「相対的デフレ期」が継続すれば、日本経済の生命線とも呼べる「輸入」がどんどん割高となり、海外からの輸入品を買いたくても買えなくなっていく事態となっていきます。特に海外調達に頼らざるを得ないエネルギーや食糧は致命的だと思います。
このような事態を回避するためには、日本の経済は、まさに今が踏ん張りどころであり、転換期ともいえるのではないでしょうか。
グローバルで力を発揮する大企業、国内の転換を図る中小企業
その中で、大企業と中小零細企業の立ち位置は異なっていくと考えます。大企業は、その資本力で主に「規模の経済」を追う主体となります。もちろん業界や企業によって事情は異なると思いますが、大企業は資本や労働力を集中させ、効率化を図ることで、モノやサービスを安価に大量に生産します。このような規模の経済は、グローバル化とも親和性が高く、日本型グローバリズムで海外へと活動を広げていきますので、日本国内の経済事情に左右される割合は大きくありません。また、これらの状況が進めば、日本国内の労働者が徐々に不要になっていくという皮肉な事態にもなっています。
一方で、グローバル化から国内に取り残される多くの事業主体は、中小零細企業となります。国内労働者の7割を雇用する中小零細企業は、ある意味で国内経済を転換するための要だといえる存在となってきます。
中小零細企業が、大企業と同じようにグローバル化や規模の経済を追うことで、国内経済は果たして豊かになるでしょうか。筆者はそうは思いません。人口が減少し、AI化や自働化が進む中で、規模の経済を追うだけでは、国内から「仕事=付加価値」が減り、一層安価なモノやサービスがあふれるだけとなり、経済停滞から抜け出せないということは容易に想像できます。そう考えると、われわれ中小零細企業に必要な変化とは、1人当たりの「付加価値=労働者の仕事の価値」を上げることと、消費者でもある労働者の「収入」を上げることです。
大企業に比べて、どちらも半分程度の水準でしかない中小零細企業ですが、企業側にはまだ余力のある状況ですので、その工夫の余地は大いにあるのではないでしょうか。
「付加価値を上げる」とは、つまり労働者の「労働生産性」を向上させることに他なりません。労働生産性は、1時間当たりの生産量である「生産効率」を向上させることも大切ですが、それよりもモノやサービスの質や「値付け」を向上させることが重要です。値付けとは販売価格、つまり物価のことです。そして、労働者への対価である賃金もその成果に応じて増やしていくことが何よりも大切だと思います。
物価よりも、賃金の方が増えていく状況(実質賃金の向上)になって初めて、労働者でもある消費者が豊かになり、経済成長の望ましいスパイラルに入っていけます。事業投資により「労働生産性」を上げることはもちろんですが、「人の仕事」により価値をつけて「多様性の経済」による仕事の高付加価値化を図っていくことが重要です。
もちろん個々の企業で事情は異なりますし、中小企業は赤字(欠損法人)の企業が8割に達する中で、なかなかそこまでできない企業も多いとは思います。こうした中でも、少しずつ「多様性の経済」にシフトしていける企業が増えていくことが重要だと考えています。
次回(最終回)は、あらためて日本の製造業の現在地を確認すると共に「多様性の経済」についてまとめていきたいと思います。 
●「多様性の経済」という価値の軸を、中小製造業が進むべき方向性とは 2022/1
ここまでの連載で確認できたのは、日本は1990年代の経済が強く物価水準の高い国から、長い停滞を経て凡庸な経済水準で中程度の物価水準の国へと立ち位置を変化させてきたという点です。その中で、日本企業は、付加価値よりも利益を、労働者よりも株主を、事業投資よりも金融・海外投資を優先する変質を遂げてきました。さらに、企業の中でもグローバル化を強く進める大企業に対して、国内経済の主役ともいえる中小企業の生産性や給与の水準が低いという実態も見えてきました。
それではこの先、中小製造業はどのような方向性を目指していくべきなのでしょうか。今回は、統計的事実から中小製造業の進むべき方向性について考えていきたいと思います。
特異な日本製造業の変化
