1億5000万円 ばら撒いた人

前法相衆院議員 河井克行
前参院議員  河井案里

1億5000万円の使途
お金の出所
当時 安倍晋三首相 (党総裁)

マスコミの触れない闇
 


河井案里河井克行河井夫妻選挙違反事件・・・
諸話2020 / 1/232/36/197/1011/20・・・
諸話2021 / 2/32/52/92/103/245/185/205/235/245/265/27・・・
  6/16/2二階甘利安倍6/186/196/216/226/246/256/26・・・
  敗因は“政治とカネ”だけか・・・
 

 

●河井案里
(1973 - ) 日本の政治家。広島県議会議員(4期)を経て、2019年に参議院議員に初当選したが、2021年に当選無効となった(河井夫妻選挙違反事件)。旧姓は、前田。夫は元衆議院議員で元法務大臣の河井克行。
経歴​
宮崎県延岡市出身。建築家の父親と声楽家の母親の次女として生まれた。父は東京で働いていたが、多忙と生活の乱れから吐血して故郷の宮崎に移り、設計事務所を開いた。バブル経済の崩壊などによりだんだん事務所経営は厳しくなり、飲食業に手を出したりしていろいろやってみたが、うまくいかず最後に開いた焼肉屋の失敗を契機に飲食業からも手を引いた。
4歳のときに宮崎市に移住。宮崎大学附属幼稚園、宮崎大学附属小学校、宮崎大学附属中学校、宮崎県立宮崎大宮高等学校を経て慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。大学生時代の友人に橋本岳がいた。大学院では「政策と民営化・民間活力の導入」を研究。
大学院修了後は、1999年に海洋研究開発機構、2000年に科学技術振興事業団(現、科学技術振興機構)に勤務。2002年4月から2003年3月まで広島文化短期大学非常勤講師を務めた。
結婚、広島県議会議員に初当選​
科学技術振興事業団専務理事だった沖村憲樹(元科学審議官)から結婚相手を探していた落選浪人中の河井克行を紹介される。紹介者の沖村を交えて夕食をともにしたその日に克行に見初められ、2001年4月20日に広島市内のホテルで結婚式を挙げた。仲人は橋本龍太郎元内閣総理大臣。司会は克行の友人で当時衆議院議員だった吉川貴盛が務めた。
結婚後、夫、河井克行の選挙サポートを始めたことがきっかけで、一緒に選挙区を回っていた克行から「君は政治に向いている」と県議選への出馬を勧められる。
2003年4月の広島県議会議員選挙・安佐南区選挙区(定数4)は、前回選で民主党・社民党の推薦を得て初当選した中国電力労組役員の森本雅彦が不出馬。後継として私鉄中国地方労組書記長の有元勝也が無所属・社民党推薦で立候補することとなった。 案里は無所属・自民党推薦で立候補し、有元や共産党新人候補らを破り得票数4位で初当選した。
2007年の県議選で自民党は現職の石橋良三、同じく現職の佐々木弘司、案里の3名に公認を出した。案里は得票数2位で再選を果たすが、佐々木は次点で落選した。
2009年、自由民主党を離党し、広島県知事選に亀井静香国民新党代表や一部の自民県議の支援を受けて立候補(自動失職)。自民党、公明党、社民党は自主投票に回った。連合広島の推薦と民主党の支援を受けた元通産官僚の湯崎英彦に敗れ、次点で落選。2010年には国民新党から第22回参議院議員通常選挙広島県選挙区への出馬を打診されたが、合意に至らなかった。同年12月に自民党に復党。
2011年の県議選に立候補し当選、議員に復帰。2012年3月には地域政党大阪維新の会が主催する維新政治塾に参加した。2015年に4期目の当選。警察商工労働委員長、農林水産委員長、地域魅力向上対策特別委員長を歴任した。
参議院議員​
2018年、自民党は翌年夏の第25回参議院議員通常選挙広島県選挙区に向けて、6選を目指す岸田派の溝手顕正を公認済みであった。ところが同年暮れ、安倍晋三首相や菅義偉官房長官らの意向をくんだ党本部は、党県連に対し、2人目を擁立することを打診。県連からは「組織が分裂しかねない」と一斉に反発があがった。
2019年2月19日、自民党の岸田文雄政調会長と甘利明選対委員長が国会内で会談。甘利は岸田に2人目の擁立に理解を求めた。この時点で候補者としては、自民党への入党を図る愛知県選挙区の無所属の薬師寺道代参議院議員と河井案里の名前が挙がっていた。準強制性交容疑で刑事告訴されていた愛知2区を地盤とする田畑毅衆議院議員が3月1日に辞職。薬師寺は田畑の後任を狙うこととなった。3月2日、自民党は河井を擁立する方針を固め、3月13日に正式に公認候補に決定した。そして3月14日、広島市議会議員選挙に出馬する予定だった行政書士の竹原哲が急遽、案里の後継として立候補すると表明した。
定数2の広島県選挙区において2人を公認するのは無謀であることから、自民党本部が野党系無所属の森本真治ではなく、過去に「(安倍首相は)もう過去の人」などとして安倍批判を行っていた溝手を潰すことを狙っていたとの見方がなされた。安倍首相と菅義偉官房長官の後ろ盾に自信をつけた案里と克行ははすぐに買収工作にとりかかる。3月27日、二人は三原市内のビルの一室に天満祥典市長を呼び出し、克行は帰り際、50万円入りの封筒を天満の背広の内ポケットに入れた。
3月29日、広島県議会議員選挙が告示される。克行は無投票で6選を果たした児玉浩の事務所を訪れ、児玉に30万円が入った封筒を渡した。案里の後継の竹原哲も無投票で初当選した。
4月15日、党本部は案里が支部長を務める「広島県参議院選挙区第七支部」に1,500万円を振り込む。以後、6月27日までに、同支部と克行が支部長を務める「広島県第三選挙区支部」に計1億5,000万円が振り込まれた。一方、溝手への支給額は1,500万円だった。二階俊博幹事長や菅義偉官房長官などの党幹部が選挙応援に訪れる中、案里は豊富な資金を元手に選挙戦を有利に進めた。克行はインターネットとコンサルティングの業者に、溝手のイメージを悪くするよう依頼。業者は架空の人物を名乗り、溝手や自民党県連が案里をいじめるようなことをしているとブログに投稿した。克行は記事の具体的な内容まで指示する一方、無所属の森本真治に対してはネガティブ・キャンペーンなどの工作は講じなかった。
7月21日投開票の結果、順位2位で初当選した(溝手は約2万5千票差で落選)。当確報道後、選挙事務所で支援者を前に「私は常々、自民党が2議席を取ってこそ、広島県、自民党の勝利だと言い続けてまいりましたので、きょうは万歳は差し控えさせていただきます」と述べ万歳はしなかった。
8月、菅官房長官を慕う無派閥議員17人が所属する向日葵会に入会。
10月4日に召集された第200回臨時国会で、参議院経済産業委員会、議院運営委員会、災害対策特別委員会に所属することになった。12月7日現在では、参議院ホームページには、経済産業委員会のページの委員名簿に案里の名前があったが、議院運営委員会と災害対策特別委員会ページの委員名簿には案里の名前は見当たらず、参議院ホームページの河井あんりページでの参議院における役職等一覧も経済産業委員会のみになっていた。
公職選挙法違反による逮捕​
2020年3月3日、公設秘書が公職選挙法違反の疑いにより、広島地検に逮捕された(後述)。同月28日午後4時半頃、衆議院議員宿舎で飲酒しながら薬を多量に服用し救急搬送されたが、症状は重くなかった。
第201回通常国会の会期末直前の6月15日現在では、参議院経済産業委員会、災害対策特別委員会、国際経済・外交に関する調査会に所属し委員を務めていた。
6月17日、夫の克行と共に自民党を離党届を提出し受理された。議員辞職はしない意向を示していた。
6月18日、広島県内の地方議員や首長ら94人に投票や票の取りまとめを依頼し、計約2,570万円の報酬を渡したとして、克行と共に東京地検特捜部により逮捕された。
7月8日、公職選挙法違反(買収)の罪で克行と共に東京地裁に起訴された。
9月12日、広島市中区東白島町にある事務所が同月中に閉鎖されると取材で分かったと報じられた。
10月27日夜、東京拘置所から保釈。
第203回臨時国会の召集直後の10月31日現在では、参議院財政金融委員会に属していた。
11月25日、公設秘書の事件について最高裁判所が上告を棄却し、公設秘書の有罪が確定。12月21日、広島高等検察庁は、連座制を適用し、案里の当選無効などを求める行政訴訟を広島高等裁判所に起こした。
2021年1月21日、東京地裁は懲役1年4か月、執行猶予5年の判決を言い渡した。
1月下旬、自民党幹部は、案里が「間違いなく近々に辞める」として、案里の辞職に伴う補選が4月25日投開票になるとの見通しを周辺に伝えた。党県連は案里に代わって擁立する候補者の人選を水面下で進め、党本部は、党県連が選ぶ候補者に公明党の支援を取り付ける方向で調整し始めた。
2月3日、公選法違反の罪で有罪判決を受けたことを受け、案里は政策秘書を通して参議院に議員辞職願を提出。同日の本会議で辞職が許可された。翌日4日には公式ホームページ及びTwitterのアカウントも削除。
被告、検察ともに控訴しなかったため、翌日5日の0時に有罪が確定。当選無効となり、2026年2月まで5年間の公民権停止となった。なお、議員活動中に河井に支払われた「歳費」「期末手当」「文書通信交通滞在費」は合計4942万円あまりであり、当選無効になってもこれを返納する義務はない。当選無効による参議院広島選挙区の再選挙は衆議院北海道2区及び参議院長野県選挙区の補欠選挙と同じ4月25日に行われ、野党統一候補の宮口治子が当選した。
5月21日、広島高等裁判所は有罪となった元公設秘書が連座制の対象になる「組織的選挙運動管理者」に当たると認定し、河井案里に対し参議院広島選挙区での立候補を5年間禁止する判決を出し、上告がなかったため、同年6月8日に連座制適用についても判決が確定した。これにより公民権停止に加え、参議院広島選挙区での立候補に限り2026年6月まで禁止となる。
国会での活動​
2019年10月31日に河井克行が法務大臣を辞任した後、案里は克行とともに国会を欠席し続け、12月9日の第200回臨時国会閉会日にも姿を見せないまま閉会を迎えた。案里は6日に「適応障害」のため1カ月の療養が必要との診断書を提出している。
不祥事​
県議時代の政務活動費問題​
2019年7月23日、広島県議会議員時代に事務所費の減額を申告せず、2018年7月から2019年4月までの10か月間に政務活動費計12万5000円を過大に受け取っていたことが報じられた。案里は「事務的なミスが原因」と事実関係を認めている。23日にも広島県議会へ返還する手続きに入るとした。また、支部が2015年から2017年分の政治資金収支報告書で案里から受け取った事務所の賃料負担分をはじめ、収入で合計2062万円余りの記載漏れがあったことも分かった。こちらは、2018年9月に報告書の訂正を広島県選挙管理委員会に届けている。
参院選の公選法違反で有罪​
   2019年
10月30日、同年7月の参院選で河井陣営が車上運動員(いわゆるウグイス嬢)13人に公職選挙法の法定上限を超える報酬を支払った疑いがあると、週刊文春の電子版が報じた。同日、克行と案里の事務所はそれぞれ「明日(31日)発売の週刊文春の記事を拝見する」とコメントを出した。
10月31日、週刊文春2019年11月7日号が発売。前日配信された記事が掲載される。
同日、午前8時すぎに夫の克行が首相官邸で安倍晋三首相に法務大臣の辞表を提出し、受理され辞任。事実上の更迭であると報じられた。首相官邸でぶら下がりに応じた克行は疑惑について「私も妻も全くあずかり知らない」「今後しっかり調査して説明責任を果たしていきたい」とコメント。同日、案里は姿を見せないまま議員会館の事務所を通じてお詫びと事実関係の把握に努めたうえで説明責任を果たしたいとのコメントを発表。
同日、安倍首相は、克行の辞任について「任命したのは私だ。こうした結果となった責任を痛感している。国民に深く心からおわびしたい」と陳謝した。
同日以降、案里と夫の克行は国会を欠席し続け、かつ公の場から姿を消した。11月、案里は参院で4回あった本会議を全て欠席。5回あった経済産業委員会と4回の議院運営委、2回の災害対策特別委にも姿を見せておらず、自民党二階派の28日の例会にも現れなかった。議員会館の案里の事務所は「院の手続きを取った上で、欠席をしております。事実関係を調査した上で、説明をしたいと思います」とのコメントを出した。11月の衆院本会議を7回全て欠席した克行の事務所も一言一句同じ談話を出した。広島県の選挙管理委員会によると、参院選で、案里の選挙運動にかかった費用の収支報告書は、法令で定められている期限の8月5日にいったん提出されたが、現在(2019年11月29日報道当時)、修正中で、広島選挙区に立候補した7人のうち、最終的なものが提出されていないのは案里だけである。夫妻で国会の欠席を続けている間も、それぞれに、給与である歳費、月額129万円あまりと、文書通信交通滞在費月額100万円は支払われている。
11月6日、安倍首相は衆議院予算委員会で、克行の法相辞任と菅原一秀の経済産業相辞任について「任命した者として責任を痛感している」と陳謝した。
11月8日、安倍首相は参議院予算委員会で、克行の法相辞任と菅原一秀の経済産業相辞任について「国民の皆さまに大変申し訳なく、責任を痛感している」と陳謝した。
12月6日、案里は事務所の秘書を通じて、適応障害で1カ月の自宅療養が必要とする診断書を、世耕弘成自民党参院幹事長に提出した。世耕弘成自民党参院幹事長は6日に記者会見をし、案里が診断書とは別に提出した書類では、週刊誌の報道について「第三者にも入ってもらい、調査を進めているところで、適切な時期に報告したい」などとしているということを明らかにした。案里の事務所によると、12月5日に東京都内の病院で診断を受けたという。また、案里の事務所は「(2019年12月)9日までの国会会期中の説明は難しい。今の段階では説明がいつになるか見通すのは難しい。当面、治療に専念する」と、公職選挙法違反の疑いで刑事告発されたことについては「当局から協力を求められれば、真摯に対応し、説明する」としている。
12月28日、広島地方検察庁が捜査に着手したと報じられた。広島地方検察庁は、告発状を受理したかどうかも含め「ノーコメント」としている。
12月29日、新たに、河井陣営の一員として2019年7月参院選の選挙運動をした男性運動員に、克行から直接、支払いの申し込みがあり、案里が支部長を務める自民党支部が約86万円を支払っていたことが明らかになった。約86万円を受け取った男性運動員が証言した。自民党側が調査を始めたことも明らかになった。
   2020年
1月15日、広島地検は河井夫妻の事務所を家宅捜索した。
1月20日、通常国会開会日に国会に登庁。公の場に数ヶ月ぶりに姿を見せ「区切りが付いたら説明したい」と報道陣に述べた。
1月23日、前年7月の参院選の公示前、自民党本部から、案里が支部長を務める「広島県参議院選挙区第七支部」に対し7,500万円、克行が支部長を務める「広島県第三選挙区支部」に対し7,500万円、あわせて1億5千万円の入金があったことが明らかとなった。落選した溝手顕正が支部長を務める「広島県参議院選挙区第二支部」に対しては、党本部からの入金は1,500万円にとどまり、10倍の開きがあった。党本部が案里陣営に肩入れした実態が浮き彫りになった 。案里は記者団の質問に対し、「(1億5千万円は)もらいましたが、違法ではありません」と答えた。その後の調べで、1億5千万円のうち1億2千万円は税金を原資とする政党交付金であることが判明。入金先と入金時期は以下のとおり。
1月27日、安倍首相は、克行の法相辞任と菅原一秀の経済産業相辞任について「私が任命した大臣が辞任したことは、大変申しわけなく責任を痛感している」と陳謝した。
1月31日、河井夫妻への強制捜査や自民党本部からの1億5千万円の入金発覚がきっかけの一つとなり、政府は2月7日に定年を迎える黒川弘務東京高検検事長の8月7日までの勤務延長を閣議決定した。安倍晋三首相が自身に司直の手が及ぶことを防ぐために行った奇策と言われ、その後検察庁法改正案は大きな問題となった。
3月3日、案里が初当選した2019年7月の参院選を巡り車上運動員に違法報酬を支払ったとして広島地検は案里の公設秘書ら3人を公職選挙法違反(買収)の疑いで逮捕した。案里は複数の党幹部に電話し「ご迷惑をお掛けしている」と陳謝した。東京・永田町の議員会館でも河井夫妻の事務所の家宅捜索が6時間半にわたって行われた。
3月18日、案里の陣営が活用していたグループLINEの内容が全国紙で報道された。克行が広報用の車の走行ルートや集会の状況まで細かく陣営に指示したり問い合わせたりしていたことが新たに判明。克行のLINEのアカウント名は「あらいぐま」、案里のアカウント名は「アンジー」であることが明らかとされた。「アンジー」はアンジェリーナ・ジョリーに対して日本の芸能誌が主に用いる愛称であるが、案里は自身のプロフィール写真にジョリーの写真をあてていた。
3月24日、広島地検は河井案里の公設秘書ら2人を同法違反の罪で起訴した。案里の秘書が連座制の対象にあたるとして、同日、広島地検は百日裁判を広島地方裁判所に申し立てた。自民党県連副会長を務める県議会議長の中本隆志は党本部に対し「離党勧告を即刻してもらいたい。従わない場合は除名してほしい」と注文を付けた。そして「議員辞職すべきだ」と案里を批判した。
3月28日、衆院議員宿舎で飲酒しながら薬を多量に服用し、救急搬送された。
3月29日、克行が広島市議会議員に現金数十万円が入った封筒を手渡していたことが明らかとなった(時期は2019年5〜6月頃)。
3月31日、克行が三原市長の天満祥典と大竹市長の入山欣郎に現金が入った封筒を配り歩いていたことが発覚した。
4月1日、克行が安芸太田町長の小坂眞治に現金20万円入りの封筒を渡していたことが小坂の証言から明らかとなった。
4月3日、元廿日市市長の眞野勝弘が市長在任中に現金を受け取った可能性があるとして広島地検から任意聴取を受けていたことが明らかとなった。
4月7日、安芸太田町長の小坂眞治は町議会の議長宛てに辞職願を提出。9日、町議会が臨時会を開き同日付で辞職した。
4月9日、広島地検は檜山俊宏県議と買収事件で浮上した渡辺典子県議の事務所や自宅を公職選挙法違反の疑いで家宅捜索した。
4月14日、克行が参院選前に案里の後援会幹部に「案里をよろしく頼みます」と選挙戦での電話作戦を依頼し、10万円入りの封筒を手渡していたことが明らかとなった。
4月21日、広島地検は広島市議会の平野博昭元議長の事務所と自宅を公職選挙法違反の疑いで家宅捜索した。
4月23日、広島地検は広島市議の沖宗正明の自宅を公職選挙法違反の疑いで家宅捜索した。
4月24日、廿日市市議会の元議長の仁井田和之が、克行から「案里をよろしくお願いします」と言われ、現金20万円を受け取っていたことが明らかとなった。仁井田は数日後、克行の事務所に現金を返し、参院選では溝手を支援したという。
4月25日、広島地検は前安芸高田市長の浜田一義の自宅を家宅捜索し、任意聴取を行った。
4月28日、広島地検は広島県議3人の議員控室を家宅捜索した。
5月13日、広島地検が克行を公選法違反容疑で立件する方針を固めたことが明らかとなった。
6月6日、克行だけでなく、案里も地元有権者らに現金を配った疑いのあることが明らかとなった。
6月13日、検察当局により、河井夫妻の自宅からは現金の配布先とみられる、合わせて100人以上の名前が記載された2種類のリストが押収されていることが報じられた。1つには地方議員や市長などの名前が、もう1つには後援会幹部や事務所関係者などの名前が、金額とともに記載されていた。検察当局は夫の河井克行前法務大臣が、2000万円を超える現金を地方議員らに配り、案里議員自身も一部の現金を配っていた疑いがあるとみている。
6月16日、広島地裁は、安里の公設秘書に対して公職選挙法違反(買収)の罪で懲役1年6ヶ月執行猶予5年の判決を言い渡した。また同日の判決では、報酬額について「夫の河井克行議員の意向を確認したうえで決まった」と指摘した。
6月17日、押収されている2種類のリストは、事務所にある河井前大臣のパソコンでも管理されていたと報じられた。検察当局がリストに記載されていた地元議員などから事情を聴いた結果、現金が配られた疑いがある100人近くの大半が、河井前大臣や案里議員から現金を受け取ったことを認めている。
6月18日、広島県内の地方議員や首長ら94人に投票や票の取りまとめを依頼し、計約2,570万円の報酬を渡したとして、夫の克行と共に東京地検特捜部によって逮捕された。
同日、安倍首相は、案里と克行が逮捕されたことについて「任命した者として責任を痛感しており、国民に深くおわび申し上げる」と陳謝した。
6月19日、検察当局が押収した克行のパソコンから、現金配布先の名前や金額を記載したリストのデータが削除されていたことがわかった。しかし検察は、電子データを解析する「デジタル・フォレンジック」を実施し、削除されていたリストを復元した。
6月23日、三原市長の天満祥典が2019年3月と6月、克行から2回にわたり現金計150万円を受け取っていたことが明らかとなった。
同日、二階俊博幹事長は夫妻に提供した1億5000万円について、「どうなったかは細かく追求していない」との認識を示した。
6月24日、元県議会議長の奥原信也県議(呉市)が計200万円を受け取っていたことが明らかになった。克行から2019年4月に50万円、6月に100万円を提供され、案里からは同年5月に50万円が渡されたという。うち50万円は使い、残りの150万円は政治資金規正法に基づく寄付として処理したと奥原は述べている。
同日、安芸高田市長の児玉浩が、県議時代の2019年に2回にわたって計60万円を受け取ったことを認めた。
同日、案里の後援会長で、府中町議会議員の繁政秀子が、克行から2019年5月に現金30万円を受け取ったことを認めた。繁政は最初は断ったが、「安倍さんから」と言われ、押し問答の末に受け取ったという。
同日、三原市長の天満祥典が市議会議長の仁ノ岡範之に6月30日付で辞職する意向を電話で伝えた。
6月25日、広島市議会議員の石橋竜史が、克行から2019年5月下旬に現金30万円を受け取ったことを明かした。「収支報告する必要はない。2人だけの秘密だよ」と言われたという。
6月26日、広島市議会議員の谷口修と沖宗正明が、克行からそれぞれ現金50万円を受け取ったことがが明らかとなった。沖宗は克行から2019年4月に30万円、6月に20万円を受け取ったと述べており、計50万円は日常生活で使い、参院選では「案里候補を推薦している」とのはがきを約3千枚書いて支援したという。
同日、広島県議(安佐北区)の渡辺典子が、克行から2019年5月下旬に10万円を受け取っていたことが明らかとなった。同県議(江田島市)の沖井純は克行から2019年4月中旬に50万円を受け取ったと明かした。
同日、安芸高田市議会の先川和幸議長、水戸真悟副議長、青原敏治市議の3人は記者会見し、克行から現金を受け取ったと明らかにした。3人のうち先川は議長室で20万円、水戸は副議長室で10万円を受け取ったという。
同日、廿日市市議会においては、仁井田和之に続いて、藤田俊雄市議が克行から10万円を受け取ったことが明らかとなった。
同日、呉市議会議員の土井正純が克行から2019年7月後半に30万円を受け取っていたことが明らかとなった。
同日、江田島市議会議員の胡子雅信が克行から2019年6月中旬に10万円を受け取っていたことが明らかとなった。政治資金収支報告書には記載せず自身の口座に入れた。
同日、北広島町議会においては、宮本裕之議長が20万円を受け取ったことが明らかとなった。
6月29日、河井案里後援会会長であり府中町議会議員の繁政秀子の辞職願が町議会本会議で全会一致で可決され辞職。
同日、北広島町議会議員の宮本裕之が議長職を退く考えを示した。
同日、広島市議会議員の木戸経康が克行から2019年4月に30万円を受け取ったと証言。同市議の児玉光禎は克行から2019年3月に30万円を受け取ったが数日後に現金書留で送り返したと証言。
同日、愛知県稲沢市議会議員の野々部尚昭と元石川県議会議員の大口英夫が陣営スタッフとして参加し、計約155万円を受け取っていたことが明らかになった。2人逮捕容疑となった配布先の94人に含まれており、受け取った155万円は参院選の収支報告書には記載されていない。野々部は選対事務局長を務めた。
同日、安芸高田市長の児玉浩は市議会議長へ辞表を提出。
7月3日、安芸高田市議会は児玉浩の辞職に同意した。先川和幸議長と水戸真悟副議長は議長、副議長を辞した。
7月8日、公職選挙法違反(買収)の罪で夫の克行と共に起訴された。
同日、保釈を請求(克行は9日に請求)。
同日、安倍首相は、案里と克行が起訴されたことについて「かつて法務大臣に任命したものとして、その責任を痛感するとともに、国民の皆さんに改めておわび申し上げたい」と陳謝した。安倍首相が河井夫妻関連の不祥事で責任を痛感するのはこれで6回目。
7月10日、亀井静香の元秘書が克行から300万円を受け取っていたことが明らかとなった。2019年5月末に100万円を、7月3日に200万円を受け取ったとされる。
7月15日、東京地裁は案里と克行の保釈請求を却下。
同日、案里の弁護人は、決定を不服として地裁に準抗告したが、棄却された。
7月17日、保釈請求を退けた東京地裁の決定を不服として、最高裁に特別抗告した。
同日、安芸高田市議会議員の先川和幸、水戸真悟、青原敏治が現金を受領した責任をとり辞職。青原はのちに「10万円をもらえてラッキーだと思った。大好きなパチンコに使った」と証言した。
7月20日、最高裁判所は案里の特別抗告を棄却した。
8月7日、2回目の保釈請求をしたが、13日、再び却下される。
8月25日、初公判が開かれ、河井夫妻は無罪を主張。3回目の保釈請求が行われたが、26日に却下。
9月15日、克行が自身の担当弁護士全員を解任し、公判が分離される事態となる。
10月7日、4回目の保釈請求が行われたが、12日に却下。
10月16日、案里の弁護士は5回目となる保釈請求を行った。27日、東京地裁は保釈を認める決定を出した。保釈保証金は1200万円で、即日納付された。検察側は決定を不服として抗告したが、東京高裁は棄却。案里は同日夜、東京拘置所から保釈された。
11月25日、最高裁が公設秘書の上告の棄却を決定。
12月15日、東京地裁で論告求刑公判が行われ、検察側は懲役1年6か月を求刑した。
   2021年
1月21日、東京地裁は求刑1年6か月に対して懲役1年4か月、執行猶予5年の判決を言い渡した。
2月1日、前三原市長の天満祥典は東京地裁で、克行から受け取った計150万円を「不法な金だった」と証言。また、「現金は背広やネクタイ、財布の購入に充てた」と述べた。
2月3日、秘書を通じて、山東昭子参院議長宛てに議員辞職願を提出。同日午後、参院本会議で許可された。また同日、東京地裁の有罪判決を受け入れ、控訴しないとするコメントを発表。検察側も控訴しなかったため、5日に有罪判決が確定した。
2月9日、東京地裁で案里の選挙事務所の会計担当者の供述調書が読み上げられる。調書によれば、会計担当者は克行の指示で、党本部からの資金1億5千万円を管理する専用口座を開設。そこから資金を引き出し、稲沢市議の野々部尚昭、元石川県議の大口英夫、男性会社員ら3人の陣営スタッフに「給与」として計約220万円を振り込んだという。男性会社員は受け取った現金の違法性を認め、この日証人尋問に出頭した。
2月17日、東京地裁で野々部尚昭は受け取った現金の違法性を認め、「2019年12月6日に克行に東京都内の議員宿舎に呼び出され、『取り調べを受けたり、マスコミに追いかけ回されたりしても、何も話さないでくれ』と頼まれた。案里も同席していた」と証言した。
政策・主張​
憲法改正に賛成。改正するべき項目に自衛隊の保持を挙げた。
憲法9条改正について、県議時代に防衛研究所に通い、旧海軍・旧陸軍のガバナンスの在り方を勉強したことを踏まえた上で、9条改正が、戦争に結び付くわけではないと政治家がきちんと伝えなければならないと考えている。
アベノミクスを評価する。
消費税増税についてはどちらとも言えないとしている。
夫婦別姓についてはどちらとも言えないとしている。
同性婚の法整備化についてはどちらとも言えないとしている。
消費税率の10パーセントへの引き上げに賛成。
原子力発電所は必要。
普天間基地の辺野古への移設に賛成(普天間基地移設問題を参照)。
女性宮家創設に反対。
菅官房長官と対談をした際、災害時の意思決定やプッシュ型支援、責任の明確化などを通じて、広島を世界最先端の防災地域にしたいと語った。
人物​
小さいころから政策に関心があった。高校生の時に、ベルリンの壁が崩壊し、また一方で日米構造協議が始まったことに、新しい時代の到来を感じると同時に政治への思いが強くなっていったという。
「人生100年時代」を迎えようとする日本は、年金問題が示すように、国家の制度設計を根本的に変えなければならない時に来ているとしている。教育や雇用のあり方も変化が迫られてるとし、環境整備を積極的に行っていきたいと語った。
尊敬する政治家として高村正彦と菅義偉をあげている。
信条は「人生に失敗はない」。特技は松任谷由実のものまねと演歌だという。
LINEのアカウント名は「アンジー」。「アンジー」はアンジェリーナ・ジョリーに対して日本の芸能誌が主に用いる愛称であるが 、案里は自身のプロフィール写真にもジョリーの写真をあてている。
参院選を通じて、自前で後援会を作ったことにより、有権者と直接やりとりができたこと、このことが大きな財産になったと語った。
参議院選挙を振り返り、低投票率の原因として、「争点設定をする力が野党になく、現状の是非だけが争点になったからだ。与党の訴えた「安定政権を続ける」というコピーも訴求力が弱く、野党は「安倍1強打破」ばかりで何をしたいのか打ち出しがない。」と述べた。また争点がないため、自分のやりたいことを訴えるしかなかったとも語った。
参議院議員として初登院した際、「国の目線で地方の課題に取り組むということと、あとは国会議員にしかできない国防安全保障などの勉強をぜひさせていただきたいと思っています」との抱負を語った。本会議に出席後、二階派の総会に参加。
堺雅人は中学校の同級生である。
所属団体・議員連盟​
自民党たばこ議員連盟
神道政治連盟国会議員懇談会 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 

 

 

 

●河井克行
(1963 - ) 日本の政治家。衆議院議員(7期)、自由民主党総裁外交特別補佐、内閣総理大臣補佐官(第3次安倍第1次改造内閣)、法務副大臣(第1次安倍改造内閣、福田康夫内閣)、外務大臣政務官(第2次小泉改造内閣、第3次小泉内閣)、衆議院外務委員長、法務大臣(第101代)、きさらぎ会幹事長、広島県議会議員(1期)等を歴任した。
経歴​
生い立ち​
広島県三原市生まれ。三原市は、河井の父と母が出会い結ばれ、河井が生まれて幼稚園年中組まで過ごした古里である。三原市本町・香積寺の下にある六畳二間の生家は平屋の賃貸で風呂がなく、幼少期の河井は母に手を引かれ銭湯に通っていた。
広島市立安小学校、広島学院中学校・高等学校を経て、1985年に慶應義塾大学法学部政治学科(専攻、東南アジアの国際政治)卒業。松下政経塾に入塾(第6期生)した。同期生に、静岡県静岡市長の田辺信宏や福井県越前市長の奈良俊幸などがいる。
1988年、アメリカオハイオ州デイトン市行政管理予算局国際行政研修生となる。1990年、松下政経塾を卒塾し、出身地である広島県に帰郷。
1991年、広島県議会議員選挙に広島市安佐南区選挙区から立候補し、初当選した。
衆議院議員へ​
衆議院の旧広島1区は定数3のうち自民党が2議席占めていたが、1993年の第40回衆議院議員総選挙に際し、岸田文武は前年に死去、粟屋敏信は新生党に移った。党は岸田文武の息子の岸田文雄と河井の2人に公認を出すも、岸田はトップ当選、河井は候補者8人中6位で落選した。
1996年、第41回衆議院議員総選挙に広島3区から自民党公認で立候補し、新進党新人の増原義剛らを破り、初当選した。
2000年6月の第42回衆議院議員総選挙では、前回の選挙で破った無所属の増原義剛に敗れ、比例復活もならず落選。支援者から「最大の敗因は独身であること」と指摘され、気落ちしているときに知人から、科学技術振興事業団(現・科学技術振興機構)に勤務していた河井案里(当時の姓は前田)を紹介される。東京で紹介者をまじえて夕食をともにし、2次会で赤坂のスナックに行った。「天城越え」を歌う案里を見初め、その日のうちに交際が決まった。2001年4月20日に広島市内のホテルで結婚式を挙げた。
増原がその後自民党に入党したため、以後2009年の第45回衆議院議員総選挙まではコスタリカ方式が採られ、河井、増原が交互に比例中国ブロック、広島3区から立候補する構図が続く。2003年の第43回衆議院議員総選挙では比例中国ブロック単独2位で立候補し、3年ぶりに国政に復帰した。2004年、第2次小泉改造内閣で外務大臣政務官に任命され、第3次小泉内閣まで務める。
2007年、第1次安倍改造内閣で法務副大臣に任命され、福田康夫内閣まで務める。2009年の第45回衆議院議員総選挙に比例中国ブロック単独3位で立候補し、4選。2011年6月、鳩山邦夫を中心に結成された「きさらぎ会」に参加し、同会幹事長を務める。
2012年9月の自由民主党総裁選挙では安倍晋三を支持し、安倍の推薦人に名を連ねた。
2012年の第46回衆議院議員総選挙では、広島3区で民主党前職の橋本博明を比例復活すら許さない大差で破り、5選。選挙後の第182回国会において、衆議院外務委員長に起用された。
2014年の第47回衆議院議員総選挙では、民主党元職の橋本に前回よりも票差を縮められたものの、橋本に比例復活を許さず、6選。2015年、第3次安倍第1次改造内閣で内閣総理大臣補佐官(ふるさとづくり推進及び文化外交担当)に任命された。
2017年の第48回衆議院議員総選挙では、無所属・連合推薦の塩村文夏、日本維新の会公認の今枝仁ら5候補を破り、7選。
公職選挙法違反事件​
2019年3月13日、自民党は河井案里を、7月の参院選広島県選挙区の2人目の公認候補に決定した。克行は3月下旬から三原市長の天満祥典や県議(当時)の児玉浩など多数の公職者に現金をばらまき始めた。
同年7月4日、第25回参議院議員通常選挙が告示され、案里が立候補。案里と河井は、自民党から支給された多額の資金(のちに1億5千万円と判明)を元手に、5期現職の溝手顕正を追い落とすための選挙戦を展開。克行はインターネットとコンサルティングの業者に、溝手のイメージを悪くするよう依頼。業者は架空の人物を名乗り、溝手や自民党県連が案里をいじめるようなことをしているとブログに投稿した。克行は記事の具体的な内容まで指示する一方、無所属の森本真治に対してはネガティブ・キャンペーンなどの工作は講じなかった。7月21日、投開票。案里は得票数2位で初出馬初当選を果たし、溝手は次点で落選した。
同年9月11日、第4次安倍第2次改造内閣で法務大臣として初入閣。
同年10月30日、参院選の案里の選挙運動に関して、選挙スタッフに法定の上限額を超える報酬を渡していたとされる公職選挙法違反疑惑が「週刊文春」電子版で報じられる。これを受けて10月31日、安倍晋三首相に法務大臣の辞表を提出し、受理された(後任は森雅子)。
事件発覚後、克行と案里は公の場からそろって姿を消し、第200回国会(2019年12月9日まで)および各委員会を欠席し続けた。
2020年3月3日、広島地検は克行の政策担当秘書、案里の公設秘書、陣営幹部の3人を公職選挙法違反(買収)の疑いで逮捕した。24日、夫妻の秘書2人を同法違反の罪で起訴した。
6月16日、広島地裁が案里の公設秘書に公職選挙法違反(買収)の罪で懲役1年6ヶ月執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。翌17日、案里と共に自民党に離党届を提出し受理された。
6月18日、広島県内の地方議員や首長ら94人に投票や票の取りまとめを依頼し、計約2,570万円の報酬を渡したとして、妻の案里と共に東京地検特捜部によって逮捕された。法務大臣経験者の逮捕は戦後初。
7月8日、公職選挙法違反(買収)の罪で妻の案里と共に起訴された。同月9日、保釈を請求するも却下。
8月25日、東京地裁にて初公判が開かれた。ところが9月15日、専任弁護士を全員を解任し、案里と公判を分離する事態となる。
2021年3月3日、東京地裁は河井克行の保釈を認める決定をした。保釈保証金は5,000万円で即日納付され、同日保釈された。
同年3月18日、近く議員辞職をする意向を固めたと報じられた。3月23日、東京地裁の被告人質問で、克行はそれまでの全面的な無罪主張を一転させ、起訴内容の多くについて買収の意図を認めた。同時に辞職する考えを表明した。同日午前、自民党幹事長の二階俊博は記者会見で、「議論の余地のないこと。党としても、こうしたことを他山の石としてしっかり対応していかなければならない」と述べた。3月25日、衆議院に議員辞職願を提出。4月1日の本会議で辞職が許可された。
4月5日、被告人質問で「もはや、有権者から審判をもらう資格はない。生涯にわたって選挙に立候補することは致しません」と発言し、政界からの引退を表明した。
6月18日、東京地裁で判決公判が行われ、懲役3年、追徴金130万円の判決が言い渡された。実刑判決が下ったため保釈も取り消され、再度東京拘置所に収監された。
選挙・役職​
1991年(平成3年) 広島県議会議員選挙に広島市安佐南区選挙区から立候補し、初当選。
1993年(平成5年) 第40回衆議院議員総選挙に旧広島1区より立候補し、落選。
1996年(平成8年) 第41回衆議院議員総選挙に広島3区より立候補し、初当選。
2000年(平成12年) 第42回衆議院議員総選挙に広島3区より立候補し、無所属の増原義剛に敗れ、重複立候補していた比例中国ブロックでの比例復活もならず落選。
2003年(平成15年) 第43回衆議院議員総選挙に比例中国ブロックから単独3位で立候補し当選。(2期)
2004年(平成16年) 第2次小泉内閣において外務大臣政務官に就任する。
2005年(平成17年) 第44回衆議院議員総選挙に広島3区から立候補し、当選。(3期)
2005年(平成17年) 総選挙後発足した第3次小泉内閣で外務大臣政務官に再任される。
2005年(平成17年) 自由民主党国会対策副委員長に就任する。
2006年(平成18年) 自由民主党国防部会長に就任する。
2007年(平成19年) 第1次安倍改造内閣で法務副大臣に就任する。
2007年(平成19年) 福田内閣で法務副大臣に再任する。
2008年(平成20年) 自由民主党副幹事長に就任する。
2009年(平成21年) 第45回衆議院議員総選挙に比例中国ブロックより単独2位で立候補し当選。(4期)
2009年(平成21年) 自由民主党国会対策副委員長に就任する。
2011年(平成23年) 自由民主党組織運動本部地方組織、議員総局長に就任する。
2011年(平成23年) 衆議院外務委員会筆頭理事に選任される。
2012年(平成24年) 自由民主党副幹事長に就任する。
2012年(平成24年) 第46回衆議院議員総選挙で広島3区より立候補し、当選。(5期)
2012年(平成24年) 衆議院外務委員長に選任される。
2013年(平成25年) 自由民主党総務会副会長に就任する。
2014年(平成26年) 第47回衆議院議員総選挙に広島3区から立候補し、当選。(6期)
2015年(平成27年) 第3次安倍改造内閣で内閣総理大臣補佐官に就任する。
2016年(平成28年) 第3次安倍第2次改造内閣で内閣総理大臣補佐官に再任される。
2017年(平成29年) 自由民主党総裁外交特別補佐に就任する。
2017年(平成29年) 第48回衆議院議員総選挙に広島3区から立候補し、当選。(7期)
2019年(令和元年) 第4次安倍第2次改造内閣で法務大臣に就任する。
2019年(令和元年) 10月31日付で法務大臣を辞任。
2021年(令和3年)4月1日、衆議院議員辞職。
活動・主張​
防衛政策​
北朝鮮や中国の弾道ミサイルの脅威への抑止力のためのミサイル防衛(MD)に関する日米協力強化を目的とする超党派議連「日米同盟コーカス」に所属している。2015年10月には長島昭久、松野頼久とともに訪米し、米下院軍事委員会戦略軍小委員会のメンバーと共同で作業部会を立ち上げた。
2017年3月の「ハドソン研究所」における講演では、北朝鮮について「経済的に北朝鮮を支えているのは中国だ」とし、北朝鮮に自制を求めるため中国が影響力を行使する必要があると述べた。また韓国大統領選挙について「韓国の次の政権が日米韓3か国の連携の重要性を十分理解することを期待している」と述べ、情勢を注視していくとしている。
さらに、河井は核やミサイルの開発を加速させる北朝鮮に対し「圧力を強める時だ」と指摘した上で自衛隊による中距離弾道ミサイルなどの保有を検討すべきだという考えを示した。河井は、北朝鮮による弾道ミサイルの発射や6回目の核実験について「全く容認できない」と非難し、「今は対話でなく、圧力を強める時だ」「われわれは日本を取り巻く安全保障環境がこれまでとは決定的に異なる次元に移った現実を直視しなければならない」と述べた。
中国による南シナ海進出に関しては、2016年12月11日にワシントンにおけるコーカー上院議員との会談で”中国による南シナ海の人工島の軍事拠点化を止めるためには米軍の航行の自由作戦だけでは不十分”で「それだけでは今の軍事化を止めることができない」と述べた。さらにコーカー議員に対して「南シナ海情勢の悪化は、米国の国家安全保障そのものにも甚大な危機をもたらす」と伝えている。
科学技術政策​
2008年5月に成立した宇宙基本法に宇宙平和利用決議等検討小委員会の委員長代理として関わり、草案を作成。草案は公明党や民主党との協議を経て、多少の修正はありつつも大筋で合意された。
法務政策​
「法曹養成と法曹人口を考える国会議員の会」の事務局長を務めており、法曹人口増員計画の見直しを主張している。
地方創生​
2014年の広島県豪雨被害を受け、土砂災害防止法の改正を検討する作業部会の座長として土砂災害防止法の改正を中心的に取り組んだと述べている。
内閣総理大臣補佐官として​
   日米同盟
2016年10月にアメリカ大統領選挙中に渡米し、候補のクリントンとトランプにそれぞれ近いとされる元議員や元政府高官などの民主・共和党の関係者と会談を行い「安倍首相は再交渉しない」「安倍首相は今の臨時国会でTPPが承認されるよう全力を挙げている」と述べた。
ドナルド・トランプが2016年アメリカ合衆国大統領選挙で勝利し、次期大統領に決まると、安倍晋三総理の特命で米国に派遣され、日米安保やTPP(環太平洋パートナーシップ)などの交渉を行った。さらに、ワシントンでは、政権移行チームのニューネス下院議員と会談した。
2017年1月4日トランプ次期アメリカ大統領の政権移行チーム幹部であるコリンズ下院議員とワシントンで会談。その後、記者会見で就任後早期に日米首脳会談を実施することで合意したと伝えた。
2017年1月には、慰安婦問題に関する日韓合意に関して、米国に説明するために安倍首相の特使としてワシントンに派遣された。
山口敬之によれば、河井は総理補佐官就任前、「議員外交」を入り口にして15回に上る訪米を行った。
   アジア(インド太平洋地域)
2015年11月2日〜6日豪州に派遣され、中国の南シナ海進出を念頭にシノディス官房長官、ビショップ外相と会談、「インド太平洋地域の平和と安定に向け、戦略的で特別なパートナーシップが重要」という認識で一致した。
フィリピンでロドリゴ・ドゥテルテが大統領に就任した際には、総理親書をもってフィリピンへ派遣された。2016年12月にフィリピンを訪問しドゥテルテ大統領と会談している。
河井は、12月21日付『夕刊フジ』において、米国の中国への対応について、中国を『戦略的競争相手』として「中国の脅威をはっきり盛り込んでいる」として、中国への風当たりが今後強くなることを予測している。
   欧州
河井は、英国で親中派として知られるオズボーン財務相が就任すると、特使として派遣され、対中傾斜への懸念を示した。会談後の記者との会見で「日英関係の戦略的な重要性で一致した」と述べた。さらに東アジアの安全保障状況について、南シナ海への中国の進出を念頭に「法の支配の徹底」にむけた連携強化をしたいとした。
2016年7月24日〜30日まで英国、ドイツ・フランス・イタリアを訪問。イタリアではイタリア政府のほかに、バチカン市国のカミレリ財務次官と会談。河井は法王フランシスコの早期来日を要請し、カミレリは「来年の訪日を真剣に検討したい」と応じた。
   アフリカ
2016年1月28日〜2月3日まで「アフリカ連合総会」に出席し出席した16か国のの首脳を会談を行った。
2016年5月8日〜13日でアフリカのガーナ・ケニアを訪問。ガーナではマハマ大統領に総理大臣の親書を手渡し、ケニアでは内閣府の「アフリカ経済戦略会議議長代行」としてルト副大統領とモンバサ港地域の経済協力について会談した。
   中近東
2016年2月14日〜20日、イランへ派遣された。これはイランの核開発計画に対して、米国などの6か国が合意した「包括的行動行動計画」の履行日に際し、経済協力が再開されるための訪問で、ヴェラヤティ最高指導者外交顧問や、ザリーフ外務大臣と会談した。
2017年4月のシリア情勢の変化に対して、河井は特使としてトルコ、アラブ首長国連邦、エジプトに派遣された。トルコではエルドアン大統領に安倍首相の親書を手渡した上で、政府関係者と意見交換を行う。
法務大臣として​
児童虐待防止に向け関連部局のメンバーを入れた検討会を立ち上げるよう指示し、数カ月以内に防止策の方向性を定めるとしている。
国外退去を命じられた外国人が出国を拒み、施設に長期間収容されている問題で、健康上の問題などで一時的に釈放されたあと行方がわからなくなるケースが増えていることについて、「出入国管理体制の根幹を脅かし、社会秩序や治安にも影響を与えかねない」と述べ、必要な対策の検討を急ぐ考えを示した。
2019年10月10日夜、在留外国人に対し、大型で非常に強い令和元年東日本台風(台風19号)への注意を英語で呼びかける動画を公開した。台風は12〜13日に近畿から東日本に接近するとみられ、河井は「最大限の警戒をしてほしい」と話し、観光庁が監修した災害時情報提供アプリ「Safety tips」が英語や韓国語、中国語、ベトナム語など11カ国に対応していることも紹介し、スマートフォンにダウンロードして情報を収集するよう呼びかけた。12日朝までに視聴が1万回を超えた、河井は「より多くの外国人に見てほしい」と動画の拡散を訴えている。
人物​
人柄​
2016年、秘書へのパワハラ疑惑を報じられた際、広島市の小学校時代の後輩が取材に対し「河井先輩のアダ名はスネ夫。実家は薬局経営の裕福な家庭で事あるごとに、僕と君らでは育ちが違うみたいなことを言う嫌みなヤツだった。当然、皆から嫌われていた」とコメントしている。
2018年2月、出身地の三原市を訪れ、50年ぶりに三原神明市に参加した。河井が生家の隣の大家に声を掛けたところ、大家は「昨日のことのようによく覚えていた」という。
大のアライグマ好きで、アライグマのグッズを収集している。ブログのタイトルは「あらいぐまのつぶやき」、LINEのアカウント名は「あらいぐま」である。
ゲームマニアでもあり、LINEバブルはプロの腕前を誇る。
安倍晋三との親交​
安倍晋三の側近の一人だった。先述の公選法違反も当時の首相であった安倍の意向と言われているほか、自身のウェブサイトに掲載する活動報告「月刊 河井克行」においても安倍との関係の深さを繰り返し強調していた。2016年盛夏号では、安倍が山形県の農家を訪れた際に進行役を務めたことをPR。 同年錦秋号には、安倍とともにケニア共和国に向かう写真を表紙に掲載。2017年新春号には、安倍らとともにこぶしを突き出して気勢を上げる写真を掲載。2018年早春号では、安倍から「今後は私の特命に基づいた議員外交を党において行うように」と命じられ、新設ポストの自民党総裁外交特別補佐に登用されたとつづった。
『月刊Hanada』2018年7月号が「総力大特集 安倍政権はなぜ強い」という特集を組んだ際、「安倍総理こそノーベル平和賞だ」と題する文章を寄稿した。その中で「北朝鮮のしたたかさ、嘘と欺きの歴史、騙しの手口を、官僚が作った紙ではなく、衆議院議員に初当選した二十五年前からの実体験に基づいて詳しく解説できるのは、世界中で安倍総理しかいません」と述べ、安倍晋三の平和実現への寄与を詳しく解説した。
2015年10月7日に第3次安倍第1次改造内閣が発足すると、河井は内閣総理大臣補佐官に任命された。日本経済新聞は2016年6月17日付の記事で、「安倍晋三総理を支える5人衆」の一人として、河井を、長谷川栄一内閣広報官、衛藤晟一補佐官、柴山昌彦補佐官、和泉洋人補佐官と並び称した。同記事は河井を「文化外交担当。米議会などに人脈がある」とした上で「今年に入り米国、イラン、ケニアなど10か国を訪問」し、「安倍総理が本当に考えていることを要人に伝え、率直な感想を聞いて持ち帰ることが仕事だ」と報じた。
その他​
鳩山邦夫の側近の一人だった。鳩山が設立した派閥横断型の政策グループ「きさらぎ会」の会合に定期的に参加。「きさらぎ会」では幹事長を務めた。
北海道2区選出の衆議院議員吉川貴盛と衆議院初当選同期であり、河井は自身のブログに吉川と写っている写真を載せ、「家族ぐるみのお付き合い」と紹介していた。なお、後に発覚した鶏卵汚職事件において吉川に鶏卵生産事業者のアキタフーズを紹介したのも河井である。
河井は1996年に衆議院に初当選して以来野中広務に「ひとかたならぬお世話になった」ことを自身のブログで明かしている。2018年4月14日、京都市内のホテルで行われた「故野中廣務先生お別れの会」に河井は参列している。
信仰​
河井はイエズス会が設立母体である広島学院中学・高校の出身である。2005年に前教皇ベネディクト16世が就任して以来それまでに計6回にわたりバチカンを訪問し、教皇訪日を要請してきたことを明かしている。
世界平和を希求するローマ教皇が日本を訪れて祈りを捧げることの意義を河井は何度も訴えている。河井の母親の聡子が2005年に死去した際には葬儀・告別式が広島市安佐南区祇園のカトリック祇園教会で行われており、河井が喪主を務めた。
不祥事​
参院選における公選法違反疑惑問題​
2019年10月31日、参院選の案里の選挙運動に関して、選挙スタッフに法定の上限額を超える報酬を渡していたとされる公職選挙法違反疑惑を「週刊文春」で報じられたことを受け、安倍晋三首相に法務大臣の辞表を提出し、受理された(後任は森まさこ)。
同年11月、克行は、溝手顕正を追い落とすために架空の中傷ブログを作成させたインターネット業者を再び呼び、パソコン内の現金配布先リストやスタッフ給与リストのフォルダーについて「データを復元できないように完全消去したい」と依頼。業者は議員宿舎、衆議院議員会館の事務所、広島市内の克行の自宅を訪れ、ソフトを使ってそれぞれのパソコンのデータを消去した。業者は、一連のデータ削除を請け負った費用として、自由民主党広島県連第3選挙区支部から82万6千円あまりの支払いを受けた。
同年11月27日、神戸学院大学の上脇博之教授ら11人は公選法違反の罪で河井夫妻らに対する告発状を広島地検に提出した。事件発覚後、河井と妻は公の場からそろって姿を消し、第200回国会(2019年12月9日まで)および各委員会を欠席し続けた。
2020年1月15日、広島地検は河井夫妻の事務所を家宅捜索した。河井夫妻は同日深夜に記者団の取材に応じた。いずれも謝罪したが、議員辞職、離党については否定した。同年1月23日、前年7月の参院選の公示前、自民党本部から案里が支部長を務める「広島県参議院選挙区第七支部」に対し7,500万円、克行が支部長を務める「広島県第三選挙区支部」に対し7,500万円、あわせて1億5千万円の入金があったことが明らかとなった。落選した溝手顕正が支部長を務める「広島県参議院選挙区第二支部」に対しては、党本部からの入金は1,500万円にとどまり、10倍の開きがあった。党本部が案里陣営に肩入れした実態が浮き彫りになった。選挙資金の入金先と入金時期は以下のとおり。
同年3月3日、広島地検は河井の政策担当秘書、案里の公設秘書、陣営幹部の3人を公職選挙法違反(買収)の疑いで逮捕した。24日、夫妻の秘書2人を同法違反の罪で起訴した。案里の公設秘書は河井の選挙への関与について「あらゆる場面で指示をして仕切っていた」と供述した。案里は複数の党幹部に電話し「ご迷惑をお掛けしている」と陳謝した。東京・永田町の議員会館でも河井夫妻の事務所の家宅捜索が6時間半にわたって行われた。その後、夫妻は「桜を見る会」前夜祭の舞台となったホテルニューオータニ東京のガーデンタワー棟に移動したが、その深夜に検察官10数人が令状を持って室内に入り、携帯電話を押収した。その際に、検察官から「着ているものを調べさせてもらう」といわれたため、案里は自ら全裸になり、多層構造になっている生理用品までめくって中を見せた。克行は「弁護士に相談したい」と言ったが、「裁判所からの差し押さえ令状があるから、その必要はない」「逮捕するわけではないから、弁護士を呼ぶ権利はない。法務大臣だったくせにそんなことも知らないのか」と一喝された。
同年3月29日、河井が広島市議会議員に現金数十万円が入った封筒を手渡していたことが明らかとなった(時期は2019年5〜6月頃)。3月31日、河井が三原市長の天満祥典と大竹市長の入山欣郎にも現金が入った封筒を配り歩いていたことが発覚した。4月1日、安芸太田町長の小坂眞治が河井から現金20万円入りの封筒を受け取ったと取材に証言した。4月3日、元廿日市市長の眞野勝弘が市長在任中に現金を受け取った可能性があるとして広島地検から任意聴取を受けていたことが明らかとなった。眞野は携帯電話などを押収された。4月7日、小坂は町議会の議長宛てに辞職願を提出し、受理された。4月9日、広島地検は檜山俊宏県議と渡辺典子県議の事務所や自宅を公職選挙法違反の疑いで家宅捜索した。4月14日、参院選前に案里の後援会幹部に電話作戦を依頼し、10万円入りの封筒を手渡していたことが明らかとなった。4月23日、広島地検は元広島市議会議長の平野博昭と息子を任意聴取し、家宅捜索した。4月24日、廿日市市議会の元議長の市議に「案里をよろしくお願いします」と伝えた後、現金20万円を渡していたことが明らかとなった。4月28日、広島地検は広島県議3人の議員控室を家宅捜索した。
同年5月13日、広島地検が克行を公選法違反容疑で立件する方針を固めたことが明らかとなった。
6月16日、妻の案里と共に離党届を提出し受理された。
6月18日、広島県内の地方議員や首長ら94人に投票や票の取りまとめを依頼し、計約2,570万円の報酬を渡したとして、妻の案里と共に東京地検特捜部によって逮捕された。
報道されている「お金を受け取ったとされる地元政治家リスト」は以下の通り。
7月8日、公職選挙法違反(買収)の罪で妻の案里と共に起訴された。同月9日、保釈を請求したが、15日、保釈請求は却下された。8月7日、2回目の保釈請求をしたが、13日、再び却下される。
8月25日、初公判が開かれ、河井夫妻は無罪を主張した。克行の弁護人は、初公判の終了後、東京地裁に3回目の保釈請求をしたが、26日、却下された。27日、弁護人は保釈請求を却下した東京地裁の決定を不服として、東京高裁に抗告したが、28日、棄却された。9月9日、弁護人は東京地裁に4回目の保釈請求をしたが、10日、却下された。11日、決定を不服として、克行自ら東京高裁に抗告したが棄却された。さらに最高裁に特別抗告を行ったが15日に棄却され、同日の第8回公判終了後に自身の弁護士6人全員を解任した。16日、東京地裁は克行の弁護人全員解任を受け、夫妻の公判を分離して進めることを決めた。10月20日、計5人の弁護人を新たに選任。22日、案里の公判に証人として初めて出廷したが、検察側の尋問に対し、必要なことは自分自身の裁判で話すとして証言を拒絶する姿勢を見せた。
2021年2月3日、案里が議員辞職。2日後の5日に有罪判決が確定し、当選無効となる。
対立女性候補を3カ月尾行​
2017年10月の衆院選で河井は無所属の塩村文夏ら5候補を破り、7選。塩村に約2万票差まで迫られたことに危機感を持った河井は翌2018年夏から、元警察の探偵の男性に塩村の金銭問題や異性関係の調査を依頼し、尾行させた。調査は3カ月にわたった。報酬約70万円の支払いは、河井の資金管理団体「日本の夢創造機構」から横浜のコンサルタント会社を通して支払われたと男性は証言した。同団体の政治資金収支報告書によれば、2018年7月27日と9月27日に計64万8千円が「調査料」として横浜市中区相生町の会社に支払われている。
秘書給与ピンハネ疑惑​
日刊ゲンダイが「自民代議士の秘書給与ピンハネ疑惑」という見出しで、河井事務所が支援者を公設秘書として登録していながらも給与を渡さずにピンハネしていたと報じた。河井側は「登録している3人の秘書は実働しており、給与はそのまま本人らに支払われている」として名誉棄損で日刊ゲンダイを刑事告訴した。
秘書への暴行​
2016年、河井が元秘書兼運転手に暴行を働いたとして刑事告訴されていたことが明らかになった。元秘書はハンドルを握る左腕を革靴で蹴りつけられ、全治14日間の大ケガをしたされる。
スピード違反の揉み消し疑惑​
週刊文春によると、2019年の参院選をめぐるトラブル以前から、河井が秘書にスピード違反や、高速道路で極度に車間距離を詰める「あおり運転」を命じているといった情報が度々寄せられてきた。また、秘書や事務所スタッフへのパワハラなどもしばしばあったといわれており、かつての秘書は「克行氏のパワハラは特に車中でひどかった。私は運転手を兼ねた秘書をしていましたが、とにかく、車に乗ると些細なことで一日中怒られます。」と証言している。この秘書は運転中の秘書と河井のやり取りを録音していたが、雪が舞う真冬のある日、広島の県北へ向かう中国自動車道では以下のようなやり取りがおさめられている。・・・
その後ももっと速度を出すように指示を出したり、「(前の車との距離を)詰めなさいって、だから車線を。怖くないから」、「ほんと頑固だね、君は。頭柔らかくしろ、頭柔らかく。自分のやり方ばっかりじゃないか、運転一つとっても。よくわかりますよ、人の言うこと聞かない」と叱ったりした。この他にも、法務大臣就任後も地元選挙区で行われた北広島町のイベントに出席するため、運転手に80キロ制限の高速道路を60キロオーバーの140キロで走行させたという。警護した広島県警の後続車両は、140キロで走行した河井の車を追いかけたが、事務所に注意を促す電話を入れただけで、道路交通法違反で検挙しなかったという。
2005年衆院選における現金持参疑い​
2005年のいわゆる郵政解散に伴う衆議院議員選挙投開票前に、克行が出馬した地元市議に現金を持参した疑いのあることが2020年6月24日、分かった。元市議が証言したと伝えられた。
対立候補へのインターネット工作​
2020年10月19日、都内のインターネット関連のコンサルタント業者は克行から依頼され、架空の人物を装ってブログを開設し、溝手顕正本人や溝手を支援する自民党広島県連が案里をいじめているとなどと、溝手顕正側が悪い印象を持たれるような投稿を繰り返し、投稿内容は克行から具体的な指示を受け投稿前に克行が文章を確認した、一方で、案里の印象が良くなるような対策をネット上で講じていたと裁判で判明した。
所属団体、議員連盟​
きさらぎ会幹事長
神道政治連盟国会議員懇談会
みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会
国家主権と国益を守るために行動する議員連盟(副座長)
TPP交渉における国益を守り抜く会 
 