われわれ中小製造業の今後の方向性を考えていくに当たって、まずは現在の日本経済の状況を産業別に可視化するところから始めてみましょう。
図1はGDP(国内総生産)活動別の変化量を相関図としてまとめたものです。横軸は名目GDPの変化量、縦軸は実質GDPの変化量です。1997年から2019年の変化量を、産業ごとにプロットしています。バブルの大きさは、各産業の2019年における名目GDPの大きさを表しています。
   図1 日本の活動別GDPの変化量相関図。実質値は2015年基準
各産業の名目GDPと実質GDPが成長(+)か縮小(−)かという軸(縦軸、横軸)と、物価が上がったか下がったかという線(緑色)で区分される6つの領域があり、それぞれの産業がどのような変化をしたのかが一目で分かります。
名目GDPが成長するということ(右側の領域)は、その産業の活動をお金の尺度で測った時に経済規模が拡大していることを意味します。一方で、実質GDPが成長するということ(上側の領域)は、その産業の産出物の数量的な規模が拡大していることを意味します。
これまでも他国の事例をご紹介してきましたので、通常の経済成長とは(1)の領域であることは理解できると思います。つまり、名目GDPが成長していて、実質GDPが物価上昇分だけ目減りしながらも成長している状態ということですね。
日本の場合は(1)の領域に存在する産業は「運輸・郵便事業」くらいで、さらにほとんど成長していません。一方で、成長している産業は「専門・科学技術・業務支援サービス業」「保健衛生・社会事業」「不動産業」などですが、物価は下がっていて(2)の領域でとどまっています。その他の産業を見てみると、名目GDPの縮小している(4)、(5)、(6)の領域に位置しています。
特に最大産業である「製造業」が、(4)の特異な位置に存在するのが何よりも特徴的ではないでしょうか。製造業が位置する(4)の領域は、名目GDPがマイナスで、実質GDPがプラス、物価がマイナスの領域です。つまり、販売価格を下げて(物価マイナス)、数はたくさん作る(実質GDPプラス)けど、元の経済規模から縮小(名目GDPマイナス)しているということを意味しています。大量に安く作るけれども、経済活動が縮小しているという状況ですね。
この根底には前回触れた「規模の経済」の価値観が影響していることは間違いないように思います。
「多様性の経済」とは
日本は今後も人口が減少していくことがほぼ確実です。そのため、人口が増えていくことを前提にした経済成長の在り方は通用しなくなっていきます。一方で、人口が減っていっても、1人当たりの生産性や所得水準を上げていき、一人一人がより豊かになっていく経済の在り方は実現可能なはずです。この方向性に向けて、私たち企業ができることは、今までの「規模の経済」一辺倒の経済観を改め、「多様性の経済」を少しずつ育んでいくことではないかと考えています。
本連載でも何度も言葉では登場させてきましたが、ここであらためて規模の経済と多様性の経済の説明を試みたいと思います。
「規模の経済」は、資本や労働者を集約し、生産の効率化を図り、安価に大量にモノやサービスを生み出し成長していく経済観です。大量に生産し販売するほど、原価に占める固定費や開発費の割合が下がり効率化されていきます。また、大規模に安価なものを生み出すために、効率的な仕組みを構築します。このような経済観の中で、労働者は「より安価な労働力」であることを求められがちです。そして、常に大量に消費するより大きな「市場」を求めていきますので、必然的にグローバル化が進んでいき、世界規模での競争にさらされていきます。
製造業では特に、このような規模の経済が重視され、流出一方のグローバル化が進んできたことは第7回で取り上げた通りです。規模の経済の下では、一定品質のモノやサービスが安価に入手できますので、消費者としては恩恵を受けます。
一方で、日本においては、その消費者でもある労働者は貧困化していきますので、購買力は下がっていきます。現在の日本では「消費者の購買力=需要」と「モノやサービスの供給量」が釣り合っていません。大規模化して大量に作るほど自働化が進み、労働力が不要になるジレンマも抱えています。