 
 
 
 

 

 

 

●河井夫妻選挙違反事件
2019年7月21日の第25回参議院議員通常選挙の広島県選挙区で河井案里が初当選(その後当選無効)した背景に、夫で衆議院議員で元法務大臣の河井克行と共謀して大規模な買収が発覚した事件である。この河井議員夫妻は公職選挙法違反で2020年6月18日に東京地方検察庁特別捜査部により逮捕された。
選挙結果​
選挙前の現職だった森本真治(党派を超えた支援を得るべく政党の公認を受けず無所属で出馬、国民民主党党員)と溝手顕正(自由民主党(以下、自民党)・岸田派)に加えて、新人の河井案里(自民党・二階派)らが立候補し、2枠を争った。森本は立憲民主党・国民民主党・社会民主党・日本労働組合総連合会広島県連合会の推薦を受け、溝手と案里はともに公明党の推薦を受けた。自民党分裂の結果、森本(329,792票)と案里(295,871票)が当選し、溝手(270,183票)の6選は叶わなかった。
事件の背景​
自民党岸田派に所属し岸田文雄党政務調査会長に応援された溝手顕正への党本部からの入金が1500万円だったのに対し、河井陣営には10倍の1億5000万円が入金され安倍晋三内閣総理大臣や菅義偉内閣官房長官に応援されたという格差があった。
背景に安倍と溝手の確執があったと言われている。参議院広島県選挙区は参議院二人区であり、長年自民党公認候補と民主党をルーツとする候補がそれぞれ1議席ずつ分け合っていた「無風の選挙区」であった。今回の選挙戦においても溝手が自民党側の候補として出ると予想されたが、党本部の意向で安倍や菅官房長官に近い2人目、河井克行の妻である河井案里も擁立された。また、自民党広島県連には溝手が所属する岸田派が多数を占め、溝手のみを支持する動向があったため、次の党総裁を狙う岸田文雄と菅義偉の「代理戦争」とする見方もある。
経緯​
2018年
2018年7月20日、自民党が翌年の参院選の1次公認候補予定者を発表。広島県選挙区(定数2)では現職の溝手顕正が公認内定を受けた。
7月31日、立憲民主党の枝野幸男代表が参院選で改選数2以上の選挙区に原則として候補者を擁立する方針を表明。
11月28日、広島県選挙区において国民民主党現職の森本真治と立憲民主党の候補者が競合して共倒れすれば自民党が2議席独占できるとして、自民党の甘利明選対委員長が宮澤洋一広島県連会長に溝手に次ぐ2人目の候補者擁立を要請した。
2019年
2019年2月19日、甘利が岸田文雄政調会長と会談し、河井案里や薬師寺道代を念頭に広島の2人目の候補者擁立に理解を求めたが、県連幹部は「擁立が決まったとは聞いてない」と不快感を示した。
3月12日、自民党が広島県選挙区の2人目の候補者として河井案里の擁立を決定。一方、久保田智子元アナウンサーらに立候補を打診していた立憲民主党では、3月24日に枝野代表が「(自民党に)二つ取られるかもしれない状況が、2人区で初めて広島で生じている」などと述べ、事実上独自候補の擁立断念と森本への候補者一本化を示唆した。
2019年7月21日、第25回参議院議員通常選挙の広島県選挙区で河井案里が初当選。
9月11日、河井克行が第4次安倍第2次改造内閣で法務大臣として初入閣。
10月30日、同年7月の参院選で河井陣営が車上運動員(いわゆるウグイス嬢)13人に公職選挙法の法定上限を超える報酬を支払った疑いがあると、週刊文春の電子版が報じた。
10月31日、克行は前日の週刊文春電子版の報道を受け、午前8時すぎに総理大臣官邸で安倍晋三内閣総理大臣と面会し法務大臣の辞表を提出、受理された。同日、週刊文春2019年11月7日号が発売され、同号でも河井陣営の疑惑が報じられる。
11月27日、神戸学院大学教授の上脇博之ら11人は公職選挙法違反の罪で河井夫妻らに対する告発状を広島地方検察庁に提出した。
12月6日、河井案里は事務所の秘書を通じて、適応障害で1カ月の自宅療養が必要とする診断書を、世耕弘成自民党参議院幹事長に提出した。また、案里の事務所は「(2019年12月)9日までの国会会期中の説明は難しい。今の段階では説明がいつになるか見通すのは難しい。当面、治療に専念する」とし、公職選挙法違反の疑いで刑事告発されたことについては「当局から協力を求められれば、真摯に対応し、説明する」とした。
2020年
2020年1月15日・16日、広島地方検察庁は少なくとも8箇所である、案里事務所(広島市中区)、克行事務所(広島市安佐南区)、河井夫妻の自宅マンション(広島市)、案里の公設秘書の男性宅と公設秘書の女性宅、克行の公設秘書の男性宅、案里陣営スタッフの自宅、克行実家(広島市)を一斉に家宅捜索し資料を押収した。
3月3日、広島地方検察庁は、克行の政策担当秘書、案里の公設第2秘書、案里陣営選挙対策本部事務長の3人を公職選挙法違反(買収)の疑いで逮捕し、24日に3人のうち河井夫妻の秘書2人を同法違反の罪で起訴した。
3月29日、克行が広島市議会議員に現金数十万円が入った封筒を手渡していたことが明らかとなった(時期は2019年5〜6月頃)。3月31日、克行が三原市長の天満祥典と大竹市長の入山欣郎にも現金が入った封筒を配り歩いていたことが発覚した。4月1日、安芸太田町長の小坂眞治が克行から現金20万円入りの封筒を受け取ったと取材に証言した。4月3日、元廿日市市長の眞野勝弘が市長在任中に現金を受け取った可能性があるとして広島地方検察庁から任意聴取を受けていたことが明らかとなった。眞野は携帯電話などを押収された。4月7日、小坂は町議会の議長宛てに辞職願を提出し、受理された。4月9日、広島地方検察庁は檜山俊宏県議と渡辺典子県議の事務所や自宅を公職選挙法違反の疑いで家宅捜索した。4月14日、参院選前に案里の後援会幹部に電話作戦を依頼し、10万円入りの封筒を手渡していたことが明らかとなった。4月23日、広島地方検察庁は元広島市議会議長の平野博昭と息子を任意聴取し、家宅捜索した。4月24日、廿日市市議会の元議長の市議に「案里をよろしくお願いします」と伝えた後、現金20万円を渡していたことが明らかとなった。4月28日、広島地方検察庁は広島県議3人の議員控室を家宅捜索した。
6月16日、広島地方裁判所が案里の公設第2秘書に公職選挙法違反(買収)の罪で懲役1年6ヶ月執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。
第201回国会が閉会した6月17日、自民党は河井夫妻議員がそれぞれ自民党本部に16日付で提出した離党届を、同日の持ち回りの党紀委員会でいずれも全会一致で受理を決定され受理したと発表した。
6月18日、東京地方検察庁特別捜査部は公職選挙法違反(買収)容疑で河井夫妻を逮捕し、衆議院第二議員会館内の克行事務所と参院議員会館内の案里事務所などを家宅捜索した。克行は、2019年7月の参議院選挙をめぐり、2019年3月下旬から8月上旬に広島県議や広島市議、地元首長ら計94人に案里への投票や票の取りまとめを依頼し、総額約2,570万円を提供した疑い。案里はこのうち5人に対する計170万円について夫の克行と共謀した疑い。法務大臣経験者の逮捕は戦後初。
7月8日、公職選挙法違反(買収)の罪で河井夫妻が起訴された。同日、案里の弁護人が保釈を請求。9日、克行の弁護人が保釈を請求。15日、東京地方裁判所は両名共認めない決定を下した。報道によると、東京地方裁判所は証拠隠滅や逃亡の恐れがあると判断したとみられると伝えられた。
8月7日、河井夫妻は東京地方裁判所に2度目の保釈を請求するが、同月13日に却下された。
8月17日、東京地方裁判所は12月18日まで計55回の公判期日を指定したことを明らかにした。判決は年明けにずれ込む見込み。
8月25日、初公判が開かれ、河井夫妻は無罪を主張した。その翌日には、3度目の保釈請求が却下された。
9月15日、克行が自身の専任弁護士6人を全員解任し、公判が分離される事態となる。
10月12日、東京地方裁判所は4回目の保釈請求を却下。10月7日に弁護人が4回目の請求をしていた。
10月16日、案里の弁護士は5回目となる保釈請求を行った。
10月19日、第21回公判が行われ、検察官が都内のインターネット関連のコンサルタント業者の供述調書を読み上げた。この業者は週刊誌に選挙違反の疑惑が報道された直後の2019年11月、克行に東京都内の議員宿舎に呼び出され「外部に流出させたらまずいものを消したい」「パソコンのデータを完全に消去してほしい」と依頼され「元大臣は焦っている様子で、完全に消去できるソフトがあると説明すると『じゃあ買ってきて』と言われた」、業者は近くの家電量販店で復元できない状態に消去できる市販ソフトを購入し、克行がそのソフトを使い議員宿舎にあるパソコンのデータを消した。その後、克行は削除を求めるデータを手書きしたメモを業者に渡し、業者が克告の議員会館の事務所と広島市内にある河井夫妻自宅のパソコンのデータを削除。議員会館での作業について業者は「動作がうまくいかず終了していなかったが、『もう十分だろう』と思い、作業を途中で終了した」と供述。業者は同12月にも、広島市内にある両被告の後援会事務所のパソコンのデータを公設秘書が同席する中で削除した。初公判での検察側の冒頭陳述によると、業者らによるデータ消去後も、議員会館の事務所のパソコンには同じリストが記録された別のデータが残っていた。関係者によると、検察当局はこれらのデータを家宅捜索で押収。大規模買収事件の捜査が進展する突破口となった。また、この業者は克行から依頼され、架空の人物を装ってブログを開設し、溝手顕正本人や溝手を支援する自民党広島県連が案里被をいじめているとなどと、溝手顕正側が悪い印象を持たれるような投稿を繰り返し、投稿内容は克行から具体的な指示を受け投稿前に克行が文章を確認した、一方で、案里の印象が良くなるような対策をネット上で講じていたと供述。
10月20日、克行が計5人の弁護人を新たに選任、新弁護団には、解任した弁護人のうち4人を再任したほか、新たに別の弁護士1人を選任しこの弁護人が主任弁護人を務める方針と報じられた。21日、解任された弁護人のうち5人が改めて選任されることになり、新たな弁護人2人と合わせて新弁護団は7人になると報じられた。
10月22日、23日、28日の案里の公判に克行が検察側の証人として出廷し、22日と23日に検察官による主尋問が行われ、28日には案里の弁護側による反対尋問が行われる予定だったが、克行は22日(第22回公判)に検察側の証人として出廷し100回以上の証言拒否を繰り返し23日まで2日間を予定していた検察側の主尋問は1日だけで終了、23日(第23回公判)は案里の弁護側による反対尋問は行われず数分で退廷し、28日は公判は開かれず克行の証人尋問は終了した。
10月27日、5度目の保釈請求で裁判所が認める決定をし保釈保証金1,200万円が即日納付され案里が東京拘置所から保釈された。保釈の条件には親族との同居が含まれている。案里の裁判は基本的に証人尋問が終わり11月13日からは被告人質問が始まる。また、同日、東京地方裁判所は克行の公判再開を決定し11月4日から行われる。
11月19日、東京地方裁判所は、克行の公判について新たに2021年3月31日までの45回の期日を決定したことを明らかにした。
11月25日付で、最高裁判所が案里の公設秘書の立道の上告を棄却を決定し有罪(懲役1年6月、執行猶予5年)が確定。検察側は立道について選挙運動の計画立案や調整を担う「組織的選挙運動管理者」として連座制を適用し、広島高等検察庁は案里の当選無効を求める行政訴訟を広島高等裁判所に年内に起こす見通し。これにより案里は連座制が適用され失職する見通し濃厚。ちなみに、連座制を強化した1994年の公職選挙法改正から2005年5月までに提起された連座訴訟117件のうち116件で検察側の勝訴が確定している。
12月15日、案里の論告求刑公判が東京地方裁判所(高橋康明裁判長)で開かれ、検察側は「選挙の公正に対する信頼を失墜させた」「民主主義の根幹を揺るがす前代未聞の悪質な犯罪だ」「厳しい選挙情勢になると予想し、本件犯行に及んだ。動機は身勝手極まりない」、さらに、地元議員の証言中に「『あはは』と笑い出すなど反省は皆無」として懲役1年6月を求刑した。12月23日に弁護側が最終弁論して結審し、年明けにも判決が言い渡される見通し。
12月16日、克行の公判予定日だったが、弁護士団の1人が新型コロナウイルス感染が判明したため公判期日取り消しとなった。感染が判明した克行の弁護士は12月10日から体調に異変があり16日朝までに陽性が確認された。克行と他の弁護人がPCR検査を受けた結果、全員の陰性が確認され、21日より公判再開。
12月21日、広島高等検察庁は案里公設第2秘書の有罪確定を受け、案里に連座制適用を求める行政訴訟を広島高等裁判所に起こした。
2021年
2021年の克行の裁判は1月8日から3月末までに計41回の審理が予定されている。克行の裁判の検察側の証人尋問や供述調書の審理は2月末ごろまでかかる見通しで、3月以降に弁護側の反証の中心となる被告人質問が始まるとみられる。
1月21日、案里の1審判決公判が東京地方裁判所で開かれ、高橋康明裁判長は弁護側の無罪主張を退け、案里に懲役1年4カ月、執行猶予5年、公民権停止5年(求刑懲役1年6カ月、公民権停止5年)の有罪判決を言い渡した。
2月3日、案里は秘書を介して山東昭子参議院議長宛てに議員辞職願を提出し、同日の参議院本会議で辞職が許可された。また同日、「たとえ一審でも信頼を回復できなかったことは政治家として情けなく、政治的責任を引き受けるべきだ」と控訴しないことを明らかにした。案里は議員辞職願の提出後に河井案里被告事務所を通じてコメントを発表。
2月4日、東京地方検察庁も控訴しない方針と報じられる。
2月5日午前0時に案里の有罪が確定し5年間の公民権停止となり、同時に第25回参議院議員通常選挙での当選が無効となった。東京地方検察庁の山元裕史次席検事は「当方の主張を一部認めなかった点は承服し難いが、百日裁判の趣旨などを踏まえて早期の確定を目指すべきだと判断し、あえて控訴はしないこととした」と発表。
2月19日、東京地方検察庁も控訴しない方針と報じられる現金を受け取ったとされる地元議員やスタッフら計100人への証人尋問や供述調書の朗読が終了した。94人が買収を認めた。明確に否定したのは広島県議ら4人。元県議ら2人は「当時の記憶がない」などと曖昧な説明をした。公判は3月に被告人質問を実施する。
2月24日、克行の弁護団が5回目の保釈請求。3月3日、東京地方裁判所は保釈を認める決定をした。保釈保証金は5000万円で、克行側は全額を現金で即日納付した。東京地方検察庁は決定を不服として東京高等裁判所に抗告したが、東京高等裁判所は抗告を退け、改めて保釈を認める決定をした。3月3日21時5分ごろ、胸に議員バッジを付けたスーツにネクタイ姿で逮捕から8か月余り勾留されていた東京拘置所の建物を出た。東京拘置所の玄関の外にいる報道陣に向かって約10秒間、無言で深々と頭を下げた。その後、迎えの黒いセダンに乗り込み東京拘置所を後にし、車両は港区赤坂の衆議院議員宿舎に入った。
3月8日、克行が保釈後初の裁判に議員バッジをつけて出廷。
3月5日、広島高等裁判所は、河井案里元参院議員に対し、有罪となった元公設秘書との連座制適用を広島高等検察庁が求めた行政訴訟の第1回口頭弁論を4月23日に開くと明らかにした。案里側は争わない方針で、即日結審するとみられる。また、案里側は広島高等検察庁などとの連座訴訟の打ち合わせで答弁を放棄する考えを示した。
3月18日、河井克行元法務大臣が議員辞職の意向と報道された。3月24日から克行は議員バッジをつけずに出廷。3月25日午後3時ごろ、大島理森衆議院議長宛てに議員辞職願を提出した。また、克行は議員辞職願の提出後に河井克行事務所を通じて所感を発表。4月1日、衆議院本会議で全会一致で議員辞職が許可された。河井克行元大臣本人は本会議に出席しなかった。
4月5日、被告人質問で弁護側から、地元議員らに渡して買収した現金の原資について問われた河井克行は、「全て私自身の手持ちにあった資金」と述べ、議員歳費が貯まっていたものと説明した。「自民党から交付された1億5000万円は、会報誌や事務所の経費にすべて使った。買収資金を交付金からまかなったことは、まったくございません」と答え、党勢拡大のたえの経費で全て使い切ったと話し「1円たりとも買収資金には使わなかった」と訴えた。また、「もはや、有権者から審判をもらう資格はない。生涯にわたって選挙に立候補することは致しません」と政界引退を宣言した。
4月30日、東京地方裁判所で克行の論告求刑公判が行われ、検察側は懲役4年、追徴金150万円の実刑判決を求めた。
5月18日、河井克行の第56回公判が開かれ、弁護側が最終弁論で執行猶予付きの判決を求め結審した。判決は6月18日予定で、検察側は懲役4年を求刑しており、東京地方裁判所の量刑判断が焦点となる。
6月18日、東京地方裁判所(高橋康明裁判長)は、起訴内容の100人全員について買収と認め、河井克行に懲役3年間の実刑判決及び徴金130万円(求刑懲役4年、追徴金150万円)の実刑判決を言い渡した。克行の弁護側は判決を不服として即日控訴した。閉廷後に、克行は保釈取り消しとなり再び東京拘置所に収監された。克行の弁護側は再保釈を申請したが同日午後棄却された。
6月18日付で克行被告の弁護側が、保釈請求を棄却した東京地方裁判所の決定を不服として東京高等裁判所に抗告した。
6月21日、東京高等裁判所(若園敦雄裁判長)は克行被告の保釈を認めない決定をした。
事件の影響​
地方政治家の辞職​
2020年4月に広島県安芸太田町長の小坂眞治が、6月には三原市長の天満祥典が、7月には安芸高田市長・児玉浩が克行から不正な現金を受領したことを認めて辞職した。他に広島県安芸郡府中町会議員の繁政秀子が6月に議員辞職した。繁政は案里の後援会長だった。更に7月15日、広島県北広島町で町会議長・宮本裕之が現金受領を認め、議員辞職を表明。7月17日には安芸高田市議会の前議長・先川和幸、前副議長・水戸真悟、青原敏治の3人が議員辞職。その後、このうち先川和幸は2020年11月の安芸高田市議会一般選挙に出馬、当選し安芸高田市議会議員に返り咲いた。
2020年9月17日、安芸太田町議会本会議で全会一致で辞任が許可された矢立孝彦は議長辞任、また、矢立に議員辞職を求める辞職勧告決議案が議員提案されが、矢立と議長を除く10人で採決し、賛成4、反対6で否決され町議は続ける。2021年3月28日に投開票された安芸太田町議会議員選挙で、矢立孝彦は再選した。
地方議会の動き​
   地方政治家の辞職勧告決議案可決​
2020年7月10日、呉市議会は、河井克行から現金30万円を受け取ったことを認めた市議・土井正純に対する辞職勧告決議案を全会一致で可決した。河井夫妻の大規模買収事件を巡り、地方議員の辞職勧告決議案が可決されたのは初めて。
2020年8月7日、江田島市議会は、河井案里の事務所スタッフから現金10万円を受け取ったことを認めた市議・胡子雅信に対する辞職勧告決議案を賛成多数で可決した。
2021年2月22日、尾道市議会は、河井克行から現金30万円を受け取ったことを認めた市議・杉原孝一郎に対する辞職勧告決議案を賛成多数で可決した。
   広島県議会議員13人に対する広島県政治倫理条例に基づく
     広島県議会政治倫理審査会の設置​
2021年3月4日、河井克行・案里夫妻から現金を受け取ったと検察から認定された広島県議13人について、広島県議会の民主県政会(14人)と公明党議員団(6人)の2会派が連名で、広島県政治倫理条例に基づく広島県議会政治倫理審査会の設置を広島県議会議長・中本隆志に請求した。検察当局が立件しなかった広島県議13人は全員が議員辞職しておらず、広島県議会として経緯の説明を求める考え。2007年の条例制定以来、初めて政治倫理審査会が設けられることになった。県議・犬童英徳(民主県政会)から審査請求書を手渡された中本議長は「時間をかけず、早期に開催したい」と意向を述べた。
2021年3月5日、現金を受領したと検察から認定された県議13人について、広島県政史上初の広島県議会政治倫理審査会の設置が決定。政治倫理審査会の委員の構成は最大会派の自民議連が6人、民主県政会が3人、広志会が2人、公明党が1人の計4会派12人。3月12日に初会合を開く予定で正副委員長を決める。
2021年3月10日、広島県議会政治倫理審査会が正式に設置された。
2021年3月12日、広島県政史上初の広島県議会政治倫理審査会が広島県議会棟で開かれ、委員長に中原好治(民主県政会会長)が、副委員長に栗原俊二(公明党議員団団長)がそれぞれ選任された。ともに審査を請求した会派から選ばれた。広島県政治倫理条例では政治倫理審査会は原則、非公開と定められている。
2021年3月26日、広島県議会政治倫理審査会の2回目の会合が開かれた。審査にあたっては被審査議員の出席を要請し、審査事項についての説明を聴取するとした。また、中原好治委員長から、県議13人からの説明を報道陣に公開して実施すること、現金を受け取った経緯や違法性の認識があったかなどを質問形式でたずねること、実施時期については5月中旬、という案が出された。委員長案は、4月の次回の政治倫理審査会までに各会派ごとで協議される。
2021年4月26日、広島県議会政治倫理審査会の3回目の会合(非公開)が11人の委員が出席して開かれ、河井夫妻から現金を受け取ったとされる県議13人が説明する場を5月18日に開き、広島県民へ説明責任という点で報道陣に公開(WEB配信や一般公開はしない)することを全会一致で決定。政治倫理審査会 中原好治委員長が、1人20分程度で、現金を受け取った場所や状況などについて質問する形式で行われる。質問内容は審査会で詰めた上で、議員に事前に通告する。質問内容は検討中で、委員長の案では受領に至った経緯や今後の対応などを想定している。中原委員長は県議13人に、説明責任の重さを十分自覚し、政治倫理審査会で広島県民に納得いただける説明をしっかりすることを求めている。
2021年5月11日、河井疑惑をただす会が5月18日に開かれる広島県議13人に対して聞き取りが行われる広島県議会政治倫理審査会を、インターネット配信など何らかの形で中継し一般公開するよう求める要望書を広島県議会中本議長と審査会中原委員長宛てに再度提出した。4月に同様の要望書を提出したが回答がなかったため再度の提出となった。
2021年5月18日、広島県議会政治倫理審査会の3回目の会合(報道陣にのみ公開)が広島県議会棟の委員会室で開かれ、検察が自民党系の広島県議13人を1人ずつ呼び出し入室させ、中原好治委員長(広島県議)が現金受け渡しの状況など事情を聴取した。県議会が現金受領の経緯などを当事者に聞くのは初めて。対象の県議には事前に質問内容が伝えられていたため用意した原稿を読み上げるだけで、質疑はほとんど行われなかった。1人につき1人20分の予定だったが1人5分程度であった。13人全員が現金の受け取りを認め、大半が謝罪や反省の言葉を述べた。公職選挙法違反にあたる恐れがあると認めたのは9人で、違法性の認識を明確に否定したのは2人だった。辞職を表明した県議はいなかった。中本隆志広島県議会議長は「本人が出てきて皆さんの前でお話をさせていただいた。自分の今の気持ちを伝えたこのことは一応成果があったのではないかと思う」とコメントした。
2021年6月14日、広島県議会政治倫理審査会の4回目の会合が開かれ、前回の審査記録の取り扱いについて協議し公開することを決定した。中原好治委員長「審査会の記録は原則、非公表だが、審査会を(マスコミに対しては)公開で行ったことを踏まえ、記録を公開する。」。近日中に広島県議会事務局で全文を閲覧できるようになる。
   広島市議会で開かれた広島市議会議員13人による説明会​
2021年1月、広島市議会議員の今田良治(自民党)が2020年11月の公判で、河井克行被告から現金50万円を受け取ったことを認め、その上で、自身の選挙区内の二つの市民団体に全額寄付したと証言したことに対して、「まちづくり団体への寄付が公職選挙法が禁じる選挙区内での寄付行為にあたる」とする広島市内の男性が警察に告発し同年2月に受理された。
2021年3月29日、広島市には不公正な金品の受領を追及する政治倫理条例がないが、広島市議会棟の1室で広島市議会議員13人による説明会が開かれ、河井克行元法相から現金を受け取った経緯などについて公開で説明する場が設けられた。進行役は広島市議会議長山田春男が務めた。説明会には現金受領を認めた広島市議会議員12人が出席し、体調不良で欠席した議員1人からは書面が提出され代読が行われた。約40人が傍聴。13人全員が現金受領の事実を口頭や文書で改めて認め、渡された時期や金額、その際のやり取りについて説明した。うち2人の石橋竜史市議と木山徳和市議は「陣中見舞い」や「当選祝い」だったとして違法性の認識を明確に否定した。辞職を表明した議員はいなかった。終了後、進行役を務めた広島市議会山田春男議長は記者団に「一つの区切りと考える。本人たちが出席したのは大きな意義があった」と述べた。公明党の碓氷芳雄幹事長は取材に、再発防止のために政治倫理条例の制定を求めていく考えを示した。
2021年6月8日、広島市議会議員の今田良治(自民党)は2021年5月末までの数回の広島県警察の任意聴取に対し、現金を寄付したとする公判での証言を翻し、「寄付はしておらず、自分で使った」と話していることが報じられた。今田市議は、裁判や広島市議会議員説明会での証言と警察の聴収とでは全く違う内容を話した。広島市議会の山田春男議長は8日、「連絡を受けていないので、詳細は分からない」としたうえで「3月29日にはきちんと説明をしていただいたので、その事実が違うのなら、何らかの対応を考えなければならないかなと思う。」とコメントした。警察は近く、公職選挙法違反の疑いで書類送検する方針。また、今田市議は裁判での証言を翻したことは偽証罪にあたる可能性がある。
2021年6月10日、広島県警察は今田市議を公職選挙法違反の疑いで書類送検した。今田市議が裁判での証言を広島県警察の聴収で翻したことについても、広島市の男性が偽証罪の疑いで県警に告発状を提出したことも報じられた。
2021年6月15日、広島市議会定例会が開会し、今田良治市議が出席、書類送検後、初めて公の場に姿を現した。報道陣の取材を受けた今田は、 「偽証したつもりはない」との認識を話した。記者から市議会での説明会でも裁判と同じく「寄付した」と説明したことになぜそのような説明を?と問われたところ「それは、わたしにもわかりません」と答えた。現時点での議員辞職は否定し、「司法判断をみて考えたい」と話した。
2021年6月16日、広島県警察は広島市議会議員今田良治が偽証した疑いがあるとする広島市民の告発状を受理した。今後、捜査を進める予定である。
   尾道市議会議員1人に対する尾道市議会議員政治倫理条例に基づく
     尾道市議会政治倫理審査会の設置
2020年3月11日、尾道市議会本会議において、議員より「尾道市議会議員政治倫理条例」を提案し、賛成多数で可決。本条例は同年3月12日に公布され、公布の日から施行。条例制定の目的は、議員が政治倫理の確立に努めるとともに、市民の厳粛な信託に応え、民主的な市政の発展に貢献するため、議員政治倫理条例を制定された。
2020年6月、河井克行から現金授受を報じられた尾道市議会議員杉原孝一郎は、朝日新聞の取材に「克行被告と面識はない。報道は事実無根だ」と否定。尾道市議会にも同様の説明をした。
2020年8月25日、河井夫妻被告初公判(東京地方裁判所)で、検察が冒頭陳述で河井前大臣夫妻から現金の提供を受けたと認定した100人の実名を読み上げたなかに、尾道市議会議員 杉原孝一郎 30万円があった。
2020年8月26日、記者から嘘をついていたことを指摘され議員辞職の意向を質問された杉原孝一郎市議は「全くありません」と答えた。
2020年9月11日、尾道市議会の求めに杉原孝一郎市議は応じて質疑を受け付けない非公開の説明会を開いた。杉原孝一郎議員は、参議院選挙公示翌日の2019年7月5日に河井克行が自宅を訪れ、河井克行から推薦はがきの入った紙袋を渡された。河井克行が帰った後、現金入りの封筒も置いてあるのに気づき、土日を挟んで3日後に返却した、と説明。「現金は3日後に返却した」「すぐに返却したので現金を受け取ったという認識はない」「法的にも道義的にも恥じる行為は一切ない」と説明した。
2020年9月18日、河井克行から現金を渡されたことを認めた杉原孝一郎市議に尾道市議会福原謙二議長が厳重注意処分を口頭で伝えた。杉原市議は「みなさんに迷惑をかけ、申し訳ない」と謝罪した。
2021年2月3日、河井克行被告第36回公判(東京地方裁判所)で杉原孝一郎市議の供述調書を読み上げられた。受け取った現金30万円について「検事の取り調べを受けた後に同額を現金書留で送ったが戻ってきた」「もろもろの生活費に使った」「9月に東京でラグビーワールドカップの試合観戦をしたときに一部を使った」。
2021年2月15日、尾道市議会は、同月3日の河井克行被告第36回公判で検察側が読み上げた杉原孝一郎市議の供述調書の内容が、尾道市議会へのこれまでの説明と食い違っていたため会派代表者会議で対応を協議し、他の尾道市議が杉原孝一郎市議に事実を質問し確認する公開の説明会の開催を決めたが、杉原孝一郎市議は出席を拒否した。
2021年2月22日、尾道市議会は、河井克行から現金30万円を受け取ったことを認めた市議・杉原孝一郎に対する辞職勧告決議案を賛成多数で可決した。
2021年3月22日、杉原孝一郎市議に対する尾道市議会政治倫理審査会が条例に基づき設置され第1回会合が開かれ、委員長、副委員長を互選した。杉原市議に出席を要請し、経緯の説明を求めることを決定。
2021年4月下旬、尾道市議会政治倫理審査会は、杉原孝一郎市議に5月中旬に公開の場での説明することを要請。
2021年5月26日、杉原孝一郎市議に対しての尾道市議会政治倫理審査会(吉田尚徳委員長)の第4回会合が非公開で開かれたが、杉原市議は出席を拒否した。尾道市議会は杉原市議に対して辞職勧告決議案が可決されており、今後、政治倫理審査会は質問項目などを整理し、再度杉原市議に説明を求める方針。