このように需要が増えないところで規模の経済を追っても、行き詰まるだけです。これまで見てきた日本の停滞を表す統計データや、図1の製造業の立ち位置を見ても明らかではないでしょうか。付加価値の高い仕事でも、規模の経済の価値観に引っ張られて、必要以上に安くしてしまっているビジネスも多いと感じています。
これに対して「多様性の経済」は、ニッチな分野で多品種少量の多様性のあるモノやサービスを、適正価格で生み出していく経済観です。目先の利益を追うよりも、労働者の生み出す仕事の価値=付加価値を重視します。
規模の経済では安定した品質レベルの代わりに、画一化が進みますので、その事業領域の隙間は広がっていきます。実際にビジネスをしていれば、ニッチな分野で、高付加価値な領域が非常に多いことに気付いている方も多いのではないでしょうか。このような領域でこそ「ある特定分野で強みを持つ中小企業」が存在感を発揮し、適正付加価値でビジネスが成立しやすいのではないかと考えます。実際に日本でも生産財などの特定領域で強みを持つ企業は多く存在しています。
ただし、この多様性の経済が適用できるのは、その分野で突出した強みのある製品や技術を持つ企業だけです。当然、誰でもできる仕事というわけではありませんので、労働者への訓練や技術投資が必要となります。つまり、「人材や技術への投資」が必要となり、労働者はコストというよりも、付加価値を稼ぐための「投資対象」だといえます。
人材投資により労働者の稼ぐ付加価値を増やせば、その成果に応じて対価(=給与)も増やしていくことができます。この労働者は消費者でもありますので、給与所得の増えた消費者は当然消費を増やしていくことになり、望ましい経済成長の在り方へとつながっていきます。
規模の経済と多様性の経済は、このように役割や領域が異なる経済観となります。どちらがよいというわけでもなく、役割分担しつつ、バランスを取っていくことが重要です。
表1に両者の特徴をまとめてみます。
   表1 「規模の経済」と「多様性の経済」の比較
日本国内では中小零細企業が労働者の7割を雇用し、まさに経済活動の主役だといえます。ただ、中小企業経営者の思考が「規模の経済」一辺倒になっているような状況に危惧を覚えます。
本当は「多様性の経済」に属するビジネスのはずなのに、「規模の経済」の価値観に引きずられて自ら価格競争をしているケースはさまざまなところで目にするのではないでしょうか。
消費者の購買力が下がっていて「安くないと売れない」という企業側の事情も分かりますが、消費者でもある労働者を安く雇用しているのも企業です。この「自己実現的な経済停滞」を打破していくには、企業自身が変化していく必要があるのだと考えます。
現在は、国内のビジネスで「規模の経済」と「多様性の経済」がうまく切り分けられおらず、ごちゃまぜの状態になっているように感じます。もちろん個々の企業で中小製造業として置かれている立場も異なってきますが、うまく「多様性の経済」の考え方を取り込めるところから進めていってはどうでしょうか。
国内経済を基盤として、企業と家計が連動して成長していく「通常の経済」を取り戻していく方向性として、私たち中小企業(特に製造業)が「多様性の経済」という軸を重視し、国内で循環して成長できる経済へと生まれ変わっていくことが必要だと考えます。
短期的な利益を追うと「合成の誤謬(ごびゅう)」によって国内経済が収縮してしまいますが、長期的に付加価値を増やしていくことを考えればゆっくりと国内経済も成長していけると見ています。自社のビジネスの付加価値を上げ、従業員への対価を上げていくことは、長期的に見れば継続的な利益を生み続ける最も「合理的な企業活動」だといえるのではないでしょうか。
多くの企業経営者がこの考えを共有できれば、「合成の誤謬」も回避できるように思います。それを実現する力を持っているのが、経営者が長期的視野で意思決定し、利益よりも付加価値を、株主よりも労働者を重視できる「中小企業」であると信じています。
中小企業こそ日本経済転換の要