鶏卵汚職事件​
2020年7月4日、検察当局は河井事件の関係先として、鶏卵生産会社「アキタフーズ」の東京本社と広島県福山市の本社などを家宅捜索し、アキタグループ元代表による「政界工作」の証拠を押収した。この家宅捜索の余波として、アキタフーズは2020年8月5日付で、アキタフーズグループ代表が辞任し、グループ代表の長男はアキタフーズ社長職が解かれ生産管理部門担当の取締役に就き、アキタフーズ会長が後任の社長に就いた。更に、2020年12月2日、アキタフーズグループ元代表が鶏卵業界に便宜を図ってもらう目的で、元農林水産大臣の吉川貴盛衆院議員(当時)に対し、大臣在任中に現金を提供した疑いで東京地方検察庁特別捜査部が動いていることが報じられた。鶏卵業界団体の役員を務めていたアキタフーズグループ元代表は河井克行の紹介で吉川農林水産大臣と知り合ったが、吉川と克行は衆院初当選が平成8年の同期で交流が長く、克行は平成25年に農林水産副大臣に就任した吉川をアキタフーズグループ元代表に紹介した。 12月22日、吉川は自身の健康状態を理由に衆議院議員を辞職した。12月25日午前、東京地方検察庁特別捜査部は、衆院議員会館(東京・永田町)や札幌市の吉川の事務所などに収賄容疑で家宅捜索に入った。既に吉川の任意聴取も行っており立件を視野に押収資料の分析などを進める方針。
続いて、2020年12月8日、西川公也(元農林水産大臣)が「一身上の都合」で内閣官房参与を辞任。同日、アキタフーズグループ元代表が西川公也にも現金数百万円を提供した疑いがあり、東京地方検察庁特別捜査部も把握し、現金の趣旨や参与の権限などを慎重に疑惑を捜査しているもようと報道された。西川は2020年11月、取材に「政治資金規正法にのっとり、適正に処理している」と話し、不正な受領はないと説明したが、政党支部や資金管理団体の政治資金収支報告書に記載はなかった。西川はアキタフーズグループ元代表からアキタ社所有のクルーザーで2020年7月3日に元農林水産官僚らとともに接待されていたことが判明、また、西川は2018年1月からアキタ社の顧問を務め、別の政治家にアキタフーズグループ元代表を紹介するなどしていた。西川は河井克行と当選同期で一緒に会食する間柄だった。
2020年12月27日、鶏卵生産大手「アキタフーズ」(広島県福山市)グループの元代表から現金を受領したとされる元法相で衆院議員河井克行の政治資金パーティーを巡り、パーティー券の購入者が偽装されていた可能性があることが報道された。政治資金規正法では、1回で20万円を超すパーティー券を購入した人の氏名などを政治資金収支報告書に記載する必要があるが、アキタ社関係者は取材に克行側のパーティー券について「20万円を超えると名前が出るので、グループ会社7社を使っていた」などと証言した。 多額のパーティー券を購入したアキタ社を収支報告書に登場させなかったり、金額を減らしたりするためだった疑いがあり、東京地方検察庁特別捜査部は本人名義以外での購入を禁じた規正法に抵触する可能性があるとみて、広島地方検察庁と共に克行側の認識などを調べているもよう。
2021年1月15日、東京地方検察庁特別捜査部は、吉川貴盛元農林水産大臣を大臣在任の前後にも現金を提供され2020年までの6年間に現金総額1,800万円を渡されたうち、大臣在任中の500万円が大臣の職務に関する賄賂にあたると認定し収賄罪で在宅起訴し、アキタフーズグループ元代表も贈賄罪で在宅起訴した。また、アキタフーズグループ元代表は、実際には会社が購入した吉川元農林水産大臣の政治団体のパーティー券300万円分と河井克行元法務大臣の政治団体のパーティー券234万円分を複数の社員などの名義で購入したように装っていたとして、他人名義での購入などを禁じた政治資金規正法違反の罪でも在宅起訴された。1月17日、アキタフーズグループ元代表が平成31年3月に吉川に手渡し賄賂と認定された現金200万円について、吉川側が「資金が必要」と催促していたこと、吉川側の現金の要望を伝えたのは元法相で衆院議員の河井克行だったことが報じられた。
西川公也元農林水産大臣は、大臣を辞任したのは5年以上前で収賄罪の時効をすぎていること、内閣官房参与で非常勤の国家公務員だったがアキタ社で顧問も務めており「給与」との切り分けが難しいこと、内閣官房参与は非常勤で職務権限が明確ではないことなどから、収賄罪などに問うのは難しいと判断された。また、一時はアキタ社の顧問として贈賄側での立件も検討されたが立件されていない。
2021年1月29日、農林水産省は、「養鶏・鶏卵行政に関する検証委員会」を設置した。委員会の構成メンバーは、井上宏(弁護士)、酒井健夫(日本大学名誉教授)、榊田みどり(農業ジャーナリスト)、谷口将紀(東京大学大学院法学政治学研究科教授)。座長は、委員の互選により選出される。
2021年2月25日、農林水産省は、吉川貴盛元農林水産大臣への贈賄罪で在宅起訴された鶏卵生産会社「アキタフーズ」(広島県福山市)前代表の接待を受けたとして、枝元真徹事務次官ら6人の幹部職員を処分し、国家公務員倫理審査会の承認を得て処分を発表した。国家公務員倫理法は国家公務員に対し、利害関係者の負担による会食を禁止している。野上浩太郎農林水産大臣は閣僚給与1カ月分を自主返納する。
2021年6月3日、農林水産省の第三者委員会である「養鶏・鶏卵行政に関する検証委員会」(座長:井上宏弁護士)は、収賄罪で元農林水産大臣の吉川貴盛被告が在宅起訴された汚職事件をめぐる報告書を野上浩太郎農林水産大臣に提出した。第三者委員会は、一連の事件による元代表からの要望を受けた政策変更は確認されず、養鶏・鶏卵政策決定過程での判断がゆがめられた事実は認められなかったと報告した。吉川被告らによる幹部職員に対する働き掛けがあったほか、吉川被告が同席した上で幹部職員への接待会食があったが、政策決定に影響を与えたとは認められなかったと結論付けた。同日、野上農林水産大臣、農林水産省内で記者会見し、「二度と疑念を持たれることがないように国民の厳しい視線を意識し、公正な農林水産行政を心掛けたい」とコメントした。
広島市の市民団体「河井疑惑をただす会」による告発状の受理​
「河井疑惑をただす会」は広島県内の有権者により結成された。
   買収側に対する告発状
2019年12月2日、「河井疑惑をただす会」は、2019年7月の参議院選挙で初当選した河井案里の陣営が運動員へ違法な報酬を支払ったとして「河井疑惑をただす会」を中心とした有権者76人が、河井夫妻を公職選挙法などの疑いで広島地方検察庁に刑事告発状を提出。告発状によると、河井克行と案里は出納責任者と共謀の上、「ウグイス嬢」にそれぞれ日当の上限の2倍にあたる3万円を支払ったとしており、また、克行が10月5日に北広島町の高速道路で運転手にスピード超過を指示し制限速度を60キロ上回る速度違反をした容疑、案里が2019年春の広島県議会議員選挙で当選祝いや激励などの名目で複数の自民党県議に当選祝いなどの名目でそれぞれ現金50万円を渡した疑いでも告発している。
   被買収側に対する告発状
2020年9月、広島市の市民団体「河井疑惑をただす会」は、現金を受け取った広島県議や広島市議ら100人の刑事処分を求める告発状を広島地方検察庁に提出。
2021年2月、広島市の市民団体「河井疑惑をただす会」は、溝手顕正ら5人への告発状を広島地方検察庁に提出。
2021年3月5日、「河井疑惑をただす会」は告発状が受理されていた事を明らかにした。「河井疑惑をただす会」によると、2019年の参院選を巡って河井夫妻から現金を受け取った議員など100人について東京地方検察庁が、落選した溝手顕正が奥原信也県議に50万円を渡したなどとして溝手顕正など5人について広島地方検察庁が、それぞれ3月5日までに告発状を受理していたと明らかにした。検察は起訴か不起訴処分かを判断することになる。
2021年6月3日、「河井疑惑をただす会」は広島地方検察庁を訪れ、被買収者の県議や市議、後援会関係者など被買収者100人に対して、早急な起訴を求めて東京地方検察庁宛ての3度目の申入書を提出した。
衆議院広島県第3区​
2020年10月時点で、河井克行は逮捕前日に自民党を離党してから4か月が経つが、自民党広島県第三選挙区支部(所在地は既に閉鎖された広島市安佐南区の克行の地元事務所)は存続し支部長に留まっているという歪な状態であり、自民党広島県支部連合会は「離党者の党支部は速やかな解散が普通」と主張、決定権を持つ党本部は「検察の捜査で収支を確定できない」としている。
克行の離党を受けて、2020年12月8日に自民党広島県支部連合会は次期衆議院議員選挙の広島3区の候補者となる党支部長候補を広島県議会議員の石橋林太郎(広島市安佐南区選出)に決定し、12月9日に党本部に支部長の変更を申請した。公明党は副代表の斉藤鉄夫の公認を11月19日に決定、11月22日には公明党代表の山口那津男も現地入りして斉藤とともに事実上の選挙運動を本格化、12月20日広島市安佐北区で後援会の事務所開きをした。野党側では立憲民主党が新人で元会社役員のライアン真由美の擁立を決定。NHK受信料を支払わない方法を教える党は新人で党広報担当の新藤加菜も立候補の準備を進めていたが離職に伴い、ミュージシャンの矢島秀平を新たに擁立を決定。
2021年2月5日、自民党と公明党は、広島3区の与党候補を斉藤に一本化し、石橋を比例中国ブロック単独で立候補することで合意。また、2月8日、2019年7月の参院選広島選挙区の件と、2021年にある衆院選広島3区の候補者調整の件と2度にわたって党県連の意思を党本部に覆された責任を取るとして、自由民主党広島県支部連合会の宮沢洋一が会長を、宇田伸が幹事長を辞任する意向を固めた。3月22日、広島県支部連合会の常任顧問会議で会長に推薦された岸田文雄(自民党前政調会長)は会長のポストを引き受ける考えを示した。3度目の広島県支部連合会会長就任であり、派閥のトップを務めるベテラン議員の再々登板は異例の人事となる。
2021年4月1日、衆議院本会議で全会一致で河井克行元法務大臣の議員辞職が許可された。3月15日までに議員辞職すれば公職選挙法などにより参院選再選挙と同日に衆議院補欠選挙が行われることになっていたが、4月1日に辞職したため衆議院補欠選挙は行われない。
2021年6月10日、自民党本部で行われた衆議院選挙小選挙区候補者の推薦内定式で、菅義偉総裁が公明党副代表斉藤鉄夫に推薦内定証書を手渡した。自民党が衆院解散前に推薦の内定を出すのは異例だが、公明党の強い要請で実現した]。
参議院広島県選挙区​
2020年10月時点で、河井案里は逮捕前日に自民党を離党してから4か月が経つが、自民党広島県参院選挙区第七支部(所在地は既に閉鎖された広島市中区の案里の地元事務所)は存続し支部長に留まっているという歪な状態であり、自民党広島県支部連合会は「離党者の党支部は速やかな解散が普通」と主張、決定権を持つ党本部は「検察の捜査で収支を確定できない」としている。
河井案里が2021年2月3日に議員辞職願を提出。同日の参議院本会議で辞職が許可された。
その後、2月5日午前0時に有罪が確定。当選無効に伴う再選挙は2021年4月25日に行われることとなった。
立憲民主党は2月から候補者の人選を進め、瀬戸内海放送出身のフリーアナウンサー・宮口治子や弁護士の郷原信郎ら3人の名前が浮上していた。郷原は3月9日、立候補しない意向を示し、同党は3月14日、宮口を推薦候補として擁立することを決めた。国民民主党は3月18日、宮口の推薦を発表した。社会民主党は3月23日、宮口の推薦を決めた。日本共産党は3月28日、宮口を支援すると明らかにした。
日本維新の会の県支部である広島維新の会は2月から候補者公募を開始したが、4月1日、擁立を見送ることを発表した。
2月11日、れいわ新選組代表山本太郎は広島市南区で記者会見し、参議院広島県選挙区の再選挙(4月8日告示、25日投開票)に候補者を擁立すると発表し、全国公募を開始、公募は2月28日まで受け付け。山本自身の出馬は公募の結果次第で「選択肢として排除しない」とし、野党統一候補を擁立する可能性も含みをもたせた。しかし、3月26日に党として候補者を擁立することは断念すると表明した。
2月19日、NHK受信料を支払わない方法を教える党は2月19日、党職員で元運送会社社員の山本貴平の擁立を発表。
2月26日、元官僚の西田英範(広島市安佐北区出身、退職時は経済産業省産業技術環境局基準認証政策課課長補佐)が広島市内で記者会見し、自民党公認で立候補することを表明した。
4月8日、参議院広島選挙区の再選挙が告示。自由民主党公認の西田英範(元経済産業省官僚 / 推薦:公明党)、諸派の政治団体「結集ひろしま」公認の宮口治子(フリーアナウンサー / 推薦:立憲民主党、国民民主党、社民党)、NHK受信料を支払わない方法を教える党公認の山本貴平(NHK受信料を支払わない方法を教える党職員)の他、いずれも無所属の佐藤周一(介護ヘルパー)、大山宏(元会社員)、玉田憲勲(医師)の新人6人が立候補を届け出た。投開票は4月25日。
4月11日、宮口治子が広島市内で行った街頭演説に、立憲民主党の枝野幸男代表と国民民主党の玉木雄一郎代表が応援に駆けつけ登壇。同日、西田英範がJR広島駅前で行った街頭演説に、公明党の山口那津男代表と自民党広島県連会長の岸田文雄前政調会長が応援に駆けつけ登壇した。4月18日には、自民党の下村博文政調会長が広島市内のホテルで開かれた総決起大会に出席、立憲民主党の枝野幸男代表が呉市のJR呉駅前で街頭演説した。4月23日には、宮口治子が広島市内中心部の商店街で行った街頭演説に、立憲民主党常任顧問の岡田克也と代表代行の蓮舫が駆けつけ登壇した。河井夫妻買収事件に関わった広島県議や広島市議らは表立った選挙応援はしなかった。
投開票日の4月25日、午後10時台に報道各社が宮口治子の当選確実を報じた。この報を受け自民党西田陣営の選挙対策本部長宮沢洋一参議院議員は「最後の最後まで河井夫婦にたたられた」と本音を漏らした。宮口治子のこの当選により、自民党が結党された1955年以降、保守地盤の厚い広島県選挙区で初めて自民党以外の候補による改選2議席の独占となった。宮口治子は今後、前回の参院選で河井陣営に提供された1億5000万円についての説明責任などを追及していきたいとしている。なお、毎日新聞が同25日投票が締め切られる前の午後7時台に、宮口と西田がそれぞれ当選確実になったとする当選者が決まった段階で速報するために準備していた原稿を、ニュースサイトへ誤って掲載した。25日午後7時23分から2〜3分の間、担当者がパソコン操作を誤って掲載、社内で気付き、サイトから削除した。毎日新聞社は、投票時間中に報道機関としてあってはならないことであると自ら認め、読者、関係者に謝罪した。
自民党から選挙資金として河井夫妻に支給された1億5000万円​
河井案里が当選した2019年7月の参議院選挙では、自民党から河井夫妻に対して、1億5000万円が資金提供されていたことが分かっている。2021年5月には、二階幹事長が関与を否定する発言をしたのを契機に、1億5000万円についての発言が自民党の要職から相次いだ。誰がどのように通常よりも極端に多い選挙資金を用意したのか、誰も説明しない事態が続いている。
2020年1月23日に発売された「週刊文春」が、2019年7月の参議院選挙の前に、河井夫妻陣営に自民党本部から合計1億5000万円が振り込まれていたなどを報じ、判明した。溝手顕正への支給額は1500万円で河井陣営の1/10だった。同日のBS日テレの番組で自民党下村博文(番組放送当時 選挙対策委員長、2019年7月参議院選挙当時 自民党憲法改正推進本部長)は、「自民党本部(からの振り込み)ということであれば、幹事長、あるいは総裁の判断ということになる」と指摘。自身は当時は自民党憲法改正推進本部長だったこともあり「特定はできない。それ以外かもしれないし、どこの指示かは分からない」とした上で「でもそういうレベルだ」、通常は都道府県連を通すとし「候補者に直接党本部が政治資金を含んで選挙活動費を振り込むのはあり得ない話だ」と説明した。
2020年6月20日、自民党本部が河井夫妻議員に支給した1億5000万円のうち1億2000万円は、税金を原資とする政党交付金だったことが明らかになった。河井夫妻議員がそれぞれ支部長を務めた2つの自民党支部は広島県選管へ出した報告書で使い道や金額を示していないことも判明した。
2020年9月8日、告示された自民党総裁選の共同記者会見で菅義偉(当時 内閣官房長官)は、1億5000万円の使途の調査について「総裁になれば責任を持って対応したい」と約束。
2020年12月8日、菅義偉首相(自民党総裁)は、自民党本部が計1億5000万円を河井夫妻議員に支出したことについて、「支部の党勢拡大などのために、党内で定めた基準と手続きにしたがって、党本部から適切に交付されたもの」とした。
2021年3月3日、菅義偉首相(自民党総裁)が参院予算委員会で「資金の詳細は検察当局に押収された関係書類が返還され次第、党で監査する(党の公認会計士がチェックする)」と述べた。
2021年5月17日、自民党二階俊博幹事長は記者会見で、河井夫妻公職選挙法違反事件で買収の原資となったとの指摘がある自民党本部からの1億5000万円に関し「その支出について、私は関与していない」と述べた。記者会見に同席した自民党林幹雄幹事長代理が、2019年当時の自民党選挙対策委員長だった甘利明衆議院議員が広島選挙区を担当していたと説明を補足した。
2021年5月18日、自民党税制調査会長甘利明(元 自民党選挙対策委員長)は1億5千万円の支出について「私は1ミリも関与しておりません。もっと正確に言えば1ミクロンも関わっていません」と関与を全面的に否定し「全く、承知をしておりません」と明言、支出については事件後の報道で知ったといい、選挙当時は把握していなかった、選挙対策委員長としての担務を「選挙区の公認調整について関わっている」と説明し、林幹雄幹事長代理による説明と真っ向から対立した。また、同日の記者会見で二階俊博幹事長は「全般の責任は私にあるが、個別選挙区の戦略や支援方針はそれぞれの担当で行っている」と改めて説明した。甘利の1億5000万円の使途の説明責任について記者団に問われた二階への質疑に割って入る形で林幹雄は、「いろいろ(二階)幹事長も発言しているんだから根掘り葉掘り、あまり党の内部のことまで踏み込まないでもらいたい」記者団に反発した。同日、共産党志位和夫委員長は会見で「自分は関係ないという発言は無責任だ。二階氏の責任で(事実を)明らかにする必要がある」と強く求めた。 同日、自民党広島県支部連合会会長岸田文雄(自民党前政調会長)は二階と甘利の泥仕合を受けて「送金に誰が関与したかではなく、金が何に使われたかだ」「1億5000万円を出したその後、それを何に使ったか、これを明らかにしてもらいたい。我々が申し入れをした論点と、昨日(17日)から騒ぎになっている論点、これはちょっとずれている」とし、自民党広島県支部連合会の要望は1億5000万円の使途の説明だと指摘し、「(自民党執行部が)早く説明をして自民党に対する疑念を払拭する必要がある」と強調した。自民党広島県支部連合会会長代理の中本隆志(広島県議会議長)は、記者団に「広島県民をこれほど侮辱した言葉はない」「幹事長である人間が関係ないはずがない」と二階に発言の撤回を要求、「参議院・(広島)再選挙、敗北の一番の原因は、河井事件と1億5000万円だったということを胸に止めて、みなさんの前で説明をしなければいけない」と語気を強めた。立憲民主党安住淳国会対策委員長は「誰も関わっていないことはありえない」と指摘し、「幹事長と選対委員長が責任をなすりつけている姿は、政権政党としてはあり得ないと私どもは思っていますので追及していきたい」「資金の原資は公金、政党交付金であり、自民党に説明責任を果たすよう求めていく」と1億5000万の支給に誰が関与したのか説明責任を果たすよう求めた。共産党穀田恵二国会対策委員長は記者会見で、「誰が資金の振り込みを指示したのか、はっきりさせるべきだ。こうした問題について不問に付したり、責任のなすりつけ合いをすること自体に自民党の体質があらわれている」と批判した。林幹雄幹事長代理は18日に電話で甘利明に「他意はなかった」と陳謝した。
2021年5月21日、自民党世耕弘成参議院幹事長は記者会見で「二階幹事長はその後、発言を補足して最終的に資金の出納についての責任は自分にあると言っていると思う。一義的に説明責任は党本部にあり、党本部の責任者は幹事長ということだ」と指摘した。一方で「この1億5000万円は、収支を報告しなければならないことが前提になっており、そういう金が買収に使われるなどということはありえない」と述べた。
2021年5月24日、林幹雄幹事長代理は、当時の甘利明選挙対策委員長が関わっていたと17日に説明していたことに「(甘利明は)公認問題、選挙区調整、県連との対応が主で、実際に交付金支出に関しては関与していない」と述べ発言撤回し、選挙前の各種調査や党内の基準に基づいて重点地区を決め、党内手続きを経て組織決定したものに対して資金を支出していると説明し「個別の誰が、とかそういうことではない」と河井夫妻への支出1億5000万円の決定は組織としての判断だったと説明した。それを踏まえて記者団から「(党本部から河井夫妻への1億5000万円の支出の)組織決定をした責任者は誰か」と問われた二階は、「総裁と幹事長だ。党全体のことをやっているのは総裁や幹事長なので、当然そういうことだ」と述べ、責任は当時の総裁だった安倍晋三前首相と二階自身にあると説明した。その後も記者団から質問が続き、「1億5000万円についても支出を決めた責任があるのか?」という記者の質問に二階は「党の組織上の責任は総裁と幹事長にある」と答えた。「1億5000万円の支出経緯に関与していないのか?」という記者の質問に二階は「何回もそう言っている」と答え、記者から二階に「二階幹事長は(支出経緯に)関与していないのか?」と再度確認した質問に林幹雄幹事長代理が割って入り「党務全般の責任、最終責任は幹事長が負っている」と述べ、支出の最終的な責任者は当時も幹事長を務めていた二階だったと説明した。
2021年5月25日午前、記者会見で記者から二階への「1億5000万円の提供を主導したのは幹事長なのか?安倍元総裁なのか?」という質問に林が割って入り「昨日話したことが全てです」と遮り、二階は1億5000万円についての質問に25日は回答しなかった。午後、記者会見で自民党広島県連合会中本隆志会長代理(広島県議会議長)が二階の24日の記者会見を受けて、「誰もが分かっていた当然のことを言っただけ。そこから先を、お話し頂きたい」二階俊博幹事長と当時総裁だった安倍晋三前首相らに対して「そろって出てこられて説明するのが一番いい。一刻も早く県民、国民の前で説明してもらいたい」「(捜査当局による資料の)押収部分は別として、分かるところだけでも説明してもらいたい」と訴えた。同25日、安倍は自身の関与について問われ、何も答えず無言で国会を立ち去った。
2021年5月31日、記者会見で自民党二階俊博幹事長に記者団が安倍晋三前総裁の説明責任を問うたが、林幹雄幹事長代理が割って入り「先週までに話した通りだ。ご理解ください」と遮った。再度質問した記者から幹事長としての見解を求められた二階幹事長は、林幹雄幹事長代理を1億5000円提供問題の「専門家」と呼んだ上で「専門家(林幹雄幹事長代理)が述べた通りだ」と質問に正面から答えず、安倍元総裁への言及を避けた。
2021年6月2日、立憲民主党、共産党、国民民主党の野党3党の国会対策委員長は国会内で会談し、安倍晋三元首相、二階幹事長に国会説明を求めることで一致した。自民党国会対策委員長森山裕、立憲民主党国会対策委員長安住淳は国会内で会談した。安住は河井案里陣営に対する自民党本部の1億5000円の資金投入を巡り、安倍晋三前総裁と二階俊博幹事長の国会での説明を求めたところ、森山はその場で拒否すると伝えた。会談後、安住は「自民党は誰の指示で金を流したか一切事実を明らかにしていない。国民には疑惑を隠していると映るだろう」と批判した。
2021年6月7日、自民党林幹雄幹事長代理が記者会見で、河井克行元法相と案里元参院議員による大規模買収事件を担当する弁護士が、検察に押収された書類の返還を請求したことを明らかにした。林幹事長代理は、河井夫妻の政党支部に党本部から提供された1億5000万円が買収目的で使われなかったことを証明するためだと説明した。
河井夫妻が逮捕後から議員辞職までに受け取った歳費などの公金​
河井夫妻議員は2020年6月18日に逮捕されてから議員辞職するまで1度も国会に登院することなく、夫妻合計で4,500万円以上の歳費や期末手当などの公金が支払われた。
2021年4月8日、克行は第54回公判にて、逮捕された後に受け取った議員歳費にあたる金額を非営利団体に寄付する考えを表明した。
2021年4月22日、2019年の参院選広島選挙区の大規模買収事件で有罪が確定し当選無効となった河井案里元参院議員が得た歳費など計4942万円は不当利得だとして、案里に返還を請求するよう国に求める訴訟を近く東京地方裁判所に起こすことを広島県内の住民6人が記者会見を開き明らかにした。また、同日、立憲民主党政調会長の泉健太が記者会見で、国会議員が選挙買収で逮捕や起訴されても歳費などが支払われている現状について「国民は納得できない」と述べ、歳費支給停止や返還を可能にする歳費法改正を検討する意向を明らかにした。
2021年4月27日、有罪が確定して当選無効となった河井案里元被告が当選から辞職するまでに受け取った給与に当たる「歳費」、ボーナスに当たる「期末手当」、それに月100万円の「文書通信交通滞在費」の合わせて総額4942万6514円について、広島県の住民6人が、河井案里元被告に返還させるよう国に求める訴訟の訴状を東京地方裁判所に郵送したことを、原告の住民が広島県庁で記者会見し明らかにした。
2021年5月7日、公明党の石井啓一幹事長が記者会見で、2019年の参院選広島選挙区での河井夫妻による大規模買収事件で当選無効となった河井案里元参院議員(自民党を離党、公職選挙法違反の有罪判決確定前に議員辞職)のケースを踏まえ、「政治とカネ」を巡る事件で国会議員の有罪が確定した場合、給料に当たる議員歳費の返納を可能にするための国会議員歳費法などの改正を目指す考えを示した。公明党は今国会での法改正も視野に、自民党や野党に働きかける。
2021年5月12日、公明党幹事長の石井啓一、自民党幹事長の二階俊博、国会対策委員長は国会内で会談し、歳費法改正案の今国会への提出と成立を視野に検討することを確認した。同日、自民党広島県連会長の岸田文雄(自民党前政調会長)が自民党本部で二階俊博幹事長と会談し、「政治とカネ」をめぐる自民党本部の対応を批判する申入書を提出。自民党本部から河井案里前参院議員の陣営に提供された1億5千万円の具体的な使途に関する国民への説明を要請した。岸田文雄はこのほか、不祥事を起こした河井夫妻元議員が離党後に説明責任を果たしていないことから、その後も責任を果たすように促すことや、国会議員の有罪が確定し、当選無効となった場合に議員歳費を返還できるようにする歳費法改正も申し入れ、返還できるような仕組みに見直すべきだと要請した。
2021年5月17日、東京や大阪などの弁護士有志が、河井案里に支払われた歳費など約4900万円を国に返還させるよう会計検査院に審査要求書を提出した。
2021年5月20日、公明党は国会内で政治改革本部役員会(本部長・井上義久公明党副代表)を開き、有罪判決を受けて当選無効となった国会議員の歳費返還を可能にする仕組みの検討を本格化させた。7月の東京都議選で「政治とカネ」問題との決別をアピールするため、今国会中に法案を提出する構え。役員会終了後、佐藤茂樹事務局長は記者団に「逮捕・勾留中や当選無効後の歳費について、今国会で法改正を目指す」と改めて意欲を示した。
2021年5月25日、立憲民主党のワーキングチーム(事務局長 森本真治参議院議員)の会議で、買収事件で当選が無効になった河井案里を例に、当選無効になるなどした国会議員の歳費を返納できるようにする新しい法律案の内容を固めた。収賄や選挙買収の罪で起訴された国会議員は所属する院の政治倫理審査会に出席し説明を求められる。拒否した場合、議長の宣告により、起訴されてからの歳費と期末手当を国庫に返納しなければならない。宣告後の歳費と期末手当は支給されない。また、有罪が確定し、当選無効になった議員は、任期が始まってからの歳費・期末手当の全額返納が義務付けらる。公民権停止の場合は、起訴されてからの全額が返納義務となる。国庫への返納は、いずれも公職選挙法の寄付禁止規定の適用外とする、という内容である。立憲民主党は今の国会に提出し成立を目指す。
2021年5月26日、公明党は国会内で政治改革本部役員会を開き、公職選挙法違反で当選無効になった国会議員の歳費返還を可能にする法改正案骨子について、公職選挙法違反事件で有罪が確定した河井案里への歳費支出に対する批判を踏まえて議論した。議員が公職選挙法違反で逮捕された場合、勾留中の歳費支給を停止する規定も盛り込む。自民党、立憲民主党など各党に提示する改正案の作成を急ぎ、今国会中の成立を目指す。
2021年6月3日、当選無効となった河井案里元議員が歳費やボーナスなどあわせて受け取った4942万円は不当利得だとして、広島県内の有権者が国に対して歳費の返還を請求するよう求めた訴訟で、東京地方裁判所(清水知恵子裁判長)は「住民らの具体的な権利について判断を求める訴えではないため、裁判所が審判できる対象の争いではない。納税者や国民の立場で国を相手に違法な公金の支出を是正するよう求める訴えは起こせない」として、裁判(口頭弁論)を開くことなく、訴えを却下する判決を言い渡した。原告らは「控訴を検討する」とコメントした。
2021年6月14日、河井案里元議員が受け取った歳費返還請求の却下をうけ原告の広島県内の有権者(市民グループ)が東京高等裁判所に控訴したことが報じられた。 
 