本連載の冒頭でも申し上げましたが、筆者は経済学者でも経済評論家でもありません。単なる中小製造業(町工場)の経営者です。「中小企業が『多様性の経済』に向かうことが日本経済復活に貢献する」という結論に対して、何ら経済学的な裏付けはありません。また、マクロ経済の停滞には、個々の企業の努力は無力で、マクロ経済政策によってのみ改善できる、といった意見もあると思います。
ただ、われわれ企業経営者は、政治が変わってくれるまで待つことはできません。その間に、経営環境は悪化し、ますます困窮していくからです。企業経営者が目先のビジネスを回すのに精いっぱいであることは、筆者自身も当事者としてよく分かっているつもりです。
相対的デフレ期による事業環境の悪化が続く中で、多くの中小企業経営者が自信を無くし、値段を下げることで仕事量を確保し、自身の給料を削ってまで会社を存続させている姿を、筆者も多く見てきました。「ジリ貧」という言葉がしっくりくるような経営をしている企業が多いのが実態だと思います。
企業の内部留保が問題視されがちですが、リーマンショックやコロナ禍を経験する中で、企業として生き残っていくために一定以上の資金を留保しておくことはもはや「処世術」となっています。企業も生き残るために、なりふり構っていられない状況ともいえるでしょう。
それでは、このままジリ貧で日本が衰退していくのを、流されるまま待っていればよいのでしょうか?
われわれ中小企業経営者は、日本で500万人以上いるとされています。その経営者の意思決定が労働者の7割を左右するという非常に大きな力を持っているわけです。中小企業は事業承継が課題とされていますが、既に事業承継を済ませて大きく伸びている中小企業が多いことも事実です。これらのうまくいっている企業を観察すると、まさに「多様性の経済」を重視した経営をしているところが多いことに気付きます。
それらの企業は、従来の値付け感を適正化し、取引する顧客や商材を見直し、顧客との関係性をより対等に変化させています。むしろ、供給側が発注側を選んでいるような領域も増えてきました。「多様性の経済」を軸としたビジネスに切り替えている企業も増えていると感じています。
日本が停滞している間、世界は大きく変化しています。日本国内でも、若い経営者を中心に高付加価値な事業への転換が進みつつあります。いつまでも数十年前のやり方を引きずり、国内で安値競争をしている場合ではありません。われわれ企業経営者が、足並みをそろえて行動変容したならば、日本経済を転換し得る大きな力となるのではないでしょうか。
今まで共有させていいただいた多くの経済統計のデータと、現在の日本の特殊な状況を鑑みれば、この「多様性の経済」を実践する企業経営への変化は、1つの大きな転換の軸になると考えます。
本稿を読まれた皆さんはどのように考えますか。筆者も一当事者として、この「多様性の経済」の考えで、自分たちにしかできないニッチな仕事を実践しているつもりです。ぜひ多くの経営者の皆さんにご賛同いただき、仲間が増えていけばと願っているところです。
あとがき
本稿の執筆にあたりまして、アイティメディア MONOist編集長の三島様には、経済素人の私に連載執筆の機会をいただき、とりとめもない原稿記事を文意をくみつつ読みやすい記事に仕立てていただきました。あらためて深く御礼申し上げます。
本稿で共有させていただいた統計データは、日本の経済状況を把握するにあたっての重要度の高いものから取り上げてきました。実はご紹介したい統計データは、まだまだ膨大にあるのですが、いずれまた機会をいただいた時のために温めておきます(既に200以上のテーマについて、ブログ記事として公表しています。ご興味のある方はこちらもご一読いただければ幸いです)
本稿はひとまずここで筆をおかせていただきます。本稿を通じて、日本の経済統計に興味を持たれた方はぜひ統計の元データをご確認いただくことをお勧めします。特に日本の政府統計は、非常にきめ細かくデータが蓄積されていることに驚くことでしょう(政府統計:e-Stat)。
公開されているこれらの統計データが、ほとんど国民に共有されず活用されていないことはとても残念です。本稿が、統計データというファクトから現状を認識し、皆さんの行動変容へとつながっていくきっかけとなれば幸いです。