 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 

 

●1億5千万円「いただきました」も「違法性ない」 2020/1/23
自民党の河井案里参議院議員は、初当選した去年の参議院選挙の前に、みずからと夫の政党支部に、党本部から合わせて1億5000万円が振り込まれていたなどと週刊誌で報じられたことについて「違法性はない」と述べました。
自民党の河井案里参議院議員は、23日発売された「週刊文春」で、初当選した去年7月の参議院選挙の前に、みずからと夫の河井克行前法務大臣の政党支部に、党本部から合わせて1億5000万円が振り込まれていたなどと報じられました。
これについて、河井案里氏は23日、記者団に対し「いただきました」と認め、「私が活動を始めたのは4月半ば以降で、選挙までのわずか2か月半の間に党勢を拡大しなければいけないということで、短い期間に資金が集中したものと考えている」と述べました。
一方で「政治資金収支報告書にしっかりと記載し、報告することにしているので、違法性はないと考えている」と述べました。
また、23日の参議院本会議の代表質問で、みずからが取り上げられたことについて「政治家として本当に申し訳なく思っている」と述べました。
河井案里氏は、参議院選挙でみずからの陣営が、いわゆるウグイス嬢の運動員に法律の規定を超える報酬を支払っていたなどと、去年10月に「週刊文春」で報じられ、先週には広島地検から秘書が事情を聴かれるなどしています。
立憲民主党の安住国会対策委員長は記者団に対し、「他党のことなので金額の多寡をどうこう言う立場にはないが、事情聴取されている事件の原資としてお金が使われたとすれば非常に大きな問題だ。ほかの候補者の何倍ももらっているということは、いわば『特別扱い』であり、無関心ではいられず、たださなければならない」と述べました。
国民民主党の原口国会対策委員長は、記者団に対し「政党支部に対して自民党本部から振り込まれたとされるお金が、買収などの不適切なことに使われていたならば重大なことだ。カネまみれ、利権まみれの政権を1秒たりとも存在させてはならず、野党が結束して対応したい」と述べました。
公明党の斉藤幹事長は記者団に対し、「公明党と自民党では選挙のやり方が違うので、金額がどういう意味を持つのか分からないが、自民党としては広島選挙区で2人の候補者を当選させるための作戦の1つだったのではないか」と述べました。
地元広島市の松井市長は23日の記者会見で、「選挙資金の確保は法令にのっとってやらないといけない。額が多いかどうか以上に、お金の使い方が法令どおり適切になされているかどうかが重要だ」と述べました。また、松井市長は、両議員の事務所が公職選挙法違反の疑いで広島地検の捜索を受けたことについて、「有権者からすると、なぜこうした事態が起きているのか知りたいと思う。今起きている事象を国会議員としてどう捉えているか言ってもらうことが、すべてのスタートだ」と述べ、重ねて説明責任を果たすよう求めました。
河井案里参議院議員の夫の河井克行前法務大臣は、記者団に対し、「妻が説明したと聞いているので、それに尽きると思う。いろいろな質問をいただき、お答えすることができないのが心苦しいかぎりだが、捜査には全面的に協力しており、コメントは控えたい」と述べました。 

 

●河井案里議員“1億5000万”巨額選挙資金で「自民党・仁義なき戦い」 2020/2/3
昨年7月の参院選で、自民党・河井案里参院議員(広島選挙区)陣営がウグイス嬢に公職選挙法の上限を超える報酬を支払っていた問題は、新たな火種を生んでいる。自民党本部から案里陣営へ通常支援資金の10倍に匹敵する1億5000万円もの巨額選挙資金投入が発覚したのだ。
「昨年7月の参院選の公示前、自民党本部から案里議員支部と夫である河井克行前法相支部に、合わせて1億5000万円が支払われていたのです。自民党内でも『資金投入は安倍首相の強い意向』『いや二階幹事長と菅官房長官の仕業』などと、党を二分する内紛に発展しつつあります」(政治担当記者)
要は、広島代理戦争に端を発した安倍自民分裂の様相を孕んでいるのだ。
「かつて米軍辺野古移設を抱える沖縄の国政選挙で1億円前後が投入されたが、広島は争点もないのに案里陣営だけ異常な大金を渡した。同じ選挙区で戦った自民党岸田派の溝手顕正陣営への党資金は1500万円。1億5000万円に下村博文・自民党選対委員長でさえ『桁違い。ありえない話』と語ったほどです」(同・記者)
広島選挙区(定員2)で自民党は、現職で6期目を目指した溝手氏に加え、新人の案里氏を擁立。理由は「広島は2議席狙える」と安倍首相サイドが強く主張したためだという。
「広島では自民2議席独占は無理。2人擁立ならどちらかが討ち死にするのは分かりきっていた。広島は岸田派牙城のため、重鎮の溝手単独擁立を県連は強く主張したが、党本部は案里氏の出馬をゴリ押し。結果はどうだ。10倍の選挙資金を受け取った案里氏が当選し、溝手氏は落選。そうした歪みを生んだ元凶は首相と菅官房長官だ」(地元後援者)
軍資金だけではない。安倍事務所は案里氏への選対として秘書4人を派遣した上、安倍、菅両氏も広島に入り、案里氏の応援演説に奔走した。
「1億5000万円なんて、菅官房長官も二階幹事長も1人で決断できない金額です。安倍首相の指示でしょう。ポスト安倍を狙う岸田政調会長も黙ってはいられないはず」(前出の記者)
仁義なき戦いに発展か。 

 

●選挙資金は「安倍総理か二階幹事長が言わない限り出る金じゃない」 2020/6/19
19日放送のフジテレビ系「とくダネ!」(月〜金曜・前8時)で、昨年7月の参院選広島選挙区を巡り、地元県議らに票の取りまとめなどを依頼し現金を配ったとして、東京地検特捜部が公選法違反(買収)の疑いで前法相の衆院議員河井克行容疑者(57)=広島3区=と妻の参院議員案里容疑者(46)を逮捕したことを報じた。
2人の買収容疑は総額約2570万円。番組では、昨年夏の参院選広島選挙区で、自民党から案里容疑者と現職の溝手顕正氏が出馬し、溝手氏への党からの選挙資金の提供は1500万円だったが河井夫妻側は1億5千万円を自民党本部から選挙資金として提供され、結果、溝手氏は落選したことを伝えた。
スタジオで小倉智昭キャスターが「こんなにも人によって金額の開きがある例はあるのか?」と政治ジャーナリストの田崎史郎氏に尋ねた。
これに田崎氏は「重点区とした場合は、金額の開きはあるんですがこれほどの開きは極めて珍しい」と答えた。その上で「これほどの金を出すためには総裁である安倍総理か二階幹事長のどちらかが出せって言わない限り出る金じゃないです」と解説していた。 

 

●河井夫妻「議員辞職」に安倍首相がやきもきの訳 2020/7/10
2019年7月の参院選での選挙活動をめぐり、東京地検特捜部が7月8日、河井克行前法相と妻の案里参院議員(いずれも自民党を離党)を公職選挙法違反(買収、事前運動)で東京地裁に起訴した。
法相を務めた夫とその妻の国会議員夫婦が大規模な買収などの罪で逮捕・起訴されるのは前代未聞のことだ。コロナ禍や豪雨被害のさなか、安倍政権にとっては手痛い打撃となり、今後の政局運営の大きな火種となるのは避けられない。
河井夫妻は安倍晋三首相に近く、選挙戦でも安倍首相や菅義偉官房長官の肩入れが際立っていた。しかも、克行被告を2019年秋の内閣改造で法相に起用したのは安倍首相だ。各種世論調査で議員辞職を求める声が多数を占めていることを背景に、与野党双方から河井夫妻の議員辞職を求める声が噴出しており、安倍首相や自民党執行部は当面、河井夫妻問題への対応に苦慮することになりそうだ。
有罪が確定すれば議員失職に
起訴状などによると、克行被告は、自民党本部が案里被告を参院広島選挙区(定数2)での2人目の公認候補に決めた直後の2019年3月下旬ごろから選挙直後の8月上旬までの間、投票や票の取りまとめを依頼する趣旨で、関係者に合計約2900万円をばらまいたとされる。
東京地検特捜部は、現金提供の対象が広島県議や地元の首長、後援会幹部ら100人にのぼり、案里被告も5人分計170万円について共謀したとしている。また、参院選公示前の投票依頼や現金提供は事前運動に当たると判断。克行被告を公選法上の「総括主催者」に当たるとして起訴しており、同被告の有罪が確定すれば連座制が適用され、案里被告も失職となる。
そこで注目されるのが起訴を受けての河井夫妻の出処進退だ。捜査関係者によると、夫妻は「買収の意図はなかった」「夫の言う通りにしただけ」などそれぞれ容疑を否認しており、裁判でも徹底抗戦の構えだという。夫妻は逮捕直前の6月17日にそろって自民党を離党しており、「建前からいえば、議員辞職は個人の判断」(自民幹部)となる。
仮に、夫妻がどちらも議員辞職せずに公判に臨めば、選挙の当選者らが買収事件に問われた場合に百日以内の判決を求める「百日裁判」となる。その場合、東京地裁が審理を急げば、10月半ばまでの判決言い渡しも想定される。ただ、過去の百日裁判を見ると、被告側の徹底抗戦で審理が長引いた例もあり、最高裁まで争いが続けば、判決確定まで1年近くかかる可能性もある。
その一方で裁判が続けば、河井夫妻を重用した安倍首相や自民党執行部への国民的批判をかき立てるのは確実だ。
克行被告は首相補佐官や党総裁外交特別補佐も務めた安倍首相の側近で、菅官房長官を囲む議員グループ「向日葵(ひまわり)会」の主宰者。案里被告は、離党後も二階俊博幹事長の率いる二階派の特別会員に名を連ねている。
広がる「自民惨敗」への不安
6月の国会閉幕を受け、夏以降のコロナ収束を前提に、政界では「秋口解散・10月衆院選」説が取り沙汰されている。しかし、百日裁判で審理が順調に進めば、一審判決は選挙期間と重なる可能性が高い。その場合「有罪となれば自民党の選挙への悪影響は計り知れず、自民惨敗は避けられない」(自民長老)との不安が広がる。
秋口解散が見送られた場合でも、一審判決以降も審理が続けば、2020年10月までのどの時点で衆院選が行われても、河井夫妻の裁判が自民党への強い逆風の要因ともなりかねない。
河井夫妻が早い段階で議員辞職すれば、百日裁判の必要性はなくなる。「起訴後に当選人(案里容疑者)が辞職すれば、それ以降は百日裁判として処理する必要がなくなる」との法解釈からだ。その場合、河井夫妻が裁判で徹底抗戦を続けたとしても、「議員辞職で政治的には区切りがついたことになり、選挙への影響も限定的となる」(自民幹部)とみられる。
夫妻の起訴を受けて安倍首相は8日夜、「わが党所属だった現職の国会議員が起訴されたことは誠に残念。かつて法相に任命した者として責任を痛感し、国民に改めておわびしたい」と神妙に頭を下げた。
自民党本部が夫妻側に支給した1億5000万円の使途については「自民党において政治資金は厳格なルールの下に運用されている」と買収資金との見方を否定する一方、「党として説明責任を果たしていかねばならない」と語った。
これに対し、立憲民主などの野党側は8日、国対委員長会談で河井夫妻の議員辞職を求める方針で一致。「首相の任命責任は重大」として、与党側に安倍首相が出席しての予算委員会閉会中審査の早期開催を求めた。立憲民主の安住淳国対委員長は「(金銭を)もらった側は事実関係を認めている以上、渡した側の責任は免れない」と強調したが、自民党は「首相はコロナ対応に集中している」などと拒否する構えだ。
ただ、与党内でも、公明党の斉藤鉄夫幹事長が8日、「国民の政治不信を招いた責任は重大だ。裁判の結果を待つまでもなく議員辞職すべきだ」と明言した。自民党内でも「次の選挙を考えても、辞職しないとだめだ」(閣僚経験者)との声が相次ぐ。
「政権ぐるみの犯罪」に発展するか
安倍首相や自民党執行部の不安要因は、1億5000万円の使途にからむ党本部などへの本格捜査だ。「考えられない額の選挙資金投入」(自民選対幹部)だけに、「総裁と幹事長の承認がない限りありえない」(同)との声が支配的だ。特捜部が河井夫妻の起訴後も捜査を続行すれば、総裁である安倍首相や二階幹事長も含めた党最高幹部への直接捜査の可能性も残る。そうなれば政権ぐるみの犯罪にも発展しかねない。
ただ、司法関係者は「金に色はないので、党本部の投入した資金が買収に使われたことを立証するのは極めて困難」と指摘する。検察当局は買収を受けた地方議員らの立件を見送る方向だとされ、「事実上、夫妻の起訴で捜査は終結」(自民幹部)との声も広がる。
今回の捜査の最高指揮官の立場だった稲田伸夫検事総長は、今回の起訴を置き土産に7月下旬までに勇退し、林真琴東京高検検事長が後任の検事総長に就任するとみられていることも、そうした見方を後押しする。
こうした事情から、政界では河井夫妻が議員辞職するかどうかが、当面最大の関心事となる。安倍首相や二階幹事長は表向き「出処進退は議員個人の判断」と繰り返すが、党内では「水面下のルートで、夫妻それぞれに議員辞職を働きかけているはず」(閣僚経験者)という。
ここにきて安倍首相と麻生太郎副総理兼財務相の度重なる密談をはじめ、二階幹事長、岸田政調会長など政権中枢の個別会談が相次いでいる。党内では「当然、河井夫妻の議員辞職問題も話し合われているはず」(若手)との声が広がる。
安倍首相が「河井夫妻の個人的問題」と放置すれば、党内には「首相は逃げ回るだけ」との不満や不信が広がり、解散戦略への影響も含めて指導力低下を加速させかねない。国会閉幕後も低下した内閣支持率に回復傾向がみられず、求心力復活を狙って党内工作を進める安倍首相にとって、河井夫妻問題への対応が政局運営のカギとなることは間違いない。 

 

●河井夫妻の19年収支「不明」 1億5000万円なお未解明 2020/11/20
2019年7月の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で公判中の河井克行被告(57)=衆院広島3区=と妻の案里被告(47)=参院広島=がそれぞれ代表を務める自民党支部が、19年の政治資金の収支を「不明」と報告していることが20日、分かった。両支部には参院選公示前、党本部から計1億5千万円が入金されているが、具体的な使途は分からない状態が続く。
広島県選管が同日、両支部を含む県内の政治団体が提出した19年分の政治資金収支報告書を公開した。克行被告の「党県第三選挙区支部」は収入総額、支出総額、寄付などを「不明」と記載。収入の前年繰越額のみ1121万9300円と記している。参院選前の昨年4月に設立された案里被告の「党県参院選挙区第七支部」も収支の総額や寄付を「不明」としている。理由については両支部とも検察当局に関係書類を押収されたことを挙げ、宣誓書に「書類が返還された時には訂正する」と記している。
両支部には参院選前の昨年4〜6月、5回にわたり党本部から計1億5千万円が入金された。同じ選挙区で党現職候補だった溝手顕正氏(78)への1500万円の10倍に当たる。うち1億2千万円は税金が原資の政党交付金だった。
総務省が今年9月に公開した19年分の政党交付金の使途等報告書でも両支部は、4回にわたり計1億2千万円の政党交付金が入金されたことを記す一方で、支出については全てを「不明」としていた。
また、克行被告の元政策秘書が代表の「党新広島支部」と案里被告の後援会「あんり・未来ネットワーク」が県選管に提出した19年分の収支報告書も、同様の理由で前年繰越額を除く収支を「不明」としている。
両被告は公選法違反容疑で逮捕される前日の今年6月17日に自民党を離党した。一方で、両被告が代表を務める党支部は今も存続している。 

 

 

 

●案里氏"進退"、永田町の古参が描く「シナリオ」 2021/2/3
「いつまで居座らせるつもりなんだ」
九州選出の自民党議員秘書がひとりごちた。2019年参院選広島選挙区を巡る買収事件で1月21日、有罪判決を言い渡された河井案里参院議員(自民党を離党)のことだ。
歳費と文書通信交通滞在費で毎月203万5200円、6月と12月には各310万円超の期末手当−。昨年6月の逮捕から7カ月で得た議員報酬は、計2000万円を超える。一度も本会議や委員会の場に姿を見せていないにもかかわらず。
ちなみに昨年10月、案里氏が保釈された際に支払った保証金は1200万円。「十分、お釣りが来てるはずなのに」。議員辞職せず、さらなる法廷闘争も視野に入れる案里氏に、この古参秘書は眉をひそめる。なおも、国民の血税をむさぼるつもりなのかと。
気掛かりなのは、党内に案里氏の辞職を促す声が乏しいことだ。離党前、案里氏は二階俊博幹事長率いる二階派に属し、買収事件の原資となったとされる1億5000万円も党本部から案里氏側に選挙資金として送金されていた。二階氏ににらまれるのを恐れて党所属の国会議員たちが口をつぐんでいるのだとしたら、今の政権与党に自浄作用など望むべくもない…。
と、ここまでは表向きの批評。永田町の古株が目を向けるのは、その先だ。
政治とカネの問題や世論の受けが芳しくない新型コロナ対応を抱えたまま、菅義偉政権は4月25日に衆参の補欠選挙を迎える。自民は、元農相が汚職事件の在宅起訴前に辞職して空席となった衆院北海道2区の候補者擁立を早々に断念。野党現職の死去に伴う参院長野選挙区も、形勢有利とはいかぬ。
「案里氏に辞めてもらってだな、自民の強固な支持基盤がある参院広島選挙区も補選に組み込むとする。それでもし『0勝2敗』を『1勝2敗』にできたら、印象もだいぶ違うだろ?」
職責を果たすことなく歳費などを受け取り続ける案里氏に引導を渡す演出をして世論のルサンチマン(怨恨=えんこん)を鎮め、反転攻勢を妨げる補選の敗北感も和らげる−。くだんの秘書は、本気とも冗談ともつかないシナリオをささやくのだ。
公職選挙法の規定により、3月15日までに一定の欠員が出た選挙区は「4・25」補選に統合される。つまり焦点は、案里氏が判決を受け入れて失職するのか、あるいは控訴するのか。
生き馬の目を抜く政界をしたたかに遊泳してきた秘書たちは、時に主人をしのぐ“千里眼”を起動する。果たして、その見立ての結末やいかに。控訴期限は2月4日。 

 

●案里被告の有罪確定 参院選買収、当選無効に 2021/2/5
2019年参院選をめぐる大型買収事件で、公選法違反(買収、事前運動)罪に問われた前参院議員、河井案里被告(47)=議員辞職=を懲役1年4月、執行猶予5年とした東京地裁判決は、被告側、検察側双方が控訴せず、5日に確定した。
有罪判決確定により、参院広島選挙区での案里被告の当選は無効となり、4月25日に再選挙が行われる。同被告は5年間、公民権が停止され、その間は立候補できない。  

 

●買収原資「党本部の資金」 元会計担当者が供述―河井元法相公判 2021/2/9
2019年参院選をめぐる大型買収事件で、公選法違反(買収、事前運動)罪に問われた衆院議員の元法相、河井克行被告(57)=自民離党=の公判が9日、東京地裁(高橋康明裁判長)であった。検察側は買収罪の対象となった選挙スタッフ3人への現金提供について、陣営の元会計担当者が「自民党本部から提供された資金が原資だった」と述べた調書を読み上げた。
克行被告と妻の案里前参院議員(47)=有罪確定、議員辞職=がそれぞれ代表を務める広島県の選挙区支部には、党本部から選挙資金として計1億5000万円が送られ、うち1億2000万円は税金をもとにした政党交付金だった。この資金が買収の原資になったとする証言が明らかになるのは初めて。
供述調書によると、この3人は陣営の事務局長を務めた愛知県稲沢市議と、企業回りや電話での投票依頼を担当したスタッフ。会計担当者は参院選前後の19年6〜8月、克行被告の指示で3人に計約220万円を振り込む際、党本部からの資金を口座から引き出して原資に充てたと述べていた。
検察側はこれまでの公判で、3人に振り込まれた金は投票や選挙運動を依頼する買収の趣旨だったと主張。3人のうち企業回りを担当した元スタッフの男性(52)はこの日証人として出廷し、「投票や選挙運動の報酬で、違法な金だと思った」と述べた。 

 

●「本丸は安倍だ!」自民党本部から支出された1億5000万円だった 2021/2/10
[ 「本丸は安倍だ!」河井克行議員の買収資金、自民党本部から支出された1億5000万円だった!会計担当者が初めての言及!→法的責任が追及されなければならい。「買収目的交付罪」(公選法221条1項5号)に当たる 地検は自民党本部を家宅捜索を ]
元自民党の衆院議員・河井克行被告を巡る公職選挙法違反の裁判で、買収に使われた資金の一部は自民党本部から提供された1億5000万円を使っていたことが初めて会計担当者が初めての言及した。これは2月9日に東京地裁で行われた公判で会計担当者が明らかにした。検察側は会計担当者の供述調書を読み上げ、買収罪の対象とされている3人の陣営スタッフへの計220万円が自民党本部の資金を流用したものだと説明。自民党本部から提供された1億5000万円の内、1億2000万円が政党交付金で、党本部の資金を管理している専用の口座からスタッフらに振り込みが行われていた。
[ 保守分裂選挙になったのは、安倍が忌み嫌っていた自民党の「溝手顕正氏」を落選させるため ]
溝手顕正氏は自由民主党所属の元参議院議員(5期)。 国家公安委員会委員長を努めた議員であるが、安倍氏を批判するなどしていたために、以前から安倍氏は嫌っていた。ご存知のように、安倍氏は若い時から「自分に歯向かう者は徹底的につぶして来ている」 この選挙でも、安倍氏側は河井克行元法務大臣の妻の河合あんり(公職選挙法の「買収」で有罪で辞職している)を立候補させた。そして、党本部からは選挙資金として、溝手顕正氏と河合あんり氏には1500万円を支出しているが、この外に自民党本文では、当時、総理総裁だった安倍氏の指示であろう、河合あんり氏には破格の1.5億円が渡っていたのだ。そもそも、河合夫妻側にこの破格の原資がなけば、あんな大金の選挙買収事件など起きなかったのだ。選挙戦でも、現地に入り、安倍自身や二階幹事長、菅氏も選挙応援演説をしている。この原資の1.5億円が法定で会計担当者から証言がでたことは、大きな意味がある。
[ 当時の自民党総裁は安倍晋三氏であり、法的責任が追及されなければならない ]
河合夫妻に渡った選挙資金の1.5億円の支出は「買収目的交付罪」(公選法221条1項5号)に当たると弁護士団などは発言している。そもそも、この金がなければあのような大型選挙買収事件など起きなかったのだ。原点と本命は「溝手氏を落選させるために安倍晋三氏がこの1.5億円」の選挙資金の供与にある。この会計担当者の証言と1億2000万円が政党交付金で、党本部の資金を管理している専用の口座からスタッフらに振り込みが行われていた事実は大きな意味がある。
[ 明らかに、「買収目的交付罪」(公選法221条1項5号)に該当する案件である ]
「買収目的交付罪」(公選法221条1項5号)とはーー
第十六章 罰則
(買収及び利害誘導罪)
第二百二十一条 次の各号に掲げる行為をした者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
一 当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき。
二 当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対しその者又はその者と関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の直接利害関係を利用して誘導をしたとき。
三 投票をし若しくはしないこと、選挙運動をし若しくはやめたこと又はその周旋勧誘をしたことの報酬とする目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し第一号に掲げる行為をしたとき。
四 第一号若しくは前号の供与、供応接待を受け若しくは要求し、第一号若しくは前号の申込みを承諾し又は第二号の誘導に応じ若しくはこれを促したとき。
五 第一号から第三号までに掲げる行為をさせる目的をもつて選挙運動者に対し金銭若しくは物品の交付、交付の申込み若しくは約束をし又は選挙運動者がその交付を受け、その交付を要求し若しくはその申込みを承諾したとき。
六 前各号に掲げる行為に関し周旋又は勧誘をしたとき。
これに、完全に合致し、安倍氏の外に、支出に二階幹事長関わっていたとすれば、これに該当する。今回、法定でのこの証言とは非常に大きな意味を持つ。広島地検はこれを、徹底的に捜査しなけばならないはずである。これを、放置する事は、地検として断じて許されない。
[ 買収原資「自民本部からの1.5億円」会計担当者が説明 朝日新聞 2021/2/9 ]
2019年7月の参院選広島選挙区をめぐり、公職選挙法違反(加重買収など)の罪に問われた元法相で衆院議員・河井克行被告(57)の公判が9日、東京地裁であった。会計担当者の供述調書を検察側が読み上げ、買収罪の対象とされた3人の陣営スタッフへの計約220万円は、自民党本部から支出された1億5千万円が原資だったとの説明を明らかにした。1億5千万円のうち、1億2千万円は税金が原資の政党交付金だった。党本部からの資金が買収に使われた可能性を示す証言が明らかになったのは初めて。調書によると、会計担当者は克行議員の指示で、党本部からの資金を管理する専用口座を開設。そこから資金を引き出し、3人の陣営スタッフに「給与」として計約220万円を振り込んだという。3人のうち1人は、受け取った現金の違法性を認めている。ほかの2人の証人尋問は今後行われる。
[ 地検は自民党本部を徹底捜査し、誰が1.5億円の支出を指示したか。明らかにしなばならない ]
自民党本部の最高責任者は総裁である安倍氏だ。2019年の参議院選挙を巡って、「党本部が結果的に買収を後押ししたのではないか」と言われ続けてきた。国民は、全く納得していない。今回、裁判所の法定でのこの会計担当者の証言は、非常に大きな意味がある地検もこれを、引き出したのだ。この前有罪で議員辞任した河合あんり議員は利用されたのだ。あくまでも、本丸は自民党本部の安倍晋三氏や二階幹事長である。地検は、「しっぽ切り」は許されない。今回の証言を元にして、自民党本部、当時の総裁の安倍晋三氏や選挙を仕切った二階幹事長を徹底捜査しなけばならない義務がある。地に落ちていた地検の国民からの信用、信頼の回復のためにも、本気で動くべきでる。 

 

●河井元法相買収事件 原資はどこから? 2021/3/24
元法相の衆院議員河井克行被告は23日、妻の案里前参院議員を当選させようと現金を配ったことを認め、議員辞職を表明した。公判では自民党から提供された1億5000万円の資金が買収に充てられたとの証言も出ているが、党側は真相究明に消極的。菅義偉首相は官房長官当時、河井夫妻に肩入れしていたが、十分に説明責任を果たしているとは言い難い。
党本部は案里氏の陣営にベテラン議員の10倍もの巨額の資金を投入し、当時の安倍晋三首相や菅氏が現地入りして全面支援した。破格の選挙資金の使われ方に関し、党側は案里氏の陣営が広報紙を広島県内に複数回、配る費用だったなどと主張するが、捜査当局に関係書類が押収されているとして、詳しい説明を避けている。
菅氏は昨年9月の党総裁選で、使途の調査について「責任を持って対応したい」と約束していた。だが、今月3日の参院予算委員会では「書類が返還され次第、党で監査する」と述べるにとどめ、解明に向けた姿勢を後退させている。
克行氏は昨年6月の逮捕以降、長期の勾留で議員活動が事実上できないにもかかわらず、総額2500万円近い歳費などを受け取っているとみられる。一転して議員辞職を表明したことで、収賄事件で在宅起訴された吉川貴盛元農相(自民党を離党)に続いて、説明責任を果たさずに終わるのが確実。党も真相究明を置き去りにしたまま、幕引きを図る構えだ。
二階俊博幹事長は記者会見で「本人は大いに反省しているだろう。党としても他山の石として対応しなければならない」と指摘。当事者意識を欠いた人ごとのような発言に対し、立憲民主党の枝野幸男代表は党会合で「自民党のど真ん中で起こった事件で、党として対応しなかったことがこうした状況を招いている」と批判。国民民主党の玉木雄一郎代表も記者団に「違法行為の原資が自民党から出ているのは明らかだ。全容を解明し、説明する責任がある」と訴えた。 

 

●二階、甘利氏が関与否定 河井元議員側への1.5億円 2021/5/18
自民党の二階俊博幹事長は18日の記者会見で、2019年参院選広島選挙区を巡る買収事件で有罪が確定した河井案里元参院議員陣営に対する党本部からの1億5千万円の送金に関し、関与を重ねて否定した。当時、選対委員長だった甘利明税制調査会長も国会内で記者団に「1ミリも関与しておらず、全く承知していない」と強調した。
参院選に関わった主要幹部同士が責任を押し付け合った形だ。
二階氏に近い林幹雄幹事長代理は17日の会見で、実質的には甘利氏が担当していたと指摘していた。「政治とカネ」の問題を巡って説明責任を果たすよう求める声が再び強まりそうだ。
二階氏は18日の会見で「党全般の責任が私にあるのは当然だが、収入、支出の最終判断をしており、個別の選挙区の選挙戦略や支援方針はそれぞれ担当で行っている」と述べた。
会見に同席した林氏は、甘利氏の説明責任について問われると「根掘り葉掘り、党の内部のことまで踏み込まないでほしい」と反発した。
一方、甘利氏は1億5千万円に関し「事件後の報道で初めて知った」と説明。「関与していない以前に、党から給付された事実を知らない」と語った。 

 

●安倍前首相の気配抜群 1億5000万円問題で“黒幕ダービー”の大本命に 5/20
2019年参院選広島選挙区の公職選挙法違反事件で買収の原資となったとの指摘がある党本部からの1億5000万円に関し、安倍晋三前首相が関与した疑いが出てきた。自民党の二階俊博幹事長、当時の甘利明選対委員長が互いに関与を否定する中、安倍前首相に疑惑の目が向けられている。
二階幹事長は17日の記者会見で、「その支出について、私は関与していない」と述べた。それを補足するように、会見に同席した林幹雄幹事長代理は甘利氏が広島選挙区を担当していたと説明した。急に水を向けられた形となった甘利氏は18日、「1ミリも、正確にいえば1ミクロンも関わっていない。関与していない以前に、党から給付された事実を知らない。これがすべてだ」と国会内で語った。
これに対し、政治評論家の田崎史郎氏は19日に出演した情報番組『ひるおび』(TBS系)の中で、「ちゃんと取材すると誰も嘘を言っていない。みんな本当のこと言ってる」と説明。
甘利氏について、広島県連との調整など選挙の実務は関わっているが、お金に関しては一切タッチしていないとした。また、当時官房長官だった菅義偉首相に対しては、政府の権力は握っているものの、党のお金に関わるポジションではないとコメント。
一方、「金はあくまで幹事長。幹事長の力の源泉は金なんです」としたうえで、「二階さんは『知りません』とは言っていない。さすがに二階さんは知らないわけがない。決裁しているんだから。幹事長の決裁なしにこれくらいの金額が動くことはない」と語った。
ただ、お金を出せと言ったのは二階幹事長ではないとし、関与した可能性があるとすれば、安倍前首相しかいないと明言。
田崎氏は「本当に関わったかどうかはわからない」と付け加えたものの、1億5000万円もの大金を河井陣営に渡すよう指示できる立場にあったのは“安倍前首相しかいない”ことを示唆した。
一体、誰が嘘をつき、誰がしらを切っているのか?
買収の原資となった1億5000万円をめぐり、広島県連会長の岸田文雄前政調会長らが使途解明を急ぎ、国民に説明するよう二階氏に申し入れている。しかし、二階氏側は「検察から書類が戻れば報告書を作成し、総務省に届ける」と従来の説明を繰り返すばかりで、一向に事実が明らかにされる気配はない。
こうした自民党本部の執行部に怒りをあらわにしているのが自民党広島県連。会長代理で中本隆志県議会議長は「二階さんの発言を聞きましたが、無責任で情けない。何とも言いようのない怒り。自分勝手な発言だと思いますね」とコメントした。朝日新聞が報じた。さらに、「県民をこれほど侮辱した言葉はない」と激怒し、発言の撤回を要求。「河井案里さん自体は二階派の議員(当時)でありますので、そこをどのように思っておられるのか」と語気を強めた。
1億5000万円をめぐって始まった“自民党ウソつき合戦”。関与が強まってきた安倍前首相からも何らかの説明が必要だろう。
Twitterの反応
「河井案里への1億5000万円のワイロ資金の提供について、二階俊博が関与を非定し、甘利明も関与を非定した。じゃあ、残るは安倍晋三しかいないじゃん!(笑)」
「「自民幹部 相次いで関与を否定する」だってさ。例の広島の1.5億円の話ね。二階さんが「関与してない」とシラを切り、当時の選対担当だった甘利明さんは「1ミクロンも関わりない」ときたもんだ。ウケるねえ、1ミクロンだぜ。残りは安倍さんか菅さんしかないが、国民はもちろん自民党員も置き去りだね。」
「杏里氏への1億5000万円は自民幹部が否定。なら、やったのは安倍か菅なんだろうな。1億5000万円を明らかにせよ。」
「これは重大かつ組織的な公職選挙法違反である。どういう経緯で誰が関わり河井夫妻に1億5000万円を渡したのか、河井克行「安倍さんから」と30万円渡したという証言もある。こんなこともきちんと説明できないような犯罪者組織自民党は解党すべき。日本にいらない。」
「自民党本部から河井案里事務所への1億5000万円支給単純に疑問かつ闇よな。これまで宏池会の溝手顕正氏が受かってたわけで、金を配ってでも溝手氏を落としたかったという話になる。(税)金をかけてでも安倍チルドレンを増やしたかったんだろうな。」
「自民党の1億5000万円問題はもともと派閥争い。すなわち、権力闘争。今回、負けたふりをしていた岸田前政調会長が機を見て立ち上がったということ。当時の現職を落としたぐらいだから相当真剣だったはず。したがって当時関与していたのは、安倍首相、菅官房長官、二階幹事長。」 

 

●自民党重鎮「関与否定」 「1億5千万円提供の指示者」 2021/5/23
2019年参院選を巡る買収事件で有罪が確定した河井案里元参院議員の陣営に、自民党本部から、同じ自民党公認の溝手顕正氏の10倍の1億5000万円もの資金が提供されていた問題について、党重鎮の発言が波紋を広げている。
5月17日の自民党本部での記者会見で、二階俊博幹事長は、資金の支出について「私は関係していない」と述べ、林幹雄幹事長代理も「実質的には当時の選挙対策委員長が広島を担当していた。幹事長は細かいことはよく分からない」と説明した。
党本部が資金を支出した2019年4〜6月、自民党の選挙対策委員長を務めていたのは、甘利明・税制調査会長だったが、同氏は、18日、記者団に「(1億5000万円の支出には)1ミリも関与していない。1ミクロンもかかわっていない。事件後の新聞報道を見て初めて知った」と述べた。
このような自民党幹部の発言に関して、岸田文雄前政調会長は、18日に出演したBS番組で、「1億5000万円を出したその後、それを何に使ったか、これを明らかにしてもらいたい。我々が申し入れをした論点と、昨日から騒ぎになっている論点、これはちょっとずれている」と発言した。
自民党本部から河井陣営に提供された1億5000万円に関して問題になっているのは、
(1)溝手候補の10倍もの資金提供は誰が決めたのか、
(2)何に使ったのか、
の2つの点だ。
(1)の点は、そもそも、自民党広島県連の強い反対・反発にもかかわらず、参院広島選挙区に2人目の候補として案里氏を公認したのは、いかなる目的だったのか、という点に関連する。
克行氏が公判で供述しているように「自民党の党勢拡大、憲法改正の発議のため」だけだったのか、安倍晋三前首相が「溝手氏への私怨」から同氏の落選を狙ったのか、或いは、菅義偉氏、二階氏らが、総裁選を見据えて、安倍首相の後継の自民党総裁の有力候補だった岸田氏の大番頭の溝手氏落選を狙ったのかなど、様々な見方がある。
いすれにせよ、1億5000万円の資金提供を決定した人物は、10倍もの資金提供の理由について説明責任を負うことになる。
一方、(2)の点は、資金提供の違法性、不当性に関連する。
結果的に、買収原資に充てられたというだけでも、その政治的・社会的責任は重大だ。もし、資金提供が、「案里氏を当選させる目的で」買収原資に充てられることを認識した上で行われたのであれば、公選法の買収目的交付罪に該当する可能性もある(【検察は“ルビコン川”を渡った〜河井夫妻と自民党本部は一蓮托生】)。
この点について最もよく知る克行氏は、自らの公判の被告人質問で、買収の資金について、「私の手持ちの資金で賄った」「衆議院の歳費などを安佐南区の自宅の金庫に入れ保管していた金で賄った。」と供述した。しかし、検察官から、日頃から議員活動のために「借り入れ」をしていることとの関係や、平成31年3月に金庫にあった現金の額について質問され、「覚えていない」としか答えられず、また、検察官から「自宅を検察が捜査した時点では大金はなかった。」と指摘されても「わからない」と述べるだけだった。
一方で、克行氏は、公判供述で、県連が溝手氏だけを支援し、案里氏の支援をすべて拒絶しており、「県連が果たすべき役割を果たしていない」ので、「やむを得ず」「市議、県議に県連に代行して党勢拡大のためのお金を差し上げ」たと述べている 。
克行氏は、5月18日の公判期日の被告人最終陳述では「1億5000万円の交付金の使途につき、いわゆる買収資金には一銭も使わなかった」と述べたが、弁護人の弁論では買収原資については全く触れておらず、「買収資金はポケットマネー」という克行氏の公判供述は弁護人にも信用されていない。
このように、上記(2)について、買収資金に充てられたことが明白になっており、上記(1)の1億5000万円の資金提供を誰が指示・決定したかが特定されると、責任追及が必至ということで、二階氏・甘利氏ら自民党重鎮が「関与否定発言」を行っていると見るべきであろう。
岸田氏も求めている、上記(2)の点についての自民党としての事実解明について、二階氏などは、これまで「検察から書類が戻れば、報告書を作成し、総務省に届ける」と述べて、「関係書類が検察に押収されていること」を、事実解明ができない「言い訳」にしてきた。しかし、河井夫妻の公判の状況からすれば、現時点では、その「言い訳」は全く通用しない。1億5000万円の使途を明らかにする関連書類の入手はすぐにも可能だ。
証拠物の押収というのは、捜査や公判立証のために行われるものであり、原則として、当該事件の裁判が終わるまでは押収物は返還されないが、刑訴法上、「押収物は、所有者、所持者、保管者又は差出人の請求により、決定で仮にこれを還付することができる。」(222条1項、123条2項)とされ、「仮還付」が認められている(仮還付を受けた者はその物を、証拠価値を変動させないように保管する義務を負う)。
案里氏の公判は終了して判決が確定し、克行氏の公判は、既に、検察官立証も論告弁論も終了し、判決を待つだけの状況になっている。関係書類の押収を継続する必要が全くなくなったとは言えないとしても、仮還付が行えない理由は考えられない。党本部が「任意提出」し「領置」(捜査機関が任意提出で証拠物を取得すること)されている関連書類については、党本部が仮還付を求めれば、すぐに仮還付されるだろう。また、克行氏が捜索の際に押収された資料は、克行氏自身が検察に仮還付を求めなくてはならないが、党本部が、克行氏に、総務省への報告のために必要だとして関係書類の仮還付を検察官に請求するよう要請すれば、克行氏が拒むことはできないはずだ。克行氏がその理由で仮還付を求めれば、検察官も仮還付を拒む理由はない。
つまり、現時点では、党本部にとって、1億5000万円の使途の全容の解明はすぐにも可能であり、上記(2)について岸田氏の要請に応じない理由はないのである。
では、自民党幹部の説明が食い違っている(1)の「誰が資金提供を決めたのか」という点は、どうなのだろうか。
この資金提供は、自民党の公式の政治資金によるものであり(原資の大部分は「政党助成金」と言われている)、自民党本部の会計責任者の事務総長が手続を行ったものと考えられる。その事務総長に対して、資金提供の指示を行ったのは誰なのか。
幹事長が関わるのが通常だろうが、もし、二階氏が言うように、「幹事長が関わっていない」とすると、自民党本部内で事務総長に指示できるのは、幹事長より上位の役職者しか考えられない。
そして、広島の選挙を担当していた選挙対策委員長の甘利氏が「1ミクロンも関わっていない」のであれば、「幹事長より上位の役職者」が、選対委員長を飛び越して、直接、事務総長に指示したことになる。
「首相動静」によれば、この合計1億5000万円の党本部からの資金提供が行われた前後に、克行氏と当時の安倍首相(自民党総裁)とは頻繁に単独面談を行っている。案里氏を公認した3月13日の前後の2月28日と3月20日、党本部から案里氏が代表を務める政党支部に1500万円を振り込んだ2日後の4月17日、3000万円を振り込んだ3日後の5月23日に安倍氏と克行氏とが単独で面会しており、6月10日に案里氏政党支部に3000万円、克行氏政党支部に4500万円が振り込まれた10日後の20日にも安倍氏と克行氏とが単独で面会し、その一週間後の同月27日に克行の政党支部に3000万円が振り込まれている。
これらの単独面談の中で、克行氏から安倍氏に「広島県連が、案里氏の選挙への協力をすべて拒否し、果たすべき役割を果たしていないので、やむを得ず、県連に代行して市議、県議に、党からの交付金を現金で差し上げざるを得ない」という説明が行われなかったとは考え難い。
2019年参院選広島選挙区の買収事件で有罪が確定した河井案里氏陣営に提供された1億5000万円をめぐっては、依然として多くの「闇」が残されている。しかし、案里氏の夫で元法相の克行氏の公判供述によって、「党本部からの交付金」である1億5000万円が買収原資になったことは、もはや否定する余地はなくなっている。押収された関連資料も仮還付可能な状況となり、事実解明を拒否する自民党本部の「検察庁に資料が押収されている」との言い訳も通用しない。
では、資金提供を指示したのは誰なのか。
事ここに至って、にわかに自民党重鎮間で「関与否定発言」の応酬が起きたことで、それが誰であるかが一層明白となった。そして、その資金提供の指示が、地元政治家に、党からの交付金を現金で渡すことになると認識して行われたことも、否定することは困難となっている。 

 

●二階氏、1億5000万円発言を修正 決定責任「総裁と幹事長に」 5/24
自民党の二階俊博幹事長は24日の記者会見で、2019年の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で有罪が確定し、当選無効となった河井案里元参院議員の陣営に1億5千万円を提供した党本部の決定に「私は関与していない」とした先週の発言を修正する形で、組織決定の責任者は「総裁(安倍晋三前首相)と幹事長だ」と述べた。発言を二転三転させる二階氏に加え、関与を否定してきた安倍氏も説明責任を改めて問われそうだ。
二階氏は17、18日の会見で自らの関与を重ねて否定した。ところがこの日、同席した林幹雄幹事長代理が「(党の)組織決定」という言葉を持ち出し、「全般は幹事長が責任を負う」と説明。組織決定の責任者に関する質問に二階氏は「党全体の事を決めるのは総裁と幹事長の私だ」と述べた。
党ナンバー2である二階氏の発言で、安倍氏は厳しい立場に置かれる。首相・党総裁在任中、1億5千万円の提供について「(二階氏ら)党執行部に任せていた」と述べ、説明責任から逃れていたからだ。
19年参院選広島選挙区で自民党は現職の溝手顕正氏に加え、新人の案里氏を擁立した。党本部は案里氏と夫で元衆院議員の克行被告の二つの党支部に計1億5千万円を提供。安倍氏との不仲が伝えられた溝手氏の党支部への10倍だった。
河井夫妻側に提供された資金のうち、1億2千万円は税金を原資とする政党交付金だった。党幹部や菅義偉首相は使途の説明ができない理由として、検察当局に関係書類が押収されていることを挙げる。24日の会見で林氏は「買収資金に使われていないことはきちっと証明する。どれだけ広報活動に使ったか立証できる」と強調。提供決定の具体的な経緯を問う質問に、二階氏が「もう何回も言っているじゃないですか」といらだちを見せる場面もあった。 

 

●「ばらまき」別の裏金か 1億5000万円は使わず 5/26
2019年の参院選広島選挙区を巡る自民党の1億5千万円の問題が、政治不信をもたらしている。参院選前に元法相の河井克行(58)=公判中=と妻案里(47)=有罪確定=の党支部に提供され、河井夫妻による買収の資金になったとの疑念が今もくすぶる。うち1億2千万円は税金から出た政党交付金。説明責任を果たさない党本部への批判も強い。さまざまな問題をはらむ政党交付金を追う。
「1億5千万円の破格の選挙応援金が支払われ、うち1億2千万円が税金由来ならば説明責任がある」
「権力者が好き放題の政治をして、説明もせず責任も取らないのは国民をばかにしきっている」
今月、中国新聞社とインターネット検索大手ヤフーが実施した全国アンケートでは、参院選前に1億5千万円を河井夫妻側へ提供した自民党への厳しいコメントが並んだ。回答者の半数近くが、夫妻による大規模買収事件の最大の問題として1億5千万円を挙げた。
事件の舞台は、案里が初当選した19年7月の参院選広島選挙区。検察当局によると、克行は同年3〜8月、案里を当選させる目的で地方議員や後援会員、陣営スタッフら100人に計2901万円を渡したとされる。時期が重なる同年4〜6月には党本部が5回にわたり、夫妻の党支部に政党交付金を含む計1億5千万円を入金していた。
同じ選挙区で落選した自民党現職に提供された額の10倍。「買収の資金になったのではないか」。国民から疑念が巻き起こった。
97人現金手渡し
実際、被買収者とされる100人のうち、陣営スタッフ3人に渡った金は1億5千万円の一部だった疑いがある。2月にあった克行の公判で、検察側は陣営の会計担当者の供述調書を朗読。3人に渡った251万円のうち、振り込み分の221万円は、政党交付金が入金された口座を経由して支払われたと明かした。
調書によると、会計担当者は克行から「党本部から大口の入金があるから報告するように」と指示を受けていた。夫妻の党支部の口座には政党交付金が入金され、会計担当者は別の口座を開設してその金を管理。3人への違法報酬をこの口座などから払ったという。
ただ、夫妻が総額で2901万円を渡したとされる100人のうち、金の流れがたどれる振り込みでの提供はこの3人だけ。残る97人にはすべて現金で手渡したという。その総額は2680万円に上る。
1億5千万円は一体、何に使われたのか。首相で自民党総裁の菅義偉も党幹事長の二階俊博も、検察に関係資料を押収されていることなどを理由に具体的な説明を避け続ける。
一方、克行は4月の公判での被告人質問で「買収資金を政党交付金から出す発想は全くない」と強調。案里をPRする党機関紙の印刷・配布費や事務所の費用などで使い切ったと説明した。今月18日の公判での最終意見陳述でも「選挙買収には一円も使わなかったにもかかわらず、要らぬ疑念を招き、自民党に多大なる迷惑をかけた」とわざわざ言及。ひときわ大きな声で謝罪した。
源流は永田町?
陣営の資金の動きなどから、1億5千万円は現金の「ばらまき」には使われていなかったという。ある関係者は、別ルートの「裏金」が河井夫妻に渡っていた可能性を示唆する。
「表には出せん金が流れてきたんじゃろう」。克行から現金を受け取った広島市議は、事件の源流は東京・永田町にあるとみて声を潜める。 

 

●大規模買収事件、最大の問題は 1億5000万円「説明ない」 5/26
元法相の河井克行被告(58)=公判中=と妻の案里元参院議員(47)=有罪確定=による大規模買収事件を巡り、中国新聞社とインターネット検索大手ヤフーが実施したアンケートで、自民党本部が河井夫妻側に提供した1億5千万円の説明責任を果たしていないことが最大の問題と思うとの回答が45・0%に上った。1億5千万円の大半の原資だった政党交付金については78・5%が「見直しが必要」と答えた。
この事件でさまざまな問題が浮き彫りになった中、アンケートでは何が最も問題と思うかを尋ねた。45・0%が「1億5千万円について自民党本部が説明責任を果たしていないこと」を選択し、最も多かった。
「法の規定がなく、河井夫妻が逮捕後に受け取った歳費などを返還させられないこと」が23・9%で続き、「検察庁が、河井夫妻からお金を受け取った地方議員の刑事処分をしていないこと」が9・0%、「河井夫妻が有権者に対する説明責任を果たしていない」が8・6%だった。
事件が起きた2019年の参院選広島選挙区(改選数2)では、自民党から現職の溝手顕正氏と新人の案里氏が立候補。野党系の現職と案里氏が当選し、溝手氏が落選した。
その後、党本部が溝手陣営に提供した額の10倍に当たる1億5千万円を河井夫妻側に渡していたことが判明。うち1億2千万円は、税金である政党交付金から出ていた。党内外から「不公平だ」「買収の資金になったのではないか」と批判や疑問の声が噴出したが、党本部は、関係資料が検察当局に押収されたことなどを理由に、1億5千万円の決定経緯や使途について具体的な説明をしていない。
二階俊博幹事長は24日の記者会見で組織決定の責任者は「総裁と幹事長だ」と明言。当時総裁だった安倍晋三前首相と自身に説明責任があるとの認識を示した。
アンケートの自由記述欄では、1億5千万円を問題視する理由について「税金から支出されているのに、国民に十分な説明責任が果たされていない」「うやむやにしようとする意図をひしひしと感じる」などと、自民党や政権の対応を批判する意見が相次いだ。
また、政党交付金の見直しが必要と思うかどうかも質問。78・5%が「必要」と答え、「必要ない」は11・9%だった。
アンケートは全国の18歳以上を対象に12〜18日にインターネット上で実施。3千人から回答を得た。 

 

●河井夫妻党支部に入金された「破格の選挙応援金」は「2億円」だった!? 5/27
ひろスポ!ひろスタ特命取材班は、国際平和・文化都市広島をひとつのステージと考え、そのステージの重要なソフトが「広島スポーツ」との立場で取材を行う。
その「ステージ」上では例えばコロナ禍による緊急事態宣言発出など様々な動きがある。
5月27日付、中国新聞一面に今、コロナ、東京五輪の次に日本国民が注目する「河井夫妻による買収」関連の記事が掲載されている。
見出しは… 「ばらまき」別の裏金か 1億5000万円は使わず
先に結論を言う。
2019年4月から6月にかけて自民党本部から夫妻党支部に入金された「破格の選挙応援金」はこれまで散々、報じられていた「1億5000万円」じゃなくて「2億円」だ! …と言い切りたいところだが、その可能性がある、という程度にしておきたい。
2019年7月の参院選に向けて色めき立つ広島選挙区。その舞台はハナから異様な空気に包まれていた。どうしてその時、地元メディアはそれを報じなかったのだろう?気が付かなかったなら、目は節穴。嘆かわしい状況だ。さすがに気付いていただろうに、自主規制したのか?
選挙だから選挙事務所が開設される。だが、その時点で溝手顕正vs河井あんり、は勝負あり!
溝手事務所はこの時、それまでの広島市中区役所付近から八丁堀交差点を北に進んだ電車道沿いに移転した。人通りだけでいえば半減するような場所だ。
だが事務所開きからほどなくこんな声が聞かれるようになった。
「いったい、どうなっとるんか?人がぜんぜん来ん。前の2割程度しか来んぞ!」
当時のことをよく知る関係者はもっと驚くようなことも話す。「だいたいね、溝手さんの事務所に顔を出してください、とお願いしてもみんな反応が鈍いんです。しばらくして“向こうは東京から、自民党本部から2億円流れて来とるそーな”という話になったんですよ」
これまで報じられてきた溝手顕正vs河井あんり=1500万円vs1億5000万円、は間違い。1500万円vs1億5000万円+5000万円なら、確かに法定での河井克行氏の自信満々?の陳述も合点がいく。
ひろスタ特命取材班では「あれっ?」と感じる事象を徹底的に取材する。この「河井夫妻」事件はその典型だ。
当時の選挙戦では先の関係者の証言にあるとおり、竹やりvs完全武装チームの戦いとなり、それがそのまま選挙結果に繋がった。
ほどなく岸田文雄政務調査会長(当時)の秘書が溝手顕正事務所に詰めた。さらに、広島事務所から福山へ応援にいく事態になった。
溝手顕正氏は広島市生まれ。父親の仕事の関係で三原市に転居し、広島大学附属三原中学校から広島大学附属高等学校に進んだ。サッカー王国広島の担い手でもある(…なのでひろスポ!も取材する)1966年、東京大学法学部卒業。富士製鐵に入社。1971年に新日本製鐵(社名変更)を退社して夫人の父親が経営する幸陽船渠(三原市幸崎町、2014年、今治造船によって吸収合併され、今治造船広島工場)に迎えられた。
ここまで読めば、ピンとくる読者も多いはずだ。天満祥典三原市長(当時)が河井陣営からカネを受け取ったのは…
2019年3月27日 三原市内のビルの一室で克行・案里夫妻と面会し、克行氏から50万円入りの封筒を…
2019年6月2日 広島市中区のリーガロイヤルホテル広島で開催された「河井あんり 飛翔のつどい」出席後、克行氏らと会食して100万円…
…となっている。三原市公式キャラのやっさだるマンは推定年齢450歳だが天満前市長の政治生命は終わった。
この三原市を舞台にして2019年夏までに何がどう歪められたか?
インドから中国へ仏教を伝えた僧侶・達磨大師。転じて、達磨の坐禅姿を模した日本の置物。心頭滅却、壁に向かって座禅を続けているうちに手足が腐ってしまったという。参院選で心が腐ったのは誰だったのか…
今となってはすべてが自民党本部、イコール当時の安倍首相の下で練られたストーリーであることが丸わかりだが、当時は得体の知れない空気が広島県に広がっていた。焦る溝手陣営は広島、福山備後地区の両面展開を強いられた。
「なんとかならんのか!福山・備後に人がいる(必要)んじゃ、あっちの議員さんがまるで動かんのよ…」
三原市観光案内には、やっさだるマンのプロフィールが載っている。数は書いてないがたぶんひとりのはず。ところがあの参院選のあった夏には達磨を決め込む者が続出したことになる。
繰り返しになるが1億5000万円ではなくて2億円。それが正しいかどうか、あとは各メディアそれぞれの担当者で確認してもらえれることを願うばかりだ。
自民党本部はもちろん要マーク。ある日、突然、大量の達磨が押し寄せる事態も予想される…(ひろスタ特命取材班) 

 

●二階氏、政治とカネ「ずいぶんきれいに」 野党は疑問視 6/1
自民党の二階俊博幹事長は1日の記者会見で、同党をめぐる「政治とカネ」の問題について「ずいぶんきれいになってきている。このことは評価していただいてしかるべきだ」と述べた。「カネを使って選挙をしたい人は誰もいない。少なくとも自民党の中にはいない」とも強調した。
ここ最近では、吉川貴盛元農林水産相が収賄罪で在宅起訴され、2019年参院選に絡む買収事件では河井案里元参院議員の有罪が確定、当選が無効になり、いずれも離党に追い込まれた。同党の菅原一秀前経済産業相は地元で現金を配ったとされる問題で議員辞職する方向で、実態と二階氏の認識にはずれがある。
立憲民主党の安住淳国対委員長は国会内で記者団に「耳を疑うような話だ。どこがどうきれいになっているのか、(国会の)政治倫理審査会に来て説明してほしい」と述べ、発言を疑問視した。  

 

●二階氏「きれいになった」に異論 自民・石破、岸田氏 6/2
自民党で続く「政治とカネ」の問題をめぐり、二階俊博幹事長が「随分きれいになってきている」と発言したことに対し、党内から2日、異論が相次いだ。石破茂元幹事長はラジオ日本番組で、過去の選挙と比較して「かかる金は少なくなった」としながらも、「『きれいになった』とは論理的につながらない。金で選挙を左右しようとする人が根絶されたわけではない」と指摘した。
岸田文雄前政調会長はテレビ朝日番組で、河井克行元法相・案里夫妻による買収事件が批判を招いて4月の参院広島再選挙で敗北した経験を踏まえ、「政治とカネの問題に国民の目は大変厳しい。幹事長にも受け止めていただき、党の信頼回復に努力をお願いしたい」と訴えた。 

 

●1億5000万円で安倍氏の説明要求、自民拒否「とやかく言われる話ではない」 6/2
自民党の森山裕、立憲民主党の安住淳両国対委員長は2日、国会内で会談した。安住氏は2019年参院選広島選挙区を舞台にした大規模買収事件で当選無効となった河井案里元参院議員の陣営に対する自民党本部の1億5千万円の資金投入を巡り、前総裁の安倍晋三前首相(山口4区)と二階俊博幹事長の国会での説明を求めた。森山氏はその場で拒否すると伝えた。
森山氏は中国新聞の取材に「資金投入は党内の判断だからとやかく言われる話ではない」と強調。実態解明を既に有罪が確定した案里氏と夫で元衆院議員の克行被告の公判に委ねるとし、「検察当局に押収された関係書類が返還され次第、党としても説明する流れになるだろう」と述べた。
これに先立ち立民、共産、国民民主の野党3党の国対委員長は国会内で会談し、安倍、二階両氏に国会説明を求めることで一致した。安住氏は森山氏との会談後、「自民党は誰の指示で金を流したか一切事実を明らかにしていない。国民には疑惑を隠していると映るだろう」と批判した。
19年参院選で自民党本部は党新人の案里氏陣営に、落選した党現職の溝手顕正氏陣営の10倍の1億5千万円を提供した。当時も幹事長だった二階氏は先月、「自分は関与していない」と強調したが、翌週には発言を修正。組織決定の責任者は自らと安倍氏だったと述べた。それ以降は記者会見で質問されても正面から答えず、提供の経緯は未解明のままだ。 
 
 
 
 
 

 

「党全般の責任が私にあるのは当然だが、収入、支出の最終判断をしており、個別の選挙区の選挙戦略や支援方針はそれぞれ担当で行っている」
 
 
 
 

 

広島の選挙を担当していた選挙対策委員長・甘利氏
「1ミリも関与しておらず、全く承知していない」
 
 
 
 

 

「幹事長より上位の役職者」が、選対委員長を飛び越して、直接、事務総長に指示したことになる
 
 
 
 

 

 

 

●野党、安倍・二階氏の説明要求 ―買収事件判決で 2021/6/18
2019年参院選広島選挙区での買収事件をめぐり、元法相で元自民党衆院議員の河井克行被告に実刑判決が出たことを受け、野党は18日、自民党が河井被告側に支出した1億5000万円の使途について、当時の安倍晋三首相(党総裁)や二階俊博幹事長に国会で説明するよう求めた。一方、与党側は党所属議員の規律を徹底させる考えを強調した。
1億5000万円については、買収の原資になったとの指摘がある。立憲民主党の安住淳国対委員長は国会内で記者団に「悪質な買収事件だ。安倍氏、二階氏も説明をしていない。逃げ得は許されない。国会での閉会中審査を含め説明責任を果たすべきだ」と語った。
共産党の田村智子政策委員長は記者会見で、「自民党総裁である菅義偉首相も国民に対する説明責任を負っている。国会の場で国民に説明することを求めたい」と指摘。国民民主党の玉木雄一郎代表もコメントで「当時の関係者が明確に説明すべきだ」と訴えた。
これに対し、自民党の二階氏は判決を受けて、記者団の取材には応じなかったが、コメントを発表。「政治の信頼を揺るがせるような事態を深刻に受け止めるとともに、引き続き党全体の規律の徹底と信頼回復に努めていく」と強調した。
同党の世耕弘成参院幹事長は記者団に、「必要な書類がそろわず、まだ説明責任は果たせていないが、意思決定の過程などしっかり説明していく必要がある」と述べた。東京都議選への影響も否定せず、危機感を示した。
広島県連会長を務める岸田文雄前政調会長は「(河井被告は)有権者にしっかり説明責任を果たし、政治の信頼回復に努めてもらいたい」とのコメントを出した。 

 

●河井元法相に実刑判決 懲役3年、「選挙の公正害する」 6/18
2019年参院選をめぐる大型買収事件で、公選法違反(買収、事前運動)罪に問われた元法相で元衆院議員の河井克行被告(58)の判決公判が18日、東京地裁であった。高橋康明裁判長は「民主主義の根幹である選挙の公正を著しく害し、極めて悪質」として懲役3年、追徴金130万円(求刑懲役4年、追徴金150万円)の実刑判決を言い渡した。
選挙違反で実刑判決が出るのは異例。河井被告の弁護側は同日、判決を不服として控訴した。保釈取り消しとなったため再保釈も申請したが、棄却された。
同被告は実刑が確定すると公民権が停止され、刑期中と、その後5年間は公職への立候補ができなくなる。
高橋裁判長は、広島県の地元議員ら100人への現金提供について、全て買収目的だったと認定。河井被告は選挙運動を取り仕切る「総括主宰者」だったとし、妻の案里元参院議員(47)=有罪確定=との共謀も認定した。
現金の提供方法も、受け取りを拒む議員らに何度も迫るなど悪質だと非難。弁護側が現金提供の主な狙いは河井被告自身の政治基盤確立で、買収は副次的だと主張したことには「案里氏の当選を得たいという目的があったことは紛れもない事実。厳しい非難が向けられることに変わりはない」とした。
その上で、過去の選挙買収事件と比べても「際立って重い部類に属する」と指摘。被告が公判途中で一転して起訴内容の大半を認め、反省の態度を示していることを踏まえても「実刑に処するのが相当」と述べた。
判決によると、河井被告は19年3〜8月、案里氏と共謀し、地元議員や後援会関係者ら計100人に、案里氏に対する投票や票の取りまとめなどを依頼し、総額約2870万円を提供した。 

 

●実刑に軽くうなずく 落ち着かない様子も―河井被告 6/18
東京地裁で18日、懲役3年の実刑判決を言い渡された元法相の河井克行被告(58)。主文を聞くと軽くうなずき、取り乱すことなく1時間余りにわたった裁判長の判決理由の朗読に耳を傾けた。ただ、時折腕時計に目を落とすなど落ち着かない様子も見せた。
青いスーツに身を包んだ河井被告は開廷前、弁護側の席で椅子の背もたれに体を預けていた。
「被告人を懲役3年、追徴金130万円に処する」。午後1時半の開廷直後に裁判長が主文を告げた。証言台に立った河井被告はうなずいたものの、納得していないためか台の上に乗せた右手の指を何度もこすり合わせた。
自身の主張がほとんど採用されず、争っていた陣営スタッフへの現金提供についても買収目的と認定されるなどすると、足元を見たり、首を傾けたりする場面もあった。否定していた妻の案里元参院議員(47)=有罪確定=との共謀が認められた際には椅子に腰掛け直した。
判決の読み上げが終了すると、再び立ち上がり、裁判長と検察官席、傍聴席にそれぞれ一礼。弁護側の席に戻り、やや放心したような表情を浮かべた。 

 

●河井元法相の実刑判決に、二階幹事長は紙でコメントを出すのみ… 6/18
2019年の参院選広島選挙区を巡る公選法違反(買収)事件で18日、元法相の前衆院議員河井克行被告に実刑判決が言い渡されたことについて、自民党の二階俊博幹事長は書面でのコメントを出すにとどめ、報道陣が求めた直接取材には応じなかった。買収の原資に充てられた疑惑がある党支出の1億5000万円の使途も提供の経緯も依然明らかにしておらず、「政治とカネ」問題に向き合おうとしない自民党の姿勢をさらに印象づけた。
二階氏は河井氏への判決後、「政治の信頼を揺るがすような事態を深刻に受け止め、党全体の規律徹底と信頼回復に努める」などとする約100字の短いコメントを発表。党本部には入ったものの、記者団から質問を受ける場は設けなかった。
いずれも自民党を離党した河井氏と妻案里元参院議員の陣営に提供された巨額資金の使い道について、党は「検察に関係書類が押収されている」と、詳しい説明を避け続けている。菅義偉首相は17日の記者会見で、支出決定が「当時の(安倍晋三)総裁と(二階)幹事長で行われたのは事実だ」と述べたが、説明責任を果たすよう指示する考えは示さなかった。
自民党は政治の信頼回復に向けた取り組みにも積極的ではない。河井夫妻の買収事件を受け、公明党が当選無効になった場合の歳費返還を可能にする法改正を訴えたのに対し、自民党は難色を示し、16日に閉会した通常国会では法案提出が見送られた。
自民党の歳費法に関する検討プロジェクトチーム(PT)は18日、秋までに行われる次期衆院選までに与党で見直しの方向性をまとめることを確認したが、国会議員の身分保障を定める憲法に抵触するという意見はなお根強い。下村博文政調会長は「できるだけ公明党と足並みをそろえる対応を考えたいが、いつできるかは(PTの)報告を聞いて判断したい」と記者団に語った。 

 

●1.5億円使途、晴れぬ疑念 「1円も使わず」証言に矛盾―参院選買収 6/19
自民党からの1億5000万円が選挙買収に使われたのか。公判で元法相河井克行被告(58)は、広島県の地元議員らに配った現金について党の資金は「1円も使わなかった」と説明したが、矛盾する証言もあり、疑念は晴れないままだ。党による説明も尽くされたとは言い難い。
河井被告と妻の案里元参院議員(47)=有罪確定=がそれぞれ代表を務める選挙区支部には、2019年7月の参院選前に党本部から選挙資金として計1億5000万円が送られた。相場の10倍とされ、うち1億2000万円は税金を元にする政党交付金だった。
被告人質問で河井被告は、地元議員ら100人に配った計約2900万円は「議員歳費など全て私自身の手持ちから支出した」と説明。案里氏も現金の原資は自身の「たんす預金」と述べていた。
しかし、公判で検察側は、河井被告の指示で選挙スタッフ3人に振り込まれた計約220万円について、「党本部から提供された資金が原資だった」と供述した陣営元会計担当者の調書を読み上げた。スタッフへの現金配布も起訴内容に含まれ、被告の発言と矛盾する。
検察側は、河井被告に金融機関から借り入れがあったと指摘。「借り入れがあるのに配るポケットマネーがあったのか」と問われた被告は「あったから配った」と説明。一方で、配布前に自宅金庫に保管してあったとする手持ちの現金がいくらだったかは「記憶にない」と答え、説得力に欠けた。
自民党はこれまで、「検察からの関係書類返還後に監査する」との説明を繰り返している。支出決定について、二階俊博幹事長ら幹部は軒並み関与を否定。案里氏の擁立を主導した安倍晋三前首相や菅義偉首相の関与を疑う声もあるが、党はいまだ明確な説明をしていない。 

 

●河井元法相の保釈、高裁も認めず 6/21
2019年の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反(買収、事前運動)の罪で実刑判決を受け、東京拘置所に再度収容された元法相の前衆院議員河井克行被告(58)について、東京高裁(若園敦雄裁判長)は21日、保釈を認めない決定をした。保釈請求を棄却した東京地裁の決定を不服として、弁護側が高裁に抗告していた。
地裁は18日、地元議員ら100人に計約2870万円を配ったと認定し、懲役3年、追徴金130万円(求刑懲役4年、追徴金150万円)の判決を言い渡した。
元法相は昨年6月の逮捕から9カ月余り身柄を拘束され、今年3月に保釈された。 

 

●[河井元法相に実刑]買収の原資は未解明だ 6/21
2019年7月の参院選広島選挙区を巡り、公選法違反(買収、事前運動)に問われた元法相の河井克行被告に、東京地裁は懲役3年の実刑判決を言い渡した。
判決は、元法相が妻の案里氏の当選を目指し、地元議員ら100人に計約2870万円を配ったと認定した。
「極めて大規模な選挙買収」であり、判決が「民主主義の根幹である選挙の公正を著しく害する極めて悪質な犯行」と断じたのは、まさにその通りだ。
ただ判決では解明されていない問題がある。案里氏陣営に自民党本部が投入した1億5千万円の資金のことだ。
買収の原資となった疑念が持たれているが、判決は原資について言及していない。元法相は、買収原資は「手持ち資金だった」と釈明しているが、うのみにはできない。
現に公判では、検察側から「自民党本部からの入金が(現金供与の)原資となった」とする元会計担当者の供述調書が明らかにされている。判決で決して幕引きにしてはならない。
そもそもなぜ党本部から案里氏陣営に、同じ選挙区で競った現職の10倍もの資金が支給されたのか。誰がそれを決定したのか。
巨額資金のうち1億2千万円は税金が元手の政党交付金であることが分かっている。自民党には経緯などを説明する責務がある。
党本部はこれまで、関連資料が捜査当局に押収されたとして説明を避けてきた。返却され次第、資料を示し納得できる説明をしてもらいたい。

選挙戦では当時官房長官だった菅義偉首相が複数回応援に入り、安倍晋三前首相の秘書も広島県内を回った。党本部が案里氏陣営を強力にてこ入れしていたのは明らかだ。
だが、これまでの党幹部らの発言をみると、自身の関与を否定するばかりか責任をなすりつけ合うようなやりとりがあった。これでは政治への不信感は増幅するばかりだ。
現金を受け取った地元議員らは刑事処分がされていないのも、ふに落ちない。
「受領を拒む相手に何度も迫ったり、無理やり受け取らせたりした」と判決が指摘するように、元法相の犯行が悪質なのは明らかだが、公選法には買収された側も罰する規定がある。
議員や首長のうち一部は辞職したが、大半は今も政治活動を続けている。一切おとがめなしでは処罰の公平性が損なわれる。何らかのけじめは必要だ。

「政治とカネ」を巡っては選挙区の有権者に香典などを提供した菅原一秀前経済産業相の公選法違反事件など、この1年間で大臣経験者3人を含む5人が立件された。「桜を見る会」の安倍前首相の疑惑も払(ふっ)拭(しょく)されていない。共通するのは説明責任を果たしていないことだ。
自民党の二階俊博幹事長は元法相の判決を受け「党全体の規律徹底と信頼回復に努める」とのコメントを発表したが回復は容易ではない。問題をうやむやにせず真相解明に尽くすことが、最低限果たすべき責任である。 

 

●河井元法相に「懲役3年実刑判決」、即日控訴も執行猶予が厳しい理由 6/22
1億5000万円は行方不明のまま
判決によると、河井被告は19年3月〜8月、妻の案里氏(47)=公選法違反の罪で有罪が確定し参院議員を失職=を当選させるため、地元首長や議員、有力者ら計100人に投票と票のとりまとめを依頼する目的で計約2870万円を配った。
高橋康明裁判長は、河井被告が案里氏の選挙を取り仕切る総括責任者だったと認定。実刑とした判決理由で「広島県全域にわたる極めて大規模な買収で、民主主義の根幹である選挙の公正を著しく害する悪質な犯行。同種の選挙買収の中でも際立って重い部類に属し、反省の態度を考慮しても実刑に処するのが相当だ」と厳しく指弾した。
河井被告は20年8月の初公判から一貫して無罪を主張していたが、今年3月の被告人質問から「選挙買収罪の事実については争わない」と一転して起訴内容を認め、4月には議員辞職していた。執行猶予を狙ったとみられ「逮捕後に受け取った相当額を贖(しょく)罪の形で非営利団体に寄付する」などと情状酌量を求めたが、判決は検察側の主張をほぼ全面的に認め、証拠隠滅の悪質さなども指摘されて一審ではかなわなかった。
この事件を巡っては、自民党本部から河井被告と案里氏側に送金された1億5000万円(このうち1億2000万円は税金が原資)の使途が注目されたが、公判で河井被告は「1円たりとも買収に使っていない」と強調した。
しかし、全国紙社会部デスクによると、選挙運動費用資金収支報告書や政治資金収支報告書などには記載がなかったという。それでは、どこに行ったのか。会計担当者は公判で「(買収資金は)党本部からの入金が原資」と証言。
検察側は買収資金の原資について公判で立証する必要はないため深く追及はせず、判決の事実認定でも触れられてはいないが、デスクは「まぁ、社会人として一般的な常識をわきまえた方なら、想像がつくんじゃないですかね」と話した。
「最強の無所属」の中村喜四郎氏は完全黙秘
今回の判決を受け、永田町を震撼(かん)させたのが「閣僚経験者がバッジを外しても実刑なのか……」ということだった。筆者が全国紙社会部記者として永田町を担当していたころ、いろいろと教示してくれた元閣僚の秘書が驚いていた。
最近では閣僚経験者の実刑といえば、鈴木宗男参院議員を想起する方が多いと思うが、この記事を読んでいる方ならば、やはり選挙において14戦無敗で、かつて「最強の無所属」の異名を取った元建設相の中村喜四郎衆院議員(現在は立憲民主党)を想起するのではないだろうか。
確定判決によると、中村氏は建設相だった1992年、埼玉県の建設業界団体「埼玉土曜会」による談合事件で、公正取引委員会に刑事告発を見送るよう圧力をかけてほしいと請託され、見返りとして1000万円を受け取った。懲役は1年6カ月。
東京地検特捜部による逮捕後は完全黙秘し、1通の供述調書も取らせなかったのは伝説だ。初公判では現金受領を認めた上で「建設業界全体の刷新と改革のための政治献金だった」として賄賂(わいろ)性を否定。冒頭陳述では、犯行内容を読み上げる検察官を睨(にら)みつけた。
鈴木氏は懲役2年となった確定判決によると、北海道開発庁長官だった97年〜98年、網走市の建設会社から北海道開発局発注の工事受注で請託を受け、現金600万円を受け取ったなどとされた。鈴木氏は「私を陥れるための国策捜査」と特捜部を批判したが、その感は拭えなかった記憶がある。疑惑がいろいろと取り沙汰されたが、立件されたのはいずれもチンケな事件だったからだ。
ほかにも山口敏夫元労働相は旧2信組乱脈融資事件で背任と業務上横領、詐欺、議院証言法違反(偽証)の罪で懲役3年6カ月の実刑、阿部文男元北海道・沖縄開発庁長官(故人)は在任中に共和汚職事件で受託収賄罪に問われ、懲役3年の実刑がそれぞれ確定した。
史上最大の買収資金は宇野亨氏の2億5000万円
一方、国会議員が選挙違反の罪に問われ、実刑判決が確定したのは、79年の衆院選旧千葉2区で当選した宇野亨氏(故人)のケースぐらいだ。2億5000万円の買収資金が用意され、逮捕者は300人以上。永田町では現在も「史上最大の金権選挙」と言われる。
84年に懲役4年の実刑が確定したが、持病で入院し、検察側も収監見送りと刑の執行停止を決定。結局、恩赦で服役しなかった。
これとは別に、判決が確定しなかったケースもある。98年には中島洋次郎元衆院議員(故人)が96年衆院選に買収資金として2000万円を配布したとして、公選法違反の罪などに問われ、東京地裁で懲役2年6カ月、東京高裁で懲役2年の実刑判決を受けた。
もっとも、受託収賄や詐欺、政党助成法違反、政治資金規正法違反の罪にも問われていたから、選挙違反だけで実刑となったわけではない。最高裁に上告し最終結審前の01年、自宅で自殺した。
ほか、最近では03年11月の衆院選で、初当選した2人が相次いで公選法違反の罪で起訴されたケースがある。比例東海ブロックの近藤浩氏と埼玉8区の新井正則氏だ。近藤氏は懲役2年、執行猶予5年、新井氏は懲役3年、執行猶予5年の判決を受け、実刑は回避された。
河井元法相が妻を参院議員にしたかった理由
今回の河井被告の判決に関しては、筆者の後輩である前述のデスクと話をしていても、執行猶予が付くかどうかは微妙なラインという見解で一致していた。
この記事を読んでいただいている方なら聞いたことがあると思うが、司法担当記者の間では「7掛け判決」「8掛け判決」という認識がある。裁判長は検察官の求刑に7〜8割を掛けた判決を言い渡すという慣例から言われている話だ。
もちろん無罪判決もまれにあるし、一部無罪で求刑の半分だったり、最近は裁判員裁判で求刑を上回る判決を目にしたりもする。しかし「7〜8割判決」というのは、相対的にその通りだと思う。
イレギュラーな案件を除けば、検察側の「求刑4年」というのは「是が非でも懲役に落とせ」という主張ではなく、裁判所に「判断はお任せする」というスタンスだったといえる。刑法の規定で、執行猶予は「3年以下の懲役・禁錮」が対象だからだ。
前述の秘書は、河井被告や事務所秘書とは付き合いがなかったらしいが「菅さん(首相、当時は官房長官)に気に入られて法相にまでなれた。公判で『県連会長になりたかった』『仲間がいなかった』なんて言ってたけど、かみさんをどうしても参院議員にしなきゃいけなかった理由って何だったのかな。東京と広島で離ればなれが寂しかったのかな」とつぶやいた。 

 

●河井元法相実刑 6/22
2019年参院選で広島県内の地元議員ら100人に計約2900万円を配ったとされる大掛かりな買収事件で公選法違反の罪に問われた元法相の河井克行被告に、東京地裁は懲役3年の実刑判決を言い渡した。当初は無罪を主張したが、公判途中で一転して起訴内容の大半を認め、議員辞職。弁護側は執行猶予付きの判決を求めていた。
判決は「大規模な選挙買収で、民主主義の根幹である選挙の公正を著しく害する極めて悪質な犯行といえる」と指摘。「犯行の大半を認めるなど反省の態度を示していることを考慮しても、相当期間の実刑に処するのが相当」と結論付けた。
この選挙で初当選した妻の案里元参院議員も買収の共犯として有罪判決を受け、やはり議員辞職した。しかし事件の全容は解明されていない。自民党本部から案里氏陣営に提供され、買収の原資になった可能性が指摘されている1億5千万円を巡り、党内でどのような話し合いがあり、最終的に誰が支出を決めたのか今もって分からない。
党幹部らの間で責任を押し付け合うような発言も相次いだ。当時の党総裁で克行被告と近い関係にあり、自ら精力的に案里氏を支援した安倍晋三前首相が責任を持って説明を尽くす必要がある。
問題の党資金1億5千万円のうち1億2千万円は政党交付金だった。公判で克行被告は党資金について「買収には1円も使っていない」と述べた。だが党本部からの資金を受領する口座を開設した元会計担当者が陣営スタッフへの現金提供を巡り「党本部からの入金が原資となった」と供述していたことが明らかになり、買収に使われたとの疑念がくすぶる。
そんな中、二階俊博幹事長は記者会見で「私は関係していない」と資金支出への関与を否定。当時、選対委員長で別の幹部から「担当者」と名指しされた甘利明氏も「1ミクロンも関わっていない」と述べた。その後、二階氏は「最終責任は幹事長にある」としたが、それ以上の説明はない。
うやむやにするわけにはいかない。総裁として党全体を統括していた安倍氏が説明するのが筋だ。しかも安倍氏は党本部が地元県連の反対を押し切り、現職に続いて案里氏を2人目の候補として公認すると、秘書らを広島入りさせ、案里氏陣営スタッフと共に地元議員や企業などを回らせた。自身も街頭の応援演説に駆け付けた。
判決を受けて、二階氏は「党全体の規律の徹底と信頼回復に努める」とした。その第一歩として、1億5千万円支出の経緯を明らかにし、責任の所在を明確にすることが求められる。 

 

●自民本部の1.5億円資料返還へ  6/24
2019年の参院選広島選挙区を巡る買収事件で検察側が押収した関連資料が、公選法違反罪で実刑判決を受けた元法相の前衆院議員河井克行被告側に近く返還される見通しとなったことが24日、関係者への取材で分かった。出馬した妻案里氏陣営に、自民党本部が1億5千万円を投入した経緯に関する資料も含まれている。
1億5千万円は同じ選挙区に擁立された自民党の別候補の10倍に上り、買収の原資になったとの疑惑が持たれたが、同党は資料が押収されているとして具体的な説明をしていない。党幹部は、資料が返還されれば使途を確認し、買収の原資にはなっていないことを証明するとしている。 

 

●河井元法相の公判で虚偽証言容疑 広島市議を書類送検 6/25
元法相の河井克行被告(58)=公職選挙法違反罪で実刑判決、控訴中=から現金50万円を受け取った今田良治・広島市議(74)が、公判で虚偽の証言をしたとして、広島県警が偽証容疑で書類送検したことが24日、捜査関係者への取材でわかった。
今田氏は昨年11月、東京地裁であった克行被告の公判で、19年3月と6月に計50万円を受け取り、同年12月に自身の選挙区内の団体に寄付したと証言した。
寄付行為を禁ずる公職選挙法違反容疑で市民から告発された。捜査関係者によると、今田氏は県警の聴取に対し、現金を寄付したとする公判の証言を翻し「個人的に使った」などと話したという。それを受け、市民が偽証容疑で告発した。
今田氏は今月8日、朝日新聞の取材に「渡したという思い込みをずっと持っていたので、寄付という言葉を使った」などと説明。「個人的に使ったのか」との質問に「それでいい」と応じた。
公職選挙法違反容疑の告発をめぐっては、県警が今月10日に書類送検した。 

 

●自民本部の1.5億円資料返還へ 元法相側に、参院選買収事件 6/25
2019年の参院選広島選挙区を巡る買収事件で検察側が押収した関連資料が、公選法違反罪で実刑判決を受けた元法相の前衆院議員河井克行被告側に近く返還される見通しとなったことが24日、関係者への取材で分かった。出馬した妻案里氏陣営に、自民党本部が1億5千万円を投入した経緯に関する資料も含まれている。
1億5千万円は同じ選挙区に擁立された自民党の別候補の10倍に上り、買収の原資になったとの疑惑が持たれたが、同党は資料が押収されているとして具体的な説明をしていない。党幹部は、資料が返還されれば使途を確認し、買収の原資にはなっていないことを証明するとしている。 

 

●「一体だれがウソをついているのか」河井元法相の買収事件の謎 6/26
法相経験者が刑事裁判で実刑判決を受けるのは初めて
6月18日、東京地裁は公職選挙法違反(買収、事前運動)の罪に問われた元衆院議員で元法相の河井克行被告(58)に対し、懲役3年、追徴金130万円(求刑=懲役4年、追徴金150万円)の実刑判決を言い渡した。
法務大臣経験者が刑事裁判で実刑判決を受けるのは初めてというが、子供でも分かるような違法行為を国会議員の身分にありながら、悪びれることもなく、実行に移すのだから実刑判決は当然である。
河井被告は2019年7月の参院選をめぐる大規模買収事件で起訴された。今年3月の公判中に保釈されたが、今回の実刑判決に伴い、再び身柄を拘束された。河井被告側は即日控訴した。
判決によると、被告は2019年3月から8月にかけ、広島選挙区の自民党公認候補だった妻の河井案里氏(47)=有罪確定=を当選させるため、地元の地方議員ら100人に計2870万円を配った。河井被告は選挙運動を取り仕切る総括主宰者だった。
当初、河井被告は買収目的を否定して無罪を主張していた。しかし、3月の被告人質問で一転して起訴事実を認め、衆院議員を辞職した。昨年6月の逮捕以降に受け取った議員歳費相当額(700万円)を贖罪寄付したことも挙げて執行猶予を求めていた。
河井被告は菅首相に近く、法相就任も菅首相が働きかけた
国会議員でありながら選挙で自分の妻を当選させるために現金をばらまく違法行為自体が、極めて悪質で前代未聞である。しかも犯行直後に法務大臣に就任するというのだから開いた口がふさがらない。
河井被告は広島県議を経て1996年に衆院議員に初当選し、計7回の当選を果たした。その間、首相補佐官や自民党総裁外交特別補佐などの要職を歴任し、1昨年9月11日には初入閣して法相に就任した。しかし同年10月31日、問題の案里氏の参院選挙でウグイス嬢(車上運動員)に対する違法報酬疑惑が週刊文春の報道で浮上し、わずか2カ月足らずで法相を辞任した。
ちなみに案里氏は2001年に河井被告と結婚し、2003年の広島県議選で初めて当選し、その後の参院選で当選した。
河井被告は菅義偉首相に極めて近かった。菅首相の支持基盤である無派閥議員グループの1つを主催するなど援助を惜しまなかった。菅首相もそんな河井被告に応え、法相への抜擢を後押しした。安倍晋三首相(当時)に対し、官房長官だった菅首相が強く推薦することで「河井法相」が実現したのである。
1候補に1億5000万円というのは選挙活動資金として破格
買収事件の舞台となった参院選(2019年7月)で、自民党が拠出した選挙活動資金の1億5000万円が、河井被告の買収工作に使われたかどうかが大きな焦点となっている。
1候補に1億5000万円というのは選挙活動資金として破格だ。菅首相との親密な関係があったから実現したことだろう。なお1億5000万円のうち1億2000万円は、国民の税金である政党交付金だった。
裁判で河井被告は「1円も買収に使わなかったにもかかわらず、要らぬ疑念を抱かれ、自民党にも迷惑をかけた」と語っていたが、かなり疑わしい。
記者会見で菅首相は「支出は当時の自民党総裁の安倍前首相と幹事長の間で行われた。検察に押収されている関係書類が返還され次第、自民党の公認会計士が監査を行ってチェックする」と説明している。
菅首相は自民党の現在の総裁である。支出はだれの指示によるもので、どのように使われたのか。1億5000万円の使途を明確にかつ詳細に私たち国民に説明する責任がある。大半が税金なのだからその責任は重い。
新型コロナ対策や東京五輪の開催でつまずく菅政権は、内閣支持率が低迷を続けている。今回の河井被告に対する実刑判決はさらなる打撃となった。次の衆院総選挙にも大きな影響を与えるだろう。
このままでは菅首相は「アベ1強」の轍を踏むことになる
菅首相は東京五輪を成功させ、それをバネに自民党総裁選と衆院総選挙に打って出ることで、首相続投を狙っている。
しかし、私たち国民は振り返ってよく考えなければならない。菅首相は憲政史上最長で、「アベ1強」といわれた安倍前政権の落とし子である。官房長官としてアベ1強の政治権力を何度も目にしている。安倍前首相に対し、閣僚として内閣に組み入れてもらうために多くの国会議員がひれ伏し、強い官邸主導で霞が関の官僚も手玉に取った。首相に対する「忖度」という言葉もよく登場した。
菅首相は「政治的に強くなれば怖いものなどない」という考えを持っているのだろう。だから周囲の意見を無視してまで頑なに東京オリンピック・パラリンピックを断行しようとするのである。
「もり・かけ問題」と揶揄された森友学園と加計学園の不祥事、安倍前首相に近い人々だけが優遇された「桜を見る会」、政治と金の問題の発覚による主要閣僚の相次ぐ辞任、そして今回の実刑判決を受けた河井被告の選挙違反事件。いずれもアベ1強という政治権力の歪みから生まれたものだ。
沙鴎一歩はここで菅首相に申し上げたい。首相の職を続けるというのならば、アベ1強の轍を踏むことだけは避けてほしい。
「夫妻にだけ責任を帰して幕を引くわけにはいかない」と朝日社説
6月19日付の朝日新聞の社説は「元法相に実刑 不信の払拭 遠い道のり」との見出しを付け、「選挙という民主主義の土台を破壊する行為に、こともあろうに国会議員が手を染める。刑事責任はきわめて重く、実刑は当然といえる」と書き出し、こう訴える。
「夫妻にだけ責任を帰して幕を引くわけにはいかない。事件への自民党の関与の有無や程度は依然闇の中だ」
事件の背景には自民党の勢力拡大がある。安倍前首相と菅首相(当時の官房長官)がどう説明責任を果たすかが大きく注目される。
朝日社説もこう指摘する。
「改選2議席の独占をねらった同党は、当時の安倍首相や菅官房長官が主導して案里氏を2人目の候補として擁立。党本部から陣営には、選挙前に1億5千万円という破格の資金が提供された」
「買収に使った金について克行被告は『手持ちの資金だった』と説明するが、裏づける資料はなく、裁判でも解明されていない。事件に一区切りがついたいま、自民党は夫妻任せにせず、資金を拠出した経緯からその使途までを明らかにして、国民に説明しなければならない」
二階幹事長「政治とカネの問題はきれいになってきている」
読売新聞(6月19日付)の社説はその中盤で「現金を受け取った広島県の地元議員と首長計40人は、いまだに刑事処分を受けていない。そのことを理由に、多くが今も公職にとどまっており、地元で不信感が高まっている」と指摘し、こう主張する。
「河井被告は今回、実刑判決を受けた。公正な処罰という観点からも、検察は、現金を受け取った側に対する厳正な刑事処分を速やかに行うべきである」
「公正な処罰」。贈収賄事件でもワイロを受け取った側だけではなく、ワイロを送った側も刑事立件される。その意味で今回の検察の捜査は不十分である。
読売社説は後半で「自民党に所属していた議員では、有権者に現金を配るなどした菅原一秀前経済産業相が略式起訴され、吉川貴盛元農相が汚職事件で在宅起訴されるなど、閣僚経験者の不祥事が相次いでいる」とも指摘したうえで、「こうした事件についても、党は説明を尽くしていない。しかも、二階幹事長は『随分、政治とカネの問題はきれいになってきている』と、国民の認識とはかけ離れた発言をしている」と訴える。
沙鴎一歩も二階俊博幹事長の発言には驚かされた。一体、国民の政治に対する不信感をどう考えているのか。こうした人物が自民党を牛耳っているのだから政治が信頼されないのである。
最後に読売社説は「政治への国民の視線は厳しい。襟を正し、自浄作用を示さなければ信頼回復は到底かなわない」と主張するが、日本を代表する自民党には自らに厳しくあってほしい。
「まぎれもない自民党議員の公選法違反事件である」と産経社説
「河井元法相に実刑 党の無責任体質も猛省を」との見出しを掲げた産経新聞(6月19日付)の社説は、二階氏の別の発言を問題視している。
「自民党幹部からは無責任な発言が相次いだ。3月に河井被告が議員辞職願を提出した際には、二階俊博幹事長が『党もこうしたことを他山の石として、しっかり対応しなくては』と述べて世間をあきれさせた。『他山の石』ではあり得ず、まぎれもない自民党議員の公選法違反事件である」
その通りである。だれがどう言おうと、自民党議員の悪質極まりない事件なのである。
産経社説は「5月には1億5千万円の送金をめぐり、二階氏が『私は関係していない』と主張し、林幹雄幹事長代理は『実質的には当時の(甘利明)選対委員長が担当した』と述べた。担当者と名指しされたも同然の甘利氏は『1ミクロンも関わっていない』と否定した。こうした責任の押し付け合いが有権者にどう映ったか」とも指摘する。
要は、彼らは自民党の要人としての自覚がないのである。政党を背負って立つという自覚を持ち、国民のための国民の政治をしっかりと実行してもらいたいものである。
産経社説はさらに指摘する。
「林氏は、検察が押収した関連資料が党に戻ってくれば『買収資金に使われていないと、きちんと証明する』とも述べた。この言質を忘れまい。約束は必ず果たしてもらおう」
そうだ。そうである。きちんと約束を果たすのが筋である。それが自民党を背負って立つ者の使命である。
責任の押し付け合いはみっともない
6月19日付の毎日新聞の社説は「河井元法相に実刑判決 買収の全容なお未解明だ」との見出しを掲げ、判決内容について触れながら選挙違反での実刑判決を「異例だ」と指摘したうえでこう強調する。
「だが、事件の全容は、いまだ解明されていない」
前述したように1億5000万円の使途など未解明なところが多い。それゆえ自民党側がしっかりと説明する必要がある。
毎日社説は書く。
「自民党総裁の菅義偉首相は『検察に押収された書類が返還され次第、党の公認会計士が監査する』と繰り返すだけだ」
「党幹部は責任を押しつけ合った末、二階俊博幹事長が、提供を決めた責任は、当時の総裁だった安倍晋三前首相と自分にあると認めた。ならば、両氏は速やかに経緯を説明すべきだ」
責任の押し付け合いはみっともない。繰り返すが、菅首相には重い説明責任がある。同様に安倍前首相や二階幹事長にも責任がある。
立花隆さんがジャーナリストとして追及しつづけたこと
最後に毎日社説はこう主張する。
「判決で幕引きとはならない。自民党議員の『政治とカネ』を巡る事件が相次いでいる。自民党は、国民の政治不信にきちんと向き合わなければならない」
問題は「政治とカネ」なのである。
ところでジャーナリストで評論家の立花隆氏(80)が4月30日に死去していたことが、6月23日付夕刊各紙やテレビのニュースなどで大きく伝えられた。立花氏は『田中角栄研究 その金脈と人脈』(1974年)で田中首相(当時)の金権政治の実態を暴露し、田中首相退陣のきっかけを作ったことで知られる。田中金権政治はロッキード事件へと発展し、司直の手で裁かれることになる。
政治とカネ。立花氏が活躍したあのころと問題は変わっていない。これからもジャーナリストが政治権力に立ち向かい、政治とカネの問題を追及していく必要がある、と沙鴎一歩は思う。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 

 

●敗因は“政治とカネ”だけか 4/28
戦後、池田・宮沢の2人の総理大臣を輩出した広島県。自民党の金城湯池の1つで“保守王国”とも評されてきた。しかし、おととしの参議院選挙をめぐって事態が一変した。保守分裂の激しい選挙の末に、巨額買収事件で当選は無効となり、やり直しとなった再選挙で、自民党は苦杯をなめた。何が歯車を狂わせたのか、自民党の戦いを追った。
”政治とカネ”で厳しい声に
4月25日午後10時過ぎ。報道各社が、立憲民主党などが推した宮口治子に「当確」を報じた。それを確認した自民党広島県連会長の岸田文雄は、支援者を前に頭を下げた。「自民党広島県連の力不足で、みなさんにおわびする。政治とカネの問題をめぐって大変厳しい声にあたった」
“案里の呪縛”で大逆風
選挙戦を通じて自民党は、“河井案里の呪縛”に悩まされ続けた。おととしの選挙では党本部が主導して、広島県議会議員だった河井案里を公認候補として擁立。県連が推した当時の現職と熾烈な保守分裂選挙となった。結果、夫で法務大臣も務めた克行が地元議員ら100人に総額2900万円余りを配ったとして公職選挙法違反の罪に問われ、案里が県議会議員4人に総額160万円を渡したとして有罪が確定するという、前代未聞の“巨額買収事件”に発展した。
「もともと広島で2議席独占は無理筋の話で、案里を無理矢理擁立したのは党本部であって、県連は被害者だ」
県連に所属する地方議員はいまでも悔しそうに本音を語る。しかし有権者にとっては「党本部」だろうが「県連」だろうが「自民党」は「自民党」だ。自民党にとっては大逆風の選挙戦となった。再選挙の出陣式に党本部から出席した選挙対策委員長の山口泰明は、挨拶としては異例の謝罪のことばから始めた。
「まずもって党本部を代表して、2年前から続いた政治の混乱。これについては本当に皆様方にもご迷惑をおかけしていることを深くお詫び申し上げたいと思う。この選挙、大変厳しいものがある」
山口のことばは、まさに今回の選挙の厳しさを物語っていた。
序盤は”河井隠し“
「おととしの選挙で河井陣営を応援した人は広島に応援に来なくて結構だ」
告示まで3週間に迫った3月中旬。当時、県連会長だった宮沢洋一は、再選挙に向けて党の参議院議員が選挙対策のために開いた会合でこう啖呵を切った。宮沢としては、県連の議員が抱える党本部への不満や、有権者から寄せられる意見を踏まえたものだった。河井夫妻と関わりがあったり、選挙で案里を応援した議員の広島入りをなくし、「県連主導」で「河井夫妻からの脱却をアピールする」戦略でもあった。実際、選挙序盤は、閣僚や党3役が広島に入ることはなかった。
自粛する“受領議員”
大規模買収事件で、党に所属する県議会議員と広島市議会議員のおよそ3分の1にあたる24人が河井夫妻からの現金を受け取った自民党。このうち、藤田博之は広島市議会議員で最高額にあたる70万円を受け取った。かつては議長も務め、現在10期目の市議会の「重鎮」だ。
藤田は、告示直前の3月下旬、現金を受け取った議員が事情を話すために設けられた市議会の場で、現金を受け取ったことを認め、弁明した。
「河井克行被告からもらった50万円と20万円。違法性がある金だとの思いはあったので、角の立たないように、本人に返そうと思った。まことに軽率な行動で、多くの人の政治不信を増長したことを深くお詫び申し上げる」
一方で、藤田は次のようにも指摘した。
「自民党本部の活動資金の配分のあり方は不透明で基準がなく、新人の案里候補が現職の溝手候補の10倍の1億5000万円の活動資金を受けることは問題ないのだろうかと不信が募るばかりだ」
この日から10日後。再選挙の告示日に藤田の事務所を訪ねた。これまで国政選挙では選挙活動を中心となって支えてきたが、今回は表立った活動を控えた。
藤田は諦めたような、やるせないような複雑な表情でわれわれを出迎え、次のように語った。
「金を配ったほうも、もろうたほうも、みんなこのたびは選挙へは参画をしないのじゃないかと思う。これまではどんな国政選挙だろうと、地域で中心的な役割をしてきた。ビラを配ったり演説会の段取りをしたり。私も政治を始めて54年になるが、初めて、いわゆる出陣式なんかを欠席する。初めての経験だ」
「まあ、渦中と言えば、渦中の人物じゃから、あまりしゃしゃり出んほうがいいだろうというのはある。1つの区切りがつけばそれぞれの言い分が言えると思うが、まだ火を噴いたばかりだ。それぞれが主張を外でしないという立場じゃないだろうか」
決死の覚悟の公明党
選挙序盤の活動の鈍さが指摘された自民党と打って変わって、並々ならぬ覚悟で選挙に取り組んだ公明党。告示日の出陣式には、幹事長の石井啓一と副代表の斉藤鉄夫が顔をそろえた。さらに選挙戦が始まってから初の週末には、代表の山口那津男も広島入り。街頭演説では、前回、案里を推薦したことをわび、支援を呼びかけた。
「自民党の公認候補を公明党は推薦した。私自身も皆様にお願いをさせていただいた。しかし、こともあろうに、国民の信頼、有権者の信頼を裏切るようなことをやって、大変な政治不信をもたらした。さらに、広島県内の多くの人を巻き込んでしまった」
「このような結果になったことを皆様に心からお詫び申し上げたい。本当に申し訳ない。再選挙は次の様々な選挙の前哨戦とも言われている。何としても、勝ち抜かなければならない。自公政権が襟を正す。どうぞ皆さん、勝たせてください」
覚悟のわけは
公明党が再選挙を重視したのには理由があった。1つは、再選挙と同じ日に行われた衆議院北海道2区と参議院長野選挙区の補欠選挙のあわせて3つの国政選挙の結果が政権に与える影響への懸念だ。3つの国政選挙については、始まる前から、「北海道は不戦敗。長野は相手の弔い合戦で戦況は極めて厳しい。勝てるとしたら広島ぐらいだ」と言われていた。「3連敗」すれば、公明党が重視する7月の東京都議会議員選挙、そして衆議院選挙への影響は計り知れない。
そして、もう1つが、次の衆議院選挙で克行の選挙区だった広島3区で、公明党が擁立する候補に自民党からの支援を取り付けるためだった。広島3区の候補者擁立過程では、一時、自民党と対立した。そこで、今回の再選挙で協力して勝利することで、次の衆議院選挙で、自民党側から支援を受ける「貸し・借り」を行いたいと考えたわけだ。
投開票日の1週間前には中国地方の5県の公明党所属議員を広島市に集め、臨時決起大会を開催。総動員で勝利に向けて支持を訴えることを確認。県本部の幹部は「他党の選挙でここまでやるのは記憶にない。全力で勝利を目指す」と語気を強めた。
“背水の陣”で臨んだ岸田
一方の自民党。今回、候補者選考から一貫して選挙戦を仕切ったのは、広島が地元で岸田派を率いる岸田文雄だ。3月末には、みずから県連会長に就任し、不退転の決意を示した。
「今回は私自身にとっても大切な選挙だ。多くの人々が、広島の政治と、私の政治における『存在感』を深く結びつけている。広島の政治の出直しは、私の政治家としての今後のありようにも大きく影響し、総裁選挙にも関わってくる。私自身、先頭に立つ覚悟で、この出直しの選挙にしっかり臨まなければならない」
保守分裂となったおととしの参議院選挙で、岸田は、県連とともに派閥の最高顧問を務めていた現職を支援。しかし、党本部が県連の反対を押し切って擁立した案里の後塵を拝し、当選させることができなかった。去年の総裁選挙で敗れてからは、党の要職や閣僚から外れて「無役」をかこっている岸田。ことし行われる総裁選挙に立候補する意向をすでに表明しているが、地元の再選挙に敗れれば求心力はさらに低下し、総裁選挙どころではなくなる。おととしのリベンジを果たすべく陣頭指揮にあたった。
いつもの国政選挙では全国に応援に回り、ほとんど地元にいない岸田が、今回は地元に張り付いて企業回りなどを行った。
「この2年間、私たち自民党のありようを考えますと、ずいぶんおかしなことがいっぱいあった。広島の自民党としてしっかりものを言っていかなければいけない。広島の自民党が先頭に立って、自民党のありようをいろいろ変えていかなければいけない選挙だ」
なりふりかまわず “禁じ手”も解禁
党本部の支援を極力おさえ、地元が主導する形で選挙戦に突入した広島県連。しかし、選挙戦序盤、新聞各社の報道で劣勢が伝えられると、大きく選挙戦略を転換した。これまで演説では新型コロナ対策や経済政策を中心に訴え、買収事件のことはほとんど触れていなかった。しかし中盤からは、党本部が案里に提供した1億5000万円についても言及し、党本部の説明を求めるようになった。政治とカネの問題に正面から向き合い、改革姿勢を打ち出すことにしたのだ。そして、地元紙には、岸田を打ち出した全面広告を掲載した。
「今度こそ信頼できる間違いのない人物を選ばなければならない。国民・県民の声をしっかりと受け止め、自民党広島県連こそが先頭に立って、自民党を変えていく。新しい自民党を私たちの手によって作り直していく。再選挙は自民党広島県連としての出直しの選挙だ」
一方で、県連幹部は河井夫妻から現金を受け取ったり、河井夫妻との親密な関係が指摘されたりした県議会の重鎮に対し選挙活動を行うように依頼。いわば「禁じ手」を解禁した。さらに、おととしの選挙で、案里支援の演説会に出席していた文部科学大臣の萩生田光一のほか、政務調査会長の下村博文も広島入りし、マイクを握った。なりふりかまわず、勝利を目指した。
あとがない岸田も、選挙戦終盤に、改めて自らの派閥の秘書団に、企業や団体、それに党の支援者などへの電話かけを最終日まで徹底するよう号令をかけた。みずからも事務所で電話をかけ続け、票の上積みを目指した。しかし、党への逆風を改めて肌で感じたという岸田。選挙戦で日焼けした顔で次のように述べた。
「元々、自民党に所属していた議員が事件を起こし、逮捕されて、裁判にかけられて、有罪となり当選無効になった。こういった経緯がある。自民党に厳しい声があり、逆風を感じている。しかし党として、しっかりと再生をしていかないといけない」
コロナ対応も影響
果たして岸田が指摘したとおり、逆風は直撃した。党が立てた西田は、およそ3万4000票差で敗れた。
NHKが投票日に行った出口調査では、自民党支持層のうち2割台半ばの人が立憲民主党などが推した宮口に投票したと答え、強固な自民党支持層が離れたことがうかがえた。うなだれた様子の岸田は記者団に対し、政権の新型コロナウイルス対応も選挙に影響を及ぼした可能性を指摘した。
「新型コロナ対策について、県民の皆さんが生活に苦労されている。政治にしっかりと責任を果たしてもらいたいと思っていることを感じた選挙だった」
一方で、次の総裁選挙への影響について記者団から問われると、激しく反論した。
「今回の選挙と次の総裁選挙について、なにか結びつけるといった覚えはないし、この選挙の結果を、総裁選挙に利用するとは考えたことはない」
解散・総選挙の時期に影響も!?
菅政権にとって最初の国政選挙となった衆参3つの選挙で、自民党は、候補者擁立を見送った選挙を含め全敗した。与党議員の多くは、「政治とカネ」で揺れた広島、現職議員の死去に伴う「弔い選挙」の長野と、いずれも個別の事情があったとして、政権運営に直接的な影響はないと平静を装う。
しかし、自民党幹部の1人は「予想以上に厳しい結果だった」と肩を落とし、別の幹部も「新型コロナ対策などへの国民の不満の表れだ」と、ショックの大きさをにじませた。今回の選挙で一度も応援に入らなかった総理大臣の菅義偉。選挙の翌日、硬い表情でこう語った。
「国民の皆さんの審判を謙虚に受け止め、さらに分析し、ただすべき点は、しっかり、ただしていきたい」
東京や大阪などに3度目の緊急事態宣言が出される中、与党内では、今回の選挙結果も踏まえ、当面は感染対策やワクチン接種に注力すべきだという意見が大勢だ。これで衆議院の解散・総選挙は、東京オリンピック・パラリンピックのあとの可能性が高まったという声も出ている。広島での敗因は「政治とカネ」の問題だけなのか。秋までに行われる衆議院選挙に向けて、与党は体制の立て直しを迫られている。 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 

 

 
 
 
 

 



2021/6